男装少女萌え【11】

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359名無しさん@ピンキー:2013/05/06(月) 13:07:37.14 ID:wDsoQDIA
投下テスト
360名無しさん@ピンキー:2013/05/06(月) 13:55:54.73 ID:wDsoQDIA
耕太郎と唯の話の続きです。

>>357>>358
規制とかでレスが遅れました、すみません。
いろいろ補足せねばならない話の状態ですが
楽しんでいただければ幸いです。

***以下本文***

「じゃあ、唯君も進学という事でっと」
冬がそろそろやってくる時期。
私は職員室で三者面談という名の二者面談を受けている。
本来なら父が来るべきところだが
さして大した事をするわけではないので言ってもいない。
目の前で進学就職問診票に記入している
入学した時から担任の栄先生も慣れているので指摘もなかった。
「みんな進学だから卒業式はやっぱり学生服かしら」
「去年もそうでしたね」
豊松小学校、豊松中学校は制服がない為なのか
ほとんどが進学する事になる水木高校の制服を着て卒業式に出る。
「唯君は…そのまま?」
「式服に相応しい物を着る予定です」
栄先生の言わんとする事はわかる。
入学以来着物(和装)で通している私。
普段着ですら洋装をした事はない。
セーラー服を着て出ても支障は無いが…騒然とするだろうな。
「少し残念。見てみたかったなぁ、唯君の制服姿」
「御期待に沿えずすみません。替わりは耕太郎達ので」
「そうねぇ、耕太郎君はどんなの着るか楽しみねぇ。ブレザーかな?」
にこにこと票をまとめながら栄先生は気になる事を言った。
ブレザー?水高は詰襟の学生服とセーラー服のはず。
「先生」
「な〜に〜?」
「耕太郎がブレザーというのはどういう事ですか?」
「え?」
栄先生の笑顔が固まった。おかしい。
「耕太郎は水高じゃないんですか?」
「え…っと…」
「耕太郎は何処へ行くんですか?」
「そ、それは…」
手に持っていた票を後ろに隠そうとする先生。やはり何かある!
「耕太郎の行き先を教えてくれませんか?」
「えっとね、唯君、落ちついてね。目怖いよ?」
「落ちついてますよ。先生こそ何を焦ってらっしゃるのです?」
「ひぇー」
361名無しさん@ピンキー:2013/05/06(月) 13:58:29.32 ID:wDsoQDIA


「10年か…」
もうそろそろこの豊松村に来て10年になる。
小学校の時から通い慣れた薄暗いこの路を1人で歩いている。
いつもなら一緒にいる奴は三者面談で今日はいない。
だから少し感傷的になってるのかもしれない。
「言わなきゃな…」
「何をです?」
声がした方を見る。
街路灯の下からこっちに向ってくる着物姿。
「唯か、びっくりさせるなよ」
「それはこちらの台詞です」
いつもの微笑顔ではなく、怒っている顔だ。
どちらにせよ綺麗な顔立ちなのは変わらない。腹立たしい。
「何が?」
「栄先生に聞きました。高校に行かないと」
栄ちゃん、あれ程黙っててと言ったのに何でばらしちゃうかなぁ
「いや、高校は行くよ?」
「え?そうなんですか?」
きょっとんとした顔になってるぞ、唯。珍しいな。
「水高には行かないけど」
「それじゃあ何処へ行くんですか!!」
怖い怖い。
「俺、あっちに行くんだ」
「あっちって?」
「親のところ」
「どうして?!」
「春から爺さんが入院するだろ?」
唯が肯く。
爺さんは肺を患っていて暖かくなる春に手術をする事になっている。
本当は今年の夏にする予定だったのだが諸事情で延期したのだ。
因みにその諸事情に唯も絡んでたりする。
362名無しさん@ピンキー:2013/05/06(月) 14:00:02.03 ID:wDsoQDIA
「そうすると、だ。婆さんは爺さんの世話をするから町に行く。
 俺はここから学校に通う。
 1人でなんとかするって言ったんだが信用されてないのか
 婆さんは町とここを往復すると言って譲らない」
「耕太郎は生活能力ないもんね」
「悪かったな。で、うちの親が出てくる。こっちに戻ってこいと」
「耕太郎の御両親の仕事は?」
「継続中」
「じゃあ耕太郎の世話はできないんじゃあ?」
「寮か下宿に入れるらしい。とことん放任な親らしくて堪らないよ、ほんと」
昔ならともかく、今は親と一緒じゃなくても寂しくもなんともない。ほんとだぞ。
少し考えてから、ぽんと唯は手を打つ。
「私の家から通えば良い!そうしよう!」
「さすがに厄介になれないぞ。前みたいに泊まるとは違うし」
「気にする事はない。耕太郎は家のものも歓迎するぞ」
「俺が気にする」
「私は気にしない!」
唯が俺の両腕を異常に強い力で掴む。
それに比例するように見つめる瞳も強い。
「唯…もう決めたんだ…」
「…私を捨てるのか」
掴んだまま頭を垂れた唯が言う。
「捨てるって…仕方ないだろう、俺だってここに居たいけど…」
「なら居ろよ!居てくれよ!そうしろよ!」
唯は涙を流しながらも強い瞳を向ける。
それに俺は見つめる事だけしかできない。
返事がないのを返事と取った唯は両の手で胸を押して離れた。
「私は…私は、行かせないからな!」
俺はそう言って走り去っていく唯の後姿にも声をかけれなかった。



気が付けば家の門の前にいた。
「唯様、お帰りなさいませ」
「ああ」
家人の雀が出迎えてくれたがぞんざいな返事をする。
それをどう察したのか背後から続けて言ってくる。
「御当主が来ております」
「父上が…」
ふと頭に案が閃いた。
それと同時に父のいる奥間へ向う。
いつもなら挨拶程度で話をする事はない。
しかし今日は違う。
私は諦めない。
耕太郎がいなくならない為ならなんでもする。
どのような手段を使い、どのような対価を払おうとも。

