亀だけど
>>818で出てた日本神話でうろ覚えだけど愛故があったの思い出した
ざっくり解説すると、妹を愛してしまった兄が「お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよね!」的なノリで妹レイーポ
で、2人の間に出来た男神は赤の他人の女神に拾われるんだけど、成長したら「義理の息子だけど愛さえあれば関係ないよね!」的なノリで同じくレイーポ
こんな感じだった
親子二代愛故か・・・
それにしても
>>818の
>母親愛するあまり実の姉と子作りしちゃったスサノオ
・・・なぜ母にいかないw
かーちゃんあの世にいるし
続き投下します。今回は本番描写なし
いつも間違えるんで、番号振るのはやめた
穏やかな日差しに包まれながらの読書は実に心地が良かった。
さすが大陸一を誇る大国。かなり古びたものから最新のものまで、城には無数の書物がある。
招かれて以来ずっとミオの心を弾ませてきたものだったが、今はただ無意識にページを捲っているだけ。
外はあんなに晴れやかだというのに、部屋の中は陽気で暖かだというのに。ミオの心だけが陰っていた。
彼の――ローラントの事を知りたいと思ったあの日からもうどれくらい経っただろうか。
随分と経ったようで、あっという間だった気もする。
あの日の夜、ミオの部屋に現れたのはいつも自分を連れに来る侍女ではなく、小太りの老人だった。
…ミオはこの男が嫌いだった。この男は、ミオがこの城に招かれた時から妙に辛く当たってきた。
初夜の際、ローラントの前で娼婦のような振る舞いをするよう唆したのもこの男だ。
下品な物言いに横柄な態度。口を開いた瞬間から嫌悪感が湧き出てくるのも致し方ないことだ。
だがこの男は人心掌握に長けている。でなければ、このような卑劣な人間が政治家という地位に座る事など出来はしない。
人が心地良いと思える言動を熟知し、それを反映させられるだけの行動力があるからこそ、この地位にいられる。
それが権力欲のある人間にとってどれだけストレスになる事か。だから、弱者を徹底的に見下す。
怒りや悲しみに打ち震えながらも抗えぬ彼らの姿を見る事で優越感を得ているのだ。
ミオは幼い頃からこのような人間を幾度と無く見てきた。だからこそ、この男への最良かつ唯一の抵抗手段を知り得ている。
彼らの言葉に耳を貸さぬ事。じっと耐え忍ぶ事。どんな事を言われても「承知しています」とだけ返す事。
辛いばかりだった日々の中で身を以って知り得たことだ。それが祖国から遠く離れたこの地でも通用するとは思わなかったが。
辛辣な言葉にいちいち反応を示せば、それこそ彼らの思う壺だ。彼らをいい気にさせるだけ。そして、自分が傷つくだけ。
目を閉じ、耳を塞ぐ。そうしていれば彼らはいずれ、声をかけることに飽きてくるから。
だから今回も、じっと耐え忍べばいい。そう思っていた。
「ローラント陛下は貴女を部屋に呼ぶな、とおっしゃった。」
彼の名前が出た事で心が反応する。それが顔にも出てしまったのだろう。男はにやりと狡猾な笑みを浮かべた。
「大方飽きられたのだろう。だが良い。毎日のように仕込まれておられたのだ。いずれ妊娠の兆候が出るはず。
これでも妊娠していないとなれば…ミオソティス姫、わかっておるだろうな?」
承知しています。いつものようにそう答える。自分でも声が上擦り、震えている様が伺えた。
それに増長したのか、男はたいそう機嫌のよろしい声で一言。そして、満足げなご様子で立ち去っていった。
「貴女はもはや用済みだ、ミオソティス姫。」
あの日から一度たりともローラントの顔を見かけない。
彼は元より忙しい身ではあるのだが、それでも今日までに1度くらいは姿を見かけても良いはずだ。
毎晩馴染みだった侍女があの日からぱったり姿を見せなくなった事で、大きな不安感がミオを襲った。
飽きられてしまったのだ、と割り切れるならばどんなに良かっただろうか。今までそうしてきたように。
だがもう、ミオには割り切れる余裕など無かった。捨てられてしまえば、もうミオの居場所は完全に失われてしまう。
ミオが居場所を保てる唯一の方法は、彼の子を宿す事。懐妊の事実さえあれば、この城に留まっていられるだろう。
だのに、懐妊を切実に願う気にはどうしてもなれなかった。
毎晩自分を形式的に抱き続けたローラント王と、あの時自分を貪るように抱いた見知らぬ彼。
両者の中にあるものが一体何なのか。そして、どちらが本当の彼自身なのか。その答えを求めてやまない自分に気付いてしまったから。
これまで感じた事の無い、不思議な感覚だった。関わりの無い他者の事を、これほどまでに知りたいと思った事はなかった。
忘れたくても忘れられない最後の長い口づけ。その生温かく切ない感触を未だに唇が覚えている。
ミオ自身の葛藤と、いずれ居場所を失うかもしれないという漠然とした不安感。思わず目を閉じ、上を向く。
そうしていないと泣いてしまいそうだった。涙を流せば、一緒に色々なものまで溢れ出てくる。それらを必死に留めておかなければならない。
――なんだか、私、弱くなった……
相手にされない…今までだったら、これしきの事で涙腺が緩むなんて考えられなかったのに。
たった一人の男性に避けられているだけで、これほどまでに不安で、泣きそうになるなんて……。
穏やかな日光だけが身に沁みる。その暖かさすらも、今のミオには辛く感じた。
今日もやはりローラントはミオの前に現れなかった。
夕食を取り終えたミオが、ふらふらと、重い足取りで向かったのは執務室の前。ローラントの許可無き者は出入りする事を許されない部屋だ。
震える指が執務室の重たそうな扉に触れた途端、宙に浮いていた意識が一瞬にして戻ってきた。真っ白だった思考が徐々に色付いていく。
どうやってここに来た? …思い出せなかった。無意識に足がこちらへ向かっていたのだ。
何故ここに来た? …思い出せない。ただ、ここにローラントがいるだろうと思ったから。
それはどうして? ……思い出せる。だけど、思い出すことを躊躇った。不安で仕方なかった。
この漠然とした不安をどうすればいいか、不安を解消できる答えをローラントが知っている気がしたから。
…違う。そんなに複雑な気持ちからじゃない。理由はいくらでも述べられる。思いつく限り、どれだけでも。
単純且つ明確な思いが喉まで込み上げてくる。それを塞き止められるほどの余裕は残されていなかった。
「…会いたい……貴方に会いたい、です……陛下………!」
ただ会いたい。それによってどんな非情な言葉が待っていたとしても。それでも彼に会いたい。
居場所を失う恐怖もある。だがそれ以上に彼に捨てられるのが怖い。それこそがミオの漠然とした不安の正体。
醜い執着だ、と、母は今現在のミオの姿を嘲笑するだろう。だがそれを恥ずべき事だとは思えなかった。
彼を思うたびに募る不安や恐怖。彼の知りたいと望む気持ちの根本にあるものをミオは未だに知らない。理解出来ない。
だが今そんな事は二の次。ただ彼に会いたい。それだけがミオの心を埋め尽くしていた。
「…ミオソティス様」
背後から予想だにしなかった声が届いたのは、それから少し経ってからの事だった。
この声には覚えがある。核心を持って振り向く。予想通りの人物がいた。
「ヒース……」
「最近庭にも来てくださらないし、たまにお姿を見かけたと思ったら悲しげな顔をされていて…心配していたんです」
黄昏時の薄暗さに廊下のわずかな灯り。そのせいか、ヒースの出で立ちがやたらと不気味に見えた。
こちらへゆっくりと歩み寄るヒース。いつもと変わらない微笑み。だけど、どこかが違う…。
「ダメじゃないですか、侍女に何も言わずにこんな所に来て。僕がお部屋までお送りしましょう。」
「でも……」
「ほら、行きましょう」
腕をつかまれ、半ば強引に引っ張られていく。華奢なヒースにこれほど強い力があったのかと驚く一方で、違和感を感じていた。
咄嗟に振り向く。視線の先の、執務室の重たげな扉が徐々に遠ざかっていく。あの向こうにいるかもしれない彼を思う。
今自分の腕を掴んでいる手から感じる体温は、ミオが覚えている体温とは同じようで全く違う。
身に馴染んだ熱とは違う異質な熱。その箇所から伝わる鈍い痛み。前方を見たまま、こちらを見ようとはしないヒース。
怖い。ふつふつと、沸騰していく水のように、小さな恐怖が沸きあがっては消えていく。
気のせいだ、と頭を振りたかった。弟のように可愛がっていた彼から、こんなに恐怖を感じるはずがない。
だが、今現在のこの状況が。否定したい恐怖を肯定する。掴まれた腕がきりきりと痛む。
「や……離してっ……!」
何度も腕を振りほどこうと試みるも、男の腕力に敵うはずもなく。何度もそう試みているうちに、ミオの部屋にたどり着いてしまった。
ヒースは無言のまま扉を開け、ミオを部屋へ押し込める。ようやく開放されたと思ったのも束の間だった。
何故かヒースも、ミオの後に続いて部屋の中へ侵入してきたのだ。
「ミオソティス様…何故、そんな悲しい顔をしてるのです?」
