すみません、途中で500になりそうだったので、慌てて立てました…
*
目を覚まし、美子は自分が何もつけない姿のままで眠っていたことに気がつき、赤面した。
まだ朝方なのかレースのカーテン越しにほんのりとオレンジの雲が見える。
横を見ると、同じ姿で無防備に眠る廉。
その穏やかな寝顔を眺めていると、昨日のことがすべて夢だったように思える。
あれは全部夢で、私は廉さんの部屋に居候していて、ただ隣で眠ってしまっただけなのではないだろうか。
だって、廉さんの寝顔はいつもと同じだもの。…服、着てないけど。
昼間とは違う、子どものようなやさしい寝顔。私の大好きな。
けれど、ここは廉の部屋ではない。
星のネックレスが、自分と廉の約束を思い出させる。
からだのあちこちに残る赤い花びらのような跡と鈍い痛みが、あれは現実だったことを声高に主張していた。
美子はその跡をそっとなぞる。
廉さんの、跡だ…。私、廉さんのものになったんだ。
そして廉の寝顔を眺めた。いとおしさで胸がいっぱいになる。
廉さん、私だけのものだって言ってくれた…。
私は廉さんだけのもので、廉さんは私だけのものなんだ。
…やだ、うれしい。恥ずかしいけど、すごくうれしい。
自分自身をそっと抱きしめる。幸せだ。女の子でよかった。
RINAさんが言ってたのって、このことだったんだ。
美子は別れ際のRINAとの会話を思い返す。
*
「廉はさ、いい男よ。あんた見る目があるわ」
RINAは何度もそういった。心配要らない、廉はいい男だ、社長と廉を信じろ。
会場から連れ出され不安に思っていた自分に、RINAをつけてくれた社長には本当に頭が下がる、と思う。
「みんなあんたのことが大好きよ。だから安心してアフリカに行ってらっしゃい。
その間に、みんながちゃんとあんたの居場所を確保しておくからね」
微笑んだRINAを本当のお姉さんみたいだな、と美子は思った。
「で、さ。ちょっと聞きたいんだけど」
RINAは急に声を潜める。
「なんですか?」
「廉とキスくらいはしたの?」
美子は真っ赤になった。は、話が突然飛びすぎなんですけど、RINAさん!
その反応を見てRINAは、ははーん、と言った表情を浮かべる。
「さすがにそれくらいはしたのね。それ以上は?」
ぶんぶんぶん、と首を横にふる美子。
やっぱねー、廉慣れてなさそうだしなーなどとぶつぶつとRINAはひとりごち、美子に言った。
「あのね、ここからはガールズトークだけど」
RINAは美子の手を握った。
「初めてのときはね、相手に任せればいいのよ」
は、初めてって!何の話ですか、RINAさん!
声にならない美子の叫びをRINAはざっくり無視し、真顔になった。
「でもね、多分廉も慣れてないからさ、嫌なことは嫌ってちゃんと伝えたほうがいいわよ」
美子は固まったまま、黙ってRINAの聞いている。
「でももっと大切なことはね、嫌じゃなくて、そうしてほしいんだったら、ちゃんとそれも伝えるのよ。
男ってさ、あれで案外かわいくって、ちゃんと伝えたらそれだけで喜ぶの」
美子はまだ固まっている。
「あんたは、そんなこと、って思うかもしれない。
なんてったって元シスターの卵だもんね、そういうこと、教わってきてないでしょ。
でも、好きな人に望んでもらえる幸せってあるよ。女でよかったなあ、ってきっと思う。
だから、もしね、そういうことになって、あんたが嫌じゃなかったら…、ちゃんと向き合ってあげてね、廉と」
「RINAさん…」
あーでも!とRINAは声を上げた。
「廉には言わないでよ、あたしがこんなこと言ってたなんて。
絶対目ぇ吊り上げて、"おまえ!美子に変なこと吹き込むなよ!"とか怒鳴られるから」
その真似があまりにそっくりで美子は思わず吹き出した。
そんな美子を見てRINAが微笑む。
「そうそう、美子はそうやって笑ってないとね。廉と、うまくやんなさいよ」
ウィンクしてみせるRINAはやっぱり本当のお姉さんみたいだ、と美子は思った。
*
「…おまえ、なに一人でニヤニヤしてんだよ」
思い返していたところに突然声をかけられ、美子は驚いて飛び跳ねる。
「廉さん、起きてたんですか」
「いや…今起きたとこだけど」
ゆるゆると廉がからだを起こした。その気だるげな仕草が妙に色っぽく見えてどきりとし、美子は思わずシーツを握り締める。
「お、おはようございます…」
「おはよう」
なんとなく照れくさくて、二人ともうつむいた。そのまま沈黙が流れる。
「からだ、大丈夫か」
沈黙に耐えかねたように、廉があさっての方向を見ながら言った。
「その、痛いんだろ?初めてのとき、ってのは…」
「あ…。はい、まだ、痛い、です、けど…」
は、恥ずかしい…美子は思った。こんな会話…想像もしていなかった。
「でも、大丈夫、だと思います」
「そっか…」
気恥ずかしいのは廉も同じで、なにを話せばいいのかよくわからない。
「あの…廉、さん?」
美子が思い切ったように問いかけた。
「…なんだ?」
「あの…昨日…の、私……。よかった、ですか?」
廉が絶句する。
「よか、よかったですか、って、おまえ…」
「あ!やっぱりだめでしたか?!」
「だめでしたか、って、おまえ…」
やっぱり天然小悪魔だ。いきなり何言ってんだ。と廉はばくばくし始めた心臓に気がつかないふりをしながら、平静を装う。
装ったつもり、ともいうが。
「ちゃんと、思ったことを伝えたほうがいい、って、教えてもらったんです。
私…、は、初めてだったから、あれでよかったのかわからないし…。
私は、その、痛かったけど、でも、すっごくうれしかったですけど、でも、きっと、廉さんはいろいろ知ってると思うから…
私なんかじゃ、だ、だめだったかな、って…」
つーか、昨日からおまえは無駄に伝えすぎなんだよ!煽るなって言ってるだろ!
と、廉は思ったが、そう言うわけにもいかずどう答えるべきか窮する。
てか、いろいろ知ってると思うから、とか言われてもな…。
「…だめ、じゃない」
「ほんとですか?」
ぱっと美子の顔が明るくなる。そのあまりのかわいらしさに、あーもういいよ、と廉は開き直る。
「…かわいかった。すごく」
「廉さん…」
真っ赤になる美子。うれしい…とつぶやく美子に、廉はくらくらする。
「それとなあ、勝手にいろいろ知ってるとか決め付けんなよ、俺がどれだけ…」
言いかけて、はっ!と廉はサイドテーブルに投げ出したままの携帯に目をやる。
あれ、履歴消しとかねえと…。昨日必死で調べまくったヤツ。
あんな履歴みられたら、どれだけ俺がエロいんだ、つー話に…。
何かを言いかけてやめた廉が気になり、美子は小首をかしげる。
「なんですか?」
「い、いや、なんでもない!」
あーそうさ、どうせ俺はなんにも知らないさ、昨日おまえに会う前にあまりに煽られすぎて、
その気になっちまったもんだから、なんとかしようと思って一生懸命いろいろ調べたんだよ、
知ってるように見えたんだったらよかった、ネットってほんと便利だな!
…と、言うのはいろんな意味で憚られ、とりあえずごまかす方向に行動してみることにした。
「どれだけかわいいと思ったか、もう一回証明してやろうか?」
ちゅっと美子に口付けると、美子はうれしそうに廉にしがみついた。
やればできるもんだなあ、と廉はしみじみ思う。これが愛ってやつか。悔しいからそんなことは絶対に言ってやらないが。
そんなわけのわからない意地に凝り固まった中、ふと思い出す。
「あ、そうだ」
「はい?」
「俺、今日と明日オフなんだ。だから…」
出発するまでふたりでゆっくり過ごそうな、と微笑む廉は子どものようにうれしそうで、美子は心の底から幸せな気持ちになる。
「はい、廉さん!」
*
美子がアフリカへたってしばらくたった頃。
廉がテレビ局の廊下を歩いていると、NANAが声をかけてきた。
「ねぇ、あの子、二年もアフリカなんかに行ったままなんですって?
そーんなに廉を待たせるなんて、たいした自信よねえ」
廉はそんなNANAをめんどくさそうに一瞥し、そのまま通り過ぎようとする。
「寂しかったら、デートくらい付き合ってあげてもいいわよ?
あの子には黙っといたげる」
いつものNANAらしい、上から目線の負けん気の強い表情で言う。
でもどこか視線は上の空で。ふん、と廉はそんなNANAを鼻で笑った。
「おまえ、俺をだしに使うなよ」
そのNANAの視線の先に、美男がいるのに廉は気づいている。
慌ててNANAは視線をそらした。
「わざとらしい大声で俺を誘って、誰の気を引こうとしてんだ?」
鈍いヤツだと思い込んでいた廉に見透かされたNANAは、真っ赤になる。
「はあっ?何言ってんの?言ってる意味がわかんないわよっ」
「そうですか」
廉は嫌みったらしく、抑揚のない棒読みで言った。
「そう言えば、このまえうちのキーボードと食事に行ってくださったそうで。
"NANAちゃんが誕生日に誘ってくれた〜"って、本人えらく喜んでましたが」
NANAはますます赤くなる。
「美男が、おいしいもの食べたいけどお店知らないって言うから、一緒に行っただけよ!
あたしの誕生日だったのは、たまたま!スケジュールの都合!」
「ま、いいんじゃないの、うまくいってそうで」
興味なさそうに、廉が言う。と、思いついたように
「けど、美男とくっついたら美子は妹だからな。あんまいじめんなよ?」
あいつらバカみたいに仲いいからなー、と自分の経験上から忠告する。
離れてたってあれだ、一緒にいたらどれだけべたべたする気なんだか。
くそ、俺の美子なのに。
「知らないわよっ!自分が美男にやきもち焼いてんじゃないの?」
もはや素直になれないNANAが言った。
図星を指された廉は、大人気ないと思いながらも若干むっとする。
「いい加減、素直になれよな、うそつき妖精」
その言葉、そのままあんたに返すわよ!と言えないNANAは反撃を試みようとするが、
廉はすっかり会話に興味を失ったようだ。
じゃあな、と言って、そのまま立ち去ろうとする後姿に、ふと思いついてNANAが叫ぶ。
「美子が妹なんだったら、じゃあ、あんたは"弟"ってことね、桂木廉!
"お姉さん"がどっちもいじめてあげるから、覚悟しといてよね!」
振り返らない廉の首筋が真っ赤に染まっていることを確認し、NANAは溜飲を下げた。
やっとNANAに気がついた美男が満面の笑みで駆け寄ってくるのを視界に映しながら、
NANAは思う。
美男にあんまりしゃべりすぎないで、って言わなくっちゃ…。
でも、その素直なとこが好きだから…もう、仕方ないか。
あーあ、あのふたりがほんとに妹と弟になったら、どうしよ。
くすっと笑ったNANAを、美男が不思議そうに見つめていた。
以上です。お粗末さまでした。
スレ立てぎりぎりでほんとすみません。てか、立てられてよかった。
おとなしく新スレにすればよかったです…。
検索廉さんとか、NANA×美男とか、双子べたべたとか
こちらから影響を受けてお借りしました。
ほかもあるかも。名作ぞろいで影響受けまくりです。すみません。
しかし昨日のNANA×美男さんの神SSとの女装ネタがかぶってしまい…。
さすがにどうかと思って、またしばらく放置しとこうかとも思いましたが、
状況もぜんぜん違うしなぁと開き直り、せっかくの祭に乗りたいと思い投下させてもらいました。
ありがとうございました。
>>6 新スレ立て、乙でした!
いやーーー!!!超大作、超絶GJ!!!
読み応えあったし、廉美子の初々しさとか周りのメンバーや社長、RINAさん
馬淵やNANAとオールスターな登場場面もめちゃくちゃ楽しかった!
あのライブの後始末なんて、すっごい辻褄合わせとか大変だったと思うけど
社長の敏腕ぶりで見事におさまっていて…感服です。
ここでも廉さんDTっぽい?wでも優しくてすっごい良かった。
この世界のNANA×美男の話も読んでみたいなぁ、なんて。ありがとうございました!
>>6 … 神 降 臨 。
もうもうもう超絶キュンと来ました。
なんか私まで幸せになって目頭がじんわり来てしまった。
優しい廉さんと素直な美子、メンバー思いの勇気と柊の切なさもあり、妹をよろしくな美男、社長馬渕RINAさんのGJさ、ツンデレNANAとさりげに美男エピも組み込まれてて、
本当に素晴らしい作品でした。SPやるならこれを原作にしてほしい!
>>7 >この世界のNANA×美男
禿同!むちゃくちゃ読みたい!
連投すまん。
>>6 わーーお!!
すーっごくよかったです!
正直、感動して涙が出てしまいました...。
読ませてもらえてありがたいです!
今日はホント大感謝祭ですね〜。
新スレ立てもお疲れさまでした!
素晴らしい、マーヴェラス!!
エロ読みながら涙したのなんて初めてだw
廉さんがいい男すぎて、美子がかわいすぎて辛い…柊勇気社長馬渕RINAさんもすごくいい。
職人さま、ありがとうございました。
続編期待してます!
>>6 スレ立て乙。
今日は、まとめ管理人の仕事いっぱいで嬉しい悲鳴。
一気には無理なんでゆっくりやっていきます。
前スレ
>>397 肩に触れ親指でスリスリする技は柊さんの技だったハズww
廉さんも習得してたとわwwww
また読みにきたw
まじで素晴らし過ぎるー。本出したら買うレベル!
あ、柊NANA職人さんも前スレに新スレになったら〜て書いてたね!楽しみwktk
素晴らしすぎる プロですか?
脳内オールキャストで変換ばっちりでした
修行して出直してきます
>>6 ・・・・言葉を失うほどにGJでした!
そして、同時に自分のレベルの低さを痛感させられるぐらいに感動しました。
ここ最近、素晴らしい職人さんがいっぱいで嬉しいですね♪
それでは、さようなら。
>>6 スレ立て乙です
GJ!GJ!!!神様!!!
なんだろうこの胸熱…ドラマで感じた笑いせつなさ胸きゅんを味わいました。
こんなに丁寧に練り込まれた作品が眠ってたなんて恐ろしい…w
コンサート後のエピもわくわくしたし、柊の優しいせつなさや勇気のお茶目な感じとか引き込まれました。
もうオールキャストGJ!
ホントそのままドラマになりそうな展開で、読み応えありました。
きゅんきゅんをありがとうございました!
>>6 萌!!!!!!!!!え!!!!!!!!!!
すっすすっすすっ素晴らしすぎる!!!
前スレ終わり頃の祭りからもうドキがムネムネしまくりでしたがこれは…
驚いt(自粛
柊さん、勇気、美男、社長、馬渕…みんなの表情まで浮かんできました。
廉さん、かわいいかわいい言ってんじゃねーよ、かわいいのはお前だよ!!
美子、こっちの理性までぶっ飛びそうな天然小悪魔ぶり…もう好きにして下さい。
大作スレ立てお疲れさまでした。
またのお越しをお待ちしております。
DT柊です。
神作品に感化され、最終回で話を作ってみました。
カプは・・・この場合なしだと思います。エロも無し。
時系列的には、廉が美子の母親の墓参りに行き、その後美子が墓に訪れるところから
ライブで、廉さんがステージに入る直前までを描きました。
終盤は殆どドラマの方と内容が変わってないですし、相変わらずの低レベ文章。
それに、今回はよくわからないのですが尋常じゃない文章量になってしまいました。
それでも良いよと言う方、読んで頂けると嬉しく思います。
それでは、どうぞ。
19 :
想いよ届け 1:2011/11/18(金) 17:07:48.98 ID:Y4gST4on
シゲ子さんに言われ、廉さんが来ていると思われた母のお墓行ったけど、既に人はいなく
変わりに花束と・・・父が母に贈った「Miss You」のCDが置かれていた。
それを見て、ここに廉さんが来たのかなんてすぐにわかった。
お墓の前に置いてあった「Miss You」のCDを手に取ると、それをそのまま抱きしめた。
そして、私の瞳からは少しずつ涙が零れ落ちて行っていた。
「お母さん。廉さんって素敵な人でしょ。私の一番大切な人なの。
すごく・・・すごく大好きでホントはずっと一緒にいたかったけど、
こんなに優しい人だから私といたら廉さん、きっと苦しむから・・さよならするしかないの」
最後の最後まで、廉さんの優しさに胸を打たれる美子。
その優しさが・・・・美子の双眸から大粒の涙を溢れださせ、内に秘めていた溢れんばかりの想いを外へと解き放つ。
「廉さん・・・・。私・・・やっぱり側に居たい・・・・。」
胸の中で抱きしめていた「Miss You」を見つめ直し、廉と過ごしたこれまでの日々が次から次へと蘇る。
温かな思い出が、胸が張り裂けそうになる思いが、大切な人と過ごした時間が・・・
全てが私の胸の中で今も輝き続けていて、けど、その輝きに身を寄せれば・・・お互いに苦しんでしまう。
大切な人を想うからこそ、側にいたいけど・・・私が側にいたら・・・その人もずっと苦しんでしまう。
だから・・・・だから・・・・一緒にいたくても・・・さよならするしかないの・・・・。
灰色の雲が広がる空が、今にも涙を零しそうになっていたが
その空は、美子がお墓を後にするまで涙を流すことはなく、ただただ美子の心を映し出しているかのように重く広がり続けていた。
その空の下、美子はCDを自らの顔へ押し当て、止める事の出来ない想いを涙として零し続けていた。
この涙が・・・届く事のない廉の事を想いながら・・・・。
同日、美子の母親の墓参りを終えた廉は浮かない表情でA.Jエンターテイメントに戻ってきていた。
自らの母親の行った罪への謝罪。そんなことで、あいつらの両親や・・・あいつ自身に許してもらおうなんて思ってはいない。
けれど、それでも・・・・俺自身が出来る事を・・・最後までしたつもりだ。
悔いはない。あいつに届けるべき物も、あいつからのメッセージも受け取った。
もう、悔いはないと・・・・何度も思い続けていた。
けど、ならどうしてこんなにも胸がずきずきと痛む?どうして、奥底から涙が溢れ出そうになる?
どうして・・・・あいつの顔が・・・頭をよぎる?
心を覆う霧のような物を何度も振り払うように首を振り、空に広がる灰色の雲を見た廉は
「どうして・・・・俺とあいつはこんな出会い方をしたんだろう・・・。」
と、自分自身の血の運命に抗う事が出来ない自分に苛立ちを覚え、
すぐ目の前にあったガラスに自分の拳を叩きつけ、誰にも見えないように一粒だけ涙を流した。
20 :
想いよ届け 2:2011/11/18(金) 17:08:13.84 ID:Y4gST4on
その姿を2階から見ていた柊と勇気。
「廉さん・・・やっぱ、まだ美子の事・・・・。」
自分の事ではないのに、廉の悲しそうな姿を見た勇気も苦しそうな表情をするが
柊自身は、そんな勇気とは対照的に廉を心配するどころか廉に対して言いきれぬ憤りを感じていた。
そして、何も言わず足早に階段へと向かうと、ロビー付近に居た廉の元へと向かった。
「あ!柊さん!?ど、どこ行くの!?」
足早にその場を去る柊を見た勇気は、慌てた素振りを見せた後、すぐに柊が歩いて行った軌跡を辿る様に追いかけて行った。
握った拳を未だガラスから離す事が出来ていなかった。
けれど、先ほどまで上に居た柊の姿が気がつけば目の前に居て、真剣な表情で俺を睨んでいた。
「・・・・何だ。」
「・・・来い。」
互いに多くは語らず、低い声で一言ずつ言葉を言うと
柊が宙にぶら下がっていた右手首を掴み、強引にトイレの方まで連れて行った。
そして、後を追うようにしてやってきた勇気も、少し息を切らせながら柊に引き摺られる廉の姿を見ると
「あ、ちょ、ちょっと!柊さん!」
と、険しい表情をしていた柊に危機感を抱き、すぐさま二人の後を追いかけた。
「ゴン!」と、個室のある扉に廉の体を押し付ける柊。
依然、険しい表情を浮かべる柊に廉は生気を失った目をして、顔を斜め下に俯かせていた。
そして、柊はそんな廉の姿を見て、怒りを通り越して悲しさを覚え、やり場のない怒りを、下唇を噛むことで抑え続けていた。
「廉・・・お前、まだ諦めきれないんじゃ・・・。」
「・・・そんなこと・・・ねーよ・・・。」
「本当にか?」
「・・・あぁ・・・・。」
柊の問いかけに、廉は力のない返事を何度も繰り返す。
本当は全部嘘で、言った事と思っている事は真逆なのに・・・。それでも、これがあいつの望んだ道なら・・それを受け入れるしかない・・・。
そう。受け入れるしか出来ない自分が悔しくて悔しくて仕方がなかったが
それでも自分にはそうすることしかできないと分かっていた廉は、目の前に立つ柊から目を逸らし続けていた。
すると、廉の今の姿にじれったさを感じた柊は握っていた右拳を開くと、そのまま廉の胸座を掴んで俯いた顔を自分の方へと向く様に持ち上げる。
流石の廉も、いきなり何事かと思い閉じかけていた目を見開くと、柊の顔を睨む。
「お、おい!な、何して・・・るん・・・だ・・・。」
怒声を響かせていた廉の声だが、何故か自分よりも先に辛そうな表情を浮かべて涙を流していた柊の姿に、
だんだんとその声を小さくし、最後の方には聞き取れないぐらいの大きさになっていた。
(何で・・・柊が泣いてる?)
その涙の真意が分からないままでいた廉は、ただ目の前で涙を流す柊をじっと見ていた。
21 :
想いよ届け 3:2011/11/18(金) 17:08:38.94 ID:Y4gST4on
片手で胸座を掴んでいた柊だが、涙を零す顔を下へ向かせ、扉に押し付けていた左手もすぐに胸座を掴んだ。
(こいつ・・・俺が泣いてないから・・・代わりに泣いてるのか・・・。)
あいつの事を想って涙を流さない俺にとって、目の前で泣いている柊がまるで
俺の心をそのまま映して、涙を流しているように感じられた。
「何・・・カッコ付けてんだよ・・・。」
すると涙で潤んだ声が、胸座を掴まれている廉の耳に伝わる。
その言葉に、今まで頑として自分の想いを伝え続けなかった廉だったがこの時、初めて感情的になった。
「俺が・・カッコ付けてるだと・・・どこがだよ!」
そう言うと、胸座に掴まれていた両手を振り払う廉。
しかし、腕を振り払われた柊は涙を流しながらも、廉を「ぎらぎら」と輝く強い目で見つめ返す。
その瞳に、廉は一瞬身を引くが、すぐにその体を震え上がらせ身構えた。
「なんで 素直に行くなって言えないんだよ!何であいつの事見てやんないんだよ!
お前は、自分が傷つくのが怖いだけだろう!だからそうやって美子から目を逸らして、
それで自分を綺麗なまま飾り続けたいだけだろ!」
柊の必死の訴えがトイレ中に響き渡る。そして、柊の言葉に廉は言葉を失った。
そして、そのまま向けていた視線を再び真下に逸らす。
(何か言葉を言い返せるのか?今の柊に・・・俺が・・・・。)
下に広がる床を見ながら、それじゃあ如何すれば良い?と声にならない想いをぶつけた。
しばらくの間、沈黙が広がったがその沈黙を破る様に二人の後を追いかけていた勇気が駆け込んできた。
「ちょ!廉さん!柊さんも!何やってるんだよ!?」
ぽろぽろと涙を流す柊と、何も言わず悲しげな表情を浮かべてている廉の姿を見た勇気は
取り敢えず、今にも崩れそうな柊の体を支えるため柊へと駆け寄る。
「柊さんも・・・廉さんも・・・ホント、何やってんだよ・・・。」
二人の辛そうな姿に、勇気自身も胸が痛くなったのか、
いつもの笑顔がまるで空を覆う灰色の雲に包まれているかのように表情を曇らせる。
その二人が見つめる中、廉は辛そうな表情を一瞬浮かべると、目を閉じて
「・・・・が言ったんだ・・・。」と掠れるような声で二人に言った。
「え・・・?廉さん?今、何て・・・?」
「アイツ・・言ったんだ。もう俺の側で笑えないって。だから・・・もう・・・
これ以上、アイツを苦しめたくない。あいつがそれを望むなら・・・それが一番良いんだ・・。」
本当はこんなことなんて言いたくはない。
けど、そうすることしかできない廉は、苦々しい口調で二人に美子が言った事と、それに対する自分の想いを伝えると
「こうするしか・・・ないんだよ・・・。」
と、涙を堪えてながら口を開き、一度だけ二人に涙を溜めた目を見せた後
二人をその場に残し、足早にトイレから出て行った。
その後ろ姿を、柊と勇気は何も言えずに悲しげな表情を浮かべて見ていた。
もう、自分たちに出来ることはないのだろうか・・・と思いながら。
22 :
想いよ届け 4:2011/11/18(金) 17:09:24.80 ID:Y4gST4on
一方、三人の間で波乱が起きている中、安藤社長もまた何も出来ない自分に苛立ちを覚えていた。
「沢木・・・俺はあの二人に何も出来ないんだろうか・・・。」
「社長?いきなりどうしたんですか?」
窓の外に映る、灰色の空を見ながら安藤社長は秘書である沢木に淡々と話し続ける。
「俺は・・今の廉を見てると胸が苦しくなるんだ。あの活気の溢れていた廉が
自信に充ち溢れていた廉の表情は、今では雲がかかったかのように歪んでいる。
本人は、あれで隠してるつもりなんだろうが、俺には今のあいつが乗り越える事が出来ない
現実の壁に押しつぶされそうになってるように見えるんだ・・・。」
「社長・・・。」
「何で分かるんだって顔してるな?そりゃ、あいつらとの付き合いは長いからな。」
そう言うと、窓に向けていた視線を沢木の方へ向け、目の前にあったソファにゆっくりと腰を下ろす。
「ハァ・・・・俺たち、結局あいつらを見守ることしか出来ないんだな。
こういう時、社長って何なんだろうなって一人の大人として思うよ・・・。変な話だけどな。」
廉と美子との関係を、長年この世界でやってきた社長の勘が訴えかける。
だからこそ、こういう時何にもしてやれない自分に苛立ちを抱きながら、
安藤社長は手と手を指の間に潜り込ませ、その手を額に押し付け、顔を俯かせた。
沢木は何も言わず、座っていた社長の隣に腰を下ろすと、そっと押しつけていた手に自分の手を添えて、しばらく見守り続けた。
23 :
想いよ届け 5:2011/11/18(金) 17:10:06.82 ID:Y4gST4on
その日の夜・・・・。
廉は合宿所の自室から、どんよりと曇っている空を見上げていた。
部屋はうっすらと照明が部屋を照らしている程度で、それでも廉の視界はぼんやりとしか外の景色を映してはなかった。
(・・・・・柊の言った言葉に・・・何も言い返せなかった・・・・。)
そう思うと、ポケットの中に突っ込んでいた星のネックレスを掴み上げる。
結局、渡す事が出来なかった主のいないネックレス。それを曇り空が広がる空と重なる様に掲げる。
(俺は・・・あいつの言った通り・・・目を逸らしてるだけなのかもしれないな・・・・。)
「きらきら」と輝くネックレスに美子の笑顔を重ねる廉。
その笑顔をずっと側で見ていたいと、誰よりも近くで守ると誓ったはずなのに・・・。
今は、目の前に虚しく、今にも輝きを失いそうな星があるだけ。
何一つ、俺は掴めないままで終わってしまうのだろうか・・・・・。
「ふぅ・・・。」と小さく息を吐き捨てると、後ろに寂しげに置かれているブタウサギのぬいぐるみを手に取った。
「ブタウサギ・・・・・か。」
ブタウサギのぬいぐるみに、美子との懐かしい思い出が一つ一つ思い出される。
思えば、あいつには最初から振り回されてばっかだったな・・・。
青空学園でライブやるって時も、ぼろぼろになりながら最後まで出来る事やって・・・。
そういや、その後すぐだよな・・・。あいつが女だってわかったの。
それで、俺があいつの母親の形見の指輪、池に放り投げるフリしてよ。
今思えば、俺あんな酷いことよく出来たな・・・とか、ある意味呆れる。
そして、一晩中探し続けたあいつの熱意が・・・少しずつ、俺の心の中にあった何かを揺さぶってたんだよな・・・。
そして、すぐ横にあったCDラックに目を向けると
(そういや、あいつが来た日、このCDラック倒されて譜面燃やされたな・・・。
今では良い思い出・・・って言えるのか?)
と思い、「ふっ」と声を漏らした後、再びブタウサギのぬいぐるみに目を向ける。
このブタウサギだって、あいつが生み出した産物の様な物だよな。
たく、よく人前で何度もあんな豚鼻できるよな・・って最初は怒ってたけど、
それも全部、あいつが俺を見ててくれてたってことなんだよな・・・。
あいつは・・・ずっと俺を見ていてくれて・・・それで、気がつけば俺もあいつの姿を求めるようになって。
それで・・・それで?今は・・・どうなってるんだ・・・?
頭の中の記憶を彷徨い続けていた廉。しかし、その温かかった記憶を彷徨っている間に
目の前に持ち上げていたブタウサギはぼんやりと歪んで映る様になっていた。
「あ、あれ?ここ、明るいのに・・なんでぼんやりしてんだ・・・ブタウサギ・・・。」
どうしてブタウサギが歪んで見えるのか分からなかったが、右腕で目を拭うと腕に付着した大量の涙。
その時、初めて自分が涙を流している事に、廉本人は気がついた。
「な、何で・・・俺、泣いてるんだ?何で、ブタウサギがこんなに濡れてんだ?」
何度も溢れ出す涙を拭い取ろうと、腕を擦りつけるが、その涙は一向に止まりはせず
ただただ、目の前にあるブタウサギのぬいぐるみに涙が零れ落ち続けるのだった。
そして、廉は手に持っていたぬいぐるみを力強く抱き締めて、その場に泣き崩れた。
(もう・・・訳分かんねーよ・・・・。)
やはり拭い去る事が出来ない温かな記憶と、微かに残る美子の香りがするブタウサギを
虚しく廉は抱きしめ続けた。
24 :
想いよ届け 6:2011/11/18(金) 17:10:32.71 ID:Y4gST4on
次の日の朝。柊達三人は、部屋に籠りっきりだった廉の事を気にして
リビングのソファに座りながら如何すれば良いのか話しあっていた。
「廉さん・・・やっぱり、美子の事・・・忘れられないよね・・・。」
「・・・なぁ、美男?美子とは何も連絡とってないのか?」
「・・・美子、今俺とも連絡取ろうとしてないから・・・どうしようもない・・。」
「そ、そうか・・・」
「くそぉ・・。俺たち、二人のためにもう何も出来ないのかよ・・・。」
何も出来ないもどかしさに、「アーー!」と声を上げながら、髪の毛をぐしゃぐしゃと掻き乱す勇気。
その勇気の姿に、冷静さを保っている柊と美男も、どうすることも出来ない事実に歯がゆさを感じていた。
「せめてもう一回だけ。あと一回だけでも・・・美子と廉さんが会えればさぁ・・・。」
ソファにもたれかかった勇気は、奥の通路にある廉と部屋と、元は美子の部屋だった美男の部屋を見ながら呟く。
「けど・・・美子がどこにいるか分からないんじゃ・・・どうしようもないよな・・・。」
「・・・・・けど、あいつも・・・廉と気持ちは同じなのは・・・事実だと思う。」
どこにも希望はない、絶望状態だった勇気と柊は、美男の言葉を聞くと、身を乗り出して美男に顔を迫らせた。
「ど、どういうことだよ!?それ!!」
「な、何か知ってんのか!?美男!知ってるなら全部話せぇーー!!」
大きな声で叫びながら、美子の両肩を掴むと前後に体を激しく揺らす勇気。
「ちょ、ゆ、勇気!そんな状態じゃ、美男も話せないだろ!!」
柊は、暴れる勇気の手を振り払うと、「げほげほ」と咳をしていた美男を気遣うように近づく。
「美男・・・だ、大丈夫か・・・。」
「あ、あぁ・・・たく・・・いきなり何すんだよ・・・。」
苦しかったのか、涙目になって勇気を睨んだ美男に、勇気は「ご、ごめん」と小さな声で謝った。
そして、息を整え終えると先ほど話した言葉の意味を説明しだす。
「実は・・・俺、お前達と合流した次の日の夜・・・美子と電話したんだ・・・。」
「えぇ!さ、さっき連絡とってないって言ったじゃん!」
「けど、肝心な居場所は聞けなかったし、それに・・それ以降一切連絡は取ってない。」
「そ、そうか・・・。それで?美子も廉と同じ想いって・・・・?」
「・・・・あいつ、その時泣きながら言ってた。廉さんをお願いって・・・。
お兄ちゃんも辛いと思うけど・・・私の代わりに廉さんの事・・・支えてあげてって・・・辛そうに・・・。」
「美子・・・。やっぱあいつも廉さんと同じで一緒に居たいんだよな・・・なのに・・・どうして!」
「・・・俺と勇気は、美子と廉の間に何があったか分からない・・・。」
美男の言葉を聞いた柊は、勇気の顔を見た後美男の顔をさりげなく見て言葉を発する。
その言葉に、勇気は「え?」と不思議そうな表情を浮かべて柊を見つめた。
「・・・・けど、まだ望みはある。二人が・・・自分の想いに素直になれば・・・まだ。」
柊はそう言うと目の中に強い光を宿した後、玄関へと走っていき、外にある自分の車でどこかへと走り去って行った。
勇気も、柊の後を追おうと外へ出て行ったが間に合わず、走り去って行った車を見て
「柊さん!!も、もうこんな時間なのにどこ行くんだよ!!」と叫んだ。
そして、リビングに座り続けていた美男。
「けど・・・それは・・・二人が・・・素直になれたら・・だろ・・。」
被っていた帽子を深々と被り直すと、去って行った柊の言葉に対して
遅くなった返事を、誰もいないリビングに響かせた。
25 :
想いよ届け 7:2011/11/18(金) 17:11:17.13 ID:Y4gST4on
ライブが刻一刻と迫っている中、誰一人としてその事に集中できないでいた。
ただ一つ、タイムリミットが近づきつつある・・・二人の関係を思い続けると。
車を急いで走らせていた柊の行き先。そこはA.Jエンターテイメント社だった。
昨日のどんよりとした黒い雲が広がっていたことが想像できないほどに、今日は快晴で
気がつけば太陽が天高く上がっており、時間の経過の早さに焦りを隠しきれなかった。
今日はライブ当日。残された時間もあまりない。多分、あの人が・・・美子の居場所を知っている。急がないと。
柊は手当たり次第に社内を走り回り、一人の人を探し続けた。
そして、練習室前に差し掛かった時、探していた人の姿をようやく見つけ出す。
「馬淵さん!!」
そう探していた人と言うのは、唯一沖縄から返ってきた後に、美子と接触をしていた馬淵だった。
鼻歌を歌いながら歩いていた馬淵は、慌てている柊の姿を見ると手を挙げ
「おぉ!柊!お前、ライブ当日なのにまだこんな所に居て大丈夫なのか?」
とへらへらと笑いながら柊に挨拶をしてきた。
すると、すぐさま走ってきた柊は馬淵ににじり寄る様に壁に追い込む。
「しゅ、柊?な、何で・・・そんな怖い顔してんだ?」
笑顔を浮かべる柊だが、その後ろの方から「ひしひし」と黒いオーラを感じる馬淵は
身を引こうと懸命に体を動かすが、後ろが壁で引く事が出来ないでいた。
そんな馬淵の肩を両手で掴んだ柊は笑顔を絶やさずに、
「美子の居場所・・・知ってますよね?」
と小さく、それでいて奈落の底から響き渡るような低い声で馬淵に迫り寄った。
しかし、馬淵自身もそう簡単に口を割らず
「んなこと言っても、教えるなって美子が必死に言ってきたんだ!
それがあいつの望みなら、例え嘘だろうが俺はその思いを裏切るわけにはいかねぇー!」
と頑なに美子の居場所を話そうとはしなかった。
26 :
想いよ届け 8:2011/11/18(金) 17:11:56.75 ID:Y4gST4on
「馬淵さん!嘘って分かってんなら、何で話してくれないんですか!」
「だ、だって・・・よ。」
「美子、今日にはアフリカに行っちゃうんです!そうなったら、本当に何もかも終わるんですよ!?」
「け、けど・・」
「馬淵さん!!」
「あぁ!くそ!もうやってられっか!」
柊の激しい問いかけに対して、馬淵の心の中でも釈然としなかった気持ちが爆発し
大きく腕を床に叩きつけるように振ると、柊の顔を見た。
「・・・青空学園・・・。」
「え・・・?」
「いいか、もう一度だけ言ってやる。青空学園だ!あぁ、たく!結局言っちまったじゃねーかよぉ!!」
言わないと決めていた事を言ってしまい、馬淵はその場で転がりながら慌てていた。
その床を転がり続ける馬淵を見ながら、柊は「馬淵さん・・・。」と声を出す。
そして、馬淵は立ち上がると「さっさと行け!」と言い放った。
「ありがとうございます!」と大きな声で言った柊は馬淵に一度お辞儀をすると
もと来た道を走って戻って行った。
「何よ、私が聞いても何一つ口割らなかったくせに、柊には簡単に口割ったじゃない。」
少し開いていた練習室から二人のやり取りを聞いていたRINAが、柊が去った後に馬淵の前に現れる。
「うぉ!り、RINA!!な、何でそんなとこからお前が出てくんだよ!?」
「いやぁ〜。もしあのまま、あんたが口割らないつもりだったら、私も柊に加勢するつもりだったのよね〜。」
そう言うと、指の関節を「ばきぼき」と鳴らして馬淵の事を見るRINAに
(あ、あぶねぇ〜)と心の中で冷や汗を流しながら叫ぶ馬淵。
そんな馬淵に、RINAは近づいて肩に手を回すと
「ねぇ、何があんたの心変えたの?」
と興味津々に馬淵の顔を覗き込みながら聞いた。
「ば、馬鹿!そんなにくっつくな!」と言い、手で「しっし」として、追っ払うように馬淵はRINAを引き離す。
そして、いつもは見せない真剣な表情を馬淵は浮かべると話出した。
「いや、ただ・・・あんなにも二人のため、お前やあいつらが頑張ってる姿見たら・・・。
諦めきれねーんだなって思ってさ・・・。」
「・・・・・・。」
「それでよ、周りの奴らが諦めてねーんだから、当人たちもきっとまだ諦めきれてねーんだろうと思ってな・・・。」
「何よ・・・あんたの割にはカッコイイ事言うじゃない。」
隣でいつも見せない大人びた表情をしていた馬淵に、少し頬を赤らめたRINAは
最後にぼそぼそと聞き取りづらい声で、馬淵にそう言った。
案の定、馬淵にRINAの最後の言葉は聞こえてはなく、不思議そうな表情を浮かべると
「ん?何か言ったか?それに、お前なんか顔赤いぞ?熱でもあんじゃね?」
と、けらけらと馬鹿にするように笑いながら言った。
その姿に、先ほど抱いた想いはやっぱり嘘だと思ったRINAは頭を思いっきり叩くと
「何でもない!さ、早く私たちも会場に急ぐわよ!」と言い、馬淵を置いて足早にその場を後にした。
「お、おい!んだよ!あんなに怒る事ねーだろ!」
馬淵は「ぷんぷん」と怒りながら、先を歩くRINAを追いかけた。
27 :
想いよ届け 9:2011/11/18(金) 17:12:50.48 ID:Y4gST4on
一方、青空学園で荷物の最終チェックをしていた美子
「えっと・・・服も入れたし、小物も入れた!航空券もある!後・・忘れた物はっと・・・。」
忘れ物がないか部屋中を見ていた美子は、テーブルにぽつんと置かれた「Miss You」のCDと、今日行われるライブのチケットを手に取った。
「・・・・今日で・・・本当にお別れ・・・ですね・・・。」
心残りや寂しさがないと言えば嘘になるけど、もうここまで来たんだ。後には引けない。
だから・・最後にもう一度。廉さんの姿を見るだけ・・・。それぐらい・・・良いよね?
手に持っていた「Miss You」のCDと、ライブのチケットを優しく抱きしめる美子。
「よし!そろそろ出よう!」
そう思ったその時、部屋に見覚えのある男性が訪れる。
「桜庭・・・美子さん・・ですよね?」
「は、はい・・・。その・・・どちら様・・・ですか?」
「私、水沢麗子の秘書をしている橘と申します。
水沢さんが・・あなたにお話ししたい事があると言っていたので御迎えに参りました。」
「み、水沢・・・さんが?」
その名に、一瞬だけ胸を激しい痛みが駆け巡る。
もう二度と、その名を聞かないようにしたかったけど・・・何の話なのか気になった美子は、手に持ったスーツケースを強く握ると
「案内・・・してください。」
とマネージャーを見つめて水沢麗子と対面することを望んだ。
「わかりました。それでは・・・参りましょう。」
マネージャーは、美子の持っていたスーツケースを受け取ると車に美子を乗せ、
水沢麗子の入院している病院へと車を走りださせた。
(最後にもう一度だけ・・・水沢さんに会って・・・・廉さんの事を・・・。)
車に乗っていた美子は、廉からプレゼントされたヘアピンを見つめると、一度だけ強く握り、鞄の中にそっとしまった。
28 :
想いよ届け 10:2011/11/18(金) 17:13:18.46 ID:Y4gST4on
その頃、ライブ会場へ向かっていたA.N.JELLメンバー。
話によると、柊は外せない用事があるだかで、会場で直接落ち合う事になっていた。
何があったか電話で聞いてやろうと思ったが、あいつ・・・合宿所に携帯忘れて行きやがった。
たく、ライブ当日なのにどこふらついてやがる・・・・。
移動中の車の中、廉は流れる景色を肘を立てた手の上に顎を乗せながら考えていた。
「ごーーー!!」
すると突然、窓の外から何かが飛び立つ音が聞こえる。
空を見上げると飛行機が飛び立っていたのが、廉の目に映る。
(あいつ・・・今日・・・行くんだよな・・・。)
「ハァ」と息を吐き捨てた後、(もう忘れろ・・。今はライブに集中すんだ・・。)
と自分に言い聞かせ、何度も頭によぎる美子の顔を振り払うように頭を振った。
その姿とは関係なく、後部座席でこそこそ話をしていた勇気と美男。
(なぁ・・・・柊さん、どこ行ったか分かんないの?)
廉には聞こえないぐらいの声で、「ひそひそ」と美男に話しかける勇気。
美男はそっぽを向くと「知らない・・・。」とぶっきら棒に言う。
「もぉ・・・。美男だって本当は心配なくせに・・・。」
「べ、別に・・心配なんかじゃ・・。」
「おい、お前ら・・少し静かにしろ・・・・。」
こそこそと話していたのだが、助手席に座っていた廉が途中から二人のやり取りを聞いており
「ぎろ」と二人を睨みつけると、再び視線を窓の外に映る景色へと戻した。
その顔に勇気は冷や汗をかいたが、廉はそれ以上何も言わなかったので「ふぅ〜」と安心して息を吐いた。
(ぁぁ・・・危なかったぁ〜。美男、もっと小さい声で話せよ・・。)
(んなこと言ったって・・・仕方ないだろ・・・。今は、どっか行った柊が戻ってくるの待つしかないんだから・・・。)
(・・・・そうだな。俺たちが慌てても仕方ないよな・・・。柊さん、早く来てくれ・・・。)
身を縮め、ひそひそと話していた二人をバックミラー越しで「ちら」と見ていた廉は
(たく・・・あいつら何話してんだよ・・・。)
と思いながらも、すぐにまた外の景色へと視線を戻し、右ポケットに入れたままだった
星のネックレスをポケットの中で弄っていた。
(・・・・美子・・・・。)
その名は、沈黙が広がる心の中で響き渡った。
廉は呼ぶ事が出来ない名前を何度も心の中で呟くと、小さく息を吐き捨て
ネックレスから手を離し、ポケットから手を抜き取ると、到着するまで眠ることにした。
起きてれば・・・・あいつの事ばかり考えてしまうから・・・。
29 :
想いよ届け 11:2011/11/18(金) 17:14:26.18 ID:Y4gST4on
「こちらの部屋になります。それでは、私はこの辺で。」
「はい。色々とありがとうございました。」
「いえ、私は水沢さんの言われたとおりにしたまでです。それでは・・・。」
水沢麗子が入院する病院に到着した美子。
ここまで送ってくれた橘さんにお辞儀をした後、部屋の前で少し躊躇った。
ノックして部屋に入ろうとしたが、やっぱり・・・どうしても会うのが恐い・・・。
そのせいか、ノックをしようと上げた右手は宙に浮かんだまま小さく震えていた。
すると、中から今にも掠れそうな小さな声で
「桜庭・・美子さん・・?」と自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。
突然の事で、その場で体を「ビク!」と震わせるのと同時に「は、はい!」と返事を返してしまう。
(まだ心の準備が出来てないのに・・・。)
心の中で、鳴り止まぬ心音を抑え込もうと両手を胸の辺りに押し付ける。
すると、私の心の内を呼んだかのように水沢さんは「・・・緊張しないで?」
と扉の前に立っていた美子に声を掛けてきた。
その言葉に、鳴り止まなかった心音は徐々に治まっていき、扉の前で大きく深呼吸をした後
「失礼します。」と言い、ゆっくりと扉を開けて病室内へと入っていった。
中にはいると、横になっていた水沢さんが辛そうに体を起こそうとしていた。
「水沢さん!だ、大丈夫ですか!?」
病院であるという事を忘れ、水沢さんの近くに駆け寄ると、私は体を起こすのを手伝った。
「だ、大丈夫・・・だから・・。」
「で、でも・・・。」
「それより・・・今日は・・ごめんなさい。いきなり呼びだしちゃって・・・。」
「い、いえ!そ、そんな・・・気になさらないでください!」
弱弱しく話をしている水沢さんの姿に、何度も首を振る。
けれど、そんな美子に笑みを浮かべると水沢さんは「そこの・・椅子に腰かけて?」
と言い、窓際付近に置いてあった椅子に座る事を促す。
まだ水沢さんの状態が気になって何があったか聞きたかったのだが、言われたように指示された椅子に座ると、黙って水沢さんの事を見つめた。
そして、水沢さんは深々と礼をする。
「あなたに謝りたくて・・・。ごめんなさい・・・。」
と涙ぐんだ声で何度も謝り続けた。
30 :
想いよ届け 12:2011/11/18(金) 17:15:09.56 ID:Y4gST4on
その後、水沢さんは私たちの両親について色々語ってくれた。
水沢さんと私のお父さんとお母さんが友人同士だった事。
その中で、お母さんとお父さんが互いに愛し合っていた事。
何より、私たち兄弟を産んだお母さんが・・・・幸せな一時を過ごした事。
そして、二人の仲を引き裂いてしまった事と・・・私に対する謝罪。
私の心の中にあった水沢さんを許す事が出来ないという気持ちは、話を全て聞き終えた頃には綺麗に無くなっていた。
だって、お父さんとお母さんはやっぱり愛し合っていた。
お母さんも苦しい人生を歩んだけれど、それでも幸せだった時もちゃんとあったんだって分かったから・・・。
「ごめんなさい・・・。本当にごめんなさい・・・。」
話が終わった後も、罪悪感によるものか水沢さんは何度も謝ってくれた。
「水沢さん・・顔を上げてください。もう・・大丈夫です。」
頭を下げて謝り続ける水沢さんの体に、支えるようにして手を添えて体を起こす。
そして、溢れだしそうな涙を堪えながら、私が今できるだけの笑顔を水沢さんに見せた。
「私は・・・もう大丈夫です。お母さんたちが・・・愛し合っていた。
それがわかっただけで私、凄く嬉しいんです。だから・・・もう謝らないでください。」
「け、けど・・それじゃあ、私の気が済まないわ。何か・・・出来る事ない・・・?」
そう言うと、水沢さんが私の右手を弱弱しく握り、訴えかけるような瞳で見つめてきた。
私はその手に左手を添え、力強く握る。
「一つだけ・・・お願いしたい事があるんです・・・。」
「・・・何?何でも聞くわ。」
私は・・・最後に自分が心から望むお願いを・・・水沢さんにした。
その後、病室を後にし最後の目的地へと・・・・向かった。
(これで・・・・もう・・・廉さんは一人じゃない・・・。)
そう心の中で思うと、溢れ出す涙に、(私・・・いっつも泣いてばっかりだなぁ・・・)
と改めて自分が泣き虫だと思い、「くすくす」と自分でもよく分からない笑い声を零しながら
零れ落ちる涙を拭き取って、空に広がる青空を笑顔で見上げた。
(廉さん・・・。あと一回だけ・・・最後に一回だけ・・一番大切な星・・・見に行きますね・・・。)
31 :
想いよ届け 13:2011/11/18(金) 17:15:38.76 ID:Y4gST4on
そして、既に会場入りし黙々と控室で準備をしていたA.N.JELLメンバー。
勇気と美男は一足早く、舞台衣装を身に纏い準備万端だったが、廉だけがまだ私服のまま
控室に置かれていた椅子に座り込んでおり、自分の携帯を眺めていた。
(母さん・・・そろそろ手術始まるよな・・・・。)
手術が始まる少し前。まだ時間があったため電話をかけようかどうしようか迷っていた。
(廉さん・・・さっきからどうしたんだろう?ずっと携帯眺めて・・・。)
(知るかよ・・・。てか、柊はまだ来ないのか?)
(ん〜、それがまだ来ないみたいなんだよね・・・・。ホント、何してんだか・・。)
ぼんやりとしていた廉の姿を見つつ、タイムリミットが着実に近付く事に二人は焦りを感じていた。
そんな事をひそひそ話していると、控室前の通路から走ってくる足跡が微かに聞こえる。
その音に気がついた廉は立ち上がると、控室から通路を覗きこむ。
通路から走ってきたのは・・・・柊だった。
(たく、ようやく来たか・・・。)
ライブ当日に遅れてきた柊に対して、怒鳴りつけようと「柊!」と通路を走る柊の名を呼ぶ。
それに気がついた柊も、全速力で廉の元まで走っていき、控室へと入った。
「柊さん!い、今までどこ行ってたんだよぉ!!」
柊の到着に勇気は柊の近くまで駆け寄る。
「勇気の言うとおりだ!お前、こんな時間までどこ行ってたんだ!!」
怒鳴り声を上げる廉は、柊の目の前に立ち、柊の姿を睨みながら見る。
上半身を倒し呼吸を整えていた柊だが、廉の怒鳴り声を聞くと重い体を持ち上げた。
「あ・・・青空・・・学園・・・。」
「ぁ?何がだ?」
「青空学園に・・・美子が・・いる・・・。」
「え・・・?」
紅潮した顔と息切れでうまく話せない柊は、覚束ない口調で廉に伝える。
美子が・・・青空学園に・・・・。
今まで居場所の分からなかった美子の居場所が・・・・ついにわかった。
けど、あいつは俺の側で笑えないって言った。そんな俺が・・あいつに会いに行ったって・・・。
あいつが・・・・苦しいだけ・・だろ・・・。
ここまで来て依然迷い続ける廉は、目を閉じて如何すればいいのか考えていた。
そんな姿を見た柊は昨日とは違い、廉の胸座を弱弱しく掴み上げると
「何・・・迷ってんだよ!」と辛そうな表情を浮かべながら、怒鳴り声を上げる。
「しゅ、柊・・・・。」
「今行かないで・・・どうすんだよ!!お前・・こ、このまま・・・行かせていいのかよ!」
「け、けど・・俺が行った所で・・・。」
「そうだよ!廉さん!柊さんの言うとおりだよ!」
呼吸を整える柊の体を支えていた勇気も、力強い声をあげて廉に意見する。
「ゆ、勇気・・・。」
「廉さん、本当は美子と一緒に居たいんでしょ!?諦めたくないんでしょ!?
なんでもっと素直になれないんだよ!何で、もっと素直に「愛してる!」ってぐらい言えないんだよ!
廉さん、ここでもし何もしなかったら一生後悔するよ!一生小心者のままだよ!良いの!?」
「お、俺は・・・。」
32 :
想いよ届け 14:2011/11/18(金) 17:16:42.65 ID:Y4gST4on
メンバーの説得に、心が揺らいでいた廉だが、このタイミングで廉の携帯が鳴り響いた。
電話主が誰かと確認しようと、携帯の液晶を見ると「水沢麗子」という名前が表示されていた。
廉は控室から出て、外にある控室の壁によしかかり電話に出た。
「もしもし・・・・。」
「今から・・・手術するわ・・・。」
「そうか・・・頑張れよ・・・・・。」
不器用なりに自分の母親にエールを送った廉。
数秒間、沈黙が続いた。先に話をしだしたのは水沢の方だった。
「・・今日・・・美子さんと会ったの・・・。」
「え・・・美子と・・・。」
何で母さんと美子が会ったのか・・・。そんな疑問はあったがそれを聞く前に水沢は話を続けた。
「それでね・・・一つだけ・・・頼みごとをされたの・・・。」
「頼み・・ごと?」
「・・あなたを・・・もう二度と一人にしないでって・・・。
今まで、ずっと寂しい思いをしてきたあなたを・・・もう二度と離さないでって・・。」
(あいつ・・・そんな事・・・頼んだのか・・・。たく・・・何で・・そんな事・・)
母親である水沢から聞いた美子の頼みを聞き、込み上げてきそうになった声を握った左手で抑えこもうとする。
その様子を、電話越しから悟った水沢は心配そうな声で
「ねぇ・・・廉?美子さん・・・どこか遠くに行くの・・・?」と聞いた。
「・・・何で・・・そう思うんだ?」
「だって・・・頼みごとを話して時のあの子・・・凄く泣きそうな声だったの。
だから・・それで、美子さんがどこか遠くに行くんじゃないかって思って・・・。」
(そう。母さんの言うとおり。美子は今日・・・アフリカに旅立つんだ。今日。)
しかし、その事を水沢に伝えなかった廉は、電話を握りつぶすかと言わんばかりの力で握り
辛そうに下唇を力一杯噛んでいた。
微かに聞こえる廉の声に、今にも出なくなりそうな声を振り絞って廉に親として最後に出来る事を成そうと口を開く。
「ねぇ・・・廉?あなた、前にもう遅いって言ってたけど・・・本当にそう?」
「な、何・・言ってんだよ?」
「本当にもう遅いの?あなたがそう決めつけてるだけじゃないの?
愛する人と気持ちが通じ合うことほど、幸せなことはないのよ?
だから、大切にして欲しい。あの子を思う・・・その気持ちを。
貴方には後悔して欲しくない。だから・・・ごほごほ・・・・」
「か、母さん!」
「だから・・・最後まで・・・諦めないで・・廉。」
母親の必死の訴えに、迷っていた廉の心は一つに決まった。
そして、大切な事を教えてくれた母さんの言葉に「ぽろぽろ」と無数の涙を流す。
「それじゃあ・・・行くわね・・・。」
もう声を発すること自体が難しい水沢は、「ぐすぐす」としていた廉に手術の時が来た事を告げると、受話器から耳を離そうとした。
すると、電話越しから「声・・・。」と声を詰まらせた廉の言葉が聞こえる。
離していた受話器に再び耳を傾けた水沢は、「え・・・?」と聞き直す。
「母さんの声・・・絶対、忘れないようにするよ。」
「廉・・・。」
「ありがとう・・・母さん。」
「・・・んん・・・。こ、こっちこそ・・・ありが・・とう・・・。」
互いに詰まった声で最後のやり取りをすると、電話を切り、涙を拭きとると控室に戻ろうとした。
33 :
想いよ届け 15:2011/11/18(金) 17:17:26.38 ID:Y4gST4on
戻ろうとしたのだが、控室入口の前には美男が立ちはだかる。
「・・・・・・。」
廉は黙ったまま、顔を俯かせていて美男を見ていた。
「俺・・お前の事・・許せないし・・・美子の事・・・本当は渡したくない・・。」
「み、美男!?」
「な、何言ってんだよ!ここまで来て!!」
美男の後ろに立っていた勇気と柊は、突然の美男の発言に驚き「考え直せ!」とかなんとか言っていた。
しかし、その二人の言葉など耳に届いていないのか、俯かせてた顔を廉の方へ向けると
「けど・・・それ以上に、美子が無理してる姿なんて見たくない・・・。だから・・。」
と言い、廉の胸に握り拳を軽く押し当てた。
「だから・・・これから先、絶対・・・あいつの事・・・離すな。
もし離したら・・・死ぬまで恨んでやるからな・・・。」
と素直に「美子を頼む」と言えない美男は、自分なりのやり方で廉の背中を押した。
そんな美男の姿に微笑みを浮かべると頭に手を当て、
「わかった。約束する。」と言うと美男の頭から手を離し、
「ありがとう。」と小さな声で言い、メンバーや母さんの優しさに感謝しながら
控室から続く通路を、ただ美子の事を想い続けて走って行った。
その後ろ姿を、微笑みながら見守る勇気と柊。
「はぁ・・・ホント、最後の最後まで世話がかかるな・・・。あの二人。」
「ホントホント。もう少し俺たちに安心して二人の事見守らせてほしいよ・・・。」
愚痴っぽく控室の前で話していた二人は、顔を合わせて笑い合った後、依然として顔を俯かせていた美男へと目を向けた。
「兄貴として・・妹を傷つけた廉さんに取られるのが嫌だったんだな・・・。」
「けど、よく堪えたな。だから、もう泣くな。大丈夫。廉はちゃんと約束は守るからさ・・。」
前髪で隠れて良く見えなかったが、床に零れる涙を見て涙を流しているという事に気がついた二人は
美男の肩を「ぽんぽん」と叩いて優しく声をかける。
その声に、美男は「ぐす」と鼻を啜り、零れ落ちていた涙を拭きとり、涙を堪えた。
「ぐす・・ち、違う・・・。泣いてねーよ・・・。これ・・汗だ・・・。」
「うわ!今時涙を「汗」だなんて言う奴いねーよ!古すぎだろ!!」
「う、うるせぇーな・・ぐす・・だから・・汗だって・・・。」
「はぁ・・・全く、お前も廉に負けず劣らずの頑固者だな・・・。」
「あいつと・・・一緒にするな!」
「はいはい。もぉ、こんな所で泣くなよ。ほら、控室行くぞ。」
そう言って勇気は、「だから、泣いてない!」と意見を変えない美男を連れて、控室へと戻って行った。
柊もすぐに戻ろうとしたが、物陰で見守る様に見ていた安藤社長を見つけると
「あ・・・。」と声を出す。
安藤社長は何も言わず、にっこり笑うと親指を立てて「よくやった!」と言わんばかりにこっちを見てきた。
それに対して、柊も何も言わず微笑みを返すと自分も控室へと入って行き、ライブの準備をすることにした。
34 :
想いよ届け 16:2011/11/18(金) 17:18:41.82 ID:Y4gST4on
(ハァ・・・くそ・・・!どこもかしこもマスコミや記者だらけ!これじゃあ外に出れねーじゃねーか・・)
記者達に見られないように外へ出ようと考えていた廉。しかし、どこを見ても人だらけで
出て行くだけで、大きな騒ぎになりかねない。
(くそ!俺には時間がねーんだ!どこか・・・抜け道ねーのか・・?)
そんな事を考えながら、誰にも見られないように外へ出るルートを考えていた。
すると、関係者用の通路を彷徨っていた廉の目の前に、観客席で見物しようとしていたNANAと遭遇する。
「っち・・・こんな時にお前か・・・たく、ホント運悪いな・・・俺は・・・。」
「何よ!人の顔見るなり、失礼しちゃう!やっぱ、ここに来るんじゃなかったわ。」
NANAは廉を横目で「ちら」と見ると、「ふぅ」と溜息をしながら
「この先、まっすぐ行ってもマスコミだらけで見つかっちゃうわよ?」
と、NANAの横を走って行った廉に言う。
「・・・は?何言ってんだ?」
「だ〜か〜ら、まっすぐ行ったらマスコミだらけで見つかっちゃうわよ?
今来た道の途中に運搬関係者専用の出入り口があったはずでしょ?
さっき見てきたけど、今ならだ〜れもいないから、簡単に外に出れるわよ?」
と言うと、NANAは組んでいた腕を解し、その方向を指差した。
まさか、あのNANAがこんな事を教えてくれるなんて思ってもみなかった廉は
「お前・・・何考えてるんだ?」と疑いの目でNANAを睨む。
「まぁ、失礼しちゃう!」と疑いの目を向ける廉に睨み返した後、
すぐに「くすくす」と笑い声を出しながら険しい表情を笑顔に変える。
「な、何が可笑しいんだよ・・・。」
「そりゃそうよね〜。今まで嘘ついてきたんだから、信じられないのも無理ないわよね・・。」
「んなもん当たり前だろ・・・。」
「けど・・・これはあなたに借りた貸しを返すためにするのよ。」
「貸し?・・・何の話だ?」
眉間に皺を寄せ、NANAの顔を見る廉。
NANAは、無駄な事はせず要点だけ掻い摘んで話しだした。
「この前、テレビ局で・・・嘘つきでも、私のファンのためには笑ってやれって言ったでしょ?
あの言葉のおかげで私、何とか乗り切れたの。だから・・・その時借りた貸しを返したいだけよ!」
そう言うと、恥ずかしそうに廉に背を向けてもぞもぞとするNANA。
(・・・まさか、こいつに助けられるなんてな・・・・。)
NANAの好意を素直に受け取ることにした廉は、NANAの肩に手を添えると
「・・・・悪かった。ありがとう。お前も・・・頑張れよ。」
と去り際に感謝を込めて声を掛けると、NANAの示した方向へと走って行った。
廉の言葉に一瞬顔を真っ赤にしたNANA。
「何よ・・。いきなりあんなこと言って・・・。」
しばらくその場で走り去る廉の後ろ姿を見つめながら
(お礼を言うのは・・私の方よ。本当に・・・ありがとう。)
と思うと、自分の短かった恋に今度こそ別れを告げ、暗闇の広がる観客席の中へと潜り込んで行った。
35 :
想いよ届け 17:2011/11/18(金) 17:19:09.04 ID:Y4gST4on
NANAの助けによって、何とかマスコミたちの目からうまく逃れ、車までたどり着いた廉は
車を全速力で走らせて、美子がいるという青空学園へと向かっていた。
(頼む!間に合ってくれ!)
ただただ、青空学園に美子がいてくれる事を祈った廉は、到着すると駆け込むように青空学園の中へと入って行った。
(がら!)
「美子!!」
部屋の扉を開けて、中へと入った廉。
部屋に居た子供たちが廉の姿に気がつくと、「あー!廉だ!」と言いながら、廉の周りに集まってくる。
廉は子供たちの顔を見ながら、部屋の中を見渡す。すると、部屋一面に広がる星の飾りに気がつく。
(美子!やっぱり、美子はここに居た!)
部屋中に広がる星の飾りを見た廉は、更に隅から隅まで部屋中を見渡す。
しかし、部屋の中に美子の姿はなかった。
(間に合わなかった・・・・。)
ここに美子がいないとなると、もうこれ以上心当たりはない。
何か少しでも良い。あいつの行き先を知りたいと思った廉は、周りに居た子供たちに、
「なぁ・・・美子がどこに行ったか知らないか?」と聞く。
子供たちは顔を合わせあって「どこに行ったの?」「知ってる?」などと色々話しあっていた。
ただ、すぐにどこへ行ったか出てこないという事は・・・きっと知らないのだろう。
と思った廉は完全に諦めかけた。けど、自分のすぐ下に居た女の子が服の袖を引っ張ってきた。
その子供の顔を見ると、「ど、どうかしたのか?」と聞く。
「あのね、美子、一番好きな星を見に行くって言ってたよ!」と元気な声で廉に伝えた。
(一番・・・好きな星・・・。ま、まさか・・・あいつ!)
廉はその言葉に一つだけ、美子の行き先が思い浮かぶ。
思い浮かべた後、子供たちに笑みを浮かべた。
「ありがとう。今度また、遊びに来てやるからな!」
「え!本当!?」
「あぁ!約束する!」
「絶対だよ!」
「あぁ!」
「やったーー!!」
喜びのあまり、ぴょんぴょんその場で飛び跳ねる子供たちを見た廉は
「それじゃあ、俺・・急いでるからもう行くな!」
と言い残し、青空学園を後にし、ライブ会場へと再び車を走らせて行った。
(これが・・・最後のチャンスなんだ!美子!絶対そこにいろ!)
車を走らせる中、廉は美子がライブ会場に居ることだけを祈り続け、全速力で車を走らせた。
36 :
想いよ届け 18:2011/11/18(金) 17:19:59.94 ID:Y4gST4on
その頃、美子は廉の考える通り、ライブ会場の客席の中で、他の客に紛れるように座っていた。
(廉さんを見たら行こう・・・。)
紺色のワンピースを見に纏う美子は一心に、ライトアップされていたステージを見ながら
最後に光り輝く一番大好きな星を早く見て、空港へ向かおうと思うと視線を下にずらし
廉からもらったヘアピンを自らの髪の毛に付けた。
すると、ヘアピンを付けるために下を向いた瞬間に、周りにいた観客が一斉に立ち上がり
「きゃーーーー!!」という黄色い声援が会場を飛び交う。
何があったとかと思い、自分も立ち上がってステージの方へ目を向けると・・・
「廉・・・さん・・・。」
青空学園から急いで戻ってきた廉は、そのまま控室には戻らず、ステージの上に迷いなく上がる。
そして、ステージの上を「すたすた」と早歩きで進みながら、観客席を見渡した。
けれど、ステージの上とは違い、観客席はライトアップされておらず、廉にとっては最悪の状況。
瞼に力を入れて、ぼんやりと映る観客席から美子を探そうとするも
辺り一面探しても美子らしい姿はおろか、ファン一人一人の顔すら見分ける事が出来ない。
(くそ!この会場のどこかに入るんだ!どうしたら・・・どうしたらいいんだ!!)
ステージ上で「きょろきょろ」と観客席を見渡す廉を見た美子は、胸の辺りを掴む。
(廉さん・・・・。私、ここにいます・・・。)
大きな声でそう言いたい。けど、その声が出ない。出す事が出来ない。
出しても・・・私も・・・廉さんも・・・苦しいだけだから・・・・。
そう思い、胸の辺りを握ったまま、立ち上がっていた体を座らせて廉の姿が見えないようにした。
(廉さん・・・ごめんなさい。)
「ずきずき」と痛む胸を押さえながら体を前に倒し、数粒だけ涙を流した。
37 :
想いよ届け 19:2011/11/18(金) 17:21:42.31 ID:Y4gST4on
(くそ!駄目だ!このままここに居ても・・・。取り敢えず、一度戻るしかない!)
辺りを見渡しても美子を見つける事が出来なかったため、今来た道を戻り、メンバーが待つ控室に戻って行った。
控室に戻ると、柊達以外にも馬淵やRINA、それに社長も深刻そうな表情を浮かべて俺の帰りを待っていた。
一番最初に俺が帰ってきた事に気がついた勇気は椅子から飛び上がると
「れ、廉さん!み、美子・・・居たの!?」
と心配そうな表情を浮かべて走り寄ってきた。
「・・・・・・・・・」
俺は何も言わず皆が見守る中、首を横に振った。
それを見た全員は沈んだ顔をし、黙り込んだ。
けど、まだ望みはある。それを知っていた俺は力強い声で
「だが・・・この会場の中に美子がいる・・・。」と告げる。
それを聞いた柊は腕を組みながら、「この・・・会場内・・」とぼそっと呟く。
そして、壁によしかかっていた美男が、
「1万5千人の中から・・・美子を見つけ出さないといけないのか・・・。」
と見つけられるか不安そうな表情を浮かべて廉を見る。
すると、だんまりを決め込んでいたRINAが馬淵の首を絞めて
「そもそもあんた、何で美子にライブのチケット渡してた事忘れてたのよぉ〜〜!!」
と怒り狂った表情と荒々しい口調で馬淵を追い詰める。
「ま、ま・・・てぇ・・ぐ、ぐるしい・・・ギブ!ギブ!!」
「もっと早く言ってたら、わざわざ廉が車走らせる必要もなかったでしょ!!」
「だ、だってぇ・・・。今・・さ・き気づいたんだから・・しかたねー・・だ・・ろ」
「はぁぁ」と獣の雄叫びのような溜息を吐き捨てると、RINAは馬淵の首を絞めていた手を離す。
馬淵はRINAの手が離れるとその場に倒れ込んだ。
「そ、それに・・・・チケット渡しても・・・くるかどうかは・・・結局青空学園行かないと・・・わから・・・なか・・・った・・。」
全て言い終える前に、馬淵は白目をむいて意識を別の世界へと手放した。
「あぁ〜。RINAさん、流石にこれはやりすぎだよ・・・。」
白目で意識を失っていた馬淵を見て、柊は苦笑いを浮かべてその姿を見た後
「ふん!」と息を吐きながら身構えるRINAに目を向けた。
「それに・・・馬淵さんが美子にチケット渡したんなら・・席番ぐらいは覚えてたかもね・・・。」
先ほどから冷静な口調で淡々と話す美男に、一同は気を失った馬淵を一斉に見ると
気を失った馬淵の周りに集まり、揺するなりほっぺたをビンタするなりして起こそうとした。
そんな一同の姿を見ていた安藤社長は、馬淵に群がる一同に引き攣った表情を見せ
「無駄だ。馬淵にチケットを渡したのは俺だ。それに、一枚じゃなくて数百枚と渡してる。
日ごろお世話になっている人たちに渡しておけと言っておいたから、
席番号を全部覚えていたとしても、どこに誰が座ってるまでは把握してないに決まってる。」
と言い、馬淵に群がるメンバーはその言葉を聞くと馬淵から離れる。
(つ、つか・・・何で・・俺こんな扱い・・?)
