【ととモノ。】剣と魔法と学園モノ。13

このエントリーをはてなブックマークに追加
1名無しさん@自治スレで設定変更議論中
[剣と魔法と学園モノ。]通称[ととモノ。]でエロパロです。
喧嘩・荒らしは華麗にスルーでいきまっしょい。

前スレ

剣と魔法と学園モノ。でエロパロ
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1214711527/

剣と魔法と学園モノ。でエロパロ2
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1221435495/

剣と魔法と学園モノ。でエロパロ3
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1228482964/

【ととモノ。】剣と魔法と学園モノ。4【エロパロ】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1236354234/

【ととモノ。】剣と魔法と学園モノ。5【エロパロ】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1246283937/

【ととモノ。】剣と魔法と学園モノ。6【エロパロ】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1248257329/

【ととモノ。】剣と魔法と学園モノ。7【エロパロ】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1250608764/

【ととモノ。】剣と魔法と学園モノ。8【エロパロ】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1261647330/

【ととモノ。】剣と魔法と学園モノ。9【エロパロ】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1274110425/

【ととモノ。】剣と魔法と学園モノ。10【エロパロ】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1287594710/

【ととモノ。】剣と魔法と学園モノ。11【エロパロ】
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1293545186/

【ととモノ。】剣と魔法と学園モノ。12【エロパロ】
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1302355832/


【保管庫】
2chエロパロ板SS保管庫
「ゲームの部屋」→「アクワイア作品の部屋」
http://red.ribbon.to/~eroparo/

次スレは480KBを超えた時に立てましょう。
2名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/11(土) 00:31:33.25 ID:+AGBAWod
>>1
スレ立て乙です。
お手すうお掛けしました。
3名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/11(土) 01:07:53.83 ID:Mv3xG5BP
>>1
スレ立て乙です
4名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/12(日) 01:54:13.54 ID:ViosTfZo
>>1
スレ立て乙です。
1にはこれを差し上げよう

つチャンピオンREDいちごと間違えてかったチャンピオンRED
5名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/13(月) 10:58:43.35 ID:/wCquvAH
>>1

っ【ノームの使用済み依代 制服・下着付き】
6名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/18(土) 00:51:35.96 ID:GnTeYPtp
今回も公式四コマのにくばなれ氏は絶好調だなw
7 忍法帖【Lv=11,xxxPT】 :2011/06/19(日) 15:03:21.05 ID:hygaimbQ
ヌラリって…少年なんだ
8名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/20(月) 17:04:56.74 ID:DWUTeCn8
教師陣に混じってても気づかない風貌だよなあいつはw
でもあれでベコニアとかジャコっちと同い年という事実……
9名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/20(月) 18:56:59.96 ID:rAuKDO07
そういうヤツ、学年に3人くらいいるじゃん?
夏休みに私服で受験相談受けに行ったら
先生に教材やら保健の営業と間違われるような子。
10名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/21(火) 03:13:33.64 ID:pJ9ZSMI0
ヌラリの毛髪は新天地を求めて旅だったんだろうね
11名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/25(土) 15:54:19.64 ID:YAXXVbR9
バカハゲじゃなくワカハゲと申したか

それはともかく3Dのペットとやらが地味に楽しみ
ペットとあれやこれやなSSが見られるわけか…
スライムとか触手とかいかにもなのはないけど、悪魔っぽいのと羊っぽいのがかわいいな
12名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/25(土) 16:32:49.60 ID:7hUHvDGI
>>8
えっ、ヌラリってブーゲンビリアより年下なの?
つか、ブーゲンビリアってヌラリより年上なの?!
13名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/30(木) 04:40:31.17 ID:PAUKJL46
>>12
自分もよく知らんが、ここは同年齢という事でイこうか
14名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/30(木) 21:20:35.91 ID:V7PMw9Zp
え?なんで?
ブーゲンビリアとPCとトウフッコが同学年で
トウフッコの現・兄貴(当時は性別未定)とヌラリが
同級なんだからヌラリが年上じゃないの?
15名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/30(木) 23:12:24.76 ID:PAUKJL46
>>14
え?!そうなん?!
あんまちゃんと見てなかったからかそれは知らんかったよ!!

すいません出直してきますorz
16名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/07/01(金) 00:55:29.50 ID:Xn8zu8Da
そういえば、オボロは卒業したんじゃなかったっけ。
17 ◆BEO9EFkUEQ :2011/07/01(金) 23:41:19.65 ID:yJYuxWZn
お久しぶりです。何とか3DS発売前に書き上がったんで投下します
前回からの引き続きのパーティネタで、今回がラスト

フェアリーとディア子で、注意としては些かドロドロとした展開になります
楽しんでもらえれば幸いです
181/16 ◆BEO9EFkUEQ :2011/07/01(金) 23:42:30.55 ID:yJYuxWZn
自分より能力のない者が活躍したり、あるいは自分が不要とした物が誰かに有効活用されていたりして、それを不快だと思う者は
少なからず存在する。そして、ただ思うだけならまだしも、中にはそれを壊してやろうとする者も存在する。
掃溜めと呼ばれる彼等にとって不運だったのは、そんな者がかつての仲間の中にいたことだった。しかもそれは、最悪な形で
彼等を壊そうとしていた。
「そんなこと言わないでよぉ……神様はいるもん〜…」
「そうねぇー、捨てる神あれば拾う神ありとも言うし……ま、貧乏神拾っちゃった神様は、大変だろうけどねぇ」
「………」
心底困った顔のドワーフに、その隣で敵意を剥き出しにした表情のセレスティア。そんな二人を、ディアボロスの少女が挑発する。
「ああ、でも別にいいのかぁ。あんたら、使えない奴等の集まりだもんね」
「ディアボロスちゃん……ひどいよぅ…」
「間違っちゃいないでしょー?あんたら、掃溜めって呼ばれてんじゃん。隣の堕天使も、実は『駄天使』だったりねぇー?」
セレスティアは何も言い返さない。しかし、固く握られた拳が、彼女の怒りを表していた。
と、そこに明るい声がかかった。
「お、二人とも何してるんだい?ああ、それにディアボロスじゃないか!三人で何してるんだい?」
途端に、三人はそちらへ振り返った。
「フェアリー君〜、ディアボロスちゃんがぁ…」
「あらフェアリー。別に、ちょっとお話をね」
「旧交を温めるって奴かい?」
「ま、そんなとこ」
押しの弱いドワーフは、二人の会話に口を挟むことができず、しゅんとした表情でフェアリーを見つめている。セレスティアは、
そんな彼女を優しく抱き寄せてやった。
「ああ、そうだ。セレスティア、ドワーフ、装備の強化頼んどいていいかい?そろそろ僕のグローブじゃ、防御に不安があるからさ」
「………」
セレスティアは返事をせず、黙って踵を返す。ドワーフはまだ何か言いたそうだったが、セレスティアに促され、渋々従う。
「……フェアリー」
「ん、何だい?」
「仲間より大事なものが見つかってよかったわね」
吐き捨てるように言うと、セレスティアはドワーフを連れて去って行った。そんな彼女を、フェアリーはぽかんとした表情で見送る。
「僕、何か怒らせるようなこと言ったっけな…?」
「さあね?でも気難しそうな人だし、何かはあったんじゃない?」
「まあなー、確かに難しい子だしなあ。あとでとりあえず謝っとくか。それより、次の水術、一緒に受けてくれるって言ってたよね?」
「え?ああ、そういえば。じゃ、一緒に行こうかぁ」
現在の仲間が、かつて所属していたパーティ。それと繋がりを持つことは、自然な流れだろう。その仲間が、どんな人物なのか。
どんな行動を取っていたのか。そういったことを事前に聞けるということは、命がけの冒険をする者にとって非常に重要な要素となる。
まして、リーダーともなれば、その重要性は飛躍的に高まる。それ故に、フェアリーはかつて仲間達が所属したパーティのほぼ全てと
接触し、仲間達のことを詳しく聞き出していた。
その中の、ドワーフが所属したパーティとは、その後も接触することが多かった。そして現在、パーティの一員であるディアボロスと、
非常に仲良くなっている。
教室に着くと、二人は並んで席に座り、それぞれ筆記用具などを取り出す。だが、ディアボロスはノートとペンを取り出した後も、
しばらくごそごそと鞄を漁っていた。
192/16 ◆BEO9EFkUEQ :2011/07/01(金) 23:43:35.98 ID:yJYuxWZn
「何してんだい?」
「あーっと、受講届忘れちゃったっぽい……水術、受ける気なかったから受講届出してないんだよねぇ」
「ああ、なんだ。僕、予備でいつも持ち歩いてるから……ほら、使いなよ」
言いながら、フェアリーは鞄を開け、中から受講届を取り出した。
「おお、用意いいね」
「これでもリーダーやってるからね。準備をこなすのも仕事のうちってね」
「さっすがぁ。で、これで……あ〜っと、現在の所属書いてない。風術……っと、完成!ん?あ、これ二枚重なってるよ」
「ありゃ、失礼。道理で一枚足りないと思ったよ」
一緒の授業を受け、教室移動も仲良く二人一緒。ここ半月ほどで、二人は異常なほどに接近していた。いつもは仲間と一緒に昼食をとる
フェアリーが、今では仲間達とではなく、彼女と一緒にとることがあるほどなのだ。
この日は、二人一緒に学食に向かうと、一度彼女のパーティの方へ顔を出した。しかし席には着かず、ばつが悪そうな顔で言う。
「ごめんよ、ディアボロス。ご一緒したいところなんだけど、さっきセレスティア怒らせてるから…」
「ああ、そういえばそうね。リーダーっていうのは大変ねぇ」
「リーダー不在のパーティっていうのも、間が抜けてる。仲いいのは結構だけど、自分とこを疎かにしないようにね」
そう言うのは、錬金術を学ぶノームである。ディアボロスを嫌わない人物という繋がりで、フェアリーは彼とも仲がいい。
「そりゃもちろん。僕はリーダーだからね」
「じゃ、残念だけど、また今度ね」
「ああ。それじゃ、また……っと、ノーム。課題の進捗はどうだい?」
「明日にはできるんじゃないかな。面倒で参っちゃうよ」
「はは、今度何かおごってあげるよ。それじゃ、今度こそまた!」
笑顔で彼等と別れ、フェアリーは自分のパーティの元へと向かう。が、席について早々、セレスティアの殺意まであと一歩という視線に
射竦められる羽目になった。
「な、何だよ…」
「……幸せね。頭の中身も、状況も」
「いや、今全然幸せじゃない…」
「なあフェアリー。お前、またあいつらのとこ行ってたのかー?」
ヒューマンの言葉に、フェアリーはこれ幸いと食いついた。
「ああ、そうだよ。どうしてだい?」
「いやなー、あいつらって、前ドワーフがいたパーティの奴等だろー?なんか、好きになれねえんだよなー」
その言葉に、ドワーフはまるで自分が怒られているかのように小さくなってしまう。そんな彼女を、セレスティアは優しく翼で抱き寄せる。
「あ〜、君は事情も知ってるしね……けど、あの人達自体は悪い人じゃないよ、ほんとに」
「そうかあ!?お前と一緒にいるディアボロス、お前といるときは大人しいけど、俺達と会ったときってほんっとにうぜえぞー!?」
どうやらヒューマンも、ドワーフやセレスティアと似たような目に遭ったらしく、その口調はだんだんと荒くなる。しかし、フェアリーは
そんなヒューマンに対し、不思議そうな顔をしている。
「え、ディアボロスが?そんなことないと思うけど……何か、すれ違いがあったんじゃなくってかい?」
「すれ違いって、ただすれ違おうとしただけでも、色々言ってくるんだぞあいつー!お前が仲良くなきゃ、俺もう殴ってるぞほんとにー!」
「ん〜、まあ君の言葉を疑うわけじゃないけど……彼女には、一応言っとくよ」
「嘘なんか言ってねえからな俺ー!」
そんな彼等の会話を、ディアボロスは喧騒の中から拾い上げ、しっかりと聞いていた。その顔にはニヤリとした、邪な笑みが浮かんでいた。
203/16 ◆BEO9EFkUEQ :2011/07/01(金) 23:44:28.91 ID:yJYuxWZn
ディアボロスが狙う相手は、主にドワーフとセレスティアだった。ドワーフはかつて仲間だったこともあり、性格も把握している。
その彼女にべったりのセレスティアは、本人を攻撃するまでもなく、ドワーフを攻撃すれば勝手に怒りを蓄積させてくれる。
あとは手さえ出してくれれば、それは明らかな問題行為となり、何かしらの処分が下されるはずである。そして、もしそんな事態になれば、
彼女の怒りの矛先は、リーダーであるにもかかわらず、何もしなかったフェアリーに向く。そこまでいけば、パーティの崩壊はそれこそ
あっという間だろう。
そのためには、フェアリーに気付かれては困る。ディアボロスはまず彼を誘惑し、完全に手中に収めたところで仲間への攻撃を開始した。
彼の前では、大人しく人懐こい女を演じ、仲間に対しては辛辣な皮肉や嫌味で攻撃する。彼女の思惑は、面白いほどにうまくいっていた。
多少、不満があるとすれば、バハムーンが思った以上に傲岸不遜で、嫌味や皮肉に対して一切反応しなかったことと、フェルパーはそもそも
寝てばかりいるため、攻撃のしようがなかったことぐらいである。
だが、それは大した問題でもなかった。少なくとも現状、事態は彼女の思惑通りに進んでいるのだ。
もう一つ、些か予想外だったのは、フェアリーが彼女のパーティ全体と仲良くなっていることだった。知らない者が見れば、彼もパーティの
一員だと思われるほどに馴染んでおり、仲間の方も、成績優秀かつ実戦経験豊富な彼のことを歓迎しているようだった。ディアボロスは
最初、この事態に少し戸惑ったが、結果として彼の仲間の不信を煽る結果となったため、これはこれで満足している。
昼食を終えた後、ディアボロスは購買へと向かった。予想通り、フェアリーはここに来ており、彼女の仲間のヒューマンと会話をしていた。
「ああ、やっぱりか。君も苦労するね」
「や、悪気があるわけじゃないと思うけど……気難しいんだよね、きっと」
「ハイ、フェアリーにヒューマン。仲良くお話?」
彼女の声に、二人は揃って振り向いた。
「ああ、ディアボロス!君も来たのかい」
「フェアリーがいるかと思って。ヒューマンもいたのは予想外だけど」
「はは、俺はお邪魔虫か?」
「まあ、別にいいよいても」
「うーわ、超邪魔くせえって感じだな。ま、お若い二人の邪魔する気はねえさ。午後の授業もあるし、この辺で失礼するぜ」
冗談めかして言うと、ヒューマンは肩越しに手を振りながら去って行った。
「フェアリーは?午後も何か授業ある?」
「ん?あー、賢者だから術師系は一通りね。火術と闇術が残ってるけど、君はどうする?」
「うーん、悪いけど、その辺はパスかなぁ。朝の水術と風術だけでもうお腹いっぱい」
ディアボロスが言うと、フェアリーはあからさまに残念そうな顔をした。
「はぁ、そうかぁ…」
「あ〜、そんな顔されても……あ、じゃあ何か埋め合わせっていうんでもないけど、何か付き合おうか?」
「おお、いいのかい?それじゃあ…」
フェアリーはいたずらっ子のように笑うと、ディアボロスの耳元に口を近づける。そして何事かを囁くと、彼女は苦笑いを浮かべた。
「そうきたかぁ……ま、いいよ〜。私から言ったことだしねぇ」
「よぉっし!!それじゃ、約束だぜ!?楽しみにしてるから!」
「はいはい。じゃ、午後の授業も頑張ってらっしゃ〜い」
非常に上機嫌で購買を出ていくフェアリー。そんな彼を、ディアボロスは笑顔で見送る。
だが、その笑顔は無邪気なものとは程遠い、嘲笑の多分に混じった笑みだった。
214/16 ◆BEO9EFkUEQ :2011/07/01(金) 23:45:47.10 ID:yJYuxWZn
授業が終わり、食事を終え、消灯までの自由時間となった頃、フェアリーは購買付近を飛んでいた。どうやらまだまだ上機嫌なようで、
その顔には一日中笑顔が張り付いていた。
そこに、道具袋を担いだバハムーンが通りかかった。その道具袋はやはりフェルパー入りらしく、僅かに寝息が聞こえている。
バハムーンにやや遅れて、フェアリーが気付く。仲間に気付くと、フェアリーは手を挙げて挨拶した。
「おー、バハムーン。またヒューマンと手合わせしてたのかい?」
そんな彼に、バハムーンは沈黙で応える。しばしの間をおいて、バハムーンは重い口を開いた。
「お前、わかってるのか?」
「何をだい?」
変わらぬ笑顔のまま、フェアリーは聞き返した。その顔をじっと見つめ、やがてバハムーンは目を逸らした。
「………」
それ以上は何も言わず、バハムーンは再び歩き出した。彼の背中を、フェアリーも黙ったままでじっと見送る。その顔には、変わらぬ笑みが
張り付いたままだった。

「幸運よねぇ〜。あんたみたいな役立たずが、お隣の優等生様みたいのと組めるなんてさぁ〜。その分、そっちは大変そうだけどねぇ」
「………」
「ディアボロスちゃん〜、私、何かしたぁ…?何かしたなら、謝るよぉ……だからもう、ひどいこと言わないでよぉ…」
「本当のこと言ってるだけだけどぉ?事実に、ひどいも何もないでしょ〜?」
翌日も、ディアボロスの攻撃は続いていた。もはやセレスティアの顔からは表情が消え、固く握られた拳は真っ白になっている。
一方のドワーフも、さすがにこうも続くとだいぶ参っているらしく、その顔は今にも泣きそうになっていた。
「ま、『掃き溜め』に『役立たず』なら、割と合ってると思うけど……公共の場所は、きれいにするべきよねぇ」
「えっと…?こ、こーきょーの場所…?」
「掃き溜めだか吹き溜まりだか知らないけど、ゴミはゴミ箱にあるべきって、そう思わない?」
セレスティアの翼が、勢いをつけるように揺らいだ。しかし、それが空気を打つ直前、後ろから仲間の声が飛び込んだ。
「お前達、ここにいたのか。ご飯の時間をきっちり守るお前が、珍しいな」
「……バハムーン」
余計な目撃者が来たためか、セレスティアは静かに翼を戻した。
「バハムーン君〜…!」
「……ドワーフ、とりあえずご飯だ。他の奴等は、もう学食に行ってるぞ」
言いたいことはわかっているというように、バハムーンはドワーフの肩を優しく叩いてやる。すると、セレスティアが即座にその手を
払い落とし、代わりに自分でドワーフの肩を抱いた。
「変な臭い付けないで」
「ステーキの匂いでもついたか?」
バハムーンが言うと、ドワーフの顔がパッと輝いた。
「え、ステーキあるのぉ?」
「ああ、まだいくつかあったはずだ。急げば間に合うだろう」
「わぁ〜、ステーキおいしいんだよねぇ。セレスティアちゃん、行こぉー」
「あ、うん」
珍しくドワーフに引っ張られるようにして、二人は学食へと走って行った。それを見届けると、バハムーンはディアボロスを一瞥した。
225/16 ◆BEO9EFkUEQ :2011/07/01(金) 23:46:31.98 ID:yJYuxWZn
「うちのリーダーが、世話になってるようだな。礼ぐらいは言ってやる」
「あんたも大変ねぇ。周り、お荷物だらけでしょう」
「そうだな」
「ああ、それとも天才様は、それぐらい何ともないのかなぁ?」
「そうだな」
「……それにしても、その図体で『ご飯』なんて、似合わない」
「俺もそう思う」
いかにも面倒臭そうに言ってから、バハムーンは踵を返した。
「うちのリーダーは、お前を気に入ってるようだ。世話は任せる」
「いいの?リーダーをそんなぞんざいに扱って」
だが、バハムーンは彼女の質問には答えず、黙って去って行った。
多少判断に困ったものの、恐らくは言い返せなかったのだろう。計画は着実に進んでいると、ディアボロスはその顔に悪魔のような笑みを
浮かべるのだった。

いつもは和気藹々としている昼食の時間だが、ここ最近はその雰囲気が少し硬い。フェルパーとバハムーンは普段と変わらないが、やはり
セレスティアとヒューマンはフェアリーにかなりの不信を持っているようだった。最も激しく攻撃されているドワーフはと言うと、
根が素直すぎるせいで誰かに不満を抱くということがないらしい。
「フェアリーよぉー、お前があいつと仲いいのはいいけどなー、ほんっとあいつうぜえんだぞー!」
その日も、ヒューマンは唇を尖らせ、フェアリーに食ってかかっていた。
「放っておけ。構ってやるから調子に乗るんだ」
そんな彼に、バハムーンがそっけなく答えた。その隣では、珍しく道具袋なしのフェルパーがデザートを食べている。
「あっちから構ってくるんだから、しょうがねえだろー!?」
「だから、向こうが話しかけようと無視すればいい。そのうち飽きてやめるだろう」
「あっちが喧嘩売って来てんのに、どうしてこっちが逃げなきゃいけねえんだよー!?」
フェルパーはデザートを食べ終えると、辺りをきょろきょろと見回し始めた。
「それは逃げとは言わねえ。相手はお前を不快な目にあわせてえんだから、構っちまえば負けも同然だぞ」
「えっと…?な、何?あいつが〜…?」
「だからな、あいつはお前を嫌な気分にさせてえわけだ。それで、お前が反論するってことは、嫌な気分になってるって証拠に…」
不安げに辺りを見回すフェルパーに気付くと、バハムーンは制服の上着を脱ぎ始める。
「……なるってわけだ。ここまではいいか?」
「なんで俺が嫌な気分だとかわかるんだよー?」
「不機嫌そうに言い返したり、怒ったように言い返せば、誰だってわかるだろう?」
言いながら、バハムーンはフェルパーに上着を被せた。すると全身を覆う布の感触に落ち着いたらしく、彼女は椅子の上で丸くなった。
「あー、なるほどなー」
「嫌な気分にさせてえ奴の思い通りに、わざわざなってやる必要はねえだろう。それこそ負けも同然だ」
「だけどよー!ほんっとに腹立つんだぞあいつー!」
「……まあ、お前に感情を抑えろと言う方が無理か」
会話の間中、フェアリーはセレスティアの殺気を帯びた視線に射竦められており、会話に参加することができない。
「あ、あ〜、えっと、ドワーフ。君も、その、なんだ。ディアボロスに、まだ何か言われるのかい?」
「ん…」
236/16 ◆BEO9EFkUEQ :2011/07/01(金) 23:47:16.78 ID:yJYuxWZn
フェアリーが尋ねると、ステーキを齧ろうとしていたドワーフはしょんぼりと耳を垂らし、持っていたそれを皿に戻す。
「……ディアボロスちゃん、何かあっただけだと思うんだけど……だけど…」
涙を堪えているのか、ドワーフは僅かに吐息を震わせ、くすんと鼻を鳴らした。
「ちょっと……辛いよ…」
最後の一言は、はっきりと声が震えた。途端に、セレスティアの殺気が鋭くなったかと思うと、彼女は突然立ち上がった。
「うわっ!?」
「……ドワーフ、帰りましょう。ステーキはわたくしが持つから」
ドワーフは黙って頷き、席を立った。セレスティアはステーキを皿ごと持つと、フェアリーに冷ややかな視線を向ける。
「仲間割れなんてしたら、それこそあの売女の思うつぼ。そうでなければ、お前を生かしてはおかないところよ」
冗談も誇張も一切含まれない声で言うと、彼女はドワーフを連れて去って行った。それを見送ると、ヒューマンも席を立った。
「俺も帰るかなー。何か今日は、もうお前と一緒にいたくねえし」
フェアリーを正面から見つめつつ、ヒューマンは言った。
「お前があいつと仲いいのはわかるけどよー……仲間よりあいつ信じるとか、お前、最低だぞ」
「………」
その言葉に、フェアリーは答えない。食器を下げ、そのままヒューマンが消えてしまうと、バハムーンも席を立った。
「俺はこいつを部屋に届けてくる。お前は、好きにしろ」
上着に包まったフェルパーを抱き上げ、バハムーンは食器を下げに向かう。
「え、あれ、人攫い……ね、猫攫い…?」
「そこの、こいつは俺達の仲間だ。俺を犯罪者に仕立て上げるな」
そんな会話を幾度か繰り返しつつ、バハムーンは寮へと去って行く。仲間達の去った食卓で、フェアリーは小さく溜め息をついた。
「はぁ、やれやれ。そんなこと、するわけないのにねえ」
一人呟き、フェアリーも席を立つ。そこには、仲間からの言葉を気にするような素振りは、一切なかった。

その夜、フェアリーは消灯時間直前に部屋を抜け出た。廊下を素早く飛び抜け、目的の部屋の前に立つと、ドアをノックする。
するとすぐにドアが開き、フェアリーは即座に中へと飛び込んだ。
「こんばんは、フェアリー。もう来ないかと思った」
「その割には、出迎え早かったよね」
「ふふ。まあ私だって、期待してないわけじゃないし」
妖艶に微笑むディアボロスに、フェアリーはいつもの笑顔を見せる。そして後ろ手に鍵を掛けると、早速ディアボロスを抱き寄せる。
「あん、いきなり?」
「ダメだったかい?」
「ん、ダメではないけど……ちょっとびっくりかな」
「そうか。じゃ、もうちょっとびっくりしてもらおうかな」
言うが早いか、フェアリーは彼女の胸に手を伸ばし、ゆっくりと撫で始めた。
「ちょ、ちょ!早い早い!展開早いってば!」
慌ててその手を押さえると、フェアリーはいたずらっ子のような笑顔を浮かべた。
「いつも同じだと、飽きるだろ?」
「むう〜、そういうのも嫌いじゃないけど……もうちょっとムードとか考えてほしいなぁ」
「はは、そうかい。そんじゃ、とりあえずベッド行こうか」
247/16 ◆BEO9EFkUEQ :2011/07/01(金) 23:48:00.55 ID:yJYuxWZn
反省のない顔で言うと、フェアリーはディアボロスの肩を抱き、ベッドへと促す。その縁に並んで腰かけると、フェアリーは改めて
彼女を抱き寄せた。
「それにしても、どうしてわざわざ私の部屋でなの?」
「ん、気分の問題だよ。女の子の部屋に来るってのは、男子にとって憧れだよ?」
「あ〜、何となくわかるかな。それ、男女が逆でも通じるよねぇ」
「わかってくれて何より。じゃ、早速」
フェアリーはディアボロスの後ろに回り込むと、大きな胸を両手で包みこんだ。同時にピクリと、ディアボロスの体が跳ねる。
「んっ……なんか、今日は……あくっ……ずいぶん、がっつくじゃない…?」
「そりゃあね。僕だって、したくてたまらない時ぐらいあるさ」
言いながら、軽く耳を噛む。ディアボロスの体が仰け反り、全身が強張った。
「あっ……くっ…!」
ディアボロスは腕を上げ、肩越しにフェアリーの頭を押そうとする。しかしそれは、彼の手が突然服の中に入ってきたことで止められた。
「あっ!?やっ、ちょっ…!」
フェアリーの手が大きな乳房を包み、やんわりと刺激する。全体を優しく捏ねつつ、指先では尖り始めた乳首をこりこりと刺激し、
その度にディアボロスは熱い息を吐き、体を震わせる。
「ちょ、ちょっとフェアリっ……やっ!い、いきなりそんなっ……んあっ!?」
片手が離れたと思った瞬間、それはスカートの中へ滑り込み、さらにショーツの中へと侵入した。くち、と小さく湿った音が聞こえ、
ディアボロスの体がビクンと震えた。
「くぅっ…!あっ、あっ……んああっ…!」
もはや喋ることもできず、ディアボロスはフェアリーの愛撫を受け入れることしかできない。フェアリーの指が秘裂をなぞり、開き、
中へと侵入する。膣内を掻き回すように動き回り、その動きが急に止まったかと思うと、最も敏感な突起を撫でながら抜け出ていく。
「あぐぅっ!ま、待って!もう無理!もう無理ぃ!!」
必死に叫ぶと、ディアボロスは何とかフェアリーの腕を振り払い、彼を押しのけた。そんな彼女に、フェアリーは実にいい笑顔を向けた。
「はは、どうだい?結構良かっただろ?」
「はぁ、はぁ、はぁ……も、もう〜、いきなり飛ばしすぎだって言うのにぃ…!」
かなり追い込まれていたらしく、ディアボロスの目つきはとろんとしたものになっており、呼吸は荒い。かと思うと、その真っ赤に
染まった顔に、反抗的な笑みが浮かぶ。
「……よぉ〜し、君がそのつもりなら私だって…!覚悟しろぉ!」
「うわ!?」
ディアボロスはフェアリーを押し倒すと、ズボンを下着ごと剥ぎ取った。そしてすっかり硬くなった彼のモノを取り出すと、根元から
ねっとりと舌で舐め上げる。
「くっ…!」
「ふふ、さっきの仕返しー!」
楽しそうに言って、ディアボロスは彼のモノを丁寧に舐め始める。先端を舌でつつき、捏ねるように舐め、一度口を離すと、半ばまでを
口の中に収める。
「うぅ…!」
彼女の口内は温かく、中で動く舌の感触が心地いい。ともすれば果ててしまいそうになり、フェアリーはシーツをぎゅっと握って
その刺激に耐える。
そんな彼を上目遣いに見上げ、ディアボロスは妖艶に微笑むと、口の中のモノを強く吸い上げた。さらに唇を窄め、舌で先端を
撫でるように刺激すると、たまらずフェアリーは彼女の頭を押しのけた。
258/16 ◆BEO9EFkUEQ :2011/07/01(金) 23:48:52.39 ID:yJYuxWZn
「もっ、もう無理無理!それ以上されたら出ちゃうって!」
「ぷはっ!ふふーん、いきなり激しくされる気持ち、わかったぁ?」
「ああ、わかった。十分わかったよ。でもまあ、これでお相子だね」
言いながら、フェアリーはディアボロスの手を引き、体を入れ替えて押し倒す。
「ほんと、がっつくね今日は」
「そんな日もあるんだって」
互いに笑顔で言うと、フェアリーは彼女の足を広げ、その間に体を割り込ませた。割れ目に自身のモノを押し当て、確認するように
彼女の顔を見ると、ディアボロスは恥ずかしげに頷いた。
ゆっくりと、腰を突き出す。秘裂が開かれ、彼のモノが少しずつ入り込んでいくと、ディアボロスは僅かに顔をしかめた。
「あうっ……く、うっ…!」
「ごめん、痛いかい?」
「へ、平気……大、丈夫…!」
一つ息をつくと、ディアボロスは少し恥ずかしげに笑った。
「気持ち、いいだけだから…」
「そうか。じゃあ、遠慮はいらないね」
奥まで一気に突き入れる。さすがに多少痛かったのか、ディアボロスの体がビクンと跳ねた。
「うあっ!?ちょっ……ほんと、激しいね…!」
「君も、嫌いじゃないだろ?」
フェアリーはゆっくりと腰を引き、再び強く突き入れる。その刺激にディアボロスが快感の声をあげると、そのままリズミカルに腰を
動かし始めた。
パン、パンと腰のぶつかり合う音が響き、それに混じってくちくちと粘膜の擦れ合う音が響く。フェアリーが腰を動かす度に、
ディアボロスは小さな嬌声を上げ、彼のモノを強く締め付ける。
「んっ!あっ!フェアリっ……気持ちいい、よぉっ…!」
可愛らしく鼻にかかった声で言うと、フェアリーの動きが僅かに強まる。二人の体には玉のような汗が浮かび、フェアリーの体を伝って
落ちたそれがディアボロスのものと混じり、シーツに染み込んでいく。
「うああっ!フェアリーっ……今日、すごくっ…!」
「くぅ…!君も、なかなか……激しいね…!」
お互いに前戯で追い込まれていたからか、二人の声は既にかなり追い込まれたものになっている。そして、フェアリーは一気に
追いこもうとするかのように、ディアボロスの腰をしっかりと掴むと、激しく腰を振り始めた。
「うあああっ!?そ、それ強すぎるぅ!!だ、ダメ!もうダメぇ!!!」
ディアボロスは彼の腕を掴み、必死に止めようとするが、フェアリーは構わず腰を動かし続ける。
「もう少し我慢してっ……僕も、もうっ……出る!」
最後に一際強く突き入れ、フェアリーの動きが止まった。ディアボロスの中で彼のモノが脈打ち、それと共にじわりと温かい感覚が
広がっていく。
「うあ……出て、る……中に、出されてるぅ…」
呆けたような表情で、ディアボロスが呟く。それを心地よく聞きながら、フェアリーは彼女の中に精を注ぐ。
やがて、フェアリーがゆっくりと腰を引いた。腰に愛液が糸を引き、彼のモノが抜け出ると同時に、彼女の中から出されたばかりの精液が
溢れ出た。
269/16 ◆BEO9EFkUEQ :2011/07/01(金) 23:49:56.02 ID:yJYuxWZn
「あうっ!はっ……はっ……い、いっぱい出たね…」
「ああ……ごめんよ、最後ちょっと乱暴で」
言いながら、フェアリーは彼女の股間を拭いてやり、自身のモノも軽く拭くと、ディアボロスの隣に身を横たえた。
「でも、乱暴なのもいいかも……なんてね」
「君、そっちの趣味があるのかい?」
冗談めかして言うと、二人は笑顔を交わした。しかし、そこでふとフェアリーの表情が変わった。
「あ、話いきなり変わるんだけどさあ」
「ん、なぁに?」
「君、うちのドワーフとかヒューマンに何か言ってるのかい?なんか、喧嘩売られたーなんて話聞いたんだけど」
彼の言葉に、ディアボロスはまったく悪びれることもなく答えた。
「するわけないでしょー、そんなこと。そんなことして、何の得があるの」
「それもそうか」
あっさりと答えるフェアリーに、ディアボロスは心の中で嘲笑した。しかしそれは、すぐに消えることになる。
「……でも、あの二人が嘘言うとも思えないんだけど、ほんとに何も言ってない?」
「だーかーらー、何もないってばぁ。大方そっちが、私の言葉何か取り違えたんじゃないのー?」
「あの二人なら、あり得なくもないかなあ……でも、はっきり馬鹿にされたとか聞いたんだけど」
ごまかせたかと思うと、妙にしつこく食い下がるフェアリーに、ディアボロスはイライラし始めていた。それに従い、口調も自然と
きつくなる。
「だから何もないって言ってるでしょ?あんたさ、私よりそっち信じるわけ?」
「いやぁ、もちろん君は信じてるさ。でも、僕はパーティのリーダーでもあるからさ…」
ここまで、全てうまくいっていた。それが突然思い通りにいかなくなり、ディアボロスの苛立ちはとうとう限界に達した。
「……あーっ!うるっさいなあんたは!!馬鹿共を馬鹿にして、何か悪いわけ!?」
突然、本性を曝け出したように叫ぶディアボロスに、フェアリーは驚きの目を向ける。
「え……な、何言って…?」
「ああそうよ!喧嘩売ってますよ!あんな屑どもが、私達より成績いいとか許せるわけないでしょ!?」
「……君は、初めからそのつもりで僕に…?」
「それ以外、あんたみたいな奴とどうして付き合うってのよ?思い上がってんじゃねえよ、このチビが!」
彼女の暴言にも、フェアリーはあまり表情を変えない。
「全部、演技だったってわけかい…」
「ああそうですよ。あっさり騙されてくれたおかげで、楽しませてもらいましたよ。あんたさ、もうあんたのパーティに、居場所なんか
ないんでしょ?仲間より私の方信じて、そんなリーダー、誰も信じないもんねえ」
勝ち誇った顔で言うディアボロスに、フェアリーは暗い溜め息をついた。
「そう、か……騙されたのか…」
「男って、ほんっと馬鹿だよね。ちょっと股開いてやりゃあさ、もうそいつ疑うなんてしないもんねえ」
「………」
フェアリーは黙ってベッドから降りると、のろのろと服を身につけ始めた。それを、ディアボロスは会心の笑みを浮かべたまま見守る。
「……さすがに、一緒にいる気には、なれないね……部屋に帰るよ…」
「ああそう、バイバイ」
フェアリーの背中に、ディアボロスの勝ち誇ったような声が突き刺さる。
「負け犬」
パタンと、ドアが閉まる。それを見届けると、ディアボロスは声をあげて笑い始めた。それは悪意と優越感に満ちた、不快な笑い声だった。
2710/16 ◆BEO9EFkUEQ :2011/07/01(金) 23:51:06.16 ID:yJYuxWZn
翌日、フェアリーは朝から授業にも学食にも姿を見せなかった。しかし、彼のパーティでそれを気にするのはドワーフ一人であり、
ディアボロスもまた、既に終わった男のことなど何の興味もなかった。
しかし、午後の授業も残り一コマとなったところで、ディアボロスの前に突如フェアリーが現れた。
「やあ、ディアボロス。昨夜はどうも」
「何よ?何か用?」
「ん、ちょっと大事な話があるからさ……夕食後、寮の屋上で。待ってるよ」
それだけ言うと、フェアリーは返事を待たずに飛んで行ってしまった。一体何の話なのかは気になったが、どうせ形だけの別れ話だろうと、
ディアボロスは考えていた。
それから残りの授業を終え、夕食を終えると、ディアボロスは一旦部屋に戻った。とはいえ、別に何か用意や考えがあったわけではなく、
単にフェアリーの言葉を忘れていたからにすぎない。
それを思い出して屋上に向かう頃には、消灯時間はあと一時間にまで迫っていた。屋上のドアを開けると、微かな月明かりに照らされ、
フェアリーの羽が煌めいた。
「お待たせ。で、話って何…」
言いかけた瞬間、彼女の耳に信じられない声が飛び込んできた。
『ああそうよ!喧嘩売ってますよ!あんな屑どもが、私達より成績いいとか許せるわけないでしょ!?……君は、初めからそのつもりで…』
「なっ…!?」
それは確かに彼女とフェアリーの声であり、会話の内容は昨夜のものと一言一句違わぬものだった。
パツッと音がし、声が止まる。フェアリーは屋上の手すりに座ったまま、笑みを浮かべた。
「いや〜、べらべらべらべら、あっさり喋ってくれたおかげで助かったよ。ま、付き合ってる子の性格ぐらい、男は知っておかなきゃね」
いつもの軽そうな笑顔。ディアボロスは咄嗟に魔法を詠唱しようとしたが、フェアリーは不敵に笑う。
「あ〜、やめた方がいいよ。空際線ってのは目立つからね。魔法なんか使ったら、一発で知れ渡るよ」
「くっ…!」
ならば直接攻撃を仕掛けるかと考えたが、すぐにそれも不可能だと知る。もし不穏な動きをすれば、フェアリーは屋上から飛び降り、
飛んで逃げるつもりだろう。
「い、いつの間にそんなのっ…!?」
「や〜、君のとこのノーム、いい腕だよねえ。君の喘ぎ声を録音しておかずにしたいって言ったら、『この変態め』とか言いながら
しっかり仕込んでくれたよ。デザートいくつか奢る羽目にはなったけどね」
その時ディアボロスは、いつだかフェアリーとノームが『課題』について話していたのを思い出した。
「ま、『たまたま』こんなのが録れちゃったけど、こんなに明瞭に録音できてるなんてね。技術の進歩はすごいねえ」
「ふ、ふざけるな!あんた、脅すつもり!?」
「いや、別に?僕はこんなのもあるよって教えてるだけさ」
「くそっ……お前、あとでお前のやったこと、みんなに話して…!」
「……あのさー、君、そんなに自分がパーティで信用されてると思ってる?」
心底呆れたというように、フェアリーは大袈裟に嘆息して見せる。
「ヒューマンも言ってたよ。君はわがままなところがあるし、嫉妬深いとこがあるから、付き合ってる僕は苦労するな、ってさ。
もしも手に負えなくなったら、是非相談してくれとまで言われたぜ?」
「う、嘘だっ!」
「そう思うならそう思ってればいいさ。僕は事実を述べてるだけだ」
ここでようやく、ディアボロスはなぜ彼がこちらのパーティとも異様に仲良くしていたのかを悟った。
2811/16 ◆BEO9EFkUEQ :2011/07/01(金) 23:52:26.24 ID:yJYuxWZn
「君ねえ、僕達を攻撃するのはいいけど、自分のとこをまずは見直しなよ。それに、君はうまく立ち回ってたつもりかもしれないけど、
君の仲間はみんなこのことを知ってる。なのに、誰一人君を止めなかった訳は、僕が何とかするから手を出さないでくれって、みんなに
言ったからだよ?」
「い……いつから、気付いてた…!?」
にんまりと、フェアリーは実に無邪気そうな笑みを浮かべた。
「君が僕に接近して、二日目ぐらいかな。僕はリーダーだ。仲間のことは、誰より把握する義務がある」
これは勝てそうもないと、ディアボロスは悟った。小さく溜め息をつき、しかしすぐにフェアリーを睨む。
「……今回は、負けてあげる。でも…」
「今回は、だって?君、次があると思ってるのかい?」
心底驚いたというように、フェアリーはまたも大袈裟に驚いて見せる。
「まあ、やりたいならやればいいけど……この学校、直筆のものさえあれば、代行で退学届出しても受理されるんだよねえ。仮に、
その人が死んでてもさ」
「私を殺して、退学届偽造しようってこと?」
「いやあ、まさか。僕だって人殺しはしたくないよ。それに、君がそんなもの用意してるわけはないし、僕にもできることと
できないことがあるさ」
言いながら、フェアリーはぴょんと手すりから飛び降り、ディアボロスの横を悠々と通り抜ける。彼女が手出しをしなかった理由は、
フェアリーがまるで迷宮探索の最中のように、警戒した視線を彼女に送っていたからだった。
屋上のドアに手を掛けると、ふとフェアリーはディアボロスの方に向き直った。
「あ、そうだ。君、コインとかを誰でもものすっごくリアルに模写する方法、知ってるかい?」
「……は?」
思わず聞き返すと、フェアリーは懐から小さな紙とペンを取り出し、カリカリと擦り始めた。やがて、動いていた手が止まり、
彼は持っていた紙を紙飛行機にして投げてよこした。それを拾い上げてみると、そこには1G硬貨の模様がくっきりと浮かんでいた。
「紙を重ねてさ、上から擦るだけ。凹凸がある物なら、何でもリアルに模写できるんだよねえ」
何気なくその紙を裏返した瞬間、ディアボロスの背筋にぞくりと冷たいものが走った。
「……だから、授業に誘ったっていうの…!?」
「さてさて、何の事だかね?ま、それはあげるよ。受講届なら、いつも数枚常備してるからさ」
楽しげに笑って、フェアリーは今度こそドアを開けた。そして体を滑り込ませると同時に、立ち尽くすディアボロスを肩越しに振り返る。
「これ以上、仲間を傷つけるなら……僕も、本気でお相手するよ」
「………」
背後でドアが閉まると同時に、フェアリーは軽く息をついた。そして、ほんの少しだけ寂しそうな笑顔を浮かべる。
「体の相性は、割と良かったと思うんだけどなあ……は〜ぁ」
溜め息をつきつつ、階段を降りる。最後に滑り込みで購買でも見ようかと考えていると、不意に意外な人物が目に入った。
2912/16 ◆BEO9EFkUEQ :2011/07/01(金) 23:53:32.01 ID:yJYuxWZn
廊下の向こうから歩いて来るバハムーン。フェアリーが手を挙げて挨拶すると、彼も軽く手を挙げてそれに応える。
そのまますれ違い、フェアリーがやはり部屋に戻るかと思った瞬間、後ろから声がかかった。
「能ある鷹は」
「……?」
「爪を隠す。だが、隠しっぱなしなら能無しも同然だ」
「………」
二人は振り向かず、バハムーンは背中越しに喋り続ける。
「お前は、爪を出すべき時を知っていたようだな」
「……やだなあ。君、人が悪いぜ?いつからわかってたんだい?」
「お前に、わかっているか聞いたときに確信を持った」
「あ〜……さすがだね」
「俺がそれを悟ると、理解した上での行動じゃないのか?」
「……いやあ、さすがさすが。やっぱり君には、どうやってもかなわないな」
極端に省略された会話を交わし、二人はそこでようやくお互いの方へ向き直った。
「ドワーフかヒューマンくらいなら、騙せるかもだけどねー」
「あいつら以外で、『わかっているのか』というだけの問いに笑顔で聞き返す奴が、何もわかってねえなんて思う奴はいねえだろう」
「セレスティアだと、逆上して殺しにかかってきそうだけどね」
冗談めかして言うと、バハムーンは少しだけ笑った。
「それだけの才覚があって、どうして隠し続けた?」
バハムーンの問いに、フェアリーは困ったような笑みを浮かべる。
「僕は言葉のイメージ通りの小物だからね。君のように才覚を誇ることもできず、セレスティアのような純粋さもない。隠して、少しずつ
発揮して、受け入れられなければまた隠す。一人で生きる力も度胸もないのさ、僕には」
「相手に合わせて力量を調節するのは、それも一つの才能だと思うがな」
「だから言ったろ?買い被りすぎさ」
「本当に、食えない男だ」
「お互い様だろ」
二人は笑顔を交わすと、同時に背を向けた。
「仲間の不満、抑えてくれてありがとう」
「気付かれてたか。だが礼を言われる筋合いはない。お前のパーティは、お前だけのパーティじゃないんだからな」
「僕が嬉しく、ありがたいと思った。お礼の理由には十分だろ?」
「……確かに、な」
それだけ言って、二人は再び歩き出した。遠ざかる背中の気配が、頼れる最高の仲間だという思いを、胸に秘めながら。
3013/16 ◆BEO9EFkUEQ :2011/07/01(金) 23:54:42.89 ID:yJYuxWZn
掃き溜めと呼ばれる彼等は、パーティとしてはそれなりに優れているという程度の成績を取り続けた。
極めて優れているわけではないが、どちらかと言えば優秀という部類。個々で見るなら、何でもそつなくこなすフェアリーを筆頭に、
格闘だけ見れば優秀なヒューマン、聖術の実施試験だけは優れたドワーフ、堕天使学科と、タカチホの巫女学科という変わった履修の
仕方ながら、そのどちらも優秀な成績を収めたセレスティア、いつも寝ている割になぜか点数のいいフェルパー、そして様々な学科、
特にツンデレ学科において類い稀な成績を収めたバハムーンと、それなりの逸材が揃っていた。
初年度こそ色々と問題が起こったものの、彼等はその後順調に授業をこなし、大きな問題が起こることもなかった。
月日はあっという間に過ぎ去り、一年経ち、二年経ち、やがて彼等は森羅万象の理という、最難関とされる迷宮すらも突破してみせた。
もはや、彼等はこれ以上教わることはなかった。ここまで生き延び、走り通した同期達と、躓き、それでも歩き続けた元先輩達と共に、
彼等は来るべき日、卒業を迎えた。
世話になった恩師達の言葉。仲間として、あるいはライバルとして共に歩んだ者達の言葉。それらを胸に、彼等はプリシアナを去る時を
迎えていた。
「みんな……もう、ほんとに、お別れなんだねぇ…」
鼻をぐすぐす鳴らしつつ、ドワーフが言う。彼女は卒業式の間中も、ずっと泣き続けていた。
「早かったねえ、ここまで。まあ、あの二人は、なんかいつも通りだけど…」
彼等は今、揃って体育館に来ていた。卒業前に手合わせしろと、ヒューマンがバハムーンに食い下がって聞かなかったためである。
「今日こそ、今日こそ叩きのめしてやるからなー!最後に勝つのは、俺だー!」
「ずっと、そう言い続けてたなお前は。そして結果は、いつも変わらなかった。それは今日という日だろうと、変わらんぞ」
「なめるなー!これまでずっと、頑張ってきたんだからなー!今日こそ絶対、勝ってやる!」
ヒューマンが床を蹴り、バハムーンが身構えた。
顔への突きをかわし、反撃の拳を繰り出す。ヒューマンはそれを軽く捌き、蹴りを繰り出そうと足を上げた。
その軌道の先に、バハムーンが膝を突き出した。そこで防がれては、いかなる格闘家であろうと、戦闘続行は困難となる。
蹴りのために上げた足が、そのまま踏み込みへと変化した。一気に懐へ迫ったヒューマンに、バハムーンは目を見開いた。
「がっ!?」
渾身の突きが、バハムーンの腹にめり込んだ。途端に嘔吐しかかり、バハムーンは頬を膨らませ、口元を咄嗟に手で押さえた。
「これで終わりだぁー!」
そこへ、ヒューマンが追撃の蹴りを放った。だが、バハムーンの目は既に闘志を取り戻していた。
咄嗟に体を開き、不用意に上がった足を肘で叩き落とす。たまらずヒューマンが呻いた瞬間、バハムーンは口の中の物を飲み下し、
思い切り体を捻った。
「はっ!!」
「ぐあっ!」
掌底が、ヒューマンの胸に直撃した。それなりにいい体格のヒューマンが軽々と吹っ飛ばされ、彼はそのまま何度も床を転がり、体育館の
壁にぶつかってようやく動きを止めた。
「ヒューマン君!大丈夫ぅ!?」
「いや待てドワーフ!それより先にバハムーンを頼む!」
「え…?」
気付けば、バハムーンの顔は真っ青になっていた。そして腹を押さえたかと思うと、その顔が苦しげに歪んだ。
「ぐ……ぐっ…!がはぁ!」
バハムーンの口から、大量の血が床へと撒き散らされた。途端にドワーフは悲鳴を上げ、その場に跪いて手を合わせた。
「神様……お願い、二人とも助けて…!怪我、治してあげてください…!」
3114/16 ◆BEO9EFkUEQ :2011/07/01(金) 23:55:21.84 ID:yJYuxWZn
彼女の祈りは抜群の効果を見せた。バハムーンの顔はたちまち赤味を取り戻し、倒れたままピクリとも動かなかったヒューマンは、
呻き声をあげて立ち上がった。
「う……あれ……なんで、俺…?ま、また……負けたのかよぉ…?」
「……最後まで立っていたのは、俺だ」
口元を拭い、バハムーンははっきりと言った。
「く……くっそぉー!!あれが決まって、それでもまだっ……くそぉー!」
悔しげに叫び、床を殴るヒューマン。彼に駆け寄るドワーフを横目で見ながら、フェアリーはバハムーンに近づく。
「危なかったね」
「ああ……だが、負けるわけにはいかねえだろう。俺は、上に立つ人間になる。ああいう奴の、目標であり続ける義務がある」
そう言うバハムーンの顔は、実に楽しげだった。
「しかし……一対一の立ち合いで、あんなにまともに攻撃を受けたのは、生涯で初めてだ。あんな奴でも、ただ一つの目標に邁進すれば、
ここまで化けることもあるんだな」
「そんなの相手に勝ち続けなきゃいけないってのも、大変だね」
「そうでもねえ。これでやっと、俺も人生で楽しみを見つけられたからな」
最後の一大イベントも終わり、彼等は住み慣れた寮を引き払う準備を終え、荷物を持って正門前に集まった。
これまで、ずっと一緒だった六人。仲間達の顔を見回し、リーダーであるフェアリーが口を開いた。
「まあ、その……みんな一緒に、今日を迎えられて良かったよ。僕はこれで、故郷に帰るつもりだけど、みんなは?」
「私も、おうちに帰るよぉ」
ようやく落ち着いたドワーフが、いつも通りのおっとりした口調で答えた。
「お金もね、いっぱいもらえたし、お父さんに楽させてあげるんだぁ」
「ほんと、君はいい子だなあ……セレスティアは?」
ドワーフにずっとべったりだった彼女がどうするのか気になり、そう問いかけると、仲間の誰もが予想しなかった答えが返ってきた。
「……ドワーフと結婚する」
「はぁ!?」
「ええっ!?」
「え……あ、あの、私とぉ…?」
ヒューマンやフェアリーとは違い、ドワーフは思ったよりも反応が薄い。あるいは、驚きすぎて反応できなかったのかもしれないが。
「えっと、女の子同士だけど……できるのかなぁ…?」
「シスターの信仰するものとは違うけど、そのためにわたくしも、タカチホの神について学んだ」
「あ……そのために、巫女学科入ったんだぁ」
「それに愛があれば、そんなの関係ない」
「ん〜……わ、私も、ね。セレスティアちゃんのこと、大好きだからぁ……お父さんも、お話すればわかってくれるかなぁ、えへへ」
本当に嬉しそうに笑うセレスティアと、恥ずかしげに笑うドワーフを見ながら、フェアリーはぽつりと呟いた。
「……こりゃ、お父さんは大変だな…」
「本人達がいいなら、他人が口を出せることでもねえだろう」
「それでバハムーン、君は?」
フェアリーの問いに、バハムーンは当たり前のように答えた。
「俺はさらに上を目指す。モーディアル学園に入学するつもりだ」
「君もさすがだねえ。ヒューマン、君は?」
「こいつ、モーディ……モーディア学園?に行くんだろ?まだ、勝ってねえからな!俺も行くに決まってんだろー!」
3215/16 ◆BEO9EFkUEQ :2011/07/01(金) 23:56:33.70 ID:yJYuxWZn
ヒューマンが言うと、バハムーンは少し嬉しげに笑った。
「どこに行こうと、お前が俺に勝てるわけはねえだろう」
「ふざけんなー!いつか絶対!絶対絶対、勝ってやるんだからなー!」
入学当初から変わらない関係に、フェアリーは笑いながら二人を見つめていた。
そこでふと、バハムーンは担いでいた袋に目を移す。
「おい、フェルパー。起きろ。大事な話だ。お前も寝てないで参加しろ」
「……おはなし?」
もそもそと、袋の中からフェルパーが這い出る。この飼い猫化した仲間がどうするつもりなのかは、全員が気になるところだった。
「俺達は、今日で卒業だ。これからは別々の道を歩むことになる」
「……ダメ」
ぼそりと、フェルパーは言った。
「こればかりは、お前の都合に合わせられない」
「ダメ」
さっきよりもはっきりと、フェルパーは言った。その顔は無表情だが、声には怒りとも悲しみともつかない表情が篭っていた。
「お前に家があるように、こいつらにも、俺にも、帰る場所がある。俺達は、ずっと一緒というわけにはいかねえんだ」
「……やだぁ…!」
表情を変えぬまま、フェルパーはぽろぽろと涙を流し始めた。思わぬ人物の思わぬ行動に、誰もが言葉を失ってしまった。
そんな彼女を見つめ、バハムーンは一つ溜め息をつくと、静かに話しかけた。
「フェアリーと、ドワーフとセレスティアは故郷に帰る。だが、俺とヒューマンは、モーディアル学園とやらに行くつもりだ」
その言葉に、フェルパーはバハムーンの顔をじっと見つめた。バハムーンも彼女の顔を正面から見つめ、やがてフッと笑いかけた。
「お前も、来るか?」
「行くっ!!」
嬉しげに叫ぶフェルパー。バハムーンが道具袋の口を開けてやると、フェルパーは早速その中に飛び込んだ。それを肩に担ぐと、中から
にゅっと腕が突き出し、フェルパーがちょこんと顔を出した。
「そうか、君達はまた別の学校かあ。頑張るね」
「上を見れば、果てがない。どんなに努力しようと、しすぎるなんてことはねえ」
全員が進む道を把握し、フェアリーは改めて全員の顔を見回した。
「……それじゃあ、みんな。ここでお別れだけど、元気で…」
「ちょっと待てよー!」
その言葉を、ヒューマンが遮った。一体何事かと思っていると、ヒューマンは意外な言葉を口にした。
「俺な、お前に言いてえことあるんだよー!あのなー、お前が俺拾ってくれなかったら、その、なんだー?そう!こんなに楽しくなかったと
思うんだよなー!だから、ありがとなー!」
「あ、じゃあ私もぉ。あのね、私のこと、仲間に入れてくれて、ありがとねぇ。おかげで、セレスティアちゃんにも会えたし、
すっごく楽しかったよぉ」
そう語るドワーフを見つめ、セレスティアはフェアリーから目を逸らしつつ、ぼそっと呟いた。
3316/16 ◆BEO9EFkUEQ :2011/07/01(金) 23:57:26.61 ID:yJYuxWZn
「……ドワーフに会えたことに関しては、感謝してる」
「楽しかった。この二人はまだ一緒。まだ楽しい」
バハムーンの肩から、フェルパーまでもがそう口にした。そしてバハムーンも、少し迷いつつ口を開いた。
「少し、入らなければよかったと思う部分もある。お前のおかげで、二番手の気楽さ、動きやすさを知ってしまったからな。だが、
これまで何でも思い通りになって、人生の何一つ面白いと思えなかったが、お前のおかげでこいつらに会えた。お前には、いくら
感謝しても足りないな」
そんな仲間達を、フェアリーは呆気に取られたように見つめていた。が、やがて表情が崩れたかと思うと、慌てて後ろを向いた。
「や、やだなあ君達!笑って別れようと思ったのに、できなくなるじゃんかー。そ、そういうことは最初に言ってくれよなあ」
「三年間の集大成を、会った瞬間抱く奴がいるか」
バハムーンの言葉に、セレスティアとフェルパーはクスリと笑った。ドワーフとヒューマンは、その意味を理解できていない。
「……それに、感謝なら僕だってしてる。陳腐で使い古された言葉しか出ないけど、君達と過ごした今までは、僕の中で最も輝いてる
時間だよ。この先、もしかしたら二度と会わない人もいるかもしれない。だけど……絶対に、忘れない」
六人はそれぞれの顔を見回し、校舎を見上げ、そして正門に目を向けた。
「それじゃあ、みんな……今まで、ありがとう!」
拳を作って突き出すと、全員がそれに倣い、拳を突き合わせた。そして最後に、六人揃って正門を抜け、校外へと踏み出した。
ここから先は、もうパーティの仲間同士ではなく、それぞれの道へと進んでゆく。当然、寂しくもあり、悲しくもある。
三年間を共に過ごし、喧嘩や仲直りを、何度も繰り返した。それでも助け合い、共に歩んだ仲間は、もういない。
しかし、傍らにはいなくとも、目を閉じればすぐにその姿が思い浮かぶ。共にあらゆる困難を乗り越えた仲間達の記憶が、自信となり、
力となり、勇気を与えてくれる。
夢と希望、危険と困難、それらに溢れた青春を共に駆け抜けた仲間達。
共通するその記憶を持ち続ける限り、彼等はずっと一緒に歩き続けている。
34 ◆BEO9EFkUEQ :2011/07/01(金) 23:59:09.66 ID:yJYuxWZn
以上、投下終了。何とかまとまってよかったw

それではこの辺で。
35名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 02:40:54.84 ID:VFPRlzoI
GJっす!
フェアリー体はちっそいけど器がでかいぜ!
36名無しさん@ピンキー:2011/07/04(月) 00:57:08.07 ID:CtGddZow
毎度ながらGJです!
ととモノ3DSをやるためだけに
3DSを買うか……?
悩みどころですね!
37名無しさん@ピンキー:2011/07/04(月) 02:08:30.50 ID:saaOwbtW
遅くなったけどGJ!
フェアリーかっこいいな
個性的なメンツの中で一人地味かと思ってたが、そんなことは全然なかった

3DSではどんなパーティに巡り会えるか楽しみにしてます!
38名無しさん@ピンキー:2011/07/09(土) 13:50:55.52 ID:496QD6rn
モミジ先生もみもみしたい
39名無しさん@ピンキー:2011/07/16(土) 17:56:35.01 ID:+PQJy0Zg
保守
40名無しさん@ピンキー:2011/07/16(土) 18:20:22.15 ID:++6aE1Lv
としm……もとい、妖艶なおねーさまであるザッハトルテの魔力を封じたうえで、
好き放題に犯し尽くし、アヘ顔で「らめぇ」としか言えなくなった時点で
優しく抱いて自分に依存されるSSを書きたい──そう想ってた時期が自分にもありました。
ザッハさん、なかなか再登場しねぇ……。想像力の翼も広がんないよ。
41名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 23:29:39.87 ID:ZXqYyuIU
・ノームの肉体は生まれたときに構築される
・儀式で他者と交換可能

なにこのエロパロ向き設定
42名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 08:12:23.97 ID:e7fux8iq
ルドベキア先生のふたなり両刀設定とか、もっと活用できないものか。
──エロパロ的に。

つーか、ゲーム本編での登場があまりに少なくね?
前作のカーチャ先生やリリィ先生と比べてもアピール度低いぞ!
モミジ先生はなんか「おかーさん」って感じだし……。
サービス薄いよ! 何やってんの!?
43名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 09:15:24.32 ID:fZPjPTa/
ルドベキア先生は色んな意味で残念なお方だったな……
そして今回はカーチャ先生のサービスってか暴走が凄まじいよなw
44名無しさん@ピンキー:2011/07/21(木) 02:15:35.50 ID:vOd6gsO2
タカチホでクシナがデモレアたちに閉じ込められたときはエロパロ妄想余裕でした
45名無しさん@ピンキー:2011/07/31(日) 07:01:59.99 ID:cPoLFgG5
ザッハトルテと3D主人公の純愛系エロ話書こうかと思ってるんだけど、ゲームしててもなかなか本筋にからんでこねぇ……。
ザッハ様の見せ場っていつ頃くるの?
46名無しさん@ピンキー:2011/07/31(日) 08:31:45.37 ID:uJW+LyLN
中盤辺りで結構絡んできたと思う
ザッハ様は実にいいキャラだ
47名無しさん@ピンキー:2011/07/31(日) 15:38:44.93 ID:OXFaRUVT
垂れ目ロリババァいいよ垂れ目ロリババァ
48名無しさん@ピンキー:2011/08/05(金) 15:00:07.60 ID:BbbkHUv2
「final」の公式キタコレ!
TOPページのザッハたん、まるでヒロインみてぇだw
49名無しさん@ピンキー:2011/08/07(日) 17:56:00.27 ID:6TOqV2y1
>>45
友達になる、の辺りから急激にデレる。
そこから先はもはや会話に出るたびに異様にデレる。
50ディモレアさん家の作者:2011/08/08(月) 19:48:30.85 ID:57/v1la9
お久しぶりです。
忍法帳のレベルが上がらないのが辛いですが新作投下でございます。
51英雄王の碑文:2011/08/08(月) 19:50:49.93 ID:57/v1la9
 クロスティーニ学園。
 パルタクスなどがある世界とは一つ裏側の世界の冒険者養成学校の一つである。
 校舎の豪華さや制服の素材が上質である事からエリートや上流階級の学校と勘違いされやすいが決してそういう事は無く多くの生徒に門戸を開いている。

 この物語はそんなクロスティーニ学園から始まる。

 クロスティーニ学園のすぐ近くにはじめの森という迷宮が存在する。
 いや、それは迷宮とは呼べないほどの単なる森なのだが、入学したばかりの一年生達が迷宮内のセオリーを学ぶのに適している事から授業にも使われる。
 一人前に罠まで設置されているから侮れない。
 そのはじめの森の中を、三人組のパーティが進んでいた。
「……本当にマルガリータ先生の授業難し過ぎるんだよなぁー……アンがいてくれなきゃオイラ絶対落第してるよ」
 先頭で教師の悪口を言っている戦士学科のドワーフの少年の名前はコッパ。
 このパーティのリーダーを勤めているがバカである事が欠点である。
52英雄王の碑文:2011/08/08(月) 19:53:29.85 ID:57/v1la9
「ありがとう、コッパ君………でも、マルガリータ先生の授業、プリントを読めば解りやすいよ?」
「……オイラ、初級学校にいた頃から難しい字読めないんだよ……」
 パーティの真ん中、コッパの後ろでお礼を言いつつコッパを嗜めているのは魔法使い学科のエルフの少女で、名前はアン。特待生故に成績は抜群であり、バカすぎるコッパの補習も平然とやってのけてしまう。
「おいおいコッパよー、ヒーローがそれでいいのか? 俺がクロスティーニのヒーローになる日は近いようだ」
 そう言って笑うパーティの最後尾は普通科のディアボロスの少年、ビネガーである。
 背中にライフルを背負っている辺り、得意武器は恐らく銃なのだろう。
「なんだとビネガー! オイラの方がぜってー先になるからな!」
「その時を楽しみにしてるぜおバカ毛玉」
「毛玉言うな! この牛野郎!」
「なんだとぉ!?」
「ふ、二人とも喧嘩しないでー……」
 ドワーフとディアボロスの仲裁に入るエルフというのもおかしな話だが、アンの言葉にコッパとビネガーは慌てて止めた。
「それにしてもよー、ダンテ先生厳し過ぎるぜ。パーネ先生の所は羨ましいよ」
「いや、パーネ先生も怖い時は怖いぜ? 俺はダンテ先生の方がまだ親しみやすいかもな」
「そうか?」
53英雄王の碑文:2011/08/08(月) 19:55:46.60 ID:57/v1la9
 コッパの言葉に、ビネガーは頷く。
「姉貴の担任がダンテ先生だったからな。姉貴がすっげぇ尊敬してるっつーか……今はお前の担任だけどな、ダンテ先生」
 ビネガーは頭を掻きつつそう言って笑った。兄弟がいると先生の印象もまた違うのだろう。
 コッパがそう思った時、ふと気付いた。
「お?」
 前方に、誰かが倒れている。行き倒れだろうか。
「行き倒れみたいだな」
「ああ……行ってみるか?」
「ヒーローたるもの、人助けが基本!」
「……よしきた、行こう」
 コッパとビネガー、そしてアンの三人はその人影まで近づいた。
「……冒険者養成学校の生徒、かな? でも、見た事無い制服だよなー」
 コッパが呟きつつ、丁寧に調べる。
 そのセレスティアの青年は恐らく上級生なのか、体格は大きめだった。
「ちょっと失礼……お。まだ生きてる」
 コッパが脈を調べ、まだ生きてる事に気付くと顔が見えるように一旦ひっくり返した。
「……ってぇ……」
 青年の口が小さく動く。どうやらまだ意識はあるらしいが、はっきりしてはいないようだ。
「保健室まで運ぶか。とにかく」
「そうだな……立てますか? 立てそうにないなら、掴まって下さい」
 ビネガーが青年を背負い、コッパが後ろを支えて落ちないようにする。
 意外と重い。何を持っているのやら、とビネガーは思った。
54英雄王の碑文:2011/08/08(月) 19:58:28.58 ID:57/v1la9
「……主に疲労と外傷…、ですね。意外とひどいですがこの怪我でも生きているとは大した生命力ですよ。新薬の実験台に……キシシシ」
 保険医、ガレノス先生はそう言って笑った後、呆れた顔のビネガー達に「おっとそうだ」と思い出したように生徒手帳を突き出した。
「一応、生徒手帳が出て来たので名前ぐらいは覚えておきなさい」
「はーい……パルタクス学園六年……聞いた事無いな、パルタクスって」
 ビネガーの呟きにコッパが頷きつつ言葉を続ける。
「ギル……ガメ、シュ? ギルガメシュか………すげぇ名前だなぁ、オイラと天地の差だぜ」
「確かにな」
 ビネガーとコッパはそう言って笑った後、コッパがふと呟く。
「それにしてもなぁ……この人どっかで見た事があるようなないような……」
「おいおいコッパ、何を言い出すんだ?」
「んー……気になっただけ。まぁ、いいや!」
 コッパはすぐに気分を変え、アンと一緒に保健室を出て行った。
 ビネガーも慌ててその後を追うが、実はその時。ベッドの上では。
「…………」
 そのギルガメシュが意識を取り戻し、コッパ達の背中を見送っていたのだった。

 その翌日。ガレノス先生から彼が意識を取り戻したと聞いたコッパ達は見舞いに行く事にした。
 見ず知らずの学校の先輩を見舞うというのも不思議な話ではあるが。
55英雄王の碑文:2011/08/08(月) 20:01:49.37 ID:57/v1la9
「こんにちはーっス! ご機嫌いかがですか?」
「ビネガー、それなんかおかしくね? こんにちは」
「二人とも保健室では静かに……あの、こんにちは」
 ビネガーとコッパが花束を抱えて顔を出し、その後に続いてアンが姿を現す。
「………? ああ、オメェらか、俺を助けてくれたっての」
 既にベッドの上で起きていたギルガメシュが視線をちらりと向けた後、そう口を開く。
 セレスティアにしてはぶっきらぼうで、珍しいな、とビネガー達は思う。
「具合はどうですか?」
「まだ本調子じゃねぇがだいぶマシにはなった……ちったぁリハビリさせてくれたらいいんだが」
「あ、そうだ。ギルガメシュ先輩、荷物、持って来たんですけど」
 ビネガーは昨日彼が倒れていた場所に散らばっていた荷物を持てるだけ集めて持って来ていた。中にはレアなアイテムもあって少し驚いたが。
 放課後すぐに行って来たとはいえ、いくらか無くなっていないかが心配だが。
「ああ、ありがとな………ん、剣も拾ってくれたのか。悪ぃな」
「いえ……それより、デュランダル二本って凄いですね」
「まぁな」
 ビネガーの言葉にギルガメシュは少しだけ自慢げに鼻を鳴らした。
 デュランダル二本を振り回しているだけあって、実力は高いのだろう。
「………先輩!」
「……あ?」
「オイラ達を弟子にしてください!」
56英雄王の碑文:2011/08/08(月) 20:05:06.29 ID:57/v1la9
 コッパが突如として口を開く。その突然の一言にギルガメシュだけじゃなく、ビネガーとアンも固まった。
「お、オイラ達、もっと強くなりたいんです! 先輩が相当な強さだって事、今ので解りました! お願いです、オイラ達を……」
「強く、か」
 ギルガメシュは小さく息を吐く。
「テメェがそれを望むなら、教えられるだけ教えてやる。ついてこれないならついてこれないと必ず言え。無茶だけはするな」
「ありがとうございます! ほら、ビネガーも!」
「は、はい! よろしくお願いします!」
「お前もかよ!? まぁ、いいけどな…」
「すいません、私も!」
「お前も!? つーか、俺は魔法そこまで得意じゃねーぞ?」
 ギルガメシュは三人の特訓に付き合わされる羽目になった。
 口では嫌がっているが認めてしまったものはしょうがない。諦めてやるしかないようだ。
「の、前に俺はリハビリがしてぇよ」
「リハビリですか? いい所知ってますよ!」
 ギルガメシュの言葉に、アンが声をあげる。
 今までわりかし静かなアンが口を開いたのには驚いた。
「ガレノス先生、先輩を少し」
「あまり推奨しませんが、まぁいいでしょう。彼も身体を動かしたがってるようですし…無茶は禁物ですが」
「ありがとうございます、ガレノス先生!」
 その時はアンだけでなく、コッパもビネガーも同時に頭を下げた。
57英雄王の碑文:2011/08/08(月) 20:07:09.70 ID:57/v1la9
「で、場所はどこにあるんだ?」
 ギルガメシュの問いに、アン達は「こっちです」と頷き、彼の手を引いて歩き出した。
 そして、彼ら4人が保健室を出るとき、ちょうど入り口の所で。
「ガレノス先生、すまないが…ん? ああ、お前らか」
 背中に大剣を背負ったディアボロスが姿を現した。
「あ、ダンテ先生。こんにちは」
「…コッパ。お前の後ろにいるセレスティアは誰だ? 見掛けない顔だが」
「昨日、はじめの森で倒れてる所を助けまして。で、これからアン達と一緒にこの先輩のリハビリを手伝うんです」
 コッパが胸を張ってそう返答すると、ダンテ先生は「いや、そうじゃなくてだな…」とため息をついた、が、その時にギルガメシュの視線を見て、少し驚いた。
「なるほど、なかなかできるようだな」
「そういう、お前も」
「せ、先輩。ダンテ先生は、オイラの担任で、めちゃくちゃ強い先生です」
「そうか」
 ギルガメシュの方はそれを聴くと興味無さげに視線を前に向けたが、ダンテの方はそれが気になった。
「……で、どこでリハビリをするんだ?」
「え? は、はい。ロッシ先生の所に…」
「オレも行く」
 アンの返答にダンテは即答するなり、即座にロッシ先生の道場へと向かいだした。
58英雄王の碑文:2011/08/08(月) 20:09:45.83 ID:57/v1la9
 数分後、ロッシ先生の道場に一行が到着した時、ロッシ先生は不在で、代わりに弟子のスフォリアがいた。
「おろ、珍しいネ」
「こんにちはスフォリア先輩。ロッシ先生は……」
 アンの問いにスフォリアは「校長の所アル」と答える。どうやらロッシ先生、なんか問題でも起こしたか。
「ところで、ダンテ先生はともかく、後ろにいるセレスティアの人、凄く怖いアル…誰?」
「ギルガメシュだ。パルタクス学園の…副生徒会長をやってる。ちょい、事情があって拾われた」
 ギルガメシュはスフォリアにそう答えた後「で」と言葉を続ける。
「おい。…俺のリハビリって誰がすんだ?」
「ロッシ先生に頼もうかと思ったんですけど……」
 アンは困った顔で答える。そう、その相手であるロッシ先生がいない。
 コッパとビネガーはアンに近寄り、声を潜める。
「おいおい、先輩怒ってるかも知れないぞ? セレスティアにしては気が短そうだし」
「だな。誰か適当に先生引っ張ってくるか?」
「ダンテ先生には……」
 アンがそう言いかけたとき、ダンテは興味深げにギルガメシュを見ており、ギルガメシュはそれを不快そうにしていた。
 ダンテがそんな顔をするのは珍しいが、あまり仲良くなれそうではないようだ。
59英雄王の碑文:2011/08/08(月) 20:12:39.19 ID:57/v1la9
 そして何もわからないスフォリアが「どうしたネ?」と首をかしげたとき、道場の扉がガラガラと開いた。
「ロッシせんせ…あ、コッパ君、ビネガー君、ここにいたのか!」
 扉を開いて入ってきたセレスティアの青年はコッパとビネガーにつかつかと近寄ると口を開いた。
「二人とも。この前の補習プリントはどうしたんだい?」
「ま、マルガリータ先生…いや、その…」
「ぷ、プリントは…その…」
 今年赴任してきたばかりの新人教師マルガリータは新人故にまだお固い部分がある事で知られている。
 一生懸命なのはいいが、コッパとビネガーの二人にとってはうるさいものである。
「で? どうしたんだい、プリントは?」
「おい、マルガリータ。そのへんにしといてやれ。ちょうどいい時にきたな」
 珍しいことに、本当に珍しい事にダンテがマルガリータの前へと入って追及を止めた。
「ああ、ダンテ先生……ちょうどいい時って?」
「ああ。紹介しよう、昨日そこの二人とアンが拾ってきた、ギルガメシュだ。六年らしい。腕も立ちそうだ」
 突如ダンテはマルガリータにギルガメシュを紹介した後「で」と言葉を続ける。
「戦術科教師としてお前も経験を積むべきだろうしな。こいつのリハビリに付き合ってやれ」
「……わかりました、ダンテ先生が言うなら」
 マルガリータはため息をつくと、ゆっくりと剣を抜いた。
60英雄王の碑文:2011/08/08(月) 20:14:58.46 ID:57/v1la9
 一般的なロングソードだ。ギルガメシュはそれを見ると、さすがにデュランダルで相手をするのもと思い、剣を収めて壁にかかっていた日本刀を勝手に取る。
 ロッシ先生のコレクションの筈だが、この際気にしないでおこう。
「さて、ギルガメシュ君、でいいかな? 生憎と手加減しないつもりだ。そのつもりで来て欲しい」
「ああ。…頼むぜ」
 ギルガメシュもそれに答え、じりじりと距離を取る。
 そして、ダンテがそれを見て興味深げに目を見開いた次の瞬間――――勝負は決まっていた。

