【合法ロリ】見た目幼い女性【ロリババア】その4

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835名無しさん@ピンキー:2014/04/06(日) 16:35:51.53 ID:wkj0GLmz
そういや、先日行った書店で見たが、どっかのラノベの新刊で
「巫女をしていた曾祖母が、儀式によって女子高生レベルに
 身体が若返り、主人公の同級生として転入してくる」
という話があった。無論、「婆しゃべり」。
もう少し若返ってせめてローティーンくらいになれば、
ここの読者のニーズにマッチしたのにね
836名無しさん@ピンキー:2014/04/06(日) 18:19:06.46 ID:0fbDmoP0
シモが緩い系ロリババア
837名無しさん@ピンキー:2014/04/06(日) 23:52:38.81 ID:H7Eq5EHr
見た目がロリでもお婆ちゃんのころを知ってたらちょっと引いちゃうな
ずっとロリなまんまでお婆ちゃんが一番好きだな
838名無しさん@ピンキー:2014/04/07(月) 00:45:30.40 ID:tOzlwaPA
>シモが緩い系ロリババア

いくら見た目ドストライクな美ロリババアだったとしてもシモの世話した瞬間に性欲なんざ失せるわ……とか思う俺介護職
839名無しさん@ピンキー:2014/04/07(月) 07:10:31.04 ID:kUFZ+IwZ
雪女なのかもしれん
840名無しさん@ピンキー:2014/04/08(火) 13:18:02.90 ID:Ec2RHsLn
草履履きで底に霜柱を作って「ほれ見よ、厚底」とやった直後に折れてこけるロリババアを幻視した
841名無しさん@ピンキー:2014/04/09(水) 00:25:34.06 ID:uYmXRKs2
婆ちゃんの脚が折れる?看病しないと・・・
842名無しさん@ピンキー:2014/04/20(日) 10:19:25.34 ID:J1Kw7btz
浣腸だと!?
843名無しさん@ピンキー:2014/04/22(火) 19:20:20.81 ID:JupH5ebI
こちらよりはるかに力があるロリババァが策謀によってこちらの言いなりになるってゾクゾクする

「さあ次は浣腸ですよ、尻をこちらに向けてもらいましょうか」
「くっ、たかが人間ふぜいが……殺してやる、殺してやるぞ」
844名無しさん@ピンキー:2014/04/22(火) 23:36:49.45 ID:gvaSYlmV
断然甘やかされたり意地悪されたい派

お婆ちゃんらしい包容力で癒されたり諭されたりたまにお茶目なイタズラされたい
845名無しさん@ピンキー:2014/04/23(水) 07:22:47.63 ID:KQpHgqEq
基本仲良しの方が安心して寄り添っていられそうでいいよな
いたずらされるくらいなら問題ないし
846名無しさん@ピンキー:2014/04/23(水) 19:30:06.26 ID:OhS2hLou
長年生きてる分感覚が鈍っていて
ただのいたずら感覚でとんでもないことされたりするとかあると思います
847名無しさん@ピンキー:2014/04/28(月) 11:09:31.16 ID:5XGha7+K
忍野忍ちゃんと混浴したい
848名無しさん@ピンキー:2014/04/28(月) 14:24:54.70 ID:/ywI7QWk
そろそろ最後に作品が投稿されてから一年になるな
849688:2014/04/29(火) 01:13:11.15 ID:C/AjBdYX
皆々様こんばんは
このスレで八千代様シリーズを投下していたものです
前作投下より一年が経過しようとする今、ようやく第三話(最終話)が形になってきたことを報告申し上げます
ゴールデンウィークの間には完成させる予定ですのでそれまでどうかお待ちあれ
850八千代様の外出:2014/05/10(土) 22:12:32.55 ID:8qhg1KTW
約一年の沈黙を破り、ロリババアスレよ、私は帰ってきたッッッ!!
そんなわけで八千代様のシリーズ最終話をお送りいたします!
ちびちびと前二作で張ってた(わかりにくい)伏線が前提になってるので、読み返し推奨とだけアナウンスさせていただきます!
851八千代様の外出:2014/05/10(土) 22:14:04.37 ID:8qhg1KTW
 「健坊。お主、自分の事が嫌いじゃろう?」

 と、唐突に八千代様は切り出した。

 ここはいつもの『離れ』の一室ではない。
 磨かれた木製のテーブル、テーブルの上の料理のメニュー。
 室内に響く、第三者達のそれぞれの会話や食器の擦れ合う音。
 穏やかな間接照明の明かりに照らされた壁の反対側には、陽光に照らされた通りが窓の向こうに見える。

 「いや、嫌い………というほど積極的なものではないな。それ以下じゃ。自分自身に興味が無い――――――こう言った方が正しいじゃろう。」

 八千代様は自分で注文した紅茶に一度口をつけてから、言葉を改めた。
 そんな砂糖とジャムを大量にぶち込んだシロップみたいなものを良く飲めるな、と頭の片隅の自分がそんな暢気なことを考えていた。
 俺の手元には対照的な黒いコーヒーがゆらゆらと湯気を立てていた。

 「――――――別にお主のその性質について、どうこう言うつもりはない。ただの確認作業のようなものじゃよ。深刻に考えずともよい。雑談のついでのようなものじゃ。」

 俺は何も答えない。
 答えられなかった。

 指先まで体が奇妙に痺れている。
口は城の門のように頑なに閉じられて、開かれることを拒んでいた。
 そのくせ目と耳はせわしなく周囲の情報を拾い集め、脳はそんな自分を冷めた温度で俯瞰していた。

 「健坊。儂はお主の事が好きじゃよ。」
 
 いつものからかうような調子ではなかった。
 ただ当たり前のように語られる、本心からの言葉だった。

 八千代様はそう言うと、その幼い顔立ちに似合わない、いやになるほど大人びた笑みを浮かべた。
 微笑んだ拍子に、こめかみから垂れる白髪がさらりと揺れる。
 赤い瞳がこちらを見透かすように見つめた。

 きっとその眼には、自分が今どうなっているのかも、何を思っているのかもお見通しなのだろう。


 ――――――思ってみれば、俺は彼女のその眼がずっと苦手だったように思う。
       自分の底の浅さを見透かされているようで落ち着かなかった、
       自分が薄っぺらな人間だと、自分が良く知っているから。

 俺は何も答えない。
852八千代様の外出:2014/05/10(土) 22:15:00.42 ID:8qhg1KTW
 「健坊。儂は――――お主のことを愛しておるよ。」

 八千代様がもう一度口を開く。
 その言葉を、俺の脳が乾いたまま処理する。
 言葉の意味をゆっくりと噛み砕いていく。


 アイシテイル。
 あいしている。
 愛している。

 ――――――愛。愛とは何だろうか?

 その問いに対する答えは持ち合わせていなかった。
 単純に難しすぎる問題だった。

 代わりに俺は空を仰いだ。
 空の代わりに見えるのは天井だったのだが。

 八千代様は変わらず俺を見つめている。
 俺は何も答えない。
 俺は何も答えない。
 俺は何も答えられない。


 俺は―――――――――、


******


 俺の父親は家を空けることが多かった。
 カメラマンというその職業柄、被写体を求めて色々な場所へ赴く必要があるというのはわかっている。
 それを考慮しても家にいる時間は随分少なかっただろうと思う。

 いや、露骨に言うと、家を避けていた―――その方が正しいと思う。
 家は父にとって帰る場所ではなかったのだ。

 母から聞いた話では、父は元々奔放な人間で一つ所に留まる事をしない気質の人間だったという。
 そんな父はたまたま母と恋に落ちて、『図らずも』家庭を持つことになってしまったのだ。
 最初の頃は父も家を大事にしようと志していたらしいが、次第にその性分が首をもたげてきて、仕事にかこつけて家を留守にすることが多くなってきた。
 母もその性分をわかっていて結婚したのだろうが、それでも実際問題として夫婦仲は少しずつ冷えていった。
853八千代様の外出:2014/05/10(土) 22:15:56.36 ID:8qhg1KTW
 父が家に夜遅く帰ってきて、母と口論していた時のことを幼心におぼろげに覚えている。
 話の内容自体は覚えていないが、家庭を顧みない父に対して母が喰ってかかり、父が淡々と突き離していたのは覚えている。
 そんなときにふと、自分の心に浮かんできた言葉がある。


 「そうか、自分は生まれてこなければよかったんだ。」


 その言葉は奇妙な確信と実感を伴って、自分の胸の内にするりと納まった。

 父と母が喧嘩をしているのは、父が家庭を大事にしないからであり、そもそも家庭が無ければそんな喧嘩はないはずだった。
 ではなぜ家庭があるのかというと、それは『自分がうまれたから』なのだ。
 ならば、自分は生まれてくるべきではなかったのだ。

 自分が得たこの考えに関しては、今まで誰にも言ったことはない。
 言う必要もないと思ったからだ。
 ただ、幼いころからその確信はずっと変わらず胸の内にあり続けた。

 そうして、両親が離婚して俺と母が百蔵の屋敷で暮らし始めたのは、俺が中学生になる頃の話だった。
 微妙な居心地の悪さを感じながらの実家暮らしを中学生、高校生の間過ごした。


