【俺の妹】伏見つかさエロパロ14【十三番目のねこシス】
『娘めいかあEX』
登場人物
高坂京介 高坂桐乃 高坂佳乃 黒猫 ほか
語り
高坂京介
でやります。
今日、俺は三人でスーパーに来ている。
一人は当然この俺。
たまの日曜だっていうのに、スーパーでの買い物に引っ張り出されているわけだ。
二人目は髪をライトブラウンに染めた垢抜けた妹、桐乃。
スーパーには似つかわしくない格好でかごを片手に買い物の真っ最中だ。
あー、またメルルキャラがデザインされた菓子を買い物かごに入れてやがる。
いい加減、卒業しろよ。
そしてもう一人は、俺の腕の中に居るこの世に生を受けてから1年3ヶ月の女の子だ。
スーパーでは子供連れの夫婦をちらほら見ることができる。
その中に紛れた俺たちは異様に若く見えることだろう。実際若いんだけどな。
それにしても桐乃は上機嫌で買い物をしている。正直、桐乃とスーパーの
取り合わせなんて、桐乃のゴスロリコスプレ並みに似合わねえが、
あの時と同様に本人はノリノリだ。
うー、でも俺はこの子を抱き続けてちょっと疲れてきたな。
「オイ、もうそのくらいでいいんじゃないのか?」
「まだまだ! あ、これも買っちゃお」
女の買い物は長いってのは重々知っていたが、子供を抱いたままそれに
つき合うってことが、こんなにしんどいとは全然思わなかったぜ。
世のお父さん方、お疲れさまです。
「もう、何やってんの? こっちこっち!」
「へいへい」
桐乃の呼びかけに俺はしびれた腕を摩りつつ、店内を歩いた。
まさかこんなことになるなんて、つい先日までは予想だにしなかったぞ。
―――話は二日前に遡る。
「京介、桐乃、ちょっといらっしゃい」
お袋が俺と桐乃を呼び出した。
俺と桐乃は、リビングに入った途端、我が家にはあり得ない存在を見て固まった。
「お、お袋‥‥‥? 一体どうしたんだ!?」
お袋は赤ん坊を抱いていた。
「かわいい――――! ねえ、アタシにも抱かせて!!」
強烈な妹オタである桐乃が、妹属性全開でお袋に駆け寄った。
目尻を下げ、だらしなく開きっぱなしになった口、垢抜けた格好をぶち壊す顔。
とても読モ様とは思えない瞬間だった。
なんでも、親戚の若夫婦が入院したので、赤ん坊の面倒を見ることになったとか。
何か面倒くせえな。そもそも俺、赤ん坊の面倒なんて見たことが無いぞ。
桐乃のときは面倒を見たかどうか覚えてないが。
「というわけで、二人とも協力してね」
「任せて! アタシ協力するから」
でもなあ‥‥‥と渋る感情が顔に出たのか、お袋は俺に言った。
「京介。困ったときはお互い様でしょ。それにつかさちゃん、こんなに可愛いし」
つかさちゃん? この子、つかさって言うの?
「可愛い子じゃないか! 俺、面倒見るよ!!」
何でかな。名前を聞いた途端に俄然面倒を見る気になったんだよな。
というわけで俺と桐乃はつかさちゃんの面倒を見ることになった。
そして、冒頭のスーパーでの買いものにつながるわけだ。
上機嫌の買い物に水を差す気はなかったのだが、あえて桐乃に訊いてみた。
「俺たちが子供連れでスーパーに来ていたら、どういう風に見られてると思う?」
「多分、若い夫婦だと思われているんじゃないの?」
普段なら「キモ」って言いそうな内容をあっさり言いやがった。
「オマエ、それで平気なの? キモイとか思わないわけ?」
「だって歴とした理由があるじゃん。預かった子の面倒を兄妹で見ているってさ」
歴とした理由ね‥‥‥。大義名分さえあれば、平気なのかコイツは。
「奥さん、いかがですか?」
い、今、「奥さん」って言われたよな!?