 たった一瞬。
 コッパも、ビネガーも、そしてアンも。
 いや、マルガリータも認識できなかった。ギルガメシュはたった一瞬で距離をつめ、刀の峰で一撃を浴びせた。
 コッパ達が認識できたのは、道場の壁に叩きつけられるマルガリータの姿だけだった。
「……大した運動にもならネェか」
「…マルガリータ先生!? 大丈夫ですか?」
「あ、ああ…なんとかね」
 マルガリータは文字通り半分震えながら立ち上がり、そのまま壁によりかかった。
 苦しそうに胸を抑えているのは、胸に峰の一撃を食らったからだろう。
「どうだった?」
 ダンテがマルガリータにそう問いかけるが、マルガリータは首を横に振る。
「その…私が彼に教えるべきことは何も無いです」
「だろうな。まだまだ勉強が足りないぞ、マルガリータ」
61英雄王の碑文:2011/08/08(月) 20:17:28.49 ID:57/v1la9
 ダンテはそう答えた後、アンに視線を向ける。
「アン。こいつの治療を。それとギルガメシュ」
 ダンテは背中の大剣を抜き放つ。直後、ギルガメシュも日本刀を壁に戻してデュランダルを一本だけ抜いた。
 後は言葉をかわさなくてもわかる。
「お前ほど強い奴とやりあうのは、久しぶりだ」
「……あんた、強いな」
 ギルガメシュはダンテの言葉にそう返すしか無い。まだ本調子ならどうにかなりそうだが、勝てるかどうか解らない。
 ギルガメシュは、先日の敗北のダメージからまだ立ち直ってない、いわば手負いだ。
 だが、本調子になったとしても、この男を倒せるかどうか解らない。

 だが、とギルガメシュは思う。
 この男の腕前を見てみたい、とも思う自分がいた。

「行くぜ!」
 先に仕掛けたのはギルガメシュだった。
 デュランダルを片手で振り上げ、一気に距離を詰めながら力任せの荒削りな連撃。
 ギルガメシュはセレスティアらしからぬ力強さと攻撃速度で相手を圧倒する、それが彼の基本にして最強の戦いだった。
「荒削りだな!」
 ダンテはデュランダルの二倍ぐらいの重量はあるであろう大剣を、文字通り軽々と扱い、その連撃を捌ききる。
62英雄王の碑文:2011/08/08(月) 20:20:03.70 ID:57/v1la9
「!」
「今度はこちらから行くぞ!」
 ダンテは大剣を横薙ぎに大きく振るう。その風圧で、ギルガメシュは少しだけ仰け反るハメになった。
 そこに隙が出来る。
 強烈な踏み込み。道場全体が揺れたと錯覚しそうな踏み込みとともに振り下ろされる大剣。
 だが、ギルガメシュとて、それで倒れるものではない。
 右手でデュランダルを握っていた、だが仰け反った今では防御には使えない。ならば――――空いている左手を防御に使った。
 左手だけで、大剣を受け止めていた。
「なっ…!」
 ダンテが思わず動きを止める。そこへ、ギルガメシュは右手を再び動かし、デュランダルを振りかぶった。
 しかしダンテもその頃には思考を戻し、咄嗟に大剣を戻す。
 剣撃がぶつかりあう。
 そのままつばぜり合いなって数秒後、ギルガメシュは距離を取ろうと盛大に床を蹴って後ろに飛び、そして着地して床を蹴り、距離を詰めようとした時だった。
「っ!?」
 彼を、激痛が襲った。
 傷が開いた、と思った直後にギルガメシュの身体は床へと叩きつけられた。
「勝負ありだ」
「……ああ」
 ギルガメシュは首だけを上にあげながらそう返した。
 そう、彼の負けだった。
63英雄王の碑文:2011/08/08(月) 20:22:51.88 ID:57/v1la9
「あの時なぜ動きを止めた」
「…あ?」
「今のだ」
「……傷が疼いただけだ」
 ギルガメシュの返答に、ダンテは冷たく返す。
「それでそんな反応をしていたら、生き残れないぞ。今がただのリハビリで良かったな」
「………ああ、そうだろうな」
「邪魔したな」
 ダンテが立ち去った直後、ギルガメシュに手を差し出す人物がいた。
 マルガリータだった。
「戦術科主任のダンテ先生にあそこまで切り合えるなんて、君は大したものだよ」
「……けど、負けは負けだ」
 ギルガメシュはそう返すと身体を起こした。
 ふと視線を向けると、コッパ達三人はギルガメシュに畏怖と尊敬が混じったまなざしを向けていた。
 それもその筈だ。なにせ、コッパ達は新学期初日にクラス全員ダンテ先生一人に大敗したのだから。
 だが、今のギルガメシュはそんな彼と平然と戦っていた。だからこそ、だ。
「……みっともねぇ所見せたな…傷が治ったら、いくらでも教えてやる」
 ギルガメシュはそう答えると、どうにか立ち上がる。どうやらこの学校でも退屈せずにすみそうだ。

 ダンテは道場を出た後、職員室へと戻ってきた。
 職員室にいるのは同僚のパーネ先生だけ。他の教師も生徒もいない。だから、ダンテはいつもとは違い、昔のように声をかけた。
「パーネ先輩」
「どうしました、ダンテ?」
64英雄王の碑文:2011/08/08(月) 20:25:24.87 ID:57/v1la9
 生徒や他の教師の前では呼び捨てにし、ぞんざいに扱っているが二人だけの時はそうもいかない。
「……あっち側の世界の生徒が、一人来ている」
 懐かしそうに、ダンテにしては珍しく笑みを浮かべながらそう答えるとパーネも面白そうに笑った。
「そう、で、今は?」
「なかなか強い。帝国の連中とマトモにやり合う事ぐらいは出来るだろうさ」
「……ならば結構。その生徒が帝国の眼を惹きつけておいてくれれば、私たちも動きやすいですし」
 パーネがそう答えた時、職員室の扉が開いて魔術科のジョルジオ先生が入ってきた。
 二人は即座にいつもの二人に戻った。
「パーネ、いくらなんでもそれは無理な相談だ。勘弁してくれ」
「ダメです。なにがなんでもなんとかしてください」
「しかし」
「しかしもなにもありません。あなたが担任だったではありませんか?」
 傍から見ればパーネがダンテを説教中である。いつもの日常だ。
「あら、お二人ともどうしたの?」
「ジョルジオ先生、いい所に来てくれた。実はその…」
 ダンテが口を開くより先にパーネが口を開いた。
「ダンテ先生が前に担当していた生徒がダンテ先生に戦術の補習を頼みに来たんです。しかしダンテ先生はさすがにそれはまずいと」
65英雄王の碑文:2011/08/08(月) 20:27:57.84 ID:57/v1la9
「…その生徒の戦術の成績は?」
「三年生の中ではトップクラスだ。俺個人として教えるものはもう散々教えている」
 ジョルジオの問にダンテが首を横に振った時、ジョルジオはダンテの両肩をつかんだ!
「ダメよ! 恋する乙女は愛しい人に一秒でも長くいたいもの! そして何よりダンテ先生の強さは古今無双、その全てを教えるにはまだまだ時間が足りないわ!」
「ほら、ダンテ先生。私の言った通りでしょう。諦めて補習をしなさい」
「ジョルジオ先生に相談したら全部乙女のなんちゃらで片付けられそうな…痛っ! ちょ、ジョルジオ先生、そのステッキ冗談抜きで痛いからやめあだぁっ!」
 そんないつものクロスティーニ学園の日常。
 しかし、それでも時として変化は訪れつつある。

 例えば、行き倒れはギルガメシュ以外にも、出てきたとか。
66ディモレアさん家の作者:2011/08/08(月) 20:30:14.01 ID:57/v1la9
最初は以上です。
さて…実はえちぃシーンを書く相手候補がいくらか出てきたのですが、誰がいいかしら?
1:アスティ
2:キャンティ先生
3:パスタとヴォローネ
4:GJ
67名無しさん@ピンキー:2011/08/10(水) 01:22:19.26 ID:BGkQN3Y+
おお、ここにきてギルガメシュ先輩に再び会えるとは。続きを楽しみにしてます

しかし4番……GJ?GJ!?
68名無しさん@ピンキー:2011/08/10(水) 20:42:04.82 ID:stXGcdPA
ヒュマ男「バハ子♪」
バハ子「ヒュム男♪♪」

バハ男「見つけたぞ…世界の歪みを!」
ノム男「ターゲットを確認、…任務を遂行する」
エル男「人前でイチャイチャと…恥を知れ、俗物!」
ドワ男「この嫉妬の力すごいよぉ!さすが嫉妬四天王だあ!!」

ヒュマ男「ヒートォ!」
バハ子「エンド!」
バハ男「俺は…リア充になれない…」
ノム男「くっ…一時撤退す…(ガクッ」
エル男「俗物が…俗物があぁあ!」
ドワ男「 」

負けるな嫉妬団!戦え嫉妬団!!
69マルメンライト:2011/08/21(日) 02:46:59.23 ID:SU2D7dS/
お久しぶりでございます。
覚えている方がいるかは分かりませんが
新作が出来たのでまた投下しにきました。

諸注意 エルフ♂×エルフ♀
    …近親相姦

70マルメンライト:2011/08/21(日) 02:48:41.56 ID:SU2D7dS/
「綺麗な月…」
静まり返った夜の校庭に立ちながら、私は空に浮かぶ銀色の月に向かって手を伸ばす。
当然ながらその手が月に届くことなど無く、その手は空しく宙を掴んだ。
「遠いなぁ…」
すごく近くに感じるのに、絶対に届かない。
目の届く場所にあるのに手に入ることが無い。
まるで、私の中のあの人への思いのようで…私は少し寂しさを感じていた。
あの人はもう寝ているのだろうか?それとも起きているのだろうか?
そんなことを考えていると小さな音がなって闇の中から錬金術師学科の制服を着た白髪のノームの少女が現れる。
「…人に練習手伝わせておきながら浸るとは良い御身分ね、銀」
木製の杖で地面を削りながら、私のあだ名を呼んだ彼女は少し苛立ったような顔で私を見る。
「あ、ごめん…鈴蘭」
「そう思うならちゃんと練習しなさいよ」
あわてて謝りながら杖を拾い上げると呆れたようにそう呟きながら彼女、鈴蘭は手じかな花壇の縁に腰かけた。
「まずは簡単にアンタの術の流れを見る、通してやってみなさい」
「うん、分かった」
鈴蘭の言葉に促されるまま、中断していた練習を再開する。
―こうして…こう―
あの人の姿を脳裏に浮かべながら、あの人の動きをなぞって呪文を口にする。
精霊魔法、今、私が練習しているのはそれだった。
呼吸を落ちつけ、魔力を集める。
イメージを描いてそれをかためる。
そこまではあの人と変わらない。
だけど…。
肝心の精霊と交信し呼び出そうとしたところで、魔力が霧散して消えていく。
「…また失敗」
「そうね」
顎に手を当てて鈴蘭は答えながら、真剣な目をして呟く。
「もう一度」
「うん」
言われるままに繰り返す。
あの人をなぞって、あの人の動きそのままに、だが何度おんなじことを繰り返しても。
呼び出すところで集めていたはずの魔力は砂のようにこぼれていってしまう。
「…」
「また…駄目」
何度目かの言葉を繰り返し、ため息をついて地面に座り込んだ。
71マルメンライト:2011/08/21(日) 02:49:41.63 ID:SU2D7dS/
「…何が違うんだろ…」
単位が足りなくて呼び出し方が分からないのならまだ分かる。
だけど、呪文自体は知っている、単位だって頑張って取得した。
高位の精霊を呼び出すことはできなくても低位の精霊ならば呼び出せておかしく無いはずだ。
なのになんどやってもうまくいかない、何度呼びかけても答えてくれない。
エルフという種族に生まれて、精霊使いという学科を選んでいるくせに。
私は一度たりとも精霊を呼び出せたことがなかった。

途中まではうまく行くのに、どうしても精霊を呼び出そうとするたびに魔力が霧散して失敗してしまう。
「どうしてよ…どうして、来てくれないのよ…」

あの人のようになりたいのに。
あの人の役に立ちたいだけなのに。
それすらも許されないとでも言うのだろうか。
苛立ちをぶつけるように地面に杖を投げ捨てると、鈴蘭は静かに口を開いた。
「今日はここまでね」
「…まだ、できる」
そう言って立ち上がろうとした私を見ると彼女は空を見上げて一言だけ言った。
「いいえ、ここまでよ、空見てみなさい」
彼女に言われるままに空を見上げると先ほどまで綺麗に姿を見せていたはずの月を分厚い雲が覆い隠していた。
「いつの間に…」
全然気付かなかった
「雨の中で練習したい?貴方がどうあれ私は嫌だから帰るわ」
鈴蘭は視線だけで私にそう告げると反論は認めないとでもいうかのように踵を返す。
「…わかった」
仕方なく頷きながら私はそれに従って、寮へと歩き出した彼女の後を追う。

一人で練習をしても良いのだけれど、それでもし暴走などしてしまったら、ろくに精霊を呼び出すことも出来ない私が対処できるわけが無い。
鈴蘭に私の練習を付き合ってもらっているのは、もし魔法が暴走してしまったときに彼女に止めてもらうためだ。
その彼女が戻ると言った以上、万が一の時のことを考えても今日はあきらめるしかない。
72マルメンライト:2011/08/21(日) 02:50:58.70 ID:SU2D7dS/
「また、今日も駄目だった」
「そうね…」
私の言葉を予想していたかのように、何の興味も持っていないという声で答えると、彼女は不意に何か思いついたように振り返る。
「…ところで、銀、あんた何でそこまでして精霊使いになりたいの?
別段今まで通りの通常の魔術であれば問題なく使えるじゃない」
一瞬、何と言おうかためらいながら私は“用意していた方の答え”を彼女に告げる。
「…精霊魔法がちゃんと使えるようになれば…皆をもっと守れるようになるから」
「…ふぅん」
私の言葉を聞いた彼女はどこかつまらなそうに私を一度だけみて告げる。
「…まぁ、いいわ、とりあえず、私はそういうことにしておいてあげる」
「…ありがと」
「礼を言われても何の事かわからないわね」
きっと本当の理由に気付いているのに、私の嘘を受け入れていつものように興味を持っていないという表情で呟く彼女に感謝する。
「ただね…銀、今のアンタじゃきっと永遠に精霊魔法は使えないよ」
「…どういうこと?」
「さぁね、ヒントはもうあげたんだから、あとは自分で考えなさい」
問いかけた私に、鈴蘭はピシャリとそう言いきる。
無言のまましばらく歩き続けると寮の近くに来たところで鈴蘭は靴を掴んでふわりと浮きあがる。
「それじゃあ、お休み」
「…うん、お休み」
なんとか絞り出すように、そう返すと鈴蘭は寮の壁をかけのぼり闇に紛れるように消えていく。
その背中を見送りながら、私は彼女の言葉を反芻する。
―何で精霊使いになりたいの?―
もともと白魔術師学科だったのだから出来ないのならば戻れば良いだけなのかも知れない。
だけど、私の目的のためにはもっと強い力が、必要だった。
「…見てほしいんだもん」
守ってもらうだけなんて嫌だ。
あの人の事を私が守れるくらいじゃないと駄目なんだ…。
73マルメンライト:2011/08/21(日) 02:51:43.90 ID:SU2D7dS/
あの人は小さい頃からの憧れの人だった。
とても優しくて、私を大事にしてくれて。
両親が死んだときだって自分だって悲しいはずなのに泣き続ける私を優しく抱きしめてくれた。
ずっと一緒だった。
ずっと一緒に育ってきた。
そして…
これからもずっと一緒に居てほしいと、あの人のそばにずっといたいと思ってしまった。

「…あれ?」
自分の部屋に向かおうとした私は、屋上に見覚えのある影を見つけて静かに階段を上り続ける。
そうして軋んだ音を立てるドアを開けると、暗い屋上の一角に小さな赤い光が漂っていた。
「またタバコなんか吸って…」
予想通りの人がそこに居た。」
肩まで伸びた黒髪のポニーテール、片手に堂々とタバコを持ったエルフの少年は、私を見るといつものように笑った。
「ようユエ、お疲れさん」
ユエ、あだ名ではない私の本当の名前。
両親が亡くなってから私をその名で呼ぶのは一人しかいない。
「もしかしてみてたの?兄さん」
私の言葉に兄さんはどこか楽しそうな笑みを浮かべながらタバコを口に咥えてその煙を吸い込んだ。
「ちょっとだけな、タバコを吸いに来たらお前が鈴蘭と校庭で練習してるのが見えたからよ」
「そっか…」
情けない姿を見られていたということが悔しくて、精霊を未だにうまく呼び出せない自分に腹が立つ。
そんな私の心を見透かしたかのように、兄さんは私のそばまで来ると、私の頭をくしゃりとなでた。
「辛気臭い顔するな、ユエ」
「…でも」
このままじゃ、私は何の役にも立てない、そのことが悔しくて泣きそうになる私を兄さんは優しく抱きしめる。
「ちょっとうまくいってないだけだ、お前ならきっと出来る、なんてったってお前は俺の自慢の妹だからな」
「…ありがとう兄さん」
でも…、と私は心の中で一人呟く。
―妹じゃ、やだよ…―
そんな枠に入れないで私自身を見てほしい。
「それまでは素直に俺に守られとけ」
「…うん」
―貴方の隣に立てないと意味が無いの―
貴方に私を見てもらえないから…
だって…私は…。
「私、兄さんのこと大好きだよ…」
「はは!俺もだ、ユエ」
笑う兄に抱きしめながら、私は心の中で再び呟く。
74マルメンライト:2011/08/21(日) 02:52:37.09 ID:SU2D7dS/
―ううん、違うよ兄さん―
貴方と私の好きはきっと違う。
貴方は私を妹としか見ていないけど、私はちがうの…
だって私は…

貴方を異性として見てしまっている。
貴方に抱かれたいと思ってしまっている。
―私はね、兄さん…貴方を男性として好きなの…―
決して口には出せない言葉を心の中で呟きながら、私を抱きしめる手にすがりつく。
涙を流してはいけない、言葉を漏らしてもいけない。
だってそうしないと、隠しているこの気持ちを抑えられなくなると、私自身が知っていた。

「もう戻るね」
だから私は別れを告げる。
「そうか、まぁ、疲れてるだろ今日はゆっくり休め」
「うん…」
いつもと変わらない兄さんの笑顔を見ながら、秘めた思いを隠すように私はそっと屋上の扉を閉め、自分の部屋へ歩き出した。
75マルメンライト:2011/08/21(日) 02:53:40.33 ID:SU2D7dS/
「うう…寒い…」
呟く声に合わせて上がる吐く息が白く染まるのを見ながら私は体を震わせる。
辺りは一面真っ白な雪原だった。
「全くだな、さっさと見つけて宿に戻ろうぜ」
今回のクエストの私の相棒はそう言ってタバコをくわえながら…いつも通り笑った。
「うん…そうだね、兄さん」
兄さんは何とも思ってないかもしれない、だけど今、彼と二人きりである、という事実に私の心の中で小さく悪魔が囁いて来る。
―今なら何をしてもバレない…―
「…何を…しても」
「どうかしたか?ユエ」
「な、なんでもない、早く探そう」
「お、おい!」
心の中で一瞬思ったことが口に出てしまいそうになり不思議そうに首をかしげる兄さんの手を引っ張って歩き出す。
この顔が熱いのは、寒さのせいだと自分に言い聞かせて…。

なぜ、私達二人がこんな場所に居るのか、私は兄さんと共に雪原を歩きながら今朝の事を思い出す。
それはいつものチームでの会議のこと。

ドラッケン学園の寮のロビー
その片隅には私達のチームのメンバーが座っていた。
「困ったものだな」
カソックを身にまとったディアボロスの少年がため息を吐きながら呟くと体面に座ったバハムーンの少女が明らかに肩を落とす。
「すまない、団長」
鎖が巻きついた刀を腰に下げたバハムーンの少女がそういうと団長は苦笑してうなだれている彼女に笑いかけた。
「気にするな鎖、あくまで期限の確認を怠った俺の問題だ、お前が気に病むことじゃない」
「だけど、実際問題どうするのさ、間に合わないんでしょ期間」
そんな二人を見ながら右目を眼帯で覆った男子制服のヒューマンがビーフジャーキーを齧りながら呟くと、ヒューマンの隣で爪をやすりで整えていた鈴蘭も軽く頷く。
「まぁわけるしかないだろうな、チームを」
さも当然のように団長はそう答えると、異なる二枚の依頼書を見比べながら皆を見渡す。
「幸い、採取の方は危険度も少ないようだし、人数も少なめで問題ないだろう」
「人選はどうする?」
「そうだな…」
鎖の言葉に団長は全員を見渡すと不意に私を見て止まる。
「銀、頼めるか?」
「うん、大丈夫、それなら今の私でも役に立てるしね」
私は…精霊使いなのに、精霊が使えない。
そんな私が討伐依頼に参加したところで足を引っ張るだけなのは目に見えている。
だったら戦闘以外で皆の役に立とう…。
だからと思って私が頷くと隣に座った兄さんが、不意に私の頭に手を置いた。
「兄さん?」
「団長、俺も採取で、別段俺がいなくても戦力的には問題ないだろ?」
何だろう?そう思って問いただすよりも前に兄さんは団長にそう告げる。
「そうだな…では、頼むぞ黒」
「了解、団長」
そうして、私達は二人で依頼を果たすために雪原へとやってきたのだった。
76マルメンライト:2011/08/21(日) 02:54:14.33 ID:SU2D7dS/
「んで、目的の花ってのは分かりやすいもんなのか?」
「少なくとも花弁が水晶みたいって言う話だからみればすぐわかると思うよ?」
二人で雪原を歩きながら、辺りに生えている草の上に積もった雪をどけて確認しながら先に進む。
「ホントにそんな花あんのかね?」
「なかったら依頼になんてならないでしょ」
タバコをくわえながらそう呟く兄さんにそう言うと、それもそうかと呟きながら、兄さん鞘をつけたままの剣で草の上の雪を払っていく。

「…ねぇ兄さん、何で一緒に来てくれたの?」
探索を続けながら、何度目かの魔獣を倒し、剣についた血を拭っていた兄さんに、私は不意に問いかけた。
「…またなんだ藪から棒に」
「…兄さん、こういう地味な感じの事、嫌いじゃない」
私の言葉に兄さんは少し困惑したようにしながらもしばらく何か考えながら不意に呟く。
「別に…たまには兄妹水入らずってのも良いかと思っただけだ」
「…嘘つき」
私の漏らした言葉に兄さんは一瞬だけ顔を引きつらせ困ったような表情を浮かべる。
私には分かっている、何で兄さんが自分からあまり好きでもないこの依頼についてきてくれたのか。
「私…そんなに頼りない?」
…私に力が無いから、兄さんにこんなことを強いてしまっている。
「んなことねぇよ」
そう言いながら兄さんが私の頭を撫でてくるけど、一度思ってしまったことはなかなか消えてなんかくれない。
それどころか大好きな兄さんにそんなことを言わせてしまう自分自身に悔しさがこみ上げてくる。
77マルメンライト:2011/08/21(日) 02:56:25.35 ID:SU2D7dS/
「ユエ…泣くな」
「やだよ…私だって兄さんの役に立ちたいよ…」
今までずっと抑えてたのに、二人きりであるという状況に少しずつ気持ちがこぼれ出す。
「…ユエ?」
兄さんが困惑した表情で私を見ている。
当然だろう、私がどうして泣きだしたのか分からないから…。
涙がこぼれるのと同時に今まで抑えてたものがこらえられずにこぼれ出す。
「ねぇ兄さん…私はいつまで妹なの?どうしたらホントの私を見てくれるの?」
「落ちつけユエ、お前なんかおかしいぞ?」
少し強い口調の兄さんの声についに私はこらえられなくなって叫んでしまう。
「おかしい?私をおかしくしたのは兄さんでしょ…」
優しくするからいけないんだ。
ずっとずっとそばに居て優しくしてくれるから勘違いしてしまって。
分かっているはずなのに、もうこの感情は抑えきれない。
それ以上言ってはいけないと分かっているのに、私はその勢いのままに、兄さんに向けその言葉を告げた。
「私は兄妹なんかじゃなくて…異性として貴方が好きなの…」
その言葉を告げた瞬間、辺りの空気が静まりかえる。
驚いたような兄さんがタバコを取り落としたのを見た瞬間、今私は自分が何を言ってしまったのかを思い出す。
「あ…」
「ユ…エ、今なんて?」
驚いたままの兄さんがそう言って立ち上がる。
言ってしまった。
恐る恐る顔を上げると真剣な表情の兄さんと目が合う。
「ユエ…俺は…」
嫌だ…聞きたくない
脳裏に拒絶の言葉を続ける兄さんの姿が浮かんで胸が締め付けられる。
「…っ!」
だから、兄さんが何かを告げようとした瞬間、私は思わず逃げ出した。
78マルメンライト:2011/08/21(日) 02:57:02.02 ID:SU2D7dS/
言ってしまった、壊してしまった。
この世でたった一つしかない居場所を私自身で壊してしまった。
あんなことを受け入れてくれるはずがない。
ボロボロとこぼれる涙が冷気にさらされ凍っていく。
自分がもはやどこを走っているのかも分からない。
ようやく立ち止まった私は自分がしてしまった事の後悔にとらわれる。
「ふ…ぐっ…」
どうして言ってしまったんだろう、あんなこと言えばもう居られなくなると分かっていたのに…。
兄さんは絶対に気持ち悪いと思ったはずだ、実の兄にそんな感情を抱いていたなんて知りもしないはずなのだから…。
苦しい、悲しい、いろんな感情が混ざり合いすぎて、もう何が何だか分からない。
それでもふらふらとした足取りで休む場所を探していると、不意に視界の端にきらきらと光るものが目に入る。
「あれは…」
雪で覆われた大きな木、その麓にひっそりと生えた水晶のような花弁の花がただ一つ、ぽつんと咲いている。
「…遅いよ」
もう少し早く見つかれば、今までどおりでいられたのに。
それでもその花を取るためにゆっくりと近づいていく。
依頼はこれで完了、だけど達成感など何もない。
「兄さん…」
あの人はどう思うんだろうか、これからどうやっていれば良いのかもう何もかもが分からない。
79マルメンライト:2011/08/21(日) 02:58:00.28 ID:SU2D7dS/
分かっていたのだ、他の人達とは違う…。
私と兄さんは兄妹、受け入れてもらえなければ、これからもそのことを引きずって生きていかなくてはならない。
だから隠していたのに…。
ぐるぐると回る思考のまま私は無造作にその花に手を伸ばす。
グルル…
「何…?」
突然聞こえた泣き声に私は思わず身構える。
ズシャリ…と重量感のある足音と共に現れたのは全身を氷で覆った竜だった。
その眼は明らかに花を取ろうとした私に向いている。
「団長の嘘つき…危険性は少ないって言ってたじゃない…」
ただでさえ、今は私一人しかいないのにこんな相手に勝てるとは思えない…。
「それでも…」
やるしかない、相手はすでに臨戦態勢に入っている、簡単には逃がしてくれないだろう。
「…足りるかな?」
腰のポーチに手をかけてその中に入った呪符を確かめる。
私は足手まといに何かなりたくない…。
取りだした呪符を片手に走り出す。
同時に竜も動きだし、鋭い爪を私に向かって振り下ろす。
何とかそれを回避しながら私は複数の呪符を投擲する。
火、水、土、風、それぞれの魔法がはじけ竜の体をほんの少しだけ傷つける。
―水は無意味、風も効果なし―
当たった瞬間のリアクションを元に頭の中で効果の低いものを選択肢から切り捨てる。
戦う力が無い代わりに私が何とか編みだした分析技能、その全てを活用し、効果のある攻撃の身を繰り返す。
だけどもともとの火力に乏しい私では攻撃を回避し、時折呪符による攻撃をするのが関の山だった。
80マルメンライト:2011/08/21(日) 02:59:03.88 ID:SU2D7dS/
戦いが長引けばそれだけ、私の体力も削れていく。
「くっ!」
振り下ろされる爪を転がって回避し、もっとも効果の高かった火属性の呪符を投擲する。
「燃えろ!!」
私の言葉に反応して呪符は竜の顔ではじけて炎を発するが、水晶のようなもので出来た外殻をわずかに焼いただけ。
むしろそれに憤った竜の攻撃はさらなる鋭さを増して襲いかかってくる。
「きゃぁ!」
何とか攻撃を回避しながら私は現在の状況を分析する。
残存の火属性呪符枚数13枚、これまでに使用したのは17枚。
攻撃の手は緩むどころか加速し始めていることから相手はまだ余力を残しているに違いない。
「足りない…」
勝てない、それを冷静に理解する。
この程度の火力では押し切られてしまう。
相手を怯ませられるぐらいの火力でないと、攻撃を回避しながらでは無理がある。
どうすればいいのだろう?
気持ちは焦っても、力の無さはどうにもならない。
必死で攻撃を回避しながら反撃を重ねるがそれが効果を発揮しているようには思えない。
「しまっ!!」
余計なことを考えていたせいか、回避に失敗し私はそのまま転んでしまう。
命を失うには十分すぎる隙
見開いた眼に竜の尻尾が迫る。
―ごめんね…兄さん―
心の中で呟いて私は静かに目を閉じた。
81マルメンライト:2011/08/21(日) 03:00:09.95 ID:SU2D7dS/
ガキィィン
けたたましい金属音に驚いて私は目を開く。
「…っ!間に合った!!」
それは聞き覚えのある声だった。
黒い髪、エルフには不釣り合いな大剣、私に振り下ろされるはずだった竜の尻尾は大剣によって振り下ろされる直前の空中で止められている。
「邪魔…くせぇ!!」
気合の言葉にその人が剣を振るって尻尾の一撃を受け流す。
「兄…さん?」
ぽつりとつぶやいた私の言葉にその人は振り返っていつもの笑みを浮かべて言った。
「よぉ、ユエ、こんなのと遊んでんなよ、バカ野郎…」
「何で…」
どうして来たのか、どうしてそうやって笑えるのか、言いたいことがあり過ぎて何を言えば良いのか分からない。
そんな私を置いて兄さんは、竜に向かってきりかかる。
連続の斬撃は怯ませるまではいかないがある程度の攻撃を抑える事に成功してはいる。
だけど…やっぱり足りない。
「セイッ!」
ビシリ、気愛の掛け声とともに振り下ろした剣は水晶のような外殻にヒビを作る。
「もう一回!!」
そのヒビをめがけて兄さんは再び剣を構えるが、そこからこぼれる音を聞いた私は思わず叫び声をあげた。
「駄目!兄さん逃げて!!」
「!?」
私の言葉に兄さんが剣を振り下ろすのをやめあわてて飛び退る。
その瞬間にヒビは一気に広がり内側から砕け、まるで弾丸のようにその破片が飛び散った。
「今のは何だ?」
くるくると大剣を片手で器用に操り水晶の塊のような弾丸を撃ち落とした兄さんが背中を向けたまま私に問う。
「外殻と本体の間にガスみたいのでスペースを作って、本体に衝撃を伝えないようにしてるんだと思う…あれをどうにかしないと、倒せない」
私の言葉を聞いた兄さんは竜に向き直ったまま再び剣を構える。
「ならとりあえず撤退だな、ユエ…一瞬で良い、アイツの視界を奪え!」
「う、うん!!」
言われるままに残り少ない呪符をかき集めまとめて竜に向かって投擲する。
防御の事は考えない、ただ正確に目標に向かって投げつける。
私に向かって振り下ろされた爪の攻撃を兄さんが剣で受け止める。
そうして竜の視界を奪うために私は再び呪符に命じる、
「燃えろ!!」
遅れて爆音、まとめて投げつけた5枚の呪符は狙い通り竜の目のすぐ近くで爆発する。
怒り狂った竜が尻尾を振りまわして暴れるのを回避しながら兄さんが私を抱きかかえて口に咥えた呪符を引きちぎる。
「壁の中に飛ばないでくれよ!」
兄さんが何を使ったのかを理解した瞬間、私達の体は光に包まれた。
82マルメンライト:2011/08/21(日) 03:00:55.92 ID:SU2D7dS/
ガラガラと音を立てて私達は地面に着地する。
「っ!…何とか、成功か」
「そう…だね」
戦闘中テレポル、どこに飛ぶかは分からないが、あの状況ならそうでもしないと逃げられなかったのだから、兄さんの行動は正しい。
きょろきょろとあたりを見回すとそこは外よりもほんの少しだけ温かい。
「洞窟か…ちょうど良いな、とりあえずしばらくは休めるだろう」
「うん…もう、外も暗いし宿に帰るのも無理があるもんね…」
「だな…今日はここで野宿だ」
兄さんはすぐに適当な木切れを拾い集めるとそのままライターで火をつける。
洞窟にほのかな明かりがともったところでようやく私は、言葉を紡ぐ。
「…助けてくれてありがと…」
「ああ、気にすんな…」
言葉は少ない、会話も続かない。
すぐに無言になってしまって何とも言えない空気に満ちている。
何をしゃべれば良いのか分からない。
何と言えば良いのか分からない。
不安な思いだけが募ってだんだん苦しくなってくる。
しばらくして洞窟の中が温まってくるとようやく兄さんが呟いた。
「…何で逃げた」
「…!」
ビクン、と思わず体が震える。
「それは…私…」
「兄妹のくせに気持ち悪い…」
予想していた言葉に思わず耳をふさごうとする私に、兄さんは更に言葉を告げる。
「と、言うとでも思ったか?」
「え?」
83マルメンライト:2011/08/21(日) 03:01:55.57 ID:SU2D7dS/
予想外の言葉に思わず兄さんを見上げると、兄さんはいつもの表情で笑っていた。
「そんな不安そうな顔してんな、俺がそんなこと言うわけないだろ?」
「どういう…こと?」
―兄さんはいつも通りのはずなのに私はその言葉がうまく理解できない―
「どういうことも何も…言葉通りの意味だよ」
―それではまるで…―
「え?おかしいと思わないの?だって私達兄妹なのに…それなのに私…」
―貴方を異性として好きだと告げたのに…―
それなのに兄さんはいつも通りの表情で笑う。
「俺は嬉しかった」
「え?」
兄さんの言葉に私は耳を疑う、そんな私を抱き寄せながら兄さんは私の耳元でその言葉を告げる。
「俺もお前を好きだった。兄妹なんかじゃなくて、一人の女として…な」
「嘘だよ…」
予想外の言葉にそれが真実と信じられず、私は兄さんの胸を押して思わず距離を取ってしまう。
「嘘じゃねぇよ…真実だ」
「嘘でしょ…兄さん優しいから私を傷つけないように、ってそんな…」
何が何だか良くわからない、ただ…そんな夢みたいなことあるはずないと、素直じゃない言葉が出てしまう。
そんな私を見ながら兄さんはやれやれと肩をすくめる。
「お前って、昔からそうだよな…」
「え…?」
言葉と共に兄さんは私を抱き寄せるとそのまま体勢を入れ替えて私を押し倒す。
「兄さ…」
何をするの…、そう問いただそうとした私の口が温かい感触にふさがれる。
「んむ…」
「…甘いな、俺好みの良い味だ」
キスをされた、その事実に困惑する私を尻目に兄さんの手は私の制服のボタンを一つ一つ丁寧に外していく。
「兄さん何を…」
「言葉じゃ…どれだけ言ってもお前は納得しないだろ?」
84マルメンライト:2011/08/21(日) 03:03:33.00 ID:SU2D7dS/
そこにあった兄さんの眼はとても真剣で、それでいて優しさを感じさせてくれる光が宿っている。
「だから…お前の体に直接教えてやる」
パチンと小さな音を立てて最後のボタンが外されて、兄さんに私の下着がさらされる。
―体に直接教える―
それが何を意味しているか、分からない私ではない。
だから私はその眼を見つめながら静かに頷く。
「嫌だったら言えよ?」
嫌なわけがない、ずっとこうする事をこうなる日をずっとずっと夢見てきたのだから…。
だから、私は兄さんの手を取って耳元で小さくその言葉をささやく。
「初めてだから…優しくしてね」
私の言葉に応えるように、兄さんは少しだけ恥ずかしそうに頬を染めながら、再び私の唇に優しくキスをした。

「んふぅ…」
薪の灯りに照らされたほの暗い洞窟内に私の声が反響する。
「気持ち良いか?」
「兄さん…触り方いやらしい」
「いやらしい事してるからな…」
クスクスと笑いながら兄さんが私の胸を優しく揉みほぐす。
丁寧に、優しく繊細に…。
まるで壊れモノを扱うかのような優しい力加減で兄さんの手が私の胸をこねまわして形を変える。
「ふぅ…くっ…」
言ってしまえばたったそれだけ、たったそれだけの事なのにそれがとても気持ち良い。
刺激が加えられるたびに皮膚の下にピクピクと電流が走って体の熱をどんどん上げていく。
「胸、結構敏感なんだな」
「う…ん」
「こんなに汗かいて…」
「ふぁぁ!!」
言葉と共に突然訪れた今までと違う刺激に大きな声を上げてしまうと兄さんがにやりと顔をゆがめる。
「今…何したの?」
「何って…こうだよ…」
私の問いかけに応えるように今度はゆっくりと、まるでスローモーションのように胸に舌を這わせそろそろと円を描いていく。
「あ…あ…ああ…」
兄さんの舌が円を描くたびにゾワゾワと背筋に今まで感じたことない刺激が走り、体中から汗が噴き出すような錯覚を覚える。
そしてそのまま固くなったそこへたどり着くと兄さんは何の躊躇もなく、その中心に吸いついた。
85マルメンライト:2011/08/21(日) 03:04:51.12 ID:SU2D7dS/
「ふくぅぅ!!」
ビリビリと、先ほど感じた強い刺激が背筋を一気に駆け上がる。
―もっと欲しい…もっとして欲しい…―
そんな思いが顔に出ていたのか兄さんは目を細めて吸いついたままのそこをカリカリと噛む。
「ひひゃ!くふぅん!」
そうして胸を弄びながら兄さんの手が私の大事なところへ伸びていく。
ぐちゅり…
「くはぁっ!」
覚悟はとっくにしていたはずなのに兄さんの予想外の行動と大きく響いた水音に思わず大きな声を再び上げる。
そんな私を楽しそうに見ながら兄さんは耳元で囁いた。
「ずいぶんたっぷり濡れてるな…ユエ」
恥ずかしい事を言われている、それが分かっているのに私は何も反応出来なかった。
なぜなら…
「兄さん…まって!ゆび…指がはいってぇ…」
自分の中、浅い場所ではあるけれどそこに確かに自分のものではない熱が入っている。
兄さんの指はまだ狭い私の中をほぐそうとするかのように、浅い場所でゆっくりと円を描く。
自分の中に自分のものではない異物がある、それなのにそれすらも気持ち良い。
「にい…さ…」
グチュグチュと続けられる愛撫に頭の中が溶けて来て次第に一つの事しか考えられなくなっていく。
「限界か?」
「うん…早く、兄さんと一つになりたい…」
私がその言葉を口にすると、兄さんはごくりと唾を飲み込んで熱に浮かされたような声で呟く。
「体勢…変えるぞ」
「うん…」
兄さんに言われるがままに四つん這いになって腰を兄さんに向ける形をとる。
ショーツはまだつけてはいたが、もはやそれは完全に濡れてしまって下着越しでも兄さんには私の形がはっきりと見えてしまっているだろう。
恥ずかしい、死んでしまいそうなほど恥ずかしい。
カチャカチャと兄さんがズボンを下ろすまでの時間を私は腰を上げたまま必死で耐える。
「準備…いいか?」
「う…ん」
背中越しに見える兄さんのモノはとても大きくてあんなものが本当に入るのかと怖くなる。
だけど勇気を出して私は自らショーツを引き下ろす。
もはや隠すものは何もない、素肌をさらしたその部分にドクドクと脈打つ兄さんのモノが押しあてられる。
86マルメンライト:2011/08/21(日) 03:05:29.66 ID:SU2D7dS/
はぁ、と熱い吐息が勝手にこぼれ、期待と恐怖で体が震える。
そんな私を心配したのか兄さんが優しげな眼で私を見つめる。
「ユエ…これがラストのチャンスだ、やっぱり嫌だっていうなら今言ってくれ」
―兄さんはやっぱり優しい…―
本当なら今すぐにでも入れてしまいたいだろうに、それでも私を心配してくれる。
だから私はそんな兄さんに、一番の笑顔を浮かべながら答える。
「今更…やめてなんて言わないよ、最後までしよう、…ルーク」
兄さんではなく…彼の本当の名前を呼ぶ。
今から兄妹の垣根を越えようと言う私なりの意志表示。
「分かった、行くぞユエ…」
私の言葉に覚悟を決めたように兄さんは私の腰を掴んで押し当てたそれを埋没させていく。
「んくっ!」
「くっ!」
ミシミシと私の膣内を割り開くように兄さんのモノが入っていく。
「ユエ…力抜け」
「う…うん…!」
すごく痛くて、泣きだしそうで、額には汗が浮かぶけれど着実にその時が近づいているのが分かる。
はぁはぁ、と互いに荒い息をしながら私の純潔の証についに兄さんがたどり着く。
「怖いよな…」
「ううん…」
兄さんの呟いた言葉に私は首を振ってそう答える。
「ルークが一緒だから怖くない、だけど…」
「ん?」
「キスしてほしい」
「はいよ…」
触れ合うだけのキスではなくて絡み合う様なキスをして、ゆっくりと離れながら私は頷く。
それに合わせて兄さんも頷いてからゆっくりと腰を推し進める。
「う…あ…ああ…」
プチプチと自分の中で何かがちぎれていく音と激しい痛みがやってくる。
―あと少し、あと少し…―
少しでも体の緊張を和らげるために深呼吸を繰り返す。
そして…
87マルメンライト:2011/08/21(日) 03:06:07.53 ID:SU2D7dS/
「うっくぅぅぅぅぅ!」
ブツリと何かがはじける音が響いて、兄さんのモノが私の奥深くまで埋まっていく。
「るー…く」
こつんと私の一番深いところに何かがぶつかる。
確認のために振り返ると兄さんは私の頭を撫で優しく笑う。
「全部入ったぞ」
「うん…わかる」
初めて男の人を受け入れたそこはまだズキズキとした痛みを伝えてくるけど、同時に繋がった部分で兄さんの鼓動も伝えてくれる。
「ルークのあつくておっきぃね…」
「お前の中が狭いんだよ」
「…気持ちよくない?」
不安になって問いかけると兄さんはクスクス笑いながら何度も背中にキスをする。
「バカ、んなわけないだろ、良すぎるぐらいだっての」
「…良かった」
しばらくそのままの体勢で待っているとちょっとずつ兄さんが腰を動かし始める。
「ん…っ、うっ…」
「まだ、痛いか?」
「…大丈夫、気持ち良いよ」
心配そうに私を見ていた兄さんにそう笑いかけると兄さんは表情を柔らかくして笑う。
「めちゃくちゃ痛ぇくせに…」
「痛いけど…それだけルークが私の事を好きって思ってくれてるってことでしょ?」
痛みをこらえながら笑うと兄さんが優しく頭を撫でる。
「バカ…」
「うん…そうだね」
ゆっくりと浅く短いストロークで兄さんが腰を動かしていく。
兄さんの言うとおりまだ痛みは強いけどそれは決して耐えられないものではない。
それに少しずつ、じくじくと滲みだすように気持ち良いという感覚が芽生えているのも本当だった。
「ちょっと強くするぞ」
「うん…」
言葉と共にズルズルと兄さんが自分を引き抜いて一番深いところまでたたきつける。
「あう…」
触れ合った体の体温が、許されない事をしているという背徳感が、私の興奮を一気にあおり、痛みを急速に奪っていく。
88マルメンライト:2011/08/21(日) 03:06:56.04 ID:SU2D7dS/
「ふ…はぁ…きもち…良い」
ついに私は堪え切れずその言葉を口にする。
「良くなってきたか」
「うん、気持ち良くて頭が溶けちゃいそう…」
「なら、もう少し早くするぞ」
兄さんの言葉にうなづくと、言葉通りにペースが速くなり、より強い快感の波が襲ってくる。
「待ってぇ…やっぱこれ以上速くされたら…私、我慢が…」
パチパチと目の前で火花がはじけて頭がぼんやりとして一つのことしか考えられなくなっていく。
そんな私の顔を見た兄さんは満足そうにしながらより深いところを抉るように私を強く抱きしめる。
「るーく…るーくぅ…」
「ユエ…ユエ…」
もはや洞窟には私と兄さんが互いに呼び合う声と濡れた音色しか響かない。
もやもやとした感覚は破裂しそうなほどに高まって今か今かとその時を待っている。
「ルーク、もう駄目…私、わたし…」
「俺ももう…」
言葉と共に兄さんは私の腰を強く掴み、ラストスパートをかける。
パンパンと大きな音が響き渡り、ただひたすらに貪られるような突き上げにブレーキが壊れてしまったように快感が加速する。
そして…
「ぐ…ぁぁぁ!」
「ふぁぁぁ!」
2人分の叫び声とともに私の中を火傷しそうなほどの熱が染め上げる。
「大好き…兄さん」
「俺もだ…ユエ」
初めての行為で荒くなった呼吸を整えながら私達はもう一度深いキスをした。
89マルメンライト:2011/08/21(日) 03:07:42.33 ID:SU2D7dS/
「どうしようか?」
「何がだ?」
兄さんの胸の上に頭を載せて呟くと、私の頭を撫でながら兄さんが私を見る。
「依頼、花は見つけたけど、あの竜を倒さないと…」
「その話か、もう少し色っぽい話かと思ったんだがな」
「…だって、他の話しないと恥ずかしくて兄さんの顔見れないんだもん」
お腹の中ではまだ兄さんの熱が残っていて、先ほどまでの行為を思い出すだけで体が火照ってくるのが分かる。
「そうか」
クスクスと楽しそうに笑いながら兄さんは私の背中をなであげる。
「しいて言うなら、あの外殻さえ何とかなりゃ、何とでもなると思うんだがな…」
「そうだね…」
呪符よりももっと強力な…強い炎があれば、何とかなりそうではあるけれど…
ヒーロー学科である兄さんの魔法でも壊せるかは分からない。
精霊魔法を使えればそんな問題も解決できるはずなのに、それも私は使えな…
―とりあえず、私はそういうことにしておいてあげる―
「…あれ?」
「どうした、ユエ?」
突然身を起こした私を兄さんが驚いた眼で見つめる。
「兄さん!もしかしたら、私なんでいままで使えなかったか分かったかも!!」
「へぇ…」
何でこんな簡単な事に気付かなかったのかと思ってしまうぐらいだけど、きっと間違いない。
「兄さんのおかげだね」
「なんか良くわからないが…今まで、ってことはつまり、もう使えるってことか?」
「うん!」
間違いない、今の私なら間違いなく呼び出せる。
だって、隠す必要なんかないだから、偽る必要だって無い。
だからきっと呼び出せる、間違いなく呼び出せると確信する。
その事が嬉しくてはしゃいでいると不意に兄さんが私の腕を引いた。
「なら、明日はリベンジって事になるよな」
「え…うん?」
どこか楽しそうな兄さんにそう答えると、兄さんは再びキスをしてくる。
「だったら、明日に備えて、英気養わせてくれよ…ユエ」
「…うん、そうだね兄さんにはしっかり守ってもらわないといけないもんね」
クスクスと笑う兄さんに合わせて笑うと、兄さんは再び私を押し倒した。
90マルメンライト:2011/08/21(日) 03:10:09.80 ID:SU2D7dS/
ザクザクと雪を踏みしめて昨日の場所に向かうと私達を待っていたかのように竜が咆哮する。
右の目は酷く焼けただれたままで、残った眼は私達を強く睨んでいる。
「ユエ、熱い視線送られてるぜ?」
大剣を引き抜きながら笑う兄さんに、私も笑って杖を構える。
「困るなぁ…私もう、兄さんのものだから、そんな熱い目で見られても答えられないのに」
「そういうことだ、俺の女に手を出す気なら、まずは俺を倒してみろよ、トカゲ野郎」
兄さんの挑発が効いたのか竜は再び咆哮を上げ兄さんに向けて爪を振り下ろす。
「ユエ!手筈通りに行くぞ!」
「了解!!」
竜の爪を大剣で受け流しながら走り出す兄さんに応え、私は術を編んでいく。
昨日の戦いの時のように呪符を使うのではなく、使うのは今までずっと使えなかった精霊魔法。
昔、兄さんが見せてくれたときのように。
兄さんが使っていた時のように、正確に術を編んでいく。
それまでは今までと何ら変わりない。
だけど私は、今回は失敗しないというのを確信していた。
「…今までごめんなさい」
術を組み上げながら、私は精霊に語りかける。
「ホントの事を隠して力を借してほしいなんて言って、かしてくれるわけないよね」
鈴蘭の言葉を思い出す。
―とりあえず、私はそういうことにしておいてあげる―
それはあくまで、鈴蘭が私がどうして本当の理由を告げないのか、それに気付いていたからこそ、出た言葉だ。
仲間として、私を知っているから、私を信頼しているからこそ、そういうことにしておくと言う言葉で済ませてくれた。
だけど、力を貸してほしいと頼む相手に、本当の事は言えないけど力を借してほしいと言って、力を貸してくれるわけがない。
「大好きな人がいるの、その人の事を守りたいから、そのための力を貸してほしい」
皆のため、綺麗な言葉で飾ってたけど、結局私が力を欲した理由はただ一つ。
91マルメンライト:2011/08/21(日) 03:10:56.26 ID:SU2D7dS/
兄さんの事が大好きだから、兄さんを守れるような力が欲しい。
今まではそのうちに秘めたもう一つの思いを兄さんに知られてしまうのが怖くて、隠し続けてきたけど、もはや隠す必要なんかどこにもない。
だって、私と兄さんは愛し合ってるんだから。

目をあけると、兄さんは竜の攻撃をいなしながら竜から私を守ってくれていた。
その背中に向けて私はたった一言だけ告げる。
「下がって!兄さん!!」
「おうよ!!」
言葉と共に兄さんが飛び退り、竜が無防備な私めがけて襲いかかってくる。
だけど…
「遅い…!!」
既に魔法は完成している。
手の中の光は白から赤へと変色し、こぼれる熱気が辺りの雪を溶かし始める。
そして私は、その力を目の前の敵に向かって解き放つ。
「来い…!フェニックス!」
私の言葉に応えるように手の中の光がはじけ空中に赤い魔法陣を描き出す。
「出来…た」
魔法陣から現れた火の鳥は呼び出した私を守護するように旋回し、竜に向かって突撃する。
遅れて爆音。
「ガァァァ!!」
爆風が収まった中心に居たのは外殻を失い、全身を焼かれた竜。
絶叫を上げながら苦しげにのたうちまわる竜に向けて待っていたかのように兄さんが駆ける。
「さすがに、外殻が全部無くなっちまえば、あの攻撃もできねぇよなぁ!!」
獰猛な笑みを浮かべた兄さんはそう叫びながら剣を振り下ろす。
「グガァァ!!」
突き立てた剣が体を引き裂くたびに竜が絶叫を上げる。
「入魂…」
静かに息を整えながら兄さんは剣を構える。
竜はそれに気づき苦痛から逃れるために、兄さんを睨んで爪を振り下ろす。
だが…
「なんてな…」
連続の6連撃をたたき込むはずだった兄さんは、軽く笑って構えを崩し、爪での攻撃を受け流す。
「わりぃな、俺はただの囮だよ」
爪をはじいた剣を回転させながら兄さんはその場から飛び退る。
そして、私を見ながら告げる。
「やれ、ユエ」
「…了解」
作り出した魔法陣は1つではなく二2つ。
二重に展開された魔法陣はひきあうように重なってその威力を増幅する。
「1回じゃ外殻だけだったけど2倍ならどう?」
倍加魔法で呼び出したフェニックスは先ほどとは比べものにならない熱量を放ちながら悠然とその姿を現して漂い始める。
その姿に竜は恐怖したのか私を排除しようと爪を振るう。
だけどその攻撃は届かない。
「ありがとね、兄さん」
「気にすんな、自分の女を守ってるだけだからな」
「学園帰ったら、またしようね」
「そうだな」
互いに笑いあいながら私は竜を睨んで呼び出したフェニックスに命令を送る。
先ほどとは比べものにならない爆音が辺りに大きく鳴り響いた。
92マルメンライト:2011/08/21(日) 03:11:31.42 ID:SU2D7dS/
私と兄さんの関係は許されるものじゃないかもしれない。
「ねぇ兄さん」
「なんだ?」
「皆になんて言おうか?」
「普通に言えば良いんじゃねぇか?今後、俺とユエは宿一緒の部屋で構わないってな」
「皆にバレちゃいそうだけどね」
「どうせ隠してもすぐバレるだろ?鼻の効くワンコロもいるしな」
だけど、私はこの人とずっと居たいと、いつかこの人と誰の目もはばかることなく居られるようになりたいと願う。
「ルーク」
「何だユエ?」
「愛してる」
「…俺もだ」
学園への帰り道、長いようで短い道のりを私達は手をつないだまま、二人並んで歩きだした。
93マルメンライト:2011/08/21(日) 03:13:52.46 ID:SU2D7dS/
以上で投下完了です。
相変わらず長々と失礼しました。
94名無しさん@ピンキー:2011/08/21(日) 03:19:31.33 ID:9ACFmfNP
久しぶりに来たらちょうど遭遇
これから読むところだが乙です!

ファイナルは3Dの移植みたいだし発売されても盛り上がらんかねぇ
3DS持ってない自分は楽しみだが
95ディモレアさん家の作者:2011/08/23(火) 00:47:09.02 ID:yDAGM+wT
どうも、こんばんは。
ファイナルは3Dの移植かぁ…ま、買うけど。

>>67
ようやく先輩の話です。
もしかしたらGJかも知れないしそうじゃないかも…?

>>69
乙です。
同種族モノでおまけに近親ってのも本当に珍しいですよね。
96英雄王の碑文 心つなぎ 1話:2011/08/23(火) 00:51:54.10 ID:yDAGM+wT
 ギルガメシュがクロスティーニ学園にやってきて、4日が過ぎた。
 ガレノス先生曰く驚異的な回復力を見せた彼はようやく退院し、保健室から学生寮へと移り、そして…。
「サイズはどう?」
「ああ。丁度いい」
 寮母のトレネッテの問いに、オレンジ、白、黒の三色を基調とする、クロスティーニ学園の制服を纏ったギルガメシュはそう頷いた。
 元々着ていたパルタクスの制服はかなりボロボロになっていたので、せっかくだからとトレネッテが用意したのだ。
 ただ、この制服は1つだけ他の制服と異なる点がある。

 ギルガメシュもセレスティアなので羽がある為、半分ほど見えないが、それでも羽の隙間から背中に大きく描かれたそれは目立っていた。
 天使の羽と月桂樹の葉に包まれた、一本の剣とその上に書かれた髑髏のモチーフ。
 そんなマークの上には『我、最強なる者』と書かれ、マークの下にはGilgameshの名が描かれている。
 そう、この制服はパーソナルマークを入れた制服なのである。もちろん、前例は無い。

 姿見でマークの存在を確認したギルガメシュは再び満足そうに頷いた。
「ありがとう。大した腕前だよ」
「そう言ってもらえると嬉しいわ。…ああ、他にも何か要る?」
 トレネッテの問いにギルガメシュは笑いながら答えた。
97英雄王の碑文 心つなぎ 1話:2011/08/23(火) 00:54:44.79 ID:yDAGM+wT
「ああ。この近くの迷宮地図と、転移札をくれ。そうだな…迷宮は三種類ぐらい。転移札は6枚で」
「あら、もう迷宮に潜るの? 病み上がりだから無理は禁物よ」
「まぁ、大丈夫さ。それに…今回は、後輩どもを特訓してやらにゃなんねぇしな」
 ギルガメシュはそう答えてニヤリと笑った。

「おい見ろよ。また落ちこぼれコンビがいるぜ」
「あいつら入試もギリギリだったんだろ? なんでまだいるのかが不思議だよな」
「おまけにドワーフとディアボロスでしょ? 知性の欠片も無いわ」
「アンちゃん可哀そうだよなー。特待生なのに、あんな奴らの相手させられて。エルフで、かわいいのに」
 放課後。クロスティーニ学園の食堂にコッパ、ビネガー、アンの三人が入ってくると即座にそんな陰口が聞こえてきた。
 コッパとビネガーへの悪口だけで、アンへの陰口は一つも無い。
 だからアンは余計に気分が悪くなってしまう。自分ならまだしも、友達がいわれのない事を言われるのが。
「………」
「おーい、アン落ち着けって」
「そーそー。俺達は慣れてるよ、あれぐらい」
 コッパとビネガーはそんなアンの肩を優しく叩きながら席に座る。
「でも、コッパ君もビネガー君も、嫌じゃないの? あんな事言われて…」
98英雄王の碑文 心つなぎ 1話:2011/08/23(火) 00:58:36.79 ID:yDAGM+wT
「そりゃー嫌さ。けどさ、アイツらを見返す為に、特訓頼んだんだろ?」
「そーそー。俺達皆強くなればたぶんアイツらも何も言わなくなるさ」
 ビネガーの言葉に、コッパも「だよなー」と返す。
 皆、という言葉にアンは少し嬉しくなる。
 アンにとって、コッパとビネガーは本当にいい友達なのだ。
 特待生入学したはいいけれど口下手で引っ込み思案、そんな彼女に声をかけたのがコッパとビネガー。
 二人は頭は悪いし成績も悪いけれど、誰かに優しくすることや気を使うことは出来る。
 だから、アンは二人の友達でいたいのだ。どれだけ馬鹿にされようが、どれだけ失敗しようが、コッパとビネガーの二人は信じている。
 ヒーローになって、誰かに尊敬されるようなぐらい、立派な人になりたい。
 そう願う二人の夢を、支える事が出来るのが、アンにとって本当に嬉しい事だから。
「それにしても特訓って何をするんだろうな? オイラ、少し気になるぜ」
「あ。俺もそう思う。案外、講義形式でやるかもな」
「よう。何の話をしてるんだ?」
「お、ルオーテ」「よう、ルオーテ」「こんにちは、ルオーテ君」
 ルオーテは三人に「おう」と声を返した後、アンの隣に座った。
99英雄王の碑文 心つなぎ 1話:2011/08/23(火) 01:02:03.10 ID:yDAGM+wT
「ああ。この前、違う学校の先輩が来たって話、しただろ? その先輩に特訓をつけてもらう事になってさ。それでどんな特訓だろうなーって」
「へぇ。そりゃすごいな。…特訓っつーぐらいだから、チャンバラでもするんじゃないか?」
 コッパの返事にルオーテがそう返した時、周りの生徒が何人か吹き出していた。
「ぷっ、落ちこぼれコンビ特訓するだってさ」
「どーせすぐ音を挙げるぜ。アイツらバカだしよ」
「そーそー。こんなはずじゃねぇって叫ぶのが何時になるか賭けようぜ」
「野郎…!」
 ルオーテが椅子を蹴ってまさしく立ち上がろうとしたその時だった。

 コッパ達の噂をしていたであろう男子生徒が首を捕まれ、そのまま持ちあげられていた。
「わっ…! な、なんだ!?」
「…おい。テメェら、コッパ達の何が解るんだ? ああ?」
「せ、先輩!?」
 ギルガメシュだった。ギルガメシュは何も答えずにただ口をパクパクする男子生徒に顔を近づけ、更に睨む。
「で? なんだ? 言ってみろ? ん?」
 この時になってようやく正気に戻ったのか、男子生徒のパーティ仲間たちがそれぞれ得物を手に立ち上がる。
「おい、離せよ! ただ噂してただけだろ!」
「そうだぞ、あんな…」
「なんだ?」
100英雄王の碑文 心つなぎ 1話:2011/08/23(火) 01:04:10.60 ID:yDAGM+wT
 じりっ、とギルガメシュが一歩近より、男子生徒は一瞬仰け反った。
 そして気付いた。ギルガメシュの瞳が本気だという事を。

「あなた達! なにしてるの!」

 突如、鋭い声がぴしゃりと飛んで、生徒達は一斉にその方向を振り向いた。
 ギルガメシュが男子生徒をつかんだままそちらの方向へと向くと、二人の方へつかつかと寄ってくる一人の女子生徒がいた。
 種族は恐らくヒューマンであろう。歳は恐らくギルガメシュとさほど変わらないぐらい。メガネをかけており、可愛いというより凛々しい印象を与えていた。
「せ、生徒会長!」
 ギルガメシュに掴まれたままの男子生徒がそう声をあげた。
「何をしているの! その子を放しなさい!」
「……」
 ギルガメシュは大人しく男子生徒を離すはずもなく、そのまま盛大に食堂の床へと叩きつけた。
 当たり前のように男子生徒は気絶した。
「…で、何が原因なの? それと、見かけない顔だけど…」
「……そいつらがコッパとビネガーの悪口を言っていたからです。先輩は二人の為に怒ったんです。悪気はありません」
 生徒会長の少女がギルガメシュに問いかけた直後、割って入ったルオーテがそう告げた。
101英雄王の碑文 心つなぎ 1話:2011/08/23(火) 01:06:38.45 ID:yDAGM+wT
「……それは本当?」
 ルオーテの言葉に、同じく席を立ってきたコッパとビネガーに彼女が視線を向けると、二人は頷く。
「すいません、実はそうなんです」
「ギルガメシュ先輩も悪気があったわけじゃないんです、ですので怒らないでやってください」
「そう」
 彼女は気絶している男子生徒の手を引っ張って起こしつつそう返すと、コッパとビネガーに視線を向けた。
「あなた達も馬鹿にされないように、もう少し頑張りなさい」
 そう言った後、彼女はギルガメシュに視線を戻した。
「…どこから来たの? それと、背中の――――」
「パーソナルマーク入れるぐらい目ぇ瞑れ。パルタクスじゃ普通にある」
「ぱ、パルタクス?」
「俺が元いた学校だ。ああ、自己紹介が遅れたな。パルタクス学園の副生徒会長、ギルガメシュだ」
「……クロスティーニ学園生徒会長のエリーゼよ。クロスティーニへようこそ」
 エリーゼはそう答えた後、もう一度言葉を続ける。
「制服の改造は校則違反よ」
「これは刺繍だ。改造には当たらねぇ。校長も寮母も了解済みだ」
 ギルガメシュの返答にエリーゼは困った顔をしたが、じきにため息をついた。
「…まぁいいわ。それと、あまり問題は起こさないようにね」
「そのつもりはねぇからそこまで心配すんな」
 ギルガメシュはひらひらと手を振ると、コッパ達へと向き直った。
102英雄王の碑文 心つなぎ 1話:2011/08/23(火) 01:11:14.12 ID:yDAGM+wT
「お前ら。特訓の時間だぞ」
「へ? オイラ達まだなにも準備してないですけど…」
「道具は要らねぇし武器もいらねぇ。ただ生徒手帳持って制服だけ着てりゃいい。ああ、それと」
 ギルガメシュは思い出したように立ち上がると、ハンカチを三枚取り出す。
「目的地まで秘密なんでな。これで目隠しをするぞ。いいか? 嫌なら、オレがいいって言うまで眼を瞑っていろ」
「気をつけてけよ。しっかりな」
 ギルガメシュの先導で目隠しをした三人が食堂を出ていくのを、ルオーテはそう声をかけて見送った。

「よーし、目隠しをとれ」
 ギルガメシュの声が聞こえ、コッパ達はようやく目隠しを外した。
 そこは、見慣れぬ迷宮の中。今にも崩れそうな壁、荒れ果てた通路。
 そして遠くから響くモンスターの唸り声…。
 特に歩いた感覚は無いから転移札を使ったのだろうが、クロスティーニ周辺にこんな構造の迷宮は無い。
「ずいぶん遠くまで来たんだね」
 アンが震える声でつぶやき、ビネガーも「そうだな」と呟く。
 丸腰でアイテム無しで迷宮に入るというのもずいぶんと違うものだな、とも思う。
「先輩。ここはどこですか? それと、どんな特訓を…」
「簡単だ。これから転移札も帰還札も一切使わず、クロスティーニまで歩いて帰ってこい」
103英雄王の碑文 心つなぎ 1話:2011/08/23(火) 01:13:40.60 ID:yDAGM+wT
 コッパの問に、ギルガメシュはそう答えた。
 コッパはなら、それなら時間はかかるけど大した――――と思いかけてふと、ここが見知らぬ迷宮であること、そして今、武器もアイテムも何も持ってない丸腰である事に気付いた。
「…正気ですか? 今、生徒手帳しか持ってないですよ?」
 ビネガーも震える声で問いかける。
「よく言うだろ。習うより慣れろってな。アイテム・武器は全部お前らが自分で調達するんだ。食料もな。はっきりいうが、これぐらいをこなせなきゃ冒険者として強くなるのは難しいぞ」
「「「………」」」
 ギルガメシュの言葉に三人は息を飲む。
 アンはともかく、コッパとビネガーの二人は落ちこぼれと言われまくっているのだ。
 そんなヤツらを見返すには、人とは違うことをどうにかなさないといけないだろう。
「これをこなして帰ってきたら、次の特訓をしてやる。だから頑張れ。テメェらが死んだら――――その時はその時だ」
 ギルガメシュはそう告げると、くるりと背を向け、そして三人が口を開くより先に転移札を使って消えてしまった。
 取り残されたのは、三人である。
「………なぁ、どうする?」
 最初に口を開いたのはビネガーだった。
「と、とにかく行くっきゃないだろ。このままここにいたって、オイラ達死ぬだけだしな」
「だよな。アン。行こう」
「う、うん」
104英雄王の碑文 心つなぎ 1話:2011/08/23(火) 01:17:31.53 ID:yDAGM+wT
 武器も無い。アイテムも無いし食料も無い。全てが現地調達という壮絶なサバイバルを、彼らはその身を持って体験しようとしていた。
 ギルガメシュが一年の頃は、一人だったとはいえアイテムや武器は持ち込んでいた。
 でも、ギルガメシュは、コッパ達に仲間がいるという点を除けば更に過酷な条件を課したのだった。
 それは彼らは知らない。彼らは、生き延びる為に前進するしかないのだから。

「………」
 コッパ達を迷宮の中に置いてきたはいいが、もしかすると迷宮のレベルが高すぎたかも知れない。
 ギルガメシュは出てきた迷宮を見ながらそう思った。
 出るまでに何度かモンスターと遭遇し、当たり前のようにギルガメシュの敵ではなく容赦なく切り捨ててきたが、コッパ達の実力を考慮すると、少し強すぎるかも知れない。
「ま、いいか」
 まぁ、それぐらいでもいいのかも知れない。
 自分のレベルより多少上の相手と戦えば、その分だけ早くレベルも上がるというものだ。
 ギルガメシュもそうして強くなったのだから。
「…けど、あんな風に目ェキラキラ輝かせて強くなりたいっていうのも、珍しいぜまったくよぉ…」
 少なくともただ純粋に強くなりたいと考えていたギルガメシュとは違う。
 コッパもビネガーも、強くなりたいと言っていたがただ強くなりたいというだけじゃない。
105英雄王の碑文 心つなぎ 1話:2011/08/23(火) 01:19:45.89 ID:yDAGM+wT
 もっともっと、本当に目的があって強くなることを目指しているような…そんな感じで。
 アイツらが上手く生き残ってくれればいいのだが、とギルガメシュが思ったその時だった。

 遠くの方で誰かの叫び声が聞こえた、ような気がした。

「………?」
 気のせいか、と思いかけた時、再び声が聞こえた。上空からだ。
「!」
 上を見上げる。
 するとそこには六頭、いいや、上に小さな影が乗ったダークドラゴンがひたすら逃げまわり、それを五頭のスカイドラゴンが追いかけていた。
「……ぃ…誰かー!」
 ダークドラゴンの上に乗っている小さな影が悲鳴をあげているがスカイドラゴンはためらうことなくブレスでダークドラゴンを攻撃しようとしている。
 ダークドラゴンは逃げようとしているが、背中に人を載せているせいで、上手く速度がでない。
「……チッ!」
 おおかた竜騎士気取りのガキンチョがダークドラゴンに乗って遊んでいるうちにスカイドラゴンにちょっかいでも出したのだろう。
 スカイドラゴンは群れで生きる生き物だ。一頭にちょっかいを出すと何頭も襲いかかってくる。
106英雄王の碑文 心つなぎ 1話:2011/08/23(火) 01:22:19.95 ID:yDAGM+wT
 だが、リハビリ代わりにスカイドラゴンを狩るのも悪くない。
 ギルガメシュは地面を強く蹴り、近くの岩へと飛び乗ると上空を飛び回るスカイドラゴンへと全身の力を込めて、グレネードを投げつけた。
 スカイドラゴンの一頭が炎に包まれ、直後、片羽を失ったスカイドラゴンが墜落していく。
 そして、残りの四頭がギルガメシュへと牙を剥いた。
「来いよ、相手してやる!」
 デュランダルを抜いたギルガメシュはまず岩から飛び降りて急降下してきたスカイドラゴンの体当たりをかわし、そのまま背中を見せた一頭へと斬りかかる。
 鮮血が飛び散り、斬られた一頭が悲鳴をあげながら全身をひねって攻撃しようとするが、ギルガメシュには遅く見え過ぎた。
 そのスカイドラゴンの背中を蹴って、そのまま首を切り落とす。
 二頭目を倒した直後、残りの三頭が一斉に火炎弾を放った。だがギルガメシュはその場からサイコビームを三発放ち、火炎弾を迎撃。そして第二派の三発を連続で放った。
 三発のサイコビームを受けたスカイドラゴンが地面へと激突し、動かなくなった。残り二頭。
 スカイドラゴンは咆哮をあげて、前後からギルガメシュを押しつぶすべく二方向から急降下してくる。だが、やはり隙だらけだ。ギルガメシュは少しだけ笑うと、デュランダルを下に向けたまま、身構える。
 そして、二頭が急降下して、ギリギリまで迫ってきた時。
107英雄王の碑文 心つなぎ 1話:2011/08/23(火) 01:28:27.15 ID:yDAGM+wT
 強烈な斬撃で、二頭の首が飛んだ。
 目にも留まらぬ早業。ドラゴンの首すら切り落とす力を、その信じられない速度で振り回す。
 それがギルガメシュの強さ。圧倒的な力と圧倒的な攻撃速度。それが彼の強さなのだから。
「大したコトねぇな」
 剣を収めつつそう呟いた時、追われていたダークドラゴンが旋回しつつ、ギルガメシュの前へと降りてきた。
 そしてその背中に載っていたのは――――片羽のセレスティアの少女。羽を後天的に失ったのか、それとも元々無いのかはわからないが、セレスティアにとって羽が片方しかないのは、忌むべきものとされている。
 もっとも、それだけで人を見る程、ギルガメシュも狂ってはいない。
「ありがとう! ドリィ、お腹が空いてて振りきれなかったんだ」
 少女はダークドラゴンをいとおしそうに撫でつつそう口を開いた。
「礼はいらねぇよ。……ソイツ、ずいぶんおとなしいんだな」
 ダークドラゴンが人に慣れるなんて聞いたことは無いが、少女は平然と撫でていた。
「ドリィは私の友達だから」
「……そうかい」
 ギルガメシュはダークドラゴンを注意深く観察していると、色々な事に気付いた。
108英雄王の碑文 心つなぎ 1話:2011/08/23(火) 01:31:41.88 ID:yDAGM+wT
 結構な歳を生きているであろうダークドラゴンだが、強烈なまでに痩せていた。体色も良くなく、あまり良いものを食べてないようにも見える。
 幾つも傷があるが、それは表向きふさがっているようだが、薄い膜が覆っているようなだけでいつ開いてもおかしくない。
「…………」
 永くないな、と思った。
「それにしても、あのスカイドラゴンを五頭を簡単に倒しちゃうなんて、すごいんだね」
「まぁな」
「名前、なんていうの? 私はアスティ」
「…ギルガメシュだ」
「いい、名前だね」
「…そうか。あんがとな」
 誰かにいい名前と言われるのは、初めてだった気がした。
109ディモレアさん家の作者:2011/08/23(火) 01:34:27.28 ID:yDAGM+wT
第1話は以上です。
2でアスティとフラグが経つと信じていたのは俺だけではないはず
110名無しさん@ピンキー:2011/08/25(木) 15:43:07.22 ID:vRWDGinr
GJ無双が始まったらどうしようかと思ったがそんなことはなかったw
何はともあれGJです

