【ととモノ。】剣と魔法と学園モノ。11【エロパロ】
スレ立て乙。
前回ドワ男の抜け毛とかかまして後悔したので
>>1にはこれをやろう
ニアししゃも(ただしカペリン)
スレ立て乙であります
保守。
皆年明けで忙しいかな?
留年に見えた。学園モノ。だからか?
6 :
[sage]:2011/01/11(火) 02:06:37 ID:ZetCt2hn
今更ながらあけおめでございます。以前『使用人』でGJをもらって調子に乗った輩です。
年明けの忙しい時期ゆえか、ここのところ閑散としていますね。
今回は枯れ木も山の賑わいということで、一つ投下しに来ました。
セレスティア♀×ヒューマン♂です。楽しめるものでありますように……。
7 :
名無しさん@ピンキー:2011/01/11(火) 02:08:44 ID:ZetCt2hn
私の部屋の中には、香の放つ香りが淡く立ち込めていました。私がそうしておいたのです。ルームメイトが帰ってくる心配はほぼありませんでした。
鼻から脳に直接入り込んでくるような妙な香り。その中で、私は後ろから、座っているヒュマ君の首に抱きついていました。できるだけ体が密着するようにしながら。
彼が何故私の部屋にいるのか。それについては説明する必要はありません。半分の偶然と半分の意図、と言っておけば十分です。
彼は体を強張らせ、何だよ、と唸るように言いました。うろたえているのは明らかでした。すぐに部屋を出て行かなかったことを後悔しているようでした。もっとも、出て行かないように私が引き止めていたのですが。
本当に良いのか、という疑問がなかったわけではありません。しかし、そんな道徳心は最早ほとんど力を失っていました。(小さなものとはいえ)教えに背くような行いなど、今まで密かに、何度もしてきたのですから。ましてや、私の髪は赤いのです。
嫉妬の末に弟を殺したカイン。お金と引き換えに主を敵に引き渡した、イスカリオテのユダ。オーディンの統べる世界の破滅の引き金を引いたロキ。彼らは赤い髪だったという話もあります。私の頭は裏切りの色に染まっているのです。
私が神とか主とかいう抽象的な存在の力を本気で信じたことなど、恐らくそれ程ありません。模範的信者であった父の気を引きたかっただけです。
仮にも修道女の身でありながら、私は自分を律することを放棄しました。それを知れば、父はどんな顔をするでしょう。あの慈悲深く厳格な、天使という表現の似つかわしい表情をどう動かすでしょう。
離してくれ。彼は呻くように言いました。私は挑発するように言いました。離さなかったら、どうなるの。言いながら、彼の首筋に唇をあてがいました。
彼が身震いするのを感じます。ああ、やってしまいました。もう後戻りできません。私のしていることは、いわゆる“早まった真似”です。
彼は家出少年同然の身の上です。卒業後の展望も持っていないようです。しかし私を慈しんでくれていることは信じられます。今のままの彼なら、卒業後間違いなく途方に暮れるでしょう。
そんな彼を家(父の教会)に連れ込んで、父の前で誓いを立てればいいのです。理性的なヒュマ君は、それまで貞節を守ってくれるでしょう。彼はそれほど性欲は強くないようですから。彼が許せば、私達はスムーズに結ばれるでしょう。
……しかし、私の方が待ちきれませんでした。あの男に犯されたあとから、私はどこかおかしくなっていたのです。彼が私と似たような思いでいると、一刻も早く証明したくてならないのです。私の心臓が荒々しく訴えています。
“人は父母を離れて妻と結ばれ、二人は一体となる。二人は最早別々でなく、一体である。神が結び合わせてくださったものを、人は離してはならない”。(新約聖書 マルコによる福音書10章7〜9節)
繋ぎ止めてしまえ。今すぐに。私だけの彼にしてしまえ。優しい彼が、他の誰かに繋がれる前に。
8 :
名無しさん@ピンキー:2011/01/11(火) 02:09:45 ID:ZetCt2hn
「言っちゃあ悪いが、お前、あぶれ者か?」
私は躊躇いましたが、結局うなずきました。全くその通りだったのです。私は学校のにぎやかな雰囲気にまごつく田舎ものでした。ましてや実家では、司祭である父を見習う修道女でした。最初のパーティーの子たちにとって、私はあまりに堅物に映ったのでしょう。
「なら俺と組め。あぶれ者を集めてパーティーにしちまおうぜ」
そう言って、ヒュマ君は私の手を引っ張っていきました。見るからに途方に暮れていた私を見かねたのでしょうか。彼にはそんなところがあります。口が悪くて不真面目で、不良のように見られることもあるけど、基本的には親切なのです。
彼がいなければ、私はドラッケンに在学し続けられたでしょうか。雑多な若者たちのひしめく異様な熱気に気圧されて、逃げ帰ってしまったのではないでしょうか。彼はどういうわけか、会ったときから私にとても親切でした。
どうしてお前は、いつもそんなに真剣なんだ。彼は私を後ろから抱きしめながら、いつになく真剣な口調で、呻くように言いました。
頑張れって言えば、本当に何にでも全力でかかりやがる。手を抜こうとか思わないのか。誰が褒めてくれるってんだ。
決まってるよ。ヒュマ君に見放されたくなかったから。私はヒュマ君の親切のおかげで今もここにいられるの。怖いことはいっぱいあったけど、その度にヒュマ君が励ましてくれたの、知ってる。だから……。
彼の腕に力がこもりました。
お前がそんなんだから、俺も怠けらんねえんじゃねえか。いっつも、真剣な奴をからかって、自分のいい加減さを誤魔化してきたってのに。お前が頑張ってると、自分が情けなくなる。お前がどこか抜けてるから、尚更放っとけねえ。
彼の声は切実でした。彼がこんな危険の付きまとうところに転入してきたのは、ひとえにお父さんから離れたかったからだそうです。確固たる目的のために邁進できない自分を惨めだと言いたかったのでしょうか。
これは三学園交流戦の後のことだったはずです。彼がどこかのパーティーの人と喧嘩して、どちらが多くターゲットを倒せるか競うことになったのでした。結果的には私たちの勝ちでしたが、彼が無理な突撃を繰り返したので全滅しかけたこともしばしばでした。
そのことを私に謝っているうちに、こんな話になったんだと思います。初めて唇を交わしたのはこのあとでした。
このとき私は、珍しく本気で神の見えざる手の存在を信じたくなりました。家出同然でここに来たのは、私も似たようなものです。
9 :
名無しさん@ピンキー:2011/01/11(火) 02:10:52 ID:ZetCt2hn
父は優しく、美しい人でした。あんな人に娘として扱ってもらえる私は、恵まれているといっていいでしょう。正直に言うなら、恐らく父は私の初恋の人です。
孤児院に定期的に訪れ、聖書の物語と主の教えについて説くセレスティアの牧師。主は、天の父は、全ての人の救い主、創造主であり、全ての人を愛しておられる。もちろん、あなた達の事も。
主は目に見えなくても、いつもあなたの傍にいて、あなたの喜びや苦しみを知っています。自分を慰めてくれる人、助けてくれる人を思い浮かべることがありますか。それこそが、あなたの主、神なのです。主は決してあなたを見捨てることはありません。
私も人間である以上、私を産んだ親というものがいるでしょう。しかし、その人たちについて覚えていることなどありません。
辛いとき、悲しいとき、私がすがれるものは空想と物語だけでした。しかし、空想の中の救い主は具体的な姿を持ちません。私の傍には、常に寂しさが付きまとっていました。孤児院の子供は皆そうです。特定の一人として愛されることに飢えているのです。
私は牧師の教えに一際興味を示しました。主はいつも共に歩み、共に苦しみ、共に喜んでくれる同伴者。私がどれだけ惨めで落ちぶれていても、一緒にいてくれる人。私は牧師にしがみついて、そんな優しい物語を無心にねだりました。
それが高じた結果か、彼は私の父となりました。私にそれを告げたときの父は、まさしく私に遣わされた天使でした。痛いときは撫でさすり、寒いときは抱きしめ、悲しいときは慰めてくれる、私のメシア。
しかし正しい信仰者たる父の愛は、万人に向けられたものでした。特に、醜い人や落ちぶれた人に。美しいものを愛することは誰にでもできる。誰からも省みられない惨めな存在を見捨てないことこそが愛なのだと、父は説きます。
それは間違いなく父の美点ですが、私は気に入りませんでした。
だったら、もっと私に構ってくれないものでしょうか。私は親に捨てられた惨めな境涯の者です。あなたはそれを憐れんで、私を迎え入れてくれました。もっと長い間近くにいて、触れていてもらいたいのです。
苦しみも喜びも共にする、魂の同伴者としての主。しかし、飢えてばかりいた私にとって、現に存在しないものだけで満足するのは無理というものです。不寛容な旧約聖書も、統一性のない新約聖書も、私の心には響きません。私の信仰の対象は主ではありません。
父は私を、惨めで寂しい所から拾い上げてくれました。しかも、主や神と違って確かに存在しているのです。私は父を独り占めしたかったのです。見も知らない人たちのために祈り働く時間を、私を愛でることに使ってほしかったのです。
これでは孤児院にいた頃と大して変わりません。面倒を見てやっている餓鬼どもの一人が、愛すべき全ての人々の一人になっただけ。他の誰でもない特別な一人ではないのです。しかし、私の望むような扱いを、父は“差別”“偏愛”として戒めるでしょう。
所詮私は跡取りになることを期待されただけなのでしょう。しかし今となっては、白い翼を背負う誇りと責任など、どうでもいいことです。いくら天使を真似ても、私の脆弱な肉体は欲望を訴えるのですから。ああ、お父さん……。
10 :
名無しさん@ピンキー:2011/01/11(火) 02:11:42 ID:ZetCt2hn
あれは仕方のない取引でした。止め処ない敵の増援。前後も左右もない乱戦。全てが終わったときに立っていたのは私一人でした。魔力はほとんど残っていませんでした。
ヒュマ君達の亡骸を見下ろしながら、私は途方に暮れました。私の戦術はドクター/シスター。完全な支援役です。迷宮を一人で脱出できる気などしませんでした。札の類は用意してありましたが、敵の火炎攻撃でポーチごと焼け落ちていました。
そこに二人連れの男が現れたのです。恐らく本職の冒険家でしょう。私は即座に助けを求めました。男達は快く応じてくれました。すぐに一人が何人かの死体と共にバックドアルを唱え消えました。
私は残った一人と、払う対価について交渉しました。お金は思いの外ありましたし、戦利品もよりどりみどりでした。男はそれらに心を動かされなかったわけではなさそうでした。しかし最終的に彼が求めたのは、お金でも物でもない、私の体でした。
これは仕方ない取引でした。あのまま私も斃れてしまえば、本当の死人が出ていたでしょう。二十年ほど前までのような“ロスト”の脅威は稀になったとはいえ、死体を食べられれば蘇生の儀も役に立ちません。
大体、私に処女を重んじるこだわりはありませんでした。男達の手つきは気遣わしげで、不覚にも私は、多少なりとも感じてしまいました。避妊もしっかりしてくれたのですから、なんとも良心的なものです。たまに聞く酷い話を思えば、とても幸せな例でしょう。
まさか主(あるいは父)も、この取引を罪深い姦通だとは言わないでしょう。もし言うなら、私の脆弱な信仰は今度こそおしまいです。問題はその後の私です。
事件による憂鬱が冷めてきてから、私の思考に一つの妄念が侵入しました。私を犯すあの男がいつしかヒュマ君に入れ替わっているのです。
その妄想はひとたび現れると私の中にしつこく居座り、いつしか夢にまで見るようになりました。そして夢から覚めた私は、生臭く濡れた体を清めながら、痛悔の祈りを唱えるのです。夢の中とはいえ、淫らな悦びを貪ったことに。
しかし、私は生まれてからずっと信仰者として洗脳されてきたわけではありません。洗礼を受けた頃には、ある程度の自我を持っていました。白い翼に恥じない正しい人であろうと自分を律するほどに自覚するのです。欲望は満たされるまで尽きません。
父は私の望みを満たしてくれる人ではありませんでした。そしてヒュマ君が、私の願いに一番近いところにいます。彼は私をどう思っているでしょう。私に何を望んでいるでしょう。あの男でも、多少なりとも気持ちよかったのです。ヒュマ君だったら……ああっ!
11 :
名無しさん@ピンキー:2011/01/11(火) 02:12:32 ID:ZetCt2hn
図書室兼王立図書館の奥のほうであの本を見つけたのが運の尽きでした。学者が時々入るぐらいの図書室の深部で、私は古い蔵書を軽く物色していました。多くは旧弊だったり難解すぎたりで、さして気になるものではありません。
そんな中、ある棚の中で一際妙な存在感を放つ書が目を引きました。周りに並ぶ本に比べてやけに古びていますが、防腐処理がされている様子はありません。発行年や著者名さえ記されていないのは、異様と言うほかありません。
その異様な書を、私は意味もなく開きました。開かれたページには、レシピと図が記されていました。それは薬の調合法でした。材料は容易に手に入るものばかりで、大掛かりな設備や手順も必要としませんでした。
その効能を読んで理解したとき、私の中で例の妄念が渦巻きだしました。脳裏にある短編小説の一節が浮かび上がります。
私は天の父にわかって載かなくても、また世間のものに知られなくても、ただ、あなたお一人さえ、おわかりになっていて下さったら、それでもう、よいのです。
私は、ただ、あの人から離れたくないのだ。ただ、あの人の傍にいて、あの人の声を聞き、あの人の姿を眺めて居ればそれでよいのだ。
そうして、出来ればあの人に説教などを止してもらい、私とたった二人きりで一生永く生きていてもらいたいのだ。
あああ、そうなったら!私はどんなに仕合せだろう。私は今の、此の、現世の喜びだけを信じる。次の世の審判など、私は少しも怖れていない。
あの人は、私の此の無報酬の、純粋の愛情を、どうして受け取って下さらぬのか。(太宰治『駆け込み訴え』)
父は私に温かな慈愛と、安心できる場所をくれました。その恩はとても言葉では尽くせません。しかし、それ以上を求めることは許してくれませんでした。
父の温かな胸に身を預けながら、父の読む『賢者の贈り物』を聞いていたとき。あの時感じていた体温の心地よさを、私は忘れることが出来ません。
成長した今、父はむやみに体を触れ合わせることを避けます。揺り椅子に座る父に後ろから抱きついてみると、父は少し表情を曇らせてたしなめます。もう子供じゃないだろう、と。
ええ、子供じゃありません。血縁関係でもありません。密着した体から体温を感じると、硬く尖った乳首が下着に擦れて痛むのです。私の夢を乗っ取るインキュバスが誰の姿を借りているか、言ってあげましょうか?
