その男、ハインツ・ベルクベルク軍曹は不満を限りなく溜め込んでいた。
自分は優秀で、特別な人間であると幼い頃から自身に言い聞かせてきた彼は、
肥大した自己愛に囚われ、29歳の今になっても周囲に溶け込めずにいた。
要するに彼は、自己愛性人格障害だったのである。
故郷の小さな農村の小学校で優等生だった彼は、首席で卒業していずれ将官になる
野望を胸にユーロ空軍の士官学校を受験した。
しかし広い世の中には彼ごときより優秀な人材は山ほどいて、あまりにあっけなくその夢は破れる。
未練がましく一兵卒として入隊した後、それなりの才能とプライドが彼の出世願望を支えた。
いま軍曹の地位にあるのはそのおかげだ。
新兵をしごく立場にある軍曹の地位は、年下のガキどもを上から目線で罵倒する
充実感で彼の自尊心も大いに満たしてくれた。
だが、それも本物の天才が現れるまでのことだった。
式波・アスカ・ラングレー大尉という少女が。