やがて解体作業が終わり、
朝と同じように獲物の皮で包んだ肉と内蔵を引き摺るオオヅノが、厨房跡から出て来た。
彼は硬直する私に歩み寄ると、血塗れの腕を伸ばす。
「―――っ」
篦鹿の有様を思い出して、私は咄嗟に身を引く。
尾を引くように空間に残った襤褸切れの端を、彼の腕が握り捕らえた。
「レヴィン」
殊の他、理知的とさえ言える声に名前を呼ばれて、咄嗟に撃ち掛けた魔法を思い留まる。
オオヅノは朝と同じように私を肩に担ぎ上げ、
もう片手で巨大な肉塊を引きずって炉の部屋へと戻った。
定位置になりつつ有る荷物の側に降ろされ、
彼が炉に火を熾し、周りの煉瓦に肉を並べて行くのを眺める。
熱々の肉を差し出されるのは予想していたので、
彼の調理中に荷物から作業用の革手袋を引っ張りだして置いて、それで受け取った。
「夜は野菜が無いんですね」
半ば彼に抱き始めていた恐怖を誤魔化すように、
冗談めかしてそう言うと、オオヅノの動きがぴたりと止まる。
彼は少し首を傾げていて、それから急に立ち上がった。
「いや待って! 冗談! 冗談だから! 行かなくて良いから!」
何もこんな暗くなった中、山菜を探しに行けなんて言うつもりは無い。
慌てて引き留めると、彼は足を留めて私を見下ろし、首を傾げる。
「野菜、無くても、構いませんので」
愛想笑いを浮かべたまま、しばらく彼と見つめ合う。
謎の威圧感に、背筋を嫌な汗が伝った。
秒針が軽く1、2周したころ、また彼が前触れ無く腰を下ろす。
こっそり溜息を吐き、食事を再開したオオヅノを眺めながら、固くて血生臭い肉に口を付けた。
贅沢を言っている場合じゃ無いのは重々承知しているが、
狼の遠吠えに警戒しながら星空の下、一人で噛じる干し肉よりも喉を通らない。
足の痛み、肉の生臭さ、同席者。あらゆる状況がひたすら食欲を失せさせるのだ。
オオヅノの食事風景は酷く荒々しい。
朝よりも獲物が大物なだけに、その光景はよりショッキングだ。
素手で容易く肉を引き裂き、血の滴る内蔵に食らい付く。
血で汚れた口元が、炉の火に照らされている。
白く浮かび上がる牙が私に向けられないのが、何かの奇跡のようだった。
オオヅノは予想通りの健啖家だったが、流石にあの量の肉を食べきれる訳も無く、
巨大な肉の塊が、炉の上の、元は鍋か何かを吊すための鉤に引っかけられて、遠火で炙られているのを眺める。
肉屋で近い風景を見たことが有るような、別に似ていないような。
肉塊から脂が炉の火に滴り落ちる。じゅうと言う音。
焚き火には、薪がくべられて居なかった。
燃料もなく、最初に供給された魔力だけで安定して燃える火と言うのは、結構な高等魔法の筈だ。
滔々と考えながら、私は昨日と同じように膝を抱えて眠りに落ちた。
以上です。
二話目、やっと名乗る(片方だけ)
続き期待
雰囲気が凄くイイ!期待してます。
投下乙続き期待待機w
自分の今年の新年ヤンデレ始めは
西炯子の「姉の結婚」の精神科医だったw
>>739 前から気になってたんだそれ
買ってくる
>>739 知らなかったからググってみたら相手の男既婚で不倫ものなのか
妻いるのにストーカーってよくわからん 読めば納得できるのかな
男が中学生?の時キモデブだったけど
ヒロインは別に差別しなくてそれに好感持ってて
そんなヒロインに喝を入れられてその後痩せてりでイケメン精神科医に
奥さんはヒロインそっくりで実家の借金の為に
ヒロインと結婚できないならと結婚した
(奥さんは妻子持ちの恋人がいて世間体のため結婚した)
数年後司書のヒロインと再開
図書館の本をパクってるように見せかけて
ヒロインに注意される→公衆の面前で侮辱されたと