アスティはもっと絡んでくれると思ってただけに、あんなあっさり退場して二度と出ないとは思わなかった
111 ◆BEO9EFkUEQ :2011/08/30(火) 00:17:05.56 ID:ffDNsbpS
お久しぶりです。気が付いたらえらく時間が経ってた
とりあえず投下したいと思います。3DSの自パーティネタ

ただ長くなりすぎたので、今回はエロ分なしになります
あと3レス目でちょっと残酷描写があるので苦手な人はご注意
大丈夫な方はどうぞ
1121/13 ◆BEO9EFkUEQ :2011/08/30(火) 00:18:37.94 ID:ffDNsbpS
失うことを恐れ、止まる者。たとえ失うものがあろうとも、それ以上を得るため、歩き続ける者。
どちらが良いも悪いもない。それは彼等の判断であり、彼等にとっての最善。
自身にとっての最善を尽くすため、彼等は歩き続ける。その先に何が待つかを知らずとも。
どんな犠牲を払おうと、見えないもののために歩み続ける者達。人はそんな者達を、冒険者と呼んだ。
冒険者とは過酷なものである。命を失うことすら、彼等にとっては珍しくない。自身のみならず、ときには仲間の命すら掛け、それでも
全員が求めるものを得られるとは限らない。その覚悟がある者は、冒険者養成学校でその技術を学ぶ。だが、実際にそれを経験した上で、
その覚悟を持っていられる者は意外なほど少ない。
また、彼等にとって必要な覚悟は、それだけではない。
とある、一つのパーティ。彼等は入学してすぐにパーティを組み、始原の森へと探索に出ていた。
そこで起こる戦い。言い換えるならば、モンスターとの命の奪い合い。大抵の者は、それは初めて経験する出来事だった。
断末魔の悲鳴を上げ、倒れるモンスター。傷つき、血を流す仲間。そこへさらに襲いかかる、新たな敵。
それは新入生の誰もが受ける、痛烈な洗礼と言える。実際の殺し合いを目の当たりにし、また自身がその当事者となって、平然として
いられる生徒は、極々一握りに過ぎない。またここで、生徒達は冒険者としての資質を問われることとなる。
彼等にとって不運だったのは、後衛であるクラッズに、その資質が全くなかったことだった。
「おい、クラッズ!ヒールを!早くヒールを頼む!」
「あ……あぁ、あ…!」
へたり込み、戦う仲間達を呆然と見つめるクラッズ。足元には黒い染みができ、その目には涙が浮かんでいる。
彼女にとって、殺し合いとは遠い世界の出来事でしかなかった。それが今、目の前で起きている。しかも、彼女の目の前で、ついさっきまで
喋っていた仲間が血を流し、動かなくなっていた。
もはや、彼女は動くことができなかった。目の前で起きていることすら現実と思えず、ただたださらに傷ついていく仲間を見ていることしか
できない。そんな後衛を当てにしたせいで、前衛として戦っていた仲間達は次々に倒れていった。
残るは、戦士のヒューマンに狂戦士のドワーフ。そして傷ついた盗賊のフェアリー。クラッズの援護があれば、この程度の敵など
取るに足らないはずなのだ。だからこそ、彼等はクラッズへ必死に声を掛けた。だが、その声はクラッズをますます追い込む結果にしか
なっていなかった。
その時、ドワーフが不意に後ろに下がり、クラッズに近づいた。種族柄、彼女達は仲が良かった。当然、前衛の二人はクラッズに励ましの
声をかけるのだろうと思っていた。
「役立たずは、いらない」
「えっ…?」
聞き返す間もなく、ヒューマン達が止める間もなかった。ナイフがクラッズの胸に吸い込まれ、ドワーフはそれを一度捻り、すぐさま
引き抜いた。途端に、クラッズは支えを失い、地面に横たわって動かなくなった。
「ドワーフ!!!何してやがるんだ!?」
「こんなゴミを当てにするから負けるんだよ。ほら、もう助けはないんだから、死ぬ気で殲滅しなきゃ私達が死ぬよ」
言いたいことは山のようにあった。彼女は仲間をゴミ呼ばわりし、まるで物のように扱い、あまつさえ表情一つ変えずに殺したのだ。
思わず、ヒューマンの手に力が入った。すると、ドワーフはある程度の距離を置いたまま笑った。
「私を殺すつもり?殺して、どうすんの?お前とフェアリーだけで、こいつら倒せるわけないよね?」
「く……くそぉ…!」
歯噛みしつつ、モンスターの方へ向き直る。残るは四体、生き残れるかは微妙なところだろう。
「ほら、行け!」
「くそがああぁぁ!!!」
やけくそになったように叫ぶと、彼等はモンスターの群れへと飛びかかって行った。
1132/13 ◆BEO9EFkUEQ :2011/08/30(火) 00:19:27.23 ID:ffDNsbpS
それとほぼ同時刻、同じく始原の森。
時間は昼をやや過ぎたところで、とある一つのパーティが昼食の準備をしていた。
大抵、彼等は食材をあらかじめ調達し、手早く食事を済ませてしまうのだが、彼等は探索に不慣れな上、学校から近いという理由で
ほとんど食料を持っていなかった。そこで、彼等は食材を現地調達していたのだが、その中の一人が野生の兎を捕まえた。
「これ、どうかな?」
「お、フェルパーやるね。兎か……兎はうまいよなあ」
「じゃ、しめるのよろしくね」
「え……ええ!?」
そう言われると、フェルパーは目に見えてうろたえた。
「お、俺が捌くのこれ!?」
「そりゃ、捕まえたんだからそれぐらいやってよ。言っとくけど、私は嫌だよ絶対!」
「そ、それは……まあ、その……わ、わかったよ!やればいいんだろ、やれば!」
フェルパーはナイフを掴むと、兎の首を押さえつけ、そこに刃を押し当てた。
だが、その刃は動かない。いざ切るとなると、手が震えて力が入らず、心臓が早鐘のように打ち始める。
「……で……できないよ、やっぱ……モンスターなら、勢いでまだいけるけど……ごめん、これ無理…!」
「このへたれが!じゃあ俺に貸せ!」
勇ましく言ってナイフと兎を奪ったディアボロスだったが、彼もいざ首に刃を押し当てると、それ以上は動けなかった。
敵意のない、むしろこちらに怯えている小動物を殺すのは、こちらに敵意を向けるモンスターを殺すのとはわけが違う。
「……すまん、俺もへたれだ…」
「ちょっと男子ー!じゃあもうそれ逃がせばいいじゃんー!無理して食べる必要ないってー!」
「おや、兎ですか。ドが付く程とは言いませんが、なかなか豪勢な食事になりそうですね」
そう言って姿を現したのは、キノコをいくつか持ったセレスティアだった。頭の上には主人と似ている、しかし真っ黒な翼を持った
小さな羊がちょこんと乗っかっている。
「ああ、セレスティア……いや、悪いけどこれ逃がす…」
「え?そんな、もったいないですよ、せっかく捕まえたんですから」
「じゃあお前、これ捌けんのかよ!?」
「ああ、皆さん捌き方知らなかったんですか。では、わたくしが捌きますよ」
1143/13 ◆BEO9EFkUEQ :2011/08/30(火) 00:20:21.44 ID:ffDNsbpS
にこやかに、そして穏やかに言うと、彼はうろたえるディアボロスから兎とナイフを取った。
「え?え、いや、ちょっと…!」
直後、彼は穏やかな笑みを浮かべたまま、兎の首を半分ほど切り裂いた。
「きゃああぁぁ!!!」
「うわっ…!」
仲間達は悲鳴を上げ、思わず目を逸らした。それをよそに、セレスティアは痛みに暴れる兎を慣れた手つきで逆さに吊るし、さらに皮を
剥ぎ始める。
「この皮は、使えませんかねえ?きれいに剥ぎ取れましたが……ああ、まだ下準備には時間かかりますんで、皆さんは他の準備を
お願いしますね」
いつもと全く変わらぬその姿に、仲間達はゾッとした。そして誰ともなく、彼等は一つの判断を下した。
食事を終え、学園に帰った彼等は、セレスティアにパーティから抜けてくれるよう頼んだ。それに対し、彼は残念そうな表情を
浮かべるだけだった。
「悪いけど、あんなあっさり生き物殺せるような人とさ、一緒にいたくないよ」
「……まあ、いいでしょう。無理に残せとは言えませんし、言いません。またいつか、どこかでお会いしましょう」

冒険者の日常とは、命を奪うことと切っても切れない関係にある。襲い掛かるモンスターや、食材となる生き物。そして、時には
逆に襲われ、命を落とすこともある。ある者はそれに耐えきれず学園を去り、ある者は慣れていく。またある者は、それに歪んだ喜びを
覚え、率先して命を奪うようになることもある。
ひと月も経てば、資質のなかった者達はあらかたふるい落とされている。その頃になると、彼等の目つきもようやく冒険者の端くれと
言えるようなものになってくる。
そうはなっても、やはり彼等は学生であり、まだまだ年相応と言える部分は多分に残っている。特に学食など、落ち着いて食事を
できるような場所であれば、彼等は実に騒がしく、また楽しげに食事をしている。それに耳を傾ければ、彼等の嗜好やパーティの状況など、
様々な情報を知ることができる。
「いやいやお前、知識は力だぜ?自分の武器ぐらい、詳しく知ってねえとな」
「お前の知識は偏ってるだろ。確かにすごいけどさ」
「だからさぁ、こっちはおかげで死ぬところだったんだけど。いい加減にしてくれない?」
「そ、そんなこと言われても……だって、あれは…」
「この後の授業、フォルティ先生のだっけ?」
「じゃあ楽だなー。でもあの先生、扱い間違えると死にそうで怖いよな」
仲良く話している者達もいれば、喧嘩をする者達もいる。中には討論をしている生徒がいたり、食器の片付けを巡ってじゃんけんを
している生徒がいたりと、食堂はとかく様々な人間模様を見せてくれる。いずれにしろ共通しているのは、探索中と違って気を張っている
必要がないため、誰も彼もが寛いでいることだった。
だが次の瞬間、その空気は瞬く間に緊張した。
「きゃああぁぁ!!」
「ドワーフさん、ダメです!やめてください!」
突然起こった悲鳴と、慌てた男子生徒の声。そちらに目を向けると、左肩にナイフを刺されたセレスティアの女子生徒が目に映る。
1154/13 ◆BEO9EFkUEQ :2011/08/30(火) 00:21:01.17 ID:ffDNsbpS
「ちょっと、放してよ。邪魔」
「ダメですってば!せめて場所を弁えてください!」
「おー、やるじゃんやるじゃん。そのままやっちゃえ、ひひひ!」
その傍らには、セレスティアの男子に羽交い締めにされるドワーフの女子と、彼女を煽るフェアリーの女子。
信じられない光景だった。ただの喧嘩程度であれば、さほど珍しくもない光景だが、校内で武器を抜き、しかも明らかな殺意を持って
仲間を刺すなど、普通ならあり得ない。
「おい、よせ!やめろ!」
「君達、何してるんだ!?」
「大丈夫ですか!?」
三人の生徒が、咄嗟に反応した。その直前、ドワーフはセレスティアに頭突きを決めて腕を振りほどき、とどめを刺そうと彼女に
迫っていたのだが、そこに間一髪、彼等の援護が間に合った。
「誰よお前。邪魔しないで」
「まあまあ、嬢ちゃん。落ち着きな。エルフ、そっちのお嬢さん頼むぜ」
「ああ、そのつもり。フェルパー、バハムーンと一緒によろしく」
「そっちのセレスティア君も、大丈夫かい。鼻血出てる」
「ええ、まあ、何とか」
三人はパーティを組んでいるらしく、連携はしっかり取れていた。ドワーフをバハムーンとフェルパーが押さえて学食から連れ出し、
被害者のセレスティアをエルフが治療する。
「畜生、もうちょっとで殺せたのに」
「だからダメですよ、ドワーフさん」
「なんでよ?私もお前も、あいつに殺されかけたんだよ?」
「とりあえず落ち着いてくれ。んで、ちょっと事情を聞かせてくれねえかい?先生に報告するにしても、経緯は把握しておきたい」
バハムーンが言うと、ドワーフの代わりにセレスティアの男子が事情を説明した。
要約すると、白魔術師だった彼女が探索中に魔力の配分を間違い、回復不能という事態に陥ったらしかった。しかも、その後は戦闘に次ぐ
戦闘で、危うく全滅するところだったらしい。
「それで、殺そうとしたのか。でも、それはちょっとやりすぎだと思う。彼女だってわざとじゃないし、君等も実際に死んだわけじゃ
ないんだろ?」
「殺されかけた。それで十分でしょ」
「大体、仲間を殺すなんて大ごとじゃねえか。どんな処分されるか、わかったもんじゃねえぞ?」
「殺されるよりマシ。そもそも、私を危ない目に遭わすような奴、仲間じゃない」
バハムーンとフェルパーは目配せを交わした。どうやら彼女に常識は通用しないようだと、二人は何となく理解した。
「ですが、ドワーフさん」
そこで、セレスティアが口を開いた。
「あのどぎつい戦闘で、わたくしもあなたも死にませんでした。それに、彼女も無事です。わたくし達全員が生き残ることが、
神の思し召しなのですよ」
「……ふん」
セレスティアが言うと、ドワーフはつまらなそうにそっぽを向いた。それと同時に、学食からエルフとフェアリーが出てくるのが見えた。
「エルフ、彼女の様子は?」
「さすがにショック受けてるね。でも、神秘の水使ったし、傷は問題ないと思うよ」
「あのまま死ねば面白かったのになー、ひひ」
1165/13 ◆BEO9EFkUEQ :2011/08/30(火) 00:21:43.69 ID:ffDNsbpS
さらりと非道なことを言うフェアリーに、エルフは眉をひそめた。
「そんなこと、言うもんじゃないよ。で、君はなんでぼくと一緒に来るの?」
「どうせその二人、あのパーティにいれないでしょ?でもさー、フェアはドワの言うこと間違ってないと思うし、セレも面白いし、
こっちに付いてくつもり」
「やれやれ……また、パーティ探しが始まりますねえ」
溜め息混じりに、セレスティアが呟く。それに、バハムーンが反応した。
「また?お前達、結構転々としてるのか?」
「あ、ええ。わたくしは、二つ目のパーティで彼女と知り合いまして、今のパーティで六つ目ですね」
「六つ!?そりゃすげえ。一体何したらそんなに移籍できるんだ?」
「最初のパーティは、兎を普通に捌いたら出て行けと言われましたねえ……他は、彼女と一緒ですので」
「そんなに嫌なら、べたべたくっついて来なきゃいいでしょ」
ドワーフが冷たく言い放つと、セレスティアは柔らかな笑みで答えた。
「嫌ではありませんよ。それに、あなたを一人にしたくもありません」
「危ないから?」
「それもあります。ですがそれ以上に、何だか放っておけないのですよ」
「フェアはさっきので四個目だったよー。どいつもこいつも、すぐ切れるから面白かったんだけどねー」
ドワーフは答えるつもりはないようだったが、セレスティアの言葉によれば、最低でも五つのパーティを転々としていることになる。
セレスティアはわからないが、少なくともフェアリーとドワーフは相当な問題児のようだった。
「そうか。まあ、頑張って…」
バハムーンが言いかけると、学食の方から一匹の動物が慌てた様子で飛んできた。主人とそっくりの、しかし真っ黒な翼を持ったそれは、
セレスティアの頭にちょこんと乗っかった。
「ああ、すみません!あなたのことを、忘れてしまいましたね」
「おっ!君、ペット連れてるんだ!?」
その瞬間、フェルパーが弾んだ声で話しかけてきた。
「あ、ええ。元々は、代表で契約させられただけだったのですが……見ての通り、今ではすっかり馴染んでしまいました」
「そうかー!いや、ペットっていいよね!僕も……あ、そこのエルフもさ、ペット連れてるんだ!可愛いよねー!」
言いながら腕を伸ばすと、どこからともなく小さな鼠が現れ、フェルパーの肩に駆け上がった。
「君のその羊君は、何て名前にしてる?」
「この子は、メアと呼んでいます。この姿、いい夢が見られそうでしょう?」
「メア……ああ、なるほど!皮肉の利いた名前だ、ははは!この子はミール!いい名前だろ?」
「ミールちゃんですか。可愛らしい名前ですねえ」
和気藹々と話す二人とは別に、フェアリーはしばらく考えていたが、やがてぼそりと呟いた。
「……飯?」
「え?」
フェルパーは懐から餌を取り出すと、それをペットに食べさせ始めた。
「いいよねえ……もっと、大きく丸く太るんだぞ〜」
「フェルパー、その辺にしとけ。お前の話し相手、ちょっと引いてるぞ」
「え?ああ、ごめん。話し中に餌もないもんだ。なあ、君達三人なんだろ?よかったら僕達とパーティ組んでみない?」
突然の言葉に、バハムーンは驚いて聞き返した。
1176/13 ◆BEO9EFkUEQ :2011/08/30(火) 00:22:24.98 ID:ffDNsbpS
「はあ!?おい、フェルパー、いきなり何言い出してんだ!?」
「ペットが好きな人に悪い人はいない!それに僕達だって、仲間が増えるのは歓迎だろ!?」
「いや、まあ、そりゃ…」
「ぼくは、別に、どっちでもいいけど……君達さ、学科は何習ってるの?」
エルフの質問に、三人はお互いを見つめ、やがてドワーフとフェアリーの視線がセレスティアへと注がれた。それに気付き、セレスティアが
確認するように自身を指差すと、二人は揃って頷いた。
「では、わたくしから。わたくしは堕天使学科をメインに、サブで牧師学科を習っています」
「へえ、堕天使かよ。の割には、羽根黒くないんだな?」
「ははは。おかげで、教室内でのどアウェイ感が半端じゃありませんよ」
「私は狂戦士。サブはなし」
「フェアは狩人と盗賊だよー!」
「おっと〜……なかなか、攻撃的な構成になるねえ」
「人に学科聞くのはいいけど、お前等は何習ってんのよ?」
ドワーフの棘のある言葉にも、バハムーンは笑って答えた。
「あー、そう怒るな嬢ちゃん。俺は海賊とマニア」
「僕はヒーロー、アイドル。ちょっとだけ執事もかじってみた」
「ぼくは精霊術師一本。ってことは、支援型と言えるのはアイドルと牧師の二人で、しかもどっちもサブ学科なんだね」
さらに言えば、盗賊技能まで不足している。バハムーンはまだ検定合格するほどの腕前ではなく、フェアリーは一応合格とはいえ、
サブ学科の基準はメイン学科より遥かに低い。
「不満があるならやめとけば。私は別にどうだっていい」
「ん〜。ま、いいだろ。見ての通り、俺達のパーティは女っ気がなかったしな。その点では、俺は大歓迎だぜ!」
「この女好きめ……こいつ、昔っからこうだから。あんまり気にしないで」
フェルパーが笑顔で握手を求めると、セレスティアも笑顔でそれに応じる。
「パーティ探しは、なかなか大変ですからね。ここで話が済むのなら、わたくしもありがたいです……が、探索に行くのは数日後からに
なると思いますよ」
軽く溜め息をつくと、セレスティアはドワーフを見つめた。
「さて、ドワーフさん。本当の大ごとになる前に、職員室に自首……もとい、報告に行きましょうか」
「……だる」
「わたくしもご一緒しますから、そう言わずに。それでは皆さん、わたくし達は、これで」
静かに一礼すると、セレスティアはドワーフと一緒に職員室へと歩いて行った。四人はただ、その後ろ姿を見送る。
「あの子は、厄介そうだ」
「あ〜。でも、お目付役も一緒みたいだから、大丈夫だろ」
「退学になっちゃったら、このパーティも組んだ意味ないよね、ひひ!」
「だぁから、君はそういうこと言うもんじゃないって」
本格的にパーティとして活動する前から、既に波乱を予感させる幕開けだった。
1187/13 ◆BEO9EFkUEQ :2011/08/30(火) 00:23:01.50 ID:ffDNsbpS
翌日、授業を終えたバハムーンが校庭を走っていると、片隅に二人の生徒が見えた。その姿は、明らかに昨日の二人である。
「おーい!セレスティア、ドワーフ!」
「ん……ああ、あなたでしたか」
草を刈り払う鎌は止めずに、セレスティアが振り返る、一方のドワーフは、黙々と雑草を手で引っこ抜いている。
「何してるんだ、お前等?」
「見ての通り、校庭の草刈りですよ。昨日の騒動の罰、というわけです」
「なるほど……って、お前はなんで一緒に受けてるんだよ?」
「彼女とは、ずっと一緒ですからね。わたくしにも少なからず責任はありますし、彼女一人に背負わせては退…」
「セレスティア、ちゃんと手ぇ動かして」
顔を上げもせず、ドワーフがぼそりと言った。
「ああ、これは失礼」
「お前な、こいつはお前のために一緒に罰を受けてくれて…」
「頼んだ覚えはないし、セレスティアが勝手にやってるだけ。責任あるって自分で言ってるんだから、他人が口出すな」
「……きついお嬢さんだ」
口では軽い調子で言いつつ、バハムーンは彼女を注意深く分析していた。
少なくとも、これまでに出会った誰とも違う人種だった。自身の罪を肩代わりしてくれた仲間に対する感謝の念は微塵も見えず、
むしろそれが当たり前だと本気で思っている節がある。
まして、昨日の事件である。いくら腹が立った、あるいは相手の過失で危険な目に遭ったとはいえ、本当に仲間を殺そうとするなど、
正気の沙汰ではない。しかも、あの衆人環視の中での凶行である。
一言で彼女を表すなら、常識がない、あるいは通じない。
「まあ、なんだ。さすがにそれ手伝うわけにもいかねえけど、頑張れよ」
二人に手を振りながら遠ざかりつつ、これは予想以上に厄介なものを抱えたかもしれないと、バハムーンは心の中で思うのだった。

後々聞いてみると、校庭の草刈りはその一角だけでなく、なんと全範囲をやらされているという話だった。そのため、草刈りを終えるには
かなりの期間を要し、結果として彼等が揃って探索に出られたのは、実に結成から一週間も経ってのことだった。
出発に際して、フェルパーがそっとセレスティアら三人に耳打ちした。
「バハムーンはさ、ちょっと注意した方がいい。あんまり、熱心に話聞いたりしないで」
「何、それ?何かすんの?」
「ああ、君とドワーフは口説かれる可能性もあるけど……まあ、とりあえず、そこそこで切り上げるようにして」
その言葉の意味は、探索に出てから僅か数分で理解することとなった。
「見ろ!この幾何学的な美しさを持つ籠状のヒルト!こんだけ派手でありながら、重量は計算し尽くされたバランス!もちろん、
ブレードに反りなんてねえし、歪みもねえ!そして必要ならば斬撃にも使える鋭さ!最高のレイピアだと思わねえか!?」
「は……はぁ…」
何でも大人しく聞いてしまうセレスティアには、まったく災難だった。武器の話になった瞬間から、バハムーンの口は止まることがない。
1198/13 ◆BEO9EFkUEQ :2011/08/30(火) 00:23:52.17 ID:ffDNsbpS
「まあ、こっちゃいいんだが、問題はこっちだ。オートマチックタイプのハンドガンだが、見ろ。リアサイトの左右の高さが微妙に
狂ってるんだ。これじゃあ、本来の攻撃力は望めねえ」
「はぁ……ですが、慣れてしまえば普通に扱えるのでは?」
「あー、道具を馴染ませるってのは大切だな。けどな、狂った道具に慣れちまうと、いざまともなもんを使おうとしても、悪い癖が
付いちまって実力を発揮できなくなっちまう!だから、道具はいいのを使えって言われるんだ」
「ところで、オートマチックの、と言われましたが……それはいわゆる、連射機構の付いたものですか?」
「いやいやいや、違うぞそれは!いや、合ってるとも言えるが、トリガー引きっ放しで連射って奴じゃねえ。オートってのは、
チャンバーへの装填方法のことだ!こいつも初弾はスライドを引いて装填するんだが、その後は発射時のガス圧を利用してスライドを
後退させて、空薬莢の排出と次弾の装填を同時にこなすってやつでな…」
セレスティアもやめればいいのだが、ついつい相手の話題を引き出すような喋りをしてしまい、彼のお喋りは留まるところを知らない。
どうやら毎回これを味わっているらしく、フェルパーとエルフはセレスティアに同情的な視線を向けている。
「バハのサブはマニアって聞いてたけど……アイドルとかじゃなくて、武器マニア?」
「それと、海賊の。特に剣と銃がお気に入りで、一度話し出すと毎回あんな感じ」
「うぜ」
「言葉は悪いけど、それはぼくも同意するよ」
バハムーンのお喋りはまだまだ続くかと思われたが、それは思ったよりも早く終わることとなった。
一行の前に、いくつかの影が飛び出した。それに対し、彼等は即座に身構える。
「っと、敵か。数は六体……一人一殺でちょうどだな」
「気は進みませんが、戦うとしましょうか」
セレスティアは鎌を下向きに構え、右手は逆手、左手は順手という変わった構えをとった。
「……ところでお前、銃とか剣は何のために作られたと思う?」
不意に、バハムーンが問いかける。
「何の、と言いますと……撃つため、また斬るためではないでしょうか?」
「そう、その通り。道具にはな、機能美ってもんがある。こいつみてえに、装飾された武器ももちろん十分にきれいだが、道具が本来の
輝きを発するのは、その目的のために使われてる時だ。んで、銃と剣ってのはな…」
スッと目を細め、バハムーンはその顔に冷酷な笑みを浮かべた。
「相手を殺すために、作られたもんなんだぜ」
パァン!と乾いた音が鳴り、たちまち一体が倒れた。それを合図に、仲間達は一斉に襲い掛かる。そしてこの時、彼等は新たな仲間が、
これまでに組んできたどんな仲間とも違うことを知った。
1209/13 ◆BEO9EFkUEQ :2011/08/30(火) 00:24:51.46 ID:ffDNsbpS
「殺しに来る相手なら、ぼくは容赦しない」
「御託並べてる暇があるなら、さっさと殺してよ!」
彼等の武器はただ一瞬の躊躇いもなく、相手の命を奪っていった。ひと月もすればある程度慣れるとはいえ、未だに命を奪うことに
抵抗を持つ生徒は多い。その躊躇いが、彼等には微塵もなかったのだ。
ドワーフの斧が頭を叩き割り、エルフの魔法が体を焼く。さらにフェアリーの弓が飛び、フェルパーの剣が相手を切り裂き、
最後にセレスティアが残った一体へと飛びかかった。
「殺すつもりはありませんが、失礼」
「ひひ、よく言う!」
彼の言葉を聞いた瞬間、フェアリーが笑った。その直後、バハムーンら三人に大きな動揺が走った。
「……は?」
彼の刃には、殺意が全くなかった。にもかかわらず、彼の鎌は躊躇いなく相手の首へ伸び、それを刈り飛ばしたのだ。
それこそ草でも刈るかのように命を刈り取ると、セレスティアは鎌を収めた。
「わたくし達の勝ち、ですね。いや、皆さんいい腕ですね」
「お前……殺すつもりはないとか言ってなかったか?」
バハムーンが言うと、セレスティアはにっこりと笑った。
「ええ、わたくしは殺してはいませんよ」
「いや、殺してねえってお前…」
話をする二人をよそに、フェアリーはモンスターの死体の前にしゃがみ込み、ごそごそと何かしている。
「ああ、わたくしの行動の結果、死に至りはしましたね。ですが、神は生きとし生けるものすべてに平等です。ここで死ぬのは即ち、
神の思し召しなのですよ。でなければ、わたくしの攻撃で死に至るはずがありません」
「……何ちゅう牧師だよ、おい」
「エルー。はい、お団子ー!」
「お団子…?」
ひょいっと、フェアリーが串に刺さった何かを投げた。それを手に取る直前、その正体に気付く。
「わあぁ!?」
「きっひひひひ!食べてもいいんだよー、それ!」
それは、矢に刺さったモンスターの目玉だった。このためだけに、わざわざ死体から目玉を抉り出して作ったのだ。
「な、なんてことしてるんだよ君は!?」
「なぁにぃ?どうせ死体でしょこんなの?フェア、何か悪いことしてるわけ?何ならお仕置きでもするー?」
まったく悪びれる様子のないフェアリー。これほどの残虐行為すら、彼女にとってはただのいたずらなのだろう。
「……いや、いい。君とは話しても無駄そうだ」
「ふーん、あっそ。じゃ、またあとで作ってあげるー」
殺意なき刃で殺しを成し遂げる、狂信の堕天使。子供のような無邪気さで残虐行為を楽しむフェアリー。そして、そもそも情けなどとは
無縁に見えるドワーフ。
よくよく、とんでもないものを仲間にしてしまったものだと、バハムーン達三人は暗澹たる思いを抱くのだった。
12110/13 ◆BEO9EFkUEQ :2011/08/30(火) 00:25:30.99 ID:ffDNsbpS
戦い、特に殺し合いに必要なものは、身体能力や技術よりも、相手の殺意に怯まず、相手の命を奪い取る覚悟と度胸である。
その点、彼等六人は殺しに抵抗を抱かず、敵の殺意をも恐れることがなかったため、この時期の学生にしては相当に強かった。
編成には多少問題があったものの、それを感じさせない圧倒的な力により、彼等は瞬く間に力をつけていった。
また、躊躇いがない動きをする仲間は、彼等の力をさらに引き出すこととなった。
これまでに組んできた仲間は、敵の攻撃を恐れ、あるいは命を奪うことを恐れ、時に攻撃を躊躇うことがあった。その仲間の援護を
当てにして動いたために、危険な目に遭った記憶もそれぞれにある。その心配がないだけで、彼等は思う存分力を振るうことができた。
だが、その仲間を信頼するという、パーティとしての基本を根底から覆されるような行動を取る者が一人。
武器と学科の都合から、彼等の編成はフェアリーとエルフが後列に入り、残りは前列で戦っていた。その中でも、狂戦士学科に所属する
ドワーフは敵の真っ只中に飛び込み、両手の斧を振り回すという豪快な戦術を取っていた。その分消耗は激しく、いかに体力のある
種族とはいえ、だんだんと疲労が目立ち始めた。
それとほぼ同じくして、フェルパーが敵の攻撃を避け損ね、手傷を負った。さほど大きな傷ではないが、決して浅いものでもない。
「フェルパー、神秘の水持ってたよね。それ、私にちょうだい」
敵の群れを捌き切り、何とか味方の前線に戻ったドワーフは、開口一番そう言った。
「ちょ、ふざけるな。僕だって怪我してるの見えるだろ?」
「じゃあ、代わりに私の弁当あげる。それでどう」
「……しょうがない。怪我は確かに、君の方が大きそうだ」
言いながら、フェルパーは瓶の蓋を開け、ドワーフに神秘の水を振りかけた。それを見ると、セレスティアは溜め息をつき、魔法の詠唱を
開始した。
ドワーフの傷が治った瞬間、フェルパーにヒールの魔法が掛けられた。突然傷が治り、フェルパーは驚いてセレスティアを見つめる。
「え?何してるんだ?僕はドワーフが…」
言いかけた瞬間、ドワーフは再び斧を構え、敵の群れへと突っ込んでいった。もちろん、アイテムを使う様子などない。
「こういうことを言いたくはありませんが、彼女を信用してはいけません。でないと、死にますよ」
「なっ……嘘ついたってことか!?」
幸い、そのドワーフの活躍もあり、直後に戦闘は終わった。当然、フェルパーは即座にドワーフに詰め寄る。
「君、僕を騙したのか!?アイテムの交換を持ちかけといて…!」
「生きてるんだからいいでしょ。何怒ってんの」
「そういう問題じゃない!もし僕が死んだらどうするつもりだったんだ!?」
「モミジ先生のとこに連れてけばいいんでしょ」
「まあ、まあ。お二人とも、そこまでにしてください」
言い合う二人の間に、セレスティアがやんわりと割って入る。
12211/13 ◆BEO9EFkUEQ :2011/08/30(火) 00:26:18.66 ID:ffDNsbpS
「ドワーフさん。彼等はそこまでしなくとも、きちんと理由を話せばわかってくれる方々だと思いますよ」
「……あのねえ、セレスティアさん?お前は戦闘中に、そんな余裕あるわけ」
「あなたが手を止めても、わたくしとバハムーンさんは動けますし、後ろからの援護もありますよ」
「お前等が動く前に、敵が動いたらどうする気よ。私は死にたくない」
「ドがつくほどやばい状況であれば、防御に専念してくれても構わないんですよ。もっとも、狂戦士のあなたは、暴れる方が
似合ってますがね」
それ以上は話す気がないらしく、ドワーフはそっぽを向いた。そちらが片付いたと見ると、セレスティアはフェルパーの方に向き直る。
「あなたのお怒りは、ごもっともです。ですが、この通りあなたは生きています」
「ああ、君の援護のおかげで」
「彼女のことは、わたくしが多少なりとも知っています。ですから、彼女があなたを騙したとしても、わたくしはあなたを生かすことが
できます。それもまた、神のお導き。どうか、怒りを鎮めてはもらえませんか?」
「言ってわかる相手じゃなさそうだし、確かに適当なとこで切り上げた方がよさそうだ」
まだ相当に不機嫌そうではあったが、フェルパーは渋々彼の言葉に従った。
「やられる前にやっちゃえばー?ヒーローと狂戦士の戦いなんて、すっごい見応えありそうだしさー」
「フェアリーさん、ご勘弁願いますよ。その戦いに割り込んだら、死ぬのはわたくしです」
ますます浮き彫りになっていく、パーティの問題点。それを実感しながら、エルフがバハムーンに囁く。
「このパーティ……やっていけると思うかい?」
「強えには強えんだが……洒落にならねえレベルのいたずらっ子と、静かな狂人と、良心と常識のねえ狂戦士。ま、こっちだって
似たようなもんだ。何とかなるだろ、ははは」
軽い口調で言い、笑って見せるバハムーン。しかしその目は言葉と裏腹に、まったく笑っていないのだった。
12312/13 ◆BEO9EFkUEQ :2011/08/30(火) 00:27:04.51 ID:ffDNsbpS
「そもそもよ?お前から神秘の水もらって、私はちゃんと敵を殲滅したでしょ。仲間として最低限の仕事は果たしてるし、結果として
お前のこと守ったわけだよね。これで回復だけしてもらって、逃げ出すような奴だったらそれこそどうなのよ。今までそんな奴だって
いたんでしょ。それに比べりゃ、私の方がよっぽどまとも。ヒーロー様の癖に、終わった細かいことぐちぐち言うんじゃないよ」
探索を終え、学食に向かった一行。そこで、フェルパーはやはり納得できていなかったらしく、戦闘中の彼女の行為について言及した。
それに対して、ドワーフはそれこそ立て板に水を流すように反論していた。
「いや、だからそれは…!」
「私が騙した?殲滅した方が話が早いって判断しただけだけど。それを勝手な憶測で私を悪者に仕立てて、ヒーロー様は悪者がいなきゃ
やる気が出ないわけ?お望みなら悪者として戦ってあげようか?その代わり、勝つのがヒーローとは限らないけどね」
傍から聞いていれば、明らかに嘘が混じっているのは理解できる。しかし、有無を言わせぬ怒涛の反駁に加え、あちこち飛躍する
彼女の話を聞いていると、当事者である者達はまともな判断能力を奪われていく。
「いや、だから……わかった、わかったよ。もう言わない、ごめん」
「わかればいい、わかれば」
勝ち誇ったように、ふん、と鼻から大きく息を吐くと、ドワーフはざっと三人前の料理を掻き込み始めた。
「モミジ先生といい、あなたといい、ドワーフの方はよく食べますよねえ。その量、フォルティ先生なら死んでますよ」
「フェアでも死ぬよー。セレと同じ量だって食べれないんだからー」
「お嬢ちゃんは小さいからなあ。それも含めて、可愛らしいとは思うけどな」
バハムーンが言うと、フェアリーはきょとんとした顔で彼を見つめた。やがて、その顔にニヤリとした笑みが浮かんだかと思うと、
フェアリーは大きく息を吸った。
「やーっ!セークーハーラーっ!」
突然の叫びに、周囲は一瞬にして静まり返り、視線は一行へと注がれる。
「なっ!?ちょっ、おいこらっ!俺まだ何もしてねえだろっ!?」
「……バハムーン。『まだ』って何だ『まだ』って」
「ほらー、何かするつもりだったんじゃないー!バハのセクハラ野郎ーっ!」
「ぅおぉい!!だから何もしてねえだろ!誤解だ!俺に変なレッテルを貼り付けるなー!」
12413/13 ◆BEO9EFkUEQ :2011/08/30(火) 00:27:51.60 ID:ffDNsbpS
そんな中、ドワーフは黙々と食事を続け、食べ終わると周囲の状況にまったく構うことなく席を立った。
「あ、ドワーフさん帰るんですか?では、わたくしもご一緒します」
「付いて来るな」
「いや、そう言われましても、鍵はあなたが持ってるじゃないですか。もう締め出しはごめんですよ」
その言葉に、バハムーンは二人の方を振り返った。
「え?お前等同室なのか?」
「ええ。男女ではありますが特例で」
「羨ましい話だな」
「さすがセクハラ野郎だねー」
「だから違うっつてんだろうがっ!」
「はは……では、わたくし達はこれにて」
既に食器を下げに行ってしまったドワーフを、セレスティアは慌てて追いかける。そしてまだまだ騒がしい仲間達のテーブルを背に、
二人は寮へと帰って行った。
部屋に入ると、ドワーフは荷物を自分のベッドの下にしまいこみ、布団の上に寝転がった。それを見ながら、セレスティアは上着を脱ぎ、
武器などをクローゼットへとしまいこむ。
「今回のパーティの方々は、なかなかいい腕を持った方達ですねえ。あれほどの動きをする方は、初めて見ましたよ」
「だから何」
「この調子なら、もしかしたらこの先も同じ面子でやっていけるかもしれませんね。ですが、ドワーフさん。仲間を騙すような行為は、
あまりしてはいけませんよ」
セレスティアの言葉に、ドワーフは首だけ持ち上げて彼を見つめる。
「そうですか、セレスティアさん。私はお前みたいに、会った奴をいきなり信用する気はない」
「だからといって、騙すのは良くない手段ですよ。相手の信用を、いきなり破壊してしまう行為なのですから。たとえその場を
切り抜けたとしても、長い目で見れば損をしてしまいますよ」
「あっそう。じゃあ一応心に留めておく」
あまり聞く耳を持っているとは言い難いが、それでもドワーフはある程度ながら、セレスティアの言葉を大人しく聞くことがあった。
「もっとも、神はあなたの行為を認めておられるのですから、わたくし如きがやめろとは言えませんがね。ご一考下さるのなら幸いです」
同室だとはいえ、ドワーフはセレスティアに心を開いているわけではない。それどころか、見た目はただベッドに寝転んでいるだけだが、
その懐にはナイフを隠し持っている。何か不都合、あるいは気に入らないことが起これば、彼女は躊躇いなくそれを使うだろう。
しかし、セレスティアはあまり彼女を刺激することがなかった。普通ならば激怒するような行為ですら、彼はそれを神の意思として
許してしまうところが幸いしていた。むしろそうでなければ、この危険人物と同じ部屋で暮らしていて、無事でいる方が難しいだろう。
「……損になることを、進んでしたいとは思わない。考えておく」
そう答えると、ドワーフは再び首を戻す。後は特に会話もなく、セレスティアはパジャマに着替え、ベッドに入る。その枕元にペットが
丸まり、それを確認すると彼も目を閉じた。
ドワーフはベッドに寝転んだまま、ただじっと天井を見つめていた。やがて、セレスティアの寝息が聞こえ始めると、そこで初めて
目を瞑り、程なく部屋には二人と一匹分の寝息が響くのだった。
125 ◆BEO9EFkUEQ :2011/08/30(火) 00:29:19.18 ID:ffDNsbpS
以上、投下終了。ペットシステムが空気すぎたのは残念だった

それではこの辺で
126名無しさん@ピンキー:2011/08/31(水) 00:05:26.22 ID:m3YPa6sD
うお、今回のPTも個性的だなぁ
どんな人間模様が繰り広げられるのかwktk
エロパートも楽しみにしてます
127 ◆BEO9EFkUEQ :2011/09/03(土) 00:05:02.57 ID:fxoXWXO1
こんばんは、前回の続き投下します
お相手はドワ子

注意としては、軽い描写ですが2レス目に暴力シーンあり
それでは楽しんでいただければ幸いです
1281/13 ◆BEO9EFkUEQ :2011/09/03(土) 00:05:59.59 ID:fxoXWXO1
見慣れた風景。見慣れた光景。見慣れた記憶。
「自分がされて嫌なことは、人にやっちゃダメだよ」
わけがわからない。人が自分にするのに、なぜ自分がするのはダメなんだろう。
見慣れた言葉。見慣れた人物。見慣れた私。
記憶と寸分違いのない、かつての光景。
「自分がされて嫌なことは、人にやっちゃダメだよ」
嘘ばかり。自分がされるってことは、他人はしてるってこと。他人がよくて、自分がダメな理由はない。
うちの近くに住む、嫌いな子。これから何十年も顔を突き合わせ、付き合って行くのかと思うとぞっとする。
大騒ぎする大人。泣き叫ぶ子供。倒れる子供。それをただ眺める私。
「どうしてこんなことを」「早く医者を」「そいつを捕まえろ」
あ、捕まるのは嫌。でもこのままじゃ捕まる。じゃ、どうするかなんて、答えは簡単。
降ってきた血は体毛に染み込み、肌に触れる頃にはひんやり冷たい。
赤い。赤い。髪の毛まで赤く染まる。倒れる子供。倒れる大人。
「こいつは危ない」「どうするんだ」「殺せ」
ほら、見たことか。自分がされて嫌なことを、みんなする。しない方が馬鹿を見る。
来るなら何人でも、排除する。私の人生の邪魔になる奴は、全部排除する。
私は私の、やりたいようにする。


眠っていたドワーフの耳が、ピクンと動いた。一瞬の間を置き、さらにパタパタと何度か動くと、その目がゆっくりと開かれる。
隣に目を移し、セレスティアとそのペットが寝ていることを確認すると、ドワーフはベッドから降り、窓から外を見つめた。
彼女達の部屋は三階に位置している。そのため、見下ろせばかなりの範囲を見渡せるのだが、探すまでもなく、ドワーフは自分を
起こした原因を見つけ出していた。
寮の裏手、木立の辺りに人影が見える。その影は三つあり、それぞれディアボロスの女子、ヒューマンとバハムーンの男子のようだった。
一瞬、自身の仲間のバハムーンかと思ったが、それにしては髪色が違うため、別人らしい。
ディアボロスは、二人に組み敷かれていた。近くには元スカートと思われるぼろきれが落ちており、ヒューマンが彼女の両腕を拘束し、
さらにもう片方の手で口を押さえている。バハムーンの方は彼女の足を広げ、その間に体を割り込ませている。
くぐもった悲鳴と、男二人の小声で怒鳴っているとでも言うような声。それが、ドワーフを起こしたものの正体だった。
何をされているのかは、一目瞭然である。しかし、ドワーフはそれを助けようという気など微塵も起きず、むしろこの先どうなるのかと、
ただ黙って興味深げに成り行きを見守っていた。
まだ挿入には至っていないようで、ディアボロスは泣き叫び、足をばたつかせ、体を捻り、何とか彼等から逃れようとしている。
しかし力がないのか、男二人は大して苦労する様子もなく、彼女を容易く押さえつけてしまう。
抵抗の動きが小さくなり、バハムーンが股間の辺りに手をやり、もぞもぞと動かす。途端に、ディアボロスの顔は恐怖に歪み、抵抗は
激しさを増した。だが、やはりそれは押さえこまれ、バハムーンが半歩前に体を動かす。
その時だった。ヒューマンが顔を上げたかと思うと、表情が一変する。そして何事かバハムーンに話し、ドワーフの方を指差して
数えるように指を振りだした。
「あ、やば」
直後の彼女の行動は、誰もが予想しえないものだった。
1292/13 ◆BEO9EFkUEQ :2011/09/03(土) 00:06:42.61 ID:fxoXWXO1
窓を開け放ち、ドワーフは三階の部屋から外へと飛び出していた。防御の姿勢を取るように両腕を上げ、膝を横に曲げた姿勢を崩さず、
その体は急速に地面へと近づく。
足が地面に着く。その勢いに逆らわず膝をつき、腰をつき、さらにそこから受け身を取るように転がり、足を跳ね上げ、立ち上がった時には、
彼女の手の中でナイフが鈍い光を放っていた。
「なっ!?おいっ…!」
素早く走り寄り、真っ先にバハムーンの腹に突き刺す。手首を返してから引き抜き、慌てて立ち上がったヒューマンを刺す。
「ぐっ……があっ…!」
今度は手首を返さず、代わりにさらに深く刺し込んでから、ようやく引き抜く。そして彼女の目は、ディアボロスへと向けられた。
「ぐす……ひっく…!あ、ありがとう、ござ…」
言いかけたディアボロスの目が、驚きに見開かれる。
「……え?」
表情一つ変えず、ドワーフは彼女に向けてナイフを振りかざしていた。それが何を意味するのか、ディアボロスが理解する間もなく、
ドワーフはナイフを振り下ろそうとした。
「ひぃ!?」
「ストォーップ!!」
その瞬間、ばさりと羽音が響き、同時にドワーフの舌打ちが聞こえた。
「セレスティア、放して」
「ダメですよ!何考えてるんですか!?」
「こいつに刺すところ見られた。殺さなきゃ」
「ダメです!ダメですってば!殺しちゃダメです!」
「……お前、私に退学になれって言うつもり?」
「違います!ですが、殺したら退学じゃ済まないですよ!そこまでにしてください!彼女はダメです!」
「え…?え…?」
無表情のまま、殺すなどという物騒な台詞を吐くドワーフに、それを必死で止めるセレスティア。ディアボロスは訳が分からず、
二人の顔を交互に眺めている。
「……ちっ!」
「まあ、彼女に限らず、こちらも殺してはいけないんですが…」
言いながら、セレスティアは腹を押さえて呻き声をあげる男二人にヒールを唱えた。
その瞬間、セレスティアの首筋にナイフの刃が押し当てられた。
「……何考えてるの」
「ドワーフさん、彼等にも死なれては困るのです。あなたのこれまでの素行から考えて、死者を出せば無事では済みませんよ」
「この場で全員殺して逃げれば、何も問題ない」
「モミジ先生という、ドがつくほど優秀な校医がいますし、ソフィアール校長先生もいます。逃げ切るのは難しいですよ」
「………」
「わたくしは、あなたを退学にしたいわけではありません。どうか、信じてはいただけませんか?」
ドワーフはしばらくナイフを突き付けていたが、やがてゆっくりと手を引いた。それを確認すると、セレスティアはディアボロスの方に
向き直った。
「ふぅ……怖がらせてしまって、申し訳ありませんでした。彼女は……あ、ドワーフさん。そちらのお二人、絞め落としておいてください」
「ほい」
「ちょ、ちょ、絞め落……ぐえっ!」
さすがに狂戦士学科を専攻するだけあり、彼女は両腕で二人を同時に締め、一瞬にして失神させた。
1303/13 ◆BEO9EFkUEQ :2011/09/03(土) 00:07:33.00 ID:fxoXWXO1
「少々、彼女は警戒心が強すぎるきらいがあるので、あなたを怖がらせてしまいましたが、もう大丈夫ですよ。まったく、災難でしたね」
そう言い、セレスティアが優しげな笑みを浮かべると、ディアボロスの目にじわりと涙が浮かんだ。
「う……うぅ〜…!わ、わた、し……信じて、たのにぃ…!な、仲間って……仲間ってぇ…!うああぁぁーん!!」
「仲間……ですか。まったく、災難ですね」
ともかくも、泣かれては話もできない。セレスティアは彼女が落ち着くのを待って、少しずつ話を聞いた。
要約すれば、彼女はなかなかパーティに入れず、ようやく入れたと思ったら体を求められ、それを断ると態度が豹変し、無理矢理に
迫られたということらしい。さほど頻繁にあるわけではないが、血の気の多い生徒が多いため、こういった事件はたまに起こるらしい。
「そうだったのですか、辛い目に遭ってしまいましたね。ですが、あなたには酷なのですが、本来第三者であるわたくし達が関わって
しまった以上、先生方に報告しないわけにはいかないでしょう。申し訳ありませんが……その話を、もう一度していただけませんか?」
「……それは、その……いいんです、けど…」
ディアボロスはドワーフが気になるらしく、ちらちらと彼女の様子を窺っていた。
「まあ、その、脅かされはしましたが、あなたを助けたのは彼女ですよね?そこは是非、強調してあげてください」
「……はい」
夜遅くではあったが、人目が多い時間帯になってはディアボロスが辛いだろうと考え、彼等は事の経緯を報告しに校長の部屋へと向かった。
そこでは主にディアボロスとセレスティアが経緯の説明を行い、ドワーフはほとんど話さなかったが、彼女を助けた理由に関して
聞かれると、ちゃっかり『同じ女として許せなかった』と答えていた。
結果、ヒューマンとバハムーンは停学処分。ドワーフは辛うじて処分を免れたが、嘘を見抜かれていたのか、『次はありませんよ』という
柔らかくも断固とした宣告を受けることとなった。
それが気に入らなかったらしく、ドワーフは無事に済んだといえ不機嫌そうだった。
「私はまた寝る」
「あ、部屋の鍵はメアに開けさせますよ。わたくしは窓でも開いていれば帰れますので、鍵は掛けてくださっても結構です」
途中から主人に合流したペットに、セレスティアは通信魔法を使って指示を出し、背中をポンと叩く。すると、ペットはすぐさま彼の
頭から離れ、ドワーフの後ろをパタパタと飛んで付いて行った。
「さて……あなたはこれから、どうします?どこか、当てはありますか?」
「………」
ディアボロスは俯いたまま喋らない。恐らく、当てなどないのだろう。そんな様子を察し、セレスティアは軽く息をついた。
「そうですか……わたくし達のパーティは無理ですが、一つだけわたくしに当てがありますよ。あなたがよろしければ、どうです?」
「ほ……本当、ですか?」
「わたくしは嘘は言いませんよ。もっとも、受け入れられるか、また人数が埋まっているかどうかは不明ですが。それでもいいなら、
明日の昼頃に寮の入り口でお会いしましょう。わたくしも、先方に確認を取る必要がありますので」
「わ、私のために……ありがとう……ぐすっ……ご、ございます…!」
「ああ、泣かないでください。困った時はお互い様ですよ」
セレスティアは何とか彼女を宥め、部屋へと送って行く。それが済むと、いつも持ち歩いている小さなノートのページをちぎり、
そこに何事かを書き込むと、とある部屋の前へ行き、ドアの下から室内へと滑り込ませた。
用事をすべて終え、セレスティアは自室に戻るとドアノブを回す。しかしやはりというか、しっかりと鍵がかかっていたため、仕方なく
寮の外へ出ると、窓へと飛び上がる。そこから室内に侵入すると、今更ながらドアに向かっていたペットが、慌ててセレスティアの方へと
飛んできた。
「ちょっと遅かったですねえ、メア。では、今度こそ寝るとしましょうか」
言いながら、ちらりとドワーフを見る。彼女は寝ているように見えたが、無防備な寝息は全く聞こえてこない。
「それでは、お休みなさい」
独り言のように言うと、セレスティアはベッドに入り、目を瞑った。程なく、彼とペットの寝息が聞こえ始めると、その数分後にようやく
ドワーフの寝息が混じるのだった。
1314/13 ◆BEO9EFkUEQ :2011/09/03(土) 00:08:14.20 ID:fxoXWXO1
翌日、セレスティアは寮の入り口付近のテーブルにいた。その前には、一人のヒューマンが座っている。
「それで、一体どういうわけ?まさかとは思うけど、また私達のとこに入りたいとは言わないよね?」
「いえ、そうは言いませんよ。わたくし自身、今は別のパーティに所属していますから」
「……ま、正直なところ、君を放出してからかなり苦戦するようになってたし、惜しく思うことはあったよ。ただ、後悔はないけどね」
「結構なことです」
彼女は、セレスティアが初めて組んだパーティのリーダーだった。彼が顔色一つ変えずに兎を殺し、捌いたことが理由で追放を決めた
張本人だとも言える。
「今日は、あなたに紹介したい方がいるのです」
「紹介って……君、私達のパーティの状況、知ってるの?」
「いえ、まったく」
おどけるように、セレスティアは大袈裟に肩をすくめた。
「よくもそれでまあ…」
「頼れる方が、あなたしか思い当たらなかったのですよ。そろそろ、その相手も来る頃なのですが…」
ちょうどその時、寮の扉が開き、ディアボロスの女子生徒が駆け込んできた。彼女はセレスティアを目にするなり、ぺこりと頭を下げた。
「す、すみません!授業が長引いちゃって…!」
「いえ、ちょうどいいタイミングですよ。ヒューマンさん、彼女があなたに紹介したい方です」
ヒューマンはじっと、ディアボロスを品定めするかのように見つめている。その視線にたじろぎ、ディアボロスは少し体を固くしている。
「ふーん、後衛系学科かな……簡単に自己紹介、お願いできる?」
「あ、はいっ!あの、えと、サブは……じゃない!えっと、メインは白まじゅちゅ……まじゅ、つし、学科です!で、あの、サブは、
い……妹、学科…」
響きが恥ずかしかったのか、ディアボロスの声はどんどん小さくなり、最後の方はよく聞き取れないほどになっていた。
「なるほどねー。道理で、守ってあげたいオーラがすごいわけだ。あと、別に焦らなくていいよ。急いで噛み噛みの紹介されるよりは、
ゆっくりはっきり言ってもらった方がわかりやすいし」
「ご……ごめんなさい…」
「あ、責めてるわけじゃないから。気になったらごめんね。なるほど、白魔術師ね…」
そう呟くと、ヒューマンは考え込むような仕草で黙り込んでしまった。
「……ダメ……でしょうか…?」
「ん〜。見た感じ、まだ経験浅そうだよね」
「は、はい……すみません…」
「使える魔法は?」
「ヒールなら使えます!でも、他は……その…」
「今後の学科の予定は?転科とかするつもり?」
「え、えっと、えっと……まだ、その、そういうつもりは、ない……です…」
畳みかけるようなヒューマンの言葉に、ディアボロスはすっかり委縮してしまっている。そんな彼女を、ヒューマンは表情を変えずに
見つめていたが、やがて深い溜め息をついた。
「はぁ……この子を、私に預かれってね」
「………」
ヒューマンのお眼鏡には適わなかったのかと、ディアボロスは今にも泣きそうな表情になった。
1325/13 ◆BEO9EFkUEQ :2011/09/03(土) 00:08:57.06 ID:fxoXWXO1
が、そこでヒューマンが言葉を続けた。
「現在の実力はともかくとして、真面目そうだね。気弱だけど、答えるべきことはちゃんと答えてる。そして、ここが一番重要」
ディアボロスからセレスティアに視線を移すと、ヒューマンはニヤリと笑った。
「今のうちのチームには、後衛が不足で絶賛募集中。偶然にしろ、助かるよ」
「では、彼女は…」
「ただまあ、うちは入れ変わり激しいからね。ずっと一緒かはその子次第だけど、少なくとも当面はうちにいてもらうよ」
そう言うと、ヒューマンは再びディアボロスに視線を戻した。
「そういうわけで、ディアボロスちゃん。今日からうちのパーティの仲間ね。あとで他の仲間にも紹介するから、授業終わったら
またここ来て」
「ほ……ほんとですか…?私、仲間にしてくれるんですか…?」
「後衛なんて、こっちからお願いしたいくらい。そういうわけで、よろしくねー」
軽い調子で言うと、ヒューマンは席を立ち、肩越しに手を振りながら去って行った。それを見えなくなるまで見送ってから、ディアボロスは
セレスティアに向き直り、勢いよく頭を下げた。
「あ、ありがとうございますっ!私なんかに、こ、こんなにしてくださってっ…!」
「いえ、いいんですよ。彼女は切る時はばっさり切り捨てますから、決して楽な道ではありませんが……あなたなら、大丈夫でしょう」
静かに言って、セレスティアも席を立った。
「では、わたくしはこれからお昼を食べますので、これで。いつかどこかの迷宮で、お会いしましょう」
「はい!はい!必ず、どこかで!」
涙さえ浮かべながら、そう答えるディアボロス。そんな彼女に優しく微笑みかけ、セレスティアは去って行った。
学食に着くと、真っ先に目に飛び込んできたのは、両手にトレイを抱えたドワーフの姿だった。相変わらず、その小さな体のどこに
納まるのかというほどに、食事の量は多い。
「ドワーフさん。相変わらずですね」
「あの女のところ?」
「ええ。これで全て、事後処理は済んだことになりますね」
一つ持とうかとセレスティアが手を差し出すと、ドワーフは唇を僅かに持ち上げて牙を見せた。本気で噛まれかねないため、
セレスティアは大人しく手を引っ込める。
「それにしても、あなたはなぜあの時、あんなことを?三階から飛び降りるなんて、フォルティ先生なら死んでますよ」
「見てたのがバレて、私の部屋特定されそうになった」
「……なるほど」
別に、彼等はドワーフの部屋を探し出そうとしたのではなく、単に目撃者がいる部屋を指し示そうとしただけなのだろう。その意味では、
彼等もよくよく災難だったなと、セレスティアは心の中で思った。
「……なんで、あそこまでするのかな」
ドワーフが、ぼそりと呟いた。
「え?何です?」
「………」
しかしセレスティアの質問には答えず、ドワーフは席に着くとすぐに食事を始めてしまった。その直後にバハムーンやエルフ達も合流し、
結局彼女の呟きは謎のままだった。
1336/13 ◆BEO9EFkUEQ :2011/09/03(土) 00:09:46.45 ID:fxoXWXO1
始原の森での探索を終え、夕食を終える頃には、辺りはすっかり暗くなっていた。例によって、ドワーフは食事を終えるとさっさと部屋に
帰ろうとしたため、都合上セレスティアもその後についていく。フェアリーはエルフやバハムーンをからかうのが楽しいらしく、
彼等と一緒に学食に残っている。
他の大多数の者に対してと同じく、ドワーフは同室のセレスティアにも気を使うことはなく、自身のやりたいようにしか動かない。
「お風呂」
「あ、先に入りますか。では、わたくしはあとでシャワーで済ませましょう」
セレスティアは既に上を半分脱いでいたのだが、大人しくドワーフに従う。彼女の後は浴槽が毛だらけで、その大半がセレスティアの翼に
絡んでしまうため、彼女が先に入った場合、彼は時間を掛けて浴槽の掃除をするか、シャワーで済ませるかの二択を迫られることになる。
もちろん、ドワーフが浴槽の掃除をするということはない。
たっぷり一時間ほどかけ、ようやくドワーフが風呂から出ると、セレスティアは体を洗うついでにペットもわしゃわしゃと洗ってやる。
汗を洗い流し、一日の汚れをしっかりと落として浴室を出る。ペットの定位置は彼の頭の上だが、さすがにこの時ばかりは彼の隣に
パタパタと飛んでいる。
いつものように、ドワーフはベッドに仰向けになり、ぼんやりと天井を眺めていた。まだ湿っているらしく、ベッドにじんわりと染みが
広がっているが、彼女は特に気にしていないらしい。
二人の間に、あまり会話はない。ドワーフは気が乗らなければ決して話しかけもせず、また返事もしない。セレスティアはそんな彼女の
気質を理解しており、自身も沈黙を苦痛と感じることはないため、あまり気にしていないのだ。
そのまま消灯時間目前となり、セレスティアがそろそろ寝ようかと思った時、不意にドワーフが口を開いた。
「ねえ、セレスティア」
「はい、何でしょう?」
彼女から話しかけるのは珍しいなと思いつつ、セレスティアは普通に返事をする。
しかしやはりと言うべきか、珍しい事態であるからには、続く言葉が普通であるわけがなかった。
「昨日の奴等みたいにさ、セックスって無理矢理したいほど気持ちいいことなの?」
「は?え?いや……そ、そうですねえ……わたくしは経験ありませんので、実際どうだかはわかりませんが、そういう方がいる以上、
そうなのでしょうね」
「セレスティアだって一人でする時はあるんでしょ?」
「や、まあ…」
「気持ちいいんだよね?」
「ええ、まあ、はい」
「でも、女から無理矢理することって聞かないけど、女も気持ちいいって言うよね」
「……まあ、そう聞きますね」
ここまで来ると、セレスティアは彼女が何を言いたいのか、何となく理解できてしまった。
そして予想通り、ドワーフはむくりと体を起こすと、セレスティアを正面から見つめて言った。
「試してみたい。セレスティア気持ちよくして」
「ほ、本気……なんでしょうねえ…」
「不服?」
「いえ、そんなことはありません。心の準備ができていなかったので、少々驚いてはいますが」
言いながら、セレスティアはペットに魔法で話しかけ、クローゼットの中で寝てもらうことにする。ふかふかのベッドがないことで少し
反抗されたものの、クッション代わりに枕を提供することで話が付いた。
枕を引きずり、ペットがクローゼットの中に消えると、セレスティアはベッドから降りようとした。しかしその前に、既にドワーフが
ベッドから降り、こちらに移ってきていた。
1347/13 ◆BEO9EFkUEQ :2011/09/03(土) 00:10:32.42 ID:fxoXWXO1
ぼふっと、セレスティアの隣に腰を下ろす。唐突な上に経験もないため、セレスティアはそんな彼女に手を出しあぐねていた。
何の感情も読み取れない目で、ドワーフはセレスティアをじっと見つめている。どうしようか迷った挙句、セレスティアはドワーフを
そっと抱き寄せてみた。だが、身動きが取れなくなることを警戒したのか、ドワーフは胸を押し返してきた。
さほど豊富ではない知識を掻き集め、ならばと耳に手を伸ばす。毛並みに沿うようにゆっくりと撫でてやると、ドワーフはパタパタと
耳を動かす。
「これはどうです?」
「ん、ちょっとくすぐったい」
「気持ちよくはないですか?」
「……どうだろ。変な感じするけど、よくわかんない」
とは言うものの、単にその感覚を快感と捉えられないだけらしく、ドワーフの呼吸は僅かながらも荒くなり、触れている耳も少しずつ
熱くなってきている。
別の場所も試そうと、セレスティアはそのまま手を滑らせ、ドワーフの胸に触れようとした。
直後、ドワーフは彼の手を打ち払い、ナイフを突き付けていた。セレスティアは動かず、手を上げて抵抗の意思はないことを示す。
「何のつもり」
「ただ胸を触ろうとしただけですよ。驚かせてしまいましたか?」
「じゃあ一言言ってよ。お前、私がナイフ持ってるの知ってるんでしょ」
「確かに知ってますが、まさかこんな時に奪うような真似はしませんよ。第一、わたくしはあなたに危害を加えるつもりもありませんし」
「……わかった。じゃあセレスティア、全部脱いで」
本当にわかってくれたのかと、セレスティアは思わず問い質そうとしたが、あまり苛つかせるのも得策ではないと思い直し、大人しく
上着を脱ぎにかかる。ドワーフはそれが終わるまで、ナイフを放さずにじっと見守っていた。
見つめられていると、さすがに恥ずかしいものがあり、セレスティアは翼で体を隠しつつ何とか下着まで脱ぎ終えた。
それを確認すると、ドワーフはようやくナイフを放し、彼の視線などまるで気にせず、着ている物を一気に脱ぎ捨てた。
「ご、豪快ですねえ」
「どうせ最後は裸になるでしょ」
「まあ、そうですね。では、胸の方を触ってもいいですか?」
「ん」
そっと、胸に手を伸ばす。毛に埋もれてよくは見えないが、触れてみれば意外と柔らかい感触がある。同時に、ドワーフが少し息を吐く。
少し押してみると、硬い筋肉の感触。その表面についた柔らかい部分を捏ねるように手を動かすと、ドワーフの耳と尻尾がピクンと動いた。
「んっ……んっ!」
「あ、ドワーフさん大丈夫ですか?」
「く、くすぐったい……けど、なんか、悪くない感じ…」
「ああ、痛いわけじゃないんですね、よかったです。では、もう少し続けてみますか」
ゆっくりと円を描くように動かし、時折掴むように刺激する。その一つ一つに、ドワーフは尻尾と耳と吐息で反応し、時には身を捩るように
全身が反応する。そんな彼女の姿に、セレスティアもだんだんと行為に力が入るようになっていく。
その時、つい力が入りすぎ、指が滑って彼女の乳首を撫でた。途端に、ドワーフの体がビクッと震えた。
「んあっ!?」
「あっ……すみません、大丈夫ですか?」
1358/13 ◆BEO9EFkUEQ :2011/09/03(土) 00:11:19.71 ID:fxoXWXO1
慌ててセレスティアが謝ると、ドワーフは震える呼吸を何とか整えつつ、熱っぽい目で彼を見つめた。
「い、今の、ちょっとよかった……そっちもして」
「あ、そうですか?では…」
一度胸を撫で、毛に埋もれた乳首の位置を確認すると、それを指でそっと撫でる。
「んくっ!ん、んんんっ…!」
気持ちいいからか、それともくすぐったいからか、ドワーフは身を捩りそうなのを必死に堪え、腕も半端に上がった格好で固まっている。
初めのうちこそぎこちない手つきだったセレスティアも、自身の行為でドワーフがしっかりと反応するため、少しずつ固さがとれていく。
つんと尖り始めた乳首の先端を、くすぐるように指の腹で撫でる。瞬間、ドワーフの手がセレスティアの腕を捕えた。
「くっ、く、くすぐったいっ…!」
「あら、気持ちよくはなかったですか?」
「……さっきから、その、気持ちいいって感じはないけど……でもやめないで」
「そうですか。なら、もう少し色々試しますか?」
そう言うと、セレスティアはそっと顔を近づけ、ドワーフの首を抱いた。が、ドワーフはその頬に手を押し当て、グッと押し返した。
「……キスは嫌ですか」
「ん」
視界が奪われることと、拘束されることを好まなかったのだろう。相変わらずの警戒心に、セレスティアは内心呆れていた。
「では、こちらを試しますか」
ならばと、手で胸の毛を掻き分け、小さな乳首を探し出すと、セレスティアはそれに吸いついた。ビクンとドワーフの体が震え、同時に
首筋に熱い吐息が降ってきた。
「はうっ…!く、あっ……そ、それ変な感じっ……はっ、はふっ…!」
やはり快感とは認識できていないらしいが、それでも本能的に求めるのだろう。ドワーフはセレスティアの頭を抱き、ぎゅうっと胸に
押し付けている。
それを不快とも思わず、セレスティアは口での愛撫を続ける。乳首を吸い上げ、それによって尖った周囲をゆっくりと舌でなぞる。
力が入らなくなってきたのか、いつしかドワーフは後ろに片手をつき、セレスティアは彼女にのしかかるような体勢になっている。
ふと見ると、ドワーフは太股を擦り合わせ、もじもじと体を動かしている。それに気付くと、セレスティアは片手を腹からそっと滑らせる。
「やうっ……そ、それもくすぐった……んんっ!」
太股から内股を通り、宥めるように何度かそこを撫でると、股間へと滑りこませる。
「うあっ!?やっ、なんか、ダメっ!」
途端に、ドワーフは太股をぎゅっと閉じ、セレスティアの手を挟みこんでしまった。
その手に感じる、べっとりと濡れた毛の感触。微かに自由の利く指を動かせば、じっとりと熱い裂け目に指が触れる。
「あっ!ちょっ……指、ダメっ…!それ、すごく変っ…!」
「ドワーフさん。股間、大変なことになってるんですが」
「え…?」
言われて初めて気づいたらしく、ドワーフはセレスティアの手を解放すると、自分でそこに触れてみた。
「……べちょべちょ。何だろ、これ。こんなの初めて」
自身の指に付いた愛液を、ドワーフは物珍しげに眺めている。指を開けばねっとりと糸を引き、擦り合わせればくちくちと音を立てる
それを、自分が溢れさせているとは信じられないらしい。
1369/13 ◆BEO9EFkUEQ :2011/09/03(土) 00:12:22.13 ID:fxoXWXO1
そんな光景を、セレスティアは黙って見つめていたが、彼の方も準備はすっかり整っていた。体毛に覆われてよく見えないとはいえ、
ドワーフは裸に違いなく、しかも自身の行為によって股間を濡らしているのだ。むしろ興奮するなと言う方が無理な話だろう。
「その、ドワーフさん。見たところ、準備もできているようですし、もう入れても…?」
「ん、入れるの。うん……それ、入れるの?」
ドワーフはセレスティアのモノをじっと見つめ、続いて自分の股間を見下ろし、再び視線を戻す。
「入るのかな、それ……でも、大きい方が気持ちいいんだっけ?痛くないのかな……痛くしないでよ?」
恐らくは不安なのだろう。珍しく口数の多いドワーフを、セレスティアは優しく撫でてやる。
「最初は痛いと聞きますので、まったく痛くないようには難しいと思います。ですが、なるべく痛くないようには努力しますよ」
「ん、そうして。じゃあ……うん、いいよ」
さりげなくナイフの位置を確認してから、ドワーフは仰向けに寝転び、僅かに足を開いた。その間に体を割り込ませると、セレスティアは
はやる心を押さえつつ、慎重に彼女の秘部へとあてがう。
「では、い……いきますよ…」
「ん」
セレスティアが腰を突き出し、先端がドワーフの中に入り込む。同時に、ドワーフはピクンと体を震わせ、僅かに眉を寄せる。
その間にもセレスティアはゆっくりと腰を進めていく。それに従い、ドワーフの手には力が入り、今ではシーツをぎゅっと握りしめている。
やがて半分ほど入った時、セレスティアは引っかかりのようなものを感じた。だがドワーフを見る限り、問題はなさそうだと判断し、
半ば強引に突き入れる。
「いぃぃったたたたたっ!!!痛い痛い痛いやめて無理もう入れないでっ!!!」
途端に、セレスティアのモノに肉を押し分けるような感触が伝わり、同時にドワーフが大声で叫んだ。
「す、すみません大丈夫ですか!?」
「うるさい大丈夫じゃない!!痛い!!抜いて!!抜けっ!!」
ドワーフはセレスティアの胸を押し返し、しかし足ではがっちりとセレスティアを捕えている。それでもあまりの痛がりように、
セレスティアが何とか腰を引くと、ドワーフは再び悲鳴を上げた。
「痛ああぁぁい!!!痛い馬鹿やめて動くなぁー!!!」
「えっ……ど、どうしろと…!?」
「いい!!やっぱり抜かなくていい!!だから動かないで、痛いんだからぁ!!」
セレスティアが動きを止めると、ドワーフは苦痛に顔を歪めつつ、何とか呼吸を整えようとする。荒く浅かった呼吸が、少しずつ深く
落ち着いたものになっていき、やがていつもより少し荒い程度にまでなると、ドワーフは涙ぐんだ目でセレスティアをキッと睨みつけた。
「……ナイフで刺された時より痛い!!」
「そ、そう言われましても…」
「痛くしないでって言ったでしょ!?全然気持ちよくないし、すごく痛いんだけど!?」
「す、すみません。ですが、わたくしも初めてなもので……え〜っと、胸とかは気持ちよかったんですよね?」
無理矢理に話を変えると、ドワーフの表情は少しだけ和らいだ。
「気持ちいいって感じはなかったけど、今よりはよっぽどよかった」
「でしたら、痛みが治まるまでそちらの続きをしましょうか」
「治まるまでって…!んっ……ん、うっ…!」
反抗される前にドワーフの胸に手を伸ばし、優しく揉みしだく。その手を押さえようとしていたドワーフの腕が止まり、耳がビクッと動く。
13710/13 ◆BEO9EFkUEQ :2011/09/03(土) 00:13:09.81 ID:fxoXWXO1
「どうです?少しは良くなりましたか?」
「っ……ま、まだ痛い、けど……悪く、ない…!」
快感で気が紛れたのか、ドワーフの声から怒りの色が抜けていく。セレスティアとしては腰を動かしたいのだが、下手をすれば殺される
危険もあるため、その衝動をグッと堪える。
乳首の反応が良かったことを思い出し、胸を捏ねつつ指先でくすぐってみる。途端にドワーフの体が仰け反り、セレスティアのモノが
僅かに深く入り込む。
「はうっ…!いたたっ……あ、ダメ、やめないで…!」
「気に入ってもらえたようですね」
痛みにも少し慣れてきたのか、ドワーフは体が動いてしまうにもかかわらず、胸への愛撫をねだる。セレスティアとしても、彼女の
不規則な動きや、痛みか快感のいずれかによる不意の締め付けは非常に気持ちよく、その言葉に大人しく従う。
しばらくの間、セレスティアはドワーフの胸を優しく愛撫し続けていた。やがて、ドワーフがそれを止めるようにセレスティアの胸を押す。
「も、もうだいぶ痛くなくなった。だから、もう抜いて」
「あ、そうですか?ですけど…」
歯切れの悪いセレスティアに、ドワーフの表情が僅かながらも険しくなった。
「何」
「あの、既に根元まで入ってしまってるんですが」
「え?」
言われて、ドワーフは視線を落とした。どうやら無意識に体を動かしているうち、少しずつ奥へと入っていたようで、今ではすっかり
お互いの腰が密着している。体を起して結合部を見れば、セレスティアのモノが入っているのがはっきりと見て取れる。
「……刺さってる」
それを見ながら、ドワーフがぽつんと呟く。しかし、そこに感慨などといった人間らしい表情を読み取ることはできなかった。
「いつの間に入ったんだろ」
「わたくしもあまり、覚えてないのですが……気持ちよければ、痛みは割とないみたいですね」
「……ん」
「動いてみても、いいですか?」
「ダメ、痛い」
挿入時の痛みの印象が強いらしく、ドワーフはにべもなく断る。
「はぁ……そうですか」
「んっ!?」
セレスティアが嘆息した瞬間、ドワーフが小さな声を上げた。少し動いてしまったかとセレスティアは焦ったが、ドワーフは意外にも
期待するような目で見上げてきた。
13811/13 ◆BEO9EFkUEQ :2011/09/03(土) 00:14:03.12 ID:fxoXWXO1
「い、今、奥の方ぐぅってきたの、ちょっとよかった。奥、もうちょっとぐりぐりして」
「え?えっと……こう、ですか?」
セレスティアは強く腰を押し付け、自身のモノをドワーフの子宮口に押しつけるように腰を動かす。
「あっ!そ、それっ……それ、いい…!もっと、もっとしてっ…!」
あまり強くは動けないものの、経験のないセレスティアにとってはそれでも十分な刺激を伴っていた。
ドワーフと腰を強く密着させ、軽く前後に揺すれば、ぬるぬるになった膣内の感触がはっきりと感じられ、左右に動かせば鈴口付近に
子宮口が当たり、同時にドワーフが熱い吐息を吐く。それに伴い、中がぎゅっと締め付けられ、彼女の体温をより強く感じられる。
それをじっくりと楽しむ余裕もなく、数分もしないうちにセレスティアが苦しげな声を上げた。
「くっ……ド、ドワーフさんっ、もう出そうです…!」
「出る…?あ、出すんだ……じゃあ、出して。そのまま中で」
「ドワーフさんっ…!く、ああぁ!!」
一際強く腰を押し付け、セレスティアはドワーフの一番深いところで精を放った。精液が流れ込む度に、ドワーフの膣内がきゅっと
締まり、それはまるで精液を絞り取ろうとするかのような動きだった。
「あっ、じわってきた…!こ、これいい……これ、すごくいい…!」
ドワーフもその感覚が気に入ったらしく、また初めてはっきりとした快感を覚えたようだった。射精が終わり、やがてセレスティアが
大きく息をつくと、ドワーフは期待に満ちた目で彼を見上げた。
「今の、よかった。もう一回して」
「え、いや……すぐには出ませんよ、さすがに」
「いいから出してよ」
「どうしてもと言うなら、努力しますが……ですが、今度はたぶん、大きく腰動かさないと出ませんよ?」
そう言うと、ドワーフの表情が変わった。
「ん、そうなの……じゃあ、いいや。痛いのはやだ」
「そんなに気持ちよかったんですか?」
「ん〜。ぐりぐりするのと、最後のは気持ちよかった。他は……くすぐったかった」
「そうですか……あ、抜いても大丈夫ですか?」
「うん……抜いて」
あまり痛がらせないように、セレスティアはゆっくりと腰を引く。しかし、ドワーフは特に痛がりもせず、抜け出ていく彼のモノを
興味深げに眺めていた。
完全に抜け出ると、愛液と精液の混じった液体がドロッと溢れた。少し出血もしたらしく、ところどころ赤味が混じっている。
それをじっと見ていたドワーフだが、セレスティアが声をかけようとすると先に口を開いた。
「じゃ、体洗ってくる」
「え?あ、はい」
自然な動作でナイフを回収し、ドワーフはひょいと立ちあがるとシャワーへ向かう。しかし痛みがないわけでもないらしく、その途中で
少し足元がふらついていた。
13912/13 ◆BEO9EFkUEQ :2011/09/03(土) 00:14:59.96 ID:fxoXWXO1
汚れた部分を洗っただけなのか、ドワーフは思いのほか早くシャワーを浴び終えた。そしてセレスティアに構うことなく、服を回収すると
自分のベッドに戻る。
「痛かったけど、初めては特に痛いんだっけ?」
「あ、ええ。そう聞きますね」
「じゃ、一週間くらいして傷治ったら、またして。おやすみ」
まだ体毛は湿っていると思われるのだが、ドワーフは構うことなくベッドに寝転がった。それを半ば呆れて見つめつつ、セレスティアも
シャワーを浴びることにする。余韻などは、もはやほとんど消え失せていた。
体を拭き、服を着直し、ベッドに戻る。例によって、ドワーフの寝息は聞こえていない。
「それでは、おやすみなさい」
これまたいつも通りに、独り言のように言って横になる。さすがに疲れているせいか、セレスティアの意識はあっという間に落ちていく。
そして、彼の寝息が聞こえ始めると、僅か一分も経たないうちに部屋の寝息は二つに増えているのだった。

