「ふふ。そんな畏まらなくても良いさ。取って喰うつもりは無いんだからさ」
「は、はい」
その派手な印象に比べ、随分と大人しい……否、控えめな性格をしている様だ。人は見掛に由らないと言う奴なのだろうか。ダイゴには判らない。
「あの、乗せて貰って有難う御座います」
「だからそう言うのは良いってば」
改めて女が頭を下げて来た。だが、別にダイゴは本当に礼など欲しくなかったので苦笑する。
未だ若干警戒している様だが、それも目的地に着く頃には幾らかは緩和されている事だろう。
「申し送れました。あたしはシロ「ストップ」
そうして、名を名乗ろうとした女の口を強い口調でダイゴは強制的に噤ませた。
「どうせ、もう会わないんだ。お互い、名前を知らない方が綺麗に別れられるさ。だから、必要無い」
一期一会の原理と言う奴だ。別れに際し、余分な情や情報を抱えれば、その瞬間が辛くなる。だから、そんな荷物はお互いに持たない方が良いとダイゴは女に告げた。
「……クールでいらっしゃるんですね」
「そう見えるかい? そんな事は無いんだがなあ」
目を二、三回瞬かせ、自分の知らない何かを見る様な深そうな目で女が見詰めて来た。
女はダイゴの発言を冷血だと感じた様だが、それは間違いだ。彼は只、TPOに応じてコロコロと被る仮面を変えているだけ。ダイゴ自身が良く判っていた。
只管、北に向けて進路を取る。ゲーム中では表示されない高速道路に乗っての高速走行。もう砂川を越えたので道中は半分と言った所だろうか。
「じゃあ、お兄さんは大学生なんですか?」
「ああ。ホウエン大の一年」
車内では来歴語りで盛り上がっていた。年齢が近い所為か、一端話に花が咲くと、直ぐに二人は打ち解けた。
「ホウエンですか。遠いですね。……あたし、内地にすら行った事無いんですよ。修学旅行以外で」
「僕もそんな感じだね。今は大分自由に出来るから、冒険序に北に来たんだよ」
ダイゴは結局名を明かさないので、女はダイゴを『お兄さん』と呼ぶ事にした様だ。何と無くそれが気恥ずかしいダイゴだったが、言われて悪い気はしなかった。
女は学校行事以外ではシンオウの外に出た事は無いらしい。だが、大学入学迄はダイゴもそれと一緒だった。彼の父親は株主会などで頻繁にホウエンの外に出向く事が多いが、その息子がそうであるとは限らない。
大学生になって時間がかなり自由に使える様になった事で、漸く彼もホウエンの外に出る決心を固めた。それが彼の言う冒険であり、シンオウ旅行の真の目的でもあった。
「で、君は何で乗り遅れた訳?」
「はあ。お恥ずかしながら、研究のレポートを喫茶店で纏めてる間に時間が過ぎてしまって。慌てて追ったんですけど」
ダイゴが気になったのは女がバスに乗り遅れた理由について。どうやら長距離バスには乗り慣れている様なので時間を誤るとは考え難い。何か面白い事でもあったのかと聞いてみると何やら真面目な話が返って来た。
「その歳で研究か。偉い事だね。因みに、何の」
「いえそんな。あたし、年明けに受験なんです。シンオウ大の考古学部志望ですけど、師匠が試しにレポートを提出しろって」
見た目は大人びているが、中身は普通の女子高生らしい。年明けにセンターを控えるという事は高校三年生か。
その歳で既に研究のイロハに手を染めるとは、末は研究者かインテリ色の強い職業を選ぶのだろうとダイゴは純粋に感心した。
「中々厳しいお師匠さんだね。受験勉強も忙しいだろうに」
そう言えば、高校の地学の師匠も決して厳しくは無いけど、考古学的な彗眼に満ちた人物であった。あの人が自分をピックアップしてくれなければ、只の放蕩ドラ息子として終わっていただろうと感謝の念に堪えないダイゴ。
師匠は元気にしているだろうか。そんな事をダイゴは思った。
「いえ、好きでやっている事ですよ。出来次第では下駄を履かせてくれるとか何とか」
「はは。何処の世界でもある話だな」
それを聞いてダイゴは一寸だけ笑った。そりゃあ、誰でも必死になるだろう。
受験に便宜を図ると言うのは並みのコネで出来る事では無い。女の師匠は大学でもかなりの地位に居る人物である事は想像に難くなかった。
「お兄さんは何を研究してるんです?」
「僕? 専攻は地質学。今は古生物学を齧ってるけど、最終的に何になるかは判らないね」
女の言葉にダイゴが答える。火山の国であるホウエンは地質学が割りと盛んである。しかし、地質学とは言ってもその裾野は広く、多領域に渡る境界学問である。
今のダイゴは専ら化石等の知識を増やしている最中だが、何時その興味の矛先が変わるかは本人にも判らなかった。
「地学! あたしも必死にやってますよ。考古学には必須ですから。でも、あんまり頭に入らないんですよね」
「それは向き不向きでしょ。僕は石が好きだから、地質学部に居るんだけどね」
そのダイゴの言葉に女が喰い付く。心なしか、目がキラキラしている様な気がする。
趣味が重なった人間を見つけられて嬉しいのか、兎に角その顔は笑顔で一杯だった。
「あたしも好きなんですよ。ポケモンの御伽噺とか、伝説。それを解き明かしてみたいなあって」
女が何に成りたいのか、最終的に何をしたいのか聞く程ダイゴも野暮じゃない。好きこそ物の上手なれの言葉通り、好きじゃなければ続けられない物好きな商売である事は間違い無かった。
「好きだから、か。まあ、頑張りなよ」
「はい。ありがとうお兄さん」
そして、それは自分自身がそうだと言う事を当然ダイゴは知っている。
激励する言葉が喉を通過するも、それが誰に向けてのものかはダイゴにだって判らない。
ただ、女はそれに嬉しそうに微笑んだ。
「悪い、ちょっと補給させて貰うよ」
「あ、煙草……未成年、ですよね」
窓を開けて、煙草のボックスを取り出して咥えた。それを見た女は珍しそうに覗き込んで来た。別にそれを咎める様な視線は感じない。
「そうだよ? 誕生日来てないから未だ18」
「不良ですか? お兄さんって」
オイルライターで火を吐けた。口元で明滅する蛍火の様な煙草の火。車内を煙草の臭いが包む。
もう一寸で19に届く所だが、それは先の事だ。何れにせよ、軽犯罪法違反である事は変わらないが、ダイゴは大人びた風貌をしているので、高校時代から吸っているが外でそれを咎められた事は一度も無かった。
「そうかもね」