悲しげな顔をして、じりじりと距離をつめてくる。ただならぬ空気を感じ取り、思わず後ずさった。
進み寄る。後ずさる。そんな攻防を続けているうち、ミオの背には壁。完全に追い詰められてしまった。
「ひ、ヒース……?」
至近距離で見える子犬のような丸い瞳に、いつものような輝きはなかった。ただ、鈍い光を爛々と発しているだけ。
怖い。いたたまれなくなって視線を反らす。その怯えた様を見て、ヒースは眉をひそめた。
「…貴女のそんな顔、僕は見たくない。貴女にはずっと優しく微笑んでいてほしい、だから―――」
乱暴に彼女の両肩を掴む。柔らかな小刻みに震えているのが手のひらを通して伝わってくる。
「ミオソティス様。僕と、この城から逃げましょう。」
「……え?」
ミオが顔を上げた。驚いた瞳と丸く、鈍い光を宿した瞳。二つの瞳がかち合う。だが、重なり合う事は無い。
「抱いてはいけない想いだとわかっていました。それでも貴女のお傍にいればいるほど、想いは強くなっていって…。
ただの恋慕の情でよかった。それなのに…それなのに、最近の貴女はいつも悲痛な顔をしてばかり。
陛下がこれ以上貴女にそんな顔をさせるというのならば、僕もこの気持ちを押さえ込んでおくわけにはいかない!」
溢れんばかりの想いを心の限りぶつけてくるヒースの姿を、ミオはただ呆然と眺める事しかできなかった。
こんな時にでも垣間見てしまうのだ。彼の姿を。身を焦がすほど滾った情欲を自分の中へ注ぎ込んできた彼の姿を。
ヒースの言葉の中にあるものと、彼の行為の中に必ず存在していたもの。それは間違いなく同じものだ。
だが、それがなんなのか理解出来ない。理解する必要などなかったのだ。自分とは縁遠いものだと思っていたから。
それを今、この少年が理解させようとしている。今までも、そしてこれからも。自分にそれが向けられる事などないはずだったのに。
「ミオソティス様。僕は、貴女を愛しています!」
――ああ、聞いてしまった。
その言葉はミオにとって毒だった。その言葉は自分を惑わし、思考を狂わせる。その言葉一つで、意のままに操られてしまう。
だから割り切った。言葉としてその言葉を向けられる事はあっても、その心を向けられる事は決して無い、と。
――だけど……私はそれが欲しかった。
勉学に勤しんだのも、芸術を嗜んだのも、美を磨いたのも。それらの行為の根源はたった一つの小さな願いのためだ。
ただ、母に愛されたい。そんな小さな願いすらも結局叶う事はなかった。
諦めたつもりだった。だけど、諦めきれなかった。心の奥底では、渇望していた愛を心から欲していた。
そして今。自分の目の前に、愛を囁いてくれる人間がいる。言葉の端々から激情が伝わってくる。その言葉に偽りが無いことも。
…その想いを受け入れ、共にこの城から逃げ出せれば。不安の種であった自分の居場所が、ヒースの隣へと確立されるだろう。
しかし、今のミオにはヒースの想いを受け入れる事はできない。どれだけヒースが激情をぶつけてこようと、やはりミオに見えているのは彼の姿なのだ。
「ごめんなさいヒース……私は、貴方の気持ちに応える事は出来ません。」
「―――っ、どうしてっ?!」
肩を掴む力が強くなる。きしむ肩の骨。きっと痣になっているだろう…なんて悠長な事を考えてしまう。
「信じてくださらないのですか? 僕は本気で貴女を愛しているんです!」
「いいえ。貴方の言葉に嘘偽りなど無いことは解っています。だけど……」
「だったら、僕の手をお取りください。さあ! 共にこの座敷牢から逃げ遂せましょう!」
男のものとは思えないような細長い指の先端がミオの頬に愛しげに触れる。
あまりの指の冷たさに、体が芯から震え上がった。―――怖い。慌ててその手を払い除ける。ヒースの顔が引きつった。
「…やはり、陛下ですか。貴女の心を縛り付けて放さないのは、あの男か!!
あの男が貴女に何をしたんです? 何を与えてくれたんです!? あの非道な冷血漢が貴女に何を……!」
「言わないで!!」
思わず大きな声が出てしまった。自分への罵倒なら耐えられる。だが、あの人に対する罵倒は、耐えられない。聞きたくない。
彼は冷血漢なんかじゃない。ましてや非道な人間ですらもない。自分の目に映る彼の姿は―――
「同じなんですヒース。私は、貴方と同じ目で、同じ想いで、彼を…ローラント陛下を見ているんです。」
彼の全てを知りたいと欲する想い。その根源は、ヒースが自分に向けている感情と相違ない。
「何を求めているわけではないんです。ただ私は……私は彼を―――!」
その先を口に出す事ができなかった。これ以上言葉を続ければ後戻りが出来なくなってしまいそうだった。
――愛している、と口に出してしまえば。一生この言葉に囚われてしまう。向けられるはずも無い愛を再び渇望してしまうだろう、と。
そんな……! 話が…話が違うじゃないか! 愛を囁けば必ず応えるって…そう言ってたのに……!」
ヒースは2,3歩後ずさり、頭を抱える。そして呪文のようにぶつぶつと何かを呟き始めた。ミオはその異様な光景を呆然と眺める事しかできない。
隙をついて逃げ出そうにも、足が震えて動く事ができないのだ。
ヒースはしばらく頭を抱えたまま動かなかったが、突如、何か吹っ切れたように背筋を伸ばし、こちらを見遣った。
狂気とも取れる光が、鈍い光しか宿していなかった瞳に差し込む。蛇のようなその瞳に見竦められ、身動きが取れなくなる。
「そうだ……応えないのならば、応えさせればいい、って」
その瞬間、ミオの体がふわりと宙に浮き、一瞬にして柔らかなベッドの上に投げ出された。
「可哀想なミオソティス様。あの男に散々身体を弄ばれ、挙句の果てに捨てられて。さぞ悲しいでしょう。
でも、大丈夫。僕が一生をかけて貴女を慰めてあげますから。」
一体何が起こったのか。それをミオに理解させる間もなく、ヒースはミオに覆いかぶさってくる。
「ヒースっ…な、にを……!」
必死に抵抗する中で、再びヒースと自分の視線がかち合う。無垢に輝いていたはずの瞳は、今は鈍く、それでいて爛々としている。
奥底に見えるのは―――まさに狂愛。蛇のような眼差しに射竦められ、凍てついたように硬直する。
その隙をついて、ヒースは慣れたような手つきでミオの両手の自由を奪う。
「止めて…止めてください、ヒース! こんなことしたら、貴方は……」
身分の低い者が上流階級の者に手をかけることがどれほどの重罪になるのか。ミオはそれを身を以って知っている。…それこそ、生まれる前から。
目を覚まさせようと言葉をかけ続けるも、狂愛を抱いた彼に届くわけも無く。彼の手が無防備となったミオの両胸にやんわりと触れる。
ミオは晒を巻いていない。巻こうにもその晒はあの日ローラントに切り裂かれてしまい、ただの布切れとなってしまったのだ。
胸を押さえつけていたものがなくなったせいで、おかげで用意されていた服の大半が着れなくなってしまった。
「驚いた……意外と肉感的な身体なんですね」
呟くように発せられた彼の声は心なしか嬉しそうだった。そして孤を描くようにゆっくりと、次第に乱暴に揉みしだく。
「この豊満な胸を…このいやらしい身体を……あの男は弄んできたんですね。羨ましいなぁ………」
彼の手は服の中へと侵入を始める。ミオは慌てて身を捩り、侵入を必死に阻む。
「止めて…お願い、だからっ……!」
狂愛に支配された彼の耳に、そんな言葉が届くはずも無い。冷たい指が素肌に触れ、同じように揉みしだく。
が、ヒースは急に手の動きを止める。そして可笑しげに口の端を歪ませると、彼女の耳元で囁いた。
「貴女もまんざらでもなさそうですよ…気持ちが良いんでしょう? 素直になってください」
「そんなわけ、ない……!」
胸への愛撫に反応しているのは、ミオの女の性だ。しばらく無沙汰だったせいでいつもよりも過敏に女の本能が反応する。
快楽を求める女の性が、嬌声をあげさせる。…だが、それはミオの本心ではない。
ミオ自身は、彼の愛撫に不快感を感じる事しか出来ずにいた。
「違う…私が、覚えて、いる…のは……この手じゃ、ない……」
嬌声交じりにようやく発する事が出来た本心は、やはり嬌声の中に掻き消えていく。
自分が覚えている手はこんなに乱暴じゃない。燃えるように激しく、なのに優しく。静かにミオを高ぶらせていく無骨な指だ。
どうしてこんな事になってしまったのだろう。こうなってしまったのは、自分のせいなのだろうか? 不快感に耐えながらそんな事を思った。
服をたくし上げられ、ヒースの眼下に実った果実が晒されようと。たわわな双丘にむしゃぶりつかれ、意のままに弄られようと。
ただただ不快だった。同時に自分の身体に刻み込まれた彼の手の動きが思い起こされ、胸の奥が締め付けられた。
「嬉しいなぁ…こんなしがない僕が、ミオソティス様を悦ばせられるなんて!」
恋焦がれた女性の身体を蹂躙しているという、狂喜に酔いしれた彼の声は高揚している。
「さあミオソティス様、応えてください。たった一言、僕を愛してると言うだけでいいんですよ?