訴えない代わりにと関係を迫る
その後ヒロインをストーカー後
ヒロインの方も恋愛や結婚に夢なくて色々とあって
大人の割り切った愛人になろう・・・でも割り切れるわけもなくって感じ
読む人によってはヤンデレというか独特な変人なんだよね
因みにヒロインの海辺の足跡だけでオナニーしてたw
>>742 741だが概要ありがと
話ややこしそうだが男は一途らしいので買ってみる
でも足跡で、とかヤンデレ好き属性ない女性読者だと
ドン引き要素なんじゃないかと心配になったw
>因みにヒロインの海辺の足跡だけでオナニーしてた
すげえww
オナニーしてたといっても
回想(絵)では足跡に足を重ねる絵ぐらいしか多分なかったはず…w
オナニーしてたっていうのは精神科医の会話中の自己申告
だけど嘘はつかないので本当にやってたって事が推測される
それにしても西先生は前作も
ヒロインは仕事できるけど男見る目なく不倫に疲れて〜で
相手役の大学教授もヒロインのおばあちゃんと不倫(肉体関係アリ)してたという
不倫作家になってたのはびっくりしたw
持ち物を紛失したとき、ヤンデレの仕業だと妄想すると少し楽しくなれる
今日もハンカチ無くして落ち込んだけどこれで元気出したw
スレチだったらすみません。
ヤンエロってCDでるんだね
男ヤンデレも需要あるみたいで嬉しい
力也ツベ板の生主の中で勢いトップか
アンチ元気だなあ
ごばくしましたすみあせん
保守ついでに妄想
ヤンデレにお世話されちゃうヒロインもいいけど、ヤンデレのお世話を頑張るヒロイン萌え
執事とお嬢様もいいけどご主人様とメイドさんが好きだぜ
ついでに、ヤンデレは常に片思いじゃないとだめなのかなあ
相思相愛だとただの純愛?
いやメイドとご主人様で相思相愛でも良いじゃんって言うか
投下作品に相思相愛で男優位な作品があるから駄目な訳なかろう
主従で女の子劣位興奮する
何時でも犯せる感が最高だな
大好きだぜ!ヤンデレ両想い!
キ、キオたん……
そういえばヤンデレ両思いだとすると
ほとんどがヒロインがヤンデレに気がついてないパターンが多いね
気付いていないのも良いし
気付いて恐怖し呆れてもいるが情やなんだで今更嫌いにもなれない
どちらも良いな
ヤンデレ両想いで思い出したが、ラスト・フレンズの宗佑はヤンデレっぽい
ドラマは見てないがシナリオ(1〜3話)を読んでみたら病んでた
毎日彼女の仕事が終わるまでずっと外から眺めつつ待ってるとか、俺以外の男と関わるなとか、帰ってくるのが遅いと拗ねたりとか、ぬるめだけど。
映像じゃなくて文字で見たから萌えたのかも・・・
>>757 当時映像で見てたけど、ジャニーズのイケメンがキモく見える破壊力だったよ
そんだけ演技が上手かったと言えるのか…映像はきついね〜
ヤンデレ好きだがDVはアカン
>>758 やはり「三次(?)は惨事」なのか・・・
実際は萌えてる場合じゃないもんねorz
しかし色んなヤンデレがおるな
ヤンデレ好きの趣味嗜好も多岐に渡りそう
惨事男はどうでもいい
>>755 ヒロインが純粋天然ちゃんで病んでいく彼氏に気付かず、それどころか病んでる所も愛されている故だと受け入れていくとかそんな話が好きです
>>758-759 俺はDVネタも大好きだけど
惨事女はイラネ、二次元なら幼女からロリババアついでに男の娘まで犯せるぞ
オナホ使用で
ヤンデレ男に虐められる二次元の女の子prpr
流血沙汰起こしたり犯したりしてる現場の様子よりも、そうなってしまうまでの過程と葛藤がメシウマ
>>763 過程と葛藤と現場の様子とその後の精神情景まで描写したら完璧じゃね?