そして、不良かどうかと言う台詞については曖昧に濁した。若さ故の過ち、若しくは血腥い武勇伝について、それを語って恐がらせたくは無かった。
ハクタイ迄後一歩と言う所に来た。だが、其処から先は高速を降りて、下の道をえっちらおっちら行く必要がある。
強行軍が過ぎたのか、ダイゴの腹の虫が餌を寄越せと吼えていた。
「そろそろ腹も減ってきたな。寄ってく?」
丁度、高速のサービスエリアの看板が見えたので、同乗者に指でそれを指して尋ねた。
「お願いします。……そろそろ、トイレの我慢が」
「……そりゃ大変だな」
少しだけ、女の顔が赤くなっていたが、それだけ事態が逼迫していたのだろうか。何にせよ、正直に言ってくれた事を労う為にダイゴは車をサービスエリアに走らせた。
――道中 サービスエリア
トイレ休憩を兼ねた食料調達。サンドイッチと缶コーヒーを三本ばかり抱えて、レジに並ぶ。同乗者の女が会計を済ませている所だが、財布と一緒に出した定期入れから文字が覗いている。
悪いとは思ったが、ダイゴはそれを読み取った。
「(シロナ、ね)」
きっとそれが女の名前だろう。知って何になる訳でも無いが、何故かダイゴはその名前を頭に刻んで置こうと思った。
――カンナギタウン 村長宅前
「忘れ物、無いかな」
「大丈夫みたいです」
話していれば長い道中もあっと言う間だった。もう陽はとうに暮れて夜の闇が辺りを覆っているが、指し示され辿り着いた家の前には仄かな明かりが燈っていた。
かなり大きな日本建築風の屋敷。蝦夷には似つかわしくないそれは、この家がかなりの名家である事を証明している様だった。
「今日は有難う御座いました。……あの、本当に寄っていかれませんか?」
「ああ。一期一会って言うでしょ? もう二度と会わない訳だしさ」
車を降りて、お互いに向かい合う。周囲からは虫の音が聞こえて来て、二人の別れを哀しんでいるかの様だった。
女……シロナは送ってくれたダイゴを引き止めたい様だったが、ダイゴはそれを頑なに拒む。これがお互いにとって一番良い別れ方だと信じているみたいだった。
「あ……そう、ですか」
「む」
途端、シロナの顔が曇り、俯いてしまう。涙を我慢している様なそれにダイゴは罪悪感に囚われそうになる。
「そんな顔をしないでくれよな。困っちまうよ」
「だって」
一度決めたそれをダイゴは譲りたくは無い。しかし、シロナも行って欲しくないと言う様な表情でダイゴを銀色の目を射抜き続ける。
「……あー、判った解った! こいつをやるよ!」
それに負けた様に叫ぶとダイゴは少しだけ決定を曲げる事にした。
シャツの胸元のポケットに手を突っ込んでそれを握ると、シロナの手に握らせてやった。
「え、これ……煙草、ですか」
「と、ライターね。それ、僕のお気に入りなんだ、大事に持っててくれよ」
渡されたそれが最初何か判らなかったが、車内で男がそれを使っていた事をシロナは思い出した様だ。何処にでもあるような古ぼけたオイルライターと、そこそこ珍しい銘柄の煙草。ダイゴにとっては馴染み深い高校時代からの愛用品だった。
「持ってろって」
「だから、再会迄預けるって事。……きっと、来年も僕はシンオウの土を踏む。運が良ければ、逢えるだろうね」
しかし、こんな物を渡されてもシロナとしては困る。彼女に喫煙の嗜好は無いのだ。一体何がしたいのか訊くと、ダイゴは言った。
要するに、再会を祈願しての願掛けだったのだ。
「! そ、それはこの季節ですか? 場所は!?」
「待った! 其処迄は決めてない! そもそも来ないかも知れないしね」
それを理解したシロナの瞳が輝き、一気に捲くし立てる。だが、それは未だに定まらぬ未来。ダイゴ自身もどうなるか判らなかった。
「・・・」
「だから、運さ。でも確率があるだけマシだろう。色違いに出会うよりは簡単だよ」
「そうですが……」
確かに、男の言う通りである。それがどうにも体良くあしらわれている感じがして食い下がろうとするシロナだったが、結局適当な言葉は出て来なかった。
「さて、僕はもう行くよ。君も受験、頑張ってね」
「は、はい! あの――」
これ以上、ダラダラと時を過ごすのは良くない。ダイゴは決心するとシロナに背を向ける。背中越しに掛かるシロナの言葉。
「また、お会いしましょう。お兄さん」
「フッ」
再会を願う声だった。それを背に受けて、ダイゴは鼻で笑った。
……縁があるならば。
ダイゴは車に乗ると、シロナを残し、その場を後にした。
……その後、期限のギリギリ迄シンオウを彷徨ったダイゴは借りた車を返却し、ホウエンへと戻って行った。
そうして始まる大学生としての忙しい日々。時折、シロナの顔を思い出しては、一夏の思い出を噛み締める。
確かにあの女との出会いが一時のスパイスとなっていたのは確かだったのだ。
――数ヵ月後 カンナギタウン 村長宅 居間
季節は師走。大地の全てが白一色に染められていた。それはシロナが高校最後の冬休みに入る少しばかり前の事。
「・・・」
受験生ともなればこのシーズンは熾烈な追い込みを強いられる。シロナも例外ではなく、過去のセンター問題集と格闘中で、その眉間には皺が寄っていた。
前回の模試の判定はB。師匠であるナナカマドの下駄は当てにしたくは無いので何とかA判定に持って行きたくてシロナは釈迦力になって知識を詰め込んでいた。
「ねえ、お姉ちゃん」
「あによ」
そんな時、妹に声を掛けられたシロナは必死の形相を崩す事無く、問題集にしがみ付く。
流石にこんな時に姉の邪魔をする程命知らずでは無い。そうするのには当然、理由があった。
「煙たい」
それはシロナの周囲に充満する煙草の煙だ。視界が白く濁り、咳を催す程に煙っていたのだ。
「あっち行きなさい」
灰皿から煙草を拾って咥えて手で追い払う。本当に邪魔な様だった。
「むう! おばあちゃん! お姉ちゃんに何か言ってよ!」
「無駄じゃ無駄。学校では吸わない事を約束しておるし、今は大事な時期じゃ。大目に見てやりな」
そんな姉の素行の悪さを祖母に訴えるも、その祖母はと言うと完全に諦めた顔をしていた。カンナギの長老である彼女が匙を投げたのだ。それはもう覆らない事態だった。
「何て理屈よ、それ! お姉ちゃん、すっかり不良だよ!」
昔は真面目だったのに何時から姉は変わってしまったのか?