ソドムとゴモラの町から逃げたロトが山の中で何をしていたか、ご存知でしょう。彼の娘達は妻を失った父に酒を散々飲ませて、父との間に子を成してしまいました。血筋を絶やさないためには、近親相姦も許されるのですか。
だったら、私がこの娘達の真似事をしたら、お父さんは許してくれますか?望むなら、何人でも産みますよ。そしてその子を、純然たる使徒として教育するといいでしょう。
……けれど、それは父の聖性を落とすことにもなりかねないことです。私の信仰の対象は、恐らく初めから天主やあの磔の人ではありません。あまりに綺麗な父を汚したくないという矛盾した思いが、私をドラッケンへ逃げさせたのでしょう。
12 :
名無しさん@ピンキー:2011/01/11(火) 02:13:55 ID:ZetCt2hn
『一人の天使が、先が火になっている長い黄金色の槍で、何度もこの身の一番深いところまで刺し貫きました。天使が槍を引き抜いたとき、私は彼が臓腑諸共もぎ取ってしまうのではないかと思いました。
天使が離れてゆくと、私は神への熱い愛の炎の中で燃えていました。痛みは時に呻き声を堪えかねるほど激しく、さらにその痛みの甘さは、何人もそれを失おうなどとは考えられぬほどに絶大でした』
信仰と恋愛には似たところがあります。どちらも相手が自分に絶対的な安心、満足を与えてくれることを期待しているのです。神/恋人は常に自分の味方であると。
だとすれば、この聖女の見た幻想が彼女の情欲の表れだと言っても、責められはしないでしょう。この神秘体験を言い表す言葉から、清らかなイメージを引き出せますか?緩んだ口から熱っぽい息を吐く、聖女のいやらしい姿が目に浮かぶようです。
とはいえ、さすがは神学博士です。私では、あの時ヒュマ君の腕の中で感じていたことを、こんな風に表現できません。
香の香りは随分濃くなり、室内の空気は淀んでいました。淀んだものがどろどろと鼻から入り込み、思考を溶かしていくようです。
私は火のように熱くなったヒュマ君の槍で、一番深いところを何度も貫かれていました。それが奥を突くと呻き、引き抜かれると喘ぎました。痛みは感じませんでした。幸か不幸か、すでに膜はありませんでしたし、その他の痛みも香の香りで麻痺していました。
醜いほどに膨れ上がったヒュマ君のあれは、私の中から溢れ出る蜜液でぬらぬらとしていました。それが私の中をゴリゴリと擦るたびに、私はあそこと脳髄を焼き切られるような感覚に襲われました。
口は酸素を求めて開いたままでした。ヒュマ君の激しい愛撫に体の震えが止まらず、声や唾液を漏らし続ける口は思わしい呼吸ができません。体は息苦しさと疲労に悲鳴を上げています。なのに、私はその二重苦が続くことをひたすらに望んでいました。
ヒュマ君は仰向けの私の上に覆いかぶさり、引き裂いた服の胸元からこぼれ出た乳房を弄んでいました。彼の手が粘土細工のように乳房を握りつぶすたびに、そこから甘い波紋が全身に広がっていくようです。
上では鎖骨や首筋、乳房をいいようにされ、下をひっきりなしに擦られている、まさにされるがままの状態。全身を襲う激しい震えと圧迫感の中、私は悲鳴を上げて気を失いました。
13 :
名無しさん@ピンキー:2011/01/11(火) 02:15:01 ID:ZetCt2hn
ヒュマ君には父のような高潔さも美しさもありません。講義への遅刻やサボりは日常茶飯事。実戦に出ているとき以外は、大体のんべんだらりとしているか、パーティー外の悪友とくだらない遊びに興じているかです。
お父様との冷えた関係で苛立っていたせいか、権威的なものに逆らおうとするような傾向が見られます。しかし個人的に困っているような人(特に女の子)には、それとなく助け舟を出してみたりするのです。
私と出会ったのも、そんなお節介の一つでした。一匹狼を気取りながら、なんだかんだでお人よしなのです。不良っぽく振舞ってるのに、可愛くて、頼もしい人。
私はヒュマ君にどれだけ助けられたんでしょう。彼に続く、パーティーの二人目にしてもらったこと。ヒュムちゃんに声をかけるよう背中を押してくれたこと。日々を楽しくするために色々と持ちかけてくれること……。
ヒュマ君のいないここでの生活など、想像もつきません。ここに来てからの私の思い出の半分以上にはヒュマ君がいます。冒険者らしいことをやり始められたのも彼のおかげです。私のドラッケンでの暮らしは、ヒュマ君のおかげで始まり、維持されているのです。
これはまさに父(を初めとした良き信者)にとっての主と天主に等しいものにすら思えます。誰にも醜さを見せない模範的な父は、堅い信仰によって成り立っている(ように見える)のですから。
ヒュマ君は私を“彼女”として扱っています。しかもそれは彼から言い出したことです。ディアボロスさんに私達の仲がばれてからかわれたとき、彼は開き直って言い放ちました。
「俺の天使を困らせるなよ」
……ヒュマ君にとって“天使”に大した意味はないでしょう。彼に信仰などないはずですから。そう自分に言い聞かせても、落ち着くことができませんでした。私にとっての天使のイメージとは、私を拾い上げてくれた父のそれに他なりません。
私にとって、ヒュマ君はあまりに都合の良い存在です。彼は私にとって父の代わりのような存在となっています。しかも、人間の匂いの薄い父よりも遥かに御しやすいのです。
『……そのように夫も、自分の体のように妻を愛さなくてはなりません。妻を愛する人は、自分自身を愛しているのです。(新約聖書 エフェソの信徒への手紙5章21節)』
私は誰かを独占し、かつその人に独占されることをずっと夢見ていました。誰とも同列にされない、特定の個人として特別扱いされたかったのです。そして“互いに仕え合い”たかったのです。父は一人だけに仕える気などありません。
父の人物と活動が国に認められ、家は国の支援を受ける正式な教会となりました。すると父は、私のような孤児を新たに何人か引き取ったのです。私は父にとって無二の存在(偏愛の対象)にはなれなかったようです。
私はその子達のお母さん役となりました。それはいいのです。子にとって母親は代わりの効かない重大な存在です。いつも父にいたわられていた身としては、“弟妹”たちに頼られ慕われるのは至上の喜びでした。しかし、彼らは独占されることを望みません。
ヒュマ君との健全な逢瀬を密かに重ねながら、私はじりじりとしていました。もっと強く求めて欲しいのに。いっそ強硬に無理やり襲ってきてもかまいません。それだけ私を欲しているなら。
私と自身を愛している、好きにしたいと、この身に容赦なく刻み付けて欲しかったのです。彼には自分自身を愛して欲しいのです。その上で、私を慈しんで、貪って欲しいのです。捨て鉢になった彼など、考えたくもありません。
14 :
名無しさん@ピンキー:2011/01/11(火) 02:19:30 ID:ZetCt2hn
私は甲高い叫び声を上げながらのけぞりました。ヒュマ君は立ったまま私を後ろから激しく貫いていました。手は私の手首を掴んでいます。
脱がされた服が腕や翼から抜かれず、手を後ろに縛られたようになっています。私は立ったまま上半身を後ろに反ったような態勢でされていました。
私の奥にはさっき出された熱いものが残っていますが、それが出きらないままに彼は再び挿し込んだのです。中の液体が彼のものでかき混ぜられてぐちゅぐちゅと音を立てています。
突き上げられるたびに、私の喉は恥ずかしいぐらい甘い声を吐き出し、乳房が衝撃で上下に揺れます。突き上げが激しくなるほどに声も揺れも大きくなります。
私のどこからこんな声が出るのでしょう。それは普段なら出そうとしても出せそうにないのに、紛れもなく私の声と思えるものでした。なんて緩みきった声でしょう。痛がっているのか悦んでいるのか分かりません。いや、両方なのでしょうか。
乳房はいろんな意味で敏感なところです。音さえ聞こえそうなほどに激しく揺れては、相当痛いはずなのです。なのにあの柔肉が大きく上下するたびに、私は狂おしいほどにその感覚を悦んでいました。痛みさえ快楽になっているのでしょうか。
お尻に彼の体重がかかり、私は倒れこむように膝をつきました。上半身がベッドの上に投げ出されます。あそこはつながったままです。膝への衝撃が結合部に刺激を与え、二人とも思わず悲鳴を上げました。
彼は私の拘束された腕の片方を取り、引っ張り上げました。ベッドに寝そべった上半身を横に起こした形になります。その態勢で律動が再開されました。
私はじっとりと汗ばんだ右手でシーツを掴みながら、されるがままになっていました。彼の前後運動が先にも増して激しくなります。私の体は無意識に震え悦び、びくびくがくがくと揺れています。
揺れの激しさのあまり、乳首がはみ出しました。散々弄られて乱れた下着は乳房の拘束を甘くしていたようです。硬く尖って突起のようになっています。死にたいほどに恥ずかしいです。
意識を揺さぶる激しい刺激が、爆竹のように炸裂してからどろどろと波及していきます。気持ちよくて恥ずかしくて、全身が溶けてしまいそうです。いっそこのまま溶けてしまったほうが幸せかもしれません。あっ、やだっ、ヒュマ君、ヒュマくん、ヒュマくぅん!
15 :
名無しさん@ピンキー:2011/01/11(火) 02:20:15 ID:ZetCt2hn
ヒュマ君はきっと心細いのでしょう。だって唯一の家族であるお父様との仲が悪いんですから。よほど苦しい状況にない限り、家族はその人を愛してくれます。さしたる理由がなくても良くしてくれます。
そういう人が自分の帰るところを確保してくれている。それがどれほど人の精神を安定させるか。分からないなら幸せすぎるか荒んでいるかです。
ヒュマ君は休暇中も家に帰ろうとしません。こっちにいるほうが楽しいから、休み中も鍛えたいからという人も確かによくいます。けれど、ヒュマくんの第一の理由は、お父様と顔を合わせたくないからでしょう。家庭の話になると、彼は暗い顔で口を閉ざします。
彼を一人根無し草にするのはあまりに危険です。私にとって彼は恩人ですから、むざむざ孤独の無間地獄に放り出したくはありません。人には帰る場所が必要なのです。自分をはっきりと肯定してくれる人がいなければ、この世は地獄以外の何者でもありません。
私は彼を独り占めにしたい、というより、独り占めにすることを認められたい。もし彼が自分を受け入れてくれる人を欲しているなら、私達の利害は一致します。
私は父に求めて得られなかった快楽を、彼に見出しました。父からは平安を、“弟妹”たちからは誇りを、ヒュマ君からはいたわりと個人的快楽を。
私はヒュマ君に平安を与えたいのです。彼を安らぎに満ちた家に迎え、お父様と仲直りさせたいのです。そして心置きなく、私と……。ああ、主よ。私の貪る卑しい悦びを、遊びのためだけの姦通などと思わないでください。
あの男達との行いを、私は悦んでなどいませんでした。肉体の快楽と精神の快楽は同じものではありません。私がはしたなく乱れるのは、私を弄んでいるのがヒュマくんだからです。他の誰でもいけないのです。
あの奇妙な書に記された薬の効能は、私の望みを具現化したようでした。服用した人同士が、相手に秘めていた感情を発露させるというものです。どのような感情を表すかは、調合する材料によって変わってきます。
私はこの薬を、嗅いで服用する香料のようにして調合しました。刺激するのは愛欲。“愛欲”には性欲の他に、対象(特に妻子)への強い執着という意味もあります。私をどうする気もなければ、何も起きません。
私は、ヒュマ君と私との精神的なつながりを確認したかっただけなのです。その夜の行いで彼の想いが冷めてしまうなら、所詮それだけのことだったということです。男性の恋愛感情は、性交を頂点としてその後は急降下……などという話もありますし。
しかし、ヒュマくんなら恐らくそんな不誠実なことにはならないだろうと信じていたのです。それがより確かに信じられれば……、彼の愛撫はどれほどの悦びをもたらすでしょう。それは体だけの悦びではないのですから、放埓には入らないはず。
ああ主よ、父よ。今回のことは、どうか大目に見てください。これは楽しみのためだけの試みではないのです。互いに人生を預けあう契約なのです。
16 :
名無しさん@ピンキー:2011/01/11(火) 02:21:02 ID:ZetCt2hn
……はぁ、はぁ、はぁ……。熱いよ……。
……可愛い?……私?……可愛すぎる?
……!
鏡に私が映っています。一糸まとわぬ姿で、ヒュマ君に後ろから抱きすくめられています。眉や目尻がだらしなく垂れて、締りのない口の端からよだれが流れ落ちています。肌は淡い赤に染まり、一目ではそれが自分であると思えませんでした。
何ていやらしい姿でしょう。垂れた翼の上から回された手に、意外と大きい乳房をむにゅむにゅとこね回されて息を荒くしています。時折指が敏感になった頂点を挟むと、あっと甲高い声を上げて、びくりと体を震わせます。彼は私の胸が随分気に入ったようです。
あそこに至っては見るに耐えません。ヒュマくんの腰に座るようにして後ろから突き上げられています。私の中からは、色々なものが混ざった白い半透明の液が止め処なく流れ出て、植え付けられた彼のものを伝って流れ落ちています。
汗をかきすぎてぬるぬると光る私の肌に、さらに赤みが差していきます。この体はどうして溶けないのでしょうか。あそこなんて、もう自分のものとも思えません。
こんな姿が可愛い?普段なら素直に嬉しくて、照れくさい言葉。彼はなかなか背が高くて男前ですから、私はどこか引け目を感じていました。けれど、こんなのは……。
見ないで……。恥ずかしいよ……、あっ!
いやっ、あっ、ああっ!だめ、だよぉ、こんなの、あっ、こんなの、わたしじゃ、ああっ!
つまんじゃ、らめぇ、あっ!つ、つ、つよ、すぎるぅ、はうぅぅっ!
はぁ……、こ、こんな、……おっぱい、ばっかり……やあ!あん!も、もう、だめ、き、きもちよ、すぎるのぉ!
あっ、ああっ!羽根は、あっ、はねは、はねは、やめてえ!ひゃうぅぅっ!
だめぇぇ!あん、はぁぁぁん!か、かんじゃ、らめなのぉぉぉ!
あ、あ、あ、あんんんんっ!ごりごり、するよぉ!
いや、やだ、いやぁぁぁ!こわれちゃうぅ!へんだよぉ!あっ、あっ、あっ、あっ……。
ヒュマくん、ヒュマくん、ひゅまくぅん!い、あ、熱い、あつい、あつい、あついよぉ!
死んじゃう、しんじゃう、あっ、しぬ、しぬ、しぬぅぅぅぅ!
だめぇぇ、ヒュマくん、ひゅまくぅぅぅん!
17 :
名無しさん@ピンキー:2011/01/11(火) 02:21:51 ID:ZetCt2hn
朝になると、ヒュマ君に起こされました。体がだるいです。動く気になれません。……講義?今日はないけど……、ああ、ヒュマ君はあるの。
……さすがに出る?サボりすぎてる自覚はあるのね。……うん、時間の余裕はあるよ。
……あれ、私ベッドで寝てる……。後始末してくれたの?ごめんね……。
……え?……まあ、出来るだけ大丈夫そうな日にしたし、避妊剤も用法どおりに……。……あとは、天に祈るだけね。
……ねえ、もし出来ちゃったら……。……そう、やっぱり?……うん、私も、まだ早いと思う。
……え?……言わせないでよ、そんなこと……。……その、何て言えばいいのかな……。
……よかったよ、凄く。夢みたいだった……。
……うん、そうだね。しばらくはいいや。
……え?私?……まあ、溺れなければいいんじゃないかな。他が手付かずにならなければ。うん、たまになら、ね……。
……ねえ、……えっと、……いいや。面と向かって訊くことじゃないし……。
……え?言うの?……うん、……そうだね。
……ねえ、……卒業しても、一緒にいていい?
全身を覆う疲労感に、布団の柔らか味は最高の組み合わせです。しかし心地良い二度寝の前に、いくつか現実的な心配が持ち上がってきます。
彼を私の部屋に連れ込んだのは正解でした。ここなら制服の替えがあります。後で破られた服を修理しなければなりません。
温かな笑みと言葉、そして香りを残して去っていったヒュマ君。……ですが、服の着方はいい加減で、髪もあまり整っていません。見るからに疲れています。
そんな姿で女子寮の中をうろつけば……。彼はただでさえ問題児として教官や生徒会に睨まれています。女子寮内でそういう人たちに見つからないことを祈るばかりです。それと、できればパーティーの女性方にも。
父はヒュマ君をどう思うでしょうか。彼はきっと洗礼なんて受けません。……まあ、大丈夫でしょう。私たちが心から互いを敬い、心配していると分からせればいいのです。それが紛れもない誠意なら、父は何も咎めずに祝福してくれるでしょう。美しい微笑と共に。
私はまだ、ヒュマ君の全てを知ったわけではありません。今日の甘美な記憶が後悔の前触れにならないとも限りません。けれど、それは今心配しても仕方がないことでしょう。
……主よ。とくとご覧ください。私たちは、少なくとも今は、共にいる幸せを共有しています。それが真のものであるなら祝福を。そうでないなら相応しい裁きを。
あなたは理不尽を許さず、常に公平であると、私はまだ信じています。その公正なる目で、私たちの行く道を照らしていただきたいのです。道を外れたならば、……御心のままに。
来るべき時、彼との記憶が甘美なものとして思い起こされますように。あなたの正義が、私たちの行く末を平穏にするものと信じて、アーメン。
18 :
名無しさん@ピンキー:2011/01/11(火) 02:22:51 ID:ZetCt2hn
投下完了。お目汚しでないことを祈るばかりです……
GJ!背徳的なエロさが良かったです!
