◆ポケモン系のエロパロSSスレです 皆で楽しくマターリ行きましょう◆
※次スレは480KBor950レスオーバを見かけたら、早めに立ててください
【諸注意】
・人×人もしくは人×ポケモン専用スレです
・ポケモン同士及び801は、各専用スレ/他板がありますのでそちらへどうぞ
・題材は基本的に職人さんの自由です(陵辱/強姦/獣姦おk)
・荒らし&アンチへの反応は無用&スルー
・ポケモン板の話題を持ち込まない
・ここの話題を他板に持ち込むことも厳禁
※職人さんへのお願い
・台本形式(フグリ「おはよう」アレッド「よぉ、フグリ」など)は
嫌われるので止めたほうがいいです
・投稿する際には、名前欄に扱うカプ名を記入し、
冒頭にどのようなシチュのエロなのかをお書き下さい
・女体化/スカトロ/特定カップリング等が苦手な住人もいます
SSの特徴を示す言葉を入れ、苦手の人に対してそれらのNG化を促しましょう
※読者さんへのお願い
・SSを読んだ場合、感想を書くと喜ばれるかも
・作品叩きは荒れるので止めましょう
*苦手なカプ&シチュであってもSSに文句を言わず、
名前欄の語句をNGワードに設定してスルーしましょう*
・本人の許可なく投稿SSの続編及び改造は行わないでください
*SSは書いた職人さんの汗の結晶です…大切に扱ってください*
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5 :
名無しさん@ピンキー:2011/10/26(水) 00:37:52.93 ID:thkeVrIY
_人人人人人人人人人人人人人人人人人_
> ボクの全身から溢れる
>>1へのラブ! <
 ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^^Y^Y^Y ̄
_
_,.. '''" ̄  ̄"'''- ..
! .r '''" ̄ ""' ` , `,
.! ,!_. .._ノ /
/ ___ _ , ノ`"'''- <
_`,'´ノ ヽ ! /\ 、 ` ._
ヽイ(ヒ_]´ヽ1 (ヒ_] 丶 ゝ ,ノ
| !'" ,___, ""! , フ
! ヽ _ン ! ,' '"´
V丶 __________, ヽ/ "ゝ
主人公にやられるミニスカートか
8 :
名無しさん@ピンキー:2011/10/27(木) 18:41:50.09 ID:rd1K6+B5
さっさと投下しろ
9 :
名無しさん@ピンキー:2011/10/27(木) 23:32:58.40 ID:KrEPDn2W
別の板でアカネとイブキに逆レイプされるSSが
10 :
音ゲーマー:2011/10/28(金) 15:38:27.49 ID:7BtGv0VD
誰かに呼ばれた気がする。投下再開。
コテは以上の様にお願い。エロパロで長年思い入れのある名前なので。
陸:愛を注ぐ責任
「・・・」
目を閉じて黙祷するレッドを横目に見ながら、リーフもまた思い出していた。
こんなに真剣に祈りを捧げられるなんて、余程相棒を愛していた証だろう。
リーフはそう信じて疑わない。
そして、想いの深さなら自分も決して負ける気はしないとも。
相棒を貰った当初は散々文句を言った気がする。
「やだやだあ! こんなのよりプリンが良い!」
まあ、子供……それも女の子にありそうな駄々だった。だが、それもリーフの気持ちになればそうだろう。世界で一番醜いと言われたポケモンを半ば押し付けられたのだ。
あれが無ければリーフが確実に投げ出していたのは確かだった。
「これなあに?」
「図鑑だよ。パパが各地で仕入れたポケモンの情報を纏めた物なんだ」
あれとは父親が纏めたポケモンのデータの資料を見せて貰った事だ。
図鑑と言うにはおこがましいポケモンの詳細な図解が載っただけの紙束だったが、その一部は現在のポケモン図鑑の礎になっていると知った時は大層驚いた。
「ほら、リーフ。これを見てごらん」
「んー? ――わあ」
そんな事よりも衝撃的だったのはとあるページに記されたポケモンだった。
「凄い綺麗! ねえねえお父さん! これ何て言うの!?」
「これはミロカロスって言ってね。世界一美人なポケモンさんだ」
慈しみを司り、見る者全ての荒んだ心を癒すと言われる逸話があるポケモン。その存在を知った時のリーフの衝撃は凄かった。
だが、それ以上に衝撃的だったのはそのヒンバスとミロカロスの関係だった。
「世界一ぃ? ねえねえ、リーフも逢えるかなあ? そのミロ……何とかさんに」
「逢える可能性は高いね。だって、リーフはもう持ってるだろう?」
「??」
「ミロカロスはね。ヒンバスが大きくなった姿なんだよ」
進化条件……美しさを重点に慈しみを以って育てましょう。
「ええ〜〜!? うっそだあ!」
「本当だよ。多くの事例を見てきたから間違いない。……リーフもこの子に会いたいなら、しっかり可愛がって育てるんだよ? 美容院行ったり、渋いお菓子を上げたりね」
「む、むうう……」
どうにもリーフは信じられなかった。あの格好悪い魚がこんな綺麗に化けるなんて、まるで醜いアヒルの子の様だったからだ。
しかし、父が嘘を言っているとも思えなかった。何て言ってもポケモンの研究を仕事にしている人だ。その知識は誰よりも深いに違いない。
「……分かった。頑張って、可愛がる」
「良い子だなリーフは。お兄ちゃんも龍鯉伝説を夢見て……かは知らないけど、コイキングを育ててるんだ。頑張りなよ」
何やら上手く誘導された気がしないでも無かったが、あの美しいポケモンが自分と居るのだと考えると幼いリーフのテンションは不思議と上がって来た。
その日から一転してリーフは木の実栽培に夢中になった。父の言うヒンバスの美しさを磨く為にカントーでは普及していないポロックやポフィン作りにも手を出し始めた。
その実験台になったのは主に自分と兄貴。毛艶をなるべく消費しない為に、幼少の兄妹はポロックやポフィンの失敗作を食べて腹を壊す事が日常的だった。
美容院にだって通った。それだけでは足りず、自分でグルーミングの技術を学んだり、お隣のナナミお姉さんから教わったりもした。
そんな涙ぐましい努力の甲斐あり、リーフが小学校に入る頃にはヒンバスは見事ミロカロスへ進化を遂げていた。
全ては進化の為に。その副産物として、料理作り(ポケモン用)の腕はその年齢からは郡を抜いて上手かった。
小学中学年に入り、兄が図鑑編纂を断った事を切欠にリーフもまたそれを断る。
レッド程バトルが得手だった訳ではないし、グリーン以上のポケモンの知識は持ち得ない。自分にあるのは料理の腕だけなので、内心ほっとしている部分もあった。
それから少しずつだが、リーフもバトルのいろはを学び始める。やはり、血は争えないモノで、一年も経過する頃にはレッドと比べても遜色無いトレーナーへと成長していた。
――マサラに双神威(ふたつかむい)ありき
……そんな変な二つ名で呼ばれたりした事もあった。
……只管に愛情を以って接して来た。本当はバトルにだって出したくなかった。相棒が傷付くのが耐えられなかった。
それでも、少しでも兄の側にあって自分の実力を周りに認めて欲しかった。
『嗚呼、あたしってば相棒を道具として使ってる』
そう思った事も一、二度ではない。それでも、相棒は自分を信じて戦ってくれた。
……それならば。
「道具を道具として上手く使ってやるのが、トレーナーの宿命」
リーフはそう思い込んで自分を欺く事にした。……道具だ何て欠片も思っていない癖にだ。
そして、時は移ろいあの事件がやってきた。
――兄が、無二の相棒を失った
その時のレッドの憔悴振りと言えば見ているこちらが泣きたくなる程に酷かった。やせ細り、満足な受け答えすら出来ない。意味不明なうわ言を繰り返し、夜中に大声を上げて飛び起きて、トイレに駆け込み嘔吐する。半分病人の域だった。
とてもじゃあないが、数日前にあった目出度い事とその証を表に出せる状況ではなかった。
兄のギャラドスが死ぬ丁度二日前だ。相棒のミロカロスが何かを大事そうに抱えていたのだ。 見た瞬間にリーフはあ、これはと思った。
それはポケモンの卵だったのだ。実物を見るのは無論初めてで、途方に暮れている所に丁度通り掛ったオーキド博士が
『良し。そう言う事なら儂が預かろう! 儂も卵に触れた事は余り無いのでな。これは良いデータが……いや、ちゃんと預かるぞ? うむ』
……そんな事を言いながら卵を持って行ってしまったのだ。
レッドのギャラドスとリーフのミロカロスは非常に仲が良かった。育て屋に預ければ即行で卵が出来そうな程に。今迄見つからなかったのが逆におかしい位だった。
今思えば、これは自分の死期を悟ったギャラドスが自分の血を残そうとした結果なのでは無いか、と勘繰ってみるも、それは本人達にしか分からない事だった。
……何れにせよ、こんな状況のレッドにギャラドスには残し形見が居ると言う事を伝えればどうなるか分かったモノではない。
リーフは結局、この事をレッドが落ち着く迄、黙っている事にした。
番を失って夜に泣いている相棒の姿を見てしまったと言うのも理由だった。人間もそうである様にポケモンも同じく悲しいのだ。
それから少し経ってレッドは大分落ち着く様になった。しかし、以前の様な感情は消えうせて、何処かが壊れてしまった事をリーフは妹として理解した。
その原因を作り上げたロケット団を大層、恨んだりもした。ギャラドスを殺した事もそうだが、兄の笑顔を奪った……否、殺した事は絶対に許せない。
リーフはレッドが自分に向ける笑顔が何よりも好きだったのだ。だが、所詮は小娘である彼女が出来る事は何も無かったのだ。
そして、リーフは引き続き博士に卵を預かって貰う様に頼んだ。新しい命を育てる精神的余裕は彼女にだって無かったのだ。
……そうして、とうとうリーフにも別れがやって来た。そして、それは今の兄妹の原型が出来上がった瞬間でもあったのだ。
どうもミロカロスの様子が芳しくない。最初は只の風邪だと思った。だが、違った。日を追う毎に弱り、とうとう自力では動けなくなる。
美しかった鱗は艶を失い、ボロボロと剥がれ落ちてくる始末だった。
ポケセンへ連れて行き、診断を受け、返って来たジョーイさんの答えは意外なモノだった。
――ポケルス感染
そんな馬鹿なとリーフは思った。
ポケルスはポケモンに寄生する微生物郡の総称で、発症確率は凡そ1/22000。そして、例え感染したとしても害を成さず、寧ろ得られる努力値が倍になる益を及ぼす存在だと習って知っていたのだ。
だが、ミロカロスが感染したものはそれらとは一線を画す危険なモノだった。
形態はポケルス様だが、他個体への感染力が無く、感染個体の細胞の複製機能を用いて自身の複製を作り出し、最後には細胞を破壊する。
……完全にウイルス感染だった。しかも、この複製の際に生成される毒素の強さと爆発的な増殖力は死病と言っても差し支えない程のモノであった。
前述の通り、本来のポケルスは毒性が無く、感染個体は勝手に免疫を作り出して自力で治ってしまう。だからこそ、ワクチンや抗生物質と言った物が存在しない。
それはつまり、治療不可能と専門家から死亡告知をされたも同義だった。
……更に恐ろしい事に、だ。
今迄、毒性を持つポケルスは発見された事が無い。今回のこれにはポケルスに似た特徴はあるものの全くの別物である事。致死性が高く、感染力が無い事からこの致死性ポケルスが何者かに創り出された可能性が高い事が示唆された。
つまり、ミロカロスは何者かが起こしたバイオテロの犠牲者である可能性があると言う事だった。
一体自分に何が出来るのか。リーフは力無く項垂れた。直る見込みの無い相棒を死の瞬間迄看ていてやれと言うのか。今直ぐ姿も分からない犯人を捜して治療法を聞き出せば良いのか。
……考えが纏まらない。リーフは相棒が苦しんでいる家に帰るのが精一杯だった。その足取りは明らかにふら付いていた。
それからリーフは手を尽くした。最新の薬、民間療法、効き目のありそうなあらゆる方法を試した。そして、挫折した。
寝ずの看病を続け、倒れそうなりながらも、レッドや母に支援されながらそれでも頑張り続けた。グリーンやオーキド博士の手を借りたりもした。
『愛情以って、しっかり可愛がって育てるんだよ』
子供の時、父が言った言葉を実践する様に踏ん張り続けた。
だが、それでも神は応えなかった。
数日に渡り続いた地獄の様な臨終の苦しみがとうとう終わった。それは奇しくも一年前にレッドのギャラドスが死んだ日だった。
医者が見守る中でミロカロスは息を引き取った。
体の大部分の肉が壊死し、腐り落ちた凄まじい状況だった。慈しみの化身とも言われるミロカロスがそんな醜い姿を晒して死ぬ。
……こんな残酷な事があるだろうか。
臨終を告げられた瞬間、張り詰めていた糸が切れた様にリーフは意識を失った。限界はとうに超えていたのだ。
数日眠り続けたリーフが目覚めた時に、最初に目に入って来たのはテーブルに置かれた相棒の遺灰が入った骨壷と、剥がれ落ちた虹色の鱗だった。
「――――ッッっ!!!!!!」
リーフは泣いた。慟哭した。今ならば兄の気持ちを理解出来る。声にならない声で只管に泣き続けた。
後の顛末は大体がレッドと同じだ。塞ぎ込み、笑顔を無くした彼女は兄と同じ道を辿る。
『あはは……もうポケモンはいいや。可愛がる程に、別れは辛いって判ったから、さ』
こうして、リーフは兄と同じくポケモンから足を洗ったのだった。
リーフはその騒ぎの後、オーキド博士に卵の処遇についてこう言った。
……無期限に預かって下さい、と
一心に愛され、またそれに応えた彼女の相棒。遺された鱗は、今も彼女と共にある。
14 :
音ゲーマー:2011/10/28(金) 15:50:33.42 ID:7BtGv0VD
本来はこれで終りだけど、日にちが空いたのでもう一発。
良いよね?答えは聞いて(ry
漆:打ち込まれた楔
話はそれで終わらない。
二人にとっての運命が決する日が唐突に訪れた。ミロカロスの件が終わって数ヵ月後。
その日、母は不在だった。久し振りに帰って来た父と旅行に行ったのだ。
レッドもリーフも宅配ピザを喰いながら居間でテレビを見ていた。
「……おい、こいつは」
「ん? 何々?」
唐突にレッドが声を荒げた。大分元気を取り戻していたリーフが面白い物でもやっているのかと寄って来る。
「え――」
画面を見て絶句するリーフ。それはある事件を報じるニュースだった。
『バイオテロの首謀者逮捕! ポケモン研究所職員、ロケット団と内通か』
……こんなテロップが付いていた。
概要はこうだ。数ヶ月前にミロカロスが罹患した致死ウイルスはロケット団と関係していたとある研究員が提供された資材とサンプルから創り上げたと言う事が判明したのだ。
創られたウイルスはデータ収集の為に飲み水に混入され、その水を使ったマサラからトキワ間の数多くの野良、飼いポケモンが被害に遭い、命を落とした。その数は報告されるだけで百件を超えていた。
これだけでも大問題だが、更に悪いのはその研究者が現役のグレン島ポケモン研究所職員であり、ウイルス開発の一部はその研究所の設備が使われたと言う点だった。
始めは別件捜査だったらしいが、その痕跡が日向に出て来た為に今回の大々的報道に至ったのだ。
……研究所の保安体制はどうなっているのかと各所からクレームが飛んで来そうなスキャンダルだった。
そして最高に傑作なのが、検挙された研究員のコメントだ。
『研究の為にポケモンがどんな目に遭おうが関係無い。科学を追及して何が悪い』
……もう、笑うしか無かった。それでいて、胸糞が悪くなる話だった。耐え切れなくなってリーフはテレビの電源を切った。
「――何よ、それ」
世界の全てが色を失ってしまった様だった。黙っていても湧き上がる感情の波。諸々の負の想念がリーフも肉体と言う殻を破って飛び出そうになる。ワナワナと震える握り拳からは血が滴っていた。
「・・・」
レッドは若干、顔を俯け、目を閉じてソファーに座っていた。何を考えているかも知れない彼の佇まいには或る種の不気味さが在った。
「何なのよ、その理屈。関係無いですって? ……こんな、こんな無責任な奴等に、ミロちゃんは……!」
あの時、味わった苦悩や絶望は何だったのか。研究と言う名目で命すら奪われた相棒の生にはどんな意味があったのか。
自分を取り巻く全てが理不尽で、ずれている。そんな風に鬱憤を撒かなければとてもじゃないがリーフは正気を保てそうも無い。
「落ち着けよ、妹」
レッドは尚も冷静だった。今にも外に飛び出しそうなリーフを宥める様な言葉を掛ける。
「はあ!? 何言ってんのよ! アンタだって相棒殺されたでしょうに! それとももう忘れちゃったのかしらね!? あの痛みを!」
だが、それは妹の逆鱗に触れた様だった。状況は違うが、喪ったと言う痛みを共有していた筈なのに。
『兄貴も同じだと思っていたのに』
初めてレッドに裏切られた気がして、リーフは激しく敵意を剥き出しにして、レッドの胸倉に掴み掛かる。
しかし。
「んなわきゃあねえだろうが!!」
「ひっ!?」
……吼えた。窓硝子がビリビリと振動する程の大声だった。リーフは一瞬にしてクールダウンし、手を放して尻餅を付く。レッドの目を見てしまったのだ。
自分と同じ、空色の、偽りの瞳。在り得ない筈なのに、その中に赤い光を見た気がした。
「今も燻ってる。いや、煮え滾ってるぜ。忘れられる訳が無ぇ」
レッドは決して冷静な訳では無かった。静かに、それでも確実に怒りの炎を燃やしていたのだ。その証拠にレッドの口の端から血の筋が伝っている。噛締め過ぎて、歯茎から出血していた。
「そ、それならどうして!」
怯んでしまったが、リーフは引き下がらない。どうして自重する必要があるのか。もう掴み掛かる様な勢いは無いが、それでもキッとレッドを睨み付けた。
「ここで喚いても何にもならんて事だ」
「――ぐっ」
正論だ。此処で泣き叫んでも犯人が都合良く死んでくれる訳じゃない。
逆鱗だって、使用すれば最長三分の高火力指向の後に疲れ果てて混乱する運命が待っている。怒りの爆発は短時間しか効果を現さない。
それならば、静かに気付かれない様に、その時が来る迄剣の舞でも積んでいた方がよっぽど建設的だとレッドは知っていたのだ。
リーフは悔しげに歯噛みして、不機嫌そうにソファーに腰を落とした。
「……どうして、どうしてこんな奴等が居るのよ。ミロちゃんが死ななくちゃいけなかったのよ……! …………神様、酷いよ」
恨み節がみっともないと言う奴が居るかも知れない。だが、今はそれに縋る事しか出来ない。悔しくて、許せなくて。
神を呪う言葉を吐くリーフは目から溢れる涙を止められなかった。
「居ないんだろうさ、神なんて」
「え」
レッドの言葉がリーフに刺さる。涙の玉を散らして、レッドを見る。
「神に慈悲があるなら、こんな事にはなっていない。だから、俺は神を信じない。縋ったりもしねえ。俺は、自分を当てにする」
神もまた人の創造物であり、それらは信仰を糧にしなければ生きられない。
つまり、祈りの一つすら捧げない人間に神が奇跡を見せる事は無いのだ。
信じないのならば、それは存在しないも同義だ。そう言う意味では確かに、レッドは神を信じていない。信じる者しか救わない、そんな不確かな存在の力を借りたくも無かった。
「……そっか。居ないんだね、神様ってさ」
神の存在を何処かで信じていた節がリーフにはあった。だが、それは存在しないとレッドに突き付けられた。そして、それに反論する気は無い。
信じる事が信仰心だと言うのなら、今確かにリーフの信仰心は死に絶えた。
「あたしさあ。こんなに、こんなに何かを憎んだの始めてかも。……憎いよ。奴等が」
「憎いのか」
世界は理不尽で、歪で、狂っている。そんな中を生きる自分は何を信じれば良いのか?
唯一、確かなのは自分には憎しみが存在する事。リーフはそれを信じたくなった。
「憎い。百辺殺しても足りない。皆殺しにしてやりたいよ」
「復讐、したいのか」
底無しの深遠に引きずり込む様な空恐ろしい低い声。リーフもまた色濃い闇を抱えて生きている。今はそれに蓋をしようとは思わない。寧ろ、思う儘にブチ撒けたかった。
「だって、そうじゃないとミロちゃんもギャラ君も何で死んだのか判らない。……成仏出来ないよ」
理不尽に命を奪われた二匹の無念はどれ程深いのだろうか。死の瞬間、相棒が何を考えていたのかは知らないが、若し二匹が今のニュースを見ていたのならば、人間でなくても絶対に首謀者を許さない筈だ。
少なくとも、リーフはそうだ。首謀者も、何も出来なかった自分自身も。
そして、そんな感情を抱えていては、向けられれば、綺麗に成仏なんて出来る訳が無い。
「そう、だな。俺も同じだ」
「兄貴……」
レッドが始めてリーフに同意した。根っ子の部分で二人は同じだ。兄妹だからじゃあない。生き方や思考形態、その他諸々が生まれながらに重なっているのだ。
だから、リーフの悲しみや憤りを我が事の様に正しく理解出来た。
「失態を誰かの所為にするのは厭だった。だから、相棒が死んだのも俺の天狗が原因って思ってた」
失敗に対する責任転嫁は人間ならば誰でもやる事だ。だが、そうやって己を省みる事の無い人間は決して進歩しない。
ギャラドスの一件が骨身に沁みたレッドはそれだけは徹底する事を心に誓っていた。己への戒めと罰として。
「でも違った! ……こいつ等は屑だ。生かしちゃ、おけねえ」
確かにギャラドス死亡の大きな要因はレッドの判断ミスだ。だが、そもそもレッドがあの場に居なければ……否、ロケット団が事件を起こさなければこんな悲劇は起こり得なかったのだ。
と、なるとその責任を負わねばならないのは誰なのだろうか?
憎悪を向ける対象は何なのか。一番死ななければならないのは何処の誰なのか。
……二人の答えは決まっている。
「は――」「く――」
互いの顔を見合わせて、瞬間魂で理解する。ああ、こいつは俺(あたし)だ、と。
コインの裏表、実像と虚像。似ている様で正反対。だが、それでも二つは同じ。
自分と似通った……否、同じ存在がこんな近くに居た。少なくとも自分は世界で一人きりで無いと言う事に安堵する。嬉しくて堪らない。
「ふ、ふふ、は、あは、あはははははは……」
「く、く、きき……くひひひひ……!」
何故だか、今度は笑いが込み上げて来た。それを止めようとは思わなかった。
――決定的な何かが壊れた
レッドとリーフはそれが自分で判ってしまった。
『きゃあっはっははははははははあ――――っっ!!!!』
『ひぃひゃひゃひゃははははははは――――っっ!!!!』
笑った。嗤った。哂った。壊れる程に。ゲラゲラと。腹を抱えて。バンバン床を叩いて。
一度、殺された心が墓場から蘇る。
……見つけた。捕らえた。心に楔を打ち込んだ者達を。復讐と言う新たな生きる目標を与えてくれた者達を。
これ程愉快な気分にさせてくれたのは相棒が居なくなってから初めてだ。だから、今迄溜め込んでいた全てをぶちまける様に二人は笑う。
知らずに涙が溢れて来ていた。レッドにとってはもう枯れたと思っていた程久し振りの涙だった。
少し間を置いて、落ち着いた二人。その眼光は誰から見ても狂っていた。
「ロケット団を皆殺す。……新たな目標が出来た訳だが」
「実際どうしよう。どうすれば復讐って出来るの?」
復讐に正当性を求める事は間違いである。だが、心に湧く憤りは少なくとも自分達にとっては正しい怒りである事を二人は信じて疑わない。
だが、その実現には多くの壁が立ち塞がる。
「黙示録を始めるにゃ武器がいる。後は武術の修練。当面はそれだな」
占拠事件の時に連中は銃で武装していた。そして、恐らくだが戦闘訓練も受けていた。
為らば、こちらにも相応の武器が要る。加えて、自分自身の鍛錬。生身の殴り合いで負けない様にする為に。最後の最後で頼りにするのは結局自分自身だからだ。
「ポケモンは、必要かな」
「・・・」
思考が一端停止した。直ぐに再起動。
……ポケモンマフィアと呼ばれている位だ。ポケモンを武器として使用する可能性はかなり高い。為らば、こちらも手駒としてのポケが必要になってくる。
だが、今の自分達はポケモンに触れられるのだろうか?
復讐の駒として使役する覚悟はあるのだろうか?
「それについては保留だ。お互いに心は癒えていない……そうだろ?」
答えは直ぐに出た。Noだ。付けられた心の傷は未だに血を流している。瘡蓋すら出来上がっていない。そんな状態でポケモンに触れるのは酷だった。
「ん……確かに、今は未だ辛いよ」
「だな。お互い、時が来る迄待つ事が寛容、か」
果たして、完全に癒える時は来るのだろうか。……今は未だ判らない。
何れ来る黙示録の日に備え、己を鍛え、最後には復讐を遂げる。
そうしなければいけない。そんな気だけはしていた。
「これで、俺もお前も未来の共犯者、だな」
あくまで仮決定だ。未来は未定なので覆る可能性はあるが、レッドはきっとリーフと共に復讐を始めると言う確信めいた予感があった。
……人を殺める事。その罪を妹にも負わせる事をレッドは済まないと思っていた。
「ん。でも、あたしはそれでも良いよ」
反面、リーフの表情は穏やかだった。動揺すらしていない実に漢前な姿だった。
「それは?」
思わず聞き返してしまった。自分には未だに迷妄が渦巻いていると言うのに。
自分には無い強さの秘密を知りたかったのだ。
「だって、一人じゃそんな大それた事無理だし。でも、お兄ちゃんとなら出来る気がする。寂しくもないから」
眩む様な笑顔だった。その秘密とは……覚悟を決めた女としての強さだろうか?
何れにせよ、自分では到達出来ない領域である事は確かだった。
「大したもんだな、お前は」
そんな妹の姿が眩しく映った。素直に褒め称える兄貴の顔もまた、妹を自慢に思っている様に誇らしげだった。
「そうでもない。内心、恐怖で一杯。でもね」
だが、リーフはレッドの言葉に首を振った。自分の抱える弱さを晒す彼女は良く見れば、憎悪と狂気に押し潰されない様に必死に自分を繋ぎ止めている様だった。
「うわ」
どっ、とリーフが倒れ込む様にレッドの胸に収まった。肉付きの良い、それでいて驚く程華奢な身体は何かに耐える様に小刻みに震えていた。
「こうすれば、怖くない」
まるで自分にそう言い聞かせるみたいな痛々しい姿。
レッドは自分の目が曇っていた事を知った。リーフは自分と同じく涌いた負の感情に迷い、それを持て余して押し潰されそうになっていた。覚悟なんて全く決まっていない、只の空元気だったのだ。それ程迄に打ちひしがれている。
「お兄ちゃんに、縋らせて……」
その言葉が決定的だった。
――縋りたいのはこちらも同じ
もうレッドはお互いそれ位しか救いは無いと本気で絶望した
激しい程に脆く、壊れ易いのが人の心だ。持て余してそれ故に苦しむなら、壊れてしまった方が時に生き易い事がある。
そんな思いがレッドに最後の決断をさせた。正気じゃ復讐なんてやってられない。それならば……
「……いっそぶっ壊れるか。修復不能な迄に」
復讐を望む二人に正気は要らない。それを捨て去り、悪魔と契約する為の儀式。自らの意志でモラルの一線を踏み越えて、狂気と憎悪を喰らって力とする。
生贄は……妹と自分自身。
無性に、レッドはリーフが欲しくなった。
「リーフ」
「へ」
決意に満ちた瞳で、しっかりとリーフの空色のそれを見遣るレッド。
きょとんとはしているが、怯えた様子は無かった。
それが好機と思った訳では無いが、レッドは自分の胸の内を一気に伝える事にした。
気取った言葉は思い付かない。それでもそれは妹への……否、リーフへの思いを綴った言葉であるのは確かだった。
「俺と一緒に地獄に落ちてくれ。代わりに、俺の全部をくれてやる。だから……」
だから……だから、えーと……言葉が途切れてしまった。
滑稽過ぎて自分で泣けて来た。やっぱり気取った真似何てするもんじゃないとレッドは少し後悔する。だが、少なくともリーフにはそれは伝わっていた様だ。
「…………ふふ」
その言葉を反芻して告白された事を理解する。つまり、死ぬ迄一緒に居てくれと言う事だろうか? ……きっとそうに違いない。リーフは微笑み、そう自己完結した。
――ちゅっ
首に手を回して、これ以上無い程密着。大きいだけで役に立たなかった乳を相手の胸板に押し付けながらキスしてやった。
「あたしは構わない。落ちる地獄が一緒なら、あたしもお兄ちゃんが欲しい……」
自分が些かブラコン気味だった事は周知の事実だし、否定したくても出来ない。
だが、許されるのなら、ずっとこうしたかったのも事実。やはり、自分の素直な思いと言うのは裏切れなかった。その証拠に、胸も顔も燃える程に熱いのだ。
「……済まん。兄貴として最低だな、俺は」
「それでも良いの。あたしも妹としてはもっと最低だから。だってね?」
吐息が掛かる程、お互いの距離が近い。今迄、こんなに接近した事は無かった。やはり、兄妹と言っても他人同士だった。だが、今からは違うのだ。
それを示す様にリーフは極上の笑みを浮かべ、こう言った。
「お兄ちゃんの事、男の子として好きだから、あたし」
――兄貴が、好き
「うぐっ!?」
リーフのハートブレイク! 急所当り! 効果は抜群だ! レッドの理性は倒れた!
そんな事言われて喜ばない兄貴が居るものか! シスコンで何が悪いっ!
「お、お前……ぐはっ! あ、侮れんな……!」
な、なんて顔しやがる! これが妹の女の顔、なのか!?
血反吐吐きそうになりつつ、何とか踏み止まった。股間のギャラドスに血が巡って行くのがレッドには知れた。顔面も火を噴きそうな程に赤いのは間違いないだろう。動悸だって豪い事になっていた。
「だから、ね」
「あ、ああ」
気が付けば圧し掛かられていた。良く見れば、リーフの目は尋常成らざる光を帯びていて、赤い残光が宙に軌跡を描く。空色である筈の瞳が爛と赤く光っている。
流石のレッドも怯む威圧感だった。
「狂っちゃお? 人殺さないといけないんだよ? その通過点って思えば、ね?」
怖い事なぞ本当に何も無い。リーフなりの決意、そして兄への愛の示し方だった。
「修羅の巷は歩めないってか? ……はっ! 上等だぜ」
キュウ、と口元を歪めて逆に押し倒した。
此処で情けない姿を見せれば男が立たない。少なくとも、リーフにそれは晒したくない。
これから共に地獄を歩むだろう相棒に、レッドは覚悟の証を刻み込む。
……復讐が善だなんて絶対に言わない。だが、それでも復讐に臨む限りこの関係は傷の舐め合い以上に尊いモノだと信じたい。そうでなければ、全く救いが無い。そんな現実は認めたくもなった。
『一緒に死んでね お兄ちゃん』
リーフの声が予言の様にレッドの頭に鳴り響く。これ以上無い程二人は呪われていた。
この夜を境に、兄妹は自ら一線を超え、完全に壊れた。
その全ては復讐の為に。だからこそ黄泉戸喫すら是とした。
来る日に備え、着実に憎悪を募らせ、死の牙を研いでいった。
……互いの肉体を貪りながら。
20 :
音ゲーマー:2011/10/28(金) 16:09:41.47 ID:7BtGv0VD
何かスレを占有してるような罪悪感に駆られる。他の職人さんも是非投下して欲しい。
一人きりは寂しい。。。
GJ
一応執筆中だが終わんないんだ頑張っててくれ
それは仕方ないと思う。
個人的な意見だが、改行が少し気になるけどこの文量とクオリティだろ?その合間を縫って投下するのは結構なプレッシャ―だろうさ。自信と度胸のある奴を気長に待ちなよ。
ところでリーフたんがエロエロするのはまだですか?そろそろ全裸待機が辛い・・・
24 :
名無しさん@ピンキー:2011/10/30(日) 01:48:00.63 ID:Oza5vmoz
服着ろよww風邪ひくぞww
>>20 乙!
ここまできたらリーフのエロエロは別話でもいい気がしてきた
捌:詭弁と正論
墓参りを終え、魂の家を出る時に見知った人物と出会った。
「おお……これは久しい」
「「ご無沙汰しています」」
兄妹が同じタイミングで頭を下げた。人当たりの良さそうな老人だった。この慰霊施設の管理者であるフジ老人だった。
実は兄妹に取っては馴染み深い人物でもある。父がこの人に師事していた事もあり、子供の頃から何度も会っているのだ。二年前もロケット団が塔を占拠した時に助けた縁もある。
「ギャラドス達の様子見かね。関心々々」
「ええ。墓の掃除と……決意表明とでも言いますか」
「命日には早いですけどね。来ちゃいました」
「ほっほっ。こう言うのは気持ちと行動が大事なんだよ」
本当に話していて、心が解れる様な不思議な雰囲気の老人だった。あのレッドが家族以外でも感情をあまり硬化させない数少ない人物でもある。
……この御仁がアレを作り出したと言うのは凡そ信じがたい事だ。
「それにしても決意表明、かね」
「「!」」
しっかり聞かれて居た事を理解し目を丸くする二人。意外と耳聡い。どうやら古狐としての一面もこの老人は持つらしい。
「ロケット団かね?」
「ご存知、でしたか」
やはり、彼は知っていた。それは当然だろう。二回の葬儀の時、その何れもフジ老人は参加していたのだから。
「噂程度にはね。ジョウトが何やらホットな事態になっていると」
この人の耳に入る程事態は逼迫していると言う事か。ナツメの情報はその信憑性を大きく増した。
「ふむ……」
……まるで値踏みする様にこちらを見てくる。底知れない何かを感じ、自然と唾を飲み込む。
「未だ、血を流し足りないのかな?」
「量の問題ではありませんよ。復活したから、滅ぼす。それだけの事です」
自分達の事情を知っているフジに詳しい説明は不要だ。レッドは敵と相対する様に身構えて、考えを言う。
「殺生を重ねて、君達は何を望んでいるのかね」
「知れた事です。殺された相棒達の魂の安息。奴等がのさばる限り、成仏なんて出来ませんから」
それを叶える為に自分達は憎しみを募らせて来た。そして、二年前にそれは確かに叶えたのだ。だが、今尚ロケット団が跋扈する事実。
リーフにはそれが捨て置けない事態だった。
「死んだ者の為か。その心意気は立派だが、それは本当に?」
「それはっ」
図星を突かれた。リーフは言葉に詰まる。
それは何度と無く考えた事だった。その度に忘却した。考えてはいけない事だからだ。
「お見通しですか」
だが、レッドは少し違うらしい。リーフをフォローする見事な切り返しだ。
「伊達に歳は取っておらんさ」
フジは尚も余裕を崩さない。不気味な怖さを保っていた。
「相棒が成仏してるかどうか何て、確認しようが無い。その解釈は生きてる俺達にしか出来ない。だって、死人は意思疎通が基本、出来ませんからね」
「つまり、君達のポケモンは復讐を望んでいると?」
確かに、イタコでも介さない限り、それは無理な話だ。だからこそ、その遺志を都合良く曲解するも、拡大解釈するも生者のみに許された特権だった。そして、相棒を殺されたレッドはそう出来る権利があった。
「それを決めるのも元飼い主の俺達ですよ。少なくとも、俺のギャラは訴えてる。仇を討ってくれって」
「あいつ等に殺されたポケは多い。だからこそ、あいつ等は知らなきゃいけない。死者の怨念は沈黙しないって。あたし達は相棒に代わって怨念返しするだけです」
何かを成すには大儀名分が必要になってくる。世の為人の為じゃない。殺された者の恨みを晴らす為に。それだけでも理由としては十分だ。
ポケモンと人間。どちらかの命が一方的に重い訳ではない。命と言う括りでは両者の重さは均等な筈だ。為らば、それを奪った者には相応の報いが与えられなければ嘘になる。
それが間違いと言いたいのだろうか。それを決めて良いのは当事者である二人だけだ。
「ポケモンの魂を縛り付けているのは他ならぬ君達自身ではないのかね」
「だから、何です? 解放されたいなら、切り上げろと? 相手を許せと、そう仰いますか」
「出来ない相談です。それをしたら今迄の自分を否定してしまう。だから、出来ません」
自分等が恨みを捨てられないから、相棒達は逝き場に迷っている……この老人はそう言いたいのだろうか?
だとしたら反吐が出る話だった。何処迄行っても他人事な無責任な発言だった。
復讐に踏み切る迄に幾度も苦悩し、考えた。その全てを捨て去れとでも言うのか?
そんな事をすれば今の自分が崩壊する。だから出来なかった。
「その先に何が待っているか、判るかね?」
「さあ? 取りあえず、僅かな安息はありましたがね。それも、容易く破られましたが」
「もう一度滅ぼせば、少なくとも相棒は成仏出来る。そう信じてますよ」
……一体、この人が何を言いたいのか判らなくなってきた。
更正させたいのか、それとも背中を押したいのか。それとも、復讐を本当に遂げた後の生き方についてだろうか。……確かに、それについては迷っていた部分はあった。
「つまり、何も無かった訳だね。そんな生き方に何の価値があるね」
「無益と仰りたい? それはあなたにとってだ。少なくとも、俺達にとっては意味のある事だ」
「無価値かも知れません。でも、最悪自己満足位は生んでくれますよ。そして、あたし達はそれで良い」
この世に無意味な物は存在しない。全てが世界を回す歯車だ。だから、過去に決着を付けると言う意味で、二人は復讐を遂げねばならない。
それに価値があるか否かは別の問題だ。リーフの言う様に、最後には自己満足しか得られないかも知れない。だが、二人はそれで良いのだ。
その生き方を貫く事にはきっと価値があるからだ。
「何とも頑なだ。それ程、憎いか」
「憎い。憎む事が、俺達の生きる糧だから。そう二人で誓ったんだ」
「自身の正当化はしない。でも、あたしは憎いんです。だから、殺すんです」
復讐に縋らねば生きられなかった。そして、人殺しとして一生を地獄で生きて行く。
兄妹はそう誓い合った。それだけは曲げられない。……否、決して曲げてはならない誓いだ。何故なら、もうとっくに二人の全身は血塗れだからだ。
「そう言うあなたはどうなんです?」
「私かね?」
今迄受けに回っていたレッドが反撃に出た。手数は平等に……と言う訳では決して無い。
「あなたのやっている事も自己満足と言いたいんですよ」
「む」
無遠慮に古傷を抉ってくれたこの老人に一言言って置かなければどうにもリーフの腹は収まらなかったのだ。
「俺達は自分の罪を認識してる。何れ、裁きを受け、地獄に落ちる。だが、それは今じゃない。殺さなくちゃいけない奴等が山と残ってる」
「しかし、あなたは自分の罪から目を背け、その贖罪から慈善事業をやっている。ポケモンを助ける為ではなく、自分が救われる為に」
自分達は人殺しで、悪人で……冗談抜きで最悪の人間だって理解している。
それでも自分を曲げないのは遣り残しがあるからだ。
だが、目の前の老人はどうだろう?
慈善家としては有名だが、それ以前の彼の顔を知っていればそんな事は決して言えなくなる。その過去はどうやっても消えない。
「「これが自己満足じゃなくて何だって言うんです」」
二人の声が重なる。フジは何も言わなかった。
「ミュウツーを造り、その力に恐怖し、持て余してハナダの洞窟に捨てたな」
「罪の意識から、ミュウを人里から隔離する為に最果ての孤島に捨てたわね」
フジの持つ後ろ暗い過去だ。ミュウツーに関しては自力で研究所から逃げたとの情報もあるが、持て余していたのなら遅かれ早かれ彼はミュウツーを捨てていただろう。その真偽は大した問題ではなかった。
兎に角、彼は自分の果たすべき責任を放棄したのだ。
……そんなのは大人のやる事じゃあない。
「元気にしてるよ。二匹とも」「あたし達のボックスでね」
その二匹は幸運な事に二人にピックアップされていた。ミュウツーは二年前にハナダの洞窟最深部で。ミュウはホウエンの友人から送られた古びた海図を頼りに辿り着いた孤島にて。
そう懐いている訳では無いが、二匹共一匹で居た時よりは幸せそうだった。
「無責任」「偽善者」
持て余して捨てる様なアンタと俺達は違うと侮蔑たっぷり言葉を浴びせ続ける。
「ポケモンを実験材料として、道具として使い、容易く切り捨てる」
「そんなあなたはあたし達の生き方に口出し出来る程」
「「優秀な人間なんですか?」」
敵愾心剥き出しにして吐かれたフィニッシュブローだ。
過去の自分を否定し、救われたいだけのアンタには何も言う資格は無い。
二人が本当に言いたいのはそう言う事だった。
「……さあどうだったか、なあ」
フジは狼狽の一つもせずに、只目を閉じてそうとだけ呟いた。
「最早何も言うまい。君達の好きにやりなさい」
「「言われずとも」」
最早、互いに掛ける言葉は無い。去り際に背中に掛かる言葉に二人は振り返らずにそう答えた。
「きっと、今の俺達では、表面上は重なっても、深い部分で絶対交わらない」
「だから、全部の決着が付いた後に、もう一度会いたいものね」
シオンを去る間際にレッドが零した。別にレッドはフジ老人が嫌いな訳じゃない。寧ろ、人間的に尊敬出来る部分が多々あった。リーフもそうだ。
だが、お互いに譲れない部分はある。だからこその衝突だった。
終わった後に何があるのかは判らない。だが、それが見えた時に、二人はもう一度此処に来ようと決めた様だった。
「……偽善、か。確かに、そうかも知れん」
天井を見ながら、そう呟くフジ老人の顔は只管に疲れきっていた。普段は誰にも見せないであろうその表情こそが、この老人の真の姿なのかも知れなかった。
31 :
音ゲーマー:2011/10/30(日) 21:30:54.99 ID:+alp4tXC
やっとこさ全部書き終えた。前みたいに半日一回ペースで投下しようと思うけどどうっすかね?
エロエロは後三回くらい後。だから服を着てくれw
全然okGJ
なんかこのシリアスな良作が終わるまで
俺の煩悩丸出しの作品なんて投下できるわけないwwwwwwwwwwwww
ネタは小出しに長持ちさせつ後続に繋げるのが戦場の上策、チマチマ行こうぜ紳士諸君
33 :
音ゲーマー:2011/10/30(日) 21:55:43.62 ID:+alp4tXC
>>32 レスありがとう!読む方も都合があるから、どうやったら読んでくれるかも考えないと長続きしないっすよね。
できるなら投下して欲しいが…
独りじゃないと思えばモチベもあがるな、楽しくやろうず
捌:怨念返し
二ヶ月が経過した。季節は初夏。命が芽吹き、木々は青々とした葉を広げていた。
あれから、ジョウトのロケット団の噂を聞く機会は日を追う毎に増していくが、カントーで姿を見せたと言う話だけは何時迄経っても耳にする事が無かった。
だが、遂に奴等は姿を現した。
――ニビシティ
博物館に論文の作成資料を取りに来たレッドは街中で旧友に会った。
「……未だ化石堀り続けてるんだな」
「まあね。昔からお月見山には通ってたからさ。今は専らディグダの穴だけど」
――ジムリーダーのタケシ
レッドの小学、中学の同級生。高校は違ってしまったが、地理的には距離は離れていないので頻繁に会う事が多かった。レッドにとってはグリーンに並ぶ数少ない親友の一人だった。
そんな彼は今やニビの専任ジムリーダーであり、副業として様々な場所で化石の採掘を行っている。
大家族を養う彼だが、アニメ版の様に父親や母親が夜逃げしたりはしていないので家族仲は滅茶苦茶良かったりする。リメイクが進む度にイケメン化が進む糸目男爵様だ。
「でも、何であそこは新しい道になったんだ? 前は地下に広かったろ。広場への道何て無かったし」
「旧坑道は落盤の危険があったんだよな。だから其処を封鎖して、頂上に通じる新しい道が急遽ね。……未だ掘り尽くして無かったんだけどさ、あそこ」
コンビニ前で屯しながら駄弁る。レッドは煙草を吸い、タケシは明るいのにビール何て飲んでいた。
「何か変わった事あったか?」
「変わった事ぉ? うーん……」
近況報告を兼ねた世間話。しかし、誰もが面白がる変わった話と言うのは案外無かったりする。タケシが首を捻る。
「そう言えば、お前カスミとどうなってるんだ? 情報が入って来ない」
「あ? あー……ぼちぼちかな」
無いのならば無理矢理話を振ってやれば良い。お題は恋バナ。ニビとハナダのジムリーダーは随分昔から懇ろな仲だったりする。
「要領得ないな」
「この前喧嘩した」
「ふむふむ」
可も無く不可も無くと言われても状況が判然としない。そうすると、喧嘩をしたと言う言葉が出て来た。……まあ、喧嘩位は付き合ってるならするだろう。
レッドだって見せないだけでリーフと何度も殴り合っている。
「当て付けか、別れるって電話来て、新しい彼氏紹介された」
「ふむふむ……何っ!?」
おっと!? これは破局のサインか!? レッドも興味津々と言った感じだった。
「ハナダジムのトモキさんだった」
「あ、ジムトレーナーね。……完全、当て付けじゃねえか」
その人ならレッドも見た事がある。船乗りの波野智紀さん(32)。あの人は確か奥さんが居た筈だ。それを彼氏と紹介するのは……不倫でなければ、タケシの気を引く罠だ。
付き合わされたトモキさんも可愛そうに。奥さんと喧嘩していない事をレッドは祈った。
「で、土下座した」
「……したのかよ! で、どうなった」
まあ、男の土下座は決して安くは無いが、それは時と場合による。寧ろ、それで女の機嫌が直るなら安いモノだ。だが実際にやるかどうかは……その辺りは個々のプライドの大小で違うだろうが。
「仲直りした。それで謝罪として飲みに連れて行けって」
「……アイツ未成年だよな? まあ、誤魔化せるだろうけど。で?」
タケシはレッドと同じく22だが、カスミは確か未だ18でぎりぎり女子高生だ。バレれば些か面倒臭いが、何とかなったのだろう。
「しこたま飲んで、あいつが酔い潰れて、家迄負ぶってった」
「……泣かせるな、そりゃあ」
何て健気だ。大家族の長男として弟や妹の面倒を見てきた故の懐の広さだ。カスミは姉妹の末っ子故か、かなり我侭で気が強いから、付き合うとするならタケシの様な広い心が必要になってくるのだとレッドはしみじみ思った。
「泣いたのはその後だよ。その状態でイジェクトされた。……濁流を背中に」
「・・・」
ろっぱー、とリバースしてしまった訳だ。……うん、別の意味で確かに泣ける話だ。
余り想像したくない光景でもあった。
「流石にムカついたからそのままホテルに行って朝迄泣かせてやった」
「酔い潰れた女をレイプ、か。中々に鬼畜だなそりゃ」
それは確かにキレても許される状況だ。だが、問題なのは酔ったJKをホテル連れ込んで強姦したと言う事である。一歩間違えれば警察沙汰だ。
……いや、結局は合意の上になるんだろうから良いのか?
「アイツが悪いんだってばさあ!」
「お前、また三行半突き付けられっぞ」
まあ、タケシも災難だがキレたタケシの相手をさせられたカスミにも同情する。
開眼し、糸目状態を解除したタケシは竜舞を限界迄積んだギャラドス並みに危険な存在になる事を長い付き合いからレッドは知っていた。
「いや、それが何か最近甘えてくるんだな。……変なスイッチ入ったのかも」
「……ご馳走さん」
カスミ……無理矢理強引が好きなタイプだったんだな。まあ、何だ。もげちまえ。んで、末永く爆発しとけ。……と、レッドは思った。
「で、そっちはどうさ? リーフちゃんと」
「あー? Sex&drugでROCK`N ROLLだ」
あ、やっぱり追及の手はこっちにも来るのね。レッドは実に判りやすい妹との近況を語った。因みに、タケシはリーフとレッドの仲を応援している。
「お、お前! く、薬やってたのかよ」
「やってねえよ。近親相姦と殺人だけだ」
お前には洒落も通じんのか、とレッドさんは自分の負っている罪をサラッと告白した。
因みに、ニッポン国で近親相姦は双方合意ならば犯罪ではありません。
「……それも洒落にならないよな。いや、マジで」
「そうだな。……何で捕まらないんだろうな」
「この国の警察機構が優秀なんだろ」
殺すべき相手はロケット団だけと決めている。それが破られる事は無い。だからこそ、レッド達の裏の顔を知っても反応を変える者は少ない。
嘗てはお月見山、タマムシのアジト、ポケモンタワー、シルフカンパニー、ナナシマ倉庫で大勢始末して来たが一度も検挙された事が無い。
案外、国はそれを知っていてレッド達を放置しているのかも知れない。
「あー、そう言えば」
「あ?」
何か他に笑える話でもあるのか、気だるげにレッドは新しい煙草を咥える。
「いや、マジな話だけどさ」
「……おう」
ふと見たタケシの顔は何時もの糸目じゃなかった。こう言う時のタケシは真剣だ。レッドは姿勢を正して、改めてタケシと向き合った。
「最近、お月見山で怪しい奴等が出入りしているらしいんだわ」
「っ! 聞かせろ」
目を見開いてレッドがタケシの胸倉を掴んだ。初めて掛かった大物の予感にレッドは興奮気味だった。
「落ち着けって。今言うから」
バシッ、と服を掴むレッドの手を叩き落とし、タケシは語る。
「俺が直接見た訳じゃないよ。ただ、広場の山荘の爺様が言うには店仕舞と同じ位の時間に黒尽くめの帽子を被った変な奴等を見かけるってさ」
「お月見山、か」
場所は判る。頂上付近にある開けた広場。山小屋とピッピが月曜にやって来る泉があるだけの場所だ。
「あそこって前もロケット団が侵入したじゃん」
「ああ。化石目当てでな」
二年前だ。旅に出て、初めてレッドとリーフがロケット団と遭遇した場所。そして、初めて人を殺し、童貞を捨てた場所だ。
「でも、今の新坑道じゃ化石は殆ど取れないんだ。何の目的があってか気になる処ではあるよな」
「ふうむ。……その広場には人が集まれそうな建物って山小屋以外にあるか?」
姿を見せる以上は何らかの目的があっての事だろう。だが、特産品である化石が取れない今、あの場所にロケット団が目を付ける何かがあるとは思えない。
考えられるとするなら、それはカントー再侵攻の為の中継基地。若しくは新たな拠点。
レッドはその手の建物の有無を尋ねた。
「あるよ。使われてない林道が広場脇に伸びてて、その先に廃屋がある」
「そっか……」
BINGOだ。呪いの解放先をレッドは確かに捉えた。自然と頬が緩む。
「あー、当然行くんだよ、な?」
「行かない理由が何処に?」
その顔がどうにも一抹の不安を煽る。タケシは心配した様に尋ねるが、レッドがそれ以外の答えを言う筈も無い。そして、止める気だってタケシには無かった。
「だよな。いや、俺が協力出来るのは此処迄だ。精々怪我しないようにな」
「ああ。ありがとうよ」
親友のエールを受けてレッドが若干微笑んだ……気がした。
荒事が出来ない訳じゃないが、本来温厚な性格のタケシがそれを得意にしていないのは確かだ。タケシはレッド達の無事を祈る事しか出来なかった。
――マサラタウン 二階 兄妹の部屋
「その情報、確かなの?」
「火の無い処に煙は……だ。現地で確かめるしかない」
家に帰ったレッドは早速その情報をリーフに伝えた。だが、どうも胡散臭く感じている様だ。今迄姿すら掴めなかった仇の情報だ。慎重になるのも頷ける。
だが、レッドの言う様にするしかないのも事実だった。
「……決行は?」
「明日。1900。午前中は下見だ」
こちらはたった二人しか居ない。敵の情報も不明瞭。こう言う時に必要なのは入念な下準備だ。地形を把握し、こちらが有利な作戦を立てる。ポケモン勝負にも言えた事だ。
「急ね。随分と」
「怖気付いたか?」
「冗談」
妹の覚悟を試す様にやや挑発的に言ってやった。だが、リーフは嘗めるなとでも言いたそうな顔できっぱりと言った。
「あー、もしもし、エリカ? あたし。悪いんだけど明日の……」
リーフがギアで電話を掛けている。相手はエリカの様だ。約束があったのだろう。それを断る電話の様だ。
「・・・」
レッドはそれを尻目に、引っ掻き棒を取り出して天井裏への蓋を開けた。梯子を下ろして、天井裏へ上半身を潜り込ませると手探りで何かを探し、それの取っ手を見つけるとしっかり掴んで階下に運ぶ。
「心配し過ぎだって。大丈夫よ。兄貴も居るし。……うん、うん」
それをもう一度繰り返し、レッドは梯子を戻し、蓋を閉めた。
運び出されたのは二つのジェラルミンケースだった。
レッドは馴れた手付きでその一つの鍵を開けた。
……中に収められていたのは銃と弾薬だった。
M1911A1ガバメント……信頼性高い45口径。嘗ての米軍正式拳銃。
M1878短銃身水平二連散弾銃……バレルを切り詰めたショットガン。近距離威力は絶大。
レッドはそれらを手に取ると、工具箱を何処かから引っ張り出し部品をバラしてチェックを始めた。
「じゃあ、埋め合わせは後日にね。……それじゃ」
――ピッ
電話を終えて、リーフもまた自分の銃をケースから取り出す。
MAC11イングラム×2……短機関銃。連射力は絶大だが精密照準は難しい。
日が暮れる迄、兄妹は自分の得物の調整を続けた。
――翌日 お月見山 夜
藪の中に身を潜めてそろそろ一時間が経過する。
「来ないわね」
「ああ。まあ、待ってろよ」
山小屋の従業員が店を閉め、出て行った事は先程確認した。
今日は月曜日ではないのでピッピを見に来る人間は居ない。だとすれば、この後に現れる人間がロケット団である可能性が強まる。後は、その人物が廃屋への林道へ向かうかどうかだ。
「・・・」
「……っ、薮蚊が」
ぶんぶん纏わり付く薮蚊がうざったいリーフは仕切りにバシバシ叩いていた。レッドは我慢してるのか微動だにしない。虫除けスプレーは使っているが、効果は余り無い様だった。
……更に数十分経過。空はどんよりと曇り、月は泉にその姿を晒さない。
光源が殆ど無い状態だ。目が慣れていない人間は何処に何があるか判らないだろう。
「来ない、わねえ」
「あ、ああ。……今日は外れか?」
明るい裡の下見は完璧。道幅や距離、廃屋内の構造もちゃんと頭の中に入れている。
そして、その廃屋には確かに人が出入りしている痕跡があった。最近の日付のコンビニ弁当の空を見つけた。だからこそ、その人物はやって来ると確信を持ってこの場に張り付いている。……だが、来ない。
レッドの言葉の通り、今日は休みなのかも知れない。もう少し粘ってそれでも来ないなら今日はもう帰ろうかと諦め掛けた、その時。
――じゃり
遠くから砂利を踏み締める音が聞こえた。
「(あれは……)」
「(来たわね……)」
少し待っていると目の前の砂利道に懐中電灯の光が当たり、黒い服の男が通過した。
あの服装は間違い無い。ロケット団だ!
ロケット団が向かうのは泉ではなく、その反対。人が寄り付かないであろう寂れた林道の方角。廃屋に向かう腹積もりらしい。
「(兄貴?)」
「(未だ後続が居るかも。もう少し待つ)」
こう言う時に慌てて後を追ってはいけない。行き場所は知れているのだ。怖いのは襲撃中に後続が異変に気付き、増援を要請する場合。まあ大半は逃げてしまうのだろうが、痛手である事は変わらない。レッドは待機の指示を出し、リーフはそれに頷いた。
その後、待つ事三十分程。後続のロケット団が次々と林道へ向かって行く。丁度四人目の男を見送った後に、幾ら待っても後続は来なかった。
「今ので最後だな。……往くぜ」
「承知」
レッドが藪から出て周囲を確認する。敵影が無い事を確認し、手で合図を出すとリーフも藪から飛び出して来る。そして、二人は極力音を立てずに林道へと向かう。
41 :
音ゲーマー:2011/10/31(月) 12:53:50.41 ID:nSegk6DE
爆撃終了。自分で思うけどやっぱり長いな…
乙
エロスとシリアスのバランスが難しいな
玖:ダンボールは持っていない
――お月見山 廃屋
辿り着いた廃屋からは確かに人の気配がしていた。
「この空気……随分久し振りだな。……ほんと、厭だねえ」
「もう二度とって思ってたけど……慣れないわ。何時迄も」
湿気の混じる生暖かい風が吹き付けて、全身から汗が滲み出る。
二年前もこうやってロケット団相手に喧嘩をしていた二人だが、決して道楽や愉しみで殺生をしている訳ではない。人殺しではあっても、殺人鬼では無い。正気は捨て去ったとは言っても、気が滅入る事だけは避けられない。
二人が木石では無い以上、そう言った感情の揺らぎと言うのは何時までも付き纏うのだろう。衒いと言う名の錆付いた釣り針が頭蓋を破って、喉元迄降りて来た様な気分だった。
兄妹はその感情を何とか処理して、廃屋を見やった。
元は営林署の建物だったのだろうが、確認した時に中がそれ程荒れていない事が判った。放置されてから余り時間が経っていないらしい。
出入り口は二箇所。正面玄関と裏口。二階建てで、一階に鍵の掛かった小部屋が二つ。二階は長い廊下一本道を左に曲がって直ぐに大部屋が一つだけ。
コンビニのゴミを見つけたのは二階なので、恐らく溜まり場は二階。その証拠に二階部分だけ電気が付いている。電気が通っている事は先刻も確認した。だが、一階部分は真っ暗だった。
敵の総数は確認出来ただけで四人。装備、戦闘錬度は不明。別ルートで合流している人間も居るかも知れないので四人以上と考えて良いだろう。内部は遮蔽物こそ少ないが壁が狭く、曲がり角も多い。
……現時点の情報は以上だ。
「で、作戦に変更は無いのよね?」
「ああ。俺が正面。お前が裏口だ」
「おっけ。……中で会いましょう」
リーフは裏口目指して駆けて行った。
二人の作戦はシンプルに二点同時侵入だ。正面がレッド。裏口をリーフが担当し、同時に潜入する。接敵した場合は極力気付かれない裡に倒す事。
気付かれた場合は、その人物が陽動を果たし、もう一人がサポートすると言うものだ。
「……良し」
レッドの準備も完了した。ホルスターに手を掛けて、銃を構える。そして、硝子越しに内部状況を確認。誰も居ない事を確認し中に入った。
昼間と変わらず、中は誇りっぽい空気だった。暗い床に目を凝らせば、積もった埃に多数の足跡が残されていた。放置されたこの場所にそれだけの人間が居ると言う事だ。
「全員、二階に集まってるのか?」
慎重に歩を進めるレッド。目の前に階段。右には廊下。その左右には開かない部屋。コの字廊下の先に裏口。リーフの姿が見えない事を考えると、敵が居るのかも知れない。
「どうするか」
選択を迫られるレッド。一階部分をクリーンにし、リーフと合流するか。それとも、此処はリーフに任せて二階に移るか。
だが、残念。時間切れだった。
――ガチャ
「ほ?」
間抜けな声が出た。施錠されている筈の二つの部屋。その片方の扉が開いた。
ロケット団がハンカチで手を拭きながら出て来た。そして、バッチリ目が合ってしまった。
「だ、誰だ!?」
「見ての通り、侵入者だよ」
どうやらその部屋はトイレだったらしい。そして、開かないと思っていたのは単に立て付けが悪かっただけの様だ。……何と言うか、間抜けだった。
「誰だか知らないが、この場所を知られて只で返す訳にはいかねえな!
行け! ズバット!」
問答無用でポケモンを繰り出すと言う事は、トレーナー崩れだろうか? ……それなら。
「リザードン、頼むぜ」
片手でボールを手にしてスイッチを押す。
――ぐるるおおんっ!
火竜降臨。尻尾の炎で周りが仄かに照らされた。
「な、何ぃ!? 何だその強そうなポケモン! 俺に寄越せ!」
……何とも平和的な会話で涙が出そうなレッド。しかも仲間を呼ばないとはお優しい事この上無い。
『ああ、くれてやるともさ。別の贈り物だけどな』
レッドが灼熱の憎悪を解き放つ。
「んー?」
正面玄関が何やら騒がしい。恐らく、兄貴が戦闘中なのだろう。
壁に張り付きながら、息を殺して目の前のロケット団の動きを観察するリーフ。コの字廊下の、玄関から死角になる位置に見張りが佇んでいる。見つかれば厄介だ。
廊下は狭く、左右へすり抜ける事は不可能。だが、相手は音がしている方向に顔を向けている。
「おーい。何かあったのかあ?」
注意がそちらに向いているならば、こちらが取る冪行動は一つ。
「(もっと注意を向けさせる!)」
リーフは潜入前に外で拾った石ころを男が向いている方向に投げ付けた。
――ガンッ! カラカラカラ……
「あー? 何の音だよ」
流石に異常事態だと気付いたのだろう。男は音のした方向へと歩いて行く。後方警戒が完全に笊だ。
……上手くいった。こう言った暗闇で相手を誘導するコツは音を武器にする事。スニーキングの基本だ。リーフはこっそりと後を付ける。
「……? 何も無いよな」
音がした場所を調べ、何も無い事に?マークを浮かべるロケット団。その視線が兄貴が居るだろう廊下の先へ向く前に……
「(仕留める!)」
リーフが動いた。左腿に装着したナイフフォルダーから大型のフォールディングナイフを抜き放ち左手に逆手で持った。
「うぐ!?」
背後から右手で相手の口を塞ぎ、暴れられない様に眼前にナイフを突き付けた。断じてCQCではない。
そして、リーフの深緑の憎悪が解き放たれた。
「ゴメンね」
――ズブシュ
「げごぶう」
掌に伝わる鈍い感触と共に声帯と頚動脈を諸共切り裂く。血飛沫を上げ男は絶命した。
「ドラゴンクローだ」
屋内で火炎攻撃は火事の恐れがあるし、狭いので飛行技はそもそも使えない。それならば、一番適任な技はドラゴンクローだ。どう見ても相手の手持ちは弱そうだし、恐らく確定一発だろう。
――ぎゃるおお!
ずしゃ……べしゃ。肉を咲く音が聞こえて、相手のズバット壁に吹っ飛ばされて壁画となった。
「ちいっ、強いじゃねえか! 次は……」
……好機!