その言葉さえあれば、僕は貴女の為に全身全霊を尽くせるのですから。」
ミオは答えなかった。不快感に耐える事に夢中で、ヒースの問いに答える暇など無いのだ。
「まだ、応えてくれないんですね。だったら……」
片手は乳房を揉み解しながら、空いた手は滑らかな身体のラインをゆっくりとなぞっていく。
太ももを何度も撫で回し、その手は徐々に足の付け根へと伸びていく。そして、ようやく目指していた場所へとたどり着いた。
下着ごしにそこをなぞった途端、ふと、ヒースの顔から笑みが消えた。
「あ、れ……なんで……?」
指が布一枚を隔てた秘所を何度も往復する。彼の予想だにしていなかった事が起きていた。
あれだけ胸を弄り、思う存分堪能したというのに。それに対してミオの方も喘いでいたというのに。ミオの蜜壷は潤ってなどいなかったのだ。
「濡れてない…なんで……どうして」
直接確かめようと、下着の隙間から中へ侵入して直にそこをなぞる。やはり濡れてなどいなかった。直接刺激しても、一向に潤う気配は無い。
先ほどまでは余裕綽々といった笑みを浮かべていたのに、ヒースの表情から笑顔が消える。
頑なに口を閉ざすミオに、ヒースは苛立ちすら覚えていた。
何故受け入れてくれない? 何故応えてくれない? …あの男の、せいなのか?
ミオへの苛立ちをローラントへの憎しみに変換する。恋焦がれた彼女を文字通り飽くまで犯し続けた憎き男。
そして、思った。ミオがなかなか応えてくれないのは、あの男への快楽に依存しているせいだ、と。
だったら、自分が与える快楽を彼女の身体に上書きしてやればいい。
未だ潤うことのないそこへ何度も指を挿入する。聞こえてくるミオの声は大変悩ましげなものだった。
だが、やはり潤いで満たされる事はない。ヒースの顔に焦りの色が見え始める。
それを察したのか、きつく結ばれていたミオの口がようやく開かれた。
「感じるわけがないでしょう……私が求めているのは、貴方なんかじゃない!」
そこから発せられた言葉は、ヒースにとって残酷なものだった。
なんということだ。彼女はこれほどまでにあの男に毒されてしまったのか。…ヒースの中の何かがふつりと切れた。
「そんな……そんなの………嘘だっっ!!」
胸に添えられたままだった片手が、いきなり胸を強く握りしめる。爪が柔肌を引き裂き、白い双丘に赤い筋が一つ、滴り落ちた。
もう片方の手は依然蜜壷を掻き回す。愛液という潤滑油のないままでの指の挿入は、ミオに鈍い痛みを与え続ける。
「貴女は愛に飢えているのでしょう? 愛してくれる者であれば、誰だって受け入れてくれるのでしょう?
こんなにも貴女を愛している僕なら……僕こそ貴女に相応しい。そうでしょう?」
「…いいえっ…いくら、弄ばれようと…、私は、貴方を、受け入れ……ません…!」
「…貴女がこんなにも強情だとは思いませんでした。」
胸を存分に堪能し、潤わぬ蜜壷を弄り回していた両手の動きがぴたりと止まる。その手は膝へ、そして付け根へと伸びる。
「どうせ僕にはもう後も先も残されていないんだ…だったら、貴女が僕を受け入れてくれるまで犯し続けます。」
耐えるように閉じられていた美しい瞳が見開かれ、ヒースを見据えた。
ああ…今彼女の瞳には僕が映ってる。いや、僕しか映っていないんだ。三度、ヒースの口角が歪む。
「な……どういう、こと……?」
「こういうことですよ。」
下着を強引に引き下げ、閉じられた足を強引に押し広げる。ヒースの目の前に赤く熟れた秘所が露わになる。三日月形に歪んだ唇が、ミオの秘所に押し当てられた。
乾いたままのそこを生温かい舌がなぞる。これまでとは比べ物にならない不快感がミオを襲った。
「やだぁっ……! 止めてっ…止めてぇっ……!」
一層ミオの抵抗が強くなる。この不快感から一刻も早く逃れねばと大きく体をしならせるも、足を持ち上げられて固定されてしまい、身動きが取れない。
唇が蜜壷へ吸い付き、生温い舌が中へ侵入する。わざとらしく粘着質な音を立てて、ミオの劣情を煽ろうと躍起になっている。
淫猥な生き物のようにヒースの舌が中を蠢く。それに反応してか、そこはじんわりと湿り気を帯び始めた。
滲み出てきた秘蜜を舌で掬い取っては、指で掻き出す。秘蜜は彼の唾液と共にシーツに染みをつくっていく。
舌が激しく蠢くたびに淫靡な水音が立ち、ミオの耳にも届く。この上ない羞恥と、不快感と、むず痒さを感じた。
「嫌……止めて! もう止めてください、ヒース! お願いだから、正気に戻って!!」
「正気に戻って欲しかったら、僕を受け入れてください…ねえ、ミオソティス様!」
必死に頭を振る。ここで羞恥心に負けて首を縦に振ってしまえば、全てが終わりだ。
「もう嫌……こんなの…こんなの、おかしい……! 気持ち悪い!!」
強烈な不快感がまとわき、ミオの思考にノイズをかける。このまま彼に犯され続ければ、最悪の場合思考と感情を欠落させる羽目になるかもしれない。
そんな中、砂嵐の空間の中で、シルエットのように彼の姿を垣間見た。
想いが溢れ出てくる。それが大きな風となり、ノイズを少しずつ少しずつ吹き飛ばしていく。
「…た…すけて……」
砂嵐の中で必死に彼の姿を追う。言葉を紡ぐ。その言葉が虚しく消え行こうとも、その名を呼ばずにはいられない。
助けて。助けて。どうか、私を、助けて。
「助けて……ローラント様ぁぁぁっ!!!」
そして、扉の壊される音。ミオは混乱状態のまま、ヒースとほぼ同時に開け放された扉を見つめる。
呆気に取られたヒースが遥か後方へ殴り飛ばされた。そこまでの体感速度はほんの刹那。
「ミオ!!」
ずっと聞きたかった彼の声がミオの名前を呼ぶ。彼の腕が体を包み、全身を温めてくれる。
「近衛兵! そこの下種を直ちに捕らえ、地下牢獄へ連行せよ!」
彼の合図を皮切りに、兵士達が部屋へなだれ込んでくる。床に蹲っていたヒースはあっという間に近衛兵に取り押さえられ、複数の兵士に囲まれたまま連行されていった。
電光石火の如き逮捕劇だった。部屋に残されたのは、衣服を乱したミオソティスと、彼女を抱え込んだ彼のみ。
彼の温もりがミオの乱れた心を落ち着かせる。心が静まっていくのと同時に、つい先ほどの状況が客観的に雪崩れ込んでくる。
彼以外の男を部屋に入れてしまった。ヒースの激情に心を揺さぶられてしまった。そして、彼以外の男と関係を持ちそうになった。
こうなってしまったのは自分のせいだ。自分の油断がこんな事態を招いてしまったのだ。こんなはしたない姿を彼に見られてしまったら……
「あ……ああ……」
居場所を失う恐怖。彼に捨てられる恐怖。現在のミオにとっての、最大の恐怖二つが一度に押し寄せてくる。
全身から血の気が引いていく。歯がかちかちと鳴り、身体ががたがたと震えだした。
「ミオ…どうした?」
異変に気付いた彼が、顔を覗き込んでくる。
「いやぁぁぁっっ!!!」
無我夢中で彼の胸を突き飛ばし、腕から逃れる。自分にはこの温もりに甘んじる資格は無いのだ。
…でも。ミオは全身を震わせながら彼に向かって何度も頭を下げる。
「ごめんなさいごめんなさい、ごめんなさい…! はしたない女でごめんなさい! 私は人形なんです、空の姫なんです、私には何も無いんです。ごめんなさい!