乙ー
先週から1を始めたんだが、バハム×ヒュマ子←フェア男に萌えてます。
1のバハムの立ち絵の格好良さは半端ないと思うんだ
GJ。
シスターのセレスティアとか萌えるな…
背徳的な雰囲気が良かった。
あ、あとsageはメール欄。
>>2にもらったししゃもがカラフトシシャモだった死にたい
というわけで続き投下します。今回はノム子。
例によって長くなったのでお暇なときにどうぞ。
それでは、いつもの如く楽しんでいただければ幸いです。
暗い宿屋の一室に、激しい息遣いと荒々しく腰を打ち付ける音が響く。
「くうっ……ノーム、ノーム!」
「あっ、うっ……フェル、パーっ…」
フェルパーが腰を叩きつける度に、両足を抱えられたノームの体が大きく揺れる。ノームは苦しげな表情を浮かべつつも、
しっかりと彼のモノを締め付ける。
「出そうだっ…!ノーム、もう限界だっ!」
「い、いいよ……出して、いっぱいっ……いっぱい出してっ…」
「ノームっ……うああっ!」
一際強く突き上げると同時に、ノームの腹に白濁が吐き出される。全てをノームの腹に吐き出すと、フェルパーは彼女の太股に
挟んでいたモノをゆっくりと引き抜いた。同時に、ノームは力尽きたように、どさりと足を落とす。
「フェルパーの……いっぱい…」
陶然と呟き、ノームは腹にかかった精液を、指でゆっくりと塗り広げる。その指がゆっくりと下りていき、何もない股間にまで
伸びると、ノームはそこへ一際丁寧に精液を塗り付けた。
「あったかい…」
「ふー……ノーム、ごめんな。いっつもお前の体汚しちゃって…」
「ううん、いいの。だってフェルパーの、すごくあったかいし、あたしの体で気持ちよくなってくれてるんだもん」
下半身がつかないように、ノームは上半身だけを起こすと、しどけなくフェルパーに抱きついた。
「ありがとな、ノーム」
そう答えると、フェルパーも彼女を抱きしめる。嬉しそうに目を細めるノームを見て、フェルパーは優しげな笑顔を浮かべた。
その翌日。ドワーフの部屋では、ノームが彼女の上に跨っていた。
「だ、ダメだってノーム!ダメだってば!」
「ダメじゃない」
「そんなの死んじゃうってば!いくら私だって、そんなの耐えられないよお!」
「耐えなくていいってば。いいから手、放して。何なら先端だけでもいいけど」
「やだって!ちょっ……先っちょだけでも危ないからっ……や、やめてって…!」
「あんたはやめろって言ったのに聞かなかった。あたしがやめる必要がどこにあるの」
「だからぁ、それはノームが破くからでしょ!?だからってなんで、私が死ななきゃいけないのよっ!?」
首筋に迫る毒のナイフを、ドワーフは危ういところで止めていた。ノームは両手でナイフを掴み、ドワーフは彼女の手ごとそれを
掴んで止めている。
「当たり前でしょっ、フェルパーと小さいののいかがわしい本なんか出して、しかも学祭でそれ売るとかっ」
「おかげでお金はかなり増えたでしょ!?むしろ感謝してほしいくらいなんだけど!?」
「そういう問題じゃないっ。勝手にフェルパー使った上に、なんか私のこと馬鹿にしてるみたいだったし、大体原稿は破ったのに、
なんで本が存在してるのよっ」
「その前に印刷してたからに決まってるでしょ!」
「最初っからあたしの意見聞く気なかったんじゃないっ」
「破かなければ聞いてましたよーだ!くっ……まったくノームは、いい加減調子に乗らないでよね!」
急に強くなった力にも負けず、ドワーフはノームの腕をしっかりと掴むと、グッと体を起こした。馬乗りになった体ごと持ち上げられ、
ノームは驚きに目を見開く。
「種族の差って知ってる?いくら私が後衛だって、あんたらみたいに非力な種族じゃあね、力比べで勝てるわけないよ!」
一転、今度はドワーフがノームを組み敷き、ナイフを奪い取る。それを遠くに投げてから、ドワーフはにやりと笑った。
「さぁてとぉ……悪い子はどうしちゃおっかなー?」
「くっ…」
怯えた表情をするノームを、ドワーフはじっと見つめていた。やがて、その顔にだらしのない笑みが浮かぶ。
「なんか……こう、無理矢理って感じで、いいですね…?男の子がこういうネタ好きなの、わかった気がしますよ…」
「や、やめてよ……そんな気持ち、わからないでいいから。もう何も言わないから、もう放して」
本気で怯えるノームに、ドワーフは割とあっさりどいてやった。ノームは体を起こし、恨めしげにドワーフを睨んでから、
拗ねたように顔を逸らした。
「ノームぅー?拗ねちゃったー?」
「……うるさい」
「うーん、そういうとこ可愛いよねー。あんまり可愛いから、ついつい可愛がってあげたくなっちゃいますよ?」
「黙れ、この万年発情期。医学書でも読んでてよ」
「つれないなぁー。ま、いいけどね。今度うちの学校用の、百合モノでも考えてようかなー」
「あたし使ったら今度こそ殺すから」
曖昧な笑みでそれに答え、返答自体はせずに、ドワーフはベッドに寝転んで医学書を読み始めた。ノームはベッドから立ち上がり、
机の前に座ると、ぼんやりと考え事を始めた。
―――毛むくじゃらめ……そういえばフェルパー、気持ち良くなってはくれてるけど……やっぱりあの本みたいに、本当に入れたり
したいかなあ。あたしも、もっとフェルパーに気持ちよくなってもらいたいし…。
そんな彼女とは別に、ドワーフも医学書を開いてはいたが、頭の中では全く別の考え事をしていた。
―――うーん、やっぱりBL系ももう一回やりたいなあ。でも、フェルクラはやっちゃったし、うちの中だと……ディアボロス?
でも、それだと攻めは誰だろ?クラッズ……は、なさそうだし、やっぱりフェルパー?
二人は同時に頭を抱え、それぞれの思考へとさらに深く沈んでいく。
―――だけど、あたしの体じゃそれはできないし、いくら何でもそんな道具はプレゼントしたくないし…。
―――でも待ってよ……女装っ子相手じゃ、いっそ普通に男女でも良くない?ていうか一般受け考えたらそっちのがいいし、そもそも
BL系としても女装っ子は微妙なとこかな……ならいっそ、ディアボロスを女の子に…?
「……やっぱり、体変えるしかないのかな…」
「……ノームもそう思う?うーん、やっぱりそうかな…」
極めて上の空の会話を交わし、二人は再び考え事を始める。
―――だけど、依代変えるなんて簡単じゃないよね。今のこの体をどうするかってこともあるし、そもそもそんな体、作れるかな…。
―――うーん、でも違うなあ。やっぱり私が書きたいのはBLだし、女装っ子は女装っ子でいいか。あ、ならいっそ、受け攻め逆転!?
ディアボロス攻め……言い換えると女装っ子攻め!これはいけるかも!?
「でも、難しいよね…」
「う、難しいかなあ……うーん、確かに作る側はいけると思っても、ダメなことってあるしね…」
ドワーフの一言で、ノームの眉がピクリと動いた。
―――ダメなこと……ドワーフの言うとおりかもしれない。確かに、生身に近い体は作れるかもしれないけど、あたしは人体の構造なんて
全然知らない。そんなんじゃ、本当にフェルパーを満足させてあげるなんて無理だよね…。
―――だけど、女装っ子受けなんて普通すぎ……いやいや、そんな考えは良くないよね。奇を衒えばいいってものじゃないし、
普通っていうのは言い換えれば普遍!それにディアボロスって、無口でクールな女装っ子で、そんな子が攻められて、ついつい
抑えきれない声が漏れちゃうとかっ!
「……うん。無理するよりは、普通にいった方がいいねやっぱり」
「普通に……そうか、そうだね。無理はできないし、しちゃダメだよね」
―――なら、ここは素直にドワーフの手を借りるしかないかな。素直に貸してくれるかは知らないけど、食べ物で釣れば何とかなるかな。
―――うん、よし!次はフェルディアにしよう!ちょっと変わった善意が受け入れられなくて落ち込むディアボロスに、それをノームすら
懐かせる包容力で受け入れるフェルパー!よし、決まった!いける!
「ノーム、ありがとねー。おかげでいい感じにまとまったよー」
「ん、あたしも感謝してる。あたしも考えまとまった」
かくして、一見噛み合っているようで、実は全く噛み合っていない会話の末、二人はそれぞれに考えを煮詰めていくのだった。
それから一週間ほどが過ぎた。一行は冥府の迷宮も攻略し、再びプリシアナへと戻ってきていた。
これまでは割と好き勝手に動いていたが、ずっと迷宮に潜っているだけでは、卒業単位を取得できない。
そのため、一行は簡単な依頼をいくつかこなすことに決め、現在はもっぱらリコリス先生の人形劇の手伝いをこなしている。
依頼の内容自体は、人形劇に必要な素材を持っていくだけなので、さして忙しくなるわけでもない。なので、各々は暇な時間を、
それぞれの学科の勉強や修練に費やしていることが多かった。
クラッズは体育館を借りて、剣の素振りや組み手をよく行い、フェルパーはその相手や炎術の勉強、合わせて腕立てや腹筋などを
やっていることが多い。ドワーフは医学書各種をよく読んでおり、また内容は誰一人知らないが、ここ最近は何やら書き物を
していることが多かった。バハムーンは妹学科の授業に積極的に参加し、ディアボロスはダンサー学科の授業に加え、フェルパーと
一緒に柔軟体操や、軽いトレーニングを一緒にやっている。そうやって二人でいる場合、なぜかドワーフもいることが多かったが、
彼女はそれに参加するでもなく、彼等を見つめながら何か考え事をしていることが多かった。
そして、ノームは図書館に入り浸り、錬金術のありとあらゆる本を読み漁っていた。収められている本は膨大な数だったが、ノームは
それらの大半に目を通していた。その甲斐あって、彼女の必要とする知識は、この一週間でほぼ完璧に得ることができた。
だが、彼女一人では、目的を成就できない。ノームは事前にある程度の準備をし、ドワーフの部屋を訪ねた。
「ドワーフ、ちょっといい」
「ん、ノーム?ちょっと待って…………よし、いいよー」
部屋に入ると、また書き物をしていたらしく、机の上にノートとペンが置いてあった。
「珍しいね、ノームが来るなんて」
「ちょっとね、頼みごとがあって」
「へーえ、ますます珍しいね。どんな頼みごと?」
割と気軽に聞いてくれそうだったが、内容が内容である。ノームは一瞬の間をおいて、はっきりと言った。
「性器を見せて欲しいんだけど」
「……え?」
さすがのドワーフも、一瞬固まった。その一瞬後に意味を理解したらしく、ドワーフは面白いぐらいに慌て始めた。
「そそそそそれってまさか、その、お誘い、ですか!?いやっ、そのっ、それはさすがにほらっ!私受けは初めてでっ、だからそのっ、
わ、私にも心の準備がっ!ああでもでもっ、嫌とは言わないけどっ、あの、その、だからえっと、最初は優しくしてっ…!」
理解ではなく曲解されているのを悟り、ノームは静かに口を開いた。
「嫌だって言っていいよ。別にお誘いじゃないから」
「あっ……え?あ、そうなの?なんだ、ふーん……はぁ〜、びっくりしたぁ。で、お誘いじゃなかったら、なんでいきなりそんな?」
「依代を変えようと思って。でも、あたしは生身の体って知らないから、そことか作れない」
「うわ、なんかさらっと言ったけど、それって錬金術師として食っていけるレベルの話じゃない?」
ドワーフも頭は回る方である。その時点で、ノームが一体何を考えているのか、そのおおよそを既に理解していた。
「つまり……ノームは、生身に近い依代を作りたいわけね?フェルパーのために……肉人形を……作る……むしろ、なるんですね…?」
「その言い方やめて。で、見せてくれるの、くれないの」
ノームが言うと、ドワーフは不意に真面目な顔になった。
「そりゃまあ、減るもんじゃないけどさー。いくらノームの頼みだって、いきなり『おまんこ見せて』なんて言われて、
はいどうぞ!なんて見せられるもんじゃないよ」
「だろうと思った。何なら医学書貸してくれてもいいけど」
「それが一番手っ取り早くはあるけど、実物を見たいから、私に言ったんだよね?」
既に、二人の駆け引きは始まっていた。ノームは落ち着いて、用意してきた選択肢を選んでいく。
「そういうこと。もちろん、お礼はちゃんとする。夕飯のケーキ一週間分でどう」
すると、ドワーフは話にならないとでも言うように首を振った。
「やっすいね、私。それが朝昼晩ならまだ考えるけど、それだけじゃあね」
「素材とかの経費で、あたしも何かと入用なの。これでも頑張ってる方よ」
「まあ鉄則だねー。経費は安く済ませろって。でも、友達相手にまで値切ろうとする?」
「むしろ、友達なら値切ってくれると思うけど」
「それにしたって、端から値切る気満々なんじゃ、値切ってあげる気も失せるよ。一ヶ月分なら考えるけどなー」
すると、ノームは早々に踵を返した。
「そう。じゃ、この話はなかったことにする。大きいのとか、別の知り合いとか当たってみる」
最初は黙って見送っていたドワーフだったが、ノームがドアノブに手を掛けたところで、渋々といった風に口を開いた。
「むぅ〜……じゃ、三週間分なら?」
「……二週間」
肩越しに振り返り、しかし手はドアノブに掛けたまま、ノームは答える。
「もう一声ぐらい頑張ってよぉ。男相手だったら万単位で取るところだよ?」
「相手によって値段変わるんでしょ。なら、そっちだって少し譲ってよ」
「一週間分も譲歩してるじゃないの〜」
「それじゃ、無理。これ以上は出せないから」
再びドアの方に向き直った瞬間、ドワーフは降参だというように息をついた。
「……わかったよぉ、二週間分で手ぇ打ってあげる。まったく、強引なんだからー」
「じゃ、取引成立ね」
一転、ノームは微笑を浮かべ、ドワーフに手を差し出す。仕方ないといった感じで、ドワーフはその手を握った。
「うん、これで成立ね。ま、ケーキただで二週間なら、悪くもないか」
思ったよりもうまくいき、ノームは内心ホッとしていた。
が、ドワーフは急に、締まりのない笑顔を浮かべた。
「それに……実は、ちょ〜っと楽しみでねー、その依代」
「ん…」
「だってさー、私のおまんこ参考にして作るんでしょ?それってつまりさ、ノームの新しい体に、私のが付くってことだよね?」
「っ…」
ビクッと、ノームの体が震え、表情が凍りつく。だが、ドワーフは気付く様子もなく、にへーっとした笑顔のまま続ける。
「それでさそれでさ、フェルパーがそれで出したら……つ、つまり、私のおまんこでイっちゃうってことですよね…!?そんでもって、
その上さらに夢中になっちゃったりしたらっ……やぁん!考えるだけでドキドキするぅっ!もしそうなったらさ、それ私の
おまんこだよーって教えたらさ、私にも興味持ってくれたりするかなあっ!?うぅ〜、わふっと楽しみぃーっ!それじゃ、早速…!」
うきうきと服に手を掛けた瞬間、ノームはドワーフの腕を掴んだ。
「……ダメ」
「ん〜?何が?」
「や、やっぱりダメ……今の話、なしっ…」
途端に、ドワーフの目がスッと細くなり、冷徹な光が浮かんだ。
「そんな勝手な話、通じるわけないでしょ?さっき確かに、ノームから取引成立って言ったよね?」
「だ、だからそれはっ……ダメ、ダメなの。お願い、なかったことにしてぇ…」
「へ〜え?散々値切った挙句、私がそれ呑んだら『やっぱりやめた』って?ふざけんのも大概にしてよ。あんた、私のこと馬鹿にしてる?」
「ちっ、違うっ……けど、ダメっ、ダメなのっ…」
「へえ。じゃ、どうすんの?あんた、どうせ私の他に当てなんかなかったんでしょ?トカゲが見せるわけないし、あんたの性格上、
他に親しい知り合いがいるわけでもない。だから最初っから、取引持ちかける前提で私に頼んだんでしょ?」
「っ…」
ずばり言い当てられ、ノームは困惑した表情を向ける。
「私にも頼めない、他に当てもない。それじゃもう、手詰まりなんじゃないの?」
「そ……それ、は…」
ノームが言い淀んだ瞬間、ドワーフはニヤリと笑った。
「……ケーキ、朝昼晩で一ヶ月分。それで代わりの案が、ないわけでもないよ」
「え…」
救いを求めるように、ノームはドワーフの顔を見つめる。
「そもそもがね、私のだけ参考にしたって、私のおまんこをそっくり作れるだけだよ?ヒューマン、エルフ、クラッズ、セレスティア、
バハムーン……それぞれ大きさだって違うし、作りも少しずつ違う。個人差だってあるし、サンプルは多いに越したことないよね?」
「それは……うん…」
「そこでねー、私の学科が役に立つんだなー」
そう言い、ドワーフはにんまりとした笑顔を向ける。
「ドクターなら、そういうの見せてもらうのも、他の人より楽なんだよねー。それに、私も女の子だしー。それに、私はちょこちょこ
知り合いいるしさ。お望みなら、色んな子のおまんこのスケッチしてきてあげるけど?」
