愛するが故に無理やり…… Part7

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1名無しさん@ピンキー
愛するが故にレイプor強姦or無理やりしてしまうシチュが好きな奴は集え!
二次でもオリジナルでもおk。
襲う側に深い愛情があればおkおk。
相思相愛なら尚更おkおkおk。
逆レイプもおkおkおkおk。

■前スレ
愛するが故に無理やり…… Part6
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1289151978/

■お約束
・エロパロ板は18禁です。大人の方だけ利用してください。
・原則sage進行。メール欄に半角、小文字で「sage」と記入。
・愛あるレイプに確定的な定義はありません。他人の考え方も尊重しましょう。
・他スレのSS紹介禁止。迷惑をかける可能性があります。
・相手をすると喜ぶので荒らし、煽りは徹底的にスルー。
・投下する方は事前の注意書きをお願いします(特に暴力等描写)。
 事前措置をとればトラブルを回避しやすいと思います。
・書きながらの投下は禁止。書き上げたものをコピペしてください。
・作品の最後には「終り」、「続く」などと宣言してください。
・気に入らない作品はスルーしましょう。好きなものにだけコメントをつければおk。
・感想の域を超えた批評、展開予想はご遠慮ください。
・リクエスト、続き希望は節度を持ち、行き過ぎたなれ合いは控えましょう。
・他人に注意をするときは、丁寧な言葉遣いを心がけましょう。

■過去スレ
 愛するが故に無理やり…… Part5
 ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1280147771/
 愛するが故に無理やり…… Part4
 ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1272428300/
 愛するが故に無理やり…… Part3
 ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1251197866/
 愛あるレイプ Part2
 ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1234146553/
 愛あるレイプ
 ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1197985819/

■保管庫
 2chエロパロ板SS保管庫
 ttp://sslibrary.arings2.com/
 ENTER→オリジナル、シチュエーション系の部屋→17号室
※保管されたくない方は投下時に一言添えてください。
2名無しさん@ピンキー:2011/02/21(月) 21:47:05.28 ID:LA9qQWL9
愛するが故にぬるぽ
3名無しさん@ピンキー:2011/02/21(月) 21:55:42.44 ID:f9LFW93Y
よくやった!!>>1さん乙!!
4名無しさん@ピンキー:2011/02/21(月) 23:27:57.38 ID:iM0RrRYR
>>1

>>2無理やりガッ
5名無しさん@ピンキー:2011/02/23(水) 16:55:36.02 ID:rZNEG3jO
即死回避
6名無しさん@ピンキー:2011/02/23(水) 22:59:27 ID:LWVxNx5O
保守
7名無しさん@ピンキー:2011/02/24(木) 04:16:02 ID:dyjL/4uu
保守
8名無しさん@ピンキー:2011/02/24(木) 17:15:47 ID:r6etkl5h
保守より好きな女を犯すんだ
9名無しさん@ピンキー:2011/02/24(木) 18:46:29 ID:4VMe4K0c
とりあえず全裸で正座しとく
10名無しさん@ピンキー:2011/02/24(木) 22:22:52 ID:Mhx24sSt
いまだに前々スレのぽよよんおねいさんを
書いてくれる人はいないのかと待ち望んで保守する
11名無しさん@ピンキー:2011/02/24(木) 22:23:57 ID:Mhx24sSt
すまん、あげてしまったorz
12名無しさん@ピンキー:2011/02/24(木) 23:08:11 ID:r6etkl5h
>>10
俺の脳内ではぽよよんお姉さんが滾る劣情をぶつけられ、犯されまくって
色んな体液でべとべとばきばきになったお姉さんがぐったりしてる
妄想巨編が展開されてるんだがなあ……
俺に文才があれば脳内の妄想を公開出来るのに(´・ω・`)
13名無しさん@ピンキー:2011/02/24(木) 23:18:10 ID:Mhx24sSt
>>12
なにそれ見たいw
自分は淫乱メスめ!と純情を裏切られたと思って
男の肉棒咥え込んでるだろ?だったらこれでも十分だな!と罵りながら
ペンとか文房具で責めて濡れ濡れになっているおねいさんとか妄想したわー
14名無しさん@ピンキー:2011/02/24(木) 23:47:33 ID:r6etkl5h
>>13
まぁ、思春期でも出せる量には限度があるから
間を持たせる為にも道具の使用は必須だよね
しかし文房具か……上手い使い方が出来るような、出来ないような
15名無しさん@ピンキー:2011/02/24(木) 23:54:13 ID:3jXxLxzK
取りあえずパイの円周率を計算するために三角定規と紐みたいなメジャーで
色々するところまで妄想した。
16名無しさん@ピンキー:2011/02/24(木) 23:59:26 ID:4VMe4K0c
お姉さんに無理やりコロコロ鉛筆転げさせて
おまえが選んだんだぜとか言いながらいろんなエロいことしてあげたい
17名無しさん@ピンキー:2011/02/25(金) 19:38:04 ID:UfWQiiKS
18名無しさん@ピンキー:2011/02/25(金) 23:30:23 ID:jbDt2MR1
19名無しさん@ピンキー:2011/02/26(土) 00:32:08 ID:ip9AHYYJ
20名無しさん@ピンキー:2011/02/26(土) 00:55:48 ID:jv5Il4aG
21名無しさん@ピンキー:2011/02/26(土) 08:57:46.24 ID:FMX6geUo
前スレ落ちたか
22名無しさん@ピンキー:2011/02/26(土) 13:58:41.39 ID:uKP+rS5Q
落ちてねーけど
23名無しさん@ピンキー:2011/02/26(土) 20:50:10.36 ID:FMX6geUo
落ちてはないな
容量埋まってただけだったすまん
24名無しさん@ピンキー:2011/02/27(日) 07:49:20.94 ID:cOTEP76x
保守ついでに


ベッドがぎしりぎしりと揺れる。
そのたびにくぐもった呻きが聞こえる。その声は快感ゆえではない。
「い、や。やめ……」
男はいらだたしげだ。濡れない女に、体をつなげても自分を拒否する女に。自分に笑顔を見せない女に。
「君が悪いんだよ。私を誘惑するんだから」
「誘惑なんて、してないっ。離して、離せっ!」
女はいましめられ後ろに回された腕の肘をたてて上体を起こし男をにらみつける。
女の服は裂かれ手首は拘束されている。口を塞がないのはこの部屋が防音なのと、舌を噛んだらさっき撮った映像を
無差別に流すと脅しているせいだ。
「この状態では途中で終われない。我慢したまえ」
男の言葉に女は絶望を感じる。だましうちのように連れ込まれ抵抗する身を捕らえられ服を裂かれた。
嫌だ、やめてという女の言葉も抵抗も男は薄笑いを浮かべながら封じた。
男の手も口も体温すら女にはいとわしい。
ベッドのゆれのピッチが上がる。男にとっても苦痛だろうに意に介する様子はない。さすがに多少は潤ったせいか。
「も、う、出すぞ」
少し苦しげな、いやそれとは違うだろう感情に支配されている男の声に女は今度こそ戦慄した。
男は避妊などしてくれてはいない。このままだと……
「いやっ、やめてっ」
女の悲鳴に近い声を聞きながら無情にも男は果てた。
きつく抱きしめられ中ににぴくぴくと動く男のものを感じ、女は絶望のあまり表情をなくして天井を見上げる。
女の耳元で男が「愛しているんだ」と囁いてもそれは女には届かない。
愛が得られないのならと男は女の他の感情を欲した。なんでもいい、自分に向けられるのであれば、憎しみだろうと
軽蔑だろうと。無関心だけは耐えられなかった。
「君が悪いんだ。私を誘惑したのだから」
無理に手に入れた誰よりも愛しい女に男は毒を吹き込む。
その毒が浸透して女が男の色に染め上げられるのを期待するかのように。


以上
25名無しさん@ピンキー:2011/02/27(日) 08:22:27.37 ID:cOTEP76x
ごめん続きをいれていなかった

女はのろのろと身を起こした。意識を失ってしまったようで既に外は明るい。
男の姿は既にない。側には駄目にした服のかわりがおいてあった。わびのつもりか?
女は泣いた。無理やりに襲われたことよりもそれまで信頼していた男の豹変ぶりにショックを受けた。
ずっと穏やかに微笑む人だと思っていた。
憧れを抱いていた。いや淡い恋心すら抱いていた。
その笑顔の影でそんなことを考えていたのか?
家の事情でやめると告げたのは3ヶ月前のことだ。こことは遠距離の地元だ。
帰って許婚と結婚して家を継ぐ。そう報告した女に男は穏やかにおめでとうと言ってくれたのに。
だから気持ちを押し殺して最後まで過ごしたと言うのに。
しきりと誘惑したのが悪いといわれた。そんなつもりはなかったのに、浅ましい感情がにじみ出ていたのか?
女は泣いた。男との最後の思い出がこんな形になったことに。
好きだった男に嫌悪しかいだけなくなったことに。いやこんなことになって許婚にも顔向けできない、家族も悲しませると
分かっているのに男の感情に「愛している」の言葉に本当は嬉しいと思った浅ましい自分に。
泣いてどうなるものでもない。それでも嗚咽はやまなかった。


こんどこそ以上
26名無しさん@ピンキー:2011/02/27(日) 09:17:46.84 ID:o025aEpl
>>24-25
おお、起きたらよいものが
GJ!
27名無しさん@ピンキー:2011/02/27(日) 09:47:14.31 ID:Y9A8aKQK
色々と想像出来るいい雰囲気だぜGJ!
このまま二度と会わず結婚して男の子供を産んでしまうのもいいが
こんな病んだ男が一度きりで我慢できる訳なさそうだし
女が嫌がっても結婚してからも映像で脅して何度も迫りそうだなw
28名無しさん@ピンキー:2011/02/27(日) 10:52:00.85 ID:mBxvt5E8
これはGJ!!
29名無しさん@ピンキー:2011/02/27(日) 12:17:59.75 ID:Bivl4njD
GJ!
30名無しさん@ピンキー:2011/02/27(日) 12:55:40.16 ID:dTQJZq7I
カタブツ委員長♂がちょいチャラ系の女子に呼び出されバレンタインのチョコと共に告白された。
普段の騒がしい姿とは別人のようなしおらしい仕草に「実は俺も前から…」と返事を仕掛けたとき、
女の子の友人たちに見付かって乱入される。
「えー、○○ってこんなのがタイプだったんだあ」
からかわれて思わず
「ち、違うわよ、ちょっとからかってみただけなんだから」
そう誤魔化してしまい、男は怒って立ち去ってしまう。

その事はあっという間にクラス中に広まり、その後暫く男はからかわれ続ける。
そして誤解を解く切欠も無いまま一ヶ月が経ちホワイトデーの日、放課後、
今は使われていない旧校舎に呼び出された女の子、
もしかして怒ってない? 今なら誤解を解けるかなと思いながら、今度は誰にも見付からないようにやって来た。

しかしそこに待っていたのは騙され馬鹿にされた男の復讐であった…



って感じで誰か。

31名無しさん@ピンキー:2011/02/27(日) 18:04:21.56 ID:S6cT1tQZ
SS来い
32名無しさん@ピンキー:2011/02/27(日) 20:50:05.89 ID:Y9A8aKQK
>>30
いいなそれ!
ホワイトデー時期に誰かSSにしてくれんかの
33名無しさん@ピンキー:2011/03/01(火) 23:10:18.58 ID:aou8NO+8
三人官女を奪い合う五人囃子の泥沼展開を
34名無しさん@ピンキー:2011/03/01(火) 23:14:55.40 ID:fzY6Zi7P
まて、三人官女だと一人は必ず普通に奪えるw
35名無しさん@ピンキー:2011/03/01(火) 23:51:54.59 ID:vaFo4D2a
保守小ネタ>>24-25を書いたものだが
続きっぽいのができたのでおいていく

将軍×退役元少尉
途中でほかの人間との結婚エピソードあり
36名無しさん@ピンキー:2011/03/01(火) 23:52:21.42 ID:vaFo4D2a

長い時間をかけて昨夜の残滓を洗い流した後自宅に戻る。
帰るなり身に着けるしかなかった服を脱ぎ捨てまた浴室へと向かう。
肌が赤くなるほど、体温や感触をも消し去りたいとごしごしと洗う。
ベッドにしばらく座り込んでいたがやるべきことを思い出して腰を上げた。
制服や支給品を返還しなければならない。必要なものを袋に入れて昨日までの職場に足を運ぶ。
事務官の女性は淡々と処理をすすめた。
「はい、手続きは終わりです。お疲れ様でした。少尉」
「元、ですよ」
あら、と事務官は目を開いて失言をわびる。そして思い出したように付け加えた。
「そういえば、閣下からのご伝言がありました。いつでもいい、こちらにいらしたら執務室に顔を出して欲しいと」
内心はひきつっていたに違いないが、それなりの軍生活だ表情を出しはしない。
口調だけかすかな困惑を滲ませる。
「閣下が?何用でしょうか」
「さあ、私にはなんとも。少尉は優秀な補佐官でしたから閣下もそれは残念がっていたとは聞いていますが」
これ以上ここで話していても何も進展はしないだろう。
重い気分のまま最上階のフロアへと向かう。
本来なら退役した人間に近づくことなどできない場所だが、護衛も執務補佐官達も皆顔見知りで通達もされていたのだろう、
とがめられることもなくただボディチェックだけはされて重厚な扉へと通される。
それをノックするのは非常な勇気を要した。

ノックに応じた声を聞いて扉を開ける。日当たりのよい、だが今はやや光をさえぎっている執務室で主は机に向かい
積まれた書類に目を通していた。いつもどおりの光景だ。自分が軍服を着ていないのを除けば。
「マリアローザ・セレス元少尉、参りました」
条件反射になっている敬礼をして昨日までの主、軍の最高実力者の将軍であるレオンハルト・フォン・ハイゼンベルグを眺める。
将軍は書類に目を落としたまま落ち着いた声で質問をよこした。
「体はつらくないか?」
「はい」
硬い声で手短に返答する。
「ピルは飲んだか?」
はっと将軍を見やると書類から目を上げてまっすぐにマリアローザを見つめている。
「何故……」
将軍はふ、と微笑む。マリアローザが憧れていた穏やかな笑み、だが目に宿る光は穏やかとは言いがたかった。
「君が私を嫌がったのだ。当然妊娠も論外だろうと誰でも考えるだろう」
目の前の男に組み敷かれ貫かれた昨夜のことが思い出され、マリアローザの体が強張る。
「すまない、君が初めてだと思わなかったので乱暴にした。今度からは気をつける」
――今度、から?
「閣下、何かお考え違いをされているようですが、私は退役した身です。今後も含めお目にかかることはありません」
目の前の男の意図が読めずに、それでもマリアローザは釘を刺す。
だが、マリアローザなどおよびもつかない歴戦の勇士でもある将軍は意に介さない。
マリアローザなど手の上で転がすことはたやすい。
「今日から有給消化なのだろう?地元に戻るのはいつだ?」
「1週間後です」
この返事に満足げに頷いた将軍はコーヒーを2人分頼むと応接セットにマリアローザをいざなった。
昨日までの同僚がコーヒーとお茶菓子を出してくれた。その際マリアローザに微笑む。それにやや硬いながらも応じて
マリアローザはコーヒーカップを口に運ぶ。将軍も同じようにコーヒーを飲んだ。
「君が淹れてくれたものの方がうまかった」
昨日までならたまらなく嬉しかっただろう言葉も今のマリアローザには響かない。
そんな彼女に将軍は小さな何かを差し出した。つい受け取ったそれはどこかの鍵だった。
「私の家の鍵だ。1週間そこにいてもらう」
マリアローザは鍵と将軍を見比べる。
「昼は好きにしてかまわない。引越しの準備や手続きなどもあるだろう。夕方から朝までは私の家に来てくれ」
「待って下さい。そんな話はお受けできません、私には許婚が」
「――映像」
今度こそマリアローザは凍りついた。
37名無しさん@ピンキー:2011/03/01(火) 23:52:59.19 ID:vaFo4D2a

将軍はソファの背もたれに肘をついた形で足を組み、楽しげに固まったマリアローザを眺める。
軍服姿でなくてもりりしく、美しい。それが今は青ざめて自分を凝視している。視線を向けられることに暗い喜びを覚える。
「君が1週間私のものになってくれるのなら、あれは処分する。許婚を悲しませることもないだろう」
拒否すれば映像を許婚に送ると。この男なら許婚を調べ上げることもアドレスを入手するのもたやすいだろう。
権力と卓越した手腕を誰より近くで見てきたマリアローザは理解する。やりかねない。
「家事はしなくていい。食事だけは作ってくれると嬉しい。好き嫌いはない。ここから好きに使ってくれ」
将軍はそう言うと無造作に紙幣が詰まった財布を渡す。
マリアローザは震えながら受け取るしかなかった。
コーヒーを飲み干して机に戻ろうとした将軍は付け加える。
「ああ、それと今日は君に贈った服を着てくれ」
「承知、いたしました」
震える語尾ながら、それでも言い切ったマリアローザに机に向きかけた将軍はきびすをかえし、ソファに戻る。
マリアローザを立たせて抱き込む。
「楽しみにしている」
そう囁いて柔らかい唇に、己のそれを重ねた。そこから震えが伝わった。

家に帰るのがこんなに楽しみなのは初めてかもしれない。明かりのついた家を眺め心が浮き立つ。
あそこに愛しい女がいる。
玄関を開けるとおいしそうな匂いがただよってきて、そこにマリアローザが立っていた。
「お帰りなさいませ」
夢のようでそれが夢でないことを確かめるためにきつく抱きしめた。腕の中で身をかたくした彼女はそれでも大人しく
抱かれるままになっている。しばらくそうして身を離しマリアローザの姿を眺める。
髪を下ろし、ワンピースが流れるように優美な曲線を際立たせている。
もとから化粧はうすいがふっくらと赤くつやめいた唇が誘うかのようにかすかに震えている。
「よく似合う、髪も下ろしたほうがいいな」
顎に手をかけて顔を上向かせ間近で眺めると、マリアローザの瞳に自分が映りこれ以上ない喜びを感じた。
「愛している」
そう言って唇を塞ぎ、こじ開けた唇の間から歯列や舌を堪能する。絡め吸い上げ、甘いとすら感じる唾液をすすり上げる。
夢中で口付けていると腕の中のマリアローザががくりと力を失う。
「閣下……」
「レオンハルト、レオだ」
頬が紅潮したマリアローザは、気付いていないだろうがすがるような視線になっている。
「レ、オ」
その口から名が紡がれた瞬間、戦慄に近いなにかが走る。気付けばマリアローザを抱きかかえて歩き出していた。
「か、レオ、どちらへ。食事が」
「君が先だ」
短く言いおき寝室に直行したレオンハルトはベッドにマリアローザを下ろす。
はやる気持ちを抑えながら上着やネクタイを外していく。マリアローザは上体を起こして後ずさっている。
それを捕らえて自分の下に横たえ、囁く。
「大丈夫、今日は優しくする」
額に、頬に柔らかく触れるだけの口付けを落とす。強張ったからだをほぐすように辛抱強く優しく触れていく。
頃合を見てまた唇を重ねる。少しずつ深くなるそれにマリアローザが眉をひそめる。
ん、と喉奥からの声にレオンハルトは目を細める。
娘のような年下の部下に心を奪われたと自覚したのはいつのことだろう。気付いた時にはその姿から目が離せず、笑顔や
自分にコーヒーを出してくれる仕草に心が躍った。
立場の差、年齢差、色々考えると動きようがなかった。決定打は許婚がいるとの情報だった。
狙っている者が多かった軍内にあってそれは一応は牽制になっていた。なかにはそれをものともしない輩もいたが
できるだけ自分の側においておくことで回避した。守ってきた。
自制が保てなくなったのは退役の報告を受けた時か? 恥ずかしそうに報告するマリアローザを前に、鉄面皮はいつもの
ように祝福の言葉を述べていた。
自分の前からいなくなる。他の男のものになる。
その時に許婚とやらがいたら間違いなく葬り去っていただろう。それほどの嫉妬を覚えた。
そして決意した。泣かれようが、嫌われようが、憎まれようが自分のものにすると。
予想外の抵抗とそれ以上に初めてだったことに驚いたが、同時に暗い喜びも覚えた。
初めての男になれた。
それきりでやめようと思った決意はあっさり覆った。マリアローザに自分を覚えこませたい。
欲望のままに罠を張る。幾重にも、決して逃れられないように。

38名無しさん@ピンキー:2011/03/01(火) 23:53:33.32 ID:vaFo4D2a

唇を離すとマリアローザは切ないといってもいいかもしれない吐息を漏らした。
レオンハルトの口付けは昨夜の噛み付かんばかりの激しさではなく、官能を引き出すかのように執拗なものだった。
経験のないマリアローザなどものの数ではない。口付けだけで力が抜けてしまっていた。
ぼうっとしていたマリアローザは、その手がワンピースの上から胸をもんだ時にびくり、と身をすくませた。
「大丈夫、怖がるな」
囁かれ、ついでのように耳に愛撫を施されマリアローザは混乱する。耳に響く音がとてつもなくいやらしく感じる。
「やめ、て」
身をよじるとそれに乗じて背中のファスナーが下ろされた。背中を直になでる手に驚いてレオンハルトに向き直る。
レオンハルトは微笑んで首筋に唇を這わせる。手も口も体温も、昨夜同様いとわしいと思うのに逃げられない。
「痕はつけないでいてやろう。私としては君に刻みたいがね」
1週間で消えるか分からないから。そんな優しさなど要らない、そう思いつつマリアローザは抗えなかった。
ワンピースが脱がされ胸があらわにされる。すくうようにもまれ、先を含まれたとき背中がしなった。
マリアローザは自分は信じられなかった。嫌悪すべき相手に嫌悪すべき行為をなされているのに、意に反して
体が勝手に反応してしまう。何故 ?レオンハルトが優しいからか? 逃げられないと思うからか?
「マリアローザ、ローザ、愛している、愛しているんだ」
何度も何度も耳元で言われその言葉に浮き立った時、マリアローザは本当の意味で許婚を裏切ったと感じた。
その証拠に昨夜は濡れもしなかった中からじんわりと何かが漏れ出るのを感じた。
無理に奪われた相手に抱かれて、反応してしまった。
その夜は涙が止まらなかった。レオンハルトが入ってきたときもまだ痛いばかりで快感には遠かったが、昨夜よりは
痛みの程度が軽くスムースに受け入れてしまったことにショックを受けた。
レオンハルトは昨夜とは違いゆっくり、中を確かめるかのように動いている。入り口付近をこねるように腰を使われ
圧迫感はあるのにむずがゆい気分も生じる。太い指がたれた液をすくって結合部の上の突起をさすると電流のような
刺激が走って腰が浮いてしまっていた。怯えを含んだ視線でレオンハルトにすがってしまう。
それをあやすようにレオンハルトは、マリアローザを抱きしめる。
「怖がらなくていい、早くここと中でイケるようになれ」
ゆるゆるとそこを弄んでいたレオンハルトは、マリアローザの足を肩に上げ奥をうがつ。
苦痛なばかりで快感はない。それでも「ごめんなさい」とマリアローザは許婚を思って泣いた。
39名無しさん@ピンキー:2011/03/01(火) 23:54:16.18 ID:vaFo4D2a

悪夢のように日々は過ぎた。相当に忙しいのにレオンハルトは将軍の職務を驚異的な速さでこなして、彼にすれば早い
時間に帰宅する。それをマリアローザが出迎える。食事と風呂をそこそこに毎夜マリアローザを抱く。
その姿は他人から見れば執着ともいえるかもしれない。
「ローザ、私のローザ」
うわごとのようにマリアローザを自分で決めた愛称で呼び、何度となく貫く。
1週間も終わろうかとしていた。
「ん、あっ、レ、オ」
こらえようとしてもマリアローザの声は艶を帯び、レオンハルトの愛撫に反応する。
「ここが、いいか」
揶揄すらマリアローザには刺激にしかならない。1週間の、ほとんど夜を徹してのレオンハルトとの交わりは確実に
マリアローザを変えた。レオンハルトの刺激に反応し、彼の愛撫を覚えこみ回数は少ないながらも絶頂も極めた。
今も中に入って、弱いところをこすりあげる指に反応して腰が淫らに揺れている。
「ふ、くっ、だ、め」
「駄目なら止めるか?」
わざと動きを止めてレオンハルトが尋ねる。
抱かれ始めはやはり多少は緊張しているマリアローザも、触れられると反応するのを抑えきれない。
精神力でぎりぎりまでは耐えていたが、それもレオンハルトを煽っているとは気付かない。
「いや時間が惜しい、こんなことも今夜限りだ」
レオンハルトは苦いものを飲み込むようにそう言うと、マリアローザの弱いところをこする。
「は、あぁっ、あああ」
指をきつく締め付けびくびくとマリアローザが達する。
その波を逃さぬようにレオンハルトは指を抜いて怒張したものをあてがい貫く。
そこは柔らかくほぐれうねうねと絡みながら、レオンハルトを迎え入れ離すまいとするかのように締め付ける。
教え込んだ以上に見事に開花して男を誘うようになったのに、レオンハルトは息をつめて耐える。
引いて奥へと出し入れするたびに快感が背を走る。マリアローザも喘いでいる。
「ローザ、いい、か?」
背に手を回して抱きつきながらマリアローザが忘我の表情になっている。
「レ、オ、あぁ、い、い」
そして一つに溶け合うかのように同時に達した。
40名無しさん@ピンキー:2011/03/01(火) 23:54:50.55 ID:vaFo4D2a

「これでお別れだ。元気で」
「レ、閣下もお元気で。ご活躍とご健勝をお祈りします」
約束の終了の朝、そう言って別れを告げた。拍子抜けするほどあっさりマリアローザは解放された。
ただ不可解な命令だけが残された。半年間は避妊をしろ、と。マリアローザはいぶかしく思いながらも指示に従った。
地元に帰ってから程なく、レオンハルトの子供を孕まなかったことに心底安堵した。許婚には顔向けできない日を過ごしたのに
子供までとなればその罪ははかり知れない。許婚が向けてくる笑顔がひたすら申し訳なかった。
忘れてしまおう。そしてここで夫に誠実に生きていこう。それが許されるならば。
花嫁衣裳に身を包んでマリアローザは誓った。
夫との夜は部屋を暗くしてもらってやり過ごした。事後シーツを引っぺがして洗うことで偽装を施した。
罪悪感からマリアローザは夫に尽くした。継いだ家の煩雑なあれこれもそれに没頭することで、あの日々を頭から
締め出せるような気がして率先して取り組んだ。
許婚だった夫はもともと親戚で幼馴染のように過ごした。その愛情は激しいというよりは家族愛のような穏やかなものだった。
それを大事にしていけば、いつかはあの日々も過去のものになるだろうと思っていた。
だから、まさかこんな風になるとは思わず、マリアローザは呆然と目の前の光景を眺めるしかなかった。
夫が土下座をして側には先ごろ入ったばかりの使用人の娘がついていた。
「こども、が?」
どこか他人ごとのように口から出た言葉に、夫がびくりと身をすくませる。使用人の娘は涙を流している。
どうやら知らない間に夫が使用人と通じて、子供ができてしまった、らしい。
マリアローザの母親は怒り狂っているが、それを妙に冷静にみるマリアローザだった。
「本当にすまない。だが子供は生ませてやりたい。虫のいい話なのは分かっているが……」
「旦那様を責めないでください。私が悪いのです。いかようにもお咎めは受けますから」
非難の目にさらされながらも互いをかばう姿に、マリアローザは入り込む隙がないのを悟った。
「別れましょう。この家は貴方が継げばいい。もともと親戚なのだし奥さんと赤ちゃんを抱えては大変でしょう?」
マリアローザの提案に、親も夫も使用人も目をむいた。
「なんてことを、貴女がここの主なのよ」
母親の金切り声も決心を鈍らせはしなかった。
「お母様。親戚同士なのだもの、助け合わないと。私たちの一族の血が流れている赤ちゃんなのよ。大事にしましょう」
本人がこれではどうしようもない。生まれる子供のためにも私生児にする前に離婚の手続きをすすめた。
傷心の元妻がその場所を離れるのは傍目からは当然のなりゆきだった。
いまだ納得はできない母親にそれでも生まれてくる子供の後見を頼み、元の夫に家を託してマリアローザは地元を離れた。
それは、レオンハルトと別れてから半年後のことだった。
41名無しさん@ピンキー:2011/03/01(火) 23:55:18.04 ID:vaFo4D2a

首都にと足を向けとりあえずホテルに宿泊したマリアローザの携帯に連絡があったのは、部屋に落ち着いて程なくだった。
番号だけで分かる。直通の番号。
やや緊張しながら通話状態にする。耳に低く落ち着いた声が響いてきた。
「ローザ、終わったようだね。またこちらで働いてくれるか? 私としては他の展開でもいいんだが」
知らず、携帯を握る手に力がこもる。
半年の避妊の指示、入ったばかりの若い娘、実に夫の好みそうな娘。
マリアローザの性格と行動を予測した上での離婚劇。
このタイミングで連絡をよこしたのは、おそらく監視もついていたのだろう。
「全てあなたの手の上ですか」
自分も踊ったマリアローザは疲れた声で問いかける。ふ、と向こうで笑う声が聞こえた気がした。
それはきっとかつてマリアローザが憧れただろう笑みに違いない。だがその目は暗い情熱をたたえ輝いているだろう。
「君が私を誘惑したんだ。だから私はそれに従ったまでだ」
マリアローザはしかし、捕らえられたのは自分の方だと感じた。
あの1週間レオンハルトはマリアローザに痕はつけなかった。その代わりに目に見えぬ枷をつけたのだ。
どうあがこうと他の選択肢はない。
「愛している、ローザ」
この上なく甘く、底知れぬ闇をたたえた言葉にマリアローザは目を閉じる。
「レオ」
もう涙は流れない。あの日無理に抱かれたのに愛の言葉に心を揺らした罪から逃れられない。
きっとレオンハルトと同じくらい罪深いに違いない。
誰も不幸にはなっていない。それだけが救いかもしれない。
レオンハルトの手で作られた偽りの幸せだとしても。
「レオ、私も愛しています」
「ああ、ローザ」
愛しい女の心まで手に入れた男の声は浮き立つ。それを聞きながら女の顔にも笑みが浮かぶ。
穏やかで暗いなにかをたたえた笑みが。


以上
42名無しさん@ピンキー:2011/03/01(火) 23:55:58.90 ID:vaFo4D2a
ひな祭りネタに割り込んですまなかった
そのネタでぜひ読んでみたい
43名無しさん@ピンキー:2011/03/02(水) 00:08:16.02 ID:7d1qzmWT
非常に良かった。
GJしか書けんのがもどかしい。
44名無しさん@ピンキー:2011/03/02(水) 00:10:24.71 ID:FeLondnm
GJ!!
初めの時は普通に現代モノかと思って見ていたw
そして半年ってこういうことかレオンハルト黒っ!!
元婚約者は罠にかかったといえど普通に屑なので
主人公はもう罪悪感なくっていいと思うんだけどw
45名無しさん@ピンキー:2011/03/02(水) 02:00:32.70 ID:Wh56x6SI
GJ!!
心までも墜とすレオさん半端ねえ
46名無しさん@ピンキー:2011/03/02(水) 02:16:51.55 ID:ZCPYwRyo
この展開は読めなかったw
47名無しさん@ピンキー:2011/03/02(水) 22:23:08.44 ID:3uHY2p0p
GJ!素晴らしい強奪感
48名無しさん@ピンキー:2011/03/03(木) 04:40:56.28 ID:ku5ZLtUg
ここって二次もいいみたいだけど、ウェブ漫画の二次でもいいんだろうか
注意書きつければ大丈夫?
49名無しさん@ピンキー:2011/03/03(木) 07:46:34.14 ID:XAB7LGFP
スレ主旨に沿ってて
注意書きがあれば大丈夫
50名無しさん@ピンキー:2011/03/03(木) 09:05:40.61 ID:BCh6ozOd
web漫画の二次って誰かが個人でサイトに上げてるオリジナル作品の二次を勝手に書きたいって事か?
それだったらその漫画描いてる本人に確認取らないとまずいんじゃ
ヘタリアみたいな商業化してるやつなら大丈夫だろうけど
51名無しさん@ピンキー:2011/03/03(木) 09:13:47.99 ID:iSCCgCdB
個人サイトの場合は注意書きとかに
二次創作への注意はたぶん書いてあるとは思うけど、
それでもエロスは嫌がる人もいるので、作者に認取るか
しないとまずいのでは?
あと書かれるのは構わないけど、作者が2ちゃんに投下されるのは
嫌がるかもしれないしね。
52名無しさん@ピンキー:2011/03/03(木) 11:35:55.23 ID:ku5ZLtUg
>>49-51
ありがとう。一応サイトの説明のとこに「二次全然OK!」と書いてあるから大丈夫だと思う
まじ作者さんええ人。
2ちゃんってのが心配だけど、作者さん亡くなっててもう確認はとれないんだ
流れぶったぎっての質問にレスありがとう。書きおえたらまた来ます
53名無しさん@ピンキー:2011/03/03(木) 12:22:33.85 ID:26q2rQjK
亡くなってるならここに投下はまずいと思うんだが
死人に口無し
確認取れないならむしろ辞めるべきかと思うけどな
54名無しさん@ピンキー:2011/03/03(木) 13:42:48.04 ID:B4NHtI76
二次OKならいいんじゃないの?
55名無しさん@ピンキー:2011/03/03(木) 14:04:42.67 ID:BCh6ozOd
とりあえず公爵家の続き待機中
56名無しさん@ピンキー:2011/03/03(木) 15:09:25.34 ID:riXr6aP7
凄い大手作家さんとかで2に抵抗無い人のだったりしたらいいけど
こっちから原作気になって住人が流れていって不快になりそうなら控えたほうが良さそうだけどね
でもお亡くなりになってたら難しいね


自分も公爵家の魔王視点全裸待機してるぜ!
57名無しさん@ピンキー:2011/03/03(木) 21:09:13.69 ID:LfBv4jfC
すっかり魔王で定着しているw

しかしやっぱり無理やり、やるんでどうしても男が黒くなるな
ヤンデレ風味が入っているほの暗い感じは好みだが
58名無しさん@ピンキー:2011/03/04(金) 10:58:16.90 ID:0zj66re+
普段は好青年なのに、好きで好きでしょうがなくて勢い余って若さゆえの過ちを……みたいなのも好きですぜ
事後に「責任は取る!」土下座するような
59名無しさん@ピンキー:2011/03/04(金) 17:31:00.17 ID:S+0cM6Qh
愛すべき馬○坊ちゃんの暴走か
そういうのもいいな
60名無しさん@ピンキー:2011/03/04(金) 19:53:00.33 ID:Zgwerypc
公爵家のものです
前スレはスレチのせすで荒れさせてしまい申し訳ありませんでした
あのような真似は自重し、今後は本編のみ投下します

公爵家の秘密、続きです
注意事項
貴族とメイド、父と子の三角関係、穴兄妹

今回は父親視点です
61公爵家の秘密:2011/03/04(金) 19:54:28.86 ID:Zgwerypc
1
「――では、これで正式に成立ですな」
ルーファスはベラム伯爵、オスカー・ハートネットと握手を交わした。
「これで両家の繁栄は約束されたも同然。いやあ、これで私も一安心です」
以前から内々に進めていたアレクシスの縁談がついに決まったのだ。
「アレクシス殿のような、見目麗しく聡明な方を夫にできるなど、我が娘には望外の喜びでしょう」
オスカーは伯爵でありながらいくつもの銀山、金鉱を所有する社交界屈指の資産家だ。
オスカーの娘、三女ユーフェミアはその利権のひとつと引き換えに、次期公爵夫人の座を得ることになる。
(貴族である以上、政略結婚は当然の義務だ。しかし……)
「伯爵、例の件もよろしく頼むぞ」
「……ああ、あちらですか。しかし公も奇特な方でいらっしゃる」
オスカーはいやらしい笑みを浮かべた。
「このような真似をなさるほど、公が情熱的な方であったとは」
「私自身、驚いているのだよ。伯爵」
オスカーの声に嘲りが混じっているのを知りつつ、ルーファスは静かだった。
(これでアレクシスの方は片付いた。後は時を待つばかり)
どのサロンに顔を出すこともなく、伯爵家の屋敷を出たルーファスはアスターへと馬車を急がせた。
一刻も早く、ステラの顔が見たかった。

この一月というもの、ルーファスは気が気でなかった。
息子が可憐なメイドに恋しているのは、傍目にも明らかだったからだ。
(ステラは私のものだ)
小さなブーケを手にしているアレクシスを目にし、危機を感じたルーファスは、嫌がるステラを庭に連れ出して抱いた。
――アレクシスに見せつけるために。
年端もいかない少年に、あの光景は毒だったかもしれない。しかし、恋する少女が既に父親のものと知れば、
諦めるほかないだろう。
アレクシスはまだ若い。すぐに別の恋を見つけることができる。婚約者となるユーフェミアはその相手に相応しい、
美しい娘だった。
アレクシスにすまないと思う気持ちも、大人気ないとたしなめる気持ちも、ないわけではなかった。
(だが、私には……もうステラしかいないのだ)
愛しい少女の顔を、白い肢体を、悩ましい声を思い浮かべ、ルーファスは対面を待ち焦がれた。
62公爵家の秘密:2011/03/04(金) 19:55:15.81 ID:Zgwerypc
2
帰路は二日ほどかかり、屋敷に戻ったのは夕方だった。
晩餐の席で、ルーファスはアレクシスに婚約の成立を知らせた。
「……そう、ですか」
アレクシスは覇気がなく、ぼんやりとしていて、驚きすらしなかった。
(失恋のせいか)
少しの罪悪感から目を反らし、淡々と告げる。
「卒業すればすぐに挙式だ。良いな」
「……はい」
物憂げな息子は、大人びた声音で従順に答えた。
「幸い、ユーフェミア嬢は美しくしとやかな方だという。年はお前よりひとつ下だが、ちょうどいいだろう」
「……はい」
「婚約が決まったとなれば、もう大人の仲間入りだ。公爵家の跡取りとしての自覚を持ち、くれぐれも軽率な行動は慎め」
ルーファスは含みを持たせ、しっかりと釘を刺した。
「私や――ユーフェミア嬢を、失望させるな」
「……はい、父上」

晩餐を終え、湯浴みを済ませて旅の汚れと疲れを取る。
寝室に戻ると、呼び出しておいたステラが窓の前に立っていた。
「……旦那さま」
「ルーファスだ」
バスローブしか身につけていない身体でステラを抱きしめ、口づける。ステラはもはや抵抗しなかった。
今すぐにでも貫きたい衝動を抑え、メイド服の上からステラの感触を味わう。
「数日とはいえ、お前の傍を離れるのがこんなに耐え難いものとは知らなかった」
「ルーファスさま……」
悲しげに睫毛を伏せるステラに、ルーファスは再び唇を押し付ける。同時にカチューシャを外し、
柔らかな髪の感触を楽しむ。
深まる口づけに、ステラは嫌々ながら応え始めた。
(今はまだ、心がなくてもいい――)
この身体が自分のものであるならば――。
(時が来れば、やがてステラは永遠に私の傍を離れられなくなる。
一年、三年、十年――長い時間をかければ、身体も心も、私を愛さずにはいられなくなるだろう)
偽りから始まる恋もある。ルーファスはステラの恋が自分に向くまで待ち続けるつもりだった。
「……ん、ふぅ――」
酸欠になりつつあるステラから、名残惜しくも唇を離す。
上気した顔は例えようもなく艶めかしかった。
「――今日は、趣向を変える」
ルーファスはにやりと笑い、命じた。
「服を脱げ」
63公爵家の秘密:2011/03/04(金) 19:56:17.65 ID:Zgwerypc
3
ステラは戸惑いの表情を浮かべ、躊躇っていた。
今まではずっとルーファスが脱がせていた。それにステラは脅されてこの関係を承諾したのだ。
自分から脱ぐことには抵抗があるだろう。
「どうした?」
それでもルーファスは、完全にステラの意思を屈服させたかった。
「早く脱げ」
ステラはまだ躊躇していた。
「……お前と仲がいいと言っていた、リースの――マリーといったか」
突然昔の友人の名を出され、ステラは目を見開いた。
「突然解雇されたら路頭に迷うかもしれんな」
「……!」
もちろん、解雇する気などさらさらない。だが、ステラを見ていると嗜虐心がざわめくのだ。
愛しているのに、めちゃくちゃにして泣かせたいとも思う。そんな自分の隠された性癖をルーファスが自覚したのは、
ステラを抱いてからだった。
(ステラが悪いのだ。泣き顔まで男をそそる……)
「マリーには何もしないでください……!」
「わかった。では脱げ、ステラ」
ルーファスはソファーに越しかけ、ステラを鑑賞することにした。
ステラは震える指で紐を解き、ボタンを外していった。衣擦れの音を聞き、その白磁の肌が晒されていく様子を見守る。
スカートが落ち、ガーターベルトとストッキングが消え、とうとうステラは下着一枚の姿になった。
「――どうした?」
止まっていた指が、ルーファスの言葉でびくりと奮え、やがて腰から頼りない布が下ろされていく。
裸になったステラは、窓から差し込む月光に照らし出され、人ならぬ者のような神々しさを放っていた。
「綺麗だ、ステラ……」
何度抱こうと、ステラの神聖さはなくならない。それが不思議だった。
そして、それを汚したい、と望む自分も、不思議でならなかった。
「自分で、やりなさい」
「……え?」
「自分で自分を慰めるのだ。……わかるな?」
自尊心をえぐるような命令に、ステラは青ざめ、涙ぐむ。
「そ、そんな……お許しください……!」
「駄目だ。断れば……」
先程と同じカードをちらつかせると、ステラは長い沈黙の後、自分の胸に手を伸ばした。
形の良い巨乳を、優しく揉み、頂を尖らせていく。
吐息が湿り、ステラの顔が聖女から娼婦へと変貌していった。
ルーファスはただ黙ってこの芸術的な痴態を眺めていた。
やがてステラの指が、神秘の泉へと向かっていく。
「あぁ……!」
くちゅりと音が鳴り、甘い声が響く。
「あっ……ん……やぁ………」
指がステラの泉を往復し始めると、淫靡な水音が奏でられた。
片手で胸の先端をいじり、もう片方で蜜壺を鳴らすステラは、悪魔的な妖艶さを纏っていた。
その光景に魅入り、いきり立った自分自身を先走の汁で濡らす。
「ひぁっ、……あっ、……あぁ、んっ……!」
蜜に濡れたステラの指がいつしか敏感な蕾を刺激していた。
「あっ、だめぇ、来る……! だめっ、……や……あっ、あ、あ、………ああぁ――!」
股間を、太股を、陰毛をしとどに濡らし、ステラは果てた。
がくりと膝をつき、肩を上下させる少女は、本当にいやらしく、愛らしかった。
64公爵家の秘密:2011/03/04(金) 19:57:09.62 ID:Zgwerypc
4
「――次は」
ルーファスは更なる指令を告げる。
「私を脱がせ、感じさせるのだ」
本当は早くステラとひとつになりたい。だが、焦らせば焦らすほどその快感も増すだろう。
ステラはよたよたと立ち上がり、悠然とソファーに座るルーファスに近づいた。
怯えながらバスローブのベルトに手をかけ、結びを解く。
露わになった猛りを見ないようにしながら、少女はルーファスの首筋に口づけた。
「う……!」
たどたどしい愛撫だったが、それでもルーファスは、ステラから触れられているという至福に酔った。
白く細い指がルーファスの胸板を這い、柔らかい膨らみとその突起が時折触れた。
「いい……いいぞ……っ」
乳首にキスされ、ルーファスはのけ反った。
「くっ……ステラ……!」
やがてステラの手が熱い男の象徴にたどり着き、手淫を始めた。
「う、あぁ……ステラ……口で、やれ……」
ステラは命じられるがまま、ルーファスの股間にうずくまり、舌と手で男根を刺激する。
(上手くなったものだ……)
最初は泣いて嫌がり、何度も無理やり突っ込んでやっと慣れさせたのだ。
「啣えろ……」
ステラの薄紅色の唇が開き、温かい口内に赤黒い棒が迎え入れられた。
たまらない快感と征服感にルーファスは悶える。
「そうだ……ステラ……あぁ、上手いぞ……」
「んっ……むぅ……」
頭を前後させ、できるだけ奥まで出し入れする。短い舌で懸命に筋裏を舐め上げ、涙目で奉仕する姿は
ルーファスをこの上なく満たした。
どれくらいそうしていただろうか。やがて限界が近づいてくると、ルーファスはステラの顔に手をやり、
最後の指令を出した。
「もう、いい。おいで……」
ステラはゆっくりと立ち上がった。ルーファスに導かれ、起立した槍の上に腰を置く。
「……」
ひとつになるまであと少しだというのに、ステラはまだ逡巡していた。
「ステラ」
強く有無を言わせぬ口調で名前を呼ぶ。
やがてステラは覚悟を決めたのか、ゆっくりと腰を下ろし、ルーファスを呑み込んでいった。
65公爵家の秘密:2011/03/04(金) 19:57:50.57 ID:Zgwerypc
5
「あぁあ……!」
待ち焦がれた瞬間、そこをルーファスは遠慮なく突き上げる。
「あぁ! ……やぁ、っ」
「ステラ――」
しっかりとくびれた腰を掴み、揺れる乳房を、苦悩と官能に彩れた顔を見つめる。
「……あ、やぁ……」
「愛している」
「あぁ……!」
「お前だけを」
「っ……ぁ……は……あ、んっ……!」
「けして離さぬ……!」
ステラは言葉を発することなく、ただ喘いだ。腰は快楽を求めて円状に動き、
泉からはこんこんと蜜が溢れていたが、瞳は虚ろで、まるで心のない人形のようだった。
「名を呼べ」
「ルー、ファス、さま……! あっ!」
「もっとだ」
「ひぁっ……ルーファス……さま……あぁ!」
「ステラ……!」
――もっと、もっと、激しく。
ルーファスは何度もステラの名を呼び、形を変えステラと交わった。
「気持ち良いか」
「あ……っん……や……あぁ……っ」
「もっと声を出せ」
「ん、あ……っ、ひあ、……ああぁ!」
上下を変え、前後を変え、何度も何度も己を打ち付け、最奥で揺らし、時にはゆっくりと体内を味わい、
敏感な突起を責め立て、濃厚な口づけを交わす。
「やぁ、も……あ、んっ、あ、ああっ! やあぁ――!」
その度にステラは鳴き、怪しく腰を回し、幾度も果てた。
「愛している」
「あっ、ふぁ、あ、あ……っ」
「ステラ、愛しているのだ」
「やあっ、あ、あ……っ」
しかしステラは言葉を返さない。その大きな瞳は、どこか遠くを見ているようだった。
それに苛立ち、乱暴にしても、ステラの反応は変わらない。
(身体は受け入れるが、心はここにはないというのか)
(それほどまでに、私に愛されるのがいやか)
「や、あ、あぁああ――!」
ステラの子宮に精を放ちながら、ルーファスは暗い怒りに包まれていた。
(許さぬ。許さぬぞ。決してお前を解放などせぬ。そしてお前の心も、いつか必ず手に入れてみせる)
66公爵家の秘密:2011/03/04(金) 19:58:30.52 ID:Zgwerypc
6
この夜から、何度抱いてもステラは同じような反応しか返さなくなってしまった。
ルーファスは何とか打開しようと、ますます行為をエスカレートさせ、時には白昼の執務室や図書室で、
時には道具を使い及んだのだが、ステラの反応は同じだった。
だが、そんなルーファスが待ち望んだ時がついに訪れた。
――妻、キャサリンの死を知らされ、ルーファスは無慈悲にも喜びしか感じなかった。
(これで……ステラを妻にすることができる)
ただ、その思いだけが、ルーファスの支えだった。
ベラム伯爵の養女としてアスター公爵家に嫁ぐ算段はできている。
喪が明ければ、すぐにでも式を挙げよう。
愛しい女を、正式に自分のものにするのだ。
(誰にも邪魔はさせぬ)
キャサリンの死を悼む振りをしつつ、ルーファスは喪服姿のステラに欲情していた。
(後少しだ……ステラ)
――お前が、すべて私のものになるまで。
67公爵家の秘密:2011/03/04(金) 19:59:17.02 ID:Zgwerypc
7
 キャラリンの葬儀はしめやかに行われた。
 アレクシスは間に合わなかったが、それを踏まえても参列者の少ない寂しいものだった。
派手で高慢なキャサリンは、女の友人というものに縁がなかった。アレクシスを産んだ後はまるで蝶のように
色々な男を渡り歩いていたが、結局本気になる者もいなかったようだ。
(――哀れな女だったのかもしれぬな)
 今更ながらにルーファスは憐憫の情を覚えた。
(しかし、それも自業自得というもの)
 ルーファスは横目でステラを盗み見る。黒いヴェールを纏っていてもその少女らしい可憐さが滲み出ている。
キャサリンとは大違いだ。
 ルーファスは亡き妻との初夜を思い返していた。
 キャサリンは常日頃から女王のように振る舞っていたが、ベッドの上でも命令ばかりし、自分勝手に快楽を求め、
品のない嬌声をあげていた。明らかに処女ではなく、慣れずとも懸命に感じさせようとする夫を
「そこじゃないわ、下手くそね」と見下し、――愛はなくとも誠実であろうとしたルーファスをひどく幻滅させたのだった。
 それに比べて、ステラを初めて抱いた時のなんと甘やかであったことか!
葬儀と埋葬を終えた後、ルーファスはステラを呼び止めた。
「――来るのだ」
 人気のなくなった教会の大聖堂に向かう。ステラは黙ってついてきた。
 大聖堂に描かれた壁画や色とりどりのガラス窓は、ルーファスが寄進したものだ。
光が射すと神々しく美しい聖堂は、今はわずかな炎の灯り以外は闇に包まれていた。
 ガラス窓の下まで来ると、ルーファスは足を止めた。
「ステラ」
 振り向いたステラは表情がなく、ただルーファスを眺めていた。
「――これを、お前に」
 取り出したのは小さな箱だ。近寄り、蓋を開けて中身を見せる。
「これは……」
 ステラはそれが何かわかると、反射的に身を引いた。その手を掴まえ、しっかりと握りしめる。
「私の妻になるのだ、ステラ」
 そしてルーファスはステラの左手の薬指に指輪をはめた。
「……私は平民です。そんなこと、許されるはずが」
「お前はすでに平民ではない」
 指輪をしたステラをうっとりと見つめ、ルーファスはその腰を抱いた。
「ベラム伯爵が養女、ステラ・ハートネット。それが今のお前の身分だ」
「何を……」
 戸惑う少女に微笑み、ルーファスは言う。
「公爵たる私が伯爵令嬢を娶る。何の不都合もあるまい」
「待って……待ってください」
「式は喪が明けたらすぐに行う。小さなものになるが、その方が良いだろう?」
 ステラの言葉を待たず、矢継ぎ早にルーファスは続けた。
「明日からはお前に家庭教師を付け、公爵夫人としての振る舞い、教養を学ばせる。部屋も私の隣に用意してある。
大丈夫だ、万事上手くいく――」
「ルーファスさま!」
 たまらずステラは叫んだ。
「……無理です。――公爵さまの奥方だなんて、私には務まりません……!」
「そんなことはあるまい、ステラ」
 腰を固定していた腕をさらに下に伸ばし、形の良い尻を撫でる。ステラはそんな些細な愛撫にもびくりと反応した。
「もう何度も務めを果たしてきたではないか――寝台の上で」
 ステラの顔が朱に染まる。いつまでも初々しい未来の妻に、ルーファスの手はさらに激しさを増していく。
「お前ほど私を虜にする女はいない」
「っあ……!」
「公に、正式に――私のものとなるのだ、ステラ」
「……無理です……んぅ……!」
片方の手で顎を掴み、口づける。
68公爵家の秘密:2011/03/04(金) 20:00:34.74 ID:Zgwerypc
8
「私の花嫁……愛しい妻……」
 唇を舐め、歯列をなぞり、逃げるステラの舌を絡める。どちらのものとも分からない膵液が溢れ、
ふたりの顎を伝い落ちていく。
「――そして――アレクシスにとっての――『母』になるのだ」
 ステラの緑の目が見開かれた。それは絶望を宿した瞳だった。
(母が子を恋することは罪になる……信心深いステラなら尚更……あれを諦めるほかあるまい)
 ルーファスはステラの首筋に唇を這わせ、赤い花を咲かせていく。
「……ルーファスさま、それは無理です……そんなこと……神がお許しになりません」
「何を言う、我が妻よ。神の御前にて、我らが婚約し――身も心も一つになるのを見届けてもらおうではないか」
「いや……!」
 久しぶりにステラが抵抗の意思を見せた。ルーファスは笑いながらステラの黒いヴェールを取り去り、
黒いドレスの背中のボタンを外しにかかる。
「無理です、結婚なんて……!」
「無理ではない。それにもう決まったことだ」
「そんな……、あっ……!」
 ボタンを全部外すと、みずみずしい二つの果実が姿を現した。
ルーファスは躊躇いもなくドレスを一気に下まで引き下ろす。聖なる場所で裸同然にされたステラは、必死に抵抗した。
「やぁ! こんなところで……」
 ルーファスは蜀台を払いのけ、ステラをテーブルクロスの敷かれた台の上に押し倒した。
抱かれるようになってさらに質量を増した膨らみを激しく揉みしだく。
「どれだけこの身体がいやらしく、どれだけ夫の身体を求めているか、神に見て頂こう」
「やあっ! 結婚、なんて……っ、いや、です……私は……っ」
 ステラは毅然と言い放った。
「あなたを、愛して、いません……!」
 胸がえぐられるように痛んだ。
 しかし同時に、それはわかっていたことでもあった。
 ルーファスは思う。
――もしもステラがたやすく愛を囁く女だったら、ここまで彼女を愛することはなかっただろう。
「今は、まだな」
 平静を装ってルーファスはステラの乳房を弄び続けた。手に吸いつくような感触のそれは、
遠慮のない手の動きによって怪しく形を変える。
「しかし、妻は夫を愛さねばならぬ」
「……や、あっ!」
 張りつめた頂を弾き、もう一方を甘噛みする。白い身体がびくりと震えた。口を尖らせて吸いつき、
舌先で突き、執拗に舐め、再び甘く噛む。もう一方は掌の中央でくねらせ、玩具のように引っ張っては離し、
爪で弾いたかと思えば指の腹で激しく擦る。
「……あっ……っ、や、あっ……あっ……!」
ただでさえ感じやすい体質であるのに、この三ヶ月何度も抱かれて弱点を知られている相手から愛撫を受け、
ステラはどんどん高まっていった。
「愛していない者に対し、こんな甘い声を聞かせるのか?」
「……それは……やあ、っ……」
 耳に舌を入れ、背中の筋を指の腹でつうっとなぞる。
「あ、んっ……」
「受け入れろ、ステラ。これは――運命なのだ」
「結婚なんて、できません……っ」
 こればかりは譲れないと、ステラは快感に顔を歪ませながらも言い放った。
「……強情な娘だ。では、賭けをしよう」
69公爵家の秘密:2011/03/04(金) 20:02:03.12 ID:Zgwerypc
9
 ルーファスは一旦ステラから手を離した。そして懐から小瓶を取り出すと、その茶色いぬめりのある液体を
ステラの身体に垂らし始めた。
「な、何を……!?」
「媚薬だ。王族でもなかなか手に入らない貴重な逸品だ」
「媚薬……? ――あああっ」
 ステラの胸、そして秘部に惜しげもなく媚薬を塗りたくる。既に湿っていて役に立たない下着を下ろし、
秘裂全体、突起、蜜壺の奥、そして菊座までたっぷりと染み込ませる。
「やあっ……あっ……! 熱い……! 中が熱い、です……!」
 塗り終わったルーファスは、悶えるステラを見下ろしにやりと笑う。
「今まで、お前から私を求めたことは確かになかった。だが、これからもし一度でも求めれば……お前は私の妻にならねばならぬ」
 賭けといっても、これは一方的なものだった。ステラの口から自分を求めさせ、結婚を認めさせるための――。
「ただし、求めなければ、お前の勝ちだ。結婚は諦めよう」
「や、あ、あ、あ、あ……!」
 既に効果は出ているようだ。ステラは自らの身体を掻き抱き、太股を擦りつけ腰をくねくねとさせ始めた。
「熱い……身体の中が……熱くて……!」
 全身を揺らし、ステラは悶えた。至る所に玉の汗が浮かび、身を振る度にそれが飛び散る。
「やあ、や、いや……っ、熱い、熱いです……っ、結婚なんて、無理……あ、あ、あ、だめ、やだ、こんなの……!」
 ステラは無意識に蕾に触ろうとしていた己の手を片方の手で止め、涙を流しながら台の上で快楽の餓えに耐えていた。
テーブルクロスのみならず、立派なアンティークとしても価値のある台の木目にまで、ステラの蜜が広がり染みを作っていく。
「やあっ、いや……苦しい……っ、熱い……っ、いや、あ、あぁ! だめ!」
 テスラは腰を回しながら台の角に秘所を擦りつけ始めた。手の動きは封じられても、下半身の疼きは止められないようだ。
「あ、あっ、ん、だめ、こんなの、だめぇっ!」
「台で慰めるか――いつまで続くかな」
「や、お願い、お願い……だめ、あ、あああっ」
 ルーファスは興奮しながらその成り行きを見守った。媚薬によって理性を奪われつつあるステラは、
やがて耐えられずに自分の手で乳房を揉み始めた。
しかし乾きは治まらず、もう片方の手は下半身にある敏感な蕾に降りていった。
「ああっ、あっ、あ、ん、はっ、いや、いやあ……!」
 事情を知らない者がこの光景を目撃したなら、ステラはただの性欲に狂った女にしか見えなかっただろう。
ステラの足の間からは白い蜜が垂れ、薄い陰毛はびっしょりと濡れていた。
「あっ、来る、来るの……っ、あ、あ、あ、っあ――!」
 ステラは弓のように身体をしならせ、視線は空を彷徨った。それなのに手の動きも腰の動きも止まらない。
「……え? や、どうして……やだっ、あ、あ、あ、いやっ、もういや……っ」
 女の身体は一度絶頂を迎えるとさらに感じやすくなり、幾度も昇りつめるようになる。
もっと激しい刺激を求めずにはいられなくなるのだ。
 今のステラの身体は、自慰により達したことで、さらに深い快楽を欲しがっていた。
 つまり――媚薬によって感度を増した身体の最奥を、男の肉棒によって貫かれる快楽を。
70公爵家の秘密:2011/03/04(金) 20:03:14.92 ID:Zgwerypc
10
「いや、だめ、それだけ、は……っ、あ、あ、あっ」
 未知の快感に翻弄されるステラは、必死に最後の理性を保とうとする。
「淫らな女だ、我が妻は。神の前で自分を慰めるなどと……罪深い行いだ」
「あ、あ、ごめん、なさい、ああんっ、ごめんなさい……っ!」
 ルーファスは言葉を使ってステラを追い詰める。
「肉の交わりは本来、子を為すため、夫婦にのみ許されるもの。夫婦にならないというのなら、ステラ、
今まで私と睦み合ってきたことはただの罪悪になってしまう。それでも良いのか?」
「ごめ、ん、なさ……ああっ、もう、お願い……っ、苦しい、ですっ、お願い、許し……っ、
あ、あ、あん、あっ、助けて、助けてください……っ、あ、も、いや、はあっ、あああっ!」
(あともうひと押しか……)
 ルーファスは最後の仕上げとばかりに、長い指を蜜壺の中へと挿入した。
「あああっ!」
 たったそれだけでステラは達したようだった。燃えるように熱い膣内がルーファスの指を歓迎する。
じゅぷじゅぷと卑猥な音を奏でるそこは、やっと訪れた快楽の源を離すまいと締め付け呑みこむ。
「ああっ、ああん、あん、もっと……っ! ひあ、あああ、ああんっ!」
 今まで抱いたどの時よりも高い声でステラは叫んだ。余裕のないその声に、ルーファスは
その時が近くなっていることを知る。
 出し入れを続けると、ステラが「もっと」と求める声が増えてきた。
 素知らぬふりで感じる場所を刺激し続ける。
「やあっあ、ひあっ! は、はああっ! もっと、お願……あああっ!」
 淫水が勢いよく飛び出し、弧を描いて床を濡らした。それでもステラの声は止まず、
その腰は更なる快楽を求めて蠢く。
「やあっ、あああ! まだ、まだなの、苦しいの、足りないの……っ! あっ、ひ、ああ、あん、あああっ!」
「何が足りないんだ?」
「あ、あぁ、来る、あ、ひああああっ!」
 指を呑みこんだ胎内がぎゅうっと収縮した。三度目の絶頂を迎え、ステラはついに理性を手放そうとしていた。
ルーファスの指がさらに激しく動く。
「ひああ、あ、あ、っ、ふ、お、お願い……っ、もう、無理、助けてぇっ、お願いです……っ」
熱に浮かされ、強過ぎる欲望に取り憑かれ、幼子のようにステラは泣きじゃくる。
「何が足りない?」
「あっ、ひっ、はあっ、ああっ! あれ……っ、あれがっ、ああああんっ!」
「……何がだ?」
「ああっ、あれっ、熱いの、熱いの……っ」
「熱い、何? それは誰のものだ? 何がほしい? ――きちんと言わなければ伝わるまい」
「ああ、だめ、だめ……っ、苦しい、もういやあっ! 助けて、お願い……お願あああんっ! ひああっ!」
 ルーファスが残酷にも指を引き抜くと、甘い刺激を求め、ステラは腰をくねらせルーファスに身体を擦りつけてきた。白い乳房が、くびれた腰が、濡れた秘裂が、ルーファスの体温を求めてひたすらに動く。ルーファスは自分が仕組んだこととはいえ、至福を感じた。
「も、だめ、ほしい、だめ、それはだめ……っ、お願い、許して……っ」
「どうしてほしいんだ? ステラ。ほら、言うんだ……」
ルーファスは上着を脱ぎ、ベルトを外し、ズボンからいきり立った自分自身を取り出した。
そして止めとばかりに濡れた蕾を指で弾く。
71公爵家の秘密:2011/03/04(金) 20:04:25.86 ID:Zgwerypc
11
「ひああんっ!」
 ――この時、完全にステラの意思は快楽に敗北した。
それは同時に、この三ヶ月かろうじて保ってきたステラの小さな誇りが打ち砕かれたことを意味した。
「あ、あんっ、ルーファス……さ、ま、ルー、ファス、さま、のっ、熱いの……っ、もっと……っ、
ああ、あっ、奥に、ああっ、ほ、し……い、です……お願い……あ、あぁっ!」
「良かろう。我が妻よ」
 初めてステラが自分のそれを求めたことに酔いしれながら、一気に貫く。
「あああああっ!」
 途端にステラの中が食いちぎらんばかりに締め付けてきた。また果てたのだ。だが休むことを許さず、
すぐさま抜き差しする。強烈な快楽によってステラの意識がまた戻って来る。
「あ、ひ、ひあ、あうっ、ああっ!」
「くっ……ステラ、良いか? 気持ち良いか?」
「ひ、ひあ、ああんっ! いいの、いいのっ! 気持ちいいの……っ! もっと、ああっ、あ、ぁ、あ、ひあああっ!」
 快感を素直に認める言葉も初めてだった。まるで獣のように激しく肉と肉をぶつけ合う。
台がガタガタと揺れ、嬌声と水音がそこに混じる。
「く、ああっ、きつい……! ステラ、締め付け過ぎだ……っ、私のものはそんなに良いかっ!」
「いいです、いい……っ、気持ちい、あっ、あっ、あん、ひあっ!」
 願わくば、永遠にこうして素直によがるステラの声を聞きながら繋がり続けたい。
ルーファスは夢中でステラを貪った。
「あ、そこ、触らな……あああ! ……いやっ、いやあ!」
 同時に蕾をいじり、右の乳房の突起に吸いつく。
「舐めな、いで、舐めないでくださいやああ! ……また、来る、来ちゃう……っ! 
あああっ、ひぐ、あ、あうう――っ!!」
 肩に痛みが走った。絶頂に昇ったステラが爪を喰い込ませたのだ。婚約指輪をはめたその細い指で。
その痛みさえもルーファスにとっては甘美だった。
「おか、おかしく、なっちゃ……っ、あああぁ! ひあっ、あぁ、ん! も、う、いやあ――!」
「私のステラ、私の妻……」
「あひっ、ひぃ、あああっ!」
 他の部分を刺激しなくても挿入だけで十分のようだ。ルーファスはステラとぴったり重なり、口付けながら交わった。
「ん、むう、ん、んん、んっ、んん――っ」
 聖堂に似つかわしくない背徳的な旋律が響く。
 実は誰も近づかないよう前もって手配しておいたのだが、ステラにはもうここがどこだかわかっていないようだった。
程よく肉のついた腰は快楽に促されて動き、ルーファスの熱い矛を受け入れ、その律動に合わせて淫らに揺れる。
その胎内は熱く、ざらざらとした壁がルーファスを逃がすまいと絶え間なく痙攣しながら包み込む。
肌に張り付く長い髪、頬を伝う幾筋もの涙、絶望を忘れただ悦楽に潤む緑の瞳。
愛しい女は、美しい淫魔へと変わり果てていた。
72公爵家の秘密:2011/03/04(金) 20:05:46.25 ID:Zgwerypc
12
「ん……っ、おかし……なる、お願、い、許して……お願……あっ、ひあっ、ああ、あああ――!」
 短時間に絶頂を繰り返したステラは、既に境界線の淵にいた。ルーファスとしてはもっと長く繋がっていたいのだが、
未来の妻を廃人にしてしまっては元も子もない。腰の動きを速め、ステラとともに頂上へ向かう。
「あ、く……っ、そろそろ……行くぞ――」
「いい、来る、あ、ひあ、ああっ」
 突き上げる腰を止め、奥の奥にぐいっと喰い込ませる。一瞬の後、そこに熱い欲望を降り注ぐ。
「あ、ああっ」
「いやっ、ああっ、ひああああ――――っ!!」
 最高の締め付けに、この上ない快感が走る。全てを吐き出し、ルーファスは荒い呼吸を繰り返した。
「ひ、い、い、あん、あ――」
 背中をしならせたステラは、呼吸を止め、やがてびくんびくんと脈を打つルーファスに合わせて甘い声を上げたかと思うと、
がっくりと脱力した。意識を失ったようだ。
 その時、ステンドグラスから月光が差した。
(まるで神からの祝福のようだ)
 ルーファスは妻とする女を抱きしめ、その瞼に口づけを落とした。
だらりとぶら下がってステラの指には、豪奢なダイヤモンドがキラキラと輝いていた。

つづく
73名無しさん@ピンキー:2011/03/04(金) 20:07:02.60 ID:Zgwerypc
以上です

次はおそらく息子視点になると思います
74名無しさん@ピンキー:2011/03/04(金) 20:23:08.03 ID:D/VE94yU
>>73
GJです!!
続き期待
75名無しさん@ピンキー:2011/03/04(金) 20:37:06.04 ID:jznTgEaK
魔王キタ――!
相変わらず半端ない追い詰め方GJです
ステラ、壊れないといいけど
76名無しさん@ピンキー:2011/03/04(金) 21:26:07.85 ID:74y7+0AV
魔王コエ――!!GJ!
しかし誰ひとり幸せになれなそうだ…
77名無しさん@ピンキー:2011/03/04(金) 21:36:29.68 ID:quNRBhwU
魔王はある種魅力的ではあるが、やはり息子とステラに幸せになって欲しいのう

というわけで>>73GJ
78名無しさん@ピンキー:2011/03/04(金) 22:20:24.79 ID:vHsHhe/6
さすが魔王きたないよ魔王きたない
薬は反則だよ
アレク(15)はどう考えても勝てねぇだろこの勝負…
でも私は変わらずアレクを全力で応援しています……


っていうか魔王コールwwwww
79名無しさん@ピンキー:2011/03/05(土) 01:02:10.25 ID:qpiudsLQ
魔王ハンパねぇ…!
ちゃんと手筈整えつつなりふり構わない一途な狡猾ドS鬼畜っぷり、そこにシビれる(ry

息子頑張れ。超頑張れ
…息子が大魔王化しない限り勝てる気がしないけどw
80名無しさん@ピンキー:2011/03/05(土) 01:04:23.22 ID:CmJDsejG
または魔王が魔王をやめる、とかかねえ
81名無しさん@ピンキー:2011/03/05(土) 02:26:12.39 ID:54VfSBVu
>>58
良い妄想だw
しかしプロポーズされた女側は
責任だけなんだじゃあ私の事好きじゃないんだ……とか思ってると萌える
そしてその一回だけで子供出来て無事結婚
しかし男もプロポーズ受けてくれたのは妊娠したから仕方なくなんだと勘違い
好きで夫婦なのにこれ以上何をどうすればとか悩んで
お互いに両想いで夫婦なのにすれ違ってるとかだったらなおいいw
82名無しさん@ピンキー:2011/03/05(土) 02:48:06.05 ID:ABQWmbBX
>>81
いいねぇ
男が無表情の無感情っぽくて勘違いされやすい人だとなお萌える…!
83名無しさん@ピンキー:2011/03/05(土) 02:50:24.01 ID:KTkha6aa
魔王で定着してるパネぇw
ステラたんちゅっちゅ


>>81
まぁ、子は鎹とも言うし
子供が熱でも出して夫婦で看病でもすれば
って完全にここ向きじゃないな


その後ベッドでよろしくやろうとしたら、夫が勢い余って無理矢理SMプレイ強要とかでw
84名無しさん@ピンキー:2011/03/05(土) 05:53:21.20 ID:UWaRwav7
公爵家来た!
可哀想なステラたんが堪らないけどおにゃのこには幸せになって欲しいから息子頑張れww


>>58を底抜けに明るいバカでやってるのが見てみたい
書くのが難しそうだが
85名無しさん@ピンキー:2011/03/05(土) 10:29:49.11 ID:ZllIV3Nw
息子には大逆転劇を期待

>>84
明るすぎるとコメディ化しそうw
86名無しさん@ピンキー:2011/03/05(土) 10:43:16.36 ID:wEboihik
>>85
コメディな無理やりw 見たいかも

魔王が神の祝福とか言っている矛盾
息子がんばれ、ステラが不憫なので超がんばれ
87名無しさん@ピンキー:2011/03/05(土) 16:41:39.52 ID:y/QOgWCc
親父がドSすぎるw
ステラたん段々可哀相になってきたぉ
女の子は甘やかしてなんぼだぜー…息子頑張れ!
88名無しさん@ピンキー:2011/03/06(日) 11:29:54.92 ID:C5Zf/ga+
息子は両想いって知らないのがなぁ…
知ったら動きそうでどうなるのか楽しみだw
しかしこれだけやってたらどちらかの子供できてそうw
息子は母親似だから息子似が生まれたら魔王怖いw
89名無しさん@ピンキー:2011/03/06(日) 12:17:50.15 ID:wUAXB0n/
それにしても侯爵家の人が投下すると
こんなにもROM?がいるのかと驚くw
もっと賑わって投下職人さん増えるといいなー
90名無しさん@ピンキー:2011/03/06(日) 12:24:42.82 ID:k5j/TkPb
こっそり職人もまぎれているw
公爵家の人の筆力に感服だぜ

魔王w
つい楽曲の魔王が頭に浮かぶんだが
おとーさん、おとうさんて息子が呼びかけるけど
この場合父親が……
91名無しさん@ピンキー:2011/03/06(日) 12:47:03.89 ID:wUAXB0n/
>>90
ちょw職人wwお前の投下も待ってるぜw
自分も魔王の歌が離れられないよ
まぁアレク君は父親が魔王だって知らないから
父親の後ろに魔王を感じて……に脳内変換してるw
一応アレクの前では狂気をみせてないいい父なんだろうな魔王・・・
92名無しさん@ピンキー:2011/03/06(日) 14:06:01.84 ID:Y9O1XVGm
時代は中世、いまだ神話や迷信が色濃く残る時代
舞台は北の町、島の最北端に位置し、外部との往来も殆ど無く冬は雪に閉ざされる。
その町では数十年に一度という極稀な頻度で空にオーロラが現れる。
緯度の関係で、その国でオーロラが現れるのはここだけ。
かつてオーロラが現れたとき、単なる偶然だが一週間後に大地震に見舞われた。
次にオーロラが現れた翌年は酷い凶作・不漁だった。
偶然が重なり、オーロラは神の怒りだと信じられるようになった。
その町ではオーロラが現れると、神の怒りを鎮める為に生贄を捧げるようになった。


ここまでは大仰な前振り。

男の父親は旅の行商人だった。
父と共に幾つかの国を渡り歩いてきたが、父の死を期にこの町に腰を落ち着け小さな雑貨屋を営んでいた。
その男はある娘に恋をしていた。
相手は領主の末娘。その子自身は身分の高さを鼻に掛けたりしない気立ての良い子だったが、
余所者の雑貨屋とでは釣り合わないと諦め、憧れ眺めているだけだった。

そして空にオーロラが現れた。
慣習に従い生贄が選ばれることになった。
その町に住む若い娘の中から厳正な籤で選ばれたのはその子だった。
いや、正しくは選ばれたのはその子の姉であったのだが、優しさにつけ込んで、泣き付き脅して無理やりに押し付けたのだ。
しかし、その子は自分の犠牲で町が、姉が助かるならと受諾してしまった。

だが男は知っていた。
他国では、もっと北にある国ではオーロラが毎年のように現れているのを。冬になれば毎夜の様に空に現れ、
そして神の怒りでも何でもなく、凶事など起こらないことを知っていた。
だから説得した、これは神の怒りではないことを、凶兆ではないことを、生贄など無駄だと言うことを。
しかし町の人は誰も男の言葉を信じない。男自身もオーロラの仕組みを知っている訳でもないので納得させられない。
その子にも説明した、命を捨てる意味など無いと、悪いことなど起こらないと。
しかし信心深く、他人を思い遣る心を持ったその子は聞き入れなかった。

もう言葉ではどうにもならない。
生贄の儀式を止めるにはその子から生贄の資格を奪うしかない。
そう神に捧げるのは生娘でなければならないのだから…


ここまで妄想して力尽きた。
93名無しさん@ピンキー:2011/03/06(日) 14:07:27.84 ID:xzMPJdTq
親父外道だな…
ステラたんが可哀相すぎて辛くなってきた
息子には本当に頑張って欲しい

>>79
息子が大魔王化
想像つかないが、息子には魔王の血が流れてるわけだから
真相を知る→ショックと怒りで大魔王化
親父に相応しい罰を与え完膚なきまでに打ちのめす展開、などとはならないか

しかしステラ祖父は浮かばれんな
後見を頼んだばっかりに孫娘が犯される事になるなんて
94名無しさん@ピンキー:2011/03/06(日) 14:14:51.09 ID:xzMPJdTq
>>92
あきらめるな!お前はまだやれる!
少し休憩してから妄想作業に戻るんだ!