「父上、お話があります」


<つづく>
363名無しさん@ピンキー:2013/05/06(月) 14:05:25.68 ID:wDsoQDIA
以上です。
364名無しさん@ピンキー:2013/05/12(日) 09:04:18.55 ID:no/BL7aA
>>363 
ツッコミしか出てこないからコメ書くのも無粋かと遠慮してたけど、なんもついてないんで一応

・全レスヤメレ。2ちゃんでは嫌われるしマナー違反。返答は作品の出来で答えろ
・ぶつ切り投下ヤメレ。ストーリーに起伏があるとこまでまとめて投下しないと感想つけづらい
・このスレではそれほど嫌われてないけど、エロパロ板ではエロなし投下は注意書きレベルなんで
「エロなし展開が淡々と続く」のは基本なしという覚悟で書くべき

見た感じ初心者だし基本的なとこ押さえればぐんとよくなりそうなので今後に期待して見てる
365名無しさん@ピンキー:2013/05/28(火) 19:19:01.70 ID:+74IUpOt
廣済堂から出てる時代物の文庫に男装物があったので
このスレに合うか分からないけど、とりあえず紹介してみる。

鳴海丈「娘同心七変化」
ストーリーは主人公である道場の娘・美鈴が暴れ馬に轢かれそうな将軍の若君を
助けた褒美に町奉行の同心見習となり変装・潜入して事件を解いていくというもの。
ラノベ感覚で読めるので普段は時代物を読まない人でも気軽に読めてお薦めな内容です。
366名無しさん@ピンキー:2013/06/11(火) 05:06:20.04 ID:kW9F7nUW
投下します。
耕太郎と唯の話の続きです。

・エロは今回もありません。
367名無しさん@ピンキー:2013/06/11(火) 05:08:36.55 ID:kW9F7nUW
卒業式を数日前に済ました俺は今日、村を出て親元に帰る。
唯にばれた次の日には村中にばれて
大人や先輩達はともかく学年下のチビ共には泣かれたりして大変だった。
一番面倒な事になりそうだった当の唯は
数日は目を合わすとそっぽ向かれたりされたが
1週間も経たないうちにいつもの唯に戻っていた。
…ように見えたのだが
俺が水高に行かないから遠くの私学の全寮制の阿比樹学校に行くと言って一波乱。
その学校の制服の購入に俺は街まで拉致されて一波乱。
まぁ試着役をしたお蔭で高校の制服はただで貰えたので助かったが。
夏以来の唯の妹の実ちゃんでまた一波乱。
実ちゃんは元気だったなぁ。どんどん女の子らしく…
「あたっ!…何をする?」
「変な事考えてたね、耕太郎」
不機嫌な顔で扇子をぷらぷらしている唯。
「だからと言って顔を叩くな」
「やっぱり変な事を!」
「逃げれない所でポカスカ叩くな!」
ここは車の内。
後部座席の運転席の後ろに唯、その左に俺が座っている。
家から駅までは距離があるのでバスで行こうとしていた時、
家の前で唯がこの車と共に待ち構えていて
押し込められるように乗せられて今に至っている。
あの量の荷物を運ばないだけでも助かるが
この黒塗りの高そうな車に乗る時はいつもこうなのはどうかと?
「最後まで悪いな、送ってもらって」
「耕太郎にはちゃんと着いてもらわないと困るから」
窓を向いて唯が答える。
婆さんと何かにこやかに話してたが
責任とかに厳しい唯の事だから婆さんと約束でもしたのだろう。
そこまで俺、まだ心配されてる?
「そう言えば唯の学校は海の方だったよな?」
「海と街の間にある山の上」
「海かぁ…行ってみたいなぁ」
「大量の塩水があるだけ」
「川と違って波があるんだろ?」
「内海だから変わらない」
会話はするがつっけんどん。
このいたたまれない状態でいるのはきついのだがどうも唯はそれでいいらしい。
駅に着いたらお別れなのだが。
368名無しさん@ピンキー:2013/06/11(火) 05:10:17.81 ID:kW9F7nUW
「なぁ、唯」
「なんです?」
「今までありがとな」
「何を改まって言うかと思えば」
広げた扇子で口元を隠しつつ呆れた顔で唯がこっちを見る。
「俺、盆には帰ってくるからさ!」
「盆に帰ってくるのは幽鬼の類で結構です」
「そしたら、そしたら、一緒に海に行こうぜ!」
「2人で海ですか…」
「それか俺もお前も寮生活だから寮の友達とかを誘ってさ!」
考えこむ唯。
昔は水衣とかいうやつを着て川で泳いでた記憶があるけど
水着をというか水に入ってる唯をほとんど見たことがないような…
あ、風呂には入ったよな?となると…
「唯」
「あ、はい!」
吃驚した顔の唯にこっちも吃驚する。
「カナヅチでも俺は怒らないからな! あたっ!」
「泳げるよ!」
バシッと扇子で思いっきり叩かれた。
ちょっと直球で言い過ぎたかもしれない。
そうだ、唯に注目されないようにするなら…
「実ちゃん連れてきてもいいから! うっ!だっ!」
今度は扇子で往復ビンタされた。
「何故、実が出る?!」
「お、俺はお前の事を思って…」
「間違い!」
顔を真っ赤にした唯に叩かれながら駅が見えてきた。
こんな馬鹿が当分できないと思うと寂しいが
また会う日までと思うと今から待ち遠しくもある。
次会う時はより配慮の出来る男になってるとも期待して。
369名無しさん@ピンキー:2013/06/11(火) 05:12:36.83 ID:kW9F7nUW