確かに惨事男ヤンデレは萎えるよな
惨事元男はグロくて抜けない
洒落にならんし可愛げがない
せやな
まあ、ヤンデレとヤンデレに迫られる女最高って事で一つ
そもそも虹と惨事での嗜好って一致するもんか?
現実と妄想を区別できない人はちょっと…
二時でも三時でも暴力が入ると途端にうわあ……ってなる
精神的にじりじり追い詰めていく系がいいよ。
精神的にじりじり追い詰めつつ暴力も振るえば最強だと思う
短いの一本行きます。
読み切りホラー風(を目指した)、文学ヤンデレ男。
花びらのように降り積もる文字と紙に沈んで行くような。そんな光景が似合う少女だった。
部室棟の二階角。文芸部の部室は山のような書物に埋め尽くされている。
学校の図書室や、近くの市立図書館で廃棄される本を貰ってきたり、
在校生や卒業生が置いていったり。
部の創立以来、部室に貯め込まれた本の数は、図書室を越えているとも言われている。
書棚は壁際を覆い尽くしてもまだ足らず、室内は回の字のような有様を呈している。
薄暗い室内に、独特の本の埃の匂い。
本が日に焼けないようにと掛けられた分厚いカーテン。
その隙間から射し込む光に、埃が白く踊る。
この部屋の主と言っても良いのが、文芸部の部長である貴子さんだ。
貴子さんは、文学少女と言い表すにふさわしい少女である。
脚立に腰を降ろして開いた本に目を落とした姿。
腰まである黒髪は、絹糸のように真っ直ぐでなめらか。
肌は日に焼けていない、透き通るような白。
作り物めいて整った顔立ち。すっきりとした顎から細い首へと繋がっている。
古臭いと不評のセーラー服も、彼女が纏えば一変する。
カーテンの隙間から差し込む細い光の帯が、黒いスカートの端に掛かっている。
夜のような深い黒。緞帳のように垂れ下がる裾から覗く膝の流線。
アイロンの利いたセーラーの白い袖。伸びる手首の細さ。
広い襟に走る黒いラインの直線。胸部の柔らかな曲線。
モノトーンで構成される中で、首もとのスカーフと唇だけが淡く赤い。
年若い少女の浮ついた所が無く、由緒有る歴史の正当を感じさせる佇まい。
垢染みた所のない、古い文学の本に出てくるような少女だった。
放課後、僕は床に積み上げられた本に腰を降ろして彼女を見ていた。
文芸部の部室には、僕と彼女しかいない。
彼女は本を読んでいる。僕は彼女を見ている。
傾き掛けた陽光でセピア色に霞む室内。
静寂を彩るような遠い喧噪。
幻想的な絵画のような光景。
完成された世界。
涙が滲むほどに愛おしく神聖だった。
彼女を表しきれる言葉を僕は知らない。
言語はあまりにも無力で不自由だ。
だから僕はただ彼女に敬服するしかない。
この完全な世界に、彼女は僕を置いてくれた。
この完全な絵の前に、立つことを僕は赦されている。
だから、
僕はゆっくりと立ち上がり、本棚を回り込む。
だから、
本を読む彼女は美しい。
だから、
僕はこの完全な世界を永遠のものにしたい。
だから、
彼女は世俗になんて、まみれるべきではない。
だから、
彼女はあの遠く美しい文学の世界にこそ還るべきだ。
だから、
僕は寄りかかるようにして書棚の一つを押した。
転倒補強など付けられていない棚は、思った以上に簡単に動いた。
ある一点で手の中の重さが消える。
限界を越えて傾いた書棚が、ぐらりと倒れ始める。
僕は次の書棚の裏に回り込む。
その時、棚と棚の隙間から貴子さんが見えた。
棚の倒れる気配に気付いたのか、ふっと本から視線を上げる。
黒曜石のような瞳が見開かれる。無数の文字がその網膜に映り込む。
形の良い唇が開かれ、そこから悲鳴が零れる前に、
その姿は雪崩のような紙と文字の堆積物に飲み込まれた。
