花咲くいろはでエロパロ

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215名無しさん@ピンキー
投下させてください。

属性:近親相姦、フェチズム

皐月さんと縁の話です。
216皐月の色は…… ◆h8MMUYXW/0OO :2011/09/17(土) 23:43:37.00 ID:z+AqbY7B
 僕はタフな方じゃない。
 僕は頭を使って要領よくやりたいんだーー

 暑い夏の日。旅館のプールサイドで、縁(えにし)は母に言いつけられて
コンクリートの割れ目から生えている雑草を抜いていた。

 ーー無駄な作業だよ。生えないように、目地を埋めとければいいだろ

 しっかりものなのか、ケチなのか、こんな作業を人手不足と理由をつけて
あてがう母を、縁は恨んでいた。
 憎いタンポポ、オオバコ取れぬ、地獄の底からスギナかな
 以前庭園の草取りに駆り出されたときに、まめじいがぼそぼそと呟いた
言葉だ。これらの雑草ときたら、示し合わせたかのように、今手元にいる。
根から取れないと、母からカミソリのような小言を食らう。
 口に出すのがバカらしいくらいに暑い。風通しの良いTシャツとカーゴ
パンツでも耐えられない。 
 日陰のないプールサイドで背に突き刺さる太陽。焼けたコンクリート
タイル。見た目アクアブルーで涼しげだが、水面から照り返す日光も顔を
焦がす。体にまとわりつくフェーンの熱風。
 たらたらとあごの横を落ちていく汗。炎天下の中、麦わら帽子をかぶっ
たってどうにもならない。
 日光……焼けつく地面……キラキラ……熱い風……

 −−ああ、もうだめだ……

 くらくらとその場にしゃがみ込む。視界が横に倒れていく。

 その時。

 水面から飛び出した逆光のシルエット。

 小さいころ見たアニメのマーメイド。キラキラと水滴をまとって。

“さつき、ねえちゃ……ん……”

 競泳用のワンピースの水着が似合う、スレンダーで長い手足、強い
意志の大きな目……
 縁がひそかに思慕を寄せる皐月が、彼を見た。

“綺麗だ……お姉ちゃん……”
 縁の視界は暗くなり、あたりの山からの蝉の声も遠のいていった。

217皐月の色は…… ◆h8MMUYXW/0OO :2011/09/17(土) 23:44:46.29 ID:z+AqbY7B


 ――縁が再び目を開くと、喜翠荘の縁の部屋の中。頭の下は氷枕、
腋の下に氷嚢が入れられて、倒れた格好のまま、ベッドに横たわって
いた。
 その横では、ある角度のときだけ異音をさせて扇風機が首を振ってい
た。
 かすかにこめかみのあたりが痛い。ただ、それよりも
“ああ、びしょびしょの服が気持ち悪い”
 風が当たるとき、服の湿り気がこの上ない涼をもたらしてくれるが、
その大部分が汗なので、べたつきもことさらだ。
 起き上がり、服を脱ごうとした時だった。
「……! …………!」
 遠くの方で、言い争っている声がする。よく通る勝気な声は皐月、
そしてぴしゃりと抑え込もうとするのは母。
「あんな炎天下、草むしりさせるなんてどうかしてる!」
「あのくらいの作業で、縁もきばれない子だ」
「倒れたのよ! お医者さんもあきれてたじゃない」
「あの仕事は、元はお前に言いつけたことだ。それをお前が断るから
縁がやる羽目になったんじゃないか」

“まただ……”
 縁は左を下にして、身を丸めた。手のひらで耳をふさいだ。
 喜翠荘のこと、お客のこと、従業員のこと、学校のこと、友人のこと
……四十万(しじま)家の女たちは、森羅万象で喧嘩を繰り返した。そ
の多くは皐月が吹っかけ、母のスイが終始冷静にねじ伏せる。ことごと
く勝つことのない争いに皐月はイライラし、また爆発する。
 険悪な空気のなか、どちらにも寄れずオロオロする縁は、母娘の喧嘩
を胃が痛むほど嫌っていた。
 ましてや自分が口論の的になっているのは耐え難かった。
 為すすべなく体を固くする。何せ、縁が泣いて止めても収まらないの
だから。
 涙の代わりに、胃がシクシク痛む。
“聞きたくない。聞きたくない”
 さらに強く耳を手で押さえると、いつしか、また眠りに落ちていた。
  
218皐月の色は…… ◆h8MMUYXW/0OO :2011/09/17(土) 23:45:48.29 ID:z+AqbY7B
  
 目を開けると、部屋がうす暗くなっていた。
 消耗していた体には、休息は体に良く、嫌な頭痛も消えていた。
 ベッドから降りると、縁は汗臭い服を全部脱いで、新しいものに着
替えた。
 汚れた服を持って部屋を出た。木造の洋館風の旅館だが、住居部分
は粗末で、廊下はギシギシ音がする。
 洗濯室には洗濯機が3台置かれて、そのうち新しいものは万が一の
客用のもの、1つは住み込みの仲居用のもの、一番古いものが四十万
家のものだ。いつものように2層式の洗濯層の方に汚れものを投げ込
もうとした時だった。

