デモンズソウルをエロくするスレ3

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586青ニートといっしょ(10/11):2012/01/22(日) 19:14:43.50 ID:gjB6+imv
 口を塞いだ理由は男自身にも遥とは知れなかったが、不安げな眼差しで見つめる女から
謝罪の言葉でも聞こえた日には死ねもしないのに死にたくなること請け合いであった。

 視線が絡む。繋がったままの場所が熱い。熱。足を崩し胡坐をかく男の性器は未だに熱
と硬度を帯びていて、男の腰を跨ぎ抱きかかえられる女の秘裂は温もりとやわらかさを
取り戻しつつあった。
「……その、悪かった」
 女が首を横に振る。
「続けていいか」
 女がこくりと頷く。
 男は逡巡し、「噛むなよ」言って、指を抜く。
 女が言葉を発するより。再び女自身の手を噛むより、早く。
 彼は彼女に口付けていた。

 近くで見ると、彼女の瞳はほんとうに碧だ。

 舌で舌を押し、狭く濡れた口内をまさぐる。頬の肉をこそげ、歯列をなぞる。鉄錆びた
味がした。気のせいかもしれないが、気に喰わなくて何度も舐めて味を薄めようと躍起に
なった。
 女の重みが増す。男根を包む肉がさざ波立ち熱を増す。
 切なげな吐息を男へと口移し、彼女は抱く男に全身を預けてきた。生身の両腕がソウル体
の首へと回され、かき寄せる。豊かな乳房が胸板に押しつけられひしゃげる。その熱、
その重み。彼のため誂えたかのようにひたりと寄り添う肉の熱。
 尻を掴んで──当然ながら彼女は尻も張り詰めてやわらかい──固定し、突き上げる。
「……ッ!」女の身体が跳ねる。秘裂が引き攣り、咥え込んだ男根をぎゅうぎゅう絞る。
生の肉。ソウルの肉。両者の差異は障害にもならない。柔襞を巻き込んで男根が行き来する
度、奥をごりごりと突かれる度、女が高い泣き声を洩らし男にしがみつくのがその証拠。
 息が苦しくなる。唇を、舌を離す。
 女の口からはもう余計な言葉は零れなかった。荒い呼吸だけが男の鼻先に当たる。上気
する肌、潤む緑眼、離れまいと寄り添う肉。女の全てが男を煽る。
「も……ね、もう……!」
 甘ったるく切羽詰まった懇願に、男は応える。
 再度の接吻。痺れる悦楽。
 激しく抉る動きに、女は腰を合わせることが出来ない。代わりに悶える身体を押さえつけ
男を限界まで呑み込む限界まで沈める。膨れた襞を拡げられるのも、奥を抉られるのも、
全部を受け止める。
 やがて。
 男の動きが速まり、ひときわ大きく突いて最奥へと先端を押しつけて。
 実際の精液ではない何かの奔流は女の胎へと注がれて。絶頂を示す女の嬌声は、絡み合う
舌の上に消えていった。
587青ニートといっしょ(11/11):2012/01/22(日) 19:15:26.69 ID:gjB6+imv

 涙が。女の目から、零れる。

 ──どうせ、
 ──貴方は。

 呟きは音になる前に消えて。女は最後に、男を弱々しく抱き締めた。


【XX周目より以前の世界より】

「こうなるのにな。分かってたのにな」
 ぱきん。
 女の手の中でソウルが砕ける。新しいソウルが女のものとなる。
「一緒だ。他のソウルと、貴方のソウルと、何も、何ひとつ変わらない。同じだ、他と
同じ、他の知らない誰かと同じ。だから平気。全然平気。分かってたから、どうせこうなる
どうせ同じ結末だと分かってたから、だから平気だし、私はまだ戦えるし、折れてなんか
いないし、“次”にだって行けるし、だから──」
 だから。
 続きを、女は口に出せなかった。
 嗚咽が楔の神殿の一角に響いていた。
588名無しさん@ピンキー:2012/01/22(日) 19:35:22.19 ID:WV+E1vcI
おおう、乙!
ゆっくり読ましてもらうぜ
589名無しさん@ピンキー:2012/01/22(日) 20:36:11.14 ID:V/aLWZo8
うわなんだこの俺得
何気に待望の青ニートさんにめっさ可愛いクールな女主といい
綺麗な文章とエロさが共存してるとこといいGJすぐる
ありがとう本当にありがとう!!
590名無しさん@ピンキー:2012/01/22(日) 21:28:47.33 ID:+4GAtle5
ぬ、濡れ場の表現力マジパネェ…
このスレはもうダクソスレに吸収されて落ちるもんだと思ってたよ。
ここにきてまさかの青ニートエロ…GJ!
591名無しさん@ピンキー:2012/01/22(日) 21:32:37.61 ID:R2Nxn2l0
おおおっ!GJ!
やっぱりエロ良いよエロ。
エロ無しSSが長く続きすぎると、他のSS投下しにくくなるもんな。
おっぱい6さん投下しなくなって、よかったかも。
592名無しさん@ピンキー:2012/01/22(日) 22:37:15.54 ID:r6lU1Pvs
>>591
後半二行で余計なこと言い過ぎ
素直にGJコールだけ送っときゃいいものを
過疎った原因をおっぱい6の人に押し付けんのは筋違いだろうが
593名無しさん@ピンキー:2012/01/23(月) 01:06:10.02 ID:cwNttrEI
投下しにくくなる本当の原因は>>591みたいな奴の存在
たちの悪い事に、そういう事言う奴に限って自覚が無い
594名無しさん@ピンキー:2012/01/23(月) 03:00:36.15 ID:GpBpNWKw
まぁどこだって住人のせいだよな、過疎るのは

妙に排他的なのが気になるんだけど多分同一人物かね

何にせよGJです
595名無しさん@ピンキー:2012/01/23(月) 05:19:02.43 ID:HTnBuH1a
周回SSのこの切なさはなんなんだ
その先にそれでも希望を見ようとするのか、
それすら繰り返される悲劇なのかみたいな
マジで絶妙な設定だよなあ
いつか必ず死ぬのに、それでも何かを信じて
生きようとするんだよなあ…
596青ニートといっしょ・中編(1/9):2012/01/23(月) 18:46:04.53 ID:4Ad3hpWZ
青ニート×女主人公な妄想>>577-587の続き。前回続き物ですって言い忘れちゃったごめんね
容量の心配はあれど、愛着のあるスレだし折角だから最後まで使い切りたいってのも人情

今回エロなし、勝手設定多めなので、苦手な方注意

*****

【XX周目より以前の世界より】

「だから」と、女は言った。

「だから、一緒に死んで?」

 吐き出される精を胎の一番深くで受けながら、彼に跨る女は言った。黒布で口元を覆って
いるのに、声はやけに明瞭に届いた。盗賊らしい黒装束一式を必要最低限はだけただけの、
碧の目が綺麗な女だった。
 射精の悦楽に浸っていた彼はしばし阿呆のように女を見上げ、出し終えて満足した男根
が膣壁に擦れる刺激で我に返った。下肢で男を咥えた女が、姿勢を変え傍らのショーテル
を取った。
 ソウルのみの身体でも、恐怖を感じれば血の気が引く。
 彼は何事かを喚きながら自らも剣へと手を伸ばす。
 混乱し床を這い回る手に、華奢な手がそっと剣を握らせたのを。彼は把握していない。

 女は、泣きそうな、縋るような目をしていた。

 刃を振り上げる女が何故そんな表情をするのか、彼には分からなかった。
 そもそも彼は。女が何者なのか。自分は、何者なのか。そんなことすら忘れていた。

 唯ひたすら哀れなほどの死への恐怖と滑稽なほどの生への執着に突き動かされ、彼は剣
を彼女の腹へと突き立てた。
 彼女の緑眼から光が失われ。
 冷たい刃先が静かに彼の喉を撫ぜていった。


 ──暗転。


 女が目覚めたのは何時もの場所で。楔の神殿、女神像の前でだった。
 そっと腹を撫でる。治りきった古傷──ボーレタリアに入る以前に受けたもの──以外
は滑らかな、娘らしい肌の感触。その他には何もない。何も。
 女はゆっくりと視線を走らせる。王城の要石の前、今はもう誰もいない空白に。
 歩く。歩く。覚束ない足取りで、階段を昇る。神殿二階の一隅、ひっそりと静まり返った
場所まで、歩く。
597青ニートといっしょ・中編(2/9):2012/01/23(月) 18:47:11.46 ID:4Ad3hpWZ
 そこには未だ情交の残り香が漂っているようだった。ソウル体となった女の錯覚かも
しれなかった。床に残った淡く輝くソウルの残滓だけが確かなものだった。
 女がソウルに触れる。元の持ち主と巡り合い、ソウルは当然のように女の中へと巻き
戻ってゆく。
 記憶しているよりも、多く。例えばそう、戦士ひとりぶん程度を増やした量のソウルに
女は口の端を上げた。
「笑える」
 笑うために。
 泣くように。
「どうして、私は、まだ」
 呪いにも似た疑問に答えるものはいなかった。


