つC
自分の想像していたものと違うと執拗に文句つけてくるクレーマーを押し切れるなら無問題
ちょっとでも叩かれたら書けなくなってしまうようなら避けた方がいいかも
個人的には続きが読みたいけど…
まあ、イカにして男の子バレをさせないかとか、有るよね。
着替えとか、行動とか、色々。多分、更衣室とかシャワー室とか洗面所とかトイレとか男女別で、しかも、場合によっては全裸になる場で。
男の子バレ後の口止め、もね。
『籠球少女(偽)』#2
思えば、入部したばかりのバスケ部が、3年の先輩の不純異性交遊による不祥事(なんでも12歳の子を誑かしたらしい)で1年間の活動停止となったことがすべての始まり……は言い過ぎでも、ケチのつき始めだったと、昴流は溜息をつく。
そもそもバスケの腕を見込まれて体育科に入学したのに、そのバスケ部が活動停止となると、何のためにこの七城高校に入ったのかわからなくなる。
あまりのショックに昴流が、翌日の火曜日から3日続けて学校をサボったのも──まぁ、決して良い事ではないが──十分同情の余地があると言えるだろう。
そして、プチひきこもり状態3日目の木曜の夕方、ミホ姉こと美穂が来襲し、昴流にちゃんと学校に行くことと、自分が顧問をする女子バスケ部の臨時コーチをすることを(主に肉体言語をもって)、承知させたのだ。
とは言え、もともとアウトドア派である昴流も、部屋に引きこもっているのはいい加減飽きていたし、そんなコトをしても何の解決にもならないことは理解はしていたのだ。
3日ぶりに顔を出した学校は──幼なじみの少女・萩谷アオイだけは、心配そうな素振りを見せたものの──呆れる程何も変わりはなく、昴流は拍子抜けした気分にさせられた。
そう、バスケ部が活動停止になろうが、自分が数日無断欠席しようが、世の中は何も変わらない。その事実が、良くも悪くも昴流にある種の「悟り」めいた諦観をもたらした。
五月病になった新入社員のような気分で授業時間を適当にやり過ごす。
いろいろ気遣ってくれるアオイには悪いと思うが、こちらも適度にあしらって振り切り、本屋で適当に時間をつぶしてから帰宅する。
もっとも、その際、しっかり「ミニバスケットのルールと指導」という実用書を買ってるあたりに、彼の義理固さが見てとれるが。
* * *
そして迎えた土曜日。授業が終わるや否や、HRもまだだと言うのに堂々と教室に押しかけてきた美穂に昴流は拉致され、有無を言わさず彼女の愛車に押し込まれた。
「ったく。教師のクセに無茶が過ぎるぞ、ミホ姉」
「にゃはは、ごめんごめん。いや、昴流のこと信用してないワケじゃないけどさ。どうせなら、少しでも長くあの子達と練習してもらいたくて──時間もないことだし」
ふぅん、と聞き流しかけて、最後のひと言が微妙に引っかかる。
「……おい、ミホ姉、何か隠してるだろう?」
「さ、さぁねぇ〜」
トボケようとする彼女を何とか問い詰めたところで、女子バスケ部が来週の土曜日に練習試合を控えていて、その結果如何で廃部になることを昴流は知ってしまう。
「ちょ、なんでそんな大事なコト黙ってたんだよ!?」
「言えば、アンタ、絶対尻ごみしたでしょ?」
「そんなコト……」
ない、とは言えなかった。
確かに、1週間のコーチでできることなどたかが知れている。それでも、その子たちが負けたとしたら──自分は彼女達の「バスケをする場所を守ってやれなかったコト」を悔やみ、落ち込むだろう。
そして、それがわかるからこそ、ハンパな関わり方を拒否したはずだ。
「くそっ! せめて俺自身が試合に参加できれば、いろいろやり方もあるのに……」
「(ちゃーんす♪ 確かに聞いたわよ〜)それより、昴流、着くまでにコレでも飲んどきなさい。生憎、昼ご飯食べてる暇はないからね」
そう言って、ブリスターパック入りのジュースを助手席に投げてくる美穂。
「ひでぇッ!!」
苦笑しつつも、パックにストローを刺して飲み始め……たトコロで、ブフッと吹き出しかける昴流。
「な、なんだよ、この「どろり濃厚果汁200%」って?」
「ん? 言葉通りでしょ。本来の半分の量まで煮詰めてあるんじゃない?」
昴流の抗議をサラリと美穂は受け流す。
「いやぁ、名前がおもしろそうだったんで、つい買っちゃったんだけど、さすがにためらわれてね〜。で、どう、味の方は?」
「……第一印象よりは、マズくない」
とは言え、空き腹にめちゃめちゃ甘い果汁ジュース(カ●ピス原液なみの濃さ)を流し込むのはちょっとした苦行だった。まぁ、カロリー補給だけはそれなりにできそうだが……。
四苦八苦しつつジュースを飲み終えた昴流は、だから気付かなかった。
パックの角に一度開封された痕跡があったことに。そして、ジュースの濃さにまぎれて、微妙に味がヘンだったことに……。
* * *
「ほら、そろそろ起きな、すばる!」
ゆさゆさと体を揺さぶられて、昴流は自分がクルマの中で寝てしまっていたことに気付いた。
「あ、ああ、ごめん、ミホ姉。ちょっとウトウトして……」
言いかけて、軽い違和感に襲われる。
確か、学校から直で拉致られた自分は、紺色のブレザーとスラックスという七高──七城高校の男子制服を着ているはずではないだろうか?
それなのに、妙に手足がスースーするような気が……。
「!」
気のせいではなかった。長袖長ズボンから、いつの間にか半袖の体操服に着替えて──もとい着替えさせられていたのだ。
いや、体操服姿であること自体はいい。コーチ役とは言え、指導上身体を動かす必要がある時もあるだろう。
勝手に着替えさせられたのも、まぁいい。いや、よくはないが、どうせこんなコトをするのは美穂くらいのものだし、恥ずかしさが皆無というわけではないが、姉弟か従姉弟に近い感覚の叔母と甥の仲だし、今更だ。
問題は──どうして、スポーツバッグに詰めて用意してあった、自分の七高の体操着ではなく、見覚えのない赤い縁取りの体操服を着せられているのか、という点だ。
おまけにボトムは、ショートパンツではなく3分丈程度の紺のスパッツ。ピッチリして臀部のラインが出過ぎるので、パンツ一枚でいるような気恥しさを覚えてしまう。
「おい、ミホ姉! 説明してくれるんだろうな?」
さすがにコレは「お茶目なジョーク」で済まされるレベルのイタズラではないと、彼なりに険悪な声で問い詰めた昴流だったが……直後に、聞くんじゃなかった、と後悔するハメになる。
美穂によると、5人しかいない女子バスケ部の部員のひとりが昨日利き手をケガしたと言うのだ。幸い骨に少しヒビが入った程度らしいが、それでもバスケットボールの試合はおろか練習だってできるはずがない。
このままでは不戦勝になるし、ケガを押してその子を棒立ちのカカシとして出場させても、結果は変わらないだろう。
「そこで、アンタの出番ってワケよ」
「フザケんな! 高校生が小学生の試合に出られるワケがないだろ!?」
幼いころからの経験で、激昂する昴流をいなすコトにかけては美穂の右に出る者はいない。
美穂は、女バスの窮状を訴えて出鼻をくじき、眠っている間に撮った写真をネタに脅し、さらに「たった1週間の我慢だから」となだめすかして、ついに「バスケ経験のある女子小学生」のフリをすることを、昴流に承知させたのだった。
* * *
「いーい? このクルマを一歩出たら、アンタは、あたしの姪っ子で、とある私立小学校に通う6年生の"高村すばる"ちゃんだからね」
「はぁ〜……もぅ、好きにしてくれ」
「おっと、言葉使いにも気をつけなさい。まぁ、とりあえずは初対面だし、丁寧語でしゃべるようにしてれば、ボロは出ないわよ」
学園の駐車場でクルマを降りた時、一瞬そのまま逃げようかとも思ったのだが、生憎と着替えの入ったカバンは美穂のクルマのトランクの中だ。この格好のまま外を出歩きたいと思うほどの勇気はなかった。
「それにしても、俺「私か、せめて僕にしときなさい」……ボクの正体が、本当にバレないと思ってるのか「ですか」……思ってるんですか?」
体育館までの道のりで、小声で(一部言葉遣いを正されながら)会話する。
「思ってるわよ。だって、アンタ、男にしとくにはもったいない程、可愛い顔してるし」
「ぐっ……!」
「背だって165センチしかないし」
「ぅぐッ!」
小柄で童顔(というか女顔)という昴流のコンプレックスを的確に突いてくる美穂。
「手足も華奢で撫で肩だし、体毛も薄いしね。アソコだって……」
「はぅわぁ!」
もうやめてー! スバルンのライフはもうゼロよー……と、自分でツッコミながら、果てしなく落ち込む昴流。
「──って言うか、なんでミホ姉が、お…ボクのアソコの毛のことまで知ってるんだよ!?」
何とかとっかかりを見つけて反論するものの……。
「さっき、着替えさせる時に見たから」
当たり前のような顔をして、シレッと返す美穂の答えに、完全に心を折られる。
「も、もしかして、この下は……」
思わず履いているスパッツに視線を落とす昴流──いや、すばる。
「にゅふふ、もっちろん、かーいいの履かせといてあげたよ〜。まぁ、急な話だったから、近くのウニクロにあったローティーン向けのショーツだけど」
おそるおそる今履いてる(履かされてる)スパッツのお腹の部分をめくりかけたすばるは、白と水色のストライプが見えた時点で、あわてて手を離した。
「し、縞パンとか、何考えてんだよ、ミホ姉ぇ〜!!」
「おろ、クマさんパンツの方が良かった? それとももっとアダルティなヤツが好み? うーん、でも一応"すばるちゃん"は12歳の女の子だから、背伸びし過ぎるのはどうかと思うよ」
スッ惚けたことをヌかす美穂。無論、わかっていて弟分をからかっているのだ。
何と言ってよいかわからず、目を白黒させてる昴流に、幾分マジメな顔になって、「女子小学生としての擬装のため」と言い聞かせる。
「そう言えば、こんなピッチリしたの履いてるのに、その……ま、前の膨らみが見当たらないんですけど?」
(まさか、昔冗談で言ってたみたいにハサミでチョン切ったわけじゃあ……いやいやさすがにソレはない!)