食品コーナーにはつきものの販売促進のオバさんに声をかけられた桐乃は、
勧められた試食品を口にすると、商品を買い物かごに入れた。
いつもなら「デートだと思われたら嫌」なんて言うくせに、今日はスルーかよ。
うわコイツ、何か知らんがニヤけてやがる。キモッ。
ピンポーン
買い物から帰った早々、玄関のチャイムが鳴った。
「ああ、多分アタシが買ったエロゲーが届いたから、受け取ってくんない?」
桐乃は、つかさちゃんをあやしながら俺に言い放った。
信じられねえ。コイツが自分で買ったエロゲーを俺に受け取らせるとは。
つうか、エロゲーよりもつかさちゃんに入れ込んでいるのかよ。
俺が玄関のドアを開けると―――そこには黒猫が居た。
言っておくが宅急便ではない。この世の仮の名を五更瑠璃と言い張る黒猫である。
「ちょっと近くを通ったものだから寄ってみたの」
ふーん。黒猫も最近は丸くなったというか、そういうことをするようになったんだな。
「まあ、上がれよ」
俺は黒猫を家に上げ、リビングに招き入れた。
そこで黒猫が見たものは、つかさちゃんを抱いてあやす桐乃の姿だった。
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
パラッ
黒猫の瞳から紅いカラーコンタクトが落ちた。
目の玉が飛び出るほど驚くという表現があるが、それに近い状況を見てしまった。
黒猫は落ちたカラコンを瞳に収めて、桐乃と対峙した。
「あ、あ、貴女、しばらく会ってないうちにそんなことになっていたの?」
「そうよ、こ――――んなコトになっちゃってんの♪」
「あ、あ、貴女‥‥‥、これからどうする気なの!? そして貴男も!!」
お、俺っすか!? なんでそこで俺? 黒猫お前、重大な誤解をしているぞ。
何で桐乃も思わせぶりなことを言うんだよ。黒猫は完全に誤解しているぞ。
「ばっかじゃ――――ん。あんた、ナニ勘違いしちゃってんの?」
桐乃は、狼狽した黒猫の様子を目の当たりにして満足したのか、
つかさちゃんのことを黒猫に説明した。
「なるほど。しかし貴女のようなスイーツと先輩のようなシスコンのもとに
大事な娘さんを預けるなんて、親御さんも大変なチャレンジャーね」
「うっさいなあ。あんたには関係ないでしょ。
こんな女みたいに厨二病を拗らせちゃダメよ、ねえ、つかさちゃん」
「つかさ?」
「そ。この子の名前。つかさちゃん」
「可愛い‥‥‥」
黒猫、お前もか! もしかして、つかさって魔性の名前なのか?
黒猫死ね
「さあ、つかさちゃん。ご飯の時間よ」
桐乃がつかさちゃんの食事の準備をしている姿を見て、黒猫が口を挟んだ。
「ちょっと貴女、それは一体何?」
「え? つかさちゃんの離乳食だケド?」
「出来合いの離乳食もいいけど、せっかく食材が揃っているのだから作りなさいよ」
オイ、黒猫!? 桐乃に食事を作らせる気か?
コイツの料理の腕前は、チョコを人間の体調を崩すシロモノに変換できるレベルだぞ。
つかさちゃんの離乳食を作らせるなんてトンでもない!
「それ嫌味? あんた、アタシの料理の腕を知っててそんなコト言ってんの?」
良く言った桐乃! 自分自身のことを把握できるってなかなかできないぞ!
「あら、そうだったわね。なら退きなさい。私が作ってあげるわ」
「ナニこの女、ムカツク!」
黒猫は桐乃を差し置いて、キッチンで離乳食を作り始めた。
桐乃の怒りはもっともだが、この状況では分が悪すぎる。
ここは黒猫に任せるしかないだろ。
それにしても黒猫は料理の手際が良さそうだ。妹が居ると言っていたが、
面倒を見ているうちに料理の腕も上達したんだろうな。桐乃とはえらい違いだ。
その桐乃は渋い表情をしながら、しかし遠巻きに黒猫が離乳食を作っている
様子をしっかりと伺っていた。
しかし‥‥‥、黒猫がキッチンで離乳食を作っている後ろ姿ってのは、
どう見ても黒魔術系統の妖し気なモノを作っているようにしか見えない。
呪いなんかこめるんじゃないぞ。
「どうかして? 先輩」
黒猫が包丁を片手に振り向いた。いや、何でも無いっす。
「さあ、できたわよ」
黒猫作の離乳食が出来上がった。
離乳食のことなんて全然解らないが、意外にも彩りのあるモノに仕上がっていた。
これなら目で見ても興味を引く食べ物だろうな。
「こうやって食べさせるのよ」
黒猫は自分の膝の上につかさちゃんを座らせ、スプーンで離乳食を食べさせた。
おお、食べてる食べてる。つかさちゃんも満足そうだ。
それにしても、ゴスロリルックの黒猫が赤ん坊を膝に離乳食を食べさせている
なんて物凄く異様な光景だ。
だが異様なのは見た目だけであって、手際はそつなく完璧と言いたい。
桐乃はそんな黒猫を前に立つ瀬が無いような状態だった。
「なによ、調子に乗っちゃって」
遂に切れた桐乃がリビングから出て行ってしまった。
この程度で拗ねるなんてらしくない、と思いつつ俺は桐乃を追って階段を上った。
「オイ桐乃、どうしたんだよ?」
「別に。後から割り込んできたあいつが気に入らないだけ」
やっぱりな。家事が弱点の桐乃にはこの状況は辛いのだろう。
麻奈実に大惨敗したときも物凄く不機嫌だったし。
「オマエだってこれから練習すれば料理くらいできるようになるさ」
「本気でそう思っている?」
ああ。オマエは努力して何でもできるようになっただろ?