続きをお待ちしてます
95名無しさん@ピンキー:2011/03/06(日) 14:27:22.16 ID:6RBk+RRo
>>92
頼む……続きを……
96名無しさん@ピンキー:2011/03/06(日) 14:38:36.18 ID:wUAXB0n/
>>92
GJ!!
いいなそんなのも読んでみたい
自分がその先を健全に妄想すると
生贄の日に娘を盗んで監禁凌辱
→娘は生贄になりたいと訴えるがもう帰っても資格はないと諦めさせる
→生贄は捧げられたと村人をだます→二人違う村に逃亡→凶作起こらない
→数年後また生贄が選ばれるという噂を他の村で夫婦になっていた二人が聞く
→夫婦は生贄がいかに無意味か、学者に聞いたオーロラの知識を説こうと村人に殺される覚悟で帰郷
→村人は説得されて生贄の制度がなくなるハッピーEDとか妄想しちゃったぜ!


>>93
アレク君は勇者で正攻法でいてほしいなぁ
大魔王化したらしたらでまたステラタン気に病みそうだし
もう本当に保管庫でまとめて読み返して可哀そうになってきたから
ステラタンには幸せになって欲しいよ
そして考えてなかったけど本当に祖父は草葉の陰で泣いてるな…
97名無しさん@ピンキー:2011/03/06(日) 14:50:10.65 ID:5CVjony9
>>89
正直言わせてもらう
数回の連載もの投下予定だったが公爵家始まってからのあまりの展開先読み予想レスの多さに辟易して
現在他スレへの投下準備に切り替えた
職人にはあんまりいい盛り上がりとは言えない
98名無しさん@ピンキー:2011/03/06(日) 14:54:33.23 ID:wUAXB0n/
>>97
そうなのか正直すまんかった。
職人さんにしてみれば展開先読みに見えるレスだったかもと反省した
>>92もその先妄想してごめんおとなしくROMっとくorz
99名無しさん@ピンキー:2011/03/06(日) 14:58:05.71 ID:YAQ1Pz+G
さよか

としか
100名無しさん@ピンキー:2011/03/06(日) 15:08:09.26 ID:6RBk+RRo
・感想の域を超えた批評、展開予想はご遠慮ください。
一応テンプレにもあるしね
ずっと同じ話題が続くのも投下しにくかったりするのかなと思う
101名無しさん@ピンキー:2011/03/06(日) 15:49:17.63 ID:36Iy5Yey
黙ってたけど97激しく同意
展開先読みって連載ではやっちゃいけないことだろ…
ここホント職人リスク高すぎるよ
自分もここに落とそうと思ってたの他所に投下した
102名無しさん@ピンキー:2011/03/06(日) 15:56:35.89 ID:s6gojHND
確かに先読みやられると、間違ってても申し訳ないし
当たってたら悔しい上に感想からパクったとか言われそうで怖いな。
103名無しさん@ピンキー:2011/03/06(日) 16:08:24.69 ID:FOcoHNRZ
公爵家の人はおkみたいだけど
職人全員先読みおkとは限らないからな
むしろ板全体としては忌避される行いだし

俺もプロット段階ではこのスレに落とすつもりのヤツ最近余所に出した
ここでは読み専に徹してる
公爵家の人のスレチ騒動見てて
このスレは間違ったことでも指摘した方が
うるさい奴だのと悪者にされるのがわかったからな
104名無しさん@ピンキー:2011/03/06(日) 16:21:38.49 ID:C5Zf/ga+
まぁ職人さんは投下しないっていう回避策とってる(とれる)みたいだから
今残ってる&投下してた職人さんは許容範囲内だったんだろうね
それでこれくらいならが暴走して今に至ると自分も反省したけど

まあでもここに投下するもしないも勝手だし
酸っぱい葡萄ちらつかせる行為も
先読み同様ウザイ行為だと思うがw
105名無しさん@ピンキー:2011/03/06(日) 16:31:53.30 ID:C5Zf/ga+
連投になったらスマンが
いっそのこと投下の注意書きにかけば?
許容出来る感想のレベル
106名無しさん@ピンキー:2011/03/06(日) 16:34:46.30 ID:gfsdF7se
>>104
・感想の域を超えた批評、展開予想はご遠慮ください。

すでに>>1にこれがあるのにこれ以上注意を追加って…
ますます投下する職人減らしてどうすんの
107名無しさん@ピンキー:2011/03/06(日) 16:35:59.68 ID:YAQ1Pz+G
>>105
それもなんか違わないか?
職人の負担が増えるというか、
これから感想を書く方側が気を付けよう、でよくない?
108名無しさん@ピンキー:2011/03/06(日) 16:37:48.92 ID:C5Zf/ga+
いや展開予想じゃなくて
なんかもらいたくない感想色々と煩そうだからw
109名無しさん@ピンキー:2011/03/06(日) 16:39:33.73 ID:YAQ1Pz+G
人気作で同じ話題が続くと投下しにくいのもわかるし、
(先が気になるからこそ先読み的なレスも増えるんだと思うけど)
別にぶった切って話題変えてくれても全然構わないわけだし

このスレの雰囲気が嫌な人は、そもそも何で読んでるのって話だし

110名無しさん@ピンキー:2011/03/06(日) 16:39:35.23 ID:VFmS2PVx
大変だな
111名無しさん@ピンキー:2011/03/06(日) 16:40:25.01 ID:6RBk+RRo
まあ、数人の職人さんが嫌がってるんだからこれから自重しとこうぜ
112名無しさん@ピンキー:2011/03/06(日) 16:41:50.70 ID:YAQ1Pz+G
ドウイ
113名無しさん@ピンキー:2011/03/06(日) 16:46:15.98 ID:hu3Flk37
自重!自重!
114名無しさん@ピンキー:2011/03/06(日) 17:07:06.94 ID:njPFqwcX
○○では書くけど●●ではROMって人は結構いるんだな
しかし作品を読んでるうちに自分でも萌えるものが書きたいと思って
下手なりに頑張って投下した俺みたいなのもいるんだぜ!
…自分の作品では萌えられないけどなorz

押しに弱い恋人にドSな淫霊が取り憑いて
運悪く(?)霊に好かれてしまい襲ったり襲われたりって妄想が形にならない
115名無しさん@ピンキー:2011/03/07(月) 20:43:21.45 ID:ThgBBtaX
見た目があまりよろしくない男が美女とか美少女に惚れたけど
まともに話も出来ずに思いを積もらせ強姦ってのが良いな


ただこの設定の場合、男が一方的に恋慕してるだけで面識無しが良いのか
ちゃんと面識があって何かの理由で、女の方も見た目があまりよろしくない男が好きのが良いのか?
スレ的には後者か?

いや、どちらでもメシウマなのか……?
116名無しさん@ピンキー:2011/03/07(月) 20:49:40.72 ID:rGnXz/kC
愛が感じられればメシウマです
117名無しさん@ピンキー:2011/03/07(月) 21:31:05.64 ID:fJrpMgC7
>>114
体は恋人だけど心は違うから
浮気になっちゃう?とかの葛藤とかいいなw

>>115
>>1に書いてあることが心理なんだぜw
118名無しさん@ピンキー:2011/03/07(月) 22:10:35.26 ID:ThgBBtaX
>>117
あれ?なんか無理な部分あった?
119名無しさん@ピンキー:2011/03/07(月) 22:13:24.88 ID:fJrpMgC7
>愛するが故にレイプor強姦or無理やりしてしまうシチュ

>襲う側に深い愛情があればおkおk。
>相思相愛なら尚更おkおkおk。
>逆レイプもおkおkおkおk。

だから愛さえあればどっちだっていいのさって意味だったw
しかも心理じゃなくて真理だったんだぜ・・・・
120名無しさん@ピンキー:2011/03/07(月) 22:14:36.74 ID:ThgBBtaX
>>119
おう、そういう意味ねw
121名無しさん@ピンキー:2011/03/07(月) 22:17:36.04 ID:3hWhISrC
>>115
勿論どっちもありなんだけど、面識ない場合はよほど上手く書かないと
単純なストーカーになりそうだから、後者が好み、妄想を膨らませやすい
122名無しさん@ピンキー:2011/03/08(火) 00:24:30.27 ID:taRag6yp
>>119
「しんり」を「まり」と読んでしまって仮面ライダー555思い出した
小説版だと愛あるレイプがあったな
あれは結構自分の理想に近い
123名無しさん@ピンキー:2011/03/08(火) 00:37:41.34 ID:f4CTDaNR
>>122
kwsk
124名無しさん@ピンキー:2011/03/08(火) 01:37:10.41 ID:taRag6yp
>>123
TVシリーズの放送時間、子供向けという制約を一切取り払って脚本家が書きたいように書いた作品、という前置きをして。

草加って奴がヒロインの真理をレイプするんだけど、
草加は幼少期に母親に捨てられた過去がトラウマになってて、
学校で虐められてた時に助けてくれた真理に母親を重ねて卒業後離れてしまってもずっと好きだった。
で、端折らないと長くなるんで割愛するけど、再会後に泣いている真理を見て覚醒、
無理矢理レイプするんだけど、真理も自分に母親を重ねてることに薄々気づいていて、
何度か行為を強要されても断れずにズルズル……みたいな感じ。
125名無しさん@ピンキー:2011/03/08(火) 03:51:45.41 ID:eKGFm8aq
女性側が拒みきれずにgdgdって良いね
従順な感じの女の子が乱暴にされそのまま関係が継続し今に至るとか萌える
126名無しさん@ピンキー:2011/03/08(火) 05:57:48.30 ID:f4CTDaNR
>>124
やだなにそれ、自分的にもドストライクだ
女の子が男との関係を男のことが好きだから
それでもいいって少し諦観して
受け入れてるシチュとか好物w
最終的には誰かの代わりではなくその子だから…
というところまで男の心理状態がいけば自分の中でパーフェクト
127名無しさん@ピンキー:2011/03/09(水) 00:03:31.31 ID:t+ulJvJ5
>>124
調べたら小説三種類くらいでてるんだけどどの著者が書いてるもの?
128名無しさん@ピンキー:2011/03/09(水) 11:39:42.47 ID:gZs1lNYz
>>127
脚本家の井上敏樹が書いた「異形の花々」ってやつ。
もう絶版だから手に入れるの難しいと思うよ
129名無しさん@ピンキー:2011/03/09(水) 17:35:36.56 ID:k2JefCOU
安心と信頼の井上さんですねw
130名無しさん@ピンキー:2011/03/09(水) 22:48:49.86 ID:2LHjBTn8
テスト
131名無しさん@ピンキー:2011/03/09(水) 23:48:01.16 ID:pt0tNc3o
公爵家の秘密、続き投下します。
息子視点、10レスほど。
あんまり無理やりじゃないところもあり。

貴族とメイド、父と息子とメイドの三角関係、穴兄弟、寝取られ?
昼ドラっぽいかも
132公爵家の秘密:2011/03/09(水) 23:48:48.58 ID:pt0tNc3o
1
 母の訃報を受け、故郷に戻る道すがら、アレクシスの胸中は複雑だった。
(どんな顔をしてステラに会えばいいんだ)
 あの夏の夜、無理やりにステラを抱いたことを、今のアレクシスはひどく後悔していた。
 ――本当は、あんな風に思いを遂げたかったわけではない。
 正々堂々愛を告げて、何度かの逢瀬といくつかのキスの後、優しく抱きしめたかった。
愛情と信頼を勝ち取って、その上で身体を重ねたかった。
(それなのに……)
 父親に抱かれているステラを見て、アレクシスの理性のたがが外れ、嫉妬と愛憎だけが暴走してしまった――。
 アレクシスはあの甘美な夜を忘れたことはなかった。
 柔らかい唇に何度も自分のそれを重ね、舌を絡めたこと。
 たわわな乳房を乱暴に掴み、薄紅色の先端をいじり回し、膵液で濡らしたこと。
 吸いつくような白い肌のあちこちを撫で、自分の肌と合わせたこと。
 そして、女の泉を貫き、汚し、挙句の果て、禁忌の門まで開かせたこと――。
 その全てが今でも鮮明に蘇る。
 扇情的なステラの表情、しっとりとした肌の感触、きつい収縮と痙攣を繰り返す熱い胎内、すすり泣くような嬌声、
絶え間なく溢れる水音、肉を打つ音に軋む寝台、涙と汗と蜜の味、咽かえる男と女の匂い――。
 思い返して、何度ステラの名を呼びながら自分を慰めたことだろう。
(けれど、ステラは――)
 アレクシスを拒んだ。泣いて嫌がった。
(それだけ――父上を愛しているのか……)
 胸が痛い。張り裂けそうだ。
(きっと、あの後も――ステラは父上に抱かれて――俺とのことなんか、ただの悪夢にしか思っていないんだろう――)
 父の前では、彼女はどんな顔で笑うのだろうか。どんな風に寝台の上で乱れるのだろうか――。
 アレクシスは沈んだ。
 婚約が決まった身であるというのに、考えるのはステラのことばかりだ。
(いつか、家のために婚姻を結ばなければならないのは、わかっていたけれど――)
 今のアレクシスにとって、他の女のことなど考えられなかった。
 この国での成人は、十六だ。
 冬に誕生日を迎えるアレクシスは、もうまもなく成人する。相手は一つ年下だから、結婚もそう遠くはないだろう。
女性の結婚年齢に決まりはない。アレクシスさえ十六になってしまえぱ、いつでも婚姻可能というわけだ。
 そして、見計らったように届いた、母の訃報――。
アレクシスは母の死を悲しんではいたが、それ以上に、公爵家に女手がないという理由で結婚が早まる可能性を危惧していた。
(ステラ……)
 しかし、思い悩む少年を待っていたのは、予想以上に残酷な現実だった。
133公爵家の秘密:2011/03/09(水) 23:49:33.64 ID:pt0tNc3o
2
「お久しぶりです、アレクシス殿」
 玄関ホールでアレクシスを待っていたのは、白髪混じりの背の高い男だった。
「――ベラム伯爵」
 アレクシスは男の名を呼んだ。ベラム伯爵、オスカー・ハートネット。何度か王都の競馬場で顔を合わせたことがある。
「義父(ちち)と呼んで頂いてもかまいませんよ」
 そして――将来、義理の父になる予定の男でもあった。
「お久しぶりです、伯爵。ご壮健のようで何より――」
 挨拶をすると、伯爵は穏やかな笑みを見せた。その後ろにもうひとりいることにアレクシスは気づいた。
「これが、娘のユーフェミアです。……未来のあなたの花嫁だ」
 おずおずと少女が顔を出す。アレクシスは紹介された少女に視線を移した。
 癖のないシルバー・ブロンドの長い髪の少女は、驚くほどほっそりとした体つきで、手も足も長く、腰など折れそうなくらい華奢だ。
緊張を湛えた青の瞳は長くくっきりとした睫毛で縁取られ、紅潮した頬、艶めく小さな唇が印象的な、人形のように整った顔立ちをしている。
 目の前の婚約者は――紛れもない美少女だった。
 似合わない地味な黒いドレスは、アレクシスの母の喪に服していることを表すのだろう。
「お初にお目にかかります、アレクシスさま。ユーフェミア・ハートネットと申します」
 緊張のせいか、少女の声は震えていたが、ドレスの裾を摘まみ挨拶する仕草は上品で洗練されている。
「……初めまして、レディ・ユーフェミア」
(こんな女性を妻にできて、喜ばない男などいないだろうな――普通は)
 だというのに、アレクシスの胸には何の感慨もわかない。よくできた芸術品を見ているような、そんな感覚だった。
「……ようこそ、我が屋敷へ」
 アレクシスはそっと差し出された細い手を取り、甲に口づけを落とした。
 ユーフェミアはほんのりと顔を赤らめ、キラキラとした眼差しでこちらを見つめている。
「父親の私が言うのもなんですが……こうしてみると、本当に美男美女でお似合いですな」
「お父様」
 伯爵が娘を自慢に思っているのはよくわかった。アレクシスは愛想笑いしかできない。
「キャサリンさまのことは、本当に残念でした。改めてお悔やみ申し上げます」
「ありがとうございます」
「私からも。生前にお目にかかり、優しく声をかけて頂いたこともありました。本当に残念でなりません……」
「ありがとうございます、レディ・ユーフェミア」
 丁寧に接しながら、アレクシスは目の前の少女に申し訳なく思った。
(……とても、可愛らしい人だ。それでも、俺は――)
「そうそう、アレクシスさま。もうひとつご報告があるのですよ」
 ふいに、伯爵が意味ありげに笑った。
「私、先日もうひとり養女を迎えましてね。……ああ、来た。こちらへおいで」
 玄関ホールの奥からこちらに歩いてくるふたつの影があった。どちらもアレクシスのよく知る人物だ。
「よく帰った」
「……お帰りなさいませ、アレクシスさま」
 父親であるルーファスとステラだった。ルーファスは見せつけるようにステラの腰をしっかりと抱き、ぴったりと寄り添っていた。
 ステラはいつものメイド服ではなく、黒いドレスを身に纏っていた。一見して高価な生地だとわかる光沢、豪華なモーニング・ジュエリー。
それは平民である彼女には本来許されない衣装のはず。
 今までのステラとはまるで違う。貴族の女性がそこにはいた。
(ステラ――どうして……)
 ステラは笑顔を作ろうとしていたようだが、それは完全に失敗していた。頬はこけ、目の下は腫れ、疲労の色を隠せていない。
何より、纏う空気が重く、暗かった。
「養女の、ステラ・ハートネットです。――ご存知だとは思いますが」
「……どういう、ことですか」
 声が震えるのを必死で隠す。
「それは私から説明しよう。アレクシス」
 ステラとは対照的に、ルーファスはにこやかだった。以前はどことなく人を寄せ付けないような雰囲気で、
息子の自分さえ話しかけるのに緊張したくらいなのに――それがいくらか和らいでいる。
「キャサリンが亡くなったばかりではあるのだが――」
 ルーファスはステラの肩を抱き――ゆっくりと誇らしげに、言い放った。
「私は、ステラを後添いとする」 
(――え?)
 後添い、という言葉の意味を理解し――それを現実と結びつけるのを、一瞬、頭が拒んだ。
 しかし、駄目押しをするように、ルーファスは決定事項として残酷な言葉を重ねる。
「――お前の『継母』ということだ」
 ――筆舌に尽くしがたい衝撃が、アレクシスを襲った。
134公爵家の秘密:2011/03/09(水) 23:50:10.99 ID:pt0tNc3o
3
 目の前が真っ暗になり、何の音も聞こえない。それからどうやってその場を離れ自分の部屋に戻ってきたのか、
アレクシスは覚えていなかった。
(ステラが……ステラが、父の妻に……俺の『母』になる……?)
「――うわああああっ!!」
 アレクシスは咆哮し、鏡を殴りつけた。音を立てて鏡は割れ、拳からは鮮血が滴り落ちる。
 ――気が、狂いそうだった。
 ステラが父の後妻になる。あの白い身体も、声も、瞳も、全てが父のものになる。誰もそれを咎められない。
妻だという、絶望的な事実の前では。
(それを、指を咥えて黙って見ていろというのか……!)
 まだ若いアレクシスは父の企みを潰すような知恵も力もなかった。
アレクシスは呪った。自分の無力さを心の底から呪った。
 冷たい壁にもたれかかる。
「ステラ……っ」
 時期公爵夫人として現れたステラは、以前とはまるで変わっていた。こちらまで癒されるような笑顔が消え、
疲労の色が濃く、強張った表情をしていた。
(……ステラは、幸せなんだろうか)
 血を失い、少し正常に戻ってきた頭に、疑問が浮かぶ。
 愛する者と結ばれ、身分の差すら越えて公爵夫人の座に納まる。それは一般的に玉の輿と言われ、
良いこと尽くめのはずだ。だがステラはちっとも嬉しそうではなかった。それどころか、父が肩を抱いた時、
ビクリと震えたあの表情から垣間見えたのは――怯えと、絶望だった。
(……あの夜、俺を拒んだのは、父を愛していたからではなかったのか?)
 初めて思い至った可能性に、アレクシスは顔を上げる。
(よくよく考えてみれば、ステラの立場では、父に逆らうことなどできない。まさか、ステラは……)
 一方的に父に想われ、身体を開くことを強いられたのではないか。
(……だとしたら、行為そのものが厭わしいだろう。あの夜の嫌がり方も……納得がいく)
 しかし、あの父がそんなことをするだろうか?
 領民からの信頼も厚く、母とは対照的に浮名など流したこともないあの父が、ステラにそのような無体な真似を強いるだろうか?
(わからない……)
 だが、ステラを見る父は、今まで見たこともない顔をしていた。そして、何処か有無を言わせない空気を纏っていた。
 父が本気で何かを欲したら、どんな手を使っても必ず手に入れるだろう。
(わからないが……否定もできない)
 仮にそうだとすると――アレクシスは父とまったく同じことをステラに味あわせたことになる。
(最低だな……俺は)
 あの夜までは、確かに彼女の好意を感じていた。だが嫉妬に狂って無理やり抱いたことで、
そんな淡い気持ちは吹き飛んでしまっただろう。むしろ、嫌われて憎まれていてもおかしくない。
 ――それでも、ステラの本音が聞きたかった。
135公爵家の秘密:2011/03/09(水) 23:50:44.93 ID:pt0tNc3o
4
 晩餐を欠席し、月が昇った頃――アレクシスはステラを訪ねた。
 メイドに訊くと、ステラの部屋はルーファスの寝室の隣だという。それだけで頭がクラクラしてくるが、
アレクシスは正気を保とうと努力した。
 意を決し、ノックをする。まもなく扉が開かれ、ステラが顔を見せた。
「……アレクシスさま」
「話したいんだ――ふたりきりで」
 沈黙するステラを無視し、強引に部屋の中へ足を踏み入れる。
 白いレースに、天蓋付きのベッド。アンティークの調度類、豪華な化粧台。女の子なら誰でも憧れるような
部屋だった。揃えたのはルーファスだろう。どれだけ父がステラを愛しているのか見せつけられ、アレクシス
の胸の内は嫉妬に燃える。
「……何の御用ですか」
「ステラ」
 青白い顔に、影のある表情。幼い頃の面影はない。あの頃のステラは、いつも笑っていた――。
「君は今、幸せ?」
 唐突に尋ねられ、ステラはびくりと震える。
「――父上を愛しているの?」
 前置きもなく、アレクシスは一番聞きたかったことを尋ねた。
 ステラは口を真横に結び、視線を落とす。
「……立派な領主さまだと……尊敬いたしております」
 覇気のない口調で答えが返ってきた。
 蝋燭の炎が揺れ、重たい夜の空気に無言が続く。
「……父を、男として愛しているのか、俺はそれが知りたい」
 どうしても、これだけは答えてもらわなければならなかった。そうでなければ、諦めもつかない。
「私は……」
 ステラはか細い声で答えようとしていたが、喉から続きが出てこないようだ。緑の瞳にうっすらと涙がにじんで
いるのを見つけ、アレクシスは微かな希望に賭ける。
「……私は……」
 緑の双眸がアレクシスへと向けられる。どこかで見たことのある眼差しだった。
 そう、それは、叶わぬ恋に苦しむ者の瞳だった。――鏡に映った、自分と同じ。
 アレクシスは確信した。
(間違いない……ステラは、父を愛しているわけではないんだ……!)
 そして、さらに――恋の矛先が向いているのは、自分ではないかという期待に胸を膨らませる。
「この間のことは、すまなかった」
 アレクシスは唐突にわびた。
「あの時の俺は、どうかしていた。嫉妬でおかしくなっていたんだ……」
「アレクシスさま……!」
 ステラは身を見開き、熱っぽい眼差しをさらに潤ませていた。
「私は……憎まれているのだとばかり……」
「憎む? どうして? こんなに――」
 ――駄目だ。もう、気持ちを隠すことも偽ることもできない。
「こんなに、君のことを愛しているのに」
 一度溢れだした言葉は止まらなかった。 
「再会してからずっと、君に恋していた。父に抱かれる君を見た時は、胸が張り裂けそうだった!
 だからあんな――すまない。あの夜を思い返して、夢の中で何度も君を抱いた。君にとっては、
 悪夢でしかなかっただろうが……」
「アレクシスさま……!」
 ぽろぽろと涙を零すステラは、頬を上気させていた。
「……そんな顔をしないで。我慢できなくなる」
 思い人に顔を寄せ、アレクシスは真摯に問いかけた。
「君の気持ちが知りたい。君は、俺をどう思ってる……?」
 視線が絡み合う。ステラは意を決したように口を開いた、その時――。
136公爵家の秘密:2011/03/09(水) 23:51:19.10 ID:pt0tNc3o
5
 廊下から靴音が響いた。こちらへ向かってくる。
「ステラ」
 扉の向こうから聞こえてきたのは、ルーファスの声だった。ステラは慌ててアレクシスをカーテンと衝立の間に隠し、
黙っているよう目配せすると、扉を開けた。
「……どうして、こちらに」
「どうしても何も。婚約者に会いに来たのだ」
 鍵を閉めるなりルーファスはステラを抱きしめ、寝台に連れて行ったようだった。アレクシスは鳥肌を立てる。
何をしようとしているのか――考えたくない。
「や、やめてください……今は……」
「妻は夫に従順であるべきだ。そうだろう?」
「お願い……今日は疲れているんです。どうか……」
「そうか。では手短にしよう」
「あ、いや……!」
 ステラの懇願も虚しく、ドサリと寝台に倒れ込む音がした。
 ――衣擦れの音。唇で吸いつく音。その合間にふたりの吐息が響く。何が起きているのか、嫌でもわかる。
「愛しいステラ……」
 聞いたこともないような甘い声は、それでも確かに実の父親のものだった。
「……っ、……んっ」
 ステラは必死に声を殺しているようだった。
「……どうした、今日はやけに強情だな」
「疲れて、いるんです……っ」
「そうか」
「……あっ、やあ……っ!」
 初めて嬌声のようなものが上がった。続いて、じゅる、じゅるると何かをすするような、ひどく卑猥な音がした。
それはしばらく続き、アレクシスの耳を犯した。
「……っ、お願……っあ、ひ、ああ……っ!」
(――拷問だ)
 怒りと嫉妬、そして悲しい男の性により、アレクシスのズボンの前はパンパンに膨らんでいた。
「どうした。こんなに溢れて来たぞ。疲れているのではなかったか?」
「いや、いや……っ」
 ステラは泣いていた。それは甘い睦言ではなく、本当に嫌がっているのがよくわかる声だった。
「今日は……本当に……ぁ……っ!」
「アレクシスが帰ってきたからか」
 父の口から出た自分の名前に、びくりと身をすくませる。
「……こんなに何度も抱かれて、まだあいつのことが忘れられないというのか?」
「――!」
 怒りと苦痛の入り混じった声で詰問され、ステラは息を呑む。
(今……なんて……?)
 身を潜めたアレクシスは、思わぬ言葉にただ立ち尽くす。
137公爵家の秘密:2011/03/09(水) 23:51:48.75 ID:pt0tNc3o
6
「あ、あぁ! ……っや、あ……」
 旋律が変わった。ぐちゅぐちゅという淫靡な音とともに、ルーファスは組みしだいた女を言葉で責め立てる。
「気づかれていないとでも思っていたか? ……こんなに濡らして、指を咥えこんで……すっかり女の快楽を知って、
 お前の身体は、すっかり私に馴染んでいるというのに」
「……っ、やあ、あ、……っく」
「それなのにアレクシスを想う資格があると?」
「……っく……うう……あぁ!」
「あれに相応しいのは、穢れのない娘だ。ユーフェミア嬢のような、な」
「……ひ、……あ、っ、……!」
「あんなに美しい娘だ。アレクシスもすぐ夢中になる……だから、早く忘れることだな」
 父へ抱いていた尊敬の念がガラガラと崩れて行く。もはや、ステラの意思で抱かれているわけではないことは明白だった。
そしてもうひとつ確かになったことがあった。
(ステラが……俺のことを……)
 さっきのあのステラの反応――そして決定的な父の言葉。こんな状況でなければ飛び上がるほど嬉しい事実だった。
(ステラが……俺を想ってくれている……!)
 アレクシスは歓喜に打ち震える。しかし、愛しい彼女は父親の婚約者になり――今、その身体を蹂躙されていた。
「……っ、……あ……あ……ぃや……っ!」
 激しい水音に混じり、ピシュゥッと何かが噴き出す音がした。
「ほら、また潮を吹いて……いやらしいな、ステラ。娼婦とてなかなかこんな風にはならないぞ。
 シーツをこんなに濡らして……はしたないな」
「……ひ、……あっ……やっ」
 無理やり抱かれても、女は濡れるし、感じる。それはアレクシスも身をもって知っていた。
 だが、潮まで吹くような淫らな身体に変えてしまったのは、どう考えても父の仕業だろう。
 それなのにまるでステラが悪いかのように責める父が許せなかった。
「気持ち良いのだろう? ……お前の下の口はとても素直だ」
「……っ、ん、……あっ、……う――!」
 ステラは必死に感じた声をもらすまいとしているようだった。
 それは――自分がここにいるからだろう。
 その健気な抵抗に、喜びと苦しみを同時に覚える。
「――入れるぞ」
 飛び出して行きたかった。やめろと大きな声で叫びたかった。
「あ、やめ……っ」
「う、……ああ」
 アレクシスは耐えた。血が流れるほど強く唇を噛みしめ、必死に耐えた。
 愛した女がすぐ傍で他の男の――しかも実の父の肉棒を受け入れている。
 残酷な現実に、ひたすら耐えた。
 やめろと叫んで姿を現したところで、アレクシスにルーファスの行為を止める権限などない。
 認めたくはないが――ステラは彼の妻になるのだから。それにもしかしたら、アレクシスを招いたステラは
さらに手酷く犯されるかもしれない。それだけはどうしても避けたかった。
138公爵家の秘密:2011/03/09(水) 23:52:24.66 ID:pt0tNc3o
7
「相変わらず良い締め付けだ――」
「い、や……! や……あ、あっ」
 二人分の重みに、寝台が軋む。はあはあと荒ぶる呼吸が部屋を満たして行く。
「お前は私を愛せばいい――お前は私の妻なのだから――」
「……や、はぁっ、……あ、いやぁ……!」
 ルーファスは手短にしようと言った割に、ずいぶんと長い間ステラと繋がっていた。激しい挿入はあまりせず、
ねっとりとステラを味わうのが父のやり方らしい。そのうちにステラの呼吸が荒くなり、声を殺せなくなっていく。
「あっ…あぁっ、もう、許して……っ」
 ステラの哀願も虚しく、肉を打つ音が無常に響く。
「お前の泣き顔は良いな、ステラ……もっと鳴け」
「はあっ、ああっ……!」
「ステラ……愛している」
「あ、あ、あ、あ……っ、だめ、だめ……っ」
 段々とステラは追い詰められていく。交わる音も激しくなり、ルーファスの息も荒くなる。
「私のステラ……」
「あ、あ、あ、ああ……っ」
 ステラの悩ましい声を聞きながら、アレクシスはとっくに硬くなり先端を濡らしている自分の猛りを放つまいと
必死だった。
(ここで、放ったら……父と一緒にステラを犯しているも同然だ……!)
「愛している……愛している……! ステラ、ステラ――!」
「……ゃ……っ……あっ、あぁ――!」
 ステラの叫び、その後の一瞬の静寂。肉を打つ音が止み、アレクシスは息を呑む。
(やっと――終わったのか……)
 アレクシスは血の集まった股間に力を入れ、何とか留まることに成功していたが、父のそれは今ステラの中で
果てたのだと思うと、やり切れなさだけが残った。
「良かったぞ、ステラ……早く、私の子を孕むのだ……」
 ――子。子ども。父と、ステラの子――。
 それはすなわち、自分の弟妹に当たる――。
 アレクシスは吐き気を催した。そして同時に、一番恐ろしいことに気づく。
(子ができれば……ステラは父を愛してしまうかもしれない……)
 母親の母性は強いと聞く。優しいステラなら、きっとどんな男の子どもでも愛するだろう。そして、やがては
その父親も――。
(だめだ……そんなのはだめだ。父の思うつぼだ……!)
 衣擦れの音が聞こえた。どうやら、ルーファスが寝台から降りたらしい。
「……どちらへ?」
「書斎だ。実はまだ仕事が残っている」
 アレクシスはほっとした。一瞬、自分がここにいることがばれたかと思って焦った。
「なに、一時間もあれば片付くだろう。先に寝ていていい」
「……わかり、ました」
 扉が開閉し、ルーファスは本当に出て行った。
 足音が遠くなるのを待ち、アレクシスは音をたてないように衝立の影から出た。
139公爵家の秘密:2011/03/09(水) 23:52:57.82 ID:pt0tNc3o
8
 寝台の上では、シーツにくるまったステラが、静かに涙を流していた。近づくと、濃密な男の精と女の蜜の匂いが
鼻を突いた。
「……見ないで……」
 アレクシスを見ようともせず、ステラは俯いたまま肩を震わせていた。 
「……早く、出て行ってください」
「ステラ」
 茫然としたまま、ただ愛しい女の名前を呼ぶ。
「――おわかり、でしょう。私はもう……何度も……穢、されて……っ」
「ステラ!」
 たまらず、シーツごとステラを抱きしめる。
「君が何度、誰に抱かれていようと穢れてなどいない!」
 そこでやっとステラは顔を上げた。紅茶色の髪が涙に濡れた頬に張り付き、緑の瞳は深い悲しみで赤くなっている。
「――愛してるんだ、ステラ」
 ステラの顔がくしゃくしゃに歪む。
「君は……君は……誰を愛している?」
 濡れて光る唇が、何かを告げようと開かれるものの、逡巡の後に閉じられる。
「ステラ……!」
「――そんなことを……言う資格は……もう……」
「教えてくれるまで離さない」
 アレクシスは腫れたまぶたに口づけを落とす。涙を舐めとり、こけてしまった頬に子どものようなキスをする。
「――だめ……! ルーファスさまが、戻ってきたら……!」
「教えて……ステラ。君の気持ちを……」
 アレクシスは目を逸らさない。
 この想いが視線で伝わればいい。そう願いながら柔らかな唇にゆっくりと自分のそれを重ねていく。
 傷ついた心を癒すように、優しく、何度も口づける。やがてアレクシスの手はステラの首を、背中を、胸を這い、
口づけも深まっていく。
「……っ、――あっ……」
「触られたところは――みんな――俺が清めてあげるから……」
 薄い茂みの奥、指を使って白い欲望を掻き出す。肌という肌を舐めつくし、父の温もりを自分のものへ描き替えていく。
「っあ、アレク……!」
 ステラは甘い声を上げてアレクシスを呼んだ。それだけで脳髄が痺れる。いしつかシーツは剥がれ落ち、
アレクシスの唇は乳房からへそ、濡れた茂みへと降りていった。
「あ、だめ、汚い……!」
「大丈夫」
 アレクシスはステラの足の間に顔を埋め、父の精が残る蜜壺を舌で清めた。抵抗がないわけではない。
他の男の精液を舐めるなど、実の父であるなら尚更ごめんだ。けれど今は、自分を穢れたと思い込んでいるステラの心を
どうにかしてやりたかった。その一心で、ただただ苦くまずいそれを舐める。
「や、あっ……アレク……あん、あっ……アレク……!」
 脳味噌を溶かすような声で、ステラは喘ぐ。泉は新たに蜜を組み上げ、だんだんと浄化されていく。
「……あ、アレク……アレク、アレク……っ!」
 以前には聞くことができなかった甘い声で、ステラはアレクシスの名前を繰り返す。舌を伸ばしつつ、時折膨らんだ蕾に
息を吹きかける。
「あぁんっ!」
 ステラは魚のように跳ねた。きゅうきゅうと舌すらすら締め付ける胎内はもうステラの味しかしない。濃厚な女の匂いを
味わい、同時に蕾を指の腹で擦り、摘まみ、刺激する。
「アレク……ひ、あっ……あぁっ……アレ……ああっ!」
 ステラは達しかけていた。そこでアレクシスは指を止める。
140公爵家の秘密:2011/03/09(水) 23:53:23.57 ID:pt0tNc3o
9
「――ほら、綺麗になった」
 顔を上げ、アレクシスは優しく微笑む。高みに行きつく前に止められたステラは顔を赤らめ、ぼうっと快感に浸っていた。
「さあ、だから……教えて」
 もう一度抱きしめ、安心させるように髪を撫でる。しかし、ふたりの身体の間に挟まったアレクシスの剛直は先走りに濡れ、
限界が近いことを主張していた。
 本当はすぐに一つになりたかった。
 けれど、その前に確かめなければならない――ステラの気持ちを。
「――す、き」
 目が乾くほど見つめ合い、アレクシスがステラの唇を触った時に、その言葉は零れた。
「好き……アレクが好き……本当は小さいから、ずっと……!」
「ステラ!」
 堰を切るようにステラは繰り返した。
「好き……アレク……愛してる……愛してるのは、アレクだけ……!」
「俺もだ、ステラ……!」
 激しく口づけ合い、身体を互いに押し付け合いながら若い少年と少女は愛を交わす。
「――来て。アレク」
 ステラはそっとアレクシスの猛りに触れ、導いた。
「私の中も、あなたでいっぱいにして……!」
 待ち望んだステラの中に、アレクシスは己を沈める。そこは溶けるように熱く、包み込むように濡れ、力一杯に締め付けた。
「あ、ああっ!」
 奥まで繋がり、まるで半身を取り戻したようにふたりは抱き合う。
「アレクが好き……好き……っ」
「ステラ……愛してる……!」
 悲しいが、時間がないこともわかっている。アレクシスは最初から激しくステラを突き上げた。
「ああ! いい、アレク……っ、ひあっ、あ、あ、あっ」
「ステラ……気持ちいい?」
「あ、っ、うん、気持ちいい……っ、大好き、アレク……!」
 ステラは今までの頑なさが嘘のように何度も愛を告げた。それに応えるように、アレクシスはステラの感じる部分を責める。
 ――ずっとこうしていたい。
 愛した女に愛されているという実感が、ステラの腹を押し上げている剛直をさらに大きくする。他の男の形に慣らされていた
はずの胎内は、それがなかったことのようにぴたりとアレクシスに張り付き、深い快感を生み出していた。
「あぁ、ひぁあっ、アレク、愛してる……っ」
 快楽と愛が混じり合った奇跡は、経験の少ない少年をひとりの男に変え、虐げれ続けた少女の心を開放した。
 しかし、やがてそれにも終焉が訪れる。
141公爵家の秘密:2011/03/09(水) 23:54:35.33 ID:pt0tNc3o
10
「ステラ、もう……っ」
「ああっ……ん、ひああっ……アレク……!」
 互いの名を呼び、貪り合うように口づけ合い、このまま死んでもいい、と思った瞬間――一際きつく収縮した子宮の入り口で、
熱い情熱が弾け、流れ込んだ。
「あああぁぁ――っ!」
 どちらのものとも分からない悦びの声が上がる。どろどろに溶けた結合部に最後の一滴が注がれるまで、ふたりは胸を上下させ、
初めて身体も心も満たされる幸福に酔う。
「アレク……嬉しい……私……今、とても幸せよ……」
 まだ出しきらないアレクシスを受け止めたまま、ステラは言った。
「俺もだよ……」
「アレク……」
 いつまでも繋がっていたくてさらに腕に力を込めるアレクシスを、ステラは悲しげに嗜める。
「――だめ。あの方が……戻って、来るわ」
「ステラ……!」
「結ばれなくてもいい。今日、あなたに愛されていると知って、私はそれだけで生きていける……」
「俺は君を諦めない。何があっても!」
 ――本当は、家も身分も捨て、ステラを連れて何処か遠くに行きたかった。
 しかし、そんなことをしても容易く父に見つけられ、連れ戻されるだけだろう。王国有数の私兵団に、優れた密偵――それらを
動かすことができる権力をルーファスは持っている。
 また、公爵家の嫡男として育てられたアレクシスは、自分の立場というものを痛いほど理解していた。アスター公爵家は王の血筋だ。
それを継ぐ唯一の男子――自分が家を捨てることは、貴族間の勢力争いや、王位継承権の均衡を崩すことに繋がり、最悪の場合、
この地に戦を招きかねない。
(……一緒に逃げようとは言えない。けれど――)
 アレクシスは迷いのない眼差しで、真っ直ぐにステラを見つめる。
「後ろ指を指されても、神に祝福されなくても、俺は君を愛することを止めない。我が名とこの身に賭けて、誓う」
 そして白い手の甲に口づける。
「だから……君も約束してくれ。心はずっと、俺と共にあると。例え――君が父の妻になっても、この愛は変わらないと」
 語尾は震えていた。情けない――。
 それでもステラは笑ってくれた。懐かしい、だが子どもの頃よりずっと、綺麗な笑顔で。
「――誓います。アレク……真実、私が愛するのは――あなただけです」
 触れるだけの口づけを交わし、ステラが先に離れる。熱い胎内が遠ざかり、空気に触れると、どうしようもない悔しさが襲ってきた。
「……さあ、行ってください」
 ステラはルーファスとともに眠るのだ。そして、それはこの先もずっと――
「ステラ、愛してる」
「私も……アレク」
 何度言っても言い足りない。名残を惜しみながら服を整える。
 最後にもう一度だけ口づけ、――アレクシスはステラの部屋を出た。暗闇の廊下を、音もたてないように、足早に駆け抜ける。
 愛し愛される至上の喜びと、愛した女を父のもとに置いていかなければならない苦悩――そのあまりの落差に心を引き千切られ、
アレクシスは呻いた。

つづく
142名無しさん@ピンキー:2011/03/09(水) 23:55:11.32 ID:pt0tNc3o
以上です。
次はステラ視点の予定です。
143名無しさん@ピンキー:2011/03/10(木) 00:03:00.80 ID:0fsZ5uDX
GJです。
アレクとステラの苦悩とつかの間の幸せが切ないです
144名無しさん@ピンキー:2011/03/10(木) 00:03:16.25 ID:1ho0U4uz
>>142
待ってました!!! GJです!!!!
145名無しさん@ピンキー:2011/03/10(木) 00:30:44.58 ID:WNFPE++e
>>142GJ
よかった二人が両想いになってよかった
でもだからこそ切なかったっ・・・
しかしこの後の魔王をどうやって打ち倒すのか
続き楽しみにしてます
146名無しさん@ピンキー:2011/03/10(木) 00:40:53.60 ID:cjUnbg/O
待ってた…GJ!!!
息子の巻き返しヒャッハー
続き楽しみにしてます
147名無しさん@ピンキー:2011/03/10(木) 00:43:53.42 ID:WmFPhqUC
GJ!!
アレクとステラには幸せになってもらいたいが
魔王は強そうだからな…
148名無しさん@ピンキー:2011/03/10(木) 00:50:04.99 ID:slbpcYQ/
GJ!ステラ報われて良かった
魔王がどう出るか怖いけど、続き楽しみにしてる
149名無しさん@ピンキー:2011/03/10(木) 02:17:13.90 ID:0TDLmR6n
アレクは優しいな…
150名無しさん@ピンキー:2011/03/10(木) 08:42:05.18 ID:EW+O6Ho6
切なすぎて眠れなかった(´・ω・`)
151名無しさん@ピンキー:2011/03/10(木) 21:51:40.23 ID:u4dzUF6f
アレクがんばれ、超がんばれ
152名無しさん@ピンキー:2011/03/11(金) 07:44:53.65 ID:TiqwtGIC
魔王まさかのオウンゴールw
自分の妻になったらあきらめるだろうという予想もむなしく
息子はそんなの関係なく魔王の事後に抱けるほど本気で好きだって
気づかなかったのが今回の戦いの敗因ですな
というか魔王がやっちゃった後にすぐにやれたからよかったけど
魔王がする前にやってたらばれてただろうなのがガクブル

>>150
自分も切なくて目が覚めたんで保管庫いって
なんか痛々しい三角関係を読んでさらに胸熱になっていた
柊ェ・・・・
153名無しさん@ピンキー:2011/03/11(金) 20:57:58.85 ID:Y4EMlYO7
ていうか、「アレクブッ殺してもステラに新しく産ませりゃよくね?」みたいになるだけのような
154名無しさん@ピンキー:2011/03/11(金) 21:03:54.09 ID:E13ZOZqH
公爵家の人が作品をまとめているのをハケーン
その前には他スレの人のも見つけた
155名無しさん@ピンキー:2011/03/11(金) 21:31:10.38 ID:wfefb5u1
そういうのはいいから
156名無しさん@ピンキー:2011/03/11(金) 22:21:40.59 ID:TiqwtGIC
っていうかこんなにすぐに再録するなら
ここに投下しないで自サイトでやってくださいって思ったんだが…
ちょっとがっかりしたよ
157名無しさん@ピンキー:2011/03/11(金) 22:24:48.11 ID:TiqwtGIC
間違って途中送信した
この板のルールあんまりよくわからないけどこっちでも連載
あっちでも再録連載って……そういうもんなの?
自分のサイトでやれってならないの?
158名無しさん@ピンキー:2011/03/11(金) 22:40:21.30 ID:dKT7nKay
>>157
なんつかお前はこの板ルール以前にこの板に合ってないよ
まとめるのも本人の自由
それを制約するルールなどない
159名無しさん@ピンキー:2011/03/11(金) 22:48:44.65 ID:TiqwtGIC
ああそうなんだ別板でこんな感想クレクレpgrというか
自サイトあるなら自サイトでやれよ
スレの意味ないよって荒れた事あったんでさ
160名無しさん@ピンキー:2011/03/11(金) 22:53:35.83 ID:4I09vVqD
怖いスレだな……
161名無しさん@ピンキー:2011/03/11(金) 22:54:45.63 ID:wfefb5u1
何でそれをここで繰り返す必要があるんだ
アホか

何をどうしようと自由だろうが
162名無しさん@ピンキー:2011/03/11(金) 22:59:07.88 ID:C8wwY0JM
職人の行動を監視してるのか?

さすがに引く
163名無しさん@ピンキー:2011/03/11(金) 23:04:59.93 ID:dKT7nKay
>>159
だからお前ここ向いてねーって
別板のルールなんて知らねーよ
がっかりしたなら黙って去れ
164名無しさん@ピンキー:2011/03/11(金) 23:13:28.52 ID:TiqwtGIC
公爵家の人にがっかりしただけで他の職人さんにはがっかりしてないし
自由らしいので去りませんがw
165名無しさん@ピンキー:2011/03/11(金) 23:13:54.51 ID:dKT7nKay
うぜー
166名無しさん@ピンキー:2011/03/11(金) 23:16:11.93 ID:wfefb5u1
実に
167名無しさん@ピンキー:2011/03/12(土) 00:52:43.03 ID:DMNH8rmu
お前ら>>1読んで素数を数えて落ち着くんだw

とりあえず投下直後に自サイトですぐ公開していいもんなんだな
自分も住人から反感買うと思っててすぐには補完してなかったから
これからは気にせずすぐに補完してみるわ参考になったw
168名無しさん@ピンキー:2011/03/12(土) 01:56:39.02 ID:LaaRoAk2
Yスレの流れか
169名無しさん@ピンキー:2011/03/12(土) 02:26:28.71 ID:BLVDFfgE
>>167
いちいち報告しなくていいから。


以下、まったり萌え語り&投下ドゾー
170名無しさん@ピンキー:2011/03/12(土) 07:18:56.33 ID:UHwNzXL5
夕兄の人のまとめサイトの話題が出た時はスルーだったのに
公爵家の人の時はすかさず注意入るなんて信者コエ―よ
171名無しさん@ピンキー:2011/03/12(土) 07:43:09.55 ID:/ECJXnkT
2が落ちて読めない場合とかもあるし、保管するのは全然かまわないと思うけどな。
というわけで職人各位の無事を祈りつつ続き待ち。
172名無しさん@ピンキー:2011/03/12(土) 09:51:18.22 ID:lCeVGrZR
>>164て、最低だな
173名無しさん@ピンキー:2011/03/12(土) 11:07:14.94 ID:wJnSYDzy
ここに限らず自サイトだと読者の感想が分からないから
人の多い2にも載せて多くの人に見てもらいたいてのはよく聞く
それにサイト掲載を後にするとパクリ疑惑がかかるからね
まぁその辺は書き手任せでどうでもいいんで、続きキボン
174名無しさん@ピンキー:2011/03/12(土) 13:35:20.67 ID:9J6rNDbO
確かに厨スレw
175名無しさん@ピンキー:2011/03/12(土) 21:28:27.70 ID:eESAW0YG
こうして過疎になっていく…のか
176名無しさん@ピンキー:2011/03/12(土) 22:32:42.93 ID:P8x9nJkl
過疎というか
ぶっちゃけこの非常事態でエロパロ板来てる場合じゃないと思う
177名無しさん@ピンキー:2011/03/13(日) 00:04:03.09 ID:1KBMaTIb
流石にこの状況下で安全な地域なんてどこにもないのに
作品投下できる猛者が現れたらそれはそれで賞賛に値するわ

見に来てる自分も自分だが…
178名無しさん@ピンキー:2011/03/13(日) 00:20:18.54 ID:v119k1TS
キモい流れ
179名無しさん@ピンキー:2011/03/13(日) 00:21:52.46 ID:0nB3kWJh
関西以降は今のとこ一応安全なんでない?
書き込み抑制するようなのもどうかと
自分は未だ余震続いてて怖い地域だけどさ
180名無しさん@ピンキー:2011/03/13(日) 00:24:37.15 ID:k8S/fo8R
>>179
抑制つか心理的に書く気になれないんだよ
181名無しさん@ピンキー:2011/03/13(日) 00:27:58.32 ID:mj0W71kM
もちろん投下は待ってるよ
作者さんの無事も確認できるし
182名無しさん@ピンキー:2011/03/13(日) 00:32:10.93 ID:khfDvkVn
ほんと無法地帯だな
183名無しさん@ピンキー:2011/03/13(日) 15:16:56.76 ID:BbNA7CWD
まあこの時期過敏に感じる人もいるのも仕方ない
184名無しさん@ピンキー:2011/03/13(日) 17:06:13.09 ID:n6XM0dFY
サイトあるならサイトでやれと思うが、普通に
185名無しさん@ピンキー:2011/03/13(日) 18:46:39.00 ID:E7VBHDsz
公爵の人のサイト見たけど
ここで穴兄弟注意されたの本当は不本意だったんだね
ここでは注意属性しぶしぶ書いてるけど向こうではタグ付いてないし
近親相姦ってあったっけそれともこれからあるの?
ここでは反省して謝った素振り見せてるけど
本当ははらわた煮えくり返っていたってことか…
186名無しさん@ピンキー:2011/03/13(日) 18:50:17.52 ID:pfGrkdkN
サイト持ちの書き手ってエロパロ板では結構いるし、特に問題なくない?
読み手はいちいち個人サイト探さないでも自分の好きシチュを楽しめる
いい事じゃないか
自サイト宣伝したらウザいと思うけどさ
とりあえず>>154みたいのは悪気ありかなしか知らないが、本当やめてくれ
187名無しさん@ピンキー:2011/03/13(日) 19:24:28.44 ID:+FSVPTsc
何でそんなに排他的なんだ
連載の続き楽しみにしてるんだから、マジやめてくれ
書き手さんがどんな状況かも分からないのに
188名無しさん@ピンキー:2011/03/13(日) 20:47:25.23 ID:v119k1TS
>>185
おまえ最低だな
189名無しさん@ピンキー:2011/03/13(日) 21:11:44.95 ID:IzQAs32U
書き手さんのサイト詮索禁止もテンプレに追加するか?
190名無しさん@ピンキー:2011/03/13(日) 21:15:02.35 ID:BbNA7CWD
近親ってどっちかと親子ってこと?
それはこっちでも注意書き書いてもらわないと…流石に
191名無しさん@ピンキー:2011/03/13(日) 21:16:25.46 ID:khfDvkVn
個人サイトを晒すような真似やめろ
192名無しさん@ピンキー:2011/03/13(日) 22:45:59.38 ID:+FSVPTsc
こんな時にこんなとこ見てる奴だからろくなのが居ないんだな
俺も含めて
193名無しさん@ピンキー:2011/03/13(日) 23:45:56.47 ID:BhiRraRI
>>185
いい加減にしろよ
マナー違反にも程があるだろ
194名無しさん@ピンキー:2011/03/14(月) 00:05:04.66 ID:3IYsrigK
ヤンデレ男っていいよな
愛ゆえにレイプ監禁なんでもしそうだ
一方的すぎると女のほうに愛が発生しなさそうだけど
195名無しさん@ピンキー:2011/03/14(月) 00:14:41.20 ID:h2s8la1u
一人の職人さん保護するためにテンプレ変更?ねーよwww

っていう冗談はさておき
真面目にレスするとこうやって侯爵家ファンが今までなかったほど
異常に公爵家の人を庇うから反発が大きいんだと思う
むしろ職人さんの為にならない擁護とかしてのあの騒動だし
某人の時は続きが読みたいから荒らすなよみたいな擁護なかったし
もっと注意するにしてもスマートに注意すれば?
>他人に注意をするときは、丁寧な言葉遣いを心がけましょう。
っていう>>1も守れてない人多い気がする
196名無しさん@ピンキー:2011/03/14(月) 00:37:48.59 ID:h2s8la1u
あー結局何が言いたかったかというと
職人さんのファンの場外乱闘がひどすぎるから
職人さんが好きなら職人さんに迷惑にならないような
注意の仕方を心がけようよと言いたかった。
勿論嵐は論外だけど。
197名無しさん@ピンキー:2011/03/14(月) 03:10:12.18 ID:dcSia1Kl
>>196
問題すり替えてない?
相手が誰だろうが、2chで個人サイト晒すような真似すりゃやった奴は非難されるよ
自サイト宣伝してた訳でもってないのに、わざわざ探してきてバラすわウダウダとケチ付けるわ
どこでやっても叩かれる行為だよ

今回のは個人攻撃だから、制止が行為に対する非難じゃなくてただ職人庇ってるように見えるのかもしれないけど
ファンがどうとかって言い出すのは話をねじ曲げてるよ

なんかよく「信者が〜」みたいに言ってるのいるけど、信者がいるって事にしたがってるようにしか見えない
いちゃもん付けは煙たがられるのが普通だよ
198名無しさん@ピンキー:2011/03/14(月) 07:20:46.49 ID:2pyXq2Mh
『嵐行為』は非難してるんだからすり替えはないだろ
個人サイト曝しが〜とかいうけど別のスレでは
普通に職人のサイトについて話してるし
前もサイトあるよってレスに注意入らなかったのに
(だからこそ見つけた人は話題にだしたんじゃないの?)
今回だけはすぐに入った
前回までは職人擁護にもにょりながらも嵐ウザイとおもってたけど
何度も注意の声をすり替えだなんだと繰り返すと
信者のえこ贔屓がウザイにしか見えなくなったけどなぁ
あ自分のレスも必要以上の叩きはイクナイというのは前提です
199名無しさん@ピンキー:2011/03/14(月) 07:34:31.39 ID:h2s8la1u
>>197
別にすり替えてないよ、「いちゃもんつける嵐は論外」と書いてる。
でも他の職人さんの時はなかったのに
この職人さんの時は何度もかばい方が尋常じゃなかったからそう思ったまで。
そして
>2chで個人サイト晒すような真似
板によってはそうでもないからそっちルールのまま来る人もいそうだけどね。
200名無しさん@ピンキー:2011/03/14(月) 07:41:53.53 ID:GujoAyZN
愚痴スレで暴れたり変なのに粘着されてるから
色々と気を使わないといかんとは思うけどね
201名無しさん@ピンキー:2011/03/14(月) 07:48:47.56 ID:eB/F/2nf
どうでもいい
公爵家の話が好きになれなくておとなしく傍観してる俺みたいなのもいる
投下しづらい空気作るのやめれ
202名無しさん@ピンキー:2011/03/14(月) 08:17:01.77 ID:31WJe14u
まだやっていたのか
203名無しさん@ピンキー:2011/03/14(月) 08:20:17.71 ID:t8FxqeRP
擁護っちゅうか注意を入れた一人だけど、
別に公爵家の人だけの話をした覚えはない
それに前の人の時とやらは、いなかったから知らん

ただ、どう考えてもヲチに近いレスとかには問題あるだろ

妄想話や萌え語り出来る雰囲気になるまで大人しく待機しとこうぜ
204名無しさん@ピンキー:2011/03/14(月) 08:56:22.55 ID:sklwnG1q
>>154
>>156
からお前らよくこんなに盛り上がれるな
とりあえずスルーするか長文レス自重しろよ
205名無しさん@ピンキー:2011/03/14(月) 10:18:22.51 ID:N5IsU4gz
気持ち悪いスレだな……
206名無しさん@ピンキー:2011/03/14(月) 12:03:53.35 ID:+TzY6MY5
>>201

お前は俺か
気持ち分かるぜ
207名無しさん@ピンキー:2011/03/14(月) 14:16:46.51 ID:lROh2pne
みごとなリア厨スレ

未成年はエロパロ板に来ちゃ駄目だよ
208名無しさん@ピンキー:2011/03/14(月) 14:36:45.54 ID:9OYe57Ot
ヲチや晒しはどの板でもフルボッコが妥当。むしろここの対応は手ぬるいんだが
勿論2もPINKも共通なので、>>1に追加する必要すら無し

今の空気は謎過ぎる
209名無しさん@ピンキー:2011/03/14(月) 14:43:03.11 ID:VJN1WyBI
お前等元気だな美熟女な人妻に惚れて、強姦して寝取る妄想したら落ち着くのに
210名無しさん@ピンキー:2011/03/14(月) 15:07:06.15 ID:2pyXq2Mh
そういえばここのネトラレはあまり嫌な感じがしないのは
寝とる過程を楽しむだけややり捨てではなく結果(心)を欲してるからだろうか…
普通の寝とられはなんか胃が痛いのが多いんだよなぁ
211名無しさん@ピンキー:2011/03/14(月) 16:17:20.14 ID:VJN1WyBI
自分というか寝取る側が主人公だからだろw
俺も寝取られちゃうのはちょっと……
まぁ、寝取る側サイドの視点で読めば良いだけだが
212名無しさん@ピンキー:2011/03/14(月) 17:47:06.58 ID:VTSm6T76
個人的には寝取りよりもすれ違いによる暴挙からの和解が好き。
愛が一方通行じゃなく、終わりごろには双方向になってほしいと思う。
213名無しさん@ピンキー:2011/03/14(月) 21:48:48.00 ID:VVTItnJU
普通にレイプも好きだけどここには愛故に〜を求めて来てるから
両方から→出てるのにうまくいかなくて…なすれ違いが読みたい
NTRは地雷なんだけどここのは何故か大丈夫な事が多いからその気持ちわかるww
214名無しさん@ピンキー:2011/03/14(月) 21:54:01.06 ID:W76QpHXW
そういうの書きてえ
でも投下はまだ早い気がする小心者
215名無しさん@ピンキー:2011/03/14(月) 23:11:20.40 ID:Bgr9chQs
>>213
愛ゆえなんでありがちな挿れたらオチるマジカルチンポみたいのが少ないからかも
自分はそういう簡単なのもイケる口だが、駄目な人はマジで地雷だろうからなあ
情熱のままに暴走して後から愛してたんだって気づくようなのはここでは駄目かな?
恋愛経験とかなさそうなキャラで感情をもてあまして
どうしても相手の事を手に入れたくて力づく…って感じで
216名無しさん@ピンキー:2011/03/14(月) 23:24:20.89 ID:+5vs1i/6
処女厨です
217名無しさん@ピンキー:2011/03/14(月) 23:48:38.13 ID:5qyek0iB
数スレ拝借

なんちゃって軍隊もの
少将×少尉
ストーカー要素あり
設定や展開がデジャヴかもしれないがこちらが元ネタということで
了承いただきたい

NGワードは「視線」で
218名無しさん@ピンキー:2011/03/14(月) 23:49:10.25 ID:5qyek0iB

「――う、くうぅ、」
口からこぼれるのが自分の声と認識できず、リインはただ苦痛に耐えた。痛みで息ができない。
「目を開けろ」
命令に従うと痛みのせいで浮かんだ涙で滲んだ視界が、自分を見下ろす男を捉えた。
「――ああ、君の瞳に私が映っている。どれだけ待ったことか」
満足げに呟くと男、レナードはリインを支配するべく動き始めた。



いつの頃からだろう。――視線を、感じるようになったのは。
はじめは気のせいだと思っていた。しかし訓練の時、本部の廊下で、中庭で、折々に感じる。
振り返ってみても誰もいなくて、いたとしても見知らぬ顔で自分に注意は向けていない。
それなのに、息苦しいような絡みつくような感触が残る。まるで、逃しはしないと告げるかのような感覚。

はあ、とついたため息に反応される。リインを見る同僚の顔はけげんそうだ。
「どうした? 最近元気ないみたいだけど。訓練がきついせいか?」
コーヒーの紙コップを両手で握り士官学校からの同期生に口を開く。夜も遅い時間の休憩所で他には誰もいない。
「最近、というかいつからかよく分からないけど、視線を感じる気がして。少し参っている」
最初の頃はなんとなくだったのが、そのうちに明確な意図を感じるような気がしていた。完全に一人になれる場所は
ともかく、最近は時間や場所に関係なくなってきているように思えていた。
一緒にいる友人にも確認してもらったけれど誰もいない。
「気のせいだとは思うんだけど」
「ストーカーかもな」
同僚はそう言ってリイン・アドラー新米少尉を眺める。士官学校を卒業したから階級はそれなりだが、まだ卵の殻が
ついたひよこ。それは同僚もご同様の新米軍人だ。
「お前美人だし、前にもストーカー騒動あったじゃないか」
確かにしつこく誘われたり、ストーカー行為も過去にはあった。でも今回は視線は感じるがそれだけで実際的な接近や
実害はないのだ。それなのに今までよりも重圧感を感じている。
「うん……そうかもしれないけど。自意識過剰か神経過敏かもしれない」
そんなリインを気遣わしげに見やり同僚はごくり、と唾を飲む。
普段は隙を見せないリインが物思いに沈んでいる姿は、頼りなげに見えてその場の空気を危うくした。
「俺が、守るよ。だから……」
肩に手が置かれ引き寄せられてはずみでコーヒーがこぼれる。それを気にする余裕もなく気付けばリインは同僚に
押さえ込まれていた。パニックに陥りそうになりながら何とか説得を試みる。
「ちょっと待って。落ち着いて、あのね、手をはなしてくれないかな。私にはその気は全く――」
だが、同僚は頭に血がのぼったのか聞き入れる様子はなく、火事場のなんとやらでのしかかられる。乱暴な手つきで
胸元を触られ鳥肌が立った。
「嫌! やめて、誰か」
叫んでも人はいなくてもう駄目かと思った時に低い、よく通る声が聞こえた。
「何をしている」
その声に同僚は動きを止めリインも声の方向を見る。壮年の男が一目で将官と分かる階級章の入った軍服を着て
マントを腕にかけている。その人物は表情を変えずに二人を見ていた。
「合意の上ではないようだな。嫌がる女性に無理強いとは、軍本部で。厳罰ものだな」
低い、穏やかとさえ言える口調なのに同僚ははじかれたように起き上がり、リインを残してその場を去った。
219名無しさん@ピンキー:2011/03/14(月) 23:49:40.43 ID:5qyek0iB

助かった、のか?
状況が飲み込めずに放心したようなリインに、大丈夫かと将官は手をさしのべた。
その手をとって起き上がる。
「ありがとう、ごさいます。大丈夫です」
敬礼して立ち去ろうと思ったのに。
「大丈夫、ではないようだな」
将官の指摘に足が、体が震えているのに気付かされる。今更ながらに恐怖が押し寄せてきた。
「座っていなさい」
椅子をひかれそこに座るとふわりとマントを着せかけられる。こぼれたコーヒーの紙コップを捨てたその足で将官は
新しい飲み物をリインの目の前に置いた。
「飲みなさい。温かいものをいれると落ち着く」
そう言って気をつかっているのだろうか、少し離れた場所に腰を下ろした。両手でカップを握り締め手を温めてから飲むと
クリームと少し砂糖が入っていて柔らかい飲み口と温度にほっとした。
震えがおさまったところに名前を階級を尋ねられる、答えるとさらに質問された。
「……先程のようなことはよくあるのか?」
「初めて、ではありませんがよくあると言うほどの頻度でもありません」
今は退役したが軍人だった父親から習った護身術や、隙を見せない行動で致命的なことは避けられていた。さっきのは
落ち込んでいたので反応が遅れて押さえ込まれてしまった。久しぶりのことだ。
「女性は大変だな、いや、君のような女性だからか」
その言葉に顔を上げる。初めてまともに目が合った。じっと見つめてくる視線が気恥ずかしくて目を伏せる。
カップを空にして立ち上がる。もう大丈夫そうだ。震えは止まっている。
「ありがとうございました。お気遣い感謝します」
マントをかえして礼をして、リインは官舎へ戻ろうとした。
「さっきのような輩がいないとも限らない。官舎までおくろう」
将官にそんなことはと辞退するが押し切られてしまった。本部敷地内で遠くもないのだが一人よりもずっと安心できた。
やはり気をつかってくれているのか少し距離をとってくれている。
官舎の玄関で立ち止まると将官はなにかあればカウンセリングを受けるように、とアドバイスをして去っていった。
その後姿をながめながらリインは、恩人の名前を聞いていないことに気がついた。
220名無しさん@ピンキー:2011/03/14(月) 23:52:19.04 ID:5qyek0iB
視線はその後も感じたが、危ないことはなくリインは軍での生活を過ごしていた。それでも気は滅入りがちなので、
仕事の合間に視線をうけないような場所で休憩するようになっていた。
その日もコーヒーを片手に気に入りの場所に向かった。生垣をまわってスペースに踏み込むと先客がいた。
振り返ったその人と目が合う。
リインを助けてくれた将官だった。彼も飲み物を手にもってベンチにすわってくつろいでいる。
「失礼しました」
邪魔をしたので元来たほうへ戻ろうとしたが、引き止められる。
「いや、かまわない。もう行こうかと思っていたから。――同じような目的かな?」
すすめられるままベンチに腰掛けて思い出す。
「その節はありがとうございました。名前も伺わずお礼も言わず失礼いたしました」
あれ以後は無事か、と聞かれ頷くとかすかに微笑まれる。
「ああ、名乗っていなかったな。レナード・ダグラス少将だ。軍には慣れたかな? アドラー少尉」
少将はリインの軍生活について色々聞いてくる、訓練の内容や官舎の住み心地まで。リインはそれにぽつぽつと答える。
「できるだけ現場の感覚を忘れずに保持していたいので」
将官のその姿勢は素直に尊敬できるものだった。そのうち休憩時間が終わり、リインは先に立ち去った。
それから何度か場所を変えて同じようなことがあった。リインが先にいたり、レナードが先にいたり。
とうとう同じタイミングでその場所にいきあったとき、リインはふきだしてしまった。レナードも柔らかく微笑んだ。
その頃にはリインはレナードに尊敬とともに親しみも感じていた。

221名無しさん@ピンキー:2011/03/14(月) 23:52:42.23 ID:5qyek0iB

「よほど気が合うらしい。君とゆっくり話をしてみたい。今度食事でもどうだ?」
誘いは嬉しいが人目がある。どう見ても将官と新米では不釣合いだ。しかしそれは……と断ろうとしたのを封じられてしまう。
「他人の目など気にしない。君さえよければ……一人の食事は味気ないので」
リインが首をかしげると独り身だ、と自嘲気味に言われた。
「気になるようなら別々に集合して個室でおちあってではどうだ?」
そこまで気をつかってもらってはかえって申し訳ない。返事をしようとしたリインの脳裏に、視線の主のことが浮かんだ。
実在する人物かどうかは分からない。だがもしその人物がいたとしたら、レナードとの接触を快く思うはずはない。
万が一レナードに危害が加えられるなどしたら。
「申し訳ありませんが……」
リインの拒絶にレナードはしばらく黙っていたが、低い声で尋ねる。
「私が嫌か?」
とんでもないとリインは首を横に振る。
「そんなことはありません。私の方に問題がありまして。ご迷惑をかけるようなことになれば顔向けできませんので」
「何か事情があるのか?」
問われるままに入隊してから視線を感じること、確認しても誰もいないこと、今のところ実害がないことなどを話す。
「視線、か。本当のことかも分からないのに怯えて閉じこもるより、こちらから陽動してみてはどうだ?」
リインは、はっとする。
先日の射撃訓練の時にまた視線を感じたことを思いだす。それまでただ怯えて周囲を見回すしかできなかったのに、
その日は何故か逆切れにも似た気持ちが生じ、その衝動のままにトリガーをひいていた。
ほぼ全弾が的の中心を貫通し、それに吹っ切れたのか以後はあまり視線に怯えなくなった。
むしろ実在するなら姿を現せとまで思うようにもなっていた。
今も自分だけなら問題はない。レナードに累が及ぶのが怖いのだ。
「私の身を心配してくれているようだが、これでも腕には自信があるつもりだ。実在するかも分からないあやふやなものの
ために君との食事の機会をなくす方が残念だ」
どうやらレナードは怖いもの知らずの冒険好きなようだ。つられてリインの顔にも笑みが浮かぶ。
「では、つきあってくださいますか?」
「喜んで」
店を予約したら連絡するから、と互いの連絡先を交換する。数日後レナードが予約を入れた店にリインは赴いた。
落ち着いた雰囲気のレストランで従業員に案内されて、やや緊張しながら個室でレナードを待つ。
「女性を待たせて申し訳ない」
程なくレナードも到着して席について食事が始まった。レナードは場慣れしていて仕草は洗練されている。食事や酒に
ついての知識も豊富で、リインは美味しい食事とあいまって楽しい時を過ごした。今は退役した父親がかつてレナードを
指導したこともあったと聞かされ、その話に花が咲いた。
あっという間に時間がすぎて店をでた。
「あまり遅くまで女性を引っ張りまわすのも悪い」
タクシーをよばれてリインだけ乗せられる。
「ここで別れるほうが都合がいいだろう。今日は楽しかった」
「私もとても楽しかったです。ご馳走様でした」
レナードに見送られて官舎へと戻った。着いたら必ず連絡を入れるようにと言われていたので、到着の報告と食事の礼を言う。
電話越しのレナードの声は落ち着いていて、耳に心地よかった。
222名無しさん@ピンキー:2011/03/14(月) 23:53:03.46 ID:5qyek0iB

しばらくは視線の主を気にしていたがリインにも、レナードにも特に何事も起こらなかった。
それからリインとレナードは時折一緒に食事をするようになった。レナードの連れて行ってくれる店はどれも雰囲気や客筋も
よければ味も極上で、また食事中の会話も大人の一言だった。必ずタクシーでリインだけを帰してくれる紳士的な振る舞いも
あって淡いながらも好ましさを感じていった。
その夜も個室で食事をした。とても口当たりのよい美味しい酒が供され、リインはいつもより過ごしてしまった。
店を出たところで段差につまづいたリインを、とっさにレナードが支えてくれた。
「大丈夫か?」
力強い腕に少しときめきながら大丈夫、と言うリインはレナードが触れている手に、力がこめられたように感じた。
「今日は送っていこう」
レナードはそう言うと一緒にタクシーに乗り込み運転手に官舎へと行き先を告げる。
流れ行く夜の街を眺めているとシートの上の手に、レナードの手が重ねられた。レナードを見やると彼の方もじっとリインを
見つめている。リインは手を引く気にはならなかった。
官舎に着いてタクシーを降りようとしたとき、レナードは重ねた手を持ち上げてリインの手の甲に唇を落とした。
外にでてレナードは今日は楽しかった、とリインに告げると本部の方へと歩いていった。
その姿を見送りながらリインはレナードが触れた手の熱さをもてあましていた。