次の手持ちを出す為に男が警戒を一瞬解いた。レッドは素早く詰め寄り、左手で相手の首を引っ掴んで突進の勢いのまま壁に叩き付ける。
「ぐ、え」
苦しげな男の声。レッドは左手に握っていたガバメントの銃口を男のこめかみに押し付け……
「くれてやるよ。……鉛玉だ」
――タァン
そのまま引鉄を引いた。乾いた発砲音が響き、男は絶命する。レッドが手を放すと床に崩れ落ちた。
「悪いな。こいつはポケモン勝負じゃないんだ」
……殺し合いだ。
人間、落ちて来た植木鉢の直撃でも容易く命を落とす。相手を殺めるのにポケモンの力にはもう頼らない。それを自分の手で成す事がレッド達の矜持だった。
さて。引鉄を引いてしまったので、今の音で確実に自分達の存在はバレた。このままでは相手が反撃に出るか、逃走する可能性があった。
レッドは倒れている男の死体をチェックした。……武器は携帯していない。先程の掴みを回避出来なかった事から、戦闘訓練も恐らく受けていない。ポケモンバトル以外は恐らくは素人さんだ。
「……ロケット団も人材不足か」
嘗ての解散に際して多くの構成員をロケット団は失っている筈だ。そして復活出来るだけの人数を確保する為、メンバー募集に躍起に成り過ぎた結果がこれだろう。
もう少し、戦闘訓練を積ませる冪だし、マフィアなのだから昔みたいに武器も携帯しておけとレッドは思った。二年前のロケット団はその辺りでは未だマシだった。
最初に出会った占拠事件の時のロケット団が異常だっただけなのかも知れないが。
「兄貴」
廊下の向こうからリーフが来た。
「リーフ……音でバレたな」
「判ってる。こっちも一人始末したわ。残り二人よ」
順当に行けばそうなるだろう。此処の連中は大した強さではない。為らば、此処は押しの一手で出る冪だろう。
「上に行く。付いて来い」
「了解!」
ダッシュで階段を駆け上がる。長い廊下を駆け抜け、大部屋前で一時ストップ。
呼吸を整えて一気に踏み込んだ。
「毎度〜」「宅配便で〜す」
――地獄への切符をお持ちしました
踏み込んだ部屋には黒服が二人。それ以外には居ない。どうやら彼等が最後の様だ。
「騒ぎを起こしているのは貴様等か!」
どうやら、此処のリーダー格らしい。纏う雰囲気が始末した団員より若干異なる。
「我等ロケット団に楯突くとは中々に怖い物知らずだな。……どうだ? 我々の下へ来んか?」
この状況下で勧誘とは、どうやらそれ程迄に人材不足は深刻らしい。少しだけ二人は同情したが、答えは当然Noだ。
「断る」「厭よ」
「ふん。当然の反応か。では、問おう。何故此処に来た? 目的は何だ?」
――目的? 目的、ねえ
レッドがホルスターに手を掛ける。遮蔽物の粗無い大部屋。大火力のショットガンを抜く。
リーフも両腰に下げていた二丁のイングラムを両手に握る。
そして、構えた。
「ロケット団!」「滅ぶべし!」
三つの銃口が男二人に向けられた。
「じゅ、銃!? リーダー、ヤバイっスよコイツ等!」
「うろたえるな!」
瞬間、パニックを起こした下っ端を大声で落ち着かせた。流石はリーダーと呼ばれるだけはある。中々に肝が据わっている。
だが、そのリーダーの頬に汗が張り付いているのを二人は見逃さなかった。
「まあ、落ち着け」
両手を挙げて敵意が無い事をアピールするリーダー格。二人は銃口を向けたまま、無言だ。
「その目を見れば判る。余程、我々を憎んでいるな」
憎んでいる? 当然だ。そうでなければこうも殺生を重ねない。
「確かに、我々は悪の組織だ。方々から恨みを買っている。だがな……」
どうやら、その自覚はあった様だ。面白いから続けさせてみる。
「今迄、私は人を殺めた事は無いよ。解るだろう。殺人は重罪だ。
……だから銃を置こう! 我々は殺し合う冪ではない! きっと話せば分かり合える!」
此処迄聞いて急速に萎えた。政治家の演説か? だったら、こんな場所ではなく、選挙カーの上でやるが良いさ。レッドは引鉄に力を込めた。
「さあ!その銃を置いて握手を」
――ダァン
言葉は最後まで紡がれない。それを遮った銃弾はフローリングの剥げた床に穴を開けていた。こんなものが直撃したら人間なら無事では済まないだろう。
「「……ポケモンは?」」
「何?」
感情の一切合財が凍て付いた声。だが、レッドとリーフの胸中では憎悪が渦巻いている。
「ポケモンはどうなんだ?」「殺した事、あるでしょう」
「そ、それの何処が悪い! ポケモンなぞ人間が使ってやらねば価値が無い存在だ! 寧ろ我々の金儲けの役に立って死ねるなら本望だろうっ!」
男は火が点いた様に早口で捲くし立てる。パニックに陥った時こそ、その人間の本質が表に出るものだ。そして、化けの皮が剥がれた男を見て二人は十分に理解した。
――ああ、こりゃ駄目だ
「お前等、もう死んで良いよ」
「ううん? って言うか、死んで今直ぐ。お願い」
言葉は出尽くした。やはり、こいつ等とは相容れない。否、それ以前に言葉が通じない。
予想はしていたが、それが当たった事に絶望する二人。もう殺意や狂気を隠そうともしなかった。
「り、リーダー!」
「こ、このまま殺されてたまるか! お前も戦うんだよっ!」
2対2。ダブルチーム同士の対決だ。とっくにポケモン勝負からは逸脱しているが、それが彼らの最後の抵抗と言うのなら、それに則るのがトレーナーとしての慈悲だ。
二人は銃を仕舞い、腰のボールに手を伸ばした。
「灰にしろ、リザードン」「フシギバナ。粉砕しなさい」
カントー御三家の裡二匹がこの場に降臨した。
相手はゴルバットとラッタ。……残念だが、レベルも種族値も一切が違い過ぎた。
「エアスラッシュ」「ヘドロ爆弾」
室内と言う事も忘れての大立ち回り。次々と落とされるロケット団の手持ち。一撃すら耐えられない。
「い、行けえ! ほら、あいつを直接狙うんだよ!」
「無理ですって近づけない!」
どうやらダイレクトアタックを考えている様だが、それは甘い。下っ端が飛び掛るより早く狙いを付けて、撃つ自信がある。それ以前にこの二匹の間をすり抜ける事など訓練を受けた人間すら至難だろう。相手に打つ手は無かった。
「ブラスト…」「ハード……」
兄妹が大技を指示。リザードンとフシギバナが発動体勢に入った。
「バーンッ!」「プラントッ!」
部屋の包み込む爆発の衝撃波と、階下から襲う巨大な樹木。この瞬間、部屋の床の大部分は崩れ、屋根と窓ガラスは吹っ飛んだ。……当然、発動前に二人は安全な物影に避難していたので無事だ。
あのまま消滅していてもおかしくないエネルギーの本流だったが、その出力はちゃんと抑えていたのだろう。ロケット団二人はその手持ちと共に階下に落下していた。
瓦礫がクッションになった様で大した怪我は見られない。二人は下に飛び降りた。
「リーフ」
「うん?」
気絶していたロケット団の意識を無理矢理覚醒させて、銃口の支配下に置く。
リーダーと呼ばれた男は壁際に追い込まれ、逃げ出せない。下っ端もその様子をビクビクビクしながら見ている。
「そいつ逃げない様に見張っててくれ」
「アイアイサー.。……動いちゃ駄目よ?」
下っ端の監視をリーフに任せるレッド。これにはちゃんと意味がある。
リーフはイングラムの銃口を突き付けて、下っ端に念を押す。コクコクと何度も下っ端は頭を振った。
「さて、人殺しは重罪って言ってたな」
「あ、ああ」
レッドがショットガンを片手に問う。これは尋問ではない。どちらかと言えば鬱憤晴らしだった。
「じゃあ、ポケを殺す事は罪じゃないのか?」
「・・・」
リーダー格の男は答えない。レッドを刺激しない様に黙っているのは見え見えだった。
レッドはその無言を肯定と解釈した。この男は確かに、先程ポケモンの命を軽視する旨を述べたのだ。
「ま、お前等にとっては、そうなんだろうな」
ポケモンは道具で、その道具を使う人間はポケモンより偉い。
人間優位の価値観を捨てられない馬鹿が考えそうな理屈だ。生身ではズバット一匹にすら苦戦すると言うのに、それでポケモンより偉いと気取る。
「そんなお前等が人権を主張するとはお笑いだな」
そんな阿呆は最早人間の範疇に当て嵌まらないとレッドは断定する。人間じゃない只の毛無し猿が人権擁護を声高に叫ぶ。或る意味シュールな光景だ。
「そして」
レッドを取り巻く空気が変わった。そして、伸ばされた右手の指が男の首に食い込んだ。
「お前等のその勝手な理屈で俺達の相棒は殺された!」
「うぐぐ!」
憎悪の発露だ。ゴリッと額に銃口を押し付けてレッドが叫んだ。慈悲は無く、殺意しか読み取れない瞳。彼はその引鉄を躊躇い無く引くだろう。
「だから、その命で贖え」
「!! 待っ「死ね」
――ダァン
そして、やはり引鉄は引かれた。
ビシャビシャと弾けた脳味噌が降り注ぐ。爆発した男の頭はまるで石榴の様だった。べた付く脳漿が天井や壁、レッドの装いを赤く汚した。
――ボトリ
下っ端の足元に何かが転がった。それは今迄生きていたリーダーの眼球だった。
「ひっ」
この時、下っ端の恐怖心は限界に達した。……このままでは殺される。
「ひいああああああああああああ!!!!」
助かりたい一心で叫びながらその場を駆け出す。
……銃口が自分を狙っている事も忘れて。
――パララララララッ
「ぎゃっ、がっ」
全身を針が貫いた様な激痛に襲われ、下っ端はもんどり打って仰向けに転がった。
軽快な連射音。チリチリと床に空薬莢が転がる。硝煙を昇らせるリーフのイングラム。彼女が撃ったのだ。
「あーあ。だから、動くなって言ったのにねえ」
「う、あ、があああ……」
苦痛に呻く下っ端の肩を片足で踏み付けた。その顔が更に歪む。
「未だ殺さないわ。急所は外してるし。……聞きたい事があるの」
「見せしめとしては良い効果だったろう? 喋ってくれるな?」
これがリーフに監視させた理由だ。目の前で上司を凄惨に殺せば、下っ端はパニックになる。その状態で多少痛め付けて尋問すれば相手は素直に喋る。それを狙ってのものだった。
情報を持っていない事が唯一の懸念事項だったが、リーダーの近くに居た下っ端だ。きっと何かを知っている二人は踏んでいた。
「う、た、助け……ぐえ」
リーフがわき腹に爪先を軽く捻じ込んでやった。蛙の泣く様な声で呻く下っ端。
「それはあなたの態度次第かしら」
リーフの瞳が闇の中で鈍く光る。赤い光だった。
「一つ目。此処って結局何? もうこの山って化石出ないんでしょ? 何でこんな場所で集まってたのよ」
「こ、こは集会所だっ。報告とっ、本隊の指示を受ける、場所だ。新しっ、団員……連れて来たりす、る」
「……やっぱり活動拠点の一つ、か」
最初の疑問だ。何でこんな場所を溜り場にしているのか。
めぼしい資源がある訳でもないこの場所を選んだ理由を知りたかった。
そして、答えはレッドが考えた通りだった。意外性の無い答えだとがっかりする事はしない。重要なのは次以降の質問だった。
「二つ目。あなた達、一度解散したわよね? でも、サカキのおじ様は行方不明なんでしょう? 誰が仕切っている訳?」
今のロケット団の内情はどうなっているか、だ。
二年前にサカキを殺せなかった瑕疵がこうやって回って来ている。
一度解散した組織を再び興すとなると、サカキに変わる新たなカリスマの存在が必要になる。二人にはその辺りが不明瞭だった。
「はー、はー……ごふ」
苦しげに息を吐き、下っ端は吐血した。
「早く答えないと出血が拙い事になるわよ?」
吐血したと言う事は、内臓にも傷があると言う事だ。やはり、近距離であっても銃身のブレはどうにもならない。だから、弾が逸れたのかも知れない。
だが、撃った本人であるリーフはそれがどうでも良い事の様に冷たく言った。
「さ、い高幹部、アポロ様を中心……ラ、ンス様、アテナ様、ラムダ、様がほ、補佐して組織は、回っている……っ」
「……聞いた事ある名前、ある?」
「いや。……だが」
どうやら幹部連中が今のロケット団を纏めている様だ。出て来た名前にリーフは心当たりが無い。二年前には名有りの幹部と闘った事が無かったのだ。
しかし、何か気になっている事がレッドにはあったらしい。
「その中に前にナナシマの倉庫を受け持っていた奴は居るか?」
レッドの引っ掛かりはそれだ。以前、ナナシマの点の穴で強奪されたサファイヤを追って突入した倉庫で確かに幹部を名乗る男と戦ったのだ。
「アポロ様、だと思……以前は、ナナ、シマ支部長だった」
「あ! あのヘルガー使いの幹部! ……始末しておく冪だったわね」
リーフも思い出した。格好は下っ端のままで、名前も表示されなかったが、確かに戦った。サカキの解散宣言を信じず、負けて尚復活に執念を燃やす発言をした幹部。恐らくは間違い無くあの男だった。
しっかり止めを刺して置けば今になって復活する事も無かったのかも知れない。そう考えるとリーフは自分の甘さが腹立たしかった。
「これで最後だ。カントーに渡ったのはお前達以外にも居るな。そいつ等は何処に居る」
「・・・」
一番重要な質問だった。他の仲間の居場所について。復活した以上、送り込んだ人員がこれだけとは考え難い。復讐を続けていく為にその情報はどうしても欲しい。
だが、下っ端は顔を背け答えない。仲間を売る事への引け目か、それとも知らないのか。……何れにせよ、レッドは追及の手を緩めない。
「ぐあっ」
レッドが下っ端の髪の毛を引っ掴んでぐいぐい引張る。リーフも踏み付ける足に体重を掛けた。苦痛の悲鳴が下っ端から漏れる。
「貴様等屑が何人死のうが、感謝こそされても泣いて悲しむ人間は居ない」
「貴様はそう言う組織に組している。死にたくなければ……」
子供が泣き出して余りあるそれはそれは恐ろしい顔と声だった。まるで人ならざる何かが二人の背中に憑いている様でもあった。
「質問に、答えろ」「質問、答えてくれるわね?」
そして、一転。二人は微笑を浮かべる。それが殊更な恐怖を煽る様で、下っ端は一寸だけちびった。そして、恐怖に負けた様に叫ぶ。
「はー、はー……ッ! ぐ、グレン島だ! 一週間後! ポケモン屋敷に到着する!」
「……確かに聞いた」
レッドは満足げに頷いた。とっくに部隊配置を終えていると思っていたがそうではなかった。それならば、準備に時間を掛けられる。
「うん。ありがとう。御協力感謝。……そして」
もうこうなった以上、下っ端に利用価値は無い。リーフは銃を下っ端の脳天に向けた。
その下っ端の視線が向くのは、自分の顔でも銃口無かった。
「く、黒だ」
リーフのスカートの中身。暗いにも拘らず、僅かだが黒い布地がしっかりと下っ端の脳裏に刻まれる。そして……
――タン
「さようなら」
下っ端はリーフの下着の色を冥土の土産に旅立った。
「今更、見られて減るもんじゃないってのよ」
硝煙の臭いが僅かながら鼻を突く。羞恥心が無い訳じゃないが、今更見られた程度で動揺する程リーフは若くも無ければ純でもない。その姿はやたら漢前だった。
それから、極力自分達の痕跡を拾い集めて、広場に戻って来た。撃った回数はそれ程ではないので薬莢やら弾やらは粗方回収出来た。だが、破壊してしまった二階部分だけはどうにもならなかったが。
――お月見山 広場 山荘前
「ふゆううう」「ふはあああ」
久し振りの荒事で少しだけ精神を消費した。やっぱりシリアスモードは判っていても疲れるものだ。ベンチに腰掛け、大きく息を吐いて安堵する。レッドは煙草を取り出して一本咥えた。
「兄貴」
「どうした」
リーフが見てきた。レッドは何か忘れ物でもあったのかとリーフの方を見る。
「煙草、貰える?」
「……あいよ」
違った。煙草の催促だ。リーフも自分の煙草を持っている筈だが、態々集る辺り、家に置いて来てしまったらしい。
レッドはリーフにそれを咥えさせてやった。そして、安物ライターに点火。顔を寄せ合い、先に火を渡らせてフィルターを吸う。
「「はああああああ」」
盛大に溜息を織り交ぜ、煙を吐き出した。溜息の度に幸せが逃げると言うが、煙草を吸っていればそれが溜息なのかどうかは判らない。
そう言う意味では、彼等の喫煙も大人ならではの験担ぎなのかも知れなかった。
「……このままで、さ」
「このまま?」
呟く様なリーフの声。視線だけを妹に向けて、兄貴は煙を肺から吐き出す。
このまま殺生を重ねて、それともこのままの温いやり方で、と言う意味だろうか。レッドには判らなかった。
「ミロちゃん、ちゃんと成仏出来るかな」
「少しは天国に近付いたさ。俺のギャラドスも」
それこそ判らない事だった。死んだ相棒がきちんと成仏出来るかなぞ、自分が死んでみなければ確認しようも無い。
唯、そう考えねばやっていらない状況なのは確かだった。
――そして ……そして、自分達は地獄にまた一歩近付いた。
それを口に出す必要は無かった。
54 :
音ゲーマー:2011/11/01(火) 01:17:06.80 ID:bUFyU21M
何かもう別のゲームの話になってしまっているなこれは。
まあ、生暖かい目で見逃してくれ。
……さて、お待たせしました。次で漸くエロパート突入です。
おまいら準備はいいですか?
てか本編の裏でもこういう血みどろの戦いを続けてる誰かがいたんだろうな
特に初期のロケット弾のやり方だと殺されるほどの恨みを買っていないことのほうが不自然だとすら思った
さあ、物語に隠された闇をみせてくれ!
生存エンドだといいな
幕間:黄泉戸喫
※黄泉戸喫(よもつへぐい)……彼岸で煮炊きした食べ物を食し、此岸に帰って来れない事を言う。伊邪那美命(イザナミノミコト)がこれをやり、現世へ帰って来れなかった。
――マサラタウン レッド宅
「ただいm……ありゃ?」
「? え、留守?」
帰宅したとき、家の扉は施錠されていた。明かりも消えていた。何時もは日付が変わる時間を過ぎて漸く消灯となる自分の家が、こんな日付が変わる前の時間に沈黙しているのはおかしいと思った。
取りあえず、鍵を開けて家の中に入った。中は真っ暗で誰も居ない。手探りで明かりを付けて荷物を床に置いた。
「……ああ」
カレンダーの日付を確認し、リーフが母親不在の理由を思い出した。
「婦人会の遠征だわ。明日の夜迄帰って来ないわね」
「……そうだった。今回はヨシノだったか」
「うん。愛知」
結婚前は敏腕トレーナーとして有名だったレッド達の母親。出産を境に本格的なトレーナー業からは足を洗ったが、腕を鈍らせない為に近所のポケモン婦人会に参加して小遣い稼ぎをしている。今日はその遠征日だったのだ。
二人にとっては好都合だ。こんな血の臭いをぷんぷんさせて帰って来た自分達を母親には見せたくなった。
「一杯、引っ掛けるかよ」
レッドは冷蔵庫の扉を空け、ビールの三合缶を取り出した。色々動き回ったので喉はカラカラ。体が水分を求めていた。
……先程、人を撃った感触を薄めたいと言う目的もあった。
――プシュ
プルタブを引いて缶を開けた。そして、一気に口を付けるとレッドはゴクゴクとそれを飲み干した。
「げふっ」
ゲップをして缶を置くと、今度は五合缶を中から取り出す。それを片手に持つと、レッドは自分の荷物を抱えて二階へと引っ込んだ。
「……一寸飲まなきゃやってられんわね」
残されたリーフも台所の下の棚を漁ると、度数高そうな洋酒のボトルを取り出し、グラスにやや大目に注いだ。そして、冷凍庫から適当な氷を掴み出してグラスにぶち込んだ。
――ゴクリ
一息で半分近くの酒を飲んだ。食道を伝って熱い液体が胃に溜まって行くのが判った。
「ふううう」
その熱さに身悶えしつつ、更にグラスへ酒を注いだ。
……荒事の後には無性に飲みたくなって堪らない。まるで、疲れた心と体が癒しと慰めを求めている様に。
身体が、熱い。胸の動機も激しい。決してそれは、今飲んだ酒の所為では無かった。
「……よっしゃ」
注いだ酒をぐっと飲み干し、リーフも二階へと昇って行く。
この疼痛を鎮める手段は一つしかリーフは知らなかった。
――レッド宅 二階
レッドは床に胡坐を掻いて銃と格闘中だった。脇には封の開いたビール缶が立っている。
かちゃかちゃ忙しなく指を動かしてバラした銃のトリガー部やバネを確認する。日頃からマメな整備を怠らなければ、得物はそれに応えてくれる。戦闘中に誤作動が起きれば命取りなのだ。だから、入念に手入れをする。
――ガチャ ガシャッ
何の音かと振り向く。其処には妹が立っていた。床には取り落とした彼女の二丁のイングラムが転がっていた。
興味無さそうにレッドが視線を外し、再び銃に意識を集中する。
……すると、背後に気配。
「――っ」
振り向こうとして、動きが止まる。それよりも一瞬早く、後ろから抱き付かれていた。
背中越しに押し当てられる豊満な乳肉の感触。密着するその身体が自分以上の熱を孕んでいた。
「お兄ちゃん……」
リーフの声には何故か艶が乗っている。耳元に吹きかけられる吐息はハアハアと悩ましく、酒臭かった。
レッドはリーフが何を求めているか当然判っている。昔は頻繁にあった事だからだ。
「……後にしてくれんか?」
見ての通り、整備中だ。漸く、気が乗ってきたのに此処で邪魔されては堪らない。それ以前にレッドは乗り気じゃないので相手が面倒臭かった。
「駄目」
だが、それで妹様は納得したりはしない。
「なっ!? ちょ――っ! ……っ」
――グキッ
凄い力で首を横に向けさせられた。一瞬、鈍い音がした気がする。
……そんな事を考える暇も無く、リーフの唇が覆い被さって来た。
ぶちゅ、と言う擬音が聞こえそうな熱烈なキスだった、開始直後から舌を打ち込んでレッドのそれに絡み付く。酒臭く、また煙草の苦味がする唾液を送られ、また送り返した。
ぐちゃぐちゃくちゃくちゃと口腔を蹂躙するリーフの舌。レッドは魂を吸われない様に必死に抵抗した。
――ちゅぽ
二人の間で唾液の糸が伝う程の大人のキスだった。リーフは妖艶な顔と声で言う。
「どう? 興奮、した?」
「――この女郎(めろう)」
長い付き合いだけあって妹は兄を煽るのが上手い。だが、それに敢て乗ってやるのも漢の道だ。少なくとも、この痛む首の礼だけはしなくてはいけない。レッドは銃の整備を中断する事にした。
――その腰、撃沈してくれる!
妹のリーフに勝負を挑まれた!
「ちゅっ、ちゅ、ちゅう……っ、はあ……お兄ちゃん、おにいひゃん……」
「っ、つ……くっ、リーフ……っ」
ベッドの上で影が二つ踊っている。
半分上体を起こしたレッドの上にリーフが覆い被さっていた。
狂った様にキスをせがむ妹に応える兄貴。二人の口は唾液でベトベターだが、そんな事を全く気にしている素振りは無かった
「ったく……相変わらず、っ……病気だな、お前は」
「おにいひゃんらって……ちゅぷ。くちゅ、……大変な変態さんでいらっしゃる癖に」
キスの合間の軽口。この場合、どっちもどっちの気がしないでもない。
殺しの後に発情して兄を求めて已まないスケベ妹。そんな妹を跳ね除けず、寧ろ餌食にしてしまう鬼(おに)いちゃん。どちらも大差は無い。
「へ、へへ。違いねえ」
「んふふ……あたし達、変態さん……♪」
二人は寧ろ、それを誇っている様な素振りすらあった。禁忌に胸躍らせ、心も股間も熱くし、お互いの肉を貪る。そんな背徳感が何にも勝って心地良い。
「うぬ……っくう……」
レッドが呻く。股間から甘い痺れにも似た感覚が襲う。リーフがレッドのジーパンのジッパーを下げて、片手の掌で勃起した一物を捏ねていた。
先走りの涎を零して啜り泣くレッドのギャラドスをリーフは細い指先を巧みに使って厭らしく扱き上げた。
「あ、ひあん!」
されっ放しで居るのも格好悪いので、レッドも利き手をリーフのスカートの中に潜り込ませる。太腿に触れるとぬるっとした感触が指先に伝わった。噴出した愛液が其処迄垂れて来ていたのだ。
案の定、下着はお釈迦になる程ぐっしょり濡れていて、クロッチをずらして指を滑り込ませると、リーフの膣肉が待っていた様に指に吸い付いてくる。レッドはそれを認めると直ぐに指三本でピストンを開始した。リーフが気持ち良さそうに喘ぐ。
「お、お兄ちゃんのえっち……あんっ」
「いや、この場合スケベなのはお前だよ」
誘って来たのはそっち。股間に先制攻撃したのもそっち。どう考えても物欲しそうにしているのはリーフだろう。証拠に、浅い部分の天井に在るザラ付いた部分を擦ってやるとリーフが痙攣した。
「スケベじゃ、ないもん」
――どんっ
「ううっ!? な、ちょっ」
突き飛ばされたレッドが背中からベッドに着地する。何だと思って顔を上げると、肉欲そのものを顔に貼り付けたみたいにリーフが舌舐めずりしながら、レッドのギンギンに滾った竿を握っていた。
一瞬、レッドですら我を忘れそうになる威圧感をリーフは放っている気がした。まるでそれが始めて繋がった時のリーフを髣髴とさせる様だった。
リーフは腰を持ち上げてパンツずらして、兄のギャラドスを自分のパルシェンに宛がう。
そして……
「い、いきなりかよ?! ぁ……っ」
――ずぶぶっ
「――はああああぁんんん……♪♪」
体重を掛けて、一気に腰を落とす。妹は兄の分身を容易く飲み込んだ。
再奥迄やって来た兄に喚起する様にリーフは全身をぶるぶる震わせて、蕩けた顔と声で兄に微笑んだ。
「ドスケベだもん……☆」
ノースリーブを脱ぎ、黒いブラを外して投げ捨てる。ぶるん、とリーフの豊乳が外気に晒された。身体の所々に切創や銃創の痕が見られるが、それでもリーフの女としての美しさは損なわれない。
『リーフ(の乳)は俺が育てた』(`・ω・´)キリッ……と言う発言をレッドはしたりしない。
しかし、リーフがレッドに育てられたと言うのは本当だ。(性的な意味で)
高校入学前から凡そ六年以上に渡り兄の手によって耕されてきた肉体は乳のみならず、その全ては瑞々しくも、また熟れていた。
兄もまた肌着である黒いTシャツを脱いで床に投げ捨てた。全身に垣間見られる火傷や銃創は妹を守り、また護られて共に歩んで来たレッドの生き様を象徴する勲章だった。
肉付きの薄い、それで居て搾られた傷だらけの男の肉体は今だけは妹専用だった。
「うふふ♪ 兄ち○ぽおいしいよぉ……♪」
兄と合体出来て嬉しいのか、淫語を憚り無く垂れ流し、兄の怒張を下の口で頬張る妹は淫乱と言う言葉がぴったり当て嵌まる。
快楽を引き出す為に上下に腰を振り、左右にグラインドさせ、器用に襞を怒張に絡めるリーフの技は熟練した娼婦の様だった。
「お兄ちゃんも妹ま○こに一杯どぴゅどぴゅしてね……♪」
「ああ。勿論だ」
きっちり種を撒いて耕す。それがリーフと言う花園を開拓してきたレッドが負う責任だった。だから、妹の腰にシンクロする様に兄もリズム良く腰を叩き込む。
長年連れ添っている兄妹はお互いの気持ちが良い場所をしっかりと知っていた。
ずぼずぼじゅぽじゅぽ卑猥な水音が室内に響く。互いの汗やその他諸々の汁の匂いが混じって何とも生臭く、それでいて饐えた臭いがしている。だが、少なくともリーフはこの臭いが好きだった。
「すーはぁ……んくっ、スーハー……お兄ちゃん……♪」
レッドの肩口に顔を埋めてくんかくんかと兄の体臭を肺一杯に吸い込んでトリップする。この汗と埃と血の臭いの混じった兄貴のワイルドな香りは容易く妹の脳味噌を甘く冒すのだ。ご飯三杯は軽くイける。
「……好きだねえ、お前も。……いや、構わんのだが」
リーフの痴態にレッドは若干引き気味だ。ほんの少しだが、匂いフェチ気味なリーフだが、レッドには別にそう言った性癖は無い。
思えば、妹が自分のトランクスをくんかくんかしながら股間を弄っていたのを見てしまったのは果たして何時だったろうか。だが、頭に霞が掛かった様に思い出が明瞭としない。
……ま、良いか。思い出せないのはきっと思い出さなくて良い思い出なのだろう。レッドは頭からそれらを追い出して行為に没頭する。
「もっと……! もっとリーフのおま○こ激しくハメハメしてぇん……!」
匂いを嗅いで覚醒したのか、腰をぐりぐりと捻ってピストンの催促をするリーフ。その瞳にはハートマークが浮かんでいて、一片の正気すら見出せそうに無い。
「激しく? じゃあ、こんなモンでどうよ?」
ソフラン発動。BPMが100から200になった。腰骨を掴んで上下に小刻みに、且つ激しくシェイクする。泡立つ愛液がぶちゅぶちゅ、と弾けて結合部にこびり付く。
「きゃああああんんんんんっ!!!」」
因みにレッドのMAXは調子の良い時で888が最高だ。今迄の倍のテンポで奥を小突かれるリーフは歓喜の悲鳴をあげた。
先程、酒を入れたので何時もより多少は反応が鈍い事はレッドに+に働いている。決して早漏である訳ではないが、お世辞にも我慢強いとは言えないレッドのギャラドス。
千に届く回数、何度と無く兄の竿を咀嚼した妹の蜜壷は兄専用のオナホールといって良い程にエグイ動きをする。その弾幕を掻い潜り、妹を満足させる事は兄にとっては常に重労働なのだ。
「いっ! イイっ! おま○こイィッ!」
オクターブ高い声で泣き喚くリーフは桃源郷を彷徨いつつ、それでも尚深い快楽を求める為に腰を振り続ける。パツパツとした結合音が引っ切り無しに鳴り止まない。
「もっと強く出来るぜ。やってみようか」
「――ひっ」
――ずぢゅっ!
レッドの無遠慮なストロークがリーフの入り口から奥迄を一気に串刺しにして、子宮口と亀頭がキスをした。恥骨と腰骨が衝突して少し痛かった。
「ひィううううんんんんん!!!」
子宮を押し潰し、内臓全部を振るわせる衝撃にリーフは涙の玉を零して悶絶した。
ズコズコと注文通りに奥を重点的に叩くレッドのギャラドス。リーフの媚肉は蕩ける程柔らかく、それでいて隙間無くみっちり締めて来る。全方位から攻め立てる襞々の攻撃も驚異的だ。だが、レッドは未だ余力があった。
「い、クぅ……! 逝っ! お、おま……逝く……!」
「んん〜? 聞こえんなあ。はい、もっと大きな声で!」
先に天辺を拝むのはリーフだった。証拠に、リーフの膣内は不規則に痙攣収縮を繰り返す。
レッドは凶悪な面で口の端を釣り上げて、高速ピストンを続けながらリーフの勃起したクリトリスを捻り上げた。
逝くなら逝くとはっきりと宣言しろ。レッドがリーフに施した唯一の調教だった。
「ぎっ! お、おま○こ逝く! 逝ぐっ! いんぐぅ!! おま○ごぉ……!!」
「おらっ! 更に糞フランだ!」
良く言えました。そのご褒美に、レッドが更にスピードを上げた。
BPMが400突入。此処迄来れば半分体力譜面だ。だが、突破出来ればウイニングランだ。ゲージは余裕なので、更に乱暴に妹の最奥の円蓋部を擦り上げる。
「おぉ……おおぉんんん! おま○ご逝っちゃいまっずっ!!!」
下品な言葉と涎を垂れ流してアヘ顔を晒すリーフは理性の螺子が跳んでしまっている様だった。
だが、その普段とのギャップもまた可愛い。レッドもフィニッシュに向けてヒートアップする。
「逝けよ……逝っちまえ。逝っちゃえよ! お、俺も……!」
良し、発狂地帯を乗り切った。これで勝てる!
「いっ、く……ぁ、あはああああああんんんん――――っッ!!!!」
「んっく……! つうううぅぅ……!」
仰け反り、ギュッと目を瞑り、涎と涙を伝わせてリーフが絶頂の快楽に身を焼かれる。
臍の裏から伝幡する享楽の波が全身の細胞全てを振るわせる。
同時に、レッドもまた熱い欲望をリーフの最奥に注ぎ込んでいた。ぎゅうぎゅう搾り取るリーフのマン肉が痛い程に息子に食い込む。
だが、それが心地良くて尿道に残る精液すらも痙攣しながら吐き出してしまう。
「はっ、あっ、あはああああ……♪ き、来たあ……♪」
ぱくぱくと金魚の様に呼吸し、胎にブチ撒けられる生臭い愛の重さがずっしりと伝わって来る。まるで止血した部分に血液が戻って来る様なじんわりと暖かい感覚がリーフは大好きだった。
「おち○ぽみゆくぅ……☆」
「……うむ。お前も大変な変態でいらっしゃる」
兄貴のモーモーミルクを子宮でごっくんしてリーフは多少胎が膨れた。
反面、リーフにぎゅっと抱かれて顔がおっぱい塗れのレッドは少しだけ苦しかった。
「やっぱり、こうやってる時が一番幸せだなあ」
下半身で繋がったまま、レッドの胸板にのの字を書くリーフ。その顔は満足気であり、また何か物足りなそうだった。
「この生臭い、泥臭い交わりがか」
少しやつれた様な顔でレッドが言う。確かに、幸せと言われればそうかも知れないし、犯ってて安心すると言う精神的な癒しみたいなものも感じる。
だが、その代償として激しく疲れる。今、この時がそうだった。
「あたしは少なくともそう。……お兄ちゃんは?」
穏やかな、それでいて屈託の無い顔。そんなリーフに視線を向けられたレッド。
「あ? 俺は」
……別にお前程じゃない。ちょっと気取ってそんな事を言ってみようとする。だが、それが判ったのか、リーフは途端に悲しそうな顔をした。
「……嫌い?」
「う」
だから、そんな本気の涙目を向けないでくれ。……駄目だ、とても敵わない。
レッドは顔を背け、早々に白旗を揚げた。惚れた弱み、と言う奴かも知れなかった。
「嫌い、じゃない。……お前とのこれは、寧ろ大好きな方だけどさ//////」
「だよね♪」
レッドの顔は珍しく真っ赤だった。満足の行く答えが聞けてリーフはご機嫌だ。
恐らく、やっているリーフには自覚は無いのだろう。若し、自覚ありでやっているのだとしたら彼女は大した役者だ。レッド以上のやり手であるのは間違い無い。だが、その真実は不明だ。
「若し、さ」
「ああ」
一寸だけ、元気が無いリーフ。何となく言いずらそうに、もじもじとしている。レッドはそんなリーフの長い栗色の髪を梳きながらリーフの言葉を聴く。
「ギャラ君もミロちゃんも死んでなかったら、お兄ちゃんとこうはなって無かったのよね」
「多分な」
リーフの問い掛けにレッドは答えた。
兄妹間も絆が爛れたのは相棒達の死が全ての原因だ。それが無かったら恐らく、お互いが垣根を越えて交わる事は無かったとレッドは確信している。
「……侭ならないなあ」
「全くだ」
あいつ等ロケット団が自分達に齎したモノ。復讐心と兄妹での禁断の関係。アレが無ければ、今のこの心地良さは手に入らなかった。だからと言って、あいつ等を許容するか否かは全く別の問題で、寧ろ消し去りたい過去だったのだ。……二人にとっては、だ
だが、例え過去をやり直す事が出来たとしても、二人は決してそうはしないだろう。この蕩ける感覚を知った今、二人がお互いを手放す事は在り得なかった。例え、相棒達に恨まれたとしても。
腐って糸を引いた縁。肉欲塗れの赤い糸と言う名の呪いで二人は縛られていた。
「ねえ」
「今度は」
リーフがレッドの瞳を覗き込む。空色の瞳。その奥には自分と同じ別の色が見え隠れしている。自分と同じ存在から熱を分けて貰う為に、リーフはレッドの一物を絞り上げた。
「ん……もっと、飲みたい」
「……おっけ」
リーフがアンコールを使って来た。蠢動する肉壷がまるで自分の一物を消化する様にうねって来る。
……もう少し、可愛い妹と戯れていたい。レッドはもう一発位は頑張ろうと決めた。
63 :
音ゲーマー:2011/11/01(火) 18:26:46.62 ID:WIVfHyF4
悪いがリアルで用事だ。一端切るぜ。直ぐ帰れるかは判らん。
コンビニ寄って来るけど、何か要るか?
64 :
音ゲーマー:2011/11/01(火) 18:27:46.41 ID:WIVfHyF4
ageてしまった不覚…!フォロー宜しく ノシ
,イ ,イ ト、ト_
/ i.`l.i l (. ゚wwr゙ <<<<<<<<<<<
/ i ヾl,/ / ̄´
/'⌒'Y'⌒ア ⊃⊃
∠二( ).ノ)
(ノ (ノ
乙 GJ、待ってるぜ
「お、お兄ちゃん……」
「リーフ」
皺になったスカートと汁塗れの黒い下着を脱がし、ニーハイソのみになったリーフ。
先程、痴態を見せていた妹は形を潜め、反面弱々しくいじらしい瞳を兄に向けていた。
M字開脚されたリーフの其処はヒク付いていて、彼女本来の色である黒色のヘアが申し訳程度に生えている。放たれた精はリーフの奥深くに着弾していて、ちっとも漏れては来ていない。
レッドは腹太鼓使ってパワー全開になったみたいにチャックから青筋立てて反り返る一物を隠そうともせずにリーフに覆い被さろうとしていた。
「ちゅー、して……」
怖い事を無くす様にキスをせがむリーフに胸の動悸を隠せないレッド。
偶にだが、リーフはこう言った付き合い始めを思い出させる様な初々しい態度を見せる事がある。そんな時は往々にして自分もまるで恋人とそうする様にどっぷりと妹の身体に嵌ってしまう。
そして、きっと今回もそうだとレッドは薄く笑う。……この先の激闘の苦しさを匂わせる乾いた笑いだった。
「いいよ」
――ちゅっ
レッドは優しく、リーフの唇にキスを落とす。最初の様な激しさは無く、只管に軽い啄ばむキス。それでも、リーフの目はぎゅっと閉じられていた。
――ずぶっ
「んっ! んんっ……っはあ! 挿入って、きたあ」
レッドはキスしながら、怒張をリーフの中に埋めて行く。瞬間、リーフの目が開かれ、レッドの最奥到達と同時に唇を離し、大きく息を吐いた。
容易く侵入出来たは良いが先程とは何か様子が違うリーフの膣内。
何だろう。気迫と言うか、篭っている情念が違うと言うか……
例えるなら、黄Bが赤GOPに変化した。そんな感じだろうか。
「……動く、か」
阿呆な事を考えてしまった自分を忘れる様にゆっくりとレッドは腰を動かし始める。
「はっ、ぁ、あはっ……んっ、んうう」
「ふっ、ふ、っ」
悶える様に喘ぐリーフ。決して苦しそうな訳ではない。とても心地良さそうにシーツを握り締めている。だが、レッドは余裕が無かった。やはり、先程とは様子が全く違ったのだ。
額に汗が滴り、リーフのお腹に雫が落ちた。
……おい、何だこのノーツの配置は。リーフの膣内は最初から発狂状態だ。
ぐちゃぐちゃのドロドロ。自他の境界が曖昧になりそうな泥濘具合だった。
「あっ! あっ! ああっ! あんんぅ!!」
「ふう……っ、っ」
遊んでいる余裕など微塵も無い。下手をすれば、最悪先にこちらが閉店して潮を吹く結果となる。男の矜持とエゴからか、それだけは絶対に避けたいレッド。
唇を噛み締めながら、妹を果てさせる為に頑張るレッドは兄貴としては最低で、それでもやっぱり優しい兄貴の鑑だ。
弾幕の如き、襞の猛攻。膣圧の洗礼。奥へと誘うリーフの女。レッドにとってはそのリーフの愛が逆に苦しかった。
「お兄ちゃん! おに、っひゃんん!!」
「はあ、はああ、はっ……っ、よっこい、せっと!」
涙の粒をポロポロ零し、上下に乳を揺らしながら四肢の爪でシーツを掻き毟るリーフ。
全体難を超えて全体至難と言った感じだろうか。だが、決して訳の解らない物でもどうにもならない物でも無い。少なくとも、完走は出来そうと踏んだレッドは尻に力を籠めて泣き喘ぐリーフに渾身の突き上げをブチ込んでやった。
「か、は-――ぁ」
リーフの身体から息が抜けて、瞬間浮き上がる。奥に到達した瞬間にリーフのお腹はレッドの一物の形にぽっこりと膨らんだ。
それがどうやら止めになったらしい。
「おにぃちゃ……っ!!」
身体はトロトロ、心もメロメロ。もうこのまま壊されてしまってもリーフは構わなかった。
――ぎゅう
リーフが脚をレッドの腰に絡ませて来た。両腕も背中に回され、物理的に引き抜く事が不可能な状況。俗に言うだいしゅきホールドと言う奴だ。
そんな男の桃源郷的シチュにあり、レッドの顔は苦い。
容赦無く搾り取る……否、握り潰すリーフの万力じみた肉壷。ゲージは輝きを無くして空っぽで、もう閉店直前だった。
そして、そんな状況でもレッドは勝った。
「お、おにいちゃんらいしゅきいいぃいぃ――――っっッ!!!!」
「リー、フ……くうっ!! ぅああっ……!!」
妹の絶叫告白を耳元に聞きつつ、レッドは堪えていた妹への愛を解き放つ。
その中で感じる背中の鈍い痛み。爪を立てられるのは何時もの事なのでレッドは抗う事はせず、只力の限りぎゅっとリーフを抱きしめた。
レッドのマグマストーム! 急所当り! 効果抜群だ!
「しゅきぃ……おにぃちゃん大好きぃ……♪」
リーフはマグマの塊を子宮に放り込まれた! マグマの熱がリーフを内部から焼く!
リーフは潮を吹いて倒れた!
「――ああ。兄ちゃんも大好きだよ、リーフ」
リアルでだいしゅきホールドを喰らいながら、レッドは白い欲望の全てをリーフの子宮に塗り込んで行く。噴かれた潮によって腹が汚れているが、そんな事は気にしない。
首や背中の鈍い痛みだって今は瑣末事だった。涙を零して極上の笑みをくれるリーフが可愛くて、レッドは自然と優しい手付きでリーフの頭を撫でていた。
リーフは最高に懐いている! リーフの肌の艶が上がった!
レッドはPPが無くなった! レッドの体力が残り少なくなった!
――Just Barely Bonus得点+1146000
「あたしは……お兄ちゃんの妹だけどさ」
「突然どうした」
気だるい身体を投げ出して、兄の抱擁を一身に受けながら、リーフが突然呟く。
レッドは怪訝な表情をした。
「あたしは同時にお兄ちゃんそのものでもあるのよね」
「おい? 何だ。脳味噌に精液でも回ったか?」
突然、要領を得ない話を振られる。ややメタ臭い話題だが、レッドにはさっぱり訳が解らない。軽口で応対してみるも、リーフには全く効果が無い。
「そうかもね。でも、薄々気付いてはいたわ」
「リーフ?」
屑の様な酷い台詞。イカれ女郎の戯言だ。
自分が精液好きだと否定しない辺り、本気で重症だとレッドが心配を始めた。
「本来、あたしは存在してはならない人間だってね」
……何だろう。一瞬、世界の綻びと言う奴が見えた気がした。
「でも、あたしはこうして存在してる。誰かが望んだんでしょうね」
光の無い、空ろな瞳だった。まるで終焉に際し、全てを語って逝くかの様な妹の様子にレッドは不安を隠せない。心に一抹の闇が滑り込む。
「今は未だ良いわ。新たな物語が始まる前だから。でも、一度それが始まってしまえば……」
「始まれば、どうなる?」
新たな始まりと言う奴がどうにも気になるが、それよりもそうなった場合に妹がどうなるのかが気になって仕方ない。少し語尾を荒くしてレッドが問う。
「さあね。それは世界次第でしょうね。だって、そう言うルールなんだもの」
全ては茶番。箱庭の中の群像劇に過ぎない。そして、役目を終えた役者は舞台を去らねばならない。例外は無い。それが、掟。
無表情なリーフの頬には涙が伝っていた。
「……冗談じゃねえぜ」
「――っ!」
だが、此処でレッドが漢を見せた。リーフを包み込む様に、それでいて強く熱く抱きしめた。
「言ってる意味は不明だが、まるで自分が消えるとでも言いたそうだな」
今にも消えてしまいそうな儚さが妹を包んでいる。そんな空気を追い払う様に、リーフの肉付きの良い、それでいて華奢な身体を抱き続けた。
「お前は俺の人生の相棒だ。勝手にリタイヤされちゃ困る」
そうして、レッドはリーフの瞳を射抜きながら力強く言った。
リーフの瞳に輝きが戻る。
……一緒に地獄に落ちると誓った。その約束を反故されては堪らなかった。
「うん。うん……!」
心の不安を全て打ち払う様な希望に溢れた言葉だった。
それに縋ってしまいたくて、リーフは顔をくしゃくしゃにしてレッドの胸に顔を埋めた。
「無性に、怖いよ。時が過ぎるのが。だから……ね」
心に湧き上がる不安は消せないし、恐怖心は日増しに強くなる。それを振り払ってくれるのは目の前の男しか存在しない。
「あたしを放さないでね……レッド」
リーフはレッドを兄としてでは無く、好いた一人の男として頼りたかった。
――ちゅっ
泣き顔のままリーフがレッドにキスをする。だが、レッドは凍り付いた様に何も出来なかった。
「……くっ」
……兄として、男としてリーフを支えなければならないのにこの体たらく。レッドは情けなくて堪らなかった。
70 :
音ゲーマー:2011/11/02(水) 00:11:56.23 ID:11dtjtIb
いや、遅くなって悪かった。濡れ場は後もう一発終盤に挟んでるので期待せずに待っとって。
それじゃまた昼にでも。
マジで楽しくてこう、自分の作品書くの忘れてしまうというか手に付かないぜGJ
やばい、リーフちゃんのか弱さに萌えてしまった
拾:憎悪の終焉
……一週間後
――グレンタウン ポケモン屋敷
グレンタウンの名所とも言える巨大な廃屋。嘗てのフジ老人達の研究拠点であり、恐らくはミュウツーが生み出された場所。
今は訪れる者は少なく、肝試しの子供やはぐれ研究員が立ち寄る位だ。昔は火事場泥棒の隠れ家としても機能していたが、治安維持の名目でガサ入れが行われ、めっきり姿を見なくなった。
時と共に朽ちて行くこの廃屋にジョウトからロケット団の増員がやってくるとの情報を得たレッドとリーフは綿密な作戦を立てて今日に望んだ。
――ドンッ!
「ぎゃああああああああ!!!!」
爆発音と共にロケット団員の断末魔が響く。屋敷全体に張り巡らされたトラップに面白い様に掛かっていく。最早、ポケモンでどうにか出来る状況を超えていた。
「糞ッ! またやられた! こっちに来てくれ!」
「一体全体どうなってる!? 敵は何処だ!」
パニックになり右往左往する男達。最初は七人近く居た団員も今やたった二人だけだ。
この屋敷にはスイッチによって開閉するシャッターが彼方此方に仕掛けられている。その切り替えとC4やクレイモアによるトラップは絶大な効果を上げていた。
『こいつ等はもう瀕死だ。一気に畳み掛ける』
『WILCO(了解遂行)。じゃあ、シャッター開けるわね』
無線で連絡を取りつつ、絶妙なコンビネーションを発揮する兄妹。
――ガラガラガラ……
シャッターが上に開いていく。
「あ、開いた! に、逃げるぞ!」
「あ、おい待て! 危ない!」
団員の一人が焦りながらシャッターに飛び込もうとする。それに罠の臭いを感じたもう一人が必死にそれを止めようとする。だが、遅かった。
「おおおおおおおおお――っ!!」
シャッターが開き切ると同時にレッドが突っ込んだ。
「がっ!」
半ば焼け糞気味にショットガンを突き出して、銃口を男にぶち当てた。それに一瞬よろける男に向かいレッドは引き金を引く。
――ダァン!
ガンスティンガーだ。近距離からの散弾銃をモロに喰らい、男は吹っ飛びながら絶命した。
「ひっ」
その様子を間近に見てしまった最後の一人がビクリと身を硬くし、次の瞬間にはレッドに背を向けて逃げ出した。通路に逃げ込もうして……
――パララララッ!
「ぐわあ!」
脚へ弾が当り、男はそのまま転んで倒れる。銃口を向けるリーフが佇んでいた。
……逃げる方向にこそ罠や追っ手を配置するモノだ。時には真っ向から勝負した方が結果的に生き残れると言うのは良くある事だ。そう言う意味では、確かにこのロケット団は策を誤ったのだ。
「さて……」
最後に残った団員に近付いていくレッド。前回と同じ様に尋問を行う腹積もりだった。リーフも構えを崩さないで、ゆっくり男に歩み寄る。その男はどう見ても自分達より年下だった。
「喋って貰おうかな」
「ぐうう……貴様等か! お月見山の仲間を殺ったのは!」
脚を抑えながら何とか身体を起こしたロケット団が憎々しげに二人を睨む。
「・・・」
――どすっ
「ぐげっ」
その顔が気に入らなかったリーフ。その爪先が男の腹に突き刺さった。
自分達は殺される覚悟を以って復讐に望んでいる。だが、そんなロケット団は殺される覚悟を以って悪事に望んでいるのかが、どうにも伝わらない。
只、上の指示を受けて、責任の所在を曖昧にしロボットの様に命令を遂行しているだけでは無いのだろうか。
悪の組織を名乗る位ならば、死の覚悟程度は済ませて置いて欲しいと常々兄妹は思っていた。
「質問はこちらがする。貴様は聞かれた事以外喋るな」
普段のリーフとは違う、低い男前な声で警告を発する。
「わ、分かった……言う通りに、する」
腹を抱えて苦しそうにしながら男は頭を振った。
……こうやって、銃で脅せば容易くこいつ等は命を惜しむ。全く、この世の必要悪足り得ない情け無さだと、思わず呆れてしまった。
「お月見山もそうだったが、ここも拠点として使うつもりだったのか?」
「そうだ。今や我々はジョウトの組織。カントー再進出の橋頭堡は欲しい」
前と同じ状況だ。どうやら、完全に拠点を西に移してしまった様だ。以前はカントーで幅を利かせていたのに、解散の煽りで動き難くなった故の苦渋の決断の名残だろう。
しかし、ロケット団への逆風が未だに根強いカントーで今更彼らに何が出来るのかと言う疑問が二人の頭には当然の様にある。復活したと言っても以前の様な力は取り戻しても居ないのにだ。
それはロケット団では無い二人が考えても仕方無い事だった。
「お前達の他に来ている奴等は? 今後の予定でも良いが」
一番聞きたい、今の二人の生命線とも言える情報。是が非でも聞き出さねばならない事柄だが、吐かれた言葉は二人の期待を裏切った。
「残念だが、俺は知らん。何も聞いていない」
「嘘を吐くと苦痛が増すわよ?」
殺人上等、撃つ気満々と言った具合でリーフが団員の鼻先に銃口を突き付ける。焦った様に団員が叫んだ。
「本当だ! 俺は知らない!」
その顔と声は嘘を吐いている様には見えなかった。男は尚も叫ぶ。
「俺達もお月見山を襲撃した奴等を捜せと直前に命令を受けていたんだ! 上層部はカントーが危険だと認識していた!」
どうやら幹部達は送る直前になって、お月見山での一件を知ったのだろう。今回の増員には追跡部隊としての任も付加していた辺り、ロケット団上層部はカントーへの派兵の危険性を肝に刻んだのかも知れない。今後の決定に慎重にならざるを得ない程に、だ。
「……やり過ぎちまったか。やれやれ」
「と言う事は、暫く団員の到着は無い……?」
「判らないが、そうなんじゃないのか? 送った仲間が皆殺される場所にしつこく部下を送り続ける程、幹部様だって鬼じゃねえさ」
だとすれば、そうなる可能性が高まる。追跡部隊の筈なのに、武器は無く、錬度も相変わらず低いのは人材難以前に財政難である可能性が高い。人材育成も武器調達も金が必要になるからだ。
そして、人員を容易く使い捨てる組織にはどんな悪党だって付いて来ない事位、幹部達は判っているだろう。カントーを押さえるメリットがあるなら、多少は強引に派兵する筈だが、そうでない場合は此処でそれが途絶える事も在り得た。
「そうね。じゃあ、あなたの辿る道も当然判ってるわね?」
「なっ、や、止め「ストップだ」
苛立った様にリーフが男の眉間に照準を合わせた。だが、レッドの声がそれを止めた。
「……殺さないの?」
「そのつもりだったが止めた。こいつには働いて貰おう」
てっきり始末してしまうと思ったのに、それを止めた兄が妹には意外に見えた。だが、レッドにはしっかり考えがあった。生かす事でこの下っ端に仕事をさせようとしていた。
「お前、死にたくないんだよな?」
銃口をチラ付かせて、威嚇する。男が今は自分達の支配化にある事を念入りにアピールする様に、バレルで男の頬を叩くレッド。
「あ、当たり前だろ! この殺人鬼が!」
「――」
侮蔑の言葉と共に、べっ、と頬に唾を吐き掛けられた。
……良い度胸をしている。
――バキッ
「ぎゃ!」
頬の汚れを腕のリストバンドで拭い、レッドは男の鼻っ面にパンチを叩き込んだ。
鼻が折れる様な事は無かったが、それでも、男の鼻頭は赤く染まり、鼻血も滴っていた。
「良いか、良く聞け糞餓鬼。一回だけだ」
勇ましいのは結構だが、自分の立場を弁えないのは滑稽以前に憐れだ。
グイっと胸倉掴んで、レッドが男の耳元で呟く。最後通牒だ。
コクコク。男は何度も頷いた。そうしなければ殺されると思ったのだ。
「送り込む度に鏖殺するってアポロに伝えろ。アジトを見つけたら真っ先に殺しに行くともな」
レッドはこの下っ端をメッセンジャーとして使う事にしたのだ。命を奪わない代わりに言葉を届けさせる。レッドは男に言葉を託した。
「それが厭なら組織の全力を以ってあたし達を潰してみなさい」
リーフもそれに続いた。それは事実上の宣戦布告だった。
「俺はレッド」「あたしはリーフ」
――嘗て貴様等を滅ぼした者だ
そして最後に自分達の名前を記憶させる。古株の団員にこの名前は効果があるからだ。
「お、お前達がサカキ様を倒した伝説の……!」
どうやら、この下っ端は少なくとも二人の名前を知っている様だった。
「頼んだぜ」
「わ、判った。確かに、伝える」
男の肩を掌で軽く叩き、銃を仕舞って背を向ける。背中に聞こえる男の声に頷いてレッドはリーフに撤収を促した。
「帰るぞ、リーフ」
「はーいはい」
「ま、待てよ! おい!」
人間用の救急キットを男に放り投げる。被弾した脚では帰還は困難だろうと判断したレッドの慈悲だ。背中越しの下っ端の声を無視して二人は屋敷を後にした。
その数日後。グレン島の火山が噴火。島の大部分は溶岩に飲み込まれ、彼等が闘った痕跡は完全に消去される。……実に危ないタイミングだったのだ。
……其処からぱったりとロケット団のカントー侵攻は止まってしまう。
数ヶ月毎に小規模な部隊が送られて来る事はあったが、年が明ける頃にはそれすらも無くなってしまった。二人が本気で組織に喧嘩を売った事に、幹部達が恐れを生したかの様な反応だった。
それに業を煮やした二人はジョウトのアジトを何とか突き止めようと方々手を尽くし、現地に飛んでみたりもしたが、ロケット団に遭遇する事すら出来なかった。まるで意図的に避けられている様に。
……今迄、踏み付けにしていた者達から、殺意を向けられ、逆襲を受ける。様々な悪行を行って来た彼等がその覚悟をしていないとは思えない。だが、実際にロケット団はたった二人だけの処刑人を恐れ、何も出来ないで居る。
悪を名乗るならば、最後迄卑劣、且つ極悪非道。掲げる悪の理想を貫き、歩む悪の道に殉じて欲しいモノだが、どうやら今の彼等にはそれだけの度胸すら無いらしい。
そんな半端で脆弱な覚悟の組織が長い命の筈が無かった。
……そうして、また月日は巡り、夏。
彼等が最初に旅立ってから三年が経過していた。
レッドとグリーンは大学を卒業。レッドはフリーランスで何かの仕事を始め、グリーンはオーキド研究所の見習い研究員をしながらトキワジムのリーダーも兼任していた。
――八月の終わり
彼等の復讐が唐突に終わりを告げた。
――レッド宅 二階
その日、レッドは家で仕事の書類を纏めていた。リーフは大学の研究室だった。
西日が目に沁みる夕刻。自分のデスクでコーヒーを啜り、キーボードを操って書類を作成するレッド。もう昼間からずっとこうしている。
地味だが意外と重要な仕事だった。目が疲れる作業を長時間休まず続けるレッドの集中力はかなりのものだった。
すると……
YOU ARE NOW ENTERING COMPLETELY DARKNESS ……
レッドのギアから着信音。一時手を止めて、ギアを取る。発信者はグリーンだった。
「あいあい。こちらレッド。ボンジュールってな」
昔の幼馴染の傷を抉る挨拶だった。
『嘗めた口利いてんじゃねえぞシスコン。って言うか、お前その様子じゃテレビ見てねえな』
「テレビ? サカキの旦那が逮捕でもされたか?」
やや憤慨しながらグリーンが語尾を荒くする。テレビがどうとか言っているが、こちらは一日缶詰状態だ。そんな暇は無い。
凡そ在りもしない事を口走ってみるも、一転してグリーンの口調はシリアスだった。
『……そっちの方が良かったかも知れねえ』
「え?」
何だろう? シリアスな抑揚の中に若干の焦りが見える様だった。
『良いか? 兎に角、テレビを付けろ。ちゃんと伝えたぜ』
――ピッ! ツー、ツー……
「……なんだありゃ」
こちらが何かを言う前にグリーンは電話を切ってしまった。どうにも幼馴染の動向が不明瞭なレッドだった。
「……この辺にするか」
まあ折角教えてくれたのだからそれに肖らなければ不義理と言うものだ。レッドは首をゴキゴキ鳴らすと、今日の作業を切り上げて下に降りて行った。
――レッド宅 居間
「あ、レッド!」
「何?」
降りると同時に母親が血相を変えた様な表情を向けてくる。母がこの様な顔を晒すなど、レッドにも馴染みが無い事だった。
「テレビ、見てみなさい」
「?」
また、テレビだ。グリーンも母もテレビを見ろと言う。其処に何が映っているのか?
レッドは画面を網膜に映し、幼馴染の電話と母の表情の意味をやっと理解した。
「……何、だと?」
『ロケット団が復活宣言!? 多数の団員がコガネラジオ塔を占拠』
そんな感じのテロップが画面に踊っていた。
――バタン!
レッドが状況把握に努めていると、チャイムもノックも無しに凄い勢いで扉が開かれた。
「はーっ、はーっ」
其処には荒い息を吐くリーフが立っていた。
「リーフ!?」
「あなた、大学は?」
「ナツメが電話くれたのよ。こんな時に篭ってられない!」
毎度の如く良いタイミングで登場する妹様には些か吃驚な兄貴。母は研究室に居る筈の娘を問い詰めるが、こんな時に研究室に缶詰になっていられないと無理矢理帰って来たみたいだった。
「兄貴、どうなってる?」
「判らん。俺も今見たばかりだ」
荷物を床に放り投げてソファーに座るレッドの隣に腰を下ろす。リーフも詳しい情報を求めていたが、レッドもそれは知らなかった。
報道ヘリによる空からの中継が続く。発端になったのはラジオからおかしな放送が聞こえると言う警察への苦情だった。だが、警察がコガネのラジオ塔に連絡をするも音信は不通。これは妙だと警官数名をラジオ塔に派遣して見た所、もう既に手遅れだったのだ。
今は膠着状態。武装した警官隊が塔を取り囲んでいるが動き出す気配は無い。内部に大勢の人質を抱えているのだからそれも当然だった。
そして、二人はそれを見た。ヘリによる映像がフレームアウトする間際、ラジオ塔の入り口から出て来た人影を確認した。
「……子供?」
「人質が自分で逃げたのかな」
どうもそれとは違う様だ。誰かに助ける素振りも、慌てた様子も無い。
帽子を被った二人の子供。男の子と女の子。小学生……否、背格好から言って恐らく中学生だ。中継が途切れてしまったのでそれ以上は判らなかった。
陽が落ちて、ヘリは撤収。少し離れた場所からのレポーターによる中継に切り替わった。それを眺めていると、先程映った子供達が大人の制止を振り切って走り去っていく。目指す先は、ラジオ塔の方角だった。
「あ、さっきの子達、戻って来たよ!?」
「おいおい、まさか……」
どう考えても力がある子供には見えない。しかし、一瞬だけ見えた彼等の顔には或る種の風格が滲んでいた事を兄妹は見逃さない。
三年前のシルフカンパニーでの激戦が脳裏を過ぎる。彼等はあの時の自分達と同じ事をしているのだろうか。それは映像だけでは判らなかった。
――そして
テレビを見始めて数時間後。唐突に動きがあった。
内部からロケット団がぞろぞろと出て来て、周囲に配備された警官隊と衝突を始める。その騒ぎに乗じて殆どの団員がバラバラに散って行く。その中には他と明らかに違う服を着た幹部と判る人間達も含まれていた。
「アポロ……やっぱり、アイツだったか」
「あの白い奴だね……」
ナナシマで闘った幹部と背丈や顔や髪色が一致している男が一人居た。だが、その男もポケモンに乗り、何処かへ去っていった。
「あいつ等がやったのか」
「みたい、ね」
騒ぎが去った後にこっそりと塔から出てくるさっきの二人。報道陣や警察に囲まれる前にポケモンで何処かに飛んで行った。
その少し後に、検挙された団員の証言により今度こそロケット団が解散した事が報じられる。
「「――――」」
レッドとリーフはその映像を呆然とした佇まいで見ていた。
――レッド宅 二階
「兄貴……」
「・・・」
自室に引っ込んで、ベッド脇に腰掛けて只管に俯く。隣に座るリーフも言葉に困っているみたいだった。
「解散、しちゃったね」
「ああ」
それ以上に上手い言葉が出ない。リーフのそれにレッドは目を閉じたまま頷いた。
「どう、しよう。これからさ」
「これから、か」
復讐の為に生きてきた。その為に多くの殺生を重ねた。一度は遂げたと思ったが、またそれに引き摺られて、振り回されて。
終わった後の事を考えた事はある。だが、殺生を重ねた自分達がのうのうと平穏を享受する事は許されない。復讐に狂い、身内を犯し、大勢を殺した。それらの咎は決して消えない。
だから、決まって何時も何かしらの理由を付けて考える事を放棄していた。だが、今度はそうはいかない。
「まあ、何にせよ」
今だって、どうして良いのか判らない。唯一確かなのは……
「俺達の戦いは終わったぜ」
全て終わった。たったそれだけだ。
「終わった? ……終わった、のかな」
「ああ。……終止符打ちは、俺達でやりたかったがな」
リーフは未だに信じられない様に複雑な顔をしていたが、レッドはもう全てを受け入れていた。
今回もまた自分達が終わらせると思っていた復讐を終焉に導いたのは名前も知らない何処かの誰かだったのだ。それを恨む真似はしない。
唯、欲を言えば、決着は自分達で付けたかった。しかし、それはもう言っても仕方が無い、過ぎ去った願いだった。
「……うん。そっか。此処で御仕舞いか。ミロちゃん達も納得してくれるよね」
「手は尽くしたさ。もう、十分血は流された。これ以上啜る事は無い」
リーフもとうとう納得した。自分達に出来る事はやった。望む結果とは違ったが、仇が滅んだ事に変わりは無い。その瞬間は確かに目の当たりにしたのだ。
それなら今度こそ、相棒達も笑って逝ってくれるだろうと二人は信じたい。この瞬間を掴む為に兄妹は魂を磨り減らして来たのだから。
もう存在しない仇の影を追う事も必要無い。銃を握る事も、殺める事も。
解放された二人はもう誰も殺さないだろう。
「若し、又復活したら?」
「その時は一緒だ。だが、次は復讐の為じゃない。自分の為にだ」
終わったからと言って生き方を変える必要は無い。その時は、残念だが再び銃を取れば良い。それが復讐に取り憑かれた負け犬として生きて来た二人に課せられた栄光ある生き様だ。
「そうならない事を祈りたいわね」
「全くだ」
出来ればそうなって欲しくは無いと二人は切に願いたかった。
だが、今はそんな事を祈るより、勝利を噛み締める為の僅かな平穏が欲しい。
巨悪の壊滅に一役買った事は何時かきっと報われる。裁きの刻が来る迄、自分達はその罪を背負って生きれば良い。
今はそうしたい。それで良いと思った。
「そう、か。主役はもう、変わっていたのか」
呟かれるレッドの科白は全てを見据えたかの様だった。
リーフがそうである様に、彼にも世界の理が確かに見えた。
「新しい物語はとっくに始まってたんだな」
主役では無くなった自分。だが、役目を終えた者が舞台を去ると言うのなら、未だに存在している自分には遣るべき事が残されているという事だ。それが何であるか、何となくだがレッドは判っていた。
「・・・」
「?」
だが、リーフは?
自分の写し身。自分の半身。自分のもう一つの可能性。
消えずに隣に存在している彼女が背負った役目は何なのだろうか。
レッドには未だそれが見えなかった。
80 :
音ゲーマー:2011/11/02(水) 14:04:41.19 ID:wngNcMJf
復讐劇強制終了。もう流血描写は無いからご安心。次辺りから後半戦こうご期待。
え、期待なんてしてないって?
乙
二人の行方が気になる
拾壱:月に吼える
――レッド宅二階 レッドの部屋
「ふああああ……」
目覚まし時計のアラームと共に意識を眠りから浮上させ、ベッドから起き上がる。
上半身裸、形見のネックレスとジーパンのみを装着した姿で大欠伸をしながら、ぼりぼりと頭を掻いた。
「あ?」
ふと、ベッドに目をやると其処に何時も居る筈のもう一人の姿が無かった。
……気の所為か、何時もよりベッドの空白が広い気がした。
「珍しい。アイツ、もう出たのか」
日付はテレビでロケット団解散が報じられた次の日。八月三十一日だった。
頭の隅に引っ掛かりを感じるが、それを気の所為だと処理して、レッドは黒いTシャツに袖を通し、下に降りた。
――レッド宅 居間
「おはようさん」
「あら、おはよう。自分で起きてくる何て珍しい」
居間に下りた時、母親は朝食準備の真っ最中だった。何気無く言われた母の台詞にまたもや引っ掛かりを覚えるレッド。ずっと自分は母に呼ばれる前に自力で起きていた筈で、寧ろ起きて来ないのはリーフだった。
「?」
……きっと間違っただけだろう。テーブルから椅子を引っ張り出して、それに腰掛ける。
沸々と湧き上がる厭な予感。レッドは何とかそれを無視する事に勤めた。
だが、それは出来なかった。
「そう言えば、リーフは? 今日も研究室?」
厭な予感の根幹。リーフの事について。胸中を悟られない様に何気無い会話を装って、普通の声色で尋ねた。
「・・・」
母親は手を止め、凍結した表情でレッドを見詰める。
「母さん?」
何故、其処で黙るのだろう。予感が急速に確信に変わって行く様を脳内で見せ付けられる。
……否、そんな筈は無い。レッドは自分の希望的観測を崩さなかった。
「それは、誰の事?」
だが、それは彼の母親自身の言葉であっさり裏切られた。
「はあ?」
最初、それを冗談だと思った。否。そう思い込みたかった。嫌な汗が全身に噴出して、衣服に張り付いて来る。レッドはそれが不快で堪らない。
「リーフだよ。俺の一ヶ下の妹でアンタの娘だ。俺に全部任せるって言ったの母さんだろ?」
念を押す様に言ってやる。頼むから、冗談だと言ってくれ。しっかり思い出してくれ。アンタの娘の事を。俺の妹の事を。
……お願いだから。
「いや、任せるも何もねえ」
――おい おいおい。まさか まさかまさか。
……言うな。それ以上言うな!
「あなた一人っ子じゃないの」
「――っ!!」
レッドは二階に駆け上がった。リーフの、妹の痕跡を探す為に。だが。
「――無い」
無い、ナイ、ない、無いっ!
彼方此方ひっくり返して探すもその存在の欠片すら見つからない。
箪笥、ベッドの下、本棚、机の中。見当たらない。収納箱の中身を全部ブチ撒けた。
妹の服も、バッグも、化粧品も、書籍も、研究資料も。寝る前にあった筈のその一切が消えていた。
「駄目だ。……糞がぁ!」
レッドは家を飛び出した。ドンカラスをボールから解き放つと、空へ飛び立った。
知り合いに聞いてみる事にした。それに賭けたかった。
「はあ? お前、頭でも打ったの?」
グリーン。馬鹿にした様な顔をされた。今度殴って置こう。……次だ。
「えっと、俺はレッドに妹が居るって始めて聞いたけど?」
タケシ。露骨に戸惑われた。御協力有難う御座いました。……次。
「どちら様ですかそれ? そもそも先輩は一人っ子では」
ナツメ。変な顔をされた。本職エスパーでもお手上げとは。……次。
「私は存じ上げませんわ。何かの勘違いではありませんの?」
エリカ。知らないと言われた。後は誰が居ただろう? 次は……
思い付く限りの知り合いを尋ねて撃沈を繰り返す。ジムリーダーは愚か、四天王にだって尋ねたがそれでも駄目。知っている名前を辿って、それが無くなる迄同じ事を繰り返した。
――居ない
リーフを知っている者が誰も居ない。自分の頭の中にしか存在しない。
何だこれは。何なんだ?
周りの全てからリーフの情報だけが失われてしまっている。
これが世界のルールと言う奴なのか。こんな。こんな……!