【XX周目かの世界より】

 ドラゴンの炎吹き荒れる中、熱風を肺に吸い込まぬよう息を止め、走る。水のヴェール
が術者の身代わりとなって蒸発する。歯を食い縛る。目指す場所、王の居城は、もうすぐ
其処。
 視界が白熱する。
 地面に叩きつけられる。軽装鎧の身体が悲鳴を上げ、喉は新しい空気を求めて痙攣する。
 呼吸を意志の力で押さえ込み、走る。耳に轟々と唸り。吹き荒れる風、炎、ドラゴンの
咆哮、身体じゅうをぐるぐる回る自分の血。
 最後の一駆けは殆ど転がるようにして。
 女は、ボーレタリア玉座へと続く回廊へ辿り着いた。
「が……っは! うえっ、げほっ!」
 肺いっぱいに新鮮な空気を取り込み、女はえづいた。急激な酷使に、死から逃れた安堵
に、身体が震えている。
 此処までくればドラゴンの死角に入る。炎を浴びる心配はもうない。呼吸を落ちつけた
女は、ぱしんと頬を叩いて喝を入れ、背中から紫炎の盾を下ろした。炎を防ぐ大盾は真っ黒
に焦げていたが、持ち手を守るという役目は立派に果たした。
「よし」
 呟き、別の盾を背負い直す。鮮やかな色彩で異教の神の描かれる盾は、守りに使うには
些か心許ない代わりに所有者の体力を僅かずつ回復する魔力を秘めていた。
 今からの“敵”に盾が有効ではないと女は知っていた。“かのデーモン”の一撃は彼女の
腕ごときで受けきれるものではない。
「……よし」
 受けなければいい。
 斬られなければいい。
 傷を負うより先に、自分が死ぬ前に、殺す。
 それが純粋な力ではデーモンに劣る女の戦い方だった。
598青ニートといっしょ・中編(3/9):2012/01/23(月) 18:48:45.07 ID:4Ad3hpWZ
 タリスマンを手に聖句を唱え、一度きりの復活を願う。祈る対象は聖職者の信ずる“神”
ではないことを女は既に知っていた。女は、何度も繰り返していたから。
 勝つための最適解は既に在る。
 あとはなぞるだけ。繰り返すだけ。

 ──何故、を。彼女は自問する。

「……帰らなきゃ、ならないから。約束、はしなかったけど。お願いは、してしまった
から。私から反故にするなんて出来ない」

 ──何故、を。彼女は自問する。
 ──どうして。何度も、何度も。

「なんでだろうね」
 歩く。歩く。誰もいない階段を上がり、玉座へ続く無人の廊下を進む。
「あの一度だけ、だったのに。“また”なんて無いかもしれないのに」
 昇降室の扉を開ける。死しても尚王に仕える奴隷たちがぎいぎいと滑車を回す。浮遊感。
小さな箱部屋に乗った女は、上へと運ばれてゆく。
「でも」
 停止。
「私は、これ以外を知らないから」
 呟いて。扉を開ける。一歩を踏み出す。
 朽ちた玉座にてボーレタリアを見下ろす、白い偽王を殺すために。


【X周目かの世界より】

 すらりとした脚がふらふら目の前を横切っていくのに男は僅かに目を向けたが直ぐに
興味を失った。
 ソウル体の脚だった。新しいデーモンスレイヤーはまた何処かで死んだのだろう。心
折れた自分が言える立場ではないが、よくもまあ飽きずに死ぬ。
 どさり。重い音。落下音。硬いものの砕ける水っぽい音。
 ──また自殺か。
 男はうんざりする。楔の神殿名物の身投げだ。せっかく得た生身の身体を、デーモンを
殺す者は枷になると簡単に投げ捨てる。この世界以外でも日常的に行われる光景。
 ふらふらと。復活した女が心折れた戦士の前を横切ってゆく。
 彼女の傍らを白い幻影が軽快に駆け抜けてゆき、後ろの階段を上がっていった。あの
幻影も自殺志願者だろうか。わざわざ痛い思いをして、ご苦労なことだ。幻影の後を追う
女を眺め、フンと鼻を鳴らす。
 ──。
599青ニートといっしょ・中編(4/9):2012/01/23(月) 18:50:23.47 ID:4Ad3hpWZ
 ──違和感があった。
 デーモンを殺す者は、死ねば生身を失う。これは正しい。
 デーモンを殺す者は、自ら死んで生身を捨てることがある。これも正しい。
 繋がらない。
 何処かで殺され生身を失った女が、此処で死ぬ理由が見当たらない。

 どさり。重い音。けれど生身よりは軽い音。ソウルの身体が落ちる音。硬いものの砕ける
水っぽい音。床に激突した女の頭が砕ける音。

 女の女神像前での復活と高所からの自殺の往復がそろそろ二桁に届きかけた頃、
「……お前、何をしているんだ」
 男はようやっと声を掛けた。
 男は苦り切っていた。こんなもの自分の役柄ではない。死ぬなら親身になって心配する
であろう人間の前で死ねばよいものを。
 呼び止められた女はびくりと身を竦ませ男に向き直る。長い黒髪を銀のコロネットで
留め、首から下を板金鎧で固めた兵士風の装い──というか、いかにも“ありあわせの装備
で頑張ってみました”という感じの女だった。
 だが。彼の目を引いたのは、女の格好ではない。
 汚れた沼のように澱みきった緑の瞳。
 心折れた者の目、自分と同じ目だった。

 咄嗟に女の手を掴み、自分の横へ座らせた理由。彼女は自分の同類だと思ったから。
折れたのは自分だけではない、と思い、薄暗い喜びが生まれたから。その、他者の挫折を
喜ぶ己れに嫌悪と罪悪感が湧いたから──笑える話だ。罪悪感、まだ自分にそんなものが
あったとは。そして。彼女の澱んだ目は、戦士のそれではなく、泣きそうな唯の小娘の
ようにも見えたから。
 とにかく。
 デーモン殺しを諦めた男は、デーモンに殺された女を座らせ、自分も横に腰を下ろす。
 沈黙。
 沈黙──「放って、おいて」
 微かな嗄れ声がした。
「どうせ死ねないんだから、気にしないで」
 ああ、出来れば自分も気にしないでおきたかったさ──男は、は、と息を吐き。思った
のとは別の台詞を口にした。
「だが、痛いだろう」
 女が顔を上げる。幼げな顔立ちだった。男よりもずっと若いのだろう。
「どうせ死んでも死ねないんだ。ここでじっとしているのと、何が違う? 痛くないだけ
マシだろう?」
「……」
 女はぽかんと口を開け──「そう、かも」
600青ニートといっしょ・中編(5/9):2012/01/23(月) 18:52:17.27 ID:4Ad3hpWZ
「だろう? だったらここに座ってりゃいい……俺みたいにな」
 女の唇から微かな吐息が洩れる。うん、と聞こえた気がした。

 どのくらいの時間、二人雁首そろえてぼーっと座っていただろう。
 不意に。膝を抱えていた女がもぞもぞ動き。
「……痛い」
 呟いた。
 手が、後頭部を押さえている。落下時に砕けた部位だ。
「痛いも何も、前の傷は全部治っちまうだろうに」
「そうだね。じゃあ、痛かった」
「……お前実はバカなのか?」
「ひどいな!」女は憤慨し──気の抜けた顔で笑う。「かも、しれないけど。貴方は口が
悪いよ」
 華やかではないが愛らしい笑顔だった。男の、折れた心の何処かを揺さぶるには充分な。
「ありがとう」
 全く必要のない礼を言い、女は立ち上がる。
「行くのか?」
「うん。じっとしているのとか、待つのとかは苦手だから」
「ハ。また殺されに行くとは、ご苦労なことだ」
 女の手が微かに震えた。ほんの一瞬、言うのではなかったと後悔した。
「……それでも、他に道なんてないし」
 前向きなことだ、と思った。やはり彼女は自分と“違う”のだ、とも。
「──なあ、」
 その。自分とは隔たりのある筈の女が、おずおずと訊ねてくる。
「また、死にたくなったら……次も、ここに来ても、いいかな」
 死ぬのも、痛いのも、実はあんまり好きじゃないんだ──これからまた死にに行く女は
そんなことを言った。
「どうでもいいさ。……好きにしろよ」
 余計な一言をつけ加えてしまったのは、彼女への罪悪感が残っていたからだろう。
 だから彼女の安堵と微かな親愛を込めた笑顔を向けられて。男はどうしようもない心地
になってしまった。


 それが切欠で彼と彼女は言葉を交わすようになった。男はいつも同じ場所にいて、女は
様々な場所に赴いて死ぬ度に男の隣に座った。
 女は、本当によく死んだ。死ぬ度にべそべそ泣いて、或いはぶつぶつとあれが悪かった
こうすれば良かった、と反省だか自虐だが判別し難い独り言を呟いていた。
 彼女が男に対して何かを要求することはなかった。慰めであれ、激励であれ、男からも
与えることはしなかった。そんなことの出来る人間ではないと自覚していた。