 タイル張りの流しの洗面器に水を張ってつけてあるもの。
 胸から上の部分が上に浮いた形で、紺色の皐月の水着がそこにあった。
 その前を通り過ぎ、洗濯物を放り込んで、また戻ってきた。
 さっきまで皐月の体を包んでいた水着。すべての体の線を、忠実な
までにさらけ出すほど、肌に密着していた。
“また胸が大きくなってた”
 1年前同じようにプールで泳ぐ皐月と今日の姿を比較した。しかし、
意識がもうろうとしていたせいか、どこかあやふやで、だから、もっと
妄想で補完されていく。
“やわらかそうだった……”
 縁は、水着に指を伸ばす。胸の部分。頂点のところを目がけて触る。
水とすべらかな水着を指の腹でたどる。
“……!”
 そのたよりない感触と勝手な想像の弾力とが妙にリンクし、縁は恥
ずかしいほど一部分を固くした。
 水着を手で沈めて、やわやわと揉む。横に揺らす。掴む。
 “お姉ちゃん、こんなにされたら、どんな顔するんだろう”
 怒った顔で拒否をする、真っ赤な顔して困る、それとも……
 縁は、つい、片手で熱くなった部分をさする。ただし、誰が入って
きてもいいように、Tシャツで隠れていることを確かめて。
 水着をひっくり返せば、腰からお尻の部分が現れる。
 男の水着とは違い、容易に女性の体の柔らかさが想像できてしまう。
スレンダーなのにやわらかそうで、丸くて、滑らかなお尻。ターンす
るときに長い脚と共に沈むお尻を思い出して、ますますいきり立つ。
 そのヒップの分を縁は無遠慮に掴んだ。
“お姉ちゃん!……” 
 脚と脚の間。そこはもう、絶対触れてはいけないのに、今、手中に
収めたも同然だった。
 掴む手で、中指だけをクロッチ部分に突っ込む。
 縁は、友人の家で見たアダルトビデオを思い出す。画面の中の女性
は、男性に股間をいじられると淫猥に身をよじった。
 仰向けの皐月が尻の方から手を差し込まれ、最も恥ずかしい部分を
いじくられる……という想像。水着の中から伸びる太もも、よじる膝、
丸まりあるいは反り返るつま先。そして熱い息づかい――
219皐月の色は…… ◆h8MMUYXW/0OO :2011/09/17(土) 23:46:44.15 ID:z+AqbY7B

 ギシギシギシ……
 廊下からの音に、縁は我に返った。濡れた手を慌ててズボンでぬぐい、
洗濯室から出ようとした。
「あ、縁。もう体調はいいの?」
 よりによって皐月。いつもがさつに接する彼女だが、さすがに穏やか
に声をかけた。髪の香りがわかるくらい近寄って、顔を覗きこんだ。
「う、うん。もうだいじょぶだから」
 ほんの数秒前まで、リアルな妄想の中で遊んでいたところを引き戻さ
れたものだから、顔を向けられない。
 幼く、歯止めの利かない屹立は、簡単には収まらない。それどころ
か皐月のシャンプーとせっけんの香りが、さらにその欲を高める。
 足早に縁はそこを立ち去って、部屋に逃げ込んだ。ベッドに飛び込ん
で、素早くズボンとパンツを脱いだ。
“お姉ちゃん、お姉ちゃん、お姉ちゃん!”
 握りしめて乱暴に。思いの激しさと劣情そのままに。
 皐月を思い浮かべ、もう何度もしたこと。思い浮かべる皐月は意地悪
だったり、無理やりだったり、反対に優しかったりするが、今日は許し
を請う皐月を存分に辱める。動けないようにして、さらけだすような
格好にして。
 初めての淫靡な想像に、簡単に絶頂を迎えた縁は、声を漏らすほどの
快感に震えた。
「……ううっ……う、ふっ………………うあっ!」
 びゅん! びゅう、びゅっ!
 ティッシュにぶちまけられる白い液。重さすら感じる量に眩暈がした。
 決まって襲ってくる後悔。実の姉を性の対象として見て、ほぼ毎夜精を
放っている。
“いけない。だめだ、もうやめなきゃーー”
 夕べも思ったことが、今日も繰り返された。
 縁は、布団に顔を埋め、うわごとのようにつぶやいた。
「もう、やめなきゃ……」

 皐月は、水につかった水着を出そうとして気がついた。
“あれ、ひっくり返ってる”
 自分が入れたときには、確かに水着の前側が見えるようにしていた。
 住み込みの従業員は、たいてい午前中に洗濯をすませてしまう。
 スイは喧嘩のあと、旅館組合の寄り合いで出てしまっている。  
“まさか、縁ーー”
 ひゅっと体が寒くなる。弟に脱ぎたての水着をいじられた? なぜ?
 何のために?
 プールのカルキ臭がする水を捨てる。蛇口から水を出して、さらにす
すぐ。そして、もう一度……
“縁は何を考えているの”
 泣き虫で、勉強はできるが飲み込みが悪い縁を、皐月はかばってきた。
長女だから、ということもある。けれども、縁が知らぬ間に身につけた
甘え方が絶妙で、皐月は嫌と言えなかった。全ての動物が本能的に持って
いる、庇護を受けるためのテクニックが、縁にはことさらあるような
気がしてならない。
 例えば声は、少年の声を脱しきらず、甘く鼻にかかっている。
 例えば目は、うっすらと涙をたたえて、必死にすがりついてくる。 
 だから、皐月は縁をそれとなく避け、つっけんどんに接し、時には
やり返さないのをいいことに、痛がるようなことをした。
“そんな想い、受け止められないよ”
 脱水層に水着を入れて、つまみを1分程度にセットした。
“あんた、弟なのよ”
 なのに、頭の中には上目づかいで迫る縁の顔が浮かぶ。
“だめ、よ……”
 洗濯機が止まる前の大きな振動にはっとして、皐月は水着を取り出した。
220皐月の色は…… ◆h8MMUYXW/0OO :2011/09/17(土) 23:49:07.86 ID:z+AqbY7B
 ◇  ◇  ◇

