「このまま行くだなんて――僕は出来ないのよ」
『ペイン君?』
「ティアラちゃん、行こう! 僕と一緒に――」
振り返るペイン。
しかしその言葉を遮るように、
『ゴメンね。あたしは行けない』
ティアラは、ただそれだけを告げた。
そう告げてくる顔は、微笑んでいた。
あまりにそれを告げる彼女の顔が晴れ晴れとしていて――ペインは、それ以上何も言えなくなってしまった。思わずうつむいてしまった。
『ゴメンね、本当に。君のことが嫌いな訳じゃないんだよ?』
そう笑いながら彼女も言葉を付け足す。
『前にも言ったと思うけど、あたしは『この山』のミルクドラゴンだもの』
「あぁ……」
『それにここには幸せな思い出がいっぱいあるの。家族で暮らした思い出や――それから大好きな君と過ごした思い出が。
そんな思い出がある限り、あたしはこの山が好き。だからここに居たいの』
そうであった。
その答えは、以前にも聞いたことであった。そしてその答えからペインは、『自分の在り方』を発見することが出来たのだ。
「――君からそれを聞いて、僕は僕なりの答えを見つけたのよ」
『答え?』
「うん。たとえどんなに過酷な土地に住んだって、そこを愛している『気持ち』が消えない限り――その場所は消えない。
例え地図から消えたって、いつまでもその場所は心の中に在り続ける。そんな想いがある限り、そう想い続けられる限り――
人は幸せなのよ」
『………』
「僕の国は、そんな国民達がいてくれる素晴らしい国だったのね、今まで気付けなかったけど。――そして僕は、
そんな国をもっと幸せな国にしたいと思ったのね。ううん、絶対にしてみせるのよ」
その想いを遂げられた日には――
その時はこそ――
「君を迎えに来るのね。この山以上の――素敵な思い出をいっぱい作ってあげるから」
『ペイン君……』
ペインは再びティアラを迎えに来ることを誓ってみせた。
けっして大きくはないその体を、胸を張って約束してみせるペイン。その時ティアラにはしかし、そんなペインの姿が
どんな王様よりも立派に見えた。そしてそんな彼の作る国と自分の未来とやらを見たいと思った。
『わかったよ。それじゃ、君が自分で認められる立派な王様になった時には迎えに来てね。お妾さんでも、
小間使いでもなんでもいいからさ』
「第一婦人で迎えるのよッ!」
『もー、奥さんは一人(あたし)だけじゃないの?』
そうしてこの日、初めて二人の間に笑い声が上がる。
「じゃあ、本当にこれで……」
そういってペインはティアラへとしばしの別れを告げようとする。
『うん、わかった。たまには遊びに来てね、歓迎するよ♪』
「もちろんなのねッ! この山の前を通る時には必ず寄るし、寝る時だってこっちには足を向けないのね」
『大げさだなぁ、君も』
「んふふふ。じゃあ、『さ――」
そして最後の締めくくりに『さよなら』を言おうとしたその瞬間――そんな言葉を遮るように、ティアラの口付けがペインの唇を奪った。
そんな一瞬の出来事に目を丸くするペインへと、
『さよならは言わないで。――「いってらっしゃい」ッ』
そう言って微笑むティアラの笑顔に涙が浮かんだ。
その瞬間、ペインも悟る――彼女もまた、この別れを惜しんでいたことを。
だからペインも、
「うん――いってきます。またね、ティアラちゃんッ」
『さよなら』は言わなかった。『またね』といって、笑ってみせた。
そうして山を下るその中、ペインは何度も振り返ってはティアラに手を振った。彼女もいつまでもそこに立って、
そんなペインを見送ってくれた。
緩やかに山を迂回しながら降りていくとやがてはそんなティアラの姿も見えなくなった。それでも振り返り、
過ぎ去ったそこにペインは彼女の面影を思い描く。
そうして何度目かに振り返ったその時、切れた視界の山の彼方に抜けるような青空が見えた。
それに気付いて、改めて見上げる空には――
ふと見上げた初夏の空には、伸ばす手に触れてしまえそうなほどの青が一面に溢れていた。
「あぁ……あんなに空が青い」
この山を登っていた時には、こんな空の青さが疎ましくも思えた。しかし今はそんなことなど微塵も感じない。
なぜなら心はこの空と同じくらいに――否、それ以上に晴れ渡っているのだから。
「ミルクドラゴンの女の子、最高だったのね♪」
そんならしくも感傷的になってしまっている自分が恥ずかしくなって、それを誤魔化すようにペインは呟いた。
そうしてもう一度、ティアラのいる村を望むようにして空を見上げる。
青空には竜によく似た雲が一筋――北の彼方へ飛んでいくのが見えた。
【 おしまい 】
以上で終わりになります。
スレをまたいで長々とスイマセンでした。
そして最後まで付き合って下さったスレのみなさんは本当にありがとうございます。
スレ汚し失礼しました。
>>55 GJでした! 前スレ途中で終わってたので気になってました
異種間ものなのにらぶらぶで、おもしろかったです!
