【俺の妹】伏見つかさエロパロ19【十三番目のねこシス】
「そ、そのまさか……。こいつは、料理だけじゃなくて、裁縫とか、掃除とかの家事全般がプロ並みなんだ
よね……」
傍らの陶山は、川原さんの脇腹を肘で小突き、小声で「余計なことを言いやがって……」と詰っている。
「まぁ、つい口が滑っちゃったけど、いずれはばれるでしょう? それに、男で裁縫やるってのは、別に恥
じゃないわよ。あんただって、内心は誇らしいんでしょ?」
「んなことあるかい……」
「まぁ、いいわ…。でね、これが高二の時の亮一の作品。文化祭でメイド喫茶やることになって、
そのメイドさんの衣装を作ったの」
そう言いながら川原さんは、自身の携帯電話を差し出した。もう、秘密も何もないということか。
その液晶画面には、紺を基調としたメイド服姿の川原さんと、同じくメイド服を着た女子二人が写ってい
た。写真の彼女らが着ていたメイド服は、ぴったり各人に合っていて、まさにジャストフィットという感じ
だった。
「すげぇ似合ってるよ。本物のメイドさん以上のメイドさんって感じだな」
「そりゃ、着てるのが、あたしとか、そこに写っている二人だからね。モデルがいいのよ」
たしかに、川原さんや、川原さんと一緒に写っている二人もものすごく可愛らしいからな。
だが、メイド服の出来が半端じゃない。何ていうか、アキバとかで見るような、露出度が高い萌的なもん
じゃなくて、実際にメイドさんが着ていそうな服を、レースとかフリルとか、細かな装飾を凝らした上で、
各人の体型に合わせて徹底的にリファインしたという感じだ。
レースとかで装飾過剰になると往々にして下品になるもんだが、全体のイメージがシックだからか、見苦
しさは全くない。むしろ、
「ノーブルっていうか、垢抜けた雰囲気がいいな……。これ、デザインも陶山なのか?」
「ま、まあな……」
「すげぇなぁ……」
俺と同い年で、こんなにも万能ってどうよ……。
そういや、一人だけ、陶山みたいに万能な奴が居たな。昨年夏に桐乃の彼氏として実家に現れた御鏡だ。
あいつの気障ったらしい癇に障る部分をきれいさっぱり取り去って、価値観その他を骨太で質実剛健な感
じにすると、陶山みたいになるんだろうか。
「しかし、あんときゃ、死ぬかと思ったぞ……。縫製はほとんど俺一人だったからなぁ。最後の三日間は半
徹夜続きだったぜ……」
「え〜? あたしも、あんたの家にミシン持ち込んで手伝ったじゃん!」
「まぁ、ミシン持参で来てはくれたけどよ……。結局、うまく縫えなかったし、そのうちに、縫いかけの服
の上に突っ伏して、ぐ〜すか寝ちまったんじゃないか。おかげで、女子十人分のメイド服を、俺は必死に
なって縫ったんだぞ」
「そ、そうだったかしらね……。全然、記憶にないけど……」
すっとぼけているような感じの川原さんを、陶山は、半眼で見詰め、ため息を吐いている。
多分、陶山の言っていることが事実なんだろう。
「で、でも、メイドになる女子の採寸は、全部やったじゃん」
「あれは、俺がお前以外の女の子の採寸しようとしたら、『バカ、変態!』とか言って、いきなりひっぱた
いたんじゃないか!」
「あったり前でしょ! あんた、他の子の身体を触ろうというとき、ものすごくいやらしい感じだったから、
放置してたら絶対に何かやらかしていたに違いないのよ」
「そんな命を粗末にするようなことはしないって……。もしやってたら、クラスの全員から袋叩きにされち
まう」
これって、痴話喧嘩ってやつなのか? 聞いちゃいけないとは思うものの、嫌でも耳に入ってくるから
困ったもんだ。
しかし、これで陶山と川原さんの大よそのパーソナリティーが把握できたな。
明るくて感じよさそうな川原さんは、意外にもずぼらであるようだし、陶山は、ちょっと強面でありなが
ら家事全般が得意という変な奴だ。その陶山は、相方の川原さんに振り回されているらしい。
いや、男と女ってのは、大概がこんなものなのかな。実家では親父が権力を振るっているようでいて、
結局はお袋の言いなりだってのが、俺を実家から追い出すか否かを決める家族会議ではっきりした。
親父は、基本的に俺を追い出すのは反対で、矯正すべきは桐乃の方だと主張したが、この件ではお袋が
異常なほど強硬で、結局は今の有様だ。