時々とはいえ一緒に食事をする二人のことは、さすがに噂になった。友人から問い詰められてリインは素直に偶然知り合って、
たまに食事に行っていると答えた。だから別に付き合っているわけでは、と言うリインを友人達は切って捨てる。
「二人で食事をするんだから、好意がないわけじゃないんでしょ?」
「よりによって少将か、誰も文句が言えないし保護者としてはいいんじゃない?」
友人もリインが視線を感じることは知っていたから、レナードの存在が牽制になっているようだと言うと安心はしてくれた。
噂が広まるにつれ好奇心からの視線は多くなったが、元の視線は感じなくなってきていた。
あの刺すような奥まで見通すような視線を。
次の食事の時にレナードにその話をする。
「噂になって諦めたのかもしれないな。だが君はいいのか? 私とで」
リインはレナードの顔を見る。静かで落ち着いていて包容力のある大人。
「閣下こそ私のような小娘と噂になってご迷惑ではありませんか?」
レナードは見開いた目を細める。発せられる声は、優しい。
「迷惑どころか、光栄だ」
そのまま見つめられてリインは胸が苦しくなってくる。
「この後、よければ一緒に飲まないか?」
いつもは食事の後で別れていた。それを一緒にということは、次の段階に誘われているということか。
リインは彼の視線を受け止め頷く。
店を出るとごく自然に腕を差し出される。それに手を絡めレナードのいきつけというバーに移動した。店内は明かりを抑えていて
落ち着いた雰囲気だ。レナードから受ける印象に似ている。
カウンターに並んで座り酒を飲む。こんな店も、こんな酒も、――男性と二人でこんなに親密なのも初めてだ。
リインの緊張もレナードとの会話と素晴らしい酒がほぐしてくれた。
「君とこうして飲めるとは、酒がすすんでしまいそうだ」
グラスを手に思わせぶりに言われ、リインはどきりとしてしまう。大人の余裕にやられてしまいそうだ。
飲み過ぎないようにと気をつけるが、グラスの酒の度数は高くゆるやかに酔いが回ってくるのを感じる。
「そろそろ、出るか」
レナードの言葉でグラスの酒を飲み干して店を出る。ふわふわと良い気分で外の少し冷たい空気が火照った体に気持ちよかった。
空を見上げて大きく息をつく。腕をとられて引き寄せられる。
レナードに抱きしめられていた。思考は停止したのに体温と心拍が上昇していく。喉にからんで声がうまくでない。
「……私が嫌か?」
耳元に落とされる低い声。前と同じ質問をされた。黙って首を横に振る。耳元でなおも囁かれる。
「私は君が好きだ。今夜、一緒に過ごしたい」
今度は黙って頷く。耳に唇が触れた。吐息が、熱い。
223名無しさん@ピンキー:2011/03/14(月) 23:53:33.65 ID:5qyek0iB

タクシーに二人で乗り込む。ホテルの名を告げるレナードの声に緊張する。それをなだめるように手が重ねられ指が絡められた。
程なく到着したホテルのロビーでリインに待っているようにと告げてレナードがチェックインの手続きをする。その間、リインは
逃げ出したい衝動と戦う。恥ずかしくて落ち着かない。
レナードが戻ってくる。案内は断ったようだ。エレベーターに二人で乗り込み目的階まで沈黙が支配する。
厚いじゅうたんが敷かれ人気のない廊下に衣擦れの音だけが響く。廊下の最奥の部屋の前でレナードが立ち止まる。
「嫌なら。ここで帰れ」
ドアを開けてレナードがリインを見つめる。目を伏せたリインは意識して足を動かし、レナードの開けたドアを通って部屋に入る。
続いてレナードが部屋に入って背後でドアの閉じる音がした。
背中に手が当てられ促されるままに廊下を通り奥にすすむ。角部屋で窓が大きく、壁際のベッドがやけに目を引く。
部屋の真ん中で抱きしめられて髪の毛をすかれる。心臓の音がレナードに聞こえてしまいそうだ。爆発しそうだと思った時に
「シャワーを浴びておいで」
囁き声の命令が下される。ぎくしゃくと浴室に行ってリインはシャワーを浴びた。体を拭いた後で服を着るべきか迷って、結局は
置いてあったガウンを身に着けた。素足をさらす恥ずかしさもありまともにレナードを見られない。
レナードもシャワーを浴びると浴室に消えた。緊張で喉が渇いたので冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し夜景を見ながら
口に含む。額と手の平をガラスにつけその冷たさで身内の熱を冷まそうとしてみる。
そんな努力も背後から抱きしめられると呆気なく無駄になったしまう。一気に体が熱くなる。
くるりと反転されて厚い胸板に顔を押し付けられる。ガウンの生地を感じ額に口付けされて目を閉じる。
抱きしめられる力が強くなる。レナードの体が震える。低く抑えたレナードの声が耳を打つ。――笑っている。
そして、唐突にあの視線を感じてリインは戦慄した。
どうして、ここには自分とレナードしかいないのに。自分と――レナード、しか。まさか、そんな……
さっきまでは恥ずかしくて閉じていた目は、今は恐怖で開けられない。しかし。
「目を開けなさい。君の瞳にうつる私が見たい」
まぎれもない命令におそるおそる目を開ける。混乱しているのに体は抱きこまれて動けない。
至近距離で見るレナードの眼差し、その中にずっと絡んできていたあの視線が、もう隠す必要もないとばかりにおおっぴらに
されてリインを射抜いている。

「どう、して」
掠れた声でようやく問いかけるリインに応じるレナードの声は楽しげで、欲しいおもちゃを手に入れた子供のような響きがある。
「君を気に入ったからだ。人を欲するのに理由がいるか?」
くくっと笑われリインは震える。混乱して絶望して、あまりのことに涙さえ浮かんでくる。
レナードは嬉しげに言葉を紡ぐ。
「私は君を気に入った、だから視線を送った。君は私の視線に気付いた、私とは最後まで気付かなかったが。怯えるだけなら
そのままにしておこうかとも思ったが、君は私の視線に反発しただろう? 実にいい。あの反骨精神でますます君が欲しくなった」
腕から逃れようとしても体格と力の差からかなわない。あっさりベッドに押し倒される。
見下ろすレナードの目に宿るなにかに吸い込まれそうな気分になる。
顔にかかった髪を払われ、レナードの顔が下りてくる。
「やめて、は、なして、はなれて下さい」」
「君には何度も選択肢を与えた。ここまで来たのは君の意思だろう?」
あの日、自分を助けてくれてマントをかけてくれた。
震える自分を保護して落ち着かせてくれて、官舎まで送ってくれた。
秘密の休憩場所で会うたびに穏やかに色々な話をしてくれた。
美味しい食事を、楽しい時間を共有した。
時間をかけて少しずつ、少しずつ惹かれていった相手がよりによって……
リインは今まで無邪気に信頼していた世界が根こそぎひっくり返り、足元から崩れていくのを感じた。
224名無しさん@ピンキー:2011/03/14(月) 23:53:56.20 ID:5qyek0iB

押さえられてガウンの紐をほどかれ、手首をその紐でまとめられる。顔を背けると首から鎖骨の上を吸われ生々しい刺激に
リインはきつく目を閉じる。ブラジャーは上にずらされて下からすくうようにもまれる。
「やっ、触らないで」
身をひねって足をばたつかせて逃れようとするリインを押さえ込んで、レナードの手は遠慮なくその肌を味わう。すべらかで
柔らかく、魅惑的な曲線を描くリインの体をなでさすり、爪を軽く立ててひっかく。片方の乳首を口に含んで舐め転がす。
もう片方の乳首は指の間にはさんで乳房全体をもみあげる。ほどなく乳首はかたくなった。
「んっ、っや、」
レナードはリインの体を揺らす。唇は臍のくぼみまでおりていて舌先でつつく。腰をなでおろし大腿に手を当てる。
いたる所を舐め、吸われて体が震える。人の上に立ち、命令を下すことに慣れきっているレナードは容赦なくリインを支配していく。
リインの足の間に身をおき、レナードは片足をかかえあげた。
やわらかい内側に唇をつけて舐めて吸う。軽く歯を立てる。下腿から足に唇をよせてレナードは足の指を口に含んだ。
リインは慌てて上体を起こし、レナードを、自分の足指を口に入れしゃぶるレナードを羞恥と嫌悪でゆがんだ表情で眺める。
「やめてっそんなところ、舐めないで、汚いっ」
足をはずそうとするリインだが、レナードががっちり抱えているのではたせない。指の間まで舐められ肌があわ立つ。
ひとしきり愛撫して気が済んだのかレナードが足から口をはなす。
足を肩に乗せられたままじっくりと見つめられてリインはおののく。まるで視姦されているようだ。
「本当に君はいくら眺めても見飽きることはないな」
優しく愛しささえ感じさせる口調で言われ、自分に絡んでいた執拗な視線と自分に見せていた紳士としてのレナードのギャップに
リインは混乱した。そんなリインの動揺をよそにレナードは強引に下着を脱がせる。
閉じようとする足は無理やりに開かれ、ためらうことなく長い指がリインに触れてくる。
リインは必死に抵抗した。体術ではかなわない。レナードは実に人体の構造を知り尽くし、抵抗を封じる術にも長けていた。
体格も軍人としても経験の差もレナードの圧倒的な優位を助ける。
大きな手でなでまわされリインは顔をそむけた。
下から上へと指が動く。程なく指先が何かを探しあてたように止まった。
「触らないで」
この期に及んでもレナードを厭い、その表れのようにか陰核をすられ中に指が入れられてもリインは抗う。
むしろ指を入れた時にリインの顔は嫌悪のためにか歪んだ。
拒否する心情を伝えられ、愉快ではないながらもレナードは今後の楽しみの方に思いをはせる。
――今は自分の下にいるこの体に分け入りたい。早く自分のものにしてしまいたい。
舐めながら唾液をまぶし指でなんとか広げたそこに猛る陰茎をあてがい、先端を押し入れる。
225名無しさん@ピンキー:2011/03/14(月) 23:54:13.33 ID:5qyek0iB

リインは突如おこった苦痛と圧迫感に硬直する。体の中心を裂かれるようで、痛みのために呼吸も忘れた。
口からもれるのはひゅうとなる空気と意味のない音だけだ。
軍人なので苦痛に耐える訓練は受けている、だが、これは違う。こんな内側からの痛みには耐えられない。
レナードも挿入してから違和感に気付く。きつすぎる。リインが握りしめる指の関節は力を入れすぎて白くなっている。
疑念は少し引いた陰茎に絡む血で確信に変わった。
リインは目を閉じて硬直したままレナードに貫かれている。感動しながらレナードはリインに目を開けるよう促す。
涙で濡れた瞳に自分が映し出されているのを見て、レナードはずっと渇望していたものが満たされた喜びを感じた。
手首の戒めをといて自分の背中にすがらせる。
「浅く息をしろ。私の背中につかまれ、力を抜かないと辛いぞ」
他の場所に愛撫を施して苦痛を逃がす。なだめるように口付けて耳朶を甘噛みする。舌をいれて音を響かせるとリインが身じろいだ。
その拍子に涙が零れ落ちる。自分で苦痛を与えておいてリインが泣くのに嗜虐心をそそられる。
涙を舐めとって少し力の抜けたリインの中へと腰をすすめる。
途端背中に回された手が肩へと移り距離をとるかのように押しやられ力がこめられる。
「痛、い、もう、やめて……」
泣きながらうわごとのように繰り返される哀願だが、そればかりはかなえられない。できるだけ苦痛を少なくしようとすると
いつまでもイケずに結局はリインの負担になる。それにきつく締め付けられている現状は不謹慎ながら悪くなかった。
「もうすぐ終わる。もう少しの我慢だ」
狭い中で刺激されレナードは内心呻く。ほぐれればさぞやと思わせる。
リインの中を味わうほどに期待に胸が躍る。腰を動かすと中がうごめいて包み込まれ激しくしなくても快感を生じる。
レナードが硬直したかと思うと低く呻きリインは繋がった中に脈動を感じた。
「あ、あ……」
レナードの満足そうな様子がリインを絶望に突き落とす。涙がまた一筋頬を伝った。


226名無しさん@ピンキー:2011/03/15(火) 00:09:02.16 ID:VqdBbVQt
>>217
gj
貴方の書く男性のちと狂気入ってて高圧的なとこ好みです
227名無しさん@ピンキー:2011/03/15(火) 02:29:38.64 ID:ZK/TcVGO
>>217-225
GJです!!
挿入されて痛がって泣いとるのが堪らんw
エロくて良かったです
228名無しさん@ピンキー:2011/03/15(火) 03:04:51.20 ID:CB6bmaPk
これはいいストーカージェントルマンw
わざわざ自ら正体を教えるところがまた狂気入っててパネェ
229名無しさん@ピンキー:2011/03/15(火) 09:44:41.69 ID:kna0cJqx
これは良いジェントルメェンでつね
素晴らしき狂気!
自分の頭の中ではスレチかもしれないがブラックラグーンのバラライカとロックの性転換バージョンでおおくりしております状態でした
ハァハァ
230名無しさん@ピンキー:2011/03/15(火) 11:46:35.53 ID:gW1aIHIg
可愛くて素直な性格の女の子が翻弄されるのも好きだが
気の強い女をじっくり落とすのも好きなんだ
無理やりやって女のプライドずたぼろなのも好きだ
231名無しさん@ピンキー:2011/03/15(火) 13:28:24.20 ID:hvmDYfeG
>>230
お前みたいな屑がでしゃばるから
このスレが晒される
死ねよ
232名無しさん@ピンキー:2011/03/15(火) 13:43:58.20 ID:wU+Ha3mV
誤爆か
233名無しさん@ピンキー:2011/03/15(火) 17:43:19.99 ID:CB6bmaPk
>>229がいいこと言うから今日はバラライカ(男体化)×ロック(女体化)の
妄想止まらなかったじゃないかw

まぁそのままでもかなり美味しく頂けますがw
234名無しさん@ピンキー:2011/03/15(火) 19:16:24.82 ID:H9u2/CLr
GJ
これはいい紳士
235名無しさん@ピンキー:2011/03/15(火) 19:45:26.19 ID:7z7Kx5xh
どこかに晒されているのか?
236名無しさん@ピンキー:2011/03/15(火) 21:12:47.04 ID:j/BMAJkY
晒されてもいいじゃないか?糞スレなんだしさ
前向きにいこう
237名無しさん@ピンキー:2011/03/15(火) 21:57:02.12 ID:BVehC2Z6
>>217
正体をばらさなければ普通に恋人同士になれたのに
この紳士は自ら棘の道を行くのが素晴らしいな、流石紳士w
この後どうなるのか本当に気になる。
238名無しさん@ピンキー:2011/03/15(火) 23:10:57.27 ID:ZK/TcVGO
>>230
どっちも好きだな可愛く素直な女の子を強姦するのも良いし
気の強い女性を襲って抵抗を排除して強姦するのも良い
239名無しさん@ピンキー:2011/03/15(火) 23:19:57.54 ID:BVehC2Z6
自分は基本的は可愛く素直な清楚系が
愛するが無理やりされて動揺するのが好きだけど
気の強いのも好きだ
プードルとばっかり遊んでたらたまにはドーベルマンと遊びたくなる
スイーツばっかり食べてたらかつ丼食べたくなるってやつだなw
240名無しさん@ピンキー:2011/03/15(火) 23:57:00.84 ID:BWdP1GpQ
わー、いい!!GJ!!
ほぐれた後も見たいw

そして個人的には228の「ストーカージェントルマン」て言い方にもGJ(w)を差し上げたい。
241名無しさん@ピンキー:2011/03/16(水) 14:55:32.42 ID:WMgMtA0k
素晴らしい!GJ!!
このあとどうなるか気になる
権力で脅されて開発されちゃうのか
逃げても逃げても追ってくるのか
妄想が止まらないw
242名無しさん@ピンキー:2011/03/18(金) 20:32:38.49 ID:8Fa6Sf6e
ちょっと思ったことが…
愛情が憎しみに変わって無理やりってありなの?
243名無しさん@ピンキー:2011/03/18(金) 20:47:02.97 ID:5HU7oKxN
可愛さ余って憎さ百倍ってやつですか!

愛情が憎しみに変わって、っていうか
愛情と憎しみが混じりあうみたいなのは愛故的には結構ありえるパターンだと思う。
嫉妬とか拒絶されてとか、そういう瞬間には愛情故の憎悪が混じりあったりしてると思うし。
煽られた憎悪が暴走した後に、
自分の中の愛情のせいでああ・・・って後悔したりするんじゃないかな。
むしろそれが醍醐味!!
244名無しさん@ピンキー:2011/03/18(金) 20:52:58.81 ID:SQMwth6T
可愛さ余って憎さ100倍で憎しみ初めてからも愛が残ってるならいいんじゃないか
完全に憎悪しかない状態ならこのスレの範疇じゃないような気が
245名無しさん@ピンキー:2011/03/18(金) 20:57:32.67 ID:CGKwOZdC
その相反する感情に振り回されるのがよいな
振幅が大きいほど、スレ的には萌える
246名無しさん@ピンキー:2011/03/19(土) 16:47:23.27 ID:ewwmO0NT
投下します。
>>30
のネタができました。
期待はほどほどに…
題名:ホワイトデーに想いを乗せて
設定:
・女子の名前、アサミ
・男子の名前、シュン
では行きます。
247ホワイトデーに想いを乗せて:2011/03/19(土) 16:50:10.37 ID:ewwmO0NT
3月14日…その日はホワイトデーだ。
「おーい!シュン!妻のアサミがきたぞ、あははは!!!」
「………」
彼は『あの』一件以来他の男子にからかわれる様になっていた。
「でもアサミもよくあんな男を好きになった者だわ〜、ははは!」
当然アサミもよくつるんでいた女子達からからかわれていた。
「うるさい!」
アサミは叫んだあと自分の机の中をふと見たら何かの紙が入っていた。
――紙?なんだろう…ん?何か書いてある――
『放課後旧校舎で待っています、byシュン』
と紙に書いてあった。
そして放課後になりアサミは旧校舎に向かった。
旧校舎の中に入るとシュンが立っていた。
「シュン…」
「やっと来たね、アサミ…」
アサミは誤解を解くことに決めた。
それがまず最初に自分がしなきゃいけないことだったからだ。
「あの…この前の…あの言葉はその…(うまく言葉が出ない…なんで?)」
「もういいよ…あれが君の本心なんだろう?」
「!?ち、ちがうよ!あれは…ん!?」
何かを言おうとしたアサミの口をシュンは自分の口で塞いだ。
248ホワイトデーに想いを乗せて:2011/03/19(土) 16:51:24.45 ID:ewwmO0NT
「はぁぁ…これで許してあげるよ…」
「ひどい…初めてっだたのに…こんなキスって…」
「それは僕もだけど?」
「きゃ!」
シュンはアサミを床に押し倒した。
「君は僕にひどいって言ったよね?でもひどいのは君のほうじゃないの?」
「!?」
「君は僕の気持を裏切った…!」
「いやっ!」
ヒートアップしたシュンは理性が木っ端微塵に砕けて無くなり、アサミが着ている制服を乱暴に脱がし、下着を引き千切った。
「僕の思いを君は知っていた!!なのに…」
「んん!!…あぁ!!い…や…あぁん!!」
シュンはアサミの秘所を悔しさ、アサミへの好きと言う想いそして憎しみ、それらの感情を籠めた指でグチャグチャに掻き乱した。
「君は僕の心を踏みにじった!!その報いだ!!!!(早く僕に君のイク姿を見せてくれ!愛しい、愛しい君のすべてを!!僕に!!!!)」
シュンの気持は指をより一層速く乱暴に動かした。
「あぁ!…もう…あぁぁぁ!!!」
アサミは激しいエクスタシーに堕ち、潮を噴いた。
「イったね?ほら…またイカせてあげるよ?!!」
シュンは絶頂に達したばかりの秘所に再び指を挿れ擦りだした。
249ホワイトデーに想いを乗せて:2011/03/19(土) 16:54:44.33 ID:ewwmO0NT
「好きだったんでしょ?僕の事が…」
「ふ…はぁん…!!今の…あんたは…あぁ!…好きじゃない…前のあんたに戻って…私は前のあんたが…シュンが好き!!!」
アサミは途切れ途切れの言葉でシュンに想いを本心を伝えた。
「でも僕は前みたいにはなれないよ?君がその僕を『あの日』に壊したんだから…」
「!!」
「あの頃の僕は純粋に君が好きだった…だから『あの日』はチョコを渡されてうれしかった…なのに…あの言葉で僕はどん底に落ちた!!!」
「あぁん!!もう…やめて!!…あぁ!!!」
「もう僕は止められないよ?だって僕は今…大好きな君を自分のものにする準備をしてるから!!」
シュンはそう言うや否や愛撫でする手を止め指を秘所から引き抜いた。
「もうこんなにびしょびしょ…」
「ぁ…」
アサミは突然刺激が止んだことで内股を擦り合わせた。
どんなに気持が快楽を拒んでも身体は快楽を求めていたからだ。
「欲しい…僕が欲しいのは君の…『アサミ』の心だ…」
シュンはアサミの上に覆いかぶさった。
250ホワイトデーに想いを乗せて:2011/03/19(土) 16:55:55.96 ID:ewwmO0NT
「なに?」
「僕が君を手に入れるための準備だよ…」
「!?」
アサミはそのとき自分の秘所に熱く固いものが当たっている事に気づき自分が何をされるのかを悟った。
「十分濡れてるから…」
「だめ…いや…やめて!!!」
「もう、ガマンできない!!」
シュンは自身を秘所に入れ、一気に腰を押し込んだ。
「ッ!!!!いやああああああああああ!!!!!!!!!」
アサミは破瓜の痛みと絶望感に涙を流した。
「繋がった…やっと…君と…」
「うそ…いや…」
シュンは拒むアサミを無視して腰を動かし始めた。
「嫌がってるけどさあ…本当に嫌なら僕から逃げるよね?」
「あ、あん!」
快楽を受け、アサミの身体は思うように力が入らなくなっていた。
それを知っていてシュンはアサミに問い詰めたのであった。
「愛しい僕のアサミ…君は僕にとって愛しい存在だこの喘ぎ声も、身体も、心も、全部僕は欲しかった…」
「ふあ!!…や…め…て…!!」
アサミは涙を流しながらシュンに伝えた。
「まだ僕を拒絶するの?」
シュンはアサミにキスをし、舌と舌を絡ませた。
「んあぁ!!!!」
「君が僕を好きになっていたのは事実だろ?僕はあの頃と変わってない!!!唯一変わったのはアサミへの想いだけだ!!!!!」
「ぁあ!!私はあんたが好きだけど…あの時は…あいつらが…」
「もういいよ!!僕は今その君を抱いてるんだから」
「ち、ちがう!!あんたは私を抱いてない!!自分の欲望に任して私を犯してるだけ!!!」
「ちがう!!僕は君を…アサミ自身を心から愛したいだけなんだ!!!」
シュンは腰の動きを激しくした。
「だったら…私を心から愛してくれてたら…こんなレイプ染みた突き方は、絶対にやらない!!!」
「!?クッ!!」
「ふあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
シュンはアサミの最奥で果て、アサミへの溜まった想いを膣内にぶちまけた。
「「はぁ…はぁ…」」
シュンは自身を引き抜いた。
すると膣内からシュンが放った想いと破瓜の血が精液となってアサミの秘所を汚した。
「はっ…取り消しの付かない事を…アサミに…」
我に返ったシュンは自分の過ちに涙を流した。
「ううん…悪いのは私、私がもっと素直にあんたへ…シュンへの想いを伝えてれば…もっと気持ちよくできたと思うから…」
アサミはそんなシュンに笑顔で答えた。
「これでお相子にしよ?シュンがそんな風に思ってくれたことがうれしかったし…」
「アサミ…ごめん!!」
シュンはアサミに抱きついた。
「じゃお詫びに…もう一回シて?今度はもっと優しく…もっと私をシュンでいっぱいにして?」
「うん、わかった」
こうして二人のすれ違った恋心は交いを果たし互いを純粋な気持で愛し合った。
251ホワイトデーに想いを乗せて:2011/03/19(土) 16:59:13.16 ID:ewwmO0NT
おまけ
その後日…
「今日もあいつらが来たらからかってやろうぜ?へへへへ!」
「アサミもさすがに嫌気が差すんじゃないの?」
「そしたらシュンをひっぱたくとか!はははは!!!」
そんなことを話し合っているとシュンの姿が現れた。
「お!噂をすると…ん!?」
「え!?アサミと一緒!?しかもラブつなぎ!?!!」
「「おはよう!!」」
「え!?ちょっとあんたアサミ!いつからシュンとそういう関係に!?」
「秘密♪」
前より素直で明るくなったアサミはうれしそうに答えた。
そのアサミの首筋にはキスマークが付いていたのを見て同級生は唖然とした。
こうして二人は晴れて本当のカップルになった。
END
252名無しさん@ピンキー:2011/03/19(土) 17:02:33.40 ID:ewwmO0NT
以上です。
自分なりにあいてみたので>>30
のイメージが崩れていたらすいません!
253名無しさん@ピンキー:2011/03/20(日) 00:06:26.30 ID:t+wL1WRX
254名無しさん@ピンキー:2011/03/20(日) 08:49:51.10 ID:8b4D/S3T
乙、でも>>30まで戻らないと何のことかわからないので、
>>30のエピももっと膨らまして作品に織り込んでくれたらよかった

保管するときとか、>>30と一緒に保管して貰わないと・・・?
255名無しさん@ピンキー:2011/03/20(日) 18:15:01.49 ID:LZnW1hqx
>>252
乙!!
からかってた同級生達は今後、無駄に仲の良い二人にあてられるんだねw

保管は確かに>>30と一緒にのが良いのか?
256名無しさん@ピンキー:2011/03/20(日) 23:21:42.43 ID:C3zxySUd

視線の続きを投下する

少将×少尉
257名無しさん@ピンキー:2011/03/20(日) 23:23:52.78 ID:uPXkKcEN

ずるり、と引き抜かれる感触にリインはぎゅっと目を閉じる。ティッシュをあてがわれると今までそこに入っていたものを
嫌でも意識させられる。無理に入ってリインを支配し、自分勝手に登りつめたレナード。
ようやく自分の上からどいたレナードから逃れベッドから降りると脱がされたガウンを胸にあてて浴室に向かう。
ドアの鍵を閉めシャワーブースで頭から勢い良く湯を浴びる。
うつむけ視界に入った腿から筋になったうす赤い液体が排水溝に流れていくのが見えた。足の間にはまだ異物感が残っている。
頭からのシャワーにまぎれてリインは肩を抱いて涙を流した。

しばらくシャワーを浴びてようやく体が温まったように思え、リインは次の行動に移る気になった。
髪の毛を乾かし浴室の籠に置いておいた服を身に着けようとした。下着は部屋だがレナードの前で二度とガウン姿をさらす気にも
なれずに服を身につけ部屋を出ようと考えた。しかし籠にはなにも入っていなかった。
レナードがガウンを羽織り、ソファで酒を飲んでいると浴室のドアが開いてリインが顔を出した。
その顔に表情はなく、静かな怒りを伝えている。
「私の服がありません。そちらにあるのでしょうか、閣下」
グラスをテーブルに置いてレナードが答える。
「ああ、君の服ならランドリーサービスに出した。一切合財。仕上がるのは明朝だそうだ」
ぬけぬけと言うレナードにリインは抑えていた怒りが爆発しそうだった。
つまり、レナードによって足止めされたということだからだ。
視線で人が殺せるのなら、今のリインなら可能だったかもしれない。それほどレナードを見る眼差しは鋭く激情を秘めていた。
「喉は渇いていないか? あれだけ泣いたし水分補給をしてはどうだ」
レナードはそんなことは受け流して飲み物を勧める。
「いいえ、早く仕上げてもらうか友人に服を持ってきてもらって帰ります」
「つれないことを言う。朝まではまだ時間がある。ゆっくりしよう」
リインはとうとう冷静さを保てなくなった。
「冗談ではありません、誰があなたとなんて」
「――私に言い返すか。面白い」
レナードは肩をすくめ立ち上がり、リインの方にやってきた。危険を感じドアを閉めようとするより早く、レナードがノブを
握り浴室に入り込んだ。
258名無しさん@ピンキー:2011/03/20(日) 23:25:40.12 ID:wYTW/Yj6

「シャワーのほうか、湯につかればよかったのに」
そう言うとレナードはバスタブに湯を張り出した。ドアを背にしているのでリインは逃げられない。
レナードはリインを見つめて微笑む。仮面をはがす前の紳士的な笑みだった。
「一緒に入ろう。髪はまとめて。――綺麗な髪だ」
リインはかぶりを振る。近づいてくるレナードを避けようと後ずさっても、洗面台に当たってすぐに捕らえられる。
手首をつかまれさっきの恐怖がよみがえる。それを押し殺してレナードに向かう。
「やめて、放してください」
その気概は立派なものだとレナードは思う。しかし恐怖を完全には隠しきれていない。そのアンバランスさが――そそる。
洗面台と自分の間にリインを挟んでレナードは乾かしたばかりのリインの髪を手にとる。つややかで、何度この中に指を入れて
梳いてみたいと思ったことか。アメニティの中のゴムで纏め上げる。ガウンをむしりとってリインを抱き上げバスタブに浸かった。
離れようともがくリインを抱きとめる。水滴が白い肌にとびまた口付けたくなる。
後ろから抱きすくめて動きを封じる。胸の広範囲に接するリインの背中が震えていた。
「震えているな。寒いか」
震える理由など百も承知で声をかけて項に唇を落とす。細く白い、普段は服にかくされ時々垣間見えてはレナードの欲望を煽った
それは今は惜しげもなく晒されている。
「私から逃げようなどと思わないことだ。伊達に階級があるわけではないのは、父親が軍人だったなら理解しているだろう?」
上の階級の人間の握る絶対的な権力をちらつかされてリインはぎり、と唇をかみ締める。
業務、任務ならそうだ、だが、男女のことは別だと思う。

脅しにも屈せず身を捩って逃げようとするリイン。だが、逃げれば追いたくなる。
まさしく彼女は自分の獲物だと、視線で追い詰め囲い込んで思いを遂げたレナードはほくそえむ。
この美しい獲物は、しかし手に入れても抵抗をやめない。
簡単に手に入る女しか相手にしていなかったレナードにはそれが新鮮でたまらなく魅力的だ。
足の間に手を伸ばし、先程自分が入ったそこに指を入れる。
「つうっ」
瞬間リインが呻く。無理やりに入れたのだ。痛みが残っているのだろう。
「痛いか、粘膜にしみるか?」
ゆるりと中で一周させる。中はリインが掻きだしたのだろう、ぬめりはなかった。
「急に動くと中が傷つく、大人しくしていろ」
勝手なことを言いながら、湯の助けも借りてレナードの指はリインの中をじっくりと探っていく。指一本でも狭いそこは前壁が
複雑な襞を構成していて鋭敏な指先にざらついた感覚を伝える。痛むだろう箇所をさけてゆるり、と指を出し入れする。
入れるときと引く時に指に絡む襞の感触。きつい中締め上げられた記憶がよみがえりレナードは湯の中で反応してしまいそうになる。
親指で陰核に触れる。やんわり押して指の腹で撫でさするとリインが息をのむ。随分と初々しい反応だ。
「自分で触っていないのか?」
意識して耳元で低い声を出す。女性にとって自分の声は心地よいらしい。そう知って意図的に使う『技術』だが、今は自然と
熱い息も付け足してしまっている。目の前でみるみる赤くなる耳が可愛くてついぺろりと舐めた。
途端びくりとはねる体を抱きなおす。
耳が弱いと見たレナードは躊躇なく耳を食む。耳朶の柔らかさと軟骨の弾力を味わう。
舌先をこじ入れると鳥肌が立っているのが見て取れた。嫌悪か? 快感か? まあ前者だろうとは思うが、と分析する。
唇をかんでやりすごそうとしているのがいじらしい。
大概溺れてしまいそうだ、とリインを湯の中で弄びながらレナードはそう思った。
259名無しさん@ピンキー:2011/03/20(日) 23:27:05.30 ID:7/YbJY1A

耳を好きにされ指を中に入れられてリインは湯に浸かっている。背中には熱い男の体を感じて身の置き所がない。
レナードは自分で遊んでいる。視線を送りその一方でするりとリインの懐に入り込んだ。
そしてリインがその気になった時に正体を晒して獲物を、自分を手に入れた。
どうして気付かなかったのだろう。
レナードに危害が加えられなかったこと、レナードと一緒にいれば視線を感じなかったこと。
少し考えれば分かることなのに、いいように手のひらの上で弄ばれていた自分が惨めになる。
あまつさえ、抱かれてしまった。今は嫌悪と裏切られていた怒りしか感じない。真相を知る前が幸せだっただけに、その落差は
一層大きくリインを落ち込ませる。レナードにいいように振り回されている自分が嫌だった。
その間にも湯の中で加えられる執拗な刺激に、さっきとは別の意味で体が震えてくる。この感覚は――何だろうか。
「ここでするか?」
背後からの声に頬が熱くなる。どこまで自分を貶めれば気が済むのか?
「嫌です。あなたなんて、大嫌い」
「やれやれ、嫌われたか。だが私は君が『大好き』だ」
微塵も落胆した様子のない言い方で抱きすくめてきたレナードにリインは息を詰める。唇は耳、片手はリインの中を探っていたが
もう片方の手が胸をもみ始めたからだ。背中はさっきより密着してレナードの欲望を伝えている。
腕ごと抱き込まれているので身じろぎしかできない。とうとう気分が悪くなってきた。
体から急に力が抜けてレナードに気付かれたようだ。
「どうした?」
「……気持ち、悪い」
さすがに敬語も出ない。レナードは抱きあげてざっと体を拭いたたあとでベッドにリインを横たえる。
「のぼせたか」
アイスペールの氷を使ってタオルを濡らし首筋や額を冷やす。水も飲んだリインはぐったりとベッドに沈んでいる。
浴室から直行しているので何も着ていない。それが無防備にベッドに横たわっているのは扇情的だった。
「目の毒だが、さすがに今は不謹慎か」
胸元までシーツをかけてレナードも横に滑り込む。腕枕をしてリインを抱き寄せた。
まだ気分が悪いのかされるままになっている。リインが正気なら絶対に許さない接触だ。頭をなでて髪をすきながらレナードは
腕にかかる重みを楽しむ。そして初めてリインを見つけた日のことを思い出していた。
260名無しさん@ピンキー:2011/03/20(日) 23:28:02.27 ID:+HKBfpbC

年度初めの入隊式。一般校や士官学校上がりの新入隊員が緊張した面持ちで会場入り口に集合している。
彼らにとっては一生に一度の式典でもレナードにとっては、顔ぶれだけは変わるが毎年の義務で参加しなければならない退屈な
数時間の行事にすぎない。ただそこに座っていなければならない、つまらない時間。
今年度の式も、いつもと変わらないはずだった。
隊員の入場の際も、だから目の前を通り過ぎるひよこ達を意識せずにながめていた。
何故目にとまったのかは分からない。数は増えてきたからとはいえ、まだまだ少ない女性だったからか?
士官学校卒であれば更に珍しかったからか?
いや、目にとまったなどというレベルではなかった。――目に、飛び込んできた。
通り過ぎる際にどういう加減でかこちらを見た瞳に、いや見たような気がしただけで実際には認識もしていないその瞳に、
それが収まっているその顔に一瞬で魅入られてしまった。
それ以後彼女以外目に入らなくなった。式典の間中ずっと彼女に吸い寄せられていた。
気付くと式典も終了して、新入隊員のオリエンテーションの案内がなされていた。
緊張の解けた隊員たちは知り合いを見つけては言葉を交わしたり、まだ着慣れない軍服を互いに批評しあったりとわいわいと
にぎやかだった。彼女もその中にいて、見ていると男女問わず人気があるようで多くの人間から話しかけられている。
笑顔で応えている彼女の姿は美しく、同時にある思いを生じさせる。

知りたい、見ていたい、近づきたい、――手に入れたい。

初めて会った、いやこちらが一方的に認識しただけなのに、湧きあがるこの感情や欲望はどうしたことだろう。
冷静沈着と言われているはずなのに、とらしからぬ衝動的な思いに困惑する。
困惑の一方で視線は飽かずに彼女を追っていた。
ふと、彼女が顔を上げて周囲を見渡す。こちらにも視線がくるがその時には視線をはずしていた。彼女はひっかかりを感じていた
ようだが顔を戻してまた話の輪に加わった。
視線に気付いたか。面白いと思った。
そこで行動をおこすことにした。
彼女に視線を送る。彼女の動向を見つめる。彼女が気付くか、自分と気付くか試してみようと。
彼女を気に入ったので手に入れてみたいと思った。
名前も知らない彼女、だが一瞥で自分を虜にした。だから彼女を腕にして至近距離でその瞳を覗いてみたいと思った。
そこまで考えて、この衝動を表現する言葉に思い当たる。それがあまりにも面白くてつい声に出して笑ってしまった。
「どうされました、楽しそうですね」
同僚にそう言われ、どう返しただろうか。確か
「ええ、面白いものを見つけましてね、この年で新たな楽しみが見つかるとは」
そう、いつまでも笑っていたい気分だった。見つけた単語はごく単純で。
――あれが一目惚れ、というのだな。

261名無しさん@ピンキー:2011/03/20(日) 23:28:46.49 ID:6uHxBZVx

しばらく横になってリインは体調が幾分か回復したようで、レナードから離れようとする。
それを許すつもりもなくレナードは唇を塞ぐ。
柔らかい唇を味わい中に舌をすべらせると噛み付かれた。とっさに身を引くが口中に血の味が広がる。
「やってくれたな、だが気の強い女性は好みだ」
リインは再び口付けられてもがく。口の中に血の味がして、噛み付いたレナードの舌が傷ついたと察する。レナードの舌は
容赦なくリインに絡み唾液を落とし込む。むせそうになりながらレナードの血の味のするそれを飲み下す。飲みきれなかった
分が口の端からこぼれた。レナードはそれにも舌を這わせる。
「嫌、もう嫌」
「まさか、これきりと思ってはいないだろうな?」
手首をシーツに押さえながらレナードは楽しげに尋ねる。
「このまま続けるほどおめでたいとお思いですか?」
リインは下からレナードをにらみつける。視線の主と知った以上関わりあいたくない、リインにとっては当然の感情だ。
だがレナードはそれに頓着しない。
「言っただろう、君を気に入ったと。一度きりで済ませるほど私はお人よしではないんだ」
怒りをこめてにらむことすらレナードを喜ばせるにすぎない。
「瞳がきらめいている、怒りか。そんな顔も見られて嬉しい」
手首に唇をよせてちゅ、と吸い上げる。上腕の内側にも赤い痕を残して唇が離れ乳首に吸い付く。熱い息を落とされ、乳輪を舌先で
丹念になぞられてリインの鼓動が早くなる。唇でわやらかくはさまれ乳首の先端をつつかれると息が止まる。
のぼせた後でまだ力が十分入らない状態のリインの抵抗は弱く、レナードのなすがままになっていた。
最初に抱かれた時よりも丹念に、口をつかってむずがゆくなるほどじれったい刺激が加えられて、次第にリインの体が汗ばんでくる。
別の意味でのぼせてしまいそうだ。
動悸がして、喉が渇く。体の中から未知の感覚が呼び起こされる。
「声は聞かせてくれないのか?」
「――誰が、あなたなんかに」
ベッドの上なのに敵同士のような緊張をはらんだ攻防が続く。
レナードはリインを屈服させるべく技術を駆使し、リインはレナードを引き剥がそうとして果たせないとなるとけして感じまい、
声を出すまいと防戦する。
262名無しさん@ピンキー:2011/03/20(日) 23:29:21.73 ID:JKvf+Czh

だが状況はリインに不利になり、足の付け根にレナードの顔が来るのを許してしまう。
舌先ですくうように舐められリインが身じろぐ。足を閉じようとしてもレナードの顔が邪魔をする。
流されている自分が嫌だ。レナードを厭い、それ以上に不甲斐ない自分が嫌になる。
大腿に手をかけ開いたそこにレナードは口をつけた。熱い粘膜の濡れた刺激でリインはひくりと動いた。
「今度は濡れてくれるかな」
丹念に入り口を舐めあげて陰核を舌先で揺らされ、反応すまいと息をつめて耐える。ぴちゃ、とレナードの口から水音がする。
陰核の周囲をくるりと舌が這う。唇で挟まれ与えられる刺激が変わる。リインの手が固くシーツを握り締めた。
「感じているのか?」
「っ誰が……」
否定する言葉を紡ぐリインにレナードが笑う、その吹きかけられる息も刺激になる。前回は混乱していてよく覚えていないが、
今回のレナードは丁寧に、言い換えれば執拗にリインのそこをほぐしている。指を入れられリインは逃れようとする。
奥まで入れられて短い声を上げてしまった。
「痛っ」
「だんだん慣れる、我慢しろ」
慣れるつもりも、我慢するつもりもないリインは指を抜き差ししながら胸を舐めるレナードの頭を引き剥がそうとする。
同時に与えられる刺激がむずがゆく、体の奥から何かが生まれる。これ以上許せば――危険だ。
レナードが指の動きを止めた。そして笑みを浮かべる。リインがいぶかっているとゆっくりと引き抜いた指をリインに見せる。
それは濡れて光っていた。
「濡れた、か。いい味だ」
見せ付けるように舐められてますますリインの羞恥が深まる。指がもう一本増やされた圧迫感に意識がそこにしか行かなくなる。
最初より指の動きに抵抗がない。身を捩ってベッドから降りようとする最後の抵抗も封じられた。
押さえこまれて抜かれた指のかわりに押し付けられた陰茎の先端がリインの入り口をこする。
「いやあっ」
拒否する言葉を吐いた次にはもう、リインはレナードに貫かれていた。再度の痛みにリインは懸命にずり上がろうとする。
その腰を抑えてレナードはリインの奥まで穿った。まだ先の痛みの残るリインには辛い。
263名無しさん@ピンキー:2011/03/20(日) 23:29:51.96 ID:fP++suZd

「イかせる前に挿れてしまうとは、私も随分焦っているか……」
じわりと涙の浮かぶリインの顔を見て自嘲気味に言いながら、レナードは入り口の壁をこする。
ゆるりと出し入れすると最初ほどの苦痛は感じず、レナードは内心ほっとする。リインを背中にすがらせると苦痛を逃すためにか
無意識にだろうが素直に手を回してきた。頭に口付けを一つ落として動き始める。
リインが息を詰めて耐えているのだが、時々それが吐き出されると熱い吐息になって、そのつもりではないだろうにレナードを煽る。
少しは濡れたせいで中も比較的動きやすく粘膜の摩擦をより感じることができた。膣の襞は引っかかるたびにレナードには快く、
熱く包まれている感触も良かった。首筋に唇を這わすとリインの早い脈拍を感じる。
まだ苦痛だろうからと気をつけてはいるが奥へと突くたびに圧迫感があるのか、んっと息を詰める音がする。
それでも初回よりほぐれた中はレナードにも苦痛より快感をもたらし、限界が近づきつつあると本能が教える。
「君の中はいい、もう、イきそうだ」
きれぎれに言うと苦痛に耐えていたリインがはっとした表情をする。
「中は、中では嫌」
切実な頼みだが、レナードは聞き届ける気はない。体の内側からもリインの全てを自分のものにする。そう心に決めていた。
「それは、無理、だ。う、く――」
レナードの背筋が強張り脈動に合わせてリインの中に精が放たれる。レナードは刹那の達成感と幸福感を感じる。
いつまでも続けばいいとさえ願ってしまうほどの快感だった。
荒い息が落ち着きレナードはリインの上からどく。抜いたところから流れ出る白濁に征服欲が満たされる。
後始末をするとリインが背中をむけうつぶせた。手はシーツを固く握っている。
最後まで抱かれてしまったことへの苦渋に耐えているようだ。
だが背中から引き締まった腰、美しく盛り上がる臀部への曲線を晒していることに気付かない。
無防備なリインにレナードは目を細める。
「誘っているのか?」
声に情欲を感じたリインが振り返って顔を上げるのと背後からレナードがのしかかるのが同時だった。
「っやっ、違う、誘ってなんか」
腰を手でつかみ臀部を軽く浮かせる。すばやく足の間に体を入れてあっという間に元の硬さに戻った陰茎をあてがう。
抗う腰をひきつけ再びリインを穿つ。自分が放った精液のせいで中は先程より動きを妨げず快楽を伝えてくる。
背中を撫でながら耳元で囁く。
「朝まではまだ時間がある、楽しもうじゃないか」
嫌だとかぶりを振るリインを、自分を捉えた女をレナードは再び愛しだした。


264名無しさん@ピンキー:2011/03/20(日) 23:30:35.92 ID:fP++suZd
連投規制が出たのでIDが全部違う
わずらわしいがすまん
265名無しさん@ピンキー:2011/03/20(日) 23:46:31.28 ID:yIpjBg5S
ナイス紳士!!!
数日後とかになってるかと思えばまだベッドの中とはお見事です紳士
続き見れるとは思ってなかったので執拗っぷりにワクワクしますな
266名無しさん@ピンキー:2011/03/21(月) 00:56:33.79 ID:oYtAgVvK
>>256-263
GJ!!
終わっちゃうのは哀しいです。
リインの逡巡と陥落をもっと見たい。
267名無しさん@ピンキー:2011/03/21(月) 01:42:16.43 ID:vsO8STRH
ストーカージェントルマンGJ!!!
もっと陥落するまで読みたかった…。
268名無しさん@ピンキー:2011/03/21(月) 03:23:14.58 ID:Bdv409i6
しかしこの焦らし感も含めてたまらんw
GJです!!
269名無しさん@ピンキー:2011/03/21(月) 13:36:00.24 ID:SCOJiRw5
GJ!
これはもう一生逃げられんなw
270名無しさん@ピンキー:2011/03/21(月) 23:02:18.31 ID:uP3hgYdh
GJ!!
リインから見たら確かに少将に遊ばれているように感じるよなあ。
嘘つかれてたんだし。
わざわざ火種つくっちゃう少将はドSW
271名無しさん@ピンキー:2011/03/24(木) 19:20:23.93 ID:sADrN7Zf
>>246
乙!欲を言えば本当に30から書いていただきたかったぜ
意外と行為中は男が病んでたーと思ったので
ラストどうなるのかびくびくしてしまったw
そしてからかいもびくともしないラブラブ馬鹿ップルになっててよかったw

>>264
ナイスストーカージェントルマンw
続き気になるよ…日常に戻った後リインも少将もどうするのか
少将の囲い込み漁が大変気になるところですな


それにしても職人さん達はお元気なのだろうか…
続き鋭意制作中とかでもぐってるんだったらいいんだけれど
272名無しさん@ピンキー:2011/03/24(木) 23:29:17.83 ID:wEOx8STm
震災の影響よりも高尚読み手様や他書き手の当てつけが嫌になって
去ってしまったんでは…と不安だ
273名無しさん@ピンキー:2011/03/26(土) 00:39:45.46 ID:dvWNsupc
愛してるのに色々あって付き合えず、しかも相手からは結果的に嫌われてるってシチュがやはり良いな
そして犯す機会が巡って来たので暴発みたいな
知的で強気なお姉さんをそんなシチュで犯したい
274名無しさん@ピンキー:2011/03/26(土) 03:03:30.00 ID:Qr3vpruh
携帯から失礼します

最後の部分が書きたくてあげたのでエロが微妙です
NGワードは「茜」でお願いします
275:2011/03/26(土) 03:04:01.32 ID:Qr3vpruh

親の離婚を機に引っ越した家のお隣りさんの男の子。それが健ちゃんだった。

健ちゃんは私にとってお兄ちゃんでありお父さんのような存在で。
母が不在がちなこともあって虐められっ子な私の甘えを一手に引き受けてくれるのが健ちゃんだった。
健ちゃんのおかげで笑顔でいられる私は辛くても学校に行くことが出来ていた。
クラスの人達と会うのは正直物凄く苦痛だったけれど、健ちゃんのクラスとの合同授業の時には安心に似た余裕をもっていられた。
健ちゃんの隣に座る人がどんな人かなんて考えたり、その人は何となく健ちゃんに笑い方が似てるかもなんて思ったり、「その人」の名前はなんだろうと興味をもつことが出来たり……

そうして私はいつしかその人に恋をした。そのことがただひたすら嬉しかった。
別に叶わない恋で良かった。
誰かを好きになれる自分がいたことが単純に嬉しかった。





ある日、私の机に一枚の紙切れが入っていた。
紙切れには資料室で待ってますの一文と、碧井という「その人」と同じ苗字だけが書かれていて、それは私を動揺させるには充分な威力を持っていた。
悪戯かもしれなかったけれど私は健ちゃん以外に好きな人がいることは言っていなかったし、私と彼の接点などないに等しかったから、誰かに仕組まれたという可能性を放棄した私の足は迷わずに資料室へと向かっていった。
276:2011/03/26(土) 03:05:52.82 ID:Qr3vpruh

資料室に行くとそこには碧井くんが本当にいた。
「あ…茜ちゃん……だよね?来てもらってありがとう」
「あ、えと……はい…」
「それで、あの…ちょっと健介から聞いたんだけど」
「、え」

「俺のこと、好きって本当?」
「…!!!」




健ちゃんは碧井くんにバラしてしまったらしい。
それはよかれと思って?
それとも私の面倒を誰かに交代したくなったとか?
しばらくなにも言えなくて呆然としていると碧井くんに「なあ、」と声をかけられた。
思わず声の方向に顔をあげると、

「ん…!!っ」

キスを、された。
突然のことにびっくりする間もなく彼は素早くネクタイを外してそれで私の腕を縛り上げた。

「なにするの…ッ!?」
恐くなって涙声になる私に構わず、今度は私のセーラー服からスカーフを抜き取って目隠しにしてくる。

「やだ…碧井く…お願いだから外して…!」
「駄目だよ」

懇願する私に構うことなく、碧井くんは少しの躊躇いもせずにセーラー服を勢いよくたくしあげその下のブラジャーも剥ぎ取ってしまった。
277:2011/03/26(土) 03:06:51.55 ID:Qr3vpruh

「やだよ…碧井くんやめて…」

首筋から鎖骨にかけて指を這わせてみる。
それから真っ白な彼女の胸を弄んだ。
下から掬うように掌で遊んだり、乳輪を縁取るようになぞったりしているうちにどんどん固くなる突起。

「あっ!!や!」
それをピンッと弾いてみるとそれまで押し殺していた可愛い彼女の声を聞くことが出来た。

「あ…はぁ…や、あおいく……うああッ!!」
真っ赤に実った突起を口に含んで転がすと、彼女の喘ぎは止まらなくなっていった。
ピチャピチャとわざと音をたてながら時折歯を当てるとかなりイイらしく、脚を擦り寄せたり腰が反ったりしている。
なので今度はスカートの間に手を差し込んでみた。

「!!いやっ!!やだ、だめぇッ!!!」
ソコに触れられるのがよほどショックだったのか、今までよりも強い抵抗をしてくる彼女。
それを抑えつつ下着の上からワレメをなぞると少し濡れているのがわかった。

「いあ…ッ!くぅ…んあっ」
そうして見つけたクリをゆるゆるとなぞると彼女の力は面白いように抜けていく。
力が緩みきった所を見計らって僕はクリを思いっ切り押し込んだ。
「あ!!きゃあッ!!!」

大きく返ってきた反応に喜びながら下着を脱がせ、彼女の秘部にむしゃぶりついた。

「や!なに…あ!!あんっ!」
歯で敏感な芽を扱いたり舌を穴に差し込んだりするたびに溢れ出す愛液。
それを最後に大きく啜り、パンパンに大きくなったモノを取り出すと彼女の秘部に当ててニ、三度スライドさせた後、一思いに貫いた。

「!!!ぃやあぁあ!!!!やだ!!!いたいいぃ!!!」

激しい痛みに泣きじゃくる彼女に構わずどうにか自身を最後まで収めると、そのままの勢いで激しくついた。

「…うあぁあ!!ぃた、や、あおいく……ッいやっっ!!!」
スカーフの色が変わるくらいに泣いて痛がる彼女。
ちいさく「ごめん」と謝ると、限界がきた僕はとうとう欲望を彼女の中に吐き出した。
278:2011/03/26(土) 03:08:42.15 ID:Qr3vpruh

目が覚めるとそこには誰もいなかった。
アレを夢だと思おうとしても下半身が訴える非情な痛みと机にあったものと同じ文字で書かれた「ゴメン」というメモがそれを許してはくれない。

家に帰って私は泣いた。
ひたすら泣いていた。
こんなこと誰にも言えない。
お母さんにも、ましてや健ちゃんにも。
健ちゃんは私の気持ちを伝えてしまった自分を責めるかも知れないし、もし碧井くんに言った理由が私から解放されたかったからだとしたら私はもう立ち直れないかもしれない。

その日から私は誰にも会えなくなってしまった。
時間が経つにつれ意味もなく私だけが悪いように思えてきて、そうするとお母さんが心配して声をかけてくれるのも、健ちゃんがドアの前まで来て名前を呼んでくれるのも今の私には辛くて。

そしていつしか私は毎日来てくれる健ちゃんにたいして怒鳴り散らすようになっていた。
279:2011/03/26(土) 03:10:10.84 ID:Qr3vpruh

僕が中学に上がる頃、彼女はやって来た。
僕の家の隣に引っ越してきた女の子の名前は茜といった。

茜は可愛らしい女の子だった。肩らへんで切り揃えられた染めたことのない綺麗な黒髪と、アーモンドのような形をした薄い色素の瞳が印象的な美少女。
性格だって特に変わったところはなく、愛らしい笑顔と人懐っこい無邪気さに惹かれ、僕達はすぐに仲良くなった。

「健ちゃんは優しいね。私と喋ってくれるのなんか健ちゃんだけだよ」
茜は学校に居場所がないらしく、よく僕の部屋に遊びに来ては淋しそうに愚痴を吐いていた。
茜はいい子なのに彼女自身を見ようとしないクラスの連中は片親の茜を虐めているらしかった。
母親が綺麗な人なのもまた恰好のネタとなり、気付けば茜は売女の娘ということになっていた。

「茜はいい子だよ」
そう言って彼女の頭を優しく撫でる。
彼女は何かあるたびに僕に話してくれた。

「グループ授業とかなんであるのかな。早退しちゃった」
「体操着がびしょびしょだったの、酷いでしょ?」
「アドレス流されてるみたい…変えるから健ちゃんも一緒に考えてよ」

「すきな人ができたの」


僕はひたすら聞き手にまわった。
茜の愚痴は全て受け止めて、たまに僕なりのアドバイスを伝えたりして。
そうすることで話し相手に飢えている茜が嬉しそうに笑うのが何よりも幸せだった。


けれどある日を境に、茜は学校にも行かず家に引きこもるようになってしまった。
280:2011/03/26(土) 03:11:59.84 ID:Qr3vpruh

僕は毎日茜に会いに行った。
声をかけたり名前を呼んだりしても何の反応もないのが淋しかった。
茜はおばさんにも顔を見せていないらしく、このままじゃいけないと思った僕はなんとかして茜を部屋から出そうと声をかけつづけた。

しばらく続けているうちに茜の拒絶は激しくなり、ある日茜は怒鳴り声を挙げて僕を追い返した。

「帰って!健ちゃん早く帰ってよ!!」
「あかね…」
「帰れって言ってるの、わからない!!?」

こんなにも怒りの感情を露にする彼女を僕は始めて知り、そして怒鳴られながらも久しぶりに彼女の声を聞けたことを本当に嬉しく思っていた。





僕の学年がひとつ上がり、茜が僕より下の学年になることが決定した頃、茜はようやくドアを開けてくれた。
そして色んな話をぶちまけるように話してくれた。

碧井に呼び出されてレイプされたとか、
僕が碧井に茜の気持ちをバラしたことが凄くショックだったとか、
死にたくなる衝動が抑えられなくなっていた時期があったこととか、
それでもおばさんには少しずつ話が出来るようになったこととか、

それから僕が毎日名前を呼ぶことが本当は凄く嬉しかったこととか

「私ね、私健ちゃんが…」
「好きだよ、茜。それから本当にごめんな」


僕はこの日、昔から隠していた気持ちをとうとう茜に告白した。
281:2011/03/26(土) 03:13:46.07 ID:Qr3vpruh

いつだって僕は茜を好きで、その気持ちだけで行動を起こしてきた。

茜が好きだから、いつも一緒にいた。

他の奴が茜の魅力に気付かないように変な噂を流したのも
笑顔になるなら多少面倒な愚痴話でも喜んで聞いていたのも
碧井を諦めさせる為に、碧井に高い金を払って協力してもらったのも
その後碧井と入れ替わって僕が茜を無理矢理レイプしたのも

全部全部茜が好きだから。それだけが理由。

「私なんかでいいの…?私みたいなどうしようもない女で…」
「茜がいい。ずっと茜だけ見てきたから」


一生このまま種明かしをしないのだって、茜が好きだから。
それだけが理由なんだよ。
282:2011/03/26(土) 03:16:23.40 ID:Qr3vpruh
以上です。
色々わかりづらい部分があるかとは思います…申し訳ないです。
283名無しさん@ピンキー:2011/03/26(土) 12:25:10.00 ID:RLCOA9bE
投下乙!
これはいいヤンデレw
>>277は普通に碧井くん目線だと思ってたから
>「好きだよ、茜。それから本当にごめんな」
ってセリフ読み返したら怖ェェェェ
ストーカージェントルマンとは違って本当に最後まで隠し通してほしいよ

しかし碧井くんは金もらったとはいえど
一歩間違えばレイパーだと訴えられそうなことよく手伝ったなw
284名無しさん@ピンキー:2011/03/26(土) 13:03:39.06 ID:afnwxiPE
>>GJ
途中で半分は気付いたけど、オチで「そこからか!?」ってなった。上手いな
285名無しさん@ピンキー:2011/03/26(土) 21:54:30.06 ID:dvWNsupc
>>282
健ちゃんマジ外道で吹いたw
良いヤンデレだったGJ
しかし端から計画通りか
ヤンデレテラオソロシス
286神竜の謳 Ch.11:2011/03/27(日) 15:10:17.33 ID:tcYL7P6H
>>282 GJでした。

続きを投下します。最終話になります。

・逆レイプ
・和姦
・未遂

13レス頂きます。
287神竜の謳 Ch.11:2011/03/27(日) 15:10:52.51 ID:tcYL7P6H
 かつて訪れた森の祠の傍に、神竜は悠然と佇んでいた。逃げも隠れもせず、まるでティトの訪れを
予め知っていたかのように。
 時が止まったまま眠り続けるセラを抱え、ティトは恐れもせず神竜と向かい合った。
 彼女の仇を見据える瞳には、憎悪や絶望などは欠片も宿っていない。
 湛えられるはただ一つ。命を捧げる覚悟のみ。
「返して貰いに来た」
 口にせずともわかっているのだろうが、ティトは敢えて目的を告げる。神竜は微動だにせず、陽の光を
受けて黄金に輝く眼を足元の人間へと落とした。
 待っていたのだろう。人間であるティトが、自分の元を訪れるまで。
「返してくれないか」
 育む命がないのなら、自分の命を与えても構わない。そう心に願い、ティトは自分を殺せと訴える。
 その覚悟を拾い上げ、神竜は再び人の言葉で語り掛けた。それは、ティトが求めた答えではなかった。
『私は何者の干渉も受け付けない』
 無論、そう簡単に要求に応じないであろうことは予想の範疇ではあった。ここで食い下がらなければ
ならないことも想定の範囲内だった。
「だったら、何故ここで僕を待っていた?」
『貴様を待っていたわけではない。人間ならば誰でも良かった』
 これだけ多くの命を奪っておいて、今更何をしようというのか。真意を問われる前に、神竜は先の死闘で
ティトが抱いた疑問に答えた。
『私は誰の味方でもない。しかしそれ以上に、誰もが敵と認める存在であってはならない』
「……何が言いたい?」
『全ては予定調和だ。それはまだ終わっていない。私が鎮めた魂は、まだ我が手中にある』
 意味深な言葉を残し、神竜はおもむろに天を仰いだ。神々しき純白の翼を広げ、先とは全く異質の
鳴き声を発した。
 高く美しい歌声が、たちまち天空を支配する。それは数多の命を乗せ、雪のように地上へと降り注ぐ。
 ティトはその光景を唖然として見つめていた。奪った命を持ち主へと返したのだ。神竜が何を意図して
このような行動に出たのか、理解するには数秒の時を要した。
『人間よ、これは天啓と思え。同じ過ちを繰り返すな。無論、我々もだ』
 返されたのは、神竜によって理不尽な死を与えられた者の命。覇竜に殺された者は生き返らずとも、
死んだはずの人間が揃って息を吹き返せば誰もが『神』の意を感じずにはいられないだろう。神竜の姿を
目の当たりした人間ならば尚更である。
288神竜の謳 Ch.11:2011/03/27(日) 15:11:28.71 ID:tcYL7P6H
 この光景を目の当たりにした人々は喜びの裏で、この先の未来を『神』の怒りに触れぬよう、畏れながら
生きて行くことになるのだろう。

 セラを抱えていたティトの手は、少しずつ人の温もりを感じていた。失われていた命は律動を始め、
彼女の全身を温かな血が巡る。固く閉じられていた瞼からは、僅かに茶褐色の瞳が覗いている。
『貴様の命など必要ない。ただし、約束を違えたその時は……』
 最後まで告げずに警告を終え、神竜は静かに森の奥へと姿を消した。
 今度また、人と魔物の間で無意味な殺生が繰り広げられたなら、神竜は再び姿を現すのだろう。
一切の救済を許さない、完全なる滅びの唄と共に。

 事態の終息を呆然と眺めるティトに、不意に細く弱々しい声が掛けられた。
 自分の名を呼ぶセラに、ティトは何も言わずに顔を向ける。生気を取り戻した少女の姿は、記憶の中の
どの姿よりも生やかで、美しい。
 愛しき少女の生還に歓喜する心とは裏腹に、ティトの表情には寂しげな微笑みが湛えられていた。


「先日の約束、取り下げさせて頂きます」
 ラスニール城に辿り着くなり、ティトは国王に向かい、とある口約束の破棄を求めた。セラとの婚約の件である。
「……ほう」
「ティト?本気で……?」
 興味深げに様子を窺う国王の前で、セラは開口一番、信じられない台詞を吐くティトに疑問を呈した。
一時的な約束ではあるものの、まさか求婚した本人の口から婚約解消が言い渡されるとは思っていなかったのだ。
「正直なところ、背後でどこぞの誰かが一枚噛んでるのかと思ったんだけど、そうでもなかったようだね」
「……失礼します」
 理由を告げることもなく、ティトは二人に背を向ける。帰国後とは言え、王女の身の安全という
最も破ってはいけない約束を破ったのだ。彼女を娶る資格などあろうはずもない。
「ティト、私はもう貴方のことは……」
「ごめん。これで、全部終わりにしよう」
 引き止めに掛かるセラの目の前を横切り、ティトは部屋の扉に手を掛ける。
 これで彼女は、何に囚われることもなく生きられる。金輪際、関わることはないだろう。

 別れの扉は不自然なほどに軽かった。反対側から何者かが同時に扉を開いたのだ。
 時をほぼ同じくして国王の元へと訪れた人物に、ティトは正面から衝突した。見上げると、父親である
ロイドに見下ろされていた。
289神竜の謳 Ch.11:2011/03/27(日) 15:11:46.13 ID:tcYL7P6H
「と、父さ……」
 腕を掴まれて引っ張られ、ティトは再び国王の元へと戻される。
 ロイドの背後にはディアナが、姿を隠しもせずに付き添っていた。
「久しぶり。あの家燃えたんだって?まさかこの城を明け渡せなんて言うわけじゃないだろうね」
「そうだな。ついでにラストニアでも復活させるか」
 平然ととんでもないことを言い放つロイドを前に、国王は顔を強張らせた。彼は遠慮なく目前まで
歩みを進め、含みのある笑みを見せながら国王を見下ろしている。
「……冗談だろ?」
「さぁ?それはおまえの対応次第だ」
 再会早々の脅迫行為。昔と全く変わらない手口に、ディアナは深い溜息を吐いた。
 しかし脅迫といえども、別段国に不利益をもたらそうというわけではない。今や祖国を同じくしている以上、
国王とてそれは理解している。
「で……、何がお望みなんだよ……」
「全騎士団を俺に寄越せ。それから、俺の素性を国中に知らしめろ。ラストニアの姓も、過去の功績も何もかもだ」
「!?ちょっと待て、そんなことしたら……」
 国王が何を危惧しているか、ロイドは当然わかっている。
 ラストニアとラクールの力関係は明らかだ。もし、ラストニア王家の末裔、しかもほとんど全ての
戦役を勝利に導いた司令塔となる人物が生きていると正式に知れたら、自国よりも力で劣るラクール側が
国を治めているという現状にラストニア兵は勿論のこと、ラストニアの民までもが不満を抱くかもしれない。
本人の意図せぬところで築き上げられたものではあるが、彼にはそう危惧させるほどの人望がある。
 しかし、ロイドは決して自己顕示欲は強い方ではない。ラクール出身者を含む騎士団の均衡を保つためにも
素性を明かさず、初めは現騎士団長であるアルセストを介した指揮系統を築くべきである。
 もし城に留まることのみを目的とするならば、わざわざ身元を明かす必要はなく、一体何を狙いとした
行動なのか国王には理解できなかった。
「心配には及ばない。こいつとおまえの娘が国を継ぐことになれば、何の不満も出ないだろ」
「へ!?父さん、何を!?」
「この国を乗っ取りたい、王女にも気がある……何か不満か?」
「それ、誰に聞いたの……」
 聞かずとも知れている。ケイトしかいない。気まずさのあまり、弟の話を持ち出してしまったのだろう。
余計なことを吹き込んだ姉のせいで、今まさに、政略結婚という予想だにしない道が開けようとしているのだ。
290神竜の謳 Ch.11:2011/03/27(日) 15:12:15.83 ID:tcYL7P6H
「俺は当分この城に滞在する。ディアナのことは気にしなくていい。どうせもう時効だ」
 国王は気圧されるように首を縦に振ったものの、先程とはまた別の危機感を抱いていた。
 ラストニアより次期王が誕生し、ラクールより次期王妃が選ばれる。実質どちらが力を持つかは明らかだ。
「まずい……本当に乗っ取られる……」
 息子にさえも一切の反論を許さず、ロイドは国王の苦慮を耳にしながらディアナを連れて部屋を後にした。

 国の重鎮的存在となれば、クレア達からの無茶振りを正当な理由で断ることができる。ディアナが切に
望んで来た日常を、今度こそ実現させることができる。しかしロイドがそう説明しても、彼女はいまいち
納得しない。
 長年共に同じ道を歩んで来たディアナは、ロイドの性格を知り尽くしている。今回の大胆な行動の裏にある
本当の目的にも、薄々勘付いていた。
 彼は真っ先に、騎士団の譲渡を要求したのだ。
「これ、もしかして……あの人への報復?」
 恐る恐る真意を問うディアナの前で、ロイドは然も当然であるように答えを返す。
「誰の女に手を出したのか思い知らせてやる。一生脅えて生きるがいい」
 ある意味予想通りの返事を嬉しく思う反面、自分達に関わってしまった若く未来有望な騎士に対し、
ディアナはどうにも同情を隠し切れなかった。


