【ととモノ。】剣と魔法と学園モノ。12【エロパロ】
2 :
マルメンライト:2011/04/09(土) 23:01:07.56 ID:LDP15HCK
>>1 スレ立て乙です。
気にいるか分からないがこちらをどうぞ
ニアだれかさんが破ったフェアリーの制服(タカチホ)
スレ立て乙ー
俺からはフェル子の脱ぎたてブルマをやろう
スレ立て乙。では俺からはヒュマ子のお古ジャージを差し上げます。
このスレにこそ続き出せるといいんだが筆が進まん……
5 :
マルメンライト:2011/04/11(月) 02:55:06.83 ID:+RMgbWSh
仕事中に思いついたネタをまとめたら気付いたら土日を使ってまたひとつ
出来てしまった。
恐れ多くも投下したいと思います。
諸注意 エルフ♀×ディアボロス♀(ロリ)
百合、破瓜描写あり
エロ多分多目
6 :
マルメンライト:2011/04/11(月) 02:57:59.57 ID:+RMgbWSh
私に全てをゆだねるように一糸まとわぬ姿の彼女がそっとベッドに横になった。
ああ、これは夢だな、と不意に私はそう思った。
私にとって都合のいい夢だ。
私の想いを彼女が受け入れてくれたら…そんなことをこんなふうに夢で見ているのだろう。
彼女の淡い水色の髪が、ベッドに放射状に広がった。
そして小柄な体を隠すように、彼女が両手で胸を覆う。
「かわいいわね…ディアボロス」
夢の中の私は、そう言って彼女の頭をなでた。
クラッズと見間違えてしまいそうな小柄な彼女、だが、頭には彼女の種族の特徴である角がしっかりと存在している。
「…はずかしいよ…エルフ…」
もじもじと、夢の中の彼女が頬を染めた。
可愛らしい…
恥じらう彼女に口づけて、そっとその手をわきにどける。
きゅっと彼女が目を閉じて震えている。
気持ち悪い…
女のくせに、同じ女性の彼女の姿を、こんな形で夢に見てる。
汚らわしい…
彼女を私は普段からそんな目で見ているのかと認識し、自分自身がとても汚く見えてくる。
私の愛撫に彼女が震え悩ましい声を上げる。
「はぁっ…はぁっ……」
待ちきれないかのきれないかのように、目に涙をためながら彼女は私をじっと見ていた。
「エルフ…お願い…私を…気持ちよくさせてください」
「ええ…」
懇願する彼女の濡れた場所に私は手をのばす。
そして、ぴったりと閉じたそこを指を差し入れこじ開けていく。
やめて…無垢な彼女を汚さないで…
夢の中の私に向かって、必死になって私は叫ぶ。
「いたっ…痛いよ…」
夢の中の彼女が痛がっている。
それなのに、夢の中の私は彼女を無視して指を奥深くまで差し入れていく
「いたいよ…裂けちゃう…やっぱりやめて…」
助けを求めるように夢の彼女が夢の私に懇願する。
もうやめて!彼女をもう苦しめないで!
夢の中の私は聞いてくれない、暗い笑みを浮かべたまま彼女の初めてを奪おうと、暴れる彼女を抑えつけ、強く突き込んだ。
「やだ…いやだ…やっぱりいや…私をこれいじょ…」
夢の中の彼女の言葉が、深く突きいれられた夢の中の私のの手でさえぎられる。
彼女の眼が大きく開かれ、彼女の口から小さな悲鳴が漏れだした。
7 :
マルメンライト:2011/04/11(月) 02:59:16.15 ID:+RMgbWSh
「やめて!!」
夢の中の私を止めようとして叫び声をあげ、私は飛び起きた。
目の前にあるのは見覚えのある自分の部屋の景色と、ルームメイトであるディアボロスのベッドだった。
「何で…あんな夢を見るのよ…」
まるで自分が彼女を奪うことを望んでいるかのような夢、同じ女性である彼女を犯す夢。
「違う…私はそんなこと望んでない……」
彼女と、一緒に冒険できる。
同じチームで彼女とすごせる。
彼女が私を頼ってくれる。
それで満足だと思うのに、夢の中の私はそれで満足していないかのように、無垢な彼女を汚そうとしていた。
「やめて…あんなの見せないで…」
いつか自分が同じことを彼女にしてしまうんじゃないかと怖くなる。
欲望に負けて…彼女のことを…
お腹が熱い…違和感を感じて下着に触ると、それは明らかに汗ではないもので湿っていた。
「最低…私…本当に最低……」
あんな夢を見て濡れてしまっている。
自分自身が汚い存在に思える。
「ん…エルフ…どうかしたの…」
私の気配に気づいたのか、隣のベッドで眠っていた彼女がゆっくりと体を起こす。
「あ…ごめんなさい…起こしちゃった?」
「…エルフ…泣いてる?」
なんとか平静を取り繕ったつもりだったのに、彼女はその気配を読み取ってそれに気づいてしまう。
「ちょっと…怖い夢を見て…」
「どんな夢…?」
彼女が、起き上がって私に近づいてくる、本当はディアボロスではなくクラッズなのではと思ってしまうぐらい彼女は小柄で、同じ年齢とは思えないくらい幼い雰囲気を漂わせている。
「…思い出せない、でも怖かった」
嘘をつく、彼女に嫌われたくなかった。
そうじゃなくても、貴方を犯す夢を見た、なんて言えるわけがない。
「…そう」
彼女が私のベッドのわきに座って私の頭をなでてくれる。
「…もう、怖くないよ」
彼女がすぐ近くにいる。
「…ありがと」
まるで妹が姉を励まそうとするような彼女の姿に癒されて、少し心が楽になる。
お礼のつもりで、彼女の頭をなでてあげる。
うれしそうに彼女は笑った。
「ありがとう…エルフ」
―ほんとの妹みたい―
妹学科という彼女の姿は幼い容姿も合わさって、見事にマッチしていると思えた。
「少し、夢見が悪かったから、シャワーを浴びてくるわ…」
さらさらとした彼女の髪の感触を味わっていたいけど、濡れてしまった下着が気持ち悪い。
それに少し、意識を切り替えたい、とそう思った。
「ん、行ってらっしゃい…」
彼女が優しい笑みを浮かべて手を振ってくる。
替えの下着を持って、私は彼女に手を振って部屋を後にする。
部屋の扉が閉まってから私はその場に座り込んで呟いた。
「ごめんなさい…ディアボロス…」
夢の中で彼女を犯していたことを今更になって謝る、だが、廊下での呟きが彼女に聞こえるはずもない…。
罪悪感を胸に感じながら、私はシャワーを浴びる為シャワー室に向かうのだった。
8 :
マルメンライト:2011/04/11(月) 03:00:25.70 ID:+RMgbWSh
エルフが去った室内で、ディアボロスは体を起して、すんすんと鼻を鳴らす。
「エッチな匂いがする」
先ほどまでの幼い笑みや気配ではなく、容姿とは異なった、妖艶な笑み。
「手を出してくれて良いのに…」
くすくすと笑いながら、彼女は自らのベッドに腰をおろして、パジャマのボタンをはずし、自分の胸を揉みながら、もう一方の手をなれた手付きでパジャマのズボンの中に差し入れる。
「あはっ…気持ち良いよエルフ…」
まるでそれが彼女の指であるかのように彼女の名前を呼びながら自分を慰める。
「早く襲ってくれないかなぁ…早く私を散らしてくれないかなぁ…」
先ほどまでの幼い無垢な彼女はどこにもいない、何かを期待するような妖艶な笑みを浮かべた少女がいるだけ。
「いっそ…」
ぽつりと彼女は小さく呟く
「私がエルフを襲っちゃおうかな…」
くすくすとい分を慰めながら彼女は笑う。
彼女の体が震え、くたりと力を失ってベッドに倒れこむ。
自分の愛液で濡れた手をなめながら、ディアボロスは呟いた。
「エルフはどんな味がするのかな」
くすくすと少女は笑う。
それはまるで男の夢に現れて精気をむさぼるというサキュバスをほうふつとさせる、そんな怪しい笑みだった。
「いつまで、我慢できるかなぁ…」
なにかイタズラを考える子供のような、無邪気な笑顔で彼女はそうつぶやいた。
9 :
マルメンライト:2011/04/11(月) 03:03:21.00 ID:+RMgbWSh
プリシアナ学園、冒険者を育てる学園として、数々の少年少女たちが集い、チームを組む。
その中の一つ、冒険者のチームの中でも一種異様な雰囲気を持った彼らは「アンノウン」と呼ばれていた。
未だ未知数でよくわからないそんな意味を隠されて。
「遅い…あの二人はまだ来ないの?」
イライラした様子のお嬢の少女が傍らに立つ彼、フェルパーに呟いた。
「イライラしないでくれ、お嬢、あいつらのことだからまた寝坊だと思うよ」
「だったら起して今すぐ連れてきなさいフェルパー!主としての命令よ!!」
「はいはい、分かりました、少々お待ちを…」
お嬢と呼ばれたお嬢の少女の言葉に、フェルパーは呆れたようにしながらも素直に従って寮の中に消えていく。
「まったく、あの二人にも困ったものだわ貴方達もそう思わない?」
「まぁ、リーダーなのにいつも寝坊してるしね」
今この場に姿すら見せていない二人の姿を思い浮かべる。
一人はセレスティア、チームのリーダーを務める堕天使の少年、
もう一人はクラッズ、風水師とダンサーというパーティの補助を務める少女
彼らの能力の高さはチームのメンバー全員が理解している。
問題なのは彼らが恋人同士で、毎日のように寝坊することだった。
今日も迷宮探索で遠出することになりそうかもしれないと、言ったのはリーダーであるセレスティアであるくせに、結局未だに彼は来ていない、恋人のクラッズも来ていないということはそう言うことだろう。
「…年頃だから…仕方ないのかもね…」
私の言葉にディアボロスが苦笑いして応える。
その言葉に、私は昨夜の夢を思い出して、罪悪感を感じる。
―年頃だからって、あんな夢見る事ないのに…―
今も彼女と本当に私が一緒に居ていいのか不安になってくる。
「…どうしたの…エルフ、体調悪い?」
顔に出てしまっていたのか、てとてと、とかわいい足音を立てて彼女が私に抱き付いてくる。
小柄な彼女はちょうど私の胸に埋まる形になった。
「大丈夫よ、ありがとう、ディアボロス」
「ほんとに大丈夫?」
上目づかいで彼女が私を見つめる。
心配してくれる彼女はかわいらしい。
汚れのない、無垢な瞳が愛おしい。
私が男だったら、彼女に対するこの気持ちを素直に受け入れられただろうに残念ながら私は彼女と同じ女性として生まれてしまった。
しかも、あんな夢を見てしまうぐらい、彼女自身を欲しているのかもしれない。
「…フェルパー遅いね」
「そうだね…」
彼女の頭をなでながらよこしまな考えを追いやる。
まちがっても、彼女のこの無垢な体を汚してしまうことなんか考えたくない。
自分の汚い想いを胸に封じる。
―この子は私を信頼してるから、居てくれるんだもんね―
初めてあった時から彼女は私を本当の姉のように慕ってくれている。
だから、それに応える為にも、私は彼女に頼ってもらえる私でなければいけない。
彼女に嫌われないために…
10 :
マルメンライト:2011/04/11(月) 03:04:30.92 ID:+RMgbWSh
そんなことを考えていると、フェルパーがずるずると、眠そうな顔をした二人を引っ張ってくる。
「連れてまいりました、お嬢」
二人をつかんでいた手を離し、軽く体についたほこりを払うようなしぐさをしてフェルパーは優雅にお嬢に礼をする。
「遅かったわね、フェルパー」
「道が混んでおりまして」
しれっとした表情でフェルパーが応える。
「なんだ、お嬢、俺にようか?」
セレスティアが眠そうに頭に手を当て黒い翼をはばたかせる。
自分が昨日、何といったのかすら覚えていないのか、はたまたまだ寝ぼけているのかその辺りは良くわからないがセレスティアはいつも通りの反応を返す。
「今日は遠出をするから早く学園を出る、そう言ったのは貴方よリーダーさん」
優雅に扇子のようなものを手にお嬢が彼を非難する。
「ああ、そういやそうだったな、また突然愛の告白でもされるのかと思ったよ」
セレスティアがふざけるようにそうつぶやく。
「オイ、堕天使、俺のお嬢に手を出したらその首を切り落とすぞ」
そんなセレスティアの首に、フェルパーがどこからか取り出した刀を押し当てる。
「オーケイ、フェルパー話し合おうぜ、俺はまだ死にたくない」
降参だというかのようにセレスティアは両手をあげて降伏の意志を表明する。
ある意味いつもの姿だった。
フェルパーはいつも仕方なくお嬢に従っているように見えて、本当に彼女のことを大切に思っていることが良くわかる。
お嬢は分かってるのかは分からないが、きっとフェルパーは彼女の従者であるということ以外にも彼女のことを思っている。
―うらやましい…―
少し、そう思う。
「まぁまぁ…そんなに怒らないでよフェルパー、ごめんねお嬢、私、最近欲求不満でさ、ヤリたくてしかたなかったから昨日セレスティアに解消してもらったんだけど、ちょっとヤリすぎて寝坊しちゃったのよ」
ずれて肩にかかった制服を直しながら、クラッズがようやく口を開いた。
「ヤる?なにをするの?」
お嬢がどういう意味だかわからないといった感じで首をかしげる。
「あれ?お嬢まだバージン?ごめん、じゃ分からないかつまりね…」
彼女が制服や耳につけた鈴がなって、リン、リン…と小さな音を立てる。
「クラッズ…それ以上はやめてもらえるか?」
射抜くようなフェルパーの視線にクラッズが震える。
「ごめん」
あわてた様子でクラッズが口をふさいだ。
「フェルパー?ヤるって何?」
意味が分からないのかお嬢は従者に向かって首をかしげる。
「気にしなくて良い、お嬢には関係ないことだ、クラッズそうだよな」
「うん、気にしないで、それよりま、遅れてごめんね」
クラッズが謝って立ち上がると、フェルパーもセレスティアに押し当てていた刀を服の袖口にしまう。
「んじゃま、行くか」
セレスティアが立ち上がって砂を払う。
セレスティアを先頭にクラッズがその横に並んで歩きだす、お嬢が歩き出し少し遅れてフェルパーが並ぶ。
「…いこ、エルフ」
ディアボロスがかわいらしい顔でほほ笑んで、私の手を引いて歩き出す。
「うん」
これが私の所属するチーム、アンノウンの仲間たちだった。
11 :
マルメンライト:2011/04/11(月) 03:05:54.35 ID:+RMgbWSh
襲いかかってきたモンスターの群れに私は呼び出した精霊を解き放つ。
「いきなさい、サラマンダー」
炎の精霊が暗い迷宮を照らし、パピヨンレディの群れを焼き払っていく。
そのほとんどが灰になるが、耐えきった何体かは私達に向かって襲いかかる。
「ハッハー!!」
セレスティアの笑い声が響き、1対の鎌による蓮撃で更に2体のパピヨンレディが地に落ちる。
「はいはい、みんな頑張って〜」
リン…リン…と鈴の音を鳴らしながらクラッズが傷を治す癒しの踊りを軽快なステップを踏む。
「邪魔よ、消えなさい!!」
お嬢が叫んでブレスで残る4体のパピヨンレディを焼く。
また1体が地に落ちて3体になったパピヨンレディがそれぞればらばらの目標に向かって攻撃を仕掛ける。
1体がフェルパーに、もう一体がお嬢、最後の一体はディアボロスに…。
自分に襲いかかるパピヨンレディを軽く斬り伏せたフェルパーが袖口から何かを取り出し、お嬢に向かうパピヨンレディに投擲する。
「うちのお嬢に、手を出さないでもらおうか」
あとすこし、というところでパピヨンレディが崩れおちる、背中には突き刺さった10本ものナイフ。
「ディアボロス!」
残る一体のことを思い出し、私は背後のディアボロスを見て叫ぶ。
だが彼女は静かにランタンのようなものをパピヨンレディに向けて呟く。
「…言霊」
ゆらり、とランタンの中の炎が揺れ、倒れ伏したパピヨンレディの体から青白い炎があふれ出て健在なパピヨンレディを襲う。
肉体ではなく魂そのものを焼かれたパピヨンレディの体が静かにそのまま地面に倒れる。
最後の一体を倒した私達はようやく張りつめていた気を抜いた。
「つかれた〜」クラッズがそう言って地面に座り込む。
「俺もクラッズに同意見だが…フェルパーはどう思う?」
言葉とは裏腹に疲れた様子を欠片も感じさせない調子でセレスティアがフェルパーに意見を求める。
「お嬢はどう?」
意見を求められたフェルパーは主たるお嬢の少女を見た。
「私は全然大丈夫…といいたいけど、さすがに無理ね」
「エルフとディアボロスは?」
「私も大体おんなじ意見、さすがにこれ以上は魔力も持たないわ」
幾度となく精霊を呼び出し続け、魔力はほとんど底をついていた、あと数回魔法を使うのが限度だろう、ディアボロスも同じ意見なのか小さくうなづいた。
「だそうだよ、リーダー、今日はスノードロップにでも宿をとって休もう」
みんなの意見を確認したフェルパーはリーダーであるセレスティアにそう告げる。
「そうだな、あそこは温泉もあるらしいし、たまには学園以外も良いだろう」
そう言ってセレスティアが道具袋から帰還符を取り出す。
「温泉…楽しみだね…」
ディアボロスはぴこぴこと期待した目で私に抱き付いてくる。
「そうね」
そんな彼女の頭をなでながら、魔法の発動を待つ。
私達の体が光に包まれていく、不意に私は、ディアボロスが見たことのない、怪しい笑みを浮かべていたような気がした。
12 :
マルメンライト:2011/04/11(月) 03:07:06.75 ID:+RMgbWSh
「温泉…楽しみだね…」
無垢な少女を演じながら、彼女に抱きつきそう言った。
「そうね」
そんな私をいつくしむように、エルフが優しく微笑む。
クスリ…
―楽しみなのは温泉だけじゃないんだけどね―
前から考えていた、ある行動を今日実行してしまおう。
―エルフが悪いんだからね…―
私は笑う、本当に楽しみだと
彼女のためにこれから張る甘い罠を考えながら。
13 :
マルメンライト:2011/04/11(月) 03:09:13.58 ID:+RMgbWSh
迷宮の中にいた時は気付かなかったが外はもうかなり暗くなっていた。
いつものようにセレスティアが部屋を5つ取る、しばらくそのままみんなで町を見回り、ご飯を食べて宿に帰った私達は分かれてそれぞれの部屋に向かった。
自分の部屋に着いた私は杖をベッドの脇に立て懸けて、そのままベッドに横になった。
「ふぅ…」
ベッドに横になると今まで感じていなかった疲れがどっと襲ってきて、眠気がやってくる。
そのまま眠ってしまいたくなったが、ふとディアボロスが温泉を楽しみにしていたことを思い出す。
「迎えに行って二人で行ってみようかしら?」
食事まではまだ時間もある。
不意に思い立って、私は自分の部屋を出る。
―ディアボロスの部屋は確か廊下の角を曲がった―
思い出しながら彼女の部屋を目指す、廊下を曲がり目的の部屋を見つけた私は軽くノックする。
「ディアボロス?」
だが、反応は無い。
寝ているのか、それとも出かけているのか?
自分の部屋に戻ろうかと思って歩き出した瞬間、部屋の中で小さな音がする。
―あれ?―
気になって耳をドアにあててみると部屋の中からは確かに彼女の声が聞こえてくる。
ふと、ドアノブをひねってみると、小さな音を立てて扉が開いた。
―あいてる?―
部屋の中は明るい、やはり寝てしまったのだろうか?
では、なぜ彼女の声が聞こえたのだろう?
悪いとは思ったが不思議に思ってそっと部屋をのぞいてみる。
そして、思わぬ光景を目にしてしまった。
「ふぅっ…ふぅっ…」
苦しげな声を抑えながら、ベッドの上で彼女の手が小ぶりな自分の胸を揉んでいる。
―え?―
もう片方の手を自分の下着の中に入れ、荒い息をしながら彼女が手を動かす。
「ふぅっ…ん…んきゅぅっ…」
ピクピクと時折はねながら、彼女は見せたことのない赤らんだ表情で。
彼女が自分で自らを慰めていた。
見てはいけないものを見てしまった、心臓がドキドキして、呼吸が荒くなる。
見てはいけないと思うのに、その光景から目を離すことができない。
幼い彼女からは想像もできないみだらな動きで彼女はその行為に耽っている。
「ふぅー…ふぅー…」
彼女が私に見せたことのない表情をして乱れている。
私の存在を気付くことなく行為を続ける彼女の指は次第に激しくなってその呼吸も、次第に荒いものになる、そして…
「ふきゅぅぅぅ…!」
彼女が小さく叫んで震えた。
達したのだと、私は気付く…。
「うみゅ…」
彼女がごそごそと動きだし、あわてて私は自分の部屋に戻る。
扉を絞め、寄り掛かると、胸の鼓動は激しくなって耳にうるさいくらい脈打っていた。
14 :
マルメンライト:2011/04/11(月) 03:10:16.17 ID:+RMgbWSh
脳裏に焼きついた彼女の姿が離れない。
じわり、と下着が濡れる感触がある。
ふらふらと熱に浮かされたまま私はベッドに横になって、制服のブラウスをはだけさせる。
ブラジャーをはずすと胸の中心のそれはピンと立っていた。
「はぁぁぁ…」
彼女がしていたように、自分の胸を揉むと、いつも以上の快感が私の背中を駆けあがる。
「ディアボロス…ディアボロス…」
彼女は誰を思ってしていたのだろう?
脳裏に焼きついた彼女の姿を思い浮かべて自らのことを慰める。
下着の中に手を入れるとそこはびしょびしょにぬれている。
きっと、これは今の行為で濡れただけではない。
「ホント…最低ね私…」
彼女を汚してしまいたくない、と思いながらも彼女の姿をはっきりと思い出せるくらい最後まで見続けた。
そして、その光景を思い出しながら今もこうして自分を慰めている。
感じる快楽はいつも以上に大きい。
「はぁ…はぁ…」
簡単に私は絶頂までたどりつく。
「ふぁぁぁ!!」
びくびくと快楽に震えながら、いいようもない罪悪感が私の心に渦巻いている。
「…ごめんなさい…ディアボロス…」
気持ち悪い、罪悪感で押しつぶれそうになる。
そんな後悔にとらわれていると、こんこんと部屋の扉がノックされた。
ビクリと震えながらあわてて服を正しながら応える。
「だ、誰?」
「私…ディアボロス…」
扉越しに聞こえてきたのは確かに彼女の声だった。
「ど、どうしたの?」
心の中の動揺を隠しながら私はなんとか口にする。
「…一緒に温泉…いかない…?」
きっと何も知らない彼女がそう言ってくる。
「わ、分かった、ちょっと用意するからちょっと待ってて!」
あわてて濡れた下着を脱いで、新しい下着をはき、更に着替え用の下着をまとめる。
全ての用意を終えた私はなるべく平静を装いながら、扉を開く。
「待たせてごめんなさい、ディアボロス」
いつもの私を演じて彼女の前に立つ。
「ううん…大丈夫」
彼女は私にいつもと変わらない笑みで答えてくれる。
「じゃあ、行きましょう」
彼女の手を取って温泉に向かって歩き出す。
私はこのまま彼女と共に居て良いのか、そんな思いが渦巻いていた。
15 :
マルメンライト:2011/04/11(月) 03:11:23.25 ID:+RMgbWSh
少し私はいら立っていた。
優しい彼女のことだ、温泉を楽しみにしている、ということを匂わせれば彼女は必ず私を呼びに来る、私はそれを待って、わざわざ自慰を披露してあげたというのに、共に温泉に入っている間も何もしてこない。
呼びに行った時、彼女の部屋からはエッチな匂いが漂っていた、きっと私を思って彼女も自慰をしたのだろう。
―意気地なし…―
イライラする、どうして彼女は私を欲してこないのだろう。
―もう、我慢できない…―
彼女がこれ以上動かないのならもう、これ以上私は我慢しない。
―オシオキだよ…エルフ―
これからする行為が楽しみでクスクスと、私は小さく笑った。
16 :
マルメンライト:2011/04/11(月) 03:12:43.75 ID:+RMgbWSh
「…エルフ、髪とかして…」
温泉からでると彼女がそう言って私についてきた。
「仕方ないわね…」
いつものように笑いながらも心の中の動揺は激しいものになっていた。
彼女と一緒に入っている間、彼女の肢体から目を離すことができなかった。
あの無垢だと思っていた彼女のもう一つの姿を知ってしまい、見た目とは違い彼女が私と同じ年頃の一人の少女だということを強く意識してしまう。
そのせいで、抑えている感情が爆発してしまいそうなほど暴れていた。
彼女の控えめな胸から目が離せない、ほっそりとした手足から目が離せない。
彼女の乱れる姿を知り、私の手で乱してしまいたいと思ってしまう。
―駄目だ…そんなこと考えちゃだめだ―
自分の部屋にたどり着く。
―こんな思いを彼女にぶつけちゃいけない―
そんなこと思っていた。
だから私は気付かない、彼女がどこか楽しそうに、くすくすと笑っていることに…。
17 :
マルメンライト:2011/04/11(月) 03:14:02.42 ID:+RMgbWSh
ベッドに腰をおろして、膝に座った彼女の髪をくしでとかす。
「きれいな髪ね…」
「ん…ありがとう…」
彼女がされるがままの様子で、嬉しそうに笑う。
さらさらしたきれいな水色の髪が私の手の中で踊る。
「ねぇ…エルフ…どうだった?」
不意に彼女が呟いた。
「何が?」
彼女の髪をとかしながら彼女の頭を撫でる。
クスクス…と彼女が笑った。
「何って、私のオナニーよ…興奮した?」
ビクリ、と手が止まる。
「…え?」
彼女が何を言っているのかが分からない。
クスクスと妖艶な笑みで彼女が私の目をのぞき込む。
まさか気付かれていた…
「あ…あの…」
「貴方が来てくれたからわざわざ披露してあげたのに…」
彼女に嫌われてしまう…嫌だ…
「エルフ、エッチな子ね…私のオナニー見て、オナニーしたでしょ」
びくりと体が震えてくしをとり落とす。
そこまで彼女は気付いている。
「あ…あ…」
「悪い子だね…エルフ」
彼女が笑う。
「ごめんなさい!ごめんなさい!見るつもりじゃなかったの!」
あわてて彼女にあやまる、怒られる、嫌われる、がくがくと体が震える。
足場がなくなったような不安と絶望が私を包む。
「え〜…その割には最後までじっくり見てたじゃない、私がイクまで…」
「ごめんなさい!許して!嫌いにならないで!私からいなくならないで!」
懇願する私の膝の上から彼女が降りて振りかえる。
小柄なはずの彼女がとても大きく見える。
「ダーメ…」
彼女が怪しい笑みで笑いながらそう言った。
許してもらえない、嫌われてしまった…彼女が私から離れて言ってしまう。
怖くて、体が震える。
「お願いだから…許して下さい…」
涙が勝手に溢れる、彼女のことを失いたくない。
「こんなに人が誘惑してるのに…なんで襲ってくれないの?」
彼女がそう言った。
「え?」
ようやく、私は今までの彼女のセリフを思い出す。
―貴方が来てくれたからわざわざ披露してあげたのに…―
そして、今のセリフ、まるで私に襲ってほしかったというような…。
「だから、そんなエルフ許してあげない…」
言葉と共に私は彼女に押し倒される。
妖艶な、サキュバスのような怪しい笑みを彼女が浮かべている。
「ディ…ディアボロ…ス?」
「貴方を私のものにしてあげる」
言葉と共に彼女は私の唇に自らの唇を合わせてきた。
18 :
マルメンライト:2011/04/11(月) 03:15:37.63 ID:+RMgbWSh
何が起こっているのかパニックになって良くわからない。
ディアボロスが私を誘惑してた?
私をディアボロスのものにする?
困惑する私を尻目に、重ね合わせた唇が開かれて、彼女の舌がこじ開けるよう入ってくる。
「んむっ!?」
私の舌を彼女の舌が絡め取る。
何度も、何度も、私を味わうかのように彼女の舌が私の口をなめていく。
だんだん、何も考えられなくなってきて、されるがままの状態になっていく。
「ふふっ…」
彼女の唇がゆっくりと離れて、唾液が私と彼女の唇をつないで橋を作る。
「甘い唇ね…エルフ…」
「ディアボロス…」
彼女がぺろりと自分の唇を舌でなめる。
その仕草に普段の彼女からは想像もできない色っぽさを感じて胸がドキリと大きく鳴った。
プツン、と頭の中で何かが切れた音がする。
「ディアボロス…もっと…もっとキスして」
私がそう口にすると、ディアボロスが満足そうに笑った。
「良い子ね、エルフ…」
彼女がそう言って再び私の唇をふさぐ。
のばされた舌に今度は自分から舌を絡め、彼女のことを受け入れる。
彼女の唾液を嚥下する。
夢のようだ、こんなふうに彼女の唇をあじわうことができるなんて…。
ゾクゾクと、背中を何かが駆け抜ける。
「脱がすわよ?エルフ」
彼女が離れてそう言うのに私は首を振ってこたえる。
パチンパチンと小さな音がなってどんどん制服が脱がされていく。
―ああ…ディアボロスが…ディアボロスが私を求めてくれてる…―
もはや普段とは違う彼女のことなどどうでもいい、このまま彼女にされて、彼女のものにされてしまいたい。
被虐的な思いが私のことを支配する。
ブラウスが脱がされ、インナーのシャツも脱がされ、彼女が私の上着を引き剥がす。
彼女の髪と同じ色の胸を覆う最後の布が彼女の眼にさらされる。
「ずいぶん立派な胸ね…」
楽しそうに彼女がそう言ってブラを押し上げる。
胸の中心の突起はピンと立ちあがって自己主張をしていた。
「触るわよ…」
「はい…」
「あはっ…!エルフ分かってるじゃない!そうよ、私はそう言う貴方が見たいの!!」
彼女の言葉に、まるで奴隷のように応えると、本当に嬉しそうに彼女が笑った。
私の胸を彼女が少し痛みを感じるくらいの力で揉みし抱く。
彼女に征服されていくようで、頭がくらくらしている。
「応えなさい、エルフ…貴方処女?」
「はい…処女です…」
私の言葉に彼女は満足そうに笑った。
そして、濡れた私の下着を一気に 抜きとる。
「そう…じゃあ、今日でもう処女とはお別れね」
くすくすと彼女が笑って胸の中心を噛んだ。
快感がびりびりと背中を走り、彼女の言葉を必死で理解する。
その言葉の意味を理解した瞬間、私は喜びで胸が張り裂けそうになった。
「はい!奪ってください!私を貴方の女にしてください」
彼女は私の支配者だ、彼女がそれを求めるなら、私はそれを拒絶するわけがない。
胸が彼女の手の中で激しく形を変え、彼女が私を喰らうように胸に噛みつき、なめあげる。
「良いわ!本当に良い!エルフ、こんなに私の想像通りの人なんて、もう誰にも渡さない!!」
ギラギラとした彼女の眼が私を見る。
―ああ…―
激しい彼女の求めがうれしい。
彼女の指が私の濡れた入り口をぐちゃぐちゃとかきまぜる。
「はぁ…はぁ…気持ち良い…気持ち良いです」
19 :
マルメンライト:2011/04/11(月) 03:17:09.15 ID:+RMgbWSh
妄想じゃなくて現実の彼女の指が私を蹂躙しようとしているのがうれしくて仕方ない。
「一人で感じるのはずるいわ、エルフ、私の胸を愛撫しなさい」
「はい!させていただきます」
夢みたいだ、まさか彼女に触ることまで許される。
彼女のブラウスのボタンをはずし、シャツに手をかける。
その瞬間、私の中に彼女の指がゆっくりと挿入された。
―ああ、入ってる!入ってる!―
ゾクゾクした快感に、もはや我慢などできない、今すぐ彼女の胸に触りたくてシャツに手をかけ引き裂いた。
ビリビリと音を立ててボタンがはじけ飛ぶ。
「あら?私のシャツ破っちゃったの?」
彼女がそう告げてハッとする。
「ごめんなさい!早く触りたくてどうしても我慢できなくて…」
「悪い子…」
ギラリとディアボロスの目が怪しく光る。
「はい!私は悪い子です!ですからオシオキして下さい!ディアボロス様!!」
懇願するように彼女を呼ぶ。
満足そうに彼女は笑う。
そして、そのまま私の入り口の近くにあっただいじな部分を思いっきりつまんだ。
「ひゃぁぁぁ!!」
敏感な場所をつままれ私はぶるぶると震える。
「あら?痛かった?エルフ?」
くすくすと彼女が笑った。
「きもちいい…気持ち良いです…」
「そう、それは良かった、ところで私の胸に触らなくていいの?」
挑発するように彼女が小ぶりな胸を揺らす。
「触ります!触らせて下さい!!」
あわてて彼女の胸を覆うブラをずらして小ぶりな胸の感触を味わう。
やわらかくて、温かい…
小さな胸の中心にはへこんだように陥没した乳首がある。
「残念かしら小さくて、しかも私陥没乳頭だしね…」
少し気にしてるのか彼女の顔に陰りがさす。
そんな彼女を勇気づけたくて、私はその言葉を口にする。
「あの…なめても良いですか?」
私の言葉に少し驚いた様子だが彼女はええ、と小さく呟いた。
そして、自分の気持ちを切り替えるように私の中に入った指を激しく出し入れする。
「ふぅぅ!」
激しいその快感に耐えながら彼女の胸にかぶりつく、胸に潜ったその先を舌先で掘り起こすように刺激していく。
「あっ!くぅぅぅ!」
彼女が快感で震え指の動きが止まる。
―気持ち良いんだ…―
彼女が感じていることがうれしくて、へこんだそこを吸い上げるように強く吸う。
「ふぅぅ!!」
彼女が震え、彼女の先がぺこん、と裏返るように飛び出した。
同じ要領でもう片方も飛び出させる。
ビクビクと小柄なディアボロスの体が震える。
「これで…大丈夫です…」
私の言葉に彼女が自分の胸を見る。
「やるじゃない…俄然欲しくなったわね」
ぺろりと彼女が唇をなめる。
20 :
マルメンライト:2011/04/11(月) 03:19:11.63 ID:+RMgbWSh
そして私の中に指が更に2本追加される。
「ふぁっ!」
圧迫感で体が震える。
ゾクゾクした感覚が私を包み、奥深くまで入ってくる。
そして、何かにぶつかって止まった。
「分かる?」
くすくすと彼女が笑う。
「はい…私の処女に指がぶつかってます」
「そう、これが貴方の処女、これから私が散らしてあげる」
散らされる…彼女に散らされる。
「うれしい?」
「はい!」
ゾクゾクと期待が高まってくる。
「初めては痛いらしいわよ?」
彼女が言葉とは裏腹に楽しそうに笑ってる。
「はい…」
胸がゾクゾクする。
「エルフは変態なのね…」
彼女が楽しそうにつぶやいた。
「ごめんなさい…」
気に入らなかっただろうか…不安で彼女の顔を見る。
その瞬間、ブツリと私の中で何かがちぎれる音がした。
遅れて、激しい痛みがやってくる。
「くきゅぅぅ!!」
体が2つにさけてしまいそうな痛みでゾクゾクしてしまう。
「あ…あ…」
パクパクと、空気を求めるように口を開きながら、私のその場所を確認する。
彼女の指を伝って、ぽたぽたと血が垂れている。
「あはは…奪っちゃった…」
楽しそうに彼女が笑っている。
「ああ…」
ぽろぽろと涙が勝手にこぼれる。
「痛かった…?」
不意にいつものディアボロスに戻って私のことをのぞきこんでくる。
「違うの…うれしいの…ずっと我慢してたから…私…もう貴方のものなのね…」
彼女は驚いた眼で私を見る。
「…そんなに思っていたなら…なぜ私を襲わないのよ…」
彼女の眼に涙が浮かぶ…。
「ディアボロス…?」
「求めてほしかったのに…私だって貴方が欲しかったのに…貴方に欲してもらいたくて、何度も何度も誘惑したのに…何で…私を好きって言ってくれないのよ!!!」
「くぁ!」
言葉と共にまだ痛む私の中で彼女が動き出す。
痛みで体が震える。
「好きって言ってよ!私は貴方が大好きなのに!何で好きっていってくれないのよ!!!」
泣きながら彼女が私を犯す。
痛くて、涙が溢れそうになる。
でも…
21 :
マルメンライト:2011/04/11(月) 03:20:48.97 ID:+RMgbWSh
「ごめんなさい…」
彼女に犯されながら私は彼女を抱きしめる。
「怖くって…貴方に嫌われたくなくて…ずっとずっと言えなかった…」
彼女の手が動きを止める。
彼女の本心を聞いて、彼女を苦しめていたことを謝る。
「いまさら遅いかもしれないけど…言わせて下さい…」
「何よ…」
涙交じりで彼女が応える顔は下をむき表情はよく見えない。
「ディアボロス…私は貴方のことが好きです…女同士で気持ち悪いかもしれないけど…私は本当に貴方が好きです…」
ひっくひっく…と彼女の鳴き声が聞こえる。
むちゃくちゃにされたお腹が痛いけど、彼女を苦しめてきた痛みに比べれば、きっと、大した痛みじゃない…。
「私の恋人になっていただけませんか?」
隠してきた、彼女への想いを口にする。
「馬鹿じゃないの…」
彼女が涙声で呟き、顔をあげる。
「初めて…奪われてから…言うセリフじゃないでしょう」
そこにあったのは泣いているけど…うれしそうな彼女…。
「それも…そうかもね」
彼女につられて笑う。
「ありがとう…」
彼女が呟いた。
「私も貴方が…好きです…大好きです…貴方のことを痛くした…我慢できなくて襲ってしまった…こんな私でも…貴方の恋人になって良いんですか?」
泣きながら言う彼女を優しく抱きしめる。
「…ええ、代わりに貴方の初めてもらいますけどね」
冗談交じりに口にする。
「分かった…あげる…だから…貴方の恋人にしてください…」
彼女の言葉に少し驚く…
だけど、そんなことはどうでもいい、目を閉じた彼女の唇を今度は私から奪う。
舌を絡めて、味わって、ゆっくりとその体を離す。
クスリと彼女のように笑う。
「それではお願いしますね…ご主人さま…」
そんな私を見た彼女は何かに気付いたように再び怪しい笑みを浮かべる。
「ええ…まずは最後まで貴方にしてあげる」
そう言って彼女が私の胸を再び揉んだ。
22 :
マルメンライト:2011/04/11(月) 03:22:06.80 ID:+RMgbWSh
「痛い?」
入ったままの手を見ながら彼女が私に問いかける。
「…あの実は私、さっきも言ったんですがマゾみたいで…」
さっきまだ痛いときに激しく動かされたせいか、なんかむずむずする。
「その……気持ちよくなっちゃいました」
ディアボロスがポカンとした目で私をみる。
「…え?なにエルフマジものなの?その場の勢いにのまれたんじゃなくて?」
こくんと彼女の言葉にうなづいた。
ずっと隠してたけど、そのせいで彼女から求められた時、思わず素が出てしまった。
「変…かな?」
私の言葉にプルプルと彼女が震える。
「ごめんなさい…エルフ」
彼女が顔を下げて表情を隠す。
「えっと…ディアボロス…?」
彼女の表情を覗き込もうとした瞬間、私の中の彼女が激しく動いた。
「ふはぁ!」
快感で体がびくびく震える。
そして、再び顔をあげた彼女は楽しそうな目をしてわらった。
「ディアボロス…“様”でしょ?エルフ」
「あ…!はい!申し訳ありませんディアボロス様!!」
彼女に怒られるのがうれしくてゾクゾクと被虐心が刺激される。
「ああ…ごめんなさいエルフ…もう我慢できない…優しくしようと思ったのにエルフがマゾなんて聞かされたらもう我慢できない」
心底楽しそうな笑みを受かべてギラギラした目でディアボロスが私をみる。
―ああ…そんな蔑んでいるみたいに見られたら…―
私も我慢できそうにない。
「あはは!ホント最高!大好きだよエルフ!!」
彼女が笑いながら私の中に入れた手を抜き差しする。
「ふぁぁぁ!」
遠慮なんかない激しい抜き差しに快感で体が震えてしまう。
「私も!私も大好きです!ディアボロス様!」
私の胸を揉みしだきながら、私の中を掻きだすように彼女が激しく私を求める。
ゾワゾワと快感が集まってきて私の中で膨らんでいく。
「ディアボロス様!私イきます!イッちゃいます!」
自分の限界を感じ、彼女にそれをつつみ隠さず全て伝える。
「いいよ!イッて!イきなさい!エルフ!」
彼女の動きが加速する。
「ふぁ!くぅ!ふはっ!もう駄目…」
膨らんだそれが破裂する。
「くふぅぅぅぅ!!」
バチバチと瞼の裏で火花がはじけて彼女の手を締め上げる。
体が収縮して快感で体が震える。
どんどん引き上げられていきついにはそれが落下するような感覚がやってくる。
「あああ…」
ぴくぴくと体が痙攣していた。
くすくすと、楽しそうに笑う彼女が私のことを覗き込む。
23 :
マルメンライト:2011/04/11(月) 03:25:38.46 ID:+RMgbWSh
「気持ちよかったかしら?エルフ」
頭が彼女になでられる。
「はい…」
「そう…」
彼女はそう言っていつものように笑った。
「…それじゃ…今度は私を…初めてだから…優しくしてね」
先ほどまでの彼女とは打って変わってよわよわしい気配を漂わせた彼女に変わる。
「ええ…」
体を起して、彼女と場所を入れ替える。
あの夢のように、彼女の薄い水色の髪がベッドの上に放射状に広がる。
彼女の頬をそっと撫でる。
「お姉さんに任せなさい」
幼い少女に悪戯をするような感覚が私を期待させていた。
「もう、こんなに濡れてるのね…」
「…うん」
スカートをめくると彼女の下着はもうじ十分なほど濡れていた。
「私をいじめて感じちゃった?」
彼女に問いただすように耳元で囁く。
「…その…かなり…」
恥ずかしそうに彼女が顔を真っ赤に染めてうなづく。
「あらあら…そんなに私をいじめるのが良かったの?」
彼女の下着を脱がしながら彼女に聞いてみる。
「だって…エルフいつもお姉さんみたいなのに…ちょっといじめるだけであんな良い声で鳴くんだもん…」
…思った以上に、彼女は大人だったらしい。
下着を脱がせると、ぴったりと閉じた彼女のそこは愛撫しなくても十分なほどに濡れていた。
「…私は痛いのが好きだから良いけど、貴方には多分すごく痛いと思うから、保険のためにもう少しぬらすわね?」
「う…うん」
私の言葉に彼女は弱弱しく応える。
…なんか少しいじめる側の気持ちが分かった気がする。
彼女のそこに顔を寄せ、そっとそこをなめてみる。
「きゃう…!」
ぴくんと彼女が震えた。
「今の…何?」
ゆっくりと彼女が体を起して、私をみる。
「私の舌…」
そう言いながらまだ閉じたそこにゆっくり舌を差し入れていく。
「ふあっ!あったかいのが私の…中に…」
割り開いたそこからはたっぷりと彼女の愛液が溢れてくる。
どんな味がするのか気になって、私はそれをなめてみる。
少ししょっぱい…。
「これが、ディアボロスの味なんだ…」
「あ…恥ずかしい……エルフ…今度オシオキするからね」
―オシオキされる―
なぜかすごくうれしい。
―もう少し味わってみたらすごいオシオキしてくれるかな?―
激しいオシオキへの期待で私は彼女にかぶりついて中の愛液を吸い上げる。
「くひぃぃぃぃ!」
刺激が強いのか彼女は自分の頭を強く抱いて、私の与える感覚に耐える。
「こ…の…!」
顔を真っ赤にして彼女が私を睨みつける。
間違いなく、今度すごいオシオキをされるだろう。
いつしてくれるかわからないけど楽しみでしかたない。
「今はちょっと許してね?今度激しくオシオキして良いから」
「…覚えててよ」
私は彼女への愛撫を再開する。
飛びだしたばかりの乳首をつまみ軽くつまんでみる。
24 :
マルメンライト:2011/04/11(月) 03:26:41.06 ID:+RMgbWSh
「ぴっ!?ちょ!そこは刺激強い!!」
「ご、ごめんなさい!」
多分、またオシオキが増えた。
「…何でエルフよだれ垂らしてるの?」
「ごめんなさい、ちょっと妄想で頭が飛んでた」
まだ敏感な彼女の乳首への直接の刺激は避け、周りをなぞるように揉み、一本だけ指を彼女に入れて抜き差ししてみる。
「ん…」
彼女が眉根を寄せた。
「痛い?」
「だ、だいじょうぶ…でもゆっくりお願い…」
「うん…」
彼女をいたわるように慎重にそこを揉みほぐしていく。
次第に閉じていたそこがちょっとだけ開いていく。
次第に指の動きもスムーズになり、彼女の声にも快感が混じり始める。
指を2本に増やして更にほぐし続ける。
ついに彼女がこらえきれないように私をみて言った。
「…多分…もう…大丈夫」
これから感じる事になる痛みを想像し、彼女の体が震える。
そんな彼女を抱きしめて、そっと耳元で囁く。
「大丈夫…私を信じて…」
私の言葉に彼女が首を縦に振る。
彼女の体と比例するように彼女の中は小さくて狭い、多分この2本でも多分苦しいはずだ。
何度も何度もほぐすように動かし、ついにたどり着いたそこをゆっくりと押し上げる。
「ひっ!」
彼女が痛みに脅えて私の肩をつかむ。
「大丈夫、痛くて耐えられなかったら爪を立てて良いから」
「でも…そんなことしたらエルフが痛いでしょ?」
心配そうに彼女がそう言って私を見上げる。
そんな彼女を心配させないように私は笑顔でそれに応える。
「あらあら…ご主人さまお忘れですか?私…これでもドMですよ」
くすくすと私が笑うと彼女もつられて笑う。
「それもそうね…じゃあ、私の初めてを奪う栄誉をたたえて、貴方の背中に私の傷を刻んであげるわ」
私を攻めていた時のような口調で彼女が笑う。
「それでは…」
ぐっと彼女の中を押し進む。
「ぴっ!?」
痛みで彼女が震えて、背中に彼女の爪が食い込んでいく。
「早く…しなさい…なにやってるの…!」
痛みに耐えながら彼女が言う。
「は…はい!」
ヤバい、ちょっと頭がおかしくなりそうなほど彼女の口調がうれしい。
そんなことを思いながら力をくわえると、ブツリと突然抵抗がなくなって彼女の深くまで指が沈む。
「いったぁぁぁぁ!!」
彼女が大きく叫んだ。
「エルフ…覚えておきなさい…」
「…は……はい!」
―オシオキいっぱいされそう…―
駄目だ、なんかオシオキへの期待で手加減ができなくなってしまいそうになる。
「い…痛い…ですよね?」
「…痛いけど…うれしいよ…エルフが私を大人にしてくれたんだよね…」
ぽろぽろと彼女が涙を流しながら微笑んでくれる。
―あ、妹モードに戻っちゃった―
少し残念だけど、ふとみた手に彼女の初めての証がついてるのをみて、またうれしいという気持ちが満ちてくる。
25 :
マルメンライト:2011/04/11(月) 03:27:49.20 ID:+RMgbWSh
「ええ…貴方を汚してしまったわ」
「…汚されちゃった」
そう言いながらもなんとも言えない達成感が私を包む。
「ねぇ…エルフ…キスして…」
「うん」
彼女の申し出に応えて唇を重ねる。
深く深く…彼女を味わう。
「大丈夫…動いて良いよ…気持ちよくして…」
幼い見かけの彼女がドキリとする言葉を口にする。
「ええ…」
まだきっと痛いはずだから、指はゆっくりと浅い位置で動かし、胸や大切な場所を愛撫する。
「はふぅぅ…」
次第にならすように続けていくと彼女の気持ちよさそうな声が漏れる。
ようやく感じ始めた彼女の中をほぐすように、いたわるように指で刺激を与えていく。
「あ、うぅぅ、エルフ…私…」
何かに脅えるように彼女が震え始める。
「大丈夫よ…イってちょうだい…」
とどめをさすために指の動きを少し強くして、それまで我慢していた彼女の胸の突起をまたつまみ、歯であまがみする。
「ひゃうっ!」
ビクビクと彼女が震える、そして、指を深く押し込んだ瞬間、彼女は大きく目を見開いた。
「ふきゃぁぁぁぁ!!」
指が強く締め付けられ、彼女の背中がそりかえる。
その体がぴくぴくと痙攣を繰り返し、糸が切れたように彼女が倒れ込んだ。
「大丈夫?」
覗き込んだ私の顔が彼女の手で引き寄せられる。
何度目か分からない口づけを交わす。
「…ありがとう、エルフ…気持ちよかったわ」
そう言って彼女はうれしそうに笑った。
「…それにしても、意外だったわ」
「…何が?」
裸のままベッドで抱き合いながら横になり、傍らの彼女に語りかける。
「いえ…私はずっとディアボロスは妹みたいだっておもってたから…」
彼女のもう一つの顔を知って、少し驚いた。
「…怖かった?」
おどおどとした目で彼女が私を見る。
「…その、できれば今度からもするときはあんな感じでしてほしいの…」
恥ずかしい願いだとは思う、自分の顔が赤くなるのが分かる。
そんな私を見た彼女はあの笑みでクスリと、笑う。
「仕方ない子ね…そんなにオシオキしてほしいの」
「ああ…その口調…その目つき…ゾクゾクしてしまいます」
ついつい彼女のもう一つの顔には敬語になってしまう。
「あはは…」
ディアボロスがいつもの彼女に戻って笑う。
「変態さんだね…エルフは…」
「うん…、私のこと…ディアボロスは嫌い?」
「ううん…大好き」
彼女が私を抱きしめて再びキスをする。
幸せな気持ちと彼女の温かさに包まれながら、私達は静かにそのまま眠りにおちた。
26 :
マルメンライト:2011/04/11(月) 03:30:07.88 ID:+RMgbWSh
「ん?」
窓から差し込む朝の陽ざしに目を覚ます。
昨日愛し合った痛みはまだ少し残っていた。
「夢じゃないのね…」
少しまだ不安だった想いが解きほぐされて解放される。
隣ではまだ彼女がすやすやと寝息を立てていた。
「…エルフ…オシオキよ…」
「ええ…どうぞ、ご主人さま…」
そう言って恋人の額にキスをして体を起こす。
制服を身にまとって、体を再び引き締める。
「良し…」
身支度を整えていると、こんこんとドアがノックされた。
「すまない、エルフ、俺だフェルパーだ」
何かあったのかと思い、扉を軽く開ける。
「どうかしたの?」
私の言葉にフェルパーがああ、とうなづく…
「どうやら…ディアボロスの姿がないらしいんだ、何かあったのかもしれない、君は良く彼女と居るから知らないかと思ったんだが…どうした?」
サァっと血の気が引く音がする。
ディアボロスは確かに今私の部屋に居る。
だが、今の彼女は明らかに、私と彼女が行為に及んだと分かる状態だ。
いくらなんでも、まだチームのみんなに打ち明けるには私の覚悟が足りない。
「そ、その大丈夫よ!!ディ…ディアボロスはわた、わたしの部屋に居るからちょ…ちょっと今はまだ寝てるから…」
何とかごまかそうとするが動揺して言葉がうまく伝えられない。
フェルパーが首をかしげると、不意に背後から声をかけられる。
「私がどうかしたの?エルフ?」
「な、なんでもないですディアボロス様!!」
「え?」
フェルパーが私の言葉に驚いた。
「あ…」
つい、彼女の言葉に反応して敬語になってしまった、しかも様をつけた状態で…。
「な、なんでもないのフェルパー、だから大丈夫」
マズイと思って彼に帰ってもらおうとしたところで私の体に手が回されて温かい感触が触れる。
「どうかしたの?」
妹モードに戻ったディアボロスが私とフェルパーを見ていた。
ほとんど裸の、体にシーツを巻きつけただけ状態で…。
27 :
マルメンライト:2011/04/11(月) 03:31:14.68 ID:+RMgbWSh
「…すまない、邪魔をした……」
静かにフェルパーが扉を閉めようとする。
「待ってフェルパー、その襲ってきたのはご主人さまの方で!」
私の言葉に本格的にフェルパーが固まる。
「フェルパー…私のエルフに何か用かしら?彼女ならあげないわよ、ま、初めてはもうもらたけどね」
よりによって再びディアボロス様に戻った彼女がフェルパーにそう言った。
「…いや、何でもない邪魔をした、今日はゆっくり休んでくれセレスティアには今日は休もうと言っておく、あと気にするな…そう言う愛の形もあると聞いたことがある、俺は君たちを否定するつもりはない、ただお嬢の前ではやめてくれ」
もはや完全にバレた。
「…うん」
ただそれだけをつぶやくと静かにドアが閉まった。
「…もうバレた」
「何?私との事がバレたのはそんなに嫌?」
「いえ…そんなことないです、ディアボロス様」
もはや条件反射のように彼女をそう呼ぶ。
「そう…ところでなぜ貴方は服を着ているのかしら?」
「え?」
彼女の言葉に私は凍りつく。
「その…今日でる迷宮探索の準備の方を…」
「今日は休みだそうよ…良かったわね…エルフ…たくさんオシオキしてあげるから」
彼女の言葉に背中がゾクゾクする。
「その…せめてご飯を食べて、温泉に入ってから…では…」
私の申し出に彼女はふむ、と考え込む。
「そうね…じゃあそうしてあげましょう、ただし終わったらオシオキね…」
「はい…」
私の言葉に彼女は満足そうにうなづくと、またいつもの妹モードに戻る。
「…じゃあ、着替え手伝って…エルフ」
「うん…」
「それと…」
「ん?」
「おはようのキス…」
そう言って背伸びして彼女が私の唇を奪う。
私の恋人は、本当に小悪魔のような少女だった。
28 :
マルメンライト:2011/04/11(月) 03:48:44.47 ID:+RMgbWSh
以上で投下完了です。
変換を失敗しておかしくなっていますがお嬢の種族はバハムーンです。
投下完了後の気付きました。
こういう間違いがないように気をつけて直していきたいと思います。
なぜかは分かりませんがドSな子は書きやすいです、すごく。
今回も拙い分失礼いたしました。
>>28 GJ
愛があれば例え主従プレイでも「なにこれかわいい」で済んでしまう不思議! いや不思議なのは俺の頭なのか?
次も楽しみにしています!
ロリでドSで悪魔っていうと
どこぞの隻眼女王みたいだなと思ったのは俺だけでいい
とにかくGJでした
激しいgjをあなたに!最近たくさん投下してくださってありがとうございます!あなたの百合SMは最高です!
残業終わって帰ってきたらレスがすごいことになってて驚いた。
みなさんGJありがとうございます。
ディア子は最初書いてた時は普通の子だったのに普通すぎて話に詰まって
ドSな子にしたら書きやすくなるかな?と思って最初から書き直したら
ものすごく書きやすくなった。
その結果エルフがああなった。
エルフ好きな方ごめんなさい。
ドSな子って書いてて楽しいね。
その結果がこれ、多分書いてる私の頭が末期
>>32 大丈夫、基本女性上位のSSしか書けない俺よかずっと正常だと思う。
今のろのろと執筆中だからもう少しだけ待って欲しい、ここ最近休日返上ばっかで忙しすぎて……愛しのセレ子の喘ぎ声も聞いてない
…久しぶりに定時で上がれた結果、土日に書いていた分も合わせて
新作完成しましたのでまたまた投下します。
前回のディアボロスとエルフたちと同じチームの子達のお話です
諸注意 バハムーン♀×フェルパー♂
エロ要素はあまり多くないかも
それでは今回もよろしくお願いいたします。
35 :
マルメンライト:2011/04/20(水) 01:06:57.15 ID:vzv0bIAY
「ねぇ…あんた何してるの?」
紫色の髪をしたバハムーンの少女がボロボロの服を着たフェルパーの少年に話しかける。
「別に…どれぐらいやったら壊れるのか、試してただけ…」
へこんでもはや元がどんなものであったか分からない金属のそれをフェルパーの少年はただ力をかけてつぶしていく。
「珍しいね…しっぽ2つ」
バハムーンの少女は楽しそうに彼の二股に分かれた尻尾をさして笑っている。
「先祖がえりだからね…」
異様に伸びた爪、二股に分かれた尻尾、尋常ではない力、フェルパーという人でありながら獣の性質をもってしまったビーストと呼ばれる存在。
「先祖がえり、何それ?」
バハムーンの少女はよくわからないといった顔で少年を見る。
「…人間なのに、僕たちフェルパーが人間になる少し前に戻っちゃたやつをそう言うんだって」
だから、人間じゃない…
幼いころに自分を捨てた親はそう言った。
「ふ〜ん、すごいね」
多分まったく理解していないのだろう、無邪気な顔で少女はそう言う。
「すごくなんかない…だって僕は人間じゃないんだもん…」
二股の尻尾がしょんぼりと下を向く。
「なんで?」
「人になる前に戻っちゃったんだから…僕は人じゃないんだよ…」
悲しい、きっとこれはそう言う感情なのだと僕は知っている。
人じゃないのなら何で僕には感情があるんだろう?
「私のパパはすごい冒険者だから私しってるよ、人と人は話し合える、話し合えるから人何だって」
胸を張って彼女は言う。
「だからあんた人でしょ?だって私を話してるじゃない、だからあんたは人」
「はぁ?」
少女はさも当然かのようにそう告げる。
「それよりも…もうこんなに遅いのにこんなところで遊んでちゃパパとママが心配するよ?」
何も知らない少女はそう言って僕を見る。
「…パパとママなんか居ない」
36 :
マルメンライト:2011/04/20(水) 01:08:07.64 ID:vzv0bIAY
僕は捨てられたんだから。
だから僕に居場所なんてない。
「そっか…同じだね」
少女がそう言う。
「え?」
「だって私のパパとママもいつもおうちにいないの冒険者だから、いつも私は一人ぼっち」
さびしいんだろう、だからきっと僕なんかに声をかけたんだ。
「僕の場合はホントに居ないから君とは違うよ」
「ほとんど同じでしょ?」
「それでも、おうちはあるじゃん、僕はおうちすらないんだよ?」
そんな僕の言葉に彼女は何かを思いついたようだった。
「じゃあ、私のおうちに来なよ!!」
そう言って僕の腕をつかむ。
「痛いよ…それになんで僕が君のおうちに行かなきゃいけないのさ」
動物でも拾ったつもりなのだろうか?