――お月見山 広場
方々を彷徨った末に、辿り着いた山の広場。空に映える月がレッドを嘲笑っている。
「何処行っちまったんだよお……!」
疲れ切っていた。足は棒の様で、思考力は昆虫並みに低下している。
肉体的と言うより、精神的疲労の方が強い。一日で一生分の徒労を味わった気がする。
辺りはすっかり闇に包まれていて、今が何時かも判らなかった。
一体、自分は何時の間にこのおかしな世界に迷い込んだのだろうか。これが夢ならさっさと覚めて欲しかったが、頭を壁に打ち付けても目が覚める事は無かった。
「リーフぅ……っ!」
頭を抱えて苦悩する。泣きたい気分なのに、天邪鬼な涙腺は反応すらしてくれなかった。
自分の半身が居なくなる事がこれ程の痛みを齎すとは。本当に心が引き裂かれそうだった。失って始めて判る大切な人の価値。リーフの存在かどれだけ大きかったのか、レッドは初めてそれに触れた気がした。
乗りが良くて、やや癖っ毛で、抱くと柔らかくて、酒飲みで、締りが最高で、笑顔が可愛くて、おっぱいデカくて、ポケモンの菓子作りが得意で、喧嘩も強くて、寝起きが悪くて、何時も助けてくれて、癒してくれて、俺の相棒で……
リーフに対して思う事は沢山在り過ぎて一言では言い表せない。脳裏に浮かぶ妹の特徴は多い。それなのに今は妹の顔が思い出せなくなっていた。
……消える。妹の温もりや、想い。重ね合った絆と、愛情が失われて逝く。忘却の彼方に消えて往く。
「――厭だ」
自分の大切な者がどんどん居なくなる。嘗てはギャラドス。自分の慢心と社会の歪みによって。
そして、今回は妹。血を分けた大切な、世界で一番大切な女が理不尽な力により存在そのものが抹消されて往く。
そんな糞っ垂れな世界はこっちから出て行ってやりたかった。
果たして、これが、殺生を重ねた罰なのか。だとしたら、何故自分も消し去らないのか。
それは役目とやらがあるのからか。ファイアレッド……前作主人公としての役目が。
「役目……」
忘我と言った表情だったが、それでもレッドは顔を上げた。
リーフにも嘗ては存在した役目。リーフグリーンの主人公。
だが、今はそうでないから彼女は退場させられた。平等に被る筈だった今作のロールを自分が全て奪ってしまったからだ。
それなら、リーフにもそれ以外の確たる役割が存在すれば、与えてやれれば或いは。
「……ある」
レッドには確かにリーフにしか出来ない役目がある事を見出していた。
本来それは、舞台役者が勝手に振って良いモノでは無かった。
だが、この世界に……否、世界を創り出した神たる存在に彼女に対する一片の慈悲でもあるのなら、それは是非とも叶えて欲しかった。
リーフが存在するに足る役割。それは……
「戻って来いよ……! お前が居なけりゃ俺は……俺はなあ……!」
神には縋らない。以前そんな事を言った自分が阿呆らしくて笑えてくる。
では、都合良くそれに頼ろうとしている今の自分は何なのだと。
……決まっている。それこそが神ならざる人の姿だ。
人間の手ではどうしようも無い超常的な何かを前に人は頭を垂れて祈るしかない。
だが、こんな屈辱で大切な女が帰ってくるなら安いモノだと、レッドは只管祈った。
――俺の相棒を返してくれ、と
「!」
不意に、何かの気配を感じた。自分以外誰も居なかった筈の広場に膨れ上がるその存在感。レッドは自分の勘を頼りにその元凶を探し始めた。足取りは覚束無いが、それでも思考だけはクリアだった。
「リーフっ!!」
月を背にして、彼女は泉の畔に立っていた。レッドが捜し求めていた女は穏やかな微笑を湛えていた。
……でもその姿は幻の様に透けていて。レッドは恐れずに駆け寄った。
「――!」
そして、その姿はその手に抱いた瞬間に掻き消えた。
「あ」
自分の両手を見詰める。抱いた筈のリーフの身体。だが、掌には何も無い。
――何も無い筈なのに
レッドの両腕から先は血でべっとり汚れていた。
「あ、ああ……!」
――バシャ
力無く、泉に膝を付く。水の冷たさは不思議と感じない。その水面に映し出される自分の姿。余す所無く血塗れだった。死の臭いが激しく鼻を突く。
「うおわああああああああああああああああああ――――っっッ!!!!!!」
月に向かってレッドは吼えた。
「……貴! 兄貴ってば!」
「――っ!?」
肩が揺す振られている。瞑っていた目を開くと其処には見慣れた天井。自分の部屋だった。
――レッド宅二階 兄妹の部屋
「あ、起きた。んもう、吃驚させないでよお。何時も以上に魘されてるし、揺すっても起きないしさあ」
「……ゆ、め?」
顔を傾かせるとほっとした様な妹の顔があった。夢、だったのだろうか。
……だとしたら何て夢だ。相棒の死以上に見たくない光景だった。
「もう日付変わっちゃったよ。夜更かしはお肌に悪いのよねえ」
「日付……」
むっくりと身体を起こす。全身に疲労が圧し掛かっていた。今迄寝ていたとはとても思えない身体の重さだった。
リーフの言葉にはっと気付きレッドが尋ねた。
「今日、何日だ?」
「え、八月三十一日。あ、日付変わったから九月一日だわ」
「――」
それを聞いて絶句した。今朝、確かに日付を確認した。八月三十一日だった筈だ。
「俺、今日何してた?」
「そんなの……あれ」
何で俺は他所行きの服のまま寝ていて、その膝下が水で濡れている? 昼間、一体何をしていた? それは勿論……
リーフに聞いてみたが、何故か彼女は怪訝な顔をした。
「どうしたんだろ。記憶に無い。……そう言えばあたしも何してたんだっけな?」
途端、背筋が寒くなった。どうして、自分の一日の行動を覚えていない?
思い出そうとして首を捻るリーフだが、どうしても思い出せない様だった。
『夢じゃなかった?』
それとも、目の前のこれがそもそも現実じゃあない?
「お前、本当にリーフだよな?」
「はい? ちょっとちょっとこんなエロ可愛い妹が他にいるっての?」
信じられるモノが何も無い不確かな状態だった。自分自身の存在すらあやふやだが、それ以上に目の前のリーフの存在が疑わしかった。
勘繰ってみるも、その反応を見る限り、彼女の受け答えはレッドが知るリーフのそれに間違い無かった。
……だが、未だ確証が無い。
「本当に、ほんとのほんとにリーフなんだな!?」
レッドはその存在を確かめる様に手を伸ばす。触れたのはリーフのたわわに実るおっぱいだった。
「きゃぁっ! い、一体どうしたのよ。……んっ、やばい薬でもやったの?」
一瞬、身体をビクッとさせたリーフだが、レッドを張り飛ばす様な真似はしなかった。
少し、眉を顰めただけで結局レッドの気の済む様にさせた。
「リーフ……」
むにむにむに。掌一杯に捏ねて、揉んで、触って確かめた。
服の上からでも判るこの柔らかさ、90以上あるに違いない質感と肉感。正に一級品。それはレッドだけが知っているリーフの乳の感触に間違いは無かった。
最早、本人として疑う余地が無い事を確認して、途端、レッドの顔が崩れた。
「リー、フ……っ!」
「っ!」
涙を滲ませて、自分に縋り付く兄の様子を見て只事ではないと妹は理解した。
兄の涙など、復讐を決意したあの日以来終ぞ見る事が無かったのに。
「……大丈夫。あたしは此処に居る。居るから」
啜り泣くレッドをあやす様に自愛に満ちた表情で背中を摩り続けるリーフの姿は、まるで若き日の二人の母親の様で、また神々しくもあった。
「何があったの?」
一言だけそう言って、レッドを宥め続けるリーフ。母性溢れる彼女の抱擁に徐々に落ち着きを取り戻したレッドはぽつりぽつりと語り始めた。
「あたしが、消えた、か」
「ああ。誰も覚えてなくて。痕跡すら無くて。捜して、捜して。見つけたと思ったら消えて、俺は蝕まれて……そして、お前に起こされた」
何時もの夢に輪を掛けて最悪な、文字通りの地獄みたいな光景だった。ダークライだってもう少し慈悲のある悪夢を見せるだろうと思わず考えてしまう程の。
「ルールに乗っ取って排除されたのね」
「そう言う事だろう、な。……焦ったぜ。本当にな」
どうやら、退場した本人にもその自覚は無い様だった。
……何て恐ろしい事だ。不要と判断された役者は自分が消えた事に気付く事も無く、その痕跡すら残さず消滅させられるのだ。それがこの箱庭の掟だと言うのなら、無慈悲にも程がある。
そして、リーフはそれに一度飲まれた。レッドにとってはまるで心の大半が砕けて消えた様な喪失感だった。
「もうあたしが果たさなきゃならない役目なんて無いって思ってた。だから、消え去るのが無性に怖かった」
以前のリーフの言葉。彼女がそれを察知したのは、消される前の危機意識か、それとも前借主人公を張った経験からか。恐らく、そのどちらか若しくは両方だろう。
「そして文字通りに一度消えたんでしょ? でも、あたしはこうして存在してる。一体、どうして」
それがどうにもならないと判ってしまったから、彼女はレッドに縋った。しかし、一度消えて尚、こうして存在している事がリーフには腑に落ちない様だった。
あの時から、自分には存在に足る役割が無かったのを知っていたからだ。
「思ったんだよ。お前に新しい役割が出来れば、また俺の前に現れるって」
レッドにはそれが納得出来なかった。だからこそ、彼は世界に対しリーフの役割を提示したのだ。彼の願いが叶えられたのではなく、世界がそれを背負ったリーフを気に入ったので彼女は再び存在を赦されたのだろう。
「あたしに課す役目って、兄貴が?」
「ああ。ゲームの駒である俺にそんな権限は無いけど、それでもそうしなきゃって」
あらゆる事象は観測者が認識しなければそもそも存在し得ない。世界の掟に気付いてしまった以上、それは確かに存在する明確な力だ。脚本と言っても良い。
レッドがそれにアクセス出来たのも、単に彼が背負っている役目の重さか、或いはリーフに対する想いの強さか。
……兎に角、彼は脚本を書き換えたのだ。それに伴って舞台に再登場したリーフが再び消える事は無いとレッドは確信している。其処に精査は必要無かった。
「それって一体……」
「……秘密だ」
問題なのはリーフが背負わされと言う新たなロールの詳細だ。本人の意思を無視して兄によって勝手に背負わされたそれを聞く義務が妹には生じていた。
リーフは神妙な面持ちをしていたが、レッドは顔を背け、断固として語ろうとしなかった。そんなレッドの態度が気に入らないのか、リーフが弾けた。
「何それ気になる! 肉奴隷? 性処理肉便器? オナホール!? ペット!? 愛奴!? ……今も十分それに近い事をやってる気がするわね」
「おい。色んな意味でおい」
何でそんなエロ方面に偏ってるんだ。他にもっと相応しい言葉があった筈だ。しかも今の自分はそれに近いって俺はどんだけ筋が入った変態さんだよ。
……レッドには言いたい事が山程あった
「じゃあ、とっとと吐いちまえよお。うん?(怒)」
「ひ、秘密。いや、何れは言うから今は勘弁して」
自分の乳をぐいぐいとレッドの顔を押し付けて、柄が悪い態度で尋問するリーフ。その彼女のこめかみに青筋の十字路を見てしまったレッドは何時かは言うからと許しを請うた。
「むう。しゃあないか」
「ぶっ」
――べしゃ
あっさり承認したリーフは手を放すと、レッドが顔からベッドに着地した。
何れ話すと言うのなら、無理に聞き出す必要は無いと思ったのだ。それ以上に、兄を尋問の名目で苛めるのは妹としては嫌だったのだ。
「はあ。せめてお嫁さん位なら妥協しても良いけどさ」
だけど、やっぱりそれ位は言って置いても良いだろうと、リーフはレッドを見ずにぶつぶつと呟いた。
「//////」
……何故か、レッドは顔の半分を掌で覆ってそっぽを向いていた。
「って、そりゃ無理か。……どしたの?」
「ナンデモナイデスヨ? ハイ」
どれだけ鋭いんだこの女。やっぱり侮れない。
振り返ったリーフが不審そうに見てくるが、レッドは怪しいイントネーションで自分の胸中を最後迄ひた隠した。
この一件を最後に、レッドが相棒の悪夢に魘される事は無くなった。
89 :
音ゲーマー:2011/11/02(水) 23:00:37.52 ID:692025kF
リーフの存在をHGSSで抹消したゲーフリを俺は許さねえ。雑巾臭いマリル数十匹放り込んでバイオテロを起こしてやりたい位だぜ。
〜チラシ裏〜
FRもLGも両方やったが、LGの主人公は女だった。だから、HGSSで当然出てくるものと信じていたらあの仕打ちだよ。ソフト二つ使って交換して凄い楽しかったの覚えてる。その思い出を無かった事にされちゃ堪らねえってのが筆者の物語の核です。
〜以上チラシ裏〜
キリも良いし、ほんとシブに爆撃しようと思う。皆少しは楽しんでくれてる様だし、同士が釣れるかも知れないな。
>>89 乙!そして激しく同意
アニメ出演→叶わず
スマブラX参戦→叶わず
HGSS出演→叶わず
というリーフの不遇さが心苦しいよ。
しかし、相思相愛で惹かれう二人の悲劇があるから赤葉SSはロマンティックで素敵だ。
>>89 同意を誘うならSSでやれ馬鹿者!!
ともあれ乙
音ゲーマーであるならばリーフにふしぎなくすりを使うべきだったな(媚薬的な意味で)
拾弐:ジョウトからの客人
――九月中旬 ヤマブキシティ リニア前
リーフはその日は休日で、ヤマブキ近辺をぶら付いていた。其処でとある人物に出会った。
「? ……あの子は」
それは女の子で何処かで見た事がある姿だった。一体、何時だったろうか。
どうやら、道に迷っている様だった。
「そこの君! 何か困り事?」
リーフは思い切って声を掛けてみた。
「あ――」
女の子が振り返る。ニーハイソ、オーバーオールの様な青いショートパンツに赤いトレーナー。リボンを括り付けたキャスケットを被っていた。
「ふふ。そんな警戒しないでよ。別に取って喰ったりしないからさ」
硬い表情のその子を安心させる様に笑い掛ける。
リーフにはその少女の正体が判った。ラジオ塔事件の時に画面に映りこんだ女の子だった。
「あたしはリーフ。大学生。あなたは?」
「え、と。あたしはコトネって言います」
リーフが自己紹介をすると、女の子が答えてくれた。
話を聞くと、彼女は友達との待ち合わせ場所であるシルフカンパニー迄の道が判らなかったらしい。確かに、遠くからは目立つあのビルだが、辿り着くには狭い路地を通らねばならず、この辺りは似た様な路地が多い。リーフは案内してやる事にした。
「じゃあ、リーフさんもトレーナーなんですか?」
「まあね。今は研究で忙しいから昔みたいに頻繁に勝負はしないけど」
道すがら、お互いについて少し話した。
コトネはジョウトはワカバタウン出身のトレーナーで、お隣さんのヒビキと言う少年と相棒のマリルと一緒に半分は修行、半分は観光目的でカントーの土を踏んだらしい。
リーフも自分がマサラ出身でトレーナーである事を告げる。
研究優先で勝負をしないとリーフは言うが、それは間違いだ。その強さ故にもう半年程挑戦者は絶えていて、それ故に卒論研究一本に搾るしかなかったのだ。
だが、そんな事を初対面のコトネに語ったりはしない。
「凄いなあリーフさん。あたしなんか何やっても中途半端で」
「今はそうでも未来は判らないものよ? 悲観しなさんな」
コトネの顔は自信無さそうに俯いている。そうやって決め付けてしまえばそれだけの話だともっと前向きになる様にリーフは窘めてやる。
「いいえ。あたしなんて駄目ダメですよ。リーフさんみたいに美人じゃないし、おっぱいだって……」
「いや、女郎の価値はそれだけじゃないでしょ。あたしの彼氏だって、乳には興味無いってさ……」
肉体的なコンプレックスを言われてリーフが苦笑する。容姿の美醜やセクシャリティの有無。それにしか女の価値を見出さない男は居るだろうが、そうではない奴だって確かに居るのだ。
……主に、あたしの兄貴。
自分みたいな阿婆擦れに興味を持つ中々の変わり者だと妹自身がそう思っていた。
「彼氏さんがいらっしゃるんですか!?」
「あ」
途端、コトネが喰い付いて来た。一寸、口が滑っただけなのだが、それに反応する辺りが中々に耳聡い。
「えー!? リーフさん程の美人の彼氏ってどんな人ですか!? 格好良いですか!?」
コトネの瞳がキラキラと輝いている気がする。
意外とミーハーだ。興味がある年頃なのかも知れないが……
「まあ、あたしにとっては良い男、だよ?」
リーフは髪を掻き揚げて、少し格好付けて言ってみた。
「うわあ。リアルな惚気。爆発して下さい」
「アンタ、何気に毒を吐くわね」
若干、リーフの顔が引き攣った。怒った訳ではなく、そんな言葉を躊躇無く吐いたコトネに少し吃驚したのだ。
「あ、すいません。ついダークサイドが滲み出て」
「・・・」
悪気は無い様だ。でもだからって、其処迄僻まなくても良いんでないかい?
それが嫌ならとっとと男を作れとリーフは言いたかったが、結局言わなかった。
「その人の写真とかって無いんですか?」
「見たいの?」
恐らく、純粋な興味本位でコトネが尋ねて来る。リーフは確かにレッドの写真を携帯していたが、それを晒すのは抵抗があった。それ程彼氏自慢をしたい訳では無かったのだ。
「えと、単純な好奇心からですけど」
でも……まあ、良いか。
どうせ今日限りの付き合いだし、兄の写真位は見せても問題無いだろう。
「……これ」
リーフは遂に折れ、自分の手帳の見開きに挟んである兄の写真を見せてやった。
リーフがレッドに頼んで撮らせてもらった物で、一番写りが良かった物を選んで携帯していた。
「か」
それを食い入る様に見詰めてコトネが一言。
「蚊?」
「かっこいい〜! 何、この人! 凄いイケメンじゃないっスか! うわあ……うわぁ! リーフさんはこんな人とあんな事、こんな事を?!」
どうやら、テンションゲージがMAXでフィーバーに突入してしまった様だ。
「あははは。まあ、餓鬼じゃないからね。そう言う事も頻繁にあるわよ」
自分では良く判らなかったが、コトネが言うには兄貴はイケメンらしい。自分の彼氏を褒められて悪い気がしないリーフは鼻先を掻きながらそう漏らした。
大人同士の恋愛ではお互いどうしてもプラトニックなままでは居られないのだ。
「そ、そのお話を是非!」
だが、それ以上下世話な話を展開する気はリーフには無い。
「あー、残念。時間切れね。着いたわよ」
「く……無念なり」
目の前にはシルフカンパニー本社ビルが聳えている。コトネが口惜しそうに歯噛みした。
――シルフカンパニー本社ビル エントランス
目当ての人物は直ぐに見つかった。屋内に作られた噴水の縁に腰掛ける帽子を逆に被った一人の少年。
「あ、いたいた」
「っ! ……兄貴?」
そして、その隣に居る野球帽の青年。
本当に何処にでも現れると我が愛しのお兄ちゃん様ながらリーフは呆れていた。
「ああ。グレイシア、リーフィアはシンオウ迄直接出向く必要があるな。向こうに知り合いが居るなら別だがね」
「何か面倒臭いっスね」
「ジバコイルやダイノーズもそうだぞ。うん? グライオンやマニューラが埋まってないな。進化させんのか?」
「何すか、それ」
「ニューラ、グライガーの進化系。爪と牙持たせて夜にレベルアップさせてみろ。使いこなせばかなりの強ポケだ」
「え! 貴重な情報じゃないっスか。メモメモ」
少年と兄は図鑑を開きながらそんな事を喋っていた。
「あれ、あの人は」
「あちゃー」
ヒビキの隣の青年の顔をコトネが見間違える筈が無い。気付かれた事が面倒臭い事に繋がらなければ良いが、多分そうはならないとリーフは自分の軽率な行動を少しだけ後悔した。
「おーい! ヒビキくーん!」
「? おお、コトネ! やっと来たな」
コトネが手を振りながらヒビキに近付く。妹と兄貴はその時に目が合った。
「……何やってんだリーフ。俺は仕事帰りだが」
「え、と道案内を」
レッドが明け方近くに出て行った事は知っていた。その言葉に嘘が含まれていない事は容易に判る。説明が面倒臭いのでリーフはそれしか言わなかった。
「紹介するわね。リーフさん。迷子のあたしを送ってくれたの!」
「そうなんですか。どうも有り難う御座いました。あ、俺はヒビキって言います」
「宜しくね」
コトネの紹介でヒビキと握手をする。黒のハーフパンツと赤いジャケットの少年。ラジオ塔の放送の時に映っていたもう一人の子供だった。
「えと、お綺麗ですね」
「え。……あ、ああ……っと、あ、ありがとう?」
それが誰に向けての言葉かリーフは直ぐに判らなかった。周りを見渡して初めてそれが自分への言葉と知った時、それは只の社交辞令だとも思った。
だが、ヒビキの真面目な顔を見る限りそうではない様だった。面と向かって誰かに綺麗だ等と言われた事が無かったリーフは何故か疑問系で答えていた。
……ベッドで兄にそう言われた事は何度かあったが、それはノーカウントだった。
「こちら、レッドさん。俺もこの人に連れて来て貰ったんだ」
「……どうも」
「は、はい! よろしく! コトネです!」
同じくコトネを紹介されたレッドは帽子を脱いで、控えめにそう答える。だがコトネはテンションが上がりっ放しなのか、レッドの片手を取ると、両手でブンブン上下させた。
「いや、この人、マジパネェわ。ポケの知識が豊富過ぎ。色々埋まらない図鑑のページについてご教授して貰っていた所さ」
些か興奮気味にコトネに語るヒビキ。歯抜けであった彼の図鑑はもうその大部分が埋まる事が決定していた。レッドの齎した情報がそれを可能にしたのだ。
「いや、それ程でも。凝り性の人間ならば誰だって到達出来るさ」
「そうね。493種全部埋めたってだけだもんね。時間と根気があれば誰だって、ね」
やや謙遜気味に兄弟が謂う。二人はとっくに全国図鑑を完成させていた。
「「はあ!?」」
それに驚きを隠せないヒビキとコトネ。先を越されていた事を知ったショック以上に、図鑑を全て埋めたと言う大偉業を全く鼻に掛けない二人の奥ゆかしさと言うか風格に驚いている様だった。
「そんな驚く様な事かな。……昔、オーキド博士の研究に付き合ってね。カントーからホウエン迄386種全て埋めた」
「その後は二人とも個人的な趣味で、シンオウのポケも埋めたのよ。創造神にも会ったわ」
始めはカントー図鑑だった。ナナシマでジョウトのポケを発見してからは、それを使ってホウエンの友人であるユウキとハルカの手も借り、全国図鑑を完成させた。
後は惰性でシンオウ図鑑も埋めた。それだけだった。
「ほんと何者ですか、あなた達は」
だが、ヒビキにとってはそれだけで済まない衝撃があったらしい。其処に至る迄の経緯や味わった苦労は筆舌に尽くし難い事が判ってしまう。今、それをやっている自分達がそうだからだ。
何度も挫けそうになって、止めたいと思って、それでも諦められなくて。そうしてヒビキは今も彷徨っているのだ。
その苦労を超えて自分達の前に立つ二人は自分達の先輩の様に映った。
だから、ヒビキは二人の正体を知り、少しでもその位置に近付きたかった。
「しがないトレーナー。そして今はケチなスローター(屠殺人)だ」
「あたしは普通の大学生。卒業したら彼の所に行く予定よ」
二人が語ったのはヒビキが知りたいモノとは遠いモノだった。だが、それが殊更秘密の匂いを煽る様で興味深かった。
「彼、ですか?」
リーフの言う『彼』と言う言葉が最初に引っ掛かった。
「え!? それってレッドさんに永久就職ですか!?」
と、其処でコトネが横から突っ込んで来た。嫌な予感、的中。リーフの顔色が少し悪くなった。どう誤魔化すか考えあぐねいているみたいだった。
「は? (……おい、話が見えんぞ。何でこの子が俺達の仲を知ってる)」
「その……(彼氏って言って写真見せたのよね)」
小声と共に睨んで来る兄の目が直視出来ず、視線を泳がせて小さく答えた。
「成る程」
やれやれと言った感じにレッドが溜飲を下げる。事情が飲み込めたのだ。
「失礼ですけど、お二人の関係って」
「ああ。妹だけど」「えっと、実の兄貴」
ヒビキの質問に正直に答えるレッドとリーフ。変に誤魔化す場面ではなかった。
「……そう言えば似てらっしゃいますね」
言われてみれば、髪色や瞳。顔形、着ている服も似通っている印象を受けた。兄妹だと納得するには十分な理由だった。
「ええ!? 恋人じゃなかったんですか!? ……はあ、からかわれたのかあ」
コトネはそれにがっかりした様子だ。リーフに担がれたと思っているのだろう。
だが、しかし。
「いや、間違いじゃない」
有ろう事か、レッドがそれを否定した。
「「「え」」」
ヒビキとコトネ。渦中の人間であるリーフもポカンとしていた。
「リーフは俺の女だ。な?」
「ぁ……う、うん! この人あたしの男//////」
そうして、レッドがリーフを抱き寄せた。そうして口を飛び出す問題発言。もうなる様になれとリーフも顔を真っ赤にして交際を宣言した。
「あー……兄妹、ですよ、ね?」
「軽蔑するか? ……別に構わないがな」
「え、と、あれよ。世の中そう言う兄妹も居るって事よ。あ、納得はしなくて良いわよ?世間の評価については判ってるからさ」
真っ当であるヒビキの価値観を塗りつぶす様にレッドがぶっきらぼうに言う。それにフォローする様に続いたリーフ。別に、社会に喧嘩を売りたい訳ではなかった。
「いや、別に俺は! か、構わないんじゃ、無いっスか? ……理解は出来ないけど」
「ああ。お前はそれで良いよ。正しい判断だ」
仏頂面のレッド。そのプレッシャーに負けた様にヒビキは言う。
そう言う連中が居てもいい。でもそれは自分には判らない世界だから、否定も肯定も出来ない……こう、言いたいのだろう。レッドはそれに満足した様だった。
「それで、あなたは?」
リーフの担当はコトネだ。正直、この子は要注意だとリーフの心が警鐘を鳴らしていた。戦々恐々としながら、それを悟られない様に尋ねた。
「す」
コトネの喉を通過したのはやはり一言だった。
「巣?」「酢?」
「すげええええ!! エロ漫画の世界みてえ!!」
「「ぶっ」」
思わず噴出すレッドとリーフ。後ろにひっくり返って、噴水の水に落ちそうだった。
「是非、お二人を師匠と呼ばせて下さい!」
「何の師匠だ何の。……こんな反応にも些か困るな。どうすりゃ良いんだ?」
「し、知らない」
コトネが二人に接近し、仰々しく頭を垂れる。
正直、コトネの反応は予想外だった。関係を明かした時に待っていたのは、拒絶か無言の肯定が大半で、残りは遠回しに応援する発言。賛同する者は本当に稀だった。
そして、この様な大手を振った肯定は初めてだった。
下の世代の考えについて行けないのは歳を取った証拠だと言うが、レッドもリーフも未だ若い自覚があった。それを突き破るコトネの反応。
……どうやら、彼女の特性は型破りで間違い無い。
「背徳と禁忌の子午線……それを越えた先に待つ真実の兄妹愛と肉欲の祀! それを貫くには障害は余りにも大き過ぎて! それに立ち向かう度に深くなっていく二人の絆! これこそ禁断の萌えっ!」
意味不明の発言がつらつら漏れる。魔界から毒電波でも受信しているのだろう。コトネの瞳は渦巻状にぐるぐるしていた。
「ひ、ヒビキ君? 君、コトネと知り合いなのよね? 止めてくれないかしら」
駄目だ。自分達では手出し出来ない。リーフがヒビキに救援を要請した。
「は、はい! 放置すると危険な気がして来ました。……コトネ?」
「え?」
ヒビキも放置が危険と判断した様だ。慌てて駆け寄って、その肩をとんとんと叩く。そして……
「当身」
「ごふ」
振り向いたコトネの脇腹を拳骨で打ち抜いた。堪らずコトネは反吐を撒いて床に転がった。
いや、それ当身じゃねえから。レバーブローだよ。
……兄妹は苦い表情でやり取りを見ていた。
「じゃ、じゃああの……俺達この辺で」
斃れたコトネを肩に背負ってヒビキが御暇を宣言した。意外にパワフルな側面を持っていたらしい。二人がそれを止める真似はしない。
「ああ。達者でな」「編纂、頑張ってね」
二人は、そう言って後輩達を送り出してやろうと思った。どうせこれで最後だからだ。
「また、会えますかね?」
「さあな」「どうかしら」
再会を匂わせるヒビキの言葉。二人は答えを持ち得ない。縁があればとしか言えない事だった。
「それでは!」「し、失礼します……」
コトネを抱えて、ヒビキが今度こそビルを出て行った。
「行ったか。騒がしかったな」
残された兄妹二人。やや疲れた表情でレッドが息を吐く。此処が禁煙でなければ即、煙草を咥えている所だ。
……あの二人がテレビに映っていた子供である事は間違いない。一期一会かと思ったが、どうもそうはならない様な気がする。
自分達と同じ匂があの二人からはしていたのだ。
「兄貴」
「あ?」
リーフの声と共に思考を中断する。レッドが向き直った。
「さっきの、本気?」
……何だろう。リーフの顔が若干赤い気がする。そしてそれ以上に瞳が真剣さを訴えている気がする。
先程の自分の言葉に対する問い質しだと言うなら、答えは決まっている。
「嘘を言う必要が何処に?」
レッドは臆する事無く言い切った。
「そっか」
目を閉じて、レッドの言葉を反芻するリーフ。そうして目を開けると、嬉しそうにレッドの腕に抱き付いた。
「おい。何だ」
突然の事にレッドも流石に戸惑った。リーフは嬉しそうに答えた。
「べっつにぃ? か・れ・し☆ に甘えてるだけよん?」
「う……」
……そうだった。ヒビキ達の前で彼女発言をしたのだった。つまり、今は自分を妹では無く彼女として扱えと言うリーフなりの甘え方だろう。
少し、判断を誤ったかも知れないとレッドは思った。
「あはは。じゃあ、ちょっくらデートしてこうよ。……レッド♪」
でも、リーフが笑ってくれるならそれも良い。レッドはそう思い直す。兄貴、ではなくて名前で呼んでくれたのが嬉しいと言うのもあった。
「……了解した、リーフ」
レッドは帽子を目深に被り直した。こう言うのも偶には悪くない。妹……否、彼女相手にサービスするなんて滅多に無い事だから。
……少なくともその時はそう思った。
「やっぱり、甘い顔何てするもんじゃねえな。特にこいつ相手には」
散々連れ回され、最後にミルク絞りを喰らう迄は確かにそう思っていたのだ。
「ん〜? 何か言ったかしら」
「……言ってない」
自分の腰の上で上下に跳ねるリーフにげんなりした表情でレッドが呟く。
もう残弾が空なのでそろそろ勘弁して欲しいと、レッドはホテルのベッドの上で思ったのだった。
100 :
音ゲーマー:2011/11/03(木) 14:09:41.99 ID:r05Gdx+z
主人公推参。続きは夜に。
>>92 それは考えなかった訳じゃない。でも奇妙な事に俺ポップン苦手なんだわ。(俺はギタドラ、弐寺主流。でもサントラは何故か持っているw)
例のネタオマージュしても書ききれる腕は無いし、大人設定なんだから最初からセクシー☆レディに変身済みだと思ってくれw
…20代のリーフさん。ぱっつんぱっつんのけしからん肉体をしておる筈ですよ。
ついもう必要がないと思ってしまいこんでたFR始めちゃったよどうしてくれる
バスト90以上のリーフちゃんにパイズリーフされたい
拾参:挑戦者、現る!
――ニビシティ ニビジム
ヒビキ達と会ってから数日が経過していた。仕事の報酬を清算した帰りにレッドは親友の所に顔を出した。
時刻は夜。ジムの解放時間が過ぎる少し前だった。この時間は何時もタケシがディグダの穴から帰って来ている事をレッドは知っていた。
「邪魔するよ」
「ああ、レッドか。……いらっしゃい」
他のジムトレーナー達は帰ってしまった後らしい。タケシがモップを持って一人で床を磨いている。このジムは基本岩だらけなのでフローリングの床は数が少ない。
タケシは相変わらず糸目で、視線を読ませない。
「?」
何故か、タケシの表情が沈んでいる気がレッドにはした。
「どうした。元気が無いが」
「やっぱ判るか」
「そりゃあ、な。何年も面を突き合せちゃいないさ」
付き合いが浅い人間ならば、糸目の彼の胸中を察するのは中々に難度が高い。瞳が見えないので、それから感情の振れを推察する事が出来ない。
だから、そんなタケシの纏う空気を読めるのは付き合いの長いレッドと他数名だけだ。
タケシはモップをバケツに浸しながら、突然呟く。
「カツラさん。負けたってさ」
同業者の敗北を、まるで息をする様に自然に告げた。
「おやっさんが?」
レッドの顔が僅かに歪んだ。タケシの言葉を最初冗談かと思ったが、どうも違う様だった。
「ああ。昼間、穴に行く途中で会ってさ」
――炎使いのカツラ
カントージムリ勢の最年長。その手持ちのレベルは非常に高く、カツラ自身もトレーナーとしては熟練を超えた達人の域。老獪と言う言葉からは程遠い燃える男だ。……そんな彼が突破された。
何処の誰がそれを成したのか、知りたい気持ちが涌いて来た。
「相当な手錬か。誰かは判る?」
「さあね。女の子だとは言ってたけど」
「・・・」
カツラのバッジを奪う事が出来る実力を持つトレーナーはそうは居ない。
噴火により、グレン島が壊滅し、双子島の穴倉に已む無くジムを移した後のカツラの復興に懸ける情熱、否……執念は凄まじかった。その逆境が彼を燃えさせ、また強くした。
それを上回り飲み込む圧倒的な力。
……レッドの脳裏に数日前に出会った少女の顔が過ぎる。
「レッド」
「っ?」
気付けば、タケシがレッドを見ていた。その顔を見たレッドがギョッとする。
「俺も今日、負けたんだよ」
その顔には隠し切れない悔しさが滲んでいたからだ。
「何!? 負けたって、お前も!?」
「いや、マジなんだわ」
これは……何やらきな臭い事になってきた。慌てて問い詰めるとタケシが恥ずかしそうに頬を掻いた。
「お前……黒星大丈夫なのか?」
「ああ、未だ平気さ。後二回は許されるから」
「なら良いがな」
各地に散在するジムは基本独立採算だが、国から支給される補助金は地理的条件や街の規模によって違う。
だが、どのジムにも言える事だが、その補助金は決して潤沢では無く、地方公務員扱いのジムリーダーの給金は驚く程安かった。
そんな待遇でも人が安定を求めるのは世の常なので、その維持に必死になるは必定。故にジムリーダーには重い責任が課せられ、その遂行に躍起になる。
ジムリーダーにはリスポーン回数が設定されている。連続で四回負けてしまった場合、ジムリーダーはその権利を剥奪され、その血縁である後継者に引き継がれる。タケシの家が大家族なのもそれが理由だった。
取り合えず、レッドが心配する様な事態にはなっていなかった。
「で、何処の誰よ」
「ジョウトの挑戦者だった。これは珍しいと勝負を仕掛けたが、コテンパンさ」
「――ジョウト」
岩タイプに拘る彼だが、腕は決して悪くは無い。寧ろ、この若さでは突出していると言っても良い。そんな彼の繰り出す化石軍団はタイプの有利を考えても並みのトレーナーでは一筋縄でいかない。
彼のバッジを奪ったジョウトの挑戦者。今何が起こっているのか、レッドには見えた気がした。
「ヒビキって名前かな。トレーナ−カードにはそう書かれてたよ」
「あいつか」
『また、会えますかね?』
去り際にそう言っていた少年の顔が思い出される。再会の時は意外に近いのかも知れないとレッドは思った。
「知り合いかい?」
「あ、いや……多分、人違いだ。済まん」
タケシの言葉にレッドは頭を振った。未だ確証が無かったが、そんな名前の人間がホイホイ居るとも思えなかった。
Waking up this morning. The same stuff comes up everyday……
「あ、と……悪い。電話」
タケシのギアが鳴り出した。セキエイのリーグとは違い、ちゃんとジムの中では電話は繋がるのだ。……曲名、判るかな?(筆者)
「ああ。構うな」
それを邪魔する程レッドだって野暮じゃない。手で出てやれと合図を出してやった。
「はいもしもし。……おう。…………はあ!? おい、それは嘘……違うって?」
話の途中でタケシの血相が変わる。珍しい事もあると遠めに見るレッド。
「今から……いや、良いけどさ。でも……っ」
……あれ? タケシの纏う空気が不穏な物になったのは気の所為だろうか?
内容が聞こえないレッドは黙っているしかない。そして……
「……っっ! 判ったよったく!!」
「!」
途端、堪忍袋の尾が切れた様にタケシが吼えた。糸目が解除されていた。
ブチッ、と言う何かを聞いた気がする。
「こんな時だけ都合良くか弱い女の振りするんじゃねえよ餓鬼が! 俺はお前の手持ちじゃねえ!」
尚も激昂を続けるタケシ。怖い怖い。……いや、冗談じゃなくて。
中々の激情家だと感心しつつ、事の成り行きを見守るレッド。
「……今から行く。身体、綺麗にしとけや」
一体、タケシは何をしたいのだろう。それに突っ込んだら負けな気がしたレッドは黙っていた。
「ふうううう」
通話を終えて、深呼吸するタケシ。気持ちを切り替える様に息を吐く。
そして、レッドに向き直り、言った。何時もの糸目のタケシだった。
「悪い、レッド。ちょっくら出てくるよ。お前も悪いけど」
バケツとモップを片付け始めるタケシ。
ジムを早々に閉める用事が出来たらしい。レッドもそろそろ帰ろうと思っていたのでそれに問題は無かった。
「あー、何の用事かヒント位はくれないか」
やっぱり、話の内容が気になる。去り際の土産にレッドが聞く。それ位別に良いだろうと思ったのだが、タケシはそれにあっさり答えた。
「カスミの処。今しがた、負けたって」
「なっ」
レッドが絶句する。タケシの憤慨の理由はそれだろうか。……どうもそれだけではない。
「それしか判らない」
挨拶もそこそこに、レッドはジムを後にした。
首を捻るが、色々と判らない事だらけだった。
――レッド宅 居間
ニビから帰って来て、晩酌しつつテレビを見ている最中だった。家の電話が鳴った。それに出ようとしたレッドだったが、先に母親に取られた。
「はいもしもし。……あらリーフ。未だ帰ってこないの?」
相手はリーフらしい。もう、夜も宵の口を過ぎている。……そう言えば、今日は姿を見ていない事をレッドは思い出した。
「うん、うん。……そう。判った。他人に迷惑は駄目よ。……しっかりね」
が、考えている裡に母親が受話器を置いてしまった。
「何だって?」
「今日は遅くなるってさ。ナツメさんと飲んでる最中だって」
今の会話内容を問う。こんな時に限って妹が家を空けている。嫌な予感しかしない。
そして、それは当たりだった。グイっと酒を飲む様な仕草を母がした。
「ナツメ?」
もうその名前が出た時点で確定だった。
「覚えてない? あなた達、仲良かったでしょ」
「いや、覚えてるけど。何でまた」
ナツメは過去に何度か家に遊びに来た事がある。その逆も然り。此処最近は専ら外で飲むのが主流だが、レッドが可愛い後輩の顔を忘れる等在り得無い事だった。
重要なのはどうして酒を飲んでいるのか、と言う事だった。
「何でもナツメさん、今日負けちゃったそうよ。その残念会だとか」
「・・・」
ああ、やっぱりアイツも乙ったのか。レッドはナツメの悔しげな顔を思い浮かべ、それを飲み干す様に日本酒を呷った。
「心配?」
「いや、アイツなら上手くやるさ」
それがリーフの事なのかナツメの事なのか判別出来ないので、ありきたりな台詞で誤魔化した。
……知り合いのジムリがどんどん倒されていく。下手人の見当は付くが、その快進撃は何時迄続くのか。
「関係無いよな、俺には」
その筈なのだが、悪寒がどうにも止まらなかった。
……数時間後、レッドの元へリーフからの救援依頼が届く。
内容:酔い潰れて動けない自分達のピックアップ。
怒り心頭のまま現地に飛んだレッドはこれを遂行。序に、報酬としてそれ等を美味しく頂いた。
一方的に呼び出されたタケシの怒りが判ったレッドだった。
――二日後 セキチクシティ
「ちわーっす」
レッドはセキチクへ飛んだ。ジムの丁度真裏にある古風な薬屋。キョウ達が営む店だった。
「いらっしゃい。……あ、レッドさん」
「よう、アンズ。店番か?」」
どうやら、今日はジムの解放日ではないらしい。キョウの娘であり、今のジムリーダーでもあるアンズが暇そうにテレビを見ていて、レッドに気付くと軽く会釈する。
何時もの忍び装束ではない、歳相応の女の子らしい格好だった。
直接闘った事は無いが、彼女が父の跡を継ぐ前からお互いに認識があった。
「はあ……そんな処です」
「学校は良いのか?」
「今日は、自主休業中です」
この日は平日で、アンズは高校に入学したばかりだった筈だ。そんな彼女が何故店番しているのか、それと無く聞いてみると元気の無い声が帰って来た。何か、あった様だ。
「それで、御用ですか」
「キョウの旦那に用があるんだが」
「父上なら奥に居るよ。……呼んで、来るね」
レッドが訪れたのは仕事道具の調達が目的だった。その旨を告げると、アンズは重い足取りで奥へと引っ込む。その様は明らかに異常だった。
……やれやれ、此処もか、とレッドは帽子を被り直した。彼の危惧は外れない。
「来たな、レッド」
暫く待つと、キョウが現れた。忍者が世を忍ぶ仮の姿……と言った感じだろうか。どてらを羽織ったその姿からは老舗の大旦那を髣髴とさせる雰囲気が滲み出ている。
寧ろ、彼等にとってはこちらが本業なのだが。
「ご無沙汰です。例の物は……」
レッドが軽く会釈する。仏頂面である事は変わらないが、目上の人間に対しての心遣いは忘れない。ロケット団解散からこっち、少しだけ感情も戻って来ている様だった。
「ああ、出来ている。持っていけ」
「どうも。はい、お金っと」
挨拶もそこそこにレッドが本題を告げる。キョウが後ろの棚を漁り、やや大振りな小袋を取り出してレッドの前に置く。レッドはその中身を確認し、代金である茶封筒を手渡した。相当に高額な商品の様だった。
「うむ、確かに。……しかし、こんなものどうするのだ?」
「仕事で必要なんですよ。それしか言えません」
忍者の秘伝が惜しげ無く使われた、それこそ対人用としてはオーバーキルな強力な毒薬。
レッドはその使用目的を語らない。キョウはプロフェッショナルなので、客の注文に答えただけだ。
「守秘義務か? 否、違うな。相当危ない橋を渡っておるな、お主」
「今の俺にはぴったりですよ」
こんな事ばかり上手くなってしまったレッドに対する適材適所だった。
何となく、キョウはレッドの仕事について見えている様だったが、深く追求はしなかった。
「そんな事よりも、アンズ。……彼女も負けたんですね」
話の向かう先を変える為で無いが、レッドがキョウに尋ねた。
「ふっ、流石に判るか」
「最近、そう言う話を良く聞きます。あの様子を見ればね」
あの重たそうな足取りを見れば、勘が悪い人間だって何かあったと判る憔悴振りだった。
「自分より年下の女子に負けた事が堪えたらしい。まだまだよ」
基本、忍者はその職業柄、感情を表に出してはならない。出す時は何らかの仮面を被らねばならないのが鉄則だ。だが、キョウの言う通り、アンズはそう言った感情の処理の仕方が未だに下手糞だった、
「女の子……ですか」
「話を聞く限り、以前よりも腕を増している。流石は一度、拙者達を突破しただけの事はある」
コトネの顔が真っ先に思い浮かぶ。そして、それは恐らく正解だった。どうやら、この男もまた過去に対戦した事があるらしい。
「やはり、殿堂入り経験者」
「うむ」
無論、四天王連中も本気ではなかったのだろう。しかし、だからと言って彼等の突破は至難の技だ。やり直しが利かず、戻って回復する事も出来ない。行った切りの特攻隊だ。
勝って進むか、負けて放り出されるかのDead or alive。
その過酷な道程を潜り抜けた者は殿堂入りとして賞賛を受ける。チャンピオン就任等はその過程に発生する副産物に過ぎない。そして、コトネやヒビキはその境地に至っている事が明白だった。だからこその強さなのだろう。
……カンナやキクコが現役だった時代、レッドも四天王には苦しめられた。キョウはその時は未だセキチクのリーダーだった。
だが、時が経て、状況は変わる。
カンナはナナシマに引っ込んで今はトレーナースクールの講師をしているらしい。キクコについては詳細不明。だが、影ながらオーキド博士のサポートを行っているとの未確認情報が方々から聞こえている。色々と因縁がある様だ。
シバは今も昔も変わらない。只管己を鍛え、闘いに狂喜するバトルマニア。偶にホウエンを訪れてはトウキと言う同門と殴り合いを繰り広げるらしい。
そして、現チャンピオンであるワタル。龍帝の二つ名を持つドラゴンルーラーが四天王からチャンプ代理に就任したのは半分は自分達の責任であるので、それについては済まなく思っていた。
……まあ、世間ではストーカーだの呼ばれている彼だが、本当はそんな事は無い。今の彼は従兄妹であるイブキにぞっこんである事を風の噂でレッドは知っていた。
因みに、新四天王であるイツキやカリンについては詳細が不明。数回闘った事はあるが、その来歴等はレッド自身に興味は無かった。そして、目の前のキョウについては言わずもがなだった。
「勝敗は、兵家の常ですからね」
まあ、今は昔語りはどうでも良い。それよりも、レッドは先輩としてアンズのフォローをして置きたかった。
「だが、気概で負ける事は許されん。これは忍の道以前の問題よ」
やはり、プロだ。些か厳格過ぎる気がしない訳でもないが、キョウの言う事を納得し、実践するにはアンズは未だ若いと思わざるを得なかった。
「だからこそ長い目で見る事も必要では?」
「む」
人生の先輩に意見する気は無い。家庭の事情に口を挟む気だって無い。
……それでも。
キョウが若干唸った。
「どれだけ詰め込んでも開花の時期は人によって違う。アンズも……きっと敗北を糧にする事が出来る様になりますよ」
「……確か、にな」
熟達を急ぐのも良い。だが、それではアンズ自身の長所を殺しかねない。
芽が出るのが早い奴も居れば、大器晩成型も居る。人間とポケモンでは成長の形はまるっきり違う。特に精神についてはとても難しく、また複雑だ。
だからこそ、答えを急ぐには早過ぎるとレッドは思った。
すると、白旗を揚げるみたいにキョウが頷いた。
「……どれ、それでは父として久方ぶりに食事にでも連れて行くか」
それは普段の彼とは違う涼やかで、優しい顔だった。
「ちゃんとお父さんしてるんですね」
「ふっふぁふぁ。他の者には見せんがな」
若干、照れ臭くキョウが笑う。
もう十分見せて貰っている、と言う突っ込みをレッドはしなかった。
108 :
音ゲーマー:2011/11/04(金) 00:12:02.18 ID:0CLNGP+K
何か話的に切が悪いのでもう一発。
109 :
音ゲーマー:2011/11/04(金) 00:12:50.25 ID:0CLNGP+K
拾肆:王の領域へ
――マサラタウン オーキド研究所前 夕刻
その日の夕方、レッドとリーフはグリーンに呼び出された。
話したい事があると、たったそれだけの呼び付けだったが、二人はその内容についてはもう判っていた。
「知ってると思うけどさ」
グリーンが西日に向かって呟く。影が長い尾を引いている。
片手には缶コーヒー。口元には火が付いた煙草が咥えられていた。白衣は着ては居ない様だが、今日の仕事が終わったのかは判らない。取り合えず、今の彼がトレーナーの顔をしているのは確かだ。
「ジムリが次々倒されてる」
「ああ。アンズが負けた事は確認したぜ」
知っているも何も、自分達も気になっていた事だ。その情報はとっくに掴んでいたし、先程この目で確認した。
「耳が早いな」
「後、誰が残ってるの? エリカと、少佐?」
名が挙がっているだけで既に五人が倒れている。挙がっていないのはその二人とグリーンだけだ。
「いや、マチス少佐も今日付けで倒された。凄まじい勢いだ」
グリーンが目を伏せて言う。稲妻軍人もまた討ち死。
これで六人だ。余所者にこうも良い様に食荒らされるのは判っていても抑えられない不快感があった。
「まあ、二人組みで順と逆で攻略してればそうなるだろうな」
「お前、あいつ等を知ってたのか?」
「ちょっとあってな」
ヒビキ達にとっては漸く折り返し地点と言った所だ。一周するには未だ時間は掛かりそうだが、それも時間の問題だろうとレッドは目を細める。
グリーンの問いに対し、レッドは気の無い返事をした。
「グリーンはどうなのよ。知ってる素振りだけど」
「ああ、会ったからな。グレン島で」
リーフが逆に問い質す。過去形でそう言ったグリーンに引っ掛かりを感じたのだ。
案の定、グリーンは二人に会っていた。グリーンが時折、文字通り焦土と化したグレン島に足を運び海に向かって膝を抱えている事は此処最近、有名な件だった。
原因はジムリの仕事か、それとも研究者としての悩みか。……何れにせよ、彼が抱える問題に対し兄妹が言う事は無かった。本人も、それを望まないだろう。
「確かに、お前の言う通り二人組みだよ。年端のいかない餓鬼だった」
「ヒビキとコトネ、か」
聞く限り、二人はチームで行動している様だ。嘗ての自分達と同じ。まるで自分の過去を見せられている気がして苦い笑いが漏れた。
「そんな名前なのか?」
「知らないの?」
「一々名前迄聞かねえさ」
態々、名を尋ねない辺りが実にグリーンらしい。少し、リーフは可笑しかった。
110 :
音ゲーマー:2011/11/04(金) 00:14:04.12 ID:0CLNGP+K
「じゃあ、このペースだと明日辺りエリカが餌食になるな」
「何か他人事だな。一応高校の後輩だろ。支援に行かないのか?」
「行ってどうなるのよ。エリカはジムリとして勝負に臨むのよ? 部外者は邪魔なだけよ」
少し、グリーンがムッとした様に言う。些か冷たいのではないかと言いたい様だ。
だが、そんな事は二人だって承知の上だ。ジムの看板を背負う以上、闘いは避けられないモノだし、応援に行った所で逆にエリカの注意を逸らしてしまう事もあるだろう。
エールを送る位はするが、後の全てはエリカ本人が如何にかするしか無かった。
「そうなると、何れはグリーンの所にも来るな。お前だけで二人を捌くのか?」
基本、トキワジムに挑むのに特別な資格は必要無いが、グリーンはカントーのバッジを七つ持つ物以外とは戦わない事にしている。このままでは彼一人でダブルチームの相手をする確率が上がる。
相手の詳細は不明だが、それでは幾らグリーンがカントー最強のジムリと言っても不利は否めない。
「そう、なるのかな」
煙草の灰を落として、コーヒーを呷って呟くグリーン。その言葉には何らかの迷いが含まれていると二人は確信する。
「止めといた方が良いわ。そっちも平等な数で臨む冪よ」
「そうなんだが、な」
本人もそれは判っているだろう。だが、そうするには避けられない切実な問題が存在していた。
……グリーンに拮抗する腕のトレーナーが居ない。
彼を助け、また時にはメインを張れる実力者がトキワジムには居なかったのだ。
「手、貸すか?」
「そりゃ駄目だ。幾ら強いってもお前等はトキワジムとは無関係。人数合わせにジムと関係無い人間を他所から引張る何て無体は通らねえよ」
レッドは無駄だと思ったが助け舟を出してやるも、案の定突っ撥ねられた。こう言う所は昔から律儀で頑固。全く変わっていないと些かレッドは苦笑する。
「ジムリとしての立場、ね。面倒臭い事ね」
「いや、違いない」
不器用で、他人を素直に当てに出来ない奴だと大仰に溜め息を吐くリーフ。兄とは違った反応にグリーンは自嘲気味に笑った。
「イエローに頼めば万事解決じゃないか?」
レッドが頭に涌いたもう一つの打開策を口にする。
――イエロー
今は一線を退き、学生を謳歌するトレーナー。だが、その力は折り紙付き。グリーン自身が見初め、鍛え、そして三年前の旅を共に踏破した彼にとっての相棒だった。
「あ、そう言えばそうね」
「う、む」
その手があったとリーフも頷く。一応、書類上はトキワジムに在籍している事になっている幽霊ジムトレ。彼女に頼めば数の不利は一気に埋まる。そう思ったのだ。
だが、反面グリーンの顔は何故か苦い。
「グリーン、体面を気にしてる場合じゃないぞ。お前が育て、また認めた女だ。お前が頼めば嫌とは言わない筈」
「ジムトレの数合わせに名前を貸して貰ったんでしょ? 使わない手は無いわ」
はっきりしない幼馴染の態度に苛立った様にそのケツを蹴り上げる二人。時間が然程潤沢な訳では無いので、とっとと決めろと言いたいのだ。
「だ、だが!」
「「だが?」」
だがしかし。グリーンの口からは否定の接続詞。兄妹は揃ってグリーンを冷ややかな目で見つめる。
「そりゃ、あいつは強いが……お世辞にも戦いに向く性格じゃあ」
囁かれる様な言い訳じみた台詞。戦わせたくないのか、それとも素直に協力を仰げないだけか。……どちらにせよ、二人にとっては聞く価値すらない糞の様な言葉だった。
「下らない」
「そうね」
「っ」
だから、それをバッサリ一刀両断してやると、グリーンが息を呑んだ。
「トレーナーは戦わせる事が仕事だ。向き不向きは成ってしまった以上、関係無い」
「それが厭なら足を洗えば良い。でも、あの娘は未だにトレーナーを続けている。起用しない言い訳としては苦しいわ」
鍛え上げ、他を淘汰して勝ち残り、頂点を目指す。それがトレーナーと言う商売に待ち受ける運命であり、また摂理だ。それに付いて行けない者は早々にリタイヤした方が自分の為でもある。
自分で志願してそれを為す以上、幕引きは結局自分の手で行わなければならないのだ。
少なくとも、以前に会ったイエローの目にはそんな感情は微塵も見えなかった。
手を借りる事のデメリットなぞ何処にも無いし、寧ろ借りなければおかしい位の一材だった。
「しかし」
もう、しかしも案山子も聞き飽きた。二人は止まらない。
「プライベートで深い付き合いなのは知ってる。でも、だからこそさ」
「あの子はあなたに頼って欲しいと思ってるわ」
グリーンだって唐変木ではない。レッドとは違ったベクトルのイケメンなので彼はキャンパス時代も頻繁に異性にもてた。
だが、その数々のお誘いを無視して結局彼が最後に何時も落ち着くのはイエローの側だった事を二人は間近で見ていて知っている。
「何で判るんだよ」
それを自分達に言わせるなと、説教してやりたい気分だった。そんなにも自分に自身が無いのか? 為らば、はっきりと言ってやろう。
「頼るって言うのは信頼して力を借りるって事さ。それが判るだけでも相手は嬉しくないか? よっぽど険悪じゃない限りは。お前達は違うだろ」
「少なくと、あたしは好きな人には頼って貰いたい。守られるよりは逆に護りたいって事、女にはあるものなのよ」
兄妹が止めを刺した。
付き合っている以上、そんな物は迷惑足り得ないし、寧ろ掛けてなんぼの世界だ。
お前は愛されてる。だから、偶には自分の女を頼ってやれ。それすら出来ないのはチキン野郎では無くインポ野郎だ。
……二人の視線はそう語っている様だった。
「――そっか」
とうとう、グリーンが折れた。迷いを断ち切る様に、短くなった煙草を壁に押し付けると、新しいのを咥えて火を点ける。
ふう、と煙を吐いて言った。
「俺は腹を括ったぜ。イエローの力を借りる。最後のバッジは易々と渡さんぜ」
「その意気だ。健闘を祈るぜ」「応援してる。頑張って」
二人の男女仲は自分達のそれより長い。言ってみれば先輩の言葉なので素直に頷く事が出来たのだ。
レッドとリーフは、お前は一人で何でも背負い込み過ぎだと思いながら、面倒臭い幼馴染にエールを送ってやった。同様に、グリーンも御節介な奴等だと思いつつ、内心は感謝で一杯だった。
「だが――」
話には続きがあった。
「「へ?」」
グリーンの口を再び出た逆接接続詞。瞬間、二人が揃って間抜けな顔をする。
「俺達が突破された時は……次はもうお前達しか残って無ぇぜ?」
グリーンの顔は真剣だった。
「一寸待って。何であたし達が」
「おっと、無関係決め込みたい様だが、そうはいかねえ。俺を煽ったのはお前達だ」
どうにも話が見えない。今のはあくまでジムリと挑戦者の話であった筈だ。火を点けた責任として自分達にも参戦しろと言う事だろうか。
「それはそうだけど、どうしてあたし達にお鉢が回るのよ」
「お前達が現行のカントー最強のトレーナーだからだ。スコアランキングや勝率を見てもそいつは明らか。ワタルさんだって太鼓判押してるんだぜ?」
「大将が俺達を? ……それは買い被り過ぎだろう」
其処で何故に自分達が登場するのかが文脈からも判らない。だが、その後の話を聞く限りでは納得出来る節はあった。
対人バトルの回数自体が減っているが、黒星は粗無い状態だし、殿堂入りの回数だって全国的に見てもかなり多い部類だろう。かと言って、あの竜使いの大将が自分達を褒めていると言うのはどうも信じ難い話ではあった。
「何にせよお前達が倒されりゃ後が無えんだ。ジョウトの奴等に舐められる事だけは我慢ならねえ」
カントーの威信は君達の双肩に懸かっている。……遠回しにそんな事を言われた気分だ。だが、それで素直に首を振れる程、兄妹は真っ当な育ち方をしていない。
「お前達が最強だって言うなら、その名に恥じない働きをしてくれよ」
「「――」」
それを言われて何も言えなくなる。その二文字が重く圧し掛かっている様だった。
……決して、そうなる事を望んだ訳ではないのに。
「こいつは幼馴染としてのお願いだ。……頼むぜ」
「「承知」」
侭ならないモノだと兄弟は諦めた。結局、こいつには敵わない。
兄妹はその時が来たら動く事をグリーンに確約させられた。そして、その時と言う奴は足音を立てて確実に近付いているのだ。
――レッド宅 居間
ソファーにどっしり座って思案する。
カントー最後の刺客として、ジョウトの挑戦者に引導を渡す。それはもう決定事項と言って良い、変えられない未来だと他ならぬレッド自身が確信している。それこそが今の自分が存在する確たる理由だからだ。
「いきなり重い役、背負わされたな」
「うん。最強って言われてもピンと来ないよね」
少なくともレッドの言葉は嘘だ。
……何れこうなるのはあの日から判っていた。その時がもう目の前迄やって来ていると言うだけの話。それから逃げる事は出来ない。否、逃げてはいけなかった。
「と、すると、このままじゃ居られないな」
「だね。最近全然勝負して無いから勘が鈍ってるわ」
それを成す為に必要な事。リハビリを兼ねた修行が必要だった。
「ハナダの洞窟?」
「却下。昔はマシだったがな。今は雑魚しか出ない」
内部構造は昔から比べ、幾らか変わっても出現ポケの質の低さは燦々たる有様だ。
嘗てはレベル50後半、深部では60を超える猛者が出現した洞窟も今では見る影すら無い。以前は修行場としてお世話になったモノだが、高レベルのポケを乱獲し過ぎた結果だろうか? ……レッドには判らない。この案件は却下された。
「じゃあ、ナナシマ」
「遠過ぎる。最近は定期便も減ってるし、渡れば暫く戻れない」
確かにあそこも七宝渓谷や帰らずの穴、灯山等に中々の猛者が揃っている。
だが、地理的に遠過ぎると言う難点があり、シーギャロップの運行本数自体が減っている。今では週に一便程度しか出ていない。
そもそも、ヒビキ達がレインボーパスを持っているか否かも不明だったので、没案となった。
「じゃあ、やっぱり……あそこ?」
「ああ、あそこ、だな」
これ以上にスリリングな場所と言うのはトージョウ圏では一つしか思い浮かばない。
――シロガネ山
霊峰という二つ名を戴く白き魔境。
レッドは其処にだけは近付きたくなかった。それにはれっきとした理由がある。
『あの山は、人を惹き付ける』
何かの酒の席でレッドがそう語ったのをリーフは覚えていた。
『上手く言えないが、そうだな。
……資格を持つ者を引きずり込んで呪縛する魔力がある』
過去に一度完全踏破して以来、その山への再登頂を頑なに拒むレッドは何かを恐れている様だった。果たして、その資格が何であるのかはその時はレッド自身も判っていない、漠然とした何かだった。
だが、今ではその正体がレッドはおろかリーフにだってはっきり見えている。
――王として君臨出来る資格
……つまりそう言う事だ。レッドもまたそうだったのだ。
リーフと言う相棒が存在しなければ、とっくにレッドもあの山に囚われていただろう。
……そんな場所を修練の場所として選ばねばならない。
「仕方無いね。気持ちは重いけど……何時にする?」
「今直ぐにでも飛んで行かなきゃならんのだろうな。準備が出来次第、飛ぼう」
思う事は山とあるが、今は少しでも時間が惜しい。だが、俄か準備は遭難の危険性を招く。準備だけはガッツリと行う必要があった。
当然その間、レッドは休業だし、付き合うリーフも大学には顔を出せそうに無い。
「うん。何が要るかな」
「うーん」
以前に登った時はアイゼンやら防寒具は持っていかなかった。それでも何とかなったのはそれが真夏だったからだろう。今は九月の半ばだが、シロガネ山は例年よりも早く冠雪を終えていた。
恐らくは高確率で長期の滞在になるだろうし、一々麓のポケセン迄は降りて居られない。
食料、テント、寝袋、水、燃料、酒、煙草、その他諸々……
とてもではないがバッグ一つでは足りない。貯金を切り崩して経費に充てる必要もあった。それから……
「あらあら、何の相談?」
思考をぶった切る母親の声。その両手には味噌汁が入った鍋の取っ手が握られていた。
「ご飯出来たから食べちゃいなさい」
「「はーい」」
こう言う時に兄妹は素直だ。詳しい打ち合わせは後に回し、夕餉を頂く事にした。
「母さん」
「何かしら?」
二杯目のご飯を平らげて、レッドが真摯な面持ちで母を呼ぶ。母親は表情を崩さなかった。
「俺達、暫くは家を空けるよ」
「家を? 旅行にでも行く気?」
これから暫くは帰って来られない。しっかり伝えて置かないと、勝手に死亡届を提出され兼ねない。
「あはは。そうなら良いんだけどね。……ポケモン修行」
「何処に行くのかしら」
本当にそうだったらどんなに良いか。リーフも真面目な顔付きで目的を言う。
母の目が鋭くなる。昔のトレーナーだった時の自分の姿を思い出したのだろうか?
歳を重ねたとは微塵も思えない、トレーナーとしての凄味やらオーラが滲み出ている。だが、怯んでは居られない。
だから、行き先を告げた。
「「シロガネ山」」
「――そう」
それだけ行って、口を噤む母親。何かを考えている様にテーブルを指で二、三回叩くとその口が開かれた。
「判ったわ。行って来なさいな」
……良し。言質が取れた。母親からもゴーサインを?ぎ取った以上は、問題は何も無い。
二人は互いを見合って安堵した。
「但しっ!」
「「!」」
所がどっこい。母親の話には続きがあった。途端に身を硬くする二人。
「ご飯をちゃんと食べる事! 数日置きに連絡する事! 命を大事にガンガン色々やる事! ……それが条件よ」
……最後のは些か無理が無いだろうか? まあ、それ以外はこなせそうなので問題は無いが、それでも何と無く肩の力が抜けた気がした二人だった。
「はっ……了解」
「うん。そうするね」
兄妹は母の条件を飲んだ。……これから少しの間、母の料理は食べられない。これで暫く喰い収めだと二人は揃って空の茶碗を差し出した。
――翌日 レッド宅 玄関
「じゃあ、若し来客があったらその時は、山に篭ってるって伝えてくれよ」
「判ったわ。伝えておく」
暫しの別れだ。このまま昨日話し合って決めた必要な装備を掻き集めて、その足でシロガネ山へ直行する。帰れるのは何時になるのか判らないので、その際の伝言を母に託した。
「何だってこんな…… ――いや、今更か」
一瞬そう思って、頭を振る。時が動き出した以上、その通りにスケジュールは動くのだ。それには逆らえない。
与えられた自分のロールを果たす為に、レッドは魔境を目指す。例え、その先に待っているのが己の消滅だとしても。
そんな彼の唯一の救いと慰めは、一人ぼっちでは無いと言う事だった。だから、恐ろしくは無かった。
「リーフ」
「え?」
兄に続いて家を出る時に、母親に呼び止められる。忘れ物かと思ったが、それは違った。
「お兄ちゃんを……いえ、あなたのレッドを助けてあげてね」
それは母親としての言葉ではない……それ以外の何かの言葉だった。
「―――当たり前だってのよ!」
それが無性に嬉しくて、リーフは実に晴れやかな笑顔でサムズアップした。
116 :
音ゲーマー:2011/11/04(金) 00:20:43.85 ID:0CLNGP+K
何てこった。途中タイトル誤った。まあ、寛大な心で許してくれ。
…引き篭もってないレッドさんもアリだよね?