料理くらいできるようになるさ。
「じゃあ、練習につき合ってくれない?」
―――えっと、それはつまり、作った料理の試食を俺にしろと?
はいはい。つき合いますよ。いつかはな。
俺と桐乃はリビングに戻ることにした。階段から降りると、
リビングから聞こえた声に俺たちはドアの手前で立ち止まった。
「ちゅかさちゅわ〜ん、あなたはなんてきゃわゆいのお?」
「「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」」
俺と桐乃はそれぞれ自らの耳を疑った。リビングに居るのは黒猫とつかさちゃん
しかいない。つかさちゃんがあんな言葉を発するはずが無い。
となると今の赤ちゃん言葉は‥‥‥
バンッ
俺と桐乃はリビングのドアを勢い良く開けると、そこにはネコ耳と尻尾をつけ、
ネコ踊りをしてつかさちゃんをあやす黒猫が居た。
「「「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」」」
俺たち三人は固まってしまった。
「ち、違うのよ、これは。この子が喜ぶものだからつい‥‥‥」
「あんたさあ、一体何やってたのお?」
桐乃がニヤニヤしながら黒猫に尋ねる。
「さあ、今度は貴女がおやりなさい」
「は? 何を?」
「決まっているじゃない! 貴女がつかさちゃんに食べさせるのよ」
「うぇっ!? アタシがやんの? つーか、しれっと流した!?」
「当然でしょ。これから何日か面倒を見るのでしょうから、貴女もしないと」
桐乃は黒猫と交代し、恐る恐るつかさちゃんを膝に座らせ、離乳食を与えた。
おお、意外にサマになっているじゃないか。
茶髪ヤンママの子育てにしか見えないのは俺好みではないが、悪くないぜオマエ。
ただ、そのだらしないデレデレ顔だけは何とかしてくれよ。
「ふええええん」
食事を終えたつかさちゃんがいきなり泣き出した。一体どうしたんだ?
「おむつのようね」
黒猫が平静な声で言う。
「何でわかるんだ?」
「このくらいのことは、妹のときに経験したからわかるのよ」
「そうか。じゃあ替えないとな」
俺はおむつを用意し、取り替えるためにつかさちゃんの服に手をかけた。
だが右腕を桐乃に、左腕を黒猫に掴まれた。
なんだ一体?と思って二人の顔を見ると、とても冷たい感じの四つの眼差しが。
そして、
「「女の子!!」」
あ、そうか。そうだよな。忘れていたぜ。いや、本当だぞ。勘違いするなよ?
「シスコンを拗らせてロリコンになったワケ? 信じらんない!」
「さすがの私もそこまでは予想できなかったわ。通報して差し上げましょうか?」
そして俺は二人にリビングから叩き出された。
黒猫の変態を見るような目と、桐乃の変態を見る目がとても痛かったぜ。
おむつ替えが終わった頃を見計らってリビングに戻ると、いつもの桐乃と黒猫が。
「この子の将来は立派なオタクにするべきよね」
「何を言い出すの貴女は?」
「だって、英才教育は赤ちゃんの頃からって良く言うじゃん?」
「それは芸術とかスポーツとかの話でしょう!」
「そう、芸術。メルルは立派な芸術じゃん?」
「これだから貴女は。あれのどこが芸術だというの? マスケラこそ真の芸術よ」
「言ってくれんじゃん! マスケラなんて厨二病アニメじゃないの!」
このアニオタ共、また言い争いを始めやがった。つき合ってられねえよ。
見ろ、つかさちゃんもオマエらの不穏な状況を察したのか、
不安そうな顔で俺にしがみついてきているぞ。
それにしてもこの子、可愛いよな。子供タレントになれるんじゃね?と思うほどだ。
ちょうど、テーブルの上にリボンがあるな。コレを髪につけてみると‥‥‥
うん、思った通りだ。とても可愛い。
そしてこの子の親が置いていったクマのぬいぐるみと並べてみると‥‥‥
おおおおおお、まるで絵に描いたような可愛さktkr!