馬鹿馬鹿しい。
「だって、私も一人であんたも一人、でも一緒なら二人でしょ?」
「はぁ?」
何が言いたいのか全く分からない。
嫌がる僕を無理やり連れて行こうとする。
「なんできてくれないのよ!!」
「なんできみと行かなきゃいけないのさ!!」
イライラとした気分が高まってきて、彼女に向かってそう叫ぶ。
「だってお友達になってほしいんだもん!!」
そんな僕に、涙を浮かべながら彼女がそう叫んだ。
「は?」
お友達?何でまた。
そんなことを思っていると目の前の彼女はわんわん泣きだす。
「だって…だれも私と遊んでくれないんだもん!パパとママもいないし、みんな私とお話してくれないんだもん!!」
「だから何で僕が…」
「だって…あんたはお話ししてくれるじゃない…」
泣き続ける彼女が嫌になって仕方なく僕は呟いた。
「分かった…行けばいいんでしょ、お友達になれば良いんでしょ」
僕の言葉に彼女がようやく泣きやむ。
「ホント?」
「うん」
「やったーー!!」
本当にうれしそうに彼女が飛び跳ねる。
「人じゃないから友達とは言えないけどね…」
自嘲するような僕の言葉に彼女が頭をたたく。
「いたっ!?なにするのさ!」
「私が人だって言ってるんだからあんたは人なの!!覚えておきなさい!!」
ホントにコロコロと表情が変わるやつだと思う。
「はいはい…」
「そうだ…あんた名前は?」
そう言って差し出された手を取って彼女が笑う。
「僕は…フェルパー」
「そっか、私はバハムーン、みんなお嬢様とか呼ぶけど、フェルパーはお友達だからお嬢って呼んで良いよ」
ほとんど変わってないようだが、彼女の中ではきっと違うんだろう。
「よろしくね!フェルパー!!」
うれしそうに彼女が笑う。
「よろしく…お嬢」
やれやれと思いながらも、初めて自分が必要とされた気がして初めて僕はうれしいという気持ちを知ったのだった。
37 :
マルメンライト:2011/04/20(水) 01:09:19.12 ID:vzv0bIAY
「ん?」
不意に窓から差し込む朝日に気づいて俺は目を覚ます。
「夢か…またずいぶんと昔の夢だな…」
大きく伸びをして体をほぐす。
お嬢と俺が初めてあったころの夢とはずいぶんと昔のことを思い出させてくれる。
「懐かしいもんだな」
案内された家を見て、俺はかなり驚いたことを今でも覚えている。
バカでかい門にバカでかい屋敷、彼女をお嬢様と迎える執事とメイド。
たまたまいた彼女の両親は、彼女が今日からここで俺を済ませてほしいというと素姓も分からぬ俺をみて、ただ一つの質問をした。
「君、家族は?」
「…いません」
「なら今日からうちの息子だ」
それだけ言って温かく迎えてくれた。
それからは驚きの連続だった、初めてまともな服を着て、初めてまともな食事をした。
冒険者である彼女の両親は確かに家にいる事は少なかった、周りには多くの人間がいたが、そのなかに彼女と同じような年の人間がいるわけもない。
だから俺達は二人で遊んだ。
イタズラをして二人でメイド長に怒られた。
姉弟のように育ち、成長していく中で俺は彼女から受けた恩を返す執事として彼女に仕える為の勉強をした。
立ち振る舞い、知識、心得、そして何より、彼女を守るために戦う技。
そうして、冒険者を目指す彼女と共にあるために、共に冒険者を目指し、このプリシアナ学院で過ごすようになった。
「お嬢がいなけりゃ今の俺はいないな」
笑いながら、いつものように鏡の前にたっていつものように髪を手入れし、もはや普段着となった燕尾服に袖を通し意識を引き締める。
そろそろお嬢を起こす時間だ、彼女を寝坊させるわけにはいかない。
「良し!」
どうせ彼女を起こした後は他の色ボケ4人を起こさなければいけない、めんどくさくて仕方ないが、それも俺の仕事のうちだ。
「それでは旦那様、奥様、行ってまいります…」
彼女の両親は、息子が娘の執事になるとはおかしなことだと笑ってくれた。
俺を本当の息子のように可愛がってくれた彼女の両親の写真に礼をする。
こんなことをしていたらまだ生きてるのに縁起でもないときっと笑うだろう。
だから部屋を出る前にもう一度、振り返って俺は言う。
「んじゃあ、父さん母さんいってくるわ」
彼らの息子として、いつもの日課を終えた俺は自分の仕事をするために静かに部屋の扉を閉めた。
38 :
マルメンライト:2011/04/20(水) 01:10:11.72 ID:vzv0bIAY
「遅い…」
俺の主人でもあるバハムーンの少女が紫色の髪を弄びながら、明らかにいらついた声で呟いた。
「…またいつも通りか」
懐かしい夢を見て上機嫌だったが予想通りの展開に俺は思わず呆れたように呟いた。
チームで集まる約束だったはずの会議室には約束の時間をすぎても俺とお嬢の二人しかいない。
「そう思うなら、フェルパー、貴方が何とかしなさいよ」
俺の呟きに、ギロリとお嬢が苛立ちを隠さずにそう言い放つ。
「そう言われても、俺にだって無理なことはあるさ」
俺が執事となって長い、もはやいつものお嬢の無理難題をさらりと受け流す。
「それでも、なんとかしなさいよ、最近はエルフとディアボロスまで寝坊してるんだし、何か理由とか分からないの?」
普段、みんなの前とは少し違う口調でお嬢が話す。
「…知らなくはないが、お嬢にはまだ早いよ」
俺は数カ月ほど前までは同じようにとある馬鹿たちを待って座っていた彼女たちの席を見て呟く。
理由を知らないわけじゃない、だがそれをお嬢に知らせるのはどうかと思う。
「いつもフェルパーはそう言うけど、一体何が早いっていうのよ!!」
いつも通りのやり取りに彼女がイライラした声で叫ぶ。
「いつかはお嬢も分かる、それまでは知らなくて良いんだよ」
見た目とは違って、彼女はいろいろと幼かった、だから俺はいつものように返す。
「そうやっていつもいつも…」
「あ〜、怒んなよ、お嬢、今起してくるから少し待っててくれよ」
本格的に怒りだしそうな彼女から逃げるように俺は席から立ち上がる。
「フェルパー…」
まだ彼女が何か言ってくる。
「何だお嬢?」
「…なんでもない、早く起こしてきなさい」
明らかに彼女は何か言おうとしていたはずなのにそれをやめてそう告げる。
「はいはい」
彼女に促されるまま、俺は会議室を後にするのだった。
39 :
マルメンライト:2011/04/20(水) 01:11:05.06 ID:vzv0bIAY
パタンと小さな音を立て、フェルパーが会議室を去っていく。
その背中が見えなくなると私は大きくため息を吐いた。
「ああ〜もう!折角二人っきりだったのに何してんのよ!!」
また彼にあたってしまった。
わがままな女だと思われていないか心配になる。
「あ〜もう、なんで素直になれないかな私は…!」
ホントは折角の二人きり何だから昔のように話をしたい。
彼と笑いあいたい、いくら彼がいつもそばにいてくれても、他のみんなには秘密で話したいことだっていっぱいある。
「あ〜むしゃくしゃする〜、なんで他のみんながいるときは普通にできるのに何で二人っきりだとまともに話せないんだろ?」
姉弟のように育ってきたのに、なぜか、最近彼と話しづらい。
二人きりだと胸がドキドキして苦しくなるし、何かを考えるとすぐ彼の顔が頭に浮かぶ、
落ち着かなくなって、結果としていつも辛くあたってしまう。
―病気かなんかなのかな?―
「は〜…なんか原因が分かればマシなんだけど…」
―いっそ他のみんな相談してみようかな?―
幸い、うちのチームには私以外に3人も女性がいる、同じ女性ならもしかしたらこの原因が分かるかもしれない。
「う〜、何でだろ気になるな〜?」
この原因が分からないといつまでたっても彼に辛く当ってしまいそうで嫌になる。
「ほんと、よくわかんない…」
とりあえず、今は彼が他のみんなを呼んでくれるのを、私は一人でただ待つだけだった。
40 :
マルメンライト:2011/04/20(水) 01:21:18.64 ID:vzv0bIAY
いつも通り俺はセレスティアとクラッズを引きずって会議室を目指す。
「お前らもいい加減に学習しろ、同じバカップルでもエルフたちはまだ自分で歩く」
このバカ二人には今頃会議室でお嬢の相手をしてくれてるはずの彼女達ぐらいの考えを持ってほしくてそう背後の二人に告げる。
「無理だな…あいつらとはそもそもの回数が違うからな、一晩で両手で数えられる程度しかしないやつらと比較されても困る」
だが、それを聞いたセレスティアは俺に引きずられながらもいつもの調子で話す。
「まったく、お前は…、お嬢の前では少しは自嘲しろ、今度は本気でお前を狙うぞ」
そう言って袖を揺らすと、その中に隠したナイフがぶつかり合ってジャラジャラと金属質な音を立てる。
「まぁ、落ち着いてって、フェルパー、それよりさ、お嬢が大切なのは分かるけど、いつまでも大人になったら分かるって言うのもやめた方が良いと思うよ?」
ようやく自分で歩き出したクラッズが不意にそんなことを口にする。
―お嬢が無垢なことの一体、何が悪いというのか―
そんな俺の心の内を見透かすように鈴の音を響かせながらクラッズが呟く。
「お嬢だって年頃だしね、近い将来、そう言う知識が必要になるかもしれないじゃん、悪いやつに騙されないためにも必要だとおもうよ?無垢と無知は全然別物だし」
チリン…と鈴を鳴らしながらクラッズが歩く。
お嬢が、いつか誰かのものになる、そんな想像が嫌になる。
苛立ちと独占欲が俺を包んで覆おうとしてくる。
「少し黙ってくれ、クラッズ」
だから、そんな思いを振り切るように、ほぼ八つ当たりぎみに彼女にそう告げて黙らせる。
ビクリと彼女が震えて鈴が奇妙な音を立てた。
41 :
マルメンライト:2011/04/20(水) 01:22:17.06 ID:vzv0bIAY
そんな俺を見たセレスティアが自分で立って俺を厳しい目つきで睨みつける。
「おい、フェルパー、人の女に当たんな…殺すぞ」
ゾクリと背中を刺すような殺意が俺に向けるセレスティアの目。
「……悪い」
「俺に謝ってどうする…クラッズに謝れよ」
普段の飄々とした態度からは想像もできない強い口調でセレスティアが告げ、俺の腕をつかむ。
一般的なセレスティアという種族からは考えられない強さで腕が握られギリギリと音をたてた。
「…すまなかった、クラッズ」
「ん、別に良いよ、セレスティアも怒んないでよ、まったく…」
「これでもお前を愛してるからな」
クラッズの言葉に軽口で返しながらセレスティアはようやく手を離す。
「あはは…」
少し照れたようにクラッズが笑うと、それに合わせて鈴が澄んだ音を立てる。
素直に、愛情を伝えられるセレスティアとクラッズがうらやましかった。
お嬢に対して、自分が主従や長年連れ添ってきた姉弟以上の感情を持っているのは気付いている。
だが、自分を救ってくれた彼女に、そんな思いを抱いてしまって良いのかという思いが俺を縛っている。
姉弟のように育ってきたのに、そう思ってしまう。
―…俺はお前らがうらやましいよ……―
心の中で一人呟く、そしてよぎった思いを振り切るようにセレスティア達に向かって言った。
「それより、早く会議室に行くぞ、お嬢をこれ以上待たせたら俺の沽券にかかわる」
「おいこらやめろ、いま良いところなんだ」
「あー制服が伸びる〜」
文句を言い続ける彼らを引きずって俺は会議室に急ぐのだった。
42 :
マルメンライト:2011/04/20(水) 01:27:33.98 ID:vzv0bIAY
襲いかかるモンスターの群れを蹴散らして、私達はひたすら進む。
今私達は、届け物を持ってタカチホ義塾を目指している途中だった。
「…あつい、フェルパー飲み物…」
見つけた洞窟の冷たい床に腰をおろしながら私は自分の従者にいった。
「はいよ、お嬢…」
私の言葉に、フェルパーがそう言って冷えたお茶を差し出してくれる。
それを飲んで体を冷やしながら、熱いだろうに燕尾服を脱がないフェルパーには少し驚く。
「エルフ…おんぶして…疲れちゃった」
「はい!もう喜んで!……じゃなかった、仕方ないわね…ディアボロスは…」
最近、妙にディアボロスと妙に仲の良いエルフが何かあわてながら疲れたのかへたり込んだディアボロスを背負う。
「…さすがに熱いな…炎熱櫓は…」
「…鈴が熱い…」
言葉の割に苦しそうではないセレスティアと対照的に疲れ切ったクラッズは冷えた洞窟の床に寝そべりながら呟く。
「予想外に消耗が激しいな…フェルパー状況的にどう思う?」
床に寝そべったままセレスティアがそう言うと、額の汗をぬぐいながらフェルパーが全員の状態を確認する。
「お嬢はどうだ?」
「…見れば分かるでしょ」
熱さで応えるのも億劫になってつい苛立ちを彼にぶつけてしまう。
「悪かった、一応、病人とかはいないみたいだが…」
「…ああ、熱すぎて苦しくてゾクゾクする……」
他のみんなの様子を確認してセレスティアにフェルパーが何かを言おうとした瞬間、ぽつりとエルフがどことなく嬉しそうに呟いた。
―なんで苦しいとゾクゾクするんだろう?―
熱いせいで彼女も少しおかしくなってるのかも知れない。
背負われたディアボロスが心配そうに彼女を見ていた。
「…セレスティア、どうやら一人重症者がいるようだ、末期になる前に休ませる必要がある」
エルフを軽く見てフェルパーがセレスティアにそう告げた。
「…しかたないな」
やれやれ、といった感じで立ち上がる。
「フェルパーはまだいけるか?」
「俺はな」
「そうか俺もだ」
セレスティアの言葉にフェルパーはそれだけつぶやいた。
「決まりだな、全員聞け、あとエルフは帰ってこい」
バサリと黒い翼をはばたかせてセレスティアがチームのメンバー全員を見る。
「大丈夫…ご…ディアボロスの柔らかさのおかげでちょっと正気に戻れた」
「それはなによりだが末期レベルは上昇してるぞ、それでだが、このままだと辛いだろうから、取り合えず女性陣はここでそのまま待機、俺とフェルパーでトコヨ目指して、後で迎えにくる」
「え?それ大丈夫?」
セレスティアの言葉にクラッズが不安そうに言う。
43 :
マルメンライト:2011/04/20(水) 01:32:19.11 ID:vzv0bIAY
「このままお前らに無茶させる方がマズイだろ特にディアボロス、お前実はかなり限界にきてるな?」
セレスティアがそう言ってエルフの背におぶさっているディアボロスを見る。
「…そうなん…そうなの?ご…ディアボロス?」
「…エルフと少し二人っきりにさせてくれれば回復するわよ、これくらい……」
いつもの弱弱しい雰囲気ではなく、どこか大人びた口調でそんな風に応えるディアボロスだがその声には確かに疲弊の色が混じっている。
「アホか、倒れてエルフに心配かけたいのか?」
セレスティアに言われ、エルフを見た彼女はため息を吐いた。
「…分かったわよ」
「そう言うわけだ、お嬢、少しの間フェルパー借りるぜ?」
「…仕方ないわね、フェルパー、早く迎えに来なさいよ?」
「分かってるさ、お嬢」
私の言葉にフェルパーが笑う。
本当は2人だけで行かせるなんて心配だけど、私も疲れているから彼の足を引っ張ってしまうかもしれない。
生まれながらのビーストの彼と、他のセレスティアはどこか異なったセレスティアこの二人だからこそ、なれないこの環境でも耐えられるのだろう。
仕方なく、その言葉にうなづくと、フェルパーとセレスティアが洞窟から出ていく。
「フェルパー…」
―ケガしないでね―
「ん?なんだお嬢?」
「…何でもないわ、早く行きなさい…」
言いかけた言葉を飲み込んでごまかすと、やれやれと、彼が苦笑してセレスティアと共に出ていった。
44 :
マルメンライト:2011/04/20(水) 01:35:51.07 ID:vzv0bIAY
彼の姿が見えなくなると、他のみんながいるにも限らず私は大きなため息を吐いてしまった。
「何やってんだろ私…」
気をつけて、それが言いたかったはずなのに結局言えなかった。
どうしても彼を見るとへんな感じになってしまう。
後悔の念が私を襲う。
「どうかしたのお嬢?」
そんな私をみたクラッズが声をかけてきた。
不意に、今朝私は彼女たちに相談しようと思っていたことを思い出す。
ちょうど、今は私達女性4人だけだった。
「…すこし、悩みがあるんだけど、聞いてくれないからしら?あと、できればエルフとディアボロスにも聞いてほしいの…」
「うんいいよ、ディアボロスちょっと動かすね」
「…うん」
私の話を聞くために、エルフが少し近くによって床に座り、ディアボロスの頭を膝に乗せて横にならせる。
クラッズも私のそばに座った。
「んで、聞いてほしい悩みって?」
クラッズがそう言って私に話を促す。
「うん…なんか最近私、どうも変なの…フェルパーを見てると胸がドキドキして苦しくなって。
昔は普通に話せたのに、最近はどうしてもわがままとか文句ばっかり言っちゃって…」
私の話を3人は真剣に聞いてくれる、彼女たちなら何か分かってくれるかもと私はその悩みを打ち明けた。
45 :
マルメンライト:2011/04/20(水) 01:39:07.81 ID:vzv0bIAY
「…なんか私、病気なのかな?」
そう言って私が締めくくると、クラッズが何かおかしなものでも見るように私を見ていた。
「…いやまぁ、ある意味病気かもしれないけどさ…これは言っても良いものだと思うかな?エルフ」
「…さすがに、フェルパーだって許してくれるでしょ、何よりお嬢の悩みなんだし…無垢と無知はちがうんだし、教えてもいいと思う」
ひそひそと彼女たちが顔を合わせながら会話する。
なんなんだろうと、不安になりながら私は彼女たちが何か言ってくれるのを待つ。
しばらくひそひそとした会話が続いていたが、耐えられなくなったようにディアボロスが呟いた。
「…別に普通よ、お嬢だって女なんだから恋愛感情だってもつでしょうが」
「あ」
「言っちゃったよ…」
ディアボロスの発言にひそひそと話しあっていた二人がおもいおもいの言葉を口にした。
とうの私は予想外の答えに驚いて明らかに普段と様子の違うディアボロスへの違和感を忘れる。
「恋愛感情…って、え?」
―フェルパーみてるともやもやして、恋愛感情?―
言葉の意味を理解できず困惑する私を見ながらディアボロスがエルフの膝から体を起こす。
そして、その首に手をまわした。
46 :
マルメンライト:2011/04/20(水) 01:41:27.88 ID:vzv0bIAY
―恋愛感情ってつまり…―
「言葉だけじゃ分かんないでしょ…見せてあげるわよ」
くすくすとディアボロスが笑う。
「ちょっ!ディアボロスそれはマズイでしょ!?お嬢!お嬢が見てるって!!」
クラッズがディアボロスのしようとしていることに気付いたのかあわてて止めようとする。
だが、それよりも早く、ディアボロスがエルフの唇を私の目の前で奪った。
「ふむっ!?駄目、ご主人様!みんなが見てる!!」
あわててエルフがディアボロスから離れてそう言うがその首を再びディアボロスが抱き寄せる。
「はっ…!しった事じゃないわね、良い機会だからみんなに貴方が誰のものか教えてあげなさい」
「はむっ!?」
ぬちゃぬちゃと二人が目の前でキスをしていた、ただ昔読んだ絵本で王子様がお姫様にしていたのとは全く違う、まるでディアボロスがエルフのことを食べているかのような絡み合うキスに私は何が起きているか分からない。
なぜか胸がドキドキして、目をそむけた方が良いのだろうかと、そんなことを考える
その間にもディアボロスの行為はどんどんエスカレートしてエルフの制服の隙間から手をその中に滑り込ませていく、エルフの制服の中でディアボロスの手が動きまわっているのが分かる。
「ふぁっ!ご主人様そんなとこつかんじゃ…ふぁ、入ってる入ってる!!」
「熱くてイライラしてたのよね…エルフも欲しいでしょ?」
ディアボロスがエルフのことを押し倒し、ごそごそと動くたびにエルフが悲鳴をあげる。
「ふえっ!?どういうことどういうこと!?恋愛感情でどうしてそうなるの!?」
「ストーップ!落ち着いてお嬢、ちゃんと話すから落ち着いて、というかむしろ目をとじなさい!あとディアボロス、それ以上続けてお嬢に見せたら本気でフェルパーに殺されるから!!エルフも喘いでないで抵抗しなさい!!!」
クラッズがあわてて場の混乱を収めようと叫ぶとあわてる彼女の心を表すかのように鈴の音色が洞窟に響くのだった。
47 :
マルメンライト:2011/04/20(水) 01:45:22.73 ID:vzv0bIAY
「あはっ…残念」
叫ぶクラッズを見て、くすくすと笑いながらディアボロスがエルフを解放して座った。
そして手に付いた何かをペロペロとなめる。
「とりあえずこれで我慢してあげる、おいしかったわよ、エルフ」
「…最後まで食べてもらいたかった……」
残念そうにエルフが呟いて、乱れた制服とスカートを直しながらディアボロスの隣に座る。
「ど、どういうこと?」
まだ少し混乱している私の肩をクラッズがつかんだ。
「いいから落ち着きなさい、ちゃんと教えてあげるから」
真剣な彼女の顔に私はただうなづいて大きく深呼吸を繰り返す、呼吸が整ってきたのを見るとクラッズが再び座った。
「いや〜焦った、ディアボロス、マジでお嬢の前でヤるつもりだったでしょ」
苦笑いしながら場を混乱させた張本人をクラッズが見る。
「ただでさえ熱いのに更に暑苦しくさせるような話聞いたらいっそ見せつけてやろうかって思うじゃない」
「…その、私は別にご主人様が望むならそのまましていただいてもよかったんですが…」
普段とは全く異なった口調でしゃべるディアボロスに横に座ったエルフが頬を染めながらもじもじと体を揺らせた。
「せめて夜にしなよ、私だって野外でヤったりするけど夜みんなが寝てからしてるんだし」
彼女達は一体何の話をしてるんだろうか?おいてけぼりにされた私はぽつんと彼女たちを見ながら座っていた。
「あ、ごめん話戻すねお嬢、さっきの話だけど、ディアボロスの言うとおり別に普通だよ、病気とかじゃないから安心して」
「…そうなの…良かった、でもじゃあなんで?」
病気ではないと聞かされようやく私はすこし安心する。
そんな私をみて、クラッズは言葉を選ぶように何か考えながら口を開いた。
「あのさ、お嬢、お嬢がフェルパーに感じてるのはね、私がセレスティアに対して感じてるのと同じものなんだけど…分かる」
「…クラッズがセレスティアに感じてるのと同じ?」
―クラッズがセレスティアと一緒にいるのは恋人だからよね?それで、そのクラッズがセレスティアに感じてる感情ってことは…―
「え?まさか…」
ようやく、私はその意味を理解してそう呟いた。
「ちなみに私がエルフに対して持ってる感情とも一緒ね」
くすくすと、大人びた表情でディアボロスが笑う。
48 :
マルメンライト:2011/04/20(水) 01:47:27.46 ID:vzv0bIAY
「…もしかして、私、フェルパーのことが好きなの?」
自分で口にして、一気に恥ずかしくなって顔が熱くなる。
言われてみれば、本で読んだことのある主人公が確か私と同じ様なことを言っていた気がする、何でそんなことに気付かなかったんだろう、しかも、他のみんなに相談までしてしまった。
「…いや、どう考えてもお嬢フェルパーのこと好きでしょ、フェルパーのこと考えると胸がドキドキするとか二人っきりだとわがままを言うとか…」
「言わないで!!さっきの話は忘れて!!」
クラッズがにやにや笑いながらさっき私が口にしたことを口にする。
恥ずかしすぎて死んでしまいたい。
「…まぁ、お嬢のことだからなんとなくそうだとは思ってたけどね」
エルフがそう言って私を見る。
「私…どうしたらいいの?」
「はぁ?普通に告白すればいいじゃない」
何をいまさらとばかりにディアボロスがそう言って足を組む。
なんとなく、今のディアボロスは普段を知ってるだけに怖かった。
「で、でも…フェルパーにいつもわがまま言っちゃってるし、そもそも姉弟みたい育ってきたから…私のことなんて…」
自分の気持ちを知ると今まで彼にしてきたことへの後悔の念がやってくる。
―私なんか…好きになってくれるわけないよね―
悲しくて、涙が出そうになる。
「…別に私はそんなこと気にしなくていいと思うけどね」
そんな私にふとエルフがそう言った。
「え?」
「お嬢は不器用だって、きっとフェルパーは分かってるんじゃない?だってずっと一緒に育ってきたんでしょ?貴方が嫌いだったら、貴方のために執事なんかになろうと思わないじゃない」
やさしく姉のようにエルフはそう言って笑った。
「うん、私もエルフとおんなじ意見かな、お嬢のことずっとみてたならそんなこと気にしないでしょ」
クラッズはそう言って鈴の音を鳴らす。
チリン…と優しい音色が辺りに響いた。
「…大丈夫でしょ、私なんか告白する前にエルフの初めて散らしたし」
さらりとディアボロスがそんなことを口にする。
49 :
マルメンライト:2011/04/20(水) 01:49:29.23 ID:vzv0bIAY
「…初めてってなに?」
さっきからたまによくわからない言葉が混じる。
「んー…まぁ、お嬢も好きな人がいるってわけだし、必要な知識だから教えておいた方がいいかな?」
クラッズがディアボロスの言葉を聞きながらエルフを見る。
「うーん、いっそお嬢に聞こうか?」
「お〜名案だね、私達も良いわけできるし」
エルフの言葉にクラッズが賛同する。
「えっと?」
困惑する私に向かってクラッズが向き直った。
「あのさ、お嬢、実際にフェルパーと恋人になった時のために、他の恋人たちの経験談聞かない?」
なんとなく、不安を感じながらも私はそれにうなづいた。
50 :
マルメンライト:2011/04/20(水) 01:50:23.05 ID:vzv0bIAY
「遅れてすまない…」
何とか宿まで辿り着いた上でセレスティアの魔法を使ってお嬢たちが待っている洞窟まで戻ってくる、結局1時間近くかかってしまったお嬢に叱られる覚悟でそう言って洞窟に入った。
だが、反応は予想外のものだった。
「…おかえりなさい」
なぜか頬を少し染めてお嬢がただ小さくそう告げる。
「…あ、ああ、大丈夫かお嬢」
「う、うん!大丈夫、フェルパー達のおかげでだいぶ休めたよ」
―オカシイ―
普段なら絶対言いそうにもないセリフを彼女が口にする
何かあったのかと思いながら他の3人をみると何やらニヤニヤした顔で俺とお嬢を見ていた。
「何があったお嬢…」
「う、ううんみんなと話してただけだよ」
明らかに嘘をついてる感じだった。
やっぱりお嬢を置いていったのは失敗だったかもしれない。
どんな話をしたのか聞きだそうと服の中に隠していた刀を取り出し…
「ストップ、フェルパー話の続きは宿についてからだ、重病人が2人に増えてる」
その刀をセレスティアが抑えてそう言った。
「なに?」
セレスティアに言われるままにみわたすとエルフとディアボロスがぐったりとした表情で二人は洞窟の床に寝そべってる。
「宿、取ってきたんでしょう、それならさっさと行こうじゃない」
ディアボロスが髪を掻きあげ立ち上がる。
「…宿、温泉、オシオキ……」
そしてエルフはそのディアボロスに寄り掛かるようにして言葉少なく立ち上がる。
「…たしかにその通りだな」
いくら部屋は別でも同じチームである以上、話はいつでも聞くことができる。
「んじゃ、セレスティアお願いね〜」
チリンと鈴を鳴らしながらクラッズがセレスティアと手を絡める。
お嬢がそれをうらやましそうな目で見ているのを見ながら、セレスティアの魔法によって俺達はその洞窟を後にするのだった。
「あ〜生き返る〜」
トコヨにつき、宿の広間に用意された扇風機にあたって冷たい飲み物を飲みながらクラッズが呟いた。
エルフとディアボロスは宿に着くなりセレスティアから鍵を奪って真っ直ぐ部屋に向かっていった。
その結果、残ったのは俺とお嬢とセレスティア、そして今涼んでいるクラッズの4人だった。
51 :
マルメンライト:2011/04/20(水) 02:00:08.31 ID:vzv0bIAY
「で、お嬢に何きかせた?」
「何だっていいじゃん、女の子同士のお話、お嬢もいろいろと悩んでて誰かに相談したかったんだってさ、ね?お嬢」
アイスを咥えてクラッズがお嬢にそういう。
「ええ、悩みを聞いてもらってスッキリしたわ」
先ほどまでおかしかったお嬢の様子も今は一応もとに戻っている。
「…お嬢がそう言うなら俺は何も言わん」
「それでいいんだよフェルパー、男が男同士でしか話せない話があるように女だってそう言う話をしたい時もあるもんだ」
セレスティアはクラッズのように冷たい飲み物を飲みながら、羽を動かしてクラッズのことをあおいでいる。
「ところで、フェルパーなんでも今日は祭りがあるそうだ、どうせ夕食までは時間もある、お嬢と一緒に行ってこいよ」
「なんで俺とお嬢が…」
「…フェルパーは私とは行きたくないの?」
からかうようなセレスティアの口ぶりに、断ろうとすると、お嬢がそう言って俺を見た。
やっぱり、何かがおかしい…。
「いや…だよね…やっぱり、私みたいなわがままな女なんか」
「…お嬢?」
なぜ彼女は泣きそうになんだろう?
誰が彼女を悲しませている?
「ごめんなさいフェルパー…」
―泣くなよ…お嬢…―
もし、彼女が俺を想ってくれているなら…
俺は悩むことなど無いんじゃないか?
気付いた時には彼女の手を掴んでいた。
「…フェルパー?」
何で自分がそんなことをしているのか分からない。
ただ、俺が言うべき言葉は何なのかそれだけは分かる。
「行くんだろお嬢…だったら制服よりかはもっと良い服着て行こうぜ?」
「あ…、うん!!」
俺の言葉にお嬢が本当にうれしそうに笑った。
まるで、彼女とはじめてあったときのように…
―…悪い、父さん母さん、俺にはやっぱ無理だった―
主としてなんか見れない、姉としてなんか見れない。
もしかしたら、俺の勘違いで彼女はただ祭りに行きたいだけかもしれないけど。
それでも良いから自分の気持ちを彼女に伝えたい。
そのためにはこの格好では行けない。
「おい、セレスティアにクラッズ、お嬢に良い服を用意してやってくれ」
それだけ言って俺は広間をあとにする。
「おい、フェルパー?」
セレスティアとお嬢が俺に心配そうな声をかける。
「心配すんな、着替えるだけだ、折角お嬢に誘ってもらったんだしな、たまには燕尾服以外にしないとな」
そう言って俺は広間を後にした。
52 :
マルメンライト:2011/04/20(水) 02:11:34.00 ID:vzv0bIAY
「あいつ…燕尾服以外の服持ってたんだな…」
「それはそうでしょうよ、それよりお嬢の服考えないと…」
「…えっと?」
「はーいお嬢!これはもう勝負下着着けて試合に行くしかない!服は浴衣、もし勝負下着がないなら下着はつけるな!!」
「ふえっ!?勝負下着って!わかんないよそんなの!でも下着なしはイヤ!!」
「なら私についてくる!!」
クラッズとお嬢は何やら忙しそうに出ていく。
「…置いて行かれたがまぁいいだろう、にしてもフェルパーにしては珍しいな」
そんなことを考えているうちに俺はあることに気付いた。
「…なるほどね、なかなか面白い考えだ」
―だが、それで良いフェルパー―
ちゃんと向き合う気になったアイツを少しだけほほえましく思うのだった。
53 :
マルメンライト:2011/04/20(水) 02:22:33.49 ID:vzv0bIAY
「フェルパー…だよな?」
しばらくして着替えを終え戻ってきた俺をみてセレスティアは失礼なことにそう言った。
「他の誰に見える」
証明するかのように二股に分かれた自分の尻尾を見せつける。
「お前が燕尾服以外を着てるところ見たことがなかったもんでね、それにしても結構にあってんな」
「執事になる前は奥様が服を選んでくれたんだがな、もともとタカチホの人間だったらしくてこういう服ばっか俺に着せるんだよ」
そう言う俺の恰好は、燕尾服の次に着なれた男物の着物だった。
「お嬢は、もう少しかかるか?」
「…いや?多分すぐ終わるとは思うぜ、今ごろ帯をつけてるだろ、にしても…お前思い切ったな」
「ああ、少しな…にしても、着物は武器を隠すところがなくて困る、結局全部置いてきた」
「…そういやあの燕尾服の中ってどうなってるんだ?」
「…今なら俺の部屋にあるけどみてくるか?」
「…いや、やめとく、知りたくもねぇ」
セレスティアがそう言うと、広間の扉が開いた。
「はいはいお待たせ〜お、フェルパーも着物か、ベストマッチだね」
鈴の音とともにクラッズがまず顔を出し笑った。
「お、お待たせ…」
そしてそれに遅れて薄い緑の浴衣を着たお嬢が少し恥ずかしそうに現れた。
普段は肩ほどまで伸びたストレートの紫髪は頭の後ろで結われ、いつもとは全く違った印象を受ける。
どこか恥じらう雰囲気も合わさって今の彼女はいつも以上にかわいらしい。
「おお、似合ってるなお嬢」
セレスティアがそう言って手をたたく、俺も素直に関心した。
「に、にあってるかな?フェルパー…」
心配そうに俺を見るお嬢に俺は笑いかける。
「ああ、よく似合ってる」
「あ、ありがと、それとフェルパーの着物姿久々だね」
「ああ、まぁな…」
なんとなく気恥ずかしくなって頭を掻く。
お嬢は昔、姉弟のように育った時のころの口調でしゃべっていた。
まずは昔のように、俺の思惑はうまくいっているようだ。
ただセレスティアやクラッズがそんな俺達をにやにや見てるのがむかつく。
「行こうぜ、お嬢」
「うん…」
恥ずかしさを隠すように彼女が俺の手を取ると俺は彼女とともに宿を後にするのだった。
54 :
マルメンライト:2011/04/20(水) 02:24:47.42 ID:vzv0bIAY
祭りの音が響いてる、人の数はそれほど多くはなかったが小さな出店を二人で回る。
「楽しいか?お嬢」
「うん!」
綿あめをなめながらお嬢が俺に本当にうれしそうに笑っているのを見て、俺はあの時断らなくてよかったと心から思う。
「…ありがとね、フェルパー…」
「…気にするな、お嬢」
彼女と店を回りながらただ歩く、それなのになぜか俺はこの時間が長く続いてほしいと思うようになっていた。
「…フェルパー、燕尾服かと思ってたけど着物着てきたから…以外だった」
「昔は俺の燕尾服見て、似合わないって言っていたお嬢のセリフとは思えんな」
俺の言葉にお嬢が笑う。
こんなに彼女の笑顔を見たのはいつ振りだろう。
「なんで…燕尾服じゃなくて着物にしようと思ったの?」
彼女の言葉に、俺は一瞬言おうか迷ったが、口にする。
「…今の俺は…お嬢の執事じゃない」
「え?」
俺の言葉にお嬢が首をかしげた、いつもと違う髪形のせいで、白いうなじがあらわになって少し動揺する。
「こんな時だからな…お嬢の執事じゃなくて、ただ俺自身として一緒に居たかった…そんなところだな」
俺の言葉にお嬢が少し驚いた眼で俺をみた。
「…ありがと」
しばらく二人で店をみて回る。
もうそろそろ、宿に戻らなくてはいけないのに、なんとなく宿に戻りたくないと思ってしまう。
俺と同じ気持ちになってくれているのか、お嬢がふと立ち止まった。
「ねぇ…フェルパー…好きな人…いる?」
「…ああ」
「そっか…」
俺の言葉に少しさびしそうにお嬢が笑った。
「…どんな人なの?」
彼女の眼が俺を見つめる。
55 :
マルメンライト:2011/04/20(水) 02:28:08.35 ID:vzv0bIAY
「…秘密だ」
「…何それ」
俺の言葉にお嬢が笑う。
「お嬢は…好きな人はいるのか?」
「…うん、いるよ」
「…そうか」
なんとなく察していた、きっと彼女がクラッズ達としたという悩みの話とはそういうことなのだろう。
今度は何気ない話や昔話をして歩く。
気付くと宿とは反対の神社に来ていた。
人影も少なく、静かな気配と虫の鳴き声だけが辺りに響いている。
「ねぇ…フェルパー」
「何だお嬢…」
不意に彼女は俺の着物の裾をつかんだ。
「私の好きな人はね…私のわがままを聞いてくれるの」
「そうか…」
「ずっと、一緒に育って…姉弟みたいに育って…」
彼女は体を何かに脅えるように震えていた。
「わがままな私の…私のずっとそばに…」
彼女の言葉を聞きながら俺は彼女の肩を抱く。
意地っ張りな彼女がした精一杯の努力に俺は応えなければならない。
「…俺の好きな人はな…わがままで…いつもイライラしてるんだ」
俺の言葉にお嬢が、え?と顔をあげる。
「…初めて俺を人と呼んでくれたんだ…姉弟みたいに育ってきたんだ…」
「フェルパー…それって…」
「なぁお嬢…今までずっと子供扱いしてすまなかった…俺はさ、お嬢に知ってほしくなかったんだ、お嬢がそれを知ってしまったら俺の方が気持ちを抑えられなくなってしまうんじゃないかって…」
俺の言葉を聞きながらそっとお嬢が体をはがす。
「フェルパー…弟失格だね」
「…もともとだよ、執事になったのも君を姉貴っていつか呼んでしまうのが怖くて、お嬢って呼び続けて、それが自然に見えるようにするためだったんだ…」
俺の言葉にお嬢が笑う。
「フェルパー…私は、貴方が好きです…だから弟じゃなくて、執事じゃなくて…恋人として私の家族になってくれませんか?」
さらさらと、風に揺られて葉がすれる音が辺りに響く。
月明かりに照らされる彼女は幻想的なものに見えて、だが俺はそんな彼女に誠意をもって応える。
「ああ、俺からも頼む…お…バハムーン」
初めて、彼女を名前で呼んだ。
お嬢という名は彼女が決めた、友達が彼女を呼ぶための名前、彼女は友達なんかじゃない…もっと大切で大事な存在だから俺が彼女を呼ぶとしたら、彼女の父と母が呼ぶように彼女の名前で呼ぶべきだとそう思った。
「あ…名前…」
ぽろぽろと彼女が涙を流しながら俺に抱きつく。
「駄目だったか?」
「ううん、友達じゃなくて…恋人になるんだから…その方がうれしい…」
そのまま泣きじゃくる彼女を胸に抱く。
俺は彼女が泣きやむまでただ待ち続けるのだった。
56 :
マルメンライト:2011/04/20(水) 02:35:28.97 ID:vzv0bIAY
「おう、お帰り、お二人さん、祭りは楽しかったか?」
帰ってきた俺達を見たセレスティアがそう言って俺らを見る。
「ええ、フェルパーと一緒に見て回れたから、楽しかったわよ、貴方もクラッズと行けば良かったじゃない」
くすくすと笑ったバハムーンにセレスティアが驚いた顔で彼女と俺を見比べた。
「どうしたセレスティア、バハムーンにからかわれるなんて思ってもみなかったか?」
お嬢ではなく、バハムーンと彼女を呼んだ俺を見て、セレスティアが笑った。
「いや、まさかお嬢にそんなふうに言われる日が来るとは思ってなかったからな、とりあえずおめでとう、と言ってやる」
「あら、ありがとう、貴方に祝福される日が来る何て思ってなかったわ」
「お、言うようになったなお嬢…!」
二人のやり取りが面白くて思わず俺は笑ってしまう。
そんなやり取りをしていると宿に着いてから姿を見せていなかったエルフとディアボロスが食事のためか、のろのろとこちらに歩いてくる。
「ディアボロスとエルフ、ようやく部屋から出られるようになったんだな」
俺がそう言って笑うと、ディアボロスが楽しそうに笑った。
「ええ、おかげさまで…たっぷりとエルフを味わったわ」
「…一杯オシオキしてもらっちゃった、美味しかったって言われちゃった」
ホクホクと、嬉しそうな顔でエルフが応える。
「なになにみんな集まってどうしたの?」
聞き覚えのある鈴の音と共にクラッズがやってくる。
「おーいお前ら、こいつらの話はまたあとでな今は飯を食べに行くぞ」
セレスティアの言葉にみんなが応えてついていく。
いつもの光景をみながら俺とバハムーンは手をつないでその後に続くのだった。
57 :
マルメンライト:2011/04/20(水) 02:43:39.80 ID:vzv0bIAY
みんなで食事をとり、俺とバハムーンへの聞き込みが終わると、セレスティアを議長に明日の予定を考える為に話し合いが始まった。
うちのチームでの会議は、リーダーであるセレスティアが議長、クラッズが進行役を行い、サブリーダーの俺が議事録をつける。
そしてチームで意見を出し合い、翌日の行動を決定するという形をとっていた。
大まかには多数決制で決まることが多いが、3:3に分かれた場合などは主にリーダーであるセレスティアが最終的な決断を行う、というのが通例だった。
「まぁ、明日の集合予定時間はいつもどおりなら9時ごろだな、もし意見のあるものがいれば挙手をしてくれ」
そうセレスティアが言うと、不意にバハムーンが手を挙げる。
「ん?お嬢何か意見ある?」
「ええ」
クラッズが進行役としてバハムーンにそう言うと彼女は立ち上がって応えた。
「その時間だと私は明日寝坊するから12時ごろにしてほしいの」
「は?」
思わず俺が声をあげた。
「バハムーン意味分かってるか?」
「だって恋人になったらみんなするんでしょ?私もフェルパーとしたいもの」
顔を赤く染めながら彼女が言う。
「はいはい、進めるよ〜みんなはどうかな?」
俺とバハムーンを無視してクラッズが他の皆に意見を聞く。
「…私は異論ないわ、その分エルフで楽しむから」
「ご主人さまがそう言ってるので私も賛成です」
バハムーンの意見にエルフとディアボロスは開き直って賛同。
もはや俺はとめはしない。
58 :
マルメンライト:2011/04/20(水) 02:45:20.30 ID:vzv0bIAY
「ん〜、セレスティアは?」
クラッズが議長を務めるセレスティアを見る。
「異論ない、全員が寝坊するんだったらそんな時間に設定する意味はない、ゆえに俺はお嬢の意見に賛同する反対意見のあるもの等は手を挙げてくれ」
彼女がみんなの前でそう宣言するとは思わなかったが、それならそれで俺にも考えがある。
静かに俺は手を挙げた。
「はい、フェルパー」
俺が手を挙げるとバハムーンが不安げに俺を見た。
そんな彼女に笑いかけ俺はその意見を告げる。
「休みだ」
「は?」
俺の意見にセレスティアが何を言い出したのかと俺を見る。
「挑発されたから…俺は今日バハムーンを寝かせるつもりはない、ゆえに明日は休みにしてくれ」
おお〜と周りから歓声が上がりバハムーンが「ふえっ!?」と声をあげ顔が真っ赤に染まる。
そんな俺を見てセレスティアはにやにや笑った。
「おやおや、こまったな俺もそっちの意見に賛同したくなってしまった、よってお嬢の意見は3、フェルパーの意見を2とするクラッズ、お前はどうする?」
「私の意見はフェルパーに賛同、3:3になったこの場合はリーダーとサブリーダーが話し合って意見をまとめ、セレスティアの決定が最終判断になるけど…既に意見に賛同を表明してるからその必要もないでしょ、がんばってね、お嬢」
「え?ええ!が、がんばるわよ?」
意味がわかっているのか分かっていないのか、バハムーンは疑問形で応える。
そんな彼女をみんなが笑っていた。
「では最終決定を下す、我々は明日、迷宮探索を行わず、休息とし、その間何するかは各人の判断にゆだねる事とする、修練のため迷宮に出る事を望む場合はその意を俺に伝え2名以上で探索に出る事、以上を持って本日の会議は終了とする、解散!」
59 :
マルメンライト:2011/04/20(水) 02:46:14.13 ID:vzv0bIAY
セレスティアがそう言うと真っ赤になったバハムーンが俺に詰め寄る。
「ちょっとフェルパー!どういう意味よ!」
「そもそもバハムーンが言い出したんだ、そこまで言われたら俺は拒絶しない、むしろ望むところだ、忘れてるかもしれないが俺はビーストだぞ?もしバハムーンとそうなった時、どれくらい君を求めるか分からない、だから休みにしてくれといったんだ」
俺の言葉にバハムーンはパクパクと口を動かす。
「部屋で待っている、覚悟ができたら部屋に来てくれ」
そう言って俺は会議に使っていた部屋を後にして、自分の部屋に向かうのだった。
60 :
マルメンライト:2011/04/20(水) 02:47:05.62 ID:vzv0bIAY
彼がそう言ってさっていくと頭の中が緊張でぐるぐるする、もとは自分から言い出したのに何をどうすればいいかわからなかった。
「お嬢、初めて頑張ってね」
そんな私にクラッズがそう言って声をかける。
「ク、クラッズ!」
「ん?なに?」
私に呼びとめられたクラッズが鈴の音を鳴らして振りかえった。
「その…初めてって…どんなかんじなの?」
「…お嬢知りもしないのにあんなこと言ってフェルパー挑発したの?」
「だって…寝かさないなんて言われるなんて思ってなかったから…」
こんなことならあの洞窟でエルフとディアボロスがし始めた時しっかり見ておくべきだったかもしれない、いまさらながらそんなことを思う。
「まぁ大丈夫、初めは痛いけど多分すぐ気持ちよくなるから」
「痛いのすごく痛いの!?」
少し怖くなる。
「大丈夫だよ…お嬢」
不安がる私の肩をエルフがたたいた。
「エルフ…」
「痛いけどね…きっと嬉しさの方が一杯になるから、だって初めてをあげるってその人のものになるってことでしょ?」
大人びた笑顔で笑うエルフを見る。
「ドMがいっても説得力無いわよエルフ」
ディアボロスが笑いながらエルフの胸をつかんだ。
「あ…ご主人様…こんなところで…ああでも見られたら…それはそれで…」
今日分かったけどエルフってかなり変だと思う。
「ま、でも大丈夫よお嬢、女は大体一度は経験するもの私だって耐えられたんだから貴方もきっと大丈夫よ…」
くすくす笑いながらディアボロスが私の肩をたたいた。
「みんなありがとう、私頑張る!頑張ってフェルパーのものになってくる」
「お〜、頑張れ〜」
クラッズがそう言って手をたたくと鈴の音がシャンシャンと鳴り響く。
「ああ、そう言えばお嬢、これあげる」
立ちあがって彼の部屋に向かおうとした私にクラッズがそう言って小瓶に入った薬を渡してくる。
「…何これ?」
あまりみたことのない薬だった。
「ん?避妊薬、初体験で出来ちゃったらヤバいでしょ、一応学生なんだし、それとも飲まない?朝までなんかしたら安全日とか関係なく妊娠しそうだけど」
「…あ、ありがと、一応のんどく」
そう言って覚悟を決めて彼の部屋に向かうのだった。
61 :
マルメンライト:2011/04/20(水) 02:47:59.46 ID:vzv0bIAY
「…クラッズ、あの避妊薬副作用あったわよね?」
お嬢がいなくなったあとディアボロスが何かを思い出したかのように呟く。
「…私、前にご主人様に飲まされて大変なことになった気がする」
苦笑いを浮かべながらエルフがぽつりとつぶやいた。
「ん?大丈夫でしょ、ちょっと普通より気持ちよくなっちゃうだけだし、朝までするなら早めに気持ちよくなったほうが良いじゃん、経験者からのちょっとした贈り物だよ」
イタズラに成功した子供のようにクラッズが笑うと、彼女の首の鈴が小さな音を立てた。
62 :
マルメンライト:2011/04/20(水) 02:48:51.92 ID:vzv0bIAY
彼の部屋の前に立ちなんども深呼吸をする、体に汚れは残ってないだろうか?
クラッズにもらった薬も飲んだし、体は隅々まで洗った、大丈夫、心の中で呟いて、彼の部屋のドアをノックする。
「はい?」
扉越しに彼の声が聞こえた。
ドキドキと心臓の音が高まっていく、なんか妙に体が熱い気がする。
「私よフェルパー」
そう言うと、少しして扉が開いた。
相変わらずの着物姿の彼が私を出迎える。
「まぁ…中に入ってくれ」
「う、うん!」
私も何を着ていこうか悩んだ結果、結局浴衣を着てきた。
これからすることを考え、彼が脱がせやすいように…。
私は緊張しながら彼のベッドの上に正座の姿勢で座った。
「バハムーン?」
「フェルパー…私初めてだから痛くて泣いちゃうかもしれない…でもね…それでも絶対最後までしてほしいの」
3つ指をついて彼に懇願する。
「私を…フェルパーにもらってほしい…」
私の言葉に彼が笑った。
「緊張しすぎだよバハムーン、俺だって初めてなんだから、二人で慣れていこう」
彼の優しい笑顔に胸がときめく。
これが私が彼を愛しているという気持ちなんだろう。
「ええ、そうね」
私も彼に合わせて笑う。
小さく音がなって電気が消える、彼が隣に座って私の肩を抱いた。
「バハムーン…」
「うん」
顎をつかまれ、彼の方を向けさせられる。
それに私は抗わず、静かに目を閉じた、遅れて温かい感触が唇に触れる。
触れるだけの子供っぽいキス
「キスしちゃったね…」
「ああ…」
私の少しまだ濡れた頭を彼がなでた。
「…もう一回…今度は大人のキス…」
今度は私から彼の首に手をまわして、唇を重ねる、そしてあの洞窟で、エルフとディアボロスがしていたように、彼と唇を合わせたまま、おずおずと舌を伸ばす、するとその舌先が何かに当たる。
―あ…これって―
目を細めると、彼の舌が私の舌をからめ捕るかのように伸ばされる。
舌と舌が触れ合うたびに弱い電流を流されたみたいな感覚がピリピリと感じられる。
―気持ち良いなぁ…―
まだキスをしているだけなのに、体が勝手にぽかぽかと熱くなる。
何度も何度も、彼と舌を絡めながらキスをする。
フェルパーの手が不意に私の浴衣の帯にかかった。
「ぬがしてもいいか?」
「…うん」
うなづくと、シュルリと彼が帯を緩める、帯が解かれ彼の手が浴衣を剥がす。
下着だけの私の姿が彼の眼にさらされていると思うと心臓の鼓動は更に高くなった。
63 :
マルメンライト:2011/04/20(水) 02:49:44.76 ID:vzv0bIAY
「黒レースとは扇情的だな…」
「だ、駄目だった?」
彼が鼻を押さえながら少し恥ずかしそうに顔をそむけた。
「いや…肌がホントに真っ白だから…よく似合ってる」
言葉と共に下着の上から彼が私の胸に触る、くすぐったい様なもどかしい奇妙な感覚が伝わってくる。
「バハムーンって着やせするタイプなんだな…」
「そ、そうかな?」
彼が楽しそうに私の胸を触っている。
「直接触りたいんだが…いいか?」
「…うん」
うなづくと、彼の手が私の背中に回ってくる、私も体を少しうかせてその手伝いをする。
パチンと小さな音がなってブラの拘束が緩み、空気が直接胸に触れた。
あらわになった私の胸に彼の温かい手が触れる。
「すごいドキドキしてる」
「うん…」
そっと私も彼の着物に手を差し込み、その胸に手をあてる。
彼の心臓も強く脈打っていた。
―フェルパーも…ドキドキしてる…―
彼とおんなじ気持ちなのだと思うと、もっともっと一緒になりたいと、そんな思いがわいてくる。
「フェルパー…触って良いよ…優しくね」
「ああ…」
言葉と共に、彼が私の胸に両手をあて、やわやわと揉み始めた。
彼の手に合わせて私の胸が形を変えていく。
そのたびに今まで感じた事のない感覚が私の背中を走って頭に届いてくる。
「なんか、変な感覚…」
「いやか?」
「ううん…気持ち良い…」
「そうか…なら…」
言葉と共に、彼が私の胸に顔をうずめる。
「ひゃん!?」
生温かいざらざらした感触が胸に触れて思わず私は声をあげた。
―何これ…指と全然違う…―
彼の舌が私の胸を円を描くようになめて、舌先で中心の部分を押しつぶすようにいじられる感触に頭がとろけてしまいそうになる。
「フェルパー…それ良い…気持ち良い…もっと…もっとして!」
彼の頭を掴んで私の胸に押し付ける。
私の言葉に応えるように彼の舌が何度も私の中心を刺激する。
「くふぅぅ…ふはぁぁ…」
ピリピリと電流が走るような感触がなんども何度も私を襲い、そのたびにどんどん体が熱くなる。
気持良すぎて、なんだかお腹がむずむずする。
胸の刺激に夢中になっていると、もう片方の膨らんだ突起を彼が手でつまみあげた。
「ぴっ!きゅぅぅぅ!!」
予想もしていなかった感触に私の中で何かがはじける。
ふわふわと体が浮くような感覚がやってきて、思わず私は彼の体を強く抱きしめた。
「なにこれなにこれ!!」
体が勝手にぴくぴく震える、頭が真っ白になって何も考えられない。
64 :
マルメンライト:2011/04/20(水) 02:51:40.38 ID:vzv0bIAY
初めて感じるその感覚に私はただただ震えるだけだった。
次第にその感覚が落ち着いてくると、少し体がつかれたような、倦怠感のようなものがやってくるが、なぜか心が満たされたような感覚がある。
荒い息を吐きながら彼の体の拘束をとくと彼が私の顔を覗き込んで笑った。
「フェルパー…今の何…?」
「イッたんだな…バハムーン…可愛かったよ」
彼がそう言って額にキスすると、体がピクンと勝手に震えた。
「イクって…なに?」
「気持ちよくなって、ふわふわしたみたいになったんだろ?」
そう言いながら彼が胸を揉むと、さっきよりも強い快感が私の背中に走る。
「うん…すごく気持ちよくなって…壊れちゃったかと思った…」
「それがイクってこと」
これがイクってことなんだ…。
あんなに気持ち良いことならもっともっとしてほしい。
彼に気持ち良くしてもらうだけじゃなくて…彼と一緒に気持ち良くなりたい。
「フェルパー…もっと気持ちよくして…それでフェルパーも気持ち良くなって…」
私がそう言うと、少し驚いたように彼が私を見た。
「分かった…下着…最後の脱がすよ?」
「…うん」
腰を浮かせると、彼の手が私を覆う最後の布をはずしていく。
外の空気に触れたそこはキラキラと何かでぬれていた
「フェルパー…ごめんなさい…私もしかして…おもらししちゃったのかも…」
私の言葉にフェルパーが笑う。
「大丈夫、これは…気持ちよくなると、勝手に出るものだから気にしなくて良い俺だってなってるさ」
「ホントに?」
「本当だよ…」
彼はそう言ってくれるけど…私はあまり知識がないから信じられない。
「気持ちよくなると出るなら…フェルパーもそうなってるなら見せて」
「は?」
私の言葉に彼が驚いた顔をする。
「やっぱり…嘘なの?私…おもらししちゃったの?」
泣きそうになると彼が仕方ないといった顔で自分の着物の帯をほどいた。
「…バハムーン、後悔するなよ?」
そう言って彼が着物を脱ぎ棄てる、膨れ上がった何か下着を押し上げていた。
彼が自分の下着を脱ぐと、跳ね上げるように彼のものが飛び出してくる。
その先端は私と同じように液体で濡れていた。
「ほら…濡れてるだろ?」
「う…うん」
彼のそれはパンパンに膨れ上がりビクビクと震えていた。
「あの…触ってもいい?」
「あ、ああ…」
恐る恐る触れると、それはとても熱くて固い。
そして何より…。
「おっきい…」
思わず唾を飲み込む、これが男の人のもので、これが私の中に入るのかと思うと少し怖い。
つい、自分のものと見比べてしまった。
65 :
マルメンライト:2011/04/20(水) 02:52:35.78 ID:vzv0bIAY
「バハムーン…」
あまりにじっと見過ぎてしまっていたのか彼が恥ずかしそうにしながら私を見る。
「ご、ごめん!」
「い、いや、いいんだが…このまま続けても良いか?」
彼の表情も気になるけど、彼のそれもすごく気になる。
「う…うん、でもフェルパーのすごく苦しそう…」
どうしても目が離せない。
私が困っていると、彼がふと口を開いた。
「よし…バハムーン、俺はこれから君のものをするから、君には俺のそれを…その、なめてほしい」
「わ…わかった!」
そう言って再びベッドに横になる。
彼が私の大事な部分に顔を寄せ、私の眼の前に彼がある。
私達は互いにそれを刺激する。
「ふひゃ!?」
先ほどまで胸を刺激していた彼の舌が私の大事なところをなめる。
今までとは違って直接お腹に響くような快感に勝手に声が出てしまう。
あわてて私は彼のものを口に含んだ。
「うわっ!?」
彼が突然大きな声をあげたので私は思わず彼を話す。
「ご、ごめん痛かった!?」
「い、いや大丈夫だ、突然気持ちよくなったからびっくりしただけだ続けてくれ」
「う、うん!」
気持ちよくなってもらえた、それがうれしくて私は再び彼のものを咥えてぺろぺろとそれをなめる。
彼が私をなめるのに私は夢中になって彼をなめる。
不意に彼が何かを見つけ、カリッとそれを噛んだ。
「ふむぅぅぅ!!」
彼のものを咥えたまま私は叫ぶ、またあの感覚が私を襲う。
思わず彼のものを噛んでしまいそうになり私はあわてて彼を掴んで引き抜いた。
「うぁ!?」
同時に彼も悲鳴を上げた。
彼のものがびくびく震え、白く濁った液体が私の顔と胸に降り注ぐ。
「ふぁ!?あっつ!」
その液体はとても熱くて、思わず声が上がる。
胸についたそれを手でのばしてみると、ねばねばした感触があった。
「…これが、赤ちゃんのもと?」
「ああ、俺の精液だな…」
彼に聞くと静かに彼がうなづいた。
なめてみたけどおいしくはなかった、苦くて変なにおいがする。
荒い呼吸が落ち着いてくると、彼が私の大切なところに再び触れた。
体がまたピクンと震える。
「バハムーン、そろそろいいか?」
彼の言葉に私はついにその時が来たことを知る。
私のところは洪水のように濡れていて、ふにゃふにゃにとろけていた。
「う…うん、入れるんだよね、フェルパーを…」
太ももに巻きつけていた尻尾を自分でほどいて、脚をそこを彼に見せるように開く。
「ああ」
開いた私の脚の間に彼が腰を下ろす。
66 :
マルメンライト:2011/04/20(水) 02:53:23.24 ID:vzv0bIAY
先ほどまで私がなめていたそれがパンパンになってそそり立っていた。
覚悟はできていた。
「うん、ください…フェルパーを…私を貴方のものにしてください…」
私の言葉に、彼が私の脚を肩にかけて頷く。
「ああ、痛いかもしれないが…我慢してくれ」
閉じたそこに彼が押しあてられる。
「うん、我慢する…だから私を…私を…大人の女にしてください!」
彼の背中に手を回す。
「行くぞ!」
「来て!」
言葉と共に、私を引き裂くように彼のものが私の中に入ってきた。
瞼の裏が真っ赤に染まる、肺の空気が押し出されるような圧迫感がどんどん迫ってくる。
びりびりと、強烈な痛みが私の背中をかける。
「いっ!痛っ…くぅっ!」
体が引き裂かれるような痛みが強くなってくる。
我慢できず、私は彼の背中に爪を立てた。
―痛い痛い痛い!!―
痛みしか感じられない、さっきまでの気持ち良い感触がない。
ポロポロ涙があふれるが、まだ彼のものは半分ぐらいしか入っていない。
何かが…彼を拒んでいた。
「バハムーン、力を抜いてくれ…」
彼も痛いんだろう苦しそうに顔をゆがめながらそれだけ告げる。
力を抜きたいのに体が言うことを聞いてくれない。
「フェルパー!キスして、キスしてくれればきっと…!」
私の叫びに彼が私と唇を重ねる、のばされた彼の舌に自分の舌を絡めて必死でその感触を味わう。
次の瞬間、ブツリと私の中で何かがはじける音がした。
「きひぃぃぃ!」
抵抗がなくなり勢いよく彼のものが私の中に入ってくる。
最後の強い痛みが私の背中をかけた。
「フェ…、フェルパー……」
そっと彼と私の繋がった部分に目を見やる。
「ああ…全部入ったよ」
大きく広がった私のそこが彼を根元までのみこんでいた。
彼を伝わって、私が初めてを失った証が流れていく。
―もう処女じゃないんだ…―
その瞬間に今までの思い出が湧き上がって、涙があふれてくる。
「バハムーン…痛いのか!?」
彼が心配そうに私を覗き込む。
その瞬間、エルフやディアボロスが言っていたことを私は理解した。
「痛い…痛いのに…うれしくて…貴方に初めてをあげられたことがうれしくて…」
ずっと姉弟みたいに育って…彼に素直になれなくて、ずっとわがままを言って…。
そんな私を彼が愛してくれて…ついに私は彼のものになったのだと…うれしくて涙が止まらない…。
「フェルパー…名前を呼んで…」
「ああ、愛してる…大好きだ、バハムーン」
「私も愛してる…私も大好きだよ、フェルパー」
私の心が満たされる…、私が彼で満たされている。
感じた事のない幸福感が私のことを包んでいた。
67 :
マルメンライト:2011/04/20(水) 02:54:57.81 ID:vzv0bIAY
繋がったまましばらく抱き合っていると、少し痛みがマシになって、代わりに私の中の彼の輪郭がはっきりしてくる。
「…すごく…大きい」
お腹を撫でてみると、彼のものが私の中で震えた。
「ん…」
「あ、悪い…勝手に震えて…」
「だ…大丈夫」
お腹に少し力を入れてみると、彼のものがピクリと震える。
「うぁ…」
気持ち良さそうに彼が震えた。
「ふぇ…フェルパー、私の中…気持ち良い?」
私の言葉に彼が何かをこらえるようにうなづく。
「ヤバいくらい、気持ち良い…俺のがぎゅうぎゅうに締め付けられて、あったかくて、バハムーンの中が俺のことをゾワゾワするぐらい撫でてくるんだ…」
「よかった…でも…そのままじゃ…苦しいよね…動いて良いよ…」
「良いのか?痛いだろ?今動いたら、バハムーンが痛がっても俺は続けてしまうかも知れないぞ?」
心配そうに彼が私を見る。
「いいよ…少しくらい痛いのなんか平気…それに…今日は私を寝かせないんでしょ?だったら…早く私が気持よくなれるように…ならしてほしい」
私の言葉に彼が笑った。
「分かった、最初はなるべくゆっくり動くぞ」
「うん」
言葉と共に彼が動き始める。
「ふぁぁ…」
ゆっくり彼が抜けていくと、体にぽっかりと穴があいたように寂しさがやってくる。
だが再びつき込まれるとすぐにそれが満たされた感覚で胸が溢れる。
繰り返しの運動で、次第に痛みが失われ、ゾクゾクした感覚へと置き換わっていく。
「フェルパー…気持ち良い…」
彼を本当の意味で受け入れられた気がした。
「俺も…気持ち良いよバハムーン…」
次第に彼の動きが早くなって、体がぶるぶると震える。
「初めては…痛いって…痛いって言ってたのに…ディアボロスの…うそつき…」
痛みなんかほとんどない…それ以上に彼にお腹の中を掻きまわされるのがうそみたいに気持ち良い。
腰の動きが早くなると、私の中がかきまぜられ先ほどとは比べられないほどの電流が背中をかけていった。
もやもやが膨らんでまたあの感覚がやってくる、イク、彼が教えてくれた感覚がまた私を包んでいく。
68 :
マルメンライト:2011/04/20(水) 02:56:13.61 ID:vzv0bIAY
「フェルパー…フェルパー…」
何も考えられなくなってただひたすらに彼を呼ぶ。
「バハムーン…バハムーン…」
彼も私の名前を呼びながら何度も腰を打ちつける。
ビリビリと感覚が集まって膨れ上がる。
「あ…ああ…あああ…フェルパー…私!」
「俺も…このまま…!」
「いいよフェルパー膣内に…私の中に…そのまま!」
深い深い一撃が私を貫く。
その瞬間にそれが音を立ててはじけた。
「ふぁぁぁ!!」
「くぅぅぅ!!」
ビクビクと体が震えて、彼を強く締め上げた、その瞬間に彼も私の中ではじけ、熱いそれを解き放つ。
「ふきゃぁぁぁ!!」
また頭が真っ白になる、ふわふわした感覚が私を包む…。
背中がそりかえり、尻尾がピンと張り、彼の尻尾が私の尻尾に絡みつく。
お腹の中で火傷しそうなほどの熱が壁を叩きながら広がっていく。
―暖かい…なんか幸せ…―
ぐったりと、ベッドに倒れ込みながら彼と口づけを交わす。
共に荒い息を吐きながら何度も何度もキスをする。
そのたびに入りきらなかった彼の精液が、私の初めての証と一緒に繋がった部分からこぼれだしていた。
「…エッチしちゃったね」
彼に抱きしめられながら私は呟く。
「ああ…痛かっただろ?」
耳元で彼が優しく呟く。
「うん、痛かったけど…最後は気持ちよかった」
「そうか…よかった」
彼がそう言って笑うと私もうれしくなった。
まだ彼の入っていたところは少しだけ痛いけど…そこまで気にはならないくらいだった。
そもそも、最初初めてが散った時以外はそれほど痛くなかった、というのもある。
「まだフェルパーが私の中に入ってるみたい…」
「そうか…」
「うん…」
ふと、私はある事を思い出す。
「パパとママ…なんて言うかな?」
その言葉にフェルパーが凍りついた。
「…旦那様と奥様のこと忘れてた……一人娘を嫁入り前に俺は傷モノにしたんだな…」
あわてる彼が楽しくて、思わず笑いが漏れる。
「大丈夫だよ…きっとパパとママなら、フェルパーがホントの家族になるって喜んでくれるよ…」
「…確かに…奥様なんか孫はいつ?とか言いそうだ」
彼がそう言って笑う。
「だね」
私もそれにつられて笑った。
「それよりフェルパー…またしよう…今日は私を寝かせないんでしょう?」
今度は負けないと、クスリと笑って、彼の胸をくすぐり挑発する。
「いったな、バハムーン…ビーストの体力なめるなよ…」
彼がそう笑って、胸をつかんだ。
「フェルパーも私をなめないでよ…フェルパーがこれ以上無理って言うまで寝かせないんだから…」
私も笑う。
夜はまだ長い…再び彼に押し倒されながら、私達は互いを求めあうのだった。
69 :
マルメンライト:2011/04/20(水) 02:57:25.17 ID:vzv0bIAY
「くふぅぅぅ!」
慣れ切ってしまった体がまた震える、もはや何度目かすら覚えていなかった。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
彼にまたがったまま私は疲れてそのまま胸に倒れ込んだ。
「ごめん、フェルパー…もう限界……」
「…俺もだ…」
夢中になって気がつかなかったがいつの間にか日が昇っている。
「…何回…したっけ?」
「…13…いや16かな…」
ぐったりと繋がったままベッドに寝そべる。
「…ホントに朝までしちゃったね……」
「ああ…ごめん…バハムーン…」
そう言って彼が頭をなでる。
「いいの…それよりエッチって気持ち良いんだね……昨日まで…知らなかったのに…体がもう覚えちゃった…」
昨日までは汚れなど知らない身だったとは自分でも信じられない。
体が快感になれてしまって、本来残っているはずの痛みはどこかへ消えてしまった。
ひどくエッチな子になってしまった気がする。
「…フェルパーが私に教えたくなかったの分かった気がする…」
「…うん?」
「だって…もう、フェルパーとエッチしないことなんか考えられなくなっちゃったんだもん」
今は十二分に満たされているが、明日になればまたしたくなってしまうのが自分で分かる。
それぐらい、彼の体になじんでしまった。
「…責任とるよ」
「ありがと…フェルパー…」
幸せな気持ちと共に睡魔が訪れる。
「フェルパー…大好き」
「俺も大好きだよ…バハムーン」
同じく眠そうな彼の声を聞きながら私達は抱き合って睡魔に身をゆだねる。
大好きな彼と一緒に、幸せな気分で満たされたまま、私は眠りにおちていった。
夢の中で、紫色の髪をしたバハムーンの女の人が小さな子供を抱えていた。
私と同じ紫の髪をしたフェルパーの女の子。
そんな女性の隣には胸に彼と同じ黒い髪バハムーンの男の子を抱いた、燕尾服を着た黒髪のフェルパーの男の人が立っている。
にゃー、にゃー…
みゃー、みゃー…
二人の腕の中で子供達が泣き声を上げる。
二人は自らの手の中で泣く子供たちをあやしながら、幸せそうに笑っていた。
それはただの夢だったけど…あの二人のようになれたら良いなと私は心の中で思うのだった。
夢の中で、燕尾服をきた黒髪のフェルパーの男が小さな子供を抱いている。
俺と同じ黒髪のバハムーンの男の子。
そんな彼の隣には胸に彼女と同じ紫色のフェルパーの女の子を抱いた、白いドレスのバハムーンの女性が座っていた。
みゃー、みゃー…
にゃー、にゃー…
二人の腕の中で子供たちが泣き声を上げる。
二人は自らの手の中で泣く子供たちをあやしながら、幸せそうに笑っていた
それはただの夢だけど…あの二人のようになれたら良いなと俺は心の中でそう思った。
70 :
マルメンライト:2011/04/20(水) 03:00:48.20 ID:vzv0bIAY
「結局、ホントにあいつら起きてこないな」
朝食を食べながらセレスティアは呟いた。
広間に用意された食事の場には彼とクラッズの二人しかいない。
「ま、そんなもんでしょ、フェルパーがお嬢のこと思ってたのって多分1年2年じゃないだろうし、両方とも体力あるしね」
味噌汁を飲みながらクラッズはそう呟く。
「子供出来たらどうするつもりだろうな、避妊薬のんでてもさすがに関係ないくらいやってると思うが…」
ポリポリと漬物を食べながらセレスティアは何気なくそうクラッズに告げる。
「そんなこと言ったら私なんかいつ妊娠してもおかしくないけどね、いくら薬のんでても私が危険日なのにセレスティア平気で膣内に出すし」
さらりと、今日の天気を語るようにクラッズが口にするがセレスティアは別段気にした様子もなく食事を続ける。
「まぁ、多分妊娠しないから大丈夫だろ」
そんな言葉をセレスティアは当然のように受け流す。
「分かんないよ?だってほとんどのベースはセレスティアなんでしょ?」
セレスティアの言葉にクラッズが応えると、袖口についた鈴が小さく鳴った。
「どうだかな、つくったやつにでも聞いてくれ」
「まぁ、最近は薬もらえなくなってきたし、少しは遠慮してほしいかな」
そう言ってクラッズが笑う。
意味深な二人の会話は鈴の音と共に静かに消えていった。
71 :
マルメンライト:2011/04/20(水) 03:09:16.14 ID:vzv0bIAY
以上で投下終了です。
今回も長々と駄文失礼いたしました。
普通の恋愛が書いてみたかったので
書いてみたのですが予定外に長くなってしまいました。
申し訳ありません。
それでは改めて今回も拙い文ですが楽しんでいただけたら
幸いです。
あんまぁぁぁい!!甘いよ!でも甘いのも大好きだ!GJ!
>>71 ぐっじょぶバッチリ楽しませていただきますたー! 余ることなく見事にカップル成立しましたねー。
リア充(相思相愛)三組のパーティ、今度試してみますネ
ちょっと毛色の違う感じのものが書きたかったので
いろいろ書いてみました、というわけでまた新作投下です。
今回もチームはアンノウン
チームの中心カップルの出会いのお話です。
クラッズ♀×セレスティア(?)♂
&
セレスティア♀凌辱
諸注意 ちょっと今回は話の中で一部暴力的な表現があります
苦手な方は読み飛ばしてください
また一部キャラにオリジナルの設定があります
75 :
マルメンライト:2011/04/24(日) 23:07:36.22 ID:ZPHwRHmv
彼の腰の動きに合わせて腰を下ろす。
彼が求めやすいよう体の向きを変える。
首のチョーカーについた鈴がそのたびにチリン…と小さな音を立てる。
「良い顔だ…クラッズ」
「それはどうも、でもいい加減あきたんじゃない?」
のばされた手が私の頭を撫で、恥ずかしさをごまかすために私はそういって笑う。
「ははっ…、飽きるわけないだろ?ここまでお前を染めてきたんだからな、どこまでも俺に染めてやる」
彼がいつものように笑って私の弱いところを攻めてくる。
「くはっ!」
ざらざらとしたやすりのような舌が小ぶりな私の胸のふくらみをそぎ落とすようになめあげる。
ビリビリした刺激が皮膚の下を通って背中に抜けた。
76 :
マルメンライト:2011/04/24(日) 23:10:57.54 ID:ZPHwRHmv
「…卑怯者……人が胸弱いの知ってて、舌の質感変更したでしょ…」
涙目の私を見ながら彼はニヤニヤと笑って動いていた私の腰をしっかりつかんで動きを止めた。
焦らすように私の浅い部分で円を描く。
「種族的にはフェルパー系だな、これが俺の特技みたいなもんだからな、それくらい我慢しろよ」
「十分我慢してるでしょ…」
楽しむかのようにセレスティアが笑う。
「今日は危険日なんだろ?この状態でもう少し焦らしてみたくてね、とりあえずいつもの行くか、手を放すから頑張って耐えろよ」
「また…?するたびに私が不利になってるのに…」
そう言いながらも期待するように彼を浅いところに受け入れたまま私は膝立ちで立つ。
77 :
マルメンライト:2011/04/24(日) 23:13:05.96 ID:ZPHwRHmv
「本気で妊娠したら責任とってよ」
「むしろ本当に俺なんかが子供作れるのかね?」
言いながら、自分の羽を一本抜いて、羽先で繋がった部分の少し上の突起をくすぐる。
細かい羽根の感触がピリピリとした刺激になって私を襲う。
「くふぅ…ふはぁぁ…」
「さて、今日はどれくらい耐える?」
じわりと繋がった部分から彼を伝わって私の蜜がこぼれおちる。
「き、記録更新を…頑張って…目指す」
「最近はだんだん最短記録の更新を目指してるけどな」
「開発進んじゃったからね、実は浅くても入れてるだけでかなりつらかったり…」
「んじゃこうしたらどうなる?」
敏感な突起を、セレスティアは楽しそうに抜きとった羽根でくすぐる。
78 :
マルメンライト:2011/04/24(日) 23:15:12.93 ID:ZPHwRHmv
「ふひぃ!くはっ!」
必死で耐えようとしているのに、慣れ切った刺激に条件反射のように体が勝手に快感で震える。
「き、気持良くなるかな?」
私がそう言うとセレスティアが楽しそうに笑った。
「よし、クラッズ、ちょっと苦しいかもしれないが頑張って耐えろよ?」
言葉と共に、羽根の先が包皮に包まれた私の大事な部分の内部を掻きだすように入ってくる。
「くひゃぁぁ!?」
あわてて私は彼の胸に手をついて耐える。
普段刺激されたことのないところまでが細かい毛先でくすぐられる。
気持ち良すぎて体が言うことを聞かない、ただ必死で腰を落としてしまわないように歯をかみしめて耐える。
79 :
マルメンライト:2011/04/24(日) 23:17:50.13 ID:ZPHwRHmv
「バカバカバカ!何してるの何してるの!あやうくイキかけたよ!!」
なんとか大きい波をこらえた私は顔を真っ赤にしてセレスティアの胸を力なくたたく。
「そんなに気持ちよかったか?」
ニヤニヤとセレスティアが笑いながら私の首の鈴を鳴らす。
「あんなのされたら気持ちいいにきまってるでしょ!…うひゃ!動かすなぁ!!」
普段、どれだけしていても刺激されない部分が彼の羽根で弄ばれる。
くすぐるような刺激にパチパチと瞼の裏で火花がはじけた。
「げ…限界…ギブアップ…だから膣内は1回で…」
80 :
マルメンライト:2011/04/24(日) 23:19:58.35 ID:ZPHwRHmv
脚と腕の震えが止まらない、このまま刺激されれば、耐えられなくなって、私の一番深いところで一気に彼を感じる事になる。
危険日だろうが彼は私の中に全てを吐き出しきるまで、やめないだろう。
だから、せめてもの譲歩を試みる。
「ギブアップねぇ…」
言葉と共に、セレスティアが羽根をそのまま軽く回した。
「セレスティアまさか…!」
「まぁそのまさかだな、ギブアップはなし、折角だし最短記録更新させる」
羽根をひねるのと共に胸に吸いついた。
81 :
マルメンライト:2011/04/24(日) 23:24:47.15 ID:ZPHwRHmv
「ひゅいっ!?」
ひねられた羽根は包皮の中の敏感な部分を絶え間なく刺激し、舌先が胸の中に潜ろうとするかのように中心を舌先で嬲る。
「うわっ!駄目、無理無理無理!同時は無理!うぁ!」
頭の中が真っ白になった、噴き出した汗で手が滑り必死で取っていたバランスが崩れる。
ズンと、浅くつながった場所に私の体重の全てがかかって深く彼を飲み込んだ。
「くはぁぁぁ!」
脳天を貫くような快感でもともと決壊寸前の感覚がはじけた。
パクパクと空気を求めるように口を開きながら背中をそらせ、中の彼を強く締め上げる。
「ほら、また俺の勝ち」
ぐったりと倒れこむと、そんな私を見ながら彼が笑った。
「卑怯者〜…そんなに膣内に出したいかな…」
絶頂を迎えてけだるい体を持ち上げる。
「どうせ俺としたって出来ないんだから良いだろ?」
「それ、いままで大丈夫なだけだったじゃない、こんなかわいい子を孕ませようなんてひとでなしすぎるでしょ」
ぽこぽこと、力を込めずにセレスティアの頭をたたく。
「そら、人じゃないしな」
そんな私を楽しそうに見つめながらセレスティアは腰を振り始める。
敏感な膣壁が傘で削られ、瞼の裏ではじける火花が消えない。
「それでも…6割は…セレスティア…ベースでしょ…」
彼の軽口に応えながら私も合わせて腰を振る、まだイッたばかりだから刺激が強いけど、動けないほどじゃない、むしろこの強すぎる快感を最後まで味わって狂ってしまいたい。
「残りの4割は何使ったかすらわかんねぇよ、作ったやつ死んでやがるし、ま、便宜上セレスティアってことにしてるけどな」
いつものように彼が笑う。
84 :
マルメンライト:2011/04/25(月) 00:02:43.08 ID:ZPHwRHmv
「はいはい…もう好きなだけ出して良いから、私のことを味わってよ、ただし、妊娠したら責任は取ってもらうから」
チリンと鈴を鳴らして私は彼にキスをする。
「分かってる、だからお言葉に甘えて好きにさせてもらうわ」
言葉と共に彼の動きが早くなる。
彼と私の腰がぶつかり合う音が鈴の音と共に一定のリズムを刻んで部屋に響く。
85 :
マルメンライト:2011/04/25(月) 00:07:18.09 ID:aMfIOAEl
「くぅぅ…ごめんセレスティア、多分先にもっかいイっちゃう」
予想外に早く膨らみあがった感覚に私は彼に全てをゆだねて、もたれかかった。
「耐えるのに精いっぱいでもう動けないから後はお願い」
「はいはい…んじゃ、一気に行くぞ」
言葉と共に私の腰がつかまれて、更に彼の腰の動きが早くなる。
「ふひぃぃぃ!」
私を突き破るかのように激しく彼が抜き差しを繰り返す。
何も考えられず与えられる快感の全てを受け入れる事だけに集中し彼を締め付けていく。
86 :
マルメンライト:2011/04/25(月) 00:17:38.57 ID:aMfIOAEl
「よ…し…行くぞクラッズ」
「うん…うん…」
私が何度目かの絶頂を迎えるのと共に、彼が震えて白く濁った欲望を、私の奥深くに解き放った。
それから5回行為を重ね、ようやくセレスティアが私を解放した。
「あー…もう4時じゃん、また寝坊するよ」
「気にすんな、どうせお嬢とフェルパー達も寝坊するだろ、エルフとディアボロスは何をするかで分からんが」
私の恨みがましい声を聞きながしながらそういって彼が私の中から溢れだしてきた精液を拭う。
87 :
マルメンライト:2011/04/25(月) 00:21:57.95 ID:aMfIOAEl
私の恨みがましい声を聞きながしながらそういって彼が私の中から溢れだしてきた精液を拭う。
「毎回毎回、危険日に限って溢れるぐらい膣内射精される私の身にもなってよ、リリィ先生、最近避妊薬くれないんだから、ホントいつか妊娠するでしょ〜」
学生なんだから少しくらい自重してください、と言って薬をくれなくなった先生の顔を思い出しながら彼の背中をたたく。
「いや、このスリルが良いんじゃないか、できるかできないか分からないってのがまたな」
楽しそうに彼が笑って頭を撫でた。
―ホント…ズルイやつ…―
「…ホントは、私を妊娠させたいんでしょ?“オーウェン”」
ちょっとしたイジワルで昔の名前で呼ぶと、彼の体がピクリと震えた。
「…その名前で呼ぶなって、今はセレスティアって名前、折角借りてるんだから」
そう言って彼が苦笑する。
「私の初めて散らした時はオーウェンだったじゃん」
88 :
マルメンライト:2011/04/25(月) 00:24:03.91 ID:aMfIOAEl
プリシアナに入る前のことを思い出してそう言うと、彼がため息をついた。
「…2年前のことまだいうのかよ」
「いや、初めてにあんなに激しく腰振られるなんて思わなかったからね」
ニヤニヤと昔を思い出して笑う。
「我慢してたぶん、がっついちまったんだよ」
「だね〜」
彼も昔を思い出したのか声を小さく上げて笑った。
「喉、渇いてるでしょ?」
「ああ、カラカラだな」
「久しぶりだし飲んで良いよ」
私の言葉に彼が笑って私の首に犬歯を突き立てる。
鋭い痛み走って体が震えた。
「っ〜!」
唇を噛んで痛みをこらえる。
89 :
マルメンライト:2011/04/25(月) 00:26:08.60 ID:aMfIOAEl
そんな私を見ながら彼は私の肩に突き立てた犬歯を引き抜き、溢れだした血をなめるように吸った。
「うぁ…また、イキそうかも…」
幾度となく繰り返したのに、牙を突き立てられる痛みとこの地を吸われるときの快感には全くなれない。
「これだけ、俺に汚されてるのに…お前の血はうまいままだな…」
彼がそう言って笑う。
「ほめことばとして受け取っとく」
そう答えながら、私は頭が真っ白になるようなその感触に酔いしれた。
彼と初めて出会ったのは最悪なことがあった後。
野垂れ死にそうな、小娘が、金を持ってる男に拾われた、そんな感じの出会いだけど。
私は彼と出会えてよかったとそう思っている。
90 :
マルメンライト:2011/04/25(月) 00:28:41.29 ID:aMfIOAEl
もともと私の家はそこまで裕福じゃなかったけど、それなりの生活はできていた。
クラッズの母とセレスティアの父、年下のくせに私よりも背の高いセレスティアの妹。
私は踊りと歌が好きで、練習をしては家族に見せて喜んでもらうのが好きだった。
うん…大好きだった。
だから…
それが魔獣、モンスターなど呼ばれるそれに襲われて無くなった時、私の全ては一度壊れてしまった。
目の前で昨日まで笑いあっていた家族が死んでいく。
私達を逃がすため、父が剣を取ってモンスターに向かっていった。
その体が引き裂かれ、大好きだったはずの父が物言わぬ肉塊へと変わる。
動けなくなった私と妹を逃げるように叱って、母はモンスターの群れの中に消えていった。
91 :
マルメンライト:2011/04/25(月) 00:31:08.03 ID:aMfIOAEl
泣きながら私達は近くの村へ走った。
走って走って…走り続けて、何も考えず走り続けた。
走り続けてようやく村にたどり着いて…助かったと思って妹を振りかえると、彼女はどこにもいなかった、私が握っていたのは彼女のものであった右手だけ…
「え…うそ…嘘だよね…」
プラン…と力なく垂れ下がった腕が地面に落ちる。
「私…私…あの子を…」
助け…られなかった、たった一人私だけが生き残った。
歌を歌うといなくなった家族を思い出す。
踊るたびにとまだ生きていたころの家族を思い出す。
「何で…皆死んじゃったのよ…」
泣いて…泣いて…泣いて…涙が枯れて泣けなくなった。
でも、たった一人の子供が何ができるだろう。
お金はない、頼る人もいない…。
92 :
マルメンライト:2011/04/25(月) 00:33:20.93 ID:aMfIOAEl
食べ物もなければ家もない、泥棒みたいなことを続けて生き延び…ヘマをしてつかまって殴られて…お金があれば家族がいれば…そんなふうに荒んでしまっていた。
そんなときだった。
私が彼、セレスティア…ううん、オーウェンとあったのは…。
「くそっ!どこ行きやがったあの餓鬼!!」
柄の悪い男たちがそう言って隠れた私に気づかず路地を通り過ぎていく。
「あー、ヤバかった…まさか冒険者とはね…」
ただの観光客かと思ったら、運の悪いことにその男たちは冒険者だった。
スリがバレた上に追いかけられ、何とか逃げ伸びる事が出来たけど、捕まったら私がどうなったか想像すると肝が冷える。
年頃の女が4人の男に群がられる姿が容易に浮かんだ。
93 :
マルメンライト:2011/04/25(月) 00:38:47.34 ID:aMfIOAEl
「うへぇ…最悪なこと考えちゃった」
走ったせいでお腹がすいた。
もう2日もまともなものを食べてない。
「…お金さえあれば…多少マシなんだろうけどね…」
ぽつりと私は呟いた。
路地に自分の空しい呟きが木霊する。
「あいつらまだ居るかな…まったく、あんだけ持ってんなら少しぐらい盗んだって罰当たらないでしょうに…」
「全くだな…少なくとも大の男がよってたかって女の子供を追い回すなんてあんまほめられたもんじゃねぇよな」
「どうせ捕まえて手篭めにでもしてやろうとか考えてたんでしょ?女っ気全くなかったもん」
かけられた言葉に応えてあわてて私は振りかえった。
「誰!?」
錆びたナイフを向けると、そいつが笑う。
「おいおい、あぶねぇよ…別に危害加えるつもりはないし…あいつらにお前を突きだしたりする気もない」
94 :
マルメンライト:2011/04/25(月) 00:40:58.20 ID:aMfIOAEl
物陰から気配も感じさせず現れたのは黒い翼をもったセレスティアの少年…私と同じ年頃くらいかと想像する。
「…私は誰?って聞いたんだけど?」
彼の言うとおり敵意は感じられなかったが、私は警戒を解かず、ナイフを向け続ける。
やれやれ、といった感じでそいつは笑った。
「…オーウェン…そう呼ばれてた、お前は?」
「クラッズ…で、オーウェンって言ったっけ?あんた何者?」
「…さぁな、ところでクラッズ、お前金が欲しいのか?」
私の言葉に彼が笑った。
「…お金は欲しいね…何?あんたが恵んでくれるの?」
「…条件次第ではな」
私の言葉に、オーウェンが笑う。
「…へぇ?私に何させようっていうの?何?ヤらせろとか?」
だとしたらこいつが油断してるときに殺して有り金を全部奪ってしまえば多少は食いつなげるかもしれない、そんなことを心の中で思う。
95 :
マルメンライト:2011/04/25(月) 00:43:59.58 ID:aMfIOAEl
そんな私を知ってか知らずかオーウェンは呟いた。
「クラッズ…文字は読めるか?」
何を言ってるんだろうこいつ?