意識はないけれど、こんなことを思っていただろう馬淵は、そのまま倒れていたが
社長の、「そのまま寝てるようなら、お魚の餌にするから大丈夫だ。」と言う声を聞くと
「いや!それだけはいやぁ!」と両頬に手を当てながら、叫ぶようにして蘇った。
「ちょ・・・まぶっちゃん、蘇るの早!」
「って・・・そんな話してる場合じゃないだろ・・。廉、どうする?
もう少しでライブも始まる時間だ。このままじゃどうしようもないぞ?」
皆が騒ぐ中一人、目を閉じながら何を考えているのか。
その真意を確かめるべく、柊は廉へと言葉を投げかける。
38 :
想いよ届け 20:2011/11/18(金) 17:22:34.20 ID:Y4gST4on
「・・・最初の曲を変更したい・・・。」
パニック状態に陥っていた勇気、RINA、馬淵と
冷静に現在の状況を受け止めていた美男、柊、社長の顔を一人ずつに真剣な眼差しで見つめる廉。
「けど・・・一体何の曲歌うんだ?」
「・・・・Miss Youだ・・・。」
「なるほど・・・。お前も意外と考えてるんだな・・・。」
どうして廉がその曲を選曲したかを聞かずに、社長は「うんうん」と頷くとその場に立ちあがり
「わかった!最初の曲はMiss Youにする!!廉、早く衣装の準備をしろ!」
と言うと、廉にすぐさま準備をするようにと、RINAに手伝うように指示した。
そして、ライブが始まる5分前・・・・
「よ〜し!完璧!ほら、さっさと行きなさい!!あんたの大事な人が首を長くして待ってんだから!」
衣装合わせにメイク、全てが終わった様で純白のスーツを纏った廉が、RINAに背中を叩かれながら出てきた。
「い、いてぇ!そ、そんなに強く叩くな!」
「はいはい、それよりほれ。あんたの服の中に入ってたよ。今は、これをお守りだと思って精一杯やってきなさい!」
「ばんばん」と背中を叩いてきたRINAを睨むようにして見ていた廉だが、
RINAが部屋に居た他の人たちに見えないように背を向けさせ、耳元で囁いた後
廉の右手の中に星のネックレスをそっと置いた。
「大丈夫よ。他の人には内緒にしとくから。ほれ、びしっと決めてきなさい!」
「RINA・・・・わかった。」
手渡されたネックレスを一度強く掴むと、それをポケットの中に詰め込んで深呼吸した廉は、再び視線を他のメンバーの方へと移す。
「ん〜。廉さん決まってるぅ〜。まるで美子の王子様見たいだね!」
「にやにや」と笑いながら廉の事を見て話す勇気に
「な、何でお、お前がにやにやしてんだよ!?」
と顔を赤くして勇気に怒鳴る様な声を上げる廉。
「そうそう!廉さん、固くなりすぎるより、それぐらいの気分でやった方が絶対うまくいくよ!」
「こ、これぐらいって・・・おまえのせいで何か逆に恥ずかしくなっちまったじゃねーか・・。」
「何言ってんの!?これからでしょ!恥ずかしがるなんて全部終わってからすればいいんだからさ!
廉さん!当たって砕けろ!!あれ・・・く、砕けちゃ駄目だっけ?ね?まぶっちゃん?」
「んん?そうだなぁ・・・男なら当たって爆発するぐらいの勢いでやってこい!」
「いや、別に意味としては砕けろでも問題ないだろ・・・。てか、馬淵さん。
爆発してどうするんですか!」
「え?だ、駄目か?」
「駄目に決まってるじゃないですか!」
「・・・まぁ、細かい事は気にすんな!全力でやってくれば良いんだ!」
「そうだそうだ!まぶっちゃんの言うとおりだぁ!」
何だか良く分からないが、二人はそれで納得したようで
廉に向かって親指を立てて「頑張れよ!」と声をかける。
「ふ・・・お前たちのおかげで緊張感全部どっか行っちまったよ!
たく・・・ありがとうな・・・・。」
そんな明るい二人を見て、緊張感が吹っ飛び
強張っていた表情は和らぎ、時折見せる笑顔に変わっていた。
39 :
想いよ届け 21:2011/11/18(金) 17:23:56.56 ID:Y4gST4on
「美男・・・・。」
「・・早く行けよな。たく、何で美子もこんな気難しい奴選んだんだよ・・・。」
壁によしかかっていた美男は廉を目の前にすると、「ぶつぶつ」と文句を言いだした。
「んなもん、後で自慢の妹さんにでも聞けばいいだろ?」
そんな美男に「にや」と笑みを浮かべて、でこぴんをすると美男は慌ててでこを押さえる。
「いってぇ・・・な、何すんだよ!!いきなり!」
「何だ。人の顔見て話せるじゃねーか。」
「く!・・・たく、どこまでもいけすかねー奴!さっさと行けよ!
それで・・・あいつを・・・あいつの笑顔・・・ここに連れてこい!良いな!?」
そう言うと、再び上げていた顔を俯かせる美男。
「むす」と怒った表情を浮かべていた美男に、一度頬笑みを浮かべた廉は
「あぁ!言われなくてもやってやる!だから・・・待ってろ。」
と去り際に美男の肩を「ぽんぽん」と叩いて美男の前を通り過ぎて行った。
「柊・・・お前には本当に世話になった。」
「ホント、お前には色々と振り回された・・・って本気で皮肉の一つでも言いたいけど
言っただろ?美子を幸せに出来るのはお前だけだって。」
「柊・・・。」
「だから、お前たちの幸せを祈る一人として、全力でお前たちをカバーしただけだ。
廉、行って来い。俺たちも陰で見守ってるから、何も恐れずありのままの自分で!」
「・・・あぁ、ありがとう。・・・・」
そう言うと、二人は互いの右手を力の限り掴み合うと託された想いを胸に、
自分が出来る事をしてくると、目の前に居た柊に真剣な表情を浮かべることでその意志を示した。
その真剣な表情にいつもの微笑みを浮かべた柊は、何も言わず肩を軽く叩いて廉を見送る。
「社長・・・。色々・・迷惑掛けた。」
「・・・何の話だ?」
何の事を言っているのか、惚けた表情で廉を見る安藤社長。
「いや、これから俺がしようとしてる事も・・・あんたに迷惑かけ・・」
「廉。今は・・・余計なことは考えるな。」
顔を俯かせ、これから起ころうとする事態を想像していた廉だが
社長は廉の両肩に手を添え、力強く掴むと微笑みを零した。
「いいか、これは俺がしたいと思ったからこうしてるだけだ。だから、お前が気にすることはない。」
「けど!」
「それとも・・・怖気づいたのか・・・?ここまで来て?」
「は、はぁ!?こ、この俺が、お、怖気づくだって!?んな訳あるか!」
人をおちょくる様な笑い方をした社長に対して、自信満々の表情で答える廉。
その表情に、「そうだそうだ。お前はその表情が一番似合う」と笑いながら何度も頷いた。
「良いか、YOUはカリスマバンドA.N.JELLのリーダー、桂木廉だ。
今までもこんな窮地に何度も立たされたろ?けど、大丈夫。YOUなら絶対に大丈夫だ。
現に、お前はその窮地を乗り越えて、今ここに立ってるだろ?それが証拠だ。」
「・・・たく、あんたにはホント、敵わないよ・・・。」
「大丈夫。マスコミどもの処理は私たちがバッチリやってやる。
この三ヶ月間、お前たちが次から次へと問題を引っさげてきてくれたおかげで
マスコミの対処が数段うまくなったんだからな。
もしかすると、神様がこの日の事を予言して特訓してくれてたのかもな?」
「そんなバカな話、あると思うのか?」
「いやぁ、強ちそうとも言い切れんぞ?今がその時なんだからな。」
「・・・かもな。」
「そろそろ時間だ。廉!行って来い!余計なことは考えず、ただ一心に想いを込めて・・。」
最後に社長は、廉の胸辺りにグーで軽く叩くと、「頑張れよ」と囁く。
その言葉に「あぁ、わかった。」と微笑みながら一言だけ言うと、一人控室を後にして
ステージへと続く通路へと歩いて行った。
そして、ステージインする直前、もう一度RINAに渡されたネックレスを見つめる。
(待ってろ。美子。この会場から・・・光り輝くお前を・・絶対見つけだしてやる。)
その気持ちを、手に持っていたネックレスに力強く込めるように握ると
衣装のポケットの中に入れ、スポットライトによって光り輝くステージ上へと上がって行った。
大切な星を・・・見つけるために。
以上です。
うわぉ・・・。詰め込みたいもの全部詰めたらこんなに長くなってしまいました;;
神作品の後に、このような低レベの作品投下、お許しください!
そして、最近ハイスピードで作品投下し続けたんですが、そろそろ余裕無くなってきたので
年末ぐらいまでロースピード投下になると思います;;
いらん報告だと思いますが、一応ご報告を。
それでは、本当にこのような超長文&駄文にお付き合いしていただきありがとうございました!
※それとまとめさん、今回の作品はまとめサイトに掲載しないでくださるとありがたいです。
わがまま言って申し訳ありません。
>>40 GJ!文量も素晴らしいw
最終回でカットされた場面を見てるみたい!これ映像化してほしいわw
自分DT柊さんファンなので作品投下気長に待ってますね。
傑作続きの後ですが南の島で続きです
廉美子エロありです
今日も島は朝から快晴だ。
廉と美子は朝からのんびり過ごしていたが、昼食後に廉はテラスに出て、新曲の構想を練り始めた。
休暇ではなく充電期間なので、次のアルバムのために少なくとも十数曲は作らなくてはならない。
柊も作ってくるから最終的にはその中から選択するわけだが。
タブレットのピアノをつま弾きながら気持ちのいい風に吹かれているうちに瞼が段々下がってきた。
しばらくうたた寝をしてしまった廉だったが、美子が近づいてくる気配で目が覚めた。
「廉さん、ひと休みしてアイスクリームでも食べませんか?」
美子がアイスのパックを持って隣に座った。スプーンですくって1口食べると
「う〜ん、おいしい〜」と言って2口3口と自分ばかり食べている。
「おい、なんで自分だけ食ってんだ?俺にも食わせろ」廉があーんと口を開ける。
美子はアイスをすくって、「はい、あーん」と廉に食べさせると見せかけてまた自分の口に入れた。
「おいっ」廉は美子からスプーンを奪おうと手を伸ばすが、美子はきゃーっと歓声を上げてスプーンを取られまいとする。
しばらくそんな風にじゃれ合っていたが、やっと一口スプーンを廉の口元に差し出した。
「もう、いらない」廉がそっぽを向いた。へそを曲げてしまったらしい。
「…ごめんなさい…」美子がしゅんとする。すると廉は自分の膝を叩いて言った。
「じゃあ、ここに座れ」
「…はい…」美子は素直に廉の膝に跨った。
「騙されたな。ほんと単純なやつ」してやったりとばかりに廉が笑った。
「もうっ、廉さんっ」美子は廉の膝から降りようとするが、廉は既に美子の腰に手を回して離さない。
口を開けて催促する廉に美子はアイスを食べさせる。
「うまい〜、もっと」美子は何度も廉の口にアイスを運ぶ。
すると廉も人差し指でアイスをすくい、美子の口元に持っていく。
美子が廉の目と指先を交互に見つめると、廉が頷いた。
目をつぶって廉の指ごとアイスを口に入れた。「おいしい…」美子が呟くと廉はもう一度アイスをすくう。
溶けかかったアイスは廉の指先から手のひらまで垂れてきた。
廉の指を口に含んだ美子は、垂れたアイスも舐め取ろうと喉の奥まで指を呑み込む。
廉は一瞬ビクッとし、下腹部のものもぴくりと反応した。
舌を絡ませ廉の指を隅々まで舐めつくしている美子の口から指を引き抜くと、ちゅぽんと音がした。
>>6さん
GJ!スレタテもTKS! すっごく美子が初々しくてかわぇぇ。
廉さんが大人になってきてるね、NANA美男の恋愛にも鋭い指摘してるし。
気が向いたら、NANA美男も描いて下さい。NANAが美男に思いきりツンデレになるのかな(廉さん女バージョンw)
>>40さん
柊さんと美男、ファインプレーですね。柊さんはDTでも非DTでもエロくて好きです。いつも楽しませて貰ってありがとう!
46 :
南の島で10:2011/11/18(金) 22:08:45.39 ID:ScxdH4Zw
指を抜かれて「あ」と口を開けた美子に激しく口づける。舌を絡ませ強く吸うと、お互いの口の中に残っていたバニラの香りが抜けていく。
アイスの余韻を全て味わい尽くそうと音を立てて吸い続ける。
美子が腰を落としているあたりが、じんわりと湿ってくるのが廉の足にも伝わってきた。
足を軽く前後に揺すってみると、美子は太腿をもじもじと擦り合わせ、廉の耳元で熱いため息を漏らした。
廉は美子のピンクのタンクトップを捲り上げる。
外出の時は肌の露出の多い服は許さない廉だったが、二人きりでいる時はむしろそういう服を好んだ。
美子はストラップなしのブラをしていた。それを引き摺り下ろした廉は乳房にむしゃぶりつく。
形が変わるほど強く握り、舌先で乳首をころがし、大きく口に含んで痛いほど吸い付ける。
両方の親指を乳首に押しつけぐりぐりと回転させると、美子はのけ反って甘い喘ぎ声を上げた。
ふと見ると、美子は自分の敏感な部分を廉の足に押し付け、微かにではあるけれど腰を揺すっている。
美子の能動的な動きに廉も高ぶっていく。
廉は足を開いた。上に載っている美子の足も自然と開かれ、そこに手を伸ばす。
「すごい…もうこんなに…」美子の下着はぐっしょり濡れていた。
下着の上から撫でただけでも廉の指に蜜がまとわりついてくる。
下着の中に手を入れて、秘所全体を撫でさする。
美子は廉の首にしがみついたままビクッと体を震わせた。廉の首筋にかかる息が熱い。
美子の下着を脱がせて愛撫を続けた。敏感な突起に指をあてて、くりくりと回転する。
「あーっ…あぁぁ」
大きくのけぞって転がり落ちそうになる美子の背中を片手で支え、入り口をなぞった。
指を差し込み激しく出し入れすると、どんどん蜜が滴り落ちていく。
廉はズボンのファスナーを開けて、自身を取り出した。
「美子、少し腰浮かせて」美子を促し、中心にあてがった。そのまま美子は腰を沈める。
「はぁぁん…んんっ」二人同時にため息を漏らした。
すぐには動かないで、中の感触を味わう廉。美子の中は既に軽く痙攣している。
「美子、動いて…」
美子はおずおずと腰を揺すり始める。最初はゆらゆらと腰を回転させるだけだったが、次第に動きは激しくなっていく。
昇りつめる一歩手前で、廉は美子を抱き上げる。美子の中から、廉自身がぬるんと外れた。
「いやぁ…廉さん」美子の瞳が潤んでいる。廉は美子を後ろ向きにすると、もう一度差し込んだ。
47 :
南の島で11:2011/11/18(金) 22:09:37.31 ID:ScxdH4Zw
美子の足に自分の足を絡ませて、大きく開くとスカートを捲り上げ、右手を美子の敏感な突起にあてた。
廉は下から突き上げながら、美子の突起を指先で震わせる。
一定のリズムで指を回転させ、同時に左手を前に回して胸を揉みしだいた。
太陽の下、大きく足を広げられ、突き上げられ、突起を弄られ、胸を揉まれ、そして自らも夢中で腰を動かし、
美子は全身どろどろに溶けてしまいそうだった。
「あああああぁっ…い…い…」美子は廉の胸に背中を押し付け首をのけ反らせた。
その時美子の中がギュッと締まり、何度も痙攣した。
「いいのか?…美子」美子の耳元で廉が囁く。コクンと頷く美子を見て、廉は微笑んだ。
美子の首筋に舌を這わせ、滲んだ汗を舐め取ると、美子はまたビクンと体を震わせた。
廉は美子の体を支えて立ち上がり、目の前のテーブルに美子の上半身を倒して、そのまま後ろから突き上げた。
「廉さん、いやっ、いやっ、こんな恰好…」
美子の抵抗に耳を貸さず、突起にあてた指を強く回転させながら廉は激しく突き上げる。
「いやっ、あぁ…ダメッ、ダメッ、もう…」
美子の大きな喘ぎ声が風に消されていく。
廉も顔をのけ反らせ、眉を顰めてその瞬間を迎える。美子のお尻の肉をぐいッと開くと、最も深いところで弾けた。
そのまま美子の背中の上に倒れ込んだ。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」
廉の荒い息が美子の首筋にかかる。美子の中では廉のそれが脈動を続けている。
つながったまま後ろのベンチにどさっともたれる二人。美子は廉がはずれないように体の向きを変えると、廉の首に両手を回した。
「廉さん、私の中で、まだ、ピクンって…」
美子は廉の腰の上で、自分を擦りつけ、ゆっくり腰を回転させている。
廉はまだ硬度を保ったままだ。美子の背中を撫でながら首筋にキスする廉。
「もっと、欲しいのか?」廉が囁く。美子は首を振るが、腰の動きは続けたままだ。
「いいの…こうしていたいだけ…」そう言いながら美子は廉に擦りつけている。
廉は苦笑して美子の腰に手を添え、手伝うように美子の腰を回転させる。
やがて、動きが鈍くなり、美子は眠ってしまったようだった。
「中に出しちまったな…まずいな」廉はひとりごちる。
「ま、いいか。出来たら出来たで」
廉は美子の頭を自分の肩に乗せて、子供を抱くように優しく抱きしめた。
昨夜の祭りから神作品が続いていて本当に嬉しい限り!
しかも大好きな廉美子の萌え&感動話…
DT柊さんまで書いて下さって幸せ過ぎます〜!!
柊×NANAの続きを投下しに参りました。
待っていて下さった方、遅筆で本当にすみません。
いよいよ佳境です。
これから投下します。
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647-654
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49 :
南の島で12:2011/11/18(金) 22:11:56.52 ID:ScxdH4Zw
「クシュン」美子のくしゃみで目が覚めた。もう日が傾きかけている。
「美子、部屋に戻ろう」美子を下ろして立ち上がると、二人ともひどい格好だった。
廉はズボンの前を開けたままで、しかも廉と美子の混じりあった体液でベタベタだった。
美子もずり下ろしたブラがウエストにまきついて、下着はベンチの脇に落ちている。
廉は美子の下着を拾うと人指し指にひっかけ、クルクルと回しながら部屋に向かう。
「廉さんっ、だめーっ」慌てて美子が追いかけるが、足ががくがくしてうまく走れない。
廉はバスルームに直行すると、バスタブにお湯をため始めた。着ていたものを全て脱ぎ、ランドリーケースに入れる。すると美子は廉のズボンを取り出して、水洗いを始めた。
「何やってんだ?クリーニングに出すからそんなことしなくていいぞ」
「でも、このまま出すのは恥ずかしいから…」
確かに二人の体液で生地がごわごわになりかけていた。
シャワーで体をざっと流すと、二人並んでバスタブに体を沈めた。
さっきから何度か美子がくしゃみをしている。
「風邪ひいたんじゃないか?ブタウサギちゃんはお尻丸出しで寝てたからな」
「ひどいっ廉さん」美子がぷーっとむくれる。
「ははっ、じゃ俺は先に上がるから。お前は100数えてから出てこいよ」
いーち、にーい、さーん…律儀に数える声が聞こえる。廉は体を拭きながら吹き出した。
キッチンに行って水を飲んでいる時、バスルームから「ガタンッ」という音が聞こえてきた。
驚いて走っていくと、美子が脱衣所で倒れている。
「美子っ」慌てて抱き起す。
「あ…ちょっと立ちくらみが。のぼせたのかな?えへへ」
美子は立ち上がるが、少しふらついている。廉は美子の髪を拭き、バスタオルで体をくるむとそのまま抱きかかえてベッドルームに連れて行く。
手際よく美子にパジャマを着せて、ベッドに寝かしつけた。
「自分で出来るのに…」大げさな廉に恐縮しながらも美子はおとなしくされるがままになっている。
廉は眠っている美子のそばで作曲の続きをしていた。時々美子の様子を見ると、顔が赤くなって、呼吸も少し荒いような気がする。
「ほんとに風邪ひいたのかな?」美子の額に手を当ててみると結構熱くなっている。
体温計がないから正確なことはわからないが、まずいかもしれない。
廉はフロントに電話して医者を手配してもらうと、ホテルに常駐している医師がすぐに来てくれた。
38度の熱があり、やはり風邪のようだった。薬を処方しましょうと言われて、
「奥さまは妊娠されてますか?」と尋ねられた。
妊娠?今はしてないだろうけど、昼間中に出してしまったことを思い出し、廉は口ごもってしまう。
医師は何かを察したのか、それではこちらを、と薬のパッケージを渡してくれた。
「suppository?何だ?」英語での日常会話くらいは出来るが、医療関係の言葉はよくわからなかった。
医師が帰ってからパソコンを立ち上げた。Suppository で検索すると…
「座薬?てことはお尻に…」
テラスで美子の後ろから突き上げたとき、目に入った美子のすぼまった部分を思い出した。
「まいったな…」廉は顔を赤らめて途方にくれた。
50 :
南の島で13:2011/11/18(金) 22:13:02.75 ID:ScxdH4Zw
夜になった。美子のパジャマを着替えさせようとシーツをめくる。
パジャマのボタンに手をかけると、美子がぼんやりと目を覚まして言った。
「廉さん…またするんですか?」
「アホか、汗かいてるからパジャマを替えるんだよ」
「え、自分でやりますから…」シーツをかぶってごそごそと着替える美子。
「パンツも取り替えろ」
廉はクローゼットから勝手に取り出した美子の下着を手渡した。
きゃん!変な声を出して美子は下着を隠した。シーツの中でもぞもぞと着替える美子に廉が言う。
「いまさら、そんなに隠さなくてもいいだろ?お前の裸なんて毎日見てるんだから」
「それとこれとは、違うんですっ」赤い顔で美子は答える。
部屋に届けてもらった夕食を美子のベッドで食べる二人。
自分でやりますと言う美子の言葉は全て却下され、全部廉がやってあげている。
スープを飲ませて、次は卵、次はどれにする?
まるで子供の世話をしているみたいに楽しそうだ。美子も甘えて、次はこれ、と少し調子に乗っている。
食事が終わったら次は…
「さて、薬の時間だ…」廉はパッケージを取り出す。
「お前、座薬って入れたことあるか?」
「ありませんけど…」
二人とも顔を赤らめている。
「とりあえず自分でやってみろ」 「はい…」
美子はまたしてもシーツの中でもぞもぞとやっている。
「あれ?んっ…入らないな…んっと」
緊張しているのかなかなか入って行かないようだ。
「俺によこせ。やってやる」 「いやですっ」 「いいから!」
抵抗して暴れる美子を抑えつけて自分の太ももの上に腹ばいにさせると、
いつも見ている美子のそこより少し上にあるすぼまった部分に薬をあてがって押し込む。
が入ったと思ったらまた押し戻されてきた。
(押し返す力がすごい…)あらぬ事を考えてしまい廉はぷるぷると頭を振る。
「美子、力を抜け」
もう一度今度はかなり強く押し込んだ。結構奥まで指が入り、これでいいのか?と不安になった。
美子は全身に鳥肌をたて、ぶるっと震えた。廉はしばらくそこを見つめて薬が押し戻されないのを確認すると、
「これでよしっ」とつとめて明るく言った。
着替えを片付けて寝室に戻ると、美子はシーツを頭までかぶって寝ていた。
「美子…」声をかけて体を揺すっても返事をしない。恥ずかしいところを見られて怒っているんだろうか?
廉は服を脱いで美子の隣にもぐりこんだ。むりやり美子の体を自分に向かせると美子は泣いていた。
「廉さん、ひどいです。あんな恥ずかしいこと…」
「しょうがないだろ、薬なんだから。俺が風邪ひいたらお前にやってもらうから、いいだろ?
あ、でも今のでコツをつかんだから自分でやれるな、うん」
「もおおっ、廉さん!」廉の腕を振り払おうとする美子だったが、廉はその力を弱めない。
「機嫌直せよ。な?」廉は腕の中にすっぽりと美子を包み込んで強く抱きしめた。
>>48うわ、思いっきり割り込みすみません!
もうしばらく待ってから投下します。
52 :
南の島で14:2011/11/18(金) 22:14:14.87 ID:ScxdH4Zw
窓から差し込む朝日で廉は目を覚ました。ベッドサイドの時計を見ると、まだ6時前だ。
こんなに早く目を覚ますのは久しぶりだった。
二つ重ねたスプーンのように美子の背後にぴったりくっついて寝ていた廉は、
美子のウエストに回していた手を額にあてて熱を測る。
「下がったみたいだな…」
安心してため息が漏れた。すると廉に悪戯心が湧いてきた。
美子のパジャマのズボンを下ろし、片足を静かに持ち上げる。
横向きに寝たまま後ろから、愛撫もせずに美子の中に自身を押し込んだ。
「んっ…ぅ…きつい…」潤いのない中へ入れるとギチギチとした感触があった。
美子が目を覚まさないようにゆっくり腰を動かした。
いけないことをしている後ろめたさで胸がドキドキした。段々中が潤ってくる。
「ん…う…んん〜」美子が声を出し始めた。寝ながら感じているのか?
廉は楽しくなってきた。ゆっくりゆっくり、起こさないように。その時…
「んん…誰?」美子の口から思いがけない言葉が漏れた。
(えっ?誰って俺に決まってるだろ。夢でも見てるのか?)廉は焦って動きを速めた。
「あぁん…ん……んん」
(相手が誰かもわからないのに、感じてるのか?)
ほんの悪戯のつもりで始めたのに、頭が混乱してもうやめられなくなってしまった。
体を起して美子をうつ伏せにし腰だけを持ち上げて後ろから貫いた。
「廉さん?ああっっ…」美子が目覚めて叫んだ。
「おまえっ…誰だと思ったんだ?」
頭に血が上り、めちゃめちゃに腰を動かしながら美子を問い詰める。
「あっあっあっ…廉さんっ」
美子は廉の言葉の意味も理解できずに一気に絶頂に駆け上った。
廉はすぐさま美子を仰向けにして、両足をつかんで自分の肩にかけた。
美子の体を二つに折るような格好でより深く挿入する。
「誰だと思ったのか、言えよっ」激しく突き上げながら美子を追いつめていく。
「なんっ…のこと?あああああっ…いやぁぁぁ」美子は快感の深さに涙を溢れさせた。
「お前にこう出来るのは俺だけだ」
廉の額から滴り落ちた汗が、美子の上に降り注ぐ。
廉の汗と美子の涙が混じりあって、美子の体を覆っていく。
「毎日教えてやる。お前には俺だけだってこと」
美子の一番深いところに叩きつけるように精を吐き出した。
「れ……ん…さ…」
立て続けに何度も絶頂に達し、美子のそこは激しく痙攣した。
美子の目の焦点は合わず、唇もわなないている。
廉は容赦なく愛撫を続ける。乳房を激しく揉みしだき、美子の中に指を入れてかき回した。
「もう…やめて…し…しんじゃうっ」
ざわざわと肌を粟立たせて美子は懇願する。
もう気持ちがいいのかどうかもわからなくなって美子はすすり泣き始めた。
正体の定かでないものに対する嫉妬で我を忘れた廉はまだ気持ちが収まらなかった。
美子を抱き上げ、無理やり口づける。美子は顔を背けて逃れようともがいている。
体を硬直させ、明らかに拒絶している美子。
「美子っ…」廉は息もできないくらい強く抱きしめた。
とうとう美子は大きな声を上げて泣き出した。
大粒の涙をこぼしてしゃくりあげる子供のような泣き顔を見て、
廉は自分の中の良くない感情が急速にしぼんでいくのを感じた。
嗚咽し続ける美子は、やがて泣き疲れて眠ってしまった。
美子の体をベッドに横たえ、パジャマを着せ直し、廉は静かに寝室を出て行った。
53 :
南の島で15:2011/11/18(金) 22:15:24.50 ID:ScxdH4Zw
シャワーを浴びながら鏡に映る自分の顔を見つめる。
どうして俺は…。美子の事になると冷静でいられない。愛しているのに、愛しているから。
いや、それは言い訳だ。自分の都合のいいように考えようとしてしまい廉は自嘲する。
美子と顔を合わせるのが怖くて、身支度を整えた廉は部屋を出て行った。
深夜に戻ると、部屋の中には人の気配がなかった。
寝室も、バスルームも、ゲストルームも見たが、美子はどこにもいなかった。
「一体どこに行ったんだ?」見知らぬ国でたった一人でどこかにいくのは考えられない。
テラスに出るドアを開ける。月明かりに照らされてぼんやりと人影が見えた。
「美…子?」恐る恐る声をかけると静かに美子が振り返った。
手を伸ばして肩に触れようとすると、美子は体をビクッとさせて後ずさった。
何か言わなきゃと思うほど口がこわばって言葉が出てこない。
「もう…遅いから…寝ろ」
絞り出すようにそれだけ言うと、部屋に戻りゲストルームに入った。
美子が寝静まった頃、キッチンへ行く。
冷蔵庫からワインを取り出し、瓶から直接飲んだ。ワインがこぼれてシャツに染みを作る。
手を伸ばした時の美子の怯えた様子が脳裏に浮かんできた。俺が壊した、なにもかも。
美子を失うかもしれない不安でいくら飲んでも酔えなかった。
キッチンの床に座り込み、倒れた瓶からワインがこぼれていくのを見ているうちいつの間にか廉は寝入ってしまった。
ふと気付くと、体に毛布が掛けられるのを感じた。美子が床にこぼれたワインを拭いている。
空き瓶を片付け、美子が部屋に戻ろうとした時、その手をつかんだ。
「行くな。いや…行かないでくれ。…お前が嫌ならもう何もしない。だから…」
自分でも気付かないうちに涙がこぼれていた。
美子が廉のそばにしゃがみこんだ。大きな瞳が揺れている。途端に大粒の涙が溢れだした。
廉の目をじっと見つめて美子が言った。
「怖かったの。すごくすごく、怖かった」
ぽろぽろと涙を流す美子を見て、自分がどんなにひどいことをしたのか廉は改めて知った。
「悪かった…ほんとに」美子の手を強く握って廉は何度も謝った。
突然美子は毛布をめくって廉に抱きついてきた。予期しなかった美子の行動に、廉の胸がきゅんと脈打つ。
美子の背中に毛布を掛けて、毛布ごと美子を抱きしめた。今度こそ壊さないように。
54 :
南の島で15:2011/11/18(金) 22:16:36.34 ID:ScxdH4Zw
それからというもの、廉は美子に触れるのを極力我慢した。
おやすみのキスをして二人ベッドに横になるが、美子が眠ってしまうとゲストルームに移動して一人で眠ることにした。
あんなに美子を怖がらせてしまったのに、一緒に寝ているとまた無理やりしてしまいそうで不安だった。
この日もそうして一人ゲストルームで寝ていた。
真夜中に気配を感じて目を覚ました。シーツをめくって美子がベッドにもぐりこんでくる。
(美子?どうした?)
目を閉じたままじっとしていると、美子は廉の体に腕を回して抱きついてきた。
そのまま寝るのかと思ったら、体を起こして、じっと廉の顔を見ている。
目をつぶっているから美子がどんな表情をしているのかわからない。廉の鼓動が早まってきた。
不意に美子の唇が降りてきた。チュッチュッと軽く何度か口づけた後、美子の舌が廉の唇をなぞっている。
驚いて声が出そうになるのをかろうじて耐えた。
美子は廉の唇を割るように舌を差し込んできたが、閉じられている廉の口をこじ開ける術もなく、
あきらめたように唇を離した。
そのまま廉の隣で横になって動かなくなった。
(はあ、焦ったー)
このまま寝てしまおうと廉が思ったその時、美子の手が廉の胸の上に乗ってきた。
再び息を詰める廉。美子の指先が廉の裸の胸の上を這っている。
同時に熱い唇があちこちに押し付けられた。
(うわっ、やめろ…美子)
廉の下腹部が反応し始めている。まずい、このままじゃ…。
美子の指が廉の乳首をかすめた。あやうく声が出るところだった。
寝たふりをする廉の体がどんどん熱くなってきた。
そして美子の手が廉の核心に近づいていく。ゆっくり手を下ろして下着越しに廉自身に触れている。
恐る恐る指先を上下させて廉自身の輪郭を微かになぞる美子。
(うそだろ?美子がこんな…)
そうしている間にも廉自身がどんどん反応してきた。これ以上されると我慢できなくなる。
そう思った廉は、声を出さずに美子の腕をつかんだ。
「あっ」美子が息をのんで固まった。
「…起きてたんですか?」
「こんなことされたら、そりゃ起きるだろ?」少し上ずった声で廉が答える。
「ごめんなさい」美子は真っ赤な顔で謝ると、廉に抱きついてきた。
「廉さん…ずっと別々に寝るんですか?…寂しいです」美子が呟いた。
「…俺だって寂しいけど、またお前にひどい事しちゃうんじゃないかって…」廉も呟く。
「いつまで別々ですか?」美子はそう言いながら、廉の乳首を指先でくるくるし始めた。
「うぁっ、、、お、お前…誘ってんのか?」廉は思わず声を上げてしまった。
美子はしばらく沈黙していたが、廉の胸の上でこくんと頷いた。
「えっ、ホントに?」今度はこくんこくんと二回頷いた。
55 :
南の島で17:2011/11/18(金) 22:18:12.94 ID:ScxdH4Zw
奥手な美子が自分から誘ってきたことに、驚きと共にじわじわと嬉しさがこみあげてきた。
「それじゃ、遠慮なく」と言うと、廉は美子の体を組み敷いた。
長いキスから始める。舌を絡ませゆっくりとその感触を味わう廉。
嬉しくて廉の口角は上がったままだ。キスを続けながら、美子のパジャマを脱がせていく。
こんな手順さえも楽しい。
美子の首筋に手を這わせキスをしたまま、胸を揉みしだく。
「んっ…ん、ん、ぁ」塞がれた美子の口から吐息が漏れだした。
乳房を持ち上げながら柔らかく揉みしだき、乳首を口に含んだ。軽く吸い、甘噛みする。
「あっ…ぅんん」美子はもう太ももを擦り合わせている。
「お前、感じやすくなったな…」廉は感慨深げに言った。
「だっ…て、廉さんが、いろん…な…ことするから…」
「いろんなことって、どんなことだ?」
美子の乳首を舌で転がして、こんなことか?と聞く。
それともこれか?といいながら美子の足の間に手を伸ばした。
「あぁっ、ダメっ」
美子の口から拒絶の言葉が出たが、このダメは嫌じゃないダメだなと判断してそのまま続ける。
すでにそこはトロトロになっていた。指を入れてかき回すと、くちゅくちゅと音を立てる。
廉は美子の中から指をはずすと、蜜にまみれた指を突起にあてる。
微かに触れてなぞると、もどかしいのか美子は腰を浮かせて廉の指に擦りつけてきた。
「ふふっ、お前積極的だな」美子の望みをかなえるように、廉は指先に力を入れる。
「んんっ…あっあっ…あん」美子の声が大きくなった。
廉は美子の足を大きく広げて中心に顔をうずめた。ぬらぬらと光る中心を舌先でなぞる。溢れる蜜を舐め取り、舌で突起を擦った。
「いやっいやっ…ああああっ」
廉は頭を上げて美子の顔を覗き込んだ。
「ほんとに嫌なのか?嫌ならやめるけど」指先で中心をまさぐりながら、廉が言う。
「意地悪…しないで…」顔を赤らめて美子が呟いた。廉は微笑んで、美子に口づける。
美子は自分の蜜で濡れた廉の唇を強く吸った。
廉は自身を握りその先端で、美子の中心全体を擦りつける。
すぐには入れないで、自分の敏感な部分で美子を楽しんでいる。
互いの敏感な部分同士を擦り合わせると、舌や指とは違う感触に美子は一際大きな声を出した。
「んっ…あああん…廉さん、それ…すき」
「好きか?…これが」珍しく行為の最中に意思表示をした美子に廉も嬉しくなった。
再び先端で擦る。粘膜同士なので相当強く擦っても痛くはないようだ。
廉も自身の先端でコリッとした美子の突起の感触を味わっている。
「美子、そろそろいくぞ」廉は美子の中心に突き立てる。
美子が大きくのけぞって痙攣する。挿入しただけで軽く達したようだ。
敏感になった美子を過剰に刺激しないように、廉はゆるやかに腰を動かす。
突き上げる動きは封印して、腰をグラインドさせる動きを続ける。
しばらくそうしていると、美子が切ない視線を向けてきた。
「もっと欲しいのか?」廉が問いかけると美子が頷いた。
それを合図に、廉は美子の奥深くへと突き上げた。
ここからは一切躊躇せずに突きまくった。
ここ何日か、美子に飢えていた廉は、早くもせり上がってくるものを感じている。
「んっ…あぁ…、美子…いいか?」腰を打ちつけながらかすれた声で廉が言った。
「れ…ん…あんっあんっ…い…い…いく…」美子の口から初めていくと言う言葉が漏れた。
思いっきり突き上げる。頭の中が真っ白になって廉の動きが止まった。
たまっていたものが全て吐き出される。精が噴出するたびに廉の腰がビクビク動いた。
美子は大きく体をのけぞらせている。意識が飛んでいるようなのに、中はキュッと廉を締め付けている。
その度に廉は「はっ…はっ…」と吐息を漏らした。
56 :
南の島で18:2011/11/18(金) 22:19:03.20 ID:ScxdH4Zw
少しの間微睡んだあと、二人は微笑みあった。
「廉さんのせいで、私エッチになっちゃいました。…いやですか?」
美子が恥ずかしそうに聞いた。
「そうだな、普段はいつもどおりで、ベッドではエロいっていうのが理想だな」
「え?もっとエッチな方がいいんですか?」
「嘘だよ。今のままでいい…でもしてほしいことがあったら、もっと言ってもいいんだぞ」
「…はい、それじゃあ…」美子が何かを言いかける。
「えっ!ほんとにしてほしいことがあるのか?」廉が焦って聞き返した。
「エヘヘ、嘘です」美子はいたずらっぽく笑った。
「お前〜、偉くなったもんだな。お仕置きだっ」
廉は笑いながら美子を睨むと、強く抱きしめて深い深いキスをした。
以上です
タイミング悪くてすみません
タイトル付け忘れとだぶっちゃってすみません
>>57本当にすみません、まさか被ってしまうなんて…
改めまして、柊×NANAの続きをこれから投下します。
前回までの更新
前々スレ
412-421
474-477
647-654
前スレ
123-133
とうとう、恐れていた金曜日がやって来てしまった。
「唯ちゃん、いつも応援してます!」
「レイラちゃん可愛すぎ!好きです!」
「これからも頑張って下さい!」
NANAはいつも通り、朝から仕事に励んでいた。
今日は同じ事務所の女性アイドルたちが集うイベントがあり、ファンと様々な交流が行なわれる。
CDデビューしている者の歌に始まり、トークショーを挟んでの握手会という流れだ。
接待を受け入れると約束したあの日から、仕事を干される事は無くなった。
それでも、以前に比べれば質は格段に落ちたと言っていい。
人気絶頂期、単独イベントにしか出演しなかったNANAも、今や事務所に多数所属する女性アイドルの一人として、合同握手会に駆り出されている始末である。
心なしか、NANAの所に並ぶファンも他のアイドルより随分少なく見えた。
「…疲れた…」
一旦交代でトイレ休憩に向かい、お茶でも飲もうかと楽屋へ立ち寄ったが、半開きのドアの向こうがやけに騒がしい。
近付くと、同じく休憩に来ていた後輩アイドルらの笑い声がした。
「ねぇねぇ、NANAの列見た?」
「明らかファン減ってたよね〜。って言うか、ちょっとざまぁ見ろって感じ」
「廉様に手ぇ出して振られるだけでも惨めなのに、いつまでもブリッコでウザいんだよね。早く消えちゃえばいいのに」
つい先日まで、自分を尊敬する先輩だとして懐いていた彼女たち。
あの媚びた態度は全部嘘だったという訳か。
心無い中傷が胸に突き刺さる。
以前の自分なら、相手が再起出来なくなるほど反撃したかも知れない。
だが、彼女たちの陰口は事実なのだ。
NANAはその場を離れ、握手会場に戻った。
…もうさっさと終わらせてしまいたい。
「NANAちゃん、あんなワイドショーなんかに負けないでね!」
「…ありがとう」
男性ファンたちの声援を何処か遠くに聞きながら、握手を交わし、予め用意された当たり障り無い受け答えをする。
デビューした頃から、握手会やイベントで自分の意思を言葉にした事は一度も無い。
荻野の指示のまま、お決まりの台詞と笑顔でファンに接するだけ。
人気を落としたくない思いでいっぱいだった。
流れ作業のように握手会を進めて行き、ようやく最後の男性ファンへ作り笑顔を浮かべて挨拶した所で、NANAは深い溜め息を吐いた。
「…あのー……」
不意に正面から掛かった控え目な声。
目を丸くし、辺りを見回すと…
「…え?………あ…」
目線の下には、子供が居た。
ファンとアイドルの間を隔てる、組立式の机の陰に隠れてしまうほど幼い女の子だ。
「NANAちゃん、ユミにも握手して!」
あの男性で終わりだと思っていたNANAの列に、ずっと並んでいたらしい。
少女の少し後ろで、母親とおぼしき30代半ばくらいの優しげな女性がこちらへ笑顔で会釈して来た。
「あら、可愛いお客さんね。ずっと並んでくれてたの?」
NANAは初めての出来事に戸惑いながらも、母親へ会釈を返す。
少女ともっと近付きたくて机と机の合間を縫い、先程までファンが列を成していたスペースへ出た。
「うん!ユミね、NANAちゃんに会いたくて幼稚園が終わってからすぐ来たの!」
ユミと名乗る少女は大きな瞳をキラキラと輝かせ、NANAを見上げてはしゃいでいる。
黄色い帽子と紺色の園児服が何とも可愛らしい。
現在時刻は夕方6時前。
腹も空く頃だろうに、健気に握手の順番を待っていたようだ。
「…ありがとう、とっても嬉しいわ。」
NANAはこの日初めて、心からの笑みを零し床にしゃがんでユミと目線を合わせ、小さな手を取り握手をした。
少女の顔も一層綻ぶ。
「あのね、ユミね、NANAちゃんがこの絵本のお姫さまとそっくりだから、好きになったんだよ」
「…お姫様?」
ユミは肩から提げた黄色い鞄の中を漁りB5版ノートの半分以下サイズの絵本を取り出す。
確かに、NANAとよく似た雰囲気のお姫様が表紙に描かれている。
「ふふ、可愛いわね。これはどんなお話なの?」
「んとね、お姫さまが悪い怪獣に捕まっちゃって、でも流れ星に乗った王子さまが助けてくれるの」
「……そうなんだ…素敵なお話ね。…でも、私を助けてくれる王子様なんて居るのかしら…」
ユミから聞かされた、よくあるおとぎ話の内容。
だが、今の自分とは真逆な立場にある絵本の主人公を恨めしく感じてしまい、思わず顔が曇る。
「ぜったいだいじょうぶ!NANAちゃんはお姫さまだもん、王子さまが助けてくれるよ!」
「…どうすれば来てくれる?」
「カンタンだよ、王子さまの名前をおっきな声で呼ぶだけ!」
屈託の無い笑顔でNANAをお姫様だと信じて疑わないユミ。
作られたキャラクターを必死に演じて、ファンを騙していただけなのに。
堪らず、ニコニコと微笑む少女を抱き締めた。
「…NANAちゃん?どうしたの?」
…今夜、この身体は汚れてしまう。
妖精やお姫様には、程遠い自分。
それでも…こんな可愛いファンの期待を裏切る訳にはいかない。
「……何でもないの……ありがとう、ユミちゃん。今日はあなたに会えて本当に嬉しかったわ」
「えへへ…これからもがんばってね。NANAちゃんが出るテレビ全部見るから!」
至極嬉しそうに声を弾ませ、母親に手を引かれて会場を後にするユミを、精一杯の笑顔で見送る。
「……頑張るわ。どんな事があっても…」
少女との出会いは、NANAの心境に変化をもたらした。
廉が言ったように、己の笑顔を求めているファンがこの世に居る限り。
どんな仕打ちにも耐えてみせる。
NANAは決意を胸に、仕事を終えてから真っ直ぐ“Venus Hotel”に向かった。
田沼社長の待つ、“接待”の舞台へと…。
───
「…もうすぐ7時か…そろそろだな」
腕時計を見ながら、柊は呟く。
この数日、三澤が田沼社長の秘書を騙りNANAとやり取りしたメールを全て読破し、
今夜の接待を阻止する準備は万全に整えてある。
廉に所縁があるという水沢麗子がホテルの総支配人と旧知の仲らしく、彼女の口添えのお陰で
様々な資料や情報を割合簡単に入手出来た。
もちろんそんな事を尋ねた本当の理由は明かせない為、
仲間内のサプライズパーティーがある…と、曖昧な説明をしたのだが。
『柊さん、まだ来てないみたい』
「ありがとう。引き続き監視を頼むよ」
耳に装着したイヤーモニターから勇気の声がし、手短に応える。
柊は現在、とある客室に先回りしベルボーイの制服姿へ変装を済ませたばかり。
顔には地味な眼鏡を掛け、そうそうバレない仕上がりだ。
三澤がNANAへ接待場所として指定したスイートルームに程近いここなら、何事も迅速に対応出来る。
『了解!…この前の潜入捜査は参加出来なかったからね。今日は頑張る!』
新曲のレコーディングがまだ残っている美男と廉は今回不参加。
代わりにかなり張り切っている勇気と、記者三人組を合わせた5人でチームを組む事となった。
彼らは各々、エントランスや裏口、関係者出入口などに別れて張り込みの真っ最中である。
目立つ金髪は黒髪のウィッグで隠し、記者らも特徴的なオカッパ頭を帽子でカバーする気合いの入れようだった。
NANAらしき女性を見掛け次第、柊へ連絡が来る手筈になっている。
「………」
バスルームの鏡で自身の変装を確認した後、精神統一の為に深呼吸を何度か行った。
これは決して負けられない闘いになる。
『…っ、柊さん!NANAちゃんが来たよ!』
「…!」
腕時計の時刻は、午後7時にあと5分と迫っていた。
NANAは三澤のメールに記された時刻ピッタリに部屋へ向かうつもりだろう。
「今から俺も監視態勢に入ります。勇気、記者の皆さんはその場で待機していて下さい」
『オッケー!』
『了解です』
『特ダネ期待してますよ〜』
『三澤に仲間が居ないかも見張ってます!』
張り込みチームに現場待機を指示し、ドアの覗き窓から廊下をじっと見つめた。
スイートルームに辿り着くには、この部屋の正面を通らなければならない。
美男と廉は強く三澤の“現行犯逮捕”を推していたが…
NANAを囮にするような真似はしたくなかった。
彼女が部屋の前を横切ったら、すぐさま部屋へ引き摺り込んででも未然に接待を阻止するつもりだ。
こちらは三澤の裏の顔を把握しているし、後からでも彼を追及するのは難しくないだろう。
「……遅いな…」
暫しドアの向こうに見える廊下へ意識を集中させていたが、一向にNANAが現れる様子は無い。
気付けば既に約束の時刻を10分以上過ぎているが、御手洗いにでも寄ったのだろうか?
「……勇気、さっき見たのは本当にNANAだった?」
『えっ?ちょっと地味な黒いワンピースを着てたけどやっぱり目立ってたし、
周りもざわついてたから間違いないよ』
「…おかしいな。あれからもう15分は経ってるのに、誰も来ないんだ。
どんなにゆっくり歩いても、いい加減部屋に着く頃のはず…」
柊の心配を他所に、勇気との無線を聞いていた記者三人組は呑気な様子で口々に話し始めた。
『いやいや、女性は買い物も電話も長いですからね』
『女優さんもよく遅刻するって言うし』
『まぁ、NANAはそのうち来るでしょう。それより、三澤も何と言うか…ありきたりな若者だったんですなぁ。
このホテルと言えばスイートルームよりもっと、通な部屋があるんですがね』
橋本と馬場の女性に対する一般論はさておき、柊は出口の呟きに怪訝な顔で突っ込む。
「出口さん、どういう事です?」
『おや、柊さんもご存知無いとは。…ま、単なる都市伝説でしょうが、このホテルのある一室に男女で泊まると、
その二人は永遠に結ばれる…なんて、噂があるそうで。てっきりその部屋を指定するかと思ってたんですよ』
『うわー、出口さんの口からそんなロマンチックな話…何か寒い!』
『そりゃ無いでしょう勇気さん…私らだってA.N.JELLの皆さんの事以外にも、色々取材してるんですからね』
真面目に語る出口へ勇気が茶々を入れるが、
それ以上柊の耳には届かなかった。
…何故、今まで気付かなかったのか。
三澤はNANAを陥れる計画を長期に渡って練るような、狡猾な面を持つ男。
美男に携帯を盗まれた数分間を後々怪しんだか、
或いはNANAを張る記者の存在を事前に知っていた可能性は大いにある。
「…やられた…」
『…え?』
「…っ…出口さん、その部屋は何号室ですか!?」
『えーっと…確か702…いや、4だったかな?』
ハッキリしない出口に焦れ、滅多に出さない大声を上げる。
「俺らは三澤に嵌められたんだ!
……NANAは絶対、その部屋に居る!!」
『なっ…!?』
『えぇっ!?』
おそらく万全を期した三澤は予め偽の部屋…スイートルームも予約しておき、
直前になって本当の部屋へ彼女を誘導し、まんまと我々を欺いたのだ。
「思い出して下さい!早く!!」
『…えーっと、えー…あった!取材メモによれば707号室です!』
柊は出口の答えを聞くなり、弾かれたように部屋を飛び出した。
「くそ…っ…!」
…NANA、どうか無事で…!
───
「…ッ…ん…………」
鼻にツンと刺激臭を感じ、混濁していた意識が現実へと浮上していく。
ゆっくり瞼を開けると、見知らぬ天井があった。
頭と身体が重い。
意識も朦朧とする。
一体自分はどうなってしまったのか?
NANAはぼんやりと薄暗い部屋の天井を見ながら、記憶を辿っていく。
イベント会場からタクシーに乗ってホテルに到着しエントランスへ入ろうとした矢先、
田沼の秘書だという田中から部屋の変更を知らせる連絡があり。
指示に従って707号室まで向かい、厳かにドアをノックすると
開いた先は真っ暗な部屋だった。
訝しむ間も無く何者かの強い力がNANAの腕を引いて中へと連れ込み、
後ろからガーゼのようなもので鼻と口を塞がれて…
「…やっと目が覚めたみたいだね」
「…だ、れ……?」
すぐ右隣から男の声がし、NANAはそちらへ首を傾けた。
先程より鮮明になった視界に、事務所の後輩である三澤の姿が映る。
紺色のバスローブ一枚だけを纏った、ラフな格好で椅子に腰掛けていた。
「…三澤くん?…どうして……」
全く訳が分からないといった面持ちで尋ねると、三澤は笑みを浮かべ
手にしていたガラス小瓶の蓋を閉めてサイドボードの上へ置く。
「ごめん、臭かったよね?あんまり起きないから
アンモニアを使っちゃったんだ」
「…あの、これってどういう…っ!?」
見当違いな事を口走る彼へ、一体何がどうなっているのか
問い掛けようと身動いだが、そこでようやく己の身体の自由が奪われていると
気付き、NANAは言葉を失った。
両手首には紐状のものがキツく巻き付き頭上で一纏めに縛られ、
両足も同じく紐でそれぞれベッドの脚と固定されていて、
動かしてみてもビクともしない。
自らの意思では足を閉じられない恥ずかしい格好に、
羞恥と怒りが沸き起こった。
「な、何よこれ…冗談でしょ?早く解いて!!」
悪戯にしては質が悪過ぎる。
思わず苛立ちを込め声を荒げて三澤を睨み付ければ、不気味な薄笑いが返るのみ。
「まだ駄目だよ、ショータイムはこれからなんだから」
そう言うと、三澤はサイドボード上にある照明のスイッチを操作し
室内の明かりを全開にした。
NANAの目に信じられない光景が飛び込む。
「……?!!」
ベッドへ横たわる自分をぐるりと囲むよう、何台ものビデオカメラが
部屋中に設置されていたのだ。
それらの全てに、録画中を示す赤いランプが灯っている。
背筋へ氷塊を押し当てられたかと錯覚する程の悪寒が走った。
「ふふ、君の可愛い寝顔をずっと撮ってたんだ。
…これからもっと、綺麗になる瞬間を撮り逃がさないようにしなきゃ…」
得意げに呟く三澤の口振りが、NANAの恐怖を更に駆り立てる。
今、目の前に居る男の眼が正気の沙汰でないのは確かだ。
「…ぁ…あなた、頭おかしいんじゃないの…?
こんな事をしてタダで済むと思ってるわけ!?」
精一杯、気丈に男を罵り強く睨む。
だが三澤は怯むどころか、ほくそ笑んで身を乗り出しNANAをじっと眺めた。
「僕にそんな口を聞くなんて、君こそどうしたんだ?
…今夜の大事な接待相手だろ?」
「……は…?」
「まだ分からないかなぁ……
“こんばんは、NANA様。秘書の田中です”」
「…!!…あなた、まさか…」
耳馴染みのある低い声音。
記憶が確かならば、それは田沼への接待に関する連絡を取り仕切っていた
秘書の田中のものに相違ない。
NANAはようやく、三澤の本性を悟り愕然とする。
「くくく…そうだよ、ぜーんぶ僕の計画通りさ。荻野も馬鹿だよね…
金に目が眩んですっかり僕を信用して…」
「そんな…じゃあ、田沼社長に接待するって話は…」
「最初から存在しないよ。
…田沼なんかに……例え父親でも、君を渡したりするもんか」
これまで、顔面に不気味な笑みを貼り付かせていた三澤の表情が少し険しくなった。
NANAは恐怖心を押し殺し、懸命に両手足を動かし拘束を緩めようと試みながら、
彼の注意を逸らす為の言葉を掛け続ける。
「ち、父親…?」
「…あぁ。僕は田沼の愛人の子だよ…
認知もされていないし、本妻からは母と同じく疎まれて…
ずっと嫌がらせを受けて育った」
苦い表情で語る三澤の独白に耳を傾けつつ。
手足を縛る紐が肌に食い込み痛みを覚えても、構わずモゾモゾと動かした。
どうにかして逃げなければ。
「…その母も去年、心労が原因で亡くなってしまって…
…生きる希望を無くした僕の前に、NANA…君が現れたんだ」
再び口端を吊り上げた三澤はベッドに乗り、
至福の時を味わうようにNANAの長い髪を撫でる。
全身に嫌悪感が走り、肌が粟立った。
「…あの時…何もかも絶望していた僕に、君はこう言ってくれたよね。
“何があっても私だけはアナタの味方よ”って。…すごく嬉しかった」
「…え…?」
「NANAの笑顔が忘れられなくて、ずっとずっと大好きだった……なのに…」
横たわる己を静かに見下ろす三澤の顔付きが、凶暴なものへと変わる。
そのまま獰猛な獣めいた性急な動きで覆い被さった男の手が、
漆黒のワンピースの胸元を乱暴に引き裂いた。
「…きゃぁっ!!」
「……なんで…何で桂木廉なんかと付き合ったんだよ!!僕を裏切って…!」
三澤はギリギリと強く歯噛みし憎々しげにそう怒鳴ると、
今まで隠し持っていたらしい刃渡り10センチほどの
バタフライナイフを取り出し、NANAに見せ付けた。
「…ひっ!!」
怯えに身を支配され、額から冷や汗が噴き出し声が出なくなる。
この男は異常だ。
…逆らったら殺される…
「…今でも別れたアイツに会ったりしてるんだろう?
…許さないよ、NANA…君にはお仕置きが必要だ…」
三澤は狂気に満ちた瞳で冷酷に呟き、ナイフを使いNANAのワンピースの胸元を
更に破り広げると、その下に隠されていた白い肌と豊かな膨らみを覆う黒の
ブラジャーを指先で撫でる。
無遠慮に柔らかく弾力ある乳房を鷲掴み、感触を楽しみながら呼吸を荒くしていく。
「…あぁ、これがNANAの胸…」
陶酔しきった様子で呟き、男はブラジャーをも刃で引き裂いた。
…怖い、怖い…やめて…!
そう叫びたいのに震える喉は役立たずで、悲鳴すらロクに上げられない。
「君が悪いんだよ、あんな奴と付き合うから…」
ぷるんと外気に晒された二つの膨らみを直に揉み、鼻息も荒く男は理不尽な言い草で
自身の暴挙を正当化しようとする。
スカートの裾をたくし上げて滑らかな太股をなぞり、とうとう下着に手を掛けた。
「…やッ………!!!」
凄まじい嫌悪と恐怖で、NANAの目尻から大粒の涙が零れ落ちる。
…誰か、助けて…!
『カンタンだよ、王子様の名前をおっきな声で呼ぶだけ!
ぜったい助けに来てくれるから!』
ふと、NANAの脳裏に昼間出会った少女の声が過った。
もし本当に王子様が助けに来てくれるのなら。
迷わず、彼の顔が思い浮かぶ。
「いや……助けて!!柊っ、…柊ーッ!!!」
無我夢中で必死に己を奮い立たせ、ありったけの大声で叫んだ。
三澤は思わず動きを止め、驚きに目を見開いてNANAを凝視する。
「…な、何を言って…」
─…刹那。
バンッ!!と、けたたましい音と共に入口のドアが勢い良く開き、
一人のベルボーイが部屋に突入して来た。
「……NANA!!」
流星の如く突然現れた彼は、身に付けていた帽子と眼鏡を床へ投げ捨て、素顔を露にする。
それは紛れもなく、強く待ち望んだ…
「…柊っ!!」
NANAの、王子様だ。
──
「ふ、…藤城、柊………」
形振り構っていられない緊急事態に焦り、サプライズをするはずの707号室で事件が発生したと
総支配人に急いで事情を話しマスターキーを手配してもらい、ようやく部屋に入ってみれば。
ナイフを手にNANAへ跨がったまま呆然とする三澤と、
衣服を切り裂かれあられもない格好の彼女が
驚いた顔でこちらを凝視していた。
白い頬が涙に濡れて、酷く痛々しい。
「…貴様…彼女に何をした…!」
柊の頭にカッと血が昇る。
ドスの利いた低い声で男を一喝し怒りに燃える鋭い眼光で射抜くと、
三澤は明らかに狼狽し視線を彷徨わせた。
しかし自身の手に凶器があるのを思い出したのか、ベッドから飛び降り
その切っ先を柊へ向ける。
「…うるさい!!邪魔をするなぁぁ!!!」
「…!!」
三澤は大声で喚きながらナイフを振り回し、柊に襲い掛かった。
ただ闇雲に切り付けようとするだけの能しか無いのか、
太刀筋はめちゃくちゃだ。
柊は神経を研ぎ澄ませ、ダンスのステップを踏むのと同じく
軽やかな足捌きで全ての攻撃を器用に躱していく。
「…チッ…ちょこまか動きやがって……!!」
いつまでも柊に傷一つ負わせられない焦りが三澤の理性を完全に崩壊させたようで、
殺意を籠めナイフを両手に持ち突進して来た。
「きゃああ!!柊…っ!」
NANAの悲鳴が響き渡り、ホテルの従業員や勇気、記者らも部屋へ駆け付ける。
「柊さん…っ、危ない!!」
「死ねぇええ!!!」
鋭利な切っ先が真っ直ぐ己に近付くのが、スローモーションのように見えた。
奴と柊のリーチはほぼ同じ。
間合いも変わらない相手の武器を素手で奪うには、かなりの危険を伴う。
ならば…
身構え、手近にあったカメラの三脚を掴むと三澤の手首目掛けてぶん投げ、
間合いの外から打撃を加える。
「…ッ…?!!」
痛みと衝撃に吃驚した男は、咄嗟にナイフを床へ落とした。
瞬間、長い右脚を繰り出し強烈な蹴りを顔面へ喰らわせる。
「…がっ…!!」
「…終わりだ」
下卑た呻きを漏らす三澤に悶絶する間も与えず、柊は男の左腕を両手で掴むと
勢いのままに軽々と背負い上げ、全力で床に叩き付けた。
「…ぐぁッ…!!!」
華麗な一本背負いが決まる。
受け身など取っていなかったであろう三澤は口から泡を吹き、
暫しピクピクと身体を痙攣させてから気絶し、やがて大人しくなった。
「い、一本背負い……」
「凄すぎる…!!」
入口に佇む勇気が目を見開きパチパチと瞬きをし、記者らも感動と興奮に打ち震える中、
柊は急いで上着を脱ぎながらベッドへ駆け寄ってNANAの上半身に被せる。
床に転がったナイフを拾い、彼女を縛る紐を切り拘束を解いてやった。
「大丈夫かっ!?怪我は…」
「柊……」
安心したのか呆けた表情のまま涙を溢れさせるNANA。
居たたまれず、柊はギュッと強く彼女を抱き締めた。
「遅くなってごめん……」
もっと早く三澤の計画の裏に気付いていれば、
こんな恐ろしい目に遭う事も無かっただろうに。
後悔が先立ち謝罪を口にすると、NANAは柊の背へ腕を回し抱き着き返した。
「…ううん…、本当に来てくれたから、それでいいの…」
「NANA…」
「私にも、ちゃんと王子様が居たのね…」
顔が見える位置まで身体を離し、ようやく安堵の笑みを覗かせた彼女の
涙の跡を優しく指先で拭ってやる。
頼りなげに柊の胸へ身を預ける様を、ただ愛しく思った。
「あのー…もしもし、お二人さん?」
「我々の存在を忘れてませんか……」
すっかり二人の世界が出来上がった頃、バツが悪そうな仲間の声で我に返って振り向くと。
勇気は従業員が用意したロープで床に伸びていた三澤を縛り上げたらしく、
誇らしげに胸を張った。
「こっちも任務完了!…まぁ、さすがにこんな騒ぎじゃ誤魔化せないよね…
ホテルの人が警察呼びに行っちゃった」
「…そうか…」
「NANAちゃん大丈夫?ホント、危機一髪で良かった〜…」
「…えぇ、ありがとう…」
さすがに刃傷沙汰ともなれば通報しない訳にもいかず、
直にやって来る警察に事情を話さねばならない。
安藤社長や馬淵にも迷惑が掛かるだろう。
「ぅ……」
NANAを抱いたまま思案を巡らせていると、小さく呻いた三澤が意識を取り戻した。
彼女の肩が強張るのが分かり、柊の怒りに再び火が付く。
自身の背後へNANAを隠し、男を睨んで牽制した。
「……な、んで……NANA、君は僕だけの、
…っ…味方だって…言ったじゃないか……」
「…知らない…そんな事、言った覚えは無いわ!」
「嘘だ…っ!!…去年、の…握手会で…
…落ち込んでた僕に、そう言ってくれただろ…?!」
三澤は柊の肩越しに見えるNANAへ、縋るような視線を送り訴える。
一寸の沈黙の後、思い当たる節があったのか彼女は息を飲み、涙声で答えた。
「…あれは……、全部嘘よ。握手会でもし元気の無いファンが居たら
こう言いなさいって、社長の命令通りにしてただけだから……」
「…う、そ……?」
「…みんなに同じ事を言ってたの……
だから、あなたが来てたかどうかまでは…覚えてないわ……ごめんなさい」
NANAの口から語られた真実は柊の攻撃よりも遥かにダメージを与えたらしく、
三澤はガックリと項垂れ…譫言のように繰り返し呟いた。
「そんな……僕は…一体何のために…………」
捜査員が部屋へ訪れ、手錠を掛けられるまでの間、ずっと…。
───
「おい、大丈夫かっ!?」
「殺されそうになったんだって?」
警察の事情聴取に加え、安藤社長のお説教を受けた柊と勇気が合宿所に帰って来ると、
早速話を聞いたらしい廉と美男から玄関先で質問責めにされた。
「…あぁ、心配掛けてごめん。どこも怪我はしてないから大丈夫だけど…」
「社長のお説教の方がよーっぽどキツかったよ!もう、鬼みたいな顔で延々と…」
勇気は思い出してもおぞましい安藤の形相を真似て、
ぶるりと身震いしながら靴を脱ぎスリッパに履き替え、リビングへ向かう。
「…まぁ、そりゃ怒られるよな」
「警察には何て?」
「あぁ…出口さんたちと話し合ってた通りにしたから、何とかなったよ」
違法な潜入捜査の件を公には出来ない為、三澤が逮捕されるまでの間
“枕営業を強要されて困っているとNANAに相談されていたから、
皆で現行犯逮捕しようと思った”
…という話で全員口裏を合わせており、警察と安藤、馬淵に対し
今回の騒ぎの真相として打ち明けた。
安藤の手配により優秀な弁護士も付き、事情聴取で柊の行為は正当防衛が立証され、
罪に問われる筈もなく手短に済んだ。
あの部屋には証拠となるビデオカメラがいくつもあり、
三澤が先に手を出した事実がしっかり記録されていたのが決め手となったらしい。
その後、警察署内で安藤の長いお説教にコッテリ絞られたものの、
あっという間にネタを嗅ぎ付け殺到して来た他のマスコミらに対応せざるを得なくなり、
ひとまず今日は彼らの計らいで密かに裏口から帰って来られたという訳だ。
ちなみに記者三人組は柊が犯人を投げ飛ばす、決定的瞬間の撮影に成功したと
喜び勇んで明日の朝刊に間に合わせるべく、記事を書きに帰ってしまった。
NANAや柊が不利になる内容には決してしないと約束して。
「今、ニュースは全部三澤の逮捕で持ちきりだ。
これから荻野の所にも家宅捜索が入るらしい」
「狸オヤジも終わったな。…それより、あの女はどうした?」
「実は………NANA、入って」
美男がふとNANAの所在を問うと、柊は扉の陰に隠れていた彼女を呼ぶ。
警察で被害届を出し終えてもまだ、何処か怯えた様子だったのを放っておけず、
ここまで連れて来たのだ。
「…こんばんは…」
「…柊、お前…」
「…あんな事があったんだし、マスコミもNANAを狙ってるだろうから…
今夜はここに置いてやってもいいか?」
複雑な面持ちの廉に許しを乞う。
一番反対しそうな彼を説得するのは至難の業かと思われたが、
意外にもアッサリ首を縦に振った。
「別に、騒ぎが収まるまでしばらく置いてやればいい。
ただし…お前の部屋で寝かせろよ?」
今度ばかりは廉もNANAを気の毒に感じたようで、条件付きだが滞在の許可が下りた。
美男は無言で頷き、リビングでニュースをチェックしていた勇気も笑顔で手招きする。
「…ありがとう、みんな」
「柊、いいの…?」
「あぁ。これからの事はゆっくり考えよう。
とにかく今日はゆっくり休んで…」
以前までの傲慢な態度の欠片も無く、泣き腫らした目を伏せ小さく頭を下げたNANAを、
A.N.JELLの4人は暖かく迎え入れた。
この合宿所に移り住んでから、女性を自室に招くのは初めてだった。
美子が美男として生活を共にしていた時ですら一度もそういった機会は無く、
少しだけ緊張してしまう。
「お邪魔します……」
「ちょっと散らかってるかも知れないけど、
好きに寛いでくれて大丈夫だから」
来客用スリッパを履いたNANAを先に通し、電気と空調を点け自分も中へと入る。
ここに来るまでに彼女の着替えを買ってやりたかったが、
すっかり夜も更け何処の店も開いておらず
仕方無くRINAに頼んで桜色の花柄ワンピースを警察署まで持って来てもらい、
代わりに切り裂かれた衣服は証拠品として提出した。
ヒラリとスカートの裾のフリルを揺らし、NANAは物珍しげに辺りを見回す。
「へぇ…、綺麗じゃない」
「そう?…勇気の部屋に比べれば物が少ないのかも知れないな」
シンプルなモノトーンの家具や寝具で統一した、
廉の部屋とほとんど変わらない広さの室内は、
いつでもギター練習が出来るよう防音設備が整っており、
まさに柊のお気に入りの空間。
余計な飾り気は無いものの、音楽雑誌や植物に関する書物などを多数収めた大きな本棚や、
アロマキャンドルがいくつかある。
一際目立つのは、ギターケースに入った何本ものギターが
整然と壁際に並ぶ様だろう。
「すごい…ギターがたくさん…」
中には有名ギタリストからのプレゼントなどもあったりして、
ちょっとした自慢のコレクションだ。
NANAはそれらを眺めてしばらく興味深げに楽しんでいたが、
部屋の真ん中にある一人掛けのソファに座ると急に口を噤む。
途端、静寂が二人を包んだ。
柊は何と声を掛けてやれば良いか戸惑い、思い付くままに言葉を発する。
「あ、…お茶でも淹れて…」
「ねぇ、柊…今日は助けに来てくれて本当にありがとう…」
NANAは真剣な眼差しをこちらへ向け、改めて礼を述べた。
このまま退室するのは良くないと思い直し、彼女の隣の床へ腰を下ろす。
「…怖かった…すごく……殺されるんじゃないかって…」
「…NANA…」
「……でも、やっぱり三澤くんを憎み切れない…
私の不用意な一言で、あんな風になっちゃったんだと思うと……」
NANAは再び目尻に透明な雫を溜め、自身の肩を抱いて小刻みに震え出した。
調べによれば、一年前…
大切な母を亡くして自殺まで考えていた三澤は、宛もなく街をフラフラしていた所、
たまたま立ち寄った大型書店で写真集の発売イベントを行なっていたNANAと出会った。
空虚な気持ちのまま何となく握手付きサイン会に参加してみると、
瞬く間に彼女の優しい言葉と笑顔の虜となり
やがてアイドルであるNANAを本気で愛してしまったそうだ。
「今まで何も考えずに社長の言う通り“妖精アイドル”を演じて来たけど、
あの人の人生を狂わせちゃったのは、私なのよね…
…それがこの先ずっと、頭から離れないんだと思うと……怖くて…」
今回の事件は、NANA一人が背負うには重過ぎて。
柊は彼女の苦しみを少しでも軽くしてやりたいと、
正面から抱き締め自身の胸元に顔を埋めさせた。
「…だけど…三澤の命を救ったのも確かにNANAだ。
きっと君に出会わなければ、アイツは自殺していたかも知れない」
「でも…!」
「犯罪にまで手を出したのは奴の勝手で、NANAがそこまで責任を感じる理由は無いよ。
…その分、これからは誠意を持って、自分の言葉で頑張ればいい。
…俺がずっと傍に居るから…」
後頭部を撫でながら、穏やかな口調で彼女を諭す。
頑なになり掛けていたNANAは静かに頷き、柊の胸で泣き始めた。
夜の庭園で会った時に見た、押し殺すような嗚咽ではなく…
子供染みた泣き声が部屋に響き渡る。
「ひっ…く、ぅ…ッ……」
泣きじゃくる彼女の涙で白いシャツが濡れてしまうが、
気にせず幼子をあやす仕草でポン、ポン…と背中を叩いてやった。
「…っ……柊、…ど、して…こんなに…優しいの…?」
ようやく少し落ち着き始めたらしいNANAから問われた一言は、
ここ数日間ずっと己の胸へ投げ掛けていた疑問と同じだった。
「それは……」
三澤が彼女に触れているのを目撃した瞬間、
激しい嫉妬で気が狂いそうになったのを思い出す。
もうとっくに、答えは解っている。
「…好きだからだよ……
NANA、俺は…君が好きだ。どうしようもないくらい……」
抱いた彼女の細い肩がビクリと震え、耳まで真っ赤に染まるのが見えた。
今回は以上です。
大量更新、しかもまたいいところで終わっちゃってすみません。
次回、エロです。書くのは苦手ですが頑張ります。
まとめサイトの管理人様、路線変更で申し訳ありませんが、
次回から【エロあり】でお願いして良いでしょうか…?