拾伍:それでも半袖、ノースリーブでミニスカ
――シロガネ山 洞窟内部
初日にレッド達はシロガネ山頂に程近い洞穴に拠点を築いた。
山の冷気と雪風を避けられ、また正規ルートから外れた場所に見つけた温泉に程近い場所。ベースとするには打って付けだった。
そして、その夜エリカが陥落したとの報せも同時に受けた。
それから凡そ四日が経過していた。山の天候は不安定で、時折魔物が吼える様な恐ろしい唸り声にも似た風鳴りを耳にする。
そんな中にあっても兄妹がする事は変わらない。薄暗い洞窟を彷徨い、出現する野良ポケモンを狩る。腹が減れば飯を食い、夜は寄り添い抱き合って眠る。……たったそれだけのシンプルな生活。
もう長い事陽の光を浴びていない。何時の間にか闇の世界の住人になってしまった……そんな錯覚すら抱きそうだった。
そんな最中……
デデン♪デーレデッテーテデレデッテーテ〜中略〜タピオカうめえっす! デデデンデデデン♪……
「おい、鳴ってるぞ。こっちは手が放せん」
「はーいはい。判ってますってばさ」
夕食の準備中にリーフのギアが鳴り出した。こんな僻地、しかも洞窟内に在って電話が通じるとは何とも不思議な話である。
レッドは携帯コンロを使って飯盒で飯を炊いている最中で動けない。ライトの灯の下、野菜を切っていたリーフが作業を切り上げて、電話を取る。発信者はグリーン。
「はいよ〜。こちらリーフ」
『あ……リーフさん、ですか』
電話の向こうから聞こえたのはグリーンの声ではない。やや間延びした、若い女の声だった。
「え……その声」
『はい、僕です。イエロー』
当然、リーフはそれに聞き覚えがある。イエローだ。
「何か久し振りに声を聞いたわ。で、何でグリーンのギアから」
『是非お伝えしなければいけない事がありまして。でも、僕ギアを家に忘れて。で、グリーンさんのギアを借りたんです』
イエローの性格は暢気ではあるが、うっかり屋では無かった筈だ。偶々だろうか? まあ、何にせよイエローならありそうな話だった。
「それで態々あたしにね」
『レッドさんのギアには繋がらないから、リーフさんにならと』
「は? 兄貴のギア……って、充電切れてんじゃん」
話を聞き、そんな馬鹿なと近くに放置されていた兄のギアを拾い上げ、その理由が判ったリーフ。
成る程。そりゃ繋がらない訳だ。
「で、あなたが掛けて来たって事は……バッジを取られたのね?」
『はい。お恥ずかしい限りですが、僕達の手には負えませんでした』
一転して真面目な口調でリーフが問い質すと、イエローもまた凛とした声色で返す。
どうやら、自分達が出張る事が確定してしまった様だ。
イエローの声には一抹の無念さが滲んでいる様に聞こえた。
「グリーンはどうしてる? ひょっとして不貞寝でも決め込んでログアウト中?」
『いえ。あの……お酒飲んで管を巻いてます』
「尚、悪いわねそれ」
渦中の人物である筈のグリーンがイエローに連絡を任せている事にリーフは引っ掛かりを感じた。こう言う事を他人任せにする事を嫌う彼がだ。
そして、その理由を聞いて呆れるリーフ。
駄目男……と、そんな言葉が頭に浮かぶ。グリーンに付き合うイエローがやや不憫だった。
『おらあ! こっち来やがれって! 電話なんて後で良いだろが!』
『ちょ、待って下さい! 僕は未だお話中……きゃあ!?』
しゅるり、がさごそがさがさ。
グリーンの声が混じったと思ったら、次にはイエローの悲鳴。一瞬、衣擦れの様な音も聞こえた気がする。
……何だ? 何をやっている? 途端に生臭い空気が受話口から漂って来た気がした。
『いよおレッドぉ。お久』
「リーフよあたしは。間違えんな」
どうやら、管を巻いていると言うのは間違い無いらしい。呂律が回っていない。
『あ? そう言えば……まあ、どっちでも良いや」
『あっ……やっ! そ、そんな……駄目です、こんな処で、ひゃんん!!」
「良い度胸ねアンタ」
男と女の違いをどうでも良いとは無礼極まりない話だった。って言うか、お前は喋りながらイエローに何をやってるんだ。
『兎に角、話聞いただろ? そう言う事だ。もうお前等だけだぜ』
『そっ、らめえ! リーフさんにっ……んっ、聞こえちゃうぅ』
「……切るわよ」
何がそう言う事、だ。これ以上は付き合い切れないリーフは会話を終わらせたかった。
そして、もう既にナニをしている声は聞いてしまっている。隠しても無駄だ。
「一寸待てって。焦んなよ。折角幼馴染がお前達の健闘を」
『あひぃ! そこ、そこは許ひてぇっ! お、おま』
――ピッ
リーフは容赦無く電話を切った。
「Fxxk」
糞っ垂と吐き捨てる。壁にギアを叩き付けたい気分だった。
凡そ、普段のグリーンからはかけ離れた行動だ。泥酔する位飲まなければならない程口惜しいのか、それとも見せ付けたかっただけか。どうにも真意が不明瞭だった。
……だがあの女、間違い無く感じていやがった。それだけはリーフにも判った。
今度二人に会ったら、金的と三年殺しをしてやろうと心に誓った。
「よお、飯炊けたぜ。で、電話は何だって?」
「あ゛?」
「っ! 何か不機嫌だな」
肩越しに掛かる兄の声に反応し、突き刺さる様な視線を投げ付けるリーフ。不愉快さと苛立ちを隠そうともしない。
「別に。グリーン達も撃墜された。そんだけよ」
「全滅か。……何てザマだ」
ぶっきらぼうに言うリーフの態度に一々レッドは反応しない。それ以上に、レッドはカントーに於ける上位トレーナーが退けられてしまった事が情けなくて堪らなかったらしい。
帽子の上から頭をぐしゃぐしゃと掻いていた。
「……にしても」
リーフが今気にしているのはレッドとは全く別の事柄だった。
『イエロー、あの娘ったら随分良い声で鳴いてたわね』
それだけ調教が進んでいると言う事だろうか。こうなれば、自分も……
「否」
リーフが頭を振った。
別に僻んでいる訳じゃあない。張り合っちゃいけねえ。人にはそれぞれのやり方がある。他人のそれを倣う必要は無い。それなら……
「今日は思いっ切り甘えちゃおっか、な?」
違う。今日はではなく今日もの間違いだった。
昨日のお兄ちゃん、逞しかったなあ……
……いかんいかん。涎が口から溢れた。それをじゅるりと啜ってレッドの方を見た。
「・・・」
一歩、二歩。そして、三歩。注視する度にレッドが後ろに下がる。
「何故、逃げる?」
低い低い声で唸る様にレッドを問い質すリーフ。その背後には瘴気が渦巻いていて、瞳がまるで猛禽類のそれの様に冷たく輝いた。
「いや、逃げるだろ! お前、今凄く怖かったぞ!?」
「むっ、こんなエロ可愛い妹様に向かって何て事言うのさ」
レッドの顔に明確な恐怖が滲んでいる。それ程に恐ろしげな表情をしていたのだろうか。だとしたら随分な話だとリーフがぷぅ、と膨れた。
……しかしながら、レッドの危険察知能力は流石だった。伊達に主人公を張っていた訳ではないらしい。それをリーフに感じたという事は、彼女はレッドにとっては危険な存在と言う事になるのだが、大丈夫なのだろうか。
『……ま、何やっても無駄だけどね☆』
きっと、其処は気に掛けたら負けなのだろう。どちらにせよ、寝床が一緒である以上、レッドに逃げ場は無いのだ。
壁に括り付けられたカンテラの明かりに照らされて、リーフの顔も影も笑っている様だった。
そこから、更に時間は経過して。
もう、篭ってから十日は優に経過している。曜日の感覚も既に曖昧になっている。
初日からこれ迄、山で人に会ったのは二回きり。三日目に遭遇したエリートトレーナーと一戦を交え、負けたその人物を麓まで送っていった。
そして、二日前に迷い込んできた山男に穴抜けの紐を渡し、代わりに食料を貰った。
たったそれだけ。この場所がどれだけ陸の孤島なのか思い知らされた。
そして、修練中に母からの電話が来た事で、時局は終局へと加速する。
耳に煩い羽ばたき音と、足下に伝わってくる振動。
野生のゴルバットとイワークが飛び出してきた。
腰のフォルダーからボールを取り出し、地面に投げる。それと同時にレッドのギアが振動した。今回は直ぐに出る。
「はい。こちらレッド。ただ今取り込み中」
『はあい。レッド。元気そうね』
母親の声が耳に聞こえる。昨日、定時連絡をしたばかりなので懐かしい気持ちは一切しなかった。
ゴルバットが血を吸う為にレッドへとバサバサと飛んで来る。
「兄貴! ゴルバット、そっち行った!」
「判ってるって。……おわっ! ブラッキー!」
リーフの注意を軽く受け流して距離を取ろうとするが、放たれたエアカッターが顔面擦れ擦れを通過する。
それを回避したレッドはブラッキーに足止めしろと指示を出す。すると、ブラッキーは敵に猛然と飛び掛った。
『本当に忙しそうね。手短に言うわ。さっきあなた達を訪ねてきた子達が居たのよ』
「子供? それって帽子を被った中学生位の? ……ナイスワーク。悪波動だ」
自分達を態々訪ねる人間等限られる。どうやら、とうとうヒビキ達が嗅ぎ付けたらしい。
自分からゴルバットを引き離したレッドはそれを賞賛しつつ、ブラッキーに攻撃を指示する。悪意に満ちた波動を近距離で喰らったゴルバットは成す術無く倒れ、地べたに落ちた。
「エーフィ、サイキネで応戦。……よっしゃあ!」
リーフの方も片付いた。特殊防御が紙装甲なイワークがタイプ一致のサイコキネシスに耐えられる道理は無い。イワークもまた、ズンと言う轟音共に共に地に倒れた。
『そう。レッドさん達居ますかって。でもあなたに言われた通りシロガネ山で修行中だって伝えたらそのまま帰っちゃったのよね。知り合いかしら』
「知り合い、ね。……いや、挑戦者だ」
どうやら、行き際に言伝を頼んだのは正解だったらしい。
奴等は来る。間違い無く。ブラッキーをボールに仕舞いつつ、レッドはもう直ぐやって来る挑戦者との対決に少しだけ身震いする。それが恐怖故か、歓喜故なのか、本人にも判らない。
『あんな線の細い子達がねえ。……強いの?』
「恐らく。だから、こうして戦って鍛えてるのさ」
ポケモンバトルに年齢や性別は関係無い事を母親は良く知っている筈だ。それなのに、敢てそう言うのは、ヒビキ達がお世辞にも強そうに見えないからだろう。
だが、そう言う人間程隠している爪牙は鋭いモノだとレッドは過去の旅の経験から良く知っていた。だからこそ、油断せずに確実に葬りたかった。
『良く判った。あんまり苛めちゃ駄目よ』
――ピッ ツー、ツー……
「無茶言ってくれるぜ」
もう答えない母親に苦笑する様にレッドは呟いた。恐らく、そんな一方的な展開には先ずならないと彼の勘が告げていたからだ。
「兄貴! 再びTally ho(敵機視認)!」
「遅い! もう見えてるっての」
これは、仕上げを急がなくてはならない。レッドはまた飛び出してきた追加オーダーを捌く為にリーフと共に駆け出した。
――翌日
あれから、納得の行く迄戦い、万全のコンディションに仕上げた。後は、挑戦者を待つだけだったが、待てども待てども来ない。
陽が落ちたので今日はもう来ないと踏んでレッド達は寝床に引っ込んだ。
そして、陽はまた昇り、二人は山頂へと続く洞窟の途中で待機していた。
「こうしてるとさ……っ! ……あはっ、気持ち良いね♪」
「……そうだな。悪くないな」
下半身で繋がりながら。こうやって、抱き合う限りは暖かいのだ。心も体も。
「今日こそ来てくれるわよね。もう穴倉生活は勘弁なんですけど」
「俺もだ。仕事が溜まりまくってる。一刻も早く下山しないとキャパがパンクしちまう」
何時までも篭っていられないのは二人にとって切実な問題だ。こうしている間にも消化されない仕事依頼は増えているし、論文作成も途中だった。
それ以前に、この場所は息が詰まる。カツラがそんな境遇で頑張っている事が二人には信じられなかった。
「んふっ。あたしでパンクするのは兄貴の此処……んくっ! ……だもんね☆」
「っ、下品だぞ」
妖しげな表情でリーフが蟲惑的に囁き、懸命に媚肉を引き絞る。レッドは若干呻き、絡む肉襞が導くまま、尿道に残る精を捻り出した。
アヘっているなら仕方無いが、それでも品の無い女はレッドは余り好きでは無かった。
「好きな癖に。……本当に元気♪ もう一回する?」
「それは――」
どうにもその言葉が嘘臭く感じるリーフが硬さを取り戻しつつある兄のそれを下の口で扱きながら問う。
レッドはそれに答えようとして、瞬間、異変を悟った。
「!」
リーフも気付いた。遠くから響く何かの音。衝撃音、爆裂音、そしてこの山では聞いた事が無いポケモンの叫び声。
何者かが野良ポケと戦闘中だった。そしてそれは……
「どうやら、これまでだな」
「……実に厭なタイミング。仕方無いか」
残念ながら続きはお預けだ。こんな姿を子供達に見せるのは情操教育上、宜しく無い事だった。リーフの柔肉が名残惜しそうにレッドの剛直を抱き締めた。
「――往くぞ」
「――応」
そして、着衣を整えたレッドとリーフが山頂へと躍り出る。戦闘開始の狼煙だ。
ガガガガ、とロッククライムで壁面を駆け上がる。
ヒビキは走っていた。その後ろの離れた所にコトネが息を切らして付いて来ている。
「ヒビキ君、待ってよ早いよ」
「判ってるよ。判ってるけどさ」
最深部へ近付く度に寒気が増し、身体を支配していく様だった。それを振り払う様に駆け抜ける。もう野良ポケと戦闘する事も億劫だった。
コトネには悪いが、ヒビキは早々に終わらせたかったのだ。
「! これって」
山頂に続く洞窟を渡る途中でそれを見つけた。ゴミ袋だった。
「ゴミ? ……誰か居るの?」
そして、その脇にある横穴。其処に顔を入れると、生活観のあるテントが僅かに見えた。空の酒瓶や煙草の箱が地面に無造作に転がっている。
コトネは奥に向かって呼んでみたが、反応は無かった。
「いや、気配は無いよ。と言う事は」
「外?」
道は一本だ。崖の上から光が漏れていて、冷気が侵入して来ている。
……探す人物は、きっと其処に居る。ヒビキ達が互いに顔を見合わせて頷いた。
――シロガネ山 山頂
「「――」」
灰の様な雪が舞っていた。まるで主役の登場を祝う紙吹雪の様に。
白い吐息を漏らし、レッドとリーフが崖の端から下界を見下ろしていた。
死ぬ前に、全てを手にする様に。
……何故なら、二人は重要な問題に直面しているのだから。
「「寒い」」
そう言う事だ。お揃いの黄色いマフラーをしてはいるが、それでも二人は凡そ雪山登山に向かない格好だった。格好を付けている状況では無かったのだ。
やっぱりもっと防寒具を持って来る冪だったと後悔してももう遅い。神がこの場所で戦えと言っているのだ。
『早く来て挑戦者。……凍っちゃう』
二人の痩せ我慢ももう長く保たない。
……そして、その時は訪れる。
「「!」」
急に開けた視界。外の明るさに幻惑されながら、二人は確かに人影を見た。
「ようこそ挑戦者」「役者は、揃ったわね」
王が、女王が漸く現れた挑戦者を出迎えた。
「レッドさん……リーフさんも」
「やっぱり師匠達なんですね。最後に立ち塞がるのは」
漸く目が慣れてきた。視界に映る二人の男女の姿。
似通った顔立ちと服装。栗色の髪の毛。空色の瞳。
間違える筈が無い。シルフカンパニーで出会った兄妹。
何と無くだが、こうなるであろう予感をヒビキ達も持っていた。それは恐らく出会いの当初から。
「そうだ。その為に俺は存在しているからな」
「あたしはその付き添い。兄貴の……レッドのパートナー」
主人公に立ち塞がる大きな壁。埋もれの塔の番人。御三家収得の鍵。
……それが存在の代わりにレッドに課せられた役割だ。本来なら、リーフにその鉢が回る事は無いのだが、この世界に限っては彼女もまたその壁の一端を担っていた。
「なら、彼方達に勝てば、この旅は終わる?」
ヒビキの口から漏れる白い吐息交じりの言葉。
これが、最後? 何とも馬鹿らしいと思い、揃って言ってやった。
「「それは無い(わ)」」
その言葉は昔の自分達に言い聞かせる様なそれでもあった。
「図鑑は埋まったか? ポケスロンの調子は?」
「葉っぱ集めは順調かしら。タワー百連勝はしたの?」
良く出来た箱庭だ、と感情が篭らない笑みが湧いて来る。遊び方は人それぞれ。とことん遣り込むも、途中で終わらせるもそれは主人公に……否、それを操るプレイヤーに委ねられる特権だ。嘗ての自分達の様に。
「いいえ。全く」
コトネがきっぱりと言った。つまり、トレーナーカードの星は一つか、二つか。
まあ、その程度だろう。
「そう言う事だ。お前達が出来る事は山と残っている」
「あたし達に勝って得られるのは僅かなイベントと少しの自己満足よ」
それで終りとは片腹痛い。自分達の様に星を全て埋めてからほざけと言ってやりたい。
ゲームとして図鑑編纂の為には避けては通れない道なのだろうが、この戦いに籠められた意味は只のファンサービスであって、プレイヤーにとってもそれ以上の意味は無い事柄だ。
だから、それを知らないだろうヒビキ達が少しだけ哀れに映った。
「「それでも戦うんだよな(のよね)?」」
だからこそ、問う。プレイヤーの意思ではなく、彼等自身の紛う事無き意志を確認したかった。
「やりますとも!」「はい! 勿論!」
矢張り、そう答えるのか。兄妹は目を閉じた。
「彼方達に勝てば、少なくともそれは自信に繋がる」
「自己満足でも、只箔が付くだけでも良い! 少なくとも、その為にあたし達は此処に来た!」
本当に、それは自分の意志なのだろうか。目に見えない妖精さんに手を引かれていただけではないのか。
……否。
例え敷いたレールを走っていただけとしても、その経験は間違い無く彼等自身の旅の軌跡だ。それだけは否定してはいけなかった。
そして、彼等が此処に居ると言う現実も変えようが無い。改めて自分の意志かどうかを問うのはナンセンスだった。……そして何よりも、だ。
「先輩達が何者であろうとも構わない。彼方達が最後の壁だ。俺は超えなくてはならない」
「師匠達は所詮、あたしの人生に於ける通過点。只それだけなんですよ」
――良い目をしている
こんな綺麗な目を向けて来ている二人の期待を裏切る事だけはしたくなかった。
「「レッド(リーフ)さん」」
二人が姿勢を正す。真っ直ぐに見詰めて来る。確かに其処には彼等の偽らざる覚悟と決意が漲っていた。
「「お願いします」」
二人が頭を垂れる。レッドの答えはもう決まっていた。
「承t「あ――」
その承認を告げようとして、隣のリーフが何故か身体をブルっと振るわせた。
「?」
リーフはちょいちょいとレッドに手招きして後ろを向く。それを横目に見つつ、レッドは不審がりながら、リーフに顔を寄せた。
「(何だ、どうした。此処は格好良く決める処だろ)」
「(判ってる! だけど、その……)」
小声でひそひそ囁く。水を差された様に感じたレッドは少し機嫌が悪い。だが、そうしたリーフも慌てている様だ。その原因はお互いにあった。
「(垂れて来ちゃった)」
「ぶっ」
スカートを捲り上げられ、彼女の太腿に光る凍りそうな液体の筋を確かに見た。
先程レッドがリーフに打ち込んだ子種だった。
それを見聞きしてレッドは思わず噴いた。……処理してなかったのかよ!
「……行って来いよ」
「あー、うん。おほほ、一寸お花を摘みに……」
こんな状態では勝負所ではない。レッドはリーフにとっと済ませて来いと指示を出し、リーフはヒビキ達にそれと悟られない様に洞窟に戻った。
「あの、リーフさんは」
当然の追求だった。バトル直前の不可解な行動にヒビキも戸惑っている様だ。
「……便所だとさ」
「あー。冷えそうですもんね、あの格好」
妹の名誉を守る気は兄には無い。それが場を納得させられる理由に思えたからそう口走った。そりゃ、ミニスカとノースリーブで雪山はキツイだろうとコトネは納得したみたいだった。
「へっくし!」
「「レッドさんもそうですけど」」
耐えられずにレッドがくしゃみをする。寒そうなのは半袖のレッドも一緒だ。
だが、それはヒビキ達にも言える事だった。……防寒具を付けていなかったのだ。
――リテイク
少ししてリーフが戻って来た。下着を履き替えたのだろう。直前のやり取りを全て忘れてやり直す。
「行きます、先輩!」「勝負です! 師匠!」
勝負に際して、微塵の迷いも無い、気丈な立ち振る舞いだった。それを無碍に扱ってはトレーナーとしての礼に反する。
――その旨、確かに承った
レッドが、リーフが帽子を被り直す。
これが、この場で戦う事が神により定められた運命。そう言っても過言ではない。
今が、与えられた役目を果たす刻だった。
「お客様を二名様、ご案内」
リーフの囁き。それはレストランのウェイトレスが口走りそうな台詞だった。
「「!?」」
ヒビキ達が目を点にする。受け狙いか? ……否、違う。目が笑っていない。
「カウンター席で宜しいですか?」
レッドの呟き。ウェイターの様なそれ全身を蝕む威圧感に思わず笑いそうになった。
「「は、はい」「き、禁煙席で」
何とか口を動かし、そう告げる。馬鹿な話だ。山頂にそんな席が存在する筈は無いのに。
「畏まりました」「……そして」
見る者全てを震え上がらせる様なプレッシャーに包まれる。そして、終にそれが爆発する時が来た。二人の両目がカッと見開かれる。
「「いらっしゃいませぇ!」」
下界に迄木霊する様な声で吼えた。
兄妹のレッドとリーフが勝負を仕掛けてきた!
126 :
音ゲーマー:2011/11/04(金) 17:02:30.47 ID:u1R9RO0n
次の場面は自分で検証した訳じゃないのでおかしな部分があるかも。温い目で見てくれると助かる。
レッド戦がダブルだと面白そうだなー
公式で実現してくれないかな
いつか全地方に行けて過去バージョンと通信せずに全国埋まるポケモンが欲しい
メタな表現が切なくて好きだ
gj!
完全に1人の為のオナニースレッドになってるな
過疎化して人がいなくなった理由がわかるわ
拾陸:双神威
ルールはダブルバトル。一人が使うポケモンは手持ちから選定した三匹。
先にどちらかの陣営を殲滅したチームの勝ち。降参もギブアップも無し。
本当の潰し合いだ。
コトネもヒビキも臨戦態勢。その手にはボールが握られている。指先が悴み、ボールが骨に喰い付く様だった。空気が重い。だが、飲まれる訳にはいかなかった。
レッド達は未だ動かない。だが、何かを口ずさんでいるのは聞こえた。
「「You are now entering completely darkness」」
一瞬、読経か何かだと思ったがどうも違う。
「Don`t need to prepare for it」「You just need to die」
二人には判らないだろうが、これこそは魔界の呪法で、一種の精神統一の手段でもあった。
「Welcom as your experience」「Serching for your souls」
こんなモノを唱えた処で固有結界が発動する訳ではない。
「「We are」」
兄妹がボールに手を伸ばし、ヒビキ達の前に翳した。
『Playing to DIE!!』
ただ、戦闘BGMが変わっただけだった。
「先鋒はお前だ! グライオン!」「マリル、行って!」
「ブラッキー、出撃」「エーフィ、交戦許可」
地面にボールを投げ付け、中身が解放された。雪煙が視界を遮る。
手の内を晒し、お互いに苦手タイプが居ない事を確認した。レベルは70前半から後半の間。レベルの面ではややレッド達の方が有利だった。
「よりによってマリル、か」
コトネの手持ちについて一言。幾ら高レベルと言ってもこの場には相応しく無いと思ってしまったのだ。電気鼠の様に専用アイテムで優遇されている訳では無いのにだ。
「相棒ですから。この子とは子供の頃からずっと一緒でした。だから、必ずやってくれるって信じてます」
「本当に強いトレーナーなら、自分の好きなポケで勝てる様に戦術を練る冪、ね」
相手の構成についてはとやかく言いたくは無い。だが、信じていると言うその言葉が真実かどうか、確かめたいのは本当だ。リーフがエーフィに指示を出した。
「カリンさんの言葉ですか?」
「違うわ。それは当たり前の事よ」
エーフィが動く。サイコキネシス。強烈な思念波がマリルに喰らい付く。
「!」
無慈悲に、そしてあっさりとマリルは倒された。悲鳴を上げる事すら許されなかった。
「拘る気持ちは判る。だが、それで勝てる程勝負は甘くない。精神論も時には必要だが、それは決して絶対じゃない」
「あたしに言わせれば、それはただのゴリ押しよ。さり気無さが無い。ケイトのおば様に言われなかった?」
そうではないと言う奴も居るだろうが、基本トレーナーはポケモンを好きにならねば始まらない。そうやって注いだ愛情が全てを決める事は無いが、拮抗した勝負ではその有無が明確な違いになって出てくる。
愛したトレーナーの為に勝って生き残る。そんなポケモンの想いが奇跡を呼び寄せる事例が少なくない数存在するのだ。
だからこそ、トレーナーは戦う道具であるポケモンに愛を注ぐ。それが一層、ポケモンと言う刃を輝かせるからだ。
コトネのやっている事はそれとは程遠い自己満足であるとレッド達は思った。信じていると言いながらも、結局水鼠は倒されてしまったのだから。
「悪波動をくれてやんな」
レッドが攻撃を指示し、ブラッキーが相手の命を削る。だが、その量は半分に少し届かなかった。
「グライオン! 剣の舞だ!」
最後に動くのはヒビキ。補助技の剣の舞。戦いの舞により、攻撃がぐーんと上がる。
「積んできたわね」「……ああ」
こいつは要注意だ。そしてターン終了。霰が降りしきり、手持ち達の体力を僅かに奪う。これがどの様にバトルに働くか。それは後のお楽しみ、と言う奴だった。
「・・・」
レッドが戦況を読む。攻撃が上がったグライオン。恐らくは地震か何らかの虫技を使ってくる筈だ。攻撃上昇タイプ一致の地震は脅威だ。防御型のレッドのブラッキーでも耐えられるか怪しい。
そして、コトネが繰り出した次峰はムウマージ。特性は浮遊。地面技の効果は受けない。
よって、高確率で手持ちが喰われる危険がある。だが……
レッドは決断した。
「ムウマージ! シャドーボール!」
「あっちゃー。……ラプラス、引継ぎ宜しく」
機先を制したムウマージが黒い塊を放り投げる。タイプ一致で効果が抜群。成す術無くエーフィが撃墜される。
リーフが次峰の召喚を宣言。氷と水タイプであるラプラス。此処の闘いでは有利だ。
「今だ! シザークロス!」「交代。カビゴン、頼む」
ヒビキが攻撃を宣言。だがその前にレッドが交代を告げた。
食いしん坊のカビゴン。暫くは壁として機能して貰う。攻撃を受けたカビゴンの体力が半分減った。
「む。成る程。上手いっスね」
感心した様にヒビキが頷く。マリルを落とされた腹癒せか、コトネはリーフに敵意を燃やしている。その邪魔は極力したくないので、レッドの相手はこっちで引き受けようと思ったのだ。それを読まれたのだろう。
この人は戦上手だ。ヒビキは純粋に敬服した。
二ターン目が終了。霰が降り注ぎ、体力が減る。カビゴンは食べ残しを持っていたので、そのお陰でほんの少し持ち直した。
「此処は、カビゴン狙いで! サイコキネシス!」
ムウマージのサイキネだ。てっきり鬼火辺りで牽制するかと思ったが、違った。恐らく、技構成はフルアタックだろう。
直撃したが、何とか耐えるカビゴン。タイプ不一致が幸いした様だ。それとも、特攻に努力値を振っていないだけか。何れにせよそれがレッドにとっては付け込む隙だ。
「良く耐えたな。今は眠っとけ」
カビゴンは傷付いた身体を癒す為に仮眠を取り始めた。
鈍足なカビゴンがグライオンを抜いた。レッドのカビゴンは素早さの個体値がU。素早さとHPに努力値を全振り。且つ陽気な性格なので嘘みたいに足が速かった。
多分、相手のグライオンもそれ程俊足と言う訳ではないのだろう。実際、行動は最後だった。ひょっとしたら、余り考えて努力値を振っていないのかも知れなかった。
「ラプラス。吹雪でゴー!」
それはリーフのラプラスにも言えた事だ。ちゃんと、素早さにも数値を割いている。
凍て付く猛吹雪がグライオンを襲い、そのまま雪塗れになって倒れた。タイプ一致四倍ダメージは襷でも無い限り耐えられないだろう。
「くっ。必中吹雪か」
霰の恐ろしさだ。七割の命中である吹雪が確実に命中する。相手にとっては悪夢だ。
「天候変える冪だったわね。ま、初見では判らないでしょうけど」
初めての人間が陥る罠だ。この山の天候を味方に付ける事は勝利に大きく寄与する。ヒビキ達にそれを期待するのは酷かも知れないが。
「トゲキッス。任せた」
ヒビキの次峰。祝福ポケモントゲキッス。特性が天の恵みならば些か厄介な相手だ。
三ターン目、終了。降りしきる霰が(以下略)
「ラプラスにシャドーボール!」
コトネがラプラスに狙いを付けた。当然だろう。カビゴンにゴースト技は通らないのだ。だが、それが直撃してもラプラスは多少よろけただけで、平気な顔をしていた。
「硬い……」
恐らく、三分の一も削れていない。この硬さは面倒だ。
「特防高いのよ、うちの子。水の波動、かな。此処は」
慎重に技を選ぶリーフ。選んだのは水の波動。リング状の水の振動がムウマージを蝕む。霰のダメージに上乗せして、八割方は命を削った。
「……情けを掛けたつもりですか。命取りですよ」
「此処であっさり落としたら損だと思ってね」
確かに、コトネの言う通り、吹雪を使っておけばムウマージは落ちただろう。だが、それでも追加効果である混乱を誘発させる事は出来た。
今はそれで御の字だった。これでコトネは手持ちを変えざるを得なくなったからだ。
「……く。絶対、貴女には負けない!」
「そうでなくちゃ困るんだけどね。……やってみろや雌餓鬼が」
完全に嘗められている気がしたコトネは敵意の眼差しをリーフに送った。
リーフ自身に侮ったつもりは無いが、そう受け取られても仕方が無いのでやや殺気を籠めて睨み返す。二人の間で火花が散っている様だった。
「キッス! エアスラッシュで怯ませろ!」
「駄目だな。鼾で宜しく」
元々、特攻値が高いキッス。タイプ一致特殊技のエアスラッシュだが、三分の一を削るに留まった。怯みも効果も不発だった。
「なっ、や、やべっ!」
寝ている状態でも攻撃手段は用意している。居眠りポケモンなのだから当たり前だろう。当てられたキッスが大きくよろめき、ヒビキが焦る。
急所当たり。体力の半分を持っていかれた。
――YOU ARE SO BAD.
ミスレイヤーである唇お化けに喰らい付かれた気がした。
四ターン目、終了。霰(以下略)
「メガニウム!」「フシギバナ……!」
コトネが交代を宣言。それを読んでいたリーフが追撃の為に切り札を持ってくる。
お互いに草ポケ。毒属性を持っているフシギバナが有利だった。
「んで、俺はもう一発鼾をば」
「こ、交代! バクフーン!」
レッドが攻撃する前にヒビキが手持ちを引っ込める。バクフーン♂。ヒビキの切り札だ。
「受けたか。だが……」
キッスに代わって攻撃を受けたバクフーン。二割弱の量を削られた。
五ターン目、終了。(以下略)
「よっしゃ! 反撃開始だ! 噴火!」
一番早いバクフーンが怒りを爆裂させた。炎タイプの特殊技、噴火。
カビゴンがバクフーンの怒りの大炎上に飲み込まれる。だが。
「げげ、耐えた!? 厚い脂肪かよ!」
「誤ったな。減っていなければ、倒せたものを」
カビゴンはまたも耐えた。食べ残し効果とバクフーンの体力、そして特性がこの状況を産んだ。
潮吹き同様に、最大効果を得る為には体力が満タンでなくてはいけなかったのだ。
「メガニウム! リフレクター!」
カビゴンへの追撃を考えたコトネだが、この後の事を考えて結局壁を張る事にした様だ。物理ダメージはこれでカットされる。
「フシギバナ、日本晴れ」
此処でリーフが天候を変える。炎タイプの技が効果アップ。ヒビキに有利な状況だ。果たしてどうなるか、結果はこの後だ。
「壁を張ったか。だが、これはどうだ? ギガインパクト、発動!」
カビゴンが眠りから覚める。それと同時に咆哮を上げると、渾身の力でバクフーンに突撃した。
「……これを、耐える、か」
壁効果と乱数の悪戯だろう。凡そ三割を残してバクフーンは耐え切った。
六ターン目が終わった。
「火炎放射! 焼き尽くせ!」
傷が深いバクフーンに些か酷な注文をするヒビキ。苦悶の表情をしつつもバクフーンはそれを実行。日差し効果で勢いを増した炎の本流が脂肪の守りを突破し、カビゴンを今度こそ飲み込んだ。
「! ……良くやってくれたカビゴン。リザードンだ!」
重篤な火傷を負ったカビゴンを素早くボールに戻し、レッドも切り札を出す。
水タイプを除いた両地方の御三家が揃い踏みだった。
「的を誤ったな。先にお前はリーフを潰す冪だった」
炎タイプで更に飛行。日差しによる炎のブーストはあるが、戦況はレッド達に有利。
反動でカビゴンは動けないのだからそのターンは放って置いて、フシギバナを倒して次にカビゴンを倒す冪だったのだ。
そうしなかったのは……ヒビキのレッドへの拘りだろう。
「ここは……っ、護り切る! 光の壁よ!」
「……防戦一方ね。命冥加だ事」
壁張りに徹するコトネとメガニウム♀。これで特殊ダメージも何割かがカット。この効果は地味に大きい。
リーフは少しだけ苦い顔をした。命を惜しむのは悪い事ではない。だが、そんな相手の命を奪わねばいけない事もあるのだ。
相手がロケット団ではないので本当に殺しはしないが、それ位の気概が必要な事だったのだ。
「貴女を信じる。ね、フッシー」
――ぎゅるるる♪
リーフが膝を付き、フシギバナの頭を抱いた。信じている。信じているから全力でやってくれと懇願している様だった。
そんなリーフにフシギバナが『お任せあれ』とでも言いたそうに唸った。
「ヘドロ爆弾!」
とうとうリーフが動いた。草には特効の毒攻撃。しかし、相手は壁を張っている。易々と突破は出来そうに無い。
毒性の高そうな廃液がメガニウムにブチ当たった。
「ああっ!? しかも毒!? メガニウム……っ」
コトネが青い顔を晒した。急所当たりだった。しかも、毒に冒されている。壁の効果で何とか生き残ったが、放って置いても毒で倒れる程の傷だった。次……否、良くてその次のターンで確実に毒にやられるだろう。
七ターン目終了。
「もう一丁、火炎放射! こいつでホカホカにって、何!」
ヒビキが火炎放射を再び指示。フシギバナをピーターのワイフの様にしてやるつもりが、それを耐えた事に驚いている。日本晴れの効果は未だに続いている。……在り得ない。
「襷持ちなのよ、困った事にさあ」
だが、それが在り得るのだ。相手が炎タイプだからこそ、日本晴れを使い、霰のダメージを阻止して、こちらへの攻撃を誘った。それこそが罠だ。
これでバクフーンは堕ちた、とリーフは確信した。
「メガニウム、圧し掛かり!」
コトネもバクフーンが仕損じるとは思わなかっただろう。攻撃対象をリザードンに絞っていた。メガニウムの物理攻撃力自体は大した事は無い。二割程を削り、麻痺させた。
「……っ、麻痺か」
このメガニウム、相当に早い。まさかリザードンが抜かれるとは。
リザードンの一撃でバクフーンを葬って、フシギバナがメガニウムに止めを刺す予定だったが、それが狂った。二人とも攻撃指示をバクフーンに集中していたのだ。しかも……
「ブラストバーンっ!!」「ハードプラントっ!!」
レッドとリーフが大技を指示。反動で動けなくなる強力な一撃。
先にフシギバナがハードプラントを発動。雪山にありえる筈も無い巨大な樹がバクフーンを襲う。タイプ有利と壁効果(或いはハチマキ効果?)でバクフーンが耐え切る。
次いで、リザードンがブラストバーンを使用。山肌を焦がす爆炎と衝撃波がバクフーンを宙へと吹き飛ばし、数秒後落下した。再起不能だった。
「畜生、強い! ……くぅ、キッス!」
相棒を潰され、苦い顔をするヒビキ。最後の手持ちを場に出さざるを得なかった。
八ターン目が終了した。
C
「願い事! 時間を稼げ!」
先に動いたヒビキのトゲキッス。体力を回復する様だ。次のターンには鼾による傷は癒えているだろう。
「種爆弾! 最後にお願いメガニウム!」
毒に冒され息も絶え絶えだったが、メガニウムが死に花を咲かせる様に最後の行動に臨んだ。打ち出された硬い種がフシギバナを上空から襲い、その意識を刈り取った。
「フッシー、ありがとう。頑張ったね」
フシギバナの身体を抱き、労を労うリーフ。彼女の大きな身体をボールに仕舞うと、その直ぐ横でメガニウムが倒れ伏した。彼女もまた限界だったのだ。
「……ラプラス」「ムウマージ!」
お互いに最後の手持ちを再びボールから解放した。
レッドの反動で動けないので、その様子をじっと見ていた。
九ターン目も終了。いよいよ佳興だった
「……よっしゃ! 此処は強気でエアスラッシュ!」
ターンの最後には願い事が叶い体力が回復する。その精神的な後押しを受けてヒビキが攻撃指示。トゲキッスが空を切り裂き、その余波がリザードンを襲う。
体力ゲージ赤く染まりが途端に、警告音が聞こえてきた。急所当たりだった。
「兄貴、構わない?」
「ああ。諸共殺っちまえ。リザードン、済まん」
――ぐううう……
行動の修正を迫られたリーフが少しばかり済まなそうにレッドに尋ねた。止むを得ないとレッドはこれを了承。
当のリザードンも仕方が無いと言った感じに唸り声を上げた。麻痺して満足に動けない自分が荷物になっている事を理解して、誇り高く散ろうとしている様だった。
「お前の犠牲は忘れない。帰ったら、好きな食い物をくれてやるよ」
「きっちり仕事はこなす。波乗り!」
「あ、拙い」
リーフのラプラスが波乗りを使用。リザードン諸共、トゲキッスを削り、ムウマージを始末するつもりだった。それに流石のヒビキも焦る。倒される可能性があったからだ。
ターゲット分散による威力軽減に賭けるしかない。
「ところがぎっちょん!」
そこで今度は黙っていたコトネが動く。一番早いムウマージは既に行動していたのだ。
「ムウマージ、心苦しいけど道連れで!」
「! タマゴ技……!」
しまったと思ってももう遅い。リーフは攻撃を宣言してしまったのだ。
何処からか召喚された大量の水が辺り一面を飲み込んだ。
「ツケを払わされましたね」
「いや、本当にそうね。参ったわ」
水が引いた後、残されたのは地に落ちそうな程傷付いたトゲキッスと水を被って尻尾の炎が弱々しいリザードン。力無く地面に横たわるムウマージに圧し掛かる様に倒れたラプラスだった。
あの時、吹雪を放っておけばこうはならなかった。だが、リーフは過去を悔やむ事はしない。あれが無ければコトネが最後の足掻きを見せる事も無かったのだから。
「危ねえ。でも、チャージ完了だ」
運良く耐えたヒビキのトゲキッスは半分その体力を戻した。
「ヒビキ君!」
役目を終えたコトネ。その顔は晴れやかで、また美々しいモノだった。
「お先に失礼!」
「お疲れさん!」
大仰に敬礼するコトネにヒビキが力一杯答えた。後は任せろ、と。
「……見せて貰ったわ、貴女の力」
その様子を何処か嬉しそうに見詰めるリーフ。
――これで良い
リーフはそう思った。
「ゴメン、兄貴。あたし、此処でリタイヤだわ」
自分の役目は果たした。それに悔いる事も恥じ入る事もしない。リーフはレッドの手を取った。氷の様に冷たい手だった。それを自分の頬に当てた。
「良くやってくれた。後は」
「うん。任せるから。……レッドの思う儘に」
状況から言って勝つのは兄だろう。……否、この戦いはそうであってはいけない。
壁である以上は乗り越えられなければならない。最後には勝たせなければいけないのだ。
だが、手加減した上でそれを為すのはご法度だ。レッドがどんな采配を下すのか、リーフは目が離せない。
「ブラッキー……奴を墜とす!」
レッドが粗無傷のブラッキーを解き放つ。
十ターン目、クリア。日差しが弱くなり、リフレクターの効果が消え失せた。
「エアスラッシュ……! 怯んでくれ!」
相変わらずのエアスラッシュ一辺倒。幾らメインウェポンと言っても、それしか芸が無いように連発してくる。怯み効果も全く出ていない所を見ると、特性は張り切りに間違い無かった。
「利かんさ。騙し討ち」
「なっ」
その硬さにヒビキが絶句。急所に当たった。だが、半分も削れなかった。
レベルは互角だが、ステータスでは守りに重点を置くレッドのブラッキー。それに対して、ヒビキの努力値の振りがどうにも判らない。
まさか、殆ど適当? 先程も考えたが在り得そうな話だった。
「っ……耐えろ、キッス!」
ブラッキーがキッスを殴り付ける。タイプ一致攻撃。即死ではないが、体力の大部分を削った。
「何故、波動弾を使わない? 使えばそちらの勝ちも有り得るぞ」
レッドが気になっていたのはそれだ。サブウェポンとしての波動弾の姿をバトルが始まってから見ていない。ブラッキーは悪タイプなので、効果抜群のダメージはタイプ一致を上回る。それなのに、何故。
「……んでないんです」
ヒビキが唇を噛んで、何かに耐える様に搾り出す。
「やっぱり、か?」
――ああ、やっぱりだ
カビゴンに使って来なかったので、若しやと思っていたが、その通りだった。
「積んでないんですよ! ハートの鱗をケチった結果がこれッスわ! 笑って下さいよ、盛大に!」
しみったれた挑戦者だって笑えよ! 寧ろ、あっはっはって笑いちゃいなさいよ!
「あっはっはっはっは! ……はあ」
一頻り笑った後に、ヒビキはがっくり肩を落とす。グルーブゲージが今にも無くなりそうだった。
「良く判った。では幕を引くか」
それに付き合う程、レッドは若くない。
積みが確定した以上、掛ける慈悲は存在しない。今回が駄目なら、二回目以降に期待させて貰おうと止めを差す決心をした。
「へ、へへへ」
だが、ヒビキの顔には不気味な笑いが張り付いている。この状況を打開する秘策がある。……そんな顔だった。
十一ターン目が終わった。光りの壁が効果を消失する。次で幕だ。
「冗談言っちゃいけねえな! 俺は勝負を捨てて無ぇんだよ!」
――Because to interesting,I`ll be crazy now!
この戦いが楽しくて堪らない。だからこれで終わりにして堪るモノか!
口調が変化したヒビキは尚も食い下がる気が満々だった。
「だが、この状況で何が出来る。戒名でも考えておけ」
急所当たりの一撃でも仕留められないなら、向こうに勝ち目は無い。キッスの体力は最早風前の灯だ。行動出来て後一回。どう考えても、ブラッキーを倒し得る手段があるとは思えない。
無駄な足掻きは見苦しいと、死刑執行を告げる様にレッドが喉を鳴らす。
「俺の秘策は……指を振るだっ!」
そうして、ヒビキが吼える。自分の手の内を明かした。
「はっ!」
レッドがそれを一笑に伏す。エアスラッシュの怯みに期待せず、よりによっての指を振る。確かに当たりを引けば、状況は引っ繰り返るが、そんな逆転劇は聞いた事が無かったからだ。
「お前、博打打か。この状況で運を引き寄せるつもりか?」
もうお前は十分やった。ここらで休んでおけとレッドが心で囁くが、ヒビキは退く気配を見せない。どうやら、本気の様だ。焼け糞と言っても良かった。
でも、その瞳は輝きを失っていない。ひょっとしたら、或いは……
――こいつは奇跡を起こす?
「やってみろよ! 俺がその希望を砕く」
その足掻きが天に通ずるか否か、レッドは見たくなった。
「砕けるのはアンタだ! キッス! お前を信じる! だから、勝たせてくれ!」
細工は流々。後は仕上げを御覧じやがれ。指が無いのに関わらず、トゲキッスが指を振った。
その姿はまるでヒビキの執念が乗り移った様だった。
そして……
「「――」」
世界が静止した様に二人は動かない。再び降り始めた雪が世界を停滞の白に染めていく。
「……まさか、こんな決着の付き方とはな」
レッドの目の前には倒れたブラッキーの姿があった。
「や、やったのか」
本当に勝ったのか。ヒビキはそれを成した筈なのに、目の前の光景が信じられなかった。
絶対零度が発動し、それが当たる瞬間を確かに見た。この状況でそれを引き当て、三割の確率を超えて直撃させた。
運の全てを使い果たしたと言ってもおかしく無い状況だった。
「く、くくくははは……」
レッドの口から漏れる笑い声。
やっと解放された。己を縛り付けていたモノから。
この瞬間の為に生きて来た。その筈なのに、それが嬉しくない。
「ぎゃあっはははははははははっ――!!」
寧ろ、この勝負が本当に楽しかったから腹を押さえて笑う。見ている者が若干引く様な壊れた笑い方だった。
「せ、先輩」
「いやいや失礼! 俺達の幕引きに相応しいって思っただけさ!」
引き攣った顔で見てくるヒビキに実に良い笑いを浮かべて答えた。
「ヒビキ! そしてコトネ!」
レッドは二人の名を呼ぶ。
「「は、はい!」」
その瞬間、背筋をピン、と正して緊張した様にレッドの言葉を待った。
「お前達の勝ちだ。良く頑張ったな」
レッドの口から出た賞賛の言葉。その口調も表情も、何時もの彼のそれでは無かった。
とても、柔らかく優しげで。まるでお父さんと言っても間違いでは無い様なそんな包容力に満ちていた。
「ほら、胸を張りなさい! 今からあなた達が最強なのよ!」
何時まで経っても硬い表情を崩さないコトネ達をリラックスさせる為……ではなく、只管頑張りを褒める様にリーフが笑い掛ける。
「最強……俺達、が? ……やったんだ。勝ったんだ俺達……!」
ヒビキは未だ信じられない様だった。だが、徐々にだがその表情も身体も解れていった。
「やった……やったよヒビキ君っ!」
コトネはもう嬉しさの余りヒビキに抱き付いて勝利に酔っていた。放って置いたらキスでもしそうな舞い上がりっ振りだった。
「こいつを、持って行け」
「え、お金は」
落ち着いた所でレッドはヒビキに賞金を渡した。二人合わせて諭吉を三人程。向こうに小判やお香を装備した手持ちが居れば、傷口は更に広がったが、幸運にもそれは無かった。
ヒビキはそれの受け取りを渋っている様だった。
「あなた達は勝った。受け取らないのは不義理に当たるわ」
受け取る事が礼儀だと嗜める様にリーフが言うと、渋々ながらもヒビキは受け取った。
「それで良い」
支払いの義務を負えて、ヒビキがそれを受け取った事を確認し、レッドが頷いた。
「あたしからはこれを」
「リボン?」
リーフも渡す物があった。それはリボンで、ヒビキ達の手持ちに括り付けてやった。
「来る前にオーキド博士に偶然会って預かったの。中々、手持ちが厳つく見えるわね」
登山用のグッズを集めている最中に出会った博士に託されたリボン。こうなる事をきっと博士は予見していたのだろう。やはり、侮れない御仁だった。
「じゃ、行くか」
「うん」
二人が手持ちへの応急手当を負え、その身を翻す。
「ど、何処へ」
ヒビキがその背中に声を掛けた。此処でお別れは少し寂しいと思ったのだ。
だが、それはヒビキの都合だった。
「キャンプ撤収して家に帰る」
「負けた以上はもう居る意味無いしね」
レッドにもリーフにもそれぞれの生活がある。勝負に決着が付いた以上、この山に用なぞ何一つ無いのだ。只、其処に戻るだけの話だったのだ。
――この山は天国に近過ぎる
そんな思いもある以上、レッド達はさっさと山を下りたかったのだ。
「じゃあな、暫定最強」
「また何時か、ね」
今度こそ別れを告げる。これが今生の別れでは無いのだ。
後ろを一切振り返らずに、兄妹は洞窟への道へと戻った。
「終わった、か」
仕事を果たし終え、最強と言う有り難くない看板を下ろす事が出来て、レッドはそれに安堵した。もう、その称号に追われる事も無いと何処か清々しくもあった。
「悔しいの?」
リーフがテントを片付けながらそう言って来る。そんなリーフ自身はどうなのだろうと勘繰って、それに意味は無いと頭を振る。
その顔を見る限り、結果については納得している様だったからだ。
「どうだかな」
「何よそれ。ま、それはあたしも同じだけどさ」
悔しさが無いと言えば、嘘になる。だけど、それ以上に楽しかった。だから、何とも言えない。レッドが曖昧に返すとリーフもまたそう言って薄く笑った。
……役目は全うした。だが、それなのに自分は未だ存在している。壁として最後の敵として主人公の前に立ち塞がるのが己の役目。それを果たした以上は消えねばならない。以前のリーフの様に。
だが、そうはなっていない。自分が特別なのか、それとも未だこの身には果たせていない役目があるのか。
……レッドの胸がちくりと痛む。
――俺は未だやれる 不完全燃焼だ
自分の魂が吼えている様だった。
144 :
音ゲーマー:2011/11/05(土) 00:42:58.04 ID:GjhVXlLl
投下中にミスに気付いてその場で修正したよorz
でも、案外何とかなるもんだなあ。
>>134 >「Welcome as your experience」「Searching for your souls」
乙ww
拾漆:胸の内
――翌日 マサラタウン 21番水道前釣り場
ヒビキ達との決戦の翌日。レッドは仕事もそこそこに暢気に釣りをしていた。
ポケモンを釣り上げる目的ではない。夕食の素材集めを兼ねた息抜きだった。此処何日か心が休まる暇が無かったので、精神を調整する為にそうしていた。
始めて一時間弱。成果はまあまあ。バケツには釣り上げた小魚が泳いでいた。
そんなレッドに近付く影があった。
「よう」
レッドが振り向く。咥え煙草だ。それはグリーンだった。
「サボりか? 未来のオーキド先生」
「お前じゃ無えよ、俺は。休憩中だ」
片手には封の開いた無糖コーヒーのボトルが握られていた。
相変わらず白衣は着ていない。研究者である以上、外の汚れや雑菌を持ち込みたくないのかも知れない。
「俺もサボってる訳じゃない。書類にサイン位はしたさ」
「それで仕事になるのかよ。気楽だねえ」
篭っている間に回って来た仕事はそれ程多い量ではなった。その裡、片付けられる書類にサインだけをしてレッドは釣りに臨んでいた。
グリーンは何とも道楽的だと一寸だけ呆れている様だった。
「で、何の用だよ」
「んー?」
気になるのはそれだ。グリーンが態々息抜きの為に顔を出した訳じゃないのは幼馴染のレッドにはお見通しだ。恐らく、昨日のバトルについてだろう。
「……負けちまったんだってな。お前達」
煙草のフィルターを吸い、煙を吐く。そして、コーヒーをくっと呷ると、グリーンは海を見ながらそう言った。
「それを笑いに来たか? 好きにしろよ」
中々の耳の早さだ。母親にもその事は未だ伝えていないのに何処で聞き付けたのやら。
……否、山から帰って連絡もせずに釣り何てしているだ。勘繰られて当然か。
しかし、そんな事を言いたいが為に態々やって来たのだろうか?
……なら随分と暇な事だ。他人の事は言えやしない。
別に嘲笑の対象になる事にレッドが思う事は無い。今迄トレーナーを続けてきたが、一度も敗北が無かった訳ではない。数こそ少ないが、グリーンにだって負けた事だってあったのだ。
その度に、グリーンは勝利者として敗者である自分を嘲笑っていた事をレッドは記憶している。そして、きっと今回もそうだろうと思った。
「……本当ならそうしたい処だが」
「あ?」
苦い声色だった。それが意外に映ったレッドが幼馴染の顔を見る。眉間に皺を寄せていて、フィルターを強く噛んでいる。
「お前、このままで済ますつもりかよ」
そして、グリーンは強い口調でそう言った。
「何が言いたい」
「決まってる。リベンジはしないのかって話だ」
グリーンの言いたい事位はレッドにだって判る。だが敢て、そ知らぬ振りして聞くと、今度ははっきりとグリーンが答えた。
「・・・」
雪辱戦について考えなかった訳ではない。だが、負けた結果は受け入れているし、それに満足もしている。リベンジに臨む必要は何処にも無い。
しかし、胸に燻る持て余す感情がレッドには不快だった。無視して忘れてしまえば良いのに、それは時間と共に大きく育って行く。
そして、それを解き放つ踏ん切りがどうにも付かない。
「悪いが興味が無えよ」
レッドは感情を交えずにそう呟くと、竿を引き上げた。餌を取られていた。
「嘘吐くなよ!」
途端、グリーンが吼えた。憤怒の形相だった。
「少なくとも俺だったら悔しくて堪らねえよ! 今もイエローとその準備してる処さ!」
「それがどうした? 評価が欲しいのか? 手放しで褒め称えろってか? あー、はいはい。流石、ジムリーダー様は違いますね。どうぞお好きになさって下さい」
大声で喚くグリーンを尻目に、淡々と練り餌を釣り針に仕込むレッド。
お前達が何に臨もうと俺には関係無い。それを話すと言う事は、構って欲しいのか?
……そんな邪推をして、レッドは皮肉たっぷりに言ってやった。
「お前!」
沸点を超えてしまったらしい。レッドの胸倉に掴み掛かるグリーン。そして、そのまま殴り付けようとした。
「――止めろよ」
『お前、殺すよ?』
ゾクッ! 尻に氷柱を捻じ込まれた様な強烈な寒気を感じたグリーン。本当に人を殺してしまい兼ねない、凄まじい目だった。
「――っっ! ちっ!」
それに一瞬にして熱を奪われたグリーンは手を放し、舌打ちした。
「もう良い。馬鹿らしくなっちまったぜ……!」
これでは話にならない。燻る怒りを不機嫌そうに顔に出し、グリーンが背を向ける。
「待て!」
だが、レッドが大声でそれを止めた。
「ああん?」
「まあ、落ち着けよ」
背中に掛かる声にグリーンは振り向き、レッドの言葉を飲み込みピタリと動きを止めた。
「・・・」
話をするならば理性的に。そう言われた気がするグリーンは一息にコーヒーを飲み干し、吸っていた煙草を踏み付けて消火した。それを拾い上げて、空のボトルに突っ込んだ。
「何を望んでる。言ってみろよ」
自分にどうして欲しいのか。その口からはっきり聞きたい。グリーンが話す迄、レッドは只管海面に漂う浮きを注視し続けた。
「……お前達が負けた何て信じられないんだよ」
「事実だ。かなりの接戦だったんだぜ?」
グリーンが目を伏せて言う。だが、そんな事を言われても困る。敗北は事実だし、決してそれは覆らない。勝手な幻想を抱かれる事はレッドにとっては迷惑な話だった。
「判るさ。嘘じゃないって事位。でもさ!」
だが、グリーンは引き下がらない。その姿は恥じも外聞も捨てている様で、みっともなくも又、潔かった。
「本当に、この結果で良いのかよ」
「いや、俺は」
何も、何一つ思う事は無いのか? 図星を突かれてレッドが言葉に詰まった。
「悔しくないのか?」
「それは……」
そんな訳は無い。腐ってもトレーナーだ。だが、これで良かったと納得して、悔しさを封殺しなければいけない。
……だが、それは一体何故なのだろう。何の為なのだろう。レッドにある迷妄の正体がやっと姿を見せた様だった。
「本当に全力だったか? 形振り構わず、それこそ道具にでも頼ってそれでも勝てない相手だったのか? ……違うよな?」
「あ、ああ」
確かに、それ程圧倒的な実力を持った連中ではなかった。そもそも回復剤に頼る事を良しとしないレッドだ。不文律と言っても良い。そして、そんな手段を取る事を選択させる相手がこの世に居るかは甚だ疑問だった。
だが、レッド達はそうでない相手に負けたのだ。みっともなく足掻く事もせず、勝ちに執着する事もせずに。
果たして、それは全力だったと言えるのだろうか。
「俺達は違う。薬も沢山使って、それでも勝てなかった。だから、悔しくて……」
「それはお前等が」
そんな物に頼るお前達の根性が悪い。少なくともレッドはそう言いたい。
どのジムリにも言える事だが、往々にして彼等は生き汚い。それが自分の地位に執着している様で美しくないからレッドは薬を使わないのだ。
グリーンもイエローもきっとそうやって足掻いたのだろう。
「判ってるさ。あいつ等は薬を使わなかった。それだけで負けた気分だったよ」
薬の使用は或る意味反則で、そしてバトルの興を削ぐ物だ。勝って当たり前の条件を引張ってきて尚負けたグリーン達。確かに、それでは立場が無いだろう。
「同じ条件で、同じ土俵で戦って。それで負けたんならお前達も満足だろうさ。でも俺達はそれですら無いんだからな」
だからこそ、グリーン達は諦められないのだろう。
……やはり、生粋のトレーナーだ。
負けて尚、満足出来る様な終りは存在しない、と言う事か。
為らば、自分はどうなのだろう。この胸のモヤモヤ。持て余す感情を放棄して、無理に忘れようとしている己は。
「もっと、やれるだろ?」
「晒していない奥の手だって、ボックスには山と眠ってるんだろ?」
縋る様に必死な目だった。頷いてくれと懇願している様にも見えた。
「む」
「なら、それを使って今度こそやっつけてくれよ」
確かに、ある。決戦には使わなかった……否、使用がどうしても憚られた手持ち達がボックスには居る。それを引っ張ってでもヒビキ達を打倒しろと言うのか。
何処迄も勝手な奴。そんなのは自分達で始末を付けろとレッドは断りたかった。
「本気のお前達の力をあの糞生意気な餓鬼共に見せ付けてやってくれよ……!」
「はあああ……」
だが、レッドの喉を通過したのは溜め息だった。
そんな泣きそうな瞳を見てしまえば、何を言う気が失せるのも当然だった。
「他人任せだな。お前、格好悪いぜ」
「いけないかよ? 少なくともお前とリーフには未だ奥の手が残ってるって、思ってるぜ?」
他人任せを嫌うグリーンが此処迄言うなぞ滅多に無い事だろう。少なくともレッドにはそんなグリーンの姿に覚えが無い。
そう迄して自分達に期待するのは何故なのか。それを確かめたいレッド。
「それを当てにして何が悪いってんだ!」
そして、グリーンは理由を叫んだ。
――相手を信じる事、か
それは、前にグリーンを焚き付けた時の自分の言葉だった。
「全く……本当に面倒臭い野郎だな、お前は」
「あ――」
吐き捨てる様にレッドが言い放ち、煙草を取り出して咥えた。
それが拒絶に映ったのか、グリーンが悲しい顔をした。だが、レッドは幼馴染を裏切る様な男では無かった。
「お前達のリベンジは一寸待ってくれ。先に俺達が始末を付ける」
其処迄言われて動かなければ漢じゃない。だが、これは決してお前達の為じゃない。あくまで自分の為に。
――やはり、俺は馬鹿なままだ
トレーナーとしての性なのかも知れなかった。
「お、おお」
途端、グリーンが破顔する。レッドを口説き落とせた事が本当に嬉しい様だった。
「その代わりさ」
「な、何だよ」
だが、続きがあった。ロハでその話を受けてやる程レッドだって優しくは無い。
「いや、今度美味い酒の一杯でも奢ってくれよ」
「……任せろ!」
レッドの要求はたったそれだけだった。グリーンがそれに頷くのを確認するとレッドが新たな煙草に火を点けた。
「……ウツギ博士の電話番号って知ってるか?」
浮きが沈むのを確認し、レッドが釣竿を上げる。
大学の特別講師として講義を受け持った事があるウツギとその受講生だったレッドは面識はあっても連絡手段が無かった。
グリーンならそれを知っているだろうと、レッドは尋ねた。
「あ? いや、家に帰れば判るけど、何だってそんな」
判る事は判るが、何でそんな物を要求するのかがグリーンには解らない。
「段取りが必要だろ。もう筋書きは出来上がってる」
「まさか、お前……いや、判った。後で知らせるぜ」
段取り、と言う言葉を聞いて話を理解するグリーン。ウツギ博士はワカバタウンに研究所を構えていて、ヒビキ達も同じ町に住んでいる。
これが意味する所は……
レッドが釣り上げた魚から針を外している様を見ずにグリーンは身を翻した。家に戻る気だった。
――同刻 グリーン宅 居間
レッドが釣りをしている頃、リーフはグリーンの家に居た。
今は丁度お茶の時間。グリーンの姉であるナナミさんとお話中だった。
「今回は残念だったわね」
「いえ。負けたけど、それなりに楽しかった。それだけで十分ですよ」
椅子に座り、目の前には用意された紅茶と茶請け。
昨日の決戦が頭を過ぎって、それには手を付けずリーフは目を閉じた。
中々に白熱した勝負だった。少なくとも、負けて恥じ入る様な事は何も無いのでリーフはそう納得していた。
目を開けて、ナナミにそう告げると、何故かナナミは少しだけ目を細めた。
「……貴女がそう言うならそうなんでしょうけど」
彼女の目には懐疑と、僅かな憂いの光。
「え?」
その目がどうにも心を揺さ振る様でリーフが呟く。
「それは、本当に?」
言葉で明確にリーフへ疑念をぶつけるナナミの表情は硬かった。
「ええ。兄貴は少なくともそれに納得してる。ならあたしも」
「いや、レッド君じゃなくてね?」
他ならぬ兄がそうしようとしているのだ。其処に自分が感情を挟み込む必要は無い。
だからそれで良いとリーフは言いたかったが、ナナミが聞きたかったのはそうでは無かった。
「リーフちゃんはどう思ってるかって事」
「あたしは」
他の誰かでは無いリーフの本心についてだった。それを問われてリーフが若干、困った様な顔をした。
「本当は悔しいんでしょ」
「……そりゃあ、まあ」
ナナミは悪い事をしてしまったと思ったのか、口元に笑みを引いて尋ねた。
そんな顔に屈した様にリーフが自分の心を口にする。
楽しいバトルだった。だが、最後が運任せだったのでそんなモノに頼らない決着を望んでいたのは確かだ。機会があるならもう一度やりたいと。
やっぱりリーフは負けたままでは悔しかったのだ。
「貴女は何時もレッド君の側に居る。でも、そこに貴女自身はあるの?」
「何を」
ナナミはずっとレッドとリーフの成長を遠くから見てきた。勿論、過去の事件についてナナミはその詳細を知っている。
或る意味、自分の弟であるグリーンと同様、若しくはそれ以上客観的にその人間像を把握している。
だからこそ、飛び出した言葉だがリーフはその意味を掴みかねている様だった。
「貴女達の関係をとやかく言うつもりは無いの。私自身、それが素敵だと思ってるから」
ナナミは数少ないリーフ達の理解者であり、またその仲については支援する姿勢を昔から崩していない。だが、ナナミはそれでも言わねばならなかった。
「けどね。愛は依存とは違うわ」
昔からリーフにはその傾向があったが、それが加速しているとナナミは見抜いていたのだ。それはお互いの為にならないとの老婆心だった。
「依存ですか」
他ならぬ自分の事だ。リーフだって気付いている。それは決して彼氏依存と言う事ではない。
「そうですね」
「判っているのね、自分でも」
リーフが頷いた。未だに精神症を発生するには至っていないが、自分達の関係が共依存的であると何時からか知っていた。この際、それに至った経緯は問題では無い。
約束だとか、誓いだとかそんなのも関係無い。そうする事でしか、立ち行かなかったとしてもそれは過ぎ去った事だからだ。
ナナミは真剣な顔でリーフを見た。それを理解しているならば、正す冪と思っている。それが大きな御節介で、又容易な事ではないと判っているがそれでもだ。
「だけど、それが役目なんです」
「誰がそれを決めるの?」
そして、リーフは頭を振った。兄に頼り、また頼られてその言葉を起点にしなければ自分で行動する事が出来なくなって来ている。そうしていれば楽だし、考える必要も無いからだ。
「そうあたし自身で決めた。そうじゃないあたしに価値は無い」
「価値って、あなた」
そう。リーフ自身が自分でそうなろうと決心したのだ。兄の言う事を聞いていれば、褒めてくれるし、可愛がってくれる。リーフはそれに価値を見出していた。
「あたしは……本当はもう存在しないから」
「え?」
そして、そうせざる得ない一番の要因は、ナナミが知りえない世界の定めた掟に関与する事柄だった。主要キャラでない彼女がそんなメタな話を理解出来る筈も無い。
「でも、一度消えたあたしを兄貴がまた呼んでくれた。だから決めた。ずっと一緒に居るって」
そんな憐れなリーフの存在を再び定めたのが自分の兄。一体、どんな役目を課したのかは未だに語られないが、少なくともそうしないと自分の存在はまた煙の様に掻き消える。
リーフはそう思っていたのだ。
「兄貴も、あたしの意思も関係無い。そうしなければいけないから、そうする。それだけの話なんですよ」
消えたくは無い。例え、自分の心を放棄しても兄の……レッドの側に居たい。居なければならない。
リーフはレッドとの歪な関係に魂迄囚われている様だった。
「良く判らないけど――」
ゆっくりと茶を啜り、茶請けであるクッキーを頬張る。それを食道に流し込んでナナミはリーフを改めて見た。やっぱり、話が理解出来ないみたいだった。
「その何処にあなたの意思があるの?」
「いや、だからそう決めたって」
だが、ナナミが言いたい事は変わらない。リーフはまた困った様な顔をした。この人は話を聞いていないのだろうか? ……と思ったのだ。
「違うわね。役目とか価値とか、そんな上っ面な言葉が聞きたいんじゃない。貴女がどうしたいかなのよ」
「あたしの?」
リーフの言葉が全てそう言った建前を前提に語られている事がナナミには納得がいかなかった。では、それが無ければ、リーフは一体どんな決断を下すのかをナナミは知りたかったのだ。
それこそがナナミが言う所の意思。偽らざる本心と言う奴だったのだ。
「レッド君の事、好き?」
「勿論。兄貴として……ううん。男として、愛してる」
レッドの事を引き合いに出してみると、リーフはそれに猶予う事無く答えた。
微塵の躊躇も戸惑いすらない凛とした声だった。
「それで、そんなレッド君をどうしたい?」
「――」
其処で、少しだけリーフが言葉に詰まる。だが、それは一瞬だった。
「愛されて、また愛したい。好き放題振り回して、あたしに心底惚れさせたい」
それこそがリーフの本心。自分の物にしてしまいたいと。
「あたしを……レッドのオンリーワンにして欲しい」
第一、ではなく唯一。
妹としては既にそうだ。だが、リーフが言うのはそうじゃない。
唯一人、レッドの愛を受ける女になりたかった。
「……そんなに想われて、レッド君は果報者ね」
「いえ//////」
茶を啜って、ナナミはそう零す。ご馳走様。そんな声が聞こえそうな顔だった。
リーフは自分が吐いた葉を今になって恥ずかしく思ったのか、赤くなった頬を照れ臭そうに掻いた。
「なら貴女はそうすれば良い。他の誰か、役目や何かの為じゃない。……貴女の意志で」
「あたしの、ですか」
それを聞けただけでもナナミは満足だった。自分の心を縛る言い訳やその他煩雑な鎖は必要無い。したい様に、すれば良い。何にも縛られずに自分で決めた事ならば、それはきっと正しい事だとナナミは信じている。
後の全てはリーフの心次第だった。
「そうじゃなければ上手く行きっこないわ。私だってねえ……」
「は、はあ」
もう小難しい話をする気は無いのか、ナナミは自分の遍歴を彼是と語りだした。
それに付き合わされるリーフはクッキーを齧って、茶を飲んだ。
――ガチャ
「お」
ノックも無しに玄関ドアが開かれた。リーフとナナミがそちらに目を向けると、この家の長男が立っていた。
「あら、お帰り」
「お邪魔してるわね」
弟にそうとだけ姉は言い、視線で混ざるか? と合図を送る。
リーフは軽く挨拶しただけに留まった。
「何だ、茶をしてたのか。……ああ、お構い無く、用が済んだら出て行くから」
だが、グリーンはナナミの誘いを断った。必要な物を取りに来ただけで、直ぐに研究所に戻る予定だったのだ。グリーンは壁に掛けられた連絡帳のページを捲り出す。
「……あたしも行くかな」
「あら、もう? もっとゆっくり」
「いえ、もう十分です。ご馳走様でした」
そろそろ御暇しようかとリーフが席を立つ。未だ話し足りないと言った感じにナナミが引き止めるが、リーフは首を横に振った。気が付けば、窓から西日が差している。長居が過ぎた様だった。
「おう、リーフ」
「ん? なあに?」
帰る気配を悟ったグリーンがリーフを呼び止めた。
「こいつをレッドに渡してくれ。何時もの処で釣りしてる」
「電話番号? 判ったわ」
グリーンが誰かの電話番号が書かれた紙を手渡してきたので、リーフはそれに頷いた。無性に、兄に会いたかったのでその序に渡そうと思った。
「リーフちゃん」
「はい?」
グリーンの家を出る直前、ナナミが呼び止める。振り返るリーフ。
「女の子は多少、我侭な位が丁度良いのよ。だから、思いっきり振り回して、咥え込んで、溺れさせなさいな」
「……ええ!」
その言葉に勇気を貰った気がする。
……今の自分の素直な気持ちが少しだけ判った気がしたリーフだった。
「何話してたんだ? 姉ちゃん」
リーフが出て行って直ぐ、グリーンが姉に尋ねる。出て行く前の何と無く嬉しそうな幼馴染の顔が気になったのだ。
「良い女の条件、かな。今度イエローちゃんにも聞かせないとねえ」
「おい、止せ! イエローを汚す気か!? ぜってえ阻止」
ナナミはニコニコしながら言った。それに碌でも無い気配を感じたのか、グリーンがそうはさせないと姉の企みを打破しようとする。
「あらあら。お姉ちゃん悲しいわ」
「気持ち悪いんだよ!」
そんな弟をからかう様にヨヨヨ、と泣き崩れた振りをする姉。弟は気色悪い何かを見た様に姉に向かい威嚇するみたい叫んだ。
155 :
音ゲーマー:2011/11/05(土) 13:58:35.54 ID:1tuyatUB
残り数回の投下で終了。俺の妄想文に付き合ってくれてる人達に感謝。
卑下すんな、楽しんでるからGJ
>>155 まいど乙!