 その日までは。
601青ニートといっしょ・中編(6/9):2012/01/23(月) 18:53:46.09 ID:4Ad3hpWZ

「なあ……お前、死に過ぎじゃないのか」
 今日も今日とて嵐の祭祀場のローリング骸骨にブチ殺された彼女は、男の言葉に傷ついた
表情を見せた。
「私はどうせ弱いよ……放っておいてくれ……」
 いじけて三角座りの女を、男は呆れた様子で眺め。
「……お前、ちょっとローリングしてみろ」
「はい? なんで?」
「いいからやってみろよ」
 突然の要求ではあったが、根が素直なのか女は首を傾げつつ従う。
 頭部以外を板金鎧で覆った身体が前転し。がしゃがしゃ耳障りな音を立てのたのた起き
上がる。
 成程。こいつはダメだ。これは死ぬ。というかこれでボーレタリアまで辿りつけたという
のが不思議でならない。
「なんでローリングしただけでそこまで言われなきゃならないんだ! わ、私のローリング
はそんなにおかしいのか?!」
「いや」ソウル体だというのに頭痛を感じながら、男は溜息交じりに告げる。「おかしい
以前に、出来てねえだろ」
「いやちゃんと転がって起き上がっただろうが!」
 言っても分からないそうなので行動で示した。
 その場で床へと飛び込み、肩口を支点に回転、着地の衝撃を逃がす。しかし回る勢いは
殺さずそのまま立ち上がる力に転化する。この間、一秒にも満たない。
「……」
 女は悔しげに唇を噛み。「……私には出来ないよ」
「いや出来る。というか出来るようになれ。まずはそのクソ重い鎧を脱げ。それでも
出来なきゃ死ぬかもう諦めろ」
「な」女は驚き、抗議する。「鎧を脱ぐ、だって? 冗談も休み休み言え。私の体力で鎧
もなしに敵の攻撃に耐えるのは無理だ」
「それじゃあ訊くがな」
 抗議に、男は返す。
「お前、鎧を着けていれば敵の攻撃に耐えられるのか?」
「……! そ、それは……」
「耐え切れないから何度も死んでるんだろ。鎧の上から削り殺されるのと、鎧なしで一撃
で殺されるのと、何が違う?」
 一拍。
「違うな。全然違うな」
「え」
 男は溜息を吐く。
 誰が死のうが生きようが、挫折した自分には関係ない。関係ないが──死ななくてもいい
人間が死ぬのは、やはり気分が良くないものだ。
602青ニートといっしょ・中編(7/9):2012/01/23(月) 18:55:17.01 ID:4Ad3hpWZ
「鎧の上から殴られりゃ死ぬ。鎧なしで殴られても死ぬ。けどな、当たらなければ怪我も
しないし死にもしないだろ。お前の力じゃ鎧を着けたまま避けるのは無理だが、脱げば
何とかなるかもしれん。違いってのは、そういうことだ」
 女はじっと、男が居心地の悪さを覚えるくらいにじーっと見つめて、
「頼みがある」
 なんだか必死な様子で懇願してきた。
「私に訓練をつけて欲しい」
「俺にそんな義理はないぞ」
「……分かってる。けど、」女の目は、必死だった。目の前の相手しか存在しないように
必死だった。
「このままじゃ、私はどうにもならないままだ……お願いだ、礼は、必ずするから! 私
は、死ぬのも、痛いのも、もう嫌なんだ……!」

 助けて、と。
 デーモンスレイヤーであることを未だ諦めていない女が、此処から進むことを諦めて
しまった男に、言ったような気がした。

 ──誰かに助けを求められたのは、本当に久々だったから。
 ──心折れた自分にも、役目があるかもしれないと、思ってしまったから。

 男は、つい頷いてしまった。


「防具は限界まで軽くするとして、だ。武器はどうする」
「力はあんまりないから、重いものは持てない」
「銀のコロネット持ちってことは、魔法も使えるんだろ。そっちで戦えば少しはマシに
なるんじゃないか」
「魔法は……教わったけど、上達は全然しなかった。触媒だって“姿隠し”のために持って
いるようなものだし」
「……お前、思った以上に弱いんだな」
「言わないで……」
 とりあえず手持ちの防具で一番軽い魔術師の衣服一式を装備させ軽快なローリングが
可能であることは確認した。次は攻撃手段だ。
 何時も使っているというロングソードとヒーターシールドを持たせ、軽く打ち合う。
「お前程度の力で、盾で防ごうと考えるな! 受けて、相手の剣を崩すと考えろ!」
「……ッ! は、いっ!」
 盾めがけ剣を思い切り振り下ろす。金属と金属が擦れ、ヒーターシールドを支える腕が
加重を逃がそうと躍起になる。
 突き出された直剣の一撃を、今度は男が盾で弾く。大きく体勢を崩したところに、一突き。
 女の反応は速かった。
603青ニートといっしょ・中編(8/9):2012/01/23(月) 18:56:57.86 ID:4Ad3hpWZ
 横へと滑る、軽やかなローリング。「わ、っと」勢い余ってたたらを踏んだが、装備の
軽さに馴れてしまえはどうということもなくなるだろう。
 意外にも剣筋は悪くない。先のロングソードでの攻撃も、力がないと嘆く割にはなかなか
の威力だった。
「お前な、」
「うん?」
 ──これは、試してみる価値がある。
「刺突剣は使ったことはあるか?」
「うん。前はレイピアを使っていたけれど、こっちの方が頑丈だから今は預けっぱなしだ。
それがどうかしたのか?」
「持ってこいよ」
「え」
「剣を見る。もう一戦だ」

 獲物を変えての再度の打ち合い。
 予測は正しかった。
 女の剣は一変していた。直剣の重さを扱いかね大味になっていた刃筋が、軽いレイピア
に替わった途端安定する。鋭い一閃が矢継ぎばやに男を襲い、いくつかは盾が間に合わず
大きく間合いを取って避ける破目になった。
 これか。これが、彼女の本来の剣か。
 重さに任せて振るう剣よりも。敵の隙を狙い防護の僅かな間を抜くスタイルの方が彼女
に相応しいということか。
 全く。
 自分の生きる術も知らずに。
「よく此処まで来れたよなあ──!」
 剣を叩きつける。女が盾で受け──

 受けない?!

 切っ先が空を切る。女がいない。黒髪の残像だけが視界にある。何処に、どこに、
「────ッ!」
 ぞわりと総毛立つ感触が生まれる。理屈より理解より先に身体が状況を把握する。背後。
致命狙い──!

 鈍い衝撃が左手に来る。悲鳴もあげず女の身体が石床へと転がってゆく。「しま……っ!」
咄嗟に裏拳の要領で振り抜いた盾が、女の顔面をまともに捉えたのだ。
 ソウル体、戦士同士とはいえ顔はまずかっただろうか──似合わないフェミニズムが頭
をよぎる男の前で、女は身を起こし。
「今の──なんだ?!」
 物凄い勢いで男ににじり寄ってきた。
604青ニートといっしょ・中編(9/9):2012/01/23(月) 18:58:36.72 ID:4Ad3hpWZ
「ああいや悪かった悪かったからまずは鼻血を」
「今の何だろう! なんか身体が有り得ないくらい軽かった!」
「鼻血を拭けって──何だって?」
 女は興奮しきりだった。ソウル体なので殴られた頬の赤みもだらだら垂れる鼻血の色も
目立たないのだが、高揚に顔が真っ赤になっているのは何故か分かった。
「レイピアがあんなに軽かったのも狙ったところに持っていけたのも初めてだし、失敗は
したけど何時後ろに回ればいいのかも分かったし──なんでだろう!」
「いや落ち着けよ」
 当たり前のことだろう、と男は女を宥める。
「負け続けのお前だって幾らかソウルを喰らったろう。ソウルでの強化は普通の鍛錬なんか
目じゃない効果を及ぼすんだよ」
「ソウルの……そっか、そうだったんだ」
 女は握るレイピアをじっと眺め、
「行ってくる」
 鼻血もそのままに凛々しく宣言した。
 は、と間抜けな声を洩らしたのは男の方。
「行くって、何処にだ」
「祭祀場だ。この感覚を忘れない内に骸骨どもに一矢報いてやる」
 女はくるりと背を向け走り出し。
 男の元に戻ってくる。

「ありがと」

 はにかむ姿は育ちの良い令嬢でも通る愛らしいものだった……服の袖でこっそり鼻血を
拭っていなければ。
「俺は何もしてないだろ」
「いいや」
 卑下も含んだ返答に対し、女はきっぱりと言い切る。
「貴方がいなければ私は先に進めなかった。貴方のお蔭だ。ありがとう」

 真直ぐな目。
 その色は、もう澱んではいない。透き通る南の海の色。

「行ってきます」

 今度こそ女は駆け出す。
 残された男はひとつ頭を振り、自分の定位置に戻る。そこで何時も通りの姿勢を取る
ことになるだろうが。今度はそこに、“待つ”という行為が加わりそうだ。


 その後。ローリング骸骨に競り負け、奴らには刺突武器より殴打が有効と気づくまで
三度ほど死ぬ彼女の洟水を拝むことを、男はまだ知らない。

*****

長くなったので分けます。続きは終わり次第
605名無しさん@ピンキー:2012/01/23(月) 21:52:24.06 ID:HTnBuH1a
やばい女主マジかわいい
GJ!続き待ってるぜ
てゆーか俺の涙を返せw
606名無しさん@ピンキー:2012/01/25(水) 12:42:55.82 ID:5gW6YcBx
青い人はやっぱ実は好い人役が似合うね、素敵
607青ニートといっしょ・後編その1(1/14):2012/01/25(水) 17:40:36.35 ID:c7YgWnZD
青ニート×女主人公な妄想>>596-604の続き。主に女主人公関連で好き勝手してます

*****

 ソウル体になって長いその男は、生身の感触を久しく忘れていた。無論この身体でも
痛みを感じれば五感もある。けれど、その感覚が肉の身を持っていた頃と同一であるか
どうか、男には確信が持てなかった。
 身体の前で両手を組む。指を組み換える。出来る。感触もある。ソウル体の身体は生身
と同じように動く。
 動くのに。
 自分は、