 この日、セラは初めて他人を自ら自室へ招き入れた。話をしたいと頼んでもなかなか首を縦に振らない
ティトを、強引に部屋の中へと引き摺り込んだのだ。
 ティトは決して良い顔をしていない。一方的な都合で決め付けられてしまった将来を撤回させるため、
一刻も早く父を追わなければならないと思っていた。
「セラ、僕達もう会わない方がいい」
「何故ですか?」
「何故って……自分の身に何が起きたか、わからないわけじゃないだろう?」
 彼女のためにも、これ以上関わりを持つべきではない。ティトがいくらそう説得しても、セラは一向に
納得しない。むしろ、説得を試みるほど反発する。
 自分の考えを絶対とし、他人の言い分には耳を貸さない。何を言っても聞く全く耳を持たず、一秒でも早く
部屋を出ようとするティトの態度は、セラにとって苛立たしいものでしかなかった。
291神竜の謳 Ch.11:2011/03/27(日) 15:12:33.71 ID:tcYL7P6H
「貴方はいつも勝手です!初めてここへ来た時も、ケイトを助ける時も、私の言うことなんて何一つ聞かずに
 自分本位な行動ばかり取っていました!」
「……うん」
「今朝もそうです!貴方は、自分の命を……、捨てようとしていました……」
「…………」
 ティトは決してセラと目を合わせようとしない。しかし、彼女が涙を堪えているであろうことは察していた。
声が、震えているのだ。
「私のためですか……?私のせいで、貴方まで命を落とすところだったんですか……?」
「……、もう行くよ」
 扉へと伸ばされた手を押さえ、セラは扉の前に立ちはだかる。
 道を塞がれ困り果てるティトを睨み付け、精一杯の虚勢を張る。
「許しません。もう、貴方に振り回されるのは沢山です」
 ティトは一歩、また一歩と迫り来るセラから逃げるように後退る。ベッドの傍まで追い込まれるなり
肩を押され、そのままシーツの上へと難なく倒されてしまった。慌てて起き上がろうと手をつくも、
セラに腰の上へと乗り上げられ、動くことすらままならない。
「こ、こんな真似するなんて、君らしくないな。早くそこを……」
「お黙りなさい。これは報復です」
 言い切られる前に言葉を遮り、セラはシーツに手をついて困惑するティトを見下ろした。長く透き通った
琥珀色の髪が流れ落ち、紗幕のように二人の視界を覆う。
 近付けられた彼女の瞳は、どう見ても復讐を企てる人間のものではない。むしろ、かつてティトが
欲していた、淡い慕情さえ感じ取れるほどだ。
「動かないで下さい」
 伸ばされた手が、ティトの頬に触れた。指示に従わず顔を逸らしても、彼女は動じない。
 このままではまずいと強引に半身を起こすと、セラは再びティトの肩を押して共に倒れ込み、自分の
身体で動きを封じた。
 完全に、抱き付かれた形となっていた。ふわりと漂う彼女の香りが、ティトの嗅覚をくすぐる。
 鼓動と温もりが布越しに伝わって来るだけで、幸福感が満ち溢れる。それ以上を望むのは、贅沢というものだ。
「セラ、離れて」
「嫌なんですか?」
 腕に力が込められると共に胸元に柔らかな感触を覚え、ティトは思わず目を閉じた。本心の赴くままに
抱き締めてしまいたいという衝動を抑え、固く拳を握り締めていた。
292神竜の謳 Ch.11:2011/03/27(日) 15:12:59.11 ID:tcYL7P6H
「……嫌なんですね」
 頑なに自分を受け入れようとしないティトを、セラはどこか悲しげに見つめている。やがて彼女は
俯いたまま静かに起き上がり、ゆっくりと身体を離した。
 膨れ上がる煩悩を制し、つい気を緩めたその直後。安堵の息を吐いたティトの下半身を、思わぬ感触が襲った。
「ちょっ……、セラ!?何してる!?」
「身体を張った嫌がらせです」
 言いつつ彼女は手を潜り込ませ、拙い手つきで懸命に互いの秘部を触れ合わせる。セラの生気に溢れた
女の身体はティトの色情を再び煽り、必要以上の昂ぶりを与える。
 彼女は思い切った行動に出ながらも恥ずかしそうに顔を逸らしていたが、やがて指先に力を込め、
ゆっくりと腰を下ろし始めた。
「待っ……!だ、だめだ、やめ……」
「貴方も最初、私が嫌だと言ってもやめませんでしたよね」
 意外にも、彼女の中は僅かに湿っていた。もう悪感情を抱かれていないのだと察することができるが、
ティトはどうしても受け入れることができない。
 行為を強行するには潤滑に乏しく、彼女の顔は苦痛に歪んでいた。それでも生じる痛みに耐え、セラは
ティトの陰茎を根元まで埋め込むと、そのまま長く息を吐き、静止した。
「無理しないで、早く離れて」
 身を案じる言葉に、セラは首を振って少しずつ腰を揺すり始める。身体が強張っているためか膣内は
非常に狭く、彼女が少し動くだけで互いのものがきつく擦り上げられる。
 漏れる呻きを耳にしては手応えありと踏み、彼女は徐々にペースを上げて行く。
「も、もう、やめるんだ……、痛いだろ」
「嫌です。平気です」
 何度やめるよう言い聞かせてもセラは一向に耳を貸さず、しかしだからと言って乱暴に扱うこともできない。
 ティトは必死にこの状況を打開するあらゆる手を考えるが、口を出る台詞はどれも説得力に欠けるものだった。
「君はあの時、身分を理由に僕を拒んでいたのに……、いきなりどうしたんだ」
「あんなもの言い訳に過ぎませんし、もう意味もありません。貴方、ラストニアの人間だったのでしょう?
 第一、私の身体を二度も奪っておいて何の責任も取らないつもりですか?
 お父様にも借金があるはずです。このまま踏み倒すつもりですか?」
「いや……、それは……」
 怒涛の追及を受け、ティトは二の句を告げなかった。過去の所業が今全て、自分に返って来ているのだ。
293神竜の謳 Ch.11:2011/03/27(日) 15:13:25.06 ID:tcYL7P6H
 視線を交えながらも絶句し、全く心変わりする様子を見せないティトをセラは更に追い詰める。懸命に
腰を揺すって互いの粘膜を擦り合わせ、望まぬ快感で苦しませ、ティトが音を上げるまで決して声を漏らさない。
「ぅ……っ!セ、セラ、わかってくれ、君の、ためなんだよ……」
「私のため?私の気持ちも考えないで、何が私のためなんですか?」
 ティトは思わず目を見開いた。蒼の瞳に映る彼女の面持ちは至って真剣で、とても揶揄されているとは
思えない。しかし、一度は大嫌いとまで言われた相手の口から飛び出す台詞とも思えなかった。
 気付けばセラの顔が目前に迫っている。目が合うと、彼女はそっと自分の唇を重ね合わせた。
「……本気?」
「命まで賭けられては、気も変わります」
 ──逃げられない。迷いなく答えるセラを目にし、ティトは戸惑いながらもそう悟る。
 今まで彼女のためと思い取って来た行動は、ことごとく裏目に出てしまっていた。
 だから離れようと決意した。しかしその決断が今、再び彼女を傷付けようとしている。
 ティトは観念したように目を閉じた。もう悩むことすら億劫だった。結局のところどの道を選んでも、
二人にとっては茨の道にしかなり得ないのだ。
「覚悟はできてるんだろうね」
「覚悟?」
 セラは女だ。これ以上恥を掻かせるわけにはいかない。
 問い返すセラの肩を掴み、ティトは彼女の身体を軽々とベッドに押し倒して形勢逆転を図る。そして、
真剣な眼差しで彼女を見据え、最後の質問を投じた。
「僕はきっと君を不幸にする。幸せになれる保証なんてどこにもない。それでもいいの?」
「それは貴方が気にすることではありません。幸せかどうかは私が決めます」
 強気な台詞とは裏腹に、セラは薄っすらと微笑んでいた。返事の代わりに口付けが与えられると、彼女は
一層顔を綻ばせた。しかし、この状態で接吻のみで終わるはずもない。
「わかってると思うけど。こんな中途半端な状態で終わろうなんて考えてないよね?君がそのつもりなら、
 最後までさせてもらうよ」
「……はい」
 頬を染めて頷くセラを、ティトは軽く抱き締める。体勢を整え、抜け掛けた陰茎を再び奥まで埋め込む。
 セラは小さな呼吸を漏らしながら、背に腕を絡めた。ティトの首元に顔を埋め、これから襲い来るであろう
快楽に備えていた。
294神竜の謳 Ch.11:2011/03/27(日) 15:17:43.43 ID:tcYL7P6H
 期待に応えるように、ティトはゆっくりと動き始める。しかし、優しく扱うのは初めのみ。
 既に彼女が強行した行為により、十分過ぎるほどに色欲を煽られているのだ。ティトは自分の欲求に従い、
遠慮なく速度を上げて行った。
「あ、あの……っ、ティト……」
「何?」
「やさ、しく……」
「今度ね」
 やられっ放しは趣味ではない。ティトは口には出さず、行為で示す。広がるスカートの裾をたくし上げて
片脚を肩に掛け、体重を掛けて自身を奥まで押し込むと、セラは堪らずに身を捩り甘い声を上げた。
 そのまま掬い上げるように、何度も腰を打ち込む。彼女の喜ぶ腰使いで、水音を立てながら突き上げる。
「あっ、は……っ!ああっ!!」
 快楽から脱しようと反射的に撓う肢体を、ティトは決して逃すまいと強く抱き竦めた。互いの身体を
密着させ、快楽に悶える身体を押さえて容赦なく奥を貫いた。
 腕の中で跳ねる身体から、彼女が得ている快感の度合いが窺い知れる。セラの身体が大きく仰け反る
瞬間を捉え、ティトは即座に同じ要領で腰を打ち始めた。
「ぁああっ!だっ、だめっ!ティ、ト……っ!」
「腕に力を入れて。しっかりしがみ付いて。まだまだ辛くなるよ」
 セラは素直に従い、自分に覆い被さるティトの身体に力の限り抱きついた。昔ならばここでじっくり
可愛がっていたのだろうが、今のティトにはそんな余裕はない。
 耳元で頻りに叫ばれる制止の声を糧に、ティトは早々に追い込みを掛ける。素直な反応を返す身体を
力一杯抱き締めながら、加減も忘れて夢中で突き込む。
「ああっ、ん……っっ!!」
 セラは固く目を瞑り、声もなく悶え続けている。急激に狭まり、快楽に蠢く柔らかな蜜壁が彼女の状態を
ありありと示している。
 粘膜が擦れ合う度に彼女は過敏に身体を捩る。その度に纏わり付き締め上げられる感覚に、ティトは
堪らず喉元から声を漏らした。
 燻ぶり続けた快感が、堰を切って溢れ出す。二人は互いに求め合い、たちまち絶頂の波に襲われた。
「うっ……!セラ……ッ!」
「わ、私、もう、……っ!あぁああっ!」
 ティトは引き込まれるように最奥まで導かれ、脈打つ欲望を吐き出した。華奢な身体を一際強く抱き締め、
逃すまいと腰を押し当て最後の一滴まで注ぎ込んだ。
295神竜の謳 Ch.11:2011/03/27(日) 15:18:08.86 ID:tcYL7P6H
 全ての事が済んでも、セラは絡めた腕を離さない。余韻に満ちた甘美な時間に酔い痴れるように、
自ら身を寄せている。ティトはただ自分の心に正直に、細くしなやかな身体を抱き留めた。

 やがて呼吸が整い始めた頃、二人はゆっくりと身体を離した。ティトは機嫌を窺うように、意中の少女の
顔を覗き込むが、そこに望んだものはなかった。
 緊張の糸が切れたのだろう。目が合うなりセラは悲しげに顔を歪め、涙を浮かべて心中を訴え始めた。
「私……貴方の言うこと、ちゃんと聞きます。ずっと貴方を支えます。だから、もっと私のことも考えて下さい。
 もう会わないなんて……言わないで下さい」
「……そう、だね」
 ティトは自分の愚行を認め、嗚咽を漏らすセラの髪を慰めるように撫で梳く。
 もう二度と悲しませまいとした少女に、最後の最後で涙することを許してしまった。結局彼女の希望に
沿うことが、最も確実な贖罪方法となるのだろう。
 『王女』のためではない。全ては彼女個人のために。
 生涯の献身を胸に誓い、二人は深く、口付けを交わした。


「あ、あの、父様」
 ロイドとディアナが城門を抜けると、二人は不意に、聞き馴染みのある声に呼び止められた。
揃って振り返ると、普段の快活な姿など微塵も感じられないほどに硬くなったケイトが、ぎこちなく
歩みを進めていた。胸には覇竜に傷を負わせた剣が、大切そうに抱えられている。
「これ……」
 抱えられていた剣がそっと差し出される。しかし、ロイドはすぐには受け取らない。視界に入った
丸腰の娘の姿に違和感を覚えたからだ。
「剣がないのか?」
 俯いたまま黙り込み、ケイトは何も答えない。しかし答えずとも、昔から片時も剣を手離すことなど
なかったのだから答えは知れている。
 差し出されていた剣に手が伸ばされる。そのまま持ち主の元へ返るかと思いきや、しかしケイトは
手の平に別の感触を覚えた。よく見るとそれは、ロイドが過去に愛用していた細身の剣だった。
「まだ使える。折るなよ」
「……え」
 半ば押し付けられる形で手にした、思いも掛けない新たな剣。使い込まれているためか、柄はケイトの
手にもよく馴染む。
 全く予測していなかった事態に困惑し、絶句する娘をディアナは微笑ましく眺めている。
「ケイト、また後でね」
「…………」
 気恥ずかしそうに固まる娘に声を掛け、ディアナはロイドと共に崩壊し切った街へと向かった。


296神竜の謳 Ch.11:2011/03/27(日) 15:18:26.60 ID:tcYL7P6H
 それからケイトは、以前よりも笑うようになった。ロイド不在の際に滲み出ていた殺伐とした雰囲気など
一切なく、周囲に柔らかな印象さえ与えるほどだ。躍起になって鍛錬に励むこともなくなり、ライラと
共に過ごすことも多くなった。
 別に彼に気を使っているわけではない。新たな住み処であるラスニール城がどうにも肌に合わず、
外で過ごす割合が増えたのだ。彼は黙っていても寄って来るため、単に話相手としているに過ぎない。
 この日も破壊された訓練施設の近くの丘で、二人は休憩がてら、復興に追われる街をぼんやりと眺めていた。
「ラストニアの血筋、ねえ……」
 ロイドの生存は、ラスニール騎士団総帥への就任と同時に国中に知れ渡った。勿論、元ラストニア軍
総司令官の肩書きを共にして。政略結婚の餌食とされたティトの身元も公となり、必然的にケイトの素性も
白日の元に晒されることとなってしまったのだ。
「聞いてねえ……」
「私も聞いてない……」
 ケイトにとっても寝耳に水。しかし、別段普段の生活に大きな変化が伴うわけではない。城を住み処と
することも、今は慣れずともいずれ馴染むことだろう。国家間の事情にも特に興味はなく、この会話も所詮
ただの世間話に過ぎない。
 故に多くを語る必要は皆無であり、本音を零すライラを横目に、ケイトは普段と変わらぬ調子で適当に
話を切り替えた。
「それにしてもおまえ、情けなかったなぁ。神竜を挑発して結局何もできず仕舞い。何がしたかったんだよ」
「……それは」
 ライラは気まずそうに俯く。本当ならば挑発により注意を引き、動向を探るつもりだった。
 しかしその目論見が達成されることはなかった。眩い謎の光を浴びたあの時から、神竜の思考を拾うことが
できなくなってしまったのだ。
 原因は不明。落としどころのない曖昧な説明を受けるも、ケイトは特に関心もなさそうに答えを返した。
「邪魔者扱いされてたな。よくわからないけど、元に戻されたんじゃないのか?」
「…………」
 可能性は十分にある上、確認手段がないわけでもない。彼の血に帯びる覇竜の魔力は今、脳へと届く
直前で中和され、中枢神経を侵すことなく全身を巡っている。
 つまり、永続的に魔力を放ち、ライラの命を守っている魔道石の髪留めを外してみれば良い。
297神竜の謳 Ch.11:2011/03/27(日) 15:18:44.13 ID:tcYL7P6H
 当人も何となく勘付いてはいた。しかし、どうしても踏み切ることができなかった。こめかみ付近へと
恐る恐る手を伸ばしても、触れるのみで終わってしまう。
 もしこれで、死を臭わせるほどの苦痛に苛まれてしまったなら、他に手がない現状ではもう二度と
元の身体に戻ることは叶わないかもしれない。僅かな希望を根こそぎ奪われてしまうことは、彼にとって
恐怖でしかなかった。できることなら誰かに、背中を押して欲しいと思っていた。
「なぁ、ケイト。もしこれで、全て元に戻ってたら……」
「戻ってたら?」
 言い掛けて、ライラは俯き口を噤む。今まで散々迷惑を掛けて来た上、自分の都合で身勝手な要求を
飲んで貰うなど虫が良すぎる。
 しかし一人躊躇するライラへと、ケイトは特に他意もなく、当たり前のように激励を送った。
「そうだなぁ。元に戻ったら、いずれ好きな人と結ばれて、子供だって作れる。長年の悲願が叶うわけだ。
 でも、今勇気を出さないと永遠に叶わない。試してみて損はないよ」
「……言ったな?」
 何の気無しに零された発言に、彼は待ち侘びていたように食いついた。今までの苦悩など嘘のように、
躊躇いなく髪留めを掴み、握り締める。そして僅かに浮かせて苦痛が伴わないことを確認するなり、
無造作に地に落とした。
 ケイトが振り向いた時には既に、魔道石は天を向き、草むらに転がっていた。
 平然と送られる視線を感じつつ、ケイトは誤解を与え兼ねない自分の発言に気付く。はっとして
ライラの顔を見遣るも、そこには感動など欠片もない。
「ケイト。おまえ俺の本心知ってるよな?自分の言葉には責任持てよ?」
「そう言えば……そうだった……」
 一種の平和呆けか、或いは現実から乖離し過ぎた出来事だったためか。以前に比べて最近は特に
何事もなく、ライラとの悶着を含めた神竜の一件など、既に絵空事になり掛けていた。
 それを知ってか知らずか、彼は脅迫的、かつ高圧的な態度で近付く。ケイトが慌てて後退っても、
二人の距離は一向に縮まらない。
「いいんだな?わかってて言ったんだよな?」
「ちょ、ちょっと待て、目が本気だぞ」
「当たり前だ」
 自分の発言に責任を持つのは当然のこと。ケイトは思慮の足りない発言を悔やむが、既に後の祭り。
言い切ってしまった手前、ライラが本気である以上彼の気持ちを無下にするわけにもいかず、かと言って
前言撤回が認められる空気でもない。
298神竜の謳 Ch.11:2011/03/27(日) 15:19:02.66 ID:tcYL7P6H
 彼は後退るケイトとの距離を遠慮なく詰め、反応を試すように手を伸ばす。逃げるように身を引きながらも、
ケイトは以前のようにきっぱりと拒絶することができなくなっていた。彼は、根は悪い人間ではないからだ。
しかし顎に指が触れた途端、ケイトは反射的に腕を伸ばし、ライラを突き飛ばしてしまっていた。
 予想していたであろう結果を、彼はどこか寂しげに受け止めている。その様子を見てケイトは気まずそうに
背を向け、取り繕うように言い放った。
「さ、先に言いたいことがある。一応、おまえのおかげで私もティトも助かったんだ、礼は言っておく。
 でも、まだ全て許したわけじゃない。だから、どうしてもと言うなら条件がある」
「条件?」
 瞳に僅かな光を宿し、彼はケイトの提案に耳を傾けた。元気付いた姿を尻目に心の内で安堵しつつ、
ケイトは父より授かった剣を握り締める。
 そして悪戯に笑みを浮かべながら、期待の眼差しを湛えるライラへと、絶壁の如く高いハードルを課した。
「私の父様に認められてみろ。父様が認める人間なら、喜んで生涯付き添ってやろう」
「…………」
 突破不可能としか思えぬほどの難壁を提示され、彼は座り込んだまま硬直する。
 相手はかつて圧倒的軍事力を以って世界中を震撼させた、ラストニアの王位後継者であった人物だ。
認めさせる方法など検討もつかない。
「会ったことすらねえよ……」
「いずれは通る道だろ。今のうちに片付けておけば後々楽になるぞ」
 これは、何度も強引に身体を奪った代償のつもりだった。たとえ正当な理由があったとしても、それなりに
辛辣な試練を課してこそ、釣り合いが取れるというもの。むしろこの程度では甘いと思えるほどだ。
 ライラは苦渋の色を浮かべながら思い悩んでいたが、やがて真剣な面持ちでケイトを見据えた。
 やっと腹を括ったのかと思いきや、しかし彼は突拍子もない提案を口にした。
「ケイト。駆け落ちしよう」
「はぁ!?」
 有無を言わせず背後から腕を回し、断らせる間も与えずに彼はケイトは身体の自由を奪った。
 暴れても女の力では到底敵わず、ただの無駄な徒労に終わっている。
299神竜の謳 Ch.11:2011/03/27(日) 15:19:41.41 ID:tcYL7P6H
「こっ、この根性なし!こら、どこを触……」
 胸元を手で押さえられ、反射的に振り向いたケイトの唇は、まるで狙い計られていたかのように塞がれた。
即座に頭部を押さえられ、ケイトはそれを振り解けぬまま草むらへと身体を倒された。
 反論を封じる口付けは容易には解かれず、撓う身体の線をなぞるように手が下方へと這う。衣服の中に
指が忍び、肌を直に触れられる。人肌の感触に震え上がり、ケイトは堪らず蹴り飛ばしてやろうと
意気込むが、彼は瞬時にそれを察し、意外にもあっさりと拘束を解いた。
 酸素を求めて呼吸を乱すケイトを満足気に見下ろし、彼は勝ち誇った様子で笑みを浮かべている。
「わかったよ。その条件呑んでやる。ただし無期限でな」
「おま……覚えてろ……」
 ロイドに異様に高い理想像を吹き込むか、或いは如何にライラが非常識な人間であるかを説いても良い。
軽率な行動を後悔させる術はいくらでもある。
 たとえ泣き付かれても絶対に妥協しないことを心に誓い、ケイトは固めた拳を地へと落とした。


 甚大な被害を受けたラスニールの復興も、ライラの悲願成就も、双方共に相当な時間を要する。
 神竜の力によるものか、頻繁に出現していた魔物は全く姿を現さなくなっていた。ティトが気に掛けずとも、
種族間の争いは嘘のようになくなったのだ。
 しかし、彼らは決してその存在を消したわけではない。神竜の棲む森は確かに存在する。急成長を
促された木々は天高くそびえ立ち、数多の生命を抱え、侵入者を拒むようにその入口を閉ざしている。
 森は今も成長を続け、より堅固な不可侵領域を築き続けている。それ故その森は人々に畏れられ、
いつしか誰一人として近付かなくなった。

 ラスニールが落ち着きを取り戻した後も、世界は常に目に見えぬ不可思議な気配に包まれていた。
 彼らの存在が記憶から薄れて来ようとも、ふと空を見上げる度に、ケイトもティトも在りし日の
断罪の旋律を思い出す。残された深い爪痕と共に、それは永遠に二人の記憶から消えることはないだろう。

 不滅の空は未来永劫変わりなく、この世の全てを繋ぎ止める。
 今日もまた、全てを統べる天空に、命の系譜が響き渡る──
300神竜の謳 Ch.11:2011/03/27(日) 15:19:51.45 ID:tcYL7P6H
以上で完結です。
長らくこの場をお貸し頂き、ありがとうございました。
301名無しさん@ピンキー:2011/03/27(日) 16:13:55.11 ID:HsAjKke+
寂しい気もするけど、完結おめ!
超乙でした。
302名無しさん@ピンキー:2011/03/27(日) 21:42:50.93 ID:rk+R05NV
神竜GJでした!!ティトとセラたんが幸せになってくれて良かったです
303名無しさん@ピンキー:2011/03/28(月) 14:47:34.81 ID:IJ440qeD
やっと終わったか
304名無しさん@ピンキー:2011/03/28(月) 18:50:13.54 ID:dI16oBMN
>>300
GJ
セラたん良かった
305名無しさん@ピンキー:2011/03/28(月) 18:51:08.24 ID:fXOoxTgW
>>300
今までお疲れ様完結おめでとう!
ティトとセラタソがどうなるか気になるw
それにしてもロイド何故騎士団なのかと思ったらw
フラグ回収率半端ないな…青年カワイソス
またどこかで読めること期待してる
306名無しさん@ピンキー:2011/03/30(水) 00:03:47.25 ID:UFNi3dDm
視線の続きを投下する

今回は翌朝設定の亀展開
307名無しさん@ピンキー:2011/03/30(水) 00:04:04.06 ID:UFNi3dDm

背中の温かさに目が覚めるとリインは後ろから抱き込まれていた。ベッドサイドの時計では朝の早い時間だ。
背後から腕を回した男の規則正しい寝息を聞いて、昨夜からのことを思い返す。
結局また抱かれて、最後は気絶するように眠ってしまったらしかった。外が薄明るくなっていたので夜明け近かったのだろう。
眠る時まで離さない腕と自分をいいようにした手を見ながら、リインは体と同じく心も重かった。
ストーカーといってもよい執拗な視線をよこした男。そんな男に……
自分がまんまと誘惑されて魂を差し出してしまった戯曲の間抜けな人間に思える。さしずめレナードは悪魔か?
起こさないようにそっと抜け出る。途端大腿を伝う液体の感触に不快な思いを生じる。
それを拭った後ガウンを羽織って浴室へと行こうとした足を、控えめなノックが止めた。
ドアガードをしたまま細めにドアを開ける。そこにはホテルの従業員が立っていた。
「ランドリーサービスです。服が仕上がりましたのでお持ちしました」
レナードが足止めのために出したリインの服だ。ドアを開けて受け取り浴室に持って入る。
体はざっと拭かれているようだが、シャワーを浴びて今度こそ服を身に着ける。
鏡に映った顔は一晩で人相が変わってしまったような気がした。色々なことがありすぎた。――悪夢のような一夜だった。
今は自室に帰って一人になりたい。一人きりになりたい。
バッグを取りに部屋に戻るとレナードが服を身に着けてソファに座っていた。端正な姿だがどこか気だるげにも見える。
「おはよう。朝食を食べるか?」
「要りません、失礼します」
きつい口調になるリインとは裏腹に、レナードはどこまでも余裕だ。自分で用意したと思われるコーヒーを飲みながらゆったりと笑う。
「水臭いな、他人行儀で。夜通し肌を合わせたというのに」
「――よくも、そんな言い方ができますね」
だましていた上に無理やりだったのに。そんなリインの抗議をさらりとかわす。
「事実だろう。私は君を抱いた。君は私に抱かれた。違うか?」
違わない。だが、本意ではない。
リインは何も言わずに部屋を出た。エレベーターに乗りこみロビー階を押す。閉まりかけたそこにレナードがするりと入り込む。
とっさに後ずさるリインだったが、レナードは動くことはせずエレベーターは下降してロビー階で開いた。
エントランスを目指すリインにレナードは落ち着いた声をよこす。
「チェックアウトしたら送ろう」
「必要ありません、一人で帰れます」
本部や官舎からそう遠くはないので歩いても帰れる。
「いいから待っていなさい」
ロビーで声は抑えていたものの押し問答になっていた二人に、声がかかった。
308名無しさん@ピンキー:2011/03/30(水) 00:04:28.29 ID:UFNi3dDm

「おや、こんな所でお会いするとは」
レナードは即座に穏やかな表情を浮かべて声をかけてきた人物に対応する。リインがよく知っていた雰囲気だ。
本心を見せずどこまでも穏やかな軍幹部としての姿。権謀術数うずまく中を泳いでゆくための姿なのだろう。
「お早うございます。奇遇ですね」
リインは少し離れて二人のやり取りをながめた。この時にさっさと逃げ出しておくべきだった。
声をかけてきたのはリインも顔は知っている将官か佐官だった。
その人物はレナードとの会話が一段落した時、リインに目線を移す。敬礼しそうになり場所を思い出して礼をする。
「君は、確か……」
思い出そうとするかのように小首をかしげる相手にレナードが助け舟を出す。
「今年入隊した少尉です」
それで合点がいったのか、ああ、という顔になる。
「そういえば本部で見かけたような。……これは隅に置けませんな」
午前中のホテルで二人連れ、で察したようだ。レナードは穏やかな口調で受け流す。
「いや、年甲斐もなく恥ずかしいところを見られてしまいました」
「定例会議でも柔軟で斬新な発想をお持ちと感服しておりましたが、なるほど、いや羨ましい」
レナードとの年の差から年若い女と付き合っているので柔軟で斬新、言い換えれば若い発想ができるのかと皮肉めいた言い方だ。
思い切り否定したいリインだったが、それをするのは僭越かとはばかられた。
「そう言われると面映いですな。では『私達』はこれで。さあ、行こうか」
あっさりと言い、結果的に肯定するような状況に持っていったレナードはリインの背に手を当ててエントランスの方へと歩いた。
陰になる柱のところまで行ってリインは背中の手から体をはがす。
レナードは毛を逆立てた猫のようなリインの様子を見て笑いを含んだ声音になる。
「公表する手間が省けた」
頬に血の気が差すのと同時にリインはレナードの言うとおりとも思う。さっきのが将官であれ佐官であれ、きっと私的な会話などで
笑いを含んだ格好の話題にすることだろう。
レナードが一緒にロビーに来たのも計算の上だったのだろうか。ありえない話ではない。
これ以上事態をややこしくしたくない。リインはきっぱりと言い切る。
「今度こそ帰ります。送りも見送りもいりません。もう私に構わないで下さい」
だが、悪夢は夜のみならず訪れるものらしい。いや、悪魔と友達なのか。
「……リイン?」
背後から聞こえる聞き覚えのある声にゆっくりと振り向く。リインの視線の先には友人達の姿があった。
「どうして、ここに?」
「ここのランチバイキングに来たんだけど、ちょっと時間が早いからラウンジでお茶でもしようと。あの、リインにもメールを
したんだけど届いてない?」
メール……携帯は昨夜レナードとバーに行くときにマナーモードにしてバッグに入れたまま。
昨夜のことというのに、随分と前のような錯覚を覚える。それほどある意味人生を変えてしまった一夜だった。
「リインは、あの……」
背後にいるレナードを友人達は当然知っている。一緒に食事に行っていると話もしていた。
付き合っていると噂されているのを教えてくれたのも彼女達だ。
この状況からおのずと導かれる結論は……
ゆっくりと、いくぶんぎくしゃくと振り返ったリインの目の前でレナードの唇が弧を描く。
――公表する手間が省けた――さっきレナードの言った言葉が頭の中でこだまする。
レナードの笑みがいっそう深くなる。
とても優しいのにどこかに突き落とすような、引きずり込むような笑み。自分に微笑むのは悪魔のようなレナードだけ、なのか。
そこがリインの限界だった。気が遠くなり、意識が闇にのまれてゆく。
309名無しさん@ピンキー:2011/03/30(水) 00:04:53.48 ID:8QM1sxyy

友人達からレナードに目を移したリインは少し後ずさる動きを見せてその場にくずおれた。
「リイン!」
「おっと」
友人達の悲鳴に近い声が上がる中、レナードはすばやく動いて頭を打ち付けるのをとどめてリインを抱き上げた。
騒がないようにとリインの友人を制する。
「大事無い。疲れが出たんだろう。――しかしこれではもう一泊する必要があるか」
レナードの言葉をリインに近寄っていた友人達が聞きとがめる。
急いでやってきたホテルマンにレナードは依頼をする。無論側で聞いているリインの友人達にも会話は筒抜けだ。
「チェックアウトをするつもりだったが、このような次第なので延泊したい。今までの部屋は掃除をしてもらう必要があるので
空いている部屋があればそちらに入りたいのだが。至急調べて手配してくれればありがたい」
客室の状況を確認するべくホテルマンが事務室に消えたのを見ながら、レナードはリインの友人達に向き直る。
「君達、今日のことはあまり騒がないでやってくれないか? 見ての通り私と彼女は色々隔てが大きいので噂になると彼女が
気の毒だ。必要以上に目立ちたくないのでね」
真摯な口調のレナードに緊張していた友人達は、それを解いて請合う。分かっています、と。
だが集団が、特に若い女性達が秘密を守るのはとても難しいのを知っているレナードは内心では事の成り行きを予想する。
友人の一人が心配そうな顔でリインを見やる。
「大丈夫でしょうか? このところずっと視線を感じるって参っていたようでしたから」
レナードはああ、と頷く。
「その件なら承知している。今後彼女に危害を加える心配はない」
レナードの言葉にほっとした顔を見せる。いつかリインが話していた親友とやらが彼女なのだろうと見当をつける。
「ああ、それなら良かったです。あの……リインのこと、よろしくお願いします。とてもいい子なんです」
腕の中のリインに目をやったレナードは友人を見つめる。かすかに友人の顔が赤らむ。
「君達のような友人がいて、彼女は幸せものだな」
そこに先程のホテルマンが戻ってきた。どうやら部屋が確保できたらしい。新たなルームナンバーを告げられ、レナードは
リインの友人達に声をかける。
「私達はこれで失礼する。ああ、君達のランチ代を私に払わせてくれ。ルームナンバーと私の名を出せば決済できるようにしておく。
バイキングもいいが、ホテル内の好きなところで食べてくれてかまわない。ここのメインダイニングのランチは絶品だと思うが」
側にいるホテルマンが頷く。友人達もこの申し出に目が輝いている。
「いいんですか? ここのメインダイニングってすごく有名なお店ですよね」
その分値段も張るので有名だがレナードにとってそれは些細なことにすぎない。
「彼女の友人に心配をかけてしまったんだ。これくらいはさせて欲しい」
レナードの提案を受け入れて礼を言う友人達に見送られて、ホテルマンに先導されたレナードがエレベーターに消える。
残った彼女達の一人がほうっとため息をついた。
「格好いい、大人って感じ」
「リインとはちょっと年は離れているけどお似合いよね」
皆でうんうんと頷きあう。
「延泊って言っていたけど、それって昨日二人で泊まったってことだよね」
刺激の強い話題に顔を赤らめつつ、メインダイニングに行くべく彼女達はエレベーターのボタンを押した。
310名無しさん@ピンキー:2011/03/30(水) 00:05:14.26 ID:8QM1sxyy

案内された部屋に入るとホテルマンが毛布をめくってくれた。そこにリインは静かにおろされた。
「なにかございましたらフロントにご連絡ください。ホテルドクターに連絡をとります」
ホテルマンの心遣いに礼を言って、二人きりになる。顔色はやや悪いが呼吸や脈拍は安定しているのでさほど心配はしていない。
とりあえずルームサービスで食事をして、端末を使ってここでできる仕事をこなす。
その合間に予想した、いや予想以上の結果にレナードは思い出し笑いをする。
本部にほど近いホテルだ、軍関係者には会うだろうと予想していたが実に理想的な顔ぶれだった。
自分の知り合いの佐官に、彼女の友人達。これで話が、噂が広がる。
リインは軍内で既に有名なので、異性との話題は非常な関心をもって迎えられるだろう。
食事に行っていることや、ごくまれに本部内の隠れ場所のようなところで二人でいたことなども噂になっていたようなので、今回の
ことは当然の成り行きとして認識されるだろう。
これで第一段階。
次の問題点として、必ずリインが離れようとするはずだ。それをどう封じるか。
枷は多いほうがいい。だが多すぎても興をそぐ。種類と強度は吟味しないと。
これまでのリインを取り巻く環境と、今日のできごとから満足のいくシミュレーションができたのだろう、レナードは一つ頷く。
「大嫌い、か」
リインの寝顔を見ながら投げつけられた言葉を反芻する。
当然だろう。視線というストーカーまがいの行為をしてきた。リインの危機を救ったのも、休憩場所で出会ったのも偶然ではあったが
即座にその状況を組み込んで利用したのは確かだ。
その一方で相談にのり、リインを安心させ距離を縮めてきたのだから。
両者が同一人物と悟った時のリインの表情。
――驚愕と混乱と絶望、そして嫌悪、憎悪。実に多彩な感情を見せてくれた。
頭をなでて頬に手を当てる。やわらかく上質な感触を伝えてくる。肌も感度も、中も申し分ない。
体の相性は悪くはなさそうだ。素質は十分で久しぶりの行為という点を差し引いても、レナードは既に溺れそうになっている。
開発しがいのある極上の素材に胸が躍る。そこにあの気概だ。
舌を噛まれた時などぞくぞくした。美しく、抗う、誇り高い存在をどう自分好みにしていこうか、とその過程も楽しみになっている。
「……気の毒だがとことん付き合ってもらう」
とりあえずは手に入れたリインに囁く。自分なりの愛情をこめた眼差しで。

311名無しさん@ピンキー:2011/03/30(水) 00:05:38.98 ID:8QM1sxyy

リインは目をあけてしばらくの間ぼんやりとする。ここは? 確か、ロビーで友人達と……
視線を横に向けデスクで何かをしているレナードの姿を認めた途端、跳ね起きる。
「急に動くとまた倒れる。安静にしていなさい。気分はどうだ? 何か食べるか?」
「何故、また部屋に」
外の景色はさっきまでの部屋とは違うように見える。
とりあえず靴だけ脱がされた形で、服は脱がされた形跡がないのにほっとしつつ、レナードを警戒する。
「君はロビーで倒れたんだ。寝かせる必要があったので空いている部屋に入った次第だ」
思い出してリインは青ざめる。レナードの知り合いの軍人と自分の友人達に目撃されたことを。そして倒れて、部屋へ。
「これで公認、といったところか」
レナードの声に一気に体が熱くなる。公認など。
「冗談ではありません。絶対にごめんです。誰が、あなたと――」
レナードはベッドに近づき、知らず身を強張らせたリインにかがみこんで耳元に口をよせる。
内緒話をするように低くおさえた声にはかすかな笑いが含まれている。何を言い出すのかとリインは緊張する。
「冗談ではない、私は本気だ。――君の友人から君をよろしく、と頼まれたぞ」
「なん……ですって?」
顎に手をかけられて上向かされる。顔を覗き込むレナードは楽しそうだ。おおげさに頷いて続ける。
「君はとてもいい子、だそうだ。同性の友人がいるのはいいことだ。君は友人に恵まれているようだな。大事にするがいい。
まあ、とにかく何か食べなさい。もう昼に近い時間だ」
混乱しながらもリインはレナードの言葉を拒否する。このままここにいると、逃げ出せなくなりそうだった。
「いりません。離してください、閣下」
レナードが表情を消し冷たい瞳がリインを射抜く。威圧感が並ではない。
「次にいつ食べられるかは軍人であれば分からない時がある。わがままで体調を崩すなどもってのほかだ。
これ以上拒否するなら、口をこじ開けてでも食べさせる」
レナードが怒った姿は初めてで、静かな口調なのにとてつもなく恐ろしい。
すくんだリインに気付いたレナードが雰囲気を和らげる。
「消化のよいものを頼もう。好き嫌いは?」
「――ありません」

312名無しさん@ピンキー:2011/03/30(水) 00:06:02.77 ID:8QM1sxyy

再び強引に寝かしつけられリインはルームサービスが来る間、仕事をするレナードの後姿を眺めていた。
有能で人格者だというのがレナードの評判だ。その人格が著しく歪んでいるのを不幸にして知ってしまった。
だが女性にもてるという噂を聞いていたリインにはレナードの行動が解せなかった。
女性に不自由はしないはず。なら何故自分にストーカーまがいの行為をしてまで近づいたのか。
思考はドアをノックする音で霧散した。
ワゴンを変形させてできたテーブルにはフルーツとヨーグルト、パンケーキ、スープにジュース、コーヒーと盛りだくさんだ。
レナードは先に済ませたから、とフルーツを軽くつまんでコーヒーを飲んでいる。
食欲はないながらも何とか食べていく。味はさすがだったがこの状況でなければもっと美味しかっただろう。

ワゴンを室外に出したレナードが戻ってくる。リインはベッドの乱れを直して、出て行く準備を整えた。
ドア側の廊下にレナードが立っている、いや立ちふさがっている。
あれを突破して、ドアを出て、ホテルから去る。成功の可能性は笑えるほどに低いように思える。
レナードが近づいても窓側にしか逃げられないのが情けない。
「顔色がよくなった。成り行きだがもう一泊することになったんだ。ゆっくりしよう」
首を横に振り明確に拒否を伝えてもレナードには通じない。後ろに追い詰められる。
「随分嫌われたものだ。昨夜は私に応えてくれたのに。痛がって泣いて私にすがったところなど可愛かったぞ」
思い出してリインは顔が赤くなるのを感じた。自分の初めて、はこの男に……
硬い表情のままドアへと行こうとしたリインはレナードにとどめられる。
「官舎に戻ります。もう、私に構わないで下さい」
「それは無理だ。これからも関わりたいと思っている。逃げようと思うなと言ったはずだが」
手首をとられリインはまっすぐにレナードをにらむ。自分の意思は無視され結果が性行為とは到底――
「私はあなたが嫌いです、絶対に許せません。他の女性と付き合ってください」
「私は君がいいし、他の女性には興味はわかない。厄介なのに目をつけられたと思って諦めてくれ」
言われている内容はひどいが声は低く穏やかでリインの深いところを揺さぶる。

313名無しさん@ピンキー:2011/03/30(水) 00:06:29.18 ID:UFNi3dDm

話はそれまでとばかりにレナードはリインを反転させると出窓に向けて押し付け、後からスカートをたくし上げる。
「嫌、やめて、もうこんなことは嫌」
抗うリインの背後からのしかかる。手は前に回り下着の上から指を押しつける。
「大人しく、この部屋は低層階だ。あまり聞き分けがないと、ここで裸に剥くぞ」
ホテルを出入りする人の顔が識別できそうな高さだ。こちらも見られてしまう。レナードの脅しに動きが止まる。
「そう、いい子だ。私も君にそんなひどいことはしたくないのでね」
強引に割りいれられた膝でできたスペースを逃さず、下着の上からあやしく動く手指にリインは出窓に手をつく。
「――許さない」
「諦めろ」
リインの怨嗟の声をあっさりといなしてレナードはなおも指を動かす。
くすぐったい感覚が次第に疼くようなものに変わる。歯を食いしばって耐えた、つもりだった。
手が下着の中に入り込む。くちゅり、と水音がした。
その音にリインは唇を震わせた。嫌なのにどうして。体液のすべりを利用してレナードの指が陰核を指の腹でこする。
指ではじかれ身内を走るなにかにリインは背をそらした。
「やはり、君は感度がいい。全く面白い」
あくまでも興味の対象としての捉えられ方に、リインは絶対に反応を示すまいと誓う。
昨夜さんざんにレナードを受け入れた膣は指一本ならさしたる抵抗も見せなくなったようだ。だが嫌でも意識してしまうリインには
その一本がとてつもない存在感を示している。中を探るように押し、引っかき抜き差しされる。
中のある一点を掠めたときにリインはこれまでにない感覚を覚えた。それが何かよく分からないまま指がゆきすぎてほっとする。
親指で擦られている陰核の方が今はそこに血液が集まって脈打っている感じでリインの注意を引いている。
レナードは服の下から手を入れてやわやわと胸をもんでいる。服は乱されていない、それだけにその下でのレナードの振る舞いが
リインの羞恥を煽っている。
「……あ、」
吐き出す息をともに出た音にレナードがふ、と笑った気配がした。
「もっと声を聞かせてくれ。感じているのだろう?」
「ち、がう」
リインはかぶりを振る。一晩抱かれただけではしたなく反応するのは自分が許せなかった。こんな男に感じるはずなど。
窓にすがりついた手先に力をこめて自分を保とうとした。

314名無しさん@ピンキー:2011/03/30(水) 00:06:57.47 ID:UFNi3dDm

あくまでも頑ななリインにレナードは攻める手をやめない。指を増やして中を広げる。少し曲げた指先でリインの弱いところを
探していく。まだ反応は弱いながらもそこを刺激すると襞が締め付けてくる部位を探り当てた。
早くここだけでイかせてみたい。どれほど乱れることだろう、その時を想像するだけでたまらない。
陰核を小刻みに震わせる。
「や、やめ、て」
拒否するリインの語尾が弱くなっている、その様子がひどく愛おしい。
「あまり煽らないでくれ、我慢がきかなくなる」
リインの耳にレナードがベルトを緩める音がした。下着を片足から抜かれ、背後からおさえる力が増して腰をつかまれたと思うと
硬く、熱いものが入り込んできた。
「うう、くぅ……や、いや、」
ぐ、と質量のあるそれはリインの中を分け入り押し広げながら奥まで到達する。みっしりとリインの中に居座っている。
前に逃げ場のないリインにレナードが背後からついてくるそれは子宮口を刺激する。引かれるときには臓器が引きずり出されるような
気がしてリインは中を荒れ狂うような嵐に耐えた。
レナードも興奮していた。着衣のままリインを立たせて背後から貫く。視覚的にも非常に刺激的だ。
ベッドとはちがってスプリングに力が逃げない分、リインにもレナードにも与える刺激が大きい。陰茎に亀頭に当たる襞や中の形が
変わってひどく、よい。腰をつかって快楽を追う。
声は出さないながらリインの背がしなった。その途端当たる角度が変わって先端がきゅうっと締めつけられた。
「っ、うっ」
何とか衝動をやりすごしまたリインの中に自分を刻む。すりあげ、こね回し、奥を突く。
リインの膣がレナードの動きに応じて襞が絡むようになった時にレナードは精をはきだした。緩やかに蠕動し収縮するそれはひどく
気持ちよく優しく包まれているように思えた。
リインは出窓に上体を預け、そのままずるずると床に座り込む。
汗に光り紅潮した顔はひどく美しかった。いまだ落ち着かない息も耳に心地よい。
仕打ちに耐え切れなかったのか悔し涙を流している。力が入らないくせに抱きしめると抗う。
本性を晒さずに抱いていれば決して見せてはくれなかっただろう反応に、倒錯的な愉悦を感じるのだからどうしようもないと
レナードは自分に笑えてくる。
腕の中でもがくリインを決して手放さない。
まだ声も聞かせてくれない気丈なリインを早く啼かせてみたい。淫らな欲望にレナードはリインを抱きしめる手に力をこめた。


以上続く予定
315名無しさん@ピンキー:2011/03/30(水) 00:58:59.32 ID:ofW75mHs
GJ!!!
一瞬、仕官も友人も、ホテルで会うのを仕組んでたのかと思ったw
堕ちるのが先か、懐妊が先か、楽しみにしてます。
316名無しさん@ピンキー:2011/03/30(水) 02:04:32.18 ID:10zoZ9AS
これが噂のデレツンですか?
GJ!!
友人の言うとおり、
いや違う意味でも何故かお似合いに感じるよこの二人。

デレツンデレになりますように・・・
317名無しさん@ピンキー:2011/03/30(水) 13:51:04.19 ID:AWOUqSv+
GJです
レナードが怖すぎワロタw
318名無しさん@ピンキー:2011/03/30(水) 23:18:23.01 ID:Q66hwT31
GJ!
レナードさん策士すぎパネェ
319名無しさん@ピンキー:2011/03/31(木) 23:54:57.38 ID:sDuj9N2G
ストーカーエロジェントルマンGJ
320名無しさん@ピンキー:2011/04/01(金) 00:35:25.69 ID:m/t5KB/A
これリインはリインで実に犯しがいがあるんだろうなw
本気で悔しがってるのがとても可愛い
321名無しさん@ピンキー:2011/04/01(金) 00:57:25.75 ID:oP6jxjLi
gj!
友人達に聞こえるように連泊を強調するのに笑ったw
しかしリインがデレデレになったら興味を失うのか?ってつい思ってしまうほどの
どこまでも困難な道を行くのが好きなストイックさとドSジェントルマンぷりがパネェっすw
続くみたいで楽しみにしてます!
322名無しさん@ピンキー:2011/04/09(土) 01:40:24.95 ID:1GHhDQQq
そういや、公爵家の人はどこいったんだ?
なんか色々問題のある人なのか?
どいでもいいから投下してくれ。
頼む!
323名無しさん@ピンキー:2011/04/09(土) 01:58:01.25 ID:YOsJ8azi
震災後投下がないってことは…
324名無しさん@ピンキー:2011/04/09(土) 02:06:43.42 ID:E9wP9Qxf
いや、らしき人が震災後に……
325名無しさん@ピンキー:2011/04/09(土) 06:56:34.77 ID:e36dlbaf
さすが信者は空気読まないで話題にだせるな……
326名無しさん@ピンキー:2011/04/09(土) 09:58:31.56 ID:G/qh++6c
……
327名無しさん@ピンキー:2011/04/09(土) 11:04:06.47 ID:jyXNUBrk
書き手の状況は分からないもんだからな
来ると信じて気長に待とうぜ
あと宵闇の続きも待ってる
328名無しさん@ピンキー:2011/04/09(土) 13:10:45.54 ID:IuoBk7rG
ミレーユたんは今風の表現で言えばブヒれるから大好き
329名無しさん@ピンキー:2011/04/09(土) 14:07:01.15 ID:6IhYg40H
ブヒれるっていったい何ぞやと思ってググったら
普通に萌えるっていう意味なのか、SM系の用語かと思ったw
続き気になるといえば神山家も気になるなー
そしてぽよよんお姉さんもしつこく職人さんを待っているんだぜw
330名無しさん@ピンキー:2011/04/09(土) 15:15:30.81 ID:jyXNUBrk
ああ、『萌え豚』の派生語か
しかし、この呼称もエラい自虐的だな
331名無しさん@ピンキー:2011/04/11(月) 00:33:43.05 ID:XdCWlCe8
ブヒれるって、一瞬SMプレイの鼻フックの事かと思ったw


続き読みたいけどもう完結しちゃったっぽい作品ならあるわ
332名無しさん@ピンキー:2011/04/11(月) 01:03:46.30 ID:HJKlfjxM
ブヒるって元々罵倒後だった筈なのに
萌え豚共々罵倒される側が喜んで使ってるからなあw
ある意味心情をズバリ言い当ててるからなんだがw>ブヒるorブヒれる
333名無しさん@ピンキー:2011/04/12(火) 13:13:30.88 ID:clz5/ROp
続き待ってます…
334名無しさん@ピンキー:2011/04/12(火) 20:54:00.87 ID:gEIoAEXF
AGE
335名無しさん@ピンキー:2011/04/18(月) 03:13:43.06 ID:97nl/crm
保守
336名無しさん@ピンキー:2011/04/21(木) 22:17:40.97 ID:E5UPZ2wC
なんか雑談まで途切れるの珍しいな
投下待ち保守

前にも話題で出たけど
愛ゆえに無理やりだと男がヤンデレか策士みたいになっちゃうけど
それとは無縁な無理やり男を考えているんだけど難しいなー
337名無しさん@ピンキー:2011/04/21(木) 23:17:51.30 ID:UlA5jMkB
そういうのじゃなく普通の男や女でも、嫉妬の上激情にかられて・・・・とか
誤解や感情のすれ違いが重なって・・・・とかは過去作品に結構ある、
というか典型だと思ってたんだけど。
そしてそんな典型が一番の大好物なんだけれども!!


338名無しさん@ピンキー:2011/04/21(木) 23:29:11.37 ID:E5UPZ2wC
おおすまんそういえばそういうのもあるなw
っていうか言われてみれば過去作品にもあった
でも嫉妬の上激情に…は自分にはヤンデレカテゴライズだったw
339名無しさん@ピンキー:2011/04/22(金) 00:59:08.89 ID:JniJphmZ
まあ、ヤンデレも人により定義が果てしなく曖昧だからなw
無理矢理犯しにかかる正真正銘のヤンデレ男も激情に駆られて犯しちゃう男もどちらも良し
女の子が可哀想でエロい目にさえ会えば!!
340名無しさん@ピンキー:2011/04/22(金) 01:28:28.40 ID:twHFzuxG
可哀想でエロくて嫌なのに、感じちゃう!

あ…わたし、なんでこんなに感じちゃうの?
あ!駄目ぇそこはっ
ぁん、あ…なんか変な音が……
んっやめてキスしないで…
いや…だめ…なんか子宮の奥が熱く…ぁぁ…でもダメぇえ、くちゅくちゅしないでぇ
ぁぁあぁ…

てな感じお願いします。
341名無しさん@ピンキー:2011/04/23(土) 06:17:48.03 ID:StIHZqyO
女の子的に凄く理不尽で慰み物にされてる感じだとたまらんな
犯されてる女の子に萌える
342名無しさん@ピンキー:2011/04/23(土) 07:02:28.83 ID:UC55qLqU
では僭越ながら、不肖名無しが早速
すごく理不尽に慰み者になってる女の子ものを投下します

元々版権ものを改変し、無駄に長いのでご注意下さい
男性視点、強姦展開。苦手な御方はスルーでお願いします。
343名無しさん@ピンキー:2011/04/23(土) 07:03:07.35 ID:UC55qLqU
彼は優等生だ。
私立高校の三年生で学業成績は優秀。部活動での活躍が目覚しく
集団生活における協調性もあり、校外ボランティア活動にも貢献して

しかも彼は容姿も秀麗で人柄も良く。校内他校老若男女問わずの親衛隊がいる。
学校社会の中で欠点の見えない優等生、それが彼の評価だ。

「えっと…あの…止めて下さい…先輩」
小さな抗議の声を上げ、彼女の瞳が大きく見開かれる。
本棚へ彼女の手首を強引に抑え付けて、その柔らかい唇へ触れ合う瞬前、離した。
「どうして、いつも、こんな事するんですか」

彼女の身体をようやく解放し、彼は人の良い笑顔で言い放った。
「いつも言ってるけど、君が好きだから」
正確に言えば君の泣き顔が好きだから、内心でほくそ笑む。

その日は、赤面してその場に座り込んだ彼女を置き去りに
彼女が現在付き合ってる男、『彼氏』が呑気に眠っているカウンターを通り過ぎ
何事も無かった様には彼は図書室を後にした。
344名無しさん@ピンキー:2011/04/23(土) 07:03:55.82 ID:UC55qLqU
『彼氏』へ彼女が秋波を送った結果、二人は付き合いだした。
というのは同じ高校の生徒ならば周知の事実だ。

それを彼が知らない筈は無い、が
状況を見計らってこの様なセクハラを幾度となく彼女に行っている。
彼は他人にすぐ分る様な愚は冒さないし、彼女は行為に抵抗できない気質であり
まして他人には公言も相談も出来ない。

故に、彼女へ対する彼の行為は日増しに激化していった。

最初は青い二人へのからかい程度の感情だった。
彼女に手を出した振りをすれば『彼氏』が躍起になって止めに来る。
それが面白かったのだが、最近では大分様子が変わってきている。
345名無しさん@ピンキー:2011/04/23(土) 07:04:56.61 ID:UC55qLqU
きっかけは、図書室で独り泣いていた彼女の相談に乗った時からだ。
『彼氏』の態度が冷たい私の事が本当に好きなのか?
等の恋愛する女の子が抱える命題へ
おざなりに返事をしてやってから、ふと気付いた。

半端な年齢層の娘特有の発展途上で不安定な美貌。
そして伏し目がちで涙映えする綺麗な瞳。
この時から彼は彼女を自分の物にしたいと思った。
346名無しさん@ピンキー:2011/04/23(土) 07:05:59.97 ID:UC55qLqU
「俺が気付いてないとでも思ってんの?」
「・・・君、離して…誰かに見られたら…」
「ふーん。見せ付けてやろうよ」
「……んっ…嫌…」

あからさまに如何わしい会話が、放課後の図書室の前で聞こえて
自分に対する挑戦と受け取った彼がドアを開けようとしたら
切なく鍵が閉まっていた。

その日は図書室で『彼氏』が彼女に何をしたのかを考えながら
沸く嫉妬を胸に彼は図書室を後にした。
347名無しさん@ピンキー:2011/04/23(土) 07:06:58.35 ID:UC55qLqU
彼の性質は他人は元より家人にすら知られていない。
丁寧な口調で誰にも分け隔てなく接して言い争う事も殆どない。
人間関係で確執を持たない為、表向きの処世術。

本来の彼は、もっと自己実現に貪欲である。
思った物は必ず手に入れてきた。
天才と呼ばれ、学業と部活動で好成績を収めている由縁でもある。

それは恋愛においても変わらない。例えそれが他人の物であっても
348名無しさん@ピンキー:2011/04/23(土) 07:18:40.11 ID:UC55qLqU
放課後、閉館時間直前。図書室は人気が無く、女生徒が独りしかいない。
委員会活動で遅くなった彼女である。
彼女は学校帰りに図書室へ寄ってから帰っている。

元々放課後は人入りが少ない図書室にて
カウンターの図書委員と殆ど二人きりの気まずい雰囲気な訳だけれど
意中の『彼氏』が委員の時もあるので
彼女は少女らしい期待を胸に本を読借りしに来る事を恒例としていた。
349名無しさん@ピンキー:2011/04/23(土) 07:19:01.20 ID:UC55qLqU
ただ彼女には二つの悩みがある。
一つは、付き合っている『彼氏』が最近焦るように彼女へ関係を求めてくる。
もう一つが、とある先輩の意図の読めない接触
よく考えれば、彼女に手を出す間男へ彼氏が牽制していると解りそうな構図を
鈍い彼女は全く理解していなかった。

それが、彼を増長させて『彼氏』を焦燥させている理由なのだが

対策として彼女は、『彼氏』には自粛する様に言い聞かせて
先輩とは遭わない様に心掛けていた。

といっても、今日も図書室に独りで居るという無防備さを彼女は露呈している。
図書当番は別の人間だと調べは付けたから安心して本を選んでいた。
350名無しさん@ピンキー:2011/04/23(土) 07:19:32.16 ID:UC55qLqU
「やぁ。・・・さん」
ここに居る筈の無い人間の声、身体をビクっと怯ませて彼女は恐る恐る振り返る。
人懐こい笑顔で微笑む先輩。
「オバケでも見た様な顔して。…最近、全然逢えなかったよね」

後ろ手で図書室の鍵を掛け、部屋の灯りを消した。
既に校内巡回への対策は完了である。
それから彼はゆっくり彼女の元へ近づいていった。

室内は静寂に包まれ、互いの呼吸と外の雨音しか聞こえない。

「先輩…どうしてここに居るんですか…?」
「当番を代わってもらったのさ。だから今日は邪魔が入らないよ」
351名無しさん@ピンキー:2011/04/23(土) 07:20:08.36 ID:UC55qLqU
以前『彼氏』から先輩には独りで近づかないで、ときつく言われていた彼女。
咄嗟にカウンターの電話を使おうとした彼女は腕を掴まれ、そのまま抱すくめられた。
光源はカーテンの隙間から差し入るのみ。激しく揉み合う二人

「離して下さい!先輩、私は・・・君が好きなんです!」
そうでも言えば男が止めてくれるとでも思っているのか
彼は彼女の認識がまだ幼いと知り、それもまた愉しめると思った。

『彼氏』へ対する嫉妬が行為の起爆剤となる。
「うん知ってるよ。でもそれは今関係ないから」
「人を呼びますよ!?」
「呼んでみれば?でも誰かに見られて困るのは俺よりも、君だよ」
352名無しさん@ピンキー:2011/04/23(土) 07:21:43.66 ID:UC55qLqU
事が露見すれば、双方ともに社会的な咎めを受けて今後の生活に支障をきたすだろう。
彼自身は口八丁で誤魔化す自信がある。
先立つ学校生活の人間的評価も抜かりは無い。

学園内一角の自分と目立たぬ女生徒
果して大人達はどちらの言い分を信じるだろうか

何より、彼女が恐れているのはこの一件が『彼氏』に知られる事

悲鳴を上げる口を口で遮った筈が、唇を噛まれて彼は刮目する。
すっかり気分を害した彼は彼女の横面を張った。
「痛いじゃないか」
小気味の良い音の一拍後、頬を抑えて呆然と先輩を見上げる彼女。
353名無しさん@ピンキー:2011/04/23(土) 07:22:05.96 ID:UC55qLqU
抵抗が弱まったので、体重の軽い彼女をテーブルの上に放り投げた。
彼は彼女の胴に跨り、セーラーからリボンを抜き去り両手首を縛った。

顔を背けた首筋に顔を埋め、舌先でぬるりと感触を堪能してそのまま耳たぶを噛んだ。
「や、やめて下さい」
どうも反応がつまらない。
もっと抵抗したり泣き喚いたりする君の色々な面が観たいのに
僕を差し置いて『彼氏』が独占する事は許せない

ぐいと顎を掴んでこちらを向かせた。彼女の怯えた目が瞬く。
「可哀想に、痣にならなきゃいいけど」
赤くなった頬を撫でて、相も変わらぬ人の良い顔で語りかけた。

「君が悪いんだよ。折角優しくしてあげようとしたのに」
「悪いのは…私なの?…何で…んっ」
思うように唇を塞いだ。
逃げる舌を追っている間に制服のボタンを外して
下着をずらすと小ぶりな乳房が揺れる。
先端を抓り上げたら彼女は苦痛に顔を歪めた。
354名無しさん@ピンキー:2011/04/23(土) 07:22:31.45 ID:UC55qLqU
彼女の両手首を掴んで上体を引き上げる。学ランのチャックを下ろした。
「彼にいつもやってあげてるように頼むよ。次噛んだらグーでいくからね」
自分のものを口腔奥まで捻じ込み、彼女の頭を押さえつけて揺さぶる。
律儀に筋を沿って舐めてくるが、思った通り慣れていない。

小さな口で根元まで咥える小動物のような彼女を見下ろした。
「『彼氏』はこんな事、君にさせなかったみたいだね」

温い粘膜から自身を抜き去って、今度は指をその口に突っ込んだ。
えずく彼女に構わず、スカートの中の下着をずらし、唾液に塗れた指で下腹を愛でる。
舌で上、指で下の先端を弄ばれて彼女も耐えきれず

「嫌!…嫌。先輩。私、は・・・君が…!」
防衛本能というべき生理的な官能と
彼の類い稀なる粘着質な床の才能によって彼女は達した。
355名無しさん@ピンキー:2011/04/23(土) 07:22:59.34 ID:UC55qLqU
「嫌だって言っておきながらこれとはね。『彼氏』じゃなくても良いんだ?」
荒い呼吸に合わせて上下する薄い胸板。か細い肢体は力無く投げだされている。
望まぬ性感であってもこの艶姿。
彼女の体液に塗れたその指を、その口に再度突っ込む。

オマエの味だ

等という陳腐な台詞は、流石の彼も云う趣味は無い。

自分ではない者にここまで慣らされていたと直感した。
壊してやりたい

「悪い子だ。君は淫乱だね」
耳元で囁かれた彼の言葉で彼女の決定的な何かが切れた。
356名無しさん@ピンキー:2011/04/23(土) 07:31:09.21 ID:Sa+0JzGJ
支援
357名無しさん@ピンキー:2011/04/23(土) 07:31:56.99 ID:UC55qLqU
薄闇の中、テーブルへ滴る鮮血。瞳の縁に溜まった涙
この前の一件では『彼氏』は彼女に最後まで手を付けていなかった証明

結局、彼は果てる事なく萎えた。
その間。期待通りに泣きも抵抗もしないで、彼女はずっと天井を見ていたから

彼を視界に入れずに

彼がベルトを絞め直した後も、テーブルの上で半裸のまま放心状態の彼女。
仕方が無いので、甲斐甲斐しく彼が身支度を整えてやり
事件発覚覚悟で彼女を自宅まで送り届けた。

帰り際でも、彼女はずっと無表情で一言も喋らなかった。
358名無しさん@ピンキー:2011/04/23(土) 07:32:12.97 ID:UC55qLqU
その後。事件は表沙汰になる事無く
彼女は一ヶ月程、学校を休んだ。

やがて復学した彼女は内向的な性格に拍車が掛かり
女子生徒以外と交際しなくなっていた。

どうやら、『彼氏』とは一ヶ月の間に別れていた様である。
359名無しさん@ピンキー:2011/04/23(土) 07:32:37.21 ID:UC55qLqU
それから春がまたやってきた。

卒業式終了後
帰路へ付いた彼女を待ち構えていたのは先輩だった。

恐怖が彼女の心を縛り、彼女は震えながらも彼の方を見た。

「久しぶり。・・・ちゃん」
あの時と同じ、人懐こい微笑み

彼女は一歩も動けなかった。

あの時の行為について先輩は丁寧に謝辞を述べた。
そして最後に、彼女へ囁く

「だけどこれで、君は僕の事を忘れられない」

それを聞いた瞬間、彼女は声を殺してその場で泣き崩れた。
傍から見たら、意中の卒業生に振られた後輩の姿に映るだろう。
360名無しさん@ピンキー:2011/04/23(土) 07:33:11.28 ID:UC55qLqU
彼女の泣き顔を、彼は皮肉気に見下ろした。

自分でも酷い事をしていると思う。
でも、心を閉ざした君があの時を忘れられない限り
僕が君にとって最初で最後の男だ。

例え彼女が自分をどんなに嫌っていても
略奪と束縛と独占。彼は満足を得た。
361名無しさん@ピンキー:2011/04/23(土) 07:34:31.46 ID:UC55qLqU
御静聴ありがとうございました。無駄に長いです、反省します
強姦ですが愛はありますので・・・ご容赦下さい
362名無しさん@ピンキー:2011/04/23(土) 11:12:32.39 ID:5s57yVOv
どこに愛があるんだよ
363名無しさん@ピンキー:2011/04/23(土) 14:25:28.90 ID:Sa+0JzGJ
独占愛ってやつか
364名無しさん@ピンキー:2011/04/23(土) 14:29:31.20 ID:TuOuCNpg
ヤンデレ?
365名無しさん@ピンキー:2011/04/23(土) 14:29:35.83 ID:DBFMKWPQ
微妙なところだけど、あるんじゃないかな・・?
だいぶ歪みまくってるだけで。
366名無しさん@ピンキー:2011/04/23(土) 14:30:41.92 ID:TuOuCNpg
ageてすまない
367名無しさん@ピンキー:2011/04/23(土) 15:29:03.02 ID:StIHZqyO
>>361
GJ
恐ろしく歪んでるけど愛はあるなあw
その後も犯されてたりすると良い
368名無しさん@ピンキー:2011/04/23(土) 17:49:19.53 ID:ng8K+4O0
>>361
投下乙
好きで…でも手に入らない(手に入れる気はない?)から
一生忘れられない男になろうとする歪み過ぎている愛が素晴らしいなw

しかし彼氏は嫉妬してたぐらいなんで主人公と別れても諦めてなさそうだ
369名無しさん@ピンキー:2011/04/23(土) 19:03:49.28 ID:75khrvfB
独占欲>>肉欲くらいな感じに見えた
理不尽と聞いて生々しいの想像してたが、男的には筋通ってるな
そして全体的に静かな雰囲気が醸し出されているのが新鮮だった

てか男は下手したら一生、この女の年頃がストライクゾーンなのではw
370名無しさん@ピンキー:2011/04/24(日) 06:28:32.50 ID:XumzzzUk
皆様のご意見を今後の参考に致します。。
予想以上に好意的なご意見を頂けて多謝御礼申し上げます。
今後もヤンデレやラブコメに精進致して参ります。

>>356
支援とご感想有難うございました。
371名無しさん@ピンキー:2011/04/24(日) 21:14:45.76 ID://AkIg36
グッジョブ!あんた鬼畜野郎だなw
372名無しさん@ピンキー:2011/04/25(月) 05:41:05.32 ID:nrMYN6r7
寒いマンセーきめえわ
373名無しさん@ピンキー:2011/04/25(月) 07:26:49.84 ID:CSqQxFdz
オレもそう思う
374名無しさん@ピンキー:2011/04/25(月) 12:45:30.59 ID:GSzX+PuY
>防衛本能というべき生理的な官能と
>彼の類い稀なる粘着質な床の才能によって彼女は達した。

アホクサ
50年ぐらい前のポルノ本でももう少しエロいぞ
375名無しさん@ピンキー:2011/04/25(月) 16:31:50.77 ID:PjpdweVi
ここはプロ作家様を待つスレじゃねーんだよw
仮に所々拙い部分があるとしても、好みのシチュを妄想して書いてくれりゃ十分なんだよ

>.361 GJ
376名無しさん@ピンキー:2011/04/25(月) 16:40:58.89 ID:PE9ykqU+
だってエロく書けねぇんだからしょーがねーだろw
じゃあお前さんが書いてみろよ
377名無しさん@ピンキー:2011/04/25(月) 17:52:54.73 ID:dfRLnZrz
スルースキル試験実施中
378名無しさん@ピンキー:2011/04/25(月) 19:06:48.73 ID:yMpf94v+
この板にはエロなしスレというものがあってだな…
あとそれ以上エロく書けないのなら、投げスレとか殴り書きスレというものもある
語りたいなら裏話スレもあるしガチ評価が欲しいなら山田スレもある


てか、この板は使い勝手の良いスレが至れり尽くせり存在してるのに
どうしてそれに気付かない書き手が増え続けるの…
この板のそういう輩を無差別のべつまくなしに案内しまくってやりたい程だ
殴り書きとか気楽でいいぞ〜。レス無いけどw
379名無しさん@ピンキー:2011/04/25(月) 20:40:36.83 ID:CSqQxFdz
どうでもいいですよ♪
380名無しさん@ピンキー:2011/04/25(月) 21:01:38.63 ID:CUFEfUlt
とりあえずみんないちをよんでみるといい……よ!
381名無しさん@ピンキー:2011/04/25(月) 23:21:09.18 ID:KE/ZibB5
気に入らない、読む気なくした場合は全力でスルーすればいいんじゃね?
最低1レス乙なりGJなりが入ったら雑談ネタに切り替えていいと思う。
感想がつかない場合は、一日たってから切り替え。
…とすると、住み分けができていいかと。万人に受ける作品なんてないし。
とはいえ、任意規定にしかしようがないから否定的な意見に過剰反応するのもどうかと思うが。
382名無しさん@ピンキー:2011/04/25(月) 23:26:07.15 ID:CUFEfUlt
マジレスしようと思ったがめんどくさいのでもう一度言うが
>>1に既に書いてあるだろ
383名無しさん@ピンキー:2011/04/25(月) 23:56:04.42 ID:5l4PUaZc
とりあえず二次元にしか興味ないヒキニートに地味〜な幼なじみが振り向いて欲しくて
髪巻いたり雑誌で見た流行ファッションで慣れないメイクをして会いに行ったら
ギャルきめえビッチとかねーよ扱いされて堪らなくなって
せっかくのお洒落や化粧もぐしゃぐしゃにしながらどうして分かってくれないのと無理やり…
っていう妄想をした
384名無しさん@ピンキー:2011/04/26(火) 00:08:58.37 ID:zPGSgIs9
御免なさい、381さん。そして批判的な意見を下さった皆様。冷静になれました

便所の落書きというか、酒呑みながらこういうエロくないエロ文を書く事が
が私のストレス解消法なんです。ええ年齢こいて文章で飯食える訳じゃないしね。

普段は笑>エロがモットーのエロくないエロ文書いてる者ですから
鼻ほじりながら何年も前にネタした文章について、エロくねえwとダメだしされたので
着眼点とツッこむ場所が違うだろwと大爆笑しつつうっかりレスしてしまいました。

でも正直、本当に皆様の文章も読んでみたいんですよ。
このスレはどエスには面白いので、どんどん活性化してほしいのです。
使い勝手の良いスレを知らん訳ではないですが、高尚な裏話なんてあんま考えてないのでw

申し訳ありませんでした。皆様の鋭意製作を楽しみにしておりますよ!
385名無しさん@ピンキー:2011/04/26(火) 01:24:21.35 ID:fYZXrUeD
うわあ…
386名無しさん@ピンキー:2011/04/26(火) 01:29:22.51 ID:QhZBtDmB
>>383
はやく文章にする作業に戻るんだ
387名無しさん@ピンキー:2011/04/26(火) 03:16:37.54 ID:dePQfisb
棲み分けできてない事を自覚できない時点で終了


しかし背伸びしたもどきとはいえ、ギャル系に逆レイプというのは
見た目的にあんまおいしくないなぁ。どんな感じか説明きぼん
388名無しさん@ピンキー:2011/04/26(火) 08:56:33.42 ID:yMltBvSb
>>384
みっともない
389名無しさん@ピンキー:2011/04/26(火) 09:00:09.45 ID:yMltBvSb
>>387
女の子が根っからの真面目っ子で
ギャル言葉や振る舞いがぜんぜん板についてなくて
とんちんかんな台詞いいながら必死で…というのは萌えかも

でもギャル系に詳しくないんで自分では書けないや
390名無しさん@ピンキー:2011/04/26(火) 11:24:49.85 ID:Q1bUjO/8
>>384
さすが厨スレ
391名無しさん@ピンキー:2011/04/26(火) 13:01:23.13 ID:2llWtvQI
>>384
すごい口惜しそうw
392名無しさん@ピンキー:2011/04/26(火) 15:35:51.28 ID:4rwdgYaQ
久々に香ばしいのが湧いたなw
393名無しさん@ピンキー:2011/04/26(火) 16:15:24.56 ID:BE+IMPAL
おや?いつもみたいに職人さんになんてこと言うんだ!って
マジギレする奴は現れないのかな?w
394名無しさん@ピンキー:2011/04/26(火) 16:29:16.34 ID:fYZXrUeD
フォローのしようがないだろ…
395名無しさん@ピンキー:2011/04/26(火) 17:12:23.39 ID:KpRT4UtW
>>387
ギャルって書いたけどage嬢みたいな髪盛りまくりの睫毛ばっさーとかじゃなくて
勉強して気合いを入れた格好+念入りにメイクをしたら普段の地味さから結構化けたんだけど
それを男に媚びてるとかスイーツ(笑)みたいに馬鹿にされて…って感じで妄想した
女の子は運動より勉強ができる真面目っ子で世話焼き、男はアニメとエロゲ好きのヒキヲタなイメージ

でも自分で書いといて何で女の子がこんなんを好きなのか分からんくなってきたw
396名無しさん@ピンキー:2011/04/26(火) 23:35:35.25 ID:oIrkVcA4
どうでもいいけど過去ログの「最後の初恋」良いな
萌えた
397名無しさん@ピンキー:2011/04/27(水) 01:09:13.64 ID:WYzbNn6Y
GJと乙の数見ればおよそどれだけの評価かわかっていいね。
長編完結させても「乙含めて」4つしかレス貰えずすぐに次の投下にかき消される作品と
投下後数日過ぎても惜しみないGJを送られる作品とじゃあ、内容のレベルも全然違う。当たり前だけどさ。
398名無しさん@ピンキー:2011/04/27(水) 01:25:58.33 ID:pD7fXnJr
>>383
個人的にはすげー読んでみたい設定。
逆レイプするんだけど経験ないからなかなか上手くいかなかったり…するのかな?
399名無しさん@ピンキー:2011/04/27(水) 01:41:21.57 ID:4CGCCAkC
おまえらが騒ぎ立ててGJするSSはことごとく俺のつぼをはずしてるからあまりあてにならない
好みの問題だろ
400名無しさん@ピンキー:2011/04/27(水) 04:09:02.67 ID:6btupxPB
ビッチ系とかギャル系は上手く嵌まると犯したくなる可愛い女の子になるな
401名無しさん@ピンキー:2011/04/27(水) 11:54:57.12 ID:L/n/JcX3
ビッチ系、ギャル系は確実にツンデレになる。そして俺得。
逆レイプも素晴らしいが

嫉妬したり振り向いて欲しくて処女の癖に男の前でビッチ系気取ってたら
男に急に逆上されてベッドに放り出されて、
え?え?嘘っ!?え?、ってあわあわして
可哀想な感じになって怖くて泣き出しちゃうとか最高だと思う。
402名無しさん@ピンキー:2011/04/27(水) 18:59:59.55 ID:bcq6f/hG
白々しい
403名無しさん@ピンキー:2011/04/27(水) 19:37:22.95 ID:S5Gl6hvm
ビッチ系は経験豊富なのよ!と誤魔化して誘惑したら
他の男とやってるんだからいいだろ!とか嫉妬して
ぷっつんきた男が場所も考えず強引に押し倒し
女の子は初めてがこんな場所で乱暴されるなんて
好きでも「嫌!」って拒んで無理やりとかお約束だが好きだw
っていうか初めてだと思わずにいたら初めてで男大喜びとか好きだw
(その前に色々とすれ違いがあるのが前提で)

>>395
そこはアレだ幼馴染でいっつも本当に困ったときには
自分を助けてくれる男の子(普段はツンツン)だったりしたらいいよ!
404名無しさん@ピンキー:2011/04/28(木) 01:21:11.83 ID:b1xr6qH0
ヤフチャのアダルト部屋で・・・
ryokoryoko_aroma1←家庭ではレスの欲求不満の悲しいアラフォーばばあ!
“癒しのアロマ部屋”で夜な夜な、たるんだ身体を披露してます
旦那とは、レスで浮気相手を探して今夜も公開頑張ってます!
住んでる地区は、千葉でも東京寄りなんで関東の皆さん!
溜まってる方は、是非1発抜いて貰いましょう。誰でもさせてくれるよ
昔でいう。。。 させ子です! あははは〜!!!
バスケットやってる高校生の息子と中2の娘にバレたら大変だな!!!
公然わいせつ罪で訴えてやるかな! あははは〜!
405名無しさん@ピンキー:2011/04/28(木) 21:58:50.23 ID:a7JK90fm
ヘタレ童貞でブチキレてビッチっぽい美少女を犯すのですね
406名無しさん@ピンキー:2011/04/30(土) 03:51:39.48 ID:O/lftgx6
長年一緒に居た幼馴染とか家族的な存在の男に犯され
身も心もずたずたにされる女の子が自分的につぼ
407名無しさん@ピンキー:2011/05/03(火) 00:22:15.48 ID:TufEdpmV
視線の続きを投下する
408名無しさん@ピンキー:2011/05/03(火) 00:23:04.30 ID:TufEdpmV