初めてドワーフと関わった者は、ほとんどが怒りや恐れ、苛立ちや驚きを覚える。それは常識がまったく通用しないということから、
どう彼女と接していいのかわからないというのが一因である。
そんな相手に、無理に常識を通そうとすれば、それは彼女からの不信や怒りを買い、結果として事件にも発展しかねないのだが、
彼等にとって幸運だったのは、彼女の扱いをセレスティアに丸投げするという、やや薄情ながらも最も賢い手段がとれたことだった。
「ドワーフさん、お疲れ様です。ですが、いくら邪魔だからと言って仲間を巻き込むような攻撃をしてはいけませんよ」
「巻き込まれる方が悪い」
「そうとも言えますが、周囲がそう思わなかった場合、結果としてあなたがドがつくほど不利な立場に追い込まれてしまいますよ。
それを防ぐためにも、今後はもう少し、巻き込まないような攻撃を心がけてくれませんか」
「……損になるのは嫌だから、考えておく」
「えー、いいじゃん殺しちゃってもー。巻き込まれる方が悪いんだしさ、ひひひ!」
「お嬢ちゃんなあ……後衛と前衛は、事情が違うんだからな?」
「そんなの知らないよ。フェアは前衛じゃないもんねーだ」
最近の彼等の感想としては、セレスティアという優秀なお目付役の付いているドワーフよりも、ドワーフほど重大ではないものの、
小さく人を苛つかせるフェアリーの方が厄介な人物だというように変わってきている。
「まったく……ドワーフより君の方が、よっぽど聞き分けない気がするよ…」
「エル達の言うこと聞かなきゃいけない理由なんてないもーんだ。フェアのこと、無理矢理止めれるなら止めてもいいんだよー?」
「それは最終手段だろう……大人しく言ってるうちにやめてくれよ、頼むから」
「ひひ、そんな度胸もないだけでしょー?言い訳なんかしなくていいからねー?」
「……ぼくの『友達』に止めてもらう前には、ほんとやめてくれよ?」
「エルフ、相手にしない方がいい。こっちがイラつくだけだ」
フェルパーの言葉に、エルフは大人しく従うことにする。すると今度は、フェアリーの標的がフェルパーへと移っていく。
終わることのないやりとりを見ながら、バハムーンは溜め息混じりにセレスティアへ話しかけた。
「お前、あいつとドワーフとに囲まれて、よく平気でいられたよな…」
その言葉に、セレスティアは笑って答える。
14013/13 ◆BEO9EFkUEQ :2011/09/03(土) 00:15:56.29 ID:fxoXWXO1
「どちらも、神がお許しになっていますから。であれば、わたくしが彼女達の行為を、無理に止める権利もないでしょう?」
「……そうか」
神が許している、の一言で全てを許してしまえるセレスティアの考え方が、この時ばかりはバハムーンには羨ましかった。
「俺は正直、神に祈りてえよ。この先も、平穏無事でいられますようにってな」
「はは……そこはまあ、わたくし達自身でも、努力していきましょう」
細かい部分では異常な点が目立つとはいえ、やはりセレスティアは常識のある人物であり、また穏やかな言動をするため、彼等にとって
貴重な相談役となっていた。
何とか無事にその日も過ごし、夕食を取って部屋に帰る。そして消灯間近になった頃、ドワーフが隣のセレスティアに声を掛けた。
「セレスティアさん?まさか、まだ寝てないよね?」
「ええ……ふぁ……寝るところでしたが、何でしょう…?」
「忘れたの。あれから今日で一週間だけど」
言いながら、ドワーフは服を脱ぎ、セレスティアのベッドにのそりと乗ってくる。しかしやはり、ナイフはきちんと携帯している。
「あ、ああ……そうでしたね。ということは、つまり、その…?」
「今日こそいっぱい、気持ちよくして」
ドワーフの身勝手な行動にも、セレスティアはしっかりと応え、彼女を気遣うことを忘れない。それを知っているからこそ、彼女は
彼の言うことをある程度素直に聞き入れ、また自由に振る舞う。普通の形とは違うが、二人の間には信頼関係がしっかりと生まれていた。
いわゆる『信頼』と比べれば、それはあまりにささやか過ぎるような、小さなものだろう。しかし、本来生まれるはずのない者に芽生えた
それは、どんな信頼にも勝るほど大切なものだった。
最も手に入れにくいものを、実は始まりと共に手に入れていたことを彼等が知るのは、まだまだ先の話である。
141 ◆BEO9EFkUEQ :2011/09/03(土) 00:17:17.16 ID:fxoXWXO1
以上、投下終了

それではこの辺で
142名無しさん@ピンキー:2011/09/03(土) 02:51:55.21 ID:BG7GyDYg
一番乗りGJ!
今回も素晴らしかったです!
3DSやりてぇー!
14310-133:2011/09/03(土) 04:16:38.06 ID:JgtXet8X
呼ばれてもないのに帰ってまいりました。
BEO9EFkUEQさんは相変わらずの暴れぶりで、さらに新手のマルメンライトさん
も急進撃し、ディモレアさん家の人まで戻ってきた……。
ダンジョンレベル上がりすぎです。
……それでも私は飛び込む。一ザコとして。
書き上がったのはドワーフ♂×セレスティア♀です。玉さぁ〜い♪
14410-133:2011/09/03(土) 04:20:53.93 ID:JgtXet8X
 ドワーフは、静かにカーテンを開けた。朝の光がベッドを照らす。
 横たわったセレスティアの体は、光を受けて白く輝いているようだった。
 血の気を失った肌は、もはや石膏像のようでさえある。
 上から交互に膨らんだりすぼまったりする曲線は、彫刻家が作品に託す理想そのもの、
と言ってさえ良さそうだった。
 横たわる白い体の周りには、彼女のものだった羽が散らばっている。
 薄暗い部屋の中、差し込む朝日に照らされたベッドは、さながら天使を納めた棺のよう
だった。
 しばしの(実際にはほんの僅かな)間、ドワーフはその裸体に見とれた。
 出来ることなら、この身体を何らかの手段でこのまま保存し、どこか秘密の場所に、船
首像のごとく飾りたい。
 そんな冒涜的な想念が、彼の脳裏をよぎる。
 だが、彼は司祭だった。これからするべきこともわかっている。
 少しの躊躇の後、彼はセレスティアの体に触れた。
 躊躇したのは、その亡骸があまりに美しく、神聖なものに見えたからだ。
 彼は死体がまだ硬直していないことを確認すると、用意されていた屍衣を取り出した。
 生前のセレスティアが、自ら仕立てたものだった。
 80年。セレスティアの天命としては、あまりに短い。
 若くして死出の準備をしなければならないというのは、一体どんな心境だったのか。
14510-133:2011/09/03(土) 04:25:19.64 ID:JgtXet8X
 時刻は0時を回っている。
 暗闇に閉ざされた部屋を、数本のろうそくが怪しく照らしている。
 ドワーフの司祭は、ベッドの脇に椅子を置いて座っている。
 彼の見下ろすベッドの中では、セレスティアの女性が横たわっている。
 お世辞にも暖かいといえない部屋で、汗にまみれて胸を大きく上下している。
 あまりに短い間隔で大きな呼吸を続ける女性を、毛むくじゃらの司祭は、沈痛な面持ち
で見下ろしていた。
 彼女の寿命を1年でも延ばす手立ては、最早求めようもなかった。
 いや、今は一分でも縮めることこそが、むしろ慈悲だろう。
「んっ、ん、はぁ、……んあ、あぁぁぁ……」
 鎮痛剤も、最早焼け石に水のようだ。
 女の細い喉から、魂を握りつぶされたような呻きが上がる。
 その度に、司祭の手の中の彼女の手が、汗を噴き出しながら握り返す。
 しかしその細い指にこめられる力は、あまりに小さい。
 ドワーフが握ってやらなければ、重そうに滑り落ちてしまうだろう。
「う、く、うぅん、はぁ、はぁ……、ぐ、うぁ……あぁぁ、あ……」
 内から湧き出す苦痛に、女が身をよじる。
 その様を見下ろしながら、ドワーフは自分の無力に締め付けられる。
14610-133:2011/09/03(土) 04:27:26.61 ID:JgtXet8X
 出会ってから数十年。
 一体何度、このセレスティアのベッドの傍で、こうしていただろう。
 ベッドの中で彼女が呻き、悶えるたびに、首の十字架が重くなっていく。
 主よ、何故、彼女を苦痛の中に捨て置かれるのです。
 生まれたときから、彼女は不治の病と共にあったという。
 彼女の白く細い体は、いつ来るかわからない、原因不明の苦痛と隣りあわせにあった。
 にもかかわらず、この女は一日も休むことなく主を讃え、その細い指の届く全ての人に
対し、惜しみない笑顔と奉仕を注ぎ続けた。
 その肉体がいつ果てるか知れずとも、その翼は見せかけの飾りではなかった。
 あまりにはかない、現世の天使。
 本来憐れまれるべき身でありながら、彼女は己がないかのように、人に仕え続けた。
 その優しさに触れた人が、彼女に悪意を向けることなどなかった。
 一体何が、彼女をそう振舞わせるのか。
14710-133:2011/09/03(土) 04:30:42.07 ID:JgtXet8X
「あぁぁぁっ、はぁ……。ん、んふぅ、……う、んんん……」
 主よ、いつまで苦しめるのです。
 一体何のために、彼女はこんな責めを受けるのですか。
 彼女ほどあなたの御教えを讃え、仕えた人を、私は知らない。
 そしてこれからも、知ることはないだろう。
 だが、その勤行も苦行も、今夜で終わりだ。
 夜明け以降、ドワーフが彼女の呻きを聞くことはないだろう。
 80年も、よく耐えたものだ。
 その忍従も、ようやく報われる。
 やがて、この声と震えが止まり、その肉体が熱を失ったとき。
 彼女はようやく、永遠の安息を約束されるだろう。
 天の王国の門も、まさか彼女を拒みはすまい。
 ドワーフはセレスティアの震える手を握りながら、そう言い聞かせ続けた。
14810-133:2011/09/03(土) 04:34:00.78 ID:JgtXet8X
――これは?
「あなたのロザリオですよ。主とあなたをつなぐものです」
――成程。まるで、飼い犬につける首輪のようですね。
「え?そ、そんな……」
――うろたえないでください。私は今日より、主の忠実な飼い犬。あなたもどうか、本物
の天使のつもりで、堂々とかけてください。
「私は、ドワーフをそんな風に見ているわけでは……。嫌な方」

 主の天使は彼の霊魂を受取りて、いと高きにまします天主の御前に捧げたまえ。
 主よ、永遠の安息を彼に与え、絶えざる光を彼の上に照らしたまえ。
 彼の安らかに憩わんことを。主、憐れみたまえ。

「すみません……。いつも、発作のたびに、看病していただいて……」
――飼い犬の勤めを果たしているだけですよ。あなたは主に仕える天使で、私は犬。どっ
ちが上か、一目瞭然でしょう。
「変なこと言わないでください。あなたはドワーフ。れっきとした人でしょう?」
――人ですか。人の身で天使の夜伽とは、光栄です。
「私はセレスティア。天使の振りした、ただの人です。私とあなたは、対等でしょう?対
等な方がよくしてくだされば、礼をしないと」
――私と貴女が対等とは、また光栄な話です。……しかし人の分際で天使の“振り”とは。
真面目な顔して、恐れ多いことを。
「……嫌な方」
14910-133:2011/09/03(土) 04:36:51.19 ID:JgtXet8X
 死体に着せる衣は、本来近親者によって着せるべきだが、セレスティアには身寄りがな
いようなので、ドワーフが着せてやる。
 何十年来もの長い付き合いだ。互いの信頼もあった。主もお許しくださるだろう。
 マネキンのように冷たい体を、用意してあったもので覆っていく。
 “神に仕えるのが勿体無い体”と、下品な誰かがからかっていた。
 しかし、故人が自ら用立てた死出の旅装は、そんな妖艶な肉体を、清楚にカムフラージ
ュしていた。
 愛用していたロザリオを首にかけてやり、両手を胸の下で組む。
 最後に、羽を整えた翼を、前に閉じるように畳んでやる。
 少し後ずさって、見下ろしてみた。ドワーフはため息をついた。
 眠る天使、とでも題して、絵に描けないだろうか。
 そんなことを思い、そんな自分に嘆息した。
15010-133:2011/09/03(土) 04:39:43.27 ID:JgtXet8X
「あの……、どうか、なさいましたか?」
 心配そうに身をかがめ、顔を覗き込んでくるセレスティアの女。
 ロザリオを下げている。信徒か。この教会の人だろうか。
――どうかしてるように見えます?
 投げやりな口調で、ドワーフはそう答えた。
「はい。なんだか、とっても疲れているように見えます」
 上辺だけだとしても、誰かに心配されたのが嬉しかった。
 あるいは、それを期待して、人気のない時間の教会に入ってみたのかもしれない。
――疲れてる?まさか。仕事も趣味もない人間が、何に疲れるんです。
 女は、少し顔をゆがめて、目を泳がせた。言うべき言葉に迷っているのだろう。
 ドワーフは内心自嘲した。会う人会う人、こんな顔をさせているから、今の身分になっ
てしまったのだ。
 何一つ定まらないまま、生意気な虚勢を張るばかり。
 そんな自分が嫌になって、なのに別の自分にもなれなくて。
 何だか全てがどうでも良くなってきて、半ば自棄で教会などに入ってみた。
 自分には縁がないと思っていた場所に、自分は一体何を求めているのか。
15110-133:2011/09/03(土) 04:52:29.16 ID:JgtXet8X
 確かに、ドワーフは疲れていたのかもしれない。
 社会とか世間とか世の中とか言う、ごちゃごちゃした、収拾のつかない世界に。
 その中に、自分のいていい場所を作ることの難しさに。
 だから、セレスティアが苦し紛れに食事に誘うのを拒まなかったし、その後リビングで、
愚痴や泣き言を延々と聞かせてしまった。
 そのまま泊まってしまい、朝食までいただきながら気づいた。
 自分は、誰かに甘えたかったのだと。
 別れ際、ドワーフはセレスティアに尋ねた。また来ていいかと。
 セレスティアは笑顔で答えた。いつでもどうぞ、と。
 気づけば、ドワーフはやけに体が軽くなったような気になっていた。
 気を良くしたドワーフは、信徒でもないのに、その後もこの教会によく顔を出した。
 磔の男の伝説を聞くためではない。親切な女の、不安げな心遣いに甘えたかったからだ。
15210-133:2011/09/03(土) 04:55:17.36 ID:JgtXet8X
 数十年前、ある夫婦が娘に毒殺された。
 治安維持部隊の捜査によると、殺された夫婦は、手の付けようのない病に犯された娘を
忌み嫌い、虐待を繰り返していたという。

  天にまします我らの父よ。願わくば、御名の尊ばれんことを。御国の来たらんことを。
  御旨の天に行わるるごとく、地にも行われんことを。

 得体の知れない病気は、往々にして感染を恐れられる。少年院を出所した女も、その御
多分にもれなかった。
 不定期に体が痛み、呻きうずくまるたびに、気味悪がられ、遠ざけられる。
 そんな彼女に、いつける場所などなかった。

  我らの日用の糧を、今日我らに与えたまえ。
  我らが人に許すごとく、我らの罪を許したまえ。
  我らを試みに引きたまわざれ。我らを悪より救いたまえ。アーメン。
15310-133:2011/09/03(土) 04:58:47.75 ID:JgtXet8X
 疎まれるものが人を恨み、世を恨むのは必然だ。彼女の翼が黒く染まるまでに、さして
時間はかからなかった。
 少しでも蔑まれたと思うと、突如鬼のごとく激昂し、相手を容赦なく痛めつけ、懐を強
奪して去っていく。
 いつしか彼女は、治安の悪い一帯でも、その短気さで恐れられる犯罪者となっていた。

  願わくは、父と子と聖霊とに、栄えあらんことを。
  初めにありしごとく、今もいつも、世々に至るまで。アーメン。

 そんなある日、ついに彼女は逮捕された。連行されていく彼女は、まるで何かを悔いる
ように涙を流し、大人しく兵に従っていたという。

  ああ、我らの罪を許したまえ。我らを地獄の火より守りたまえ。
  また全ての霊魂、殊に主の御憐れみを最も必要とする霊魂を、天国に導きたまえ。
15410-133:2011/09/03(土) 05:01:25.88 ID:JgtXet8X
 一組の男女が、写真の中で寄り添うように並んでいる。
 首から十字を下げたディアボロスの男の腕に、セレスティアが腕をからませ、擦り寄っ
ている。灰色の翼が、男の背を抱くように回されている。
「生まれつきの悪人などいません。全ての赤ちゃんは、何者でもないのですから。
 悪人には、悪人になる理由があります。荒っぽいやり方ですが、彼らは、自分の怒りの、
憎しみの理由を、知ってもらいたいのです」
 セレスティアとドワーフはテーブルに向かい合って座り、熱いお茶と、置かれた写真を
挟んでいる。
「撃たれても、罵られても、彼は私を案じていました。私は苦しんでいる人の助けになり
たい。あなたの望むことを教えてください。どうにかしてかなえましょう、と。
 私は、馴れ馴れしい、余計なお世話だと怒り狂い、血を流す彼を蹴りつけました。それ
でも彼は、私に憎しみを向けようとはしませんでした。
 怒りと暴力は他人を傷つけ、あなたに向けられる善意を退け、憎悪を呼び集めます。自
分で救いの機会を遠ざけないでください。
 ご自愛ください。あなたはどう見ても、今の自分に納得しているように見えません。
 ……そう言って、彼は無抵抗で……」
15510-133:2011/09/03(土) 05:03:39.11 ID:JgtXet8X
――この牧師さんは、今……
「召されましたよ」
 セレスティアは、口元に皮肉げな笑みを浮かべた。
「私から受けた傷から、悪いウィルスが入ったようで。出所して、再会してから、数年でした」
 セレスティアはカップを引き寄せた。しかしそれを見下ろしても、持ち上げて飲むこと
はしなかった。湯気が彼女の顔をぼかしている。
「自分の救い主を、自分で殺したんですよ。私は」

――しかしあなたは、自分を励ましてくれました。あなたがあの時声をかけてくれなけれ
ば、自分は、何かろくでもないことをしでかしていたでしょう。
「何か出来ると思いたかったんですよ。ごくつぶしだった私でも、あの人のように、誰か
を救えないかと。他人のために自分を犠牲にする覚悟もないくせに」
 自嘲的な言葉を切って、セレスティアは顔を上げた。そして言葉を失った。
 ドワーフが椅子の上に立ち、机に両手と額を突いていたからだ。
15610-133:2011/09/03(土) 05:06:14.96 ID:JgtXet8X
 おれはただ、いつも誰かに気にかけてもらいたかっただけだ。
 主よ、あんたじゃない。この世に生きている、俺の手の届くところにいる人間にだ。
 誰か一人でもいい。俺の身を損得抜きで案じてくれるような人がいれば、俺はまだ、こ
の世にい続けられる。
 だから、セレスティアに心配されたとき、この上なく嬉しかった。
 そして、出来ればずっと心配されたいと思った。そのためには、こっちもあの人のため
になることだ。
 愛されたければ愛せよ。それがこの世の理だろう?
 俺たちの利害は一致していた。セレスティアは、恩人を失った寂しさを。俺は、誰かに
常に認められていたい欲求を。互いに補完できるかもしれない。

 垂れた頭の上から、セレスティアの厳粛な声が聞こえる。
「***よ。父と、子と、聖霊の御名によって、あなたを洗います」
 宣告の後、思ったほど冷たくない、ぬるいお湯の混じった水が、ドワーフの頭を濡らした。
15710-133:2011/09/03(土) 05:08:35.40 ID:JgtXet8X
「長い、付き合いでしたね」
 ひとまず落ち着いたセレスティアが、ベッドの中から力ない声を投げかけてくる。
「二十年以上も、ずっと……」
 目が潤んでいるのは、熱のせいか。
「あなたには、いつも、世話をかけてばかりで……」

「何も、思わないのですか?」
 汗をかいた裸の背中を拭かれながら、セレスティアはドワーフに尋ねてきた。
 心なしか、その声は沈んでいるように聞こえる。
「今まで何度も、こうしてもらいましたが」
 ドワーフがセレスティアの体を仰向けにした。晒される肌から目を逸らし、手探りで濡
れた肌を拭く。
「はぁ……、ドワさん……」
 セレスティアの声が揺らいでいる。そう思ったドワーフは、彼女を拭く手を速めた。
「ふぁぁん!」
 タオルが躊躇いがちに乳房をなでると、セレスティアは身を震わせ、甲高い声を上げた。
「セレスさん……」
 ドワーフはタオルから手を離し、咎めるようにセレスティアの名を呼んだ。
「ずっと、一緒だったのに……」
 視界の外で、セレスティアの手が弱々しく触れるのを、ドワーフは感じていた。
15810-133:2011/09/03(土) 05:10:36.14 ID:JgtXet8X
「……自分で楽園への道を遠ざけるつもりですか」
 ドワーフはそう言いながら、努めて冷静を装った。
「くだらないことを言うんですね……」
 そう返したセレスティアの声は、また力を失っていた。
「私は主の飼い犬です。下らなくとも、正しい勤めを果たします」
 自分は主の飼い犬。それはドワーフにとって、理性を働かせるための呪文だった。
「本気で言ってるんですか?」
 ドワーフは答えられなかった。自分でも、安っぽいことを言ったと思ったからだ。
「私、あなたが好きなのに」
 ドワーフはつい、セレスティアの方に目を向けてしまった。
 そして息を呑んだ。裸の上半身が、ろうそくの揺らめく灯りに照らされている。
 上手く拭ききれていない汗が、その灯りを反射し、見とれずにいられない体を光らせている。
「主に仕えるものは、苦しんで逝かなければならないの?」
 潤んだ目が、ドワーフを見上げている。
「私を救おうと、少しでも思ってくれるなら……」
 ドワーフの腰に触れた手が、力なく服の裾を掴む。
「死ぬまで、抱いてください」
15910-133:2011/09/03(土) 05:13:58.77 ID:JgtXet8X
 何をしたいわけでもなかった。
 わけもわからず生まれさせられ、わけもわからず生きながらえてきた。
 人生など、何かの弾みで終わってしまうなら、それでもいいとさえ思っていた。
 あの日の拙い励ましを受けるまでは。
 その過去がどうであろうと、彼にとって彼女は天使だった。大げさでも冗談でもない。
 彼女が自分を励ましてくれたように、彼も彼女の助けになりたかった。
 発作が辛いときに飛んでいけるようにと、警備員が持つような二枚一組の呼び出しカー
ドを渡したのが、本格的な始まりだった。
 常にどこか寂しそうで、不安そうな彼女を放っておけなかったのだ。
 野良犬でいることに嫌気が差し、彼は自らに首輪をはめた。
 それは表向きには、あの磔の男につながれている。
 だが、全知のお方はご存知だろう。彼が誰に仕える気で頭を垂れたか。
16010-133:2011/09/03(土) 05:17:38.27 ID:JgtXet8X
 全てが夢幻だったかのようだ。あれは現実だったのか。
 ドワーフの体には、疲労が残っている。季節の割には、汗の臭いが濃い。
 しかし、夜の記憶には、どこか現実味が感じられなかった。
 ベッドの中の彼女は、その身から絶えず汗を噴き出していた。
 肌は元の白さを感じさせないほどに赤く染まり、止まらない汗は体温をろくに下げられ
ていなかった。
 濡れた肌に、ドワーフの抜けた体毛がこびりついている。
 そんな体に跨り、ドワーフはセレスティアの肌をなでていた。
 指が肌に触れるたびに、セレスティアは吐息を漏らしながら体をくねらせ、敏感なとこ
ろに触れると、しゃっくりのような声を上げ、のけぞるように身を震わせた。
 末期の体を震わせ、か細い声で、喘ぐようにドワーフの名を呼んでいる。
 火傷しそうなほどに火照った肌から汗が蒸発し、上下に揺れる体から湯気が立っている。
 そんな風に見えたのは、幻覚だったか。
16110-133:2011/09/03(土) 05:19:43.12 ID:JgtXet8X
 つながったところが熱い。その熱さに、ドワーフの方も息が上がっていた。
 しかし体を止めることはなかった。いや、止まらなかったのか。
 認めるしかなかった。彼女とこうなりたかったという欲求に、彼の若い肉体は何度も苦
しめられてきた。
 狂おしいほどに求め合って、死にそうなほどに搾り出し、溢れるほどに注ぎたいと、幾
度となく体が訴えていた。
 彼女が叫んでいる。もっと激しく。もっと愛して。
 無茶を言ってくれる。ぐちゃぐちゃと突かれながら、過労死したいとでも言うのか。
 全身がつりそうだ。貴女は、二人して重なりあった亡骸を晒したいのですか。
 ……魅力的な提案ですね。
 しかしその前に、俺の意識がストップをかけそうです。
16210-133:2011/09/03(土) 05:23:17.49 ID:JgtXet8X
 既に視界がぐらついている。全てが夢幻のようだ。
 だがせめてもう一発。俺の下で、あなたがその体を反らして痙攣するのをもう一度見るまでは。
 結合部から、ドワーフの欲動がごぼごぼと溢れ、セレスティアは枯れた喉から、かすれ
た叫びを上げる。
 せわしなく動いていた翼が硬直し、胴体が断続的に、ほぼ一定のリズムで跳ねる。
 彼女の中で跳ねる彼のものと同じようなリズムだ。びくん。びくん。
 体が跳ねるたびに、松ぼっくりのように実った乳房が揺れ、汗を撒き散らしている。
 ドワーフは、一秒でも意識を留めようと躍起になっていた。
 最期の、一度きりの、それゆえに凄絶な交わりを、少しでも長引かせたかった。
16310-133:2011/09/03(土) 05:26:18.66 ID:JgtXet8X
 葬儀、埋葬には、期待していたほどの人は来なかった。
 それでも、同僚達を合わせれば、二十は下らない人が来てくれた。
 彼女を葬る義務を持たない人がこれだけ集まってくれたならば、十分満足すべきだろう。
 人が一人死んだところで、世の営みは途切れないのだから。

  主よ、世を去りたるこの霊魂を主の御手に委せ奉る
  彼が世に在りし間、弱きによりて犯したる罪を、
  大いなる御憐れみもて赦し給え
  我らの主によりて願い奉る。アーメン

 棺の中の彼女は、清楚な白い衣に身を包み、白い両手、白い両翼を組んで、敷き詰めら
れた色とりどりの花々の中に収まっている。
 天に召されるに相応しい姿だ。あの夜の痕跡を入念に消したかいがある。
 彼女の顔には、表情らしいものは見えない。僅かに憔悴のようなものが感じられるだけだ。
 末期の苦痛に耐えていたのだろうと、同僚達は好意的な見方をしている。
16410-133:2011/09/03(土) 05:29:52.10 ID:JgtXet8X
 彼女の精神は救われたのだろうか。納得して逝けただろうか。
 だがこれだけは信じている。彼女は主の栄光を讃えて逝ったのではない。
 彼女とドワーフは、似たもの同士だった。
 少なくとも、神とか主とか呼ばれるものを、手段としてしか見ていなかった点では。
 同僚達は、セレスティアと最も仲の良かったドワーフに、祈りを唱えるよう勧めた。
 だがドワーフは辞退した。既に彼にとって、主を讃えることに意味はなかった。
 セレスティアのいない教会で、神の忠実な従者を演じるのは苦痛でしかなかった。
 いくらかして、彼は教会を去った。それでも、“首輪”を手放すことはしなかった。
 それは彼にとって、セレスティアとの思い出につながれたものだったからだ。
16510-133:2011/09/03(土) 05:32:23.37 ID:JgtXet8X
「まさか。ただのアクセサリーですよ」
「アクセぇ?本当ですか?」
 ドラッケン学園の制服を着たディアボロスの少女が、興味深げに詮索する。
「だって、アクセって言うには物々しいですよ。結構年季入ってますし」
 タカチホ義塾の制服を着たドワーフの男は、はにかむように笑った。
「はっはっは……、さすがに女性の目は誤魔化せませんね。ええ、これは思い出の品です。
ある人とのね……」
「ある人って……?」
 少女は興味深げににじり寄ってくる。ドワーフはその顔の真ん前で、パチンと指を鳴らした。
 そして、驚いて飛び退く少女に、からかうように笑いかける。
「想像にお任せしますよ」
16610-133:2011/09/03(土) 05:41:45.85 ID:JgtXet8X
字数やら連投やらの規制にかかりながらも投下完了。
こんなに細かく分けることになるとは、修行が足りません。
3の二週目パーティーのドワ男に関する妄想です。
楽しんでいただけますように……。

しっかし、何度も投稿してるような人は、魅せ方が違うよな……。
167名無しさん@ピンキー:2011/09/06(火) 03:20:12.73 ID:+A1Dx0I2
>>166
相変わらず独特な雰囲気持ったSS書くなあ、GJです
168名無しさん@ピンキー:2011/09/14(水) 18:35:27.19 ID:M0+Jf55p
>>166
GJ!
16910-133:2011/09/20(火) 02:40:38.09 ID:Bg0wF/Fn
>>167さん、>>168さん、有難うございます。
自分の書いたものによい反応が返ってくるのは嬉しい限りです。

独特な雰囲気……ですか。
後になって読み返してみると、全然学園モノじゃない……。
以前のも、今回のも……。
170名無しさん@ピンキー:2011/09/21(水) 01:48:15.18 ID:4b1j1DgG
>>169
独特な雰囲気=どことなく退廃的かつ静かだけど情熱的、みたいな感じね。悪い意味じゃないよw
学園に来るまでの経緯って感じで、舞台が学園じゃなくとも特に問題はないと思う
171名無しさん@ピンキー:2011/10/07(金) 01:05:23.23 ID:4+w7Oadj
final発売まで一週間!
楽しみだ!
172名無しさん@ピンキー:2011/10/16(日) 00:45:24.29 ID:zJXGiHq0
Final手に入った!
173名無しさん@ピンキー:2011/10/22(土) 23:18:31.53 ID:PVJU3vtH
ザッハトルテ可愛いなぁ
何か書きたいけどもっと進めてどんなキャラか見極めてからにするか、悩む
174名無しさん@ピンキー:2011/10/22(土) 23:37:07.75 ID:i0mNhz+j
是非!餌をくださいSir!
175名無しさん@ピンキー:2011/10/23(日) 04:19:37.94 ID:HGfn3Z8l
アネモネちゃんをひどい目に遇わせるプロデューサーさんのお話下さい
176名無しさん@ピンキー:2011/10/24(月) 23:30:45.45 ID:9fdhNISp
>>173ですがついやっちゃった
とくに山も落ちも無くザッハトルテといちゃつきますよ
177ザッハちゃんと夜会話:2011/10/24(月) 23:32:13.12 ID:9fdhNISp
「また負けたのだ〜〜〜!!」
 ローズガーデンの宿屋の一室、部屋に二つあるベッドの上でジタバタ暴れるディアボロスの少女がいた。
「ほら泣かない泣かない、よしよし」
「むぅ、泣いてないぞ」
 その隣には、ベッドの縁に腰掛け少女の頭を撫でて慰めるヒューマンの少年がいた。
「というか負かしたの僕達なんだけど、色々とどうなの?ザッハトルテ」
 ディアボロスの少女は名をザッハトルテ。「闇の」だとか「呪いの」だとか「荒地の」だとか、安定しない二つ名を持つ正真正銘の魔女。
 ちなみにヒューマンの少年は分かりやすく「青い魔女」がいいとか思っている。
「……負けたときはとても悔しくて、キサマを呪ってやるくらいのつもりで来たのだがな」
 魔女は暴れるのをやめて頭の上にあった少年の手を取った。
「ここに来たらそんな気は失せてしまったのだ」
 繋いだ手を宝物のように両手で包み込む。
 それから続く沈黙は二人にとって居心地のいいものだった。


 二人の夜の密会は彼らが三回目に会った日から続いている。
 どこかズレた失敗を繰り返す魔女に興味を持った少年が招いたのだ。
 はじめの頃は緊張感を持って、少年が悪事のアドバイスなどをしていた。
 魔女の襲撃と数時間後の密会を数回繰り返すうちに二人は共に寛ぐようになり、さらに数回の後には親密な仲となっていた。
 ただし全て密かに、である。ザッハトルテが忍びこむのに苦労する学園の寮は避け、宿の部屋も防音や人払いなど呪術的に守られている。
 少年にとっては恋人でもあくまでザッハトルテは悪い魔女であり、その姿を晒すことは避けなければいけなかった。
178ザッハちゃんと夜会話:2011/10/24(月) 23:33:11.08 ID:9fdhNISp
「ま、呪うんなら軽いので頼むよ」
 少年はニヤリと笑い、魔女の手を持ち上げ甲にキスをする。
「そういえば口さえ動けばどうにかなるのだったな」
 魔女はそれに満足気に笑い、手を放す。
 少年が片手間に学んだ神主学科は内容に呪術と対抗手段を含み、魔女と関わるのに気休め程度の足しになっていたかもしれない。
「はらたま〜きよたま〜ってね。さて、ちょっと着替えて欲しいんだけど」
 そういいながら少年が道具袋から取り出した服は。
「千早……?ふむ、神主と巫女合同の授業で見かけて気に入って着せてみようということなのだな?」
「違います。あと袴と、寒いから適当にシャツとジャージでいいかな」
「おお私ですら分かる無茶苦茶……待て、外へ連れ出す気か?」
 魔女の表情が硬くなる。自分ノ姿を見られようものなら少年にとって予想もつかない悪い事態になると。
「だからこそ、いつものアレンジした制服から着替えるんだよ。大丈夫、この辺りはザッハトルテの姿までは有名じゃないさ」
 その言葉を聞いて無理矢理に納得した魔女が渡された服を着込んでいく。ちなみに今まで下着とナイトキャップだけの肌色率高い姿だった。どうやら寝間着は使わ

ないらしく初めて泊まって行った夜は多分に少年を悩ませた。
「 何なのだこれは、どうすればいいのだ?」
「あー、これを巻いてクロスして折り込んで結んで被せて完成、千早は羽織ってこの紐を結べばよし」
 袴の履き方が分からなかったようだが、少年が手際よく着せていった。
「後は髪を纏めれば十分化けられるかな」
 道具袋からさらにリボンを取り出して魔女の髪型を変えていく。
「はい、ポニテ巫女の出来上がり」
「その安易な表現は気に入らんが、なかなか悪くないのだ」
 魔女は髪を結ぶために後ろに回っていた少年の胸に背を委ねる。
 その感想が新鮮な衣装のことなのか、少年との距離のことなのかは本人ですらよく分かっていないだろう。
 少年は魔女の体重を受け止め抱きしめる。
「そりゃ良かった……行こうか、ザッハトルテ」
 最初の目的なんか投げ捨ててこのまま押し倒そうかという葛藤を切り抜けて少年は声をかけた。
 ここローズガーデンはその名の通り大きな薔薇園を観光、生産資源としている。それ自体は夜間暗すぎて立入禁止なのだが町の中央の公園にも見事な花壇と噴水が

あり、そちらはライトアップされ夜のデートスポットなのだ。
「では、エスコートとボディガードは任せるぞ?」
 自身の力で守られた部屋から出る不安は残っているだろうに、それでも笑顔で魔女は言う。

 きっと、初めての外での密会は素敵なものとなるだろうから。
179ザッハちゃんと夜会話:2011/10/24(月) 23:35:03.82 ID:9fdhNISp
以上です
ザッハトルテが登場し終えるたびに妄想して脳内で出番を増やすプレイ中
今プリシアナに到着したところですがリリィ先生に浮気しそうです
この先生は女キャラが押し倒しそう

ぎゃあ、メモ帳の右端で折り返すところに覚えのない改行が
180名無しさん@ピンキー:2011/10/26(水) 17:59:53.99 ID:9unFHfti
gj!
オラニヤニヤしたぞ!
181名無しさん@ピンキー:2011/10/29(土) 13:13:57.20 ID:jUsqrl0a
GJ
アンデッド三姉妹戦の初戦終わったばっかだけど、ザッハトルテマジ可愛い
よ〜し、俺も夜会話の人に続k……けるといいな
182名無しさん@ピンキー:2011/10/30(日) 15:00:37.71 ID:Mjf5wu/c
gj
ザッハトルテはイイキャラですな
183名無しさん@ピンキー:2011/10/31(月) 16:52:56.27 ID:MS0HDO4O
GJ
わたsザッハトルテは本当に良いキャラなのだ。
184名無しさん@ピンキー:2011/11/05(土) 12:53:43.32 ID:jbRakrS3
ザッハトルテに、お前にも呪いをかけてやるよとか言ったら
やってみるがよいとか、余裕綽々の顔なんだろうけどいきなりディープキスして色々一杯一杯のザッハトルテに

俺のことが頭から離れられない呪い。

とか言っちゃうとか考えたけどくっさーーー
185名無しさん@ピンキー:2011/11/05(土) 14:40:09.28 ID:16735b6U
良いから書け! さあ書け!!
186名無しさん@ピンキー:2011/11/06(日) 19:00:17.61 ID:oMwT1nEg
>>177の続きっぽいのが出来てしまいました
少し時間を遡って互いに警戒心が消えて好きだと告白したけどまだ何もしてない、手を繋ぐだけでもドキドキしちゃうくらいの関係
説明書いてて恥ずかしくなってきた
まだ不慣れで行数制限とか分かってないけど行きますよ
187ザッハちゃんと夜イチャ:2011/11/06(日) 19:01:30.61 ID:oMwT1nEg
「ふはははー、闇の魔女ザッハトルテただいま参上なのだー!」
 日が沈むと共にスノードロップの宿屋の一室に現れるのは全体的に青っぽくてたれ目の少女。冒険者の半分に「うぜぇ」と思われ残りの半

分に「アホだ」と思われているらしい正真正銘の魔女。
 名乗りは盛大だったが侵入した部屋にはすでに防音の呪術が施されていて声は廊下にすら届くことは無かった。
 ひっそりと盛大に行われた名乗りを聞いたのは一人だけ、その日の部屋の借主であるヒューマンの少年。彼は予兆なく現れた来客に目もく

れずそれまで行なっていた作業を続ける。
 小さな瓶から中の液体をスポイトで吸い上げ、テーブルに並んだ小さい筒に数滴づつ慎重に入れていく。
「……無視か、いったい何をしているのだ?」
「……げっ」
 少しいじけながら小瓶をひょいと取り上げる魔女、その行動を見て固まる少年。
「ふむ、ニトログリセリン?……」
 魔女も固まる。それが軽い衝撃で引火する爆発物であることに気づいたようだ。
 先に硬直から復帰した少年がそっと瓶を支えて言う。
「ゆっくり手をはなして、下がって」
 魔女はまだ全身ガチガチだが少年の言葉に従い手を開き、そして煙と共に姿を消した。
「いやどこまで下がって……戻るまでに終わらせよう」


「あんなふうにしてギガショット用の弾は自作しなきゃならないんだよ」
「……あの異様に痛い一撃のことなのだな」
 約十分後、突然の命の危機から立ち直って戻ってきた魔女と作業を終えた少年がお茶会を開いていた。
 機材を取り付けられ即席のリロードベンチになっていたテーブルは片付けられ、少年が淹れたお茶と魔女が土産に持ってきた菓子が乗って

いる。
「いつも手加減無しにやってるから……ごめん、ザッハトルテ」
 少年と魔女の関係は奇妙なもので夜の密会では仲よさげに言葉を交わし、昼間出会ったときは冒険者と悪い魔女として躊躇なく銃弾と呪い

を交わしていた。
「ふふん、私を誰だと思っているのだ?私自ら改造した制服はたとえ神の剣であろうと傷一つ付かないのだ」
 自慢気に言い切る魔女に少年は愉快そうな笑みを漏らす。
「それでもね……自分の気分的な物かな、これは」
 その言葉に今度は魔女が笑みを漏らす。
188ザッハちゃんと夜イチャ:2011/11/06(日) 19:02:27.96 ID:oMwT1nEg
「律儀なのだな、私が許すと言っても自分を許せないか」
 想われているのだ、私は。少年にも聞こえないような小声で魔女が呟やき、お茶を一口飲む。
 気持ちを落ち着けるように少しの間目を閉じた魔女はコップを起き、立ち上がって少年の直ぐ側まで移動してから言う。
「それなら、気に病む必要が無いことを直接触れて確かめてみるのだ」
 少年が言葉の意味を理解するより早く、魔女は制服を脱ぎ捨てた。薄い水色の下着姿になった魔女は少年の手を取る。
「ほれほれ」
「え?……え?!」
 急展開に少年の思考が追いつかない。最近仲の良くなってきた二人だが直接肌がふれることなど滅多に無かったのだ。まぁ下着姿は数回見ているが。
 魔女に導かれ少年の手が空気にさらされた右の太腿に触れる。
(初撃、クラ子が弓で牽制、右太腿を掠める)
 魔女の体温を感じながら、昼間の戦闘風景が頭の中に浮かび上がる。
(第二撃、フェル男の粉砕は杖でガード、姿勢を崩す。三撃、セレ子の飛ばした光弾が腹部にヒット)
 二人の手は滑るように魔女の腹に移動する。途中で下着に引っかかり少年がギクリと震えた。一気に体温が上がり心臓は早鐘を打つ。
「私の肌に傷跡がみえるか?痣の一つでもあるか?」
 その言葉に少年の視線が魔女の肌に吸い寄せられる。ディアボロスにしては健康的な色の肌はうっすら赤く、手に伝わる感触はシルクのよう。ごくりと緊張を示すように唾を飲んで答える。
「……どちらも…無い、綺麗だよ」
 満足気な、いつになく悪い魔女のような笑みを浮かべる魔女の手が動く。少年は傍から見ても分かるほど興奮しているがそれでもどこか冷静に風景の先を思い出していく。
(四撃、ドワ男とバハ子連携、ドワ男の鬼神斬りが防御魔法を貫通し左腕にヒット)
 指先が肘から肩までを撫で上げる。
「ふぁ…」
 なれない感覚に魔女が声を漏らすが、それでも少年の手は離さない。
(ラスト…僕のギガショットが左胸にヒット)
 そして手は鎖骨をなぞり左の胸に重なる。
「気は晴れたか?」
「……うん」
 少年が立ち上がり魔女のすぐ側に。さらに近づき、胸に触れていた手は少し名残惜しそうに背中側に滑らせる。魔女も同じようにして自然と抱き合う姿勢になった。
 そのままお互いの存在を感じ取るよう腕に力を込めに数秒。少年が口を開く。
「ありがとう、ザッハトルテ」
「どういたしましてなのだ。ところで…」
 少年の胸に顔を埋めていた魔女が目を合わせてから言う。
「ヒュマの制服が硬くてあちこち痛いのだ」
 学園の制服は見た目には普通の布だがそのまま冒険にも出れるように極軽度の装甲がある。互いに服を着ていれば気にならないだろうが、魔女はほぼ裸だった。
 少年はそのままの姿勢で少し考える。腕を解いて離れる場面では無いよな、と。
「あー、脱げばいいのかな?」
「この先を望むのならな?」
 二人してニヤリと悪巧みでもするように笑い、少年が自らの制服に手をかけた。
189ザッハちゃんと夜イチャ:2011/11/06(日) 19:03:17.33 ID:oMwT1nEg


「おーい、起きるのだー」
 魔女が少年の頬をペチペチと叩く。
「もうすぐ夜が明けるのだぞー」
 しばらく続けると少年の目がうっすら開く。
「……朝?」
「後数分でな」
「さいですか……」
 少年が体を起こし無理矢理意識を整えようとすると、掛け布団が一緒にめくれてその下にあった魔女の裸が顕になる。首をぐりぐり回している最中に二人の目が合い、少年が魔女の状態に気付いた。
「あー、ごめん」
 今更何を恥ずかしがるのか、顔を赤くして横になり布団をもとに戻す。
「照れ屋め」
「否定はしませんよ……帰っちゃうんだろう?服着ようか」
「うむ」
 からかう口調で言われた少年が今度は思い切り布団を剥がす。二人共起き上がり互いの姿を目に入れないようにしながら服を拾い、身につけていく。うっかりその気になってももう一度の時間は無い。
「あ、下着汚れてたら道具袋に宝箱から出たあぶない下着が入ってるから」
「そんなもん履けるかなのだ!」
 残念だと呟きながら制服の袖に腕を通し、帯を締める。いつでも外に出られる姿になった少年が振り返ると鏡を見ながら帽子の位置を合わせる魔女の姿が見えた。
「しかし、学生の身になってこんな事をするとは思わなかったのだ」
 帽子がしっくり来ないのか色々動かしながら言う。
「うん?結構そういうことの噂は多いよ?」
 魔女が手を止めて怪訝な顔で少年の方を見る。
「そうなのか?」
「僕のパーティだと二人、クラ子と従兄弟のクラ男の仲がどう見ても恋人、セレ子がある日クラスメイトのバハ男の部屋に突入して翌朝堕天して出てきた。パーティ内で完結する関係が無いのは珍しいけど」
 指折り例を示す少年に呆れ顔で魔女がぼやく。
「それは…風紀が乱れきっているのだ」
「人のこと言えないけどね」
 違いないと笑い、結局帽子は落ち着かず杖の先に引っ掛けた。他に持ち物など無かったことを確認してから少年に向けて言う。
「もう夜が明ける。明確なルールではないが時間切れなのだ」
「これ以上は誰かと鉢合わせする危険があるしね。その習慣は続けよう」
 魔女が頷きその日の別れの言葉を口にする。
「ではな、次は勝ってここに来るのだ」
 足元から煙が登り始める。
「期待してるよ、お姫様」
 姫と言われた魔女の顔がポカンと呆気に取られた表情に変わり、何か言おうとする前に煙に包まれた。
 そして、来客の消えた部屋で少年は呟く。
「待ってるよ……返り討ちだ」
190ザッハちゃんと夜イチャ:2011/11/06(日) 19:03:55.48 ID:oMwT1nEg


おまけ

「ゆうべはおたのしみでしたね」
 宿の食堂に降りると仲間の半分が先に来て一つのテーブルに座っていた。僕もそのテーブルに付いて朝食を注文した辺りで言われたのが今の言葉。
「ななんあ何のことでしょうゲルフェルパー君」
「うわ、止まらず二回も噛んだ」
「しかも顔真っ赤で図星なのが丸分かりです」
 台詞一つにドワ男とフェル男に突っ込まれた。分かってるよこんちくしょう。
 隣に座っているバハ子は理解して無いようでパンを片手にきょとんと止まっている。君はそのままでいてほしい。
「……なんでそう思ったのかな」
 手遅れで無意味だと分かっているが認める言葉は出さない。言質取られたが最後面倒なことになるに決まっているのだ。
「だってなぁ、一応順序立てて言うか。これまで何回か呪いの魔女が喧嘩売ってきただろ、その後のリーダーの判断が不自然すぎるんだよ」
「みんな疲れが見えるのに学園で休まず迷宮通り抜けて街の宿に来ましたよね、そこでの部屋割りローテーションも融通してもらって一人部屋を確保するし」
「あ、誰かと会ってるんじゃないかって言ってたやつ?」
 ばれてらー。ドワ男とフェル男の繋ぎがスムーズだしバハ子も絡むってことは僕抜きで話題にしてたな。
 ちなみに僕のパーティは男女3:3なのでそれぞれ二人部屋と一人部屋を借りている。男子組は交代で一人部屋、女子組はバハ子が一人部屋になっている。なんか、二人部屋の相手の惚気話に根を上げたらしい。
「そして今回、ヒューマンの髪が汗に濡れたような感じになっています」
 前髪を少し摘んで見ると確かに、濡れてはいないが運動した後のような手触りを感じる。今度から不自然でも朝風呂だな。
「あー、昼間の戦況を思い返してトレーニングをしてたんだよ」
「俺らが様子見に行こうとしても部屋に辿りつけないような細工してか、無理があるな」
 適当に選んだ矛盾しなさそうな言い訳はあっさり否定された。たぶん人払いの呪術のせいだが厳重すぎるのも考え物らしい。
「おお?リーダーが死にかけてる。ねぇねぇ何の話ー?」
 背後から届いたのはこの手の話が大好きなクラ子の声。おそらくセレ子も一緒だろう。
「リーダーがこっそり会ってる誰かとの関係が進んだようなのですよ」
「あら、まぁ」
「ウボァ」
 確定事項として言っちゃうのかフェルパーよ。こっそりが分かってるなら晒すな。
 バハ子が察してしまったらしく顔を赤くして対角まで逃げられてちょっと傷つく。
「とりあえずはおめでとう、リーダー」
 そう笑顔で言うクラ子に右の腕を掴まれた。解くために左手を伸ばそうとしたら動かない。これまた笑顔のセレ子(黒)に左腕が掴まれていた。そのままズリズリと長椅子の真ん中まで動かされる。
「え、何これ怖い」
 そして両脇を塞ぐように後から来た女子二人が座る。
「リーダー、初めての体験聞きたいな!」
「必死に秘密にしてるのは分かっていますから誰とは聞きませんけど、仔細にお願いしますね」
 朝っぱらから猥談をしろというのかこいつらは、それを女子に話すのは拷問に近い気がする。つーか初めてって何故断言できた。
「じゃ、俺らは部屋に戻って出発の準備してるから」
「そうですね、ではお先に」
「うおぉーい!興味ないのになんでこいつら焚き付けた!」
 朝食を終え部屋に戻る男子二人。銃に弾を込めてこなかったことが悔やまれる。
 気がつけば食堂の他の席は異様に静かで、こっちに聞き耳立てているのが分かりやすい。もう学園に噂を提供するのは確実のようだ。あとバハ子さんなんで残ってるんですか聞きたいんですか勘弁して下さい。
「さぁ!正直に吐かないと」
「有ること無いこと言いふらします!」
 仲いいなあんたらリーダーとして嬉しいよ畜生!

 結局、朝の馬鹿騒ぎは宿の女将さんに怒鳴られるまで続くのだった。
191ザッハちゃんと夜イチャ:2011/11/06(日) 19:04:35.36 ID:oMwT1nEg
以上です
本番描写?無理だよ!書いてて「中でギガショット撃つよ」とかどうしようもないモノが出てくるよ!
ザッハトルテ戦は実際あんな感じにあっさり終わってポカーンとした記憶があります。
あとPT内で完結する関係は全く思いつかない。まったく、妄想に向かないPTだ。
192名無しさん@ピンキー:2011/11/06(日) 19:48:16.69 ID:k25myrKj
乙、良い妄想だ
193名無しさん@ピンキー:2011/11/06(日) 22:43:44.01 ID:5kCuyudp
エロパロだからって気にする事は無いよ、俺はこの位が好きだなあ
194 忍法帖【Lv=4,xxxP】 :2011/11/07(月) 01:03:17.03 ID:1b3YoJ/z
いいねいいね。ザッハちゃん可愛い

ところで>>187の3行目みたいな空行だけど、「右端で折り返す」使ってるとよく出るよ
折り返し=改行らしくって、そこに自分で改行入れたりすると二重に改行されちゃうみたい
195名無しさん@ピンキー:2011/11/07(月) 16:54:14.59 ID:DdusaCkn
乙!
ザッハ可愛いよザッハ
196 ◆BEO9EFkUEQ :2011/11/09(水) 00:59:05.42 ID:UBu778wT
お久しぶりです。ずいぶん間が空いてしまいましたが続き投下します。
お相手はエルフで、特に注意はなし。
楽しんでもらえれば幸いです。
1971/14 ◆BEO9EFkUEQ :2011/11/09(水) 00:59:46.04 ID:UBu778wT
なぜこんな事態になってるのか、まったく理解できない。
目の前で、誰かが木に縛りつけられ、それをドワーフとセレスティアが表情も変えずに殺してる。
「な、何してるんだよ!?」
そう叫んだ声は思いの外小さく、それでも二人はこっちを向いた。
「ああ、大丈夫ですよエルフさん。神はお許しになっています」
「そ、そんなことあるかぁ!大体それっ……同じ生徒で、仲間じゃ…!」
「こいつは仲間じゃない。生徒なだけ」
話が通じない。セレスティアまで、一体どうしたって言うんだ。
「いえいえ、ドワーフさん。仲間であることには変わりないですよ」
見つめるセレスティアの先にはぼくがいて、ぼくは木に縛り付けられてて、二人が武器を構えた。
「な……何…!?なんでぼく…!?君達、何する気なんだよ!?」
「ええ、ええ、ご安心を。そのうちあなたの方から、死を願うようになりますから。それまでの辛抱ですよ」
ゾッとするほど優しい笑顔。狂った言葉。死の恐怖に、ぼくは思い切り彼の名を叫んだ。