「一応ね、いくらなんでも古代の言語とかは無理だけど、自分で言うのもなんだけど頭は良い方だしね」
「そうか、よかったら教えてくれ、喋るのはみてるうちに何とかなったが、文字だけはどうにもならん」
何か奇妙なことをオーウェンは言う。
ただ文字をおしえるだけで金をくれるというのだろうか。
「何たくらんでるの、あんた?」
「たくらむ?…あ〜少し待ってくれ、なんとか思い出す…」
私の言葉に唸りながらオーウェンは悩みだした。
「ん、なんとか記憶に入ってた、べつに何もたくらんでねぇよ、俺もわけありでな、文字とかを覚えないといけないんだが…わけあってあんまり人とはかかわりたくなくてな、ボロが出る」
96 :
マルメンライト:2011/04/25(月) 00:50:16.93 ID:aMfIOAEl
「あんたまさか魔物なの?」
私の言葉に彼が笑った。
「魔物ね…似たようなもんかもしれないな…」
そう言って彼が手を差し出す。
何事かと思うと、オーウェンが静かにしろとばかりに自分の指を口にあてる。
「ちょっと見てろ…」
言われるままに彼の手を見ると、ありえないことが起こった。
メキメキと音をならして、爪が硬質なものへ変化していく。
まるでビーストのような敵を引き裂くための爪。
「オーウェン…あんた…セレスティアじゃないの?」
彼の背中の翼を見ながら私は呟く。
97 :
マルメンライト:2011/04/25(月) 00:52:59.63 ID:aMfIOAEl
彼の背中の翼を見ながら私は呟く。
「知らない…だからそれを知るために、文字を覚えておきたい、ヒントになりそうなものはあるが、文字が読めないから意味がない」
「なるほど、UNKOWN(アンノウン)だから、オーウェンね」
「…よくわからんが、あんまり良い意味じゃないみたいだな」
私の言葉に彼が呟く、なんとなくそんな彼に私は興味を持った。
「金はあるの?」
「金…これのことだよな?」
そう言って彼が袋を取り出す。
そこには溢れんばかりの金貨が詰まっていた10万いや50万はあるかもしれない。
「…あんた何者?オーウェン」
「だからそれが知りたいんだよ…クラッズ、どうだ?」
彼の言葉に私はうなづく…なぜ彼がこんな大金を持っているのか彼が何者なのか興味を持った。
98 :
マルメンライト:2011/04/25(月) 00:55:15.49 ID:aMfIOAEl
「いいわよ、文字を教えてあげる、その代わりお金や食料を私に頂戴」
ナイフを納めて手を差し出す。
一瞬それをみて悩んだ後彼は私の手を取った。
「ここが俺の家…だとおもう」
山奥の小さな小屋を指差してオーウェンがそう呟いた。
「…いや、それぐらいははっきりしなさいよ」
「知るか、そもそも家って言う言葉がどんな意味だかまではしらん」
呆れながら私が呟くと、彼はそう言って首をかしげた。
「へんなやつ」
「よくいわれる、あまり良い意味じゃないみたいだな」
私の言葉に彼が応える。
「とりあえず家ってのは自分が眠ったり、食料を食べたり、誰かと一緒に過ごすための場所よ」
「なるほど…ならここは今日から俺とクラッズの家だな」
私の言葉に彼がそう答える。
99 :
マルメンライト:2011/04/25(月) 00:58:25.02 ID:aMfIOAEl
「…え?私も住むの?」
「…住む…過ごすと同じ意味だよな?そうか…クラッズにはクラッズの家があるから俺とは住まないか?」
「…まぁいいや、別にそれで良いよ、今日からここは私とオーウェンの家」
住む場所まで手に入ったのは行幸かもしれない。
そんなことを私は思う、オーウェンの知識は何かおかしくて人として、何かが欠けている気がした。
一瞬、まだ子供とは言え男と女が一つの家に住む、ということに危機感を覚えたがどうもオーウェンからはそれらの知識が無いように思えた。
「それより、いつまでたってればいいの?早く私達の家の中に入りましょうよ」
「ああ、そうだな」
私の言葉にオーウェンがそう言って歩き出して家の扉をあける。
中からはどこか埃っぽい匂いが漂ってくる。
そして、それに混じった薬品のにおい。
100 :
マルメンライト:2011/04/25(月) 01:00:57.32 ID:aMfIOAEl
「ここが俺とクラッズの家だ」
そう言ってオーウェンが家の中を案内する。
広間、寝るところ(ちゃんとベッドが二つあった)、食事を作るためのキッチン、トイレまであって意外とちゃんとしていた、そして何より…。
「これ…錬金術師が錬金術に使う道具じゃない?あとこの本も…やっぱり錬金術関連」
大量に積まれた本と魔道書、なぜこんなものが彼の家にあるのだろう。
パラパラとめくって見ると錬金術に関することがかいてあった。
これでも、頭は良い方だから、なんとなく理解できる。
「…錬金術、そう言えば俺をオーウェンといったやつが自分を錬金術師だと言っていたな」
私の言葉にオーウェンは少しうれしそうに呟く。
「これだ…クラッズみてくれ…」
101 :
マルメンライト:2011/04/25(月) 01:03:24.70 ID:aMfIOAEl
そう言って彼が本棚から取り出したのは重ねられた沢山の紙、どうやら前にこの部屋を使っていた人物の手記らしい、細かいことは分からないがこのあたりの本を読めば理解できるかもしれない。
気になったのは、オーウェンによく似たセレスティアと、全く関係がなさそうな他の種族の名前が書き記されていることだった。
なにか、彼に関することが書かれているのかもしれない。
「完全には理解できないけど…、このあたりの本を読めば私なら分かると思う」
そう言った私に彼がうれしそうな顔をした。
「本当か!よかった…俺が何なのかわかるかもしれないんだな!」
「う、うん」
オーウェンの迫力に思わずあとずさる。
「ところでオーウェン、この本の持ち主はどうしたの?」
多分彼の親だと思われる人物、その人がどこにいるか私が聞くとオーウェンは少し困った顔をした。
102 :
マルメンライト:2011/04/25(月) 01:06:07.35 ID:aMfIOAEl
「だいぶ前に動かなくなった、目も覚まさない、動かなくなったら穴を掘って埋めろと言われたから、すぐ近くに埋めた」
動かなくなった、それがどういうことか気づいて、私は自分の家族を思い出す。
「…そっか」
彼も私と同じなんだ。
「…とりあえず、これから貴方に文字をおしえるから、ちゃんと覚えてね、それで文字を覚えたら言葉の意味をおしえるから」
「ああ、たのむ」
私の言葉にそう言って彼が笑った。
そうして、私と彼、オーウェンとの奇妙な生活が始まった。
料理の意味すら知らなかった彼に料理がどういうものであるか教え簡単な料理を作る。
「おお、うまい、って言うのはこういうことだなうまいうまい」
「…オーウェン、今まで何食べてたの?」
久しぶりの食事にありつきながら私が聞くと彼はなんでもないことのように応えた。
103 :
マルメンライト:2011/04/25(月) 01:08:34.41 ID:aMfIOAEl
「食事はとらなくても問題ない、今までは何かを食べたことはなかったが、クラッズが料理がうまいな」
腹の減らない人間など居るのだろうか?そんなことを思いながら食事を終え、薪を使って風呂を沸かし、久々の風呂に入る。
オーウェンも風呂、ということは知っていたようで、それは簡単に済ませる事が出来た。
そうして夜になると彼に文字をおしえる。
もともとみただけである程度の会話ができるレベルの彼なのだ、私のおしえた内容をどんどん吸収していく。
そうして彼とすごしながら錬金術本を読み彼に関することが書いてある資料を読むための知識を学ぶ、そんな生活を3カ月ほど続け、簡単な本ならオーウェンが読めるぐらいになった辺りで私は書斎の机に隠された手帳のようなものを見つけた。
「何これ?」
パラパラとめくって中を見ると、どうやら日記のようだった。
104 :
マルメンライト:2011/04/25(月) 01:11:30.62 ID:aMfIOAEl
「…この筆跡…」
あわてて私は紙束の筆跡と見比べる。
「…同じだ」
錬金術の知識はほとんどないけど、この日記ぐらいは読める。
同じ人物が書いた日記なら何か書いてあるかもしれない。
なぜか緊張しながら私はそれを読みだした。
「…これ、ホントなの……?」
これが真実だとするなら…オーウェンは人間なんかじゃない。
おそらく紙束に書かれていたのはある実験の記録、そして日記に書かれていたのはその実験の途中経過なのだろう様々な種族の性質を掛け合わせ、新たなる種族を作り出すための錬金術の研究結果がまとめられていた。
失敗、失敗、また失敗、ただその言葉が続いていく、幾度となく、失敗を繰り返し、ある日を境に、その言葉が変わった。
成功するかもしれない、それとともにつづられた内容に私は驚きを隠せなかった。
105 :
マルメンライト:2011/04/25(月) 01:18:45.23 ID:aMfIOAEl
○月×日
兼ねてより考案してきた新たな種族を人工的に作り出す研究に取り掛かることにした。
基本のベースには魔法生物に近いセレスティアを使用し、フェルパーの先祖帰りによって誕生するビースト種の生命力、攻撃性、エルフやディアボロスのような特定のものに行使する魔術への適性を持ち、バハムーンのようにブレスを放つ器官をもったそれ。
サンプルは6体作成したが4体は失敗…2体が順調に成長を続けている。
○月○日
2体の素体のうち1体が本日ついに成長を止めた、セレスティアの因子だけでは全ての性質を併せ持つことはできないようだ。
おそらく、他の種族の性質を自らで処理することができなかったためだろう。
おなじことが起きないように残りの一体に特殊な処置を施し、肉体を自分の意志で変質可能とする能力を付与する。願わくば成功をのぞみたい
106 :
マルメンライト:2011/04/25(月) 01:20:57.35 ID:aMfIOAEl
○月△日
ついに長年の夢がかなうかもしれない。
素体は順調に成長を続けている。
セレスティアの因子は全体の60%ほど、見た目はほとんど通常のセレスティアと変わらない。
問題になるとしたら性質的に、吸血行為を行う恐れがあることだ。
やはり触媒に使用したもののせいで、人より魔に近くなってしまうのかもしれない…。
×月×日
処置に使用した触媒の影響か、素体の羽根が次第に黒く変色し始めた。
だが大した影響でもないだろう、私の夢は着実に完成へと近づいている。
そろそろ彼にも名前を与える事にする。
人のようにありながらそのどれでもない、新たな種族、未知数なこの存在、UNKNOWN(アンノウン)そう、彼に与える名は…
107 :
マルメンライト:2011/04/25(月) 01:22:59.24 ID:aMfIOAEl
「クラッズ…風呂が沸いたぞ」
「あ、うん」
彼が書斎に入ってきたのを見て、私はそこであわてて日記を隠した。
「なにか分かりそうか?」
「いや全然、錬金術師って何言ってんだろって事ばかり書いてるから理解しづらい、それより、オーウェンの方は課題の本少しは読めたの?」
とっさに私は嘘をつく。
ごまかすために続けた言葉に、彼はああ、とうなづいた。
「辞書というのは面白い、言葉の意味も理解できてなかなか勉強になる、まだ4分の1しか読めてはいないけどな」
本当にどこか面白そうに彼はその手の百科事典をひらひらと振る。
「百科事典を面白いって言えるのはオーウェンだけだろうね」
私が呆れたようにそうつぶやくと、彼は首をかしげる。
「ん?何でだ?」
108 :
マルメンライト:2011/04/25(月) 01:26:22.53 ID:aMfIOAEl
「百科事典っていうのは、ただ言葉の意味を並べただけだからね、歌とか踊りみたいに、何か想いがこもってるわけじゃないからね」
「…そうか、ならきっと歌や踊りを理解できるようになってみたいな」
彼が少しさびしそうに笑った。
不意に、私はいなくなってしまった妹の姿を彼に重ねる。
「いつか歌とか踊りを見せてあげるよ、」
「クラッズは歌と踊りを知ってるのか?」
「まぁね…」
「そうか、なら俺がもっと言葉を覚えたら、いつか聞かせてほしい」
私の言葉に彼がうれしそうに笑う。
不覚にも、胸がときめいた。
「…いつかね」
「ああ」
「それじゃ私はお風呂入ってくる」
ひらひらと手を振ると彼は椅子に座って百科事典を読み始めた。
109 :
マルメンライト:2011/04/25(月) 01:29:16.28 ID:aMfIOAEl
手を動かすとチャプリと湯に波紋が立った。
「何であんな約束したんだろ…」
湯に体を浸けながら私はポツリと呟いた。
家族を失ってからもうかなりたってしまった。
歌と踊りがうまいとは言ったが自分がまだ、好きでいるのかはもう分からない。
でも、彼がそれを聞いてみたいというから、あんな約束をしてしまった。
「私は…なんでオーウェンが気になるんだろう…」
不意に、手記の記録を思い出す。
「UNKNOWNだから…オーウェン…」
3カ月、知識はそこまでなかったがあれだけの資料を呼んだ、日記の人物が何を作っていたのかは大体分かってきていた。
「…ホムンクルス」
錬金術を使って作る、人の形をした合成獣、そして…
「それが…オーウェン…」
110 :
マルメンライト:2011/04/25(月) 01:31:27.29 ID:aMfIOAEl
あの日記に書かれた、もう6体の素体の生き残った1つ…彼のことを指しているのだろう、セレスティアでありながらビーストのような爪に帰る事の出来る彼、そしてところどころにあったセレスティアをベースにしたという言葉。
何より…人間のように見えても何か大事なものが欠けている彼。
「まだ、分からない、オーウェンが人間じゃないって決まったわけじゃない」
だから…それを見極める為に…私はいるんだ。
見極めて…何がしたいんだろう?。
「…馬鹿みたい、お金にもならないのに」
彼のことばかり考えている、まるで、恋にでもおちたかのようだった。
111 :
マルメンライト:2011/04/25(月) 01:34:08.47 ID:aMfIOAEl
ある日の夜、オーウェンは突然ベッドから起き上がった。
「どうしたの?」
眠い目をこすりながら私は彼を見る。
「なんか…喉が渇く……」
「また?」
最近になって、彼は異様な喉の渇きに苦しんでいた。
何かを、求めるように。
「何だろうな…」
ふらふらとおぼつかない足取りで彼はキッチンへ向かっていった。
目が覚めてしまい、私は先日、書斎で見つけたそれを持ってキッチンに向かう。
「…クラッズ、起こして悪い…」
具合が悪そうに、彼が水を飲んでいる。
「そんなに喉が渇くの?」
「何か…どれだけ水飲んでも喉が渇く…」
病気か何かだろうか?一度医者に連れて行ってみた方が良いかもしれない。
そんなことを思いながら、私はつい最近書斎で見つけたものをグラスに注いだ。
琥珀色をした液体をコップの四分の一ほど入れて私はそれをテーブルに置いた。
112 :
マルメンライト:2011/04/25(月) 01:36:19.83 ID:aMfIOAEl
「クラッズ…それはなんだ?」
もう何杯めかの水を飲みながらオーウェンが聞いてきた。
「お酒だよ、この間書斎で見つけたの、試しにオーウェンも飲んでみる?」
コップを揺らして、私はちびちびとその酒を飲んでいく。
家族がまだ生きていたころ、こうして夜中に起きて妹と隠れて父親の酒を飲んでみたことを思い出す。
妹に進めてみた時のことを思い出しながらオーウェンにそう言った。
「うまいのか?」
「さぁね、でも私は別に嫌いじゃないかな…」
私の言葉にオーウェンは水を飲むのにつかっていたコップを差し出す。
それにほんの少しだけ、その酒を注ぐと恐る恐る彼がそれに口をつけた。
「…不思議な味だな…なんか体が熱い気がする」
「それがお酒だからね」
そう言って私が笑うと、彼がコップの中の液体を一気に飲み干した。
「うん…悪くない」
113 :
マルメンライト:2011/04/25(月) 01:39:07.76 ID:aMfIOAEl
口の中でそれの味を確かめるように彼が飲み下し、うなづきながらそう呟く。
「もう少し飲む?」
「ああ、頼む」
再びそそいで、今度は互いのグラスを合わせて音をならしてから酒を飲む。
「…なんかさ、オーウェンみてると…妹思い出すよ…」
酒に酔ってきたのか、私の口から勝手に言葉が漏れた。
「妹…いるのか?クラッズ」
「いた…ってのが正しいかな…もういない…死んじゃった…私のせいで…」
もう流れないと思っていた涙がこぼれる…。
「…そうか…」
死、それの意味をオーウェンは完全に理解してはいない、ただ最近になって、彼が動かなくなってしまった、というその人に花を手向けるようになったのを知っている。
「…私が…もっとうまく逃げれば…あの子ぐらいは生き残れたかもしれないのに…私が…私が、もっと早く逃げられていれば…お母さんも死ななかったのに…」
114 :
マルメンライト:2011/04/25(月) 01:41:55.66 ID:aMfIOAEl
きっと、彼にはまだよくわからない…彼にとって、父と母、家族というものが彼にはまだ理解できるはずがない…なのに…
彼は泣きだした私のことを胸に抱きしめた。
「…何やってるの…オーウェン…」
「…俺も…よくわからない…でもこうしてやったほうが良い気がした」
そう言いながら、彼は私の頭を撫でた。
優しく優しく…まるで優しかった父のように…私が泣きやむまで彼は私の頭を撫で続けた。
「ごめん、オーウェン…家族のこと思い出して泣いちゃった…」
私が恥ずかしさを抑えて笑うと彼が少し戸惑った顔をした。
「いや…俺にはまだよくわからないが…悲しいということが少しだけ分かった気がする」
彼がそう言って私を見る。
酒に酔ったのか少し彼の顔も赤かった。
「どうかしたオーウェン?」
私の言葉に彼が震えた。
「いや…なんでもない…」
嘘をついている。
115 :
マルメンライト:2011/04/25(月) 01:46:10.79 ID:aMfIOAEl
「隠し事してもばればれだよ、どうかしたの?」
私が言うと彼は少し言いにくそうに、だが…口を開いた…。
「クラッズから…良い匂いがする…」
どういうことかは分からなかったが、彼の眼が少しくらいキッチンで赤く光っていた。
「どういうこと?」
「…俺もよくわからない」
戸惑うように彼が応えた。
「…自分がしたいようにしてみなよ…ヤらせろってわけじゃないんだったら少しぐらい…許す」
彼に泣きついてしまったのだから、セックス以外なら別にしてあげても良いと思えた。
「…いいのか?」
彼が申し訳なさそうに私を見た。
「少しだけならね」
そう言って椅子にもたれかかるとふらふらと彼が私に近づいてくる。
そして、私の体を逃がさないようにするかのように強く抱きしめる。
彼の舌が私の首筋をなめあげる。
その感触に体が震えた。
116 :
マルメンライト:2011/04/25(月) 01:48:26.84 ID:aMfIOAEl
「…何すんのオーウェン」
苦しそうに荒い呼吸を繰り返しながら彼が口を開く。
「…クラッズ、すこし痛いかもしれない…」
「え?」
どういうこと、そう言おうとした瞬間…彼が私の首に噛みついた。
「いっ!?」
突然の鋭い痛みに私は声をあげた。
彼の犬歯が私の肩に深く突き刺さって、肉を破る。
「ちょ…!オーウェン…!」
痛みで顔をしかめながら彼を放そうとした瞬間、彼がそのまま首筋を強く吸った。
「うあぁっ!?」
ビクンと体が震える…そして、彼が何をしているのかを察した。
彼は…私の血を吸っている、まるで吸血鬼がそうするかのように。
「これだ…これが欲しかった…」
彼がうれしそうに私の血を吸っている。
「くはぁぁ…」
体温が奪われていくような奇妙な感覚、血を吸われているのになぜか頭が快感で震える。
―ヤバ…私なんか変…―
117 :
マルメンライト:2011/04/25(月) 01:51:00.18 ID:aMfIOAEl
もやもやとした感覚が下半身に集まっていく、血が吸われているはずなのに、感覚と共にそこに血が集まっていくような奇妙な感覚だった。
―何これ…―
感じた事のない感覚で頭が白くなっていく、酒のせいか痛みが治まってくると、奇妙な感覚はどんどん広がっていく。
―変に…なる!―
体が全く言うことを聞かず、頭がとろけてしまいそうになる。
―無…理…これ以上は…―
「ふぁあああ!!!」
彼が再び強く吸ったのに合わせて、集まっていた何かがはじけた、心地よい刺激が体をめぐって、四肢がピンと張る、エッチな本に載っていた話を思い出して少し顔が赤くなった。
―…今のもしかしてイクってやつかな?―
けだるい感覚に包まれながら私はそんなことを考える…しばらくしてようやくオーウェンが私の肩から口を放した。
ぺろりと、唇についた私の血を彼がなめる。
118 :
マルメンライト:2011/04/25(月) 01:53:09.62 ID:aMfIOAEl
「…おいしかった?」
なんとなく気になって私がそう言うと彼はびくりと震えた。
「…悪いクラッズ…お前がうまそうに見えて…気付いたら…」
震える彼の頭をたたく。
「おいしかったか?私はそう聞いてるんだから答えてよ」
血を吸われてイってしまったことを隠したくて、私はそう彼に言う。
私の言葉に戸惑いながらもオーウェンは静かに口を開いた。
「…美味しかった…今まで食べた何よりも…」
何かに脅えるように…彼がそう呟いた。
「…俺は…人間なのか?」
「さぁね」
私は彼にそう答えた。
「…怖くないのか?クラッズ…俺はお前の血を吸って、うまいと言ったんだぞ?」
戸惑う彼に私はどうでもいいと答えた。
「どうでもいいよ、マズイって言ったら殴ったけど、うまいって言われたら、まぁ悪い気はしない…何より…なんか…その…気持ちよかったし…」
119 :
マルメンライト:2011/04/25(月) 01:55:21.59 ID:aMfIOAEl
最後のほうは、恥ずかしくなって尻すぼみになってしまった。
血を吸われてイクなんて経験をしたのは多分私ぐらいだろう。
―…下着、変えないとだめだな―
彼に血を吸われた時、何も考えられなくなるくらい気持ちよかった。
「喉の渇きはどう?」
私がそう言うと彼が更に困惑した表情を浮かべた。
「…おさまってる…酒でもおさまらなかったのに……」
多分、手記にあった性質なんだろう…、頭の中で何となくわかっていた彼の正体がはっきりとした。
ホムンクルス…やっぱり彼はあの手記にあったホムンクルスだと確信する。
―で、それが何―
どうでもいいと、そう思った。
「ま、喉の渇きが治まる方法見つかったならよかったじゃん、さすがに毎日だと困るけど…どうしても喉が渇いて仕方なかったら、私に言ってオーウェン」
そう言った私を彼は信じられないものを見るかのような目で見た。
120 :
マルメンライト:2011/04/25(月) 01:57:24.15 ID:aMfIOAEl
「怖くないのか?」
「うるさい、どうでもいいって言ったでしょ?あんまりしつこいともう飲ませないよ?」
私がそう言うと彼が少し悩んだ。
「悩むな馬鹿」
「お前の血はうまいから…たまに頼むかもしれない」
私の言葉に彼が申し訳なさそうに呟いた。
「気にしないの、どうせ、女なんて、月一で血大量に流してるんだし」
「…もったいないな」
「よだれを拭きなさい、開き直り過ぎだから」
「…冗談だ…」
比較的本気にしか見えない顔で彼が笑った。
彼のそんな姿を見ながら私は思う、思ってしまう。
―…マズイな、本気でオーウェンのこと気に入ってきてる―
気になるだけだった私の中の彼への印象が少しずつ変わり始めていた。
121 :
マルメンライト:2011/04/25(月) 01:59:25.88 ID:aMfIOAEl
暗い森の中を片腕を失ったセレスティアの少女が走る。
彼女が走ると、髪飾りについた鈴が鳴っていた。
痛い、痛い、痛い…
無くなった手が激しく痛んだ。
ただひたすらに、逃げる事だけを考えて彼女は走っていた。
何かは彼女をおっている。
―嫌だ、捕まりたくない…!―
必死で彼女は走り続ける、だがいつまでも続くと思われた逃走劇はあっけなく終わりを迎えた。
「きゃぁ!」
盛り上がった木の根に彼女が足を取られ転ぶ。
「痛い、痛いよ…」
張りつめていたものが切れぽろぽろと彼女が無くなった腕を抱きしめて泣きだした。
「助けてよ…いつもみたいに助けてよ…どこ行っちゃったの…お姉ちゃん…」
少女は少し前まで腕を引かれて逃げていた、必死で走って、走り続けていた。
横合いから飛び出した怪物に自分の腕が食べられるまでは。
122 :
マルメンライト:2011/04/25(月) 02:01:35.59 ID:aMfIOAEl
ジャリ…
そうして彼女を追いかけていたそれが姿を現す。
少女よりもふたまわりも大きい狼のような獣が彼女の目の前に立った。
「あ…あ…」
チリン…チリン…
ずりずりと、片手で彼女が後ずさると髪飾りの鈴が音を立てる。
「やめて…もう食べないで…痛いの…痛いんだよ…」
がくがくと震えながら少女はあとずさる。
その背中が、何かにぶつかった。
恐怖に震えながら、少女は振りかえる、人に似た、それでいて明らかに人とは違う無数の手をはやした悪魔が立っていた。
「い…いや…」
少女がにげるだが、その脚に、植物のツタを思わせる触手が絡みついた。
「いやーーー!!!」
そのおぞましい感触に彼女が叫び声をあげると、その体を押さえつけるように全身にツタが絡みつく、年の割には豊満な胸が締め付けられて強調される。
123 :
マルメンライト:2011/04/25(月) 02:21:37.05 ID:aMfIOAEl
少女は必至で暴れ続けた、だが、そんな少女の抵抗をあざ笑うかのように、ツタが彼女の服を引き裂く。
「嫌だ…嫌だよ…助けて…助けてお姉ちゃん…」
少女がぽろぽろと涙を流す、そんな少女を無数の手をはやした悪魔が掴んだ、びくりと彼女が震える、持ち上げられた彼女は、悪魔の股間にそびえたつ醜悪なものを見てしまった。
「やめて…いや…」
ゆっくりと体がおろされていく、悪魔の手が彼女の服を引き裂いていく。
「嫌だ…嫌だよ…助けてよ…お姉ちゃん…」
少女は現実から目をそむけるように瞼を強く閉ざす、そんな彼女をあざ笑うかのように悪魔が笑い最後の布を引き裂いた。
「いやーーー!!!」
ひんやりとした夜風が直接触れる、これから自分の少女の体は震えていた。
124 :
マルメンライト:2011/04/25(月) 02:24:25.52 ID:aMfIOAEl
そして、悪魔が彼女の腰をつかみ、湿ってもいない彼女の秘所にその醜悪なものを突き立てた。
ブツンとなにかがちぎれる音がした。
「いやぁぁぁぁぁ!抜いて!抜いてぇぇぇ!」
ブンブンと彼女が首を振る。
だが悪魔はそんな彼女にお構いなしに腰を動かし始めた。
「痛い痛い痛い!死んじゃう!死んじゃう!!」
明らかにサイズの違うものを突き立てられ、少女は苦痛の悲鳴を上げた。
彼女の脚には彼女が穢れを知らぬ乙女であった証が伝わっていく…。
見たくないと思っても突き上げられるたびに嫌でもそこを見てしまう、悪魔のものが突きたてられている自分自身を。
「痛い…痛いの…死んじゃう…」
少女の泣き叫ぶ声を悪魔がわらった、そして、彼女を拘束していたツタの一本が、何かを探すようにうごめき、後ろの小さなすぼまりにふれた。
ビクンと彼女の体が震える。
125 :
マルメンライト:2011/04/25(月) 02:27:07.96 ID:aMfIOAEl
「やめて…そこは…そこだけは…いやぁ…」
少女が懇願するようにそう呟き、そして…。
「いぎぃぃぃぃ!!」
目を大きく見開き背中をそらせて少女が叫んだ。
「ああ…ああ…」
明らかな異物を本来とは異なる場所に突き込まれる激痛に少女は震えた。
悪魔が動く、少女が叫ぶ、ツタが動く、少女が叫ぶ。
少女の悲鳴と、濡れた音が暗い森に響きわたる。
これはきっと夢だ、少女がそう言いながら少女が笑う。
「覚めてよ…起こしてよ…助けてよ…お姉ちゃん」
少女の言葉と鈴の音がむなしく夜の森に響きわたる。
彼女をあざ笑うかのように…悪魔が少女の白い翼をつかむ。
「うあ…やめて…やだ…」
何をしようとしているのかを察し、少女は抵抗しようとするが、前と後ろ、両方の穴を貫かれた彼女は動くこともままならない…。
126 :
マルメンライト:2011/04/25(月) 02:30:07.70 ID:aMfIOAEl
ぶちぶちと何かがちぎれる音と文字通りの体を引きちぎられる痛みが少女の背中に走る。
激しい痛みと共にぼたり…と何かが地面に落ちた…。
「い…や…」
それは鳥の羽根に似ていた、羽毛に包まれた、白い純白の羽根…それが、ボタボタと流れ落ちる血を吸って赤黒く染まっていく。
姉がいつもきれいと言ってくれた、自分の羽根が、もぎ取られて地面に落ちていた。
「返して…返してよ…」
痛みなのか悲しみのせいなのかもはや彼女には分からない。
「う…うう…」
心の中で誰かが笑う。
引き裂かれた純潔…もぎ取られた羽根…彼女を更に絶望に陥れるかのように、悪魔の動きが加速する。
「もうやめて…これ以上私をいじめないで…」
どす黒い闇が彼女の精神を覆っていく。
そんな彼女の心の内などお構いなしに悪魔が強く彼女の奥深くをたたく。
苦しそうに…息をしていた。
127 :
マルメンライト:2011/04/25(月) 02:35:33.43 ID:aMfIOAEl
「え…まさか…いや…それだけは…それだけはやめて!!」
悪魔のものが彼女の中で膨らむ。
そして、彼女の一番深いところで悪魔が己を解き放った。
「あ…あ…ああ…」
汚されてしまった…犯されてしまった。
少女がボロボロと涙をこぼしながら、震える。
ゴポリと…収まりきらなかった白い液体が彼女の初めての証と共にあふれ出る。
同時に後ろを貫いていたツタが彼女を地面に下ろす。
よろよろと立ちあがった彼女は、かつて自分のものであった翼を抱きしめ泣きじゃくる。
その背中に、彼女の腕を喰らった獣が、爪を立てた。
そして、悪魔によって引き裂かれた場所に、明らかにサイズの違うそれを突き立てる。
「やめて…もうやだ…もう…やだよ…」
だが、獣がそれを理解するはずがない、彼女を四つん這いに押さえつけ、そのまま激しく腰を振る。
128 :
マルメンライト:2011/04/25(月) 02:38:08.34 ID:aMfIOAEl
「いやぁ!もうやだ!もうやだぁ!!」
現実に耐えきれず、少女の心が悲鳴を上げた。
ウォォォン…
チリン…チリン…
どれだけ眼をふさいでも貫かれる感触がこれが現実だと彼女をあざ笑う。
「やだ…やめてよ…このままじゃ…いなくなっちゃう…私が…いなくなっちゃう」
走馬灯のように昨日までの彼女の家族の姿が、脳裏に浮かんだ。
そして…
「ウォォォォン」
「いやぁぁぁぁぁ!!」
遠吠えのように獣が叫び少女の奥底に、濁ったそれを解き放った。
それと共に、心がピシリと音をたて、壊れた。
ぐったりと倒れた少女がちぎられた自らの羽根に手を伸ばす。
悪魔や獣はそんな彼女にゆっくりと近づいていく。
異変が起きたのはその時だった。
少女が触れた羽根が真紅に染まり金属質な光沢を放つ。
奇妙にねじ曲がり、羽根ではない別のものに変化していく。
「殺す…」
129 :
マルメンライト:2011/04/25(月) 02:40:16.62 ID:aMfIOAEl
かつて自らの翼であった真紅の鎌をもった少女は言葉と共に自らを犯した怪物に襲いかかった。
引き裂かれた服、手折られた翼、震える脚を伝わって濁った白い液体が地面にこぼれおちていく。
彼女のことを汚しつくした獣たちは、物言わぬ躯となっていた。
返り血に染まった破れた彼女の服の隙間からは無数の引っかき傷が刻まれている。
かつて自分の翼であったはずの凶器、鎌を手放し少女は泣きつぶれた。
次第に日が昇り、朝を迎える。
再び顔をあげた少女の目に宿ったのは憎悪と狂気。
「許さない…許さない…許さない…」
―私を捨てて逃げたあいつを絶対に許さない。―
失った翼と置き換わるように背中を破って黒い翼が姿を現す。
「なんで私がこんな目に会うのよ…何で私があんなバケモノに犯されなきゃいけないのよ」
ボロボロと涙をこぼしながら彼女の脚には渇いた血がこびりついていた。
130 :
マルメンライト:2011/04/25(月) 02:42:37.86 ID:aMfIOAEl
それが彼女が全身から放つ殺意をより強くしていく。
「何で私が…何であいつじゃないのよ」
ゆらり…少女の背中に憎悪の炎がともっていた。
「許さない…許さない…私とおんなじ目にあわせて…苦しませて抜いて殺してやる…」
憎悪の炎が強く燃え上がる、許さない、ただその言葉を繰り返しながらセレスティアの少女が歩く。
翼を模したような真紅の鎌を杖にして少女はただ許さないとその言葉を繰り返した。
「必ず見つけ出してやる…みつけだして殺してやる……!」
そう言い放つ少女にもとの逃げ惑っていたころの面影はどこにもなかった。
チリン…
「あはは、あははははははははははは!!!!」
おお・・・
リアルタイム・・・になるのかな?
続き期待
132 :
マルメンライト:2011/04/25(月) 03:03:49.17 ID:aMfIOAEl
前篇投下完了です
タイトルつけ忘れてましたがタイトルは「UNKNOWN」です。
アンノウンチームのセレスティアは実はセレスティアじゃなかった。
これがオリジナル設定です、地味に今までエルフとディア様やらお嬢とフェルパー
とかで複線張ってたんですが気付いた人いますかね?
ちなみにネームレスのころから各人の武器や戦闘スタイルはその人物の暗喩を込めてます。
こちらは気付いた人がいたらすごいかも。
なんかパソコンが壊れかけなせいか忍法帖が吹き飛んだらしくて
超小出しな感じに、後編は明日会社から帰ってから投下します。
楽しんでいただけるかわかりませんが後編もお付き合いいただけると幸いです。
今回も拙い文で失礼いたしました
ようやく帰宅、これから後編投下いたします。
チリン…
オーウェンと買い物に出かけた私は不意に聞き覚えのある音と、見覚えのある姿を見た気がした。
「どうしたクラッズ?」
「…なんでもない」
こんなところに…彼女がいるはずがない…彼女はもう死んでしまったのだから…
「誰かに似てるやつでもみたのか?」
私の顔を見て、オーウェンがそう呟いた。
「うん…死んじゃった…妹に似た人を見た気がするの…」
私が家族を失ってもうそろそろで一年がたつ。
「探すか?」
彼がそう言って私の手をつかむ。
「いや…いいよ、たぶん気のせい」
「そうか…お前が良いなら何も言わないでおく」
そう言って彼は私の手の荷物を取り上げる。
「ん、ありがと、オーウェン」
「気にすんな…それよりも喉渇いた、クラッズ」
そう言って彼が私に抱き付いて首をなめた。
「せめて家帰ってからにしてよ、こんな朝の街中とか絶対にやだ」
一度受け入れたせいか血を吸われるのは気にならなくなっていた。
それでも、なんか後ろめたい行為な気はしないでもない、だから私は二人きりの時だけ、彼にのませてあげる事に決めていた。
「はいはい…んじゃ早く帰るか」
私の言葉に本当に残念そうに彼がそう言って歩き出す。
「うん」
もう一度だけ振りかえって、見覚えのある影を探してみる。
―気のせいだよね…―
その思いを振り切るように、歩き出した彼の背中を追いかけた。
歩き出した二人を追うように、ボロボロの布を身にまとった人影が路地の陰から躍り出る。
「見つけた…見つけた…」
ざりざりと背中に背負った何かを引きずりながら歩くそれは少女の声をしていた。
「楽しそうにして…ゆるさない…」
くすくすと、その人物は狂った笑いを浮かべながら、二人の背中をゆっくりとおっていた。
「う…あ…は…」
頭が解けそうなほどの快感に私は打ち震える。
「おいしい?オーウェン…」
「ああ、ただ飲みすぎるとクラッズに悪いから、これで今日はやめとく」
ほんの二口ほどの血を飲むと、彼は私の首からそっと口を放した。
いつもの絶頂を迎えることなく終わった行為に、私はお預けをくらったような印象を受ける。
―本格的に、頭がおかしくなってきたかも知んない…―
自分が血を吸われることを望んでいたことを知って、私は打ちひしがれた。
初めは仕方ない、と思っていた、それなのに…今は私の方がその感覚を求めている。
下手に気持ち良いせいで、体が勝手に求めてしまう。
「どうした?クラッズ?」
そんな私を、不思議そうに彼が見ていた。
「…なんでもない」
出逢ったころはまだどこかおかしかった彼の様子も、もはや普通の人間と何ら変わりない。
「なんで、俺が血を吸うか分かったか?」
血を吸われたせいで、少しダルさで椅子に座った私を見ながら、彼が料理を始める。
「…オーウェンの特殊な性質で、血からその人の持ってる魔力を吸って自分のものにしてる…らしい」
「…なんで、そんな性質を俺が持ってるんだ?」
未だ、自らの正体を知らない彼が首をかしげた。
「…さぁ?あの手記だと…オーウェンを育ててくれた人は、あなたのそれを治そうとしてたみたい…でも失敗して、オーウェンの体は今みたいになった…ってことらしいよ」
彼のために用意した嘘を私は彼に言い聞かせる。
「…そうなのか」
私の作り話を真に受けて、彼が少しさみしそうに呟いた。
その仕草や様子は、とても彼が造られた者だとは思えない。
―自我と、心を持ったホムンクルス…―
ありえないと思うけど、今それは現実のものとして私の目の前にある。
「それより…今日は何の本を買ったの?」
「小説を数冊と…」
彼が料理しながら答える、私は彼が買ってきた本の袋を開けて中を見る。
「あとエロ本」
「え?」
それを見つけて手が止まった。
どう見てもいかがわしい表紙の本がある。
「…オーウェン性欲あるんだ」
「最近知った」
どんなものに興味があるのか気になって、中を軽く見てみる。
クラッズの少女が恥じらいながらヒューマンの少年のものを受け入れ、腰を振っていた。
「…て、いろいろちょっと待った」
「ん?どうした?」
オーウェンが食事をテーブルに並べながら私を見る。
「オーウェン…何でこの本えらんだの?」
「クラッズと同じ種族が出てたからだ」
さらりと、何事もないかのように彼がそう言う。
「…ちょっと待って…もしかしてオーウェン私のこと…」
「好きだが?」
予想通りの言葉が彼の口から発せられた。
「えーっと…」
何と反応していいか分からない。
むしろ今まで知らなかったとは言え、自分に好意を持っている男と同じ部屋で眠っていて…血を吸われるたびにあえぎ声をあげて…。
「…顔が赤いぞ?クラッズ」
「オーウェンのせいでしょうが…」
自分がまだ処女なのが奇跡だと思えた。
多分、彼の中で性欲と恋愛感情とつながりができていないからだと思う。
「クラッズは俺のことどう思ってる?」
「私は…」
オーウェンのことどう思ってるんだろう。
彼の正体がホムンクルスであるということを知っているのに、彼が傷つくのが怖くて未だに伝える事が出来ない。
血を吸われるのが気持ち良くて、そのまま抱かれてしまいたいと思ったこともある。
「私は…オーウェンのことが……」
その瞬間、窓が割れて何かが飛び込んできた。
「クラッズ!!」
とっさにオーウェンが私をかばう。
少し前まで私のいた場所に、真紅の鎌が突き刺さっていた。
「一体…誰が…」
窓の外を彼と睨む、すると…。
「…あらあら…お邪魔だったかな?」
くすくすと、フードを纏った少女の声が割れた窓を越え、床に突き刺さった真紅の鎌を引き抜いた。
チリン…とどこかで聞いたことのある音色が響く。
「何者だ…」
オーウェンが私を背後にかばいながら、その人物を睨む。
私は…その人物が誰なのか、分かっていた。
くすくすと、フードの人物が笑う。
「さて何者でしょう?貴方の後ろのクラッズは、私が誰なのか気づいてるみたいだけどね…」
フードの人物が笑うたびにチリン、チリン、と鈴の音がなった。
なぜ、彼女がここにいるんだろう?なぜ、彼女が私を襲うんだろう?
「…クラッズ?」
「生きてたのセレスティア…」
私の言葉にフードの人物が笑って、フードをはずす。
「久しぶりね…お姉ちゃん」
死んだと思っていた妹がそこにいた。
「無事だったんだ…よかった…」
うれしくてぽろぽろと、涙がこぼれ落ちる、私は彼女が自分を殺そうとしたことも忘れてふらふらと近づいた。
「クラッズ!やめろ!!」
そんな私をオーウェンが突然引っ張った。
瞬間、目の前を真紅の鎌が薙ぐ。
「セレスティア…?」
「無事なわけ…ないでしょう」
片手で真紅の鎌を振りぬいて彼女が笑う。
どこか壊れた歪な笑い。
「右腕はお姉ちゃんがもってっちゃうし…必死で必死で逃げたのに…」
笑いながらセレスティアが涙を流していた。
「初めてだったのに…バケモノなんかにむちゃくちゃにされて…」
体を覆っていたマントをセレスティアが脱ぎ棄てる。
そこにあったのは、オーウェンと同じように漆黒に染まった翼。
真っ白だった彼女の翼はどこにもない。
「お前のせいだ…」
翼と共に変わってしまった彼女が私を睨む。
「セレスティア…私…私…」
謝ろうと再びつかづこうとした私をオーウェンが手でさえぎった。
「やめろクラッズ、あいつはお前を殺す気だ」
「そんなことわかってるよ!でも…あの子がああなっちゃったのはああ、しちゃったのは私のせいなんだもん」
本当はあのとき、気付いていた、彼女の気配が無くなっていることに、でも怖くて、怖くて、死にたくないから逃げ続けた。
私は、妹を見捨てて逃げた、だからあの子はああなってしまった。
彼女が壊してしまったなら、それは間違いなく私のせい。
「じゃまだよ、どいて」
「がっ!?」
私に気を取られたオーウェンを、セレスティアが鎌の柄で殴り飛ばす。
「オーウェン!!」
「大丈夫だ…ぐ!」
倒れたオーウェンのお腹をセレスティアが踏みつける。
「ほんと…邪魔…先に殺してやろうか?」
暗く濁った光をたたえたセレスティアがそう言いながらオーウェンを何度も何度も踏みつける。
「ぐふっ!」
苦しそうに彼が呻く。
「やめて!セレスティア、オーウェンは関係ないでしょ、彼を傷つけないで!!」
私の言葉を聞いたセレスティアがニヤリと顔をゆがませた。
「苦しいの?お姉ちゃん、こいつが傷つけられるのが…」
「…うん、だから…お願い…」
「ダーメ…」
歪な笑いを浮かべてセレスティアは鎌の柄をオーウェンのみぞおちに突き立てた。
「が…!」
「苦しめば良い、私が苦しんだようにお姉ちゃんも苦しめば良い!!」
セレスティアが笑いながらオーウェンを何度も何度も蹴りつける。
次第に、オーウェンの体がぐったりと力を失っていく。
「やめて!お願いだから!オーウェンが…オーウェンが死んじゃう!!」
「だめ!もっとお姉ちゃんは苦しむの!私が苦しかった分苦しむの!!」
でも、セレスティアは壊れた笑いを繰り返すだけで、その行動をやめようとしない。
「やめてぇ!!」
彼を助けようと、私は椅子でセレスティアのことを殴りつけた。
「きゃあ!」
どさりと倒れた彼女からオーウェンを引きはがし、そのまま背負って家から逃げ出す。
「クラ…ッズ…」
「オーウェン!大丈夫、死なないでよ!!」
背中で彼が苦しそうにうめいた。
セレスティアから隠れる為に森に逃げ込み、木に彼の体を横たえる。
「…ごめん…オーウェン…」
ボロボロになった彼に、謝る。
「…気にすんな…それより…クラッズ…俺のこと…好きか?」
血を吐きながら彼がそういって私の頭を撫でた。
こんなときに、何を言ってるのか…そんなことを思いながらも、私ははっきりと自分の思いを口にする。
「大好きだよ…大好きだから…オーウェンに傷ついてほしくないよ…」
今まで隠してきた思いを口にする。
たまにふざける彼が好きだった。
血を吸われ続けるたびに抱かれたいと思っていた。
何より…私を大事にしてくれる彼が大好きだった。
「…俺も…クラッズが傷つくのは嫌だ…」
私の言葉に彼がそう呟いた。
「え?」
「クラッズを失いたくない…だから…俺にお前を守らせてくれ…」
「そんなボロボロなのに…そんなオーウェンに何ができるのよ…」
ボロボロになってるのに、まだ私にそう言ってくる彼のせいで、涙が止まらない。
「あいつを…お前の妹を…止める…、血をくれれば…何とかなる」
それが、どういう意味か、私は察する。
彼女を止めるには一つしかない。
「それは…」
「クラッズ…俺はお前を失いたくない」
彼が私の頭を引きよせて、唇を重ねる。
「ずるいよ…オーウェン…そんなこと言われたら…私…」
セレスティアが…私がおとなしく殺されても彼を見逃すようには思えなかった。
彼には生きてほしい、私はどうなってもいいから…彼は助かってほしい。
ガサリ…チリン…
背後の茂みが音を立てセレスティアが姿を現す。
「みーつけた…お別れはすんだ?お姉ちゃん?とりあえずヴァージンをそいつの前でぐちゃぐちゃにして、そいつが死ぬのをお姉ちゃんは見ないといけないの」
チリン…と鈴を鳴らしながらセレスティアはくすくす笑っている。
「ごめん…セレスティア…私は…ひどいお姉ちゃんだ…」
私の決意を察して、木を支えにオーウェンが立ち上がる。
「…何するつもり…」
彼女が私達を睨む。
―ごめんね…セレスティア…―
また私は彼女を見捨てるんだ。
生き残ってくれた最後の家族を失うんだ…。
でもそれ以上に彼を失いたくないと、私の心が叫んでる。
「私は死ねない…」
セレスティアを強く睨みつける。
「…へぇ?」
そんな私をセレスティアは見下すような目で見ていた。
「どうやって?」
笑う彼女の目を見ながら私は背後の彼に言葉を告げる。
「良いよ…オーウェン…好きなだけ…好きなだけ、私の血を吸って…」
「ああ…クラッズ…俺がお前を必ず守る」
私の言葉に応えるようにオーウェンが肩に噛みついた。
「くはぁぁ…」
ぶるぶると体が震える、頭がとけそうな快感で目の前が真っ白に染まる。
私の体温が彼によって奪われる。
私達の行為をセレスティアは驚いた眼で見ていた。
たっぷりと血が彼に吸われて意識が少し遠のきそうになる。
「…オーウェン…いける?」
「…これだけもらえりゃ余裕だな」
ぺろりと傷をいたわるように、彼が舌で肩の傷をなめてなめそう言った。
「それじゃ…お願い…」
快感で力が抜けてしまった私はぺたりと地面に座り込む。
「なに今の?」
セレスティアがそう呟くと、ボロボロだったはずのオーウェンが笑った。
その体がものすごい速さで直っていく。
「子供には早いな、教えてやらねぇ」
力が満ちた表情で彼が笑う。
「処女じゃない分お姉ちゃんよりは大人だけどね」
彼の変化に気付いたセレスティアが鎌を構えようとする。
だが…。
「遅いんだよ!」
ビーストのように変質させた腕でオーウェンがその鎌を弾き飛ばした。
「チッ!」
舌うちしながらセレスティアが鎌を拾おうと走り出す。
「だから、おせぇ!!」
言葉と共に、オーウェンがブレスを放つ。
さすがに驚いたセレスティアがあわててそれをよける為転がった。
「…あなた、人間?」
立ち上がりながら、セレスティアがオーウェンを睨む。
「さぁな…しらねぇよ、一つ言えんのは…」
ちらりと彼が私を見た。
「俺はあいつを傷つけさせない、たとえあいつの妹でも、あいつのことを殺そうとするなら…俺がお前を殺す…」
オーウェンの言葉にセレスティアが笑った。
「殺せるもんなら、殺してみなさいよ!!ファイガン!!」
「ウンディーネ!あの炎を止めろ!」
セレスティアの放った魔法の炎が彼の呼びだした水の精霊に受け止められる。
「セレスティアかと思ったら…ブレスの次は精霊魔法…今度は何を使うつもり?」
セレスティアの言葉にオーウェンが笑う。
「さてな、何なら使えるか、俺にもよくわからないもんでね」
言葉と共に、オーウェンの姿が掻き消える。
「ちっ!」
舌うちしてセレスティアが鎌を拾い上げる。
「どうした?怖いのか?」
「ぬかせバケモノ!!」
セレスティアが狂ったように魔法を放つ。
その全てをオーウェンの魔法がうちけしていく。
雷には土の精霊が闇には光の精霊が、時折姿を現して交錯するたびにビーストと金属質な手でセレスティアの鎌を弾く。
「死ねぇ!!」
空間を薙ぐようなセレスティアの斬撃をオーウェンは身を低くして回避しながらビーストと化した腕を伸ばす。
「死なねぇよ…俺はクラッズを守るって言ったんだからな」
言葉と共にオーウェンが走り抜ける。
「あ〜あ…残念」
どこか嬉しそうにセレスティアが小さく呟いて、その胸をビーストと化したオーウェンの腕が貫いた。
瀕死の彼女の手を取ると、セレスティアが小さく笑った。
「…お姉ちゃん…無事だったんだ…」
笑うセレスティアは昔の家族が一緒のときと同じ優しい顔をしている。
「ごめん…セレスティア…」
彼女の手をつかんだまま私は謝る。
彼女を見捨てたばかりか、殺してしまうことになった彼女に…。
だが、そんな私の頭をセレスティアは優しく撫でた。
「気にしないで…お姉ちゃん…私、お姉ちゃんのこと、殺したくなんかなかった…でも、もう一人の私が、ずっとお姉ちゃんを…殺そうとするの、止められなかった」
壊れてしまった彼女の中の闇、それがきっとさっきまでの彼女。
「オーウェン…だっけ?」
「…あんま好きな名前じゃないが、そう呼ばれてる」
セレスティアの言葉にオーウェンが複雑な表情を浮かべる。
「そっか…お姉ちゃんを守ってくれて…ありがとう」
「…気にするな、俺が勝手にしたことだ」
死にそうなのに、セレスティアは笑ってオーウェンにお礼を言った。
「あの鎌、貴方にあげる…もともと私の羽根だったの…あんなふうになっちゃったけど…貴方が使ってくれれば…貴方なら…きっとお姉ちゃんを守るために使ってくれる…私を止めてくれた貴方に…私からの…プレゼント」
「分かった…これからは一緒にクラッズを守っていこう…」
オーウェンがそう言うとセレスティアが笑った。
「お姉ちゃん…私、冒険者になりたかったんだ…」
次第に力を失いながらも彼女が笑う。
共に、目指そうと誓った道を彼女が思い出させてくれる。
「うん…うん…」
「私の代わりに…皆を助けられるような…そんな冒険者にお姉ちゃんはなってほしい」
「約束する!絶対に絶対になるから…」
「オーウェン…お姉ちゃん…大事にしてね…」
「言われなくても…分かってる…」
オーウェンも、泣いていた本当の人間のように…。
「あはは…ごめんね…オーウェン…ホントに人間?とかバケモノとかいっちゃって…」
「気にすんな…俺だって分からないんだから…」
「ううん…」
オーウェンの言葉をセレスティアが否定する。
「人間だよ…お姉ちゃんを守って、私のことで泣いてくれてる…だからくだらないことを気にしないで…それでも気になるなら、オーウェンて名前が嫌いなら、私の名前を貸してあげるから…」
「ありが…とう…」
次第にセレスティアの目が光を失っていく。
「…おねえちゃん…歌…聞かせてほしいな…」
「分かった…」
涙をこらえず私は彼女の手を取って、歌を歌う…彼女が好きだった歌を…
「ありがと…おねえちゃん…ありがと…オーウェン…」
「…セレスティア…」
私の歌を聴きながらセレスティアが笑う。
「二人とも大好き…だよ」
最後にそう呟いて、彼女は静かに息を引き取った。
彼女の形見の髪飾りを自分の髪につける。
軽く頭を振るとチリン…と小さな音を立てた。
「これからはずっと一緒だよ…セレスティア…」
彼女の亡骸にそう告げる。
死んだ彼女は幸せそうに眠っているように、私には見えた。
「クラッズ…墓の用意ができた…」
真紅の鎌を背に背負って、オーウェンがそう告げる。
「ありがと…オーウェン…」
彼が掘った穴に彼女の体を横たえる、土をかぶせ、墓標を添える。
最後にオーウェンと二人で並んで彼女の墓に手を合わせる。
彼女との思い出がよみがえる。
「ふ…」
二人で一緒に悪戯をして怒られた。
二人で隠れてお酒を飲んだ。
冒険者を目指す彼女にいろいろな勉強をおしえた。
「お姉ちゃんは笑ってるのが一番良い…」
そう言って笑っていた彼女を思い出す。
なのに、今の私は泣いてばかりだ。
笑わないといけないのに…。
「クラッズ…無理をすんな、泣きたいなら好きなだけ泣けばいいんだ」
オーウェンがそう言って私の肩を抱く。
「オーウェン…ありがと…」
彼の胸に抱きしめられながら私は声をあげて泣き続けた。
―ごめんなさい…セレスティア…貴方を助けられなくて…ごめんなさい―
オーウェンが私の頭を撫でる…。
彼女の鈴が私のそんな私を慰めるようにチリン…と小さな音を立てた。
「窓直さないとな」
壊れたガラスを片付けながらオーウェンが呟いた。
「そうだね」
セレスティアが破壊した窓をとりあえずの応急処置で板を打ち付けてふさぐ。
「なぁクラッズ…冒険者になるのか?」
オーウェンが呟いた。
「うん、なる約束したから…」
「そうか…なら俺も冒険者になる…」
私の言葉に彼がそう言って、立ち上がった。
「いいの?」
「良いんだよ、お前と一緒にいたいからな」
オーウェンが少し恥ずかしそうに言った。
そんな彼を見ながら、私は今までついていた嘘をやめる。
「ホントはね…オーウェン、私貴方が何なのかもう分かってるの」
「ああ、ホムンクルスなんだろう?」
やっぱり彼は気付いていたんだ、セレスティアと彼が戦う時、血を吸わせてくれと言っていたから、まさかとは思っていた。
「知ってたんだ…」
「文字をクラッズが教えてくれたからな…あとは資料を読んでれば、なんとなくわかった」
「そっか…そうだよね」
それでも、彼は彼でいてくれた。
「それよりクラッズ…ホントに俺が好きか?人間じゃないのに…」
不安そうに見つめる彼の頭を私は軽くチョップでたたく。
「セレスティアも言ってたでしょ、オーウェンは人間、ちょっと人と違うだけ」
そう言って笑うと、鈴が小さな音を立てる。
彼のことを笑うように小さく小さく音を立てる。
「だがな…」
「あー…めんどくさい、そんなに不安なら分からせてあげる」
まだうだうだと何かを続ける彼の手を引っ張って寝室に向かう。
「お…おいクラッズ?」
戸惑う彼をベッドに押し倒す、そしてマウントポジションを取って彼に笑った。
「いいからこのまま好きにされちゃってよ、そしたらそんなこと悩まなくなるから」
恥ずかしさを必死で押さえながら私は彼のズボンを脱がす。
そこは少しずつ固くなってきてはいたがまだまだ力強くはなっていなかった。
「あ、かわいい…」
そう言うと彼がピクリと震えた。
「オイ…」
「あ、ごめん、すぐするから待ってよ…」
ベッドから降り自分の上着を脱いで胸を覆う布を脱ぎ棄て上半身裸になると、オーウェンがじっと私の胸を見ていた。
「な、何?」
少し恥ずかしくなって彼を見る。
「何か…腰がムズムズするな」
言われて彼のものを見ると、少し大きくなってきていた。
興奮してくれている、不安だっただけに、嬉しくて、私はそのまま彼のものをつかんだ。
軽く上下にしごいてみると、彼が少し苦しそうにうめく。
「あ、ごめん痛い?」
「いや、大丈夫だ、続けてくれ」
「ん、ありがと」
ベッドに腰をかけた彼の股間を直視するように私はベッドからおりて、ひざまづく。
固くなり始めた彼のものを思いきって口でくわえると、彼の腰がわずかにはねた。
上目づかいで彼を見ると気持よさそうな顔をしている。
ぺろぺろと舌でなめると、口の中で彼がどんどん大きくなる。
「んふ…はむ…」
体が熱くなってきて、彼のものに奉仕を続けながら私はあいた手で自分を愛撫する。
先ほど彼に血を吸われたせいか、下着はびしょびしょに濡れていた。
―…なんか頭くらくらする…―
血が足りていないのか、はたまた彼によったのか、一心不乱に私は彼のものをなめ続けた。
大きくなった彼のものはものすごく熱くて固い、口に入りきらなくなって私は先っぽだけを口に含んで、彼の中を刺激するかのように舌をそこに差し込んだ。
「うっ…クラッズ…マズイ…」
「んむ…あむ…」
彼がイキそうになっているのか腰を震わせ、私の頭を引き剥がそうとする。
必死で私はそれに抗うように彼のものを強く吸った。
「うあっ!」
抵抗空しく彼からひきはがされる、だが同時に彼も絶頂を迎え私の顔と胸を彼の白濁液が汚す。
「暖かい…」
顔や胸に張り付いたそれをなめてみると、少し不思議な味がする。
「どう?オーウェン、ちょっとは気にならなくなった?」
そう私が笑うと、彼が私をみて不敵に笑っていた。
―あれ?―
「ここまでされたら…我慢できるか…男らしくしてやるよ」
言葉と共にベッドの上に引き上げられ、今度は私が押し倒される。
「あれ?オーウェン?もしかして…」
「クラッズ…覚悟しろよ…」
言葉と共に彼が下着を引きちぎった。
精を吐き出したばかりのそれが力強くそそり立っている。
「ちょ!タイムタイム!ヤッていいけど!ヴァージン何だから優しくしてよ!」
「無理だ…人がどれだけ必死に耐えてきたと思ってる、人間じゃないからクラッズが嫌がると思って我慢してきたんだぞ?」
そう告げる彼を私は不意におかしくなって笑う。
「…ホムンクルスだって何だって良いじゃん…オーウェンはオーウェンだよ、男なんだし、私を食べたかったら…食べちゃえ、私が許可する」
私が笑うと彼が少し驚いた顔をした、そしてすぐに笑う。
「途中で後悔するなよ?」
「絶対にしないね」
私が笑うと、髪飾りの鈴が鳴った。
「どうせならそんなこと考えられないくらい、むちゃくちゃにしちゃってよ」
「ああ、楽しませてもらう」
そう言ってオーウェンが私の胸をつかんだ。
勢いの割に繊細なタッチで胸を揉まれると切ないようなくすぐったいような気分が膨らんでくる。
「あ…はっ…声が…出ちゃう…」
チリン、チリンと鈴が鳴る。
「もっと出して良いんだぞ、どうせだれも来やしない」
笑いながら彼が濡れた私の大事なところをなぞり挙げた。
「ふひゃぁ!」
突然の刺激に思わず声をあげる。
「お…オーウェン…なんかうまいね…経験あるの?」
「いや?ない、ないけど…」
ぼそりとオーウェンが私の耳元で囁いた。
「クラッズの感じるところはよく知ってる…」
「ふえっ!」
驚く私の小さな豆を彼が笑ってつまみあげた。
「くひぃぃ!?」
強すぎる刺激に思わず彼の体を強く抱く。
「ここと、あと、首筋もよわい…」
首筋を生温かい感触がくすぐると、血を吸われるときのことを思いだして快感で体が震える。
「ちょ…なんで、しって…」
「あとここも…」
言葉と共に彼の指が私の中に入って手前の壁をくすぐった。
「うひゃぁぁ!!何で…何で知ってんの!?」
私の言葉に彼が笑う。
「血を吸ったときに、なんか知らんがクラッズが一人でしてる時の光景が浮かんできた。胸の先をつまむのも好きなんだよな?」
言葉と共に胸がつままれると、びりびりとした電流が背中を走る。
「ちょっと…ちょっとまって…つまりオーウェン…私が一人でしてるのみたってこと?」
「ああ」
あっさり言われて顔が真っ赤になる。
「あんなに深く指入れたら処女膜傷つくぞ」
「!?な、な、なんのこと?」
そんなことまで知られているなんて思わなくて顔が真っ赤にそまった。
「これからは気にしなくて良いようになるけどな」
言われて彼のものを見ると、パンパンに膨れたそれがいまかいまかと私に入るのを待ちわびて先走りの汁が垂れていた。
「て、ちょっとまってオーウェン、さっきよりでかくなってるのは気のせい?」
「さぁな」
くすくすと彼が笑う。
「意外と面白いな、ホムンクルスって」
彼が私の首に噛みついて血を吸った。
「ちょ、卑怯者!?あ、ああ…!血を吸いながら入れるな〜!!」
同時に異様なサイズのそれが私の中に入ってくる。
血を吸われているせいで痛みと快感を同時に味あわされる。
「オーウェン、反則…血吸わないで…せめて初めての痛みだけは味あわせて…」
半分ほど埋まった彼を見ながら、せめてもの願いとして彼に言う。
「…分かった」
「ありがと…」
痛いと知っているから、彼はそれを和らげようとしてくれたのだろう、だけど、私はその痛みを彼のために味わいたい…。
彼のものになる痛みだからしっかり覚えておきたい。
「痛かったら我慢せずに言えよ?」
オーウェンが私の腰をつかんだ。
「血を吸われるので痛いのは慣れてるよ…だからオーウェン…私を散らして…」
「ああ…」
彼が腰を引き勢いよく私の腰を引きよせる、ブツリと私の中で何かがはじけて、彼が一番奥まで潜り込んだ。
「くあ!…い…った」
体を二つに割かれるような痛みに体が震える。
「大丈夫か?」
そう言って私を見た彼の唇を奪う。
舌を絡ませ、彼を解放する。
「結構痛い…」
ひりひりした痛みが下半身に残っている。
「俺はすごく気持ち良いんだがな…これがクラッズの中か…熱くてキツイな」
「いちいち言わなくて良いよ…馬鹿…」
自分の中がどういうふうになってるか言われ、恥ずかしくて顔を隠す。
「そう言われてもな…」
ポリポリと彼が頬を掻く。
「どれだけ恥ずかしいか思い知らせてあげる…」
そう言って、私は自分の中の彼に意識を集中させた。
「うあ…オーウェンの…アツくて…固くて…おっきくて…ときどきピクって動いてる…」
私の言葉にオーウェンのものが反応してまたお腹の中でピクリと動いた。
「クラッズ…」
オーウェンが赤い顔で私を見る。
「優しくとか…無理」
言葉と共に彼が動き出した。
「うあっ!?逆効果!?ちょっと…バカ!オーウェン激しいって!!」
ずぶずぶと彼が何度も私の中を出入りする。
痛いのに…気持ち良いという感覚もある。
「あんなことを言われて…手加減なんか無理だ」
「うぁ!くふ!ふぁ!」
髪飾りの鈴が彼の動きに合わせて鳴る。
濡れた水音が寝室に響く。
パンパンと腰がたたきつけられる音と共に小刻みな鈴の音が常に響く。
妹にみられながらされているようで、背徳的な快感が頭をだんだん真っ白に染めていく。
「オーウェン…駄目…もう限界…」
激しい行為で自分がどこかに行ってしまいそうな不安な気持ちがどんどん強くなる。
火花が絶え間なくはじけ続け、腰の痛みが溶けていく。
「俺も…このまま…」
「いいよ…だから早く…私の中に…」
「ああ…行くぞクラッズ!」
「うあぁぁぁぁ!!」
彼が震えて私の中ではじけ、熱い液体を私の中に解き放つ。
その熱さに中を焼かれながら私は初めての行為での絶頂へと上り詰めた。
「大好き…オーウェン」
「俺もだ…クラッズ」
彼がそう言って顔を近づける。
私はそっと目を閉じ思いを伝えるように口づけを交わした
「…オーウェンに散らされた〜」
行為の後の気だるい感覚に包まれながら私は彼の首に噛みつく。
「最初に誘ってきたのはクラッズのほうだろ?」
彼が笑って溢れてきた精液を私のそこからふき取る。
「…そうだけどね、初めてなのにあれはひどいよ、ただでさえデカイのに、あんな風にされたら広がったままになっちゃうってば、てかまだ痛いし」
まだ彼が入ってるような感覚に私は自分のお腹を撫でる。
「むちゃくちゃにしていいって言うからしただけだ」
けろりと、した顔で彼が答える。
「…さて、思惑ではヴァージン散らされるつもりはなかったんだけど、まだ自分が人間かどうか悩んでる?」
思い出したように私がそう言うと彼が笑った。
「なんかどうでもよくなった、俺は俺だし、ホムンクルスならではの技で、クラッズを楽しませてやれそうだしな」
そう言って彼がざらざらとした質感の舌で私の胸をなめた。
「くふっ!?…ちょっと、何か舌の感触さっきと違くない?」
私がそう言うと彼がニヤニヤと笑って私を見た。
「手が変化させられるんだから、舌だってフェルパーみたく出来るよな…ブレスだって吐けるんだし」
「あはは…何それ、そんなお得な機能付きなの?」
私が笑って彼も笑う、鈴が小さな音を立てる。
「病みつきになるだろ?」
子供みたいに彼が笑う。
「そんなのもう、とっくのとうになってるよ」
今度は私が抱いてやる、そんなことを思いながら私は再び彼を押し倒す。
まだ日も暮れていないのに私達は何度も何度も愛し合った。
荒々しく扉がノックがされる音で私は目をさました。
「ん〜オーウェン…起きて〜フェルパー来たみたい…」
オーウェンのことをそう呼んでゆすると彼が静かに目をあける。
「…おはようクラッズ、あとオーウェンじゃなくてセレスティアな」
ぼーっとした目で私をみながら彼が頭を撫でる。
あの子の形見の髪飾りがいつものように鈴の音を響かせる。
とりあえず、脱ぎ棄てた服に身を包むと、扉が金属音と共に二つに分かれた。
「おはよう、お二人さん、会議の時間は過ぎてるぜ?」
いつも通りの燕尾服に身を包んだフェルパーが刀を服にしまいながら笑う。
「ああ、いつも悪いなフェルパー、お嬢を満足させるために夜は忙しいのに、朝は俺らを起こしに来てくれて」
「分かってるなら考えろ、というかお前らよく体力持つな、俺もバハムーンと毎日やってるが…2、3回が限度だよ」
「初日のお前らと俺らよりもハードなエルフ達にはかなわんがな、俺とクラッズは最低6回はする」
「危険日も全部中だからそろそろ私が妊娠しそうだけどね〜、そしたらさすがのセレスティアもできないでしょ?」
「じゃあ妊婦になったら後ろだな」
「うわ、変態、でも刺激的でいいかもね」
鈴を鳴らして私が笑うと、オーウェンも楽しそうに笑った。
「やれやれ…学生で子供産んだら、何言われるかわからんぞ」
フェルパーがそう言って笑うと、オーウェンはにやにやと笑った。
「いや、分からんぞ、タカチホのネームレスは子持ちが確かいるからな」
「そういやそろそろ三学園交流戦だな」
思い出したようにフェルパーが呟く。
「去年、あっさり負けたな〜今年は勝てるといいけど…」
不安になった私の頭をオーウェンが撫でる。
「今年は勝てるさ、なんたって全員オトナだからな」
愛用の真紅の鎌を背負い、オーウェンが笑う。
「バーカ、あっちだってオトナでしょ?」
私達の会話に呆れたようにフェルパーが笑う。
アンノウン、それが私達のチーム。
お嬢様のバハムーンと、その執事で恋人の暗器使いのフェルパー
ネコ被りの妹ディアボロスと、その恋人のドMな精霊使いのエルフ
そして私と、その恋人、人の心を持ったホムンクルス…
どこかふざけた私達、それでも仲間になれたのだから、きっと仲良くやっていける。
そして、いつか彼のことを本当の名前を皆に知ってもらいたいと、私はひそかに心の中で思う。
―ねぇ、セレスティアどう思う?―
髪飾りの鈴が、そんな私に応えるように小さく澄んだ音色を奏でた。
171 :
マルメンライト:2011/04/26(火) 01:50:13.71 ID:OTiwRpeP
以上でようやく投下完了です、サイズが大きすぎて規制に引っ掛かってまたLVが1になりました。
ビューアを買った方が良いのかも知れない。
というわけでセレスティアことオーウェンとクラッズの過去話でした。
クラッズとセレスティアがなんであんなにいつも仲が良かったか分かっていただけたら
幸いです。
他のメンバーと比べるとだいぶ異色な感じですね。
今回はいろいろと書いてみたいように書いてしまったので変な感じになってしまっているかもしれませんが
楽しんでいただけたら幸いです。
今回も拙い文失礼しました。
妹さん(´;ω;`)
でも最後に仲直りできたのは幸せだったかな。ともあれ、忍法帳のレベル初期化にも負けず乙でした!