「わっ!」
「うおおっ?!」

 予兆なく背中を叩かれ比喩抜きに飛び上がる。耳元で弾けるような笑い声がした。
「ははっ、奇襲成功!」
 陽だまりの猫の如く目を細め笑うのは、黒髪緑眼のデーモンスレイヤーだ。曖昧な燐光
を纏う姿は男と同じくソウル体であることを示しているが、活力に溢れる印象は明と暗
ほどに異なった。
 今日の彼女は何時もの魔術師装備から髪を留める銀のコロネットだけをそのままに、
盗賊めいた黒一色の格好をしている。足音が聞こえなかったのは布で裏打ちしたブーツの
効果だろう。
「なあなあ、足音も気配も全然気づかなかっただろ? ラトリアのタコ看守もこいつで
後ろからばっさりさ!」
 女は片足立ちになりその場でくるくる回ってみせる。身に着けているのは後ろ暗い職業
の人間の好む色無し音無し装飾無しの装束だというのに、はしゃぐ彼女は新しい服を与え
られた幼女の如しだった。
 一瞬翻るスカートの幻影が見えた気がして、男は眉間を押さえた。引きずられ過ぎだ、
どうかしている。
「……デーモン殺しは順調なようだな」
 座り直しての男の言葉に女は「うん」と頷き、自らも腰を下ろす。
「最近、“敵に倒されない内に倒す”っていうのがどういうことか、分かってきた気が
する。あ、弓も作って貰ったよ」
 ごそごそ背負い袋を探る女を、男は遮る手の動きで止める。
「興味ないんでな。……それより、さっきの。気配を殺すのはやめてくれ。気分が悪い」
 気配を絶たれ気づかぬ内に背後を取られるのが嫌なのか──彼女を信じていないのか。
気配に気づけぬ己れが嫌なのか──自身を信用していないのか。少し考えればどちらの
理由かは明白だろう。
 しかし。
608青ニートといっしょ・後編その1(2/14):2012/01/25(水) 17:41:21.32 ID:c7YgWnZD
「ご……ごめん」
 顔を曇らせ謝る女に気を取られどうでもよくなる。
 ──クソ。何だってんだ。
 ──お前は、デーモン殺しも板についてきた女は。心折れた自分よりも余程強くなった
のに。
「もう、しないから。許して欲しい」
 捨てられる不安と、縋りつく懇願と。僅かに甘い媚びすら含んだ声に表情に、庇護欲と
滅茶苦茶にしたい欲と、心の両端が揺すぶられる。
 服装も悪い。この鎖骨をまるごと露わにするデザインといい、身体の輪郭をくっきり
浮き立たせる材質といい、魔術師ローブのときにも思ったが質量豊かな胸といい、男の
よからぬところを刺激してしまう。最後のは服装は関係ない気もするが、とにかく背丈の
関係でちらちら覗く谷間が悩ましい。あ、関係あった。
 オーケー、落ち着こう。
 まず視線を胸から引き剥がして、この。たかだか戦い方を教えた程度の女自身よりも
弱い相手に潤んだ瞳を向ける女に「これから気をつけろよ」とか何とか言って、ほっと
して笑う彼女を見物するとしよう。

「──前に“礼をする”って言ったよな」

 舌と声帯が理性を裏切る。
「え、あ、うん」女はいきなりの話題転換に間抜けな反応を返す。
「私に可能な返礼なら……なにか必要なものはあるかな?」
「モノじゃねえよ。武器も装飾品も、俺には必要ない」
「……うん、でも、それじゃあ」
 不安げに目を泳がせる女。
 ──止めろ。止めておけ。こいつはガキだ。おっぱいばかりはご立派だが、このほけっ
とした様子じゃ自身が──“女”であることが異性にどう影響するのかこれっぽっちも
理解していない。
 腕を掴む。細い。女は混乱している。
 舌打ち。女がびくりと身を竦ませる。
 ──反応が違うだろう。
 振り払えよ。怒れよ。お前は女で、俺は男なんだ。何を言われるかくらい考えろ。
 そんな。
 捨てられた犬っころみたいな目で俺を見るんじゃない。

「抱かせろ」

 男は。自分を、敗残者と自覚していた。無能な臆病者だと知っていた。
 けれど。下衆ではないつもりだった。
 そのつもり、だった。
609青ニートといっしょ・後編その1(3/14):2012/01/25(水) 17:42:23.67 ID:c7YgWnZD


 女は抵抗しなかった。拒絶すらしなかった。人気のない柱の陰に引きずりこむまで終始
無言で俯いていたはものの、その態度は従順そのものだった。一瞬“抱く”という言葉の
意味も分からぬほど子どもなのかと疑ったが、覗く耳たぶの赤さからその可能性も消えた。
幸か不幸か。
 今現在。女は壁を背にし正座をし、男は彼女の前で胡坐をかいている。互いに無言。
張り詰めた空気が漂っている。
 女の目は不安と緊張とで潤み、男は性欲と苛立ちと自己嫌悪とで爆発しそうになって
いた。
「……」
「……あ、あの」
「脱げ」
「あの、私は別に──はい?」
「脱いでそのでかいおっぱいを拝ませろって言ったんだよ」
「……!」
 女が胸を交差させた腕で隠す。顔が真っ赤だ、ソウル体のくせに。
「おおお大きくなんかない! これ服で寄せてあげてるだけだしそんな大きくない!」
 しかも混乱しているのか明後日な抗議をしてきた。この空回り具合をからかってやりたい
気分とこの馬鹿さ加減を怒鳴りつけてやりたい気分とが混然一体となって男の側も言葉が
重くなる。
「いいから、脱げよ」
「あ、ああああのあの」
「……“礼は”“何でも”じゃなかったのか」
 あう、と女が言葉を詰まらせる。
 一秒。
 二秒。
 たっぷり十を数えて、女がようやっと動く。
 震える指が上着の留め紐を一本一本ほどき、前をはだける。色気のない下着が露わに
なり、それも少しばかりの逡巡ののちに取り払われた。
「大きく、なんか……ない、よな」
「手をどけろ。見えん」
 女が泣きそうな顔をして腕を下ろす。命じた側がうろたえるほどに白くやわらかそうな
乳房が異性の眼前へと晒される。慎ましやかな乳首が外気に触れて震えていた。
 手袋を脱ぎ、無遠慮にも掴む。ひ、と、女の喉から小さく息が洩れる。構わず力を込める。
最初指の沈む頼りない感触があったかと思えば直ぐに見た目に相反する硬さが手を押し
返してきた。誰にも触れられていない、処女の胸の弾力だった。

 頭痛がした。
610青ニートといっしょ・後編その1(4/14):2012/01/25(水) 17:43:32.86 ID:c7YgWnZD
 確かにこんな状況下だ。純潔を金にすることは出来ないししたところで意味はないし、
好いた相手に捧げるというのも難しかろう。しかし、だからと言って自分のような人間に
むざむざ渡す奴があるか。こいつはバカだ。大馬鹿だ。

 ぎゅう、とわし掴む。男の手から白い肉が溢れて零れる。たっぷりとした質量、心地好い
重み、芯を残す癖に男の力でいとも簡単に形を変えるその柔らかさ。「痛……っ」悲鳴が
洩れて、噛み殺される。緑の瞳に涙が溜まっている。矢張り彼女は馬鹿だ。痛いなら、嫌
なら悲鳴を上げればいい。泣けばいい。少なくとも無抵抗で蹂躙を受け入れるべきでは
ない。細く色めいた息なんか吐くな。どうして乳首が硬くしこり始めているんだ。
「……きつくするからな」
「う、ん」
 いやそうじゃない。抵抗しろ。委ねるな。

 ──この俺に、何を求めているんだ。

 乳房を掴んだまま、指の股で乳首を挟んで擦る。びくんと女の肩が跳ねる。くすんだ
桜色の乳輪が痛みと不平とを訴えるかのように色味を増す。女の顔が痛みに歪む。身体の
方が言葉よりも余程正直だ。どうしてこの乳房はこんなにも簡単にてのひらに吸いつくんだ。
どうして、嫌がっているのを知って、この下衆野郎の手は止まらないんだ。どうしてこの
女は。

 濡れる緑の目を、見た瞬間。
 ようやっと。罪悪感が閾値を超えた。

「────え」
 手を離す。
「悪かった」
「え、え」
 何時の間にか随分と近づいていた身体を離す。
「冗談だよ」
「冗談って、え、え」
「ちょっとからかっただけなのに本気にしやがって。お前は本当に馬鹿だな」
 責任転嫁する自分を殴りつけたくなる。その自己嫌悪が、ズボンの中で理屈はいいから
とっととブチこませろと暴れる分身を押さえつける。
 分かっていたはずだ。彼女が身を委ねた理由。彼女が男に従った理由。
 捨てられた犬の目。捨てられる子どもの目。
 何のことはない。彼女は、男の命令に逆らって男の機嫌を損ねるのが。男と──この
土地で数少ない“人間”と疎遠になるのが、嫌だっただけだ。
 子どもだった。どうしようもなくガキだった。“大人”が傍にいなければ生きていけない
と思い込んで精一杯の媚を売る、哀れなガキ。男は彼女の“親”ではないし、男は哀れな
彼女に劣る存在なのに。身体を提供したところで、彼女の得るものは何ひとつないのに。
611青ニートといっしょ・後編その1(5/14):2012/01/25(水) 17:44:56.90 ID:c7YgWnZD

 冗談で済ませよう、と。女への庇護欲が囁く。
 馬鹿みたいに自分を慕ってくる女へ、元通りの関係を戻してやること。それが傷つけた
唯一の償いだと。なあに馬鹿なんだからそれでカタがつくさ──。
 冗談で済むものか、と。女を滅茶苦茶にしたい欲が喚く。
 関係は壊れた。お前の望む通り、お前が壊した。もう戻らない。戻らないなら徹底的に
壊してやれ。自分の手でとどめを刺してやれ──。

 ぐらつく膝に力を入れる。立ち上がる。立ち去る。何時もの場所に戻る。それでお仕舞い。
彼女は戻ってこないかもしれない、それでお終い──「──わたし、が、」

 声。泣き声?
「私が、おかしい、から?」
 理屈に合わない言葉。
「やっぱり、おかしいんだ。だから、」
 緑眼。南の海の色らしい。相応しい喩えだと思う。こんなに揺れて、こんなに濡れて。
「だから、貴方も」

 ──私が要らないの?