「あれ?」
何故か駅前で止まらずそのまま進んでいる。
「唯、駅通り過ぎたぞ?」
「そうでしょうね」
叩き過ぎて熱くなったのか扇子を本来の使い方をしながら唯が答えた。
「なんで?」
「用が無いから」
「用がないってお前…じゃあ、何処行くんだよ?」
「阿比樹学校」
にっこりと笑って唯が言う。
「そりゃお前の学校だろ?俺は…」
「はっはっはっ。耕太郎も一緒だよ」
「そんな事できるか!もうあっちに入寮だって決まってるのに!」
「うん、決まってるよ。阿比樹の方の寮に」
「ゑ?」
「入学の諸々の書類の手続きは済ませた。生活用品の手配はした。耕太郎の制服も準備した…」
唯は指折りながら確認するように言う。
「制服ってまさか…」
「はっはっはっ。まさかもなにも自分で試着して寸法も合わせたじゃないか」
「あれはむこうの制服で」
「ボタンが違うだけで同じだよ。ちなみにもう替えてあるから安心して」
「いつの間に?」
「お婆さんに頼んでおいたからね」
「婆さん何してんだぁ?!」
「お婆さんは喜んでくれたよ?これでお爺さんの看病に専念できると」
「それだったらむこうでも変わらないじゃないか」
「御両親からしてもどっちでも変わらないからと承諾を得てるよ?」
「親〜〜〜!!」
「まぁ平たく言うと”耕太郎だけ”が知らなかった、という事」
「そ、そんなの…」
嘘だと言いたかった。
しかし笑顔の唯がなんだか薄ら寒く感じて続けれなかった。
「でも、今回は大変だったよ?
 耕太郎が他所へ行くと知ってから父上に頼んで
 耕太郎と共に行ける高校を探して貰って尚且つそこに入れるようにしてもらい
 お婆さんとお爺さんに承諾を貰って、耕太郎にばれないように準備してたからね。
 本当は村から通える所が良かったんだけど
 結局それだと私の家から通う事になるから耕太郎が嫌がるしね」
なんでこいつは笑いながらこんな事が言えるんだ?
俺はこの数ヶ月騙されてたという事だよな?
それをこいつは…
370名無しさん@ピンキー:2013/06/11(火) 05:17:40.97 ID:kW9F7nUW
「”私だけ”知らなかったから、これでおあいこ」
「何が?」
気付くと唯の笑顔は消え真面目な顔をしている。
「耕太郎は黙っていた、だから私も黙っていた」
「だからってここまで…」
「だったら!…だったら、言ったら耕太郎は行かないでくれた?」
「俺は…」
ここまでしてくれた唯には感謝はすべきなんだろうけど
なにかが引っ掛かって言い淀んでしまう。
「耕太郎」
「ゆ、うわっ」
唯が抱き着いてきてシートに俺を押し倒す格好になった。
「唯…」
唯の軽い体とあの匂いに包まれ車の天井は見えるが
右に唯の顔があるので表情は見えない。
「耕太郎…」
「なんだ?」
「もし…」
「もし?」
「もし、阿比樹に行かなくても良かったらどうする?」
「…」
「耕太郎が望むなら駅に戻ってもいいよ?」
「唯…」
「だからそれまではこのままで…」
天井を見ながらぽんぽんと唯の背中を叩いた。
それに反応してかぎゅっと唯の抱き着きが強くなった気がする。
「まさか、本当に私を捨てて行かないよね、耕太郎?」

とりあえず唯、駅に着くまでに俺が彼岸に着いてしまう。
俺は山の上から海岸が見たいんだ。

<おわり>
371名無しさん@ピンキー:2013/06/11(火) 05:19:45.92 ID:kW9F7nUW
以上です。
372名無しさん@ピンキー:2013/06/11(火) 20:47:46.91 ID:Iqj5zMDz
GJ
唯はなんかがんばったな。耕太郎の最後の独白はムラムラしてるのかこれ
373名無しさん@ピンキー:2013/06/16(日) 10:04:35.78 ID:CkmLYdDv

唯は男装?ってのは毎回思うけど可愛い
ちょっとヤn(ry
>>372
多分首が極まってるんじゃないかな…後部座席で押し倒すのは難しいからしかたないね(目逸らしつつ
374名無しさん@ピンキー:2013/07/05(金) NY:AN:NY.AN ID:AGZOou9a
かんなぎに男装少女出てきて俺歓喜
375名無しさん@ピンキー:2013/07/09(火) NY:AN:NY.AN ID:y53xDuxA
ジャンプの無刀ブラックにも男装少女が出てきてるけど、男装少女萌えに引っかかる展開がまだ少なくてなw
376名無しさん@ピンキー:2013/07/28(日) NY:AN:NY.AN ID:NQO1F473
逆転裁判5に男装っ子
377プロポーズ大作戦(まえがき):2013/08/26(月) NY:AN:NY.AN ID:y+ZBm1pC
小ネタ投下。1600字ちょっと。

影武者のお話
※ヒロイン(男装娘)の一人称が「私」
※しょっぱいシリアス両片思い?
※ぬるいエロ
※オチなし

大丈夫ならそのままスクロール
378プロポーズ大作戦(まえがき):2013/08/26(月) NY:AN:NY.AN ID:y+ZBm1pC
『彼女』は思ったよりもマシな人生だ、と前に語った。
彼女は王族の庶子として生まれ、疎まれて暮らしてきたそうだ。
出家するか、王族のつとめとして政略結婚するか。
二択の間に第三の選択肢が降ってきたのは彼女が8歳くらいのときだったという。
彼女は兄――腹違いの王太子とそっくりだったのだ。


廊下でキスをしようとしたら殴られた。
「お前、よからぬ噂がたったらどうする気なんだ」
「言わせておけばいい」
「阿呆、兄上の名誉に関わるんだぞ」
手加減をしているらしく、殴られた頭には衝撃だけがあってさほど痛くない。
彼女の兄は俺の主君でもあるので、うかつなことは(一応)できない。
見つめ返す顔は精悍で、背もすらりと高い。よくよく観察しなければ女とはわからないだろう。
ただ兄王子とは違うのが、匂いだ。
彼女からは湿った甘い匂いがする。