ぎっしりと本の詰め込まれた書棚が、無粋に静寂を掻き乱して倒れた。
僕は思わず足を止めてその光景に見入る。
書棚と本との積み重なった下から、赤い液体が滲み出した。
血だ、彼女の血だ。
赤い液体は、散らばった本のページに染み込んで行く。
彼女の命が本に吸い込まれて行く。
彼女は今、正に、文学の世界へと還って行くのだ。
授業を受ける彼女の後ろ姿だとか、友達と談笑する彼女の横顔だとか、本の感想を楽しげに語る笑顔だとか。
彼女との思い出が次々に浮かんでは消えて行く。
形容し難い感情が、僕の中に沸き上がる。
高揚と喪失感と、怒りと喜びと、全能感と無力感と。
感情は電流のように僕の体を駆け巡って、そうして僕に深い痛みを残す。
ふと、小さく呻く声が聞こえた。本の山の下からだ。
まだ、浅い。もっと深くまで、彼女を埋葬しなければ。
彼女を埋葬するために必要なのは、土くれではなく紙と文字だ。
本の世界こそ彼女にふさわしい。
僕は足早に二つ目の書棚の裏に回り込む。
倒される書棚から零れる文字と紙に彼女が沈んで行く。
さようなら、貴子さん。
あなたと僕この痛みを以って、あなたは永遠の存在になった。
以上です。別に怖くなかった。
蛇足。ヤン男の名前は鈴木くん。貴子さんは結構普通の娘。
鈴木くんは現場から血の染み込んだ本を一冊持って帰りました。
GJ!
静かな雰囲気が素敵です。気に入った。
殺してしまうとはなかなか考え方が歪んでるぅ
>>773-775 GJでし
しかしよし殺そうとなるあたりカッ飛んどるなw
そして血の染みた本とか素晴らしい
GJ
まさにヤンデレった思考の鈴木くん
しかし金田一や明智みたいなのに
結局は捕まりそうな雰囲気を感じてしまったw
GJ!
綺麗だった
短いのに上手くまとまっていて読みやすかったし、世界観が凝縮されていていい読後感
GJでした。
エロなしの単発いきます。
ツンヤンが精一杯デレたらこうなったの巻
狂おしい執着もいつか冷める。
愛とは、永続はしないもの。
いずれ熱情は霧散するだろう。
彼女は、無防備に眠りこけている。
細首に絡めたこの指先に力を籠めたらどうなる?
抵抗しないのは、私を受け入れるという事でいいんだな?
今を止めてしまおう。
そうすれば、お前は私だけのもの。
身じろきして、彼女が目を開けた。
急いで引っ込めた私の手を訝しげに見ている。
「お目覚めか?」
「きゃあ!」
やはり、拒絶か。
「寝過ごしました?すみません。」
「いいや定刻どおりだ。
あと少し遅かったら、理性がもたないところだったがな。」
彼女は赤面して、乱れた衣の首元をかき合わせている。
あの白い手足を拘束して辱めたい。
絶望の涙に濡れる彼女が見たい。
何よりみずみずしい血肉を余さず喰らい尽くしたい。
「忠告だ。
私を脅威の数に含めないでいる事は理解したが、
施錠くらいして寝るんだな。」
そうだ。これでいい。
お前は私に心を許してはダメだ。
さもないと死ぬぞ。
完
>>780 良い感じに狂ってるなw
日常が見たいw
愛してるがゆえに命を狙ってくるヤンデレ
しかしそれに気がつかない天然ヒロインいいなぁ
しかし傍から見ると貞操の危機に見えるという三重に美味しいですw
流石景のGEのヒロインの元彼が
いい感じに静かなるヤンデレってかんじでいいなぁ
まだ読んでる途中なんで違うかもしれんけどw
透流はヒロインと話し合えば元サヤに戻れると山奥に監禁するいいヤンデレw
ヒロインと別れるきっかけになった奴らをフルボッコにして写真撮ったりして
その後弁護士になってるところが怖い・・・
そして別の女にアピられてるのに全く気がついてない