「………」
ノームは黙って財布の中身を確認し、複雑な表情を向けた。
「……に、二週間……ただし、ケーキとティーセット付き…」
「およ?ここに来てまだ値切る?」
一瞬、機嫌を損ねてしまったかと、ノームは怯えた表情を見せた。しかし意外にも、ドワーフは笑った。
「いーい根性してるじゃない?それに、ティーセットはなかなか……あっ、そうだ!」
急に大声を出したかと思うと、ドワーフはポンと手を打った。
「三週間、朝昼晩でケーキティーセット。ただしお昼はケーキのティーセットじゃなくて、ドーナツとコーヒーセット」
「そ、そんなお金、どう頑張っても無理だよ…」
「知ってる。ところが、それも解決する手段があるんだよねー」
「ど、どんなの」
「あのさ、全滅しちゃった生徒の救助のバイト、知ってる?極々一部の生徒しか請け負えないんだけど、成功したら全滅したパーティの
所持金の半額から、治療費を引いた分がこっちの取り分になるんだけどね」
「……そんなシステムだったんだ」
「まあ、それが足りなきゃ、その分単位に色付けてもらう程度だけど。で、これって私はできるんだよねー。ドクターだし、実力も
あるし。でもさ、これ一人は正直辛いんだよね。だからこれ手伝ってくれれば、ノームのお金の問題も解決するし、私もきちっと
おごってもらえるし、それに何より…」
そこで、ドワーフは一種禍々しいとも言える笑みを浮かべた。
「死人に口なし、ですよ?ノームも思う存分、色んな種族のおまんこ見られるし、私も解剖図見られたりするし、いいこと尽くめだと
思わない?少々傷つけたって、モンスターが傷つけたんだか、私達が傷つけたんだか、わかるわけもないしねー」
確かに、その点はかなりの魅力があった。またそれ以外に、もはや道もないように思えた。
「……わかった、手伝う」
「ほんと?よぉし、それじゃあ今度こそ、取引成立だね!」
そう言って差し出された手を見て、一瞬ノームは引っかかりを感じた。しかしすぐに気のせいだと思い、その手をしっかりと握った。
「それじゃ、あとでリリー先生のとこ行ってくるから、詳しくはその後でねー」
意気揚々と部屋を出るドワーフ。ノームはもう一度財布の中身を見て、少しぐらいは残るといいなと、暗澹たる気分になるのだった。
それからさらに数日。一行の活動はさしたる変化もなく過ぎているが、ここ最近はノームとドワーフが揃ってどこかへ出かけることが
多くなっていた。とはいえ、それは自分達の探索などを終わらせた上での行動なので、他の仲間に迷惑がかかるというものではない。
また、二人は必ず一緒に食事を取るようになっており、その際には何かと話をしていることが多い。
この日も、二人は一緒に昼食を取り、ドワーフが食後のドーナツとコーヒーを頬張っていた。
「……また依頼、あった」
「ん、あっはおー。ははら、あほへいほー」
「口の中の物、片づけてから喋って」
「んっく……ふう。このドーナツもなかなかだけど、やっぱりトカゲの作った奴の方がおいしいなー」
言いながら、ドワーフはドーナツをコーヒーに浸し、染み込ませてから再び頬張る。
「それで、ドーナツとコーヒーセットなのね」
「おいしいんだよー、これ」
「あたしはやる気しないけどね。それにしても、大きいのが作ったドーナツの方がいいなら、毎食作ってくれるように頼んでこようか」
ノームの言葉に、ドワーフはニヤニヤとした笑みを返す。
「ん、いいですよーだ。それに、あれはあれ。これはこれ、だもんね」
「……口約束では、あるけどね」
「そうだねー。確かに証文もないし、証人もいないし。でも、契約破ったらどうなるか、想像はつくんじゃないのー?」
「想像したくない」
「それがいいよー。新しい体、大切でしょ?」
笑顔を浮かべて言うドワーフに、ノームは薄ら寒いものを感じた。
「ふう、ごちそうさまー!それじゃ、ちょっとお仕事行こっかー。今回は拭えぬ過去の道だってさ」
「近場ね。すぐに終われそう」
二人は食器を片づけると、すぐに探索の準備を整え、仲間にはちょっと出かけてくるとだけ告げると、揃って迷宮へと向かって行った。
実力の高い二人だけに、もはや近くの迷宮のモンスターなど問題にならない。二人はあっという間に拭えぬ過去の道へ辿りつくと、
全滅したというパーティの捜索を始めた。
この迷宮は、生息するモンスターの強さこそ大したものではないが、扉やワープゾーンのために予想外の長期探索となることが多い。
地図や、いざという場合の脱出手段の確保はもちろんのこと、そういった長期戦に備えての準備もなしにこの迷宮へ入ることは、
死にに行くのとほぼ同義である。だが、探索にこなれてきた新入生が、敵の強さに惑わされて奥へと入り込み、そのまま脱出叶わず
全滅するという事故が、毎年必ず十数件は起こっている。そして、その報告を受けた同級生や、手段はどうであれ生還した者達は、
地図の確認や食糧、回復薬の確保、魔力の配分など、戦闘以外で冒険に必要な要素を痛感するのである。
探索開始から約一時間後、二人は六つの死体に囲まれ、それぞれ思い思いの行動を取っていた。
「……昨日気付いたけど」
「ん〜?」
ノームは倒れたクラッズの女子生徒の服を脱がしにかかりながら、ドワーフに話しかける。
「あたし、あんたに騙された」
「ん〜?何が〜?」
ドワーフはドワーフで、ひどい傷を負って倒れたバハムーンの生徒の様子を、克明にスケッチしている。
「あんたとあたしが、この手伝いやって、そのお金であんたに三週間ケーキセットおごるって話だったけど、これあたし一人でやれば、
万事解決だったんじゃないの」
「そうだね〜、やっと気付いた〜?……大きな傷は少ないし、急所への傷も見られないし、毒を受けた様子もなし……死因は失血による
ショック死かな?」
ドワーフはまったく気にする様子もなく、次の死体の死因究明に取りかかっている。
「というより、これってあんた一人だけ儲かるって構図よね。しかも楽に。その上ケーキまで食べて」
「ま、情報料と授業料とでも思ってよ。大体、ノームが先に仕掛けてきたんだからね」
一旦顔を上げると、ドワーフはノームに笑いかけた。
「私達ドワーフに、商談の交渉持ちかけるなんて、無謀にも程があるよ?基本はしっかり抑えてあったけど、それ以上がなきゃねー」
「……ちょっと考えればすぐわかったのに、なんであんな提案に…」
悔しそうに呟くノームを、ドワーフは実にいい笑顔で見つめている。
「最初にさ、牽制し合ってからノームの提案に乗ったでしょ?それでさ、ノームは完全に油断しきっちゃってたんだよねー。
だから一発揺さぶりかけて、あとは一気に畳みかけて、本命の提案出して、はいおしまい!ふふふ、面白いほどハマったよねー」
「……どこから読んでたの」
「どこも何も、最初っからだよー」
笑いながら言って、ドワーフはビシッと指を突き出した。
「鉄則その一、弱味は見せるな。ノームはフェルパーにわふっとラブラブっていうのがわかってたから、ここで簡単に揺さぶれた」
「………」
「鉄則その二、最後の最後まで油断するな。交渉がうまくいったと思って、ノームは油断したよね?だから揺さぶりの効果が、二倍にも
三倍にも跳ね上がった」
突き出した指を、二本から三本に増やし、ドワーフは続ける。
「鉄則その三、何があっても冷静に。揺さぶられてパニクって、その結果がこれだもんねー。取り乱し……乱れ……乱れて
いいのは……ベッドの中だけ……ですよ…?」
「そんなどうでもいい情報いらない。とにかく、あんたに取引持ちかけるのは分が悪いっていうのは、よくわかった」
「そ?ならいいけど」
ノームは小さなクラッズの死体を散々に弄んでから、それを庇うように倒れるエルフの女子生徒の死体へと移る。
「……ところでドワーフ」
「ん、何?」
「ドワーフとエルフって仲悪い人多いけど、あんたもエルフは嫌いなの」
「ん〜、そうだね〜。あんまり好きではないかな」
「ふーん、やっぱり言葉遣いとか、気が合わないとか」
「エルフって恥ずかしがりで、おっぱいとかおまんことかなかなか触らせてくれない癖に、耳ちょっと舐めたらイっちゃって、
全っ然攻め甲斐がなくてつまんないんだもん」
「………」
ノームは顔を上げ、ドワーフの顔をじっと見つめる。ややあって、ドワーフも気まずい沈黙に気付き、顔を上げた。
「……いや、ただの冗談ですよ?」
「冗談に聞こえなかったんだけど」
「冗談ですってば。さあさあ、とにかくちゃちゃっとやることやって、これ保健室に運ぼうよ。帰還札はあるんでしょ?」
「うん、あるけど。じゃ、そっちも早く終わらせてね」
こうして、救助活動という隠れ蓑を手に入れた彼女達は、非人道的な手段によって、それぞれの目的を遂げていくのだった。
「ほいノーム、今回の取り分ね」
「ん、意外と多いね。ところでドワーフ、リリー先生に何か言われたりしなかった」
「ん?あ〜、『ドクターとして勉強熱心なのはいいですけど、同じ生徒を教材代わりにするのは感心しません』だって。噂はひどいの
多いけど、優しい先生なんだねー」
「怒ると怖いらしいから、ほどほどにね」
内心は、目をつけられて少し痛い目でも見ればいいのにと思いつつ、ノームはそう言っておいた。
その後、夕食のケーキをおごるために一緒に食事をし、以降はそれぞれの行動に戻った。ノームは製作途中の依代の続きを作るため、
急ぎ足で部屋に向かっていたが、その途中で背中に声がかかる。
「お、ノーム。急ぎかい?」
「あ、フェルパー」
途端にノームの足が止まり、小走りでフェルパーに駆け寄った。
「ううん、別に平気。どうしたの」
「ああいや、どうしたってわけでもないけど、何か足取りが軽かったから、いいことでもあったのかなってさ」
細かいところを見てくれる彼に感動しつつも、依代のことは完成まで隠しておきたかったため、答えをはぐらかさねばならない状況に
ノームは心苦しさを感じていた。
「ん、別に。ただその、えっと……錬金術の勉強、そろそろひと段落つきそうだから」
「ああ、また盗賊を主学科にできるようになるからか。なるほどね」
自分の嘘を、何の疑いもなく信じてしまうフェルパーに、ノームは内心ひどく心が痛んでいた。
そこでふと、フェルパーの表情が変わる。
「あ〜、んじゃあ、その……忙しい、かな?この後。よかったら……また、二人で過ごしたいんだけど…」
「……ごめん、早めに仕上げちゃいたいから…」
「そっかー……最近、御無沙汰だったから、どうかなって思ったんだけど……ま、ひと段落つくまでは我慢かな」
残念そうではあったが、フェルパーはすぐに気を取り直したようだった。それが僅かながらに、ノームの心を慰める。
「うん。なるべく早く終わらせるから……そしたら、いっぱい遊んで欲しいな」
「ああ、俺も楽しみにしてるよ。それじゃ、またな」
顔は笑顔で、心の中では今すぐいっぱい遊んで欲しいと泣きながら、ノームはフェルパーと別れる。そして心の中で、できうる限り
早めに作りあげてしまおうと、固く決心するのだった。
ノームが新たな依代製作に取りかかって一ヶ月。作業は思ったよりも順調に進み、また体の構造はドワーフの助けを借り、
ようやく最後の仕上げというところまで来ていた。
「うーん。こうして見ると、依代だとは思えないねー」
その依代を見下ろし、ドワーフが感慨深げに言う。
「中身入りだって言っても、たぶん全員信じるよこれ」
「これ、あたしの卒業制作にしてもよかったかもね。これなら卒業確実でしょ」
二人の前にあるものは、依代というよりも、ただ眠っている一人の少女と言った方が近いような代物だった。姿かたちはノームに
そっくりだが、その顔には赤味が差し、今にも目を開けそうに見える。その肉体はノームの作った妙な機械の中に収められ、
満たされた液体の中に浸されている。
「卒業制作でライフゴーレム……じゃなくてフレッシュゴーレム?ホムンクルス?まあいいや、とにかくそんなの作ってきたら、
先生達もびっくりだろうねー」
「そのどれでもないね。ゴーレムには核が、ホムンクルスには生命があるから」
「じゃあこれは……に、肉人形で……いいんですか…?」
「すごく嫌な呼び方だけど、それが近いかな。でもドワーフの言い方だと違うものだよね」
「そんなことないですよ?……で、いよいよ仕上げだねー」
ドワーフの言葉に、ノームは表情を改めた。
「そうだね。ドワーフ、他の人はよろしく」
「任せてー。探索休みに持って行けばいいんでしょ?それぐらい軽い軽い!」
「頼むね。それじゃ……あたしは、仕上げに入るから」
「はいはーい。んじゃ、探索中止にはしておくから、頑張ってねー」
ドワーフが部屋を出たのを見届けてから、ノームはしっかりと鍵を掛け、新たな依代を見つめる。
彼女の言葉通り、これは肉を持った人形だった。臓器や血液などを備え、生命活動を行うのに十分な機能を持っており、これに核を
埋め込めば、フレッシュゴーレムとなる。仕上げとは、ノームがこの肉体に、核の代わりに入り込むことだった。
―――乗り移るのは二回目だけど……うまくできるかな。
やはり、緊張は隠せない。また、新たな肉体に乗り移ったところで、馴染むまではまともに動くこともできない。不測の事態が起きて、
このせっかく作った肉体が破壊されないとも限らない。
―――……クローゼットに隠しっぱなしの方がいいか。
一度は引っ張り出した依代一式を、再びクローゼットに収める。それを終えるとベッドに横たわり、ノームは目を瞑った。
―――さてと……そろそろ始めようかな。
体の各部に付いている機械を、順次止めていく。最後に頭の後ろに付けられた機械を止めると、ふわふわと不安定な感覚に襲われる。
じっと意識を集中し、肉体と精神との繋がりを意図的に切っていく。まずは右手、そして左手の繋がりを断ち、軽く腕を上げようと
してみる。しかし、確かに腕を上げた感覚はあるのだが、依代の腕が上がった気配はない。
ノームはさらに続ける。両足、体、頭と次々に断っていき、そっと目を開けると、依代の内側が視界に映った。
ふわりと浮かび上がる。体は目を閉じたまま、ベッドの上で眠っているように横たわっている。長らく世話になった依代だったが、
もうこの依代に用はない。
クローゼットの戸をすり抜け、さらに機械もすり抜けると、ノームは新たな依代の中に入り込んだ。
―――入りにくいなあ。
元々、ノームが取り憑くために作られた今までの物と違い、これは人工的に作られたとはいえ、いわば生身である。入り込むのには
多少手間取ったものの、ノームは何とか新たな依代に取り憑くことに成功した。
そのまま、全身の感覚を探る。思った通り、今までとはずいぶん違いがあり、腕を動かそうとして、機械の内側に肘をぶつけると、
強い痛みが襲ってきた。
「んっ…!?」
それが思いのほか強い苦痛であることに、ノームは驚いていた。今までは、依代が損傷しないような衝撃などは、大した痛みとも
感じておらず、また痛みの質自体が全然違っていたのだ。
―――これが、生身なんだ……何かと不便そう…。
指を動かそうとしてみるが、まだ数本まとめて動いてしまったり、関係のない足が動いたりと、感覚が全然馴染んでいない。ともかく、
今は大人しく依代に馴染もうと、ノームは体を動かすのをやめた。
液体に浸かっているとはいえ、この機械は一種の生命維持装置である。呼吸が苦しいと感じることもなく、暑くも寒くもない。
何もすることがなく、ノームはじっと外の世界に耳を傾ける。
窓の外から聞こえる音は、学生達の喧騒。寮の中では、誰かが親しい友人と会ったらしく、大声で挨拶を交わしている者がいる。
他にも小鳥の鳴き声や、虫の鳴き声。そして何より、キーンという自身の血流の音や、それを送り出す心臓の音が聞こえる。
―――ちゃんと、うまく作れたんだなあ。
そう思うと、なぜか鼓動が高まった。何か不具合でも起きたのかと慌てたが、一般に言われる『胸が高鳴る』というのがこれなのだと
理解すると、ノームの胸がまた高鳴る。
―――こんな感じなんだ……ちょっと苦しい感じだけど、何だか面白い…。
胸が高鳴ることに胸が高鳴るという、終わりのない永久機関を続けていると、不意にノックの音が響いた。ノームはビクリと体を震わせ、
聴覚に全神経を集中させる。
「ノーム、いないのか?……おっかしいなあ、部屋にいるって聞いたけど…」
―――あの毛むくじゃらめっ!
その声は、紛れもなくフェルパーの声だった。今すぐにでも彼を出迎えたくはあるのだが、まだ体が思うように動かず、それも叶わない。
心苦しくはあったが、黙っていなくなるのを待とうと決めた瞬間、ガチャリとドアの開く音が聞こえた。
「しかしなんで、ドワーフが鍵持って……あれ……ノーム?」
―――あの色ボケ万年発情期がっ!!!