そこらの空き部屋に引きずり込んで、こんどはちゃんとキスをした。
王宮内は茶話室だの会議室だのいらない空き部屋がけっこうあるのだ。
部屋にあった机に乗せると、首筋に顔を埋めて匂いをかいだ。
「……変な趣味」
彼女が蔑みの言葉を投げてくる。
「外、暑かったのか?」
「ほざけ」
でかい時間は裂けないので、申し訳程度に服をはだけさせて、体にかぶりつく。
彼女は少しづつ、熱い吐息を漏らしはじめる。
結ってあった髪をほどこうとしたら、彼女が自分でほどいた。
「……淫乱だね」
「お前が……いうな」
最初は遊びで、彼女が乗ってきたことに驚いた。
望めばいつでも引き返せるだろう、と考えていたが甘かった。
気づけば泥沼にずぶずぶと嵌っていた。
379プロポーズ大作戦(2):2013/08/26(月) NY:AN:NY.AN ID:y+ZBm1pC
しばらく彼女をいたぶっていたら、早くしろとばかりに彼女が足を開いてきた。
おとなしくその間に杭を打ち込んでやる。
猿のような前後を繰り返していると、きりきりした痛みが喉を焼いた。


果てた衝撃でしばらくぼんやりしていると、耳朶にどろっとした声が聞こえてきた。
「中に出すなって……言ってるだろう」
涙目で俺の精液をハンカチで拭いていた。顔は少し迷って、袖で拭く。
「ああ……できたら養ってやるよ。二人くらい食ってける金はある」
「私に家でお前の帰りを待てと? 味方の誰もいない場所で?」
「嫌か?」
俺はわりと本気だった。だって今は不公平だ。
こんなに好きなのに、彼女は少しも俺のものになってくれない。
彼女は衣服を身にまといながら吐き捨てた。
「今だけだ。いずれお前は私に飽きるだろうよ」
それとも俺のことが嫌いなのか?


翌日、俺は主君にお目通りを願い出た。昼餉の後に王子は部屋に呼んでくれた。
「話とはなんだ」
「俺にあれを賜りたく存じます」
 王子は椅子から落ちかけた。ゆっくりと体を起こすと、呆れ顔が浮かんでいた。
「お前ね……おい、下がってくれ。二人で話がしたい」
その場にいた侍従を退出させると、もうひとつの椅子を指さして座れと言われた。


「お前たちがただならぬ仲というのは察していたが、あの子ももう大人なのだし、
節度をわきまえるならと放っておいた」
ただな、とと王子は続ける。
「お前にはわからんだろうが、私たちにも兄妹の情というものはあるのだよ。
物ではないのだから、お前の気持ちひとつでやれるものではない」
「なぜそういうまともなことを言い出すんですか」
「まるで私が普段まともなことを言わないような物言いじゃないか。
ともかく、あの子がうんと言わないかぎりは私も認めないよ」


「とはいえ、いつまでもここに居るわけにもいかないのは確かだ……
あの子によると、時がくれば修道院にでも行くそうだぞ」
「なんだと」
一瞬自分の身分を忘れて、椅子を蹴っ飛ばし立ち上がった。王子はもう一度座れと諭した。
ひっくり返った椅子を朦朧とした頭で元に戻す。
「ここにいたところで大した未来はない。私にはひきとめることができない。
どうにかお前ががんばるんだな」

――――――
ここまで。
中途半端なところで終わってすみません。
380名無しさん@ピンキー:2013/08/26(月) NY:AN:NY.AN ID:y+ZBm1pC
名前欄ミスってた……申し訳ない。
381名無しさん@ピンキー:2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:IKXwX37h
なんかきてた、とりあえず乙
382名無しさん@ピンキー:2013/08/30(金) NY:AN:NY.AN ID:xCpKiHPh
乙乙!
続きに期待
383名無しさん@ピンキー:2013/08/31(土) NY:AN:NY.AN ID:Kzbp4cx+
384名無しさん@ピンキー:2013/10/08(火) 17:10:26.05 ID:klV8/Z9B
>>380
サムライホルモンやってひさしぶりに男装少女萌えが再燃して
ここに来た。新しいのがいつのまにか投稿されてたようで大変うれしい。
次回作を全裸待機する。
385名無しさん@ピンキー:2013/12/01(日) 06:17:05.01 ID:bDzwtN7h
男装少女に男装したままフェラしてほしい
見た目はほとんどBLだけどそれがいい!
そんで女だと確認するために剥きたい
386名無しさん@ピンキー:2014/01/12(日) 20:46:06.86 ID:b68Hb1lb
剥いたらエロい黒ランジェりーとかだったらいいな。
で「男みたいな恰好してんのに、こんなセクシーな下着つけてんのかよ」
とか言って女であることを意識させ、恥ずかしがらせる。
387名無しさん@ピンキー:2014/01/17(金) 11:15:50.53 ID:ATENcTKO
「僕は……君が好きだ」

 最初は思ったね。その言葉に『はあ? 何言ってんだ?』と。
 だって、目の前にいるのは、校内イケメンランキング三年連続一位間違いなしの、
そこらのアイドルなんて目じゃない程の超絶美形の生徒会長、青葉優樹なんだから。
 ま、まあ、俺だって多少女にキャーキャー言われる程度のルックスは持ってるが、
この男はレベルが違う。桁が違う。何もかもが違う。両手を挙げてバンザイ降参だ。
 その男が、突如として吐いた言葉が、冒頭のそれだ。何かの間違いだと思うよな?

「……何言ってんだ、青葉?」
「君が僕の事を何と思っていようが関係ない。僕は……君が好きなんだ」

 ……えっと、その……BL展開ですか? ちょ、ちょっと、そういう趣味は無いんだが……。
 夕暮れの生徒会室。副会長である俺と、会長である青葉、二人きり。差し込む夕陽で
オレンジ色に染まる部屋の中、青葉の頬はそれでもわかる程に赤く染まっていて――

「……すまんが、俺はノンケなんだ」

 我ながらひでえ言葉だが、こういうのは変に取り繕おうとすると、逆に良くない。
 BL展開はゴメンだからな。はっきり言っておかないと……。

「……?」

 ……なぜそこできょとんとした顔になる?