>>77 えっえっえっ!!?
なんという生殺し!!
リアルタイムで読めてmjでどきどきしました。
GJです!!!!
あーなんか…
柊さん…
かっけーーー!!!!
そしてNANAの縛られシチュ…似合う。
次回全力待機してます!
>>40 DT柊さんー!
描写の仕方すごく好きです。
スローで構わないので、また素敵ssお待ちしてます!
>>57 エロエロGJです!
鬼畜めな廉さんが新鮮♪
>>77 GJ!!待ってました!…けど、生殺しw
柊さんかっこいいし、細やかなエピありだし面白かったです
次楽しみに待ってます!
>>57 廉さん、美子がかわいいからって寝込みを襲うなー!てかいきなり挿入するなw
南の島で、エロエロしすぎ!GJでした
>>77 うわぁ〜!助かってよかった。NANAちゃんも素直でかわいい!GJ!
柊さん、カッコイイ!惚れるわ。勇気も今回活躍できてよかったー!
次はエロとな?全裸待機しております!!
77》凄い!!!上手い!!!
素晴らしすぎです!!!
>>57 南の島で開放感あるんだろうが廉さんすごいww
中に出してたし美子妊娠の展開もみてみたいかも
NANA助かってよかった〜
柊さんがかっこよすぎ!
続き楽しみにしてます。
>>57 妊娠フラグww
廉さんスゴイ、襲いまくってて曲できるのか心配ww
この状況下で作った詞はエロそうだ。
>>77 生殺し…全裸待機してます。
柊さんの華麗な一本背負いの記事読みたい。
>>57 廉さんエロ過ぎです…
前スレのとき書き損ねちゃいましたが、美子の呼び捨て大興奮でした!
それは思いつかなかったーーーーと思って、萌え萌えです
そしてそれを喜んじゃう廉さんのかわいさにやられてますw
でもエロ過ぎる…そんな廉さんも好きw
>>77 お待ちしてましたよ!
NANAちゃん無事でよかった…でもかわいそうだ…
かわいくて、かわいそうで、きゅんきゅんきます
これから柊さんと幸せになるんですよね?ですよね?
待ってます!
連投でごめん。
前スレの結婚前夜の話、古宇利大橋のプロポーズの続きですよね!
このまえ以前旅行したときの写真をたまたま見返してて、
ここで廉さんがプロポーズしたんだとニヤニヤしてしまいました
あの先のぜんざいやさんで二人でぜんざいでも食べて、
「あんたら夫婦ね〜?」とかおばあに言われて顔赤らめてるといいよ、と妄想しましたw
続き読めてうれしかったです。
>>77 生殺しなんてそんな…!
いやいたお待ちしてました!
NANAのムチムチな白い肌に破れた服そして縛られているなんて…ハァハァw
王子様な柊さんカコイイ!
続き楽しみにしてますー!
エロ鬼畜な柊さんも好きだけど、優しくて甘々な柊さんも見てみたい…。
>>77です。たくさん感想いただけて嬉しいです!
後半1日で書きなぐった所為でニュアンスおかしい部分とか多々ありますが…
大目に見てやって下さい。
柊さんが忍者の末裔なんじゃないか的な話が頭から離れず、
気付いたらスーパーマンになってたww
>>57 昨夜は本当に失礼致しました。
南の島の解放感、最高です!DT廉さんも好きだけど、
エロエロもかなり楽しい!美子妊娠フラグだと思って期待しちゃいますww
>>86リクエストにお応え…出来るか分かりませんが、次回エロでは
優しい優しい柊さん目指して頑張ります。気長にお待ちいただければ…
57です
感想下さってありがとうございます
>>77 とにかく凄いです!!!
何回も読んじゃいました
大傑作ですね
レベルの差を痛感しました
>>57 廉さん絶倫だなぁ〜DTキャラだったのにw
これは美子妊娠しちゃうww
あああー 神降臨祭りに出遅れてしまった
>>6 正直に言います。泣いてしまいました。
気障なことを申しますが、文章から二人の愛があふれていました。
>>40 素晴らしい。最終回の隙間を形の合うパズルがはまっていくようでした。
タイトルがまた素敵。心をぐっと掴まれました。
>>57 あなたの描くエロが好きだ!!! 思わず告白。
表現の快感さが半端なかったです。日々求め合う二人の続きをぜひっ!
>>77 風邪をもろともせず全裸待機していてよかった!
投下しますレスを見て年甲斐もなく「シャー!!!」と叫んだのは秘密ww
柊さん、ドラマ前半の機動力を見るに、忍者の末裔のセンはありえる・・・
各職人さん方GJGJGJです!ホントどれもこれも良作。
続きを心よりお待ちしております。長文スマソ。
>>49 南の島さん、超GJ!
「奥さまは妊娠されてますか?」って、お医者さん直球質問に焦りました。
座薬のSuppositoryって言うんだね。勉強になりますたw
がっつく廉さんに降参です。シスター美子、まさかの出来婚?! 続きお待ちしてます・・・
92 :
名無しさん@ピンキー:2011/11/19(土) 20:59:18.42 ID:BZupoEv/
そういえば、テンプレにまとめサイトを入れるって話
どうなったんでしたっけ?
>>93 管理人さんからはOKでてたはず
投下中のスレ立てで忘れたんじゃないかな?
自分も今言われて気づいた
次スレから入れる?>まとめ
あと1のテンプレも、600レスじゃなくて480KBまでいったら
とかにした方がいいかも、とちょっと思った
投下がたくさんあると、前スレみたいに600までいかなくても埋まっちゃうし
逆に少なければ600までいっても全然余裕って事もありそうだから
>>87 反応頂けて嬉しい。
でも作品の構想を変えてほしいとは思ってるわけじゃないので、自然に浮かんだらで良いので是非是非お願い申し上げますです!
気長に待ちますぅううう!
最近神職人さん降臨しまくりで活気づいてていいねぇ!
まとめさんも大変でしょうが、助かってますありがとう!
次スレからはなるべくテンプレに入れたいね。
97 :
2:2011/11/20(日) 06:03:00.05 ID:Jt+9HTlP
>>2です…。ご指摘のとおりです。すみませんでした。
慌てて立てたので、ついうっかりしてしまいました。
スレ立て相当久しぶりで、できるかも不安で、とにかく立てねば!と焦ってしまって。
せっかくまとめ人さんがああおっしゃってくださってたのに、本当にすみません。
基本は読み手なので、まとめサイトがのってた方が絶対にいいと思っていたのにorz
テンプレですが、たとえば480KB前あたりに一旦作って、おいといてもいいかなと思いました。
そうすれば、ああいう状況になっても立ててコピペで済むから、気が楽なので。
いや、残り考えて投下すればよかっただけの話なんだけど。
それから、普段こういうのは書かず、投下したらしっぱなしで逃げるんですが…。
過分な感想をいただいて恐縮しています。ありがとうございました。
メインキャラみんなが寄ってたかって二人を幸せにしたに違いない!
という思い込みから書きはじめたものだったので、みんなを褒めていただけたのが本当にうれしかったです。
実は翌日気がついて、この件についてお詫びを書きに来たんですが、
ああいった感想をいただけると思ってなかったので、レスを見てびっくりしてしまい…。
向こうでまとめ人さんにだけ謝ってきちゃってました。すみません。
長文失礼しました。名無しに戻ります。
次スレはテンプレに入れるの、賛成です。本当にすみませんでした。
テンプレに追加した方が良いような気がする事
「スレ立ては必ず宣言してから行く。無断で行くのは控えること」
「前スレの容量が中途半端に残った場合は書き手読み手にかかわらず埋めること」
作品投下中で焦ったのは分かる
誰にだって失敗はあるんだからそんなに気にすんな
けど、上の二点はロムってて気になった
まとめサイトの入れ忘れはそんなに気にしなくてもいいと思う。
新規で覗く人も少ないだろうし、検索したらすぐ出るし。
前スレ埋めてくれた方いたね。気付いた時には完了してて、反省した。
テンプレ置いとくのも修正も賛成。基本的な事だけど、文字にしておくのは大事かも。
まだ2ちゃん慣れしてない人もいるだろうし、気にしなさ過ぎもよくないと思う。
うん、文字にしておくのは大事だと思います…。
その2点追加と、レス数じゃなくて消費KB数でのスレ立てにするというのに賛成。
やっぱり480KBくらいかな?
焦ると基本的なことも頭からぶっ飛ぶということがよくわかった…。
もう一度だけ。
ほんと、いろいろすみませんでした。
前スレ埋めてくださった方、ありがとうございます。
美男祭り、GJ!
エロい柊さんも絶倫廉さんも好きだ。
しかし、これ中の人のファンが読んだらどう思うのか、少々心配になりますw
>>100 新スレたてアリがトン。
450KBぐらいでたてておいてもいいんだけど、レスつかないとスレオチするよね?
そのぐらいでテンプレとかスレたて相談して、実際に480KBぐらいになったらたてるってことででOK?
たてたくても規制されちゃう場合もあるしね。
>>101 エロパロ板のスレ落ち基準は480KB
この容量を超えて且つ一週間書き込みがないとdat落ちという仕組みらしい
450KB過ぎたら次スレ立てやらテンプレの相談というのには賛成
2スレ目でテンプレ修正の話あったね。
このスレはこのこと以外も色々なあなあにし過ぎだと思ってるので、少しホッとした。
気になりながらスルーしてる時点で自分も同罪だけど。
いろいろ決まりごとがあるんですね
肝に銘じます
空気を読まずに南の島で最終章です
前レスではエロすぎてすみません、やりすぎたかと反省してます
廉美子 エロありです
105 :
南の島で19:2011/11/21(月) 00:41:53.34 ID:CUbjNhOM
「お土産これで全部ですよね。ふふっ、みんな喜んでくれるかな?」
メンバーや事務所のスタッフ、青空学園の子供たち用に沢山の買い物をした廉と美子は、カフェでひと休み。
行き交う人々を眺めながら、冷たい飲み物で喉を潤している。
「あの…」
背後から声を掛けられ振り向くと、日本人の女性が立っていた。
「A.N.JELLの廉さんですよね。わーっ、やっぱりー!握手してもらってもいいですか?」
廉は立ち上がって微笑みながら握手に応じている。美子の姿を遮るようにさり気なく立ち位置を替えながら。
女性がお礼を言いながら立ち去るまでその後ろ姿を見送り、席に戻ると美子が俯いている。
「美子」
廉の呼びかけに顔を上げた美子は、弱々しい笑顔を浮かべた。
ホテルの部屋に戻っても美子は元気がなかった。廉と一緒にいる所をファンに見られて気にしているんだろう。
「きっと気付かれましたよね、私の事」
A.N.JELLの美男に双子の妹がいることは有名だし、美子の顔を見れば一目瞭然だ。
また二年前に廉とA.N.JELLが苦境に立たされたことを思い出して落ち込んでいる。
「美子…おいで」
廉は美子の手を取り抱きしめる。俯く美子の顔を上に向けて、チュバっとわざと大きな音を立ててキスをした。
「心配するな。大丈夫だから」美子の背中をぽんぽんと叩いて廉は囁いた。
美子がキッチンで簡単な夕食を作っている間に、廉はテラスに出て社長に電話を掛ける。
昼の出来事をかいつまんで説明した後、真剣な口調で話し始めた。
「社長、俺、美子の事、公にしたいんだ。いずれ一緒になるんだし…」
「えっ、一緒にって…待て待て待て待て。美子も承知してるのか?」社長が慌てて遮る。
「いや、まだ…言ってないけど…」廉が口ごもった。
「廉、わかってると思うけど、二人の結婚は二人だけの問題じゃない。だろ?」
諭すように言う社長の言葉が廉の胸に突き刺さる。わかってるよ…だけど…
いつも一緒にいるけど、本当はちゃんと世間にも認められる関係になりたかった。
でも、仕事への影響を考えると自分達の意向だけで簡単に決められることでもなくて、
その現実に廉はもどかしさを感じていた。
「ま、電話でするような話じゃないから、日本に戻ったらゆっくり話そう。じゃな」
切れた電話を見つめて、廉は深いため息を漏らした。
106 :
南の島で20:2011/11/21(月) 00:43:18.04 ID:CUbjNhOM
夕食後、廉は時折美子の顔を見ながら、考え込んでいる。
何か言いかけては、言葉を呑み込んだりして落ち着きがない様子に美子が尋ねる。
「廉さん、どうかしましたか?」
廉は一瞬ピクッとしたが、美子の前に来て跪く。
「美子……俺達ずっと一緒にいような。何があっても…」
美子の手を握りしめて思いつめたように言う廉。
いつになく真剣な表情の廉に少し驚きながらも、美子はにっこり微笑んで言った。
「はい。ずっと一緒にいます」
美子を抱きしめながら小さなため息が漏れる。本当に言いたいのはもっとちゃんとした約束なのに。
翌朝、早く目覚めた廉は隣で寝息を立てる美子を見つめている。
あどけなさを残した美子の寝顔は、いくら見ていても飽きなかった。
美子の下唇を指でめくると、美子は口元をムニャムニャさせて横を向いてしまった。
くくっと笑ってまた美子の顔をこちらに向かせる。ほっぺを指でつついたり、
唇を指でぷるぷると震わせて美子をおもちゃにする廉。
「んん〜?廉さん?」美子が目を覚ました。
「おはよう」
「あ、おはよ…ございます」
美子が挨拶を返す。それでもまだ眠いのか、また目を閉じると廉の体に腕を回して抱きついてきた。
廉も美子を抱きしめて子供をあやすように背中をさすっている。
「なあ、今日は何する?ん?」
「ん…おうちに…帰りたい…」寝ぼけながら美子が呟く。
「そうか。じゃ…帰ろうな」
再び眠りに落ちていく美子の背中を撫でながら、廉が囁いた。
107 :
南の島で21:2011/11/21(月) 00:45:08.84 ID:CUbjNhOM
ホテルのレストランで夕食を済ませた後、廉は旅行の手配をしてくれた代理店に帰国便の
スケジュール確認のために電話を掛けた。
A.J.エンタテインメントとは長い付き合いのある代理店で、今回の美子との旅行も
社内ですら極秘にしていろいろ便宜を図ってくれている。
先にシャワーを済ませた美子が、リビングにやって来た。
美子をソファに腰かけさせて、バスローブの紐をほどく。
前をはだけて、美子の首筋から胸元、お臍、下腹部へとつつっと指を滑らせる。
「ぁ…廉さん…シャワーは…?」
「電話が来るから、まだいい」
ソファの前に胡坐をかいて、廉は美子への愛撫を始めた。足を大きく開いて入り口を舌先でなぞる。
美子はソファの背もたれに体を預けて、ため息を漏らした。
指でそこを開いて、露出した突起を優しく舐めあげる。溢れる蜜を舐め取り、また突起へと舌を移動させた。
美子は胸を上下させて、息を荒くしている。
「あっあっ…んんんっ…や…」
美子が甘く喘ぎ始めた時、廉のシャツの胸ポケットに入っている携帯が鳴りだした。
すると、驚いたことに廉は愛撫を続けながら、電話に出て話し始めた。
「ああ、○○さん、わざわざどうも」
事務所の人間にはわりとぞんざいな言葉を使う廉も、社外の人には丁寧に応対する。
普通に話しだした廉に驚いた美子は、自分の声が漏れないように両手で口を塞いだ。
「本当にお世話になって。ええ…美子?ここにいますよ。美子もすごく喜んでます」
突起を指で撫でながら、美子に視線を向けて、軽くウインクをする廉。
美子は顔を真っ赤にして、目を見開き、首を強く横に振った。
「はははっ、そうですね。じゃ、詳細はメールしてください。準備しておきますから」
事務的な会話を続けながら、廉は美子の中に指を差し込み、激しくかき回した。
くちゅくちゅと言う音が、相手に聞こえるんじゃないかと美子は気が気じゃなかったが、
それよりも快感がまさって抑えた手のすき間から微かに声が漏れだす。
「はい、それじゃ、よろしく」
廉が電話を終えた。その途端、美子は大きな声をあげ始めた。
「あああああっ…やっ…廉…さん…あっあっあっ」
声を出すまいと我慢していた反動で、美子は狂いそうなほどに感じているらしい。
「お…願い…もうっ…」
涙を流して感じまくっている美子を満足げに見て、廉は囁いた。
「可愛い…美子」
なおも美子の中をかき回し続け、同時に敏感な突起を舌先でくりくりとなぞった。
「いやーーっっ、い…い…いく…」
白い喉をのけ反らせ体を硬直させて、美子は昇りつめた。
「美子、好きだ…好きだ…好きだ…」
震える美子の体を抱いて、廉は囁き続ける。
108 :
南の島で22:2011/11/21(月) 00:47:18.38 ID:CUbjNhOM
もう一度シャワーを浴びた美子と廉は、バスローブ姿のままテラスでシャンパンを飲んでいる。
火照った体に海からの風が心地いい。上空には二人を見守るように大きな満月が輝いている。
美子は廉の肩にもたれかかって、風に吹かれてうっとりと目を細めている。
美子の横顔をじっと見つめていた廉は、愛おしさで胸が一杯になってきた。
突然美子のグラスを取り上げてテーブルに置くと、向かい合っておもむろに口を開いた。
「あ…の、東京に帰ったら、俺、社長と話し合って、なるべく早く、お前の事はっきりさせるから。
だから、その…俺と、結婚…してくれないか?」
緊張のせいか上ずった声で一息に言った後、廉は息を詰めて美子を見つめている。
いつもの自信満々な廉とは程遠い気弱そうな表情で。
美子の手を握る廉の手から、震えが伝わってくる。
美子は廉の手の上に自分の手を重ねて、大きく頷きながら答えた。
「はい」
たった一言の短い答え。でも廉にはそれで充分だった。
「そ、そうか…そう、か……はぁ…良かった」
ホッとしたのか廉は大きなため息をついた。
「嬉しい…」美子は涙ぐんでいる。
「でも、急がなくてもいいんですよ。一緒にいられるだけで幸せですから」
美子の瞳はキラキラと輝いて、廉は吸い込まれてしまいそうになる。
「うん、、いや、ていうか、俺が待てないんだ。お前を早く自分のものにしたくて」
少年のように性急に言い募る廉を見て、美子は思わず微笑んでしまう。
「もう廉さんのものですよ。一生、永遠に、一緒です」
力強い言葉と揺るぎない眼差し、急に大人びたような美子に逆に廉の方が勇気づけられた。
惚けたように美子の顔を見ていると、シャンパンを注いだグラスを渡された。
チン、とグラスを合わせて乾杯する。なんだか立場が逆転したな、と苦笑しながら廉は一息に飲み干した。
落ち着いて自分達の姿を改めて見た廉は、しまった、というような表情をした。
「どうしたんですか?」
美子の問いに小さな声でごにょごにょと言っている。
(一生に一度のプロポーズが、ふ、風呂上りって…しかもバスローブ姿、ありえないっ!
あ…指輪も用意してなかった…アホかっ、俺)
勢いに任せてプロポーズしてしまったことを一瞬後悔しかけたが、でも美子がOKしてくれたから
これでよしとしようか…むりやり廉は納得する。
「廉さん?」美子が不思議そうな顔で見ている。
「な、なんでもないっ」
動揺をごまかすように美子を抱きしめる。
「明日、日本に帰ろう。そしてずーっと一緒にいような」美子の耳元で囁いた。
頷く美子に唇を寄せて、廉と美子は深く口づけた。
これでおしまいです
感想を寄せてくださった方ありがとうございます
>>109 GJ!乙華麗でした!
エロエロ廉さんに、こんなにほっこりした幸せ展開…
美子もエロかわいくって、よかったです!
でも、かわいいプロポーズと一瞬の後悔がかわいすぎて忘れそうになったけど
電話しながらそんなことすんなよwこのがっつき廉さんめw
普通の言葉使いしてる廉さんもツボでした…初めて見たような?そんなことない?
考えたら、普段どんだけぞんざいにしゃべってんだよ廉さんw
>>109 GJ!
えろえろ廉さん最高です!!しかし電話中はww
プロポーズ可愛すぎて悶えた
>>109 GJです!!
美子がかわいい。
無事に結婚できるといいな。
その前に「できちゃった」になりそうだけど…
>>109 嬉し恥ずかし南の島、事実上のハニ―ムーントリップ?
南の島の廉さん、電話しながら、美子攻めてるところ、エロ親父モードw
美子がアフリカ帰りならまだ22歳、廉さん25歳か、若いなー、
しばらくは、婚約期間楽しんで、数年後結婚ですかね。
>>109 完結おめでとうございます!
いや〜テクニシャンな廉さんが新鮮でよかったw
ホントの新婚旅行ではいったいどんなことになるのやら…
美子、がんばれ!w
>>109 プロポーズ可愛いかった!
けど廉さんw 何があった?どこで覚えた?
色々聞きたいw
すみません 投下します
小ネタで、時期は施設コンサート前日です
おまけで柊×美男(美子)エロなし有ります
すでに二人は結ばれてますw
117 :
曇りと晴れ1:2011/11/21(月) 21:15:11.67 ID:saNZ7+Ht
「あ…俺たち、付き合うことにしたから」
夕食後のリビングで、柊が突然思い出したかのように言った。
施設でのコンサートを明日に控え、ホテル暮らしをしている廉も今夜は久しぶりに合宿所で過ごしている。
「…!」「…?」
柊の横に座る美男は少し慌てて、廉と勇気はぽかんと口を開けて柊を見た。
「お、俺たち…って…だ、誰のこと?」
放心状態の廉に変わって、勇気が恐る恐る口を開く。
「誰って、美男だよ」
柊はそう言うと、隣で恥ずかしそうに俯く美男の頭を優しく撫でた。
冗談には見えない光景に勇気が慌てる。
「でっ、でも美男はまだ入ったばかりで…(てか、男じゃん!)」
「そうだよな…こんな気持ちになるなんて、自分でも驚いてるよ」
幸せそうに微笑む柊を見て、勇気はへなへなと笑うしかない。
「はは…しゅ…柊さんてば…美男みたいなの…(女みたいな男!)がタイプだったん…だ?」
こんなこと聞きたくないのにー!馬鹿馬鹿、俺のばかっ!…と勇気は心の中で叫ぶ。
「ん、まぁ…そうなのかな?自覚はなかったんだけど」
じ、自覚って…柊さん。
照れくさそうな柊の笑顔と、二人を包む幸せオーラが勇気の気力を奪い取っていく。
「も〜柊さん、手が早いなぁ〜…ははは……ふぅ…」
もう無理…勇気はすがる瞳を廉に向けて、首をぷるぷると振る。
廉はぶるっと体を震わせると、勇気の視線を受け止め頷いて見せた。
「柊…本気なのか?(そいつ男だぞ?!)」
腕を組み、眉間にシワを寄せて廉が口を開く。
「もちろん本気だよ。それにメンバー内でこんなことになって、申し訳ないと思ってる」
柊は、真剣さと誠実さを感じさせる強い眼差しで、まっすぐ廉の目を見据えた。
「だから、お前たちには知ってて欲しかったんだ」
言い終えた柊が最後にきゅっと唇を噛む。
…俺は知りたくなかったけどな。まさかお前が、あっち側の人間だったなんて…
思わず言いたくなる愚痴も、真剣な柊の顔を見ると何も言えない。
「ったく…仕方ねぇな…(こんなカミングアウトされちゃあ)」
その言葉に美男の顔がぱぁっと明るくなった。
「ただし、俺はまだそいつをメンバーだとは認めてないからな」
そう言って柊の横にちょこんと座る美男を睨み付けた。
大人しそうな顔して柊をたぶらかしやがって…くそっ。
そんな廉の感情など知らない柊が慌てて言う。
「ああ、わかってるよ。俺がちゃんとフォローするから」
なんだよ…そんな奴のために必死になりやがって。俺の楽譜を燃やした奴だぞ!
ふつふつと怒りがこみ上げるのを、なんとかリーダーの自覚で押さえこむ。
「あと、絶対バレないようにしろよな!」
柊の相手が男なんてわかったらどうなるか…いやいや…考えたくもない!
廉は頭がくらくらするのを感じた。
「気をつけるよ」
ホッとした表情でみつめあう二人を、廉と勇気がちらちらと、何度も盗み見ていた。
118 :
曇りと晴れ2:2011/11/21(月) 21:16:36.48 ID:saNZ7+Ht
柊と美男が幸せオーラに包まれながら部屋へと戻ったあと、リビングにはうなだれた二人が残された。
「はあぁーー」と勇気の大きなため息が沈黙を破る。
「驚いたね…」
「ああ…」
ソファーの上で横になり、膝を抱えて丸くなっていた勇気が、体を起こして廉の顔を覗きこんだ。
「廉さん、知ってた?」
「しっ、知るわけないだろ」
「そうだよねっ、知ってたらあんな顔しないよね〜」
勇気はわざと明るい口調で言ってみたものの、どんよりした空気は変わらない。
「よりによって、なんであいつなんだよ。男でも女でも柊なら選び放題だろっ」
落ち着けば落ち着くほど、訳のわからない怒りが廉を襲う。
「なんで社長も柊もあいつに惑わされるんだ?」
「それに、なんだよ。付き合い長いのに…俺に隠し事しやがって」
いやいや、言わないでしょ〜普通…勇気は苦笑いしながら心の中で呟いた。
止まらない怒りを散々口にしたあと、ようやく廉が静かになった。
黙って隣で愚痴を聞いていた勇気が、小さなため息をついてから口を開く。
「美男に柊さん取られちゃったね」
「ああ…」
「俺たち二番目になっちゃったね…」
「ああ…」
「もう寝る前のハーブティーも息抜きの紅茶も、なくなっちゃうのかなぁ〜」
勇気が冗談めかして言う。
「あるとしても、俺たちのためじゃないだろうな…これからは、あいつのついでだ」
「ついでか〜」勇気は肩を落として呟いた。
「それよりお前、眠れない時の話し相手がいなくなったな。どうすんだ?」
「廉さんこそ、もう徹夜してんの気付いてくれる人いないよ。夜食でてこないよ?」
「はぁーーーっ」
その夜、二人のため息がリビングの空気を何度も揺らしたことは、廉と勇気二人の秘密だ。
…余談…
しばらくしたら、廉は美男が女だと偶然知ることになる。
そして、思い出す。
あの夜二人が部屋に戻る時、柊が不意に振り返って笑ったその顔を。
あーーっ!!…あの悪代官みないな含み笑い!!
くそっ!あいつわざと黙ってやがったなっ!
事務所を飛び出した廉はまだ知らない。
あの夜から、廉が気付くのを柊が楽しみに待っていること。
「言ってなかったかな?」の一言をどんな風に言おうか、柊が毎日考えていること。
そして、今夜はとりあえずみんなで笑いあえること。
119 :
曇りと晴れ3:2011/11/21(月) 21:17:58.74 ID:saNZ7+Ht
一方廉と勇気をリビングに残して、仲良く柊の部屋に戻った二人。
「柊さん!廉さん許してくれましたね!!」
美男は余程嬉しかったのか、柊の左手を両手で握って左右にゆらゆら振っている。
「だから言ったろ?話せば廉はわかってくれるって」
優しく微笑む柊に、うんうんうんと何度も美男が頷いた。
「でも、突然だったからびっくりしました。まさか今日言うとは思ってなかったので」
「今日、廉が帰ってくることはわかってたからね。早い方がいいと思って」
柊の言葉に首を傾ける美男を、柊はソファーに座るように促した。
「どうしてわかってたんですか?」
「昔からライブの前の日は、三人一緒に過ごすことにしてるんだ」
「あ〜だから廉さん帰ってきた時、柊さんも勇気さんも驚かなかったんですね〜」
と、にこにこする美男の顔が一瞬固まった。
「あ…れ?…柊さん?」
思ったより早かったな…と、口をぱくぱくさせる美男に柊は苦笑いをして見せた。
「美男、気付いたんだ?」
「しゅ、柊さんは気付いてたんですか!?」
「ん、まぁね」
そう言って思い出し笑いをする柊の頬を、美男は軽くつねってふにふにする。
「この口が、わざと言わなかったんですね!」
柊は頬を交互にふにふにされたまま、美男の髪をくしゃくしゃにした。
「すっかり忘れてたのは誰なのかな?」
「もーっ、緊張してたんですぅ!」
みるみるうちに美男の頬が膨らんいく。
そして柊の顔から手を離すと、ぷいっと柊に背を向けた。
「み〜お」
拗ねた美男を柊が後ろから抱き寄せた。
柊の胸元に背もたれても、美男は口をきかない。
「ごめん…美男にはもう少し我慢してもらうことになるけど、俺がちゃんと守るから」
最後の言葉で、美男の身体から少しだけ力が抜けた。
「我慢するのは…平気です」
うんうんと頷く柊の仕草が美男の身体に伝わってくる。
「俺がいつも一緒にいてあげるから、大丈夫だよ」
柊の言葉と、背中に感じる温もりが心地よくて、美男は身体を柊にあずけた。
120 :
曇りと晴れ4:2011/11/21(月) 21:19:14.66 ID:saNZ7+Ht
「でも…私が女だって知らないのに、よく廉さん許してくれましたよね?」
「そうだね」
そう言ってくすっと笑った柊の吐息が、美男の髪を揺らした。
柊は、美男を後ろから抱きしめたままソファーにもたれかかり、心地よい重みを感じている。
「廉はバンドのこともメンバーのことも、本当に大事に思ってるんだ」
「はい…以前、命懸けてやってるって言われました」
「だから、交際宣言した俺たちが男同士でも、あいつは認めてくれたんだよ」
「え?……ええっ!」
美男は慌てて柊の腕から逃れると、苦笑いする柊と向かい合った。
「お、男同士って…私と柊さんが!?」
「うん、だって桜庭美男は男だからね」
なんだか少し楽しそうな柊の表情に、慌てる美男は気付かない。
「でもあのっ、えと…それって…」
「よくあることだから」
美男の混乱をよそに、柊は事も無げに言った。
「それに…お前が女だってバラすのは、もう少し先がいいと思うんだ。
廉は頑張ってるお前を認めてくれる。少し時間はかかるけど、ちゃんとそういうとこに気付く奴だから」
「柊さん…」
「一度に伝えても混乱するし…それに、大丈夫。バレた時のことも考えてるから」
そう言って、柊が目を細めてふっと笑ったのを、美男は見逃さなかった。
「あー!柊さん今なんか悪い顔しましたよ」
美男が怪しんだ顔で柊を覗きこむ。
近づいてくる赤くふっくらした唇に、柊はちゅっとくちづけた。
驚く美男に笑いかけ、言い聞かせるように囁く。
「今日はここまでだからね。明日早いから」
美男は大きな瞳をぱちぱちさせて何度も頷くと、恥ずかしそうに微笑んだ。
つられて頬をゆるませる柊に、美男がお願いをする。
「あの、柊さん…悪い顔をしたことは許すので…もう一回だけいいですか?」
柊はゆっくり手を伸ばすと、美男の柔らかい頬に指先で触れた。
一瞬間を置き、ふっと笑うと優しくつまんでぷにぷにする。
「んー、どうしようかな」
近づいてくる意地悪そうな柊の顔を見て美男は笑い、そして、ゆっくり目を閉じた。
以上です
前半笑い話の予定でしたが、最近の廉さんの幸せぶりを見て主旨変更しましたw
ありがとうございました
十分笑えましたw良かったよww
>>121 投下ありがとうございます!あの、でも1つわかんないトコが…
読解力なさすぎて申し訳ないんですけど、最初に美男が気づいたことって
何ですか?その時点で、男同士ってことになってるのに気づいたかと思ってたんだけど
それはその後だったし…。そこだけ、?になってしまいました。
>>109 完走お疲れ様でした!超GJでした!
電話中でも止めようとしない廉さんにツボりましたw
>>121 流石柊さん。どんな相手にもドSな所に爆笑しつつ
最後の二人のやりとりにほっこりしました!GJ!
DT柊です。まったり書こうと思ったら気がつくと完成してたので投下します
DT柊×美子でエロあり、超長文です。
それでも良いという方は読んで下さると嬉しいです。
125 :
聖夜の奇跡 1:2011/11/21(月) 22:00:42.96 ID:L7PPC9Ru
12月24日 クリスマスイブ。
こんな日でもA.N.JELLとしての仕事はある。
まぁ・・・。どうせ、仕事が無くたって一緒に過ごしたいと思っている人は遠くに居るんだけどさ・・・。
午後9時45分。クリスマスライブ会場休憩室。
今日はA.N.JELLのクリスマスライブが行われてた。
このライブ、二日に亘って行われるのだけど・・・このライブのコンセプトが・・・ちょっと辛い。
今回のライブ、社長の提案で男女カップルのみ来場可能となっている。
クリスマスなのだから、愛する人と至福の時間を過ごしてもらいたいという社長の突拍子もないアイディアだ。
無論、別にこの考えに何か意見があるわけじゃない。ただ・・・・。
観客席を見れば幸せそうな表情で仲良くしている観客が目に映るわけで
そうなると、アフリカに今もいるだろう美子の姿が頭を埋め尽くす。
今年のクリスマスは帰って来れないと手紙で知らされた時点で、今年のクリスマスに望みが無くなった俺は
今日という日ほど、クリスマスが悪魔的行事であると思ったことはなかった。
(ハァ・・・。外、見事に雪降ってるなぁ・・・。このままだと、ホワイトクリスマスになるな・・・。)
外を見て、「ちらちら」と街の明りのみが広がる闇の中を舞う雪を見ながら溜息を吐き捨てる。
東京でこの時期に雪が降ることなんて珍しく、しかも明日はクリスマスだから喜ばしい事であるのに
どうしても素直に喜ぶ事は出来ない。多分、美子が来るって決まってたらまた違ったんだろうけど。
今年は廉を抜いて・・・3人で朝まで語り合う事になるのか・・・・。
廉は美男が美子と変わって加入してすぐ後に、何の前触れもなくNANAちゃんと交際していることを明かした。
俺たちはおろか、両社の社長もその事を全く把握してはおらず、この会見を聞きながら汗をだらだら流して混乱していた。
けど、そんな社長たちの気持ちなど知らず、互いに辛い時期を二人力を合わせて乗り越えた事により、
気が付くと深く愛し合っていたと、廉にしては珍しく笑顔で会見をしていた。
ただ、2年近くの付き合いだと言っていたが、どう考えても廉の様子が慌ただしくなったのは今年の8月ぐらいからだったのだが・・・。
まぁ、それは二人の幸せそうな姿を見て「野暮なことだな」と考え、何も言わず二人の幸せを温かく祝福した。
そんな状態で迎えたクリスマスイブ。廉がNANAちゃんと一緒に過ごさないわけがない。
今日は朝から珍しく上機嫌で、その上機嫌に対して勇気と美男が「にやにや」と笑いながら茶化していたのを朝見かけた。
「は、はぁ!?お、俺が、あ、あいつと、い、一緒に過ごす!?んな訳あるか!?」
と首や耳まで真っ赤にして反論してたが、誰が見たって嘘だって言うのはまる分かりで
その姿に更に茶化していた二人は大笑いして廉を弄っていた。
微笑ましいやり取りだと思い見ていたが、恋人と二人で大切な1日を過ごす事ができる廉を
若干羨ましくも思ったが、まぁ・・・クリスマスは今年だけじゃないと思って邪念を振り払った。
126 :
聖夜の奇跡 2:2011/11/21(月) 22:01:52.69 ID:L7PPC9Ru
と言う訳で、今年も4人ではなくいつもと変わらない人数、メンバーが少し違う3人で
朝まで語り合う事が、用事がない時点で決定しているという訳だった。
だらしなく着ていた真っ赤な舞台衣装を着直し、残念そうな表情を浮かべながら
壁に掛っていた時計を見て、(そろそろ・・・着替えて帰るか・・・。)とソファに重たく沈んでいた体を持ち上げ、立ち上がる。
すると、そんな俺の目の前にいつの間にか退屈そうな顔をした美男が立っていた。
「み・・・美男?どうした?そんな顔して?」
「そ、そんな顔って!さっきから呼んでるのに気がつかないからだろ!!」
「え・・・?俺の事?呼んでた?」
「呼んでた〜〜!ずっと、ずーーーっと!けどお前、ピクリとも反応してなかったから待ってたんだ!」
「あ、あぁ・・・ごめん。ちょっと考え事しててな・・・。」
「ど〜せ、その様子だと「美子に会いたいなぁ〜。」とか思ってたんだろ?」
いかにも「お見通しです」と言わんばかりのどや顔を浮かべる美男に
心を見透かされ、「その通りです」と言わんばかりに柊は美男から顔を逸らす。
すると、そんな美男が「あ、そう言えば・・・渡し忘れてたんだけど・・・。」
と言いながら、自分の黒いジャケットの内ポケットを漁りだす。
その声に、逸らしていた顔を再び美男の方へ向け、黙って美男を見る。
そして、お目当ての物が見つかったのか、「お!」と声を出し、
中から白い封筒入を取り出すと、その手紙を手渡してきた。
127 :
聖夜の奇跡 3 :2011/11/21(月) 22:02:22.69 ID:L7PPC9Ru
「み、美男?これ・・・何だ?」
突然手渡された手紙を、何度も角度を変えながら見ていると美男は
「何って・・・手紙だけど?」
と真顔で言ってくる。
「い、いや、それは分かるけど・・・何でこのタイミングで?」
「あぁ、そこか。3日前ぐらいに届いてたんだけど、忘れててさ。」
美男は頭を掻きながら、「ごめんごめん」と笑いながら何度か頭を下げる。
「たく・・・。まぁ良いや。」
(どうにも美男を見てると、怒る気になれない。きっと・・・・美子を見てるように思えるからなのかな・・・。)
笑みを返し、心の中で美男を許すと
封筒の中に入っていた手紙を取り出し読みだした。
(・・・今日の午後10時30分。あなたと行った星が輝く海で待ってます。・・って何だこれ?)
差出人も書いてはいなく、ただそこには今日の日付と時刻、そして待ち合わせ場所が書いてあった。
当然、心当たりなどすぐには浮かばず、その場で腕を組んで考え始めた。
海と行っても・・・最近行った海って美子と9月に行っただけだし・・・。
ん?じゃ、じゃあ・・・も、もしかして・・・この手紙・・・。
けど・・・美子・・・今年は帰れないって手紙で・・・。
何も言わずその場で表情を曇らせ、考え事をしていた柊に美男は、
「その場所、絶対、ぜーーーったい行けよ!良いな!?行かなかったら許さないからな!」
と念入りに何度も柊の胸の辺りに人差し指を当てながら言うと、慌ててその場から走り去って行った。
「絶対行けと言われても・・・まぁ・・・美男が言うなら行くだけ行ってみるか・・。」
まさか、帰って来ないと言っていた美子が帰ってくるはずはないと思っていたが
少しだけ、ほんの少しだけ俺の考えている場所に、美子が居たら良いな・・・。
と思いながら、手に持った手紙を上着のポケット中にそっと入れると
待ち合わせ時刻まで、既に時間がない事に気が付き、衣装のままで慌てて車まで走って行った。
(よしよし!行った行った!けど、あの様子だと・・・差出人分かったのか?
たく、あいつ・・・。分からないように書けってあれだけ言ったのに・・・これじゃあサプライズじゃねーじゃん。)
走り去ったと思われた美男は、実は休憩室の死角か柊をずっと見つめており
走り去っていくのを確認すると、「ふぅ」と安心したのか息を漏らした。
(ま、何はともあれ・・・良いクリスマスにしろよ。)
と心の中で走り去って行った柊に微笑みと言葉を投げかけた後
その場で体を「くるり」と回転させ柊が走り去った方とは逆の方向へ体を向けると
自分も待たせていた勇気の許へと向かう事にする。
(あ〜あ。男と二人でクリスマスかぁ〜。何か、負けた気分・・・。)
「ぼそぼそ」と呟きながら何だかしみったれた表情をしていた美男は、残念な気分を抱きつつ、
「ま、来年までに俺も彼女を見つければいいか。」
と言い、落ち込んでいた気分を立てなおすと笑顔を浮かべ、鼻歌を歌いながら歩いて行った。
128 :
聖夜の奇跡 4:2011/11/21(月) 22:03:01.85 ID:L7PPC9Ru
時間は流れて午後10時36分。
ライブ会場から車を全速力で走らせ、少し遅れはしたが美子と行った海岸にようやくたどり着く。
辺りに雪は積もっておらず、海から吹きつける潮風と僅かに舞い散る雪が肌に冷たく突き刺さる。
そんな中、自分の考えが正しいなら・・・・ここに女性が居るはずだと思っていた俺は
砂浜を穴が開くぐらいに何度も見渡す。
しかし・・・砂浜の方を何度も見ても人っ子一人見当たらない。
(やっぱり・・・・美子じゃなかったのかな・・・。)
微かに残っていた望みも、誰一人いない海岸によって絶たれてしまう。
その後、ポケットに入れていた手紙を再び取り出し、その手紙に白い息を吐き捨て
(もう帰ろう。)と思った俺は車へと戻ろうとした。
とその時、自分のすぐ近くで「くしゅん!」と誰かがくしゃみをするような声が聞こえた。
くしゃみを聞き、反射的に後ろを振り返るが誰もいない。
けれど、確かに聞こえたそのくしゃみに、俺は闇の広がる砂浜向け、大きな声で
「みこーーー!!」と気がつけばその名前を呼んでいた。
すると、すぐ近くで気が付かなかったが、砂浜と自分が居る少し高めの段差をつなぐ
階段の物陰で何かが動くような音がした。
そして、その音が聞こえた場所へ階段を駆け下り、何かが居る物陰の目の前まで行った。
「み・・・こ?」
そこには風から身を守る様に物陰に隠れ、黒い手袋に守られている両手に息を吐き続け、
纏っていたブラウンの毛皮のコートを抱く様にしてしゃがみ込んでいた美子の姿があった。
「柊・・・さん?」
海岸から吹く冷たい風から身を守ろうと、近くにあった階段の陰に隠れて耐えていると
私の名前を呼ぶ大きな声が、吹きつける風の中を切り裂く様に響き渡る。
その声の聞こえた方へ体を向けようとしたけど、向ける間もなく目の前に柊さんの姿が・・・。
「柊・・・さん?本当に・・・柊さん?」
コートの中に潜り込むように隠していた顔を上げると見間違えるはずもない。
大好きで大好きでたまらない柊さんが・・・真っ赤な衣装で私の目の前にしゃがみこんでいた。
「美子!!」
私の姿を見た柊さんはもう一度大きな声で私の名前を呼ぶと、何も言わず体を抱きしめてくれた。
(あぁ・・・柊さん。柊さんだ。本当に・・・本当に柊さんなんだ・・・。)
抱きしめてくれたその腕の温もり、顔のすぐ近くで目を閉じて笑っている優しい顔を見て
自分は柊さんのいる日本に戻ってきたんだと改めて実感した美子。
胸に溢れる温かな気持ちを抱きながら、美子も目を閉じた後、柊の首に腕を回し、柊の胸の中に顔を納めると、3ヶ月ぶりの再会を心の底から喜んだ。
抱きしめ終え、互いに顔を見合った後「くす」と笑みを浮かべ合った。
たくさん話したい事があったが、寒そうに震えている美子の姿を見て
「美子・・・取り敢えずここは寒いから、俺の車の中に行こう。」と言った。
美子は何も言わずに頷くと柊の手を握り、体を一度柊の体に寄せ笑みを浮かべる。
柊も美子の笑みに微笑みを返すと、持っていたスーツケースを受け取り、自分の車へと走りながら向かって行った。
129 :
聖夜の奇跡 5:2011/11/21(月) 22:03:52.71 ID:L7PPC9Ru
「ふぅ・・・。やっぱり、この時期の海は寒いなぁ・・・。」
車のエンジンを起動させ、空調の温度を23℃ぐらいに設定した。
「うぅ・・・も、もう少しで凍え死ぬところでした・・・。」
美子はまだ抜けきらぬ寒さに、シートの上に足を乗せながら丸くなっていた。
流石に・・・ずっとあそこに居たわけではないと思ったけど、ちょっと不安になって
「美子?一つ聞きたいけど・・・ずっとあそこで座ってたのか?」と気遣うように聞く。
「えっと・・・午後の4時ぐらいにここに着いたんです。
ずっと砂浜で待とうって思ってたんですが、砂浜を通りかかったおじいさんとおばあさんが
私の寒そうな様子を見兼ねて、近くにあるお家まで連れてってくれたんです。
それで、待ち合わせ時間の5分ぐらい前にそちらの家を出て、砂浜で5分ぐらい待ちました。」
「そ、そうか。ずっと待ってたわけじゃなくて良かったけど・・・寒い思いさせて悪かった。」
自分の今に至るまでの道筋を、未だ小刻みに震えながら話し終えた美子に謝ると
「い、いえ!む、寧ろ柊さんに何も言わずに来ちゃったのが悪かったんですから、気にしないでください!!」
と慌てながら首を振り、「気にしないでください!」と申し訳なさそうに何度も言ってきた。
(3ヶ月ぐらい一緒に居なかったけど、いつも通りの美子だな・・・やっぱり。)
少し騒がしいぐらい元気な美子に、3か月前から感じ続けていた同じ安心感を抱くと
「ふふ」と声を零しながら笑みを浮かべる。
美子は柊の笑みの理由が分からなかったが、その顔を見て、釣られる様に笑みを浮かべた。
その後、小さな笑い声を零し終えると、美子の顔を見て「美子・・・お帰りなさい。」と言う。
美子は「にこり」と笑い、「柊さん・・・只今!」とふわりとした柔らかな声で言葉を返した。
130 :
聖夜の奇跡 6:2011/11/21(月) 22:04:31.15 ID:L7PPC9Ru
こんなたわいの無いやり取りでも・・・少しの会話でも幸せと思える相手が居る事の
ありがたさを、目の前で笑う大切な人を見つめながら、俺は改めて感じる事が出来た。
きっと・・・今日会えないと思っていていたのに、会えた事で余計に嬉しく思ったからそう思ったのかもしれないけど、
けど・・・やっぱり・・・好きな人と大切な時間を一緒に過ごせるって幸せだな・・・。
「にこにこ」と嬉しそうに笑う美子を見て、この雪降るクリスマスイブに贈られた
最高のサプライズプレゼントに感謝しつつ、動かない車の中で幸せを噛みしめ続けた。
そして、こんなやり取りを車で行っている間に時刻は11時2分になっていた。
車内の時計に目を向け、夜も更けてきた事を感じるが、美子が来る事は想定外だったため
この後、どこへ行こうか決めてなく、夢のようなふわふわした空間から戻った柊は
「これから・・・どうしようか・・・。」と呟くと、深刻そうな表情を浮かべて考える。
「あ、柊さん・・・。これ、お兄ちゃんから柊さんに渡しとけって言われてて・・・。」
深刻そうな表情を浮かべていた柊の顔を見た美子は、コートのポケットから小さな紙切れ出すとそれを手渡した。
「ん?これ・・・何だ?何かの住所みたいだけど?」
「お兄ちゃんが・・・予約はしておいた!柊の名前を言えば案内してくれる!って・・・手紙に書いてました・・・。」
(予約?)
「予約」と「案内」という2つの言葉。そして今日が美子の帰って来た日でクリスマスイブ。
これらから、何を予約したのかなんてすぐに分かった。
(ホント、美男は根回し良いな・・・。)
美男の気遣いに感服した後、美男の気持ちをありがたく受け取ると美子に「それじゃあ、言われたとおりに行ってみるか。」
と言い、止まっていた車を動かしだし、雪が舞い散る闇の中を都内へ向けて走り出させた。
そして、車を走らせてすぐ、長旅で疲れているはずの美子に
「美子?目的地に着くまで多分時間あるから、少し眠るといいよ。長旅で疲れてるだろうし。」
と言い、左手で頭を「ぽんぽん」と軽く叩いてやる。
その言葉と行動に眠そうな表情を浮かべると、
「す、すいません・・・それじゃあ・・・少し・・寝ますね・・・。」
と「ぼそぼそ」と小さな声で言葉を返し、「もぞもぞ」とコートの中に顔を潜らせるとすぐに眠りに就いた。
(美子・・・お疲れ様。けど、夜はまだ長いから・・・ゆっくり休めよ?)
子供のように安心しきった寝顔を浮かべながら眠る美子に、柊は心の中でそう言葉を投げかけた。
そう。クリスマスは・・・これから始まるのだ。
二人だけの・・・忘れられないクリスマスは・・・これから。
131 :
聖夜の奇跡 7:2011/11/21(月) 22:05:21.21 ID:L7PPC9Ru
「ちらちら」と舞っていた雪は都内に入ってもその勢いは変わらず
儚く消えてしまいそうだけども、それでいてしっかりとした存在感をアピールしながら
幻想的に輝く街の中を静かに舞い続けていた。
時刻は午後11時42分。
海岸から美子を起こさないよう、ゆっくりと車を走らせていたが、ようやく目的地に着いた。
目的地は・・・案の定ホテルだった。しかも、都内で1、2を争うほど人気で有名なホテル。
こんなクリスマスシーズンによく予約が取れたなと思いながら、隣で寝ていた美子を起こすと
美子が持ってきたスーツケースと・・・美子に渡そうと思っていたあの赤いハイヒールを見えない様に持ち、雪降る中、二人で足早にホテルの中へと入って行った。
「うわぁ・・・すっごい綺麗・・・。」
フロントロビーに入ってすぐ、美子は天井からぶら下がる大きなシャンデリアに目を輝かせながら見つめていた。
俺自身、こういうホテルは仕事で止まった事はあったけど・・・美子が言うとおり、本当に綺麗だ。
床は白と黒のツートンカラーのシンプルなタイルが綺麗に並べられており、
ロビーの休憩スペースには、心落ち着かせる観葉植物が綺麗に手入れされて置かれていた。
そして、壁の方には天井を支える様に白く大きな柱が何本も等間隔で立ち並び、壁にはくどすぎない程度の花の模様が施されていた。
それ以外にも、説明しきれないほどに素晴らしい芸術品の数々などに目を奪われっぱなしだ。
まさに西洋諸国に訪れたかのような気分をロビーに入っただけで味わえた。
まぁ・・・西洋諸国の国に行った事はないんだけども・・・気分として感じられたってことだ。
美しいロビーにずっと見惚れているのもありなのだが、
今日はこのホテルに泊まりに来た訳だから、このままぼーとしてるわけにもいかない。
「ふぅ」と息を吐き、意識を取り戻すと、隣で「ぽー」とした表情で辺りを見渡していた美子の手を取り
「こんなに綺麗だと、部屋の方も楽しみだな?」と微笑みながら言った。
「そうですねぇ〜。こんな夢のような空間が・・・世の中にはあるんですね・・。」
若干まだ見惚れながら辺りをゆっくりと見ていた美子に、そっと笑みを浮かべた後、
「それじゃあ、早く行こうか。」と言い、手を引いて受付まで歩いて行った。
「すいません。予約していた者なのですが・・・。」
「はい。それでは・・お名前の方をお願いできますでしょうか?」
「藤城柊です。」
「藤城様・・・。A.N.JELLの藤城様ですね。本日は我々のホテルをご利用いただきありがとうございます。」
受付の担当者は俺の名前を聞くと、騒ぎ立てるわけでもなく冷静に取り合ってくれた。
流石はプロって感じだ。きっと、このホテルもたくさんの芸能人の方々が利用してるのだろう。
だからこそ、プライベートの一時を気兼ねなく満喫してもらおうという配慮が、従業員一人一人の態度から感じ取れる。
今日1日・・・何も気にせず、二人っきりの時間を過ごせそうだ・・・。
132 :
聖夜の奇跡 8:2011/11/21(月) 22:05:54.30 ID:L7PPC9Ru
「それでは・・藤城様のお部屋へは担当の者に案内させます。すぐにお呼びしますので少々お待ちください。」
もろもろの手続きを終えると、受付担当の方が深々と礼をした。
その言葉を聞いて、美子と一緒に受付のすぐ横で待つことにした。
「凄いですね!お部屋に行くのにわざわざ案内してくれるなんて!まるでお姫様になった気分です。」
鼻歌を歌いながら嬉しそうにはしゃいでいた美子は、「くるり」とその場で体を回転させた。
「美子、嬉しそうだな。子供みたいにはしゃいで。」
「わ、笑わないでください!だって・・・こういう所、初めて来たんですから・・。」
そう言うと頬を「ぷくー」と膨らませた。
「はいはい、でも、他のお客さんが居ないからって大きな声出すなよ?」
「そ、そうですね・・・。迷惑掛っちゃいますもんね・・・。注意しないと。」
注意深く、「大きな声出さないように」と真剣な表情を浮かべて呟いていた美子に
柊は、(本当に子供みたいだな)と思い、自分の子供を見守る様な優しい視線を送った後
頭にそっと手を当てて、肩の少し下まで伸びていた後ろ髪を何度か撫でる。
美子も撫でられている事に気が付くと、気恥ずかしいと感じながらも
久しぶりに感じる手の感触に嬉しく思い、柊の体に自らの体を寄せて、気持ちよさそうに目を閉じた後、笑顔を浮かべた。
そんなやり取りをしていると担当者の方が来て
「それでは、お部屋の方まで案内します。こちらへ。」
と二人に向かって言うと、柊の持っていたスーツケースを受け取った後、「にこり」と柊に笑みを浮かべ
(可愛らしいですね。)
と小さな声で囁いた後、何事もなかったかのようにエレベーターへと歩いて行った。
その言葉に、(あ、多分見られてたな・・・。)と先ほどのやり取りを見られていた事を悟る。
けど、隣で「にこにこ」と楽しそうに笑っていた美子は気が付いていないだろうと思い、敢えて見られていたという事を伝えず
「それじゃあ、行こうか?」とこちらも何事もなかったかのように笑みを浮かべると
美子の手を握り締めて、担当者が歩いて行ったエレベーターの方へと向かった。
133 :
聖夜の奇跡 9:2011/11/21(月) 22:06:25.47 ID:L7PPC9Ru
「それでは、ごゆっくりお過ごしください。」
「ガタン。」
案内人が居なくなった後、落ち着いていた美子の表情は一気に
子供の様な無邪気な笑みへと変わっており、部屋を見渡して「うわぁ〜!」と一声上げる。
確かに、これは美子が発した「うわぁ〜。」と言う言葉しか出ないぐらいの綺麗な部屋だった。
部屋の大きさは合宿所の美男の部屋ぐらいの大きさで
壁の色はロビーの色と同じ、ライトイエローのあっさりとしたもの。
そして、部屋中央に置かれていた二人掛け用のソファの前には、横長のテーブルが置かれ
そのテーブルの上には、うっすらと色づくバラの花が描かれるティーポットにティーカップと、様々なお茶菓子がずらりと並べられている。
また、部屋の隅には大きな本棚にたくさんの観光用雑誌や海外のものと思われる書籍が
隙間なく詰められており、海外から来たお客さんでも楽しめるようになっている。
他にも、年季の入った大きな置時計がずっと時を刻み続けていたり、壁の方に暖炉に似せて暖房が置かれているなど
本当にここは日本なのか?と思わせるような部屋が目の前に広がっていた。
中でも、美子はキングサイズのベッドの上に「ちょこん」と置かれていた2つのテディベアが気に入ったらしく、目の中に入ると、駆け寄る様に置いてあったテディベアを持って再び。
「柊さん柊さん!これ!今日と明日、クリスマス特別企画で2人部屋ご利用の方限定でプレゼントって書いてます!」
まるで子供がサンタさんからのプレゼントに喜ぶように、目を輝かせてテディベアを見せてくる。
「へぇ・・・。そんなこともしてるんだ。凄いホテルだなぁ・・・。」
「はい!」と笑顔で手渡されたテディベアを受け取ると、「るんるん」と抱きしめる美子に
(本当に嬉しそうだなぁ・・・。)
と見てるだけで心が温かくなり、自然と笑みが零れ落ちた。
すると、テディベアを持って喜んでいた美子が、小さなくしゃみをした後、鼻を啜りながら
「あ、柊さん・・。あの・・・私、少し体がまだ寒いので・・お風呂入ってきます!」
と言うと、持っていたテディベアを横長のテーブルの上に置き、スーツケースから着替えを取り出し、抱えながらバスルームへと駆け込んで行った。
唐突だなぁ・・・とか走り去る美子を見て感じたが、あれが美子らしさなのかな?
と自分なりに納得のいく答えを見つけ出したが、すぐに広い部屋に一人残された寂しさに
「ふぅ・・。」と小さく息を吐き捨てると、バルコニーがある窓の目の前のチェアに
よしかかるように座り、きらきらと輝く雪が降り続ける外の景色をぼんやりと見つめた。
それと同時に、部屋に置かれていた置時計が「ごーんごーん」と鳴り響く。
外の景色を無心に見つめていたが、重たい音を響かせる置時計の方に「ちら」と目を向け
(もう12時。今日が・・・クリスマスか・・・。)
と思いながら、置時計の音に導かれる様にして深い眠りに誘われて行った。
「んん・・。あれ・・・美子?」
気が付くと眠りについていたのか、真っ白な薄地のワンピースを着た美子が微笑みながら見つめていて、
目の前にあったチェアに身を縮めながら、手を膝の上に乗せて座っていた。
「あ、柊さん?起しちゃいましたか?何だか疲れてそうだったんで、起こさないように見てたんですけど・・・。」
「んん・・・い、良いよ。寧ろ、起してくれて良かったのに・・・。」
重たい瞼を腕で擦った後、「んん」と言う声を上げ、腕をあげて背筋を伸ばす。
そして、大きく深呼吸をした後、改めて美子の姿に目が行ってしまった。
「柊さん、すっごく子供みたいに表情和らげて寝てましたよ?何だか、自分の子供見つめるような気分で・・。
あ、い、いや・・その!わ、私自身、こ、子供産んだ事ないですからね!?」
「あたふた」と自分の何気ない一言に恥ずかしさを覚えたのか、顔を真っ赤にして
何度も柊の顔を見つめながら首を横に振る。
けれど、柊の耳の中には美子の声は届いていない。何故かって?それは簡単な事。
柊は・・・目の前に現れた美子の姿に見惚れていたから。
(み・・・美子?え?・・・え?)
真っ白なワンピースを見に纏う美子は、3か月前に一緒に過ごしていた頃とは全くの別人のようだった。
あの頃は、美男として活動してたため男物の服を身に纏う事が毎日だったが
こうして、ワンピースを見に纏った美子をいざ目の前で見ると改めて女の子なのだということ事を高鳴る鼓動が教えてくれる。
無駄な装飾が無いせいか、より一層そのワンピースは黒く輝く髪の毛を靡かせる、美子の女性としての魅力を強調させていた。
そして、ワンピースの下から伸びる白く細い脚。見慣れたという言い方は変な気もするが、
「すらー」と伸びる細い脚が・・・・だんだんと俺を誘惑してるんじゃないかと思うぐらいに・・・体の奥底から熱を込み上げさせていった。
「柊さん・・・?どうか・・・しましたか?」
ただただ目の前に居る美子の姿に見惚れていた柊だが、美子の声に自分の世界から戻ってきた。
「あ、あぁ・・・美子。い、いや・・・何でもないよ・・。」
「そうですかぁ?その割には・・・何だか顔が赤い気がするんですけど・・・。」
案じ顔を浮かべながら、首を傾げて柊の様子がおかしいと思う美子だったが
「大丈夫だから。」と言う言葉に、しぶしぶ燻る想いを抱きながらも、それ以上の追究を止めようとした・・・。
のだが、美子は何で顔を赤くしているのか・・・自分の姿を見て何となく想像がついた。
それを思いつくと、すぐにその場に立ちあがり
「柊さん、そう言えば・・・私、このワンピース凄くお気に入りなんです。似合いますか?」
と柊のすぐ横に立ち、体を回転させた。
(突然の美子の行動だけど、多分この様子は・・・俺が美子の事ずっと見てたのがばれたな・・。)
ばれたならばれたで、これ以上何かを隠すような事をしたって無駄だと思った柊は
チェアから立ち上がり、すぐ横に立っていた美子の背中に右腕を回し、左手で顔を持ち上げる。
「凄く可愛い・・・。もう襲いたくなるほど・・・。」
自分の想いに素直になると微笑みながら囁きかけ、美子に反応の隙も与えず唇を押し当てた。
美子は、柊の一連の動作にほんのりと体を熱くしていたが、熱い口づけをされ、その熱は一気に最高潮まで高まった。
そして、「どきどき」と高まる鼓動に従うまま目を閉じると、ただ自分の唇を求める柊の首に両腕を回して、体を抱き寄せた。
久しぶりに交わす、大切な人との口づけ。
その久しぶりの感触をじっくり味わう様に、柊は美子の口の中でゆっくりと舌を絡める。
美子もまた、望んでいた行為をされている事に少しの恥じらいを覚えつつも
それでも、喜びがそれを上回っていたため、「どくどく」と小刻みに鼓動を刻む胸に手を当てながら、「ぬるぬる」と互いの唾液が纏わりつく舌を懸命に絡め続けた。
口づけを終え、最後に舌が離れる瞬間、美子の舌に喰らいつく様に口で咥え
「ちゅー」という音を立てながら、美子の舌を吸い上げる。
「んぁぁ・・・。」美子はその行為に、婀娜やかな表情を浮かべつつ、甘い声を上げた。
そして、吸い上げた舌を離し、互いの舌の間に繋がる透明な細い糸を
舐め上げる様に掬い取ると、既に艶気に満ちた顔を浮かべる美子の体を抱き上げ
ベッドの上にそっと横に寝かせた。
「んん・・・柊・・さん・・。」
息を荒くし、紅を潮していた美子の上に覆い被さると、ベッドに手を押し付ける。
(こんなタイミングで・・・言うのってありなのか分からないけど・・・もう止められない。)
若干だが、正常な反応をする事が出来ないであろうというのは目の前の人の姿を見れば一目瞭然だったし、朝になってからいえばいいのかとも思ったけど・・・。
けど、全てを受け止めてもらったうえで・・・・・この先をしたいという思いが止まらなかった。
「美子・・・。俺、お前に伝えたい事があるんだ。」
先ほどまで、美子に顔を赤くしていたが、その面影はどこにもなく
今はただ、目の前にいる美子の姿を強く輝いていた瞳で見つめていた。
「柊・・・さん?つ、伝えたい・・・こと?」
美子は、柊の言葉に対してか細い声で言葉を返し、じっと柊の顔だけを見つめる。
「・・・・ふぅ・・・。」
美子が見つめる中、緊張によって速まる鼓動を抑えるべく、目を強く瞑り息を吐き捨てた後
覚悟を決め、ベッドに押し付けていた手を握り、美子に一世一代の告白をすることにした。
「年が明けたら・・・俺の実家に来てほしい。」
「え・・・?柊さんの・・・実家ですか?」
「あぁ。それで・・・俺の両親に・・・お前を紹介したいと思ってる。」
「柊さんの・・・・両親に・・・?」
「ずっと・・・ずっと遠回しな言い方でしか・・・お前には伝えていなかったけど・・・。」
「・・・しゅう・・・さん?」
(やっぱり、緊張のせいなのかうまく言葉を繋げる事が出来ない。
けど、ここから先なんだ。美子に伝えたい言葉は・・・この先何だ・・・。)
どうしても静まらぬ心音を、無理やりねじ伏せる様に自らの手を押し当て
そのまま、大きく息を外へ吐き出した後、止まっていた言葉の先を言った。
「今度、俺の両親に紹介したい。結婚を前提にお付き合いしている女性がいるって・・・。」
その言葉を受け取った美子は、一瞬何が起きたのか分からなくなり
「え・・?」と言う言葉を境に、「ぴたり」と体の振動を停止させ、一心に柊の顔を見ていた。
(え・・?しゅ、柊さん・・・。今・・・何て・・・言ったの?