「うわあぁっ!?」
悲鳴と共に、エルフはガバッと体を起こした。その全身は汗だくになっており、呼吸もまだ荒い。
真っ暗な部屋の中、エルフは状況を理解できずにしばらく混乱していた。やがて、確かめるようにぽつんと呟く。
「ゆ、夢……か…?」
夢の中と違い、自分の声がはっきり聞こえる。同時に、悲鳴に驚いたペットがベッドに上がり、エルフの腕を心配そうにつつく。
「ああ、フェネ……ありがとう、大丈夫だよ」
ペットの頭を撫でながら、エルフは大きく息をついた。
―――まったく、なんであんな夢……ドワーフはともかく、セレスティアはあんな人じゃないよなあ。
とはいえ、状況によっては吐きかねない台詞だとも、エルフは考えていた。
―――途中で起きたけど……助けに、来てくれたなあ。
ぼやけた記憶ではあるが、確かに夢から覚める直前、彼はエルフを助けに来てくれた。
心を落ち着けるため、もう一度深呼吸をする。そして再び寝ようとしたとき、エルフは気付きたくない事態に気付いてしまった。
「……小さい時以来だ……今のうちに洗っちゃお…」
悲しげに溜め息をつくと、エルフはズボンを脱ぎながら洗面所へと向かうのだった。
1982/14 ◆BEO9EFkUEQ :2011/11/09(水) 01:00:21.01 ID:UBu778wT
四校交流の式典が、四校対抗の天空の宝珠争奪戦開幕式になってはや数日。ドラッケン学園の学食に、モーディアルの校章をつけた
六人の生徒がいた。その中の一人であるフェルパーは、肩に乗せたペットに自分のステーキを分けてやっていた。
「お前、ほんっとにペット好きだよな。つうかよ、あんだけタンポポちゃんにインサイト・ペッパー大量生産させたんだから、
それ食わせりゃいいじゃねえか」
「ん、これはこれで別。同じものを食べるって言うのは、親睦を深める手段の一つだ」
「ペットに『飯』なんて名前付けてるんだし、太らせて食いたいだけじゃないのー?ひひ!」
フェアリーの言葉に、フェルパーはうんざりした顔で向き直る。
「もう情が移ってるから、食いはしない」
「……元々は食う気満々かよ」
「はは……でもほんと、ペットはいると心が休まるよね」
そう言うのはエルフである。ペットを肩に乗せるフェルパーや、頭に乗せるセレスティアと違い、大きな耳を持つ狐のようなペットは、
主人の足元で行儀よく待っている。
「やっぱりそう思うよね!?」
エルフの言葉に、フェルパーは実に嬉しそうに振り向いた。
「いやまあさ、正直おいしそうに見えることもあるけど、やっぱりペットっているだけでいいものだよね!」
「ああ、うん…」
「君とはほんと、話が合うから嬉しいよ!」
「そ、それはどうも…」
あまりの変わりように、反応に困っているのか、エルフは少しうろたえたような口調で返事をする。が、フェルパーは気にする様子もない。
そしてそんな仲間の様子を、ドワーフは一切構うことなく黙々と食事を続けており、セレスティアは話に参加はせず、ただ微笑みを湛えて
彼等の様子を見つめている。
「ま、とにかく、だ。水竜なんての相手にしなきゃいけねえみてえだし、長丁場になるだろうからな。全員しっかり食っとけよ。
フェルパー、せっかくだしこれも食えよ」
そう言って、バハムーンがスペアリブを彼の皿に移すと、フェルパーの動きが止まった。同時に、ペットが大慌てで彼の肩から飛び降り、
エルフの後ろに隠れた。
「……てめえで取ったんだろ、それ」
それまでとは打って変わって、驚くほど低い声が聞こえた。同時に、バハムーンは『やってしまった』と言いたげな表情を浮かべる。
「俺は俺の食いたい物を最初から選んでんだよ。食える分を食える量だけ取ってんだよ。なんでてめえのまで俺が食う必要があるんだ」
「ああ……悪かった、ほんと悪かったよ。ただ、俺は単にお前が食うかなって…」
「食わねえに決まってんだろ!」
突然の大声に、周囲の生徒が驚いて彼の方を振り返る。
「あー、だから悪かったって……今のどこに切れる要素が…」
「ま、まあまあフェルパー。バハムーンだって、ただの親切だったんだよ」
見かねて、エルフが宥めに入った。その後ろでは、狐と鼠のペットが居場所を巡って喧嘩を繰り広げている。
「君の気に障るようなことだったのかもしれないけどさ、悪気があったわけじゃないし、そこまで怒ることは…」
「悪気がないのが一番たち悪い。ま……わかった。あ、こらミール。フェネに迷惑かけてないで、帰ってこい」
主人に呼ばれ、彼のペットは再びフェルパーの肩へと戻った。居場所を取られまいとしていたエルフのペットは、腰に手を当ててふんっと
大きく息をついた。
「お前等は仲いいのに、お前等のペットはそんなに仲良くねえよな」
そんな様を見て、バハムーンがぽつりと呟く。
「ご主人様取られそうで、そのペットまで嫌いなんじゃないのー?」
「あ、あはは……そうかも、ね……はは…」
フェアリーの言葉に、エルフは心底困ったような苦笑いを返すのだった。
1993/14 ◆BEO9EFkUEQ :2011/11/09(水) 01:00:59.03 ID:UBu778wT
善悪という概念のないドワーフと、進んで悪行を行うフェアリーはともかく、他の四人の仲は良好なものである。また、ドワーフとは
セレスティアが比較的良好な関係を築いており、フェアリーもその二人とは意外に仲がいい。そのため、小さな諍いは数多く起こるものの、
全体としてみれば彼等の関係は良好と言えた。
「ふ〜、食った食った。じゃ、ちっと小便行ってくる」
「あ、じゃあ僕も」
「連れションですか。わたくしもご一緒しますよ」
洞窟内でのあまり落ち着かない食事を終えると、男子三人組は揃って迷宮の隅へと向かう。
「エルフ、君はどう?」
フェルパーが声を掛けると、エルフは心底困った表情を浮かべた。
「あ〜、いや……ぼ、ぼくはいいよ」
「君はいつも来ないね。ま、いいけど」
「エルも行ってくればー?我慢は良くないよー、ひひ!」
「い、いいってば!その、あの、えっと……は、恥ずかしいしさ…!」
そんな五人とは距離を置くように、ドワーフは無言で斧に付いた返り血を洗っている。
「……ふぅ。屋外で用を足すなんて、最初は抵抗ありましたけど、意外と慣れるものですよねえ」
「お前は驚異的な勢いで馴染んだと思うけどな。つうか連れションっつーと必ず参加するなお前は」
「親睦を深めるのに、連れションはいい機会だと思いますよ?」
「場合によっては、溝を深めるけど。ははは」
三人が元の場所に戻ると、ドワーフはのそりと立ち上がり、先程彼等が用を足した方へと向かう。
「ドワーフさん、どちらへ?」
「おしっこ」
「ああ、空くまで待ってたんですか?」
「セレスティア達は関係ない。ただ斧洗ってただけ」
「あ、フェアもおしっこしたいー。ドワと一緒に行っていーい?」
「じゃあお前が前行って」
「はーい」
ドワーフの言葉に驚くほど大人しく従い、フェアリーはドワーフの前へと出る。そこで、不意にエルフの方を振り返った。
「あ、エルはどうー?フェア達と一緒ならいいんじゃないのー?」
「い、いいってば!勝手に行って来てくれよ!」
「あっそー、漏らしたりしないでねー?きひひ!」
「フェアリー、邪魔」
「ごめんなさーい」
やはりドワーフの言葉には素直に従い、二人は隅の方で用を足し始めた。一応、年相応に異性への興味が強い男子連中ではあるが、
さすがに斧を持ったドワーフの存在が危険すぎるため、大人しく待っている。
「エルフ、本当に平気?我慢は良くないよ?」
「平気だよ……まあ、なるべく早めに用事済ませたくはあるけどね」
他の面子に比べ、エルフは少々人付き合いの悪い部分があった。食事などは一緒に取るのだが、トイレも風呂も決して誰かと一緒には
行かず、一人で済ませているらしかった。また、宿屋での部屋割も一人を希望することが多く、パーティの財布を握っているフェルパーの
意見と衝突することが多い。
2004/14 ◆BEO9EFkUEQ :2011/11/09(水) 01:01:34.20 ID:UBu778wT
とはいえ、それを大きな問題と思っている者は、パーティにはいない。誰も彼も一癖ある人物であるため、むしろエルフのそういった
気性など些事に分類される。それに、風呂やトイレの付き合いは悪いにしても、戦闘での動きは誰かに合わせるのが非常にうまい。
基本的には、魔法を用いた多数との戦いを得意とするが、強敵相手には仲間との連撃を繰り出し、あるいは俊足を活かした援護に
回ることもある。もちろん、勝負どころと見れば強力な魔法で一気に決めにかかることもある。
彼等にとっては、もはや水竜すら敵ではなかった。多少は手間取ったものの、これまでの幾多の戦いと同じように、結局は危なげない
勝利を収めていた。
それからいくつかのクエストをこなし、彼等は次の校章を求め、プリシアナ学院に向かった。とはいえ、さすがに一日で着けるような
距離ではなく、彼等はローズガーデンで宿を取った。
到着は夜だったために気付かなかったが、太陽の下で見るローズガーデンは非常にきれいな場所だった。ここしばらく、戦いの連続で
疲れていた彼等は、そこにもう一日滞在することに決めた。
「いい匂い。適当にぶらぶらしてくる」
「あ、わたくしもご一緒していいですか、ドワーフさん?」
「なんでわざわざ私と一緒なの、セレスティアさん?」
「一人で回るのも味気ないかと……それと、あなたがトラブルに巻き込まれないように、というところです」
「……ま、別にいいよ」
あくまでも、ドワーフが巻き込まれないように、という言い方をする辺り、セレスティアの対応も慣れたものである。
エルフやフェルパーであれば、トラブルを起こさないように、という言い方をして、たちまち彼女の機嫌を損ねていただろう。
「俺は交易所でも見てくっかな。何てったって、時代の最先端、プリシアナの隣だからな。面白えもんがあってもおかしくねえ」
「フェアはどうしよっかなー。バハと一緒は嫌だしぃー」
「ひでえな、お嬢ちゃん」
「セレー、ドワー。フェアもついてっていーい?」
「勝手にすれば」
セレスティアと二人がいいとか、人数は少ない方がいいとかいった感情はまったくないらしく、ドワーフはそっけなく返事をする。
「ローズガーデンで両手に花かよ。羨ましいぜ、まったくよぉ」
割と本気な口調のバハムーンに苦笑いを返すと、セレスティアはさっさと歩きだした二人の後を慌てて追って行った。それを見送ると、
バハムーンも交易所へと向かう。
残ったフェルパーとエルフは、同時に顔を見合わせた。
「さて、僕達はどうする?」
「あー、そうだね、うん……じゃあ、その、い、一緒にその辺見て回らないかい?花とか……きれいだし」
「じゃあ、そうしよう」
あっさりした感じで言うと、フェルパーはのんびりと歩きだした。一歩遅れて、エルフもその隣に並ぶ。
ローズガーデンというだけあり、そこには様々な花が咲き乱れている。名前の由来でもあるバラに限らず、季節の花はもちろんのこと、
魔法によって温度管理されているのか、冬に咲くような花すら栽培されている。
「花はよくわからないけど、これだけあると壮観だ。……こらミール、花食べるな」
「ん、と、それはカーネーション。こっちはプリムローズ。そこにあるのはヒースだね。ちなみにプリムローズの花言葉は『青春の
始まりと悲しみ』で、ヒースは『孤独』だよ」
さらっと説明するエルフに、フェルパーは少し驚いたようだった。
2015/14 ◆BEO9EFkUEQ :2011/11/09(水) 01:02:12.43 ID:UBu778wT
「へえ、詳しいね」
彼の言葉に、エルフは得意げな笑みを見せた。
「精霊使いだし、自然と生きる種族だからねぼくらは」
「なるほど。はは、一番いい相手と一緒になったかな、これは」
「っ…」
フェルパーが言うと、エルフは言葉に詰まったようだった。が、フェルパーは気づかない。
「エルフ、これは何?」
「え、あ、それはスノードロップ。真冬の花だね」
「スノードロップ?じゃ、あそこも花の名前なんだ?」
「そうだね。この花は、面白い言い伝えがあってね。ぼくは結構好きだよ」
「言い伝え?どんな?」
「それはね、この花は昔、色がなかったらしいんだ。それで…」
花の名やその由来、花言葉などを話しながら、二人はのんびりとローズガーデンを歩く。博識なエルフに、フェルパーはひたすらに
感心するばかりであり、そんな仲のいい二人の様子が気に入らないのか、エルフのペットはフェルパーのペットを威嚇し続けている。
「や、花言葉は一つじゃないよ。ものによっては色で変わったり……こらフェネ、ミールをいじめない。あー、たとえばバラなんかはさ、
それ自体に『愛、美』っていう二つの花言葉があるんだけど、ピンクだと『一時の感銘』、赤だと『愛情、情熱、熱烈な恋』なんて
三つもあったりするんだ」
「へーえ、そんなのよく覚えられるね」
「ぼくとしては、バハムーンが武器の名前とか特徴とか覚えてる方がすごいと思うな」
「はは、それも確かにそうだ」
その時ふと、フェルパーが足を止めた。視線の先には、ギザギザの花弁を持った、縁だけ白い赤い花が咲いている。
「あの花、面白い感じ。君に似合いそうだな」
「そ、そうかい?あれが、ね…」
引きつったエルフの顔を、フェルパーは不思議そうに覗きこんだ。
「どうしたんだ?」
「あ〜……いや、他意はないんだろうね。ただね、あれはセキチク……花言葉は『あなたが嫌いです』っていうんだ…」
「え、そうなのか!?べ、別にそんなつもりはっ…!」
「いやいや、花言葉知らないっていうのはわかってるから、別に気にしないよ。あんまりピンポイントで選ばれたから、ちょっとびっくり
したけどね」
「……ごめん」
ばつが悪そうに謝るフェルパーに、エルフは笑顔を向けた。
「いいっていいって。わざとじゃないのはわかってるから。とにかく、もうちょっと色々見ないかい?ぼくとしては、こんなにいっぱい
花が咲いてるのは珍しいから、もうちょっと見て回りたいんだけどな」
「ああ、いいよ。僕もせっかくだし、色々聞いてみたい」
それからしばらくの間、二人は花を見て回った。途中、カフェで寛ぐセレスティア達三人を見かけたり、交易所から出てきたバハムーンに
捕まりかけたりしつつ、久々にのんびりとした空気を満喫していた。
やがて、少しずつ日が傾き、辺りが赤く染まり始める頃、二人は宿屋へと戻った。他の仲間はまだ外にいるらしく、部屋に戻っている
気配はない。
2026/14 ◆BEO9EFkUEQ :2011/11/09(水) 01:02:56.03 ID:UBu778wT
「どうしようか?ご飯、先に食べちゃうかい?」
「ドワーフ達は外で済ませそうだし、それもいいね。バハムーンはどうだか知らないけど」
とはいえ、バハムーンは一度交易所に行くと、それこそ一日中でも張り付いている男である。どうせしばらくは戻らないだろうと判断し、
二人は宿の中にある食堂へと向かった。
プリシアナの近くであるだけに、宿泊客はその制服が目立つ。幾人かの生徒とすれ違い、また正面にはディアボロスの生徒がこちらへと
歩いてきている。その生徒に、二人は何となく目を引かれた。
ただ歩いているだけなのだが、周囲に気を張っているのがはっきりとわかる。いかにも女性らしい、艶を感じさせる歩き方は、恐らく
踊り子学科に所属しているからだろう。それら一つ一つが、彼女がかなりの腕を持つ冒険者なのだと示している。
そのまま何事もなく通り過ぎるかと思った瞬間、後ろから大きな声が響いた。
「あーっ!ディア君、にゃ!見つけたぁー!」
途端に、ディアボロスはビクリと身を震わせ、声の主に視線を送る。フェルパーとエルフも驚き、振り返った。
そこにいたのは、同じくプリシアナの制服に身を包んだ、フェルパーの女子生徒だった。彼女は手をわきわきと動かし、ディアボロスを
狩人のような目で見つめている。
「ふっふっふ〜、ディア君、にゃ。言ったよねぇ〜?今度会ったら、女湯に引きずり込むって〜」
「っ…!」
「さぁ〜てぇ〜……覚悟、してもらうよ〜?」
今にも襲いかからんばかりの彼女を前に、ディアボロスは一つ息をつくと、懐に手を突っ込んだ。そして腕をふわりと広げたかと思うと、
真っ赤なマントが翻った。
「んにゃ?」
それこそ踊るような仕草で、ディアボロスはそれを背中へと回し、流れるような手つきで身につける。内側から腕を張ってそれを広げ、
中に何もないことを見せると、次にばさりと大きく翻した。
一瞬、ディアボロスの体がマントに包まれた。不思議なことに、マントはそのまま空中でくるくると回り、それどころかだんだんと
小さくなり始め、やがて異次元に吸い込まれたかのように消え失せてしまった。もちろん、ディアボロスの姿も一緒に消えている。
「なっ……トリックスター…!?」
「す、すごい……あんなの、初めて見た…」
思わず囁き合う二人を無視し、フェルパーの女子生徒は辺りの匂いをふんふんと嗅ぎ始めた。
「さすがディア君……だけどぉ〜…!」
耳と尻尾をピンと立てると、彼女は廊下の奥を睨んだ。
「この私から、逃げられると思うなぁ〜!」
ダン、と大きく床を踏み鳴らし、彼女は驚くべき速さで走り去っていった。その後ろ姿を、二人は呆然と見送る。
「……先輩達って、やっぱりすごいんだね」
「うん……僕も、もっと頑張らなきゃって思った。ていうか、ディア『君』って……あの人、男だったんだ」
「え、あ、そうだね……まあ、そういう人も、いるよね」
気を取り直し、再び歩き始めた瞬間、目の前のドアがガチャリと音を立て、中からドラッケンの制服を着たドワーフの生徒が顔を覗かせた。
「ん…?あ、そこの君達、ちょっといい?」
左右を見回し、フェルパーとエルフを見つけると、その生徒は気さくに声を掛けてきた。
「はい、何でしょう?」
「今さ、プリシアナの制服着た、ディアボロスの……女の子にしか見えないけど、男の子の生徒見てない?」
「その人なら今、僕と同族のプリシアナの女子生徒に追いかけられて、どっか消えました」
フェルパーが言うと、ドワーフはふんふんと匂いを嗅ぎ、納得したような表情を見せた。
2037/14 ◆BEO9EFkUEQ :2011/11/09(水) 01:03:36.88 ID:UBu778wT
「あー、わふっと面倒な子に見つかっちゃったんだねー。教えてくれてありがと」
言ってから、彼女はフェルパーとエルフをまじまじと見つめた。
「君達、モーディアルの子なんだね」
「ええ、そうです。この間入学したばっかりで…」
「ふぅん?じゃあ後輩だねー。それにしてはなかなか……いい体してるね」
舐めるように全身を眺め、やがてその視線はフェルパーとエルフの顔を交互に見つめるようになり、かと思うと、表情が妙に
だらしないものに変わっていく。
「そ、それで……二人で、お風呂にでも、い、行くんですか…?」
「な、なんで急に丁寧語になるんですか……食事に行くだけですよ」
「あっ、まず食事なんですね…!二人で……口いっぱいに……頬張って…!」
独り言のように続ける彼女に、フェルパーとエルフは思わず一歩後ずさった。
「……フェルパー、ドワーフの人ってこう、変な人しかいないのかな…?」
「モミジ先生とタンポポに失礼。この先輩が変なだけだと思う」
そんな二人の話が聞こえたのか、ドワーフはハッと我に返ったようだった。
「あっ、あっ、何でもないんですよ!?ただ、仲いいのはいいですよね!?」
「……はあ」
「えーっととにかく、ディアボロスのこと教えてくれてありがとね。あの子に見つかる前に探しに行かないと……ん?」
部屋から出ると、ドワーフはふんふんと鼻を鳴らし始めた。そしてエルフを見つめると、にまーっとした笑みを浮かべる。
「な、何なんですか…!?」
「ん〜、ちょお〜っと耳貸してくれる?」
一体何なのかと思いつつも、エルフは大人しく屈んでやった。その耳に、ドワーフが何事かをぼそりと囁くと、エルフの表情が変わった。
「えっ!?なっ…!」
さらに、ドワーフはぼそぼそと続ける。エルフの顔は真っ赤に染まっており、たまらずフェルパーが声をかけようとしか瞬間、エルフが
勢いよく立ちあがった。
「ふふふ〜、これでも先輩だし、ドクターだからねー。患者のちょっとの変化だって見逃さないんだから」
「っ…!」
「ま、頑張ってねー。結果が出なかったら、いつでも来ていいからね」
「だ、だ、誰がっ、そんなっ…!」
「あはは、またねー!」
楽しそうに言って、彼女は走って行ってしまった。まだ顔の赤いエルフに、フェルパーは心配そうに声を掛けた。
「だ、大丈夫?何言われた?」
「え!?あ、いや……ちょっと、まあ、その、からかわれた感じ……別に、大したことじゃないよ、ははは…」
結局、エルフは何度聞いても曖昧に答えるばかりで、一体何を言われたのかは謎のままだった。
2048/14 ◆BEO9EFkUEQ :2011/11/09(水) 01:06:32.16 ID:UBu778wT
夕食を終える頃には、他の仲間も宿屋に戻り始めており、セレスティアとバハムーンが一緒にいる姿は確認できた。バハムーンはいかにも
興奮気味に、交易所にどんな武器があったかを語っており、セレスティアは少し困ったような表情ながら、それを大人しく聞いている。
恐らくフェアリーとドワーフは、彼にバハムーンを押し付けて部屋に戻ったのだろう。
フェルパーとエルフも例に漏れず、バハムーンに見つからないようにその場を離れた。そこで、本来なら別々の部屋に戻るはずだったが、
あれ以来やや無口だったエルフが突然口を開いた。
「あ、あの、フェルパー。よかったらぼくの部屋で、少し話でもしないかい?」
「え、いいけど。いきなりどうした?」
「ちょっと、まあ、ね。色々、話したくてさ」
そんなエルフのズボンを、ペットは不満げにぐいぐい引っ張っている。
「君の子には、あまり歓迎されてないけど…」
「フェネ、そう言わない。それより、ミールとちょっと遊んでやっててくれないかな」
名前を呼ばれ、フェルパーのペットは彼の肩から飛び降りた。が、即座にエルフのペットに飛びかかられ、慌てて主人の肩に戻る。
「こらフェネ、いじめない……そう言わない、仲間なんだから」
結局、ペットには歓迎されなかったものの、フェルパーはエルフの部屋にお邪魔することにした。意見が聞き入れられなかったのが
ショックだったのか、エルフのペットは部屋に戻るとベッドの下に入り、一匹で丸くなってしまった。
「……フェネ、大丈夫かあれ?」
「あー、まあしょうがないよ。そっとしといてあげれば、その内機嫌も直るよ……たぶん」
それでもフェルパーは少し気になったらしく、自身のペットを側へ行かせた。普段なら威嚇や攻撃の一つでももらうところなのだが、
今回はそれもなく、黙って二匹寄り添っている。
「……相当ショックだね、あれ」
「そ、そうみたいだね……あとで何かおいしいものでもあげようかな……じゃなくって!」
急な大声に、フェルパーの尻尾がビクンと跳ねた。
「えっと……その……じ、実はさ、君に、言いたいこと……っていうか、話したいことがあって…」
「ああ、うん。何?」
「ええっと……それは、その…」
言い辛いことなのか、エルフは言葉に詰まっているようだった。そんな姿を、フェルパーは不思議そうに見つめている。
「ええっとぉ……じ、実は……その…」
「……だから、何?」
フェルパーとしては、単に先の言葉を促しただけだったのだが、彼の言葉にエルフは焦ってしまった。
「だ、だからっ……ぼくは、そのっ……こ、こういうことだよっ!」
叫ぶように言うと、エルフはガバッと上着を捲りあげた。いかにもエルフらしく、また術師らしい白くきれいな肌を見つめ、フェルパーは
しばらく固まっていた。
やがて、その薄い胸板と真っ赤な顔を交互に見つめ、耳が困ったように横向きになる。
「……えー、っと、胸が何?」
「えっ…!?あっ……ああ…………ああぁ…」
思いの外ショックだったらしく、エルフの顔は一瞬引きつり、すぐに悄然としたものに変わっていった。
「……?」
「そ、そうだよね……わかるわけないか…」
「その、だから話を…」
「じゃ、じゃあこっちだったらわかってくれるよねっ!?」
2059/14 ◆BEO9EFkUEQ :2011/11/09(水) 01:07:43.09 ID:UBu778wT
なぜか怒ったように叫ぶと、今度は立ち上がり、ベルトを外したかと思うとズボンとパンツを一気に引き下ろした。
「うわっ!?ちょっ、何をっ…!?」
「うぅぅ…!み、見ればわかるだろっ…!」
「そんなの、別に見たく…!」
言いつつも違和感を覚え、フェルパーはエルフの股間を見つめた。そしてすぐに、違和感の正体に気付く。
「……え?ちょっと……え!?」
そこに、あるべきものはなかった。フェルパーは混乱する頭を必死に整理し、エルフに掛けるべき言葉を探す。
「……エルフ、女?」
「………」
エルフは顔を真っ赤にしたまま、こくんと頷く。
「なんで男装なんか…」
「それは、えっと……こういう学校の人って、血の気の多い人が多いから、女の子の格好だと危ないって…」
それを聞いた瞬間、フェルパーの顔から表情が消えた。
「つまり、俺達全員信用してなかったってことかよ?」
「ちょっ、ち、違うっ!だってほらっ、セレスティアの話だって聞いただろ!?実際そういうことあったじゃないか!」
「……ああ、確かに」
それを聞いて納得したらしく、フェルパーの表情が戻る。
「それに、今更告白するタイミングも掴めなくて……そ、そもそもね、ぼくのうちは男兄弟ばっかりで、この格好の方が落ち着くって
いうのもあって、自分のことも『ぼく』って言った方がしっくりきて……だから、その、ずっと男装続けてたんだ…」
「ふぅん…」
未だにズボンも何も戻さないエルフから微妙に視線を逸らしつつ、フェルパーは先程から気になっていることを尋ねた。
「それで、どうして急に、そんなの僕に話す気になった?」
「そ、それは…」
エルフは耳まで真っ赤にしつつ、恥ずかしげに視線を逸らした。
「だから、それは……こ、これ…」
もはやズボンのことなど頭にないらしく、エルフは懐からピンク色のカーネーションを差し出した。フェルパーはそれを受け取ったものの、
それが何を意味するのかはまったくわからない。
「……花?」
「ああぁぁ……そうだよね、そうだったよね。君がわかるわけないよね。そ、その花言葉は、『あなたを熱愛します』って…!つ、つまり、
好きになった相手なんだから、性別明かさないとどうしようもないだろっ!?」
最後はもはや怒っているような言い方だったが、フェルパーが驚いたのはその口ぶりではない。
「え……い、いつから…?」
「……君達と会って、少ししてから…」
「しかし、なんでまた今…?」
「あの、廊下で会った先輩にさ、言われたんだ。見てるだけで満足なのかって……好きな人に、気持ちすら伝えないで満足なのかって。
ていうか、女だって一瞬でバレてた…」
「ああ、それで君あの時…」
「も、もしダメだったら慰めてあげるとか言われたけど、な、何だろうねあの先輩」
そう言ってぎこちなく笑うエルフ。その視線はフェルパーの方へと向き、同時に開きかけた口が止まった。
20610/14 ◆BEO9EFkUEQ :2011/11/09(水) 01:10:07.72 ID:UBu778wT
「まあでもフェル……あっ……と……えっと…」
フェルパーのズボンの中心が、はっきりと盛り上がっている。それが自分の体を見たためだとわかると、エルフは急に恥ずかしくなり、
慌ててズボンを上げようとした。
それとほぼ同時に、フェルパーが立ち上がり、エルフの体を抱き寄せた。
「えっ、えっ!?ちょ、ちょっ……フェルパー!?」
「……えーと」
まだ気持ちの整理は終わっていないらしく、フェルパーは妙に気の抜けた声で話しかける。
「正直、まだちょっと混乱してる……けど、僕のこと好きって言われて、そんな姿見せられて……それに、少なくとも君のことは
嫌いじゃないし、最近あれだし……ちょっと、我慢できそうにない」
その意味を一瞬遅れて理解すると、エルフは途端に慌てだした。
「ふええぇぇ!?ちょ、ちょっと待って待って!だ、だっていきなりそんなっ!?好きは好きだけど、こここ、心の準備がっ…!」
耳をせわしなく上下させ、エルフはフェルパーの腕から逃れようともがく。そんな彼女を見つめながら、フェルパーはぼそりと呟いた。
「……うん、やっぱり我慢できない。エルフ、ごめん」
「やっ、ちょっ……はう!」
薄い胸に、そっと手を這わせる。エルフの体がビクッと震え、直後にその手を押さえてしまう。
「ま、待って……こんな、は、恥ずかしいよ…!」
「じゃあこっち」
言うが早いか、今度は股間に手を伸ばす。しかしその手が触れる直前に、エルフはしっかりと手で防御してしまった。
「だ、ダメだよ!絶対ダメ!大体、その、お風呂だって入ってな…!」
「別に気にしないし、君の匂いは嫌いじゃない」
「そういう問題じゃないー!と、とにかく絶対にダメ!やだってば!」
右手で胸を、左手で股間をしっかりと防御されてしまい、フェルパーは不満げに彼女を見つめる。しかし、すぐにいたずらっぽい笑みを
浮かべると、素早く後ろに回り込んだ。
「ちょ、何……ひゃっ!?」
耳に、ざらりとした感触。途端にエルフの体がビクンと跳ね、刺激から逃れるように耳が垂れる。
「み、耳ダメっ……ダメ、ダメだってば!やっ……ああっ!」
耳朶を舌全体でなぞり、途端に下がったそれを唇で挟む。今度はその刺激に耳が跳ね上がり、先端が口内に入り込む。それを甘噛みすると、
エルフは切なげな声を上げ、力なく身を捩る。
「うあっ……フェルパー、ダメ…!はうっ……やめ、て…!」
「耳、弱いんだ」
エルフの声を無視し、フェルパーは執拗に耳を責める。やめさせようにも、エルフの両手は塞がっており、できることと言えば頭と耳を
動かして逃げるぐらいしかない。
逃げ回る耳を追い、優しく噛んで捕える。
「いっ!?つぅ…!」
相当に敏感らしく、できる限り軽く噛んでいるのだが、エルフは時折苦悶の悲鳴を上げる。するとそれを詫びるかのように、フェルパーは
柔らかな舌先でそっと噛んだ部分を舐めてやる。
「や、め……フェルパー、もう、やめて……お、おね……がい……だからぁ…!」
上ずった声でエルフが哀願する。もはや身を捩ることもなく、弓なりに強張った体をぶるぶると震わせるばかりになっている。
そんな彼女の姿は、フェルパーにとってむしろ扇情的に映っていた。熱く火照った体をさらに強く抱きしめ、彼女の声など
聞こえていないかのように行為を続ける。
20711/14 ◆BEO9EFkUEQ :2011/11/09(水) 01:10:47.00 ID:UBu778wT
耳たぶを噛み、その部分を撫でるように舐め、たまらずエルフが耳を下げると、上からかぶりつくように甘噛みする。
「あぅ…!やっ、やっ…!フェルパ……フェル、やめっ……はっ、くっ…!もっ、だ、ダメっ…!ほんと、ダメっ…!」
経験はなくとも、切れ切れの声からは彼女が相当に追い詰められていることが見て取れた。
とどめとばかりに、フェルパーは耳たぶから内側へ、さらに耳孔をほじるように舌を這わせた。
「あっ!?やっ、フェル、それっ……ぐっ!!ああっ!!」
ビクンと一際大きく体を震わせ、エルフの体が折れんばかりに仰け反った。そのまましばらく固まっていたと思うと、エルフの体から
突然ガクンと力が抜けた。
「おっと!?エルフ、大丈夫?」
驚いて尋ねると、エルフは蕩けたような目でフェルパーを見つめる。
「あ……あたま、まっしろで……めのまえ、ちかちかする…」
普段の喋りからは想像もつかない舌足らずな口調で、エルフが答える。もはや隠す気力も、隠そうという意思もないのか、体を隠していた
両手は耳と同じくぐったりと垂れ下がっている。
その姿に加え、エルフから感じられる匂いにはすっかり発情した雌の匂いが混じっている。フェルパーは片手でエルフを抱きつつ、
下に穿いていたものを脱ぎ捨てた。
エルフを抱く腕を腰の辺りまで下げ、覆い被さるように上半身を折る。彼女に抵抗する力があるはずもなく、そのまま机に押し付けられる。
「あう……フェルパー、なに…?」
「………」
何も言わず、すっかり濡れそぼったエルフの割れ目を押し開くようにして、先端を押し付ける。そこでようやく、エルフはフェルパーが
何をしているのかを悟った。
「ふえ……ま、待って…!フェル…!」
エルフが言い終える前に、フェルパーは彼女の腰をしっかりと掴み、腰を突き出した。
「あくっ…!う、あああっ!」
太股を雫が伝うほどに濡れており、しかも一度達した直後だったため、痛みは意外なほどになかった。むしろ、体内に感じる熱いものの
感触は、エルフに弱いながらも快感を与えていた。
「はあっ、く…!フェル、パぁ…!」
「うう……エルフの中、すごく気持ちいい…!」
耳にフェルパーの吐息がかかり、エルフはぶるっと身を震わせる。彼の声に答えようとした瞬間、フェルパーは不意に腰を動かし始めた。
奥まで刺し込み、中の感触を楽しみながらゆっくりと引き抜く。かと思うと獣のように激しく動き、たまらずエルフが苦悶の声を上げると、
一転して気遣うような動きに変わる。
その変化に富んだ刺激は、エルフが感じていた苦痛を快感へと変えていく。まして、一度達して蕩けた頭には、獣の如く求められる刺激も、
気遣われるような優しい刺激も、等しく快感と喜びに変わっていく。
「うあぅ…!フェルパー……フェルパぁぁ…!」
「エルフ……エルフっ…!」
20812/14 ◆BEO9EFkUEQ :2011/11/09(水) 01:11:26.03 ID:UBu778wT
お互いを呼び合う声が、二人の快感をさらに高めていく。フェルパーの動きは少しずつ乱暴なものとなり、それに伴ってエルフの腰を抱く
腕にも力が入る。
「エルフっ……僕、もうっ…!」
呻くように言うと、フェルパーはエルフの腰を抱え上げるように掴み、奥へと強く突き入れる。それが幾度か繰り返され、さすがにエルフも
痛みを感じ始めた時、フェルパーが一際強く突き入れた。
「くぅぅ!」
「う……ああぁぁ…!」
彼のモノがビクンビクンと体内で跳ね、同時にじわりと温かい感触が広がる。もはやエルフの頭は思考を失っており、それが何を
意味するのかはわからなかったが、その感覚は妙な安心感と満足感を与えてくれた。
最後まで注ぎ込んでも、フェルパーは動こうとせず、エルフもまた無理に動こうとはしなかった。ただ、強い快感の余韻と、
大きな満足感に、二人はじっと浸っていた。
一体どれほどそうしていたのか、太股を何かが伝う感触に、エルフはようやく腰を引こうとし始めた。それに気付き、フェルパーも
ゆっくりと彼女の中から引き抜いた。
「んっ…!あう……フェルパーの、あふれてる……ぼくの中、いっぱい…」
陶然と呟くエルフに、フェルパーはそっと顔を寄せる。それに気付き、エルフが顔を上げると、フェルパーはそっと唇を重ねた。
「ん…」
労わり合うような、唇だけの優しいキス。飛ばしてしまった段階を踏み直すかのように、二人はずっとじゃれ合っていた。

昂っていた気持ちも落ち着き、火照った体も熱を失ってから、二人は体を洗い、仲良くベッドの中にいた。まだ行為の余韻が多少
残っているらしく、二人ともどこかぼんやりした目をしている。
「……ねえ、エルフ」
「……んー?」
疲れから気だるさもかなりあるらしく、二人の言葉は一拍ずつ間が空いている。
「……明日さ、みんなに性別のこと、話そう。バハムーンもセレスティアも、君が言うような人じゃない」
「……うん、そうだね」
それだけ言えば会話は十分と思ったらしく、二人は目を瞑ろうとした。が、クスンクスンと鼻をすするような音に、二人の耳が同時に
動いた。
「あ……フェネ、何も泣くこと……いや、そんなことない、そんなことないってば」
どうやらずっとベッドの下にいたペットが、いよいよ主人が離れてしまうと思って、寂しさから泣いているらしかった。
「はぁ……じゃあフェネ、君もおいで。みんな一緒に寝よう。それならいいだろ?」
「みんな、か。じゃあミール、君も来るといい。こんな機会、滅多にない」
二人が声を掛けると、ベッドの下からそれぞれのペットが這い出し、ぴょんと飛び乗ってきた。エルフのペットは彼女の脇の下に陣取り、
フェルパーのペットは枕元で丸くなる。
「ふふ。やっぱり、ペットがいるっていうのはいいね」
そう言ってエルフが笑いかけると、フェルパーも笑顔を返す。
「そうだよね。やっぱり君とは、話が合うよ」
布団の中、そっと手を伸ばし、手を握り合う。一度恥ずかしそうに笑みを交わすと、二人は今度こそ目を瞑った。
可愛いペットと恋人とで寝るベッドの上、二人の寝顔はとても幸せそうだった。
20913/14 ◆BEO9EFkUEQ :2011/11/09(水) 01:12:21.89 ID:UBu778wT
「そういうわけで……ごめん。君達を騙してたことになるけど、ぼく、本当は女なんだ」
翌朝、宿の食堂に集まった仲間達に、エルフは自身の性別を告白していた。それに対し、フェルパーを除く四人は言葉を失っていた。
「……えっ……と…」
「………」
四人は唖然とした顔でエルフとフェルパーを見つめ、次にそれぞれの顔を見回し、誰かが口を開こうとすると絶妙なタイミングで別の誰かが
口を開き、それを同時に察知して口を閉じる、という行為を繰り返していた。
しかしそれでは埒が明かないと思ったのか、四人は奇しくもまったく同時に口を開いた。
「隠してたつもりだったんですか?」
「今更かよ」
「気付いてないと思ってたの!?」
「知ってるけど」
同時に聞こえた四つの声が、どれも既に知っていたという内容であったことを知ると、今度はエルフとフェルパーが驚いた顔をする。
「えっ!?な、なんで!?」
「なぜって……あなたの声は、どう聞いても男性の声ではないですし」
「生理の時は、血の臭いぷんぷんしてた」
「フェアはねー、エルがトイレ行くとこ見たからだよー」
「お前のフェルパーに対する態度、どっからどう見ても恋する乙女じゃねえかよ」
今度は四人が順番に答え、その内容からエルフは割とあっさりバレていたことを知る。
そこで、不意にフェルパーが口を開いた。
「ちょっと待て。じゃあお前等、知ってて俺にだけ教えてくれなかったのかよ」
その声には明らかに怒りが含まれ、一種の迫力の籠った声だったが、今回ばかりは誰一人怯まなかった。
「まさか気付いてないとは思いませんよ」
「気付かない方がおかしいでしょー」
「お前が鈍すぎるだけだ。お前以外は全員気付いてるじゃねえかよ」
「馬鹿じゃないの」
そう言われてしまうと、フェルパーは何も言えなかった。
「……ごめん」
「おお、かつてないほど早いな、お前が怒り鎮めるの。この先、最短記録は破れそうにねえな」
「け、けど……バハムーン、君、完全にエルフのこと男扱いしてただろ?女の子だったら即行口説こうとする癖に、なんで今回は…」
フェルパーの質問に、バハムーンはむしろなぜそんな質問をするんだというような目で彼を見つめる。
「そりゃ、当の本人が女扱いされたくなさそうだったからな。女の子には優しくするもんだ。となると、口説いたり何したりで
女扱いするわけにはいかねえだろ?それに、割とすぐお前に惚れちまったしな」
「ええっ!?そ、そこまでバレてたのかい!?」
「それも気づいてなかったんですか!?」
思わず口走って、セレスティアはあっと口を押さえた。
「とと、失礼」
「なぁんだ。エル、隠してるつもりだったんだー。じゃあからかい方変えればよかったなー、ひひ!」
言われてみると、フェアリーはよく二人のペットの仲が悪いことについて、主人が取られそうで嫌なんだろう、という言い方をしていた。
そしてそのことから、二人はさらなる恥ずかしい事実に気付く。
21014/14 ◆BEO9EFkUEQ :2011/11/09(水) 01:13:03.93 ID:UBu778wT
「フェ、フェネ。もしかして君、ぼくのそういうの…」
「……ミール、正直に答えろ。お前、エルフの性別とか、そういうのとか…」
ペットに話しかけた二人は、一瞬の間を置いて同時に両手で顔を覆った。
「ペット以下のヒーローと、ペット以下の精霊使い。似合いなんじゃないの」
「うう……正直泣きたい…」
ドワーフの悪意に満ちた言葉にも、二人はもはや反論すらできなかった。そしてなお悪いことに、これまでの流れはフェアリーに
二人をからかう格好の材料を与えてしまっていた。
「……でさー、エルとフェルが揃ってそんなこと話しに来たなんてさぁー……それにぃー、フェルは昨日までエルの性別、
知らなかったんだよねー?どうやって教えたのか、フェア興味あるなぁー、ひひひ!」
「なっ!?そっ、そんなのどうだっていいだろ!?き、君達に今話したみたいな感じだったよ!」
「うっそだぁー!今、ごまかそうとしてたもんねー!」
「お嬢ちゃん、やめてやれ。こいつらもう相当恥ずかしい思いしてるんだからよ」
バハムーンの言葉に、フェアリーは実に楽しげな笑みで答えた。
「やめれるわけないでしょー?こんな面白いことー。フェア悪くないもーんだ。で、エルとフェルは昨日何してたのかなー?」
「頼む……ほんと頼む、もう僕達のことは放っておいてくれ……言いたくない」
「言いたくないようなことしてたんだぁー?へーえ、ヒーローなのに悪いことしてたんだー」
「べ、別に悪いことじゃっ…!」
「じゃあどんなことー?悪いことじゃないんなら言えるよねー?ひひ!」
そんなやりとりを、バハムーンはもはや止めようともせずに見つめていた。
「……なあ、セレスティア」
「何です?」
「この場合、黙ってたエルフが悪いのか、気付かなかったあいつが悪いのか、それとも言わなかった俺等が悪いのか、どれだと思う?」
その質問に、セレスティアはにっこりと笑って答えた。
「わたくし達が悪い、ということはないでしょうね。あちらのお二人に関しても、神はお許しになられているようですが」
「自業自得とでもいうとこか……あとは、運が悪かったってとこか?」
「そうですね。フェアリーさんにとっては、むしろ運が良かったようですけれど」
「ま、別に関係にひびが入ったわけでもなし。隠し事もなくなったことだし、エルフの恋は成就したみてえだしな。からかわれるぐらいは
ご愛敬ってとこだろ」
「……実は、少し嫉妬してません?」
セレスティアの言葉に、バハムーンは悪戯っぽく笑って視線を外した。
「……ちょっとな」
「やっぱり」
「けどまあ、幼馴染が幸せになって腹が立つなんてことはねえよ。俺もいつかは、欲しいもんは手に入れてやるさ」
まだまだ解放されそうにないエルフとフェルパーを見ながら、バハムーンは楽しげにそう言った。
この日以来、フェルパーとエルフの関係は少しだけ変わった。ただの気の合う友人から、恋人へ。そして、最も守りたいものへ。
それに伴い、ペットも主人の変化を察知し、お互いのペットとも少しだけ仲良くなった。
その代わり、両者とも意外な鈍さや抜け具合を、仲間にからかわれるようになったのは言うまでもない。
二人の仲は進展したものの、それ以外の仲間には妙な弱味を握られてしまったと思う二人であった。
211 ◆BEO9EFkUEQ :2011/11/09(水) 01:15:25.77 ID:UBu778wT
以上、投下終了。
顔タイプ2、髪型3にしたエルフは最初から男に見えなくて参った。
それではこの辺で。
212名無しさん@ピンキー:2011/11/09(水) 01:45:01.08 ID:1UToSNZZ
GJ
エルフさんが可愛すぎてたまらんぜ
あと相変わらずなドワーフに安心した
213名無しさん@ピンキー:2011/11/10(木) 00:41:00.09 ID:FeYTY/F7
以前ドワ子がエルフはうんぬん言ってたのを思い出したぜ。
個人的にあのパーティすごく好きだったので、その後がちょっとわかって嬉しかったわ
214名無しさん@ピンキー:2011/11/10(木) 00:43:07.98 ID:FeYTY/F7
いい忘れてたけど乙なんだからね!
215名無しさん@ピンキー:2011/11/14(月) 22:43:11.57 ID:Ben08ssk
>>189でちょろっと出したクラ×クラを書こうとしてなんかできた副産物的小ネタ
クラッズの外見的成長はどんな感じなのかなーと


クラ(♂)「あにきー、エロ本見っけたー!」
ヒュ(♂)「食堂でそんなこと叫ぶな!」

クラ「うぉー!すげー!」
ヒュ「エロ本ってか水着写真集だな……クラッズの。犯罪臭すげぇ」
クラ「でもあにき、これ大人だぜ」
ヒュ「これでか。うちのクラ子と大差ないけど」
クラ「チッチッチッ、あんなツルーンでぺターンな小娘とは比べ物になんないね」
ヒュ「うーん?同族にしか分からない差か。タカチホのウヅメ先生くらいになれば分かるけど」
クラ「アレは何か別の血が混ざってると思う」
ヒュ「さいで。この写真もたいがいぺタンに見えるんだがなぁツルンはヌードでないと分からないけ……ど…?」
クラ「どしたのあにき?」
ヒュ「おまえ、なんでクラ子がツルンって知ってるんだ?」
クラ「……あ、ちょ、ま!」
ヒュ「こら逃げるな!」
216名無しさん@ピンキー:2011/11/15(火) 00:20:43.28 ID:2JzcTTFo
クラのが実は年上だったりするんだな
いくつとしとってもそんな感じなんだろうけど
217名無しさん@ピンキー:2011/11/15(火) 23:34:56.49 ID:RdWbwpkW
つまり>>215の台詞はクラとヒュマが逆、と
犯罪臭すげぇ
218名無しさん@ピンキー:2011/11/19(土) 08:23:50.08 ID:B0p9EOM5
流石合法ショタロリ種族は格が違った
219名無しさん@ピンキー:2011/11/19(土) 21:55:26.25 ID:7eQLrakV
>>184の人のネタで書いてみたけど……投下してもいいもんかな
220名無しさん@ピンキー:2011/11/19(土) 21:59:23.78 ID:xA5zvyum
いいんじゃないか?
全裸で待機してる
221名無しさん@ピンキー:2011/11/19(土) 22:21:13.39 ID:7eQLrakV
じゃ投下
改めて見直したら184の人がくっさーーって言ってた理由がよくわかって悶えた
酒の力恐るべし
222ザッハちゃんと呪い:2011/11/19(土) 22:22:37.04 ID:7eQLrakV

「うう〜〜。悔しいのだ。恨めしいのだ。う〜〜、うう〜〜」
「いや、俺に言われてもな」

 ドラッケンに災いをもたらす(かっこわらい)魔女、ザッハトルテの文字通り移動する拠点を俺が見つけたのはただの偶然だった。
 仲間とはぐれ半ば遭難して、小川で獲った魚を炙っている所に『美味しそうなのじゃ』とふらふらと家ごと寄ってきたのを偶然というのならば、だが。

 おなかが減った→いい匂いがする→エンカウント。この理屈、気まぐれで悪意に満ちた神様の仕業としか考えられない。
 すわ俺もここまでか申し訳ありません御館様クシナ様の留学に合わせて学びそして我が車輪となれとの御命令果たせそうもありませんかくなる上は……とか覚悟を決めたのになぜか懐かれていた。
 眼前でよだれを垂らして邪気のないきらきらした目で見つめられれば、そこはそれ、武士の情けというやつだ。……きょうび幼児でももう少し邪気があるものなのだけどなぁ。

「そもそも、だ。何故お前は呪いを掛けた後、わざわざ俺たちの前に現れた」
「ふっふ〜ん、それはこの私の偉大さをみなに幅広く知らしめるためなのじゃ」
「そのまま隠れてればいいだろう? 謎の奇病と思われてそれで終わりだ」
「そ、それでは私の存在が誰にも気づかれないではないか! お主は鬼か、悪魔か!?」

 怒られた。理不尽だ。
 それを言えば俺とザッハトルテとの間柄も謎だ。初めて出会ってから小競り合いの絶えない関係のはずなのだが、それが――当然俺たちの勝利で――終わるたびに、こうして宿での秘密の反省会を繰り返している。
 そしてこの気まぐれ魔女の行動も俺の理解の範疇にない。『座り心地が良さそうだから』とベッドに腰掛けた俺の上に鎮座し、『私は寒がりなのだ』と駄々をこねては抱きしめさせる。
 そしてそれ以上に訳が分からないのが、俺自身がこの時間を手放したくないと思っているその事だ。

223ザッハちゃんと呪い:2011/11/19(土) 22:23:48.74 ID:7eQLrakV

「なんぞ難しい顔をしておるな」
「……御館様に忠義を尽くす為、かの名高い災いの魔女殿の呪いをご教授願うにはどうすればいいか考えてたところだ」

 心を見通されたような感触を誤魔化すためとはいえ、我ながら何と慇懃無礼な。……そこで嬉しそうな表情にならない。そんなんだからアホの子って言われるんだぞ。

「そうかそうか。お主も改めてこの私の恐ろしさに感動と旋律を覚えたということか」
「そういうことにしておいてくれ。そうだな……不作の災いをかけるにはどうすればいい?」
「何のためにそんな呪いを知りたいのだ?」
「御館様の敵を弱らせるために、そこの領地を不作にする」
「そ、そんなことをしたら皆が飢えて苦しむではないか!? ダメだ! そんなのは絶対にダメなのだ!!」
「……じゃあ大雨の呪いを教えてくれ」
「それで、どうするつもりなのだ?」
「御館様の敵の運河を氾濫させる」
「それじゃお百姓さんだけでなく魚を取る人や旅行者も難儀してしまうではないか!? 絶対に教えないのだ!」
「ならば日照りの呪いを……」
「お主はなぜ皆が困って恐ろしい目に会うような呪いばかり選ぼうとするのだ!? この私の目の黒いうちは絶対にお主にそんな事はさせんからな!」

 ……まったくもって。呪いだの災いだの大層な渾名で呼ばれているけれど。ここまで根っこが一般人過ぎるのもどうかと思う。こいつは絶対に悪の要素は持ってない。俺のほうがよっぽど悪人じゃないか。

224ザッハちゃんと呪い:2011/11/19(土) 22:25:28.19 ID:7eQLrakV

「何を笑ってるのだ?」
「笑ってる? ……ああ、なるほど。いや、そうだな……ザッハが教えてくれないんじゃ仕方ない。……俺も一つ呪いを知ってるんだが、試してみようかな?」
「む、それは私にと言う事か? ふふん。ならば好きにやってみるがよい。この私に呪いをかけようなど百年早い。えーと、馬の耳に念仏というやつなのだ」
「それは釈迦に説法だ。一応確認しておこう。この呪いは死ぬまで消えない呪いになるだろうが……本当にいいんだな?」
「お主の呪いなどへっちゃらへーの余裕のよっちゃんなのだ。ほれほれ〜〜。一生懸命必死になって精々頑張るがよいぞ」

 じゃあ、遠慮なく。俺の膝の上に座ってるザッハを持ち上げ、正面から向き合う。座らせているときから思うのだが、重さなんて全然感じない。
 俺の腕の中のわるいまじょは突然の行動にちょっとだけびっくりしたようだったが、すぐに自信満々余裕綽々の表情で俺を見つめ返してきた。
 暖かくて柔らかい、滑らかな頬を両手で挟み――何も言わせずにその唇を塞いだ。

「……!? っ、……! ……っ、ぁ……っ!」

 左手を頭に右手を腰に。反射的に逃れようとする身体を拘束し上唇から下唇へ。わずかに濡れた艶かしい唇を味わい強く吸い、抵抗が弱まった瞬間に口腔に舌を潜り込ませ思うままに蹂躙する。

「っぁっ! や……ぁ、んっ」

 時計の針が半周する頃には既にザッハの身体からは力が抜け、痙攣するように時折動くだけ。不埒な侵入者を押し返そうとする小さな舌を絡めとる度に吐息が漏れる。
 開放はきっかり一分後。短いはずの時間がやけに遅く感じられた。

225名無しさん@ピンキー:2011/11/19(土) 22:26:55.12 ID:7eQLrakV

「……っ、あ! っ! ……お、お、おぬっ、おぬっ! おおお主……っ!」
「唾液で橋ができて……滅茶苦茶エロいぜ?」
「〜〜〜〜〜っ!!」

 おでこから顎の先まで真っ赤に染めて改造制服の袖で口元を一生懸命ごしごし拭う。そんな仕草が凶悪なまでに可愛らしい。
 肩を優しく押すと抵抗もなくザッハの身体がベッドに沈んだ。ぎしと小さく軋み音。

「……ぁ」
「俺のかける呪いはね――」



 ――俺のことが頭から離れなくなる呪い



 季節は秋深く。長い夜は始まったばかり。
226名無しさん@ピンキー:2011/11/19(土) 22:29:35.00 ID:7eQLrakV
いじょ
ザッハちゃんマジ可愛い
膝の上に乗っけてなでなでしたい

……ところでゾンビパウダーってすごく、こう、ムラムラくるアイテムですよね?(マテコラ
227名無しさん@ピンキー:2011/11/20(日) 12:56:06.48 ID:m8vRLXV8
乙だよ、ザッハちゃんかわええのう
228名無しさん@ピンキー:2011/11/23(水) 15:49:51.08 ID:XcLSOZ48
GJ、ザッハちゃん可愛い抱きしめたい
ふにゃふにゃで柔らかそう

……ところで、ゾンビパウダーは良いアイテムですよねぇw
229名無しさん@ピンキー:2011/11/23(水) 18:39:57.74 ID:/ilVBm5C
パネェ先生に土下座したらゾンビパウダー譲ってくれそう。
とうぜんザッハちゃんに使っちゃうよ。
やめたいのに、とめたいのに
やめられないとまらないってのはどんな気分だろうねうふふ
230名無しさん@ピンキー:2011/11/24(木) 00:02:44.78 ID:VE2CjkFV
誰かゾンビパウダーネタでやってくだされ。
パネエ×ザッハとか色々派生しそうだw
ディモ姐さん×ストレガとかさあ・・・
231名無しさん@ピンキー:2011/11/24(木) 12:20:09.67 ID:QzBzNkKw
やるとしたら洗脳効果を取り除いたゾンビパウダー改とかになるかなぁ
鬼畜モノ好かんし、反応無いザッハちゃんグチョグチョにするのも……ありかもしんない
232名無しさん@ピンキー:2011/11/24(木) 23:18:15.77 ID:/pZA8mUH
ザッハ「ふっふっふー、遂に安全なゾンビパウダー改が完成したのだー!」
ディレ「面白そうなもの作ってるわねぇ。じゃぁ早速試してみましょうか。えいっ♪」
ザッハ「ぶふぅっ!?」

オチはセルフサービスで
233名無しさん@ピンキー:2011/11/24(木) 23:22:43.63 ID:/pZA8mUH
いつもモとレを間違えるんだ……
ごめんね姉さん
234名無しさん@ピンキー:2011/11/24(木) 23:38:07.93 ID:QlqDdWAX
パネェ先生もナイトメアパウダーは無くなったって言ってたけど
ゾンビパウダーは無くなったとは一言も言ってないもんな。
飴状に加工してもらってザッハちゃんにプレゼントしちゃうようふふ
235名無しさん@ピンキー:2011/11/25(金) 23:55:15.07 ID:mkVaPUht
パーネ先生「ザッハトルテさん、新しいお友達の>>234さんですよー。仲良くしてあげてくださいね、うふふふふ」
ゾンビパウダーを>>234に振りかけながら。
236名無しさん@ピンキー:2011/11/26(土) 01:01:19.30 ID:yYqKfjrU
>>232 誰かこの二人でネタ書いてくれることを祈るか・・・
>>235・・・・でその後はどーなるのやら・・
237>>235:2011/11/26(土) 02:49:46.35 ID:Mg8hdngD
>>236
ザッハが触れるか触れないかギリギリのところまで近づいては離れる焦らしプレイ。(決して触れません。)
薬を使ってイタズラしようとしたお仕置きらしいですよ。
238ディモレアさん家の作者:2011/11/27(日) 14:35:50.27 ID:um7bIte6
とりあえず>>234の冥福を祈る。
やはりザッハちゃんはエンカウント→青姦の流れだろうに。

間開いてごめんなさいなっと。先輩の続きでごんす。
239英雄王の碑文 心つなぎ 2話:2011/11/27(日) 14:36:57.00 ID:um7bIte6
「ギルギル、起きて。ここまで来ればもうすぐブルスケッタ学院に着くよ」
 ドリィの上で横になって寝ていたギルガメシュを、アスティがそう言って起こすとギルガメシュはようやく眼を覚ました。
「ん……ああ、背中に載せてもらって悪ぃな」
「ううん、気にしないで」
 ギルガメシュは大きく伸びをすると、視界の下の方に幾らかの建物が見える。
 あれがブルスケッタ学院か、と思う。確かに歴史が長いように見える。まぁ、ギルガメシュがいたパルタクスは比較的若い学校だったが。
「…じゃあ、私はこれで。ギルギル、また会おうね」
「おう。あんがとな」
 ギルガメシュはそう答えてひらひらと手を振り、ドリィの背中から飛び降りた後、翼を器用に使って滑空する。空を自由に、とまでは行かずとも滑空ぐらいなら出来る。
 そして文字通り滑空した状態のまま―――――ブルスケッタ学院の校門をくぐった。

「ようこそ! ブルスケッタ学院へ!」
 見学に来た、とやってきたギルガメシュに対してブルスケッタ学院は信じられない事に、文字通りその歓迎の言葉と案内役の生徒をつけてきた。
 クロスティーニ学園もまだ全部見て回ったわけではないが、パルタクスやランツレート、マシュレニアといった各校に比べると外部者にフレンドリーな気がする。
「今日の案内役を任されました! なんでも聞いて下さい!」
 メガネをかけたクラッズの少女は嬉しそうにそう言うと、ギルガメシュを先導して歩き出す。
「ブルスケッタは魔法をメインに学んでるって聞いたが……資料とか多いのか?」
「はい、とても多いですよ! 古くから炎・水・雷・土の四大属性に加え、光・闇、味方に力を与える補助魔法に回復魔法、精霊魔法から死霊魔法、風水魔法……ありとあらゆる魔法の資料が蔵書として所在します。他校の生徒も感心するぐらいなんですよ! すごいです」
 まぁ、ギルガメシュとて武術一辺倒ではない。君主学科は回復魔法や光属性魔法も扱うので、それへの参考になるかも知れない。
「見に行ってもいいか?」
「はい、どうぞ! 今はちょうど、他校の生徒さんが閲覧してますよ」
 クラッズの少女に先導されつつ図書館へと向かうと、図書館だというのに何故か奥の方で何人かの生徒達が盛り上がっていた。
240英雄王の碑文 心つなぎ 2話:2011/11/27(日) 14:37:29.22 ID:um7bIte6
「えー、絶対こう来て、こう書いてこうの方が効率的だべー?」
「無茶苦茶言うな。効率的ではあっても、この構築式は明らかに見づらいだろう! これが俺流構築式だ。美化委員副委員長が言うには間違いない!」
「えー、フランはこの方がいいと思うよなー?」
「ごめん、リモン。こっちの方が見やすいし分かりやすい……で、でもリモンはこんな構築式書けるんだから大したものよ! うん!」
「それは言えている。こっち側の錬金術はノームしか扱えないなんて、実に興味深いな。ヒューマンはどう……」
「…………」
「ヒューマンさんは先程からずっと蔵書を読んでらっしゃいますわね。よほど気に入ったのでしょうか」
「まぁこんな凄い蔵書に触れられる機会なんてそうそうないからな」
「……イベリオン!」
「待て!? 図書館内で試すなー!!!!」
「あの声は…」
 ブルスケッタの制服を着ている生徒と錬金術について話すディアボロス、魔導書を読んでいる間に魔法を試したヒューマン、そしてその隣にいるセレスティア。
 全員、見覚えのある制服。
「お前ら無事だったのか」
「あれ、ギルガメシュ君? 無事だったのね…」
 セレスティアが慌てて顔を挙げ、それにディアボロスとヒューマンも振り向く。
「先輩! 生きてたんですね」
「どうにかな。お前らも無事で何よりだ」
「ああ、そうだ。先に紹介しておきますよ、先輩。こちらはブルスケッタ学院の…」
「リモンだべ」
「フラン。よろしく」
 先程ディアボロス達と話していたノームの少年とディアボロスの少女はそう名乗ると、ギルガメシュと一度握手を交わす。
「……あんた強いね」
 フランは少しぞっとしたような声でそう言った後、席へと戻る。
「仮にも学園最強でしたものね」
 セレスティアが笑いながら答える。確かに、今は過去になってしまったかも知れない、最強の名。
「何時だって取り戻すさ」
 そう答えた後、ふと思いだしたようにギルガメシュは口を開く。
「そういやエルフはどうした?」
「ジュースを買いに行ったよ」
「すんません、おまたせして…って先輩!?」
「エルフ。図書室では静かにな」
 どうやらこの世界での日々も、色々と面倒くさい事になりそうだな、とギルガメシュは思った。
241英雄王の碑文 心つなぎ 2話:2011/11/27(日) 14:37:59.09 ID:um7bIte6
 迷宮の中を、3つの影がさまよっていた。
「おい、出口はこっちで合ってるのか?」
 戦闘を歩くビネガーがそう後ろに声をかけると、次を歩くコッパは首を横に振る。
「オイラが知るかよ…ほら、よく言うだろ? 右の壁に沿って歩き続ければ出られるって」
「一向に進んでる気がしないけどな!」
 コッパの言葉にビネガーは苛立たしげに返す。
「うるせぇよ! オイラだって別にそれが正しいとは…」
「でもやってんじゃん」
「わかんねぇからやってんだろ」
「無駄足だったらどうすんだよ」
「だからそれもまだわかんねぇだろ」
 二人が言い争いを始めた時、近くでがさりという音が聞こえた。
「「!」」
「も、モンスター…!」
 コッパとビネガーが凍りつく中、その後ろでアンが恐ろしげに声をあげる。
 エリマキゾンビと食われかけミイラ、更にツインヘッドとなかなか強力なモンスターが、三人を囲んでいた。
 だがしかし、それに対抗する手段が無い。何故なら三人とも今素手なのだ。
「…どうする? 逃げるか?」
「逃げるが勝ち…だよな! アン、逃げるぞ!」
「う、うん!」
 三人が尻尾を巻いて逃げ出そうとした時、エリマキゾンビが突進してきた。
 先頭を走ろうとしていたコッパは見事に体当たりを食らってバランスを崩す。
「いでぇ!」
「バカっ、倒れんな!」
 続いてビネガーもそれにつまずき、更に後続のアンもビネガーの背中に当たる。
 そしてそのまま三人は倒れこみ、そこへ次々とモンスターが文字通り襲いかかる。

 ツインヘッドの一撃がビネガーを襲う。
 背中から文字通り強烈な一撃を食らったビネガーは飛びそうになる意識を痛みが強引に引き戻すという苦しみを味わった。
「ぐっ……」
 立ち上がろうと慌てて手を振り回すが、その腕を食われかけミイラが引っ掻き攻撃を加える。
 鮮血が飛び散る。
 更に食われかけミイラはビネガーの背中へと襲いかかるがビネガーは慌てて横へと転がった。
 それ自体は責められたものではないが、それは下にいたコッパを無防備に晒してしまった。
「ぎゃあああああああ!!!!」
 コッパは腹を大きく抉られ、悲鳴をあげた。
 ビネガーが慌てて顔を挙げようとした時、エリマキゾンビが再び体当たりを浴びせた。
「やめて、やめてぇぇぇっ」
 そして別の後続はアンへと襲いかかろうとしていた。
 食われかけミイラとエリマキゾンビによって壁に抑えつけられたアンは肩や手足に噛み付きや引っ掻き攻撃を何度も食らっていた。
 殺される、とアンは思いかけた。
242英雄王の碑文 心つなぎ 2話:2011/11/27(日) 14:38:22.06 ID:um7bIte6
 コッパは腹を抉った食われかけミイラの腕に噛み付いていた。
 強引に攻撃を止めると、手が数回迷宮の床を彷徨い、落ちていた石を掴んで盛大に殴りつける。
 そして食われかけミイラが崩れ落ちると同時に、石をそのまま近くで床に倒れかかっていたビネガーへと投げ渡す。
 ビネガーは受け取るやいなや、夢中で反撃を開始した。
 コッパも素手でそれに続き、鮮血を垂らしながらも彼らは戦いを始める。そしてそれを見ていたアンは少しだけ勇気を取り戻した。
 やれるだけの事はやろうとばかりに、自身を押さえつけていたエリマキゾンビの顔を掴み、ありったけの力を集めてファイアの魔法をぶつける。
 十数匹のモンスターは彼らの反撃に驚いたのか、少し尻込みしかけていた。だが、三人はどうにか体勢を整えていた。

 そして気付いたのだ。
 武器がなくても、己の体を、今まで覚えた魔法を、或いは自分の脳から思いつく戦略を武器に戦う事は出来るのだと。
 三人は再び身構え、今度はしっかりとした足取りで敵へと襲いかかる。
 コッパはその力強いドワーフとしての拳で。
 ビネガーはディアボロスが持つ、強靭な肉体とブレスを武器に。
 アンは自らが持ちうる魔法を最大限に使って。
 鮮血が飛び散り、悲鳴が上がり、その中を、三人は進む。

 そして数分後、全てが終わった後で、三人は。
 倒れこんだ。
「…死ぬ…」
「ぁぁ……いでぇ…手ぇ、いだい…」
「こ、怖かったァ…」
 コッパ、ビネガー、アンはそれぞれの感想をもらしつつ、床で倒れこんだまま、それぞれ伸びをする。
「動けねぇ…アン、ヒールかけて…」
「俺にも…」
「少し待ってお願い…」
 アンはしばらく床に倒れこんで息を整えていると、ビネガーはふと喉が乾いている事に気付いた。
 そりゃそうだ。何せ食料も何も無く放り出されたのだ。あれだけ動けば喉も渇く。
「お……」
 視線を彷徨わせていると、少し離れた場所にディープゾーンがあり、暗くてよく見えないけれどとにかく水がある事は確かだった。
 ビネガーは文字通りそこまで這って行くと少しだけすくって飲む。
 冷たい。
 続いて顔を突っ込んだ時、コッパとアンもビネガーが水を飲んでいる事に気づき、慌てて側へと寄ってきた。
「畜生、オイラにも飲ませ…」
「コッパ君?」
「んー?」
 急に言葉を止めたコッパに、ビネガーも既に飲み始めていたアンも怪訝そうに聞く。
「いや…なんでもない」
 コッパもそのまま飲み始めた。
 二人に奥が見えないようにわざと身を乗り出してがぶがぶ飲む。
「言えないよなぁ」
 コッパは口の中だけで呟く。
「奥に死体が浸かってたなんてさ」
243英雄王の碑文 心つなぎ 2話:2011/11/27(日) 14:49:36.18 ID:um7bIte6
「……ぁぁっ……ぁぁん…っ…」
 淫らな水の音と、断続的に響く嬌声。
 打ち捨てられた廃墟の中で、クロスティーニ学園の制服を纏った女子生徒達が―――陵辱された後だった。
 六人のうち、五人は既に力なく床に横たわり、最後の一人は四つん這いにされて背後から責められていた。
 武器はとっくのとうに遠くに蹴飛ばされていて手が届かず、頼りにすべき仲間たちも返事どころか生きてるのかすら解らない。
 陵辱されている少女はただ、歯を食いしばりながらも、快楽と苦痛の狭間で、声を出す。
「チッ……もっといい声で啼けねーのかよ」
 だが、無常にも彼女を陵辱するディアボロスの青年は嫌そうにそう声を出し、自分から少女を突き放した。
 まだ白い液体を吐き出していた自身のモノを軽く振ってからズボンにしまう。
「弱すぎて殺す気にもならなかったけどよ……やっぱ殺すか。つまんねーし」
「…………殺すなら、早く殺して…」
「あ? なんだよ、まだそんな事言える気力残ってたのか?」
 青年のつぶやきに少女がそう返答し、彼は興を削がれたような顔をする。
「チッ、だったらテメェだけ殺さねぇで周りの奴らだけ殺しまうか」
「……や、やめて…それは…」
「俺に反抗するんじゃねぇよ」
 青年がそう言って刀を振り上げようとした時、彼は背後に気配を感じて振り向いた。
 青年と同じ、黒とベージュを基本とした制服を身にまとうフェアリーの青年が小さく手をあげた後、口を開く。
「遊びはそこまでにするんだ、ガラハッド」
「なんだよ、ガウェイン。退屈でしょうがねぇからこうしてるんだぞ?」
「その少女が必要だからだよ。殺す事も壊す事も許さない」
「……ちっ」
 ガラハッドが興味なさげに立ち上がった後、ガウェインは入れ替わりに片膝をついて少女の前に座る。
「さて……君のことが必要なんでね。悪いが拒否権は無いと思ってくれ」
 そう言ったガウェインの顔は、奇妙なまでに歪んでいた。
244ディモレアさん家の作者:2011/11/27(日) 14:51:41.80 ID:um7bIte6
2話は以上。
アネモネちゃんとベコニアちゃんが可愛くてしょうがないけど芯までドラッケンに染まった俺がいました。
キルシュトルテ様可愛いです。
245名無しさん@ピンキー:2011/11/30(水) 00:57:41.52 ID:Ivt6A6gj
ザッハトルテをマジ泣かせてーな。
恐怖でガタガタ震わせたい。
246名無しさん@ピンキー:2011/12/01(木) 07:32:44.57 ID:hkmLcTGv
ディモレアさんちの人来てた!おつおつ
貴方のおかげでディモレアがもう子持ちバツイチのお姉さまにしか見えないw
247名無しさん@ピンキー:2011/12/04(日) 14:25:19.34 ID:7iH3ZR7C
拘束して動けなくなったザッハちゃんの目の前でお友達解体ショー。
うふふ苦しそうだね凄い悲鳴だよザッハちゃん。
もう動かないね。次は君の番だよ?
といったところでネタばらし、パーネ先生のナイトメアパウダーをもう一回作ってもらいましたー。








まだ使って無いけどね?
248名無しさん@ピンキー:2011/12/04(日) 21:08:51.52 ID:4rkDd4CV
せんせー>>247が何か吸い込んで倒れてます
249名無しさん@ピンキー:2011/12/04(日) 21:15:19.56 ID:26m7orFa
産めときなさい
250 ◆BEO9EFkUEQ :2011/12/05(月) 03:38:30.33 ID:3rl2bDOe
何だかんだで一ヶ月ほど空いてしまいましたが続き投下します
今回のお相手はフェアリー

今回の注意としては、本番はなし
それとスパンキング描写がメインになるので、苦手な人はご注意
大丈夫だと言う方はどうぞ
2511/14 ◆BEO9EFkUEQ :2011/12/05(月) 03:39:18.01 ID:3rl2bDOe
悪戯した。怒られた。
悪戯した。怒られた。
悪戯した。怒られなかった。
「もういいよ、言ってもどうせ聞かないんだろう?」
後はずっと怒られなかった。悪戯し放題だった。
面白いけど、ちょっとなあ。フェアが求めてるのは、ちょっと違うんだけどなあ。
だけどやっぱり、悪戯は楽しい。怒らせるのも楽しい。
でもでも、やっぱりこれじゃない。あ、でも今度は期待できそう?
うん、期待できそう。ああ、夢じゃないといいんだけどなぁ……夢、かなあ。


冒険者養成学校の学食は、どこであっても人気の場所の一つである。常に緊張を強いられ、生命の危機すら日常であるこの学校では、
食事の楽しみというものは何よりも重要なものである。ここ、タカチホ義塾の学食も当然人気の場所だが、そこにいる一人、
モーディアル学園の校章をつけたエルフは、僅かに表情を曇らせていた。
「いや……文化の違いっていうのは、尊重されるべきだと思うんだけどね」
極端に文化の違うこの学校では、出てくる料理も他校とは一線を画す。また、食器も多少異なっており、彼女の隣ではセレスティアが
箸の扱いに四苦八苦しており、さらに隣のドワーフは寿司を手掴みでひょいひょいと口の中に放り込んでいる。
「何か許せねえことでもあったのか?」
「ん〜、手掴みとかはいいけど……その、ねえ。どうしても一つだけ慣れないのがあって」
そう語る彼女の近くでは、数人の生徒がそばやうどんを食べており、その全員が豪快に音を立てつつ麺を啜っている。
「ぼくとしてはさ、麺類を音立てて啜るのだけは、どうにも我慢できなくってね…」
すると、カレーうどんを食べていたフェアリーが、ちらりとエルフの顔を見た。彼女も麺を啜るのは慣れないらしく、フォークに巻き付けて
食べていたのだが、その顔ににんまりとした笑みが浮かぶ。
直後、フェアリーは大きく息を吐くと、ずるずるずるっと大きな音を立てて麺を啜り上げた。途端に、エルフはその長い耳を両手で覆う。
「おぉあああぁぁぁ!!??くっ……フェアリー、何するんだよ!?」
彼女の言葉に、フェアリーは意地悪そうな笑みで答える。
「んっく……ん〜?だって、ここだとフェアみたいな食べ方が普通でしょー?」
「そりゃ、そうだけどっ……今、ぼくそれだけは慣れないって言ったばっかり…!」
「だからなぁにぃー?フェアだけにやめろって言うのー?やめなかったらお仕置きでもするのー?」
そう言われると、エルフは言葉に詰まった。明らかに悪戯目的ではあるのだが、周囲では麺を啜って食べている生徒が多く、
フェアリーだけにやめろと言うのも公平ではない気がしてしまう。
「……控えてくれると助かるんだけどね」
「やだよーだ。音立てて食べれるなんて、ここでしかできないもんねー」
「やめといた方がいいぞ、お嬢ちゃん」
そこで不意に、バハムーンが口を開いた。
「なんでー?他に同じことしてる人いっぱいいるけどー?」
「そうじゃなくてだな、その食い方だとスープが飛びまくりだぜ。せっかくの可愛い顔を汚したかぁねえだろ?」
バハムーンの言葉に、フェアリーは自身の胸元へ視線を落とす。
「……あ、ほんとだ。うわぁ、匂いまでついちゃってるよぉー!」
2522/14 ◆BEO9EFkUEQ :2011/12/05(月) 03:39:55.12 ID:3rl2bDOe
「ほれ、使いなお嬢ちゃん」
ハンカチを差し出すと、フェアリーはそれを受け取り、ごしごしと制服を擦り始める。多少はマシになったものの、色と匂いはしっかりと
生地に染み込んでしまっていた。
「う〜……カレー臭いよぉ」
「ぼくがお仕置きなんかするまでもなく、罰が当たったみたいだね」
ニヤニヤしながら言うエルフに、フェアリーはムッとした顔を向けた。それに加え『罰』という言葉に反応したセレスティアも、横目で
エルフを見つめている。
「……ペッ!」
「うわああぁぁ!?唾吐くとか何考えてるんだよ君はっ!?本気で喧嘩売ってるのかい!?」
「あ〜あ〜……賑やかな食事は楽しいなぁ〜…」
棒読みで呟くバハムーン。その後、彼とセレスティアは本気で喧嘩に発展しかけたエルフとフェアリーを、それぞれ必死に押さえる羽目に
なるのだった。