「ああ、それはタックって言ってね……」
得意げな美穂の説明によると、タックとは女装をたしなむ人が自分のち○ち○を隠すための技術らしい。要は、竿を後ろに倒して手術用接着剤で固定し、球を体内に押し込んだうえで、余った皮を貼り合わせて女のソレに近い形に見せかけているのだ。
「ちなみに、上はブラじゃなくてカップ付きハーフトップにしといてあげたよ。ヌーブラ胸に貼り付けてあるからちょっと膨らみもあるように見えるしね」
何、この細やかな心遣い?
こういう気配りはもっとまともな方面に発揮してほしい……と心から願うすばるなのだった。
-つづく-
GJ!
タックとは、トイレシーンが楽しみじゃねーか
>>663 無粋なツッコミすまんが、「不戦勝」ではなく「不戦敗」ではなかろうか?
667 :
【籠球の人】:2012/08/09(木) 11:32:11.21 ID:fwnBTGdJ
>無粋なツッコミすまんが、「不戦勝」ではなく「不戦敗」ではなかろうか?
おぅふ! おっしゃる通りでございます。
あと、ノリと勢いで書いてしまった1話と食い違う部分(缶ジュース→パック、部屋で目覚める→車中でetc)は、以後、2話ベースでとらえていただけると幸い。
プロフェッショナルの書く月刊や週刊の小説や漫画でも、最初の読み切りと、後からの連載とで設定が変わるのは良く有る事。
更に単行本化で修正される事も有る。
続きを待ってます。
くれぐれも、
例えれば、狭い家に大広間を入れませんように。
大人1人がやっと入れる風呂に、本物小学生女子4人と偽物小学生女子1人が一緒に入る。みたいな。
たっく
コカンが不自由
玉が戻らなくなるかもしれない。
硬くなった時には、イタイと思う。
オトコのコ、がんがれ。
そうか、ハイレッグのブルマでは無いのか。
助かってますねぇ。
ぱんつのはみ出し
#帰省でしばらくPCが使えないため、少し短めですが中継ぎパートを投下。前半部、女装の意味薄いです。
『籠球少女(偽)』act.3
──そして、物語は冒頭の場面に戻るワケだ。
懸念していたよりは、"高村すばる"と恵心女バスメンバーとの邂逅は巧くいった。
「高村すばるです。これから試合までの一週間という短いあいだですが、こちらこそよろしくお願いします」
5人に向かってペコリと頭を下げる。体育会系で元々礼儀正しい面のある昴流にとっては、るたとえ年下の女の子とは言え、初対面の相手に礼を尽くすことはさほど苦にならない。
挨拶も済んでさてコレからどうすれば……と思ったところで、綺麗に整えられたボブカットの少女──確か"水都朋香(みなと・ともか)"と名乗った娘が、一歩前に出て聞いてきた。
「その、不躾ですが、ポジションはどこを?」
「えっと、ポ……」
PG(ポイントガード)と言いかけて思い直す。
高1の男子バスケ部員なら当り前だが、小6でこの身長なら……。
「ポ、ポストです。センターって言うほうがわかりやすいかもしれません」
一応、中学の頃はキャプテン兼司令塔としてチームを引っ張っていたので、ポストプレイに関する知識もそれなりにはあるから、大丈夫……だと思う、たぶん。
「そうですか。負傷した藍璃の穴を埋めてもらうのなら、それが一番助かります」
なるほど。体操服に着替えていない長身の(もぢもぢしながら「樫井藍璃(かしい・あいり)」と名乗っていた)子が、腕をケガしたメンバーなのだろう。
「しばらくブランクがあるので、多少ぎこちないかもしれませんが、精一杯がんばります」
センターなんて、ほとんどやったコトのないポジションだが、本来は15歳の男が4学年下の女子に混じってプレイするなら、このくらいのハンデはあって然るべきだろう。
「す〜ばるぅん!」
金髪に近い栗毛をツインテールにまとめた少女、鷺澤眞子(さぎさわ・まこ)が、グイとすばるの手を引っ張る。
「わわっ、さ、鷺澤さん……ですよね? どうかしましたか?」
「あのさぁ、そういうしゃべり方だと疲れない? あたし達、チームメイトなんだから、普通に話そ、ね?」
初対面からざっくばらんというかフランクな娘だが、これが彼女の持ち味なんだろう。
とは言え、普通に「女の子口調で」話すとなるとボロが出そうな気がする。美穂に言われた通り今日のところは丁寧語で通す方が無難だろう。
「えっと、すみません、人見知りする方なんで、いきなりはちょっと……」
「え〜、ノリが悪いなぁ」
ブーブーと頬を膨らませる眞子を、アイガードをかけた三つ編みの子──長津田咲(ながつだ・さき)がなだめる。
「コラ、眞子、そんなこと言わないの。ごめんなさい、高村さん、この子、悪気はないんだけど、慣れ慣れしくて」
「い、いえ、気にしてませんから……。じゃ、じゃあ、早速練習始めませんか?」
彼女達との接し方と距離感についてはひとまず棚上げすることにして、話題を逸らす。
「そうですね! じゃあ、みんな、まずはいつも通り準備体操から始めよう」
「おー、そなた、練習、がんばる!」
朋香の言葉に、飛びぬけて小柄なふわふわ髪の少女──濱田そなたも元気よく同意したため、ようやく練習が始まったのだった。
さて、いったん練習が始まれば、すばるもスポーツマンのハシクレ(まぁ、今の外見では"スポーツガール"だが)として、雑念をある程度切り捨てることができる。
10分ほど柔軟を兼ねた準備体操を行ったのち、まずは互いの技量を確認する意味で、ひとり5本ずつフリースローを打つ。
張り切って先陣をきった眞子は、ボールの勢いはいいもののコントロールが乱雑で、リングに当たったのが3回で1本も入らず。
二番手の咲は、シュートの勢いは劣るものの、精確さでは眞子より勝り、1点獲得。
その次の手のそなたは根本的な力不足だ。ゴールまでシュートが届かない。
そして、四番目にボールを手にした朋香は……。
「!!」
その光景を見た時、すばるは思わず息を飲んだ。
これほど美しいフォームでシュートを打つ選手を見たのは初めてだったからだ。
恵心女バスの中で唯一のバスケ経験者だとは聞いていたが、女子のミニバスに多いボスハンドではなくワンハンドで、軽くジャンプしてシュートを打つその背中に、まるで天使の羽でも生えているかのように、すばるの目には映った。
すばるの熱い視線も知らず、気負うことなく5本ともなんなく決める朋香。
「はい、最後は高村さんの番ですよ」
「……あ、はい」
朋香のシュートの余韻に酔ったような心地のすばるは、いつもよりボールが小さいこともあって、1本目を外してしまう。
「あ……」
もっとも、それで負けず嫌いな気性に火がついたのか、残る4本は力加減を考え入れてキチンと入れてみせる。
「おぉ、すっげえ! すばるん、やるじゃん」
「すごいわね。これなら試合に勝てる見込みが出てきたわ」
盛り上がる眞子と咲を尻目に、すばると朋香の視線が交錯し──ふたりはニコリと微笑む。それなりの技量を持つ者同士のみが分かる境地というヤツはあるのだ。
その後は、すばると朋香が相談して決めたドリブルとパスの練習、そして最後は3on3ならぬ3on2の変則マッチを行い、今日の練習は終了となった。
「あ〜、つっかれたぁ。でも、楽しかったなぁ」
「おー、練習、たくさん」
「そうね。これまで以上に充実してたわ。やっぱり経験者がふたりもいると違うものなのね」
クールダウンを兼ねた軽いストレッチをしながら、眞子たち三人は満足そうだ。
「すごいですね、高村さん」
「いえ、水都さんこそ……」
お世辞ではなく、まぎれもなく本音だ。「小六女子」として多少実力をセーブしていたとは言え、朋香はすばるの予想を大きく上回る技量を見せてくれたのだ。
「おーし、そろそろアガリの時間だぞ。ちゃっちゃと着替えて気をつけて帰れよ〜」
「一応」顧問として監督していた(というか見てただけ)の美穂が、それでも最後には先生らしいことを言って締める。
「もう6時20分なのね。みんな、更衣室に移動しましょ」
「そうだね。あ、高村さん、こっちです」
和やかな雰囲気で女バスメンバーに誘われた瞬間、すばるの中の充実した時間は終わりを告げる。
(な!? き、着替えるって……)
さきほどまでの心地よい疲労感に満ちた汗ではなく、ガマの油のような冷や汗が背中を滴り落ちる。
(さすがにソレは、マズいよ!)