「あ、そっか。そういえば、先にそっちから言っておかないとだな……」

 青葉はそうひとりごちると、またしても衝撃の言葉を吐いた。

「僕は、女だよ?」

 またしても俺は思ったね。『はぁ? 何言ってんだ?』と。
 おいおい、 冗談はその端正な顔だけにしてくれよ。

「……もしかして、全然全くこれっぽっちも欠片程も気づいてなかった、のか……?」

 何やら頭を抱えて苦悩し始めた青葉に対して、俺はもう一度、最初に言った言葉を
繰り返そうとした。「何言ってんだ、青葉」と。
 だが、そうしようとした矢先、俺は別の言葉を口にする事になった。

「何やってんだ青葉っ!?」

 青葉の奴、俺のズボンのファスナーを徐ろにおろし、俺の逸物を取り出したのだ。
 あまりに唐突だった為、俺は反応する事もできず、ボロンと例のアレは飛び出てしまった。

「案ずるより産むが易し。男だったら男の物にこういう事はできないだろう?」
「いやまてまてコラ。男だったらとか以前に、普通の女もいきなり唐突にんな事はせんわぁああああ!?」
「……そうなのか? いや、でも、書記の安原美咲女史は、男はこういう事をされると喜ぶ、と……」
「喜ぶけどな!? 喜ぶよ!? そりゃ喜ぶけども! 唐突に過ぎんだろうが!?」
「まあいいじゃないか。気にしない気にしない」
「気にする」
「……ぺろり」
「わあはぅ」
「……ちょっと変な味だね」
「い、いきなりはやめてくれ……変な感覚で膝が砕けるかと思ったぞ……」
「それって……気持ちいい、って事、なのかな?」
「……否定は、できないが……」
「じゃあ、続けるよ……あむっ」
「……だか……ちょ、ま……あっ」
388名無しさん@ピンキー:2014/01/17(金) 11:17:10.31 ID:ATENcTKO
 俺はされるがままだった。いや、何しろこういう事をされるのは初めてだ。女子と付き合った事はあるが、
こういう事をする関係にまで至る事は無かったので、なんというか、自分でするのとも違う未知の感覚が
はふぅん……あ、いい、そこ……ぉ。

「ろーらいふくかいひょー。ほくはふはふはれへひうはい?」
「だっ……こ、咥えたまま……喋るなっ……!」

 きっと、『どうだい副会長? 僕は上手くできているかい?』と尋ねたのだろう。
 その答えは、問答無用にYESだ。いくら俺がこういう事の経験が無いとは言え、気持ちよすぎる。
もう今にも俺の物は爆発してしまいそうだ。何かそうなったら負けた気がするので必死に我慢してるが。
 咥えて前後したり、先っちょを舌で撫で回したり、一体こいつはこういう技をどこで習ったのかと
快楽にうめつくされそうになる頭の片隅に疑問が湧いたりもしたが、その答えは尋ねるより先に
青葉の方から提示された。

「……練習、したんだよ? 君に喜んで欲しくて、さ」

 ……何だ、この感情は。
 青葉が女だと、未だに俺は信じられない。だって、学内ではファンクラブができるほどのイケメン様が、
いつも肩で風を切って歩いてるような、凛とした美男子が、実は女で、実は俺の事が好きで、好きが
高じてこんなエロい事までしちゃう程で、その為に練習までしてくれる程だとか。
 なんかもう、青葉の奴が男かどうか、女かどうかなんて、どうでもよくなってくる。
 こいつは、本当に俺の事を好きなんだと、その想いが実感となって俺の身体の中を駆け巡る。
 そして駆け巡った物は、一気に俺の先端から噴出した。

「きゃっ!?」

 断りを入れる間も無く、俺の物は白濁を吐き出した。これまで経験した事が無い快楽によるそれの
量は、これまで経験した事が無い程に多く、ちょうど言葉を紡ぐ為に口を離していた青葉の顔を、
真っ白に染め上げていく。

「……もう、出すなら出すと言ってくれたまえよ。飲めなかったじゃないか」
「……お前、こういう事の知識得る為に、エロ漫画とか読みまくったろ?」
「な……そ、そそそそそそそそ、そんな事は無いヨ? ほら、美咲女史に聞いたりだとかしてただけで、
 別にエロ漫画の購入費用経費で落とそうとして会計の園原女史にもこの事はバレてるとか、
 そんな事は全然無いのデスヨ?」

 ……あー、もう、なんだこれ。いつもの冷静沈着、不敵に笑ってるのがデフォ表情な青葉からは
信じられない焦った顔だ。初めて見たぞ。超可愛いじゃねえかこの野郎。

「エッチな娘は……嫌い、かな?」

 ま、さっきは男でも女でもどっちでもよくなるとか思ったけど、俺も一応ノンケなわけで、男じゃ
ないならその方がいい。というか、こんなに可愛い上目遣いの涙目で、こちらの様子を伺って
くるような男がいるか! ……と言い切れないのが世の中の深い所だが……それはさておき。
 とにかくまあ、確かめさせてもらおうか。
 俺は不安そうな青葉の問いかけに首を横に振りながら、無言で青葉の胸元に手を伸ばした。