とにかく悪戯を好むフェアリーは、特にエルフとフェルパーを標的として数々の諍いを引き起こしている。
言っても聞かないのはわかっているので、なるべく二人とも無視するようになっているのだが、そうなると今度は無視できないほどの悪戯を
仕掛ける始末であり、ここ最近はその手口もかなりエスカレートしてきている。
その仲裁は主にバハムーンとセレスティアの仕事だが、バハムーンの場合は標的が移るのみ、セレスティアの場合は比較的大人しく
言うことを聞いている。
どうやら悪戯をするにもちゃんと基準はあるらしく、たとえばセレスティアに関しては、彼が全ての行為を許してしまうため、逆に悪戯を
仕掛けないらしい。とはいっても反応がないのがつまらないからではなく、普通なら絶対許さないような行為すら、本気で許してくれる
彼には一種の尊敬に近い念を抱いているらしかった。
またドワーフ相手には、さすがのフェアリーも絶対に仕掛けない。本人曰く『命がけの悪戯は楽しいけど、死ぬとわかってやる悪戯は
したくない』とのことだった。
とはいえ、単に恐れているだけかというと、そういうわけでもない。
「仲間が最高の宝?そんなの、宝を手に入れられない弱者の負け犬の遠吠え。仲間なんていうのは、自身の足りない技能を補うための
存在でしかないでしょ。迷宮で手に入れた宝を、財産を、分けなきゃいけない相手が宝?寝言も大概にしてよ。たとえばお前が莫大な
金を見つけて、それを一人占めしたくないって思うわけ?仲間と分けなきゃってのは欲求じゃなくて義務でしょ?」
「そんなこと…!」
「人ってね、図星突かれると否定したがるもんだよ。お前はほんとにそんなことないって、自信持って言える?一人で迷宮潜って手に入れた
宝を、帰ってきて他の生徒に分けたいって思うわけ?私はそうは思わない。全部私だけのものにしたい。だから本当なら、お前達全員
殺して宝だけもらいたい。でも、お前達殺すと代わりがいないんだよね。一人はさすがに限界あるし、そういう意味では仲間が宝って
いうのは頷ける話かもね」
いつもの如く、立て板に水を流すどころか立て板を滝に放り込んだような、怒涛の反駁をするドワーフ。常識から考えるとありえない、
非常に殺伐とした理論ではあるが、それをこのドワーフは本心で述べている。
そんな彼女を、フェアリーはうっとりした目つきで眺めていた。
「ドワってかっこいいよねー」
「そ、そうか?」
「フェア、あそこまではっきりは言いきれないよー。すごいなぁ、ほんとにー」
「あれはちょっと異常だと思うけどな……普通、仲間殺して宝一人占めとか、考えてもやりはしねえぞ。あいつこそ、いつか罰当たりそうな
もんだがなあ」
「ですが、彼女はずっとああしてきていますが、神はお許しになられていますよ。であれば、彼女の言うことは、きっと間違って
いないのでしょうね。わたくし達からすれば、ドがつくほど不穏な内容ではありますけど」
2533/14 ◆BEO9EFkUEQ :2011/12/05(月) 03:40:43.61 ID:3rl2bDOe
こんな話になったわけは、迷宮で宝箱を見付けたときに、エルフが何気なく『仲間が一番の宝だ』と言ったことに端を発する。
たったその一言が気に入らなかったらしく、こうしてドワーフの饒舌を引き出してしまう結果となったのだ。普段あまり喋らない彼女だが、
一度喋り出すとバハムーンすら霞んで見えるほどに喋り続け、言葉を叩きつけてくるため、非常に厄介な現象の一つである。
「さて……堕天使のきまぐれだな。セレスティア、もしもの場合は頼むぞ」
「ええ、お任せを」
ドワーフとエルフ、そしてエルフに加勢しようとして巻き込まれたフェルパーを置いて、バハムーンは宝箱の解錠に掛かっていた。以前は
フェアリーが担当していたが、今では晴れて盗賊力検定に合格した彼が解錠を担当することが多い。
幸い、罠の解除は無事に成功し、バハムーンは戦利品を引っ張りだした。
まず目に入ったのは、槍に剣と革を張り付けたような、武器とも防具とも言えない装備品だった。
「これは…?」
「おお、こりゃアダーガだな!」
途端に、バハムーンの目が活き活きと輝きだす。
「こいつは盾の一種なんだが、どっちかというと武器の性格が強えんだ」
「なるほど、確かに盾のようにも見えますね。槍に盾が付いたような印象ですが…」
「現実的に考えりゃ、レザーシールドが金属製の盾に勝てるわけはねえが、こいつは魔法的な強化が施されてる。その分、防御も
なかなかだし、魔法攻撃も強化される。攻撃には、遠距離の相手に槍、近寄られたら剣での攻撃と使い分けられる、武器と防具の
融合品としては相当な性能だ。こりゃいいもん拾ったぜ。おーい、そこの三人!誰かこれ使いてえ奴いねえか!?」
バハムーンが声を掛けたことで、ドワーフ達三人の話はようやく終わりを見せた。
「僕はマイク持ってなきゃいけないし、いらない」
「うーん、ぼくも魔法の盾使ってるし、魔法攻撃頼みだしなあ…」
「斧か剣の方がいい。いらない」
「そうか……フェアリー、は、弓だしな。セレスティア、使うか?」
「そうですね。両手武器も、今では片手で使えますし、練習がてら使ってみましょう」
言いながら、セレスティアはアダーガを受け取り、左手に装着する。その間に、バハムーンは箱の中からさらにアイテムを取り出す。
「イエローインナー……んー、こりゃ微妙だな。生地が悪い。んでもう一つは……お?」
ひょいっとつまみ上げたそれは、一見してぼろきれのようにも見えた。しかしすぐに、その正体に気付く。
「……レオタード?」
「うわ、それ生地薄すぎないかい?正直、着ない方がマシな印象…」
明らかに防具としては三流の外見に、他の仲間はすぐ興味を失ったようだったが、バハムーンは食い入るようにそれを見つめている。
「バハ、何してんのー?あ〜、セクハラ野郎だからそういうのも大好きなわけー?きひひ!」
「いや……お前等、これ相当な逸品だぞ!」
彼の顔は明らかに普段と異なる真剣な目つきで、口調も熱を帯びていた。
「確かに、身を守る防具としてはクズだ。生地は薄いわ、痛みも何もかも、感覚を増加させる魔法までかかってやがる。けどな、その魔法は
身体強化魔法の副作用だ!これ着るだけで、着た奴の身体能力は半年分以上の鍛錬を積んだのと同じぐらいに跳ね上がるぞ!そこらで
目にする強化魔法なんて目じゃねえ!特定の一部じゃなくて、身体能力全てを強化する魔法の最上級がかかってやがる!」
言われて注意してみると、確かにそのレオタードは尋常ならざるオーラを纏い、しかもそれは呪いのような禍々しいものではなく、一種の
神々しさを帯びた、一見して強化魔法とわかるようなものだった。
「うーん……確かに、逸品ではあるけど…」
「……見た目が、ね」
エルフの言葉は、バハムーンも含めて全員の心情を代弁していた。防具としてはもちろん、服としても着ていない方がマシに見えるような
逸品である。こんなものを着て出歩くなど、相当な覚悟が必要だろう。
2544/14 ◆BEO9EFkUEQ :2011/12/05(月) 03:41:22.90 ID:3rl2bDOe
「じゃあとりあえず、道具袋にしまっとくか。いやあしかし、こんなとこでひと財産築けるような逸品が手に入るとはな。ははは、今日の
俺達はついてるなー」
楽しげに言うバハムーン。彼の言葉に、ドワーフはしばらく道具袋を見つめていたが、割とすぐに興味を失ったようだった。
その後の探索でも、彼等は多くのアイテムを入手し、中には優れた武器も散見された。その度に、バハムーンは水を得た魚の如く
それらの解説を始める。
「おお、魔法で軽量化されたチェーンソーだな!こんだけ軽けりゃ、一撃ぐらいおまけで叩きこめるな。刃のチップはほとんど
なくなっちまってるが、これは錬金で直せば問題ねえ。ドワーフ、せっかくだからどうだ?」
「ん、もらう」
ビュイン、と軽くエンジンを吹かし、ドワーフは珍しく嬉しそうな笑みを浮かべた。ただし大半の仲間にとって、その笑顔は不穏な
ものにしか見えなかったが。
「んでこれは……ジュエルソードか!見ろ、この宝剣みたいな外観!そして油を塗られた刀身!重心は手元に来るようになってるし、
これはいい物だ……実にいいものだ。なあ、フェルパー?」
同じく剣を使うフェルパーに、バハムーンは何か言いたげな笑顔を向けた。それに対し、彼は溜め息混じりに返事をする。
「……僕は、破邪の剣でいい。それは君が使えば」
「ぃよおっし!他にあるのは……教師の鞭か。これは誰も使わなそうだし、あとで売りだな」
本来の目的はタカチホ義塾の校章の入手だが、彼等は踏み入れた迷宮を余すところなく歩いて回り、ついでに戦闘訓練とアイテム探索を
行っていた。その分、同期の者達より彼等の力量は高く、装備に関しても上等な物を多く持っていた。
ただし、当然のことながら攻略は遅い。この日も結局は最奥まで到達できず、道半ばにしてタカチホ義塾へと引き返すこととなった。
学校に着く頃には、既に辺りは薄暗くなっていた。一行は早めの夕食を取るため、すぐに学食へと向かう。
朝の一件があるため、席は向かい合ったセレスティアとバハムーンを中心に、それぞれエルフとフェルパー、フェアリーとドワーフという
座り方に落ち着いた。
「ドワーフさん、何ですそれ?」
「てんぷらだって。きのこと……なんか葉っぱ。セレスティアも取ってくれば?」
「おいしそうですね……ん、メアも食べたいですか?では、ちょっと取ってきましょうか」
頭の上のペットにせがまれ、セレスティアは追加の料理を取りに席を立つ。
「あ、悪りいセレスティア!ついでに水頼めねえか!?」
「ええ、構いませんよ。他に必要な方はいますか?」
「じゃあセレスティアさん、私も追加」
「ドワーフさんとバハムーンさん、で以上ですかね?では、少々お待ちを」
セレスティアが行って少し経つと、今度はフェアリーがバハムーンの食べている物を覗き始めた。
「……バハは何食べてんのー?」
「ん?餅入りそば。結構うまいぞこれ」
「ふーん」
気のない返事をするフェアリーだが、その目はじっと丼の中を見つめている。やがて、バハムーンが一瞬目を逸らした隙に、
驚くべき速さで中の餅を奪い取ってしまった。
「あっ、おい!」
「むぐっ……ふーう、もう食べちゃったもんねーだ、ひひ!」
「よく喉に詰めなかったな、あの粘っこいもんを…」
小さく溜め息をつくと、バハムーンはフェアリーの顔を見つめる。その表情は、どこか相手を観察するようなものにも見えた。
「にしてもお嬢ちゃん、あんまり悪戯ばっかするなよな。いくら可愛らしいお嬢ちゃんっつったって、ものには限度ってもんがあるからな」
するとフェアリーも、バハムーンの顔色を窺うかのような視線を送る。
2555/14 ◆BEO9EFkUEQ :2011/12/05(月) 03:42:13.66 ID:3rl2bDOe
「ふ〜ん、じゃあ限度越えたらどうするのー?」
「怒る」
「ひひ!セクハラ野郎が怒ったって、全然怖くないもんねー。それに、怒る怒るって言って、怒るつもりなんか全然ないんでしょー?」
「そりゃあ、できるなら怒りたかぁねえさ」
「じゃ、怒らなければいいでしょー。どうせ怒る気もないくせにさー」
だんだんいつもの表情に戻り、煽るような台詞を吐くフェアリーに対し、バハムーンは呆れたような表情を浮かべて視線を逸らした。
「……ま、とにかくほどほどにしてくれよ?」
「はーい。じゃあほどほどの悪戯ならいいんだよねー?えい!」
「いや、そう……おいっ!何しやがっ…!」
バハムーンが止める間もなく、フェアリーは彼が大切にしているシャドーバレルを奪い取ると、銃身に醤油を注ぎ込んだ。
「きっひひ!ほどほどならいいんでしょー?こんなの洗えばすぐ落ちるし、全然大したこと…」
彼女の台詞は、最後まで言えなかった。というのも、バハムーンが彼女の服の襟を掴み、席を立ったからだ。
「ぐえっ!?ちょ……ちょっと、何するのー!?フェアのこと殺す気ー!?」
「……フェルパー、それ洗っといてくれ。水洗いだけしてくれりゃ、後の手入れは俺がやる」
感情を一切感じさせない声で、バハムーンが言う。それに対し、長い付き合いのあるフェルパーも頷くことしかできなかった。
「お嬢ちゃん。ものには限度があるって、言ったばっかだよな?」
「だ、だから何だって言うのー!?そんなの、洗えば落ちるでしょー!?」
彼の行動は周囲の生徒の注目を浴びていたが、異様な迫力に誰一人声を掛けることができない。
「ヒールすりゃ治せるから、お嬢ちゃんの腕をへし折ってもいいのか?」
「ふざけないでよ、セクハラ野郎ー!フェアの手とただの物は全然違うでしょー!?」
「ちっ……お前が言ってもわからねえ奴だってのはよくわかった。悪りいみんな、先部屋戻らせてもらうぜ」
そう言うと、バハムーンはフェアリーを引きずって歩きだした。
「ちょっ……やめてよ!なんでフェアまで行かなきゃいけないの!?一人で帰ればいいでしょ!?放して、放してってばぁ!!」
それに激しく抵抗しつつも、フェアリーは減らず口を叩き続けている。そんな彼女に構うことなく、バハムーンはそのまま
フェアリーと共に学食を出ていった。
「……バハムーンさん、帰ってしまいましたね」
そこへ入れ違いになる形で、天ぷらの乗った皿と水入りの湯飲みを二つ持ったセレスティアが戻ってきた。
「ああ、セレスティア……フェアリー、あれはいくら何でもやりすぎだよねえ……バハムーン、止めに行った方がいいかなあ?」
エルフの言葉に、セレスティアはいかにも不思議そうに首を傾げた。
「いえ、必要ないと思いますよ?」
「で、でも、あんなに怒ったの初めて見て…!」
「フェルパーさん、彼の観察眼は、あなたが一番よく知っているのではありませんか?それに、彼はいわゆる女好きですしね。
一時の感情で女性との関係を壊すような真似はしませんよ、きっと」
言いながら、セレスティアはペットに天ぷらを食べさせている。ドワーフは彼が持ってきた水を二つとも、当たり前のように
自分の物にしている。
「僕も付き合い長いけど……あいつ、たまによくわからない」
「いざとなれば、保健室の先生方を頼ればいい話です。神がお許しになるならば、彼女が死ぬようなことはありませんよ」
穏やかに物騒な台詞を吐きながら、セレスティアはのんびりと食事を再開した。ドワーフは元々気にするつもりもないらしく、
ここまでの事態に一切の反応を示さず食事を続けている。
そんな薄情な二人とは別に、エルフとフェルパーは揃ってバハムーンの消えた方へ不安げな視線を送るのだった。
2566/14 ◆BEO9EFkUEQ :2011/12/05(月) 03:43:29.05 ID:3rl2bDOe
バハムーンはフェアリーの首根っこを掴み、引きずるようにして自室へと行くと、ドアを開けるなり彼女を部屋へと放り込んだ。
「きゃ!?ちょっと、このセクハラ野郎!いきなり何よー!」
後ろ手に鍵をかけつつ、バハムーンは表情のない目でフェアリーを見つめる。
「お前、舐めてんだろ?人がいつまでも大人しくしてると思うなよ?」
視線に気圧されたのか、フェアリーは若干たじろいだようだったが、すぐにいつもの表情に戻る。
「ふ、ふん!じゃあ何するって言うのー?お尻叩いたりでもするのー?どうせできもしない癖にさー!」
「言うと思ったぜ。お前はほんとに、言ってもわからねえ奴なんだな」
「あっ、ちょっ…!」
大股で歩み寄るバハムーン。フェアリーは慌てて逃げようとしたが一瞬遅く、再び襟を掴まれていた。片手でフェアリーを捕まえつつ、
他校生用の椅子を引っ張り出すと、バハムーンはそこに座り、膝の上にフェアリーの上半身を横たえ、両腕を後ろ手に捻り上げた。
「い、痛っ!やめてよ、腕折れちゃうでしょー!バハの馬鹿ー!痛いってばー!」
もはや返事もせず、バハムーンは彼女の下着ごとスカートを掴むと、一気にそれを引きずり下ろした。
「きゃーっ!?ふ、ふざけるなセクハラ野郎ー!あとで絶対仕返ししてやるー!」
騒ぎ続けるフェアリーを無視し、バハムーンはゆっくりと手を振り上げた。
「バカー!アホー!ほんとのセクハラ野郎だって、みんなに言いふらし…!」
パァン!と乾いた音が部屋中に響き渡り、フェアリーの声が途絶える。非常に小柄なフェアリーに対し、かなりの大柄なバハムーンの手は、
彼女の両方の尻たぶを同時に打ち据えていた。
「いっ……いたぁ…!こ、このセクハラ男ー!ほんとにお尻ぶつとか信じれないんだけどー!バハの変態!変態ー!」
「言ってもわかんねえんだろ?じゃあ実際やってやるしかねえじゃねえかよ」
「だからってほんとにや……ひぐっ!?」
再び、乾いた音が部屋に響き渡り、フェアリーの短い悲鳴が上がる。
「い、痛い!痛い!やめてよ!ほんとに痛いってばぁ!」
「痛くなきゃあ仕置きにならねえだろ」
「ふざけ……あぐうっ!」
三回、四回と叩かれ、フェアリーの尻はたちまち赤く染まり、熱を持ち始める。そこをさらに容赦なく叩かれ、フェアリーの苦痛は
どんどん強くなっていく。
「ひっ!ぐっ!うあっ!や、やめて!痛いってば!やめて!やめろっ!」
「どうしてこんな目に遭ってるのか、それすらわかってねえみてえだ、な!」
「あぐっ……あ、洗えば落ちるでしょあんなのー!」
「人が大切にしてるもんを、ぶっ壊すような真似したのがいけねえってんだよ!」
「いたぁい!!こ、壊れてないんだからいいでしょー!ていうか、何回ぶつつもりよ、この変態野郎ー!」
必死に体を捩り、逃げようとするフェアリーを押さえつけながら、バハムーンは一瞬手を止めた。
「……そうだな、百回も叩けばわかるか」
「ふえぇ!?う、嘘でしょ!?もうお尻痛すぎ……うあっ!?」
もがけばもがくほど、バハムーンはより強くフェアリーを押さえつけ、尻を打ちすえる手にも力が入る。
「ぐっ!あっ!や、やめっ……いっ!?ふざけ……あうっ!痛いぃー!」
何度も何度も乾いた音が響き、そこにフェアリーの悲鳴が混じる。彼女がいくら叫ぼうと、バハムーンは一向に聞く耳を持たず、
むしろより強く掌を叩きつける。
2577/14 ◆BEO9EFkUEQ :2011/12/05(月) 03:44:14.03 ID:3rl2bDOe
二十回目辺りまでは、フェアリーは激しく暴れ、大声で悲鳴を上げ、その合間に罵倒の言葉が混じっていた。それはバハムーンを苛立たせ、
彼女の苦痛を跳ね上げる結果にしかならなかった。
「ぐ……うっ…!痛いっ……あつっ…!」
三十回目を超えた辺りでは、フェアリーはもはや叫ぶ元気も失い、微かに苦痛を訴えるのみになった。あれほど激しかった抵抗もなくなり、
ただ全身を強張らせるのみで、あとは僅かに身を捩る程度となっていた。
そして、四十回目を数えた頃だった。
「うぅ…!くっ、んうっ…!あふっ…!」
フェアリーの悲鳴は食いしばった歯の隙間から漏れるような声に変わり、動きも打たれる度に体がピクンと震える程度になっていた。
そこに、バハムーンは容赦なく手を振り下ろす。
「ふぐぅっ…!」
パァン!と乾いた音に混じり、微かにくちゅ、と水音が聞こえた。
「………」
フェアリーの尻に手を置いたまま、バハムーンは黙って掌に意識を集中する。
小指側の端の辺りに、生温かい感触があった。僅かに手を動かしてみると、それはぬるぬるとした粘性を帯びている。それが何であるかは、
状況さえ考慮しなければ簡単に答えが出る。
フェアリーの呼吸は荒く、全身は赤くなっている。おまけに、太股に感じる彼女の体は、じっとりと汗ばんできていた。
再び手を振り上げ、容赦なく彼女の尻を叩く。
「ひうっ!」
一瞬間隔が狂ったためか、フェアリーは甲高い悲鳴を上げ、体がピクンと跳ねる。そして再び、乾いた音の合間に湿った音が響く。
注意して見れば、フェアリーは足をぴっちりと閉じ、僅かながらも太股を擦り合わせるように動かしていた。
―――ああ、やっぱりな。
特に何の驚きもなくそう思いつつ、バハムーンは続けざまに尻を打つ。
「ひっ!?ぐっ、うっ!うあっ!」
ちょうど五十回目で、バハムーンは手を止めた。フェアリーは小さく体を震わせ、もはや抵抗の意思すら示さない。
そんな彼女に、バハムーンは声を掛けた。
「お前な、実は全っ然反省してねえだろ?」
その声に反応し、フェアリーが顔を上げた。呆けたような表情を浮かべていた彼女だったが、バハムーンを見るや否や、たちまち元の
反抗的な表情に変わった。
「だ、誰がそんなこと…!絶対、ぜぇったい仕返ししてやるんだからー!」
「やれやれ……言ってもわからねえ、叩かれてもわからねえ。んなら、もっときついお仕置きが必要だな」
お仕置き、と言った瞬間、フェアリーの体がかあっと熱くなるのを感じた。しかしあえてそれには触れず、バハムーンは探索で得た武器を
入れている袋を引き寄せ、中から教師の鞭を取り出した。
「ひっ!?ちょ、ちょっと、な、何するつもり!?」
さすがに、フェアリーの表情が強張った。しかし表情や言葉とは裏腹に、彼女の胸はより大きく高鳴った。
「使い道なんて、一つだろ」
「ちょ、ちょっと待ってよ!そんなので叩かれたらっ…!」
ヒュッ、と空気を切る音が鳴り、直後にパシィン!と大きな音が鳴った。
「い、痛あぁい!!」
ただでさえ真っ赤になった臀部に、さらに赤いミミズ腫れが浮かび上がる。
2588/14 ◆BEO9EFkUEQ :2011/12/05(月) 03:45:00.86 ID:3rl2bDOe
「これで51。これで……52!」
「ひぎっ!?痛い!痛い痛い痛い!!痛いよ、痛いってば!もうやだ!お尻叩くのやめてぇ!」
さすがに痛みが強すぎるのか、フェアリーは再び暴れ出した。腕を押さえられているため、足を曲げて必死に尻を庇おうとする。
「おい、足どけろ。邪魔だ」
「やだやだ!もうぶたないでよぉ!」
「邪魔だっつってんだろうが!」
強い口調で言うと、バハムーンはその足に容赦なく鞭を振り下ろした。
「痛ぁ!!」
左足を打たれ、さすがにそっちは下ろしたものの、右足はまだ庇い続けている。しかしそちらもすぐに鞭を浴び、フェアリーは悲鳴と共に
両足を下ろす羽目になった。
「ったく、最初からそうしてろ。53!」
「うああっ!」
足の痛みすら引かないうちに打たれ、フェアリーの目にじわりと涙が浮かぶ。同時に、そこに怯えの色が浮かんだ。
「な、なんでぇ!?今二回ぶたれ…!」
「足が邪魔だからどけただけだ。今のはカウントしねえよ」
「そ、そんなっ…!」
「54!」
「あぐうぅぅ!!」
バハムーンが鞭を振り下ろす度、フェアリーの尻に赤い線が浮かんでいく。数が増えるにつれ、その線は交差し、重なり、線としての姿を
失っていく。
「ひぐっ……う、うえぇ……痛いよ、痛いよぉ…!」
いつしか、フェアリーは泣きだしていた。だが、バハムーンはそんな彼女を気遣うことなく、変わらず打擲を続ける。
「お、お尻がぁ……いぎっ!お尻、熱い……破けちゃうよぉ……うあっ!」
必死に痛みを訴え、涙を流すフェアリー。それだけ見れば、恐らくバハムーンもその手を止めていただろう。
しかし、彼女の太股には透明な雫が伝っていた。それは鞭を振るうほど、尻を強く叩くほどに量を増し、今やバハムーンのズボンにまで
染み込んでいくほどになっている。
叩いた数が80を数えた頃、バハムーンが口を開いた。
「お前、少しは懲りたかよ?」
「うぅ……ぐすっ…!」
「聞いてんだから返事くらいしろ!」
パシィ!と高い音が鳴り、フェアリーの体がビクンと跳ねた。
「い、痛いぃ!!聞いてる!聞いてるよぉ!」
「なら、返事をしろっつってんだ、よ!」
再び強く打ちすえられ、フェアリーが甲高い悲鳴を上げる。
「やぁぁ!!もうわかったからやめてぇ!やめてよぉ!」
「何がわかったんだ?懲りたかって聞いてんだよ」
「うぅ…!」
フェアリーは答えない。バハムーンは黙ったまま、彼女の尻を強く叩く。
「ひぐっ!!い、いちいち叩かないでよぉ、ばかぁ…!」
「ここまできて、まだそんな口きくのか。お前もよくよく、自分の立場が分からねえ奴だな!」
大きく腕を振り上げ、今度は手首のスナップを利かせて思い切り振り下ろす。
2599/14 ◆BEO9EFkUEQ :2011/12/05(月) 03:45:59.30 ID:3rl2bDOe
パァァン!と、これまでとは比較にならないほどの音が鳴り、フェアリーの体が仰け反った。
「ぎっ!?あ、がっ……く、あぁぁ…!」
もはやどこを叩かれたかわからないほど真っ赤になった臀部に、明らかにそことわかるミミズ腫れが浮かぶ。あまりの衝撃に、フェアリーは
言葉も出せず、ただぶるぶると震えながら痛みに耐えている。
そこへ追い打ちをかけるように鞭が振り下ろされ、バハムーンが口を開く。
「いいか、少々の悪戯は構わねえ。けどな、度が過ぎたもんとか、相手が本気で嫌がることはやめろ」
「……くぅぅ…」
鞭の音が鳴り、乾いた音が部屋に響く。
「あぐっ!」
「普段の悪戯程度なら、仕置きもこれぐらいにしてやる。けどな、次また今日みてえな真似しやがったら、次は海賊流の拷問にかけるぞ。
わかったか?」
「………」
フェアリーは答えない。バハムーンはフェアリーの腰を乗せた右膝を軽く上げ、鞭を彼女の尻の割れ目に沿うように構え直した。
「わかったか!?」
尻たぶではなく、その間を狙って鞭が思い切り振り下ろされた。
「ひぎゃああぁぁぁ!!!」
湿った皮膚を叩いたような音と共に、フェアリーの絶叫が部屋に響く。続いて微かに、ちょろちょろという水音が聞こえた。
「……漏らしやがったな、お前…」
「あうぅ……ご、ごめんなさい、ごめんなさいぃ…!」
バハムーンのズボンが、黒く湿っていく。初めて謝罪の言葉を口にしたフェアリーだったが、バハムーンは容赦なく鞭を振り下ろす。
「あぐっ!?」
「まったく、さすがにちょっとびっくりしたぞ。で……今ので何回目だったかなぁ?びっくりしたんで忘れちまったぜ」
その言葉に、フェアリーは怯えと驚きのこもった目でバハムーンを見つめた。
「は、88回だよぉ!嘘じゃないよぉ!あと12回だけだよぅ!」
「そうだったかぁ?ま……俺の膝の上で漏らしやがった分もあるし、50回目から数え直しだ」
「そ、そんな!そんなぁ!やだやだ!これ以上はフェア死んじゃ……いぎぃぃ!!」
鞭が振り下ろされ、フェアリーが悲鳴を上げる。苦痛と恐怖に泣き喚きながら、フェアリーは必死に口を開いた。
「うあああ!いだいぃぃ!!お、お願いもう許してくださいぃ!!何でもします!!何でもしますぅ!!」
その言葉に、バハムーンの手が止まった。
「ほーお、何でも……ね」
その言葉を反芻し、膝の上のフェアリーをじっと見つめる。
恐らく、訴えている苦痛も恐怖も本物だろう。本物だからこそ、彼女にとって『価値』がある。彼女の普段の挑発的な態度や悪戯は、
すべてこのためだけに行われている。
彼女は、生粋のマゾヒストなのだ。これまでの流れですら、彼女にとっては垂涎もののシチュエーションであり、性的興奮を得るに
十分すぎるほどの状況だったのだ。
そんな彼女を見て、何の反応もしないということは不可能に近かった。自身の境遇に酔っているフェアリーは気付かなかったが、
彼のモノは既にズボンの中ではち切れそうなほどに充血している。
「それじゃあ…」
この命令を出した時に、フェアリーが嫌がらないという確証は持てない。しかし、これまでの状況を見る限りでは、可能性は十分にある。
答えが出たところで、バハムーンはズボンのベルトを外した。そしてチャックを下げると、すっかり大きくなったモノをフェアリーの
眼前に突き付ける。
26010/14 ◆BEO9EFkUEQ :2011/12/05(月) 03:46:46.36 ID:3rl2bDOe
「ひっ!?」
「俺を満足させろ。そうすりゃやめてやる」
相当に無茶な要求だとは思ったが、フェアリーは必死に頷いた。
「あ、あぁ……や、やりますぅ!やらせてくださいぃ!だから……だから、もうお尻ぶたないでぇ!」
泣き声混じりの口調や言葉の内容とは裏腹に、哀願の台詞を吐くほどに新たな愛液が滴り落ちる。おまけにその表情は、どこかうっとりと
したような、恍惚とした表情すら浮かんでいた。
バハムーンは押さえつけていた手を緩め、右手だけ解放してやる。これまでに実物を見たことはないらしく、フェアリーは手を出しあぐねて
いるようだった。
それでもおずおずと手を伸ばし、そっと彼のモノに触れる。一応の知識はあるらしく、優しくそれを掴むと、ゆっくりと上下に扱き始めた。
反応を探るように、恐る恐るといった感じで扱くフェアリー。そんな彼女の姿を愛らしく思いつつ、バハムーンは鞭を振り上げた。
何度も聞いた、鞭が空を切る音が鳴り、続いてパァンという音が響く。
「いたぁっ!な、なんでぇ!?フェア、ちゃんとやって…!」
「俺は『満足させたら』やめてやるって言ったんだ。その間、叩かねえとは一言も言ってねえぞ」
「そんな、そんなのっ…!」
「ほら、さっさと続けろよ。じゃねえとずっと終わらねえぞ」
言うが早いか、バハムーンは立て続けに三回鞭を振り下ろした。
「痛いっ!やっ!あぎぃっ!!や、やめてぇ!ちゃんとするからっ、ちゃんとするからぁ!!んむぅ!」
必死に叫ぶと、フェアリーは大きく口を開け、バハムーンのモノを口に含んだ。しかし体格が違いすぎるため、先端部分しか入らない。
それでも、痛みから逃れるため、というよりは逃れようとする自分を演出するためか、フェアリーは必死に舌を使い、先端を飴でも
しゃぶるかのように舐め始める。
温かい口内で小さな舌が必死に動き、とにかく快感を与えようと頑張っている。そんな彼女は可愛らしく、また拙い舌使いが何とも
気持ちよく感じられ、ともすればすぐに果ててしまいそうだったが、バハムーンはその衝動を懸命に堪える。
「んん、んっ……ひぐっ!?んうー!」
時折、思い出したように鞭を振るう。その度に、フェアリーはビクンと体を震わせ、奉仕にも力が入る。そんな姿もまた倒錯的な
魅力があり、バハムーンが耐えるのを難しくしている。
「んく……んっ、んう!ふぁぁ…!」
鈴口を舌先でつつき、全体を撫で回すようにねっとりと舐める。右手ではしっかりと扱きつつ、フェアリーは口での愛撫を続ける。
どうやら顎が疲れてきたらしく、フェアリーは口に含んでいたモノを出し、それをぺろぺろと舐め始めた。
そこへ、気まぐれに鞭を落とす。途端にフェアリーは小さな悲鳴を上げ、慌てて舐めていたモノを再び口に含んだ。
ちゅうっと、フェアリーが先端を強く吸い上げる。突然変化した刺激に、とうとうバハムーンの我慢も限界に来た。
「くっ……限界だ、出る!」
「ん、んむっ!?んうう……うえぇっ、けほっ!」
ビクンとバハムーンのモノが跳ね、フェアリーの口内にどろりとしたものが流れ込む。フェアリーはそれを口で受け止め、何とか飲もうと
したのだが、あまりの生臭さと勢いに、ついむせてしまった。
唇を中心に、顔全体に精液がかかり、喉の辺りまでがバハムーンの精液で白く染まる。その状況に、フェアリーは半ば放心しているよう
だった。
射精の快感と倦怠感、それに加えて女の子を精液で汚すという背徳的な快感の余韻に浸りつつ、バハムーンは声をかけようとした。
26111/14 ◆BEO9EFkUEQ :2011/12/05(月) 03:47:39.79 ID:3rl2bDOe
その瞬間、フェアリーはハッといたように口を開いた。
「ああ、こぼしちゃったぁ…!ごめんなさいぃ、すぐきれいにしますぅ!」
「え?あ、おい…」
バハムーンの声など聞こえていないらしく、フェアリーは両手で顔を拭うようにして精液を掌に集めると、それを躊躇いなく口で吸う。
さらにバハムーンの腹に顔を近づけ、零れた精液を丁寧に舌で舐め取ると、目を瞑ってごくんと飲み込んだ。
「んっく……はぁっ……きれいに、しましたぁ…!ちゃんと、全部飲みましたぁ…!」
陶然と呟き、軽く口を開けて舌を出して見せるフェアリー。そんな彼女に、バハムーンはぽつんと呟いた。
「いや……誰もそこまでしろとは言ってねえんだが」
「えっ…」
その瞬間、フェアリーは驚いたように目を見開き、まるで怒られでもしたかのように泣きそうな顔になった。
バハムーンは即座に気配の変化を感じ取り、彼女の腕を解放すると、頭にポンと手を乗せた。
「けど、よくやった。えらいな」
「……えへへ」
本当に嬉しそうに、フェアリーは笑顔を浮かべた。涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔ではあるが、とても可愛らしい顔だった。
「んじゃ、約束通りこれでおしまいだ。お前、立てるか?」
「え?えっと……ちょっと痛い…」
「だろうな。しょうがねえ、今日はここ泊まってけ。一緒に寝ることになるが、そんぐらい構わねえだろ?」
「うん、フェアはいいよ。お尻痛いし、あまり動きたくないもん」
それで話はまとまり、二人は濡れタオルで軽く体を拭くと、床に布団を敷いて横になった。相当に痛むらしく、フェアリーは掛け布団すら
かからないようにバハムーンに密着し、うつ伏せで寝ている。
「眠れそうか?」
「んー、寝れなくはないよー。じんじんするけど」
「そうか。まあそれぐらいで仕置きにはちょうどいいだろうけどな」
「………」
やはり『仕置き』という言葉には格別の思い入れがあるらしく、フェアリーの顔が僅かに赤くなった。
が、直後にその顔は真っ青に変わることになる。
「んで、お前結局、一度も謝ってねえよな、俺の銃に醤油ぶっかけたことに関して」
「ええっ!?え、えっと、その、フェアは、そのっ…!」
不意打ちの質問にしどろもどろになっていると、バハムーンはさらに言葉を続けた。
「あれはさすがに本気で許せねえんだよなあ。んで、謝罪の一つもねえってなると、別のお仕置きが必要だよなあ」
「あ、あの……ごめんなさ…」
「今更遅えよ。そうだなあ」
バハムーンはフェアリーをじっと見つめると、その服に手を掛けた。
「ええっ!?ま、待って待ってぇ!!それはダメ!それはダメなのぉ!」
「何勘違いしてるか大体想像はつくが、残念ながら違うぞ。まあ裸に剥くのは変わらねえけどな」
「やだやだやだぁ!このセクハラ野郎ー!やめてよぉー!」
「また言いやがったなそれ。あったま来た、もう泣こうが喚こうが絶対許さねえ」
「いやあああぁぁぁ!!!」
夜の学生寮に、フェアリーの悲鳴が響き渡った。
26212/14 ◆BEO9EFkUEQ :2011/12/05(月) 03:48:28.43 ID:3rl2bDOe
「あううぅぅ……ううぅぅ〜…」
もののふの荒ぶる社に、フェアリーの呻くような声が響く。しかし、前を歩く四人は誰一人振り返らず、隣のエルフもあまり見ようとは
しない。ただ少しは気になるのか、たまにちらりと様子を窺ってはいるようだった。
「……もうやだぁー!こんな恰好やだよぉー!」
とうとう、フェアリーが顔を真っ赤にしながら叫んだ。それに対し、前を歩くバハムーンが肩越しに振り返った。
「黙れ。それにその装備、お前にはちょうどいい代物だろ」
「効果なんかどうでもいいのー!だってこれぇ…!」
必死に叫ぶフェアリーの服装は、上に制服すら身に着けない、非常に薄手のレオタード一枚きりだった。
その布地は異常に薄く、よく見れば素肌が透けているのがわかる。その上、着用者の行動を妨げないためにか、異常なほどぴっちりとした
作りになっている。そのせいで、フェアリーは下着すら身に着けられなかったのだ。
胸を見れば小さな乳首がちょこんと浮かび、後ろから見ればお尻などほとんど隠れていない。しかも食いこみがやたらに強くなっており、
正面から見れば小さな割れ目にレオタードが食い込んでいるのがはっきりと見て取れる。冒険者養成学校の生徒でなかったとしたら、
警備兵に連行されても文句は言えないところである。
「お尻丸見えー!おっぱいも見えてるー!あそこなんかっ……く、食いこんでっ…!こんなのやだよぉー!代わってぇー!
誰か代わってぇー!ドワ助けてよぉー!」
そんな乙女の叫びにも、ドワーフは冷たく言い返す。
「やだ。私もそんなの恥ずかしい。それにそんなの着てたら、前にいると死ぬ」
「うあーん!エルでもいいからー!セレぇー!」
「ぼ、ぼくも嫌だよそんなの」
「わたくしも、ぜひ遠慮させてください。それに、わたくしがその格好をした場合、あなたとはまた違う意味で大問題ですので」
恐らく男連中が着た場合、冒険者養成学校の生徒であっても警備兵に連行されるだろう。
「うぅ〜、やだよこれぇ…!食いこんでるし……こ、擦れるし…」
まだぶつぶつと言っているフェアリーに、バハムーンが口を開いた。
「まあいいじゃねえか。その分、戦闘力に関してはかなり上がっただろ?」
「そ、それはそうだけどさぁー!」
実際、そのレオタードは予想以上の効果をもたらしていた。体が思った通り動く、などというものではなく、思った以上の動きを
することができる。ここ最近、一気に速くなったセレスティアを余裕で抜き去り、弓の弦もまったく苦にならず、そこから放たれる矢は
敵に突き刺さるどころか貫いた。魔法の詠唱もすらすらとできるようになり、精神集中も容易くできるようになり、出がけには校門で
3ゴールド拾った。
「で、でも……び、敏感になりすぎっ…」
欠点としては、敵の攻撃がそれまで以上に辛くなったことだった。軽い一撃が当たるだけでも、飛び上がるような痛みに変わるのだ。
おまけに、食い込んだ部分と擦れる部分から受ける刺激も、それまでの倍以上に高まっている。動けば当然その刺激は強まり、実質
普段の行動が、全て拷問に変わっているようなものだった。
それでも、フェアリーは羽で飛ぶことができ、回避行動も得意であり、武器も弓矢を用いるため、そういった面からみればこの防具は
まさにフェアリーのためにあるようなものだった。
「昨日のありゃあ度が過ぎてたからな。ま、戦力的にも充実したし、諦めろ」
「うぅ〜……いつか絶対仕返ししてやるぅ…!」
そうした戦力の充実もあり、彼等はようやく最奥に到達すると、そこにあった異次元の扉から現れたモンスターを容易く降し、
絵馬の奉納を済ませて学校へと戻った。
26313/14 ◆BEO9EFkUEQ :2011/12/05(月) 03:49:18.82 ID:3rl2bDOe
さすがに学校内でこの露出はあまりに哀れということで、フェアリーはエルフのお古であるマントをもらい、それを身に付けた。
それでも正面から見れば、男子生徒と一部の女子生徒の目の保養になりそうな状態ではあったが、今までと比べれば随分とマシである。
とりあえずの課題も終わったため、一行は学食でのんびりと夕食を取っていた。
セレスティアは箸を扱うことを諦めたらしく、トンカツをナイフとフォークを使って食べている。隣では昨日に引き続き、ドワーフが
天ぷらを頬張っている。フェアリーはなぜか、椅子の上に行儀よく正座して食べている。
「あとは、校章ができるの待つだけだよね」
「ああ。合間に何か一つぐらい、課題出されそうな気もするけどな、はは」
「うわー、ありそうでやだなあ、それ。あるにしても、できればそんなに大変じゃない奴…」
その時、セレスティアのカツを切る手につい力が入りすぎ、下の皿を切りつけてキィッと高い音が鳴った。途端に、エルフとセレスティアの
体がビクッと震える。
「し、失礼。筋が硬かったもので…」
「あ、ああ……わざとじゃなきゃいいよ。ていうか、君もこの音苦手なんだ」
「少なくとも、愉快なものではないですねえ」
そんな会話をする二人を、フェアリーは横目で見つめていた。彼女もナイフとフォークを使っており、エルフがその視線に気づいた瞬間、
フェアリーは視線を戻した。
そのまま、大人しく食事を続けるフェアリー。絶対に何かすると思っていたエルフは、些か拍子抜けしたようだった。
「……フェアリー、今日はずいぶん大人しいね?」
思わずそう言うと、フェアリーは意外に刺々しさのない口調で答える。
「何か鳴らした方がよかったー?」
「え?いや、鳴らさない方がありがたいけど」
「悪戯ばっかりでも飽きるしねー」
およそフェアリーらしくない台詞に、エルフは思わず耳を疑った。それはフェルパーも同じだったらしく、肘で軽くバハムーンをつつく。
「バハムーン、昨日あの後何した?」
「何って、こってり叱ってやっただけだよ。叱るべき時にちゃんと叱ってやるのは、子供も動物も一緒だろ?」
「そ……そうか」
フェアリーは子供扱いなのか動物扱いなのか、一瞬気にはなったが、恐らく前者だろうと思い直し、フェルパーはそれ以上聞かなかった。
その時、フェアリーの表情が不意にいつもの笑顔になった。
「あ、もしかしてエル……悪戯ないと寂しいー?」
「なっ、ちょっ、誰もそんなこと言ってないだろ!?」
「いいよー、遠慮しなくてもー。キーって鳴らしてあげようかー?きひひ!」
またいつもの言い合いが始まりそうなところで、バハムーンが横から口を挟んだ。
「やめとけ、お嬢ちゃん。昨日の今日でんな真似したら、お仕置きじゃ済まねえぞ」
すると、その意味するところを察し、フェアリーは言葉に詰まった。
26414/14 ◆BEO9EFkUEQ :2011/12/05(月) 03:49:56.32 ID:3rl2bDOe
「う……も、もう、うるさいなあ、このセクハラ野郎ー」
「ま、俺に恨みがあるのはわかるからな。その程度は許してやる。けどな、他の奴にあんまり迷惑かけるようなら、こっちも容赦しねえぞ」
「じゃあ、バハになら迷惑かけてもいいわけー?ひひ!」
「昨日みてえなことしやがったら拷問にかける。直接なんかして来やがったらそれ着たままで昨日みてえな目に遭わせる。それが嫌なら、
口で言う程度に留めときな」
「……あっ」
普段は短絡的に物事を考えるフェアリーだが、レオタードにかかった強化魔法のおかげで、彼女は彼の言わんとすることを理解した。
「ふ、ふん!いつか仕返ししてやるんだからねー!……今日はもういいけどー」
「そうかい。捕まる覚悟があるならいつでも仕掛けてきな」
「べーだ!今度は捕まってやんないからねー!」
仲良さそうに喧嘩する二人を見つめ、フェルパーは再び口を開いた。
「バハムーン。君、ほんと昨日何した?」
「さっき言っただろ」
「それにしちゃ、懐いてない?」
「気のせいだ」
とてつもなく面倒な性癖を持つフェアリー。しかしバハムーンはそれを見抜き、しっかりと手懐けてしまった。それでも周囲には、以前と
変わっていないように振る舞うのも、ひとえにフェアリーの性癖ゆえである。
とはいえ、フェアリーは望みの相手を見つけることができ、バハムーンも手のかかる、しかし面白い相手を見つけることができたと
思っている。もちろん、口に出すわけはないのだが。
この日以来、フェアリーの悪戯の頻度はほんの少し減った。それに加えてエスカレートしつつあった行為も、少し苛つく程度に戻りだした。
また、妙に機嫌のいい日が増え、そういった日はあまり悪戯を起こさないようになってきたのだが、他の仲間達にとって、その原因は
未だに謎のままなのだった。
265 ◆BEO9EFkUEQ :2011/12/05(月) 03:51:29.81 ID:3rl2bDOe
以上、投下終了。失禁ネタ注意を書き忘れました申し訳ない
うちのフェア子は結局このレオタードを愛用させられ続てたりします

それではこの辺で
266名無しさん@ピンキー:2011/12/06(火) 21:14:12.74 ID:MAtnNkWm
GJ!バハムーンが男前だなあ
このフェアリーのちょっとアホの子っぽい話し方好きだ
267名無しさん@ピンキー:2011/12/06(火) 23:08:55.12 ID:XoNI+//a
GJ!何かに目覚めた
しかしドMなフェアリーってのも大変そうだよね、打たれ弱いドMってのも。
268名無しさん@ピンキー:2011/12/07(水) 01:57:50.48 ID:y6+X3rbU
GJ!!
本番よりむしろ興奮するw
フェア子ドMとか予想外すぎた・・・エロすぎる!
けしからんもっとやれ!
269名無しさん@ピンキー:2011/12/19(月) 20:18:32.93 ID:R+j5Lv/1
てすてす
270名無しさん@ピンキー:2011/12/21(水) 13:07:47.31 ID:eGJGDFTt
保管庫でBEO9EFkUEQ様の作品読み漁ってるんだけど凄い量だ
こんだけ大量のPC作ってそのどれもが魅力的なキャラクター
本気で尊敬する
271名無しさん@ピンキー:2011/12/22(木) 21:48:54.66 ID:p8sIlJtS
>>270
俺もその人の作品好きだわ

でも最近みないな…
272名無しさん@ピンキー:2011/12/22(木) 23:31:23.11 ID:OgcRSSFr
>>271
え?
273271:2011/12/23(金) 14:50:33.10 ID:MBGAVD1g
すまん俺ちょっとどうかしてた
274271:2011/12/28(水) 01:12:51.08 ID:p0mBy9Jv
275名無しさん@ピンキー:2011/12/28(水) 11:31:31.50 ID:Ev+e8L7z
276名無しさん@ピンキー:2011/12/31(土) 18:48:53.43 ID:umCxpOLn
277名無しさん@ピンキー:2011/12/31(土) 19:40:44.50 ID:1sFIUoGd
278名無しさん@ピンキー:2011/12/31(土) 19:46:23.10 ID:m83KpNVQ
279名無しさん@ピンキー:2011/12/31(土) 20:22:50.52 ID:IyG1N3p4
280名無しさん@ピンキー:2011/12/31(土) 21:12:06.27 ID:rX+ZfpoS
281 【大吉】 :2012/01/01(日) 00:25:44.76 ID:bOeeE3v+
282名無しさん@ピンキー:2012/01/01(日) 00:42:41.19 ID:zqthJWwC
283名無しさん@ピンキー:2012/01/01(日) 00:43:03.90 ID:wNwkoWw2
284名無しさん@ピンキー:2012/01/01(日) 12:25:25.55 ID:0HBVThKH
お前ら年を跨いで何やってるんだ

俺はエロい文書くの無理らしいなぁ
ザッハトルテ脱がした所で完璧に止まった
285名無しさん@ピンキー:2012/01/01(日) 19:22:15.09 ID:NKUbUphR
エロくはないけどほぼ着てないのでこっちにらくがき投下
ttp://p.pic.to/zdaq
今年は(干支的に)バハ子の年
286名無しさん@ピンキー:2012/01/01(日) 21:16:51.77 ID:OF1zAmHV
>>284
目隠しとか縛るとか
287 【小吉】 :2012/01/01(日) 22:00:14.49 ID:RcUZa4RE
羽が下すぎね?
肩甲骨から出てるイメージ

とりあえずカメラさん回り込んで
288名無しさん@ピンキー:2012/01/10(火) 01:26:09.78 ID:tHizSAw1
発情期云々とかってこのスレで出来た概念で、オリジナルではないよね? まだプレイしてないのがあるから間違ってたら申し訳ないが

他にもそういうのあったら教えてくれるとSS書きやすい
289名無しさん@ピンキー:2012/01/10(火) 07:06:43.65 ID:gDKFqZiD
発情期云々はこのスレっていうか獣人ものだと割と鉄板なネタじゃないかな
公式設定がいい加減なところがあるから、作品の大まかな雰囲気さえ壊さなければ
細々とした設定なんかはある程度書き手の好きにして良いと思う

このスレだとノームなんかが良い例だけど、
つるぺた人形からオリエンタル工業製まで書き手とSSによって色々あるよ
290名無しさん@ピンキー:2012/01/10(火) 16:55:15.03 ID:l+CoPHZZ
キャラスレがリョナの流れなので誰か
291名無しさん@ピンキー:2012/01/10(火) 17:02:23.82 ID:SBUfBU3l
あそこ気持ち悪くて見てない
292名無しさん@ピンキー:2012/01/11(水) 01:09:17.55 ID:zAWJY1do
まさかpinkスレのほうが慎重な流れになっているとは・・・
293名無しさん@ピンキー:2012/01/11(水) 22:05:52.80 ID:Rw3dU83D
リョナも大概だと思うがザッハトルテは縛って泣かしたい
294名無しさん@ピンキー:2012/01/14(土) 07:52:10.66 ID:7J+0C1pB
鉄板だが騙して羞恥に頬を染めながらも自らの意志で腰を振るうち、ディアボロスの血に潜んだ肉欲を目覚めるように仕向けたい
295名無しさん@ピンキー:2012/01/17(火) 18:32:13.23 ID:/2lsDjbU
ふむ。そうして淫魔化して日々襲ってくれるようになるのだね、わかりますよ
296名無しさん@ピンキー:2012/01/22(日) 02:00:22.45 ID:s8zmEY44
どうせならさ、淫魔ザッハ×ディモ姐さん みたいな絡みをやってほしいな。
ここなら思う存分できるしさ・・
297名無しさん@ピンキー:2012/01/22(日) 02:10:36.11 ID:6bTucIOB
本スレ?の賑わいっぷりとは対照的ですしね
298名無しさん@ピンキー:2012/01/22(日) 22:43:17.32 ID:ax8lThnE
主にラプさん的な意味でにぎわってるな。
299名無しさん@ピンキー:2012/01/27(金) 01:59:59.89 ID:67RHMP53
キシュトルテとメイドが百合百合するSSまだー?
300名無しさん@ピンキー:2012/01/29(日) 04:34:30.21 ID:naM5rqhD
>>299
今ならお書きになっても誰からも文句は出ませんぞ
301名無しさん@ピンキー:2012/02/06(月) 00:20:46.10 ID:MGm+gYjW
「なんと!間違って媚薬入りの焼きそばパンを食べてしもうた!どこかにこの疼きを鎮めてくれる可愛いメイドはおらんかのう!」
「ああ姫様!こんなに火照られて…!私が今から鎮めて差し上げます!」

みたいなのほしゅい
302名無しさん@ピンキー:2012/02/06(月) 15:33:09.98 ID:CSyNSBsX
なんでそんなの持ってるんだよw
303名無しさん@ピンキー:2012/02/06(月) 15:46:07.98 ID:6ezYRtEk
プリシアナであったイベントで嘘ついてたやん
304名無しさん@ピンキー:2012/02/11(土) 00:43:02.92 ID:lH6aNwiy
305名無しさん@ピンキー:2012/02/13(月) 00:17:28.38 ID:katkQOdl
306名無しさん@ピンキー:2012/02/13(月) 12:54:41.89 ID:bRIQyr3M
307名無しさん@ピンキー:2012/02/13(月) 21:32:37.45 ID:es+Ta12H
308名無しさん@ピンキー:2012/02/14(火) 00:29:35.76 ID:IQHeKsZg
309名無しさん@ピンキー:2012/02/14(火) 00:31:55.40 ID:Lt92Vs/N
310名無しさん@ピンキー:2012/02/14(火) 04:51:14.72 ID:+b5tquhs
311名無しさん@ピンキー:2012/02/14(火) 06:15:44.00 ID:Dtt3IXO/
過疎スレの末期や
312名無しさん@ピンキー:2012/02/14(火) 15:31:14.66 ID:RGbiB4NH
ロリエル子にお兄ちゃんの固くておっきいチョコ下のお口で食べたいな
とか言われて全力で我慢して転げ回るヒュム男の妄想が加速してきた
313名無しさん@ピンキー:2012/02/22(水) 00:27:55.65 ID:5nxZam+0
耳姦エルフはよ
314名無しさん@ピンキー:2012/02/24(金) 23:26:33.84 ID:maDx3f16
315名無しさん@ピンキー:2012/03/02(金) 02:22:10.30 ID:hYt+kNJ7
h
316名無しさん@ピンキー:2012/03/12(月) 01:31:15.32 ID:61emOa2d
相変わらず過疎ってるな。
ちょっと画像を投下してみよう。

http://s.cyrill.lilect.net/uploader/files/201203120130370000.jpg

317名無しさん@ピンキー:2012/03/12(月) 01:32:52.73 ID:61emOa2d
あ、ちなみに>>316の画像はセレ子な。
318名無しさん@ピンキー:2012/03/12(月) 06:00:09.16 ID:DLWJAi2I
い、いやらしい……!!
319名無しさん@ピンキー:2012/03/14(水) 00:26:47.14 ID:Fekmijsb
できる>>316がいると聞いた
320セレ子好きの人 ◆ipgfq4cKFPWl :2012/03/14(水) 03:00:45.30 ID:3q2Aq9u3
>>316だが、まだまだ過疎ってるな。
もっと画像と投下してみようと思うけど、どうしようか。

あと、キャラスレの>>6も私です。
321名無しさん@ピンキー:2012/03/14(水) 04:08:36.43 ID:Wav+2jMS
ノム子さんをお願いしたしく
322名無しさん@ピンキー:2012/03/14(水) 08:05:56.63 ID:UMhPHl31
>>320
言わんでも絵でわかるのよ?
323名無しさん@ピンキー:2012/03/14(水) 14:33:00.77 ID:e0ynLhbb
>>320
エル子さんをお願いします。
324名無しさん@ピンキー:2012/03/14(水) 14:33:29.71 ID:e0ynLhbb
下げ忘れた、スマソ
325セレ子好きの人 ◆ipgfq4cKFPWl :2012/03/15(木) 01:28:38.76 ID:LI4y57q6
ここって拾った画像はだめなのかな?
326名無しさん@ピンキー:2012/03/15(木) 02:23:19.11 ID:eSHUzrzk
てーかそもそも画像の張り付けが禁止事項だったりする……
かといって別スレに貼るわけにもいかんというジレンマ
たまーに貼られるくらいならいいのかね?個人的には歓迎したいところではあるんだが
327名無しさん@ピンキー:2012/03/15(木) 08:44:18.10 ID:alDA4VRh
もう角煮にスレ建てちゃえよ
ついでにキャラスレから引っ越して
328名無しさん@ピンキー:2012/03/15(木) 15:19:26.21 ID:RdSJoN+W
そこまでの需要はないだろ、2行目が言いたいだけで
329名無しさん@ピンキー:2012/03/17(土) 01:13:22.59 ID:8X2qh/pS
冒険の彼方を書いてる人どうしたんだろう。
あの話の続きを見たいのに.....orz
330セレ子好きの人 ◆ipgfq4cKFPWl :2012/03/19(月) 02:11:25.30 ID:smlIrfNz
投下。
バハムーン♂×セレスティア♀

ttp://s.cyrill.lilect.net/uploader/files/201203190208440000.jpg

もうSS書いてる人、みんないなくなっちゃったのかな?
331名無しさん@ピンキー:2012/03/19(月) 15:09:25.21 ID:OylZ4pV5
マットプレイとはけしからんもっとやれw

いなくなったわけじゃないけどネタとか暇とかがないんじゃないかな
332名無しさん@ピンキー:2012/03/19(月) 15:14:12.53 ID:4z0Z/4Br
あとやる気もな
333名無しさん@ピンキー:2012/03/20(火) 13:33:36.26 ID:EZX8phaT
なんかすっかり活気がなくなってしまったようなので、保守も兼ねて小ネタをひとつ。
Finalの攻略本に乗ってたドワ男とエル子の4コマの続きを妄想してみた。
334名無しさん@ピンキー:2012/03/20(火) 13:34:45.70 ID:EZX8phaT
エル子「あら、柄にも無くお勉強かしら?」

ドワ男「んー俺、剣には自信あるけどエルフで魔法が得意なお前と一緒に戦ったらもっと強くなるだろ?」

エル子「えっ…ま、まあ否定はしませんわよ」

ドワ男「じゃあ、ドワーフとエルフの子供ってスゲー強いんじゃないか!?」

エル子「なっ!?」

ドワ男「いててててっ!耳が千切れるって!!」

エル子「あっご、ごめんなさい…あ、貴方が変な事を言うから…その…っ」

ドワ男「でもハーフドワーフって、なんかロゴが悪いんだよなー」

エル子「え?何を言ってるのよ、エルフとドワーフの子供ならハーフエルフでしょう?」

ドワ男「はぁ?ドワーフとエルフの子供なんだからどう考えてもハーフドワーフだろ?」

ドワ男&エル子『…………………』




ヒュム男「…なぁ、ドワ男とエル子のやつら、今日は何が原因で喧嘩してるんだ?」

バハ子「あー…なんかドワーフとエルフの子供はハーフドワーフって言うのか、ハーフエルフって言うのかで喧嘩してるみたい。」

ヒュム男「なんだそりゃ?本当にアイツらは仲が良いんだか悪いんだか…」

バハ子「でも子供かー…ねぇねぇ、もしあたしとヒュム男に子供が出来たら、その…ハーフバハムーンになるのかな?」

ヒュム男「なんだよハーフバハムーンって、長ったらしいから亜人で良いだろそんなの…っておい!?宿の中でいきなりオベリスクを振り回すなよ!危ないだろ!?」

バハ子「う、うるさいばかぁっ!!」
335名無しさん@ピンキー:2012/03/20(火) 13:35:26.94 ID:EZX8phaT
こんな感じで今日もウチのパーティは元気にやってます。
エロなしでスマソ
336名無しさん@ピンキー:2012/03/20(火) 15:31:03.83 ID:GXnufkUh
キライじゃないよこういうの
337名無しさん@ピンキー:2012/03/27(火) 13:02:24.04 ID:rrbV1YkM
ちょっと書かせてもらう。
分割になるけど。

バハ子ちゃんが格好に無頓着なのは何を着ても似合ってる良いとしても男の趣味が最悪だよね。
そう言うのはヒュム子だった。
「あの男は確かに変態ですわね。なぜバハ子はあの男を選んだのですか?」
フェル子も彼女に同意する。
バハ子はドワ男は堕セレ子の彼氏で、パーティで余った男はヒュム男しか居なかったからと答える。
「ヒュム男さんは女性の裸の写真を黙って売る変態です。」
バハ子はヒュム男を扱き下ろしたのち、でも彼にも良いところはあるんですよ。と付け加えた。
338名無しさん@ピンキー:2012/03/27(火) 13:16:53.97 ID:rrbV1YkM
「あんな屑に取り柄なんかあるんか?」
「まあまあドワ男さん、聞くだけ聞いてみましょうよ。」
堕セレ子はドワ男宥めながら、笑顔でバハ子に惚気話を促した。
「確かにヒュム男は変態ですが、初めてのときから毎回ゴムを付けてくれました。」
バハ子以外の一同がそれだけと思っていると、彼女は悪気なくヒュム男の長所であり短所であることをさらっと話した。
「殿方の特徴であるあそこが標準より小さめなんです。」
ヒュム男以外のメンバー、一同は苦笑いし、ヒュム男に至っては涙目だった。

おしまい。
あんまりエロくないな。
バハ子がちょっといろんなことに無頓着だなぁ。
339名無しさん@ピンキー:2012/03/29(木) 00:06:09.49 ID:oxFsc6Nx
バハ子さんそれ男にとっては公開処刑みたいなもんだからやめてあげてwww
340セレ子好きの人 ◆ipgfq4cKFPWl :2012/04/07(土) 21:46:26.26 ID:gnu592Uh
久しぶりに投下
バハムーン♂×セレスティア♀(ボテ腹)

ttp://s.cyrill.lilect.net/uploader/files/201204072144470000.jpg

お腹の子供はどっちに似るだろうか?
341 忍法帖【Lv=3,xxxP】 :2012/04/08(日) 02:04:14.23 ID:RoyF0YRO
test
342名無しさん@ピンキー:2012/04/09(月) 00:13:56.09 ID:Wp8ucA4S
>>340
がっしり掴んでる感じがいいな。あと何気にセレ子さんの下着がエロい
343 ◆BEO9EFkUEQ :2012/04/10(火) 01:30:05.30 ID:/KJKSvKQ
大変お久しぶりです。もう四月とか何の冗談でしょうか

続き投下します。今回のお相手はエルフで、特に注意はなし
楽しんでもらえれば幸いです
3441/14 ◆BEO9EFkUEQ :2012/04/10(火) 01:30:59.00 ID:/KJKSvKQ
他人に囲まれて何が楽しいのか。口先だけの言葉の何が嬉しいのか。
それよりペットといる方が楽しい。こちらの愛情に打算も何もなく応えてくれるから。
いつもみんなに囲まれ、楽しげに話すバハムーン。いわゆるガキ大将。
目立たない方が好き。一人でいる方が好き。僕とは縁のない人。
僕をからかう奴に、そいつはこう言った。
「やめろよなー。そいつはじっとしてる方が好きなんだよ」
一瞬、視界が消える。次に見えたのは、鼻血を出して床にへたり込むバハムーン。
「勝手に決め付けんなぁ!」
「……んだよお前!?訳わかんねえよ!」
子供同士の殴り合い。殴って蹴って引っ掻いて、気付けば二人とも血だらけ。
怒りすぎて痛くない。痛みが全部怒りに変わる。そんな二人だったから、喧嘩が終わるわけもない。
だけど、いつしか疲れて止まって、気付けば二人とも半ベソかいて、だけど、あいつはニッと笑った。
「何だよお前、すげえ強えじゃねえかよー」
差し出された手を掴んだのはどれくらいだったか。そして気付けば、みんなが僕を見てた。
注目されるのが、こんなに楽しかったなんて。上辺だけの言葉でも、褒められるのがこんなに嬉しかったなんて。
こんなに楽しいなら、注目されるのも悪くない。


ある意味において、一行の中で最も胆の据わった人物はフェルパーである。
「フェ、フェアなんていっつもこんな恰好なんだからー!みんなだってこれぐらい、い、いいでしょー!?フェアのせいじゃないもんー!」
「……てめえ以外の誰のせいだってんだ…?」
「ち、違うもんー!フェアのせいじゃないもんー!」
フェアリーを睨みつける五人に、その中心で怯えきった表情のフェアリー。その全員が、普段の制服とは打って変わって、ほぼ裸といった
異常なまでに露出の高い装束を身につけている。
「だって、武の儀式なんて、この学校じゃ絶対スモーでしょー!?だから、そのっ……お、踊りの方がいいって…!」
魔女達の呪いによって生み出された岩戸を破壊するためには、ある儀式が必要だった。その儀式とは、神に武と舞いを捧げ、
その力を借りて呪いを解くというものである。武力に偏った編成である一行は躊躇うことなく武の儀式に参加しようとしたのだが、そこで
横からフェアリーが舞いの儀式を希望してしまい、あとはもうあれよあれよという間に舞いの装束を着せられ、校庭へと駆り出されたのだ。
周囲にはキルシュトルテやチューリップなど他校の先輩や、クシナにタンポポといった同級生もいるが、その全てが女子生徒である。
「……俺の踊りと裸を、一体どんな神が喜ぶってんだい?え?」
「うぅ〜……お、落ち着かない……帰りたい…」
「いくら神のためとはいえ……わたくしも、これは、ちょっと…」
「………」
とはいえ、このような反応は彼等だけでなく、他の女子生徒も大騒ぎをしている。が、級友が閉じ込められている者もおり、初めに幾人か、
やがて少しずつ舞いを始めるものが増えていく。
それでも踏ん切りがつかない一行だったが、唯一いつもとほとんど変わらぬ様子のフェルパーが口を開いた。
「アイドル学科の舞台度胸つけさせる訓練だと思えばいい。踊らないわけにはいかないし、エルフ、一緒に踊ろう」
「え?え!?ちょ、ちょっと待って!ぼくまだ心の準備がっ…!」
「踊ってるうちに気にならなくなる。手、貸して」
有無を言わさず、フェルパーはエルフの手を取って踊りだした。さすがにサブでアイドル学科を学んでいるだけあり、タカチホの舞いとは
違うものの、そのダンスはとても洗練されたものだった。最初はステップすら覚束なかったエルフも、だんだん彼の動きに
引き込まれたらしく、いつしかまともなダンスを踊っていた。
3452/14 ◆BEO9EFkUEQ :2012/04/10(火) 01:31:44.29 ID:/KJKSvKQ
「……ドワーフさん」
「私はやだ。絶対踊らないから」
そう言うドワーフは、尻尾でしっかりと股間を隠し、両手で小さな胸をしっかりと覆い隠している。
「そうは言いましても、わたくし達だけ踊らないわけにはいかないでしょう?もし、わたくし達が踊らないことで儀式が失敗すれば、
校章をもらえないどころの騒ぎでは済まなくなりますよ。ドがつくほど恥ずかしいのはわたくしも同じですが、これも課題の一環だと
思って、一緒に踊りましょう?」
顔を赤くしながらも、セレスティアは優しく手を伸ばす。ドワーフは不機嫌そうにそれを睨んでいたが、やがて渋々といった感じで
手を取った。
「……踊りってわかんないから、セレスティアさん教えて」
「ええ、いいですよ。まず足はこう…」
いかにも不器用な感じで踊るドワーフに、それを優しくリードするセレスティア。踊り始めた四人を見つつ、バハムーンは口を開いた。
「……フェアリー」
「ひっ!?な、何!?」
「とりあえず、今は責任のことは置いておく。選んじまったもんはしょうがねえ、俺達も踊るぞ」
「え……ほ、本気?」
「俺達だけサボるわけにいかねえからな。ほれ、手ぇ貸せ」
そう言われ、フェアリーはおずおずと手を差し出す。その手をがっしりと掴むと、バハムーンはフェアリーを力強く引き寄せ、その耳元に
囁いた。
「ただし、あとで覚えてやがれ。今晩、俺の部屋に来い。しっかりお仕置きしてやる」
途端に、フェアリーの顔が真っ赤に染まった。
「あっ……ふ、ふん!絶対、い、行かないもんね…!」
そして踊り始めた二人の姿は、仕方ないといった感じで踊るバハムーンに対し、フェアリーの踊りにはなぜかほのかな艶が含まれて
いるのだった。ただ、それに気付く生徒もいなければ、そもそもそんな余裕がある者もいなかったのだが。
結局、儀式は成功し、岩戸に閉じ込められていた生徒達は全員無事に救出された。校章も無事受け取り、一行はさらにいくつかのクエストを
受け、イワナガ先生に休暇を取ってもらうために、モーディアルにいるヌラリとジャコツへ協力を仰ぎに向かった。
しかし、交渉がすんなりまとまるなどということはなく、彼等は力試しとして一行に戦いを挑んできた。
「うおっ、避けた!?あれをかよ!?」
「ちっ、当たらない…!」
同級生の中では、明らかに頭一つ抜けた力を持つ彼等だったが、その力を持ってすら、二人の動きを捉えることは難しかった。
「確かにやりおる……だが、まだまだ青いわ!」
瞬間、ヌラリの周囲に強大な魔力が集まった。それに気付き一行が身構えた瞬間、ヌラリが錫杖を振るう。
「イペリオン!」
「なっ……うわああぁぁ!!」
直後、辺り一面を凄まじい閃光が襲った。
「キャー!ヌラリンかっこいいー!」
「ジャコッチ……じゃない!ジャコツ、まだ気を抜くでないぞ!」
光が薄れ、生徒会室が元の明るさに戻る。そこにあったのは、巻き込まれすらしなかった机と椅子、床に倒れる五人に、ただ一人立っている
フェルパーの姿だった。
3463/14 ◆BEO9EFkUEQ :2012/04/10(火) 01:32:22.50 ID:/KJKSvKQ
「ふむ、さすがに貴様は無傷のようだな。ヒーロー学科のすり替えか」
「……負けない、倒れない、諦めない。それがヒーローの条件だ」
魔曲の冠を被り直しながら、フェルパーは静かに身構える。
「でも、あなた一人で私とヌラリン相手にできるつもり?」
ジャコツの言葉に、フェルパーは僅かに微笑んだ。
「一人で相手するつもりなんて、まったくない」
その言葉に応えるように、小さな衣擦れが聞こえた。
「くっ……こいつらぁ…!」
「いっててて……イペリオンとか、容赦ねえなあ、先輩…!」
ひどく傷ついてはいたが、ドワーフとバハムーンがのそりと立ちあがった。
「ほう、貴様等も耐えていたか。これは驚い…」
ヌラリの言葉が終わる前に、さらにいくつかの物音が聞こえた。
「あつつつ……イペリオンなんて、見たのも初めてだよ……さすがに効くねえ…」
「さすが、ド級の威力ですね……ですが、倒れるわけには、いきません…!」
「いったぁ…!」
さらに、エルフとセレスティア、フェアリーまでもが立ちあがった。これには、さすがのヌラリとジャコツも目を見張った。
「なんとっ!?全員耐え抜くとは!」
「うそ!?ダーリンのイペリオン受けて立てるなんて!?」
「……こぉ〜のぉ〜…!」
一瞬、気が緩んだ瞬間を逃すほど、彼等も甘くはなかった。
「ハゲぇぇぇーーー!!!」
フェアリーの怒りに満ちた叫びが、反撃の合図となった。エルフが真っ先に魔法を詠唱し、即座に全員が攻撃に移る。
「今度はぼく達の番だ!フェニックス!」
エルフの叫びと共に、炎の鳥が二人に襲いかかる。二人はすぐに左右へ飛んで直撃を免れたが、同時にフェアリーが跳びかかっていた。
「死ねっ!」
「ぬっ!」
物騒な叫びと共に、手裏剣が投げつけられる。曲線を描いて飛ぶそれを、ヌラリはあっさりと叩き落とすが、そこへさらにフェルパーが
走っていた。
「ミール、行け!」
フェルパーの言葉に応え、小さな鼠がヌラリの顔に飛び付いた。
「ちっ、小癪な!」
鼻を齧られる直前に引き剥がし、机の上に放る。その隙にフェルパーは距離を詰め、足元を狙って白刃を振るった。手裏剣の防御に錫杖を
使い、もう片手は顔の鼠を剥がすのに使っていたため、ヌラリは咄嗟に跳び上がってそれをかわした。
「空中じゃさすがに、先輩でも動きはとれねえよなあ?」
薬室に弾を込め、バハムーンはヌラリに銃の照準を合わせた。
「しまっ…!」
「逃がさねえ!」
パァン!と乾いた音が響き、ヌラリの首が弾かれたように仰け反った。彼の弾丸は狙い違わず、ヌラリの眉間を捉えていた。
「ヌラリン!?」
それにジャコツが気を取られた瞬間、首元に冷たい感触が走った。それを悟ると、ジャコツは小さく息をついた。
3474/14 ◆BEO9EFkUEQ :2012/04/10(火) 01:32:58.87 ID:/KJKSvKQ
「……一瞬気を抜いたとはいえ、やるじゃない?」
「お褒めに預かり、光栄ですよ」
いつの間にか背後に回り込んだセレスティアの鎌が、ジャコツの首元にあてがわれていた。彼が本気で殺しに来ていれば、彼女の首は
既に胴体から離れていただろう。
勝負あったかと全員が息をついた瞬間、ジャコツに向かってドワーフが走った。
「え!?ドワーフさん、ダメですよ!もう勝負はつきました!」
「まだ、殺してない!」
チェーンソーと大斧を構えて向かってくるドワーフに、ジャコツは一瞬驚いた顔をし、そしてニヤリと笑った。
首に鎌を突きつけられたジャコツ目掛け、武器が振り下ろされる。
「……ふふっ、頼もしい後輩じゃない」
楽しげなジャコツの声が響く。彼女は一瞬のうちにセレスティアの鎌から逃れ、ドワーフの攻撃すらかわしていた。
そして彼女の背後に、武器を振り下ろした姿のままでドワーフが立ち尽くしている。その体には蛇が巻き付き、彼女の首に鋭い牙を
突きつけ、今にも食いつこうとしていた。
「うむ…」
ジャコツの言葉に、ヌラリが静かに答える。その額には、ゴム弾の真っ赤な痕が残っていた。
「あ……あ〜、それで、先輩、イワナガ先生の代わりの依頼は〜…」
威嚇されつつ蛇を必死に宥めるセレスティアと、まったく動けずにいるドワーフを気にしつつも、バハムーンは話を進める。
最終的には、ドワーフは何とか無事に解放され、イワナガ先生の休暇も確保できることとなった。課題の成果としては上々だったが、
最後の最後で完膚なきまでに叩きのめされたドワーフはずっと不機嫌そうだった。
誰とも口を聞かず、いつも以上に不穏な雰囲気を纏っている。当然、そんな彼女に近づこうとする者はほとんどいなかったが、夕飯を
食べ終えた頃、隣に座ったセレスティアがドワーフに話しかける。
「先輩達は、強かったですねえ」
「………」
さすがにショックだったらしく、彼の言葉にもドワーフは何ら反応しない。
「ですが、仕方のないことですよ。あなたの強みが、あの方々には通用しませんでしたから」
「………」
「生き物は全て、死を恐れます。それゆえに、死に連なる悪意、殺意、そういったものも恐れます。あなたが叩きつける殺意は、相手を
怯えさせるのに十分なものです。そういったものに不慣れな相手なら、特にそうでしょう」
「……だから、何」
およそ数時間ぶりに、一行はドワーフの声を聞いた。
「ですが、彼女は違いました。彼女は、命の奪い合いに慣れています。奪う側も、奪われる側も、幾度となく経験した目をしていました。
ですから、本来であれば相手を怯えさせられるはずのあなたの殺意も、彼女には通じなかった。そうなっては、あとは純粋な技量の
勝負です。入学して数ヶ月のわたくし達が、三年間通った先輩に勝てる道理はありません」
「……セレスティア、うるさい」
その言葉は危険信号の一つだったが、セレスティアは構わず彼女に笑いかけた。
「強くなりましょう、ドワーフさん。今は勝てなくとも、わたくし達はここまで誰よりも早く駆け上がってきたでしょう?であれば、
あと一月、二月、あるいはもっとかもしれませんが、訓練を怠らなければ勝てない道理もありません。神は、自ら助くる者を助く。
努力を続ければ、神も必ずお力添えをしてくれますよ」
その言葉をつまらなそうに聞いていたドワーフだったが、やがて小さく息をつくと、静かに立ち上がった。
3485/14 ◆BEO9EFkUEQ :2012/04/10(火) 01:33:38.37 ID:/KJKSvKQ
「神なんかに頼るより、セレスティアさんが強くなればいいだけじゃないの?」
皮肉っぽい口調ではあったが、少なくとも機嫌は幾分か直ったようで、他の四人の仲間は内心ホッと安堵の息をついていた。
「あのお嬢ちゃんの機嫌直ってよかったぜ……隣にいる身としては、生きた心地がしなかったからな」
立ち去るドワーフとそれを追いかけるセレスティアを眺めつつ、バハムーンが小声で言う。
「僕も、一撃なら何でも耐えられるけど、ドワーフを相手にしたくはないね」
「ねー、それより明日どこ行くのー?フェア、またすぐタカチホ戻るのやなんだけどー」
フェアリーの言葉に、三人は顔を見合わせた。
「確かに、あそこは暑いからねえ。訓練がてら、ドラッケンから回っていくかい?」
「いや、むしろさっさとあっち行って用事済ませて、ドラッケン回ってまた帰ってくりゃいいだろ?」
「ええー!?フェア、暑いのやだー!」
「だからって、報告後回しにするわけにもいかねえだろ。報告さえ終わりゃ、あとは氷原だろうがどこだろうが回ってやるよ」
「むぅ〜……暑いのやなのにぃ…」
フェアリーはぶつぶつと文句を言っていたが、結局はバハムーンの意見に従うこととなった。
久しぶりに母校の自室に戻り、一行はそれぞれ冒険の疲れを癒す。やはり自室は落ち着くもので、彼等は部屋に戻ると翌日の準備を
済ませ、その後すぐに眠ってしまった。