いくら相手が小学生とは言え、そろそろ多感なお年頃の女の子たちの着替えを間近で見るのは、年上の男としてアウト過ぎる。
第一、いくらすばるが小柄で女顔とは言え、裸になったら流石にバレる──と思う(もしバレなかったら、それはソレで何か大切なモノを喪うような気がするし)。
進退きわまったすばるを救ってくれたのは(いささか遺憾なことに)、叔母である美穂だった。
「あー、スマン、こいつ、ちょっと急ぎの用事があるらしくてな。あたしの部屋に着替えが置いてあるから、これからクルマで送ってやんないといけないんだよ」
「地獄に仏とは、このコトか!」と、思わずチワワのようなうるうる目で、美穂に感謝の視線を向ける──もっとも、その"地獄"に放り込んだのも彼女本人なワケだが。
「明日は朝9時に体育館に集合するように」などと顧問らしげな言葉を残し、体操着姿のすばるを連れて駐車場に戻る美穂。
「た、たすかった〜」
クルマが発進した瞬間、思わず素の言葉を漏らす昴流。
「大げさだなぁ。今日は大目にみたけど、明日からはちゃんとみんなと一緒に着替えなさいよ」
「いいっ!?」
一難去ってまた一難とはこの事か。
「当り前でしょ、臨時とは言えチームメイトなんだから」
「み、ミホ姉は、それでいいのかよ、教師として」
「にゅふふ、あたしは、"すばるちゃん"のコトは信頼してるからねー」
流し目で含み笑いをしていた美穂だが、表情をやや真面目なものに改める。
「それより──どうだった、今日一緒に練習してみて」
「……まぁ、悪くはない気分、かも」
悪戯好きの叔母を調子づかせるのはシャクだったが、それでもすばるは正直にそう答える。
わずか5日ぶりとは思えないほど、バスケットボールを手にしてコートを走り回るのは楽しかった。それに──と、4人の「チームメイト」の顔を思い浮かべる。
「水都さんは、すごく高いバランスで仕上がってる。強いて言うと、ややチームプレイがぎこちないところがあるかな。
鷺澤さんの運動神経は女の子離れしてるし、長津田さんの正確なコントロールと落ち着いた性格も頼りになると思う。濱田さんは、体力さえつけば逆にその小柄さと気配の読みにくさを武器にできると思う。ただ……」
そう、練習試合まで、あと一週間しかないのだ。
「だから、アンタを引っ張り込んだんじゃん。お願い、すばる。あの子達のバスケできる場所、守ってあげて」
「……できる限りの努力はする」
ぶっきら棒に、そう答えるすばる。
──しかし、彼はまだ知らない。
「じゃ、途中で投げ出さないように、股間は来週までそのままね」と、美穂の部屋に帰っても、タックを外してもらえないことを。
「それと、明日はコレ着て、学園(ウチ)まで来なさい。あぁ、那夕お姉ちゃん(昴流の母)には話通してあるから、心配ないわよ」
と、恵心学園初等部の女子制服(薄紫をベースにしたセーラーカラーの膝丈ワンピース。ただし、襟元やスカートの裾にはレースとフリルが一杯)を、ラン型スリップ&ショーツ込みで渡され、真っ白になることを。
こうして、高村すばるの女子小学生(偽)ライフは、幕を開けたのである!
-つづく-
#女装SSとして美味しいシーンを期待されてた方、すみません。トイレシーンやら女児女装外出やらは、次回に乞うご期待。
#それとアイリーンこと樫井藍璃は、練習中は見学してます──台詞ないけど(笑)。「原作」での彼女のファンの方がもし見てたら、そちらもすみません。
キャミでなく、ラン型スリップというのが子供っぽくていいな
次回期待
つC
#数日キーボードに触らなかっただけで、テキストを打つのが億劫に。リハビリ兼ねて、短めの続き(この種のお約束シーン)を投下します。
『籠球少女(偽)』act.4
恵心女バスメンバーとの初めての練習を終えたその夜。
羽瀬川昴流は絶体絶命のピンチに陥っていた。
敵は理不尽なほどに強大で、自分以外の味方はおらず、さらに一縷の望みをかけた援軍はあえなく裏切り、敵方に加勢する。
このままでは、日付が変わる頃には昴流のプライドはズタズタになり、一生物のトラウマが刻まれることになりそうだ。
つまり、何が言いたいかと言えば……。
「さ、すばる〜、ちゃっちゃとコレに着替えな」
「美穂ちゃん、どうせなら下着はコチラの方がいいんじゃないかしら」
「お、ナ〜イス! さすがは那夕お姉ちゃん」
叔母である美穂と、実の母親である那夕(なゆ)の等身大着せ替えドールにされているのである──無論、「女の子らしい可愛い衣裳」限定で!!