依代が不具合を起こした時のために、一日経って自分が姿を見せなければ様子を見に来てくれと、ドワーフに鍵を渡しておいたのだ。
フェルパーが鍵を持っているということは、ドワーフがそれを渡したということである。
心の中でありとあらゆる悪態を吐いていると、フェルパーの慌てたような足音が近づく。ややあって、ノームは抜け殻となった
依代を発見されたのだと気付いた。
「おい、ノーム?おいノーム!どうした!?起きろよ!ノーム!」
フェルパーの焦った声。ノームは返事をしたくてたまらなかったのだが、液体の中では声も出せず、また機械を止められるほどには
体も動かせない。
何度かノームを起こそうとした後、フェルパーは慌てて部屋を飛び出して行った。しばらくして、再び足音が近づき、部屋のドアが
乱暴に開けられる音が聞こえた。
「ドワーフ、頼むっ……君なら、何かわかるんじゃないか!?ノーム、どうしちゃったんだよ!?」
「そう言われてもなぁー、ノームの体って普通の種族と違うしー」
白々しい響きの多分に含まれた言い方だったが、冷静さを欠いたフェルパーがそれに気付く様子はない。
足音はベッドに近づき、どうやらドワーフが形だけの診察をしているらしいことがわかる。やがて、衣擦れの後にドワーフの
声が聞こえた。
「中身、入ってないみたい」
「え?そ……それって、どういう…?」
「つまり、この体は抜け殻。フェルパー、最近ノームと遊んであげたー?」
「い、いや、それはノームが忙しいみたいだから、全然…」
「もしかしたら、それでも強引に構ってほしかったのかもよー?」
「ええ!?で……でも、あいつに限ってはそんなことなさそう…」
「女心は複雑なんだよ?もしかしたら、それで大切に思われてないって思って、どっか行っちゃったんじゃない?」
「……ノーム…」
悲しげに呼ぶ声に、ノームは今すぐここを飛び出してドワーフを殴り倒した後、フェルパーの胸に飛び込みたかったのだが、まだまだ
依代に馴染むまでには時間がかかりそうだった。
「とにかく、一緒にいてあげれば?もしかしたら戻ってくるかもしれないし、そしたら喜ぶんじゃないー?」
「そう……かもな…。ドワーフ、ありがとな…」
「どういたしましてー。それじゃ、ごゆっくりー」
どう考えても、微塵も心配していない声なのだが、やはりフェルパーが気付く様子はない。足音の一つが出ていき、ドアが閉まる音が
響くと、残ったフェルパーはベッドに座り、ノームの依代を抱き締めたようだった。
「……何があったんだよ、ノーム…」
空の依代が答えられるわけもなく、今のノームも答えられない。また、元の依代に戻ることもできず、ノームはクローゼットの中で
一人悶々としていた。
早く馴染んでほしいという願いとは裏腹に、感覚が慣れてくるのには長い時間がかかった。一方のフェルパーは、身じろぎ一つせず、
ノームの元の依代を抱いているらしかった。
たっぷり数時間が経過し、窓の外からよりも寮の中の物音が大きくなってきた頃、ノームはある程度自由に体が動かせるのを確認し、
いよいよ行動を開始した。最後にもう一度、指先から動かせるのを確認し、その感覚がしっかりと繋がっているのを確かめ、それらに
問題がないのを確認すると、内側に取り付けてあるボタンを押した。
途端に、生命維持装置内の液体が蒸発していき、同時に蓋が開いたことによって、ノームの体が空気に晒される。
しばらく、ノームはそのまま横たわっていたが、妙な息苦しさを感じた。しばらくして、自分が呼吸をしていないことに気付き、
慌てて息を吸う。しかし、まだ口の中に液体が残っていたらしく、気管に入り込んでしまい、ノームは思い切りむせ返った。
途端に、クローゼットの外から凄まじい威圧感が伝わってきた。
「……誰だ」
「げほっ、げほっ!ま……待って、フェルパー…!ごふっ……あ、あたしだから…!」
体を起こし、立ち上がる。しかし筋力が思ったよりなく、その足はガクガクと震え、うまくバランスを取らなければ
倒れてしまいそうだった。それでも必死に立ち上がり、クローゼットの戸を開けると、フェルパーの驚いた顔が目に映る。
「ノ、ノーム!?え!?じゃあこれ…?あ、いや、そ、それよりなんで裸なんだ!?」
「それは、あの……きゃっ!?」
外に出ようとした瞬間、足を機械に引っかけ、転びそうになる。辛うじて浮遊が間に合ったが、それとほぼ同時に、フェルパーが
その体を抱き止めていた。
「大丈夫か……って、ん!?な、何か柔らかいし、温かい…!?」
「あっ…」
途端に、ノームの全身がかあっと熱くなる。心臓はうるさいほどに高鳴り始め、頭はくらくらしてくる。
「あ、あの……えっとね、これ、あたしの新しい体…」
「新しい体!?じゃあ、その……この、ベッドで寝てたのは、前の依代か?あっ、まさかそれで、最近忙しいって言ってたのか!?」
「うん……ごめんね。フェルパー、びっくりさせたくて…」
「ああ、びっくりは今日一日だけで何回かさせられた……しかし、何だこれ…!?今までと全然違う…」
「ど、どうかな。これね、核のないフレッシュゴーレムなの。だからね、生身とほぼ同じで、声とかも前よりは、人間らしく
なった、でしょ…?」
確かに、以前は抑揚のない無表情な声だったが、今はきちんと抑揚が付いている。ただ、そういった喋り方に慣れていないらしく、
まだあまり抑揚のない声ではある。
「しかしまた、なんでそんな手間のかかる真似を…」
「……フェ、フェルパー……あの、胸、とか……どうかな…」
「胸…?」
言われて、フェルパーは視線を落とす。そこにあったものは、乳首すらついていない無機質な胸ではなく、いかにも柔らかそうな、
形のいい乳房だった。途端に、フェルパーの顔が赤くなる。
「あっ、やっ、その……き、きれいになったな…」
「……嬉しいっ」
ぎゅっと、ノームが抱きつく。柔らかく、温かい感触が一気に強くなり、フェルパーの尻尾が一瞬にして倍ほどに膨らむ。
「そのー、ノーム、おい……と、とりあえず、服着ないか?」
「なんで?」
「な、なんでって…!」
ノームはフェルパーの顔を見上げると、満面の笑みを浮かべた。
「この体ね、フェルパーともっといっぱい愛し合いたいから、作ったんだよ。だからね、まだちょっと、体慣れてないけど、
抱いてくれると嬉しいな」
「ま……まだ少し時間が早いと思うけど、元気だな」
そうは言いつつも、フェルパーのズボンは既に大きく盛り上がっていた。ノームがそこに視線を移すと、フェルパーは恥ずかしげに
頭を掻いた。
「……フェルパーも元気」
「や……はは、そりゃまあ、一ヶ月以上我慢してたから…」
「え、一人で処理してなかったんだ……フェルパー、ごめんね。じゃあ今日は、あたしの体いっぱい使って」
抱き締められたまま、床を軽く蹴る。突然の動きによろめき、フェルパーがベッドに腰を落とすと、ノームはその前に跪いた。
依代に慣れていないため、やや覚束ない手つきでズボンを脱がせ、彼のモノを取り出す。すっかり硬くなったそこを撫で、
ノームは妖艶に微笑んだ。
「最初は、口でしてあげるね」
軽く髪を押さえ、そっと彼のモノを口に含む。途端に、フェルパーが呻き声を上げる。
「うあっ……ま、前と全然違っ…!」
唾液をたっぷり絡め、根元まで丁寧に舌で愛撫する。そのまま根元に舌を押し付け、先端までねっとりと舐め上げ、先端を舌でつつく。
さらに唇をすぼめ、唇で扱くように頭を上下に動かすと、フェルパーはベッドのシーツを強く握る。
それまではなかった、唾液による滑りと体温の温かさは、思った以上の快感となっていた。フェルパーはその刺激に耐えるのが
精いっぱいで、ただきつく歯を食いしばり、彼女のされるがままになっている。
そんな彼の姿に、ノームは胸が締め付けられるぐらいの喜びを覚えていた。自然と行為にも熱が入り、ノームはわざと音を立てて
彼のモノを強く吸ってみる。
「くっ……お、おいノーム、もうよせっ…!それ以上されたら出るっ…!」
呻くように言うと、フェルパーはノームの頭を押した。そのまま口に出してくれてもよかったのに、と思いつつも、ノームは大人しく
口を離した。
「ふふっ。フェルパーの、すっごく硬くて、熱くて……ね、もう入れても、いいかな」
「ん……あ、待って」
そのまま跨って来ようとしたノームを、フェルパーはやんわりと押し留める。
「俺ばっかりされるのもなんだし、それに君の体、もっと触りたいから、お返しな」
「え?あ、うん……あっ」
今度はフェルパーがノームの体を崩し、ベッドに押し付ける。膝から下はベッドの下に垂らし、ノームは仰向けのまま
期待に満ちた目でフェルパーを見つめる。
そんな彼女の胸に、そっと手を伸ばす。彼の手が触れた瞬間、ノームの体がピクッと跳ね、同時に彼女の鼓動がフェルパーの手に伝わる。
「すごく、柔らかい……それに、すべすべしてて、気持ちいいな」
「あうっ……んっ…!フェルパー…!」
感触を楽しむように、ゆっくりと捏ねる。やや控えめながらも、しっかりと存在を主張する膨らみは、フェルパーの手の動きに
合わせて形を変え、その度にノームの体には強い快感が走り抜ける。
「あっ……あん!はぅ……フェルパー、んっ……フェルパー…!」
愛撫を受け、先端が硬く尖り始めると、フェルパーはそれを口に含んだ。ビクリと、ノームの体が跳ねる。
「やっ!そ、それダメぇ…!んくっ……ふあぁ!」
ノームの体はすっかり紅潮し、心臓はうるさいほどに高鳴っている。それを新鮮な気持ちで見つめながら、フェルパーは空いた手を
彼女の腹へと滑らせる。
「んっ……お、お腹、も……気持ち、いいよぉ…」
ただ、そこを撫でられるだけで、たまらないほどの快感が溢れる。自分で触るだけでは何とも感じないはずなのに、彼の手が
触れると胸が高鳴り、同時に強い快感を伴う。呼吸は自然と荒くなり、同時に頭がくらくらするような感覚を覚える。
フェルパーの手が下へと滑り、一度焦らすように太股を撫でると、それまではなかった器官へと触れた。
「ふああぁぁっ!?」
途端に、ノームの体が仰け反り、胸に吸いついていたフェルパーは驚いて体を離した。
「あっ、ごめん!痛かったか?」
「あ……う、ううん、違うの。えっと、その…」
ノームは顔を真っ赤にし、恥ずかしげに視線を逸らした。
「き……気持ち、良すぎて…」
「……みたいだね。すっかり濡れてる」
彼の言葉通り、フェルパーの指にはねっとりとした液体が付いており、それが自身の体から出たものだと気付くと、ノームは耳まで
顔を赤くしてしまった。
「敏感なのは、相変わらずなんだね」
「これも、盗賊用に感覚特化の神経構造だから……それに、フェルパーが触ると、なんか、どこでも気持ちいいの…」
「なんか、嬉しいなそれ。相変わらずといえば、つるつるなのも相変わらずだね」
一瞬何の事かと思い、それが体毛に関することだと悟ると、ノームは少し不安げな表情になった。
「あ……毛、あった方がよかった…?」
「ん?いや、ノームは体毛ないので見慣れてるから、これでいいよ。それより……ここ、もっと触っていい?」
再び、フェルパーの手が股間へと伸びる。それに対し、ノームは恥ずかしげに笑った。
「うん。だって、そのために作ったんだもん。いっぱい触って」
許しを得て、フェルパーは彼女のそこを開かせ、そっと指を差し込んだ。途端に、ノームの顔が歪む。
「うっ……くっ、あっ…!」
「ノーム…!」
「や、やめないでっ…!痛く、ないからっ……もっと、いっぱい…!」
どうやら苦しそうに見えるのは快感のためらしいと気付き、フェルパーはゆっくりと指を動かす。
だが、いよいよその感覚を楽しもうとしたとき、ノームの手が彼の腕を捕えた。
「あうっ……はっ、はぁ…!や、やっぱりダメ…!」
「え、なんでだよ…」
不満げに言いかけたフェルパーに、ノームは蕩けるような笑みを送る。
「指じゃなくって……フェルパーの、ちょうだい。あたしの中、フェルパーのでいっぱいにして」
「そういうことか……よし、わかった」
早速足を開かせようとすると、再びノームの手が彼を止める。
「フェルパーも、上脱いで。フェルパーの体、あたしも直接感じたいから…」
「ああ、ごめんごめん。ちょっと待ってな」
フェルパーもそろそろ我慢できなくなってきているらしく、上着を脱ごうとして袖が抜けずに手間取り、しまいには僅かに布の
裂ける音を響かせつつ、強引に脱ぎ捨てた。その間に、ノームは足もしっかりとベッドに上げ、わざと焦らすかのように足を
ぴっちりと閉じている。
すっかり服を脱ぐと、フェルパーもベッドに上がり、ノームの足をそっと開かせ、その間に体を割り込ませる。
鼓動がいっそう速く大きくなるのを感じながら、ノームは大人しくフェルパーを待つ。そのフェルパーは秘裂にモノを押し当て、
すぐに腰を突き出すが、焦っていたためか滑ってしまい、うまく入らない。
「フェルパー、ゆっくりでいいよ」
「う……ご、ごめん。実際するのは初めてで…」
「うん、あたしも。だから、ゆっくり……ね?」
「そ、そうか。それもそうだな」
それで少し落ち着きを取り戻し、フェルパーは改めてしっかりとあてがうと、慎重に腰を突き出した。
「んっ……う、うあっ!あうっ!あああっ!」
秘唇がゆっくりと広げられ、先端が熱い粘液に包まれる。ノームの中は思った以上にぬるぬるしており、またきつい。
中に侵入するにつれ、ノームの嬌声も大きくなり、その体もじっとりと汗ばんできている。
「うっく…!ノーム、平気か…!?」
「だ……だい、じょぶっ…!」
苦しげに答えるが、思った以上に中はきつい。腰を進めると閉じられた肉を無理矢理押し広げる感覚があり、ともすれば
裂けてしまうのではないかという不安が襲う。しかし彼女自身の言葉に、僅かに残った気遣いも消え失せる。
モノが彼女の中に埋まるにつれ、熱くぬるぬるとした感触が広がっていく。それを楽しむように、フェルパーはゆっくりゆっくり腰を
突き出していき、やがてその感覚が根元まで来ると、ノームの上に覆い被さるようにして止まる。
「くっ……んっ…!フェル、パー……動いて、いいよ…」
何とかそういうノームに、フェルパーは苦しげな苦笑いで答える。
「む、無理……今動いたら、出る…」
「……そんなに、気持ちいい…?」
ノームは嬉しそうに微笑むと、自分から腰を振り始めた。予想外の攻撃に、フェルパーは呻いてそれを止めようとしたが、初めての
感覚に、しかも一ヶ月以上我慢していたせいもあり、あっさりと屈した。
「うあっ……やっ、おいっ、ノームっ……出る!」
ビクンと、体内でフェルパーのモノが跳ね、熱い液体が中に注ぎ込まれるのを感じた。
「あっ……フェルパーのが……出てる……あたしの、中に…」
陶然と呟くノーム。フェルパーはノームに覆い被さったまま、全てを彼女の中に注ぎ込むと、少し怒ったような、しかしどこかばつの
悪そうな、複雑な表情を浮かべた。
「……出るって言ったのに、お前は〜…!」
「だって、出してほしかったんだもん…」
ノームが言うと、フェルパーは少し意地の悪い笑みを浮かべた。
「そうか。じゃ、一回じゃ足りないだろ?」
「え?」
「まあノームが足りてても、俺は足りないから、少し付き合ってもらうぞ」
「え?え?ちょっとフェル……んあっ!?」
一度出したにもかかわらず、フェルパーは抜きもせずに腰を動かし始めた。
「あっ、あっ!や、フェルっ……はうっ!」
ノームの中を激しく突き上げつつ、フェルパーは彼女の耳を軽く噛んだ。途端にノームの体が仰け反り、膣内がぎゅっと締め付けられる。
「み、耳はぁ…!お、お腹、すごいよぉ…!」
突かれる度に、中で掻き混ぜられて泡立った精液が、結合部から溢れ出る。愛液と精液が混ざり、より滑りの良くなった膣内を、
フェルパーは容赦なく突き上げる。
「はうっ!あっ!フェルパー、フェルパーっ…!」
「ノーム……可愛いよ」
耳元で囁くと、ノームの体がかあっと熱くなった。そして彼に甘えるように、ノームは全身でフェルパーに抱きつく。
その体をしっかりと抱き返し、フェルパーは欲望のままに腰を振る。既に二人の体はじっとりと濡れ、汗の匂いが鼻孔をくすぐる。
「気持ち、いいのっ……フェルパー、もっと、もっとぉ…!」
「ぐぅ…!ノーム、すごくきつい…!ま、また出そう…!」
フェルパーの動きがさらに激しくなり、さすがのノームも若干の痛みを感じ始める。しかし、その痛みは不快ではなく、むしろそれほどに
彼が気持ちよくなっているのだと思うと、嬉しさに胸が締め付けられるような感じがした。
「い、いいよ、出して…!フェル……んむぅ…!」
貪るようにキスを求められ、ノームは必死でそれに応える。やがて、動きの一つ一つが大きく荒くなり、そして一際強く腰が
叩きつけられたと思うと、再び体内に熱い物が流し込まれるのを感じた。
「んっ……ふーっ、ふーっ…」
何とも言えないほどの快感と、幸福感。
好きな人に抱かれ、求められ、そしてようやくこうして一つになれたと思うと、自然に涙が溢れてきた。
「んう……ふあ…」
フェルパーが唇を離すと、ノームは涙を流しながら、放心したように彼を見上げる。
「あっ……ごめん、辛かったか?」
慌てて気遣ってくれるフェルパーに、ノームはとびきりの笑顔を返した。
「ううん、違うの。嬉しくって、胸が苦しくなって……そしたら、なんか勝手に涙出ちゃって…」
「……ほんと、生身になったんだな」
「んっ…!」
フェルパーはノームの中から引き抜くと、彼女の体を優しく拭ってやった。
「疲れただろ?」
「ん……体、重い…」
「それ疲れてるんだよ。もう体洗うのとかは後にしてさ、今は寝ていいよ。俺、一緒にいるからさ」
そう言うと、フェルパーはノームを優しく抱きしめてやった。温かい腕が、えもいわれぬ安心感を彼女にもたらす。
「ありがと……ねえ、フェルパー…」
言いかけたノームの口を、フェルパーは優しく塞いだ。
「……好きだよ、ノーム」
言おうとしたことを先回りされ、ノームは一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐに満面の笑みに変わる。
「ん……私も」
ぎゅっとフェルパーに縋りつく。そして目を瞑ると、あとはもう自分でもわからないぐらい早く、眠りへと落ち込んでいった。
翌朝、ノームはフェルパーが買っておいてくれた焼きそばパンを五つほど平らげ、さらに学食で朝食を取ってからドワーフの部屋へと
向かった。しかし、今回は愛用している毒のナイフは部屋に置いてある。
「……いや、だからさ?」
降参だというように手を上げ、ドワーフが言う。
「私なりの気遣いだよ?ノームだってよかったでしょー?」
「言い残すことはそれだけ?」
ノームの手には、毒のナイフの代わりにシャドーバレルが握られていた。さすがに飛び道具相手では、ドワーフもどうしようもない。
「いやいやいや、待ってよ。私さ、フェルパーだけは部屋に行くように仕向けたけど、他のは全部行かないようにしたんだよ?