でもどうか捨てないでください私をここから追い出さないでください!! 懐妊できるよう努力しますから、お望みの事は何でもしますから。だから、だから…
私を追い出さないでください、私をお傍に置いてください、お願いします、お願いします!!」
押さえ込み続けてきた感情がとめどなく溢れてくる。19年間ずっと、居場所を失う恐怖と、捨てられる恐怖と戦ってきた。その苦しみを吐き出せる場所など無かった。
醜い。実に醜い。虚しい執着じゃ。きっと母はそういって嘲笑うだろう。それでも、もう止められなかった。
だが、今自分の目の前にいるのは、母ではない。
「落ち着け。」
温かく大きな手のひらがミオの両頬をつかんでこちらを向かせる。窓辺には月明かりが差し込んでいた。
彼の両目が、至近距離でじっとこちらを見つめている。覚えのある優しい微笑を湛えたまま。
前髪を掻き揚げられ、露わになった額についばむように彼の唇が触れる。
「すまなかった。俺がちゃんと傍にいてやればこんな事にはならなかったのに…。怖かっただろう?」
引き寄せられ、胸元に押し付けられる。彼の声が直接体に響いていく。
「もう、泣いてもいいんだ。…辛かったな。」
…こんな感触は知らない。知らないはずなのに、温かさだけではなく懐かしさで涙腺が緩む。
いつものように、上を向いて塞き止める隙はなかった。頭に回された手が蜜色の髪をやさしく撫で付ける。
固く締められていた感情の蛇口が、直に伝わってくる温もりでゆっくりと緩められていく。
枯れ果てたと思っていた一滴がミオの頬を濡らす。次から次へと溢れ出て止まらない。
―――ああ、この温もりだ。この温もりこそが…
19年間ずっと欲しかったもの。手に入らないと割り切り、諦めていたもの。それでも心のどこかで強く欲していたもの。
自分が妹達に向けるものとは違う。あの殿方が自分に囁いたまやかしでは決してない。
それを与えてくれたのは彼だった。ローラント王と、目の前にいる青年。2人で1人の彼がミオにかけがえの無いものを教えてくれた―――
人を愛する事を。人に愛される事を。
誰にも愛される事のなかった少女。愛する事しか知らない、けれども愛を認めることの出来なかった心優しき王女ミオソティス。
彼女はようやく、声を上げて泣いた。19年もの時を経てようやく愛を手にした少女の、心からの福音だった。
以上
残念ながらまだまだ続くんだ…
うおー待ってた!続き来てたーー!!
しかもまたいい所で更に続きとはーー!!!
ミオちゃんかわいそ可愛いのは勿論だけどローラントこそ幸せになって欲しい乙です
GJ!
ローラントかっけえww
でもヒースがちょっと可哀想だな…
誰に愛を囁けば必ず応えるって言われたんだあああ(´д`)
ミオちゃんとローラントが幸せになることを祈って、次回に期待します
うおう続き投下ありがとうございます
>「助けて……ローラント様ぁぁぁっ!!!」
こう言ってなかったらローラント誤解したのだろうと思うと胸熱w
ヒースも「愛を囁けば必ず応える」なんて言うから
騙す気満々なのかと思ってしまったけど本当に好きみたいだったし
愛故スレ住人としてはカワイソス(´・ω・)テラカワイソス
GJ!
これ小太りの老人が全部仕組んでるのか
雨降って地固まる結果となってよかった
これからの展開が胸熱すぎる…楽しみ
ミオ様テラカワユス(*´∀`)
更新待ってたよGJ!!!!!!
ローラント様かっこいいなww
続きもゆっくり待ってる!
湊たんに続いてミオたんも幸せになりそうでよかった
鷹とかローラントとか、S男子が優秀で無意識ラブでM女に執着しまくりパターン好きだ
似てるけど無意識じゃないパターンで凄い好きだったのが
ずっと前のスレで見た「年上未亡人と若者」。
あの続編てあったのかなあ。。。
すっごい読みたかった。若者目線のやつとか。
まて、鷹はともかくローラントは無意識ラブじゃないだろw
年上未亡人と若者良かったよね、自分も続編読みたかった・・・
ミオたんとローラントたんはよ
他の新作もはよ
続き投下します。今回はエロ無し
>>844待たせてごめん。ペース上げてなるべく早く投下できるようにする
扉を開け放った瞬間、飛び込んできた光景に絶句した。
両手を拘束され、足を開かされ泣き叫ぶミオと、その股に顔を埋める庭師の少年。
そこから状況を推測するのは容易い事で、理解が追いついた瞬間、渾身の力を込めて男を殴り飛ばした。
この男を殺したい。今すぐに心臓を抉り取ってやりたい。いや、深い絶望を味わわせた上でじわじわと死に追い遣ってやろうか。
止め処ない殺人衝動に駆られたがそんな事よりもミオの精神状態が気がかりでならなかった。
腕の中の彼女は恐怖に震え、絶望していた。蹂躙されかけた恐怖とは全く別物の、途方も無く大きな恐怖に。
それは…孤独だ。
いつ捨てられるかわからない。いつ居場所を失うかわからない。そんな恐怖と毎日格闘してきたミオ。
その漠然とした不安は、身分の低い男を部屋に入れ、蹂躙されかけたという事実によって確定したものとなった。
契りを交わした者以外との関係を持てば双方に重い処罰が待っている。
そこに身分の差が加わった場合、どちらに非があろうとも刑が重くなるのは身分の低い側だ。
事実、先代国王の弟…ローラントにとっての叔父は、あろうことか兄の妻、即ち先代国王夫人と肉体関係を持ったため、辺境の地へ一家総出で追放されたのだ。
男を部屋に入れた事、合意がなかったとはいえローラント以外の男と肉体関係を持ちそうになった事。
それらの事実から来る後ろめたさが、今までぼんやりとしていた不安をはっきりさせてしまったのだ。
ミオにとっての最大の恐怖…それは、己の居場所を失うことなのだから。
そんな彼女に何をしてやればいい? どうしたら彼女をこの恐怖から救ってやれる?