練習帰りのクルマの中で、美穂は自分の姉であり昴流の母でもある那夕に「話は通してある」と告げた。これは、確かに嘘ではない。昴流を七高まで迎えに行く前に、姉には電話を一本入れてあった。
美穂の担任する女生徒たちの窮状を助けるため、しばらく放課後は、昴流が「高村すばる」という「12歳の女の子」として恵心学園初等部に来ることになった──という美穂が電話でした説明自体にも、大きな不備や過不足はない。
ただ、その際「だから、那夕お姉ちゃんも協力してよね」という一言は、明らかに(少なくとも昴流にとっては)蛇足だったと言えるだろう。
世の中の大半の母親と同様、昴流の母である那夕も、「娘を可愛らしく着飾りたい」という欲求は少なからず抱いていたのだ。ただ、羽瀬川家の場合、子供が男子の昴流ひとりだけだったので、その欲求が満たされる機会がなかった。
しかし、思わぬ成り行きからその隠れた欲求を実現するチャンスを得た那夕は、普段の落ち着いた様子からは考えられないほどに「暴走」したのだ。
すなわち……。
「た、たかだか一週間の変装のために、こんないっぱい女の子の服買って来てどーすんだよ、母さん!」
羽瀬川家のリビングには、ところ狭しと、ローティーンの女児向け衣類(無論、那夕が買って来たばかりのものだ)が並べられていた。
襟元にふんだんにフリル飾りの着いたパフスリーブの白い半袖ブラウス。
紺と空色のシンプルなギンガムチェックのジャンパースカート。
小さく薔薇の花模様を散らしたジョーゼット地のピンクの長袖ワンピース。
薄いコバルトブルーで、Aラインを描くスカートがくるぶし近くまであるノースリーブのサマードレス……などなど。
アウターだけではない。
美穂に渡されたラン型スリップとはシルエットの異なる白いシルクのシュミーズや、細い肩紐のキャミソール、レースとフリルに彩られたドロワーズから、「小学生には早過ぎる!」とPTAに怒られそうなハイレグ気味のビキニショーツといった下着類までも揃えてあった。
言うまでもなく昴流──いや、「すばる」のために、那夕が浮き浮きしながら購入してきた代物だ。
無論、昴流は抵抗はした。したのだが、保護者であり父がいない間この羽瀬川家を預かる母親と、腕力では到底叶わない叔母の姉妹コンビの前に、あっけなく崩され、プライベートファッションショーを披露するハメになった。
オマケに──那夕にはそのつもりはなかったのだろうが──デジカメでパシャパシャと大量に女児女装中の写真を撮られたため、これでまた昴流が美穂に逆らえない材料(ネタ)が増えてしまった。
「ちくせぅ……やっぱミホ姉の頼みなんて引き受けるんじゃなかった」
「『口ではそう悪態をつきながらも、彼、いや「彼女」も内心自分の可愛らしい格好にまんざらでもない気分に浸っているのだった』」
「勝手なナレーション入れんな!」
悪ノリした美穂の合いの手にすぐさまツッコむ昴流。
「第一、いくら俺が童顔だからって、女の子のカッコしたって見苦しいだけだろうが」
「あらあら、そんなコトないわよ〜。とってもよく似合ってるわ、スーちゃん♪」
母親の那夕がすかさず否定する。
「母さん、だから高校生の息子をスーちゃんって呼ぶのはやめてくれって……」
お決まりの昴流の抗議は、これまだいつも通りスルーされる。
「まぁまぁ、ちょっと見てご覧なさいな」
ポヤポヤ天然でありながら何気に押しが強いのは、さすが美穂の姉だと思わされる。那夕に後ろから肩を押され、渋々鏡を覗き込んだ昴流だが、そこに映る人影を目にしてピタリと固まる。
「……だれ、これ?」
目の前にいたのは、中学に入った当初からバスケ部で懸命に頑張ってきたにも関わらず、やや小柄で体格もいまいち貧相な15歳の少年……ではなかった。
前身ごろにギャザーを寄せた白い胴着と肩の部分が膨らんだ黒いサテン地の半袖で構成されたボディスを着て、半ば透けるような白い紗のフレアスカートを履いた、12、3歳くらいの可愛らしい「少女」が佇んでいたのだ。
首には袖と同じ生地のダミーカラーを着け、その上に真紅のリボンタイが結ばれている。足元は、清楚な純白のタイツとダークブラウンのストラップシューズだ。
栗色に近い茶色のサラサラ髪はナチュラルな感じのボブカットに整えられ、ボンネットと呼ばれるややクラシックな頭飾りを着けているせいで、どことなく小貴婦人(リトルレディ)と言った趣きにも見えた。
「……クッ!」
一瞬"鏡の中の美少女"に見とれかけ、それが他ならぬ自分の姿だと気づいて、昴流は唇を噛む。
美穂のドヤ顔を見ると悔しいが、似合っていることは認めざるを得なかった。
「そ、それはともかく! これはあくまで、恵心女バスでボクが活動するための擬装なんだから、あんまり凝っても仕方ないだろ」
「甘いッ! 擬装(カモフラージュ)だからこそ、バレないようにしっかりやるのが鉄則ってモンでしょーが」
確かに美穂の言うこと自体は正論だが、その真意は明らかなので素直には頷けない。
「まぁまぁ、スーちゃんもそんな堅苦しく考えないで、一種のお祭り騒ぎ(イベント)だと割り切って楽しんでみたらどうかしら?」
その点、那夕の意見の方が、まだ多少は納得がいく。
(はぁ〜、仕方ない。どうせ一週間の辛抱か)
自分のお人好しさ加減に苦笑しつつも、母と叔母の「お楽しみ」につきあう覚悟を決めた昴流──いや、"すばる"だったが……。
その後も2時間以上にわたってファッションショー(+撮影会)が続き、のみならずポーズや仕草、さらに言葉遣いまで、「小六の女の子」らしいそれに矯正されるに至って、自分の判断が甘かったと悔やむことになる。
さらに、その格好(ちなみに、比較的シンプルなオフホワイトのトレーナー+サーモンピンクのロング丈キャミワンピという組み合わせ)のままで、夕飯を取らされる。当然、お行儀や食べ方などにもチェックが入った。
食後に風呂に入って、ようやくこの馬鹿騒ぎから解放されたかと思いきや、風呂から上がると脱衣籠には、当然のようにライトイエローの女児向けパジャマが置いてある。
キャミソールとの重ね着風ネックのトップと、チュールレースのフリルが重なったキュロットミニとのセットで、いかにも女の子らしいデザインの上下を手にとり、もはや"すばる"は力なく笑うしかなかった。
-つづく-
#以上。すばるちんの"覚醒"フラグの回でした。鏡イベントのシーンの服装は、某薔薇人形の第1と第3のドレスを足して女児向けにアレンジしたイメージ。
#次回、物語は翌日の日曜の朝から開始。この日、「彼女」はほぼフルタイムで「高村すばる」であることを強いられます!
あぁ、羨ましい、(違うかw
服飾用語の勉強になります。
自分の知らない用語をぐぐって新たな知識がつきました。
お母さんの公認は、ウラヤマシイよ。
多分、息子が女装する事を、嘆いて悲しむ場合が多いでしょう?
#ちょっと間があきましたが、その割には萌えどころすくなめかも。
『籠球少女(偽)』act.5
──その日は、朝から夢見が悪かった。
ふと気がつけば、昴流はバスケのコートに立ち、懸命にボールを追っていた。
目の前の試合に熱中する一方で、心のどこかで「これは夢なんだな」と思う自分がいる。
「バスケ馬鹿」である昴流にとって、この種の夢はこれまでに何度も見た経験があるので、ある意味、「見慣れて」いるのだ。
ただ、いつもと少し違うこともあった。
「すばる〜ん、パース!!」
「初瀬川さん、カウンターです!」
一緒に試合しているのが、中学時代のチームメイトではなく、恵心学園女バスの面々だったことだ。
夢の中とは言え、昴流もそのことにまるで違和感を抱かず、少女たちに混じってボールを追いかけていた。
これまた夢のせいか、朋香を除いてほぼ素人であるはずの彼女たちも、なかなか達者なプレイを見せてくれる。
「くっ……水都だけじゃない。そっちデカいのもなかなかやるぞ」
「ダブルチームをふたつ作るか!?」
相手が小学生くらいの男子たちであるところから見て、どうやらこれは「来週の練習試合」という設定のようだ。
ただでさえ、朋香のプレイに翻弄されがちなのに加えて、藍璃並に身長があり、技量で遥かに上回るすばるが加わっては、男バスに勝ち目はない。
試合は10点以上の差をつけて、女バスの完全勝利に終わった。
「やったゾ、すばるん!」
「お〜、そなたたちの勝利」
見学していた藍璃も踏めた5人の"チームメイト"と抱き合って喜ぶすばる。そこには、皆と一丸になって試合に勝ったという純粋な喜びだけがあった。
(あぁ……やっぱりバスケっていいなぁ)
久々に思う存分バスケをすることができて、晴れやかな気分になる。
もっとも、試合が終わった以上、「高村すばる」は臨時女バス部員のお役目御免となり、二度と彼女たちと共にプレイする機会はないのだろうが……。
それが少しだけ残念だと感じる。
「はぁ? 何言ってるんだよ。すばるんは、もう立派なあたしたらの仲間だろ」
「そうよ。これからもトモと一緒に、いろいろ教えてよね」
眞子と咲が不思議そうな顔で、そんなことを言ってるが、さがにソレはマズいだろう。今回は特別としても、部外者がいつまでも学校の部活に混じっているワケには……。
「そう言うと思って、「高村すばる」の転校手続きしといてやったよ」
み、ミホ姉、冗談……だよな?
「大丈夫よ、女の子として必要なことは、お母さんが教えてあげるから」
か、母さんまで……。
不気味なほどにイイ笑顔のふたりに、さすがにちょっと引いて逃げ出したところで、幼馴染のアオイの後ろ姿を見つけ、助けを求める。
「あ、アオイ! ミホ姉たちが何かヘンなんだ!」
ところが、七城高校の女子制服であるブレザーを着たアオイは、振り返るとコツンと軽く拳骨を落としてきた。
「こ〜ら、ダメでしょ、年上の人を呼び捨てにしちゃあ」
「へ? 年上?」
いや、アオイは昴流と同じく高一のはずなのだが……。
「あら、だって、そうでしょ。すばるちゃん、小学六年生の女の子だもの」
「え……あ!」
気がつくと、いつの間にか「彼女」は、ライトパープルの長袖ワンピース──つまり恵心学園初等部の女子制服を着ている。足元もバッシュから三つ折ソックス&ローファーに変わっていた。
「え……な、なんで!?」
「コラァ、すばる! 授業中に何寝ぼけて立ち上がってんの! 廊下に立たせるわよ」
めったに見ない先生然とした美穂に叱られ、反射的に「ご、めんなさい」と謝って席に着くすばる。周囲を見れば、教室には、どう見ても小学生の男女──それも制服からして恵心学園の生徒と思しき子たちが座っている。
「あ、あれっ?」
「大丈夫、すばる?」
事態が飲み込めないすばるを、隣席の朋香が気遣ってくれる。
「う、うん。平気」
(なんでボクがこんな所に……それに、水都さんは「高村さん」って呼んでたんじゃあ……)
そんな風に違和感を抱いたのもつかの間、次第にあやふやになってくる。
(あ……でも、平日の授業中に教室にいるのは当たり前、なのかな。朋香とも、この間、名前で呼び合おうって約束した……んだっけ?)