 そして、俺は八千代様に出会った。


******


 本日は快晴、湿度は低い。
 空を見上げれば綿菓子のように白い雲が空を悠々と泳ぎ、住宅地のベランダを見れば奥様方が洗濯物を吊るしているのがよくわかる。
 かくいう俺も今日はきちんと洗濯物を干してからの外出である。
 午後に雨が降らないのは予報で確認済み。
おかげで気分は上々、後顧の憂いは無し。

 だが、実際に街中を歩く俺の表情は何だか妙に固かった。
 苦虫を噛み潰したのに苦くなかったことに疑問を感じているような表情で固定されている。

 ポケットから携帯電話を取り出し液晶で時間を確認すると、午前十一時の十分前。
 待ち合わせの時間には駅に着くだろう。

 待ち合わせ。
 そう、待ち合わせなのだ。

 ――――――よりにもよって八千代様と。

 八千代様である。
 あの百蔵家数百年の歴史の生き証人である不老の少女であり色素が死滅するまで引籠り生活を続けて何をするにもまずもって他人を自分のテリトリーに呼びつけることで用事を済まそうとするはずのあの八千代様が、である。
 あの八千代様が、外で待ち合わせをする、というこの異常事態。
 あまりの異常事態に俺は今日午後の天気が急に霰、雹を通り越して氷河期になってもおかしくないと思い始めている。
854八千代様の外出:2014/05/10(土) 22:17:02.10 ID:8qhg1KTW
 「洗濯物を取り込んでくるべきだろうか……。」

 気が動転しているあまり変な事を考えている。
 額をぴしゃり、と叩いて雑念を追い払った。
 手元の携帯電話を操作して、数日前に来たメールを読み返す。

 そのメールの件名には実にわかりやすく、『デートじゃ!』と書いてあった。
 本文には土曜日―――つまり今日、駅前にて待ち合わせ云々と書いてある。
 無論、どういう風の吹き回しなのだという旨の返信をこちらも送ったのだが、八千代様からは『黙ってデートコースでも吟味しておくがよい』というありがたいお言葉が頂けたのみであった。

 呼び出すだけ呼び出しておいて行く先はこっちが決めなければならないという理不尽な事態に、当然俺も呆れかえった。
 まぁ、メールを精読してみると、自分の長い引籠り生活の間に巷がどのように変わったのか見て見たいというのが八千代様の希望だというのがわかったので、俺も渋々了承することにした。

 そんなこんなで本日十一時に駅前にて八千代様と待ちあわせることになったのである。

 「……………はぁ……。」

 我知らず、憂鬱気なため息が口から漏れる。

 煩わしい――――――と思う。
 俺は別に八千代様のことが嫌いだというわけではない。
 ただ単純に老体なら老体らしく、部屋で黙って茶でも啜っていてくれればいいのに、なんやかんやと好奇心で手を出す度に呼びつけられるのが面倒なのだ。

 ただ、よしんば部屋で茶を飲んでいるのだけにせよ、自分が茶飲み話に付き合わされる立場なのは明白なのだが。
 兎にも角にも、俺は随分八千代様に振り回されているのだ。

 「しっかし、なんで俺がねぇ……。」

 ぽつり、と疑問が口から零れ出る。
 それは、それこそずっと前からついて回っていた疑問だった。

 どうして自分なのか。
 どうして八千代様は自分を選んだのか。

 疑問それ自体はずっと頭の中にあったが、不思議とそれを八千代様に尋ねたことはない。
 尋ねたところで別にどうということでもないと思うし、聞いたところで大した答えがあるわけでもないという気がする。
 それとも――――――。

 「ん、ついたか。」

 とりとめのない思考を打ち切って、視線を前に向ける。
 考え事をしている間に目的地である駅に到着していた。
855八千代様の外出:2014/05/10(土) 22:17:54.08 ID:8qhg1KTW
 特に何の変哲もない、地方の駅である。
 白い駅舎に自転車置き場、駅前にファストフード店とコンビニがある。
 駅員不在で改札すらないような寂れた駅でもないが、一日数万人が利用しビルが隣接しているような豪華な駅でもない、ごく普通の駅である。
 今日は休日であることもあってか、平日よりやや人が多いように見受けられる――――――とはいっても微々たるものだが。

 「……まだ来てないな。」

 ぐるりと周囲を見渡して、八千代様らしき人物がいないのを確認する。
 あの白髪頭は外なら相当に目立つはずだが、今は見当たらない。
 俺は時計を確認して、待ち合わせの時間まで五分程度あることを確かめると、黙って八千代様を待つことにした。

 彼女より先に到着する事が出来たのは僥倖だった。
 自分の方が遅く着いたのならあとでどのような文句を言われるのか想像したくない。

 だがしかし、だからこそ、


 「――――――遅いぞ健坊。」


 と背後から声を掛けられた時は心臓がとまるほど驚いた。
 足もとに爆竹を投げ込まれた鶏みたいな勢いで後ろを振り返る。

 そこには見慣れない少女がいた。
 いや――――――先ほど掛けられた声から、八千代様であることは察しがついているのだが、自分の知っている八千代様と目の前の人物がとっさに結びつかなかったのである。
 結果として俺は、碌な言葉も無いまま阿呆みたいに口を開けて突っ立っていることしかできなかった。

 「…………………。」
 「なんじゃ、健坊。鳩が50口径弾喰らったような顔をしとるぞ。」

 先ほど『遅いぞ』と言われたように、俺がここに来た時には既に八千代様はここに来ていたのだろう。
 それでも一度確認したにも関わらず、俺が八千代様に気がつかなったのは、彼女がその特徴的な髪の毛を隠していたからである。

 長い長い白髪は纏めてアップにしており、頭には鍔広の帽子を被っている。
 上着にはベージュ色のカーディガン、その下には桜色のキャミソールをインナーに着ており、首の周りには淡い藤色の薄手のマフラーを巻いていた。
 下半身は白のフリルが飾りについた水色のスカートで、黒のニ―ソックスと赤いローファーを履いていた。
 さらに桃色のフレームの眼鏡をかけて、型からは同色の小さなバッグを提げていた。
856八千代様の外出:2014/05/10(土) 22:18:54.85 ID:8qhg1KTW
 「………………。」
 「おい健坊、なんとか言ったらどうじゃ。逢瀬の際に男が女を待たせるのはあまりに甲斐性が無いとは思わんのか?」
 「……あぁ、すまんかった。」

 脊髄反射的に謝罪の言葉を述べたが、俺の頭はまだ正常な状態に復帰していなかった。
 それくらい、普通の女の子らしい服装に身を包んだ八千代様はインパクトがあったのだった。
 八千代様はそんな俺を訝しげに見て、むぅ、と唸った後合点がいったという風に手を鳴らした。

 「ふむ!何をそんな呆けた面をしておるのかと思ったら、儂に見惚れておったのじゃな?」

 そう言うと八千代様はくるりとその場でターンして見せた。
 カーディガンとスカートの裾がふわりと風に舞った。

 「どうじゃ?通販サイトを眺めながらあーでもないこーでもないと言いつつ、タキエと一緒に選んだ洋服じゃぞ。良く似合っておると思わんか!?」

 八千代様はいつもの皮肉気で老獪な笑みではなく、年頃の少女のような屈託のない微笑みを顔に浮かべた。

 ちなみに彼女の言うタキエとは百蔵の屋敷の中で数少ない八千代様と面識のある使用人の一人で、俺も世話になった事のある人である。
 俺は駅の駐車場のあたりに視線を向けると屋敷で見たことのある車を発見した。
運転席に座っている壮年の女性はこちらを認めると、軽く会釈を返した。

 ――――――わざわざ送ってきてくださってありがとうございます。
 ――――――いえいえ、今日は八千代様をよろしくお願いいたしますね。

 といった目線での会話をその女性―――つまりタキエさんと交わすと、俺は八千代様に向きなおった。
 八千代様はやたらとキラキラした目でこちらを見上げていた。

 「それで、何か感想はないのか健坊?」

 一歩こちらに近づいてきて更に分かった事なのだが、どうやら薄く化粧もしているようだ。
 頬はほんのりと紅色が差し、唇は微かに艶めいていた。
 盛り過ぎない程度のナチュラルメイクだったが、それでも日常的に顔を合わせている仲だからこそその違いははっきりと認識することが出来た。
 普段とは違う八千代様の表情を見せられて、俺はまたしても奇妙な混乱を覚えて頭を振った。

 期待に満ちた視線を向けてくる八千代様に対して俺はたっぷり数秒考えた後、こう答えた。

 「馬子にも衣装というのかな……。」
 「ド阿呆―――――――――ッ!!」

 八千代様の蹴りは正確に俺の脛を捉えた。
 ローファーを履いていたこともあり、非常に痛かったということはここに明記しておく。


******
857八千代様の外出:2014/05/10(土) 22:19:55.20 ID:8qhg1KTW
 「それで、いきなり外出とかどういう風の吹き回しだよ。」
 「ふむ?」

 俺が向こう脛を蹴り抜かれて悶絶してから数分後、俺達二人は駅前にあるファストフード店で昼食を取っていた。
 店はMの字の看板が特徴的な某世界的ハンバーガーショップである。
 俺は適当にチーズバーガーセットを注文したが、八千代様はメニューを睨みつけてうんうんと唸ってから、期間限定のてりやきたまごバーガーなるものを選んだ。
 本人としては色々試してみたかったのだが、大量に頼んでも食いきれないのは目に見えているからだそうだ。