翌朝、珍しく寝坊気味のドワーフとセレスティアを待つ間、フェアリーとエルフ、フェルパーは学食で朝食を取っており、バハムーンは
モミジ先生にタカチホ土産の大温泉まんじゅうを渡していた。
「ああ、でもこんなに食べたら太っちゃうかしら」
「多少ふくよかぐらいな方が、先生はきれいですよ。それこそお付き合いを申し込みたいぐらいです」
いかにも軽そうな笑顔で言うバハムーンに、モミジ先生もちょっと困ったような笑顔を返す。
「わふ〜ん、先生をからかっちゃいけませんよ」
その言葉を聞くと、バハムーンの顔が不意に真面目なものに変わった。
「本気で言ってたんですけど……じゃ、真面目に言えばいいですか?」
「わふん!もっとダメです!」
慌てて言う彼女に、バハムーンは楽しげな笑顔を浮かべた。
「ははは、さすがに生徒と先生とじゃ釣り合いませんからね。真面目に言うのは卒業までとっときますよ」
「もう、何言ってるんですか……先生をからかうより、他に報告とか残ってるんじゃないですか?」
「あ〜、またタカチホに戻らなきゃいけないんですよねえ。先生に会えなくなるのは寂しいですよ」
「聞かない子ですね、わふ〜ん」
するとそこに、ようやく起きてきたセレスティアとドワーフが通りかかった。
「おや、バハムーンさん。おはようございます」
「ん?おう、セレスティアとドワーフか。おはよう……てか、ちょっと遅いな」
「ふぁからあに?……んふぁ〜…」
大欠伸をしつつ、ドワーフがまだ寝ぼけているような声で言う。
「大丈夫かお前?」
「ん」
「そうか……あ、じゃあモミジ先生、俺はこの辺で失礼します」
「気をつけて行って来てくださいね」
口の周りの毛についた餡子を舐め取りながら、モミジ先生は三人を送り出す。寮を出ると、ドワーフはまた大きな欠伸をした。
3496/14 ◆BEO9EFkUEQ :2012/04/10(火) 01:34:20.30 ID:/KJKSvKQ
「眠そうだな」
「眠い」
「最近よく寝ますねえ。ドワーフさんも、さすがに疲れが溜まってるんじゃないですか?」
「ん」
受け答えも面倒らしく、ドワーフは最低限の返事しかしない。しかしそれも珍しいことではないので、セレスティアもバハムーンも
今更気にはしない。
非常に眠そうではあるものの、学食に着くとドワーフはすぐさま朝食を取りに行き、両手に山のような料理を持って帰ってきた。
「ドワおはよー。いっつもいっつも、よくそんな食べれるよねー」
「体の大きさが違う」
「体っつーより、胃袋の大きさじゃねえのか…」
バハムーンの言葉を無視し、ドワーフはフェルパーに視線を移した。
「フェルパー、アイドルってこう、頭の上に本載せて歩くとかやるの?」
「え、僕?あー、本じゃなくて水入れたカップでやった。ほとんど遊びみたいなものだったけど」
「それ今度教えて」
「あ、うん、別にいいけど…」
あまり絡むことのない相手からの意外な申し出にフェルパーは困惑していたが、断る理由もなかったために承諾した。
「それは、何か強くなるためのトレーニングですか?」
「別に」
セレスティアの言葉に、ドワーフはそっけなく答える。しかしその場にいたほぼ全員が、足運びや重心の落とし方などの基礎を
鍛え直すのだろうと思っていた。
「フェアも似てるのたまにやってるよー。忍者学科って遊びみたいのいっぱいで面白いよー」
「お嬢ちゃんもいつの間にか転科してたよな。そんなにその学科魅力あったのか?」
「だってさー、隠れて襲ったりとか、気配消したりとか、悪戯い〜っぱいできそうじゃない?ひひ!」
「なるほど、お嬢ちゃんらしいな」
そんな他愛もない話もしつつ、一行は準備を整えるとタカチホ義塾へと戻った。そこで報告を済ませると、今度はプリシアナ方面へと
足を向ける。
実力的には、そこに至るまでのダンジョンを軽く踏破できるほどだが、あまり時間を掛けても本戦開始の期日までにモーディアルへ
戻れなくなってしまう。そのため、いくつかのダンジョンはテレポルでさっさと抜けてしまい、一行はプリシアナで昼食を取ると、
今度はスノードロップへと向かった。
「すっずしーい!っていうか、寒ーい!」
「元気だね、君は。みんなは大丈夫かい?」
これまで砂漠にいたため、スノードロップの雪景色は天国のようでもあり、また地獄の寒さでもある。
「俺は、ちっと、寒い、な」
「わたくしも、さすがに少々。ドワーフさん、大丈夫ですか?」
「ん……寒い」
見た目こそ暖かそうなドワーフだが、彼女は体を抱くようにして、背中を丸めて縮こまっており、相当に寒いようだった。
「ドワ、あったかそうなのにねー」
「冬毛じゃないし、お前みたいに脂肪ない……ハ、ハ……ックシュン!」
「探索はやめておきますか?体も慣れていないのに無理に探索に出ては、体調を崩しかねませんし」
ドワーフの体を翼で包みつつ、セレスティアが言う。フェアリーはそれを見ると、いそいそと彼のもう片方の翼に潜り込んだ。
3507/14 ◆BEO9EFkUEQ :2012/04/10(火) 01:34:56.74 ID:/KJKSvKQ
「それもそうだ。バハムーンも密かに死にかけてるし」
「本戦で、ここ、なしだ、と、いいな」
結局、一行は探索を諦め、そのまま宿に向かった。しかし折悪しく、プリシアナの校章をもらいに来た生徒達が多くいたため、
部屋に空きがない。いくつかある宿のどこも満員であり、一行は途方に暮れた。
「で、どうすんのー!?フェア、こんなとこで野宿とかやだよー!?」
「わたくしも遠慮したいところですが……生憎と、魔力も尽きかけてますし、転移札もありませんし、交易所も閉まっている時間ですしね」
「お風呂もないしね……体だけ洗わせてもらおうかなあ」
「無理なものはしょうがない。何とかここで一晩過ごす策を考えよう」
バハムーンとドワーフは会話に参加する元気もなくなってきたらしく、二人とも毛布に包まって震えている。そんな二人に、ペットを
連れている三人は彼等を湯たんぽ代わりに貸していた。
「一応、防水断熱のマットは持ってますよ。それと燃料と、毛布が一人数枚分」
「テント置いてきたのは完全に失敗だったねえ。いっそ広間でもどこでもいいから間借りするかい?」
「それ、ドラッケンの生徒がやってた。他にいい案…」
言いかけたフェルパーの尻尾が、ピンと立った。
「あ、そうだ。雪洞作ろう。あれならテント並の機能がある」
「なるほど、遭難した時の定番ですね。では、町外れの一角をお借りするとしましょうか」
「わーい、ゆっきあそびーゆきあそびー!」
「……真面目に作ってね?」
話が決まったところで、一行は町外れに雪洞を作り始めた。疲れと寒さのため、最初は適当に穴を掘って済ませようと考えていたのだが。
「ねー、穴掘るだけじゃつまんなくないー?」
「そうですねえ……この気温ですと、氷の家でも作れそうですね」
「本格的なのに越したことはないよね。えーっと、確かあれは一部を半地下にして…」
知識と好奇心と遊び心、そして普段は見ない大量の雪が、彼等の行動をどんどん捻じ曲げていく。
「ふーっ!雪切るの疲れるねー!」
「エルフ、通路はこんなもん?」
「うん、それでいいよ!あ、バハムーン、中で押さえて!」
「結局俺まで……あいよっと!」
「いきますよドワーフさん、せーのっ!」
「ふっ!……はぁ、暑。あとブロックいくつ?」
雪洞を作りだしておよそ二時間、一行の目の前にある物は、誰がどう見ても本格的すぎる氷のドーム状住居であった。
「……家作っちゃったね」
「ドがつくほど気合の入った出来ですね……おかげで全身汗だくですよ。フォルティ先生なら死ぬところです」
「えっへへー、楽しかったぁ!ねね、早く中入ろうよー!」
「そうだね、このままじゃ風邪ひきそうだし、早く入ろう」
半地下となっている通路を通り、ドーム内部に入ってみると、思ったより暖かいという感じはしない。しかし時間が経つにつれ、一行の
体温によって中の空気がだんだんと暖かくなり始めた。おかげで気温に関しては心配なくなったが、構造故に別の問題が生じた。
「……汗臭い」
「通気性は最悪ですしねえ。おまけに、全員汗だくになりましたし」
臭いが中に篭るのだ。もっとも、嗅覚に優れたドワーフやフェルパーはさほど気にしていないようだったが、年頃の女の子である
エルフとフェアリーはさすがに気になるようだった。
3518/14 ◆BEO9EFkUEQ :2012/04/10(火) 01:35:33.90 ID:/KJKSvKQ
「ん〜、フェアもお風呂入りたくなってきちゃったよぉ…」
「だよねえ……でも、こんな時間に押し掛けるわけにもいかないし」
「お湯でも沸かしましょうか?体を拭くぐらいなら…」
「セレのエッチー!みんないるのにそんなことできるわけないでしょー!」
「あ、ああ、それもそうでしたね。ですが、フェアリーさんの場合は普段の服装…」
「う、うるさいなー!言わないでよー!気にしないようにしてるんだからー!」
「フェアリーうるさい。寝らんない」
「ごめんなさーい」
ドワーフは何ら気にすることなく、既に一番奥の壁を背にできる部分を確保して寝転んでいる。しかし言葉とは裏腹にまだ寝る気は
ないようで、他の仲間の動向を注意深く見守っている。
さすがに外に出る気もせず、男連中を出すこともできず、結局はフェアリーとエルフもそのまま寝ることにした。持ってきたマットの
都合上、六人はかなり密集することになり、ドワーフの隣にセレスティア、その隣にバハムーン、そしてそれぞれと頭を突き合わせるように
してフェアリー、エルフ、フェルパーと並んで寝ることとなった。
「みんなで寝るの初めてだねー。エル、早く寝ていいからねー?ひひ!」
「頼むからここで悪戯はやめてくれよ?」
「明日もあるんだし、お前も早く寝ろよ。んじゃ、おやすみ」
付けていたランプを消すと、辺りは一瞬にして真っ暗になる。それから数分と経たぬうちに、一番元気そうだったフェアリーの寝息が
聞こえ始め、続いてセレスティア、バハムーンと増えていく。
エルフはどうにも体が気持ち悪く、なかなか寝付けないでいたが、寝れば気にならなくなるかと思い、じっと目を瞑っていた。
ごろりと、隣のフェルパーが寝返りを打ち、エルフの体を後ろから抱き締めた。
「っ…!?」
一瞬驚いたものの、単に寝相が悪いだけかと思い、エルフは再び目を瞑る。
が、直後にうなじへかかる吐息に気付き、ぎょっとして振り向いた。
「ちょ、ちょっとフェルパー…!何してるんだよ…!?」
「……エルフの匂いする」
一瞬遅れて匂いを嗅がれていることに気付き、たちまちエルフの顔が真っ赤に染まった。
「ばっ……何考えてるんだよ…!?」
「いい匂い。エルフ、普段あんまり匂いないから」
元々匂いに敏感な種族だけあり、フェルパーとしては個々の体臭もその人固有の個性として見ている。しかしエルフはそれを嫌い、
毎日しっかりと体を洗うため、あまり匂いがなかったのだ。
それが今、彼女から非常に強い匂いが感じられる。その匂いはとても女の子らしく、また彼女らしい匂いだった。
「こ、こらっ、何盛ってるんだよ…!?やめろっ…!」
「ごめん、我慢できない」
後ろからエルフの体をぎゅっと抱きしめ、うなじに舌を這わせる。途端に、エルフの体がビクッと震えた。
「んっ……や、やめて…!み、みんな起きちゃうし、フェネも起きる…!」
「うん。だから声出さないで」
「こ、この馬鹿ぁっ……んんっ…!」
声が出そうになり、エルフは咄嗟に両手で口を覆った。誰か起きてはいないかと耳を動かしてみるが、寝息の数に変化はなかった。
「やめ……ほ、ほんとにやめてくれよ…!なんで君いっつも……こんなのやだ……っ…!」
エルフの弱々しい懇願など聞きもせず、フェルパーの舌がうなじから耳へと移る。エルフは必死に口を覆い、声を漏らさないように
我慢している。
3529/14 ◆BEO9EFkUEQ :2012/04/10(火) 01:36:13.98 ID:/KJKSvKQ
それをいいことに、フェルパーは彼女の耳にゆっくりと舌を這わせ、さらには片手を胸元へと滑りこませる。
「んっ……く、う…!」
声を出せば、誰かが起きてしまうかもしれない。その恐怖から、エルフは初めての時より緊張していた。だが、フェルパーの愛撫を
受けるうちに、身体の方は正直に反応してしまう。
上気し、再び汗ばんできたエルフの体。それを肌で感じつつ、フェルパーは彼女の薄い胸を優しく撫でる。気を張っているからか、
エルフはその刺激一つ一つに敏感に反応し、熱い吐息を漏らしている。
「んう……うっ、く…!」
声を抑え、刺激に耐え、しかしそれは結果としてフェルパーの行為を強く感じることとなってしまう。いつしか頭の中に靄がかかり、
快感に流されてしまおうかとエルフが思い始めた瞬間、不意にフェルパーの動きが止まった。
「んっ……ん、フェル、パー…?」
多少の不満が篭った声で呼ぶと、フェルパーは小さく笑った。
「エルフ、辛そうだからさ。やっぱりやめようかなって」
「え……い、今更そんな…!」
言いかけて、ハッと口を押さえる。肩越しに振り返れば、実に楽しげなフェルパーの顔が見え、少々ムッとしたものの、それでもエルフは
続く言葉を止められなかった。
「……こ、ここまで、した……ん、だから……その……さ、最後……まで…」
「ほんとにいいの?」
「き、君のせいだろ…!」
好きな相手に優しく愛撫され、無反応でいることなどできるはずもない。まして、それを途中で止められるなど拷問に等しい。
羞恥心が消えたわけではない。それでもエルフは、その快感に流されることを選んだ。
「せ、責任……は、取ってくれよ…」
消え入りそうな声で、しかしエルフは確かに言った。
フェルパーはにんまりと笑い、再びエルフの体を抱いた。そして優しく引き寄せ、体をぴったりとくっつける。
「力、抜いてて」
そう耳元に囁くと、いつの間に脱いでいたのか、フェルパーは自身のモノをエルフの股間に押し当てた。
「あっ…!?ん……ん…!」
手探りで位置を直し、秘裂に先端を押し付けると、フェルパーはゆっくりと腰を突き出した。
「ふぅっ…!んんん〜…!」
緊張から、いつも以上にきついエルフの膣内。しかし中はねっとりと濡れており、ぬるぬるとした肉を押し広げる感触が、フェルパーに
強い快感をもたらす。また、エルフからしてもいつも以上にフェルパーのモノが感じられ、それが強い快感となっていた。
ゆっくりと押し進み、腰と腰が密着するまで入れると、フェルパーはエルフの耳元に囁いた。
「エルフ、平気?」
「ん…」
口を開けば声が出てしまいそうで、エルフは両手で口を覆ったままこくんと頷いた。
「動くよ」
「ん……んっ…!んうぅ…!」
フェルパーがゆっくりと腰を動かし始める。激しい動きはできず、それは実にゆっくりとした動きだったが、だからといって快感が
弱いわけではない。むしろ、普段は感じられないような小さな刺激すらはっきりと感じられ、それが動きの少なさを十分補うほどの
快感を生む。
35310/14 ◆BEO9EFkUEQ :2012/04/10(火) 01:36:56.36 ID:/KJKSvKQ
「く、ふ……んっ……ふぅぅ…!」
声だけは出さないように、エルフは必死に口を押さえる。今の彼女には、声を出すことは自殺にも等しい行為だった。
音に意識が行く余り、毛布の中に響くくぐもった水音すらはっきりと聞こえる。それどころか、自身の呼吸音、心音ですら大きく聞こえ、
ましてや時折漏れる喘ぎ声など、その度にエルフの体がビクリと震えるほどだった。
そんな中で、突然聞こえたバサリという音は、二人を驚かせるのに十二分の効果があった。
「っ…!?」
一瞬、二人の動きが止まる。どうやらフェアリーが寝返りを打ったようで、毛布の中に丸まった状態になっている。しばらく経っても
特に他の動きはなく、二人はホッと安堵の息をついた。同時に、フェルパーは少し意地悪そうに笑うと、エルフの耳元に囁きかける。
「さっきエルフの中、すごく締まった」
「っ……しょ、しょうがないだろ…!いちいち、そ、そんなこと言……んうっ!?」
突然フェルパーが動き、エルフは思わず声を出してしまった。途端に、エルフは大慌てで口元を押さえ、同時にフェルパーのモノが
ぎゅうっと締めつけられた。
「こ、この馬鹿ぁっ……んんんっ…!」
間隔を開けて、不規則に突き上げる。予測できない動きに、エルフは快感に身構えることもできず、ただひたすらに口を押さえて
耐えようとする。そんな彼女をいたぶるように、フェルパーは動きを変え、強さを変え、彼女の体内を突き上げる。
突かれる度にエルフは小さく声を上げ、フェルパーのモノをぎゅうっと締めつける。動きこそ小さいものの、それは確実にフェルパーを
追い込んでいく。
「くぅ…!エ、エルフ、そろそろ、もう…!」
歯を食いしばり、囁くフェルパー。その言葉を証明するように、エルフを抱く腕にぎゅっと力が入り、動きも大きく、強くなっていく。
「んあっ…!ぼ、ぼくも、もうっ…!」
エルフの中が痙攣するように締めつけ、その刺激にとうとうフェルパーも限界に来た。
「エルフっ……出る…!」
「んんんっ……んぅぅ〜っ…!」
フェルパーのモノが跳ねるように動き、エルフの体内にじわりとした温かみが広がっていく。エルフは必死に口を押さえつつも、膣内は
射精をねだるかのように収縮を繰り返し、フェルパーのモノを何度も何度も締めつける。
やがて、動きが静まっていき、フェルパーが大きく息をつくと、エルフもぐったりと体を横たえた。
「んんっ……はぁ……はぁ…」
快感の余韻に浸りつつ、エルフはぼんやりと目を開けている。その視界には、セレスティアの頭とドワーフの肘が映っている。
35411/14 ◆BEO9EFkUEQ :2012/04/10(火) 01:38:02.69 ID:/KJKSvKQ
「はぁ……はぁ…………え?」
そこで、エルフは異常に気付いた。ドワーフの肘は、床についている。そして、こちらからは小指が見えている。
慌てて視線を上げると、うつ伏せになった状態で両肘をつき、そこに顎を乗せているドワーフの姿が映った。
「うわぁっ、ド、ド、ドワーフ!?」
「ふーん、もう終わり?なんか、地味」
そこでフェルパーも事態に気付き、大慌てでエルフから体を離した。
「なっ、ちょっ……い、いつから君…!?」
「……やぁっと終わったかよ。いつからも何も、起きねえ奴がいるとでも思ってんのか?」
頭の方から低い声が聞こえ、フェルパーはぎょっとして視線を上げる。同時に、すっかり呆れかえった顔のバハムーンと目が合った。
「うええ!?バ、バハムーンまでっ…!?ちょ、いや、ぼ、ぼく、そのっ…!」
「お、起きてるなら最初から…!」
「起きてるんじゃねえ、起こされたんだよ。まったくてめえらこんな狭いとこで盛りやがって」
呆れと怒りの入り混じった声のバハムーンに、フェルパーもエルフも言葉を失う。
「風呂入りてえとか何とか言っときながら、その体はどうするつもりなんだ?ええ?」
「あう……そ、それ、は…」
「そのままってわけにはいかねえよな、まさかよぉ。おーいセレスティア、こいつらに湯沸かしてやってくれ」
「そうなりますよねえ。わかりましたよ」
背中を向けたままで、セレスティアが答えた。その声ははっきりとしており、既にだいぶ前から起きていたことがうかがえた。
「セ……セレスティア、まで…」
「途中から、声が抑えきれていませんでしたし、おかしな気配があれば警戒するのは、冒険者の性ですよ」
ややうんざりした口調で言いながら、セレスティアは仰向けになり、その体勢のままで小さな鍋に水を入れ始める。
「……ドワーフさん、今だけ少しどいていただけませんか?」
「やだ。羽根布団どかしちゃダメ」
「そうですか」
元々期待していなかったのか、セレスティアは仰向けのままで器用に火を起こす。もはやエルフもフェルパーも完全に固まっており、
エルフに至っては耳まで真っ赤な顔になってしまっている。
ふと、そこでドワーフの視線が動き、フェルパー達からその隣の毛布へと移る。そしてやおら手を伸ばすと、その毛布をぺろんとめくった。
「聞いてない……聞いてない…!聞こえないもん……何もないもん…!」
小さな声で繰り返しながら、耳を塞いでブルブル震えるフェアリー。どうやら目もぎゅっと瞑っているらしく、ドワーフが毛布を
めくったことすら気付いていないらしい。
35512/14 ◆BEO9EFkUEQ :2012/04/10(火) 01:38:56.89 ID:/KJKSvKQ
「……おーい、お嬢ちゃん」
「わーっ!?わーっ!何も聞いてないもんーっ!フェア何も聞いてないーっ!」
バハムーンが声をかけると同時に、フェアリーは大声で叫び出した。
「素だと下系苦手なのかこいつ…」
それはつまり、二人の行為のせいでフェアリーも起きていたということだった。半分開き直り始めたフェルパーと違って、混乱の真っ只中に
いたエルフの頭に、自身の行為を全員に気付かれていたという事実が染み渡っていく。
「……う……うぅ〜…!」
「ちょっ……エ、エルフ!?」
「ふえぇぇ〜ん!!」
とうとう、エルフは泣きだしてしまった。彼女にとっては、フェルパーとの交わりを全員に聞かれていたなど、とても耐えられるような
辱めではなかった。
「お、落ち着いてエルフ!別にそんな、泣くような……痛ってええぇぇっ!」
言いかけた瞬間、フェルパーが悲鳴を上げた。慌てて毛布を跳ね上げると、主人を泣かされたペットがフェルパーの尻尾に本気で
噛みついていた。
「痛い痛い痛い!!フェネ、悪かった!!僕が悪……痛ぃっててて!!!」
「ふえぇ〜!もうやだぁ〜!ぼくもう帰るぅ〜!」
ペットに襲われ、尻尾を振り回すフェルパーに、恥ずかしさのあまり幼児退行を起こしているエルフ。それを見ながら、バハムーンは
全身がしぼむような溜め息をついた。
「……フェルパー、そこまでして注目浴びて、楽しいか?ん?」
「わ、わざとじゃなっ……あだだだっ!!だ、誰かこの子取ってくれぇぇ!!」
「……やっぱり馬鹿だね、こいつら」
そんな様子を楽しげに眺めながら、ドワーフが呟く。それに対し、セレスティアは否定とも肯定ともとれない笑みを浮かべた。
「まあ……若いというのは、いいことですよ。ははは…」
結局、彼等はその後エルフとそのペットを宥めるのにかなりの時間を要し、またフェアリーを落ち着かせるのにも相当な苦労を要した。
そして、全ての元凶であるフェルパーは、ただひたすら縮こまっているのだった。
35613/14 ◆BEO9EFkUEQ :2012/04/10(火) 01:39:41.76 ID:/KJKSvKQ
モーディアル学園に戻って数日。本戦開始を明日に控え、一行はそれぞれに英気を養っていた。
全ての学園の校章を集められたパーティはそれほど多くなく、本戦に参加できるということは、それだけで相応の実力を持つパーティだと
言える。その自信と誇りを胸に、本戦に挑もうと決意を新たにする生徒も多くいる中で、一行はまったくもって緊張感のない様子である。
「ドワーフ……一つ持ってやろうか?」
「グルルル…!」
「わかった、わかったよ。手は出さねえって」
両手に料理満載のトレイを持ち、さらに頭の上にまで同じようなトレイを乗せているドワーフ。既にコツはだいぶ掴んだらしく、
その状態でも危なげなく歩いている。
「にしても、フェルパーに聞いてたのってそのためかよ…」
「それ以外、こんな技術何に使うの」
「その技術自体じゃなくて……いや、いいか。さっさと戻って食おうぜ」
ドワーフには負けるものの、これまた料理満載のトレイを持ち、バハムーンは仲間達の元へと戻る。
「おかえりなさい。ドワーフさんのそれ、便利そうですねえ」
「セレスティアさんも習ってみたら。そんなに難しくなかったよ」
「いえ、わたくしは結構ですよ。そこまでたくさん食べられませんしね」
「それにさー、ドワとかフェルだと耳でも押さえれるから簡単なんだよー。フェア、それすごい苦手ー」
フェアリーはすっかりいつも通りの様子であり、ドワーフやセレスティアと仲良く喋っている。
その正面には、フェルパーとエルフが座っている。両者の間に、会話はない。
「よう、フェルパー。少しは傷良くなったかよ?」
「少ししか良くなっちゃいけねえのかよ…?」
「だからおま……一体どこで切れるんだかほんとわけわかんねえんだよ昔っから!傷が良くなったか聞いただけだろ!」
「……まあ、それなりに」
フェルパーの顔には、大きな青あざがいくつも付けられていた。
「サブとはいえ、アイドルがまあ……自業自得だけどな」
「………」
その傷は、スノードロップからモーディアルに帰ってきてから、羞恥が怒りに変換されたエルフに付けられた傷である。文字通りに
張り倒され、これまでに見たことがないような怒りを見せるエルフに、あの時は本気で死ぬかと思ったと、本人は後に語っている。
「エルフ、お前も気持ちはわかるけどな、やりすぎだ。いい加減、機嫌直せよな」
「……でも、ぼく…!」
「流されたお前も、自業自得なんだからな」
「あぅ…」
そう言われてしまうと何も言い返せず、エルフはへなっと耳を垂らした。そんな様子を、フェアリーはニヤニヤしながら見つめている。
35714/14 ◆BEO9EFkUEQ :2012/04/10(火) 01:40:24.33 ID:/KJKSvKQ
「ひっひひ!エルもフェルも、一緒にビースト学科に転科しちゃえばー?」
「ぼくがどうやってビースト学科に…」
「獣みたいに、すーぐその気になっちゃうんだからさー。いけるんじゃないのー?ひひひ!」
「っ……う、うるさいなっ!そんなっ、ぼく、別にっ……うぅ〜、もう言うなぁ…!」
「やぁ〜だよぉ〜だっ。ねー、フェルもその方がいいって思うでしょー?」
「思わない。大体君…」
「うっそだぁー!ぜぇ〜ったいそう思ってるくせにー!」
いつものように言い合いを始める三人を眺めつつ、バハムーンは溜め息をつく。
「こいつら、仲良いんだか悪いんだかわかんねえよなあ」
「悪くはないでしょうね。良くもないようには見えますが」
「フェルパーもエルフも、こう見えて問題児なのにはほんと参るよな」
「はは……ま、まあ、誰しも欠点はあるものですよ」
緊張感など微塵もなく、いつも通りの一行。彼等が数日後に、天空の宝珠争奪戦の本戦に参加するなどとは、誰も思えないだろう。
これほどまでに呑気でいられる訳は、彼等が自身の力に絶対の信頼を持っているからに他ならない。それに加え、仲間の力にも信頼を
置いている。焦ったり緊張したりする理由など、彼等には何一つなかった。
ただ一つ、彼等の気にかかる事態があったとするならば、未だにフェルパーと話さないエルフと、そのペットにすっかり嫌われて
意気消沈しているフェルパーをどうしたものかという程度である。
もっとも、それすらフェアリーにはちょっかいをかけるいい口実であり、セレスティアはさほど気にしておらず、ドワーフなど完全な
無関心である。バハムーンに至っては、あと二日もすれば仲直りするだろうと、既に幼馴染の行動を予測済みである。
結局、行為の発覚が大きな事件だったのは当事者である二人だけで、他の仲間には極めてどうでもいい事件なのだった。
358 ◆BEO9EFkUEQ :2012/04/10(火) 01:40:58.12 ID:/KJKSvKQ
以上、投下終了
それではこの辺で
359名無しさん@ピンキー:2012/04/10(火) 18:33:09.47 ID:v7xorbvX
うぉぉぉ!超久しぶりだァァァ!!
乙!
あなたの作品、いつでも楽しみにしてるぜ!
360名無しさん@ピンキー:2012/04/11(水) 09:36:11.83 ID:DozXC1/p
久々の投下うれしすぎワロタw
相変わらずどのキャラも味が出まくってていい・・・
仲間の前でセクロスされちゃうなんてエル子エロすぎるさすがエロフ
GJでした!
361名無しさん@ピンキー:2012/04/22(日) 21:55:24.99 ID:E0Q202ls
かなり遅れたけどGJです!
どうなるかと思ったこのパーティも案外うまくいってるようで安心したぜ
362名無しさん@ピンキー:2012/04/23(月) 17:30:07.22 ID:YguXebMs
怒られたので分割
バハ子とヒュム男の馴れ初めを適当に書いていく。
ファイナルのネタばれ注意(一行目)
ラプシヌを倒した一行はそれぞれ休暇を取っていた。
セレ子とドワ男はセレ子の家に挨拶に行き、ヒュム子とフェル子はどこかの海に行っていた。
バハ子は実家に戻り、露天風呂で骨をやすめていた。
「気持ちいい…」
バハ子が身体を洗おうと湯船から出るとヒュム男と鉢合わせてしまった。
「ヒュム男さん?」
「バハ子ー!」
股間を膨らませたヒュム男はバハ子に飛びつこうとしたが、彼女に抱きとめられた。
「ヒュム男さんがなさりたいことは分かりますが、いきなりとびつくのは滑って危ないですよ。」
「ってことはアレをするのはいいのかな?」
バハ子はヒュム男の問いに頷く。
363名無しさん@ピンキー:2012/04/23(月) 17:50:32.74 ID:YguXebMs
「でもどこでしましょうか?」
「ここでにきまってるだろ。」
「ぬるぬるして危ないですし…、わたしの部屋にいきませんか?」
「でもさ、ご両親に聞こえちゃうよ?」
バハ子は1つため息を吐き、嘘は駄目ですよとだけ言って、彼女の部屋に連れて行った。
バハ子の部屋に行くと、綺麗に片づけられており、一般的なバハムーンのイメージとは程遠い可愛らしい部屋だった。
「何を出しているのでしょうか?」
ヒュム男は無言でカメラを取りだした。
364名無しさん@ピンキー:2012/04/23(月) 18:14:29.25 ID:YguXebMs
彼はバハ子の域を荒げて、バハ子の裸をたくさん撮るんだと意気込んでいる。
「まあ、良いですけど。」
「バハ子脱いで脱いで。」
「ヒュム男さんが脱がすのではなくて?」
彼は自分で脱がしたら写真撮れないし、ポーズを取らせられないと主張した。
ヒュム男は鏡の前で色々なポーズをバハ子にさせ、写真をとっていた。
彼女は股から愛液を垂らし、ヒュム男を求めている。
ヒュム男はバハ子をベッドに押し倒し、声が出ないようにと優しくバハ子の口を押さえた。
ヒュム男はバハ子のふくよかな胸に顔を埋め、喘ぐことが出来ないバハ子の膣に男の物を挿入した。
バハ子に多少の痛みがあり、血が少し出たが、ヒュム男が少し動くのを我慢すると痛みがひいていった。
365名無しさん@ピンキー:2012/04/23(月) 18:25:12.77 ID:YguXebMs
「バハ子、ちょっと待って。」
ヒュム男はバハ子の膣からゆっくりと一物を抜くと、コンドームを付ける。
そして愛液と血が混ざった液体を垂らしている一糸まとわぬバハ子の姿をカメラに収めた。
またバハ子に挿入すると、ヒュム男は我慢の限界になったのかコンドームからあふれるほどの精液を出した。
ヒュム男はコンドームを外し、バハ子に後ろを向いて四つん這いになるように指示した。
彼はバハ子の口に猿轡を嵌め、声が全く出ないようにする。
366名無しさん@ピンキー:2012/04/23(月) 18:49:19.23 ID:YguXebMs
ヒュム男は彼女のお尻を舐め、バハ子が呻いても四つん這いのままでと指示をした。
バハ子の足が震えだしたのを見たヒュム男はその姿をカメラに収め、バハ子の肛門に挿入した。
バハ子を激しく突き、ヒュム男の一物は臨界に達していた。
「バハ子出すぞ。」
バハ子の肛門に精液を流し込む。
バハ子は熱さでもだえるが、ヒュム男の指示は続く。
彼女を仰向けにし、股を開かせる。
ヒュム男はバハ子の股をかるく小刻みに蹴り、いわゆる電気按摩をする。
バハ子は恥ずかしさで声を出したいが、猿轡のせいで声を出せない。
「俺、かるスカトロ趣味があるんだ。」
そういって、バハ子の股を小刻みに蹴り続ける。
バハ子が絶頂に達してもヒュム男は彼女の股を小刻みに蹴り続けた。
バハ子は用を足したくなるが、ヒュム男の要求に応えて黄色い液体を噴射した。
ヒュム男はその光景をカメラに収めると満足し、彼女に嵌めた猿轡を外して行為を終わらせた。
「お父様、お母様…、見ているのは分かっておりますのでお掃除よろしくおねがいします。」
バハ子の部屋のドアが開き、彼女の両親が入ってくる。
「わかってんだね。バハ子…。」
「あれだけ、わたしを結婚させたがってたお父様達ですもの。多少変態でも家柄の悪くないヒュム男さんを歓迎するのは当然です。」
「バハ子、こんなに大きくなって…」
「首謀者のお母様が綺麗にまとめないように」
そんなこんなでヒュム男とバハ男はこんやくしたのであった。
おしまい。
ヒュム男は変態という話でした。
367名無しさん@ピンキー:2012/05/09(水) 15:32:43.78 ID:4purBryA
乙乙!
だが最後の誤字で落ちがガチホモになってて吹いた
368名無しさん@ピンキー:2012/05/24(木) 22:11:02.98 ID:Q5lcYkEM
369名無しさん@ピンキー:2012/05/29(火) 02:38:01.09 ID:/lArErm1
まさかの新作でまた活気付く日が来るだろうか
370名無しさん@ピンキー:2012/05/29(火) 11:50:22.44 ID:sWRAnj6/
学園は卒業だッ!!
今度は剣と魔法と○○モノでヨロシク!!

○○にナニを入れるべきかな……あ、キャラデザはうしと病の続投でお願いしますw
371名無しさん@ピンキー:2012/05/29(火) 15:40:02.22 ID:/lArErm1
新・剣と魔法と学園モノというのが来てるんじゃよ
絵師はうし病続投でまさかの3D化
372名無しさん@ピンキー:2012/05/29(火) 23:04:22.21 ID:sWRAnj6/
>>371
なんだとぉーぅ!!??

ググったら本当だった……

まだまだ卒業できそうにないな……
373名無しさん@ピンキー:2012/06/08(金) 19:51:46.18 ID:/0rePZn9
よし久しぶりに書くか。誤字に気を付けないと。
ヒュム男がバハ子と交わったことを聞きつけたザッハトルテは急いでバハ子の家にやってきた。
「おまえらー!学生がセックスしたってのは本当か?」
「はい。本当です…」
彼女の問いにバハ子は顔を赤らめて答える。
「おまえらー!学生がそんなエッチなことをしてもいいと思ってるのか?」
「卒業は決まっておりますし、わたしの場合はしないとまずいというか…」
「む?」
ザッハトルテは彼女の答えに疑問を覚えた。
「実はわたしの家はバハムーンでも十指に入る名門なのですが、家督を継ぐ男子がおらず、このまま卒業してしまうと暴走した両親が誰の子でも良いから孕んでこいと娼婦に出されかねません」
「ですので、家柄が良く、家系図から見て男子が生まれやすいヒュム男さんをわたしの両親が唆したです。わたしもヒュム男さんだからこそ、あんな恥ずかしい行為でも耐えられたのですけど」
ザッハトルテは恥ずかしい行為についてバハ子に耳打ちして興味本位で聞いてみた。
「裸の写真を取られたり、四つん這いにされておまたを優しく小刻みに蹴られたり、おもらしをさせられたりと」
ザッハトルテはバハ子の初夜の思い出を聞くと顔を真っ赤にし逃げて行った。
卒業式後の夜、バハ子の部屋ではヒュム男の精液とバハ子の愛液と尿が混ざった液体がバハ子のベッドのシーツに垂れ流されていたのは言うまでもない。
そして二人は結婚し、何ヶ月か同時にバハムーンの同時に男女二子を儲けた。
バハ子娘が露出狂になるのはまた別の話である。
374名無しさん@ピンキー:2012/06/09(土) 22:12:00.00 ID:47ZaYtJ+
おつ!
だけどやっぱり最後誤字があって和んだ
375セレ子好きの人 ◆Oh8cZBRTK6AM :2012/06/19(火) 23:18:46.39 ID:5jg84MKm
久しぶりすぎてトリ忘れたかも

ブルマでバハ姉

ttp://s.cyrill.lilect.net/uploader/files/201206192304300000.jpg
376名無しさん@ピンキー:2012/06/21(木) 01:14:21.88 ID:Ul+7Zjs2
なんとエロいバハ子
377 ◆BEO9EFkUEQ :2012/07/04(水) 04:15:08.66 ID:nsjfkcCP
お久しぶりです。実に三ヶ月も空いてしまった。

続き投下します。今回はサブパーティの話でお相手はヒューマン。
楽しんでもらえれば幸いです。
3781/16 ◆BEO9EFkUEQ :2012/07/04(水) 04:15:52.24 ID:nsjfkcCP
「好きは力だ!」
これは彼女の昔からの主張であり、信念である。曰く、好きであれば努力を努力とも思わず、自然とその技能が身に着く。
従って下手の横好きなどというものは存在せず、好きであればある程それに特化できるというのが彼女の考え方である。
これだけ聞けば、誰もが彼女を気のいい優しい人間であると思うだろう。
しかし、彼女の言う『好き』とは、ありとあらゆるものに向けられており、またそれは自分への言葉でもある。
逆に言うならば、彼女は『好き』以外の物をすべて排除しようとする。冒険者養成学校という、時に命すら賭けるこの学校においては、
彼女はその好き嫌いを如何なく発揮し、優しさとは程遠い、むしろ冷徹な人間として評価されていた。
『好き』なパーティを組むため、彼女は何人もの生徒と出会い、別れた。
無抵抗の生き物を、顔色一つ変えずに殺したセレスティア。殺しに疲れ、探索を嫌がるようになったフェルパー。勉強を嫌い、背中を
預けるにはあまりに不安のあったクラッズなど、数えればきりがない。
それらを排除し、時には自身がパーティから抜け、彼女は理想のパーティを求め続けた。おかげで彼女が本格的な探索に出られるように
なったのはかなり後の方だったが、理想が現実となった時、力をつけるのは早かった。
「よっしゃあ!オレから行くぜー!」
「あいあーい、みんなの防御はお任せくださいねー」
「そんじゃあ僕も!いけぇ、砂嵐!」
驚くほどの俊敏さで攻撃を仕掛けるドワーフに、魔法壁を展開するバハムーン。直後にはクラッズが魔法を使い、牽制を仕掛ける。
「行くよ、ディアボロス!援護、よろしく!」
「は、はい!頑張ります!」
両手に拳銃を持ち、彼女は真っ直ぐに敵を見据えた。その体が、不意にぐらりとよろめく。
パパパパン!と火薬が爆ぜる音が響き、辺りに硝煙の匂いが立ち込める。同時に、敵の前列が一斉に倒れた。しかしまだ敵は多く、
さらに中列と後列が控えている。
「後列から行きます!シャイガン!」
ディアボロスが叫ぶと同時に、巨大な閃光が襲い掛かり、敵後列を飲み込んでいく。そして、手の回らなかった中列のモンスターからの
反撃が始まる。
初めに仕掛けてきたモンスターの体当たりで、魔法壁にひびが入る。続けて襲ってきた攻撃で、魔法壁は音を立てて砕けた。
「ありゃー、やっぱり強いですねー。二発でおしまいですかー」
顔には制服のように張り付いた笑みを浮かべつつ、バハムーンが呑気な声を出す。
「じゃーご主人様、あとはよろしくお願いしますねー」
三匹のモンスターが、一斉にヒューマン目掛けて襲い掛かった。
直後、ガギンと硬質な音が響き、モンスターが弾き飛ばされた。
「傷つけさせるもんか。どんな攻撃だろうと、止めてやる」
ヒューマンの前に立つ、もはや鉄塊とでも呼べそうな人物。異形のグレートヘルムから覗く青い瞳と、地面を滑るような動きだけが、
辛うじて彼がノームなのだと示している。
「さっすがノーム!よぉし、次で終わりだぁー!」
楽しげなクラッズの叫びと共に、最後の攻撃が始まる。ほとんど攻撃らしい攻撃も受けず、彼等はあっという間に殲滅を終えた。
3792/16 ◆BEO9EFkUEQ :2012/07/04(水) 04:16:33.63 ID:nsjfkcCP
「へっ!本戦っつってもこの程度なら、楽勝だな!」
「この程度ならそうですねー。入り口でこの程度だから、奥はもっと強いとか思わないんですかねー」
「い、いちいちうるせえな!」
「あ、あの……バハムーンさんも、お兄ちゃんも、喧嘩はやめて…」
ディアボロスの言葉に、ドワーフとバハムーンは同時に振り向いた。
「……お、おう」
「あいあーい、でも喧嘩なんかしてないですよーディアちゃん。だって喧嘩は、同レベルの相手じゃないと起こらないんですからー」
「お前はほんとオレに何の恨みがあるんだよ!?」
「そ、そう突っかからないで…」
兄、と呼んではいるものの、別にドワーフがディアボロスの実の兄であるというわけではない。単に妹学科に所属するディアボロスに対し、
ドワーフが兄学科を取っているというだけの話である。
「仲いいよねーあの三人。ヒューマン、行けそうかな?」
「この程度なら、まだまだねー」
クラッズに対し、明るい笑顔を見せるヒューマン。そんな彼女に、ノームがそっと近づく。
「君を危険な目には遭わせない。安心して」
「あっ……う、うん!き、期待してる……からねっ!」
途端にヒューマンの歯切れが悪くなり、その顔もやや赤く染まっている。すると不意にカシャッというシャッター音が響いた。
「あっ!ちょっとバハムーン、何撮ってんの!?」
「何ってー、冒険の記念写真ですよー。私達が一位になったら、この写真も校内新聞に載るかもしれませんよー?」
「ほ、ほんとにそれだけでしょうね…?まあ、それなら、いいけどさ」
メイド学科に加えてジャーナリスト学科という一風変わった履修の仕方をするバハムーンは、事あるごとに写真を撮っている。多くの場合、
それは不穏な予感のする写真なのだが、彼女の魔法壁と攻撃力、チェックスキルに盗賊技能にいざという時の庇う技能は非常に役立つ。
そんなところが、ヒューマンが彼女を『好き』になった所以である。
他にも、ドワーフはその瞬発力と攻撃力が『好き』になり、クラッズは彼の持つスキル、幸運の鐘の効果が『好き』だった。
その三人はヒューマンが直接探し出した仲間だが、ディアボロスは以前彼女が『嫌い』だから追放したセレスティアから紹介を受けて
仲間になったという経緯がある。当初は非常に頼りなかったが、根が真面目なため、今では安心して背中を預けられる存在である。
そして、肌の露出がほとんどないほどに防具を着込んだノーム。彼に関しては、聞いた誰もが驚くような逸話がある。
一月ほど前、ヒューマンが学食で夕食を取っていると、不意に彼が近づいてきた。そして開口一番、こう言ったのだ。
「あなたに一目惚れしました。好きです。どうかあなたのパーティに入れてください」
一緒にいた仲間達は全員呆気に取られ、周囲の生徒も言葉を失い、ヒューマン自身も思考が完全に止まってしまった。そしてようやく
絞り出した答えは。
「あ、あっ、あっ、い、いいよ!?べ、別にいいよねみんな!?そんなっ、えっと、よろしっ……だっ、じゃっ……えっとっ、も、もし、
力なかったらごめんするかもだけどっ……と、とにかく、えっと、よ、よろしくっ!」
あまりにも直球すぎる好意と言葉を受け、ヒューマンは完全に混乱していた。当然、バハムーンはそれをしっかりと写真に収めていた。
好き嫌いの激しい性格だけに、彼女は人に好かれることがほとんどなかった。そこに彼の言葉を受け、最初は混乱するばかりだったが、
幾日も経たぬうちに彼の鉄壁の防御と、それを活かした庇う能力を『好き』になっていた。そして、自身に好意を抱いてくれるところも
『好き』になり、いつしか彼の全てが好きになっていた。
とはいえ、現状、彼女はパーティのリーダーである。仲間をまとめる者が誰か一人を好きになるなど許されないことだと必死に言い聞かせ、
彼女はその気持ちを隠しつつ、仲間の前ではいつものように振る舞っている。
無論、隠せていると思っているのは本人だけであり、他の仲間は全員二人の関係を知っている。
3803/16 ◆BEO9EFkUEQ :2012/07/04(水) 04:17:16.01 ID:nsjfkcCP
彼女達は順調に奥へと進んでいき、やがて大量のワープゾーンのあるエリアへと踏み込んだ。
「うおっと!?まぁたかよぉー?ほんっと、うぜえなあここ」
「あいあーい、ちゃんとメモは取りましたよー。このワープゾーン、たぶん外れと正解とがありますねー」
「じゃ、外れを避けながら正解探せばいいわけね?はぁ〜、虱潰しに行くしかないか…」
一見しただけではわからないワープゾーンは、厄介な罠の一つである。しかも、今回のようにそれを利用しなければ突破できない場合も
あり、多くの者が嫌うものでもある。
「ま、いいじゃない?ノームのおかげで消耗は少な…」
クラッズが言いかけた瞬間、突然横からモンスターが飛び出してきた。
「きゃあ!?て、敵っ…!」
咄嗟にその場を飛び退き、体勢を立て直そうとしたディアボロスの姿がフッと消滅した。一瞬遅れ、仲間達はその意味に気付いた。
「馬っ鹿野郎!逃げる先ぐらい考えろ!」
「あいあい、いきなりならしょうがないですねー。助けに行きますよー」
続いてドワーフとバハムーンが、ディアボロスの消えた方へと飛び込んで行った。
「ちょ、ちょっとドワーフ!バハムーン!そんな勝手に…!」
「クラッズ、話は後!敵が来てる!」
目標を見失ったモンスターは、ヒューマン達へと狙いを定めていた。さらに、その後ろから仲間のモンスターが現れる。
「うへぇ、これ僕達だけで戦うのぉ?やっだなぁ…」
「仕方ないよ。大丈夫、君達に手出しはさせない」
「ノーム、よろしくね!」
仲間が減ったとはいえ、ノーム以外の二人は後列であり、さらにヒューマンは相手が集団でも単体でも十分に戦えるため、それほどの
危機には陥っていない。多少時間はかかったものの、三人はモンスターの殲滅を済ませると、近くのワープゾーンへと飛び込んだ。
ところが、その先はまだ見たことのない場所であり、当然ながらディアボロス達の姿はなかった。
「えええ!?ここで正解引くぅ!?まったくもぉ〜、私達ついてるんだかついてないんだか…」
「……しょうがないよ、ヒューマン。とりあえず、先に進もう。今までの流れからすると、この周囲にもワープゾーンが張り巡らされてる
はずで、しかもそこに入ってもディアボロス達のところには行けない。道を探しつつ、無事でいてくれることを祈るしかないよ」
「ふぅ……それしかないよねえ」
他に案があるはずもなく、三人は探索を再開した。人数が減っても、ヒューマン達には優秀な盾要員がおり、ディアボロス達は後衛と
前衛、それに加えてどちらもこなせる万能学科がいる。どちらにしろ致命的な危機にはなるまいと、それほどの心配はしていなかった。
何度か戦闘をこなしつつしばらく進むと、前方から何やら戦闘の音が聞こえてきた。
「ヒューマン、あの音聞こえるかい」
「うん、でもディアボロス達じゃなさそう……何にしろ、行ってみようか」
同じ生徒が苦戦しているのであれば、手助けをするのもやぶさかではない。果たしてそこに駆けつけてみると、三人の生徒が十匹を超える
数のモンスターの群れと戦っていた。
「おいフェルパー!魔法いけるか!?」
「ちょっときつい。ミール、援護しろ!」
「邪魔!」
銃と剣を持つバハムーンに、剣とマイクを使うフェルパー、そして巨大な斧とチェーンソーを振り回すドワーフ。明らかに前衛のみで
組まれており、しかも対集団戦を不得手としているパーティのようだった。
3814/16 ◆BEO9EFkUEQ :2012/07/04(水) 04:17:58.93 ID:nsjfkcCP
「きつそうだね、あれ。ヒューマン、助ける?」
「うん、行こう。あんな群れじゃ、私達だってきついしね」
話はすぐにまとまった。彼女達は彼等に走り寄ると、ノームは前衛に、クラッズとヒューマンは後衛に収まった。
「君達、大丈夫!?援護するよ!」
「おっと、誰だか知らねえが助かるぜ!それに、あんたみてえなお嬢さんとあっちゃ、見学でも大歓迎だぜ!」
「そ、そう、あはは…」
いきなりの反応に、ヒューマンは苦笑いを返した。するとすぐにフェルパーが振り返る。
「バハムーンがごめん。でも、助かる」
「皆さんは攻撃をお願いします。防御は僕に任せてください」
「邪魔はしないでよ!」
いかにも邪魔そうに言うと、ドワーフは猛然と敵に突進していく。奇妙なことに、フェルパーとバハムーンはそれに続かず、まったく別の
敵を狙って攻撃を仕掛け始めた。
「お?お嬢さんはガンナーか。さすが、俺よか銃の扱いは心得てるな。銃も嬉しそうだ」
「ああ、うん……ありがと」
銃が喜ぶ、という変わった表現に、ヒューマンは少し興味を引かれた。軽い男のようだったが、彼も銃を使い、またその射撃は正確である。
しかも、左手では剣の柄を握っており、倒し損ねたモンスターが迫るとそれを抜刀して斬り捨てていた。
バランスは悪くとも、彼等は全員が相当な腕前を持っていた。彼女達が加勢したことであっという間に殲滅を終えると、ヒューマンは
バハムーンに話しかけた。
「君こそ、いい腕してるじゃない?学科は海賊?」
「おっと、ガンナーに褒めてもらえるのは光栄だな。その通り、海賊とサブでマニアを取ってる」
その時、ヒューマン達は強い殺気を感じた。一体何事かと身構えると、彼等の仲間のドワーフがこちらをじっと睨みつけている。すると、
フェルパーがすぐそれに気付き、彼女とヒューマン達の間に割って入った。
「さっきから仲間がごめん。おかげで助かった。これ、お礼にでもなれば」
そう言って、フェルパーは女神のレイピアを差し出してきた。意外な高級品に驚きつつも、ヒューマンは有難く受け取った。
「ノーム、これどう?」
「うん、よさそうだね。使わせてもらうよ、ありがとう」
「ところでお嬢さん、あんたらは三人で組んでるのか?」
バハムーンの質問に、ヒューマンは首を振る。
「ううん、ほんとは六人なんだけど、さっき不意打ち食らってワープゾーンに飛び込んじゃって…」
「ありゃ、俺達とまったく一緒じゃねえか。いやぁしかし、おかげでこんな可愛らしくて強えお嬢さんと一緒になれるなんて、
これはこれでついてるな、はははは」
「……ど、どうも」
時に冷徹とも言われるヒューマンは、相手から褒められることに慣れていなかった。恨み言や捨て台詞などは聞き飽きるほどに
聞いてきたが、ノームのように直球の愛の言葉や、バハムーンのようにやたらと褒められることに耐性が全くない。
「あ、えと……そ、それで、君達も本戦でここに来てるんだよね?じゃあせっかくだし、お互いの仲間が見つかるまで、パーティ組んで
みない?君達かなり強いみたいだし、状況的にはありだと思うんだけど」
「ちょ、ちょっとヒューマン」
そこで、クラッズが慌てて囁く。
3825/16 ◆BEO9EFkUEQ :2012/07/04(水) 04:18:42.43 ID:nsjfkcCP
「あのドワーフの子とか、なんか怖いんだけど……大丈夫なの?こんな人達と一緒で…」
「まあ、あの子はともかく、男子二人は問題ないでしょ。それに、負担は分散できた方がいいし…」
「いざとなれば、僕が守る。心配いらないよ」
「……う、うんっ!よ、よろしくねっ!」
顔を真っ赤にしつつも、ヒューマンは頷いた。
「そっちの話はまとまったかい?」
「えっ!?あっ、ま、まとまったよ!う、うん、しばらくよろしくね!」
「こちらこそよろしく、お嬢さん……と、あんたらもな」
「……ええ、よろしく」
こうして、彼等は即席のパーティを組み、さらに奥へと歩いて行った。新たな仲間への若干の期待と、多大な不安とを抱えつつ。

その頃、ディアボロス達はかなりの苦戦を強いられていた。学科的なバランスはいいのだが、全体攻撃の手段はディアボロスの魔法のみで
あり、しかもそのディアボロスはひとたび狙われるとすぐに危機に陥ってしまう。単体攻撃ならばバハムーンが庇えばいいのだが、
全体魔法などを受けてはひとたまりもない。
「きゃあ!お、お兄ちゃんー!」
「てっめぇ!このぉ!おわっ……あつつつ…!」
「あいあいあーい!ディアちゃんはこっちに任せて、そこのお兄ちゃんは殲滅だけ考えてー!」
「うう……ま、魔力が…!バフォ、お願い!」
ディアボロスが声をかけると、小さな山羊が小さな槍を振りかざし、一声鳴き声を上げた。その鳴き声は魔力を帯び、ディアボロスの体に
吸収されていく。
「こ、これでシャイガン一発分には…!バハムーンさん、大丈夫でしゅか!?」」
「あいあい、まだ何とかねー。でも、ここで敵さん減らさないと厳しいかもですよー」
「う、うん、頑張りゅ!」
「ディアちゃん、落ち着いてねー。さっきから噛んでますよー」
「オレもやるだけやるけどよ……少し……いや、何でもねえ!やるぞ!」
これまでに大きな群れとの戦闘が、かれこれ三回ほども続いている。もはやディアボロスの魔力は心許なく、バハムーンの魔力は
魔法壁一枚すら張れないほどになっていた。それでも決して諦めず、三人は敵の群れを睨み、武器を握り直した。
そこに、ふわりと一陣の風が舞いこんだ。
「苦戦しているようですね」
「え…?」
聞き覚えのある、柔らかく優しい声。ディアボロスが振り返るのと、彼が隣に降り立つのはほぼ同時だった。
「助太刀しますよ、ディアボロスさん」
「ああっ!!シェレスティアしゃん!!」
「噛んでる噛んでる、噛みまくりだよーディアちゃん」
純白の翼に暖かな声、そして顔に浮かぶ優しげな微笑みは、彼女の記憶とまったく変わらなかった。さすがに手に持つ武器は堕天使らしい
禍々しい鎌になり、左腕にはほぼ武器である盾、アダーガが握られていたものの、それでも彼を見間違うわけがない。
3836/16 ◆BEO9EFkUEQ :2012/07/04(水) 04:19:29.87 ID:nsjfkcCP
「セレー、それ知り合いー?すっごい弱そうなんだけど、なんでこんなとこいんのー?ひひ!」
様々な思いを一気に吹き飛ばすような不快な台詞。思わずムッとして視線を向けると、そこには楽しげに笑うフェアリーと、ばつの悪そうな
表情を浮かべるエルフがいた。
「き、君はいきなりそういうこと言わない!ごめん、言いたいこと色々あるかもしれないけど、今はとにかく敵を倒そう!」
「なんだお前等…!?ま、助太刀はありがてえけど、ディアボロス危ない目に遭わせんなよ!」
「おー?何、何ー?自分ができもしないこと、フェア達に強制する気ー?」
「んなっ!?て、てめっ…!」
「ひひっ!前衛がよそ見してたんじゃ、危ないんじゃないのー?」
「……あ、あとで覚えてやがれてめえ!」
「フェアリーさん……今はとにかく、殲滅を優先しましょう。エルフさん、先手はお願いします」
困り切った笑顔を浮かべつつ言うと、セレスティアはディアボロスへと視線を向けた。
「ヒューマンさんのところは…」
「あっ、あっ、ち、違うでしゅ!わちゃし……わた、し、達!ワープゾーンのせいで逸れちゃって…!」
「ああ、なるほど。と、いうことは、あれからずっと彼女と一緒にいたということですか」
そこで一度言葉を切ると、セレスティアはディアボロスに優しく微笑みかけた。
「頑張りましたね、ディアボロスさん」
「っ……は、はいっ!」
目に涙すら浮かべ、ディアボロスは勢いよく頭を下げた。そんな様を、バハムーンはポケットに忍ばせたピンホールカメラでちゃっかりと
撮っていた。
「さて、とにかく今は……この戦い、終わらせるとしましょうか」
「はいっ!」
セレスティア達の会話が終わったのを見計らい、エルフが真っ先に動いた。
「みんな、取りこぼしは頼むよ。ベヒーモス、出番だ!」
エルフの声と共に、巨大な獣が実体を取り、激しく地面を揺らした。それだけでも多くのモンスターが倒れたが、残った敵にフェアリーが
手裏剣を投擲し、さらにドワーフが殴りかかった。
「うらぁ!これで一匹ぃ!」
「ん、速い……でもフェアの方が速いもんねーだ、ひひ!」
「わたくしも、負けてはいられませんね。メア、行きますよ!」
セレスティアの言葉に応え、黒い翼を持った羊は大きな鳴き声を上げた。その声を受けたセレスティアの鎌は、モンスターの首を一瞬の
躊躇いもなく刈り飛ばした。
「あいあーい、それじゃあ私も攻撃に出ますよー。ご主人様達には近づけませんよー!」
ビュン、と鞭が唸りを上げ、モンスターに直撃する瞬間、パァン!と激しい音が鳴った。それに弾かれるように、モンスターは吹っ飛んで
動かなくなった。
「あとは私が…!シャイガン!」
ディアボロスが叫んだ瞬間、強烈な閃光が走り、残っていたモンスターは全てその光に呑まれ、消えていった。
殲滅を終え、一行は大きく息をついた。すると、ドワーフがセレスティアを睨む。
「……で、助かったけどよ、お前誰なんだ?ディアボロスと知り合いなのかよ?」
「あ、ええ。以前に…」
「お兄ちゃん!」
言いかけたセレスティアの言葉を遮るように、ディアボロスが強い口調で言った。
3847/16 ◆BEO9EFkUEQ :2012/07/04(水) 04:20:08.76 ID:nsjfkcCP
「そんな言い方しないで!いくらお兄ちゃんでも怒るよ!」
「えっ、あっ……い、いや、オレは、その……わ、悪かったよ」
「『お兄ちゃん』ということは、兄学科を取っているのですね。でしたら、『妹』であるあなたを気遣うのは当然のことです。
そう責めないであげてください」
「……セレスティアさんが言うなら…」
カシャッと、シャッター音が響く。そちらに顔を向けると、バハムーンが笑顔でカメラを構えていた。
「あいあーい、いい写真撮れましたよー。現像が楽しみですねー」
「……変わった人だね」
エルフが率直な感想を述べると、ディアボロスはおかしそうに笑った。
「でも、すっごくいい人なんですよ。あ、えっと、お兄ちゃんは格闘家と兄学科で、バハムーンさんはメイドとジャーナリスト学科で…」
「あのさー、そんなことより何かお礼でもないのー?せっかく助けてあげたのにさー」
「フェアリーさん…」
セレスティアが窘めようとするが、その前にバハムーンが口を開いた。
「あいあい。助けてもらったんですからお礼は当然ですねー。と言っても、ろくなのないんで、こんなのでもいいですかー?」
そう言ってバハムーンが差し出したのは、キャットテイルだった。確かにこの迷宮では、力不足となってしまう武器である。
「えー?こんなしょぼ…」
「大切なのは気持ちですから、何でも結構ですよ」
フェアリーの口を塞ぎつつ、セレスティアが穏やかな笑みを浮かべて言う。
「えーと、それで、ちょっと話をまとめたいのですが……ディアボロスさん達は、パーティからはぐれてしまったんですね?」
「あ、はい。すみません…」
「いえ、責めているわけではありません。それはわたくし達も同じですので」
「え?そ、そうなんですか?」
「ええ。理由は恐らく同じかと思われますが、不意打ちを受けてワープゾーンにうっかり飛び込んでしまいまして」
苦笑いを浮かべるセレスティアに、頭を掻くエルフ。しかしフェアリーのみ、その表情はどこか緊張しているようだった。
「ですので、よろしければこの先しばらく、一緒に行動しませんか?あなた達がよろしければ、の話ですが」
「も、もちろんそれはっ…!」
「あいあーい、ちょっといいですかー?」
二つ返事で了解しかけたディアボロスをやんわりと遮り、バハムーンが口を開いた。
「どうしたんだ?オレ達だけじゃ、ここはきつ…」
「あいあい、今だけじゃなくて先も読んでくださいねーお兄ちゃん。で、ですねー、一緒に行動するっていうのはいいんですけど、
もしも大天使の羽根を見つけた場合、それはどっちが所有するんですかー?」
「……なるほど、そんな問題もありましたか」
とは言いつつも、セレスティアは既にその質問を予想していたようだった。
「でしたら、お互いに元のパーティに戻り次第、その所有権を賭けて戦う、ということでどうでしょうか?」
「やっぱりそれが妥当ですかねー。じゃあ、その方向でいきましょうかー」
「た……戦うんですか……そう、ですか…」
ディアボロスは気乗りしないようだったが、これが本戦であり、なおかつ迂闊に渡せない物である以上、了承せざるを得なかった。
「それでは皆さん、しばらくの間、よろしくお願いしますね」
「あいあいー、こちらこそよろしくお願いしますよー」
「よ、よろしくおにぇがいしましゅ!」
「……ディアちゃん噛んでるよー」
かくして、彼らもまたパーティを組み、再び迷宮を歩き出した。実は逸れた仲間達も、自分達と同じようにパーティを組んでいるとは、
当然知るべくもない。
3858/16 ◆BEO9EFkUEQ :2012/07/04(水) 05:24:55.26 ID:nsjfkcCP
「ねえ、ノーム。あの人、すごいねえ」
「そうですね」
前を歩くノームにそっと近づき、クラッズが囁く。それに対し、ノームは静かに頷いた。
「私はブルパップ式だねー。ちょっとうるさいけど、小型で命中良好。それにあのフォルムが好きだなー」
「ブルパップ式か、いいとこ突いてくるな。けど、俺はちょっとマグチェンジしにくくて苦手なんだよなあれ。あと照準器にスコープとか
使わねえと信頼性が薄いところも怖いな」
「うーん、そこは確かに言えるかも。でも逆に言えば、それさえクリアすれば文句なしにいい武器だよね」
「そりゃもちろん!バレルの長さに対してあれだけ切り詰められる全長、そこからくる取り回しの良さ、軽さ!今はまだ試行錯誤が
必要な技術だが、いつかあれがスタンダードになるんじゃねえかな」
「あ、ちなみにハンドガンはどういうのが好き?私はオートマチックの小型のが好きなんだけど」
「あ〜、難しいところだな。実用性無視なら中折れ式の一発もんが好きだが、中継地点に戻らねえで長く戦うならやっぱりリボルバーだな。
けど、俺のスタイルだともっぱらオートマチックの大口径ってとこか」
「銃と剣のスタイルだもんねー。あ、それスライドストップ切り詰めてある?」
「おお、よく気付いたな!さすがガンナー!俺の手のでかさなら、これでも余裕で届くしな。取り回しがいいのが一番だ」
ヒューマンがガンナーになった理由は、もちろん学科の戦闘能力や盗賊技能などが『好き』だったからでもあるが、同時に銃が好きだった
からでもある。そのため、時々銃について熱く語りだし、知識のない他の仲間をうんざりさせることがあったのだが、このバハムーンは
そんな彼女の話に難なくついて行き、それどころか活き活きと語り合っている。
彼と話す彼女は実に楽しげで、元々パーティを組んでいる仲間としては、少し寂しいような、妬ましいような、そんな感情を覚える。
かといって、彼女の話についていけるようになりたいとは、二人とも全く思わないのだが。
「……ノーム、焼きもち焼いたりとかしてない?」
「いえ、別に」
そうは言うものの、声は無表情であり、表情も全く見えないため、その言葉の真偽は不明である。
「と、一旦話は中断だ、お嬢さん。敵さん来てるぜ」
「みたいだね。それじゃ、さっさと片付けようか!」
非常に、というより異常に攻撃的な編成でありながら、彼等は何ら問題なく探索を進めている。それはバハムーンら三人が、相当な実力を
持っていたというのも大きい。
「奥は私が!君は真ん中のあいつを!」
「おう、さっさと片付けてやろうぜ!」
即座に武器を構える仲間達とは別に、フェルパーがノームに話しかける。
「今回はどうする?今度は僕が庇ってもいい」
「いや、僕は動きが鈍いし、攻撃力も君達に劣る。だから攻撃を頼むよ」
「わかった。それにしても、君はすごい。そんな鉄塊みたいになるまで防御を追求するなんて、僕には真似できない」
「僕も、君のことは興味深く思うよ。すりかえと魔力の回復を組み合わせて使うなんて、僕は考え付かなかった」
ヒーローとアイドルというおかしな学科の取り方をするフェルパーは、魔曲の冠を愛用し、クロスアーマーを使いながらも鉄壁の守備を
持っている。ノームとはまた違った守りの堅さに、ヒューマン達は感心していた。
戦闘は彼等の圧勝で終わり、戦利品を漁っていると、ドワーフが首を傾げていた。
「……いつもより、お金とか多いね。そのネズミ動いてたっけ?」
「あー、それ僕の幸運の鐘の効果だよ」
思わず答えてから、クラッズはしまったと思った。というのも、彼女は戦闘中まったく連携を取ろうとせず、それどころか一度は彼女を
庇ったノームごと敵を切り倒そうとしたのだ。フェルパーやバハムーンも彼女のことは得意ではないらしく、あまり積極的に関わろうと
しない。普段接点のないヒューマン達など、言わずもがなである。
3869/16 ◆BEO9EFkUEQ :2012/07/04(水) 05:25:58.87 ID:nsjfkcCP
「ふーん」
しかし予想に反して、ドワーフは気のないように答えてから、ほんの少し笑ったようだった。
「便利だね」
「あ、ああ……どうも」
自分の技能を褒められて悪い気はしない。ましてクラッズ自身、その技能のために風水師を選んでいたため、ついつい口元が緩んでしまう。
会って十数分の仲間とはいえ、それぞれに興味の持てる部分、または気の合う部分があり、彼等はそれぞれこの出会いに満足していた。
特にヒューマンとバハムーンは、なかなか全力で語り合える仲間がいないため、暇さえあればお喋りを楽しんでいた。
そんな二人を黙って見ていたノームだが、幾つ目かの外れのワープゾーンを引いたとき、ヒューマンに話しかけた。
「ヒューマン、大丈夫かい。疲れてないかい」
途端に、ヒューマンは目に見えて挙動不審になってしまった。
「えっ、あっ、大丈夫だよ!大丈夫!まだまだ全然っ……大丈夫だからね!」
「そうか。でも無理はしないでくれよ」
その会話を聞いていたバハムーンは、しばらくしてニヤリと笑った。
「……そうかぁ、お嬢さんはその動く鎧と付き合ってんのかぁ」
「ええっ!?い、いやそんな付き合うとかっ……いや、だってっ、私リーダーだしっ…!」
「いいんじゃねえの?特定の誰かと仲良くしちゃいけねえなんてこともねえし」
そう言うと、バハムーンはちらりとノームを見、意味深に笑った。
「けど、お嬢さんが気になるってんなら、俺なんかどうだ?俺としちゃあ歓迎だが?」
「君?あはは、いやそれは…」
「冗談と思ってるかもしれねえが、本気だぞ」
それまでと違う口調に、ヒューマンは思わず足を止め、それに気付いた他の仲間も足を止めた。
「邪魔」
「こらドワーフ……少しは待とう」
「あいつらだけでやってればいいでしょ」
「こっちのも関わってる以上、そうは…」
「うぜえ」
「……割と大ごとかもしれないから、あっちは動かないだろ。そうなったら、君一人では行けないだろ」
フェルパーがドワーフを説得しているのを横目で見つつ、バハムーンは言葉を続けた。
「こんだけ銃の話で盛り上がれる奴なんて、今まで見たことはねえ。実力も申し分ねえ。顔もいい。お付き合いしてえと思わねえ奴なんか
いねえだろ?こんだけ条件そろってりゃあよ」
「だ、いや……でも、えっと…」
「付き合えねえんだろ?特定の仲間とは」
その言葉に、ヒューマンは胸を接射で撃ち抜かれたような気分になった。
「その点、幸い俺はパーティも違う。腕も見ての通りだ。そこの鉄塊より退屈させねえと思うぞ」
「………」
「ちょ、ちょっと君…!」
「あー、悪い。外野の口出しはなしで頼むぜ?」
たまらず諌めようとしたクラッズを軽くあしらい、バハムーンはヒューマンを見つめる。
38710/16 ◆BEO9EFkUEQ :2012/07/04(水) 05:26:41.13 ID:nsjfkcCP
「どうだ?横に並んで同じ得物を扱うってのも、なかなかいいと思わねえか?」
「……わた、しは…」
「ちょっといいかい」
そこに、ノームがそっと近づき、さりげなく二人の間に割って入った。
「おう、何だよ?」
「僕は、ヒューマンのことが好きだ。一目惚れだ」
「なっ!?ちょっ!?」
「彼女の立場もわかるけど、僕は付き合ってると思ってる。確かに君はいい人だと思うし、もしかしたら僕より退屈させないかも
しれないけど、君より僕の方が、彼女を愛してる」
堂々と言い切るノームに、バハムーンは冷ややかな笑みを送った。
「思うのはそりゃご自由に。けど、計れもしねえ、見えもしねえもん、口では何とでも言えらぁな」
「僕はずっと彼女と一緒にいる。これから先も、ずっといる」
「そりゃあただの呪縛じゃねえのかー?お嬢さんがあんたに飽きた時、うざってえことこの上ねえぞ」
バハムーンの言葉に、ヒューマンの心がざわりと騒いだ。
「その時は、身を引くまでだ。好きだっていうのは、相手を全力で思いやることだろう」
「ん〜、聞こえはいいな。でも、また振り向かせる努力もなしで身を引くってのは、ただの逃げじゃねえのか?それとも、あんたの言う
『好き』って感情は、その程度ってことかねえ?」
ざわざわと、ヒューマンの心が騒ぐ。
「まったく君は……ありとあらゆる状況を指して答えられる訳なんてないだろう」
「それでも、その答えが真っ先に出たってことは、それがあんたの最初の選択なんじゃねえのかあ?そんな野郎よりは、俺の方が…」
「いい加減にしてっ!!」
突然の大声に、ドワーフ以外の全員が驚いて振り返った。仲間の注目を集めたまま、ヒューマンは大股でバハムーンとノームの間に割って
入ると、バハムーンをキッと睨みつけた。
「……確かにね、君はいい相手だと思うよ。楽しいしね。でもね、人の仲間……ううん」
そこで一度息をつくと、ヒューマンはバハムーンの目をまっすぐに見据えて言った。
「人の恋人をそうやって悪く言う人、私は『嫌い』!」
「………」
バハムーンは表情を変えず、じっとヒューマンを見つめた。ヒューマンも負けじとバハムーンを睨み返す。
不意に、バハムーンはニッと笑った。
「そうかい。ちぇ、お嬢さんがそう言うんじゃ仕方ねえなあ」
予想以上にあっさり引かれ、ヒューマンは些か拍子抜けしてしまった。
「……君こそ、随分あっさり引き下がるんじゃない?」
「『嫌い』まで言われちゃあなー。それに嫌われるにしたって、これ以じょ…」
ドルン!とエンジンの音が響き、一行は驚いてそちらを振り返った。視線の先ではチェーンソーを構えたドワーフと、完全に腰の引けた
フェルパーの姿があった。
「ちょっ、待っ……ドワーフ、待て!話終わった!今終わっただろ!?もう動くから、僕に八つ当たりするな!」
「うおぉい、お嬢さん!その辺にしとけ!な!?ここで俺等殺したって、お前も先に進めねえだろ!?」
「帰還すれば問題ない。生徒同士の争いも認められてる」
「そ、そりゃそうだが……ああくそ、セレスティアの重要性がよくわかるぜ…」
どうやらこのドワーフは、人もモンスターも殺すことに何の感情も抱いていないようだった。あまりすっきりしない形ではあったものの、
これ以上の会話は無理だと判断し、一行は先に進むことにした。
38811/16 ◆BEO9EFkUEQ :2012/07/04(水) 05:28:19.49 ID:nsjfkcCP
さらに何度かワープゾーンにかかり、苦労しつつも何とかそこを抜けだし、いよいよ最奥かと思ったその時、奥から戦闘の音と聞き慣れた
声が聞こえてきた。
「くうっ!ま、待ち伏せとはなかなか…!」
「……よくも……よくも、セレスティアさんをぉ!!」
「あーっと!そこのお兄ちゃん、今すぐ引いてー!妹さんブチ切れてますよー!」
「ちょっ、待て待て待てぇ!!お、お前等も引けぇー!」
「死ね!イペリオン!!!」
直後、ダンジョンを揺るがす大音響と、レオノチスらの悲鳴が辺りに響いた。
「今の声…!?」
「お?お嬢さんも聞き覚えあったのか?こっちも何だか、聞いた声がした気がするんだよなあ」
一行は急いでその場に駆けつける。すると、そこには逸れてしまった面々が集まっており、ちょうどディアボロスがセレスティアの治療を
しているところだった。
「ディアボロス!?それに……君、セレスティア!?」
「あ、ヒューマンさん!それにみんなも!」
「おや、皆さん……これはこれは、ドがつくほどの奇遇ですねえ」
「おー、お前等もお嬢さんとこのパーティと組んでたのか。大した偶然だぜ、ははは。にしても、お前らどうやって先に?」
「わたくし達は、テレポルが使えま…」
その瞬間、チェーンソーのエンジン音が響き、一同はぎょっとして振り返った。それと同時に、フェアリーが慌ててセレスティアの後ろに
隠れ、涙目になってドワーフを見つめていた。
「ふ、ふえぇぇ……セレ、助けてぇ…!」
「セレスティア、そいつ渡して」
断れば彼もろとも殺しかねないほどの殺気を放ってはいたが、セレスティアは落ち着いて彼女を宥める。
「ドワーフさん、許してあげてください。確かにフェアリーさんは後方警戒を任されていますが、その彼女も、そしてわたくし達も
直前まで気付けなかったではありませんか。ですがそれまでは、わたくし達が気付かない襲撃にも、彼女は気付きました。であれば、
今ここで彼女を殺してしまうのは、得策とは言えませんよ。どうかもう一度、考えてみてくれませんか」
「………」
ドワーフはしばらくセレスティアを見つめていたが、やがてチェーンソーのエンジンを切った。
「ふん。代わりもいないなら、しょうがないか」
あれほど扱い難いドワーフに、あっさり言うことを聞かせるセレスティアに対し、ヒューマン達は心の底から感心した。
「久しぶりだね、セレスティア。みんながお世話になったみたいだね」
「こちらこそ、お久しぶりです。わたくし達もお世話になっているので、お互い様ですよ」
「人当たりの良さも相変わらず……生き物を躊躇いなく殺すのも、相変わらずかな」
「神が許していますからね。わたくし自身は、何も殺してはいませんよ」
「ほんっと、相変わらずだね」
「あいあーい、ちょっといいですかー?」
そこに、なぜかカメラを片手にバハムーンが割って入った。
「あのですねー、今ナイトタイタンを倒して、大天使の羽根見付けたんですよー。で、ですねー、混成パーティである以上、戻るとなったら
所有権がどっちか決めなきゃいけませんよねー?」
「あ〜、それもそうか。けど…」
ヒューマンはざっと、周囲の顔を見回した。ディアボロスは明らかに乗り気ではなく、傍らのドワーフは彼女を見ている。バハムーンは
どうにも読めないが、戦うこと自体は何とも思っていないだろう。クラッズはいつ戦闘になってもいいように身構え、ノームは動かぬ
鎧状態でまったく状況が読めない。
38912/16 ◆BEO9EFkUEQ :2012/07/04(水) 05:28:55.76 ID:nsjfkcCP
対する相手は、セレスティア、フェアリーが気を張っており、ドワーフに至っては既に殺気を放っている。エルフ、バハムーン、
フェルパーは状況を見ているようで、しかし臨戦態勢に入っている。
これまでの流れや周囲の状況。それらを思い返し、ヒューマンは大きく息をついた。
「……ま、一枚ぐらいいいでしょ」
「え!?ちょ、ちょっとヒューマン!?」
「一緒にいてわかったけど、少なくともこっちにいた三人は恐ろしく攻撃的。セレスティアは相手が死んでもお構いなしの攻撃仕掛けるのは
わかってる。他の二人はわからないけど、そんなパーティの仲間である以上、実力は負けず劣らずってとこでしょ。そんなのと戦うのは
危なすぎるし、それに…」
ちらりと、相手側のバハムーンを見る。
「……こっちは、少し借りがあるしね。これで、貸し借りなしってところでどう?」
「借りがあるって、それはどっちも同…」
「そ、それでいいと思います!戦うのは、ちょっと……い、嫌です…」
クラッズの言葉を遮り、ディアボロスが言った。それを聞くと、ヒューマンは少しホッとしたような表情を浮かべた。
「ってわけで、こっちは降り。バハムーン、その羽根あっちにあげて」
「あいあい、かしこまりましたご主人様ー。そんなわけで、それは持ってってくださいねー」
「いいんですか?決勝に出るなら…」
「ここで一つ逃したところで、まだあるでしょ。その機会を逃すほど、私達弱くないよ」
セレスティアはしばらくヒューマンを見つめ、やがて穏やかな笑みを浮かべた。
「そういうことでしたら、いただいておきましょう。決勝で会えることを、祈っていますよ」
それで話はまとまった。ダンジョンにあった大天使の羽根も全てなくなったということで、彼等は元のパーティに戻ると、それぞれ学園へと
帰って行った。
セレスティア達はドラッケンに泊まるらしかったが、ヒューマン達はモーディアルへと帰った。母校の方が落ち着けるというのもあるが、
ディアボロスがスポットを使えるため、移動に不自由しないというのも理由の一つである。
学園に戻ると、彼女達は揃って学食へと足を運んだ。特に大きな課題をこなした後などは、こうして全員で食事をすることが多い。
「いやー、それにしても大変でしたねー。逸れちゃった時は死を覚悟しましたよー」
「ご……ごめんなさい、私のせいで…」
「そうですよー、ディアちゃん。追ったのはお兄ちゃんと私も同罪ですけど、原因はディアちゃんですからねー」
いつも通りの笑顔を浮かべつつ、バハムーンは言い切った。
「お、おいおい。お前そんな…」
「失敗は失敗ですよーお兄ちゃん。認めなきゃいけないところは認めなきゃいけませんよー」
「まあ……そりゃ…」
「ま、おかげでいい写真いっぱい撮れましたけどねー。あとディアちゃん、いくら切れたからって、魔力の配分を考えなくなるのも
ダメですよー」
「は、はい……ほんと、ごめんなさい…」
泣きそうになっているディアボロスに、クラッズが取り繕うように口を開いた。
「ま、まあまあ。確かに大変な目には遭ったけど、全員無事だったんだから、あんまり責めなくてもいいじゃない。大天使の羽根は
逃しちゃったけどさ」
「あ、そだ。羽根と言えばさ」
クラッズの言葉で思い出したらしく、ドワーフはヒューマンの方へと視線を向けた。
39013/16 ◆BEO9EFkUEQ :2012/07/04(水) 05:29:35.52 ID:nsjfkcCP
「あの羽根、どうしてあいつらにやっちまったんだ?オレ達ももらう権利はあったと思うんだけどよー」
「ん……まあ、言っとかないとダメかなあ」
心を落ち着けるように深呼吸すると、ヒューマンはゆっくりと口を開いた。
「私……あ、えっと、別にみんなが好きじゃないってわけじゃないんだけど……みんなそれぞれ好きなとこはあるんだけどさ…」
「ご主人様ー、要点だけでいいですよー」
「あ、うん……じゃあとにかく!私、ノームが好き」
知ってる、と全員が思ったが、誰も口には出さなかった。
「誰か一人、特別扱いはダメだってずっと思ってたけど……でも、無理。私、ノームが好き」
「僕としては、嬉しい言葉だよ」
ノームが言うと、ボッと音でも出そうな勢いでヒューマンの顔が赤くなった。
「そっ、そっ、そうかな!?そうだといいけどね!と、とにかくそういうことだからっ……ま、また明日ねっ!」
つっかえつっかえ言うと、ヒューマンはノームの手を引いて学食から出ていってしまった。残された仲間は、呆然とそれを見送る。
「いや……だから、なんでそれが羽根をあいつらにやったのと…」
「ニブチンですねーお兄ちゃんは。あのご主人様が、ああはっきり言うなんて、今までなかったじゃないですかー。つまり、理由は
そこですよ」
去っていくヒューマンとノームの後ろ姿を写真に収めつつ、バハムーンが言う。
「そういえば、僕達と一緒にいた方の、あの海賊のバハムーン、ヒューマンのこと口説いてたなあ。結局フラれてたけど」
「……いいなあ」
ぼそっと、ディアボロスが呟いた。
「ほんと、羨ましいよなあ、あんなはっきり言えるのって……はぁ〜あ」
「あいあい、お兄ちゃんもディアちゃんもお疲れみたいですねー。私もちょっと疲れましたし、そろそろ休みましょうかー」
かくして、リーダーがいなくなってしまった彼等は、その後いなくなった二人の分の食器も片づけつつ、各々部屋へと戻っていくのだった。