「行ってきまーす!」
 大きなえんじ色のバッグを肩に、夏服の皐月は玄関を後にした。
 5日間の合宿。学校に泊まり込み、特に体力増強のための“恒例の地獄”
と言われていたが、それでも元気よく出かけて行った。
 縁は、複雑な気持ちで胸がざわついていた。
 皐月がいないのは、旅館の華やかさが全く違う。裏で文句をこぼしなが
らも仲居に混じって、旅館を手伝う姿が見られないのは、とても寂しいの
だ。現に常連からも、「あら、皐月ちゃん、今日はいないの?」などと聞
かれるほどだ。
 だが、これほど縁にとって好都合で嬉しい期間はなかった。
 皐月の部屋の中に忍び込み放題だから。

 午後6時。宿泊客に夕食の膳が運ばれていて大わらわになっている。
 ふすまに手をかけて、縁はどきどきしている。昔は無造作に入って行った
ものだが、今そんなことをすれば皐月に殺される。
 スイも観光協会の用事で出かけて行ったから、誰にも邪魔されない。
 必要最低限の分だけ素早く開くと、体をすぐに滑り込ませて、音もなく
閉じた。
 “すごい。お姉ちゃんの匂いだ”
 廊下を通りすがっても、部活帰りで汗みずくでも薫るシャンプーの香り。
それが体中全部を包んでる。抱きすくまれているような錯覚してしまう。
 中はお世辞にもきれいとは言えなかった。畳にものが落ちたたままとい
うことは無いにしろ、椅子にかけてあるジャージやら、さまざまな高さの
本が、互い違いに並んでいるのは、雑然さを感じさせた。ベットの上には
洗濯したものが、たんすに仕舞われずに投げ出されていた。
“さっさと済ませなきゃ”
 縁の目的は押し入れだ。その中の、皐月の、もの。
 少し開いたふすまを開けると、下段に幅の広い衣装ケース、上段に中が
見える幅が狭いケース。
 迷うことがなかった。パステル調の色が見られる上段の一番下のケース
を静かに手前に引いた。
 息をのんだ。ストライプ、水玉、無地……様々な色の組み合わせで行儀
良く並んでいるショーツ。部屋の雑然さの割に綺麗に整えてあった。
 年頃の女性らしく淡い色調の海の中で、どうしても目を引く一つ。
 “あ、黒の……”
 黒の下着。右の列の真中当たりに3つに折られている。白い下着は他に
も多くあるのだが、この黒だけは逆に輝いてさえ見えた。
 “これ、いつ履くんだろ”
 制服や普段着の時に、上半身に透ける下着の色は、白かごく薄い色だけ
だ。黒や濃い色なんて見たことがなかったーー。
 “そうだ、ブラジャーも見よう”
 同じような色調のボックスは2つあり、この2つにブラが所狭しと収納
されていた。
 そこでも、眼に飛び込んでくる1点だけの黒。
 縁はどうにもこの色に惹かれた。他の色には感じない魔力も放っている
気がした。
 気がつけば、この色の下着を抜き出していた。縁は音をさせないように
衣装ケースや押し入れ、ふすまを閉めると、自分の部屋に飛び込んだ。
221皐月の色は…… ◆h8MMUYXW/0OO :2011/09/17(土) 23:50:40.94 ID:z+AqbY7B
「ハア! ハア! ハア!……」
 すごい達成感、すごい罪悪感、すごい……興奮!
 胸の鼓動を抑えることなどできはしない。喉は渇ききって痛いくらいだ。
縁は自分の手にある布の感触を確かめた。自分の部屋のふすまが閉まって
いることと、あたりに人が近づいていないか、耳をそばだてた。
 それから、“戦利品”まじまじと見る。
「……お姉ちゃん……エロい……」
 ブラの肩ひもから縁取りのレースも大人っぽいが、胸を下半分で支えて
いる形といい、谷間の部分に施されているレースといい、嫌でも視線が行
ってしまう。
 ショーツはゴムのサイド部分が細く、全体的に光沢があった。フロント
のゴムから下にすこしだけレースがあり、素肌が透けるようになっている。
 皐月の水着姿と、肌の色と、手の中の下着を頭の中で合成させるーー
 何しろ、皐月は雪国の女性特有の肌の白さが美しい。物足りなさは感じ
ないのに大きすぎないバストとくびれたウエスト、可愛く上がったヒップ
を思い出せばーー
「うわ……お姉ちゃん……」
 黒い下着から透ける姉の肌のまぶしさに魅了されない者はないと、確信
していた。ほんの少し幼さが残る少女が黒い下着をつけているアンバラン
スにどこか淫靡さを嗅ぎ取ってしまう。
 縁は反射的に股間のものをしごいた。だってそこに皐月がいて、うるん
だ瞳で縁を迎え入れているから。縁の首の後ろに腕をからませ、口づけを
せがむから。
「あああっ……おねえちゃん……ああっ………………ううっ!」
 た易く、しかも、強い甘い電気が縁の脊髄を貫く。
 その下着を、白い矢が小さな音を立てて何度も撃ち抜く。
「はっ! はっ! はっ! はっ! ……」
 苦しい呼吸が止まらない。すっかり消耗するような妄想と劣情。
 ブラの内側に、縁の残りのものが未練たらしく貯まっていった。
“おねえちゃん……僕は、悪い子です……”
 縁は反省と後悔に目をつむる。しかしそこには肩ひもを落とした皐月が
――
 再び立ち上がる若い力。
“ごめん……なさい……ごめん……なさい”
 先ほどの体液のぬるみを使って、心と裏腹に手が動いた。
222名無しさん@ピンキー:2011/09/17(土) 23:54:55.96 ID:z+AqbY7B
 今日はここまでです。明日投下します。
223名無しさん@ピンキー:2011/09/18(日) 16:54:46.57 ID:UXqV5VRt
これは予想外のカプだった
224 忍法帖【Lv=18,xxxPT】 :2011/09/18(日) 18:33:22.95 ID:oqeSnKy5
GJ!
続きwktkして待ってます…!
225名無しさん@ピンキー:2011/09/18(日) 19:35:50.80 ID:D/2qs9Qz
 続きをうpします。
226皐月の色は…… ◆h8MMUYXW/0OO :2011/09/18(日) 19:37:28.32 ID:D/2qs9Qz
 ◇  ◇  ◇