 「わひのはいふふのいふう?ほんはふぉはははほひあふへはお。」
 「いや、聞いた俺が悪かった。先に口の中を空にしてから喋ってくれ。」
 「んむ。」

 八千代様はそう頷くと口の中いっぱいに頬張っていたハンバーガーを咀嚼してから飲み下して、コーラを一口飲んだ。
 なにやらリスを彷彿とさせる動作であった。

 「儂の外出の理由か?そんなのはただの気紛れじゃよ。」
 「……いつものように。」
 「うむ、いつものようにじゃ。」

 八千代様はそう言って今度はポテトを口の中に放り込んだ。

 「実を言うと、昔から定期的に出かける日を設けておってな。以前外出した時から随分日が経っておるのを思い出したので、こうしてお主を誘った次第じゃ。」
 「定期的って、それはどれくらいの周期なんだ?少なくとも俺が世話係になってからは一度も出かけてないだろ。」
 「二、三十年に一度と言うところかの。」
 「……………。」

 長ぇよ、と突っ込みを入れたかったが、そこはぐっと我慢した。
 この人は色んな意味で時間のスケールが違うのだ。
 俺の呆れた顔を見てとったのか、八千代様は憮然とした表情でつけ足した。

 「むぅ、これでも頻度が増えた方なのじゃぞ?江戸幕府の時代は五十年、六十年と部屋に籠っておるのもざらじゃったからな。」
 「そんなんだから肌が生っちろいんだな……。」
 「まぁ、逆に言えば、今の時代は変化に富んでおるからちょくちょく足を運ぶ意味があるのじゃがな。」

 そう言うと八千代様はポケットから携帯電話…というかスマートフォンを取りだした。
 そういえば先ほど、この店の支払いもこれを使ってやっていたのを思い出した。

 「見るがよい!今ではこの『お財布ケータイ』という機能でどんな勘定もこれ一本で済むのじゃ良い時代になったと思わんか!?」
 「……その代金って百蔵の家の口座から引き落としてんだろ?」
 「うむ、必要経費と言うやつじゃ。」
 「……………。」
858八千代様の外出:2014/05/11(日) 02:20:57.60 ID:UnQPzKO8
 御先祖様の横暴である。
 しかし、八千代様の数多くの道楽費は百蔵の家が持っているので今更の話ではある。

 げんなりとしている俺を尻目に八千代様は、電車も切符を買わずにこれ一本で行けるらしいと力説している。
 おそらくそういった真新しい技術や文化を試すのが八千代様の外出の一つの目的なのだろうな、と俺はなんとなく推測した。

 「それで、どこに行くとか…そういう目的とか予定とかは何かあるのか?」
 「特に無いのう。メールで言った通り、お主が儂をエスコートせい。」

 男の甲斐性の見せどころじゃな、と言ってにやりとした笑みを浮かべてから、八千代様は両手で持ったハンバーガーを頬張り始めた。
 ちょっと余り気味になっているカーディガンの袖にソースが付着しているのを指摘するべきかどうか迷いつつ、俺は今日の予定を頭の中で確認した。

 確認したと言っても、実際にはノープランである。
 俺のやることといったら市街地まで連れて行って、そこから先は八千代様について回るだけだ。
 なぜならこの八千代様のことだから、街に出ればあれもみたいこれもみたいといって勝手に動き始めるからに違いないからである。
 子供みたいに目を輝かせて街をかけずり回る八千代様の姿をありありと幻視して、俺は無意識のうちに嘆息した。
 どうやら八千代様の行動がかなり正確に思い描けるようになるまで毒されているらしい。

 「………上着の袖にソースついてるぞ。」
 「むぐっ!?」

 またもやリスみたいにハンバーガーを口に詰め込んでいる八千代様は、俺にそう指摘されると素っ頓狂な声を上げた。
 それを見て俺はまたやれやれとため息をついたのであった。



 それから昼食を終えて市街地に到着した後、八千代様は開口一番こうのたまった。

 「一昔前はこの辺りも焼け野原だったんじゃがのう。」
 「いつの話だよ。第二次大戦のあたりか?」
 「戦国時代。」
 「……………さいですか。」
 「ふふん。」

 俺が辟易した顔をしていると、隣で八千代様はなぜか得意げな顔をしていた。
 ……察するに、これはこの人の持ちネタなのだろう。

 「さてと、久々の外出じゃからの。目一杯豪遊させてもらうとしよう!」
 「あー、そうだなとりあえずあっちの方に………」
 「むむっ!なんとあそこにドでかい電気店があるではないかっ!行くぞ健坊!」
 「聞いてねえっ!!」

 俺がとりあえず繁華街の方向へと歩き出そうとしたとき、八千代様はそれとは反対方向にある電気屋の方へと歩き出してしまった。
 いや正確にはスキップでもせんばかりの早歩きである。
 俺が突っ込みを入れると、八千代様はスカートの裾を翻しながらこっちの方へと振り返った。
859八千代様の外出:2014/05/11(日) 02:22:15.40 ID:UnQPzKO8
 「早うせいっ!ぼさっとしとると置いていくぞ!」

 そのときの八千代様の表情はそれこそ満面の笑みだった。
 いつもの老獪な表情はどこへやら、本当に十代の少女のような無邪気な笑顔だった。

 「……へいへい。」

 色々と突っ込みたいのは山々である。
 ただ自分の口元が笑っているのは自分でも気がついていた。



 それから先は概ね俺が予想していた通りである。
 まずは電気屋についた八千代様は買うわけでもない家電を一通りいじって満足した後、ゲームコーナーで興味を引かれたタイトルを幾つか購入して、買い物袋を俺に預けた。
 それからショッピングセンター内にある服屋を何軒か梯子して何着か購入し、待たされた俺には買い物袋を頂戴してくれた。
 更に繁華街に行く途中で小物屋や雑貨屋を覗いて衝動買いし、買い物袋は俺に渡された。
 他に書店、鞄屋、靴屋、ビデオ屋、CD屋、コスメショップ、ケータイショップ、リサイクルショップ、スーパー、コンビニ、etc,etc……………。
 そして……

 「そろそろ……休憩しようぜ?」
 「何じゃ、もうへばったのか。若いのに情けない。」
 「持ってる荷物の量が違うんだよっ!」

 さも呆れたと言わんばかりの表情を見せる八千代様に対して、俺は両手を掲げた。
 これまでの道中で八千代様の購入した品々が入った紙袋の数々で俺の両手は完全にふさがっており、それでも飽き足らず買い物中に買わされた新しい鞄に購入したものを放り込まれている始末である。
 女子の買い物に付き合わされる男子の悲哀というのは、相手が誰であっても変わらないものの様だった。

 「ふむ。まぁ、そういうことなら仕方があるまい。儂もそろそろ歩き疲れたころじゃからな。休憩を取るのはやぶさかではないぞ。」

 そう言って八千代様は手近なところにあった喫茶店を指さした。

 「……お茶にでもしますかね。」
 「うむ。」

 八千代様が頷いて俺たちはその喫茶店に入った。
 店は思いのほか洒落た作りをしていて女性客が多く、男性である俺としてはやや気後れした。
 当然八千代様は気にすることなく席を選んで座り、紅茶とスコーンを注文した。
 実のところ甘いものがあまり好きではない俺はブラックコーヒーを頼んだのだが、八千代様はそんな俺を尻目に紅茶に砂糖とジャムを三杯ずつ放り込んでいた。

 「……良く飲めるなそんなもん。」
 「うむ、甘くて美味いぞ。お主も一杯どうじゃ?」
 「わかってて言ってるだろ。」
 「当然じゃ。」
860八千代様の外出:2014/05/11(日) 02:23:15.81 ID:UnQPzKO8
 くっくっ、と喉の奥で笑って八千代様はスコーンを一切れ齧った。
 スコーンにはクリームとジャムが塗りたくってあり、これまた甘そうであった。

 そして、自然な流れで切り出した。
 今日の天気のことでも話題にするような気安さで口にした。


 「健坊。お主、自分の事が嫌いじゃろう?」


******


 「………………………………。」

 長い、長い沈黙があった。

 口は貝の様に閉じられ、舌は乾いていた。
 手足は石の様に強張り、脳は凍っていた。

 八千代様の質問に答える言葉を俺は何一つとして持っていなかった。
 いや、そもそもの問題として俺自身の中に人に対して応えられる何かがあったためしが、これまで一度としてあったのだろうか?

 こんなに空っぽで、薄っぺらな自分という人間の中に?
 こんな――――――生まれてくるべきではなかった人間に?