 ──かちん。頭の中で噛み合う音。女は泣いていた。男が“抱かせろ”と言ったときも
腕を乱暴に掴んだときも乳房を犯したときでも顔は歪めても泣きはしなかったのに、今は
ぼろぼろ涙を零していた。泣かせたくない、と、頭の何処かが喚く。彼女はもう泣いて
しまったのに。元凶である彼がいなくなっても独りで泣き続けるだろうに。泣かせたい、
と、頭の別のところが喚く。泣いているのが許せない、彼女が一人勝手に泣いているのが
許せない、彼女を泣かせるのは自分だけでいい。
 守りたい欲。壊したい欲。
 ふたつの欲が指向性を同じくし、ひとつの行動を導き出す。
 女を冷たい床に押し倒す。彼女は泣きながら腕で顔を隠す。見ないで、見ないで、醜い
私を見ないで。乳房が揺れている。先端に口付ける。硬いそれを口の中で転がし、吸う。
ソウル体は食事を必要としないのに、味覚はまだ残っていた。甘かった。
 女が。びっくりして、涙も止まった様子でこっちを見ている。突然胸乳を吸われたの
だから当然の反応か。
「あ──や──」
「知るか」
 胸元をかき合せる腕を押し留め残った衣服を乱暴に脱がせる。
「で──でも──私──」
「知らんと言ってるだろうが」
 滑らかな肌が露わになる。震えて、しっとりと湿っていた。撫ぜるとそれだけでぞくぞく
した。
612青ニートといっしょ・後編その1(6/14):2012/01/25(水) 17:46:12.70 ID:c7YgWnZD
「俺はお前の身体でおかしいところなんか知らねえよ」
 だから。男は続ける。「おかしいって言うなら、確かめさせろ。俺が、お前はおかしく
ないってのを証明してやるからよ」
 なんという屁理屈。
 なんという卑怯者の論理。
 最低で、最悪で。女の顔もまともに見れず薄い腹を舐める。
「────やってくれる、の?」
 その。どうしようもない男の頭を遠慮がちな手が撫でていって。
 それでもういいと思った。


 神殿の床は堅く冷たかったので脱いだ服と脱がせた服とを重ねて仰向けになる女の背中
に突っ込んだのだが、流石にベッドの柔らかさまでは望めない。
「マントか何か取ってこようか。トマスさんに頼んで」
「要らん」
 女の申し出を一蹴し、男は彼女の肩を撫ぜる。ひくりと震える肌が赤みを増す。朱色を
全身に拡げるように、華奢な身体を撫でる舐める。息を呑み固く目を瞑る彼女は、しかし
抵抗らしい抵抗はしなかった。繊細な首筋、おとがい、真っ赤になった耳朶をくすぐると
「ひゃっ」と頓狂な悲鳴を上げる。半開きの唇に自分のそれを重ねる。やわらかかった。
「──あ」
 舌まで突っ込んで思うさま嬲って満足して離したところで、零れた唾液で唇を光らせた
女はぼんやりと男を見上げ、
「初めて、だ……」
「そ、そうか」
 だろうとは思ったが直に聞くと気恥ずかしい。
 女は小首を傾げ。男の手に、おずおずと指を絡めて、
「もう一回したい」
 おそるおそるといった風にねだってきた。
 唇を重ねる。今度は女の好きにさせる。彼女は遠慮がちに男のかさつく唇を舐めて、舌
を差し入れる。口内の浅い部分をまさぐる舌先には、技巧はないが真摯さがある。
 長いような、短いような時間が過ぎて。女はようやっと口を離し。
「……味、しないんだな」
「当たり前だろうが」
「当たり前なんだ。そっか」
 なんだかひとつ大人の階段を昇った顔で頷く女に、妙に愛おしいような腹立たしいよう
な微妙な衝動を感じ発散すべくお留守になっていた乳房をこねる。
 慣れたのか力を加減したからか、女から微かに上擦ったような吐息が洩れる。指が何処
までも沈むようなやわらかさと、幾ら嬲っても芯を崩さぬかたさの同居する、絶妙な感触
だった。
「あ──なあ──ん! ──待って、聞い、て」
613青ニートといっしょ・後編その1(7/14):2012/01/25(水) 17:48:04.30 ID:c7YgWnZD
「どうした」
 切れぎれの声に乳輪をなぞる手を止める。
「あ…あの……私の、胸、そんなに、気に、なるのか」
 愚問であった。
「そりゃあそうだ。こんなでかいおっぱい──」
 みるみる潤む女の目に、男は自らの失言を悟る。「い、いや、触り心地の好いおっぱい
──」またしてもの失策であった。「いや、その、エロいおっぱい」傷口に塩を塗り込む
悪鬼の如き所業であった。組み敷かれる女は泣き出す寸前だ。男も内心割と冷や汗を流して
いる。
「ああ、くそ」
 ぐにぐに乳房を揉む。しっとりしてすべすべして最高の触り心地だ。殆どやけくその
勢いで叫ぶ。「でかくてエロくて俺好みのおっぱいだからだよ! クソ、気にするなって
方が無理なんだよ!」
 ここで泣かれた日には準備万端の下半身をどうすりゃいいんだ──打開策もなく唯ひたすら
に胸を揉む男に。女は。
 ぽろりと。女の目尻から涙が落ちて男はぎょっとする。が、泣いたわけではなく溜まった
涙を振り払うための動きだった。
「……好き?」
「好みだよ悪かったな」
「……そう、なんだ」ゆっくりと。女の身体から力が抜ける。「じゃあ、好きに触って、
いい」
「……は?」
 紅潮する頬。伏せ気味の睫毛が震えている。「でも……出来れば、痛くは、しないで」
 かぼそい声に理性があらかた持っていかれた。

 硬くしこった先端を吸い、色の境目を歯でなぞり、甘い肉と甘い喘ぎをこれでもかと
堪能し。
 男は、ようやっとその傷痕に気がついた。
 白い肌の中埋もれていた白い古傷が、紅潮した肌の中で浮かび上がる。男の視線に気づき
女が身を強張らせる。
 再三言っていた“おかしい”の元凶はこの傷だろう、と男は思い至る。両乳房の間から
鳩尾を通り腹まで走るその傷痕は、確かに年頃の娘が気にしても仕方がない。
「別におかしくねえよ」
 先んじて宣言する。男の言葉に、男が傷痕をなぞる感触に、女が喉に詰まるような声を
洩らす。
「戦ってりゃこの程度の傷、誰でも負うだろうよ。別に、お前だけってわけじゃない」
 傷痕を舐める。癒着した痕特有の固い舌触り。滑らかな肌の歪な部分。コントラストに
馬鹿々々しいくらいに興奮するのが分かる。
「そう、なの?」
「そうなんだよ」
614青ニートといっしょ・後編その1(8/14):2012/01/25(水) 17:49:20.22 ID:c7YgWnZD
「そう、なんだ……そうだったんだ……」
 どうということもない掛け合いの内に、華奢な身体から余計な緊張が消える。そっと
伸ばされるたおやかな手が、男の肩を、頬を優しく滑る。茂みの奥、未だ綻んでもいない
秘裂に触れると流石に止まったが。
「あ……」
 指の腹で幾度かなぞるが腰が揺れるばかりで反応がない。
 男は女の顔を見る。
 女は。男を信じきった──というか、“もう”“何をされても、恨まない”との面構え
だった。
 ──こいつは。本当に。
 ゆっくりと、舐める。秘裂ではなく太腿の内側を。そんなところを責められるとは思って
いなかったのか、女の脚が跳ねる。
 抉じ開けることも、無理矢理貫くこともしなかった。どうせ死なない身だ、時間だけは
腐るほどある。
 たっぷり脚を愛撫し、軽い身体をひっくり返す。

 久方ぶりに、女が抵抗するそぶりを見せた。が、「貴方なら──もう、──でも、いい
──」と呟いて身を任せる。
 期待と不安と信頼と怯えと覚悟とを押し込んだその身体を滅茶苦茶にしてやりたいと
思う。その心に応えたいと思う。どちらも本心から、そう思う。

 女をうつ伏せにし、尻を突き出す格好を取らせる。豊満な、とまではまだまだ足りない
尻を抱えてほったらかしだった男根を擦りつける。己が一部ながら涎を垂らして喜ぶ様は
白い肌とはいかにも不釣り合いだ。
 肉に触れる──秘裂がひらいていなくて良かったかもしれない──綻ぶ素振りでも見せ
ていたら、何がなんでもブチ込んで泣かせていた──圧に、熱に、男根が震えて悦ぶ。
“汚す”悦楽に、脳が酔いはじめる。
 下半身が本能任せに好き勝手しているというのに。
 男の目線は、眼下の背中に釘づけになっている。
 日に焼けない、生白い背中。男と比べると哀れなほど狭い背中。そこにぶち撒けられた、
無数の傷痕。
 深いものはひとつとしてない。命に支障のある傷も、神経を駄目にするような傷も、
何処にも見当たらない。単に。後々も残る程度の傷が、背中一面余すところなく広がって
いる。それだけ。それだけのこと。
 覆い被さる。
 傷のある背中に、自分の胸板を押しつける。
 充分注意したつもりだったが、下敷きになった華奢な身体は重みに耐えかね喘いだ。

「痛む、か」
615青ニートといっしょ・後編その1(9/14):2012/01/25(水) 17:50:51.84 ID:c7YgWnZD
 過去の傷。今の重み。どちらを指してかも分からぬ問いに、女も答えようがなかった
らしい。
 沈黙の内。床についた男の手へと、細い指が重なる。冷たかった。触れるのが精一杯と
震えていた。
 どうしようもなかった。歯を食い縛って、耐えるしかなかった。
「お前は、」
 但しわけの分からない情動に身を任せる前に、告げておかねばならないことがある。
「何処もおかしくねえよ。何処もかしこも、……俺の、好みだ」
 震える手が。同じく震える手を、握った。