GJいつも楽しく読ませて頂いております。お幸せにというか、とりあえず末永く爆発して下さい。
前回投下した奴等がちょっと気に入ったので再び同じパーティから
今回はフェルパー×ヒューマン
注意としては、逆レイプモノで、ヒューマンの扱いが始終ひどい
大丈夫だという方はどうぞ
「おい、フェルパー。飯だぞ」
後ろの道具袋に声を掛けるバハムーン。しかし、反応はない。すると、それを見ていたフェアリーが笑う。
「『めし』じゃ反応しないよ、フェルパーは。もっと丁寧に言わないと」
「………」
バハムーンは少し眉をひそめ、軽く咳払いをすると、ひどく重くなった口を開く。
「ご、ご飯だぞ」
「ごはん!」
途端に道具袋の口が開き、中からフェルパーが飛び出した。
「ごはん、なに?」
「おにぎり各種。中身は取ってのお楽しみだ。個数は一人二つまで」
「じゃあこれ」
「じゃあ俺これー!」
フェルパーは何の遠慮もなしに、さっさと自分のおにぎりを確保する。それに続いてヒューマンも取り、その後にバハムーン、
ドワーフと続いていく。
「……む〜」
早速一口齧ったフェルパーが、顔をしかめる。その中身は梅干しで、どうやら気に入らなかったらしい。
「これ嫌い」
「好き嫌いしねえで、黙って食え」
「お、僕のは野菜の漬け物か。これ、タカチホの食材使ってるのかな?」
「うおお!?おにぎりの中におにぎりが入ってるー!?」
「お、それは当たりだ。よかったな」
「え、何?これ君のお手製?」
「あ、私のはお魚だぁ」
言った瞬間、ドワーフは強烈な視線を感じた。そちらに顔を向けると、フェルパーが期待に輝く目でこちらを見ていた。
「……えっとぉ、交換するぅ?」
「する!」
フェルパーは梅干しおにぎりを文字通り投げてよこし、代わりにドワーフが差し出したおにぎりをひったくるように奪った。
早速一口齧ると、それまでの表情とは打って変わって、フェルパーの顔はとろんとした、幸せに満ち溢れたものに変わった。
「……ツナ」
一言呟き、フェルパーは緩みきった顔でゆっくりとおにぎりを食べ進める。
「相変わらず、君は幸せそうだね」
「しやわせ」
さほど大きくないおにぎりはすぐに小さくなり、最後の一口を名残惜しげに口に入れると、フェルパーはもう一つのおにぎりを齧った。
「……しゃけ」
より一層、フェルパーの顔は緩んだものになり、もはや蕩けきった顔と言えるほどにまでなっている。
「その程度でそこまで喜ぶか。幸せな奴だな」
「しゃーわせ」
もはや言葉も緩みきっており、フェルパーは食べながら喉をゴロゴロと鳴らしている。隣のセレスティアはそれがうるさいらしく、翼で
そちら側の耳を覆っている。
「よかったねぇ、フェルパーちゃん」
「よかった」
満面の笑みで食べるフェルパー。そんな彼女のおかげで、迷宮の中での食事という落ち着かない状況にもかかわらず、一行はそれなりに
ゆったりとした気分に浸れるのだった。
恐らく彼等の中で、周囲からも仲間内からも謎の多い人物として見られているのは、このフェルパーだろう。
一日の18時間は寝て過ごし、移動は道具袋に入って仲間に運んでもらう始末。戦闘と食事以外では、彼女が起きているところを見た者は
いない。その割には授業日数が足りていないという話も聞かず、また成績もさほど悪くないらしく、まさに謎だらけの人物である。
彼女の加入の経緯は、恐らくプリシアナ設立以来、後にも先にもこの一件だけというような、おかしな経緯だった。
その日、フェアリーはヒューマンと一緒に寮の中をぶらぶらと歩いていた。ヒューマンとドワーフに続き、セレスティア、
そしてバハムーンという強力な仲間を得たはいいが、規定ではあと一人パーティに入れられる。
だが、入学からそれなりに日が経っており、もう一人でいるような生徒は少ない。ドワーフのように、元のパーティから放逐される者も
いるとはいえ、そう都合よく目の前に現れてくれるわけもない。
「別に五人でもいいんじゃねえのー?問題はねえんだろー?」
「とはいえ、あと一人入れられるんだから、多いに越したことはないよ」
「けど、いねえんじゃしょうがねえだろー?」
「まあ、そこなんだけどねえ…」
溜め息混じりに言うと、フェアリーは冗談めかして言った。
「あ〜あ、どっかにいい仲間が落ちてたりしないか…」
言いかけた彼の口は、そのままあんぐりと開けられていた。隣のヒューマンも、訝しげな顔でそれを見ている。
廊下を曲がった先に、道具袋が落ちている。そこには張り紙があり『拾ってください』と書かれていた。
単純に考えれば、いらなくなった物を、誰かの再利用を願って捨てたか、あるいはそれを装ったいたずらの類いだろう。
しかし、その袋は規則正しく上下に動いていた。おまけに中からは、寝息のようなものまで聞こえている。
「……何、これ?」
「誰か、犬か猫でも捨てたのかー?」
「いや、まさかそんな……けど、それっぽく見えなくもないよね…」
「じゃ、確かめてみようぜー!」
「あ、ヒューマン待っ…!」
止める間もなく、ヒューマンはずかずかと近寄り、道具袋を開けた。そして彼は、そのまま固まってしまった。
一体何事かと覗きこんだフェアリーも、その場に固まってしまった。袋の中身は、彼等の想像を遥かに超えていた。
「す、捨て……猫?」
「まあ、確かに、近いものだけど……一体何がどう…」
中に入っていたのは、フェルパーの少女だった。捨てられた事にも気づいていないのか、彼女は道具袋の中で、安らかな寝息を立てている。
「お、何か紙切れ入ってるぞー?」
「どれどれ……ふーむ、元のパーティの人が書いたんだね。この子がどんな子か書いてある」
曰く、寝てばかり。食べることしか頭にない。誰かが運んでやらないと移動もしない。仲間と馴染む努力もしない、など、捨てるに至った
経緯が簡単に記してあった。ついでに、彼女の学科と寮の部屋まで丁寧に記載されている。
それをざっと読み終えると、フェアリーはしばらく何かを考えていた。少しの間をおいて、何かを決心した顔つきになると、
彼はヒューマンに言った。
「ヒューマン、悪いけどこの子持ってくれるかい?」
「え?何?どうするんだー?」
「決まってるだろ?六人目の仲間は、決定だよ」
「へーえ?誰だー?」
「この子だよ!話の流れからわかってくれよ!」
そんな経緯など本人はつゆ知らず、いつの間にか一変している仲間達を不思議に思うでもなく、別の意味ですっかり馴染んでいる。
他の仲間も、フェルパー運びは日替わり交代制を敷くなど、このおかしな仲間に馴染んでしまっている。
また、基本的には寝るか食べるかしかしていないとはいえ、戦闘では頼りになる仲間でもある。誰とも連携を取ろうとはしないが、
鋭い爪牙と強靭な筋力は十分な殺傷力を備え、時にはフェアリーをも凌ぐ速さで攻撃を仕掛けるため、前衛としての仕事は十二分に
果たしていると言える。
なので、彼等の間ではフェルパーを足手まといと思う者もおらず、不要だと言う者もいない。多少の手間があるとはいえ、必要な時に
必要な分だけしっかりと活躍しているのも事実であり、まして、そもそもがパーティから追い出された者達の集まりでもあり、それを
言い出すにはまず自身のことを振り返る必要がある。
そんなわけで、フェルパーはパーティの一員として定着している。周囲から本物の猫のような扱いを受けてはいるが、フェルパー自身、
それを不快にも思っていない。ただただ、食べて、寝て、食べて、戦って、寝て、食べて、という生活を満喫していた。
しかし、年中変わらないと思われた彼女の生活に、大きな変化が起きた日があった。
普通ならば、誰かが起こしに来ても寝続けているはずのフェルパー。その彼女が、朝になると不意に目を開けた。
「………」
眠そうな目を瞬かせ、腹に手を当てる。
―――おなか、ぽかぽか。
全身が、妙に火照る。特に下腹部を中心にその火照りと、疼きに似た感覚が湧き上がってくる。
―――ぽかぽか、治す。
のろのろと制服を身に着け、大あくびをしながらドアを開ける。
「うおっと」
すると、その後ろから声が聞こえた。見れば、ちょうどバハムーンが運びに来たところだったらしく、驚いた顔をして立っていた。
「珍しいな、お前が起きるなんて……ん?」
彼の言葉を完全無視し、フェルパーはバハムーンの匂いを嗅ぎ、全身を眺め、そしてまっすぐに目を見つめた。
「おなかぽかぽか」
「ぽかぽか?ぺこぺこ、じゃなくてか」
「セックスする」
「む…」
バハムーンはふんふんと鼻を鳴らし、フェルパーに一体何が起こっているのかを悟った。
「なるほど、盛りか」
「盛り」
その言葉の意味を考えるように、フェルパーは一瞬上を向いて考える仕草をした。
「盛り」
確認するように、もう一度繰り返す。それに対し、バハムーンは溜め息を返した。
「お前には残念だが、俺は異種姦に興味がない。一人で処理するか、ヒューマンかフェアリーを当たれ」
「ダメ。するの」
「俺は根っからの同種好きだ。お前がしたくとも、俺が反応しねえんじゃしょうがないだろう」
「……ケチ」
「何と言われようと、無理なものは無理だ。フェアリーなら、購買部付近で見かけたぞ。行けばまだいるだろう。幸い、今日は休みだ。
何とかして処理しとけよ」
宥めるように頭をぽんぽんと叩き、バハムーンは行ってしまった。それを不機嫌そうな目で見送り、やがて見えなくなると、フェルパーは
購買に向かって歩き出した。
ほどなく、目的の人物が見つかる。また消耗品を買い込んだらしいフェアリーを見つけ、フェルパーはトコトコと近寄る。
「あれ、フェルパー?珍しいね、君が出歩いてるなんて」
「………」
彼の言葉を無視し、フェルパーは品定めするようにフェアリーの全身を眺める。
「ん、何だい?何かついてる?」
それが終わると、フェルパーは小さく溜め息をついた。
「小さすぎ、ダメ」
「はい?」
やはり彼の言葉は無視し、フェルパーはくるりと踵を返し、さっさと行ってしまった。
「……何か今、ものすごく傷つく言葉を投げかけられた気がする…」
最後の最後まで彼を無視し続け、フェルパーは学食に向かって歩き出す。途中、幾人かの同種の生徒と出会ったが、相手が男だった場合は
距離を置いて立ち止まり、まず様子を見る。大抵は相手も立ち止まり、意思のないことを示すため、顔を背ける。それを確認すると、
お互いに合図を送り、一気に駆け抜け、すれ違う。匂いで刺激を受けるため、不要な暴行及び傷害事件を防ぐための、彼等なりの努力である。
そうやって何人かをやり過ごした時、不意に後ろから声がかかった。
「お、お前フェルパーじゃねえかー!?すごいなー、一人で起きたのかー!」
途端に耳がピクンと動き、フェルパーはそちらを振り返る。
「朝飯食うんだろー!?一緒に行こうぜー!」
いつも変らぬ騒がしさのヒューマン。それに対し、フェルパーは口を開く。
「おなか、ぽかぽか」
「だよなー!俺も腹減ったぜー!」
「セックスする」
「ん?誰がだー?」
「盛り」
「食べざかりってことかー?てか、さっきから何……どあ!?」
ヒューマンにとって不運だったのは、フェルパーにとっての気を許せる知り合いが、もういなかったこと。彼女の断片的な言葉だけで
状況を理解できるほど、頭が回らなかったこと。そして、その受け答えにフェルパーがイラッときてしまったことだった。
フェルパーは突如ヒューマンの腰を抱え、そこにぶら下がった。慌てて踏みとどまったはよかったが、フェルパーは柔軟な身体を
最大に使い、背中側から勢いをつけて延髄を蹴り上げた。
いくら格闘家として優れた資質を持っているとはいえ、動きもタイミングも不意打ちとあっては、避けることなどできなかった。
そのまま宙返りするように股間から身体を通し、うつ伏せに倒れるヒューマンの背中に乗る。そこで一度大きな欠伸をしてから、
フェルパーは彼の背を降り、担ぎ上げた。
気絶したヒューマンを肩に、フェルパーはやや上気した、楽しい玩具を手に入れた子供のような顔をしている。学食へは行かず、
元来た道を戻って自分の部屋に入ると、普段は掛けもしない鍵をしっかりと掛ける。
ヒューマンをベッドに投げる。ぞんざいな扱いを受けても、完全に気絶しているヒューマンは起きる気配もない。
「……むふー」
鼻息荒くそれを見つめ、フェルパーは穿いていたショーツを脱ぎ捨てた。期待に満ちた笑顔を浮かべ、ヒューマンのズボンに手を掛けると、
一気に引き下ろす。
「……大きくない」
当たり前のことなのだが、失神させられたヒューマンのモノは全く反応していない。そもそも嗅覚もあまりないため、相手が発情期でも
匂いで気づくということはないのだ。
仕方ないというように息をつくと、フェルパーは髪を掻き上げ、ヒューマンの股間に顔を近づける。そして彼のモノを開いている手で
掴むと、先端を舌先でつつくように舐める。
「う…」
ヒューマンが微かに呻き声を上げ、そこが僅かに動く。その反応に気を良くし、フェルパーは飴でも舐めるようにペロペロと舐め始めた。
「ん〜……んむ……ふ〜」
棘が当たらないよう、使われるのは舌先のみだったが、やや硬い舌先での刺激は割と強く、ヒューマンのモノは見る間に大きくなり始めた。
唾液をたっぷりと絡め、伸ばした舌先で鈴口をつつき、ほじるように舌を動かす。さらにキスをするように唇をつけ、軽く吸ってやると、
粘り気のある液体が滲みだしてくる。フェルパーが口を離すと、舌とヒューマンのそこにねっとりとした糸が引かれた。
舌舐めずりをし、軽く息を吐いて口の中に残る味と匂いを楽しむ。それだけでも、発情期のフェルパーにとっては十分すぎるほどの
興奮剤となる。
「もう十分」
興奮気味に言うと、フェルパーはいそいそとヒューマンに跨り、彼のモノを無造作に掴む。そして腰を動かし、秘裂にあてがうと、
少しずつ腰を落としていく。
ゆっくりと割れ目が押し開かれ、ヒューマンのモノが沈み込んでいく。微かな痛みと粘膜の擦れる快感に、フェルパーは尻尾を震わせ、
顔には苦しげにも見える恍惚の表情が浮かんでいた。
「んにっ…!ん……にゃあぁう…!」
発情期の猫そのものの鳴き声を発し、フェルパーは深く息をついた。それと同時に、フェルパーの尻がヒューマンの腰にぶつかる。
「んあ……あ、あ…!き、気持ちいい…!気持ちいい!」
興奮した声で叫び、フェルパーは激しく腰を動かし始めた。
半ばまで抜き、一気に腰を落とす。奥深くを突かれる衝撃が快感となって頭まで突き抜け、何度も何度もそれを繰り返す。少し疲れると、
今度は奥まで咥え込んだまま腰を前後に動かし、身体の奥をこりこりと刺激しつつ、時折ヒューマンのモノをぎゅっと締め付けてみる。
「うっ…」
「ん〜!おなか、入ってるっ…!」
力を入れる度、体内にあるものがはっきりと感じられ、それがまた大きな快感となってフェルパーを襲う。
「んな〜あ!もっと、もっと!」
湧き上がる疼きと快感に突き動かされ、フェルパーはより激しく動きだす。結合部からは愛液がとめどなく滴り落ち、ヒューマンの腰を
伝ってシーツにまでこぼれ、黒い染みを作っている。
踊るように腰を振り、荒い息をつくフェルパー。その肌は赤く染まり、玉のような汗が浮かんでいる。動く度にそれが流れ落ち、
ヒューマンの身体にぽたぽたと落ちる。部屋の中には、ベッドが激しく軋む音とフェルパーの嬌声が響き、汗と愛液の匂いが彩りを添える。
それらの刺激に、気を失っていたヒューマンの意識は、徐々に覚醒を始めた。
「う……な、なん、だ…?あれ……フェル…?」
「気持ちいいの!いっぱい気持ちいいの!」
上ずった声で叫び、フェルパーは腰を動かしやすいよう前傾になり、ヒューマンの体に手をつこうとした。
「ぐえっ!?」
だが、それは狙いを外れ、ヒューマンの首に両手が添えられた。おまけに、なお運の悪いことに、彼女の指は頸動脈をしっかりと
押さえつけていた。
「がっ……あっ…!」
「いいの!いいの!おなかぐりぐり、気持ちいい!」
体重を掛けて首を極められ、ヒューマンの意識はあっという間に闇の中へと逆戻りする。だがフェルパーは、その一連の出来事に
全く気付いていなかった。
腰を密着させたまま、前後に腰を振る。奥がヒューマンのモノで捏ねられ、さらに前傾したことで最も敏感な突起が擦れ、フェルパーの
快感は一気に跳ね上がった。
「うなあああ!!こすれるの好き!ぐりぐり好き!ふわふわする!ふわふわするぅ!」
あまりに興奮が高まったためか、いつの間にか尻尾は二股に分かれ、鋭く伸びた爪がヒューマンの首に食い込んでいる。
幸か不幸か、当のヒューマンはそれに気付くこともなく、ただ肉体に与えられる刺激に、理性の介在しない反応を返していた。
さらに快感を貪ろうと、フェルパーがより強く彼のモノを締めつけた瞬間、それがビクンと脈打ち、フェルパーの中に熱い液体が
注ぎ込まれた。
「ひあっ!?」
途端に、フェルパーは身体を仰け反らせる。
「うっ、あ、ああああ!!熱いの来た!!おなかに熱いの!!熱いのっ……あ、あ、ああああぁぁぁ!!!」
悲鳴のような叫びを上げ、フェルパーの体がガクガクと震える。彼女の意思とは関係なく、膣内は精液を絞り取ろうとするかのように
蠢動し、締めつけ、それによって彼のモノがより大きく感じられ、フェルパーの快感を跳ね上げる。
「あぁ……あ……おなか……いっぱい…………いっぱいぃ…」
精が流れ込む度、身体の奥が満たされていく。疼きが消え、渇望が薄れ、後には大きな満足感と疲労感が残っていく。
何度か彼のモノが動き、やがて止まると、フェルパーはがっくりと首を落とした。
「はぁ……はぁ……はぁ……ぽかぽか、なおった…」
満足げに言うと、またしばらく余韻に浸り、腰を上げる。途端に秘部から精液が溢れ、フェルパーはそれを慌てて手で受け止める。
「もったいない……んく…」
手に取ったそれを、愛おしげに舐め取り、飲み込む。飲み下すと同時に、再びフェルパーの体と尻尾がぶるんと震えた。
「疲れた……寝る」
溜め息をつくように言い、フェルパーはばったりとベッドに倒れた。そして目を瞑ると、大きく息をつく。
が、その目が不意に開かれる。
「……じゃま」
そう言うと、フェルパーはヒューマンの体を拭きもせず、ズボンなども一切穿かせないまま担ぎ上げ、部屋のドアを開けると、まるで
ゴミでも捨てるかのように、廊下に放り投げた。
それが済むとドアを閉め、鍵も掛けず再びベッドに倒れ込む。そして今度こそ目を瞑ると、数秒後には安らかな眠りについているのだった。
その夜、一行は揃って学食へと来ていた。ほぼ全員、いつもと変わらぬ様子だったが、ヒューマンだけはしきりに首を捻っている。
「う〜〜〜ん……フェルパーとは会った気がするんだけどなあ〜……全っ然、思い出せねえ…」
「二人とも、朝ご飯食べに来なかったよねぇ?一緒に何かしてたのかなぁ?」
「う〜〜〜ん……わかんねえなあ〜…」
「フェルパーちゃんは、何か覚えてるぅ?」
ドワーフの問いに、フェルパーは焼き魚を口いっぱいに頬張りながら顔を向けた。
「……ぽかぽか、治してた」
「ぽかぽか?……あ、調子悪かったんだぁ」
「そう」
それだけ言うと、答えるのが面倒臭いと言うように、フェルパーはすぐさま食事に戻る。例によってセレスティアは、黙々と食事を
続けている。
「そういえば、僕も朝会ったなあ、フェルパー。珍しく出歩いてたよね」
「あれぇ?調子悪かったんだよねぇ?」
ドワーフが言うと、フェルパーの代わりにバハムーンが口を開いた。
「調子が良ければ、いつも通り寝てるだろうなこいつは」
「……調子いいのにぃ?」
「出歩いてるってことは、いつもの調子じゃなかったってことだろう。普段こいつは、そんな真似しねえんだからな」
「……あ〜、そっかぁ」
「いや、それ納得できる説明かい…?」
「う〜〜〜ん……でもなんで、俺部屋で寝てたんだろ…?なんか、フェルパーが俺の上に乗って暴れてた夢見た気も……体もなんか
妙にすっきりしてるし…」
ヒューマンが言うと、バハムーンは嘲笑を浮かべた。
「俺に勝てねえから、満たされない欲求がそんな夢になったんだろう。何なら、一度くらいわざと負けてやろうか?」
すると途端に、ヒューマンはいつもの表情に戻った。
「何をー!?なめるなよお前ー!今度は絶対勝ってやるんだからなー!これ食い終わったら勝負しやがれー!」
「また満たされない欲求が溜まるぞ。それで構わないというなら、やってやるがな」
「何か、うまくうやむやにされてるような……それにしてもフェルパー、一人で起きられるんなら、今度からちゃんと起きてくれよ。
君を運ぶの、それなりに手間なんだぜ?まあ、僕は運んでないけど……どうしてみんな、君のこと運んでると思ってるんだよ」
フェアリーが言うと、フェルパーは『何を言ってるんだろう』とでも言いたげな目で彼を見つめた。
「えらいから」
「……は?」
「えらいから」
「………」
つまり彼女は、自分が偉いから、全員が自分のために何かしていると思っているのだろう。あまりの答えに、フェアリーが言葉に
詰まっていると、横からバハムーンの手が伸びた。
「そうだな、戦闘もやる時はやってるからな。偉い偉い」
そう言ってわしゃわしゃと頭を撫でてやると、フェルパーはゴロゴロと喉を鳴らした。その姿はどう見ても、飼い猫を可愛がる主人と
ペットという構図だった。
「うん、えらい」
「でも、みんな戦ってるよぉ?」
「だがこいつは、普段寝てて、戦闘の時は頑張って起きてるだろう」
「あ、そっかぁー。だから偉いんだねぇ」
ドワーフの場合は、本当に偉いと思っているのだろう。その言葉は、何の含みもない純粋な響きを持っていた。
すると、そろそろ苛立ち始めた表情で食事をしていたセレスティアが顔を上げた。そしておもむろに手を伸ばすと、ドワーフの頭を
わしわしと撫で始める。
「ん……なぁにー?」
「……あなたも偉い子」
「そぅおー?えへへ〜」
「……なぁんか、ごまかされた気がするなあ…」
フェアリーの呟きは誰に拾われることもなく、一行の夕食の時間はいつもと変わらず過ぎて行くのだった。
その後、フェアリーはどうにもヒューマンとフェルパーのことが気になり、明日の探索の準備を終えると、事情を知っていそうな
バハムーンを探してあちこち飛び回っていた。やがて、寮の休憩室でフェルパーを膝に乗せて座る彼を見つけ、そっと近寄ってみる。
「それにしてもお前、後片付けぐらいはしっかりしろ。あの体液塗れのあいつを洗って部屋に届けるのは、お前を運ぶよりよっぽど面倒だ」
「……くぅ〜…」
やはり、フェルパーは眠っており、バハムーンの言葉は彼女に向けられているというより、独り言に近いのだろう。
「おまけに、首に傷まで付けて……俺が光術師も履修してたからよかったものの、お前の爪は十分な凶器だぞ」
「……ふああぁぁふ……くふ〜…」
「しかし、ヒューマン相手か。お前、子供が出来たらどうするつもりだったんだ?って聞いても、何も考えてないんだろうな。
お前みたいな奴等は、やっぱり誰かが上に立って導いてやらなきゃ、どうしようもないんだろうな、まったく。次からは道具でも使って、
俺が鎮めてやるか」
そこまで聞いて、フェアリーは彼女とヒューマンに何があったかをあらかた察した。また、夕食での行動から、恐らくバハムーンは
直接尋ねても答えないだろうと判断し、フェアリーはさっさとその場を離れた。
「まったく……あいつも面倒な男だなあ」
笑いながら呟き、フェアリーは部屋へと戻る。他人を見下している男ではあるが、ただ傲慢なだけでなく、色々と世話を焼く男なのだ。
もしも本当に、これでフェルパーとヒューマンの間に子供ができていれば大ごとだが、今それをパーティの仲間と、自分の意思なく
犯されたヒューマンに知らせたところで、どうなるものでもない。むしろ、ヒューマンには重荷になってしまう可能性が高い。
そう考えた上で、彼は適当に話をごまかしたのだろう。だが実際に、彼女が妊娠してしまったらどうするつもりなのか。
そこまで考えて、さっきのバハムーンの台詞を思い出す。
「そういえばあいつ、ドクター学科にも手出ししてたっけな……まあ、世話焼いてくれるなら任せとくか」
恐らくはその心配も消えているであろうことに気付き、フェアリーはホッとした笑みを浮かべた。そしてしみじみと、悪くないパーティだと
実感する。
問題児の集まりでも、全員が何かしら光るものを持っている。むしろ、掃き溜めであるからこそ、それが活きているとも言える。
それは『掃き溜めに鶴』と言うより、むしろ『鶴の掃き溜め』とでも言った方が近いな、などと、彼は思うのだった。
以上、投下終了。久しぶりに短くまとまったw
それではこの辺で
乙です。
ほんとにヒューマンの扱いが酷いw
逆レイプガチ絞扼はともかく、知り合いの男に運んで洗ってパンツ穿かせてされるのが屈辱的すぐる。
フェルパーが気まぐれな猫っぽくていいですねwGJです
たしかにヒューマンの扱いはひどいのかも知れないけどヒューマンっぽい気もするw
今回もお疲れ様でした
ゴールデンウィーク万歳、久しぶりにまとまった休みが取れました。
記念にまた一作完成したので投下
またまたチームはアンノウン
ロリディア様×エルフさん
諸注意としてはあいかわらず百合
過去に自分が書いたやつのキャラが出てます。
今回は短めにまとめられたと思いますのでよろしくお願いします。
187 :
マルメンライト:2011/05/01(日) 14:47:00.00 ID:IcFuEt1A
「くぅ…はぁ…」
窓から差し込む月明かりが白い彼女の肢体を照らす。
「お願いします…ご主人様…早く、早くください…」
「ホント、エルフはエッチな子ね…」
懇願する彼女の首に吸いついて所有の証を刻みつける。
「駄目…ご主人様…また…また痕が残っちゃう…」
恥ずかしそうに首を隠すエルフの腕を私は笑って引きはがした。
「隠す必要なんかないじゃない…どうせ、貴方が処女じゃないのも、私とこんなことをしてるのも、皆にはもうバレてるんだから…」
くすくすと笑うとエルフが顔を赤く染めた。
「でも…」
「うるさい子…」
それでも私に口答えをする彼女の胸のふくらみを強くつまんだ。
「きゃふぅ!!」
血がにじむくらいの力でつまんだのに、彼女の口から洩れた声は快感に震える女の声。
―私のモノだ…―
暗い思いが私の心を覆う。
彼女と愛を誓ったのに、私の心は何かを恐れて怯えている。
その思いを振り切るように激しく彼女の中を掻きたてた。
「くはぁ!ご主人様!激しい!激しいです!!」
「激しいのが良いんでしょう?苦しいのが良いんでしょう?」
「はい!はい!ご主人様に激しくされて…とってもとっても気持ち良いです!」
涙目で彼女が肩を震わせる。
「正直ものにはご褒美ね…どうしてほしいの?」
「ご主人様の指で…イカせてください…」
頬を真っ赤に染めながらエルフが私に懇願する。
「分かったわ…それじゃ、一気に行くわよ…」
彼女の体を転がして、うつ伏せに倒し、腰を掴む。
「ああ…うれしい…うれしい…」
快感で体に力を入れられないらしい彼女の膣を指でめちゃくちゃに蹂躙する。
「はぁ…!くぅ…!イッちゃう…気持ち良すぎて…イッちゃう…」
ぶるぶると彼女が肩を震わせた。
188 :
マルメンライト:2011/05/01(日) 14:48:11.07 ID:IcFuEt1A
「良いわよ…エルフ…イキなさい…」
彼女にとどめをさすように、控えめな彼女の小さな真珠に私は歯を突き立てた。
「きひゃぁぁぁ!!」
大きな叫び声をあげて、彼女の背中がそりかえり、手足がピンと張って収縮する。
彼女の中の私の指がぎゅうぎゅうと強く締め上げられる。
「ああ…なんで!なんで!止まらない…イクのが止まらない!!」
びくびく震えながらエルフが潮を噴き上げる。
痛みを快感に感じてしまう彼女には最後のとどめは強すぎたらしい。
吹きだすそれを口で受け止め、彼女の味を存分に味わう。
「ご主人様助けて…イキっぱなしで…怖いんです…」
「あらあら…それは大変ね、もう一回イケば少しは収まるかもよ?」
涙目の彼女を抱きしめてその中を再び蹂躙する。
「うぁぁ!変になっちゃう…はぁぁ!」
エルフが強く私の体を抱きしめる。
再び彼女が達して、今度はそのままベッドに倒れた。
「収まったかしら?」
くすくすと笑うとエルフがとろけた表情でキスを求めてきた。
その求めに応じてキスをする。
私は彼女が大好きだった、彼女も私を大好きだと言ってくれる。
それなのに…
―何で私は女なんだろう―
心の中で、私はそんなことを思っていた。
189 :
マルメンライト:2011/05/01(日) 14:50:36.49 ID:IcFuEt1A
「…というわけなのよ」
プリシアナではなくドラッケン学園の図書室、渡された紅茶を飲みながら、向かい合うヒューマンの少女に自分の悩みを語った。
「いや、というわけなのよ、じゃないから…、何で妹の生活もとい性活相談されてるの私?」
「聞きなさいよ、同じ趣味を持った同士でしょ?しかも姉なら妹の悩みの相談ぐらい聞いてくれても良いじゃない、エリス」
エリス、それが目の前のヒューマンの少女の名前だった。
学園こそ違えど同じ冒険者を目指し、そして同じく同性の彼女を持つ仲間。
そして何より血のつながった私の姉。
「私はむしろ、未だに他のチームのメンバーに打ち明けられてないから、そんな話を聞かされて妬ましいよ、できればシュトレンと毎日したいし」
「すれば良いじゃない、夕食の後のデザートに彼女とか最高よ?」
「殴るよ?デザートだと私が食べられそうだけどね、パティシエだし」
彼女の焼いたクッキーを食べながら私達は悩みを話す。
「ところで、さっきの話聞いてると、あなたもしかして本名誰にも喋ってないの?」
姉、エリスはそう言って私を見る。
「なんか恥ずかしいじゃない、別にうちのチームに私以外のディアボロスはいないんだから…ディアボロスでいいのよ」
何で姉が今更そんなことを言ってくるのか私にはわからなかった。
だが、そんな私を一瞥し姉は紅茶に角砂糖を混ぜながら、何かを思い出すように、呟く。
190 :
マルメンライト:2011/05/01(日) 14:52:04.72 ID:IcFuEt1A
「いいと思うけどね…恋人とセックスして…本名で呼ばれて…この人のものなんだな…って認識すると、すごくうれしい気持ちになるし」
「そんなものなのかしらね…」
本当は、自分が何で不安なのか分かっている。
私は女、そして、エルフも女…フェルパーとお嬢、セレスティアとクラッズのように、幾度となく体を重ねても、私達に子供ができる事はありえ無い。
彼女の初めてを奪ったくせに、彼女にそれ以上の女の喜びを与えられないというのが、私の今の悩みだった。
「いっそ、私が男なら、エルフを孕ませられるのにね…」
「なにディアボロス、もしかして子供欲しいの?」
私の言葉に姉が首をかしげた。
「…別に」
興味なさげに呟いた私を姉は真剣な目で見ていた。
「別に家のことなんか気にしなくて良いじゃない、ちゃんと長男様が彼女持ちなんだから、孫ぐらいアイツが見せるでしょ」
「エリスは、シュトレンだったかしら?その人との子供ができないことに悩んだりしないの?」
こともなげに答えたエリスに、私がそう言うと、エリスは優しく笑った。
191 :
マルメンライト:2011/05/01(日) 14:53:46.75 ID:IcFuEt1A
「そんなこと考えたことなかったな〜、初めては野外だったし、彼女には腕まで入れられちゃったし…隠れてだから貴方みたいに毎日はできないけど、それでも今が幸せだから、私はそれで良いと思う、シュトレンとも話し合って満足してるしね」
「そう…とりあえず幸せそうで何よりだわ」
空になった紅茶のカップを置いて、私は席を立ちあがる。
「もう帰るの?」
立ち上がった私を見ながらエリスが呟く。
「ええ、そろそろ三学園交流戦でしょ?今年は長男様のチームに勝ちたいからね、学園に戻って作戦会議」
「そっか、んじゃ、元気でね」
笑うエリスに軽く手を振る。
「ええ、それじゃまたね」
「あ、待ってこれお土産」
去ろうとした私にエリスは何かを投げよこす。
「ディアボロスの見た目じゃきっと買えないでしょ?」
空中の紙袋をキャッチして、その中を確認した私は思わず笑ってしまった。
「なんで笑うのよ、いらないなら返して、シュトレンに使う」
笑いだした私をエリスがうらみがましい目で見つめ紙袋を取り上げようとする。
お腹を押さえながら、涙をぬぐって私は紙袋を懐にしまった。
「あはは…!ごめんなさい、ありがたくもらっておくわ」
バカみたいな姉の心遣いをありがたく受け取っておく。
「ありがとお姉ちゃん、少し元気になったわ」
笑う私の頭を姉は優しく撫でてくる。
「今度はエルフさんも連れてきてよ、私もシュトレン連れてくるから」
「はいはい、わかったわ」
姉の言葉にそう答え、笑う。
少しだけ心が軽くなった気がして、私は図書室を後にした。
192 :
マルメンライト:2011/05/01(日) 14:55:46.97 ID:IcFuEt1A
「あ、おかえり〜お姉さん元気だった?」
プリシアナに戻ってくると、学院の入り口でクラッズに出会う。
「うん…元気だった、交流戦頑張ってね…だって」
チームメンバー以外の目もあるから私はいつもの弱いほうの自分を演じて答える。
「うあ〜、余計にプレッシャー」
不意に私は気になって、クラッズに一つ聞いてみる事にした。
「クラッズは…セレスティアのこと本名で呼んだりするの?」
私の言葉にクラッズは一瞬首をかしげて言った。
「ん、たまに言うよ、セレスティアが恥ずかしがるからあまり言わないけど…」
「…クラッズの本名は?」
「そのままクラッズが本名だよ、もともとは一般人だしね」
チリン…と鈴を鳴らしながらクラッズが笑う。
「そういや、ディアボロスは本名ちがうんだっけ?なんて名前なの?」
聞かれて…私は戸惑った、エルフにもまだおしえていない名前を彼女に先に教えていいのか。
悩んだ挙句、私は普段の自分に戻って口を開く。
「まだ、エルフにもおしえてないから…エルフに教えたら教えてあげるわ、それまでは秘密よ」
私の言葉に、クラッズが笑う。
193 :
マルメンライト:2011/05/01(日) 14:56:52.15 ID:IcFuEt1A
「あはは…!ホントにディアボロスはエルフが大好きだね!」
楽しそうに笑う彼女につられて私も笑った。
「当然じゃない、だってあの子のご主人様だもの」
彼女と共に笑いながら、もしかしたら自分はくだらないことに悩んでいるんじゃないかと思い始める。
だって、私はこんなにも彼女を愛しているのだから…。
だから彼女に聞いてみよう、私は心の中でそう呟いた。
194 :
マルメンライト:2011/05/01(日) 14:57:40.53 ID:IcFuEt1A
「おかえりなさい、ディアボロス」
部屋に戻ると、彼女が私を出迎えてくれた。
「ん…ただいま、エルフ」
ボフンと彼女に抱きつくと、彼女の甘い匂いが胸に広がる。
「お姉さん、元気だった?」
ベッドに腰を下ろすと、彼女が私の髪をくしでとかす。
「うん…、今度はエルフも連れてきてね、だって…」
「そっか、じゃあ今度は一緒に行きましょ?」
「うん」
髪をとかしながら彼女が私の頭を彼女が撫でる。
不意に初めての夜を思い出して、ぽつりと言葉が勝手に漏れた。
「ねぇ…エルフ…赤ちゃん欲しい?」
「へ?」
私のその言葉にエルフは戸惑ったような声をあげた。
「…私はエルフが大好きで、エルフが私を大好きだって思ってくれてるのも知ってるの、なのに…私はあなたを母親にしてあげられない…」
―私は女だから…彼女との間に子は生せない―
私がそう呟くと、エルフは私の耳元で囁いた。
「ディアボロス…もしかしてずっと一人で悩んでたの?」
「…」
私は何も答えなかったがそれが肯定していることを彼女に教えてしまう。
そんな私をエルフが優しく抱きしめた。
「…確かに子供ができないのは残念かも知れないけど、代わりに私には貴方がいるから」
エルフがそう言って恥ずかしそうに笑う。
「だから、気にしなくて良いの、私は貴方が好きだから貴方とずっと一緒にいたいだけ、ただのわがままな女だから…ディアボロスが気にする必要なんてないの」
彼女の温かい言葉が胸に染みいる。
195 :
マルメンライト:2011/05/01(日) 14:58:57.19 ID:IcFuEt1A
「…ねぇ、エルフ…ディアボロスじゃなくって…ナハトって呼んでほしい」
私の言葉にエルフが、え?と呟いた。
「ナハツェーラ、それが私の本名、お父さんとお母さんにもらった大事な名前」
大事な名前だから…今までずっと隠してきた、だけど…ホントに彼女が好きだから、姉の言っていた言葉を思い出して、私は自分の名前を告げる。
「うん…わかった…ナハトだね…しっかり覚えとく…」
エルフがそう言って笑う。
ご主人様でも、ディアボロスでも無くて、本当の名前で呼ばれるとうれしくて涙が溢れそうになる。
―エリスの言うとおりだ―
ただ、名前で呼ばれるだけなのに、今までの不安がウソみたいに消えていく。
本当の名前を彼女に呼ばれてようやく私は本当の恋人になれた気がした。
「エルフは…なんて名前なの?」
私の言葉にエルフが少し照れくさそうに笑う。
「ファリエル、略すとそのままエルフ、今更だけど…改めてよろしくね、ナハト」
「うん…改めてよろしくね…ファリエル…」
196 :
マルメンライト:2011/05/01(日) 15:00:23.73 ID:IcFuEt1A
今日の会議を終えた後、部屋に戻った私たちはいつものように体を重ねようとしていた。
「えっと…今日はご主人様にならなくて良いの?」
お風呂上がりの私と彼女の体からはまだほんのり湯気が出ている。
ベッドに横になりながら彼女にそう言うとエルフ…いやファリエルがくすくすと私の真似をするように妖艶な笑みを浮かべた。
「いつも私がしてもらっているから今日はナハトを私が気持ちよくしてあげる」
普段とは完全に立場が入れ替わった状態に私はなんとなく初めての夜を思い出す。
「それじゃナハト、脱がすからね…」
「うぁ!ちょっ…ちょっとまって!!」
私の服に手をかけたファリエルの手を掴む。
そんな私を見ながらファリエルが楽しそうに私の服を脱がせていく。
弱弱しい抵抗を続けるが、結局はあっさり下着だけの姿にされてしまう。
「新発見、ナハト実はイニシアチブを取られると弱いんだね」
今まで隠していたことを知られ恥ずかしくて顔から火が出そうだった。
「ファリエル…今度オシオキするわよ…」
顔を隠しながらそう言うとファリエルはくすくすと笑った。
「分かってますよ、ご主人様、でも、今日だけは私に任せてください」
いくら本当の名前を知ったからと言って彼女の中身は変わらない、私が変らないように、彼女は彼女、私は私なのだから。
「…良いわ、好きにして……」
私の言葉に彼女がくすりと笑う。
「それじゃ、いただきます」
小ぶりな私の胸に彼女がかぶりつく。
「ふぅぅ…」
ちろちろと、舌先でへこんだ乳首を掘り起こすかのようにもどかしい刺激が与えられる。
「ちりちりする…」
「でも気持ち良いでしょ?」
「…うん」
もう片方の胸を優しく揉みながら彼女は強く胸を吸う
197 :
マルメンライト:2011/05/01(日) 15:01:19.31 ID:IcFuEt1A
「んん…んきゅぅ!」
吸い上げられた方の胸の中心が裏返るようにして飛び出した。
普段は隠れているそこが冷たい空気に触れてピリピリした刺激が胸に走る。
「ん…また乳首出ちゃった」
初めて彼女にされた時もそう言えば彼女にされてこうなったことを思い出して笑う。
彼女と普段するときは私が攻めてばかりだったから、ずっとそこはへこんだままだったのに、なんだか大人になった気がする。
「ごめんファリエルちょっと待って…」
「うん、分かった」
試しに自分でつまんでみると心地よい刺激が背中を走る。
「ふ…」
―気持ち良い…―
あの時は刺激が強くて苦しかったけど今はちゃんと快感を感じられた。
思わず切ない声を漏らすと、彼女が楽しそうな目で私を見ていた。
「また、もう片方もしてあげようか?」
彼女の言葉にドキドキと胸が高鳴る。
「…お願い」
胸の前で組んだ手をファリエルがずらして胸にかぶりつく。
「ふみゅぅ…」
生温かい彼女の舌の感触がとても気持ち良い。
既に飛び出した方の乳首は彼女の指先で転がすように愛撫されている。
彼女をいじめるのとはまた違った快感が私の中で浮かび上がる。
「ふあぁぁ!」
再び、彼女が強く胸を吸った、パチパチと火花が散るような感覚の後に、隠れていたもう片方の乳首もついに顔を出す。
「これで大丈夫」
そう言って彼女がキスをしてくる、目を閉じてそれを受け入れて、彼女と舌を絡ませ合う。
彼女の甘い唇を吸いつくように何度も味わう。
彼女とのキスはもう何度目だかなど覚えていないが、今更になって少し恥ずかしくなる。
長く深い口づけを交わし、ようやく彼女と離れると、私達をつなぐように銀色に光る橋ができる。
「ナハト…濡れてるね」
私の下着をみた彼女が耳元で小さく囁いた。
198 :
マルメンライト:2011/05/01(日) 15:04:07.00 ID:IcFuEt1A
「ファリエルが…上手だから…」
子供っぽい青と白のストライプの下着は中心の部分の色が水気を吸って濃い青色に変っている。
「いつもナハトに可愛がってもらったから…指の動かし方には自信があるよ」
くすくすと彼女が笑って、下着の中に手を入れる。
「うぁぁ!」
グチュリと水音がなって私のそこが彼女の指を飲み込んだ。
「ごめんなさい…いきなり入れちゃった、痛い?」
ぺろりと舌を出して彼女が笑う。
「気持ち良い…」
ぽそりと小さく呟くと彼女が楽しそうに笑った。
「でも残念、一番奥まで味わいたいのに…指じゃ届かないもんね…」
彼女の言葉に、私はあるものの存在を思い出した。
「あ…あのファリエル…私の制服の上着の内ポケットに…良いものがあるから…」
「え?良いものって…なんだろ?」
彼女が起き上がって壁に掛けられた私の制服の内ポケットを探ると姉が私にプレゼントしてきたあるものが入った紙袋が出てくる。
それを開けてみた彼女がその中にあったあるものを出して楽しそうに笑った。
「確かに…これは良いかも…私も気持ちよくなれるかもしれないし」
そう言って彼女が袋から取り出したのは、ブーメランのような形をした棒のようなもの。
所謂ところの双頭のディルドーだった。
その片方の先端を彼女がなめ、自分の中に埋没させる。
「うぁ…結構太い…苦しくて…うぁぁ…気持ち良い…」
悩ましい声を上げながらファリエルが自分の中にそれを差し込むと、まるで彼女から男の人のものが生えているように見える。
199 :
マルメンライト:2011/05/01(日) 15:05:09.38 ID:IcFuEt1A
「これ、一体どうしたの?」
再び私に覆いかぶさりながら、彼女が私にそう囁く。
「エリス…私のお姉ちゃんが…プレゼントだって…くれた…」。
「あれ…ロウソクとか入ってたんだけど…」
他のものもみたらしく、私の言葉にファリエルが少し苦笑いした。
「…今度…ファリエルで試して良い?」
不安になって上目づかいで彼女を見つめると、何かを思い浮かべるように彼女が目を閉じた。
「…ぜひ」
―そう言えばファリエルドMだもんね…―
今はイニシアチブを取られているけど普段は私が攻めるのを喜んで受け入れる彼女だから、ロウソクとかを使ったプレイを思い浮かべてみたらしい。
うれしそうに頬を染めていた。
「それより…早く…入れないの?」
切ない気持ちがわきあがってきてもじもじと足をこすり合わせると、ファリエルが興奮したように鼻息を荒げた。
「ちょ、ちょっとだけ…もう少しだけ濡らした方が…きっと気持ち良いから…」
私の下着を脱がしながら少し危ない目をした彼女が私のそこを見つめている。
「ひ…ひらいて良い?」
下着を完全に脱ぎ去ると彼女がそう言って私のそこに手をかける。
「い…良いけど…あんまりじっくり見ないでよ…」
ドキドキと高鳴る心臓の鼓動に耐えながら私は手で顔を覆って羞恥心を必死でこらえる。
彼女の細くて華奢な指が私のそこにあてられて…そっとそこを開いていく。
「…うわ…きれいなピンク色…きらきらしてて…あ、ここもしかして処女膜があったところかな…」
「実況しないで!!!」
恥ずかしさで顔が真っ赤に染まる、今度これ以上のオシオキをしてやると心の中に刻みつける。
「ご、ごめん…」
「うー…今度耳元で後ろのしわの数数えてやる…」
うらみがましい目で見つめると彼女がうれしそうに笑った。
どうやらわざとやったらしい。
200 :
マルメンライト:2011/05/01(日) 15:06:14.27 ID:IcFuEt1A
「あのね…ファリ…くひゃん!!」
注意しようとした瞬間に彼女が舌を私の中に差し込んだ。
ちゅるちゅると音を立てながら彼女が私の愛液を吸い上げ、中の壁をなめあげる。
「くうぅぅ!」
丹念な彼女の舌での愛撫に体が勝手に震えだす。
切ない気持ちが高まってお腹の中の熱がどんどん高まっていく。
「お腹が…お腹が熱いよ…助けて…ファリエル…」
ぎゅっと彼女を抱きしめると、彼女がうれしそうに笑った。
「もう…入れても良いよね?」
作り物の突起をはやした彼女が耳元で囁く。
「うん…早く…来て…」
こらえきれずに私がそう言うと…私の腰を彼女が掴んで、それを私の中に突き込んでいく。
「くぁぁ!」
今までの指とは異なった感触で体が震える。
指一本とは比べモノにならない太さのモノが私の中を割り進んでいく。
「う〜!」
ゾクゾクと背中を駆けあがる快感を彼女の背中に爪を立て必死でこらえる。
そしてついに、それが私の子宮の入り口をこつんとノックした。
「うあぁ!?」
「きゃあ!」
今まで感じた事のない刺激に思わず強く締め上げると、ファリエルが同時に声をあげた。
そしてそれに合わせるように私に埋まった部分が突然大きく膨れ上がる。
「ふぁ!何これ…おっきく…」
ギチギチと狭い私の膣内が限界まで拡張される。
圧迫感で苦しくて、思わず息を吐き出した。
「これ…片方が強く締め付けると…もう片方が大きくなるみたい」
ぜぇぜぇと荒い息を吐きながら彼女が私達をつないでるそれを見る。
201 :
マルメンライト:2011/05/01(日) 15:07:46.01 ID:IcFuEt1A
「さ、裂けるかと思った…」
私がかなり強く締め付けてしまったせいで彼女に埋まっている方はかなりのサイズになってしまったらしい、それでも彼女は私を傷つけないように、肩で息をしながら私に入ったほうが大きくなり過ぎないように気をつけて腰を振る。
ずるずると、内臓が引き出されるような感触に体が震える。
「うあぁぁぁ!くふぅぅぅ!」
瞼の裏でパチパチと火花がはじけ続ける。
頭が溶けてしまいそうな快感が背中を通って走り抜ける。
おなじ女性の彼女が作り物の男性器で私の中を蹂躙する。
抜ける寸前まで引き抜かれ、次の瞬間には子宮の入り口がたたかれる。
緩やかだった彼女の腰の動きが次第に加速して貫かれる快感に私は打ち震える。
「ファリエル…私…イッちゃう…このままじゃ…」
おびえる私を彼女が優しく包み込む。
「大丈夫…怖いことじゃないんだから…変なことじゃないんだから…イッて良いんだよ…ナハツェーラ」
耳元で名前を囁かれ体が勝手に熱くなる。
さらなる刺激を与えるように彼女が体を起して私を抱き上げる。
「うあぁぁ…だめぇ…奥ゴリゴリしちゃやだぁ…」
抱きあげられたせいで、体重が一点に集中し更に深い場所をえぐられる。
作り物の男性器が私の子宮の入り口を押し上げるようにゴリゴリと刺激してくる。
その心地よさに震えて、言葉とは裏腹に体は彼女が離れないようしっかりと固定してしまっていた。
「すごい…ナハトの子宮がコリコリしてるの分かる、私に入ってる方にコリコリしてるの伝わってくる…」
私を貫くように腰を掴んで落としながらその感触に夢中になったようにファリエルは激しく私に腰を叩きつける。
202 :
マルメンライト:2011/05/01(日) 15:08:48.93 ID:IcFuEt1A
「うはぁ…ゴリゴリが…ゴリゴリがぁ…気持ち良くて頭が真っ白になっちゃうよぉ…」
「私も…もう…」
くるしそうにファリエルが呻いた。
「キスして…キスしてファリエル…私がどっか行っちゃわないように…!」
「うん…うん!」
狂ったように腰を打ちつけながらファリエルが私の唇を奪う。
夢中で互いに求めあい、訪れる終焉をうけ入れる。
そして…
「うあぁぁぁ!」
「きゃふぅぅ!」
同時に訪れた絶頂に震えながら私達は再びキスをした。
203 :
マルメンライト:2011/05/01(日) 15:09:38.71 ID:IcFuEt1A
「ん…ナハト…大好き…」
「ええ…ファリエル…私も貴方が大好きよ…」
「えへへ…うれしい…」
すやすやと疲れて眠る彼女に布団をかけてあげながら私は一つの決意を固める。
「子供が作れなくても…貴方を守って一緒にいられればそれで良いかな?」
少し前から考えていたある事を行動に移すため、私はその書類にペンを走らす。
ゆらゆらと不安定に揺らめくなランタンの明かりが私を照らしている。
「思えば、このランタンって私に似てるわね…」
頼りなさげに揺らめきながら、そのうちの炎は人の体を焼くには十分な熱を持っている。
ガラスの檻に守られて、隠れて燃え続ける炎、今まで彼女の背中に隠れていた私自身によく似てる。
「…今まで、ありがとう、今度から私は…守る側になるから…あなたともお別れね…」
そっとランタンのフードをはずし、中の炎を吹き消す。
頼りない灯りはあっさり消えてしまった。
―あとは…セレスティアに一応確認するだけね…―
書類を全てまとめ終えた私は眠る恋人の額にキスをして、彼女とおなじベットに入って横になる。
「愛してるわ…エルフ…ううんファリエル…」
「ありがと…ナハツェーラ」
幸せそうな彼女の寝顔を見ながら今までにない充足感を感じて、私は静かに目を閉じた。
204 :
マルメンライト:2011/05/01(日) 15:11:15.48 ID:IcFuEt1A
朝早く起きた私は制服に着替えセレスティアのもとへ向かう。
軽く扉をノックすると扉は軋んだ音を立てて内側に倒れた。
「…ずいぶん斬新な扉ね」
よく見ると、刃物か何かで切られた扉を板でとりあえず補強しているだけのようだった。
倒れた扉をまたいで、私は眠る二人のもとに向かう。
どうやらしたまま力尽きたのか、制服を着てスカートをつけたクラッズがセレスティアのちょうど腰の位置にまたがって寝息をたてている、セレスティアは裸で、おそらく彼女のものと思われる下着がベッドのふちに起きていた。
「お疲れのところ悪いのだけれど…起きてくれる?セレスティア?」
私が静かにそう言うと、セレスティアが目を覚ます。
「なんだディアボロス…こんな朝早くに…」
普段は私も寝ている時間だけに、彼が戸惑う理由も分かった。
だがそれを無視して私は本題を彼に告げる。
「こんな時期に悪いけど…転科したいの、良い?」
私の言葉に彼が少し驚いた表情をした。
「そらまた…サブでも変えるのか?」
彼の言葉を首を振って否定する。
「いいえ、メインよ、死霊使いからヴァルキリーに変えたいの」
「は?」
彼が驚くのも無理もない、今まで魔術師系の学科だった私が、戦士系の学科に転科したいと言い出したのだから。
205 :
マルメンライト:2011/05/01(日) 15:16:30.35 ID:IcFuEt1A
「…何があった」
驚く彼にただ一言自分の端的な思いを告げる。
「ただちゃんと戦う力が欲しいだけよ…もともと妹学科なんだから魔法は見よう見まねで何とかなるしね」
そう私が告げるとセレスティアが笑う。
「ホントにそれだけか?」
見透かすようなその眼に、私はクスリと笑いを洩らす。
「いつまでも、守ってもらうばかりの女でいるのは、嫌じゃない?自分の女は自分で守るわ」
クスリといつもの私の表情で笑う。
「なるほど…分かった、好きにしろ、ちゃんとした前衛が三人になるなら、それはそれでちょうどいい」
そう言うとセレスティアは制服をはおって真紅の鎌を背中に背負う。
「交流戦まで時間がないからさっさとヴァルキリーの学科の単位を取ってもらうぞ?」
「当然…望む所よ、本戦までにはマスターして見せるわ」
私の言葉にセレスティアは満足そうに笑った。
206 :
マルメンライト:2011/05/01(日) 15:17:33.78 ID:IcFuEt1A
地の果てまで広がるような広大な砂漠の中心に、シキガミと呼ばれるゴーレムを囲んで六人の少年少女が立っていた。
「これで何匹目だ?」
燕尾服のフェルパーの少年が服の袖から抜き出した刀を構え、ふと思い出したかのように呟く。
「多分三匹目、他のチームがどれだけ倒してるかは分からないけど、もうだいぶ倒したはずよ?」
そんなフェルパーの少年に寄り添うように、盾と剣を構えたバハムーンの少女が並び立つ。
「とりあえずさっさと片付けようよ、本気で優勝目指すなら、まずはとにかく数を稼がないと…」
チリンと鈴を鳴らしながらクラッズの少女が舞を踊り始める。
「クラッズの言うとおりだ、さっさとこいつを倒して次を見つけるぞ」
真紅と漆黒、一対の鎌を構えながら堕天使のセレスティアが笑う。
「それじゃ…一気に行くよ…行け…セラフィム!!」
その言葉に応えるようにエルフの少女が魔法を唱え解き放つ。
光り輝く精霊がシキガミの体を打ちすえる。
エルフの少女の攻撃を皮切りに残りの五人が走り出す。
「ハッハー!!」
笑い声と共に姿を消したセレスティアがゴーレムの死角に突然現れ真紅と漆黒二色の鎌を薙ぎ払う。
深く刻まれた斬撃にゴーレムの体が一瞬ひるむ。
207 :
マルメンライト:2011/05/01(日) 15:18:29.84 ID:IcFuEt1A
その瞬間に合わせるようにフェルパーとバハムーンが同じタイミングで飛び出した。
「双」
走り抜けたフェルパーがゴーレムの脚を刀で薙ぎ払う。
「破」
それに合わせながらバハムーンも反対の脚を剣で切りつける。
『刃』
最後に呼吸を合わせた連携攻撃でゴーレムの背中に大きな十字を刻みつけ、二人は飛んで距離をとる。
その攻撃にゴーレムは大きく傾きながら唯一、無防備なエルフに向かい剣を振り下ろす。
だが、その剣が彼女に振り下ろされるよりも早く、彼女とゴーレムの間に水色の影が割り込んだ。
「人のオンナに…きやすく触るんじゃないわよ!!」
そう叫んだ小柄なディアボロスが、自身の身の丈と同じ二本の大剣でゴーレムの剣を弾き飛ばす。
弾かれたゴーレムの剣が宙を舞い、遠く離れた地面に突き刺さる。
「大丈夫?ファリエル?」
ゴーレムの攻撃を撃ち落としたディアボロスの少女は長い髪を掻きあげながらエルフの少女に笑いかける、そんな彼女を見つめながらエルフの少女は恥ずかしそうに笑った。
「ん、ありがと…今のナハトかっこよすぎて…ドキドキするかも」
頬を染めて笑う少女にディアボロスも少し恥ずかしそうに笑った。
「あらあら…また好感度アップね、ロウソク以外にももっと激しいことして大丈夫そう」
くすくす笑う少女は顔に見合わない妖艶な笑みを浮かべている。
208 :
マルメンライト:2011/05/01(日) 15:21:16.27 ID:IcFuEt1A
「オイオイ、戦闘中だぜ、続きは夜にやってくれ」
「あらあら、それもそうねごめんなさい」
呆れたように笑うセレスティアの言葉にディアボロスの少女は再び剣を構えて向き直った。
「それじゃ…ちょっと本気で行くわ、かかってきなさいドン・キホーテ」
ゴーレムを挑発するように手招きして、新たな得物の剣を手にディアボロスの少女は駆けだした。
少女の名前はナハツェーラ
彼女の種族はディアボロス
学科はヴァルキリーと妹学科
頼りないランタンの炎のように誰かの後ろに隠れていた少女は決意を胸に剣を取る。
新たな信念を両手に構え、愛する少女を守るため、彼女は新たな道を歩き出した。
209 :
マルメンライト:2011/05/01(日) 15:30:47.79 ID:IcFuEt1A
以上で投下完了です。
女性同士の恋人の不安みたいの話を書きたかったので書いてみました。
ロリディア様の姉には以前書いた作品のキャラを使用しています。
知らない方はごめんなさい。
今回も拙い分で失礼しました。
遅くなったけど、GJ!
甘えん坊でSだなんて…
もう!
もう!(←感極まって言葉が出てこない)
211 :
マルメンライト:2011/05/05(木) 23:53:21.44 ID:4d+BcuzO
GJどうもありがとうございます。
前回はちょっと思いつきでしたので不安でしたがGJいただけて良かったです。
明日からまた仕事が平常通りスタートするので今日は新しく考えた
チームの新作を投下しにまいりました。
フェルパー♀×バハムーン♂
諸注意 ヒロ…イン?