 「……………………………………………。」

 まるで死人の様に微動だにしない俺を見て、八千代様が微笑んだ。
 そこには様々な感情がないまぜになっていた。

 慈しみ
 憐れみ
 哀しみ

 まるで、桜の花弁がひとひら落ちるような儚い笑みだった。

 その笑みが一瞬――――――ほんの一瞬だけ、俺の体を解した。
 いや解されたのは心の方だったのか。
 なんにせよ、俺はそのほんの一瞬にだけ、自分の言葉を紡ぐことに力を注いだ。


 「俺は―――――――――自分が価値のある人間だと思ったことなんて、一度も無い。」


 精いっぱいの一言だった。
 一度口を開いただけで何キロも走ったような疲労さえ感じる。
 鼓膜に届いた自分の言葉は、壁一枚隔てたように遠く聞こえた。

 そして俺の言葉を聞いた八千代様は何も言わなかった。
 何も言わずに目を閉じただけだった。
 ただ、その沈黙には俺の言葉を反芻するような感覚が確かに感じられた。

 「左様か。」

 たっぷり時間をかけて、八千代様はそう言った。
 もう一度開いたその目の中の、赤い瞳が静かに俺を映した。

 「お主が今まで生きてきて、周囲に違和感を覚えておるとするのなら――――――全てお主自身のその認識が原因じゃな。」
861八千代様の外出:2014/05/11(日) 02:24:12.88 ID:UnQPzKO8
 八千代様のその言葉はこちらに対して問いを掛けるのでもなく、答えを提示するのでもなく、ずっと考えてきたことを整理するような響きがあった。

 「お主が百蔵の家が落ち付かないと感じておるのは、ひとえに自分が場違いに過ぎると感じておるからなのじゃろう。あの広く大きく由緒ある家には自分の様なものが住むには豪奢に過ぎると、いたたまれずに。」
 「………………………。」

 正解だった。
 青の家は俺のような人間には『大きすぎる』。
 物理的な意味だけではなく、家柄も、財力も、権力も。
 俺が百蔵の人間であるというだけで手に入れられるものはあまりにも、自分の手には余り過ぎた。
 ――――――俺自身にはそんな価値などないのに。

 「お主の言動も基本的にそうじゃ。お主は基本的に他人に対して強く反発する事が無い。自分の意思にも、言葉にも、価値があるとは露ほども思っておらんからじゃ。ただ、形の上では文句のようなものは言ってみせる。なぜなら『普通』の人間なら普通はそうするからじゃ。」

 正解だった。
 俺は表面上では確かに文句は言う。
 けれど最後には誰かに従う事、流されることを許してしまう。
 それは結局のところ――――――他人の意思を曲げさせても貫くだけの価値を、自分の意思に認めていないからなのだ。

 そうなることはいつもわかっている――――――だから、俺の文句はただの『フリ』だ。
 空っぽで薄っぺらな出来損ないの人間が、一丁前の意思を持った人間のフリをしているだけなのだ。

 「そんなお主じゃから、儂はこれからする質問の答えも良くわかっておる。予想された答えじゃ。お主の考えておることも、どうしてそう考えるようになったのかも全て承知の上じゃ。じゃから、遠慮せずに答えてくれ。」

 八千代様は、そう言って一拍の間を置いた。
 その瞳でまっすぐに俺を見つめながら言った。


 「健坊、儂はお主のことが好きじゃよ。お主は、儂の事が好きか?」
 「知らねえよ。」
862八千代様の外出:2014/05/11(日) 02:25:04.05 ID:UnQPzKO8
 今度は迷わず、固まることもなかった。
 本心からの言葉だった。

 聞きようによっては酷く突き放したような言葉だったかもしれない。
 だが、八千代様は小さく優しい微笑みを目元に浮かべていた。


 俺が、口先だけでも『嫌い』と答えなかったことの意味を理解しているから。


 俺は八千代様から目を逸らして、手元のコーヒーを改めて口に含んだ。
 コーヒーは既に随分と冷めていたが、不思議と熱いような気がして、俺は心の中でため息をついた。


******


 結局、俺たちが喫茶店を出るときには既に日は傾きかけて、西の空は茜色が差し始めていた。
 体感時間としてはもう少し短かったはずなのだが、実時間はそれとはおかまいなしの様だ。
 アインシュタインに色々と問い詰めたい気分だった。

 そろそろ帰るか、と俺が提案すると八千代様は了承した。
 ただし元来た駅の前で別れるとかそういうことではないらしい。

 「今夜はお主の部屋に泊まろうと思う。」
 「はぁ?」
 「嬉し恥ずかし朝帰り、というやつをやってみようと思ってのう……ってそんな顔をするでない。」

 俺と視線を合わせた八千代様が突っ込みを入れる。
 それほどまでに酷い面をしていたようである。

 「まぁ、なに。久々に外に出たのじゃから、どこかに宿泊して夜を明かすのも一興じゃと思っただけでな。であればお主の部屋が一番都合が良かろう。前々から一度行ってみたいと思っておったからのう。」
 「いいのかよ。特に何の面白味も無い部屋だぞ。」
 「それで良いそれで良い。人の部屋に遊園地のような娯楽性など求めてはおらぬよ。」

 そう言って八千代様はけらけらと笑い、ついでに夕食も俺に作らせるという旨を伝えてきた。
 食事のクォリティには期待しないようにと釘をさしておいた上で、俺はそれに了承し、ようやく俺たちは帰路につくことになった。

 元来た駅まで帰る際の電車はギリギリ座席が空いていたので座ることが出来た。
 もう少ししたら帰宅ラッシュに巻き込まれていたかもしれないので運が良かったと言えよう。
 運が良かったと言うのは八千代様にとってである。
普段から引籠り生活をしている分、久しぶり(過ぎる)外出でよほど疲れたのだろうか、八千代様は席に座るなりいきなり眠りこけてしまった。
863八千代様の外出:2014/05/11(日) 02:25:56.19 ID:UnQPzKO8
 意識を失くした八千代様の頭が、俺の肩にこてんと乗った。
 普段はつけない香水でもつけているのだろうか、柑橘類のような香りが鼻をくすぐった。
 この頭をどけようかという考えが一瞬だけ頭をよぎったが、すぐに打ち消した。
 代わりに少し乱れた髪の毛を指先で整えてやった。

 指先に感じる髪の細さ、
鼻に届く香り、
肩の上の重みと温かさ、
 そういったものを煩わしいと思うことはなかった。

 窓から差す夕暮れ時の日差し、
 電車の中に作られる陰影、
 座席を揺らす微かな振動、
 それらが静かに自分の心の中を通り抜けて行くのを感じていた。

 そして、通り抜けて行く毎に自分の心にある空洞もまた、まざまざと感じられた。

 それは自分が物心ついたときからずっとそこにあった空白だった。
 『これ』は自分が生まれてくるべき人間ではなかった、と思った時に生じて、それ以来自分の胸の芯に変わらずあり続けてきた、深く、広く、暗い、大きな穴だ。
 奥を覗けば落ちてしまいそうで、耳をすませば風が抜けて行く乾いた音が聞こえてきそうだった。

  八千代様に言ったように自分で自分に価値が認められないのは、きっと『これ』のせいなのだ。

 「…………………っ……。」

 ―――――不意に背筋がぞわり、と粟立った。

 目の前がカッと熱くなり、酷く暴力的な気分になる。
 視界に入る優しい夕暮れの景色や、肩にかかる小さな重みと体温が、酷く鬱陶しいものに思えた。
 近くにあるもの目につくものに手当たり次第、この胸の内側にあるまっくろなものを叩きつけて滅茶苦茶にしてやろうかと思う。

 「…………………。」

 ゆっくりと深く息を吐きながら、こめかみを押さえた。
 この得体の知れない暴力的な波が引くのをじっと堪える。

 こんなのはただの気の迷い。
 こんなのは所詮、偶にある立ちくらみのようなものなのだ。

 気を紛らわすために何気なく窓の外に目をやると、景色が見慣れたものに変わっているのに気がついた。
 そろそろ電車が目的地に着くのを知った俺は隣で寝ている八千代様を揺さぶって起こした。

 「八千代様、そろそろ起きないと寝過ごすぞ。」
 「んむぅ……あと十時間……。」
 「ふんっ。」
 「むぎゃうっ!?」
864八千代様の外出:2014/05/11(日) 02:26:49.58 ID:UnQPzKO8
 相変わらず惚けたことを、もとい寝惚けたことをのたまう八千代様に軽い裏拳を叩き込む。
 額の骨でこつん、と良い音を奏でた八千代様は、年寄りに対する労りが足りんぞ、とぶつぶつ言いながら電車を降りる身支度を始めた。

 電車を降りるころには既に日も西に沈み、空は東から紫色の夜に染まり出していた。
 微かに肌寒さを覚える風を感じていると、ふいに自分の手に温かいものが触れた。

 「…………。」

 八千代様の手だった。
 八千代様は何も言わずにその小さな手の指を絡ませて、こちらの手を握ってくる。
 俺も何も言わずに、その手を握り返した。
 手のひらから伝わってくるその体温が、今はなぜかとてもありがたく思えた。

 駅から自分のアパートまで帰る道中、俺たちの間に特に会話らしいものはなかった。
 今のうちに夕食に何を作ってほしいのか聞いておいたりするべきだったのかもしれないが、なんとなく話をしづらい気分だったのだ。
 ただそれは悪い意味ではなく、むしろこの静けさが心地よかったからだと言える。

 それから数分ほど歩いて俺達二人は、俺の住むアパートに到着した。
 道路に面していないので車の騒音に悩まされるわけでもなく、かといって応通の便が悪いわけでもない、中々良い具合のロケーションにある。
 百蔵の家は不動産を経営しているので当然ここもその系列の物件である。
 こういうときには特に含む所なく、実家に感謝したい気分になる。

 ポケットから鍵を取り出し、一階にある自分の部屋に入り、電気をつける。
 人工的な照明の明かりに照らされた部屋の中は至ってシンプル、悪く言えば殺風景だった。
 机、ベッド、足の短い丸テーブルといったものが主に目につく家具で、カーペットすら敷いていない。
 床や机の上も散らかっていないというよりは、散らかるほどの物が無いと言った方が正しいだろう。
 他に目につくものと言えば机の上に畳まれたノートパソコンや大学で使っている本屋ノートがあるくらいだろうか。