結婚を・・・前提に?お付き合い・・・それって・・・もしかして・・・。)
ゆっくりと柊の言葉を脳内で処理し終えた美子は、込み上げる熱い思いを抱いたまま
「柊さん・・・それって・・・。」と涙を浮かべた瞳で柊の姿を捉えた。
そして、柊は全てを吐き終え、冷静さを取り戻したのか、強張っていた表情を和らげ
優しく微笑みを浮かべた顔で美子を見つめ返した後、最後の一言に自分の想いを詰め込むように力強い声で
「再来年、アフリカから帰ってきたら・・・美子と結婚したい。」と言った。
その言葉に、先ほど言った言葉が聞き間違いではない事を再度確認すると
美子は胸の辺りに両手を添え、その手を抱きしめる様に身を縮め、目を閉じた顔を添えていた手に押し付けた。
そして、柊の言葉に今までで味わったことのない喜び、嬉しさ、幸せを感じた美子は
閉じられた瞳から喜びの涙を流した。
(お父さん・・・お母さん。私、幸せだよ。
温かくて・・・優しくて・・・力強くて・・・誰よりも私の事を想ってくれる人が・・
私の事を・・・守ってくれるから。そして、その人と・・・ずっと一緒に居られる。
私・・・今、お母さんたちと同じ気持ちだよ・・・。凄く・・・凄く幸せ・・・。
大切と想える人と・・・想いが通じ合って・・・凄く幸せだよ・・・。)
優しく広がる温かな気持ちを抱きしめる様にかみしめた美子は、零れ落ちる涙を拭きとると
満面の笑みを浮かべていた柊の首に両腕を回し、目を強く瞑った。
「私も・・・柊に・・・ずっと付いていきますから。」
最愛の人の名を初めて呼び捨てで呼んだが、それが美子の柊に対する最高の答えなのかもしれない。
今まで、付き合ってはいたけど、どうしても「さん」づけで名前を呼び続け
そこに対して言いきれる壁があるように感じていた美子。
けど、柊と結婚したいという気持ちが、その壁を壊していった結果・・・なのかもしれない。
初めて自分の名前をそのまま呼んでもらえた事と認めてもらえた事に、
柊自身も溢れんばかりの喜びを感じ、その気持ちを美子を抱く両手に込める力で表現する。
(絶対に・・・離さない。)と言うかのように、柊の腕は美子の体を強く抱きしめ離さない。
嬉しさのあまり、涙を流し続ける美子もまた、幸せそうな笑みを浮かべながら抱きついていた。
そして、その想いを胸に秘めたまま、二人は再びベッドの上に体を沈め、軽く触れ合う口づけをした。
「美子・・・ありがとう・・。」
耳元で囁いた後、首筋に口を当てその部分に赤い痕を作る様に吸い上げる。
「ぁぁ・・しゅ・・柊・・さん・・・。」
先ほどの感動の余韻がまだ残っているせいか、涙ぐんだ声で甘い声を発する。
首筋から口を離し、真赤な薔薇の花びらのような痕を指でなぞった後、目を閉じる美子に
「今日だけでも良いから、柊って呼んで?」
と穏和な声で囁きかける。
その言葉に、美「んぇ・・・。」と何とも言えない声を漏らしたが、数秒した後
「しゅ・・しゅう・・?」とたどたどしい口調で名前を呼んだ。
それに満足した柊は「ありがとう。」と囁き、首筋に残る赤い痕に舌を這わせると
ワンピースの上から胸を掴み、緩急をつけて揉み始めた。
「んぁぁ・・・ん・・。」
「ぴりぴり」という刺激が、舐められる首筋と揉まれる胸から伝わり体を震わせる。
けれど、布越しから来る刺激に美子の体は満足できなく、体をむずむずとさせた。
「しゅ・・ぅ?それ・・・じゃ・・いゃ・・。」
ワンピースの上から揉まれていた右手を掴むと、嬌声を上げながら首を横に振る。
「・・・じゃあ・・・何が良い?」
なぞる様に舐めていた首から顔を離し、優しく微笑みを浮かべる。
美子はその笑顔を捉えた後、恥ずかしそうに躊躇い、「もぞもぞ」と体を小さく揺すった後
「・・・直接・・・触って・・・。」と、掠れて聞こえないぐらいの大きさの声で伝えた。
ワンピースを着て気持ちよさそうにしている美子の姿をもっと見ていたいと思っていたが
既に限界なのか、足を内またにさせ擦らせていた美子の姿に負けてしまう。
「・・・わかった。そうして欲しいんでしょ?」
その言葉を聞くと、美子は擽ったそうに弱弱しく笑みを浮かべる。
美子の上体を起こした後、腕を上にあげさせ、ワンピースをそっと脱がした後、ブラジャーのホックを外し、「する」と下に落とし終えると
美子は再びベッドの上に沈み込み、頬を一段と赤くして、うっすらとこっちを見てきた。
(美子・・・こんなに積極的に・・・って、きっと・・・これも俺のせいなのかな?)
若干、A.N.JELLのメンバーとして活躍してた頃に、
こういう事をやり過ぎた自分にきっと責任があると思いながらも、今後、こういう行為を自重しようと考えた柊は
それでも・・・今日だけは・・・我慢し続けた自分へのご褒美で良いよな?
と都合の良い様に解釈すると、美子の左胸の頂点を口の中へ含み、右手でもう片方の胸を掴んだ。
「んぁぁ!ん!ぃぁ・・。」
「じんじん」と熱く濡れている物体と、冷たい感触がそれぞれの乳房から伝わる。
その感触は紛れもなく自分が求めていた刺激で、もどかしい想いを抱きながらアフリカの地で一人、慰めていた自分のものとは全く違った。
「んぁぁ・・しゅぅ・・ん!」
吸いついたり、弾かれたり、摘まれたり・・・・。その一つ一つに体を大きく反らさせる。
懐かしい感覚に、艶っぽい声を上げ、ベッドシーツを赤く熱を持った指が掴み
恍惚とした表情から涙が零れ、自分に喰らいつく柊の姿を映しこむと、より一層胸を上下に震わせ、「んぁん!!」と声を上げた。
「んんぁぁ・・んん・・・。」
舌の上で頂点を転がしたり、吸い上げたりする度に声を出す美子。
その頂点から口を離し、美子の耳元に顔を近づけ
「こんなに厭らしくなって・・・。もしかして・・・向こうで?」
と、敢えて一番重要な部分を言わずに美子の反応を見つめる。
「んぁ・・・んん・・・。」
「ぎゅ」と強く瞑った瞳から「ぽろり」と涙が零れた後、羞恥に赤く染まる頬のまま、小さく1度だけ頷く。
「やっぱり・・・。だから、こんなに敏感になってるんだ・・・。」
囁き終えた後、首を軽く舐めるのと、右の頂点を弄っていた指を強く摘むのを同時に行う。
「ぁぁん!んぁ!」という喘ぎ声と同時に、美子の体は「びくん!」と跳ね上がり
「んぁ・・・んはぁ・・・。」と何度も胸を上下にさせながら呼吸をしだす。
そして、右手の代わりに左手をその場に残すと体を起こし、愛液が既に溢れ出てる秘部へ視線を移した。
「美子もわかるでしょ?自分のここが・・・こんなにびしょびしょだって・・。」
下着の上から濡れている割れ目をなぞる。
「ぃぁん!ゃ!んん!!」
愛液によって感度を増したその部分に触れるだけで甲高い声を出し、すぐに離れて行った指を恋しく思うと、腰を浮かせて近づけようとする。
けれど、その指はもう近くに存在はしなく、「目を開けて?」と言う柊の言葉に
ゆっくりと瞼を開くと、先ほど触れていただろう愛液で微かに濡れる人差し指を見せられる。
「ほら・・・これ、美子のだよ?」
わざとらしく意地悪そうな笑みを浮かべ、濡れた人差し指と親指をくっつけたり離したりを繰り返し、指の間に生じる厭らしく輝く細い糸を見せつける。
その糸を見ただけで、美子の心音は「どくん!」という大きな音を体内で轟かせ
体の中から熱いものが込み上げ、それから逃れようと目を瞑り、顔を逸らす。
柊はそんな美子を誘惑する様に小さく甘い声で
「そろそろ・・・限界なんじゃない?」
と囁き、再び秘部の割れ目を掠る程度になぞり上げる。
「ぁぁ・・・。」
触れられるけど、すぐに遠のく指先にもどかしさを感じ、もっと欲しくなる。
誘惑する様に囁きかける柊さんの手で・・・限界を迎えたい・・・。
何度も掠る様に触れていた柊の右手を目を閉じたまま掴むと
涙で潤んだ瞳を開き、弱弱しく響く荒い呼吸の音を飲み込むように抑え込む。
「しゅ・・ぅと・・・い・・き・・たい。」
顔から火の出る思いだが、それでも柊の手によって限界を迎えたいと思う美子は
恥ずかしい思いを押し殺し、柊の右手をそのまま自らの秘部へと当てさせようとした。
けれど、真っ赤に染まる美子の上半身を起こし、そのすぐ後ろに自分の体を潜り込ませ
美子を自分によしかからせるような体勢にすると、美子の左手の上に自分の手を添える。
「しゅう・?」
「一人でやるのが恥ずかしいなら・・・俺も一緒にして上げる。」
微笑んだ後、美子の手に添えた左手と一緒に、愛液溢れる秘部に互いの中指を侵入させる。
「んぁぁぁ!」
二本の指が内部に入ると、天井を仰ぎ見て、艶かしい声を上げると
腰を浮かせ、「どくどく」と秘部から込み上げてくる刺激に体を「ビク!」と震わせた。
「んぁぁぁ・・・。」
内部に中指が全て収まると、気の抜けた声を出す。
「それじゃあ・・・動かすよ?」
美子のすぐ後ろで見守る様に見ていた柊は、「ぬるぬる」と締め付けられる秘部で
重ねていた美子の指も一緒に動かす様に上下に暴れさせ始めた。
「んぁ!ぁ!んんん!ゃ!」
指が動き始めると、「ぬちゅぬちゅ」と言う音が響きだし、その音を聞いてすぐに
美子が上体を柊の体を向く様に捻じれ、柊の服の胸元辺りを掴んで「びくびく」と小刻みに揺れている。
柊は縋る様に身を寄せてきた美子の肩を右手で掴むとそのまま抱き寄せ、
「どう?気持ちいい?」とすぐ目の前にある耳へと囁きかける。
その言葉に美子は小さく数回頷く。
「美子・・可愛いよ。」
もう一度囁くと、胸の辺りに寄せられていた頭を優しく撫で、美子の意識をそちらへ向けている間に
秘部の中に入れていた自分の指を、気づかれないように外へと抜き去った。
抜き去られた後も、美子は柊の指が抜き去られた事に気が付かず、一心に指を動かし続けていた。
引き抜いた左手に目を向け、「ぽたぽた」と愛液が零れる中指を口元へ持っていき
「ぺろり」と一度だけ舐め、美子の愛液の味を味わった後、
(美子・・・。お前はいつもこうやってんだな?)
と思うと、何も考えず秘部の中で指を動かし、その刺激に体を震わせながら
婀娜やかな表情を浮かべている美子の姿に胸を熱くしながら、何も言わず見つめ続けた。
「んぁ!んぁ!しゅ・・ぅ!駄目!も、もう!んぁ!!」
限界を迎える間際でも、美子は未だ柊の指と共に自分の指が動いているのだと思っている。
そのため、限界迎えそうになって今、柊の指の勢いを止めて欲しいかのように、何度も首を横に振っていた。
敢えて、最後まで自分の指と動いている様に思わせようと思った柊は
「もう良いよ?我慢しないで?」
と、美子を縛る限界への道を切り開いてあげるかのように囁く。
その言葉を聞いた美子は、「こくこく」と何度も頷くと
「んぁぁ!ぃゃ!い、ぁ、んんんん!!!」
と大きな嬌声を上げ終えた後、「びくん!」と体を大きく跳ね上がらせる。
「んぁ・・・んぁ・・はぁん・・・。」
小刻みを続けながら、肩で呼吸していた呼吸を整えようと空気を大量に取り込むように息を吸っている。
そろそろ、美子に本当の事を伝えようと思った柊は、秘部が咥えていた美子の手を
「ずるり」と引き抜くと、美子の顔の目の前に濡れた中指を持ってくる。
「美子、一人でイッちゃったね。いっつもこういう風にしてたんだ。」
「はぁ・・・んぇ?」
柊の言葉に、閉じていた目をうっすらと開くと、もう一度「ぇ?」と声を漏らす。
「ほら・・・。美子の指だけ・・・こんなに濡れてるぞ?」
「・・・・ぁ。」
ようやく、暴れている途中に柊の指が抜かれた事を、自らの指だけが濡れているのを見て気が付く。
「美子・・・誰のせいでこんなに厭らしくなったんだろうね・・・?」
惚ける様な表情をしながら囁く柊。
「んもぉ・・・。柊の・・・意地悪・・・。」
恥ずかしすぎて柊の顔を直視できない美子は、「むす」とすると、真っ赤な顔を隠す様に柊の胸に顔を押し付けた。
「それじゃあ・・・今度は一緒にイこう?」
拗ねる様に顔を押し付けていた美子に優しく語りかけると
何も言わずに美子の上半身を再びベッドの上にそっと置くと、美子が最後に纏っていた下着を下ろし、
閉じていた足を両方の太ももを前方へ倒す様に押して、「ぱっくり」と広げられた秘部へと目を向けた。
「ぃゃ・・・。そ、そんなに・・・見ないでください・・。」
あられもない姿を見られ、胸の辺りで両手を握りながら涙を瞳に溜めていた美子は
柊の手によって開かれている脚に力を入れて、閉じようとするが、脚は一向に閉じることはない。
そんな美子の様子などお構いなしに、口を開く秘部に自分の口を当て、入口付近に溜まっていた愛液を、全て飲み干す様に吸い上げる。
「んぁ!あぁぁ!んぁ!」
「美子はやっぱり厭らしいね・・・。いくら吸っても溢れてくる。」
弄れば弄るほどに溢れ出す愛液を、人差し指を入れ、穿る様に外へ勢いよく引き抜くと
ベッドの上に愛液が撒き散らされ、愛液が付着した部分が黒くシミが広がる。
「んぁ・・・ん・・だ・・って・・・とまら・・ない・・・。」
「止まらないの?」
「びくびく」と体を震わせると、小さく「こくり」と頷く。
「ホント・・・誰がこんなにしたんだろうね・・・。こんな艶かしい姿見たら・・・我慢できなくなる。」
もう自分自身を抑える事が出来なくなり、舞台衣装からゴムを取り出し、
衣装をベッドの脇に脱ぎ棄てると、固く腫れあがる竿の部分にゴムを取り付ける。
そして、恥ずかしそうに顔を逸らす美子に
「こんなにしちゃったんだから・・・ちゃんと償わないとな・・・。」
と美子の心に残る最後の物足りなさを補う決心がついた柊は、
最初に首筋に付けた赤い痕のすぐ下に、もう一つ同じような痕を残すと、開かれた入口に視線を移した。
「しゅ・・・ん・・・。」
肩で息をする美子はもうそれ以上、何かを考え、何かを発するほど意識が残ってはいない。
ただ、本能のまま溢れ出る言葉を外へと出すことしかできない状態だった。
「美子・・・何も、何も考えなくて良いよ?だから・・・あと少しだけ、一緒にいよう?」
うっすらと開く瞳から見える柊の笑顔に、美子も弱弱しく笑みを返すと柊の首へと腕を回し、しがみつく様に抱きついた。
上体を宙に浮かした状態は辛いだろうと感じた柊は、愛液によって濡れる秘部に
勢いよく自分の竿を挿入すると、美子の背中に手を回して、自分の上体を前へと倒し、美子の体をベッドへと沈める。
そして、美子の事を速攻で追い上げるかのように最初から激しく腰を動かし始めた。
「はぁぁ・・ん!」
「美子・・・・んん・・どぉ?」
「んぁぁ!んん!!い、ぃぃ・・ん!」
柊の竿が美子の秘部に叩きつけられるたび、美子の体は大きく反られ
甘く、それでいて余裕のない辛そうな声が部屋に響き渡る。
そんな表情と声、そして締め付けられる秘部内を動き続ける竿に直接伝わる刺激に
柊自身もだんだんと息を荒くし、微笑んでいた表情は込み上げる快感に耐える様に歪ませていた。
「んぁ!あぁ!しゅぅん!しゅう!」
ぼんやりとした意識の中、何度も思い人の名前を呼び続ける美子。
その名前を呼ぶ美子の声に、背筋を伸ばしながら腰を動かしていた柊の上体が、美子の体に密着するように前へと倒れる。
「美子・・・ここにいるよ?」
柊を探す様に、目を閉じていた美子の宙で動いていた両手に声を出してすぐ近くに居る事を伝えた。
この言葉に、美子は目の前にある物体にただただしがみつく様に抱きつく。
その抱きしめに応える様に、柊も美子の体を抱き寄せ、美子の顔のすぐ隣に顔を沈める。
「んぁ!しゅぅ・・だ、だめ!ん!だめ!いゃ!ん!!ぁぁああ!!」
そして、抱き寄せられてすぐに秘部に侵入していた竿が、美子の中で愛液が溢れるのを感じ、すぐ後に美子は甲高い声を上げながら限界を迎えた。
「んん!」
その後、柊自身も締め付けが一層強くなった秘部に限界が近付いたのか、美子の体を力一杯抱き寄せると
「美子・・・俺も・・・。」
と一言残すと、ゴムを付けた状態で美子の内部で限界を迎えた。
互いに荒々しい呼吸をしながら、目の前に居る大切な人の顔を捉える。
「しゅ・・・ぅ・・・さん・・。」
もうすぐにでも意識が無くなりそうな美子は、最後に残った意識で柊の名前を呼ぶ。
「美子・・・。」
柊もその声に優しい口調で美子の名前を呼ぶと、最後に一度舌を絡め合う深いキスをした。
そして、美子はキスを終えると「にこ」と幸せそうな微笑みを浮かべた後、すぐに疲れ切った表情に変わり、その場で意識を手放した。
「美子・・・無理させてごめん。ゆっくり眠れよ?」
数回頭を撫でた後、身に纏っていたワンピースをそっと着させると。ベッドの中へ入れた。
「お休み・・・美子。」
すやすやと眠る美子のおでこに軽い口づけをした後、微かに笑った美子を見終えると
脱ぎ棄てられていた衣装を持って、バスルームへと入っていた。
12月25日 午前5時51分・・・
窓際から香るハーブの香りと、朝陽によって美子は目覚めた。
「んん・・・あ、あれ・・・?さっきまで私・・・・・・。」
背筋を伸ばし、大きく深呼吸をすると自分の体に身に纏っているワンピースに違和感を感じる。
(あれ・・・さっきまで・・・柊さんと・・・。え・・・夢?)
夜の出来事が夢のように感じられた美子は、右側の首筋に手を当てる。
そして、少し腫れあがった痕を指が捉えると
(あぁ・・・やっぱり・・・夢じゃない。)
と二人の出来事が夢じゃないという事を実感し、何となく恥ずかしい気持になりながらも
ほっこりと温かくなる胸の辺りに手を添えて、身を縮ませて大切な時間を噛み締めた。
そんな事をしていると、窓辺に座りながらハーブティーを飲んでいた柊が、微笑みを浮かべながら近付いてきた。
「美子、おはよう。よく眠れた?はい、ハーブティー。淹れたてだから少し熱いからな?」
ベッドの上に座る様にしていた美子の横に座ると、ハーブティーの入ったティーカップを手渡す。
「柊さん、おはようございます!」
「にこり」と笑みを浮かべると、手渡されたティーカップを受け取り、ハーブティーを一口だけ口に含む。
「んん〜。凄く美味しいです!」
「そうか。その様子だと、ゆっくり休めたみたいで良かったよ。」
そう言うと、笑顔を浮かべる美子の頭を優しく撫で始める。
「えへへ・・・何だか・・・私、凄い長い夢を見てるような気がしました。」
「夢・・・?」
両手でティーカップを持ち、上機嫌そうに振舞う美子に、柊は首を傾げながら見つめた。
「柊さんに、私がたっくさん苛められる夢です!」
わざとらしく陰険な目つきをして、横目で「ちら」と柊を見る。
「あ、あぁ・・・そ、それは・・・うん。凄い夢だな。」
冷や汗を掻きながら誤魔化す様に柊は惚ける。
「ふふ・・・。誤魔化さないでください!あれは全部夢じゃないです!」
「ま、まぁ・・・知ってたけどさ・・・。」
「もぉ・・・。柊さん、勝手に記憶操作しないでくださいよ・・。」
「じー」と疑いの眼差しを向ける美子に、柊は話題を逸らす様に
「そ、そう言えば!美子に渡したい物があったんだ!」と言い、慌てながら立ち上がると
窓辺に置かれていたチェアの近くまで向かって行った。
慌てていた姿に、美子は「くす」と小さな笑い声を発すると、自分も渡したい物があった事に気付づく。
ベッドサイドにティーカップを置き、スーツケースを漁りだし、茶色い袋を取り出すと、抱きかかえるように柊が居た窓際まで駆け寄って行った。
そして、二人は同じタイミングで互いの名前を呼んだ。
「しゅ、柊さんから先に!」
「いや、ここはレディファーストってことで、美子から!」
「え〜!レディファーストの使い方違いませんかぁ?」
「良いから良いから!何?」
うまい事丸め込まれた美子は、「ぶー」と口を尖らせたながら頬を膨らませた後
「ふぅ」と息を吐き捨て、「にっこり」と笑うと先ほど持ってきた袋を渡した。
袋を受け取った柊は中身を取り出すと、中から黒いマフラーが現れた。
「美子・・・これ・・。」
マフラーを宙に浮かべながら、美子に問いかける。
「ほ、本当は、アフリカに行く前に渡したかったんですが・・・渡し損ねちゃって。
だ、だから、これは、わ、私からのクリスマスプレゼントです!」
「もじもじ」と体を動かしながら、改めてこういった物を男性に渡すことに恥じらいを覚えた美子は、頬を赤らめて柊を上目で見つめた。
良く見ると、端っこの方がちょこっと解れていたり、縫い合わさってない部分が少しだけある事に、これが美子の手作りの品だという事に気が付く。
そして、敢えてその細かな部分を見ない事にし、何も言わずマフラーを首に巻きつけ
「これがあれば、いつでも暖かいな。ありがとう。大切に使わせてもらうよ。」
と微笑みながら言うと、美子は「えへへ・・・」と照れ臭そうに笑っていた。
「それじゃあ・・・俺も、美子にプレゼント!」
嬉しそうに笑っていた美子に、柊も手に持っていた袋を手渡す。
「これ・・・何ですか?」
袋を受け取ると、首を傾げて中身を聞く。
「それは開ければ分かるよ?」
その言葉を聞き、中に入っていた箱を取り出し、箱を開く。
目の前からは太陽の日差しによって真っ赤に輝くハイヒールが現れた。
「うわぁ・・・。綺麗な靴ですね・・・。あ・・・れ?この靴・・どこかで・・・。」
しかし、この靴をどこかで見た様な気がした美子は、目を閉じて記憶の中を探り始める。
そして、すぐにこの靴がアフリカに行く前日に、自分が見つめていたものだという事に気が付くと、目を見らいて柊の顔を見つめた。
「実はさ・・・俺もお前がアフリカに行く前日、お前が凄く欲しそうに見つめてたの見て
この靴買ったんだ。けど、アフリカに行くって分かったから、こんなハイヒール持って行かせるわけにもいかないだろ?
だから、次に日本へ帰って来た時に渡そうってずっと思っててさ。」
「凄く嬉しいです!本当にありがとうございました!」
満面の笑みを浮かべながら、もらった靴を胸に抱きしめる様に抱く美子。
その笑顔に笑みを浮かべ、「こっちこそ。こんなに愛情のこもったプレゼントくれてありがとう。」と言った。
しばらく、その場で笑みを零しあった二人。
けれど、ふと、美子の心の中で夜の出来事が本当に夢じゃなかったのかと心配になってしまった。
それに、あの時は意識が朦朧としてたから、もしかしたら夢と現実がごっちゃになってしまったのかもしれない。
そう思うと靴を箱の中にしまい、柊に真剣な眼差しを向けた
「柊さん・・・その・・お聞きしたい事が・・・。」
「・・ん?どうした?そんなに改まって。」
緊張のせいか、身を強張らせながら震える口元に力を加えた。
「柊さんと・・・私、ずっと・・・一緒に居ていいんですよね?」
「結婚」と言う言葉を出す事が出来なかった美子は、回りくどい言い方で柊に聞く。
すると、「くす」と笑い声をあげて柊は美子を見つめた。
「な、何か・・変なこと言っちゃいました!?わ、私!」
「い、いや・・・ごめん。あんなタイミングで言ったから・・・きっとうろ覚えなんじゃないかと思ってさ・・・。」
口元に手を抑えて笑っていたが、すぐにその表情は真剣で強い眼差しへと変わった後
両肩にそっと手を添え、目線を直線状にすると
「美子が忘れても何度だって言うよ。アフリカから帰ってきたら・・・俺と結婚してほしい。」
と力強い口調で美子に言い切った。
(あぁ・・・やっぱり、やっぱり・・・夢じゃないんだ・・・。)
溢れんばかりの喜び。それが再び美子の胸に宿り、現実である事を心の底から嬉しく思う。
そして、胸一杯溢れる幸せを抱きながら、柊の胸の辺りに顔を寄せ、幸せそうに笑う。
「美子・・・。絶対・・お前の事幸せにするから・・・。」
目を閉じて、柊の言葉に耳を傾け続けていた美子に囁きかけると、そっと美子の体を包むように抱き寄せる。
美子は溢れ出る幸せに喜びの涙を流すと、涙ぐんだ声で
「はい。私も・・・柊の事・・・絶対に幸せにします。」
と柊に言葉を返した。
しばらく二人はその場で永遠の愛を誓うように抱き合っていた。
そうしていると、部屋に置かれていた大きな置時計が朝の6時を告げる鐘の音を響かす。
その鐘の音は、まるで二人を祝福するように部屋中に響き渡り
同時に、窓の外に昇る太陽は、二人を見守る様に温かな光を降り注ぎ続けた。
そんな中・・・二人はずっと、ずっと何も言葉を発せず、ただ目の前に居る人を幸せそうな表情で抱きしめ続けていた。
以上です。途中で連番を間違ってしまい申し訳ない;;
そして、毎回暖かな感想をくださる方々、本当にありがとうございます!
それと、クリスマスネタを置いていって下さった方にも感謝です!
今回もこのような長文&駄文でもうしわけありませんでした。
それでは、失礼しました。
大作きてるwとりあえず先に補足だけします
>>123 >>121です。こちらこそ、はしょってすみませんw
廉たちに「私が女だってことって言ってない!」です。美男は忘却、柊わざとw
>>146 スレ汚しスマソ。慌てすぎた
「私が女だってこと言ってない!」ですorz
>>147 補足ありがとうございます!こちらこそスミマセン…。
意地悪な柊さん、素敵でした!廉&勇気が柊さんを取られてしまったって
嘆いている図が、たまらなく好きwGJでした。
おおお、柊さんターンきたね。
良い柊さん、初期に2人だけの秘密の関係を築けば上手くいくというお手本みたいだ。
クリスマス柊さん、ぜひ雪降る金沢編で、ご両親報告→婚約?も・・・おながいします。
>>145 こちらの柊美子もお幸せに…!
大作お疲れさまです
舞台衣装にゴム入ってる柊さん…絶倫廉さんとは別なところですごすぎるw
>>145 DT柊さんきたー
舞台衣装にもちゃっかりゴム忍ばせてる柊さんにツボったw
廉さんがプロポーズしたかと思ったら柊さんもいきましたね。
これは続きが楽しみだ〜w
>>121 こうなる前の柊美男のエピ読みたいです
>>145 DT柊さん、なぜ衣装にはいってるんだwww
さすが柊さんだ。
ST柊さんの所の廉さんはNANAちゃんと幸せそうだし、
美男と勇気もなんか仲良さげでイイ。
柊美子祭りキター!!
どっちの柊美子もS柊さんが見れてニヤニヤでした!GJ!!
>>145 以前クリスマスネタを呟いたものです。こんなに早く大作にしていただけるとは!ありがとうございました!この二人の行く先、これからもついていきますwww
いつもの異色カプ好きが、また投下させていただきます…。
廉×RINAで、エロありです。苦手な方はご注意ください。
設定としては、美子と美男の入れ替わり事件は起こらなかったってことで。
美子好きな方はすみませんw
155 :
風邪の悪戯1:2011/11/22(火) 21:47:24.19 ID:XZSXQzhq
A.N.JELLの専属スタイリストとして安藤社長から辞令を渡され、もう5年ほどが経った。
以前はガールズグループを担当していたのに突然で不思議だったけれど、やってみれば男性用の衣装選びやアクセサリー選びも楽しい。
何よりも、マネージャーの馬淵が頼りないせいか、何かと姉のように慕ってくれるメンバーの柊や勇気、美男はカワイイし。
ただ、リーダーの廉は気難しくて口数も少なくて。いろいろと衣装のこだわりも多く、やや手を焼いている。
それなのに…最近いつの間にか、ふと見せる寂しげな表情…音楽に対するひたむきな姿勢。
ごくたまに見せる優しい笑顔、歌っている時の艶やかさに心を奪われていた。
まさか、自分が廉にこんな気持ちを抱くなんて…。
「ま、それに気付いたところでどーしようもない、か…」
「おい、どうかしたか?」
衣装合わせをしている時につい独り言が出てしまい、その悩みの種である廉に聞かれてしまった。
「あ、いやぁ、何でもないわっ!それよりコレ、早く向こうで着替えてきて」
カーテンで仕切られた試着室へ行かず、廉は面倒がって私の横で着替えを始めた。
廉の長い手足や広い背中を見つめるだけで胸は苦しくなってくる。
どうやったら、この想いを消せるのだろう…。きっと、望みなんてない。
「RINAさん、顔が赤いな…体調悪い?大丈夫?」
ぼーっとしていると、柊が優しく声をかけてきた。
「風邪じゃない?!俺、薬持ってるよ!飲む?」
勇気も心配して、ガサガサと自分のバッグを探している。
「季節の変わり目はひきやすいしね。体冷やさないで」
美男は部屋の隅においてあるウールのひざ掛けを渡してくれた。
「俺らに移す前に今日は早く帰れよ。とにかく、さっさと寝ろ」
他の3人とは対照的に、想い人にはキツく言い渡された。
「あはは、大丈夫よー!ありがとね…」
そう言ったものの、言われてみれば少し頭痛もして体が熱い。
馬淵が迎えに来て4人をテレビの収録に送り出した後、私は椅子に座ったままテーブルに突っ伏して眠ってしまった。
156 :
風邪の悪戯2:2011/11/22(火) 21:48:06.25 ID:XZSXQzhq
「RINA?おい、こんなところで寝てんな!起きろよ」
「え…?廉?」
廉に肩を揺す振られて起きると、既に2時間ほど経過していた。
番組の収録を終えて戻ってきたメンバーが心配そうに私の顔を覗き込んでいる。
廉の手のひらが、私の額に当てられた。
「…かなり熱あるな。早く帰るぞ。お前の車のキーは?」
「え…?自分で運転でき…」
「そうは行くかよ。馬淵に頼むか…あ、あいつ今日は無理か」
この後、美男のソロでの収録で馬淵はついて行くことになっていた。
「じゃ…俺が送る。おい、柊。勇気と一緒に先に帰ってくれ」
「わかった。RINAさん、お大事に」
「早く元気になってね〜!」
私は意外な展開に、ふらふらと立ち上がって廉の後ろを歩いた。
「ねぇ廉…ほんとに自分で…」
「いいから、黙って送られろよ。ほら、キー貸せ」
振り返った廉の顔が、あまりに優しくて。速くなる鼓動に胸を押さえながら素直にキーを渡した。
「こっから30分くらいだよな?それまでこれ被って寝とけよ」
車内で、廉はナビを私の自宅に設定しながら自分のジャケットを私に被せた。
でも私の車を運転する廉…なんていう光景に、私は助手席で眠るのがもったいないと思ってしまう。
薄暗い空間で浮かび上がる廉の横顔に見惚れながら、とろんと下りてきた瞼との闘いに負けて眠りに落ちた。
((目的地に到着しました。運転お疲れ様でした))
聞きなれたナビのアナウンスで目を覚ますと、マンションの暗い駐車場に着いたところだった。
「起きたか…?どこに停めればいい?」
「あ、あの奥の…7番のトコにお願い」
廉は中をゆっくり進み、スムーズに駐車した。
「ほんと、ありがとね。助かったわ、もう大丈夫」
車から降りてドアを閉めようとした時、いきなり眩暈がしてその場に座り込んでしまう。
「おいっ、全然大丈夫じゃねーぞ!」
「あ、あれ…?おかしいわね」
のろのろと立ち上がると、廉が腕と背中を支えてくれた。
「部屋に行くまで送ってやるよ。途中で倒れられても困るからな」
そう言ってそのまま廉は、7階の部屋まで一緒について来てくれる。
なんだかんだ言って、やっぱり優しい…。
熱で気弱になっているせいか、いつも以上に廉を想う気持ちが強くなってくるのを感じていた。
157 :
風邪の悪戯3:2011/11/22(火) 21:49:01.78 ID:XZSXQzhq
「廉…ありがとう、もうほんと大丈夫だから」
「さっきから、お前の大丈夫はアテになんねぇな」
部屋に入ると、廉はキッチンから水を持ってきてくれた。
「ほら、薬飲んで早く治せ。明日は俺らもオフだしゆっくり寝とけよ」
「うん…そうね。そうさせてもらう」
私がベッドに座って薬を飲むと、廉は一安心したようにふぅ、と息をついた。
「じゃあ、俺は帰るから。おやすみ」
「・・・おやすみ」
薬を飲み、ベッドに横たわる。
最近少し忙しかったから…もう若くはないなぁ、などと考えていたけれど、すぐに意識が飛んだ。
滅多に飲まない薬が効いて、翌朝の目覚めは最高に良かった。
体からダルさが消えて、むしろいつも以上に元気な気もする。
熱ももう下がったみたいだ。
「んん〜〜〜〜っ!と」
思い切り伸びをして起き上がろうとすると、足元が少し重い。
「…!!廉っ!やだ、なんで?」
ベッドの縁に腕を乗せて、なぜか昨日帰ったはずの廉が眠っていた。
状況が把握できなくて頭には「なんで?」ばかり浮かんでくる。
でも子供のようにあどけない廉の寝顔をそっと覗き込むと、自然に笑みがこぼれてしまった。
「…んん?」
「あっ、廉!どうしてあんたが…」
「起きたか。あ〜体痛ぇ…」
ひとつ伸びをして、廉は体を起こした。
「熱は下がったか?」
「うん…多分。あ、あんた昨日、帰ったんじゃなかったの?」
「覚えては…なさそうだな」
廉は呆れたように言ってベッドに腰掛け、ふぅ…とため息をつく。
「あたし…何か、しちゃった…?」
全く、覚えてなどいなかった。
158 :
風邪の悪戯4:2011/11/22(火) 21:49:54.17 ID:XZSXQzhq
廉が言うには、私が寝たと思って帰ろうとすると、ずっと廉の名前を呼んでいて…帰るに帰れなくなったらしい。
もう、なんていうか。恥ずかしすぎる…。
「あぁ〜もうっ。ほんとにゴメン…」
「…たく、それにしてもお前はこういう時に、俺のほかに名前呼ぶ男も居ないのか」
「それはっ、廉だから…!」
つい、口が滑った。でももう、隠しておけない。苦しい。
「俺だから…?何なんだ?」
「あんたを…好きなのよ」
言ってしまった。でも胸のモヤモヤが取れて、どこか清々しい気分でもある。
こうして、後先を考えずに行動してしまうのは悪いクセだけど、後悔は無い。
少しの沈黙の後、顔を上げて廉を見ると難しい顔で固まっていた。
「ごめん、あんたは迷惑だよね」
「あ、いや…。その、驚いたっつーか」
「聞かなかったことには出来ないだろうから、せめて聞き流してよ」
ちょっぴり強がって、そんな風に言ってみる。
本音を言えばもちろん、気持ちに応えて欲しいけど…。
「もう聞いちまったんだから、そんなの無理だ」
そう言った廉の顔はなぜか真っ赤になっている。
どう対処したものかと視線を泳がせて考えているのが妙に可愛くて。
ほんの出来心。私はそっと廉の顔を覗き込んだ後、その唇を奪った。
私は目を閉じていたけれど、廉は目を見開いているのがわかる。
柔らかい唇を軽く吸い、舌でペロリとなぞって口を離した。
「あははっ、告っちゃった記念に、ご馳走様でした〜なんて…」
「お前…」
「怒っちゃった…?やっぱ」
おどけて見せたけど、さすがにマズかったか…。
「お前から、仕掛けたんだからな」
「えっ?」
一瞬、何が起こったかわからなかった。
廉の顔が目の前に来て、さっき触れ合わせた互いの唇が、また重なる。
そしてさっきみたいに唇だけでは終わらない。
「んっ…ぁ…」
少し口を開くと声が漏れ、それを合図に廉の舌が入り込んできた。
私は廉の頭の後ろに手を回し、より深くそのキスを貪る。
顔の角度を変えて、もっと…もっと。2人の唾液が交じり合って口の端から零れ落ちた
159 :
風邪の悪戯5:2011/11/22(火) 21:51:37.16 ID:XZSXQzhq
「はぁ…ん…はっ…」
名残惜しいキスが終わると、紅潮した頬の廉が潤んだ瞳で私を見ていた。
そう、男の本能が剥き出しになっているかのような…。
「昨日から…誘ってるとしか思えないぞ、お前」
「昨日…?」
「俺の名前ばっかり呼んでる時…なんか、エロすぎなんだよ」
どんな顔して廉の名前を呼んでいたのか自分ではわからないけれど、そのおかげで廉がこうして、
朝までそばに居てくれたのなら嬉しい。
「あたしは…廉に、抱いて欲しいって思ってるから」
それがたとえ、一度きりだとしても。
この体と心の火照りを、このままにしておけない。女の本能で、そう思った。
「RINA…」
廉は私の名前を呼ぶと、再び口づけてくる。
それと同時に、着ているTシャツの中に手を入れられてゾクリとした。
「れ、ん…」
探るように胸のあたりでもぞもぞと動く廉の手が焦れったくて、自分から着ているものをベッドの下に脱ぎ捨てた。
廉も着ていたシャツを脱ぎ、私の上に覆いかぶさる。
首筋や鎖骨にキスを落とされて、ぴくりと反応した瞬間、指で胸の先端を弄ばれた。
「あっ、ゃんっ…」
廉はもう片方を口に含んで吸い付き、舌の先で転がすように舐める。
胸から伝わってくる快感に身を任せながら、私は自分の中心がじわりと潤っているのがわかった。
「廉…こっちも、触って?」
夢中になって胸を愛撫していた廉は、私を一瞥してから無言で頷いた。
長い指が、私の下腹部へと降りてくる。そしてショートパンツも下着も全て足元へ追いやられた。
ピチャ…という音が、この部屋に妙に響いて聞こえると、割れ目に沿って指が滑る。
「すげぇな…」
「ぅ、んっ…ぁっ」
ぎゅ、っと指の付け根まで押し込まれてヌルヌルした中を擦られる。
気持ちのいい所を指が何度も掠めて、その度に愛液が奥から溢れてきた。
「廉…そこっ、いぃっ…あ、んっ」
私の中をかき回す手の動きが速くなり、廉の親指が私の膨れたクリトリスに当たった時、快感が絶頂を迎えた。
中に入っていた指を、ひくひくと震えて締め付けると廉はゆっくり手を外に出した。
「こんなに、濡れるもんなんだな…」
廉が自分の手に絡みついたものをマジマジと見て呟く。
もしかして…廉って、初めて?…だとしたら。
「すっごい嬉しい…」
「えっ?」
自分から言わないのに、私が初めてなんでしょ?なんて聞けば、廉は多分
途中でやめてしまうかもしれない。意外と小心者なんだから…。
私は自分の体を起こして、廉の耳たぶを軽く噛んでから首から肩にかけて舌を這わせた。
「ぅっ、あ…」
思わず声を出す廉を、私は容赦なく攻め続ける。
色白の胸元にある薄い褐色の乳首まで舌を下ろすと、一気に舐めあげた。
ぴくん、ぴくん、と小刻みに震える廉の下半身は、立派に隆起している。
160 :
風邪の悪戯6:2011/11/22(火) 21:52:32.02 ID:XZSXQzhq
「脱いで…廉」
私がそう言うと、廉は素直にベルトを外して一糸纏わぬ姿になった。
硬くなった廉のモノは、真上に立ち上がって存在を主張している。
手を伸ばしてその先端にそっと触れると、既にぬるりと湿っていた。
「食べてもいい?」
「え?…お、い…ちょっ」
それを口に含んで舌を動かせば、さらに大きく膨らむのがわかった。
自分の唾液がじゅるじゅると音を立てているのを聞くと何とも卑猥に思えてくる。
「RINAっ、ちょっと、待て…!」
苦しそうな表情で、廉は私の動きを止めさせた。
「気持ちよく、なかった?」
「あ、いや…。ヤバかった…」
廉は伏し目がちに照れ臭そうに言うと、ギュ、と私を抱きしめた。
「いまさら、だけどさ。本当にいいのか…?」
何を言うかと思えば、本当にいまさら。いいに決まってる。
それに廉を欲しているのは私のほうだ。
「あたしは廉と、繋がりたい」
抱き締め返す腕に力を込めて、そのまま自分が仰向けになるようにベッドに横たわる。
1つ軽くキスをしてから、脚を広げて廉のものを迎え入れる準備をした。
161 :
風邪の悪戯7:2011/11/22(火) 21:53:02.73 ID:XZSXQzhq
「え、っと…ん?」
廉が自分のペニスを握って挿入を試みている…けど。
「あの、廉…そっちじゃなくて、こっち…」
思わず後ろのほうに入りそうになっていたので、そっと手を添えて誘導した。
廉は顔を真っ赤にしていたけれど、それもたまらなく愛おしい。
私の中に、廉の熱いものがゆっくりと侵入してきた。
「ぅ、あ…んっ」
廉の背中に腕を回して、根元までしっかり入るように密着させると「んっ…」と廉からも声が漏れる。
「動い…て、いいよ…」
そう言うと、廉は私の腰を支えるようにして動き始めた。
始めは少しノロノロとした動きだったけれど、動くごとにますます互いの体液が交じり合い、滑らかに出し入れ出来て徐々に動きが速まる。
「あっ、ぁんっ…んん…!」
廉と繋がった部分に神経を集中させていると、自分ではないような、いやらしい声がいつの間にか漏れてしまった。
切なげに、快感に顔を歪めていた廉が少し動きを弱める。
「廉…?」
「や、っばい…そろそろ…」
「うん…大丈夫だから、そのまま出して…」
太ももの内側に力を入れ、私の中で廉を奥まで感じた。
「ぅ…はぁっ…」
「ん、ぅん…」
中でぴくっぴくっ、と震えて廉の精が果てる。
そして名残を惜しむように、体を起こして互いの温もりを分け合った。
廉はやや緊張もしていたのか、コトを終えて眠そうで無防備な表情が可愛らしい子供のようで…。
「あ…昨日、あんまり眠れてないよね?少し、寝ていいわよ」
「え、あぁ…。そういやすっげぇ眠くなってきたかも…」
そう言うと、間をおかず廉は瞼を閉じる。
寝息に合わせて廉の長い睫毛がかすかに揺れるのをしばらく見つめてから、私も気だるさに身を委ね、また眠りについた。
以上です。
この後、2人がどうなってくかは…考えてませんw
RINAさんの一人称で書いてみたら、エロとか難しかった…。
いつも、まとめサイトのその他カテゴリに入るようなモノばかり書いてすみませんw
>>162 あらららららら!GJ!!!
その他好きにたまらんカプ、ありがとうございました!
RINAさん…いいポジにいるなーー!!
廉さん、お姉さんに教わって好きな子とやる時に備えてね!
素敵カプさんくすです!
>>162 GJ!異色カプ毎回楽しんでます。
RINAさんにリードしてもらって廉さんよかったねw
この先エロいこと教えてもらうんだろうな〜ww
>>162 異色カプおもしろいw
しかし、相手がRINAさんでもDTだったのかwww
RINAさんの手ほどきいいですね
それにしても文章が上手い
南の島のエロ廉さんに感想下さったみなさん ありがとうございます
以前書いたもう一つの美男ですねの続編です
投下します
合宿所に向かうタクシーの中、柊はぼんやりと窓の外を眺めていた。
流れていく景色は一切目に入らず、柊の脳裏に浮かぶのは、数時間前に見たクラブの屋上での光景だった。
ドラマの打ち上げ会場で、姿の見えなくなった美子を探して、たどり着いた屋上で見てしまったあの光景。
「………錯覚だ」
「…………柊の元に帰れ」
途切れ途切れにしか聞こえなかったが、あれは明らかに美子の告白を断る言葉だったと思う。
ショックだった。ドラマの撮影中から、もしかしたら、という不安があったけれど
それが現実になると激しく胸が締め付けられた。
でも、泣きながら会場に戻って行く美子に見つからないように、柱の陰に隠れた柊が
次に見た光景は更に衝撃だった。
「ごめんな…美子…うっ…く…」
廉が泣いてる。屋上の床に寝ころがって。子供の様に体を丸めて泣いている。
まさか…まさか…廉も美子の事を…
いたたまれなくなって柊は屋上を後にした。打ち上げ会場に戻ると、美子は大はしゃぎで騒いでいる。
その不自然なほどのはしゃぎ様を、柊は正視することが出来なかった。
二次会三次会と進むうちに美子の酔いは深まり、最後にはとうとう酔いつぶれてしまった。
柊は隣にいる美子を見つめる。美子はすっかり正体をなくして、眠り込んでいる。
「美子…辛いのか?……そんなに…廉が…好きなのか?」
返事がないのは承知の上で、柊は問いかけずにはいられなかった。
その頃、いつも利用しているホテルの部屋に、廉はいた。
「んっ…ぅんっ…」激しく口づけ合う音と、女の吐息が響く。
そのままベッドに倒れ込むと、女は廉の上に跨った。シャツのボタンを外しながら、
廉と舌を絡ませ合っている。
廉のシャツを脱がせて、その胸に唇を寄せる女。廉は無表情でその女を見下ろしている。
(誰だっけ…この女…)ぼんやりと霞む頭で廉は考える。
打ち上げ会場にいたスレンダーなモデル風の女を思い出した。
(そうだった、痩せてるのに胸は大きくて…俺好みの女…あいつとは違う…あいつとは…)
女が廉のベルトに手をかけた。ハッとして思わずその手をつかむ廉。
「やめろ。……悪いけど、帰ってくれ」
「えっ、どういう事?」
廉は立ち上がって女の腕とバッグをつかむと、ドアまで連れて行った。
「なによっ、サイテーねっ!一体何様のつもりっっ」
女は廉に罵声を浴びせて部屋を出て行った。
部屋に一人きりになった廉は、自嘲気味に笑った。
「はっ…何してんだ…俺」
ドラマの最終回の放送が終わって数週間がたった。
A.N.JELLは相変わらず忙しい日々を送っている。
連日リハーサルや取材、テレビの収録と表面上は以前と変わらない生活だが、
柊だけは廉と美子の変化に気づいていた。
「おいっ、美子、お前いつもBメロの入りが遅れるんだよ。何回言えばわかるんだ?」
「ハイハイ、すみませ〜ん」
「ハイは、一回でいいっ!」
今まで何度となく繰り返されてきたような場面。美子に厳しい廉と、廉を茶化す美子。
だけど、あの二人は目を合わせない、絶対に。
笑顔で屈託なく、冗談まで飛び出すのに、ある一点だけを慎重に避けているように。
(もしかして、邪魔なのは…俺なのか?)
柊はやりきれない気持ちで二人から目を逸らした。
久しぶりの休日、廉は尊敬するミュージシャンZeusのスタジオに遊びに来ていた。
日本のロックシーンを牽引してきた彼と会うのは久々だった。
いつものようにセッションが始まる。アドリブでギターを弾くZeusに懸命についていく廉。
「おい、調子悪そうだな、廉。女にでも振られたか?」
ミスの多い廉にZeusが言った。
「そんなんじゃないですよ。俺、ここんとこしばらく、女いませんから」
「その割には色っぽい音鳴らすじゃねーか。好きな女でも出来たんだろ?」
Zeusがニヤニヤしながら廉の肩を小突いた。
「好きな女なんか…いませんよ。っていうか、錯覚しただけです、好きなのかなって」
「ハアー?相変わらずお子様だな。どうせ恋なんてみんな錯覚だろ。ハハッ」
えっ?廉は絶句した。「恋なんてみんな錯覚」?
それじゃあ、俺の気持ちも、美子の気持ちも本物の恋なのか?
同じ日、柊と美子はドライブをしていた。
以前と変わりない美子の様子に安心した柊は、ホテルの駐車場に車を滑り込ませた。
一瞬驚いて柊に顔を向けた美子に、「嫌?」と聞くと美子は首を横に振った。
シャワーを浴びて、ベッドに横たわり、いつものように長いキスから始めた。
美子の舌を捉えて強く吸いながら、右手で胸を揉みしだく。
なんだろう…いつもと違う。どこがどうとは言えないけど、美子の反応に違和感を感じた。
柊は体を起こして、美子を見下ろした。
「柊さん、どうしたの?」
急に愛撫をやめた柊を訝しんで、美子は不安げに尋ねた。
「心ここにあらず、って感じだな」
「え?そんなこと…ない」
美子の目に涙が溢れてきた。そんな美子の肩を抱いて優しく囁く。
「いいんだよ、美子。そんな日もあるさ。泣かないで」
美子を強く抱きしめて慰めながら、柊の心の中は打ちのめされていた。
深夜、廉は自室でドラマの最終回を見ていた。
パソコンにイヤホンをつないで、音が漏れないように何度も同じシーンを繰り返し見た。
「願い続ければ星もつかめる、そう教えてくれたのはお前だ。…愛してる」
この時抱きしめた美子の体の柔らかさ、美子の匂い、美子の体温、全部今でも覚えてる。
「願い続ければ星もつかめる、そう教えてくれたのはお前だ…
画面の中の自分に合わせて、声に出してみる。
「愛してる、か…」
その時肩をつかまれて廉は飛び上がった。
振り向くと美子がいた。慌ててパソコンを閉じて、イヤホンをはずした。
「何だよ、お前。ノックぐらいしろよ!」廉の鼓動が早鐘のように打ち始めた。
「しました。何度も。それより、廉さん、どうしてそんな事してるんですか?」
「そんな事って…」
「ドラマの最終回の台詞を言ってましたよね。どうしてですか?」
美子が真剣な顔で詰め寄ってくる。
どうしてって、そんなこと、俺にもわからない…いや、わかってる…ほんとは…
美子の顔を見つめながら、何か言おうと思っても言葉が出てこなかった。
そして…
口づけた。
美子の頬を両手で挟み、その唇を強く吸った。が、一瞬で我に返る。
「あ、いや、これは………悪い…」
しどろもどろになりながら弁解にもならない言葉を並べた。
美子は廉の腕を強くつかんでいる。その真剣な表情は怒っているようにすら見える。
突然美子が廉の首に両腕を回して、自分から唇を重ねてきた。
もう止められなかった。美子を強く抱きしめて、その柔らかい唇を貪った。
どのくらいそうしていただろう。ようやく体を離した時、美子は大粒の涙を流していた。
廉も美子もわかっていた。ここで一言でも発してしまったら全てが壊れてしまうことを。
互いの目を食い入るように見つめた後、美子は部屋を出て行った。
美子とキスをして以来、廉の頭からその時の事が離れなくなった。
キスなんてするんじゃなかった。よけい苦しくなっただけだった。
そんな事ばかり考えながら、合宿所の庭を歩き回っているうちに、
柊が趣味でやっている小さなハーブ園に入り込んでいた。
「あ、おまえら…いたのか」
ハーブの手入れをする柊と、それを眺めている美子がいた。
廉は、踵を返して戻ろうとする。柊が呼び止めた。
「廉、少し見て行ったら?」
「あ、ああ」仕方なくその場にとどまった。
「ふふっ、いつもハーブティ淹れてあげても、どれだかわかってないでしょ」
柊は楽しげにハーブの説明を始める。
「これはカモミール。いつもお茶で飲んでるやつだよ。入浴剤にも使えてリラックス効果があるんだ」
「へ、へえ〜」
「これはセージで、バジルは知ってるよね。どっちも料理に使うと最高においしいよ」
一見穏やかなように見えて、その場の空気は異様に張りつめていた。
柊の言葉が頭に入ってこなかった。横目で美子を見ると、顔をこわばらせている。
「俺、そろそろ行くよ」
廉が室内に戻ろうと歩き始めた時、柊が鋭い声で廉を呼び止めた。
「廉っ!俺達、話し合うことがあるんじゃないか?」
廉の足が固まった。前に進むことも、振り返ることも出来なかった。
立ち尽くしていると、美子の声が聞こえた。
「柊さんっ、何言ってるの?柊さんっ。廉さんはもう行ってくださいっ。早く行って!」
美子の声に押されて、廉は逃げるようにその場を立ち去った。
自室に戻った廉は、ベッドに腰かけ頭を抱えた。
終わってしまう…このままじゃ。一体どうしたらいいんだ…
翌日事務所内のスタジオでリハーサルをしているA.N.JELL。
緊張感溢れる室内で、無駄な話をするメンバーもなく、皮肉にもスムーズに作業が進む。
「そろそろ終わりにするか」
廉に言われてみんな時計を見ると、午後10時を回っている
それぞれ自分の楽器や楽譜を片付けて、部屋を出て行こうとした、その時、
ジャジャジャーーン!!!
シンバルの音が鳴り響いた。
「ちょっと待ってよ!」
勇気がドラムセットから立ち上がって三人を睨みつけている。
「ねえ、どうしたの?最近おかしいよ、みんな。何があったのさ!
どうして俺には何も言ってくれないの?俺だって仲間だろ?」
勇気の目からは涙がこぼれていた。廉は勇気に歩み寄って肩をぽんぽんと叩いた。
「悪かったな、勇気。今日はみんなで焼き肉でも行くか?」
勇気は涙を拭いながら、「廉さんのおごりだからね」と言って小さく笑った。
行きつけの焼き肉店の個室で久しぶりに和気あいあいと食事を楽しんだ。
「酒も飲もうぜ。おまえら、何飲む?」廉がみんなに聞いた。
「でも、車どうする?」
「そんなの、運転代行頼めばいいだろ」柊の言葉に廉がさくっと答える。
廉と柊と美子はぎこちないながらも笑顔を交わし、やがてそれは本当の笑顔になって行った。
廉はメンバーの顔を見渡して、心に決めた。これからどうするべきかを。
合宿所に帰った四人はそれぞれ自室に戻って行く。廉は勇気を呼び止めた。
「勇気…ありがとな。おまえのおかげだよ」
「何がさ」酔いで顔を赤らめた勇気が言った。
「それは…」廉は言葉を濁す。
「やっぱり、何があったのか言ってくれないんだね」勇気がしょんぼりと肩を落とした。
「ごめん…でも、いつか話すよ。話せる時が来たら…」
「ホントっ?じゃあ許してやるよ、廉ちゃん」
へへへーっと笑いながら勇気が部屋に戻って行った。
「あいつ、何が、廉ちゃんだ」廉は笑いながら勇気の後ろ姿を見送った。
翌日、廉は美子の部屋の前に立ち、深呼吸してから、ドアをノックした。
ドアから顔を覗かせた美子に「ちょっと、いいか?」と声を掛け庭に誘う。
「あの、この間は…悪かったな。勝手かもしれないけど…忘れてほしいんだ。あの事…」
少し顔を赤らめて、思い切って言った。
「そう言うと思ってました。私の方こそ、すみませんでした」
意外にも美子は笑顔で答えた。
少し拍子抜けしたけれど、きっとこいつも同じ事思ってるんだな、そう思うとこれで良かったんだと廉は思った。
「そうか…じゃ、じゃな」
なんだか照れくさくて足早にその場を去った。その足で、柊のハーブ園に向かう。
「柊」
柊が振り向いた。この間みたいな険しい顔じゃなく、いつもの穏やかな柊だ。
「柊、悪かった。俺、お前を心配させるようなこと、もう無いから。絶対」
柊は驚きで目を見開いている。咄嗟には言葉が出てこない。
「…それで…いいのか?美子の事、好きなんだろ…」
「いいんだ。やっぱり、俺はA.N.JELLが一番大事だからな」
これまで通りだ、俺達は…そう言うと廉は足取りも軽く去って行った。
「ふっ、かなわないな、廉には…」
吹っ切れた様子の廉を見て、柊も決心した。
テレビ局からの帰り道、柊は公園脇の人通りの少ない道に車を止めた。
「柊さん、ここは…?」
柊はしばらく目を閉じて沈黙していたが、意を決したように口を開いた。
「美子、俺達少し距離を置かないか?って言っても同じ所に住んでるから
実際に離れるわけじゃないけど。言ってる意味わかるよね?」
美子は大きな瞳をさらに大きく見開いている。
「美子には、時間が必要だと思う。混乱して揺れてると思うから。
だから少し考える時間を持った方が…」
柊の話を聞きながら美子は泣き出した。
「ごめんなさい、ごめんなさい。私のせいで柊さんを傷つけてしまって」
「泣かないで。美子のせいじゃない。誰のせいでもないから」
柊はそっと美子を抱き寄せた。背中をぽんぽんと叩きながら、美子をなだめる。
「いつか、それでも俺の事が好きだって戻ってきてくれたら嬉しいけど、
もしそうならなくても美子の事恨んだりしないよ」
柊は体を離して美子の目を見つめながら微笑んだ。
「だって、俺達はA.N.JELLの仲間だからね」
「柊さん…」
美子は流れる涙を手の甲で拭い、大きく頷いた。
今日はテレビ局でのライブ。
みんな衣装もメイクもバッチリ決まって準備万端整っている。
「A.N.JELLのみなさ〜ん、本番お願いしま〜す」
スタッフから声が掛かる。
「よしっ、みんな、行くぞっ」廉が声を掛ける。
「おおーっ!!!」
メンバーの顔を見渡すと、みんな何の迷いも、陰りもない笑顔だった。
(俺達は大丈夫だ。これからも、ずっと)
廉は確信を抱いて、みんなと一緒にステージに向かった。
以上です
鬱展開が続いて落としどころをどうしようか
迷いながら書いていましたが、勇気が助けてくれました
あと若干1名架空の人物が出てますが笑ってお許しを
お邪魔しました
>>172 GJです!!!
この間書き損ねたんですが、この世界超ツボでした!
耐える廉さん、幸せなのに結局目撃&苦悩するw柊さん、せつな芸の美子、みんなのガス抜きができる勇気。
やっぱりA.N.JELLは誰かが欠けたら駄目ですね。
廉さん好みのモデルさんも乙でしたw
>>172こんな続きが!
柊さん、こちらで幸せになれたかと思ってたのにw
展開台詞がA.N.JELLらしくて泣けました。
>>172 GJ!続きがあったんですね。
前作で柊さんがフラれなくてよかった〜と安心したのに
続編でやっぱりフラれるかと思ったw
>>172 勇気、GJ!
柊美子ファンだけど、この展開だと廉さん可哀そう過ぎ。
こんなに爽やかに男らしく身を引いたら、美子も廉さんを忘れられなくてなって結局柊さんとも別れちゃいそう。
美子が双子ならいいのにね・・・って双子か。女2人双子なら良かったのか。
>>172 3人とも切ないけど、おさまるようにおさまったんですね…GJでした!
こういうお話を読むと、やっぱり柊さんは幸せじゃイケナイ気がしてくるw
そして勇気はやっぱりイイなぁ。勇気が幸せなお話が読みたくなってきた。
いっぱい投下されてたw
柊美子もRINA廉もオールキャストもGJ!!
>>145 普段静かな柊さんが、美子のことになると浜辺で大声で「美子ーーー!!」って叫ぶ所、大好きですw
172です
感想を寄せて下さってありがとうございます
続編を想定してなかったので つじつま合わせるのに四苦八苦しましたが
GJいただけて嬉しいです
短い話をひとつ。廉美子エロ無しなのかな?
180 :
可愛い蕾:2011/11/24(木) 12:03:24.18 ID:sea7mk+B
美子の白い胸の真ん中にぽっちりと鎮座する可愛い蕾。廉はとにかくそれが好き。
今日もそればかりを執拗に愛撫している。
まだ立ち上がる前の蕾をそーっと舌先でなぞった時の、ぷにぷにとした感触がたまらない。
でもすぐに蕾は存在を主張し始める。そしたら隣の蕾に移動。
はっきり言って美子の胸は小さい。でもそこがいい。美子が巨乳だったら、逆に嫌だ。
胸が膨らみ始めたばかりの少女みたいな、控えめな胸。
あ、だからって別にロリコンじゃないからな。
時々巨乳じゃないと嫌だっていう男がいるけど、頭おかしいんじゃねーか?
自分の女のおっぱいが、自分の好きなおっぱいだろ。
そんなにデカい乳がいいなら、ホルスタインとでも付き合えよ。
美子の胸は小さいけど、感度は抜群だ。
今だって胸しか愛撫してないのに、軽くイッちゃったみたいだ。
女って胸だけでもイケるんだな。それとも美子だけか?
他の女の事は知らないけど、それは美子には内緒だ。
美子が下半身をもじもじさせてる。欲しいんだな、きっと。でも、まだまだお預けだ。
今日は飽きるまで美子の胸を堪能したいからな。
でも、飽きないんだよな、これが。こんなに胸ばっかり舐めてたら、ふやけちゃうかも。
ちょっと、噛んでみようかな。唇で歯を覆った状態で噛むと、すごく感じるみたいだ。
あ、ビクビクしてる。またイッたのか?すげ…。
ていうか、俺が上手いからだったりして…(//∇//)
顔を真っ赤にして、目を潤ませてる。そんなに気持ちいいのか?可愛すぎる、美子。
よーし、もっともっと感じさせてやるからな。
こうして、たまの休みの昼下がり、廉の愛撫は延々と続いていくのでした。
おしまい。
ほんっとすみません
おバカな廉さんで
お邪魔しました
>>181 美男アナザーワールドもすごく良かった。美男舞台裏って感じでドキドキしたよ。
これもし続いたらやっぱり柊さん不幸になるのかな。
微乳好き廉さんイイですね。マザコン疑惑払拭ですなw
>>181 二十歳超えたイイ大人がかわいすぎるwww
廉さん…かわいいよ。
>>181 廉さん可愛いww
自分も美子のてっぱんは最高だと思います
廉さんたらww
でも美子がこれだけ感じやすいと廉さんもやり甲斐あるわなw
>>180 ちょwww 廉さん、さかりのついた中学生みたいw
美子の胸、あざだらけになったりして。
ところで、美子ってカトリック?それともプロテスタント?
カトリックならものすごく子沢山になりそうな気もする。
廉さんが早めにこっそりパイプカットすれば大丈夫w
あんまりたくさんだと、子供に美子を取られるのを嫌がりそうだからね・・・
子沢山家族な桂木家想像したw
廉さんもおんぶ紐で前も後ろも子供抱えたりしてる姿をw
でも美子も廉も寂しい育ちしてるから子供いっぱいの
賑やかな家庭ってのも憧れてるかもよ?
エロなしで、オバカ話を書いてみましたので投下。
時系列は、美男(美子)が女だとメンバーみんなにバレた後くらいです。
190 :
甘い誘惑1:2011/11/26(土) 00:27:14.64 ID:YiWDv3VK
時刻はもう、午前1時を過ぎていた。
忙しい一日を終え、柊が熱いシャワーを浴びてバスルームからキッチンへと続くドアを静かに開けた時、
2つの声が耳に飛び込んだ。
「美男…これは、廉さんと柊さんには内緒だからな」
「はい!2人だけの秘密ですねっ♪」
俺と廉に内緒で、勇気と美男が何を…?
しかしそこで出て行っても、その秘密は暴けない。
柊は、音がしないようにそっとドアを閉めて声のほうへ耳を澄ました。
「勇気さ…こんなに…」
「これ…俺の・・・・・・どう?」
ドア越しでは、やはり声が聞こえにくい。
柊は更に耳に神経を集中させた。
「こう…咥えて…美男、…うまいぞ」
「んふっ…すっごい…あっ…いっ」
…咥える?上手い…?!まさか…!!
最近そういえば、勇気は美男を構いっぱなしで…女だと知ってからは特にそうだ。
純粋で無垢な美男に、何か良からぬことを教えようとしてるのでは…?いや、まさか。
柊は、勇気がそんな男ではないと思いつつも、急に不安になってきた。
「あっ…かき回して…くっ…」
「指…ドロドロ…どうしたら…」
「俺も…舐めて…あっ」
その後も、楽しそうな2人のはしゃぎ声が聞こえる。
かき回す…?指…ドロドロ…舐める…。この短い時間でどこまで?
あぁ、これはどうすればいいんだ!?今、出て行っても…この上なく野暮だ。
そもそもなんで、自分たちの部屋でやらないんだ!?
イヤなことでも、ことごとく目撃してしまう自分の過去を振り返って、柊は
バスルームのドアを開けることが出来ない。
191 :
甘い誘惑2:2011/11/26(土) 00:28:39.58 ID:YiWDv3VK
「絶対廉さん…できないですね」
「…柊さんも…だから……無理だ…」
廉と俺じゃ、ダメなのか…?
でも美男は、廉のことを好きだったはず…。
この前、女だと告白してからは勇気のことを好きになったのだろうか?
清純なはずの美男が、そこまで勇気に許してしまうなんて…。
柊は、頑張って見守っているのに報われない自分の恋に打ちのめされた。
と、その時向こうのほうからドアの開く音がする。
「お前ら…こんな時間に何やってんだ!!」
「「廉さん…!」」
廉が、部屋から出てきてしまったらしい。
大きな声だったので、柊にもしっかり聞こえた。
「いやっ、これは…!俺が美男を誘って…」
「勇気さんを怒らないでください!私もその気になったから…!」
互いに庇い合う美男と勇気。
あぁ、こんなにも2人はいつの間にか…惹かれ合っていたのか。
敗北感でいっぱいになった柊に、さらに追い討ちをかける声がする。
「ったく、お前らは!俺がこんなことで怒るかよ」
立場的には柊の仲間だったはずの廉が、大して怒りもせずに言った。
「さすが、廉さん!!一緒に…?」
「あぁ、ただし柊には言うなよ?」
勇気が誘い、廉が言ってのける。
一緒にって!?しかも、また俺にだけ秘密…。
柊はヘナヘナとその場に座り込んだ。
「あっ…廉さんの大きい…!」
「ホントだ!ずりぃ〜」
廉のは大きいのか…?知らなかった。長い付き合いだが、そういえば見たことはないな…。
でも、俺だって大きさには自信があるのに!…じゃなくてっ。
これ以上、ここで会話を聞くのはさすがに耐えられない!!
そう思った柊は、バン!っと勢いよくバスルームのドアを開けた。
192 :
甘い誘惑3:2011/11/26(土) 00:29:28.33 ID:YiWDv3VK
「柊さん!?そこに居たんですかっ?」
「みんな、何やってんだよ…こんなとこでっ!恥ずかしくないのか…?」
柊は視線を逸らしたまま、吐き捨てるように言った。
「あの、柊さん、これは…その…」
美男が、弁解の言葉を探す。
「柊さんはイヤだろ、夜中にこういうの…」
「昼より夜だろう、普通…でも部屋でやるよな?」
勇気の言葉に、柊は冷静に答えたが3人は意味がわからず呆然としている。
「それより、廉まで一緒になって…どういうことなんだ」
「いや、俺はただ…」
「なんで、俺だけダメなんだ…?」
言いながら少し泣きそうになるのを懸命に堪えつつ、柊は3人に背を向けた。
そんな柊の背中に、美男が近づく。
「柊さん、内緒にしようとしてごめんなさい…。柊さんも、よかったらどうぞ…?」
「美男、お前はいったいどうしちまっt」
柊の目の前には、割り箸に巻きついたドロリとした物体。それはかすかに、甘い匂いを放っている。
「でもこんな時間に甘いもの食べたら肌が荒れるからって、柊さん絶対食べないもんな」
「うわっ、水飴が垂れてきて手がベトベトになったぞ!汚ぇっ!」
「ほら〜言わんこっちゃない。混ぜてたらすぐ柔らかくなるんだよ。廉さん潔癖だからこういうの、苦手だろ〜?」
勇気が、奥からおしぼりを持ってきて廉に渡した。
「ふん、珍しいから食ってみたかっただけだ。柊、お前もちょっと食えよ」
「あ、あぁ…。たまになら…いいかもな…」
「良かった〜!実は、柊さんにだけ内緒って言うのも、心苦しかったんです」
ニコニコ笑う美男につられて、柊の顔に引きつった笑みがこぼれる。
割り箸に巻きつけた水飴を一気に口に押し込んで、柊は「おやすみ…」とだけ言い残し、
ヨロヨロと自室へと戻っていった。
「なんか…柊さん様子がおかしかったね?」
「仲間はずれにされたみたいで、悲しかったんでしょうか…悪いことしちゃったな」
「あいつが、そんなこと気にするかよ。さ、片付けたらもう寝るぞ」
193 :
甘い誘惑4:2011/11/26(土) 00:32:30.91 ID:YiWDv3VK
さて。実際の会話は…
「勇気さん、水飴ってこんなに伸びるんですね」
「これさ〜昔から好きで、駄菓子屋でつい買っちゃうんだよね。俺のお気に入り。どう?おいしい?」
「こう割り箸を咥えて割ってさ。そうそう美男、そんな感じ。舐めてみろよ。美味いぞ〜」
「んふっ。すっごい甘いっ!けど美味しいっ」
「あっ、どんどんかき回してたら、白くなってくるよ」
「垂れてきて、指がもうドロドロです〜。どうしたらいいですか?」
「俺もベタベタ。洗えばいいし、舐めてもいいし…あ、手まで甘いぞ」
「絶対廉さんは、ベタベタするの嫌がってできないですね」
「そうそう。柊さんも、ストイックで夜遅くは何も食べない人だからな。寝る前にこんな甘いの、無理だろうし」
甘い誘惑に負けた勇気と美男の、至って健全な会話だった。
以上です!