内なる自分がそう問いかけてくる。――愚問だ。ローラントはそれをあっさりと一蹴した。
…してやるなんておこがましい事は言えない。自分も彼女を傷つけた一人なのだから。
だが、伝えるのは今しかないと思った。彼女を落ち着かせるために、彼女に自分の心の内を知ってもらうために。
ずっと心の奥底にしまっていた物語を、今紐解く時が来たのだ。
…
……
………
ローラントになって1年が過ぎた頃の初夏の事。その日は西の小国が四の姫、カルミアの生誕祭だった。
次期国王として強引に参加させられ、大嫌いな円舞曲を何度も踊らされ疲弊した彼は、逃げるように会場を後にした。
その頃の彼にはまだ、奔放な少年だった頃の心根が残っていた。
見知らぬ他国の城はまだ少年の心を失いきれていなかった彼の好奇心を大いに刺激する。
わずかな灯りを頼りに真っ暗な庭を駆け抜け、垣根を潜り、たどり着いたのは随分とわびしい石塔の前。
薄明かりの漏れる、窓と思しき穴を好奇心に駆られて覗き込んだその瞬間、彼の目は一瞬にしてその一点に吸い込まれた。
中は恐ろしいほど質素だった。古めかしいベッドと申し訳程度の燭台、簡素な作りの本棚だけが無造作に置かれた空間。
そんな空間の中に、同じように質素な召し物に身を包んだ少女が佇んでいたのだ。
濃い闇と蝋燭の薄明かりが少女をやけに奇麗に照らし出し、その不思議な空気に思わず息を呑む。
はじめ彼は、彼女を人形だと錯覚した。
床に座り込み、目を伏せ、一定の間隔でページを捲る所作が、いつか目にしたからくり人形と同様だったからだ。
だが、彼女が瞬きをしたこと、そして人形とは思えないような切なげな表情がその錯覚を打ち消した。
…今彼女に声をかけたらどうなるだろう。彼女は一体どんな顔をするのだろう。好奇心は留まる事を知らず。
「おい、お前」
ついに声をかけてしまった。ここから、一つの物語が始まりを告げたのだ。
「どなた…ですか?」
少女は肩を震わせる。こちらを見る目はやけに琺瑯質で、光を宿していなかった。
そこから読み取れるのは、彼女が受けてきたであろう耐え難い苦行の数々。
それは、自由を否定され続けた彼にこそ理解が及んだのかもしれない。彼は全く知りもしない彼女に深い同情心を覚えた。
「人に名を尋ねる前に、自分から名乗るのが礼儀ではないのか?」
「それは……失礼しました。ですがそれは出来ません。」
「何故だ?」
「貴方様は高貴なるご身分の方だとお見受けしました。です、私は空の姫。私は貴方様に名乗る資格はないのです。」
空の姫君、という単語が妙に引っかかったが、それは少年の純な好奇心の前にあえなく流されていってしまう。
今の彼には彼女に対する興味しかなかった。名を名乗らぬ、人形のような琺瑯質の目をした娘。実に物語的ではないか。
「…お前が空の姫とやらだろうが俺には関係ない。そんなことよりも、あのくだらないパーティーに嫌気が差してたんだ。
あんな場所で他人のご機嫌取りを続けろなんて、正直反吐が出る。」
彼女は目を丸くする。予想だにしなかった言葉なのだろう。
「なあ空の姫。お前さえ良ければ、俺の気分転換の相手になってくれないだろうか?」
その時初めて、琺瑯質の目に蝋燭ほどの小さな火が灯ったのを、彼は見過ごさなかった。
………
……
…
「あの後、柄にも無く植物辞典を開いて必死にその花の名前を調べた」
腕の中の彼女が目を見開いてこちらを見つめる。一瞬だけ琺瑯質な目が垣間見えた。
彼女に想像できただろうか? あの時の少女が、今あの時の少年の腕の中にいる事を。
「その花の花言葉は『私を忘れないで』だそうだ。だから、忘れなかった。ひと時もあの少女を忘れた事はなかった。
俺が王族思想に染まりかけ、感情を失いつつあった時も。あの少女の事だけは忘れなかった。…忘れたくなかったんだ。」
あの花はもう枯れてしまったけれど、その直後からずっと欲して止まなかった花はまだ枯れていない。
「もうわかったか? …その花の名前は『ワスレナグサ』。そして、またの名を―――」
「ミオソティス……」
か細い声はわずかに震えていた。驚愕と感嘆の入り混じった吐息を感じる。
「なんだ、今の今まで忘れてたのか。」
「だ、だって…! 招待客の名簿に、教えられた名前はどこにも無かったから……。
だからあれは夢だったんだ、って思ったんです。私の寂しさが見せた幻だと……」
「だが、夢じゃなかった。幻でもなかった。」
抱きしめた腕に力を込める。それに応えるように、彼女もまた彼の首に手を回してきた。
「私のことを忘れないでいてくれて、あの頃からずっと想っててくれてありがとう…アスター様。」
やっと名前を呼んでもらえた。“ローラント”でも“陛下”でもなく、本当の自分の名前を。
母が愛した花を今度は彼女が愛する。そして、誰にも愛されなかった花を、彼が心から愛する。
偽りの姿―ローラント―ではなく、本当の姿―アスター―として。
五日後の昼下がりの執務室にて。ローラント…もといアスターはとある紙面を睨みつけていた。
「それを見ての通り、あいつの履歴はぜーんぶでっち上げだったよ。
その住所にある場所はただの農地、奴が卒業した学校にヒース=スプリングスなんて生徒はいなかったそうだ。」
「そうか…ご苦労だったな。」
ミオを陵辱しようとした憎き男の顔写真の載った紙などこれ以上見たくもない。力いっぱい握りつぶして、床に叩きつける。
窓際で煙草を燻らせながらその様子を見ていたシュロがひゅうと口笛を鳴らした。
「こんな単純なでっち上げ、選民意識の根付いた城の輩が見逃すはずはない。…やはり内部の人間が絡んでるのか。」
「ま、それ以外考えられないわな。」
あの男がミオを犯そうとしたのは、単に恋慕の情を拗らせたからではないと確信している。
あの男は牢にぶち込まれる前にこう呟いたらしい。「話が違うじゃないか。こんなにあの方を愛しているのに」と。
だが、言葉を発したのはそれきりで、現在は与えられた食事にすら口を開こうとしないという。
一体誰があの男をこの城に迎え入れたのか。現時点では暫定的な証拠は何もない。だが、アスターにはおおよその見当が付いていた。
「フローリスト……あいつの仕業か?」
あの男には疑われるだけの理由がある。ミオを正妻に招き入れる事に最後まで反対していたのがこの男だ。
全ては自分の娘であるサイネリアを王族に入れるため。王族の親類という立場を欲するが故。実にくだらない権力欲だ。
爪が食い込みそうなほどに拳を握るアスターの姿を察し、シュロは煙草の火を消した。
「確かにあいつにゃそうするだけの理由がある。お前がミオ姫一筋なのを見て、強攻策に出たとしてもおかしくはない。
だけどなアスター、動機だけであのオッサンを追及することはできねーぜ? 証拠がねーんだよ、証拠が」
「それを探し出すのがお前の仕事だろうが」
「あのずる賢いオッサンが探し出せるような証拠を残してるはずねーだろ。だったら残されてる証拠はただ一つ。」
「…ヒース=スプリングスの自供のみ」
解ってるじゃねーか、と言いたげに口の端を持ち上げる。そんなことはとっくに解ってた。だからこそ、苛立つ。
ミオの心を抉り、ずたずたに切り裂き、それなのに未だにミオを愛しているなどとほざいている。
それを思うと殺人衝動が抑えられなくなる。あの男を拷問にかけ、全てを自供させた後にじわじわといたぶり殺してやりたい。
ローラント王が冷血非道と称されているのは、罪を罪とする正義感の強さが故だ。その為に拷問も終身刑に処する事も決して躊躇しない。
あの男は、これまで人生で最も憎悪を抱かせた男。その気になればどうとでもできるのだ。
「どうすんだ? あいつこのまま持っても3日が限度だぞ。今のうちに拷問にかけ……」
「止めろ……!!」
だが、そんな事をしたらきっとミオは傷つく。信頼を裏切られたとはいえ、実の弟のように思っていた男を殺されるのは、彼女にとっては苦痛のはずだ。
さすがのシュロもアスターの意外すぎる発言に驚いたらしい。鳶色の目を飛び出しそうなほどに見開いて、唖然とこちらを見ているではないか。
大きなため息が漏れる。アスターの想いがローラントの枷となるとは。全くの想定外だった。
「アスター様。今日もお疲れ様でした。」
私室へ戻るとナイトドレスを纏ったミオが一日の疲れを労ってくれる。現在この部屋はアスターの私室であり、同時にミオの部屋でもある。
夜、ミオに様々な話を語り、彼女と共に眠りに付く。それはミオにとっては出会いの日の延長。アスターにとっては幼き日の日課の再開だった。
あの日の夜、ミオの部屋の扉を派手に壊し過ぎてしまったらしく、修復には結構な日数を要するようだった。それならこれ幸いにと共用の部屋とすることに決めたのだ。
反対をする者はいなかった。ミオを娶る事に反対していた者達すらも彼女の優しさに触れて考えを改めたらしく、今では王に相応しいお方だと口を揃えて言い出す始末。
……ただ1人、フローリスト卿を除いては。
「どうしました? なんだかお元気がないようですが……」
知らずの内に顔を顰めていたらしく、ミオが心配そうに顔を覗き込んでくる。なんでもない、と微笑んでは見せたが、やはり胸のつっかえを取る事が出来ずにいた。
被害者の無念を第一に思い、どんなに非道な刑も躊躇無く科してきた。因果応報が適切だと考えていたからだ。
だが今回は。ミオの無念を思い、あの男に因果応報を適用しようとすると、被害者であるミオが傷つく結果となってしまう。
もうこれ以上彼女を傷つけたくないと思うアスターとしての思い。例外を作ってはならないというローラントの考え。この2つがせめぎ合う。
「…すまないミオ。今日は先に休んでもいいか?」
毎晩の安らぎを拒否してしまうのは忍びない。だが、今はすぐに休んだほうが得策だと思った。
ミオは自分の様子を察し、了承してくれるだろう。そう思い、彼女の返事を待たずにベッドへ向かおうとすると。
意外な事が起こった。
「待って……!」
アスターの寝巻きの裾をしっかりとつかんで離さないのだ。
「今日は、私の話を聞いてくださいませんか?」
ミオは感情を表に出す事はあまりない。自己主張も全くしない。だから驚いた。
彼女の表情はいつもと変わらず控えめなものだったが、その目には怯えながらもはっきりとした決意が宿っていたのだ。
正直すぐにでも休んでしまいたい。だが、初めて自分の前で感情を出してきた彼女を突き放す事など出来なかった。
「あ、ごめんなさい…! お疲れでしたら、無理には」
「いや、いい。たまにはお前の話も聞いてみたいからな。」
いつものように彼女を隣に座らせ、肩を引き寄せる。一瞬硬直を見せるも、次に聞こえるのは安堵したような吐息。
そうして今度はミオが、自らの想いを紡ぎだす。
以上。
次はエロ入れる
もはやエロがあってもなくてもよくなってきたよ自分的に
素直にこの話が好きだ
作者さんありがとう、続き楽しみにしてる
自分もエロなしでいいんじゃないかと思ってきた
とりあえず2人が末長く幸せになればなんでもいいよ…!