 「テレビも無いんじゃのう。」
 「ニュースなんて新聞とネットで足りるしな。」

 今まで大人しかった八千代様がポツリと呟いて、俺はそれに自分の鞄と買い物袋の山をその辺に置きながら返答した。
 八千代様は何やら手持無沙汰に周りを見渡していたが、やがてバッグを床に置いて、自分はベッドの方に腰を下ろし、苦笑した。

 「なんにも無い部屋じゃのう。寂しくはないのか?」
 「いや、別に八千代様の部屋の方が散らかり過ぎじゃないかと思うくらいだ。」
 「お主は一言多いのう。」

 八千代様に憎まれ口を叩きながら、改めて自分の部屋を見渡して、殺風景だと思う。
 部屋を見渡して目にする色と言えば、机や床の木の茶色、壁と天井の白、それと強いて言うならばクローゼットの奥に覗いている服の灰色や黒程度のものである。
865八千代様の外出:2014/05/11(日) 07:48:57.85 ID:UnQPzKO8
 何度も言うが、殺風景だ。
 というよりは何もない。
 空っぽ、空虚、空洞、空白。
 それはさながら――――――、

 「お主自身の様じゃのう。」

 そう声を掛けられて、自分が物想いに耽っていたことに気付く。
 ふと顔を上げると、八千代様が静かに微笑んでいた。
 膝の上に自分の脱いだ帽子を置いて、彼女は小さく手招きした。

 「まぁまぁ、健坊。ちょっと隣に座っておくれ。」

 言われるままに八千代様の隣に腰掛ける。
 体重をかけると、ベッドが微かに軋む音がした。
 いつも聞き慣れている筈なのに、どこか違う音なのは俺一人の体重とは別の物が既に上に乗っているからなのだろう。

 俺は改めて、隣に座っている八千代様を見下ろした。
 俺の肩くらいの高さにその頭があり、白髪の中のつむじも良く見えるくらいだった。

 「本当に―――この部屋はお主の様じゃのう。」

 八千代様が俺の方を見上げてそう言った。
 その声音は心なしか何かを哀しむような響きがあり、その瞳は微かに潤んでいるようにも見えた。

 この色の希薄な部屋の中で、八千代様だけはいやに色づいているように見えた。
 上着のベージュ、眼鏡とインナーの桃色、水色のスカートと藤色のマフラー。
 頬と唇は桜色で、瞳の色は赤色だった。

 いつもの八千代様の『離れ』では、彼女が白一色のモノトーンだったのに、これではあべこべだ。

 八千代様がすっと手を動かした。
 その手が俺の手の上に重ねられる。
 そして、体重が俺の方に偏り、八千代様がしなだれかかってきた。
 温かい手を、柔らかい体を、芳しい香りを、緩やかな重みを、俺の体が感じ取る。

 あぁ、電車で寄りかかってきた時もこんなだったな、と頭の奥で冷ややかに思考した。

 八千代様が囁くように呟く。

 「健坊。お主は、空っぽな人間じゃのう。けれど――――――、」


 ――――――儂は、そんなお主のことを愛しておるよ。


 その言葉が何かの引き金を引いた。
 頭の後ろのあたりでがつん、という音とともに撃鉄が叩き落とされる感覚を確かに感じた。
866八千代様の外出:2014/05/11(日) 07:50:00.79 ID:UnQPzKO8
 俺は気がつけば、八千代様をベッドの上に押し倒していた。
 細い手首を締め上げて、華奢な肩を突き飛ばすようにして、力任せに。
 どさっ、という八千代様が倒れる音がして、俺はその上に馬乗りになった。

 「……………………っ……!」

 八千代様はそれでも表情一つ変えなかった。
 まるで何もかもが予め分かっていたかのような、静かな笑みを崩さなかった。
 俺は手の中に彼女の細やかな肌と華奢な骨を感じながら懊悩していた。
 電車に乗っていたとき、不意に襲ってきたあの暴力的な波がまた再び俺の中で荒れ狂っていた。

 ――――――今なら壊せるぞ。

 そんな悪魔めいた囁き声が何処かで聞こえる。
 押し倒したときにはだけたマフラーとカーディガンの隙間から、八千代様の鎖骨と首筋が見えて、その白さがいやに目についた。

 「健坊。最後にもう一つだけ指摘しておかねばならんな。」

 必死で暴力的な衝動に耐えている俺に八千代様が話しかけてきた。
 その声色は男に襲われそうになっている女のそれではなく、明日の天気を読み上げる気象予報士のような粛々とした印象を与えた。

 「お主の心の中は空っぽじゃ。自分自身に価値を見出せない人間は往々にしてその様な空白を内側に抱え込むことになる。じゃが、お主は良くそれを隠しておる方じゃ。実の親でもそれに気がついてはおらんじゃろう。」

 その通りだった。
 俺は自分の中にある空洞を他人に意識させた事など無い。
 いや、むしろ自分でもそれに気づかないように入念に入念に蓋をしてきたとさえ言える。

 「しかし、どんなものにも限界はある。何かのきっかけで閉めておいた蓋が外れ、掛けておいた封が剥がれるときがある。そういうときに、心の中の虚(うろ)は力の塊になって周りに向けて直接放たれる。――――――丁度、今のお主のように。」

 八千代様が自由な方の手を伸ばして俺の胸に触れた。
 その下に―――物理的な意味でなく、概念的な意味で―――俺の空洞があった。
 耳をそばだてればそこを吹きぬけて行く風さえ聞こえそうな、深い穴だった。

 しかし、今そこから聞こえるのは、空洞の虚(うろ)そのものが意思を持って、胸の内から這い出して来るような、そんな不吉極まりない律動だった。
 俺はその動きに目を凝らし、押さえつけるように努めた。
 食いしばった奥歯がぎりり、と口の中で音を立てた。

 「構わんよ、別に。」

 ――――――だというのに八千代様はそんなことを言った。

 「お主がそう望むのなら、儂を犯せばよい。お主がそう望むのなら、儂を嬲ればよい。お主がそう望むのなら、儂を甚振ればよい。お主がそう望むのなら、儂を壊せばよい。お主がそう望むのなら――――――儂を殺せばよい。儂はお主の全てを受け入れよう。」
867八千代様の外出:2014/05/11(日) 07:51:07.30 ID:UnQPzKO8
 八千代様は淀みなくそう言い切った後、片手で眼鏡を外した。
 レンズが外れて、その赤い瞳が一層露わになる。
 睫毛の一本一本、虹彩の一筋一筋さえ見えそうな距離で、俺たちは見つめあった。

 「なんでだ……、」

 長くあるいは、ほんの少しだけ、沈黙を挟んでから俺は口を開いた。
 胸の奥でぐるぐると渦を巻いている衝動と空白を抑え込みながら、慎重に言葉を形にしていく。

 「なんで、そこまで言えるんだ。俺は………俺はそんな価値のある人間じゃない。」
 「お主が計るお主の価値はお主が決めればよい。しかし、儂が計るお主の価値はお主が決めるものではない。ある人には路傍の石くれにしか見えぬものも、誰かには玉石より価値のあるものかも知れぬ。そういうことじゃよ。」
 「じゃあ、なんなんだ。八千代様にとっての俺は何なんだ。――――――愛しているっていうのは本気なのか。」
 「そうじゃよ。」

 八千代様の言葉には一切の迷いがなかった。
 深く、奥の方にしまっておいておいた物を丹念に並べ立てていくような静かな言葉だった。

 「愛とは――――――分け合うこと、寄り添うこと、与えること、捧げること、祈ることじゃ。じゃから、儂はお主に儂の全てをくれてやりたい。そして――――――叶うのならその胸の空白を埋められるものになりたい。」

 八千代様の手が俺の頬に添えられる。
 その手はいつもと変わらず、小さく温かく、そして優しかった。

 「健坊。お主、儂のおとこにならぬか?
儂のものになっておくれ。二人で静かに慎ましく、ずっとあの『離れ』で暮らそう。
  儂がお主を揺り籠から墓場まで満たしてやりたい。それが儂を健やかなるときも病めるときも病めるときも満たすことになる。」

 それはいつかどこかで聞いた言葉だった。
 こちらを見つめる八千代様の目はどこまでも俺の眼をまっすぐ射ぬいていて、胸の底まで見透かされるような、どこまでも深い赤色を湛えていた。
 いや、ような、ではなく本当に俺のことは見透かしているのだろう。

 その上での、この言葉だ。

 俺は八千代様の上に馬乗りになったまま、その瞳を見据えた。
 痛みが走るほどの沈黙の後、俺は口を開いた。


 「それは――――――できない。」
 「………そうか。」


 八千代様は呟くようにそう言って、目を閉じた。
 その声が微かに震えているのを俺は感じ取った。

 「八千代様が嫌いなわけじゃない。そういうわけじゃない。八千代様のものになってあの『離れ』でだらだら一生過ごすのは正直魅力的な提案だと思う。むしろ、そうしたいって思う部分も確かにある。」
 「……………。」
 「だけど――――――それを選んだら、俺はきっと俺でなくなるから。」
868八千代様の外出:2014/05/11(日) 07:51:58.98 ID:UnQPzKO8
 本当に、魅力的な提案だと思ったのだ。
 一瞬、首を縦に振ろうかと思うほどに。