以前書いた「未経験」「床上手」に続いての聞き間違い3部作ってことでw
いつも廉さんなので、今回は柊さんに犠牲になってもらいました。
お粗末さまでしたー
>廉のは大きいのか…?知らなかった。長い付き合いだが、そういえば見たことはないな…。
>でも、俺だって大きさには自信があるのに!…じゃなくてっ。
このくだりに吹いたwwwww
>>187 パイプカット廉さん・・・エロパロにふさわしいのか、ふさわしくないのか分からないw
カットって、夫独断で妻に同意なく勝手に出来るものなの?
子沢山廉さんなら、銭稼ぎにNHKみんなの歌とか、子供向けの仕事も引き受けたり
美子もスーパーでパートとかするんだろうか、切ないねw
柊美子なら子供なしで、二人でハーブティ飲んで優雅に暮らしそうなイメージです。
アジアで大人気バンドで作詞作曲も廉さんだから
余裕で子沢山でも養えるでしょw
美子はこども達とボランティア活動してそう
柊さんは息子なら本気で大嫉妬して
苦悩したり僻んだり、いいコメディになりそうw
女の子なら母娘の間で取り合いが起こって
密かにニヤニヤして両手に花を満喫しそうw
>>198 そんな幸せな柊さん認めないww
娘が年頃になったら大変そうだ
>>198 ・柊美子Jr男の子の場合
美子「済みません、柊さん、赤ちゃんに、ミルク飲ませてきます」
柊「俺は、忘れられたのか・・・」
・柊美子Jr女の子の場合
勇気「廉さーん、柊さんまたお休みだってさ。最近有給取り過ぎだよね。」
廉「あいつ、学校行事全部参加してるからな、有給使いきったから、減俸だな(怒)!!!」
美男「いや、いつも、娘の学校の行き帰りも悪い虫がつかないようにあと付けてるから。まだ6歳なのに。
仕事しろよ!」
柊さんに似たらやたらエロくてストーカー変態ヤンデレ気質な女の子に育つのか
廉美子の娘は廉さん似のツンデレ美少女がいいな
女の子なら、柊さんがお父さんだったらファザコンになりそうだな
当然娘は女子校に通わせるだろうし、積極的に学校行事も参加するだろうから
同じクラスのお母さんや担任の女先生に手作りハーブティー配ったり
娘の同級生にも頭ナデナデしたりして無駄にモテちゃうんだろうなwww
ややエロありで、短いのをひとつ投下します
一応NANA×美男のつもりですが、NANAメインです
初めてしたのは中3の夏だった。
1コ上の彼氏の家で、今日は親がいないから、なんて誘われて遊びに行ってそうなった。
向こうも私もほとんど興味本位で。
彼は学校で、夏休み中に絶対ヤると友達に宣言してたみたいで、私の気持ちはどうでもよかったようだ。
ただ、私も家に行った時点でそれを期待してたのが見え見えだったから、悪くは言えない。
向こうは必死で、息を荒くして、なんだか気持ち良さそうだった。
でも私は、友達と噂してたほど気持ち良くなんてならなくて、ただ痛いだけで終わった。
その彼氏とは秋にもう一度。
でも私が別の高校に進学することになって、そのまま別れた。
「…ぁん、そこ…ん、気持ちいい…」
「じゃあもっと触ってあげる…」
「は…ぁ、んっ…」
その後は2人。
なんとなく付き合うようになって、なんとなくそうなって、そしてなんとなく別れた。
スカウトされて仕事を始めたらどんどん忙しくなって、恋愛なんて、そんなのどうでもよくなった。
可愛いアイドルを演じていれば私をチヤホヤ持ち上げる、そんな周りの大人達が馬鹿に見えて、裏で散々毒づいた。
「NANA、感じやすくなったよね…」
「そんなことな…ぁんっ!」
廉は私に媚びなかった。
私のことを好きにならない男なんていない。
そんなのただの思い上がりだった。
自分から本気で追いかけるなんて初めてで、やることなすこと全てが裏目に出た。
美子には、かなわなかった。
「…私のこと…好き?…ぁっ…」
「好きだよ。好きじゃなきゃ俺…こんなことしない…」
大好きな人ができた。
素直な人。
嘘をつかない人。
私のことを、まっすぐに好きだと言ってくれる人。
その人は私の心までまるごと包み込んでくれる。
彼に抱かれて初めて、セックスが本当はすごく気持ち良いものだと知った。
「もう…来て。お願い…」
「ん、わかった…」
脚を開いて、彼を受け入れる。
彼のものが、ゆっくりと私のすきまを埋めたり、離れたり。
腰をやわらかく波打たせて、そこを擦り合わせる。
キスをすると、息が熱くて。
クラクラとめまいがする。
「ん、んっ!あああっ!」
「ん…NANA、いい……ふ、くっ…」
私が上になって、自分の中に沈めていく。
彼が熱い吐息を漏らしながら気持ち良さそうにしている顔を見るのが好き。
腰が螺旋を描き、いちばん感じるところを探す。
彼が身体を起こして、私を抱きしめた。
肌が合わさって、鼓動が伝わる。
「そろそろ、限界…かも…」
「あたし、も…」
もう一度仰向けになり、彼と繋がる。
動きと呼吸が速くなった。
ぬるぬると濡れたところがいやらしい音を立て続ける。
このまま、2人で溶けてしまえればいいのに。
「ああっ、ぁんっ!…はぁっ、ん…んっ!」
「う…もうっ、は…ぁっ…NANA…っ!」
「んぁっ!や、ぁん…みぉ、みおっ…あ、あああああっ!」
夜中に目が覚めた。
隣を見ると美男はまだ眠っている。
安心しきったようなその寝顔が可愛らしくて、心の底から愛おしいと思う。
ベッドからそっと抜け出して、キッチンで少しだけ水を飲み、渇いた喉を潤す。
再びベッドに潜り込み、美男の体温を感じて目を閉じた。
以上です
突発的に思いついて書いたとはいえ、なんたる箇条書きの嵐…
>>206 いやいやGJでした。
美男×NANAほんと大好きだー萌えるー!
今まで男運無くて体目当てとかばっかで若干男性不信気味なNANAが「どうせ美男だって私のことなんてわかってくれないのよ!」とか言い出したり美男を邪険に扱ったりして、
NANAのことが本当に大好きな美男が忠犬のように尽くしてNANAの心を溶かしていって「NANAと付き合えて本当に嬉しくてさ、NANAのためなら何だってしてあげたいなって、そう思ったんだよね。」とか言ってNANAをよしよししてあげる美男を妄想するなんて朝飯前だわー。
妄想から作品にするとなると話は別なんですけどね。
でも「…夜露死苦。」な美男からは別人のようだがw
なに書いてるのかわかんなくなってきたわ。
>>206 GJ!NANAが心開いていくのがかわいくてイイわー。
美男、NANAを幸せにしてやれよ…って思ってしまう。
>>207 いやいや。そこまで妄想してるんだからもう書いちゃえよw
>>206 美男NANAいいですね。
>>207 >NANAのことが本当に大好きな美男が忠犬のように尽くし
よろしく忠犬美男、読みたい〜YOU、書いちゃいなよ。
>>202 柊父さん、同じクラスのお母さんや担任の女先生に手作りハーブティー配ったりしたら
最初は好感度高くても段々と・・・微妙になりそう。
A.N.JELL柊の噂スレが立ちそう。お母さんたちの格好の餌食にw
>>200 ちょwww
柊美子Jr.見たすぎるw
息子でも娘でも展開が面白おいしすぎる!!
この場合、柊さんにとっても美男兄さんになるのかな?美男兄さんの冷静なツッコミがw
南の島書いたものです
またしても廉美男(美子)です それしか書けない…
しかも柊勇気が完全なサブキャラですみません
廉さん一目ぼれ設定エロありです
212 :
廉と美男:2011/11/28(月) 13:52:59.46 ID:nV8IhpYx
「お前、女なんだろ?」
スマートフォンの映像を美男に見せながら、廉は意地悪そうにニヤリと笑った。
映像の中には、社長室でぴょんぴょん跳ねる美男と、「これで女だとはばれないわ」と言うRINAの姿が。
(ど、どうしよう。もうばれちゃった。やっぱり首になるのかな?お兄ちゃんに何て言おう…院長様、どうしたらいいんでしょう)
あっさり女だとばれてしまって美男の頭の中はパニックになってしまった。
「ちょっと、来い!」
廉に腕をつかまれて誰もいないリハーサル室に連れ込まれた。
(怒ってる、廉さん、あんなに眉毛を吊り上げて…怖い…え?あれ?)
鬼のような形相で美男を睨んでいた廉の顔がふっと緩んだ。
「やっぱりな。どう見ても女だと思ったけど、確証が無かったからな」
(え?)
「俺、もしかしてあっち側の人間かと思って焦ったよ」
(ええ?)
「お前可愛すぎる。もろに俺のタイプだし」
(えええーーーっ!!!それってどういう事ですかっ?タイプって…)
驚きのあまり、口をパクパクするだけで、美男は言葉が出ない。
「と言う訳で、これから仲良くしような。あ、でも柊と勇気には内緒な」
廉はいたずらっ子みたいにウインクを送ってきた。
「あの、あの、と言う訳でって、どういう訳ですか?」
美男には事の成り行きがまったく理解できていない。
「だ・か・ら!二人で秘密を共有するってことだよ。あ〜楽しくなりそう〜」
わかったようなわからないような廉の答えに「はあ…」と答えたものの、
美男は狐につままれたような気持ちだった。
(ばれちゃったけど、とりあえずは大丈夫みたい。でも、秘密を共有ってどういうことだろ?
助けてくれるってことかな?)
美男は頭の中をハテナマークで一杯にしながら廉の後をついていく。
その日の夜、美男は廉の部屋に呼びつけられた。
どうして女の自分がA.N.JELLに入ったのか、そのいきさつをひと通り説明して、改めて謝罪した。
「ふ〜ん、そういうことか。じゃあ兄貴はいまアメリカの病院にいるんだな。
それで三か月たったら交代するのか。考えたな、馬淵のやろー」
「はい。私は兄と交代したら、ローマに行ってシスターの…」
廉が美男の言葉を遮った。
「ローマっ?何でっ」
廉の剣幕にびっくりしながら美男は説明を続ける。
「は、はい。シスターになるための修行です。一人前のシスターになって、世の中に尽くすことが私の夢なんです」
そう言うと、美男は十字を切って、胸の前で手を合わせ小さく祈った。
「シスターってことは、もしかして一生独身なのか?」
「はい」
美男は何の疑問もなく素直に返事をする。
驚愕の表情を浮かべた廉は、まじまじと美男を見つめながら、ぶつぶつと独り言を言う。
(もったいねーよ。こんなに可愛いのに。つーか、てことは、処女?)
微かに顔を赤らめた廉を、きょとんとして不思議そうに美男が見ている。
その視線に気づいた廉は、ゴホンと、わざとらしい咳払いをして「そうか」と納得したふりをした。
213 :
廉と美男2:2011/11/28(月) 13:53:55.03 ID:nV8IhpYx
数日後、事務所2階の窓から廉は外を眺めていた。今日も大勢のファンが駆けつけている。
すると、その中に美男が走り出ていくのが見えた。たちまちファンに取り囲まれる美男。
「あいつ、何やってんだ?」
慌てて美男を追いかける。
ファンにもみくちゃにされながら、なんとか人垣から逃れようとする美男の背後でキャーッという
すさまじい歓声が聞こえた。
振り向くと廉がこちらに向かって走って来るのが見えた。
「美男っ、戻れ!」
廉は美男の腕を強くつかんで、事務所内へと引っ張って行く。
「でもっ、でもっ…」
美男は必死に抵抗するが、男の力にはかなわず、またしても無人の小部屋へと連れ込まれた。
備品等を置いておく6畳ほどの部屋は、棚やロッカーが所狭しと並んでいて、廉と美男が入ると
必然的に体が密着してしまう。
「お前、何考えてんだっ?のこのこ出て…」
廉は強い口調で美男を叱責しようとしたが、美男の顔を見て何も言えなくなった。
「うぅっ…ひっく…ひっく…ふぇ…」
突然泣き出した美男に廉は慌てふためいた。
「お、おい、何で泣いてんだよ。泣くなよ」
なんとかなだめようと、美男の頭を撫でたり、背中をぽんぽんと軽く叩いたりするが、
みんな逆効果でかえって美男は大泣きし始めた。
「うぇ〜ん、ひっく…ふぇ〜…んっく…」
「泣くなったら…まいったな」
泣き声が廊下に漏れないように、廉は美男を抱きしめた。自分の胸に美男の頭を密着させて
優しく背中をさすってあげる。
そうして美男をなだめているうちに、廉は妙な気分になってきた。
(可愛いなぁ…まずい…なんかドキドキしてきた。でもシスターになるんだしなぁ…あーっもう)
たまらない気持になった廉は、美男の顔を上に向かせて、おでこにちゅっとキスをした。
「なななな、何をするんですかっ」
美男はずざざっと後ずさり、「マリア様、お許しください」と急いで十字を切った。
そのままぺこりと廉に頭を下げて、美男は部屋を出て行った。
ぽかーんと口を開けて、あっけにとられていた廉は、はっと我に返り憮然とする。
「な、何だよ。俺は、悪魔か?吸血鬼か?」
自分がいきなりキスしたくせに、そのことは棚に上げる廉だった。
その夜、またもや美男は呼びつけられた。
「お前、何で泣いてたんだ?」
廉は昼のちょっと憮然とした気分を引きずったまま、高飛車な態度で聞いた。
「それは…今日お母さんかもしれない人が訪ねてきて、後を追ったんですけど…」
「お母さんかもしれないって、どういうことだよ」
「幼い頃に別れたままで…実は兄がA.N.JELLに入ったのも、有名になればお母さんが
会いに来てくれるかもって…ふぇ…ん…」
また泣き出しそうな美男の様子に慌てる廉。
「わっ、泣くな!泣いたらまたキスするぞ!」
美男はびくっと体を震わせて、涙を堪えている。ほっとしつつもちょっとムッとする廉。
(なんだよ、そんなに嫌なのかよ、俺にキスされるのが)
「だけど、そんな大事な事なんで言わなかったんだよ。知らなかったらお前の事
守ってやれないだろ?」
「すみません…え?守るって…」
廉を見上げてきょとんとする美男。
(きょとんとするな、きょとんと!可愛いだろーが)
廉はどぎまぎしてそっぽをむいてしまう。
「だから、お前が女だってこと知ってるのは俺だけなんだから、俺がお前を守るしかないだろ?」
「馬淵さんも知ってますけど…」
「そーだけど!!!仕事中とか、色々あるだろ?これからは何でも俺に言えよ。
あ、そーだ。毎晩報告に来い。その日あった事とか、心配事とか。いいな」
こうして、美男は毎晩廉の部屋に来るのが決まりになった。
214 :
廉と美男3:2011/11/28(月) 13:55:03.92 ID:nV8IhpYx
美男が加入して初めてのライブ後、お母さんについての話を聞きに、先日訪ねてきた叔母さんに会いに行くことになった。
記者の目を逃れるため女装した美男の姿を見て、廉の胸は高鳴った。
(か、可愛い…いや、そうじゃなくてっ…でも、ワンピ似あうな…)
廉は横目を駆使して、美男の全身を上から下まで舐めるように見ている。
手をつないで走りながら、美男は不思議なドキドキを感じていた。
(廉さんの手、あったかい…なんだか胸が苦しい。どうしたんだろ…)
廉も同じように感じていた。手をつないだだけで、こんなにドキドキするなんて。
(中学生じゃあるまいし…)
横を走る美男をちらっと見る。美男も廉を見ていて、目が合うとサッと顔を逸らした。
美男の頬が赤くなっている。これは、もしや…。
「美男にそんな悲しい事情があったなんて…」勇気がしんみりと呟いた。
「俺達で楽しくさせてあげないとな」
柊と勇気は美男のために、パーティーの準備を始めた。
合宿所の庭にテーブルを出して、バーベキューの下ごしらえ、くす玉まで作って美男の帰りを待った。
「美男ー、お帰り。初ライブ成功を祝って、今夜はパーティーだぞ!」
勇気の宣言で楽しいバーベキューパーティーが始まった。
美男も楽しそうだ。ん?勇気と食べさせ合いっこしてる。こらっ離れろっ!ったく。
あ、柊、なんで美男の頭撫でてんだ?油断も隙もないな。
あいつら、男相手に可笑しいだろ。それとも気付いてるとか?ありうるな、特に柊の場合。
廉は鷹揚に構えながらも、内心気が気じゃない。
パーティーの片付けも終わり、それぞれ自室に引き上げた後、廉の部屋のドアがノックされた。
「入れ」
美男がおずおずと入ってきた。
「廉さん、今日はありがとうございました。あと、パーティーも…」
「それよりどうだったんだ?叔母さんの話は」
美男は俯いてなかなか話し始めなかったが、やっと顔を上げた時には、涙ぐんでいた。
「お母さんは…だいぶ前に…亡くなったそうです」
それだけ言うと、また俯いてしまった。
「そうか…」
あまりの事に廉も何と声をかけていいのかわからなかった。
「いつかは、会えるって…信じてたのに。もう…いないなんて…お母さん」
俯いた美男の足元に、ぽたぽたと涙がこぼれている。
廉は美男を抱きしめた。肩を震わせ、声を殺して泣く美男が可哀想で仕方がなかった。
「美男、我慢しなくていいんだぞ。泣きたい時には思い切り泣け」
廉の言葉でたがが外れたのか、美男は堰を切ったように泣き始めた。
「お母さんっ、ぅえ〜ん…ふぇ…ん…っく、うぇ〜ん…」
美男の泣く姿につられて、廉も涙がこみ上げてきた。可哀想に…母親に会えることを信じて
頑張って来たのに。
廉は美男の頭を撫で、背中をさすり続けた。しばらくそうしていたら、急に美男の重みが掛かってきた。
「美男?…え、寝てる…」
廉の背中に回していた美男の手が、だらりと垂れさがった。
「まじかよ…」
仕方がないので自分のベッドに美男を寝かせた。美男に布団を掛け、自分は布団の上に横になり、美男を見つめる。
「元気出せ、美男。俺がそばにいるから…」
そのまま廉も深い眠りに落ちて行った。
215 :
廉と美男4:2011/11/28(月) 13:56:59.42 ID:nV8IhpYx
翌朝目覚めた美男は、自分の顔の真ん前に廉の寝顔があるのに気付いてギョッとした。
(廉さん、どうして私の部屋に…あれ?ここ…廉さんの部屋?)
そっとベッドを抜け出そうとした時、廉が身じろいで美男の肩に腕を回してきた。
「ん…美男」
(!!!え?寝言?ど・ど・どうしよう…廉さんの息がかかる…何か…変な気分…)
廉の腕を静かに持ち上げて、ベッドから抜け出す。足音を忍ばせて美男は出て行った。
ドアが閉まった途端、廉が目を開けた。
(ふふっ、あんなに顔を赤くして…俺、本気になりそうだな…)
自らも頬を染めて、廉は自分の気持ちに改めて気付いた。
「よお〜、揃ってるな、エンジェル達。今日はお客さんを連れてきたぞ」
社長の後ろから美男の叔母しげ子が顔を出した。
「住む所が無くなったらしくてな、しばらくここに住んでもらうことにしたから」
「それは構いませんけど、部屋はどうするんですか?」
柊の疑問に社長が答える。
「そうだな、美男の部屋を使ってもらって、美男は誰かと相部屋だな」
「えーーーっ!」
四人が同時に叫んだ。
柊が目を光らせている。勇気は小さくガッツポーズ。
(何だこいつら、美男と同室になりたいのか?まずい、そうはさせるか)
廉は顔芸を駆使して、美男に訴えかける。
三人を見渡して、美男は考え込んでいる。
(お前っ、何迷ってんだよ!俺だろっ俺っ!早く選べっ)眉をぐいッと上げて美男を睨みつける。
美男が廉を指差した。柊と勇気がため息を漏らす。
(はー、ったく。ハラハラさせんなよ)
廉は内心の嬉しさを隠して、「俺?しょーがねーな」としぶしぶ承諾するふりをした。
美男が部屋にやって来た。ワクワクしてるのにあえて仏頂面の廉が言った。
「お前、何で俺を選んだ?」
「え、私が女だって知ってるのは、廉さんだけだから…」
(それだけかよ。やっぱり俺の事を何とも思ってないのか?)
ガッカリしてへそを曲げた廉を、美男はそっと窺う。
(でも、それだけじゃないかも…。廉さんを見ると、ドキドキしちゃう。ハッ、いけないっ。
マリア様、お許しください)
床に直接敷いた布団の中で、美男は何度も寝返りを打った。
「だめだ、緊張して眠れない。お水でも飲んでこよう」
馬淵とRINAから渡されたスタンガンを持って立ち上がる。ふと廉の寝顔を覗くと
普段の怖い顔とは違って、少年のような可愛い顔をしていた。
「ふふっ、可愛い…」
その瞬間、スタンガンが手から滑り落ちて美男を直撃した。
あっ、と叫んで、廉のベッドに倒れ込む。その衝撃で廉は目を覚ました。
「美男?なんだ?おいっ、どうした?ん?何だこれ?」
廉はバチバチと火花を散らす物体を拾い上げた。
「これ、スタンガン?って、どういう事だよっ!」
憮然としながら気絶している美男を覗き込んだ。揺すっても起きそうもないので、
またもや自分のベッドに寝かせる。
自分もベッドに潜り込んで美男を見つめた。美男は微かに口を開けて規則正しい寝息を立てている
廉はそーっと唇を近づけた。美男の柔らかい唇に自分の唇を押し付ける。そのまま軽く唇を吸った。
(はーっ、どうしよう、我慢できない。ていうか、俺って鬼畜?美男ー、抵抗しろよ)
気絶している美男に無茶な事を言いつつ、廉は理性と煩悩の狭間で悶々としていた。
216 :
廉と美男5:2011/11/28(月) 13:58:28.38 ID:nV8IhpYx
目覚めた時またしても廉のベッドにいるのに気付いた美男は、呆然として廉の顔を見上げた。
しかも今回は廉にしっかりと抱きしめられている。
(どうしてこんな事に…)
ハッとして自分の体を見下ろした。
(よかった、パジャマは着たままだ)
あからさまにホッとして、小さく吐息を漏らす。
「何にもしてねーよ(キスはしたけど…)」
廉の突然の声に美男はビクッと体を震わせた。ドキドキしながら身を固くする美男。
「なあ、お前、俺の事嫌いか?…俺は、お前の事が…好きだ」
廉の告白を信じられない思いで美男は聞いた。ぴったりくっついたお互いの胸に鼓動が伝わって来る。
耳を擽る廉の息が美男の感覚を敏感にさせて、美男は自分の体の奥がじん…と疼くのを感じた。
「あの、私は…私は…」
うっすらと涙ぐんで廉を見上げる眼差しに、廉は確信を持った。
そのまま口づける。何度も唇を触れ合わせるだけのキス。やがて美男に覆いかぶさり、本格的なキスを始める。
美男の唇を吸い、促すように舌でなぞる。美男は堪りかねて微かに口を開いた。
迷わず舌を差し込む廉。口の中を探り、美男の舌を求める。ようやく探り当てた舌を強く吸った。
「ん…んんっ…」
真っ赤な顔をして美男は吐息を漏らした。廉は薄目を開けて、その様子を見ている。
パジャマの上から美男の胸をまさぐった。美男は目を見開き一気に涙が盛り上がってきた。
美男の舌を吸いながら強く胸を揉みしだく。パジャマ越しに美男の乳首がピンと立ち上がっているのがわかる。
廉はそこに口を付ける。パジャマを唾液で濡らしながら、強く吸い上げた。
「んっ、あっあっあん…」
甘い喘ぎ声を上げて、美男は身悶える。全身がバラバラになりそうな快感の中、思った。
(廉さん…廉さん…もどかしい…直接触ってほしい…)
次の瞬間、美男は廉をはねのけて飛び起き、そのまま走って部屋を出て行った。
トイレに駆け込んだ美男は、自分の体を抱きしめて座り込んだ。
(私ったら何て事を…。あんな事をされて、もっとして欲しいって思うなんて…)
一方廉も呆然としていた。可愛い声を上げて、感じているみたいだったのに。
(やっぱり嫌だったのか?シスター…だもんな…)
涙を流していた美男の顔を思い出しながら、廉は俯いた。
217 :
廉と美男6:2011/11/28(月) 13:59:51.87 ID:nV8IhpYx
廉と美男のよそよそしい様子を見て、柊は異変に気付いていた。
(何かあったんだな、きっと。ということは、廉も気付いてるのか?)
柊はちょっとからかってみることにした。
「美男ー、元気ないな?どうした?」
美男の額に自分の額をこつんとぶつける。ちらっと廉を見ると、目を見開き、血相を変えてやって来た。
「おいっ、美男っ…その、なんだ…とにかく来いっ!」
廉は美男の手をぐいぐい引っ張って行ってしまった。
柊はぷっと吹き出す。思った通りだと納得した。
「やっぱりね、廉のタイプだと思ったよ。おい、勇気、どうやら諦めた方がよさそうだよ」
「え〜廉さんも美男の事好きなの?そりゃないよ〜…って、柊さんっ、気付いてたの?美男の事」
「まあね、初日に気付いたよ。一生懸命隠してるから、乗ってあげてたけどね」
柊は得意げに笑って言った。
「さすが、柊さん。俺も割と早めに気付いたけど、それも知らないで『僕は…』なんて言うから、
可愛いやら可笑しいやらでさ。でも廉さんは鈍かったよね。それなのに最後はさらっていっちゃうんだからな」
廉は美男を車の助手席に乗せると、そのまま走り出した。
都内をあてもなくグルグルと走り回っていたが、突然何かを決意したようにハンドルを切った。
廉の常宿にしているホテルの駐車場に入る。美男は驚いて廉を見るが、廉は前を向いたままだ。
部屋に入っても廉は沈黙を続ける。美男はいたたまれなくて、落ち着きなくあたりを見回している。
突然廉が口を開いた。
「勘違いするな。そういう事をするために来たんじゃない。ただ、お前の気持ちを聞きたいんだ。
俺は、この前言ったとおり、お前の事が好きだ。てっきりお前もそうだと思ったけど、違うのか?」
奇を衒うことなくストレートに発せられた廉の言葉を聞いて、美男は昨日の事を思い出していた。
廉に対する自分の気持ちは、神様への裏切りではないのかと悩んだ美男は、院長様に会いに行ったのだった。
正直に自分の気持ちを話した美男に対して、院長様は静かに話し始めた。
「美子、人を愛するという事はとても素晴らしい事です。自分の思うままに生きていいのですよ。
神様はいつでもあなたの心の中におられます。それさえ忘れなければいいのです」
218 :
廉と美男7:2011/11/28(月) 14:01:48.79 ID:nV8IhpYx
院長様の優しく諭すような言葉を思い出して、美男の瞳から涙が溢れた。
廉さんが私を好きだと言ってくれた。私も廉さんを好きになっていいんですね。
泣いている美男を見て廉は胸が張り裂けそうだった。やっぱり嫌なのか。俺の勘違いだったのか。
顔を背けた廉の手がふわっと包まれた。美男が廉の手を握っている。
「私も、廉さんの事が、好きです」
声を震わせて、それでも一語一語はっきりと美男は言った。
廉は目を見開く。ホントに?ホントに?何度も聞き返す廉。美男は少し笑って本当ですと答えた。
きつく抱きしめる。美男、好きだ、と囁くと美男が言った。
「美子です…本当の名前」
体を離してまじまじと見つめる。美子?美子…美子か。なんか照れくさいな。
「美子、好きだ…もう泣くな」
もう一度優しく抱きしめる。
「泣いたら…キス…してくれるんですよね」
真っ赤な顔をして美子が言った。廉は再び目を見開いた。
(お前っ、処女のくせに…どこで覚えた、男をその気にさせる方法を…)
たまらず美子に口づけた。美子の口の中を舌で探る。強く吸い上げると美子もおずおずと応じた。
何度も何度も顔の角度を変えて、美子の舌を、唇を吸った。
「んっ…んんんっ…あん」
美子が吐息を漏らし始めた。ゆっくりベッドに押し倒す。口づけながら美子の胸に手を伸ばした。
美子がビクッとした。
「嫌か?」
美子が首を振る。
「嫌じゃないです…この前も…ほんとは…もっとして欲しかった」
(だからっ…何言ってんだ…正直すぎるだろ)
完全に煽られた廉は、歯止めが利かなくなった。美男の胸を強く揉みしだき、益々強く口づける。
シャツを脱がせてブラジャーを外す。美子の小さな胸が小刻みに震えている。先端に舌をあてた。
生温かくて柔らかい舌の感触。それだけで、美子の体の奥が疼き始める。
(あ…この前よりもっと…何かが…溢れてくる)
初めて経験する感覚に美子は不安を覚える。思わず廉の背中に腕を回してしがみついた。
廉は執拗なまでに美子の胸を愛撫している。胸の先端を円を描くように舐め、頂点を強く吸った。
「あんっ…や、や、あああっ」
自分で自分の声に驚いた。でも恥ずかしいと思う間もなく、快感が襲ってくる。
廉が顔を上げて美子を覗き込んだ。
「いいのか?続けても…」
指先で胸の先端を転がしながら廉が聞く。ここで終わるなんて、美子は耐えられなかった。
「は、はい」
震える声で答えた。廉は微笑んでもう一度キスをした。
美子の着ている物を全て脱がせて、自分も脱いだ。
廉は美子の足を大きく開いて、顔を埋める。既に溢れさせているその場所に唇を寄せた。
そんな事までされるとは思わなかった美子は、びっくりして足を閉じようとする。
でも廉の舌が敏感な場所を舐めた時、鋭い快感が全身を駆け巡り一気に力が抜けた。
「あんっ…あっあっあっ、廉…さん」
219 :
廉と美男8:2011/11/28(月) 14:03:07.81 ID:nV8IhpYx
シーツに染みを作るほど滴らせている美子を見て、そろそろ大丈夫かなと廉は思った。
財布の中から小さなパッケージを取り出して、装着する。
「美子、痛かったら言えよ」
そっと中心にあてがう。美子の体が緊張するのがわかる。
「力抜いて…」
ゆっくりゆっくり押し進める。美子はぎゅっと目をつぶって、シーツをつかんでいる。
少しずつ進めながら片手を美子の胸に伸ばした。先端を転がし、押しつぶし、揉みしだく。
美子の意識は痛みから逸れて、また甘い声を上げ始めた。
ようやく全部が入ったところで美子を抱きしめる。美子はずっと涙を流している。キスしてあげなきゃな。
美子の口中に舌を差し込み激しくかき回した。強引に舌を捉え、強く吸いながら胸を揉みしだく。
「んんっ…んっ…んっ」
ゆるゆると腰を動かす。美子は緊張しているのかきつく締め付けられた。徐々にスピードをあげると、
美子は痛みに耐えて、眉間に皺を寄せて涙を流している。その姿を見て可愛いと思った。
(俺ってひどい奴だな。こんなに痛がってるのに)
でもその痛みを与えているのが自分だと思うと妙な満足感が湧き上がる。
(痛い…けど、その向こうから…何か来る…)
その何かに自分の体がさらわれそうで、美子は夢中で廉にしがみついた。
廉は激しく突き上げる。二人のつながった部分からぐちゅぐちゅといやらしい音が響いている。
もう何も考えられなくなって、めちゃくちゃに突きまくった。
「あん…あっあっあっ…廉…さん」
思い切り奥まで突き上げた瞬間、廉の動きが止まった。美子の上に覆いかぶさりしばらく動けなかった。
美子の中で、廉がビクビクと震えている。愛おしさで胸が一杯になり、強く廉を抱きしめた。
「美子、愛してる…」かすれた声で廉が囁いた。
「私も、…」愛してますって言おうとしたのに、唇を塞がれてしまった。
220 :
廉と美男7:2011/11/28(月) 14:04:19.34 ID:nV8IhpYx
夜、合宿所に戻ると、柊と勇気が待っていた。
「お前は、もう寝ろ」
廉はばつの悪い思いで、つい美子につんけんしてしまう。
美子はおとなしく部屋に戻って行く。
廉のツンデレ気質を熟知している柊は、ニヤッと笑って廉をからかった。
「俺たちの前だからって、そんなに美男に冷たくしなくてもいいだろ」
「な、何がっ?」
廉は真っ赤になって柊を見た。隣の勇気も口を出す。
「そうだよ、廉さん。美男が可哀想だろ。女の子なんだから」
「!!!女の…子って、知ってたのか?」
「とっくに知ってるよ〜。気付いてないの廉さんだけだったから。ホント、鈍いよね〜」
真っ赤な顔で呆然とした廉は、急に立ち上がって、もう寝るっ、と一言残して部屋に行ってしまった。
柊と勇気は顔を見合わせて、吹き出した。
リビングの方を振り返り、二人が見ていないのを確認すると、廉は素早く部屋に入った。
立ち上がった美子を強く抱きしめる。優しく美子の唇を吸って、愛してる、愛してると何度も囁いた。
以上です
エロがマンネリですね
柊美子書いてみたいけど、鬼畜展開になりそうで怖いです
お邪魔しました
>>221 爽やかキューピット柊さんGJ!ツンデレ廉さんかわゆい〜。
柊美子ぜひいつか気が向いたら書いて下さい。鬼畜でもファンタジーでもw
>>210 廉美子一家は、ほのぼのホームドラマだね、
柊美子一家は、ギャグ満載コメディw
『柊父さんは、心配性』
主演 柊さん
テリー伊藤メガネで常に身を隠して娘と娘の彼氏を追かっけるアイドルバンドのサブリーダーの物語
>>221 やった! 南の島さんの新作だ! ファンです!
愛溢れるエロが大好きです。
ちょっと控えめエロでしたか? もっとフルスロットルでも好きです〜〜〜。
ぜひ、柊美子も!
>>221 廉美子新作うれしい!
嫉妬したり自制したりのぐるぐる廉さんがいっつもツボですw
美子の嫉妬も見てみたい〜
もちろん柊美子も!
>>221 エロもいい廉さんかわいい! でも鬼畜柊さんも読みたいです!
ネチネチねっとり美子を責める柊さんに飢えてる
投下します。
柊×美男(美子)エロなしで、柊さん知ってる設定です。
時期は原宿より前あたりで…
柊さんの妄想デートのつもりが5.6で別物になりました。すみません。
「驚いたな…」
仕事帰りの夕方、柊は待ち合わせの教会の前に車をとめると、頬をゆるませながら呟いた。
街路樹の陰に半分隠れながら、美男が柊の方を見ている。
『笑わないで下さいね』
何度も電話で言っていたのを思い出し、こういうことかと納得しつつ、柊は美男に手招きをした。
ぶんぶんぶんと木の陰から頭を振るたびに、長い髪が夕日の中で揺れている。
「夢みたいだな…」
初めて見る美男の姿に感動しながら、柊は車を後にした。
「美男、待った?」
街路樹を背にして俯く美男に、柊が尋ねる。
「いっ、いえ、今出てきたところです。院長様とのお話が長くなってしまって」
水色のワンピースを着た長い髪の彼女は上ずった声で答えると、ためらいがちに顔を上げた。
あまりの愛らしさに自然と柊の頬がゆるむ。
「あーっ!柊さん、やっぱり笑いましたね」
隠れようとする美男の手を、柊が慌てて掴んだ。
「違うよ、美男。俺、嬉しくて…」
「え?」
「ごめん、可愛いすぎてにやにやしてしまう」
「柊さん…気持ち悪いですよ?」
言葉とは裏腹に、美男が嬉しそうに笑う。その顔を見て柊も笑う。
「このまま帰るのはもったいないな。ドライブでもしようか?」
「いいんですか?」
夕暮れから夜の始まる時間、街の色が変わっていく中ふたりは並んで歩き出した。
行き先も決めず、ただ二人だけの時間と空間を楽しむドライブ。
他愛もない話で笑ったり、何気ない相手の仕草にドキドキしたり。
信号で止まる度、二人は顔を見合わせて微笑みあう。
「あ、柊さん。あれなんでしょうね?」
海岸線を走っている途中、美男が柊に問いかけた。
暗闇の中まるで海に浮かぶように、暖かな光で包まれている場所が見える。
「なんだろうな?…近くまで行ってみようか」
「なんだか、楽しみですね」
美男の弾んだ声が車内に響いた。近づくにつれ、小さな好奇心が大きな期待へと変わっていく。
隣で目を輝かせる美男を見て、柊は少しだけスピードをあげた。
「柊さん、ここ知ってましたか?」
「いや…全く知らなかった」
偶然見つけてたどり着いたことに感謝しながら、柊が答える。
目印がなければ、通り過ぎてしまいそうな海沿いの小さな遊園地。
イルミネーションで彩られた園内に入ると、ライトアップされた大きな噴水が二人を出迎えた。
「うわぁ」
思わずかけ寄る美男の後ろ姿を、柊は微笑みながら見守る。
平日の夜のせいか人影はまばらで、仕事終りのデートを楽しむ恋人同士が何組かいるだけだった。
「デートか…」柊がぽつりと呟いた。
変化する色によって印象の違うその空間を、美男はじっとみつめている。
「綺麗ですね」
そう言って美男は柊を見上げて微笑んだ。
「ああ…癒されるな」
自然と頬のゆるむ自分に気付いて、またか…と柊は苦笑いをする。
「行こうか?」
美男のお目当てはまだ先にある。
柊はそっと美男の手を握った。
柊の顔と握られた手を交互に見て、美男が微笑む。
「はい」
嬉しそうな声と同時に、柊の手がぎゅっと握り返された。
「うわー!大きな星ですねぇ」
美男が見上げるその先で、大きな☆が○の中に浮かんでいた。
その円の上では様々な色の小さな星たちが、チカチカと点滅している。
遠くで見つけたお目当てがそこにあった。
「やっと、見つけました。宇宙で一番大きな星…こんな所にあったんですね!」
にこにこする美男の顔を見て、柊はその星が目印の観覧車を指差す。
「せっかくだから星の上まで行ってみる?」
「いいんですか?!」
もっともっと喜ぶ顔が見たいし、何でもしてあげたいと頷きながら柊は思う。
夜空に浮かぶ大きな丸い光と星に向かって、二人は手を繋いだまま歩き出した。
「次の方いないんで、よかったらアレどうぞ」
係りの人がそう言って、3つ先の赤い色を指差した。
「あ…どうも」
訳もわからないままお礼を言って、二人で顔を見合わせる。
「赤色に何かあるんですか?」
柊が係りの男性に問いかけると、苦笑いしながら「赤は一つだけなんで」と前置きした後説明してくれた。
『赤色に乗った二人は永遠に結ばれる』
と恋人同士には有名で、わざわざ仕事帰りに来るカップルも多いとのことだった。
「素敵ですね〜」
「ほんとだね」
にこにこと微笑みあうカップルを誘導しながら、係りの男性が柊にこっそり言う。
「真上付近で中の照明消えますけど、驚かないで下さいね」
「あ…はい」
苦笑いしながら柊が答えた。
高さを増すたびに、少しずつ夜景が広がっていく。
「柊さん、ありがとうございます」
向かい合わせに座った美男が頭を下げた。
「迎えに来てくれて、一番大きな星を見せてくれて、それに観覧車にも乗れてます。
こんな…普通のデートみたいなこと、私したことなくて。だから、とても嬉しいです」
そう言って恥ずかしそうに下を向く。
「俺の方こそ、今日は嬉しいことばかりだよ」
柊は目を細めて美男をみつめた。
時折揺れる長い髪、袖から伸びる白くて細い腕、楽しそうな笑顔。
そんな普通の光景を、柊は忘れないように刻みつける。
「ほら、見てごらん。あそこにも星がある」
柊は真ん中の窓から地上を指差した。
「え、どこですか?」
身を乗り出して美男が窓に顔を寄せる。
「みたいじゃなくて、デートだからね」
柊が耳元で囁いた。美男が顔を向けるのと同時に、照明がゆっくりと落ちていく。
「え…」
完全に照明が落ちると、足元と天井に無数の☆が現れた。
「かわいい」
白く浮かび上がる大小の星に美男が思わず呟く。
「美子…」
驚いた顔が柊を見た。
「柊さん、初めて名前…」
美男は名前を呼ばれただけで、ドキドキしている自分に気付く。
今まで一度も美子とは呼んでくれなかったのに…
それなのに、こんな星の中で初めて呼ぶなんて…
「柊さん、ずるいです…」
柊は首を傾げて微笑むと、美男の頬に手を添え、そっと唇を重ねた。
優しく触れるだけのキスを、星の中で何度も繰り返す。
「美子、大好きだよ」
一番聞きたかった言葉を、美男は星の中で見つけた気がした。
「柊さん、どうかしましたか?」
腕の中で、美男が不思議そうな顔をしている。
「あ、ごめん。なんでもないよ」
考え事をしていた柊は笑って誤魔化す。
「今日は楽しかったですね〜ドライブも観覧車も」
「ファーストキスも」
柊はさりげなく付け加えた。
「ファーストキスじゃないですよ?それは柊さんが私の部屋で奪いましたから」
何気ない反撃に心が痛む。
考え事の種が出てきたのは、録画したバラエティーを見ていた時だった。
美男と勇気が雛壇に並び、ファーストキスの思い出を聞かれていた。
「美男くんはどこで?狙ってたの?」
軽くふられた質問に、美男は顔を赤らめながら答えていた。
「へ…部屋ですよっ、ぼっ、僕の部屋でケーキを食べたあとに…」
「あー!クリーム付いてるよ?とか言ったんじゃないの〜」
「キャーっ!美男くん策士!」
「それはやっぱり狙ってたんだよねー?」
悪気のない盛り上げと、容赦ない司会者の切り返しに、美男の慌てる様子がみてとれた。
「ねっ、狙ってませんよっ!と、突然だったし…」
「え?美男くん奪われたの!?」
「えっ!?…あ、あの…僕っ」
見てられない程慌てた美男を、勇気がフォローする光景を見ながら柊は反省した。
やっぱり…あれが美男のファーストキス…
後々もしかして?とは思ったものの、下手に確認して落ち込むのも嫌だった。
ただ…ああ、やり直してあげたい…とうなだれたあの日から、柊はずっと気にしていた。
「今日の観覧車のキスがファーストキスにならないかな?」
「なりませんよ」
冗談だと思ったのか笑いながら即答した後で、美男は不思議そうな顔をした。
「どうしてそんなこと言うんですか?」
柊は正直に、番組を見たこと、ロマンチックな思い出にしてあげられなくて反省してることを話す。
「もー!そんなこと気にしてませんよ?」
美男が呆れたように言う。
「でも、女の子だし…」
「私にとっては誰としたかですから」
「え?」
「あ〜初めてキスしたのは柊さんとだったな〜て、思い出す方が大事ですから」
えへっと笑う美男を見て、柊の顔がぱっと明るくなった。
「じゃあ、美男は気にして…」
ないんだね?と言いかけた柊の言葉を、美男が遮る。
「でも、憧れますよね〜ロマンチックなファーストキスって」
「うっ…ご、ごめん」
何も考えずに美男の唇を奪った自分を柊は恨んだ。
やっぱり女の子には大事な思い出なんだ…なのに俺は…
再び落ち込んでいく柊の腕を、美男がつんつんと指先でつつく。
「あの…今日、柊さんと観覧車でファーストキスしたのは美子ですから。
あれは美子の素敵な思い出として大事にしますね」
柊が驚いた顔で美男を見る。
「…え?で、でも…」
「だって、美子って柊さん呼びましたよ?だからあれは…美子のものです。
柊さんも忘れないで下さいね?美子とのファーストキスは観覧車の中ですよ」
恥ずかしかったのか、最後にえへっと美男がはにかんだ。
「ああ、忘れない。覚えとくよ」
そう言うと、柊はぎゅっと美男を抱き締め付け加えた。
「いつか、聞かれるかもしれないからな…」
以上です。ぐだぐだですみません。
おお!例の新聞記事の妄想デートですか!
すごい読みたかったのでGJ!
柊さんクリーム作戦でファーストキス奪っていたとはww
鬼畜柊も欲しいけど、ごくごく普通の恋愛もさせてあげたいw
柊ヲタの自分、新聞妄想デートの実現に感激しました。
妄想新聞のデートかw
感激!
よかったね柊さん!
>>235 GJですー!
キュンときました
奪った流れ気になりますw
>>235 自分も柊ファンなので、妄想デートの実現に感涙です!幸せ柊さんおめでとー!!
>>221 いやいや、廉さんかわいくってよかったです
愛らしい廉美子をありがとうございました
よかったら、鬼畜柊さんもぜひw
>>235 妄想デート実現!ありがとうございます!
柊さん、よかったね…キュンキュンきました
>>235さん 素敵なお話ありがとうございます。
柊さん「俺の彼女です!」宣言のあとに、インタビューに備えて書いた柊さんシナリオ小説という
オチかと思ってドキドキして読みました。妄想じゃなかったんだね<観覧車キス!
ドラマの柊さんスポーツ新聞インタビュー、将来、廉美子ジュニア達が読んだらビックリするね。
「大好きで優しい柊おじさんが、実は、ママの最初の恋人だった!!!」って衝撃。
>>235 GJ!! 以前、柊美子でケーキ食べたあとに初体験〜の話を書かれた方ですよね?続きが読めて幸せです!
ほのぼの柊美子も大スキだ!
美男NANA続きあったらいいな・・・気が向いたらおながいします。まったり待ってます。
もし美男NANAがくっついたら、廉さんはNANAの弟になるんだね。
柊さん、廉美子の子供がダメでも、美男NANAの子供でもいいんじゃね<年の差婚
>>244 柊さんひそかに、歳の差婚を狙うも…廉美子の子供も、美男NANAの子供も
全員男の子だったーorz というオチがいいと思いますw
前スレ378です
美男×NANAの続きを投下します
まだエロなしですごめんなさい
おまけに書いてるうちに激しくバカップルになりました
スレチもいいとこなので興味のない方はスルーしてください
前回投下分
前スレ372−377
NANAと手をつなぎ、彼女の歩幅に合わせてゆっくりと出口へ歩いていく。
柊の車のエンジン音が薄れていき、やがて消えた。
コツコツと硬い足音が響く薄暗い地下駐車場で、美男の心はまだ少しざわめいていた。
柊が美子の名前を呼んでいた。
本当に好きだったんだな、と思う。
『美男は美男だ。お前は美子とは違う』
そう言っていた柊が俺と美子を重ねてしまうほど、まだ少しだけ、想いを断ち切りがたいままでいる。
美子が柊とのそういう話をあまりしたがらなかった理由が少し分かったような気がした。
美子だって、柊と同じように辛かったんだろう。
あいつは人の気持ちを軽く受け流せるようなやつじゃない。
美子は柊の心を深く受け止めて…それでも廉を選んだ。
選択のベクトルが違うのは、選ぶのも選ばれるのも、どちらも苦しい。
「どうしたの美男?さっきから黙っちゃって」
少し不安そうに美男の顔を覗き込むNANAに、小さな声で答える。
「俺さ…。俺がNANAの隣にいられるのは、すごく幸せなことなんだなって思って」
NANAの部屋で何度か身体を重ね合った今でも、こうしてただ手をつなぐだけで胸が高鳴る。
そんな甘い気持ちになれるのは、NANAが俺のことを選んでくれたからだ。
手のひらに伝わる彼女の温もりがうれしくて。
美男はしなやかなNANAの手をきゅっと握りしめた。
NANAに出会って、恋に落ちて、想いを伝えて、それが通じた。
この世でたった1人の大切な人が俺だけを見つめていてくれる。
奇跡なんて一言で簡単に片付けたくはないけれど、間違いなくこれは奇跡だ。
美子じゃないけど、神様に感謝したくなる。
地上へ向かうエレベーターの中。
扉が閉まり、次に開くまでの7秒間。
2人きりの小さな箱の中で、溢れる恋心を唇越しに伝え合った。
エレベーターの扉が開き、不思議なデートが始まる。
今日のプランは特に決めていなかった。NANAの思いつくままに1日を楽しもう。
「NANA、これからどうする?」
「買い物したいな。行きたかったお店があるの」
小さなショップが立ち並ぶ通りに着くと、NANAの心に火が点いた。
美男は手を引っ張られて、あちこちの店を連れ回される。
「美子!見て見て!これ可愛くない?」
「う、うん。そうね」
「あー、こっちもいいなぁ。どうしよう。迷っちゃう」
NANAがブラウスとニットを手に鏡の前で悩んでいると、すぐに店員が寄ってきて声をかける。
「それ、どちらも今すごく人気のある商品なんですよ〜」
「やっぱりそうなんですね。どっちにしようかな」
迷うNANAに少し待つように声をかけ、店員がスカートを手に戻ってきた。
「この2つに合わせるとこんな風にコーディネートできて……」
2人が盛り上がるのを横目に見ながら美男は店の中の洋服をひととおり眺め、NANAの好みを頭に入れる。
そうしている内に名前を呼ばれて振り向いた。
NANAが試着室のドアの向こうから顔だけ出して手招きしている。
「どう?似合うかなぁ?」
試着室を出て鏡の前に立ち、ちょっぴり照れた笑顔でくるりと回ってみせる。
とろんとした素材のスカートがふわりとひるがえり、またNANAの脚にまとわりついた。
やわらかく揺れる服は彼女にぴったりで、首を傾げて見つめられたらそれだけでもう、ノックアウト。
「…すっごく、可愛い」
「ホント?じゃあ…。すみません、これ全部くださぁい!」
「えっ?!」
1つだけ選ぶはずが3つになった。
ショップ店員恐るべしだ。セールストーク上手すぎるだろ。
こんな調子で次々と紙袋が増えていくことに美男は圧倒されていく。
NANAって、こんなにパワフルだったの?!
「NANA、重いよ…」
「え〜、まだ欲しいものいっぱいあるのに」
「でもおれ…じゃなくて私、女の子だからこんなにいっぱい持てな〜い」
女装しているのをいいことに、試しに甘えてみたら呆れたようにプッと吹き出された。
「もぅ、しかたないわね!私も持ってあげるから貸して」
「よろしくお願いしまーす」
なるべく小さな紙袋を2つ、NANAにうやうやしく進呈する。
「でもこんなことしてあげるの今日だけなんだから。次は覚悟しといてね!」
そう言ってNANAはいたずらっぽく笑った。
買い物をひととおりすませ、近くのカフェで少し遅めのランチ。
食事が済むとデザートのケーキとドリンクが運ばれてきた。
NANAの前にはシフォンケーキと紅茶、美男の前にはチョコレートケーキとコーヒーが並ぶ。
「ん〜、おいしい!…でも、美子のもいいなぁ…」
甘いものに目がないNANAが美男の皿を羨ましそうに見る。
だったら全部あげるよと言っても、太っちゃうからそんなにいらないと彼女は答える。
「違うの。ちょっと味見したいだけなんだってば」
NANAが美男のチョコレートケーキを一口食べて満足そうに微笑んだ。
「うん、こっちもおいしい!ねぇ、美子も私の食べてみる?」
NANAはそう言うとフォークでシフォンケーキとクリームをすくい、美男の口元に差し出した。
あーん。ぱくっ。もぐもぐ……
甘いものはあんまり得意じゃないけど、たまにはいいな…
NANAと見つめ合って幸せな気分に浸っていると、周りのテーブルからの視線が痛いことにふと気が付いた。
あわてて我に返って周囲に背を向け、息をひそめて話し合う。
「みんなが怪しそうな目で見てるんだけど…」
「どうしよ…部屋にいるつもりでいつもの癖が出ちゃった…」
「とにかく少し、落ち着こう」
「そうね…」
それから2人は澄ました顔で背筋を伸ばして目の前にあるものを黙々と口に運んだ。
せっかくのデザートもドリンクも、もうほとんど味がしなかった。
会計を済ませると、レジを打ったアルバイトの大学生らしい女の子が声を掛けてきた。
「あのっ、NANAさんですよね?!私、大ファンなんです!握手してもらってもいいですか?」
NANAがにっこり微笑んで握手をすると彼女はとても興奮したようで、口を開いたら止まらなくなった。
「きゃー、ありがとうございますっ!感激です!あのあのっ、NANAさん今日はお友達とお買い物ですか?」
「そうなの。今日はお休みだから、久しぶりに外に出掛けてみたのよ」
「あの、NANAさんのお友達ってA.N.JELLの美男さんにそっくりですねっ!さっきデザート食べさせてあげてるのを偶然見ちゃって、それで、女の子なのになんだか恋人同士みたいでちょっとドキドキしちゃいました〜」
「こっ、こ、恋人同士なんてそんな!か、彼女は私の大親友で、美男さんに似てるってよく言われるの…」
隠さなければいけないキーワードが立て続けに出てきて、慌てたNANAの声が軽く裏返る。
「そうだったんですね〜。あっ、引き止めちゃってごめんなさい!これからもお仕事頑張ってくださいねっ!」
まるで逃げるみたいに店を後にした。
「あーん、怖かった〜!」
バレたらどうしようかと思っちゃったとNANAが少し弱気になる。
「もう心臓バクバクよ!」
「俺もだよ…」
NANAと同じように動悸がなかなかおさまらない中、今度は突然携帯が鳴り出して飛び上がるほど驚いた。
「よ〜美男!今どこだ?表参道?すぐに行くからちょっと待ってろよ」
…馬淵さん、心臓に悪いよ…。
大通りから少し離れた人通りの少ない道で10分ほど待っていると、馬淵の車がやってきた。
車から降りた馬淵が美男の姿を見て興奮したような声を上げる。
「ぅわお!美子だっ!美子じゃないか〜!」
美男の周りをグルグル回りながらあちこちを見回して、むやみに関心しているようだ。
「いや〜、見事に化けたな!これならどこから見ても男だなんてバレないだろ?!」
「シッ!馬淵さん声デカいよ!」
「おーっと、悪い悪い。まあとりあえず乗れよ」
馬淵はトランクに荷物を詰め込み、いや〜お前らよく買い込んだな〜、なんて妙に関心しながら運転席に座る。
そしてバッグの中から取り出したチケットを後ろの2人に差し出した。
「デートの定番っていったら遊園地だろ!どうだ?行ってみるか?」
「NANA、どうかな?」
「行きたい!遊園地なんて久しぶりよ!」
NANAの表情がパッと明るくなった。
「よーし、決まりだな。このまま送ってってやるよ」
高速道路を走りながら馬淵が冗談を言って車内を盛り上げる。
しばらくすると後部座席からの笑い声が消え、馬淵がバックミラーを覗くと2人は手を繋いだまま肩を寄せ合って静かに目を閉じていた。
「こいつら、毎日忙しくて大変だもんな…」
目が覚めたら、思いっきり楽しんでこいよ。
馬淵は2人が目を覚まさないように、できるだけ静かに車を走らせた。
「美男、着いたぞ。起きろ」
トントンと肩を叩かれる刺激で目が覚めた。
後部座席のドアから馬淵が上半身だけをのぞかせている。
ふぁ〜、と軽く欠伸をしてから隣を見るとNANAはまだ小さな寝息を立てている。
「ちょっと話いいか?」
馬淵に呼ばれ、まだ夢の中にいるNANAを起こさないようにそっとドアを閉じて外に出た。
「美男、今夜はどうするんだ?」
「え?NANAんとこに泊まるつもりだけど」
「まったく、せっかくのデートだってのにムードのかけらも無いやつだな〜」
やれやれ、と馬淵が呆れた顔をする。
「ほら、これやるよ」
差し出されたのは遊園地のすぐ隣にあるホテルのカードキーだった。
「どうせそんなことだと思って部屋を予約してある。今夜は2人でゆっくり過ごせ」
そっか、そうだよな…。
いつもみたいにNANAの所に行けばいいやなんて軽い気持ちでいたことを反省する。
「ごめん馬淵さん…ありがとう」
「お礼なら俺じゃなくてRINAに言うんだな」
「え?」
「お前は妙に鈍感なところがあって、女心が全然わかってないんだとさ」
馬淵は先日、RINAに呼び出されて強く言われたらしい。
『このデートがNANAにとってどれだけ特別なもので、どんなに楽しみにしてるか知ってる?
デートって雰囲気も大切なの。ロマンチックな場所でドキドキしたいのよ!
でもあの子、そんなの全然分かってないでしょ。
NANAはね、美男と一緒ならどこでもいいなんて健気なこと言っちゃって、もうホントに可愛いの。
でもそれじゃダメなのよ〜!わかる?
NANAの笑顔が見たいなら、もっといろいろ考えなさいって言ってやって。
美男のことはアンタの仕事よ。しっかり教えてあげなさいよっ!』
…とまあ、こういうわけだとか。
「俺に言うなよって思ったけどな。でもRINAの言うとおりだろ?次からは自分で考えるんだぞ」
「…そうだね、了解。がんばるよ」
「ところでさ…」
馬淵は辺りをキョロキョロと見回して誰もいないのを確認すると、美男の肩に手を回して内緒話を始めた。
「なあ、もちろんアレは持ってきてるんだろうな?」
「あれって……あっ!」
しまった、と愕然とする。
「やばいよ馬淵さん。俺、NANAんちに箱ごと置きっぱなし…」
「バカ!何やってんだよ〜!NANAちゃんにもしものことがあったらどーする?!」
「馬淵さんお願い!コンビニかどこかで買ってきてくれないかな…?」
「お前、美子の顔でそんなおねだりするなよ〜!ドキドキするじゃないか!」
どうしよう…さすがにこのカッコじゃあんなもの買いに行けないし…まずい…やばい…。
わかりやすく慌てる美男を見て、馬淵はとうとう笑いを堪えきれなくなった。
「ガハハーッ!お前をからかうとおたおたするから面白いって、本当に柊が言ってたとおりだな!」
「え〜?!ひどいよ馬淵さん!」
赤面する美男に、馬淵がジャケットの内ポケットから小さな紙袋を取り出して見せた。
「ほれ、これは男心のわかる俺からだ。今夜はいい夢見ろよ〜!」
馬淵がにやけた顔で美男の背中をポンポンと叩く。
「長い夜もこれで安心…って、何かのCMみたいだな。わははっ」
最後の冗談に苦笑しながら、馬淵から紙袋を受け取りありがとうと感謝した。
思ったより話が長引いたせいで、車に戻ると目を覚ましたNANAが不機嫌な顔で待っていた。
「美男のバカ!もう、どこに行ってたのよ!気付いたら誰もいないし、電話しても美男の携帯ここにあるし…」
隣に座ると、NANAがぎゅっと腕にしがみついてくる。
言葉では強がっているけれど、きっと不安だったんだろう。
「NANAちゃんごめんっ!俺が美男連れ出したから…」
あわてて謝る馬淵を美男が遮った。
「違う、悪いのは俺だよ。NANA、1人にしてごめん」
「もうやだ。美男なんて嫌い」
NANAは口を尖らせて、目を逸らしたまま合わそうとしてくれなかった。
「困ったな…。機嫌直してよNANA。これからはずっと側にいるからさ、ねっ?」
お願いだからと手を合わせて必死に頼み込んだら、NANAがようやく口を開いてくれた。
「…じゃあ、キスしてくれたら許してあげる」
えっ?それでいいの?
可愛すぎるNANAの答えに美男の口元が自然と緩む。
こんな謝り方ならいつだって大歓迎だ。
「わかったよ。だったらもう俺のこと、ちゃんと見てほしいんだけどな」
美男はNANAの方に向き直り、彼女の頬を両手で優しく挟んで逃げ場をなくした。
「あ…」
少し恥ずかしそうに目を伏せるNANAの顔をクッと上に持ち上げる。
下から覗き込むようにして視線を合わせ、そのままゆっくりと顔を引き寄せた。
NANAは目を閉じ、唇を軽く開いて甘い瞬間を待ち構える。
ちゅっ。
額に軽くキスをした。
「………え〜っ?!」
期待を裏切られたNANAが不満そうな顔をする。
いままでに見たことのない表情が面白くて、ますますからかいたくなった。
「ほら、キスしたよ。これで許してくれるよね?ねっ?」
「んもぅ、ひっど〜い!美男のバカっ!」
ヘラヘラした態度が気にくわなくて、NANAが美男の腕や胸元をバシバシと叩く。
「いててっ。NANAごめ…ぃてっ」
ちょっ、グーパンチはやめて。
「あーもうホントごめん。これで許して」
NANAの手首を掴んで動きを止め、今度はまっすぐに唇を奪った。
チュッと音を立てながら柔らかい唇を味わっていると、さっきまで抵抗していた身体が脱力していく。
なんだか少しずつその気になってしまって、NANAの胸に手を伸ばした。
「ぁん…」
その豊かなふくらみを手のひらで包んでやんわりと揉みしだくと、切なそうな声が聞こえてきた。
髪をそっとかきあげて耳元に息を吹きかけるとNANAが身体をぴくっと震……
「わーーーーーっ!2人ともそこまでっ!」
「うわっ!」「きゃっ!」
馬淵の顔が真っ赤になっていた。
とりあえず今回はここまでです
>>244のタイミングのよさ(?)にビビりましたw
次はまだ書けてないので、また間があいてしまうかもしれませんががんばります
>>253 GJ!っつーかバカップルwかわええ。
しかも生殺しー!!ちょっとー続き〜〜〜!!
赤くなるまぶっちゃんもかわええw
最近は以前よりは少し投下も落ち着いてるみたいだけど、もうすぐDVDも発売だね。
撮影の合間に出演者がわちゃわちゃしてる映像とか見られたら
また妄想が膨らみそうだわー。
>>253 待ってましたぁあああ!
また続きが気になるところで…うぅ。
バカップル最高です!
本当可愛いよ二人とも!
キュンキュン過ぎて涙出そうw
続きお待ちしております。
>>253 お待ちしてました!
かわいい〜かわいい〜
253さんの美男もNANAも本当にかわいいです!
ムチャブリーな柊さんを思いやる美男優しすぎw
続きもお待ちしています!
>>253 百合っプルに間違われる美男NANAキター
バカップル可愛すぎ2828
柊美子、美男NANAとハッピーなお話が続いたところで空気を読まずに投下します
柊美子エロありです
ブラック柊さん鬼畜展開しかも滅入る話なのでお嫌な方はスルーしてください
259 :
偏愛1:2011/12/03(土) 10:57:19.88 ID:0S6gQVQb
都内にしては緑の多い閑静な地域。その中でも特に豊かな森に囲まれた場所にそれはある。
青空学園。美子が働いている場所だ。
廉と美子が付き合い始めてから、何度か来たことがあった。
少し離れた高台から眺めるだけで、美子に会いに行ったことはないけれど、
ここに美子がいると思うだけで心が慰められた。
どうやら二人は幸せにやっているらしい。漏れ伝わる噂を聞くだけで満足していた。
昨日までは。
「美子は元気か?」
何気なく聞いた柊に対して、廉は不機嫌そうに言った。
「さあな。あいつの事は聞かないでくれ」
足早に去っていく廉の後ろ姿を呆然として見つめた。
一体どういう事だ。幸せにやってるんじゃなかったのか?あんなに大騒ぎして結ばれたのに、
そんなにあっけなく終わってしまうのか?
柊の心の中に廉に対する怒りが沸々と湧いてきた。
美男に問いただしたところ、二人ははっきり別れたわけではなかった。
些細なことで口論になり、お互いそのまま連絡をしていない状態らしい。
その話を聞いて、俺の心の中にある決意が生まれた。
廉、今度こそ、美子を俺の物にするよ。手が届かなくなってから、どれほど大事だったか思い知ればいい。
高台に車を止めたまま、美子の帰りを待った。そろそろ園を出る時間だ。
遠くから美子が歩いてくるのが見える。俯いて寂しそうな足取り。
柊は車を出した。美子の横に車を止めて驚いたように声を掛けた。
「美子?久しぶりだね。元気だった?」
我ながら白々しい声が出た。美子は驚いた後、そっと微笑んだ。
「柊さん、どうしたんですか?こんな所で」
「ちょっと通りかかって。今帰り?よかったら送ってくよ」
躊躇う美子を強引に車に乗せて、車を走らせた。
「ここが美子の部屋か。女の子らしい部屋だね」
柊は美子の部屋に上がり込んでいた。
優しくて礼儀正しい美子は、家まで送らせてそのまま柊を帰らせるなんてことはしないだろう、
という柊の読みは当たった。
美子が淹れたお茶を飲みながら、当たり障りのない世間話を続けた。
始めは困惑していた様子の美子も、気持ちがほぐれてきたのか笑顔を見せるようになっていた。
すっかり美子の気持ちが緩んだ所で、唐突に話を切り出した。
「廉とはどうしてる?」
美子の肩がこわばった。しばらく俯いていたが、顔を上げて精一杯の笑顔を作った。
「最近、忙しいらしくて。あんまり会ってないです」
それだけ言うと、お茶のおかわり淹れますね、と美子は席を立った。
260 :
偏愛2:2011/12/03(土) 10:58:19.89 ID:0S6gQVQb
美子の背後に近づいて、後ろから抱きしめた。
「柊さんっ、やめて下さいっ!」
腕を振りほどこうとする美子を強く抱きしめて、耳元で言った。
「廉は、戻らないよ」
美子の体から力が抜けた。追い打ちをかけるように柊は続ける。
「諦めたほうがいい。あいつは、美子の元には戻らない」
美子の体が震えだした。前に回している柊の腕に、ポタッと美子の涙が落ちてくる。
ひとしきり泣いて落ち着きを取り戻した美子は、柊に向き合ってごめんなさい、と謝った。
「いいんだ、泣きたい時は泣いた方がいいから」
美子の背中を優しく撫でて、美子に安心感を与える。徐々に抱きしめる腕に力を入れて二人の体を密着させた。
不自然な体勢に美子は戸惑っている。そのまま美子の首筋に唇を寄せた。
「柊さん?何を…」
手を突っ張って柊から逃れようとする美子を押さえつけた。その間も美子の首にキスを重ね、
耳たぶを噛んだ。
「いやっ!やめてっ!」
美子は激しく抵抗した。柊はおかまいなしに愛撫をエスカレートさせる。
ブラウスの裾から手を忍ばせて、ブラジャーのホックをはずした。そのまま手を前に回して胸を強く揉みしだいた。
「いやーっ、いやっ…やめてっ」
大声を出す美子に囁く。
「そんな声を出したら、隣に聞こえるよ」
美子が息をのんだ。一瞬美子が怯んだ隙に乳首を強く捻る。ビクンと体を震わせる美子。
強く胸を揉みながら時々乳首を捻った。美子の手から力が抜けて行く。
「やめて…下さい、柊さん…お願い」
口ではそう言うものの、美子の頬は上気して目が潤んでいる。
「ふふっ、それで抵抗してるつもりなの?誘われてるようにしか思えないよ」
柊はすっかり力の抜けた美子を抱き上げてベッドに連れて行った。
261 :
偏愛3:2011/12/03(土) 11:00:04.08 ID:0S6gQVQb
上半身裸にした美子の上に覆いかぶさって愛撫を続けた。
両方の胸を強く揉んで、代わる代わる強く吸う。舌を大きくあてがって乳首を擦りあげると、
美子はビクビクと体を震わせた。
「これ、好きなの?」
美子の反応を見て、感じてそうだと思うとそればかりを執拗に続ける。
スカートの中に手を入れる。下着の上から触っただけでも美子の潤いを感じた。
全て脱がせて美子の足を開いた。
「すごい濡れてるよ、美子。嫌だって言ってたのに。どうしてだろうね?」
溢れさせている所をまさぐりながら柊が言った。
「や…めて…お願い…んんっ…」
美子は涙を流しながら懇願した。
「やめないよ、美子。だって、こんなに欲しがってる。ほら…」
いきなり指を差し込んだ。激しく出し入れしながら敏感な場所を擦った。
「ああああっ…い…やっ…んっ…あぁ」
ビクッと体を震わせて美子が脱力した。
「もうイっちゃったの?早いな。してくれるなら誰でもいいんだね」
柊は痙攣する美子の中で指を動かし続けながら言葉で弄る。
「そ…んな…こと…あっあっ…」
美子は立て続けに達していた。
「廉はどういう風にやってくれた?同じようにやってあげるよ」
廉の名前を出すと、美子の中が一瞬キュッと締まった。柊は思わず嫉妬を覚える。
柊は美子の足をさらに広げて、中心に舌を伸ばした。
イったばかりでヒクつくそこを音を立てて舐め始めた。入り口をなぞり、奥まで舌を差し込むと美子の痙攣が微かに伝わってきた。
指で開いて小さな突起を露出させる。ピンク色に輝くそれを優しく舐めあげた。
美子は押し寄せる快感に、きりがないほど達し続ける。
「こんなに感じやすいなんて思わなかったよ。意外といやらしいんだね」
柊に何を言われても、もう美子には届いていなかった。
262 :
偏愛4:2011/12/03(土) 11:01:02.35 ID:0S6gQVQb
柊は全裸になるとベッドに座った。そそり立つものを美子に見せつけて握らせる。
「咥えて」
信じられないというように、美子は目を見開いた。
「フェラくらいした事あるでしょ?」
「い、いや。廉さん…は、そんな…こと、させなかった…」
「そんなこと?」
柊の瞳が冷酷に光った。
「恋人同士なら誰でもしてることだよ。…廉は色々我慢してたのかもな」
柊の言葉が胸に突き刺さる。私、廉さんに、我慢させてた?だからこんなことに…
「ほら、そっと咥えて」
混乱した美子は柊に言われるまま口に含んだ。
「出し入れしながら舌を使って。んっぁ…上手だよ、美子」
まるで催眠術にでもかかったみたいに、美子は舌を動かしている。
「男は先端が一番気持ちいいんだよ。んんっ…そう、そこ…はぁ…」
美子は自分が今何をしているのか、どうしてこんなことをしているのか、頭がぼうっと霞んで分からなくなっている。
柊は少しずつ体の位置を動かした。ベッドに仰向けになり、美子に声をかける。
「美子、俺の顔に跨って」
思考停止に陥っている美子は、従順に柊の顔を跨いだ。
柊の眼前に美子の中心部が迫る。ぬらぬらと光って、滴らせている。指でぐいっと開くと美子の
奥まで見えた。
めちゃくちゃに舐めまくった。奥まで舌を入れてかき回し、突起に舌を押し付け回転させる。
舐めるほどに溢れてきた。柊の顔の上に美子の蜜が滴ってくる。
柊は口全体で美子の秘所を覆い、強く吸いながら舌で蜜を掻き出し、ごくりと喉を鳴らした。
美子は自分に与えられる快感に連動するように、柊のものをしゃぶり続ける。
ねっとりと舌を絡ませ、唾液を口いっぱいにためて、いやらしい音を立てている。
やがて柊は体を起して、美子の口に向かって出し入れを始めた。美子の頭を押さえて腰を使う。
「美子、すごくいいよ」
頭をのけ反らせて動きが早まった。
「はぁ…んっ…あぁ…いい…」
動きが止まる。その瞬間美子の口の中に吐き出された。ビクビクと脈動するたびに溢れていく。
美子は涙を流して、助けを求めるように柊を見た。
「飲み干して」
柊はにっこり笑って命じる。
目を見開いて首を振る美子。しかしやがて覚悟を決めたのか、諦めたようにごくりと飲み干した。
柊はむせながら泣いている美子を抱きしめて、頭を撫でて褒めてあげた。
「よく出来たね。上手だったよ。廉にもやってあげればよかったのに」
放心状態の美子は、柊の顔をぼんやりと見上げるだけだった。
263 :
偏愛5:2011/12/03(土) 11:02:14.49 ID:0S6gQVQb
美子を横たわらせて、足を広げる。美子は意志をなくした人形のように虚空を見つめている。
避妊具を装着して、美子の中心にあてがった。
「美子、いくよ」
一気に突き立てた。あっけないほどスムーズに飲み込まれていく。
これが美子にとっての初めてだったら、どんなにいいだろうと柊は思った。
処女性を重んじるわけじゃないが、美子に初めての痛みを与えたかった。その後の労りと慰めも。
全部廉が味わった。どす黒い嫉妬の炎が柊の胸で燃え盛る。
何かに復讐するように突きまくった。
美子は柊の背中に手を回してしがみつき、腰に足を絡ませて擦りつけてきた。
そんな無意識な反応も廉との営みで身に着いたものだと思うと、柊の怒りは頂点に達する。
「あっあっあっあっ…い…い、いく…いくっ…」
「まだだよ…美子。もっと…もっと…して…あげるからね」
廉の幻を振り払うように腰を動かし続ける。美子の締め付けに逆いながら激しく腰をぶつけた。
「あああああっ…また…いくっ…やっ…ああっ…れ…ん…さん…」
柊の心臓が凍りついた。その瞬間限界を超えてしまった。
美子の中で脈動しながら精が吐き出されていく。柊は呆然としたまま美子を見つめた。
「美子…俺を見て…美子?…美子っ、美子っ!」
皮肉にも柊が与えた深い快感によって美子は意識を失くし、柊の呼びかけに応える事はなかった。
264 :
偏愛6:2011/12/03(土) 11:03:04.52 ID:0S6gQVQb
あれから一度だけ美子の部屋を訪ねた。でももう、そこに美子はいなかった。
しばらくしてから、廉に電話があったらしい。
またアフリカに行くと言っていたそうだ。もう戻らないとも。
許されない罪を犯したからと、泣いて謝っていたと聞いた。
廉は引き留めたみたいだけど、美子の意志は固かった。
俺があんなことをしなければ、廉と美子は今でも幸せだっただろうか?
