【俺の妹】伏見つかさエロパロ15【十三番目のねこシス】

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501風(前編) 25/44

「おお、黒猫氏、お目が高い。これは、ナチスの大立者で、国家元帥だったヘルマン・ゲーリング愛用のルガーを忠実に
再現したモデルですぞ」

「そうなの……」

 そのあっさりとした返答で、黒猫の興味の対象が、モデルガン本体ではなく、それに付随しているものであると分かった。

「なぁ、拳銃の隣にある勲章みたいなもんは何なんだ?」

「あれは、騎士鉄十字章でござる。ナチスドイツにおいて、軍人が獲得し得る最高の戦功章で、受章者は当時、ドイツ社
会で英雄とみなされ申した」

「そういう代物なんだ……」

 中央に鉤十字がレリーフになっているのは好みが分かれるだろうが、周囲を銀色の金属で縁取りされた黒い十字は、
いかにも黒猫が好みそうな意匠だった。

「モデルガンじゃなくて、あの勲章が欲しいんだな?」

 俺の問い掛けに黒猫は、こっくりと頷いた。
 だが値札には、三万六千円と記されている。

「ちょっとなぁ……、甲斐性なしの俺には、不可能に近い金額だぜ……」

 昨年のコミケで御鏡が作ったシルバーアクセサリーを買ったように、目の前にある騎士鉄十字章をモデルガンごと
黒猫に買ってやりたかった。だが、それは金額的には到底不可能だった。

「……別にいいわよ……。それほど欲しいと思った訳じゃないから」

 そう言いながらも、目は勲章に釘付けになったままだ。こいつは、こういうところで嘘がバレるんだよな。
 さて、どうしたものか。

 沙織も、下顎に手を当てて、何やら考えているような雰囲気だった。
 その沙織が、決心したかの如く口元を一文字に引き結び、何かを確かめるかのように、軽く頷いたように見えた。

「黒猫氏、そのモデルガンと騎士鉄十字章は、拙者が購入致しますぞ」

「そう……、沙織が買うのなら仕方がないわね」

 資本力がある者が、欲しい物を優先的に手に入れる。
 古今東西から変わらぬ、商取引の原則の一つだ。
 だが、沙織には、金にあかせて何かを買い占めるというような下品な振る舞いは、およそ似合わない。
 沙織のことだ。購入したモデルガンと騎士鉄十字章のうち、後者を黒猫に譲るつもりなんだろう。
 そうすることで黒猫は目当ての勲章を入手できる。だが、黒猫の自尊心はどうなんるんだ。

「でも……、施しだったらいらないわ……」

 案の定、誇り高き闇の眷属は、沙織の狙いをお見通しだった。
 ささやかだが、腹の底から搾り出されたような黒猫の抗議の声に、沙織は、口元を『ω』な風にすぼめ、後頭部をポリ
ポリと引っ掻いた。

「いや、いや、黒猫氏、それは早合点というものにござるよ。拙者、別に黒猫氏にその騎士鉄十字章を差し上げたくて、