いつか、のほほん〜としたちょっぴりエロい子供のリーフの話が読みたいな…
拾捌:原点にして頂点
――夕刻 マサラタウン 釣り場
「あ、居た。兄貴〜!」
町の南に位置する21番水道前の岸辺。その畔が兄が何時も釣りをする場所だ。妹はポツンと一人で釣り糸を垂れている兄を直ぐに見つけると、大声で呼んで手を振った。
それに気付いたレッドが片手で答えた。
「釣れてますか?」
「ぼちぼちだ」
駆け寄って成果を尋ねるとレッドは顎でバケツを指し示す。十匹には届かない数の小魚がバケツの中で狭そうに泳いでいた。
「あ、グリーンからこれ預かったよ」
先程、グリーンに預かった電番の紙切れを思い出し、リーフが兄に手渡す。
「ありがとよ」
レッドは妹からそれを受け取ると、直ぐにポケットに捻じ込んだ。
照り付ける西日が周りを仄赤く染めている。耳に届く潮騒はざあざあとノイズの様に絶え間無い。だが、それが不快とは思わなかった。
「あのさ」
冷たさの混じる潮風がリーフの前髪を軽く浚う。自分の言いたい言葉を喉に溜めて、それを伝えようとする。
些かの間を置いて決心する様にリーフが唾を飲むとそれを言った。
「あたし、やっぱりこの前の戦「……リベンジすんぞ」……は?」
どうしても腹が癒えないので借りを返したい。そう伝えたかったのだが、レッドがその旨を掻き消した。
一体どう言う心境の変化だとリーフは怪訝な表情でレッドの横顔を見る。何時もの仏頂面だった。
「グリーンに泣き付かれてな」
「グリーン……だから、そのお礼参りの代行?」
その理由とやらがレッドから語られる。そんな醜態をグリーンが兄相手に晒すとは思えないのだが、兄が嘘を言う必要性は感じなかった。
だが、そう頼まれたから雪辱戦に臨むのだろうか? 少なくとも、今のリーフにとってそんな戦いに意味も価値も無かった。
「いいや、違う。切欠はそうだけどさ」
だが、やはり兄貴は妹を裏切らない。ちゃんと自分の本心に素直に従った故の決定だった。
「俺自身、どっか未だ燃え尽きてない部分が在ったんだと思う。そいつがどうにも気持ち悪くてな」
「あたしも……実はそう。だから、兄貴を誘おうと思ったんだけどさ」
理由は己の精神衛生。消し切れない胸の痞えを解消する為に戦いたい。リーフも似た物を抱えていたので、それを口実に兄を誘おうとした。先に言われてしまったが。
「何だ。俺を逢引に誘おうって思ってくれたのか」
「あ、逢引って! っ……まあ、違わないかな//////」
リベンジをデートと言うのは少し違うと思うが、まあ二人で行動する以上は結局それと同じだとリーフは気付いた。
軽口の様に言ったレッドだが、硬かった筈の表情はとても穏やかで口元には僅かな笑みが浮かんでいた。それを見たリーフは途端に頬へ紅葉を散らす。こんな自然な笑みを見たのは何年振りだろうか。だからだろうか、胸の動悸が一気に高まった。
「悪い。気を遣わせた」
「ううん? そんな……」
すると、今度は一転した様にレッドの表情が沈む。要らん世話を焼かせた事を悔いている様だった。それに慌てた様にリーフが首を振る。そんな事を気にして等居なかったのだ。
「それにあいつ等は最強、なんだろう? なら、挑戦者が出てくるのは当然だよな」
「だね。逆にあたし達が挑んだって良いのよね」
ニヤリ、と笑いレッドがリーフに自分達の正当性を尋ねる。リーフは頷く。
負けて悔しいから、再挑戦する。挑戦者として挑む以上、向こうは拒む事が出来ない。
トレーナーとしておかしい事は何一つ無かった。
「そ。大人気無いって言われても良いさ。今度は端から全力全開で行く。それ位の余力は残ってたろ、お前だってさ」
「そりゃ勿論。心のどっかで遠慮してたのかもね。でも、やっぱり」
最後にヒビキ達を勝たせる為に、手持ち選びの段階から気後れしてしまった事は否めない。決して、戦いの最中は油断せず、手を抜いたつもりも無い。
だが、お互いにそれを面に出した以上、もう一度戦いたいと言う欲求を引っ込める事は出来なかった。
「ああ。もう余計な枷は要らない。そんなもの無視してさ」
「思いっ切り、ぶつかりたいよ。……兄貴と」
課せられた役目はとうに果たしたのだ。後はもう自分達の好きにして良いだろうと半ば開き直りに近い覚悟もあった。脚本に従わない者を世界は有無を言わさず消去するかも知れない。
だが、それでも。もう目に見えない何かに縛られるのは厭だったのだ。
「俺も。リーフと一緒に弾けたいんだ。他ならぬ、お前とさ」
だから、レッドはそうするのだ。惚れた女と共に。
「――」
その言葉が胸を射抜く様だった。まるで昔に戻った様に、感情豊かにコロコロと表情を変えるレッド。もう見れないかと思っていたお兄ちゃんの顔。
それは妹にとって強烈な破壊力を秘めたモノで、更にそんな事を言われれば、ときめくなと言う方が無理だった。
「何よそれ。殺し文句って奴?」
バクバクと脈打つ心臓。それによって覚醒した乙女回路を悟られない様にリーフは顔色を余り変えずに軽口を吐いた。
「そう思ってくれて良いさ」
「え」
だが、今のレッドに敵は無い。最後のフラグを回収するみたいに振舞うレッドがとんでもない色男に見えたリーフ。母音を口走る事が精一杯で、思考が付いて来なかった。
「なあ、リーフ」
「あに……レッド?」
自分の目に刺さる、兄の真摯な空色の視線。リーフは兄と呼ぶ事を放棄し、名前を呼ぶ。今は一人の女として、レッドと向き合いたかった。
「旅に出ないか、また」
「旅?」
何とも唐突なお誘いに流石のリーフも戸惑う。バトルの話からどうしてそんな方向に行くのかを聞かねばならなかった。
「ずっと考えてたよ。復讐を終えた後の生き方。行き先とか人生設計とかも考えて無いけどさ、それが落とし処しては妥当かなってさ」
「妥当って、それ本気で言ってる?」
レッドが何時も考えていた事だ。もう終わった事に心を砕くのは馬鹿らしいし、振り向きたくも無い。そして、それが復讐を駆け抜けた自分達が歩む新たな旅路。
先送りにしていた答えをやっと見出せた様なレッドの顔は明るかったが、リーフはどうもそれが行き当たりばったりに感じられてしまう。だから聞いた。
冗談だよな? と。
「至極、大真面目だぜ!」
レッドの答えには迷いが無かった。それは既に決定事項で、また誇っている様な満足気な顔だった。何故其処迄自信たっぷりなのか、リーフは一寸不安になってきた。
「も、目的は何さ!」
だから、一言言ってやらねばならなかった。……の、筈なのにリーフはそれしか言えなかった。
「それを探す為、かな」
「はあ?」
リーフも開いた口が塞げなかった。
何なんだ、それは。つまり、目的は無い、と言う事だろうか。
だとしたら、流石に付き合い切れない。冒険が嫌いな訳じゃないが、自分達は良い大人だ。夢見がちな餓鬼では居られない。そう昔に語ったのは他ならぬレッドなのだ。
が、次のレッドも言葉でリーフの心にある虚妄や迷妄は跡形も無く吹っ飛んだ。
「もう俺達を縛るモノは無いんだ。それならさ、新しく始めたいんだ」
『俺と、お前で』
「っ!」
耳元で甘く囁かれた気がした。
目的の為に行くのではない。行く事それ自体が目的である。その果てに何らかの価値を見出せるならそれで御の字だと。
それが罪からの逃避だと、自分探しの下らない旅だと、言いたい奴には言わせて置けば良い。一つ所に留まるよりは飛び回っている方が自分達の性に合っている。そして、何時かは終の塒を見つけ、裁きの時を待つ。それこそがレッドの望み。
「そいつを叶える為にもさ。俺とお前でシナリオをぶっちぎる。それで消えるって言うのなら、それも良いさ」
……筋書きの無い、自分達が主役の物語。
ずっと、そんな生き方を求めていたのかも知れない。それを手にする過程で斃れ、また消滅したとしても、それもまた一興。決して振り向く事はしない。
だから、その幕開けとして自分達を縛り続けた糞っ垂な運命……否、脚本の鼻っ端を圧し折る。そうしたかったのだ。己が見定めた人生の相棒、リーフと一緒に今を駆け抜けたかった。
「……成る程ね、」
リーフは納得した様に頷いた。決して、迎合した訳ではない。情に絆されて渋々承諾した訳でもなかった。
「好きに生きて、好きに駆けて、好きに死ぬか。……良いわね、そう言うの」
縛られない生き方。それを望む人間は居るだろうが、実践は茨の道だ。自由の主張には相応の重たい責任が付き纏うし、そう生きる事は、又野垂れ死ぬ自由と隣り合わせでもある。
……だが、そんなスリリングな生き方も悪くない。とても魅力的で、粋。格好良く映る。
どうせ、お天道様の下をまともに歩けない碌でも無い事もしてきたのだ。自分達にはお似合いな末路だし、それに憧れて実践するのに何の憚りがあろうか。
そして何よりも……
「一緒に来てくれる?」
「何を今更。一緒に死ぬんでしょ? あたし達はさ」
迷い無い、自分の意志で大好きな人と一緒に居られる。
理由としてはそれだけで十分だった。
「そうだったな。じゃあ、いっそ駆け落ちでもかますかよ」
「何言ってんのさ! こちとら、生まれた瞬間とっくに籍入れ済んでるっての!」
――あたしも結局、馬鹿なままね
最早、リーフは動揺すらしない。完全に覚悟が入った女の顔だった。
潮の香が乗った海風が祝福する様に二人の頬を撫でる。
――惚れた男を支え、守り通す
そして、最後には奪って逃げて添い遂げる。それこそが、彼女の原動力。自分と言う存在に今度こそ自分自身で課したリーフの生きる意味。
どん、と胸を張るリーフは夕日に染まり、この世の何よりも綺麗に見えた。
レッドが惚れない要素は何処にも無かった。
二人の腹は決まった。
――数日後 ワカバタウン ヒビキ宅二階 ヒビキの部屋
「ねえ、ヒビキ君」
「何?」
お隣さんのコトネがベッドの上に寝転がり、漫画の単行本を読んでいる。
幼馴染の言葉に学校の宿題を片付けていたヒビキが顔だけをその方向に目をやる。
「あたしのマリル、除けて。雑巾臭くて敵わないのよ」
「自分で除けてよ。俺だって触りたくないし」
コトネの直ぐ近くで寝ているのは彼女の相棒だ。相変わらず悪臭の特性を発揮しているらしい。触れれば手から臭いが取れない事を知っているので断固としてヒビキはその要求を突っ撥ねた。きっと、ベッドもとうに雑巾臭くなっているのだろう。
「ええ? ……やだ。動くの面倒臭い。今良い場面なのよ」
「……こいつは」
動きたいのではなくて、自分も触りたくない事は明白だった。漫画に視線を移した彼女の顔に汗が張り付いているのをヒビキはちゃんと見ていた。
自分が嫌な事を他人任せにするとはどんな根性なのだとそのケツを引っ叩いてやりたい気分に襲われた。
『ヒビキ〜! ちょっと〜!』
「母さんが呼んでる。じゃあ、俺はこれで」
「あっ! ……逃げられた」
良いタイミングで下から母が呼んで来た。離脱のチャンスを逃さぬ様に、ヒビキは直ぐに立ち上がると階段を下りて行く。コトネは逃げたヒビキの背中を見送るしかなかった。
――ヒビキ宅 居間
「何、母さん」
降りると母親が郵便物を整理しているのが見えた。公共料金請求書、保険の資料、永代墓地のパンフレットその他諸々がテーブルに重なっていた。
「あなた宛に手紙来てるわよ」
「俺に?」
珍しい事もあるとヒビキはそれを受け取る。手書きの文字で自分の宛名と郵便番号が記されていた。ポケモンに持たせるなら未だしも、電子メールが主流のこのご時勢に何とも古風だと、現代っ子代表のヒビキはそう思った。
「差出人は……知らないな」
封筒の裏をひっくり返して差出人を確認した。
漢字で書かれた差出人の名。……聞いた事の無い名前だった。
「何々……」
兎に角、ヒビキは封を破ってその中身を取り出し、読んでみた。それを読み進める裡にヒビキの顔色が変わった。
「――こ、これって!」
――ヒビキ宅 二階
「何だったの? って言うかマリルを「コトネ」
「な、なに? どうしたの?」
帰って来たヒビキに尚もマリルを退かせようとするコトネ。だが、今はそんな横着を聴いている暇は無い。青い顔をしてヒビキがコトネの眼前に手紙を突き付けた。
「果たし状だ。レッドさん達からの」
「っ!」
コトネの表情もまた驚愕に染まった。
……二日後、ウツギ研究所にて待つ。
用件は前回の逆襲。約定違えずに必ず来られたし。
しっかりとした筆跡で簡潔にそんな事が書かれていた。
「どうするの?」
「どうするも、受けるしかないだろ」
手紙から目を放し、コトネがヒビキの顔を見る。其処には戸惑いが浮かんでいた。
正直、ヒビキは逃げ出したい気分だった。勝ったとは言っても、それは確率の悪戯であってもう一度やって今度も幸運を掴めるとは限らない。寧ろ、負ける可能性が圧倒的に高い。
何とか話し合って激突を回避しようと思い馳せるも、こうして態々書状を送り付けて来た相手がそれを呑むとは思えない。そして、きっと逃げてしまえば、レッド達は自分達を軽蔑するだろう。そんな無様な姿は見せたくは無い。
ヒビキ達は彼等の挑戦を受けざるを得なかった。
「まさか雪辱戦なんて」
「ああ。……時間が無いな。うかうかしてられないぞ」
時間が圧倒的に足りなかった。放って置いても彼等は来る。このままでは恐らく勝てない。ヒビキもコトネもそれは判っている。
「だね。……厭な予感がする。マリル、おいで」
「何処に?」
寝ていたマリルを叩き起こし、コトネが壁に掛けられていたキャスケットに手を伸ばし、被る。外出する気の様だった。
「準備よ! ヒビキ君も来て」
「判ったよ」
聞く必要も無い事だった。ヒビキがコトネ後を追い、対決の準備に取り掛かる。
――二日後 ウツギ研究所
「やあ、来たね。二人とも」
約束の刻限きっかりに、ヒビキ達が研究所の敷居を跨いだ。待っていた様にウツギ博士が出迎えてくれた。
「博士」「あの、師匠達は?」
此処を戦いの舞台に選ぶ以上、ウツギ博士もそれには賛成なのだろう。二人はレッド達は何処だと訊く。
「奥に居るよ。さ、彼等は待っているよ」
後は自分で確かめろ。ウツギ博士は何も言わず、只手で奥へ行けと指し示した。
How much do you hate me now?
But not enough.I fuxked too.
We`ll back to fxck again soon……
「来てくれた、か」「態々、悪いわね」
二人は長年の友人を迎える様な気さくな顔で待っていた。
そして、彼等の前に再び帰って来た。今度は頂点としてではない。挑戦者として。
「「!」」
「「どうした(の)?」」
レッドとリーフの姿を見て、二人の動きが止まる。それが気になった兄妹は変な部分でもあるのかと自分達の装いをチェックしつつ二人に尋ねた。
ヒビキ達の戸惑いの理由。それは単に以前の戦いの時との彼等の服装の違いだった。先ず、レッドの帽子が違う。野球帽ではなく、後ろがメッシュになったトラッカーキャップ。リーフに至っては被ってすらいない。
レッドのジャケットも細部や配色がやや違う。リーフはミニスカとノースリーブは着ておらず、黒いやや裾の長いワンピースを着用している。
そして、手に着用されたレッドの黒い穴開きグローブとリーフの白い手袋。リストバンドも無い。足はランニングシューズではなく、揃いの編み上げブーツ。
それだけの違いがあった。同じ部分と言えば鱗の首飾りとブレスレット位なものだった。
そして、服装以外にも異なっている部分があった。
「いえ、その髪の毛は」
「ああ。こいつが地毛だ。染め直したんだよ」
レッドとリーフの髪の毛の色。以前の栗色ではなく、艶のある漆黒の髪。
「そ、それにその目は……カラーコンタクト、ですか?」
「逆よ。これも本当のあたし達の色。今迄はコンタクトしてたけど、それを止めただけ」
最も目を引くのがその瞳の色。人間離れした紅蓮の瞳。以前の空色のそれとは与える心理的な効果が全く違った。
「小学校入った位に、周りの子達に恐がられた」
「吸血鬼みたいだって。だから、その時からああだったのよ」
嫌でも目が引き付けられる妖しい色気に満ちる兄妹。確かに、子供ならそれに恐怖を覚えても仕方が無いが、ヒビキ達は違う。魅了されそうだった。
「何で、今回は?」
「本気の証、かな」「または覚悟、かしらね」
だが、どうして自分達にそんな姿を晒すのかがヒビキには判らなかった。
「今迄ずっと偽ってた。もう、そう言うのは止めにしたいのさ」
「だから、その第一歩としての秘密公開かな。恥ずかしい話だけど」
これが、俺達の、あたし達の本当の姿。正体を明かした二人から迸るプレッシャー。もうこの時点でヒビキとコトネは帰りたくなった。
「師匠……どうして師匠達が」
「可笑しい?」
もう手を選んでいる暇は無いと、ヒビキは無駄と知りつつも説得を試みる。
「そうは言いませんが! でも、先輩達が来るなんて、俺達は微塵も」
戦う覚悟等全く決まっていない。だから、今は手を引いてください、と懇願する様な目で先輩二人に訴えるヒビキ。
「「甘い!」」
当然、そんな要求は通らない。バッサリ一刀両断された。
「お前達が最強だ。為らば挑戦者が現れるのは必定。覚悟していなかった訳でもあるまい」
「あなた達の好き嫌いは関係無い。そもそもそんなモノは選べない。甘えるな」
此処に自分達が居る時点でそんな選択肢は無い。最強の看板を背負うなら、そんな個人的な感傷は許されないとレッド達は一喝した。
「それで納得しろって! そんな大人の都合で!」
コトネが食い下がった。それは大人では無くトレーナーの都合なので年齢などは当然関係無い事だ。それでも聞き入れて欲しかったのだ。もう戦いたくないと言う事を。
「違うな」
レッドがそれにゆっくりと首を振った。
「新たな王を創り上げた責務だ」「それが、理由よ」
「何ですって?」
レッド達が戦うのはそのどれでも無い自分達の都合の為だったのだ。
「頂点と言うのは本来、孤独な場所だ」
「あなた達の場合は一組だけどね」
最強の名を戴く事の重圧と徒労感。そして、運命。嘗ての二人はそうだった。そして今はヒビキ達がそれを背負っている。
「其処に座る者は例外無く義務を負う。現れる挑戦者と戦い続ける義務だ」
「勝利を以って相手を愛するか。敗北を以って逆に愛されるか。それがずっと続くのよ」
――だから、今度は俺達がお前達の孤独を癒す
新たな物語の先触れとして、レッド達は頂点への帰還を望む。
理由はそれだけ十分だ。与えられた役割だから戦うのでは無い。……己の意志で!
レッドとリーフの赤い瞳が如実にそれを語っていた。
「「受けてくれるな?」」
「やろう、コトネ」
「ヒビキ君」
是非も無い事だった。予測は可能。だが、回避は不可能。そんな事はとうに判っていた。だが、認めたくなかった。今はそれに真っ向から対峙しなくてはならない。
「先輩達の言う通りだ。俺達は甘かったよ。今やトージョー圏のトレーナー全てが敵なんだ」
「それが、義務。……重過ぎるよ、そんなの」
最強と言うネームバリューの重み。戦い続ける修羅の道。そんな糞みたいな荷物は今の自分達には重過ぎる物だ。出来るなら、熨斗を付けて叩き返したかった。
「ウツギ博士!」「お願いします!」
その言葉が訊きたかった。為らば、後は審判の指示を仰げば良い。前回は僻地故に居なかったが、今回は違う。完全に決着を付ける為にこの場所を選んだのだ。
「やっと出番だね。では、ジャッジは僕が引き受けるよ」
影の様に出番を控えていたウツギ博士がそう宣言した。果たし状を送る前に既に博士の了承は得ていた。それがレッドの考えた筋書き。
衆人環視の下、完膚無き迄叩きのめす。言い訳等はさせない様に。
「表に出ようか。ここは些か狭い」
だが、屋内でバトルを始めるには問題がある。研究所と言っても内部が狭く、高価な研究機材が沢山ある。壊されては商売上がったりなので、ウツギ博士は四人を外に案内した。
「お前達の張りぼての王冠、俺が食ってやるよ」
「此処を、新たな王の墓場とする」
移動の際に、レッドとリーフにそう言われる。ヒビキ達は覚悟を決めた。
――Now,it`s payback time!
レッドとリーフ(本気)に喧嘩を売られた!
166 :
音ゲーマー:2011/11/05(土) 23:41:42.29 ID:8BHN/OMD
次も変な部分があるかもだから注意。
荒れる要因だろうけど、どうしても聞いてみたい。
赤さんと葉っぱさんについて中の人のイメージってある?
筆者的には沖田総悟とルナマリアって所だけど。
個人的にはサスケェ…とキバーラかな?
脳内CVは特に無いかな…
拾玖:Almagest
――ワカバタウン ウツギ研究所前
「ルールは……言う必要は無いのかな」
勿論と、四人は頷く。シロガネ山の時と同じだ。
騒ぎを聞き付けた住人達が集まってくる。ちょっとした御祭り騒ぎの様だった。
「では、両チームとも構えて」
地面に棒で引いた線の上で相手を見据える。シロガネ山のそれは非公式戦といっても良いモノだったが、今回のそれは違う。開戦様式は公式のルールに乗っ取る。
「礼」
形ばかりの礼だ。一応頭を下げる。これをしなければウツギ博士は開戦を宣言しないだろう。
「――初め」
そして、火蓋が切られる。新王者のヒビキとコトネ。挑戦者である双神威、レッドとリーフがボールを地面に放り投げた。戦闘BGMはもう一つのone more。アカシックレコードが今、ベールを脱ぐ。
「マニューラ!」「マリルリ! 頼むわ相棒!」
ヒビキ達の先鋒が姿を現す。悪、氷のマニューラ。水のマリルリ。
どうやら、対決に際し、マリルでは力不足と踏んだらしい。コトネの相棒はもう戻れない進化後の姿をしていた。
「多少は変えてきた様だな」「だけど、通じるかしらね」
前回のバトルでお互いの手の内は割れている。それでは、戦況が読まれる可能性があるので編制を変えるのは当然と言えば当然だった。
実際、レッド達もそうだった。
「出入りだぜ、ミュウ!」「ミュウツー! 華麗にボッコボコよ!」
レッド達の手持ちが姿を現した。
全国的に見ても出会った者が少ない実在する幻、ミュウ。そして、人がその手で創り上げた業の化身。ミュウツー。
「「ほ?」」
ヒビキもコトネも間抜けな顔をしていた。そのレベルを見て、絶望を知る。
レベル100。
どんな大器も満たせば、それはその他大勢と変わらない。だが、成長限界迄到達出来る者は本当に稀なのだ。少なくとも、ヒビキ達のボックスには其処に到達している手持ちは一匹も居なかった。
「大人気無いか?」「だけど、ルールには使用ポケの制限は無いのよね」
大人気無いって言うか、伝説の使用ってちょっとアンタ。
色々言いたいが、事前に決めたルールでは禁止事項としては盛り込まれていなかった。それを言われては何も言えやしない。
……完全にやられた。こんな事なら自分達も格好付けずにルギアとホウオウを持って来る冪だったと悔やんでも後の祭り。
例え、それがあったとしてもレベル差は埋められないのだ。
「だから、今回は自重しない」「苦しめるつもりは無いの。安心してね」
ゆっくりと笑う兄妹。その顔が回避不能の未来を垣間見せる様で泣きたくなった。
「ど、どうすんのよヒビキ君!?」
「……駄目だこりゃ」
コトネが半分涙目でヒビキに訊く。どうすれば勝てる……否、生き延びられるか。
ヒビキの答えは決まっている。在り得ない。
序盤からこんな高密度のチップが見えない速度、且つ階段の様に降って来るなぞ聞いていない。最初でこれなら終盤はどうなるのか考えたくも無かった。
「波動弾」「サイコキネシス」
無慈悲にレッド達が攻撃を宣言。タイプ不一致だが、四倍ダメージ。マニューラがあっさりと落とされる。
同じく、マリルリも倒れた。レベル的に種族的に多少は強くなった様だが、それは所詮付け焼刃と言う奴だった。
最初のターンが終了。ヒビキ達ワカバチームの被害は甚大だった。
「くっ、バクフーン」「め、メガニウム」
もう、うかうか出来る状況じゃない。切り札を持ち出して何とか勝敗を先送りにしたいが、それは不毛な事だった。レッドとリーフに戦慄させられたヒビキとコトネは気持ちの面でとっくに負けていたのだ。
「リフレクター」「光の壁」
対物理、対特殊の壁を同時に展開。二人の目が得物を追い詰める狩人に鈍く光っている。それはこの世に在り得ない絶対零度の獄炎だった。
「噴火だ! 出来るだけ削ってくれ!」「種爆弾! メガニウム!」
「平気平気」「余裕余裕」
今の二人に出来る最大攻撃。だが、壁に阻まれているので三分の一も削れない。火傷の一つすら負わせる事も出来なかった。
そして、二ターン目も終了。
「それじゃ、そろそろ」「こっちも交代だ」
淡々と次の手を繰り出す兄妹。慈悲の欠片も見えないその目に睨まれただけで、心臓が凍り付きそうになる。
只の交代だと言うのに、次の手を見るのが本当に恐かった。これ以上、最悪な光景な見たく無かったのだ。
「待たせたな、ギャラドス」「宜しくね、ミロカロス」
斯くして、姿を見せたレッド達の次峰。
勿論、ヒビキ達が知る由も無い事だが、死に別れた最初の手持ちとは違う個体。
レッド達は思い入れのあるこの二体のポケモンを好んで使いたくは無い。だが、それを持って来たのは、ひょっとしたら彼等なりの過去との決別を意味していたのかも知れない。
「「い、色違い……」」
レベルについてはもう何も言わない。だが、それ以上に目を引いたのは二匹の体色だ。
血の赤と、薄い紫色。通常の青と桃色ではないそれに目が吸い込まれる。
一応、ヒビキ達は怒りの湖でギャラドスの色違いを見た事はあったが、ミロカロスのそれを見たのは初めてだった。
「これが、俺達の真の相棒だ」「リザとフッシーには悪いけどね」
三年前の旅の始まりを告げたのはレッドがマサラの釣り場で釣った色違いのコイキングだった。その金色の鱗を見詰めている裡に、死んだ相棒に怒鳴れた気がした。
『何時迄ダラダラ微温湯浸かっとんねんっ!』
そして、レッドは数年越しに図鑑編纂の旅を決意した。勿論、リーフもだ。
其処で、ずっとオーキド研究所に預けていた相棒の残し形見を孵化させてみた所、生まれたヒンバスもまた色違いだったのだ。
ポケモンの色違いが発生する確率は凡そ1/8200。二人揃ってそれを引き当てたのは正に天文学的な確率。運命的な出会いと言っても過言では無い。
そんな二匹は彼等にとっては紛れも無い切り札。
「もう一丁噴火だぜ!」「り、リフレクター!」
怯むなと言う方が無茶な注文だが、それでも逃げる事は許されない。
何とか状況を打破しようと、彼是考えるが生き残る未来が全く見えない。
噴火を喰らったミロカロスだが、全く動じていない。たった二割しか削れなかった。
一応、壁を張ったがそれは焼け石に水だろう。
三ターン目が終了。刻々と死の瞬間が近付いて来ているみたいだった。
「竜の舞」「どくどくよ」
積み技でステータス強化。加えて、毒による長期的な戦果を望む。
さっくりと止めを刺しに来ない辺り、実に性格が悪い二人だった。
「積んでしかも猛毒!?」
「ああ、拙い! 手が付けられなくなるわよ!」
メガニウムが猛毒を浴びた。このまま放置すれば建て直しが不可能な状況に追い込まれる。……否。壁を張られた時点でそうなっていたのか。
運指の法則が乱れる!
こんなチャージノートが絡む発狂乱打を音ゲ脳を持たない凡人が捌ける訳が無い。和尚したって片方のパートは相当にキツイし、抜けられる可能性はかなり低い。
指ツイスターの骨折譜面。閉店は時間の問題だった。
「まだまだ噴火! ……駄目?」「光の壁を!」
少なくとも火傷位は負わせてギャラドスの体力を削ろうと目論んだが、僅かにゲージが減っただけで目論みは失敗。対特殊の障壁を展開するが、それが無駄な足掻きだとコトネ自身もきっと判っているだろう。
四ターン目が終わった。僅かにメガニウムの命が削られた。
「決着を急いでいる様だな。付き合ってやるか?」
「良いんじゃない? あたしはいけると思うけど」
もう少しだけ足掻く時間位は与えてやろうと更に舞を積もうと思っていたが、向こうはそれが大迷惑の様だ。
レッドはリーフに尋ねる。それにリーフは頷いた。
……殺っちまうか、と。
「なら、それを信じるか。ギャラドス! 大サービスのギガインパクトだ!」
「ミロカロス! 諸共波乗り! たっぷり水を飲ませてやって!」
一段階アップのギガインパクト。氷の牙でも良かったが、力の差を見せ付ける様に放たれたそれは易々と壁を突破してメガニウムをブッ飛ばした。
そして、次いで放たれたギャラドスをも巻き込む大海嘯。水に弱いバクフーンがそれに耐えられる道理は無かった。
「「・・・」」
揃って、目を覆いたい光景だった。
救いは無いんですか? ……無いよ。妖精にそう囁かれた気がした。
「バンギラス……」「カイリュー……」
ヒビキ達が最後の手持ちを晒す。二匹共に600族。しかし、切り札と言うにはレベルが今の二匹より明らかに低い。恐らく、急拵えの保険である可能性が高い。
だが、今更そんなモノを持って来た所で戦況は覆らない所迄来ていた。
「ちっ、襷潰しか」
「仕方無いじゃん。それでもあたしは相棒を信じるけど?」
「違い無いな」
バンギラスの砂起こしは微妙に厄介だ。相手の特防が上がる位はどうでも良いが、ターン最後の削りが襷で耐えた命を容赦無く刈り取るのだ。
だが、それ位で優勢が崩れる訳ではないとリーフは判っている様だ。レッドもそれに頷いた。五ターン目終了だ。
「カイリュー、雷! ……うわ」
「ストーンエッジ! 糞、硬い」
反動で動けないギャラドスを確実に潰す為に容赦無い攻撃が集中する。だが、雷は外れ、ストーンエッジも壁に阻まれ、思う様な効果を上げない。
ギャラドスは耐え抜いた。最も利いたのはミロカロスの波乗りだった。
「良く凌いだな。向こうの運、尽き掛けている?」
「此処は……自己再生しておくかな」
落とされても仕方ない状況だったが、そうはならなかった。こちらの運ではなく、相手方の不運が原因な気がして、前回の決着の場面を思い出すレッドだった。
リーフは無難にも体力回復。バクフーンにより付けられた傷が完全に癒えた。
六ターン目が終り、マサラチームの壁の効果が切れた。砂嵐が両陣営の体力を削った。
「ミュウ」「ミュウツー」
再びレッド達が掟破りを召喚する。胃が痛くなりそうな状況だった。
「うわ、来たよ。岩雪崩!」
「早々にお帰り下さい! 逆鱗!」
全体攻撃が両ポケモンの体力を削るが、威力が分散され半分を削るに至らない。追撃の様にミュウツーにブチ当てられるカイリューの逆鱗。しかし、それでも倒す事が出来ない。残りの体力は二割強だった
七ターン目終了。砂嵐が四匹の命を削り取る。此処で、リーフのミュウツーがオボンの実を使用。体力を半分位迄戻した。
「リフレクター」「光の壁」
「また張るのかよ!? 畜生め! 悪波動!」
エスパータイプに特効の悪攻撃。だが、バンギラスの特攻はそれ程高い訳ではない。壁に阻まれてミュウツーの体力を削り切れない。残りは二割半。
「未だ未だ逆鱗! ……あ」
此処で逆鱗がヒットすれば良かったのだが、当たったのはレッドのミュウだった。
壁に邪魔されてやっぱりダメージが通らない。ミュウツー同様、オボンの実でミュウが体力を幾らか戻す。そして、疲れ果てたカイリューは混乱した。
シングルならそう言う心配は無いが、ダブルバトルで対象を自分で指定出来ない事は厄介なネックだ。確実に葬るのなら、ランダム要素を排除しなければならなかったのだ。
「ナイストライだったぜ」「しかし、惜しかったわね」
八ターン目終了。ワカバチームのリフレクターが切れた。砂嵐が(以下略)
「「行って来い、ドーブル!」」
レッド達が手持ちの交代を支持。二人の最後の手。絵描きポケモン、ドーブル。
「「ど、ドーブル?」」
お世辞にも種族的に強いポケモンではない。だが、その特徴は他のポケモンを圧倒する。やろうと思えばどんな技だって覚える事が出来るのだ。それを最終決戦に出してくるとは。
そのレベルも相まってこいつは非常にヤバイ臭いがする。是が非でも倒さねばならなかった。
「カイリュー! 逆鱗、発動!」
混乱中にも関わらず、恐れずに逆鱗使用を指示。そして、それは確かに的確な手だった。レッドの手持ちがレベル100で無ければ。
そして、タイプ一致のドラゴン技がドーブルにクリーンヒットした。
「……嘘でしょ。何で耐えるのよ」
だが、それでもドーブルは倒れない。二割強を残して、未だ健在だった。
「レベル差を舐めるな」
「係数が違ってくる。壁もあるんだしね」
これが壁の無い状態の逆鱗なら話が違っただろう。タイプ一致と砂嵐で多分、ドーブルは撃墜されていた。だが、落とそうとして攻撃した結果はこれだった。
「ストーンエッジ! って、嘘だろ!?」
そして、ヒビキが続いて攻撃を続行する。タイプ一致の強烈な一発だ。傷付いたレッドのドーブルは耐えられない。
しかし、それも当たらなければどうと言う事は無い。無常にもヒビキのバンギラスは攻撃を外してしまった。
「運に見放されたな」
「やっぱり、あの時に使い切っちゃったのよ、きっと」
ストーンエッジは外れ、タイプ一致の逆鱗でも倒し切れなかった。
運は完全にヒビキとコトネを見放していた。
九ターン目終了。ヒビキ達を守っていた光の壁が効力を失った。砂嵐が(以下略)
「「せーの、茸胞子!」」
揃って同じ技の使用を宣言。必中睡眠がバンギラスとカイリューを眠らせた。
「この型、やっぱり……」「起きて! 起きなさいよカイリュー!」
必中一撃必殺型。実際に遭遇した事は今迄無かったが、余りにも有名な型だ。
眠らせ、狙いを付け、葬り去る。只それだけの型。だが、何よりもそれが恐ろしいのだ。
十ターン目終了。以下略
「木の実は持っていない様だな」
「後は運だけど……滅びの歌、撃っておく?」
眠りこけ、起きる様子の無いワカバチーム。問題なのは後、何ターン眠ってくれているかだが、保険として死の宣告でも使うかとリーフがレッドに訊いた。
「いや、こいつ等が虫の息である事には変わり無い。倒されてもこっちには後があるんだからな」
だが、それにゴーサインは出さないレッド。もう十分付き合ったのだ。此処は強気に行くとリーフに答えた。
「じゃ、あれだね? ドーブル、心の目」
「ああ。ロックオンだ」
二人のドーブルが狙いを定める。カイリューもバンギラスも起きなかった。
「「!」」
死ぬがよい。二週目のラスボスが無情にそう言った気がした。
十一ターン目終了。以下略。
「・・・」
必死に頭を巡らせる。この状況を打破する手は無いものか。
行動を許した瞬間に敗北が確定する上に素早さでは完全に向こうが上。
手持ちは空っぽ。完全に積みの状態。
せめて一匹でも手持ちが居てくれれば、交代してその場凌ぎが出来るがそれも叶わない。
……道具が使えれば。
ヒビキは決して考えてはいけない事を考えてしまった。
「使えば良いんじゃないのか?」
「頼っても良いけど? 今回は薬位で文句は言わない」
随分と長考していた様だ。その声に気付いてハッとすると、二人は火の点いた煙草を咥えて、紫煙を燻らせていた。
先輩達、喫煙者だったんですね。……否。そんな事はどうでも良かった。
「で、でも」
今の自分の心を見透かした二人の発言。それが悪魔の囁きの様に聞こえた。
今迄だってこうやって追い詰められた事はあるが、連戦が続いて止むを得ない場合を除いては、戦闘では道具に頼らない事を極力決めていた。
ジムリ戦でも、四天王戦でも。そしてこの前の戦いでも。ヒビキ達が唯一貫いて来た矜持だったのだ。
それを破れと、破ってでも足掻けと四つの赤い瞳が誘惑する。
「ま、若しそっちが使ったなら、こっちも解禁する覚悟はあるが」
「あなた達がどれだけ数を用意したか知らないけど。こっちに抜かりは無いわよ?」
最初から形振り構わない覚悟をしている。伝説の使用がそうだ。そちらが回復剤を使うなら、こちらも同様にさせて貰うとレッド達は告げた。
「元気の欠片、回復の薬。それぞれ百個は持ってる」
「あなた達は、どうかしら」
そんな状況に陥ってしまえば、それはもうポケモンバトルではない。只の醜い泥仕合だろう。そんな無様は晒したくなかった。
「ブラフだと思うか?」
「まあ、好きにしてよ」
直ぐにそれが真実と判る。王手一歩前に居る彼等はそんな嘘を吐く必要等何処にも無いのだから。
牽制でも脅しでも無い。好きにやれ。俺達はそれを食い破る。
レッド達は本当にそうするつもりなのだろう。
「ヒビキ君……」
「ああ、積んだ。俺達の負けだ」
実力でも、物量戦でも、圧倒的。勝ち目はとても無い。
コトネが悲しそうな目でヒビキを見た。もう打つ手は無いのか、と。
ヒビキはそれに頷き、投了を宣言。これが本当のどうしよもないものと言う奴だった。
「「絶対零度」」
ヒビキの言葉を確かに聞き、レッドとリーフが攻撃を指示。
この瞬間、バンギラスとカイリューは倒れ、ヒビキ達の敗北が決定した。
「それまで!」
見届け役のウツギ博士が勝負の終了を告げる。
「勝者、マサラチーム! 双方、礼!」
再び、形ばかりの礼をしてバトルの幕が下りる。それはレッド達にとっての物語の転換点であった。
「はあ……結局三日天下かよ」
規定の賞金をレッドに手渡し、実に残念そうにヒビキが愚痴る。
「悔しいか?」
その顔を見れば訊く必要は無い事だと判っていても、レッドは訊いてしまう。嫌味のつもりは全く無い。今のヒビキ達の気持ちは知って置きたかったのだ。
「そりゃ勿論! でも」
「何よ」
コトネがそう叫んだ。やっと掴んだと思った栄光の地位だったのに、直ぐに引き摺り下ろされた。それが口惜しくてならない。オーバージョイの世界を垣間見た気すらした。
「師匠達の力を思い知った。なら、後はそれに向かって万進するだけかなって」
「前向きね。でも、今はその方が良いのかもね」
しかし、これだけの力の差を見せ付けられて負けるのならば、それだけで納得だとヒビキは思った。最強を名乗るには未だ力が足りないとも。
だから、次に備えてもっと強くなる。その時迄最強の座は一時預ける。負け惜しみの様だが確かにそう思った。
リーフはそんなヒビキを薄く笑った。やれるものならやってみろ、と。
そして、自分達は未だに人間の範疇だとも付け加えたかった。
『俺(あたし)達、其処迄廃人じゃないよ?』
あの狂った世界は人間を卒業しなければとても太刀打ち出来ないからだ。
「博士、今回は有難う御座いました」
「あたし達の無礼な訪問にも関わらず、厭な顔一つすらせずに我侭を聞いてくれた。感謝しています」
突然の申し出を無理に聞いて貰ったウツギ博士に兄妹は素直に頭を下げた。完全な勝ちを演出する為には第三者の目が必要だったのだ。その役目を担ってくれた博士には本当に感謝の念を抱いていたのだ。
「顔を上げてよ。僕も、トップ同士のバトルを見られて嬉しかったよ」
だが、博士は迷惑だとは微塵も思わなかった様だ。にこやかに笑みながら、今の戦いの光景を思い出している様だった。
「研究職を続けているとバトルからはどうしても縁遠く成りがちだからね」
在野の研究者ではあるが、最近はどうしても研究所に篭りがちになってしまう。
そんな自分の目の前でポケモンがトレーナーと共に連携し合って、命の力をぶつけ合う。その熾烈な瞬間を目撃出来ただけでも、研究者としては十分だったのだ。
ウツギ博士の佇まいが自分達よりも遥かに大人に見えた二人だった。
「月並みだがな。……確かに返して貰ったぜ」
「これでまた振り出しね。残念だけどね」
最初は奪い、今度はそれを奪還された。ヒビキ達の最強を求める戦いは確かに、最初に戻ってしまった。だが、ヒビキ達に敗戦の悔しさはあっても後悔は無かった。
二人が背を向ける。マサラへ帰る気なのだろう。
「待って下さい」
だが、ヒビキには未だ用があったのだ。
「ん?」
その背中に声を掛けると、レッド達は振り向いた。
「その……」
「何だよ」
言い難そうにもじもじと視線を彷徨わせるヒビキの様子に、用件を早く言えとせっつくレッド。何も無いなら帰るぞ、と言っている様な顔だった。
「しゃ、写真を一緒に撮りませんか? 俺等の敗戦記念の」
「序に、ギア番も教えて下さい! お願いします」
そして、とうとうヒビキとコトネが内容を語った。記念……否、忌念写真の撮影と電話番号の交換。
「「ぷっ」」
なんだかそれが可笑しくて思わず噴出してしまった。
「良いよ。そんな事で良ければ。な?」
「うんうん。問題ナッシングよ」
後輩の可愛らしいお願いを無碍にする程、鬼じゃあない。顔を緩ませてそれに応じるレッドとリーフ。しかし、ギア番交換は未だしも、写真を撮る為のカメラが無かった。
「じゃ、写真は僕が撮ろう」
それを解決したのはウツギ博士だ。戦いの様子を記録でもしていたのだろうか、彼の手にはデジタルカメラが握られていた。
「それじゃあ、フォトジェニックな君達、息を吐いてゆっくり笑ってね」
研究所前で手持ち達を交えずに四人だけで撮る。思い思いのポーズを決めてシャッターの瞬間を待った。そして。
――パシャ
此処に新たな思い出が生まれたのだった。
「じゃあな、後輩。次は何時になるか俺達にも判らんが」
「その時には今度こそ、あたし達を超えて見せて頂戴ね」
ドンカラスとプテラに乗ってレッド達は帰っていった。天より舞い落ちる一枚の黒い羽がこの場に彼等が残した存在の証の様に感じられた。
「「・・・」」
飛んで行った東の方向を見るも、その姿はもう既に点の様に小さくて、暫くして完全に視界から消え去った。
「やっぱりさ」
「うん」
ドンカラスの羽を拾い上げ、ヒビキが漏らす。
「格好良いよなあ」
「そうだね」
憧れの先輩。その勇姿と圧倒的な実力をその身で知った。
それに何時かはきっと、追い縋る。……否、追い越してみせる。
最早、頂点も最強もヒビキとコトネにはどうでも良い話だった。
……そして、レットとリーフにとっても。
176 :
音ゲーマー:2011/11/06(日) 15:23:24.01 ID:52cWUmBy
残り後二回。次は誰も待っていないだろうがエロパート再び。
おまいら準備はいいですか?
〜チラシ裏〜
シブにも爆撃中だがコメントが全く無いのは拷問に近いな。所詮、シブに於ける小説の立場なんざそんなものか。どれだけ大作仕上げても注目されなきゃただの文字の羅列だぜ。
〜以上チラシ〜
177 :
名無しさん@ピンキー:2011/11/06(日) 15:44:52.23 ID:xeuJsqx3
>>176 なん、だと…
pixivでも検索してくる
178 :
音ゲーマー:2011/11/06(日) 15:46:13.10 ID:52cWUmBy
え、マジか? 何だが催促したみたいだな。気を遣わせて悪い。
作品の質と作者の人間性はあまり関係ないと思うけど、『コメントがないからやる気がでない』『注目されなきゃ作品は文字の羅列と一緒』なんて不用意な発言は、仮にも文字を書く人間なら控えたほうがいいんじゃないか。
君の中ではコメントや反応をくれる人だけがよい読者なの?
無言でも楽しんで読んでくれている人たちの気持ちは無視なのか?
>>176 「赤葉」でタグ検索したら見つかるみたいね。
181 :
音ゲーマー:2011/11/06(日) 16:24:02.45 ID:52cWUmBy
>>179 やる気が出ないとは言ってないぜ。
反応があれば気持ちも返せるが、批判も肯定も無い状態で相手がそれを楽しんでいるってどうやって把握する? 投下した身としては結構なプレッシャーだよ。
俺の作品は自己満足のオナニーだ。自分の為に書いた物をお裾分けしてるだけだよ。
だが、それでも書いた作品は自分の子供も一緒だし、投下した以上はそれに責任を持たなきゃならない。親として、作者として評価を気にするのは悪い事なのか?
>>176 大丈夫だ、作品として生み出されればいずれは誰かの目にとまる。
ここでこれだけ評価されてるんだ、気にするなよ。
シブで作品公開してるってだけいっとけば閲覧者数も上がるさ…
ま、よい作品を読めるんなら喜んで評価しに行くけどね。
つーことで
>>180ありがとう
ちなみにCVはレッド青年を中井和哉、リーフ青年を河原木志穂で
脳内再生してる
何初段に穴冥やらせてんだよアホかw
>>181 気にすんな、
>>179のが訳分からんから
ロム専なんていないのと同じだって分からんのかね。
ロム専云々の問題じゃなくね?たしかに作品投下してくれるのはありがたいけど作者のコメントが余計というか構ってちゃんすぎるのは俺もうすうす感じてた
誘い受けっていうの?作品はいいのにコメントで興をそがれるわ
評価気にするのなんて物書いてる人ならだれでも同じ不安抱えてると思うし
オナニーオナニー連呼してるけどぶっちゃけ予防線張ってるようにしか見えないわ
幕間:良い子は『極力』真似しちゃ駄目だぞ?
※近親相姦の実践は自己の責任を以ってお願いします。(筆者)
……最終決戦から凡そ一ヶ月後
――マサラタウン レッド宅 居間
「で、本当に行くんですか? あいつ等は」
「そうらしいわね。もう飛行機のチケットも取ったって」
レッド達が頂点と言う名の王冠を奪還してから少し経って、二人は唐突に旅に出る事を周囲に告げた。その理由を聞いても二人はやれ自分探しだのポケモン修行だの、はたまた仕事の業務拡張だとかどうもはっきりしない。
その明確で無い辺りをはっきりさせる為にグリーンはレッドの家を訪れた。
そして、彼の応対に当たっているのが二人の母親だった。
「そうですか」
出されたコーヒーを啜って、残念そうに漏らす。チケットを手に入れたと言うのであれば、彼等は本当に行くのだろう。
行き先はホウエン。出発予定は十一月上旬。もう何日も無かった。
「寂しいの? グリーン君」
「……そりゃあね」
グリーンは素直にそう呟く。何だかんだ言って、15年以上の付き合いがあるのだ。昔の自分ならば、一緒に付いて行くと決心してそうしたのだろうが、今はそうはいかない。
グリーンはトキワジムのリーダーで、オーキド研究所の見習い研究員。自分に今の生活がある以上、二人の後を追う事は出来ない。
確かに、グリーンは寂しい。だが、それを言ってもどうしようも無い。レッド達にだって彼等だけの人生があるのだから。
「でも、おばさん程じゃないでしょう」
「そうね。確かにずっと一緒に居た子供達が離れていくのは寂しいわね」
そして、それ以上に淋しいのはレッド達の母親だ。三年前のカントー行脚の旅の最中を除いて、常に二人の近くに居た。ずっと彼等の母親として、帰る場所で在り続けたのだ。
この巣立ちが摂理だと雖、それを悲しまない親は例外を除いては居ないだろう。
「でも、あの二人が決めた事だから。もう私から言う事も、してあげる事も殆ど無い。全部があの子達次第と言う訳」
そんな母親がそれを受け入れている以上、グリーンが口を挟める事は最早何も無い。
「……何時帰るとかも判らないんですか」
「聞いて無いわ。ただ、リーフは未だ卒業前だから、必要に応じて帰るとは言っていたけど、その後の事は判らないわね」
レッドの仕事は未だにグリーンも実情を掴み兼ねているが、旅をしながらやって行けると言う事は恐らく真っ当な仕事では無いだろう。ポケモントレーナーは副業と言っても過言ではない。
そして、今のリーフは卒論研究で一番重要な時期の筈だ。それなのに旅に出るとは、本当に卒業出来るのかがどうにもグリーンには怪しい。タマムシ大の卒業資格を得る事は一筋縄で行かないとグリーン自身が去年味わったのだ。
「・・・」
あの変態兄妹が何を考えているのか、それは幼馴染にも理解しかねる事だった。
一方その頃、その上では……
――レッド宅 二階 兄妹の部屋(愛の巣、または牢獄)
「や、やあん……! ぉ、お兄ちゃん!」
渦中の人物達は生臭い遊びの真っ最中だった。腕輪を除いて一糸纏わぬ姿に引ん剥かれたリーフと首飾りを残して上半身だけ素っ裸のレッドが乳繰り合っていた。
「駄目……っ、らめらよお! し、下にお母さん達が……っ、あああん!」
背後から、やや手荒く乳を揉まれて甘ったるい声を響かせる。普段から重そうにぶら下る脂肪の塊に節だった指が食い込み、痺れる様だった。
何時もより乱暴で痛みの混じる手付きなのだが、それがどうしてか心地良くって更なる刺激を求めてしまう。
「ほっとけよ、毎度の事だ。寧ろ、聞かせてやろうぜ?」
「やだっ! は、恥ずかしっ……ふあああ……」
乳肉に指を食い込ませ、ビンビンに滾った両乳首を指の腹で優しく扱いてやると、艶の利いた声が涎と共にリーフの口から漏れた。
母親の存在下で目交う事は昔から頻発していた事態だったが、それ以外の誰かが居る状態でした事は無い。それがリーフには恥ずかしいのだ。
今思えば、シロガネ山に篭っていた時にイエローから来た電話で、彼女が受話口越しにグリーンにイイ事をされていた事を思い出すリーフ。
それはレッドが知り得ない事ではあるが、今の自分の状況はそれとは全く逆だと気付いてしまう。意識するなと言われても流石に無理だった。
「って言うか、こんなびちゃびちゃにしといて我慢出来るのか?」
レッドの指先がリーフの女に触れた。熟れた水蜜桃を潰した様に果汁が滴っていた。
「そっ! それは…それは」
「それは……何だよ」
床にシロップを撒く程に興奮している妹のその場所。最早、期待している事は明白だったが、リーフは恥じらいを捨て切れない様だ。
だからレッドは滾る一物をジッパーを下ろして引っ張り出した。そして、そそり立つそれを……
「っ……ぁ、ふきゃああああああああっッ!!!!」
相手の反応を見ずに一気に打ち込んだ。
「ったく、お前と来たら。今更、隠す事でも無いだろうに」
他人の反応なぞ、至極如何でも良い事象。それが独善的と言われてもそれは構わない。
ワナワナと震えるリーフだが、その肉壷は情熱的にレッドの魔羅を抱き締めているのだから。
「だから素直んなれや」
そうして、妹を貫いた兄は背後からその耳をベロっと舐めて囁いた。
「んいいいいいっ! ち、ち○ぽぉ! お兄ちゃんのおち○ぽ挿入ってきらあ!!」
「欲しかったんだろうが。俺の……こいつがさあ!」
奥底に溜まっていた何かを解放する様に淫語を垂れ流す妹。
それを聞いて何と無くだが心満たされる兄。支配欲何かとは縁遠いと思っていたが、成る程。 胸に湧く熱い思いの正体はそれに根差すモノかも知れないと一瞬、レッドは思った。
「あっ、あっ、あはっ、んあっ! あひいい!! しょ、しょんな、事ぉ……」
だが、尚もリーフは強情だった。咥え込んだ兄のギャラドスをしっかと挟んで放さない妹のパルシェン。蕩けた声と顔でそんな台詞を吐かれても説得力なぞ何処にも無い。
「強情な奴だ。ま、嫌ならそれも良いか。無理矢理はいかんよな」
だが、その言葉こそがレッドのtrapだ。
男の娘って意味じゃないぞ?(筆者)
「だ、駄目ぇ!」
竿を引き抜こうとして腰を引いたレッドだったが、それを許さない様にリーフが結合部分を密着させて来た。何が何でも離さない……そんな気迫が乗り移った様なリーフの下の口による喰い締めは痛みを催す程だった。
「うぬっ……、何だどうした。必死じゃないか」
「抜いちゃ、抜いちゃやぁだあ!!」
その情け容赦無い搾精を喰らいながらも、レッドは余裕の表情を崩さない。雄としての優位性を認識させる様に耳元で囁くと、リーフは頭を左右に振り駄々を捏ねる様に叫ぶ。
「もっと! もっと突っ込んでよ! ハメハメしてよお! お胎が……疼くよう……!」
火が点いた身体は決して自分では鎮められない事を自覚している。だからリーフは恥も何も捨て去って、雌として犬の様に尻尾を振る。
知らずに零れた涙はレッドを誘うには十分な効果だった。
「――」
その懇願が耳に届いたレッドは一瞬、全ての動きを止めた。
ゾクゾクと背中を奔る怖気。
『……あれ? 俺ってS気あったっけ?』
思わず自分でも首を傾げそうになった。ひょっとして女の趣味が変わってしまったのかと考えてしまった程だったが、レッドに結局確かめる術は無かった。
「やっぱり好き何じゃないか。このスケベが」
「お兄ちゃんが! お兄ちゃんがあたしをドスケベにしたあ……!」
詰る様に温度が低い言葉を浴びせるレッド。その度にきゅんきゅん締め付けるリーフの女。今直ぐに妹の雌穴を掘削したい気分に駆られるも、それを何とか耐える。
「猫被るなよ。お前が変態だって事は俺がちゃんと知ってるからさ」
「ううっ、ぐすん……い、意地悪しないでよお」
今更、確認する必要も無い事実。兄妹でスケベな事を犯っている以上、それは誰から見ても倒錯的で、背徳的。そして変態的な行為。それが何にも勝って心地良いからそうしているだけだ。
とうとう憚らずに泣き出したリーフだったが、別にレッドは妹を苛めたい訳では決して無かった。それは寧ろ……
「そいつは違うぞ。兄ちゃんなりのお前への愛だ」
妹への、愛している女への自分の想いの示し方だった。
「・・・」
それは聞いたリーフは一瞬、泣く事を忘れてレッドを見た。
( ゚д゚ )
……こんな表情で。
「そんな顔しないでくれよ。悲しくなってきた」
こっち見んな。って言うか、信じろよ。些か、萎えた気がしたレッドだった。
「なら……ならさあ」
全身、余す所無く赤く染まったリーフがもじもじとしながら、又恋人に向ける様な乙女らしい表情でレッドにおねだりする。
「もっと優しく可愛がってよ……レッド♪」
「っ」
頬に伝った涙の痕がその表情と相まって、凄まじくそそる。鼻血と一緒に白い汁を噴きそうになった。
「……不覚だ」
「?」
キュン、と来てしまった。暴れ狂う胸の動悸を押さえ込み、暴発しない様に尻の穴に力を籠めて延命を図るレッド。此処で閉店するのは情けない。
……やはり、難抜けは半端じゃない。レッドはその事実を肝に刻んだ。
「優しくしろって言われてもな。……うーむ」
「うあっ……ああっ! ふは、はあん……♪」
苛めるつもりは更々無いが、リーフの言う優しさの詳細がどうにもレッドには判らない。
今は様子見の段階なので、乳を捏ねながら、ゆっくりと竿を抜き差しして淡々とトリルを捌いて行く。
気持ち良さそうな呻きを熱い吐息と共に漏らすリーフ。偶に先端が敏感な部分を擦るのか、身体を時折びくびくさせている。
「こんな感じですかー? お客さん」
ズッズッズ……
ヘコヘコ腰を前後させて絡む襞の誘惑に徐々に染まっていくレッド。しかし、それを顔と声に出さないのは彼なりの抵抗の証でもあった。
「も、っと……強くて良いかも」
もっと攻撃を集中しろ、とHQからの命令が下る。確かに気持ち良いのだが、もう少し乱暴にしても構わないとリーフは自分で腰を動かしながら言った。
「・・・」
随分、貪欲に育ったモノだと半分感心、半分呆れながらレッドはそれを無言で遂行した。
「かはっ!? あ……く、ぁ」
――ズゴンンッ!
子宮と一緒に押し上げられる内臓。肺の酸素が搾り出されて、涎と涙が同時に顔を伝う。
突き上げの衝撃と齎される剛直の熱さが意識を刈り取る様に感じられる。
「ふんぬっ!」
「きゃあああんんん!! は、激しいよぉぅっ!!」
ゴッゴッゴッ……
加減を抜きに発狂乱打をこなすレッド。子宮にめり込む様なピストンに流石のリーフも苦しさを感じたのか、涙を流してペースダウンを懇願する。
しかし、レッドは止まらない。ムギュッと掌でリーフの乳を押し潰し、更にスピードアップ。乳には興味は無いが、90オーバーの脂肪細胞の無駄遣いは授乳を除けばこの時を於いて使い道が無い。
だから、力の限り滅茶苦茶に捏ね回してやった。
「俺はこれ位が丁度良いんだがなあ」
――HAHAHA
外人がそうする様な清々しい笑顔を貼り付けてレッドが笑う。別にそれが悪いとは言わないが、この場面でそれは似つかわしくないと思う人間はきっと多数だ。
「やああああんんんっ!!」
だが、それは所詮第三者の目であり、兄の魔羅に頭がパーンしそうなリーフがそれに気を向ける余裕は無い。
粘度を増した愛液……否、桂冠粘液と言う名の生臭い本気汁が結合部からボタボタと雨の様に床に滴り落ちた。
……十数分経過。
「うぐ、くう……んぬっ! ……あー、そろそろ限界なんだが」
「あ、らひ……もっ! もう、逝く……逝くよお……!」
難抜けの足掛かりが確かに見えた。やっとレッドが耐えていた胸中を口に出すと、リーフも自分が倒されそうになっている事を告げる。リーフのゲージはフィーバー状態で何時オーバーフローしてもおかしくなかった。
「んじゃ……もう一寸だな。キツイが耐えるぜ」
此処で気を抜いてガシャンと行くのは馬鹿らしい。先端から涙を零す自分のギャラドスを宥めて、リーフの肉の花園を耕していく。
高密度乱打、軸運指、同時押し、鋸譜面、歯抜け譜面、無理皿……
あらゆる要素が降って来る様だったが脳汁を垂れ流しているレッドがそれをこなせない道理は無い。譜面の内容はしっかり覚えているのだ。
「レッド……! レッドぉ……!」
涙で化粧された蕩け切った顔がリーフの心を表している様だ。雌に成り下がり、雄に組み伏されて、犯される。それが自分に正しい姿だと信じて疑わない。
自然に漏れる喘ぎと共に収縮する肉の壁がレッドの竿を自分の奥に引き込んだ。
絶頂の予感と共に、上がっていた子宮が下に降りて来る。
「ふへへへ。堪らねえなあ。そうだろ? リーフよお」
「うん……うん! 硬くて、太くってあっついレッドのち○ぽ大好きだよお……♪」
禁忌だとお互い承知しているので憚る事はしない。実際、こうして居る時二人は確かに一つに溶け合う様な快楽と充実感を得ている。
兄ち○ぽも妹ま○こも二人は大好きだった。
「俺もお前のま○こは好きだぜ。俺専用だからな、此処♪」
「くひいんんっ!!」
自分専用の穴。それを存分に使って竿を扱くレッド。
……決して、自分の射精を導きたいのではない。それはリーフが喜んでくれるから、愛してくれるから。
だから、レッドは頑張る。大好きなリーフとの絆を深める為に。
子宮口にキスされて悶絶したリーフがブルブルと身体を震わせた。
「――来て」
「む」
竿全体に伝わる蠢動。声を聞く迄も無く、レッドには判った。弾幕を抜けた、と。
「来てぇ! レッド専用のオナホま○こにいっぱいいっぱい種付けしてえぇっ!!」
「よっしゃ! 止めくれてやる!」
しとどに塗れそぼる淫裂が更に水気を増してレッドの竿に噛み付いた。
トロトロのメロメロ状態になってしまったリーフはそれを飲む迄、決して満足はしないだろう。レッドもそれを承知して、絶頂を呼び込む為にラストスパートに入る。
「ああ! 逝くっ! 逝ぐっ! おま○こ逝っちゃうのぉ!!」
「此処だ!」
ガクガク痙攣して、必死に机の端にしがみ付くリーフ。ポロポロ零れる涙がまるで雨の様だった。
勝機を見たレッドが腹に溜まる欲望をリーフの中に解き放つ。
「逝っちゃ……ぁ、ああああああああああああ――――ッッっ!!!!!!」
絶頂と同時に最奥を叩く、熱い愛の迸り。それがリーフを更なる絶頂へと導いた。
……失禁を催す程の。
レッドのブラストバーン! 急所当たり! 効果は抜群だ! リーフは倒れた!