心当たりは無いが、夏休みのやや終盤。お盆過ぎ辺りに何か親切な人に出会ったとか聞いて暫くしてからだろうか。姉が喫煙に手を染めたのは。
それは周囲を驚かせたが、学校で吸う事も無く、受験勉強の合間に偶に吸う位だから周囲は特に強硬な態度は示さなかったのだ。
只、此処数日修羅場が続いているのか吸う本数は確実に増えていて、妹は心配だった。
「あー、もう」
だが、姉はそれを聞く気は無いのだろう。なら勝手にしろと、ほんの少し姉を妨害してやる為にテレビのスイッチを入れて彼方此方チャンネルを変えてやるも、姉は微動だにしなかった。
「あ」
そうして、とあるニュース番組が画面に映し出される。それに興味を惹かれた様にシロナの妹は母音の一つを喉へ通過させた。
「?」
シロナにはそれが気になった。答え合わせの最中なので、集中力が切れてしまったのか、自然と興味がテレビに移る。
「へえ、凄いなあ」
「何?」
感嘆の溜め息を吐く妹の顔が気になって仕方が無い。それ程に面白い内容なのか、シロナは作業を中断して椅子からを立ち上がった。
「見てよ、お姉ちゃん。凄いよね、この人。お姉ちゃんとあんまり歳も違わないのにさ」
テレビの画面を指差す妹。其処には白衣を着た研究者風の男達が何やら難しい話をしている。その中にシロナは見知った顔を発見した。
「――」
シロナが息を呑む。夏のある日に出会った、自分を車で送ってくれた青年だった。
『弱冠19歳の奇跡!? 化石復元装置、遂に実用化』
画面に張り付く字幕には確かにそう書かれていた。
話の概要はこうだ。
ホウエンの大企業、デボンとカントーのグレン島ポケモン研究所の合同研究により、ポケモンの化石を復元する機械が開発された。
以前にもその様な機械が作られた事はあったが、信頼性と成功率の面でとても実用化には程遠かったが、テレビで紹介されているマシンはその精度が過去のそれとは大きく違った。
そして、その開発に大きく貢献したのが、僅か19歳の大学生。デボンコーポレーショングループ御曹司のツワブキ=ダイゴだったのだ。
地元では幼少期から神童と呼ばれ、大人達を圧倒していた様だが、テレビに映る彼の顔には一切の感情が浮かんでいなかった。
「顔もイケメンだし、背も高いし、それに大企業の御曹司? ……きっとこの人、スーパーマンなのね」
「ツワブキ=ダイゴ……」
シロナの頭にはテレビのナレーションや妹の声は一切入って来ない。
噛み締める様にその男の名を呟くだけだ。
「なあに? お姉ちゃん、こう言う人好きなの?」
妹はそんなシロナを茶化す様に言って来た。その顔がニシシと嗤っている。
「……無理無理! お姉ちゃんみたいなタッパのデカい女何てそれだけ恐がらrグハッ」
シロナ自身が気にしている高い身長。それを態々指摘して言う辺り妹の性格は悪い。
だが、シロナはそれに怒る事は無く、只黙らせる為に妹の喉に抜き手を放つとゆっくりとした足取りで自室へと引っ込んだ。
「ダイゴ……」
電気が消えて暗い室内。暖房を切ってあるので寒々とした空気が身体を包む。
シロナはドアに背を凭れさせて、その名前を反芻する。
理由は判らないが、どうしてももう一度会いたかった。
それでも、何処の誰か判らなくて、日を追う度に気持ちが募って、胸が苦しかった。
だから、嘗ての彼がそうした様に煙草を吸ってみるも、堆積する心の澱は煙と共に出て行ってくれる事も無かった。
そんな彼が誰なのか判った。シロナは嬉しかったのだ。
「ダイゴ、さん」
シロナが自分の机の引き出しを漁る。ずっと前に預かった珍しい銘柄の煙草。シロナはそれを取り出して咥える。
使い込まれたダイゴのライター。今はシロナが大事に大事に使っているそれで火を点けた。
「ぶっ! ……キッツぅ! 味も香りも飛んでるわこれ」
肺に煙が満ちると同時にシロナが咽る。自分の吸うそれとは強さが違い過ぎて頭がクラクラする。賞味期限がとうに過ぎていたので、その味は只管辛かった。
363 :
音ゲーマー:2012/02/12(日) 01:04:39.69 ID:d39ufpgA
ゲームであれだけ石好きが強調されているのだから絶対にその道の人間であると思ったし、地学は考古学の基礎でもある。この二人、趣味の一部が重なってるよね。
>>362 お前が… ネ申 か…!
続き大いに楽しみにしてるぜb
>>363 GJ!