長い、長い週末が終わってリインは日常にもどった。
ようやく解放された時、軍を辞めると口走ったリインをレナードは一笑に付した。
「君は士官学校の特待生だろう? 任官義務年限があるはずだ。正当な理由なき任官拒否の罰則も知っているな?」
金銭的な免除のかわりに一定期間の軍への従事が義務とされている。途中でやめれば費用の一括返還請求がなされる。
リインの保証人は父親だ。迷惑をかけるわけにもいかないし、一括で返すには苦しい金額だ。
「当分君は軍と、私とは縁が切れない。私から切るつもりもない」
そんなリインを優しく見ながらレナードは、素晴らしい週末だった、また連絡すると言い置いて去っていった。
屈辱的な思いで病院へと行った後官舎へと戻り誰にも見られずに部屋に入ると、ベッドにもぐりこんで疲労した心身を癒すかのように
ただひたすら眠った。
週明けからリインは噂が広まったのを知った。友人や上官以外にも目撃されたのだろう。
好奇心でいっぱいなくせに、誰も正面きっては聞いてこない。友人達はうらやましいだのお似合いだの、リインにとっては
見当違いの祝福をしてくれた。二人でいた事実は事実なので否定もできない。
ただ親友のアネットだけは、塞ぎがちなリインの様子に何か感じ取っているようではあった。

リインは徹底的に一人になるのを避けた。常に誰かと、同性の人間とだが行動し休憩場所へも足を向けず業務が終われば早々に
官舎に引き上げた。女性用の官舎にこもり休日も出歩くことを極端に減らした。
視線はそれでもよこされることはあった。絡みつくようなそれをリインは無視した。
レナードもそれ以上のことはせず、元々少将と新米の少尉だ。
顔を合わせる機会もほとんどなく緊張をはらみながらも平穏に日々は過ぎた。
リインはプライベートでもレナードを無視した。交換した連絡先は変更してもすぐに突き止められる。着信や受信拒否は
万が一の業務の連絡だった場合には許される行為ではない。――ただ無視することにした。
何度か留守電に店の名と日時の連絡が入っていたが応じる気は全くなかった。

なかったことにしてしまいたかった。

409名無しさん@ピンキー:2011/05/03(火) 00:23:56.90 ID:TufEdpmV

自室にいたリインの携帯が鳴る。表示された番号は嫌でも覚えてしまったものだ。いつものように無視を決め込み留守番電話に
切り替わった。そこに落ち着いた声で伝言が入る。
「一時間待つ。君が来ないなら君の友人に代行してもらう。ただしその後の保証はできない」
店の名前が告げられて電話が切られた。
リインは少しの間意味が分からずに呆然とする。友人に代行? その後の保証? 今までの誘いにはなかった言葉に嫌な予感を
覚えつつも、どうやら無視すれば友人を巻き込むつもりらしいレナードに真意をただすべく急いで支度をして自室を出た。
店に到着すると申し付けられていたのだろう従業員に案内されて奥まった個室へ入る。
二度とかかわり合いになりたくなかったレナードが、酒のグラスを手に座っていた。
「やあ、来たな」
案内をした従業員に始めてくれ、と合図をするレナードに詰め寄る。
「あの内容はどういうことですか。私の友人とは……」
「話は後だ。まずは乾杯しよう」
レナードは新たなグラスに酒を注ぎリインに手渡す。座るように促されしぶしぶ向かいの席につく。
不本意ながらもレナードのペースに乗せられる。かなり強い酒を食前に飲まざるを得なくなったリインは苦い顔になる。
次々に運ばれる料理を砂を噛むような思いで食した。レナードから振られる話題に必要最小限に応えてリインは食事を終えた。
前はとても楽しかったレナードとの食事は、今は憂鬱な時間と化した。
味もいいのに食べた気がしなくて勿体ないと感じる。
どうにかコーヒーまでたどりついた時にレナードがおもむろに口を開く。
「先程の質問だが」
リインが答えを欲した質問。それまで努めてレナードを見ないようにしていたリインがはじかれたように顔を上げる。
途端レナードとまともに視線が合う。レナードは満足そうだった。
「やっと私を見たな。ああ何の話だったか。君の友人達と知り合いになってから色々と相談に乗ってもらっていたんだ。
何しろ年は離れているし、何故か君には避けられているし、若い女性の好みや心理など見当もつかないからな」
ぬけぬけと言うレナードにリインは怒りを覚える。
ストーカーまがいの行為の挙句さんざんに体を弄んだレナードに良い感情などかけらも持てるはずもない。
顔も見たくないのが当然だろう。切実に関係をなかったことにしたいと思っている、それなのに友人を巻き込むとは。
「友人に、何を。彼女達は関係ないでしょう」
「そうだ、私と君には『関係』があるがな」
すうっと場の空気が冷える。レナードの目が笑っていない。
410名無しさん@ピンキー:2011/05/03(火) 00:25:25.97 ID:TufEdpmV

「君の友人、アネットといったか。彼女は私に好意的なようだ。君の代わりをやってもらえたら私も楽しいかもしれない。
だが私は知っての通りのひどい男だから、彼女を壊してしまうかもしれない。
君にはストーカーへの耐性があったが、彼女はどうかな? どれくらい私の視線に耐えられるだろうか」
足を組んで、両手の指先同士をあわせてレナードは笑う。
「あなたは、どこまで……」
それ以上続けられないリインに、心外だという表情を見せる。
「ん? 私は年若い恋人に冷たくされて傷心の惨めな男だ。慰めてくれそうな優しい相手がいれば、それにすがりたくなるのが
人情というものではないか?」
リインが席を立てばレナードは迷わず友人、アネットを呼び出すだろう。そして優しい彼女ならそれに応じるはず。
「……彼女をどうするおつもりですか」
「君次第だろう。君が私の恋人だと私を安心させてくれれば、友人とやらの入る余地はない、何でもない話だ」
レナードは席を立ちリインの前にくる。座ったままリインはレナードを見上げる。
テーブルの上の両手をすくうように持ち上げ握られる。
「ああ、それから誰だったか、君を襲おうとした輩。先日移動になった先で負傷したそうだ」
地名を聞かされめまいを覚える、それは激しい局地的な戦闘になった地域で間違っても新米軍人が出張る場ではない。
レナードの意向で同僚が配置転換になったのだ、そしてリインの友人達にも同様のことが起こりうると言外に告げている。
――いや、脅している。
レナードは笑いながらアネットを、友人達を壊すだろう。それは確信に近かった。
リインはそんな未来は見たくなかった。傷つくと分かっていながらみすみすレナードの供物にはできない。
「リイン」
耳元で名を呼ばれぞくりとする。低く熱をおびた囁き。
「君は……私の恋人か?」
かがみこむレナードと一瞬視線を交錯させて、リインは目を閉じた。睫毛だけが震えてリインの心情を伝える。
唇がリインのそれに柔らかく触れて離れる。もう一度触れ、今度はだんだんと深くなる。
レナードとの口付けはリインが噛み付いた時以来だ。しかし二度と噛み付けない、抵抗できない。
リインはレナードの脅しに屈した。
無言の契約の証のように、レナードはリインの後頭部に手をやりひきつけて唇を貪る。やわらかく唇を食んで歯列にそって舌を動かし
上顎へと舌先をすべらせる。そしてリインの舌をすくうように絡めた。
「う、ん……」
思わず漏らした声にレナードの手が耳をさすって頬をなでる。その間にもリインの口中はレナードに支配されている。
縮こまるリインの舌を強引に絡めてしごく。口の中を犯される生々しい感覚にリインは震えた。
ようやくレナードが離れたときにはリインの息は上がり、瞳は息苦しさのせいか濃厚な口付けのせいか少し潤んでいた。
それでも一目でレナードを虜にしたその瞳でにらみつける。
「恋人でも、愛人でも、好きに呼べばいいでしょう」
そしてリインはレナードの腕の中に囚われた。
411名無しさん@ピンキー:2011/05/03(火) 00:26:05.99 ID:TufEdpmV

引きずられるように連れ込まれたホテルで壁に押し付けられて、リインは唇から耳へと移ったレナードの愛撫を受けていた。
逃げられないように抱きすくめられ耳に濡れた感触を受けて響く淫らな音に目をかたく閉じる。
耳朶を噛まれもう片方の耳もすり、と指でこすりあわされる。刺激は耳だけなのに体が熱くなってくる。
「私を焦らして楽しかったか?」
「そんな……」
耳元に落とされる声にぞくぞくしながらリインは否定する。焦らすどことか無関係になりたかったのが本音だ。
レナードの大きな手が脇腹から腰を撫でている。そこからレナードの欲望が熱が伝わる。
その熱に飲まれそうになり、リインはレナードの肩を押す。
「シャワー、を」
レナードが指先を握る。浴室のドアを開けリインに微笑む。
「一緒に浴びよう」
一人で、と言うリインを無視して強引に一緒に浴室に入ったレナードは、ネクタイを緩める。
「私が脱がせるか、自分で脱ぐか」
どちらもごめんだ、と言いたげに自分をにらむリインが可愛らしい。だがあまり余裕もないのも確かだった。
囲い込んでゆっくりと服を脱がしていく。スカートではないのは警戒の証だろう。ふるり、とこぼれ出た胸に口付けるとリインが
身じろぐ。乳首を口に含んで吸うと鋭く息をのむ音が聞こえた。
業務上での接触は皆無と言ってよいほどになく、リインに避けられていた期間はかなり長い。
時折見かけた姿はいつも誰かと一緒だった。視線に気付いているだろうにあの年にしては見事にそれを黙殺した。
その豪胆さ、手を出す隙を見せない冷静さをレナードは好ましく思った。
そうでなければ追い甲斐がない。
だから搦め手を使った。とりあえずは人のものに勝手に手出しをした若造を激戦地に追いやり、リインの友人達が食事の礼を言って
きたのを機に知己を得てゆっくりと外堀を埋めていった。
仕上げはリインの親友のアネット。あれはいい手駒になる。
リインを揺さぶるのにもってこいの存在だった。
枷はまだ他にもあるがこの二つでリインは自分を受け入れた。

412名無しさん@ピンキー:2011/05/03(火) 00:26:40.58 ID:TufEdpmV

強情な心とは裏腹にリインの体は柔らかい。鍛えていても男のそれとは違うさわり心地に陶然となりながら、レナードは執拗に乳首を
愛撫する。口の中で尖りゆく感触を味わう。気付くとリインが顔を赤くして口を押さえていた。
感じているらしい様子にもっと、と思うのは男の性か。
衣服を取り去り、自分も服を脱いで二人では狭いシャワーブースに収まる。シーツの上に広がる髪が好きなレナードはリインの髪の毛を
まとめて濡らさないように留意する。シャワーの湯が二人を濡らしていく。
改めて施される濃厚な口付けに、密着する体温にリインの鼓動は早くなる。
そちらに気をとられていると、体をすべる手の感触にはっとした。ボディーソープを手に取ってのことだろう。抵抗なくリインの体を
レナードの手は動き回る。大きくて熱い手のひらに包むように触れられ、その熱が伝染したようにリインも熱くなってくる。
首から鎖骨。肩から腕そして両手で手もほぐされるように泡を擦り付けられる。
特に鋭敏な感覚器官である手は執拗にもまれ指の間も強めに触れられ、指を絡められると切ない疼きが生まれてくる。
大きな手が背中を撫で下ろすその力強さに、身を委ねてもいいような安心感さえ生まれてくる。
胸をすくわれるように持ち上げられソープのせいで摩擦のない指で乳首をつままれ、リインは背をしならせて胸を突き出すような
形になってしまった。
「ここで抱いてもいいのか?」
からかいを含んだ声に我に返り慌ててかぶりを振る。レナードの手はそれ以上は胸にはとどまらず下へとおりてゆく。
「自分で洗いますから」
腰から臀部に手がうつりリインは抗う。それを無視してレナードはリインの片足を持ち上げて少し曲げた自分の膝に絡ませる。
足先を撫でられ足首から上がってくる大きな手。膝から大腿へと手がすべらされる。もう少しで付け根、というところでレナードは
今度は反対側の足に同様の行為をする。それも済んで足がおろされリインがほっとしたその時。
指がひたりと付け根に当てられた。手の平と指ですくうようにもまれる。抵抗のない指が陰核をくりくりと刺激する。
「っは、あっ……」
次いでつままれてリインは下腹部で湧きあがる疼きに思わず声を上げる。レナードの指は陰核を、その周囲をなで上げ、さする。
「中は……このままだとしみるな」
流れ続けていたシャワーの湯で手を洗い、レナードの指が再びリインの足の付け根に当てられ、膣へともぐりこむ。
「んっ、や、……あ」
軽く曲げられた指で壁をこすられリインは熱い息を抑えられない。もみこまれるように入り込んだ指は指先の点で、指全体の面で、
レナードはリインの中を洗い出すかのように掻いてゆく。円を描くようにぐるりと回されたかと思うと次には奥へと押し込められる。
湿気のせいで音の響くシャワーブースにぐちゅぐちゅと淫猥な音がした。
臀部に手を当ててもみながらリインを自分のほうに引き寄せているレナードを満足させるに十分な音、だった。

413名無しさん@ピンキー:2011/05/03(火) 00:27:19.71 ID:TufEdpmV

「前よりも濡れているな。私の指は気持ちいいか?」
羞恥で頬を染める、いや今回は少しばかり快楽も伴っているらしいリインはレナードの視線を避けるように、顔を斜めに向ける。
もう一本増やした指でゆっくりと抽送するとリインの手がレナードの腕に置かれ、離そうとするかのようにかすがるかのようにか
力がこめられる。
とろりと粘液が指から伝い中があやしく蠕動を始める。ここでイかせてもいいが、もう一つのお楽しみもあることだとレナードは
リインの中から指を引き抜いた。
リインは壁に背中を預ける。既に疲労し体が重だるい。そんなリインの体の泡をざっと流してレナードは『お願い』をする。
「私の体も洗ってくれるか?」
嫌々ながらボディーソープを手に取り、レナードの真似をして体に手をすべらせる。
意識して見た事のなかったレナードの体と感触が目の前にあり、改めて自分との違いを思い知らされる。がっしりした骨格や
鍛えられた筋肉、そして古傷。レナードが軍という苛烈な場所で生き残り過ごしてきた歴史を感じる。
大きな背中や胸、自分より太い腕や手を洗いその下へと行かなければならないリインは目のやり場に困る。
レナードの体の中心で陰茎が反り返っていた。
「先に足を」
そう言われ視界に入れないようにとかがみこんで足を洗う。手首をとられて立ち上がると陰茎に導かれる。
「ここも洗ってくれ」
触れたそれは熱くて硬くて、手を引こうとしたリインの手は大きな手に包まれて上下させられる。びくりと脈動する陰茎は
リインには目の毒だ。それでもレナードはリインの手で丹念に洗わせる。
レナードが熱い息を漏らし、自身で泡を流した。
自分でやるからと言っても聞き入れられずふかふかのバスタオルで体を拭かれたリインはバスローブを羽織らされる。
レナードも同様の姿になり抱き上げられてリインはベッドに運ばれた。

414名無しさん@ピンキー:2011/05/03(火) 00:27:53.79 ID:TufEdpmV

そらす顔を上向かされレナードと目が合う。髪はまとめていたものがほどかれてシーツに流れている。
それを掬い取ってレナードは指の間で滑り落ちる感触を楽しむ。
「――卑怯者」
低い、リインの声に戯れをやめ上からじっくりと見下ろす。敵意に満ちた瞳が実にそそるのをリインは知らない。
「大嫌いの次は卑怯者か。つくづく私は外道なようだな」
笑い混じりに感想を言って、レナードはリインの体に唇を落とす。
しっとりと温かい感触に半ば夢中で触れていく。細い骨格を代表するような鎖骨や人目に晒さないために白い胸元。しなやかで
レナードを拒絶したり、すがってきたりするわがままな手指。
じっくりと口付けて唇で食んだり、舌で舐めたりしているとうっすらとリインの体が汗ばんで、紅潮してくる。
手を重ね指を絡めると無意識に握られる。今やレナードの頭は胸にあり、その髪の毛さえリインの肌を刺激している。
吸い付かれた乳首を歯でしごかれリインは身を捩る。
逃げないリインをじっくりとレナードは追い詰めていく。息が荒くなるのをリインは我慢できない。
歯を食いしばって声を上げまいとするリインは、皮肉にもレナードの嗜虐芯を煽っている。
唐突に目の前に指が突き出されレナードを見上げると命令を下す。
「指をしゃぶれ」
意味が分からずそれでも口元に持ってこられた指に顔を背けると、唇に押し当てられる。
「咥えて、舐めろ」
一瞬噛みちぎってやろうかという衝動にリインはかられた。ぎり、と下からレナードを見据える。レナードも視線をそらさない。
緊張ただよう時間が過ぎて、先に目をそらしたのはリインの方だった。
それを承諾ととり、レナードが口をこじ開けて指をいれこむ。
「大嫌いな卑怯者に抱かれるのを選んだのは君だ。私が憎いなら私を殺せ。ベッドの上ほど無防備な場所はないからな。
私を殺せないなら私に抱かれていろ。君は私のものだ」
違うと叫びたいのに、口の中に指があるために果たせなかった。
敗北感にまみれながらリインはレナードの指に舌を這わせる。口をすぼめて指を吸い上げた。
レナードもされるままではなく、リインの口の中を押さえこすり、好きに動いている。
足を抱えられレナードの顔が付け根に埋まる。
シャワーブースでの愛撫の余韻の残るそこに口と、リインの口で濡らした指での刺激が加えられた。
リインの体が震えて、足指に力が入る。中を揺らされて陰核を吸い上げられたとき閉じたリインの目蓋の裏に光が走る。
レナードの指が内腿に食い込み尖らせた舌が膣内に入ってくる。ぬるりとした粘膜とざらついた表面が指とは違う刺激を伝える。
腰が浮き、足が震えるリインに駄目押しのようにレナードは音を響かせて溢れた粘液をすすった。
細かな痙攣がリインから生まれる。陰核を吸って軽く歯を立てた時、リインは背をしならせて硬直した。
「――っ」
声にならず、見開いた目も映したものを認識せず、ただリインは自分の中で爆発した何かにがくがくと身を震わせた。
その感覚は鋭く強くリインを押し流した。
415名無しさん@ピンキー:2011/05/03(火) 00:28:26.08 ID:TufEdpmV

ベッドに投げ出されたように沈んだリインは自分の息が荒く、喉が乾いて苦しいのに気付く。
さっき白い世界になったようなそこは何の変哲もないホテルの一室だった。
体が重くどこかに引きずり込まれそうなリインは自分の頭に腕枕をしたレナードにようやく視線を向けた。
嬉しげな、慈しむような眼差しを向けているレナードをぼんやりと見る。
「初めて達したな」
レナードの手で絶頂といわれるものを経験させられた。そのことを認識したリインはレナードの張り巡らせた蜘蛛の巣に捕らえられた
獲物の心持ちを味わった。
大嫌いといい、卑怯者となじったレナードに感じてしまった。リインは内心で己を呪う。
まだ力の入らないリインの足を抱えてレナードは挿入した。いまだ蠕動し収縮するそこはきゅうっとレナードを締め付ける。
経験の少ないきつさと絶頂を極めた後の壁の動きはレナードの脳髄に快楽を送り込む。
奥へと誘い込むような襞の動きは貪欲で、絡んでくるこの間よりも熱い内腔に溶けてしまいそうだ。
誘いを無視され期間があいたせいか、きつさは最初の頃のようなのに絡んでくる感覚は違っていてひた、とレナードに吸い付き
ざらついた前壁は往復するたびに亀頭にえもいわれぬ快感をもたらす。
すぐに果てそうになるのを我慢して、レナードはリインの腰を抱えなおしてリインを揺らす。
前回中でリインの弱そうな所を指で探し当てたが、そこを抽送のたびに刺激すると締め付けが強くなった。
リインの手が落ち着きなくシーツをつかむ。
自分にすがれとばかりにそれを引き剥がしてきつく抱きしめる。
腰を使って奥へと突き、こすりあげる。
リインの息がまた熱くなり、耳元で煽ってくる、ひときわ強く締められたときレナードはたまらず精を放った。
襞が絡んで最後まで搾り取る。互いに汗にまみれこれ以上ないほど密着して。
さすがに中では絶頂というわけにはいかなかった様だが、レナードは満足だった。
「素晴らしかった、リイン」
また一歩自分のものにしたリインに早く自分のところに堕ちてこいとばかりに口付ける。


以上続く予定

416名無しさん@ピンキー:2011/05/03(火) 02:01:24.02 ID:o7Yktrjc
ひたすらにGJ
相変わらずのストーカージェントルマンっぷりがたまりません
417名無しさん@ピンキー:2011/05/03(火) 04:30:35.25 ID:5JNto1bQ
ナイスジェントル!!
友達に代わりにって……鬼畜っぷりに磨きが掛かってきましたな
襲った奴の配置換えはグッジョブだけどw
ストーカージェントルマンパネェ
418名無しさん@ピンキー:2011/05/03(火) 06:10:40.34 ID:t5YTW/3m
同じくGJです!
じわじわとモノにしていく過程がたまりません。
レナード魅力的過ぎ。
続きをお待ちしております。
419名無しさん@ピンキー:2011/05/03(火) 08:34:27.09 ID:OLbjn1zp
GJ!
リインの嫌がり方が嫌悪に近くてゾクゾクする。
この先楽しみだな〜続き待ってます!
一息ついたら、ローザのその後をちょっとだけお願いします。
420名無しさん@ピンキー:2011/05/03(火) 09:02:19.29 ID:X9Biuq8b
GJ
追い詰め、追い詰められ感がすごくいい
やっぱりジェントルには勝てないんだな
続きが楽しみ
421名無しさん@ピンキー:2011/05/03(火) 10:47:21.77 ID:8xW4LGD8
レナードの手段を選ばない描写が素晴らしい

ところで、襲う側♂と襲われる側♀は両想いのすれ違いで、最終的には結ばれずに終わりってこのスレ的にありでしょうか
422名無しさん@ピンキー:2011/05/03(火) 14:37:04.66 ID:AmCPtoD4
初めて、しかも不本意にいかせた時のレナードの満足気な様子に萌え

レナードのことマッドメンのドレイパーで脳内映像化して楽しんでます。
ありがとう
423名無しさん@ピンキー:2011/05/03(火) 20:44:58.65 ID:c8j87vjM
>>415
GJ
この調子で鬼畜っぷりを発揮して追い込んで欲しいw


>>421
別にBADエンドでも良し
424名無しさん@ピンキー:2011/05/04(水) 02:03:59.96 ID:5EH+5Fmj
>421
過去にいくつかあったから無問題
425名無しさん@ピンキー:2011/05/04(水) 02:30:06.26 ID:m8Mu7Mq2
永遠に続いていく予感のするすれ違い、みたいのも自分は好きだな。

死ぬまで愛故が続いていくと思うと胸熱
426名無しさん@ピンキー:2011/05/05(木) 03:52:36.26 ID:hjIbrQvN
みたいのもっつうかそのパターンはえらい頻度で話題にのぼってる訳で…
解決するパターンも別れパターンも読みたい
427名無しさん@ピンキー:2011/05/05(木) 22:03:26.06 ID:PfET7FZd
>>426
解決するわけでもなく、別れがくるわけでもないっていうパターン、
例えば、すれ違いや誤解、素直になれない心を抱えたまま、ずっと監禁されたり陵辱され続ける。
この関係の終わりがくる予感が未だしない・・・明日が見えない、みたいな終わり方のする話をイメージしてた。
そういうある意味曖昧?な終わり方はそんなになかったんじゃないかなって思って・・・。

職人さんたちが続きが気になるっ!っていう声に答えて完結話書いてくれたみたいなのもあると思うけど。
自分も全作品読んだわけじゃないので勘違いだったらスマソ。
428名無しさん@ピンキー:2011/05/05(木) 22:05:09.50 ID:vhljLe19
>>427
そういう終わり方良いな
絶望的な感じで素晴らしい
429名無しさん@ピンキー:2011/05/05(木) 22:20:42.49 ID:0RcAodr9
片方が一言「好き」って言えばとか簡単な事で
誤解がほぐれて幸せになれるのに
その簡単な事が言えなくてジリジリするっていうのも好きだなー

430名無しさん@ピンキー:2011/05/05(木) 23:56:36.74 ID:m/EcaKJT
そんなほの暗い感じもいいな。
>>419、ローザのその後って一応両思いエンドじゃね?
431名無しさん@ピンキー:2011/05/06(金) 00:06:47.87 ID:qLOAYt77
>>427
明らかにそれっぽいシリーズは数点程くらいしか見てないが、
続きを次の世代分まで妄想するような雑談はしょっちゅうだぞ
連載に反映されたりするし

イザ投下されるとまぁ、楽しんで読んでるんだが、今そんな増やすよりは
短編でサクッと青春の陰の部分みたいなネタでしんみりしたい時もあるって事
432名無しさん@ピンキー:2011/05/06(金) 01:38:13.93 ID:Oa4/91jD
まぁお前の都合で投下されてる訳じゃねーしな
433名無しさん@ピンキー:2011/05/06(金) 02:28:02.30 ID:zUbnnGVB
>>415
投下ありがとうございます
この二人大好きです!
続きも楽しみにしています
434名無しさん@ピンキー:2011/05/06(金) 05:37:01.38 ID:kzCUYiGk
>>429
まあ、好きと言えず悲惨な状態が続くのは好きかな
435 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/09(月) 00:17:25.89 ID:aPh4MjHJ
421です。以前このスレでお話しした「想い合っていながら最終的に結ばれない」が
完成したので投下します。前・中・後の三部です。
現代日本もの、孕ませ要素あり。エロ描写はぬるめで、全体の3割くらいです。
蛙(かわず)の夢(前)

 教会の鐘が鳴り、扉が両端から開かれるのを群衆は今や遅しと待っていた。
女性陣は目を光らせ、男性陣は祝福と、半分くらいは羨望の眼差しで。
やがて鐘が鳴り、純白のウェディングドレスに身を包んだ新婦と、その腕を組んだ
新郎が姿を現す。
「おめでとう」 「おめでとう」
 次々に祝福の言葉が飛び、夫婦は幸せそうに笑った。少し張り出した腹部を撫で、
新郎と目を合わせて手を振り上げると、花束が空を舞い、女性陣がわっと歓声を上げる。
その様を、多田明(あきら)は教会から少し離れた道路で微動だにせず見つめていた。
436 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/09(月) 00:20:02.09 ID:aPh4MjHJ
頭を上げた新婦の目が、一瞬明を捉えた。が、彼女はすぐに視線を
隣の夫に戻し、二度とこちらを見なかった。

「若社長!」
 秘書の田村ひとみに呼ばれ、明は振り向いた。ひとみは両手に大量の資料を抱え、顎で
押さえつけてこちらを睨んでいる。
「社長の部分はともかく、若、は余計だ」
「じゃあ次から五代目とでもお呼びいたしましょうか」
「もっと勘弁してくれ」
 田村ひとみは動じない。親子ほども年の離れた、二か月前の先代社長の急死に伴って
後を継いだ20代の小倅など、先々代社長の頃に入社し、先代社長の秘書を20年勤めた
ひとみにとっては頭に殻のついたヒヨコも同然である。
「若、の部分が取れたときが一人前の成り時です」
 しらっと言ってのけた。
437 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/09(月) 00:22:51.85 ID:aPh4MjHJ
「明日の会議の書類です。東京支社と大阪支社の売り上げ報告、
経理部の定例報告、システム管理部の報告書、始末書、インフラ部からの提案書、諸々。
明日の会議までに目を通しておくように、とのことです」
「ちょっと待て、明日は商談が入ってなかったか」
「その商談が延期になったと、先ほどメールにて報告いたしました。
代わりに重役会議への参加を」
「嫌がらせか」
「一人前に渡り合って経営に口を出せとは、誰も申しておりません。今は席に座って
内容を理解するのが関の山でしょう。若社長はまだ中核としての期待はされておりませんし、
いずれ中核を担う時まで会社を健全に保つのが我々の務め、と管理職役員皆様申しております」
 
438 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/09(月) 00:25:38.40 ID:aPh4MjHJ
多田商事は大正時代から続く総合商社で、明で五代目になる。古くは江戸時代に権勢を誇った
大店が明治に入って時流に乗り、商売を海外まで広げ、大正時代に会社として成立した。
二度の大戦もバブルも不況も逆手にとって成長を遂げ、今に至っている。旧財閥に比べれば
その規模は微々たるものだが、この地方では大きな地盤を築き、東京と大阪に支社も持つ、
地方豪族という言葉通りの存在だった。
439 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/09(月) 00:27:49.78 ID:aPh4MjHJ
 山と積まれた資料を前に、明はため息をついた。今夜の完徹は間違いない。
「お疲れ様です」
 由香がコーヒーを用意していた。砂糖1杯にクリームひと匙が明の好みであることを、由香は熟知している。
「参った、今夜は完徹だ」
「その資料は?」
「明日の商談が急にキャンセルになって、今度は代わりに会議に出ろ、とさ」
 机に顎を載せ、シャープペンシルを加えて明はおどけて見せる。
「では私は、厨房に夜食を頼んでまいります」
「ああ、ありがとう」
440 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/09(月) 00:34:39.83 ID:aPh4MjHJ
 由香の後姿を明は見送った。湊由香は明と同じ24歳、私立小学校などないこの地域では明も
地元の小学校を卒業している。由香はその頃からの同級生で、中学を卒業後に東京の私立名門校、
イギリスの大学と地元を離れていた明に対し、由香は地元の高校の頃からこの屋敷でアルバイトをはじめ、
卒業後は正式に職を得ている。由香の母親もこの屋敷で働いていたから、いわゆる親子2代だった。 
 すっかり使用人姿に違和感のない由香の背中は少しばかりさびしい。もちろん、プライベートでは昔のように
読んでくれはするが、勤務中の姿はプロそのものだ。
 小さいころは気が弱くて、いつも明ちゃん、明ちゃんなんて泣いてたのにな。
田圃畑に囲まれて、虫も蛇も蛙も日常茶飯事の環境だというのに、由香は蛙が大の苦手だった。
道の真ん中に死体が落ちているだけで立ちすくんでは動けずにいた。
441 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/09(月) 00:38:08.15 ID:aPh4MjHJ
―何が怖いんだよ、こんなの。
 手をつないで道を通ったことも何度もある。
「なあ、由香」
「何でしょうか」
 戻ってきた由香に問うてみた。
「蛙はまだ苦手なのか?」
「いえ、あの、その」
 途端に言葉に詰まる。言葉は丁寧だが、動揺は隠し切れていない。その横顔は相応に年をとり、幼いころには
なかった華やかさが増している。自分の贔屓目を差し引いても由香は田舎には少ない整った顔立ちで、
人気も高かった。地元に戻ったときには流石に結婚もしているだろう、という予想を裏切って
まだ結婚どころか彼氏の一人もいたことがないと知り、密かに祝杯をあげたのはここだけの話だ。
今の由香は仕事モードに入っている。以前高速道路のSAで見つけた蛙のストラップを買ってきてやろう。
どんな表情をするだろうか。
442 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/09(月) 00:43:59.11 ID:aPh4MjHJ
 地元企業に職を得るのは、何も使用人としてだけではない。れっきとした社員として多田商事に入社した明の同級生も何人もいる。
システム管理部の長谷実(みのる)もその一人だった。地元の公立名門校から県内の国立大学の情報学部に進学し、技術職として
就職して2年目、普段の仕事に加えて新人の育成も加わり、このところ定時に帰れたためしがない。
 実は肩をこきこきと鳴らした。
「長谷、ちょっといいか。システムに不具合が」
「はい」
「先輩、こっちのプログラムにバグが」
「ちょっと待ってろ」
 20代は仕事が恋人、というのはあながち間違っていないと実は思う。仕事の忙しさに浮いた話の一つもなく、
遊ぶところもない田舎の実家暮らしだから、給料の半分は貯金に回っている。
―ま、社会人はこんなもんか。
 頬を叩き、気合を入れ直して、実はコンピュータに向かった。おそらく、今日も残業だ。
443 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/09(月) 00:46:36.52 ID:aPh4MjHJ
「由香!」
 残業後の帰宅の車内から、実は窓を開けて前を歩いていた幼馴染の名前を呼んだ。由香の家から職場までは
15分、急ぐ距離ではないが、街灯の少ない田舎では猪や鹿も出る以上、安全とも言い切れない。 
「実」
「送ってってやるよ」
「ありがと」

「明はどんな感じだ?」
「社長に就任してからはすごく大変みたい。今日も大量に資料持って帰ってきてた」
「親父さん、急に亡くなったもんな」
「うん。・・・心臓発作だったって」
 二月前の盛大な葬式を、二人はまだよく憶えている。地元の名士、と言っても言い足りないくらいの人であった
先代社長の急死は地元紙に大きく取り上げられ、焼香客が門前市をなした。もともと後継ぎとして
既に明が擁立されていたから大きな混乱はなかったが、あと数年は気楽な見習いでいられただろう明の
身辺は、一転して嵐である。
444 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/09(月) 00:48:55.17 ID:aPh4MjHJ
「どうなるんだろうね、明ちゃん。会社も家も全部一気に継がなきゃいけないなんて」
「ま、ダメなら会社のほうは首切られるだけだろ」
「まさか」
 多田商事は上場もしている株式会社だが、変なところで田舎の因習を残していると実は思う。就職活動では
全国からいくらでも優秀な人材がエントリーするのに、半分は必ず地元出身者で構成されているのだ、
実もそれで入ったほうだから、あまり大声では言えないが。
「家はともかく、カルロス・ゴーンでも呼ぶ時代だぜ?舵取り次第と時流次第で、生き残れるかなんてわかった
もんじゃねえよ」
「まだ二カ月だもん、これからだよ」
 車は由香の家の前に着く。明じゃないが、また明日も朝っぱらから仕事が山積みだ。
445 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/09(月) 00:52:16.39 ID:aPh4MjHJ
「飲み会?」
 実は眉をひそめた。覚えの悪い新人に手を焼き、年寄管理職のシステムの不慣れに手を焼き、本来午前中に
終わらせる予定だった仕事を完了させた時点で既に1時を回っている。
「今そんな余裕、あると思うか?」
「まあまあ、明もあの通り忙しいだろ?社長就任後初の息抜きってことでな?」
 視線の先には明が例によって歩きまわっている。このところすっかり見慣れてしまった光景だった。
実に声を掛けてきたのは宮田で、こちらも中学校一学年二クラス時代からの同級生である。
例によって地元採用で就職し、同じ会社の人事部に籍を置いていた。どこで誰が働いているかを
把握しているから、幹事にも抵抗がない。
446 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/09(月) 00:57:33.84 ID:aPh4MjHJ
「高村とか山口とか、あと湊とか、この会社かあの家で働いてる奴だけでもさ」
 湊の部分が本命だろ、と軽口を返したくなって、実はやめた。自分を勘定に入れても先輩後輩同級生合わせて
8人は由香を手中に収めたがっていることを実は知っている。自分が実力行使に出ないのは、単に
「一番付き合いの長い幼馴染」の座を失いたくないからだけではない。

 いつも通りに部屋を掃除し、ベッドを整えて、由香は満足げに部屋を振り返った。
「よし、完璧」
 とはいえ、当人は帰って寝て起きてまた出るだけの部屋だから、あまり激しく汚れる部屋ではない。
その上この部屋の主が帰ってきてまだ2年、使われなかった時間のほうが圧倒的に長かった。
イギリスにいた頃は本当に帰ってこなくて、そのままイギリスに住んじゃうんじゃないかって、何度も
メールしたっけ。
447 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/09(月) 01:00:39.78 ID:aPh4MjHJ
 明が海外への大学の進学を見越して都内の高校に進学すると決めたとき、由香は明と離れたくないと大泣きした。
―絶対、絶対戻ってくるよね?
 思い出すだけで顔から火が出そうになる。あの時は本当に二度と帰ってこないと思っていたのだから仕方ない。
親父の会社を継ぐんだから戻ってくるよ、と何度も言い聞かされて、絶対だよ、約束だよ、と何度も由香は
念を押した。明がいなくなるなんてことは由香にはあってはならないことであり、帰りを待つためにここで
アルバイトを始めたのだった。
 家に帰ってきたときに、少しでも心休まる場所でありますように。願いはそれだけだった。
448 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/09(月) 01:14:02.10 ID:aPh4MjHJ
文字規制が厳しいのでちょっと中断します・・・すみません
449 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/09(月) 01:20:47.50 ID:/IWCGNSq
携帯から再開します

 由香も帰った夜分遅く、漸く自室に着いたところで明のスマートフォンが鳴った。着信画面には長谷実とある。
「もしもし」
「よお、お疲れ」
 電話の先は相変わらずの声だった。社内での上下関係はプライベートでは持ち込むまいと決めている。
実は明を社長と呼んで頭を下げるし、明は実をシステム管理部の長谷と呼ぶ。
「どうしたんだ、こんな時間に」
「大した用じゃないんだ。宮田が久しぶりに飲み会でもどうかって話になってさ」
「飲み会、か」
「お前も社長社長で息つく暇もないだろうし、たまにはストレス発散も兼ねて」
 言われて、明は確かにここ二カ月暇らしい暇もなかったのを思い出す。父の死を悲しむ暇もなく社長就任の大小があり、
それからは社内を歩き回る毎日だ。椅子に優雅に腰をかけて手を組む、なんてどこの話だ、と明は思う。ゴブレットで酒を飲むどころか、まともに飲んだのは由香のコーヒーくらいだ。
「宮田はお前の都合に合わせるってさ。俺もそのつもりだし、ついでに由香もお前なら誘いやすいだろ」
 ついでに、の部分に明は聞き捨てがならなかった。そこが本音だろう、と言いたいのをこらえて、
「わかった。そっちも確認しておく」
とだけ返した。

 素直じゃねえの。携帯電話を切って実は思った。連れてきたくないならいっそ宣戦布告されたほうがよほど
楽だ。そして明が素直に由香に手を出さない理由が実にはわからない。24という年齢は、
地方ではそろそろ子供の一人も生まれていておかしくない。事実、中学から付き合っていた連中の中にはそろそろ二人目が生まれるなんいうのもいる。
 由香はいずれどこぞの縁談を受けるか誰かの手を取って嫁ぐだろう、おそらく仲間内でもそれは一番早いと思われていたし諦められてもいた。が、蓋を開けてみれば結婚どころか浮いた噂の一つ
もない。独身を通す理由が、明の帰国を待っていた以外の説明がつかないのだ。
あまりもったいぶっているなら、こちらもそろそろ幼馴染の立場に甘んじる必要はないのかもしれない。
 携帯電話を充電機に立て、実は目を閉じた。

450 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/09(月) 01:27:11.56 ID:/IWCGNSq
「飲み会には来ない?」
 だが、周囲の思惑をひっくり返して由香の返事は欠席だった。
「その日はシフトが入っちゃって、ほかの人も予定があったりして、どうしても無理で」
 そう言って、部署のシフトを見せる。遅番の由香のほかには数人が予定に組まれ、二人が休みの予定だが、
二人とも希望休として出ている。残りもそれなりに事情があるのだろう、当主権限で強制執行は後々のことを考えると憚られた。
「じゃ、仕方ないか」
「ごめんね、実には私から伝えておくから」
「ああ・・・それから」
 明は背広のポケットを探り、SAの紙製の土産袋を取り出した。
「お土産」
 ほい、と投げてよこす。
「開けていい?」
「どうぞ」
 交通安全のお守りだってさ、と注釈もつける。果たして包みを開けると、出てきたのは蛙のストラップであった。
「明ちゃん!」
 由香は一瞬蒼白になった後、顔を真っ赤にして叫ぶ。
「高速道路じゃ「無事カエル」のお守りらしいぜ?」
 まだ文句のありそうな由香が口を開こうとしたとき、1時の鐘が鳴った。休憩終了、の合図だ。
「さて、仕事仕事」

 ―明ちゃん、か。ある晩、大阪に向かうべく乗った新幹線の中で、明は由香の言葉を思い出していた。
田舎の旧家の使用人兼幼馴染という、時代錯誤も甚だしい関係だ。その上実や宮田も含め、由香に想いを寄せる連中はいくらでもいる。
 更に悪いことに、父の急死で明にはもう一つ当主としての仕事が増えた。
―早く結婚して、後継ぎを作りなさい。葬儀の際伯母に言われた言葉は、おそらく父も若かりし頃に、そして
伯母自身も母も言われ続けた言葉であろう。事実明の母は別の地方の名家の出身で、文字通り後継ぎを生むために、嫁がされてきたのだ。
 明の足元には、見合い写真がいくつも積み上げられている。どれもこれも地方の旧家に生まれ、
または東京や大阪の会社経営者の一族に生まれて東京の名門女子大を卒業した、生まれ通りに嫁ぐことを定められた令嬢たちだった。
 由香ではだめなのですか、と母に食って掛かったこともある。しかし母の答えは明瞭だった。
―家や会社のための道具になることに、あの子が耐えられると思いますか。
 母は自分が実家と嫁ぎ先、そして双方の経営する会社の取引の道具となることをよく承知していたし、事実そうでなければ利権と因習が幅を利かせる田舎の旧家では生きていけまい。
 指を咥えて由香が誰かのもとに嫁ぐのを見守り、そして自分は愛情のない結婚をして種を仕込め。
端的に言えばそういうことだ。
「クソっ」

「社長、遅いよー」
「お、社長」
 明の慰労会を名目にしていたわりに、飲み会は主役を抜きにしてさっさと始められていた。一部は既に出来上がり、顔が赤い。
「悪い、仕事が長引いた」
「じゃ、改めて明の社長就任二カ月お疲れさまってことで乾杯ー」
 かちんかちんと、あちらこちらでグラスが鳴る。ネクタイを寛げると、宮田と実が近付いてきた。
「よ、社長」
「お疲れ様ですぅ、社長」
 酒のせいか、口調はふざけ半分だ。
「湊は連れてこなかったんですか?」
「仕事が抜けられないんだそうだ」
「そこを当主の鶴の一声で、なんとか」
「無茶を言うな」
 ぐい、と明はビールを一気にあおった。
「ねーねー社長ー、お給料あげてくんないー?旦那の稼ぎが悪くってさあー」
 向こうの席では既に元同級生現使用人女子がへべれけ口調で叫ぶ。あはははは、と歓声が上がった。
「そうそう、うちもー。ここだと多田か公務員か医療関係でない限りマジ安月給でやってらんない」
「下手するとあたしのほうが稼ぎ多いんだもん、参っちゃうよぉ」
「子供作るのも考えちゃうしねー」
「産婦人科なんかじいさんのところ一つだけだし」
「ってか、うちの旦那ソッチがヘタクソなんだけどー」
「マジ?マジ?」
 酒が進むと、女子は明け透けな話に抵抗がなくなってくる。横目で見ながら、実は明の箸が進んでいないことに気づいた。
「食えよ、メシまだだろ」
「あ、ああ」
 良家のおぼっちゃまは酔っ払い方までお上品だ。顔色は赤いが、言葉は変わらない。
451 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/09(月) 01:36:14.13 ID:/IWCGNSq
「何考え込んでんの、社長」
「実たちは、結婚しないのか?」
「結婚?」
 宮田も実も頓狂な顔になる。
「結婚、ねえ。ま、相手がいて、状況が許せばってところかな」
「まず相手が見つからないと」
「ここに独身の妙齢女性がいるんだけどー」
 聞きつけた女子が返す。
「男にも選ぶ権利はあるし?」
「うるっさいバカ」
「そういう明はどうなんだ?」
「俺か?俺は―」
 ちらつくのは由香と、沢山の見合い写真だ。顔も名前も憶えていない。
「まだ」
「ま、今は仕事が恋人だしな」 
「そうそう」 
 酔った頭で勝手に結論付ける。
「そういえば、由香も結婚しないよねぇ」
 また女子だ。男性連の心中を見透かすような発言が続く。
「彼氏がいたってこともないみたいだし」
「高校の時にも断られた男子、結構いたよ」
「あたし、実と付き合ってるとばかり思ってた」
「違えよ」
 明の目がぐらつく。独身の由香と、跡取りを残すこととがダブった。いっそ由香との間に子供を作ってしまえば―。
 馬鹿らしい。考えかけて明はやめた。代わりにジョッキを一気に空にする。
「でも、ありかもな」
 実が横で顔を上げた。
「お、やるか?」
「それは宣戦布告的な?」
 いつまで経っても据え膳の存在に気づこうとしないなら、それを横から頂いたところで文句は出るまい。
据え膳の所有者はいまだ確定されていないのだ。
―本気か、実?思わず出そうになった言葉を明は引っ込めた。本気だろうとおふざけだろ
うと、
自分が口を出す権利はない。
 ずきりと頭痛がした。明日も昼から会議、終わったら支社からの定例報告会、取引先と
の商談と、やることは山積みだ。思い出したくないことばかりが押し寄せて、明はウイスキーの
ボトルに手を付けた。
452 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/09(月) 01:39:54.06 ID:/IWCGNSq
「遅いなあ、明ちゃん」
 由香は先ほどから何度目か忘れるほど時計を見上げていた。同級生との飲み会、しかも
ここからさして離れていない駅前とはいえ、既に時刻は11時を回っている。いつもならとうに由香も帰る時刻だが、
酔って帰った時に介抱する人手がいないと、との言葉で残らされているのだった。
―あんたもそろそろ結婚したらどう?
 朝、母が持ってきたのは見合い写真だった。こっちからもあっちからも貰ってるんだけど、と、あっという間に見合いの写真が積み上がる。
「まだ、結婚は」
「まだ、じゃなくて。もうそろそろ考えていいんじゃない?」
 試しに一枚を手に取ると、スーツを見た男性が畏まって座っている。28歳、年収450万、趣味は―。
「仕事が楽しいから、考えたこともないよ」
 それだけ返して、家を出た。本当は、まだ昔の夢―明ちゃんのお嫁さんになる―を、捨てきれずにいる自分がいる。
田舎で20年も暮らし、旧家の暮らしを何年もつぶさに見てくれば、釣り合わないことなど十分わかっている。まして
明の母は他所の名家から嫁いできた人だ。由香個人との仲は良いが、それだけでは旧家の当主の妻そして母は務まらないことを由香はよく知っていた。
 もう少しだけでいい。明ちゃんのそばにいたい。明が結婚したら、その時こそ自分はここを出て行こう。由香はそう決めていた。そのとき、玄関近くで物音がした。

「悪い、ここまで潰れるとは思わなかった」
 実はすまなそうに言った。明日も早いし、さあ出ようとした時点で明は既に大量の空き瓶とグラスに囲まれて
意識をなくしていた。寝息はしっかりしているし吐いてもいない、泡も吹いていないから、
命に別状はあるまいと考えて店からここまで引っ張ってきたのだった。
「由香、片方持ってくれ」
 せーの、で持ち上げて、2階の自室まで運ぶ。
「どうしたのかな、ここまで酔っ払うの、初めて見た」
 自室のベッドに横たえ、由香はため息をついた。
「こいつなりにいろいろあるんだろ。社長もだし、当主もだし」
「鞄、ここでいいか?」
 宮田が荷物を運んでくる。
「うん。ありがとう」
 二人が去ってしまうと、由香はてきぱきと明の介抱を始めた。ベルトを緩め、ネクタイを解き、ボタンを外して
体の締め付けを減らす。目が覚めた時のために水と、吐きそうになった時のために洗面器も用意した。
「・・・由香」
「明様」
 明が目を覚ました。酔いがまだ抜けていないらしく、瞳はどろりと濁っている。
「お目覚めでしたか。では私、人を呼んで」
 来ますね、と言おうとした由香の手を、明は強い力で引いた。
「・・・明様?」
 いつもと違う、と由香ははっきりと感じた。本能的に恐怖を感じて振りほどこうとし、
そのまま返す力でベッドに引きずり込まれる。間髪いれず、唇を塞がれた。
「やっ・・・」
 誰か、助けて。叫ぼうとしたところを、再度塞がれる。圧し掛かってきた体の重さに、由香はめまいがした。
酒の臭いのせいだけではない。長年想いを寄せてきた人が、自分の意思を無視して自分を抱こうとしている。
「明ちゃ、」
 明の手がブラウスの上から由香の胸を掴んだ。首筋を、舌が這う。
「由香」
 熱のこもった言葉が、今は恐ろしい。
「俺の子供を産む気はあるか」
 言われた言葉の意味が一瞬理解出来ず、由香は首を横に振った。別の何かが明の中に入り込んで、明の人格を
乗っ取りでもしてしまったか、そう思わずにいられなかった。指先は止まらずにブラウス
のボタンを外し、ブラの下に直接冷たい手が入る。力加減なしに男の手が乳房を掴んだ。

453 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/09(月) 01:45:41.52 ID:/IWCGNSq
 現実味のなさは明も同じだった。俺は由香相手にとんでもないことをしている、その自覚はあったが、それ以上に
由香が他の男に抱かれるのも、自分が他の女を抱くのも許せなかった。子供を作ってしまえば、誰もが由香を
諦めざるを得ない。他家からの縁談も、使用人に手を出して子供まで作ったとなれば遠のくことは確実だ。
「明ちゃん、やめて・・・っ」
 ブラのホックを外し、由香の乳房を直接食んだ。男を知らない体はそれだけで雪のように白く、情欲をそそる。
全部だ、全部欲しい。実にも宮田にも渡さない。理論はめちゃくちゃだというのに、結論と欲望は正直だ。
必死に逃げるようにして身を捩り、背を向けた由香のスカートに手を入れ、ストッキングごとショーツを降ろす。
「誰か、助け、んんっ」
 由香の言葉を片手で塞ぎ、もう片手を剥き出しになった中心部にひたりと当てると、由香の体がびくりと震えた。

 由香にとって、全ては悪夢の一言に尽きた。体の中心を押し割って入ってくる何かがある。自分の意志とは関係なしに
異物は否応なく侵入し、内側をこすり上げ、襞を広げていく。それは同時に由香の心を浸食してもいた。
ブラウス一枚残して、今まさに自分は明の欲望の玩具とされようとしているのだ。
―明ちゃんにとっての私は、子供を産ませるための、道具なの?
 明はブラウスを脱いだ。滾った欲望は既に準備ができている。頑なに向けた肩を返し、泣き崩れる由香の額に
口づけた。抵抗らしい抵抗をやめた由香は、されるがままに身を任せている。
「どうして、こん、な」
 由香にはわからない、と明は思った。明治時代に廃止されたはずの身分制度は貧富の差と家柄という形で残り、
田舎の因習と馴れ合いは根を張り、その家に生まれた瞬間から人生の全てのレールが敷かれる。自分の思い通りになることなど、何一つない。
なら、いずれ作らなければならない子供の母親だけは自分で選ぶ。どれだけ後ろ指を指されても認めさせてみせる。
 反論は聞かなかった。身動きの取れない由香の足を広げ、自らをあてがう。欲望のままに貫いた。
「やっ、いやあああああ!」
 破瓜の痛みを、由香はシーツを握りしめて耐えた。諦めきれずにいた夢も、明の幸せを
見届けてから去ろうと決めていたことも、全て崩れていく。一番の希望が一番の絶望に変わる。
痛みに指先は縋りつく先を求めているが、明の背に爪を立てるのだけはプライドが許さなかった。子供を産む道具となる運命を受け入れるのは嫌だった。
 破瓜の血が自身に絡みつくのを見て、明は噂に間違いのなかったことを確信した。侵入者を許したことのなかった入り口は熱く滑り、力加減を知らないまま明を締め付ける。
「っは・・・」
 それだけで達しそうになるのを堪え、明は深く深くへと腰を打ちつけた。
「やめて、いたっ、いやあ、いや!」
 悲鳴を上げる由香の体を抱き込み。文字通り全身で味わった。口づけ、歯を舌で割り、深く絡める。耳を愛撫し、髪を梳き、肌と肌を密着させ、待ち望んだ女の体を貪った。限界が近いことを悟り、最奥まで割入る。
「お願い、中は、や」
 それが目的である明は聞く耳を持たなかった。
「出すぞ」
「いやあっ」
 全身が震え、脈動とともに明は全てを放った。一滴も逃すまいと接合を解かず、残滓ごと注ぎ込む。その様を由香は焦点の合わない瞳で見ていた。

 言葉もなく身支度を整え、逃げるようにタイムカードを押し、息をすることも忘れて走って、転がり込むように家にたどり着いた時点で、時刻は既に一時を回っていた。
這いつくばるように部屋に戻り、ドアを閉めると、枯れたはずの涙がまた溢れてきた。声だけ殺して、由香は泣いた。

 翌日の休みを挟み、通常通り由香は出勤した。悪夢は心を苛んだが、ここを辞めたところではいそうですかと
次の仕事が見つかるわけではない。まして明はこのあたりでは強力な地盤を持つ名士だ。由香の雇用に手を回すことなど、造作もない。
由香はいつも通り、コーヒーに砂糖とクリームを一杯づつ入れて差し出した。
 その様子を内心驚きつつ、明は由香の淹れたコーヒーを飲んだ。以前より、苦い気がした。

蛙の夢(前)終わり

もともと近代西洋もので書いてたのが魔王公爵に圧倒されて急遽現代ものになったのはここだけの話。
454名無しさん@ピンキー:2011/05/09(月) 07:39:04.80 ID:4lNahXNg
GJ!
見た目も性格も良い女性が心身共にズタボロになるのかと思うと
股間が熱くなって勃ちますねw

でもこれバッドエンド確定なのか
期待してます
455名無しさん@ピンキー:2011/05/09(月) 07:45:09.75 ID:DzsivDRm
GJ!!
由香ちゃんが不憫だ
地方の閉塞感のようなものがじんわりと包囲している雰囲気がいい
バッドエンドかあ、切ない
456名無しさん@ピンキー:2011/05/09(月) 18:15:26.74 ID:8PZ8TGTr
グッジョブ!
まさしく好きだと言っておけば……な展開に胸熱w
これからどうやって苦しんでそしてどんな悲劇がと楽しみにしてる
しかし中世風で見てみたかったかも
でもこの地方の閉塞感もいいな〜
というか自分も身分高いパワハラ系書こうとしたら
魔王のパワーに引きずられそうで現代にしようかと迷っていたよw
457 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/10(火) 00:12:52.26 ID:faj3XVgi
続きを投下します。
今回エロ多め。

蛙の夢 (中)

 一度箍が外れてしまえば、最早明は成り振りを構わなかった。由香の休日と遅番を把握するのは雇用者としてわけのないことだったし、
地元の産婦人科の老医師に手を回して、見返りと引き換えに由香が来院してもピルの処方をしないよう伝えるのも電話一本で話がついた。
 本社から戻り、食事を済ませてから由香の遅番の退社時間にあたる10時までが明にとっては一番都合の良い時間だった。
広い部屋の内側から鍵をかけてしまえば人は来ないし、窓を開けない限り防音の部屋から物音は漏れない。まして由香の行動は「仕事が残っている」の一言でいくらでも留め置ける。
―そう、当主との間の後継ぎを「作る」、という仕事が。
 明が鍵を閉めると、それが合図でもあるように由香は服を脱ぎ始めた。震える手でリボンを解き、
ブラウスを脱ぎ、スカートのホックを外す。
「全部脱いで」
ブラとショーツだけのあられもない姿になった由香を見て、それでも明は冷徹に言った。先月は2度事に及んだ時点で生理が来てしまった。
見合い話を断るためには、妊娠は早ければ早いほどいい。自身も上着を脱ぎ、ネクタイを外す。
生理が終わって一週間、そろそろ危険日と言えるあたりに差し掛かっている。それを由香自身よくわかっているのだろう―が、
無理に転職したところで、多田商事と取引関係にないこのあたりの企業はほぼ皆無だ。由香を雇用すれば取引を打ち切る、
と言われれば誰もが取引の継続を選ぶだろう。
 手を背に回し、ブラを外す。大きくはないが形のよい胸がこぼれ、ショーツが落ちて一糸まとわぬ姿が月明かりに浮かんだ。
そのままベッドに座らせ、明はサテンのリボンを拾い上げた。いたずらに、というよりは嗜虐心に明の眼が光ったのを由香は見落とさなかったが、
どのみちこの部屋からは逃れられない。
「後ろを向いて、手を出して」
 大人しく従うと、両手首を後ろに緩く縛りあげられる。いよいよ逃げ場がなくなったところで、明が由香の唇を塞いだ。
 全部入った。
「う、あ、やっ、いたっ・・・」
 後ろ手に縛られたまま、由香は顔を苦痛に歪めた。
「まだ、痛いか」
 体の中は裂かれるように痛み、涙ばかりが頬を伝う。かろうじて由香は頷いた。
「じきに慣れる」
「そんな、こと、うあっ」
 由香の腰を押さえると、明はゆっくりと律動を始めた。
「や、いやっ、動か、ないで・・・っ」
 自分の中で明が動いている。文字通り犯している。いまだに由香にはそれが信じられない。あの飲み会の夜以来、
自分は悪い夢を見ているのではないかと思いたくなる。が、夜毎自分を組み敷く男の顔は、まぎれもない幼馴染の顔だ。
「あうっ」
 由香の中を蠢く明が、ある一点で動きを止める。
「な、なに」
 由香は痛み以上に、体の奥が痺れるのを感じていた。二度、三度明が同じ場所を突き上げると、
その度に由香の体は跳ねるような反応を返す。
「ここが弱いのか」
「あっ、あんっ、ひあっ」
 あとはもう構わなかった。探り当てた弱点を攻めるにつれ、拒むようだった締め付けは快感を求める方向に変化していく。
熱の塊が内側をこすり上げる度、ぬるりと襞が粘ついて絡みつく。子孫を残す男の本能に、子種を受け入れる女の本能は正直だ。
脳が痛み以外の信号を伝えてくるのが、由香にとっては拷問だった。いっそ痛みだけのほうが、歯を食いしばってやり過ごせる。
受け入れがたい理性とは裏腹に、体が明を覚えこもうとしている。
「由香・・・っ」
「ふあっ、や、い、いやあああっ」
 子宮の隅々まで放たれる熱を、由香は感じ取っていた。両膝を裏から押さえこまれた由香の内側でびく、びくんと明が収縮する。
「あ・・・」
 明ちゃんは、私が好きで抱いてるんじゃない。私に子供を産ませるために出してるだけなんだ―。
歓喜する体と裏腹に、心のほうは絶望しているのかもしれなかった。

 その日、二度果ててから明は由香の手首を解いた。こすれた手首のあちこちに、擦り傷ができている。
「あ・・・」
 明は何も言わずにナイトテーブルから絆創膏を取り出し、由香の傷に貼った。
―ひどいことをするくせに、子供を作る道具でしかないのに、小さな怪我のことは気にするの。
 体はすぐには立てないほど重く、足の間からはさっき放出されたばかりの精が漏れ始めている。
先ほどまでの明と今の明が一致せず、由香は惑乱せざるを得なかった。
458 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/10(火) 00:39:05.12 ID:faj3XVgi
 明は重役会議の資料に見入っている。このところようやく社長業が板に付いてきた、とは古株社員の言葉だった。
「東京支社は、ずいぶん売上が良いんだな。決算に合わせて黒字にしたのかと思ったけど」
「商売相手の数が桁違いです。尤も、売上に対して人手不足のようですが」
「増員も考えるか」
「そうですね。ところで若社長、ここのところ、ずいぶん機嫌がいいようですね」
「そうか?」
 田村ひとみは社長室の机の上で売り上げ報告を眺めている明を見て言った。最初のうちは仕事に押しつぶされそうになっていたというのに、
このところ明の終了は早い。19時には必ず仕事を終了させて帰路についている。
 女でもできたかしら。
 結婚と恋愛は別物だ。社長となればなおさらであることを、ひとみは先代の頃に学んだ。明の父は明の母に「当主の妻」の役割を果たさせた後、
何度か大阪支社の女子にちょっかいを出していたことをひとみは知っている。
おそらく深い仲くらいにはなっていただろう関係に見て見ぬふりをしたのは、
こちらに戻ればそれをおくびにも出さず、ひとみ以外の誰ひとりとして匂わせることがなかったからだ。
秘書のひとみにはスケジュールの関係上感づかれざるを得なかったが、売上への影響を出さず、
妊娠沙汰にもならず、別れるときも一切こじれさせず、お終いには最後まで一人で抱えて墓の中まで持って行った。
相手の女性社員もとうに結婚し、ひとときの社長のお遊びなど昔の話だろう。そこまで徹底すれば、
いっそ天晴れというものだ。
 さて、この若社長にそれが出来るかしらね。
459 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/10(火) 00:53:53.86 ID:faj3XVgi
 由香をベッドの上に膝立ちにさせ、ブラウスの上から胸をつつくと、それだけで由香の体は震えた。
腰を押さえこみ、スカートのホックを外す。サテンのリボンで視界を塞がれた由香は、唇を噛んで耐えていた。スカートを膝まで落とし、
体の中心に指を滑らせる。
「んぅっ」
 布地の上から触れただけで、既に濡れているのがわかって、明はほくそ笑んだ。体はこれから自分に起きることを既に理解し、快感を与えられることを待ち望んでいる。
「こんなに濡れてるのに、嫌なのか」
 現実を受け入れようとしないのは、心だけだ。上から筋を指でなぞると、
「やあんっ」
 それだけで膝が震え始めている。ためらわず、明はショーツの中に手を入れた。
「や、そこは、だめっ」
 ダメ、と言われて引き下がるなら、今のこの瞬間はない。今の明は、由香への執着で出来ているようなものだ。
「あ、ああんっ」
 侵入した指先は薄い陰毛を撫で上げ、迷わず中心部へとたどり着く。指先の感覚だけでもそれとわかるほど、そこはしとどに濡れていた。
丁寧に襞をなぞり、触れるか触れないかの力で陰核を摘む。由香の膝は既にどうしようもないほど揺れ、息には隠しきれない熱がこもっている。愛液が滴となって腿を伝う。
「はあっ、あっ・・」
「ここは?」
「も、やだ、やめ、うああっ」
 熱く潤った泉に明は指を差しいれた。綻んだ入り口が収縮し、侵入者を食いちぎる勢いで絡みついてくる。
構わず指先を動かし、深くまで押し込んでは戻す。曲げた爪の先で軽く中を引っ掻いていく。
「あ、あ、ああっ」
 くちゅ、くちゅ、くぷ、と、由香自身信じたくない音を由香の体は出している。子供を作るため男を受け入れる行為に、
それ以上に愉悦を得ることに貪欲になっている。
「明ちゃ、あうっ」
 十分な潤いと痛みを感じない程度の綻びを確認して、明は布地から手を抜く。少ない光源の中でも、はしたないほどに濡れて粘ついているのがわかった。
「あ・・・」
 膝立ちを強いられていた由香の体が崩れる。がくがくと震える足に最早体を支える力は残っていまい。
「こっちのほうは、準備ができてるみたいだけどな」
 明は由香の後ろに座ってリボンを解くと脇の下から手を回し、着たままであったブラウスのボタンを外し始めた。
「あ、ああ」
 か弱い力で由香が明の手を追うが、先ほどの行為で既に指先に力が入っていない。
「明、ちゃん」
「何?」
「いつまで、こんな、あっ」
 ブラのホックを外して押し上げ、柔らかい乳房に指をうずめる。ピンク色の突起を指先でつまむと、そこは既に硬く存在を主張していた。
「由香が後継ぎを産むまで」
 それは既に決まったことだ、と言わんばかりの明の指先が、濡れたショーツにかかる。膝まで降ろし、むきだしのその場所の熱をわざと再確認した。
腿と腿の間に明の手を挟んでいる姿は、ひどく扇情的で淫らだ。
「私、明ちゃんの、子供を産むための、道具なの?」
 息も絶え絶えに由香は訴える。どうか違うと言って欲しい。だが、明は答える代わりに由香をうつ伏せに組み敷いた。腰だけを押さえこんで、自らの熱をあてがう。
「正確には、お前にしかできない仕事だな」
「しご、と」
「この家の後継ぎを産む事も、大切な仕事の一つだ」
「や、あああああっ」
 肘だけでも体を支えようとした由香に、明は後ろから本命の「仕事」を始めた。
「んああ、あっ」
 最初とは違う、由香の膣内の勝手を知った明は由香の敏感な部分を攻めながら、強いて最奥までは進まず半ばで動きを止めた。
「あっ、あっ、ひあっ、明、ちゃ」
 後ろから覆いかぶさって胸を掴み、乳首を指先で弄び、同時に下の抽挿を再開する。
胸への愛撫と連動するように、膣は内側からぐっと締まる。
「はあ、あ、あ、あ」
 今まで達くことを頑として拒んでいた由香の体が、初めて絶頂を迎えようとしていた。
「こっちは正直だな」
「そんな、こと、やああっ」
 最奥まで貫き、子宮壁にぶつかると、わざと入り口まで引き戻す。張り出した亀頭が由香の内側をこすり上げ、
明そのものを文字通り由香の中に刻み込んでいく。こらえきれず、由香がついに陥落を許した。
「なか、こわれちゃ、あ、あっ、あぅっ、あああああっ」
 膣壁が明を吸い込むように、逃すまいとするように動く。奥へ奥へと吸い上げるような感触だった。その流れに逆らわずに、明は滾りを送り込んだ。
460 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/10(火) 01:02:43.88 ID:faj3XVgi
「由香!」
 明との「仕事」を終え、着替えて帰路を急ごうとすると、ひどく懐かしい声がした。
「・・・実」
「送るよ」
「・・・ありがと」
 助手席に乗り込む由香の横顔を見ながら、実は由香に違和感を感じていた。この間会った由香はもっと幸せそうで、
もっと屈託がなかった。それが今日の由香はどうだ。
「どうした、元気ないな」
「そう?・・・いつもと変わらないよ」
 声音の端々に、今までにはなかった陰りを感じ取る。
「本当に?」
「・・・うん」
 車は、田舎の田圃道をゆっくりと進んだ。蛙の鳴き声がこだまする。明日は、雨だろうか。
「実、社長にとって従業員って、何だと思う?」
 絞り出すような声で由香は言った。
「どうしたんだよ、急に」
「いいから」
「・・・売上を上げて、地域に貢献して、雇用を作り出す。会社の役目がそれだとしたら、従業員はその手駒だろ」
「手駒、って、道具ってこと、だよね」
「そりゃそうだけど・・・明と何かあったのか?」
 ぶちまけてしまいたい気持ちと、言わずにおくべきだという気持ちとが由香の中で交錯した。実が会社のために売上を上げるための道具なら、
自分は会社のために後継ぎを作るための道具、なのだろうか。
 だが、違う。自分は社長の自宅を快適に保つ道具と言われれば納得するが、会社のために社長の子供を産む道具、と言われても受け入れられない自分がいる。
 ぱたりと由香の瞳から涙があふれ、実はあわてて車を止める。
「おい」
「・・・会社の後継ぎを産むのも、従業員の仕事の一つなのかな」
「何だよ、それ。おかしいだろ。明がそんなこと言ったのか」
 こらえていたものを押さえきれなくなり、由香は頷いた。由香に感じていた違和感と今の言葉とが、かちりと噛みあう。
「まさか」
 今日もそのための「仕事」をさせられていたというのか。言葉にするにはあまりに憚られたその部分を、
由香は正確に理解したようだった。顔を上げないまま由香は頷く。実の眼を見て話すことが、どうしても出来なかった。
 
「ああっ、あっ、あんっ」
 その夜も、制服姿で明に組み敷かれ、由香は明の出入りに身を任せていた。
馴らされた体は既に明を抵抗なく受け入れ、深く咥えこんでいる。体同士がぶつかる音が耳を打った。
 体は明を受け入れることを知っているのに、心は明を受け入れないでいた。由香が明にとって跡取りを残すための道具でしかない事実が、
妊娠させるための肉体だけが求められているのが、何よりも由香には辛かった。体はどうなってもいい。
子供が必要だから作る、明のように世襲制を強制されてきた身にとってはそれも一つの解決策だろう。
―じゃあ、私はどうなるの?
 自分が求められているのは幼馴染の湊由香、だからではなく、その卵子と子宮に過ぎない。種付けの効率を上げるために明は由香を日々抱き、
抵抗なく受け入れられるために明の肉体を由香に覚えこませているのだ。
農作業で言うなら土壌を改良して土を耕し、種を蒔いているのと変わりはない。酪農でいうなら家畜の種付け出産だ。
 何だよそれ、おかしいだろ。実の言葉が頭の中で反響した。そうだ、自分たちの関係はとんでもなく歪だ。
妊娠を目的とし、雇用を盾にした性関係の強要。田舎者の由香でもそんな馬鹿な話は聞いたことがない。が、自分たちの関係はそれに他ならない。
「はあっ、あんっ、んああっ」
 明は今日2度目の射精を迎えていた。性的な興奮や快感よりも何よりも、自分が求めているのは受胎の一言に尽きる。
腹出しや顔射といったアダルトビデオのような行為は無駄だった。フェラチオなど、論外だ。
「ひああ、あんっ、あうっ、あああっー」
 由香が達くのにあわせ、明は精を放った。果てた後も、明は体を離そうとしなかった。
461 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/10(火) 01:30:43.19 ID:faj3XVgi
 裏門を出ると、見慣れた車があった。
「・・・実」
「送るよ」
 
 車の中は、ほとんど無言だった。由香に肉体関係を強いる明と、幼馴染としての明と、社長としての明がどうしても一致しない。
「いつから、そうなんだ」 
「いつから、って」
 実が重い口を開いた。
「お前と明だよ。その、無理やり子供作って既成事実に持ち込もうとしてるんだろ」
 いらだち紛れに実は言う。自分ではどうにもならないことだ。だからこそ腹立たしい。
「・・・あのとき、飲み会が終わって、実たちが明ちゃんを運んできた、あの後から」
 隣で実が息を飲んだ。由香は下を向いた。感情がどうであれ、子供が出来てしまえば由香と明の関係は
一生切り離せなくなる。まして地元を離れたところで高卒の何の資格もない女が一人で食べていくだけの稼ぎを得られるとは思えなかったし、
地元に残ったところで明の手の中からは逃れられない。現に駆け込んだ地元の産婦人科はピルの処方を断ったし、
目的が目的である明は一切の避妊をしない。四面楚歌もいいところだった。
「私、本当は明ちゃんと結婚なんか出来なくてもよかったんだ。どうしても家のために他所から奥さんを迎えることはずっと昔から知ってたし、
それで明ちゃんが幸せなら、いいと思ってた。今だって正直、体なんてどうなったっていい」
「どうでもいいって、お前」
「でも違う。明ちゃんが欲しいのは私そのものじゃない。私の子宮と卵子と、それだけ。後継ぎがいれば結婚してようとしてなかろうと周りは文句を言えないから、
一番手っ取り早いのが一番近くにいた私だった」
 心の底から求めあい、自ら望んで体を許していたなら、実にもあきらめがつく。正妻になろうとなるまいと、それは由香が決めることだ。
だがそうではない。後継ぎという明の事情に、由香は最悪の形で巻き込まれている。
―こんな奴に、幼馴染を任せておけるか。
 実の内側に、憎しみに近い感情が湧きあがってきた。由香が明をずっと待っていたことも、明が由香に想いを寄せていたことも実はよく知っていた。
だからこそ永遠の二番手に甘んじるつもりでいたというのに、実際に明のやっていることは由香を心身ともに踏みにじる行為でしかない。
「何なんだよ、あいつ」
「実」
「お前、こんなにボロボロにされていいのかよ。レイプまでされて、都合のいい道具にされて、それでいいのかよ」
「・・・どうしていいか私にも分からないよ。ずっと好きだったのに、なんで、こんな、道具みたいな」
由香は泣き崩れた。実は言葉を返すことが出来なかった。明の家の事情を実は朧気に、由香は身を持って理解している。
だが、子供を作る宿命までも一方的に強いられるいわれはない。由香は生まれてからこの町で過ごし、育ち、泣き、笑い、
記憶を積み重ねて生きてきた。その全てが由香だ。肉体だけの存在ではない。
車内から見上げる空は霧が出ていて、月も星も見えない。五里霧中、それが今の由香なのだろうと実は思った。
462 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/10(火) 01:32:12.19 ID:faj3XVgi
蛙の夢(中)終わり。

着衣プレイは浪漫だと思います。
463名無しさん@ピンキー:2011/05/10(火) 02:14:23.88 ID:pIT+9/xj
素晴らしすぎる・・・それしか言えない
続き待ってます!
464名無しさん@ピンキー:2011/05/10(火) 07:12:10.50 ID:DRNBSjE6
アンタ……最高やGJ!!
本当に何故押し倒すときに好きだと言わなかったんだ明
そして実は二人の気持ちを知りながら誤解解いてやれよというのは酷か
すごく切ない切ないよ
これ始めに二人はくっつかないって知らずに読んでたら
すごく二人は誤解とけるんだよね!と期待して読んで
読み終わったら鬱りそうだったから初めに注意してもらえてよかったw
465名無しさん@ピンキー:2011/05/10(火) 07:20:27.42 ID:Ov5lPOKp
GJ!
切ないなあ
いってやれよお、明、たった一言じゃないか
と思いながらこの生殺しにwktkする矛盾

本当に最高だ
466名無しさん@ピンキー:2011/05/10(火) 17:32:03.28 ID:75LFMIVD
GJ!
仕事で義務か
色々重いな
続きに期待
467 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/11(水) 00:05:25.01 ID:jJ7Q117T
蛙の夢、完結編を投下します。
エロなし。

蛙の夢(後)