ドラッケン学園、数々の冒険者を生み出してきた学園
歴史あるその学園の片隅に、ひっそりとその場所は存在していた。
まるで牢屋を思わせる薄暗いその場所を黒い羽根をはやしたセレスティアの女性が歩く。
コツコツとヒールと石の床がぶつかって静まり返ったそこに音を響かせる。
どこかを目指すように歩いていた彼女が目的の場所にたどり着くと、その音が不意にやむ。
代わりにジャラジャラと金属がこすりあう音が彼女の視線の先で鳴った。
「これで何回目かしら?」
目線を合わせるようにしゃがみこんでセレスティアの女性、カーチャは呆れたようにその人物を見る。
「確か5回目だったか?」
ジャラリと両手に鎖をつけられたその人物は楽しそうにそう笑って答えた。
「いいえ7回目よ、貴方自分がなんて呼ばれてるか知ってる?」
カーチャの言葉に、その人物は愉快そうに笑って答えた。
「確か…“狂犬”だったか?なかなか愉快な名前じゃないか」
くすくすとその名前を喜ぶかのように暗闇の人物が笑う。
「オイ、カーチャ、煙草くれないか?丸三日吸ってないせいかどうも調子が上がらねぇ…」
「…全く、仕方ないわね」
そう笑って、カーチャは煙草とライターをその人物に手渡す。
暗闇の人物はそれを受け取ると実にうれしそうにその煙を吸い込んだ。
「ああ…生き返るな、やっぱ俺はこいつが無いと始まらねぇ…」
そんな人物を見ながらカーチャは手足の鎖の鍵をはずす。
「はい、あんまりシュピール先生を困らせちゃだめよ?」
子供に注意するようにカーチャが笑うとその人物も愉快そうに笑った。
「あとでまた謝っておくよ、にしても、ん〜やっぱ鎖が付いてないってのは良いことだな」
固まった体をほぐすように伸びを始めるその人物をカーチャが見つめて笑う。
「それと…女の子なんだから、その口調はやめた方がいいわよ」
窓から差し込む灯りがようやくその人物の姿を浮かびあがらせる。
「はは…!悪いな、もうこの口調でなれてるから今更変える気なんかねぇよ」
まるで男性のよう口調で答えながら、狂犬と呼ばれた白髪のフェルパーの少女は獣のように口をゆがめて笑うのだった。
214 :
マルメンライト:2011/05/05(木) 23:58:51.66 ID:4d+BcuzO
たった3日懲罰房にいただけなのに校舎の中を歩くのは久しぶりな感じがする。
「にしても…」
ちらちらと自分を見つめる視線に“彼女”はつまらなそうに顔をゆがめる。
「ほんとかったるいぜ…」
また、俺の噂でもしてるんだろう、内容はどうせ碌なことじゃないだろうと、簡単に想像がついて彼女は毒づく。
―話があるなら面と向かって言えっつーの―
煙草を咥えて火をつけながら彼女は久方ぶりのまともな食事のために食堂に向かって歩みを進める。
「あー!学内は禁煙って何回も言ってるじゃないですか!!」
そんな彼女に向かってそう叫びながら一人のフェアリーが走ってくる。
つまらなそうにしていた彼女はその人物を見つけると少しうれしそうに顔を緩ませた。
「おう、シュピールセンセ、元気にしてたか?」
彼女の頭に手を置きながら彼女はニヤニヤとした顔で笑う。
「シュピールセンセ、じゃないですよ!なんど言ったらフェルパーちゃんは先生の言うこと聞いてくれるんですか!?」
プンプンと子供のように頬を膨らませながら怒るシュピールを見ながら彼女、フェルパーは楽しそうに笑った。
「はいはい、それと、心配かけて悪かったな」
少しも悪びれた様子を見せずフェルパーはシュピールの頭をわしゃわしゃと撫でた。
狂犬、そう呼ばれる彼女に対しても自分の生徒の一人としてわけ隔て無く接するシュピールは彼女が心を開いている数少ない人物の一人だった。
「まったく…今回の喧嘩の原因はなんだったんですか?」
ぐちゃぐちゃにされた髪形を直しながらシュピールが彼女と隣り合って歩く。
215 :
マルメンライト:2011/05/06(金) 00:00:33.38 ID:4d+BcuzO
「あん?いや別に、なんか群れて気にくわねぇことをやってやがったからうぜぇと思って殴り飛ばした、んでちょいとやり過ぎていつもんとこ、さすがに骨を折ったのは失敗だったな」
けらけらと自分が懲罰房に送られる原因となった喧嘩を思い出しながらフェルパーが笑う。
「全く…フェルパーちゃん、ホントは優しいのに、そうやって悪ぶるから勘違いされちゃうんですよ?ホントは今回のことだって、苛められてる子を助けたのが原因じゃないですか…ただでさえ女の子なんだからおしとやかにしないと好きな人ができた時大変ですよ?」
大人びた表情で呟くシュピールを見ながらフェルパーが苦笑する。
「別に良いんだよ、他人が俺をどう思うかなんてな、俺は自分のやりたいようにできればそれでいい」
がらりと、食堂の扉をあけると、彼女の姿を見た食堂の人間が一斉に黙る。
―あーウゼェ…―
視線を一身に浴びながらフェルパーは黙ってメニューを確認する。
216 :
マルメンライト:2011/05/06(金) 00:01:29.69 ID:4d+BcuzO
「フェルパーちゃんは決まりました?」
「んー、B定かな?今あんま金ねぇし」
冒険者を目指しながらも、孤高であり続けるゆえの金欠に悩みながらフェルパーはそれなりのメニューに目をやる。
「奢りましょうか?先生ですし」
「いんや、やめとく、カーチャにでも使ってやれよ、お前あいつ好きだろ?」
「いやぁ…まぁ…それなりに…優しいですしね、てかフェルパーちゃん、先生はちゃんと先生って呼ばないとだめですよ?」
「あ〜はいはいわかったっての…」
注意するように言うシュピールの言葉にフェルパーは、はいはいと適当に答える。
長くなりそうな話を適当に聞き流しながら、フェルパーは食堂の人間に自分の食事を頼むのだった。
217 :
マルメンライト:2011/05/06(金) 00:02:34.96 ID:4d+BcuzO
「久しぶりだな、フェルパー」
シュピールと食事を終え、一人残ったフェルパーが今日は何をするか考えていると彼女に声をかける人物がいた。
「またお前か…何の用だよ…」
椅子に寄り掛かりながら彼女がそう言うと彼女の向かいに声をかけてきたバハムーンの少年が座る。
「いつものことさ、俺のチームに入ってくれ、フェルパー」
「またかよ…」
バハムーンの少年の言葉にフェルパーは嫌そうに顔をゆがめた。
「俺はどこにも所属するつもりはねぇよ、飼い犬になるのはごめんだね、かったりぃし」
煙草に火をつけ、その煙をバハムーンに吐きつけながらフェルパーがそう告げる。
「変わらないな、どうしたらうちのチームに入ってくれる?」
幾度となく繰り返された会話にフェルパーはやれやれと肩をすくませた。
「テメェが俺と戦ってくれて、俺に勝ったらかんがえてやる」
「あいにくと、俺は女とは戦わない主義だ」
彼女の言葉に、バハムーンがいつもの言葉を返す。
「んじゃ、無理だな、あきらめろ、つかなんでお前は俺にそんなにこだわるんだよ」
218 :
マルメンライト:2011/05/06(金) 00:03:49.35 ID:4d+BcuzO
灰皿に煙草の灰を落としながらフェルパーは頬杖をついてバハムーンを見る。
「だから何度も言っている、お前ほどの腕を持つ格闘家はそうそういない、俺のチームにぜひ欲しい逸材だ」
「逸材ねぇ…」
真顔で自分を見つめるバハムーンに呆れたようにフェルパーが呟く。
「…真剣だぞ?」
「分かってるっての、だが俺は弱いやつに従う気はねぇ」
それだけ言ってフェルパーは話は終わりだと言わんばかりに立ちあがる。
「どこに行く?」
「トイレだよ、女にわざわざ聞くなっての」
呆れたように笑ってひらひらと手を振りながらフェルパーは食堂を去る。
後にはぽつんとバハムーンだけが残された。
219 :
マルメンライト:2011/05/06(金) 00:04:59.17 ID:uxs54v6l
フェルパーが立ち去り、またにぎやかに鳴り始めた食堂で、バハムーンの向かいに黒い髪のフェアリーと狐を模したお面を頭につけたクラッズの少年が座った。
「どうやら、また振られてしまったようだね、リーダー殿」
まるでおとぎ話の魔術師のような格好をしたフェアリーが笑う。
「本当に残念だ…なぜあいつはこうも俺を拒絶する」
はぁと大きくため息をつきながらバハムーンは肩を落とした。
「ま、彼女は極端に自分を見下されることを嫌ってるからね、バハムーン彼女より背、高いし、あんまり好ましく思われてないんじゃない?」
遠まわしに嫌われていると言われ、バハムーンが更に落ち込んだ。
「…なぜだ、俺はこれほどまでにあいつを欲しているのに…」
「…うむ、実に意味深なセリフだね、この場に彼女がいなかったことを喜びたまえリーダー殿、もし彼女に聞かれていたら平手の一発、いや拳の一撃はされても仕方ない」
芝居がかったような口調で大仰に肩をすくめながら笑うフェアリーにバハムーンが首をかしげた。
220 :
マルメンライト:2011/05/06(金) 00:06:22.34 ID:uxs54v6l
「どこか今の俺のセリフにおかしなところはあったか、クラッズ?」
「バハムーン、君は変なところで馬鹿だね、男性が女性に対して欲してるとか言ったら間違いなくそれはヤリたいと言ってるみたいなものでしょ?」
まるで年下に言い聞かせるようにクラッズがバハムーンを見る。
「…」
その言葉になぜかバハムーンが黙った。
「え?まさか…バハムーン?」
「うむ…なんとなく想像はしていたがね、やはりリーダー殿が彼女に執着していたのは彼女自身に興味があったからか」
不思議なものでも見るようなクラッズとは対照的に、納得がいったというような表情でフェアリーがうなづく。
「…男が女を好きになって何が悪い…」
微妙に顔を赤くしながらバハムーンが呟いた。
「…マジで?相手はあの“狂犬”だよ?」
確認するかのようにクラッズがバハムーンに言う。
「美しいじゃないか、孤高であり、気高いそして何よりあいつは可憐だ」
真面目な顔で呟くバハムーンにクラッズが少し引く。
だがフェアリーは目を閉じながら静かにうなづく。
「うむ、その言葉には賛同しよう、多少口調に問題はあるが容姿の面では確かに美しい」
「分かってくれるか…フェアリー…」
「美しいものはたとえどんなものであっても認められるべきだ、リーダー殿にそれを見る目があったことに私は好ましく思っているよ」
がっしりと彼の手を握りながらバハムーンが首をふる。
221 :
マルメンライト:2011/05/06(金) 00:07:06.94 ID:uxs54v6l
「ま、口調さえアレじゃ無ければ確かにきれいかもしれないけどね…」
クラッズも彼女の姿を思い出しながら、小さく呟いた。
事実、彼女は確かに美しい、容姿は淡麗であるし、スタイルはかなり良い方だろう、だがそれでも彼女は彼女なのだ。
一人称は俺、口調は完全に男、狂犬と呼ばれる由縁となった伝説は計り知れない。
曰く、武装した三人の男を素手で倒した、曰く、気に入らないという理由で一人の生徒を半殺しにした、その手の話題はいくらでも聞ける。
多くはおひれのついた噂だろうが、いくつかは真実である証拠に彼女は懲罰房と呼ばれるところに何度か送られていた。
「フェルパー…なぜ俺に振り向いてくれない…」
「…いや、いきなりマジすぎるよバハムーン」
ため息をつくバハムーンをクラッズは奇妙なものを見る目で見る。
「ふむ…リーダー殿…私に考えがあるのだが…少し聞いてみないかね?」
「聞こう、名案があるのか?」
「うむ、私に任せたまえ、リーダー殿、配役に少々問題はあるが脚本は一流の私だ」
何やら思いついたように笑うフェアリーをどこか疲れた目でクラッズは見つめるのだった。
222 :
マルメンライト:2011/05/06(金) 00:08:19.91 ID:uxs54v6l
トイレと称して食堂を抜け出したフェルパーはあても無く校舎をブラついていた、ビーストと格闘家どちらの単位も獲得し終わっている彼女はわざわざ授業に出る必要もない、強いて言えば彼女は暇なのだ、ブラブラと歩きながら、彼女はふと自分のことを追い続ける気配に気づく。
―どうやら、俺をつけてるみたいだな…―
どこかで、また俺を気に食わない連中がまだ居るんだろう、そんなことを思いながらフェルパーは屋上を目指す。
―多少のストレス解消にはなりそうだな…―
煙草を口にくわえながらフェルパーは楽しそうに顔をゆがめた。
戦うことは嫌いではなかった、むしろあの生と死が入り混じった感覚は彼女が最も欲するものである。
―懲罰房に入ってた間にたまったストレス解消には最適だな―
ガチャリと屋上の扉を開け、その中心に進んで彼女は背後の気配に声を投げかける。
「そろそろ姿見せろよ、テメェらも、隠れ続けんのは飽きただろ?」
振り返りながら彼女が笑うと、剣を持った4人の人影が出口を塞ぐように現れる。
「久しぶりだな“狂犬”懲罰房の暮らしはどうだった?」
リーダー格と思われるディアボロスの少年がそう言うとフェルパーはにやりと口の端をあげた。
223 :
マルメンライト:2011/05/06(金) 00:09:34.84 ID:uxs54v6l
「退屈だな…俺には生きるか死ぬかその瀬戸際に立って戦うのが一番の楽しみなんだ」
鋭くとがった爪をなめながらフェルパーが笑う。
「この間のオトシマエつけさせてもらうぞ」
正直この前のオトシマエと言われても心当たりがあり過ぎて思いつかない。
武装した4人を目の前にしながらも彼女は笑っていた。
「悪いが…手加減はできねぇぜ?」
獣のように笑いながらフェルパーが構える。
「いくら“狂犬”とて4人がかりに勝てると思うか?」
「うだうだいってねぇでかかって来いよ…多少は楽しませてくれや」
手招きして笑うとその挑発に乗るように4人が彼女に襲いかかる。
「くはっ!」
振り下ろされる剣を踊るように回避しながら楽しそうにフェルパーが笑った。
「おせぇ!」
自分に襲いかかってきたヒューマンの頭を掴んで屋上の床にたたきつける。
ゾクゾクと背中を駆けあがる快感にフェルパーは体を震わせた。
「くはは…くはは!!」
何がおかしいのかフェルパーは腹を抱えて笑いだす。
「やっぱ…良いなこうやって、命を狙われると…生きてるって感じがするぜ…」
奪い取った剣を握りながらフェルパーが自分の唇をぺろりとなめる。
―楽しませてくれよ?―
心の中で呟きながらフェルパーは走った。
殺すつもりで振り下ろされた剣を紙一重で避けながら、自分を切ろうとした少年の腹を手加減なしに蹴り飛ばす。
吹き飛ぶ少年を見ながら背後に回り込んだ少年の剣を弾き飛ばす。
金属がぶつかり合う音を聞きながらフェルパーは笑い声をあげた。
「どうしたクソガキ!?そんなんじゃたのしめねぇよ、もっと俺をたのしませろよ!!」
襲いかかる剣をかわしながらフェルパーが笑う。
224 :
マルメンライト:2011/05/06(金) 00:10:54.18 ID:uxs54v6l
「くそ…」
倒れた仲間を見降ろしながら、リーダー格の少年がフェルパーを睨んだ。
彼の背丈は、彼女より少し高い。
「調子に乗るなよ狂犬!」
振り下ろされた剣がフェルパーの剣を弾き飛ばす。
「おっと…」
へらへらと笑いながらフェルパーがリーダー格の男を見た。
「女の分際で、男にかなうと思うのか?」
にやりと彼女を見下すように少年が笑う。
その瞬間、フェルパーの纏っていた気配が変わった。
「…ぇ」
それは決して触れてはいけない、彼女の逆鱗に触れる行為。
「…何?」
フェルパーの呟きにその男が首をかしげた。
聞き取れなかった、ただそれだけであったのに、それがより彼女の苛立ちを増幅させる。
再び顔をあげた少女の眼に宿るのは純粋な敵意。
「俺を…見下してるんじゃねぇ!!!」
拳を握り、獣のように目が光る。
「な…!」
少女の豹変にリーダ格の少年が一瞬怯んだ。
それを彼女は見逃さない。
先ほどまでとは比べようもないスピードで一気に詰め寄り、少年の無防備な腹に拳を叩きこむ。
「がっ…!?」
大きく体がくの字に曲がり、少年が腹を押さえてよろめく。
その少年の頭を掴みフェルパーは膝を顔面にたたき込んだ
「俺を見下すな!俺を…勝手にみるんじゃねぇ!!」
「がっ!ぐっ!ぐはっ!」
もはや戦意を失っている少年をフェルパーは何度も何度も打ちのめす。
気を失って倒れた少年をまるでごみを捨てるかのようにフェルパーは投げ捨てる。
屋上を誰かが駆けあげってくるのが聞こえる。
よく見ると屋上に倒れている少年の数は3人、1人たらなかった。
「…」
無言のままにフェルパーは屋上の扉を睨む。
勢いよくそれが開け放たれ更に6人の少年が駆けこんでくる。
「狂犬…テメェ…!」
倒れ伏した3人を見て、少年たちが剣を抜いた。
その少年たちをフェルパーが冷酷な目で睨みつける。
「…オイ…」
ジャリ…フェルパーが静かに男たちに向かって歩き出す。
「てめえら…俺を見下してるんじゃねぇよ…」
静かに拳を握りながらフェルパーの少女が駆けだした。
225 :
マルメンライト:2011/05/06(金) 00:12:01.31 ID:uxs54v6l
「…というわけだが?どうかなリーダー殿?」
大仰に両手を開きながらフェアリーが話を締めくくる。
「…なるほど、つまりいっそ開き直れと」
長々しかった話を聞き終えたバハムーンは静かそう言ってうなづいた。
「…どうやらリーダー殿には風情や感性と言ったものが無いようだ」
どこか不満そうにフェアリーが呟く。
「いや、バハムーンにそう言うことを求めた君が悪いそれより…」
ほとんど空になったお茶を飲みながらクラッズが横目でそれを見る。
「何かずいぶん騒がしくない?」
何やら剣呑な雰囲気を纏ったやつらが集まって何やら話をしていた。
「…確かに…何かあったのか?」
ようやくそれに気づいたバハムーンもいぶかしむようにその人物たちを見る。
「結構、大変なことになってるみたいですよ?」
「また、狂犬さんが暴れてるみたい」
青と赤、白と黒、対照的な雰囲気を纏ったセレスティアとディアボロスの少女がそんな彼らに声をかけた。
「おやおや…セレスティア…今日も君は美しい…その美しさを私一人のものにできないだろうか?」
おお、と大仰に頭を押さえながらフェアリーがそう言ってセレスティアの手を取る。
そんな彼を見ながらセレスティアはクスリと笑った。
「いつも通りですね、フェアリーさん」
「ああ、私は常にいつもどおりさ、いつも通り、君がどうしたらボクに振り向いてくれるのか考えている」
芝居がかった口調と動きを続けるフェアリーを無視し、バハムーンは静かにディアボロスを見た。
226 :
マルメンライト:2011/05/06(金) 00:14:17.36 ID:uxs54v6l
「また…アイツが暴れてるだと?」
「ええ…どうやらそうみたい、ここに来る前にちょっと小耳にはさんだれべるだけど、なんか彼女完全にキレちゃってるみたいね、誰かが彼女の逆鱗に触れちゃったそうよ」
「…それはマズイね、つい先日は懲罰房で済んだけど…あまり暴れてしまうと今度こそ退学になっちゃうかもしれない…」
クラッズがそう呟くとバハムーンがガタッと立ちあがった。
「ディアボロス、フェルパーはどこだ!」
「屋上…止めるつもりなら急いでいきな、多分間に合わないけど…先生たちは…私とクラッズで何とかするよ」
ディアボロスの言葉にクラッズがうなづく。
「お前たち…」
自分のチームのメンバーを見ながらバハムーンが小さく呟いた。
「…何をしているのだね?リーダー殿、先を急ぐのだろう?ここでおしゃべりしていて良いのかね?」
「フェアリーさんに笑われていますよ?リーダー?」
「…あとは任せた」
それだけ言ってバハムーンが食堂をあとにして屋上を目指して駆けだした。
227 :
マルメンライト:2011/05/06(金) 00:15:49.96 ID:uxs54v6l
「フェルパーさん私達のチームのメンバーになってくれると良いですね」
そんな彼を見送りながらクスリとセレスティアが笑う、同じ様にフェアリーもクスリと笑った。
「なに、私と君の考えた物語だ役者はすこし粗暴だが、きっとうまくいくだろう」
「…ん?どういうこと?」
首をかしげるクラッズとディアボロスにフェアリーが笑う。
「つまりこういうことさ…君たちもうその辺で良い、ご苦労だった」
パチンとフェアリーが指をならすと食堂の隅で剣呑な雰囲気を纏っていた少年たちがやっと終わりか、といった表情でフェアリーのところにやってくる。
「おーい、カントクー、屋上の奴らはいつ回収するんだ?」
のんきな顔でそう笑う少年にフェアリーが笑う。
「リーダー殿とフェルパーの決着がついたら適当に回収しておいてくれたまえ、あとで私から直接報酬を支払おう、とりあえず、これが君たちの分だ」
ごそごそとローブの中から金貨の入った袋を取り出すと、そう言って彼らに投げ渡す。
「怪我してる人は後で私とカーチャ先生で治療しますから、悪い人達役の人達に治療費は気にしないように言っておいてください」
「はいよー」
ひらひらと去っていく少年たちをクラッズとディアボロスがポカンとした表情で見つめている。
そして少年たちがいなくなると、入れ替わりにカーチャとシュピールの両先生が並んではいってきた。
「どうやらうまくいきそうね?」
くすくすと笑いながらそう言ってカーチャが席に座る。
「あとはフェルパーちゃんとバハムーン君がどうなるかですね〜」
のんびりと机に体を投げ出しながらシュピールが笑った。
「…信じられない…まさか今までの全部ウソ?」
「…え、マジで?」
ようやく気付いたディアボロスの言葉にクラッズが驚いた表情を浮かべる。
228 :
マルメンライト:2011/05/06(金) 00:16:52.57 ID:uxs54v6l
「ウソ等では無い、あまりにも彼の行動がもどかしいのでね、私とセレスティア、さらにシュピール先生とカーチャ先生にも協力していただいて一芝居打っただけだよ」
けらけらと笑いながらフェアリーがお茶を飲む。
「君さっき驚いてたじゃん」
クラッズがフェアリーにそう言って首をかしげる。
「世の中には監督と主役が同じ映画もあるのだよ、クラッズ、私も役者を演じる以上その程度の演技は心得るさ」
フェアリーの言葉にクラッズはやれやれと肩をすくめる。
「それにしてもリーダー、フェルパーさんに勝てますかね〜」
セレスティアはそんな彼らを見ながらくすくすと笑っていた。
「心配無いでしょう、確かにビースト学科と格闘家学科マスターしてるフェルパーちゃんは強いですけどバハムーン君十分強いですし」
のんびりと寝そべりながらシュピールが笑う。
「少しは、これで彼女もおとなしくなってくれるといいわね、懲罰房、私は何度も行きたくないもの、あそこ気味悪いし」
くすくすとお茶を飲みながらカーチャも楽しそうに笑う。
「…はぁ、後で二人にばれても知らないよ?」
呆れたようにクラッズは呟いて、お茶のお代わりを取りに行く。
「あ、ごめんクラッズ、私の分もお願い」
「ん、ディアボロスは温めだよね?」
「うん…猫舌だから」
はいはい、とクラッズは笑い、リーダーたちはどうなるのかな?などとクラッズは新たに仲間になるかもしれない少女のことを思いながら、やれやれと小さく呟くのだった。
229 :
マルメンライト:2011/05/06(金) 00:18:45.37 ID:uxs54v6l
「…オイ、もうだれも向かってこねぇのか?」
屋上に伸びた9人を見降ろしながらフェルパーはそう呟いた。
だが、そんな彼女の声に応えるものは誰もいない。
「ちっ…!」
舌うちしながらフェルパーは煙草を取り出し火をつけた。
立ち上る紫煙を見ながらフェルパーはぽつりとつぶやく。
「…今度こそ、退学かな…アイツとも、もうおさらばだな…」
煙草の煙を吐き出しながら、何度も自分をチームに誘ってきたバハムーンの少年を思い出しフェルパーは呟く。
―結局、最後までやりあえなかったか…―
退学になる前に一度ぐらいアイツと戦いたかった、そんなことを思いながらフェルパーは煙草の灰を地面に落とす。
次の煙草を取ろうとして、彼女は煙草の箱が空であることに気づく。
「ちっ…」
空になった煙草の箱を握りつぶし、背後に投げ捨てる。
230 :
マルメンライト:2011/05/06(金) 00:20:40.97 ID:uxs54v6l
「ああクソ…」
煙草が無いことでちょっとした苛立ちがやってくる。
「おいフェルパー」
不意に、声がかけられ何かが宙を舞って自分に飛んでくるのに気付き、彼女はそれを空中でつかんだ。
「確か…そいつでよかったよな?」
開いた屋上から現れた見覚えのある顔にフェルパーが笑う。
「ああ、サンキュ…」
手の中の新しい煙草の箱を開け、煙草を口にくわえながらフェルパーが笑う。
そのまま煙草に火をつけると、バハムーンが彼女の隣の地面に腰を下ろす。
背の高い彼が彼女に合わせるように、むしろ彼女よりも頭が下に来るように座るのを見て、フェルパーは笑う。
「なんだ、俺の下着でも見たいか?」
くすくすと笑いながらフェルパーは煙草の煙を吐き出す。
彼が自分のことを思ってそう座ったのには気づいていた。
「…見て良いならな…」
「…アホか」
真顔でそう言ったバハムーンにフェルパーがいつもの表情で返す。
「ずいぶん暴れたみたいだな…」
屋上に倒れ伏した男たちを見ながら、バハムーンがフェルパーを見上げる。
「まぁな…、馬鹿が俺のこと見下しやがったからついつい、いつもより暴れちまった」
自嘲気味に呟いたフェルパーにバハムーンが笑う。
「…満足か?」
「…いや、どうも微妙だな…これでしまいになるかもしれねぇかと思うと、お前とやり合ってみたかったよ」
まるで退学が決まったかのように話すフェルパーにバハムーンがふと呟いた。
「…退学にはならん、フェアリーたちがうまくやってくれるだろ」
まさかそのフェアリーにたばかられている等とは知りもしないバハムーンがそう呟く。
「なぁバハムーン、どうしたらお前は俺と戦ってくれるよ…」
煙草の灰を落としながらフェルパーはぽつりとつぶやいた。
まるで、恋をする乙女のように…
231 :
マルメンライト:2011/05/06(金) 00:21:36.13 ID:uxs54v6l
「…そのことだが、お前がある条件をのんでくれるなら…戦ってやっても良い」
「あん?」
予想外のバハムーンの言葉にフェルパーは思わずバハムーンを見た。
「条件って何だよ?」
首をかしげるフェルパーをバハムーンが少し楽しそうに見つめる。
「俺が勝ったら、俺の女になってくれ、それで俺の女として…チームに入ってくれ」
「は?」
予想外のバハムーンの言葉にフェルパーの手から煙草が落ちる。
「ん?お前の女になれって…お前まさか…」
「ふむ、端的に言おう、抱かせろ、そして俺の彼女になれ」
きっぱりと言い切ったバハムーンの言葉にフェルパーの顔が朱に染まる。
「はぁ!?お前頭わいてんのか!?俺は“狂犬”とか呼ばれてるんだぞ?口調もこんなんだし、そんな奴に抱かせろとか…」
「だが、良い女だ、それも特別上等な女だ」
真っ赤な顔をしたフェルパーをバハムーンは楽しげな眼で見つめ、視線を合わせるように立ち上がる。
パクパクと口を開くフェルパーにとどめを刺すようにバハムーンはその言葉を告げる。
「好きだ、フェルパー」
「…良し分かった、その条件飲んでやる…」
顔を真っ赤に染めたまま、フェルパーがそう言って笑った。
「俺が負けたら、好きにしろ…条件どおりお前の女になってやる」
尻尾を振りながらフェルパーが楽しそうに笑う。
「ただし…俺が勝ったら、今後一切俺に声をかけんなよ?」
「ふむ…それは負けられんな…ぜひともお前の恥じらう姿を見てみたい」
にやりと笑うバハムーンに、フェルパーが煙草に火をつけ笑う。
「ぬかせ、その笑い顔止めてやんぜ…」
くるりと回って距離をとり、フェルパーが拳を握って構える。
それに合わせてバハムーンも拳を握って構えた。
232 :
マルメンライト:2011/05/06(金) 00:22:40.38 ID:uxs54v6l
「今夜が実に楽しみだ!」
「夢は眠ってから見るんだなバハムーン…!」
ジャリ…と床を踏みしめながらフェルパーが煙草を吐き捨てる。
そして二人は同時に駆けだした。
「はっ!」
「せいっ!」
体全身のばねを使って放たれたフェルパーの突きをバハムーンは円を描くような動作で受け流す。
あっさり初撃を受け流されたフェルパーは楽しそうに唇を舐めながら腹を狙って蹴りを放つ。
「むっ!」
だがバハムーンはそれにすぐに気づいて腕を使って腹をかばった。
丸太を蹴るような感触にビリビリとフェルパーの脚がしびれる。
「いってぇー!お前の体何で出来てんだ!」
ぴょんぴょんと跳ねて距離をとりながらフェルパーが笑う。
「体の頑丈さには自信があってな、それにしても…白とは意外だな…」
なぜか鼻を抑えながら呟いたバハムーンの言葉にフェルパーはきょとんと首をかしげる。
そして何かに気付いたようにその顔が真っ赤に染まった。
「あ!テメェ!!何俺の下着みてやがんだ!まだ勝負の最中だろ!!」
粗暴な口調で話しながらまるで乙女のように恥じらうフェルパーの姿にバハムーンが顔を赤らめる。
「…いや…なんだ、見るつもりはなかったんだが…見えてしまったのだからしょうがない」
恥ずかしそうにそう言うバハムーンにフェルパーの顔が更に赤くなる。
「記憶を失え!!」
そう叫びながら距離を詰め、頭を狙って拳を放つ。
だが、バハムーンはそれを横に避けてたやすく回避し、拳を放った腕をつかみ投げた。
「きゃん!!」
たたきつけられた衝撃に珍しく可愛い悲鳴をフェルパーがあげる。
そんな彼女をバハムーンの視線が見つめていた。
233 :
マルメンライト:2011/05/06(金) 00:23:23.82 ID:uxs54v6l
「っ〜見んじゃねえ!この!」
「そうだな、見つめるのは今夜ベッドの上でじっくりさせてもらおう」
くすくすと笑うバハムーンに攻撃を繰り返すがバハムーンはそれをたやすくよけてしまう。
「このっ!このっ…!!」
「ところでフェルパー…」
不意に呟いたバハムーンにフェルパーが彼を睨む。
「なんだよ?」
「そろそろ俺も攻撃していいか?」
首をかしげるバハムーンにフェルパーが不意にあることに気づく、そう言えば、バハムーンは未だに自分からの攻撃をほとんどしてきていなかった。
「…いいぜ、俺を自分の女にするとかのたまわったんだからな、お前の力見せてみろよ…」
挑発するようにフェルパーが手招きする。
「なるほど…」
そう呟き、バハムーンが目を細める。
「では…行くぞ」
ドン…!と地面を震わせてバハムーンが攻撃を開始した。
「うおっ!」
予想外のスピードにあわててフェルパーは回避する。
「ふっ!」
「くぁ!」
背中からぶつかるような攻撃に回避が魔に合わずフェルパーの体が宙に舞う。
ストンと何とか着地をしながら、フェルパーはバハムーンを見た。
「…オイ、なんだその予想外の強さは…これでも俺はビーストと格闘家の単位マスターしてんだぞ?」
それゆえに彼女は今まで狂犬と呼ばれながら闘いに明け暮れ、一度も負けたことがなかった、それなのに、今目の前に立つバハムーンは明らかに自分の腕を凌駕している。
「何、単純なことだ…」
バハムーンは構えを解かずフェルパーを見つめながらさらりと答えを言い放った。
「俺は基礎およびこのドラッケンで受けられる戦士系学科、その全てをマスターしている」
234 :
マルメンライト:2011/05/06(金) 00:24:17.40 ID:uxs54v6l
なんとでも無いことのように言い放ったバハムーンにフェルパーがぽかんとした表情をし、爆笑した。
「お前…馬鹿か?全部マスターとか…勝てるわけねぇだろ…」
ひぃひぃと腹を押さえて笑いながらフェルパーが呆れたように座り込む。
「負けだ負け…降参だ…」
赤らんだ顔をそむけながらフェルパーがそう言って屋上にそのまま横になる。
そのまま煙草に火をつけて、笑う。
「ずいぶんあっさり負けを認めるんだな」
「だって別に俺お前のこと嫌いじゃねぇし、むしろ好きだし、俺よりも強いのも分かったし、別に抱かれてやってもいいぜ、それと喜べこれでもまだバージンだ膜もちゃんと残ってる」
開き直ったようにそう告げるフェルパーに、楽しそうに笑いながらバハムーンがその横に座った。
「なるほど…では、改めて言おう、フェルパー…俺の女になってくれ…」
少し恥ずかしそうにそう告げたバハムーンにフェルパーは体を起して口づける。
「…初めてだからよ…なるべく優しくしてくれや…」
恥ずかしそうに顔を染め、静かに彼から離れながらフェルパーはそう言って笑った。
「ああ…」
バハムーンが笑って、彼女のことを抱き上げる。
「お…おい!!」
お姫様だっこの体勢で抱きあげられたフェルパーはあわてたようにバハムーンを見る。
「ちょっと待て!お前まさか…」
「…すまんこのまま夜を待つのは待ち遠しいんでそのまま俺の部屋に連れていく、我慢できそうにない、ついたらすぐにしよう」
「おまっ!せめて風呂ぐらい入らせろ!こっちにも心の準備があるんだっつーの!!」
「大丈夫だ!風呂なら俺の部屋にある、なんなら俺が洗ってやろうか」
「っ〜!自分で洗う!!」
恥ずかしそうに顔を染め、ぽこぽこと彼の胸を殴るフェルパー
その彼女に狂犬などと呼ばれる恐ろしさは無い、ただ、恥じらう乙女のようなただの年相応の少女だった。
235 :
マルメンライト:2011/05/06(金) 00:25:51.78 ID:uxs54v6l
二人の去った屋上で倒れ伏した9人はようやく体を起こす。
「…いったか?ボコられ一号?」
「…いったな、ボコられ2号、つか狂犬、キャラ違いすぎね?俺、あいつの口から抱かれてやって良いなんて言葉が出るとはおもわなかったぞ?」
「まぁ狂犬っていっても女だしな、恋する女は素直なもんさ」
「オイなんだその発言」
「いやだって俺、彼女いるし」
「オイ、ここに裏切り者のリア充がいるぞ皆ボコろうぜ」
「やめろ、既にリーダー役なんかやったせいで狂犬に思いっきりボコられたわ、つか額割れてるし」
ボロボロの体を起こしながら9人は思い思いに口を開く。
「それより…これで明日から突然、狂犬が女っぽい口調になってたらどうするよ?」
「私、フェルパー、お菓子と彼が大好きな女の子ですとかか?」
一人が漏らした言葉に全員の動きが止まる。
「いや、むしろそれはもう一種のホラーだろ、なにされたらそうなるのか恐ろしくて俺、二度とあのバハムーンに逆らいたくなくなるわ」
彼らはそう言って大きな声で笑うのだった。
236 :
マルメンライト:2011/05/06(金) 00:30:04.75 ID:uxs54v6l
ごしごしと自分の体を丹念に磨きながらフェルパーは何度も確認するように自分の体の匂いを嗅いだ。
―ん、大丈夫そうだな…―
邪魔だからいつもさらしで覆っていた無駄にデカイ二つの膨らみを一応もう一度洗い自分の女の場所を何度目だかわからないほど洗う。
―つか、俺何やってんだ…思いっきり期待してんじゃねか…―
初めて入るあいつの部屋の風呂でシャワーを浴びながらドキドキと高鳴る心臓を必死で抑える。
―アイツに…抱かれるんだよな…―
初めては死ぬほど痛いと小憎らしい保険医が言っていた言葉を思い出し、少しだけ怖くなる。
「まだか?フェルパー」
「うっせぇ、だまってろ!テメェのために体洗ってんだから少しぐらい待て!!」
「俺のためか…よし存分に待っておこう」
頬を真っ赤に染めながらフェルパーは再び体の泡を洗い流す。
―良し…―
顔を軽くはたいて、風呂からでて下着をはいてバスタオルを体に巻く。
どうせ脱がされるぐらいなら、制服はわざわざ着る必要もないと判断し、そのまま籠に入れたままそっと部屋をのぞく。
制服姿のアイツがベットに座って俺を待っていた。
どこかそわそわしているあいつの姿に俺は思わず笑いを洩らす。
―緊張してやがんの…―
自分もどきどきと緊張していたが意を決して、姿を見せる。
「…あ、上がったぞ」
俺の言葉にバハムーンが俺の姿を見つめる。
―う…―
下着をつけてバスタオルを巻いただけの姿なので、どこか頼り無く感じてしまう。
―やっぱ制服ぐらい着るべきだったかもしれねぇ…―
「…お前…普段と胸の大きさちがわないか?」
アイツが俺を上から下に見下ろしてふと気付いたように呟く。
「いつもは…さらし巻いてんだよ、デカイと動くのに邪魔でな…」
恥ずかしさを何とかこらえながらあいつの隣に腰を下ろす。
心臓は破裂しそうなほど高まっていた。
そっと、アイツが俺の肩に手を載せ抱き寄せる。
「良い匂いだ…」
「っ〜!!いいからさっさと抱きやがれ!こっちはおもいっきりハズいんだよ!!」
うらみがましく睨むとバハムーンがガチガチに緊張した体をそっとベッドに押し倒す。
「あまり緊張するな、こっちだって初めてなんだから…あまり緊張されると…その困る」
「無茶言うな…こっちは…これからお前に女にされるんだぞ…お前のモノ突っ込まれるんだぞ…恥ずかしくて…死にそうなんだ」
目を腕で覆いながら俺が言うと、そっと唇に温かい感触が触れる。
ピチャピチャと俺の唇をなめていたかと思うとバハムーンの舌はまるでこじ開けるように俺の口の中に入ってきて舌を絡め取った。
237 :
マルメンライト:2011/05/06(金) 00:31:08.41 ID:uxs54v6l
「むぅ…!」
どうして良いのか分からずパニックになる俺の手を抑えながらバハムーンの舌が俺の口の中を蹂躙していく。
次第に体から力が抜け、何も考えられなくなっていく…。
―なんだかんだいって俺は女なんだな…―
バハムーンの舌に自分の舌が絡め取られて激しく深い口づけをされると頭の中が溶けていく。
「タオル…外すぞ…」
そっと唇を離しながら…バハムーンが呟く。
「ああ…」
コクンと首を縦に振るとバハムーンの手がタオルにかかり、それをはずしていく。
いつもさらしで隠していた胸が何も隠すものなくそのままあいつの目に触れる、自分の女の部分を申し訳程度に下着で覆ったほぼ生まれたままの姿の俺がバハムーンの目にさらされる。
「…きれいだな」
「…あほ…何言ってんだよ、傷だらけだろうが」
「真実を言ったまでだ、多少切り傷とかもあるが…実にきれいだと思う」
バハムーンの言葉に胸が高鳴ってバハムーンが俺に触れるのを待つ。
「触るぞ…」
「いちいち確認すんじゃねぇ…恥ずかしいだろうが…馬鹿」
「だが…」
何かを言おうとしたバハムーンの肩をつかみ俺はその言葉を告げる。
「今更、拒絶なんかするわけねぇだろ!俺は…俺はもうお前の女になるって言ってんだろ!俺がなんの考えなしにバージンだと膜がのこってるとか言うとおもうのか?テメェにやるっていってんだよ!!…テメェに…破ってほしいんだ…女に…してほしいんだ…俺だって…」
あいつの目を見て俺は告げる。
「俺だって…お前が…好きなんだ」
238 :
マルメンライト:2011/05/06(金) 00:32:31.02 ID:uxs54v6l
ひとしきり叫ぶと、恥ずかしそうに頬を染めながらフェルパーがそう言って再びベッドに体を投げ出した。
「ほら、さっさとやれよ…」
挑発するかのようにフェルパーが笑う。
「それでは…楽しませてもらうとするか」
つんと上を向いたボリュームのある胸に軽く手を触れる。
「ふっ…!」
俺の手が胸に触れるとピクリとフェルパーの体が震えた。
「痛かったか?」
「いや…なんつーか…ちょっとばかし、むずむずするっつーか…うんまぁ…」
少し言い淀むようにフェルパーははにかんで笑った。
「…気持ち良い、そのまま続けてくれ…バハムーン…俺を…お前の女にしてくれよ…」
そういってフェルパーは普通の少女のように笑った。
「心配しなくても…お前は十分に良い女だ…」
そう言って胸を揉むと弾力のある感触が伝わり俺の手の形にそってフェルパーの胸が形を変える。
「ん…」
くすぐったそうに身をよじらせ恥じらうフェルパーの姿に興奮は否応なしに高まっていく。
いつも男のようにふるまっているフェルパーが俺の手の中で少女のように震えている。
そのギャップがたまらなく愛おしい。
思わず俺は天を向くその胸の中心にかぶりついた。
「うはぁ…!」
舌先でピンと立った桜色の突起を転がすと目に涙をためながら可愛らしくフェルパーが声をあげる。
「良い…すごくいいぜ…バハムーン、俺…初めて女で良かったと思ってる」
「そうか…」
「見下されるのは嫌いなんだがな…こうやって…お前に組み敷かれるのは…悪くない…」
へへっ、とフェルパーが舌を出して笑う。
「そう言えばなぜ見下されるのがそんなに嫌いなんだ?」
ふと気になってそう言うとフェルパーが言いにくそうに言い淀む。
「いや、なんつーかよ…俺は、他人に自分を見透かされてる感じがが嫌いなんだ、もっともお前には全部さらけ出しちまってるし…このまま処女散らされるってかんがえると…はずかしいけど、ちょっとうれしい」
頬を染めながらフェルパーがはにかむ。
なかなかぐっとくる仕草だった。
「…ん、どうしたバハムーン股間押さえて」
「いや…なんでもない、それより…下着を脱がす腰を少し浮かせてくれ」
「ん…はいよ」
俺の言葉に従って、フェルパーが軽く腰を浮かす、そっと手をかけそれを下ろす。
生まれたままの姿となったフェルパーがそこにいた。
239 :
マルメンライト:2011/05/06(金) 00:33:30.51 ID:uxs54v6l
「…なんだよ…恥ずかしいじゃねぇか…なんか言えよ」
ごくりと思わず唾を飲み込む。
「…うむ…これは…なかなか…」
すべすべとしたフェルパーの脚を撫でるとそれに反応して尻尾が震える。
ひっそりと湿り気を帯びたそこに手をあてる。
「うぁ…指…指がぁ…」
壊れものを扱うかのように繊細にそこをなであげるとプルプルとフェルパーの体がふるえる。
「うぁぁ…気持ち良い…こんなのしらねぇ…」
「自分で慰めたことは無いのか?」
俺の言葉にフェルパーが首をかしげる。
「自分で慰めるって…どうやるんだよ…」
「知らないなら…別にそれで良い」
そう言って俺はフェルパーのそこに口をつけた。
「ふぁぁ!ちょっ!どこなめて…!」
軽く濡れたそこをなめるとあたふたとフェルパーがあわて始める。
「きちんと濡らさないと痛いらしいからな、じっとしてろ」
「うう…わかった」
俺がそういうと顔を恥ずかしそうに真っ赤に染めながらフェルパーはそれを受け入れる。
「う…ひっ!うぁぁ…あ!馬鹿やめろ…そんな中なんか舐めるな!音たてるなぁ…気持ちよく…なっちゃうだろ……」
俺の頭を押さえつけるようにフェルパーが頭を掴む、だが俺はそのか弱い抵抗を無視し、目的のものを見つけ、敏感なそこを舌で思いっきりなめあげた。
「うはぁぁぁ!!」
びくびくとフェルパーが震え足で俺の頭を挟む、動けないことへのせめてもの抵抗で俺はそこへの愛撫をひたすら続ける。
「まて!やめろバハムーン…変だ…気持ち良くて…なんか頭が…俺が…壊れ…」
「良いんだフェルパーそのままそれを受け入れろ」
そう告げて充血して膨らんだそこを軽く噛んだ。
240 :
マルメンライト:2011/05/06(金) 00:34:45.87 ID:uxs54v6l
「うきゅぅぅぅぅ!!」
今まで聞いたことの無い可愛らしい悲鳴を上げながらフェルパーの体がピンとはって背中をそらせる。
次第にその体が力を失ったように倒れ、ぐったりとした表情で荒い呼吸を繰り返す。
「イッたかフェルパー…」
そう言って頭を撫でると恥ずかしそうにフェルパーが笑った。
「アレが…イクってやつなんだな…なんかふわふわして…頭の中が真っ白になって…すごく…気持ちよかった…」
不意に笑っていたフェルパーが何かに気付いたように俺を見る。
「なぁ…バハムーン、なんかふとももにカタイものが当たるんだが…」
「ああ、俺のモノだ」
「…見せてくれ」
ああ、とフェルパーの言葉にうなずき俺は痛いぐらいに張りつめたそれを解放するためにズボンを脱いで下着も脱ぐ、バネがはねるようにそれが飛び出ると真っ赤な顔を手で覆いながらフェルパーがそれをじっと見つめていた。
「で…デカ…こ、これ…これを俺の中に突っ込むのか?」
恐る恐る手を伸ばし、フェルパーが俺自身に触れる。
「うわ…カタ…つか…ほ、ホントに入るのか?これ俺に入るのか?」
「多分な、多少痛むかもしれん…」
「そ…そうだよな…よし…こ、こっちは準備出来てる…いいぜ」
少しおびえた様子のフェルパーが気丈にもそう言って笑う。
「ああ…それじゃあ…なるべく優しくする…」
俺がそう言ってフェルパーそのそこにあてがうと彼女は目を固く閉じて手を胸の前で組んでその衝撃に備える。
「緊張しすぎだ…あんまり緊張して体に力を入れると、余計痛いぞ」
「そんなの無理だ…そこまで言うなら…バハムーンが何も考えられなくしてくれ…」
思わずドキリとさせるフェルパーの物言いに俺は今すぐつき込んでしまいたい衝動を必死で抑える。
「分かった…それじゃあ、もう一度愛撫をするぞ…」
「あの気持ち良いのしてくれるのか…?…うれしい…してくれ…何にも考えられないようにしてくれ」
俺の言葉にフェルパーが何度も首を振る。
241 :
マルメンライト:2011/05/06(金) 00:36:34.71 ID:uxs54v6l
ボリュームのある胸を揉み、指で彼女の中をほぐすように浅くかき回す。
なんどもなんどもそれを繰り返すうちに自然と彼女の体から力が抜けている。
「バハムーン、ヘンだ…変なんだ…気持ち良いのに…だんだんなんか切なくて…お腹の中が熱くて…頭が変になりそうなんだ…」
ぽろぽろと目から涙をこぼしながらフェルパーが腰をくねらせる。
「これ…俺がお前を欲しがってるんだろ?俺の女がお前を欲しがってるんだろ?」
初めての感覚に戸惑いながらフェルパーが俺を見つめる。
「ああ…俺もお前が欲しい」
そう言って唇を重ねると今度はフェルパーの方から俺のことを求めてくる。
「バハムーン…来てくれ…俺を…いや…私を…女に…お前の女に…」
「ああ…いくぞ…フェルパー」
たび重なる愛撫で完全にほぐれたそこに自分をあてがう、俺のモノは今にも破裂してしまいそうなほど高ぶっている。
「はやく…はやく…」
待ち望む彼女の腰を掴んでゆっくり腰をつきいれる。
ギチギチと痛いほどのそれが俺を締め付け侵入を拒むかのように押し返してくる。
「か…はっ!」
苦しそうにフェルパーが眉をひそめた。
―あまり長引かせない方がよさそうだな―
「すまん!フェルパー!」
「へ?う…いったぁぁぁぁ!裂ける!裂けちゃう!!」
彼女に一言謝って、彼女を抱き上げるようにしながら彼女の処女を一気に引き裂いた。
242 :
マルメンライト:2011/05/06(金) 00:38:50.17 ID:uxs54v6l
苦痛に彼女の肩が震え、ボロボロと涙がこぼれ落ちる。
少し罪悪感を覚えながら俺は彼女の頭を撫でた。
「バハムーン…ばかやろぉ…死ぬかとおもったじゃねぇか…」
涙を手で拭いながらフェルパーが笑う。
「すまんな…あんまり苦しませても悪いかと思って一気に突き破ってしまったんだ」
「…私…お前を受け入れられたんだよな?」
心配そうにそう告げる彼女に笑いかけ、繋がった場所を見せてやる。
俺と彼女の腰はぴったりと合わさり、彼女の中に埋まった俺を伝って、彼女が初めてを失った証が流れていた。
「う…ふ…」
それを見た彼女の眼に涙があふれる。
「私…ずっと…私みたいな女を好きになってくれる奴なんて…ぜったい…絶対いないって、そんな奴いるはず無いって…」
口調こそ男のようであったがうれしそうにそう泣き続ける彼女はただの少女だった。
「待たせて…すまなかった」
俺の言葉に彼女が笑う。
「いいんだ…私…今すごいうれしい…お前の女に…お前に初めてを捧げられて…」
感極まったようにフェルパーが泣く。
「大好き…大好きだバハムーン…私、こんな口調でガサツで…それでも…」
243 :
マルメンライト:2011/05/06(金) 00:40:24.25 ID:uxs54v6l
「それでも…お前と一緒にいたい」
彼に貫かれて、ついに自分の中の女を真に俺は理解した。
「俺もだ、俺と共に、来てくれ…フェルパー」
彼の言葉に何度もうなづく。
痛いはずなのに彼に貫かれたその痛みがどこか心地いい。
「動いて良いぜ…バハムーン…私の中を…私をお前で染めてほしい」
彼の体を抱きしめて耳元で彼に囁く。
「分かった…痛かったら言えよ」
そう言ってバハムーンが動き出す。
内臓が引きずりだされるような感覚と自分の中が隙間なく埋まる感触に“私”は震える。
「うぁぁ…」
「痛いかフェルパー?」
心配そうに私を見た彼に首をブンブン横に振ってこたえる。
「気持ち良いんだ…バハムーン、お前が私の中を掻き混ぜるのが…お前に自分が蹂躙されるのが…」
ゾクゾクと背中を快感が駆けあがって脳を焼いていく。
今まで感じた事の無い体を貫かれるような感覚に体がしびれていく。
熱くて固くて太い串のようなものが私を事を串刺しにする。
入口まで引き抜かれたそれが今度は私を貫くように深く埋まる。
一番深い場所がたたかれるたびに快感で体が打ち震える。
満たされたと思うとぽっかりと穴があいたように彼が引き抜かれまたその空白を埋めるように彼のモノが私を蹂躙する。
―うぁぁ…これが…抱かれるってことなのか…ヤバい…これは…クセになる…―
今まで一番好きだった戦いなんか比べモノにならない脳が焼けそうな感覚と腰が溶けてしまうような感覚が気持ち良い。
自分が女であること彼が男であることを感じさせられる。
今までの自分が壊れてしまいそうな不安と壊されてしまいたい期待がぶつかり合う。
244 :
マルメンライト:2011/05/06(金) 00:41:38.32 ID:uxs54v6l
「今までの私を…壊してくれ…バハムーン」
ついに不安が壊れ、期待がただ一つそこに残った。
壊されたい…彼に壊されて彼のモノにされてしまいたい。
「わかった…かなり激しくいくぞ…」
言葉と共に彼の腰が加速する。
まるで私を貫こうとするような激しい突き上げに体の感覚は勝手に暴走し始めた。
頭の中で極彩色の火花が散る。
「ふぅぅ…壊れる…壊れちゃう…」
自分の体の感覚があいまいになって彼と混ざり合うように溶けていく。
何かが集まって私の中で破裂しそうに膨れ上がっていく。
「うぁぁ…バハムーン激しい…イク…私…このまま…」
ゴリゴリと彼のモノが私の中を削っていく。
「俺も…このまま…」
ぶるぶると彼も何かをこらえながら私の中を掻き混ぜる。
「出して…私を…私の中を…バハムーンで…」
最後まで私がその言葉を告げる事は無かった。
こつんと彼のモノが一番深い場所、子宮をたたいた瞬間に、いままで溜まっていたその感覚がはじける。
「きゃぁぁぁぁ!!」
体がバラバラになってしまいそうな激しい快感で私は女らしい悲鳴を上げ背中をそりかえらせた。
「くぅぅ!」
強し眼あげた彼のモノが私の中で震え、温かい何かが私の中で放たれる。
「くはぁぁ…でてる…バハムーンが…お腹の中に…」
火傷しそうなその熱さを敏感になった感覚で受け止めながら、自分を抱いた男の胸に倒れ込むと、すぐに心地よい睡魔が襲ってくる。
―セックスって…結構疲れるんだな…―
お腹の中で彼の熱がまだのこっているのを感じながら私はそのまま睡魔に身をゆだね眠りへと落ちていった。
245 :
マルメンライト:2011/05/06(金) 00:43:21.10 ID:uxs54v6l
目を覚ますと俺の目の前に彼女の顔があった。
「…ん?」
無防備な寝顔と一糸まとわぬ彼女の姿に昨日何があったかを思い出す。
―ふむ…あのまま眠ってしまったのか―
いくら思い続けたからと言って、初めての彼女に少し激しくし過ぎてしまったかもしれない。
ベッドのシーツには俺が彼女の初めての男になった証が点々と散っている。
「…喉が渇いたな」
ベッドから体を起こし脱ぎ棄てた下着を拾い上げ、それだけを身につけ冷蔵庫から取り出した飲み物を口にする。
「ん…どこだここ?」
不意に彼女が起き上がり辺りをきょろきょろと見回し俺を見つける。
豊満な胸が朝日に当たってキラキラ輝いている。
「おはようフェルパー」
「おう…おはようバハムーン何で私ここにいんだ?」
「…いや、昨日何があったか覚えてないのか」
「…昨日?」
その瞬間、全てを思い出したように顔を真っ赤に染め、彼女はあわてて布団で自分の体を覆った。
「あ…私…昨日…バハムーンに抱かれて…あんな…」
いつの間にか、一人称が“俺”から“私”に変っていた。
「その…なんだ…どうだ体の調子は?」
飲み物をもう一つ持ち、ベッドに座って彼女にそれを手渡す。
「…まだ…バハムーンが中に入ってる感じがある…しかもちょっと痛い…」
恥ずかしそうに頬を染めながらフェルパーは俺の渡した飲み物を口にする。
「ん…悪いバハムーン煙草取ってくれ、多分制服のポケットの中だ」
「ああ、分かった」
そう言って風呂場の籠にまとめてあった彼女の制服のポケットから煙草とライターを探し出し彼女に渡す。
「ん、ありがとな…」
小さくそう言ってフェルパーは煙草に火をつけた。
何とも言えない沈黙が辺りに満ちる。
246 :
マルメンライト:2011/05/06(金) 00:44:26.89 ID:uxs54v6l
「…昨日は…気持ちよかった、ありがとうフェルパー」
何かを言おうと考え続け、俺は取り合えずそれを口にする。
その瞬間フェルパーが激しくむせた。
「だ、大丈夫か?」
彼女の背中を撫でてやると彼女が少し目に涙を浮かべながら笑う。
「わ、わりぃ…なんか恥ずかしくってよ…」
フェルパーが煙草の煙を吐き出しながら笑う。
「す、すまない…」
思わず彼女に謝ると、彼女が楽しそうにわらった。
「謝んな…それに…」
ポリポリと恥ずかしそうに頬を掻きながらフェルパーが笑う。
「私も…その…気持ちよかった…ありがとうバハムーン、見下されるのは嫌いだが…お前に組み敷かれんのは好きになった、またしようぜ、もっとお前に染め上げられたい」
「そうか…喜んでもらえてよかった…そう言えば、一人称変わったな」
照れ隠しにそう笑うと彼女がああ、と呟いた。
「お前の女になったからな、口調はすぐには変えられねぇが、とりあえず、少しくらい女らしくしてみたくなった、にあわねぇか?」
くすくすと自重気味に笑う彼女を俺はそっと抱きしめる。
「いや?俺のために変ろうとしてくれているんだ…俺がそれを否定するわけない…」
俺の言葉に嬉しそうにフェルパーが目をつぶる。
「お、私は…お前と一緒に冒険者を続けたい…お前のそばで共に冒険者として成長していきたい…」
彼女のその告白を俺は彼女を抱きしめ、うなづく。
「私を…お前のチームに入れてくれ…バハムーン、でもって私をもっと女にしてくれ」
「当然だ…」
俺の言葉にフェルパーは恥ずかしそうに笑う。
247 :
マルメンライト:2011/05/06(金) 00:45:42.09 ID:uxs54v6l
「ああ…よろしく頼むぜバハムーン、彼氏らしくリードしてくれや、もし子供ができてもお前の子供なら産んでみたい」
そう言うと彼女はホントにうれしそうに頬を緩ませ笑う。
可愛らしい彼女の姿に股間がイケナイことになった。
「…オイ…バハムーン…ケツに何か固いのが当たるんだが…」
ポリポリと頬を掻きながらフェルパーが笑う。
「…うむ、その…なんだ、お前がずいぶん可愛らしいことを言うもんだからな…」
「…いいぜ」
「何?」
俺の言葉にフェルパーが恥ずかしそうに頬を染めていう。
「…こんな朝っぱらからすんのはおかしいかもしれないがな…お前がしたいんなら…そのデカイの…私の体で処理して良い…辛いだろ?」
上目づかいで見つめるフェルパーに理性が吹き飛ぶ。
「すまんフェルパー…」
彼女の腰を掴んで一気に突き入れる。
「にゃぁぁぁ!?ばか!濡らす前に突っ込むな!!裂ける裂ける!!…へ?うにゃぁ!?ちが!そうじゃない!にゃぁぁ!!」
あまり濡れていない彼女の膣に自分でかきまぜながら同時に秘所への愛撫を開始する。
すぐにソコが湿り気を帯び腰の動きがスムーズになる。
「にゃぁぁ…やめろぉ…きもちよくなるぅ…」
「ずいぶんと敏感なんだなフェルパー…」
胸を揉み、腰を振りながら彼女の耳元で囁く。
「お前が…お前がぁ…太いのが…カタイのがぁ…私ん中がぐちゃぐちゃに…くはぁぁ…」
ぶるぶると肩を震わせながら彼女が呟く。
「バハムーン…ちょうだい…もっと…もっと私を…」
彼女の首筋に何度もキスをし、赤い痕を刻んでいく、白い肌に赤い花が咲いたみたいで面白い。
「ああフェルパー…最高だ…お前の中は最高に気持ち良い…」
「うれっ…しい…お前も…お前のも…おっきくて…固くて…気持ち良い…気持ち良いよバハムーン…」
248 :
マルメンライト:2011/05/06(金) 00:47:25.96 ID:uxs54v6l
不意に思いついて彼女の体を抱き起こす。
体重が一点に集中して俺のモノが更に深く沈んだ。
「ひぃ!?うあぁぁ…!バハムーンやめろ…これ!…気持ち良すぎて変になる…!」
自分の奥深くを抉られる感触にフェルパーが震えた。
「フェルパーは奥の方が感じるみたいだな…ならばもっと深くいってみるか」
彼女を貫いたまま俺はそっと立ち上がる。
「待って!待ってバハムーン…そんな奥…奥されたら…」
あわてて俺の首に手をまわしてフェルパーが俺を引き抜こうとする。
抜ける寸前まで引き抜かれたその腰を掴むと、それを引き寄せ同時に一気に腰を突き込んだ。
パンとくっついた腰が大きな音を立てた。
「くひぃぃ!!破れる…私の中破れちゃう…」
「気持ちよくないか?」
耳元で囁くとフェルパーは顔を真っ赤にしながら俺にしっかり抱きつく。
「…すごくいい…こんなの初めて…こんな気持ち良いの…耐えられないよ…バハムーンなしじゃ生きられなくなっちゃうよ…」
目に涙を浮かべ、歯をカタカタ震わせながらフェルパーが囁く。
「バハムーン…今さっきのもっとして…私が破れちゃうぐらい…壊れちゃうぐらい激しく…」
「分かった…」
言われるままに再び彼女の体を強く突き上げる。
「うはぁぁ!これ…すご…無理…むりぃ…すぐ…すぐイッちゃ…」
俺の目の前で彼女の豊満な胸が震える。
それにかぶりつきながら彼女の中を激しく責め立てる。
パンパンと腰がぶつかり合う音と彼女の嬌声が部屋に響く。
「ふはっ…壊れる…私が壊れる…壊れちゃうくらい気持ち良い…気持ち良くて頭…馬鹿になる…」
「俺も…無理だ…」
強い締め付けに耐えきれず、俺は彼女の中にそのまま欲望を放出する。
「にゃぁぁぁ…!」
同時に彼女の体もびくびく震え、背中をそらせた。
はぁはぁと荒い呼吸をしながら彼女にキスをすると照れくさそうに彼女が笑った。
「大好き…バハムーン」
「俺もだフェルパー」
繋がった場所からは入りきらなかった俺の精液がコポリと溢れてきていた。
249 :
マルメンライト:2011/05/06(金) 00:49:24.05 ID:uxs54v6l
行為のあとの気だるい感覚に包まれながら私は煙草に火をつけた。
―なんか、一日で思いっきり女にされたな…―
肺を満たす煙草の煙を静かに吐き出す。
バハムーンに抱かれて女になっても煙草の味は変わらない。
―ま、変わるのは私だからな―
シーツに残った赤い染みをみながらそう思う。
ロストバージンは確かに痛かったが、今朝はほとんど濡れていない状態で突っ込まれたのに、それほど痛みを感じなかった、それどころか、立ちあがって思いっきり貫かれた時はあまりの快感に頭が狂うかと思ってしまった。
―実は私ってマゾなのか?いや違うよな…別段痛いのは気持ちよくもなんともないし―
にしても…貫かれるのがあんなに気持ち良いとは思わなかった。
―次は私が上になってみたらもっと良いのかもしれない…―
軽く想像してみただけで体がゾクゾクと震えてしまう。
「どうしたフェルパー?」
バハムーンがそんな私に気づいて首をかしげる。
「…なんでもない、ただ女で良かったなって思ってただけだ」
自分を突きあげるたくましい彼の体の感触を思い出す。
「俺のモノが気に入ったか?」
ふざけるように笑う彼に煙草の煙を吹きかける。
「バカ野郎…あんだけされて…気にいらないわけ無いだろ…忘れられるか…」
昨日までウザいやつ程度にしか思っていなかったはずの彼が自分の心をたった一日で多くしめてしまっている。
―完全に惚れちまった…―
きっともう自分は彼なしでは生きられないのだとそう思う。
狂犬はどこかに行ってしまった。
狂犬は自分のことしか考えない、戦うこと以外は考えない。
自分の生きたいように生き、死にたいように死ぬのだから、ゆえに彼のことを考えている私、彼の女となって彼と添い遂げたいと思う私はもはや狂犬とは言えない。
250 :
マルメンライト:2011/05/06(金) 00:50:31.72 ID:uxs54v6l
狂犬で無くなったのなら自分は一体何なのだろう。
「なぁバハムーン…私って…なんなんだ?」
ふと気になって彼にそう言うと彼は何を馬鹿なことを言っているのかというような目で私を見た。
「決まっている、俺の彼女だ」
当然のように笑うバハムーンを見ながら、私はこいつに惚れてよかったと、そう思う。
―あばよ…狂犬、私はこいつの女としてこれからずっと生きてくわ…―
古い今までの自分に、私は心の中で別れを告げた。
251 :
マルメンライト:2011/05/06(金) 00:53:09.71 ID:uxs54v6l
食堂に集まったチームのメンバーを見渡して俺は彼女を呼ぶ。
「というわけで、彼女が我々のチームの6人目だ、皆よろしく頼む」
俺の言葉に皆が拍手をして彼女を迎えた。
「あ〜、なんて自己紹介すればいいかわかんねぇな…まぁいいや、俺…じゃなかった私はフェルパー、学科はビーストと格闘家、んで恥ずかしながらこいつの彼女だ…狂犬って呼ばれてたこともあるからもしかしたら迷惑かけるかもしれないが…これからよろしく頼む」
少し恥ずかしそうにそう言ったフェルパーを他のメンバーが祝福する。
「よろしく…フェルパー、伝説はいろいろ聞いている、敬意を込めて君のことは獣殿と呼ばせていただくとしよう、私はフェアリー、学科は賢者とトリックスターだ、主に参謀を担当している何かあったら気軽に命じてくれたまえ、配役と脚本はお手の物だ」
おとぎ話の魔術師のようなローブを纏ったフェアリーがそう言って恭しく彼女に礼をする。
「よろしくお願いしますフェルパーさん、私はセレスティア…学科はシスターと堕天使です、パーティの癒しキャラを狙っております、ちなみにバイですよろしくお願いしますね?」
ちょっとした問題発言を交えながらくすくすと笑ってセレスティアも優雅に礼をする。
「んじゃ、次はボクだね、ボクはクラッズ、学科は盗賊と海賊、魔法はからっきしだけどその分剣や銃には自信がある、君とリーダーと同じ前衛だからよろしく頼むよフェルパー」
クラッズは彼女にそう言って笑う。
「で、私はディアボロス、学科は人形遣いと闇術士、主に担当は魔法、貴方の狂犬としての伝説はいろいろ聞いてる、チームに入ってくれてうれしい、よろしくねフェルパー」
ディアボロスがそう言って締めくくると最後にバハムーンがフェルパーの前に立って笑う。
252 :
マルメンライト:2011/05/06(金) 00:55:15.00 ID:uxs54v6l
「そしてフェルパー、俺がチームのリーダーのバハムーンだ、学科はセイントと竜騎士、もっとも申請が通れば今度はヒーロー学科に転科するがとりあえず今はそんな感じだ、ん…?」
何かに気付いたようにバハムーンが頬を掻く、視線はフェルパーに向いていた。
「ん?どうした?バハムーン私になんかついてるか?これでも朝シャワーを浴びたんだがな、朝いろいろあって汗かいてたし」
きょろきょろとフェルパーは自分の服を見渡す。
「ついてはいるが、獣殿、それが付いているのは君の首筋だよ…やれやれ、リーダー殿、せめて彼女のことを思うなら服に隠れる場所につけるべきだね」
「…オイ、セレスティア、悪いが鏡もってねぇか?」
フェアリーの言葉にフェルパーはあることに気づきセレスティアにそう告げる。
「はい、ありますよ、どうぞフェルパーさん、なんならファンデーションお貸ししますけどいります?」
くすくすと笑う少女を見ながらフェルパーは受け取った鏡で自分の首筋を確認する。
「あーあ、言わなければ分かんないのに…何でフェアリーは言っちゃうかね」
「まぁ、言わないでこのまま皆にひそひそ言われるのは、フェルパーもちょっと嫌でしょ?」
クラッズとディアボロスの言葉にフェルパーは答えない、ふるふると恥ずかしそうに顔を染め、バハムーンを睨みつけた。
「オイ、彼氏様、これはどういうことだ」
鏡に映った自分の首筋にまるで刺青のように無数に刻まれた赤い痕に気づいてフェルパーは体を震わせる。
「うむ、すまんフェルパー今まですっかり忘れていたんだ、今朝した時そう言えば夢中になってかなりの量つけたことをな」
「てめぇバハムーン!私の首筋キスマークだらけじゃねぇか!!何してくれてんだ馬鹿野郎!!どおりで朝ここに来る前にあったカーチャやシュピールに笑われたわけだ!!!」
セレスティアに鏡を返しながらフェルパーが拳を握る。
「悪気はない!ただあまりにも今朝のお前が可愛らしくて夢中になったらつけすぎただけだ!!」
「でっけぇ声でさけぶんじゃねぇ!私がお前に抱かれたこと全員にバレるだろうが、つか今朝とか言うな思い出すだろ、実はまだいてぇんだからな!!」
彼女の言葉に食堂がシンと静まり返る。
253 :
マルメンライト:2011/05/06(金) 00:58:13.26 ID:uxs54v6l
「ん?あれ…どうした?」
フェルパーが突然静かになった食堂を見渡す。
「あ〜獣殿、君は今、公然と“食堂全てに響く声”で昨夜と今朝、何があったか叫んだのだが…」
フェアリーの言葉にフェルパーの顔が朱に染まる。
「う…あ…私今…抱かれたって…今朝を思い出すって…」
そんな彼女にとどめを刺すようにセレスティアが彼女の肩をたたく。
「昨夜と今朝はお楽しみでしたね…なんちゃって」
きゃっ、と頬を染めてセレスティアが笑う、笑われた当人はバハムーンを睨み叫んだ。
「バハムーンの馬鹿!デカチン!おっぱい星人!!」
「いや、フェルパー、俺のサイズはお前も喜んでたじゃないか!!」
「うるせぇ!それとこれとは話が別だ!デカすぎてまだ痛ぇんだよ!!」
吐き捨てるようにそう言って泣きながら走り去るフェルパーをバハムーンがあわてて追いかける。
254 :
マルメンライト:2011/05/06(金) 00:59:49.45 ID:uxs54v6l
「楽しくなりそうですね、私の癒し系キャラの座は奪われそうですが」
「ああ、本当にね…それとセレスティア…君の癒し系キャラの座は変わらんよ…なぜなら私の中のその座には君が常に君臨している、君こそが私にとっての癒しそのものだ…」
諸悪の根源とも言うべき二人はくすくすと笑いながらその二人の去ったドアを見つめる。
「いや〜狂犬って呼ばれるくらいだからとんでも無い子を想像してたけど以外に普通の恥ずかしがり屋だね、うまくやっていけそう」
「…そうだね、なんか保護欲をかきたてる、多分、彼に求められたらなんでもしちゃって開発されて余計に夢中になるタイプ、リーダーと相性は良いかもね、彼、なんでも極めるタイプだし」
クラッズとディアボロスは走り去った二人を見ながら笑う。
そんな彼らのもとにもう二人の共犯者たるシュピールとカーチャがやってきて座った。
「いやぁ…みなさんみました?なんて言うか、フェルパーちゃんものすごく目に毒でしたよ、首のあたりびっしり…」
「首筋、キスマークだらけだもんね、しかも一人称俺から私になってるし、あの子、きっとコスプレとか求められたら恥ずかしながらついついするタイプよ」
「あ〜、確かにフェルパーさんメイド服とか着物であ〜れ〜とか求められたらするタイプですね」
「何はともあれリーダー殿と獣殿がうまくいったようで私は満足だよ、今回は実に満足のいく出来だった。」
クスクスと笑う教師2人と悪そのものな2人が笑う。
やれやれと肩をすくめながら残りの2人は新たなるメンバーの増えたチームがどうなるかちょっとした期待に胸を躍らせるのだった。
255 :
マルメンライト:2011/05/06(金) 01:08:37.63 ID:uxs54v6l
以上で投下完了でございます。
ホントに毎度毎度連投すみません。
というわけで今回からまた別チームのお話です。
(チーム名未定)
さて…今回のヒロインはなんか…すみませんあんなキャラで。
最終的には多少女の子らしくなったと思いますのでお許しを…
それでは今回も拙い文で失礼しました。
楽しんでいただけたら幸いです。
GJ。
俺っ子も嫌いじゃないってか大好物。
ちょっと気になったけど、セリフの中で「。」を使っていないのはなんでだろう。
あと、長いセリフは適度に改行した方が読みやすそう。
職人様にダメ出しって訳じゃないけど、その辺直せばもっとよくなるんじゃないかな。
このシリーズも今後が楽しみ。
257 :
名無しさん@ピンキー:2011/05/14(土) 00:19:05.55 ID:DcS9pCRE
保守
なんか長編と化しつつある感じがするけど、前回に引き続きのパーティから投下
今回は最初と違ってドワ子×セレ子の百合モノ
注意としては、やや長めで、5レス目後半から7レス目前半にかけ、理不尽な暴力描写あり
それとお尻ネタありで、舐めるなどの描写があるので苦手な人は注意
大丈夫だという方はどうぞ
実践主義の冒険者養成学校とはいえ、当然授業が実技ばかりで構成されているわけではない。魔法を使うにはその基礎を理解する必要が
あり、罠の種類に関しても同様である。武器の扱いにしても、まずは座学によって基本的な扱いを学び、その上で実技を行い、その知識を
確かなものとする必要があるのだ。そんなわけで、この学校でも筆記試験があり、勉強嫌いの学生はその時期になると大変な思いを
することになる。
そんな地獄の中間試験も終わり、生徒達の注目は、先の試験の成績上位者が貼り出された表に集まっていた。
「今回の聖術試験、異様に難しかったよな」
「平均50以下だっけ?つーか、『聖術を使用するにあたっての精神構築と詠唱技術の関係』とか、誰が答えられるんだよ」
「でも、あんな人もいるみたいだよ、ほら…」
軒並み低い点数の上位者達の中で、三桁の点数が二つ。そこには、セレスティアとバハムーンの名前が書かれていた。
「お前もか、まあ当然だな」
「………」
上位にある名前を、セレスティアは黙って見つめている。
「君達、よくあの試験で満点なんか……僕だって必死に勉強して、あの点数だったのにさ」
そう言うフェアリーも、78点という今回ではかなり高めの点数を取り、6位の成績となっていた。
「勉強と理解が足りなかっただけの話だろう」
「きついね、君は…」
「俺としてはそれより、こいつの方が気になる」
バハムーンはトントンと、下の方にある名前を指で叩いた。それは上から50位という、成績上位者の中では最下位に位置する位なのだが、
そこにははっきりとフェルパーの名前が書かれていた。
「フェルパー……勉強できる方なんだね」
「睡眠学習、という奴か、これは?」
そんな話をする三人を、他の生徒はやや距離を置いた感じで見つめていた。
「あ〜、トップってあの人かあ」
「なんかさ、あの人達だと普通って感じするよねー」
「ねー。あの人達じゃしょうがないかー」
「お、お前17位じゃん!すげえなー!」
「だろ!?今回はちょっと頑張ったからなー、ははは!」
周囲の会話を背に、セレスティアは黙って成績表を見つめ、やがて不意に踵を返した。立ち去る彼女に目をくれる者はおらず、
まるで彼女など最初からいなかったかのように、喧騒はずっと変わることがなかった。
「うう〜、また補習だよぉ〜…」
「うわぁー!俺も補習だぁー!なんでフェルパーはあんな点取ってるんだよぉー!」
「くぅ〜…」
その日の学食は、非常に騒がしかった。ひどく沈んだ顔のドワーフに、悲痛な表情ながらも落ち込むどころか、いつも以上に騒がしい
ヒューマン。その騒がしさの中、フェルパーは黙々と食事を進め、食べ終わると早々に昼寝を開始している。
「君達……何、赤点?」
「うぅ……23点…」
「俺なんか14点だもんねー!へーんだっ!くそぉー!あんなのわかるわけねえだろぉー!」
「ま、まあヒューマンはともかく、ドワーフ、君、聖術は得意中の得意じゃないのかい?今回難しかったけど、聖術の使用法の基礎とか、
赤点回避用のサービス問題多かっただろ?」
「でも、『神様に怪我を治してくれるようにお祈りする』って書いたら、三角だったよぉ?」
「ああ……なるほどね」
ドワーフは理論で魔法を使っているわけではなく、異常とも言える信仰心によって直感的に魔法を使っているだけなのだ。なので、
彼女にとって魔法を使うということは、神に祈るということと同義なのだろう。
「まったくお前等は……少しは我流だけでなく、体系的に物事を学習しようとは思わねえのか」
「うるっせえー!そう言うお前だって、フェアリーとかドワーフより聖術苦手だろー!?何点だったんだよ!?」
「満点だが」
「え……嘘だろー!?お前のヒールなんか、あんまり回復しねえじゃねえかよー!?」
「聖術向きではないからな。だがそれでも、知識として理解して、体系的に学習すれば、あれだけ使えるということだ」
「何言ってんだかよくわかんねえよ!わかるように言えよなー!」
「聖術は苦手だが、勉強すればあれぐらいはできる。お前のように勉強もしねえ、魔法自体苦手という奴では真似もできねえだろう」
「くっそー!好き勝手言いやがってー!絶対絶対、ぜぇ〜ったい格闘では勝ってやるからなー!」
いつもの調子で喧嘩を始めた二人をよそに、ドワーフはいつの間にかいたセレスティアに話しかける。
「セレスティアちゃん。セレスティアちゃんは何点だったぁ?」
「……100」
「あ、満点取れたんだぁー。セレスティアちゃん、すごいねぇ」
まるで自分のことのように、嬉しげに目を細めるドワーフ。そんな彼女をしばらく見つめ、セレスティアは黙って目を逸らした。
補習が確定したドワーフとヒューマンがあまりに落ち込んでいたため、フェアリーは一度別の学校でも行き、そこの授業を
受けてみようと提案した。プリシアナに居続けるよりは、多少なりとも気分転換になり、また何かしら身になる授業が受けられるかも
しれないという、彼なりの気遣いである。
結果、行先はドラッケン学園に決まった。というのも、ドワーフは以前ここでシスター学科に転科していたからだ。最初、
彼女は光術師だったのだが、パーティを組んで比較的すぐにこの学園へ来た時、即座に転科手続きを済ませてしまっていた。
また、バハムーンもここでドクター学科やパティシエ学科を齧っており、何より文化の違いすぎるタカチホよりは、ここの方が
過ごしやすいだろうという判断もあってのことだった。
彼等の入学前に、大陸全土を巻き込む大きな事件があり、今では中央の大陸にモーディアル学園という学校もできている。そこにも
興味はあったのだが、そこに行くには相応の実力が必要であり、彼等にはまだ少し荷が重い。三つの学校のいずれかを卒業し、あるいは
卒業見込みのある者の幾人かはモーディアルに通うようになっており、その者達は周囲からの畏敬と羨望の眼差しで見られている。
彼等もいつかはそうなりたいと思うが、焦るわけにはいかない。とにかく今は、目前に迫る補習と、それまでの気晴らしと勉強が
大切である。
「それでですねー、宝箱の罠は大きく分けて、物理的な罠と魔法的な罠の二種類があるんですよー」
彼等は今、揃って盗術の授業を受けていた。セレスティアが堕天使学科であることもあり、また普段誰も受けない授業なので、珍しいので
受けてみようという話になったのだ。
リコリス先生と違い、正真正銘の子供先生であるシュピール先生は、その小さな体をいっぱいに使って授業を進めている。
「たとえばですねー、石つぶてなんかは物理で、悪魔の呪いなんかが魔法なんですよー。それで、物理的な罠は、蓋を開けるときに
引っかかるような感じがあるんですねー。それでですねー、具体的にどういう感じかというとー…」
盗術の授業を終え、一行は揃って昼食を食べていた。しかし、バハムーンとフェルパー以外の表情は暗い。もっとも、セレスティアは
明るい表情を浮かべていることはほとんどないが。
「……ヒューマン、さっきの授業、わかったかい…?」
「わかるわけねえだろー……何言ってんだか全然…」
「実技も難しかったよねぇ。全然ダメだったぁ」
「確かにあれは、ちょっと難しかったな」
珍しく同調するバハムーンだが、その彼にヒューマンが食ってかかった。
「あれのどこがちょっとなんだよー!?お前、あの授業内容全部言えるのかよー!?わかったのかよー!?」
「当たり前だ。現に俺は、三回とも解除成功しただろう?」
「じゃあ覚えてんなら言ってみろよー!適当言うなよー!?」
やれやれといった風に溜め息をつくと、バハムーンは静かに口を開いた。
「石つぶての場合はむぅ〜っとした感じがあって、ガスの時はくーっと、きゅーっとした感じで、ボムの場合はぐぅぅっと…」
「……ぐ〜っと」
ぼそりと、セレスティアが呟いた。
「ん、そうだったか。俺はどっちかというと、ぐぅぅっとした感じと解釈したんだが……言われてみれば、ぐ〜っとした、だったか」
「むしろ、石つぶてはむーっとした感じ。ちょっと掴むのに苦労した」
「そうか?石つぶては聞いたままだったな、俺は」
会話を始めてしまった二人を、他の仲間は呆然と見つめている。
「……あの授業内容を覚えて、しかも理解できるって…」
「くそ〜、悔しいけどほんとに覚えてやがるなあいつー……なんで覚えられるんだよー!?」
「あの二人はもう、僕達とは頭の作り違うんだよ」
「二人とも、すごいねぇ」
ドワーフの言葉に、セレスティアが振り向く。その目からは、何の感情も読み取れない。
「……どうしたのぉ?」
思わずそう尋ねるが、バハムーンがそれを遮るかのように口を開いた。
「おい、セレスティア。罠の解除はともかく、奇襲の方はどうなんだ?隠れ方も習っただろう」
「……わたくしはフェアリーじゃない」
セレスティアはドワーフから視線を外しつつ、ぼそりと呟いた。
「ああ……ついでに幼女でもないな。あの教師の技術は、使えそうにないか」
残っていたオイルサーモンを食べようとし、いつの間にかそれが皿から消え、代わりにフェルパーが何か咀嚼しているのを確認すると、
バハムーンは軽く息をついた。
「俺のサーモン……まあとにかく、ここには堕天使の教師もいるんだ。そっちの授業も受けてみてはどうだ」
「そうね」
あとはもう、セレスティアは口を開かなかった。その後、彼等はそれぞれの学科の授業を受け、飛竜召喚札を使ってその日のうちに
プリシアナへと帰って行った。
食事や探索の時以外では、一行はそれぞれ自由に過ごしていることが多い。
フェアリーは探索の物資調達をしていることが多く、ヒューマンは格闘訓練に余念がない。バハムーンはフェルパーの面倒を見ているか、
あるいはヒューマンの組み手に付き合わされ、ドワーフはバハムーンに負けるヒューマンの治療か、そうでなければ大聖堂や寮の自室で
聖書を読んでいたり、祈りを捧げていることが多い。ただし、彼女に聖書の内容を聞いても『難しくてよくわからない』という、
シスターにあるまじき答えが返ってくるのだが。
そんな中、セレスティアはドワーフと一緒にいる時以外、何をしているのかほとんどわからない。一人でいるため、行動を把握できないと
いうこともあるが、それ以上に彼女の行動自体がまったく読めないのだ。フェルパーとはまた違った気まぐれで行動し、その傾向も
掴めない。図書館で本を読んでいたかと思えば、数分後には寮の屋上で羽を伸ばしていたり、かと思うとカフェでケーキを食べていたり、
とかく好き勝手に動き回る。
この時、彼女は校舎の中をぶらぶらと歩き回っていた。試験が終わった直後ということもあり、まだ掲示板に注目する生徒も多く、
校舎内にいる生徒の会話もそれに関する話題が多い。
それらに全く興味ないといった風に歩いていたセレスティアだが、ある一団の声に、ふとその足を止めた。
「今回の聖術難しすぎだよー!あれで100点とかおかしいよー!」
「あれはもう、平均越えで満足したよ俺は。勉強の成果は十分に出た」
「別に満点じゃなくたって、問題はないですしね。取れる人だけ取ればいいんです、あれは」
表情一つ変えず、セレスティアはその言葉を聞いていた。やがて、何事もなかったかのように再び校舎内を歩きだす。
あちこち歩き回り、結局夕飯の時間まで歩き回った後、学食へと向かう。どうやら仲間達はだいぶ前に来ていたようで、ドワーフと
ヒューマンが机に突っ伏し、その隣でフェアリーが頭を抱えている。
「あ〜う〜……覚えきれないよぉ〜…」
「詠唱とか……念じるとか……死にそうだー…」
「基礎中の基礎なんだけどな、これ……聖術に限らない、魔法の基礎だから……頼むよ、ほんと…」
「とりあえず、ごは……飯を食ってからにすればどうだ?」
「今、ごはんって言いかけただろ?」
「ああ、言いかけた。空きっ腹で勉強しても、頭に入らねえだろう」
バハムーンはフライドチキンを摘んでおり、フェルパーは我関せずといった態度で黙々と食事をしている。
セレスティアは特に声もかけず、黙ってドワーフの隣に座った。
「あ、セレスティアちゃん。ご飯一緒に食べよぉ〜」
「……ええ」
「今ねぇ、フェアリー君に勉強教えてもらってたんだけどぉ、全然わかんなかったよぉ」
言いながら、ドワーフは出しっぱなしだった白紙のノートを鞄にしまう。
「いや、ドワーフ、少しぐらいわかってくれよ…」
「セレスティアちゃん、あんなに難しいテストで百点満点だったんだよねぇ」
感心するように、ほう、と息を吐き、ドワーフはセレスティアに純真な笑みを向けた。
「やっぱり、セレスティアちゃんってすごいよねぇ」
その瞬間、セレスティアは突然、椅子を蹴って立ち上がった。
「え……え?」
驚く仲間には目もくれず、セレスティアはドワーフの腕を乱暴に掴むと、大股で歩き出した。
「セ、セレスティアちゃん何〜!?どうしたのぉ〜!?」
引きずられながらも、ドワーフは辛うじてフライドチキンを一つ取り、それを口に放り込んだ。それだけ食べられれば満足だったのか、
あとはセレスティアに腕を引かれつつ、覚束ない足取りでついていく。
「……あいつ、どうしたんだー?」
「さあ…?」
わけがわからず、呆然としているヒューマンとフェアリー。一方のフェルパーは変わらず食事を続けていたが、バハムーンはその顔に
不安げな表情を浮かべていた。
「危ないか……いや、でもドワーフなら……あいつなら、あの猫女も何とか……信じるしかないな」
「え、猫女?」
「頼むぞ、ドワーフ」
珍しく切迫した声で、バハムーンはそう呟いた。
ドワーフを強引に引きずりながら、セレスティアは自分の部屋へと戻った。そしてドアを開けるなり、ドワーフを部屋の中へと文字通りに
蹴り込んだ。
「きゃっ!?」
驚くドワーフに構わず、セレスティアは後ろ手に鍵を掛けると、立ち上がったドワーフをベッドへと突き飛ばす。
「な……何?セレスティアちゃん、どうしたのぉ…?」
いきなり乱暴な扱いを受け、ドワーフは怯えきった声で尋ねる。セレスティアはそんな彼女を見下ろし、口を開いた。
「わたくしは、あなたの何!?」
「え…?な、何って…?」
まったく理解できない質問に、ドワーフはそう聞き返すしかなかった。すると、セレスティアはドワーフの胸倉を掴んだ。
「正直に言いなさいよ!どうせあなたもそうなんでしょ!?口ではきれいごとばっかり吐いて、心の中じゃわたくしのことが
気に入らないんでしょう!?嫌いでたまらないんでしょう!?」
「そ、そんなこと思ってないよぅ…」
「へえ、そう?」
嘲るような口調で言うと、セレスティアは突然、ドワーフの顔を殴りつけた。
「あぐっ!?い、痛い……セレスティアちゃん、何するのぉ…?」
「これでも嫌いじゃないとか言う!?まだきれいごとを吐ける!?」
「だ、だって……私、本当にセレスティアちゃんのこと、嫌いじゃ……ぐうっ!」
鳩尾に、拳がめり込む。悲痛な呻き声をあげて体を折るドワーフの髪を掴み、セレスティアは無理矢理顔を上げさせた。
「まだ言う?これでもまだ嫌いじゃないとか言うつもり?」
頭の回転の鈍いドワーフは、なぜ自分がこんな目に遭うのか理解できなかった。また、セレスティアがなぜこんなことをするのかも、
同じく理解できなかった。そして、彼女の求める答えも、どうすれば早くこの苦痛から逃れられるかも、わからなかった。
唯一、ドワーフにわかったことは、セレスティアの目には怒りではなく、強い悲しみと恐怖が篭っていたことだった。
「うぅ……げほっ……嫌いじゃ、ない…」
「まだ…!」
「私……セレスティアちゃんのこと、好き、だよ…」
一瞬、セレスティアの顔に戸惑いが浮かんだ。しかしそれは、すぐに狂気じみた表情に塗り潰される。
「へーえ。じゃあ、わたくしが初めてもらっても文句は言わないわね?好きなんでしょ?」
「え?え?は、初めてって……やぁ!?」
スパッツに手を掛けると、セレスティアは乱暴にそれを破り捨てた。思わず股間を隠そうとした手を押さえつけ、濡れてもいない
秘裂へと指を這わせる。
「何!?何するのぉ!?セレスティアちゃん、やだ!やめてぇ!!」
ドワーフの抵抗も意に介さず、セレスティアはその中へ乱暴に指を突き入れた。
「あっ、ぐ…!」
途端に、ドワーフの動きが止まった。あまりの痛みに、悲鳴すら止められてしまう。
そんな彼女を、セレスティアは獲物をいたぶる猛獣のような目で見つめている。
「やだ……やだ…!セレスティアちゃん、そっちはぁ…!」
「好きなんでしょ?じゃあ、文句はないはずよね?」
「だめ……だめぇ…!お、お願い、それだけはぁ…!セレスティアちゃ…!」
「何か文句でも、あるわけ!?」
急に強い口調で言うと、セレスティアは二本目の指を突き入れた。途端に、ドワーフの体がビクッと震える。
「いっ…!ぐ、うぅ…!」
「居もしない神に忠誠を誓って、純潔を保って……その純潔は誰に捧げるわけ?神?馬鹿馬鹿しい!そんなのに捧げるぐらいなら、
あなたの好きなわたくしがもらう方が、よっぽど有意義だと思わない?」
「か……神様は、いるよぉ…!純潔は、守らなきゃ…」
「そう……残念ね、守りきれなくて」
残忍な笑みを浮かべ、セレスティアは揃えた指を思い切りドワーフの中へ突き入れた。膣内を限界以上に押し広げられ、同時に
ぶつりと何かが切れたような感覚が伝わった。
「いっ、痛いいいいぃぃぃ!!!!」
ドワーフの悲鳴が部屋に響く。やがて、セレスティアの指に、つぅっと一筋の血が伝い落ちた。
「あ……あ、ああぁぁ…」
それを見つめ、ドワーフはぽろぽろと涙を流す。セレスティアはゆっくりと指を引き抜き、再びドワーフの胸倉を掴んだ。
「どう?これで目が覚めた?寝言は言えなくなった?それとも、まだ嘘つき続ける?いい加減、嫌いになったでしょ?」
「うぅぅ……ぐすっ、ひっく…!」
あまりのショックに泣きながらも、ドワーフはセレスティアを見上げた。そこにはやはり、行為を楽しむセレスティアの顔はない。
表情こそ笑みを浮かべているが、その目はむしろ、怯えの色が一層濃くなっていた。
だが、もしそれがなかったとしても、ドワーフの言葉は変わらなかっただろう。
「嘘じゃ……ないよぉ…。セレスティアちゃん……ひっく……セレスティアちゃんのこと、嫌いじゃ、ない……」
セレスティアの顔から笑みが消え、代わりに恐怖と苛立ちの混じった表情が浮かぶ。
直後、セレスティアはベッドの上に立ち上がり、同時に大鎌を振り上げていた。
「ああそう!まだ言うのね!じゃあこれでも、嫌いじゃないって言える!?いい加減、嘘つくのはやめてよ!」
「嘘なんか……言わないよぅ…」
「嘘よ!じゃあ証拠を見せてよ!嘘つかないって証拠見せてよ!」
彼女の言っていることは、明らかに滅茶苦茶だった。それでも、ドワーフはそれを非難するという普通の発想が出ないほど頭の回転が鈍く、
それを受け入れてしまうほどに純真だった。
「いいよ……ぐすっ……セレスティアちゃんが、信じてくれるなら……何されても、いいよ…」
「……そう。じゃあ、右腕を斬り落としても文句はないわけね」
さすがに、ドワーフの表情が強張った。しかし、ドワーフは怯えながらも拒否はしなかった。
「いい、よ……そ、そうしたら……信じて、くれ、るん……だよ、ね…?」
「……できもしないくせに。いいわ、どれぐらいでボロが出るか見てあげる。できも、しないくせに」
ゆっくりと、鎌が肩口に添えられる。ドワーフは怯えきった表情ながらも、唇を真一文字に結んでじっとしている。
グッと、鎌に力が加わる。鋭利な刃はたちまち皮を裂き、右腕に血が流れ落ちた。
「ぐうっ……うぅっ……うあぁっ…!」
ぼろぼろと涙を流し、歯をきつく食いしばり、ドワーフはその痛みに耐える。セレスティアは彼女をいたぶるように、ゆっくりと
刃を進ませていく。
皮を切り、肉を切り進み、出血はますますひどくなる。
「ほら、どうしたの?早く抵抗しなさいよ」
「……っ…!」
ドワーフは答えられず、代わりに黙って首を振る。その間にも鎌は彼女の腕を斬り、そしてとうとう、刃が骨まで達した。
「はっ、はっ……く、ぐっ…!」
あと一息、セレスティアが力を込めれば、ドワーフの腕は根元から斬り落とされる。ドワーフは既に覚悟を決め、涙を流しつつも
その瞬間を待っていた。そして、セレスティアの腕が動いた。
「ああああああああ!!!!」
大きな叫び声。同時に鎌が引き抜かれ、それは床へと放り投げられた。
「え…?」
驚く間もなく、セレスティアはドワーフの頭から水を浴びせた。それが肩に触れると、痛みは瞬時に消え、今まであった傷も一瞬にして
消えてしまった。
状況をまったく掴めないドワーフに、セレスティアが縋りついた。
「なんで!?」
「え?え?」
「どうして!?なんでよ!?なんでっ……うっ、ううぅぅ…!」
縋りついたまま、セレスティアは涙を流し始めた。ドワーフは訳も分からず、ただただ呆気に取られている。
「なんでよ…?わけわかんない……なんでよぉ、なんでなのよぉ…!」
「セレスティアちゃん…?」
「なんで……なんで、他のみんなは頑張ったら褒めてもらえるのに……何かできたら、喜んでもらえるのに…」
「あの、セレスティア、ちゃん…?」
「どうしてわたくしは、できて当たり前なの…!?頑張っても、誰も褒めてくれない…!わたくしが何しても、それが普通って…!」
まるで子供のような口調で、セレスティアは続ける。
「わたくしだって、頑張ってるのに…!なのに、ねえ!どうして頑張ったらいけないの!?どうしてわたくしだけ普通なの!?