>一方が拒絶し、それでももう一方が求め続け
この感じだとなかなかくっつかなそうだから、長く楽しめそうだ
野暮だけど、「I want to your help.」 じゃなくて「I want your help.」 では
U:一年越しの再会
――トクサネシティ ダイゴ宅
「中々ドラマチックな出会いですね。少女漫画みたいだ」
「そうだね。でも、事実なのさ。困った事に」
ユウキの尤もな感想にダイゴが苦笑した。だが、それは事実で、脚色は殆ど無かった。
「で、そのニュースでシロナさんはダイゴさんの事を知ったんですか」
「そうらしいね。本人が言ってたから」
唯一、私情が入っているのはシロナの件。ダイゴ本人の話では無い以上、どうしてもそうなるが、シロナがそう言うのであれば其処に拡大解釈はあれど、嘘は無いだろう。
「それで、どうなったんです?」
「ん」
姿勢を正して座り直したユウキは話の続きをダイゴにせがむ。ダイゴはそれを了承した様に頷くと再び語り出す。
何と無く、だけどさ。また逢える予感はあったよ。
事実、僕達は再び出会ったんだ。
問題なのはその後さ。まさか、あんな事を言い出すとはね。
……出会いから丁度一年
――コトブキシティ バスロータリー前
ダイゴとシロナが出会ってから、一年が経過した。シロナの桜は咲き、シンオウ大の新入生として学籍を考古学部に置いた。
今は夏休みの最中。何かのサークルに属していないシロナはバイトや研究に没頭する事無く暇を持て余し、この日がやってくるのを一日千秋の思いで待ち侘びていた。
「来るかなあ……ダイゴさん」
出会いの発端となった場所で、シロナは呟く。
嘗て、因縁が生まれた地。あの時の出会いで自分の存在が大きく変わってしまった事を彼女は知っていた。
自分にもこんな乙女心があったのかと驚き、また逢えない苦しさを紛らわす様に煙草に溺れ、今ではその容姿と煙草臭さからか、誰も寄り付かない。
全てはあなたの所為。若し、本当に現れたならそう言って抱き付いてやろうと画策していたのだ。
「……無理、かな。やっぱ」
だが、やはりシロナも女である以上は弱気にもなる。去年の去り際、運が良ければとダイゴは言っていたが、その運が自分に向いているのかが全く判らない。この場所に来るかどうかすら不明だった。
……ぐうううぅ〜
シロナの腹の虫が鳴った。昨日は良く眠れなかったし、喉が痞えたみたいに食欲だって湧かなかった。だが、それでもシロナの身体は滋養を必要としていた。
「何か食べよ……」
今は14時に届く辺り。ホウエンからカントー経由の朝一の飛行機で空港に着き、車でやっとコトブキに着く時間。このまま待ち続けるにせよ、戦いは始まったばかり。シロナは近くに軒を構える行き付けのラーメン屋に進路を取った。
運ばれて来た醤油バターラーメン大盛を啜りながら、ちらちらとロータリーの方を眺める。絶え間ない人の群れの中に彼女が求める人物は居なかった。
そうして、箸で麺を摘まんで口に持っていこうとして……
――ズンンッ
「ぶっ」
瞬間、地面が揺れてバシャっと顔にスープが掛かった。
それを紙ナプキンで拭いながら外を見ると、三、四人が歩道に集まっている。
その隙間から見えたのはシンオウでは見た事の無い青く輝くポケモン。そして、背の高い銀髪の男。
「あ」
……間違い無い! ダイゴだ!
張っていた甲斐があったとシロナは荷物も放り出して店の外に飛び出した。
「ダイゴさん!」
「君は……」
周りの人間を押し退けて、名前を呼ぶとダイゴはシロナを見た。去年とYシャツの柄は変わっているが、それ以外は殆ど同じ。
やっと、やっと捕まえた。どれだけこの日を待ち侘びた事か。小躍りしたい気分を抑えて、シロナはダイゴの銀色の瞳を注視する。あれから、一年経過するがその輝きに変化は無かった。
「漸く、お会い出来ました」
「・・・」
自然と湧き出る嬉しさを抑える事はせず、シロナは笑顔をダイゴに送り続けた。
だが、ダイゴは変な顔をしたまま三点リーダーを返して来た。
「あの?」
何だろうか、自分に可笑しな部分でもあるのかと首を傾げてみるも心当たりが無い。
「いや、ほっぺにナルトが」
「!? //////」
で、ダイゴが正解を言うと、途端にシロナの顔が赤く染まる。慌てて顔を拭うと、確かにナルトが手の甲に付着している。地面が揺れてスープを被った時だろう。確かに可笑しな部分はあったのだ。
「お〜い姉ちゃん! 金貰ってねえぞ!」
「……食い逃げ?」
「ち、ちち、違いますよう!」
更に追い討ち。ラーメン屋の主人らしき人物が怒りながらシロナを追って来た。ダイゴは顔色一つ変えずにその様を見ていたが、当のシロナは恥ずかしいやら忙しいやらで頭が混乱しそうだった。
「此処のお勧めって何?」
「味噌全般はイケますよ。口臭を気にしないなら餃子。アイヌ葱がたっぷり」
「オッケー。じゃ、それとネギ味噌を貰おうか」
シロナがラーメン屋に戻ったので、ダイゴも序に食事をする事にしたらしい。シロナはこの店に通い慣れているので、ダイゴの問いに答えると、彼は早速注文した。
因みにシロナが醤油を食べているのは、前に来た時に味噌を食べたからだった。
「で」
「ズルズル……っ、はい?」
半分伸びた自分の丼を啜るシロナ。疑念の視線をぶつけるダイゴが言いたい事はシロナには判っている。
「何故、僕の名を? 名乗らなかった筈だが」
「テレビ、見ましたからね」
ほら、やっぱりだと別段喜ぶ事もせずにシロナは理由を語る。それ程突飛な……それこそ占い師の力を借りた訳でも、超能力でも無い普通の理由だ。
「テレビって」
だが、出演した本人であるダイゴの表情は困惑気味だ。まるでその事を覚えていない様な素振りが少し気になった。
「化石復元装置。受験前の年末に」
「……! あれって全国放送だったの!? ローカル中継だとばっかり思ってた」
「カントーと合同の大きな研究だったんですからそれは……」
其処迄言われて漸く合点が行った様だった。しかし、ダイゴ自身はホウエンで撮られた映像がシンオウに迄届いていた事が信じられない様だった。
随分と自分を過小評価している様なダイゴにシロナは苦笑した。
「参ったね。案外世界は狭いみたいだね。……シロナ君」
「え!」
そうして、ダイゴがやや照れ臭そうに頬を掻くと、次いで出た言葉にシロナは吃驚した。
……自分の名前。彼の様にテレビで名前が出た訳でも無いのにどうして? ……と言う顔をしていた。