 八千代様に愛されて、愛された分を愛し返す。
 自分の尻尾を飲みこむ蛇みたいに二人で漫然と日常に耽る。
 八千代様はさっき言ったように、俺の心の空洞に絶えることなく愛を注いで、満たしてくれるだろう。


 でも――――――この空洞を俺が無くしたら、俺には何が残るというのだろう。


 何にもない、空っぽで空虚な自分に残ったちっぽけなアイデンティティ、あるいはプライド。
 この胸の空白は俺の人生の中で、俺の手で育んできた、俺だけのもの。
 だから、これだけは手放せなかった。

 どれだけの幸福に背を向けることになっても、決して。

 「……そうじゃな。お主はそういう奴じゃからな。」

 だがそこが愛いのじゃがな、と八千代様は息を吐き出しながら言った。
 閉じた眼の眦から、一滴の水が流れた。
 涙だった。

 八千代様は声もあげず、ただ俺の下で静かに涙を零した。
 それを見て、胸が痛んだ。
 自分が傷つけておいてだが、痛みを感じずにはいられなかった。

 そういえば、とふと思い返す。
 八千代様は俺のことを、常々つまらないやつだなんだと言っていた。
 そして同時に、そこが可愛いとも面白いとも、言っていた。

 きっと――――――八千代様は最初からわかっていたのだ。
 俺が胸の内に何を抱えているのかも、それを手放せない事も、自分の想いを伝えればどうなるのかも。
 全て承知の上で、俺を愛していると、そう言ったのだ。

 「でも、それでも――――――儂を受け入れてくれなくても、儂のものになってくれなくても――――――それでも、それでも、」

 八千代様が目を開けた。
 潤んだ赤い瞳が俺を捉える。
 何かを紐解くような間を空けて、言葉を続けた。


 「それでも――――――『私』はあなたのことが大好きだから」


 ――――――その衝撃をどう形容したら良いのだろうか。
 とにかく、心臓に直接電気を流されたような、頭を思いっきり鈍器で殴りつけられたような、そんな強烈な衝撃が俺を襲った。
869八千代様の外出:2014/05/11(日) 07:52:52.90 ID:UnQPzKO8
 肋骨の奥が痛い、体の節々に熱さを感じる。
 それが自分の心臓の鼓動と、送り出される血流の脈動だと気付くのに理解が追いつかなかった。
 ドクン、ドクン、と心臓がけたたましい音を立てて血を体中に溢れさせた。

 ものを考えさせる余地すらなく、俺の頭がゆっくりと下へと降りて行く。


 やがて、俺の唇が八千代様の唇と重なった。


 どれくらいそうしていただろうか、一秒にも満たなかった様な気がするし、何分もしていたような気がする。
 やがて俺が唇を離して顔を上げると、八千代様が自分の唇を指でなぞりながら口を開いた。

 「………健司からしてくれたの、初めてだね。」

 泣きそうに潤んだ瞳と切なげに眉を寄せる表情。
 いつもの不遜な態度も、老女の狡猾な笑みも、そこには無かった。
 外見そのままの、あどけない少女としての、剝き身のままの彼女がそこにいた。

 「……もっと、キスして。」

 頬を染めて、伏し目がちに八千代様がねだる。
 俺は何も言わずにもう一度同じように口づけた。

 んっ…、と鼻にかかった甘い声と芳しい少女の香りが鼻に届き、脳を痺れさせた。
 目を閉じて何度も啄ばむようなキスを重ねる。
 ちゅ、ちゅ、と言う音と口先の微かに濡れた感触がどこまでも鮮明だった。

 「ん…っ、んん……っ…、んぅっ、ふぅ……っ」

 やがてどちらからともなく、唇の隙間から舌を差し出して絡めあった。
 八千代様の舌を舌でなぞると、口の間からくぐもった息が漏れた。
 自分の舌で相手の口の中を探るように舐めていく。
 八千代様との口付けなら何度もしたはずなのに、唇の柔らかさ、舌の細さ、歯の小ささ、唾液の甘さ、口中の温かさの、その全てが新鮮なものに感じた。

 いつのまにかベッドの上で、八千代様の手を握っていた。
 自分の手の下で小さな手が動いて指と指を絡ませ合ってくる。
 俺はそれを拒まず握り返した。

 体を重ね合って、そのまま息が苦しくなるまでキスをした。
 唇を離すと、唾液が糸を引きながら互いの口の間を垂れていった。

 息を荒げながら俺は八千代様を抱き起こした。
 すると、八千代様は俺の腕の中に流れ込むようにしなだれかかってきた。

 「……電気、消すか?」
 「………………………やだ。」

 俺がそう訊くと、消え入りそうなかすかな声で言った。

 「電灯消しに行くちょっとの間でも、今は離れたくない……。」

 そう俺を見上げながら言った。
 目の端からは涙が一粒はらり、と落ちた。
870八千代様の外出:2014/05/11(日) 10:05:38.08 ID:UnQPzKO8
 俺はもう何も言えず、黙ってその体を抱きしめ返すしかなかった。
 胸の上に胸が重なり、重い鼓動を打つ互いの心音が重なり合う。
 細くて小さな柔らかい体、温かな体温と優しい香りが、今やどうしようもなく俺の脳の機能を焼き切っていった。
 本格的に本能の雄の部分が目覚め始め、股間に血が集まり始めていった。

 それを察したのだろうか、八千代様はそっと俺の体を押しのけるようにして体を引いた。
 そして頬を僅かに染めながら、恥じらうように目を伏せて巻いていたままのマフラーを解いた。
 静脈も透けて見えそうな白い首筋、華奢な鎖骨が露わになる。
 八千代様は次にカーディガンに手を掛けようとするが、俺の手はそれより早く動いて肩を掴んでいた。

 びくり、とその肩が反射的に竦むが、すぐに力を抜いてこちらに身を預けてきた。
 俺は顔の側面からその耳に口づけた。
 今日の八千代様は髪を上げているから、その耳とうなじがよく見えた。

 唇で耳たぶを啄ばんでから、うなじへと移る。
 ちゅっ、と音を立てるように唇を落として舌でなめると、何とも言えない花のような甘く爽やかな香りが鼻をついた。
 夢中になって、後れ毛を巻きこむように何度もそこに唇で吸うと、八千代様の体がびくびくと震えた。

 「んっ、んふっ、くっ、んん……っ」

 手の甲を口元に当てて声を殺そうとするその仕草がどこまでもいじらしかった。
 舌を首筋の表面を下ろして行くように舐め、そこに跡をつけるように口づけを落とした。
 意地悪をするように軽く肌に歯を立てると、八千代様が嫌がるようにして身をよじらせた。

 肩を掴んでいた手を動かして、俺の手でベージュのカーディガンをずり下ろす。
 上着が滑り落ちて、細い肩が見える。
 背中に手を回してキャミソールのボタンを外して、肩ひもをずらした。
 上のキャミソールと良く似た肌着を露わにした八千代様を俺はもう一度ベッドの上に押し倒した。
 今度は、ガラス細工を扱うように、優しく、そっと。

 ふぅ、ふぅ、と浅い呼吸とともに八千代様の胸が上下する。
 キャミソール状の肌着をずり下げると、その胸の控えめな乳房と桃色の乳首が露わになる。
 手のひらでその存在を確かめるように胸を撫でると、既に硬くなっている乳首に手が触れる。
 コリコリと弾力のあるそれを指先でくすぐるように捏ねると、八千代様の体が僅かに跳ねた。

 「はぁ……っ、あぁっ……」
871八千代様の外出:2014/05/11(日) 10:06:43.31 ID:UnQPzKO8
 小さな胸の柔らかさと肌の滑らかさをもっと感じたくなって、俺はそこに何度も手を這わせた。
 手のひらと指を使って丹念に、優しく、慎ましい乳房を揉みほぐす。
 指の腹を使って乳首を押すと、八千代様が白い喉を晒して喘いだ。
 人差し指と親指で摘まんで捏ねると一際高い声が響く。

 「んくっ、ぅん……ぁ、ぁん……っ、ふぁぁ………あんっ…!!」

 やがて、八千代様が切なげに両足の膝頭を擦り合わせているのに気付いた。
一旦体を引いて、手で太ももに触れると八千代様はその体を強張らせた。
 ただし抵抗をするそぶりは見せず、切なげに息を荒げるだけだった。

 手のひらで太ももを撫でる。
 黒いニ―ソックスと白い肌のコントラストを目と手で感じ取る。
 そのまま俺の手は少しずつ上へと登っていき、スカートの中へと伸びて行った。
 スカートの下に隠された場所を指と手で触れていくと、指先が熱い部分に触れた。
 湿り気を帯びたそこを指先で少し押すと、にじゅ、というごく小さな水っぽい音を立てた。

 「濡れてる。」
 「………っ」

 俺が意識せずそう口に出すと、八千代様は頬を赤く染めてそっぽを向いてしまった。
 そのあまりにも普段とギャップのあり過ぎる恥じらいの態度が、どうしようもなくいじらしかった。