 5日後の午後3時。喜翠荘の趣のある玄関の空気が、かき乱された。
「あー、もー、疲れたぁ、もー動けなーい!」
 合宿でしぼられまくった皐月は、帰ってくるなり脚だけ三和土
(たたき)に投げ出して、制服のまま寝ころんだ。
「お帰り」
 年齢より少し地味な着物を隙無く着こなしたスイが出迎えた。
「はしたない。もうお客様がいらっしゃる時間だ。早く部屋にお行き」
 わずかにひそめた眉。それは相当不快に思っている証拠だ。
 床でその顔を見た皐月は、しょうがない、という顔をし
「はいはーい。はしたない娘は部屋に引っ込みまーす」
 と重い荷物を引きずり部屋に行こうとした。
 その足取り。スイは軽い違和感を感じて、
「皐月? お前……」
「ん?」
 振り返る娘の顔に、ほのかに漂う雰囲気……
「……なんでもない。お行き」 
「……」
「ああ、それから、私は今晩組合の研修で、○○ホテルに一晩御厄介に
なるよ。それとーー」
 スイは小さくため息をついた。
「縁は臥せっているからね。夏バテかね」
 皐月は再び部屋に向かう。
 荷物の重さをいいことに、目から漏れ出る動揺を隠した。障子を開け、
部屋に入るまで気が気でなかった。
 ベッドに倒れこむ。その内心は、恐怖にも似た焦りで渦巻いていた。
“何、あの、異常なまでの鋭さは!?”
 顔の横を汗が伝った。暑さと重いものを運んだだけではなかった。
“バレたの?! 西岡先輩のこと”
 電車の定期入れの折り返した中。頭一つ分背の高い男子生徒と寄り添う
笑顔の皐月の頬に緊張が見てとれる。
“あたし、先輩と……”
 定期入れを抱きしめて、首から上を紅く染めて左右にごろごろと転がっ
た。制服にしわがつくことなど、気に留めない。
 気のすむまで転がってから、我に帰って起き上がった。
「洗濯するもの、洗濯機に入れとかなくちゃ……」
 バッグごと洗濯物を持って、階段を下って洗濯室に持っていき、汗っぽい
ジャージを洗濯層に入れようとした時だった。
「…………!」
 洗濯層の底、黒いショーツが濡れたまま残っていた。
 さっと顔と胃のあたりの血の気が落ちる。
 絶対、スイのではない。それに一世代前の自動ではない洗濯機を、忙しい
仲居は使わない。
 拾い上げて、確かめる。−−刺繍も形も、自分が買ったものに間違いない。
 それを脱水層に入れて、汗っぽい体操着、ネットに入れた下着類を洗濯層
に入れた。
 自分の部屋に戻り、押し入れを開け、下着のケースを確かめた。
 皐月はため息をついた。
「さあて、どうしてくれよう……」
 そう一人ごちた皐月の声は、小さく震えていた。
227皐月の色は…… ◆h8MMUYXW/0OO :2011/09/18(日) 19:38:57.07 ID:D/2qs9Qz

 大きめの新しい氷を入れていた氷枕が、だいぶ頭になじんできた。
 もう暗い部屋の中、縁は体のだるさに打ちのめされていた。また、意識が
あるようなないような、頭の中に綿が詰まったような重さがとれない。  
 皐月がいない日々、縁は自分に歯止めの利かない自分にどっぷり浸っていた。
それほどに姉の引き出しから持ち出したものの魔力が凄まじかった。
 姉の肢体がまぶたにこびりついて離れない。黒の下着をつけた皐月のしなや
かな媚態が縁に迫ってくる。さらに下着をつけたまま、時にはそれをゆっくり
外して、ありとあらゆることをして、縁を悦楽に追いやった。
 思考できないのか、フル回転で想像をめぐらせているのか、わからない状態
で、下着は汚れた。その度に洗い、細心の注意を払って乾かして、使った。
 どちらかと言えば、会いたくない。顔を見たいけれど、辛くて見られない。
自分の欲のままに下着を持ち出して弄んだ。想像の中とは言え、口に出すのは
憚れるようなことをし続けた。
 ふわふわしている。全ての体液が無くなったかのように自堕落に耽った。
 闇の中、このまま眠りに落ちても構わない。もう一度
 皐月のことを思い浮かべるのもいい。
“そうだ、体の自由が利かない今の僕に、下着姿でのしかかるお姉ちゃんなん
てのはどうだろう”