「はは、悪いね。去年、サービスエリアで買い物してる時、定期入れが見えちゃってね」
「あー、ずるいですよ、そう言うの!」
「ごめんごめん」
そして、種明かし。ダイゴは去年の段階でとっくに自分の名前を知っていたのだ。それを顔にも出さずに黙っていた辺り随分性格が悪いのでは無いだろうか。
ダイゴの名前を知ろうと苦悩していた自分が一人だけ馬鹿みたいに感じたシロナは頬を膨らませた。
「でも、ダイゴさん凄いですよね。テレビで取材されるなんて」
中々ダイゴの注文がやって来ない。それでも、シロナの中にはダイゴに対し、言いたい事は沢山ある。例の放送の内容についてがそうだ。
自分と一つしか違わないのに、テレビに出る様な偉業をやってのけた事が純粋に凄くて、また憧れる。自分には決して真似出来ない事だとただただ感服していた。
「……別に僕の実力じゃないさ。元々は師匠が確立した理論を僕がアレンジして、研究チームに流したってだけさ。作り上げたのは彼等だよ」
ダイゴの顔が一気に表情を無くす。声のトーンも変わらない。だが、何故か其処には不機嫌さが滲んでいる様な気がした。
彼の師匠はネムノキ博士と言い、ジョウトのアルフ遺跡を調べていた考古学者。大分前に一線を退いた博士はホウエンのダイゴの高校で臨時教師をしていた。その時にダイゴの才を見初めた博士はダイゴに自分の知識を分け与えた。
そうして、ダイゴの好奇心は石のみならず、地質学の広い分野に向けられる様になった。そんな彼の師匠も歳には勝てないのか、今は体調を崩し療養生活を余儀無くされている。
「あの……」
「いや、もう僕にはどうでも良い話なのさ。古生物学にも未練だって……」
そのダイゴの姿に心がざわつくシロナ。だが、掛けられる言葉が思い付かないのか困った表情を浮かべる。
一瞬覗いたダイゴの瞳には絶望や憤りが浮かんでいる気がした。
「ダイゴさん?」
「悪いね。その話は勘弁して欲しい。……処で、君はその後?」
もう一度見た時、ダイゴの顔は何時ものそれだった。瞳も曇り無い銀色の色彩を放っていておかしな部分は見えなかった。
これ以上触れて欲しく無いダイゴは話の矛先をシロナに向けた。
「はい……何とか、合格しましたよ」
それに何と無くだが気付いたシロナは今度は自分の近況を語る事にした。去年、別れてからの受験勉強やら試験の内容、入学した大学での生活等話題は多くあったのだ。
「ズルズル……それで……っ、それで重要な質問があるんだけどさ」
「な、何ですか?」
ラーメン啜りながらダイゴが言う。重要な、と態々言ってきたダイゴにシロナは少し身構えた。
「っ……この辺にレンタカー屋(○産)って無い?」
「え、ええ。駅の反対側にありますけど、どうして?」
口元をナプキンで拭ってダイゴが尋ねたのは車の事。シロナ自身、車に興味も無ければ詳しくも無い。しかし、そのメーカーの店ならば駅向こうにある事をシロナは覚えていた。
しかし、何故そんな事をダイゴは聞くのだろうか?
「困った事に空港からの道でオドシシの群れに遭遇してさ。慌ててブレーキ踏んだらエンストしちゃってね。それは直ぐに直ったけど、ボンネット開けて調べたらエンジンベルトが逝っちまってた」
「……ああ。偶に道路を横切りますよね、あれ」
その理由と言うのがまたシンオウでしか在り得ない様なレアケースだった。過去にシロナも数回だが、百頭近い群れが列を作って公道を横切る場面を目撃した事があった。
エンジンが故障して安全運転が不可な状況ならレッカー移動が必要になるだろう。
「で、電話掛けようと思ったら僕のナビが圏外でさ。仕方無くメタングに乗って君と会った場所近くに降りたら、これまたビンゴだった訳だ」
※図鑑には飛べるとの記述がありますが、ゲームでは無理です。(作者)
「……暢気にラーメン啜ってる場合では無かったのでは?」
「良いよ良いよ。ちゃんとポケモンの力を借りて路肩に避けて、三角停止板も出しといたから」
ダイゴにとっては不運。だが、シロナにとっては幸運だった。若し、ダイゴの持つポケナビが圏内であったなら、二人が再会する事は恐らく無かっただろう。ナビの普及率はシンオウでは未だ未だ低いのが現状だ。
しかし、そんな状況を放置してラーメンを啜るダイゴは随分と図太い……否、中々の大物なのだろう。
「確かに、公道に故障車放置は拙いですね。……判りました。案内します」
「ズズズズ…………済まんね」
「良いんですよ。……あ、餃子一つ貰って良いですか?」
困っている相手が居るのなら、それがダイゴかどうかは別にしてシロナがそれを放置する事はしない。水先案内を引き受ける事をダイゴはスープを直に啜ってそれを飲み干すと頭を下げた。
シロナはそんな事で恩を着せたりはしない。ただ、自分のラーメンを食べ終えて口寂しいのでダイゴの餃子を一つ所望すると、ダイゴはそれに頷いた。
そうして、数時間掛けてレッカー移動を終え、新しい車を借り受けたダイゴは店の前でシロナと向き合う。陽は傾いて、僅かに空が紫色に染まっている。
「さて」
「はい……」
ダイゴが口走ろうとしている言葉をシロナは理解している。だが、どうしてもそれは聞きたくない言葉。だが、それでもダイゴは言うだろう。
「またこれでお別れだね」
「・・・」
吐かれた言葉が全身に刺さる様だった。ずっとその影を追って、やっと出会えたのに、たった数時間でお別れ等納得出来ない。
だから、シロナは己の胸中を瞳に込めて、唯無言でダイゴを見詰める。
「おっと、お嬢さん。これ以上何を望む? 僕は何も要求しないさ」
今にも泣きそうなシロナの顔。しかし、ダイゴは非情だ。甘い顔何て微塵もしない。出会いと別れを繰り返すのが人生だと、聞き分けの無い子供を諭す様な口調で言葉を紡いだ。
だが、シロナだってそんな事は判っている。それでも、譲れない想いと言う奴はある。
何でこんなに執着するのか、今迄自分で首を傾げていた事だったが、漸くその理由が見えた。だから、シロナはそうするのだ。心の儘に。
「だから君も今回はこれ「あの!」
突然、顔を上げて言葉を遮るシロナ。それにダイゴは一歩後ろに後ずさった。
「っ! な、何でしょうか」
それも当然だ。シロナの顔には何らかの決意が滲んでいて、それに気圧されてしまったのだ。
「あ、あたしを連れて行きませんか!?」
「――――ええ?」
そうして耳に聴いた言葉にダイゴは言葉を失った。
……What the hell are you talking about?