そう考えると不思議とソレが正しいような気もしてくる。
(そう、そうだよね。ボクは恵心学園初等部6年生で、女子バスケ部員の高村すばるなんだもん)
──そうして、"高村すばる"は、そのまま女子小学生として楽しい日々を過ごすのだった。
「……って、ンなわけあるかぁーーーーーっ!」
絶叫とともにガバリとベッドの上に起き上がるすばる、いや昴流。
「ハッ、夢か。良……」
「よかった」と言いかけ、視線を下として、何とも言えない表情になる。
「全部夢だったら良かったのに……」
その目に映るのは、フリルとレースで愛らしく飾り立てられた、ローティーンの女児向けパジャマだ。
いや、パジャマだけではない。
元々部屋自体はきれい好きなので比較的整理整頓されている方だったが、明らかに男子高校生の部屋には似つかわしくない可愛らしい色と柄のカーテン&ベッドカバーに換えられている。
愛用しているまくらにも白いレースカバーがかけられ、さらにその隣には高さ30センチくらいのテディベアのぬいぐるみが置いてある。これを抱きしめて眠れとでも言うのか。
「なんであのふたりはこんなに凝り性なんだ……」
さらにベッド脇のローテーブルには、今日の着替えが置いてある。
あまりにフリフリヒラヒラした服だと着替えや仕草でボロが出ると抗議した結果、白い丸襟ブラウスに若草色のキュロットを合わせ、その上に萌黄色のスプリングコートを羽織るという、比較的ボーイッシュな格好にOKが出たのは、不幸中の幸いというべきか。
もっとも、下着についての譲歩はなく、昴流は何とも形容し難い表情で、やや履き込みの深めの水色の女児用ショーツと揃いのハーフトップ(ブラカップ付き)を渋々身に着けた。
(ぅぅ、何か悪い事してる気分。まぁ、着心地自体は悪くないんだけどさぁ)
……本人は気づいてないが、どうやら昨日の"荒療治"の成果か、女の子の服装への拒否感がだいぶ薄れたようだ。
そもそも、いかにボーイッシュとは言え、明らかに「元気な女の子」風の服装を、たいした抵抗もなく着ている時点で、美穂たちの悪だくみは着実に成功してると言えよう。
「おはよう、母さん、ミホ姉」
そんな自分の変化も知らず、昴流は(多少の気恥ずかしさは意図的に無視して)ダイニングへと顔を出し、母の那夕と、結局昨夜そのままこの家に泊った美穂に挨拶する。
「おはよう、スーちゃん、とっても可愛いわよ♪」
「ふぁ〜あ。おあよー、すばる……うんうん、よく似合ってる」
「よしてくれ」
酸っぱい顔つきになった昴流に、美穂がチッチッチッと指を振る。
「言葉遣いがなってないなぁ、せめてもうちょっと丁寧にしゃべりなさいよ」
「はいはい、わかりましたよ、ミホお・ば・さ・ま♪」
「んあ゛っ!?」
ホットミルクにむせる美穂を見て、ささやかな勝利に酔う昴流だった。
朝食の後、そろそろ時間なので美穂のクルマに乗せてもらい、そのまま恵心学園初等部の体育館へと向かう。
その場で5人の女バス部員と合流した後、まずは女子更衣室で着替えることが、この日の"高村すばる"の最初の試練となった。
「は〜、それにしても、もうすぐ6月だけあって、今日は暑いわね。まだ練習前なのに、汗がアンダーシャツに染みてる感じ」
「にゃはは……あいかーらず、つるぺったんだな、咲は」
「何よ! スットン共和国代表の眞子だけには言われたくないわよ」
「あ、あたしはいーんだ。あと3年も経てばママみたく「ぼん・きゅっ・ぼん」のないすばでぃになるから」
「あ、そなたちゃん、そのパンツ初めて見た。かわいいパンダさんだね」
「おー、こないだデパートで見つけて、買ってもらった」
『きゃる〜ん、きゃぴきゃぴ』という擬音が聞こえてきそうな現役女子小学生に混じっての着替えは、天国と地獄──いや天国(ごほうび)成分が控えめな分、羞恥心と罪悪感の焦熱地獄120%となって、すばるの良心を苛んでくる。
(お、落ち付こう。この子たちはまだ小学生、ほんのお子様なんだから……)
と、頭では考えるものの、どこか甘酸っぱい匂いのたちこめる狭い部屋で、4人の少女達とともに着替えるという体験は、それだけですばるの平常心をごりごり削る。
しかも……。
「あ、羽瀬川さんは、けっこう背が高いから、やっぱりそれなりに胸あるんですね」
"女同士"の気安さからか、朋香などが無防備に下着姿で話しかけてきたりするのだ。
「そ、そう…ですか? いや、たいしたモノじゃないですよ」
(何せ、シリコン製の偽乳ですから)とはさすがに口に出せない。
「ほほう、たしかに多少はありそうだな。しかーし、ウチのアイリーンに比べればまだまだ……」
──ポカッ!
「バカなこと言ってるんじゃないの。だいたい藍璃の胸の大きさは眞子が誇ることじゃないでしょ……ごめんね、羽瀬川さん。このツルペタ娘の言うことは気にしないで」
「あたしがツルペタ娘なら、咲はペチャパイメガネじゃねーか!」
半ばじゃれあい、半ば本気のケンカを始める眞子と咲。着替えの途中なので、絶対男の目には触れさせられない状態になっている──まぁ、約1名、不可抗力で目にしているワケだが。
「あ、あの……時間がもったいないですし、さっさと着替えて、練習しません?」
女の子同士のコミュ二ケーションなんてものをロクに知らないすばるとしては、ふたりの争いから目を逸らし、控えめにそう口にするのが精一杯だった。
とりあえず今日の練習では、以前朋香が考案していた(が、有名無実化していた)練習メニューをベースに、ドリブルやパス、シュートなどの基礎練習を中心にした堅実なメニューを再構築し、実施する。
合い間には、飽きがこないよう1on1や3on3などの実戦に近い形式のトレーニングも挟むことで、彼女たちのモチベーションを維持する。
もとより中学時代はチームマネジメントも兼ねた頭脳派キャプテンとして知られていた昴流にとっては、このテのことはもっとも得意とする分野だ。"すばる"としても苦にはならない。むしろ、楽しいとすら言ってよい。
しかし……人生楽ありゃ苦もあるさ、楽しいことの次には苦しい(?)コトが待ち受けているものなのだ。
──ブルッ!
「すみません、水都さん、ちょっと……」
女の子向けのトイレの隠語が浮かばなかったが、朋香は察してくれたようだ。
「あ、お手洗いなら、裏口から出た廊下を左に行くとありますよ」
「は、はい。じゃあ、少しだけ外します」
と、体育館を出たまでは良かったものの……。
「や、やっぱりコッチに入らないといけないのかなぁ」
赤いスカート姿の女性を擬人化したマークのついた、女子トイレの入口を前に、躊躇いを捨てきれない"高村すばる・12歳♀(偽)"なのだった。
-つづく-
#以上。夢のシーンはお約束ですが、昴流が"すばる"に浸食されている暗示としてぜひとも入れておきたかったトコロ。正夢になるのか、はてさて……。
#次回ようやっと待望のおトイレシーンに!
堕ちていく過程はいいね。好きだよ。GJ!