 襖がそっと開いて、すぐに音もなく閉められた。
 それから衣服が擦れる音。畳に衣服が落ちる音。
 ベッドに近づいてくる音。ベッドに乗ってきしむ音。
 やさしい息遣い。様子をうかがっている。
「縁、起きて。縁」
 ああ、お姉ちゃん、顔がとても近いね。相変わらず綺麗だね。長いまつ毛と
美しい瞳が僕を飲み込むよ。いくら太陽の下にいても日焼けしない白い肌が
暗い中でまぶしいよ。Tシャツとひざ丈のジャージでそんなに可愛いって反則
だ。
 それにしても、そんなに見つめないでよ。僕の頭や胸の中を見透かすつもり
なの?
「縁、あんた、あたしが好きなの?」
 わ、なんてこと訊くんだよ。真剣な顔で、そんなことーー
「姉弟なんだよ、あってはならないことなんだよ」
 わかってる、わかってるよ。
 でもーー
 自分でも止められない想いなんだ。喜翠荘のプールで浮輪で浮かんでたときに
見たあの時のお姉ちゃんに恋してから、ずっと。他の女の子に目もくれない。
「僕は、お姉ちゃんが、好きだよ」
 言っちゃった。どうせ夢だから、素直に想いを告げた。
 その瞬間、驚いたような、悲しいような表情をして、顔を赤らめた。想像の中
のお姉ちゃんがしないような顔だな。
 しばらく何も言わない時間が過ぎた。お姉ちゃんは相変わらず四つん這いで
僕の顔を眺めたままだ。
 それから、2、3度目をそらしてから、もう一度僕を見つめた。
 口元がきゅっと締まってから。
 再び口を開いたときに、信じられない言葉が聞こえた。
228皐月の色は…… ◆h8MMUYXW/0OO :2011/09/18(日) 19:40:24.18 ID:D/2qs9Qz

 あたし、この合宿で先輩とエッチしたよ。
 夕べ。午前から約束とりつけて、体育館の用具入れのところで。
 先輩はモテる人だったから、とても慣れてて、エッチな触り方が上手で――

 ……お姉ちゃん、何言ってるの? 意味がわからない。何を? 何をした
って? とつとつとしゃべっているけど訳がわからない。
 僕のぼーっとした顔を覗き込んだお姉ちゃんは、心配そうに眉を寄せた。
「縁、わかった? あたし、先輩とセックスしたの」
 直接的な表現で、僕の頭にようやっと響いた。
 お姉ちゃん、先輩と? セックス? 嘘、だ……信じない、嘘だ……あり
得ない、嘘だ、嘘だ! うそだ!
 う  そ  だ っ !!
 叫び出しそうになる。頭が熱くなり、拳を握りしめる。歯を食い縛る。
 辛い、口惜しい、せつない、寂しい……
 知らずに涙が出る。涙が出る自分が嫌になる。
 そうやって僕を貶めるお姉ちゃんが嫌いで、邪(よこしま)で、狡猾で。
 だから、反撃したくなった。今までは何もできなかったが、もう我慢でき
なくなった。 
「セックスしたくて合宿行ったんだ。それってインランって言うんでしょ?」

229皐月の色は…… ◆h8MMUYXW/0OO :2011/09/18(日) 19:41:53.22 ID:D/2qs9Qz

 意識が急浮上した縁は、枕に涙を落しながら、うすら笑いで姉を軽蔑して
いた。
 邪悪とも性悪ともとれる嫌な笑みは、皐月は初めて見るものだった。
 いつもの縁なら、何も言えずに、口ごもるだけだったのに。
“この子、どうしちゃったの? 暑さで頭がおかしくなったの?” 
 皐月は少しひるみながら、違う角度から弟を追求した。
「あんた、水につけたあたしの水着、いじってたでしょ。ひっくり返ってた」
 自然に口角が上がる。勝ちを確信していた。皐月のお下がりのピンクと白の
ストライプのパジャマを着た縁の手首を掴んで頭の横でベッドに押しつけなが
ら、追い打ちをかけた。
「それに、あたしの下着までいじって。洗濯機に残ってた」
 縁は強く姉をにらんだ。
 非難されるのは自分の方だと、縁自身もわかってはいた。しかし、その場
で非難するのではなく、こういう時に持ち出されることに、腹の中にどす黒
いものが渦巻いた。
“そうか、わかっていながら――”
 縁は自然と笑いが漏れた。それが止められない。
「ふふふ……僕の気持ちに気付きながら、僕を泳がしてたんだね」
 皐月の顔の横を一筋汗が流れた。
「ククク……それで、僕をあきらめさせようと、先輩とヤったの?」
「――なっ?! 何言ってるの?! バカじゃないの?!」
 これには、皐月も動揺を隠しきれなかった。
 先輩とのセックスの時、皐月の横に置かれたもう一組の黒のショーツを見
た時、部屋にわざと置いてきた黒の下着と縁を思い出した。
 縁がいたずらするかもしれないと、からかい半分を目的に。
 そしてもう半分は自分への気持ちを確かめることも目的に。
“あたし、何てことしちゃったんだろ……”
 皐月の顔はみるみる紅く染まった。
“弟に何考えてるんだろ……”
 もう切り上げるしかない。これ以上話をしたら、後戻りできないところに
行きつきそうでならなかった。
「わかった? あたしのことはあきらめなさいね」
「ううん。嫌だ。僕はお姉ちゃんのこと、好きでいる」
 真摯な眼。今までの小悪魔のような、策略を巡らせている瞳ではない。いつ
もの縁が帰ってきたようで、皐月はつい安堵した。安堵したら、聞き分けの
ない弟にかぁっと怒りが湧き上がる。
 ささやき声で、しかし厳しい口調で弟をなじった。
「先輩のものになったあたしなのに、欲しがるの!?」
 拒む皐月が悲しかった。二人を阻む眼に見えない禁忌が口惜しかった。
 組み敷かれたの体の下で、想いが堰を切った。
「お姉ちゃんは“黒”なんだ!!」
 声がかすれた。興奮と、発汗と、嗚咽が混じって、喉がひりひり痛い。それ
でも伝えたい気持ちが勝(まさ)った。 
「お姉ちゃんは、意地悪で、凶暴で、喧嘩っ早くて、だらしなくて、それでい
て気づかいができて、賢くて、機転が利いて、要領が良くて綺麗で、可愛くて、
いい匂いがして、素敵な声してて!」
 呆気に取られている皐月に、畳みかけるように、
「どれが欠けてもお姉ちゃんじゃないんだ! 絵の具みたいにたくさんの色が
混ざって黒になってるお姉ちゃんが……おねえちゃんが……すき……んっ!?」 
 語尾が泣き声に溶ける時、皐月は、縁の唇を自らの唇でふさいだ。
230皐月の色は…… ◆h8MMUYXW/0OO :2011/09/18(日) 19:43:30.62 ID:D/2qs9Qz