『……これは、きっとあたしの初恋。だから、後悔しない様に好きにやる』
そんなシロナの胸中をダイゴが知る由も無い。
372 :
音ゲーマー:2012/02/13(月) 13:09:23.83 ID:zcBWhmaB
>>352 ずっとヒマワキだと思ってた。恥かしいな…
>>366 チェックしてなかった!これだと助けたいになっちゃうな。これまた馬鹿な間違いを…
ありがとう。向こうではちゃんと修正しますた。
373 :
名無しさん@ピンキー:2012/02/13(月) 20:19:25.07 ID:U6CfMOH+
>>372 きゃーダイゴさん渋い!!
シロナさんかわいい!
現在の年齢からして結構前からかっ
出会った時に車内でやるべき
音ゲーマーさんが来ないとこのスレは伸びないなあ
他の人が書いても何の反応もない
まあどうしても見劣りしちゃうから仕方ないのかもだけど
そいつは禁句だぜ?
>>374 そういう発言が職人さんをスレから遠ざけさせるってなんで分からないんだ・・・。
音ゲーマーさんGJ!
続き待ってます!
V:奇妙な同行者
「えと、話が見えないんだけど」
フリーズを脱したダイゴはそう答えるだけで精一杯だ。
まあ、確かに一人旅は気楽で良いが、その反面寂しさが常に付き纏う。ポケモンでは埋められない人恋しさと言う奴だ。
シロナの様な美人の姉ちゃんが側に居れば恐らく楽しい旅になるのだろうが、それとこれとは別の問題だ。そもそも何だってそんな突飛な事を言い出すのかダイゴは理解に苦しんでいる。
「あ、あたしはこう見えても蝦夷っ娘ですし、色々案内出来るって言うか、いえいえそんな能力は無いかもだけど実際シンオウ何て広過ぎて行ってない処も多くて。
で、でも地図を見る事位出来ますし居たら居たらで色々とお役に、え、えっちなのは未だ駄目ですけどもだ、ダイゴさんが優しくしてくれるならあたしは別に……」
だが、理由を聞いてみるも矢継ぎ早に繰り出される言葉の弾幕が理解を容易にさせない。些かテンパっている事だけは何と無く判った。
ってか、えっちって何だ。そんな事を期待していると思われているのだと言うのなら失礼な話だ。幾らシロナが上玉だと言っても、良く判らない相手に獣性を解き放つ程ダイゴは無鉄砲では無いのだ。
「シロナ君!」
「は、はい!」
平常心を失い、錯乱気味なシロナの肩にダイゴは片手を置くと、大きな声で呼び掛ける。それに体をビクリとさせるとシロナは直立不動で固まった。
「落ち着け。そして、深呼吸だ」
「は、はい! すー、は−……」
そんなに早口で駆け抜ければ酸欠になる……と言う事ではなく、落ち着いた状態じゃなければ言葉が通じないからだ。
「落ち着いたな。で、改めて訊こう。どうしてそうしたい」
「それは……っ! これでお別れにはしたくないから!」
リラックスして落ち着きを取り戻したシロナにもう一度ダイゴは問う。その詳しい理由について。シロナは何とか聞き入れて貰おうと必死の表情と声色で叫ぶ。
だが、そんな程度で揺らぐ程ダイゴは安い男ではない。
「決め手に弱いな。僕にどうして欲しいんだ?」
「違います! あたしがそうしたい! ……もっと、ダイゴさんと一緒に居たいから」
どうにもそこからシロナの本気度合いが伝わらない。
それ以前に何を望んでいるのか、何をしたいのか、その必死そうな顔の裏で何を企んでいるのか。……ダイゴはシロナを疑っていた。
彼だって馬鹿じゃない。自分の持つ御曹司と言う肩書き。其処に金の臭いを嗅ぎ付けたハイエナの様な連中が笑顔の仮面を被って近付いて来た事はそれこそごまんとあった。シロナもそんな連中の一人に過ぎないのではないかとダイゴは思ったのだ。
だが、シロナは疑いを向けるダイゴの思いを知らず、只管真っ直ぐな想いを叩き付ける。恋する乙女は無敵だと言わんばかりに。
「もっと一緒にお喋りして、一緒に行動して、ダイゴさんを知りたい。そして、あたしの事も知って欲しいから……」
シロナは只、そうしたいからそうするだけだ。其処に打算や物欲と言った物は付随しない。酷く真っ直ぐで、そして自分勝手なシロナの都合だった。
「ふむ」
その黄金の瞳を見て、瞬間ダイゴは悟る。馬鹿みたいな話だが、この女は本気だと。ダイゴにはそんな妄言に付き合う必要も義理だって無い。
「だ、ダイゴさん。あたし」
「……良く吼えたものだね」
泣きそうな顔でシロナが見て来た。胸中を全部語ったのか、ダイゴの名前を呼ぶ事位しか出来ないのだろう。
その声に耳を貸す必要等、無い。そんな自分勝手な都合に振り回される義理は無い。
何時もの様に作り笑顔を浮かべて別れを告げれば良い。
その筈だったのに。
「気に入った! 乗りなよ、Sweetheart!」
どうしてもダイゴにはシロナの願いを切り捨てる事が出来なかった。それがどうしてか判らない。だが、もう決めてしまった以上、その正体についてはどうでも良い。
だから、車の助手席を開いてシロナを迎えてやった。
……只、これが後々に益に働くかも知れないと言う損得勘定は働いたかも知れないが。
「あ……は、はい!」
許可をもぎ取った! それが信じられなかったが、目の前に開いた車のドアを見てこれが現実だと確信する。シロナは去年と同じ様に車に乗り込んだ。
「車中泊が頻発するだろうし、何処に行くかは一箇所除いて基本、未定。帰るなら今の裡だが、平気かい?」
「とっくに覚悟してますよ」
シートベルトを締めているこの旅限定のパートナー(仮)にこれ以上進むなら覚悟を決めろと念を押す様に尋ねる。
だが、シロナはそれでも折れない。途中下車する気は更々無い様だった。
「上等だ。なら最初は……ショッピングセンターにでも行くか」
「買い物、ですか」
そうして、直ぐに本決まりしたパートナーに最初の行き先を告げた。
「一人増えた訳だから、色々物入りだよ。お金は心配しなくて良いけど、君には先ず必要な物がある」
「何でしょう」
元々、当ての無い旅だが、独りでする以上は別に大した問題じゃあない。去年と同様に気侭に彷徨い、石を掘っているだけで良い。だが、今回はそれで済まない。
趣味の石掘りに同乗者を無理に付き合わせる事は出来ないし、早急に作戦を立てる必要があった。物資調達が最たる例だ。
「着替え。それ一着じゃ洗濯すら出来ないよ。それに替えの下着とか絶対に要るでしょ?」
「あ……た、確かに」
シロナの格好はどうみても余所行きの一張羅。白いパンツに臍が見える丈の黒いキャミに足にはサンダル。頭には去年は無かった特徴的な髪飾りがあしらわれていた。
荷物はやや小さめのショルダーバッグのみ。其処に着替えが入っているとは考え難かった。シロナは今、コトブキにアパートを借りて一人暮らしらしいが、きっと彼女自身も旅に同行するとは当初は考えていなかったのだろう。
「汗臭い女も別に嫌いじゃないけどさ」
「え」
不意に、ダイゴの口を飛び出した意味深な台詞にシロナが固まる。それはつまり……
……どう言う意味ですか?