 その朝起きた時点で、既に異変は始まっていた。頭が重く、ずきずきと痛む。しゃにむに体を起こすと、今度は眩暈がした。
「由香」
「・・・何?」
「ごはん、出来てるわよ」
 母の声もいつもより遠い。ふらつく体を押さえて階段を降り、なんとか居間に向かう。
味噌汁とご飯、鮭と卵焼きの、平均的な日本の朝食だ。椅子に座ろうとしたその瞬間に、猛烈な吐き気が襲った。
「うっ」
 返す足でトイレに駆け込み、せり上がってくるものを全て吐き出す。中の消化物が全てなくなって胃液だけになると、喉の奥が焼けつくように痛んだが、
それさえも全て出してしまいたかった。
「どうしたの、由香。二日酔い?」
 何も知らない母が声を掛けてくる。が、由香は事態を確信していた。心当たりなど今更挙げるまでもない。週に二度はそのための「仕事」をさせられていたのだ。
事態を防ぐための対策もさせてもらえない産婦人科では、診断を受けたその瞬間に明に連絡が行くだろう。薬局で妊娠検査薬を買っただけでばれる田舎で、
プライバシーや個人情報という言葉は明以外には適用されない。その明は、由香の妊娠の知らせを手ぐすね引いて待っているのだ。
 朝食を押し込むようにして食べ、電車で一時間半も先の、新幹線の乗り換え駅近くにある産婦人科に駆け込む。
名前を呼ばれるまでの時間が、閻魔の裁きを待つ時間のようだった。

 止めろって言ったってなあ。実は机の上にコンビニのパンとサラダを広げて頭を抱え込んでいた。明はいつも通り社内を歩き回っているから、
何を考えているか実にはわからない。とはいえ、由香の様子が嘘とも思えなかった。由香が明を陥れようとする理由はないし、
失敗すれば由香の首が締まるような場所だ。
 男女の抜き差しならぬ関係といったところで、自分のやろうとしていることは単なる出歯亀だ。それでもあの飲み会の夜、もう少しだけ、
せめて明が目を覚ますところまであの場に留まれば、全ての悲劇は防げたかもしれない。そう考えてしまうことはどうしようもなかった。
 いっそのこと、由香を横から攫うとか―もっと馬鹿馬鹿しい。こちらの根回しがよほどうまくいかない限り、明はいくらでも周囲を追いこんで由香を追い詰めるだろう。
少なくとも、由香が彼の子供を産むまでは。産んだ後は子供を取り上げられ、地主のお手付きのレッテルを貼られるってわけだ。
 東京ならともかく、ここは世間の狭い田舎だ。明が本気を出せば、由香一人経済的にでも社会的にでも
物理的にでもどうとでも追い込める。それを恐れて、由香は泥沼の中で息も出来ずにいる。
―東京、ねえ。
 実は壁の貼り紙を見た。「東京支社、異動希望者募集。職種、年齢、経験年数不問」とある。東京支社はこのところ売り上げを伸ばしているらしい。
特にシステム管理担当者はすぐにでも誰か来られないか、と部署直々に要請を受けている。異動願いを出せば即受理されるだろう。
由香を説得して偽装結婚し、ほとぼりの冷めたところで多田を離れて転職する。由香が妊娠していようとしていなかろうと、明にばれる前に婚姻届を出してしまえば
子供は法律上自分の子供になるから、後継ぎにはできまい。よしんば明が裁判を起こそうと養育環境と養育意志とが揃っていれば、地主との癒着のない東京での裁判ならこちらに分がある。
 そこまで考えて、あほらしいと実は頭を横に振った。我ながら自己満足ばかりのいい加減な計画だ。第一、こちらに住んでいる家族が村八分を受けないとも限らない。
 それでも、由香は体をいいようにされ、心は悲鳴を上げている。自分は道具ではないと泣いている。文字通り一番近くにいながらそんなことにも気付かない明が、
実には信じられなかった。 昼休みも半分を切ろうとしたとき、携帯電話が鳴った。由香だった。
468 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/11(水) 00:07:52.17 ID:jJ7Q117T
「今日、産婦人科に行ってきたんだ」
 電話の向こうの由香の声は震えていた。ああ、この時がきたか、と実はぼんやりと思った。まともな避妊手段を一切封じられて、
いわゆる「中に出されて」いたのだから、今更驚きはしなかった。
「5週目、だって」
「・・・やっぱりな」
 由香は泣いているんだろう、と実は思った。言葉の端々で、しゃくり上げる声が聞こえる。妊娠そのものよりも、自分が本当に明の「道具」になってしまった、
彼のお望み通りに後継ぎを身ごもってしまった、その絶望のほうが大きいのかもしれなかった。
「お前、本当にこれでいいのか」
「よくないのは、わかってる」
「ずっと好きだった奴に、仕事の度に部屋に連れ込まれてレイプされて、そいつの思惑通りに妊娠して、思惑通りに子供を産んで、
どこにも逃げ場もなくて、これでいいなんて、お前が一番思ってないだろ」
 由香が電話の向こうで黙り込むのがわかった。先ほどのあほらしい逃亡話―自分の頭の中で練った、
計画とも呼べない計画を、実は思い出していた。
「結婚して、東京に逃げないか」
 あくまで、提案だ。由香を逃がすための提案、と、実は自分に言い聞かせていた。横から奪うためじゃない、俺は由香を道具にさせたくないだけだ。
「東京?」
「東京支社が増員を募集してる。今日希望を出せば、すぐにでも受理されると思う」
「でも」
「バカ、偽装結婚でいいんだよ。本当に夫婦になれなんて言ってない」
「本当の子供じゃないのに」
「誰にも言わなきゃ誰にもわからねえよ。母親がお前なことに変わりはないんだ」
「実に迷惑だよ」
「迷惑なんて考えてねえよ」
 もうひと押しだ、と実は考えた。子供を作られようと何をされようと、心はこちらにある。
―絶対に明には渡さない。
「このままあいつに子供を渡してお役御免でいいのか?お前は湊由香で、子供を産む道具じゃないだろ?」 
 その言葉に、由香が言葉を詰まらせる。
「多少戸籍に傷はつくけど、あいつの思惑に振り回されて終わり、なんてことはさせたくないだろ?お前の人生なんだから、
手遅れになる前に多田だろうと他人だろうと使えるものはとことん使えよ。他のことは逃げ切ってから考えても遅くないだろ」
「実は、本当にそれでいいの?私と明ちゃんのことに無関係なのを巻き込んじゃうのに」
「迷惑か?」
「迷惑なんかじゃない。全然迷惑なんかじゃないよ。けど、実はどうなるの」
 血のつながらない赤子一人のために実の人生を変えかねない。由香はそれを恐れているのだ。
 何を今更、と実は思った。一度しかない人生に、狂いも何もあるか。なら手を差し伸べないで後悔するより、
好きな女に地獄まで付き合う。それで十分だ。
「俺が自己満足でやろうとしてるんだから、それでいいんだよ。幸い資格も貯金もあるし、どうにかなるからさ」
469 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/11(水) 00:11:32.71 ID:jJ7Q117T
 腹が決まれば、実の行動は驚くほど速かった。電話で母に婚姻届の用紙と戸籍謄本を頼み、その日のうちに東京支社への異動希望を出し、
夜には双方の両親に挨拶をし―由香の父親には当然張り倒されたが、エコー写真を見せられれば認めざるを得ない―、翌日には婚姻届を役所に提出した。
数日後には小さなアパートに最低限の荷物で引っ越しを済ませた。
 子供を作る既成事実には、こちらも既成事実の積み重ねで対抗する。いずれ明にも情報が漏れるだろうが、婚姻届の取り消しは余程でない限り第三者には出来ない。
そして事実上夫婦として暮らしてしまえば、その取り消しを求めること自体が明によからぬ噂を立てさせる。それがわからない男ではあるまい。
 退職します、と由香が告げたのは、一週間後のことだった。明と明の母が揃った朝である。
「今まで、長い間お世話になりました」
 退職届を手渡し、深々と頭を下げる。
「淋しくなるわね」
 急な退職に、明の母が溜息をつく。
「実は結婚が決まりまして」
 最初から何もなかったかのように、努めて「仕事」の表情と言葉で、由香は告げた。
「相手の東京への転勤が決まったので、一緒に来ないか、と」
 その言葉で、明は息を飲んだ。実が東京支社に異動する、その希望を提出したのは一週間前だった。内心邪魔者が一人減る、
と喜びながら東京支社に連絡し、双方の人事担当とすり合わせて、正式な辞令が昨日出たばかりだった。
 そしてこの一週間、由香は生理を理由に明を拒んでいる。辻褄が合いすぎて、明は眩暈がした。
「先日婚姻届も出したので、実はもう湊は旧姓なんです」
 それを敢えて報告しなかったのは、すぐに退社することが分かっていたからか。
「あら、おめでとう。じゃあ、今は?」
 母がその先を促す。これ以上聞いていたくなかった。
「―長谷。長谷由香、と」

 現場担当者を捕まえて由香のシフトを確認すると、本来出社予定だった部分はすべて有給扱いとなっていた。
「月の終わりまでは居てくれないか、ってこっちもお願いしたんですけどねえ。旦那の転勤が急なのと、何より体調が良くないんだそうで」
「体調?」
 明が鸚鵡返しに言う。
「どうもこうも、結婚した女の体調が良くない理由なんて一つっきゃないでしょう」
 担当者はまだ分からないのか、と言いたげに唇をゆがめた。
「コレですよ、コレ」
 両手を腹の前で丸い形にし、上下に動かす。
「二ヶ月目だそうで」
 実君も由香ちゃんも全く隅に置けない、と笑った。
 アパートに戻ると由香は、わざと切っていた携帯電話の電源を入れた。普段はほとんど来ない明からのメールが大量に届いている。内容はどれもこれも、一度話をしたい、との件だった。
妊娠も、間違いなく伝わったことだろう。
 完全に逃げ切れるとはまだ思えなかったが、家族が村八分にされているということは今のところなかった。
周囲では由香と実ができちゃった婚をした、お前らもか、程度にしか考えられていない。明が口を挟む余地は今のところ、ない。
 明日にでも来てほしいとの東京支社をなだめ、仕事の引き継ぎを済ませ次第東京へ引っ越す算段が整っていた。
双方の実家から直接ではなくわざわざこのアパートを借りたのは、周囲に自分たちが夫婦であることを浸透させるためだけだった。
「風邪引くぞ」
「あ、うん」
 床に座り込んでいた由香を、実が見咎めた。部屋は段ボールばかりで、布団とテーブル、最低限の家電と食器のほかにはまともな家具もない。
東京に行ったら買おう、と二人で決めていた。
「ごはん、私が作るよ」
 そのまま台所に立とうとする由香を、実は止める。
「妊婦はおとなしくしてなさい」
「でも」
「いいから」
「・・・うん」
 ふと、封のされていない段ボールの中から実の衣類が覗いた。その緑色に、由香は見覚えがあるような気がした。
―なんだっけ、あの色。・・・そうだ、蛙だ。
 由香はのろのろと立ち上がり、自分の段ボールを開けた。蛙のストラップは、明がお土産にと買ってきて
由香に押しつけたものだった。これを貰ったのは三か月前だ。それまでと今との状況とは、あまりに違いすぎている。
 窓の外に、田んぼが広がる。今日は蛙は鳴いていない。きれいな月だった。
―交通安全のお守り。無事帰る、だってさ。
 もう、明ちゃんのところには帰らない。田圃めがけてふっと放ると、それっきり蛙は見えなくなる。
それを待っていたかのように、由香の携帯電話が鳴った。
 明だ。
 息を飲む由香の隣で、実が携帯電話を取り、通話ボタンを押した。
470 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/11(水) 00:19:40.93 ID:jJ7Q117T
「もしもし」
 受話器の向こうから聞こえた声に、明は一瞬我が耳を疑った。番号は間違いなく由香だ
が、声の相手は実だ。
「実・・!?どうして」
「どうしてもこうしてもないだろ。結婚したのをお前も知ってると思ってたけどな」
 実の声音は苛立ちの段階を通り越して、既に嫌悪感を露わにしている。
「由香は」
 お前が言えた立場か、と言いたくなるのを押さえて、実は会話を続けた。
「隣にいるよ」
「じゃあ」
「ふざけるな。俺はお前が由香に何をしたか全部知ってる。何を吹き込んで何をしようとしたか、そのために
どれだけひどい目に遭わせていたかも知ってるし、根回ししていたことも知ってる。その結果はお前ももう知ってるよな?
お前の声は聞きたくないし、聞かせたくもない」
 明は言葉を失った。自分のもとに由香を留めたくて取った行動の結果がこのザマだ。自分は由香も子供も実に攫われていく、
その未来を自らの手で手繰り寄せたのだ。
「子供だけでも取り上げようなんて思うなよ。子供は俺の子供として認知する。金も一銭も要らない。会社もいずれ転職する。
お前個人とかかわる気は二度とない」
 返答を返せずにいる明の受話器の向こうで、
「・・・少しだけ、話させて」
 由香の声がした。
「けど、お前」
「私にかかってきた電話だもの」
「俺は」
 少しの押し問答の末、実は根負けしたようだった。
「一度だけだぞ」
「・・・うん」
 
「由香」
 子供を作るのは建前に過ぎなかった、といって何になるだろう。自分は後継ぎを残すための見合い話を蹴りながら、
由香を留めるためと自分に言い聞かせながら、その実祖先と同じことを由香に強いたのだ。
―あの子が会社や家の道具になることに耐えられると思いますか。
 母の言葉は正しく由香を見抜いていた。実は自分が強いた無理を道理で破ったに過ぎない。
「俺は」
 言葉にならない。本当は由香にこそ側にいてほしかった。他の誰にも渡したくなかった。今何を言っても、もう由香には伝わるまい。
「・・・明ちゃん、私は本当に、明ちゃんが好きだった。どんなにひどい目にあわされても、明ちゃんが
私のことを本当に好きでいてくれて、それで抱いてたとしたら、それでよかった。
一生日蔭者になっても、構わなかった。子供ができようと出来まいと、ずっと側にいたかった」
 由香は感情をなくしたような、淡々とした声で言った。ああ、これが最後なんだ、と明は思った。
「けど、明ちゃんは言ってた。私が後継ぎを産むのは仕事だって。・・・私は子供を産むための道具にはなりたくなかった。
私にとっての明ちゃんは代わりのいない人だったけど、明ちゃんにとっての私はそうじゃなかった」
「由香、違う、本当は―」
 お前でなければならなかった、その言葉を、由香は途中で遮った。
「―もう遅いよ、明ちゃん。明ちゃんの一番欲しかった子供が出来て、実が全部分かった上で支えてくれるって言ってくれた時、
私、絶対に子供を明ちゃんには渡さないって決めた。明ちゃんのところには戻らない。子供のための道具にはならない。子供を多田家の後継ぎにはさせないって。
・・・それだけだよ」
 言い切って、由香は携帯電話の通話を切った。そのまま着信履歴から、明の番号を着信拒否に登録する。
これで、本当にさよならだ。
「・・・由香」
 傍らで、実がものも言わずに由香の体を抱きよせた。腕に身をまかせながら、由香は目を閉じて涙を流した。
471 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/11(水) 00:28:31.67 ID:jJ7Q117T
 30年以上努めた会社を数年前に定年退職後、ひとみは東京に引っ越し、退職金と貯蓄、年金を元手に通信制大学に入学した。
既に夫はこの世を去っているし、結婚した娘も東京に暮らしている。田舎の広い家で一人で日がな一日過ごす生活よりは、
娘の育児を手伝いながら興味のあることでも好きに勉強してみようか、と思ったのがきっかけだった。

 日が暮れた道を子供たちが競うようにして帰っていく。孫と同じくらいの子供たちだろうか、次々ひとみの傍らを走り抜けていく。
揃いのユニフォームはサッカー教室の後の子供たちだろう、泥だらけで、それでも飽きずにサッカーボールを蹴りながら歓声を上げる。
そのうちの一人が、昔どこかで見たことのある顔のような気がして、ひとみは目を瞬いた。
 まさか、ね。
 若社長は先代のようにはなれなかった。就任して数年で社内の女子に手をつけたとの噂がまことしやかに立ち・・・
そしてそこから立ち直ることができなかった。
 他人の空似だわ、・・・若社長の小さな頃に似てるなんて。
 
「多田商事、新社長が決定」
 夕刊の片隅に、小さな記事が写真つきで載っている。年嵩の男性の写真だった。
 明の解任が決まったとの知らせを実は宮田から知らされた。経営悪化の責任を取って辞任、が表向きの理由だったが、
実際のところは経営以上の問題で、社長の放蕩が原因だったらしい。多田だからと目をつぶってきた地元の取引先にいくつも逃げられ、
株主と役員にそっぽを向かれたとのことだった。
―旧家の嫁さんに暴力を振るって逃げられたとか、会社の金を博打に使ったとか、
本当かどうか分からないけど最近の明の噂はそんなのばっかりだ。あいつ、どうかしてるよ。
 多分、明は本気で由香を愛していたのだ。子供を作るのもそれが目的のすべてではなく、本当は由香を繋ぎとめるための手段ではなかったか、
と思う。却って由香を失い、結果自分自身まで見失うほど、深く―。今はもう実にはわからない。
「お父さん、ごはん出来たよ」
「ああ、悪い悪い」
 妻の声に、実は我に返った。
「ただいまー」
 サッカー教室が終わり、今日も汗と泥まみれになって帰ってきた息子の着替えを手伝い、2歳になる娘を抱きあげて食卓に着く。
「今日は何?」
「今日はシチュー」
「やったあ!」
 男同士、顔を合わせて歓声を上げた。その表情が、いつかどこかで見た横顔と重なって、実は幻を振り払った。

蛙の夢、終わり

お付き合い、ありがとうございました。
472名無しさん@ピンキー:2011/05/11(水) 00:39:09.71 ID:PMKXlYon
GJ!!
明…転落人生を送るなんて
というかもうすべてやけっぱちというか
自分と由香を引き離した家を壊したかったんだろうな
由香は転落した明の事何も思ってなさそうで更に鬱
誠氏ねのノリで実氏ねと呟いてしまったw
そしてひとみさんがさりげなくおいしいポジションだなー何もしてないのにw
473名無しさん@ピンキー:2011/05/11(水) 00:44:23.38 ID:NTXgODvR
>>471
グッジョブ〜
>あいつ、どうかしてるよ
お前が言うなとツッコミ入れたw
由香が色々知った未来も見てみたいほど
哀しいすれ違い愛ご馳走様でした
474名無しさん@ピンキー:2011/05/11(水) 00:48:06.40 ID:u3mWlfkM
一言の重みですれちがいか
GJでした
475名無しさん@ピンキー:2011/05/11(水) 01:05:20.46 ID:13iagTL7
GJ!!
明ちゃん自業自得だが哀れ
由香ちゃんも神視点から見ると不憫だな
だがそれが良い
完結乙です
476名無しさん@ピンキー:2011/05/11(水) 04:40:08.15 ID:9F4y0q65
実いい人だな
477 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/12(木) 00:49:44.04 ID:OBcsBPGx
感想諸々、ありがとうございます。追記、補足を少し。

ひとみ女史:気がついたら出番が増えてました
由香→明:式での態度が全てかと
>どうかしてる云々:「旧家の嫁さん〜」からここまでは宮田のセリフだったりします。描写不足ですみませんorz

>>456
さあそれを早く文章にするんだ

では今度こそ名無しに戻ります
478名無しさん@ピンキー:2011/05/12(木) 02:06:39.20 ID:rDy9jCyu
>>477 乙でした

>由香→明:式での態度が全てかと
由香は切替えが早かったんだ、意外だった。

明が一番悪いのには変わりないのだけど、実も卑怯ではあるね。
永遠の二番手でいるつもりだったけど状況が変わって、子供を引き受ければ
由香が手に入るからと偽装結婚でいいんだよ、とあくまで親切心からのように
振舞って弱っているところに付け入ってまんまと手に入れて、そのまま夫婦になったわけだから。

きちんと気持ちを打ち明けた上で明ではなく自分を選んでと言っていたらあっぱれだった。
でもそれで由香が明を選んだら悲恋にならないか。
他の男の子供を引き受けるなんて立派と言うべきなのかな。
実は成長してますます明に似てくる息子を見ていつまでもモヤモヤしつづけると良いと思う。
479名無しさん@ピンキー:2011/05/12(木) 07:46:04.23 ID:eC8JI9QX
>>477乙!
初めは明に感情移入して読んでいたせいで
由香の事すぐ実に乗り換えるなんてこの尻軽!
明の事そんなに好きじゃなかったのかーとか思っていたが
由香視点で読むと明に犯されながら段々と
「この人、人としてこの行動はどうよ?」と思っていって気持ちが冷めかかった所に
(由香視点では)人として立派に見える実にぐらっときちゃってもしょうがないかと思ってしまったw
自分より大事だと明に思われてる子供を取り上げて
式での由香→明の態度も好きだったからこそ許さないって愛が故に振り切る気持ちで
でも由香は自分の結婚を悲しむよりもお腹の子供見に来てるんだなと気丈にふるまって
ほかの男の子供になることこそ復讐だとおもったんだろうなと勝手に解釈した。
そうじゃなきゃ明が可哀そうすぎてw

でも実は明の友達で明の気持ち知ってたくせに
道具だと思われてると思って絶望している由香の気持ちを救いもせず
自分のものにしたんで>>478の言うとおり最低でもやもやし続けてほしい
これで実が明の友達でもないか気持ちを知らなかったんなら
別にそこまで最低だとは思わなかったんだけどw

そしてひとみさんはなにかやらかしてくれると思ったのに
ただ蚊帳の外で見てるだけで物語の核心にも触れてないのがウケたw
480名無しさん@ピンキー:2011/05/12(木) 08:12:26.57 ID:Mj61U9a2
>>477
冒頭の時系列が少し分からなかった
新郎新婦が実と由香だったのか
それを切なく明が見ていたところに
ひとみに書類を押し付けられた

その後はさかのぼった話だったんだ
なんか書類をおしつけられてため息ついているところに
由香がコーヒー入れたように読んでしまっていたよ
481名無しさん@ピンキー:2011/05/12(木) 11:15:05.74 ID:IH3oXocV
由香ちゃん的には自分は道具と思われてるんだって最後まで思ってるっぽいしなあ
最初に犯した時に好きだと言って押し倒しておけばまた違ったろうに
明は一族になんとか認めさせないとって考えで頭一杯だったんだな

>>480
行も一つ空いてるし
ひとみさんが「若社長!」って言ったとこで既に過去ジャマイカ?
482名無しさん@ピンキー:2011/05/12(木) 18:09:50.42 ID:IzQcB24v
是非とも幸せになってるヒロインに明の本心を知らせてほしいと妄想するけれども
明の本当の気持ちを説明され、ヒロインが去ったから明は破滅したんだとか
実は明がヒロインの事好きだと知ってたけど弱みに付け込んだとか聞いても
ラストの由香は明の事後悔するどころか
電話で明の言い分を聞かなかったことといい
実を選んだことを後悔しない強さというか酷薄さがありそうだ…
まぁ好きだったときいたのに電話ごときで諦めてしまう程
意気地無しな明が悪いんだがw

いいネトラレを有難う!いい感じで欝るよ……
483名無しさん@ピンキー:2011/05/13(金) 16:04:34.12 ID:WP/97MjZ
ところで、行為のきっかけや物語全体からすれば愛故でも、物語の雰囲気的はラブコメってのはありだと思う?
484名無しさん@ピンキー:2011/05/13(金) 18:52:33.32 ID:cfnyCWT6
そういう作品過去ログあさったら結構あるから愚問だなw
485名無しさん@ピンキー:2011/05/13(金) 20:12:55.62 ID:0JJl25sq
愛故だったらなんでも良い
486名無しさん@ピンキー:2011/05/13(金) 20:20:24.62 ID:GHJdZSI0
愛故に無理矢理なら純愛っぽくて両思いでも何でもいいw
出来ればエロコメで頼む
487名無しさん@ピンキー:2011/05/13(金) 20:48:24.66 ID:TtIucfCd
明るいのがみたくなるな
皆うまくて主人公が可哀想なのに感情移入しすぎるぜ!
488名無しさん@ピンキー:2011/05/13(金) 21:49:45.69 ID:7GElyFdF
まあ、強姦する位好きな訳だしラブコメみたいなのも見たい
鬱なのも良いが毎度寝取られても困るぞw
主人公が寝取るのも好きだけどさ

寝取られ寝取りも面白いんだけどね
489名無しさん@ピンキー:2011/05/14(土) 00:21:19.41 ID:mcwWBjIn
明るい愛故無理やりを目指しはしたがどうだろう

主とメイド
490名無しさん@ピンキー:2011/05/14(土) 00:21:49.58 ID:mcwWBjIn

「旦那様、寝酒をお持ちしました」
「ありがとう、そこに置いておいてくれ」
トレイに酒を移したデキャンタとグラスをのせて、メイドが顔を出した。主はベッドに上体をもたせ、書類を見ている。
片足はベッドの上に伸ばし、片足はベッドの下に下ろしてある。湯上りなのかパジャマにガウン姿だ。
側の卓にトレイを置いて、礼をして部屋を出ようとしたはずなのに。
「……何故旦那様の上に座らされているのでしょうか」
片手は書類を持ち、それに目を落としながらもう片方の手は、メイドの腰にしっかり回して怪しい動きで撫でている。
それをひきはがそうとしながらも、使用人はあくまで丁寧な口調を崩さない。
「いい加減、私のものになりなさい」
「ですから嫌だと申し上げているでしょう。使用人に手をつけるなど、主の風上にもおけない行為ではありませんか」
気丈な態度を崩さないメイドを、主は書類を卓に置いて見つめる。
そろいの制服なのに、きっちりと着こなしていて文句のつけようがない。それなのに覆う面積が多いのに色気が感じられる。
もう片方の手も腰に回し、腕の中に囲い込む。
「私は気にしない。主の要求に応じるのも使用人の務めではないかな?」
「そんな、理不尽、な、……むぐっ」
それ以上の文句は実力行使で封じられた。

「やっ、嫌です、旦那様」
「脱がされるのが嫌か。自分から脱ぐとは積極的で嬉しいが、男の夢として恥じらいながら脱がされてくれ」
メイドをベッドにうつぶせるように倒して、制服の上のエプロンのリボンを解き、後ろのボタンをはずしていく。
抗う手は両手首をまとめてベッドに押し付けている。
「旦那様なら、いくらでも良家のお嬢様が選べるではありませんか。それに嫌なのは服を脱ぐこと、そのものです」
「着衣でとはまたマニアックだな」
ボタンを外し、背中をあけてそこから手が前へと忍び込む。下着の上から胸を手で覆われ、メイドは硬直する。
「あっ、やめて、ください。嫌、です」
「それこそ嫌だ」
むにむにと胸をもんで中心を押し込むと、ひくりと体が動く。項をきつく吸うと綺麗な痕がついた。
胸から手を抜いてワンピース型の制服のスカートをまくり、太腿を撫で回すと慌てて閉じようとするのを膝を入れて阻止する。
「手首を押さえていては手が足りないな」
主は真面目に言い、ふと己のガウンの紐に目をとめる。しゅるりと紐を抜き去ってそれでメイドの手首を縛る。
メイドは主に体を押さえ込まれながら、それでも逃げようともがいている。
既に髪は乱れて制服は脱げかけ、スカート部分はまくれ上がっている。
涙目で手首の紐を外そうとしている姿を見て、主は目を細める。
「泣き顔も似合うとは思わなかった。沢山泣かせてあげよう」
「――それこそ、嫌です」
491名無しさん@ピンキー:2011/05/14(土) 00:22:21.81 ID:mcwWBjIn

ベッドにうつぶせにされて、上からのしかかられて身動きの取れないメイドは身を捩っているが、主の両手は制服の下、下着の上から
両胸をもんでいる。耳に舌を這わされて背中は主の胸が密着している。
「だんな、さま。お願いです、こんなことはやめて、後生ですから」
頬を赤らめて哀願するメイドの姿は、胸に迫るものがあるが主は意に介さなかった。
「手を縛っていては服が脱がせないな。胸はまた今度見せてもらおうか」
「またなんて、また今度なんて、ある訳ないでしょう。いい加減に、あ……っ」
主の手がお尻に触れ、ひた、と覆われ熱いその感触に思わず声が出てしまっていた。
手は下着を分け入って直接素肌にふれ、お尻をもんでいる。強くもまれて背中に力が入る。手が離れてほっとしたのに下着の中心を
こすられて、その衝撃に身がすくむ。
布越しに執拗に掻かれて、胸は相変わらずもまれているし力がどんどん抜けていく感覚に、メイドは切実に危険を感じる。
「お前はどこが感じるかな? ここかな?」
布をずらして指が中に入り込んで、その生々しい感触に背筋が粟立つ思いがした。
「……や、やだ、やだぁ……」
蕾を撫でられておののくメイドが本気で泣き出したのに、内心うろたえ舌打ちする思いで主は指を中に沈める。
狭い中を丁寧にほぐしていくが、気遣いは届かない。
それでも中は反応するように蜜がこぼれてくる。
「泣かないで、そんな意味で泣かしたくはないんだから」
「だ、って、指が気持ちわるい……」
しゃくりあげるように、言葉を紡ぐメイドをひっくり返し、下着を取り去る。
「じゃあ、指じゃないものをあげよう」
「えんりょ、します」
「まあまあ」
にこりと笑って、猛ったものをあてがい先端を沈める。
「いっ、指より気持ち悪いじゃないですか、やめて、それ以上は、ほんとに――いったああ」

492名無しさん@ピンキー:2011/05/14(土) 00:22:54.78 ID:mcwWBjIn

「使用人の口調とは思えないな。もう使用人としては置いて置けないか」
「そ、んなこと言ったって、ほんとうに痛い、ひいっ、押し込めないでっ」
メイドは痛みに、主も力加減など分からないままのメイドに締め付けられて双方嫌な汗をかいている。
「もう少し、力を抜いて」
「むり、そんなの無理」
「やれやれ、手間のかかる」
主は手首の紐を解いて指を絡め、耳を食んだ。舌先を耳に入れてわざと音を立てる。
「今に下もこれくらいぐちょぐちょと音をさせるようにしてやる」
メイドの注意がそれたタイミングを見計らって、主は腰をすすめて奥まで到達した。
「――ほら、入った」
「いゃ、ひど、い、どして、こんな……」
もはや片言でしかしゃべれないメイドの指に絡めた己の指に力をこめて、主は少し引いてまた中に入る。
途端にメイドが、顔をゆがめる。
「なんでっ動くんですか、じっとしていればまだ耐えられるのに」
「それは、酷というものだ」
主はまたゆるりと動く。メイドはそのたびに、泣き言を投げつけ主を拒む。
ようやく耐えられるかと思ったのに、主の動きはだんだん大きくなってきて、それとともにいつもは冷静な主の顔から落ち着きが
失われていた。眉をひそめて何かに耐えるような表情になっている。
主に手をつけられ、無理に体を繋げられてメイドはその情けなさにますます泣きたい思いになる。
唐突に主が動きをとめ背筋を震わせた。同時に中に入っていた主のものがびくびくと跳ねるような動きになったのに気付いた。

主がしばらくしてからメイドの上からどいた。大きく息をついて、主は実に満足そうに笑った。
「やっと私のものになったな」
震える手でメイドは制服を整える。身動きした途端に足の間に生じた違和感に、顔をしかめる。
主は無遠慮にそこに布をあてがって拭う。その手をメイドははねつけた。
「私は、この屋敷に勤めた時から旦那様のものです。こんなことをして確認なさる必要はありませんでした」
その言葉に主はメイドを抱きしめる。
抱きしめられながらうつむくメイドは、続く主の言葉に顔をあげた。
「お前が好きだから、愛しているから全部欲しかったんだ」
その言葉に別の意味で涙がこぼれそうになったメイドは、しかし。
「だが私はまだ満足していないので、今度は素直に抱かれなさい」
主の反省していない台詞に柳眉を逆立てる。
「一体、何を考えていらっしゃるんですか」
主は、メイドの怒りをさらりとかわした。
「お前のこと」
真っ赤な顔で振り上げたこぶしは宙でとまり、主に握りこまれた。




493名無しさん@ピンキー:2011/05/14(土) 00:46:46.17 ID:VhqkCRbh
GJです、メイド可愛いなw
しかしご主人様ポジティブだな、とりあえず都合良く曲解するのかw
494名無しさん@ピンキー:2011/05/14(土) 01:36:43.82 ID:f0St1gJl
こういうのもいいなあ〜!!
GJ!
このスレでこんなほのぼの気分になれるなんて。
495名無しさん@ピンキー:2011/05/14(土) 02:26:42.83 ID:PUB9WZ1r
GJ! 毅然としたメイドがいいな〜。
主人の余裕な態度もまたイイ。
続き待ってます!
496名無しさん@ピンキー:2011/05/14(土) 04:24:38.61 ID:4Obizdfp
GJ
縛ったりとかしておいて痛がられたら焦る主人ワロタ
ラスト普通に告白してるしw某ほのぼのレイプ思い出すノリと勢いだ
満更でもないけど真面目なメイドはナイス相方だと思う
497名無しさん@ピンキー:2011/05/15(日) 20:21:04.34 ID:wkOARRbz
行為に及ぶことを了承せざるを得ない状況を作り出すというのはこのスレ的に大丈夫?
例えばセックスしないと治らない病気を装うとか
498名無しさん@ピンキー:2011/05/15(日) 20:23:48.92 ID:WCUtjwAf
>>497
もーまんたい
499456 ◆hYUCeP81shTk :2011/05/17(火) 01:02:03.94 ID:8YTVMCWA
>>477
中世風なまま文章に起こしてみたが
書いてから477と微妙にネタかぶってたすまんorz
そして本家魔王の復活を願って。
保守代わりにこまめに投下したりしなかったり。

悲恋・ヤンデレが嫌いな方は回避してください。
500 ◆hYUCeP81shTk :2011/05/17(火) 01:02:48.30 ID:8YTVMCWA

 とある古城を買い取り別荘にしようとしていた女が、塔の中で怪しげな人影を見た。
 初めは幽霊かと思いきやどうやらそうでもないようで、正体は若く美しい青年だった。
 不動産屋が近隣に住んでいる者に、この古城の管理を任せていたのだろう。
 この城の持ち主になるかもしれないのだが、この城のいわくありげな話などあるのかと興味本位で聞いてみた。
 すると、青年は魅力的な笑顔で語りだす。

「昔々、このあたり一帯を治めていた王様がいたんですよ、その彼のお話を一つ」

 物語はよくある――悲しい身分差の物語。
 ある落ちぶれた下級貴族の少女が、働き口を求め幼馴染の青年に頼った。
 幼馴染の青年は伯爵を父に持ち、この国の王の妹の息子で王位継承権をもつ。
 身分の差があれど、隣の領地だからという縁で少女の事をとても大事にしていた。
 そんな彼が最近悩んでいたことは、いとこの王子が教育係を次々と辞めさせていく事。
 少女は小さい頃に患った病の所為で、この国ではめったに見る事の出来ない銀の髪を持っていた。
 その目立つ外見の所為で社交の場に出ることはなく、本を読んでいる方が幸せという変わり者でもあり才女だった。
 もしかしたらそんな少女だったら、上手くいくかもしれないと王子に紹介される事となった。
 青年は王宮で少女にいつでも会えるという……下心もあることは少女には言えなかった。

 ある日王子に紹介された少女は驚いた。
 幼馴染の青年の過去の記憶の姿とうり二つの少年だったからだ。
 そのせいで、昔を思い出し青年が子供になってしまったかのように錯覚する。
 つい王子になれなれしい態度をとってしまった少女は、面接に落ちたのだと思った。

 反対に、王子は見たことのない藤色に光る白銀の髪を持ち、白い肌の華奢な少女の事を、妖精の様だと思っていた。
 そしてどんな質問にも答えてくれる知識量の多さはアルフヘイムの賢人のようにも思えた。
 しかし今までの癇癪持ちの癖で、少女に酷い態度を取ってしまう。
 
 そんな二人は長い年月を掛けて段々と仲良くなっていった。
 お互いに恋心を秘めていると気が付いた時には、王子の隣国の王女との婚姻話が水面下ですすんだ頃だった。

 賢い彼女は悟っていた……これは叶わない、叶ってはいけない恋だと。
 恋に落ちた愚かな男は心の奥底で望んでいた……彼女を手に入れたい、どんなことをしてもと。

 彼女は諦めようと思っていた。
 もしこの気持ちが通じたとしても側室の一人になるだけしかなく。
 それはこれから嫁ぐ王女の体面に泥を塗り、輿入れの妨げになると。
 王子への気持ちを振り切る為に、仕事を辞して、この経験を生かし内密に他家の家庭教師の仕事を探そうとしていた矢先。
 ところが、ある夜。
 宴で酔った王子が気持ちを抑えることが出来ず、彼女の部屋を訪れた。
 自分の婚約の事を聞かされて、いつもは飲まぬ酒を同様の為飲みすぎてしまったのだ。
 酒の勢いで、彼女の体を貪った。
 欲しくて――欲しくてたまらなかったのは、体ではなく心だったのに。

 無理矢理に。好きな人とはいえ酒臭い王子に犯された少女は。
 行為が終わり満足し、深い眠りについた王子を涙目で見つめた後に、部屋を後にした。
 そして誰もいない井戸で、体を清める。
 喜ばしいはずの行為は――初めての女の都合も考えない一方的な行為の為と、さまざまな感情がいり交り、苦痛でしかなかった。
 それを、幼馴染の青年に見られてしまう。
 部屋を訪ねたのに、夜にどこかに行こうとしている幼馴染を心配しての行動。
 青年は、どうしたらいいかわからないと泣き崩れる彼女に、自分のショックを隠し、酔った王子を青年の控室に連れて行った。
 そして彼女に言う。「これは夢だった」のだと。


501 ◆hYUCeP81shTk :2011/05/17(火) 01:06:02.75 ID:8YTVMCWA
 次の日青年の部屋で起きた王子は夢うつつで、青年の作り上げた嘘を信じた。
 彼女に会っても態度もいつもと変わりなく冷静で、彼女を強姦した記憶は、ただの自分の都合のいい夢だと、そう思いこむ。

 一方彼女は、顔は冷静を装いながらも絶望に陥っていった。
 早く次の職を探さなければと焦るほど、あの夜の事が忘れられず、王子の事も思いきれない。
 そうだ、あんな事をされても彼女は王子の事が結局好きなのだ。
 閨の中の繰り言だとしても「愛してる」そう囁かれたのは彼女の心を十分にとらえて離さない。
 ずるずるとおそばに居る事を引き延ばしているのではないか、そう思い、尼僧になる決心をつける。
 尼になってしまえば、この思いを払しょくできるのでは。
 そんなささやかな願いは、月の物が二か月遅れ、ちょっとしたきっかけで吐き気が止まらなくなったことで彼女の望みを絶った。
 腹の中に王子の子がいる。
 それは考えてもみず、王子の第一子ということになる。聡い彼女には恐ろしい事だった。
 また彼女を心配し、気にかけていたためにそれを察した幼馴染が、相談に乗る。
 同時に信じられない言葉を吐いた。
 ――結婚しよう、と。
 王の子種は絶やすことは出来ず、堕ろすことは罪深い。
 かといって制御の出来ない市政に紛れてはどのような事になるのか。
 下手な貴族の手に渡り、王位を脅かすことになるよりは、自分の子とすればいいと。
 万一王子にうり二つでも、王子にそっくりで血のつながりのある青年なら誤魔化せると。

 彼女は、渋った。
 このような自分の為に青年の人生を変えていいのかと。
 青年は望んだ、見ているだけで何もできなかった自分が、彼女にできる最高の事。
 青年の長い説得を受け、彼女は彼のよき伴侶になろうと思った。
 子供の未来の為に。青年への恩返しの為に。

 一方王子は彼女との淫らな夢を見てから、思いは日に日に募っていた。
 彼女の態度も、自分を好きでいてくれると……うぬぼれではない切ない目で見つめられるたびに。
 酒の力を借りなくとも、何度手を出しそうになったかは知れない。
 思いを打ち明けよう。そう決心した日、授業の後に、彼女が職を辞すと言った。聞き間違えだと思った。
 よりにもよって、自分とうり二つの従兄と結婚すると。
 そしてすでに従兄の子が宿っていると。

 いつもの自分を見つめる熱のこもった切ない瞳は――。
 そう考えた瞬間に、王子の理性は脆くも崩れ去った。
 混乱する彼女を寝室に連れ込み、無理矢理拘束し、まだこちらの方は教えてもらってなかったなと下種な言葉を吐き、彼女を犯す。
 すでに使用済みなのだから、なんでもない事だろう?と。暴言を吐きながら、同時に従兄に抱かれる彼女を想像し、傷つけ、傷ついていく。
 飽きるほどやりつくし、それでもなお手放さず、監禁する。
 すぐに侍従長や父が苦言を呈すが、聞き入れない。
 下手に遊ぶよりは、妊婦と遊んだ方が安心でしょう……アンタたちは。
 そう狂気じみた言葉を吐くだけで、彼女をスケープゴートのように差し出し、隣国にばれぬように体裁を整えるのは分かっていた。
 もう、手放さない。絶対に。




「そう言って、王子は自分の持っている領地のこの塔に彼女を閉じ込めることにしたんですよ」
「それはまた、物騒な話ね……で、どうなったの?」
「え、ああ、彼女は塔から身を投げて自殺し……」
「またまた悲惨な……ってそっちも気になるけど」
「はい?」
「その幼馴染とやらはどうしたの、純愛!って感じで可哀そうなのに。
 だってずっと見てたんでしょ?その彼女の事」
「では、続きを話すとしますか。おや?もうこんな時間だ、また会った時にお話ししますよ」
「え、ちょっと!」
「ではまた今度」

続く
502名無しさん@ピンキー:2011/05/17(火) 01:09:30.60 ID:G8o3r9x2
GJ
淡々とした語り口が好みです
503名無しさん@ピンキー:2011/05/17(火) 16:38:51.90 ID:mSy6VdKF
GJです
続き気になる
504名無しさん@ピンキー:2011/05/18(水) 03:17:30.28 ID:O4N7dmAA
時にここの同士達はアラ・カチューというキルギスという国の風習をご存知でしょうか?
分かりやすく一言で言うならば誘拐婚でしてね。
詳しい解説を読んでいたら割とこのスレ向きのような気がするのですが・・・いかがでしょうか?
505名無しさん@ピンキー:2011/05/18(水) 15:55:07.26 ID:Pwsn/A/I
>>504
>誘拐婚

実にこのスレ向き
てか本邦も含め割りと世界各地に似たような風習があるな
506名無しさん@ピンキー:2011/05/18(水) 17:59:45.45 ID:M/pVPYYH
というか中世物とかは実際にしてなくても
噂立てられたらアウト!みたいな感じだよね
それで男が好きな女なら悪評を無くすために〜とかで
無理矢理結婚にもっていくっていうの多い気がするw
(捨てられて女涙目なパターンもあるけど)

昔の昼ドラでも
酔わせて裸にしてやってないけどやったとかいわれて
他に好きな人がいたけど結婚しなきゃならなくなったとかいう泥沼話みたなぁ
今じゃそんな事ないけど貞操観念が厳しい風潮ってこのスレ向きだよね
507名無しさん@ピンキー:2011/05/18(水) 20:11:15.17 ID:EKYMzpLc
誘拐婚は、女や家畜を融通し合う風習があるとこで発達しやすいと思う
下手したら子供さえ産んだら帰って良し、みたいな話まであるらしいしw
穏便に済むとこだと時々交流があって、そんな事態は想定内だったりしそう

問題にしやすいのは、祭の時だけ寄り集まって相手を決めるようなケースかな…
関係ない部族が紛れ込んでたりして。これは日本でも天狗や山窩ネタでいけそう
交流のある部族間でも、詫びの一頭も無いとそこから大きな諍いに発展したり…

愛故というか、その後の周りの対応が楽しそうだと思ってしまうw
508名無しさん@ピンキー:2011/05/19(木) 01:01:36.77 ID:lNYhb9cV
誘拐婚調べてみたが半端ないなこれ・・・・
キルギスでは普通に行われてるってのが信じられない。

しかし、普通に好きな女がいる男にとってもヤバイ風習だよなこれ。
いつ他の男に攫われて既成事実作られて結婚されるかわかんないんだもんな。

彼女に自分は誘拐しないって約束して恋人になって、プロポーズして断られた後、
結局恋人に誘拐婚された。激怒する彼女に、
他の男が誘拐の計画をしてるっていう噂を聞いて、仕方なかったんだ!!
て言われたって話があった。
もうあっちでは普通の習慣になっちゃって、結局幸せになってるカップルもいたけど・・・

動画とか見ると女の子が本気で泣いてて、かわいそうだ。
509名無しさん@ピンキー:2011/05/19(木) 01:08:20.41 ID:y3qBDRiZ
まあマジな話としては一定のルールとか暗黙の了解はあるはずだから。
ネットにある動画だから信じるよ、てのもアレだし。

じゃなきゃ浚って来た女に殺されるとか下手すりゃ部族間闘争とか
リスク高過ぎてどこかで廃れるし。
それなら近所の家から普通にもらって来る方が早いし楽っていうね。
510名無しさん@ピンキー:2011/05/19(木) 01:26:57.53 ID:d+fE09eL
おっとい嫁じょ
511名無しさん@ピンキー:2011/05/19(木) 07:12:19.15 ID:tUgl5GkY
キルギスじゃない話だけど、全部合意済みなんだけど婚姻にドラマを演出するために
新郎側の男どもが攫う→新婦側親族が応戦→新婦側女性が仲裁にはいり婚姻成立、って
手順を踏むって話は聞いたことがあるよ。
「攫ってでも手に入れたかったほど価値のある女」ってことになるんだってさ。
色々だね。
512名無しさん@ピンキー:2011/05/20(金) 01:18:36.83 ID:chQSH7eB
キルギスでは特に貞操観念が高くて仮に相手を殺してもどこにも行けないから、泣く泣く受け入れているという話でしたね。
何故かというとその男の家でどんな事情があっても一晩過ごしてしまった場合、処女を失ったとみなされてしまうから。
そうなってしまうと公然と罵詈中傷されたり、
近所や会社でも評判が著しく落ちてその男以外との結婚が難しくなってしまうため、受け入れるしかないという。
親も嫁入りするようにわざわざ説得しに来るほどそれは酷いそうです。
出会ったばかりの相手でも浚って嫁にするという風習が、今でも根強く残っているのだから当然といえば当然ですが。
嫁を探して若い男がうろついている・・・なんてのも動画にはありましたね。
酷い場合だと道を聞いただけなのに一目惚れされて浚われてしまったというケースも。
男の嫁にするために友人や知人などが協力して、女性の周りをうろついたり調べていたり、
自称花婿達が家に押しかけてきたり。
一応犯罪行為だと国に認められては居ますが、実際に通報する人は居なくて事実上の無法地帯だとか。
しかし、この場合外人などでも浚われたりは・・・・・・しないでしょうね。
流石に同じ国の女性だけでしょうし。
最も条件さえ揃っていれば偉い人の娘でも平気で浚ってしまうわけですが。
513名無しさん@ピンキー:2011/05/20(金) 01:54:35.78 ID:s+lqpVI1
「拐われる娘以外」との社会的な暗黙の了解、慣習に違反していないなら認められるんだろうね
基本的に最低限の身元は調べてだろう
514名無しさん@ピンキー:2011/05/21(土) 01:04:15.50 ID:sIF0VHya
嫁を探しに来た男に見始められて攫われて結婚させられる……か。
よくオリジナル・二次問わず陵辱系の話にはモンスターの嫁にさせられるというシチュがありますが、
それの成人男性版というのは中々見ない気もします。
一目惚れされて攫われる若い女というのはこのスレ的には中々使えそうな設定ですね。
もしくは一目惚れされて兎に角結婚を迫られたりとかかなぁ。
いつの間にか自分を知っててストーカー気味に結婚を迫ってくる男と、
それに怯える若い女と考えると色々想像が膨らみます。
515名無しさん@ピンキー:2011/05/21(土) 10:20:34.78 ID:qVnhsxsF
結婚は社会的な契約関係なんだから、反社会的な行為(現代日本なら相手の
同意がない場合、近世欧州なら貴賎結婚とか)はそもそも習慣化せんわな。
事実関係はどうあれ、懲罰的なリスクは避けられないんだし。

だからこそ人間同士の場合はそこがハードルになったり、どうクリアするかに
知恵を絞ったりする話になったりするわけだが。
516名無しさん@ピンキー:2011/05/22(日) 00:55:03.63 ID:PYtAYaYX
公爵家の者です。

悩んだのですが、続き投下します。
属性は若妻と従者、
11レス消費予定。
517公爵家の秘密:2011/05/22(日) 00:56:13.40 ID:PYtAYaYX
1

 冷たい唇が掠めるように触れた。同時に、祝福の鐘が鳴る。
「――これで、お二人は正式に夫婦となられました」
 聖堂に歓声が沸いた。
 鳴り止まぬ鼓動を抑えつつ、瞼を開ける。
 紺碧の中に映る自分が見えた。離れて行く端正な顔にぼんやりと見惚れてしまう。
 ――何て素敵な人なのかしら。
 出会った瞬間に恋をした。美しい黄金色の髪に、透き通った碧眼。洗練された物腰、
優しい笑顔の少年は、まるで物語から抜け出た王子様だった。この人が自分の婚約者だ
という幸運に、どれほど感謝したかしれない。
(ジュード、私は幸せよ)
 拍手の嵐の中、長年の従者であり兄とも慕うジュードを視界の端に見つけ、微笑む。
確かに目が合ったのに、そらされた。
(もう、恥ずかしがり屋さんね)
 自然と笑みが零れる。
 こうしてユーフェミア・ハートネットはアレクシス・アディンセルの妻となった――。
 
 その日、城下町は祭りに沸いた。何しろ、領主の跡取り息子の結婚式だ。無礼講で飲めや
歌えと騒ぐことが許される。もちろん、当のアスター公爵家も賑やかだった。親族を招いて
宴会が続いたが、途中、侍女に促されて寝室へと上がる。
 湯浴みをし、香油を塗られ、大人びた新品のナイト・ドレスに袖を通す。
 ユーフェミアの胸は高鳴った。
(とうとう、アレクシスさまと――)
 どういうことをするのか、おぼろげながらには分かっている。新婚初夜、夫婦となった
男女は睦み合うのだ。それは最初痛いらしい――だが、それを我慢しさえすれば、今までに
味わったことのない幸福がやってくるのだという。
(……痛いのは、いや。でも、こればかりは……どうしようもない、のよね)
「エレーナ、ジュードはどこ?」
 ふいに不安になったユーフェミアは、一番親しい侍女に尋ねた。
 エレーナは何故か苦笑し、「さあ、お酒でも飲んでいるのでしょう」と答えた。
「会いたいわ」
「なりません、ユフィさま。今宵は特別な夜なのですから。花嫁の寝室に招いて良い男性は
おひとりだけです」
「だって……披露宴ですら見かけなかったの。私の花嫁姿の感想がほしいわ」
「……もちろん、お綺麗でしたよ。何度も私そう言ったではありませんか」
「ジュードの口から聞きたいの。兄のようなものだから」
「いけません。ユフィさまのお気持ちは嬉しいのですが、使用人相手にそのような……」
「なぜ? お義姉さまはメイドだったけれど、身分の差を乗り越えてお義父様とご結婚された
でしょう?」
「それは……」
 エレーナは口籠った。
(お義姉さまの話をすると、なぜこうも歯切れが悪くなるのかしら。素敵なお話なのに)
 もとは平民であり、父である伯爵が養女にした義姉・ステラは、アレクシスの父・アスター
公爵の妻になった。というよりも、公爵が彼女を妻にしたいがために父の養女にしたのだ。
そのため、ステラは義姉であり、義母とも言える。
「ね。それに比べれば何でもないことよ。……今日は仕方ないとしても、絶対感想を聞かせる
ように言っておいてちょうだい」
「……はい」
 エレーナは渋々頷いた。
 その間にも初夜の準備は整っていく。薄い化粧に、花を編み込んだ髪型、繊細な白のレースを
使ったナイト・ドレスは、まるでもうひとつの花嫁衣装のようだった。
518公爵家の秘密:2011/05/22(日) 00:57:01.29 ID:PYtAYaYX
2

「お時間です」
 それを合図に、エレーナを含む四人の侍女が部屋を辞する。
「つつがなくお過ごしになられますよう」
 そして入れ替わりに――アレクシスが姿を見せた。
 アレクシスは濃紺のガウンを肩にかけ、その下は部屋着だった。湯浴みをしたのか、金髪は
湿っており首筋に張り付いている。今までに見たことのない艶めいた姿に、ユーフェミアの心臓は
今にも飛び出しそうだった。
(この方は……私とひとつしか違わないのに、どうしてこのように大人びていらっしゃるのかしら……)
「レディ・ユーフェミア」
 ふたりきりになった寝室で、最初に言葉を発したのはアレクシスだった。
「……はい」
 緊張のあまり、声が震える。
「こちらへ」
 招かれた先は寝台だった。顔を真っ赤に染め、ごくりと唾を飲み込み、ユーフェミアは歩き出す。
「そう怯えなくていい」
 広々とした寝台に上がると、アレクシスは言った。
「何もしない。……疲れている。俺は寝る」
 ――え?
「だから君も寝るといい」
 そう告げると、アレクシスは布団の中に身体を潜り込ませ、横になった。
 ユーフェミアが呆気に取られていると、彼は反対側に顔を向け、瞼を閉じたようだった。
(……もしかして、気を遣ってくださって?)
 どういうつもりなのか、まったくわからない。
 半時もすると確かな寝息が聞こえてきた。新床の夫は、本当に眠ってしまったようだった。
 ホッとしたような、残念なような、複雑な気持ちだ。けれど、初めて男性と同じベッドに寝るだけで
ビクビクしている自分には、ちょうど良かったのかもしれない。
 手を伸ばせば彼の金髪に手が届く。そんな距離に胸を弾ませ、ユーフェミアは眠れぬ夜を過ごしたが、
結局明け方近くに眠りに落ちた。
 目覚めた時にはアレクシスの姿はなかった。少し寂しかったが、仕方がない。きっと忙しいのだろう。
彼はこの秋から跡取りとしての仕事を覚え始めたばかりなのだ。だからあまりかまってあげられないかも
しれない、と言われていたことを思い出し、ひとりきりの寝台でため息をつく。
(いいの。きっと、これでいいのだわ。ゆっくりで……)
 ――だって、私は彼の妻なのですから。
 ユーフェミアは焦ってなどいなかった。一目で恋に落ちた人を夫とできた喜びで胸がいっぱいだった。
これから、時間はたっぷりある。彼と一緒にいる時間は、死がふたりを分かつまで続くのだ。少しずつ、
彼の妻らしくなっていけばいい。
 この時、ユーフェミアはそう思っていた。
519公爵家の秘密:2011/05/22(日) 00:57:47.49 ID:PYtAYaYX
3

 結婚して一週間が経ち、一月が経ち、二か月が経った。未だにアレクシスはユーフェミアに触れようとは
しなかった。そのことを不思議に思わないわけではないが、そもそも、共に寝台で横になるのだって週に
一度なのだ。そしてアレクシスは成人して一年も経たない。ユーフェミアだってまだ十五だ。
(……きっと、気遣って下さっているの)
 ――自分があまりに幼いから。
 ユーフェミアは幼少時から美しいと言われ慣れているものの、自分の華奢な体型では子どもを産めないのでは
ないかと侍女たちが噂をしているのを聞いたことがあり、それをずっと気にしていた。
 おそらく、自分に対する美しいという賛辞は、人形に対するそれと同じなのだろう。殿方は胸や尻の豊かな
女性を好むものらしい。残念ながら、そのどちらもユーフェミアにはないものだった。女性としての魅力はまた
別の話なのだ。
(魅力的な女性になるまで、アレクシスさまは待って下さっている)
 ユーフェミアはそう信じていた。
 また、この頃、公爵邸ではある重大事を控え、慌ただしくなっていた。
 義母となったステラの出産が近づいていたのだ。
 それなのに、その夫である公爵は何でも国王陛下直々の命を賜り、隣国へ使者として派遣されることになって
しまった。半年は戻れないらしく、義父である公爵はユーフェミアにもわかるほど不機嫌だったが、不承不承
出かけていった。
 ユーフェミアはステラを気の毒に思い、度々部屋を訪れた。
 ステラを見舞う度、ユーフェミアはいつも彼女の美しさに魅せられた。腹部は膨らみ命を生み出さんと準備を
整えつつあるのに、その面はひどく儚げで悩ましい。肌を露出しているわけではないのに、どうしてだか匂い立つ
ような色香を放っているのだ。ただ、無理をしているように微笑むのが不可解だったが、公爵が不在、しかも初の
出産で不安になっているのだろうとエレーナは言った。

 そして雪の散らつく夜、ステラは無事に女児を産んだ。
 金の髪に青い瞳をした、美しい赤子だった。

 ユーフェミアは毎日のようにステラと赤ん坊に会いにいった。無垢な赤子を抱く度、ユーフェミアは癒された。
と同時に、自分も子どもが欲しいと強く願うようになった。
 ――それなのに、アレクシスはもう滅多なことでは一緒に寝てくれなくなってしまっていた。
「ねえ、ジュード。私は、女としての魅力がないのかしら?」
 教会に寄付をしに行った帰路で、ユーフェミアは幼馴染の従者に何とはなしに問いかけた。
「……何をおっしゃいます。ユフィさまほど素晴らしい女性はおりません」
 一見冷たそうに見られがちな黒髪の青年は淡々と答えた。ユーフェミアは苦く笑う。
「そう、きっと私は、お前がそう言ってくれるとわかっていて尋ねたのだわ」
 この従者が決して嘘をつくような真似をしないこと、そして自分を盲目的に甘やかしてくれることをわかっていて、
尋ねたのだ。少しでも慰めがほしくて、わかりきった問いかけをした。
「あなたは、そのままで魅力的です」
「……ありがとう。ジュード」
 だが、アレクシスの無関心ともいえる態度は、少しずつユーフェミアを蝕んでいった。
520公爵家の秘密:2011/05/22(日) 00:58:30.91 ID:PYtAYaYX
4

 ――どうして。
 どうして一緒に寝てくれないの。
 こんなに良い妻であろうと努力しているのに。
 早く子を、と周囲から囁かれるのに。
 私が幼いから? 女として魅力がないから? 私のことがお嫌いだから?
 それでもユーフェミアは明るく振る舞う。社交の場で微笑み、教会に通い、精一杯身を飾る。
 しかし、肝心のアレクシスは留守を任され仕事が忙しいと、ふたりで話す暇もない。
 ――私はあなたの妻なのに、どうして。
 心の叫びは行き場をなくし、目に見えない形でユーフェミアを追い詰めて行った。
「アレクシスさま……」
 夜、ひとりきりの寝台で、ユーフェミアはすすり泣く。
 この地の冬は、故郷のそれよりも厳しい。寒さが身に染みる。
 誰か、温めてほしい――アレクシスさま……。
 最後に彼がこの部屋に訪れたのは、一月前だ。夫婦らしく寄り添うことはなく、まるで義務のようにただ横たわって
いただけだったけれど――それでもいい。それだけでもいいから、一緒にいてほしい。
 でも、本当は――名前を呼んでほしい。口付けてほしい。抱きしめてほしい。
 胸が苦しかった。じんわりと高ぶってくる熱。まだその正体を知らぬ若い乙女は、ただ夫恋しさに焦がれる。
 貞淑な妻は、夫にわがままを言ってはならない。その教えをきっちりと守っているユーフェミアは、このやるせない
思いをどうやってアレクシスに伝えれば良いかわからなかった。ただ毎夜、寂しい、恋しいと泣くことしかできない。
「……どうして……」
 ユーフェミアは広過ぎる寝台から起き上がり、暖炉の前のソファの上にうずくまった。
「どうして……一度も触れて下さらないの……? 私は……真実、あなたの妻になりたいのに……」
 炎の踊る姿を見つめながら、ひとり呟く。
「どうして……」
 また頬を涙が伝った。肩を揺らし、孤独に耐える。
 ――本当は、わかっていた。どうしてアレクシスが来ないのか。結婚して半年は経つのによそよそしいのか。
「彼は……私を愛していない」
 言葉にしてみると、なんと陳腐な台詞だろうか。
 いつかは、と希望を持ち続けて半年。まだ半年、と自分を慰めることも、もう疲れてしまった。
 貴族の結婚に愛がないのはよくあることだが、ユーフェミアはアレクシスを愛してしまった。
 だからこそ、余計に辛い。
 妻であるのに、いまだ身体は清いまま。女として求められすらしない。
 ――それならば、私は、いったい何のために嫁いできたのだろう。
 何のために、生まれてきたのだろう……。
521公爵家の秘密:2011/05/22(日) 01:00:33.72 ID:PYtAYaYX
5

 そして翌日、朝食の席でユーフェミアは倒れた。
 ジュードに抱きかかえられ部屋に戻され、医者を呼ばれた。エレーナが真っ青になりながら駆けつけてきて、何かを
飲まされたことは覚えているが、その後すぐに眠りに落ち、目覚めると夜になっていた。
「ユフィさま」
 ベッドの傍にいたのはジュードだった。
「ジュ……」
 名前を呼ぼうとしたが、掠れて上手く声が出せない。黒髪の従者は「無理はなさらないでください」と告げた。
細められた眼差しで、どんなに彼が自分のことを心配してくれていたかわかる。
「お水です」
 無骨な腕で背中を抱えられ、上半身を起こされる。グラスの水を飲むことすら億劫だったが、ゆっくり時間をかけて
飲み下した。
「何か、他に欲しいものは」
 頭を振る。
「医師とエレーナを呼んで参ります」
「……や!」
 立ち上がろうとしたジュードの服の裾を引っ張る。
「いか……で。ど……もいかな……」
 途中、けほけほと咳きこみながら、それでも目に涙を溜めて訴える。
「もう……とりは――いやなの……!」
 それは心の底からの叫びだった。
 ジュードの瞳がわずかに熱を帯びる。やがて彼は、椅子に坐し、厳かに言った。
「かしこまりました」
 ユーフェミアの質の悪い風邪は一週間ほど続いた。アレクシスが何度か顔を出したらしいが、眠っていた時なので
記憶はない。けれど、一日一回はステラがお見舞いに来てくれた。気を使ってか短時間の訪問だったが、ユーフェミアは
それがとても嬉しかった。そしてエレーナとジュードは付きっきりで看病してくれた。特にジュードはいつ寝ているのか
不思議なくらいなほどだった。
 医者からもう大丈夫ですと告げられると、ユーフェミアはまずステラとその愛娘に顔を見せに行った。久しぶりに
赤子と対面できる喜びに胸は弾んだ。
「奥さま、ユーフェミアさまがお目通りを希望いたしております」
 ジュードが低い声で告げると、中から侍女の声が慌てたように「お待ちください」と答返ってきた。
 いくらか待って、ようやく迎え入れられる。そしてユーフェミアは思いがけない人物の姿を目にした。
「アレクシスさま……」
 アレクシスが幼子を胸に抱いて微笑んでいた。
 刹那、ユーフェミアの胸に激しい感情のうねりが吹き荒れた。
 見たこともないような表情で赤子を抱く夫。忙しいといって昼間に見舞いに来ないのは何故。妹の顔を見る時間は
あっても、妻の顔を見る暇はないというの。ひどい。ずるい。どうして。
(そんな心から嬉しそうな顔を、私には一度だって見せてくれないのに――)
「身体は良いのか」
 ユーフェミアの姿を認めると、アレクシスの瞳は他人を見るそれになった。
「ええ」
 声が強張る。
「そうか」
「……お義姉さまは、どちらに?」
「席を外している」
「では、出直しますわ。ごきげんよう」
 ユーフェミアは踵を返し、ジュードとエレーナを引き連れて部屋を辞した。アレクシスは引き止めなかった。
つう、と一滴、ユーフェミアの頬を涙が伝った。
522公爵家の秘密:2011/05/22(日) 01:02:30.62 ID:PYtAYaYX
6

「ユフィさま、このままでよろしいのですか」
 自室に籠り、晩餐にも顔を出さないユーフェミアを心配してエレーナが言った。
「……何のこと?」
 寝台に伏せったままユーフェミアはとぼけてみせた。
「アレクシスさまのことです」
「…………」
「僭越ながら、あの方の振る舞いは、ユフィさまの夫として相応しくないと言うほかありません。ユフィさまはもっと
愛されて当然なのですよ。多くの殿方がユフィさまに夢中で、求婚者も数え切れないくらいおりましたのに……
いくら公爵家の跡取りだからといって――」
「あの方を悪く言わないで!」
 ユーフェミアは思わず声を張り上げた。
「あの方は――私の夫です」
「……申し訳ありません」
 出過ぎた真似をいたしました、とエレーナは頭を下げた。
 一瞬、エレーナに全て心情を打ち明けてしまおうかという誘惑に捉われる。けれど、一度も夫婦になっていないことを
話すのは、相手が同性のエレーナであっても気が引けた。
「今日はもういいわ。下がりなさい」
 そうしてユーフェミアはひとりになった。エレーナが作ってきてくれた果実酒で喉を濡らし、窓の外の月を眺める。
 しばらくして――ノックが響き、予期せぬ人物が姿を現した。

「……本当に身体はもういいのか?」
 アレクシスだった。ユーフェミアは驚きながらもこくりと頷く。
「そうか」
 気まずい沈黙が続く。
 どうして彼がここにいるのかわからなかった。
 しかし、こんなことはもう――滅多に起こらない気がする。
 寝台から降り、ガウンを床に落とす。
「……ユーフェミア?」
 何がユーフェミアをそうさせたのはわからない。多少、酔っていたせいかもしれない。
 だが、明確な目的をもって、ユーフェミアは薄絹の衣を脱ぎ去った。
「私はあなたの妻です」
 涙を目に溜め、ユーフェミアは驚く夫の胸に飛び込み、自分の身体を押しつける。
「だから……どうか……」
523公爵家の秘密:2011/05/22(日) 01:03:16.29 ID:PYtAYaYX
7

 突然の出来事に呆気に取られていたアレクシスの、冷たい唇に自分のそれを重ねる。よくわからないが、わからない
なりに何度も何度も繰り返す。アレクシスは身体を押しのけようとしたが、ユーフェミアも二つの細腕を首の後ろで
交わらせ、必死に離れまいとする。彼の服に乳房とその頂が触れ、擦れる度に、むず痒いような心地よいような不思議な
刺激を感じた。
 しかし、慣れない口付けで先に酸素が足りなくなったのはユーフェミアだった。頭がくらくらして、はあっと大きく
息をついた瞬間、肩を掴まれ引きはがされる。
 ふたりはしばらく、言葉もなくただ呼吸を繰り返していた。
(呆れられたかしら……でも……それでもいい……)
 ユーフェミアの視界に映るアレクシスは、眉間にしわを寄せ、ひどく苦しそうな顔をしていた。彼が何を思いどう
感じているのかはわからない。恋しい夫との距離は、月よりも遠いように思われた。
「……すまない。あなたがこんなに思い詰めていたとは」
 発せられた夫の声は、いつもとは違っていた。
「だが俺は……あなたとは……。すまない。ドレスや宝石や……望むものは何でも与えよう。愛人を持ってもかまわない。
だが、やっぱり、これだけは――」
 苦痛に満ちた声。俯きこちらを見ようともしないアレクシスに、ユーフェミアはくってかかった。
「――どうして。どうしてですの!?」
「すまない」
 アレクシスは踵を返す。
「待って。待ってください……!」
 とても納得できなかった。恥を忍んで、死にそうな思いをして、こんなはしたない真似に出たのに。
「待って……! 私の何がお気に召さないのですかっ? 直します、悪いところは直しますから……! お願い、
アレクシスさま……っ」
 追いすがるユーフェミアの腕を、アレクシスは乱暴に振りほどく。
「――君が悪いわけじゃない。……すまない」
 そうしてアレクシスは出て行った。
 ひとり残されたユーフェミアは自失する。
「……うっ」
 肩が震える。視界が滲む。
「う、ふふ、ふふふ……っ」
 天井を仰ぎ、少女は笑い声とも泣き声とも判別のつかない悲鳴を上げる。
 ――なんて滑稽。なんて惨め。
 やがてそれは、狂気じみた高笑いへと変わった。
「……ユフィさま、お嬢さまっ! ――失礼いたします、お嬢さ……っ!?」
 ただならぬ気配を聞きつけ、寝室へと踏み込んできたのはジュードだった。実直な侍従は床に裸で伏せる
主人の姿を見つけ、硬直する。
(……もう、どうでもいいわ。全部……)
 ユーフェミアは笑い続けた。
524公爵家の秘密:2011/05/22(日) 01:04:09.95 ID:PYtAYaYX
8

 月の光が差し込む部屋の床に、白い身体をさらけ出し、泣きながら笑う主人の姿を見て、ジュードは固唾を呑んだ。
 ほとんど無意識に、扉を閉めて施錠する。
 始めて目にするユーフェミアの裸身は、何度も想像したそれよりはるかに幻想的だった。
 抱きしめたら折れてしまいそうな腕、まだ成長途中のささやかな膨らみ、いつもより乱れた銀の髪。腰には余分な
肉など少しも付いておらず、臀部も丸みを帯びているが随分と小ぶりだ。ほっそりとした足はまだ少女そのものと言って
いい。
 さらに視線は、本来ならば決して拝めないはずの場所にまで到達する。
 秘められた丘は無毛だった。たまにそういう体質の女がいるとは聞いていたが、実際に見るのは初めてだった。
ただ縦に筋があるだけのそこに、幼女趣味とそしられても仕方のない衝動を覚える。
(ユフィ……さま……)

 ジュードは鍛冶屋の三男だった。しかし、三男とはいえ、姉が四人もいる。日々の生活は苦しく、ひもじかった。
 そんな彼に伯爵家の使用人という仕事が舞い込んできたのは、ジュードが九つの時だった。父が伯爵家の警備兵の
剣を修理したのが縁でそういう話になったらしいのだが、一も二もなく幼い彼はその仕事を引き受けた。無口な少年は、
とにかく必死に働いた。そして「お嬢様のお相手」という子守りもそのひとつだった。
 お嬢様、ユーフェミア・ハートネット伯爵令嬢は、当時一歳。乳母よりもメイドたちよりも、何故かジュードを
気にいってしまった。そしてそれは彼女が成長しても変わらなかった。
 ユーフェミアは美しく成長した。あどけない笑顔、甘えた仕草、可愛らしい声。いつしかジュードは、自分が抱いては
ならない感情を抱いていることに気がついた。それらを追い払うため、誘ってきた町娘と戯れ、娼館に通ったこともある。
だが、結局どれも長続きしなかった。当然だ。
自分が懸想している相手は、極上の美姫であるのだから。
 ユーフェミアの結婚が決まった時、ジュードはいっそ死んでしまおうかと思い詰めた。彼女の傍にいられないのなら
意味がないと本気で思ったのだ。だが、幸いにも嫁ぎ先に連れて行く数少ない従者の中にジュードは選ばれた。
 彼女が他の男のものになるのを見るのは心臓をえぐり取られるよりも辛いが、それでも彼女の傍にいられるなら――。
 そんな葛藤を隠し、ジュードはアスター公爵家へとやってきた。
 ユーフェミアの夫となる男は、成人を迎えたばかりの少年だった。容姿に恵まれ才気煥発、しかも公爵家の跡取り息子だ。
ろくでもない性格をしていたら許さないと息巻くジュードの予想を裏切り、少年は穏やかで礼儀正しく、文句のつけようもない。
さらに、認めたくはないが、肝心のユーフェミアが少年に心奪われてしまったようだった。
(もとより身分違い。叶うはずもなかった。これでいい――)
 そう己に言い聞かせたが、結婚式の夜はさすがに耐えがたく、抜け出して城下の娼館で闇雲に女を抱いた。愛する女と
同じ髪の色の娼婦を相手に、ただただ虚しさが募った。
 だが、結婚してもユーフェミアは変わらなかった。結婚した女というのは――男を知った女というのは、大なり小なり
雰囲気が変わるものだ。だというのに、ユーフェミアは違った。
(貴族の使用人として培った観察眼も、惚れた女には通用しないということか)
 始めはそう思っていたのだが、ふとした瞬間にユーフェミアがひどく寂しげな顔をすることにジュードは気づいた。
それは想う相手に嫁いだ新妻のする顔ではない。やがてそれは、月が経るにつれ、重くなっていった。
525公爵家の秘密:2011/05/22(日) 01:04:53.74 ID:PYtAYaYX
9

「ねえ、ジュード。私は、女としての魅力がないのかしら?」
 教会に寄付をしに行った帰路で、ユーフェミアがぽつりとそう言った時、ジュードの心は震えた。
 ――アレクシスと上手くいっていないのだ。
 そう直感し、仄暗い喜びが沸き上がる。
「……何をおっしゃいます。ユフィさまほど素晴らしい女性はおりません」
 何も気づかぬふりをして、いつものように淡々と返す。出てきた言葉は、もちろん本心だ。彼女以外の女なんて、
虫けらほどの価値もない。
「そう、きっと私は、お前がそう言ってくれるとわかっていて尋ねたのだわ」
 ユーフェミアは眉尻を下げて笑う。そんな風に憂いを帯びた様子でさえ麗しい。
「あなたは、そのままで魅力的です」
 万感の思いを込めて、ジュードは言った。
「……ありがとう。ジュード」