 俺は指の腹の部分で何度もその濡れている部分を撫でた。
 ショーツの表面から感じるその湿り気と熱が少しずつ高まっていくのを感じる。
 少し上の部分にある豆のような突起―――クリトリスに触れると、八千代様の脚が反射的に閉じた。
 両の太ももで手を圧迫されるが、委細構わず愛撫を続けた。
 しゅっ、しゅっ、と擦れる音がスカートの中で立つ。
 やがてショーツ越しからでも、溢れた愛液が指先につくようになった頃、八千代様が小声で囁いた。

 「い……イきそう……っ」
 「じゃあ、このまま………。」
 「だめっ」

 八千代様は強い声で拒絶して首を振った。

 「………健司に、抱いてほしい。」
 「……………。」

 俺は無言で手をスカートの中から引いた。
 そんな恥じらう少女のような視線と声で請われたら言うことを聞く他なかった。

 一度スカートの中から手を引いた後、両手を差しいれた。
 手探りでショーツの端部分に指を引っかけ、下にずり下ろして行く。
 八千代様もそれに協力するように、腰を浮かせてくれた。
 ショーツを脱がして脚から引き抜く。
 一瞬だけ目を向けると、ショーツのクロッチ部分は粘った液体で濡れていた。
872八千代様の外出:2014/05/11(日) 10:07:31.48 ID:UnQPzKO8
 次に俺は自分のズボンを脱ぎ始めた、
 一々順番に脱いでいくのがもどかしかったので下着ごと脱ぎすてると、勃起したペニスが飛び出した。
 既に亀頭をむき出しにして、先走りの汁で濡れて、痛みを覚えるほどに血の通った陰茎だった。
 これほど強く勃起していること自体に俺は少なからぬ驚きを覚えた。

 八千代様はベッドの上に横たわったまま、俺の性器に視線を注いでいた。
 やがておずおずと手を伸ばし、自分でスカートの裾を持ち上げた。
 水色のスカートと黒い靴下の間の白い肌が露わになる。
 ただその両脚は緩く閉じられ、奥の女の園を隠すようだった。
 俺がそっと膝頭に手を置くと、八千代様は体をすくませた。

 「大丈夫、恥ずかしいことなんてない。」
 「……一つだけ、約束してほしいの。」
 「…何?」

 俺が勤めて優しく声をかけると、八千代様は口元に手を寄せて、伏し目がちに囁いた。


 「……………やさしくしてね?」


 俺は何も口にせず、ただ黙って頷いた。
 両手で彼女の膝を持って左右に割り開いていく。
 毛も生えていない股の間、そこの雫で濡れた陰部が曝される。
 八千代様が恥じらうように腰を揺らすと、陰唇がくちゃり、と艶めかしい音を立てた。

 それを見て愚息がまた一段と勃起を強くした。
 もう何度も八千代様とは肌を重ねているはずなのに、これほど強い興奮を覚えたのは初めてのことだった。
 心臓が聞いたことも無い音を立て、脳が火で炙られているように熱い。

 八千代様の膝の裏に手を添えて、M字に大きく開かせ、性器の入り口が上向かせた。
 俺はその正面で膝立ちになり、生唾を飲んでから深く息を吸い込んだ。
 腰を落として、自分の陰茎を八千代様の陰唇の入り口にゆっくりと添える。
 互いの先走りの汁が触れ合って、にちゃり、という音がした。

 八千代様の顔を一瞥する。
 八千代様は赤らんだ顔でこくり、と頷いた。
 俺は頷き返して、腰を進めた。

 「あっ…………んっ…!!」

 ずぶり、という音が聞こえた気がした。
 八千代様の膣の中は相も変わらず、きつく狭かった。
 そこをゆっくりと、確実に亀頭の先端で掘り進んでいく。
 膣の入り口が上を向いているので、少しずつ体重を掛けて自分のペニスを中へと埋め込んでいく。

 内部の襞の一枚一枚を掻き分けて行く感触が陰茎から伝わってくる。
 下手に暴発しないように歯を食いしばって、腰を進めた。
 八千代様は眉を寄せて。シーツを握りしめて強烈な挿入感に堪えている。
873八千代様の外出:2014/05/11(日) 10:08:48.91 ID:UnQPzKO8
 「んっ…んぅ…………ふんぅ……っ!!」

 やがて先端部が行き止まりに到着する。
 亀頭に触れる子宮口の感触を確かめると、俺は深くゆっくりと息を吐いた。
 膝の裏に入れていた手を離し、手をベッドの上についた。
 すると、その手に八千代様の手が触れた。

 「……手、握ってもいい?」
 「そのほうがいいのか?」
 「うん。ぎゅっ、としてると安心するから……。」

 童女のようなあどけない笑みを浮かべて八千代様が俺の手に指を絡めてくる。
 俺がそれを握り返すと、向こうもしっかりと握り返してきた。
 それと同時に、俺のペニスもきゅっ、と締めつけられた。

 「………いっぱい、優しくして」

 その言葉への返事の代わりに、俺は顔を寄せて彼女に口付けをした。
 やさしく、唇へ触れるだけのキス。
 それと同時に膣内に埋め込んだペニスを本格的に動かし始める。

 「んぁ…っ、ぁんっ……」

 奥まで差し込んでいた陰茎を、入り口のあたりまで引き戻す。
 竿の幹が外に出た所で、もう一度奥まで貫く。
 入口から奥までを行き来する抽送を言われたようにゆっくりと優しく繰り返した。
 引き抜くたびに雁首のエラと擦れる襞の感触、突き入れるたびに重い手ごたえを返してくる膣肉の感触を覚える。
 ぐちゅっ、くちゅっ、ぐちゅっ、と糊を撹拌するような音が耳に響いた。

 「あぁ……ぁっ、……ん…っ、ふぁぁ………ぁんっ…!!」、

 八千代様の口から桃色の吐息がこぼれる。
 背筋を震わせながら快感を味わうその悩ましげな表情が俺の興奮を否が応にも煽った。

 膣洞の真ん中あたりのくねったところを、わざと擦りたてるように剛直を引き抜くと、甲高い声を上げる。
 膣の入り口で細かく抜き差しすると、んっんっ、と鼻にかかった声を出す。
 子宮口を押しつぶすように体重を掛けると、天井を仰ぎ眉根を寄せて悩ましい息を吐いた。

 俺の腰の動きに合わせて喘ぎ声を上げる様はまるで楽器の様でさえあった。
 だとすればこれほどの名器はこの世には二つとしてないだろう。
 その音が、感触が、表情が、俺をこんなにも強く捉えている。

 「ぅんっ、ふんっ、んぅっ、……ぁっ、あぁんっ………!!」

 いつしか、優しくすることも忘れて激しく腰が動いていた。
 腰と腰がぶつかる、ぱんぱん、という乾いた音が立つ。
 俺の陰茎が何度も掘削した膣の中はすっかり解れて濡れそぼり、出入りする度に愛液の飛沫がシーツの上に散った。
 膣洞はペニスを小気味よく締めつけ、襞と雁が絡んで背筋を快感で震わせた。

 俺はもう一度覆いかぶさって、八千代様にキスをした。
 互いの唇を割って舌で口中をまさぐって唾液を流し込む。
 八千代様もそれに応えて、舌を出して俺の口に吸いついてくる。
 互いの唾液で口元がだらしのない犬のように濡れた。

 性器を、舌を、指を絡ませ合う。
 先走りと愛液に唾液に汗と、互いの体液も絡めあって一つになる。
 強烈な一体感が多幸感になって、背筋から脳までを麻薬のように痺れさせた。
874八千代様の外出:2014/05/11(日) 10:09:56.65 ID:UnQPzKO8
 自分の陰茎の付け根、前立腺のあたりにマグマのようにドロドロの熱を感じた。
 すると、何も言っていないのに八千代様がその脚をこちらの腰に絡めてきた。
 ニ―ソックスに包まれた脚が俺の体をきつく挟みこむ。
 俺は心を決めてひときわ強く奥へと自身を押しつけて、溜めこんでいたものを解放した。

 ――――――びゅうぅぅぅっっ!!ぶびゅ、ぶびゅるるるるるるるるるっっっ!!!

 「―――――――――っっっ!!はぁぁっ……………………ぁっ!!あぁぁぁぁっぁっんんんっっ………!!!」

 精液が鈴口から迸る。
 量が多すぎて液体ではなくなっているのではないかと錯覚するほどの大量の精液が、尿道を内側からこじ開けながら噴出する。
 一抹の恐怖さえ感じるほどの猛烈な快感で目眩がした。

 全開にした蛇口のように白濁液を噴き出すペニスを、さらに八千代様の膣肉が締め上げてくる。
 愛液でグズグズに蕩けた膣が絶頂の痙攣とともに、更に精液を絞り出そうと圧迫してくる。
 締めつけとともに、ぶちゅる、という滑稽な音がして狭い膣内から愛液と精液の混ざった液体が僅かに吹きこぼれた。

 「はぁっ…はぁ…っ……はぁ…、んぁっ……ぁぁっ……」

 絶頂を味わった八千代様が荒い息をついていた。
 手を伸ばして汗で濡れた額に張り付いた、乱れた髪を整えてやる。
 バラ色に染まった頬を撫でると、八千代様からその上に手を添えて頬を擦りつけてきた。

 「健司。」
 「……どうした?」
 「…………もっと、して……」

 吐息交じりの甘い声で、赤く潤んだ瞳で、八千代様がそうねだる。
 まだペニスを咥えこんだままの腰が誘うようにうねった。
 俺は茶化すことも、呆れることも無く頷いた。