(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
389名無しさん@ピンキー:2014/01/17(金) 11:25:39.90 ID:ATENcTKO
何か、フェラする前に練習するのが俺のジャスティスらしい。
390名無しさん@ピンキー:2014/01/19(日) 16:43:32.88 ID:mWLMiDz/
まさか保守代わりに書き込んだネタに反応してくれるとは思わなんだ。
ありがとう!
と思ったらいいところで終わってる!
391名無しさん@ピンキー:2014/02/01(土) 12:39:56.01 ID:M6eJi987
392名無しさん@ピンキー:2014/03/24(月) 22:13:03.34 ID:C8pW9wDx
もう2ヶ月近く書き込みなし
393名無しさん@ピンキー:2014/04/04(金) 00:01:11.37 ID:8hfzX/pv
保守
394名無しさん@ピンキー:2014/04/08(火) 00:44:13.55 ID:3q5q1LGE
>>272
このシチュエーションで誰か書いていただけるとありがたい
395名無しさん@ピンキー:2014/04/17(木) 14:27:57.47 ID:as860kn7
ライトノベルの『無双嘘術の天才詐欺師』(志茂文彦/HJ文庫)で男装があった。
ヨーロッパの金髪碧眼のお姫様が、敵の目を逃れて行動するため、
かつらとカラーコンタクトで日本人の少年になりすまし、主人公の弟的存在として振る舞う(日本語は堪能)。
中盤での登場シーンはほとんど男装し、男装バージョンのイラストもあり。
396名無しさん@ピンキー:2014/04/19(土) 01:02:34.14 ID:WyaFdnaU
ラノベならゼロから始める魔法の書にもおるよ
ツンツンの男装僕っ子が裸になったりする
397名無しさん@ピンキー:2014/04/20(日) 22:43:40.02 ID:Xm3WOCK7
幼なじみで昔から女の子だということを知っている
みたいなシチュエーションも好きだ
398 ◆IyF6/.3l6Y :2014/04/30(水) 22:55:59.98 ID:+bAkUk1P
短いの投下します。前編でエロなしです。久々なんで読みにくかったらスマン

凍える塔

 その王子は、人質の身であってもなお不遜だった。
王の前妻が命と引き換えに生んだその息子は身体が弱く、一族では冷遇されてきた。隣国に人質に出されたのは、厄介払いの意味でもあったのだろう。

 田舎の貴族の、更に四男であるルーシアスが、隣国のレオ王子に仕え始めたのは、16歳の頃だ。国から連れてきた老人ひとりと、王族の黒い衣装をまとった11歳の少年を迎えたのは、5年も前のことだった。
ルーシアスが住んでいた屋敷は、さほど豪華でも大きくもなく、ただこの地方の冬の雪に耐えうる剛健さだけを誇っていた。石造りの壁は灰色で、庭には花もなければ水場もない。
そんな場所に降り立った王子は、随分と景色から浮いて見えた。
秋の木漏れ日に光る、詰襟の絢爛な金糸の刺繍。腰に吊るした白銀の柄のサーベル。よく磨かれた革のブーツ。それらは国の豊かさと文化水準の高さを誇っていたが、それを持て囃す人もここにはいなかった。
「お前が私の護衛か」
 跪き返事をしたルーシアスの頭上から、声が降ってくる。
「よい、顔を上げよ。わたしは人質なのだ」
 父親と兄と共に王子を迎えたルーシアスに、レオはそう呟いて口端を歪めた。見上げたレオの顔には、年齢に見合わぬ自虐の色があった。
癖のある赤毛と、細面の顔立ちは前妻に似て非常に美しかったが、手足は虚弱な身体と、恐らくは冷遇された身の上を反映して、葦のように華奢だった。その華奢な身体に反し、目つきは頑なで冷たかった。
人形のように虚無的だと、ルーシアスは思った。そしてそれ故に、美しいとも。
長い睫毛に翳る、淡い緑の切れ長の瞳に、するりと優雅なカーブを描く眉。耳の辺りまで伸びた赤い癖毛は、ふわふわと波打っている。まっすぐに通った鼻筋に、柔らかな曲線の顎のラインが、生まれの良さを窺わせた。
黒い上衣に、その白磁のような肌がよく映える。
 程なく、レオは更に辺境の塔に移送された。祖国から連れてきた老人と、護衛のルーシアスだけが彼の供である。
それでも、レオは常に、王のように背筋を伸ばして歩き、王のように不遜に振舞った。それは、今思えば、「王族」であることで人質として生き延びるための術だったのかもしれない。

 塔に幾度か春が訪れ、冬が来た。
その都度、レオの顔から幼さが抜け、手足はわずかばかり伸びた。塔に届けられる、新鮮とは程遠い食料がその発育を妨げていることは、誰の目にも明らかだった。
それでも、護衛として少なからぬ時間を傍で過ごすルーシアスに、文句ひとつ零さないのは、恐らくは彼なりのプライドだったのだろう。
天気のよい秋の日や、暖かい春の日などは、外を歩くレオに付き添うこともあった。針葉樹の森を歩く彼の頬は、わずかに赤らみ、目に光が差し込む。
そのときだけ、彼に少年らしさを感じた。
 さすがに窮屈になった王族の服を着なくなり、一年が経つ。
少年は、青年との境にいた。ルーシアスは、いつ来るかも分からない敵に備えたまま、塔を守っている。
399 ◆IyF6/.3l6Y :2014/04/30(水) 23:07:06.57 ID:CJI5Cklc
 
 結果的に、レオの命を奪いかけたのは、敵ではなく雪だった。側仕えではなくとも、レオが寒がりだということは、数年の間に学んでいた。
思えばレオの一族は、だいぶ南側の出の筈だ。雪もほぼ降らない、温暖な地域だった。
碌な防寒着もなく引き渡されたレオに、外套を貸したこともあった。
目の詰まった羊毛の外套は雪にも水にも強かったが、小柄なレオが着ると裾が踝まで届く。
そんなレオが、一端の王族のようにルーシアスに外套を着させるのが、何だか滑稽だった。