友達だって言った人だって、わたくしが頑張ったら離れるばっかり!!前からそうだったし、ここに来てからもそうだった!!
できるのがダメなの!?他の人はいいのに、わたくしはダメなの!?ねえっ……なんでよぉ…!」
今まで見たこともない、子供のような表情で感情を吐き出すセレスティア。その言葉は、ずっと彼女の中で澱のように溜まり続けた、
誰にも言えなかった本音なのだろう。
戸惑いながらもそれを聞き終えると、ドワーフはおずおずと口を開いた。
「あ、あの、ごめんね。セレスティアちゃん、何言ってるのかよくわかんないけど…」
身も蓋もない前置きをしてから、ドワーフはそっとセレスティアの手を取った。
「私は、その、一緒にいるよ。友達だよ」
その言葉に、セレスティアは弾かれたように顔を上げた。しかしまだ、その顔には怯えが張り付いている。
「嘘……嘘よ…!みんなそう言って、でもわたくしが頑張ったら、みんな掌返してっ…!」
「嘘じゃないよ。セレスティアちゃんは、ずっと友達だよぉ」
セレスティアの顔から、恐怖がなくなっていく。その代わりに、今度は大きな悲しみの表情が広がった。
「やだ……嘘だって言ってよ…!わ、わたくし……あなたに、散々ひどいことして、傷つけて……あなたのこと、こんな…!」
嘘であってほしかった。そうでなければ、セレスティアは自分を友人と思い、決して離れずにいてくれた大切な者を、疑い、傷つけ、
取り返しのつかない暴力を振るったことになるのだ。
しかしやはり、ドワーフはセレスティアのそんな心中を察することはできず、強い口調で否定した。
「嘘じゃないよぉ!」
言うなり、ドワーフはセレスティアをぎゅっと抱き寄せた。温かく力強い腕に包まれ、セレスティアはしばし呆然としていたが、
やがて今にも泣きそうな顔になった。
「うそ……うそよぉ…!だ、だって、あんなことしたのにっ……ひどいこと、いっぱい…!」
「それは、うん……痛かったし、びっくりしたけど……でも、友達だよ。セレスティアちゃんは、すっごく大切な友達だよぉ」
「ああ……ああぁぁ…!」
ぽろぽろと、セレスティアの目から涙がこぼれ落ちる。直後、セレスティアはドワーフの胸に顔を埋め、子供のように泣きじゃくった。
「ごめんなさい…!ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…!」
泣きながら、セレスティアはずっとそう繰り返していた。そんな彼女を、ドワーフは優しく、強く、じっと抱き締めていた。
十数分ほど泣き続け、セレスティアが少し落ち着いたところで、ドワーフは体を離し、セレスティアの顔を見つめた。
「少し、すっきりした?」
「ぐす……っく……うん…」
「思いっきり泣くとさ、なんでかすっきりするよねぇ。もっと泣いてもいいよぉ?」
「いえ……くすん……それより…」
目元をごしごしと擦り、セレスティアは思いつめた顔でドワーフを見つめる。
「ドワーフ……お願い、わたくしのこと、思いっきり殴って…」
「え?」
「だ、だって……わたくし、あなたに、あんなにひどいことしてっ……うう…!あ、あなたが友達だって言ってくれても、
このっ……このままじゃ、そんな資格なんてない…!」
再びセレスティアの目に涙が溢れ、その声は震え始める。ドワーフは一瞬言葉に詰まり、首を振った。
「……ううん、そんなことしないよぉ」
「そんなっ…!引っぱたいてもいいから、噛みついてもいいから、お願いだから、一回でいいからやり返して…!」
「やだよぉ。私、セレスティアちゃん傷つけたくないよぉ」
セレスティアの願いは切実だったが、その心境を理解できるほど、ドワーフは頭が回らない。
「うぅ〜……お、お願い、だからぁ…!だって、だって、わたくしはあなたを傷つけたのに……罰せられることもないなんて、そんな…!」
「えっと……なんでセレスティアちゃん怒ってたのか、よくわかんないけどぉ、セレスティアちゃん、ちゃんと謝ったよぉ?」
「ただそれだけで、許されるなんて……そんなの……守ってきた純潔まで、台無しにしたのに…!」
「う〜、それは、ちょっと、悲しかったけどぉ……で、でもねぇ、結婚するぐらい好きな人になら、あげてもいいんだって、
聞いたことあるよぉ。その、セレスティアちゃんは、私…」
恥ずかしそうに視線を逸らし、尻尾を落ち着きなく揺らしながら、ドワーフは恥ずかしげに言った。
「そ、それぐらい、好きなんだよぉ。だから、そのぉ……えっとぉ……き、気にしないでいいよぉ」
「……ふえぇ…!」
ドワーフの言葉に、セレスティアはまた泣き出してしまった。自分をこれほどまで想ってくれる友人を、彼女は散々に傷つけたのだ。
もはやセレスティアは、死んで詫びるしかないなどと思い始めていた。
一方のドワーフは、元気を取り戻してくれるかと思ったセレスティアが再び泣き出してしまい、大慌てだって。一体なぜ泣きだしたのか、
彼女はやはり理解できていない。
どうしたものかと必死に考え、ドワーフはセレスティアの肩を抱いた。
「ねえ、セレスティアちゃん」
優しく呼びかけられ、顔を上げた瞬間、ドワーフは突然唇を重ねた。
「んっ…!?」
セレスティアが驚き、固まっていると、ドワーフは唇を離し、恥ずかしげに笑った。
「えへへ。あのねぇ、セレスティアちゃんと、こう……え、エッチなことしてるときってね、すっごく幸せなんだぁ。悲しいこととか、
辛いこととかあってもねぇ、セレスティアちゃんが気持ちよくしてくれると、全部忘れちゃうんだよぉ」
そこで、セレスティアはドワーフが何を考えているのかを悟った。
「あ、あの、ドワーフ…!」
「だからねぇ、今日は私が、セレスティアちゃんにしてあげるねぇ」
「いや、あの、そのっ…!」
うろたえるセレスティアを、ドワーフは優しく押し倒した。鼻先にキスをし、次に頬にキスし、まだ戸惑う表情のセレスティアに
唇を重ねる。まさかそれを押し返すこともできず、また意外な行動に固まってしまい、セレスティアはされるがままとなっている。
「あれ……えっとぉ……ん〜しょっと…」
キスをしながら、服を脱がせたかったのだろう。しかし、不器用な彼女にそんな真似ができるわけもなく、ドワーフは結局唇を離し、
両手でセレスティアの服を脱がしにかかっている。
それでも相応の時間を掛け、ようやく前をはだけると、ドワーフは固まるセレスティアに笑いかけた。
「今日のセレスティアちゃん、かわいい」
たちまち、セレスティアの顔が真っ赤に染まった。そんな彼女をますます愛らしく思いながら、ドワーフは大きな胸に手を掛ける。
「んんっ…!」
セレスティアの体がビクッと震え、ドワーフは驚いて思わず手を離す。しかしすぐに思い直し、撫でるような強さで、ゆっくりと
捏ね始めた。
「ドワーフ…!はうっ!んっ、う…!」
ドワーフが手を動かす度、大きな胸は柔らかく形を崩し、同時にセレスティアが小さく喘ぐ。吐息は少しずつ熱を帯び始め、顔の赤みは
全身へと広がっていく。
「おっぱい、気持ちい〜い?」
「あうぅ……う、うん…」
尋ねられると、セレスティアは恥ずかしげに頷いた。今まで見たこともない姿に、ドワーフは何となく楽しくなり始めていた。
ふと、セレスティアの顔から視線を逸らす。押し倒された際、セレスティアの手は軽く上げたような格好になっており、指を半ば
開いている。だが、ドワーフが胸を刺激すると、その指は喘ぎ声と共にぎゅっと握られ、刺激が弱まると再び開いている。
楽しげな笑顔を浮かべると、ドワーフは右手を胸から離し、セレスティアの左手に指を絡めた。
「あ…?」
「えへへ〜、にぎにぎ」
言われて初めて、セレスティアは無意識に手を握っていたことを知る。普段とは真逆とも言える状態に、彼女は妙な気恥かしさを覚えた。
「あ、でも手……あ、じゃあセレスティアちゃん、ちょっとごめんねぇ」
何のことかと思っていると、ドワーフはセレスティアのブラジャーを強引に上へずらした。胸を直接見られ、恥ずかしいと思った瞬間、
そこにドワーフの吐息がかかった。
「え、何……ふああっ!?」
空いた右手の分を埋めるように、ドワーフはセレスティアの乳首を口に含んだ。大きな舌で転がすように舐め、吸い、つつく。
「あっ、あっ、あっ!ド、ドワーフっ!待っ……ああっ!」
「んっ……ん、ふ…」
自覚はなかったのだが、セレスティアは胸が非常に敏感だった。以前、戯れに胸を吸われたときでさえ、声を抑えるのに必死の努力を
要したほどだった。それが今、ドワーフは手での愛撫の代わりに口を使っており、その動きは明らかに快感を与えるためのものである。
「ああ、あっ!ドワーフ、待って、待ってっ…!はあぁっ!む、胸はっ……胸は、もうっ…!ああっ、ダメ…!も、もうダメっ…!」
「んふ……はぁっ、ん…!」
「やあっ…!ドワーフってばぁ…!」
わざとではないのだろう。しかし、ドワーフは胸を吸うのが気に入ってしまったらしく、セレスティアの声が届いていない。
快感を堪えようと、思わず手に力が入る。すると、それに反応してドワーフも強く手を握ってくれるのだが、それ以外に関しては
まったく気付いてくれる気配がない。
セレスティアの全身には玉のような汗が浮かび、呼吸は荒く乱れている。左手はドワーフの手に繋がれ、右手は強くシーツを握りしめる。
「はっ、ぐっ…!うあぅ……ああ、あっ!やぁ!ドワ……くうううぅぅぅ!!」
ビクンとセレスティアの体が仰け反り、大きな嬌声と共に手を強く握りしめる。あまりに強い力に、ドワーフは驚いて口を離した。
「ふぇ!?あ、あれ?セレスティアちゃん……だ、大丈夫ぅ…?」
「うぁ……むね、だめって言ってるのにぃ…」
間延びした口調で、セレスティアは涙すら浮かべながら言う。
「あ、ご、ごめんねぇ、聞こえなくって……じゃ、こっちの方してあげるねぇ」
「こ、こっちって……あの、ドワーフ、ちょっと…!」
止める間もなく、ドワーフはセレスティアのスカートを下ろし、ショーツを剥ぎ取った。少しは慣れたのか、今回は割と手早く済んでいる。
「わぁ、セレスティアちゃんびしょびしょ〜。でも、これって気持ちよくなるとなるんだよねぇ?なんか、嬉しいなぁ〜」
ぱたぱたと尻尾を振りつつ、ドワーフはセレスティアの股間に手を伸ばした。
「あ、あの、ドワーフ!今、あの、わたくしっ…!うあっ!?」
「えへへ〜、もっと気持ちよくしてあげるねぇ」
割れ目に指を挟みこませ、前後に擦る。それだけでも十分に刺激となり、しかも体毛に包まれたドワーフの指は、ざりざりとした
細かい刺激を与えてくる。
「ああ、あっ!だっ、ちょっと、待っ…!か、体も洗ってないのにぃ…!くうっ!」
「でも、今日は探索行ってないしぃ、大丈夫だよぉ」
ずれた答えを返しつつ、ドワーフは休めることなく手を動かす。決して中に入れることはなく、入口を擦られるだけのもどかしい刺激。
たまに最も敏感な突起に触れ、強い快感が走る。一度達してしまった体を焦らされ、不意打ちで強い刺激を受け、セレスティアの快感は
再び跳ね上がっていく。
「やっ……ドワー、フ…!こ、これ以上は……ほんと、ダメ…!」
「ん?そぅお?じゃ、こっちするねぇ」
「え…?ええ!?ちょ、ちょっとドワーフ!!待っ…!」
指がそのまま後ろへとずれ、もう一つの穴に押し当てられる。慌てて止めようとした瞬間、ドワーフはグッと力を込めた。
「ひっ…!!あぐっ!い……痛いっ……ドワーフ、痛いっ…!」
愛液の絡んだ指が、少しずつ腸内へと侵入していく。だが、セレスティアはそこを弄ったことなどほとんどなく、おまけにドワーフの指は
他の種族と比べ、遥かに太い。いくら滑りがいいとはいえ、急に限界近くまで広げられたセレスティアは、ほとんど痛みしか感じない。
「あ、セレスティアちゃん、ここあんまり触らないんだよねぇ。もう少し、優しくするぅ?」
「くっ……ぐっ…!うぅぅ……い、いい……そのまま、で、いい…!」
しかし、その痛みはドワーフに与えた苦痛の報いだと、セレスティアは自身を納得させた。裂けそうなほどに痛んではいたが、それを
黙って耐えようと心に決める。
が、ドワーフはセレスティアがひどく痛がっているのを察知し、不意に指を引き抜いた。
「あうっ……はぁ、はぁ……ドワーフ…?」
「ん〜、指は痛かったんだね。ごめんねぇ。それじゃ、痛くないように、気持ちよくしてあげるぅ」
「きゃっ!?」
言うが早いか、ドワーフは体を離すと、セレスティアの腰を抱え上げた。そして、後ろの穴にぬらりとした感触が走る。
一瞬、何が起こっているのか理解できなかった。だが、すぐに覚えがある感触だと思い出し、直後に何をされているのか悟った。
「や、やああぁぁ!!ドワーフ、それはっ……それはダメぇ!やめっ……ふあぅぅ!」
舐められている。汚いはずの部分を、丁寧に舐められている。
驚きと、嫌悪感と、戸惑いが一気に襲い掛かる。セレスティアは悲鳴を上げ、体を捩り、何とかドワーフの腕から逃げ出そうとするが、
さすがに種族柄、ドワーフの力は強く、何より力が入らない。
「やぁ……くうっ!やなのっ……ドワ……はあぁっ!うっ、あっ!ああっ、やめ……んあああ!」
ドワーフの舌が穴の周辺を這い回り、唾液をたっぷり絡め、先端で皺をなぞるように舐める。その動きは優しく、丁寧で、
セレスティアの中に認めたくない感覚が湧きあがる。
「あぁぁ、嘘……こんなの、嘘っ…!やだっ……おしり、でぇ……えっ!?やっ、何!?や……うあああぁぁ!!!」
舌がぐりぐりと押し付けられ、窄まりを押し広げ、腸内へと侵入する。途端に、セレスティアの頭の中は何かが弾けたように真っ白になり、
目の前がちかちかと点滅する。
先に達していたからなのか、それともドワーフの動きのせいなのか、異常なところを舐められているという嫌悪感や戸惑いを、遥かに
超える快感。腸内に押し込まれる舌の感触も、腸内で動き回る違和感も、すべてが快感となってセレスティアを襲う。さらに、時折
秘部にかかる彼女の吐息が、それらをより強めていく。
「だ、めっ…!ドワーフ、だめぇ!もうやめて!これいじょっ……ううぅぅ…!や、めぇ……あっ……ドワ……あああっ…!」
声は切れ切れとなり、翼が意思と関係なくばさりと開く。両手はシーツを握りしめ、必死に快感の波を堪えようとするが、そんな抵抗は
ほとんど意味を為さなかった。
「それっ……あっ……だめっ…!も、もうっ……がっ……は、ぐっ!!っっっっっ!!!!!」
もはや声さえ出せなくなり、無意識に体が仰け反る。頭の中は快感で埋め尽くされ、セレスティアの体はガクガクと痙攣する。
「あ……セレスティアちゃん、大丈夫ぅ?」
異常に気付き、ドワーフは舌を抜くと、セレスティアの腰をそっとベッドに下ろした。しかし、まだ快感の余韻で頭がうまく動かず、
セレスティアは荒い息をつきながら横たわっている。
「セレスティアちゃん、今きちゃってたんだねぇ。えへへ〜、私も気持ちよくしてあげられて、嬉しいなぁ〜」
言いながら、ドワーフも隣に寝転び、セレスティアをぎゅっと抱き寄せる。いつもとは正反対の状況だったが、セレスティアはそれを
不快とは思わなかった。むしろ、これはこれでとても安らげるものだと思っていた。
しかし、引っかかるものは残っている。なぜ、自分はドワーフを傷つけたのに、彼女に気持ちよくされているのか。とても納得できるような
ことではなかったが、ドワーフは決して自分を罰するようなことはないだろう。
であれば、することは自然と絞られる。まだ乱れる呼吸を何とか鎮め、セレスティアはドワーフの体を軽く押し、その顔を見上げた。
「ドワーフ…」
「ん、なぁに?」
「あなたのこと……いっぱい傷つけて、ごめんなさい…」
その言葉に、ドワーフはきょとんとした表情を浮かべていた。既に散々、気にしなくていいと言っていたので、もう気にしなくなっていると
思っていたのだ。
だが、さすがのドワーフも、その言葉に込められたセレスティアの心情を、ほんの少しだけ理解した。
「……うん、もういいよぉ。ちゃんと謝ったから、許してあげる〜」
ドワーフが言うと、セレスティアの顔に笑顔が広がった。同時に、その目に涙が浮かぶ。
「ありがとう…!」
ぎゅっと、ドワーフに抱きつくセレスティア。そんな彼女を、ドワーフはあやすように撫でてやる。
「このまま、寝ていいよぉ。きちゃうと、疲れるもんねぇ」
「ん……ありがと、ドワーフ」
「ふふ〜」
急に嬉しそうな笑い声をあげ、尻尾を振り始めたドワーフに、セレスティアはきょとんとした顔を向ける。
「セレスティアちゃん、今まで私のこと『あなた』ってしか呼んでくれなかったから、そう呼んでくれると、なんか嬉しいなぁ」
「あ…」
言われて初めて、セレスティアはその事実に気付いた。そしてもう一つ、とてつもなく大事な事実に気付く。
「ド、ドワーフ!寝る前にちょっと、ちょっとだけ放して、お願い!」
「え?あ、うん……どうしたのぉ?」
ともかくも腕を離すと、セレスティアはハンカチを手に取り、思いっきり鼻をかんだ。それが済むと再び、ドワーフの胸に顔を埋める。
「ありがとう……ドワーフ、ぎゅってして」
「うふふ〜、今日のセレスティアちゃん、甘えんぼさんだぁ」
言われたとおり、ドワーフはセレスティアを強く抱き締める。ふかふかの体毛に顔を埋め、セレスティアは大きく息を吸った。
「すぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜…」
「……な、なんか今、十秒くらい息吸ってたけど、大丈夫?」
「………」
セレスティアは答えない。代わりになぜか、その体がビクビクと、何度か震えた。
「……ふぅ〜〜〜〜……大丈夫…。おやすみ、ドワーフ…」
「う、うん…?おやすみぃ」
いつもより遥かに強い、ドワーフの匂い。それに包まれながら、セレスティアは今までにないほど安らぎに満ちた心で眠りにつくのだった。
「あんまり、そのまんま過ぎるだろう」
「いや……だって、ねえ…?」
その頃、学食ではバハムーンが、かつてないほどにげんなりした表情を浮かべていた。
「あんまり、そのまんま過ぎるだろう」
「いや……わかった、わかったよ、ごめん。そんな二回も言わなくったって…」
「それよりよー、なんでセレスティアが猫女なんだよー?フェルパーじゃねえのかー?」
「だから、あんまりそのまんま過ぎるだろうそれは。んな面白みのねえ言い方、俺がするかっ!」
「面白みより、わかりやすさ重視してくれよ。で、君の話だけど…」
「ああ……その前に、ヒューマン。お前はフェルパー連れてさっさと帰れ」
バハムーンが言うと、ヒューマンは身を乗り出して反抗する。
「なんでだよー!?なんでフェアリーはよくて俺はダメなんだよー!?」
「お前は補習があるだろうが。確か、小テスト数枚やるんだろう?補習の補習を受けたくなきゃ、さっさと帰って勉強しろ」
「うう……そ、それはそうだけどよぉ〜…!」
「手合わせも、それが終わるまでお預けだ。余計な差をつけられたくなきゃ、詠唱法基礎ぐらい完璧にしておけ」
「……くそー、勉強わかんねえんだよぉー……何書いていいかわかんねえのに、どうやって…」
「どうしてもわからなきゃ、聞きに来い。フーセンボム並みの頭の中身のお前にもわかるように説明してやる」
「……中身入ってねえって言いたいのかよー!?」
「お、わかったか。思ったよりはマシな頭のようだな」
「くそーっ!てめえ今度絶対こてんぱんにしてやるからなー!覚えてやがれー!」
元気に騒ぎながら、ヒューマンはフェルパー入りの道具袋を担いで寮へと戻って行った。それを見送ると、バハムーンは大きく息をついた。
「やれやれ、手のかかる奴だ」
「案外、扱い慣れてる感じはあるけどね。で、セレスティアの話…」
「ああ…」
水を口に含み、時間を掛けて飲み下すと、バハムーンはフェアリーの目をまっすぐに見つめた。
「一切の他意なく、公正な意味での言葉で、あいつは小物だ」
「小物…?小物って、あいつがそんな…」
「お前の解釈する『小物』は、相手を見下す意が入ってるな。そうじゃねえ。あいつは、能力は高いが、考え方が小物なんだ」
「……わかりやすく頼む」
「見下す意味を取り除けば、まあ大まかにはお前の考える小物と変わりない。誰かに認めてほしくて、褒められたくて、一人が嫌で、
細かいことを気にする。そういう意味では、フェルパーは相当な大物だな」
「なるほど。で、猫女ってのはどうして?」
「焦るな。順を追って説明してるんだ。お前、あいつが試験でいい点を取ったり、習ったことを容易く習得するのは、普通だと思うか?」
「普通……そう、だなあ。君とあの子は、それが普通だよね」
はぁ、と、バハムーンは溜め息をついた。
「だろうな。できる奴には、できねえ奴の気持ちはわからねえ。できねえ奴に、できる奴の気持ちはわからねえ。多寡や質の違いこそ
あれど、あいつもヒューマンも、努力してることには変わりねえ。これでたとえば、ヒューマンが聖術試験で、平均点以上を叩きだせば
どうだ?お前は、あいつを褒めちぎるだろう?」
「そりゃそうだろうなあ」
「隣で、満点を取ったセレスティアを差し置いて、な」
「………」
そう言われると、フェアリーは言葉に詰まった。
「責めてるわけじゃねえ。それが普通だ。だが、あいつはそれが納得いかない。どうして自分は、こんなに頑張ったのに、誰も
褒めてくれないんだって思うわけだ」
「………」
「少し話が戻るが、できる奴と、できねえ奴と、お互いわかり合うことはまず不可能だ。そして、ない物を持ってる相手を妬ましく思う。
妬ましく思う気持ちが、そいつの目を曇らせる。あいつが褒めてもらいたくて全力を出せば、できねえ奴は馬鹿にされてると思う。
そうして邪険に扱われたあいつは、どうして自分だけ誰も認めてくれないんだと思う。そして一層努力して……ま、悪循環だな」
「ヒューマンがいなくてよかったよ。彼がいたら、ここまでの話を噛み砕くのに一日かかる」
フェアリーの言葉に珍しく笑顔を返し、バハムーンは続ける。
「なあ、わかるか。隣では頑張った奴が、結果はどうあれ評価され、同じく頑張った自分は、失敗すればいいと唾を吐かれる。
この差はなんだ?あいつじゃなくとも、納得いかねえと思うだろう」
「……なんか、鬱になってきた…」
「あいつは鬱になるんじゃなくて、捻くれた。どうせ誰も自分を認めない。認めてくれる奴などいやしない。友情なんてのは上っ面の
薄っぺらい言葉だけ。本気を見せただけで、自分から逃げて行く奴等ばっかりだってな」
再び水を口に含み、バハムーンは一緒に入ってきた氷をがりがりと噛む。
「そう信じてる奴が、だ。自分を無邪気に慕って、何の衒いもなく褒めてくれて、受け入れてくれる存在に会ったら、どうなると思う」
「喜ぶんじゃ……ないかなあ?」
「捻くれてなければな。いいか?あいつは友情も、ありのままの自分を認める奴も、受け入れる奴も『いないと信じて』るんだ。
お前、どんな魔法も跳ね返すという鎧が目の前にあったら、どうする」
「そうだなあ。まずは一発、ビッグバム辺りを…」
言いかけて、フェアリーの言葉が止まった。そして、その顔は見る間に青ざめていく。
「つまり、そういうことだ。こういうのは、猫が似た行動を取ることがある。主人が自分を怒らないと信じているからこそ、噛みついたり、
引っ掻いたり、わざと怒られる行為をして見せる」
「だから、猫女…?」
「少し違う部分もあるがな。そんな奴はいないと信じて、でも心から求めた存在を信じたくて、試してみる。その試しが、破壊衝動に
向くのは、まず確定的だろうから……危険だとは思う。だが、セレスティアが猫なら、ドワーフは犬だ」
「見た目もそれっぽいしね」
「まあな。見た目が可愛いってのは得なもんだ……それはともかく、あいつは頭もよくない。だから、セレスティアが無茶な要求を
しようと、突っぱねることなくその要求を受け入れる。裏表もねえ性格だからな、あいつの心は、きっとセレスティアにも伝わる。
少なくとも、俺はそう信じてる」
言い終えると、バハムーンはコップに残っていた水を一気に飲み干した。
「……君、そこまでわかってるなら、試験結果褒めてやりゃよかっただろ」
「俺が言っても、傷の舐め合いにしか見えねえさ。できる奴は、できる奴の気持ちがわかる。それに、ああいう捻くれもんは、人の心の
裏を読むのに長けてるもんだ。裏表のない奴にしか、どうしようもねえ」
フェアリーは改めて、バハムーンの能力に舌を巻いた。ほとんど会話もないセレスティアの心情をここまで読み切り、なおかつ
ドワーフの性格までしっかりと把握しているのだ。フェアリーとしては、セレスティアは無口で少し言葉がきつい相手だとしか思って
いなかった。
「ともかく、明日あいつらが来なければ、大惨事。揃って来れば、一皮剥けた仲間と出会えるだろうよ。じゃあ、俺は部屋に帰るぜ」
食器を下げ、部屋へと戻るバハムーン。それを見送りながら、フェアリーは彼が自分に今の話をした理由を、ぼんやりと考えていた。
それから数日。ドワーフとヒューマンの補習も無事に終わり、一行はいつもの雰囲気を取り戻しつつあった。
しかし、そのいつもの雰囲気は、あれ以来少しだけ変わってきていた。
「セレスティアちゃん、ほんとにありがとね〜。小テスト、46点も取れたの初めてだったよぉ〜」
「……あなたがいつもしてることを、わかりやすく説明しただけ」
ドワーフの言葉に、セレスティアは微笑を浮かべて答えた。
「すげえなー。俺はギリギリ32点だったぞー。悔しいけど、お前のおかげなんだよなぁ〜…」
「……基礎だけでも、覚える脳があって助かった。あれ以上時間を取られると、俺の睡眠時間が消える」
まだバハムーンの目の下には、小さな隈が残っている。傍らにフェルパー入りの道具袋を置き、バハムーンは軽く息をついた。
「それはそうと、お前等盗術は覚えてるか?」
「う〜ん、シュピール先生の授業、全然わかんなかったからぁ…」
「まあ、できなくても問題はねえだろうが、せっかく習ったんだ。記憶から消える前に復習だ。ドワーフ、ハンカチ貸せ」
「ハンカチ?いいよぉ、はい」
ドワーフは、真っ白な飾り気のないハンカチをバハムーンに渡す。すると、彼はどこかからシルクハットを取り出し、その中を見せる。
「基礎中の基礎だからな、盗術に限らず使える技術でもある。しっかり覚えておけ」
言いながら、バハムーンはハンカチをシルクハットに入れ、それをくるりと回して逆さに持った。
「簡単な問題だ。今俺が預かった、ドワーフのハンカチがどれか当ててみろ」
そのまま山の部分を掴み、つばを下にして左から右へと動かす。すると、シルクハットの中から一枚ずつハンカチが舞い落ち、机の上に
三つの白いハンカチが並んだ。
「君……この間のでトリックスター学科まで習ったのかい…」
「面白そうでな。さあ、見るのも手に取るのも自由だ。当ててみろ」
三枚のハンカチは、大きさや色はどれも同じようなもので、パッと見ただけでは判別がつかない。
「俺これだと思うぞー!」
「う〜ん……これ、かなぁ?」
ヒューマンとドワーフは、それぞれ違うハンカチを指した。
「根拠は?」
「何となくこれっぽいからなー!」
「洗ったばっかりできれいだから、これかなぁって」
「………」
そんな中、セレスティアが手を伸ばし、ハンカチを一枚手に取った。そして、それを鼻へと近づける。
「………」
一度匂いを嗅ぎ、それを戻す。続いてもう一枚を取り、同じように匂いを嗅ぎ、戻す。さらに三枚目を手に取り、息を吸うと、不意に
その動きが止まった。
「……すぅ〜〜〜〜〜…」
長い呼吸音が響き、やがてそれが止まる。セレスティアはハンカチで鼻を覆うようにしながらしばらくじっとしていたが、やがてその体が
ビクンと震えた。
「ど、どうしたんだお前ー?」
ヒューマンの言葉には答えず、セレスティアは何事もなかったかのようにそれを戻すと、軽く息をついた。
「これ」
「……そうか。フェアリー、お前はどれだ」
「うーん、触ってもいいんだよね?じゃ、ちょっと失礼して…」
摘んで擦るようにして三つのハンカチの感触を確かめると、フェアリーは額に手を当てた。
「ん〜、一瞬だったから確証はないけど……確か、綿だった気がするんだよなあ。だから僕も、セレスティアと同じ」
「答えは出揃ったな。セレスティア、フェアリー、正解だ」
そう告げてから、バハムーンはヒューマンとドワーフに呆れた視線を向ける。
「これは三枚とも、材質が違ってな。フェアリーの言った通り、預かったハンカチは綿。ヒューマン、お前が選んだのは麻で、ドワーフ、
お前が選んだのは絹で、俺の私物だ。一番高いのを自分のにしようとするな」
「あれぇ〜?洗ったばっかりだから、ぴかぴかのこれだとおもったんだけどぉ…」
「手に取るのも自由、と言ったはずだ。見るばかりが鑑定法じゃねえ。使える感覚は全て使って、鑑定するんだ。そういう意味では、
セレスティア、お前は変わった鑑定法だったな」
「……あなたも、匂い嗅ぐのは得意でしょう?あなたなら間違わないはず」
「あ、そっかぁー。セレスティアちゃん、頭いいねぇー」
ドワーフが言うと、セレスティアは嬉しそうに目を細めた。
「え〜?匂いでわかるかぁ〜?」
「粗野なあなたには、向かない方法ね」
ぼそりと、セレスティアが呟く。が、ヒューマンは首を傾げた。
「そ、そや?」
「下品で乱暴もんのお前には向かない、とさ」
バハムーンが通訳すると、ヒューマンはムッとした表情を見せた。
「何だよお前ー!喋るようになったら馬鹿にばっかしやがってー!くそー、バハムーンが二人になったみてえだー!」
「セレスティアちゃん、ダメだよぉ、そんなこと言っちゃ〜。仲良くしなきゃダメだよぉ〜」
そう言ってドワーフが服の裾を引っ張ると、セレスティアは表情を改めた。
「……でも、本当のことだから」
「怒らせるのダメー。もっと優しくしなきゃダメだよぉー」
そんな一行を見つめながら、フェアリーは笑った。
「どうなることかと思ったけど……みんな、本音をぶつけられるようになったなあ」
以前より表情が明るく、また喋るようになったセレスティア。それを受け入れる仲間達。
口では何だかんだ言いつつ、しっかりとヒューマンの面倒をみるバハムーン。誰が見ても仲良しのセレスティアとドワーフ。どんどん
飼い猫化が進むフェルパーに、どんどん存在感の消える自分。だが、それでもいっそ構わないと、フェアリーは思っている。
「ま、リーダーばっかり目立つようなパーティじゃ、しょうもないからな。これでいいよな……はは」
半ば無理矢理、自分を納得させつつも、あながち偽りでもない。リーダーがまとめ続けなければ存続できないパーティなら、
それは存在する価値がないと、彼は考えている。そういった意味では、このパーティは彼の理想形だとも言えた。
かつて価値を否定された仲間達は、今日も仲良く迷宮探索を続けている。
以上、投下終了
それではこの辺で
激しくGJ、セレスティアがホントに良いキャラしてますねw
そしてバハムーンの大人レベルがあいかわらず高いw
お疲れさまでした
GJでした!
毎回毎回素晴らしい文章です。
ドワーフが可愛いなぁ
GJです!
賢いバハムーンとは新機軸!
GJ!バハムーンがいい男過ぎるw
280 :
マルメンライト:2011/05/15(日) 23:23:10.15 ID:1kuiZ4PU
いまだに新しいチームの名前が決まってないですがまた新作が出来ましたので
投下させていただきます。
諸注意:ディアボロス♀×クラッズ♂
多分甘め?
某闇の生徒会の方が小物化してます。
281 :
マルメンライト:2011/05/15(日) 23:26:46.26 ID:1kuiZ4PU
「はぁっ…!くぅ…!」
静まり返った部屋の中、私は愚かな行為に一人耽る。
胸をつまみ、浅く入れた指で自分の中を掻きまわす。
否、この手は私の手ではない。
「クラッズ…駄目…そこは…弱いの」
閉じた目の裏側で、彼の姿を夢想する。
瞼の裏に浮かんだ彼はいつもの優しい笑みを浮かべている。
だが、想像を重ねた彼の手は、私を激しく掻きたてる。
「ふぅっ!…そこは!…駄目…苦しい…」
敏感な部分がつままれて私の腰が高くあがる。
「う…くふぅ…くはぁぁ…!!」
最後に腰が跳ね上がり、そのまま静かに布団に落ちる。
ビクビクと体が震え、敏感になった肌に夜の冷たい空気が触れた。
彼のことが愛おしい。
彼の体に抱かれたい。
彼に貫かれる自分を想像し、彼の姿を夢想する。
だけど…
「…馬鹿みたい…。人に好きになる資格なんかないのに…」
がりがりと肩に爪を立てると、私の肩から赤い血が流れる。
呪われた子、罪深い子、そう呼ばれる私の血が静かに腕を伝わって涙と共に染みを作る。
汚い血、彼にすら打ち明けていない、私の秘密。
「私の血が汚いなら、どうしたら綺麗になれるの…」
この血が汚れに満ちているなら、その血の全てを入れ替えれば、私の呪いは解けるのだろうか?
真実を伝えれば私は彼に抱きしめてもらえるのだろうか?
「クラッズ…クラッズ…」
何度繰り返しても満たされることのない渇きを覚えながら私は愚かな行為を繰り返す。
彼が欲しい、彼に抱かれたい、彼にこの身を捧げたい。
彼に純潔を引き裂かれ、彼に汚されることを夢想する。
繰り返すたびに味わうのは、ほんの少しの心地よさと、彼がここには居ないという空しさだけ。
彼のことが好きなのに、私の心を呪いが縛る。
いっそ、こんなさえ気持ちを持たなければ…私は苦しまずにいられるのだろうか?
そんなことを思いながら私は一人遊びに今日も耽る。
この想いが報われること等あるのだろうかと思いながら。
282 :
マルメンライト:2011/05/15(日) 23:29:31.11 ID:1kuiZ4PU
ドラッケン学園の食堂にチーム全員で集まって食事をとる。
おとぎ話の魔術師のような格好をしたフェアリーの向かいに修道服に身を包んだセレスティアが、首にマフラーを巻いたフェルパーの前に彼女の恋人のバハムーンが、そして私の向かい側に、彼がいつものように座る。
いつも通りの光景だった。
「…獣殿、この時期にそのマフラーは熱くないのかね?」
今の季節は夏真っ盛り、そんな時期にマフラーを巻いたフェルパーに同じ様に熱そうな格好をしたフェアリーが呟く。
「…私だって、ホントはつけたかねぇよ。ただ…外したら…見えちまうだろうが…」
パタパタと手で仰ぎながらフェルパーが恥ずかしそうに呟いてバハムーンを睨んだ。
「…またですか?リーダー?」
フェルパーの隣に座ったセレスティアがどこか楽しそうにそう笑う。
「うむ…、フェルパーが恥ずかしがる姿が偉く気に入ってな…つい、毎朝つけてしまう」
何事もないかのように食事を続けながらバハムーンがそう言うとフェルパーが恥ずかしそうに尻尾を揺らしながら食事を再開する。
「バハムーンの…馬鹿…」
頬を染めながら、どこか嬉しそうに彼女は笑う。
―いいな…―
その姿に、胸が苦しくなる。
羨ましい、そんな思いが私の心に渦巻いていた。
「まったく、学生なんだから節度もとうよ。」
静かに食事をとっていた彼がそう言って苦笑する。
―クラッズは…誰か好きな人居るのかな…―
「…努力はしよう…まず回数を減らしてみるか」
「…え」
クラッズの言葉に応えたバハムーンの言葉を聞き、明らかにフェルパーが悲しそうな顔をする。
「減らすのか…?」
泣きそうな目でフェルパーがバハムーンの目を見つめる。
「…クラッズ、女性を悲しませるのは関心しないよ」
ちらりとクラッズを見ながらフェアリーが呟く。
「…なんでボクが悪役なのさ…、好きにしていいよもう…」
明らかに悪くなった旗色に彼がため息をつきながら空になったコップを持って立ち上がる。
「あ、ごめんクラッズ、私のもお願い」
「ん、分かった、ぬるめだね」
私がネコ舌なのを知っている彼は、そう笑ってコップを受け取る。
やっぱり彼は優しい…。
―優しすぎるから…好きになっちゃうんだよ―
心の中で小さく彼を非難する、だが、そんなことは彼には伝わらない。
283 :
マルメンライト:2011/05/15(日) 23:30:22.28 ID:1kuiZ4PU
「喜べ、フェルパー。回数は減らさなくて良いそうだ」
「ホントか!?…あ、じゃなかった、べ、べつに減ったところで大丈夫だっての、全く…
ま、バハムーンがしたいって言うなら、仕方ねぇな」
そんな私の隣では、パーティ唯一の彼氏持ちが嬉しそうにブンブン尻尾を振っていた。
―うらやましい…―
彼女のことが羨ましい
幸せそうに、愛する人と過ごせることが…
―妬ましい―
私は、誰かを好きになってはいけないのに…
「…違う、そうじゃない」
心によぎった思いを小さく呟いて否定する。
本当に汚れているのは私の血じゃなくて、私の心そのものなのかもしれない。
「はい、ディアボロス、ぬるめのお茶」
少しボーっとしていた私は彼の言葉に正気に返る。
「うん、ありがと、クラッズ」
「どういたしまして」
そう言って笑う彼を見ながら私も小さく笑う。
これでいい、私と彼はきっとこれでいい。
ぬるめのお茶の入ったコップを受け取り口にする。
ただのお茶のはずなのに、彼と一緒に飲むお茶は一人で飲む時よりおいしかった。
284 :
マルメンライト:2011/05/15(日) 23:31:56.09 ID:1kuiZ4PU
彼女はいつもどこか悲しそうな顔をしていた。
笑うととても綺麗で可愛いと思うのに、彼女はあまり笑わない。
時折笑ってくれるけど、それは彼女の本当の笑顔ではない気がした。
無理に笑うのは見たくない、自然な彼女の笑顔が見たい。
それがボクの望みだった。
「どけよ、ワンコロ…噛み砕かれてぇか!!」
行く手を阻む巨大な獣に獰猛な笑みを浮かべたフェルパーが叫んで疾走する。
「フェルパー、先走るな!」
「心配すんな彼氏様、私の背中。預けたぜ」
「まったく、仕方ないやつだ…」
笑いながらバハムーンが彼女に背後から襲いかかろうとした魔獣を切り伏せる。
その行動は完全に彼を信頼していることが伝わってきて、なかなかうらやましいものがあった。
「…っと、それいじょうは進ませないよ」
よそ見をしているうちに二人から逃れた魔獣が襲いかかってくる。
「クラッズ!」
「大丈夫、心配しないで、ディアボロス」
彼女にそう答えながら、サイに似たその魔獣の頭を銃で撃ち抜き、背中に剣を突き立てる。
苦しげに暴れる魔獣の背を蹴って、再びそれに銃を向ける。
「よっ…と」
ドンドンと辺りに銃声が響き、魔獣が動かなくなる。
「ね?」
ボクがそう言って笑いかけると、呆れた顔で彼女が笑った。
「ふむ、あらかた片付いたようだが、“襲撃者”とやらの姿は見えんな」
剣についた血を拭きながらバハムーンが呟いた。
「ですね…」
少し疲れた様子でセレスティアが呟く。
今回ボクたちが受けたのは所謂ところのクエストとは少し毛色が違っていた。
「…もしかしたら、我々が疲弊するのを待っているのかも知れないね」
ありえない話ではなかった。
そもそも、僕らがこの依頼をうけたのはドラッケンに所属する生徒が先日何者かに襲われ、
全員瀕死の状態で保健室に運び込まれた、という話を聞いたからだ。
285 :
マルメンライト:2011/05/15(日) 23:32:28.70 ID:1kuiZ4PU
「黒い精霊…」
ぽつりとディアボロスが小さく呟く。
瀕死の状態で運ばれた彼らが告げた襲撃者の見た目。
同じ場所で戦ってみてはいるがその姿はどこにも見えない。
「フェルパー…どうだ?」
「…学園みたいな場所なら、ある程度気配は読めるが、ここには魔獣共もいやがるからな。
さすがに私でも、全部は読み切れねぇ…」
バハムーンの言葉にフェルパーが耳をぴくぴくと動かしながら呟く。
「仕方ない、ここは分かれて探すことにしよう」
「…リーダー殿、それは少し危険ではないかね?」
フェアリーの言うことはもっともだった襲撃者が何人なのかも分かっていない、ただでさえ6人がかりのチームが敗北している相手なのだ。
「だが、このまま戦い続け、疲弊したところを襲われてしまえば同じことだ。それならばあえてわけ、目標が襲ってきたところで合流をすれば良い」
「なるほど…ボク達自身が囮ってことだね?」
ボクの言葉にバハムーンがうなづいた。
「…なるほど、このままあてもなく探すよりは効率は良いかもしれませんね」
「うん、連絡石で通信して座標さえ分かれば転移符ですぐに合流できる」
セレスティアとディアボロスもそう言ってうなづいた。
「ふむ…、確かにリーダー殿の言うとおりだ。ではそのつもりで行こう、
リーダー殿どの様に分けるのだね?」
「俺達前衛と後衛の術士達、それを各1名合計2名のツーマンセルにしよう。
俺とフェアリー、フェルパーとセレスティア、そしてクラッズとディアボロス、この組み合わせに分かれよう」
リーダーであるバハムーンの決定に皆がうなづく。
それぞれに分かれ、緊急用の転移符と帰還符を受け取り僕らは連絡用の魔石を首にかける。
「それでは、何かあったらすぐに連絡しろ。間違っても各人達だけで行動するな」
「了解したよ」「分かりました」「オーケイ」「了解」「うん、了解」
バハムーンの言葉に皆が思い思いに答える。
そうして僕らは3つにわかれて歩き出した。
286 :
マルメンライト:2011/05/15(日) 23:33:13.53 ID:1kuiZ4PU
「…それにしても、襲撃者って何者なんだろうね?」
「分からないけど、ドラッケンの生徒だけを狙っているってことなら…
目的は復讐、たぶん、ドラッケンに居たことのある人間だと思う」
ディアボロスと共に歩きながら僕らはそんな会話をする。
今思えば、こうして二人きりで彼女と話すのは初めてだった。
「なるほど、一理あるね…」
心の中の緊張を隠しながら彼女の言葉にそう答える。
「あんまり離れない方が良いね、いつ襲われるかわからないし」
ボクの緊張を知ってから知らずかディアボロスがボクに寄り添って手を握る。
人形を操る彼女の指はとても華奢で、力を強く込めると折れてしまいそうなほどに儚い。
ジャリ…
「!…ふせて、ディアボロス…」
「!?きゃっ…」
何かの足音を聞きボクはあわてて彼女を引き寄せた。
体勢を低くした僕らのすぐそばを大型の魔獣が通り過ぎていく。
どうやら気付かれなかったようだ。
「その…クラッズ…」
どこか恥ずかしそうな彼女の声にふとボクは手に当たる柔らかい感触に気づく。
ふにふにと手を動かすとマシュマロのようなやわらかい感触が手に伝わる。
「あ、ごめん…」
「良いから…どいて…ふっ…くぅ…」
その感触をこらえるように彼女がぴくぴくと眉を動かす。
ボクの手は彼女の胸をわしづかみにしていた。
今まで見たことのない彼女の表情に、ボクの中の何かがうごめきだす。
「ディアボロス…」
震える彼女の顎を掴んで引き寄せる。
「クラッズ…駄目…」
拒絶する彼女の言葉を無視して、ボクは彼女の唇を無理やり奪った。
「んむっ!?」
私の唇に彼の唇が触れている。
その瞬間に私の胸を恐怖が蝕んでいく。
あれほど待ち望んでいたはずなのに…彼が汚れてしまうという罪悪感が私を包んでいく。
―…クラッズが、クラッズが…汚れちゃう…―
私は汚いから…呪われているから…彼を汚してしまう。
私に触れている彼の唇が、黒く蝕まれていくイメージが頭によぎる。
―やめて…―
頭の中で彼の姿が闇に覆い隠され、見覚えのある人物の姿に変わる。
―「あんたは幸せになんかなれないのよ…」―
母と慕っていたはずの女性がそう言って私の首を絞める。
幻覚だと分かっているのに息が苦しくなって呼吸ができない。
―「私からあの人を奪ったんだから、あんたなんか呪われてしまえばいい」―
偽りの母の幻影がそう言って私の首を絞める。
―「あんたにかかわる人間は皆不幸になればいい…」―
偽りの母の幻影が霞み、今度はクラッズの首を締め始める。
嫌だ…。
ガタガタと体が震える。
偽りの母の手の中で苦しげに彼が呻いている。
「やめて…!!」
次の瞬間、私の手は幻影ではなく、現実の彼の頬を叩いていた。
287 :
マルメンライト:2011/05/15(日) 23:34:40.08 ID:1kuiZ4PU
頬がじりじりと痛む感触にボクはようやく正気を取り戻す。
「あ…ああ…」
彼女が涙を流して震えていた。
「あ…」
自分がようやく何をしていたのかに気づき、罪悪感がこみ上げる。
「…ごめん」
ボクは今、何をしようとした?
彼女が抵抗をしなければ、ボクは何をするつもりだった?
彼女を、どうしてしまうつもりだった?