 それ以降もユーフェミアとその夫との溝が埋まる様子はなかった。侍女のエレーナが「最近アレクシスさまのお渡りが
ないの」と零すのを聞き、相変わらず無関心な態度のアレクシスを見ていれば、彼がユーフェミアを愛していないことは
容易く察せられた。
 ジュードは複雑だった。愛していないのに結婚したのか、とアレクシスを憎む一方、彼の心がユーフェミアに向いて
いないことに安堵する。愛のない結婚は貴族間では当たり前だし、自分がアレクシスをどうこう言える立場ではないことは
わかっているのだが、つい険を込めて彼を見てしまう。
 義母ステラが女児を産み落とすと、ユーフェミアは寂しさを紛らわすためか、赤子にしょっちゅう会いに行くようになった。
(お可哀想なお嬢様……)
 赤子を抱いて笑うユーフェミアを眺めながら思う。
 ――もし自分がアレクシスだったら、決してあんな顔をさせないのに。
 それからしばらくして、ユーフェミアは風邪で倒れた。
 ジュードはエレーナとともにつきっきりで看病した。エレーナを寝せても、ジュードは片時もユーフェミアの傍を離れなかった。
それはジュードだけの特権だった。幼い頃から世話をしているので、周りの人間は誰もそれを不思議に思わない。
ジュードがどんな思いで彼女を見ているのか、知る者はひとりもいなかった。
 熱に浮かされ、ユーフェミアは「ひとりにしないで」と泣く。「ここにいます」と何度も告げる。自分を求め甘えてくる
ユーフェミアが愛しかった。そして憎かった。彼女が倒れたのは、心因性のものだと知っていたから。彼女がここまで思い詰める
原因であるアレクシスに嫉妬し、自分の想いに気づきもしない残酷な彼女を恨んだ。
 ジュードは徐々に歪んでいった。
 そして――
526公爵家の秘密:2011/05/22(日) 01:05:41.99 ID:PYtAYaYX
10

 夕食を取らないユーフェミアを心配して、彼女の部屋へと向かい、尋常ではない声が聞こえて踏み込んでみれば――
そこには焦がれた女が裸で座り込んでいた。
(自分に都合の良い夢なのか、これは?)
 クラクラする頭を押さえ、一欠片残った理性に従い、上着を脱いでユーフェミアの肩に着せる。
「ふふ、はは、あはは……っ」
 だがユーフェミアはそれすら気づく様子がない。
「お嬢様」
「ふふっ、馬鹿よね、ふふふ……」
「お嬢様」
「ふっ、ははは……」
「ユフィさま!」
 耐えかねてジュードはユーフェミアを抱きしめた。
「いったい……何が……」
「ドレスでも宝石でも何でも頂けるけれど、愛してはくれないのですって……愛人を持ってもいい、とまでおっしゃって……」
 ユーフェミアは自分自身に言い聞かせるように呟く。
「どうして? 私はあの方の妻なのに――」
 涙を浮かべ、ユーフェミアはジュードを見つめた。
 プチッと糸が切れる。
 長年編み続けて太く長くなっていた糸が、いとも容易く切断された。
 ジュードはため息をつくと、ユーフェミアを抱きあげ、寝台に寝かせた。
 そしてそのまま華奢な身体に覆いかぶさり、首筋に吸いつく。
「……ジュード……?」
 ユーフェミアはまだ状況が理解できていないらしく、しゃくりあげながらジュードの名を呼んだ。それが一層
ジュードの熱を高ぶらせる。
「え……? 何……あっ」
 小ぶりだが形の良い美乳を優しく手で包む。もう片方の手はへその当たりを撫で、ゆっくりと脚へ伸びて行く。
「や、やだ……ジュード、やめなさい」
 かまわず胸元に顔を埋め、その可憐な桃色の先端を口に含む。
「――やっ、いやっ!」
 びくりとユーフェミアの身体が震えた。舌で突き、唇を使って吸いつき、歯を当て甘噛みしてやると、その度に
びくんびくんと跳ねる。肉付きが薄いせいか、極めて感度良好だ。
「いや、やあっ、やめなさ……お願い、やめて!」
 やっと置かれた状況を認識したユーフェミアが抵抗する。
「ジュード!」
「あなたが悪いんですよ」
 ちゅ、と音を立てて桜桃の実から口を離し、ユーフェミアを見下ろして言う。
「ずっと……ずっとあなたのことを見守ってきたのに……」
「ジュード……?」
「あなたは私の気持ちに気づきもしない……!」
「…………え?」
「……お寂しいのでしょう? 私が、慰めて差し上げますから……」
「どうし――んむぅっ」
 可愛らしい唇を塞ぐ。息もつかせぬ激しい口付けは、ユーフェミアから抵抗する力を奪っていった。その機を見逃さず、
ぐったりと寝台に沈んだ身体のあちこちに口付けを降らせていく。
「もう……やめて……」
 息も絶え絶えにユーフェミアが懇願する。その言葉が、表情が、より一層劣情を煽るとも知らず。
 ジュードは夢中でユーフェミアに自分の印を刻んでいった。服の上からは見えない場所に、次々と赤い花が咲いていく。
「っつ……!」
 ユーフェミアの肌は白く、きめ細かく、まるで最高級の絹のようだった。どこを触ってもつるつるとしており、瑞々しい。
白魚のような脚を指の一本一本まで舐めつくし、くるぶし、ふくらはぎ、膝の裏、太股へと愛撫を施していく。
 その合間にもユーフェミアは泣きながら身をよじり、やめて、いや、と繰り返していたが、それを聞き入れるつもりなど
全くなかった。
「美しい……私のユフィ」
 やがて脚の付け根、なだらかな丘に辿り着く。子どものようなそこを無骨な指で開かせる。わずかに湿ってはいるが、
男を迎えるにはまだ潤いが足りていないようだった。
527公爵家の秘密:2011/05/22(日) 01:06:51.01 ID:PYtAYaYX
11

「いやあっ」
 小さな悲鳴を上げるユーフェミアの頬にキスしながら、指で溝をなぞる。可愛らしい蕾をすぐに見つけ、親指で優しく
押しつぶし、中指は秘められた泉を探る。
「何をするの……っ、あっ」
 発見した蜜壺は指を入れただけで窮屈に感じるほどだった。第二関節まで沈めると、ユーフェミアは悲鳴を上げた。
「っやああっ」
 あまり使いこまれていないのだろう。微笑を浮かべながらジュードは指で襞を味わった。
「どうしてお前が……あうっ! いやっ」
「まだわからないのですか?」
 どこまでも無垢で残酷な少女に、女の最も感じるところを責め立てる。
「いや、あ、あ、……何、これ、や、ひあっ」
 与えられる快感にユーフェミアは跳ねた。執拗に陰核と膣口をいじり続けた結果、水のような蜜が漏れ出る。段々と
大きくなるその音と、手を濡らしていく液体は、準備が整いつつあることを示していた。
「やあっ……! やめて……っ!」
(ああ、もう……!)
 本来、ジュードは女が求めてくるまで焦らし続けるのだか、今は長年想い続けた少女を前に余裕がなくなっていた。
一旦手を止め、性急に着ているものを脱ぎ去る。ユーフェミアと同じく一糸まとわぬ姿になったジュードは、逃げようと
後ずさるユーフェミアを捕まえ、大きく足を開かせた。
「いやっ、離してっ」
 羞恥に顔を真っ赤にさせる彼女はひどく扇情的だった。晒された彼女の秘所は、まるで生娘のように初々しい色を
していた。
「ユフィ……」
「いやっ、恥ずかしい……! 離して! お願い、いつものジュードに戻って……!」
「いつも……? いつも私は思っていましたよ。あなたとこうしたいと」
「嘘……そんなの嘘よ……」
 もう待てなかった。長い銀髪を振り乱し怯えるユーフェミアを気遣いながらも、ジュードはいきり立った自分自身を
秘裂にあてがう。
「や……いや……! 助けて、誰か……! 助けて、アレクシスさまぁっ!」
 ユーフェミアは必死に腰を引いて逃れようとする。挙句の果てに、他の男の名を呼んだ。カッとなったジュードは、
意地の悪いことを囁く。
「あなたを愛していない方に助けを求めても、無駄ですよ」
「――っ!」
 ユーフェミアはぼろぼろと大粒の涙を零し、動きを止めた。その隙にジュードは挿入を開始する。
「ユフィ……!」
528公爵家の秘密:2011/05/22(日) 01:09:44.82 ID:PYtAYaYX
12

 だが、結合はなかなか上手くいかなかった。先端が入り奥へ進もうとすると、肉の弾力につるりと押し返されてしまう。
今までこんな不手際をしたことはなかったのに、まるで初めての少年のようだ。苦戦を強いられ、もどかしく思いながらも、
できるだけゆっくりと己を沈めていく。
「い――っ!!」
 ユーフェミアは声にならない叫びを上げる。やっと入った彼女の中は狭かった。多少強引に押し進み、途中に違和感を
覚えつつも、何とか根元まで埋め尽くす。
「ああ……っ」
 ジュードは歓喜に震えた。
 今、確かに彼は、ユーフェミアと一つとなった。
 何も生えていないなだらかな丘が自分のものを咥えこんでいる景観は、倒錯的な官能に満ちていた。
まるで幼子のような人妻を、慈しみ育て上げた掌中の珠を、無残に犯している。その興奮と満足感は、
どんな女を抱いた時にも得られなかったものだった。
 ユーフェミアは顔をしかめ、苦痛に耐えているようだった。その顔が快楽に堕ちる様が見たくて、ジュードは腰を振り始めた。
「ああ、ユフィ、ユフィ……!」
 身体を密着させ、温もりを感じながら、とろけるような快楽を貪る。硬い蜜壺をこじ開け、慣らしていく。
加減を間違えれば壊してしまいそうな身体だ。奥まで入れる度、自分の矛がユーフェミアの腹を突き上げるのが見える。
 ユーフェミアはシーツを握りしめ泣いていた。こちらの顔を見ようともせずただ嗚咽するだけの彼女に、苛立ちが募る。
「すごい締め付けです。あなたも気持ちいいでしょう?」
「…………」
 強情な女だ。もっと鳴かせようと、ジュードは繋がったまま彼女の上半身を起こし、自分はその下になった。
「……やっ」
 ユーフェミアは抗議の声を上げた。その細腰を掴み、重力を使って自分に打ちつける。
「いやっ!」
「良い眺めです」
 不安定な体勢になり、白い手がジュードの胸に置かれた。ユーフェミアの腰を掴んで円を描くように回し、時には
下から突き上げる。
「いや、あ、い……ああ、あっ!」
 たまらず少女は叫ぶ。人形のように整った顔に未知への恐怖が見て取れた。恐らくこの体位は初めてなのだろう。
「大丈夫、すぐに良くなります……」
「……もう、いや。抜いて……あ、あっ、うう!」
 絶え間ない刺激に、ユーフェミアの銀髪が揺れる。声を出さないよう、眉を寄せ、唇を噛んでいる顔も、
あどけなく可愛らしい。
529公爵家の秘密:2011/05/22(日) 01:10:22.86 ID:PYtAYaYX

13

「いつまで我慢できますか?」
「……っ、ん、う……っ」
 繋がったまま彼女の腰を浮かせ、抜けるぎりぎりのところで落とす。
「んあっ」
 前後左右に回転させ、自分の上で踊らせる。
「……う、っ……や、あっ」
 下からの振動も忘れない。
「ひああっ」
 ジュードは思うままユーフェミアを追い詰めていった。再び押し倒し、うつ伏せにして尻を高く上げさせ、犯す。
「こんなの……いやあ……っ」
「とても魅力的ですよ。もっといやらしく鳴いてください」
 屈辱的で卑猥な格好を強いられたユーフェミアは、シーツに顔を埋めて耐えていた。泣き声だけでも十分に
そそられるのだが、彼女にそんなことを知る由もない。
 ジュードは激しく腰を打ちつけた。寝台は軋み、結合部は淫らな水音を響かせる。
「……っ、あ、ああっ」
 深窓の姫君も、さすがに耐えきれず声を上げた。手塩にかけて育てた少女を犯している。その悦びにジュードは
ますます勢いづく。
「ああ、ユフィ……!」
 限界が近づいていた。最初の体勢に戻り、大きく股を開かせ、自分を穿つ。足と足を絡ませ、手を繋ぎ、
口付けながら高みへと向かう。
「ああ、あ……っ、うっ、あ、あ、あ」
「ユフィ、私のユフィ。もっと、もっと……」
 昇り詰める寸前、外か中か迷う。だがジュードは本能に従った。
 全てを放ち、一つになったまま余韻に浸る。
「愛しています――」
 睫毛に乗る雫を払い、額に口付け、愛を告げる。
 それがユーフェミアに届いたどうかは、わからなかった。放出の途中で彼女は意識を失っていた。
 しぼんだ自分を引き抜くと、とろとろと白い液が漏れ出した。そしてそれに赤い色が混じっているのに気づいた
ジュードは、その意味するところに茫然とする。
(まさか……馬鹿な)
 暗くてわからなかったが、良く見ればシーツにも赤い染みがある。
 ――ユーフェミアは処女だったのだ。
(どういうことだ?)
 普通ならありえない。家や血筋を絶やさぬよう、愛のない結婚でも夫婦は交わる。それは義務だ。ユーフェミアと
アレクシスが何度か同じ寝台で過ごしたのは知っていた。当然、経験があるものとばかり思っていた。
(どうして――?)
 愛しい女の髪を梳きながら、ジュードはしばらく考え込んでいた。
530名無しさん@ピンキー:2011/05/22(日) 01:11:33.25 ID:PYtAYaYX
つづく

予想より2レス多くなってしまいましたが、以上です。
531名無しさん@ピンキー:2011/05/22(日) 01:23:24.92 ID:CM+pfviM
お帰りなさい!GJ
続き読めてよかったステラ視点だと心構えしていたら
まさかの婚約者視点……だと
そしてアレクシスも結婚しちゃうなんて
益々ステラ奪還が難しくなりそうだけど
アレクシスはステラに一途すぎてほっとしたが
妻としてはつらいな、でもユーフェミアも幸せになって欲しい。

500の続き投下しに来たんだがこっちは明日にすることにする
それにしてもかぶらなくてよかったリロってよかったw
532名無しさん@ピンキー:2011/05/22(日) 01:25:01.36 ID:NMZO5fL0
新章と言っていいのかな?
ステラたんに引き続いて不幸な子だ、ユーフェミアたん…

愛憎絡まりまくりの世界がたまりません。GJ。
533名無しさん@ピンキー:2011/05/22(日) 01:26:14.73 ID:NMZO5fL0
>>531の続編も楽しみにしてる。連レス失礼。
534名無しさん@ピンキー:2011/05/22(日) 01:36:25.73 ID:+7JSPwgg
続きが気になりますなー
ユーフェミアはとばっちりを受けた感じで気の毒だね
535名無しさん@ピンキー:2011/05/22(日) 01:50:46.88 ID:YlXWl+Uj
ステラの子供の父親は誰かと問いたい
DNA鑑定のしようもないから無理だろうけど

ともあれGJ
ごちそうさまですた
536名無しさん@ピンキー:2011/05/22(日) 02:10:13.30 ID:CM+pfviM
>>533d

>>535
金髪ってあったから普通にアレクシスだと思ってしまっていたw
537名無しさん@ピンキー:2011/05/22(日) 12:48:25.83 ID:Yp98GBHI
こうやって有名作家気取りが増えていくんだな
538名無しさん@ピンキー:2011/05/22(日) 16:45:43.30 ID:FNW/Rn6a
>>530
待ってました!!
すげー面白かったよGJ

>>531
続き楽しみにしてます!
539名無しさん@ピンキー:2011/05/22(日) 19:14:00.81 ID:c3mx58UB
tst
540名無しさん@ピンキー:2011/05/22(日) 20:20:49.28 ID:3ji91Iml
自サイトに完全版上げてるんだしいちいちこっちに投下しなくてもいいのに
以前のゴタゴタで絡まれるの分かりきってるだろうにさ
541名無しさん@ピンキー:2011/05/22(日) 21:23:48.62 ID:/Tw+HE8K
職人の個人サイトチェックしてんのか?
きめえ
ストーカーかよ
542名無しさん@ピンキー:2011/05/22(日) 21:26:15.41 ID:fp491qJ/
サイト載せててこっちに載せる意味あるのか?
大人気(笑)だから?
「迷ってた」くらいならやめて欲しい
実際、別作家さんの投下を妨げてるわけだし
543名無しさん@ピンキー:2011/05/22(日) 21:40:54.83 ID:9YjnAljw
>>530
ユーフェミアたん可愛いGJ
続き待ってる
544名無しさん@ピンキー:2011/05/22(日) 21:58:27.05 ID:UvskGICo
アホか。
たまたま投下のタイミングがかちあって後にするって言ってるだけじゃん。
投下のタイミングがかちあうかもしれないから投下すんななんて言ったら誰も投下できなくなる。
545名無しさん@ピンキー:2011/05/22(日) 22:00:45.85 ID:TlVUZEwU
個人サイトまでチェックしてるとはファンの鑑だな…
自分はそこまでできないからここに落としてくれる方が助かる
546名無しさん@ピンキー:2011/05/22(日) 23:22:31.39 ID:/E6gc0J/
またこの流れ? 面倒だしどうでもいいからやめてよ。
547 ◆hYUCeP81shTk :2011/05/22(日) 23:59:11.56 ID:CM+pfviM
投下予告して色々とすまなかったです。次は自重します。
タイトルをつけ忘れていることに気が付いたので追加。
>>500-501の続き。悲恋・ヤンデレ注意。
548ある塔の断片 ◆hYUCeP81shTk :2011/05/23(月) 00:01:02.85 ID:CM+pfviM


「あ、まってたんだから」
「……また会えるとは思わなかった」
 男が少し驚いた顔をした。しかしその表情はどことなく嬉しそうだ。
「続きが気になるの」
 女は自分でも不思議だったが、気が付いたら自然とこの塔に来ていたのだ。
 気になるのはこの塔の謂れなのか、話の内容なのか、それとも――。

「では、約束通りに会えたのだから続きを話そうか」



 彼女は初めの頃は王子に犯されながら、酷い言葉を投げ掛けられて思考を放棄し悲しみに暮れた。
 拒否すれば腹の子を堕すぞと、盾に取られ。
 無理矢理言うことを聞くしか無く、その状況を人形のように受け入れる事しかできなかった。
 ――腹の子は貴方の子供と、何度言いかけたかはしれない。
 時が経つに連れ、思考する事が戻ってくると、彼女は気が付いた。
 王子は彼女への愛するが故の失意で、彼女を酷く詰り求めている事に。
 気が付いた瞬間、彼女は王子のすべてを赦した。
 でも、このままではいけないと……王子に愛され、愛しているからこそ。
 こんな関係は今は些細な歪でも、王子の輝かしい未来に破滅を招く程の歪みになると考える。
 彼女は決心した。
 王子の為なら、なんだってできる。どんなに罪深い事でも。
 どんな手を使っても逃げようとした、愛する人を騙してでも。
 王子に従うふりをして油断を誘う。
 騙し、自分が無事にげ通せ王子がそれを知ったときの事を思うと、胸を裂かれるような行動だったが決心は鈍らなかった。
 自分を王子の手持ちの領地にある塔に閉じ込めるようにそれとなく誘導し、そして身柄を移された。
 彼女は思い出したのだ。
 その場所は城の書架で埋もれていた誰も知れないような文献に記された、隠し通路があると。

 従順になっている彼女に気をよくしたのか日に日に王子は上機嫌になる。
 塔の中の見張りは少なくなり、巡回の時間の間隔が長くなった。
 監禁されている事実にさえ目を瞑れば、まるで恋人同士のような時間が流れる。
 従順な振りが"振り"でなくなりそうな曖昧な感覚に陥りそうになる。
 これがひと時の事ではなく永遠に続けばいいのにと思っていても、ついにその日は来た。
 王子が隣国の姫君を迎える事になったのだ。
 しぶる王子を彼女は説得し、迎えに向かわせる。
 
 逃げる時がきた。失敗すれば死を選ぼうという程の決意。
 自分の存在自体が害悪なのだと。腹の中の子に詫びながら彼女は静かに決心した。
 全ての罪はあの宴の夜に、酔った王子を拒みきれなかった自分の所為なのだから。

 一方幼馴染の青年は、急に自分の前から姿を消した彼女を必死で探していた。
 初めは、彼女はやはり思い直して独りであてもなく飛び出したのかとおもえど、彼女の私物は何も動かした形跡がなくそれは不自然だった。
 すぐに王子の周辺が緊張を強いられ、何か問題を隠していることに気がつく。
 従兄弟が青年を徹底的に避けた事で、それは確信にかわった。
 彼女を救い出そうとしても隙がなく、近づくことすらできない。
549ある塔の断片 ◆hYUCeP81shTk :2011/05/23(月) 00:02:07.43 ID:CM+pfviM
 しかし、幸運で皮肉な事にも、彼女を邪魔だと思う王や侍従達の協力を取り付けられた。
 彼らは初めは婚約者が決まった王子の結婚前の遊びだと、すぐにやるだけやったら飽きると思っていた。
 しかも相手は絶対に王子の子供を身篭ることは無く、生まれは卑しくなく身寄りのない身分が低くどうにでもなる女。
 そして、結婚もしていないのに身籠った、身持ちの悪い女だ。
 一時の閨の指導だと割り切れば、許されることだったが。
 この関係を、妃を迎えても続け、そして妃よりも尊重すると。
 時が経つにつれて、王子の彼女への異常な執着心がうかがえてくる。

 流石にまだ妃も迎えていない、こちらの方が国としては格下で平伏して王女を娶る立場。
 妃として迎えるまえから愛人を囲うとなると体裁が悪いと慌てたし、更に彼女の相手は王妹の息子だと発覚した。
 降嫁したとはいえど、王は妹とは仲がよい。いや甘いと言ってよかった。
 その息子が遊びではなく、妻として迎える前提での関係と主張すれば、密かに母子共々葬り去る事も出来ない。
 そんな焦慮する彼等にも、転機が訪れた。
 隣国の王女との婚儀が速まったのだ。
 青年はそのゴタゴタに紛れ彼女を助け出そうと、王子の出立日にそれを実行に移すことにした。

 脱出は奇跡的な大成功だった。
 偶然が重なり合い、こちらの息の掛かっていない警備の者十数名は、塔の裏手の川に彼女が身を投げたと取り違えた。
 彼女は惜しみなく長く美しい髪を切ると、それを持たせ死体を持ち帰れなかったと、青年の息の掛かった者に報告させる。

 そして数週間後。
 侍従達が身代わりとなる死体をどこからか連れて来る。
 それはどこからどうやって手に入れたのかは不明だったが。それは知らないほうがいいことだ。
 
 王子は初めは彼女が死んだことを信じようとはしなかったが。
 次々と希望を打ち砕くようにされる報告。
 彼女が残した遺書とも取れる書き置き。
 それを何度も繰り返し読むと、自らの愚かさで完全に彼女を失ってしまったと、やっと理解した。
 彼女を失った当初は、何故自分を置いて逝ってしまったのか……と。
 怒りと悲しみとやりきれなさで荒れた王子。
 しかし時が経ち、何度も読み返す彼女の言葉に、そして塔にきてからの彼女の王子としての品位を落とさぬようにとの気の使い方が思い出される。
 彼女が命を賭してまでに自分に立派なこの国の王になるようにと、望んでいた書き置きが胸に強く響く。
 ――彼女の最期の授業を、生徒らしく実行しろということか。
 ある時期から彼女の誇れる男になろうと、王子はそれこそが彼女への愛の証かと気がついた。

 一方、彼女は救い出されてからは王子と青年への申し訳なさに悩んでいた。
 自分が生きてあの塔から救い出されたのは、青年の未来の妻だったからと侍従たちから散々聞かされる。
 でも一度ならともかく、彼女は何度も凌辱され、受け入れ、喜びさえしていた。
 そんな不潔な自分が、誠実な幼馴染の妻になれるはずもなかった。
 腹の子さえ居なかったら、本当にあのまま自らの命を絶っていただろう。
 そのどうしたらいいかわからないやりきれなさを、青年がまるで真綿に包むような優しさで、辛抱強く解きほぐす。
 それが打ちひしがれ、枯れはてた彼女の心に水を注ぐ。
 二度目の求婚はかなりの時間をかけて成された。

550ある塔の断片 ◆hYUCeP81shTk :2011/05/23(月) 00:02:36.56 ID:CM+pfviM

 すでに彼女は別人として生きる事を侍従たちから強いられていた。
 別の貴族の養子になり名前も変わり、目立つ髪も染め、人前に出ない事が義務づけられる。
 万が一王子に会わないようにと、青年は地方に小さな領地を拝領した。
 都にいれば、国の中枢を動かすほどの身分を持ち、それが義務だった青年。
 だが、今回の事で王子から遠ざけられたからと、笑う。
 それを見て、申し訳なさに消え入りそうになるが、それも笑って許してくれる。
 幸せだから、と笑ってくれる。
 そんな青年は愛妻家の地方の一領主として、民に愛された。

 そうしているうちに臨月を迎え、子を産んだ。
 女の子で――王子にそっくりだった。
 その子も自分の子のように慈しんでくれる青年を見。
 子供が喃語で「ととさー」と青年を慕い、笑いあう頃には、王子の賢王としての活躍も遠い領地にも届くほどだった。
 絵に描いた幸せに包まれ、やっと王子を思いきれると、彼女は思った。
 これでいいのだ、これで。

 そう彼女が幸せを感じる頃には、国の情勢が変わり、国境で小競り合いが続く。
 青年も一領主として、領民と戦に参加することになった。
 戦に赴く青年に無事に帰ってきてと、青年を初めて自分から抱きしめる。
 結婚してもいまだに二人の間は清い仲だった。
 彼女からの初めての接触に、青年は必ず生きて帰って来ると、誓う。
 帰ってきたら――身も心も貴方の本当の妻になりますと、彼女は長年待ち続けてくれた夫にやっとの事で言った。

 戦地に赴いてから、思わしくない報告だけがもたらされた。
 僻地の領地では情報の伝達も遅い。
 身を切られるような思いの中、彼女には子供だけが支えで、不安になる心を耐えた。
 そんなある日、戦がこの国の勝利で終わったと、夫が無事帰ってくるとの報告に彼女はやっと安堵する。
 夫の帰りを指折り数えて待つ中、やっと夫の乗った馬が城内に入ったとの知らせを受け。
 人前に出るときは顔を隠すという約束を忘れて、彼女は夢中になって子供を抱いて走った。
 歓迎をする領民に囲まれ、それを片手をあげ応える馬に乗った夫に駆け寄る。
 ――しかし、その足は、夫の顔を見ると、魔法にかかったように止まった。
 


「ちょっと!彼女は塔から身を投げたって貴方言わなかった?」
「人の話しは最後まで聞かないと。せっかちなのが君の悪い癖だね、ジュリア……ああ、もう時間だ」
「もう、また?時間って何なのよ?」
「まぁ。また……次に会えた時にでもわかるよ、全てね」




551名無しさん@ピンキー:2011/05/23(月) 00:10:03.62 ID:8aQ7Vm1w
笑顔動画を見てたら、谷山浩子女史のヤンデレ曲が個人的にツボに入ったので、
これで愛故とか書いても大丈夫でしょうか
552名無しさん@ピンキー:2011/05/23(月) 00:39:15.63 ID:8aQ7Vm1w
リロードしてなかったら投下が(汗)
>>548->>550 GJ
そして次回wktk
最初の会話とこの悲恋がどうつながるのか楽しみだ
553名無しさん@ピンキー:2011/05/23(月) 01:30:44.83 ID:h3f/zw6U
>>550
今回も続きが気になる引き
続き待ってる
554名無しさん@ピンキー:2011/05/23(月) 10:37:01.91 ID:JCD1K80J
なんか批評家気取りばっかで
職人潰してばっかのスレになっちまったな
555名無しさん@ピンキー:2011/05/23(月) 15:05:56.29 ID:2NZV4JGP
愚痴ならば愚痴スレヘ
場外乱闘をやらかしたいなら誤爆(絡み)スレヘどうぞ
556名無しさん@ピンキー:2011/05/23(月) 16:14:26.44 ID:kVeu+mZm
愚痴スレや誤爆スレに書き込むのはかまわんが、スレ名出すなや、ウザいわ
557名無しさん@ピンキー:2011/05/23(月) 17:28:45.83 ID:gq+igbws
愚痴スレ
558名無しさん@ピンキー:2011/05/23(月) 18:29:46.58 ID:+uCW1AqC
腐女子の実態晒しあげ
559名無しさん@ピンキー:2011/05/23(月) 19:36:38.64 ID:qwMj1FAi
覚え立ての単語を使いたいだけなのかもしれんが
意味間違ってるから失笑するしかできんな>558
560名無しさん@ピンキー:2011/05/23(月) 20:32:33.70 ID:+uCW1AqC
チュプの方がいいか?
561名無しさん@ピンキー:2011/05/23(月) 20:49:17.34 ID:28DMkVwK
ふふ
562名無しさん@ピンキー:2011/05/23(月) 22:14:33.22 ID:4n+7KXuM
でって言う
563名無しさん@ピンキー:2011/05/24(火) 19:36:50.02 ID:VC7aUJDl
で、愛するが故に無理やりな話を再開していいものかね
564名無しさん@ピンキー:2011/05/24(火) 20:54:54.50 ID:gdM2nfBN
確執を解決するために幼い娘を嫁に差し出す・・・ねぇ
人質的な強制結婚か・・・
565名無しさん@ピンキー:2011/05/24(火) 21:32:24.62 ID:VC7aUJDl
それが何がどうなって愛するが故に無理やりなのかKwsk
566名無しさん@ピンキー:2011/05/24(火) 22:04:07.90 ID:PSZvRtd7
娘の夫は娘に心を寄せるが娘は心を開かず、すれ違った挙げ句の果てに無理やり、まで想像したので
誰か文章にしてくれたら嬉しい
567名無しさん@ピンキー:2011/05/25(水) 00:46:22.67 ID:foSuEzsM
>>565
TVを見ていたらそんな風習を話していたんで何か妄想に使えないかと思って呟いてみた。
で、思いついたのは権力者がその娘に一目惚れして嫁にするために罠に嵌めるという、
水戸黄門などの時代劇にでもありそうな展開。
けど水戸黄門ってスレ的に中々使えそうな状況やってるんだよな。
悪代官がただの欲望塗れだから余り意識されないが。
想い合ってる男女を引き裂いて嫁にしようとしたり、未亡人を陥れて嫁入りさせようとしたり・・・・・・ets。
こういう強制結婚を欲望だからではなく、恋慕故にと置き換えると中々良いなぁと感じてね。
568名無しさん@ピンキー:2011/05/25(水) 01:34:19.11 ID:qe50318d
あの手のテンプレ的悪代官とか和製中世モドキファンタジーの悪い権力者は
どう考えてもこのスレ向きだな
本気で好きだけど悪い奴なんで女には嫌われ怖がられ
でも権力はあるからな、無理矢理犯りやすい
邪魔者の正義の味方がいなけりゃ勝つる
569名無しさん@ピンキー:2011/05/25(水) 02:37:31.79 ID:o7SED4dy
しかしロマンスは邪魔がないと盛り上がらない矛盾、いやさお約束。
570名無しさん@ピンキー:2011/05/25(水) 05:33:48.76 ID:qe50318d
まあ、確かにそうだよな
悪が勝つ方向を期待したいがやっぱり討伐されて
男側的には悲恋も悪くないか……
571名無しさん@ピンキー:2011/05/25(水) 07:39:50.42 ID:JR0FcLSP
まさにそんな悪代官(奉行?)が出てくる小説最近読んだw
好きになった材木問屋?の小町娘を手に入れるため借金漬けにして
父親自殺で娘を無理やり正妻に。
結婚した当初は強姦してたけど娘は無理矢理されてるため苦痛しか感じずに
嫌がる反応ぐらいしかしなくて乱れない。
娘が嫌がると喜んで乱暴されるから、諦めて淡白な反応しか返さなくなって
つまらんといい昔からいる側室といちゃいちゃする
その関係を見ていた悪代官の手下が
正妻にするぐらいその娘にドS的に惚れてるなぁと思うってのが
全体の1、2ページしかなかったけど萌えたw
因みに娘は生まれる前から?の幼馴染の許嫁に助けてもらって逃げ、悪は滅びたw
572 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/25(水) 18:36:34.03 ID:1RcF+Wcl
江戸時代の話の流れを読まずに投下

六回に分けて投下します。
非処女・ヤンデレ・人死に・穴兄弟要素を含みます。バッドエンドです。
エロ描写は(愛故以外も含めて)全体の半分くらい?
タイトルおよび全体の構想はショパンの曲から。BGMにしていただけると陰鬱さ倍増。


雨だれ<1> まだ愛故描写なし。

 真夜中に携帯電話が鳴った。絵理は明かりのない部屋で手さぐりして腕を伸ばした。
傍らで眠っていた男が気配に気づいて目をさます。裸の体に毛布を巻いて、絵理は携帯電話を取った。
「もしもし?」
「絵理?起きてた?」
 電話の向こうは母だった。
「ううん、寝てた。どうしたの、こんな時間に」
 携帯の時計によれば、時刻は既に12時を回っている。常識的に考えて電話の時間ではない。
「お隣の英(ひで)ちゃん、憶える?」
「・・・憶えてるけど、どうかした?」
 憶えてる、どころの話ではない。二度と思い出したくなかった。
「今日、亡くなったそうよ」
 その言葉に、絵理は母には気付かれないよう胸を撫で降ろした。朗報だったら聞きたくなかったが、
一番待ち望んでいた知らせだった。
「そう」
「明後日お通夜で明々後日お葬式だそうよ。急だけど、帰ってこられる?」
「そうね、なんとかしてみる」
「わかったわ、遅くにごめんなさい」
 それだけ言って、電話は切れた。
「どうした?」
「幼馴染が死んだって。明後日お通夜で明々後日お葬式だけど、帰ってこられるかどうかの確認」
 ベッドに横たわったままの男の隣に絵理は潜り込んだ。
「幼馴染の訃報の割には、淡々としてるんだな。仲が良かったんじゃないのか?」
「まあね。幼馴染っていったって、田舎の幼馴染はきれい事だけじゃ済まないから・・・
これでもいろいろあったのよ」
「へえ。たとえば、こんなことも?」
 男はそれと分かるように体を密着させてくる。
「それは別の男」
 絡んできた腕を解かないまま、絵理は体を任せた。目を閉じる直前、部屋の隅に置かれたピアノが目に入った。
573 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/25(水) 18:39:29.45 ID:1RcF+Wcl
 星明学園中高では毎年全校対抗の合唱コンクールがあり、中・高から一クラスづつ優勝クラスには
NHKコンクールの都大会に参加する権利が与えられる。
大学までの一貫教育だから受験がない分部活動や学校行事に力を入れるのがこの学校の方針で、
数年前にはそれが功を奏して念願の全国大会に駒を進めたこともある。
「鐘が鳴る 鳩が飛び立つ 広場を埋めた群衆の叫びが聞こえる 歌を 歌をください」
 音楽室は高校も含め3つあるが、この時期はどの教室も朝から晩まで歌声が途切れることがない。
ピアノもフル稼働している。
「陽が落ちる 油泥の渚 翼なくした海鳥の呻きが聞こえる 空を 空をください」
 この曲は、序盤と終盤はあまり分岐が多くない。問題は中盤だ。
「こだまして 木々が倒れる」
「ストップ」
 本田絵理は歌いかけの声を止めた。
「男子の今の入りかた、頭の「こ」の部分が聞こえない。もういちどちゃんと指揮者の合図を確認して、
女子に頼りすぎだから自分が主旋律になると自信がなくなるでしょう」
「はいっ」
 序盤は難易度の低いピアノの伴奏が終盤になるにつれて難易度が上がり、自信をなくしていく。
一度全体を通して確認しておくか、と絵理は思った。

 絵理は音大を卒業し、非常勤講師を2年経て今年から常勤の専任講師になったばかりだった。この学校は生徒の意識が高く、
行事にも勉強にも真面目な子供たちが多い。私大の付属に多い「付属上がりのバカ」も少なく、保護者の意識も高いから、我ながらいい職場に恵まれたものだ。
「お疲れ様です」
「お疲れ様」
 職員室に入ると、先ほどまで受け持っていた3−Bの担任が声を掛けてくる。
「どうですが、うちのクラスは」
「女子はかなりいい感じです。が、男子が頼りないですね。
しっかりパートリーダーになれるのが一人いるとだいぶ変わるんですが」
 大会に出る以上校外の評判にかかわり、ひいては来年の志願者数に直結するだけに、合唱コンクールは教師の査定に影響する。
少しでも良い出来で優勝したい、望めるなら都大会を勝ち抜いて出世したいと、
音楽教員以上に深く関わる担任たちは休日と朝、放課後全てを返上して本番に臨む。
「B組の田中瑞穂ですが、今度伴奏の指導をするので本人に伝えておいてください」
「わかりました」
 用件を済ませて絵理は校長に向きなおった。
「申し訳ありませんが校長、地元にて不幸が発生したので明後日と明々後日だけお休みを頂戴できると助かります」
「不幸?」
「はい。よりによってこの時期に」
「できればNoと言いたいところだがね」
「すみません」
574 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/25(水) 18:42:12.40 ID:1RcF+Wcl
 主任の佐藤先生と相談してOKが出れば、という条件をクリアし、絵理は連休を手に入れた。
「ずいぶん急ねえ」
「すみません、夕べ訃報が届いたもので」
 佐藤先生はため息をつく。
「明々後日は2−Eと1−Dの土曜練の依頼が入ってたけど」
「担任の先生方にはお話ししてあります。代わりにお土産をせがまれました」
「もう少し時期をずらしてくれればよかったんだけどねえ」
「ハタ迷惑な時期に死んでくれたと思いますよ」
「人が死ぬ時期ばかりは選べないもの。まして本田先生のご実家は地方でしょう?」
「一度葬式に顔を出さないと何年も陰口を叩かれるような田舎です」
 そのあたりの感覚は、23区以外の土地に住んだことのない佐藤先生には理解しがたいものらしい。
「想像できないわ」
 いっそそれくらい縁の薄い場所なら良かったのに、と内心絵理は思った。
 翌日、放課後の指導を石井先生に交代してもらった絵理は大荷物を抱えて東京駅に向かった。
東京駅まで一時間、東京駅から新幹線で二時間、更に単線のローカル線で四十分。
乗り換えの回数は決して多くないのに、そういえば成人式と法事以外の理由では一度も帰っていなかった。
大学時代はバイトと授業を理由に、就職後は仕事と副業を理由に(私立の非常勤講師の給料は安い)。
 それ以上に、英ちゃんのせいだ。窓の外を流れだしたビル街を見ながら、絵理はため息をついた。
575 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/25(水) 18:47:32.50 ID:1RcF+Wcl
 絵理は幼馴染で隣人の佐野敏幸(としゆき)と向かい合っていた。敏幸の目の前には大量の参考書が積まれ、
絵理の目の前には世界史の教科書が広げられている。
「1789年6月17日、第三身分を中心に憲法制定国民議会成立」
「6月20日、テニスコートの誓い」
「では7月14日、バスティーユ牢獄に押し入る前に民衆が立ち寄ったのは?」
「廃兵院」
 世界史では校内で追随を許さないと言われる敏幸は、なんなく答えて見せた。
「じゃ、知ってるか?マリー・アントワネットの昔の音楽の家庭教師」
「モーツァルトじゃなくて?」
「そっちはプロポーズして振られたほうだろ。正解はグルック」
「あ」
 音楽にはまるで興味がないくせに知識の点ではなぜそういう細かいところまで知っているのか、
絵理には敏幸の脳がわからない。一度脳みそを割って中を調べてみたいほどだ。
「敏ちゃんの頭の中ではどこからどこまでが世界史で、どこからが文化史なのかわかんない」
「全部世界史だろ。日本も含めて」
 それくらいの頭でなければ、普通科の学年トップはつとまらないのかもしれない。2年生の期末テストでは世界史と現代文で満点、
本人いわく苦手という生物、英語も八割は取っている。唯一数学が六割どまりだ。
「敏ちゃん、もう志望校は決めた?」
「今のところは早稲田か慶応の法学部。本格的に司法試験目指すつもりだから。絵理は?」
「まだはっきりは決めてないんだけど、桐邦音大か国崎音大のピアノ科かな。
プロは難しいと思うけど、教職を取って先生を目指そうと思って」
 敏幸と絵理はどちらもN高の生徒だった。春休みを挟んで、四月から三年生になる。N高はこのあたりでは並ぶもののない進学校で、
地元では唯一の音楽科があり、浪人を含めるとほぼ全員が大学に進学する。
敏幸は普通科、絵理は音楽科でトップを取っていた。
「N大の教育学部は?一番近場の国立だろ?」
「あそこはセンター重視で実技のウェイトが低いし、実技の授業数が少ないから。
敏ちゃんだって法学部がないから受けないって言ってたじゃない」
「それに、絵理は一人暮らししたいって言ってたしな」
 ぐい、と敏幸は絵理の体を引き寄せた。腕の中に抱き込み、指先を撫でる。そのまま、手首に口づけた。
「実家通いじゃ、安心してこんなことも出来ない」
「敏ちゃん」
 絵理が敏幸にはじめて体を許したのは、高校に入って最初の夏休みだった。それから一年半になる。そろそろ
親にも弟にも邪魔されない環境が欲しいと思うのは男の必然だ。
「東京の大学に入ったら、一緒に暮らすか」
「無理だよ。音大生は学生会館か寮しか選択肢がないって先輩が言ってた」
「丁度いいだろ、こういう音が漏れないんだし」
 冗談めかして敏幸は言う。
「んもう、変態」
「変態で何が悪い」
 そのまま敏幸は服の下に手を差し込み、絵理の胸に手をやった。小さいころは俎板だったというのに、
よくここまで自分好みのFカップに育ったものだ。いや、育てたというべきか。
 押し倒して事に及ぶ間も、敏幸は絵理の指に気を遣うことを忘れない。知識ではなく経験で、絵理はそれを
よく知っていた。
576 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/25(水) 18:57:40.73 ID:1RcF+Wcl
 地元の駅からN駅までは、ローカル線で四十分かかる。N駅は地元で唯一の都会で、同時に新幹線の乗り換え駅も兼ねている。
この路線は田舎にしては進学校が集中しており、入試レベルも進学率も高い。
 それを支えているのが地元の旧家であり大地主、兼名士である多田家だった。N駅前に多田商事の本社と
東京、大阪に支社を構え、雇用と経済を生み出している。このあたりで多田と取引のない地元企業は皆無だ。
 地元の駅前に聳え立つ瀟洒な洋館が多田の本家で、絵理の母は昔から家政婦として働いている。
絵理が東京の音大を視野に入れられるのも、その雇用があってこそだ。
 駅前から山のふもとに見えるその洋館に頭を下げると、敏幸がやってきた。
「いつものお礼か?」
「うん」
「よくやるな」
「いいじゃない」
「絵理姉(ねえ)、おはよ」
「英ちゃん、おはよう」
 英ちゃんこと英幸(ひでゆき)は敏幸の二つ年下の弟で、今年からN高校の一年生になる。
「敏ちゃんの学ランもこんなにきれいだったのに、どうすればここまでボロボロになるんだか」
 絵理は敏幸のブレザーをつついた。あと一年もつかどうか怪しい。
「うるせえな」
「英ちゃんは何か部活入るって決めた?」
「ううん、まだ」
「うちは運動部は強くないけど、文化部は結構盛んだよ」
「そうなの?」
「合唱部とか科学部とか、大会にも出てるみたい。英ちゃん合唱部だったし、どうかなっ
て思って」
「ふうん」
 道の向こうから、駅に向かって数人の女子がやってくる。
「佐野っちおはよー」
「絵理、今の課題曲何?」
 英幸が女子の制服を見比べた。絵理のセーラー服のタイは赤だが、他の女子は緑だ。
「どうしたの?」
「襟姉の制服って、他の人と違うの?」
「ああ、普通科はタイが緑で、音楽科は赤なの」
 ローカル電車が入ってきた。通学時間だけあって既に社内は缶詰だ。指先が押されないように守りながら、絵理は電車に割って入った。

 普通科と音楽科は教室が一緒だが、音楽科には防音の音楽室がある。通常の授業が終わってからここで弾いていくのが絵理の日課だった。
今の課題はショパンの「英雄ポロネーズ」で、後半のオクターブ連打が
難しい分弾きごたえがある。窓を叩く音がして、絵理は振り返った。カーテンを開ける
と、敏幸だ。
「もう帰るの?」
「ああ。受験勉強」
 そう言って赤本を取り出す。「早稲田大学法学部 入試過去問題」絵理には100年かかっても解けそうにない。
「何の曲弾いてたんだ?」
「ショパン。聞いたことくらいあるでしょ」
「太田胃散の」
「それもあるけど、革命とか、幻想即興曲とか」
 そう言って、絵理はピアノの前に座る。
「こんなのとか」
 一曲弾き始めた。
「何だっけ、この曲。英なら結構クラシック聞いてるんだけどな」
「雨だれって、タイトルくらいは聞いたことない?」
 言われてみれば確かに、正確に刻むリズムが雨音を連想させる曲だ。出だしはやさしい通り雨のようだが、
次第に重苦しく陰鬱な表情になってくる。
「暗っ」
「計算とか一切しないで、いかにも感覚で作ったって感じ」
「ピアノの詩人ってか」
「そうそう」
577 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/25(水) 19:03:42.87 ID:1RcF+Wcl
「どうしたの?二人とも」
 そこに英幸が通りかかる。
「英ちゃん」
「何か面白い部活でもあったか?」
「そうだね。文化部だと天文部とか」
「運動部は?」
「運動部は明日見てみようと思って。今、雨だれ弾いてなかった?」
「お前、耳いいな」
「ちょうど英ちゃんがクラシック好きとかって話してたところだったんだよ」
 続きを弾き始める。
「そうそう、隣からよくピアノの音が聞こえて、それでピアノ曲は憶えた。小犬のワルツとか、トロイメライとか、
月の光とか」
 ついていけんと言うように、敏幸が頭を横に振る。彼にとってはピアノの曲はどれもこれも同じように聞こえるらしい。
太田胃散=ショパンはウィキペディアからの知識である。
「同じ腹から生まれた兄弟なのに、何を間違えればこんなに違うんだか」
「それよりそろそろ行かないと、次の電車逃すと45分待ちだよ」
「うお、やべっ」
 兄弟が時計を見やった。
「じゃあね」
「じゃあな」
 二人が去ると、絵理はカーテンと窓を閉めた。
「さて、練習練習」

 夕食も終わり、敏幸は居間で過去問を解いていた。傍らでは父が野球中継を見ている。
「あんた、テレビのついてる中でうるさくないの?」
 母が声をかけるが、敏幸は知らぬ顔だ。
「全然」
 現代文と古文はほぼ満点だが、漢文が足を引っ張る。英語はセンターと早稲田では傾向がまったく違い、
早稲田でかなりを取れてもセンターでは得点が落ちる。
 隣家からは、かすかにピアノの音が聞こえてきた。
「あ、悲愴」
 弟が顔を上げる。ピアノ曲なんざ敏幸には聞き分けがつかない。5分も聞けば欠伸が出るが、
弟にとってはそうでないらしい。
「・・・絵理姉って、彼氏とかいるのかな」
 ふと英幸が言った。
「兄貴、知ってる?」
「知らね」
 わざと敏幸は言った。知らないも何も自分だが、秘密にしておこうと決めたのは両方の合意だった。狭い田舎や
校内でやっかみや誤解やあらぬ噂を巻き起こしたくない。もし別れるようなことがあっても墓の中まで口外しないと決めた。
「あっそ」
 それだけ言って、英幸は自室の二階へと上がった。次は、世界史だ。

578 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/25(水) 19:07:57.23 ID:1RcF+Wcl
「えりちゃん、ピアノひいて」
 小さいころの思い出は、いつも絵理と兄との3人だ。あまり運動が得意でなく、本に浸っているほうが好きだった
英幸は、それゆえに家の中で過ごすことのほうが多い子供だった。兄も似たようなもので、家の中は子供らしいボールよりも絵本のほうが多い有様だった。
 そのうちに隣家の絵理がピアノを習い始め、どうやら才能もあったらしくめきめきと腕を伸ばしていった。
そのピアノを聞くのが英幸の趣味になり、同じ目線で話がしたくなってピアノ曲を聴きあさるようになった。それが恋愛感情に変わるのに、時間は必要なかった。
 隣家からは、相変わらずピアノの音が聞こえる。ベートーヴェンの「月光」第三楽章だ。少しだけ窓を開けて英幸は電気を消した。
月の狂気を楽譜に落としたような、不安定で激しい曲だ。低くうねっては駆けあがり、たたみかけるように主題が繰り返される。
―こんなにきれいな曲を弾くのに、兄貴には股を開くんだ。
 兄と絵理の関係を知ったのは二月前だ。公立の推薦入試とインフルエンザの流行が重なり、大事を取って三年生だけが臨時休校となったのだ。
仕方なしに自宅に戻ると、兄の靴の他に革靴がある。誰か来ているのだろうか、そう思って階段を上がろうとし、足が止まった。
「ん、や、あんっ」
 押し殺したような喘ぎ声が英幸の耳を正確に射た。
「敏ちゃん・・・はあんっ」
「絵理・・・っ」
 聞き間違いもしない、兄の声だった。
「や、そんなとこ、触っちゃ・・・」
 物音を殺して、居間に取って返した。知らず知らずのうちに股間は否応なく反応し、存在を主張してくる。
両親は普段から共働きで、夜まで帰ってこない。英幸の偶然さえなければ、確かに誰にも邪魔されない絶好の状況だった。
聞きたくない気持ちと本能とが交錯した。
「あんまり、動か、ないで」
「無理。すげー気持ちいい」
 ぎち、ぎちとベッドの軋む音がする。音を出さずに階段をのぼり、自室に駆け込むと、英幸は膨らんだジッパーを降ろした。
兄の部屋からはそれとわかる水音が聞こえてくる。右手が怒張を握りしめ、知らず知らずのうちに摩擦を始めていた。
「ん、んん、はあっ」
 言葉もなく喘ぐ絵理の嬌声が、既に限界に近いことを告げていた。痛いほどに膨れ上がったそれを強くこすり上げ、英幸は倒錯した絶頂を迎えた。
 何食わぬ顔で今帰ったような素振りをした英幸を、何もなかったかのような表情で絵理と敏幸は迎えた。
彼女は相変わらず「幼馴染のお姉さん」の表情をしていたが、英幸にはそれが張り付けた仮面のようにさえ思えた。
 二月前を思い出して、英幸はほくそ笑んだ。誰のものでもないと信じていた彼女が、既に文字通り兄のものであると
知ったときの絶望たるや、誰にも分るものではない。そして二人は、自分にさえその関係を隠しているのだ。
 二人がその関係を周囲に隠しているなら、それを利用してしまえばいい。
普通科と音楽科のトップが不純異性交遊など、田舎の高校にとっては絶好のスキャンダルだ。学校どころか地元にさえいられまい。
―さあ、どうしようか。窓を閉めて、英幸は目を閉じた。

雨だれ<1>、終わり。
合唱曲「聞こえる」は中学時代に実際に歌った歌だったりします。
579名無しさん@ピンキー:2011/05/25(水) 20:30:12.55 ID:M9JlyIMt
田舎
580名無しさん@ピンキー:2011/05/25(水) 20:46:43.81 ID:JR0FcLSP
投下乙!
ヒロインに死んでほっとしたといわれてる
英ちゃんが何をしたのかすごく気になるw
ヤンデレの独りよがりほど悲しいものはないな…
全六話続き楽しみにしてます
581名無しさん@ピンキー:2011/05/26(木) 00:13:02.10 ID:gZw08Ppa
英ちゃん何しやがったのw
続きに期待

しかし多田さん家のある地方かあ
閉鎖的環境で圧迫感バリバリなんだな
ヤンデレとか性犯罪とかと実にマッチする
582 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/26(木) 11:29:51.99 ID:D0ng/Tsg
続き投下します

雨だれ<2> 愛故入ります

「結局天文部に入ったんだと、あいつ」
 本田家の居間で参考書を広げながら敏幸が言う。
「ふうん」
 絵理はドイツ語の辞書を手渡した。音楽科で必修のドイツ語は他の外国語と並んでライバルの多い英語より難易度が低いことが多いため、
うまくすればセンター試験のいい抜け穴になる。
「天文部かあ、あんまりぴんと来ないけどね」
「運動部みたいに上下関係が面倒でなくて、理系でも文系でも役に立つことが多いからだそうだ。
実際古代ギリシャ史とギリシャ神話、地学と天文は直結するしな」
 そう言って、イヤホンを耳に当てる。ベートーヴェンの第九番交響曲、第四楽章の合唱部分、
いわゆる「歓喜の歌」だ。発音と文法と単語を一気に覚えこむのに歌が一番効率が良い、
と聞いて試す気になったらしい。どこぞの高校では卒業式に言語で全校合唱だという。
「Freude, schoner Gotterfunken,Tochter aus Elysium Wir betreten feuertrunken.
Himmlische, dein Heiligtum」
「音が外れてる」
「うるせ」
「普段歌ってないからだよ」
「文法はともかく、発音は分かりやすいんだな」
「音楽の先生によると、文法は難しくても発音は日本人に合いやすいんだって」
 耳は悪くないんだから、もっと音楽に興味を持てばいいのにと、絵理は心の中だけで呟いた。

 その英幸は、敏幸が家に帰った時点で居間で眠りこけていた。入学して一月、
ようやく日々の生活にも慣れてきたところで進学校としての勉強量が本領を発揮してきたらしい。
周囲には参考書が散らばっている。
「制服くらい脱げっての」
「仕方ないんじゃない?さっきまでずっと参考書と首ったけだったんだもの。
まして兄がトップなら弟もトップを狙え、みたいな期待があるんでしょ」
「そんなもんかねえ」
 周囲に散らばっている参考書の中には、星座図鑑やギリシャ神話と言った敏幸にはなじみのない文献が
転がっている。遊び半分で読み始めると、小さな頃に聞かされた星座の神話もいくつか混じっていた。
 ゼウスの好色ぶりといい寝取りといい、愛人やその子供を容赦なく手に掛けるヘラといい、
ずいぶん自分勝手で好き放題な神様ばかりだ。成人向けゲームにでも置き換えればさぞ修羅場だろう。
古事記によれば天皇家も昔は散々無茶をやらかしていたから、神様が人間になっただけでどこの王家もそのあたりは変わらないらしい。
 修羅場、ねえ。
―絵理姉って、彼氏とかいるの?
 弟の言葉をふと敏幸は思い出した。英幸は絵理のピアノで音楽教育を受けたようなものだ。
全く興味のない敏幸と違い、ピアノはほとんど弾けないが一度憶えた曲は忘れず、歌を歌えば音程も外さない。
中学時代の合唱部では、音感と声の良さを武器にソロパートもつとめていたと聞く。
―まさか、な。
 一瞬思い浮かんだ嫌な予感を、敏幸は否定した。もしそれが現実だったとしても、
絵理が英幸相手に首を縦に振らないことを、敏幸はよく知っている。
それに、幼馴染の居心地の良いぬるま湯のような関係から気まずさを感じる関係に転じるリスクを英幸が取るとは思えなかった。
 本を元に戻して敏幸は階段を上がり始めた。受験生には、やることが山ほどあった。
583 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/26(木) 11:34:01.97 ID:D0ng/Tsg
 中間も終わり、五月も後半に入ったころだった。絵理は練習室のカーテンの隙間から外の様子を伺い、
時計の時間を確認して楽譜を閉まった。あと十分で学校を出れば、待ち時間を殆ど挟まずに電車に乗れる。
 敏幸はとうに下校していた。今頃は過去問でも解いている頃だろうか。
―そういえばあの人、ドイツ語の勉強とか言って第九聞いてたっけ。
 戯れに、右手で主旋律を弾いて左手で和音をつける。思えば逸話の多い曲だ。
作曲者の生前はまともに評価されなかったとか、日本での人気に対して海外ではあまり歌われないとか、
あげくCDのサイズはこの曲が収まるかどうかを基準にしているとか。
 扉を叩く音がした。敏幸は既に下校しているはずだから、
この時間に残っているとしたら天文部の英幸だろうか。それとも、他の音楽科の誰かや先生だろうか。

 果たして、扉の向こうにいたのは英幸だった。部活帰りだろうか、荷物を抱えている。
昔は自分より小さかったのに、いつの間に追い越されたのか絵理には不思議でならない。
絵理の身長は高くないほうだが、敏幸と英幸は170センチを超えている。
同じ田舎育ちで同じ店で売ってる食べ物を食べてきたのに、どうしてここまで違うかな。
「どうしたの?」
「少し話があるんだけど、いい?」
「いいよ」
 絵理は英幸を招き入れた。扉のカーテンを閉め、鍵をかけた。

 英幸はドアの前に荷物を置き、傍らの椅子に座った。絵理の荷物をまとめるのを待っているようだった。
作業を終え、絵理がピアノの椅子に座る。 
「絵理姉に、聞きたいことがあるんだけど」
「・・・何?」
「彼氏っているの?」
 どきりと絵理の胸が鳴った。敏幸と付き合うようになってから、この問いに対しては全てNOで返している。
下手に勘ぐられたりあらぬ噂をたてられたりするのが面倒だからだ。好きな人はいる、とだけ、
嘘の中に真実を交えて返してきたし、実際それで問題が起こったことはなかった。が、相手が相手だ。
「好きな人は、いるけど」
「誰?」
 英幸の目つきが、いつにない真剣身を帯びてくる。
「いや、それは、その」
 まさかあなたのお兄さんと既に深い仲です、なんて言えるわけがない。英幸が椅子を蹴って立ち上がり、
絵理は思わず後ずさった。壁に退路を阻まれ、咄嗟に絵理は言葉を濁した。
「他校に」
584 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/26(木) 11:47:45.10 ID:D0ng/Tsg
「嘘つき」
 途端、英幸が絵理に覆いかぶさるように囁いた。
「英ちゃん・・・?」
 絵理の体を壁に押し付け、セーラー服のタイの結び目に指をかける。
「普段兄貴とどんなセックスしてるの?」
 その言葉に、絵理の顔がさっと赤らんだ。言葉を返せずにいる絵理の腿に手をやり、スカートをたくし上げる。
「・・・っ!」
「こんなのとか?」
「英ちゃ、んっ」
 英幸は強引に唇を奪い、赤いタイを解いた。押し返そうとする
絵理の両手を掴んでひねり上げ、両手首を後ろ手で縛る。
「普通科の優等生と音楽科の優等生が揃って淫行してました、なんてばれたら謹慎じゃ済まないよね?」
「・・・英ちゃん」
 セーラー服の前合わせのファスナーを降ろす。
「絵理姉の、嘘つき」
―もう、許してあげない。わざと聞こえるように、英幸は耳元で言った。
ファスナーを降ろすと、セーラー服の上からでもその膨らみの大きさが分かるバストが現れる。
クラスの男子がそういえば言っていた。音楽科三年の本田先輩の生乳はどんなもんか、と。
ピアノの演奏よりそちらに意識が行って仕方ない、なんていう正直者もいた。
「いやあっ」
 ホックをはずし、直接その感触を確かめる。男の手でも余るその胸は丸く、ピンク色の突起がその存在を主張している。
「放して・・・っ」
「絵理姉がいけないんだ、俺に隠れて兄貴とセックスなんかするから」
「そんなこと、んっ」
 乳房を食みながら、英幸はスカートの中に手を差し入れた。足と足の間を指先でなぞると、
童貞の英幸でもそれとわかるほど布地は湿り気を帯びている。ぐらりと絵理の足が揺れたのを、英幸は見逃さなかった。
「濡れてる。普段からシてるからこっちは敏感なんだ」
「違・・・っ」
 布地を分けて、英幸の指が直接割れ目に割り入った。ぬめる襞をかき分け、
蕾を探り当ててきゅう、と摘む。
「うあっ」
 絵理の視界が滲んだ。半分遺伝子が同じなだけあって、敏幸の指先と英幸の指先は殆ど同じ形をしている。
なまじ敏幸の体を知る絵理にとっては拷問だった。自分を何度も抱いた手と、
自分を今犯している手は同じ感触を伝えてくる。目を閉じれば、
敏幸に抱かれているような錯覚さえ覚えてしまう。
「やめて、英ちゃん」
 絵理の膝が震えている。やめる気など、毛頭なかった。既に下半身は早く熱を放出させろと訴えている。
「兄貴とのセックスはどうだった?こんなこともしたの?」
「や、やだ」
 パンティを膝まで降ろすと、そこは既に滴っていた。愛液が腿を伝い、
本能と理性が戦っていることを教えている。
指先を差し入れると、待ちかねていたかのようにずぶ、と音を立てて沈み込んだ。
その感触に思わず首を横に振る絵理に、英幸はほくそ笑んだ。
「大丈夫、兄貴とのことは黙っててあげる。でも、兄貴にも俺とのことは内緒だよ?」
 片手で絵理を責め立て、もう片手でベルトを降ろして、英幸はポケットから銀の包みを取り出した。
「あ・・・あ」
 絵理の中から指を抜き、濡れた手でコンドームを付ける。諦めなのか、体が言うことをきかないのか、
既に絵理は立っているだけで精いっぱいだった。両腿を愛液が伝い、一部はハイソックスにまで達している。
足首に下着が引っかかり、はだけた胸がうっすらと汗ばんでいる様は淫らで美しい光景だ。
その体を密着させ、逃れられないように片足を掲げて英幸は絵理の中に自身の滾りを押し進めた。
「いやあ、あ、ああっ」
 悲鳴を上げた唇とは裏腹に、体は英幸を飲みこみ、受け入れることに貪欲だ。
散々兄の体で「学習」してきたのだろう、快感を求めて腰が動き始めている。
585 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/26(木) 11:56:21.65 ID:D0ng/Tsg
―敏ちゃんじゃない、と頭では分かっている。が、体は止まらない。
敏幸との行為に慣れた体が異物を飲み込み、もっともっと快感を得ようと求めている。
乳房を愛撫する指先の感覚が、声が、律動のリズムが、何もかもが敏幸と違うようで似通っている。
「いや、やめて、やめっ、ああっ」
「兄貴とどっちが大きい?」
「はなし、ひあっ」
 繋がった部分がぐちゅりと音をたてた。奥まで挿入し、内側の感覚を楽しむように先端まで引き戻す。
角度を変えて再突入すると、それに合わせて腰が揺らいだ。
 処女ではなく、快感を知ってしまっている。その求め方も得方も知っている。だがそれは敏幸との時間のためだけだった。
英幸に体を奪われて脅されるために敏幸に抱かれていたわけではない。
 先ほどから壁に押し付けられている手が、体と壁に挟まれてずきりと痛んだ。
英幸は構わずに絵理の両足を抱え、
深く挿入してくる。
「いやあっ」
 せめてこの時間が早く終わってほしいと、それだけを絵理は願った。悪夢ならいっそ早く覚めてほしい。
 英幸の体が絵理の奥底でどくりと震えた。ああ、射精だと絵理は半分瓦解した脳の奥で感じていた。

「また明日ね、絵理姉」
 身支度を整え、絵理の手首を解いて、何もなかったかのように英幸は言った。
絵理は茫然としたまま立つことすら出来ずにいた。昨日までの幼馴染と目の前の雄とが一致しない。
体を立たせようと英幸が引いた手を、絵理はせめてもの矜持で払いのけた。
「はなして」
「そろそろ先生が見回りに来るよ。さっきの時点で練習室を使ってたのは絵理姉だけだったし」
「いいから、帰って!」
 はだけたままのセーラー服をかきよせ、絵理は英幸を見ずに行った。同じ空間にいるのさえ厭わしかった。

 英幸の足音が遠ざかって、絵理ははじめて声を上げて泣いた。敏幸との関係を悪いと思ったことは一度もない。
好きになって、その延長上で体を許した。それだけだ。
弟がその関係をもとに絵理を強請るなど、誰が信じるだろうか。
 外は既に真っ暗で、風がざわざわと吹き始めている。どれだけ電車を待つことになっても、
英幸と同じ電車には乗るまいと絵理は決めた。

雨だれ<2>、終わり

ギリシャ神話、旧約聖書あたりはNice boat.ってLVじゃないほどHR・NTRの宝庫。
586名無しさん@ピンキー:2011/05/26(木) 16:51:29.66 ID:5zn/mHAh
ギリシャ神話で印象深かったのは、ダナエ姫と黄金の雨の話だな
旧約聖書だとディナの話
587名無しさん@ピンキー:2011/05/26(木) 19:03:02.63 ID:XL9RRd4S
GJ
ヒロインと英ちゃんは未来がわかっているけど
敏幸は生きてるのか死んでるのか気になる
そして多田家はご健在な頃なのかw
こんな人の目につきそうなところで
ゴムとか手に入れられなさそう…
と思ったけどきっちり避妊してるのは偉いw


自分がギリシャ神話ですごく心に残ってるのはテーセウスかな
アリアドネを捨ててこいつはヒデェやと思っていたら
その後アリアドネの妹と結婚。
その妹はアフロディーテーの力で義理の息子を好きになって
義理の息子からフラれると義息子に乱暴された!って言って自殺して
それを信じたテーセウスは息子を殺したとか・・・ドロドロすぎるぜw
588名無しさん@ピンキー:2011/05/26(木) 19:35:36.38 ID:kLBlnIii
フェードルの話か
女→男の愛故か、たぎるな

アポロンもエコー?だかに迫ってたな
589名無しさん@ピンキー:2011/05/26(木) 19:38:12.83 ID:408h5IJx
GJ!ここから英ちゃんが死んでほっとしたと言われる位
何をしでかすか、絵理の心がどう揺れ動くか期待


>>587
テーセウスのドロドロはすごいよな
息子と嫁の仲を勘違いした後も新しい嫁にゼウスの娘を求めて
子供のヘレンを誘拐したりやる事が滅茶苦茶だw
でもアリアドネの場合は、アリアドネに惚れたディオニュソスがテーセウスに
アリアドネ捨てていけやと命令した説もある
そっちだったらちょっと可哀想w
590名無しさん@ピンキー:2011/05/26(木) 20:19:07.74 ID:pWdf03tw
このスレ的にはアンドロマケーあたりがツボると思う。
トロイ王の長子ヘクトルの寡婦。国が滅んだ後
幼い我が子を城壁から投げ落としたネオプトレモス(アキレウスの息子)の奴隷にされ、
ギリシャに連行されて三人の子を生む。
この内の一人が後にペルガモン(=旧トロイ地方)の初代王となった…らしい。
大分うろ覚えだから細部違ってたらすまない。

確かラシーヌが彼女をネタに戯曲を制作してた筈…
とwiki覗いてみたらオレステス(ヘレネの甥)→ヘルミオネ(ヘレネの娘)
→ネオプトレモス→アンドロマケー→亡夫という片思い連鎖な超鬱展開だった…
591名無しさん@ピンキー:2011/05/26(木) 21:02:37.53 ID:fhSgyeUV
イリアスからは外れるけど、以前どこかで見た ヘレネ→ヘクトル には萌えたなあ。
パリスより兄ちゃんに惚れるだろJKってネタレスだったけど。

……ここって女の方が襲っちゃっうネタもいいんだよね?
592名無しさん@ピンキー:2011/05/26(木) 22:44:00.19 ID:XL9RRd4S
いいですとも!w
過去にもあったよ

>>589
自分が初めてみたテーセウスの話が
アリアドネを連れて行ったら船が難破するとか言われて
すまない!心苦しいが……とか言って寝ているアリアドネを島に置き去り
嘆き悲しむアリアドネを純情おじちゃんなバッカスが見つけて
動物たちやらと一緒に慰めている間に二人は夫婦になった話
だったんでそのイメージが強くて。
でもそのバッカスだったら愛ゆえなヤンデレおじちゃんになれるなw

>>590
ググったらフェードルとアンドロマケーが
一緒になった本売ってるんだな!
本当にあらすじこのスレ向きのツボだぜ
つーかオレステスが切なすぎる男だ…
593名無しさん@ピンキー:2011/05/26(木) 23:25:44.74 ID:408h5IJx
>>592
ディオニュソスはヘラに呪われたり自分を認めない人間を狂わせたりしてたから
ヤンデレぽい青年をイメージしてたよ
だからアリアドネとの話も勿論このスレに沿った展開を妄想してたw
まだテーセウスを諦めきれず気丈に振る舞い、相手が神だからと恐れを抱きながら
心ではディオニュソスを拒絶するアリアドネを見て
テーセウスに嫉妬しながらアリアドネを何度も強引に抱くディオニュソスとかなw
陽気なおじちゃんバージョンだったら優しく相手が心を開くまで待ってくれるんだろうな

あと神話でこのスレに合った話だとハデスとペルセフォネも大好きだw
594名無しさん@ピンキー:2011/05/26(木) 23:44:58.63 ID:gBIVUaG1
ハデスはデメテルどこいったってなるなw
595 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/27(金) 00:12:39.01 ID:npLyO6jC
続き投下します

雨だれ<3> 

―今日一日、英ちゃんに会いませんように。
 そう祈るのが絵理の日課となった。家を出るときは出来るだけ物音をたてずに、
電車が到着するギリギリのタイミングで、家でピアノを弾くときは真ん中のペダルで音を小さくして、
窓もカーテンも閉めた。
敏幸には受験勉強の邪魔にならないようにと言い訳をしてごまかしたが、
要は英幸に自分の気配を悟られたくないのが本音だった。
帰りの遅くなりやすい天文部の下校時間より一本早く電車に乗り、
家に帰ってから弾く。最近帰りが早いと先生は首を傾げたが、その理由を正直に言えるものではない。
練習時間と練習環境さえ確保できれば良かった。
 大抵はそれで上手くいった。家のアップライトは学校のグランドピアノに比べれば音質も響きも落ちるが、
指の感覚は一緒だからだ。だが、計算が狂うこともあった。

 外は叩きつけるような雨が降っていた。
「・・・っ、いやあ・・・」
 制服の中を英幸の手が動き回る。
「最近会わなかったね。どうしたの?家で練習でもしてた?」
「英ちゃんには、関係、ない・・・っ」
「家のピアノよりこっちのほうが音がいいって、前は言ってたのに?」
 グランドピアノの蓋に手をつかされ、絵理は唇をかみしめた。
ブラジャーはとっくに外され、制服の中で胸が泳いでいる。背中から覆いかぶさるようにして
英明は絵理の行動を封じていた。
 制服をたくしあげ、背中から胸までを露出させると、その様は淫靡で美しい。
垂涎の的の胸も兄が育てたと知らされれば面白くはないが、今その恩恵を最も受けているのは自分だ。
「どうして、こん、な」
「俺と兄貴とどう違うの?何で兄貴はよくて俺はダメなの?」
「敏ちゃんは、関係、なっ・・・」
「俺が絵理姉のことをずっと好きだったって、知らないでしょう」
 スカートに手を伸ばし、片方の脇からパンティを降ろす。
「や、いやあっ」
「その絵理姉と兄貴が深い仲だって俺が知ってたことも、絵理姉は知らなかった」
 自分の怒張が膨らんでいくのを英幸は感じていた。あの日から自分はどこかおかしくなってしまったのかもしれない。
だが、歪んだ欲望を満たしてくれるのは絵理だけであることも英幸は知っていた。
「その上絵理姉も兄貴も、揃って嘘をついた。絵理姉に彼氏はいないって」
 スカートを降ろし、露わになった絵理の臀部を撫でた。固く閉じた足の間に指を入れて泉の状態を確認する。
指先を軽く曲げて内側を引っ掻くと、絵理の体が面白いように跳ねた。
「だから決めたんだ。俺は二人を許さない。どんな手を使ってでも
絵理姉を俺のものにしてみせるってね」
「だからって、こんな」
 胸も尻も隠れていない今の絵理は、文字通りあられもない姿だ。
写真でも撮れば高値で売れるだろうが、楽しむのは自分一人でいい。
「もうこんなになってるのに?」
 抜いた指先はとろりと愛液が光っている。足先も震えている。腰のくびれを掴み、
英幸は有無を言わせずに滾った欲望でその場所を貫いた。
「いや、いやあああっ」
 コンドームは今日は準備していない。文字通りの生の感触は溶けそうに熱くぬめり、
それだけで射精を促しかねないが、ここで妊娠させては元も子もない。
兄と絵理が別れるまで事の露見は避けたかった。
「お願い、放して・・・っ!」
 ピアノに縋りつき、絵理は逃れようと必死に身を捩った。その指先を、英幸が後ろから捉えて掴んだ。
体を密着させるごとに、怒張は奥へ奥へとのめりこんでいく。ピアノが時折絵理の乳房をこすり上げ、
冷たい感触に絵理はますます混乱した。
「絵理姉の中、すごいね。熱くて溶けそう。このまま出したいくらいだ」
「助けて、誰か・・っ」
 内側を存分に楽しみ、絵理が抵抗する気力をなくしたところで英幸は自身を抜いた。
精は、真っ白な背に出した。    
596 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/27(金) 00:19:13.71 ID:npLyO6jC
 絵理は闇の中をひた走っていた。白い影が追ってくる。逃げても逃げても、執拗に迫っては絵理を捉えようとする。
影は英幸の顔をしていた。誰か、助けて。そう叫ぼうとした手を影が塞ぐ。
―誰か・・・誰か!
 チャイムの音で絵理の眼が覚めた。全身ひどい汗で、頭も重い。季節外れの熱が出たからと、
学校を休んだのを絵理は思い出した。期末試験が既に終わっていたのが幸いだった。
 胸の間を汗が滴って落ちる。その感触に、絵理は身震いした。
数日前に英幸に準備室で行為を強要されたばかりだった。その手の感覚がいまだに全身から消えないでいる。
 チャイムが再び鳴った。時計は正午を指していた。まだ母は帰ってくるまい。
用心のため、チェーンを外さずにドアを開けた。
「大丈夫か?」
 敏幸だった。全身から力が抜けて絵理はへたり込んだ。