「意味は特に説明しないよ。自分で考えてね」
「はあ」
ダイゴがアクセルを踏むと、当ての無い旅に向けて車が前に走り出す。
カーオーディオから流れるやたらスタイリッシュなBGMがシロナのテンションを上げて来る。 ……結局、その言葉の意味がダイゴから語られる事は無かった。
男一人、女一人の旅が始まり三日が経過。その間に艶っぽい話は一切無かった。
何処に行くか決め兼ねていたダイゴだったが、シロナが南に行ってはどうかと言うので、それに乗った。
シンオウの南の端。ゲーム中は行く事が出来ない襟裳へ進路を取り、その岬でタマザラシの群れを見て、本当に何も無い場所だと誰かの歌を思い出して二人して笑った。
次の目的地はノモセ。海岸線を北東へ進路を取り、只管走り続けた。
……その途中。
――シンオウ地方 ノモセ南西の海岸線
一日近く走り通して、流石のダイゴもくたくただった。そして、それはシロナも一緒だ。彼女はハンドルは握らないが、それでも居眠り一つせずに地図と睨めっこして、的確にダイゴのサポートを行っていた。
もうとうに日も暮れている。事前に買い込んで置いたレトルトパックのカレーとご飯を携帯コンロで湯煎した物を食し、その日の夕食は終了だった。
アイドリングを切り、シートを大きく後ろへ倒して、後部席のタオルケットを手繰り寄せる。そして、寝そべって窓の外に目をやると辺りは真っ暗闇だった。空は曇っているので星明りすら覗かない。
それが何ともつまらなくて。特に用があった訳では無いが、ダイゴはシロナに話し掛けた。
「冒険したい年頃なのかは判らんが、些か選択を誤ったのでは?」
「どうしてです?」
突然のダイゴの質問に眠ろうとしていたシロナは顔を横に向ける。
「いや、只そう思っただけさ」
運転席のダイゴは瞳を閉じて、只じっとシロナの言葉を待っている様だった。
「そりゃ、楽しい事ばっかりじゃないのは判ってました。でも、それも覚悟の上なんですよ」
僅か三日程度の行動だが、少しはダイゴと言う人間については見えた気がする。
何処まで行っても無色透明。自分と言う個性が無い様にダイゴは振舞う。何があってもマイペース。顔に出して怒る事も、大仰に笑う事も、悲しむ事も無い。
その凡そ空気を読まない発言に励まされた事もあれば、逆に腹が立った事もあった。それでも、無意識的に傷付ける発言だけはされた事が無い。
「今はダイゴさんと一緒に居られれば、あたしはそれで良いんです」
極力、敵を作らない生き方、と言う奴なのだろうか。自分に対してだけでは無く、誰に対してもダイゴはそんな姿勢を取り続ける。普通ならば只の八方美人で終わってしまい兼ねないのに、ダイゴはそれとは違う。
余程、頭の回転が早く、又相手の心の機微に聡いに違いない。
……だからこそ、気になる。一緒に居れば居る程、謎が増えるこの男が。
「……僕も男だ。豹変する事もあるかもよ?」
「その時は……ふふ。優しくして欲しいですね」
ダイゴがシロナに顔を向ける。何時もよりトーンが落ちた声。こちらにはその準備があるとでも言いそうな声。そんな警告的な言葉をシロナが真っ向から受け止める。
望む所だ、と。
「「・・・」」
そして絡み合う二つの色の異なる視線。温度を感じさせない冷徹な白銀と闇に映える壮麗な黄金。お互いの心が通い合う瞬間だった。
「呵っ! 馬鹿馬鹿しい! ……もう寝るよ」
「…………はい」
その瞳にシロナの本気を垣間見たダイゴは話の一切を冗談の一言に済ませ、寝てしまう道を選んだ。
かなり勇気を振り絞った自分の発言が空振った事以上に、自分を真正面から見ようとしないダイゴの素っ気無い態度がシロナには悲しかった。
「あ……」
「ん?」
そうして、自分も寝てしまおうと決めた瞬間、シロナは思い出したかの様に呟く。それを耳で拾ったダイゴは何だと言う顔でシロナを見る。
「そう言えば、預かったライター」
「ああ、あれね。……良いさ。君にあげるよ」
それは去年、ダイゴがシロナに預けたオイルライターだった。再会に乗じて返すつもりだがシロナは今の今迄すっかり忘れていた。だが、今更ダイゴはそれを返して貰おうとは思わない。
「良いんですか? 貰って」
「勿論。大事にしてくれている様だからさ。僕の代わりに使ってやってよ」
「……はい! そうします」
彼女が煙草を吸う時に見たそれは手入れが行き届いて居て、使われているライター自身が幸せそうに見えた程だった。
それなら、ライターはこのままシロナが使う冪とダイゴはそれを譲り渡す。それが初めて貰ったダイゴからのプレゼントの様に感じられて、シロナは嬉しそうに笑った。
――ノモセシティ 大湿原
翌日。ノモセに辿り着いた二人はこの街の唯一の見所である湿原に足を踏み入れていた。
「大したモンだなあ、こいつは」
「嘗ての海の残り香。何度見ても圧倒されます」
その雄大な姿にダイゴも言葉を奪われた。数回に渡りこの地を踏んだシロナであってもその感動は色褪せない。
「ホウエンにも自然は多いけどこれだけの規模のモノは無いよなあ」
この圧倒的な敷地の広さ。湿原内に列車が走っている等、スケールが全く異なっている。ホウエンのサファリも中々に広いが此処には敵わない。やたらと自転車のテクニックを試されるギミックはあるが、その程度のモノだ。
一応、此処もサファリゾーンの体を成してはいるが、二人の目的は観光であって、態々泥の中を分け入ってポケモンを捕らえたりはしない。不用意に服を汚して洗濯に回す真似は時間の無駄だった。
「気に入りました?」
「そう、だねえ」
去年に渡り、二度目のシンオウ行脚。故郷のホウエンとは全く表情が違う自然。文化。人々。同じニッポンでありながら、南北の距離がそのまま住んでいる人間の心の距離になっているかの様だった。
確かに、シンオウは美しい。だが、故郷であるホウエンの水にすっかり馴染んでいるダイゴはそれを素直に認められないのかも知れない。地域性と言ったモノに戸惑っているのかも知れなかった。
「――」
……そうやって。