「うぐぅ……づうう……」
ぱしゃぱしゃと水の跳ねる音がする。小便を漏らす程感じてくれたのは良いが、床を汚すのは勘弁して欲しいと賢者モードに移行中のレッドは思った。
彼のジーンズはリーフの汁と尿で水浸しだった。
「はー……はー……」
「ふっ、こいつは俺とお前のお袋の分だぜ」
満足気で放心状態のリーフはピンク色で爛れた洞窟を彷徨っているのだろう。出せるだけリーフの中に放出したレッドは少しだけ息を乱してニヤリと笑う。難付き穴譜面攻略が成功した様に。
「レッドぉ」
「は?」
だが、妹様は未だにしぶとく生きていた。今回は結構頑張ったつもりだったが、それでも届かないとは、タフにも程がある。
レッドの顔に冷たい汗が噴出した。
「もっと、しよ……?」
「……ああ。付き合う」
物欲しそうに、指を咥えて見詰めるリーフ。そして、更なる供物を要求する様に蠢く彼女の柔肉。
レッドが一物を引き抜くと打ち込まれた白い塊がボタボタと床に垂落ちる。
……こいつは堪らない。
レッドは装いを全て脱いで全裸になると、リーフの手を取ってベッドに移動した。
「あー……しかしなあ」
「はあ……はー……なあに?」
後背座位。胡坐を掻いたレッドの上にリーフが背中を向けて座っている格好だ。
ずっぽりと咥え込まれたまま、レッドはリーフを抱き締めて、漆黒の髪の毛に手櫛を施す。
「何でこんな気持ち良いんだろうかなあ」
レッドも餓鬼じゃないので、リーフ以外の女を抱いた事が無い訳じゃない。しかし、そうした所で何時も途中で萎えるか、それとも射精出来ないかの結果に落ち着く事が大半だった。
不感症ではない筈だが、何と言うか心にグッと来るモノが無い。それが理由だ。
しかし、リーフとのこれには確かに心を奮い立たせる何かがある事がレッドには知れている。その正体について、レッドは深く考えた事は無い。きっと、血の絆かそれに順ずる何かだとそう思っている。
「それはさあ……んふふっ、あたしとぉ」
リーフがにやけた顔でレッドの瞳を射抜く。自分と同じ真紅の瞳。偽りではない本来の色。それが何だか嬉しくて尻の穴に力を籠めた。
「おうっ!?」
レッドがやや裏返った声で呻く。竿全体に食い込む肉壁の熱い抱擁。
此処で全押しが来るとは予想外だったらしい。油断していた様だ。
「レッドの相性が良いからだよきっと☆」
血が繋がっているのだから当然な話だと、したり顔で膣を締め、左右に捻りを加える。中々に高度な技だ。しかし、兄によって仕込まれた妹の本気はきっとこんなレベルでは済まないのだろう。
「っ、ぐ……妙な話だな。普通、親が同じで同タイプなら相性は決して高い訳じゃ」
「ポケモンと一緒にしたら駄目だよぅ! 身体とか、心とかさ」
今のでゲージがかなり削られた。持ち直そうと奮闘するも、ゲージが硬くて中々右に増えない。どんだけトータル値低いんだよって話だった。
確かに、レッドの言う通り同IDで同じ種族の場合、繁殖率はそれ程高くは無い。
だが、リーフが言いたいのはそうじゃない。寧ろ、心と身体が高相性で繁殖率が低いと言うのは今の若い自分達には御の字の状態だった。
実際、もう少しで四桁に届く回数、レッドはリーフに種付けをしているが、それらが芽を出した事は無い。案外、兄妹のどちらかが生物的に問題があるのかも知れなかった。
「……良く判らんが、赤い糸?」
「そうじゃないの? あたしがメロメロなんだから、レッドもそうじゃないとおかしいよ」
実に判りやすい例えだった。
普通は在り得ない事だろう。だが、復讐と言う非現実的な事象が二人の距離を縮め、密着させ、気が付けば腐って爛れた赤い糸が何時の間にか結ばれていた。
その過程を経てリーフはとっくにレッドにメロメロだし、レッドだって顔と口に出さないだけでリーフにメロメロだった。
「良縁、か。ほんと、誰と結ばれるか何て判らんモンだな」
実の妹にぞっこんLOVE。どんだけ罪深い事なのか己のカルマを数値化したい気分に駆られる。だが、此処迄来てそんな思いに意味や価値は無い。
稀にだが世の中そう言う奴が確かに居る。その幸運(?)な例が自分達であったというだけの話。兄と妹以前に自分達は男と女。偶々同じ家に生まれたと納得したとしても別に問題は無い。
兄妹だから一線を越えて愛し合うのは間違いだと言うのは、少なくとも自分達には見苦しい言い訳にしか映らないのだ。
「……厭?」
「ふっ」
その証拠に、レッドの呟きを聞いていたリーフが悲しそうに見てきた。潤んだ赤い瞳に涙を溜めて、今にも泣き出しそうだった。
そんな顔を吹き飛ばす様にレッドは鼻で笑って漢を魅せる。
「冗談言わんでくれよなあ!」
「ひぐっ!? ぁ、はああああ……!」
――ブヂュウッ!
リーフの腰骨を掴んで、勢い付けて分身を最奥に叩き込む。子宮が潰れる様な強烈な一撃にリーフの目から涙が一粒零れた。
……あ、結局泣かしちゃったよ。レッドは気にしない事にした。
「俺はとっくにお前のモンだ。そして、その逆でもある」
レッドが言いたい事はそれに尽きる。お互いに売約済み。未来を誓い合った所で誰に文句を言われる筋合いも無い。それで良かった。
「だから覚悟しろ。何時か絶対に孕ませるからな」
その為にはレッドがもっと頑張る必要があるが、それすら承知の上。お互いを逃げられなくする既成事実としてはこれに勝るものは無いからだ。
「れ、レッド……良いの?」
その言葉が遠回しなプロポーズに聞こえる。パクパク口を開閉する自分の子宮口。
それでも、逸る気持ちを抑えてリーフは真摯な面持ちで言葉を待った。
「くどい」
レッドが口走ったのはその一言だけだった。
「は……あははは」
嗚呼、何だ。あたし、やっぱりこの男性(ひと)が好きだったんだ。
改めて、それを知ったリーフの頬に何度目かの涙が伝う。
「うん! 期待してるわね」
そうして、リーフは一言だけ漏らすと、至上の笑みと共にレッドの唇を奪った。
『あ・な・た☆』
「……!」
「はんん!? んっ……んんう……♪」
……そいつはマジ反則。鼻血こそ噴かないが、ギャラドスが竜の怒りを吐き出すには十分な効果があったらしい。新鮮な精液を胎に浴びて、リーフは静かに絶頂を迎えた。
リーフのとっておき! 急所に当たった! レッドは潮を噴いて倒れた!
「こいつは……ローマ法王の分だ」
「熱いの、溜まって来てるよ……本当に、堪らないよ……♪」
ビチャビチャと子宮内を跳ね回るレッドの白く濁った愛情。ずっしりと重くなっていく自分の胎を掌で撫でてリーフは満足気に微笑んだ。
「ねえねえ、未だ出来そう?」
「い、いや、それは流石に」
何やら発狂のスイッチを入れてしまったらしい。若いとは言っても三発目を直ぐに用意出来る程レッドは絶倫では無い。一端間を置いてくれとレッドはリーフに頼み込む様な顔をしていた。
「えー、駄目って? んもう、だらしないわね」
「いやあ、仕方ないだろう。お前の具合が良過ぎるんだから」
此処が踏ん張り所だろ、とリーフが膣を振動させるも、レッドの竿は力を無くして縮こまってしまっていた。それを恥じる様にレッドは鼻頭を指で掻く。
「ふーん。ま、良いわ。回復する迄は待ってあげる」
これは駄目だとリーフは悟ったらしい。レッドに塩を送るつもりは無いが、少し休憩しようとリーフは目で告げる。
「レッドがあたしを愛してるってのは、歪みない事実だからね」
時間はたっぷりある。だから無理強いはしない。貴重な種の仕入先を閉店に追い込む訳にはいかなかった。
「ああ。妖精さんに誓ってだ」
戒め、許容、そして賛美の心。それこそが妖精哲学の要たる三信。
どうやら、兄妹は妖精に愛されている様だった。
――レッド宅 居間
「・・・」
二杯目のコーヒーを啜り、目を閉じるグリーン。
その眉は何故かヒク付いていて、握られた拳もプルプル震えている。
その原因は上から聞こえてくる物音。女のエロい嬌声に気合の入った男の唸り声。
ギシギシアンアン。
「えっと」
「何かしら?」
耐え切れなくなってグリーンは助けを求める様にレッド達の母親に訊いた。
「何時もこうなんスか? って言うか、放っておいて良いんスか?」
天井に指を向けてそう尋ねた。事情は知っていた。知っていたつもりだったが……これは一体何なんですか?
「今更何言っても無駄だから。とっくに諦めたわ」
カップのお茶をゆっくり啜った母は表情を崩さずにそう答える。
「それは、でも」
ええ〜? 放置するの? ってか、絵面的に色々拙くナイデスカ?
グリーンの頭には言いたい言葉がぐるぐる回っていたが、結局それは出てこなかった。
「親として、息子達の幸せを願うなら手を引かせる冪でしょうね」
それは母も判っているらしい。だから、ちゃんと言葉を尽くして説明する。
最初は止めさせようと思ってはいた。だが、言葉での説得は無駄だと悟り、好きにさせる事に決めた。無理矢理、力尽くで引き離せば血を見る事が明らかだったと言うのもある。
「でも、あの子達はもうそうじゃないと生きられないから。それならね」
壊れてしまった心は決して修復が出来ないと、息子と娘の状態を見れば痛い程判ったのだ。例え、それが醜い傷の舐め合いだとしても、あの二人の間には確固たる愛が存在していた。だから、それを認めた瞬間に止める気等は失せてしまったのだ。
「信じて見守るのも親の道よ。あの子達の幸せはお互いに一緒に居る事なんだから」
子の不幸は総じて親の責任である。その関係の後で子供達が泣くと言うのなら、その責任は自分達が被れば良いと、不器用だが親達は見守る事に決めたのだ。
そして、きっとそうはならないだろうと楽観視もしている。親の勘と言う奴だ。
二人で居る時の息子達は幸せそうだからだからだ。
「ただ……こうも若い滾りを聞かされるとおばさんも持て余して困っちゃうわ」
「おじさん、中々帰って来ませんもんね」
弊害があるとすれば、暇があればピンク色の空間と生臭い空気を生成する息子達の仲良く爛れた性活だろうか。
夫が僻地に居る妻の苦悩は想像に絶するモノであるとグリーンには知れた。近々また帰って来るらしいが、きっと待ち遠しいだろう事は間違い無い。
「だから帰って来たら、私も兄さ……」
「!?」
……今、何か聞こえた? い、否。きっと聞き間違いだ。そうに違いない。グリーンは頭を蝕む恐ろしい考えをすっぱりと忘れ去りたかった。
「……こほん。旦那に思いっ切り欲求不満をぶつけるのよ」
「ソウデスカ」
乾いた声がやっと喉を通過した。
やばい。これ以上は恐くて聞けない。聞いたが最後、頭が狂う。グリーンは早々に逃げ出したくなった。
「……俺、そろそろ行きますわ」
「あら、会って行かなくて良いの?」
当然引き止めてくるレッドの母。だが、グリーンは止まらない。時計を見ると、結構時間を消費していた。この後はジムに顔を出さねばならなかった。
「邪魔する程野暮じゃないですよ。宜しく言って置いて下さい。ご馳走さんっした」
「判ったわ。また遊びに来てね」
逃げ出したい気持ちも、ジムへの用事も本当だったのでグリーンは軽く頭を下げると、レッド宅を後にする。
背中に掛かる声にまた来たいと思ってしまう。たった今逃げたいと思ったのに、人間の心は不思議だった。
「・・・」
外に出て少し歩いて、煙草を咥えて火を点けた。無性にニコチンが欲しい気分だった。
「うわあ。何だよ、このモヤモヤはよお」
フィルターを吸って、肺に煙を渡らせて、それを吐き出す。
途端にグリーンはその場に頭を抱えて蹲った。
「畜生。良い声だったなあ」
耳に残るリーフの声。はっきり聞いた訳じゃないが、グリーンの性欲を刺激するには十分な用を成す。
グリーンとて、リーフの存在を意識しなかった訳ではない。レッドとの事が明るみになった時に思いを引いたが、年々けしからん身体に育っていくリーフには興味深々だった。
あんなパッツンパッツンでムチムチの美味しそうな身体を好きにしているレッドに男として嫉妬する程だ。
「い、いやあいつはレッドのだ。考えちゃいけねえ」
親友相手に嫉妬何て格好悪い所じゃない。寧ろ、あの二人は病気と言っても良いのでそんな感情を向ける事自体が不毛であるとグリーンは思い込みたい。
しかし、駄目だと思ってもやってしまうのが人間の性だ。
その様を頭の中にほんの少しだが想い描くグリーン。
……うむ。ご飯四杯は楽にイける。
「……っ」
乳、太腿、尻、声。どんな感触だろうか。どれだけ良い匂いがするんだろう。
そう言えば、姉ちゃんもリーフ程じゃないけど、結構イケてるよな。ちょっとトウが立っているのがあれだが、弟の目か見ても……
此処迄考えてハッと気付いたグリーン。煙草の火がフィルター近く迄迫っていた。
「だからイカンっちゅうに。ってか何で姉ちゃんの面迄……!」
もう、頭がおかしくなりそうだった。それ以上にズボンが窮屈で、痛い程だった。
これは本格的にいかん。自分がテンパっている事を認識し、問題が起こる前にそれを処理する必要が生じていた。だから、グリーンはある人物に助けを求めた。
グリーンはギアを取り出して電話を掛ける。
「あー、もしもし?」
『もしもし。……グリーンさんですか?』
グリーンが最終的頼りにする女。少しばかり電話が遠いが、移動中だろうか。
「ああ。……その、単刀直入に言うが、今から会わないか?」
『え……はあ。僕は平気ですけど。突然どうしたんです?』
この時、グリーンの頭はイエローとの事で一杯だった。自分で処理する事も思い付かない。只、会ってそのつるぺたな小さな身体を抱き締めて××したかった。
突然そう言って来たグリーンにイエローは警戒している様だ。
「いや、無性に会いたくてな。今は家に?」
『いえ。下校中です。直ぐに着きますけど』
性欲を持て余すからとは流石に言わない。だが、鼻息の荒さは隠し切れないらしい。グリーンは勤めて冷静な振りをして話を都合の良い方向に持って行く。
怪訝に思ったイエローだが、結局は追求を止めてしまった。
「じゃあ、家に直接行くぜ。また後でな」
『はい。お待ちしてますね』
――ピッ
約束を取り付けた事を確認し、グリーンはギアを閉じた。
後は……
「済まん、イエロー。だが、男は時に狼なんだ!」
珍しく張り切っているグリーンはボールからピジョットを召喚すると、その背に飛び乗り空へと消えた。
ジムの用事に構っていられる状況では無かった。
――レッド宅 二階
「何時かはあたしもお母さんかあ。欲しいなあ、子供」
「安心しろよ。そうなったら、ちゃんと俺が側に居るからさ」
グリーンが大幅に株を落としていると言うのに、兄妹は乳繰り合っている真っ最中だった。先程と同じ体位で、レッドのギャラドスはリーフのパルシェンに埋まっていた。
レッドの掌を自分の胎へと誘導し、自分の願望を零すと、レッドが優しい手付きで撫でて来た。
今は精液漬けのこの場所だが、きっと近い将来新しい住人が住み着く事を確信している様だった。
「そうじゃないと、あたし泣いちゃうよ?」
「そいつは勘弁だな」
責任云々を言う気は無い。だが、リーフとしては、そうなったら好きな人には側に居て欲しかった。自分が居ない事でリーフを泣かせるのはレッドにとっては殺人以上の禁忌なので絶対にそんな事にはさせないとリーフをそっと優しく抱き寄せた。
「男の子? それとも女の子が良いかなあ。……ねえ、どっちが欲しい?」
「無論両方で」
即答。リーフの子供ならば、どっちが生まれてもきっと可愛いだろうと、その顔を想像して顔をにやけさせた。
「欲張りね。あたし達の路線を引き継がせるつもり?」
「その気は無いさ。そして若し、そうなっても止める気はサラサラ無えさ」
兄妹か姉弟かは知らないが、若しそうなったら、この腐った縁が清算されずに引き継がれるのではないかと、リーフは心配している様だ。
だが、レッドにそんな気は無い。成る様にしか成らないし、そうなったとしてもそれにに横槍入れる気だって無い。レッドはそれで良かった。
「はあ。父親失格ね」
「お前もそうなったらそうするんだろ?」
「勿論!」
レッドを否定する旨を吐くも、考えはリーフも同じだった。先の事は判らない。でも、なるべくそうは成らずに、子供達が産まれて来たら自分達とは違う全うな道を歩んで欲しいと二人とも思っていたのだ。
「だからね」
「おう」
赤い視線が交差する。望む未来が相手の瞳の中にある様だった。
「一杯仲良くしてさ、一杯一杯幸せになろうね」
「ああ。俺達が殺して来た人達の分迄、な」
そいつもまた、贖罪の一つ。
死んでチャラになる罪等、そうは無い。それで済ませるには多くを殺し過ぎた。
だから、生きて償う。世間に唾を吐かれようとも、石を投げられようとも二人一緒にその地獄を生きて行く。そうでなければ死んだ人間は納得しないだろう。
それは何と言う幸せな茨道だろうか。想像するだに、怖気が奔る様だった。
「リーフ……」
「レッド……ぁ、んん」
リーフに顔を寄せて、その唇を奪う。
兄として妹にするキスではない。恋人が相手にするキスの様に、それは穏やかで、また燃える情熱が秘められている。
くちゅくちゅと互いの粘液と舌を貪り、唾液を攪拌して相手に送る。
それを嚥下しつつ、レッドは枕元にあった自分のギアを手繰り寄せる。
そうして、写メ機能をオンにして、自分達が上と下で確かに繋がっている瞬間をフレームに収めた。
――パシャ
ハメ撮りの痕跡を残して置こう。これもまた、若気の至り。時が経てば良い思い出として機能する事間違い無しだ。
「もう! いきなり何すんのよう」
「思い出作り、ってか」
口から伝わる唾液を拭わずに、いきなり写真を撮ってきたレッドに頬を膨らませるリーフ。別に本気で怒っている訳ではない様なので、その写真に保護を掛けながらレッドはやや適当に返事を返した。
「思い出、ねえ」
――ピキッ
……理由は無いが、何と無くその反応に苛っと来た。
「じゃあ、あたしもレッドに刻み込んであげる。あたしとの思い出を……ね☆」
リーフがレッドに圧し掛かる。突然の事に反応し切れないレッド。まるで麻痺した様に身体の自由が利かない。
「はっ? ちょ、おまっ――」
レッドが言葉を失う。双眸に漲る赤い赤い光。凡そ人では無い何かを髣髴とさせる圧倒的な眼力は戦慄をレッドの心に呼び込んだ。
♯←こんな何かがリーフのこめかみに張り付いていた。
――さよなら、現世
『アッーー!』
何時かの尻叩きの礼にしてはやり過ぎの様な気がしてならない。
そして、何と言う露骨なラス殺し。流石はコンマ……否、ゲー○リクオリティ。
――stage failed
……その後、レッドさんは文字通り干乾びる迄リーフさんにお絞りされましたとさ。
――そして
リアル投下への遭遇に…そして修羅の世界に咲いた花に
乾杯
197 :
音ゲーマー:2011/11/06(日) 23:40:11.18 ID:XYRX7JLh
次で全部終り。先に付き合ってくれた皆に礼を言っておくよ。
ダラダラ長くなっちまったけど、こいつが俺のスタイルだ。確実に人を選ぶだろうし、スレ容量も圧迫しちまう。だけどこいつを止めたら俺の文が損なわれちまうんだ。
迷惑掛けたな。そして、ありがとう。
礼は完結してから言え!!
そして乙
終:Bad Maniacs
――シオンタウン 魂の家
出発の前日。全ての準備を終えた二人は再びこの場所に足を運んでいた。備えられた供物も以前と同様。だが、墓の前に立つ二人の胸中は前回とは全くベクトルが違う。
「「・・・」」
目を閉じて静かに黙祷する。頭に過ぎるのは過去の自分達。
未だ皆生きていて、野山を駆け巡り、日が暮れる迄遊んで、腹一杯に飯を食って、一緒の布団で寝て潰されそうになって……
もう戻らない日々。それが奪われた時から、ずっと縛られていた。自分の憎悪に。相棒の死に顔に。
きっと、あそこ迄復讐に狂えたのも、亡くしたモノに相応しい何かをこの手に掴む事を心の底から願っていたから。
だが、どれだけ願おうとも死人が蘇る事は決してない。ずっと判っていた事だ。
そうして、ふと隣を見れば、本当に大切な者が直ぐ側に居た。
もう戻らない嘗ての相棒。だが、隣にはこれからの人生を歩んでいく伴侶の姿。
憎悪の果てには確かに救いがあったのだ。
「行くぞ」「ええ。行きましょう」
だから、これからはそれを導に生きて行く。もう、決して振り返ったりはしない。
それは二人にとっては過去との決別を意味する。
相棒(buddy)に撤収を告げると、彼女は頷いてくれた。
「あばよ、相棒」「今度は新しい家族が出来た時にでも、ね」
もう二度と来ない訳ではないし、忘れる事もしない。今は唯、前を向いて、胸を張って生きて往きたい。嘗ての相棒達からのほんの祝福が二人には必要だった。
だが、決して彼等は応えないだろう。その答えは、二人の胸の中にこそあるのだから。
「暫くだね、レッド君。それにリーフさんも」
以前と同じ様に、その老人は二人を待っていた。あの時以来、顔を合わせる事は無かったが、フジ老人の姿は以前よりも若干やつれている印象を二人に抱かせた。
「「ご無沙汰しています」」
前と同じく、やっぱり同じタイミングで頭を下げる。
前回言われた事を二人はちゃんと覚えている。だが、それを顔にも口にも出さない。全ての決着がついた以上、もう喧嘩腰になる必要は無いのだから。
「墓参りかね」
「ええ。暫く会えなくなりそうだから、これで参り納めですよ」
それ以外の何の用があるのかと余計な突っ込みはしない。この墓参りの後は色々と忙しくなる事は目に見えている。次の予定が何時になるか全く判らないし、自分達が進んで足を運ぶ事も無いだろうとそんな予感がしていた。
「ほう。何処かに行くのかね」
「はい。兄貴と旅に出るんです」
フジ老人の質問に答える。当面の活動地域はホウエンを予定している。
別に其処で何かをしたい訳では無い。行った先に何があるのかを二人の目で確かめる。それが目的だった。
「ふむ」
フジ老人がじっとこちらを見ている。値踏みする様な視線ではない。ただ、じっと目を向けて見詰めるだけだ。そうして、暫く二人の顔を眺めた後に、フジ老人は顔を綻ばせた。
「あ、あの」「どうか、しましたか」
その視線と表情の真意が判らないので、困った顔をする二人。何か可笑しい事でもあるのかと互いに顔を見合わせるも、別にそう思える節は無かった。
「いや、良い顔をしていると思ってね。憑き物が落ちた様だ」
その言葉でこの老人の真意が知れた。やっぱり、心配してくれていたのだ。以前の様な凶相が見られない事でこの御仁は全てを理解したのだろう。
「そうかもです。もう、俺達に復讐は必要無い。要らない過去だって、決めたから」
「また復活するかも知れない。でも、もう良いんです。そう決めた。あたし達自身で」
ロケット団。それはこの国が抱える歪みの具現。トレーナー崩れが安心して暮らせる様な法制度の整備や就職雇用口を用意しなければ同じ様な組織は何度でも興されるだろう。それを望む人間達の意思で。
だから、きっとまた蘇る。何時かは判らないが、きっと。
それでも、戻らない過去にはもう縋らない。血を啜る事も極力したくない。取り憑いていた復讐心だってとっくに離れて行ってしまった。だから、もう良い。
悲しい出来事だったが、それはもう二人には必要無い、捨てて良い過去だとそう決めたのだ。
「そうか。やっと成仏したのだね、君達の相方は」
「「はい」」
少なくとも二人はそう信じている。思い出の中の相棒達の顔は満面の笑みで満ちている。
だから、迷う事無く頷く。確かめる必要は無い。そう信じるだけで良かった。
「ポケモンへの信頼。愛情。安らぎ。……そんな物は、所詮は人間の都合だ」
世の中にはそんな欺瞞に満ち溢れている。テレビや書物で何度と無く目にするその単語。その意味を正しく理解している人間は果たしてどれだけ居るのだろう。
「私は自分が正しいと信じて疑わなかった。だから、ミュウツーを創った。無責任な話だがね」
それを盾にして、自分の正当性を求める。嘗てのロケット団然り。この老人然り。そして、嘗ての自分達もその例に漏れない。
「だが、そんなエゴを振り翳しても、最後にポケモンが笑うならば私はそれで良いと思うのだ」
過程も重要な話だろうが、この場合は結果論という意味での話。些か、無責任かも知れないが、ポケモンと人間の意思疎通が難しい以上、そう判断せざるを得ない事柄。
ポケモンの幸せ等、所詮は人間の尺度で量れるモノではない。だからこそ客観的に判断せざるを得ない事柄だった。
「そして、そのエゴに囚われてはいけない。縛られる等以ての外だ。君達は……解き放たれたのだね」
そうして、フジ老人はその渦に囚われた。そして、自分達も同じ様に。
だが、フジ老人と二人が違うのは、其処から抜けられたか否かだ。この老人は未だに苦しんでいる。決してその様を人には見せないが、目を見れば二人にだって判る事だった。
「「・・・」」
ゆっくりと頷く。責任逃れはしない。何時かきっと裁きは受ける。それが生きている裡に齎されるかは不明だが、その咎を背負って生きて行く事を二人は決めていたのだ。
「なら、君達は自由だ。……今度こそ好きに生きたまえ。私は此処で、それを眺めているよ」
「「はい!」」
全てを見据えた老いた男の戯言。……そう判断するには忍びない暖かさと力強さがその言葉にはあった。
老人の激励に二人は元気良く答え、外へと駆け出す。
二人の鱗のアクセサリーがそれを祝福する様に僅かに光る。年月を重ね、所々が汚れて草臥れたそれには嘗ての相棒の魂が宿っている様だった。
遠ざかる背中を眺めながら、フジ老人はゆっくりと微笑んだ。
――翌日 カントー国際空港 正面ゲート
十一月上旬。気温は然程低くは無いが、それでも時折冷たい風が吹いて体温を奪っていくかの様だ。道歩く人々が二人の側を通り過ぎ、次々と消えていく。旅へ出る者、帰って来た者。顔を見るだけではそれは判らなかった。
兄妹の服装は何時もの通り。リベンジの時に着用した初代仕様ではなく、リメイク時の服装にややアレンジを加えた形になっている。只、髪と目の色だけは戻っていなかった。
「暫く、カントーとはさよならかあ」
やたらとデカいパンパンに膨らんだ旅行鞄を軽々と抱えてリーフが零す。
年内中には恐らく帰らない。卒論発表会は一月末なのでそれに合わせて帰る必要はあるだろうが、その後の事は全く決めていなかった。
指導教員を口説き落としてゴーサインを貰うにも随分苦労したと、その時の様子を思い出して、直ぐに思考をシャットアウト。あんまり思い出したくは無かった。
「やっぱ寂しいかよ」
隣に控えるレッドも容量限界に挑んだかの様な破裂しそうに膨らんだズタ袋を担いでいた。
長年慣れ親しんだ土地を離れるのだ。もう二度と帰らない訳では無いが、それに際し一抹の寂しさが過ぎるのは人間の性だろう。レッドだってそうだ。
「そりゃそうよ。エリカやナツメと暫く飲めないからさあ」
「まあな。グリーンの愚痴聞くのも、タケシからかうのもお預けだもんな」
遠く離れれば徐々に疎遠になるのが人間関係だ。今迄の様に気軽には会えないし、電話で繋がっていると言っても以前の様な深い関係では無くなってしまう。
それは、確かに淋しい事だろう、
「でも……一人じゃないからさ。そんなに寂しくない」
そんな中でリーフが頼るのは隣に何時も居てくれたお兄ちゃんの存在だ。そして、それは決して依存的なモノではない。
「兄貴が……レッドが居てくれるなら、あたしは十分だよ」
もっと深い、恋人……否、伴侶……否、buddyとして。
相棒を信じているからこそ、旅の不安は一切感じなかった。
「また何時消えちゃうか判らないけどさ。こんなあたしで良ければ、レッドの側に居させて」
そう言ってリーフは悲しそうに囁いた。
唯一の懸念事項がそれ。一度、リーフは確かに世界から退場して、消え去った。兄が役目を負わせたとは言っているが、それが何時まで続くか判らない。
何故なら、今の自分達はシナリオを無視して好きに動いている。今この瞬間だって、消されると言う恐怖が付いて回っているのだ。
そんな厄介な自分に手を差し伸べ、一緒に居てくれる優しいお兄ちゃん。甘えるなと言う方が無理な相談だった。
「無いさ。お前が消える事なんて」
だが、レッドは強い口調で言い切る。断言出来るだけの何かを持っている様にその顔は自信で満ちている。しかし、リーフだって馬鹿じゃない。
それが何なのか聞かないまま、はいそうですかと納得何て出来なかった。
「どうして?」
だから、それを聞く。兄が自分へ課した役目を知りたかった。
「それは――」
一瞬、強い風が吹いて、レッドの帽子がそれに浚われる。だが、レッドは気にも留めず、リーフの肩に両手を置いて、はっきり聞こえる様に言葉を紡ぐ。
「お前が俺のヒロインだからさ!」
それこそがレッドがリーフに課した役目。女主人公と言う意味ではない。レッドと対を成す存在と言う意味だ。レッドは前作主人公として神に愛されているのか、この世界での存在が許されている。
だから、リーフにその役目を課した以上、レッドが存在しているなら、リーフもまた存在しなければ世界のルールが破綻する。それは正に世界の改変とでも言って良いチート級の荒業だった。
俺が存在する限りはお前は絶対に消えない。だから、安心しろとレッドはニッと笑った。
「――ぁ」
言っている意味が今一理解出来ない。理解は出来ないが、取り合えず一緒に居られると言う事は魂で理解した。だが、そんな事も今では瑣末事に感じられる。
それは自分に向けられた兄の笑顔が原因だった。
もう失われて久しい、二度と拝めないとすら思っていたモノ。
妹がずっと大好きだったお兄ちゃんの屈託の無い、笑顔。
涙が一粒、ポロリと瞳から零れ落ちた。
「え」
何が起こったのかとレッドは唖然とした。突然にして泣き始めた妹。最初の小降りの雨は今では大雨となり、滂沱の如く妹の頬を伝っている。
そして、リーフの顔がくしゃりと歪むと同時に、レッドは抱き付かれた。
「ぁ……あ……! ぅ、うあああああああああ……!」
憚らずに大声で泣く女と抱き付かれている男。周囲の通行人が何事かと視線を向けてくるが、レッドは固まったまま何も出来なかった。
「なっ!? ちょ、ええ!? 何故っ!?」
「ぐすっ……ゴメ、御免ね、兄貴。あたし、嬉しくて。嬉しくてさあ」
自分なりにはこれ以上無くエンディングのフラグを立てたつもりだったが、失敗してしまったのだろうか。……否、話を聞く限りそうではない。
「あ、ああ。……それで、一体何が?」
女泣きを続けるリーフはしゃくり上げるだけで何も答えない。
「っ……ぐすっ、えへへ。内緒、だよ」
身体も、心も、全て捧げた。後残っているのは命だけだが、それすら捧げても構わなかった。だが、結局それでも兄の笑顔を手にする事は終に出来なかった。
もう諦めたと思っていたそれがこんなタイミングで齎される。
……こんなに嬉しい事は無い。だから、リーフは嬉し泣きを続ける。
「??……どうも解せんなあ」
そしてそれは、レッド本人が知る由も無い事だった。
――搭乗ゲート
もう後、数十分で機内案内が始まる。レッド達は荷物検査を負え、待機していた。
ふと、目をやると、喫煙所から二人の人物が出て来た。
「・・・」
やたらと背の高い、黒っぽいスーツと赤いスカーフが特徴的な銀髪のお兄さんと、やっぱり背が高い胸元の大きく開いた黒い服と特徴的な髪飾りをした金髪のお姉さん。
「どうしたの? ……あの人達が、どうかした?」
レッドの視線が気になったのだろう。泣き腫らして普段以上に赤い瞳の妹が横から聞いてくる。
「何処かで、いや何かで見た気が……否、やっぱり気のせいか?」
テレビか、それとも何かの雑誌で見た顔な気がする。だがどうしてかその詳細が思い出せない。
……思い出せないと言う事は、大した情報では無いのかも知れない。
レッドはボリボリと帽子の上から頭を掻いて椅子から立ち上がる。
「あ、何処に?」
「煙草」
いきなり席を立った兄が何処に行くのか、妹は尋ねた。これがトイレだったなら放置する所だが、レッドの手に握られている煙草のボックスを行き先が判った。
「あたしも行く」
兄の後ろに妹は付いて来た。
そうして、機内への案内が始まると、ゲートが途端に人でごった返す。
乗るのは最後で良いと、ボーっとして人込みが緩和されるのを待っていると、先程見かけた背の高い二人が搭乗者の列に混ざっていた。
「同じ便、か」
それを眺めていると、その二人と目が合った。
――ゾクッ
銀色と金色の瞳がダブルでレッドの目を射抜く。瞬間、レッドは理解した。
この二人は只者じゃあない。同じ臭いがしている。
そして、恐らくその正体は……
「兄貴。行こうよ」
「あ……そう、だな。行くか」
リーフが肩を叩く。それに我に帰ると、人の列は無くなっていた。あの二人もとうに居ない。
……中々、ホウエンもホットな場所であるらしい。少なくとも、今の様な猛者が居る事は間違い無い。レッドのトレーナーの魂が唸りを上げる様だった。
――飛行機内 空の上
搭乗して凡そ三十分。別に変わった事もある筈が無く、絶え間無く襲って来る気圧変化の耳鳴りを唾を飲んだり、欠伸したりしてやり過ごす。
「・・・」
窓の外を眺めるも、青い空と地上より大きく見える太陽、下方に僅かに見える雲以外何も無い。悲しい位暇な状況だった。
「すう……」
そうして、傍らに視線を向ければ、肩に寄り掛かる自分の妹の姿。無防備な寝顔が何だか心を暖かく満たす様で、レッドは顔を綻ばせた。
一切合財の感情が凍て付いていた頃には決して見られなかった表情で。
「……やれやれ」
もう人間らしい感情等、望むべくも無いと勝手に思っていたが、その氷を溶かしてくれたのが妹だと言うのが何とも恥ずかしく、また嬉しい気持ちに駆られる。
『お前が居るなら、俺は笑って居られる。だから、ずっと兄ちゃんの側に居てくれな』
「本当に良い女だよ、お前は」
口にこそ出さないが、レッドは確かにその気持ちを胸に抱えたまま、リーフのやや癖のある黒髪を撫でた。
……この先、何が待ち受けるかは判らない。でも、二人ならばきっと何とかなる。何が相手でも乗り越えられる自信もある。そして、その覚悟も。
―― Yeah,let`s go all the way to hell.
「だよな? 相棒」
「くー……むにゅ……すう」
リーフは寝息を立てるだけで答えない。だから、レッドも瞳を閉じた。
今は、この暖かい気持ちのまま、惚れた女と共に眠りたかった。
「あら」
忙しそうに機内を駆け回るフライトアテンダント。とある席に近付いた時に、声を漏らす。
一組の男女が、子供の様に身を寄せ合って眠る姿。
その光景は何とも微笑ましかった。
その後、飛行機は無事定刻通りにホウエンへ到着した。
季節は晩秋。木々は葉を警告を告げる黄色に染め、やがて死を連想させる赤へと姿を変えて地に落ちる。
開け放たれた窓からこの季節にしては暖かい風が吹き込み、カーテンを少しだけ揺らした。
その傍ら。壁にぶら下がったコルクボードに一枚の真新しい写真が貼り付けられている。
新王者陥落の記(忌)念写真。映り込んでいるのは四人。
胸元に蒼い鱗をぶら下げ、腰に右手を当てているレッド。その真ん前でアピールするヒビキ。
虹色の鱗を括り付けた左手でサムズアップしているリーフ。その腰に抱き付いているコトネ。
そして、兄妹の片手と片手はしっかりと硬く結ばれていた。
それは復讐に生き、その運命に振り回された者達の残滓だった。
〜了〜
205 :
音ゲーマー:2011/11/07(月) 16:04:33.31 ID:2YH4FSFx
今見返したら捌章が二つあるにに気付いたorz
正しくは玖:怨念返し、拾:ダンボール〜それ以降一ずつずれて弐拾:Almagestとなる。
申し訳無いが保管する人達は修正を頼む。
おまけの(生身)スペック
赤さん 本名:神代烈斗(仮)
身長180 年齢23(HGSSシロガネ山バトル時)FRLG開始時は20歳
歪みねぇ兄貴。レベル75 性格は冷静(本来はやんちゃ)
職業は秘密。髪は栗色。瞳は空色。本来の髪色と瞳は黒と赤。シスコン(病的)。
タイプ:悪、炎 特性:極(5ターン経過すると一度だけ能力全てがグーンと上がる)
戦慄(場に出た時相手の能力を全て下げ、同時にPPを余分に削る)
兄妹愛(一緒に出撃した場合、妹が被弾する度能力のどれかがアップ)
武器:ガバメント、ソードオフツインバレルショットガン、ジャックナイフ、自己流喧嘩術
手持ち:リザードン♂、ブラッキー♂、カビゴン♂、ギャラドス♂、ドーブル♂
ドンカラス♂、ミュウ(ボックス控)
葉っぱさん 本名:神代葉月(仮)
身長170 年齢22(シロガネ山バトル時)FRLG開始時は19歳
パイオツカイデー(90前半)レベル74 性格は能天気(本気時は冷静)
大学生。卒業後は兄のサポートを予定。通常時と本来の髪と瞳は兄と同じ。超絶ブラコン。
タイプ:悪、草 特性:ハイテンション(急所に当てる度に能力が一つグーンと上がる)
戦慄(場に出た時相手の能力を全て下げ、同時にPPを余分に削る)
兄妹愛(一緒に出撃した場合、兄が被弾する度能力のどれかがアップ)
武器:デュアルイングラム、爆薬類によるトラップ、ジャックナイフ、自己流喧嘩術
手持ち:フシギバナ♀、エーフィ♀、ラプラス♀、ミロカロス♀、ドーブル♀
プテラ♀、ミュウツー(ボックス控)
駆け抜けた。そして書き切った。
それでも俺は未だ書いてる。ダイシロだ。需要の有無は問わず、完成させる事が重要だって思うんだよ。それで良いって。
んじゃ、そろそろ名無しに戻るぜ。
完成させたらまた遊びに来るよ。
またな。
ここまでの長編、執筆乙。
最後の最後にリアタイ投下に遭遇できてラッキーだ。
意思を持った主人公ズがキャラクターとして動いているのを
見るのはなかなかに新鮮で、楽しませてもらった。
普段はROM専だが、初代&金銀世代の俺にはかなりの良作だったので感想をば。
新作もあるなら期待してる。改めて乙!
乙
極て、ボスかよww
乙
乙
久々に読み応えのある作品だった。
拍手を送らざるを得ないな。
乙!
次回作にも期待してるぜ!
おつ
で、つるぺたなイエローさんが野生を解き放ったグリーンさんにめちゃくちゃにされる話はまだか?
イエローってポケスペのキャラだろ
グッジョブ
まーいいじゃん>>イエロー
長いオナニーやっと終わったんだな
ようやくまともなスレに戻りそうだ
成程、過疎状態がまともなのか
頑張れ
なんという厨二
自治気取りがうぜえな。お前が投下しろよ。
ここまで堂々とオナニーされると
逆に清々しいなw
え…自演じゃなかったのか、とネタにマジレs
時々いるよね
エロパロスレで厨二病発症する奴
そんなこと言うなよ かわいそうだろ
練習がてらに作った奴を投下する前に
注意事項
・ポケアニの序盤を基にしたオリジナルヒロイン登場SS
・ストーリー構成はにわか丸出し、キャラ改変あり
・短編の癖に長ったらしい経緯が多いので、幾つか省いた文章が存在
・矛盾があっても気にしない
不満があればNGワードなり読み飛ばすなり、好きにしてください
カントー地方の田舎町マサラタウン
ここではポケモン研究所があり、ポケモン研究者の一人オーキドが日々研究に明け暮れている
そんなある日、オーキドが二人の少年を呼んできた
オーキドに呼ばれた帽子をかぶる少年サトシとオーキドの孫シゲルが研究所に入ってきた
「やっと来たか二人共!」
二人を迎えたのは、年齢に相応しくないエネルギッシュなポケモン研究者オーキド
彼は知る人ぞ知るポケモン科学の第一人者である研究者だ
若い頃、数々の偉業を成し遂げたオーキドは出世を嫌い、生まれ故郷のマサラタウンにポケモン研究所を建てて暮らしている
「やっとポケモンが手に入る… 博士! 早く見せてくださいよ!」
興奮気味のサトシはポケモンが欲しくてうずうずしている様子だ
「おいおいサトシ、気持ちは判るが話が早過ぎるだろ。 どっかの漫画じゃあるまいし。」
呆れ顔で皮肉交じりに言い放つシゲルは、サトシとは対照的に沈着冷静だが
オーキドの孫であってか、時折嫌味を見せることがある
オーキドは期待通りといわんばかりに話を進める
「実はな、お前達二人にポケモンを渡そうと思うてな。 それはここに居る二匹のピカチュウじゃ。」
机の上に座っている二匹のピカチュウ…
実は、生まれ故郷を追われてからあてもない旅をしている野生のポケモンだった
二匹共長旅で空腹と疲労が極限に達したある日、通りかかったオーキドが二匹を保護し手当てをしていた
元気になった二匹はオーキドに懐いてきたものの、オーキドはトレーナーに成り立てのサトシとシゲルに託そうと考えていた
オーキドは続けて話を進める
「この二匹は頼り甲斐があってな、お前達二人には打って付けのパートナーになれるそうじゃ。
まずはサトシ、この二匹のうち一匹を選んでくれい。」
指名されたサトシは喜んで答える
「はい! よ〜し!」
シゲルは予想を裏切られたのか、不満気な顔をする
「ちぇっ! 爺ちゃんそりゃないぜ。」
サトシはシゲルをよそに、二匹のピカチュウを見る
左のピカチュウはサトシを気に入ったのか、甘える仕草をしている
右のピカチュウはサトシとの旅は任せろと言わんばかりに意気込む
ふたつにひとつ…、サトシは慎重に選ぶことにした
「右か左か…どっちにしようか…」
サトシは迷っていた
左は愛嬌たっぷりで懐き易いピカチュウ、右は好戦的でやる気満々のピカチュウ
どちらを選んでも育て甲斐があるようだ
初心者と言えども、サトシが迷うのも無理はない
「う〜む…サトシめ、迷っておるようじゃな。」
オーキドはそう言いながら内心期待している
シゲルはそれを知ってか知らずか、何かを伺う
サトシは腹をくくって左のピカチュウに手を伸ばす
左のピカチュウは待ちに待ったその手に触れられる…
「よーし、左のピカチュウ、キミに…」
が、その刹那
「…あれっ!?」
「そのピカチュウいっただきーっ!」
「なっ、シゲルてめえ!」
なんと! シゲルが割り込んで奪い取った
当然、シゲルに掴まれた左のピカチュウは嫌がってじたばたする
それを見たオーキドは、孫の思わぬ行動に焦りの色が混じった怒鳴り声を上げる
「こらシゲル! ポケモンを取り上げるな! 嫌がっとるではないか!」
シゲルはそれに構わず手にしたピカチュウをねだる
「じいちゃん、このピカチュウが欲しい! ぅわっ! こいつっ! じたばたすんなって!」
「むむむ…仕方ない奴じゃなあ、そんなに欲しければ連れて行くが良かろう!」
シゲルの狡猾さに呆れるオーキドは仕方なくシゲルに渡す事にした
結局左のピカチュウはシゲルのパートナーになる事となり、観念したのかがっくりとする
左のピカチュウに気を遣うサトシはオーキドに言う
「博士、いいんですか? あのピカチュウは酷く嫌がってたのに。」
そう聞いてオーキドは言う
「仕方あるまい。 最初はそうなのかも知れんが、そのうち慣れるじゃろう。」
そんな時、右のピカチュウはサトシを見つめて呼び掛ける
「ん? キミは俺と一緒に行きたいのか?」
右のピカチュウは『そうだよ!』と鳴き声を出して頷く
「よーし、キミに決めた!」
サトシは右のピカチュウを両手で掴み、高く上げる
かくして、右のピカチュウはサトシのパートナーとなった
それを見届けたオーキドは早速話を進める
「これでようやく、お前達はポケモンを手にしたようじゃな。
そこでじゃ! お前達二人にコーチをつけてやろう。 しかもとびっきりの女の子じゃ!」
「うそぉ!? 爺ちゃんの研究所に女の子が居たのか!」
「博士、俺達のコーチになる女の子って、誰ですか?」
サトシとシゲルの反応はまさしく両極端
サトシはポケモン学に精通する母子家庭で育った男の子だ
その家庭の影響があってか女の子に興味はなく、ポケモン以外に関心が無い
一方シゲルはオーキドの孫であって知的センスは抜群で、女の子に人気がある
反面、何かと祖父を自慢して鼻をかける程高慢チキで、かつ狡猾な性格から男の子に嫌われている
そこでオーキドはサトシの問いに答える
「ふむ、数日前にここに来たばかりでな、ポケモンに関しては相当な知識を持っておる。
なんでも、小さい頃からその知識を身につけるために育てられたそうな。 お前達には打って付けじゃろう。」
オーキドは後ろを向いて呼ぶ
「お〜い、サクヤ〜っ!」
その奥から「は〜い!」と聞こえると、数秒足らずでドアが開き、一人の少女が入ってきた
二人の4つ年上の少女は茶髪の前髪ショートにロング三つ編みおさげ、容姿は全身白色の作業服姿だが…
程よい胸のふくらみにくびれた腰、ふっくらとした尻にスラっとした脚
成長期の女性と思われるスタイルが服越しに伝わる程完璧だ
そんな少女をオーキドが紹介する
「この女の子の名前はサクヤ、ここで働いている研究員の一人じゃ。」
少女は笑顔で自己紹介する
「あたしサクヤ、あなた達の名前を教えて。」
シゲルは得意気に名乗る
「オレはシゲル、そこに居る爺ちゃんの孫さ!」
それを聞いて呆れるサトシは気を取り直して自己紹介する
「俺サトシ、宜しく!」
二人の名を聞いたサクヤは答える
「博士の孫シゲルくんにサトシくんね、こちらこそ宜しく!」
サクヤは微笑んだ、それは言葉に出来ない程眩しい微笑みだ
それを見たサトシは見惚れてしまったのか、思わず言葉を失う
「ぉお〜っ! もろオレ好みじゃん!」
シゲルは興奮の音を上げると、サトシはその声を耳にして我に返った
そんな時、オーキドはサクヤの服装に気付く
「ところでサクヤ、何故作業服の格好をしておるんじゃ?」
オーキドに言われたサクヤは何かを思い出して慌てる
「ご・ごめんなさい! 例の機械の組み立てをしている途中で…」
慌てるサクヤにオーキドは静止する
「まあ落ち着け! 気持ちは判るが、君を無理させる訳にはいかん。
こんな事もあろうかと思うて、念入りに他の研究員に言っておいたからな。
と言う訳でサクヤ、この二人にトレーナー指南をしてくれい!」
「は・はい! ありがとうございます!」
それを聞いた興奮度最高潮のシゲルが相方のピカチュウを左腕で抱え、サクヤの左腕を掴んで引っ張る
「そうと決まれば特訓開始だ!」
「ちょ・ちょっとシゲルくん!? 落ち着いてえぇぇぇぇ……」
疾風の如く走るシゲルに引っ張られるサクヤの声は、外に出るとともに小さくなって消えた
それを見たサトシはただただ呆然とするだけだった
更に孫のシゲルに心底呆れるオーキドは愚痴をこぼす
「シゲルの奴め…余計な下心丸出しにも程があろうに。」
サトシは彼女についてオーキドに問う
「博士、あのサクヤって女の子、いつこの研究所に来たんですか?」
オーキドは深刻な顔をしながら答える
「う〜む…あの二匹のピカチュウを保護してから数日後の事だが、あの時酷く疲れた顔をしておったのじゃ。
何でもあの娘は行くあても無かったと言うてな、わしが雇い入れることにしたのじゃよ。」
「じゃあ、何か理由でも?」
「残念じゃが、サクヤは一言も言うてくれんのだ。 おそらく人には言えん何かを抱えておろう。
それはそうとサトシ、早く行かぬとまたシゲルに取られるぞ! 何しろあいつの事だからな!」
「そうだった、早く行かなきゃ! それじゃ博士、行ってきます! 行くぞピカチュウ!」
サトシは相方のピカチュウとともに外へ出た
かくして、サクヤの指導による特訓が始まった
サトシとシゲルは初めて手にしたポケモンの扱いに散々手間取ったが、サクヤのアドバイスを受けてコツを掴み始めた
マサラタウン付近の草むらに潜む野生のポケモンとの戦い…1対1の野良バトル…
二人はそれを何度も繰り返すうちに上達してゆく
気が付けば既に夕方となり、サトシとシゲルや二匹のピカチュウは既に疲労困憊となった
サクヤは二人を称えるように呼び掛ける
「お疲れ様、今日の特訓はここまで!」
サトシとシゲルは息を切らし、二匹のピカチュウは仰向けに転がっていた
何とか息を整ったシゲルはサトシに文句を言い放つ
「サトシお前、ちょっと飛ばし過ぎじゃないのか!?」
サトシはシゲルに文句を言い返す
「そう言うお前こそ最初から飛ばしたんだろ!」
言い返されたシゲルは毒を突いてやろうと思ったが、それすら言えるだけの元気がない
それはサトシも同じ、どちらも目の前のライバルに差をつけなければ気が済まないからだ
そんなやり取りにサクヤは静止する
「はいはいいがみ合いもその位にして、ゆっくり休んで頂戴。」
シゲルは素直に聞いて笑顔で答える
「は〜い。」
それとは対照的に、サトシは欲求不満か渋々答える
「判ったよ…」
そんなサトシにサクヤは説教する
「サトシくん、そんな事言っちゃ駄目。 あなたのポケモンだって、もう疲れ切ってるわよ。
いい? いいトレーナーはポケモンに無理をさせないことよ。」
説教されるサトシは『本当なのか?』と納得しなかった
既にすやすやと眠っている相棒を抱えるシゲルはサトシに言い放つ
「そうだぞサトシ! サクヤの言う通りだ!」
図に乗るシゲルにサトシは怒鳴る
「お前が言うな白髪助平小僧!!」
そこから疲労感を感じさせない程の罵言暴言の嵐…
両者の懲りないやり取りに、サクヤは思いっ切り怒鳴り声を上げる
「二人共いい加減にしなさい!!」
その怒鳴り声に両者は思わず押し黙る、溜息をついたサクヤは言う
「全くもう…あなた達のいがみ合いに振り回されるあたしの身になってよね。
元気なのはまだいいけど、今は喧嘩なんてやってる場合じゃないから。
もし今度いがみ合ったら、あたしは即コーチを破棄するから、そのつもりでね!」
一喝されたサトシとシゲルは叱られた子供のように返事をする
「「は〜い…」」
二人の返事にサクヤは微笑む
「判ればよろしっ!」
サトシのピカチュウは『やれやれ』と呆れていた
丸く収まったところでサクヤは次の日の予定を話す
「じゃあ明日の9時に同じ場所に集合ね、その時は予定を話すわ。 と言う訳で解散!」
たった三人と二匹にもかかわらずノリノリのサクヤ、シゲルはそれに釣られるかのように走り去る
「じゃあなサトシ! おやすみサクヤ!」
何処から力が湧いてきたのか、シゲルは実家に向かって全力疾走する
「へへへ、サクヤ♪ サクヤ♪」
シゲルに抱えられたピカチュウは既に目を覚ましたが、風に当たって気持ち良さそうだ
それを見届けたサトシはただただ苦笑いするしかなかった
「はは…これじゃ博士が愚痴をこぼすのも無理ないな。」
サクヤはサトシの左肩をポンと叩いて言う
「サトシくんも早くお帰り。 お母さんが心配にならないうちにね。」
サトシはサクヤに笑顔で答える
「ああ、おやすみサクヤ。 行こうかピカチュウ。」
そう言うと、サトシはピカチュウとともに実家に帰った
…と思いきや、ピカチュウは数十歩で立ち止まり、サクヤの後姿を見てサトシを呼び止める
ピカチュウの異変に気付いたサトシは足を止め、ピカチュウに向く
「どうした、ピカチュウ?」
ピカチュウは『サクヤはまだ立ち止まってる』と鳴く
サトシはその方向に向くと、それは夕焼けに染まるサクヤの後姿だった
この時、サトシとピカチュウはどうしたんだと思った
後姿では判らないサクヤの表情は悲しく、そして切ない
そんな表情で夕日を見つめるサクヤは、あの忌まわしい事件を鮮明に思い出す
幸せだった日々、大切なもの、何もかもが炎の中に消えていったあの事件…
御主人様… みんな…
どうしてあたしを残して逝ったの…
「……ャ …クヤ… サクヤ!」
「!!?」
何者かに呼び掛けられたサクヤは我に返った
「サクヤ、どうしたんだよ? さっきからボーッと立ってて。」
声の主は実家に帰った筈のサトシだった
サクヤは無意識に泣いている事に気付き、慌てて涙を拭う
「サ・サトシくん? ごめんなさい、嫌な過去を思い出しちゃった。」
そんなサクヤにサトシは言う
「何があったか知らないけど、ちっともサクヤらしくないじゃないか。
あれ程俺を厳しく指導したくせに。」
サクヤはそんな自分が情けなく思い、悲しく笑う
「そうよね、あたしらしくないね。 ここに来てからいつの間にか、心の隙間を埋めるのに躍起になったもの。」
それから二人はしばらく沈黙する…
そよ風が二人に語り掛けるように吹き、遠くにある草むらがあおられて微かな音を立てる
夕日は沈み始める時、サトシは意を決するかのように言う
「なあ…サクヤ。」
「ん? なあに?」
「俺…サクヤにどうしてやればいいか判らないし、何が出来るか判らないんだ。
だけど、俺はサクヤの悲しい顔なんてもう見たくないんだ! 俺はサクヤの力になりたいんだ!」
サトシがそう叫ぶと、サクヤはそっと両手を伸ばし抱きしめる
同時に、サトシの帽子が地面に落ちた
「もういいの! サトシくん、ありがとう。」
サクヤの両腕に抱かれたサトシの顔は柔らかい胸に押し付けられ、ほのかに香る女の匂いが鼻を刺激する
「サ…サクヤ???」
この時サトシは何が起きたのか全く判らないようだ
サクヤは抱擁を解き、サトシの肩を両手で触れて言う
「でもね、何が出来るか、どうしてやればいいか判らずに大見得を切っちゃ駄目よ。
自分の可能性さえも判らないまま言うのはね、自分から言う人にとって良くない事なの。
例え小さな事でもこつこつと積み重ねていけば、自分の可能性が見えて来るわ。
それまでは無理せずに積み重ねていって、ね。」
あれ程悲しい顔をしていたサクヤに笑顔が戻った、サトシはそれを見てほっとした
「ああ! 良かったぜ…」
そう言ったサトシの頬を、サクヤはそっと両手で触れると
「これはほんのお礼よ。」
サクヤの艶やかな唇がサトシの唇に触れる
(えぇ? え?? ぇええっ?!?)
サトシは頭が混乱して赤面する
数十秒後、サクヤはゆっくりと唇を放す
「サ…サクヤ…んむっ?」
サトシは震えながら言うが、サクヤの人差し指に唇を触れられ静止される
それを間近で見るサクヤはクスッと笑う
「何も言わなくていいの、あなたのおかげで救われた気がするわ。」
まだ顔が赤いサトシは恥ずかしげに俯き、押し黙っていた
そんなサトシの仕草にサクヤは微笑む
「さ、そろそろ日が沈むから帰りましょ。」
「う・うん…」
サトシの帽子を拾ったピカチュウは『隅に置けないねぇ〜』とニヤニヤしていた
やがて夜になり、研究所は全てのガラス窓から灯りが点いていた
研究員達が黙々と研究を続けている中、オーキドとサクヤは休憩室でコーヒーを飲んでいた
休憩室と言っても接客用テーブルとそれの両端にある本革3人掛けソファー
その隣には従業員用のテーブルに人数分もある椅子がある
如何にも休憩と接客を兼ねた不思議な空間とも言える一室だ
ソファーに腰を掛ける二人は、束の間の休憩での会話を楽しんでいた
「サクヤよ、あの二人はポケモンの扱いに慣れてきたかね?」
サクヤはオーキドから尋ねて来た今日の経緯について直ぐに答える
「はい、手応えは十分でした。 明日になれば確実になる筈です。」
それを聞いて安心したオーキドは言う
「そうか! それなら安心して旅をさせられるな。
何しろ、あの二人は大物のトレーナーになっても不思議ではないからのう。」
不思議に思ったサクヤはオーキドに聞く
「ところで博士、孫のシゲルくんの事を気に掛けないのですか?」
「うん? シゲルならば心配など無かろうて。
あいつは念願のトレーナーになったら自分の頭脳を試したいと意気込みおってな。
もっとも、何が起きようが転んでもただでは起きぬからのう。」
サクヤはクスッと笑う
「博士は相当の自信家なんですね。」
「いやいや、シゲルには到底敵わんよ!」
そこでオーキドは、サクヤにサトシの事を尋ねる
「それとサクヤ、君はサトシの事をどう思うかね?」
その言葉にサクヤは一瞬ドキッとした
「は・はい! サトシくんは腕白で勢いさえ有り余っていますが、優しくて力強く、誠実さをも備えています。」
それを聞いたオーキドは感心する
「なるほどな! あの時サトシは二匹のピカチュウと初対面にもかかわらず、えらく好かれよった。
わしの目に狂いは無ければ、トレーナーとしての素質を秘めておるやも知れん。」
サクヤは思わず頷く、と同時に頬を少し赤くした
勿論それを見逃すオーキドではなかった
「もしや…君はサトシに惚れたのではあるまいな?」
「は・博士!? …冗談は、やめて下さい…」
サクヤは恥ずかしげに言う、その表情は既に一目瞭然
それは夕方の時、自分を慰めてくれたサトシに好意を抱いていたからだ
オーキドはゆっくりと立ち上がり、一室のガラス窓の前に歩む
「のうサクヤ。 そろそろ自分の足で一歩踏み出してはどうかね?」
「え…?」
オーキドの言葉にサクヤは理解出来なかったが、それでもオーキドは続けて言う
「わしはのう、君の尽力に心から感謝しておる。
じゃが、君が心の隙間を埋めるのに躍起になっているようでは、わしとて心苦しい。」
オーキドは研究員として働くサクヤの心境を密かに見抜いていた
そこでサクヤに二人のコーチを任せた事を機に、サクヤに自分の足で一歩踏み出すチャンスを与えようと画策した
オーキドはサクヤに顔を向けて言う
「サクヤよ。 心の隙間を埋めるため、背負い続ける心に決着をつけるために人生を賭ける覚悟はあるか?」
サクヤは少し俯き、深く考えた
それは自分の人生を決定付けるもの…背負い続ける心に決着をつけるため…
やがてサクヤは立ち上がり返事をする
「はい!!」
単純な一言ではあるが、サクヤの答えは明白である
それを聞いて確信したのか、オーキドは笑顔で言う
「よし! 決まりじゃな。 明後日の出発まで存分に打ち明けるが良いぞ!」
「はい! ありがとうございます!」
サクヤはオーキドに頭を下げる
その頃、ここはサトシの実家
「へっくしゅ!」
くしゃみをしていたのは、ベッドの布団で寝るパジャマ姿のサトシだった
この自室は健全な学生によくあるきちんとした部屋だ
ピカチュウはデスクの上にある座布団の上ですやすやと眠っている、余程寝心地がよかったのだろう
サトシは天井に目を向けながら右人差し指を唇に当てて、甘い一時をふと思い出す
(そう言えばサクヤの口…やわらかかったな…)
ファーストキス…サトシにとって、衝撃の体験そのものだった
普段は女の子に興味はなかった健全な男の子であるサトシでさえ心が揺れる
(サクヤは一体、何者だろうか?)
サトシは夕方までの経緯を振り返り、考える
あの涙は何かを悔やみ、悲しむ時に流した涙だろうか?
いずれにしても、サトシでさえ判らない事が余りにも大きい事は確かだ
(何考えてんだ俺は…明日に向けて早く寝よう。)
サトシは考えるのをやめて寝ることにした
翌日の午前9時、サトシとピカチュウは集合場所に着いた
シゲルはとにかく、肝心のサクヤはまだ来てないようだ
「そろそろサクヤはもう来てもいい頃なんだが。」
サトシはそう呟くと、後ろからサクヤの声が聞こえた
「おはようサトシくん! 早かったね!」
サトシはサクヤの方向に向くと
モンスターボールに見立てた絵を描かれた銀色のTシャツ、その上に着る空色の薄いデニムシャツ
脚線美を演出するセクシーデニムズボン、防水と機動性に優れたアウトドアシューズ
一見シンプルな服装だが、完璧なスタイルがはっきりする分昨日の作業服姿とは段違いだ
そんなサクヤの姿に、サトシは見惚れそうになった
「お・おはようサクヤ! 随分と似合ってるじゃないか!」
少し照れくさそうに褒めるサトシにサクヤは微笑む
「ふふっ、ありがとう♪ サトシくんに気に入ってもらえるかなって。」
サクヤの私服は派手さがないものの、年端も行かぬ少女に相応しくない魅力的なスタイルを一層引き立てる
勿論普段は女の子に関心がないサトシを惹きつけるには十分だった
そんな時、サトシの横から突然ピカチュウが抱きついてきた
「うわっ! ピカチュウ!??」
なんと、甘えんぼうのシゲルのピカチュウだった
いきなり抱きつかれたサトシは思わず尻餅をつく、どうやらシゲルのピカチュウはサトシと触れ合いたかったようだ
サトシはまだ甘えるシゲルのピカチュウを撫でながら言う
「おいおい、君はシゲルと一緒じゃなかったのか?」
そこへシゲルが走って来た
「当たり前だろう! こいつと外に出るまではな!」
立ち止まったシゲルは息を切らしながら苦言する
「それに、せっかくもらったポケモンをサトシに取られちゃ元も子もないからな!」
シゲルはそう言うとサトシにくっ付くピカチュウを両手でひょいっと抱える
サトシのピカチュウは『もとはと言えばお前が取り上げたんだろ』と内心呆れる
そんな事もお構いなくシゲルはサクヤに挨拶をする
「おはようサクヤ! 今日は一段と綺麗だな!」
サクヤは笑顔で答える
「ありがとうシゲルくん。
それじゃ、予定通りに集合したところで…今日は、野生のコラッタを懲らしめにいくの。」
それを聞いたサトシは
「それって確か、平野の農園を荒らし回る野生のコラッタの群れのことだよな?」
1番道路沿いの東側にある平野の農園は、マサラタウンからそれほど遠くはないところにある
ここ最近収穫期のみならず、保存庫まで荒らされる被害を受けている
コラッタの群れは常に集団行動をするため、1番道路に潜む野性のコラッタと比べて凶暴かつ用心深い
サトシとシゲルを試すには打って付けだが、ポケモンの扱いに慣れ始めたばかりの二人にとっては危険過ぎる
ただ、二匹のピカチュウが居れば話が変わるとも言えようか
そこでシゲルが言う
「それなら天才のオレに任せてくれ! 自慢の頭脳にかかれば、あんな奴等お茶の子サイドンさ!!」
それを聞いて呆れるサトシは低い声で言い放つ
「おいおい…そんなに大見得を切って大丈夫かよ…」
サトシのピカチュウは『本当の天才なら自分を自慢しないだろ』と突っ込む
シゲルに抱えられているシゲルのピカチュウは『ホントに天才なの?』と首をかしげる
サクヤはそんな状況を気にせずに言う
「それじゃあ、平野の農園に行きましょう。」
「おーし! いっちょうやるか!!」
意気込むサトシに続いて二匹のピカチュウが『おーっ!!』と拳を上げる
そんな時、ふと気付いたサトシはサクヤに言う
「そう言えばサクヤ、自分のポケモンを持ってなかった?」
サクヤは微笑みながら手持ちのモンスターボールを取り出す
「勿論持ってるわ。 パウワウ、出ておいで!」
サクヤはモンスターボールのスイッチを押すと、開かれたボールから光とともにパウワウが現れた
パウワウはサクヤに近付くと、サクヤはしゃがんで頭を撫でる
「この子はね、あたしがトレーナーに成り立てた頃からのパートナーよ。
こう見えても頼り甲斐があってね、どんな時でもずっと一緒だったの。」
サクヤの言葉通り、パウワウは生まれた時から苦楽を共にしたポケモンだ
トレーナーに成り立てた頃のサクヤは数々の苦労の末、本当の親さえ知らないパウワウを立派に育て上げた
今や彼女の努力の結晶とも言うべき存在だ
サトシは初めて見るポケモンに興味が湧く
「へぇ〜、このポケモンはパウワウって言うのか。」
パウワウはサトシに興味を持ったのか、『ナデナデして』と近付く
「ははは、可愛いな。 宜しくな、パウワウ。」
サトシはパウワウに頭を撫でると、パウワウは『よろしくね』と喜ぶ
「サトシくんって、ポケモンに好かれるタイプなのね。」
「そうかなあ? 教科書やテレビでよく見るけど、生で見るのは初めてだからな。」
「そっか、サトシくんも初めてだよね。 それはそうと、そろそろ出発するからこの子を戻すね。
パウワウ、お戻り!」
サクヤが呼び掛けると、パウワウは光になってボールに戻った
「予定よりだいぶ遅れちゃったから、平野の農園までかけっこしましょう。」
「そうだな、少しでも遅れを取り戻さないとな! 行くぞピカチュウ!」
サトシとピカチュウが一足先に走り出す、サクヤはそれに負けじと追いかける
「よーし! 負けないわよ!」
その後ろには、何時の間にやら置いてけぼりを食らったシゲルが嫉妬にも似た怒りに震えていた
「うぐぐ…サトシの奴…サクヤと仲良くなりやがって…畜生! 待ちやがれーっ!!」
シゲルは叫びながら二人を追いかけた
まだ抱えられているシゲルのピカチュウは『ホントに懲りない人だねえ』と呆れていた
ようやく平野の農園に着いたサトシ達は、野生のコラッタの群れについて訊ねたところ
数年前の異常繁殖が原因ではないかと思われたが、それだけでは済まされるものではなかった
増え過ぎたためか、過剰な木の実狩りが多発し、幾つもの山や森林の木の実が食い尽くされてしまう
挙げ句木の実をめぐる争いが生じ、追い払われた多くの野生のポケモンは群れを成し、農園などを襲ってきた
野生のコラッタの群れはその一部に過ぎないが、強いポケモンを持たない付近の農園にとっては脅威とも言える
サトシ達は二匹のピカチュウを頼りに、野生のコラッタの群れの居場所を割り当てることにした
住み処に辿り着いたサトシ達は、野生のコラッタの群れとの死闘を繰り広げ、ついに群れのリーダーのラッタを懲らしめた
どうやらラッタとコラッタ達は、それぞれの住み処を追われ、空腹に耐えかねて農園を襲ったようだ
そこでサクヤは、手持ちのモンスターボールでラッタとコラッタ達を保護し、研究所に預けることにした
カントー地方の何処かに居る有能なトレーナーに、彼等をいつでも譲って貰うようにと考えたからだ
サトシ達は平野の農園に戻り、農園職人の中にトレーナーが居るかと訊ねると、案の定数人居た
その職人達はまだ駆け出しだったためか、快く受け取った
将来のガード役を手に入れた職人達やそのポケモンの活躍が楽しみだ
一段落したサトシ達は平野の農園をあとにし、マサラタウンに帰っていった
それから夜になり、サトシは実家のリビングで母親のハナコと会話していた
「へぇ〜、サクヤちゃんはよく出来た子なのね。」
とハナコは感心する、サトシはテーブルの上に座るピカチュウと一緒にジュースを飲んでいた
「うん。 昨日のコーチ役もそうだけど、今日の野生のポケモン退治の時だっていい腕前だったよ!