少なくとも、こんな最悪の別れが無かった事だけは確かだ。
俺が愛だと思ったもの。そんなものはどこにも無かった。
ただ劣情を満たすだけの汚れた行為があっただけだった。
今でも時々この高台にやって来る。
自分の犯した罪を懺悔し、許しを乞うために。
でも緑の森に囲まれた小さな学園の中に、もう美子はいない。
以上です
本当にすみません。全方位に向けて土下座します
特に柊さんファン、中の人のファンの皆さん、すみません
口直しと言ってはなんですが、おまけにほのぼのしたやつを一つ
266 :
双子U-1:2011/12/03(土) 11:07:03.41 ID:0S6gQVQb
久しぶりに廉の家に遊びに来た美男は、紅茶を飲みながら室内を見回している。
「ふーん、これが新婚の部屋か…」
「お兄ちゃんたら、まだ結婚してないから…」
美子は顔を赤らめて照れている。
「もうすぐ廉さんも帰るから、ご飯食べて行ってね」
「うん」
美子の幸せそうな顔を見て美男は安心した。
養護施設から修道院に入って、ほとんど世の中の事を知らないまま廉と出会って恋をした。
世間知らずすぎて、悪い男に騙されるんじゃないかと心配してたけど、廉ならまあまあ合格点だ。
「美子、幸せか?」
美子の顔を見ると聞くまでもないけど、それでも確認したい。
「うん、とっても幸せ」
瞳を輝かせる美子。我が妹ながら可愛い。
「じゃあ、喧嘩なんかもしないのか?」
美子の表情が曇った。
「実は、こないだ大喧嘩しちゃった」
(えっ!あれほど美子を大事にしろって言ったのに、もう喧嘩か。廉のやつ…)
「何で喧嘩したんだよ」
美子は俯いてもじもじしている。
「あのね、どっちがたくさん好きかって…言い争いになったの」
「は?」
「絶対私の方がたくさん廉さんの事好きなのに、廉さんは、いや俺の方がもっと好きだって」
真面目な顔で話す美子の横顔を見て、美男はあいた口がふさがらなかった。
(何だそれ?バカか、こいつら)
妹を守りたい一心であまりにも世間から隔絶させたのが悪かったんだろうか。
美子のあまりの浮世離れぶりに逆に心配が募る。
いや、でも、美子だけならまだしも、廉まで一体何なんだ。
A.N.JELLのカリスマにしてリーダーの桂木廉が、それじゃバカップルじゃないか。
美男の困惑にも気付かず、美子は続ける。
「廉さんの事が大好きで、考えるだけで涙が出るの。どうしたらいいと思う?」
(知らねーよ。ったく。勝手にしろ)
美男はばかばかしくなって横を向く。
267 :
双子U-2:2011/12/03(土) 11:08:01.88 ID:0S6gQVQb
「美子ー、帰ったぞー」
「あっ廉さんが帰ってきた。はーい」
美子がいそいそと玄関に向かう。美男も一応出迎えようと席を立った。
「美子、ただいま。」
美子を抱きしめながら廉が言った。
頬を染めてうっとりとした美子が廉を見上げて、お帰りなさい…と呟く。
微笑んで見つめ合った二人が、唇を寄せ合った。その時、
「よう、義弟、お帰り」
ギョッとした廉が顔を上げると、壁に寄りかかった美男がニヤニヤしながら立っていた。
「な、なんだ、来てたのか、美男」
取り繕うようにポーカーフェイスになる廉だったが、キスの邪魔をされて明らかに少し残念そうだ。
「まあね。妹が幸せにやってんのか、チェックしにな」
「幸せに決まってんだろ。なあ、美子」
美子は廉を見上げて大きく頷いた。よくなついた子犬みたいだな、と美男は思う。
「廉でもただいまのチューとかするんだな。なんか意外だ」
「べっ別に…たまたまだ、たまたま」
美男に弱みを握られた気がして、廉は落ち着かない気分だ。
夕食後、片づけをする美子に付いて、廉もキッチンへ行った。
(廉も手伝いをするんだな。感心、感心)
そう思いながらキッチンを覗いた美男は唖然とする。
廉はシンクを片付ける美子の背後から抱きついて、ただイチャイチャしているだけだった。
(…これが、うちのリーダー…。ファンが見たらがっかりするぞ)
「俺、もう帰るから」
二人に声を掛けた。
やっと二人きりになれるとでも思っているのか、廉は急に愛想よくおお、そうか、なんて言ってる。
もっとゆっくりしていけばいいのに、と言う美子の声を背中で聞いて、玄関へと向かう。
(ゆっくりなんかしてられるかよ。アホらしくて、やってらんないっつーの)
玄関先まで見送りに来た二人に手を振り、バイクに跨った。
走りながらバックミラーで二人を確認する。小さくなっていく二人。
あ、もうキスしてる。つーか、外でキスすんなよ。誰かに見られたらどうすんだよ。
呆れながらも美男の口元に笑みが浮かぶ。
良かった、幸せそうで。良かった、廉が相手で。
「あーっ、俺も彼女欲しくなっちゃったな…」
美男は大きな声で独り言を言いながら、家路を急いだ。
以上です
お邪魔しました
連投すみません
口直しと思ったけど、よけい柊さんに申し訳ないことになってる
重ね重ねすみません
>>269 鬼畜柊さんに続いて廉美子のラブラブバカップルですかw
自分は柊美子萌えですが全然OKですw
作品投下してくれるだけでありがたいっす。
>>252 ぉぉ、萌えカップルキター。変装美子さん、美柊さんの元彼女さんと間違えられなくてよかったw
>>265 ブラック柊さん、ズバリ、好きです!こんなエンドもありですよね。
ほのぼの廉さんファミリー、子沢山になりそうw 美男義兄の心配は尽きない感じw
>>265 GJGJ
ブラック柊さんの美子凌辱キター!
しかし報われない…切ない…
バカップル廉美子ごちそうさまです
毎日お帰りのちゅーしてるんですか廉さんww
まぁドラマでは廉さんは美子と三回も外で
人目も憚らずキスしてるし、元々キス好きだと思うw
だからおはよう、行ってきます、お帰り、お休みなさいと
毎日4回は必ずしてんじゃないのw
>>275 キス好き萌ゆるなww
ほっこりしちゃったわ
そして細身の美男×バイク萌え!!
>>265 暗黒面に堕ちた柊さんGJ!ほんとこういうのがよく似合う…
エロゲーのバットエンドしてる気分でしたww誰も救われない…
キス好き廉さん可愛い!
確かに本編でもよくちゅっちゅしてた…それも全部外でww
>>265柊ヲタですが、せっかくなのでこちらでは柊に何でもさせてくださいw
幸せになって欲しいけどこういう鬼畜柊も大歓迎です!
今回は自業自得ですが、どこまでも不遇柊に萌えw
>>265 黒々柊さん、いいよー。ここで、廉さん起死回生、美子をひきとめるサイドストーリー
あるといいな、さらに柊さん不幸ですけど。
廉美子バカップル萌え〜。キス魔廉さん♪外でやるのはまずいと思うw
柊さんは鬼畜設定似合うなww
優しいアイドルスタイルな笑顔を見せたかと思うと
鋭い射るような目つきで廉さんや美男をみるのが
鬼畜を連想してしまうのかw
柊さんはヤンデレの気もあるからなー
本当エロパロ向きなキャラだ
うぉぉ・・・。久しぶりに来たら滅茶苦茶作品が増えてるw
鬼畜柊さんとか色々。胸熱すぎるwけど・・・読む時間がない;;
お久しぶりです。DT柊です。前回は暖かな感想、ありがとうございました!
最近、本当に書く時間がなくて急いで書きあげました。
DT柊×美子 エロあり 本番無し 金沢行の前日というコンセプトです。
それでは、どうぞ。
283 :
前日 1:2011/12/05(月) 00:08:50.17 ID:lncZop6R
12月27日。午後8時34分。
美子がアフリカから一時的に帰国してから早3日が経過した。
本当なら、A.N.JELLとしての活動は大晦日のカウントダウンライブで終わり・・・っと思ってたんだけど
何故だか、今年はしないという事。
変わりに、今日からメンバー達はしばしの休暇を与えられた。
各メンバー、突然の事だったが色々と考えていたようで、合宿所に残っているのは俺と美子だけだ。
勇気と美男は社長や馬淵さん達とハワイへと颯爽と旅行へ向かって行ったし、廉も気が付くとふらりと消えていた。
ホント、みんな用意が良いなって言うぐらい素早く消えて行って・・・・
もしかして・・・・どこかで言われてたんだろうか・・・?
そんな俺たち二人も、明日から急遽実家の金沢へと戻ることにした。
正月明けになるかと思ったけど、今年は美子の紹介も兼ねて実家でゆっくりすることにした。
だから今日は、美子と二人で必要な物を買いに行ったりして明日の準備をしていた。
そして、今は準備を終えてリビングのソファに二人で座っていた。
「はい。ハーブティー。」
「あ、ありがとうございます!」
ソファに座る美子にそっとティーカップを手渡すと、すぐ横に腰を下ろす。
美子はティーカップを受け取ると、すぐにハーブティーを少しだけ口の中に含んだ後
「ふぅ・・・温かいですねぇ・・・。」と言い、両手でティーカップを持ちながら笑みを零した。
その美子の姿と言葉に微笑みを返した後、一口だけ飲むと、ティーカップをテーブルに置いた。
「明日は・・・実家か・・・。」
ついにこの時が来たか・・・と思いながら、柊は両手を組むように掴むと
真剣な表情を浮かべ、目の前で波を打つハーブティーを見つめていた。
「うぅ・・・す、少し緊張してきちゃいました・・・。」
柊の様子に美子は緊張してきてしまったのか、身を縮めると表情を強張らせて
手に持っていたティーカップを少しだけ強く掴むと顔を俯かせた。
「・・・大丈夫。美子はいつも通りにしてればいいから・・・な?」
すぐ横で緊張している素振りをしている美子に気が付くと、優しい口調で語りかけ
美子の両手で掴まれていたティーカップをテーブルの上に置くと、美子の両手を上から包むように掴んだ。
自分の両手を掴まれた美子は、少し体を震わせた後ゆっくりと不安そうな表情を浮かべながら、柊の顔を見つめた。
「け・・・けど・・や、やっぱり・・・わ、私なんかが・・・しゅ、柊さんと・・・。」
「美子?そんな事考えるな。」
緊張のせいなのか、珍しくマイナス方向にばかり考えていた美子の両手を力強く掴んだ後
小さくも、それでいて力強い声が部屋に小さく響き渡った。
しばらく、二人のいる部屋の中からは物音ひとつ聞こえず、窓の外で「ひゅーひゅー」と吹く冷たい風の音が聞こえるだけだった。
その沈黙を柊は息を一つ吐き捨てた後、ゆっくりと破り捨てた。
284 :
前日 2:2011/12/05(月) 00:09:27.59 ID:lncZop6R
「緊張するのは分かるけど・・・。大丈夫。いつも通りの美子でいれば・・・絶対大丈夫だから。」
「・・・・そうですね!すいません!私、ちょっと緊張しちゃって!」
不安そうな表情はその言葉の後、もうどこにも見当たらず
変わりに、いつも見ている満面の笑顔が目の前には存在していた。
その笑顔に、言葉や態度として表していなかった自分自身の胸の中にあった緊張も気が付くと消えていた。
「美子・・・。」
そして、緊張の糸と同時にもう一つ別の物も吹っ切れてしまったのか、柊は美子に深い口づけをした。
突然だったのか、美子は一度だけ目を見開いたがすぐに目を閉じ、キスへと応じた。
「美子の手も体も・・・少し冷たいな。」
口づけを終え、手に掴んでいた美子の手が冷たい事に気が付く。
美子はキスを終えてすぐのためか、何の事を言われているのか分かっておらず、半開きとなった瞳でこちらを見つめた後
「んぇ・・?」と何とも表現しづらい声を出してきた。
「こんな冷たかったら・・・風邪ひいちゃうな。すぐ体・・・温めないと。」
「にこり」と笑みを浮かべた後、美子を自分の膝の上に乗せ
首筋辺りに舌を這わせると、美子の右手を掴み、美子のズボンの中へと自分の手と美子の右手を潜り込ませた。
「んぁ・・あ、しゅ・・・さん。こ、こんなとこ・・・駄目・・・。」
誰かが来て、こんな姿を見られる事を恥ずかしく思った美子は目を瞑り
小さく横に首を何度も振りながら、どんどん潜り込んでいく二人の手の進行を阻むように柊の手首を掴んだ。
「大丈夫・・・誰も来ないから・・・。」
耳元で呟いた後、再び首筋を一度強く吸い上げる。
「んぁぁ!ぁぁ」
冷たく冷え切った首筋に温かな感触が強い刺激を与え、その刺激に体を反らす。
そして、その瞬間に進行を拒んでいた左手の力が弱くなったのを感じると、すぐに下着の下に存在する割れ目の部分に到達する。
「ほら・・美子。ここ、凄く温かいよ?わかる?」
既に下着の上からでも分かるぐらい、美子の秘部は愛液を溢れださせていた。
一度、自分の指で掬い上げるようになぞった後、美子の右手の上に手を添えて
美子自身に自分の恥ずかしい部分が「濡れている」という事を実感させる。
「んぁ!・・・ぃぁ・・んん・・・。」
自分の秘部から溢れる愛液に感じているという事を実感した美子は、恥ずかしさのあまり目を強く瞑らせつつ
触れさせてすぐに絹を裂くような声を響かせ、その後に弱弱しい喘ぎ声を口から漏らす。
「嫌なの?それとも良いの?ねぇ・・・どっち?」
目を閉じながら懸命に耐える美子には見えないが、意地悪そうな笑みを浮かべつつ囁きかけ
美子の中指で割れ目をなぞらせるように手で誘導させる。
「んん・!・・ぃぁじゃ・・ない・・・。」
下着越しから与えられる刺激に、再び甲高い声を響かせた後
その刺激が嫌ではないという事を柊の体に縋る様に体を寄せ、無我夢中になりながら訴えかける。
それを確認した柊は、「それじゃあ・・・もっと気持ち良くならないとね・・。」
と艶っぽい声で囁きかえると、ゆっくりと美子の右手に添えていた手を動かしだして刺激し始めた。
285 :
前日 3:2011/12/05(月) 00:10:14.07 ID:lncZop6R
「んぁ!ん!んんん!!」
「美子。前にも言ったけど・・・誰のせいでこんなになっちゃったんだろうな・・。」
「んぁ!んん!ぁぁぁ!」
ぼそりと呟いた言葉は、幾度となく執拗に弄られ続ける最も敏感な部分から伝わる刺激によって、美子の耳には届いてはいないようだった。
今の美子はただただ、体中に走る刺激に体を大きく反らし、嬌声を上げることしか出来ない。
だから、俺の言葉は聞こえない。
そう分かっているから問いかけたんだけど・やっぱ、もう少し自重するべきなのか?俺。
そうこうしていると、体に寄り添うような形でよしかかっていた美子が身を縮め
柊の方へ体を向けると、左手で胸の辺りを必死に掴んできた。
「しゅぅ・・・だ、駄目!ん!駄目!」
もう限界が近いのか首を何度も横に振り、それでいて秘部を弄る美子の指の動きは速さを増していた。
そして、何か言葉を発する前に美子は甲高い声を上げ限界に達したようだ。
「ハァ・・・んぁはぁ・・・んん・・・。」
赤みを帯びた頬で、柊の方へ顔を押しつけながら呼吸を整える美子。
何も言わず微笑んでいた柊は、ズボンの中に潜り込ませた美子の右手を左手で抜き去ると、中に残る右手で下着越しから割れ目を軽くなぞる。
下着越しからでもはっきりと分かるほど、秘部周辺は「ぐしょぐしょ」に濡れている。
当初の目的である「体を温める。」というのは見事にクリアしたのだが、
ちょっとした意地悪心に火が点いてしまった柊は、美子の様子を確認せず、すぐさま下着の中へと手を潜り込ませた。
286 :
前日 4:2011/12/05(月) 00:11:41.96 ID:lncZop6R
「んぁ!」
直接秘部に触れられ、大きく体を震わせる。
「美子・・・もっと・・・もっと・・・体温かくしてあげる。」
胸に押し当てられている美子の顔を左手で持ち上げ、深い口づけを交わしたのと同時に
秘部に直接触れていた右手の中指と人差し指を、愛液によって濡れる秘部へと一気に入れた。
「んんん!んんん」
「ビクビク」と何度も体を震わせながら、整いきれていない呼吸のまま舌を絡ませ合っている美子。
必死に刺激に堪えている美子の姿を、うっすら開いた瞳で捉えていた柊は
自分の腕の中で感じる美子がたまらなく愛おしく感じていた。
その感情が、内部で暴れる指の速度を更に早くさせる。
そして、その指が内部で大きく動くたびに「びしゃびしゃ」と愛液の音が響き渡り
美子の体がその度に大きく震えあがる。
「んぁ!っぁっぁ!ん!だ、駄目!」
口づけを終えてすぐ、美子から甲高い喘ぎ声が聞こえる。
内部に溜まっている愛液が潤滑油のような働きをし、秘部で暴れる指は締め付けもなくスムーズに動く。
そして、その愛液は美子自身にも影響を与えており、内部をより敏感にさせているようだった。
それを証明しているかのように、1度目の限界を迎える前よりも、今の声は1回りほど高い声を発している。
「美子・・・」
「しゅう・・さん!ぁぁ!だ、駄目!へ、変に、変に・・・あぁ!」
休憩も入れず、限界を迎えてすぐにもう一度追い込んだ為、美子は苦しそうな表情を浮かべながら必死に声を出す。
「良いんだよ?変になっても?」
(自分がしてる行動。後日思い出したら・・・きっと、とてつもなく恥ずかしくなるんだろうな)
そう思いながらも、追い込むように囁きかける。
その言葉に従うかのように、美子は涙を「ぽろぽろ」と零しながら顔を胸に押し付けると
「んぁ!ぁ!だめ!い、いゃぁ!」
と声を上げてすぐに秘部から愛液が外へと飛び出し、2度目の限界を迎えた。
そして、「しゅう・・・さん・・・。」と苦しそうな呼吸で名前を呼び、弱弱しく笑みを浮かべると
柊の腕の中で静かに眠りに着いた。
「・・・また・・・やっちゃった・・・。」
明日が出発の日で、美子に負担を掛けないようにするつもりで我慢しようとした結果
見事にいつも以上のハイペースで美子をイカせてしまった。
(取り敢えず・・・ホント、自重しないとな・・・俺。)
と腕の中で眠る美子に誓いつつも、その誓いをすぐに破ってしまいそうな自分に
苦笑いを浮かべ、「ハァ・・・。」と息を漏らした後、美子を抱きかかえ、頬に軽くキスをすると自分の部屋へと戻って行った。
以上です。自分の作品の柊さんに「自重」の二文字はない気g(げふんげふん
取り敢えず、相変わらずの駄文ぷり、お許しください。
次回の金沢編も時間がかかると思いますが、完成次第投下しますので
気長に待って下さるとありがたく思います。
それでは、長々と無駄話をしてしまい申し訳ありませんでした。
失礼しました。
>>287こちらの柊さんも色々鬼畜w
自重なんて似合わない文字は柊の辞書から消してしまえば良いんです!
次は、ほ…本番おながいしますw
>>287 あぁ、この柊さんの辞書には自重ってワードは載ってないわww
きっと、お正月から実家で…両親いてもなんだかんだやっちゃうんだろう
なぁ…。
両親に聞こえるから声出さないでって、
嬉しそうに襲ってる柊さんが容易に想像できる。
>>287 自嘲しない柊さんGJ!
金沢編、柊さんファミリー、ご両親登場ですね、柊さんは兄弟いるんだっけ?
美子との顔合わせも楽しみです。和服、帯グルグルあるかな、ワクワクしそうw
>>287 DT柊さんの続き待ってました!!もはやDTぽさは微塵も感じられないテクをもってますがw
GJです!!
金沢での家族紹介、実家で自重できない柊さん、全裸で待ってますw
このまま婚約、妊娠、柊Jr.誕生しても自重できない柊さんに期待
>>287 DT捨ててから一気にエロに目覚めちゃってるねw
金沢編といえば前にも良作があった気がするけど、設定も全然違うし超楽しみにしてます。
てかこれ結婚前提なのかww
懐かしいな〜金沢編
あの作品にエロパロ学んだんだよな〜
加賀友禅のグルグル再び希望w
やっと本当に好きになった子抱けたんだからそりゃ止まらない罠
金沢編楽しみです
>>287 元DT柊さんの成長がすごい!エロの素質があったから伸びしろも期待出来るのね。
原作は知らないけど、日本ドラマのA.N.JELLの男3人は、皆DTぽいというか、初心で女慣れしてなさそw
ミュージシャンって、言っちゃ悪いが、ファンや周りの女子食い放題みたいな肉食イメージあるんだけど、
同居の男装女子に3人ともぽーっとなっちゃう3人は、交際経験ほぼゼロ設定なんだろうか。
柊さん続きますw
投下します。柊×美子 エロありです
設定時期特にありません。
エロ書きたかっただけです…
299 :
すれ違い 1:2011/12/07(水) 20:32:45.80 ID:Bcn4Z4B8
月が赤く見えたその夜、美子は不安を抱えながら柊の部屋にいた。
何度も二人で過ごしたこの部屋には、甘くて楽しい幸せの記憶しかない。
美子の一番落ち着く場所だった。
なかなか二人の時間が持てない中で、最近感じていたほんの小さな距離感。
勘違いだと自分に言い聞かせながら、美子は不安でたまらない。
柊さんを失うなんて考えられない…美子はきゅっと唇を噛んだ。
「柊さん、何か…あったんですか?」
「どうして?」
柊はソファーに座ったまま、入口に立ちすくむ美子に微笑みかけた。
「不安なんです…柊さんが、今までと違う気がして…」
「そうかな?」
口調はいつもと変わらず優しいのに、胸を締め付ける痛みが美子を襲う。
少しでいい…抱きしめて大丈夫だよって言って欲しかった。
「い…今までこんな夜は、二人で一緒にいたじゃないですか」
美子の震える声が部屋の中に響いた。
「こんな夜?…ああ、そういえば廉も勇気も今夜はいなかったね」
忘れていたふりをする柊が怖くて、悲しくて美子の瞳に涙が溢れていく。
そんな美子の様子を見て柊は苦笑いを浮かべると、ソファーから立ち上がった。
「美子、どうして泣くの?泣かないで、こっちにおいで」
柊が両手を広げる。
「柊さん…」
寂しい夜、何度も思い出した光景が目の前にある。
美子は流れた涙を拭うと、柊の胸に吸い寄せられるように抱きついた。
目を閉じて、柊の背中に手を回し顔を胸に押し付ける。
よく知ってる、いつもと変わらない温もりにホッとした時、柊の腕が強い力で美子の腰を引き寄せた。
300 :
すれ違い 2:2011/12/07(水) 20:33:35.95 ID:Bcn4Z4B8
「柊さ…ん?」
「して欲しくて来たんだよね?」
耳元で囁かれた言葉に美子が顔をあげる。
「ち、違います!」
身体を押し退けようとしても、柊の腕は美子を離さない。
「柊さん…どう…したんですか?」
「俺はどうもしないよ」
柊の唇が美子の耳から首へと、ゆっくり道筋をつけていく。
「やっ!…柊さん、やめてください」
「どうして?こういうこと、して欲しかったんだよね?」
そう言ってくすりと笑うと、柊は美子をベッドへ押し倒した。
「柊さんっ!…こんなの、柊らしく…」
首筋に柊の吐息と舌を感じて、美子の身体が震え始める。
「俺らしいって…何?俺のこと、ただ優しいだけだと思ってない?」
美子の両手を片手で押さえ込んだまま、柊は右手をシャツの下に潜り込ませていく。
「んっ…そんなこと、思ってません」
「思ってるよ…」
悲しそうな声とは裏腹に強引に下着をずりあげると、柊はその柔らかい膨らみを強く押し掴んだ。
「ぃやっ!」
痛みをこらえるように美子が声をあげ身体をよじる。
「教えてよ、美子。俺らしいって…何?」
シャツをめくり上げ、露になった胸元へ唇を寄せると、その頂に強く舌を押しあてた。
「んっ…あん…っ」
指先と温かい舌の感触が、敏感な部分にまとわりついて離れない。
音をたてて舐め回され、弾かれる。強く吸われたかと思えば、舌先がくねくねと動き回った。
「んんっ!あっ…あぁ…っ」
身体の奥がじんじんと熱くなり、魅惑的な世界へ吸い込まれていくようだった。
嫌だ…違う…いつもの優しい柊さんじゃない。
そう思っていても、執拗な愛撫に下半身が疼き始め、しだいに身体の力が抜けていった。
「はぁ…んぁ!…ぁぁ…柊さん…」
体勢を変えても、後ろから伸びる柊の手は、まだ美子の膨らみと頂を弄んでいた。
不意に与えられる強い痛みに身体をよじる以外は、柊にもたれたまま、喘ぐしかできない。
むずむずと身体の奥でずっと何かが動き回り、下半身の疼きはもう我慢できないほど大きくなっている。
「嫌ならここでやめてもいいんだよ?」
後ろから、柊が耳元で囁いた。
「どうする…やめておく?」
柊は柔らかい身体に手を這わせながら、もう一度囁く。
「…ぁあ…柊…さん」
「答えないとやめるよ?」
いやいやと美子が首を振る。
もう、我慢できない…うっすらとした意識の中で、美子が口を開いた。
301 :
すれ違い 3:2011/12/07(水) 20:34:25.33 ID:Bcn4Z4B8
「お願い…です…やめないで…下さい。もう…私」
身体を火照らせた美子が潤んだ瞳で柊を見る。
柊は目を閉じてフッと微笑むと、美子の肩に唇を滑らせながら、意地悪く静かに言った。
「じゃあ、このまま自分で脱いでごらん。下着も全部」
柊にもたれたまま、美子は頷いて素直に従う。拒むことはもうできなかった。
「んぁっ!あっ…ああっんっ…!」
いきなり長い指を入れられ掻き乱され、美子の身体がびくっとのけ反った。
溜まっていた疼きが一気に全身へと広がり、いやらしい音がくちゅくちゅと響く。
「美子、凄いね…そんなに触ってもらいたかった?」
柊の言葉は切れ切れにしか美子には届かない。
いつもじわじわと感じていく道のりをとばして、いきなり白い世界へ閉じ込められたようだった。
「んんっ!んぁっ…ぁっ…」
中に入った指先に内側を強く押されるたび、無意識に腰がびくびくと動く。
「美子、手をついて、腰をあげて」
中で指がいやらしく蠢くまま腰を浮かされた美子は、柊の身体に押された。
ベッドに半分顔を埋め、言われた通りに手をついて腰をあげる。
「ああっ…んんっ!」
さっきとは別の場所に指先があたり、攻められる。
途切れることのない水音と美子の声だけが部屋中に広がっていく。
「こういうのも、好きなんだ?」
背中を這う舌も、乳房を掴む掌も、中で激しく動き回る指先も、
そして柊から出る言葉も、今まで美子が知らなかったものばかりだった。
「はぁ…はぁ…んんっ…柊…さん…」
トロトロとしたものが、美子の太ももを流れ落ちる頃、ようやく柊の指と身体が美子から離れた。
乱れた呼吸を落ち着かせようと、美子が大きく息を吐く。
「これからだよ」
柊は崩れ落ちそうになる美子の腰をぐっと持ち上げると、背中を強く押した。
「ああんっ!…んっ!…やっ…んぁっっ」
いきなり柊のモノが美子を突き上げた。
容赦なく、奥まで何度も激しく美子を攻めたてる。
身体の中に突き刺さるような痛みと快楽に、美子からは絶え間ない喘ぎ声しか出てこない。
「んんっ!…柊さ…あぁっん!…んっ…」
柊は片手で美子の腰を支えたまま、ぷくりとした蕾のそばにもう片方の指先を伸ばした。
ぐるぐると円を描くように周囲を撫でる。
「んんっ…っ…ぁぁ…」
「イきたい?触って欲しいんだろ?」
「ぁぁ…っん!…柊さ…ん」
苦しそうな美子の声を聞きながら、柊は指先を離すと再び腰を突き上げた。
「あんっ!んんっ!」
「今日は、イかさないから」
柊は美子の腰を掴んだまま、ただ欲望を打ち付ける。
荒い息遣いと苦しそうな喘ぎ声だけが、部屋の中に満ちていった。
302 :
すれ違い 4:2011/12/07(水) 20:35:12.33 ID:Bcn4Z4B8
「好きにしていいよ」
「え…?」
ベッドに腰掛けた柊の背中をみつめていた美子は、突然の言葉で現実に引き戻された。
柊の感触がまだ残る身体をゆっくり起こし、振り向かない背中に口を開く。
「…どういう…意味ですか?」
「これからは、お前が必要な時だけ俺のところに来ればいい。それで俺は構わないから」
ジーンズを履いた柊が、上半身は裸のまま立ち上がった。
一度も振り向かない背中を見ながら、美子は何度も首を振る。
「わ…わかりません…どうして、そんなこと?…」
突然、冷たい暗闇に放り出されたような不安が美子を襲う。
「柊さん…私のこと、嫌いに…なったんですか?」
「嫌いになったりなんかしないよ…俺は…」
柊は言いかけた言葉を飲み込むと、小さく息を吐いた。
「お前がしたいようにすればいい。もし…好きな奴が他にできたら、気にせずいっていいから」
「柊…さん?」
こんなに、胸が張り裂けそうなくらい柊さんが好きなのに…
いつも側にいたくて仕方がないのに…伝わらない気持ちがもどかしかった。
「私が好きなのは、柊さんだけですから…」
「そうかな…?」
柊は床に落ちていたシャツを拾い、袖を通す。
そのまま部屋を出ていく柊の後ろ姿に、美子は涙声で訴えた。
「絶対に、この気持ちは変わりません」
二人を隔てたドアを背に、柊は唇をぎゅっと噛んだ。
「絶対…か…」
窓の外に浮かぶ大きな赤い月を見ながら、消せない疑いが心を覆っていく。
「美子…お前は誰を見てるんだ?」
震える声で、柊がぽつりと呟いた。
以上です。エロありきですみません。
でも久しぶりエロ書いて楽しかったw
まさかの美子に冷たい柊さん
このあとどうなるのですか?続きお願いしまーす
>>303 GJ!!でも柊さんに一体何があったんだ?!何が原因ですれ違ってるのか気になるー!よければ続きお願いします!
GJ!でもすごい続きが気になる終わり方ww
>>303エロ上手すぎる、ドS柊が良かった!
赤い月が二人を惑わせたのかw
何なんだ!続き気になるので
またエロ有でおながいしますw
>>303 嫉妬?柊ちゃん、こわーいw
赤い月って不気味。美子、もしかして、廉さんのこと、ジッと見てるとか?
ドS柊さんいいねー廉さんと美子疑ってんのか?
あんなに美子に好かれてんのに悩みの尽きない男w
柊さんが美子に冷たいなんて…一体何があったの?
そして何を不安に思ってるんだーーーー!!すごく気になるw
しかし柊さんはどんなキャラでもハマるなw
寝言で廉の名前出したとか
寝言ってw柊さんショック
>>311 その寝言も美子の夢の中では
(廉さん、ずるい!私も柊さんと一緒にお茶したいのに…あの…「廉さん!」…そろそろ私と代わってください…)
の「廉さん」かもしれないのに勘違いしてる柊さんだったら可愛いw
もしかしたら水族館で水槽に向かって「廉さ〜ん」って手を振ってる夢だったらどうしよう……。ロケを目撃した人がそんなことを言ってたよね。
>>314 いや、水槽じゃなくて、美男は、お魚さんに向かって、「廉さ〜ん☆」って手をふってて
柊さんが長い脚をバタバタさせるほど爆笑だったらしいがw (漫画じゃなくてリアルでそんな動作する人見たことないよw)
これ、どう考えても、エロパロにならないエピだけど・・・
見た目の雰囲気でいうと、ナナと柊、勇気と美男(♀)、廉さんと美男(♂)のカップリングがすっきりする。
エロないうえに話にもなってませんが、投下します。
4人それぞれが過ごすせつない夜の感じで書きました。
続きはまだ書いてませんので、中途半端が苦手な方はスルーして下さい。
317 :
それぞれの夜1:2011/12/10(土) 23:02:56.01 ID:JUHplMn0
窓辺に立つ廉の胸元に顔を寄せながら、美子は窓の外の星をぼんやり見ている。
やっと想いが通じてこんなに幸せなのに…
「美子…ベッドに行こう」
廉が肩を抱いたまま歩きだした。
「今日は止めておきます…ごめんなさい、廉さん」
部屋の真ん中で立ち止まった美子を、廉が驚いた顔で見つめる。
「どうしたんだ?」
「どうもしません。今日は…疲れたのでそんな気分じゃないんです」
「そうなの…か。じゃ、じゃあ早く寝た方がいいな」
美子に拒まれたショックを軽く感じながらも、廉は無理やり笑顔を作る。
「本当にごめんなさい。おやすみなさい」
そう言うと美子は廉の部屋を静かに出て行った。
「拒まれた…俺が…」
わ、忘れよう…頭を軽く振ると廉はベッドに潜り込んだ。
美子は部屋には戻らず、リビングのソファーでぼんやりしていた。
『廉さんのこと好きなのに…忘れなくちゃいけないのに』
美子が頭の中で何度同じ言葉を繰り返しても、最後に浮かぶ言葉はいつも変わらない。
柊さんごめんなさい。私、忘れられないです。
美子は大きく息を吐き出した。
あの夜、廉さんも勇気さんも仕事でいなかった。
だから柊さんと二人で、料理を作ってビールを飲んだ。
昔の話を聞いて笑ったり、昔の映像を見せてもらったりして楽しい時間を過ごしたあの夜。
私は…柊さんと…
それから避けられていることは気付いてる。
普段の態度は今までと何も変わらないのに、二人きりになることはなくなった。
寝る前にはキッチンでハーブティーを飲んでいたのに、それもしなくなった。
あれから二人きりになったのはたった一度、ここで偶然会った時だけだ。
「あのことは忘れるんだ、いいね?」
その時、柊に強い口調でそう言われたことを思い出す。
「俺達は、何もなかったんだ…だからお前は今まで通り、廉だけを見てればいい。わかったね?」
窓に打ち付ける雨の音を聞きながら、柊の真剣な表情に黙って頷くしかできなかった。
なのに…気付くといつもここにいる。
また同じことを言われて、傷ついてもいいから、ただ会いたかった。
318 :
それぞれの夜2:2011/12/10(土) 23:03:49.75 ID:JUHplMn0
ベッドの中で、廉はひとり眠れずに何度も寝返りをうつ。
「どうしたんだ…?あいつ」
今まで拒否したことなんか一度もなかったのに。
いや…言わなかっただけで、もしかして思っていたのか?
そういえば…廉は消えかかっていた記憶を手繰り寄せた。
話しかけても上の空だったり、笑っているのにその顔が寂しそうに見えたり…
おかしいな、と思うことがあったような…
でもそれはいつも一瞬のことで、深く考えることもなかった気がする。
二人でいた時なのか、みんなもいたのかすら曖昧だった。
あれは、いつ頃だっただろう…
『すみません、最近体調悪くて…』
そう言って部屋に籠ることが多かったあの頃…か?
はっきりしない自分の記憶がもどかしい。
「思い過ごしだろ…」
自分に言い聞かせるように廉は呟いた。
本当に疲れてるだけに違いない…
実際、最近はそんなこともないし、今日のことがなければ思い出しもしなかったはず。
『お前…これから断わられる度、こんなに考えるつもりか?』
廉は自分に問いかける。
ハッとして顔を枕に押し付け、振り払うように頭を振った。
「俺らしく…ない…」
少し前まで、恋愛とか女だとかくだらないと思ってたし、興味もなかったのに。
ただあいつを特別と思っただけだ。
たったそれだけのことで、今の俺はこんな小さなことにショックを受けて、余計なことまで考えてる。
お前のせいだ。
お前が、俺に余計なこと教えたからいけないんだ。
お前のせいで、俺は眠れない。
廉は大きく息を吐き出した。
だめなんだ…お前がいないと…
お前が側にいないと、俺は寂しくてたまらない…
「あ----っ!もうっ!」
だめだっ、眠れない!
…み、水でも飲もう…
廉は軽く頭を振ると、ベッドからふらふらと立ち上がった。
319 :
それぞれの夜3:2011/12/10(土) 23:05:06.48 ID:JUHplMn0
「柊さ〜ん、ビール飲む?」
ドアを開けると、勇気が顔を覗かせ冷たい瓶を差し出してきた。
「悪いな…ありがと」
「それより、早く本読み終わって、俺のことかまってよね〜」
そう言って小さく口を尖らせる。
「あ、ああ…もう少しだから」
柊は苦笑いをした。
集中して読みたい本があるから…部屋で過ごすための口実だったが、さすがにそろそろ無理がある。
「今日は廉さんと美男も早々部屋に戻っちゃったし、俺ももう寝るよ。おやすみ〜柊さん」
「ああ、おやすみ」
明るい勇気に感謝しながら、再び柊はソファーに腰をおろした。
最近は一人になるといつも同じことを考えている。
どうしてあんなことをしたんだろう…
自分のせいで、美子はまだ苦しんでいる。
いくら後悔しても消せない事実に、柊は唇を噛みしめるしかない。
あの夜から、美子は罪悪感に苦しんでいる。
最初は廉へと向ける笑顔もぎこちなくて、見ている柊も辛かった。
…俺は、どうすればいい?お前に何をしてあげられる?
いくら手を差し伸べたくても、出来ないもどかしさが柊を襲った。
そんなの、一つしかないじゃないか…
避けてあげること、それくらいしかしてやれない。
今のお前が一番辛いのは、俺の顔を見ることだろうから。
なるべく顔を合わさないように、お前が穏やかに過ごせるように…
それだけを願って毎日を過ごしていた。
でもあの日…夜中に仕事が終わったあの雨の夜。
さすがにみんな寝てるだろうと油断した。
誰もいないと思ったリビングで、ちょうど美子が立ち上がったところだった。
「柊…さん」
美子の驚いた顔が、今でも頭から離れない。
何か言いたげに口を開く美子に、かけてやれる言葉を他には思い付かなかった。
「あのことは忘れるんだ。いいね?」
「柊さ…ん…」
美子の表情が変わった。
「俺達は、何もなかったんだ…だからお前は今まで通り、廉だけを見てればいい。わかったね?」
真っ直ぐみつめる美子の視線が怖かった。
黙って美子が頷くのを見て、柊はそっと目を閉じた。
窓に打ち付ける雨の音が、いつまでも耳に響いていたのを覚えている。
今夜もまた眠れそうにないな…柊はひとり苦笑いをした。
テーブルに置いたビールはすっかり温くなっている。
それを手に取り、さっきの会話を思い出す。
多分、今夜二人は一緒にいる…今なら下に行っても大丈夫だろう。
冷えたビールに取り替えようと、柊はソファーから立ち上がった。
320 :
それぞれの夜4:2011/12/10(土) 23:06:46.90 ID:JUHplMn0
「だいたい、ありえないから。ハーブティー飲まずに毎晩ビール飲むなんて」
柊にビールを差し入れ部屋に戻った勇気は、ベッドに倒れ込んで呟いた。
『集中して読みたい本がある』
それが部屋で過ごすための口実ってことくらい、俺だっていい加減気付いてるし…
柊さん、いつまでそうするつもり?
小さなため息をつくと、勇気は天井を見上げた。
「なんで柊さん…美子を避けるんだよ…」
毎日言おうと思ってるのに、毎日言えない柊への言葉だった。
「……だけ見てればいい。わかったね?」
水を取りに行くため階段を下りていると、声が聞こえて勇気は足を止めた。
柊さん…?
言い聞かすような柊の口調と、その後の静けさに何かを感じて勇気の鼓動が早くなる。
何?…なんで?何してる?
何も見てないのに、気まずさを感じて勇気は慌てて部屋へと戻った。
「大丈夫、俺の勘違いだ…思い過ごしだ」
座り込んでドキドキする自分に何度も言い聞かせる。
しばらくすると、柊の部屋のドアが閉まる音が聞こえ、勇気は顔を上げた。
そっと部屋を出て、階段の途中からリビングの様子を伺う。
…だよな、お前しかいないよな…
ソファーに座る小さな背中が震えていた。
何があったんだ?
柊さんに何を言われたんだ?
心配なのに怖くて声をかけられない。
ごめん…美子、今はまだお前を慰める自信がない…
勇気はリビングから見えない位置に座ると、美子が部屋に戻るまで窓に打ち付ける雨を眺めていた。
次の日、勇気は久しぶりにバスに乗った。
1日二人を見ていても、昨夜のことなんかなかったみたいに普通だった。
一瞬見せる美子の暗い顔を除いては…
柊さんと何があったんだ?
どうして泣いてたんだ?
廉さんは知ってるのか?
俺、心配なんだ…
「まだ…好きだから」
窓に写る自分の顔を見ながら、勇気はそう呟いた。
ねぇ…柊さん知ってる?
俺は知ってるよ。あの雨の夜からずっと美子を見てたから…
あいつ、夜中リビングに座って柊さんを待ってるよ。
二人に何があったか知らないけど、あんな美子を見るのは…俺辛いよ。
天井を見上げたまま、勇気はそっと目を閉じた。
321 :
それぞれの夜5:2011/12/10(土) 23:08:06.03 ID:JUHplMn0
部屋を出て、柊は一度だけ階段の途中でリビングを伺った。
月明かりに照らされたその部屋に人の気配はない。
ホッとして階段を下り、体をキッチンに向けた時だった。
「…柊さ…ん」
「っ!」
突然だったことにも、それが美子だったことにも、柊は驚いた。
「…美…子」
いつも自分が座っていたその場所から立ち上がった美子に、柊は戸惑う。
動けないでいる柊に、美子が緊張した様子でゆっくりと近づいてきた。
その不安そうな表情を見ていると、声をかけずにはいられない。
「どうした?眠れないのか?」
ぷるぷると首を振りながら必死で涙を堪える美子を見て、柊の胸が痛み始める。
どうした?何があった?…話を聞いてあげたい気持ちをぐっと押さえ込む。
抱きしめたい気持ちをこらえて、柊は美子の顔を覗きこんだ。
「ごめん…慰めてやれないんだ…」
困った顔でそう言う柊の顔を見て、美子の瞳にみるみる涙が浮かんでいく。
パタンッと不意に廊下の奥からドアの閉まる音が聞こえて、美子がびくっと身体を震わせた。
「廉…さん!?」
「まずいな…」
目の前の泣き顔を見て柊は呟いた。この状況を誤魔化す理由が見つからない。
柊は美子の身体を引き寄せると、階段を指差して囁いた。
「上にいて…大丈夫、俺に任せて」
そう言って美子の背中を優しく押し、不安そうに振り向く美子に笑って頷いて見せた。
柊は廊下の先に廉の姿を見て、小さく息を吐き出す。
廉への隠し事がまた増えることに罪悪感を感じながらも、美子のためだと柊は自分に言い聞かせる。
大丈夫、廉は見えていないはず…柊はゆっくりと廉の方へ足を踏み出した。
「…廉?」
「うわっ!……しゅ、柊か?」
大きく身体をのけ反らせた後で、廉は目を細めながら柊に近づいた。
「お前、驚かせんなよ」
と、息がかかるほど顔を寄せる。
「近すぎるんだけど…」
苦笑いをする柊の顔を見て、廉は口を尖らせた。
「し、仕方ないだろ。見えねぇんだから」
廉はそう言って柊に背を向けると、冷蔵庫から水を取り出しそのままリビングへと歩いていく。
柊は温くなったビールを戻しながら、ソファーに座る廉に目をやった。
冷たいビールと水を取り出し、廉に話しかける。
「眠れないのか?」
「ん…まぁな…もう少しここにいる」
「そっか…じゃあ、おやすみ」
「ああ、おやすみ」
俯いたまま手を振る廉を残し、柊は美子の待つ2階へと上がって行く。
とりあえず以上です。
読みにくい上に、中途半端ですみません。
>>322 胸ドキ展開キタ-----!!!
柊美子切ないんだけど、ものすごく廉さんが可哀相だ。
この廉さんを裏切ったら、柊美子幸せになれそうにもないような気がするよ。続き怖いけど楽しみです。
いや、ここまで来たら廉さん裏切って
本能のまま柊の胸に飛び込んで愛と快楽に溺れ、いっそ超絶ドロドロな展開を希望w
勇気は純愛のまま…綺麗な体でいいかw
みんなそれぞれ切ないねぇ
「あの夜」に柊美子は過ちを犯してしまったんですかね。
柊美子好きの自分ですが、これは廉さんフラれたらかわいそうだな。
続き待ってますー
>>322 GJ!!以前あった、雨の夜にビールを飲んだ二人が過ちを犯した話の続きですね?!続き気になります!!どうなるんだ…
流れを読まずに初投稿です。すみません。
しかもカップリングは柊×美子です。
設定は二人が金沢に帰って両親に説明した、という出来事ありきでの
今の季節の出来事という感じです。
読みづらい等、不備が多々あるかと思いますがご容赦ください。
暑い季節に恋人のふりをして美子と一度帰省してから数ヶ月。
紆余曲折の末、柊と美子は本当の恋人となり、また柊の故郷へ一緒に帰ってきた。
クリスマスから年末年始にかけてのスケジュールがびっしり埋まってしまった柊が帰省できるのは
中途半端なこの時期で、もう兄の身代わりをしなくてよい美子もそれに合わせた形となった。
「俺は年明けでも良かったんだけど、親が早く帰って来いってうるさくてね。悪いな、美子」
「そんな!わたしもまたこうして柊さんの故郷に来られて、ご両親にお会いできるのが嬉しいです。」
空港を出ると日本海側の冬らしい鉛色の空。
4ヶ月前あれほど暑さが厳しかったのに、同じ場所とは思えなかった。
「ううっ、寒いですね、柊さん」
「こっちはもうそろそろ初雪が降るからね。美子、ちょっと薄着だったかもな」
そのままタクシーで柊の実家に向かう。由緒正しい日本家屋のお屋敷、
と言って間違いない門構えに、二度目とはいえ美子は緊張せずにいられない。
そんな美子の頭をポンポン、と撫でてから柊は「ただいま」と、玄関の戸を開けた。
柊の両親は笑顔で迎えてくれ、美子との再会を喜んだ。
緊張で固かった美子も柊のフォローもあって徐々に気持ちがほぐれていった。
昼食を食べながら和やかに互いの近況を話していると、柊によく似た母が、
「柊、せっかくだから冬の金沢の街を案内してあげたらどう?夏来た頃とは街の装いも違うから」
と提案してきた。
「えっ、夏と冬で何か違うんですか?」
美子は柊の母の言うことに検討もつかない。
「確かにそうだな。よし、午後からは少し歩こうか。実物を見ればよくわかるから」
美子の質問には答えずに、柊は頷いて母の提案に乗ることにした。
「前にも来たけど」と、柊が前置きして美子を連れて来たのは三大名園の兼六園。
園内に入り美子はすぐに違和感を感じたが、それが何かうまく説明できない。
「さて、クイズです。前に来たときと何が違うでしょうか?」
少しおどけて言う柊に、うーん、と唸る美子。
「どこか違う気がするんですけど…何が違うのかわからないです。
木が減ったりしてるわけじゃなさそうだし」
それを聞いてクスッと笑う柊。
「確かに木は減ったりしないね。美子、よく見てみて。木の枝、何か変わってない?」
言われて目の前の木をじっと見つめる美子。
「あ…枝にロープが結んである。ああ、これだったんですね!」
木々の枝にはロープが繋がっていて、それらは幹に沿って立てられた支柱の一番高い所に集まっている。
「これね、雪吊り、っていうんだ。こっちは雪がたくさん降るから、
雪が降り始める前に木を守るためにこうやってロープを張るんだよ。
こうすれば枝に雪が積もらないからね。」
「そっかぁ、知らなかったなぁ。おもしろいですね」
「俺の実家の周りの塀にも、 藁のゴザみたいなものがぶら下がってたでしょ?
あれも、こも吊りって言って雪から塀を守るためのものだよ」
生まれ育った街のことを優しい笑顔で説明する柊を見つめて頷きながら、美子は温かい気持ちになっていった。
柊が小さい頃の冬の思い出を話しながら街を散策していると、ゴロゴロと雷が鳴り始めた。
「雷…?」
雷なんて夏場に聞くものだと思っていた美子は少し驚く。
「まずいな。降るかもしれない。家に戻ろう」
眉をひそめながら言う柊に、え、と美子が声を出した瞬間。
ズドドドドドン!とものすごい爆発音と地響きがして、勢いよく大粒の雨が振り出した。
「きゃっ」
何が起こったかわからない美子は咄嗟に柊にしがみつく。
「美子、大丈夫、雷だよ。傘を差して」
言いながら柊は傘を広げた。
東京では聞いたことのない、轟々と鳴り止まない雷にすっかり美子は縮こまり、
相合い傘の要領で柊は彼女の肩を抱いて歩いた。
こんなに何かを怖がる美子は、蝉が顔に止まったと夜中に騒いだとき以来で、それが柊には微笑ましい。
しかし雨は風を伴い強まるばかりで、一つの傘に入る二人は次第に雨に濡れてゆき、
駆け足になりながら柊の家に着いた頃には全身水浸しのようになった。
「柊さん、ごめんなさい…私のせいでこんなに濡れてしまって」
玄関に入る前にバッグからハンカチを取り出した美子は、雨で濡れた自分のことはお構いなしに、
柊の肩を拭こうとする。
「美子、大丈夫だから自分を先に拭きなよ。風邪を引くよ」
そう言いながらハンカチを持った美子の手を掴むと、驚くほど冷たい。
「大丈夫か!?寒かったよな、こんな日に歩きまわってたから」
「平気です。雷は怖かったけど、柊さんの故郷のこといっぱい教えてもらって、楽しかったから」
美子は濡れた前髪のまま顔を上げて笑顔で答えた。
その健気さに、柊は突然自分のタガが外れたのだと気づいたときには美子に口づけていた。
「柊さん、ダメです!お父さんやお母さんに見られちゃう」
驚いた美子が後ろに飛び退くと、柊は先ほど掴んだ手をぐいっと引っ張り、
「じゃあ見つからないところに行こう」
と、雨が降る庭へ美子を連れ走り、小さな建物の戸を開けて美子を抱えるように入った
「うちの離れの茶室だよ。今日は誰も来ない」
それだけ言った柊の唇は美子の唇に吸い付いた。次第に舌と舌が絡んでいく。
外ではまだ雷の音がして、キスに応じながら美子は思わずびくっと体を震わせる。
柊はそれに気づき、すっと唇を離すと美子を優しく抱きしめる。
「美子…体冷えてるな。暖めないと」
「あ、柊さん…」
濡れた美子の服を一枚ずつ脱がしてゆき、柊は上半身裸になってからまた抱きしめて、
体温で美子を暖めた。美子は背中に回された柊の手の冷たさに驚きながら、優しい暖かさに包まれ幸せを感じた。
柊のキスが美子の首や鎖骨に降りてくるころには雷の音が美子に聞こえなくなっていた。
丁寧に美子の体をなぞる唇に意識が集まる。ブラが外されて胸がさらされると少し寒さを感じたが、
「柊さん…はぁっ…」
温かい柊の唇がすぐに胸に降りてきた。頂きの周りをゆっくりとなぞる舌。
もう一方の乳房は、冷んやりとした手に優しくしだかれている。
「あっ…あぁん…」
「美子、我慢しないで声出しなよ。誰も来ないし、外は雷と大雨だ…叫んだって聞こえない」
そう言うと柊の唇は美子の胸の頂きを捉えて強く吸い付いた。
「ひゃああんっ!」
刺激に少し大きな声を上げる美子に柊は満足せず、そのままもう一方の胸の頂きを指でつまみ上げた。
「あぁうっ、柊さん…」
だんだんと声にならなくなる美子。
柊は美子の下半身を覆う服を脱がせて自分も裸になった。
美子の太ももに触れると、濡れた服がまとわりついていたせいで冷たかった。
「冷たいね。もっと熱くしてあげる」
暖めるように両手で美子の太ももをゆっくりとさすりながら、柊はキスを再開させ、
次第に下のほうへ唇が近づいていく。
暖めるという名目でやわやわと脚をなぞられる手のひらに、だんだんと美子は息が上がっていく。
そんな美子の反応を楽しむように柊の手は下着に近づいていき、とうとう触れた。
「美子…ここはあったかいんだね。でももうこんなに濡れてるの?雨に当たったわけじゃないよね」
下着の上から染みになっているのがわかるそこをゆっくりとさわると、美子の熱さに驚いた。
にやりとしながら意地悪く言う柊に、美子はイヤイヤと首を振る。
「えっ、違うの?じゃあ確かめてあげるね」
柊は美子の下着に手をかけた。
潤んだそこは直に触れるとさらに熱い。
「ふぁっん!はぁ…はっ…だめ」
「美子、すごいね…何もしなくてもどんどん濡れていってる。中はもっと熱いのかな」
冷たい指を侵入させると、美子はビクッと体をしならせて喘ぐ。
「美子…指が溶けそうだよ。あったかくてトロトロだ」
わざと小さな声で柊は美子の耳元で囁いた。美子に羞恥の表情が浮かぶ。潤んだ瞳を柊に向けた。
「恥ずかしいから…そんなふうに言わないで」
「だめだよ、そんな顔でそんなこと言っても、もっともっとって言ってるようにしか見えない」
苦笑した柊は指を二本に増やして、美子の中を更にぐちゃぐちゃと音を立ててかき混ぜ、
美子の顔を見ながら確実に弱い部分を攻めていく。
「柊さんっ…柊さっ…もう…はぁあん!」
かき混ぜられる指に意識が飛びそうになったとき、冷たい親指が美子の突起を捏ね始めた。
「美子、何回でもイっていいんだよ?大きな声でね…いやらしくね」
そう告げた柊の指がかき混ぜる速度を上げると、はしたない水音が大きくなった。
親指はゆっくりと突起を捏ねたままだ。
「もうだめぇ…はぁあぅん!」
叫んだ美子の喉が仰け反った。
「かわいいな、美子…俺のことも暖めてくれないか?」
そう言ってぐったりした美子の脚を広げて、柊は自身をあてがい、美子の中に入ってゆく。
「柊さんっ…熱い…」
熱い楔のような柊を受け入れた美子は体の内側からたぎる快感に目を開いていられない。
「あったかいよ、美子…けどもっと熱くしてやるから」
ゆっくりと腰を打ち付けながら柊はまた美子の首に、肩に、腕に、キスの雨を降らせる。
と、美子の体を起こし、繋がったままうつ伏せにさせて背中の至るところに唇を這わせた。
両手は胸を掴んでゆっくりしだいている。
「柊さんっ…変になるっ…もう、もうっ!」
背中に、胸に、優しい愛撫を受けながら突かれる美子は気が狂いそうになる。
「本当に後ろから責められるのが好きなんだね、美子は…中がどんどん熱くなって締め付けられてくよ…」
柊はまた囁くように告げると、後ろから美子の耳を、うなじを、甘く噛んだ。
「あぁあっ!」
気持ちよさの波に次々と追い立てられて、もう美子は何も考えられなくなっている。
「美子・・・もうそろそろ俺も限界だ。ちょっと手荒くなってごめん」
「はぁ・・はっ・・・柊さんっ・・・」
柊の打ち付ける腰の速度が早くなり、さらに高みへとさらわれ、混濁してくる美子の意識。
「美子・・・愛してる」
「あぁああんっ!!」
そう呟いた柊が左手で胸の頂きを、右手で突起をきゅっとつまみながら中に欲望を放つと同時に、
強い快感に襲われた美子は叫びながら意識を飛ばした。
小さな茶室に二人の熱が籠っている。
柊は素早く服を着て、ぐったりと裸で横たわったままの美子が風邪を引かないようにエアコンのスイッチを入れる。
「寒がってたんだから最初からエアコン入れればよかったんだよな・・・切羽詰まりすぎだろ、俺」
そう一人ごちて苦笑すると、眠ってしまった愛しい人にそっと口づけた。
以上です。長々いろいろと失礼いたしました。
実は柊さんの地元住みの者なのですが、昨日からものすごい雷が鳴っていて、
こんな話を書いてみたくなりましたw
ありがとうございました。
柊さんの地元の職人様キターw
御自宅でもエロ炸裂の柊さんイイヨイイヨー
懐かしい故郷のいたるところで思う存分やっちゃて下さいw
>>322 これって美子が女バレした後(俺の彼女です!)の頃の話?
初期の優しい柊さんなら、美子もガード外しそうだよね。後半の柊さんには、終始ガード硬かったけどw
>>318 ここで、名曲「ふたり」が出来たのかな<眠れない・・・君のせい
柊さんは、苦悩が似合うので、やっぱりここは、身を引いて欲しいような。
>>335 こっちの柊さんは、本能赴くままで幸せそうで何よりです。プラマイゼロだね。
柊さんの地元話もっと知りたいです。
兼六園は夏にしか行ってないけど地味だったなぁ。近所の公園に似てたw
>>335乙です!雪景色の描写が美しいなーとうっとり読んでたらやはり地元の方だったとは。冬の金沢×柊美子イイ!なんとなく、柊美子は冬が合う気がする。
>>335 地元職人さんGJ!
この茶室、地元時代は柊さんによって茶室以外の目的で使われてたんだろうなぁ。
美子ちゃん、裸で風邪ひきませんように…
この看病してくれる人、ちゃんと看病するとは思えない。
絶対、悪戯しちゃうよ。
柊×美子もいいけど廉×美子派としてはちと寂しいスw
廉×美子が好きな人は少ないのかな?
確かにこのスレになってからは、柊×美子が多いかな
でも、正統派も結構あるし量的には同じぐらいかも
絶倫廉も続きが読みたいな
自分も廉×美子派
でも読ませてもらう立場だし、職人さんの気がのるまで気長に待つよ
いろいろと解き放たれた柊×美子も読むの楽しいしw
絶倫廉さんも密かに待ってます
343 :
名無しさん@ピンキー:2011/12/11(日) 22:23:08.82 ID:Ta4D+f2D
あまりに下がってて落ちないか心配で一旦ageます
そんな自分も廉美子派です。
初々しい廉さんも絶倫廉さんもカモンカモン!!
待ってるぞ。
良かった、自分だけじゃなかった!
廉×美子ネタ、次作を楽しみに待ってます。
それから柊×NANAのサスペンス(?)もクライマックス気長にお待ちしてます。
>>335 やっぱり地元の方だったんですね!GJです!!
ホント、雪景色の描写が美しいし、
土地のことも勉強になってよかったですw
柊さん合宿所ではハーブティーだけど、実家では
お抹茶たてるんですかねw
ちなみに自分も廉美子派なので、新しい作品
気長にお待ちしております!
皆さんの作品にいつもキュンキュン。
美子を想う廉さんが特に好きで楽しみにしています。
柊さんは美子よりもNANAと結ばれてほしいと思う自分。
柊NANAとかも、色々妄想できそうだ。でもまとめ見たら、思ったより少ないね。
>>347 まぁ、まとめのタグの数字は、作品数じゃなくページ数だから…
柊さんモノは長編が多い印象です。
まとめサイトの管理人より。
>>348 あ、柊さんモノっていうか柊NANAの作品数が長編タイトルを1つと考えると
3つしかないので思ったより少ないなってことです。紛らわしくてすみません。
まとめ管理人さんいつもありがとう!!
柊NANAでなんか妄想したいので、自分で書いてみようと思います…w
>>335 GJです!!幸せ柊美子おいしくいただきましたw
また良ろしければ続き待ってます。金沢の描写も素敵でした!冬の金沢はきっと趣あってイイんだろなぁ…
自分はオールマイティーに楽しめるので柊美子も廉美子も勇気美子も、なんでも職人様が書いてくれるだけで幸せだから、あんまり何派とか広げると職人様が投下し辛い空気になるのは避けたい
>>335 GJ!描写も流れも好きです!
美子かわいいしタガが外れた柊さんの攻め良かったです
またその後思いつかれたらよろしくです
まとめ管理人様いつもありがとうございます
前回ブラック柊さんドン引きされなくてよかった
今回は廉美子エロありです やっぱりこの二人好きだな
353 :
美子の誘惑1:2011/12/12(月) 03:23:04.91 ID:2jV29+E9
廉がPVの撮影で沖縄に行って二日目。
美子は明日の夜に帰ってくる廉のために、ご馳走作りの下準備をしていた。
ピンポーン。
玄関のチャイムが鳴り、インターフォンのモニターを見てみると、NANAが立っていた。
「久しぶり、美男。あっ、美子だったわね」
リビングに通されたNANAは物珍しそうに部屋の中を見回している。
一度だけ行ったことのあるA.N.JELLの合宿所のリビングに良く似た、白で統一された清潔な部屋。
所々に星モチーフの小物や可愛い置物があるが、これは美子の趣味だろう。
サイドボードの上にある写真立てに目がいった。
どこか南の島で撮ったらしいツーショットの写真が飾ってある。
「ふ〜〜ん」
少し鼻白んだところに、美子がお茶を持ってやって来た。
「何のご用ですか?」
美子には珍しく単刀直入に話を切り出した。NANAの事を警戒しているんだろう。
「やーね、そんな怖い顔しないで」
NANAはゆっくり紅茶に口を付けて、一口飲み干して美子を見据えた。
「実は、あなたに教えたいことがあって来たの。今まで隠してたけど、あたし達ずっと続いてたのよ」
「あたし達って…?」
美子は話が飲み込めずきょとんとしている。
「あたしと廉に決まってるでしょ」
「えっ!嘘です。NANAさんと付き合ったのは、私の秘密を守るためだって…」
「勿論そうよ。でも世間的には付き合ってる事になってたんだし、据え膳食わない男がいるかしら?」
「嘘、嘘です。まさか、そんなこと…」
美男は呆然としている。二年前の廉とNANAの様子が頭の中を駆け巡った。
「あたし達、まるで犬猿の仲みたいだったけど、不思議と体の相性だけは良かったのよね」
美子の顔を正面から見つめて、NANAは艶然と微笑んだ。
「あなたがいなかった二年間も勿論会ってたわよ。若い男が二年も我慢できる訳ないものね」
美子は立ち上がって携帯を取り出した。
「廉さんに確認してみます」
NANAは一瞬ヤバい、と言うような顔をしたが、「どうぞ、ご勝手に」と澄まして言った。
「美子か?何かあったのか?」
「あの、廉さん、実は聞きたい事が…」
「何だ。今忙しいんだ」
電話の向こうから、スタッフ達の立ち働く声が聞こえた。いけない、こんな事で電話なんかしちゃ。
美子は「明日帰る時間を確認したくて。でもいいです。馬淵さんに聞きます」と電話を切った。
354 :
美子の誘惑2:2011/12/12(月) 03:25:06.22 ID:2jV29+E9
「賢明ね。仕事中にくだらない電話するなんて、廉が一番嫌がりそうな事だものね」
NANAは内心胸を撫で下ろしていた。
「今日はあなたにプレゼントがあるのよ」
NANAの寄越した紙袋を開けてみると、DVDが一枚と小さな包みが入っていた。
『素敵な夜を迎えるために〜Luxury Sex Life〜』
「こっこれっ、何ですか?」
裸の男女が絡み合っている表紙の写真を見て、美子は真っ赤になった。
「セックスのハウツーDVDよ。あなた、廉にまかせっきりなんですってね。正常位ばっかりで。
廉はね、バックから突き上げるのが好きなのよ。そりゃあ激しいんだから。フェラもしないんでしょ。
美子にはそんなことさせないって言ってたもの。でもあたしがしてあげると、大喜びしてるわよ」
心の中で舌を出しながら、NANAの口から嘘八百がすらすらと出てきた。
次々とNANAの口から飛び出る言葉に、美子は目を白黒させて口をポカンと開けている。
「あの、い、一体、何が言いたいんですか?」
「だから、少しは研究しなさいって言ってるのよ。あたしだって、いつまでも廉に構っていられないし。
セックスがワンパターンだと飽きられるわよ」
車に乗ったNANAは、真っ赤になったまま固まってしまった美子を思い出してくすっと笑った。
「豹変した美子を見て、腰を抜かせばいいんだわ。あー、すっきりした」
小さな復讐を果たしたNANAは、笑顔で車を発進させた。
NANAが帰ったのも気付かないほど、美子は長い時間呆然としていた。
廉とNANAがずっと続いていた、体の関係もあったというのは、やっぱりどうしても信じられなかった。
それは廉が帰ってから聞いてみるしかない。それより強烈に美子の心に衝撃を与えたのは
「セックスがワンパターンだと飽きられるわよ」
というNANAの言葉だった。確かにいつも廉さんのするがままで、自分は何もしていない。
廉さんはそのままでいいって言ってくれるけど、本当は色々して欲しいのかな?