ここエロパロ板ですから・・・w
エロあり連載のエロなしパートは普通に許容されるってことで
っていうかここ愛するがゆえに致すスレだからなという
スレの存在意義全否定!?っていう冗談だったw
なぜ愛してるか、どれぐらい愛してるか、って語るくだりは
エロを美味しくいただくための最上のオードブルですけんね。
それだけでいいって言うからだろw
その肝心なメインイラネって言ってるようなもんだ
ミオたんローラントたんのエロはよ
ミオたんペロペロペロペロペロペロ!!!!かわいい!!ミオたんかわいいよ!!!
キモイ変態が増えたな
この前からニコかどっかのノリで急かすバカは一生ロムってろよ
コッペリアシリーズ面白いのはわかるけどな
ここに来てタイトル(琺瑯質の目の乙女=コッペリア)が出てくるとは思わなかった
でもまだ花束の意味が出てないな…ミオたんの名前の由来が花ってことと何か関係があるのか?
続き楽しみにしてます
ローラントにまでたんを付けるとは怖いもの知らずめ…
専スレ状態になるほど投下されてるし一週間も経ってないのに
はよって急かしてるのはアホかって思うけどね
>>863 ヒロインの名前が勿忘草で花言葉っていうのはわかってたけど
ファンタジーだし同じ意味があるとは思わなかった
コッペリア普通にバレエのコッペリアの話
(人形の女に恋をする)にかけてるだけかと思ってたw
GJ!!!!!
なんか次の展開が気になって目が離せないww
期待しています。
前回はエロ無しで申し訳ない
続き投下します。和姦注意
貴方の話を聞いてから色々な事を思いました。
その時まず思い出すのが、貴方と初めて…いえ、再びお会いした時の不思議な感覚のことです。
それは、母が私に向けるそれととてもよく似ていました。だけど、どこかが確実に違っていて……
私はただ畏怖する事しかできませんでした。母の眼下で震えていたあの頃と同じように。
その違いに気付いたのは、その……貴方に、初めて抱かれた時です。
あの時、貴方は私に微笑んでくれていましたね。あの時だけじゃない。貴方はいつもそうでした。
頬を撫で、髪を梳きながら…あなたはいつも微笑んでくれました。まるで不安を拭い去るように。
私にはその微笑みの理由が解りませんでした。はじめは、理解しようとも思いませんでした。
だって私は……自身の役割を世継ぎを産むための器なのだと信じて疑わなかったのですから。
でなければ、何もない空っぽの嫁き遅れなんて娶ろうとは思わないでしょう?
私が唯一誇れるものは、血統のみ。陛下が求めておられるのは私に流れる古の血統と、その血を受け継いだ世継ぎ。
陛下は私自身を求めておいでではない――自他共にそう割り切ってこの国へとやってまいりました。
なのに、貴方は私の頑なな心を溶かしていった……。そして私は、貴方の事を知りたいと思うようになりました。
だけど貴方の事を知りたいと願えば願うほど、心が締め付けられて苦しくなるんです。
心苦しいまま貴方に抱かれ、何故心苦しくなるのか解らないまま、貴方は私から遠ざかって行った…。
仕方ない事だ、と割り切ろうとしました。私には何もないのだから、いずれ飽きられる。それは必然なのだと。
でも不安は募るばかりだった。可笑しいですよね。見放される事には慣れてるはずなのに…割り切れるはずなのに、それが出来ない。
独りぼっちになる事も怖い。だけどそれ以上に、貴方に会えないことが哀しくて、辛かった……。
様々な感情がせめぎ合う中、唯一はっきりとしていたのは、貴方に会いたいと願う気持ちだけでした。
玉座で対面した時の不思議な感覚も、2人の貴方の事も、心苦しさや弱さの理由も。
根本にあるものは全て同じもののはずなのに。理解できなかった。…理解しようとしなかったのかもしれません。
私の心の扉の鍵を開けることが出来るのは、もはや1人しかいませんでした。
私には今までずっと想いを抱いていた方がいます。あの時、私に楽しいお話を聞かせてくれたあの彼―――
それは虚しい妄想だ、と嘲笑われました。私自身も妄想だと思い込んでいた。それでもどこかで彼を慕っていました。
差し向けられた偽の偶像に騙され、心を開きかけてしまうほどに私は彼を想っていました。
きっと…いえ、間違いなく、私は彼を愛してしまっていたんです。それは今も変わらない。
そう言って彼女はアスターの両頬を包み込み、微笑む。
それは幼い頃、アスターが垣間見たものと同じ―――心から美しいと思える微笑みだった。
「貴方は、一歩踏み出して私の先を歩いてくれた。今もまだ私の前を歩いて、私の手を引いてくれる。
それに甘えてちゃいけませんよね。私も貴方に追いつきたい。貴方の隣を歩きたい。
―――愛しています、アスター様。私に、貴方の隣を歩かせてください。これからも、ずっと。」
…その言葉を聞いてしまっては、もう抑えられない。愛しさが次から次へと溢れ出てくる。
半ば衝動的に彼女の後頭部に手を回し、そのまま唇を押し付けた。
頬を包んでいた手が首の後ろへ回る。触れるだけの長い長い口付けは、徐々に深いものに変わっていく。
彼女はそれを受け入れた。遠慮がちに蠢く彼の舌に懸命に自身の舌を絡めてくる。
口内で孕んだ熱い吐息が僅かな隙間から漏れ出し、2人の身体を火照らせていく。どちらからと無く、ベッドの上に倒れこんだ。
名残惜しげに唇を離す。瞳に映った彼女の顔は紅潮し、瞳は物欲しげに潤んでいた。
「なんて顔をしてるんだ、お前は……」
あまりにも艶っぽい彼女の表情を、この時ばかりは恨めしく思う。
今日は彼女と言葉を交わす気すら起きなかったのに。今は言葉だけじゃとても足りそうにない。
「嫌ならそう言ってくれ。今ならまだ間に合うから……」
彼女があの男に蹂躙されてからまだ5日しか経っていないのだ。ここで止めなければ、彼女の傷を広げる事になってしまう。
それでも彼女を求めて止まない。…そもそも、彼女を抱きしめて寝るという行為が、アスターにとってどれだけ苦痛だった事か。
それだけでも抑えるのに必死だったというのに、今回は恨めしいオプションまで付いてきている。
一刻も早く彼女の拒否の言葉を聞きたかったのに…現実は非情だ。彼女はその物欲しそうな瞳で微笑み、首を横に振った。
そして、自ら体を擦り寄せ、ゆっくりと口付けてくる。小さな舌がアスターの口内を必死に蠢く。
これじゃ、いつだったかと逆じゃないか。心の中で苦笑した。そして同時に、それまで何とか保てていた理性は音を立てて崩れ去る。
舌を絡ませながら自然と衣服に手をかけ、お互いに一枚一枚、もどかしげに取り去る。
ようやく唇が離れた頃には、既にお互い生まれたままの姿になっていた。
―――2人とも、狂おしいほどに互いを欲していた。
「顔……赤い、ですよ?」
「それはお前も同じだろう」
伸ばされた手に指を絡める。ミオの裸体は何度も見てきたはずなのに、なぜだか気恥ずかしくて目を反らす。
それを悟ったのか、眼下の彼女はくすくすと笑った。
「本当にいいのか? 嫌なら嫌とはっきり…」
「…続きをしてくれないほうが、もっと、嫌、です……」
ミオの口からそんな言葉が出るとは思わず、目を丸くして彼女を見る。今度は彼女の方が目を反らした。
「お前もなかなかやらしいんだな」