相棒のパウワウだって結構強かったしな。」
ハナコはサトシの話を聞きながらコーヒーカップに入ったポタージュを口に運ぶ
ポタージュをすすったハナコはコーヒーカップを置くと、なにやら真面目そうに語る
「最近の女の子はね…着飾りとか、度が過ぎたメイクとか、何かと気取ることが多いし、
何よりも社会的モラルが欠如する事が多いわよねえ。
親の躾の悪さとかも考えられるけど、ああ言う時こそ少しでも真面目にやろうと言う気持ちはないのかしら。」
それを聞いたサトシはただただ言葉を失う、ハナコの言葉には社会の深刻さを物語っていた
都会でよく見るなんとかギャルだとか、モラルの欠片も無い不良女子学生が時折見かける事が多い
ただ愛情と信頼こそがモノを言うポケモンの世界において、トレーナーの戦略性とポケモンの実力がすべてだ
そのためか、誰彼構わず勝負を仕掛ける不良グループほど実力はおろか、度胸さえ持ち合わせていない
カントー地方政府はそんな女子学生を社会問題視し、それ等を徹底的に更正せんとする政策を進めていた
しかし、いつもにも増して暗中飛躍する悪徳組織ロケット団に悩まされ、その政策を断念せざるを得なかった
だが、そんな内政事情をサトシとハナコには知られていないようだ
ハナコは表情を変えてサトシに聞く
「話が変わるけど、サトシはサクヤちゃんの事、気になる?」
サトシは何事も無かったように考える
「う〜ん…昨日から出会ったばかりだからなんとも…。」
と言ったものの、少々気になるようだ
ハナコはそんなサトシを見透かしているかのように微笑みかける
「そうよね、そんなに経ってないもの。」
そんな時、玄関からチャイムが鳴る
「はーい!」
ハナコは呼び掛けながら席を立ち、玄関に向かうと
「こんばんは、おば様。」
玄関のドアを開けて挨拶してきたのは、今朝見せた身軽な服装のサクヤだった
「あらサクヤちゃん、いらっしゃい!」
ハナコは意外にもサクヤとは面識があったようだ、そんな母親の横に出てきたサトシは何か矛盾があるのではと思った
「ママ、サクヤといつ知り合ったの?」
「ええ。 ほんの数日前、研究所に寄ったらたまたまサクヤちゃんと会ったのよ。」
「それでか…。」
サトシが今まで知らなかったのも無理はない、サクヤが研究所に来た当初からあまり知られていなかったからだ
ともあれ、サトシはリビングで実家にお邪魔してきたサクヤと会話していた
当然何事もなかったかのように、二人の会話が弾んでいる
その隣の居間には、ピカチュウとパウワウがじゃれ合って遊んでいる
サトシとサクヤはポケモントレーナーに関するモノについて会話している
「要するに、トレーナーとポケモンのコンビネーションが肝心ってこと。
それは人間のコンビやチームに通じる事があるけど、トレーナーが如何にポケモンの能力を引き出せるかにかかってるの。
ポケモン全ての能力を知るのは至難だけど、ある程度知っておけば育て易くなるからね。」
「それって、サクヤが言ってたトレーナーの知識と経験が重要って奴だよな。
でもトレーナーの個性は千差万別になるんじゃ?」
「う〜ん…それはトレーナーの個性によって、手持ちに反映するんじゃないかと思うわ。
よく見かける一般トレーナーがその典型ね。」
「じゃあジムリーダーは基本的に個性派揃いだけど、エリートやベテランの場合は?」
「ごめんなさい、あたしも流石に判らないわ。」
「そうだよな。 世の中には凄腕のトレーナーが何処かに居るかもしれないからな。」
そんな中、ハナコがリビングに入ってきてサトシに呼び掛ける
「サトシ、お風呂が沸いたわよ。 すぐに入ってらっしゃい。」
「はーい。 ごめんサクヤ、また明日にしようぜ。」
サクヤは席に立つサトシに言う
「ううん、お話に付き合ってくれてありがとう。」
「ああ、おやすみサクヤ。」
そう言って風呂場に向かうサトシにハナコが呼び止める
「それからサトシ、ママはすぐに出かけるからあとは宜しく。」
「…?」
サトシは首をかしげながら風呂場に向かった
息子を見送ったハナコはサクヤに振り向く
「サクヤちゃん、よかったら一晩泊まっていかない?」
この時サクヤは、遂にこの時が来たかと内心腹をくくってきた
「い・いいんですか? おば様…」
そんなサクヤにハナコは微笑む
「いいのいいの! 遠慮しないでサトシと付き合いなさい。
その代わり、あの子はちょっとやそっとじゃ意識してくれないわよ。 じゃ、頑張ってね!」
ハナコはそう言ってリビングを出た
しばらくしてからサクヤは深呼吸をしている
恋心が芽生えたばかりの一人の少女が愛するべく一人の少年に、今こそ全てを打ち明けるために
「…よしっ!」
意を決したサクヤは席を立ち、風呂場へと向かう
一方居間に居るピカチュウとパウワウは、まわりを気にせずにじゃれ合っていた
所変わってサトシの実家の風呂場、必要最低限の洗面器具や石鹸の他にシャンプーやボディソープなどがある
浴槽は勿論、風呂場の床幅も大人二人までが入れる必要最低限の広さになっている
浴槽にはお湯を沸かしてあり、そこから湯気が立つ
裸になったサトシは風呂場椅子に座って頭を洗っているところだ
「それにしても驚いたぜ。 サクヤはママとの顔見知りだったなんて。」
心地よく頭を洗うサトシはどこか名残惜しく言う
「出来ることならサクヤともっと話がしたかったな。 それにサクヤの事を色々と…」
サトシは何を想像したのか、頭を洗う手が止まる
「っと! 何考えてんだか…」
不意にいやらしいコトを思いついてしまい、恥ずかしくなったサトシは再び手を動かして頭を洗う
シャワーを浴びて頭を洗い流しながらサトシは思い浮かべる
(そう言えば昨日の夕方、『ここに来てからいつの間にか、心の隙間を埋めるのに躍起になった』って言ったよな…
それにあの涙は…いや、やっぱやめとこ。 明日は旅に出る日だからな。)
そう考えるとサトシはシャワーを止める
「憧れのポケモンマスターになるために!」
そう意気込むとすぐに風呂に入る
普通に入ると言ってもすばやく入るのでお湯が波立つ、サトシはそれを楽しみながら肩まで浸かる
「はぁ〜っ、いつもながらいい湯加減だ。」
くつろぐサトシは風呂場の天井を見上げ、ひと時の静寂を楽しむ
明日の旅立ちを控え、一日が繰り返される生活と住み慣れた実家を離れる事になる
旅先で出会うポケモン達、しのぎを削る数々のライバル、待ち構える幾つもの難関…
憧れのポケモンマスターを志すサトシは、好奇心と期待が不安に勝る程心が躍る
サトシはひと時の静寂を打ち破るように意気込む
「よーし! 第一目標はポケモンマスターだ!」
その時、風呂場のドアが開く
「サトシくん、入るね。」
なんと、サトシが帰ったと思ったサクヤが一糸纏わぬ姿で入ってきた
先程まではロング三つ編みおさげだった後ろ髪はほどかれて、滑らかなロングヘアになっている
「さ・サクヤ!?」
サトシは慌てて背中を向けるが、サクヤは構わずドアを閉めて風呂場を眺める
(な・なんでサクヤが入ってきたんだ??? もう帰ったと思ったのに…)
頭の中でつぶやくサトシは酷く赤面する
「素敵な風呂場だね、あたしはこれを見るの初めて。」
「えっ???」
サトシは不思議に思ったが、サクヤの裸体から目を逸らそうと固まっている様子だ
その後ろからサクヤがシャワーを浴びる音が響く
想像よりも実物を見たほうが恥ずかしくなるのはよくある事だが、反応は人それぞれであると言うまでもない
勿論普段は女の子を意識しなかったサトシも例外ではない
サクヤはシャワーを止め、ゆっくりと風呂に入る
「!!!」
サトシは不意にサクヤの美脚が目に入り、慌てて体ごと目を逸らす
先程赤面した顔は既に湯気が立つほどに熱を帯びている
そんなサトシの後ろ姿を見つめるように、ゆっくりと入ってきたサクヤはふっくらと膨れた胸まで浸かる
浴槽からゆっくりとお湯が溢れ出す中、サクヤは後ろ姿のサトシに言う
「サトシくんって、女の子に興味ある?」
サトシは何とか落ち着かせて言う
「え…? う、う〜ん…ママので見慣れてるから。」
とぼけるサトシは少女のを間近で見るのが初めてだ、しかもサトシが微かに意識しはじめたサクヤの美しい裸体
その一糸纏わぬ姿を見て照れない、恥ずかしくならないと言えば嘘になるだろう
ゆっくりと近づくサクヤはサトシに問い詰める
「じゃあ、あたしの体を見ても?」
サトシはドキッとした、こんな状況下では口が裂けても言えない
身軽な服装はまだしも、彼女の裸体を直視する事が出来ずに居る
サクヤは後ろ向きに固まっているサトシを抱擁する
それに驚くサトシは震えた声で言い放つ
「!! サクヤ…?」
サトシの背中にサクヤの美乳が密着し、服越しとは比べ物にならない程の胸のやわらかさが直に伝わる
頬をうっすらと赤くするサクヤは微笑む
「魅せてあげるよ、サトシくんなら。」
「な、なんで???」
サトシは不思議に思った、何故知り合ったばかりの少女と裸の付き合いをしなければならないのか
今まで色恋沙汰を知らないばかりか、恋などに興味を持たないサトシはまだ気付いていない
それでもまだ艶やかな微笑みを絶やさないサクヤは、そんなサトシを惹き付けようとしている
サクヤは抱擁を解き、少し離れる
「女の子の体を見るの…怖い?」
「…怖いって言うより……恥ずかしい………」
「じゃあ…目を瞑らないでこっちむいて。」
サトシは微かな勇気を振り絞り、体をゆっくりとサクヤの前に向ける
その正面から、サクヤの美しい裸体が目に映る
ゆっくりと波立つお湯から見える美乳、お湯に浮かぶ滑らかな髪…
サトシは今まで見たことがない美しいものに見惚れてしまった
「き…綺麗だ…」
サクヤは既に釘付けになったサトシを見てクスッと笑う
「サトシくんは女の子の体を見るの…あたしで初めてだよね。」
「…サクヤ……」
目の前の少女の名を呟くサトシの心は既に怖がりや恥じる気持ちはなく、高まる鼓動とともに興奮が湧き上がる
「キ、キス…しようか…?」
「うん、しよ…」
二人はゆっくりと顔を寄せ、目を閉じて、そっと唇を重ねる
一方、研究所の休憩室では
「サクヤちゃんが某豪邸爆破事件唯一の生き残りだったなんて…。」
驚きを隠しきれないハナコにオーキドは言う
「いや、まだ確証したわけではないが、これはあくまでわしの予想じゃ。
こないだたまたまニュースを観たんじゃが…あれはロケット団めのグループが逮捕された時の事じゃ。」
オーキドの話では、テレビに映るグループのリーダーが悔し紛れに暴言を吐いた
『豪邸の奴等が我々の要求を頑なに拒んだから爆破してやったのよ!!
それに紛れて豪邸のポケモンやメイド共を奪おうとしたが、たまたまガスが引火しちまったせいで奪い損ねた!
ただ一人逃げ延びたガキをとっ捕まえてやりたかったが、貴様等政府の犬風情のせいで何もかも水の泡だ!!』
いかにも胸糞悪い台詞…反省ばかりか、人やポケモンをなんとも思わない悪党の吐き捨てそのものだった
それを観たサクヤはほっとするどころか、涙を流していた
「それでサクヤに声をかけるとな、慌てて拭いておったんじゃ。」
オーキドの話を聞いたハナコは
「それって、サクヤちゃんは某豪邸に育てられた子じゃ…?」
それを聞いたオーキドは言う
「その可能性は否定出来ん。 それにサクヤは、いつまでも研究所に居られる子ではないのでな。
サクヤが自分の足で一歩踏み出すためには…ハナコさん、貴方の息子が必要なのじゃ。」
ハナコはオーキドに協力したとはいえ、純粋な一人息子と一人の少女が釣り合うか、不安になるのも無理はない
「勿論最悪の結果になる事を、覚悟していましたわ。 でも…」
不安げに言うハナコにオーキドは笑顔で答える
「ハナコさんや…貴方がサトシを信じるように、わしはサクヤを信じておるのじゃ。
今わし等に出来る事は、他にあるまい。」
同じ頃、サトシの実家の自室、カーテンを開いた窓から月明かりを照らす
一糸纏わぬ姿になっているサトシとサクヤは、ベッドの上に座った状態でディープキスをしている
サトシは両手でサクヤの美乳を揉み、後ろ髪ロングヘアのままのサクヤは唇を離れないようにサトシの頭を両手で抱える
「んむっ…んふ…ん…ふぅ…むぅ…」
「…ぁはぁ…ぁんっ…ん…んぅうん…」
二人は甘い息をしながらぴちゃっ、ぴちゃっと微かな音を立て、何度も唇を重ねながら舌を絡ませる
塗れて湿った唇からよだれが糸状になって伝うように流れ落ちる
最初はぎこちなかったが、何度もしているうちに舌使いが滑らかになり、病み付きになっていた
「…ふっ…ん……んむぅ…」
(こうすると、サクヤはちょっと痛くなるかな…?)
悪戯を思いついたのか、サトシは少しずつ両手の揉む力を強くしながら小刻みに円を描く
「…ぅんっ!? ふぁっ…っんん…!」
(きゃっ! サトシくん? やっ、む・胸っ…!)
一瞬ビクッとしたサクヤの両手が緩くなってきた、それはわずかな痛みと同時に性感に襲われたからだ
サトシはサクヤの反応を愉しむかのように、美乳を揉む
「んん…むぅ…ふぅ…」
(サクヤってあんな風に反応するのか…)
サクヤは胸を強く、かつ優しくも激しく揉まれる度に電撃のようにほどばしる性感に襲われる
「ふぁっ…はぁぁあ…ぁあっ…んぁぁあっ…!」
(嫌…もうやめて…っ! い、いっちゃう…!)
ディープキスを解いてしまう程の激しい性感に耐えるサクヤの美乳を、サトシは容赦なく揉み続ける
同時に、サトシはディープキスで追い討ちをかけるように攻める
やがてサクヤは唇を放し、絶頂を向かえる
「ふっ…ふぁっ、っぁぁあああぁぁっ!!」
サクヤは背中を逸らして絶頂した、それとともに唇から垂れてきた透明の粘液が散らばる
胸の谷間を押し付けられたサトシは美乳から両手を放し、両腕でサクヤを抱擁し、倒れるのを阻止した
サトシに支えられたサクヤはそのまま上半身を起こし、抱擁を解く
サトシも抱擁を解き、絶頂したサクヤを気に掛ける
「ごめんサクヤ、ちょっとやりすぎたかな…」
放心しているサクヤはサトシの言葉を気にする様子はなく、絶頂に導いた快感が静まり、乱れた息を整える
愛する男の手に美乳を揉まれるのが余程心地良かっただろう
「うふふ…いっちゃった。 サトシくんのえっちぃ♪」
サクヤはそう言うと、サトシにそっとキスをする
ゆっくりと放した唇から粘液が糸状になり、やがて垂れて消える
サクヤは妖艶な眼差しで微笑みながら、サトシのイチモツに触れる
「!?」
サトシは気付かぬうちに起っている自分のイチモツを触れられ、思わずビクつく
それを優しく撫でるサクヤは見た目の年に相応しくない立派なモノに興味津々だ
「ね、あたしにも気持ちよくさせて?」
「う…うん…」
サクヤはサトシの脚を開かせてから、両肘を立てる四つん這いの姿勢をとる
その状態でサトシのイチモツを両手で触れる
どう言うわけか既に皮を剥いており、立派な亀頭が露出する
「あたし、こう言うのはじめてだから…頑張るね。」
サクヤはサトシのイチモツを両手で撫でながらそっと亀頭を舐め回す
「うっ…サクヤ…?」
サクヤが初めて挑戦するフェラチオに加え、両手の愛撫でサトシを快感へと誘う
フェラされるサトシは初めての快感に震えている
サクヤの舌使いはややぎこちないが、未経験のサトシを感じさせるには十分とも言える
サトシはこの性感に堪えているうちに、自分のイチモツが大きくなるのを感じていた
まるで自分のとは思えない程長くて太い立派な陰茎へと変貌する
「す・凄い…! コレがサトシくんの…」
サクヤは逞しいモノを目の当たりにして息を呑む
(それに…御主人様のより…大きい…)
ふと昔を思い出したサクヤは立派な陰茎から両手を放し、両手をつける四つん這いの姿勢で顔を上げ、サトシの顔に近付く
妖艶な眼差しで見つめるサクヤは甘い声で言う
「そろそろ…あたしの中に…挿れてみない?」
「え…? …で、でも…どうやって?」
初めて聞くサトシは戸惑っていた、ナニをナニに入れると言われても判るはずがない
十代の若者は、トレーナーになれば大人の仲間入りを果たす
反面、その殆どが性知識など微塵もないのはよくある事
そんなサトシにサクヤは仰向けになって開脚すると、閉じられた桃色が口を開く
「この口にね…あなたの立派なモノを挿れるの…」
上の口よりも小さい口…、そこから月明かりを浴びて光る半透明の粘液を垂らしている
サトシは決して見ることが出来ない艶やかな女のモノを見ると、湧き上がる興奮とともに己の欲望が爆発寸前になる
サクヤは愛する男と結ばれる期待と未知の体験への不安を抱きながら、両手を差し伸べてサトシを誘う
「…きて、サトシくん… 一緒に気持ちよくなろっ♪」
「…っ!!!」
この一言で、サトシは高鳴る鼓動とともに静かなる獣と化した
サトシは膝を着いたままサクヤの両脚の間に入る
そこから脈を打ってそそり立つ凶暴な陰茎の角度を片手で調節し、愛液に塗れる桃色の口に亀頭の先をあてがう
そしてそのまま腰を前進させ、桃色の口の中へと侵入する
「んっ! んぅ…っ」
サクヤは初めて挿入される苦痛と快感に身を震わせて声を漏らす
しかし、ここからが本番…捧げるべく処女(おとめ)の証が破られる
「ひっ…ぃいんっ…」
(あたし、これで…)
初めて進入を許した桃色の口の膜がゆっくりと引き千切られ…
「ひぁ…か、ぁあっ…」
(初めてを…サトシくんに…)
ギチギチとしながら亀頭を飲み込む…
「ぁはあぁぁん!!」
(あげちゃった…)
サクヤは襲い掛かる激痛に身を悶え震え、両手でシーツを握り締める
それを示すかのように、結合部から破瓜の血が流れる
サトシは暴れたがる自分の分身に驚いたが、それを健気に咥える桃色の口にも驚く
このままサクヤの太腿を掴み、ピストン運動で腰を動かす
「ぁあっ…はっ…ぁん…っんぅ…くぅん…」
サクヤは突かれる度に嬌声を漏らし、熱く湿った膣壁が包み込むように陰茎を締め付ける
(くぅっ! これはきついな…!)
サトシは自分の分身が柔肉に締め付けられる性感に堪えながら、奥へと進むようにピストン運動のペースを速める
「ひぁっ ぁあっ あんっ ぁはぁっ ぃぁあぁっ ぁあんっ っふぅうっ」
サクヤの嬌声が高まり、突かれるたびに美乳を揺らす
それを眺めるサトシを更に興奮させる
サトシはピストン運動のペースが速くなり、息を切らし始める
「はぁ…サクヤ…君は本当に…可愛いな…」
「え…」
サクヤはこの一言に胸が締め付けられてときめく
すると陰茎を締め付ける膣壁が緩くなり、陰茎が勢い余って滑る
「うわっ!?」
「きゃぁっ!?」
陰茎の勢いで亀頭が子宮口にぶつかり、結合部から愛液が破瓜の血と混ざって勢いよく噴き出す
この衝撃にびっくりした二人は興奮のあまりに体を振るわせる
「す、凄い…! これがサクヤの中か…」
「サトシくんの…あたしの中で脈を打ってる…」
二人は震えたまま静止して、互いの鼓動を感じ取る
サトシはこの状態でサクヤに言う
「…サクヤ、動くよ?」
「うん…このまま激しく動いて…んぁあ…っ!」
サクヤの返事に答えるように、サトシは腰を引いて陰茎を膣内の半分まで抜く
そこから陰茎を一気に侵入させ、子宮口に叩きつける
「ぁああっ!」
サクヤはその衝撃で不意に嬌声を上げる
サトシは再びピストン運動を始め、速く、そして深く突き動かす
激しく動くたびにベッドからギシッ、ギシッときしむ音が聞こえる
「あっ! ぁんっ! はぁあっ! ぁあんっ! ぃぁんっ! ふぁっ! ぃゃあぁんっ! ゃんっ! ぁあんっ!」
(そう言えば…サトシくんに『君』とか『可愛い』って…まだ言われてな……〜っ!)
サクヤは何度も嬌声を上げながら考えるが、途中で思考が途切れてしまう
少しずつ痛みから変わる快感の波に押され、頭が回らなくなってきた
それでもまだサトシの激しい連続突きを受けて何度も嬌声を上げ、喘ぐ
「あんっ! ぁあっ! やっ! ぃあっ! やんっ! あっ! あん! あんっ! ひぁあっ! ぃやっ!」
(駄目…っ! もう…考え…られないっ!)
それを眺めながら息を切らすサトシは、そんなサクヤを愛おしく感じた
激しく動けば動く程つながった性器と性器が擦れ合い、快楽を貪る
「サクヤ…サクヤ…っ!」
「あ…サトシ…くぅん…んっ! も…っと…もっとぉっ!」
二人は互いに名を呼び、交錯する声が何度も耳元に響かせた
あれから何分経ったのか、月明かりが照らす部屋の中に性の音色が絶えず響き渡る
ベッドの上に飛び散る汗は、月明かりに照らされ、無数の粒子になって輝く
二人は疲れてきたのか、交錯する声は徐々に弱くなってきた
「はっ はっ ふぅっ ふっ はふっ はあっ ふんっ むぅんっ むっ…」
「あっ あっ ぁんっ ぃやんっ ぁんっ あんっ やっ やぁっ ぁあん…」
サトシはまだ萎える様子がない己の分身が徐々に膨れ上がり、湧き上がる射精感に襲われる
「やばい…! 何か…出る…っ!」
「そ…そのまま…出してっ! あたしも…イクから!」
サクヤは絶頂寸前になり、膣壁が陰茎を一層締め付ける
それに耐えるサトシは渾身の力を込めて膣奥にまで突き上げる
「出…っ! くぅうっ!!」
「あっ! ぁぁあああぁぁぁぁぁああんっっ!!」
サクヤは背中を仰け反り、悲鳴にも似た嬌声を上げて震える
両手で握り締めているシーツを引き千切る程強く引っ張る
同時にサトシは膣奥に有りっ丈の熱い欲望を放ち、胎内に勢いよく注ぎ込む
「んぬぅう……っ! ふぅぅぅ……」
「っはぁあああぁぁん…! サトシくんの…あったかぁい…♪」
痙攣を起こす膣肉がきゅうっ、きゅうっと陰茎を締め付けて精液を搾り取る
熱い欲望を出し尽くしたサトシは陰茎をズルズルと引き抜く
破瓜の血に染まった桃色の膣から白濁が溢れ出し、シーツへと垂れ落ちる
疲れ果てたサトシはゆっくりと前に倒れ、サクヤの上に覆いかぶさって密着する
既に息を回復したサクヤは、幸福感に満ちた笑顔でサトシの頭を撫でる
「ふふっ、お疲れ様。 初めてなのに凄くよかったよ。」
「ああ…よかったぜ…。」
サトシは心地良い疲労感を感じ、サクヤのやわらかい美乳の上で眠りについた
「もう…サトシくんったら。 うふっ♪」
すやすや眠るサトシにサクヤは微笑む
この夜、サクヤは処女を捧げ、サトシは童貞を捧げた
夜が開け、サトシは朝の日差しの光に照らされて目を覚ます
「ん…ぅう〜ん、もう朝か。」
気が付くと、サトシは仰向けに寝ていた
…と同時に、左側に何かやわらかいものと密着しているのを感じた
腕枕に胸板に当てる左手、左肩に触れる美乳に腹と太腿に密着する脚…
(まさか…サクヤ?)
サトシは恐る恐る左に向くと、目の前に右下横寝しているサクヤだった
しかもサトシと同じく素っ裸だ
(やっぱり…昨日の夜、サクヤと…)
この時サトシは顔を赤くするが、目を逸らす様子はない
それどころか、サクヤの寝顔を愛おしく感じ、見つめていた
(それにしてもサクヤの寝顔、可愛いな…)
しばらくしているうちに、サクヤは目を覚ます
「ん…んぅ〜ん…あ、おはようサトシくん。」
「ああ、おはようサクヤ。」
サクヤはサトシとの挨拶を交わすと、密着した体をそっと放して起きる
「ねえサトシくん、あたしの事…好き?」
「え…」
この一言に、サトシは戸惑った
研究所でサクヤと出合い、初めて見る眩しい笑顔に魅せられる…
その日の夕方、涙を流すサクヤを励まし、笑顔が戻ったサクヤの唇に触れた…
そして次の日、サクヤとの会話が弾み、その一日が終わろうとした夜…
サクヤと唇を重ね、体を触れ合い、初めて抱き合った…
この二日間を振り返り、楽しかったひと時、そして甘いひと時があった
短いようで長い思い出を鮮明に刻まれた心には、これから旅立つサトシにはあまりにも重過ぎる
色んな意味で仲良くなれたサクヤと、今日から否応なく離れていかなければならなかった
そう思ったサトシは次第に悲しい顔になる
そんなサトシの唇に、サクヤは人差し指でそっと触れる
「サトシくん、あたしに『悲しい顔なんてもう見たくない』って言ったよね。
あたしも悲しい顔は見たくないの。 それにあたし、大切な人の悲しい顔、嫌いよ。
だから…もう悲しい顔をしないで。」
サクヤは人差し指を放し、サトシにキスをした
昨日の夜、沢山キスを交わした二人には少し照れくさいキスだった
「あなたはまだ口から言わなくても、あたしを意識してくれればいつか『好き』って言えると思うわ。
それにあたし…サトシくんの事、好きなの。」
サトシはサクヤの眩しい笑顔に胸が締め付けられてときめく
「あ…ああ!」
「うふふっ」
サトシは笑顔が戻り、サクヤはクスッと笑った
その時、部屋のドアからハナコの声がした
『サトシ! サクヤちゃん! 起きてらっしゃい!』
サトシとサクヤは思わずビクつく
「ま・ママ!?」「お・おば様!!」
台詞の数は違えど、同時に発音した
『あらあら、二人共もうシちゃったの?』
サトシはなんとか弁解しようにも、言葉が見つからずあやふやする
「ぁあ…いや…その…え〜と…」
玄関に居るハナコはドア越しに聞こえる息子の声を聞いてからかう
「まあ! サクヤちゃんとシちゃったんだぁ! 罪な子ねえ♪」
「〜っ!!!」
サトシは一瞬ボワッと蒸気を上げて赤面した、まるで某漫画によくあるリアクションだ
息子の馬鹿正直さに感心するハナコはサクヤに聞く
「それとサクヤちゃん、サトシと一緒に居てどうだった?」
サクヤは照れくさそうな顔で返事をする
「はい、サトシくんの傍に居て幸せです。」
それを聞いて安心したハナコは祝福する
「よかったわねえサクヤちゃん! これで安心して息子と一緒に旅に出られるわね!」
「ぇえっ!?」
サトシは一瞬耳を疑った
「そうそう! お風呂はもう沸いてあるから、仲良く入ってらっしゃい。
その間にとびっきりのご馳走を作ってあげるわ!」
ハナコはそう言うとすぐに階段を下りて行った
その足音がドア越しに聞こえるが、呆然とするサトシの耳には入らなかった
一方のサクヤは酷く赤面して俯いていた
いくら既成事実とは言え、あまりにも都合が良過ぎるのではないのだろうか?
しばらくしてからサトシはサクヤに視線を向ける
「なあ、サクヤ…」
「は…はい?」
「こんな時に言うのもなんだけど…俺、サクヤの事が好きになっちまって。」
「…サトシくん…」
「サクヤ…、俺と一緒に行かないか!?」
サトシの告白に、サクヤの目は感涙に溢れる
「嬉しい…ありがとう!」
サクヤは嬉しさのあまり、サトシの唇に飛び込んだ
その後、風呂場に入ったサトシとサクヤは洗いっこしながら談笑していた
この時サクヤは、幼い頃に住んでいた某豪邸からマサラタウンへ来る経緯をサトシに話した
サトシは旅立つ決意を新たに、密かに気を引き締めていた
出発の予定時間が数十分遅れてしまったが、サトシとサクヤの笑顔が絶えなかった
二人の服装は昨日と同じだが、サトシは自分のリュックを担いでいる
後ろに歩くピカチュウは『実に羨ましいなぁ〜』と眺めていた
マサラタウン出入り口の前に、リュックを手にしたオーキドが待っていた
「やあおはよう! 一夜で大人になり始めたと見えるわい。」
「「おはようございます、博士。」」
サトシとサクヤは息を合わせて挨拶をする
そんな二人にオーキドは感心する
「うんうん! 息がぴったりじゃ! それはそうとサクヤ、君に渡さねばならぬ物があってな。
それがこのアウトドアリュックじゃ。 君の大事なものが全てこのリュックの中にしまっておる。」
オーキドが持っているアウトドアリュックは、サクヤのために取り寄せたものだ
「ありがとうございます、博士!」
リュックを受け取ったサクヤは早速担ぐ、その大きさはサトシのリュックの三割はある
「うむ!似合っておるぞサクヤ!」
「よかったなサクヤ!」
サクヤは感謝の気持ちでいっぱいだ
それから何を思ったのか、サトシはオーキドに聞く
「そう言えば博士、シゲルの奴はどうしたんですか?」
「うむ、確かシゲルの奴は先程サクヤを一目見ようと研究所に来おってな。
わしは『サクヤなら既に朝一番に出発したぞ』と言ったら、もの凄いスピードで走って行きおった!
あの時は笑いが止まらんかったわい!」
「はは…本当に懲りないですね、あいつ。」
「ふふふ、あたし達を見たらどんな反応をするのかしら。」
あまり語られてなかったが、シゲルはサクヤに猛アタックを何度も試みたが、いずれも空振りに終わったらしい
それでも諦め切れないシゲルは、今がチャンスとばかりに追いかけていった
サクヤは既に、サトシと結ばれているのを知らず…
もしもシゲルがサクヤと一緒に居るサトシを見かけたら…あまり想像したくはないだろう
「そうじゃサトシ、君に渡したいものがあっての。 これがポケモン図鑑じゃ!」
オーキドが取り出したのは言わずと知れたポケモン図鑑、持ち主が出会ったポケモンを音声で解説する携帯端末機である
若い頃、オーキドは大学時代の仲間達とともにポケモン図鑑を開発した
長年をかけて集めたポケモンのデータをこの図鑑に載っているため、トレーナーにとっては大きな存在となっている
「もし初めて見るポケモンに出会ったら、この図鑑を使ってみるといい。
その時図鑑が音声で解説してくれるぞ。」
「ありがとうございます! これがポケモン図鑑か…」
受け取ったサトシは初めて手にするポケモン図鑑に興味津々
オーキドは早速二人に言う
「さて、予定時間が遅れてしまったが…旅先には何が待ち構えているのか判らん。
じゃが、これだけは言っておく。 何があっても二人三脚、そしてポケモンと力を合わせて進むのじゃ!」
「「はい!」」
サトシとサクヤはまた息を合わせて返事をする、もはや二人には怖いものなどないようだ
「サクヤ、この先君とてまだ判らぬ事が多い。 例え何が起きようと、サトシの支えになるのじゃぞ!」
「はい! 博士の恩に報いるために尽力します!」
「それにサトシよ、ポケモンマスターへの道は遥か遠く、そして長く険しい道じゃ。
その道にめげず、真っ直ぐに力強く突き進むがよい!」
「はい! 絶対にポケモンマスターになってみせます!!」
オーキドはうんうんと頷く、ピカチュウは『二人共活き活きしてるねぇ』と笑った
サトシとサクヤはまたまた息を合わせる
「「それじゃ博士、行ってきます!」」
続けてピカチュウは『行ってくるね!』と手を振った
「うむ、気をつけてな!」
サトシとサクヤ、そしてピカチュウはマサラタウンを出て出発した
その後姿を見送ったオーキドは
「二人の活躍が楽しみだわい。 …それにシゲルめ、今頃何処まで行っておるのやら。」
1番道路を歩くサトシ一行は、次の目的地トキワシティを目指して進んでいった
サトシとサクヤは時折手をつないで歩いていた
かくして、サトシ一行の冒険が始まった
幾多の道を抜け、序盤のジムバッジ獲得のために奮闘した時期があった
まだ見ぬ野生のポケモンのみならず、途方に暮れたポケモンと出会う
更には、道中の最中にしのぎを削るライバル達と出会い、互いに高め合っていった
行く手を阻むかのような事件と度々遭遇するが、それをことごとく解決した
因縁のロケット団との死闘の末、野望を打ち砕くとともに解散に追い込む
8つのジムバッジを獲得したサトシ一行は、ポケモンリーグを構えるセキエイ高原を目指す
年に一度行われるポケモンリーグが開幕し、幾多の兵達がぶつかり合い、死闘を繰り広げた
幾つもの強敵を打ち負かしたサトシは、ついに決勝リーグへと駒を進める
決勝リーグのバトルは熾烈を極め、ベスト4へと駒を進めたサトシはシゲルとの死闘を制し
ついに、決勝戦を制し優勝した
多くの出会いと別れを繰り返して成長してゆくサトシ一行は、更なる高みを目指し、まだ見ぬ地方へと旅立った
それから数年後、幾つもの主人公の少年達が活躍する中、サトシとともに旅を続けるサクヤはサトシの子を身篭っていた
サトシとサクヤは子沢山に恵まれた夫婦になるのは、それからの話である
終
これにて終了です
時間を置きながら何処まで書き込めるか試してみましたが、正直しんどい思いをしました
今回の反省を踏まえてレス・容量少なめに投下するのを心がけます
乙
シゲル哀れ過ぎワロタ
251 :
名無しさん@ピンキー:2011/11/23(水) 04:57:17.18 ID:l66x5lsv
gjだ。特に違和感なかったぜ。
これからは夢小説もあり、と
藤林丈司
最近変なの多いな
クダリとベルっていうとんでもマイナーな電波を受信したけど
ちゃんとした話というか文章にできるかどうか…
なんつうか、職人ってすごいんだな
変な職人しかいないんだから
変なのが増えるのも当然だわな
257 :
名無しさん@ピンキー:2011/11/24(木) 23:22:08.32 ID:Ky35Gjdj
変(態)な職人しか居ない…だと?
よろしいもっと増えろ!
自治厨の自演だから構うなよ
変態は変態でもノーマル派なら歓迎
>>255 バトルの練習がしたいというベルに主人公辺りがトルサブウェイを教えて、
何度も挑戦するうちにダブルトレインでクダリと勝負するも負けてしまう。
最近頻繁に挑戦しにくる女の子ということでクダリはベルを知ってたけど、
初めてそこでお互い自己紹介…まで妄想したけど健全にしか転がらねえ…
どうやって押し倒させればいいんだ
アニメベルかゲームベルかでシチュ変わる気がするけど
バトルに強くなるためには体を鍛えなきゃいけないみたいな展開かねえ
サブウェイ挑戦中に列車事故で車内に長時間閉じ込められ、その間にお互いの身の上話をな
そして終電逃してボクの家に略
>>261 お、いいなそれ お風呂上りはダボダボシャツですねそうなんですね
ノボリ←(憧れ)←ベル←(性的な視線)←クダリ
みたいな変態路線と、クダリが自分はロリコンなのかと葛藤したり
中学生みたいにうわああって悩む感じの路線の2つが俺の脳内には浮かんだ
ノボリとベルが付き合ってるけど、クダリもベルが好き
ある夜、ノボリの部屋でベルとノボリがギシアンしてる声が聞こえてきて
耐えられなくなったクダリがノボリがいない時に服と表情を真似してベルを襲いに行く
…とかどうだろう ちゃんと伝わるかびみょいかもだが
サブマスなんてネタにしにくいからな
思い付き様が無い
>>264 某書の人が(おそらくネタで)サブマスについて腐ってたな
何故サブマスに腐女子共が群がるのか理解できないんだよな
もっとマシな連中が群がるかと思ったが
車掌とか電車系は男の世界だからな
制服萌えという言葉もある
女子高生のセーラー服に萌えるみたいなもんでしょう
きっと双子だからだよ
女は大概双子萌えなんだ 偏見だけど
アレだ
某所で言われてたんだが、仮にサブマスが双子の美少女だったら、
俺らもカミツレさんやフウロさんにハァハァしたみたいに双子の百合な薄い本を欲しがるかも、って意見を見たことがある
嫌がるベルちゃんがぺろぺろされる話はどこですか先生…先生…っ
271 :
名無しさん@ピンキー:2011/12/08(木) 06:55:30.77 ID:t+W4QAAp
無いなら自分で書いた方が早い場合もあるぞ
Nの城にジムリーダーたちを呼んだのはベルだったよな
でもサンヨウのジムだけは間に合わなかった…
つまりジムに着いた際、事情を話す前にちょいと
ペロペロちょっかいかけられて遅れたんじゃないか…
という妄想の種をやろう。 無理やり感は……うん、気にすんな分かってる
よし、全裸で待ってる
全裸で待ってる方が一日以上待たされてるぞ。
全裸待機で2日は辛かろう
っネクタイ
おぉ、かたじけない…首元が、温かい…
ならば私からはこれを進呈しようぞ
っきざみのり
いい加減服着たら
裸ネクタイ股間にきざみのりを付けて健気に待機している273を思うと……
それ公式ちゃうわ
公式同人誌
今気付いたが、きざみのりって薄い本とかで良くある股間を規制するためにある黒いアレか
全裸ネクタイきざみのりの273のために俺頑張りたい…
ほんとにぺろぺろだけで終わりそうだけど
286 :
名無しさん@ピンキー:2011/12/22(木) 08:49:10.17 ID:6UAM27fW
ガンヴァレ♪(ToT)/~~~
287 :
名無しさん@ピンキー:2011/12/22(木) 23:27:47.64 ID:DI28BYCC
セックスする時に、ポケモンの技の名前言う奴…
痛いわw
288 :
名無しさん@ピンキー:2011/12/22(木) 23:31:47.10 ID:DI28BYCC
笑ってしまうもんw
何故、ポケモンの技名を出すのかがわからんw
御前はポケモンなのかって言いたくなるねw
なんの話だよ、と裸ネクタイ刻み海苔が物申す
290 :
名無しさん@ピンキー:2011/12/23(金) 00:44:27.89 ID:MPTOvjEy
そう思わないか?
291 :
名無しさん@ピンキー:2011/12/23(金) 18:33:12.02 ID:MPTOvjEy
オリキャラで投下するふぃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
主人公の名前:馬鹿
幼馴染の名前;満子
ここは死ね死ねタウン
その街中で、激しい性行為が行われていた
「きゃうん!きゃうん!」
「オラオラ、どうした?肉便器よ」
「気持ちいいよ、馬鹿」
「うん、僕も♪」
ドピュドピュドピュ
馬鹿は、満子の膣へ中出しした
「死ね、馬鹿」
完
292 :
名無しさん@ピンキー:2011/12/23(金) 18:33:59.55 ID:MPTOvjEy
おーわり♪
最高の作品だろ?
大論外
載せる価値がないと思われ
過疎だとこんなデカイ釣り針にもレスが付くのな、レス乞食も頭使うねぇ
295 :
名無しさん@ピンキー:2011/12/25(日) 00:19:55.73 ID:6xnk0/4q
最高だね、この作品はw
最高過ぎて、何回も抜いたよ
296 :
↑:2011/12/25(日) 09:58:20.34 ID:bd5luHqK
自演乙
やべぇ、ポケパークのツタージャがボクっ娘だった。
なんか出てきそう。
298 :
名無しさん@ピンキー:2011/12/25(日) 20:03:14.35 ID:A+0VL96M
ポケモンスレだけあって未成年の多さが目立つな
反応したらそこで試合終了だよ
300
こっちではお初です。
BWのカトレア姉さんが好きなのに話が少ない…。
そんなわけでカトレア(BW)×ギーマものです。
では『誘惑する貴方 魅了する君』です(厨二なタイトルは花言葉からですw)。どうぞ。
瞼を開け、目を擦って時計を見る。時はまだ正午。
「暇ね…」
彼女は四天王のカトレア。
彼女にとって、一人でいる時間は退屈以外の何物でもない。
誰かに呼ばれれば話は別だが、この寒い時期に外に出るのも面倒であった。
故に彼女は基本的に、一日の大部分を睡眠時間に割いているのであった。
「全く…何故こんな時間に起きてしまったのかしら」
そう呟いて再び毛布の中に入ろうとしたその時、部屋の外から靴音が聞こえた。
「挑戦者の方かしら…?」
そう言って寝ぼけ眼を再び擦りつつカーテンを開けるとそこには見慣れた姿があった。
「あら、ギーマさん。アナタでしたの」
「ああ、そうさ。挑戦者でなくて、悪かったね」
ギーマは皮肉めいた口調で笑って言った。
「そんなことはないわ。丁度こちらも退屈していたの。ひとつ手合わせでもどうかしら?」
彼女がモンスターボールを取り出したのを見て、彼は少し考えたようなポーズをとる。
「そうだな…悪くない誘いだが、生憎こちらは君自身に用があるんだ」
「どういうことかしら?」
「君のベッドで語り合いたい、と言えば君でも分かるかな」
彼女はそれを聞いて思わず吹き出した。
「ふふっ…おかしな人。はじめから格好付けず言ってくださっても良かったのに」
「あまり下品な言葉を君の前で使いたくなくてね」
「別に私は構いませんわ。さあ、どうぞ。お入りなさいな」
カーテンの中に二人で入ると、カトレアは小さく笑った。
「えっと…今日はアタクシから脱ぎましょうか?」
「今日はやけに積極的だな」
彼女はギーマの見ている前で、服を丁寧に脱いでいった。
レースのついた下着姿で、彼の方を見つめてはにかんだ。
「あの…やっぱり…」
「最後は、脱がしてほしいと?」
「ええ…」
彼はカトレアの下着を丁寧に外した。
小さな胸と柔らかい女性器が見える。
恥ずかしそうにそれを隠す彼女を尻目に、彼はゆっくりと彼女をベッドに寝かせた。
「ほら、手をどけないと…ことが進まないよ」
「だって…恥ずかし…」
「もう何度も見られているだろう?さあ」
「あっ…」
折れてしまいそうに細く白い腕を掴んで、彼は彼女の胸を触った。
首筋に小さく息を吹きかけてから、耳を甘噛みした。
そのまま、彼の手は彼女の鳩尾をなぞって、太腿の部位へと移動した。
「はっ…だめですっ…ぎーま…さんっ…」
喘ぐ彼女のうなじにキスを落とし、そのまま女性器に指が触れた。
「んあっ…ふっ…まだ…はやっ…はやいですっ…まだ…」
しかし彼はその言葉を無視して指で膣内をまさぐる。
勘で陰核の部分を探り当て、指の腹を擦った。
「ひんっ…だめっ…ふぁ…やめっ…ああっ」
「そろそろかな」
彼はそう言って指を引き抜いた。
小さい彼女の呼吸が部屋に響いている。
「はぁ…はぁ…はぁ…ぎーま、さん…」
「ん?」
「アタクシの身体、物足りなくありませんか」
そう言うカトレアの物悲しそうな目は現在の状況から生まれたものではなかった。
「いや、そうは思わないがね。とても魅力的だ。なぜ急に?」
「ふと、思ったのです。アタクシは細い身体を煌びやかな衣装で隠しているだけなのではないかと。そしてその身体と同じように脆い心を、強い口調で覆っているだけなのではと…。そう思うと、不安になって…」
「それが本当だとしても、君の魅力には何の変化もない」
「そう、でしょうか…」
「むしろ、強い女性がふと見せる弱い面こそ、男には魅力的に映る。そう、今の君のようにね」
「ありがとう。お世辞でも嬉しいわ…」
「嘘や口説き文句でこんなことを言っているように見えるかい?」
彼はそう言うと、彼女の唇にキスをして舌を挿れる。
蕩けるような感覚と唾の音に酔いしれる二人。
糸を引いて出た唾を腕で切って彼女は言った。
「感じますわ…アナタはそこまでアタクシを…」
「おいおい、恩を感じた風に言わないでくれ。ただ、君の姿に魅了された。それだけさ」
「ふふっ…素直でない人…」
彼はくすりと笑う可憐な女性をベッドの上で激しく抱いた。
「ああ、素直でないさ。悪人だからね」
器用にズボンの上から彼女の女性器に肉棒を挿入する黒い男。
不意を突かれてなすがままにされる彼女の乳首を噛む。
それを皮切りに、体のあちこちにキスを落としていく。
言葉にならない高い声をあげる彼女を腰を動かしつつ抱き上げる。
彼女の細い脚も、弱い力ながらも呼応するように彼の腰に絡む。
「んあああああ!」
耳を劈くような嬌声をあげて髪を振り乱すと、彼女の意識は途切れた。
###
彼女が起き上がると、丁寧に服が着せられていた。
「いつもありがとう、わざわざ…」
「いいっていいって。こっちが好きでやってる事さ」
彼女が自身の身体を見ると、丁度服から見える部位にはキスマークが見えないようになっていた。もっとも、身体は噛まれた部分が赤くなってまだ痛いのであるが。
「いつも思うけど…器用な人ね、アナタ」
「褒め言葉と受け取っても?」
「さあね…ふふっ」
「君は最近笑うことが多くなったな」
「そうかしら。もしそうなら、アナタのおかげよ」
「ほう、何故かな?」
「アタクシを初めてオンナとして見てくれたから…かしら」
ギーマは予想外の言葉に動揺するのを隠しつつ言った。
「卑怯なお嬢様だ。そんなことを言われたら、君から離れられないじゃないか」
「そうしてくださると嬉しいわ」
「言われなくても、君に出会った時から君以外見ていないがね」
「ふふっ、やっぱり面白い人…」
「さて、そろそろ時間かな。挑戦者の足音が聞こえてきた」
「あら、そうね。それじゃあ、またいずれ」
「ああ、では失礼するよ。また『ここ』で語り合おう」
ギーマの言葉に再び笑顔を見せるカトレア。
カーテンから出てワープした彼。
それと入れ替わるように現れた挑戦者が外に見える。
「さて、参りましょうか」
一言そう呟いて彼女はモンスターボールを取り、カーテンを開けた。
「どなた…?」
(終)
以上です。皆さま良いお年を。
投下おつゆ。
年越しまでに新しい作品が出来ててよかったです
自分も書いてるけど明日までに間に合いそうに無い。ごめんなさい
307 :
名無しさん@ピンキー:2011/12/31(土) 14:05:17.57 ID:vov4kQuK
今年も終わりお☆
308 :
名無しさん@ピンキー:2011/12/31(土) 14:06:36.26 ID:vov4kQuK
うひゃっ
309 :
名無しさん@ピンキー:2011/12/31(土) 14:07:04.76 ID:vov4kQuK
うほっ
いい女♪
注意
ダイゴ×ハルカ
ラブラブリア充系
長くなっちゃった
薄明かりの部屋。ダイゴはハルカをベッドに押し付ける。恥じらうような目で見つめる彼女の唇を黙って奪った。
唇だけでなく、舌が割って入る。初めて受け入れる感覚に、ハルカの息は荒かった。ダイゴが舌でハルカの口腔を刺激するたびにふむぅというとろけた声が聞こえる。
最初はダイゴにただ翻弄されていたのに、徐々にハルカから舌を積極的に絡ませていた。
ダイゴの舌が離れ、ハルカは目を開ける。もっと欲しいという、少女にしてはやけになまめかしい目。初めてのキスは、ハルカを本能と理性の瀬戸際に追いやった。
「ハルカちゃん怖い?」
「少し。でもダイゴさんだから大丈夫です」
待ち望んだ心から好きな人とのこと。これからダイゴに処女を奪われ、雌として扱われることを。
それだけ、ハルカにとってダイゴという男は魅力的だった。ポケモンの強さ、凛々しさそして優しさ。全てが出会ったことのないオーラで溢れている。
「上出来。まずは君の体を全部見せてもらおうかな」
上着をめくりあげる。無駄な肉のない、それでいて柔らかな腹。さらに上には、発達途中の胸。さらに脱がすと、鎖骨のラインがはっきりと見える首筋。どれもダイゴには美味しそう見えた。
ハルカの頬をなでる。そしてその下をダイゴはなめた。
「きゃあ!」
首筋にくるくすぐったいような、気持ちよい感触にハルカはただ体を震わすだけ。
「ダイゴさぁ…ん」
首筋を吸い上げる。ハルカからは見えないが、赤く腫れていた。
「かわいいね。ここから大人にしてあげる」
右の膨らみの先端に口をつける。
「っ、ダイゴさんっ…」
何かから逃げようとするかのようにハルカが体を動かす。けれど上からダイゴがしっかりと押さえつけてるのだから、無駄だった。
ダイゴの柔らかな唇にくわえられ、その舌で刺激される。その舌の動きは予想が出来ず、ハルカが声にならない声をあげる。
「っあ…ぁあっ」
左の膨らみはダイゴの指で刺激されていた。特に先端を刺激する指は、優しく、そして時々強く。先端だけでなく、乳房を包み込むようにもみほぐす。チャンピオンという地位でもなければこんな幼い感触は味わえない。
それにくわえて処女ときた。丁寧に快感を与え、虜にするチャンスだ。それにハルカは逆らわない。大人しく、そして素直にダイゴから与えられる快感に身を浸している。
チュッとダイゴが乳首を吸う。そして一気に放した。しばらくダイゴは両方の乳房をもんだ。その間にもダイゴのものは堅く膨らんでいく。それがハルカの股に当たっているのも解った。
「あん…ぁっ…」
一気に刺激されて、ハルカは初めてと思えないくらいに乱れていた。
「はぁ…はぁ…」
「気持ちいい?」
ダイゴは唇から乳房を解放し、ハルカに顔を近づける。キスする前とは全く違う。快感を欲し、ダイゴを誘っている。自覚はないかもしれないが、ハルカはもう雌として雄を誘惑しているのだ。
「きもちいいです」
これだけでここまで淫らになる。思ったより早いな、とダイゴは小さく言った。
ハルカの声はとろけてきている。ダイゴは下の服へと手を入れる。パンツの中へ指を滑らせた。
「ダイゴさ…そんなところはずかし…」
予想通りだ。中はもうよだれを垂らしたように濡れている。
「君も解っているだろう。脱ぐんだ」
ダイゴは下着ごと一気に下ろした。ハルカがじっとダイゴを見つめている。不安そうで恥ずかしそうで。けれど何より早くして欲しいという顔で。
「足の力抜いて」
緊張なのかハルカの両足に力が入りすぎている。声をかけてようやくダイゴの手が足の間に入る。
雌は雄を誘っていた。まだ毛も生え揃わない幼い雌が、成熟した雄を。
ダイゴはハルカの足の間に顔をうずめる。桜色のうっすらとした筋からは、とめどなく愛液が流れていた。そこからさらに舌でなめとる。すでに堅くなった小さな突起を。
「ひゃぁっ」
「ここなのかな一番感じるのは」
「あっ、ダイゴさんやめて、はずかしいよぉっ」
「処女なのに、こんな感じちゃって、恥ずかしいだろうねぇ」
ハルカの手がダイゴの頭に触っている。何とか離そうとしてるのだ。けどダイゴの舌が刺激を与え続け、ハルカから抵抗する気力を奪っていく。
「あっ、あっ、ダイゴさん、もっと、もっと」
ハルカは足を積極的に開き、ダイゴからの刺激を求めていた。
突起だけでなく、さらに下までダイゴは舌で刺激を続けた。
「ダイゴさん…」
淫らな声でダイゴの名前を呼び続ける。それと同時にますます濡れていく。
「ハルカちゃん」
「はい」
「君、ここいじったことないのに」
ダイゴの長い指がハルカの桜色した筋へと割り込む。その刺激に彼女は体を強ばらせた。
「よく僕とやりたいなんて思ったね。こんなに狭くて入ると思ってるの?」
何もまだ入れたことないからってダイゴは容赦しない。中指を入るところまで押し込み、そしてゆっくりと動かす。
「い、いたっ!」
「指一本しか入れないのに、これ以上できるわけないよね」
「いたいっ、うごかさないで…」
「これも痛いのに、全く。僕は君の開発係じゃないんだ」
ハルカに対し、攻撃的な言葉を投げつけた。無論、考えなしに言ってるわけではない。
「ごめんなさい」
「その割には、こんなに気持ち良くさせてもらおうなんて、甘いんじゃないかな。そういうの僕は嫌いだ」
ダイゴに怒られている。今まで優しかったのに。ハルカは何がなんだか解らず、指でかき混ぜられてる痛みもあって、泣き出してしまった。
「ごめんなさい、わたし、ダイゴさんがすきで、ダイゴさんに…」
「ああ、ごめんね」
ダイゴはハルカを優しくなでる。ただしその表情、口調は変わらない。
「僕に抱かれたいって思ったんだろう。それは嬉しいよ。でもハルカちゃんばかり気持ち良くなるのもずるいよね」
ダイゴはハルカの目の前にそそり立つ男性器を突きつける。先端からは透明な液が何度か出ていた。
「君にしたように、僕のを口でくわえて」
「え、そんな…」
ハルカが初めて見る大人の男性器は大きく、とてもハルカの口に入りそうでもない。けれど躊躇している暇はなく、ダイゴに頭を掴まれ、無理矢理口の中に押し込まれた。
「うっ」
吐きそうになっても、ダイゴに頭を押さえられて動かすことができない。それでも半分も入っていないのだ。苦し紛れに自ら舌を使ってダイゴに刺激を加える。
「そう、その調子だよハルカちゃん」
ダイゴの腰に手をまわし、ダイゴのものを一心不乱でなめた。ダイゴに嫌われたくない。ただそれだけで。
「ああ…気持ちいいよハルカちゃん。上手だ」
ダイゴがハルカの頭をなでる。彼女はダイゴの目をみて、必死に機嫌を見ていた。口の中に少しずつ出る液体に不快な思いをしながらも。
口からは唾液が溢れて、それが潤滑油のように動きをなめらかにしていた。
「ハルカちゃんよく出来ました。もう放していいよ」
許して貰えた。ハルカは口からダイゴの男性器を放す。よだれだらけの口周りをダイゴはぬぐった。もう怒ってないし、嫌われてない。ハルカは安心したようにダイゴに抱きつく。
「してる間、ハルカちゃんも気持ち良くなりたいと思った?」
ハルカは頷く。ダイゴが喜ぶのなら何をされても構わない。そんなハルカの心を見抜いているダイゴが、彼女を言いなりにさせるなんて簡単すぎることだった。
「じゃ、足開いて寝てごらん。寝ながら僕のをさっきみたいにくわえるんだ」
ダイゴの両膝がハルカの頭付近にあった。そしてそこに見えるのは、ダイゴの男性器。
「ダイゴさん…」
唾液で濡れた男性器はベッドライトを反射させた。ハルカはその手で掴むと、愛おしいものを扱うかのように口へと運ぶ。
その瞬間、ハルカは舌の動きを止めてしまった。さっきみたいな気持ちよさがまた来たのだ。ダイゴの舌が、ハルカの堅くなった突起を優しくなでている。
「ハルカちゃん、やめちゃダメだよ。君の開発は時間がかかりそうだからね」
またダイゴに嫌われてしまう。そう思ったらハルカは必死でダイゴの男性器を舌で愛撫した。
その間にもダイゴは突起を舌で転がし、指で桜色の筋をなでる。そしてもっとも愛液が溢れる場所へと指を当てる。
「んー!」
ハルカが苦しそうに叫ぶ。それでもダイゴへの愛撫を必死になってしていた。ダイゴの指が奥まで入っている。ハルカには一番苦痛のようだ。足に力が入って、ダイゴの頭を挟む。
何度も指を出し入れすると、筋がだんだん一つの穴を暴き出す。指を抜き、ダイゴはその穴をなめた。
「ハルカちゃん、本当によく出来たね」
ずっとハルカの愛撫を受けていた男性器はもう限界というところまで来ていた。ハルカの上に向き合うように乗ると、唇を塞ぐ。
「入れるよ」
ハルカの前髪をなでる。
「いれてください」
ダイゴがゴムを取ると、自らの性器につける。何度も楽しむ為に。
ハルカの筋に先端をあてがう。そして彼女の足をしっかり押さえる。ダイゴは腰を動かし、その中へと入れた。
「いたっ!いたぁ」
まだ先端しか入ってないのに。ダイゴは一度そこで止まる。
「ぬいて!ぬいてください!」
「僕をどんだけ待たせたら君は気が済むんだい?僕はこの時を待ってたというのに」
言葉の意味を知り、ハルカは歯を食いしばる。これ以上、大切なダイゴの期待を裏切れない。
「いくよ」
ダイゴはさらに中へと入れた。
「ったぁーーー!」
ダイゴもそんなに痛くないわけではなかった。締め付けすぎて、きついのだ。けれどハルカほど痛くない。
「いたい、いたい…」
幼い雌には、成熟した雄は暴力にも等しかった。
無意識にダイゴから逃げようと、ハルカは上へ上へと動かす。
「頭ぶつけるよ」
すかさずダイゴが枕を入れる。そして下へと戻された。
「まだ全部入ってないからね」
「や…いたいっ」
さらにダイゴは入れていく。粘膜のこすれるイヤらしい音と共に。
ハルカの中はダイゴを拒否するかのように締め上げた。それがダイゴにとってこの上ない快感。
「動くよ」
「あーっ!うごかさないでうごかないでぇ!」
ダイゴが出し入れする。ハルカの悲鳴が聞こえる。彼女がダイゴを掴む力が強くなる。
「ハルカちゃん、すっごく気持ちいいよ」
「やだ、やだぁ…ぬいて…」
「やっとのことで手に入れた。そう簡単に離さない」
ハルカの体を起こし、そのままダイゴの上に乗せる。
「上の方が痛くないらしいよ」
膝たちのハルカを抱きしめ、下から突く。それでも苦痛が変わらず、彼女の表情は泣きそうだ。
「それでも痛いのかい?仕方ないね」
ハルカの頭を撫でる。そして唇に触れ、舌を絡ませた。
「ダイゴさん」
やめてくれるのかという期待がハルカにあった。
「ごめんね、最後までさせてもらうよ」
容赦ない突き上げがハルカを襲った。ダイゴはハルカを抱きしめたまま。そして時々唇を重ね、悲鳴をかき消す。そんなダイゴにハルカはされるがまま。よりいっそう、ダイゴに抱きつき、しがみつく。
いつの間にかハルカはダイゴに再び押し倒されていた。ダイゴの顔がベッドライトに照らされた。いつもの余裕の表情でダイゴはハルカを見ている。
「ハルカちゃん、ハルカちゃん…」
時々唇を求めて来る。柔らかい唇を重ね、舌を絡ませた後はハルカの耳元で囁く。
「好きだハルカちゃん。愛してる」
その声はいつも聞くものよりは震えていた。それでもダイゴからの愛を告げる言葉はハルカを痺れさせる。
荒い息づかい。じっとりと重ねた肌に感じる汗。
ハルカは目を閉じてダイゴに身を任せる。もう抵抗なんて意味がない。痛みは続くのに、ダイゴと抱き合っていることの嬉しさが勝っていた。
何度か体位を変え、ダイゴはハルカをしっかりと抱いて離そうとしない。
ハルカが下になり、上からダイゴに犯されている。激しく乳房をもまれながら。
ハルカは初めて体を犯され、抵抗の痛みにそろそろ限界だった。堅く目をつむり、ダイゴにされるがままに。
「気持ち良いよ…イきそう」
ダイゴのペースが早くなる。さらに痛みが増した。
「う…あぁ…」
ハルカのうめき声が漏れる。ダイゴはどこか遠くを見ていた。そして一気に突き上げる。
「…あぁ…あつい」
ハルカは体の中に、熱いものが広がるのを感じとっていた。ダイゴに抱きつかれ、しばらく言葉を発しない二人。
思い出したようにダイゴが終わったものをハルカから引き抜く。そしてゴムを剥がすと、縛って捨てた。
「ハルカちゃん、良かったよ」
ダイゴがハルカの髪を撫でた。けれどそうは言われても、ハルカは痛くて仕方なかったので、ピンと来ない。
「またしようね」
「…はい」
唇を重ねた。軽くして、ダイゴは離れる。
「ハルカちゃん先にシャワーする?」
「あ…はい」
ベッドから起き上がり、裸のまま出ていくハルカの後ろ姿を見送る。そしてちょうどそのタイミングでポケナビにメールが入る。
「…この人はもういいや。僕には新しいおもちゃが手に入ったからね」
一方的に別れを告げるメールを打つ。
「ハルカちゃん、か」
今までの人たちよりだいぶ年下だが、今日はかなり楽しめた。
ダイゴはハルカの調教計画を頭の中で練り、ポケナビの電源を消した。
君も今まで寄ってきた女と同じ、僕のお金が目当てなんだろう?
だったら僕は君で快感をむさぼりつくす。君が僕を利用するのと同じだね。
ハルカちゃん、愛してるよ。飽きるその日まで、たくさん可愛がってあげる
終わり
どこがラブラブリア充系だGJ
>君も今まで寄ってきた女と同じ、僕のお金が目当てなんだろう?
ハルカは本気で恋してるのにこの解釈 切ないな……
そのすれ違いっぷりが余計にエロい
GJ!
325 :
名無しさん@ピンキー:2012/01/09(月) 00:58:11.97 ID:i64NwyqI
久々にイイのがキタ!
GJ!
ダイゴこのやろうこのやろうGJこのやろう
327 :
名無しさん@ピンキー:2012/01/19(木) 23:30:21.00 ID:9PWhgDB9
もう一週間以上経ったのか…
328 :
名無しさん@ピンキー:2012/01/20(金) 19:21:27.35 ID:yTwf5XHU
保守
329 :
名無しさん@ピンキー:2012/01/27(金) 05:26:38.91 ID:RFxD8/0Y
保守ぅううううううううううううううううううううううううう!!
サトベルマダー
331 :
名無しさん@ピンキー:2012/01/27(金) 23:23:12.71 ID:++Vg+B1d
時代遅れかな?
ネジカトが読みたい…
332 :
名無しさん@ピンキー:2012/01/28(土) 08:30:40.21 ID:ecY01sO4
よし、自分で書こうと思います!
エロい部分入れれるかわかんないし、
入れれたとしてもぬるいと思うけど…
需要あればネジカト書かせていただきます。
やっぱり需要ないかな…?
333 :
名無しさん@ピンキー:2012/01/29(日) 00:43:26.91 ID:4GrCUYfk
需要無いって言われれば書かないというのか
お前の情熱はその程度かッ!
…ていっても、過疎気味だし投下してくれるならぜひ読みたいです
自分なんて未だにリーフやアザミさん好きだし、時代遅れを気にする必要は無いんじゃないかな
俺なんて、時代遅れどころかマイナーなヒナタ(ポケモンレンジャー)やミント(ポケモンカードGB2)が好きな寂しい奴だぜ
時代が来なかったに近い
ポケスペ以外のマンガのエロパロはこっちに投下されるのか?
336 :
名無しさん@ピンキー:2012/01/29(日) 23:44:22.43 ID:QqY0+8AH
そうだよな。
好きなものに時代も何も関係ないよな!
よし、今頑張って書いてる!
近々投下できると思う…多分。
アニメフウロの公式絵キター!
58 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/01/31(火) 19:48:23.89 ID:xKt3Joet
http://twitpic.com/8dwy3h 2月23日のポケットモンスターベストウィッシュ
頭の中でポケモンバトルをシミュレーションして勝敗を決めるフウロに業を煮やしたデントが戦いを挑む
デント×フウロって案外行けそうだな
ヒナタもリーフも好きだ
ちょっと書くか…
>>339 一瞬ヒナタ×リーフ書く気なのかと思ってしまったww
アニメでもゲームでも絡んでないしさすがに無理だなww
しかしこれは期待
343 :
名無しさん@ピンキー:2012/02/08(水) 22:20:08.80 ID:dl0rn34e
「クダリさーん!」
今日もまた、バトルサブウェイに明るい少女の声が響く。
「こんにちは、トウコちゃん」
僕はいつも通り挨拶をする。
いつもと何も変わらない。
・・・そう、全てがいつも通り。
少女は僕に眩しいほどの笑顔を向け、こんにちは!と返してくれた。
たったそれだけのことにも、僕の胸は高鳴った。
「今日ね、トウヤ達にチョコレートをあげたの」
「チョコレート・・・?」
「うん、今日は2月14日。バレンタインデーでしょ?」
そっか。すっかり忘れてたよ。
「それでね、大好きなクダリさんに・・・これ!」
彼女は鞄を漁り、そこから可愛いリボンのついた紙袋を取り出した。
「本命のチョコレートです」
ほんのりと頬を赤く染め、はにかむ彼女が愛おしく感じる。
「ありがとう。・・・ノボリには?」
彼女が僕を慕ってくれているのはとても嬉しい。
その反面、実の兄への気持ちにも興味が湧く。
「ノボリさんのもあります。でも・・・義理チョコです」
その言葉に、僕はひっそりとした笑みを浮かべる。
「そっか・・・」
「はい。私が好きなのはクダリさんですから!」
僕は溜め息をついた。
それが本物の僕に向けられた言葉だと思うと、悲しい。
だって、僕は・・・・・・
「トウコ様。私は貴方が欲しいです」
貼り付けていた笑顔。
僕・・・いいえ、私にはやはり笑顔は難しすぎました。
「えっ?」
「何故ですか?こんなに似ているのに、何故貴方はクダリを選ぶのです?」
力強く抱き締めれば、驚いたのか、彼女の手から紙袋が落ちる。
・・・駄目だ。誰か続きを頼む!
クダリとトウコがラブラブなのを知りつつも、トウコが好きなノボリ。そうだ、クダリに変装してトウコに近付こう!