そうだ、アレもあったんだよな。じゃあ、試しに‥‥‥
「ホント、邪気眼にはつき合ってらんないわ!」
「貴女こそ、あの駄作を過大評価するのはお止めなさい。それが世のためよ」
「じゃあ、つかさちゃんにメルルとマスケラのどっちが好きか聞こうじゃないの!」
「望むところよ。せいぜい覚悟しておくことね」
つかさちゃん、マジ可愛い。こんな娘が居たらデレデレの毎日が送れるだろうな。
などと、つかさちゃんとの世界に浸っていた俺は桐乃の声で現実に引き戻された。
「ねえ、ちょっとつかさちゃんに話があるんだケド」
ヘッ!? な、何すか、いきなり?
「話って、い、今すぐじゃないとダメなのか?」
「ハァ? 今すぐじゃダメな理由があんの?」
「い、いや、そんなことはない‥‥‥」
「じゃあ、いいじゃん!」
桐乃は猫撫で声でつかさちゃんに話し始めた。
「つかさちゃぁん、メルルとマスケラのどっちがぁ‥‥‥」
その声に反応したつかさちゃんが桐乃と黒猫の方を振り向いた。
俺、オワタ\(^o^)/
「ぬあっ! な、なな‥‥‥!!」
「‥‥‥あり得ないわ!!」
桐乃と黒猫はつかさちゃんの顔を見て引きつった。
俺がつかさちゃんにおもちゃのメガネをかけていた最中に桐乃と黒猫に
割り込まれたんだな。うん、とてもメガネが似合っていたと思うんだ。
「どうだ!? つかさちゃんってメガネが似合うだろう?」と言いたかった。
そして俺は二人に家から叩き出された。
黒猫のゴミを見るような目と、桐乃のゴミを見る目は一生忘れられないだろう。
熱りが冷めたであろう頃、俺はこっそりと玄関から家に入り、
リビングの様子を伺った。
さぞかし険悪な雰囲気になっていると思いきや、笑い声が聞こえる。
つかさちゃんは、桐乃がメルルを見せると手を叩いて喜ぶ仕草をし、
黒猫がマスケラを見せるとクイーンオブナイトメアのようなポーズをした。
そんなつかさちゃんを見て桐乃も黒猫も二人とも大喜びだ。
この二人がキャッキャッ言いながら談笑するんて、悪いことの起こる前触れかよ、
なんて思えてしまう。
つかさちゃんは、すっかり二人のアイドルになってしまった。
子供パワー恐るべしってところか。
それから1週間後―――
つかさちゃんの両親が退院し、つかさちゃんも帰って行った。
桐乃は名残惜しそうな顔をしながらつかさちゃんを送り出した。
お袋から最初に話を聞いたときは面倒だと思っていた俺も桐乃と同じ気分だった。
「アタシもいつかはあんな娘が‥‥‥」
桐乃が呟いた。
そうだな。オマエなら結婚してくれと言ってくる男なんて山ほど出てくるはずだ。
そしてつかさちゃんのように可愛い子を授かることもできるだろう。
そして俺にもいつかはあんな子を‥‥‥と思いに耽っていると、
「ねえ、つかさちゃんって世界一可愛かったよねえ♪」
デレデレ顔丸出しの桐乃が話しかけてきた。
「‥‥‥そうか?」
「え? ナニよあんた!? つかさちゃんが世界一じゃないって言うの?」
「世界一は言い過ぎだろ?」
「フン! アンタにとっちゃ黒いのや地味子、あやせが世界一なんでしょ!」
桐乃はいきなり不機嫌になった。
「そんなこと言ってないだろ」
「言ってんじゃん! ムカツク!!」
「違うぞ。俺にとっての世界一可愛いってのは‥‥‥」
俺にとっての世界一可愛いってのを頭に思い浮かべた。
だが、その思い浮かべたことが顔に出るんじゃないかと思うと、
世界一こんなに可愛いヤツのことなんて、話せなかった。
「なんでもねえよ!」
「最ッ低――――!!」
バンッ!!
桐乃は玄関に飛び込んでドアを乱暴に閉めた。
「やっぱり可愛くねえ‥‥‥か」
『娘めいかあEX』 【了】