そりゃまあ、言われたことではないけどさ、ドクターから見てもあの体はちゃんとできてたし、不都合は起きないだろうって確信が
あったからやったんだからね。気まぐれでいたずらしたわけじゃないよ、ほんとに」
「……まあ、確かにフェルパーとゆっくりはできたけどさ」
「でしょ?だからね、もう銃下ろしてよー。それに、ここでそんなの撃ったら、学校中に知れ渡るよ?」
「……それもそうかもね。じゃ、次はクロスボウにしておく」
物騒なことを言いつつ、ノームは銃を収めた。ドワーフはホッと息をつくと、にんまりとした笑みを浮かべる。
「で……どうでした?初めてのセックス、痛かった?」
「ん、あんまり。あの辺は、痛覚とかあまり感じないようにして、快感だけ感じられるようにしておいたから」
「あ、ずるーい。でも、ちょっともったいないかも。最初痛いだけだったのに、だんだん中とかでも感じられるようになってくるのって、
すっごく達成感というか、そういうのありますよ?」
「そんなのいらない。それに、あたしが痛がってると、フェルパーも気にしそうだし」
「うーん、愛ですねえ。それでそれで……結局、どんな感じのおまんこにしたの?」
遠慮のない質問にも、ノームは気にする素振りもない。
「やっぱり同族がいいかなって、フェルパー族の参考」
「あ〜、無難なとこだね。まあ、妥当って言えば妥当な…」
「でも」
言いかけたドワーフを無視し、ノームは続けた。
「大きさはクラッズ族参考」
「何ですとーっ!?」
思わず叫ぶドワーフのことなど既に眼中にないらしく、ノームはポッと顔を赤らめる。
「だって、男の人ってきつい方が好きらしいし……昨日だって、抜かないまま二回もしてくれた…」
「……ノ、ノーム、それ、ちょっと見せて、くれません、か…?」
尋ねるドワーフに、ノームは冷たい笑みを送る。
「やだ。見せるのはフェルパーだけ」
「そんなこと言わないでさー!私だって依代作り手伝ったでしょー!だからちょっとぐらい、い、いいじゃないですか!」
「ダメ」
「じゃ、じゃあご飯おごるって言ったら!?」
「ダメなものはダメ。さっさと諦めて」
「あ〜ん、いじわるぅ!」
そこに、コンコンとノックの音が響く。話を中断して出てみると、頭に三角巾を巻いたバハムーンが立っていた。
「お、ノームもいたのか―。あのなあのな、またケーキ作ったんだけど、食べないか?」
「食べるっ!ショートケーキある!?」
どうやら交渉は望み薄と悟ったらしく、ドワーフの興味は早々にケーキへと移っていた。
「あるぞー!あと、チョコレートケーキとモンブランと……あ、ノームはどうだ?」
「食べる。フェルパーには声掛けた?」
「ああ、もう全員掛けたぞー。じゃ、カフェの方で待っててくれよ。持ってくからさ」
言われて、二人は校内のカフェに移動する。すると、既に男連中は席に着いており、丸いテーブルを囲んで一足先にケーキを頬張っていた。
「お、ノームとドワーフ。お先に」
フェルパーとクラッズはチーズケーキを食べており、ディアボロスはショートケーキを黙々と食べている。相変わらず女子生徒の
制服を着ており、またここが母校のため、ディアボロスだけは非常にカフェの雰囲気に馴染んでいる。
「あ、いいなー。みんな先食べてるんだ」
「ああ、三人で体育館いたら呼ばれてなー。んで、ディアボロスが面白かったぞ。バハムーンが、ノームとドワーフ呼んでくるって
言ったら、ひったくるみたいにしてショートケーキ確保してなー」
「っ…!」
楽しそうに言うフェルパーに、ディアボロスはほんのり顔を赤くしつつ、非難がましい目を向ける。
「……何だよ、怒るなよ。悪かったって。そんな気にすると思わなくてさ……二人とも、クッキーもあるけどどう?」
「ごちそうさまでした」
「え、食べないの?」
「え!?あ、いや、食べますよ!?じゃ、ケーキ来るまでこれ食べてよっと」
ドワーフは当たり前のようにディアボロスの隣に座り、クッキーをがつがつと頬張りだした。かなり量があったはずのクッキーは、
瞬く間にその数を減らしていく。それを見て、ディアボロスはクッキーを数枚掴むと、それを制服のポケットにしまった。
ノームは椅子を掴むと、男連中の中心にいたフェルパーの隣に強引に移動する。もはや言って聞く相手でもないので、クラッズは
黙って席をずらしてやった。
「……無理矢理だな」
「だって、隣がいいんだもん」
クラッズに目で謝ると、彼は『慣れたものだ』と言うように笑う。
「お待たせー!これ、追加のケーキな!」
そこに、バハムーンがケーキを持って現れる。どうやらかなり作っていたらしく、現在男性陣が食べているケーキに加え、
さらに数種類のケーキがトレイに乗っていた。
「トカゲ、私ショートケーキ!」
「じゃ、あたしはモンブラン」
「これ、俺達の分もある?じゃ、またチーズケーキもらうな」
「僕はどうしようかな……これ、ガトーショコラ?だっけ?これ、もらうね」
それぞれ思い思いのケーキを取り、バハムーンは余ったケーキを自分の分にして席に着く。その時既に、ドワーフのケーキは半分ほどの
大きさにまで減っていた。
「おいしー!最近、トカゲ腕上げた?」
「お、ほんとかー!?嬉しいなあ、それ!」
「うん、ほんとにおいしいよね。今度は他のも食べてみたいなー」
思い思いの会話を楽しむ仲間を、ノームは少し戸惑ったような表情で見つめていた。
「ん?ノーム、どうした?」
「フェルパー……あの、なんか胸がドキドキするんだけど……なんでかな」
「楽しいからじゃないのか?こう、わくわくする感じじゃない?」
「ふーん……楽しいと、こんな感じなんだ」
しみじみとした感じで呟くと、ノームはにっこりと笑いかけた。
「楽しいね、フェルパー」
「はは、そうだな」
「あれ?なんかノーム、雰囲気変わったかー?」
「何、大きいの」
「……気のせいかな?」
「あ〜、ノーム依代変えたからねー」
「ええ!?依代変えたって……自分で作ったの!?」
「愛は強いんですよー。ね、ノーム?」
「変な振り方しないでよ」
とはいえ、ノームの口調は怒ったようなものではない。むしろ、そんな会話を楽しんでいるような、どこか楽しげな口調だった。
好きな人と、より愛し合いたいという一心だけで、とうとう依代まで変えたノーム。その技術は、もはや学園でも飛び抜けたものに
なっていることに、本人は気づいていない。元より、そんなことに興味もなければ、比べようとも思っていないので当然ではある。
その鍛え抜かれた技術は、ただ愛する者のために。
本人はその言い方を嫌がるものの、ドワーフの言葉を全身全霊でもって体現しているノームだった。
以上、投下終了。ドワーフがいつになく暴走して参った。
しかし全滅したときの救助システムは実際のところどうなってるんだろうか。
それではこの辺で。
GJ&乙です。
フレッシュノームか。夢が広がるね。
GJですた。
相変わらずドワ子はおいしいキャラしてるなぁ…
前回のお話がちょっと影を落とすような終わり方だったから心配だったけど
この流れなら平気…か?
なんにせよ乙ですた。
46 :
名無しさん@ピンキー:2011/01/20(木) 22:46:22 ID:w5RwRNEe
age
保守
保守
保守
こんばんは。また間が空きましたが続き投下します。
今回のお相手はバハ子。注意は特になしかな。
それでは楽しんでいただければ幸いです。
最も歴史あると言われる冒険者養成学校である、ドラッケン学園。他の二校と比べ、生徒数もかなり多く、まさに名門と呼ばれるに
ふさわしい規模の学園である。
そんな事情もあってか、この学園には大浴場が設置されている。探索で付いた様々な汚れを洗い流し、疲れた体を温かい湯に沈めて
仲間と語らう。そんな時間は、冒険者養成学校という特殊な状況下においては、数少ない安らぎの一つである。
探索は長引くこともあり、また地下迷宮に行っていれば時間感覚が狂いやすい。そのために浴場は大抵の場合、誰かしらが
使っているものだが、この時は珍しく、誰一人として浴場内にはいなかった。
ただただ湯の流れる、静かな音が響く。それを切り裂くようにして、浴場の戸が勢い良く開かれる音と、嬉しげな大声が響く。
「おおーっ、貸し切りぃー!やっほーぅ!!」
ダダダッと駆け足の音が響き、続いて湯の中に遠慮なしに飛び込む、大きな水飛沫の音が響いた。
「全くトカゲはー。体洗ってから入らない?普通」
「子供よね。外見と違って」
早々に湯船へ飛び込んだバハムーンと違い、ノームとドワーフは先に体を洗い始める。
「それにしても、やっぱり生身って面倒。しっかり洗わないと、臭いついたり痒くなったり…」
「それが普通なんだよー。それにノームはまだ楽な方じゃない」
そう言うドワーフは全身に石鹸の泡を付けており、まるで羊のような姿になっている。
「ほらほらノーム。羊、羊」
「楽しそうね。大きいのと同レベルね」
「……よし、流そ」
頭からシャワーの湯を被ると、ドワーフの毛は体にべっとりと貼り付き、普段よりも遥かに細い体に見える。
「毛むくじゃらは大変ね」
「大変だよー。季節の変わり目なんか抜け毛増えるしさー。その点ノームは……毛、薄いですね?」
「どこ見てんの変態。必要があれば生やせるけど、そんな必要なさそうだから生やしてないだけよ」
その時ふと、バハムーンが異様に静かなのが気になり、二人は後ろを振り返った。すると、彼女は顔だけ湯から出してうつぶせになり、
手足の力をだらりと抜いたまま、尻尾を器用にくねらせて静かに泳ぎ回っていた。
「泳いでるのは予想の範囲だけど……あれは犬かき……じゃ、ないよね」
「トカゲ泳ぎでしょ」
「ドワーフも真似できるんじゃない」
「いやー、私の尻尾じゃ、ああはいかないよー。あの、まさにトカゲって尻尾じゃないとね」
その声が聞こえたらしく、バハムーンが唇を尖らせて振り向いた。
「……む。ドワーフ、トカゲって言うなよー。ドラゴンだぞー」
「似たようなものでしょ。火が吐けるトカゲって程度で」
「全然違うってばー!トカゲは空飛ばないだろー!?」
「じゃ、あんたはトカゲで確定だねー」
「あう……で、でもっ、ランドドラゴンとかだっているんだからなー!」
「こだわるのね」
「そういえばトカゲ、ここ入ったのだって『ドラッケン』って響きがご先祖様っぽいから、とか言ってたっけね」
「あ、そうだ。頭洗お」
唐突に言って、バハムーンは湯船から上がるとドワーフの隣に座る。ドワーフはノームの方へ僅かにずれたが、ノームはそれ以上に
座る位置をずらした。
「……大きいのも毛は薄いのね。その辺は中身通り」
「トカゲだから、毛が薄いんでしょ。爬虫類だもんね」
「だからぁー、トカゲって言うなよー。私はトカゲでも、ご先祖様はドラゴンなんだからなー」
「ま、私としては毛よりも〜…」
そう言って、ドワーフはにんまりとした笑みを浮かべた。
「……ノームもトカゲも、胸、結構でっかいですよねー。触り心地よさそー」
途端に、二人はドワーフから距離を取った。
「……触ったら殺す」
「や、やめろよー!?変なことするなよー!?」
「ああでも、ノームのは小ぶりと言えば小ぶりなんだね。でもカップはそこそこありそう……スリーサイズいくつ?」
「いくらでも調整利く体のサイズなんか、聞いても無駄でしょ」
「えー、興味あるのに…」
「そう言うあんたはいくつよ」
「秘密ー」
「どうせ60・60・60でしょ」
「ちょっ、違うよ失礼な!私だって凹凸ぐらいあるよ!」
「ああ、60・70・60だったのね」
「ひどーい!トカゲー、ノームがいじめるー!」
言うなり、ドワーフはバハムーンに抱きついた。少し戸惑っていたものの、バハムーンは割と嬉しそうだったが、ドワーフの顔に
だらしのない笑みが浮かぶ。
「うーん、ウエスト結構あるけど、大柄だから普通……でもこの胸は……大柄でも十分な迫力、ですね…!」
「わーっ!?ちょっと、やめてよぉ!ノームぅ、ドワーフが、ドワーフがーっ!」
「……お幸せに」
「やだぁーっ!ドワーフやめてよーっ!ノーム、お願いだからやめさせてーっ!お願いだからーっ!姉ちゃんーっ!」
「あたしは別に、妹に思い入れなんかないから無駄。じゃ、お風呂入ってくる」
「そんなぁーっ!」
一方の男湯。一応壁があるとはいえ、女湯と同様に誰もいない静かな浴場では、隣の声は見事なまでに筒抜けだった。
「……あいつら、何やってるんだ…」
「……混ざりたいと思う僕は汚れてると思う?フェルパー」
「じゃあ俺も真っ黒だ。男はみんな真っ黒だ」
耳に水が入らないよう最善の注意を払いながら、フェルパーは丁寧に頭を洗っている。
「それにしても、バハムーンも生えてないのか。意外だなー」
「僕も最初意外だったけど、さっきのドワーフの言葉聞いて納得しちゃったよ」
「女の子は無駄毛の処理が大変だー、みたいな話聞くけど、うちの奴等はそんなの縁ない奴ばっかりだな。ははは」
「あははは。ドワーフなんか、そんなことしたら大変な事になりそうだしねー」
そしてふと、二人はディアボロスに目をやる。
「……?」
腋に剃刀を当て、見つめる二人を不思議そうに見つめ返すディアボロス。
「……意外なとこにいた…」
「わざわざ剃ってるんだ……なんでまた?」
「……踊ってる最中に見えて、きれいなものでもない」
「なるほど、さすがだね」
「君って結構、職人気質なところあるよなー」
フェルパーは最後に頭から湯を被ると、湯船へと向かう。それに続いてクラッズも湯船に浸かり、のんびりとストレッチを始める。
そこへ、ようやく作業を終えたディアボロスが来た。爪先からそっと湯に浸け、波紋が立たないようにゆっくりと足を差し込んでから、
一度湯船の縁に腰かける。
「………」
そしてタオルを手に取ると、長い髪を根元から掻き上げる。それをタオルで結い上げ、髪が湯に浸からないようにすると、ようやく
湯船の中へと身を沈めた。
その動作を見るともなしに眺めていた二人は、揃って言葉を失っていた。
「……色っぽく見えた僕はどうなんだろう、フェルパー…」
「男でもしょうがないと思うぞ……見た目、ほとんど女だし、動作もそれっぽいし、細かい気遣いなんかうちの女子連中超えてる…」
「……?」
二人の視線に気づき、ディアボロスが首を傾げる。
「ああいや、何でもないよ。ただ、本当に女っぽく見えるなってさ…」
「………」
特に気にしてはいないらしく、ディアボロスは気持ちよさそうに目を瞑った。
「……男なのがもったいないくらいだよね」
「だよな」
「………」
かくして、騒がしい女湯とは対照的に、男湯は平和な時間が流れていくのだった。
その後、男性陣が風呂を上がると、女性陣もちょうど上がったところだったらしく、外からは楽しげな声が響いていた。
「ふーっ!やっぱりお風呂上がりはこれだよなー!」
「おいしいよねー。お風呂上がりの……白い……ミルク…」
「うるさい毛むくじゃら。牛乳、あたしも買っておけばよかった」
そんな会話に、脱衣所のクラッズも思わずうんうんと頷く。
「お風呂上がりの牛乳って、何かおいしいよねー」
「なー。俺も好きだあれ。ディアボロスはどう?」
ディアボロスはちょうど髪を掻き上げ、ポニーテールに結い直そうとしているところだった。まだ湿った黒髪と晒されているうなじが、
そこはかとなく色気を漂わせる。
「………」
返答はしなかったが、ディアボロスは少し考えた後、こくんと頷いた。
「やっぱおいしいよなー。にしてもまあ……まさに烏の濡れ羽色って感じだな、その髪」
「フェルパーもね。あ〜、僕もあとで牛乳買って来ようっと」
「俺も付き合う。ディアボロスはどう?」
「………」
「よし、じゃあ三人で買いに行くかー」
買いに行く方向で話がまとまった男性陣とは別に、外の声はまだ続いている。
「購買まだやってるし、行ってくれば?」