 ある朝、雪の日は外に出ないレオが、どこにもいないことに気付いたのは側仕えの老人だった。
レオは塔の中ほどにある小さな部屋に住んでおり、小間使いや護衛が暮らす塔の地下とは区画を異にしていた。
朝食を部屋に運びに行った老人が、血相を変えて階段から降りてきたとき、ルーシアスはその意外な俊敏さに驚いた。
「坊ちゃんが、おりません」
 老人は、往年の眼差しの鋭さを思い出させる表情で言った。今でこそ質素な格好をしているが、昔は親衛隊の一員だったということを思い出させる表情だった。
いつも綺麗に櫛の通った白髪が、わずかに乱れている。
ルーシアスと顔を見合わせた老人は、「私はもう一度塔の上まで探します。あなたは外を」と、息を吐きながら指示した。
脱走。転落。誘拐。様々な可能性が頭を過ぎり、ルーシアスは一気に体温が上がるのを感じた。
思えば、厭世的な青年だった。人質としての価値さえも見失ってしまったのか、それとも塔の中の世界から逃れようとしたのか。
早まるな、とルーシアスは呟いた。
粗末な木の扉を引くと、膝の上までも積もった雪が崩れこんできて、ルーシアスは踏みとどまる。
目が潰れるほどに眩い光が瞳を刺した。
ドサドサと、針葉樹から雪が落ちる。哀れでちっぽけな王子に、親しみや特別な思いを抱いていたわけではなかった。
ただ、自分の弟よりも若いあの王子が、世を儚んで命を絶つのは早すぎると思った。外套を着て、かんじきを履き、ルーシアスは雪を踏みしめる。
なぜか、脱走だと思えなかった。あの寒がりのレオが、真冬に逃げ出すわけがない。足跡を探して、ルーシアスは雪の表面に目を凝らした。
ウサギの足跡。鹿の蹄。木の下に、点々と落ちる雪の痕。人のものと思える足跡は残っていない。この雪の中では痕跡を残さずに行動することはできない。
夜明け前に雪は止んでいる。それ以降の痕跡は、全て残っているはずだ。
塔の頂にこんもりと積もった雪が、音を立てて塊で落ちてきた。

 塔の周りを壁から離れて歩くと、しきりに雪が壁沿いに落ちてくる。それを避けながら、ルーシアスは雪の中を進む。
「レオ王子―――っ!」
叫べば、口から白い呼気が漏れた。冴え渡る朝の空気に、それが凍り付いていく。
壊れ物のような危うい面影を、王族として不遜を装うその仕草を、透き通るような赤毛を求めて、視線は雪面を這う。こんなに冷え込む朝なのに。外にいたら、凍えてしまうではないか。
ずっと会っていない末の弟の顔が頭を過ぎった。毛穴が凍りつき、ちくちくと沁みてくる。
「レオ―――!!」
足跡もない。痕跡さえも。塔の中を老人が探しているだろうが、普段使っている部屋の他には隠れる場所などないのは、ルーシアスがいちばんよく知っている。
探す術もないルーシアスの目の前に、広大な、どこまでも広大な森林が広がっている。どこに。雪が落ちる音が、ルーシアスの焦燥をあざ笑うかのように響く。雪に落ちた雪が煙を立て、視界を白く染めた。
「あの、バカ王子が・・・!」
吐き捨てて、ふとルーシアスは振り向いた。塔を見え上げる。
雪。いまにも崩れ落ちそうな。
足元を見る。既に崩れ落ちた雪の塊が、塔の根元にこんもりと溜まっていた。
内側から閂をしているはずの、塔の窓が、わずかに開いたまま放置されている。
「・・・あの、バカが!」
呆れと、ふつふつと沸く怒りが口を突いて出た。真っ青な顔で、気絶したレオが発掘されたのは、その数分後だった。
400 ◆IyF6/.3l6Y :2014/04/30(水) 23:19:59.32 ID:FXeJtDl4

 私は16歳です。王の先妻の末娘として生まれ、人質の名目で隣国に出されました。

 私の母は病がちだったそうです。そのせいで、生前既に第二夫人として有力貴族の娘を迎え入れるという話が持ち上がっていました。
しかし王の父、つまり私の祖父は、権力争いを嫌い、世継を生む王妃として私の母だけを立てたかったと聞きます。
当時、退位したとはいえ、まだ祖父の権力は絶大でした。
そして、祖父は私を、母が産んだ5番目の「王子」として発表させました。
しかしそれも虚しく、母は私を産んですぐにこの世を去りました。
その後すぐに祖父が死に、結局は有力貴族の娘が王妃に迎え入れられました。
どれも私の記憶には残っていません。私は身体が弱く、ずっと母の実家の宮で暮らしていました。
それが幸いし、権力争いの場からは離れていました。今の王妃の顔は、数えるほどしか見たことがありません。
それでも、長ずるにつれ、何かと不穏なものを感じることが多くなったのも事実です。
腹違いの弟ができて、今の王妃は彼をいずれかは世継にと考えていたようでした。
私には3人の兄と、隣国に嫁いだ姉がいます。いずれかは長兄が国を継ぐでしょう。
しかし、王妃がそれをすんなりと認めるとは思えませんでした。
私の住んでいた宮でも、どこかから来た使いを見かけることが幾度かありました。
隣国に人質として出されるという話が出たのは、そんな時でした。姉の嫁いだ国に、事実上の亡命をするのです。
王妃の一族の経済的締め上げに、母の宮も汲々とし始めていました。
他に選択肢はありませんでした。