っていうネタなんだが、何か書いてて無理を感じた。
先日、pixivでレッド×コトネのCP絵を見てから妄想が広がリングして、ついにはSS購入にまで至ってしまった訳だが、そんな俺で良ければなんか書きたい。
345 :
音ゲーマー:2012/02/10(金) 23:41:08.89 ID:Ouv7cpeF
投下テスト
イジワルなあなた
ダイシロ。前作以上に長い。
捏造俺設定にアルコールとカフェインとニコチンを混ぜて煮込んでみた。
嫌な予感がする人はNG、またはスルー推奨。
人の出会いは往々にして皮肉なものである。
時間や場所、状況……TPOのみならず、その他一切の指定が出来ない。
その当事者達が初対面であった場合、彼等の間に存在する感情は好きでも嫌いでも無い。
どうでも良い。若しくは、知りたいと言う欲求のみである。
そうして、お互いを知る裡にそれ以外の感情が湧いてくる。相手を理解するが故に。距離が近くなる故に。
とある男女が居た。彼等は出会い、共感し、寄り添い、一方が拒絶し、それでももう一方が求め続け、最後には再び結び付いた。
二人の出会いからの歩みとその軌跡。その全てを記そう。
Prologue:ビギニング
――ホウエン地方
ニッポン国の南に位置する火の国。地方の一部は亜熱帯に属し、一年の大半が温暖な気候。場所によっては過ごし易く、また過ごし難い。
様々な固有種や色とりどりの草木が見る者の目を楽しませ、時には圧倒する。
その名には豊かな実りと良き縁が育まれる様にとの願いが籠められている。
……その南に位置する小さな島、トクサネ。
住民は然程多く無く、漁業が島の大きな収入源。目を引く物と言えば、近年造られた宇宙センター位なモノだ。
気象条件の関係でロケットを宇宙へ飛ばすのに良い環境だからと造られたロケット発射基地は今も定期的にロケットを打ち出し、宇宙への橋頭堡としての役割を果たしていた。
その一角に、とある男の棲家が在った。
――トクサネシティ ダイゴ宅
小さな家だった。コンクリート製の平屋。住人の趣味か、彼方此方に素人では価値が判らない色取り取りの石や何かの原石が仕舞われたガラス製のキャビネットが置かれている。
しかし、家の内部は片付いていて家主の几帳面さが見える様だった。
「――君達が」
この家の主である青年が口を開く。長身痩躯で整った顔立ち。身を引くであろう銀髪とそれと同じ銀色の瞳。稲妻のラインが入った特注スーツに赤いスカーフ。両腕に装着された金属製のバングル、右手の人差し指と薬指には指輪が嵌っていた。
「君達が尋ねて来るとはね」
ツワブキ=ダイゴ。ホウエン地方を牛耳るデボンコーポレーショングループの跡取り……つまりは御曹司。同時に、元ホウエンリーグチャンピオンでもある好青年。
しかし、その実態はストーンゲッター。石収集人と言う名の道楽人。
それが今の彼の世間での評価だ。
「済みませんでしたね、突然お邪魔して。迷惑でした?」
テーブル席に座るニット帽を被った青年……ユウキが済まなそうに頭を下げた。
「だったら家に上げてないさ。何分、人が尋ねてくるのは久し振りだったからね」
腕組みして、壁に背を凭れるダイゴ。一地方を代表する有名人にしては何とも寂しい話だとユウキは思った。
「そうなんですか? ダイゴさん、顔は広いと思ってたけれど」
「プライベートで仲が良い友人はそれ程多く無いんだよ。君もそうじゃないの?」
「まあ、確かに」
言われてみればそうだった。不定期にこちらから尋ねて行く事は多々あれど、ミシロの自宅に尋ねてくるのはミツル位の者だと言う事を今になって思い出す。
だが、それが寂しいかどうかは別の問題だ。ユウキとしてはそれで良かった。
「独りで居た時は、まあぼちぼち。……カゲツだろ? ミクリだろ? フヨウに、フウとランに……あ、後はゲンジさんか」
「じゃあ、今はそれがぱったりと?」
随分とビッグなネームが並んでいる。やはり、嘗ての鋼の貴公子は伊達では無い。だが、今は彼等の訪問回数は下火にある様だ。
「いや、ミクリ相変わらず来るね。ナギと一緒にさ。ゲンジさんは不定期で変わらないけど、それ以外は……最後に来たのって何時だっけ」
「あの双子……ご近所さんなのに寂しいですね」
現チャンピオンとヒマワキのジムリは同棲中らしい。昔付き合っていて、一度別れた後に復縁したとの噂を耳にはしたが、詳細は判らない。まあ、ダイゴとの付き合いが今も続いているならそれ以上問う事は無かった。
ドラゴンルーラーのゲンジに至っては本当に何も判らない。リーグ絡みの付き合いのかも知れないが、何を考えるにしても情報が足りなかった。
しかし、トクサネのジムリであるフウとランが遊びに来ないと言うのは他人の目だとしても寂しい事の様に思える。一度、二人にダイゴの事を尋ねた事があったが随分懐いている様な印象を受けたからだ。
「案外、気を遣ってくれてるのかもね」
「・・・」
ダイゴの言葉にユウキは目を細めた。
その原因が女にあると言う事が遠目でも判る。窓を飾るカーテンの柄、棚に置かれた小物のファンシーさ、さり気無く玄関に置かれている小さな花の鉢植え……
男は余り気にしないだろう部分に乙女心が満ちている気がする。
そして何よりも。自分の座るテーブルに置かれた写真立て。其処に見えるのはダイゴの姿と、その彼の腕に嬉しそうに抱き付く金髪の美女。
……先程、会った女。そんな彼女は自分の相棒を連れて買い物に行ってしまったが。
「やっぱり、気になるかい?」
ダイゴが問い質す様にユウキを見る。だが、威圧的な何かが含まれる視線ではない。
腕組みも崩してはいなかった。
「ええ。全部の情報を掴んでる訳じゃないから」
「だろうね」
猶予う事無く、ユウキが頷いた。件の女性については知っている。
元シンオウチャンプにして考古学者。最近はダイゴと組んで行動している様だが、何故その相手がダイゴなのかどうにも接点が見えない。ユウキは知りたい気持ちが満々だった。
「ま、良いか」
ダイゴは一寸だけ悩んだ素振りを見せるも、直ぐに頷く。
「え」
ユウキが言葉に詰まる。……そんなあっさりとしていて良いの?
「そんなに気になるなら喋るよ。第一君達は」
「俺達は?」
ダイゴが語ろうとするのは理由があっての事だった。そうでも無い限り、この鋼の男が本心を吐露する事は無いだろう。
「僕を負かして、尻を蹴っ飛ばした。あれで僕はもう一度彼女と向き合おうと決心したからね」
「・・・」
ユウキの脳裏にあの時の光景が過ぎる。流星の滝での激突。相棒のハルカと共に挑み、二対一で漸く倒せたこの男。
あの時吐いた言葉がフラグになっていたなぞ、考えもしなかった。
「一応、当事者だ。知って置く義務があると思うけど?」
「ですね」
まあ、過ぎ去った事象は今は良い。気になるのは彼と彼女について。彼等の物語に首を突っ込んだと言うのなら、聞いてやるのが世の情けと言う奴だ。
「じゃあ、聞きましょう。ダイゴさんとシロナさんの馴れ初め」
南と北のチャンピオンの出会い、そして其処から紡がれるストーリー。
人間に歴史あり。どうやってあんな上玉を口説き落としたのか、ユウキの胸は好奇心で一杯だった。
「長くなるよ。覚悟は良いかい?」
「言われずとも!」
『来いやあああああああ――っっ!』
ダイゴの忠告なぞ、とっくに折り込み済みだ。ユウキは銀髪の男の昔語りに耳を傾ける。
ダイゴは煙草を咥えると、ポツリポツリと語り出した。
第一印象は……そうだね。綺麗な娘だったよ。
可愛いじゃなくて、綺麗。背も高かったなあ。
一度切りだと思って御節介を焼いたけどさ……
349 :
音ゲーマー:2012/02/10(金) 23:55:23.56 ID:Ouv7cpeF
やあ。また来てしまったよ。さわりはこんな感じだが大丈夫か?
前と同じく小出しで続けるので宜しく。
寒いので早くしてくれ
GJ
>>348 ×ヒマワキ
○ヒワマキ
未だにこの間違いしている男の人って…
おお! 前ダイシロ書くって言ってたからずっと待ってました!
ありがたやありがたや……
T:旅は道連れ
今から凡そ七年前の話。
――シンオウ地方
ニッポン国の北方。広大な面積を誇り、悠久の歴史と数多くの自然を有する神話の眠る大地。アルミア地方と隣接しており、トレーナーとレンジャー、二つの人種が混在し、また境界線でもあるのか、決して交わらない稀有な場所でもある。
その北の大地にホウエンの御曹司は居た。
――204番道路 荒れた抜け道 コトブキ側
「はああああ」
人が誰も居ない抜け道の近く。移動手段であるレンタカーを降りたダイゴは唸る。
……熱い。暑いではなく、熱い。
故郷のホウエンよりは幾らかマシなのだろうが、肌を焼く様な極悪な日差しは陽が高く昇る程に激しくなる。まるで24分刻みの灼熱皿が降って来ている様なゲージの奪われ具合だった。
「親父も無茶言ってくれたよ、ったく」
車のトランクを開いて商売道具である採掘道具を取り出して愚痴る。
……彼のシンオウ訪問の目的は趣味にしている石集めだけではない。
出発間際に急遽決まった、樺太(リゾートエリア)の別荘建設。ダイゴの父親であるツワブキ社長の鶴の一声だった様だが、その建設に当たって、土地の下見を息子に依頼したのだ。
「あんな僻地にブッ建ててどうする気なんだか」
滴る汗を拭いながら、ブチブチと文句を漏らす。
父親の無茶振りを息子はさっさと実行した。コトブキの空港から降り立った彼は進路を北へ向け、一日半掛けてキッサキに辿り着くと、更に半日掛けてバトルゾーンへ船で渡り、ファイトエリアを東に向かい、更に230番水道を越えてやっと件の場所に辿り着けた。
現地の業者と打ち合わせが終わる頃には既に三日が経過していた。
そして、父の用事をこなした彼は再びシンオウ本土の土を踏んだ。後は各地を彷徨いながらピッケルを振り、暇があれば地下に潜り石を掘る毎日。野宿や車中泊を繰り返して、今日の採掘ポイントは此処、荒れた抜け道だった。
「……よっしゃ。行くか」
準備を整え、採掘用のツナギに着替え終わった。重量のある山男装備を背中に背負ってダイゴは穴倉に向かった。
――カーン、カーン……
一言も言葉を発せず、黙々と壁の亀裂にピッケルを打ち付ける。
上を見上げれば岩の亀裂から僅かな光が入って来ていて、穴の中は仄かに明るい。
それでも刺す様な日差しは入らず、水場も近くにあるので抜け道内部の気温はとても涼しかった。採掘には中々好条件と言える環境だった。……しかし。
「……外ればっかりだな」
振れども振れども出てくるのは石ころばかり。イシツブテの一匹すら出て来ない。偶に出てくるのはドラグライト鉱石だが、ダイゴのアイテムボックスには売る程在庫があった。
やはり、塊やエルトライト、メランジェ鉱石は中々お目に掛かれる代物では無いと言う事か。
「……やれやれ」
ダイゴはその場に腰を下ろして、ピッケルを投げ出した。そうして、ポケットを漁って煙草とオイルライターを取り出す。ダイゴが咥える煙草は彼が高校の時から吸っている愛モクで、ボックスパッケージには髑髏が刻まれていた。
辺りを見回して、掘れる場所は粗方掘り尽した事を知り、この辺りにして置くかと撤収を考え始めた。奥に見える水路を辿れば、新たなポイントを発見出来るかも知れないが、残念ながらダイゴの手持ちには波乗りが使えるポケが居なかった。
……そんな事を考えていると。
――ザッ
「?」
奥の方から靴音が聞こえて来た。今迄誰とも遭遇しなかったのに珍しいとダイゴは思った。だから、ソノオ側の出口の方に視線を向けた。
暫くすると、その靴音の主が暗がりから近付いて来た。
「――」
その姿を見た瞬間、ダイゴは少しの間呼吸を忘れた。
女だった。それも女子高生。何処かの高校のセーラー服を着ていた。中学生と言うには顔も身体も成熟し過ぎている。
人目を引くであろう、煌きたなびく長い金髪。180には届かないだろうがかなりの長身を誇っていた。
そして、ダイゴが最も惹かれたのはその女の瞳の色だ。
ほんの少しだが覘いた黄金の瞳。自分の白銀のそれと対を成す様な色彩に何かしらの感情を覚えた気がした。
「――」
女の方もダイゴに気付いた。自分がそうした様にこちらを流し見て来る。
そして。
――にこり
女は笑顔を向けてきた。別にダイゴがその顔に心を動かされる事は無かった。だから、ダイゴも社交辞令的に軽く頭を下げてやった。
少し足を止めただけで、女はコトブキ側の出口へ向かい、そのまま抜け道を出て行った。
「・・・」
ダイゴは吸いきった煙草を携帯灰皿に捨てると、もう一本咥えて火を点けた。
……シンオウにも結構な美人が歩いているんだなあ。
取り合えず、そんな事を考えながらダイゴは散らかした荷物を片付け始めた。
――夕刻 コトブキシティ
抜け道を後にし、着替えを済ませたダイゴ。登山用のトレッキングブーツ、灰色のカーゴパンツに胸元が大きく開いたシャツに柄物のYシャツを羽織り、丸いフレームの黒いサングラスを掛けていた。
そんな彼の車はバスロータリー近くの信号に引っ掛かっていた。腹が減ったので夕飯にあり付こうと碁盤状の道を走らせていたのだが、どうにも先程から信号に引っ掛かる。法定速度を無視している訳では無いのにだ。
中々進まない車。ふと開いた窓から外を見ると……
『待ってえええ〜〜っ!!』
「――あ?」
女の声が聞こえてくる。何事かと思い、窓から身を乗り出すと、反対車線の歩道を女が必死の表情で走っている。彼女は長距離バスを追いかけている様で頑張って走っているが、バスはスピードを上げて、彼女を置いて走り去ってしまった。
「あの娘は、さっきの」
その特徴的な容姿を見忘れる筈は無い。先程、抜け道で擦れ違った女子高生だ。
「!」
その様子を見ていると、後ろの車からクラクションを鳴らされた。信号はとっくに青だった。
「……良し」
ダイゴは決断した。直進しようとしたが、急遽予定を変更し右折する。そうして、荒い息を吐く女の近くに車を止めるとクラクションを鳴らした。
「あ、あなたは」
そうして、助手席側から窓開けて身を乗り出すと、ダイゴは言った。
「Do you need to ride? Sweetheart」
「……Yes! I want to your help.」
少し格好付けて英語でそう言ってみたら、女の方も英語で見事に切り返して来た。随分と乗りが良くてらっしゃる。
ダイゴが助手席を開けると女は車に乗り込んだ。
「で、何処に運べば良い?」
「あ、はい。……えと、さっきのバスを追って貰えれば」
乗り込んで来た女に行き先を聞く。女は若干遠慮がちに口を開いた。
結構、ハスキーな声。ダイゴ自身も声がしゃがれているので不思議と親近感が募った。
「あれは何処行きのバスだい?」
「ハクタイです。あれに乗り遅れたら、次のバスでは家に帰れないんです」
バスが何処行きなのか、ダイゴは見逃していた。そうして告げられたのは、シンオウ北部の入り口に当たるハクタイシティ。旭川方面でコトブキ(札幌)からはざっと200kmは離れている。
「因みに、お家は何処」
「……カンナギ、です」
確かに、ハクタイ行きの長距離バスは一日の本数に限りがあるだろう。次の便では足止めを喰らうという事は、この女の家は更に奥地にあるのだろうか。
ダイゴが興味から聞いてみると、女は答えた。
「カンナギ! 随分遠いな。遠軽方面?」
「はあ」
流石のダイゴも吃驚した様だ。ロードマップを取り出して確認するも、其処はハクタイから更に東に位置していて、シンオウの背骨とも言えるテンガン山を抜けた麓にポツンと存在する小さな町。
めぼしい産業は無く、ただ何かを描いた古代の壁画が祀られているだけの陸の孤島。若しくは僻地。彼女はその町の住人らしかった。
「……良く判った。其処迄は面倒を見るよ」
「ええ!? で、でもご迷惑じゃあ」
少し、考えたダイゴだったが、乗せてしまった以上は後戻りしたくない。どうせ当ての無い旅なので、ガソリン代を見ず知らずの女に貢ぐ位は構わないだろうと納得した。
そんなダイゴの申し出に女は露骨に戸惑った表情をしていた。
「ああ、気にしないでよ。こっちが勝手にやる事だから」
「……判りました。お願いします」
しかし、ダイゴは折れない。自己満足の御節介焼きだから、何も気にしなくて良いと諭すみたいに柔らかい口調で言ってやると、女の方も遠慮するのは悪いと思ったのだろうか、やや遠慮がちにだが頷いた。
「ふふ。そんな畏まらなくても良いさ。取って喰うつもりは無いんだからさ」
「は、はい」
その派手な印象に比べ、随分と大人しい……否、控えめな性格をしている様だ。人は見掛に由らないと言う奴なのだろうか。ダイゴには判らない。
「あの、乗せて貰って有難う御座います」
「だからそう言うのは良いってば」
改めて女が頭を下げて来た。だが、別にダイゴは本当に礼など欲しくなかったので苦笑する。
未だ若干警戒している様だが、それも目的地に着く頃には幾らかは緩和されている事だろう。
「申し送れました。あたしはシロ「ストップ」
そうして、名を名乗ろうとした女の口を強い口調でダイゴは強制的に噤ませた。
「どうせ、もう会わないんだ。お互い、名前を知らない方が綺麗に別れられるさ。だから、必要無い」
一期一会の原理と言う奴だ。別れに際し、余分な情や情報を抱えれば、その瞬間が辛くなる。だから、そんな荷物はお互いに持たない方が良いとダイゴは女に告げた。
「……クールでいらっしゃるんですね」
「そう見えるかい? そんな事は無いんだがなあ」
目を二、三回瞬かせ、自分の知らない何かを見る様な深そうな目で女が見詰めて来た。
女はダイゴの発言を冷血だと感じた様だが、それは間違いだ。彼は只、TPOに応じてコロコロと被る仮面を変えているだけ。ダイゴ自身が良く判っていた。
只管、北に向けて進路を取る。ゲーム中では表示されない高速道路に乗っての高速走行。もう砂川を越えたので道中は半分と言った所だろうか。
「じゃあ、お兄さんは大学生なんですか?」
「ああ。ホウエン大の一年」
車内では来歴語りで盛り上がっていた。年齢が近い所為か、一端話に花が咲くと、直ぐに二人は打ち解けた。
「ホウエンですか。遠いですね。……あたし、内地にすら行った事無いんですよ。修学旅行以外で」
「僕もそんな感じだね。今は大分自由に出来るから、冒険序に北に来たんだよ」
ダイゴは結局名を明かさないので、女はダイゴを『お兄さん』と呼ぶ事にした様だ。何と無くそれが気恥ずかしいダイゴだったが、言われて悪い気はしなかった。
女は学校行事以外ではシンオウの外に出た事は無いらしい。だが、大学入学迄はダイゴもそれと一緒だった。彼の父親は株主会などで頻繁にホウエンの外に出向く事が多いが、その息子がそうであるとは限らない。
大学生になって時間がかなり自由に使える様になった事で、漸く彼もホウエンの外に出る決心を固めた。それが彼の言う冒険であり、シンオウ旅行の真の目的でもあった。
「で、君は何で乗り遅れた訳?」
「はあ。お恥ずかしながら、研究のレポートを喫茶店で纏めてる間に時間が過ぎてしまって。慌てて追ったんですけど」
ダイゴが気になったのは女がバスに乗り遅れた理由について。どうやら長距離バスには乗り慣れている様なので時間を誤るとは考え難い。何か面白い事でもあったのかと聞いてみると何やら真面目な話が返って来た。
「その歳で研究か。偉い事だね。因みに、何の」
「いえそんな。あたし、年明けに受験なんです。シンオウ大の考古学部志望ですけど、師匠が試しにレポートを提出しろって」
見た目は大人びているが、中身は普通の女子高生らしい。年明けにセンターを控えるという事は高校三年生か。
その歳で既に研究のイロハに手を染めるとは、末は研究者かインテリ色の強い職業を選ぶのだろうとダイゴは純粋に感心した。
「中々厳しいお師匠さんだね。受験勉強も忙しいだろうに」
そう言えば、高校の地学の師匠も決して厳しくは無いけど、考古学的な彗眼に満ちた人物であった。あの人が自分をピックアップしてくれなければ、只の放蕩ドラ息子として終わっていただろうと感謝の念に堪えないダイゴ。
師匠は元気にしているだろうか。そんな事をダイゴは思った。
「いえ、好きでやっている事ですよ。出来次第では下駄を履かせてくれるとか何とか」
「はは。何処の世界でもある話だな」
それを聞いてダイゴは一寸だけ笑った。そりゃあ、誰でも必死になるだろう。
受験に便宜を図ると言うのは並みのコネで出来る事では無い。女の師匠は大学でもかなりの地位に居る人物である事は想像に難くなかった。
「お兄さんは何を研究してるんです?」
「僕? 専攻は地質学。今は古生物学を齧ってるけど、最終的に何になるかは判らないね」
女の言葉にダイゴが答える。火山の国であるホウエンは地質学が割りと盛んである。しかし、地質学とは言ってもその裾野は広く、多領域に渡る境界学問である。
今のダイゴは専ら化石等の知識を増やしている最中だが、何時その興味の矛先が変わるかは本人にも判らなかった。
「地学! あたしも必死にやってますよ。考古学には必須ですから。でも、あんまり頭に入らないんですよね」
「それは向き不向きでしょ。僕は石が好きだから、地質学部に居るんだけどね」
そのダイゴの言葉に女が喰い付く。心なしか、目がキラキラしている様な気がする。
趣味が重なった人間を見つけられて嬉しいのか、兎に角その顔は笑顔で一杯だった。
「あたしも好きなんですよ。ポケモンの御伽噺とか、伝説。それを解き明かしてみたいなあって」
女が何に成りたいのか、最終的に何をしたいのか聞く程ダイゴも野暮じゃない。好きこそ物の上手なれの言葉通り、好きじゃなければ続けられない物好きな商売である事は間違い無かった。
「好きだから、か。まあ、頑張りなよ」
「はい。ありがとうお兄さん」
そして、それは自分自身がそうだと言う事を当然ダイゴは知っている。
激励する言葉が喉を通過するも、それが誰に向けてのものかはダイゴにだって判らない。
ただ、女はそれに嬉しそうに微笑んだ。
「悪い、ちょっと補給させて貰うよ」
「あ、煙草……未成年、ですよね」
窓を開けて、煙草のボックスを取り出して咥えた。それを見た女は珍しそうに覗き込んで来た。別にそれを咎める様な視線は感じない。
「そうだよ? 誕生日来てないから未だ18」
「不良ですか? お兄さんって」
オイルライターで火を吐けた。口元で明滅する蛍火の様な煙草の火。車内を煙草の臭いが包む。
もう一寸で19に届く所だが、それは先の事だ。何れにせよ、軽犯罪法違反である事は変わらないが、ダイゴは大人びた風貌をしているので、高校時代から吸っているが外でそれを咎められた事は一度も無かった。
「そうかもね」
そして、不良かどうかと言う台詞については曖昧に濁した。若さ故の過ち、若しくは血腥い武勇伝について、それを語って恐がらせたくは無かった。
ハクタイ迄後一歩と言う所に来た。だが、其処から先は高速を降りて、下の道をえっちらおっちら行く必要がある。
強行軍が過ぎたのか、ダイゴの腹の虫が餌を寄越せと吼えていた。
「そろそろ腹も減ってきたな。寄ってく?」
丁度、高速のサービスエリアの看板が見えたので、同乗者に指でそれを指して尋ねた。
「お願いします。……そろそろ、トイレの我慢が」
「……そりゃ大変だな」
少しだけ、女の顔が赤くなっていたが、それだけ事態が逼迫していたのだろうか。何にせよ、正直に言ってくれた事を労う為にダイゴは車をサービスエリアに走らせた。
――道中 サービスエリア
トイレ休憩を兼ねた食料調達。サンドイッチと缶コーヒーを三本ばかり抱えて、レジに並ぶ。同乗者の女が会計を済ませている所だが、財布と一緒に出した定期入れから文字が覗いている。
悪いとは思ったが、ダイゴはそれを読み取った。
「(シロナ、ね)」
きっとそれが女の名前だろう。知って何になる訳でも無いが、何故かダイゴはその名前を頭に刻んで置こうと思った。
――カンナギタウン 村長宅前
「忘れ物、無いかな」
「大丈夫みたいです」
話していれば長い道中もあっと言う間だった。もう陽はとうに暮れて夜の闇が辺りを覆っているが、指し示され辿り着いた家の前には仄かな明かりが燈っていた。
かなり大きな日本建築風の屋敷。蝦夷には似つかわしくないそれは、この家がかなりの名家である事を証明している様だった。
「今日は有難う御座いました。……あの、本当に寄っていかれませんか?」
「ああ。一期一会って言うでしょ? もう二度と会わない訳だしさ」
車を降りて、お互いに向かい合う。周囲からは虫の音が聞こえて来て、二人の別れを哀しんでいるかの様だった。
女……シロナは送ってくれたダイゴを引き止めたい様だったが、ダイゴはそれを頑なに拒む。これがお互いにとって一番良い別れ方だと信じているみたいだった。
「あ……そう、ですか」
「む」
途端、シロナの顔が曇り、俯いてしまう。涙を我慢している様なそれにダイゴは罪悪感に囚われそうになる。
「そんな顔をしないでくれよな。困っちまうよ」
「だって」
一度決めたそれをダイゴは譲りたくは無い。しかし、シロナも行って欲しくないと言う様な表情でダイゴを銀色の目を射抜き続ける。
「……あー、判った解った! こいつをやるよ!」
それに負けた様に叫ぶとダイゴは少しだけ決定を曲げる事にした。
シャツの胸元のポケットに手を突っ込んでそれを握ると、シロナの手に握らせてやった。
「え、これ……煙草、ですか」
「と、ライターね。それ、僕のお気に入りなんだ、大事に持っててくれよ」
渡されたそれが最初何か判らなかったが、車内で男がそれを使っていた事をシロナは思い出した様だ。何処にでもあるような古ぼけたオイルライターと、そこそこ珍しい銘柄の煙草。ダイゴにとっては馴染み深い高校時代からの愛用品だった。
「持ってろって」
「だから、再会迄預けるって事。……きっと、来年も僕はシンオウの土を踏む。運が良ければ、逢えるだろうね」
しかし、こんな物を渡されてもシロナとしては困る。彼女に喫煙の嗜好は無いのだ。一体何がしたいのか訊くと、ダイゴは言った。
要するに、再会を祈願しての願掛けだったのだ。
「! そ、それはこの季節ですか? 場所は!?」
「待った! 其処迄は決めてない! そもそも来ないかも知れないしね」
それを理解したシロナの瞳が輝き、一気に捲くし立てる。だが、それは未だに定まらぬ未来。ダイゴ自身もどうなるか判らなかった。
「・・・」
「だから、運さ。でも確率があるだけマシだろう。色違いに出会うよりは簡単だよ」
「そうですが……」
確かに、男の言う通りである。それがどうにも体良くあしらわれている感じがして食い下がろうとするシロナだったが、結局適当な言葉は出て来なかった。
「さて、僕はもう行くよ。君も受験、頑張ってね」
「は、はい! あの――」
これ以上、ダラダラと時を過ごすのは良くない。ダイゴは決心するとシロナに背を向ける。背中越しに掛かるシロナの言葉。
「また、お会いしましょう。お兄さん」
「フッ」
再会を願う声だった。それを背に受けて、ダイゴは鼻で笑った。
……縁があるならば。
ダイゴは車に乗ると、シロナを残し、その場を後にした。
……その後、期限のギリギリ迄シンオウを彷徨ったダイゴは借りた車を返却し、ホウエンへと戻って行った。
そうして始まる大学生としての忙しい日々。時折、シロナの顔を思い出しては、一夏の思い出を噛み締める。
確かにあの女との出会いが一時のスパイスとなっていたのは確かだったのだ。
――数ヵ月後 カンナギタウン 村長宅 居間
季節は師走。大地の全てが白一色に染められていた。それはシロナが高校最後の冬休みに入る少しばかり前の事。
「・・・」
受験生ともなればこのシーズンは熾烈な追い込みを強いられる。シロナも例外ではなく、過去のセンター問題集と格闘中で、その眉間には皺が寄っていた。
前回の模試の判定はB。師匠であるナナカマドの下駄は当てにしたくは無いので何とかA判定に持って行きたくてシロナは釈迦力になって知識を詰め込んでいた。
「ねえ、お姉ちゃん」
「あによ」
そんな時、妹に声を掛けられたシロナは必死の形相を崩す事無く、問題集にしがみ付く。
流石にこんな時に姉の邪魔をする程命知らずでは無い。そうするのには当然、理由があった。
「煙たい」
それはシロナの周囲に充満する煙草の煙だ。視界が白く濁り、咳を催す程に煙っていたのだ。
「あっち行きなさい」
灰皿から煙草を拾って咥えて手で追い払う。本当に邪魔な様だった。
「むう! おばあちゃん! お姉ちゃんに何か言ってよ!」
「無駄じゃ無駄。学校では吸わない事を約束しておるし、今は大事な時期じゃ。大目に見てやりな」
そんな姉の素行の悪さを祖母に訴えるも、その祖母はと言うと完全に諦めた顔をしていた。カンナギの長老である彼女が匙を投げたのだ。それはもう覆らない事態だった。
「何て理屈よ、それ! お姉ちゃん、すっかり不良だよ!」
昔は真面目だったのに何時から姉は変わってしまったのか?
心当たりは無いが、夏休みのやや終盤。お盆過ぎ辺りに何か親切な人に出会ったとか聞いて暫くしてからだろうか。姉が喫煙に手を染めたのは。
それは周囲を驚かせたが、学校で吸う事も無く、受験勉強の合間に偶に吸う位だから周囲は特に強硬な態度は示さなかったのだ。
只、此処数日修羅場が続いているのか吸う本数は確実に増えていて、妹は心配だった。
「あー、もう」
だが、姉はそれを聞く気は無いのだろう。なら勝手にしろと、ほんの少し姉を妨害してやる為にテレビのスイッチを入れて彼方此方チャンネルを変えてやるも、姉は微動だにしなかった。
「あ」
そうして、とあるニュース番組が画面に映し出される。それに興味を惹かれた様にシロナの妹は母音の一つを喉へ通過させた。
「?」
シロナにはそれが気になった。答え合わせの最中なので、集中力が切れてしまったのか、自然と興味がテレビに移る。
「へえ、凄いなあ」
「何?」
感嘆の溜め息を吐く妹の顔が気になって仕方が無い。それ程に面白い内容なのか、シロナは作業を中断して椅子からを立ち上がった。
「見てよ、お姉ちゃん。凄いよね、この人。お姉ちゃんとあんまり歳も違わないのにさ」
テレビの画面を指差す妹。其処には白衣を着た研究者風の男達が何やら難しい話をしている。その中にシロナは見知った顔を発見した。
「――」
シロナが息を呑む。夏のある日に出会った、自分を車で送ってくれた青年だった。
『弱冠19歳の奇跡!? 化石復元装置、遂に実用化』
画面に張り付く字幕には確かにそう書かれていた。
話の概要はこうだ。
ホウエンの大企業、デボンとカントーのグレン島ポケモン研究所の合同研究により、ポケモンの化石を復元する機械が開発された。
以前にもその様な機械が作られた事はあったが、信頼性と成功率の面でとても実用化には程遠かったが、テレビで紹介されているマシンはその精度が過去のそれとは大きく違った。
そして、その開発に大きく貢献したのが、僅か19歳の大学生。デボンコーポレーショングループ御曹司のツワブキ=ダイゴだったのだ。
地元では幼少期から神童と呼ばれ、大人達を圧倒していた様だが、テレビに映る彼の顔には一切の感情が浮かんでいなかった。
「顔もイケメンだし、背も高いし、それに大企業の御曹司? ……きっとこの人、スーパーマンなのね」
「ツワブキ=ダイゴ……」
シロナの頭にはテレビのナレーションや妹の声は一切入って来ない。
噛み締める様にその男の名を呟くだけだ。
「なあに? お姉ちゃん、こう言う人好きなの?」
妹はそんなシロナを茶化す様に言って来た。その顔がニシシと嗤っている。
「……無理無理! お姉ちゃんみたいなタッパのデカい女何てそれだけ恐がらrグハッ」
シロナ自身が気にしている高い身長。それを態々指摘して言う辺り妹の性格は悪い。
だが、シロナはそれに怒る事は無く、只黙らせる為に妹の喉に抜き手を放つとゆっくりとした足取りで自室へと引っ込んだ。
「ダイゴ……」
電気が消えて暗い室内。暖房を切ってあるので寒々とした空気が身体を包む。
シロナはドアに背を凭れさせて、その名前を反芻する。
理由は判らないが、どうしてももう一度会いたかった。
それでも、何処の誰か判らなくて、日を追う度に気持ちが募って、胸が苦しかった。
だから、嘗ての彼がそうした様に煙草を吸ってみるも、堆積する心の澱は煙と共に出て行ってくれる事も無かった。
そんな彼が誰なのか判った。シロナは嬉しかったのだ。
「ダイゴ、さん」
シロナが自分の机の引き出しを漁る。ずっと前に預かった珍しい銘柄の煙草。シロナはそれを取り出して咥える。
使い込まれたダイゴのライター。今はシロナが大事に大事に使っているそれで火を点けた。
「ぶっ! ……キッツぅ! 味も香りも飛んでるわこれ」
肺に煙が満ちると同時にシロナが咽る。自分の吸うそれとは強さが違い過ぎて頭がクラクラする。賞味期限がとうに過ぎていたので、その味は只管辛かった。
363 :
音ゲーマー:2012/02/12(日) 01:04:39.69 ID:d39ufpgA
ゲームであれだけ石好きが強調されているのだから絶対にその道の人間であると思ったし、地学は考古学の基礎でもある。この二人、趣味の一部が重なってるよね。
>>362 お前が… ネ申 か…!
続き大いに楽しみにしてるぜb
>>363 GJ!
>一方が拒絶し、それでももう一方が求め続け
この感じだとなかなかくっつかなそうだから、長く楽しめそうだ
野暮だけど、「I want to your help.」 じゃなくて「I want your help.」 では
U:一年越しの再会
――トクサネシティ ダイゴ宅
「中々ドラマチックな出会いですね。少女漫画みたいだ」
「そうだね。でも、事実なのさ。困った事に」
ユウキの尤もな感想にダイゴが苦笑した。だが、それは事実で、脚色は殆ど無かった。
「で、そのニュースでシロナさんはダイゴさんの事を知ったんですか」
「そうらしいね。本人が言ってたから」
唯一、私情が入っているのはシロナの件。ダイゴ本人の話では無い以上、どうしてもそうなるが、シロナがそう言うのであれば其処に拡大解釈はあれど、嘘は無いだろう。
「それで、どうなったんです?」
「ん」
姿勢を正して座り直したユウキは話の続きをダイゴにせがむ。ダイゴはそれを了承した様に頷くと再び語り出す。
何と無く、だけどさ。また逢える予感はあったよ。
事実、僕達は再び出会ったんだ。
問題なのはその後さ。まさか、あんな事を言い出すとはね。
……出会いから丁度一年
――コトブキシティ バスロータリー前
ダイゴとシロナが出会ってから、一年が経過した。シロナの桜は咲き、シンオウ大の新入生として学籍を考古学部に置いた。
今は夏休みの最中。何かのサークルに属していないシロナはバイトや研究に没頭する事無く暇を持て余し、この日がやってくるのを一日千秋の思いで待ち侘びていた。
「来るかなあ……ダイゴさん」
出会いの発端となった場所で、シロナは呟く。
嘗て、因縁が生まれた地。あの時の出会いで自分の存在が大きく変わってしまった事を彼女は知っていた。
自分にもこんな乙女心があったのかと驚き、また逢えない苦しさを紛らわす様に煙草に溺れ、今ではその容姿と煙草臭さからか、誰も寄り付かない。
全てはあなたの所為。若し、本当に現れたならそう言って抱き付いてやろうと画策していたのだ。
「……無理、かな。やっぱ」
だが、やはりシロナも女である以上は弱気にもなる。去年の去り際、運が良ければとダイゴは言っていたが、その運が自分に向いているのかが全く判らない。この場所に来るかどうかすら不明だった。
……ぐうううぅ〜
シロナの腹の虫が鳴った。昨日は良く眠れなかったし、喉が痞えたみたいに食欲だって湧かなかった。だが、それでもシロナの身体は滋養を必要としていた。
「何か食べよ……」
今は14時に届く辺り。ホウエンからカントー経由の朝一の飛行機で空港に着き、車でやっとコトブキに着く時間。このまま待ち続けるにせよ、戦いは始まったばかり。シロナは近くに軒を構える行き付けのラーメン屋に進路を取った。
運ばれて来た醤油バターラーメン大盛を啜りながら、ちらちらとロータリーの方を眺める。絶え間ない人の群れの中に彼女が求める人物は居なかった。
そうして、箸で麺を摘まんで口に持っていこうとして……
――ズンンッ
「ぶっ」
瞬間、地面が揺れてバシャっと顔にスープが掛かった。
それを紙ナプキンで拭いながら外を見ると、三、四人が歩道に集まっている。
その隙間から見えたのはシンオウでは見た事の無い青く輝くポケモン。そして、背の高い銀髪の男。
「あ」
……間違い無い! ダイゴだ!
張っていた甲斐があったとシロナは荷物も放り出して店の外に飛び出した。
「ダイゴさん!」
「君は……」
周りの人間を押し退けて、名前を呼ぶとダイゴはシロナを見た。去年とYシャツの柄は変わっているが、それ以外は殆ど同じ。
やっと、やっと捕まえた。どれだけこの日を待ち侘びた事か。小躍りしたい気分を抑えて、シロナはダイゴの銀色の瞳を注視する。あれから、一年経過するがその輝きに変化は無かった。
「漸く、お会い出来ました」
「・・・」
自然と湧き出る嬉しさを抑える事はせず、シロナは笑顔をダイゴに送り続けた。
だが、ダイゴは変な顔をしたまま三点リーダーを返して来た。
「あの?」
何だろうか、自分に可笑しな部分でもあるのかと首を傾げてみるも心当たりが無い。
「いや、ほっぺにナルトが」
「!? //////」
で、ダイゴが正解を言うと、途端にシロナの顔が赤く染まる。慌てて顔を拭うと、確かにナルトが手の甲に付着している。地面が揺れてスープを被った時だろう。確かに可笑しな部分はあったのだ。
「お〜い姉ちゃん! 金貰ってねえぞ!」
「……食い逃げ?」
「ち、ちち、違いますよう!」
更に追い討ち。ラーメン屋の主人らしき人物が怒りながらシロナを追って来た。ダイゴは顔色一つ変えずにその様を見ていたが、当のシロナは恥ずかしいやら忙しいやらで頭が混乱しそうだった。
「此処のお勧めって何?」
「味噌全般はイケますよ。口臭を気にしないなら餃子。アイヌ葱がたっぷり」
「オッケー。じゃ、それとネギ味噌を貰おうか」
シロナがラーメン屋に戻ったので、ダイゴも序に食事をする事にしたらしい。シロナはこの店に通い慣れているので、ダイゴの問いに答えると、彼は早速注文した。
因みにシロナが醤油を食べているのは、前に来た時に味噌を食べたからだった。
「で」
「ズルズル……っ、はい?」
半分伸びた自分の丼を啜るシロナ。疑念の視線をぶつけるダイゴが言いたい事はシロナには判っている。
「何故、僕の名を? 名乗らなかった筈だが」
「テレビ、見ましたからね」
ほら、やっぱりだと別段喜ぶ事もせずにシロナは理由を語る。それ程突飛な……それこそ占い師の力を借りた訳でも、超能力でも無い普通の理由だ。
「テレビって」
だが、出演した本人であるダイゴの表情は困惑気味だ。まるでその事を覚えていない様な素振りが少し気になった。
「化石復元装置。受験前の年末に」
「……! あれって全国放送だったの!? ローカル中継だとばっかり思ってた」
「カントーと合同の大きな研究だったんですからそれは……」
其処迄言われて漸く合点が行った様だった。しかし、ダイゴ自身はホウエンで撮られた映像がシンオウに迄届いていた事が信じられない様だった。
随分と自分を過小評価している様なダイゴにシロナは苦笑した。
「参ったね。案外世界は狭いみたいだね。……シロナ君」
「え!」
そうして、ダイゴがやや照れ臭そうに頬を掻くと、次いで出た言葉にシロナは吃驚した。
……自分の名前。彼の様にテレビで名前が出た訳でも無いのにどうして? ……と言う顔をしていた。
「はは、悪いね。去年、サービスエリアで買い物してる時、定期入れが見えちゃってね」
「あー、ずるいですよ、そう言うの!」
「ごめんごめん」
そして、種明かし。ダイゴは去年の段階でとっくに自分の名前を知っていたのだ。それを顔にも出さずに黙っていた辺り随分性格が悪いのでは無いだろうか。
ダイゴの名前を知ろうと苦悩していた自分が一人だけ馬鹿みたいに感じたシロナは頬を膨らませた。
「でも、ダイゴさん凄いですよね。テレビで取材されるなんて」
中々ダイゴの注文がやって来ない。それでも、シロナの中にはダイゴに対し、言いたい事は沢山ある。例の放送の内容についてがそうだ。
自分と一つしか違わないのに、テレビに出る様な偉業をやってのけた事が純粋に凄くて、また憧れる。自分には決して真似出来ない事だとただただ感服していた。
「……別に僕の実力じゃないさ。元々は師匠が確立した理論を僕がアレンジして、研究チームに流したってだけさ。作り上げたのは彼等だよ」
ダイゴの顔が一気に表情を無くす。声のトーンも変わらない。だが、何故か其処には不機嫌さが滲んでいる様な気がした。
彼の師匠はネムノキ博士と言い、ジョウトのアルフ遺跡を調べていた考古学者。大分前に一線を退いた博士はホウエンのダイゴの高校で臨時教師をしていた。その時にダイゴの才を見初めた博士はダイゴに自分の知識を分け与えた。
そうして、ダイゴの好奇心は石のみならず、地質学の広い分野に向けられる様になった。そんな彼の師匠も歳には勝てないのか、今は体調を崩し療養生活を余儀無くされている。
「あの……」
「いや、もう僕にはどうでも良い話なのさ。古生物学にも未練だって……」
そのダイゴの姿に心がざわつくシロナ。だが、掛けられる言葉が思い付かないのか困った表情を浮かべる。
一瞬覗いたダイゴの瞳には絶望や憤りが浮かんでいる気がした。
「ダイゴさん?」
「悪いね。その話は勘弁して欲しい。……処で、君はその後?」
もう一度見た時、ダイゴの顔は何時ものそれだった。瞳も曇り無い銀色の色彩を放っていておかしな部分は見えなかった。
これ以上触れて欲しく無いダイゴは話の矛先をシロナに向けた。
「はい……何とか、合格しましたよ」
それに何と無くだが気付いたシロナは今度は自分の近況を語る事にした。去年、別れてからの受験勉強やら試験の内容、入学した大学での生活等話題は多くあったのだ。
「ズルズル……それで……っ、それで重要な質問があるんだけどさ」
「な、何ですか?」
ラーメン啜りながらダイゴが言う。重要な、と態々言ってきたダイゴにシロナは少し身構えた。
「っ……この辺にレンタカー屋(○産)って無い?」
「え、ええ。駅の反対側にありますけど、どうして?」
口元をナプキンで拭ってダイゴが尋ねたのは車の事。シロナ自身、車に興味も無ければ詳しくも無い。しかし、そのメーカーの店ならば駅向こうにある事をシロナは覚えていた。
しかし、何故そんな事をダイゴは聞くのだろうか?
「困った事に空港からの道でオドシシの群れに遭遇してさ。慌ててブレーキ踏んだらエンストしちゃってね。それは直ぐに直ったけど、ボンネット開けて調べたらエンジンベルトが逝っちまってた」
「……ああ。偶に道路を横切りますよね、あれ」
その理由と言うのがまたシンオウでしか在り得ない様なレアケースだった。過去にシロナも数回だが、百頭近い群れが列を作って公道を横切る場面を目撃した事があった。
エンジンが故障して安全運転が不可な状況ならレッカー移動が必要になるだろう。
「で、電話掛けようと思ったら僕のナビが圏外でさ。仕方無くメタングに乗って君と会った場所近くに降りたら、これまたビンゴだった訳だ」
※図鑑には飛べるとの記述がありますが、ゲームでは無理です。(作者)
「……暢気にラーメン啜ってる場合では無かったのでは?」
「良いよ良いよ。ちゃんとポケモンの力を借りて路肩に避けて、三角停止板も出しといたから」
ダイゴにとっては不運。だが、シロナにとっては幸運だった。若し、ダイゴの持つポケナビが圏内であったなら、二人が再会する事は恐らく無かっただろう。ナビの普及率はシンオウでは未だ未だ低いのが現状だ。
しかし、そんな状況を放置してラーメンを啜るダイゴは随分と図太い……否、中々の大物なのだろう。
「確かに、公道に故障車放置は拙いですね。……判りました。案内します」
「ズズズズ…………済まんね」
「良いんですよ。……あ、餃子一つ貰って良いですか?」
困っている相手が居るのなら、それがダイゴかどうかは別にしてシロナがそれを放置する事はしない。水先案内を引き受ける事をダイゴはスープを直に啜ってそれを飲み干すと頭を下げた。
シロナはそんな事で恩を着せたりはしない。ただ、自分のラーメンを食べ終えて口寂しいのでダイゴの餃子を一つ所望すると、ダイゴはそれに頷いた。
そうして、数時間掛けてレッカー移動を終え、新しい車を借り受けたダイゴは店の前でシロナと向き合う。陽は傾いて、僅かに空が紫色に染まっている。
「さて」
「はい……」
ダイゴが口走ろうとしている言葉をシロナは理解している。だが、どうしてもそれは聞きたくない言葉。だが、それでもダイゴは言うだろう。
「またこれでお別れだね」
「・・・」
吐かれた言葉が全身に刺さる様だった。ずっとその影を追って、やっと出会えたのに、たった数時間でお別れ等納得出来ない。
だから、シロナは己の胸中を瞳に込めて、唯無言でダイゴを見詰める。
「おっと、お嬢さん。これ以上何を望む? 僕は何も要求しないさ」
今にも泣きそうなシロナの顔。しかし、ダイゴは非情だ。甘い顔何て微塵もしない。出会いと別れを繰り返すのが人生だと、聞き分けの無い子供を諭す様な口調で言葉を紡いだ。
だが、シロナだってそんな事は判っている。それでも、譲れない想いと言う奴はある。
何でこんなに執着するのか、今迄自分で首を傾げていた事だったが、漸くその理由が見えた。だから、シロナはそうするのだ。心の儘に。
「だから君も今回はこれ「あの!」
突然、顔を上げて言葉を遮るシロナ。それにダイゴは一歩後ろに後ずさった。
「っ! な、何でしょうか」
それも当然だ。シロナの顔には何らかの決意が滲んでいて、それに気圧されてしまったのだ。
「あ、あたしを連れて行きませんか!?」
「――――ええ?」
そうして耳に聴いた言葉にダイゴは言葉を失った。
……What the hell are you talking about?
『……これは、きっとあたしの初恋。だから、後悔しない様に好きにやる』
そんなシロナの胸中をダイゴが知る由も無い。
372 :
音ゲーマー:2012/02/13(月) 13:09:23.83 ID:zcBWhmaB
>>352 ずっとヒマワキだと思ってた。恥かしいな…
>>366 チェックしてなかった!これだと助けたいになっちゃうな。これまた馬鹿な間違いを…
ありがとう。向こうではちゃんと修正しますた。
373 :
名無しさん@ピンキー:2012/02/13(月) 20:19:25.07 ID:U6CfMOH+
>>372 きゃーダイゴさん渋い!!
シロナさんかわいい!
現在の年齢からして結構前からかっ
出会った時に車内でやるべき
音ゲーマーさんが来ないとこのスレは伸びないなあ
他の人が書いても何の反応もない
まあどうしても見劣りしちゃうから仕方ないのかもだけど
そいつは禁句だぜ?
>>374 そういう発言が職人さんをスレから遠ざけさせるってなんで分からないんだ・・・。
音ゲーマーさんGJ!
続き待ってます!
V:奇妙な同行者
「えと、話が見えないんだけど」
フリーズを脱したダイゴはそう答えるだけで精一杯だ。
まあ、確かに一人旅は気楽で良いが、その反面寂しさが常に付き纏う。ポケモンでは埋められない人恋しさと言う奴だ。
シロナの様な美人の姉ちゃんが側に居れば恐らく楽しい旅になるのだろうが、それとこれとは別の問題だ。そもそも何だってそんな突飛な事を言い出すのかダイゴは理解に苦しんでいる。
「あ、あたしはこう見えても蝦夷っ娘ですし、色々案内出来るって言うか、いえいえそんな能力は無いかもだけど実際シンオウ何て広過ぎて行ってない処も多くて。
で、でも地図を見る事位出来ますし居たら居たらで色々とお役に、え、えっちなのは未だ駄目ですけどもだ、ダイゴさんが優しくしてくれるならあたしは別に……」
だが、理由を聞いてみるも矢継ぎ早に繰り出される言葉の弾幕が理解を容易にさせない。些かテンパっている事だけは何と無く判った。
ってか、えっちって何だ。そんな事を期待していると思われているのだと言うのなら失礼な話だ。幾らシロナが上玉だと言っても、良く判らない相手に獣性を解き放つ程ダイゴは無鉄砲では無いのだ。
「シロナ君!」
「は、はい!」
平常心を失い、錯乱気味なシロナの肩にダイゴは片手を置くと、大きな声で呼び掛ける。それに体をビクリとさせるとシロナは直立不動で固まった。
「落ち着け。そして、深呼吸だ」
「は、はい! すー、は−……」
そんなに早口で駆け抜ければ酸欠になる……と言う事ではなく、落ち着いた状態じゃなければ言葉が通じないからだ。
「落ち着いたな。で、改めて訊こう。どうしてそうしたい」
「それは……っ! これでお別れにはしたくないから!」
リラックスして落ち着きを取り戻したシロナにもう一度ダイゴは問う。その詳しい理由について。シロナは何とか聞き入れて貰おうと必死の表情と声色で叫ぶ。
だが、そんな程度で揺らぐ程ダイゴは安い男ではない。
「決め手に弱いな。僕にどうして欲しいんだ?」
「違います! あたしがそうしたい! ……もっと、ダイゴさんと一緒に居たいから」
どうにもそこからシロナの本気度合いが伝わらない。
それ以前に何を望んでいるのか、何をしたいのか、その必死そうな顔の裏で何を企んでいるのか。……ダイゴはシロナを疑っていた。
彼だって馬鹿じゃない。自分の持つ御曹司と言う肩書き。其処に金の臭いを嗅ぎ付けたハイエナの様な連中が笑顔の仮面を被って近付いて来た事はそれこそごまんとあった。シロナもそんな連中の一人に過ぎないのではないかとダイゴは思ったのだ。
だが、シロナは疑いを向けるダイゴの思いを知らず、只管真っ直ぐな想いを叩き付ける。恋する乙女は無敵だと言わんばかりに。
「もっと一緒にお喋りして、一緒に行動して、ダイゴさんを知りたい。そして、あたしの事も知って欲しいから……」
シロナは只、そうしたいからそうするだけだ。其処に打算や物欲と言った物は付随しない。酷く真っ直ぐで、そして自分勝手なシロナの都合だった。
「ふむ」
その黄金の瞳を見て、瞬間ダイゴは悟る。馬鹿みたいな話だが、この女は本気だと。ダイゴにはそんな妄言に付き合う必要も義理だって無い。
「だ、ダイゴさん。あたし」
「……良く吼えたものだね」
泣きそうな顔でシロナが見て来た。胸中を全部語ったのか、ダイゴの名前を呼ぶ事位しか出来ないのだろう。
その声に耳を貸す必要等、無い。そんな自分勝手な都合に振り回される義理は無い。
何時もの様に作り笑顔を浮かべて別れを告げれば良い。
その筈だったのに。
「気に入った! 乗りなよ、Sweetheart!」
どうしてもダイゴにはシロナの願いを切り捨てる事が出来なかった。それがどうしてか判らない。だが、もう決めてしまった以上、その正体についてはどうでも良い。
だから、車の助手席を開いてシロナを迎えてやった。
……只、これが後々に益に働くかも知れないと言う損得勘定は働いたかも知れないが。
「あ……は、はい!」
許可をもぎ取った! それが信じられなかったが、目の前に開いた車のドアを見てこれが現実だと確信する。シロナは去年と同じ様に車に乗り込んだ。
「車中泊が頻発するだろうし、何処に行くかは一箇所除いて基本、未定。帰るなら今の裡だが、平気かい?」
「とっくに覚悟してますよ」
シートベルトを締めているこの旅限定のパートナー(仮)にこれ以上進むなら覚悟を決めろと念を押す様に尋ねる。
だが、シロナはそれでも折れない。途中下車する気は更々無い様だった。
「上等だ。なら最初は……ショッピングセンターにでも行くか」
「買い物、ですか」
そうして、直ぐに本決まりしたパートナーに最初の行き先を告げた。
「一人増えた訳だから、色々物入りだよ。お金は心配しなくて良いけど、君には先ず必要な物がある」
「何でしょう」
元々、当ての無い旅だが、独りでする以上は別に大した問題じゃあない。去年と同様に気侭に彷徨い、石を掘っているだけで良い。だが、今回はそれで済まない。
趣味の石掘りに同乗者を無理に付き合わせる事は出来ないし、早急に作戦を立てる必要があった。物資調達が最たる例だ。
「着替え。それ一着じゃ洗濯すら出来ないよ。それに替えの下着とか絶対に要るでしょ?」
「あ……た、確かに」
シロナの格好はどうみても余所行きの一張羅。白いパンツに臍が見える丈の黒いキャミに足にはサンダル。頭には去年は無かった特徴的な髪飾りがあしらわれていた。
荷物はやや小さめのショルダーバッグのみ。其処に着替えが入っているとは考え難かった。シロナは今、コトブキにアパートを借りて一人暮らしらしいが、きっと彼女自身も旅に同行するとは当初は考えていなかったのだろう。
「汗臭い女も別に嫌いじゃないけどさ」
「え」
不意に、ダイゴの口を飛び出した意味深な台詞にシロナが固まる。それはつまり……
……どう言う意味ですか?
「意味は特に説明しないよ。自分で考えてね」
「はあ」
ダイゴがアクセルを踏むと、当ての無い旅に向けて車が前に走り出す。
カーオーディオから流れるやたらスタイリッシュなBGMがシロナのテンションを上げて来る。 ……結局、その言葉の意味がダイゴから語られる事は無かった。
男一人、女一人の旅が始まり三日が経過。その間に艶っぽい話は一切無かった。
何処に行くか決め兼ねていたダイゴだったが、シロナが南に行ってはどうかと言うので、それに乗った。
シンオウの南の端。ゲーム中は行く事が出来ない襟裳へ進路を取り、その岬でタマザラシの群れを見て、本当に何も無い場所だと誰かの歌を思い出して二人して笑った。
次の目的地はノモセ。海岸線を北東へ進路を取り、只管走り続けた。
……その途中。
――シンオウ地方 ノモセ南西の海岸線
一日近く走り通して、流石のダイゴもくたくただった。そして、それはシロナも一緒だ。彼女はハンドルは握らないが、それでも居眠り一つせずに地図と睨めっこして、的確にダイゴのサポートを行っていた。
もうとうに日も暮れている。事前に買い込んで置いたレトルトパックのカレーとご飯を携帯コンロで湯煎した物を食し、その日の夕食は終了だった。
アイドリングを切り、シートを大きく後ろへ倒して、後部席のタオルケットを手繰り寄せる。そして、寝そべって窓の外に目をやると辺りは真っ暗闇だった。空は曇っているので星明りすら覗かない。
それが何ともつまらなくて。特に用があった訳では無いが、ダイゴはシロナに話し掛けた。
「冒険したい年頃なのかは判らんが、些か選択を誤ったのでは?」
「どうしてです?」
突然のダイゴの質問に眠ろうとしていたシロナは顔を横に向ける。
「いや、只そう思っただけさ」
運転席のダイゴは瞳を閉じて、只じっとシロナの言葉を待っている様だった。
「そりゃ、楽しい事ばっかりじゃないのは判ってました。でも、それも覚悟の上なんですよ」
僅か三日程度の行動だが、少しはダイゴと言う人間については見えた気がする。
何処まで行っても無色透明。自分と言う個性が無い様にダイゴは振舞う。何があってもマイペース。顔に出して怒る事も、大仰に笑う事も、悲しむ事も無い。
その凡そ空気を読まない発言に励まされた事もあれば、逆に腹が立った事もあった。それでも、無意識的に傷付ける発言だけはされた事が無い。
「今はダイゴさんと一緒に居られれば、あたしはそれで良いんです」
極力、敵を作らない生き方、と言う奴なのだろうか。自分に対してだけでは無く、誰に対してもダイゴはそんな姿勢を取り続ける。普通ならば只の八方美人で終わってしまい兼ねないのに、ダイゴはそれとは違う。
余程、頭の回転が早く、又相手の心の機微に聡いに違いない。
……だからこそ、気になる。一緒に居れば居る程、謎が増えるこの男が。
「……僕も男だ。豹変する事もあるかもよ?」
「その時は……ふふ。優しくして欲しいですね」
ダイゴがシロナに顔を向ける。何時もよりトーンが落ちた声。こちらにはその準備があるとでも言いそうな声。そんな警告的な言葉をシロナが真っ向から受け止める。
望む所だ、と。
「「・・・」」
そして絡み合う二つの色の異なる視線。温度を感じさせない冷徹な白銀と闇に映える壮麗な黄金。お互いの心が通い合う瞬間だった。
「呵っ! 馬鹿馬鹿しい! ……もう寝るよ」
「…………はい」
その瞳にシロナの本気を垣間見たダイゴは話の一切を冗談の一言に済ませ、寝てしまう道を選んだ。
かなり勇気を振り絞った自分の発言が空振った事以上に、自分を真正面から見ようとしないダイゴの素っ気無い態度がシロナには悲しかった。
「あ……」
「ん?」
そうして、自分も寝てしまおうと決めた瞬間、シロナは思い出したかの様に呟く。それを耳で拾ったダイゴは何だと言う顔でシロナを見る。
「そう言えば、預かったライター」
「ああ、あれね。……良いさ。君にあげるよ」
それは去年、ダイゴがシロナに預けたオイルライターだった。再会に乗じて返すつもりだがシロナは今の今迄すっかり忘れていた。だが、今更ダイゴはそれを返して貰おうとは思わない。
「良いんですか? 貰って」
「勿論。大事にしてくれている様だからさ。僕の代わりに使ってやってよ」
「……はい! そうします」
彼女が煙草を吸う時に見たそれは手入れが行き届いて居て、使われているライター自身が幸せそうに見えた程だった。
それなら、ライターはこのままシロナが使う冪とダイゴはそれを譲り渡す。それが初めて貰ったダイゴからのプレゼントの様に感じられて、シロナは嬉しそうに笑った。
――ノモセシティ 大湿原
翌日。ノモセに辿り着いた二人はこの街の唯一の見所である湿原に足を踏み入れていた。
「大したモンだなあ、こいつは」
「嘗ての海の残り香。何度見ても圧倒されます」
その雄大な姿にダイゴも言葉を奪われた。数回に渡りこの地を踏んだシロナであってもその感動は色褪せない。
「ホウエンにも自然は多いけどこれだけの規模のモノは無いよなあ」
この圧倒的な敷地の広さ。湿原内に列車が走っている等、スケールが全く異なっている。ホウエンのサファリも中々に広いが此処には敵わない。やたらと自転車のテクニックを試されるギミックはあるが、その程度のモノだ。
一応、此処もサファリゾーンの体を成してはいるが、二人の目的は観光であって、態々泥の中を分け入ってポケモンを捕らえたりはしない。不用意に服を汚して洗濯に回す真似は時間の無駄だった。
「気に入りました?」
「そう、だねえ」
去年に渡り、二度目のシンオウ行脚。故郷のホウエンとは全く表情が違う自然。文化。人々。同じニッポンでありながら、南北の距離がそのまま住んでいる人間の心の距離になっているかの様だった。
確かに、シンオウは美しい。だが、故郷であるホウエンの水にすっかり馴染んでいるダイゴはそれを素直に認められないのかも知れない。地域性と言ったモノに戸惑っているのかも知れなかった。
「――」
……そうやって。
遠くを見ながら、表情の一つすら変えずに思案に耽るダイゴの端正な横顔。時折吹く風がその銀髪を揺らして、女であるシロナを以っても目を離し難い危険な色気を放っている気がした。
「どうしたの?」
その視線に気が付いたダイゴがシロナを見やる。だが、シロナの反応は鈍く、その声に反応する迄数秒を要した。
「あ……いえ、絵になるなあって」
「はあ?」
――すみません。見惚れてました
そんな旨の発言に今度はダイゴがポカンとした。ダイゴ自身は判らないだろうが、彼は美形である。こんな景勝地で隣を見ればイイ男が居るのである。女であるシロナはその誘惑に抗えなかったのだ。
「うふふ。何でもないでーす」
少しだけ赤い顔をしていたシロナはその顔をダイゴに見せない様に金色の髪を靡かせて、その場を駆け出した。
「ダイゴさ〜ん! こっちー!」
「・・・」
重そうにぶら下る乳房をユサユサと揺れさせて、シロナはダイゴに向けて手を振る。
屈託無い笑顔を見ながらダイゴは確かにこう思った。
『絵になってるのはそっちの方だっての』
だが、それを顔にも口にも出さない。只、やれやれと呟いてダイゴはシロナの後を追う。もう少し、相棒の茶目っ気に付き合ってやろうと思ったのだ。
381 :
音ゲーマー:2012/02/14(火) 12:49:52.59 ID:QXIrehRy
>>374 それって俺の作品が他の人のやる気を殺いでるって事?そんな事言われても困っちゃうな。俺はただ投下してるだけなんだけど…
まあどの道この容量じゃ続きの投下は無理だ。次スレまで引っ込むよ。…ってこの台詞前のスレでも言ったっけな。
なにがしたいも何も
音ゲーマーさんが来ないとこのスレは伸びないっていうのは間違っていないと言ってるだけだが
385 :
名無しさん@ピンキー:2012/02/14(火) 16:33:31.17 ID:wg5LzFOQ
>>384 確かに音ゲーマーさんは凄いが、そんな言い方をすると職人さんが不快な思いをする。
書いてもらってる身なのに、それを言うのはどうかと思うぞ?
>>384 そう言うてめえの発言に責任を持たねえのか?
禁句ってモンを知らんのか?
音ゲーマーさんGJ
続き全裸で待ってる!
・・・なんだけど、荒らしと思われる書き込みにまで反応しない方がいいと思うよ。
>>384みたいなのはどこのスレにもいるから構ったら負け。自分ももう反応しない。
職人さんが来たら全力で歓迎して、投下してくれたら感謝。気に入らなければ静かにスルー。
それだけだ。
これはもう埋めにかかっていいのかね。
埋め。
土里さん召喚!
ミヽー 、_
> `ヽ、
/ /'/ ノィ ヽ
/ / / /イ/ `! ヽ
/イ/ / / _" rー l ! ヽ
レ!イ エ! iヨ }イ、!´ うめないか
レ'ヽ、 ノ i-'
/ ヽ、 ー‐'/|、
,.、-  ̄/ | l  ̄ / | |` ┬-、
/ ヽ. / ト-` 、ノ- | l l ヽ.
/ ∨ l |! | `> | i
/ |`二^> l. | | <__,| |
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 ̄ ̄ ̄ | _ 二 =〒  ̄ } ̄ / l | ! ̄ ̄|
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ミヽー 、_
> `ヽ、
\ / /'/ ノィ ヽ /
/ / / /イ/ `! ヽ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
/イ/ / / _" rー l !ヽ  ̄< けっきょくボクが
/ レ!イ エ! iヨ }イ、! \ \_______
レ'ヽ、 ノ i-'
ヽ、 ー‐', /
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/ /|/ヽへ_ ヽ / / /\ \
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 ̄//| i〕 i〕 .レへノ \ / ・ ・ / /<すごいんだよね
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\\ ノ_, / / /\ _ /\/ \______
いちばんつよくて>\__ ∩ ∨∩ \__/∩
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`ト- /レ1/l:::::::l l`ー' / / ',
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| , /l /⌒マ / ひとり埋めとか そういうのダメよ
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,'ひゃあ!わたし知りません〜 ! ゙i
チャンピオンじゃありません〜 !!
(口) (指) (視) (触) (禁) (戦)
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{:::/:/l 代ヒァ\ レ
ゞ¨ | | \ !
l | l\ ー } l
l | l爻> ィ´,, | ヽ
l | ':,爻从从爻ミ;, ヽノハ
l .:::| \爻メ爻爻; /
. ,イ::::::从 /爻爻;:::!「 ̄
{:::::::::::::::\__/爻爻{::::::i|
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(/ ∨介 `Vツ \{\ 从 :|⌒\_)
}V∧ ' _, \ | :|
/ / 个 、 __ イ} ′ !
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`フ丈爻-─ュ父-=彡 / 、
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i .:: /_ミ \、 .:i i ゚:ト、 人
レ! : i´ ィ心 ヾ.、:.::l l |;;;,\ `Y´
/,,;;;! :. . ト マ丿 i マノ\l l ト.;;;,;ノム
{,,;!{;;;;;;ハ i:.ヾ゚/i/i/i | /i/i/iノ ! |;;\';ノ |
ヽ_ヾイ:〈ヽ:. ト、 、_┃, / ,: i: !ノ,;ノ 人
|:!::ヽ`ヾ、辷:.┃.ィ{ ,′ .l: .i‐'’  ̄`Y´ ̄
厶::弋! Y}/7777! ,′ .:;: ハ |
ト.ト. ///トヘヘ人ハ厶////,レ .::;: /廴:.、
| ヽ`ー{//爻;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;メ'<._ .:イ:. /;i;iム/}:、
ト、 j//厶;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;iムハィ爻ソ∠イ;i;i;〈/ノ \ 、
. 八:::::_/////ソヘi;i;i;i;iメ 7ヘi;i;ソヘ!//〈 \)\
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マ////'イ .:{/////////.:マ/////ハ/////ハ'}|
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