頭の中によぎった想像を頭を振って追い払う。
「ごめんディアボロス…」
彼女を傷つけてしまうところだった。
彼女を解放するように体を離す。
「ち…違うの…ごめんなさいクラッズ…そうじゃないの!!あなたを殴ろうとしたんじゃないの!!」
だが、離れようとしたボクの服を彼女が引っ張って止める。
「嫌わないで…お願いだから嫌いにならないで…!」
すがるように泣き叫びながら彼女がボクの手を強く引く。
「ディ…ディアボロス?」
彼女の様子が明らかにおかしかった。
「もうやだ…、もう私嫌だよ…クラッズのことが大好きなのに…何で…何で」
突然の彼女の告白に頭が揺さぶられるような衝撃が走る。
―ディアボロスが…ボクを…好き?―
どうして彼女が震えているのかがわからにない、なぜ彼女がおびえているのか分からない。
ボクにおびえていると思っていたのに、彼女の眼はボクを見ていない。
何か別の、全く別のものに脅えるように彼女が自分の肩に爪を立て、ガリガリと掻きむしり始める。
「血…そうだこの血が汚いから…汚いからいけないんだ…」
突然何かを思いついたように、彼女は虚ろな目でどこかを見ながら、ナイフを取り出して、自分の手首にそれをあてる。
突然の彼女の行動に驚いてボクは彼女を取り押さえた。
「ディアボロス!!何やってんの!?」
「放して!放してよクラッズ!!全部捨てないと綺麗になれないの!!こんな私じゃあなたと一緒に居られないの!!」
泣き叫びながら彼女は何度も自分の手首を切ろうとナイフを押し当てる。
「落ち着けこのバカ!!」
何度止めようとしてもやめない彼女に耐えきれず、思わずボクは彼女の耳元でそう叫んだ。
驚いた表情で彼女がナイフを取り落とした隙をついてボクはナイフを奪い取りベルトの内側に差し込んだ。
「あ…」
ようやく彼女の眼に理性の光がともり、自分のしていた行動に今度は肩を震わせ始める。
「ディアボロス…一体、何が…」
「ごめん…」
そう言って彼女を起こそうと手を伸ばす。
だがその瞬間、ディアボロスが何かに気付いたように叫んだ。
「クラッズ…危ない!」
「え?」
あわてて背後を振り向いた瞬間、何かがボクを弾き飛ばす。
そのままボクは壁に向かってたたきつけられた。
288 :
マルメンライト:2011/05/15(日) 23:35:25.00 ID:1kuiZ4PU
「がっ…!?」
固い壁にたたきつけられ、一瞬、呼吸ができなくなる。
それでも何とか自分を吹き飛ばしたものを見る為に彼女の方を見ると、黒い虚ろな影が彼女を取り囲んでいた。
―マズイ…!―
襲撃者、その見た目と完全に一致する。
彼女に完全に意識を取られ警戒を怠った自分に舌うちした。
「こちらクラッズ…襲撃を受けた。座標…X13:Y11」
首にかかった魔石を掴み直ちに仲間に連絡する。
だが、反応は何も返ってこない。
「無駄だよ…、彼らも今頃、ボクの呼びだした闇の精霊に襲撃されているころだからね」
コツコツと足音を響かせながら、黒い虚ろな影の向こうに、エルフの少年が姿を現す。
「スティクス…」
余裕の表情で現れた少年をボクは強く睨みつけた。
「やぁ、久しぶりだね…クラッズ」
うすら笑いを浮かべながら、スティクスは手をたたく。
闇の精霊、ドラッケンの生徒が襲撃される、それらの断片が彼の姿を見た瞬間全て繋がった。
「襲撃者の正体は…キミか」
うかつだった、闇の精霊と聞いた時点で彼のことを思い出すべきだったのに、完全に失念してしまっていた。
剣を引き抜き、銃を構える。
「おっと…駄目だよクラッズ、こっちには人質がいるんだからね?」
彼がそう言うと、まだ泣き続けているディアボロスを3体の闇の精霊が取り囲む。
「…ちっ!」
舌打ちをしながら剣と銃を投げ捨てると満足そうにスティクスが笑った。
「それで良い、できれば君にはボクの仲間に入ってほしいからね」
偉そうに胸を張りながら笑うスティクスが癇に障る。
「ディアボロスを人質に取ってる分際でふざけたこと言わないでほしいね」
そんなボクの言葉にどこか楽しそうに笑った。
「君は本当に分かりやすい、君は昔からそうだ、いつもディアボロスのことを見ている。
よっぽど彼女に執心の様だね」
くすくすと笑いながらスティクスは闇の精霊を次々に生み出した。
状況はどんどん不利になっていく、彼女の武器はボクが奪ってしまった。
ある意味、ボクの武器の代わりにならなくはないが、彼女がとらわれたままでは、下手に動くこともできない。
取り囲まれながらもボクは必死で反撃の糸口を探しながらスティクスのことを睨みつけた。
―動かないで―
口の動きだけで彼女に告げると彼女が小さくうなづいて返す。
そんな僕らを見ながらスティクスはニヤニヤと薄気味悪い笑みを浮かべていた。
289 :
マルメンライト:2011/05/15(日) 23:36:25.43 ID:1kuiZ4PU
「ねぇクラッズ…君はディアボロスのことが好きなようだけど…君は彼女が呪われた子だとは知らないのかい?」
「ディアボロスが…呪われた子?」
くすくすとどこか楽しそうに笑いながらスティクスがそう言うと、ディアボロスが驚いた表情で彼を見上げた。
「なんで…なんで、あなたが…」
ガタガタと震えながらディアボロスがスティクスを見る。
「ボクの新しく所属している学園の校長は物知りでね…いろんなことを知っているんだ。
だからボクは君の真実を知っている」
「やめて…クラッズに言わないで…私の秘密を…言わないで…」
ボロボロと涙を流しながらすがるように言う彼女をスティクスはどこか楽しそうに見つめている。
―やめろ…―
彼女を泣かせるな。
彼女を苦しませるな。
頭が沸騰しそうなほどの殺意が僕を塗りつぶす。
「ねぇクラッズ知ってるかい…?彼女はね…」
「やめて…、お願い…言わないで!私の秘密を言わないで!!」
―やめろ…―
泣き叫ぶ彼女をあざ笑うようにスティクスは楽しそうに…笑った。
「彼女はね…父親と実の姉の間に生まれた、禁忌の子供なんだ」
「な…に?」
「あ…ああ…あああ」
にわかには信じられず、思わず彼女の方を見ると、ボクを見た彼女の顔が絶望に染まっていく。
「いやぁああああああ!!!!」
彼女の絶叫が辺りに響いた。
290 :
マルメンライト:2011/05/15(日) 23:37:22.96 ID:1kuiZ4PU
『こちらクラッズ…襲撃を受けた。座標…X13:Y11』
胸元の魔石からどこか焦っているようなクラッズの声が聞こえてくる。
「くそっ…!やはり分けたのは俺の判断ミスか!!」
苛立たしそうにリーダー殿が叫んで闇の精霊を切り捨てる。
「今更、そんなことを言っている場合ではない!さっさと片付けて合流するぞリーダー殿!!」
彼の言葉にそう返しながら私は自分に迫ってきた精霊の頭を魔法で吹き飛ばす。
動き自体は単調で簡単だがいかんせん数が多い。
―これは…四の五の言っている場合ではないね…―
瞬間的にそう判断し、リーダー殿と背中を合わせる。
「リーダー殿、悪いがここは私に任せて、セレスティアやフェルパーと合流してくれ。彼女達は大群との戦いには向いていない!」
「だが、お前はどうするんだ?」
襲いかかってきた精霊を切り倒しながらリーダー殿が私を見る。
「何…心配はない、ただ、ここに君がいると、私が全力を出し切れん…」
私の隠していることを彼らに知られるのはまだ早い。
「勝算はあるのか?」
リーダー殿が私に呟く。
「無論…このバケモノどもは“みたことがある”ゆえに…私を傷つける事は出来ない」
襲いかかってきた精霊を吹き飛ばしながらそう言うと、リーダー殿が静かに呟く。
「分かった…お前を信じよう…」
「ああ、任せてくれたまえ…」
最後に少しでも私の負担を減らすかのように、リーダー殿が闇の精霊の群れを薙ぎ払い、転移符を懐から取り出す。
「先に行く…遅れるな」
「ああ、すぐに追いつくよ…」
私がそう笑うと、彼も笑って姿を消した。
今頃、フェルパー達と合流出来ているはずだ。
―これでいい…―
たった一人になった私を闇の精霊が取り囲む。
その精霊の群れを見ながら、私は久しぶりに昔の口調に思い出して笑った。
291 :
マルメンライト:2011/05/15(日) 23:38:01.00 ID:1kuiZ4PU
「ははは…貴様らみたいなモブキャラが…俺を殺そうなんざ百年早い…」
俺の言葉に怒ったのか、闇の精霊が一斉に飛びかかる。
だが…それは私にとって“未知ではない”。
「起動を宣言…どれだけ貴様らがあがいても…俺には絶対届かない」
ローブがばさばさと羽ばたいて、幾何学的な文様を空中に描き出す。
互いに尾に噛みついた、絡み合う2匹の蛇の紋章が私の前に浮かび上がる。
その壁にぶつかった闇の精霊が、一つ残らずはじけ飛んだ。
「俺を傷つける事が出来るのは…未知であって既知ではない…」
もはや私に触れることすらできなくなった闇の精霊を見わたし、俺は呪文を紡ぎ始める。
「あー、邪魔だぞ。俺はこれから急ぎの用事があるんだ…その邪魔だけはしないでくれ」
闇の精霊が集まった魔力に脅えるように私に飛びかかる。
しかし、その攻撃の全て、私に届くより先に蛇の文様に噛み砕かれる。
「無駄なんだよ…滅びろ劣等。ビッグバム!!」
私の言葉に応えるようにタロットカードが光を放ち、魔力を増幅し、解き放つ。
閃光がきらめき迷宮が大きく振動した。
暴風が吹き荒れ、闇の精霊がことごとく砕け散る。
後に残るのはただ一人、不気味な文様を纏わせたおとぎ話の魔術師のようなフェアリー一人。
「やれやれ…少しばかりやり過ぎてしまったようだね」
壊れてしまった壁を見ながらフェアリーはいつもの芝居がかった口調で笑う。
「終了を宣言」
フェアリーの言葉に応えるように蛇の文様がローブに吸い込まれるようにして消滅する。
「おっと…」
ふらりとよろけながらフェアリーは自嘲気味に呟いた。
「やれやれ…やはり…昔の遺産など、そうそう使うものではないね」
そう言ってフェアリーは懐から転移符を取り出し、クラッズの言っていた座標を思い出す。
だが、どうしてもうまく思い出せなかった。
失われた魔力と共に、記憶の一部も欠落している。
「ろくな代償を持ってないね、もう少し…使い勝手のいいものにしてくれれば良いものを…」
だれともなくフェアリーが呟いて、その姿が掻き消えた。
292 :
マルメンライト:2011/05/15(日) 23:40:26.79 ID:1kuiZ4PU
彼女が泣いている。
なぜ泣いているのか、そんなことは簡単だ、ボクの目の前のバカが、彼女の傷を抉ったからだ。
「見ないで…クラッズ…私を見ないで!!私のことを…見ないでよ…」
ボロボロと彼女が涙を流しながら叫び続ける。
彼女の精神の状態を現すかのように、辺りの意志が無茶苦茶な軌道を描いて飛びまわっている。
「あはははは!!どうだいクラッズ…これでも君は彼女を愛せるか?
彼女という呪われた存在を君の愛で救えるのか?」
何が楽しいのかスティクスは腹立たしい笑いを浮かべている。
―笑ってんじゃねぇよ…―
どうしようもなく、胸糞が悪い。
久しぶりに頭が煮えそうな怒りがボクの頭を塗りつぶす。
「…黙ってろスティクス」
ついに怒りがこらえられず、言葉にこもって表れた。
「何?」
スティクスがボクをいぶかしんだ様子で見ている。
そんな彼を無視してボクはディアボロスに呟いた。
「ねぇディアボロス…君はボクのこと好き?」
彼女が呪われた存在だ?
笑わせるな…、彼女が呪われた存在なら、ボクはもっと呪われてる。
「え…?」
ボクの言葉に驚いたように、ディアボロスが顔をあげる。
「さっきはごめんね…ディアボロスの胸触っちゃって。…しかもキスまでしちゃってさ…
キミが殴ってくれなければ危うくキミを犯すところだった」
「クラッズ…?」
いつも頭につけていたお面に手をかける。
少し昔を思い出して、どうしようもない笑いがこみ上げた。
「ねぇディアボロス…キミは自分が汚いって言ってたけどさ…
ぼら、どうだい?ボクだって十分汚れてるだろ?」
仮面で表情を覆い隠すと、昔を思い出して頭がクリアになっていく。
「ディアボロス…人を殺したことはある?」
たとえ彼女の生まれが呪われていても、昔のボクほど呪われてはいない。
「ボクはあるよ」
「…え?」
ディアボロスの声が凍りついたのが聞こえた。
「もともとは暗殺者として育てられてたからね。知ってる?暗殺者を育てるとき、必ず一人、年下の子と育てられるの、で、まず最初にその子を殺すんだ…」
もしかしたら嫌われたかもしれないが、そんなことはどうでも良い…。
「ボクの体はとっくに汚れてる、君の呪いなんかじゃ汚せない…。それ以上にこの手は血で汚れてる」
「クラッズ…」
今のボクがするべきことは…彼女を泣かすやつら、彼女に危害を与えるもの。
その全てを壊すだけ、ほんの少しだけ昔の自分を思い出し、自らの中にあるスイッチを切り替える。
293 :
マルメンライト:2011/05/15(日) 23:41:24.62 ID:1kuiZ4PU
「ク…クラッズ!そこを…!」
動くな、とでもいうつもりだったのか、そのスティクスを狙って彼女から奪ったナイフを投げつける。
同時に剣と銃に走り寄り蹴りあげたそれを空中で掴んだ。
「動くなスティクス、精霊も動かすな。さすがに操ってるお前が死ねば、
こいつらだって消えるだろ?」
ボクの言葉にスティクスの体が震えた、その頬には今の攻撃でついた傷が確かに刻まれている。
「ク、クラッズ、冗談はやめてくれ、僕と君は友達だろう?」
彼女を傷つけておきながら、スティクスがそう言ってボクに笑いかけた。
…ような気がした。
だけど、その表情は仮面のせいで分からない。
当たり前だ、これはそのためにあるのだから。
「ああ、そうだね、友達だ…」
「よ…よか…」
たとえどれだけ、相手が親密なものでも確実に殺せるように、
相手の表情を見なくて良いようにボクはこの仮面を纏う。
そう、たとえそれが昔の友人であっても。
「だが彼女を傷つけたら話は別だ、死ねよスティクス、あの世で彼女に詫びろ」
何の躊躇もなく、ボクは引き金を引いた。
「ボクを守れ闇の精霊!!」
自分を守るため、ディアボロスを取り囲んでいた精霊がスティクスのもとに集まる。
その瞬間を見過ごさず、ボクは走ってディアボロスを抱きかかえた。
「大丈夫?怪我は無い?」
仮面を外してそう言うと彼女が驚いた眼でボクを見ている。
「触らないで…汚れちゃう。…クラッズが汚れちゃう…」
肩に触れた手を彼女が涙を流しながら振り払おうと暴れる。
再び呪いに縛られた彼女がボクにそう言うがやはり彼女の眼はボクを見ていなかった。
だからその肩を掴んで思いっきり抱きしめた。
「汚せないって…言っただろ?」
「クラ…」
「ごめん、少し黙ってディアボロス」
まだ何かを告げようとした彼女の顎を掴んで再び強引に唇を奪う。
驚いた表情で彼女の眼が見開かれ、ボクのことを押しのけようとするが、その抵抗を無視して彼女の口内を蹂躙する。
次第に彼女の体から力が抜け、暴れまわっていたものが地面に落ちた。
「少しは…落ち着いた?」
ボクの言葉に彼女が恥ずかしそうな表情で首を縦に振る。
「よかった…ところでディアボロス…一つ、伝えたいことがあるんだけど良い?」
「え?」
ボクの言葉に彼女が首をかしげる。
もはや何が起こっているのか分からないんだろう。
だから、そんな彼女に付け込んでボクはその言葉を口にした。
「君がもしボクを好きなら…ボクの恋人になってよ。ボク、君が好きなんだ」
そういって笑うと彼女の眼に涙が浮かぶ、でもそれは悲しみじゃなくて…。
「…うん、私なんかで良かったら…。あなたの恋人になりたい…あなたのモノに、なりたいよ…」
初めて見る彼女の本当にうれしそうな顔に心が躍る。
294 :
マルメンライト:2011/05/15(日) 23:43:56.73 ID:1kuiZ4PU
「クラッズ!よくも…死ねぇ!」
スティクスが叫んで更に精霊を呼びだしてくる。
「うるさいな…黙ってろドサンピンが…!」
人が良い気分に浸ってるのに、ガタガタとうるさいこと仕方ない。
「少しは空気読んでくれない?KYにもほどがある。だから君はハブられるんだよ!」
「黙れーー!!」
スティクスが叫ぶのと同時に襲いかかってくる闇の精霊を剣で切り飛ばし、逃げるスティクスを追っているように見せて、落ちた彼女のナイフに駆け寄って彼女に向かって蹴りつける。
「ありがと…クラッズ」
小さく彼女が囁くとナイフがひとりでに宙を舞い始める。
彼女が立ち上がって呼吸を整えるようかのように一度目を閉じ、息を吐いた。
静かに再び彼女が目を開くと取り囲んでいた精霊が細切れになって宙に舞う。
「な…に…」
豹変した彼女の様子にスティクスが驚いた声をあげる。
「ねぇ…クラッズ…もう一度好きって言って…」
「大好きだよ…ディアボロス」
「ありがと…クラッズに好きって言ってもらえたからもう何にも怖くないね」
嬉しそうに笑った彼女は周りを取り囲む精霊を見ると、クスリと笑った。
「あのさ…もう飽きちゃったから消えてくれる?」
彼女の眼が怪しい光を放つ。
同時に、無数の斬撃が辺り一帯に走り回った。
「クラッズ…本気だとどこまでいける?」
カツカツと靴を鳴らしながら彼女がボクの隣に立つ。
「どこぐらいまでいってほしい?」
仮面で顔を覆いながら彼女に笑う、ボクに彼女は背中を合わせて笑った。
「少なくとも、皆が来るくらいまで時間は稼ごうか」
踊るように僕らは共にかけだした。
295 :
マルメンライト:2011/05/15(日) 23:46:12.50 ID:1kuiZ4PU
切り捨てて失われた精霊を魔力を使って補充して狂ったように、スティクスが僕らに襲いかかってくる。
切り捨てた数は2ケタ等軽く超えていた。
「ボクはな…ボクの精霊は…最強なんだよ!!」
「…さすがに辛いかも…」
「…奇遇だねボクもだ」
彼女と背中を合わせながら笑う。
新たに呼び出された精霊が襲いかかってくる。
―ここまでなのかな…―
だが、そう思った瞬間聞き覚えのある声が辺りに響いた。
「そうか、それは良かったな」
瞬間に白い影が走り抜け新たに呼びだされた精霊が、一つ残らず砕け散る。
「…だがこの程度ならベッドの上のアイツの方がよっぽど最強だぜ?」
マフラーをなびかせながら、獣のような笑みを浮かべて、フェルパーが笑った。
「闇の魔力で強化されたボクの精霊を拳で殴り飛ばしただと…!?」
「こちとら毎晩ミルクを腹いっぱい飲まされて強化されてるんでね…!」
獰猛に笑いながらフェルパーは“狂犬”と呼ばれた2つ名にふさわしい勢いでスティクスの精霊を吹き飛ばしていく。
「くっ!?」
その光景に驚愕の表情を浮かべていたスティクスは、迫りくる何かをよけるようにあわてて飛びのいた。
「あらら…外しちゃいました」
どこか間の抜けた笑い声を響かせながらセレスティアが物騒な鎌を薙ぎ払う。
「あとちょっとで首を切り落とせたんですけどねぇ…」
「こらセレスティア、人に恥ずかしいセリフ言わせておきながら外すんじゃねぇよ。
…私が恥さらしただけじゃねぇか」
どこか恥ずかしそうにそういうフェルパーがセレスティアを睨むと、なぜかハンカチで鼻を押さえた彼女はいつものように笑って答える。
「いやぁ、よかったですよ。とくに毎晩ミルクをお腹いっぱいとか。アドリブにしては…もう、もう意味深過ぎて私、鼻血が…」
「ぼ!防御を!!」
そんな彼女たちを無視し、なんとか彼女の攻撃を回避したスティクスが既に呼び出している精霊を集めるかのようにそう叫んで印を結ぶ。
だが、その言葉に応える精霊はどこにもいない。
「なるほど…貴様が襲撃者か」
大剣を背中に担ぎながらバハムーンが最後の闇の精霊を踏み潰す。
「何で…、何でボクの精霊はどうした!?」
「何…簡単だ、切り倒したただそれだけだ。そしてこの場に居るのは
フェルパーが今先ほど吹き飛ばした…。新たに呼ぶ隙は…ないぞ?」
296 :
マルメンライト:2011/05/15(日) 23:47:56.61 ID:1kuiZ4PU
「バハムーン…」
僕らが彼を見ると彼がどこか楽しそうに笑った。
「すまんなクラッズ、ディアボロス、二人きりのところを邪魔をした」
バハムーンの言葉にボクの腕の中でディアボロスが頬を染める。
「別にいいよ、ただ今度から気をつけてね」
「善処しよう」
ボクの言葉にバハムーンが笑う。
そんな僕らを見ながらゆらりとスティクスが立ち上がる。
「…はは、ちょっと驚いたけど6人全員無事とはいかなかったみたいだね」
集まったボク達を見ながらスティクスがどこか歪んだ笑みを浮かべる。
確かに彼の言うとおり、ここにはフェアリーの姿が無い。
「…バハムーン、フェアリーは?」
「あいつは…」
バハムーンがそう言って口を開くがスティクスの甲高い笑い声がそれを遮る。
「ボクの闇の精霊に囲まれて無事なわけが無い、次は君たちの番だ!」
高らかに叫んでスティクスが杖を振り上げる。
その瞬間スティクスの真横の壁が吹き飛んだ。
「おやおや…こんなところにいたのかね?襲撃者は一体どこにいる?」
いつもの芝居がかった口調で笑いながらフェアリーがふわふわとこちらにやってくる。
そんな彼に示すように僕らはそろって彼の破壊した壁を示した。
正式には壊れた壁に埋もれたスティクスを。
「はて?」
フェアリーが僕らに近づきながら後ろを振り返る。
「…今日は…ここまでにしておいてやろう…」
ボロボロの体を引きずりながらスティクスが立ち上がる。
「…いや、悪いけどスティクス、君、満身創痍だから…」
「うるさい…ボクは闇の生徒会の一員なんだ。この程度で負けを認めるつもりはない」
ギラギラとした目で僕らを見ながらスティクスの体が闇に包まれる。
「この借りは…いつか返す」
お決まりのセリフを呟いて、スティクスの姿は消えていった。
297 :
マルメンライト:2011/05/15(日) 23:49:19.52 ID:1kuiZ4PU
「逃げられちゃいましたね…」
静かになった迷宮にセレスティアのどこか間延びした声が響く。
「逃げ足の速いやつだ、だがもはや正体も分かった以上注意を呼び掛けておけば問題ないだろう」
静かに剣を収めながらバハムーンが呟く。
「なぁ…ところでよ」
ちらりとフェルパーがボクを見た。
正確にはボクとボクの腕の中に収まっているディアボロスを、
「私ら邪魔じゃないか?」
ディアボロスの顔が真っ赤に染まり、あわててボクから体を離す。
「獣殿、そういう時は黙って何もいわず立ち去るのが、正しいあり方だと思うよ?」
どこか疲れたような表情をしたフェアリーがそう言って笑う。
みんなの生温かい視線がボクらに注がれていた。
ディアボロスは恥ずかしそうに顔をうつむかせるだけで何も言わない。
―あー…まぁ、いっか―
開き直ってボクは彼女を抱き寄せる。
「ごめん皆、先学園帰って報告しといて。ちょっと今日一日二人っきりにさせてほしい」
「ク、クラッズ?」
驚いた表情を浮かべるディアボロスをしり目にバハムーンが笑う。
「分かった、宿が決まったらそれだけおしえてくれ。明日、昼過ぎに迎えに行こう」
ボクの肩を叩いてバハムーンが皆を見渡す。
「帰るぞ、早いうちに学園に知らせる必要がある」
彼の言葉に3人が思い思いの言葉を返し、去っていく。
二人きりになったボクは彼女の手を引き立ち上がる。
「行こう、ディアボロス…」
「…うん」
どこか恥ずかしそうにしながら彼女は小さく笑うのだった。
298 :
マルメンライト:2011/05/15(日) 23:50:07.33 ID:1kuiZ4PU
冷たい風が湯上りで火照った体に気持ち良い。
ローズガーデンの小さな宿に二人きり、たった一つの部屋だけ取って私達は今ここにいた。
「隣良い?」
「同じ部屋だからとなりも何もないけどね」
背中からかけられた彼の声にそう言ってうなづくと、彼は静かに私の隣に座った。
「…別に、膝の上に座ってもよかったのに」
冗談交じりで呟くと彼がいつものように笑う。
「ボクが膝に座ったらまたディアボロスの胸に触れちゃうよ」
彼の飛ばす冗談に私は笑って答えた。
「そしたら…また私をエッチなことしたくなる?」
「…そうだね、したくなるかも、むしろぐちゃぐちゃにしてどろどろにしちゃうかもね」
まるで私を脅かすように笑う彼の手をとり自分の胸に触れさせる。
「…クラッズ、本当に私のこと…好き?」
真剣な表情で彼を見ると静かに彼がうなづいた。
「当然、そうじゃなければあんなことしないよ」
迷宮でしたことを思い出したのか彼が苦笑いを浮かべる。
嬉しい、本当に嬉しい…だけど、私の心はどうしようもない不安で押しつぶされそうだった。
「ねぇ…クラッズ、抱いて。本当に私が好きなら…私のこと…抱いてほしい」
呪われた私が、彼に愛されているのだという証が欲しかった。
彼の手を握りそう告げると、彼がもう片方の手で私の手を包んで耳元で囁く。
「ホントに良いの?」
どこか緊張した面持ちで告げる彼に首を振ってこたえると、そっと彼が私の顔に手を伸ばした。
顔が彼に向かされて私の唇に彼の唇が触れる。
また私の心を縛っている鎖が黒い影となって彼を覆っていくイメージがわきあがり体が震える。
「う…あ…」
怖い…彼を汚してしまう。
そんな気持ちが湧き上がってくる。
だがそんな私の気持ちを察したのか、彼が私の手を掴み、唇を離した。
「いったろ?ディアボロス、君ごときの汚れじゃボクは汚せない」
大胆不敵な笑みを浮かべ、クラッズが私を床に押し倒す。
彼を覆う黒い影が彼によって引き裂かれる。
「ボクが君を汚してやる」
彼の言葉に胸がドキリと高鳴った。
あの時は抵抗できたのに、今度は全く抵抗できそうにない。
「さて、今度は抵抗しないんだね…、何も抵抗しないならこのまましちゃうけど良いの?」
楽しそうに笑って彼が制服の上から私の胸を掴む。
もどかしいような刺激が皮膚の下を通って私をくすぐる。
ドキドキと心臓がどんどん高まっていく。
「うん…私をクラッズで汚して…」
私がそう言うと彼がどこか楽しそうに笑って口づける。
呪いはもはや私を縛らなかった。
299 :
マルメンライト:2011/05/15(日) 23:51:04.88 ID:1kuiZ4PU
彼の手が私の制服の隙間から潜り込んでくる。
「ふっ…」
これから自分がされることを想像すると、胸の鼓動がどんどん高まっていく。
私はこれから汚される幾度となく繰り返した自慰をなぞるように彼に犯されるのだ。
もぞもぞと自分の服の下で彼の手が動きまわっている。
くすぐったいような感覚がざわざわと背中をかけぬける。
「ふはぁ…」
「ディアボロスの肌、スベスベしてて気持ち良いね」
首筋を温かい感触がなぞりあげ、体が優しくさすられる。
「ホント…?」
「うん、汚すのがもったいないくらいだけど…。ドロドロに汚れたキミも見てみたい」
笑いながらクラッズがプチプチとボタンをはずしていく。
恥ずかしくて、顔が熱い、期待で胸の鼓動はどんどん早くなってうるさいくらいになっていた。
「ああ…」
全てのボタンをはずした彼がどこか嬉しそうにため息をついた。
「ど…どう?クラッズに喜んでもらえる?」
私の言葉に笑って彼が下着の上から胸に触った。
「うん、すごく綺麗だよ…。ディアボロス」
「うれしい…」
彼の言葉が嬉しくて、涙が勝手に溢れてくる。
「ディアボロスってホントは泣き虫だよね」
そんな私の頭を撫でながら彼が笑う。
「ちがうもん…泣き虫なんかじゃないもん」
涙はボロボロと溢れて止まらない。
「強がらなくて良い…、キミがどんな子だってボクが受け入れる。こんな血に汚れたボクで良ければ…いくらだって抱きしめてあげる」
「クラッズは汚れてなんかないよ…」
え?と彼が呟いた。
「だって、あなたは優しいから…過去なんか関係ない。私にとってあなたはクラッズ、とても大切で…愛しい人」
私の言葉に彼が笑う。
「キミを好きになって…本当に良かった」
パチンと彼が私の胸を覆う布をはずす。
「それじゃ…触るよ…?」
「うん…私にあなたを感じさせて…」
耳元で囁くと、彼は優しく私の唇を奪った。
彼女と唇を重ねながら、その唇を舌でこじ開ける。
その行為に彼女は少し驚いた眼でボクを見ながらも、おずおずと自らボクの舌に自分の舌を絡めてくる。
―すごく可愛い…―
戸惑いながらも歩みよってくる彼女の姿は驚くくらいの可愛さに満ちている。
「ふぅ…」
マシュマロのようにやわらかな胸を優しく揉むとピクリと眉を震わせながら気持ち良さそうに声を漏らした。
彼女の興奮を表すように小さな桜色の膨らみが少しずつ自己主張するように立ち上がってくる。
彼女の胸を揉みながらボクはそっと膨らんだ突起を指で挟んだ。
「ふぁ!」
とたんに彼女が可愛らしく声をあげて体を震わせる。
300 :
マルメンライト:2011/05/15(日) 23:51:53.60 ID:1kuiZ4PU
「敏感なんだね…ディアボロス…」
ボクの言葉に彼女が顔を赤く染める。
「クラッズにこうやってされることを考えていつもしてたから…」
「え?」
ボクの言葉に彼女は自分が何を言ったのか思い出し、沸騰してしまいそうなほど顔を真っ赤に染める。
「いつもしてたって…何してたの?」
彼女の突起を指で転がしながら彼女の耳元で囁く。
「それは…」
恥ずかしそうな彼女の表情がボクのイタズラ心をくすぐる。
「いってよ…ディアボロス。言わないならやめちゃうよ?」
少し強く彼女の乳首をつまんだ。
「きゃふっ!言うから…言うから…もっと気持ちよくして…。最後まで私を汚すって約束して…」
「いいよ…キミの中が一杯になるまで汚してあげる…」
耳元で囁くと期待に体を震わせながら彼女は小さく呟いた。
「オナニー…してました…クラッズにこうされることを思いながら。毎日寝る前…ずっと一人でしてました…」
羞恥で体を震わせながら呟く彼女が愛おしい。
「良く言えたね…偉いよディアボロス…」
彼女の頭を撫でながら、濡れた彼女の下着に手を入れる。
「あ…クラッズの手が…」
「うん…優しくするね」
「…うん」
彼女のそこは驚くぐらいの湿り気を帯びていた、熱くトロトロとした感触をあじわうように、ボクは優しく彼女の入り口をなであげる。
「ふぁ…、気持ち良い。…クラッズ…中の方も掻き混ぜて…」
懇願するように呟く彼女にうなづいて熱いそこに指を差し入れる。
「くふぅ…!」
プルプルと彼女が肩を震わせる。
「うわ…あつくて…キュウキュウだ…」
彼女の中は異物であるはずのボクの指を逃がさないようにするかのように強く締め付ける。
火傷しそうなほどの熱さのそこをボクはゆっくりとかきまぜた。
「ああ…あああ…ああ!!」
「ここだね?」
「そこ…!そこ良い!!」
彼女が強く反応したところを見つけ、そこを重点的に攻めるとガクガクと彼女が頭を縦に振った。
彼女の額に汗が浮かび、プルプルと震えながら快感に耐える彼女の姿はとても綺麗で美しい。
思わず、ボクは目の前で美味しそうに揺れる二つのふくらみにかぶりついた。
「くはぁ!」
ビクンと彼女の体が跳ね上がる。
「だめぇ…クラッズ…このままじゃイっちゃうよ…。
初めてはあなたのでイキたいの…早く…入れて、我慢できない」
荒い息を吐きながら体を絶えず震わせる彼女の背中をなであげる。
「わかった…痛いかもしれないけど…我慢してね…」
コクコクと無言で彼女が首を縦に振る。
ボクはズボンと下着を脱ぎ棄てて、パンパンに張ったそれを解放する。
初めて見るボクのモノを彼女はうっとりとした眼で見つめていた。
301 :
マルメンライト:2011/05/15(日) 23:53:22.54 ID:1kuiZ4PU
「クラッズの…これが私を…。私のことを貫くんだよね?」
優しくボクのモノを触りながら彼女がどこか嬉しそうに笑う。
「うん…覚悟してよ?」
下着をずらして彼女のそこに押し当てながら言うと彼女が笑う。
「いいよ…私の初めて…ズタズタにして…。私のこと…ドロドロに犯して…」
彼女がボクの頬を撫でながら呟く。
「じゃあ…いくよ…」
彼女の腰を掴んで狙いをしっかり定めて腰に力を入れる。
「来て…クラッズ…」
ミシミシと音を立てながら彼女の中をボクが引き裂いていく。
ぴったりとじた彼女の割れ目をこじ開けるようにボクのモノが彼女の中にのみ込まれていく、ざらざらとした彼女の膣壁と熱い彼女の中がボクの侵入を拒むかのように強く締め付けてくるのがたまらなく気持ち良い。
「あ…ああ…クラッズが…入って…」
引き裂かれる痛みをこらえながら彼女がボクの肩を掴む。
中ほどまで埋まったところで、ボクのモノは薄い壁のようなものに止められた。
彼女が穢れを知らぬ乙女である証、その証拠がボクのモノのすぐ目の前にある。
「クラッズ…早く…このままじゃ…私…」
何かをこらえるように彼女がボクの腰に手をまわした。
「多分…痛いよ?」
「いいから…早く来て…」
「分かった…」
焦るような彼女の声にうなづいてボクは勢いをつける為に腰を引く。
そして彼女の腰を引き寄せながら、ボクは自分の腰をたたきつけた。
「きひぃぃ!」
ビクンと彼女が大きく震えて背中をそらせて体を震わせる。
「ああ…駄目…」
ビクビクと体を震わせながら彼女はしっかりボクの体を抱きしめる。
ぐったりとした様子でボクにもたれかかる姿はまるで…。
「もしかして、ディアボロス…今イった?」
ぐったりと体を投げ出しながら彼女は恥ずかしそうに首を縦に振った。
「ごめんなさい…我慢できなくて…入れられただけで…軽くイッちゃった」
「痛く…なかった?」
心配になって顔を覗き込むと彼女が静かに首を横に振る。
「そんなに痛くない…むしろ…すごくうれしい…。私の中…クラッズで一杯なの」
そう言いながら彼女が自分のお腹をそっと撫でる。
ムクムクと自分のモノが彼女の中で更に膨らむのをボクは感じた。
「ふぁ…クラッズ…おおきい…」
「ごめん、ディアボロスの中が気持ち良いから…」
彼女の中はボクのことを離さないかのようにキュウキュウと締め付けている。
彼女自身の仕草も合わさって今にでも爆発してしまいそうだった。
そっと繋がった場所を見ると、ボクを伝わって彼女が純潔を失った証がぽたぽたと床に落ちている。
302 :
マルメンライト:2011/05/15(日) 23:54:20.46 ID:1kuiZ4PU
つられてそこをみた彼女はどこか恥ずかしそうに笑った。
「クラッズので…私の広がってる…」
「…だね」
彼女の言葉にボクも笑った。
ぴったりと閉じていたはずのそこは限界まで広がって根元までしっかりボクのモノを飲み込んでいる。
「…大丈夫かな?」
どこか不安そうに彼女がボクを見上げる。
「何が?」
彼女の頭を撫でながらそう言うと恥ずかしそうに彼女が呟いた。
「クラッズの形に…広がったままになっちゃいそう…」
そう言って彼女は再び自分のお腹を撫でる。
それに合わせて彼女の中がキュッとボクのモノを締め上げた。
「ごめん、ディアボロス動かすよ」
たまらなくなってボクは彼女にそう告げてゆっくりと腰を引いた。
「うん…くぁぁ…」
ボクを離さないかのように絡みついてくる彼女の中を振り切るようにズルズルと引き抜いていく。
「ふぁぁ…」
入口まで引き抜き、中に沈めていくと今度はボクの侵入を拒むかのように強く押し返してくる、それを無理やり押しのけるようにして突きいれると先がコツンと彼女の一番深い場所に当たった。
「はぁ…はぁ…」
「痛い?ディアボロス?」
肩を震わせながら荒い息を繰り返す彼女のそう告げると彼女が首をブンブンと横に振った。
「すごく…気持ち良い。もっと早くても大丈夫、だから来てクラッズ。もっと…私を気持ちよくして…」
彼女の言葉がボクの理性を狂わせる。
「分かった…。それじゃ、激しくするよ…」
しっかり彼女の腰を抱きしめ、先ほどよりも激しく抜き差しを繰り返す。
彼女の中を削り落とすように、時折円を描くように動かしながら腰を振ると、彼女が可愛らしい悲鳴を上げた。
「すごい…こんなに…私の中でクラッズが。もっとほしいよ…もっとはやく!」
ボクの腰に手をまわしながら彼女が耳元で荒い呼吸を繰り返しながら懇願する。
それに合わせて動きを早くするたび、彼女の胸がプルプル震えていた。
「ん…!」
その先を口に軽く含んで噛むと、彼女の中が締まる。
それに気を良くしたボクは彼女の中を味わいながら時折彼女の胸をはむ。
最初は抗議するようにボクを見ていた彼女も次第に快感をこらえる事に必死なのか目を閉じて体を震わせ、あえぎ声を上げ続ける。
静まり返った夜の室内に彼女の声と濡れた水音、腰がぶつかりあう音が響く。
「クラッズ…もう…駄目…。飛んじゃう…イッちゃう!」
額に玉のような汗を浮かべながら彼女が首をふる。
「ボクも…無理…」
ボクも既に限界に近かった、複雑に絡みついてくる彼女の中は絶えずボクを締め付けて、今までに感じた事のない快感を与えてくれる。
ラストスパートをかける為にボクは彼女を組み敷いて彼女の腰を完全に固定する。
ボクも限界に近いと察した彼女は足をボクの腰に絡めて小さくうなづいた。
それにボクもうなづいて、もはやなんの手加減も無しにむちゃくちゃに腰を打ち付ける。
「あー!あー!」
言葉を忘れてしまったように髪を振り乱しながら彼女が快感に打ち震える。
「う…くっ!」
そして、ついに腰にたまったそれに耐えきれずボクは彼女のもっとも深い場所に腰を打ちつけ、自分の欲望を解放した。
303 :
マルメンライト:2011/05/15(日) 23:55:06.16 ID:1kuiZ4PU
「ふぁぁぁ!!」
同時に彼女の悲鳴を上げビクビクとその体が背中をそらせて痙攣する。
体の熱を彼女に奪われていくような、満足感に包まれながらボクはドクドクと彼女の中に全てを注ぎ込む。
「あったかい…私の中が…クラッズで汚されてく…」
どこか夢見ごごちな表情で彼女は嬉しそうにそうわらった。
「ごめんね、激しくして、せめてベッドが良かったよね?」
どこか申し訳なさそうに頭を掻きながら彼が笑う。
「ううん…クラッズに汚されたかったから、場所なんてどこでも良いの…」
渡されたシーツで体をくるみながらそう言うと、彼が恥ずかしそうに頬を掻く。
自分の中にまだ残る彼の熱が、自分が彼に汚されてしまったのだということをおしえてくれて、とてもうれしい。
私の中に放たれた彼の精液は次第に体にしみこんでいくように広がっていく感覚があってどこか気持ちよかった。
「私にとても気持ち良い初体験を味あわせてくれてありがとう…大好き、クラッズ」
彼を抱きしめて頬にキスをすると、彼が笑う。
「ボクも君が好きだよ、ディアボロス。大好きだ…」
そう言いながら彼が頬にキスした私の顎を掴んだ。
少し強引な彼の行動に驚くが素直に私は受け入れて彼と舌を絡ませる。
たったそれだけのことなのに頭が溶けるくらい気持ち良い。
頭がくらくらとして、だんだん何も考えられなくなっていく。
「クラッズ…まだ…できる?」
胸がどうしようもなくうずいてしまい、彼に懇願するように私は彼の胸に頬を擦り寄せる。
「まだ、汚されたい?」
彼はそんなふうに甘える私の頭を撫でながら優しく笑う。
「うん…」
彼は自分を人殺しだなんて言っていたけど、そんなことなんかどうでも良い。
私で彼が気持ちよくなってくれるなら、彼と気持ち良くなれるなら、この身の全てを汚されたい。
「それじゃディアボロス、次はベッドでしよう?」
「うん、私のこと…もっとクラッズで汚してね」
耳元で囁く彼にそう言って笑う。
そんな私の言葉に応えるように彼は静かに私をベッドに押し倒した。
破瓜の血と精液で汚れてしまった下着を脱ぎ棄てて、彼に見せつけるように自分のその部分を開くと、とろりと彼の精液がこぼれ落ちる。
「あ…出ちゃった…」
折角彼が注いでくれたものがこぼれ落ちるのを見て、思わず呟いた私に彼が笑う。
「大丈夫…」
そういって彼が私に自分を押し当てた。
304 :
マルメンライト:2011/05/15(日) 23:55:45.09 ID:1kuiZ4PU
「お腹いっぱいになるくらい、たっぷり注いであげるから」
「はぁっ…!」
言葉と共に彼が私の壁を割り開いて、私の中に入ってくる。
背中をなんともいえない快感が走り抜けて、思わず口から吐息が漏れた。
目を閉じて快感に震えていると、耳元に彼の声が響く。
「気持ち良い?」
「…うん、おなか一杯に…クラッズを感じる…」
彼の鼓動が、彼の熱が、彼の想いが一つになった部分から伝わってきて心の中が満たされていく。
体全体が満たされる感覚で頭がとけそうになほど気持ち良い。
「それじゃ、今度は最初から強めに行くからね?」
「うん、きて、一杯気持ちよくして…」
言葉と共に彼が動き出す。
やってくる快感をもはやこらえず私は大きな声で喘ぐ。
私達は何度も何度も交わる。
繰り返すたびに私の中が温かい彼のもので満たされていく。
私の体の奥深くが彼で汚され、その熱が体全体に染みわたっていく感触が心地いい。
私の中がほぐされて、彼の体になじんでいく。
私の中が溢れるくらいに交わって、ようやく私達は眠りにおちた。
305 :
マルメンライト:2011/05/15(日) 23:56:30.19 ID:1kuiZ4PU
ドラッケン学園の食堂にいつも通りのメンツで座る。
セレスティアが座って向かい側にフェアリーが、バハムーンが座ってその向かいにマフラーを巻いたフェルパーが、そしてボクの向かいに、ディアボロスが座って食事をする。
いつもと変わらない光景だが、その中の僕らの関係は確かに変わっていた。
「クラッズ…ご飯粒、ほっぺについてる」
「え?ホント?」
もぐもぐと食事をとっている時に彼女に言われ、取ろうとするがそもそもどこにあるか分からない、苦戦しているボクを見ると、ディアボロスがクスリと笑って立ち上がった。
生温かい感触が頬に触れ、彼女がそっと座り直す。
「はい…とれた」
「…ありがと、ディアボロス」
そんな僕らを見ながら他の3人かどこか恥ずかしそうに笑っていた。
「…私、前にアレと似たようなことバハムーンにやったな…。
アレ、傍目に見せられるとこんな恥ずかしいことなのか…」
フルフルと肩を震わせながらフェルパーが羞恥で顔を染める。
「獣殿、君がやったのは、“はい、あーん”だ。君たちのは恋人同士のそれだが、彼らのアレはもはやそのレベルを超えているよ」
珍しく、どこか恥ずかしそうなフェアリーがボク達二人を見ながら呟いた。
「まぁ、あれはもはや新婚の夫婦みたいなものですね…」
たった一人、素知らぬ顔で食事を続けるセレスティアがそういって笑うと、ディアボロスが何かを思いついたようにニヤリと笑った。
「新婚…ねぇ、クラッズ」
「なに?ディアボロス?」
楽しそうな彼女につられてボクも思わず笑顔がこぼれた。
「デザートは…私にする?それともワタシにする?それとも、わ・た・し?」
ディアボロスの発言に、バハムーンがお茶を吹きだしてゴホゴホとむせた。
「だ、大丈夫か?」
「大丈夫だ、すまないフェルパー」
何やら苦しんでいるバハムーンを無視して恥ずかしさをこらえながら、ボクは立ち上がって彼女のことを抱き寄せる。
「それ、全部君じゃないか」
「嫌?」
ボクを上目づかいに見上げる彼女にボクは笑って答える。
「あとでじっくり食べさせてもらうよ?」
「…うん」
クスクスと彼女が笑う。
彼女はだいぶ明るくなった、今までのどこか皆と距離を置いているような彼女ではなくて、等身大の彼女で接している。
だからそんな彼女が愛おしくてボクは彼女にキスをする。
みんなに囃したてられながら、彼女はとてもうれしそうに笑った。
306 :
マルメンライト:2011/05/15(日) 23:57:11.34 ID:1kuiZ4PU
薄暗い洞窟に集まった数人の影が揺らめいている。
その誰もが空を見つめ、かけていく太陽を眺めていた。
「約束の時は近い…」
威厳のある声でディアボロスの男がそう告げると彼を囲む人間が恭しく頭を下げる。
「お前たちの力を見せてもらおう」
『闇の生徒会の名にかけて…』
彼らは笑う、自分たちを認めなかった者たちへの復讐を誓って。
307 :
マルメンライト:2011/05/16(月) 00:03:57.32 ID:42DjOlZO
以上で投下完了でございます。
今回も拙い分で失礼しました。
毎度乙!
「デザートは〜」に噴いたwww
すごくお久しぶりでございます。
つーか、覚えている人いるかどうか解らないですが…規制の巻き添えを喰らって書き込めぬ日々が続きました。
とにかく、過去編の最終章だけを引っさげてどうにか現れました。
気がついたら知らない住人さんの方が多い…?
…システム変わったのか、どうも上手く投稿できぬ。
しばし待たせてしまいますな、申し訳ない。
おー!お久しぶりです!
なんかすごい懐かしいね
>>311 お久しぶりです。
気がついたら3が発売されてましたねぇ。もう、何スレも前になるのかw
>>312 おおう、ありがとうございます。
て、ことはまだレベル1だからそこまで書き込めないって事か…。
細かくなんとかするしかないなぁ…。
それから一年の月日が流れた。
カガリの死は二人に影を落としたが、彼女が遺した子供はすくすくと育ち、また半年後にディモレアの子供が生まれた。
二人の子供を育てつつ、二人は研究にいそしむ毎日を送る。
それは、ある意味幸せな時間であった。
いつ病が再び襲い来るか解らない、だが何も見いだせずに迷っていた時期とは違う。
今はカガリの代わりに子供を育てる事と、自分たちの子供への愛情を向ける事がエドにとっての生き甲斐になりつつあった。
そう、壊れた世界をなんとかしたいという思いは、またしても消えかけていた。
否、むしろそれが当然であったというべきか。そうであった筈だというのに―――――。
「再流行してる? なんで?」
久しぶりに麓の街に買い出しへと出掛けたエドが戻ってくるなり発した言葉に、ディモレアは首を傾げた。
カガリの死の後、流行病はゆるやかに終息へと向かって行った。
明確な治療法は相変わらず見つからないままだったが、流行が収まったのならそれでいいと何処の街でも考えていたらしく、エド達もまたそう考えていた。
しかし、実態は違った。
またしても街から人の姿が消え、家に引き蘢り怯える日々が続いているのだ。
「で、医者とか魔術師とか、なんか言ってるの?」
「何も言っとらん。ただ用心しろとしかな…おい、俺のズボンにジュースこぼすな」
エドは自分の足下で義姉のカテリーナと遊ぶ息子にそう注意した後、ディモレアに視線を戻した。
「だからあの研究、続けようと思う。実はいうとあの赤い石…全然解っちゃいないしな」
「まぁ確かにね……」
カガリの死後。あの石を使った研究はカガリの死が切っ掛けで停まってしまった。
彼女を救うのに間に合わなかった事が、どうでもいいと思ってしまったからだろうか。
結局の所処分も出来ずにそのままにしてある…下手に捨てると何処かで災害が起きそうだからかも知れないが。
「……しょうがないわね」
ディモレアはため息をつく。
カテリーナと、息子は真剣そうな二人を見て不安げな顔を見せるがすぐにエドは笑みを浮かべた。
「心配するな。ちょいと仕事してくるだけだから。お休み、坊主」
エドはニヤリと笑い、ディモレアを促して研究室へと向かった。
そう、少年の父親の一番古い記憶。もう顔も覚えていない。だけど、そうやって怪しげな笑みを浮かべて、天才的な腕前を持っていた、その笑みが自信から来ているものだという事だけは。
少年もしっかりと覚えていた。
その日の夜に、本当の悲劇が起きる迄は。
アイザ地下道の先。
誰も住まない、誰も足を踏み入れなかった土地。
それ故に。例え何か起こっても、助けを呼びに行くのには困難が付きまとう。元々、誰も足を踏み入れないアイザ地下道より更に先の場所なのだから。
その日の夜。
構築式を描くこと。これも問題は無かった。
素材を用意すること。これもまた問題は無かった。
そう、問題は。幾度となく使用してきた赤い石の欠片を、普段よりやや大きめのものを使用したこと。
そしてもう一つ。これは……悲劇だったのだろうか。
「ディモレア、配列間違えるなよ」
「大丈夫よ、いつもやってる事だから……あれ? ねぇ、エド」
「なんだ?」
ディモレアの言葉に、エドが振り向いた直後だった。
「構築式、途中で消えかかってない?」
「へ? さっきちゃんと書いた筈…」
そう、エドはちゃんと構築式を書いていた。あくまでも書いた時点では。
そこに一人の人影が紛れ込んでいたのだ。好奇心を抑えられなかった、カガリとエドの子が。カテリーナが、研究室に入り込んでいた。
まだ幼い彼女は上手く歩く事も出来ない。よちよちと歩く彼女の足が、構築式に何度か入り込み、そしてその時。
エドはちゃんと書いた、と言いかけたその時に。手に持っていた赤い石を、落としてしまった。
そう、これは悲劇だった。悲劇だったのだ。
人為的なミスではない、起こる筈も無いミスが。
「…カテリーナ! そんな所に入っちゃ…」
ディモレアがカテリーナの存在に気付き、怒鳴りかけた時、構築式は中途半端なまま作動した。
火花が散り、奇麗に円を描いた構築式が完結せずに内部でその力を暴走させようとしていた。
そして運の悪い事に、普段エドがその手で作動させる錬金術ならまだ良かったものの、今日はその効力を数倍、時にそれ以上に引き上げる赤い石を使っていた。
「やばっ…!」
エドがカテリーナを抱え上げた頃には火花は火柱と化し、周囲に膨大な魔力が溢れんばかりに発されていた。押さえ込むのは、困難。
「ディモレア! カテリーナと、子供を連れていけ! 早く!」
「わかった! アンタも早くね!」
カテリーナを文字通りパスして渡し、ディモレアが外に出て行くのを確認するとエドは魔力を押さえ込むべく、構築式に取りかかる。
とてもじゃないが、抑えきれない。
「糞っ、なんてこった…!」
何でこうなったのか、検討もつかない。とにかく抑えなくては、研究所ごと爆発してしまう。
構築式が中途半端なまま作動しているのなら、行き場を無くして回転するエネルギーを別の方向に分散させればいい。その為には、まず構築式全体を更に派生させるカタチで新たな構築式を作る事他ならない。
どのような方向に向けるか。エドは一瞬だけ考える。
時間にして一秒も経たずに新たな構築式を作るべく、エドが手を伸ばしたその時だった。
エドの周囲に、一つの構築式が浮かび上がった。
「え?」
エドは気付く。その構築式が何を意味しているのかを。否、それは構築式だけではない。
魔術回路を組み込んだ、魔術と錬金術の応用をした技術。あの夜、エドがこの秘石の効果に初めて気付いた時のあの式が。
まるで記憶を浮かび上がらせるかのように、エドの周囲に現れた。
赤い石と、エドを中心として。
「おい、嘘、だろ……!」
エドは呟く。この構築式が浮かべば、あの夜よりも数倍大掛かりな構築式を使っている以上、あの時以上に巨大な隕石を誘因させる事もありえる!
ヤバい、とエドは判断した。
「ディモレア! 早く子供を連れて行け! 早く!」
エドがそう叫んだ直後、屋根を突き破り、その隕石が飛来した。
カテリーナを抱えて研究室を出たディモレアは、寝ている息子の元までようやく辿り着いていた。
まだ幼い息子は完全に眠りこけており、目を覚ます気配は無い。
ディモレアは息子を抱き上げると追ってくるであろうエドを探すべく、背後に視線を送った。
直後、激震が一瞬だけ部屋を揺らした後、衝撃が起こった。
「っ!?」
息子を抱きしめ、降り掛かる土ぼこりや瓦礫から咄嗟に守る。今の衝撃は…。
嫌な予感がする。
「エド?」
声をかけるが、返事は無い。おかしい。嫌な予感がする。
ディモレアが慌てて研究室まで戻ろうとした時、衝撃の第二波が襲って来る。
「!」
バランスを崩しかけるが慌てて持ち直し、研究室へと向かう。やはり、衝撃の発生源は研究室だ。何が起こった。
何なのだ、この胸騒ぎ。
ディモレアが研究室の前まで辿り着く頃には、三度目の衝撃があった。
そして、壊れかけた壁越しに見える、空の暗い色に、幾つかの流星が光っているのも見えた。こちら側に向かう、流星が。
「……エド!」
「ディモレア…!」
壁を開けるべく、手をかけても瓦礫か何かで崩れているのか開かない。そしてその向こうから、エドの声が響いた。
弱々しい声の。
「エド、どうなったの!? 待って、今…」
「とてもじゃないが……間に合わない」
「間に合わないって何がよ!」
エドの奇妙な言葉に、思わず彼女は声を荒げる。だがしかし、エドは言葉を続ける。
「バカ、子供二人抱えて戻って来てどうする気だ……頼む、急いで逃げてくれ。俺はここでなんとか抑えてみせる」
「はぁ? 何言ってんのよ、そっちこそバカじゃない! 別にアンタだけがやってた事じゃないでしょーが」
「これを拾ったのは俺だ。それと、始めたのも俺だ……なんつーかな、最初に考えてた事が実際に起こってるってのに……なんか嬉しくない」
「そりゃそーよ」
世界を壊してまた作り直すだなんて。
そんなの、神様でもないのだから出来る訳が無いし、許される訳でもない。
でも……その代償は、彼自身の命だというのだろうか。
「やっぱそんなよこしまな考え持つんじゃねーな。ハハ、自業自得で身を滅ぼすたぁ、この事だ」
「何笑ってるのよ!」
笑い事じゃない、とディモレアは言いたかった。
そう、だって。この扉の向こうでエドが死んで行くのを、黙って見ていろというのが辛かった。出来れば後を追うぐらいに。
でも。
この手の中にいる子供は、きっとそれを許さない。
カガリに続いて、エドまでも自らの手から離れて行くのが、物凄く辛い。でも。この子は、まだ、残っている。
ディモレアは自らの腕にいる子供を一度だけ抱きしめた。
「……ねぇ、エド」
ディモレアが呟いた直後、四度目の衝撃。
「いてて……くそ、ヤバいな、下半身が動かねぇや……おう、どうした?」
ゴホ、という小さな咳と共にエドが口を開く。
「今まで、ありがとうね」
「何をいまさら……俺もだよ」
二人は、完全に開かなくなってしまった扉越しに、声を出して笑った。
学生時代は喧嘩ばかりしていた。
でも気がついたら側にいる事が当たり前になっていた。
卒業後は二人で色々と取り組んだ。
辛い事もあったけど。
それでも二人で、いや、仲間達も含めて、一緒にいる事が楽しい時間であった事だけは解っている。
もしも仮にも人生最良の期間を決めるとしたら。
生まれてから今日この日までの全てを、エドと、カガリと、ダンテと、パーネと…そしてカテリーナと息子と、皆でいれたこの時が。
人生で、世界で一番尊くて、幸せな時間だった。
その時期を、決して忘れはしない。そしてそれが今日終わる事を、忘れはしない。
「バイバイ」
「ああ。じゃあな、ディモレア」
ディモレアはエドの返事を聞いた後、息子を抱きかかえて外へと駆け出した。
もう、決して足を止める事も、ここに戻る事も無いだろう。最愛の人の、亡がらを弔いに来る事ですらも…。
でも、もう迷わない。
これからは、この子を守る為に生きるのだから。
エドはディモレアに別れを告げた後、痛む身体を引きずり、どうにか構築式へと向かった。
幾つか隕石を呼び寄せたお陰か、先ほどよりはパワーも収まっているようだ。
「幸運、なのかな、こいつぁ…」
手をかけ、エネルギーを抑えるべく必死に取りかかる。血をだいぶ失い、意識も朦朧としているが思い出せ。俺は立派な錬金術士。
たかだがその程度の事など簡単に出来た…はず。
だいぶエネルギーが分散してきた。
そういえば、と思い出してみる。錬金術士として頑張ってきたはいいが、結局の所身を滅ぼすのが自分自身というのは何とも間抜けな話だ。
ただ、この世界に生きていて一つだけ良かった事があるとすれば。
ディモレアと出会った事なの、だろうか。もしも途中で彼女に停められもしなかったら、世界を壊した狂人で終わっていたのかも知れないから。
俺は、幸せものだ。
赤い石がその暴走を停めた頃、アイザ地下道の先にあったその建物は全てを破壊し尽くされていた。
たった一人の亡骸と、少し離れた部屋で泣く幼い少女だけを残して。
ディモレア達の物語がこの後にどうなかったか。
残されたカテリーナはダンテとパーネが自らの手元へと連れ帰った。その後、彼らは女帝バルバレスコの元に身を寄せる事になる。
それが正しい事だったのか、そうではなかったのか。
それは誰にも解らない。
ただ、この物語にはもう少しだけ続きがある。壊れてしまった後の、アイザ地下道のその先で起こった。
ある、一つの事実だけが。
「…はぁ」
エドの死から既に十五年の月日が経ち、ディモレアは久しぶりにアイザ地下道を訪れていた。
勿論、一人でだ。息子は今は冒険者養成学校のパルタクス学園に通い、それなりに好成績を収めている。それは良い事だ。
ディモレアがアイザ地下道を訪れたのには理由がある。
十五年前に出て行って以来、一度たりとも戻らなかったかつての研究所。そこに放置されたままのエドの亡骸を弔う為と、エドが残した赤い石を処分する為だ。
あれだけ膨大な力を保つ石を、あのまま放置しておく訳には行かないと思ってはいた。しかし、出来なかった。訪れる事自体が辛かったからか。
でも。
「いつまでも、逃げ続ける訳には行かないものね」
ディモレアはそう呟いて笑う。打ち捨てられて久しい門をくぐり、完全に壊れた瓦礫の山を進んで行く。
ただ、その時になってディモレアは気付く。
「…?」
前人未到のアイザ地下道を、何者かが抜けた形跡があるのだ。
ダンテ達かな、と思う。しかし、何度も歩いて来たであろうその足跡はダンテ達とはまた違う足跡だった。では、誰か。
いや、この靴の足跡は何処かで見覚えがある。
「…なぁ、ところでさ」
直後、話し声が漏れ聞こえて来た。決して遠く無い。否、エド達が研究室としていた場所の周辺からだ。
誰だ、と思いつつディモレアは咄嗟に身を隠す。瓦礫の隙間からそっと様子を伺うと、濃暗灰色とベージュを基調とした制服姿が見えた。
間違いない。パルタクスの生徒だ。
「こんな所に、パルタクスの生徒が? 何か、拾ってる…」
もう少しだけ、瓦礫の隙間に目を近づけて目を凝らす。
すると、彼らは何かを拾っているようにも見えた。何なのだろう。そして、喋っている言葉も今度は鮮明に聞こえた。
「で。こいつを使えば、なんとかなるってのかよ?」
もうすぐ卒業を控えるであろうフェルパーの少年の言葉に、セレスティアの少年ともう一人、フェアリーが大きく頷いた。
「ええ。それさえあれば、願いは叶う。きっと……」
「俺は正気とは思えないがな」
「ランスロット。それは結果論だ」
フェルパーの返事に、セレスティアは切り返す。
「お前がどう思おうと、俺の気持ちは変わらん。王は一人いればいい。俺という王がな」
「へいへい、解ってますよ……キング・アーサー」
「……キングは余計だ。俺の名前はアーサーだ」
そのパルタクスの生徒達が拾っているもの。それは、赤い石に間違いは無かった。
彼らがそれを使って何をしようとしているのかは定かではないが、ただ。
やり取りから見るに、彼らは何をしようとしているのか?
「……パルタクス、か」
息子がいる。関わらない訳には行かない。
けれども、どうする。あの子に、彼らをなんとかさせようにも、彼らは相当な手練。そして。
一人だけではない。
ディモレアは首を左右に振る。そして、思いついた事は、ただ一つだった。
パルタクスに、攻撃を加えて彼らを沈黙させる事だった。
子供の為に作ったライフゴーレムを尖兵代わりとして戦闘能力を持たせ、何度か交戦させた。
そしてその後に、かつて学生時代に発見した迷宮の遺産まで投入して。あの生徒達と交戦した。
だがしかし、勝つ事は出来なかった。
向こうから見れば、否、息子から見てもディモレアの方が一方的に攻撃を仕掛けて来たと見るだろう。
だがしかし、本当は違う。
彼女がエドが残した世界を守ろうと、そして最愛の人が作ってしまった罪の結晶を無くす事だったというのに。
どうしても、果たす事は出来なかった。
どうしても、だ…。
そしてそれから二年後に、ギルガメシュと彼女の息子が決闘を行なったのだがそれはまた別の話。
以上でございます。
はぁ、ようやく次は先輩の話に戻れる…。
長らく待ってた方、いらっしゃると思いますがマジで申し訳ない。
まさか規制の巻き添え喰らうなんて一度も思っちゃいなかったのでありましたorz
>>312氏に感謝感謝です。
ありがとうございます。地道にレベルを挙げてきます。
お疲れ様です。
続き楽しみにしております。
今更だが3DのPVにディモレアっぽいキャラがいるわけだが
>>327 確かにいるね
そしてととモノ。のコミカライズも気になるところ
コミカライズ……だと……
超楽しみ
330 :
マルメンライト:2011/06/01(水) 02:25:07.65 ID:MalvNLoR
皆様おひさしぶりです。
前回までチーム名未定だったシリーズの新作の前編が出来ましたので投下させて
いただきます。
諸注意 前編はエロなし
セレスティア♀×フェアリー♂
そこは神殿に似ていた、そして学び舎にも似ていた。
だが決定的にそれらと違うのは、そこがまるで激しい戦いでもあったかのように無残に破壊しつくされていることだった。
ひび割れた柱、砕けて落ちた石の天井。
そんな崩れた建物をローブを纏ったフェアリーの少年が歩く。
「…どこだ…」
奇妙な方向に曲がってしまった右足を引きずりながら、彼はそう呟きながら崩れた建物を何かを探すように見渡す。
その背に生えた羽根は半ばちぎれ、元の形を保っていない。
ずりずりと足を引きずりながら少年はひたすらに何かを探して歩き続ける。
そして広場であっただろう場所の中心にたどり着くと彼はようやく目的のものを見つけ出したかのようにボロボロの羽根を使いその中心に向かって羽ばたく。
その軌道はふらふらと頼り無いものであったが、彼はそれでも前を見据えて歩き続ける。
そして、そんな彼に気付いたようにそれが彼を見つけて笑った。
「…おや、無事ですか?」
それはセレスティアの青年だった。
ふざけたような口調だが、その声はどこかかすれていて弱弱しい。
「幸い…君のおかげで生きてはいるようだ…。もっとも、さすがにアレと戦うだけの力も魔力もこれっぽっちも残ってないがね」
「そうか…それはよかったよ、彼を止める事は出来なかったが…君を助ける事が出来たんだから」
そうフェアリーに応えるセレスティアの青年の白い服は、もともとの色を覆い隠すように赤黒い染みが広がり不吉な模様を描き出していく。
青年の姿に苦しそうな表情をしながら少年は静かに両手を開いて彼に向ける
「今、治療しよう…」
そう、うめきながら治癒の呪文を少年が唱え始めると青年は彼の手を掴んで無言で首を振った。
「無駄です…、私の怪我は治癒を使ったところで治らない…。そもそもそれで治せるのなら自分で何とかしていますよ…、あなたも魔力は残り少ないのでしょう?それは自分に使ってください」
血の気を失いかけた青白い顔で青年が笑う。
「だが…このままでは君は…」
それでも続けようとした少年に、青年は静かにこう言った。
「どの道、私はもう助かりません…ですから、私のことを思ってくれるなら、あなたは必ず生き残って、このことを後世に伝えてください。
あの男…アガシオンの企みを…防ぐために…」
まるでいつもと変わらない笑顔に少年は静かに縦に首を振った。
服の染みはどんどん広がり、青年の体を覆っていく。
そんな彼を見ながらフェアリーは静かにうなづいた。
「ああ…約束しよう…他でもない君の頼みならば」
涙を流しながら、私は友の手を掴む。
「ありがとう、親友…あなたが私の友で…よか…った」
最後にもう一度だけ笑って、青年はそのまま静かに目を閉じる。
「馬鹿者が…子供がまだ生まれたばかりなのだろう?悲劇でしかないのに、
そのことを私の口から君の家族に伝えろと言うのか?私は悲劇が嫌いだと言っただろう」
嗚咽交じりの声で少年は呟きながら青年を見る。
青年はもはや答えない。
そこに彼の肉体はあれど、彼の魂は存在していない。
青年は、もう息耐えていた。
どこか満足げな青年の顔を見ながら少年は静かに呟いた。
「君の望みは、君の願いは…私が受け継いで…私の手で完遂させる。
たとえ、この身が呪われようとも、君の成せなかったことを、私が完遂して見せる」
青年の亡骸に残された魔力を吸い上げながら、少年は静かに呪文を唱える。
「ゆえに友よ…安らかに眠れ…」
彼の言葉と呼応するように地面に広がった魔法陣が遺跡に残った魔力すらも吸い上げながらどこか怪しい光を放つ。
少年はその広がる魔法陣の中心で触媒たる魔石を握りしめる。
「本当は、どうしても、奴を倒せないときにこの命と引き換えに使うつもりだったのに…。
まさか、この命を終わらせないようにするために使うことになるとはね…」
自嘲気味に少年は呟く。
「私は…終わりを拒絶する…、私は永遠を望む…」
最後に少年が呟くと、それに合わせて魔石が砕け、魔法陣から溢れる光が彼を包み込んだ。
それは遥か昔の事、のちに光のセレスティアと呼ばれた青年の最後の真実の姿だった。
ドラッケン学園、数々の冒険者を生み出してきたその学園で、最近ひときわ目立つパーティがいた。
「邪魔だどけぇぇ!!」
行く手をさえぎる獣の群れを拳と爪で引き裂きながらフェルパーの少女が疾走する。
その少女を見ながらバハムーンの少年は両手で握りしめた剣を手に背後の仲間に命令を出す。
「クラッズ!フェルパーを援護しろ、後衛の防衛は俺が引き受ける。
そして、フェアリーはキルシュトルテ達、ディアボロスはジーク達の援護を行え!