遠くを見ながら、表情の一つすら変えずに思案に耽るダイゴの端正な横顔。時折吹く風がその銀髪を揺らして、女であるシロナを以っても目を離し難い危険な色気を放っている気がした。
「どうしたの?」
その視線に気が付いたダイゴがシロナを見やる。だが、シロナの反応は鈍く、その声に反応する迄数秒を要した。
「あ……いえ、絵になるなあって」
「はあ?」
――すみません。見惚れてました
そんな旨の発言に今度はダイゴがポカンとした。ダイゴ自身は判らないだろうが、彼は美形である。こんな景勝地で隣を見ればイイ男が居るのである。女であるシロナはその誘惑に抗えなかったのだ。
「うふふ。何でもないでーす」
少しだけ赤い顔をしていたシロナはその顔をダイゴに見せない様に金色の髪を靡かせて、その場を駆け出した。
「ダイゴさ〜ん! こっちー!」
「・・・」
重そうにぶら下る乳房をユサユサと揺れさせて、シロナはダイゴに向けて手を振る。
屈託無い笑顔を見ながらダイゴは確かにこう思った。
『絵になってるのはそっちの方だっての』
だが、それを顔にも口にも出さない。只、やれやれと呟いてダイゴはシロナの後を追う。もう少し、相棒の茶目っ気に付き合ってやろうと思ったのだ。
381 :
音ゲーマー:2012/02/14(火) 12:49:52.59 ID:QXIrehRy
>>374 それって俺の作品が他の人のやる気を殺いでるって事?そんな事言われても困っちゃうな。俺はただ投下してるだけなんだけど…
まあどの道この容量じゃ続きの投下は無理だ。次スレまで引っ込むよ。…ってこの台詞前のスレでも言ったっけな。
なにがしたいも何も
音ゲーマーさんが来ないとこのスレは伸びないっていうのは間違っていないと言ってるだけだが
385 :
名無しさん@ピンキー:2012/02/14(火) 16:33:31.17 ID:wg5LzFOQ
>>384 確かに音ゲーマーさんは凄いが、そんな言い方をすると職人さんが不快な思いをする。
書いてもらってる身なのに、それを言うのはどうかと思うぞ?
>>384 そう言うてめえの発言に責任を持たねえのか?
禁句ってモンを知らんのか?
音ゲーマーさんGJ
続き全裸で待ってる!
・・・なんだけど、荒らしと思われる書き込みにまで反応しない方がいいと思うよ。
>>384みたいなのはどこのスレにもいるから構ったら負け。自分ももう反応しない。
職人さんが来たら全力で歓迎して、投下してくれたら感謝。気に入らなければ静かにスルー。
それだけだ。
これはもう埋めにかかっていいのかね。
埋め。
土里さん召喚!
ミヽー 、_
> `ヽ、
/ /'/ ノィ ヽ
/ / / /イ/ `! ヽ
/イ/ / / _" rー l ! ヽ
レ!イ エ! iヨ }イ、!´ うめないか
レ'ヽ、 ノ i-'
/ ヽ、 ー‐'/|、
,.、-  ̄/ | l  ̄ / | |` ┬-、
/ ヽ. / ト-` 、ノ- | l l ヽ.
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/ |`二^> l. | | <__,| |
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}/ -= ヽ__ - 'ヽ -‐ ,r'゙ l |
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ミヽー 、_
> `ヽ、
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/イ/ / / _" rー l !ヽ  ̄< けっきょくボクが
/ レ!イ エ! iヨ }イ、! \ \_______
レ'ヽ、 ノ i-'
ヽ、 ー‐', /
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/ /|/ヽへ_ ヽ / / /\ \
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 ̄//| i〕 i〕 .レへノ \ / ・ ・ / /<すごいんだよね
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\\ ノ_, / / /\ _ /\/ \______
いちばんつよくて>\__ ∩ ∨∩ \__/∩
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`ト- /レ1/l:::::::l l`ー' / / ',
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| , /l /⌒マ / ひとり埋めとか そういうのダメよ
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チャンピオンじゃありません〜 !!
(口) (指) (視) (触) (禁) (戦)
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{:::/:/l 代ヒァ\ レ
ゞ¨ | | \ !
l | l\ ー } l
l | l爻> ィ´,, | ヽ
l | ':,爻从从爻ミ;, ヽノハ
l .:::| \爻メ爻爻; /
. ,イ::::::从 /爻爻;:::!「 ̄
{:::::::::::::::\__/爻爻{::::::i|
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',圭ニヾ=/ ヾ ヽ l \\ i i! |!ニニニ)
>三,zイ 丶 , - 、 { /\ヽ |!. |!ニニ/
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