 前戯にはたっぷり時間を掛けた。掛け過ぎて、うっかり漏らしてはいないかとこっそり
確かめるほどに、長く。女の肌が余すところなくほの朱く染まる程度に、長く。
 そんな風な経過だったものだから。組み敷いた女がおそるおそる先走り塗れの男根に
触れた瞬間情けない声を上げたのも致し方なきことだろう。出さなかっただけ上出来だ。
「あ、ご、ごめん」
 女は焦点の定まらない瞳でふわふわと謝って、
「私も、貴方になにかしたくて──ごめん──」
 触れるか触れないかのところでの愛撫を繰り返す。無意識にだろうが、生殺しだ。“女”
というのは残酷極まりない。クソッタレ、と呟いて秘裂をなぞる。ひくつくそこは固さは
減ったようだが、まだ閉じていて、
「ふ…あ……っ」
 甘ったるい鼻声が聞こえた。
 女から。
 蕩けて、泣きそうな、男を責める目で、見ている。
「も……」
 何だ。何でそんな顔されなきゃならないんだ。こちとら気を最大限遣っているのに、
まだ強請ることがあるのか。
「もっと──」
 上気した顔。霞がかった瞳。荒い呼吸。これは──。

「──もっと、深、くっ……! ごめん、ごめん──! も、我慢、できない──っ!」

 やはりこういうときに反応が速いのは頭よりも身体だ。脳ミソが理解するより先に指が
秘裂へ潜ろうとする。抵抗。抉じ開ける。無理矢理。薄い膜を引き千切るように、二本の
指で押し広げる。
 途端。
 溢れた。女の背が大きくしなった。高い声──嬌声、が、溢れて、鼓膜から脳髄まで
一直線に駆け抜けた。
616青ニートといっしょ・後編その1(10/14):2012/01/25(水) 17:52:17.50 ID:c7YgWnZD
 どろどろの肉の間に指が挟まれていた。ぬかるんでいた。蕩けていた。語彙の全てを
引っ張り出しても尚足りないくらい、其処はたっぷりの蜜を湛えて膨れていた。よくもまあ
今まで溢れなかったものだ。
 動かす。にちゃにちゃ音がする。動かす。熱い粘液が絡まる。動かす。襞が絡んでぎゅう
っと締めつける。快楽に指が溶けそうになる。
 女の嬌声が止まない。処女の肉の中に限界まで高まる熱を押し込めていた女は、今や
快楽から遮るものも無く男の下で悶えていた。
「あ、あ、──ひうッ?! っは、ああッ!」
 二本目を突っ込み、掻き回す。声のトーンが高くなる。乳房が呼吸につれ激しく上下
する。本数を増やしたのに、溢れる蜜で指の滑りは良くなる一方だ。

「……やっぱり……私、おかしい……」
 喘ぎに混じる自虐に無性に腹が立って細腰を持ち上げるように抉る。女が泣く。涎と涙
を垂らしてよがる。
「だって……はじめて、なのに……っ! 初めて、って、痛い、のに、私、痛く……おかしい
よ……! 気持ち好いの、おかしいよお……ッ!」

 頭の何処かが切れた。

 ──気持ち好い、か。もしかしたら、ソウル体同士なのが貢献しているのかもしれない。
 世界との境界線を曖昧にした身体は不安定で、自分以外と混じりかけては元のかたちを
取り戻す。世界とソウル体の境目が曖昧なように、ソウル体とソウル体の境目も曖昧だ。
自分とも他人ともつかぬ身体だからこそ、受け入れ、快楽を素直に享受することが可能に
なったのかもしれない。

 知らない。
 そんな理屈は知らない。
 今、自分の手で開いて自分の下で喘いで自分によって絶頂を迎えようとしている女が。
唯々愛しくてならないだけだ。

 限界だった。
 おそらく、どちらも。
 大きく綻んだ其処に男根を当て。一気に、貫く。ぬるりとした感触に包まれたかと思う
とそこかしこの柔襞が絡みついて奥へと送って途中微かな引っかかりを感じた気もしたが
締めつける心地好さに手招きされがむしゃらに奥を目指し。
 しなる女の身体を抱き締め、男は腰の溶けるような快楽を味わった。
 悦楽。達成感。解放感。
 嫌な予感が頭を冷やしたのは、貫いたままの女に口付けしている最中のことだった。
 ──これ、もしかして、挿れただけで出したんじゃなかろうか。
617青ニートといっしょ・後編その1(11/14):2012/01/25(水) 17:53:40.58 ID:c7YgWnZD
 身体をひくつかせ、とろんとした目で抱かれる女を前に、男の矜持は崖っぷちまで追い
詰められた。挿入即射精とか、何処の童貞だ。自分は童貞でも早漏でもない。きっと。
おそらく。多分。
 男としての誇りを回復すべく、腰を動かし女の中にあるはずの男根を前後させる。女
からひゃあとかそんな感じの切羽詰まった嬌声が聞こえたはものの、心苦しいが構う暇は
ない。
 膣の感触で男根の様子を確かめようと思ったのだが。
 駄目だった。
 何処をどうしても蕩けて快いばかり、この法悦の前では自己の存在なぞ塵芥に等しい。
つまり気持ち好すぎて何も分からない。しかし引っこ抜いて万が一萎えていたら──神
かけて冗談じゃない! この女に早漏だと思われるくらいなら今すぐ首かっ切る方が万倍
マシだ!
 ぐるぐるうだうだ悩んだ末に。男は、女に声を掛ける。
「おい」
「は、ひゃ、ひゃうい」
 呂律が回っていない。あと目も焦点を結んでいない。大丈夫だろうか。
「今、どうなってる」
「ふえ?」
「今、お前の中が、どうなってるか。言えるか」
「ふえ──?」
 なか──? 呟いた女の、男根を咥え込んだ場所がうねる。華奢な身体がびくっと震える。
「中だよ。どうなってるか、言ってみろ」
 もうひとつ突っ込んで言えば中に存在する男根の様子を聞きたいのだが、そこまで直接
言うのは恥ずかしかった。
「あ、あ」
 そんなことを命じられた女の方が恥ずかしいだろうとまでは思い至らなかったが。

「あ、」襞がぎゅっと絡みつく。そこを引いて、襞を巻き込んで奥へ進む。「あ、いっ、
今はっ、おなかの、ところ、ごりごりって……!」先端らしき部位を押しつける。「奥、
いっぱい……! やあっ! 拡がるから……! 元、戻らなくなるからあ……ッ!」

 ああ、この様子だとばっちり勃起している良かった良かった──そんなことどうでも
よくなる。
 泣きじゃくる女を抱き締め突き上げる。女の声が高くなる。自分が女の何処にあるかも
分からないのに、女を高めているのは自分だという興奮がある。華奢な身体が痙攣を始めて
いる。耐える表情。崩したくて、抉る。目が眩む。こちらも限界。込み上げる射精感。
彼女より先に果てたくない。その一心で堪えてひたすら最奥をこそげ落とす。
「ひう」
618青ニートといっしょ・後編その1(12/14):2012/01/25(水) 17:55:33.04 ID:c7YgWnZD
 女の目が見開かれる。細い腕が男の背中に回り、強く抱き締められる。

「あ、ああああ──!」

 全身を痙攣させしがみつく女へ、男は余すところなく吐き出した。
 どろどろに溶けて。溶けあって。このまま離れずとも構わない──そんな気すらした。
 そんな願い。叶わないと分かっていたのに。




「──子どもの頃、王子様を待ってたよ」
 男の腕を枕に、女はそんな寝物語をした。
「笑わないのか? 笑っても怒らないよ?」
「いや、いい」
 片腕を女に貸し、もう片方の手で女の背中を撫でて。男は答えた。
「そうか」女は嬉しそうに。けれど申し訳なさそうに笑う。「ごめん。ありがとう」
「えっと、それで、そうそう。王子様を待ってたけど、来なかったから。待っても、誰も
来てくれなかったから。だから待つのは得意じゃない」
 待っても救いは何処からも来ないから。
 彼女は笑って、男の胸に額を押しつける。
「……あったかい」
「ソウル体だろうに」
「そうだね。……こうしてて、いいかな」
「好きにしろよ」
「うん。好きにする」
 彼女はそうしてしばらく男の胸で静かにしゃくりあげていた。
 再びデーモンを殺し、デーモンに殺される覚悟がつくまで。彼女はずっとそうしていた。




「じゃ。行ってきます」
 笑って手を振る女に、心折れた戦士は応えられなかった。
 彼は。定位置から離れ、要石の前に立つ。手を伸ばす。中空で止まる。そのまま。腕が
震える。疲労ではなく、恐怖で。自己嫌悪で。
「……クソ」
 吐き捨て、ずるずると座りこむ。
「畜生、畜生」
 その要石の先は、彼が最後に死んだ場所だ。もう己が死体は朽ち果てただろうか。もう
己がソウルは塵と消えただろうか。
619青ニートといっしょ・後編その1(13/14):2012/01/25(水) 17:56:36.23 ID:c7YgWnZD
 確かめるのは容易いはずだ。この先に行き、己が目で見ればいい。道中の化け物どもは
倒せばいい。倒せなくても殺されても、どうせ楔の神殿で蘇る。辿り着くまで死に続ければ
いい。
 それが、出来ない。
 心折れた自分には、出来ない。
「畜生が」
 彼女には出来るのに、自分には出来ない。
 ──縋る目。信頼の目。そんなもの自分には値しないのに。
 嫉妬。劣等感。どす黒い感情が渦巻いている。デーモンスレイヤーたる彼女を、自分の
腕に抱かれてまどろんでいた彼女を、酷く傷つけかねない昏い淵。
 どうすればいい。
 彼女の身体を滅茶苦茶にしてやりたかった。どろどろに蕩かして、喘がせて、動かなく
なるまで思うさま嬲ってやりたかった。
 彼女の心を守ってやりたかった。よく泣く彼女の、よく死ぬ彼女の、支えになれれば、
と思っていた。
 どちらも本心だ。どうしようもなく。
 けれど自分は此処から動けない。負け犬。敗残者。唯一歩を踏み出す、それすら叶わぬ
臆病者。彼女への昏い感情を溜めこんでいつか手酷く傷つける、卑怯者。
 彼は、ゆっくりと元の場所に戻る。
 ボーレタリア王城に続く要石、その前に。