セレスティアは全体を把握し回復に専念しろ!」
「了解…!本気で行くよ!!」
リーダーたる少年の言葉に応えながらクラッズは自らを狐の仮面で覆い、先行するフェルパーの背後を狙う魔獣を銃で撃ち落としていく。
「今!ジーク私達も合流するよ!」
「お、おう!!」
ヒューマンの少女ベルタが叫び、バハムーンの少年ジークがそれに応え、彼女に続いて走り出す。
「ちょ!二人とも待ってってば!」
それに遅れてノームの少年、フォルクスもあわてて走り出す。
彼らが駆けだしたのを確認するとディアボロスは小さく笑って呟いた。
「さぁ、万華鏡をまわしましょう」
ギシリ…
何かが歪むような音が響き、走り出した彼らの行く手をさえぎる魔獣たちの中心で無数の斬光が走りまわる。
そして、その体がスライドするように崩れ落ち、もしくは石となって倒れていく。
合流した3つのチームは取り囲まれた状態になりながらもどこか楽しそうに笑っていた。
「なかなかやるのう、ノイズメーカーと呼ばれておるゆえ、うるさいだけかと思っておったが…」
「あながち間違ってはいない、うるさいというのはそれだけやる気があるということだからな」
キルシュトルテの言葉にバハムーンはそう言って楽しそうに笑う。
ノイズメーカー、どこか自分勝手で喧しい。
彼らはそんな名前で呼ばれていた。
「妙じゃな」
ようやく片付いた魔獣の群れを見ながら、キルシュトルテがそう呟いた。
「うむ、確かに奇妙だね…」
ほとんどのものが首をかしげる中、ただ一人、フェアリーさんだけがそれに賛同する。
「何が妙なんですか?」
フェルパーさんの傷を治しながら私が呟くと、彼はいつもの笑いを浮かべながら呟いた。
「あまりにも、干渉が少なすぎるのだよ…。我々の持つ秘宝を狙っているはずなのに我々を襲っているのはあくまでこの迷宮にもともと生息している魔獣のみだ…」
「言われてみれば…確かにそうだな…」
フェアリーさんの言葉にリーダさんがそう言ってうなづく。
確かに、彼の言うとおりだった。
闇の生徒会…もともとは私達と同じく冒険者を目指しながら、何らかの理由で学園をやめ、今まで何度か私達の前に立ちふさがってきた相手。
彼らの目的は分からないが、私達が運ぶ秘宝、それを彼らは狙っているハズだった。
それなのに、なぜか彼らは未だに姿を見せない。
いままでは気付いていなかったが、確かに何か奇妙だった。
「俺達に恐れをなしてるんだろ?」
「阿呆、んなわけあるか、ちょっとは考えろジーク」
まるでなにも分かっていないかのように明るく答えたジークさんを呆れた目で見ながらフェルパーさんが呟く。
「確か、前もこんなのあったね…」
膝の上に座ったクラッズさんを抱きしめながらディアボロスが呟いた。
明らかにイチャついているようにしか見えないが、それを注意しようとする者はいない。
それだけ、皆疲れているから、それぐらいは自由にしてあげたいと皆が思っているのだろう。
そんな配慮を知ってか知らずかクラッズさんは真面目な顔で呟いた。
「…そうだね、前にボクとディアボロス達が襲撃された時に似てる」
「つまり…罠を用意してるということですね」
「まぁ可能性はあるね」
「また、前回と同じミスをするわけにもいかん、交代で見張りをしながら休憩しよう」
リーダーの言葉に皆が答えて野営の用意を始めるのだった。
夜、皆が寝静まったのを確認しそっと私はだれにもばれないようにテントから抜けだす。
とはいっても、本来一緒のテントであるはずのフェルパーさんとディアボロスは居なくなっていたので抜けだすのは簡単だった。
だから、私は一人、ただ一人静かな場所を探して歩く。
私達は今、あるクエストを受け、迷宮を進んでいた。
それは、ドラッケン学園に伝わる秘宝を大陸の中心の禁断の地へと運ぶ。
それも学園の代表として…。
「はぁ…」
魔力の溢れる神秘的な泉の前で、誰もいないのを確認してから私は隠れてため息をついた。
「眠れませんね…」
どれだけ普段通りで居ようと思っても、どうしても緊張してしまう。
他語っている時もそのせいかいつも通りの自分をうまく演じられず、どうも落ち着かなくて眠れない。
緊張とストレスで胃がキリキリと痛んだ。
「いたいよぅ…くるしいよぉ…」
痛むお腹を押さえ思わず地面に座り込む。
―弱いなぁ…私―
他の皆だって、きっと緊張していないわけが無いのに、私はその緊張に完全に負けてしまっていた。
―怖い…―
痛む胃を押さえながら私はカタカタと体を震わせる。
戦っている間は感じていなかった恐怖が今頃になって自分を襲っていた。
明らかに敵は強くなっている。
いくらフェルパーさん達が強いからと言って絶対に大丈夫かどうかなんてわからない。
もし彼女達が死んでしまったらどうしよう、そんな不安が胸を覆う。
怖い…怖くて仕方が無い…
いつもの私ならきっと笑っていられるのに、いつもの私が思い出せない。
彼女達に、こんな弱い姿は見られたくない。
自分が本当はこんなに臆病だなんてきっと彼女達は知らないから。
だから、私はいつものように隠れて一人で震えていた。
だけど…。
「ずいぶんと遅い散歩だね、セレスティア」
そんな私の名前を誰かが呼んだ。
「フェアリーさん…?」
聞きなれた声に顔をあげ振り返るとカンテラを手に見慣れた彼が近づいて来る。
「どうかしたのかね?」
いつものようにまるでおとぎ話の魔術師のようなローブで身を包み、ふわふわとどこか頼りなく漂いながら彼は私のそばまでやってくる。
「ちょっと、眠れなくて…」
あわてて自分を取り繕いお腹の痛みをこらえながら私はそう言った。
「なるほど…」
そう言って彼が私からちょっとだけ離れて座る。
「確かに、眠れない夜もあることだろう…」
「…ええ」
―…見られてませんよね…―
心の中の動揺をひた隠しながら私はそう言って彼に応える。
「フェアリーさんも眠れないんですか?」
「まぁ…そんなところだ」
私の言葉に彼が頷いた。
それだけ言うと彼はそのままゆらゆらと揺らめくカンテラの炎を見ながらただじっと何かを待つように座っていた。
「セレスティア…」
しばらく黙っていた彼がようやく口を開いて私の名を呼んだ。
「はい?なんでしょうフェアリーさん」
そのころには少しだけ心も落ち着いて来ていてある程度普段の自分を演じられるだけの余裕が戻ってきていた。
だからまた私はいつもの自分を演じて彼に応える。
「君にとって…私はどんな人間だろうか?」
「…面白くて、楽しい人ですね」
突然何を言うかと思ったが、私は正直に彼にそう告げた。
「おやおや、君にほめてもらえるとは嬉しいね…」
「それと、嘘つきです」
「…なるほど、ぬか喜びをありがとう、わが女神」
私の言葉に彼が苦笑した。
「ふふっ…」
そんな彼の表情が可笑しくて思わず私は笑ってしまう。
そんな私を見た彼はどこか満足そうに笑った。
「やっと、笑ってくれたね…」
「…え?」
思いもしなかった彼の言葉に私は思わず聞き返してしまった。
あっけにとられた私の頬を彼が優しく撫でた。
「やはり君は、笑っていた方が美しいよ」
「フェアリーさん?」
ようやく私は、彼が私を元気づけるためにあんなことを言ったのだと察した。
「気づいてたんですか…?」
私の言葉に、彼は小さく頷いた。
「これでもずっと君のことを見てきたからね
いつも誰かをからかっているけど、本当は君が臆病なことを…私は知っているよ」
私の頭を撫でながら彼は優しい声色でそう告げる。
「無理をしなくて良い…辛いだろう?」
「…ええ」
彼の言葉に私は頷く。
もともと彼はお芝居が好きだった。
もしかしたら彼はずっと前から気付いていたのかもしれない。
だから、こうして今、私を慰めに来てくれたんだろうと、思う。
「私の前で、演技などしなくて良いんだよ…。少しは肩の力を抜きたまえ、
真面目なのは君の良いところだが、それで君が笑えなくなってしまっては意味が無いよ?」
優しく諭すようにそういいながら私の頭を彼が撫でる。
「私では、君に頼られるには力不足かい?」
「ううん…力不足なんかじゃないです…」
「そうかい…」
「ホントに甘えても良いんですか?迷惑じゃないですか?」
「迷惑なわけなどあるまいよ、君に甘えられるなど、私にとっては夢のようなことだからね」
そんな優しい彼の言葉に耐えきれず、私はそのまま彼の胸に飛び込んだ。
「怖いよ…怖いよフェアリー!私、死にたくない…皆にだって死んでほしくないよぉ…」
押さえていた感情が決壊し涙が勝手に溢れだす。
泣きじゃくる私を抱きしめながら、彼が優しく私の背中をなでた。
「大丈夫だよ…セレスティア…君は死なないさ…皆も死なない…」
「分かってるけど、でも…怖いんだもん!」
彼が私をそう言って慰めてくれるけど、私の不安は収まらない。
「…学校のためなんかで、私戦えないよ…。私自分勝手なんだもん…」
泣き続ける私がそう言うと私の背中を撫でながら彼が静かに口を開いた。
「では…約束をしようセレスティア…」
「え…?」
彼の言葉に私は思わず顔を上げる。
どういうことか分からない私を見ながら彼がほほ笑む。
「この戦いが終わったら…私が君の願いを一つ叶えよう…」
「…なんでも?」
「ああ…なんでも叶えてやる…何が良い?」
いつもの芝居じみた口調じゃなくて、どこか大人びた口調で彼が私を見る。
「急にいわれても…分からないよ」
「そうか…じゃあ、この戦いが終わるまでに、考えてくれたまえ…」
もしかしたら、こっちが本当の彼なのかもしれない。
私みたいに彼も何かを演じているのかもしれない。
「うん分かった…」
彼にそう答えながら、私は彼の顔を見つめる。
「では、それで決まりだ、これでは君が戦う理由になれないだろうか?」
彼が何かをまた演じながらそう告げる。
だから、私もいつもの自分を演じながら、彼の言葉に応える。
「ふふ…十分です、ご褒美…楽しみに考えておきますね?」
「お手柔らかに頼むよ…」
そう言って彼が立ち上がる。
「まって…」
立ち上がった彼のローブの裾を掴んで私は彼を引きとめる。
「どうかしたかね?」
「…ちょっとかがんで」
私がそう告げると彼が不思議そうに首をかしげながら静かにかがむ。
「これで良いのかね?」
「…うん、そのまま」
彼にそう答えて、彼を引き寄せる。
そして引かれるままに彼の唇と私の唇が重なり合う。
温かい彼の唇の感触が私の唇を伝わって、驚いた表情をした彼の顔が私の目の前にあった。
「…セレスティア」
ゆっくりと彼の体から離れると彼が驚いたような表情のまま、小さく呟く。
「元気にさせてくれたお礼…ちなみに、ファーストキスだよ…」
恥ずかしさをこらえてそう言うと彼が笑った。
「…光栄だ、私などに捧げてくれるとはね」
「フェアリーさんだから…あげたんだよ」
私の告白を聞いた彼が静かに私の再び私の肩を抱いて抱きしめる。
「ありがとう…セレスティア…」
泉から溢れる魔力の小さな光が、私達のことを照らしていた…。
彼女のことを見送りながら、私は彼女が触れた自分の唇を撫でる。
そこにはまだ彼女に触れた感触と温もりが残っていて、彼女が自分にだけ見せてくれた弱さに、ほんの少しだけ心が高鳴る。
「…私にも、人間らしい心が残っていたのだね…」
彼女が私を愛しているかは分からない。
それでも、一時であれ、彼女の心の支えになれたのであれば、こんなに嬉しいことは無いだろう。
彼女と一緒に居ただけで、こんなにも心は高鳴るものだとは思わなかった。
あの時、自分で時を止め、数々の別れを繰り返す中で、自分の心などとうに凍ってしまったのだと思い込んでいた。
否、きっと凍っていたのだ。
彼女がそれを溶かしてくれたのだろう。
愛するものを太陽に例える事ほど、くだらない考えはないと思っていた。
人は太陽の恩恵を浴びるだけで、太陽に何も返せない。
一方的に受け取るだけなど、愛する者への例えには相応しくない。
だが、それでも、私にとって彼女は太陽だった。
凍りついていた心を溶かし、暗く染まった私の世界に光を与えてくれた。
だからこそ、彼女と言う太陽を失うことなど…私には考えられない。
―彼の時と同じことをするわけにはいかない…―
「否、させるわけにはいかない…」
そのために、私は時を止め、ただひたすらに力を求めてきたのだから。
「彼女には怒られるかもしれないね…」
―だが…それでも良い…―
それで彼女を守れるなら…。
だから私はたった一人、まだ皆が眠る中、一人静かに歩き出す。
目指す場所など決まっている。
「友よ…長らく待たせてしまったね…あとほんの少しだけ…待っていてくれたまえ…」
もう、どこにも居ない最初の友人に、私は静かに呟く。
もはや道化を演じる必要はない、昔の自分を取り戻し、友との約束を果たすため、私はただひたすらに歩みを進める。
「聞いてんだろ?アガシオン」
昔の口調でしゃべりながら俺はそう言って遠くに見える建物を睨む。
「ようやくお前に追いついた、覚悟しろよ?」
遠くの建物を睨んだまま俺はそう言って中指を立てる。
「あとちょっとだ、それまでは好き勝手、お山の大将気取ってろ」
古びたローブを翻しながら俺は再び歩み始める。
心の中で、最後に彼女に謝罪の言葉を述べながら…。
古びた建物の中心で、その男は水晶玉を見ながらどこか楽しそうに口をゆがめた。
「…ふふ、あの時のフェアリーか…どうやってこの長い時を生き続けたのかはわからんが…。実に面白い…」
男は心底楽しそうに笑いながら、自らの意思を伝える為、魔石を掴む。
「皆の者に次ぐ…これからやってくるフェアリーの妨害はせずに、私のところまで通せ」
『どういうことです?校長?』
彼の言葉に魔石越しに戸惑った声が聞こえてくるが、彼は笑うだけで何も答えない。
「くどいぞ…二度は言わせるな…」
威厳ある男の声に反発の声がやむ。
「その代わり、他の者が来た場合にはお前たちの好きにするがいい…力はそのために与えたのだ…」
男の声に、魔石越しに笑い声が響く。
どこか楽しそうで歪んだ笑い声を聞きながら、男は実に楽しそうに笑った。
「楽しみにしているぞ…フェアリー…」
男の呟きは闇にとけ静かに消えていった。
「おはようございます皆さん」
「…おう、おはようさんセレスティア…」
どこか眠そうに顔をこするフェルパーさんの首にはあいかわらずのキスマークが無数に刻まれている。
「…決戦前にお盛んですね」
「ばっ、違!私は嫌だったのにバハムーンが無理やり…押し倒してきたからつい…」
私の視線に気づき、彼女はあわてたようにずり落ちたマフラーを結び直す。
「…だから眠そうなんですか?」
「…バハムーンが寝かせてくれないから…って違う、ヤッてない!!
お腹一杯になんか注がれてなんかないからな!!」
私の言葉に顔を真っ赤に染めながらフェルパーさんがブンブンと手を振って顔を隠す。
毎度思うけど本当にこの人は隠す気があるんだろうか?
言ってもいないことを否定されると、明らかにしたのだと分かってしまうこと学習してほしい、さすがにこうも予想どおりだと、むしろわざとやっているんじゃないかとさえ思ってしまう。
ちなみに件のバハムーンさんはいつになっても起きてこないフェアリーさんを迎えに行ってしまってこの場には居なせいでその確認はできなかった。
「…つか、私よかあの二人に言えよ…あいつらめっちゃ声響いてたんだぞ?」
不満げな顔でフェルパーさんが見つめる先には今日もいちゃいちゃしているクラッズさんとディアボロスさんがいた。
「昨日もありがとうクラッズ…とっても気持ちよかった」
「どういたしまして、ディアボロス、ボクもすごく気持ちよかったよ」
ハートマークを飛び散らせながらイチャつく二人はほかのチームの前だと言うのに、もう一戦始めそうな気配を漂わせている。
「…あの二人はからかっても面白くないですもん」
「よし、セレスティア、一回殴らせろ、出来る限り手加減してやる」
私の言葉にフェルパーさんがそう言って拳を握った。
「やです、痛いの嫌いですもん」
「てめぇ…」
怒ったように彼女がフルフルと体を震わせながら手を振り上げる。
だが、それが振り下ろされるよりも早く、どこかあわてた様子のリーダーさんが走ってきた。
「今すぐ出発するぞ!」
彼の突然の言葉に皆が驚いたような表情をする。
だが、同時に、私は彼のすぐそばにフェアリーさんが居ないことに気付いて、最悪の考えが思いつく。
―嘘だよね…フェアリー?―
「どうしたよ、彼氏様」
問いかけたフェルパーさんの言葉にリーダーさんが静かに口を開く。
「これを見ろ…」
たった一枚のうすい紙に見覚えのある文字が記されている。
―嘘だ…―
自分の予想通りの展開に、私は心の中でそう叫ぶ。
バハムーンさんからその紙を受け取って読んだフェルパーさんの顔が怒りを抑えるようなものに変わる。
「何で…そんな顔するんです?フェアリーさん、フェアリーさんはどこですか?」
リーダーさんはそれに応えない。
「あのクソ馬鹿が…!死ぬ気かよ!!」
彼女の気配に、ディアボロスさんとクラッズさんがあわてて彼女に駆け寄る。
―そんなはず無いですよね?フェアリーさん…―
ここには居ない彼に心の中でそう問いただすが、当然何も返ってこない。
その紙には、見知った彼の筆跡で記されていた。
――――――――――――――――――――
まず、初めに皆には黙って言ってすまないと言っておこう…
謝って済むレベルではないかもしれないがね?
私は、あの親玉…アガシオンと呼ばれる魔術師と因縁がある。
だから、その因縁を果たすため、あえて一人で行かせてもらう。
私の手で…全てを終わらせてしまいたいから…
P.S
セレスティア、君の言うとおり私は嘘つきだ。
もし、私が生きて帰れた時には、いくらでも文句を聞こう。
だから…許してくれ…
――――――――――――――――――――
「…急ぐぞ、まだ間に合うかもしれん」
リーダーの言葉に皆が頷く。
私も手紙を握りしめながらなんとか頷いた。
用意を終えた皆を連れて私達は走り出す。
「馬鹿…フェアリーさんの馬鹿!」
ここには居ない彼を追って走りながら私は叫ぶ。
だが、そんな私達をさえぎるかのように、うすら笑いを浮かべた少年が私達の前に立ちふさがる。
「おっと…ここから先は行かせないよ?」
「スティクス!空気読めないのはいい加減にしろって前も言ったよね?」
「うるさい…!こんどこそ、より強くなった僕の闇の精霊で…」
いらだったクラッズさんの言葉にスティクスがそう言って杖を構える。
だが、私はそれすら待たずに鎌を引き抜いて振り下ろす。
「どいてよ…」
どこかおびえた様子で私をみるスティクスを睨みながら私は再び鎌を構える。
「私の邪魔をしないで!!!」
恐怖なんか感じない…他の事等どうでもいい…。
ただ、私は、彼が無事であることを祈りながらそう叫んで精霊の群れに飛び込んだ。
363 :
マルメンライト:2011/06/01(水) 03:26:50.60 ID:MalvNLoR
以上で前編投下完了です。
pixiv的な方で のせている自己満足な設定資料ではすでにチーム名が決定
していたんですが、スレ埋まりかけなので10になるまで自重
していてようやく10になったと思ったらまさかの再び忍法帳初期化
に泣きそう。
何はともあれ、今回も拙い文で失礼しました。
後編はまた後日投下します。
新シリーズですなGJ。これからに期待
ちなみに忍法帖は文字制限がなくなったそうですよ
365 :
マルメンライト:2011/06/02(木) 02:55:16.83 ID:SJSCUGIS
>>364 情報ありがとうございます。
文字数制限なくなったというのは知りませんでした。
一応、チームは前回までのフェルパー&バハムーン、ディアボロス&クラッズ
達と同じです。
ですので新シリーズというより正式にシリーズ名決定な感じです。
あ……ありのまま、いま見たことを話すぜ!
俺は本屋で見かけたチャンピオンなんちゃらという雑誌を手にとり、
「ととモノ」漫画を読んでみたら、
「キルシュトルテが、一途で優しく、聡明かつエアリード能力の高い、正統派プリンセスになっていた!」
催眠術とかそんなチャチなモンじゃない。
コレがヒロイン補整ってヤツか……。
キルシュのイメージが「気まぐれで我儘かつ、おバカで困ったちゃんな王族の代表」というのは、私の偏見だろうか。
まぁ、確かに「3」の終盤はそれなりに成長してるけどけさ。
368 :
マルメンライト:2011/06/07(火) 00:56:48.90 ID:0R29riEC
>>366 もう出てたんですね、明日買ってこよう。
はてさて、こんな時間ですが、後編出来たので投下します。
諸注意 前回の続き エロあり
セレスティア×フェアリー
前シリーズのキャラ一部出現
かつてどこかで、あれほどの幸福を感じたことはあっただろうか。
その人はとても良い人だった、掛け値なしに良い人だった。
怖がりな私が皆と一緒に居られるように、友達として居られるすべをおしえてくれた人。
その人と一緒に居るのが楽しくて…。
その人と会えた日は一日中が幸せだった。
きっと、それは私にとっての初恋だったんだろう。
その人の事が大好きだったからずっと一緒に居たいと思っていた。
だけど…
ある日、彼は私に告げた。
「すまないが、もう会えなくなる…」
その人はそう言って私の頭を撫でた。
「なんで…?」
どこか寂しそうに笑うその人のことを見上げると、彼はどこか遠くを見ながら呟いた。
「友達と約束があってね…、それを果たさないといけないんだ…」
「もう会えないの?」
私の言葉に静かに彼がうなづいた。
370 :
マルメンライト:2011/06/07(火) 01:01:11.79 ID:0R29riEC
「きっと、また長い旅になるからね…」
「大事な友達なの?」
「ああ、私の初めての友達だ…」
「…じゃあ、我慢する」
本当は、彼と離れたくなんて無かった。
だけど、彼を困らせたくなどなかったから、私は涙を堪えてそう言った。
「…すまないね」
「ううん…でも、一つ約束して?」
「何だい?」
私の言葉に彼が首をかしげる。
「いつか私がもっと大きくなってあなたに追いついたら、私をお嫁さんにして」
私の言葉にその人は少し驚いたような顔をして…笑った。
「良かろう…、全てが終わって君にまた会えたら。君を私の妻として迎えるよ…」
「うん、じゃあ約束…」
うなづいた彼に、私はそう言って自分の宝物の指輪を差し出した。
「これは…」
「目印、私がいつか追いつけるように」
私がそう言って笑うとその人が私の頭を撫でる。
「…大切にしよう、いつか君が見つけられるように。未来の妻が…私を見つけてくれるように…」
そういってその人が去っていく。
一度だけ私に振り返って手を振りながら…。
思い出した過去の光景に、あの人と彼の姿が重なる。
「…置いてかないでよ」
また、居なくなってしまう。
私が本当に大好きな人は、いつも勝手にどこか行ってしまう。
「どいて…!邪魔しないで!!」
私をさえぎるように現れた闇の精霊を鎌を振って切り捨てる。
自分がどうだとか、そんなのは関係ない。
彼を失ってしまう事の方が怖かったから。
「セレスティア!焦り過ぎだ、ちょっとは落ち着け!!」
「うるさい!!!」
勝手な行動を続ける私を止めようと、フェルパーさんが肩を掴むが私はそれを振り払って闇の精霊を切り捨てる。
「フェアリーさんが心配じゃないんですか!?フェルパーさんは!?」
そう叫んだ私をフェルパーさんが睨みつける。
「バカか!テメェが無理して倒れてみろ!それじゃあ何も意味ないだろうが!!」
「でも…!!」
間に合わなかったらどうすればいい、その気持ちだけがどうしても焦ってしまう。
だが、そんな私を見て、リーダーは静かに言った。
「フェルパーの言うとおりだぞ、セレスティア、アイツが勝手に先行してしまった以上。
俺達は何が何でも5人そろってアイツに追いつく必要がある」
「そうだね…バハムーンの言うとおりだ、だからこそ…アイツはさっさと片付けよう」
372 :
マルメンライト:2011/06/07(火) 01:02:51.69 ID:0R29riEC
お面で顔を隠しながらそう言ってクラッズさんがスティクスの立つ場所を睨む。
「みんな…」
「お前だけじゃねぇんだよ…、だから焦んな」
「はい…」
フェルパーさんの言葉に私は静かにうなづいて鎌を握り直す。
「なんか気にいらないね、ボクを見てないってのがさ…」
苛立たしそうな目で私達を睨みながらスティクスが再び精霊を呼びだす。
「ちっ…まだ呼び出しやがるか…」
吐き捨てるようにフェルパーさんが呟く。
「…このまま時間をかけ過ぎても良くないね」
魔力でナイフを操りながらディアボロスさんがそう言ってクラッズさんのそばに立った。
「だが、このままではどうにもならんな…一体一体はそこまでの強さは持っていないが、
あいかわらず数が多い」
ディアボロスさんの言葉にリーダーが苦々しげに呟く。
「せめて…アイツを守ってる精霊だけでも片付けられると良いんだがな」
「…闇の精霊だから、私の魔法がほとんど効かないのがちょっと辛いね」
私達のチームは後衛と前衛でその役割がはっきりと分かれてしまっている分、ある程度ならばらばらになっても行動はできる。
ただし、相手が大群になってしまうと弱いのが欠点だった。
「急がないといけないのに…」
小さく私はそう呟く。
皆もそれに小さくうなづく。
―せめてフェアリーさんのように大勢の相手をどうにかできる魔法を使える人がいれば…―
そんなことを思っていながら、目の前の精霊を切り飛ばす。
「セレスティア!後ろ!」
「しまっ!?」
ディアボロスさんの言葉にあわてて振り返った先に闇の精霊の姿が見える。
―避けられない!―
そう感じて、私は思わず目を閉じる。
だが…
「オイオイ…この程度で苦戦してんなよ、だらしねぇな…」
どこか楽しそうな声と、銃声が辺りに響いた。
「え?」
私の目の前で闇の精霊が霧散する。
「だめだよ、ヒューマンそんなこと言っちゃ」
「はいはい…わかってるよフェアリー」
思わず声の聞こえる方向を振り返るとそこにはタカチホ義塾の制服を身にまとった6人がいた。
「おいロクデナシにドクター、どうやらノイズメーカーは急いでいるみたいだ、道作ってやれよ」
「了解」
リーダーである少年の言葉にそう答え、白衣を纏ったフェルパーと白髪のディアボロスがタバコをくわえながら前に出る。
「行くぜ…フェル合わせろよ」
「うん、任せて」
二人は揃ってタバコを捨てながら、静かに腰を落とし刀に手をかける。
「疾き太刀の…白刃で咲かす…赤花で…舞う白雪を…桜に変えん!!」
異なる二つの声が響き、辺りの空気がギシリと歪む。
「天剣絶刀!」
それとともに雨のように降り注いだ斬撃が私達の行く手を阻んでいた精霊を吹き飛ばした。
「なっ!?」
驚いたスティクスの声が辺りに響く。
そんなスティクスとは対照的な落ち着いた声で彼らが告げる。
「行けよ、急いでるんだろ?」
ネームレスのヒューマンがそう言って笑う。
「すまんな…恩に着る、いつかこの借りは返そう」
「借りパクで良い、さっさと行け…」
リーダーさんの言葉にヒューマンさんがそう言って笑う。
その言葉にリーダーさんも笑って私達に振り返った。
「行くぞ!」
「オーケー!」
皆がそう言って武器をしまう。
「ありがとうございます…」
最後にそう言ってお礼を言って、私も皆と一緒に走り出した。
「クソっ…行かせるか…」
ノイズメーカーが去っていった先をスティクスが睨む。
だが、彼らを追いかけようとしたスティクスの前に赤い髪のバハムーンと薄いブルーの髪のノームが立ちふさがった。
「…行かせると思う?」
「残念だが、行きたいなら俺らを倒してからにしてもらおう」
「くそっ…」
吐き捨てるように呟いたスティクスが再び闇の精霊を呼びだす。
無数に現れた精霊に、ネームレスと呼ばれる彼らはどこか楽しそうに笑った。
「足りねぇなぁ…」
「足りないね…」
「あんまりつまらねぇと、後でフェアリーに迷惑かかるから楽しませてほしいんだがな…」
やれやれとヒューマンが笑うと少し恥ずかしそうにフェアリーが笑う。
「あはは…大丈夫、まだ予備の制服は2枚あるから」
「そうか…なら安心だな、俺も憂いなく戦える」
「…二人とも避妊はしようね、私がいうのもなんだけど…」
楽しそうに笑う二人を注意するかのようにノームも笑う。
「気が向いたらな…」
そう言いながらヒューマンは拳銃を構えて向き直る。
「タカチホ義塾所属…ネームレス…参る!!」
彼の言葉が辺りに響いた。
どこか離れた場所から戦いの音が聞こえてくる。
「…もしかしたら、彼らだろうか?」
―ゆっくりと行きすぎたかもしれないね…―
少しばかり急いだ方が良いだろう。
ここに来るまで妨害は全くなかった。
いくつかの罠はあったが、多くは床に設置されているものであったため、翼をもつ私にとっては関係ない。
「まさか、魔獣まで出てこないとは予想外だがね…」
たどり着くまで多少の戦闘は覚悟していた。
だが実施は闇の生徒会はおろか昨日は波のように襲いかかって来た魔獣達は気配すら感じられない。
「ずいぶんと歓迎してくれているようだ」
そう呟きながら、私は首に下げた小さな指輪を弄ぶ。
―これをもらったのはいつだっただろう?―
それはおもちゃの指輪だった。
いつだったか、とある少女がくれた指輪。
「彼女は、一体どうしているのだろうね…」
指輪をくれた少女と彼女の姿が瞼の裏で重なりあう。
「…そんなわけ、あるわけない…か」
余計なことを考えるのをやめ、私はたどり着いた扉に手をかける。
静かに扉を開く。
その先に広がった場所はどこか神殿に似ていた。
そして、学び舎にも似ていた。
「…どうだ?懐かしいだろう?」
「…ああ、実に腹立たしいほどにね」
闇の中から聞こえた声に私はそう答えて部屋に足を踏み入れる。
部屋に灯りがともり、中心に立つ一人のディアボロスの男の姿を映し出す。
「久しいな…一体どうやってこの時まで生き延びた?」
「…簡単さ、肉体の時間を止めたのさ」
歩みを進める。
ようやくだ、長い時を生き続け、ようやくこの場にたどり着いた。
「…ほう、そこまでしてあの男との約束を果たすか、円環の理から外れてまで…」
「俺は貴様と違って約束は果たすタチでね…」
私の言葉にその男、アガシオンが笑う。
「…なるほど、では今度こそ確実に滅ぼして、奴のもとに送ってやろう」
笑いながら杖を構えるアガシオンに向かって私も笑う。
半ば忘れかけていた感情が色を取り戻していく。
「ぬかせよ…お前ごときが俺を滅せるものか…ゆえに滅びろ、勝つのは俺だ!」
言葉と共に私は駆けだす。
「闇よ…我に従え…」
予想通りの言葉と共にアガシオンは予想通りの呪文を唱える。
「ククク…クハハハハハ!!!」
笑みが勝手にこぼれ出る。
「何がおかしい…」
呪文も唱えず笑う私をいぶかしげにアガシオンが睨む。
「別に、君を倒すのが楽しみで笑っていただけさ」
「ぬかせ!わが野望のために散るがいい!!」
アガシオンの呪文が完成する。
ゆえに私は唱える。
「起動を宣言、既知は…私を傷つけない」
闇が私を覆う、だがその闇が私を傷つける事はない。
なぜならば…
「私はその結末を知っている」
言葉と共にローブがはためき2匹の蛇が具現する。
「何!?」
それまで余裕の表情だったアガシオンの表情が驚愕へと変わる。
蛇は絡まり合いながら勝手にうごめき、襲いかかる闇をかみ砕く。
魔力の余波が風となって私の髪をなびかせる。
「実に…心地よい風だ」
私には傷一つ無い。
「校章だと…?」
あっけにとられたようなアガシオンが俺のことを見つめていた。
―その顔だ…その顔が見たかった―
「俺がこの数百年の間何もしていないとでも思ったか?
お前が力を取り戻すまでの時間、俺が胡坐をかいて暇をつぶしてたとでも思ったか?」
俺が昔のように笑うとアイツが目を細めて俺を睨む。
「貴様…」
半透明の蛇の文様は俺を守護するように取り囲む。
「過去の遺物とはすばらしい、俺のような存在でも、それを理解すれば力を貸してくれる」
俺の言葉にアイツは俺に向かって再び杖を構える。
ただし、そこに纏う気迫と気配は先ほどとは全くの別物だった。
「過去の遺物をもとに校章を人工的に作り出したか…」
「ああ…なかなか骨が折れたよ、俺のもともとの性格のせいか使い勝手が非常に悪くてね。
普段は全く使えない、だがそれでも、君を倒すぶんにはとりあえず問題はなさそうだ」
改めて俺は武器を構える。
「貴様を侮ったことを謝罪しようフェアリー…」
「そうかい…ではケリをつけよう、互いにな…」
俺は呪文を口にする。
同時にアガシオンも再び呪文を唱える。
「泣き叫べ劣等、今ここに…神は居ない」
「ぬかせ亡霊!わが野望のために花と散れ!!」
集めた魔力に意味を与え、アガシオンに向かって解き放つ。
「滅びろ!ビッグバム!!」
「滅しろ!ナイトメア!」
閃光と闇がぶつかり合い、衝撃が辺りに暴風となって吹き荒れる。
過去を振り切る戦いはそうして始まった。
塔が揺れていた。
上の階から振動と爆発音が聞こえてくる。
私達は走っていた。
ただひたすらに最上階を目指して。
「クソッ!いつになったら一番上までたどり着くんだ!!」
フェルパーさんがイライラした表情でそう叫ぶ。
私も多少は冷静で居るように努めては居るけど音と振動が響くたびに不安で泣きそうになってしまう。
だけど、ここで泣いて立ち止まってしまったらもう本当に彼に会えなくなってしまう気がしてひたすらに足を動かし階段を駆け上がる。
「ストップ!」
走り続ける私達をディアボロスさんが引きとめる。
そして落ちていた石を私達の前の道に向かって投げる。
その石が空中で何かに引っかかって地面に落ちた。
「…やっぱり」
ディアボロスさんが呟くとその言葉に呼び寄せられたように一人の少女が現れる。
「へぇ…私の糸が見えるんだ」
奇妙な人形を持ったフェルパーの少女はそう言って私達の前に立ちふさがる。
「あとちょっとだったのに…」
ぎりぎりと人形の首をひねりながら少女が私達を睨む。
「知ってるぞ…貴様、元プリシアナのベコニアか…」
「…これ以上は行かせないから、私が苦しんだ分を他の奴にも味あわせてやるんだから…」
「くそ…こっちは急いでるというのに…」
ベコニアを見ながらリーダーさんが呟く。
「…なるほど、ではここは俺達が引き継ごう…」
私達の背後からそんな言葉が聞こえてきた。
何かがベコニアに向かって無数に降り注ぎあわてた様子で彼女が回避する。
「ちょっと…フェルパー、一本も当たってないじゃない」
「悪いバハムーン、君が気になって外した」
「…バカ」
そこに居たのは燕尾服を纏ったフェルパーの少年と剣と楯を構えたバハムーンの少女。
そして…
「イチャつくなら他でやって頂戴、あなた達がうるさいからファリエルの調教、これでも我慢してるのよ?」
小柄なディアボロスの少女が身の丈と同じ程の大剣を両手に構えながら二人の間に割って入る。
「糸かぁ…緊縛も良いなぁ…」
どこかうっとりした顔で呟きながらエルフの少女が小さく呟く。
「…まぁ、確かにエルフはそろそろどうにかしないと妄想だけで末期レベルが上昇しても困るしな、終わったら好きに遊べ、俺が許可してやる」
「まぁ、私達もあんま人の事は言えないしね」
チリンと鈴の音を響かせながらクラッズの少女と赤い鎌を背負ったセレスティアの少年が姿を現す。
「…アンノウン!?ヌラリ達は何してるのよ!!」
「久しぶりだなベコニア、ちなみにあのハゲ達は来る途中に倒して来たぜ?」
不敵な笑みを浮かべた少年はそう言って笑いながら真紅の鎌を投擲する。
「行けよノイズメーカー、身内のことだ、こっちで解決しておく」
「恩にきる…」
言葉と共にリーダーさんが走りだす。
だから私もそれに続いて走り出した。
背後で戦いの音が聞こえる、だけど私達は振り返らない。
アンノウン、彼らの事は知っている。
今年の3学園交流戦の優勝チーム。
唯一、ネームレスに黒星を飾ったチーム。
たとえ、相手が英雄と呼ばれたエデン先輩であっても負けたりしないだろう。
だから私達はつき進む。
ただひたすらに前を見て。
次第に音と振動が近づいていた。
「あとちょっと…あとちょっとだから…だからお願い…」
神様に祈りをささげながら私はひたすらに走る最上階の扉まであとほんの少しだった。
「…なかなかやるね」
戦いはまだ終わっていなかった。
「私にはやり遂げねばならぬことがある…!」
アガシオンはそう言って再び呪文を唱えた。
「貴様の校章の能力は理解した…用は、貴様が既知感を感じた場合、その攻撃を無効化するというものだろう…」
「…なかなか鋭いね…その通りだ、名を…未知の校章という…」
私にとって、想像できる既知の結末を否定するためだけに用意した、魔王の力を模しただけの歪な模造品魔王達の使うそれとよく似た、似て非なる防御結界。
「つまり…貴様が結末さえ想像できなければ、攻撃は無効かされることはない…」
「…一体、どうやって想像させぬつもりだね?」
問いかける俺にアガシオンは何も答えない、ただ、俺を見ながら薄く笑った。
「何…簡単だ…」
そう言って、アガシオンは部屋の扉に杖を向けた。
「何を…」
そこまで言って私は気付く…
部屋に迫る足音に…。
「くっ!?」
あわてて俺は走り出す。
結末は想像できる、あのまま魔力が放たれればあの向こうの誰かが死ぬ。
「クソったれ!」
だが、それはただの想像、私にとっての既知には程遠い。
頭の中に彼女の姿がよぎる。
―すまない…セレスティア…―
心の中で呟いて私は走り出した。
扉を開いた瞬間に闇が迫ってくるのが見えた。
「え…?」
何が起こっているのか分からない。
ただ体が恐怖で固まる。
「セレスティア!!」
誰かの叫び声が聞こえる…。
聞き覚えのある声なのに、私はそれが誰なのか分からない。
フェルパーさんか、それともリーダーさんか…。
ただ誰かが叫んだのが分かった。
「う…あ…」
死にたくない…怖い…
体が勝手に震えて…私の口から言葉が漏れる…
「助けて…フェアリー」
「…呼んだかね、わが女神…」
そう言って笑った彼と私を…闇が襲った。
目の前で彼が崩れ落ちるのを私は茫然と見つめていた。
私も一緒に巻き込まれたはずなのに、なぜか私に傷はない…
透明な蛇のようなものが…私のことを守っていた。
「フェアリー…さん?」
「やぁ…セレスティア…怪我は…無いかね?」
「何してるんですか…」
地面に倒れた彼の手を掴み、呟くと彼が苦しそうに血を吐いた。
「私にとって…大切な人を…守っているのさ…」
彼の言葉と共に私を守っていた蛇が霧散する。
「予想通り…貴様にこの言葉を返してやろう、フェアリー…」
部屋に聞き覚えのない声が響く。
「お前が…アガシオンだな…」
フェルパーさんがその男を睨み、前に出た。
その隣にバハムーンさんが並ぶ。
「いくら貴様でも…同時に二つの結末は分からんようだな」
「残念ながら…模造品だからね…」
アガシオンの言葉に彼がそう言って答える。
「数百年にわたった旅の、この結末まで貴様には予想できたか?」
「数百年…?」
思わずフェアリーさんを見ると、彼が苦しそうに笑う。
「やれやれ…年齢が…バレてしまったね…」
「こんなときに…何言ってるんですか…」
彼の体が重くなっていくような気がする。
まるでその命が今にも失われようとしているかのように…。
「すまないが…リーダー殿…獣殿…クラッズにディアボロス…あの男を…止めてくれ」
「…分かった」
リーダーさんがそう言って静かに剣を構え、皆と共に走り出す。
皆が戦っているのに、私は彼のもとから離れられない…。
今この場を離れてしまったら、もう彼には会えない気がしたから…。
「君に会えてよかったよ…セレスティア…」
「何言ってるの…まるでお別れみたいに…言わないでよ…」
涙があふれる。
演技なんかできるわけが無い。
気付いていた…彼が今、死にそうなのは私の事を守ったからだと…。
「今…治すから…私が治すから…死なないでよ…」
「泣かないでくれよ…セレスティア、君が泣くと…俺も悲しいんだ…」
そう言って彼が笑いながら私の頬を撫でる。
その時に、私の眼にあるものが入った。
彼が首から下げたおもちゃの指輪…それには見覚えがあった。
とても大切にしていたものだから…覚えていた。
「約束したじゃない…追いついたら…お嫁さんにしてくれるって…私のお願い…一つ聞いてくれるって…」
私の言葉に、彼が少し驚いた表情をする。
「そうか…どおりで…似てると思ったよ…」
「私も…ずっと思ってた…すごく似てるって…でも違うって…」
追いついた…ようやく彼に追いついたのに…彼がまたどこか遠くへ行ってしまう。
今度こそ手の届かない場所に行ってしまう。
「やだよ!置いてかないでよ!私を一人にしないでよ…」
「すまない…」
「嘘つき…」
謝る彼にそう告げる。
「ごめん…セレスティア…愛してるよ…」
「フェアリー…私も…」
それなのに…彼は息をしていなかった。
彼の手が力なく垂れ下がる。
「やだよ…」
彼の体を抱きしめて…呟く。
「一人にしないで…」
彼は答えない…。
「大好きなんだよ…」
眼を閉じたまま目覚めない…。
彼が…死んでしまう…。
「やだ…嫌だよ…絶対に嫌…」
私は自分勝手だから…貴方を絶対に失いたくない。
「死なせてなんか、あげないから…絶対にお嫁さんにしてもらうんだから…」
だから…私は神に願う…皆のためなんかじゃなくて…自分のためだけの願いを口にする。
「彼を奪わないで…」
光が魔法陣を作っていく…。
「大切な人なの…」
彼と私を包みながら魔法陣が広がっていく。
普段、祈りをささげるときのように、心の底から…神に願う。
「お願いだから…助けてよ…!!」
彼が助かるのなら…この翼を捧げよう…。
彼の事を救えるのなら…どれだけの対価も払うから…。
だから私はその言葉を口にする。
「天にまします我らが父よ…願わくば…わが願いを聞き届けたまえ」
この羽根は確かに黒く染まっているけど、彼への想いは純粋だから、この願いを聞き届けてほしい。
彼の命を救ってほしい。
天を仰ぎながら私は願いの言葉を口にする。
「ラグナロク…今こそ奇跡を…」
私の言葉と共に、魔法陣が光を放ち、辺りを明るく照らした…。
「くっ!」
狂犬とも呼ばれたフェルパーの拳をかろうじてアガシオンは回避する。
だが、彼女は一切攻撃の手を緩めることなくアガシオンに襲いかかった。
「てめぇだけはゆるさねぇ…」
怒りを抑える事すらせず、狂犬と呼ばれた時代に戻りながらフェルパーは連続して攻撃を放つ。
攻撃を続けるのはフェルパーだけではなかった。
「はぁっ!」
気合の掛け声とともにバハムーンが斬撃を放つ、ただの斬撃ではない神速の6連撃
絶え間ない攻撃の嵐にアガシオンは思わず膝をつく。
だが、それでも攻撃の手は止むことが無かった。
「…こんなに頭に来るのは久しぶりだよ…」
狐の面を纏いながらクラッズが至近距離で銃と剣による攻撃をたたき込む。
「ぐ…が…」
アガシオンが苦しそうにうめく。
「クソッ…フェアリーめ…なんという置き土産を…」
アガシオンは歯噛みした。
彼の唱えた呪文が瞬時に手の中で霧散する。
全ての魔法が届かない、魔法による攻撃の全てが無効化される。
「神は居ないなどと、うたいおって、自らはそれを置き土産にのこすとは…」
襲いかかるディアボロスのナイフをよけながら苦々しげにアガシオンが呟く。
その瞬間、部屋を白い光が染め上げた。
「…ここは、どこだ?」
気付くと私は川のほとりに立っていた。
確か私はアガシオンと戦っていて…
「…そうか、私は死んだのか」
彼女を守るため、模造品の校章を使い彼女の死を否定した。
ゆえに自分は死んだのだ。
友との約束も果たせぬままに…。
ならばここは地獄だろうか?
ただ無限に広がる川があるだけで、そこには誰もいなかった。
「ずいぶんとさみしいところだ」
「…ええ、そうですね」
私の呟きに聞き覚えのある声が聞こえてくる。
思わず私は声の方向を振り返った。
「君は…」
そこには、予想通りの顔があった。
「お久しぶりです…」
光のセレスティア、そう呼ばれた友が、いつの間にか私のそばに立っていた。
「…すまないね」
約束を果たせなかった。
そのことを彼に謝ると彼が静かに首を振った。
「違うでしょう…フェアリー、貴方が謝るとしたら、謝るべきはそれじゃない」
彼の視線が私を射抜く。
「怒っているのかね?」
私の言葉に彼がうなづいた。
「私は…貴方に後世に伝えてほしいと言いました…。ですがそれは…貴方に罪を背負ってほしいと言ったわけではない…」
「そうか…」
私は思い違いをしていた、彼は、自分の成せなかったことを私に頼んだわけではなかったのだ。
私が勝手に思い込んで、勝手に自分の時を止めたことを彼は怒っているのだと、理解する。
「すまない…」
私が頭を下げると、彼がやれやれと首を振った。
「謝る相手も…違うでしょう?」
彼の言葉に、一人の少女の姿が思い浮かぶ。
「彼女に…貴方と同じ業を背負わせるつもりですか?」
彼の問いかけに私は首を振る。
「彼女に、そんな重い物は背負わせられないよ…」
「では…フェアリー、約束をしましょう…」
彼はそう言って笑った。
「…なに?」
突然の彼の言葉に、私は首をかしげる。
「貴方は彼女を幸せにして、今まで無視してきた時を、これから彼女と共に生きてください…」
彼がそう言って私を見る。
「…承知したよ…わが友よ…」
「…では、もうそれはいりませんね…」
彼が私に手を向けると、私の中から静かに小さな魔石が転がり出る。
私の時間を止めていた、小さな魔石が…。
「これは没収します、勝手に終わることも、終わらないことも許しません」
彼がそう言って笑う。
「止まってしまった時間をこれからきちんと歩んでください…。
貴方がこれ以上罪を背負うことはないのです…、ちゃんと人として貴方が思う幸せをつかみなさい」
「…ありがとう、友よ」
私の中から無限の時は失われた。
だが、それが喜ばしいことに私には思える。
そんな私を見ながら彼も満足そうに笑った。
「いつかまた…真に貴方が天に召される時…その時再び逢いましょう…」
彼の言葉に静かにうなづく。
どこか遠くで、彼女が私の名前を呼んでいる。
だから…帰らなければ…。
彼女を泣かせるわけにはいかないから…。
「さらばだ…友よ」
「…ええ、行ってらっしゃい」
そう言って過去を振り切って私は歩き出す。
川ではなく、陸に向かって。
私が、変えるべき場所に向かって歩き出した。
光が消える。
だが、彼は目を覚まさない…。
自分の祈りが足りなかったのか、それが悔しくて私は彼の胸に顔をうずめて涙を流す。
「嫌だ!嫌だよ!一人にしないでよ!!」
彼の胸をたたきながら神に呪いの言葉を吐く。
「返して!私の大切な人を返してよ」
私は一人泣きじゃくる。
誰も私を慰めてくれないから…大切な人が失われてしまったから…。
自分の力の無さが恨めしくて涙を流す。
「嘘つき…お嫁さんにしてくれるって言ったのに…お願い聞いてくれるって言ったのに…」
そう言いながら彼の胸をたたく。
もう彼は笑ってくれない、私を笑わせてくれない。
そのことが悲しくて涙を流す。
「フェアリー…フェアリー」
ただひたすらに彼を呼ぶ。
「…どうか、したかね?セレスティア…」
初めは幻聴かと思った。
彼を失ってしまったことを受け入れられなくて、自分は幻を見ているのだと…。
だけど、彼は体を起して、私の涙を拭いとった。
「君には涙より笑顔のほうがよく似合う…」
彼の唇が手に触れる。
温かい熱が伝わってくる。
「フェア…リー」
彼の頬に手を触れる。
彼に触れた手から彼のぬくもりが伝わってくる。
「心配かけてすまなかったね…」
彼がそう言って笑った。
「これは…夢?」
「いや、夢などではないさ…」
私の言葉に彼が笑って私の唇を奪う。
温かい彼の舌が私の中を蹂躙する。
「ん…」
「これでもまだ夢だと思うかい?わが女神」
いつものように彼が笑った。
「…ううん」
彼の言葉に私は首を振る。
夢なんかじゃない。
それは現実だった。
彼はちゃんと生きていて、私の事を抱きしめてくれる。
それがとてもうれしくて思わず彼に抱きついた。
「フェアリーの馬鹿…心配させないでよ!」
私の言葉に彼が笑う。
「すまんね、ちょっと昔の友人に会いに行って来たんだ」
「馬鹿…勝手に居なくならないでよ…もう…一人にしないでよ」
「…悪かった」
「お嫁さんにしてくれるんでしょ?」
「ずいぶん歳が離れているが良いのかい?」
からかうようにそう言って彼が立ち上がる。
「良いの、愛があれば年の差なんて関係ないんだよ」
「そうか…では…」
彼が私に手を差し伸べる。
「行こうか、わが妻よ…いつまでも彼らにばかり任せておけんだろう?」
戦い続けるフェルパーさん達を見ながら、彼が笑う。
だから私は彼の手を取って立ち上がる。
「はい…行きましょうフェアリー…私の旦那様」
私の言葉に彼が笑って私達は手を取って走りだした。
戦い続ける仲間に向かって。
「何だ今のは…!」
アガシオンがくらんだ目をこすりながら光の見えた方向を睨む。
そして、気付いた。
「何?」
フェアリーが居ない、死んだはずのその男が居ないことにアガシオンの心に動揺が走る。
「誰か…お探しかね?」
どこか芝居がかった声が部屋に響いた。
「な…に…?」
アガシオンが驚いた表情で声の主を見る。
「やぁ、数分ぶり、あの世で友に追い返されてしまったよ」
クスクスと笑いながらフェアリーとセレスティアは仲間のもとに合流する。
「遅いぞ、フェアリー」
バハムーンの言葉に、フェアリーは笑う。
「すまない、少し道に迷ってしまってね、我が妻がいなければ、たどり着けないところだったよ」
「本当に困った旦那様です…」
くすくすとフェアリーの言葉にセレスティアが笑う。
彼らを見ながら仲間たちも笑って各々の武器を構える。
「さて…アガシオン…第二ラウンドだ決着をつけよう…」
フェアリーの言葉にアガシオンが笑う。
「くはは…くはははは!それで良いそうでなくてはな!!」
杖を両手に構えるアガシオンを見ながらフェアリーが笑う。
「さてアガシオン、案ずることはない…rest in piace 安らかに眠りたまえ」
言葉と共にフェアリーは呪文を完成させる。
それを見ながらノイズメーカと呼ばれる彼らは笑った。
「行くぞフェルパー!」
「任せろ彼氏様!」
剣を構えたバハムーンの隣にフェルパーが拳を握って前に立つ。
「行くよ…ディアボロス」
「うん…」
仮面を纏ったクラッズの背後にディアボロスがたつ。
そしてフェアリーの隣に漆黒の羽根のセレスティアが立つ。
彼と手を結びながら…。
「もう離しませんからね…」
「分かっているさ」
彼は自分勝手で、私も自分勝手で…ようやくたどり着いたから、もうこの人の手を離したりなんかしたくない。
彼の手を強く握り、目の前の敵に立ち向かう。
やっぱりまだ怖いけど、でも私の隣には彼がいるから、今度こそ私は戦える。
アガシオンの張った防御結界を獣殿が粉砕する。
リーダー殿の攻撃にアガシオンの杖が宙を舞い、クラッズの攻撃でアガシオンの体が大きく傾ぐ。
私はその中へ飛び込んで、終わらせるための呪文を唱えた。
とっさにアガシオンが回避しようとするがその体をディアボロスのナイフが縫いとめる。
「終わりだ…」
私の言葉にアガシオンが笑う。
「いや、これでは終わらんさ、もう計画はほぼ完遂しているこの私が滅びても別の私が引き継ぐだけだ」
「そうか…ならば…」
俺はそう言って魔法を解き放つ。
「その計画すらも俺が止めてやる…」
「貴様の力でそれができるか?」
俺を見ながらあざ笑うかのようにアガシオンが笑う。
「できますよ…私だって居ますし、皆だっているんですから」
そう言って、彼女が私と手を重ねる。
「こういうときに行ってみたいセリフあるんですよね」
「奇遇だね私もだ…」
「言ってみましょうか夫婦の初めての共同作業ということで」
「そうしよう」
俺と彼女は共に口の端だけ上げて笑う。
『あばよ…くたばっちまいな』
ビッグバム…閃光が辺りを白く染め上げた。
「やれやれ、完全には止め切れなかったね…」
「でも、すぐに追い付けますよ、私達ですから…」
私の言葉に彼女がそう答えて笑った。
「皆も随分とひどいものだ、生き返ったばかりの人間をあそこまで寄ってたかって殴ることもないだろう」
「それだけ皆も心配してたんですよ」
闇の生徒会達との戦いは勝利などと呼べるものではなかった。
計画の全ては止められず、我々を守るために校長たちは石となった。
また、次の戦いが待っている。
今度こそ、世界の命運を決めるような戦いが…。
「怖いかね…」
「ちょっとだけ…怖いです」
「そうか…」
ドラッケンの静まり返った屋上から見える空には無数の星がきらめいている。
校長たちが自らの命をとして守ってくれたからこそ、まだ見る事の出来る景色に感謝する。
彼女と共に居られることを感謝する。
「そうだ…フェアリー」
「何だね、セレスティア」
「なんでもお願いごと聞いてくれるんだよね?」
どこか楽しそうに彼女が笑う。
そう言えば、この戦いの前に彼女とそんな約束をしたことを思い出す。
「何か思いついたかい?」
「うん…」
恥ずかしそうに彼女がうなづく。
「…フェアリーと朝まで一緒に居たい…貴方と一緒に目覚めたい」
「…それは…」
「…駄目?」
「いや…」
彼女の手をとり立ち上がる。
「光栄だよ…」
私の言葉に彼女は笑った。
彼の部屋に案内された私は思わずきょろきょろと部屋を見回す。
そこはとても綺麗に片付いていて、本棚には大きめの本と漫画の本。
そして机には書き途中の原稿のようなものが置かれている。
「どうかしたかね?」
私の視線が気になったのか彼がそう言って私を見た。
「いえ、思ったよりも今風でしたので…」
「盆栽でも飾られているとでも思っていたかね?」
「…ちょっとだけ、ちなみに何歳ですか?」
「覚えてないね、少なくとも君の10倍以上は生きているよ」
彼が静かに苦笑する。
「辛くなかったんですか…?」
ベッドに腰をかけながら彼に問いかけた。
そんなに長く生きて来ていたのなら、彼が味わったはずの喪失は1度や2度ではないはずだから。
「そうだね…辛かったよ、だが自業自得と言えばそれまでだ…」
悲しげに彼が笑う。
だから私はその体を抱きしめる。
「でも、そうじゃなければ私は貴方に追いつけなかった」
「そうだね…、もう私には無限の時間はないけれど…残された時間を、君と共にあるために使おう…」
首から下げたおもちゃの指輪を彼が鎖から外す。
私は静かに彼に向け、左の手を差し出した。
彼は黙って、差し出した手をよって薬指にその指輪をはめる。
「サイズ、あってませんね」
もともと子供のサイズであるそれは私の指には小さくて、完全にはまることはなかった。
「ずいぶん、大きくなったものだね」
どこか昔を懐かしむように彼が私の髪を撫でた。
「あんなに幼かった君がこんなに美しくなるとは思わなかった」
「恋する乙女はみんな美しくなれるんですよ、フェルパーさんやディアボロスさんも綺麗でしょ?」
私の言葉に彼が笑いながら私の服のボタンをはずす。
「だが、君の美しさには及ばない…」
「それは、当り前でしょう。だって…」
彼のローブを脱がしながら彼に向って笑いかける。
「だって、私はあなたのお嫁さんになるために生まれたんだから…」
大切な場所を覆う布1枚を残しほとんど生まれたままの姿となった彼女がベッドに横になる。
白く透き通った彼女の肢体が私の目の前にさらされていた。
「恥ずかしい…」
「普段はあんなに皆をからかっているというのにね…
獣殿に知られたら今度は君がからかわれてしまうよ?」
私の言葉に彼女が恥ずかしそうに顔をそめたまま胸をたたいた。
「だって…知識はあるけど…実際するのは初めてだから」
彼女の言葉に一瞬、罪悪感を感じる。
「…私も言った方がいいかね?」
「…言わなくて良いです、私よりも何倍も生きてる、って聞いてたから予想はしてました」
その割に彼女の顔には明らかな不満の色があった。
「スネないでくれよ…」
「スネてないもん…」
唇をへの字に曲げ、可愛らしく彼女は顔をそむける。
そうしたら彼女が期限を直してくれるのか考えていると静かに彼女が口を開いた。
「フェアリー…」
「なんだい?」
「私の事…好き?」
「無論だ…」
「私だけを見てくれる?」
「ああ、当然だろう?」
その言葉にウソや偽りなどない。
私は彼女を愛している。
本当は臆病な彼女を、誰かをからかうことが好きな彼女も。
とても愛おしい、それこそ自分の命よりも彼女の事が大切だった。
彼女の眼が私の眼を見て、笑った。
「じゃあ、いいや許してあげる」
そう言って彼女が何かを求めるように目を閉じた。
「ありがとう…セレスティア…」
彼女が求めているものを察し、私はそう言って彼女の唇に自らの唇を重ね合わせる。
「ん…」
彼女の中に舌を差し入れるとおずおずと彼女も舌を伸ばして私の舌と絡みあう。
「んふ…」
ぴくぴくと彼女の体がそのたびに震える。
ゆっくりと唇を離すと、彼女はベッドに横になり笑った。
「ねぇ…しよ?」
「ああ…」
彼女はすぐそこに居た。
いままでずっといろいろなものに追い越されてきたのに、追いついた彼女が私を待ってそこに居てくれる。
無限だった私はもういない、彼女と同じように老いて死んでいく私。
彼女はやっと追いついたと言っていたが、私にとってそれはちがう。
ずっといろいろなものに追い越されてきた私が、ようやく彼女と言う刹那の存在に追いついたのだと信じたい。
だから私は彼女にその言葉を告げる。
「愛しているよ…セレスティア」
偽りのない彼女への愛を…。
彼の手が私の胸に触れると体が勝手にピクンと震えた。
「ん…」
「痛かったかね?」
「ううん驚いただけ…」
心配そうに見つめる彼に私はそう言って笑いかける。
「あんまり大きくなくて…ごめんなさい」
私の胸は他の皆に比べると小さい。
特に前にお風呂に入った時に知ったフェルパーさんとの差には愕然としたものを感じた。
だが、彼はそんな私を見ながら笑う。
「気にすることはないよ…すぐに大きくなる、むしろ私が大きくしてあげよう」
力自体は優しく彼が私の胸を揉む。
「きゃっ!」
彼の手の動きに合わせて、私の胸が形を変える。
「…気持ち良い…」
やわやわと彼が私の胸を揉むたびに刺激が電流になって皮膚の下をかけぬける。
今まで感じた事のない刺激に、私はぷるぷると体を震わせることしかできなかった。
「ずいぶんと敏感だね」
くすくすと彼が笑いながら胸を丹念に揉む。
「フェアリーが…上手…だから…きゃふ…!!」
胸の中心をつままれて思わず甘い声が口から洩れる。
「ああ…美しい声だ…まるで夢の様だよ…君とこうしているなんて」
彼が嬉しそうに笑いながら私の胸を弄ぶ。
ピリピリした刺激が私を断続的に襲って、与えられる快感に私は何もできずに震えていた。
怖いのではない、気持ち良すぎて、何をして良いのかが分からない。
大切な場所がムズムズして足をすり合わせると、彼がそっと私の脚に触れた。
「おやおや…セレスティアどうかしたかい?そんなに足をすり合わせて…」
「ムズムズして…切なくて…どうしていいかわからないよ…」
自分が変になってしまったような不安が私を覆い隠す。
「フェアリー、私変だよ…」
彼の匂いがまるで麻薬のように私の頭を溶かしていく。
「それは大変だ…私が確認してあげよう…」
楽しそうに笑いながら彼がそっと私の下着に手をかけた。
「あ…そこは…!」
スルスルと彼の手が腰にあるひもをほどき私の下着を取り去ってしまう。
冷たい空気が直接その場所に触れ、恥ずかしさで思わず私は顔を手で覆った。
「ほぅ…」
見られている…彼に見られてしまってる。
「見ないでぇ…そんなにじっくり見ないでぇ…」
自分では見えないけど、彼が持っている私の下着を見たせいでそこがどうなってしまっているのか私は分かってしまっていた。
「恥じること等無い…とても綺麗だよ…」
言葉と共に彼が触れると、刺激とともにそこが水音を立てた。
「ひゃん!!」
胸とは違う刺激に思わず叫び声を上げる。
「フェアリー…苛めないで…」
くちゅくちゅとわざと水音を立たせるように彼が私のそこを弄ぶのに耐えられなくなって、私は彼に懇願する。
だが、彼はそんな私を見ながらサディスティックな微笑みを浮かべた。
「苛めてなどいないさ…君は初めてだと言うからね…優しくしてあげようと思っているんだよ」
言葉と共に水音が更に大きくなる。
「やだぁ…!そんなに音立てないでぇ…!」
耳をふさいでも音が私に聞こえてくる。
気持ち良いのに恥ずかしくて、彼の顔をまともに見れない。
だけど、目を閉じると余計に感覚が鋭くなって、自分のそこが立てている水音と、彼の与える刺激が強くなる。
閉じた瞼の裏でパチパチと火花がはじけた。
「…くすっ…」
「ひぃ!」
彼の笑い声と共に私のそこを生温かい感触が撫でる。
プツプツとした何かで大切な場所をなぞりあげられ、思わず私は目を見開いた。
「駄目!そんなとこなめちゃだめ!汚いから、それ以上なめちゃ駄目!!」
必死で彼の頭を押しのけようとするが、体に力が入らず、彼のされるがままになってしまう。
そして、ついに、彼の舌が私の中に入ってきた。
「くふっ!」
ビクンと体が大きく震える、糸が切れてしまったように体が全く言うことを聞かなくなり、彼への抵抗が完全に止んでしまう。
「ふぅぅ…くふぅぅ…」
だが、彼の責めは止まらず、胸を執拗に揉みながら、私の中をなめあげていく。
「変になっちゃう…変になっちゃうよぉ…」
もやもやとした感覚が広がっていくにつれ、自分が壊れてしまいそうな感覚に私はおびえて体を震わせた。
彼のしてくれることが気持ち良くて、何も考えられなくなってしまいそうで、目を伏せ、必死で声を抑えようとする私の手を彼が掴む。
「どうしたんだい?セレスティア…もっと君の美しい声を私に聞かせてくれ…」
「怖くて…気持ち良すぎて怖いんだもん…」
今までからかい続けていたフェルパーさんに心の中で謝罪する。
こんな快感を毎日のように与えられながら、それでも形ばかりの平静を保っていられる彼女に嘆息する。
「怖いなら…その恐怖の全てを火にくべてしまえば良い…」
悪魔のように彼が囁く。
「ふぁ…!」
彼の手が敏感な部分に触れた。
「駄目…それ以上は…私が…私が壊れちゃう…」
限界だった。
膨らみ過ぎた快感が私の中でわだかまっている。
これ以上の刺激を受ければ、それが破裂してしまうのが分かっていた。
未知の恐怖に震える私を彼の手が優しく撫でる。
「大丈夫だ…セレスティア…それは自然なことなのだから…」
「フェアリー…」
彼の優しい声に、私は覚悟を決め彼を抱きしめた。
「お願い…私を壊して…」
「ああ…」
言葉と共に彼が私の大事な部分をつまむ。
頭の中で、ついにそれが音を立てはじけた。
「きゃふぅぅぅ!!」
ビクンビクンと体が激しく震える。
「ふあぁぁぁぁ!」
筋肉が勝手に収縮し、背中が大きくのけぞった。
頭が真っ白に染まってふわふわと漂うような感触に、不安になって彼を強く抱く。
今度は体から全ての力が抜け、そのままベッドに倒れ込んだ。
「はぁ…はぁ…」
「…イッタようだね」
「…はい、イッちゃいました」
体がひどく敏感になって、彼の手が私に触れるたびに体が震える。
「すごく…気持ちよかったです…」
彼にそう言うと満足そうに彼が笑った。
「それは何よりだ…」
だけど、これだけで終わりではないことを私は知っている。
「次は…フェアリーさんが気持ちよくなる番ですよね?」
私がそう言うと、彼が笑った。
「ああ…出来るだけ優しくしよう…」
そう言いながら、彼がローブを脱ぎ棄て、ズボンを脱ぎ去る。
そこにはまるで蛇のように、彼の腰で彼自身がそそり立っていた。
「そ…そんなの入るんですか!?」
予想外の大きさに思わず腰が引ける。
どう見ても彼の腕と同じぐらいの大きさに、わたしは恐怖を隠せない。
「怖いならやめておこうか?」
そう言って彼が私の頬を撫でる。
「やだ…」
声が勝手に口から洩れた。
「折角追いつけたんだから…今日こそあなたの物になるんです」
逃げてばかりでは居られない…だから私は、体を起こす。
「フェアリーさんは、そこに横になってください」
「…きっと痛いよ?」
ベッドに横になりながら彼が呟く。
「あなたに置いて行かれた時の方がよっぽど痛かったです」
「…すまない」
あの時は本当に苦しくて、もし彼が居なくなってしまったら、そのことで怖くて仕方なかった。
その時に比べれば、初めての恐怖など大したことではない…。
だから私は寝そべった彼の腰にまたがって彼の物を私に合わせる。
その切っ先はしっかりと私を狙っていた。
「…行きますよ…」
「無理はしないでくれ、痛かったらまた今度にすれば良い…」
優しくそう告げた彼に首を振って、私は一気に腰を落とした。
「ん…くっ!?」
メリメリと彼が私を引き裂いて私の中にのみ込まれていく。
「うぁぁ…」
体が二つに裂けてしまいそうな痛みで涙がぽろぽろとこぼれた。
だけど、私は腰を落とすのをやめない。
ゆっくりと自分の意志で彼の事を受け入れていく。
「大好きですフェアリーさん…」
私がそう言うと、彼が私の背中を撫でながら、優しく囁いた。
「私もだよ、セレスティア…」
半分ほど彼が私に埋まったところで、彼のモノが何かにぶつかって止まった。
「はぁ…はぁ…」
荒い呼吸を繰り返しながら何度も腰を落とそうとするが、未知の恐怖に体が震えてままならない。
「あとちょっと…あとちょっとなのに…」
ほんの少しのきっかけがあれば踏み出せるのに、それ以上が怖くて踏み出せない。
これ以上は自分の力だけではどうしようもなかった。
だから私は彼に懇願する。
「フェアリー…私を大人にして…」
そんな私を抱きしめて彼が言った。
「分かった…」
言葉と共に彼が私の腰を引き寄せる。
「あ…あ…」
思わず逃げようとする私の腰を彼がしっかりと固定したまま引き寄せる。
そして…。
ブツリと、何かがはじける音が私の中に確かに響いた。
「いったぁぁぁ!!」
あまりの痛みに絶叫する。
体から力が抜けたせいで体重が一か所にかかって彼のモノがズルズルと私の中を押し開いて一番深くまで埋没する。
そしてそのまま、ぴったりと私と彼の腰がくっついた。
「あ…かはっ…」
肺から押し出された空気を吐き出して彼の上で荒い呼吸を繰り返す。
心配そうに見つめる彼をみて、私は痛みをこらえながら笑う。
「…入ったんですね…」
「ああ…」
自分のそこを見ると、限界まで広がった場所に彼が埋まって、トロトロとした血が流れ落ちているのが見えた。
「…貴方のものになったんですね…」
「ああ…」
私の言葉に彼がうなづいた。
みっしりと、彼のモノが私の中を埋め尽くしているのが分かる。
私の中で彼が脈打っているのが感じられる。
「私達…一つになったんですね…」
「明日は赤飯でも炊いてあげようか?」
からかうような彼の言葉に私は笑って彼の唇を奪う。
自分が満たされている感覚が、とてもうれしかった。
痛いのに、とっても嬉しい。
ズキズキとした痛みは止まないのに、彼と一つになったことが嬉しい。
「おなか一杯に、フェアリーさんを感じます」
裂けてしまいそうなほど限界まで広げられているのに、彼の鼓動が伝わってきて自分の鼓動と一体化するような感覚が心地いい。
彼のものになってしまってたのだと思うと、たまらなく心が震えた。
「痛いだろう?」
優しく彼がそう告げるが、私は静かに首を振る。
「痛いけど…おなか一杯で…それ以上なにも考えられないです…」
確かに、お腹は痛かった、裂けてしまいそうで、圧迫感で呼吸が辛い。
でもそれなのに、嬉しい気持ちが一杯で、何も考えられない。
ゆっくり腰を動かすと、ざわざわとした刺激が駆け抜けた。
「きゃうん!」
思わず悲鳴を上げると、彼が静かに私の腰を掴む。
「気持ち良いのかい?」
彼の言葉に私は静かにうなづいた。
「痛いのに…気持ち良いよ…フェアリーでお腹いっぱいで嬉しいよ…」
私の言葉に彼が笑ってゆっくりと腰を動かし始める。
背中を快感が駆けあがって腰が震えた。
「くはぁ…」
痛みはある、だけどその中に混じった怪しい快感がゾクゾクと背中を駆け上がる。
ゆっくりとした抜き差しが繰り返されるたびに次第に痛みが溶けていく。
次第に私の体は意志を無視して勝手に腰をくねらせ始める。
「おやおや…?」
フェアリーがそれに気付いて、楽しそうに笑った。
彼に嫌われてしまうのではないかという思いでふたたび心が不安に覆われる。
「う…ち、違うのフェアリー!…体が勝手に動いちゃって」
だが、不安にかられる私の頭を彼は優しく撫でて笑った。
「良かった…君が感じてくれて…俺だけ気持ち良いなんて、不公平だからな」
いつもの芝居めいた口調ではない彼の口調に胸がときめく。
本当の彼が知りたいから、私は彼を求めて淫らな願いを口にした。
「もっと…もっと頂戴、フェアリー、もっと気持ちよくして…」
「分かってるよ、俺の女神、もっともっと気持ちよくしてやる」
彼が笑って私に自分を突き立てる。
私を激しく突き上げながら彼が私の胸を揉む。
「駄目…もう駄目…イッちゃう…」
ぶるぶると体を震わせると、彼も体を震わせた。
「俺も…イク…」
「来て…来てフェアリー…」
痛む腰を無理やり動かして、貪欲に彼を求めて腰を振る。
「行くぞセレスティア…!」
彼がそう言ってスピードを速めた。
「ふあぁぁ…くはぁぁ…!!」
まるでおもちゃの振り子のようにに揺らめきながら彼の与える快感に震える。
そして、彼が力強くもっとも深いところをたたいた瞬間、私の中で彼がはじけた。
「きゃぁぁぁ!」
「くぅぅぅ!」
火傷しそうな熱さが私の中を焼いていく、その感覚に酔いしれながら静かに私は彼の胸に倒れ込む。
「では…第2ラウンドに行こうか」
快感に震える私を組み敷きながら耳元で彼が囁く。
「待って…待って…」
私のか弱い抵抗を彼が笑って振り払う。
「ふぁぁ!!」
私の上げた嬌声が、彼の部屋に大きく響いた。
「…フェアリーさん意地悪でした」
毛布で体を覆った彼女が非難交じりに私を睨む。
「…否定はしないよ、震える君をいたぶるのも中々面白かった」
私がそう言って笑うと、彼女が頬を赤くして体を覆う毛布を強くつかんだ。
「いっぱい、いっぱい膣内に出されちゃいました…」
「君の中がとても気持ち良かったからね…」
私の言葉に恥ずかしそうに頬を染めるだろうと思っていた彼女の顔が、イタズラが成功したかのように楽しげに歪む。
「…セレスティア」
「これで…もう、言い逃れできませんよね?」
くすくすと、彼女が楽しげに笑う。
その瞬間、あることに気付いて思わず私は彼女に問いかけた。
「…つかぬことを伺うが…セレスティア危険日はいつだね?」
「いつだと思います?」
私の言葉に、彼女が笑う。
なんとなく、わかってしまった。
「…今日だね」
「大正解」
彼女が満面の笑みで笑う。
「…未婚の女性がなんてことを…」
そもそも、私も私だ、そこまで自分ががっついて彼女を求めていたことを思わず恥じる。
確かに確認すらもせず、2ラウンド目に突入したのは私自身だ。
自分の愚かさを呪いたくなる。
頭を抱える私を見ながら彼女は笑った。
「今は未婚でもすぐ既婚になるもん」
おもちゃの指輪を指にはめながら彼女が笑う。
「確かに、そうだがね…」
「なら良いでしょ?」
そう言って彼女が笑う。
どうせ、結果が分かっているなら、我慢するのも馬鹿らしい。
彼女の毛布をはぎ取って再び彼女を押し倒す。
「きゃっ!」
可愛らしく、彼女が悲鳴を上げた。
「フェアリー?」
「どうせ父親になるんだったら、間違いなく出来るまでやってやる」
俺がそう言って笑うと、彼女が頬を真っ赤に染めた。
「う…今度は苛めないでね…」
「努力する…」
彼女の言葉にそう答え、俺は再び彼女に自分を突き立てる。
今まで隠してきた想いを、彼女に全て伝える為に…。
眠い、とっても眠かった。
「…大丈夫かセレスティア?」
食事をとりながら眠りかけている私の顔を覗き込みフェルパーさんがそう告げる。
「…らいりょうふれす」
「よし…ぜんぜん駄目だな」
舌が全く回らない、普段なら彼女をからかっていられるのに、それ以上に激しい眠気に私はふらふらと揺れていた。
「…ちょっとばかりやり過ぎたね…」
「…まぁみれば分かるな」
フェアリーさんの言葉にリーダーさんがそう言って笑った。
「…どれだけヤッタらこいつがこうなるんだよ?」
「獣殿、それは野暮だよ、聞かないでくれ」
フェルパーさんの言葉にフェアリーさんが頭を掻いて答える。
「ねぇクラッズ、ご飯食べたらデザートにいこう」
「…なんでそこで張り合おうとするかな君は…」
私を見て、ご飯を口にしながらディアボロスさんの言葉にクラッズさんが笑って答える。
「たとえ状況がどうなろうが変らんな、俺達は、どんな状況だろうがいつも通り、自分勝手だ」
リーダーさんがそう言って笑う。
「あたりまえじゃないですか…」
おもちゃの指輪を手にはめて、私はフェアリーさんの手を取る。
「だね…」
そんな私の頭を撫でながら彼も笑った。
「我々はノイズメーカーだ、自分勝手で喧しくない我らなど、私たちではないだろう?」
彼の言葉に皆が笑う。
「…だな」
「うん」
「だね」
そう…私達はノイズメーカー。
皆、自分勝手で喧しくて、仲が良い。
それが…私達だった。
以上で投下完了です。
今回も長々と失礼しました。
一応、これでチーム名未定ことノイズメーカーシリーズ終了です。
新シリーズはまだ考案中。
また、大変申し訳ありません。
スレ、やっぱり立てられませんでした。
前スレでもやらかしましたが大変申し訳ありませんが、
スレ立て出来る方代理でお願いします。
>>405 貴重な男フェアリー分でしたなGJ!てか以前のキャラ一部どころか総出演してたようなw
スレ立てできるかなーと思ったら忍法帖作成とか言われて無理だった……立てられる人出るまで保守するようにしよう……
>>406 GJどうもです、一度書いてみたかったので書いてしましました。
見直したらモブとスノウ以外の過去キャラほぼ総出演してますね。
やっぱりこの間の忍法帖リセットのせいでスレ立てはしばらく無理ですかね。
地道にレベル上げてスレたてしてみます。
多分レベル足りると思うけど立ててこようか?