「うまいぞー、牛乳」
「……いいや、面倒臭いから。部屋にあったと思うから、帰ってそれ飲む」
そしてこの選択が、翌日に大変な騒ぎを起こすこととなった。
一夜明けた朝。学食に来ないノームをフェルパーが見に行くと、彼女はベッドの上で腹を抱えて唸っていた。慌ててドワーフを
呼んだところ、彼女もこれは手に負えないと判断し、結局保健室に運び込まれることとなった。
「食中毒ね。何か、変な物でも食べた?」
カーチャ先生の質問に、ノームは苦しげな息の中で何とか答えた。
「……ぎゅ、牛乳……三ヶ月前、の…」
「どうして、そんなの飲むの…」
その言葉はカーチャ先生だけでなく、その場にいた全員の気持ちを代弁していた。
「前は、平気だったから……うっ……ぐぅぅぅ…!」
「……ノームさあ、今あんた生身でしょ?人形じゃないんだから、死ぬ気?」
「だ、だって…」
「ていうか、馬鹿でしょ?いや、仲間疑うなんて最低だよね。ノームは馬鹿。余計な手間増やして、このクソ馬鹿肉人形がー」
久しぶりに、ドワーフは口の悪さを存分に発揮している。
「ノーム、その体、脳味噌入ってるんだよね?使い方わかる?わかっててそれなら、一回死んでみる?馬鹿って死ななきゃ治らない
らしいからさ」
「少し言いすぎよ。仮にもあなた、ドクターでしょう?」
教師の注意にも、ドワーフは全く怯まない。
「言いたくもなりますよー!どこの世界に、三ヶ月前の腐った牛乳をわざわざ飲む奴がいるんですかー!」
その世にも稀な人物を前に、仲間達は言葉を失う。
「噂では聞いてたけど、この子は依代を生身にしたっていう子よね?常識が通用しなくても、仕方ないわよ」
「うぅ……うっ、あぁぁ…!フェルパー、痛いっ……お腹、痛いっ……死んじゃうよぉ…!」
「ああもう、お前は〜…!先生、何とかしてやれませんか?」
「薬は出しておくけど、すぐに治るわけではないわ。後は安静にしてることね」
「だから面倒なんだよねえ。私だって、一応解毒剤に毒消しにリポイズ試したけどさ、ほとんど効いてないんだもん。こういう、
病気とかに対する治療魔法も充実するといいんだけどねー」
結局、ノームには患者に鞭打つドワーフより、心の拠り所であるフェルパーが付いていることになり、迷宮探索は中止となった。
元々予定していたならまだしも、突然の中止ではやることもない。フェルパーとクラッズは、もう学科の単位を完全に取得しているので、
授業も特に出る必要はない。他の三人はそれぞれの授業を受け、それが終わると揃ってドワーフの部屋に集まることとなった。
「で、ここを折り返して……はい、これが鶴」
「えーっと、こうかな?できたできたー」
「ん〜っとぉ……えいっ!やった、できたー!」
「………」
暇を持て余している四人は、タカチホの遊びである折り紙に熱中していた。最初はトランプでもやろうかという話になっていたのだが、
クラッズが落ちていた紙きれで何となく鶴を折ると、他の三人は見たこともない遊びに夢中になってしまった。
「ドワーフとディアボロス、うまいなあ。僕よりきれいにできてるんじゃない?」
「トカゲは……クラッズのにそっくりだねー。羽の折り目が開いちゃってるところまで忠実にそっくりだね」
「え?うん、兄ちゃんの真似したらこうなった」
「……妹学科の技術、妙なところで活用してるね」
「次、何折ろうか?って言っても、あと僕ができるの蛙とやっこさんくらいしかないけど」
「クラッズ、折り紙士って奴の経験でもあるの?」
「いやー、あそこまで出来てたら、鶴そんなに下手じゃないって。タカチホだと、結構折れる人多いよ」
クラッズが次の紙を取り出すと、そこで不意にバハムーンが席を立つ。
「ごめん。ちょっとトイレ行ってくるなー」
「あ、じゃあ私もー」
それに続いて、ドワーフも席を立った。
「二人とも?ディアボロスは……何か折る?」
「……やっこさん」
折り紙に興じる男二人を残し、バハムーンとドワーフは寮の女子トイレに向かう。その道すがら、ドワーフはバハムーンに身を寄せた。
「……で、トカゲ。あれからクラッズとは……どう、なんですか?」
「どうって?」
「だからぁ、一発ヤッた後、またヤりました?」
一瞬意味を考え、その意味を理解すると、バハムーンはたちまち顔を赤くする。
「しっ、してないよっ!ていうか、いきなりなんでそんな話!?」
「ええっ!?してないのっ!?もったいない!」
「何が!?」
「だって、いくらでもヤれる相手いるのに!」
「で、でも、クラッズ何も言わないし…」
「……あー、そっか。トカゲ痛がってたから、遠慮しちゃってるのかもね」
「……え?なんで知って…?」
「とにかく!」
つい口を滑らせたドワーフは、聞き返そうとしたバハムーンを無理矢理遮る。
「前も言ったけど、男なんて全員頭の中はヤることしか考えてないんですよ!?だからトカゲも、またそろそろ抜いてあげた方が
いいですよ!」
「そ、そんなこと大声で言うなぁ…!でも、その、クラッズそういうの断りそうだし…」
「だいじょ〜ぶ!クラッズだって男なんだから、トカゲが『しよ?』って言えば一発ですよ!」
「……でも、痛いから…」
すると、ドワーフの目がきらりと妖しく光る。
「トカゲ、あんたのそのおっぱいは何のために付いてるんですか?」
「な、何って…」
「そこにおちんちん挟んで擦ってあげたら、大抵の男は即抜けますよ!?」
「えっ、ええええっ!?こ、こ、ここでそんなことするのぉ!?」
何だかんだで、バハムーンもクラッズに何かしたいという気はあるらしく、ドワーフの言葉をいちいち素直に受け取っている。
「それができるってすごいことなんですよ!?せっかくできるのにやらないなんて、もったいなさすぎですよ!」
既に二人はトイレの前まで来ているのだが、話に夢中になっており、中に入ろうという気配はない。
「それにそうすれば、トカゲは痛くないままで満足させられ…!」
「相変わらず」
突然、トイレの中から声が聞こえ、二人は驚いて振り返った。
「セクハラ絶好調ね、わふちゃん」
ハンカチで手を拭きながら出てきたのは、紛れもなくフリーランサーのリーダーであるクラッズだった。
「うおおー!クーちゃん久しぶりぃー!」
「おお、リーダー!?こんなところで会えるなんてなー!」
バハムーンは早速彼女を抱き上げようとし、しかしクラッズは鮮やかにそれをかわすと、代わりに飛び付いてきたドワーフと
しっかり抱き合った。
「え、なんでなんで!?クーちゃんなんでこんなとこに!?」
「なんでって、私も二人も、ここの生徒でしょうが。何かいい課題出てないかなってさ、寄ってみたわけ」
ぎゅうっとお互いの体を抱きしめてから、ドワーフとクラッズは体を放した。そこをこれ幸いと、バハムーンがクラッズを抱き上げる。
「……バハムーンも相変わらずだね。でも、何?バハムーン彼氏できたの?」
「えっ!?あ、うん、その、彼氏って言うか、兄ちゃんって言うか…」
「……妹学科?」
「そ。でもパティシエとしても相変わらず頑張ってるよねー」
「ふーん、わふちゃんも少し仲良くなった?」
クラッズが言うと、ドワーフはうんざりしたような顔をする。
「特に変わらずだよー。私のこと狙いにくくはなったけど、だからってわふっと仲良くなるってことはないからね?」
「そう。残念なような、変わんなくてホッとしたような。何にしろ、元気そうで何より」
「それは私の台詞だよー。クーちゃん、よく無事だったよねー、あの編成でさ」
ドワーフの言葉に、クラッズは遠くを見つめるような目つきになった。
「……あ〜、最初はほんと死ぬかと思ったけど、フェアリー頑張ってくれたし、プリシアナのセレスティアが堕天使になってくれたから、
今は結構バランスも良くなったよ。ここまでが大変だったけど……そっちはどんな編成だったっけ?」
「私とトカゲでドクターとパティシエ、プリシアナが盗賊の錬金術師とダンサー、タカチホが侍と炎術師の格闘家」
「ああ、一通り網羅してる……私のとこなんか、私とタカチホのフェアリー以外、全員術師だったのに…」
「リーダー、苦労してるなあ」
クラッズはバハムーンの腕から脱出すると、大きく息をついた。
「ああでも……ほんとはこういうのしない方がいいんだろうけど……頑張ったし少しぐらい…」
ぶつぶつと呟いたかと思うと、クラッズはガバッとドワーフに抱きついた。
「おっと!?」
「わふちゃんー!ちょっと話聞いてよー!せっかく会えたんだから話聞いてってよー!」
「はいはい、クーちゃんストレス溜まってるのね。ゆっくりじっくりわふっと聞いてあげるから、とりあえず落ち着こうね」
ドワーフは子供をあやすように、クラッズの頭を優しく撫で、背中をぽんぽんと叩いてやる。バハムーンがそれを羨ましげに
見ていると、不意にドワーフがそちらへ視線を送る。
「トカゲー、見ての通りだからさ、私はクーちゃんのとこ行くから、みんなにはよろしく言っといてー」
「え、行っちゃうのか?まあ……いいけど」
「じゃ、よろしく。ほらほらクーちゃん、とりあえず部屋行こうねー」
異様に親密な感じでクラッズを抱くドワーフに、今まで見たこともない、まるで子供のような表情のクラッズ。その二人が廊下を曲がって
見えなくなるまで、バハムーンはぽかんと見送っていた。
「……リーダー、あんなんだったっけなあ…?ま、いいか」
とりあえずトイレで用を足すと、バハムーンはドワーフの部屋に戻る。
「……で、なんかドワーフとリーダー、揃っていなくなっちゃった」
「いなくなっちゃった、って……ここ、ドワーフの部屋なんだけどねぇ」
一人で戻った経緯を説明すると、クラッズは呆れ顔だった。ディアボロスは折り紙で作った蛙をうまく跳ばせようと、足の折り方の
調整に余念がない。
「それにしても、君達の班長って、あの戦士の子だっけ?てことは、フェアリーさんとセレスティアもいるんだなあ」
「なんで『さん』付け?」
「先輩だから」
「うそ?」
「ほんと。班長とあの人だけ一年先輩なんだよ。久しぶりに会ってはみたいけど……今は違う班だし、会わないままでいいや」
そう笑うと、クラッズはディアボロスの方へ視線を向ける。
「ディアボロスはどう?仲間と会いたいとかない?」
「………」
ディアボロスは顔を上げ、少し考えてから、ふるふると首を振る。
「そっか。まあ、ねえ。元の仲間と会ったら、色々思うところもあるだろうしねえ」
「………」
クラッズの言葉に、二人の表情も僅かに曇る。
元々が、お互いの力量を見たいがために組まれたパーティである。言うなれば、現在のこのパーティは、『本来の』パーティではない。
いつになるかは分からないものの、その時が来れば元のパーティに戻らなければならないのだ。
「……ああ、ごめん。暗くしちゃったかな。ま、とにかく今はこの班が僕達の班だし、みんないい友達だよね」
その言葉に、バハムーンが微妙な表情で話しかける。
「……なあ、クラッズ」
「ん?どうしたの?」
「私ってさ……お前の、その、か、彼女、に、なるのかな?それとも、友達なのかな?」
「なっ……えっと、君はいきなり、何を…?」
「わ、私はなっ!お前のこと、兄ちゃんみたいな、彼氏みたいな、友達みたいな……そ、そういう感じなんだけど…」
「えぇ〜っと……その、そうだなあ……あの、ね、君の、その『兄ちゃん』って呼び方とか、性格とか、ものすごく妹に似てるんだよ」
困ったような、あるいは辛そうな表情で、クラッズは続ける。
「だから、その〜……恋人ってなると、ちょっと違う感じだし、でも親友ってのも……うーん、違うんだよね…」
「で、でもでも、私、兄ちゃ……じゃないじゃない!お前と、その、エッチなこと…」
「やめてバハムーン!ディアボロスいるんだから!」
「………」
ディアボロスは特に気にする様子もなく、かといって出て行くでもなく、事の成り行きを黙って見守っている。
「……また、したいとか、思わないのか…?」
「ちょっ!?バハムーン続けるの!?」
「わ、私は、その……お前が我慢してるんだったら、やだし、求めてくれたら……わ、悪くないって言うか……嬉しい、かな…」
「あの、だからね?バハムーン、ちょっと落ち着いてね?君はさ、妹に似てるところが多くて……恋人としては、ものすごく
見づらいんだよね」
「で、でも、見づらいんだったら、頑張れば見られる…」
「あー、いや、そういう意味じゃなくて…」
「……じゃあ、私は魅力ない…?」
「いや、なくないよ。って僕何言ってるんだろ……やっ、女の子としては可愛いと思うし、その……君がさっきから言ってることに
関しては、そりゃ、まあ……僕も男だから…」
クラッズの声はだんだんと小さくなり、最後の方は何を言っているのかよく聞き取れないほどだったが、それでもバハムーンには
十分に伝わった。
「じゃ、じゃあ!またしたいとか、思う!?」
「だ、だからどうしてそれを今っ……君、ドワーフに悪い影響受けてない?」
そんな二人を、ディアボロスは黙って見つめていたが、おもむろに紙を取ると何かを折り始めた。
「とりあえず、ね?バハムーン、落ち着こうか。ここ二人だけじゃないんだし、時間も早いし、そういう話は後でゆっくり…」
必死に説得を試みるクラッズに、ディアボロスが突然何かを投げた。驚きながらも何とか受け取ると、それはピンクの紙で作られた
ハート形の折り紙だった。
「……ちょっと、ディアボロスー!?」
「………」
クラッズの声を無視し、ディアボロスはウィンクを送ると、そのまま部屋を出て行ってしまった。後にはバハムーンとクラッズと、
ハートの形をした折り紙が残される。
「いらない気を使ってくれて…!僕にどうしろって…?」
「に……いや、クラッズ」
いつもとは違う声音に、クラッズはバハムーンの顔を見上げる。その目はどこか不機嫌そうな、それでいて寂しそうな色が浮かんでいる。
「あの、な。私だって、お前に気ぃ使いたいんだぞ。なのに、そういうの全然させてくれないって、ちょっとやだ」
「あ、う、いや、それは…」
「お前だって、その、溜まって……るん、だよな?だから、それぐらいは、させてくれよ…」
「………」
言葉に詰まったクラッズを、正面から見つめる。そして、バハムーンはドワーフの言葉を思い出した。
「なあ、クラッズ……しよ?」
「っ…」
その言葉は、バハムーンが思った以上の効果を発揮した。クラッズの目からは迷いが消えうせ、代わりに覚悟のようなものが見て取れる。
「……ほんとに、いいんだね?」
「う、うん。なんか、改めて言われると、ちょっと怖いけど……よ、よし!じゃあ早速…!」
「って、ちょっと待った!バハムーン、ここドワーフの部屋!」
勢い込んで服を脱ごうとしたバハムーンを、クラッズは慌てて止める。
「あ、そっか。あ、じゃあこの前お前の部屋だったし、今日は私の部屋!ここうちの寮だしさ!」
鍵はどうしようかと悩んだものの、結局二人は鍵を掛けずにドワーフの部屋を後にした。不用心ではあるが、盗まれてまずいような物は
一つもなかったので、問題は特になさそうだった。
バハムーンの部屋は意外と近く、いくつか部屋を跨いだところにあった。部屋に入って鍵を締め、再びバハムーンが服を脱ごうとすると、
それをクラッズが止める。
「ん?何だよー?」
「あー、いや、そうすぐに脱いじゃうのも味気ないからさ」
「でも、どうせ脱ぐだろ?」
「その過程が楽しいの」
言いながら、二人はベッドに向かう。バハムーンがその縁に腰かけると、クラッズは彼女の胸に手を這わせた。
「あっ…!」
「この前は、痛くしちゃったと思うからさ。今日は、気持ちよくさせてあげる」
クラッズの小さな手が、バハムーンの大きな胸を包む。
指に力が入り、胸を軽く潰す。途端に、バハムーンは熱い吐息を吐く。
「はうっ…」