寮に戻ったヒューマンは、そのままノームを部屋に連れ込んだ。そして鎧を着たままの彼の胸に勢いよく顔を埋める。
「う〜、言っちゃった、言っちゃったぁ…!みんなに言っちゃったよぉ…!」
ゴォン、と音をたてたヒューマンの額を撫でてやりつつ、ノームは彼女に優しげな視線を向けた。
「やっと正式に認められたみたいで、嬉し…」
「だぁーっ、言わないで!恥ずかしいのそれ!でも…」
そこで一瞬言葉に詰まり、ヒューマンは上目遣いにノームを見つめた。
「わ……私も、そう言ってくれると嬉しいけど…」
仲間の前では、少なくとも最低限の威厳を保つヒューマンが見せる、年頃の少女らしい表情。自然にノームの腕が伸び、彼女のうなじに
添えられる。そのまま軽く力を加え、彼女を抱き寄せると、僅かに震える唇に自身の唇を重ねようとした。
その直前で、ヒューマンがノームの肩を突っ張った。
「ちょっと待った。今気付いたけど、ノーム結構汗臭い」
「……まあ、この格好だと蒸れるからね」
「じゃあさ、先お風呂入っちゃって。そしたら、その後で……ね?」
ノーム自身も少し気になっていたため、大人しくヒューマンを放し、朝からずっと着ていた鎧を脱ぐ。そして持っていた荷物から着替えを
取り出すと、浴室へと向かう。
浮遊能力があるとはいえ、重い鎧を着続けるのは決して楽ではない。シャワーを浴びて簡単に汗を流すと、浴槽に湯を張り、そこに身を
沈める。温かい湯の感覚が全身に染み渡り、ノームは大きく息をついた。
39114/16 ◆BEO9EFkUEQ :2012/07/04(水) 05:30:11.65 ID:nsjfkcCP
ともすれば居眠りでもしそうな倦怠感と安堵感の中、ノームの耳に小さな足音が聞こえ、やがて浴室のドアが開く音が聞こえた。
「やっほー」
「ヒューマン……何を…」
「へへ、来ちゃった」
タオルすら持たず、一糸まとわぬ姿でヒューマンが笑う。思わず浴槽から出ようとしたところへ、上からヒューマンが跨るようにして
入ってきた。
ザパッと音が響き、湯が波打つ。その揺れが少しずつ収まり、やがて平穏を取り戻したところで、ノームが口を開いた。
「随分積極的だね」
「んー、何か、今日はね」
言われると少し恥ずかしくなったのか、ヒューマンの頬がほんのりと赤らんだ。
「前から、ね。好きだとは思ってたんだけど、その、改めて言ってみたら……ほんとに、好きだなって」
喋りながら、ヒューマンは身を乗り出し、互いの吐息がかかるほどまで顔を寄せた。
「だからノーム……今日は、思いっきり…!」
そこで言葉を切り、ヒューマンは貪るようにノームの唇を奪った。それに応え、ノームも彼女を抱き寄せる。
「んんっ……んふ、んっ…!」
唇を吸い、舌を絡め、熱い息を吐き出す。荒々しいキスをしつつ、ヒューマンは右手でノームの股間をまさぐり、彼のモノを掴んだ。
既にある程度の大きさになっていたそれを一度愛おしげに擦ると、自身の秘裂へとあてがい、ヒューマンは腰を落とした。
「んっ!んんんっ!!」
「くっ…!」
湯の中とはまた違う熱さが伝わり、ノームが小さく呻く。やや滑りは悪かったものの、ぬるぬるとした粘膜に少しずつ包まれていく感覚は、
十分に大きな快感を伴っていた。
半分ほどで一度動きを止め、ヒューマンはノームの顔を見つめる。目が合うと嬉しげに笑い、そして一気に腰を落とした。
「はぅ……あああ…!ノーム、ノームぅ…!」
甘えるような声を出し、ヒューマンが縋りつく。その体を抱き寄せてやると、彼女は腰を動かし始めた。
浴槽の湯が大きく揺れ、バシャバシャと外に飛ぶ。それに構わず、ヒューマンは激しく腰を動かす。いつもよりも熱く感じる彼女の中は
ノームに強い快感を与え、時折腰を動かすと、ヒューマンがそれに応えるように喘ぐ。
「ふあっ……ノーム、好き……好き、好きぃ…!」
「……僕も好きだ、ヒューマン」
証を求めるように、ヒューマンが激しくキスを求め、ノームもそれに応える。相手の舌を味わうように深く舌を絡め合い、時には軽く
歯が当たることもあったが、それでもなお求め合う。
息継ぎをするように、二人は同時に唇を離し、ヒューマンが上体を起こす。それによって目の前に来た乳房に、ノームが吸い付く。
「んあっ!?そ、そこ、はっ……あはぁ!」
ノームの頭を抱き締め、ヒューマンは快感に身を震わせる。多少の息苦しさを覚えつつも、ノームは彼女の乳首を転がすように舐め、
さらに軽く腰を突き上げる。
「いいっ……いいよ、ノームぅ……気持ちいい…!」
それに対抗しようとするかのように、ヒューマンもゆっくりと腰を動かす。浴室には流したはずの汗の匂いが篭っていたが、もはや二人とも
そんなものは気にしていなかった。
何もかもノームに任せてしまいたい衝動を何とか堪え、ヒューマンは彼のモノを必死に締めつける。そんな彼女の努力を愛らしく思いつつ、
ノームは胸を優しく舐め、腰を突き上げる。
39215/16 ◆BEO9EFkUEQ :2012/07/04(水) 05:30:53.60 ID:nsjfkcCP
「いい、よぉ……ノーム……好きぃ…!」
荒い呼吸の合間に、ヒューマンが陶然と呟く。その目は既に蕩けきっており、顔は暑さと興奮故に、真っ赤に染まっている。
だんだんとヒューマンの腕に力が入り、さすがに苦しくなってきたため、ノームはヒューマンの胸から口を離した。代わりに彼女の腰を
抱くと、それまでより強く突き上げる。
「やっ!?あっ、い、いきなり強っ……くぅぅ、ああ…!ノ、ノームぅ!」
突然強くなった刺激に、ヒューマンの体がビクンと仰け反る。その反応を楽しむように、ノームは一回一回を強く突き上げる。
「あっ、ぐっ、うっ!ノームっ……す、少し、強すぎっ……ああうっ!」
刺激から逃れようとするように身を捩り、体を支えようとあちこちに手をつく。その度に浴槽の湯が跳ね、ヒューマンの体を濡らしていく。
汗と湯で艶めかしく光るヒューマンの肌。苦悶にも似た快感の表情。それら全てが愛おしく、ノームは彼女の腰から背中へと腕を滑らせ、
強く抱きしめた。
「ノームっ……も、私……ちょ、やばい…!」
「いいよ、我慢しないで。正直、僕も結構、きてるし」
口調こそ落ち着いているが、ノームも呼吸は荒く、かなり追い込まれてきているようだった。
「くぅぅ……じゃ、じゃあ、ノームっ……も、もう一回っ…!」
迷っていたヒューマンの腕が動き、ノームの顔を抱く。そして彼が顔を上げると同時に、ヒューマンは再び貪るようなキスを仕掛ける。
「んっ……んんんっ!」
入ってきた舌を唇と舌とで愛撫し、相手が舌を引くと今度はこちらが舌を入れる。苦しくなると唇を離し、その度に白い唾液が糸を引く。
突き上げるたびに漏れるヒューマンの吐息が、ノームの頬を心地よくくすぐる。少しでも長くそれを感じていたかったが、耐えるのも
そろそろ限界だった。
「ヒューマンっ……もう、出そうだ…!」
「だ、出してぇ…!中に、中にぃ…!」
「ヒューマン…!」
お互いの唇を吸い、一際強く突き上げる。同時に、ヒューマンの中で彼のモノがビクビクと脈打つのを感じた。
「んんんんっ……ん、くっ……はあっ……はあっ…!」
荒い息をつき、ヒューマンが唇を離す。
「あぁ、あ……出て、るぅ……出してるぅ…」
小さな声で呟くヒューマン。彼女の中は痙攣するように震え、ノームのモノが精液を吐き出す度にきゅうっと収縮していた。
二人はしばらく繋がったまま、呼吸が治まるのを待った。しかしいつもなら比較的すぐに治まるのだが、今回は射精が終わっても、
呼吸はまったく治まらない。それどころか、ヒューマンの方は眩暈すら感じ始めた。
「あぅ……な、なんか、へん……とりあえず、そとでて……あうっ!」
彼のモノを抜き、何とか立ち上がろうとした瞬間、ヒューマンはひどい立ち眩みを起こし、壁に頭をぶつけた。
「大丈夫かい?ちょっと、のぼせたみたいだね」
そう言うノームも、全身すっかり真っ赤に染まっており、だらだらと汗を流していた。
「ご、ごめん……おふろのなか、は、だめだね…」
「次からは、やめとくことにしようか」
その後、二人は何とか風呂を出ると、体を拭くのもそこそこに、裸のままベッドに倒れこんだ。あとは疲れのせいもあり、二人は
あっという間に安らかな寝息を立て始めていた。
39316/16 ◆BEO9EFkUEQ :2012/07/04(水) 06:09:21.21 ID:nsjfkcCP
「う〜、喉痛い……けほっ!」
翌日、ヒューマンは湯冷めが祟り、風邪をひいてしまっていた。幸い症状は軽く、少し休めばすぐ治りそうなのが不幸中の幸いだった。
「大丈夫かい、ヒューマン」
「うん、いちお…」
「ダメですよー、ちゃんと寝るときはお布団かけなきゃー。じゃないと、そんなことで決勝出場逃したら泣くに泣けませんよー」
「ま、今日一日ぐらいはいいだろ。そんな風邪、パパッと治して次の試合に備えようぜー」
そんなにひどいものではないということで、一行は揃って学食に来ていた。ヒューマンも食欲はあるらしく、いつも通りに朝食を
取っている。
「あの、あとで保健室行ってみますか?」
「ん、たぶん平気。そこまでひどくはないと思うから」
「とにかく、ゆっくり休むといいよ。何なら僕がついてようか」
ノームが言うと、ただでさえ紅潮しているヒューマンの顔がさらに赤くなった。
「……そ、それはそれで幸せかも…」
「ちょっとヒューマン、頼むから早めに治してよ?僕達まだ羽根一枚も持ってないんだから」
「わ、わかってるわかってる。それはちゃんとわかってるから大丈夫だよ」
以前なら、ノームに対する気持ちを隠そうとするあまり、そんなことを言われれば大慌てだっただろう。それをしなくてよくなった今、
ヒューマンの心は非常に軽かった。
「……やっぱり、好きなのは好きって言った方がいいよね〜…」
「ん?何か言った?」
「ん、別にー」
好きな人がそばにいてくれる幸せ。好きだと言える幸せ。それを容認してくれる好きな仲間達。それら一つ一つが、ヒューマンにとっては
かけがえのない大切な存在だった。それらのためならどんなことでもでき、また苦にならないと彼女は思っている。
それ故に、やはり好きは力だと、ヒューマンは改めて思うのだった。
394 ◆BEO9EFkUEQ :2012/07/04(水) 06:10:57.85 ID:nsjfkcCP
以上、投下終了。二度も連投規制に…
今度は二ヶ月以上かからないようにしたい

それではこの辺で
395名無しさん@ピンキー:2012/07/04(水) 09:19:43.11 ID:xhE9Sdw5
GJです。
ノームの愛し方に共感を覚えました。
愛しい人を守りぬける男になりたいものだなぁ
396名無しさん@ピンキー:2012/07/05(木) 03:20:23.04 ID:fkMvkjsU
ロリディア子あざとい!妹なだけでロリじゃないかも知れないがあざとい!
初登場のシーンを思い出すとたぎってしまうな
397名無しさん@ピンキー:2012/07/05(木) 12:54:55.27 ID:txYAdwsf
GJ!
相変わらず面白かったッス!
398名無しさん@ピンキー:2012/07/13(金) 23:55:09.67 ID:1E2AbVgu
落ちてる?
399名無しさん@ピンキー:2012/07/20(金) 08:57:26.54 ID:pTJxCQpr
新作の堕天使と死霊使いの吸血衝動は妄想が捗るな・・・
血以外にもぴちゃぴちゃしてもらいたいな。
400名無しさん@ピンキー:2012/07/21(土) 14:44:25.66 ID:ehVzQjPx
本屋でキシリトヲルの「ととモノ」コミックが発売されてた。
……あれ、キルシュ姫って、こんなにスペックの高いヒロインだっけ?
高貴な威厳と優しさと人を見る目をもった不屈の王女。
これじゃあまるで主人公みたいじゃないですかー!
401ディモレアさん家の作者:2012/07/24(火) 22:29:07.44 ID:SHipIszu
Finalが未開封積み化のまま。新を買ってしまいました。
お久しぶりです。(ぺこり)

覚えている人がいるかは知らぬが続きを投下します。
402英雄王の碑文 心つなぎ 3話:2012/07/24(火) 22:33:26.23 ID:SHipIszu
「まさかこっちでまた会えるたぁ思わなかったな」
「同感ですね」
 ギルガメシュの言葉にセレスティアはクスクス笑った。
 ブルスケッタ学院であの時あの場にいた全員と再会したギルガメシュは、彼らとクロスティーニに向かう事にした。
 元々パーティではないが、手練ばかり5人も集まっているのだ。一塊で行動した方が元の世界に戻る方法を探すという面でも楽ではある
403英雄王の碑文 心つなぎ 3話:2012/07/24(火) 22:38:59.48 ID:SHipIszu
「でも、無事で良かったです。瓦礫に巻き込まれて死んでたかも知れないと思うと、怖いですし」
「まぁな。相当崩落しただろうしよ」
 ゼイフェア地下道が崩落した時は死ぬかと思っていた。しかし、気がついたらまだ生きていた。
「…で、やっぱりお前ぇらも記憶ねぇのか? 崩落した直後、どうやってきたか」
「ええ」
「…そうか」
404英雄王の碑文 心つなぎ 3話:2012/07/24(火) 22:44:25.68 ID:SHipIszu
 ギルガメシュの問いにセレスティアはやはり首を振る。
 そう、ここにいる全員の共通点その2が、地下道が崩落した直後の記憶が飛んでいる。
「ま、構わねーけどよ。別にテメェのせいじゃねぇ」
 ギルガメシュがそう呟いた時、先頭を歩いていたディアボロスが「ん?」と声をあげる。
「どしたのー?」
405英雄王の碑文 心つなぎ 3話:2012/07/24(火) 22:47:44.43 ID:SHipIszu
「ヒューマン、エルフ。前に何かいる」
 二番目を歩くヒューマンがそう声をかけると同時に、ディアボロスの返答。
「おおっ! ダークドラゴンだねぇ」
「倒しがいがありそうっすね!」
 ヒューマンの言葉にエルフが弓を用意する、が。
「ダークドラゴン?」
 ギルガメシュが一歩前に進み出ると、そこには確かに―――ドリィがいた。
406英雄王の碑文 心つなぎ 3話:2012/07/24(火) 22:51:16.42 ID:SHipIszu
「なんだ、テメェか。安心しろ、こいつは大人しい」
 ギルガメシュの言葉に全員が剣を下げると、ドリィは首を軽く動かし、近くの木を示した。その木陰ではアスティが寝息を立てていた。
 眠るアスティに、ギルガメシュは手を伸ばす。
「起きろ。こんなところで寝てると、風邪引くぞ」
「ん…んん…」
 ギルガメシュがアスティを起こしている間、他の四人はドリィに視線を向けていた。
407ディモレアさん家の作者:2012/07/24(火) 22:55:58.76 ID:SHipIszu
忍法帖のせいでろくに書き込めないので
いったん中断します。
レベル上げしてきます…。
408英雄王の碑文 心つなぎ 3話:2012/07/24(火) 23:20:50.78 ID:SHipIszu
「…しかしすごいな、このダークドラゴン。傷だらけだ。まさしく歴戦の猛者って感じがする」
「俺一人じゃ五分かかっても倒せそうに無いです」
「どうあがいても無理の間違いじゃなーい?」
「ちょ、先輩酷いっすよ!」
 ディアボロス、ヒューマン、エルフの下級生組がドリィの前で騒いでもドリィはただ黙ってセレスティアと視線を合わせていた。
409ディモレアさん家の作者:2012/07/24(火) 23:25:31.06 ID:SHipIszu
…やっぱりレベルが上がってないので続きはまた後日に。

…やっぱ●導入するしかないか。
410名無しさん@ピンキー:2012/07/25(水) 02:57:23.05 ID:Qb+VE2Gf
おお、懐かしの名前が!期待して気長に待ってます

レベル上げは気長にやるなら誤爆とか控え室とかに一日一回書くとかどうでしょ?
411ディモレアさん家の作者:2012/07/25(水) 16:49:08.27 ID:l1gdZUSs
と、とりあえず●導入したからマシになったはず…
早く就職さえ出来ればもう少しはマシになるのにと思いつつ皆様お待たせしました。

改めて3話を投下します。
412英雄王の碑文 心つなぎ 3話:2012/07/25(水) 16:57:59.23 ID:l1gdZUSs
「まさかこっちでまた会えるたぁ思わなかったな」
「同感ですね」
 ギルガメシュの言葉にセレスティアはクスクス笑った。
 ブルスケッタ学院であの時あの場にいた全員と再会したギルガメシュは、彼らとクロスティーニに向かう事にした。
 元々パーティではないが、手練ばかり5人も集まっているのだ。一塊で行動した方が元の世界に戻る方法を探すという面でも楽ではある。
「でも、無事で良かったです。瓦礫に巻き込まれて死んでたかも知れないと思うと、怖いですし」
「まぁな。相当崩落しただろうしよ」
 ゼイフェア地下道が崩落した時は死ぬかと思っていた。しかし、気がついたらまだ生きていた。
「…で、やっぱりお前ぇらも記憶ねぇのか? 崩落した直後、どうやってきたか」
「ええ」
「…そうか」
413英雄王の碑文 心つなぎ 3話:2012/07/25(水) 16:59:25.00 ID:l1gdZUSs
 ギルガメシュの問いにセレスティアはやはり首を振る。
 そう、ここにいる全員の共通点その2が、地下道が崩落した直後の記憶が飛んでいる。
「ま、構わねーけどよ。別にテメェのせいじゃねぇ」
 ギルガメシュがそう呟いた時、先頭を歩いていたディアボロスが「ん?」と声をあげる。
「どしたのー?」
「ヒューマン、エルフ。前に何かいる」
 二番目を歩くヒューマンがそう声をかけると同時に、ディアボロスの返答。
「おおっ! ダークドラゴンだねぇ」
「倒しがいがありそうっすね!」
 ヒューマンの言葉にエルフが弓を用意する、が。
「ダークドラゴン?」
 ギルガメシュが一歩前に進み出ると、そこには確かに―――ドリィがいた。
「なんだ、テメェか。安心しろ、こいつは大人しい」
 ギルガメシュの言葉に全員が剣を下げると、ドリィは首を軽く動かし、近くの木を示した。その木陰ではアスティが寝息を立てていた。
 眠るアスティに、ギルガメシュは手を伸ばす。
「起きろ。こんなところで寝てると、風邪引くぞ」
「ん…んん…」
 ギルガメシュがアスティを起こしている間、他の四人はドリィに視線を向けていた。

「…しかしすごいな、このダークドラゴン。傷だらけだ。まさしく歴戦の猛者って感じがする」
「俺一人じゃ五分かかっても倒せそうに無いです」
「どうあがいても無理の間違いじゃなーい?」
「ちょ、先輩酷いっすよ!」
 ディアボロス、ヒューマン、エルフの下級生組がドリィの前で騒いでもドリィはただ黙ってセレスティアと視線を合わせていた。
 セレスティアも、その視線を合わせたまま、無言だった。
 三人は気づかないし、ギルガメシュも気づかない。

 ドリィは、その瞳で何を見ていたのだろうか。
414英雄王の碑文 心つなぎ 3話:2012/07/25(水) 17:00:41.13 ID:l1gdZUSs
「…あれ? ああ、ギルギル?」
「ようやく起きたのかよ。盗賊に襲われても知らねぇぞ?」
 ようやく目を覚ましたアスティにギルガメシュが呆れつつそう声をかけると、アスティは「ありがとう」といいつつ身体を起こす。
「あれ? パーティを組んだの?」
「まぁ似たようなもんだな。同じ学校の奴らだしよ」
 ギルガメシュが軽く肩をすくめると、ドリィが小さく鳴いた。
「あ、ドリィが少し疲れちゃったから、巣に帰るって言ってる」
「…そうかい」
 まぁ、確かに無防備なアスティを守るには疲れるだろうし。特に、空腹で傷だらけの身では。
「ドリィの巣ってどの辺なんだ?」
「ドリィは遺跡の近くに住んでるよ? 私もその近くに住んでるの」
「そうか」
 遺跡、というとコッパ達を置いてきたダンジョンの1つ手前ぐらいか。
「またな」
「うん、またね」
 アスティがドリィの背中に乗ると、ドリィは小さく啼いてから空へと舞い上がっていった。
「…知り合いですか?」
「まぁな」
 ギルガメシュはセレスティアにそう答えると、くるりと背を向けて先頭を歩き出した。
「まだ、道は長ぇぞ。もっと歩かねぇとな」
415英雄王の碑文 心つなぎ 3話:2012/07/25(水) 17:01:59.18 ID:l1gdZUSs
 永遠とも思えたダンジョンを歩き続けて、どれだけの時間が流れただろうか。
 遠くの方に見える光を頼りに、何度も倒れながら進み続け、遂に―――――。
「「「出口だー!」」」
 コッパ、ビネガー、アンの三人はダンジョンから外に飛び出ながらそう叫んだ。
 ギルガメシュにダンジョンの奥に置かれてから何時間経ったか分からないが、とにかくダンジョンを1つ出れたのだ。
「いやー…死ぬかと思ったぁ…」
 コッパがへなへなとその場に座り込み、ビネガーも「だよなぁ」と呟いて壁にもたれかかる。
「…と、とにかくまずは宿屋で休もうよ…」
「おう…あ、すんませーん」
 コッパは近くで商談をしていた商人にそう声をかけると、商人は驚いた顔をしていた。
「うわぁっ!? ああ、人か…な、なんだい?」
「ここ、どこですか?」
「ここはズッコット遺跡だよ…知らずに来たの?」
「私達、先輩に転移札で連れてこられて、そこから戻って来いって」
 商人にアンが説明している間、ビネガーとコッパはズッコット遺跡の場所を思い出そうとしていた。
「どのあたりだっけ? 遺跡って」
「剣士の山道の先じゃね?」
「それはパニーニ学院じゃなかった?」
「じゃあ、魔女の森の、先?」
「ブルスケッタより先じゃなかったっけ? 覚えてないけど」
「ビネガー君、コッパ君。まずはとりあえず休もうよ…場所は後で地図を買えばいいし」
 三人が宿屋へ向かう間、注目をとりあえず浴びていた。
 何せ所持品なんて殆ど何もなく、着ている制服はボロボロで血まみれ、ついでに泥やら粘液やらでネトネトとお世辞にも綺麗と呼べる格好ではない。
 武器はまだ拾えてないし、アイテムもろくにない。無謀もいい所である。
「えーと、1人1泊いくらー?」
「1人1泊250Gだよ」
 宿屋の主人の返事に、コッパはとりあえず巾着袋をひっくり返す。
「…ビネガー。アン。幾らある?」
「おまえは幾らだ? 84G」
「113Gしかないよ…」
「…49G…」
 3人合わせても一人の代金にすら満たない。
「足りねー!!!」
「なんてこった…。また戻れと!? つーか、コッパ49Gとかなんだよ! ふざけてんのか!」
「冗談じゃないやい。…こうなったら先に進むしかないな」
 コッパの言葉にビネガーがそう返し、コッパはため息をついて立ち上がる。
「いざ、前進前進! ブルスケッタ学院目指して進めー!」
「はー…また命がけの行進か」
「ブルスケッタに着けば少しは休めるといいね」
「それまでに生きてればな」
「ビネガー、余計なことは言うな! オイラ達自身を信じるんだ!」
 コッパを戦闘に再び迷宮へと向かう三人の学生達を商人達は「気でも狂ったか?」と噂するほかなかった。
 ちなみに地図を買い忘れていた。
 ついでにそのなけなしの金でもアイテムを買うのを忘れていた。
416英雄王の碑文 心つなぎ 3話:2012/07/25(水) 17:03:19.23 ID:l1gdZUSs
「この森の先だ」
 ギルガメシュ達はようやく初めの森まで辿り着き、クロスティーニ学園まであと少しになっていた。
「モンスター、弱すぎない?」
 術士なのに先陣を切って歩くヒューマンが草陰から出てきたモンスターをファイアで焼き払いつつそうボヤいた。
 確かに彼女達にとっては弱いはずだろうが、しかし学校近くのダンジョンで強いモンスターが出てきても困る。
「モンスターが弱くても罠は本物だから、気は抜けないだろう。ダンジョンなんてそんなものさ」
「ディアボロス君の言う通りですね。前に、ランツレート学院の近くでモンスターが弱いーなんて気を抜いていた子がクレバスに落ちたなんてことも…」
「うーん、でもつまらん!」
 ディアボロスとセレスティアの言葉にヒューマンは不満顔でそう叫ぶなり、ふと思い出したように周囲を見渡す。
「あ、でも構造は本物だね。…何度も曲がらなきゃ前に進めないなんてうんざりだし」
「森だからな」
 ギルガメシュがそう答えた直後、ヒューマンは杖を構えた。
「じゃ、道作るね」
「「「「…へ?」」」」
 他の四人が目を点にした直後、ヒューマンは前面に向けて詠唱を始めていた。

「イベリオン!!!」

 ブルスケッタ学院の図書室で読んだばかりの炎の魔法を唱えた。
 しかも、このヒューマン。3年生という若さでありながら、パルタクス三強の異名を頂戴している。
 つまり、この炎の一撃は、情け容赦ないほどの威力だった。
 尋常じゃなく、情け容赦ない威力だった。

 放たれたイベリオンはたくさんのモンスターや草木を高温で次々と焼き払いながら一直線に進む。範囲を絞り、前面だけに限定されたことで射程が大幅に伸びたそれは、凄まじい勢いで進む。
 モンスターの悲鳴や断末魔が次々に響き渡る。
「ぐはぁっ!?」
「ああっ! ロッシ先生!? ロッシせんせー! しっかり!」
 遠くの方で誰かの悲鳴と共に、慌てるもう一人の声。
「てへっ♪ 失敗しちゃった」
「…ヒューマン。テメェは森林の中のモンスターを討伐するのに森林ごと焼き払うのか? 真性のアホかテメェは!」
 ギルガメシュは即座に怒鳴りつけたがヒューマンは「失敗だよ、失敗」と肩をすくめる。
「だ、大丈夫ですかー!」
「い、今行きますから!」
 そんな二人を尻目にディアボロスとセレスティアは出来た道を進み、慌ててエルフもその後を追う。
 とりあえずヒューマンを叱り付けても聞いていないのでギルガメシュもその後を追った。
417英雄王の碑文 心つなぎ 3話:2012/07/25(水) 17:04:15.86 ID:l1gdZUSs
 5人が進んだ先では、サムライのような服装をしたヒューマンの男と、その隣でパニックに陥るエルフの若い女性がいた。
 手当てをするべきはずなのだろうが、女性は完全にパニックになっており、道具袋から道具を撒き散らしては時折本気で転んでいる。
「とにかく、落ち着いてください。えーと…先輩! メタヒールを!」
「ええ!」
 セレスティアがサムライに駆け寄り、メタヒールを使うと、虫の息だったサムライが少しずつ生気を取り戻した。
「し、死ぬかと思った…」
「ああ、良かった! ロッシ先生!」
「…きゃ、キャンティ先生、失礼。とりあえずあっしの上からどいてくれませんかね?」
「あ…す、すいません!」
 どうやら二人は教師だったらしい。サムライの方がロッシ先生で、エルフのほうがキャンティ先生。
 ふと、ギルガメシュは先日ダンテと手合わせした時、ロッシ先生の道場を借りていた事を思い出した。
「…アンタら、クロスティーニの教師か?」
「うむ…おうっと!?」
 ロッシ先生がそれに答えようとした瞬間、再び崩れ落ちる。どうやらまだ本調子ではないようだ。
「うちのアホがとんだ迷惑かけちまったな。とりあえず…保健室まで送るわ…ヒューマン。手を貸せ」
「え〜。女の子に力仕事しろって?」
「テメェは片手でジャッジメント振り回してる癖によく言うぜ…しかもこれはお前のせいだろ! 少しは反省しやがれ!」
「そ、そんなに怒らなくても大丈夫ですよ? ほら、ロッシ先生も強いですし…」
 ヒューマンを再び叱るギルガメシュに慌ててキャンティ先生が助け舟を出した時だった。
 その矛先はくるりと変わった。
「それと!」
「は、はい!」
「教師が戦闘不能の1つや2つでパニックになんじゃねぇ! 俺達が来なきゃこいつ死んでたぞ!」
 ギルガメシュの凄まじい剣幕にキャンティは震えながらも頷き、慌ててエルフが二人の間に入る。
「あの、すいません。先輩も悪気があるわけじゃなくて…」
「う、うん。いいのよ…私が至らなかったから…」
 へこむキャンティ先生の背中を優しくなでるエルフ。
 そしてその前では文字通りロッシ先生を引きずるギルガメシュ。ヒューマンが上半身を持てば運べるのだが持っていないので引きずられている。
 少なくとも、クロスティーニ学園までの道のりは平和な日常だった。

 …きっと、この頃までは。
418ディモレアさん家の作者:2012/07/25(水) 17:05:42.99 ID:l1gdZUSs
とりあえず、3話完了です。
規制にしょっちゅう巻き込まれるプロバイダーだからかなぁ…

次はもう少し早めに出そうかと思います。
では。
419名無しさん@ピンキー:2012/08/06(月) 01:09:34.97 ID:rfKOSFbI
>>418
乙です!しかし2の世界で準備忘れるとかコッパ達は大丈夫なんだろうかw
あの世界のダンジョンはとにかく殺意しか感じなかったからなあ…
420セレ子好きの人 ◆Oh8cZBRTK6AM :2012/08/09(木) 03:05:52.86 ID:UzrsWXI/
夏なので、スク水仕様のセレ子(+クラ子)

ttp://s.cyrill.lilect.net/uploader/files/201208090256100000.jpg
421名無しさん@ピンキー:2012/08/12(日) 13:20:40.40 ID:HGYyznIA
>>420
GJ

突然性欲が無くなる魔法をかけられたが、それでも相手に心配をかけないように懸命に情事には尽くそうとするバハ子とセレ子の百合SS誰か頼む
422 ◆BEO9EFkUEQ :2012/08/23(木) 23:57:14.50 ID:CrRzFLSx
お久しぶりです。刻の学園出ましたがどうも手が伸びません
人数少ないしNPC加入必須なのがどうにも……

それはともかく投下します。お相手はフェアリー
注意事項としては、例によってスパンキング描写あり、あと出血表現が少しと、お尻弄りが少しあります
大丈夫な方はどうぞ
4231/12 ◆BEO9EFkUEQ :2012/08/23(木) 23:58:19.49 ID:CrRzFLSx
頭を撫でる大きな手。大きな背中。少し大きすぎる声。
何でも知っている。何でも答えてくれる。知らない世界をたくさん教えてくれる。
「おかえり、父さん!ねえ、今度はどんなとこ行ったの!?」
「よーう、半年ででかくなったなあ坊主!話の前にほら、土産だ!」
見たこともない物。見たこともない生き物。子供の冒険心を大いにくすぐる、たくさんの話。
「何これ?剣……持つとこない?」
「そいつはパタっつってな、ほれ、根元がガントレットみたいだろ!?その中に握れるとこあるから、持ってみな!」
「すごいこれ!どこで見付けたの!?」
「あ〜……ちぃっと、よそ様の船に食糧分けてもらいに行ったときにな!」
決して他人に誇れる職じゃない。それでも、親父は俺の誇りだ。
「ねえねえ、父さん。他の国の女の人って……きれいだった?」
「ん?そうだな、今回のとこはきれいだったぜ!こう、肌の色が日焼けしたみたいに黒っぽくてな、胸もこう、しっかりした張りが…!」
後ろから聞こえる咳払い。引きつる顔。俺は多分笑顔だっただろう。
「ほぉ〜う。その話、もうちょっと詳しく聞きたいねぇ?」
「……お、お前……計ったな、坊主ー!」
「へへへー。父さんいつも言ってるでしょ?女の人には優しくしなきゃダメって」
「教えを守ってることは感心だけどよぉー、男なら男の事情もわかってくれよなー!」
まるで友達のようで、それでもやっぱり尊敬できて、ちょっと困った人。
数少ない、家族での記憶。そこにはいつも、あの人がいた。


「おお、クファンジャルだ!こいつは見ての通り、極端に曲がった刃が特徴でな、普通に振るだけで突き刺し、引き裂くって動きになる。
小型ながら殺傷能力は十分、頼りになる武器だな!」
「ほんと、君武器には詳しいよね」
とある教室の一室で、エルフとバハムーンが話している。二人の前には二冊の本が置かれ、ページを繰る音が静かに響く。
「こんな特徴的な刃がついてんだから、余裕でわかるだろ?」
「だったら、こんな特徴的なんだからこれもわかるだろ?」
そう言ってエルフが本のページを叩くと、たちまちバハムーンの眉間に皺が寄った。
「えっ……と……火属性は、水に弱くて……み、水が土に…」
「違うって。火に水、水に風、風に土、土に火だってば」
「わぁーかってるって!火に水!水に風!風に……か、風に……火!じゃなくて土!土に火!ほれ言えた!」
「じゃ、問題。あるダンジョンでは火、風、光、闇属性を使うモンスターがいます。この場合、防具の属性はどうするとよいでしょうか」
エルフが言うと、バハムーンの顔がどんどん歪んでいく。
「え……ええっと……み、水だ!」
「ぶー」
「じゃ、火か!?」
「外れ」
「じゃあ何だよ!?」
「正解は無属性」
「何だよそれ!?引っかけ問題かよ!?」
「常識問題だよ」
4242/12 ◆BEO9EFkUEQ :2012/08/23(木) 23:59:01.29 ID:CrRzFLSx
心底疲れたような溜め息をつくと、エルフはうんざりした視線を向ける。
「ほんと、なんで武器防具そのものには詳しいのに、こんな簡単なのがわからないんだよ…?」
「くっ……こ、こんな問題わからなくたって、海賊には…!」
「ここ卒業できなきゃ、夢も何もないだろ」
「……ごもっとも」
「さ、少なくとも属性基礎くらいは覚えられるように、しっかり復習しようか」
そうして、ほぼ白紙だったバハムーンの属性学のノートに、この時期にしては異常なほど基礎的な知識が書き込まれていくのだった。

「まったく、バハムーンには参るよ。夢があって、それに対する努力してるのはいいけどさ、苦手を克服しようとしないからなあ」
「へー、そんな弱点あったんだー。今度いじってみよっと、ひひ!」
「フェアリー、水」
「はーい」
昼過ぎの学食に、珍しく授業の予定などがなかった女子三人が集まっていた。エルフとフェアリーはケーキを食べており、ドワーフは
常人が昼食と呼ぶものを、おやつと称して食べている。その間、エルフのペットは足元に行儀よく座っている。
「あれ、ドワーフどこ行くんだい?」
「おしっこ」
「またか。水飲みすぎって感じもしないけどねえ」
エルフの言葉には答えず、ドワーフはさっさとトイレに向かって行った。
「ただいまーって、ドワはー?」
「トイレだって」
「ふーん……パン、一口齧ったら怒られるかなあ?」
「殺されるんじゃないかな」
「だよねー。やめとこっと」
今日のフェアリーは悪戯癖が落ち着いているようで、エルフとも普通に会話を交わしている。
「次の探索場所、どこになるのかなー?フェア、楽なとこがいいなー」
「そんなんじゃ本戦にならないだろうし、そうはいかないだろうね。もっとも、その意見にはぼくも賛成だよ」
そこに、ドワーフが戻ってきた。彼女はフェアリーの持ってきた水を一息で飲み干すと、空になったグラスを再びフェアリーに突き付けた。
「また?よく飲むねー」
「飲んじゃ悪いの?」
「ううんー、全然。じゃ、行ってくるねー」
「飲むのもそうだけど、君ほんとよく食べるよね。それで太らないのが不思議だよ」
「太るほど怠けてない。あと……ちょっと身長伸びてたし」
少し気にしていたのか、そう言うドワーフの顔はほのかに嬉しそうだった。
「えー、いくついくつー?」
水を持ってきたフェアリーが、実に興味深げに尋ねると、ドワーフは少し誇らしげな顔をした。
「131。大台乗った」
「ええーっ!?フェア、まだ120いってないのにーっ!ずーるーいーっ!」
小さいとは思っていたが、改めて具体的な身長を聞くと本当に小さいんだなと、エルフは二人の会話を聞きながら思っていた。
4253/12 ◆BEO9EFkUEQ :2012/08/23(木) 23:59:55.15 ID:CrRzFLSx
「……ま、いいやー。フェア、これでもBカップあるもんねーだ!」
「ふーん、私はぎりぎり足りなかった。別に胸なんかどうでもいいけど」
「………」
どちらともなく、二人は黙ったままのエルフへと視線を移した。そのエルフは、視線が合わないようにゆっくりと目を背ける。
「……エルー、エルはどうだったー?ひひひ!」
「……し、身長は170超えてたよ」
「身長じゃなくって、バースートー。ねー、いくつだったのー?ねーってばー」
「………」
エルフは顔を真っ赤にしつつ、視線を逸らし続ける。すると、不意にドワーフが席を立った。またトイレにでも行くのかと思っていると、
彼女はエルフの後ろに回り込み、突然その胸を鷲掴みにした。
「ひやぁ!?なな、何するんだよ!?」
「………」
ドワーフは何も言わず、再び席に着くと食事の続きを始めた。そして、ぽつりと呟く。
「……トリプルA」
「なっ…!」
「ぶっ!あっはははは!!あはっ、あはははは!!!ト、トリプルっ……あはははははは!!!」
「ひ、人の胸いきなり鷲掴みにして、おまけにそんなこと言うとかっ…!」
「掴める胸もなかったくせに、大袈裟な言い方しないで」
「っ〜〜〜!!!」
「ひひっ、ひゃははははは!!!ド、ドワさいこー!!お、お腹痛いー!!!」
顔を真っ赤に染め、涙目になってドワーフを睨むエルフに、笑い転げて椅子から落ちそうになっているフェアリー。そんな中、
ドワーフだけは面白くも何ともなさそうな顔で食事を続けている。その姿を、エルフのペットは憎らしげに睨んでいたが、さすがに相手が
悪すぎるため、手が出せないようだった。
「あはっ……はぁ、はぁ……あ〜ぁ、顎痛い……でも、エル170以上あったんだー。じゃあセレとかフェルって、相当でっかいねー」
「ん、え、ああ……セレスティアはぼくと同じくらいだけど、フェルパーはぼくより少し大きいね。バハムーンなんか190近いだろ」
「ねー。エルってフェルのどこがいいのー?」
唐突な質問に、エルフの顔が再び赤くなる。
「なっ……そ、それはほら……同じ、ペット連れだし、色々と、まあ…」
「ふーん?でもそれなら、セレの方がよくなーい?ペット連れてるし、優しいし、ドワ止めれるのってセレぐらいだしー」
「なら、そのままドワーフと仲良くしててほしいと思うな、ぼくは」
微かに殺気の篭った視線を感じつつ、エルフはそう言って流すことにした。さらに言うなら、セレスティアの潜在的な狂気が少し
怖いという理由もあるのだが、あえてそこまでは言わなかった。
「ねー、ドワはセレと仲いいよねー。どの辺が好きー?」
色々と行動と思考の幼いフェアリーだが、人並みに恋愛話などは好きなようで、ドワーフにも臆さず尋ねている。
「……別に、好きって思ったことはない。ただ、セレスティアさんはそんなにイラつかない」
「あれ、そうなのー?でも、優しいし強いし、完璧じゃないー?」
「たまに夜中に泣きながら起きたりしてるし、変なとこもある」
「なんだそれ?ホームシックか何かかな?」
「フェアは全然わかんないなーそれ。ここ楽しいもんねー」
やはり彼はよくわからない奴だと、エルフは改めて思った。
4264/12 ◆BEO9EFkUEQ :2012/08/24(金) 00:00:55.07 ID:CrRzFLSx
「そう言う君こそ、最近はバハムーンと仲良くないかい」
「えっ!?フェ、フェアが!?そ、そんなことないよ!そんなことないってばー!」
顔を真っ赤にし、手をぶんぶん振って必死に否定するフェアリーの姿に、エルフは若干呆れていた。これではむしろ、全力で
肯定しているようなものである。
「まあいいけどね。ただ、バハムーンの相手してくれるんだと助かるよ。あいつ、装備の話になると止まらないからさぁ」
「あー、そこはフェアも嫌ーい。セレに任しとけばいいんじゃなーい?」
「私も関わりたくない。セレスティアさんが適任だと思う」
かくして、女子連中の間ではバハムーンの話し相手はセレスティアということに、全員一致で決まったのだった。

翌日、一行はドラッケンの職員室の大掃除という課題を受け、各地を回っていた。その最後に、カーチャ先生の机周りのゴミを
処理するため、彼等はタカチホ方面へと向かっていた。
「にしてもさー、これ中身何なんだろうねー?」
「さあ……しかし、ゴミだというのであれば、あえて中身を確認するまでもないでしょう?」
セレスティアの意見はもっともではあるが、この『ゴミ』を詰めている最中のカーチャ先生の態度は、決して普通のものではなかった。
そのため全員が中身に興味を持っていたが、もしも中身を見たことがバレれば、何かしらの形で単位に響くかもしれない。
そんな考えのおかげで、彼等は辛うじて中身を覗こうという衝動に勝てていた。
「それよか、さっきの戦利品!い〜いもんが手に入ったよなあ!」
全員が即座に『始まった』と思い、セレスティア以外の仲間がバハムーンから距離を取った。
「見ろこれ!フランベルジュ!波打った刀身にヒルトの装飾……俺、こういうの一番好きなんだよなあ……芸術的な美しさと、その裏に
潜んだ狂気じみた破壊力!それを両立させたこいつは、ある意味全ての剣の最上級だと思うぜ!ま、波打った刀身ってだけならクリスも
そうなんだけどよ、このでかさで、この形…!レイピアタイプのフランベルジュも捨て難いけどなあ、いいよなあ、これ…」
「は、はぁ…」
「こいつはな、元々の意味はフランボワヤン……っつったかな?まあ平たく言やあ炎の形を表す言葉が、そのまま名前になったんだよ。
ほれ、刀身の揺らめき具合が炎に似てるだろ?この刃はな、芸術的な美しさを持っちゃあいるが、その実態は敵の肉を抉り、飛び散らせ、
傷を広げて治りにくくする役目もあるんだ。だからこそ、こいつは最高に美しい。役目を果たせねえ道具ってのは、悲しいもんだからな。
陸にある船とか、倉庫に眠ってる宝石とか、間抜けなもんだろう?」
「そ、それにしてもバハムーンさんは本当に何でも知ってますね。一体、その知識はどこから得たのですか?」
さすがにセレスティアも毎回相手にはしたくないようで、話題を別の方向へと変えた。すると、バハムーンの表情が少し神妙なものに
変わった。
「あ〜、元は親父の影響だな。俺の親父、海賊でよ。こういう武器とか好きで集めてたんだ。子供の憧れだぜ、ああいうのはよ」
「そうだったんですか。しかし、海賊…」
「言いたいことはわかるぜ。親父は紛れもねえ犯罪者だ」
しかしそれに関しては何の負い目も感じていないようで、バハムーンの口調はあくまで変わらなかった。
「それでも、親父は俺の誇りだ。最後に、半年後に帰るって言って家出てから、もう十年以上帰らねえけどな」
「………」
フェルパーはその話を知っていたらしいが、それ以外の仲間は初耳であり、エルフとセレスティアは言葉に詰まった。すると、すぐに
重い空気を察したらしく、バハムーンはニカッと笑った。
4275/12 ◆BEO9EFkUEQ :2012/08/24(金) 00:01:41.49 ID:MfbSI7AZ
「んな重っ苦しく考えんな!海で死んだなら海賊としちゃ本望だろうし、生きてりゃ会うこともあらぁな。そん時は、お袋に
ちょっと寂しい思いさせた分、俺が代わりに一発ぶん殴るって決めてるんだ」
「ドがつくほどに、強い方ですね」
セレスティアの言葉は、何の飾り気もない本心からの言葉のようだった。それに笑顔を返してから、バハムーンは後ろを振り返った。
「ん?おい嬢ちゃん、どうした?顔赤いぞ?」
「えっ!?あっ、えっと……べ、別に、何でも……何でも、ないよ…」
慌ててゴミ袋から離れ、なぜか途切れ途切れに言うフェアリー。それに対し、バハムーンはそっけなく答えた。
「そうかい、暑さには気をつけろよ」
どう見ても何でもないわけはないのだが、一度こうと言うと他は絶対に認めない性格なのはわかっている。なので、バハムーンはそれ以上
追及しなかった。
一行は炎熱の穴ぐらに着くと、休む間もなくその中を進み出した。内部はさすがに暑く、全員ひっきりなしに汗を拭っている。
特にドワーフは全身の毛が汗で張り付いて普段よりほっそりした見た目になっており、フェアリーに至ってはレオタードが透けて
しまっている。とはいえ、フェアリーは普段から服装を意識しないようにしているため気付いておらず、男連中もそれを楽しめるほどの
余裕などまったくなかったが。
少し奥へと進み、溶岩が特に激しく燃え盛るところまで来ると、バハムーンがゴミ袋を持ち上げた。しかしすぐには捨てず、それを
じっくりと眺める。
「……やっぱり、中身気になるよなあ」
「それはそうだけどね、捨てないってわけには…」
「いやいや、もちろん捨てるつもりだぜ。けどよお」
そこまで言って、バハムーンはニッと笑った。
「捨てる前に、中身を見るなとは言われて…」
「キャーッ!ダメーぇ!」
突然、フェアリーが悲鳴を上げ、袋を思い切り突き飛ばした。しかし不幸だったのは、フェアリーの位置からだと袋を挟んだ反対側に
バハムーンがいたことである。
「うおっ!?」
いくら体格が違うとはいえ、不意打ちで、しかも全力で突き飛ばされたバハムーンは、大きく体勢を崩した。
「わあああああ!!」
「うわっ、バハムーンさん!」
間一髪、セレスティアが飛び付き、辛うじて落下するバハムーンの尻尾を掴んだ。しかしバハムーンの巨体に引っ張られ、セレスティアも
足場を踏み外した。
「うわっ、ちょっ……だ、誰かぁ!」
「バハムーン!セレスティア!」
フェルパーが駆け寄り、セレスティアの腕を掴む。だが、男二人の体重を支えられるほどの力はなく、フェルパーもずるずると
引きずられていく。
「ま、まずい!エルフ!」
「み、みんな大丈夫かい!?」
即座にエルフが駆け寄り、落下寸前のフェルパーの腕を掴んだ。辛うじて落下は止まったものの、ひ弱な術師の力では引き上げることも
できず、また支えきれなくなるのも時間の問題だった。
4286/12 ◆BEO9EFkUEQ :2012/08/24(金) 00:02:29.26 ID:MfbSI7AZ
「ぐっ……ううぅぅ!ぼ、ぼくじゃこれは……ドワーフぅ…!」
「私の体重じゃ無理。死にたくないし。それより、こっちやる」
「ひ、ひぃっ!」
ドワーフに睨まれ、フェアリーがビクリと体を震わせた。一方の男子連中は、そんな上の状況など知る由もない。
「うあっちちち!!あ、頭が焼ける!脳が溶ける!尻尾がちぎれるー!!」
「ぐぅぅ……あ、上がってこられるか…!?」
「無理ですっ……こ、これ以上は支えるのもっ…!ドがつくほどに、やばい状況ですねえっ…!」
宙吊りにされたバハムーンに、その彼を片手で掴んでいるセレスティアの限界は近い。引き上げようにも、エルフは力が足りず、
フェルパーも半分落ちかかっているため、力が出せない。
ゴミ袋はとっくの昔に溶岩に落ち、派手に炎を上げている。中身は一瞬にして炭化し、もはや何であったかは理解できない。
彼等も一度落ちてしまえば、そうなるのは目に見えている。もし灰も残らず焼かれてしまえば、もはや蘇生魔法ですら復活は無理だろう。
セレスティアもその状況は理解しており、生き延びるため必死に思考を巡らせる。そしてようやく、一筋の光明を見出した。
「バ、バハムーンさん!わたくしの背中のっ……鎌を、取れますか!?」
「か、鎌!?手ぇ伸ばせば、何とか……痛ぃってえぇ!!ゆ、揺らすなぁー!」
「では、それを掴んで下さい!早く!」
「何を……ああ、そういうことか!」
バハムーンもセレスティアの考えを理解し、尻尾の痛みを必死に堪え、セレスティアの持つデスサイズヘルを掴んだ。
「フェルパーさん、いいですか!?『せーの』で手を放してください!」
「馬鹿言うな!死ぬ気か!?」
「死にたくないからこその提案です!返事は待ってられません!バハムーンさん、いいですか!?」
「早めに頼む!」
「お、おいちょっと待って!僕は放す気はっ…!」
「いきますよ!せぇ、のっ!」
フェルパーの言葉を無視し、セレスティアは大きく羽ばたき、同時に彼の手を全力で振り払った。それに一瞬遅れてバハムーンが
上体を起こし、岩に向かって鎌を突き刺した。尋常ならざる切れ味とバハムーンの力により、鎌の刃は岩を突き通し、溶岩に落ちる直前で
バハムーンの落下は止まった。その前に、セレスティアはバハムーンからも手を放し、飛行して足場へと戻っていた。
「ふぅ……危なかったですね、フォルティ先生なら死んでましたよ」
「俺は今も軽く死にそうだけどな!つうかお前、『せーの』でって、普通『の』から一拍置くだろ!?」
「あ、すみません。わたくしは置かないのが普通だと思っていたもので……ドワーフさん、ストップ!ストップ!!」
フェアリーの羽を毟ろうとしているのを見つけ、セレスティアは慌ててドワーフを止めた。
「なんで?これあると溶岩に放り込めないでしょ」
「いえ、放り込まないでください。フェアリーさんにはわたくしの鎌を回収してもらうという任務がありますので」
「セレスティアさんがやれば済むでしょ」
「わたくしの翼では、滞空や微調整はしにくいんですよ。なので、フェアリーさんに頼ませてください」
何とか話を付け、バハムーンはエルフの武器であるオロチをロープ代わりに、全員で引っ張り上げて救助した。それが終わると、
フェアリーは岩に刺さった鎌を何とか引き抜き、それをセレスティアへと返した。
「し、死ぬかと……怖え……溶岩怖え…」
「で、セレスティアさん?もうそいつ放り込んでもいい?」
「いえ、それはその、わたくしも他の方も無事ですし、鎌も回収してもらいましたし、大目に見てあげてください」
やはり、ドワーフはセレスティアの言うことだけは大人しく聞く。おかげでようやく死の危機から解放され、フェアリーがホッと
息をついた瞬間、後ろから低い声が響いた。
4297/12 ◆BEO9EFkUEQ :2012/08/24(金) 00:03:14.94 ID:MfbSI7AZ
「よかったなあ、お咎めなしでよお」
「ひっ!?」
ビクッと体を震わせ、フェアリーは慌てて振り向いた。視線の先では、バハムーンがじっとこちらを睨んでいる。その目は完全に
据わっており、そこからも深い怒りが感じられた。
「あ、あ、あのっ……フェ、フェアわざとしたわけじゃ……わざとじゃないもん、わざとじゃないもん…!」
「そうだなあ、わざとじゃなきゃあ許されるんなら、何でも解決すらぁな」
「ですが、神はフェアリーさんの行動を…」
「ああいや、お前の神はいい。人の世界の話だ」
そうセレスティアに返す時だけはいつも通りの口調で、バハムーンはさらっと言った。
「わ、わざと、じゃ…」
「……もういい。仕事は済んだし、帰るか。こんなとこ、長居はしたくねえしな」
返事を待たず、バハムーンは歩き出した。他の仲間も一瞬遅れて、その後に続く。フェアリーはドワーフとバハムーンにビクビクしつつも、
いつも通り後ろからついて行った。
洞窟を抜け、中継点を通り、ドラッケンへと戻る。その間、バハムーンは一言もフェアリーと口を利かず、またフェアリーも声を
掛けあぐねていた。その雰囲気に、一行の間には少しばかり不穏な空気が漂っていたものの、バハムーンならばそう悪いことにも
なるまいという信用があるため、それほど重く考えている者はいなかった。
課題を終え、夕食になっても、バハムーンはフェアリーを無視し続ける。さすがに罪悪感があるのか、フェアリーは料理を取りに行く
バハムーンの背後に、おずおずと近づいた。
「ね、ねえバハ……あの…」
言いかけたフェアリーを、バハムーンは冷たい目で睨みつけた。その眼光に委縮し、フェアリーが言葉に詰まると、バハムーンは
何事もなかったかのように行ってしまった。
食事の間も話しかけられず、通信魔法で会話を試みるも無視され、部屋に戻るという段になって、フェアリーは彼の後ろをおずおずと
ついて行った。そして部屋に入ろうとした瞬間、全身の勇気を振り絞って再び声を掛けた。
「あ、あのっ、バハ!」
「………」
やはり冷たい目で睨まれ、フェアリーはビクッと首をすくめた。しかしそれではダメだと思ったのか、若干震えながらもバハムーンに
近づいていく。
「その、えと……ど、洞窟、のは……ごめ……きゃあっ!?」
フェアリーが手の届く範囲に来た瞬間、バハムーンは突然フェアリーの首根っこを掴み、部屋の中へと放り込んだ。そして自身も素早く
部屋に入ると、しっかりと鍵を掛ける。
「てめえは毎度毎度、謝るのが遅えんだよ」
「う……な、何よー!フェアのこと、無視しまくったのはそっちでしょー!?私は別に、わ、悪く……悪く、ない……もん…」
声は後半からどんどん力を失くし、最後はよく聞き取れないほどだった。また、必死に反抗的な態度を取ろうとはしているらしいのだが、
その目は今にも泣きそうなほどになっている。およそ、不安九割、期待一割と言ったところだろう。
一方のバハムーンは、実はそれほど怒っているわけではなかった。これまでの態度も、彼なりに考えがあってのことである。
「自分が悪いと思ってんなら、それでも謝るぐらいはできるんじゃねえのかよ?ああ?」
「う……う、うるさいなー!聞こうともしなかったくせにー!馬鹿!バハの馬鹿ぁー!」
フェアリーが言い終えるか終えないかというところで、バハムーンは彼女をひょいっと抱え上げてベッドに座ると、いつものように
膝の上に横たえた。
4308/12 ◆BEO9EFkUEQ :2012/08/24(金) 00:07:49.73 ID:CrRzFLSx
「あっ、やっ……もうやだ!痛いのやだぁ!」
「悪いのはてめえだろ?」
教師の鞭を手に取り、ゆっくりと振り上げる。それを見て取ると、フェアリーの顔がサッと引きつった。
「ま、待って!フェア、まだこれ着たまんまっ…!」
パンッと、乾いた音が部屋に響く。
「あっ……ぎっ…!」
それほど強く叩いたわけではないが、全ての感覚を増幅させるレオタードは必要以上の痛みを彼女に伝え、たちまちフェアリーの目には
涙が浮かんだ。
「い、痛いっ!痛いぃ!やめてぇ!お願い、せめてこれ脱がせてぇ!」
それには答えず、再び鞭を振るう。フェアリーは悲鳴を上げ、何とか逃げようともがくが、バハムーンの力に抵抗できるわけもない。
「痛いよ!痛いよぉ!もうやめて!許してぇ!」
必死の哀願を無視し、バハムーンは何度も何度も鞭を振るう。彼女の小さな臀部はたちまち真っ赤に染まり、熱を持ち始めた。
「痛い……痛い、痛い、痛いぃ…!きゃあっ!!お、お願い許してぇ!!もうやめてくださいぃ!!」
乾いた音が響く度、フェアリーの悲鳴が上がる。その声は叫び声から哀願に変わり、泣き声になり、そして嬌声へと変わっていく。
「痛いよ……痛いよぉ……あうっ!?お、お尻……痛いぃ…!んんっ!!……ゆる……し、てぇ…!」
内容こそ哀願であっても、その声には艶が混じり、抵抗もほとんどない。全身には玉のような汗が浮かび、ただでさえ限りなく薄い
レオタードは、ところどころ完全に透けていた。特に股間部分はぐっしょりと濡れており、鞭で叩かれる度にその染みは広がっていく。
恐らくは無意識に太股を擦り合わせるフェアリーを見ながら、バハムーンはさらに強く鞭を振り下ろす。
「ひぎゃあっ!?いた、いっ……やめて……許してぇ…!」
普段であれば、そろそろ頃合いといったところだが、バハムーンは鞭を振り上げ、二度三度と続けざまにフェアリーの尻を打ち据えた。
「やぁぁ!!な、なんでぇ!?もう、いっ……うあああ!!痛いよ、やめてよぉ!!」
つい口走ったらしい一言に苦笑いを浮かべ、しかしすぐ無表情に戻すと、バハムーンは努めて感情のこもらない声で言った。
「なんでって言ったか?」
「えっ!?あっ、あっ、あの、あのねっ!それは、別に、あのっ…!」
「何度も何度も似たようなこと言われて、何度も何度もこんなこと繰り返して、いい加減こっちだって腹も立つんだよ」
一瞬、フェアリーはホッとしたような表情になり、慌てたように反抗的な目つきをした。
「う、うるさいなー!今回はわざとやったわけじゃないし、もういいでしょー!?フェ、フェアだって焦ったんだからー!」
「わざとじゃなきゃ、人を殺しかけてもいいってのか?」
「う……う、うるさいうるさいうるさぁーい!!バハなんか一回死んじゃえばよかったんだぁー!」
バハムーンがフェアリーの気質を理解しているように、フェアリーも何となくではあるが、バハムーンの意図を理解し始めている。
普段よりも激しいお仕置きの気配を感じ、普段ならばさすがの彼女ですら言わない言葉を吐き捨てた。
その言葉を待っていたかのように、バハムーンは僅かに目を細めた。
「……謝りもしねえで、そんな減らず口を叩くか。てめえな、今日という今日はいつもみてえに軽く許してもらえると思うなよ」
言うなり、バハムーンはレオタードに手を掛け、乱暴に剥ぎ取った。
「きゃああ!?や、やだっ!バハのエッチぃ!か、返してぇ!!」
慌てて奪い返そうとしたフェアリーを押さえつけ、バハムーンはベルトを外し、ズボンを下ろした。そしてやおらフェアリーを
持ち上げると、その足を開かせ、自身のモノの上に座らせるように置いた。
「ひっ!?う、うそっ……うそ、だよね…!?や、やだ、やだぁ…!」
途端に、フェアリーの顔が恐怖に歪み、ガタガタと震えだした。
4319/12 ◆BEO9EFkUEQ :2012/08/24(金) 00:08:43.74 ID:MfbSI7AZ
「やだっ……な、何でもするよぉ…!ちゃ、ちゃんと舐めるし、全部飲むよぉ…!だから……だ、だから、それだけはやめてぇ…!」
目には涙が浮かび、顔色は真っ青になっている。声音からも、フェアリーが本気で怯えているのは感じ取れる。それだけに、バハムーンは
判断を迷っていた。
これまで、フェアリーとするときは口や手でされるだけで、最後までしたことはなかった。というのも、あまりに体格が違うこともあり、
またフェアリーがそれに対して恐怖を覚えていたからだ。しかし、いくらバハムーンといえど若い男子であり、一度くらいは最後まで
してみたいという気持ちもある。また、フェアリーも気分が昂れば受け入れる可能性があるのではないかという考えもあった。
「悪いことをしたら、なんて言うんだ?」
「え…?」
しかし、やはりあまりにも怯えているように見えるため、バハムーンは確認するように尋ねた。
「ちゃんと言えりゃあ、これは勘弁してやる。悪いことをしたら、なんて言うんだ?」
再び尋ねると、フェアリーはガタガタ震えながらバハムーンの顔をじっと見つめていた。が、不意に反抗的な目つきをしたかと思うと、
体を押さえる彼の腕に思いっきり噛みついた。
「痛って!?」
「い、いいからさっさと放せ馬鹿ぁー!!この変態!!セクハラ野郎ー!!」
呼吸と体を震わせ、怯えの色を必死に隠そうとしているフェアリー。その目を正面から見つめ、バハムーンは彼女の肩に手を掛けた。
「そうかい、それが答えだな」
フェアリーが何か言おうと口を開けたが、バハムーンはそれを無視して彼女の肩を思い切り押した。
みぢっと小さな音が鳴り、先端部分がフェアリーの中に入り込んだ。同時に、フェアリーが悲鳴を上げる。
「あっ、ぎぃっ!!!ぐ、がっ…!!!」
あまりの痛みに目を見開き、食いしばった歯の隙間から悲痛な声が漏れる。フェアリーの小さな秘裂は既に限界以上に広げられ、
結合部分には早くも血が滲んでいた。
一方のバハムーンは、初めて感じる快感に、ついそのまま根元まで押し込んでやりたい衝動に駆られていた。しかし悲痛なフェアリーの
表情が、辛うじてその衝動を押し留めていた。
「あ、ぐっ……うぅあああぁぁ…!」
ぽろぽろと大粒の涙をこぼし、ただただ痛みに震えているフェアリー。さすがに声をかけようかと思ったとき、一瞬早くフェアリーが
口を開いた。
「ご……ごめんなさいいぃぃ…!」
極めて僅かながらも、その声から苦痛以外の感情を読み取り、バハムーンは内心ホッと息をついた。
「あ、謝りますぅ…!だからっ……だから、これ以上は入れないでくださいぃ…!し、死ぬ……死んじゃいますからぁ…!」
「………」
一瞬迷って、バハムーンは彼女の肩にかけている手に力を込めた。
「これまで謝りもしなかったてめえの、そんなわがままを俺が聞くと思うのか?」
「ひ、ひぃぃ…!!やだ、やだぁ…!!」
だが、フェアリーが本気で泣きそうになった瞬間、バハムーンは不意に力を緩めてやった。
「まあ、今回は特別に聞いてやる。その代わり、きっちり俺を満足させろ」
その言葉に、フェアリーは涙と鼻水を垂らしつつも、何とか笑顔を浮かべた。
「あ、ありがとうございますぅ…!グスッ……頑張り……ますぅ…!」
バハムーンの肩に手を掛け、フェアリーはほんの少し腰を動かした。途端に激痛が走り、思わず呻いて動きを止めてしまう。
43210/12 ◆BEO9EFkUEQ :2012/08/24(金) 00:09:29.69 ID:MfbSI7AZ
「うあっ……い、いたいぃ……ひっく…!」
痛みに体を震わせ、溢れる涙を必死に拭うフェアリー。それでも必死に要求に応えようとする彼女の姿は可愛らしくもあり、また震えが
伝わることもあって、バハムーンとしてはそれだけでも意外と気持ちいいのだが、あえて冷たく声を掛ける。
「それで何かしてるつもりか?自分でできねえってんなら…」
「や、やめてぇ!ちゃんとしますっ、ちゃんとしますからぁ!うぅ……んぐぅ〜っ…!」
唇をぎゅっと噛み締め、フェアリーは再び腰を動かす。やはり痛みが強いらしく、その動きはないに等しいようなものだったが、
時間が経つにつれて、少しずつ動きが大きくなっていく。
「んん……はぁ…!くっ……い、たい……あう…!裂け……ちゃう、よぉ……くぅ…!」
それに伴い、声にも少しずつ変化が現れる。純粋な泣き声だったものが、微かな熱を帯び始め、苦痛を訴える言葉は、苦痛を自身に
言い聞かせるようなものになってきている。
貞操を無理矢理奪われ、破瓜の痛みを耐えながら奉仕を強要されるこの状況に、フェアリーは明らかに快感を覚えていた。
バハムーンは彼女のきつすぎる膣内の感触を楽しみつつ、ならばもう少し無茶をしても大丈夫かと考える。
右手を振り上げ、やおらフェアリーの小さな尻を打ち据える。途端にフェアリーは悲鳴を上げ、同時に動きが止まった。
「あああっ!!い、いたいよぉ!!あ、あそこに響くから叩かないでぇ!!」
「だったら、もう少ししっかり動け」
そう言い、尻を強く打つ。フェアリーは再び悲鳴を上げ、何とか深く入れようと体重を掛けた。しかし、元々の体格差とひどい痛みにより、
ほとんど入れることはできなかった。
「あうぅ……ご、ごめんなさいぃ…!む、無理ですぅ……お、おっきすぎて……入らないよぉ…!」
また痛みが強くなったのか、フェアリーの目には再び涙が浮かんでいた。バハムーン自身、これ以上深く入れるのは無理だと思って
いたため、彼女が無理をする前に声を掛けてやることにした。
「だったら、もっと締めてみろ。それぐらいできんだろ?」
「や、やりますぅ……やりますから、無理矢理入れたりしないでぇ…!」
実際にやられれば地獄でも、妄想としてはそれなりに興奮するらしく、フェアリーの表情は再び陶然としたものに戻りつつあった。
同時に、バハムーンのモノがきゅうっと締めつけられる。体格差のおかげで結構な締め付けではあるが、元々が非力な種族のため、
締めつける力自体はさほど強いものでもない。刺激としては十分であり、実のところバハムーンは出してしまわないよう耐えるのに
それなりの努力を要していたのだが、その締め付けの弱さを口実にさらなる責めをしてやろうと考え付く。
中指を舐めて唾液を絡ませると、バハムーンはフェアリーの尻たぶを掴んだ。そして軽く開かせると、無防備な後ろの穴に指を突き入れた。
「きゃああぁぁ!?なっ!?ちょっ……うあっ!なんっ、やっ、そんなっ……うああっ!!」
途端にフェアリーは悲鳴を上げ、予想外の刺激と恥ずかしさに混乱しているようだった。思った以上の反応に、バハムーンは思わず
ニヤリと笑みを浮かべた。
「少しは締まるじゃねえか。ほら、もっと強く締め付けてみろ」
「ちょっ、だっ、そこお尻っ……うあああぅ!?ゆ、指曲げないでぇ!!!」
フェアリーはバハムーンの上体に縋りつくような体勢になり、指の動きを押さえようとしているのか、必死にそこを締めつける。
それに連動してバハムーンのモノも強く締め付けられ、快感も跳ね上がる。
「だ、ダメダメダメぇ!!お、おしり出したり入れたりダメぇ!!ひあああっ!!」
締めつけもさることながら、結合部から溢れる愛液は明らかに量を増し、今やバハムーンの太股を伝うほどにまでなっている。おまけに
刺激から逃れようと腰を動かすため、不規則な刺激が与えられ、もはやバハムーンの我慢も限界だった。
43311/12 ◆BEO9EFkUEQ :2012/08/24(金) 00:10:18.35 ID:MfbSI7AZ
「くっ……そろそろ出すぞ…!このまま、中に出すからな…!」
「な、中って!?それよりゆびっ……お、おしりやめてぇ!そ、そんなおしりの中からひろげたりっ…!」
「ぐっ……出すぞ!」
ビクンとバハムーンのモノが跳ね、結合部からはたちまち入りきらなかった精液が溢れだした。
「えっ!?や、あ、熱いぃー!!中痛いっ…!だ、出さないでぇぇぇ!!!」
それが沁みたらしく、フェアリーは全身を強張らせ、悲鳴を上げる。しかし、やはり苦痛のみというわけでもないらしく、むしろその悲鳴は
自身をさらに酔わせるためのものに近かった。
時間を掛けて、じっくりとフェアリーの中へ注ぎ込む。その大半が溢れ出てしまったものの、膣内に射精したという充足感は非常に
大きく、バハムーンはしばらくその余韻に浸っていた。
「ああ……あ……おなか……い、いっぱいぃ……もう、はいらない……よぉ…」
苦しげでありつつうっとりした独特な声に、バハムーンはフッと我に返った。まず後ろに入れている指を抜こうとしたが、直前でふと
思い直し、そこで吊り下げるような形で彼女の体を持ち上げた。
「ひやあああっ!?そ、それダメぇ!!!広がっ……お、おろしてぇぇぇ!!!」
栓になっていたモノが抜け、痛々しく広がった秘裂からどろりと精液が溢れ出る。だが、当のフェアリーはそれどころではないようで、
涎を垂らしつつ必死にバハムーンの体にしがみついている。
太股の上にフェアリーを下ろすと、ようやく指を引き抜く。同時に、フェアリーの体がガクガクと震えた。
「んあああっ!!抜けちゃっ……んあう!!」
全てが彼女の中から抜け出ると、フェアリーは力尽きたようにうなだれ、バハムーンに体を預けてきた。それを抱き止めてやると、
ようやく気持ちが落ち着いてきたのか、荒い息をつきながらバハムーンの顔を見上げる。
「はぁ……はぁ…………あ、あの…」
「ん?」
「洞窟……はぁ……危ない目に、あわせて……はぁ……ごめん、なさい…」
相当気にしてたんだなと、バハムーンは何となく微笑ましい気分で思った。
「遅くなっても謝ることにしたか。えらいな」
「……えへへ」
頭を撫でてやると、フェアリーは嬉しげに目を細めた。
「それにしてもお前、後ろの方の反応が随分良くなかったか?もしかして、そっちの方が好きなのか?」
「ええっ!?」
途端に、フェアリーの顔がボッと音が出そうな勢いで赤く染まり、目は真ん丸に見開かれた。
「そそそそんなことないよーっ!!お、お尻の方が気持ちいいとかっ……あるわけないもんー!!フェ、フェア変態じゃないもんーっ!!」
どの口が、と喉元まで出かかった言葉を、バハムーンは辛うじて飲み込んだ。
「そうか、違うのか」
「へ、変態はバハの方でしょー!?い、いきなりっ……お、おし、り……に、指入れるとかーっ!!ほんと信じれないんだけどー!!」
「まあ、別にいいけどよ。その、体は大丈夫か?少しきつかったかと思ったんだが」
「平気なわけないでしょー!?い、いきなり入れられるしっ、指曲げてグネグネするしっ、引っ張って持ち上げっ…!」
「尻の方じゃなくて、前の方な」
「っ!?えと、だ、だ、大丈夫っ!!ち、血もあんまり出てないしっ!!痛いけどっ!!」
「ならいいんだ」
そっと抱き寄せてやると、フェアリーはようやく落ち着きを取り戻し、ふーっと大きく息をついた。どうやら相当に消耗していたらしく、
そのまま目を瞑ったかと思うと、一分と経たないうちに寝息を立て始めてしまった。
43412/12 ◆BEO9EFkUEQ :2012/08/24(金) 00:11:05.79 ID:MfbSI7AZ
仕方ないので体を拭いてやり、起こさないようにそっとベッドに寝かせ、その隣に寝転がる。
何の気なしにフェアリーの体を見てみると、身長こそ小さいものの、それなりに整った体型をしていることに気付く。胸は大きいわけでは
ないが、少なくとも膨らみがあるのは見てとれるため、他二人の女子連中に比べればある方と言えるだろう。
せっかくのそれに一切触れることなく、それどころかどこにも愛撫すらしたことがないことに思い当り、バハムーンは苦笑いを浮かべた。
「……ほんっと、めんどくせえ関係だよなあ」
誰にともなく呟き、バハムーンも目を瞑る。そうしてフェアリーの寝息を聞いているうち、いつしかバハムーンも眠りに落ちていた。

昼休みを終え、空席の目立つようになった学食に、ドワーフとセレスティアを除く一行の姿があった。二人がいない理由は、久しぶりに
ドワーフが他の生徒と諍いを起こし、仲裁に入ったセレスティアに怪我を負わせたためである。ギロチンアックスの腹の一撃で失神した
セレスティアは保健室に運ばれ、ドワーフは罪の意識を感じている様子はないものの、何となくついていることにしたらしい。
「ん〜、フェア達、次の本戦出れるかなー?」
前屈みでテーブルに肘をつくフェアリーが、実に不安げな声で尋ねる。
「被害は幸い……というより、不幸中の幸いでうちのセレスティアだけだし、どっちもうちのパーティの仲間だし、大丈夫だとは思う」
肩のペットに餌をやりつつ、フェルパーが答えた。
「でも、なんでセレスティアが殴られたんだい?」
「あー、やばそうな気配感じて庇ったみてえだな。あのお嬢ちゃん曰く『止められなかったから腹で殴った』らしいぜ」
「それでも、フェアだったら死んじゃいそー。ドワの攻撃って、力任せだから刃じゃなくっても……いたたた」
体を起こしかけたフェアリーが不意に顔をしかめ、再び前かがみの姿勢に戻る。それを見ていたエルフは、不思議そうに首を傾げた。
「……どうしたんだい、フェアリー?腰でも痛いのかい?」
途端に、フェアリーの顔が真っ赤に染まった。
「ふえ!?こここ腰痛いってそんなっ……あっ、やっ、じゃなくって!腰じゃなくってお尻っ……じゃなくってぇぇ!!!そう、腰!!
腰痛いのっ、朝からっ!」
「な、何だよ大声出したり……まあ腰にしてもお尻にしても…」
「だからっ、痛いのは腰だってばーっ!!!」
「う、うるっさいなあ!!そんな大声出さなくたって聞こえるって!!」
フェアリーは顔を赤くしながらぜえぜえと荒い息をついていたが、やがて心を落ち着けるように大きく息をついた。
「ふぅ〜〜〜……ひりひり……じんじん…………んふふ…」
「な、何この子……なんか気味悪いんだけど…」
そんな二人の様子を見つめながら、フェルパーは肘でバハムーンを小突いた。
「バハムーン……君、また何したんだ?フェアリーをドMにでも調教してるのか?」
その言葉に、バハムーンは首を振った。
「いいや、逆だ。俺がドSに調教されてるんだ」
「なんだそれ…?ま、フェアリーの相手してくれるんだったら、僕もエルフも助かるけど」
「ああ、そうさせてもらうぜ。むしろ、こんな面白い相手、手放してたまるかってな」
面倒ではあっても、不快な関係ではない。むしろ、口にも態度にも決して出さないものの、お互いに大切な存在だと思っている。
求める者を与え合う、そしてお互い以外ではそれを望めない関係。そういった面もひっくるめて、この上もない貴重で大切な存在である。
しかし少しずつ、お互いにエスカレートしてきているな、とは二人とも内心思っている。ならばどこかで止めるかと言えば、答えは
否定以外に存在しない。むしろ大歓迎だとすら、二人は思っている。
深いところで実は似た者同士の二人は、まさにお似合いのカップルなのだった。
435 ◆BEO9EFkUEQ :2012/08/24(金) 00:14:38.29 ID:MfbSI7AZ
以上、投下終了
スレ容量が結構来てるけど、落ちる判定は480kbからだったっけ?
次スレ立てた方がいいんだろうか?

それではこの辺で
436名無しさん@ピンキー:2012/08/25(土) 10:13:54.04 ID:XwcLWrr8
お久しぶりです!相変わらずのGJな作品でした!
437名無しさん@ピンキー
よく見たら>>1に480kb超えたら立てろってあったね
というわけで立ててきた

【ととモノ。】剣と魔法と学園モノ。14
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1345857166