亡命してからの生活は、それほど悪いものではありませんでした。
もとより、主立って私の身の回りの世話をしていたのは母の親衛隊の一員だったロレンツィオだけでしたし、亡命先では護衛までも付きました。
質素ながらも衣食住が保証される生活、政治的闘争から遠い世界は随分と気楽でした。
小さい頃、夏の避暑地で一緒に過ごした兄の見よう見まねで、「王子」として振舞わなければならないことだけは大変でしたが。
塔に来てから2、3年は、先行きの不安はあるものの、概ね穏やかな生活だったと思います。
 変化が訪れたのは、私が13歳の頃でした。月のものが始まったのです。
鏡で見る私の身体も幾分成長し、腰から太ももにかけてうっすらと肉が付き始めました。
胸が殆ど育たなかったことが幸いし、護衛のルーシアスに勘付かれることはありませんでした。
 ルーシアスは、私の一族とはかなり違う風貌です。
くすんだ茶色の短髪は、無造作に刈り込まれたままの風でしたし、肌は浅黒い色をしていました。
父や母は、人を寄せ付けない高潔な貌をしていましたが、彼は穏やかな、少し少年らしいような瞳が印象的でした。
剛直な眉と、しっかりとした鼻梁は成人男性のそれでしたが、笑う顔には慣れ親しみやすさがあります。
彼の主として振舞ってはいるものの、実際のところは精神的に寄りかかっている部分が多かったように思います。
困ったことに、成長するにつれその傾向は顕著になりました。
ルーシアスは、ほとんど常に一緒にいましたし、近頃では頭の中に霞がかかったような気持ちになります。
それどころか、何かの拍子に触れられたりでもしたら、体中が脈打っていてもたってもいられないのです。
だから、最近では、彼が少しでも近寄るたびに「近寄るな」と言うしかないのです。
頭の中で、この腕が、節のある指が、もし自分を触ったらと想像するだけで、呼吸が浅くなるのです。
鼓動と、血の流れる音が聞こえてくるので、私はそれが誰かに聞こえないかと不安になります。
401 ◆IyF6/.3l6Y :2014/04/30(水) 23:24:14.33 ID:FXeJtDl4
レオ王子、と彼は私のことを呼びますが、本当のところそれは私の本名ではありません。
幸運でした。もし本当の名前を呼ばれたら、いてもたってもいられなくなるでしょう。
 最近では、朝起きてからずっと身体が熱く、腰が疼いて気だるいので、思わず窓から雪に飛び込んでしまいました。
塔の天辺から落ちてきた雪に埋もれて、危うく死ぬところでした。目が覚めたときには、ルーシアスとロレンツォが目の前で血相を変えていました。
一時は、私が命を絶とうとしたと思っていたようですが、それは違います。
「父さまと母さまを守るためにここにいるのだ。わたしがそんな事をすると思ったか無礼者が!」と叫ぶと、ふたりは押し黙りました。
それでも結局、それとなくルーシアスが監視するようにはなりました。
でも、私は覚えています。ルーシアスが、道具も使わずに私を助けてくれたこと。
身体を抱え上げて、運んでくれたことも。

 それから私は、身体が熱くなったり腰が疼いたりするのを、もっとはっきりとした形で意識するようになりました。
下腹部がいつもとろとろとして、下着が擦れるのでさえしんどいのです。
頭がぼんやりとするので、階段を踏み外しそうになります。そのときにルーシアスが支えるので、腰から背骨に甘いような刺激が走って、声が漏れそうになります。
そんな状況なのでいけないこととは分かりながらも、夜毎自分の身体を慰めて凌いでいます。
最初こそ慣れない異物に痛みがありましたが、いまでは糸を引くくらい潤ったそこが、すんなりと指を受け容れてしまうのです。
指を入れるたびに、粘膜の道が締め付けるように動くのが分かります。
ああ、この中に滾ったモノを入れられたら。腰を掴んで、強引に奥まで打ちつけられたら。あの肉体に組み敷かれて、犯されて、喘いで、汚されて。繋がったまま抱き合って。
そんな考えが頭の中にいっぱいで、お腹のなかで指を掻き回しても、身体は満足してくれないのです。小さな絶頂を迎えても、そんないやらしい妄想が頭から離れないのです。

・・・そして今日も、夜が来ました。

―――ここまで―――
402 ◆IyF6/.3l6Y :2014/04/30(水) 23:27:43.53 ID:FXeJtDl4
ここまで投下してから気付きましたが、そういえば過去に投下された「ナタリー」とおんなじシチュエーションになってしまいました。
意識したわけではないのですが、不快になられたらあいすみませぬ。
403名無しさん@ピンキー:2014/05/01(木) 18:44:20.54 ID:S8B03yUz
構わん続けろ
404名無しさん@ピンキー:2014/05/02(金) 23:15:03.02 ID:aC8kJxMA
続きを! 続きをたのむ!
405名無しさん@ピンキー:2014/05/03(土) 23:54:02.79 ID:74dqBNrx
俺の好みストライクだ
頼む続けてくれ!
406名無しさん@ピンキー:2014/06/01(日) 22:44:06.01 ID:Ql4iZxZi
昔の作品だけど、とりかえばや物語えろいよね
平安貴族は進んでる
407名無しさん@ピンキー:2014/07/17(木) 09:43:14.82 ID:6w4PVGN2
保守代わりに小ネタ。もし男装少女が超鈍感男に惚れたら


俺と相棒は騎士だ。騎士団に何人も腕利きの男はいるが、背中を預けられるのはこいつだけだと思っている。
ある日、俺たちに城を落とす作戦を言い渡された。その城の守りは非常に固く命がけの戦争になるだろう。騎士団全体が武功の予感と死の不安でそわそわしていた。
出立の前の日、俺は相棒に呼び出された。個室のある居酒屋で。
「どうした改まって」
「実は大事な話があって……」
 憂いを帯びた表情は、見るものの魂を奪う死神にたとえられるほど美しい。何度も言いかけてはやめる相棒に焦れた。
「はやく言え、俺はそんなに信用がないのか」

「俺、女なんだ」
「は?」
予想外の言葉に素っ頓狂な声を上げてしまった。その反応を否定的なものと受け取った相棒はみるみる顔を曇らせる。
「や、やっぱり気持ち悪いよな、女が男のふりしてるなんて……いままで騙しててごめんな。もうこの作戦終わったら相棒は解消しよう。俺が……」
そこまで言うと相棒はぼろぼろと涙をこぼし始めた。
「いや、いや待て、一応確認しておくが、冗談じゃないんだな?」
相棒は頷く。
「た、確かに驚いたが大丈夫だ。お前が女だからって気持ち悪いなんて思わない。俺に自分から本当のことを話してくれたじゃないか。嬉しいよ」
「あ、ありがとう……」
相棒は、まだしゃくりあげながら何か言おうとする。
「あのさ、俺、お前のことが……す」
「ああ、俺達は親友にして友達だ。それはお前が女だからといって変わらない」
目の前の死神は突然泣き止んだ。
「俺はお前が騎士を続けられるかぎり相棒だぞ。この友情は永遠だ。約束だぞ」
端正な顔が能面のようになった。落ち着いてくれてよかった。


作戦の日、相棒は敵兵をちぎっては投げちぎっては投げ、まさに死神と呼べる活躍をした。
悩みが解消されて精神的に安定したのだろう……俺もサポートしがいがあるものだ
408名無しさん@ピンキー
>>407
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