#うーむ、スランプ気味です。短くて申し訳ない。
#万が一、コレを読んでいるかもしれない"原作"ファンの人へ。「昴も美星もこんな変態ぢゃないッ!」と思われるかもしれませんが、本作は『籠球少女(偽)』です。主人公は"昴流"で、その叔母は"美穂"なので、並行世界の別人だと思ってください。
『籠球少女(偽)』act.6
トイレには入りたいが、この姿で女子用に入るのは何かに負けた気がする……という昴流の男としての葛藤は、迫り来る尿意に負けて、案外あっけなく決着がついた。
そして、いざ覚悟(?)を決めて足を踏み入れてみれば、床に薄いピンク色のタイルが敷き詰められた其処は、女の子特有のフローラルな香りが漂う……わけもなく。
清潔に掃除されてはいるが、それでも僅かに特有のアンモニア臭が感じられる、まぁ、「トイレ」としてはごくありふれた場所だった。
無論、男子トイレに固有の小便器──いわゆるアサガオが見当たらず、個室だけというのは、男にとってはやや落ち着かない気分にさせられるが、逆にその個室に入ってしまえば大差はない。
一番奥の個室に入って鍵をかけたところで、我知らず昴流は、「ふぅ」とひと仕事終えたようなため息をついていた。
とは言え、ここからがむしろ「本番」である。
まずは、便器のフタを開ける。通常ならそのまま内蓋も開けるのだが、今の"すばる"の状態では立ち小便はできないことは、昨夜から何度か経験済みなので、すばるは軽く内蓋を紙で拭いてから腰掛けた。
座った状態から軽く腰を浮かせて、スパッツとショーツをふくらはぎ下までずり下ろす。
モスグリーンの可愛らしいリボンがワンポイントについたショーツが視界に入ると、今自分が履いているモノなのに、なぜかイケナイものを目にしたような気分になり、すばるは視線を逸らした。
その逸らした先で目に入るのは、まるで幼児のようにツルツルに陰毛を剃られた股間。しかも、一見したところ男の徴(シンボル)は見当たらず、逆に肉の合わせ目で出来た一本の縦筋──女の子の"割れ目"があるように見える。
無論、本当に性転換したわけではなく、美穂に人体用接着剤によるタックで、疑似的にそのような形にされてしまったワケだが。
まるで、幼い女の子のアソコのような外見になっている自分の股間を見ると、すばるは羞恥心とともに、いわく言い難い感情(認めたくはないが、「快感」や「興奮」と呼ぶべき代物)が胸の中に湧き上がってくるのを感じる。
目をしばたいて、そんな淫靡な想いを振り払うすばる。
(ダメダメ、何考えてるんだ、ボクは……さっさと済まそ)
そう反省しながらも、すばるは足元を肩幅に広げてつつ、膝頭を軽く合わせた、いかにも「女の子がおしっこする時」らしい格好を自分がとっているコトに気が付いていない。
そのまま、ぴんと背筋を伸ばした状態でお尻を後ろに突き出すような姿勢になって、下腹部の尿意に意識を集中する。
これは、タックによってペニスが後方に折りたたまれて尿道が圧迫されている状態のため、、少しでも尿道への圧力を減らすためだ。
しばらくすると、普段小用を足すときとは、かなり異なる感覚が下半身に満ちてくるのがわかった。
押さえつけられているせいかチ●チンの特有の感覚がなく、陰嚢の皮で形成された疑似"陰裂"の下部、俗に"蟻の門渡り"と呼ばれる部位のあたりから、ちょろちょろと尿が滴り、次第に勢いを増していく。
もっとも、尿道が圧迫されているため小便小僧的な"水流"にはならず、水撒きのホースを指で押さえたような、プシャッと噴き出す感覚に近いのだが。
「えっと……あ、コレか」
"音姫"などと通称される女子トイレ固有の装置のボタンを押すと、水音が流れて、小用の音がかき消された。
しばらくして、立ちションよりかなり時間をかけて、ようやく溜まった尿を放出し終わると、思わずホッとした気分になる。こればかりは男女いいずれの立場でも変わらない。
男なら後は逸物を振れば済むのだが、今のすばるの状態では、アソコを折り畳んだペーパーで丁寧に拭くしかなかった(それがまた"彼女"に自分があたかも女の子になったかのような錯覚を無意識に植え付けているのだが……生憎本人は気づいていない)。
立ちあがってショーツ、そしてスパッツを上げ、今度は本当に水を流して個室を出る。
洗面所で手を洗い、首にかけたタオルで手を拭きながら、鏡を覗き込み、軽く身だしなみを整える。
普段の無頓着な「昴流」ならまずそんなコトはしないが、今の状態が「普通ではない」以上、念のために必ずチェックするよう、母や美穂にもよく言い聞かされているのだ──無論、ふたりの真意が別にあるのは言うまでもない。
「うーん、問題ない、かな」
鏡の中に映っている人影は、すばるが自分で見ても腹立たしくなる程、「小学生にしては背は高めだが、普通に可愛い女の子」にしか見えなかった。
(今の状況だと、そうじゃないと困るんだけど……何だかフクザツ)
喜ぶべきか悲しむべきか、微妙な気持ちのまま、すばるは練習に戻った。
* * *
その後の女バスの練習自体は極めてスムーズに進行した。几帳面な朋香や咲はもとより、奔放な眞子や不思議ちゃん系のそなたも、真面目にトレーニングに励み、わずか半日の練習とは思えない程上達していく。
制服で見学している藍璃には、センターとして自分の動きをよく見ておくように言ってある。彼女も神妙に頷いて、キチンと理解しようとしているようだ。
そして、練習後の着替えも、二度目とあって──眞子に着衣の上からヌーブラ入りの胸を揉まれるというハプニングはあったが──すばるもそれほどテンパることなく済ませることができた。
もっとも、今回は別の部の先客がいたため使えなかったが、本来彼女たちは練習後にシャワーを浴びる習慣らしいので、次回はそれもクリアーする必要があるだろうが。
「用があるから」と偽って仲間達と別れ、すばるは美穂のクルマで家まで送ってもらう──つもりだったのだが。
「ミホねえ……ちょっと相談したいことがあるんだけど」
「へぇ、珍しいね。まさか、すばるの方からそんなコト言うなんて。なになに、おねーさまに、話してみそ♪」
「茶化さないでよ! 水都さんにさぁ、ちょっと怪しまれてるみたいなんだ──いや、女の子の格好してることじゃなくて、手加減してるんじゃないかって」
「あ〜、なるほろ」
本来慣れたPG(ポイントガード)ではなく、センターのポジションについているとは言え、基礎体力自体が高校生男子と小学生女子ではかけ離れているのだ。一応セーブしているとは言え、個人技に関する部分ではやはり完全に隠すのは難しい。
さらに言えば、すばる自身、かなりのバスケ馬鹿で、バスケに関しては熱くなりやすいタチだと言う自覚もあった。
「ボクが我を忘れても実力をセーブできるような、工夫とか何か考えられない?」
「うーん……さすがのあたしも、大リ●ガー養成ギプスまでは持ってないなぁ。パワ●リストとアンクルなら、一応あるけど?」
「それしかないかぁ。睡眠薬とか下剤を飲むとかも考えたんだけど、それも問題ありそうだし……」
「(あ……いーコト思いついちゃった♪) ねぇ、すばる。ソレに近いこと──"人為的に体調不良にするする手段"なら、心あたりがないでもないわよ」
「ホント、ミホねぇ!?」
「ええ。ただ、当然のことながら、アンタの身体にちょっと負担がかかるけど……大丈夫?」
「……やる」
わずか2日間とは言え、共にバスケをした以上、すばるにとって彼女達はすでに「大切な仲間」という意識が芽生えていた。ここまできた以上、ぜひとも試合まで彼女達につきあって、ぜひとも勝たせてあげたい。
そのためにも、チーム1の実力者である朋香と気まずくなるのは避けたかった。
「うむ、よく言った! それじゃあ、明日の練習までに用意しとくよ」
-つづく-
#今回は、おトイレ回。このテのシーンは萌える人と萌えない人の差が激しいかも。すみませぬ。
#そして、美穂がどんな悪だくみを思いついたかは、勘の良い人ならわかるかも。
つC
事細かな表現が素晴らしい…>タックでオシッコ
後は、気付いたら残尿でショーツに
付けてしまったオシッコ染みを
ネタに辱められるシーンでもあれば最高です。
GJ!!!!
#今回、ミホ姉が色々やらかしてます。中でも、「未成年にコレはちょっと……」という部分もありますが、エロ的フィクションとして流してていただければ幸い。
『籠球少女(偽)』act.7
美穂の言葉通り、翌日から練習時に「ある手段」をとった"すばる"の動きは、確かに普段よりいくぶん抑制の利いたものとなった。
決して意図的に手を抜いているわけではなく、自然とそうなっているため、朋香から不審に思われることもない。
また、練習試合まで日がないこともあって、あれ以来毎日、5人(+見学の藍璃)はトレーニングしていた。
学園での女バスの練習日は火・木・土だが、それ以外の日も、ちょっとした富豪である眞子の家(というか屋敷)に来れば、庭に拵えられたバスケットゴールと半面の屋外コートで基本的な練習は可能なのだ。
すばるも、当初の嫌がりようが嘘のように、放課後は毎日喜々としてこの学園に来て、他のメンバーとともに過ごしていた。
基本的に、気の合う"仲間"とバスケがやれれば、あとの事はわりとどうでもいい子なのだ。そのおかげで、恵心学園女子バスケチームと"彼女"の一体感は日を追うごとに高まっている。
また、さすがは成長期と言うべきか、的確なバスケ技術を持つふたり──朋香とすばるの指導のもと、各人の技量も日に日に高まっていた。
傍から見ている限りでは、一見良いことづくめのように見えるが……皆さんは、美穂がすばるに提案した"手段"が何か気にならないだろうか?
