【俺の妹】伏見つかさエロパロ20【十三番目のねこシス】
う〜〜ん、そういや、川原さんだって、開業医の娘なんだよな。スケールは、保科さんや沙織とかに比べ
ればささやかかも知れないが、やっぱお嬢様なんだと今さらながら実感しちまったぜ。
相方の陶山は、ダークグレーのスタンドカラーシャツにカーキ色というかオリーブ色に近い腰丈の
ジャケットを羽織り、黒いデニムを穿き、八ピースの丸っこいハンチングを被っている。
対する俺たちはというと、俺は普段と代わり映えのしない長袖のダンガリーシャツにジーンズで、あやせ
はチャコールグレーのコットンパンツ、白黒の市松模様の長袖ブラウス、それにいつぞや加奈子が出た
メルルのイベントで桐乃の目を欺くために着用したキャスケットを目深に被っている。
「済まねぇ。ちょっと遅れちまったみたいだな」
「いや、今がちょうど九時だ。こいつに急かされて、俺たちはだいぶ早く着いちまったのさ……」
陶山は自分の腕時計をチラ見してから、相方の川原さんに向けて顎をしゃくった。
その川原さんは、喜色満面で、時折、「うほほぉ〜〜い!」とか訳の分からないことを口走っている。
こりゃ、桐乃以上にヤバイかも知れねぇ。
あやせはハイテンションな川原さんを警戒してか、俺の後ろの方で緊張して縮こまっていた。
「もう分かるよな? あのお姉さんが川原さん、で、眼鏡を掛けているのが、川原さんの同級生で陶山だ」
「よろしくぅ〜〜〜。川原瑛美でぇ〜〜す」
「俺は陶山亮一。高坂とはいつも一緒に昼飯を食う仲なんだ。今日はよろしく……」
陶山は警戒しているあやせを気遣っているのか、できるだけさりげなく振る舞うように心掛けていること
が何となく分かった。
本人が『気遣いの陶山』を自認していたが、俺も、たしかにそうだと思うな。
「で、その子が、高坂くんの妹さん? どれどどれ……。うっひゃ〜〜〜、かわいい〜〜〜」
気遣いの陶山に対して、川原さんは自分の欲望に忠実なタイプらしい。ずぃ! とばかりにあやせの前に
歩み寄り、帽子で顔を隠そうとしているあやせを舐め回すようにガン見している。
相方の陶山が、「おい、大概にしろ……」という小言とともに、カーディガンの裾を引っ張ったが、当の
川原さんはお構いなしだ。
「は、初めまして、こ、高坂あやせです。あ、あやせって呼んでください……」
その瞬間、川原さんが「ん?」と呟き、帽子を目深に被っているあやせの顔を凝視し直した。
「……あ、あやせちゃん?」
「は、はい……、あ、あやせと申します……」
おずおずと言いかけたあやせも、川原さんと目が合った瞬間、「えっ?!」と短く叫んで身を強張らせている。
「ど、どうしたんだよ?」
「………………」
俺の問い掛けにあやせは押し黙ったままだ。
陶山は川原さんに、「ひょっとして、知り合いか?」と尋ねている。俺から見てもそんな感じだったよな。
だが川原さんは、
「知り合いっていうか、何ていうか……。ど、どう説明したらいいのかな……」
と、言い淀んでいる。俺と陶山は顔を見合わせた。本当に何なんだろうね。
言い難そうな事情がありそうなところが、かえって気になるよな。だが、それよりも……、
「それはそうと、俺と瑛美は、千葉から来るっていうお前の友人とお前が一緒の時、お前の妹さんの面倒を
見なきゃならん理由を未だ聞いてない……」
こっちが先決だ。昨夜の電話でも、『会った時に話す』と約束したからな。
俺は、千葉から来る友人は(沙織は神奈川からだが……)世に言うオタクで、あやせとは趣味が合わない
から一緒にはさせたくないことをまずは手短に話した。
「なるほど……。それで妹さんを隔離する訳か……」
「うん……、できれば隔離したいんだが、こいつは俺と俺の友人が何を話すのかが気になるらしく、目立た
ない様に監視したいそうだ。しかし、あやせ一人だとちょっと不安だから、二人にお目付け役を頼みたいん
だよ」