 ──分かっていたはずだ。
 ──デーモンを殺すことを諦めたその日から。
 ──こうなることは、分かっていたはずだ。
 “そう”ならなかったのは、自分が臆病者だったから。もしくは──彼女が、いたから。

 彼は静かに腰を下ろす。何時も通り、膝に肘を載せ、前屈みの姿勢を取る。負け犬には
相応しい姿勢だ。彼は自嘲する。
 だが。もういい。もう終わる。終わらせる。

 ──負け犬には。負け犬なりの、遣り方がある。


「あんた……誰だ?」
 男の言葉を彼女は最初性質の悪い冗談ととった。
「あんまり縁起のいい冗談じゃないぞ、それは──な、冗談、だろ?」
 語尾が不安に揺れたのは、それだけ彼女が彼をよく見ていたから。ということになる
のだろう。
「ああ……俺は、誰だ? ……全部忘れちまったよ……」
 彼女の顔が強張り、慌てて男の肩を掴む。
620青ニートといっしょ・後編その1(14/14):2012/01/25(水) 17:58:07.96 ID:c7YgWnZD
 掴んで揺すぶって、必死で呼びかけても。男は彼女を見ようともしない。
「……ッ! 待ってろ! 今、貴方はちょっと調子が悪いだけだ! そうに決まってる
……!」
 彼女は踵を返し、神殿の一角に向かう。そこには聖職者がいて、多くの聖職者が医療の
技を持っていることを、女は知っていたからだ。
 しかし頼みの綱は己が無力を恥じるように首を横に振り、彼女は呆然とした。

「──何、止まっているの」
 彼女は呟く。
「待っても、助けは来ない──何処にも、来ない!」

 そして。顔を上げ、男の元へと向かう。俯き何事かをぶつぶつ呟き続ける男を、そっと
抱く。
「……祭祀場で、徳の高い聖職の方が閉じ込められているそうなんだ。その方を、連れて
くる。きっと何とかなる」
 抱き締める。何も伝わらないソウルの身体を、強く。
「待ってて。私が返るまで、待っていて」
 手を──離す。
 背を向け、駆け出す。
 このまま会えなくなるような。悲しい予感を、押し潰して。


*****

書いてるうちにくっそ長くなったので、続きは総合スレに投稿になるかと思います。
大量投下にスレまたぎ、本当に申し訳ない

>>605
ごめんね、これで涙返せたらいいんだけど!
621名無しさん@ピンキー:2012/01/25(水) 19:33:40.05 ID:+zn7NPs9
うわああぁぁぁぁ
何このクォリティ…エロも文章もキレイだし女主人公マジ好みだし
ループの切なさとかバッドエンドの絶望感とかなんやかんやでヤバイヤバイ
おっぱいの描写が特にGJ、俺好みのエロいおっぱい御馳走様です。

次回ラストなんだろうか。全裸で待機してます!
622名無しさん@ピンキー:2012/01/26(木) 04:26:59.89 ID:dEHE2nZI
女主ちゃんいじらしい…いいわぁ

いいもの読ませて貰った。ありがとう。
次回も楽しみにしてます!
623名無しさん@ピンキー:2012/01/26(木) 17:46:27.24 ID:K3t/XpzE
test
624名無しさん@ピンキー:2012/01/26(木) 17:47:30.31 ID:K3t/XpzE
あれ、まだ書き込めるのか
埋まってないじゃん
625名無しさん@ピンキー:2012/01/26(木) 18:29:47.37 ID:lFIO/Cgp
500kbで落ちるからどっちにしろ投下は厳しいな
626名無しさん@ピンキー:2012/01/26(木) 18:53:09.73 ID:wZsPeu9w
念のため誘導
【ダークソウル】エロパロソウル【デモンズソウル】
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1327090832/
627SS保管人:2012/01/27(金) 00:22:27.02 ID:+e06NXYm
業務連絡です。

保管庫はゲームの部屋の「2号室」から「デモンズソウル/ダークソウルの部屋」に移転しました。
628名無しさん@ピンキー:2012/01/27(金) 08:36:12.80 ID:Aley7IeZ
>>627
SS保管いつもお疲れ様です
629名無しさん@ピンキー:2012/01/27(金) 08:59:57.65 ID:3qVeEzdM
>>627
ありがとうございます!
630名無しさん@ピンキー:2012/02/03(金) 10:59:45.04 ID:5VMDO5Tg
俺の青春と共にあったスレももうそろそろ消滅か…
切ないな
631猟奇系な彼女(1/5):2012/02/03(金) 18:11:24.57 ID:D2V+ploF
埋めに女主人公×黒ファントムネタ
逆リョナっぽい暴力的な表現があるので苦手な方はスルーよろ


*****

 嵐の祭祀場にて少女は笑う。零れるような笑み。若く、無邪気な目をした少女だった。
 それが笑う。
 笑って、右手の竜骨砕きで剣持つ骸骨を“壊す”。
 敵を“壊した”少女は平然として剣を戻し。
「──ははっ」軽やかなバックステップを踏む。先まで少女が居た空間を鋭い刃が抉り、
引き戻される。
 下手をすれば自分の臓腑を抉ったであろう刃を、その持ち手を、少女は愛しげに眺める。

 輪郭の曖昧なそれ。赤黒い影とも炎ともつかぬ幻影に彩られたヒトならざる者。誰かの
妄執。誰かの残滓。
 黒いファントム。

「──さあ」
 “敵”にしか成り得ない対象へ、少女はそれはそれは甘く囁く。
「邪魔な間男はもういないよ──さあ、ボクと踊ろうよ──」

 黒ファントムは答えない。
 一足にて飛び込んでの突きを以って応えとする。
 少女の。弾けるような狂笑が響いた。
「あははははは! 激しいねえ! もっと! もっと頂戴! 激しいの頂戴!」
 喰らえば血反吐を吐く連撃を容易く避けて少女は笑う。挑発。誘い。黒いファントムは
揺らがない。ヒトではない敵意と悪意と妄執の塊は、ソウルを奪わんと襲いかかるだけだ。
システマティックな行動原理が、少女は決して嫌いではないのだけれど。
「……ちょっと飽きちゃうなあ」
 ぽつり呟き。
 くるり。右手を返し、竜骨砕きを地面へと突き立てる。大地が抉れ鉄塊は歪なオブジェ
の如く自立する。
 鈍い音がして、黒ファントムの切っ先が竜骨砕きに弾かれた。鉄塊の真後ろにいたはず
の少女は既に距離を取っている。けらけら笑う声が風に混じる。
「ね! これ見て、これこれ!」
 自慢げな、甘えるような要望は、恋人とのデートに精一杯のおめかしをしてきた乙女の
如しであった。
「キミの為に用意したよ! ほらほら見て見て!」
 黒ファントムが──“見る”。
632猟奇系な彼女(2/5):2012/02/03(金) 18:12:21.61 ID:D2V+ploF
 瞬間。
 空気が変わる。
 黒いファントムの様子が変わる。
 害意を撒き散らすだけであったはずの黒ファントムが、たった一人に対して明確な“殺意”
を持つ。
 右手に刀を、左手に同じく刀を携え無邪気に笑う少女へ。ソウルを奪うためではなく“殺す”
ために疾る。
 二本の刀は同一のもので、この世に二つと存在しない一振りであった。
 刃の部分をわざと砕いた歪な刀──敵の血と脂で隙間を埋めることにより完成する刃
を備えたそれは、『誠』の銘持つ妖刀であり。そして黒いファントムの妄執の核ともなる
刀であった。
 それを。
 少女は、くるくると。遊び道具のように扱い、回し、刃同士をふざけて打ち合わせる。
 冒涜に、黒いファントムが無音で吼える。少女の哄笑が重なる。
 突き立つ竜骨砕きを間に置いて、少女とファントムはくるくる周る。戯れ、とは呼べない。
黒いファントムの繰り出す刃、その鋭さと重さを見れば。笑いながら位置を変える少女、その
めまぐるしい早さと位置取りの繊細さを見れば。

 手も触れない清いダンスはどれほどの間続いたろう。

 不意に。
 少女がふらりと足を止める。
 その顔は白い。刀を握る手も白い。

 ──『誠』が妖刀と呼ばれる所以──
 ──使用者の体力を削り、やがては死に至らしめる呪い刀──
 ──斬る者。斬られる者。そのどちらにも“死”をもたらす呪いの刀──

 浅く息継ぎする少女。その期を逃さず黒いファントムが疾る。“突き”の体勢に獲物を
構え、最後の一足で大きく腕を引き、踏み込むと同時に前へと突き出す。速度と体重と刃
の鋭さの乗った必殺の一撃は吸いこまれるように少女の腹を目指し、