それを知るためには、七城高校の授業が終わるや否や、HRもそこそこに教室を飛び出して電車に乗り、恵心学園の最寄駅のすぐそばにある美穂の部屋で、"高一男子・羽瀬川昴流"から"小六女子・すばる"の格好に着替える"彼女"に注目せねばならない。
* * *
叔母自身から借り受けた合い鍵で美穂の部屋に入ると、昴流は、躊躇なく高校の制服と下着を脱ぎ捨て、乱雑に畳んで部屋の隅に置く。
"その日の分の着替え"は、あらかじめ美穂がリビングの机の上に用意しておいてくれている。
ほんの数日前までは触れることさえためらっていたローティーンの女児向け下着を、ごく自然に手にとり、広げる。
今日のは、世界一有名なビーグル犬のキャラがワンポイントに入った、ライトグレーのフルカップブラとスポーティショーツのセットだ。
ブラの左胸にワンポイントで某ビークル犬のプリントが入っていたり、ショーツのウェストラインにその犬の登場するマンガのロゴが入っていたりするのが、カジュアルな印象を与える。
「うん、こういうシンプルなのは悪くないな♪」
鼻歌でも歌いそうなほど上機嫌で、ストラップを調整しつつブラを着用してから、慣れた手つきで胸の脇の肉を膨らみをカップに押し込む。
「元からある僅かな膨らみ」に加えて、この補整のおかげで、すばるの胸にそれなりの大きさの隆起が出来ていた。
──じつは、土曜の練習が終わったあと、美穂は本人の了解をとったうえで、昴流を知り合いの整形外科医の元へと連れて行き、脂肪注入によるプチ豊胸を受けさせたのだ。
もっとも、元が男性だし、量も少なめにしたので、乳房と言えるほど大きく膨らんだわけではなく、せいぜい「思春期の少女の膨らみ始め」といった程度だ。血小板なども併用しなかったので、おそらく一月もすれば、完全に吸収されて元に戻るだろう。
「自然に戻る」という説明を聞き、また、シャワー時などでチームメイトに裸体を見られる危険性があることはわかっていたので、昴流も不承不承納得し、施術を受けていた。
ちなみに、高校では厚めのアンダーシャツを着て誤魔化している。体育の授業時は、体操着の下にアンダーシャツ、さらにその下にピッタリしたハーフトップで押さえ着けていた。
この胸の感覚に慣れないから、運動能力がセーブされているのだろうか? いや、ボディバランスを崩すほどの大きな乳房であれば別だが、走ってもほとんど揺れないこの程度では、本人への影響はたかがしれている。
ブラとお揃いのショーツを履く……前に、トイレ近くの棚から、すばるはソレを取り出した。パッケージを破ると、親指程の太さの樹脂製の筒から紐が垂れた物体が姿を現す。いわゆる、"アプリケータータイプのタンポン"だ。
「何も塗らないで入れるのは、ちょっと恐い、かな」
独り言をつぶやきつつ、すばるはキャップ部分にオ●ナインを軽く塗り着け、四つん這いになると、広げた脚の間からソレを自らの"孔"へと挿入する。
「んんっ……やっぱり、またひと回り大きくなってる、みたい」
確かに、初めての日曜はミニサイズ、翌々日の火曜はレギュラーサイズだったのに対し、今日のは少し大きめの、俗に言う「多い日も安心」タイプだった。
それでも、すばるの体は比較的すんなり筒状の物体の挿入を受け入れた。キャップ部がすべて体内に入り込んだことを確認してから、すばるはアプリケーター部分を押し込む。
「くッ……あぁ、やっぱ大きい、かも」
客観的に見ればせいぜい直径1.5センチもない物体なのだから、アナルに入らないはずはないのだが、これまで肛門交接やアナニーの趣味もなかった少年に、ソコへの異物を素直に受け入れろと言うのは酷だろう。
おまけに、入れたばかりの今は良いが、時間が経つにつれ、タンポンは"彼女"の体内の水分を吸って、徐々に大きくなっていくのだ。
そう、コレが、すばるが「練習時全力を出せず、自然と内股気味に歩くようになった」原因だった。
肛門とその内部の違和感を気にしつつ、紐の部分は尻の谷間に巧く隠してショーツを履くすばる。
最初に挿入した時は、ソレの「違和感」だけで腰砕けになり、まともに力が入らなかったのに比べると、少なくとも表面上は自然に振る舞えるようになったのだから、随分慣れた(開発されたとも言う)ものだ。
だからこそ、「慣れ」の部分を見越して美穂はサイズを徐々に大きくしているのだ。もっとも、この件については、すばるの中に「タンポンを入れられると動きが鈍る」という暗示にも似た条件反射が出来つつあるので、取り越し苦労かもしれないが。
木曜日である今日は恵心学園の体育館で練習できる。そのため、すばるは壁に掛かっている薄紫色のワンピース──学園初等部の女子用制服を手に取った。
「はぁ、結局、この制服を着るハメになっちゃったなぁ」
美穂は学園側に「"姪"を助っ人として学園に来させる」ことの了解は得ていたが、「部外者とは言え、私服の生徒が学園内をうろつくのは好ましくない」ということで、交換条件として、すばるも体操着に着替える前は皆と同じ制服を着ることになったのだ。
もっとも、眞子やそなたが「すばるんもお揃い♪」と喜んでいたので、さほど悪い気はしなかったが。
首元のボタンをいくつか外してワンピースをかぶり、そのまま左右の袖を通す。この制服自体を着るのは2回目だが、すでに何回も女の子用の服の脱ぎ着はさせられているので、それほど戸惑うことなく、着用することはできた。
ボタンをとめ、制服を身体の線になじませてから、胸のリボンを結ぶ。
「あ、忘れてた」
すばるは椅子に腰かけると、黒い二ーソックスを履いた。どの道、練習時にはスポーツソックスに履きかえないといけないのだが、これも「女の子の身だしなみ」というヤツだ。そのヘンの機微は、"彼女"にも少しずつ飲み込めてきていた。
最後に鏡を覗き込みながら髪の毛の襟足をやや外跳ね気味にブローして、愛用している赤いカチューシャを着ければ、「女子小学生・高村すばる」の完成だ。
「ちょっと手間取っちゃったな。急がないと」
体操着の入ったスポーツバッグを手に、玄関でこれまた私立小の女の子らしいオークブラウンのオブリークトウベルトシューズを履くと、"少女"は仲間達の待つ体育館へと急ぐのだった。
* * *
そして、迎えた練習試合の日。
地区大会優勝クラスの男子チームにもひけをとらない──どころか、むしろ凌駕している朋香のテクニックで、改めて彼らのド肝を抜き、ダブルチームで警戒させる。
そればかりでなく、僅か一週間の成果とは思えぬ、眞子と咲のパスワークとシュート力も、相手を大いに混乱させることができた。
チーム1非力で小柄なそなたには、代わりに徹底的にドリブルを仕込んだ。おかげで直接的な得点力はないものの、ボールをキープして運ぶことだけは安心して任せることができる。
そうして運ばれたボールをゴールに叩き込むのは、他の4人り役目だ。
無論、すばるも鉄壁のセンターとして男子の攻勢からゴールを守り抜き、その後のリバウンドなどで大いに活躍した。
1センター4シューター……というには、まだ朋香以外の得点力が不足しているが、すばるの代わりに藍璃が復帰したとしても、このチームの目指すべきひとつの方向性は見えたと言って良いだろう。
無論、試合は女子チームの圧勝……とまではいかず、6点差での勝利となった。これは、後半になるにつれて、朋香とすばる以外の3人のスタミナが切れたからだ。持久力の強化あたりも、今後のチームの課題となるだろう。
とは言え、試合終了の笛が鳴った時、藍璃やすばるも含めた女バスのメンバー6人が嬉し涙を流しながら抱き合って喜んだ、その気持ち自体に嘘はない。幼いながらも、美しい女の友情(まぁ、ひとりは偽女児だが)と言うべきだろう。
もっとも、今日のすばるの後孔に詰め込まれていたのが、いつもの生理用品ではなく、ピンク色をした丸っこいプラスチックの電子機器だったこと。
そして、試合中すばるが熱くなり過ぎた際に、謎の振動音が"彼女"の下半身から響いて(幸い試合の喧噪に紛れて誰も気づかなかったが)、途端に"少女"の動きがセーブされたことは、すばると美穂の間だけの秘密だ。
──ミホ姉、マジ鬼畜!