 これ以上縁の言葉を聞きたくなくてこんなことをしているんじゃない。
 考える前に、体が、こうして動いていた。
 こうしてしまってから、自分が甘やかしているのか、“母性”なのか、倫理
観がおかしいのか。皐月の中で理由が浮かんでは消える。でも今は、縁を抱き
止めていたかった。
 姉のピンクの唇が、弟の唇をやさしく食む。敏感に上下の唇を行き帰を繰り
返した。
 結んでいた縁の唇は、熱い皐月の息に、氷が解けるようにほどけていく。そ
こを舌でくすぐる。さらにサラサラの猫っ毛の中に指を梳きこんで撫ぜた。
「……はぁ、ああ……おねえ……ちゃ……」
 ついには縁の口から余裕のない甘い声がもれ、その歯と歯の間に、舌が滑り
込んだ。容赦なく、縁の歯を這い、奥に差し込まれ、おびえて震える舌と触れ
あった。
「……んんんっ?! ……んん!……うん……ふ……うん……」
 蹂躙されていく縁にダイレクトに皐月の粘膜が触れ合って、それが麻痺と言
っていいほど、縁の体の自由を奪い、代わりに思春期の体をた易く呼び覚ます。
縁は、真っ赤な顔の眉の間を歪ませて、皐月の感触に耐えていた。
 そうやってキスしながら、皐月は縁のパジャマのボタンを上から外していく。
一つ、二つ……一番下のボタンを残して、それで胸がはだけてしまう。
 オトコでないカラダ。筋肉が乗っていない代わりに脂肪ものっていない細い
上半身。皐月は少年のシルクのような肌に指を滑らせ、うっすら浮いたあばら
骨をたどった。
「あっ! ……ああっ! ……くすぐっ……たいっ!」
 首筋、鎖骨、と点々とキスを降らせ、体をずらしていくと、色の薄い小さな
乳首にたどりつき、温かい口に含んだ。
「ああんっ! ……それ! ……だめだよう……」
「なんて声出してんのよ……」
 皐月の行ないの度に、女の子のような、か細く、甲高い声が発せられる。
 さっきまでの何かに憑かれていたような縁が、良いように身をよじっている。
そのギャップに、皐月の肌をぞわぞわと伝う得体の知れないもの。視界がにわ
かにほの霞み、胸がきゅっと締めつけられる。体の奥に疼いてしまう何か。
「さっきの啖呵は何だったの?」
 責めたくなる。肉体と心をちくちくと突っつきたくてしょうがない。
 皐月は縁の体の上でにやりと笑って、服を脱いだ。
 白い肌が現れた。
 そこにつけられていたのは、あの黒い下着だった。
231皐月の色は…… ◆h8MMUYXW/0OO :2011/09/18(日) 19:46:00.44 ID:D/2qs9Qz

 縁は思わず息を呑んだ。
 想像でないリアルの皐月の下着姿――肌理の細かい素肌、優しく美しい体の
ラインはもっと官能的で、もっと刺激的だった。それに魅惑的な香りと自分の
体の上の体温が加わって、年端の行かない少年には酷なほどだった。 
「縁、あたしのこと好きなんでしょ?」
 少し惚けた少年に笑みを含んで、先ほどのように再びのしかかって呼びかけ
る。
 縁は皐月から眼を逸らした。
「……好き……だよ?」
「じゃあ、我慢して。あたしいろんなことするから。手はそのまま布団につけ
たまま」
 ひんやりした指が、縁のへその横を通って、少年特有の細い腰に回ったパジ
ャマのゴム。そこに滑り込んだ。
「それはっ!……」
 思わず、皐月の手首を捕まえた縁を、姉は叱った。
「こーら、手はそのままでしょ?」
 反対に手首を掴まれて、枕の両脇に押しつけられる。
 皐月が目を細めて、自らの口の端を下の先でぺろっと舐めた。
“なんていやらしい顔をするんだろう!”
 背筋(せすじ)から腰にかけて、ぞくぞくっと電気が走る。それは決して嫌
なものでなく、むしろもう一度、もっとと求めてしまう感触。
“僕は逆らえない。僕は手を出せない。僕はおねえちゃんのおもちゃ……”
 そう考えるだけで、固くなった部分の付け根が、勝手にきゅうんと疼く。
 皐月は、腰骨から肌沿いにお尻まで手を入れると、縁のパンツとパジャマを
膝まで下した。
「縁、すごい……びんびんじゃない」
 兄弟で風呂に入っていたときに見た、思わず可愛がりたくなるようなささやか
な突起ではなく、小さいながらも一個の生き物のように立ちあがっていた。しか
もすでに透明な雫を紅い先に盛り上がらせている。
「……恥ずかしいよぉ。……見るなよぉ」
 にやりと皐月が笑って、縁の声色を真似た。
「――――『僕を泳がしてたんだね?』」
 かあぁぁぁっと、縁の顔が熱くなった。思わず顔を隠した。
「やめてよお! さっきはどうかしてたんだ!」
「手は顔の横!――――『僕をあきらめさせようと、先輩とヤったの?』」
「やめてぇ! おねえちゃん、やめてええ! ――――ああっ?!」
 かぶりを振りながら紅潮して涙を流す顔を隠せない状況に、何故か縁の頭から
つま先まで身を痺れさす電気が通じた。
 縁の羞恥の表情に、今度は皐月の体が火照る。黒の下着で良かったと思う。み
っともない沁みに気づかれることはない。
 ショーツを脱いでしまう。それをさっき自分が脱いだところに置き、縁の腰の
上に跨った。
「……縁、あたし、しちゃうよ?」
 泣きそうで、恥ずかしそうで、可愛くて、そして上気している姉。
「…………おねえ、ちゃん」
 弟はそれしか言えなくて。
 姉はその切っ先を手で支えると、自らのぬるみのなかにゆっくりと収めていっ
た。
232名無しさん@ピンキー:2011/09/18(日) 19:47:29.72 ID:D/2qs9Qz
続きは明日。明日で完結しますよ。
233名無しさん@ピンキー:2011/09/19(月) 07:35:38.69 ID:vevdX6hN
それでは、続きを。
234皐月の色は…… ◆h8MMUYXW/0OO :2011/09/19(月) 07:38:42.30 ID:vevdX6hN
 