>>56 ありがとうございます!
そういって頂けると投下した甲斐がありました〜。
次回また機会があります時はどうかよろしくお願いします
58 :
名無しさん@ピンキー:2011/11/20(日) 04:00:03.78 ID:GvnQkZ4f
純君と愛ちゃんの恋愛
59 :
沢井:2011/11/23(水) 23:16:54.24 ID:Y99oS3Jk
>>55 おお、異種姦ものは珍しい。GJです。ペイン君の甘いしゃべり方がまあ可愛いこと(マテ
・・・え?なにさりげなく参加してんだって?・・・すいませんでしたぁあああああああっ!!!
三月の地震でパソコンが(物理的に)限界に達しまして、中に入っていた文章データがすべておじゃんになり、創作意欲を喪失しておりました。
現在以前の自分の作品を読んで感覚を取り戻している途中です。年明けからコトヒラを再開できればいいかなぁと思っております。
コトヒラ待機保守
保守
62 :
名無しさん@ピンキー:2011/12/29(木) 01:42:02.43 ID:GlWUr2NI
至近距離純愛(お隣幼馴染み的な意味で)
hai
64 :
名無しさん@ピンキー:2012/01/03(火) 14:27:07.06 ID:fpDQPuL9
ほしゅ
65 :
名無しさん@ピンキー:2012/01/31(火) 20:02:40.17 ID:GwhUcdsn
バレンタインデー編があるっていってたから待ってるんさ、二年くらい
うぉしゅ
68 :
名無しさん@ピンキー:2012/03/01(木) 22:21:00.46 ID:OcF75PjG
ほす
69 :
名無しさん@ピンキー:2012/03/17(土) 10:13:37.40 ID:N9BTZMil
ほ
続きが来るまで5年でも10年でも待つさ
続き待ってます
ほしゅしてるのって俺だけ?
いやいや
74 :
名無しさん@ピンキー:2012/04/09(月) 00:16:37.05 ID:0daE4yHH
いやいやいや
75 :
名無しさん@ピンキー:2012/04/26(木) 21:51:23.00 ID:siz84U3J
ほす
保守
ほしゅ
78 :
名無しさん@ピンキー:2012/06/06(水) 06:24:47.84 ID:SW4uw+hx
ほす
79 :
名無しさん@ピンキー:2012/06/19(火) 22:05:51.33 ID:dz9mM2jF
純君と愛ちゃんの純愛
80 :
名無しさん@ピンキー:2012/06/28(木) 23:41:02.56 ID:SZqNBHy0
ほ
81 :
名無しさん@ピンキー:2012/07/14(土) 20:42:58.34 ID:nJQXRArL
し
82 :
名無しさん@ピンキー:2012/07/21(土) 01:54:21.90 ID:ysEmKzfc
保守
83 :
名無しさん@ピンキー:2012/08/03(金) 04:52:16.51 ID:D5QctO6n
ほ
84 :
名無しさん@ピンキー:2012/08/15(水) 22:31:13.75 ID:KgROVFTb
せ
愛
が
87 :
名無しさん@ピンキー:2012/09/25(火) 06:11:39.54 ID:mK2FwxUS
重
88 :
名無しさん@ピンキー:2012/09/29(土) 01:00:13.71 ID:dXsCFmGz
力
愛
90 :
名無しさん@ピンキー:2012/10/17(水) 06:20:19.11 ID:6ZHTZwKL
液
ほ
92 :
名無しさん@ピンキー:2012/12/17(月) 20:04:43.75 ID:PNMgT2Pg
し
93 :
名無しさん@ピンキー:2013/01/14(月) 08:59:34.98 ID:H5Nk0kvw
誰かいる〜❓
ほしゅ
続き書いてくださる神はどこですか?
ほ
保守
97 :
名無しさん@ピンキー:2013/07/04(木) NY:AN:NY.AN ID:J5Ee4ibu
遠距離純愛
保守
ここってやっぱり、住民の殆どが女なのか?
おっさんがいないとでも思ったか!
純愛
102 :
名無しさん@ピンキー:
ほす