-エピローグへ-
#駆け足ですが、続きは多分日付が変わった頃にでも。
ナイス調教
バスケのほうもばっちり成果が出ててGJ
しかしとある拷問を思い出して粘膜ヤバいんじゃないかと軽く血の気が引いた……短時間ならさほど影響がなくて済むみたいだけど
『籠球少女(偽)』Last act.
あの練習試合から3ヵ月あまりの時が流れた7月末。学生にとっては待望の長期休暇みが訪れている夏の日のとある昼下がり。
恵心学園の最寄駅からすぐそばのバス停へと向かうひとりの少女の姿があった。
白に近いクリーム色の半袖シフォンカットソーに、膝上20センチの白いミニフレアスカート、ティーンらしくスラリと伸びた健康的な素足をさらし、足元にはふくらはぎ半ばまである編み上げハーフブーツを履いている。
シンプルなコーディネートだが、ウェストを取り巻くフリルと、胸元と両袖口にたなびく鮮やかなピンクの飾りリボンがひそかにオシャレだ。
それを着こなしている少女の自身も、肩にかかるくらいの長さの焦茶色の髪の裾をやや外側に跳ねさせ、目鼻立ちのハッキリした活発そうな顔立ちをしている。
つば広の麦わら帽をかぶっているいることもあって、まさに「夏のお嬢さん」といった雰囲気だ。もっとも、肩にかけたアデ●ダスのスポーツバッグだけが、その印象を裏切っていたが……。
「か〜のじょ♪ 可愛いね、お茶しない?」
そして、そんな美少女が歩いていれば、こういうナンパなお馬鹿が現れるのもお約束だ。
声をかけられた少女はキョトンとした顔で振り返ると、マジマジと中学生くらいのニヤケ面の少年の顔を見返した。
「──それ、もしかして、ボクのコト?」
「(お、ボクっ子キターーッ! この反応は脈ありか?)うんうん、もっちろん♪」
下心全開で鼻の下を伸ばす少年を見て、少女は軽く眉をひそめ、首を傾げる。
「お兄さん、中学生だよね? ひょっとしてロリコン?」
「へ?」
「ボク、これでも小学生なんだけど」
「……え? ええぇーっ!」
思いがけない少女の答えに絶叫する少年。
と、「ムンクの叫び」ばりの変顔になった少年の後頭部に、背後からにゅっと伸びて来た手がアイアンクローをキメる。
「アタタタタ! な、何しやがるんでぃっ……て、た、タカユキ先輩!?」
「相変わらずお前もこりねぇヤツだな、哲平」
どうやら、先輩らしい高校生くらいの少年が、ナンパ少年に制裁を加えているようだ。
「この人には、ウチらであんじょう言い聞かせておきますさかい、お嬢さんは先においきやす」
高校生の連れだろうか。腰までありそうなストレートの黒髪をツインテイルに束ね、向日葵模様のサンドレスを着た小柄な女の子が、少女に話しかける。
「は、はい。ありがとうございます」
ペコリと頭を下げると、少女は早足にバス停に歩みより、折よく着たバスに飛び乗った。
(ふぅ〜、これでナンパされるのは3度目だよ。喜ぶべきか悲しむべきか、フクザツな気分……)
クーラーの利いた車内でひとり席に座り、スポーツバッグを膝の上に置きながら少女は溜め息をついた。
──無論、言うまでもなく、この「少女」は、高村すばるにほかならない。
あの練習試合のあと、すばるは皆の前から姿を消すつもりだったのだが、「藍璃が復帰するまでだけでも」、藍璃復帰後は「彼女がセンターとしての基礎を覚えるまで」と、ずるずる引きとめられ、結局夏休みの今に至るまで、ほぼ毎日、恵心学園のみんなの元に通いつめている。
すばる自身、なんだかんだ言いつつ、それが少しも苦にならなかった。
いや、正直に言えば、朋香たちと一緒にバスケをすることが楽しいのだ。部活ができず、無味乾燥に思える高校生活より、"仲間"たちと過ごす時間のほうが、100倍充実している。
おかげで、七城高校での羽瀬川昴流は「バスケを取り上げられた燃え尽き症候群患者」的な扱いを受けているが、あえて「昴流」も反論せず、ひたすら地味にやり過ごしている(幼馴染のアオイだけは、いまだ心配そうだったが)。
むしろ今のすばるにとっては、高校生活こそつまらない仮初の時間で、恵心で5人と練習することが目的で生きていると言っても過言ではない。
夏休みに入ってからは、美穂の部屋ではなく、こんな風に自宅から、高村すばるとして女の子の格好で出かけることも多いのだ(母の那夕はむしろ大歓迎で、喜々として"娘"のファッションをコーディネートしている)。
今日は、そんなみんなと夏合宿に出かけることになっている。美穂が8人乗りのレンタカーを借りて来て、学園の駐車場が集合場所なのだ。
あるいは4月の頃なら「小学生とは言え、女の子5人とお泊り」ということに怖気づいたかもしれないが、毎日のように彼女達と過ごし、時にはシャワー室で全裸に近い姿も互いにさらしている今となっては、何ら躊躇いはない。
胸に関しても、月一で脂肪注射を受けてるおかげで、小学生らしい適度な膨らみを保っているので何も問題はない。
先日など泳げない藍璃の特訓のため、眞子の家のプールでスクール水着姿(白い縁取りの入った競泳タイプだが)までさらしてしまったすばるに、もはや恐いものなど何もなかった!
最近──特に夏休みに入ってからは、練習以外でも5人と一緒に過ごす時間が多くなっている。その分、すばるの精神的な「女子小学生化」も進んでいる(だから、さっきも平然と小学生だと自称できた)のだが、あえて本人は気が付かないフリをしていた。
「あ! すばるも来たみたいよ」
「ホントだ。オーイ、すばる〜ん!!」
「こんにちは、咲ちゃん、眞子ちゃん。ほかのみんなは?」
「トモは、倉庫から持っていくべきものがないかチェックしてるわ」
「みーたんは、暑いからってクルマん中。あとは、そなた待ちかな」
チームメイトにして大切な友人であるふたり会話しながら、すばるは三泊四日の楽しい合宿に思いを馳せる。
(ずっと、みんなといられて、こんな時間が続けばいいのにな)
ふと心の奥で呟くすばる。
──やがて夏休みが終わる頃、思いもよらずその願いが叶うことになろうとは、神ならぬその身にはわかるはずもない。
そして、秋の地区大会で、それまで完全に無名だった(と言うかそもそも存在すらしていなかった)恵心学園初等部女子バスケットボール部が、関係者の度肝を抜くことになるのだった!
<おしまい>
#以上です。最後の部分は、まぁ、「フィクションです」から(笑)。
#このあと、夏休み中に原作みたく、男バスエースの妹の双子やそなたの妹、咲と張り合う幼馴染などが登場し、すばるを入れれば10名になる(つまり公式試合に出られる)という状況に。
仲間を見捨てられないすばるは、美穂の誘いに乗って恵心学園初等部への編入を決意する……という流れの予定。
GJ!!!
元ネタ知りませんが、楽しませてもらいました
後で縦書きに加工して、じっくり再読します
乙です
やはり氏は良い物を書きなさる・・・!!
GJ!
また流れが止まってるな〜。
そう言えば、最近「女装してガールズバンドの一員になる男のコ」のマンガが増えてない?
一般作なんで、エロには期待できないけど……。
何年か前にはエロゲで「女装してガールズバンドの一員になる男のコ」の作品がいくつか出てたな。
それらもふまえて…
Vo 柴田健(女声男子)
Gt 雨宮秋人(僕が女装して弾いてみたらバレそうな件)
Ba 前島鹿之助(キラ☆キラ)
Ky 内田誠(りりかる!)
と挙げてみたけど、ドラムスやってる男の娘って誰かいたかな?
ビヒーダは男の娘枠じゃないな・・・
るい智FDの智、花見沢Q太郎「PLAY!」の那由他はボーカルか。
それメインの話じゃないからちと類型がずれるが。
あと女装少年アンソロジーコミックスの最初のころ掲載されてた「神韻楽団 音姫」は全員女装男子。
全員系はまだあったと思うけど思い出せない・・・