 「付き合うよ。何度でも、八千代様が満足するまで。」
 「うれしい………あんっ」

 八千代様が悩ましく目を伏せて言葉を切った。
 中に入ったままの俺の陰茎はまた硬さを取り戻し始めていた。
 そして俺は再び腰を動かし始めた。

 満足していないのは八千代様だけじゃない、俺だって同じなのだ。


 その晩、俺たちは何度も交わった。
 互いの体力が尽きるまで、何度も、何度も、何度も―――――――――。
875八千代様の外出:2014/05/11(日) 10:11:03.46 ID:UnQPzKO8
******


 「………38度5分。」
 「風邪じゃな。」
 「だろうな。」

 俺は体温計を一瞥して嘆息した。
 熱を出している当の本人はこっちの気も知らず、なぜか生き生きとしている。
 病人なのだからもっとしおらしい態度を取ってほしい。

 「うーむ、これはあれじゃのう。流石に久々の外出は体に堪えたという事じゃな。寄る年波には勝てんの。」
 「都合のいい時だけ老人のフリするのはやめろよ……。」
 「何を言うか!?齢400にもなる老人を捕まえてフリとはなんじゃ、フリとは!!もっと年寄りを敬わんかいっ!!」
 「昨日の晩あんだけ俺から搾り取っておいてどうなんだその台詞っ!?」

俺が抗議すると、ベッドから体を起こした八千代様は、性欲と歳は関係ない、としらばっくれた。

 というわけで明くる日の朝、八千代様は起床するなり熱を出した、と訴えてきた。
 晩の間に結局、例によって例の如く何も出なくなるまで搾り取られた俺はふらつく体に鞭打って八千代様の介抱をしている。

 「まぁ、何はともあれ朝飯にしようではないか、健坊。とりあえず消化によいものを頼むぞ。何分昨晩は夕飯を食えなんだから腹が減っておるのでな。」
 「誰のせいだと思ってるんだが…………。」
 「ふむ。そうじゃな、お主のおかげで腹はともかく胎はパンパンじゃぞ?」
 「朝から全開だなこの婆さん!!」

 悪態をつきながら台所に向かう。
 消化に良いものをリクエストされたので、ひとまず粥を鍋一杯に炊いている途中である。
 無論、八千代様のだけでなく俺の分も含めてである。

 「昨日の晩はしおらしかったのになー………。」
 「うむ、昨晩か。儂も100年に一度くらいは誰かに甘えたくなる時があるのじゃ。大目に見ておくれ。」
 「………百年くらい前にも似たようなことが?」
 「女は幾つになっても性根は乙女なのじゃ。覚えておくとよいぞ。」

 そう言って八千代様はくふふ、と老犬のような含み笑いを零した。
 ベッドの上でにやにやとこっちにからかうような視線をよこす姿は、もうすっかりいつもの八千代様である。
 そしてその『らしさ』に安堵する自分がいるのもまた事実である。
 八千代様はこうでないと――――――そんな思いが頭をよぎる。

 鍋の火加減を見ながら冷蔵庫の中を引っ掻き回していると八千代様がまた声を掛けてくる。

 「しかし健坊、お主よかったのかのう?」
 「何がだよ?」
 「儂の誘いを袖にしてしまって。」
 「あー……それな。」
876八千代様の外出:2014/05/11(日) 10:14:00.42 ID:UnQPzKO8
 その言葉で昨晩のやり取りを思い返す。
 自分という人間の空っぽさ、八千代様の愛の告白。
 しかし、一晩経って想うことは変わらなかった。

 「やっぱり、俺は八千代様のものにはなれないな。」
 「左様か。かなり本気で残念じゃよ。」
 「すまんな。」
 「構わんよ。拒まれることを受け入れるのも、また愛じゃ。」

 振り返ると、八千代様は笑っていた。
 悔いも無く、怒りも無く、怨みも無く、哀しみも無く、ただ純粋に笑っていた。
 その笑顔が俺には少し眩し過ぎて、俺はまた台所の作業に向きなおった。

 「別に――――――拒んだわけじゃない。ただ一方的に甘やかされたくないってだけだよ、もう子供じゃないんだからさ。」
 「子供ではない………?く、くくくくくく……っっっ、あっはっはははははは!!これは傑作じゃのう!!言うに事欠いて『もう子供ではない』ときたかっ!!」
 「そこ笑うとこかよ!!」

 八千代様がベッドの上で、けたけたと腹を抱えて笑った。
 何がそんなにおかしいのか。

 「当たり前じゃろう。百蔵の人間はみーんな、儂の子供じゃぞ?なのに、御先祖様に向かって『子供でない』などと……くくくっ、腹が痛い……っ!」
 「もしもしすみませんタキエさんですか。八千代様が風邪をひいたんで迎えに来てほしいんですけど。」
 「まて健坊、儂が悪かった。謝りますごめんなさい反省してます。」
 「手のひら返し早すぎだろう……。」

 俺が携帯電話を取り出して屋敷に電話をするそぶりを見せると、八千代様はすぐさま謝罪の意を表してきた。
 もうこの人本当に病気なのだろうか早くも疑わしくなってきたんですけど。


 ―――――しかし、八千代様には一笑に付されたものの、俺の思う所は変わらない。
 結局のところ、俺はもう素直に他人に甘えさせてもらうには大人になり過ぎてしまったのだと思う。
 実際の年齢は未成年なので、八千代様から見れば確かに子供なのかもしれないが―――――それでも、である。

 確かに、八千代様は俺のことを愛してくれるだろう。
 俺の心を満たすまで、いつまでも限りなく。

 でもそれは雛鳥が親鳥に餌を与えてもらうような、ある種、一方的な関係だ。
 見ようによっては幸福なあり方なのかもしれないが――――――俺はどうにもそれが我慢できなかった。
 一方的に甘やかされて自分自身がスポイルされることが、なによりも耐えがたいと感じたのだ。
 たとえ、その自分自身というものがどれほど空虚で薄っぺらで惨めなものでも、自分を捨てることはしたくなかった。
877八千代様の外出:2014/05/11(日) 10:14:49.70 ID:UnQPzKO8
 「何にせよ、すまんかった健坊。とりあえず今日は儂の面倒を見ておくれ。まさか病気の老体を放っぽり出して何処かには行くとは言わんじゃろ?」
 「……………そうだな、今日の午後は授業サボるか。」
 「お主も融通が効くようになったのう。」
 「お陰さまでな。」

 背中越しに会話しながら、鍋の中の粥の具合をチェックする。
 適度に煮えたのを確認して、俺は器に粥をよそった。


 ――――――いつの日か、もっとちゃんとした人間になろうと思う。
 自分に価値を認めて、自分で誇りに思える自分になって、芯のある一人前の人間に。
 まぁ、それでも八千代様にはいつまでたっても子供扱いされるのだろうが――――――そのときにはなんて言葉を掛けようか?
 対等の人間に――――――なんておこがましいにもほどがあるのは承知の上で。


 「なぁ、八千代様ー?」
 「んー、なんじゃ健坊?」
 「好きだ。」
 「そうか、儂もじゃ。」
 「あ、やべっ。」
 「どうした、鍋でもひっくり返したか。」
 「いや、何でもない。口が滑っただけで。」
 「ふむ。よくあることじゃ。」

 よくあることなら仕方ないな、と俺は笑い、
その通りじゃな、と八千代様も笑った。

 窓の外に視線を移す。
 外は曇天、鱗のような雲に遮られて陽の光は灰色。
 憂鬱とも言われそうな天気だが、眩しくないその明るさが目に優しかった。

 俺の手元には湯気を立てる茶碗が二つある。
 それを二つとも盆の上に乗せて、八千代様の所へと持っていった。
 そして、二人でいただきます、と手を合わせた。


 こうしてまた新しい一日が始まる。
 これから先も新しく日常は続いていく。

 俺達二人は、やっていける。
 そう、静かに思った。














了。
878名無しさん@ピンキー:2014/05/11(日) 11:23:06.45 ID:9X+IEDdF
>>877
お疲れ様どした






ふう……
879名無しさん@ピンキー:2014/05/13(火) 20:16:43.92 ID:ZTwcKJNO
>>871
いやぁ・・・・良い物見せて頂きました

久々に満足のいくロリババァを拝めたな
880名無しさん@ピンキー:2014/05/14(水) 10:08:58.73 ID:AeRMczOY
UP乙であります。
スレがにぎわうのは良い事であります。
881名無しさん@ピンキー:2014/06/02(月) 01:50:53.57 ID:aChnSMlK
くっそ暑いのう・・・とか言って愚痴ってる婆ちゃんに冷蔵庫からアイス出してあげて
昔は川でスイカを冷やして・・・とか云々言ってるののんびり聞きたい
882名無しさん@ピンキー:2014/07/21(月) 19:50:23.09 ID:THaeytCd
圧倒的に強い人外ロリババアが、細かい設定や因果関係抜きに犯罪者どもぶちのめす漫画とかあったら割と流行ると思うんだよなぁ
幼い女の子が窮地に陥る事件の報道効く度に、っょぃ幼女が本当にいて欲しいと思う
883名無しさん@ピンキー:2014/07/21(月) 19:58:02.95 ID:f4keMTFs
正義の味方のロリババアか
流行ってもよさそうだな
884名無しさん@ピンキー
強いロリババアはなぜか怪力のイメージがある