美子はDVDのパッケージを開けて中身を取り出した。
寝室の廉のパソコンにDVDをセットして、部屋のカーテンを閉めた。
画面に男性器のアップが映る。パートナーの女性が手や口で愛撫している。
(う、わーー!!で、出来るかな、私?)
美子は何度も何度もDVDを見ていろんな技を頭に叩き込んだ。
355 :
美子の誘惑3:2011/12/12(月) 03:27:34.93 ID:2jV29+E9
すっかり暗くなった頃、美子は疲労と空腹で寝室から出てきた。
ぐったりとソファに身を投げ出した時、ぽろっと何かが落ちた。
「あ、これ…」
NANAが置いて行った小さな包みだった。開けてみるとピンク色の小さなブラジャーとスキャンティが出てきた。
スケスケのチュール地でほとんど丸見えのブラジャーと、同じ生地のスキャンティはクロッチ部分が
ぱっくりと割れていて穿いたままでイタすことが出来るという代物。
「きゃー!何これっ?」
美子は両手にブラジャーとスキャンティを握って、またまた真っ赤になって固まってしまった。
翌日の夕方、廉が帰って来た。
お風呂を沸かして、美味しいお料理もたくさん作ってある。廉はご満悦で料理を平らげた。
そしていよいよその時がやって来た。
「美子ー」
廉はベッドに入って自分の隣のスペースをぽんぽんと叩いて美子を呼んだ。
美子はバスローブ姿のまま部屋の電気を消した。
「電気消すなよ。暗いと見えないって言ったろ?」
美子は廉の言葉には答えずにいきなり廉に跨った。美子の体からぶるぶると震えが伝わって来る。
「廉さん、今日は私に…任せて下さい」
「え?」
驚いている廉の唇に美子の唇が降りてきた。廉の唇を柔らかく包み込むように吸い始めた。
互いの舌を吸いながら、廉は手探りで美子のバスローブの紐を解こうとしている。
が、美子がそれを止めた。自分でバスローブを脱いだ美子は、もう一度廉に口づけた。
徐々に唇を移動させて、首筋に舌を這わせ、鎖骨を軽く噛み、廉の乳首を捉えた。
「お…まえ、どうしたんだ?」
暗くて美子の顔が見えないせいか、廉は段々不安になってきた。
美子は舌を尖らせて、ぐりぐりと廉の乳首を抉るようになぞった。
「んっあっ…美子…待て」
356 :
美子の誘惑4:2011/12/12(月) 03:29:10.54 ID:2jV29+E9
思いがけなく感じてしまって、廉はしばし放心してしまった。
その間にも美子の動きは続いている。いきなり下着の上から握られた。
「うわっっ…や、やめろ」
下着ごと握って上下にしごくと、ぐんっと大きさも硬度も増してきた。
(わっすごい…こんなに変わるんだ、男の人って…)
変なことに感心しながら、廉の下着を下ろして直接握った。
「やめっ…やめろっ」
焦った廉はベッドサイドの明かりを付けて光量を最大にした。そして美子の姿を見て唖然とする。
申し訳程度の小さなスケスケの布で出来たブラジャー。乳首も乳輪も丸見えでそのエロさたるや
素っ裸の方がまだ健全というほどだ。
何着てんだ、と思いつつも、やはり廉も男なので、そのエロさに刺激を受けて益々自身が大きくなった。
「廉さん、今まで廉さんに…まかせっきりですみませんでした。私も…頑張りますから」
「は?お前、何言ってんだ…って、ちょ、待てっ…んくっ」
美子は廉の先端にチュッとキスをしてじっと見つめていたが、意を決したのか目をつぶってそれを口に含んだ。
DVDで見たとおりにやろうと思っても、緊張しすぎてすっかり忘れてしまい、無我夢中で舌を動かした。
それでも手でゆっくり上下にしごき、先端を舌で舐めまわすと徐々に思い出してきた。
(そうだ、裏側をそーっと舐めるんだった。上手く出来てるかな?)
廉のものを咥えながら、上目使いで廉を見ると、真っ赤な顔をして眉を寄せている。
(気持ちいいのかな?まさか痛いんじゃ…)
「廉さん、気持ちいいですか?」
口を離して聞いてみた。
「あ…ああ、う…ん」
(気持ちいいんだ。良かった)
嬉しくなって益々丁寧に舐めた。そして自分の顔を上下に動かし始めた。
(す…げ、気持ちいい…美子の…口の中…熱い…も、イキそう)
口の中でまた一回り大きくなったのを感じた美子は、顔を激しく上下に動かし続ける。
「んっ…はぁ、美子っ…もう…いいから…んくっ…やめろ」
廉は手を伸ばして美子の肩をつかみ、起き上がらせた。同時に自分の手のひらで精液を受け止めた。
さすがに美子の口の中に出してしまうのは嫌だった。
357 :
美子の誘惑5:2011/12/12(月) 03:30:53.28 ID:2jV29+E9
ティッシュで手のひらをふき取り、美子を抱きしめた。
一生懸命気持ちよくしてくれた美子の口に舌を差し込んでかき回す。
ぴちゃぴちゃと音を立てて激しくお互いの舌を吸うとまた欲望が頭をもたげてきた。
ブラジャーの上から美子の乳首を強く吸い上げた。生地のカサカサした感触がいつもと違う快感を呼ぶ。
「廉…さん、まだです」
美子は全身を桜色に染めて、四つん這いになった。お尻を高く持ち上げ、膝をつき、頭を枕に埋めて廉を振り返る。
「きてください…お願い」
緊張と恥ずかしさのため美子の声は震えている。
「美…子」
(どうした、お前、そんな恰好して…そのパンツ…見えちゃってるぞ…)
何が何だかわからなくなった廉は、美子のお尻に抱きついた。スキャンティのぱっくり開いた部分から
丸見えになっている美子の中心を指で開いて舌を差し込んだ。
めちゃくちゃにかき回し、敏感な突起も舌で擦りあげた。あまりに興奮して力の加減も出来なかった。
「ああ…んっ、あっあっ…あああっ…いやっ」
美子がいきなり達した。廉はそこに捻じ込みガンガン突き上げた。
自分のものが美子の中に入ったり出たりするのを見ながら腰を動かし続ける。
「美子っ…美子っ…いいっ…はぁっ…んっ…」
「廉っ…さん…すご…い、あんっ…また…やっ」
限界の直前に美子から引き抜き、そのまま美子の背中に迸らせた。
美子を抱き寄せ口づける。舌を吸い、唇を甘噛みし口中のありとあらゆる所を探り尽くした。
358 :
美子の誘惑6:2011/12/12(月) 03:32:39.63 ID:2jV29+E9
「廉さん、まだですよ」
(えっ、まだするのか?もう無理っぽいんだけど…)
美子の様子を窺うと、どこから持ってきたのかコンドームを取り出して廉に装着させようとしている。
廉のものをしごいてコンドームを先端に乗せると、なんと口で被せ始めた。
「はあんっ」
(うわ、女みたいな声出しちゃった…やべ)
美子の動きはぎこちなくてなかなか上手く被せられないようだ。でもそのぎこちなさが、また堪らない。
ようやく装着し終わると、美子は廉に跨って自ら腰を沈めた。
腰を前後に揺すって締め付けてくる。廉もたちまち高ぶってきた。
美子は懸命に前後に揺すったり、上下に動かしていたが、段々疲れてきたようだった。
「美子、もういいよ」
廉は体を起して美子を抱きしめた。そのまま体を入れ替えて自分が上になる。
「やっぱりこれが一番好きだな」
正常位で腰を動かしながら廉が言った。
「どうしてですか?あんっ」
「お前の顔が見えるし、キスも出来るだろ?」
廉に口を塞がれ、口づけたまま突き上げられる。
「んっ…んっ…はぁ…やぁっ…ああっ」
力を振り絞ってめちゃくちゃに突き上げる。美子の中がきゅっと締まってきた。
「美子っ…いくぞっ…一緒に」
廉の動きに合わせて美子も擦りつけてくる。二人の動きがピタッと合った時、同時に絶頂を迎えた。
さすがに一晩で三回はきつい。廉は抜け殻のようにぐったりしている。
「廉さん、よかったですか?」
「うん。すごくよかった…」
美子はふにゃっとした笑顔で廉の胸に頬を寄せた。
「よかった。普通にするのが一番好きだって言ったから、あの、バ、バックが一番じゃないのかなって」
「ん?何でバックが一番だと思ったんだ?今まであんまりしたことないだろ」
「でも、NANAさんが…あっ」
美子はうっかり口を滑らせた。
「ああっ?何でNANAが出てくるんだ?」
鬼の形相になった廉に、美子は昨日の事を全て打ち明けた。
「あの女〜、美子に何て事言いやがるんだっ。お前も真に受けてんじゃねーよ。あいつと寝るわけないだろ!!」
「それはっ、信じてませんでしたけど…でも研究しなさいって言うのは、一理あるかと思って…」
美子の声が段々小さくなっていく。
大きく息を吐いた廉は、美子を抱き寄せる。
「まあ、確かに今日はすごくよかった。けど、俺が教えるから他所で覚えなくていいから。いいな」
「はい。じゃあ、あの、フェ、フェラっていうのもしない方がいいですか?」
「い…や、それは、んー…ま、あれだな、時々、してもいいけど…」
「廉さん…」
「何だよ…」
「好きなんですね、フェラ」
「うるせ…」
廉は真っ赤になって美子を抱きしめ、もう何も言わせないようにその唇を塞いだ。
359 :
美子の誘惑7:2011/12/12(月) 03:34:56.45 ID:2jV29+E9
数日後、テレビ局の廊下で廉とNANAがバッタリ出くわした。
廉は周囲の人に不審がられないように小声でNANAに話しかけた。
「お前、余計な事してくれたな。二度とあいつに近づくなよ」
NANAは廉の睨みなどどこ吹く風とばかりに、涼しい顔で言った。
「あ〜ら、でもおかげでいい思いしたんじゃないの?感謝してほしいくらいだわ。それじゃ」
真っ赤になった廉の顔を見て、NANAはぷっと吹き出し、笑いながら行ってしまった。
後日、パソコンを立ち上げた廉は、画面いっぱいに男性器のアップが出てきて腰を抜かした。
「あいつ、これ見て…あああ、はっきり男のアレが映ってるじゃねーか!こんなもん見せられるかっ」
廉はDVDを取り出し、二度と美子の目に触れないよう自分の机の奥深くにしまい込んだ。
以上です
段落の区切りが変ですみません
南の島で出し切ったのかエロが淡泊になりました
お邪魔しました
>>360 南の島さん、いつもありがとうございます〜!
美子も廉さんも可愛いな〜w
NANAちゃん結局二人のために色々してくれてるんですよねw
南の島さんの作品大好きなので、次作も楽しみに待ってます!
おお!早速廉×美子ネタが…嬉しい〜!
素直な美子と何だかんだ優しい廉さんカポーはほっこりします。
南の島さん、いつも有難うございます。
久しぶりの廉美子だ〜
南の島さんありがとう
一生懸命な美子かわいいなぁ
>>360 GJGJ!!
頑張って色々してあげる美子が可愛すぎる〜!
廉さんの「はあんっ」って喘ぎ声ワロタ
まとめさん、いつも乙です。
>>352 ブラック柊さん、好きでしたよ。あれってもう続きない?傷心美子がどうなるか気になります。
やっぱり廉さんに情熱煮えたぎらして欲しい気がします。
小悪魔NANAさん、GJ!です。エロ淡泊じゃなくて充分迫力ありました!
もし、この人が義姉になったら廉美子、いろいろと楽しそうだw
ドジな美子のことだから、絶対DVD入れっぱなしにしたままなんだろうな〜
と思いながら読み進めたら案の定www
それにしても3回とは廉さんやっぱり絶倫だねw
>>360 南の島さんありがとうございます。
廉×美子超ほっこりです。
廉さんの「はあんっ」で初めて笑いましたw
>>360いつもありがとうございます!今回も可愛い廉美子GJ!廉さんの「はあんっ」ちょうど最近バラエティで廉さんの中の人が「はあっ」って上ずった声を出しててその声で再生してしまったw
>>360 すごく良かったですw
廉さん優しいなー美子があんな可愛いんだもん仕方ないよね!
ごちそうさまでしたw
おお、ちょっと見ない間に!
>>335 素敵素敵!GJです!
金沢素敵なところですよね、冬は行った事ないけど。
本編見てて、柊さんが金沢って聞いたとき、
おお、なんか風情のある感じがぴったり!と思ったのを覚えてる
原作見てなかったけど、韓国版柊さんが釜山出身でってのは、
原作ファンの親から聞いてw知ってたので。
ラブラブ柊美子も大好物です!ありがとうございました!
>>360 GJ!
美子…www
廉さん、もうメロメロだよね〜こんなに可愛いんだもん。
NANAちゃん復讐なのか、なんなのか…いいぞもっとやれ
廉美子はとにかく幸せラブラブであって欲しい…と思ってしまう
ありがとうございます!
>>368 それ見た!録画見直して、その声でもう一度再生してくる!www
>>360 美子GJ!美子って実は気が強いよね、廉さんよりも男前かも、いざとなったら、大胆にやる子!
廉さんは、絶倫が似合うね(←褒めてます)
柊さんは、目撃とガックリが似合うね(←褒めてます)
柊×NANAエロ待ち正座続行中
253です
美男×NANAの続きを投下してみます
いちおうエロありです
柊×NANAお待ちの方、すみませんw
今までの投下分
前スレ372-377
本スレ247-252
少し乱れた服を大慌てで整えて、顔を赤らめたまま車を降りた。
馬淵さんがいることなんてすっかり忘れてたよ。
ああ、穴があったら入りたい…。
馬淵が車のエンジンを掛け、運転席の窓を開けた。
「ま、まぁその、あれだな。お前たちがラブラブだってことがよーっく分かったよ」
2人の甘いやりとりが脳裏に浮かんだのか、また馬淵がポッと頬を染める。
「でもお前ら、すぐに周りが見えなくなるみたいだから気をつけろよ」
「はぁい…」
「明日また迎えに来るから、それまで楽しんでくるんだぞ。あばよ!」
平日の昼間の遊園地は恋人たちでいっぱいだった。
みんな腕を組んでうきうきと歩いたり、楽しそうに笑い合ったりして幸せなオーラに包まれている。
2人はそんなふんわりとした温かい空間にすぐに溶け込んだ。
ハラハラしながらアトラクションを楽しんで、疲れたらドリンクを買ってベンチで休憩。
行列に長時間並ぶのだって、NANAと一緒にいれば苦にならない。
だけど、園内で愛想を振りまいている着ぐるみが次々と彼女に近づいてくるのには何度もイラっとさせられた。
中のヤツ、絶対に男だよな。
NANAに不思議そうな顔されたし、自分でもしょーもないことしてるって思ったけど、さりげなく間に割り込んでいちいち邪魔してやった。
ざまーみろ。
日が暮れるまで思う存分遊んで、ホテルのレストランで食事をした。
出てくる料理はどれもとても美味しくて舌鼓を打った。
大人っぽい店内の雰囲気につられて高そうなワインなんか飲んじゃったりして、ほろ酔い気分に頬を染める。
「そろそろ部屋に行こうか」
NANAは何も言わず、コクンとひとつうなずいた。
エレベーターで目的階に着くとNANAの手を引いて足早に部屋に向かった。
「ここだ」
扉を開けて中に入る。
バタン、と音を立てて扉が閉まった。
レストランを出てからここまで、ずっとひそめていた息をふうっと大きく吐き出す。
そうしてNANAと2人で顔を見合わせて、爆発したように笑い出した。
「あー、面白かった〜!いつバレるかと思ってヒヤヒヤしたよ!」
「私も!今日はずーっとドキドキしっぱなしよ。こんなに楽しかったの本当にひさしぶり!」
NANAが興奮に頬を染める。その弾けるような笑顔に心をぎゅうっと掴まれた。
うわ…NANAってこんな顔もするのか…。
知らなかった。なんだか、すげー感動する。
「NANA、今日はいっぱい笑ってたね。すごく可愛かった」
「本当?うれしい…」
そのまま言葉は消え、お互いを見つめる瞳が潤んでいく。
どちらからともなく腕を伸ばし、抱きしめ合って唇を重ねた。
「ん…」
NANAがうれしそうに目を細める。
唇を軽く触れ合わせては離し、一瞬だけ視線を交わすと鼻先をこすりつけるように近づいて、そしてまた唇をついばむ。
そんなことを何度も何度も繰り返して、まるでじゃれあって遊ぶ子猫みたいに軽い口づけを楽しみ続ける。
「NANAってさ…キスするの好きだよね」
「だって美男のキス、気持ちいいんだもん」
NANAが美男の目を見てふふっ、と笑う。始まりはいつもこう。
「俺も好きだよ。NANAの唇、柔らかくって気持ちいい…」
甘噛みするように合わせた唇が離れるたびに軽い水音を立てる。
繰り返す音が頭の中で増幅されて響く。
夢見がちに微笑んでいたNANAの表情が、熱に浮かされる女性のものに変化していった。
このギャップがたまらなくて、いつも心を狂わされる。
NANAの背中に回した手を、腰のカーブに沿わせてゆっくりと滑らせていった。
「ぁん…ね、美男…ちょっと待って」
NANAが身体をよじって腕の中からすり抜けようとする。
「なんで?しようよ…」
「だって、せっかくこんな素敵な所にいるのに…。それだけじゃもったいないじゃない」
そう言って美男の身体をするりとかわし、夜景の光る窓のそばへ駆け寄った。
「やだよ。今がいい」
NANAを後ろからやんわりと羽交い締めにして、首筋に鼻を擦りつけて甘える。
「ん、もう…やぁだっ」
「どうしてもダメ…?」
「まだ時間はいっぱいあるでしょ。少しだけ我慢してね」
美男の腕から力が抜ける。
NANAは美男の隣に立つと、がっかりとため息を吐く横顔に「ごめんね」と軽く口づけた。
「ほら見て、すごく綺麗よ。こんなに素敵な景色初めて…」
窓の外には、夢の国から溢れ出るまばゆい光の渦。
NANAは美男に寄り添い、美しい夜景に瞳を輝かせる。
暗闇の中に散りばめられた宝石はキラキラと光を放ち、鳥肌が立つほど綺麗だった。だけど。
ねえNANA、知ってる?
俺にとって君以上に綺麗なものなんて、この世界にはないんだよ。
NANAの横顔を見つめて思う。
美男はそっとNANAの肩を抱き、窓の外に目を向けた。
「ね、お茶でも飲まない?」
夜景を十分に堪能した様子でNANAが言う。
「今日はいろんなことがありすぎて少し疲れちゃった」
「ん、そうだね」
ソファに腰掛け、NANAが淹れてくれた紅茶を飲んでホッと息を吐く。
本当にハラハラドキドキの1日で、楽しかったな。
朝からメイクして、女の子に変身して、買い物に行って……。
買い物?そうだ、あれ渡さないと。
「NANA、これ…気に入ってくれるといいんだけど」
バッグから小さな箱を取り出してNANAに差し出した。
「開けてもいい?」
リボンをほどいて箱を開けると、小さな赤いハート型の石が付いた華奢なネックレスが現れた。
「可愛い!これ、いつの間に?」
「NANAが夢中で買い物してる時に見つけて、内緒でね」
「ありがとう!すっごくうれしい!」
ネックレスを手に取って満面の笑みを浮かべるNANAを見ると、こっちの頬まで緩んでしまう。
「よかった。喜んでもらえてホッとしたよ」
「ねえ、着けてくれる?」
NANAはソファからスッと立ち上がり、部屋の隅にある鏡の方へ歩いていった。
NANAが姿見の前で今まで着けていたネックレスを外した。
長い髪をひとつにまとめて持ち上げ、なめらかなカーブを描くうなじを美男に見せつける。
さらさらとした細い鎖を首筋に回して金具を留めた。
鏡越しに見える彼女の白い首元で赤いハートがキラリと光を放つ。
「ありがとう美男。大切にするね」
「よく似合ってるよ。可愛い」
美男はNANAの腰を後ろから抱いて、首筋に軽く口づけた。
「なんだか、変な気分ね」
「え?」
NANAは鏡の中の美男と目を合わせて会話する。
「美男ったら本当に可愛くて綺麗で…女の私が嫉妬しちゃうくらい」
「そんなことないよ。NANAの方がずっと綺麗だ」
もう一度、首筋にキスをする。
「でもドキドキするの。いつもと違って、美男がすごく色っぽくて…」
「…感じちゃう?」
「…うん」
今度は舌先を這わせた。
「…っ」
声にならない吐息とともにNANAが肩を震わせる。
「NANA、もう…いいよね?」
「ん…。でもシャワー浴びたいの。いっぱい歩いたからこのままじゃいや」
「いいよ、このままで」
「嫌よ。汗かいてるもん…」
「じゃあ一緒に入ろっか?」
美男の頭の中ではもうNANAが服を脱ぎ始めている。
今日の下着は白?それともピンク…?
「なによその笑顔…美男のえっち」
「そんなことNANAに言われたくないんですけど〜」
「もうっ!」
軽口を叩きながらNANAの手を取り、バスルームへ向かった。
NANAが鏡の前で器用に髪をまとめ、クリップで留めた。
背後で服を脱ぎ捨てる美男が鏡に映る。
「あ〜、美男のブラ可愛い!いいなぁ」
「羨ましがらなくていいから。それより背中外して。うまく取れないんだ」
「ヘンなの。脱がせるのはすごく上手なのにね」
「そんなこと言わないで。ほら早く」
NANAに背中のホックを外してもらって、きつい締めつけからようやく解放された。
「ありがとNANA。ん〜、やっと楽になった〜」
両腕を上げてグッと伸びをしたその時、不意に襲ってきた感覚に背中がゾクッとした。
「ブラの跡がついてる…」
NANAが指先で下着の跡をそっとなぞる。
「やめろよ、くすぐったいだろ」
指は背中から脇を通って胸の前へ。そして突然、小さな突起をかすめた。
「ぁんっ…」
思わず女の子みたいな声が出て、自分でもびっくりした。
「NANAっ!?」
「美男、いつも私のいろんなとこ触ってニヤニヤしてるでしょ。お返しよ」
NANAの指がゆるやかに円を描いてそこをクニクニとこね回す。
くすぐったいような、それでいてなんだか甘いもどかしさに耐えきれなくなりそうで、NANAの手を掴んでやめさせた。
「ん…もうわかったから…NANAも脱いで」
「美男が脱がせていいよ…」
NANAの誘う瞳がオスの部分を確実に刺激する。
胸を高鳴らせながらNANAの服を次々と床に落としていくと、透き通るほどに白い素肌が露わになった。
「え…」
まったく想像もしていなかった真紅のレースの下着姿。
丸みを帯びた身体から匂い立つような色香が漂って、固くなり始めた下半身を直撃する。
「やっぱりNANAってエッチだ。たまんない…」
NANAの唇と舌を味わいながら肩紐をずらし、ホックを外してやわらかな胸を解放する。
ショーツに指を掛けて引きずりおろすと、くるんと丸まった小さな布がかすかに糸を引いた。
バスタブの中で軽く身体を濡らしてボディソープを手にとり、お互いの身体を撫で回してふざけ合った。
NANAの胸のスイッチを指でにゅるんとかすめるたびに小さな声が聞こえてくる。
その反応が面白くて、そこばかりを執拗に攻めた。
「やっ、あ…あっ」
「さっきのお返しだよ」
「ぁんっ…ひどいよ美男…。ん…そんなにいじわるしないで…」
NANAが悶える姿と声が可愛すぎて、楽しくてたまらない。
「いじわるなんてしてな…ぅあっ!」
夢中でNANAの胸をもてあそんでいたら、すっかり固くなったものを突然握られて腰が砕けた。
激しい反撃に耐えられなくなってバスタブの縁に座り込む。
NANAの指がぬるぬると滑ってそこを這い回り、頭の中がひどく混乱した。
「…ぅっ…ん、NANA…?」
「もう許してあげないから」
NANAの口元にうっすらと冷たい笑みが浮かんだ。
緩急をつけた絶妙な力加減で何度もしごかれて、あっという間に窮地に追い込まれていく。
「あ…NANA、俺…もぉヤバい」
「いいよ、出して」
「は……、うっ!…ぁっ……」
NANAの手が最後に数回上下したところで、陥落した。
バスタブの中にへたり込んで乱れた息を整えていると、NANAが向かい側にペタッと座って顔を見合わせた。
「あぁ…ごめん、汚しちゃったね」
壁に向かって放たれた白い液体は、NANAの頬にも少し飛び散っていた。
「いいの。美男が感じてくれた証拠だから。…気持ちよかった?」
「うん…。よすぎて、まだびっくりしてる」
ぼんやりした気分の抜けないままNANAの頬に手を伸ばし、自身の快楽の跡を拭う。
どうしたんだろう…こんなに積極的なNANAは初めてだ。
今日は驚かされてばっかりだな。これが『特別な日』ってやつか…。
NANAがメイクを落として顔を洗い、素顔に戻った。
いつもより少しだけ幼い印象になって可愛らしい。こんな顔も大好きだ。
「美男も洗ってあげる」
NANAが美男の顔をくるくると撫でてクレンジングを馴染ませていく。
「あ、でもせっかく綺麗だったのに…もったいないことしちゃったかなぁ」
「別にいいよ。帰りはNANAが好きなようにメイクすればいいし」
クレンジングをシャワーで流して、犬のようにプルプルと頭を振った。
「それに、これが本当の俺だから」
今回はここまでです
次はできるだけ近い内に。がんばって妄想しますw
二人ともかわいい〜
しようよって言う美男が駄々っ子みたいで超萌えますw
まとめさん、いつもありがとん!
>>379 美男NANA、GJです!
クレンジングでメーク落とすまでは、見た目は、NANAx美子だったんでしょうか?
これはこれで萌えますw
>>380 うわぁあああん待ってましたぁああああ!
どうしてこの美男×NANAはこんなに可愛いの?こんなに萌えるの?神なの?w
本当剥げそう。
鼻を擦り付けたり犬のようにプルプルするなんて、やはり美男は忠犬ミオ公だったんだな!
私のNANAの中の人フォルダに、まさに赤レースの下着グラビアがあるので、びっくりしてしまった&リアルでドキドキしたw
続きをお待ちしております!
>>380 GJ−!!かわいいよー。ベタなやりとりがかわゆすぎる。
お風呂で女の見た目から男に変わって…本番が始まるんですね。
私も風呂で全裸待機しますw
美子の誘惑にご感想下さった皆さんありがとうございます
>>366さん鋭いw読まれてる
今回は廉美子エロあり同居までの巻です
386 :
愛の巣1:2011/12/17(土) 01:07:51.87 ID:c/L4ZqPU
二年ぶりに帰国して初めてのお彼岸。美男と美子の二人は両親のお墓にお参りしていた。
日本に帰ったら真っ先にやろうと思っていた事。別々だった両親のお墓を一つにしてようやく二人は肩の荷が下りた気がした。
「やっと、お母さんとお父さんが一緒になれたね。きっと喜んでくれてるよね」
涙を流しながら微笑む美子を見て、美男はただ頷いた。
日本を留守にした二年間の報告を両親にした後、美子は美男に向き直って話し始めた。
「お兄ちゃん、実は、廉さんが二人で暮らそうって言ってくれてるの。そうしてもいい?それとも、廉さんの事、まだ許せない?」
しばらく沈黙した後、美男は口を開いた。
「お前がそうしたいならそうすればいい。俺が口出すことじゃないから…」
それだけ言うと、美男はもう一度お墓に手を合わせ、駐車場へと歩いて行った。
車に乗った美男は昨夜廉に言われた言葉を思い出していた。
「美男。美子と二人で暮らす事、許してくれないか?絶対大切にする。美子を幸せにすることでご両親に償いたいんだ」
もう許している。と言うより廉が悪いわけじゃないことは始めからわかっていた。
それでも時折子供じみた感情を爆発させた俺を、廉は辛抱強く見守ってくれた。
廉がいい奴だって事はわかってるし、何よりあの二人は愛し合っている。
でも、でも、やっぱり心に引っかかってしまうのは、廉の母親の事だった。
きっと二人はいずれ結婚するだろう。そしたら、あの女は美子の義母になる。それだけは納得できなかった。
合宿所に帰った二人を廉が出迎えた。
二人だけで墓参りをさせようと遠慮した廉だったが、そこで話がどうなったのか気になって落ち着かない時間を過ごしていた。
「美子、ちょっと…」
美子の腕を引いて、自室に連れて行く。
「どうだった?」
「はい、反対はされませんでしたけど…」
「けど…?」
「したいようにしろって…」
歯切れの悪い言葉から、やはり美男は内心反対なのかと思い、廉はもう一度話してみることにした。
387 :
愛の巣2:2011/12/17(土) 01:09:30.51 ID:c/L4ZqPU
庭の芝生の上にぽつんと胡坐をかいて座っている美男がいた。
背中を丸めて俯いている姿は、まるでいたいけな子供のように見えた。
美男の隣に廉も胡坐をかいて座った。
「何だよ」
俯いたまま顔も向けずに美男が言った。
「お前、本当は俺達の事反対なのか?もしお前が嫌なら、美子と二人で暮らすのは考え直すよ」
美男の頭にカッと血が上った。廉を押し倒してその体に馬乗りになった。
「何言ってんだよっ!お前、美子を幸せにするって言っただろっ!俺が反対したら簡単に諦めちまうのかよっ!!」
廉の胸倉をつかんでがくがくと揺さぶり続ける。廉は抵抗せずに悲しげな顔で美男を見つめていた。
「あーっ、美男のやつ、何やってんだよっ!」
リビングから芝生へ走り出ようとした勇気を柊が止めた。
「待って、俺達は口を挟まない方がいいと思う。詳しい事情は知らないけど、一度思い切りぶつかった方がいいんだ、あの二人は」
美男の廉に対する態度から、何か深い事情があると柊は感じていた。
そして多分それは、妹をとられた寂しさからくるものだけじゃないだろうという事も。
「おいっ廉っ!何とか言えよっ!俺は、俺は…」
美男の声に涙が混じった。廉が静かに口を開く。
「俺の…母親の事が許せないんだろ?」
美男の動きが止まった。廉のシャツをつかんだまま、美男は泣き出した。
「俺は、お前と美子が…付き合うのは、嫌じゃない。一緒に…暮らすのも、反対しない。
お前が、いい奴だって事も、わかってる。だけど…」
だけど…。結局いつも気持ちはそこに戻ってしまう。廉の母親が、両親にどんなひどい事をしたか。
許したいのに、許せない。許せないままでいる自分が、嫌だった。胸が苦しくてたまらない。
廉も美男の気持ちが痛いほどわかっていた。だからこそ、かける言葉が見つからなかった。
「お兄ちゃん、やめて!」
裸足で駆け寄った美子が美男の背中にしがみついた。
「もう、許してあげよう。廉さんだって、苦しんでるの」
嗚咽する美男を後ろから抱きしめて、美子が諭すように言った。
「お前、悔しくないのか?廉の母親のせいで、父さんも母さんもどれだけ辛かったか…」
美男の言葉を聞いた廉は、顔を背けて唇を噛み涙を堪えている。
「悔しいよ。運命を恨んだこともあったよ。でも、この運命じゃなければ廉さんに会えなかった」
廉はハッとして美子を見た。唇がわなないて涙が一筋こぼれた。
「誰かを憎んだままじゃ、きっと自分が幸せになれない。だから私は水沢さんを許したの。
お兄ちゃんも幸せになってほしい。だからお願い、許してあげて…」
廉は体を起こして、右腕で美子を、左腕で美男を抱きしめた。
「愛してる…二人とも。どうか俺に償わせてくれ…一生をかけて償うから」
388 :
愛の巣3:2011/12/17(土) 01:10:36.82 ID:c/L4ZqPU
リビングから三人の様子を見守っていた柊と勇気は大きなため息をついた。
「何かよくわかんないけど、落ち着いたみたいだね」
「そうだな。お茶でも淹れようか。勇気、お前も手伝って」
「へーい」
ソファに座った五人が静かにお茶を飲んでいる。みんな無言だけれど、ゆったりとした時間が流れていた。
泣きはらして目を真っ赤にした美男が、唐突に口を開いた。
「美子と廉はここを出て、二人で暮らす事になったから」
みんな一斉に美男を見た。
「えーっ、そうなの?寂しいよー、せっかく美子が帰って来たばっかりなのに…」
「まあまあ、いいじゃないか。二人は二年間も待ったんだから」
口を尖らせて不満げな勇気を柊がなだめた。
廉と美子は顔を合わせて見つめ合った。二人とも目が潤んでいる。
「ただし条件がある。この合宿所に近い場所に住むこと。週に一度は美子を連れてくること。
美子の望みは何でも叶えること。絶対に美子を泣かせないこと。もし泣かせたら、理由はどうあれ廉のせいにするからな」
「お兄ちゃん、そんなのひどい」
頬を膨らませて美男に抗議する美子を廉が止めた。
「わかった。必ず守るよ。ありがとう…美男」
それから仕事の合間を縫ってこじんまりとした一戸建てを探し、家具や生活用品などを揃えていった。
小さいけれどセキュリティーのしっかりしたその家は、合宿所から車で五分程度の距離で周囲の環境も申し分ない。
引っ越しの前夜、廉と美子は廉の部屋の窓辺で星空を見上げていた。
そっと美子を抱き寄せて唇を重ねる。お互いに相手の唇を軽く噛みながら、より深く口づけようとした時…
「はい、そこまでー。美子、部屋に戻れ」
ノックもしないで美男が入ってきた。廉と美子はびくーんと体を硬直させた。
「おっ前、ノックしろって何回言えば…」
真っ赤になった廉が文句を言おうとするのを美男が遮った。
「俺、前に結婚するまで禁止って言ったよな。それもあっさり破りやがって。
結婚もしてないのに同居を許したんだから、今夜ぐらい我慢しろ」
胸元まで真っ赤に染めて絶句した廉を置き去りにして、美男は美子を連れて行ってしまった。
389 :
愛の巣4:2011/12/17(土) 01:11:45.92 ID:c/L4ZqPU
「明日から二人か…」
いろんなことを想像して胸がドキドキしてきた。ベッドの上に寝転んで二年前のたった一度の夜の事を思い出す。
誰にも見せたことのない体を、自分のためだけに開いてくれた。可愛い声を上げながら、顔を真っ赤にして泣いてた。
廉は高ぶってくるものを感じて、股間に手を伸ばした。何度かさすって慌てて手を引っ込める。
「はぁぁ…。歯でも磨いて寝るか…」
勢いよくベッドから起き上がり、廉は部屋を出て行った。
洗面所に行くと美男が洗面台の横に座っていた。歯ブラシを口に入れながら、目を向ける。
「何してんだ?」
「見張ってんだよ、美子が風呂入ってるから。どっかのエロい人が覗きに来るかもしれないからな」
「ゲホッ、お、俺は歯磨きに来ただけだろーが」
さっきまで色々想像したり思い出したりしていたことを見透かされたようで、廉は焦ってむせてしまった。
横目で美男を睨みながら歯磨きを続ける。すると美男は真剣な目で見返してきた。
「廉。美子の事頼むな。望みは何でも叶えろなんて言ったけど、あんまり甘やかさないでくれな、あいつ調子に乗るから」
(お前、歯磨いてる時にそんな真面目な事言うなよ…)廉は急いで口をすすいで言った。
「おう、これからは、お前の代わりに美子を守るよ」
美男がふふっと笑った。
「逆だよ、廉。守られてたのは俺の方だよ。聞いただろ、昼間あいつが言ったこと。
自分が幸せになるために、廉のお袋さんを許すって。あいつは前しか向いてない。女ってほんと強いよな」
洗面台から弾みをつけてピョンと飛び下りた美男は、洗面所から出て行こうとしてふと振り返った。
「あ、そうそう…」
廉の首に腕を回して頬にブチュっとキスをした。
「俺も愛してるよ、廉」
ニヤッと笑って洗面所を出ていく。廉は目を見開き腰を抜かしてへたりこんだ。
(な・な・何だっ、今のはっ!)洗面所のドアを開けて美男に怒鳴った。
「美男っ、てめー、いい加減にしろっっ!」
遠くから美男のげらげら笑う声が聞こえてきた。
390 :
愛の巣5:2011/12/17(土) 01:13:04.51 ID:c/L4ZqPU
引っ越し祝いに駆け付けたメンバーや、マネージャーの馬淵、スタイリストのRINAが帰って、二人は顔を見合わせて微笑んだ。
仲良く片付けを終えて、順番にお風呂に入って、もう何もやることがなくなると沈黙が訪れた。
RINAがプレゼントしてくれた真っ白なシルクのパジャマを着た二人。廉は間が持てなくて、シャンパンをガブガブ飲んでいる。
酔いなのか照れなのか顔を真っ赤にした廉が、一つ咳払いをした。
「ぅんん、そろそろ、寝るか…」
「…はい」
白いパジャマを着てるせいか二人の顔はより赤くなっているように見える。
抱きしめようとした廉の腕をほどいて、美子がベッドに正座した。
「廉さん、ふつつか者ですが、どうぞよろしくお願いします」
改まった美子の態度にドギマギして、廉も思わず居住まいを正す。
「あ、ああ、こちらこそ、よろしく」
二人は顔を合わせてくすっと笑い、抱きしめ合った。
長い口づけをかわした後、美子の全身に舌を這わせる。
わざと敏感な部分を避けて、乳房の周りを舐める。わき腹から下腹部へと舌を這わせた後、美子をうつ伏せにする。
背後から美子にのしかかり、うなじに歯を立てた。
「はぁ…んっ…」
美子はシーツをつかんで声を漏らしている。
背骨に沿ってゆっくり舌を這わせると、美子の体がびくっと震えた。滑らかなお尻のふくらみを両手でつかんで、強く吸う。
「ん、あぁっ…や…んっ」
太腿を撫でながら舌を下ろしていく。美子の足先をつかんで、指を口に含んだ。
「ひゃっ…んっあっ…ぅん…あぁっ」
足の指の間を舌先でなぞると、美子は全身をふるふると震わせて皮膚を粟立たせた。
もう一度美子を仰向けにして、ようやく胸への愛撫を始める。
乳房を強く揉みしだいて、乳首をちゅうっと吸った。指先で乳首を捏ねながら、乳房のふくらみもあちこち吸っていく。
美子の体に赤い廉のしるしが増えていく。
391 :
愛の巣6:2011/12/17(土) 01:14:40.67 ID:c/L4ZqPU
美子の足を大きく開いた。そこはびしょびしょに濡れていて、シーツにまで滴っている。
指で開いて舌を這わせる。舌で蜜をすくい取り、突起になすりつけた。そのまま優しく突起をなぞると、美子の声が大きくなった。
「あっ…んぁっ…れ…ん…さん…あっあっあっ」
軽くイッた美子を満足げに見つめて、避妊具を着けた。
「美子…いくぞ」
美子の中心にあてがって静かに進める。二年前のたった一度の経験しかない美子は、ほとんど処女のようなものだろう。
なるべく痛みの無いようにゆっくりと押し開いていく。
「痛むか?」
「んっ…少し…痛いけど、大丈夫…です」
根元まで挿入した後、すぐには動かないで美子を抱きしめる。頬やおでこ、美子の顔中にキスを降らした。
廉のキスに溺れそうになった美子は、微かに口を開ける。そこにすかさず、廉が舌を差し込んだ。
舌を絡め、激しく吸いながら、ゆっくり腰を動かし始める。
くちゅくちゅといやらしい音が室内に響いている。きつい美子の締め付けに、廉は早くもイキそうになった。
「んっ…はぁっ…はっ…美子っ…」
美子の肩口に顔を埋めたまま、荒い息を吐いて、腰を動かし続ける。
「やっ…んぁっ…だ…めっ…あんっ…あああっ」
廉の背中に爪を食い込ませて、美子はのけぞり始めた。
美子の片足を持ち上げ、より深くへ打ちつける。ビクッと痙攣した美子は徐々にぐったりとしていった。
少し落ち着いた美子に軽いキスをした。快感の余韻の残る美子はそれだけでもピクンと体を震わせる。
「廉さん…好き」
美子は涙を流して廉に思いを告げる。
「泣くなよ。美男にばれたら怒られるだろ」
頬の涙を指でぬぐって、また口づける。
頬を上気させ、目を潤ませる美子を見ると、廉はたまらない気持になる。
「美子…もう一回…」
廉は美子におおいかぶさって、また最初から愛撫を始めた。
そして空が白み始めるまで、何度も何度も愛し合った。
392 :
愛の巣7:2011/12/17(土) 01:16:47.91 ID:c/L4ZqPU
すっかり日が高くなった頃、ようやく二人は目を覚ました。
「おはよう」
「おはようございます…」
照れくさそうに頬を染めて、初めて二人きりの朝を迎えた。
「お腹すきましたね。何か作ります」
起きて身支度を整えようとする美子を廉はニヤニヤしながら眺めている。
ふとベッドの端っこに美子のパンツを見つけた廉は、素早く拾って枕の下に隠した。
「あれ?ないなぁ…」
吹き出しそうになるのを堪えて、廉は自分のパジャマの上着を渡した。
「これでも着とけ」
廉のパジャマの上着だけを来た美子と、パジャマのズボンだけを穿いた廉が手をつないでキッチンへ。
朝食の準備をする美子を後ろから眺めて、廉のニヤニヤが止まらない。
お尻が見えそうで見えない絶妙なバランス。背後から美子をギュッと抱きしめた。
滑らかなシルクの感触の下にある、熱くて柔らかい美子の体。全部俺のものだ。
「だめ…これから朝ごはんですよ…」
廉をたしなめながらも、美子は熱い息を吐く。
「ああ、食べたら…また、しよ」
トーストを食べながらじーっと見つめると、美子は恥ずかしそうに目を伏せる。
少し寝癖のついた髪、廉のだぼだぼのパジャマを着た華奢な体、照れくさそうに上気した頬、全てが愛おしい。
「廉さん、コーヒーおかわりしませんか?」
「ん…こっちのおかわりがいい」
そう言うと美子の手首をつかんで、引き寄せた。美子の首筋に唇を寄せて、ベッドに行こう、と囁く。
「廉さんたら…もう」
顔を赤らめて俯いた美子をさっと抱き上げて寝室に向かう。そしていつ果てるとも知れない愛の交歓が始まる。
以上です
シリアスタッチに始まったのにまさかのエロターン
廉さんすごいなー と自分で書いておきながら言ってみる
お邪魔しました
きゃーーー!!廉さんすごーい!!
最初泣かされたのに、今は超ニヤニヤですw
美男兄ちゃんと廉さんのからみがすごくよかった!
そして廉美子の二人はいつものごとく最高でした(涙)
南の島さん、ホントにいつもありがとうございます!
大好きです!w
>>393 ラブラブご馳走様ですぅ…(*´д`*)
この美男もいい〜!
廉美子はラブラブが似合うな、やっぱり。
ドヤ顔廉さんと目うるうる美子が目に浮かぶ〜(*´д`*)
美男って本編でよろしくのみだったので、キャラ先入観無くてどれ読んでも違和感的なもの無くていいね。
>>393 GJ!
廉さんエロい!エロい人…!
美子はしばらくパンツ履かせてもらえないんだろうかw
二年前の一夜のお話も大好きです
双子+廉さんのつながりと、いちゃいちゃとエロと…
いつも素敵な廉美子ごちそうさまです…!
>>380 美男×NANA、なんて目に美しい組み合わせ…
いっそ馬淵が羨ましいw
続き楽しみです
>>393 ぐはっ、廉さんサイコー!!
何度も盛ってる発情期廉さん大好きだw
また廉美子待ってます〜!!
男物のブカブカパジャマ着てるだけの美子の姿を想像したら萌えたw
てか廉さん裸エプロンとかもやりそうw
やばいーー廉さんデレすぎ絶倫すぎw
廉×美子やっぱり一番好きだーーー!
エロはともかく、双子部分は本当にドラマ化して頂きたいくらい。
南の島さん、いつも萌えありがとうございます。
次作も楽しみにしてます!
>>393 南の島さん、素敵なお話ありがとう!
2年前に一度、その後、2人とも純潔守ってたのか。
美子はともかく、絶倫さん、大丈夫だったな・・・
2人暮らしで封印したもの一気に出して下さいw
>>393さん
廉さん絶倫でもあり、エロでもあり、やれば出来る子だったね。
2年前に童貞卒業したとは思えないw
A.N.JELLのバンドの曲の方向性が変わりそうだ。
>>393 この廉さんて、「出発前夜」の廉さんですか???
>>393 南の島さん、またまた素敵なお話ありがとうです。
「美男ですね」のDVD第1話を見てたら廉さんは怒ってばかりいましたね。
その頃の廉さんと絶倫廉さんwを比べると成長したなぁと妙に感心したりしてw
一人の人間として男としてもw
柊NANAまだかな?
>>405 職人さんのペースに任せようではないか!
私も内心wktkだけどw
大変お待たせ致しました…。
柊×NANAの続き、エロです。
あれから続きを作る時間が全く取れず、こんなに遅くなって
しまいました。
待って居て下さった方々、すみませんでした。
他の職人さまの神作品もほとんど読めていないので、
また改めて後日読ませていただきますね!
前回までの更新分
前々回スレ
413-421
474-477
647-654
前回スレ
123-133
現行スレ
>>59-76
柊の告白が耳に届き、その意味と重みを理解した途端、
NANAの身体が一気に熱くなり、意思とは関係無く頬が火照る。
だが、どうしても素直になれないもう一人の自分が冷めた眼で、
こう言うのだ。
…どうせ嘘よ。
柊が好きなのは美子のはず。
哀れな私を慰めたいだけ…。
また、廉の時みたいに本気になって傷付きたいの?
「…ちょ、…ちょっと待ってよ…このタイミングでそんな冗談…」
今ならまだ、冗談にしてしまえばお互い傷付かずに済む。
そう思って顔を上げ咄嗟に彼の台詞を否定し掛けたが、
じっとこちらを見つめる切れ長の瞳に吸い込まれそうな錯覚が生じ、
息を飲んだ。
「冗談じゃない。…ずっと悩んで、出した答えだ」
淀み無く言い放った柊は、とても嘘を吐いているとは思えない様子で。
NANAの心がグラリと大きく傾く。
「ホントに……信じていいの…?」
「…あぁ。何度でも、NANAが信じてくれるまで言うよ。
俺は…君が好きだ」
大きな不安と僅かな期待を込めた問いをあっさり肯定し、
念押しとばかりに再度愛を告白され…ようやく己を縛る心のバリケードが
消え失せていった。
本気で自分を助けに来てくれた、この男性(ひと)なら。
信じてみたい。
「……わ、たしも…」
「……ん?」
「…私も、す……き…」
NANAは柊の胸に再び顔を埋め、自身の想いを打ち明けた。
だが蚊の鳴くような小声だった所為か、頭上からは耳を疑う
言葉が落とされる。
「…ごめん、よく聞こえなかったんだけど…」
今までの人生で、自ら“好き”とハッキリ告白した経験などない。
否、そもそも廉以外に恋をした者など居なかった。
学生時代は歌やダンス、芝居のレッスンに全てを捧げていたし、
芸能界に入ってからは言い寄る男性らのルックスやステータスだけを
見て適当に交際し、飽きればサヨナラしていたNANAにとって、
先程の返事はまさに一世一代の告白だったのだが…
よもや聞こえていなかったとは。
恥ずかしさと苛立ちが募り、ガバッと勢い良く朱に染まった顔を上げ、
悔しげに柊を睨んだ。
「だーかーら!!私もあなたが好きだって言っ……んぅッ…!?」
半ばヤケクソで叫んでいる最中、いきなり唇を塞がれてしまう。
思わず目を大きく見開き、呆然と固まる。
後頭部と背中へ添えられた手が抵抗を許さず、ぽってりと肉厚なNANAの
それに何度も柊の薄い唇が食らい付いた。
「…っ、……!」
やっと想いを自覚したばかりだというのに、早過ぎる展開に心臓が
破裂しそうだ。
とりあえず一旦冷静にならねばと柊の胸を押して身体を離し、
どうにかキス攻撃から逃れた。
「…はぁっ、…もう!いきなりキスするなんて…っ」
「………嬉しい…すごく…」
「……柊…?」
文句を言おうとするも直ぐに抱き締められてしまい、暴れる間も無く
耳元へ柊の囁きが届いて、動きを止める。
そこでようやく気が付いた。
己を抱く腕が、肩が…微かに震えている。
「あの時、俺の名前を呼んでくれてたから少し期待はしてたけど、
正直…不安で堪らなかった。
……君の中にはまだ、廉が居るかもなんて…情けないだろ?」
「…それは…」
「…あの星のイヤリング、廉がしてる物にソックリだった。
NANAが遊びじゃなく…本気でアイツを想ってた事くらい、知ってたよ」
美子に意地悪をしたり、A.N.JELLの仲を引っ掻き回そうとした真意を、
彼はとうに見抜いていたらしい。
全てはただ、廉に振り向いて欲しかっただけ。
本気の恋を知らなかったNANAの不器用な想いが、歪んだ形で
現れてしまったのだと。
「…確かに……好きだったわ。初めて本当に好きになったのが
廉だったから」
「…そう、か…」
「ぶっちゃけ、フラれたのも初めてだったのよ?…好きな人に
振り向いてもらえないのが、こんなにツラいんだって事もよく分かった」
ここで見栄を張ってもバレるだろうと、素直に失恋の痛手を引き摺っていた
事実を認める。
少し緩んだ腕の檻から抜け出し、NANAはソファから立ち上がって
彼へ背を向けアロマキャンドルが並ぶ棚を眺めた。
「…でも、ね…未練タラタラで無くしたイヤリングを探してた私を笑わず、
真剣に手伝ってくれたあなたの優しさが嬉しくて。
あの夜から、少しずつ廉を思い出す時間よりも…柊の事を考えてる
時間の方が増えてたみたい」
接待の件に悩み苦しみながらも、柊の顔ばかり思い浮かんでは
溜め息を吐いていたこの数日。
三澤の魔の手から救い出された瞬間、胸に渦巻くモヤモヤが
確信に変わった。
「…廉への気持ちは無かった事には出来ない。
だけど、やっぱり私が今一番好きなのは…藤城柊さん、あなたよ」
顔を見ないまま今度こそ素直に愛を伝え、くるりと振り向けば。
柊は手で顔を覆い、その場に蹲っていた。
「ど、どうしたの…?」
「……驚いたな………幸せ過ぎて死にそうだ」
やや色黒の彼の顔が、首筋まで赤らんでいるのが良く分かった。
普段から冷静沈着で、恋愛に関しても常に穏やかなイメージだったが、
意外に純情な一面もあるようだ。
NANAは何やら嬉しくなり、柊の目の前にしゃがみ肩を揺らして
笑いながら顔を覗き込む。
「ふふ、あなたも結構可愛い所があるのね」
「…NANAこそ、そんな風に笑ってる方が綺麗だよ」
「…なっ、何よ、またクサい事言っちゃって」
からかうつもりが、ほんのり頬を赤らめた男に返り討ちにされ、眉根を寄せた。
ストレートにそんな台詞を吐かれては反応に困る。
「思ったまま言っただけさ。俺はNANAの笑顔が好きなんだ」
「あ〜もう!恥ずかしいからヤダ!聞きたくないっ!」
恥ずかしげも無く宣う柊に我慢出来ず両手で彼の口を塞ぎ、これ以上
喋らせまいと制止した。
すると、柊は黙ってNANAの手を取り指先へ羽が触れる程度の強さで口付ける。
ビクッと無意識に肩が竦んだ。
「…俺も同じだな。美子を想ってた頃を忘れないし、
この気持ちはずっと大切にしたい。
ただ、今はA.N.JELLの仲間に対する愛情にも近くて…
何て言うか、家族みたいな感じなのかも」
気になっていた本音が語られ、NANAは肩の強張りを解き力を抜いた。
指先に寄り添う唇は手の甲へと移動し、やがて三澤に拘束されて出来た
痕へ辿り着く。
白い肌に痛々しく残る鬱血痕は所々紫色に変色していて、当分消えそうにない。
それらを労るよう、柊はチュッ、チュッ…とリップ音を響かせ
手首へのキスを繰り返した。
「…三澤がNANAに触ってるのを見た時、一瞬…
奴を殺してやりたいとさえ思った」
「っ…!」
「…同時に、君を欲してる自分にも気付いたんだ」
口付けを止めた彼はNANAを見つめ、切なげに目を細める。
白い頬へと伸びた指先から伝わる熱に男の欲を感じたが、
三澤が襲って来た際に我が身を襲った嫌悪感は無い。
むしろ柊の指先から微かに漂うカモミールの香りを、心地好いとさえ思った。
「…ホント、あなたって好きな子に一途なのね」
「え?」
「……そんな顔されたら…どうにでもしてって言いたくなっちゃう……」
俯いて小さくそう呟くと、頬を撫でていた指先が反応を示し彼の動揺を表す。
形勢逆転かと思い視線だけチラリと移せば、真摯な表情で佇んでいる柊と目が合った。
「…消毒…させてくれないか?アイツに触られた所、全部……」
今時ドラマでも言わないだろう気障な言い回しに、胸の鼓動が高鳴るのは
愛ゆえか。
「……怖い思い出も全部、消してね?」
NANAはほんのり頬を染め、恥じらいながらも頷いた。
───
所謂お姫様抱っこの格好でNANAをダブルサイズの大きなベッドへと運ぶ。
しっかり肩に腕を回してしがみ付いて来る彼女が愛しい。
少し行儀が悪いが、黒のカバーに覆われた布団を足で端に寄せ、
同じく黒で統一したシーツの上へ降ろしてやった。
「…何だか悔しい。ベッドまで良い匂いなんて…」
「昨夜アロマキャンドルを点けてたからかな?匂いが
移っちゃったんだと思うよ」
「私の部屋よりよっぽどお洒落ね」
冗談っぽく普通の会話で誤魔化し、互いに緊張を隠そうとする。
NANAは今回の件で、少なからず男性に対し不信感を抱いているはずだ。
このまま放置すればトラウマになりそうな苦い記憶を全て、
愛で満たし塗り替えてやりたい。
「…俺は君を欲しいと思うけど、絶対に傷付けたくない。もし嫌だと
思う事があれば、我慢しないで言ってくれ。無理強いはしないから」
「うん…ありがとう」
ベッドの端に腰掛け大事な前置きを彼女に伝え、ぐちゃぐちゃになっている布団を折り畳んで邪魔にならないよう足元へ寄せる。
己の上半身を包む白いシャツのボタンを片手で外し、前を肌蹴ながらベッドへ乗り上げた。
結局ベルボーイの制服姿から着替える暇も無く事情聴取を受けた為、
車のトランクに仕舞ってある上着と帽子以外はそのままだ。
どうせならもう少しお洒落な雰囲気を演出したかったが、
糊の利いたシャツの合間から覗く男の肌を見たNANAが、あからさまに
視線を泳がせ狼狽える様を目の当たりにし、これも悪くないか…と思い直す。
「…NANA…」
ベッドに横たわる彼女にゆっくり覆い被さり、長い栗色の髪を指先で梳く。
サラサラとした感触を暫し楽しみ、再び赤く色付く唇に己のそれを重ねた。
これまで何度か交際経験を積み、情事も手慣れた方だと自負しているが
NANAの唇は柊が出会った女性の中でも一際柔らかく魅惑的で、
初体験に胸踊らせる少年のような気持ちにさせてくれる。
「…っん、ふ……」
角度を変えて何度か口唇に吸い付き感触を堪能した後、
息苦しいのか僅かに開いた隙間からすかさず舌を捩じ込み、驚きに震える
NANAの口腔内を貪る。
整った歯列をなぞると、奥に隠れていた彼女の舌を絡め取り深い口吻けを交わしつつ、背中へ腕を回しシフォン素材の女性らしい花柄ワンピースの
ファスナーを下ろした。
「…や、柊……電気、消して…」
「…NANAの姿を良く見たいんだけど…このままじゃダメかな?」
「バカ、恥ずかしいでしょ!」
真っ赤な顔を両手で隠し悪態を吐くNANAを見て笑みを零し、
今回は意地悪するのは止めようと柊は素直に要求を飲み、
一旦ベッドから降りて部屋の明かりを落とす。
すると、窓の外から差し込む月の光が幻想的に彼女を照らし出した。
「こっちの方が良いかもね」
写真に収めたくなる美しい光景に目を細めて呟き、シャツを脱ぎ捨てベッドへ戻る。
柊は廉と正反対で夜目が利く為、照明が薄暗くなろうが全く問題はない。
男の半裸に俯いてしまったNANAを抱き締め、壊れ物を扱う恭しい手付きで
ワンピースを脱がせた。
元々身に付けていた下着も三澤に破られてしまったらしく、
現れたのはNANAのバストサイズに合っていない、窮屈そうなピンクのブラジャー。
小さな布地に収まり切らない胸の谷間が零れ落ちそうで、柊はゴクリと生唾を飲み込んだ。
「…これもRINAさんが用意してくれたんだけど、あんまり合ってないみたい」
「急だったし、NANAのサイズを知らなかったんだろうな。
…俺もちょっとビックリした」
着痩せするタイプなのか、脱がせてみて初めてなかなか豊満なバストだと
気付き、思わぬ喜びを感じて微笑む。
上体を起こし不思議そうに首を傾げるNANAの背に腕を回し、ブラジャーの
ホックを外す。
自分と同じように上半身を生まれたままの姿にし、脱がせた衣服を床へ落とした。
「…っ…あんまり見ないで…」
解放された乳房は重力にも負けず張りを保っており、その二つの頂には
薄紅色の突起が可憐に存在を主張している。
思わず手で胸元を隠そうとするNANAをゆっくりベッドへ押し倒し、
上に覆い被さって穴が開くほど滑らかな肢体を眺めた。
「綺麗だ…」
純粋に思うまま褒め言葉を漏らしたのだが、NANAは胸元までカーッと
肌を紅潮させ外方を向いてしまった。
「…は、恥ずかしい…どうにかなりそう…」
「大丈夫だよ、すぐに恥ずかしいのも気にならなくしてあげる」
耐え難い羞恥と格闘する彼女へサラッと爆弾発言を投げ掛け、
口端を吊り上げる。
呆気に取られて気を抜いたNANAの隙を突き、柔らかそうな乳房へ唇を寄せ
色づく突起に吸い付いた。
「…んっ…、くすぐったい…」
先程までの初な反応からして、どうやらNANAは性交渉の経験がほとんど
無いように見受けられる。
プライドが高い彼女の事、きっと本気で愛する男性にしか肌を許す気に
なれなかったのかも知れない。
それにしても、よく清い身体のまま枕営業を決意したものだ。
柊は改めて、腹を括った女性の強さを感じた気がした。
「これはくすぐったい?」
「ふふ…っ、ダメだわ、笑っちゃう…」
「じゃあ、こうしたらどう?」
何も知らない真っ白なNANAを、己の手で淫靡な世界へ誘う。
そんな魅惑的なこの時間が堪らなく愛しく、楽しくて仕方がない。
柊は彼女が悦ぶ塩梅を確かめるべく胸の突起に軽く歯を立ててみた。
途端、ビクンと細い肢体が揺れる。
「あっ…!」
「…ちょっと強めが好きなのか。覚えておくよ」
曖昧な刺激よりも分かりやすい愛撫を好む傾向にあると分析し、
そのまま乳首を交互に舐めて吸ったり甘噛みを繰り返した。
「ん…、何か…体が熱い…」
気恥ずかしそうに呟いたNANAがモジモジと両足を擦り合わせる。
柊は胸元に愛撫を続けながら、そっと彼女の下肢へ手を伸ばした。
上品な黒レースの下着越しに秘部を撫で上げれば、しっとり湿り気を
帯びているのが分かる。
「ぁっ…」
「…濡れてる。感じやすいんだ…」
「…〜っ、言わないでよ、もう!」
恥ずかしがるNANAをつい苛めたい衝動に駆られるも、ヘソを曲げられては
後々困るので自重し、頬へキスを送りご機嫌を窺う。
「ごめんごめん。あまりにも可愛いから、つい言いたくなって」
「…あなた、絶対ドSでしょ」
「さぁ…それはこれから君が確かめてみたら?」
悔しげにこちらを睨む視線を難無く躱し、柊は長い指を黒レースの下着の
中へ忍ばせていく。
若干潤みを帯びた割れ目に添って指先を動かしてみるが、まだ到底膣内に
異物を挿入出来る程ではない。
一旦指を退け、下着に手を掛け足首まで引き下ろした。
「ひゃ…っ…!」
真っ裸となったNANAがシーツなどで防御してしまう前に、下着を抜き取り
両足を掴んで大きく開かせ股間へ顔を埋める。
抗議の声を聞くより早く、柊はまだ誰にも触れられた事が無いであろう
秘部に、躊躇せず舌を這わせた。
「だ、だめ!!そんなとこ…っぁ、あ…」
当然驚いたNANAは足を閉じて柊から逃れようと試みるが、そんな抵抗の
意思などすぐに攫う自信がある。
尖らせた舌先で肉襞を掻き分け割れ目を舐め上げ、僅かに膨れ始めている
陰核を強く吸った。
「ぁあっ!?…や、そこ…やだぁ…ッ…!」
すると、これまでとは明らかに違う悲鳴にも似た声を上げて身をくねらせる彼女。
いつしか抵抗するのも止め、柊が与える快感に従順になり始めた。
わざと唾液をたっぷり含ませた舌で陰唇を丹念に舐め解し、
ぷっくり充血し膨れた花芯を吸い上げれば膣口からとめどなく愛液が溢れ出す。
シーツまでぐっしょり濡れてしまいそうな量の蜜を啜り、わざと厭らしい
水音を響かせた。
「は、ぁあ…っ、んんッ…柊っ…」
「…そろそろいいかな」
唇を秘部から離して呟き、柊は己の右手人差し指と中指を舐めて潤すと、
濡れそぼったそこへ慎重に挿入してみる。
「っ…、中に…ゆび、が…」
「もし痛かったり、苦しかったらすぐに言って?」
本当は、乱れるNANAの姿に興奮しているし、今すぐにでも彼女と一つに
なりたいくらい股間が熱い。
だが、初めての夜に無茶な真似はするまいと、既にテントを張っている
自身の息子は見ない振りで前戯に集中した。
「…だ、いじょうぶ…みたい…」
「良かった。…最初は怖いかも知れないけど、俺が居るから…
安心して任せてね」
「うん…っ…」
充分に濡れた内部は柊の指をキツく締め付けるが、侵入者を拒むという
よりも寧ろ、奥へ誘うよう蠢いている。
この中に己の欲望を突き立てれば、さぞかし甘い快感が得られるのだろう。
考えただけで全身の血が沸き、無意識に舌舐めずリをしてしまう。
「…柊…っ…ん、今の顔、やらしい…」
「俺よりNANAの方がよっぽどイヤラシイ顔してるよ」
「な、そんな訳な…っぁう!あ、そこは…ッ、ダメだってばぁ…!」
少々変態染みた表情を見られたのが照れ臭く、
膣内へ挿入する指を三本に増やすとバラバラに動かして中を掻き回し、
親指の腹で同時に花芯を刺激し彼女から余裕を奪う。
「ぁ、あ…っ!やだッ、何か、くる…やあッ…!!」
痛がる様子も無いのをいい事に思い切って、微妙に折り曲げ角度を付けた
指を激しく出し入れし敏感な陰核を数回弄れば、
狂ったように叫んだNANAはシーツを掴み足を大きく開いたまま、身体を
小刻みに震わせ軽くイッてしまった。
「…ぁ、あ……」
全身を脱力させぼんやり天井を見つめる彼女の中から指を引き抜く。
物欲しそうにヒクつく膣口を目の当たりにし、柊の我慢も限界を超えた。
無言のままベッド脇の棚の一番上の引き出しを開け、中からコンドームが
入った箱を取り出す。
万が一、いつかお世話になるかも知れないと淡い期待を込め、
美子を好きだった頃に購入しておいた代物だ。
NANAに背を向け箱の封を開け、ベルトを外し素早くスラックスと下着を
脱いで裸になると、立派に反り勃った自身にそれを装着した。
こういう事は、女性に気を遣わせずスマートに行うのが粋というもの。
案の定、余韻に浸りぼうっとしているNANAは柊の一連の動きに気付いていない。
安堵の息を吐きながら振り向き、さりげなく箱を元の場所へ仕舞ってか
再び彼女の上に戻る。
うっすら汗ばんだ頬や額に口付け、優しく笑んで頭を撫でた。
「もうちょっと頑張れそう?」
「……うん……私を、あなたのものにして…」
挿入してしまう前に今一度理性を総動員してNANAの身体を気遣ってみたが、
掠れた声で囁かれた台詞に、目眩すら覚えるほど興奮が高まる。
「…っ…力、抜いてて…」
両膝を持ちM字型に開脚させると、下腹に付くほど硬く勃起した性器を
潤み切った秘部へ押し当て、グッと腰を進める。
「ひっ…ぁ、う…!」
経験を積んだ女性とは比べ物にならない抵抗感がある膣内。
息を詰め、キツく締まる内壁を緩慢な動きで貫いていき、一際狭い部分も
越えて奥深くまで挿入を果たした。
「…っは……、全部入ったよ…痛くない…?」
「ん…っ…、思ったより、大丈夫…かも…」
「…NANAの体も、俺を受け入れてくれたのかな」
前戯にたっぷり時間を割いたのが成功したのか、NANAは目尻に生理的な
涙を浮かべつつ柊に微笑んで見せる。
チラリと結合部を窺うと、処女の証である鮮血が微量ながら滲んでいた。
多少の痛みはあるだろうに、それを感じさせまいとする彼女の健気さが
柊の胸を打つ。
「…好きだよ、NANA…」
「……私も…好き…」
めちゃくちゃに中を暴きたい欲も確かにあるが、それ以上にNANAへの
想いで満たされる心。
こんなにも、一つになれた喜びを噛み締めるセックスは初めてだった。
「動いても大丈夫…?」
深呼吸で痛みと圧迫感をやり過ごそうとしているNANAには酷だが、
このままじっとしている訳にもいかず尋ねる。
「ん…、平気…」
了解を得た柊はゆるゆると腰を揺らして熱い体内へ性器の抽挿を開始した。
愛液で満たされる肉襞の温かさと強弱ある締まり具合に、
感嘆の溜め息が漏れる。
「ぁ…、う…んっ、柊……」
「NANA…ッ…」
互いに名を呼び、抱き締め合って繋がる喜びを共有する。
心から柊を受け入れようとしてくれているNANAの様子も、
徐々に変化していった。
挿入時は時折、顔を強張らせ痛みに耐えつつ笑みを作っていたが、
大分慣れて来たのか腰の律動と共に零れる喘ぎが艶っぽく木霊する。
「はぁ…ん、あ……っ…」
腰を引いて性器を抜き掛けると収縮は弱まり、また奥まで中を突けば
離すまいと絡み付く。
名器と呼ぶに相応しい膣内のうねりに、己の息が上がるのが分かる。
普段はそれほど早い方ではないが、このままではすぐに
放ってしまいそうで…。
彼女を終始優しくリードしたいとの決意は見事に崩壊した。
「…っ…、ごめ…我慢出来ない…ッ…」
NANAの括れた細い腰をガシッと両手で掴み、柊を誘惑して病まない肉壁を
夢中で突き上げる。
「ひ、ぁあ!んっ、ぁ…激し…っぁう!ぁ…あ…ッ…」
肌がぶつかり合う激しいピストンに、NANAは首をのけ反らせひっきりなしに鳴く。
腰を振る度、ぷるんと揺れる乳房にむしゃぶりつき柔肌を強く吸って
胸元にいくつも赤い痕を刻んだ。
「…っは、…も…出そ…ッ…」
「んぁっ、…あ!柊…ッ…わたし、…もう…だめぇ…っ!」
快楽の波に飲まれ、泣き叫ぶ彼女。
己の手によって淫らに染まり、蕾から満開の華を咲かせていく美しい身体を
舐め回すよう見つめ、はち切れんばかりに硬く勃起し脈打つ肉棒で
最奥を叩く。
「…っぁああ!!」
「……っく……!」
NANAはいつの間にか柊の腰に脚を巻き付けており、そのまま全身を
痙攣させて達した。
膣内もその衝撃に連動し銜え込んだ性器を強烈に締め付ける。
柊は彼女とほぼ同時に絶頂を迎え、太股と臀部を震わせ何度か腰を
打ち付けながら、火照った中へドクドクと大量の精液を注ぎ込んだ。
「…はぁ……は…、熱い…」
「…っ…ん……」
全て搾り取ってやろうと言わんばかりに蠢く内壁に促され、
射精を終えた柊はNANAを強く抱き締め耳元で荒い呼吸を繰り返す。
暫し二人、一言も話さずただ肌を重ねた状態で、
この上ない幸福を噛み締めた。
「……NANA…大丈夫?」
「…ん…柊、は…気持ち良かった…?」
「…あぁ、すごく良かった。
こんなに幸せだと思ったのは生まれて初めてだよ…」
呼吸が整った所で顔を上げ、気怠げな表情のNANAから問われた言葉に、
満面の笑みと素直な答えを返す。
彼女もようやく嬉しそうな、はにかんだ笑顔を柊へ向けた。
「…柊…大好きよ」
己の首元へ腕を回し、キスをせがむNANAの可愛らしさに頬が
緩みっぱなしになるのを抑えられず、唇を啄む軽めの口付けを何度も交わす。
ふと、その時…体勢がズレた所為か下半身に何となく違和感を覚えた。
キスを中断し、不思議がる彼女の頭を撫でてからゆっくり身体を離す。
結合部から萎えた性器を引き抜くと…。
「…嘘だろ…」
先端部が破れ根本に申し訳程度で絡み付いているコンドームの残骸が現れた後、
膣口からは逆流した大量の白濁液が溢れ出した。
黒いシーツの上に染みを作ってしまったそれを眺め、柊は呆然と座り込んだ。
「こんな簡単に破れるなんて……」
初めてのセックスを最高の思い出にしてあげたい一心で、スマートに避妊し彼女に余計な
気遣いをさせまいとしたが、まさかその避妊具が不良品だったとは。
NANAにどう詫びれば良いかも分からず項垂れた柊の耳に、
あっけらかんとした声が届いた。
「あ、気にしないでね?私ならちゃんと避妊してるし」
「…は?」
「ピルで排卵をコントロールしてるの。生理痛で仕事が大変な時があったから。
まぁ、プロとして当然よね」
何と、柊がいちいち気にするまでもなく、NANAはとっくに避妊の準備を
していたのだという。
確かに考えてみれば、枕営業をするなら予め自ら対策をしておくのが
安全だろう。
相手の男が避妊具の装着を拒む可能性もあるのだから。
先程までのしおらしさは何処へやら、セックス直後の余韻も覚め遣らぬ中で
サラリと言ってのけたNANAが、デートの会計をいつの間にか済ませている
男前な男性の姿とダブって見えた。
しかし、そんなしたたかな面すらも可愛いと思ってしまうあたり、
柊も重症である。
「…そうか……驚かせて悪かったね、本当に…ごめん」
一人で焦り格好悪い姿を晒したショックを引き摺りつつ、コンドームの残骸を
ベッド下のゴミ箱へ捨て、とにかく謝罪する。
「ふふ、謝らないで?すごく嬉しかったわ。
柊がそんなにも私を大事に思ってくれてるんだなー…って」
だが、失敗したとは言えキチンと避妊をしようとした柊の真摯な態度に、
彼女はますます惚れ直したと言ってくれた。
照れ臭くなり、赤らんだ頬を見られないよう隣に寝転び、胸元へ
NANAの頭を抱き寄せる。
「わっ…ちょっと、柊…苦しい!」
「……もし…万が一の事があっても、俺は君を離さない。
…NANAは俺の、一番大切な星だ…」
突然の抱擁に冗談っぽく笑いながら文句を垂れたNANAへ、真剣な想いを
口にした。
例え何があっても、手離すつもりは無いと。
窓の外に煌めく星空を見上げ、彼女の方が美しいと本気で感じ、
咄嗟に出た台詞だった。
あの日、庭園で星のイヤリングを探した夜から、
運命は決まっていたのかも知れない。
柊はようやく、自分だけの星を掴まえたのだ。
NANAという、素晴らしい星を。
「…あら、失礼ね。私は星なんかじゃないわ」
「え?」
「これからは…そうね、太陽になって、星よりずーっと明るく
あなたを照らしてあげる!」
ついロマンチックな想像に耽っていた柊に負けじと、NANAは自身を
光輝く太陽に喩えてみせた。
胸元から頭を上げ、自信に満ちた笑顔を覗かせる彼女につられ、破顔する。
「それは…すごく楽しみだな」
「でしょ?約束するわ」
肩を揺らし愉しげに笑うNANAと額同士をくっ付け、柊は晴れやかな
気持ちで囁いた。
「…期待してるよ、俺の太陽さん?」
今回は以上です。
優しくて、ちょっと意地悪だけど大事な時に失敗してしまうヘタレな
柊さんも可愛いかな〜なんて思って、色々詰め込んでみましたw
次回の更新を最終回にしようと思います。
長々と続けてしまってすみません。近い内にまた来ます。
>>421 うおお、原始女性は太陽だったから!NANAちゃんは太陽だ!