「な……っ、そ、そんなことっ……!」
顔をさらに赤く染め、恥ずかしがる姿が劣情を煽る。彼女が恐怖を抱いていないことに安堵する。
「やらしいほうが、俺は嬉しいけど?」
そして、次の瞬間には。彼女の双丘をやんわりと揉みほぐしていた。
「ひゃ……あっ!」
「相変わらず感じやすい身体だな。」
彼女の反応を楽しみながら柔らかさを堪能する。掌に収まりきらないほど豊満な胸。至高の柔らかさだった。
…揉むだけでは飽き足らず、今度はたわわな果実を舌先で味わう。絹のような肌に舌先を滑らせ、白い丸みに赤い跡を散らしていく。
そうやって双丘を磨くように舐め上げ、徐々にその頂へと登っていく。ぴんと主張する桃色の頂へ。
「ぁ……やぁぁ……」
頂に近づくにつれ、彼女の嬌声も艶かしいものに変わる。まるで、懇願するように。
それに応え、まずは乳輪をなぞる。それから彼女が求めて止まなかった愛撫――先端を摘み、音を立てて吸い上げる。
「あっ、やぁんっ………!」
体がびくんと跳ね、白い肌が粟立つ。シーツと握り締めて快感に悶える様はなんとも表現しがたいほど艶かしい。
ミオが欲しい。身体だけではなく、心ごと自分のものにしたい。狂想的な欲求が再び募る。
一方通行だったこの欲求に、今ならミオも応えてくれる。そう確信できるのも、きっと―――
求めて止まないその箇所に手を這わせる。指先がそこに触れて、驚いた。
「ミオ、もうこんなに濡らしたのか」
「やだっ……! い、わない、で……!」
触れなくても解るほどに彼女の蜜壷は潤い、受け入れる準備は万全だった。
恥ずかしさのあまり両手で顔を覆う彼女の仕草があまりにも可愛らしく、不意にときめきを覚える。
「だが、まだ駄目だ。…もっと乱れろ」
存分に潤った花芯を広げ、指を挿入する。彼女の内側の性感帯を指で刺激していく。
右手は依然として胸への愛撫を続ける。双丘を交互に舐め上げ、先端を摘み、転がし、激しく揉みしだく。
一層強く、そして甘く。甲高い嬌声が上がる。その声から、彼女が着実に絶頂に近づいているのを察する。
中は滾る程に熱く指を締め付け、蜜壷は潤いを増し、アスターの左手までをも愛液で満たしていく。
「あぅ、あぁんっ! やぁ…、あぁぁっ!」
「そう…もっと、もっと乱れていいんだ……」
容赦ない愛撫に身を捩りながらも、快楽を逃すまいとアスターの頭を掻き抱く。
敏感な身体はびくびくと大きく震え、激しい愛撫に対しても大げさなほどに反応を示す。
「あ、すたー、さまっ…! ぁ、あぁ……わ、私、もう………!」
こんなに快楽を求めるミオを見るのは初めてだ。
…いや、快楽ではない。ミオが求めているのは自分だ。彼女の濡れた瞳がそれを物語っていた。
ならば、まず彼女を頂上まで昇らせてやらねば。指を増やし、中を乱暴に掻き回す。淫靡な水音が響く。
「やああぁああぁ!! あ、ああああぁあぁぁぁぁあああっっ!!」
アスターの頭を抱いたまま、大きく背を弓なりにしならせる。彼女のたわわな双丘の谷間に顔が押し付けられ、呼吸が出来なくなる。
ミオはしばらく絶頂の余韻に浸っていた。幸福を伴った快楽など、自分には無縁のものだと思っていた。
彼が与える止め処ない快楽は容赦なくミオの体力を削り、肩で息を整えないといけないほどに消耗してしまった。
息苦しさを伴うふわふわと浮いたような感覚。不思議とどこか心地がいい。
「んぐ……っ」
すぐ傍でうめき声が聞こえ、胸の谷間をごそりと何かが動く。胸元に覗く真っ黒な髪。
それがアスターの頭だと解った途端ようやく状況を悟った。慌てて彼の頭を解放する。
「げほっげほっ……! まったく……、俺を、窒息、死、させる、気か…!」
「ご、ごめんなさい! 私、ぼーっとしちゃって……!」
ミオと同様に、だがミオとは違った理由で息を荒げるアスターが、恨めしげにミオを見てくる。
慌てて頭を下げた。まさか自分の胸で彼を窒息させるとは……笑い話にもなりやしない。
申し訳なさと、穴があったら入りたくなるくらいに乱れた自分の痴態とでうつ伏せになる。
何度か声をかけられたがそれでも顔が上げられず。しばらくシーツに顔を埋めていると、すぐ耳元で彼の声を感じた。
「お前は激しいのがお好みみたいだな」
振り向く間もなく、身体がくるりと回転し、足を広げさせられる。蕩けきった蜜壷にいきり立った物が宛がわれる。
「…今度は俺を同じくらい気持ちよくさせてくれよ?」
そこから感じる想像以上の質量と熱に、思わず仰け反った。
「ちょ、ちょっと待っ……」
「待ったなし。」
アスターが笑みを浮かべる。それはミオを不思議と安堵させる表情。アスターのこの顔が、堪らなく愛しく感じる。
ローラント王でいる時は絶対に見せない少年のような顔。壊れそうなほどに、心が高鳴った。この状況でその笑みはずるい。
その隙を付いて、彼の肉棒は蜜壷を押し広げ、ゆっくりと中へ埋もれていく。
先ほどの激しい愛撫すらまだ序の口と思えるほどの快楽がミオになだれ込んできた。
「やあぁ、あぁっぁ、あ、あぁぁっ! あぁああぁぁっ!」
自分の想いがはっきりとした今、彼から与えられる快楽は至高以外の何物でもない。
心の中の大きな空洞を埋めてくれるもの。醜い執着でも、虚しい妄想でもない。確かな愛がそこにあった。
腰はぴったりと密着させられ、追い詰めるように突き上げてくる。彼が奥を突くたびに、ような気がした。
彼以外、もう何も見えない。彼の与える熱以外には、もう何も感じない。心の奥底から湧き上がる幸福感がミオを満たしていく。
「アスターさまっ、は、げしっ…! ひあぁっ、あぁぁぁ!」
「激しく、してんだ、よっ…!」
ぼんやりとした視界の中で見えた彼の顔は苦しげだった。苦痛ではない。止め処ない快楽に耐える顔。
冷血と称されるほど冷静沈着な彼のこんな顔を見れるのはきっと自分だけの特権だ。
そう思うと、腰が自然と動いてしまう。蜜壷が彼のものを容赦なく締め付ける。
我ながら本当にはしたないと思う。だけど、それでもいい、と思った。このまま彼だけの物になりたい。彼が欲しい。
それは孤独から開放された少女の初めての願い。いつもなら願いを抱いた傍で願いを諦めてきたのに。今回だけは、叶うと確信できる。
熱い。熱い。自身の熱も、相手の熱も、焦がれそうなほどに。お互いがお互いを昂らせ、熱を発し、熱を与える。
激しく求め合い、止め処ない快楽を享受し、理性などとっくに吹き飛んで。
「ア、スター…さ、まっ! あ、あぁぁあっ、もぉ、だ、めぇっっ!!」
「ミオ、出すぞ……!」
ミオの体が再びしなる。それと同時に中に滾った白濁が吐き出される。全部出し切っても、すぐさま抜き取る事はできず。
しばらくお互いを抱きしめあい、孕んだ熱に浮かされながら気だるい余韻に浸った。
「お前は本当に最高の女だよ。」
汗に濡れたミオの髪を優しく梳きながら囁く。彼女は恥じらいながらも嬉しそうに、胸板に擦り寄る。
……身体は手に入れても、心まで手に入れることは出来ない。そう思い込み、独りよがりな行為を繰り返していた時のことを思い出した。
それでも自分はミオの心を欲していた。その葛藤に気付いた時、後悔と罪悪感が湧き上がり、自然とミオから遠ざかった。
ミオにとっての恐怖とは孤独。それを知っていながら背を向けたこと、それによってミオはどれだけの不安を抱え込んだだろう。