 ずるるる……と先端が粘膜で包まれ夢のように同化していく。蜜壺の中をかき
分けているのか、一つ一つの襞に翻弄されているのか。少年の脳が順々に焦げて
いく。
「ああ、ああ、おねえちゃん……」
 切なく眼を閉じて頭を振って声を漏らす縁の悦び顔に、皐月は歯を食いしばる
ほど、残忍な欲求にかられる。わずかにしこった、胸の先端を爪でつまむ。
「はあっ! ああっ! だめだったら!」
 もっともっと追いつめたくて、皐月は埋め込んでから、ゆっくり腰を揺らす。
温かく全体が絞られる初めての感覚に、必死に言いつけを守って手の位置を動か
さずシーツをひねり上げている。熱の肉が埋まっている快感よりも、縁の痴態の
淫らさに、肩からうなじにぞわぞわと駆けあがるもの。
 両方の乳首が指で遊ばれる。パジャマがはだけ肩がむき出しになっているのを
見て、その艶やかな丸さを口で楽しんだ。体に皐月の黒いブラジャーが乗る。想
像しきれなかった、優しい温かさが弾力と共に伝わり、何倍もの刺激で刺さる。
「ああっ! ああっ! おねえちゃん! ぼく……!」
 急速に腰の中の熱が、痺れを伴う甘さに変わって行く。我儘にこらえ性もなく
高まる顔を見て、姉は全部を抜き出した。
「……はあ、はあ、はあ……ど……どうしたの?」
「縁、自分勝手すぎ」
 少し口を尖らしてから、縁の耳に口を近づけた。
「あたしも気持ち良くさせて……」
 怒った顔を印象付けておいて、射精にまっしぐらに向かう弟を焦らしたかった。
危うく笑ってしまう顔を隠し、どれだけ“オトコ”になれるか試したくもあった。
「おねえちゃん、どうすると気持ち良くなるの?」
 戸惑って、素直に恥ずかしいことを訊く弟に、少し芝居がかった声で囁いた。
「……入れて。で、突きあげて……」
 簡潔で淫猥なことを姉にせがまれて、耳が溶けた。
 皐月が体を起して、潤っている花弁を両手の指で開いている。完全に腹にはり
ついているこわばりは、手を使わないでは挿れられない。
「いいよ、手を動かして」
 許しを得て、嬉々として若棒の根元を支えて皐月自身に向ける。
“縁に尻尾があったら、ちぎれるほど振ってるだろうな”
 欲望にきらきらした眼を向ける弟に、可笑しい想像をしながら、腰を落して
いった。
235皐月の色は…… ◆h8MMUYXW/0OO :2011/09/19(月) 07:41:32.75 ID:vevdX6hN
 
 初めての挿入と違って、感激よりも安心が先に立った。縁は再び粘液の中に
ひたり、熱を伴った蠢きに酔う。
「……すごいんだ、お姉ちゃんの中。ぎゅっとされる」
 慣れたのか、そんな恥ずかしい感想を真顔で言ってくる縁。
「ばか……」
 上下に動き始めながら、照れ隠しに目を逸らす。縁の肉棒の茎の長さだけ、
白く細いヒップが浮き沈みする。ちょぷ、ちょぶ、と音がする。二人が織り
なした最も淫猥な場所からの最も淫らな音は、それぞれの性感を煽っていっ
た。
「……うん……ううん……あ……ふ……」
 時折前後に体を揺さぶって、皐月は背中のホックを外した。黒のベールから
現れた白い張りのあるふくらみ。色素の少ない尖った頂は、縁から遠ざかり近
づいた。
 その光景に縁の目は貼りついてしまった。無遠慮に、揺れる桃色の乳首を
脳内に焼き付けている。
「……はあ、はあ……縁……手を使わないの?」
 縁はハッとした。完全に許してくれている。自分が触ることをとがめないの
だと。
 おずおずと両手を伸ばした。瑞々しく弾む乳房に触れてから、親指を乳首の
先端に押し当てた。
「……あふっ! ……あん……うん……ああっ」
 縁に触られて正直なところ、気持ちいい。弟にそうやって助け船を出しなが
ら、自分も貪って行く道外れた姉でいい。間違っても母性からこうしていると
は認めたくない。
 だから、挑むような顔をして言った。
「ほら、突きあげてごらんよ。おちんぽをあたしの中へ……」
「――!」
 なんて恥ずかしいことを言うんだろう。隠語を交えて、欲望のままの言葉で。
縁の脳がスパークしていく。本能的な禁忌や、憐憫や、綺麗事が消し飛んでい
く。
 膝を立てると、縁は腰を天井に突いた。
「ああっ! そう! そんな感じ」
 皐月から滅多に褒められたことがない縁は、嬉しくて2回、3回と腰を繰り
出していく。
「ああっ……ああっ……やだ……すご……」
 小振りながら、胎内を暴れる縁に、皐月もだんだん余裕を失っていく。本当
にいやらしいだけの少女になって行く。
 ついに皐月は布団に両手をついて、快感に身をのけ反らした。縁の上で乳房
を揺らして、緩んだ膝のせいで、すっかり蕩けた結合部を縁にさらけ出すよう
な、あられもない少女の姿。
 縁も体を起こし、皐月に激しく腰を使った。
「あっ……あっ……ああっ! あっ……縁……ああっ!」
「お……ねえ……ちゃん! ああっ!」
 互いの全部が見えている。隠されていた裸身も、話すことも許されない欲望
も、自分さえも知らなかった感情も。
 そして、快感の虜になった悦びの顔も。
「……出るっ! ……出ちゃう! ああっ……出ちゃうよ!」
「うんっ! ……いいっ……からっ……中、いいからっ……」
「いいのっ?!」
 姉でも、皐月でもない、ただのオンナに、ただのオトコとして、ひくつく
ような動きで蜜壺を責め上げた。
「えにしいいっ……あああっ! ……ああっ…………………はあ! はあ!」
「ああああっ! うんっ! …………はっ! はっ! はっ!」
 皐月の胎内の生温かい感覚。恋人にも許さなかったことを、縁にはさせて
しまった。
 後悔じゃない。何故なら、その瞬間あんなに必死な目をしていて、女として
受け入れたくなってしまったから。
236皐月の色は…… ◆h8MMUYXW/0OO :2011/09/19(月) 07:44:34.53 ID:vevdX6hN