うう、柊さん幸せでよかった…
NANAちゃんも幸せでよかった…
お互いうまくいかない恋をしたあとだから、幸せになってほしいよ…
GJでした、最終回も楽しみにしております
うわ!昨夜催促したらもう来てたーw
すごく良かったです
手首の拘束痕へのキスにそうそうコレコレと萌えました
最終回楽しみにしてます
柊さんが生唾飲み込む様子を想像できるww
最終話たのしみにしてます!
380です。美男×NANAの続きを投下します
エロありです
今までの投下分
前スレ
372-377
現行スレ
247-252
374-379
「ねえ、早く早く」
濡れた身体を拭くのもそこそこにベッドに直行してNANAを待った。
「ちょっと待ってて。すぐ行くわ」
NANAが肌の手入れを終えてまとめていた髪をほどき、軽やかな足取りでベッドへ駆け寄る。
バスローブを脱ぎ捨てて冷たいシーツの間に滑り込むと、今にもとろけそうな笑顔で美男に抱きついた。
「み・お」
NANAが美男の頬にキスをする。
「み〜おっ」
頬に、額に、唇に、名前を呼びながら次々とキスの雨を降らせていく。
「ちょ…どうしたのNANA、テンション高くない?」
「だって、やっと本当の美男に会えてうれしいんだもん!」
すかさず美男の唇にもう一度「んーーーーっ」と長いキスをして、チュッと音を響かせて唇を離す。
「はしゃいだらダメ?」
大きな瞳。甘えた声。上気した頬。濡れた唇。
もう、何もかもが可愛すぎて、愛おしすぎて、胸が苦しい。
「ダメなもんか。うれしいよ」
NANAの温かい身体を腕の中にギュッと包み込んで、幸せを思いっきり噛みしめた。
シャワーを浴びたばかりの素肌はまだ水分を蓄えていて、しっとりと吸い付くようで気持ちいい。
「美男の心臓、ドキドキしてるね」
「うん」
「私も…。今すごくドキドキしてる」
「うん、ホントだ」
「美男……」
「ん?」
「もう、好きにしていいよ…」
強烈に甘ったるい囁き声が頭の中に充満して、脳味噌がとろけそうになった。
長い髪を耳元からかきあげて、そっと唇を重ねる。
「ん…」
瞳が潤み始め、指を絡ませた手を握る力が強くなったら、それは感じ始めたサイン。
薄く開いた唇に舌を差し込み、ねっとりと絡ませる。
ぴちゃぴちゃと響く水音がNANAの中に埋もれている淫らな気持ちを目覚めさせていく。
「ん…美男…ぁ…はっ」
身体を密着させて脚を絡ませ、首筋を舌先で微かになぞる。
「…っ」
NANAが息を詰めたまま身震いして、シーツをギュッと握りしめる。
我慢する姿も色っぽくてなかなかいいんだけど…。
耳朶を甘噛みして、可愛らしく立ち上がった乳首をキュッとつまんだ。
「あんっ」
高い声を上げて掴んでいたシーツを離す。
「可愛い…。もっと聞かせてよ」
キスをしながら右の手のひらで乳房を包み込み、下から持ち上げるようにやんわりと円を描く。
ボリュームはあるけれど大きすぎなくて、きれいな形をした胸。
揉みしだいている時のむにゅっとした手応えがたまらなく気持ちいい。
右手で乳房を揉みながらもう片方の乳首を口に含み、舌でクニクニと転がした。
「あ…ふぅん、んっ」
NANAが脚をくねらせて切なそうに喘ぐ。
「やっぱ胸弱いんだ」
ピンと尖った先端を舌先でツンツンとつついたり、ざらりとした表面で舐め上げる。
「やっ、美男…やだ…ああんっ」
肌が薄紅色に染まり、悶える姿がいっそう艶やかに輝きをたたえていった。
NANAの上半身を抱き起こし、枕をクッション代わりに挟んでヘッドボードに背中を押しつけた。
その隣に向き合って座り、唇を貪りながら太腿に指を這わせる。
膝から内腿の付け根までを、やさしく、ゆっくりと行ったり来たり。
そこにたどり着きそうになっては逃げていく指先にNANAが焦れてきた。
「美男、違うの…。もっと…」
「もっと、なに?」
「もっと…気持ちいいとこ触って…」
「NANAの気持ちいいとこ?どこだかわかんないよ」
「ん、焦らさないで…お願い…」
「…ここかな?」
くちゅっ
「あっ…ん、んっ!」
「…正解」
トロトロと溢れ出てくる蜜を塗り広げて、入口から小さな突起まで、中指で襞を上下になぞってやわらかくほぐす。
NANAが声を上げるたびに手のひらがぬるぬると生温かく濡れていく。
乳首を口に含み、同時に親指でクリトリスを押さえて円を描いた。
「はあんっ!」
激しい快感がNANAを襲い、首をのけぞらせる。
NANAの膝を立てて外に開き、脚の間に移動した。
テラテラと濡れて光る脚の付け根に顔を近づけ、丸見えになった入口から中指をぬぷっと差し込んだ。
「や…んぁっ…」
中で指を動かすとくちゅっと卑猥な音が耳元で聞こえてくる。
「めちゃくちゃ濡れてる…」
内腿に舌を這わせながら、中を探る指を増やした。
閉じようとする脚を押し開き、温かくヌルヌルとまとわりついてくる壁をこすり上げる。
次々とこみ上げてくる波をやり過ごすように、NANAは頭を左右に振って切なそうに眉根を寄せていた。
「はぁっ、んっんっ…んっ」
再び胸への愛撫を加え、指を曲げて上の襞をリズミカルに刺激する。
美男の肩を掴む力が次第に強くなっていった。
指を細かく動かし続けるとNANAの声が高くなり、やがて大きな声をあげた。
「あんっ!あ、あ…やぁっ!美男っ!」
NANAが背中をビクッとのけぞらせ、そして徐々に脱力していった。
「はぁっ……ぁ…ぁっ……」
喘ぎは続く。
指を入れたままじっとしていると、中がヒクヒクと痙攣して指を締め続ける。
胸が大きく上下している。苦しげな呼吸が整うまでには少し時間が掛かりそうだった。
美男は固く立ち上がったものに素早くゴムを着けた。
NANAの向かいに胡座をかき、後ろに手をついて座る。
「おいで。少し休もう」
NANAはうつろな目のまま、魔法を掛けられたように美男の上に跨がる。
自らの手で美男のペニスを握り、中心に導いてゆっくり腰を沈めた。
「あっあっ…」
じわじわと貫かれていく感覚にNANAがまた声を震わせる。
奥まで飲み込まれたのを確認すると、美男は身体を起こしてNANAを抱きしめる。
NANAの脚が美男の腰に絡みついた。
抱き合ったまま小さくゆらゆらと揺れていると、NANAが少しずつ落ち着きを取り戻してきた。
まるで子供みたいだな…。そう思いながら頭を撫で、背中をさする。
こみあげるような激しい快感はないけれど、NANAと繋がっているだけで幸せで、頭も身体も心地よかった。
「美男…優しいね」
静かな囁き声が鼓膜をくすぐる。
「NANAに褒められるなんて怖いな」
「なに言ってるのよ…」
冗談めかした答えにNANAがクスッと笑う。なのに、彼女の目はどこか不安そうだった。
「幸せすぎて怖いなんてこと、本当にあるのね」
「怖い?どうして」
「あっという間に、消えてなくなっちゃいそうだから…」
背中に回された腕はまさにしがみつくという表現がぴったりで、微かに震えていた。
「美男が好き…好きなの。お願い、ずっとそばにいて」
「もちろん…絶対に離さないよ」
柔らかくて、少し頼りない身体を力強く抱きしめる。大丈夫。だいじょうぶだから。そう囁いて髪を撫でる。
NANAは美男の肩に頭を預けて安心したように目を閉じ、静かに息を吐いた。
穏やかな快感の波間を漂っているうちに、NANAがゆるやかに腰をくねらせ始めた。
「ん…美男…なんだかヘンになってきちゃった…」
吐息が熱くなり始めている。
NANAの動きに合わせてゆっくりと突き上げるように腰を動かすと、ゾクゾクするような感覚がすぐに蘇ってきた。
「NANA、もう止めないけど…いい?」
柔らかく押し付けてきた唇が、彼女の答えだった。
NANAを押し倒して横を向かせる。
上の脚をすくい上げて大きく開き、ゆっくりと、奥に押し付けるように突き上げる。
「あっ…みお、すご…ぁあんっ!」
わずかな摩擦でも、NANAの淫らな気持ちに火を点けるには十分だった。
NANAはいつもとは違う角度に敏感に反応した。
腰をうねらせて押し上げるたびに内壁がキュッと美男を締めつける。
「んっ、あ、あっ、やぁっ!」
喘ぎ声が大きくなってきたところでわざと身体を離した。
今日は何度も焦らされたんだ。
せっかくひとつになれたのに、NANAを1人だけイカせたりなんてするもんか。
NANAの身体をうつ伏せにする。
上にぴったり重なって、そのまま後ろからグッと挿入した。
「はあんっ」
NANAの脚が開かないように自分の脚で挟み込んで腰を動かす。
肌がぴったりと密着して、淫靡な気持ちが高まっていく。
狭い隙間で粘膜を擦り合わせるとぐちゅぐちゅと音を立てた。
「はぁっ…ぁ、みお…もう…んんっ」
NANAが限界に近づいていた。
「待って、まだ、もう少し…」
追いつめられてすぐにでも吐き出したい気持ちとは裏腹に、少しでも長くNANAを感じていたくて。
残り少ない理性を働かせて動きを緩めた。
「ぁ…いや、もっと…もっとして」
イキそうでイケないもどかしさにNANAが乱れる。
それはもう美男も同じだった。
NANAを仰向けにして脚を開き、すぐに貫き通した。
ベッドをギシギシと軋ませて互いの腰をうねらせる。
「あっ、あっあっ!…ぁんっ!」
喘ぎ声が止まらなくなったNANAの口をキスで塞ぐ。
「んっ!…ん…っっ」
くぐもった声がいっそう淫らに部屋中を満たして美男のものを漲らせる。
「NANA…いくよ」
腰を激しく打ちつけるうちに理性も何もかも吹っ飛んだ。
繋がったところがとろけていくようで、頭の中が真っ白になった。
「…んっ、みぉっ!んぁんっ!あああっ!」
「うっ…く、NANAっ!」
NANAの背中が仰け反り、中で美男をきつく締め付ける。
それと同時に美男もあふれる欲望を吐き出し、ふたりで絶頂に達した。
―
「美男、起きて。早く支度しないと馬淵さんが来ちゃうよ」
「んー…」
目を開ける。飛び込んできたのは女の子のやさしい笑顔…NANAだ。
「…おはよ。朝から可愛いね…」
「ふふ、ありがと。ほら、早くシャワー浴びてきて」
朝イチでいいもの見た、なんて思いながら寝不足な目をこすり、バスルームへ向かった。
シャワーを浴びてまた女の子の服に着替えた。
ソファに座り、NANAにメイクをしてもらう。
「美男、ありがとね。私のワガママに付き合ってくれて」
「いいよ。初めてデートできて楽しかったし」
ファンデーションとチーク。肌がなめらかになり、顔色が明るくなった。
「ね、社長にいいって言われたら、いっぱいデートしようね」
「そうだね。あーあ、でもそれまでお預けか〜。俺、耐えられるのかな…」
アイラインとシャドウを重ねると目がパッチリと大きくなった。ブラシとチップの感触がこそばゆい。
「ねぇ…もしガマンできなくなっちゃったら、また昨日みたいにデートしてくれる?」
NANAが鏡越しにメイクを確認しながら、甘えた声でねだる。
「いいけど…でも何度も女装したら俺、トオルみたいになっちゃうよ?」
「えっ?!やだっ…」
冗談のつもりで言ったのに、NANAに思いっきり引かれまくった。
「…え?ちょ、ちょっと待って…」
あたふたする美男の顔を見て、NANAがクスクスと笑う。
「わかってるわよ。『う、嘘だよNANA!冗談だ!』でしょ?もう、ホントに可愛いんだから」
「もー、真似するなよ。ムカつく…」
「ほらぁ、ムッとしないの。綺麗な顔が台無しよ」
NANAにマスカラを塗ってもらって、目をしばたたかせる。
長くなった睫毛がパサパサするのはどうも慣れなくて変な気分だ。
「ん、いい感じ。あとは口紅だけね」
NANAが口紅とリップブラシを手に取った。
「そうだ、ちょっと待って…」
「え?」
口紅を塗る前に、NANAの顔を引き寄せて唇を塞いだ。
「やっぱり…美男のキスって気持ちいい」
「そう?じゃ、お言葉に甘えて…」
完全に女の子に変身してしまう前に、NANAといっぱい、何度も何度もキスをする。
NANAの首に光る赤いハートが、キスマークのように浮かんでいた。
以上で終わりです!
長々とお付き合いありがとうございました
ラブラブで、甘々で、ベタベタなバカップル。自分で書いといて何ですが、嫌いじゃないですw
ワオー!リアルタイムで読んじゃった
超GJです!!
昨日の柊NANAと言い、今夜の美男NANAといい最高に可愛いw
>>421 柊NANAの職人様、待ってましたー!素敵ー!!GJ!
ゴム破れてた時にオロオロする柊さんが面白かったですw
クサイ台詞言うのもイイw
最終話もものすごく楽しみです!
>>433 ベタベタでかわゆいー!虫歯になりそうなくらい甘いっwGJです!
具体的な体位変換の描写とかしっかりしててエロ萌えました。
またぜひこのカプでも書いてくださいね!
NANAちゃん好きにはたまらない1日でした…
柊NANA職人様と美男NANA職人様にがっつし感想書いたのに間違えてゴミ箱をタップしてしまったorz
もう眠すぎるので後日改めて感想書きにきます。
お二方、いつも萌えをありがとうございます…(*´д`*)
>>433 かわいいかわいい!
こっちのNANAちゃんも本当にかわいいです〜
美男もかわいい!
そしてエロいい〜。ベタ甘万歳!
超GJでした!ありがとうございました!
>>433 美男NANAキター!!GJ!!可愛すぎるこの二人!幸せいっぱいごちそうさまでしたw
そしてDT柊さんシリーズの柊美子・金沢編を全裸で待機中。気長に待ちます!
>>433 NANA美男ありがとー☆
ビジュアル的には百合萌えもあって2倍美味しいw
柊さんの年の差婚も結構早く実現しそうだな。
廉×美子投下させてください。
一応エロあり。美子がアフリカから帰ってきて3ヵ月後の話です。
「え、24の夜も25も仕事入ってないのー?ひさしぶりじゃん、そんなの!」
勇気が声を上げる。馬渕はその声に満足したようにばちっとウィンクし、答えた。
「24は夕方までは入ってるよ。でも押しそうにないから16時前には終わるな。
今年のクリスマス特番は前撮りだし、当日はたまたま空いたんだ。
ま、俺からのクリスマスプレゼントってことで?」
大仰に肩をそびやかして見せる。
「"たまたま"だったら、馬渕さんからの、じゃないんじゃ…」
柊がこっそり突っ込んだが、馬渕は聞こえないふりをする。
「だから、みんなハッピーメリークリスマース!だ!」
「テンション高いなー馬渕さんは。俺マジうらやましい、そのテンション」
という美男の突っ込みも無視し、馬渕は一人でジングルベルを歌いつつ、くるくる回った。
勇気が黙って一人ニヤニヤしていた廉に声をかける。
「だってさー。いい夢見ろよ!ってやつだよ、廉さん。美子誘わないとねー」
廉は予想通り真っ赤になり叫んだ。
「アホか!おまえがいい夢見てればいいだろ!」
「あーはいはい、幸せな人に言われたくありませーん」
「おい、勇気!おまえなぁ!」
ここ最近すっかり勇気に遊ばれている廉は、真っ赤なまま勇気に食って掛かった。
そんな廉を見ながら笑う勇気と微笑む柊。
美男も笑いつつ、ひとりどこか考え込む目をしていた。
それが1ヶ月前。
美子がアフリカから帰ってきて3ヶ月。明日は12月24日。
初めてのクリスマスイブを二人で過ごせることに廉は喜びを感じていた。
本人はクールなふうを装っているつもりだが幸せオーラはだだ漏れで、
それが勇気あたりのからかいの種になっている。
しかし、それすらも気にならないほど廉は幸せだった。
「廉、明日泊まってくんの?」
美子からの電話を待ちつつリビングのソファに座っていた廉に、美男が声をかけた。
直接的に聞かれ、廉は首筋が赤くなる。
べつに泊まってくること自体は初めてなわけでもなく、これまでも何度もあった。
隠しているわけでもないし、赤くなる必要もないのだが、やはりなんとなく気恥ずかしい。
「…そのつもりだけど」
照れ隠しに必要以上にぶっきらぼうに答える。
美男はそのこと自体はいつものことなので気にしたふうでもなかったが、何か言いたげにしている。
「なんだよ」
さすがの廉も美男の様子に気がつき、問いかけた。
美男は言おうか言うまいか悩むといった態で、ちょっと困ったように小首をかしげる。
その様子は美子にそっくりで、廉は余計に気にかかる。
「美男、言いたいことがあるなら言えよ」
「明日…、クリスマスイブ、だろ」
美男が思い切ったように言った。
「あいつ…、基本今までクリスマスにミサ以外の過ごし方したことないんだよ」
廉は、はっとする。
「あ、子どもの時は別だけどな。
でも施設に入ったあとはクリスマス会もやるけどお祈りさせられてたし、
あいつは中学に入ってからは修道院に基本を置いてたから、ずっとイブは深夜ミサに出てたんだ。
俺は普通に寝てたけどさ…」
美男は頭をかいた。自分でも何が言いたいのかよくわからなくなってきたらしい。
「ごめん、変なこと言った。でもさ、クリスマスってのはたぶん美子にとってはそういうものなんだ。
だから、ちょっと普通の女の感覚と違うかもしれない。それをわかってやってほしくてさ…」
廉は黙り込んだ。わかった、と返事をするべきなのだろうが、できなかった。
あ、でも、絶対おまえと過ごせてうれしいと思ってると思う、あいつおまえのことしか考えてないから!
などと言い足した美男の言葉は、ほとんど耳に入っていなかった。
部屋に戻り、ベッドに横たわった廉は考える。
クリスマス。
ずっと誕生日も嫌いだったが、クリスマスも嫌いだった。
楽しかった思い出などほとんどない。
自分が生まれた日を喜べない誕生日と、街中が楽しげに輝いている中ひとり取り残されるクリスマスと。
どっちがましだったかと聞かれたら、どっちもかわらねーよと答えるしかない。
仕事を始めてからのほうが、やることがある分だけよっぽどましだった。
2年前。誕生日に自分は思いを自覚した。初めて誕生日が特別なものに思えた。
その2年の間にクリスマスは2度来たけれど、美子はアフリカに行っていたし、
仕事が入っていたから今までどおりに過ごしただけだった。
今年は、二人で過ごす初めてのクリスマスだ。
けれど。クリスマスの本来の意味など考えたことがなかった。
世間一般のイメージしかない。
…美子にとっては?美子のクリスマスは?
ふと、今日の美子の予定を思い出す。
…子どもたち向けのクリスマスミサの手伝いに行くって言ってた…。
自分は仕事だったから、気にしていなかったけれど。
からだを起こし、ブタウサギのぬいぐるみを見つめる。その横に置いた、小さな箱も。
「おまえのクリスマスって、どんなだよ…」
ブタウサギがちょっと小首をかしげたように見えた。
「そうやってごまかすなよ…わかんねえよ…」
廉は誰にともなくひとりごちる。
翌日。
廉はメンバーと一緒に夕方までの仕事をこなす。
勇気はあいかわらず廉をからかいたくて仕方がないようだったが、廉の様子がおかしいのが気にかかった。
「ねえ、なんで廉さんあんなに暗いの?昨日までご機嫌だったじゃない?」
こそこそと柊に耳打ちをする。柊も声を潜め、首を傾げる。
「さあ…よくわからないな、昨夜美子と電話してた時もなんだかおかしかったみたいだったけど」
「…柊さん、もしかして廉さんの電話、聞いてたの?」
じーっと勇気が柊を見つめる。柊は少し慌てたように言った。
「聞こえたんだよ、リビングで話してたから。
そのこと自体が珍しいだろ、普段なら絶対部屋に戻ってから電話するのに」
「…確かに。廉さんらしくないね。どうしたんだろう」
仕事を終え、廉は美子と待ち合わせたレストランに向かう。
しかし何か心に引っかかるものを感じたままだった。
勇気も柊もなにか言いたげだったが、気がつかないふりをした。
美男とは目が合わせられなかった。
自分の小心さが嫌になる。
後悔していないだろうか。美子は。
シスターになるという夢を捨てたことを。
クリスマスという聖なる夜に、そのことを思い出さないだろうか。
待ち合わせの時間よりも早くついてしまった。
それでも、頭の中はそんな言葉がぐるぐるしている。
美男がそんなつもりで言ったのではないことはわかっているのに…。
美子が自分を思ってくれているのはわかっているつもりなのに…。
どうして俺は、美子のことになると冷静でいられないのか。
わかっていた。
慣れていないからだ。愛することにも、愛されることにも。
待ち合わせたホテルのレストランで、廉はあらわれた美子に驚く。
ブルーグレイのマーメイドラインのワンピースにボレロを羽織った美子は
見たこともないほど大人っぽい。
2年の間に伸びた髪をもてあそぶことにももう慣れたつもりだったけれど、
その髪をハーフアップにしたうなじは思わずどきりとするほど色っぽかった。
悩んでいたことが一瞬吹き飛ぶほど、美しい。
「お待たせしました、廉さん」
そう言ってはにかんだように微笑む美子に思わず見とれる。
「…あ…、いや、そうでもない、俺も今来たから」
口ごもる廉に、美子が不安そうにたずねた。
「どうかしましたか…?」
おまえについ見とれて…とも言えず、ことさらに真顔で言う。
「いや、なんか雰囲気違うな、と思って」
「に、似合わないですか?」
あわあわとする美子はいつもの美子なのだけれど…。
「そんなことない。けど、そのワンピース、自分で選んだのか?」
RINAあたりのセンスにしても珍しいような…などと思っていると、
美子がなぜか若干口ごもりつつ答えた。
「これは…あの…。水沢麗子さんからいただいて…」
「…はぁ?」
廉の眉が寄る。悩んでいたことも忘れ、ふと思い出す。
「そういや、おまえ、あの人とメル友なんだよな…」
「メ、メル友ってわけじゃないですけど!」
いつの間にアドレスを交換したものやら、突然妙に自慢げな顔で
「美子ちゃんはメールも素直で可愛いわよねえ、あなたとは大違い」などと
いわれたときの脱力感を思い出した。
…つーか、いつの間に"ちゃん"呼ばわりだよ、などと突っ込んだところで
こたえる人ではないので、黙っていたが…。
渋い顔で廉が言う。
「しょっちゅうメール寄越すだろ、あの人。迷惑だったらほっといていいぞ」
「迷惑だなんて、そんな…。このワンピースだって、絶対似合うと思ったの、っておっしゃって…」
はあああああ、と廉は盛大にため息をついた。
「俺があんまり返事しないから、ちゃんと返事寄越すおまえに甘えてんだよ、あの人は。
可愛い娘ができたつもりででもいるんじゃねーか、あれは」
と、自分で言ってから"可愛い娘"という言葉の意味を自分で深読みし恥ずかしくなる。
「でも、私もメールいただいて、うれしいですし…」
などと答える美子の言葉は半分耳に入っていない。
いや、そりゃまあ、俺が一応息子なわけだから…、娘、といえないことも…、ない、か…?
つうか、それって、つまり…。あ、いやいや、何の話だ。
頭の中で自己ツッコミをしながら一人でくるくる表情を変え、しまいには真っ赤になった廉を見て、
美子が小首をかしげた。
「廉さん、どうかしましたか?」
「あ、いや…ま、まあ、おまえがいいなら俺はいいんだけど」
強引に話を切り上げる。
「クリスマスにでも着てね、っておっしゃってました」
どこの世界に息子の彼女にそんなことを言って洋服を贈る母親がいるんだ、とも思うし、
逆にそれを素直に着るのも美子らしい、とも思うが。
…いいのか、おまえはそれで。そういうクリスマスで、本当にいいのか?
また胸が苦しくなる。
けれど「似合ってますか?」と微笑む美子は確実に美しく、
ただ見とれることしかできない廉は、とりあえず母親のセンスを認めざるを得なかった。
「廉さん、いつもと変わりないですよね?何も、ないですよね?」
食事を終え、部屋に入った。突然、ぽつんと美子がいう。
言われた意味がわからず、廉は眉を寄せた。
「なんだか、昨日ちょっと変だったから…。今日もなんだか…変だし…」
廉はどきりとする。
見透かされていたことに少し驚きながら、口に出してはこう答える。
「変?俺が?…なんで」
「…なんで、って言われても…うまく言えないんですが…」
一瞬目を伏せ、じっと見つめられる。そのまっすぐ瞳に、廉は息が苦しくなる。
「いいのか?って、言いましたよね?今日、予定通りでいいのかって」
確かに言った。昨日の夜、電話をした時に。今日の予定はそのままでいいのかと。
クリスマスイブの夜、本当に自分と過ごしていいのか、と。
美男と話したあと美子から来た電話で、思わず口に出た言葉だった。
「あれ、どういう意味だったのかなあ、って…」
「…そんなこと言ったか」
思わずごまかそうとする。自分らしくないのは承知の上だ。
「言いました。…それで、もし、廉さんが何か誤解してるなら…」
美子が廉の手を握る。美子の手は震えていた。
「私は、廉さんのそばにいられることが幸せです。それ以上の幸せはないんです。だから…」
廉は震える手を握り返す。美子を不安にさせてどうするのか。
自分の不安で美子にこんな顔をさせるのか。
ひとつ深呼吸をする。
「おまえ、さ…」
言いかけて、言いづらくて、廉は語尾を弱める。
「おまえ、後悔してないか」
美子ははっきりと戸惑った表情を見せた。何を言われているのかわからない、といった顔。
「何を、ですか?」
「おまえ、シスターになりたかったんだろ。
アフリカ行ったのだって、シスターの、なんか勤めみたいなやつみたいなもんだろ。
今日だって…。ほんとは、ミサとか行きたかったんじゃないかって…」
言ってから、後悔した。
これじゃ何を言いたいのかわからないし、まるで美子を責めているようだ。
「い、いや、そんなことをちょっと思っただけだ。だから、あんなことを…」
言いかけた廉を美子はぎゅっと抱きしめた。廉は目を見開く。
「廉さん、廉さん…」
「なんだよ…」
「何度でも言いますけど、よく聞いてくださいね」
なんだそれ。突っ込もうかと思ったが、黙り込む。
「私は、廉さんのそばにいるのが幸せです。
私のなすべきことは、廉さんのそばで、廉さんを愛することです。
それが、神様が私にお与えになった運命です。自分で選んだ道です。
廉さんのことが大好きだから…。
だから、一度だって後悔なんかしたことないし、これからだってしませんよ。
廉さんが迷惑だと思わないでくれるなら、私はずっと廉さんと一緒にいたいです」
廉さんが不安なら、何度でも言ってあげます。と美子が耳元でささやく。
「私は、もう廉さんをひとりにしたくない…」
「美子…」
「それに、私もひとりになりたくないです」
美子はさらに腕に力を込めた。からだから、自分の気持ちが伝わるといい、と思った。
「今日はクリスマスイブですよ?一緒に幸せな気持ちになってくれなくちゃ困ります」
美子に抱きしめられ、廉は息が詰まりそうだった。
さっきとは違った苦しさ。幸せすぎて。
「俺、多分、不安なんだ。こういうの、慣れてねぇから」
ぽつんと廉がつぶやく。
「いまだに、おまえがそばにいてくれるのが現実なのか信じられなくて、不安になる」
「廉さん…」
いつもの強がりをかなぐり捨てたような廉の言葉に、美子は胸を打たれる。
「でも、おまえがそう言うなら、大丈夫だな」
「そうですよ、信じてください」
そっと美子の腕をほどき、顔を見つめた。頬に手を触れる。
「…キス、していいか?」
美子は目を見開き、真っ赤になる。
「そんなこと…いつも聞かないじゃないですか…」
「だめか」
ぶんぶんぶん、と真っ赤な顔のまま美子は首を振った。ぎゅっと目をつぶり、つぶやく。
「キス…してください…」
廉はうれしそうに微笑んで、美子に口付けた。
そっと優しく触れて、唇を吸った。
美子の唇を、美子自身を自分で確かめたくて、廉はゆっくりとその唇を味わう。
ここにいる。美子も俺も。そのことを確かめたくて抱きしめる。
ふと、ふんわりと甘い香りが鼻をくすぐった。
いつもの美子とは違う香りに、廉は戸惑う。
「…なんか…いいにおいがする」
つぶやいた廉に美子は、あ、と声を上げ、問いかけた。
「好き、ですか、この香り」
「…うん、どうした、これ」
廉の言葉を聞き、美子はよかった、とひとりごちる。
「これ、ボディクリームの香りなんです。RINAさんが、あの、その…」
なぜか一瞬言いよどむ。廉はまたRINAがなにかちょっかいを出したな、とぴんと来た。
「なんだよ」
「その…クリスマスなんだから、いつもと違う感じでちゃんと磨きなさい、って…」
「磨く?何を?」
ぴんとはきたものの、言っている意味はよくわからない。
「あの…その…、か、からだを…」
「からだ?」
どこまでも鈍い廉に、美子はなんと言っていいものか恥らう。
「その、廉さんに、喜んでもらえるように、って…」
その言葉に疑問符を浮かべ、一瞬後に理解した廉は、首筋まで真っ赤になり絶句した。
何言ってんだ、あいつは!
「だから、その…。RINAさんがいい香りのクリームでマッサージしてくれたから…
つやつや、なん、です、肌、とか…」
美子も真っ赤になっている。
そんな美子を見て、廉は悩んでいた自分がちょっとばかばかしくなった。
こんなに素直に自分を思ってくれているのに。
かわいい美子。俺の美子。…ちょっと、周りの意見を素直に聞きすぎのきらいはあるが。
でも。それも全部、俺のために。
「じゃあ、それは、俺に触ってみろ、ってことだな?」
「っ!…そ、そんなんじゃ…。あれ、でも、そうか…な?」
恥らいつつ小首をかしげる美子は、いつもどおりの愛らしい美子で。
すっかり調子を取り戻した廉は、そんな美子を見てにやにやと笑う。
「じゃ、遠慮なく触らせてもらおうか」
廉はするりとワンピースを滑り落とし、そっと美子をベッドに降ろした。
美子が甘い吐息を漏らす。それだけで廉は背筋にぞくりとしたものを感じる。
触れただけで、胸がときめく。触れられただけで、息が苦しくなる。
声を出した美子を、廉は見つめた。いつもとは違うまなざしの廉を美子は見上げた。
背筋に走ったぞくりとしたものを、美子のからだに伝えようと廉はそっと首筋に触れる。
何度触れても、何度自分のからだで埋め尽くしても飽きることのないこの気持ちを
廉は美子に伝えたかった。
ずっとずっと一緒にいたいという気持ちを。
あ。と、美子が声を漏らす。
首筋に唇をあてただけなのに、美子の声は既に色づき始めている。
真っ白だった美子のからだをこんなふうにしたのは自分だと思うと、それだけで廉は満たされる。
ちゅっと強く吸い上げると、そこに赤く跡がついた。
見えたところでかまうものかと、廉は思う。
俺のものだ、俺の印をつけて何が悪い。俺だけのものだ。
いつもと違う甘い香りは、美子をさらに艶やかに感じさせる。
いつもと違う質感の肌は、廉の何かを煽り立てる。
慣れてきた手つきで、レースのついたかわいらしいブラを剥ぎ取った。
ふるりとあらわれたその優しいふくらみは、いつものように廉を夢中にさせる。
やわやわと揉みしだき、先端に唇を寄せた。
ついばんだり、指で転がしたり、舌でつついたり、
廉はまるでそれがお気に入りのおもちゃであるかのようにかわいがる。
そのふくらみも、その先も、すべて自分のものだ。
美子の吐息が髪をくすぐった。美子の鼓動が伝わった。美子の声が耳を打った。
甘い香りが美子の熱で溶け出し、立ちのぼった。
からだ中の五感がすべて美子で満たされていくのを感じる。
美子も自分で満たされてくれるといい、と心から願う。
「はぁん、んん、廉さん…」
無意識にか、美子が廉の頭をかき抱いた。
美子が自分を抱きしめる。美子を抱くことと同じくらい幸せだった。
もっともっと。感じさせて、声を上げさせて、乱れさせて、すがりつかせたい。
愛しているから。抱きたい。抱かれたい。
自分以外には見せない姿を表情を、自分以外には聞かせない声を、すべて味わいつくしたい。
美子が、自分のものになったのは奇跡だから。
「廉、さん…」
ささやきながら美子が廉の髪を撫でる。
廉が先端にそっと歯を立てると、美子があん、と声を上げ指に力を入れた。
「あ、ごめんなさい…」
思わず廉の髪を引っ張ったことに気がついた美子がつぶやく。
廉は顔を上げ、微笑んだ。
「気にすんな。…気持ちよかったのか?」
「…やだ、廉さん、意地悪…」
「おまえ、これ好きだもんな」
そう言ってもう一度甘噛みすると、美子は吐息をこらえて顔を赤く染め、ぷいっと横を向く。
「…知りません」
「好きだって言えよ、素直にさ」
指で頬をつつくと、美子はますます赤くなる。
「…廉さん、どうしてそんなにエッチなことばっかり言うんですか」
意地悪してるんですか、という美子に、ことさら澄ました顔で廉が言った。
「別に言ってねーだろ、言わせようとしてるけど」
「!」
美子は絶句し、もうこれ以上はないというくらい赤くなった。
そんな美子が廉はかわいくてしかたがない。
「言ってみろよ、ほら。そこを噛んでもらうの好きですーって」
つんつん、とさらに頬をつつく。美子は真っ赤になったまま固まっている。
廉はそんな美子のリアクションを見ているだけで幸せになる。
しかし、あまりいじめすぎるのもな、と思い、
「嘘だよ。そういうのも言わせたいけど、まあ、それはそのうちな」
とウィンクしてみせると、美子はふぅ、とため息をついた。
「廉さんはずるいなあ…」
「なんだよ、ずるいって」
ほんの少しむっとしたように言う廉の首に腕を巻きつけ、抱きしめる。
「だって、そんなふうに言われたら、言わない私が悪いみたいじゃないですか」
廉さんが望んでくれることなら、なんでもやってあげたいと思ってるのに。
そう思いながら、顔を見られないように耳元でささやいた。
「そうやって、廉さんに噛んでもらうの…好き。すごく」
吐息に紛れて顔を隠して言ってみたけれど、恥ずかしさで壊れそうになる。
今度は言われた廉が首元まで赤くなった。
「おまえさー…」
しばらく固まった廉が、ぎゅっと美子を抱きしめる。
こっちがどきどきするっつーの、そんなこと言われたら。
自分が言わせようとしたのを棚に上げて、美子に言った。
「おまえ、その無駄にかわいいの、やめろよな…」
無駄にかわいい美子に煽られ、廉の動きが激しくなる。
「や、やだ、廉さん、あんっ…」
からだ中どこもかしこも廉にまさぐられ口付けられ、頭の中に霞がかかる。
廉の唇が、廉の指が、自分をどこかに連れて行く。
…でも、この感覚、嫌いじゃない。美子は思う。
廉さんのものだって、からだ中で感じるこんな瞬間が…好き。
「おまえ、すげえエロい顔してるぞ」
廉が言った。そんなことを言いながら、すでに廉は下着を脱がせた美子の中心に指を埋めている。
くちゅくちゅと音を立て、2本の指を中でぐるりと回す。
「…そんなこと、されたら、そういう顔に、なりますっ…」
「ふーん、エロい顔してんのは認めるんだな」
じゃあ、もっとそういう顔してみろよ。俺だけに見せてみろ。
そう耳元でささやいて、敏感な部分を弾く。美子が眉を寄せ一際高い声を上げた。
「廉さんの、せいなのに…」
ほんの少し恨めしそうに見上げるその瞳が"エロい"ことに気がつかない美子は、無意識に廉を煽る。
「そっか、俺のせいか。おまえがエロくなったのは」
そうかそうか、とひとりごちながら、廉はさらに美子の足を広げさせた。
「じゃあ、ちゃんと責任とって綺麗にしてやる」
そう言って、そこに顔を埋めた。すべてを舐めとるかのように、ゆっくりと丁寧に舌を這わせる。
「や、や、ああああん、廉さん、そんなっ…」
しばらく指を使わず舌でだけそこを愛撫した。
聞こえてくる粘ついた水音に、美子は思わずいやいやをするように首を振る。
「いや、イヤ、あ、ん、廉さん、いやぁん…」
その声に誘われたかのように、廉が突然舌を尖らせ先端を攻め立てた。
指でそこを広げ、めちゃくちゃに突き入れる。
ちゅっと敏感なところを吸い上げると美子は足をきゅっと強ばらせ、がくがくと震えた。
息を荒げ、目を閉じ、シーツをつかむ。
甘やかで少し高く伸びる嬌声は、美子が達した時の声だった。
廉はそんな美子をいとおしく思いながら、わざと意地の悪いことを言う。
「せっかく綺麗にしてやろうと思ったのに、どんどん出てくるからな」
濡れた唇を見せつけるように、ぺろりと舌でぬぐった。
美子は恥ずかしさのあまり顔をそらす。廉は美子の顎をとらえ自分のほうを向かせた。
「こっち見ろよ。顔が見たいって言ったろ」
何度も美子を高ぶらせ、何度も甘い艶めいた声を上げさせる。
その声を聞くたびに、廉はたまらない気持ちになった。
「廉さん、もう…」
美子の潤んだ目が自分を誘う。望まれた喜びに廉は満ち足りる。
ぐっとからだを引き寄せ、自分自身を美子に差し入れた。
「ん…」
二人同時に漏れる声。はぁ…と息を漏らし、無防備な顔で廉は一瞬動きを止めた。
「顔。隠すなって」
美子の顔にかかった前髪を手で払う。美子は潤んだ瞳でそんな廉を見上げた。
「廉さんも…顔、見せてくださいね」
廉は美子を見つめ返した。美子が廉の頬にそっと手のひらをあてる。
「ほら、廉さんだって…エッチな顔してる…」
突然の言葉に廉が赤くなる。
「おま、おまえ、何言ってんだ」
「私のことばっかり、言うからです…」
勢い余って突き上げた廉の動きに、美子の言葉は喘ぎ声混じりになった。
「じゃあ、それはおまえのせいだからな」
責任取れよ、と言って、廉は動きを激しくする。
そうだ、全部おまえのせいだ。
おまえがそばにいないと寂しくてどうしようもなかったり、
おまえがよそを向いていると妬ましくて苦しかったり、
ちょっとしたことで不安になったり、こんなに俺が弱くなったのはおまえのせいだ。
でも、虚勢じゃない多分本当の強さってやつを感じられるようになったのも、おまえのせいだ。
今の俺がこうなったのは、ぜんぶおまえのせいだ。
だから…責任とって、おれのそばにいろ。
廉の激しい動きに合わせたように、美子の口からいやらしい声が漏れる。
美子はもう返事をすることもできず、ただ廉に満たされる自分を感じていた。
「もっと、いやらしい声、出せ…、美子…」
耳をぺろりと舐められ、激しく突き上げられると頭が真っ白になる。
「あああ!あ、ああん!はぁん、いや…ん、気持ち、いい…」
美子の艶めいた声を聞き、廉は満たされる。
「美子…愛してる…」
「私も…愛してます」
もう何度聞いた言葉だろう。もう何度ささやいた言葉だろう。
何度聞いても、何度ささやいても、言葉では足りることはないこの思いを、分かち合いたい。
このいとおしい思いが、からだ全部から伝わるといい。
美子は廉の背中にしがみつく。ぎゅっと足を絡ませる。
吐息に邪魔されながら、お互いの名前をささやきあった。
廉が美子の腰を引き寄せ、深く口付ける。
その瞬間、美子の中で強い波が起こる。
その波と高く伸びた声に誘われるように、廉もまた声を漏らした。
翌朝、目が覚めた美子は隣に廉の姿がないことに気がついた。
「れん、さん…?」
そっとからだを起こす。
廉が先に目覚めていることはほとんどない。
早起きに慣れた自分が先に起き出し、目を覚ました廉にどこに行っていたのかとすねられる。
それがいつものパターンだったから、美子はなんだか不安になる。
廉のすねる気持ちが初めてわかったような気がした。
きょろきょろと部屋を見回すと、窓際に廉が立っていた。
珍しく既に身支度も整え、まだ暗い外を眺めている。
美子はほっとしつつ、その立ち姿に思わず見とれた。
すっと伸びたその背中にしがみついた昨夜のことを思い出し、ひとり赤面する。
廉が気配を感じたのか、振り返った。
「…起きたのか」
「あ、はい…。おはようございます、今朝は早いんですね」
「ああ…ちょっと、な」
どこかいつもの廉とはどこか違う気がして、まだ何か思い悩んでいるのだろうかと、美子は不安になる。
しかし、自分ひとり昨日のままの姿でいることに気がつき、あわあわと身支度を整える準備をし始めた。
シャワーから上がり、美子はいつものシンプルなワンピースに着替える。
廉はまだ窓際にたたずんでいた。そっと近づき、声をかける。
「廉さん…どうかしたんですか?」
廉は答えず振り返った。かたい表情に美子はますます不安をおぼえる。
「美子…」
名を呼び、廉は一瞬息を止めた。そして、思い切ったように口を開く。
「昨日、言ったよな、後悔してないって」
その言葉に美子は戸惑った。まだ廉さんは不安なのだろうか。信じてほしいのに…。
「もちろんです、私は、」
言いかけたところで、廉に抱きしめられた。
耳元で息を飲み込んだ音が聞こえる。鼓動が速い。心なしか、腕も震えている気がした。
「廉さん、どうしたんですか…?」
「一度しか言えないから、よく聞けよ」
声が震えている。廉はからだをはなし、美子を見つめる。
「俺と…結婚してくれ」
かたい表情のまま、廉が言った。緊張のせいか腕の震えが強くなる。
「ずっと考えてた。おまえと一緒に、ちゃんとした居場所を作りたいって。
でも、正直悩んだ。
俺は家族ってもんがよくわかんねぇから…、こんなこと言っていいのかって。
おまえを俺のそばに置いておくのは俺のエゴなんじゃないかって。
でも、やっぱり俺にはおまえが必要なんだ。ずっとそばにいてほしいんだ。
だから…」
そっと小さな箱を取り出し、美子に見せる。
「これ、受け取ってくれないか」
震える指でその小箱を美子の目の前で開いた。きらりと輝くリングを見て美子は涙があふれる。
「うれしい、廉さん…。私も、ずっと廉さんのそばにいたいです…」
そんな美子を見て、廉は一気に緊張から開放される。畳み掛けるように問いかけた。
「いいんだな?それは、オッケーってことでいいんだな?」
「もちろんです。私はずっと廉さんのものだから…」
廉は美子の左手をとった。壊れ物を扱うかのようにそっとそっと触れる。
薬指に指輪をはめた。美子はなされるがまま、涙を流している。
「愛してる、美子。ずっとずっと、俺のそばにいろ」
「はい、廉さん…」
指輪を見つめ、美子は幸せを噛み締めていた。
神様…。
私の役目は、廉さんのそばにいること。
何ができるかわからないけれど、一生、廉さんのためにできることをしていくこと。
ずっとずっと廉さんを愛し続けること。
素敵ななすべきことを与えてくださった神様に…心からの感謝の祈りを。
少しずつ明るくなってきた空に、美子は祈りを捧げる。
廉さんを幸せにする力を、どうぞ私にお与えください、と。
廉と美子はお互いを抱きしめあい、もう一度深く口付けた。
以上です。ありがとうございました。
クリスマスネタを書きたくて書きましたが、うまくその雰囲気が出せてないようなorz
エロがエロくなくてすみません。
とりあえず皆様、一日早いですけど、メリークリスマス!
あ、それとそろそろ次スレの相談を始めた方がいいですね。
480KBになってしまった…。
長くてすみませんでした。
廉美子可愛い・・・。朝からとろけちゃいましたぁ。
>>441 ヤバいっ!この廉美子ヤバすぎです
可愛いすぎるしこっちまで幸せになる
一足早いクリスマスプレゼントを有難うございました 作者様
>>451さま
廉美子の幸せっぷりに涙…
初めて2人でクリスマスが過ごせて、読んでるこちらも幸せです。
しかし言葉攻め廉さんは相変わらずのツンデレでステキw
いよいよプロポーズか〜この先もずっと見守ってゆきたい!
>>451 どかんと甘ったるいの来ました!ありがとうございます!溶けました!!!!素晴らしすぎる…
やっぱいいなぁ、この2人は…
素敵なクリスマスありがとうございました!
GJGJGJ!!
萌え転がりました!美子は本当無駄に可愛い…
ご馳走様でした
>>451 きゃ〜〜!!
突然のプロポーズにどっきん!
甘くてあったかい最高のクリスマスプレゼントに
涙してしまいました
廉さん言葉攻めとか好きなのに美子を思う気持ちは
すっごく真面目で真剣でそれがいいんですよね〜
あ〜...ホントによかったです!ありがとうございました!!
>>459 テンプレ、このような感じで私は良いと思います。
それと、今から作品を投下しようと思うのですが、多分容量足りないと思うので
今から先に次スレ作ってきます。
12月28日。午後8時。
雪のせいで少し実家に着くのが遅れたが、8時ぐらいに無事に到着した。
実家に着くなり、美子は「ひらひら」と舞い落ちる雪と辺りに広がる白銀の世界とに子供のようにはしゃいでおり
また、俺の実家を見るなり「え!柊さんのお家って大きい!!」などと一つ一つの事に対して全力投球しているかのようなほど元気だった。
正直のところ、両親と会うってことで緊張しているかと思っていたのだけど美子自身はそうでもなく
逆に紹介する俺の方が緊張していたみたいだった。
けど、その姿を見て不思議と緊張が解れ、何でか分からないけど少しの間大笑いしてしまった。
美子は大笑いしている俺の事を不思議そうに見ていたけど、すぐに釣られたのか「くすくす」と小さな笑い声を零していた。
ホント、美子と一緒に居ると毎日が楽しいな・・・・。
そうこうしていると、美子が寒さのあまり「くしゅん」とくしゃみをした。
流石に、ずっと外で変に笑い続けているのも可笑しな話だと冷静になって分かり
車に積んである荷物を持ち出すと、美子の冷えた手を握り締め、颯爽と家の中へと入って行った。
「あら、柊。遅かったじゃない。あ、桜庭美子さんね。初めまして。
私、柊の母の藤城楓と申します。この度はこのような場所までわざわざお越しいただきありがとうございました。」
家の中に入ると、すぐ目の前には豪勢な着物を纏ったお袋が居ており、美子に紹介を済ませると深々と礼をしてきた。
「は、初めまして!桜庭美子と言います!」
美子もお袋の挨拶に応えるように名乗ると、その場でぱぱっと雪をほろった後、礼をした。
互いに礼をし終え顔を上げると、お袋は少し深刻そうな表情を浮かべていた。
その表情に疑問を感じた俺はすぐさま、「お袋、どうかしたのか?」と聞いた。
「あ、いや・・・・実は・・・この後、旦那に美子さんの紹介するつもりだったと思うんだけど・・・その・・・。」
少し斜めの方に俯き、口元に握った右手を当てながら小さな声でそう告げる。
何やら様子の変なお袋に、一抹の不安を抱く。
「親父に・・・何かあったのか?」
俺の言葉に隣に居た美子も、何かを感じ取ったのか何度も俺とお袋の事を交互見ていた。
そして、お袋は下唇を噛み、顔を俯かせると
「あの人・・・・」と言葉を発した直後に客間のほうから大きな音がした。
何事かと思い、お袋の後ろにある客間の方へと目を向けると・・・。
ビール瓶を両手に持ちながらべろべろに酔っ払った親父が現れた。
「かぇで〜。何やってるんだ〜!」
けらけらと笑いながらビール瓶を持った右手を高く上げぶんぶん振り回した。
「あの人・・・緊張しちゃって、がばがばお酒飲んで・・・酔っ払っちゃったの・・・。」
「・・・・へ?」
どういう事か分からない美子はお袋の言葉に首を傾げながら声を発するのと同時に
後ろで暴れていた親父が倒れ、その場で眠りに入ってしまった。
俺は顔を真っ赤にして親父の方へ駆け寄ったお袋の代わりに何でこうなるのかを説明した。
463 :
金沢へ 2:2011/12/24(土) 00:37:19.08 ID:E7OM5g+i
親父が緊張しやすい人と言う事とお酒に弱い事。
多分、実の息子が結婚を前提にお付き合いしている女性を連れてくるという事から
父親としての立場上緊張してしまい、それを和らげるために酒を飲んで酔っ払ったと。
「柊さんのお父様・・・・お酒・・・弱いんですか?」
「う、うん・・・。それで・・・まぁ・・・ああなっちゃったって・・・。」
「え・・っと・・・そ、その・・・こ、こういう時・・何て言えば・・・。」
「・・・まぁ、俺も今何て言えば言いか困ってるから・・・何も言わなくて良いと思う。」
血のつながりのある者として、実の父親のこんな姿を見られて、内心俺も恥ずかしい・・・。
そんな事を考えながら、廊下で爆睡している父親を顔から火が出る勢いで恥ずかしそうに介抱しているお袋を数秒間見た後、
「お袋、俺も手伝うよ。」
と言い、靴を脱ぎ廊下に居るお袋に近づく。
するとお袋は
「いえ、ここは私とお手伝いさんでやるから二人はお風呂に入ってらっしゃい。
美子さんの紹介はまた明日・・・仕切り直しにしましょう?」
とまだ微かに赤い顔を美子には見られないように、俺の顔を見て言った。
「わ、わかった。」
美子にこんな姿を見られたくないというお袋の意思を汲み取り、玄関の方へと戻ると美子の手を取った。
「あ、あの・・・柊さん?」
どういう状況か把握できていな美子は心配そうな表情を浮かべながらこちらを見つめてきた。
その美子を安心させるために頭を軽く撫でた後、申し訳なさそうな表情を浮かべながら
「ごめん。親父があんな状況だから、美子の紹介は明日になった。本当にごめん。」
と言った。
「い、いえ!き、気になさらないでください!わ、私も・・・じ、実は・・・その・・・き、緊張してたので!」
美子は「にこ」と笑うと、頭を下げる俺に「頭上げてください!」と何度も言ってきた。
俺も顔を上げ、目の前で「にこ」と笑っている美子に笑みを返した。
「だから、今日はもう休もう。親父の事とかはお袋たちがするって言ってたから。」
「わかりました!それじゃあ私、お母様に一言掛けて・・・。」
そう言いながら、玄関で靴を脱ぎ、お袋の歩へと向かおうとした美子。
しかし、柊はその動きをすぐさま左手首を掴むことで妨害し止める。
「しゅ、柊さん?」
「あ、あの・・・あ!大丈夫!俺がさっきお袋に言ってきたから。だから、は、早く風呂入りに行こう!な?寒いから早く風呂入って、今日はもう寝よう!」
握った手首を力強く握り直すと美子の言葉を聞かずにお風呂場へと引き摺って行った。
464 :
金沢へ 3:2011/12/24(土) 00:38:03.23 ID:E7OM5g+i
お風呂場に着き、取り敢えずあの場から脱出する事が出来た。
「はぁ・・・はぁ・・・。」
「あの・・・柊さん?どうかしましたか?」
「んぇ!?あ、み、美子か・・・あぁ・・・ごめん。」
無我夢中だったとはいえ、流石に強引にここまで連れてくる必要があったのか・・・
冷静になるともう少し優しく連れてくるなり出来たんじゃないか・・・とか考えたけど、もうそれ以上考えるのは止めた。
美子の手首を離し、鞄から着替えを取り出した後、何気なく身に纏っていた衣服を脱ぎ始めた。
すると、すぐ隣に居た美子が突然大きな声を「きゃぁ!」と声を発した。
何事かと思い、美子の方へと目を向け、「どうした!?」と上半身裸の状態で聞いた。
そうしたら、さらに美子は両手で顔を隠し、俺に背を向けた。
「あ、あの・・・その・・・い、いきなりだったので・・・こ、声が・・・。」
・・・・あぁ。なるほど。そういうことか。そりゃ、いきなり男が脱ぎ出したら驚くよな・・・。
自分の今の状況を壁に掛けてあった鏡を見て納得した。
その後、背を向けたままの美子に「それじゃあ、先に入ってるから。」と言い残すと服を全て脱ぎ捨て丁寧に畳んだ後風呂場に入って行き、
体をお湯で数回流した後、お風呂の中へと浸かった。
(そう言えば・・・美子と風呂に入るの・・・初めてだな・・・。)
檜風呂の中に浸かってすぐに木目調の天井を仰ぎ見ながらそう考えた。
あれから何分絶ったんだろうか・・・。5分ぐらいかな?
美子は一向に脱衣所から出てこない。まだ、一緒に風呂とかは早かったのかな・・・。
って、一線越えた時点で一緒に風呂が早いって考えはないだろ・・・。
駄目だ!こんな事考えてたら・・・・昨日の誓いが破れそうになる。というより、我慢するなら入って来ない方が良い気が・・・・。
ぶつぶつと天井を眺めながら心の中で言っていると、脱衣所と風呂場を繋ぐ引き戸が開かれる。
天井に向けていた視線を、すぐに扉の方へと向けるとタオルを纏った美子がゆっくりと入ってきた。
ちらちらとこちらを恥ずかしそうに見てきたが、何も言わずに体をお湯で流した後、風呂の近くまで近づいてきた。
465 :
金沢へ 4:2011/12/24(土) 00:38:39.11 ID:E7OM5g+i
「どう?温かいだろ?」
「んん・・・温かいです。」
「にへら」と笑顔を浮かべながら、美子は俺の顔を見てきた。
その笑顔を見た後、頭を軽く撫でると身を縮めて更に体を寄せてきた。
「そうか。ここ、俺が一番好きな場所なんだ。」
「冬場だと温かいですもんね〜。」
「それだけじゃなくてさ・・・。ほら、横見てみて?」
その言葉に美子は言われるがまま横を見ると、大きな窓ガラスから深々と雪が降り続ける和風の庭が見えた。
「・・・綺麗・・・。」
それは言葉では表しきれないほどに綺麗な景色だった。
庭に備え付けられてる灯篭に火が灯っていて、雪がうっすらと積もる庭全体を照らしており
そのおかげで、雪が積もっている松の木がイルミネーションがついたクリスマスツリーのように「きらきら」と輝いていた。
そして、庭にあった大きめの池に「ゆらゆら」と映る灯篭の火の灯りが外に広がる景色をより美しくしていた。
「何か、柊さんがこの場所が好きだって理由が分かる気がします。」
「・・・ここから見える冬の景色が、子供のころから大好きでさ。」
「こんなにキラキラ輝いていたら・・・・誰だって好きになっちゃいますよ。
私だって、見て数秒で大好きになっちゃいましたもん。」
景色を見ていた美子がこっちを見てきて「にこり」と笑う。
その後、少し恥ずかしそうに顔を逸らした後
「私・・・柊さんに会えて本当に良かったです・・・。」
とぼそりと呟いた。
「俺も・・・美子に出会えて良かったよ・・・。」
目の前で恥ずかしそうに身を縮める美子の体を後ろから抱き寄せ、肩甲骨辺りに顔を乗せ
美子に向けて笑みを浮かべる。
「柊さんと出会えて私、柊さんからいろんなものをもらいました。
こんなに綺麗な景色もたくさん見せてもらいましたし、こんなに温かい想いもたくさんさせてくれて・・・。
キラキラ輝く夢の様な毎日を・・・柊さんは私に教えてくれて・・・。
私・・・凄い幸せです・・・・。」
風呂に浸かっているせいか、それとも本心から恥ずかしいと思っているのか美子の頬は赤みを帯びていた。
そんな事を見ながら考えていると、「ばしゃばしゃ」と波打つ音が聞こえたと思ったら
気がつくと美子と唇が重なっていた。
いつも控えめに動きを合わせてくるように動いている美子の舌はその面影すらなく
懸命に自分から俺の舌へと自分の舌を絡めてくる。
けど、懸命に絡める本人の息がどんどんと荒くなってきていた。
自分からすることなんて全然なかったからきっと慣れてないんだと感じた。
それでも、今は何も考えず美子の舌の動きに・・・・俺が合わせよう。
キスを終え唇が離れると、美子は少し息を荒々しくしながら涙で瞳を潤わせていた。
そして、先ほどの話の続きなのか口を開くと
「だから・・・私も・・・・・その・・・。」
ともじもじしながら言葉を詰まらせていた。
何を伝えたいとしているのか・・・・わかるよ。
俺だって、美子と一緒に居るだけで毎日が楽しくて・・・・
だからこそ、これからも一緒に居たいと思えた。ずっと好きでいたいと思った。
何があっても・・・ずっと・・・ずっと・・・。
466 :
金沢へ 4:2011/12/24(土) 00:39:24.59 ID:E7OM5g+i
目の前でもじもじしながら「えっと・・・。」と言葉を漏らしている美子の体を何も言わずに抱き寄せる。
「俺も・・・美子から色んな物をもらったよ?だからさ・・・難しく考えなくて良いんだよ?
俺にとって、美子と過ごす一つ一つの時間が夢の様にキラキラ輝く毎日何だからさ。」
「柊・・・さん・・・。」
互いの顔を見合った後、それぞれ目の前に居る人に向けて満面の笑みを浮かべる。
そして、もう一度軽い口づけを交わすと立ち上がり、美子の体を風呂の中から引き上げて風呂から上がる。
その後、美子の体をガラスとは逆の壁の方へと優しくよしかからせると深い口づけをした。
「んん・・・」
角度を変えながら舌を絡め、その時に出来る微かな隙間から小さな声が漏れる。
そんな中、壁に倒れかかる様な形でよしかからせた美子の体に後ろから手を回し、
片方の胸を緩急をつけながら揉み始め、もう片方の胸の頂点を摘むように弄り始める。
「んん!んんん・・・。」
突然、胸の辺りから刺激を感じたからか体を「ビクん!」と跳ね上がらせ、口を塞がれながら嬌声を風呂場に響き渡らせる。
何度もしているから刺激に慣れたとも思ったがそう言う訳ではなく、
こういう刺激に慣れるって言う考えが美子には通じないんだなとか最近分かってきた。
それに、今日は体が濡れてるから余計に敏感に反応する事も分かっていた。
って・・・やっぱり、我慢できなかったか・・・・。
「んぁぁ!ぁぁあ!」
口を塞いでいた唇を退けると甲高い声が響く。
水浸しで喘ぐ美子の姿は艶っぽく、いつも以上に「ビクビク」としているのが更に美子を厭らしく見せているように感じる。
その姿を見た俺は、胸を弄りながら
「ごめん。やっぱり我慢できない・・・。」
と予め行為自体に対する謝罪をした後、首筋に真っ赤な痕がつくぐらい吸い上げた。
「んんああ!」
柊の言葉に美子は声を出しながら首を「こくこく」と数回縦に振った。
その動作を確認した後、胸から手を離し、床に置いてあったボディソープを軽く手に付け
両手を擦る様にして泡立てた。
467 :
金沢へ 5:2011/12/24(土) 00:40:45.79 ID:E7OM5g+i
「美子の体・・・洗わないとね・・・。」
そう言うと美子の体に「ぴたり」と密着し、左手で両方の胸を抱えるように手を回し
両方の胸を交互に弄りだす。
そして、右手を美子の秘部周辺へと持っていき、何度もその周辺を弄り始めた。
「んぁぁ!しゅうさんんん!あぁ!だ、だれか・・・き、来ちゃうぅぅ!」
美子の体を弄り始めてすぐに大きな声が響くと、美子は目を強く瞑りながら首を横に振りながらここじゃ嫌だという事を伝える。
しかし、アブノーマルなプレイのお好みの柊にその言葉は意味を持たない。
逆に柊の心に油を注いでるようなものだった。
「来ちゃったら・・・どうする?」
耳元でそう囁くと左の胸の頂点を「くりくり」と強弱をつけながら摘み始め
それに乗じて秘部周辺を弄っていた右手が秘部の割れ目の上を執拗になぞる様になった。
「んぁ!ここ・・・だめんんん!!」
「ここって・・・どこ?風呂場が嫌ってこと?それとも・・・弄られてるここが嫌なの?」
その言葉を発すると、右手で執拗になぞっていた秘部の最も敏感な部分をわざとらしく摘む。
「んんんん!だ、だめ!」
「それじゃあ・・・止めて良いの?」
ゆっくりと右手で弄っていた部分から手を遠ざける。
すると、美子は「んぁぁ・・・。」と気の抜けた声を出した後
「それ・・いい。けど・・ここじゃ・・・いや・・・。」
と小さな声を漏らした。
だが、柊はその言葉を聞くと美子の右足を右手で持ち上げ、秘部の割れ目が「ぱっくり」開く様にした。
「それじゃあ、ばれない様に声を抑えないとね・・・。」
意地悪そうな笑みを見えない様に浮かべながら耳元で囁いた後
「ぱっくり」と開かれた秘部の中へと、今度は左手の中指と人差し指を潜り込ませていった。
「んん!んんんん!!」
柊に言われたとおり、美子は壁に押し当てていた右手で口を塞ぎながら声が漏れないように必死に堪えていた。
柊は美子に何も声をかけずに、中に忍ばせた指をばらばらに動かし始めた。
指に纏わりつくボディソープのおかげで、秘部の中で動く指が動く度に「ぬちゅぬちゅ」と卑猥な音を響かせる。
その音と共に、美子は瞳を強く瞑りながら口を抑えて声を漏らさないように堪えていた。
その顔をすぐ横で見ていた柊は、ただ何も言わずにその姿を見ていた。
「んん!んんぁぁあ!」
秘部で暴れる指が動く度に、だんだんと美子の声が荒々しくなり
だんだんと秘部から響く卑猥な音が音を大きくしてきていた。
それにより、そろそろ美子の限界が近づいてきている事がすぐに分かった。
そう分かると柊は一瞬だけ指の動きを止め、興味本位で薬指も入るかどうか試したくなり
美子の秘部の中に3本目となる指をゆっくりと沈めていった。
「んぁぁ!ぁぁあぁ!!」
3本目の指は意外にもすんなり入って行き、その指が収まりきると手で抑えていた口から甲高い声が漏れだした。
そして、すぐさま3本の指を抜き差しを激しいスピードで行うと絹を裂く様な嬌声が響き渡り、指を抜き去ると、美子の秘部から愛液が勢いよく溢れ出した。
468 :
金沢へ 7:2011/12/24(土) 00:43:20.38 ID:E7OM5g+i
「んはぁ・・はぁ・・はぁ・・・・・・。」
限界を迎え、ぐったりと壁によしかかる美子の体を両手で支える。
「美子・・・イッちゃった?」
問いかけに対して美子は弱弱しく頷く。
柊は「くす」と小さく笑った後、
「そこのオープンガラスから誰かに見られてたら・・・どうしてた?」
と小さな声で問いかける。
美子は整いきれていない呼吸を「ごく」と飲みほした後
「柊さんと・・・一緒だから・・・恥ずかしく・・・ないですもん・・・。」
と顔を真っ赤にさせながらそう言ってきた。
その言葉が何だか嬉しくて、柊は美子の体を力強く抱き寄せた。
同時に、何故か自分も恥ずかしくなり美子の背中に数秒間顔を押し付ける。
そんな柊の姿を見た美子は「にへら」と弱弱しい笑みを浮かべながら柊を見ていた。
梅
あれ・・・まだ埋まらない?
埋め!
うまれーーーーー