言い終えて気付いたが、これってあやせを子供扱いしてるよな。案の定、誇り高き自称俺の妹様は、
膨れっ面で会話に割り込んできた。
「あ、兄は、オタクな連中と付き合っちゃいけないと思います。わ、わたしは兄のことが心配で……」
「“お兄さん”思いなのね」
すかさず川原さんの突っ込みが入った。
だが、川原さんは、『お兄さん』の部分をことさら強調したような気がしたが、まぁいいか……。
「おっと、メールが来たか……」
俺は鳴動している携帯電話の画面を確かめた。沙織からのメールだった。
『京介氏
本日は宜しくでござる
しかしながら、待ち合わせの場所を変更致したく候
中央駅ではなく、中央駅の南口にある喫茶店にて落ち合いましょうぞ
しからば、御免』
という文面とともに、店の所在を示すURLが張ってあった。
しかし、俺は駅の南側には一回も行ったことがないから、沙織が指示した喫茶店にはまるで心当たりがない。
「知ってるか? この店……」
俺は陶山と川原さんに沙織からのメールを見せた。こういう時に頼りになるのは地元の人間だな。
「ああ、ここね。ものすごくおっきな喫茶店よ。ワンフロアが、うちの大学の学食ぐらいありそうな……」
「そんなにでかいのか……」
それはかえって好都合だな。あやせが、他の客に紛れて、俺と黒猫と沙織のやりとりを監視し易くなる。
「場所も中央駅のすぐそばだから、地下鉄で行くのがいいだろうな」
幸先よし……。俺は、 黒猫や沙織とのシビアになりそうな話し合いと、それをあやせが監視するという
厄介なミッションの成功を半ば確信した。これなら、万事うまくいくだろう。
俺とあやせとの関係修復を除いて……。
地下鉄に乗って俺たちは移動し、目指す店の前にたどり着いた。
「なるほど。たしかにでかいな……」
都内にもこれだけの規模の喫茶店は少ないだろう。いや、違うか。東京は、あちこちに喫茶店があるから、
大規模なものはそうそう必要ないんだろうな。
都内に比べて鄙びたところがあるこの街では、喫茶店の数が少ない代わりに、こうした大規模なもので
カバーしているということか。
「高坂から先に入った方がいいだろうな。そうすれば高坂の友人たちの目は高坂に集中する。その隙に、
俺と瑛美があやせちゃんを後ろに隠して入店するよ」
「だな……。そうしてくれると助かるよ」
陶山も川原さんも背が高いから、あやせの姿をカムフラージュしてくれるだろう。
俺は三人に「じゃあ、先に行くぞ」と告げて、自動ドアではない扉を押し開けた。
店内は思った以上に広く、ざわめいていた。これじゃ黒猫や沙織がどこに居るのかさっぱり分からねぇ。
だが、店内中央辺りのコンパートメントから、さっと右手を挙げる奴が居た。バンダナに眼鏡姿の沙織
だった。そのコンパートメントは、入り口からは太い柱で一部分が遮られていやがる。これじゃ、沙織が
挙手してくれなかったら分からなかったな。
「やれやれ……」
これから始まる話し合いのシビアさを思うと気を引き締めなきゃならないんだが、ようやく沙織を見つけ
られたってんで、ちょっと安堵しちまった。油断は禁物だってのによ。
沙織が居るコンパートメントを遮っている太い柱を回り込むようして歩いていくと、いつもながらのゴス
ロリファッションでキメている黒猫の姿が見えてきた。そして、黒猫の隣りには……、
「な、なんで、お前がここに居る!!」
オレンジ色のタンクトップの上にダークブラウンのレザーっぽい腰丈よりも短いジャケットを羽織り、
下はマイクロミニスカートにブーツのあいつが、俺の目の前に居やがった。
そいつは、大きな瞳でぎょろりと俺を睨みつけ、呪いの言葉を肺腑から絞り出した。
「………アンタ。逃げるなんて許さない………」
(以降、『火』(Kwa)に続く)
以上で『風』は終わりです。
それにしても、単発レスのジャミングが連投規制よけになりました。
IDを変えて単発レスするしか能のない輩も多少は役に立つんですね。
一応は礼を言っときますか。