“それって結局『母性』なの?”
 くらくらする頭の中で、縁のものがまだ抜けていないのに、ぐるぐると考え
てしまってる。解決できることなのか、答えがあることなのかもわからないが、
汗ばんだ体を横たえて天井の木の板を見つめていた。
 その横で、縁は息を整えながら複雑な表情で皐月の顔を見て、すぐに反対の
壁の方に寝返った。
 達成感を覚えながら、口をへの字に曲げ、そして尖らせた。
“なんか違うんだよな、うまく行きすぎちゃって”
 結局胸を揉みしだきながら、中出しまでさせてもらったのが、違和感の元ら
しい。自分の名前を呼びながら、感じてしまう姿が気に食わないのだ。
“お姉ちゃんは、もっと自分勝手に僕に意地悪しなきゃダメだ”
 優しく包み込んでくれるんじゃなくて、黙って平手打ちして髪の毛をつかみ、
ひいひい言っている縁を嗤う皐月を期待していた。
 その最中にあった、縁の羞恥心を煽るようなことを続けて欲しかったのだ。
 皐月はゆっくりと体を起こし、ティッシュを取って後始末した。下着を付け
部屋着を着ると、ぼそりと小さく言った。
「忘れなさいよね。あたしも忘れる」
「うん」
 皐月を見ることもなく、縁は応えた。
“『あーあ、粗末でつまんなかった』って言って欲しかった……”
 皐月が部屋を出ていくと、寝そべったままため息をついた。
237皐月の色は…… ◆h8MMUYXW/0OO :2011/09/19(月) 07:46:34.59 ID:vevdX6hN

 ◇  ◇  ◇
  
 それから二人の間には、何も生まれなかった。
 同じ家に生活している姉弟だから、当然行き合うし、互いの目に触れた。二人
であんなに身を絡めたから、その収まりがつかなくなると思われたが、意味のあ
る眼差しや、思わしげな言動などもなかった。
 殊に縁の姉への思慕は急速にしぼんでいった。下着などへの興味も、皐月の
甘酸っぱい香りも、意に介さなくなった。
 簡単に言ってしまえば、「こんなもんか」とわかってしまったということが
大きい。今まで、どこまでも大きく膨らましてきた想像力が、現実の皐月の深部
を垣間見たせいで、冷めてしまった。
 姉は、人の弱点を突き、すぐ殴り、罵詈雑言を浴びせかける人だと思っていた。
 けれど実際は、情にほだされ、結局何でも許してくれる人だと知ってしまった。
 正直なところ、縁は前者でなければ体が滾らない性癖だったのだ。
 姉が家を出て行ってから出会う地元の女性には、そんな強烈な人は見つけられ
なかった。東京の大学に行ったときに、やっと崇子という向上心も野心も人並み
外れた女性を見つけ、なんとかしがみつくように関係を保ってきた。ついには
その崇子も生涯の伴侶にすることができた。

 ◇  ◇  ◇
  
 縁は、秋のプールサイドを眺めていた。もう、黄色、赤の紅葉が水面を色どり
夏の水しぶきや歓声が嘘のように静まり返っていた。
 思えば、このプールがなかったら大切な女性との関係は生まれなかった。
 浮輪で水面に浮かんでいたとき、美しい水着姿で飛び出した皐月。
 二人して水に落ちて、ずぶ濡れになりながら縁の法要と言葉に心打たれた崇子。
 いずれも季節は夏。その一つの季節で始まって終わって行くことが多くて内心
驚いた。
“姉さん。姉さんがいなくても、喜翡荘を立ち直らせて見せるよ。叱られたい時
は崇子さんに存分に叱ってもらう”
 甘ったれたことは言っていられない。自分は1旅館の経営者なのだ。人に頼ら
ず、親が残した喜翠荘を盛りたてて見せる。
 多くの予約が入っている。まだまだやることは残っている。
 腕時計を見た。その裏に隠されている縄の跡。これが生活に潤いをもたらせて
いる。
 お客を迎える準備を再開すべく、プールを後にした。

あの日の水着のシルエットは遠い記憶に仕舞いこんだ。
 
 想いを灯して温かなぼんぼりの光に照らされる日はもう間近だ。

                 
                            完