 満面の笑みにて迎えられた。

 幻影に思考する能力があるとすれば、彼は何を思ったろう。無防備を晒した少女。彼女に
誘われるまま放った致命打が、彼女の左手の『誠』で弾かれたとき。体勢の崩れた刹那、
彼女が抱擁を求めるかのようにふわりと飛び込んできたとき。その右手の『誠』が胴を
貫き貫いたままぐるりと回転しソウルの血と肉とを抉り更に上下左右滅茶苦茶にかき回し
止まったかと思うと腹をしたたか蹴られ倒れたところを一気に引き抜かれ大量のソウルを
撒き散らしたとき。そして今。呼吸を速くし、うっとりとした表情で馬乗りになる少女を
見上げる今このとき。少女の両の手の『誠』が、黒いファントムの両肩をそれぞれ貫き地面
へと縫い止める今、このとき。声無き声で吼える彼は、一体何を思っただろう。
633猟奇系な彼女(3/5):2012/02/03(金) 18:13:08.85 ID:D2V+ploF

「あっは」
 少女はそれはそれは楽しそうな声を洩らし、両肩から『誠』を生やす黒ファントムの腰に
跨ったまま厚い胸板を指でなぞる。
 その繊手には指輪が嵌められていた。鋭い輝きを放つひとつと、鈍い輝きを放つひとつ
の、対の指輪。持ち主が窮地に陥った際に指輪の効力は発揮される。例えば今。妖刀に
よって体力を消耗せしめられた今。

 少女の手は止まらない。黒ファントムの腹筋をなぞり、下腹部へ。
 抵抗は不可能。
 黒ファントムの下半身は絡めた脚でがっちり固め、上半身は両肩を地面に串刺しにする
ことで固定した。左右の肩からぎりぎりばきばきと不穏な音がするが、なに人間ならば骨
のある辺りを貫いた。肘などの関節部分であれば引き千切ってしまえばそれまでだが、
この位置ならば早々に抜けることもないだろう。

 少女が熱い吐息を洩らす。
「ね」
 頬は赤く、目は潤み、唇は濡れてうっすら開いていた。
 ゆるゆると。腰が上がる。それでも絡める脚は相も変わらず黒いファントムの下半身を
拘束している。
「見てよ、キミのせいで、ボク」
 少女の手が、彼女自身の股へと向かう。
 ブーツのみでズボンを穿いていない脚は、白く、しっとりとぬめっている。そこをなぞり、
短い上衣の裾をまくりあげる。と。
「──こんなに濡れちゃった」
 汗以外の体液で重く湿った下着が、布一枚下の肉のかたちをくっきり浮かび上がらせて
貼りついていた。

 少女は笑って、片手で濡れた下着をずらし、空いている手で黒ファントムの下腹部を探る。
目当てのものは直ぐに見つかった。生身の少女のかたちとにおいに当てられ、鎌首をもたげる
男性器。
 自分を殺そうと暴れる男を組み敷いて、少女は男根を衣服から解放し、細い指でしごく。
 あっという間に天を向くソウルの肉に、少女は蕩けた笑みを浮かべた。そうしてびくびく
震える幹を握り、先端を涎を垂らす肉の合間へと導いて。
「う…っふ、あ、っはあ──!」
 歓喜と共に呑み込んだ。
 硬くエラの張ったソウルの塊が少女のなかを一気に拡げいっぱいにする。
 胎を満たす質量を、少女は顎を反らしてじっくりと味わう。蕩けた襞を絡ませて、その
形状を膣に覚え込ませる。相手がソウル体だからかそれとも黒ファントムだからか、微細
な棘が潜り込むような、ちりちりと灼ける感覚がある。が、それすらも今の少女には刺激的
で心地好い。
634猟奇系な彼女(4/5):2012/02/03(金) 18:13:54.07 ID:D2V+ploF
 ゆっくりと。ぬるま湯のような熱に浸っていると。
 足の下に筋肉の動きを感じた。
 同時に、収めた男根が胎をぐちりと掻き回すのも。
「キミも動きたいの?」
 両肩からばきばきごりごりと異音を上げ、刀を抜こうと刃部分を掴む手からはぼたぼた
とソウルを流し、犯す女をはね除けようと腰を足を動かそうともがく黒ファントムを、少女
は慈愛の目で以って見下ろした。
「しょーがないなあ、せっかちさん」
 少女は。歌うように、囁いて。
 体重をほんの少しだけずらした。
 たったそれだけで黒ファントムの稼働域は飛躍的に──但し、下半身に限っての話だが
──向上する。
「…っ! うあ、奥、の、きた…っ!」
 突き上げられて少女が仰け反る。内腿の筋がぐっと浮き出しぶるぶる震える。締めつけ
られて尚も荒々しく内襞を抉る男根に、少女は舌を突き出し喘いだ。
「ふやあっ! これ、すごいっ! おく、おなか、ぐりぐりするう…っ!」
 根元まで埋めて下から腰を回されると唯でさえ丸く拡がっていた膣内が更に引き延ば
される。襞が痙攣し壊れたように粘液を溢れさす。恐ろしいまでに滑りの良くなる胎内を
膨張する男根がごつごつと突き上げた。
「抜ける…っ、抜けちゃう…! 抜いちゃ、やだあっ!」
 腰が浮いた瞬間抜けかけた男根に、少女が被せるように尻を落とす。ぶちゅう、っと粘液
の弾ける音がして、黒い男根が朱い肉のなかに消えた。少女の喉から喜悦が洩れる。
 自由を取り戻す僅かばかりのチャンスを逃した黒ファントムは、狂ったように暴れて
いる。その動きが少女の快楽を引き出すと知っているのかいないのか。
 男根は少女が収められる限界ぎりぎりまで膨れあがり、黒ファントムの動きは殆ど狂乱の
体をなしてきた。

 ばきばきがりがり。
 異様な音。淡く輝くソウルが黒ファントムを染めている。彼の両肩は砕け、半ばまで
千切れ、『誠』の拘束から逃れる寸前にまで迫っていた。
 ばきばきごりごり。
 黒ファントムの曖昧な容貌の中、爛々と光る真っ赤な目に射抜かれ。少女は快楽に濁った
だらしない笑みを浮かべた。

 殺されるかもしれないのに。恐怖と興奮で狭まるナカを壊す勢いで抉られて、内臓の
位置が変わるまで押し上げられて、少女は苦鳴と紙一重の嬌声を上げる。
「ひぐああっぐあっああっ!」
 人ではない、獣の悲鳴。
「おなっおなかやぶれるボクのおなかやぶれちゃう──っ!」
 上衣が乱れる。覗く下腹部が膨れて見えるのは気のせいだろうか?
635猟奇系な彼女(5/5)
 泣き叫ぶ少女。結合部から体液が飛び散る。笑う少女。背中が折れそうなくらいにしなる。
黒い男根を咥える朱い肉が晒される。びくびく震えて奥へと蠢く様が晒される。
「やぶれる、やぶけちゃう、」
 少女の手が指に嵌めた指輪にかかる。鈍い窮鼠の指輪。窮地に陥る所有者に、守りの加護
を与える指輪。
「これ、はずしたら」
 内側からの暴虐により少女が破壊されるを防ぐ指輪。
「こわ、れ、る? こわされ、ちゃう──? ひぎっ、ひっ、っか、あははは──!}
 狂ったように少女は笑う。否、とうに狂っている。胎を貫く快楽に狂っている。
 少女の視界が白く霞む。呼吸は限界、熱が──擦りたてられ、砕く勢いで突かれる場所から
熱いかたまりがせり上がり──少女の指から、鈍い窮鼠の指輪が落ちる。
 衝撃が熱を打つ。爆発。全身がめいめい勝手に痙攣する。
「あ゛ーっ! ああ゛──っ!」
 暴虐的な絶頂に少女は獣の叫びを上げ。死の匂いを間近に嗅ぎ取り──、

 黒いファントムは消滅した。

「……あ」
 ぜえぜえと息する少女が、同衾相手が消えたと気づくまでにはしばらくかかり。
「あー……そうだ、出血ダメージ」
 原因を悟るまでにはそれよりも少しだけ余計に時間を要した。


 白く晴れ渡る空の下、少女はふうと溜息を吐いた。
「あうー、惜しいことしたなあ……もう一回くらい、今度はソウル体で試してみたかった
のになあ……」
 肉欲の火照りは既にその身体にはない。一発ヤッたあとのすっきりさっぱりした清々しさ
だけがある。
「今度からどうしよ……オストラヴァは可愛いんだけど、齢がなあ……まだ女の子に夢を
見せてあげたいよね。あと、カタギに手を出すのは良くない。ダメ、ゼッタイ」
 少女は二本の『誠』を腰にたばさみ、竜骨砕きを地面から引き抜く。
「パッチの奴がもーちょっと頑張ればいいのに。何だよ、抜かずの五発やったくらいで
さー。しかもあれからボクを見るだけで逃げるし。何が気に入らないのさ。気持ち好さそう
にして、泡まで吹いてたじゃん」
 身長と比べれば三分の二、体重で比較すると下手をすると自分と同程度の重さの鉄塊を
少女は軽々と担ぎあげる。デモンズスレイヤーの名は伊達ではない。
「あーどーしよっかなー」
 デーモンのソウルを喰らい色んな意味で人としての規格を外れつつある少女はしばし
悩み──「あ!」
「そうだ! ラトリアの、ユルトがいたじゃん。アイツ暗殺者だしきっとえっぐいテク
とか道具とか薬とか使えるよ。しかもユルトの後はメフィストフェレスが控えてるし、
一粒で二度美味しいってやつだね! ぃやったあ!」
 拳を突き上げ歓喜のポーズを取る少女。

 ボーレタリアの空は、今日も色の無い霧に包まれている。