 台所を借りて敏幸がお粥を作るのを、絵理は黙って見ていた。家事は女性の仕事、という概念は田舎ではまだ根強いが、
なかなかどうして敏幸の後姿には違和感がない。卵と鮭を使い、ネギを載せた粥はどちらかというと雑炊のような気もしたが、
些細なことだった。
「ほら」
「ありがと」

 音楽科の先生から預かった課題や友人から預かったノートを見つつ、絵理はぼんやりと座っていた。
敏幸はこれまた受験生の性で、単語帳とにらめっこしている。センターはドイツ語、私大の入試は英語にすること
でセンター試験の外国語のリスクを下げる方向らしい。
「どうせ大学に入ったら嫌でもやらなきゃならないんだから、
教師がいるいまのうちにやっておいたほうがまだ楽」だそうだ。
 絵理は横になり、胡坐をかいた膝に頭だけ載せた。邪魔をする気はなかったが、
少しでいいから触れていたかった。
「どうした?」
「・・・ごめん、少しだけこうしてていい?」
 一番近くにいてほしい人と一番近くにいてほしくない人は兄と弟なのだ。
同じようで違い、違うようで似ている。
「最近、元気ないな。何か音楽科で嫌なことでもあったのか?」
「受験が近くなって、緊張してるだけだよ」
 音大の推薦入試は秋だ。2月の終わりの敏幸よりずっと早く、準備期間も短い。
合否が出た後の期間は長いから、そこは敏幸とは逆だ。
「ピアノのことはよく分からないけど、今更怖気づくような腕じゃないだろ。
普段だって毎日何時間も練習してるんだし」
「うん・・・ありがとう、敏ちゃん」
 指先を撫でる敏幸の指が優しくて、絵理は目を閉じた。好きで隠しごとをしているわけではない。
むしろいっそぶちまけてしまいたいような気持になる。が、自分の弟が自分の幼馴染を脅していると聞かされたところで、
信じられるだろうか。どちらも信じ切れず、どちらも疑いきれない。それが人情だ。
「敏ちゃん、あたしたち、何で付き合い始めたんだっけ」
「なんだよ、いきなり」
 敏幸は顔を紅潮させた。ごほんとわざとらしく一つ咳をする。
「そんな昔のこと、覚えてねえよ。・・その、幼馴染から、なんとなく」
 男子中学生らしい理由の「胸」もさることながら、ピアノの腕前のほうで既に絵理は校内では有名な存在だった。
美人で知られていた一つ下の湊由香とはまた違う理由で男子を引き付けた。
誰かに先取りされるのが嫌で、自分だけのものにしたくて、敏幸は絵理を手に入れたのだ。憶えていない敏幸ではない。
 初恋は成就しないと世には言う。成就するだけ自分は幸せなのかもしれない。
けれど、その成就しなかった痛みを凶器に変えてまで強いられるいわれはない。
 遠からず、この優しい手を手放さなければならない時が来る。それが、絵理には何よりも辛かった。

597 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/27(金) 00:24:44.72 ID:npLyO6jC
 夏休みに入ると、敏幸は予備校の夏期講習と学校の夏期講習とに一日中家を空けることとなる。
早慶受験者にはよくある夏休みだった。逆にいえば、絵理の安全圏がなくなるという意味でもあった。
 練習室にいては、文化祭の準備を理由に登校した英幸に見つかりかねない。家にいればピアノの音で感づかれる。
かといって練習しないわけにはいくまい。推薦入試はすぐそこなのだ。
 音楽科の友人を誘って、合同練習することもあった。母か父のどちらかが休みの日は家で練習を続けた。
あるいは、普通科の教師相手に座学や面接の対策をすることもあった。とにかく、
英幸と顔を合わせようと二人きりになる状況を作らなければいい。
 綱渡りのような努力は、それでも功を奏した。文化祭での音楽科の有志で発表する「ラプソディ・イン・ブルー」の伴奏も担当することとなり、
昼の学校で一人きりで練習する機会すらなくなると、絵理は胸を撫で降ろした。
「ここのところ絵理、毎日学校来てるけど、大変じゃない?」
「音楽科の文化祭での演奏でしょ?ほぼ休日返上じゃん」
「好きでやってることだから、気にならないよ」
 緑のスカーフの普通科の友人に混じって、絵理は毎日登校した。普通科は午前中に受験対策があり、
人によっては午後から駅近くの予備校で衛星授業を受けるのだという。絵理は午前中に文化祭の練習を入れ、
午後には座学の指導を受けるようにしていた。音楽科の生徒は座学に力を入れる人間が少ないとは
普通科の教師の嘆きだったから、その点でも絵理の評判は上がった。一人でいる時間を少なくできれば、目的は問わなかった。
 休みないという点以外は不満のない日々を乗り越え、10月の文化祭も無事終了した頃、
絵理は桐邦音大の合格通知を受け取った。
598 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/27(金) 00:32:30.55 ID:npLyO6jC
「お疲れ」
 敏幸が言う。英幸は、天文部の合宿で今日は帰らないと聞いていた。
「毎日ピアノ漬けで休みなしだったけど、でも楽しかった」 
「楽しかったんだろ?それで合格なら言うことないな」
「敏ちゃんは?」
 見ろ、とばかりに模試の結果を見せる。早慶希望者だけを対象にした模試でも、堂々のB判定だった。
「浪人はしなくて済みそうだ」
 文化祭が無事に終わり、大学にも合格した。が、もう一つだけ懸案が残っている。
今まで逃げ続けてきた英幸の件だった。顔を合わせるのも嫌だが、それでもいつかは対決しなくてはならなかった。
「ん」
 敏幸が唇を重ねてくる。唇で受け止め、絵理はそのまま敏幸の首に腕を回した。
「こっちも最近ご無沙汰だったしな」
「受験生のくせに」
「たまには休息も必要だってことだよ」
 絵理の服の中に敏幸の手が入ってきた。絵理は抗わずに身を任せた。目を閉じると英幸と錯覚しそうで、
違うと絵理は自分に言い聞かせた。今自分を抱こうとしているのは敏幸であり、
英幸ではない。敏幸は絵理が本気で嫌がるような真似は一度もしたことがない。
 外は肌寒くなってくる季節だというのに、既に肌は汗ばんでいた。愛撫など、殆ど必要ないほどに絵理は濡れていた。
「好き、敏ちゃん、好き・・・っ」
「知ってる」
 向かい合って座ったまま、下から敏幸が貫いてくる。絵理は夢中になって名前を呼んだ。
腰に足をからめ、素肌の胸を隙間なく合わせ、お互いの境界さえ忘れてしまいたかった。
体の内側の凹凸すらぴったりと合わせるような、ゆるやかな律動だった。
 これがセックスなんだと、絵理はぼんやりと思った。満ち足りるような、自分が自分でなくなるような、
体と体の交歓を、皮肉にも英幸と関係を持たされたことではっきりと理解した。
 勝手を知った体は、お互いの絶頂の迎え方もよく知っている。敏幸が絵理の急所を攻めてくるときは、
自身も絶頂が近い時だ。体の内側も外側も敏幸の熱で満たされ、ほとんど同時に絶頂を迎えながらも、
自分たちに残された時間がそう長くないことを絵理は悟っていた。

雨だれ<3> 終わり 
ショパンの他にはリストも好きですが、その娘のコジマがNTRの当事者と知って吹いた。

そしてこのスレのギリシャ神話の盛り上がり方にも吹いたwww
599名無しさん@ピンキー:2011/05/27(金) 19:12:47.11 ID:ixu3ApPE
ギリシャ神話はこのスレの内容に即したおいしいネタがたくさんあるからね
だから人気なんだね

そういえばどっかの神話で女を連れ去ってれいぽうして
女の親が怒ったりするけど、結局は女は自分を連れ去った男をすきになるって言う話があったなあ
女を連れ去った男は愛するが故に無理やり…てこと?
600名無しさん@ピンキー:2011/05/27(金) 20:22:17.36 ID:xVQK7RVi
600
601名無しさん@ピンキー:2011/05/27(金) 21:30:12.99 ID:M82O599b
サビニの女の略奪かね、ローマ建国譚の
602名無しさん@ピンキー:2011/05/27(金) 22:18:29.25 ID:LTsi2gPr
>>598
GJ
敏ちゃんの動向も気になるw
つか冒頭見ると絵里ちゃんすっかり擦りきれてる?感じだな
あんな感じで性行為してるの知ったら英ちゃんはショック受けそうw
死んでしまったようだが

神話系は良いネタがゴロゴロ転がってるからね
603 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/28(土) 00:21:53.92 ID:XHaPwW+1
続き投下します

雨だれ<4>

 受験生から解放されてしまうと、まだ受験生である音楽科の生徒に練習室の優先権が移る。
大学から課題は出されていたが、幸い敏幸の受験勉強に付き合ってから夜に家で練習しても、間に合うレベルだった。
「1937年、スペイン内戦にて破壊された小都市は」
「ゲルニカ」
「ではスペインの何州か」
「バスク地方」
 例によって絵理は敏幸の世界史対策に付き合っていた。11月になると、雨でも降らない限り
天文部はほぼ毎日観測になる。それも絵理にとっては都合がよかった。
「沖縄戦の一般的な期日を述べよ」
「1945年3月26日上陸、6月23日牛島満中佐の自決により終結。通称アイスバーグ作戦」
 そこまで聞いてない、という突っ込みは、心の中だけでした。
どこがどんな風に出題されたとしてもおかしくないのだ。
「ではベトナム戦争で使用されたといわれる枯葉剤、主な成分は」
「ジクロロフェノキシ酢酸とトリクロロフェノキシ酢酸」
「原発事故の起こったウクライナのチェルノブイリ、一説には聖書になぞらえて何と呼ばれるか」
「ニガヨモギ」
 得意のくせに細かな知識の確認をやめないのは、単に他の科目よりも世界史が好きだからだ。
絵理のピアノと一緒である。
「ただいま」
 玄関から聞こえた声に、絵理は身を竦めた。なるべく聞かないようにしていた声だった。
「おかえり」
「・・・英ちゃん」
「どうしたの、絵理姉」
 夏休み前までのことなど、何もなかったように英幸は笑った。逃げまわって予定を詰め込んだ分、
ピアノの腕前が更に上がったのは皮肉と言っていい。
「絵理姉、合格おめでとう」
「・・ありがとう」
「こっちの大学に進学するとばっかり思ってた」
「今日の観測は?」
「先生の出張で、ミーティングだけで終わり」
 敏幸の見えないところで、絵理にだけ見せた英幸の笑みに、絵理は息が止まるような思いがした。

604 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/28(土) 00:25:16.68 ID:XHaPwW+1
 俺とのことを兄貴にばらされたくないよね、と耳打ちして数日後、英幸は絵理を自室に引っ張り込んだ。
普通科だけの冬休み直前模試の日だった。
「絵理姉と会うのも夏休み前以来だね。もしかして、避けられてたとか?」
「・・・」
「兄貴の受験勉強に付き合って、そのままこういう事もしてたんだ?」
「痛・・・っ」
 両手首を頭の上で拘束し、私服のネクタイで縛る。
「兄貴と絵理姉が一緒にいるだけで俺がどれだけ嫉妬してたか分かる?こんなに好きなのに、
絵理姉は俺のことを見ようともしない」
 ベッドに押し倒し、英幸は絵理に圧し掛かった。セーターをたくしあげ、
ブラウスのボタンを一つづつ外す。あごのラインを指先でなぞり、唇に触れた。
「んっ」
 被さるように唇を塞ぐ。舌が歯列を割って入り、口の中の奥まで侵入してくる。指先がブラの内側に侵入し、
乳首を押し上げた。
「絵理姉の体は柔らかいね。どこもかしこも、真っ白で、何にも知らないような色で、
吸いつくような感触で」
「やっ・・・」
 日に当たっていない肌は白く、青い血管がうっすらと透き通ってさえいる。指でゆっくりとその感触を味わうと、
英幸は絵理のジーンズのボタンに手をかけた。
「英ちゃん、腕、痛い」
「絵理姉が暴れるからいけないんだ。こうでもしないと、絵理姉の視界に俺は入れてさえもらえない」
 圧し掛かったまま英幸はジーンズを降ろした。パンティのクロッチを押し広げ、指先を侵入させる。
「いやあっ」
 こうして嫌がる絵理を無理やり抱いている瞬間だけが、自分を絵理に認識してもらえる瞬間だ。
下着を足首まで降ろし、足を体で押さえこんで、英幸はその場所に舌を這わせた。
「や、いや、いや」
「絵理姉が学校のどこにいても、すぐに分かるよ。音楽科のスカーフは、よく目立つからね」
 片手で胸の感触を楽しみ、舌先で襞を割る。こちらは経験がないのだろう、跳ね上がる絵理の体を見る度、
英幸は歪んだ恍惚が己の中を満たしていくのを感じていた。自分が兄以上に彼女を知っている、
その最初であるという何かを刻み込みたかった。
 伸ばしたままの片手に目が行く。兄が育てたらしい巨乳は、形も大きさも申し分がない。
自らの下半身を露出し、英幸は絵理にまたがった。下半身を解放された絵理がうっすらと目を開けたのもつかの間、
絵理の胸に自らの怒張を挟み込む。その様に、絵理が思わず目をそむけた。
 見たくもないものが自分の胸の間から鎖骨にかけて鎮座している。それは既に熱を持ち、存在を主張しているのだ。
きつく目を閉じてふるふると首を横に振る絵理を見ずに、英幸は両胸を掴み上げて自らを動かし始めた。
「すごいね、絵理姉のおっぱいは。すごく気持ちいい」
 絵理は歯を食いしばった。胸の谷間をこすり上げていく怒張は、ますますその膨らみを増していく。
「ほら、もう、出る・・・っ!」
 目も口も堅く閉じた絵理の頬に鎖骨に胸に、熱い何かが飛び散った。英幸は下半身の希望に従って出るに任せ、
出しつくしてから傍らのタオルで絵理の体を拭き始める。
「や、もう、こんなの、いや」
 絵理は泣きそうになりながら懇願した。英幸の部屋の匂いは、皮肉なほど敏幸の部屋のそれと似ている。
なじみのある感覚が、悪夢によって上書きされていくようだった。
「まさか絵理姉の胸で抜けるとは思わなかった。俺がいつもどうやって抜いてたか知ってる?」
 わずかに英幸はカーテンを開けた。窓の向こうは、見慣れた絵理の家だ。
605 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/28(土) 00:30:24.53 ID:XHaPwW+1
「ここの窓を開けると、絵理姉のピアノの音がよく聞こえてくるんだ。
その音で抜くのが、一番気持ちよかった」
 英幸は茫然としたままの絵理の体を返した。今日はコンドームを用意している。腰を掴んで自らの股間にあてがい、
深々と押し入った。
「ふあ・・・っ」
 もはや絵理は叫ぶ気力もなく、押し出される息だけが彼女の感情を伝えている。
「今絵理姉と繋がってるのは俺だよ。兄貴じゃない。分かる?」
「あ、あ、あ」
 絵理の体を枕に押し付け、英幸は腰を押し進める。内壁が、吸いつくようだ。
掴んでいる腰をぐいと引きよせ、接合を深くする。
「東京に行って、何も知らなかったようなふりをして兄貴とセックスできる?
もし兄貴と結婚したとしても俺は一生絵理姉に執着する。子供はどちらの子供が生まれるかな」
「はあ、あ」
―ごめんね、敏ちゃん。大好きだよ。でも、一緒にはいられない。
 煮え滾る意識の中で、絵理は声に出さずに呟いた。
海老のように反った腰が痛み、指先が虚空を掴んだ。

 夏休み前に見たきりだった悪夢を、絵理はまた見るようになった。
夢の中で英幸の形をした影が追ってくる。それは絵理の口を塞ぎ、服を破り、有無を言わせず体を引き倒した。
 別の夢を見ることもあった。迷路の奥へ奥へと逃げる絵理を、英幸が悠然とした足取りで追ってくる。
遠くに敏幸の声が聞こえるが、出て行けば英幸に捕まってしまうから、出ていけない。
 早く上京して実家から出てしまえば、悪夢は終わる。その気持ちだけが絵理を奮い立たせていた。
 冬休みになると、今度は引っ越しの準備が迫ってきた。家の中で息を潜めていたかったが、そうもいくまい。
 冬休みの自由講習の合間を縫って何度か上京し、揃える必要のあるものとそうでないものをリストアップし確認していく。
親が隣にいて英幸に遭遇しない新幹線は、絵理にとって数少ない安全な寝床だった。
 佐野家は、絵理にとって既に安全な場所ではなくなっていた。一歩入るだけで本人の在宅とは無関係に英幸の気配を感じ取り、体が震えた。
 敏幸に付き合っていた受験勉強も、英幸と顔を合わせる可能性を少しでも下げたくて、
本田家の居間で何人か普通科や音楽科の友人を集めて行うようになった。
もともと敏幸は雑音をまるで気にしないタチだから、ピアノが鳴っていようとCDが鳴っていようと
予備校の衛星授業のビデオが流れていようと知ったことではない。
「佐野っち世界史教えてくんない?」
「代わりに数学教えろよ」
「あたし数学佐野っちより悪いんだけど」
「本田は下宿先もう決めたのか?今ピアノの持ち込み可の部屋探してるんだ」
「だったら、こことか」
「お、なかなかいい感じじゃん・・・って、女子寮かよ」
「あ、ごめんー」
「絵理、景気づけにノリのいい曲一曲弾いてよぉ」
 静かなほうが絵理には怖かった。一人で出かけるのも極力避けた。誰かと話していれば、
英幸のことを思い出さずに済む。両親のどちらかが家にいれば、英幸が突然来訪しても顔を合わせずに済む。
卒業式までの二カ月をやり過ごしてしまえば、あとは上京してしまえる。
 怖がってばかりではこの関係は終わらないことも知っている。けれど、顔を合わせるのも声を聞くのも嫌だった。
顔で敏幸と笑いながら、心では英幸と似ていないところを必死で探している。
 絵理が台所で飲み物を準備していると、友人の笑い声が響いた。
「音楽科ってさあ、みんな爪短いよね。ピアニストって優雅なイメージがあるけど、
頓詰まってささくれてる」
「そりゃ、長かったら演奏できねえよ」
「そういや俺、小学校に入ってから絵理とボール系の遊びしたことないな」
 敏幸が言う。
「そうなの?」
「下手に突き指でもさせたり折ったりしたらピアノ弾けなくなると思うとさ、なんか怖えもん」 
「あ、それは言えてるかもな。うちの親も俺がピアノ始めてから、
野球とかドッジボールとか全然しなくなった」
「指一本でも感覚って変わるもんなの?」
「当たり前だろ。ピアニストは指が生命だぜ?」
「あー、だからあんたサッカー部だったんだ」
「そういうこと」
606 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/28(土) 00:33:16.15 ID:XHaPwW+1
 センター試験を境に、世間は本格的な受験シーズンに突入する。絵理は朝まだ暗い中を
始発の電車で受験に向かうクラスメイトを何度か見送った。何校か予定を詰めて受験する友人は、
都内に共同でウィークリーマンションを借りたという。朝夕を外で食べてもホテルより安く、新幹線の利用回数も少なくて済む。
 家に帰って二度寝し、英幸が登校したであろう時間を見計らってピアノを弾いた。
引っ越しの作業も少しづつ進めていたから、部屋の中はダンボールで足の踏み場もなくなっている。
 敏幸の受験も、間近に迫っていた。センター試験では結局思ったほどドイツ語で取れず、
生物で失敗したが、国語と世界史の高得点を盾にセンター利用の滑り止めを一校確保した。
「んじゃ、いっちょやってきますか」
 明日から本番だという日の夕方、絵理は敏幸を友人と一緒に地元駅のホームで見送った。
都内のホテルに宿をとったという。
「大丈夫だよ、敏ちゃんなら」
「爆死したら骨は拾ってあげるから」
「ありがたくねえなあ」
「先生たちからお守り預かってきたよ。法学部なら東大の文一受けてほしかったって嘆いてた」
「俺センターで大コケしたから今更無理だっつの」
 ローカル線が入線してくる。どうやらこの駅で折り返しらしく、電車は全ての乗客を吐き出した。
「がんばれー」
「がんばって」
「おう」
 逆方向に向かう電車を待つという友人と別れ、絵理は足早に踵を返した。
が、その腕が止められる。絵理の表情が凍った。
「ただいま」
 学校帰りの英幸だった。

雨だれ<4> 終わり  
ヤンデレの言葉責めって難しい(´・ω・`)
607名無しさん@ピンキー:2011/05/28(土) 00:45:23.46 ID:xHMr9fkd
>>606
GJ!!
最後怖いw英ちゃんマジ自重…しなくて良いか
後、誤字報告です>>603で牛島さんが中将ではなく中佐になっとります
608名無しさん@ピンキー:2011/05/28(土) 15:19:58.48 ID:izSJEeVC
>>606GJ!!
英ちゃん敏幸をホームに落とすのかと一瞬ビビったw
敏幸がいない間の主人公ピンチだな
それにしても606の書くヒロインは
気が強いというか芯がしっかりしてるから
男の方が置いてかれているというかすごくかわいそうに見える。
英ちゃんを追い詰めたのは私のせい……って思わずに
純粋に嫌いとしか思われていないのが切なさに拍車をかけるよ
そして雨だれ聞いたんだが鬱に拍車がかかるなw

>>593のディオニュソス読みたい
しかしそんなヤンデレさんがアリアドネを好きになる理由が気になるw
609名無しさん@ピンキー:2011/05/28(土) 15:21:19.55 ID:izSJEeVC
すまん間違えて上げたorz
610 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/29(日) 00:02:47.54 ID:XHaPwW+1
続き投下します。

雨だれ<5> この先エロなし。

英幸にとってはありがたくなく、絵理にとっては都合がよいことに、高校生の帰宅ラッシュの時間であり
地元の小・中の下校時間でもあった。人目につくようなことは出来まい。
「・・・お、かえり」
「駅までなにしに来てたの?俺を迎えにきた?」
「みんなで敏ちゃんを見送りにきただけだよ。明日から本命の受験だもの」
「ああ、そっか」
 そのまま帰ろうとする絵理を、英幸は追いかけた。追いつき、前に立ちはだかる。
「そんなに急がなくたって」
「・・・部活はどうしたの」
「期末テスト一週間前だからないよ」
 息が詰まった。早くここから逃げ出したい。だが、英幸はまず逃さないだろう。
「ピアノの練習があるから、帰る」
「うちもこっちなんだ」
 傍目にはごく真っ当にしか見えない笑顔で、英幸は言った。

 結局、並んで歩くことになる。絵理は一言も話さなかった。下を向いたまま、
家までの距離を着実に縮めることに専念した。
「何か話してよ」
「・・・英ちゃんと話すことなんかないよ」
 今からでも走り去りたかった。せめてあの時、友人が電車に乗るまで待てば、
この事態は防げたかもしれない。
「兄貴とは、結局まだ付き合ってるんだ」
 絵理は顔を上げた。足を止めて英幸を見る。
「前に言ったよね。絵理姉と兄貴が結婚しようとどうしようと、俺は構わないって」
 ぎらついて、どこか狂気すら孕んだ瞳だった。あと少しで家に着くというところで、絵理は息を飲んだ。
「今からでも、体で教えてあげようか?」
 空いていた絵理の片手を掲げ、口づける。言葉と行動に対して指先に込められた力は男の全力だ。
優男の英幸とはいえ、絵理の指など造作ない。
「英ちゃん、やめて」
「どうして?」
「指、痛い」
 力が少し緩んだところで、絵理は英幸の手を振り払った。震える手を握りしめて対峙する。
「もう、こんなの嫌だ。英ちゃんに怯えて、毎日毎日逃げ回って、どうすれば顔を見ずに済むかって、
そればっかり考えて」
 英幸の眼を見るのは怖かった。が、言わなければならないのは今だ。
 もう、終わりにしなければならない。
「敏ちゃんと付き合ってるのは本当だよ。親にも英ちゃんにも言わないって、二人で決めたんだもの」
 実際の行動はともかくとして、第三者の見えるところでの二人は友人付き合いに終始していた。
英幸が何を言って脅しても、絵理は一度も関係を認めなかった。
「認めるんだ?」
「けど、もし別れたとしても絶対に英ちゃんを選んだりしない。何をどうされても、
あたしが英ちゃんを選ぶことは絶対にない」
「どうして?」
「・・・英ちゃん、前に言ってたね。自分と敏ちゃんの何が違うのかって。
敏ちゃんは、あたしが嫌がることは一度もしなかった。
無理やり体を開いたり、脅したり、そんなことは一度もなかった」
「絵理姉」
 絵理の瞳からぼろぼろと涙がこぼれた。 
「英ちゃんは、あたしがどんなに嫌だって言っても、聞いてくれなかった。
気持ちよかったことなんて一度もなかった。ずっとずっと、早く終わればいいって、そればっかり考えてた」 
 思いだしそうになるたび、絵理の体は震えた。二度と次がありませんように、と祈りながら、
ますます慎重な行動を取らざるを得なくなった。英幸の行為は、絵理にとって単なる動物の交尾の強制でしかなかった。
 動物は雌にも選択権があることを考えれば、絵理の意志も選択もあったものでない行為はそれ以下だ。
611 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/29(日) 00:07:08.93 ID:XHaPwW+1
「何度も言うけど、敏ちゃんはあたしの嫌がることは一度もしなかった。指を無理やり掴んだこともなかったし、
手首を縛ったり、壁に押し付けたりもしなかった。
それだけじゃない。ピアノを弾く指だからって、痛めたり、
弾けなくなるような事態につながりかねないことは一切しないって、
ずっと気を遣ってくれてた。付き合うずっと前、小学校の頃からだよ」
 その言葉に、英幸は言葉を失った。指はピアニストの命と、知らないわけがない。
その指に、自分は何をしてきた?嫌だと、痛いと、放せと訴える彼女の言葉を無視して、
縛りあげて、押さえつけて、
「絵理姉、の、指」 
―そして、強いてきた。
「俺は、なんてことを」
「敏ちゃんは、ピアノのことは何もわからなかった。曲の聞きわけも出来なかったし、音感もなかった。
でも、ピアニストにとって一番大切なことは知ってた。
 英ちゃんは、ピアノのことはたくさん知ってたけど、曲も知ってたけど、
でも、一番大切なことは分かってなかった」
 絵理はしゃくり上げた。英幸の手から逃れるためには、敏幸の手も離さなければならない。
敏幸と英幸は兄と弟だ。敏幸一人の手を取った上で英幸から逃れることは今の絵理には不可能だった。
「敏ちゃんとは別れなきゃいけないのかもしれない。でも、嫌いになったからでも
英ちゃんを選ぶからでもない。敏ちゃんと英ちゃんが兄弟だから、切っても切れないから、
英ちゃんから逃れたければ敏ちゃんごと切るしかなかった。どれだけ好きでも、一緒にいたくても、
敏ちゃんと一緒にいると後ろに英ちゃんがいる。英ちゃんを思い出して、
敏ちゃんを受け入れられなくなる」
 敏幸に抱かれながら、英幸の影に怯える。そんな関係は、いずれ破たんする。事が露見して破たんするより、
今のうちならまだ敏幸の受ける衝撃は少なくて済む。それが絵理の出した結論だった。 
「敏ちゃんとずっと一緒にいたかった」
 ずっと隣で笑っていたかった。結婚して、子供を産んで、育てて、老いていきたかった。
 触れようとしてきた手を、絵理は払いのけた。一年前まで信じて疑わなかった未来を、
そしておそらく敏幸はまだ信じて疑っていない未来を、英幸は兄弟という切っても切れない縁を印籠にして、
土足で踏み躙って壊したのだ。
「敏ちゃんが好きだった。本当に、本当に」
 山の端に、日が落ちる。
「絵理姉、俺は」
 先ほどまでの狂気はもう英幸にはなかったが、言葉は絵理には届かなかった。過去は消せない。
絵理は敏幸に英幸を重ね合わせる苦しみにずっと苛まれ続ける。その原因を作った英幸が、たまらなく憎かった。
「最近、夢を見るの。逃げても逃げても、英ちゃんの影が追ってくる。怖くて誰かって叫ぼうとしても、
口を塞がれて声が出ない。 この町のどこにいても、安心できない。英ちゃんがいつ脅してくるかと思うと、
眠ることも一人で出掛けることも出来ない」
 絵理は顔を上げた。死刑宣告のようだと英幸は思った。
 自業自得。まさに今の自分がそうだと英幸は理解した。絵理を欲するあまり、絵理の気持ちを無視し、
行動と言葉で彼女を追い込んで苦しめた。その結果が、跳ね返ってきたのだ。
「絶対に許さない。英ちゃんがいる限りここには帰らない。―絶対に帰らない」
612 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/29(日) 00:13:14.53 ID:4MyiAGd6
「間もなくN駅、N駅に到着いたします」
 新幹線のアナウンスが懐かしい駅名を告げ、絵理は荷物をまとめた。
 悪夢は上京してからも絵理を苛んだ。拘束されて体をいいようにされた記憶が、
追いかける夢が、一時は不眠症寸前まで絵理を追い詰めた。睡眠薬を手放せなかった時期さえある。
 やむにやまれぬ帰省で一度だけ英幸の顔を見たが、体が許さなかった。吐き気と不快感が、
故郷に帰ったことを後悔させた。
 英幸本人は決して二の鉄を踏むまいと理性では分かっていたが、少しでも近くにいる、
その可能性さえ絵理にとっては拷問だった。
 敏幸を含め、安全圏全てを奪った英幸に、何度殺意を覚えたか分からない。おそらく実行していたら
英幸は抵抗しなかっただろうが、しなかったのは自分のキャリアに傷が付くのと
親の高額な学費の負担が無駄になるのを避けたかったからだ。英幸の人生を考えてのことではなかった。
 大学に入ってすぐに敏幸と別れた。念願の早稲田大学に合格し、意気揚々と上京して
携帯電話を手にした彼への二通目のメールで、他に好きな人ができたからと断腸の思いで送ったのを憶えている。
 その後、敏幸とは成人式のための帰省で一度顔を会わせたきりだ。約束通り、何もなかったかのように振る舞った。
―英ちゃんの死を悲しみに帰るんじゃない。英ちゃんと今生会わなくて済むことを確認して安心する
ために帰るんだわ。
 死んで、やっと拒否しなくて済む。もういないと納得することでやっと安心して眠れる。
故郷に帰ることを躊躇わなくて済む。もう悪夢を見なくていい。
目的はそれだけだった。 
 ローカル線の四十分を耐え、駅前でタクシーを拾って実家に戻る。隣家はひっそりと静まり返っていた。
明日と明後日の法事の間中、近隣の女たちは息つく暇もないほどに働かされる。
親族だけでひっそりと行うか全て葬儀会社に任せるという佐藤先生の常識はここでは通用しない。
「ただいま」
「お帰りなさい、絵理」
 母の声が聞こえる。
「はい、東京土産」
 東京駅で買った銘菓を手渡す。
「お土産って言ったって」
 ちらりと母は隣家を見た。主目的はそちらだと言いたいのだろう。知ったことじゃないわ、
と絵理は内心毒づいた。
「そうそう、お隣の敏ちゃんがね、絵理が戻ったら寄って欲しいって言ってたの。
いつでも構わないから、必ずって」
 どきりとした。一方的に別れたきり、一度も連絡を取っていない。
「分かった」
613 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/29(日) 00:18:30.34 ID:4MyiAGd6
 時刻は9時を少し過ぎようとする頃だった。用意していた喪服に着替え、隣家を訪ねる。
チャイムを押すと、ややあって、見慣れた、けれど少し小さくなった影が現れた。兄弟の母親だった。
「あらあら、絵理ちゃん、きれいになって」
「お悔やみ申し上げます」
「上がって行ってくれる?」
「はい」

 変わり果てたというには大げさだが、痩せ衰えた男の死に顔だった。死に化粧と綿でも、頬のこけ方は隠しきれない。
髪だけが綺麗なのは、おそらくかつらだろう。絵理は大学時代ホスピスでの
慰安コンサートに参加していたことがあるから、一目で判別がついた。
「去年の春、悪性の腫瘍が見つかって。放射線治療も抗がん剤もやれるだけやったんだけど、
若いから進行が早くて・・・」
「まだ若いのに」
 言葉とは裏腹に、絵理の心は悲しくなるほど冷静だった。幼馴染でいた時間のほうがずっと長く、
思い出も沢山あるのに、憎しみが全てを押し流してしまったのかもしれなかった。
 頬に触れると、ひやりと冷たかった。ああそうか、もう血は流れていないんだと、ようやく感じることができた。
―ねえ、英ちゃん。いっぱい遊んで、いっぱいピアノも弾いたのにね。
最後まで、どうしても許せなかった。

 二度と目を覚まさないことに安堵している自分と、精いっぱい悲しもうとしている自分がいる。
後ろの襖が開いた。背の高い男が静かに入ってくる。絵理は頭を下げようと向きなおり、そして言葉を失った。
「絵理、か?」
「・・・敏ちゃん」
 外は雨が降り始めていた。

雨だれ<5> 終わり

もう一話だけ続きます。

>>607 指摘thx 脳内で修正してもらえるとありがたい
614名無しさん@ピンキー:2011/05/29(日) 10:04:33.42 ID:78EL0fZY

英ちゃんやけにあっさりと身を引いたな…
なんか死んで嬉しいとか言ってたから
もっと酷いことされてたかと思ってたw
ヒロインの気の強さパネェので全く可哀相に見えないww
振り回された兄弟が可哀相過ぎる……
次回兄が何を話すのか気になるな
でも悲恋だしもう彼氏いるから復縁はないんだよね

多田さん家一帯の美少女は悲恋を強いられる宿命なのかw
615名無しさん@ピンキー:2011/05/29(日) 10:28:22.84 ID:+C4Fypub

英ちゃんに訴えるヒロインの叫びが痛々しくて切ない…
敏ちゃんは指を大事にしてくれた辺りが特に悲しい
幸せになって欲しいけどバッド確定だったか

>>608
置いていかれた慰めるバージョンだと同情が徐々に…ぽいけど
テーセウスに命令した場合はアリアドネを気に入っての略奪だろうね
里中満智子の漫画版だと一目惚れで、嘆き悲しむアリアドネを言いくるめていたw
616名無しさん@ピンキー:2011/05/29(日) 11:02:38.11 ID:61/XJSFN
投下乙!
ついにあと一話で終わりか。
兄視点から見ると大学合格地元離れて
人目気にせずにラブラブできると意気揚々だったろうに
携帯買って二通目のメールで別れ話なんて…切ないな。
そして同窓会であっても何もなかったふりで
久しぶりにじっくりと話す兄との会話がすごく気になる。

>>615
d里中満智子版見たくなったw
そういえば里中満智子といえば「海のオーロラ」の
いつも当て馬になる男はこのスレ向きだと常々思ってたw
617名無しさん@ピンキー:2011/05/29(日) 11:26:46.37 ID:bGTsU218
ふむふむ
618名無しさん@ピンキー:2011/05/29(日) 13:01:52.28 ID:OADwhOCi
>>613
乙です
こういう気の強い女の子大好きなんで最終話も楽しみだ

>「海のオーロラ」
昔あの話のトトメスには是非「愛するが故に〜」してほしいと思ったものだが
ヒロインは絶対心変わりしないだろうな
何回生まれ変わっても想い続けるすごい執念だからなww
619 ◆hYUCeP81shTk :2011/05/29(日) 23:34:48.48 ID:61/XJSFN
海のオーロラはエジプト時代もよかったけど
ナチス時代の当て馬もよかったw

ある塔の断片書き上げたので投下します。
悲恋・ヤンデレ・暴力やグロ表現注意。
勢いで書いたので、後半意味不明な所があったらすいません。
これでラストです。
620ある塔の断片 ◆hYUCeP81shTk :2011/05/29(日) 23:36:05.17 ID:61/XJSFN

「また、来ちゃった、不思議よね」
「何が?」
 というか、なぜ初対面の男とこんな昔話といえど際どい話しをしているのか。
「とにかく、続きを聞きたいわ!」
 恥ずかしさを打ち消すように、女は先を急かす。
 青年は女の態度を少し気にしていたようだったが、女の望む通りに続きを話し始めた。




 領民たちに歓迎され夜通しの宴が終わった後、夫婦の寝室に彼女と"夫"はいた。
 幼子は隣の部屋で夜泣きもせず、すやすやと眠っている。
 彼女は領民たちを不安にさせないためにも、二人きりになるまで貝のように閉じていた口をやっと開くと言った「どういう事……なんでしょう、か」と。

 ――彼は夫ではなく、王子、いや陛下だった。

 そ知らぬ顔で、夫に成り済ます陛下に彼女は真意がはかりかねた。
 二人はよく似ていた。あまり夫と顔を合わせる事のない領民ならともかく、いつも顔を合わせる城内の使用人さえも騙せるほど。
 少しの違和感は、命を懸けた戦場での経験がそうさせるのだと納得していた。
 もしや、夫との大がかりな冗談なのだろうかと。
 しかし夫の仮面が剥がれ本来の表情に戻った陛下は、残酷な表情を見せる。
 ――もう少し騙されていればよかったものを賢過ぎるのも考えものだな?先生。
 その瞳には昔宿っていた、愛は消え。
 紛れもなく憎悪と狂気しか宿っていなかった。


 王子から王……陛下と呼ばれるようになった男は。
 過去の事を悔やみ、いくら賢王と讃えられようともまったく心は晴れなかった。
 一番褒めてほしい人はもういない。
 過去の過ちで彼女を失ったことを悔い、そして衝動から、遠ざけてしまった従兄弟にあやまらなければと後悔していた。

 従兄は失意の為、中央の職から辞した。
 気を利かせた今は亡き父王が、その失意を埋めるために無理矢理婚姻させたと。
 小さい頃からことあるごとに比べられた年上の従兄。しかも姿かたちが双子のように似ているためにそれは顕著だった。
 さすがに、自分は王子だったからあからさまにはないが、子供心にもそういう空気は伝わってくる。
 だからこそ、我がままになり、癇癪を起していた。
 そんな従兄の妻である彼女を……子を身籠っている身で凌辱し、死に追いやった。
 彼女が自分を受け入れてくれたのは愛ではなく、そして自分の為に死んだのも立派な王になってくれという献身から。
 初めは嫉妬の為に、従兄を避け、城から追いやったが。
 時が経つにつれて後悔の念が沸き起こる。
 誰にも言えない、感情。
 一国の王が謝罪するなどと、簡単にしてはいけない行為。
 でも謝りたくて、謝りたくて――悶々と日々を過ごすうちに、お忍びで従兄の領地へ行くことを考えたが、それはとても難しいことで、実現はしないように思われた。
621ある塔の断片 ◆hYUCeP81shTk :2011/05/29(日) 23:37:03.46 ID:61/XJSFN

 しかし転機は訪れる。国内を湯治を兼ねた視察旅行へという話が出た時。
 馬を飛ばせば二、三日でつくかつかないかの距離にある領地を選択した。
 そしてそこで、仮病を使い、真っ青になる領主にすべてを託し、お忍びで従兄弟の領地へと向かう。
 彼にどういう顔をして会えばいいのか、向かう馬上で、悩みに悩んだが。
 ここで足を止めてしまうと青年に二度と謝れないと思い、王は馬を走らせた。
 そして――従兄の領地に着き、見たものは。

 髪を染めているが、子供を抱いて幸せそうに微笑んでいる。
 死んだはずの、彼女。

 愛は貰えなかったが、命という献身をもらったと思った、彼女だった。




 王は頭が真っ白になって、その場を馬を走らせ去る。
 帰路では裏切られた悲しみを突き抜け、怒りが沸々と沸き上がり、その心のままに馬に容赦無く鞭を打ち立てた。
 心労で倒れそうになるほど心配した領主の元に帰った時には、馬は乗り潰されている程。

 ――二人で私を嘲笑っていた訳か。
 しおらしく殉じたフリや、中央から隠遁するふりをして苦しむ私の影で二人は幸せに……。
 そう気がついた時。表面上賢王としての顔を保ったまま。
 奥ではどろどろとしたモノが流れはじめる。
 そして、過去に良心の為に慟哭した分、王のそれは――壊れた。

 ここ数年の評価のおかげで、前王の側近に、当時の事を聞くのは容易だった。
 そして、詳細を聴き終わると、老害め、と。用済みとばかり始末する。
 当時王を陥れた、彼女と引き離した臣下達を、それぞれ様々な理由を探しだし、無いのなら捏造し、独り残らず処理した。
 勿論、賢き王の顔は崩すことはないが、密やかに狂った感情は留まる事は知らず。
 誰も真の彼が狂王だとは、気がつかない。

 一番報復するのが大変なのは、我が親愛なる従兄だ。
 少しでもこちらが何か動けば、たちまち露見されそうで。
 おあつらえ向きに、国境で小競り合いが始まり、それが元で戦が始まる。
 それならば従兄を戦で激戦地へ送ることは、容易だった。
 しかし、能力の高い彼は案の上生き残る。
 ――大人しく死んでいれば、楽に死ねたのに。
 本来なら戦の功労者には、恩賞が出るのが常だったが、王は死を与えた、残酷な死を。
 妻と子には手を出さないでくれと、必死になる従兄に、笑って自分が面倒を見ると誓う。
 その"面倒"の片鱗を仄めかすと、絶望に目を見開き抵抗する彼に満足し首を刎ねた。

 従兄の死を直接報せにいくという名目で、彼女の下に行くことにした。
 当時の真相を知る者はもういないので、誰も止めるものはいない。
 最後の最後にとっておいた彼女には、どんな絶望を味あわせてやろうかと、王は心が浮き立った。
 そして、彼女の為に最高の舞台を演出しようと企んだ。


622ある塔の断片 ◆hYUCeP81shTk :2011/05/29(日) 23:38:37.18 ID:61/XJSFN

 折角の演出だったが、久しぶりに会った彼女は一目で、馬上の人物が夫ではないことが分かったようだ。
 驚きと苦悩と、不安な顔が、王の心を恋をした少年のように浮き立たせる。
 彼女を目の前にすると、愛してるのか、憎悪なのか。
 それとも愛憎という言葉通りに、同時にその感情を人の心は持てるものなのか。
 騙した彼女を酷く嬲り殺しにしたいという感情と、愛していた彼女を抱きたいという感情が混ざる。
 嫌がる彼女を張り倒し、髪を引きずり、ベッドへと投げつけるように倒す。
 従兄や子の身を脅かしたくなければと、囁き、奉仕を命じる。
 拙い愛撫に、泣く彼女に、躊躇う彼女に、そんなに嫌なのかと、殴りつける。
 ――彼女に暴力をふるうのは驚くほど、簡単で爽快だった。
 彼女が泣けばなくほど、傷ついた顔をするほど、胸が満ち足りる。
 そして、犯しながら今までの恨み辛みを、耳元でささやく。
 傷ついた分だけ、彼女にも同じように傷ついてほしい。
 彼女の心が自分にない事が我慢ならない。

 散々なぶりものにした後。
 子供と夫だけは助けてください、私が悪いんです……と。
 従兄と同じことを言い出す彼女に、苛ついて、すでに従兄は始末したと言った。
 驚きに見開かれる目は、絶望に染まり、充ち足りる。
 もう彼女を救い出してくれる人間はいない。
 でも安心は出来ない。二度が起らないように、足の健を切って、しまおうか。
 髪の毛を毟れるほどの強さでつかみ、背ける顔をこちらに向ける。
 虚ろな瞳……もう私以外見なくてもいいだろうと、その瞳に最後に映るものは私でいいと。
 目を潰してやろうかと、これからの彼女の未来をまざまざと並べ立てる。
 しかし、どんなに恐ろしい事を並び立てても罪を犯した者がその報いを享受するかのように、その反応は淡白だった。
 ならば、大切な娘の処遇を話そう。 
 娘もお前と同じく、凌辱して、母子とも王専属の娼婦として飼ってやろうと言う。
 飽きたら城の兵士に払い下げるのもいいな、と。
 その言葉を言うか言い終わらないうちに、散々ひどい事を言っても従順だった彼女が。
 何故か思いの他激しく抵抗する。
 そしてそれが何の意味もないと悟ると馬鹿な事を嘯いた。
 貴方の子なのに――だなんて。また、何という嘘なのか。
 自分が彼女と関係していた時は、最初から最後まで身ごもっていたのだからそれはありえない。
 賢い彼女の言葉とは思えなかった。
 子は確かに自分に似ていたが、従兄と自分はそっくりなので、どちらの子ともいえない。
 嘘をつくなら、もっともらしい嘘をつけばいいのに。
 それほど従兄との子供が大事だという事か。
 こんな自分を騙そうとする舌なら切り取ってやろう、と言いながら彼女の首を絞める。
 それとも喉を潰した方が、いいだろうか。
 ――彼女の顔を見、彼女の口から紡がれる言葉だと、どんな馬鹿げたことも信じてしまいそうで。
 あれほど憎しみしか感じていなかったのに、顔を見たら犯してしまっているのがその証拠。
 殺すことが惜しくなる。
 もっともっと、長く苦しませたく、自分の事でいっぱいになってほしくなる。
 あの時、自分を捨てたことを悔やんで欲しい。罪悪感で押しつぶされろ。

 憎くて憎くて憎くて――同じほど愛しい君。
 いや愛しいからこそ、憎いのか。

 そして、狂った王はまた彼女を塔に閉じこめた。
 もう彼女は逃げ出せず、それは終の棲家になった。



623ある塔の断片 ◆hYUCeP81shTk :2011/05/29(日) 23:44:10.87 ID:61/XJSFN

「と、いう訳さ」
「……お、終わり?」
「ああ、もう救いなんてないね。実際に彼女は死ぬまでここで飼われていたんだよ」
「…………」
 閉じ込められて住んでいた――ではなく、飼われる。という言葉でゾッとする。
「どうしたの?ジュリア」
「いや、でも。こういう言い伝えって。詳細って本人しかわからないことじゃない?途中で追加された創作……とか?」
「いいや、嘘じゃないよ」
「お、脅さないでよ!」
「本当、この話は曾祖父から聞いたんだ」
「そ、曾祖父?」
「そう、曾祖父。まぁ聞いたときは正直、死に掛けの老人の戯言だと思っていたけど……
 あとは彼女の日記が残っていたんだよ。どうやら曾祖父は、彼女に見つめられるのと抱きしめられるのが好きで、彼女の目と両腕はかろうじて無事だったらしい」
「貴方のご先祖の話……じゃあ、この塔は」
「どうやら僕は、曾祖父にそっくりらしい」

 男の笑顔が、変わる。
 顔は笑っているが、瞳は硬直したように笑っていない。
 あれだけ魅力的だった青年がまるで――女は直感で、後ずさった。
 本能的に駆け出して、塔の螺旋階段を駆け下りる。でも足がもつれて、思うように動かない。
 なんで!? 動いてよ!
 青年は女に「なぜ逃げるんだい」と語りかけながらゆっくりと降りてくる足音がする。
 それが恐怖を煽り、足がもつれて、反射的に何かに捕まった。
 重厚なビロードの布が落ちる。そこには驚くべき絵がかかっていた。
 年代物の油絵の中で微笑んでいるのは―――女とそっくりな、ドレスを着た銀髪の女性。
 女は直感で気づく。これは「彼女」だ。

「従兄の婚約者だと紹介された君を初めて見た時驚いたよ」

 絵に気を取られていて背後に青年が迫っていたのに気が付かなかった。
 そうだ、私は……慈善事業のガラパーティでのバイトで出会った資産家の男性と恋に落ち。
 その婚約者と共にこの城を別荘にするために下見に来て。
 そして、この城の持ち主である、婚約者の従兄という殿下に会って――楽しく会話をして。
 ――記憶が。
「あ、私……?」
「どうやら思い出してきたようだね……薬の副作用が強かったみたいで最近正気を失っていたようだったけど」
「な、に?」
「段々と正気が戻る感覚が長くなってくれて嬉しいけれど、急に走っちゃ危ないな……寝たきりだったのに」
 そうだ、色んな事に鈍感だった。
 自分はいつ、どうやってこの塔に来ていたのか。
 そして、青年に自分の名前を教えてもいないのに……青年が知っていたのは。
 女はこの塔に閉じ込められていたのだ。彼女とは違って薬を使われて。
 段々と記憶の霧が晴れるたびに、心がざわついていく。
「あ、あの人はどうしたの?」
「ああ、親愛なる僕の従兄かい? 君と僕を出会わせてくれただけで、もう用はないよ」
「彼をどうしたの!!」
「いいじゃないか、君はもうここから出られないんだから」
 そう言いながら青年は女の顔を撫でる。
「昔から、この塔に来て隠されている彼女の肖像に見とれていたんだ。
 どうやら異変を感じ取った乳母が、君の祖母を連れて逃げてくれたみたいだと日記に書いてたから探していた。
 曾祖父似と書かれていたから期待はしていなかったけれど――」

 ――こんなにそっくりだなんて運命だと思わないかな?

 その笑顔に、女は凍りつき。
 そして自分の終の棲家もここになるのかと、恐怖した。


終わり。
624名無しさん@ピンキー:2011/05/30(月) 00:06:01.91 ID:4MyiAGd6
なんというヤンデレ乙
最後のそこで話が繋がるとは
625名無しさん@ピンキー:2011/05/30(月) 00:34:53.81 ID:PL/JOFJE
乙です
ヤンデレ王最恐すぎる
従兄弟は結局童貞のまま亡くなるし生まれ変わってもまた略奪されるしでホンマ踏んだり蹴ったりやな
626名無しさん@ピンキー:2011/05/30(月) 09:44:39.74 ID:NfRKfhsq
GJ
考えると同じ曾祖父を持つ血縁同士か
なかなかに濃い血の因習だな
627名無しさん@ピンキー:2011/05/30(月) 19:00:23.81 ID:ETpMNxJF
まぁ曾祖父ぐらいならもう誰?って言うぐらいの親戚そうだがw
しかも異曾祖母だしw(ややこしいな)

そういえば近親婚を繰り返したために近親にしか恋できないつー作品を昔よく読んでて
男は近親にしかたたないから女が生まれると
他家の男達に強制的に子供が出来るまでまわされて…
でも中には女が好きでたまらなくて自分の子を産ませたいと権限を使い半年だけ占有
しかし女は近親にしか感じないし濡れず、しかも義弟を愛してる
っていう愛するが故に無理矢理を考えてたなw
628名無しさん@ピンキー:2011/05/30(月) 19:30:48.57 ID:L2rtyB8n
>>627
それなんてオバフロ的なwww

629 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/31(火) 00:20:48.04 ID:EVkAAXhi
投下します

雨だれ<6> これで終わり。エピローグです

「夜分遅くに悪いな。東京から今日戻ってきたんだろ?」
「明日になれば女性はみんなお葬式の手伝いにされちゃうから、今日くらいしか話す時間がないと思って」
 連れてこられたのは懐かしい敏幸の自室だった。昔のような雑然さはもうない。
敏幸は早稲田の4年生のときに司法試験に合格し、修習を終えて今は東京でイソ弁だという。
 敏ちゃんは昔の夢を叶えたんだ、と絵理は胸を撫で下ろした。
「話ってのは他でもない、英のことなんだ」
 絵理の胸が跳ねた。あのことだと、すぐに感づいた。
「あいつ、自分がもう助からないって知ってたんだろうな。何日か前にどうしても俺に会いたいって、
連絡してきたんだ」
 敏幸は下を向いていた。
「あいつが俺とお前の関係を知って、それを盾に―お前に、とんでもないことを、した、と」
―俺、知ってるんだ。絵理姉が兄貴と別れた本当の理由。
 弟の最期の言葉は、いまだに敏幸を苛む。弟が自分たちの関係を知っていたことそのものも信じられなかったが、
そのあとに続いた言葉は、もっと信じがたいものだった。
 俺、兄貴と絵理姉の関係、知ってた。知ってたけど、俺も絵理姉のことが好きだった。
だから、悔しくて、認めたくなくて、どうしても絵理姉を自分のものにしたくて―
 絵理を学校の練習室で手籠めにしたと、弟は言ったのだ。しかも、絵理を脅して複数回事に及んだと。
「正直、信じられなかった。けど、思い出してみればあの頃のお前は確かに少し変だった。
休みなく予定を詰め込んだり、いつも誰かと一緒に出かけたり俺といたりして、絶対に一人になりたがらなかった。
別れてからも、余程の理由がない限り戻ってこなかったし、連絡もなかった」
―もちろん、絵理姉は俺のものにはならなかった。けど、兄貴と一緒にいると俺を思い出す。それが辛いからって、
兄貴とは別れたくないけど、俺がいる限りここには戻らないって。
 何度も本当のことを言いたかったけど、怖くて言えなかった。絵理姉がずっと避けてるのは俺で、兄貴じゃない。
俺が、あんなことをしたから。兄貴の影に俺を見るのが嫌だから。
「あのとき、すぐにでも気付いてやれればよかったのにな。俺は受験受験で、
自分のことばかりで、何も気づいてやれなくて」
「敏ちゃんのせいじゃないよ」
 全ては敏幸の手の届かない範囲で起こったことだ。敏幸との関係を後悔したことなど、絵理にはない。
630 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/31(火) 00:24:54.92 ID:EVkAAXhi
「最後にあいつに、許さないって言ったんだってな」
「・・・うん」
 あの時の本心は、今も変わらない。体を奪い、精神を擦り切れさせ、
恋人との仲を破滅させた男だ。絵理にとっては敵でしかない。
「許してやれ、なんて言えないさ。あいつはそれだけのことをした。正直俺が英と他人だったら
どんな手段を使ってでも破滅させてやってたと思うし、今だって英が死んだから悲しめなんて、
お前にだけは絶対に言えない」
 被害者なのか、加害者の家族なのか、俺はどの立場なんだと敏幸は自嘲した。憎みきることも出来ず、
かばうことも出来ない。許せずにいる気持ちと兄という親愛が内側で闘っている。
「英の容態が急変したのは、俺の見舞いの翌日だった。伝えない限り、死んでも死にきれなかったんだろうな。
だから、兄として思うんだよ。あいつはずっと苦しんでたんじゃないかって」
「英ちゃんが?」
「お前がここに来るまで、俺なりにあいつのことを思い返してたんだ。俺が大学に入って帰省するとき、
あいつはお前のことを一切話さなくなった。何か言おうとしていたこともあったけど、
いつも途中で飲み込んで、言おうとしなかった。彼女の一人でも作ったらどうだって話をしても、
自分にはそんな資格はないって言ってた。
 一度、自分で集めたショパンのCDを大量に捨ててたこともあったらしいんだ。お袋が、
自分が聴くからって引き取ったらしいんだけど、それでも死ぬまで一切聴こうとしなかったらしい。
病室に持って行っても、手を着けなかったそうだ」
 今ならその理由が分かる。ショパンは英幸にとって自責の曲にしかならなかったのだと。
絵理とのつながりを持ちたくて買い集め、その絵理を自分の身勝手な行動で失った。
「あいつ、俺の帰り際に言ってたよ。俺に、自分の代わりに謝ってほしいってな」
―絵理姉が来るとしたら、俺の葬式だろうね。多分俺は、絵理姉には二度と会えない。
それだけの事をしたから。だから、兄貴に頼みがあるんだ。
 自分勝手なのは分かってる。兄貴に頼めるようなことじゃないのも分かってる。
でも、他の誰にもこんなことは頼めない。
 絵理姉に伝えてほしいんだ。ずっとずっと、謝りたかったって。許さなくていい、
許してほしいなんて思っていない。伝えてくれるだけでいいんだ。
結局それが、兄弟の最後の会話となった。
「馬鹿だよな、あいつ。後悔して苦しむような原因を自分で作って、
泥沼にはまって、身動きが取れなくなって」
 敏幸は口の端を持ち上げてみせたが、歪んだような笑みだった。
「バカだよ、英ちゃん、本当に、なんであんなこと」
 昔のままの三人でいられれば、ショパンなんかいつだって弾いていた。
昔思い描いていた未来の中には英幸の居場所も確かにあったのに、彼が選んだのは
誰もが傷ついて誰も幸せにならないままバラバラになる、
取り返しのつかない道だった。
 大切な幼馴染だからこそ許せず、憎み、苦しんだ。後悔しても、
それを伝えるだけの手段と時間は永遠に彼から失われてしまった。もう、全ては取り戻せない。
 泣くつもりはなかったのに、涙は止まらなかった。抱き寄せた敏幸も、涙を押さえていなかった。

631 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/31(火) 00:28:13.02 ID:EVkAAXhi
 体を離すと、お互いに泣きはらした目をしていた。階下から、母の声が聞こえる。
 敏幸は絵理の左薬指を見た。指輪ははまっていないが、そこだけが他の指と比べてわずかに細い。
「今、付き合ってる奴とかいるのか?」
「うん。音大の頃に慰安コンサートで行ってた病院の看護師で、今一緒に暮らしてる。
二人のほうが家賃も安いし」
 とはいえ、体を許したのは最近だった。絵理が処女でないことは知っていたが、
英幸の件は話していない。勘の鋭い男だから、絵理の濁した「いろいろ」も気付いているのだろう。
戻ったら全部打ち明けようと絵理は決めていた。
「お前は、ちゃんと前に進んでるんだな」
「たまたま、そういう人を好きになっただけよ」
 絵理は改めて敏幸を見た。少しだけ、彼と似ていると絵理は思った。

 最後にもう一度だけ、英幸の顔に触れた。その冷たさに、また涙が出た。

 家に帰る頃には、雨はますます激しくなっていた。絵理は居間の片隅に置かれたピアノの蓋をあけた。
使う人間がいなくなったせいか音は多少曇っていたが、聞ける程度ではある。
 鍵盤の布を外し、ピアノの前に座った。楽譜もないのに、指先は正確に動き始めた。
「あら、何の曲?」
 風呂から上がった母が声をかけてくる。
「ショパンの、雨だれ」
「ふうん」 
 母は窓の外を見た。
「雨だれっていうより、嵐だけどねえ」

―絵理姉、ショパン弾いて。
―いいよ。何弾こうか。
 英幸の声が、記憶の底から浮かび上がってきた。
 
雨だれ、 終わり
おつきあい、ありがとうございました。

>>608
中間部は特に鬱になります。かといって明るく弾かれるのも困りますが。

>>614
女が男を押し倒すラブコメも考えてます・・が、やはり女性のほうがどうしても逞しくなるorz
632名無しさん@ピンキー:2011/05/31(火) 01:16:41.90 ID:pthv7KXj
グッジョブ!!
切なかった……切なくて欝。
ていうかこれ一番の被害者(悲劇のヒロイン)敏幸じゃね?って思った…
まだまだ未練あるのにヒロインだけは前に進んでて
しかも彼が敏幸に似てるじゃなくて
敏幸が彼に似てるって描写でもう完全に二人の事は
過去になってるんだなとかわいそう過ぎた……

次作は明るいの予定らしいからどんなのか楽しみにしてる!
633名無しさん@ピンキー:2011/05/31(火) 02:33:34.27 ID:ZrhwsltX
GJ
こういう雰囲気のもいいね
敏ちゃんはやり切れなさMaxだな…
しかし、女は強し、だ。敏ちゃんにもいい人が見つかりますように
634名無しさん@ピンキー:2011/05/31(火) 18:16:40.20 ID:sJdCxf2L
少佐と少尉の話、続き楽しみにしてます
635 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/31(火) 23:40:13.57 ID:EVkAAXhi
>>632 最大の被害者は敏幸
その通りだと思います。抵抗や対策をし続けた絵理に対して介入すら出来なかったですしね・・

>>634
ナカーマ あの策士なところがまたいい。
636 ◆h1Zp3va3xs :2011/05/31(火) 23:42:03.79 ID:EVkAAXhi
では名無しに戻ります
連投失礼orz
637名無しさん@ピンキー:2011/06/01(水) 22:14:39.10 ID:rerUHTi8
ミレーユが気になる。もしかしてあれで完結?
638名無しさん@ピンキー:2011/06/02(木) 17:58:05.66 ID:zolDg0t3
えミレーユタンの秘密がまだまだわかってないし続くと思ってた…
他にも終わっていない連載陣の続き待ってます
639名無しさん@ピンキー:2011/06/02(木) 18:27:14.11 ID:ZpUlIRa9
職人も私生活があるし今は忍法帖システムもあるからな…
今でも魔王のほのぼのレイプの続きを待っています
640名無しさん@ピンキー:2011/06/03(金) 03:36:08.03 ID:1E72qBXX
>>635
今読んだ
敏幸ちゃんカワイソスw

未来のある終わりと言うか
冒頭からわかってたが
確かにこりゃやりきれんかもなあ
GJでした
641名無しさん@ピンキー:2011/06/03(金) 22:51:13.90 ID:nekGRcn4
そろそろ次スレ?
642名無しさん@ピンキー:2011/06/03(金) 22:54:15.45 ID:1E72qBXX
次スレだがレベル足りてる人居る?
最悪外部にスレ建て依頼しないと建たないぞ
忍法帖め……
643名無しさん@ピンキー:2011/06/04(土) 01:58:48.19 ID:cPfXmEra
四国ですが揺れました
644名無しさん@ピンキー:2011/06/04(土) 02:12:45.40 ID:cPfXmEra
誤爆しました
645 忍法帖【Lv=1,xxxP】 :2011/06/04(土) 23:58:05.19 ID:4NDlPhlT
誰かマジ次スレ頼む
646名無しさん@ピンキー:2011/06/05(日) 00:12:50.91 ID:l8+lg3Ne
挑戦してみる
647名無しさん@ピンキー:2011/06/05(日) 00:18:41.65 ID:l8+lg3Ne
ダメだレベルが足りない
648名無しさん@ピンキー:2011/06/05(日) 00:21:38.03 ID:6u4amFx4
じゃあ自分が挑戦してみようか?
649名無しさん@ピンキー:2011/06/05(日) 00:28:56.79 ID:4AP49nSg
同じく挑戦したがだめだった
650名無しさん@ピンキー:2011/06/05(日) 00:30:19.09 ID:6u4amFx4
すまんやっぱり自分もダメだったんでテンプレ置いておく



愛するが故にレイプor強姦or無理やりしてしまうシチュが好きな奴は集え!
二次でもオリジナルでもおk。
襲う側に深い愛情があればおkおk。
相思相愛なら尚更おkおkおk。
逆レイプもおkおkおkおk。

■前スレ
愛するが故に無理やり…… Part7
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1298291948/l50

■お約束
・エロパロ板は18禁です。大人の方だけ利用してください。
・原則sage進行。メール欄に半角、小文字で「sage」と記入。
・愛あるレイプに確定的な定義はありません。他人の考え方も尊重しましょう。
・他スレのSS紹介禁止。迷惑をかける可能性があります。
・相手をすると喜ぶので荒らし、煽りは徹底的にスルー。
・投下する方は事前の注意書きをお願いします(特に暴力等描写)。
 事前措置をとればトラブルを回避しやすいと思います。
・書きながらの投下は禁止。書き上げたものをコピペしてください。
・作品の最後には「終り」、「続く」などと宣言してください。
・気に入らない作品はスルーしましょう。好きなものにだけコメントをつければおk。
・感想の域を超えた批評、展開予想はご遠慮ください。
・リクエスト、続き希望は節度を持ち、行き過ぎたなれ合いは控えましょう。
・他人に注意をするときは、丁寧な言葉遣いを心がけましょう。

■過去スレ
 愛するが故に無理やり…… Part6
 ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1289151978/

 愛するが故に無理やり…… Part5
 ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1280147771/
 愛するが故に無理やり…… Part4
 ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1272428300/
 愛するが故に無理やり…… Part3
 ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1251197866/
 愛あるレイプ Part2
 ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1234146553/
 愛あるレイプ
 ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1197985819/

■保管庫
 2chエロパロ板SS保管庫
 ttp://sslibrary.arings2.com/
 ENTER→オリジナル、シチュエーション系の部屋→17号室
※保管されたくない方は投下時に一言添えてください。
651名無しさん@ピンキー:2011/06/05(日) 08:25:40.28 ID:dxrgNzsk
俺もレベル足りない
どうしよう外部にスレ建て依頼するか?
652 忍法帖【Lv=1,xxxP】 :2011/06/05(日) 12:11:30.99 ID:9Zbc6REm
レベル3以上でスレ立て出来るよな
653 忍法帖【Lv=2,xxxP】 :2011/06/05(日) 15:32:47.04 ID:az8ykDeb
てす
654名無しさん@ピンキー:2011/06/05(日) 23:28:10.39 ID:5pkwz4M8
いってくる
655名無しさん@ピンキー:2011/06/05(日) 23:29:43.77 ID:5pkwz4M8
すまん駄目だった
656名無しさん@ピンキー:2011/06/06(月) 01:11:17.95 ID:ntAwXfy+
レベルテスト
657名無しさん@ピンキー:2011/06/06(月) 17:34:44.38 ID:A9wegbY9
>>652
いや10以上だろ
しかも●持ちじゃないとホストで弾かれる事もあるし
658 忍法帖【Lv=6,xxxP】 :2011/06/07(火) 09:45:19.18 ID:Ag5QbO0N
なんつう迷惑なシステムなんだ
地味にレベル上げて●持ってとか
誰得なんだよ
659名無しさん@ピンキー:2011/06/07(火) 21:47:18.52 ID:4AoTcY9/
>>657
●持ちでもスレ立て出来ない糞システムに変更してるよ
おまけにLvで書き込み出来る文章量も決まってるらしい

職人さん達気をつけて
Lv低いと今まで投下出来た長文もアウトみたいだから
660名無しさん@ピンキー:2011/06/08(水) 01:27:32.35 ID:a5ZJXmiv
それより早く建てないとこのまま沈むぜ
今の俺ではスレ建て出来ない……
661名無しさん@ピンキー:2011/06/08(水) 04:46:49.79 ID:NtnXYK6u
たてますた

次スレ



愛するが故に無理やり…… Part8
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1307475399/
662 忍法帖【Lv=4,xxxP】 :2011/06/08(水) 07:38:52.87 ID:xbmmJ6m6
本当に乙

次スレでもいい愛故が読めますように
663名無しさん@ピンキー:2011/06/08(水) 15:32:43.79 ID:RbRsanWX
>>661 乙。ありがとう。
664名無しさん@ピンキー:2011/06/08(水) 20:55:22.29 ID:euEWvUCu
>>661乙です
義理の姉弟の弟が姉に密かに想いを寄せていて姉が婚約するか他県に引っ越すとかで
どうにも我慢できなくなった弟が無理やり姉を押し倒す…的なシチュが好きだ
姉が普段はメガネで貞子ヘアーな地味女で姉の素顔が可愛いのを知っているのは弟だけ
ある日地味な姉に惚れた男が姉と恋仲になり実家に挨拶に来て弟逆上
両親がいない時を見計らって姉を犯しちゃう血の繋がりないし「いいよね」って感じで中出し
姉は弟に襲われ中出しされたショックで婚約破棄…誰にも言えず頻繁に弟に犯される
という感じの妄想をよくするんだけど文章にできない
665名無しさん@ピンキー:2011/06/08(水) 21:14:40.55 ID:v4oYmbvr
似たような話が前にあったぞ
666名無しさん@ピンキー:2011/06/08(水) 21:28:54.78 ID:hwDx7+69
あの話は婚約相手がいいひとっぽくて泣けた
最後まで一方通行オチもアリだなーと思ったら最近そういうオチ多くて密かにニヤリ
667名無しさん@ピンキー:2011/06/08(水) 21:55:30.11 ID:IVnIKZlM
一方的な愛というか身勝手をぶつけられて闇に惑うのもいい
反撃していくのもいい

どっちも好きだ
668名無しさん@ピンキー:2011/06/09(木) 09:40:12.71 ID:zX1vARuk
可愛い女の子が性的にも精神的にも酷い目に会ってると萌えますねハァハァ
669名無しさん@ピンキー:2011/06/09(木) 10:38:50.17 ID:8HlU46YR
酷い事してる方も酷い目にあってると余計にいい。

というか、女の子だけが酷い目にあってればいいなら別に相手
モブでも成立するしな。
それだけじゃ物足りない人間の行き着く先がここら辺の嗜好。
670名無しさん@ピンキー:2011/06/09(木) 12:22:27.43 ID:KtLZGHJy
同意

酷いことされていても相手を憎みきれないとかで葛藤するとおいしい
それをこえて、なお許せない、許さないとなるのもいい

ここの愛憎表裏一体の嗜好は好物です
671名無しさん@ピンキー:2011/06/09(木) 16:25:28.45 ID:rNTp9VFe
世の中の強姦は屋外より屋内、見ず知らずより顔見知り同士のほうが多いんだそうだ
愛故に事に及び、愛故に関係を断ち切れず、愛故に苦しむ・・・胸熱な関係が実在するということですね(キリッ
672 忍法帖【Lv=5,xxxP】 :2011/06/09(木) 21:32:23.74 ID:znwi28L3
そりゃあ外じゃ発覚しやすいし
顔見知りじゃなきゃ警戒してまず近くに寄れなさそうだしな…

>>664の話も読んでみたいよマジで
そういえば最近は誤解であれ一方通行なの多いよね
視線しかり多田家一帯しかりw
673名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/14(火) 08:45:23.59 ID:5xCFDEf0
一方通行か
テンプレにあるように一時は一方通行無理やりでも相思相愛なエンドなら
尚更おKだけどそこまでもっていくのは難しいよな

多田家のヒロイン達の芯の強さは好みだ
結局強いのが女なのか、惚れてしまったほうが負けなのか
674 忍法帖【Lv=26,xxxPT】 :2011/06/14(火) 08:49:01.98 ID:yWLuedKN
しかし忍法帖はいつまで続くのか
長文が投下し辛くて参るぜ
これで嫌気がさす職人さんも出そうで
もったいない話だ
675名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/14(火) 12:00:05.29 ID:s9W4SP/i
前は6レスくらいで済んでたものが20スレくらいに分けないといけないのはなー。
投下も面倒だろうし、こんなのが続くようだとZIPで投下の方が良かったりして。
676名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/14(火) 15:40:49.33 ID:Jvr/GD2k
あと2K
埋め埋め埋め
梅梅梅梅
677名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/14(火) 19:14:06.84 ID:vUt50pZ+
新スレの奴ら何なの
こっち埋めろっていうのに新スレばかり延ばして……
埋める方が先だろ
落とすのがいいんだったら埋めろとか言われないだろ
注意しても駄目なところを正当化する狂盲がいるから
こっちにはマナー悪いから投下したくないって言われるんだろ

注意しないと埋めずにそっちに普通にレスしてるくせに
678名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/14(火) 19:18:04.00 ID:SdXdwd5P
自然に落ちてもいいと思うか
埋めてきっちりけじめをつけて新レスに行きたいかの違いだろう

自分は埋めるぜ
679名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/14(火) 19:59:28.39 ID:dS37JlxK
埋めはマナーでもなんでもないからね。
昔は埋める目的で書き込む所謂埋め書き込みは荒らし扱いだった。
680名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/14(火) 20:12:34.27 ID:k6ynFJvA
多田家一帯ってなんか湿度高そうなイメージがある
681名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/14(火) 20:16:13.81 ID:tNyy3mrJ
はいはい埋め埋め
682名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/14(火) 20:37:41.95 ID:KA7domY8
>>677
向こうで突っ込まれてからようやく工作の一つもできてない事に気づいて
こちらに書き込んだんですね、分かりますw
683名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/14(火) 21:32:24.97 ID:VzLdKROa
684名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/14(火) 21:45:07.09 ID:vUt50pZ+
>>682
いや前からスレ埋めてたよ
今日は別に話題なかったからレスしてなかったけど
埋め

あんたもずいぶんなつんでれさんだなw
685 忍法帖【Lv=5,xxxP】 :2011/06/14(火) 21:58:07.88 ID:hSi0y6Cu
愛無理の話は大概ツンデレさんだと思うんだ
686 忍法帖【Lv=1,xxxP】 :2011/06/14(火) 23:20:15.16 ID:f8+HuqEJ
687名無しさん@自治スレで設定変更議論中
爆乳美少女に惚れて愛しすぎて犯した
ちょ犯してー
はあ、二次元に行きたいよおー梅