結果、自身の後ろめたさがミオに大きな傷を付ける事となってしまった。アスターはおそらく一生後悔するだろう。
――俺はどれだけミオを傷つけたかわからない。なのにミオは……
処女を奪った事も、毎日愛玩人形の如く抱き続けた事も、空き部屋で無理矢理犯した事も、罪悪感が故に日々避けていた事も。
ローラントが、アスターが犯した行為を、ミオは全て受け入れ、許した。そしてアスターが抱えた葛藤が終わりを遂げた。
「お前のおかげで、ようやく答えが出た。」
ここ最近悩んでいた事。その答えをミオのおかげで導き出す事ができた。まどろみが生まれ、目を閉じようとした時、
「アスター様。」
ふいに名前を呼ばれ、彼女を見つめる。服の裾を掴んでいた時と同様に、強い決意が瞳に宿っていた。
「貴方が悩んでいた事、知っていました。それが私のためを思っての事だということも。
…1人で抱え込まないで。私も、貴方の悩みに寄り添わせてください。」
翌日の夜。静まり返った独房に少年の呟きが聞こえる。それは聞き取れないほどにか細く、壊れたオルゴールのように同じ音を繰り返す。
そんな薄気味悪い空間に灯りが一つ。彼のいる独房の前へとゆっくり近づいてきた。灯りが彼の顔を灯す。
すっかりやせこけた顔が光へ吸い寄せられる。その向こうに浮かぶもの。少年の瞳が、大きく見開かれた。
「ああ、ミオソティス様……!」
少年の目には彼女しか映っていない。ただ彼女だけを瞳に収め、爛々と輝いていた。
「ミオソティス様、ついに決心してくださったんですね! 僕を受け入れて下さるのですね!!
ああ、なんて幸せなんだ僕は……! さあ、早くここから逃げ果せましょう。こんなどす黒い場所から!」
鉄柵に噛り付くようにへばり付き、目を血走らせ、少年は言葉を浴びせ続ける。少年の目には彼女以外何も映らない。だから何も気付かない。
彼女の傍らに少年が最も嫌い、憎んだ男が傍にいること。少年の愛した彼女は、そんな憎い男の手をずっと握り締めている事も。
ミオソティスは、変わり果てた少年の姿に深い悲しみを覚えていた。童顔で子犬のようなあのヒースは、もうそこにはいない。
いるのは自分に盲目的に、かつ狂想的な愛を突き刺してくる男だけ。そして、腕に咎の証を刻まれた罪人だ。
彼をそうさせてしまったのは自分だと思うと、やるせない気持ちになる。
だが、彼は言った。“冷血になれ”と。宣告者が持ってはいけないもの、それは情。己の思考を最も狂わせるものなのだとも。
大きく呼吸をする。左手に伝わる温もりを握り締める。この温もりだけを感じながら、彼女は少年に宣告した。
「罪人、ヒース=スプリングス。貴方に宣告します。……私は貴方を“許す”。今すぐこの城から出て行きなさい。」
少年の言葉の霰が止む。何を言われたかわからないといった体の、唖然とした表情でひたすらミオを凝視する。
そのうち少年は表情を強張らせ、苦笑する。鉄柵を握り締めた手が小刻みに震え始めた。
「な、何を…言って、るんで、すか? 貴方、は、僕、を……」
「聞こえませんでしたか? この国の王妃である私に対する性的暴行……本来ならば死罪同然です。
ですが、私は貴方を許します。憲兵が貴方を国境付近まで送り届けますから、それから先は貴方のお好きになさい。」
「そん、な…ど、うし、て…?! 僕、は、こん、なにも、貴方、を愛し、てい、る、のに!」
「私は愛していない。貴方を愛する事など一生あり得ない。」
ヒースは愕然と膝をつく。愛すれば必ず応える、そう言われたのに。心優しい彼女は、決して拒否しないとそう聞かされていたのに。
今ヒースの前にいる彼女は、ヒースの愛した彼女ではなかった。冷徹な目で自分を見据え、自分にとって最も非情な言葉を宣告する、氷のような女。
彼の目には彼女しか映っていなかった。だから、気付く事は出来なかった。氷のような彼女の左手が、震えながら愛する人の温もりを握り締めている事を。
「ならば、もういっそ……殺してください。貴女に想いが伝わらないのであれば…受け入れてくれないのならば、もう僕に生きる意味なんてない……!」
「いいえ、殺しません。自ら命を絶つことも許しません。生きる意味は、これから見つけなさい。
……もう終わりにしましょう、ヒース。もうこれ以上私に幻想を抱かないで。私は、貴方が思うような人間ではないのです。」
左手の力が一層増す。
「貴方は私に愛していると言ってくれた。その嘘偽りない言葉が、私は嬉しかった。こんな私でも愛されるのだ、と実感できた。
…だけど。私は貴方を愛する事はできない。私が欲しい愛は貴方からのものじゃない。…ここにいる、彼の愛です。」
やっとヒースは気付けた。ミオの後ろに、寄り添うように憎き男の姿があること。その男の手と、焦がれて止まなかった彼女の手が固く繋がっている事に。
そうして、ようやく彼は悟ったのだ。自分の愛した女性の真の姿を。
「そうか……貴女は、この国の王妃様だったんだ……」
膝をついたまま彼女を見上げるヒースの瞳には、もはや光など存在しなかった。虚ろだが、はっきりと王妃の姿を捉えていた。
「ミオソティス様。僕は今初めて、貴女と僕の身分の差を実感する事ができました。…終わったんですね、僕は。」
憲兵2人に曳かれ、馬車へ乗り込むヒースの姿をミオはじっと見つめ、それから彼に声をかける。
「一つ、教えてください。貴方は一体何処の何者で、何故この城にやってきたのです?」
「……そんなこと、知って、どうするんです?」
馬車の奥で、虚ろな目がぼんやりと浮かぶ。そのたいそう不気味な様にも物怖じせず、努めて冷静に答えた。
「忘れない為です。」
ヒースは笑った。小馬鹿にしたように、だけども哀しそうに。
「貴女は相変わらず優しいお方だ。…ですが、貴女こそ忘れないでいただきたい。貴女のその優しさは、薬であると同時に毒でもある。
薬で癒えた者もいれば、毒に侵された者もいる。僕のように薬も毒も享受した者すらいる。それを憎んで止まない者がいることを、決して。」
馬が嘶く。定められた時刻が来たのだ。ヒースを載せた馬車がゆっくりと動き出す。
「待って……質問に答えてください! 貴方にこんな仕打ちをしたのは、一体誰なのです!?」
ヒースの唇が震える。馬の足音で、声は掻き消えてしまったが。アスターにはその唇の動きを察した。
幸いミオには理解する事ができなかったらしく、馬車が見えなくなった後に小さな声で「ごめんなさい」と謝ってきた。
「謝るな。…よく、頑張った。」
彼女の頭を引き寄せる。糸が解けたように体の力が抜け、堰を切ったようにすすり泣くミオを力強く抱きしめた。
現実はいつもミオに対して非情だ。それがこれからも続くというのならば、自分は全力でミオを守る。
ようやく解り合えたのだ。心の底から愛し合えたのだ。もう絶対に彼女を離さない。
…そう、固く心に誓ったのに。
以上。これにて第1部完
次から第2部に入ります
GJ!!!!
それと第一部お疲れ様でした!
ここまで焦らされるとエロ描写も感慨深くなってくる……これぞ純愛って感じだな
窒息しそうになったミオ様のおっぱいを触りたい
やっと思いが通じた二人の仲は引き裂かれてしまうのか!?
まだまだ今後に期待だな。
乙でした。