相変わらず、少しくすぐったいような、微妙な感覚。だが、その感覚は少なくとも不快ではなく、むしろ背中がぞくぞくするような、
不思議な快感を伴っている。
大きく、ゆっくりと手が動き始める。その度に、胸から全身へとその感覚が広がり、バハムーンは嫌がるように身を捩る。
服と下着の上から受ける刺激は、あまりにも物足りず、もどかしい。だがそのもどかしさが、また別の快感を生み出し、バハムーンを
確実に昂らせていく。
「く、うっ……はあっ…!」
抑え気味の喘ぎ声を漏らし、体を支える腕はぶるぶると震える。そんな反応を見つつ、クラッズは彼女の服に手を掛けた。
「うく……ん……あっ!?」
突然刺激が強まり、バハムーンはビクッと体を震わせる。いつの間にか上着がはだけられ、クラッズの手は下着越しに胸を触っている。
「あう……ク、クラッズ…!」
「どう、バハムーン?大丈夫?」
口を開けばすべてが喘ぎ声になってしまいそうで、バハムーンは黙ったまま頷いた。以前よりは緊張していないせいか、彼から受ける
刺激は前よりも強く、また純粋な快感として感じられる。
「んあっ……はっ、くぅ…!あんっ!」
クラッズの手が動き、胸をぎゅうっと寄せられる。一呼吸置いて、その刺激に慣れたと思った瞬間、大きく円を描くように揉まれ、
バハムーンは思わず声を上げてしまう。
呼吸はどんどん熱を帯び、体もそれに比例して熱く赤く染まる。クラッズの手に、胸が柔らかく形を崩される度、バハムーンは
吐息や抑えきれない声でそれに応える。
クラッズとしても、その感触を存分に楽しんでいた。大きな胸は非常に揉み甲斐があり、適度な張りが手に心地良い。触れれば
柔らかく、指がふんわりと沈みつつ、力を抜けばすぐにその形を戻す。
「ふぅぅ……はくっ……く、う…!」
そして、その快感を必死に耐えるバハムーンの姿は、とても可愛らしかった。時には妹のように見えたりする存在ではあるが、
こうしているとやはり、一人の女の子としてしか見られなくなってくる。
また少しずつ抑えが利かなくなってくるのを感じながら、クラッズはバハムーンの背中に手を回し、ブラジャーのホックに手を掛ける。
簡単に外せると思っていたのだが、それを外すのは意外に手間取った。苦労してやっと外れたかと思うと、二つある留め具の片方だけ
外れてしまい、もう片方が余計に外れにくくなる。それでも、クラッズは持ち前の手先の器用さと、男としての執念でそれを外した。
「これ、いい?」
「んっ……あ、うん…」
クラッズに言われ、バハムーンはブラジャーから腕を抜き、それをベッドの下に落とす。するとすぐに、クラッズは手を伸ばした。
「あっ!?はうぅ…!くっ、あっ!」
直接肌と肌が触れ、快感も一気に跳ね上がる。その刺激に、バハムーンは大きな声を上げ、身悶える。
汗ばんだ肌は彼女の肌にしっとりとした感触を与え、その手触りは思いのほか心地良い。その感触にクラッズが夢中になっていると、
不意にバハムーンがその手を押さえた。
「ま、待って…!あの、私ばっかり気持ちよくなってるから……私も、お前に、する」
「え、いや、いいよ。僕はこれでも結構…」
「い、いいからっ!私だって、その、お前に気持ちよくなって欲しいんだ!」
言いながら、バハムーンはクラッズのズボンに手を掛け、一気に引き下ろした。
「わっ!?ちょっと!?」
「へへ〜、ドワーフにちょっといいこと聞いたからさ、お前のこと、すっごく気持ちよくしてやれると思うんだー」
「やっぱり奴のせいかっ!」
「いいだろ今はー。とにかく、今度は私の番!」
バハムーンはクラッズを抱き上げると、ベッドの上に座らせた。そして有無を言わさず下着も剥ぎ取ると、のしかかるように体を寄せる。
「ええっと、確か〜……こう、かな?」
「うあっ!?そ、それは……くっ!」
自分の胸を持ち上げ、クラッズのモノをその谷間に挟む。途端に、クラッズは呻き声を上げる。
「あっ!い、痛いか!?」
「う……い、いや、全然。というか、その、気持ちいいかな…」
「そうか?ほんとか?よ、よーし!それじゃ……んっ、しょ!」
思いっきり胸を寄せ、クラッズのモノをきつく挟みながら、大きく上下に擦り始める。
皮膚こそやや硬質なものの、全体を柔らかく包みこまれ、その中で擦られる感覚に、クラッズはいきなり出してしまわないように
耐えるのが精いっぱいだった。
「くっ、あっ…!バハムーン…!」
「あ、なんかお前の、もっとでっかくなってきた……気持ちよくなってくれるの、ちょっと嬉しいな、へへ」
いたずらっぽい笑みを浮かべ、バハムーンは胸を両手でぎゅっと締めつける。そして、さらに激しく上下に扱き始めた。
全体をやんわりと、しかし強い圧迫感があるほどにきつく包まれ、時折先端が谷間を抜け出る。再び全体を包まれると、外気に晒され
冷えた部分に彼女の体温を感じ、それがまた適度な刺激となる。
何より、懸命に頑張るバハムーンの姿と、自身のモノを乳房に包まれ扱かれるという光景が、何よりも強い刺激だった。少しでも長く
楽しみたいという思いと、そう簡単に出したくないという一種の意地で耐えていたクラッズだったが、それももう限界だった。
「ご、ごめんっ…!バハムーン、もう出る!」
「え?わっ!?やっ!?」
胸の中で、彼のモノがビクンと脈打ったかと思うと、顔に熱い液体がかけられる。バハムーンは咄嗟に胸をぎゅっと押し付け、
彼のモノを完全に包んでしまった。
「あっ……中で、出てる……熱い…」
彼のモノが跳ねる度、胸の中に熱くどろりとしたものが吐き出される。それが動かなくなるのを待って、バハムーンは胸を
押さえていた手を放してみた。
「はぁ……はぁ……ご、ごめん。君の体汚しちゃって…」
「ん、別にいいけど……白くてどろってしてる。なんか、生クリームとかヨーグルトみたいだなー」
谷間に大量に付いた精液を、バハムーンは指で掬って舐めてみた。
どことなく楽しげだった表情が、見る間に曇っていく。そして、今にも泣きそうな顔でクラッズを見つめる。
「……おいしくない〜」
「そ、そんなおいしい物なんか出さないよ、モノノケじゃあるまいし…」
「あっ!そ、それより、どうだ?気持ちよかった……よな?」
「………」
答えるまでもなく、十分に気持ちよかった。しかし、彼のモノは未だ萎えず、彼自身も物足りなさを感じていた。
何より、顔と胸に白濁を飛び散らせ、どこか気恥かしげに笑うバハムーンの姿は、ひどく扇情的だった。
「……ごめんバハムーン、今のもすごく気持ちよかったんだけど、その、最後までしたい」
「え?最後って……あ、あれか?あの、お前のそれ、また、私の中…」
途端に、バハムーンの表情は怯えたものになっていく。
「そんなに怖がらなくっても、初めてじゃなければそんなに痛くない……らしいよ」
「うぅ……でも、兄ちゃ…」
「………」
「じゃないじゃない!!お前のそれ大きいし、あのあと何かはまってるみたいな変な感じ、ずっと残ってた…」
「えーと、あの時は僕もがっついちゃったけど、今度こそ優しくするから」
怯えてはいても、求められれば悪い気はしないし、また求めるのが他ならぬクラッズだということもある。
「ほ……ほんとに、痛くしないでな〜…?」
「うん、約束するよ」
胸と顔を拭いてやると、バハムーンは少し嬉しそうに笑う。彼女自身の許可が下りたことで、クラッズはそれまでと反対にバハムーンを
押し倒すと、スカートに手を掛けた。
「こ、この前は……スカートは、脱がなかったな、そういえば…」
「ああ、そうだったね……怖い?」
「す、少し…」
クラッズはバハムーンの頭を優しく撫で、スカートを脱がせる。その下に穿いていたものは、やはり男物のトランクスである。
「君、これ好きだねぇ…」
「す、涼しいし……穿きやすいし……あ、これ、嫌か…?」
「いや、いいよ。なんか、最初の一回でもう慣れたし」
それも同じように脱がせてしまうと、胸への愛撫でそうなっていたのか、そこはじっとりと濡れていた。
前戯は不要かとも一瞬考えたが、それで痛がらせても悪いので、クラッズはそこに顔を近づけた。
「え!?ちょ、ちょっと何…!?」
「さっきのお返し」
秘裂をそっと開かせ、そこに舌を這わせる。途端に、バハムーンの体が跳ね上がった。
「きゃあっ!?やっ、ちょっ…!だ、ダメだよぉ!そんなとこ汚……はうっ、んあああっ!!」
思わず、バハムーンはやめさせようと彼の頭を押すが、クラッズは意に介さない。無理矢理押し返そうにも、侍学科専攻のクラッズは
意外なほど力が強く、それも叶わない。
下から上へと舐め上げ、形をなぞるように舌を這わせる。さらに小さく尖り始めた突起を舌先でつつくと、バハムーンの体が仰け反る。
「うあっ、あ、あっ!!やめっ……兄、ちゃ…!」
最後の一言を全力で聞かなかったことにしつつ、クラッズは彼女の中に舌を差し込んだ。
「やあぁ!!それっ……うああっ!」
「痛っ!」
反射的に、バハムーンはクラッズの髪を掴んでしまった。さすがにかなり痛く、クラッズは愛撫を中断する。
しかし手を放させてみると、それほど悪くない状況だった。バハムーンは快感にすっかり脱力してしまい、ベッドに横たわって
荒い息をついている。
「痛かったら言ってね」
耳元にそう囁くと、クラッズは有無を言わさずバハムーンにのしかかり、彼女の中へ一気に押し入る。
「あぐうっ!?うあっ……い、痛…!」
突然の痛みに、バハムーンは顔を歪めるが、以前ほどに強い痛みは訴えず、また挿入自体も楽なものだった。
「ごめん、大丈夫?」
「んっ……ちょ、ちょっと痛い…。けど、前よりは、全然…」
それでも辛そうなバハムーンを、クラッズは優しく撫でてやる。
「動いても、平気?」
「……うん」
一度出していることもあり、クラッズはがっつくこともなく、ゆっくりと腰を動かし始める。
「くっ……んっ、うっ…!」
クラッズが動くと、バハムーンは少し顔を歪めたが、以前ほどに痛がったりはしない。彼女の様子を慎重に見ながら、クラッズは少しずつ
腰の動きを強めていく。
部屋の中に、ベッドの軋む音と、二人の荒い息遣いが響く。クラッズが腰を打ちつける度、肌のぶつかり合う乾いた音が鳴り、そこに
バハムーンの苦しげな声が混じる。
「うっ……くぅ、うっ……あっ…!」
やがて、その音に少しずつ変化が生まれ始める。突き上げる度に響く乾いた音に、僅かながらもくちゅくちゅと湿った音が混じり始める。
そしてバハムーンの声にも、苦痛とはまた違った響きが混じり始めていた。
「うあっ、あっ!ク、クラッズ…!な、何、これっ…!?」
「ん、どうしたの?大丈夫?」
少し動きを弱め、クラッズが尋ねると、バハムーンは困惑した表情を浮かべた。
「お、お前が動くと……お腹の奥が、あっつくなって……なんか、こう、ビリビリって…」
「……気持ちいいの?」
「………」
バハムーンは顔を真っ赤にして俯き、しばしの間をおいてこくんと頷いた。
「そっか。じゃ、もっと気持ちよくしてあげる」
「え、やっ……う、うあっ!?」
言うなり、クラッズは腰の動きを強める。最初こそ、いきなり強くなった刺激に驚いていたものの、やがてバハムーンもそれに合わせ、
腰を動かし始めた。
「んっ!あっ!あっ!やっ……こ、腰動いちゃうよぉ…!」
「はは、いいじゃない。痛いより、気持ちいい方がさ」
気遣う必要がなくなったことに気付き、クラッズは欲望のままに動き始める。荒々しく腰を叩きつけ、両手で彼女の胸を包み、
激しく捏ねるように揉みしだく。
「ふあっ!あっ、んっ!ク、クラッズ……気持ちいいよぉ…!」
最初こそ戸惑っていたものの、バハムーンもすぐに快感を受け入れ、彼と同じように快感を貪る。尻尾は彼の腰に巻き付き、
ぐいぐいと引き寄せ、腰は彼のモノをより深く飲み込むように動かされる。それに加え、突き入れられるときは力を抜き、
逆に引き抜かれるときには、それを引き止めるように思い切り強く締め付ける。元々が筋肉質な彼女は、その締め付ける力も
非常に強く、それがクラッズに大きな快感を与える。
「うあっ!?バハムーン、そんな締め付けたらっ…!くっ……も、もう出ちゃうよ…!」
「んっ!あ、あの熱いの…?い、いいよっ!熱いの、出していいからっ……もっと、もっと動いてぇ!」
やめるどころか、バハムーンはますます激しく腰を動かし、反対に動きの鈍くなったクラッズを追い込んでいく。
「も、もう限界っ……バハムーン、バハムーンっ!」
最後に彼女を呼ぶと、クラッズはバハムーンの中に勢いよく精を吐き出した。その量は二度目とは思えないほど多く、バハムーンは
体内にその感覚をはっきりと感じた。
「あ、熱っ……熱いの、いっぱい出てるぅ…!」
半ば放心したように呟くバハムーン。彼女自身は、達したわけではなかったようだったが、性的に未熟な彼女にとっては、これほどの
快感でも十分すぎるものだった。
バハムーンの中に全て流し込むと、クラッズは一度腰を引き、モノを半ばほどまで抜いてから、精液を擦り込もうとするかのように、
再び奥まで押し込む。
「んっ…!?」
少しの間余韻を楽しんでから、クラッズは今度こそ彼女の中から引き抜いた。同時に入りきらなかった精液が、どろりと溢れ出た。
さすがに疲れたのか、クラッズはバハムーンの胸の谷間に顔を埋めるようにして突っ伏した。そんな彼の頭を、今度はバハムーンが
撫でてやる。
「だ、大丈夫?兄……クラッズ」
「ん……今危なかったけど、平気。君こそ、大丈夫?」
「え?う、うん……気持ち……よかったし…」
つい乱れてしまった自分を思い出したのか、バハムーンは顔を真っ赤に染めて答えた。
「よかった。また君に痛い思いさせちゃったら、嫌だからさ」
「で、でも、だからってあんなとこ舐めるなんて……その……よかった、けど…」
快感と羞恥心の間で揺れ動くバハムーンを微笑ましく思いつつ、クラッズは彼女の体を抱き締めた。
「あっ…?」
「君って、妹みたいなところあるし、そんな雰囲気もあるけどさ……やっぱり、妹とは違うんだよね」
「え……じゃあ、あの…」
「仮に妹だとしたって、君は君……一人の、人間だもんね。僕一人の都合で、君のやりたいこと全てを押さえつけるのは、
間違ってるよね。もちろん、お互いの意思っていうのは必要だけどさ」
クラッズは顔を上げ、谷間からバハムーンの顔を見上げる。
「バハムーン。君のこと、僕は妹の代わりにしようとしてた。ごめん」
「い、いいよいいよ!?私だって、兄ちゃんの妹の代わりになろうとしたし…!」
「そういう無茶なとこ、似てるよほんと。だから、妹と重ねないっていうのは無理かもしれないけど……妹みたいな、恋人みたいな、
大切な仲間……って関係じゃ、ダメかな?」
その言葉に、バハムーンは意外にも嬉しげな笑みを浮かべた。
「へへ、私が兄ちゃんに思ってるのとおんなじだなー。いいぞ、それでー!」
ぎゅっと、胸の上のクラッズを抱き締める。クラッズもそれに応え、彼女を強く抱き締める。
お互いの温もりを強く感じ、それが昂った心を静めていく。やがて二人は抱き合ったまま、いつしか幸せな眠りに落ちていた。
「へー。トカゲ、頑張ったんだー」
「う……ま、まあ…」
「ふーん、サイズが合わないのによくやること。それにしてもドワーフ、今日は異様に毛艶いいみたいね」
翌日、一行は病み上がりのノームに配慮し、迷宮の探索をそこそこにして再び大浴場へと来ていた。この日は数人の生徒がいたが、
その生徒達は先に上がったため、実質はまたも貸し切り状態である。
「ん、クーちゃんの毛づくろいだからねー」
「クーちゃん…?ああ、あんた達のリーダーね」
「そうそう。で、サイズの違いね……トカゲ、今回はそんなに痛くなかったんじゃないのー?」
「ええ!?ど、どうしてわかるんだ!?」
驚いて尋ねるバハムーンに、ドワーフはにんまりとした笑みを浮かべる。
「だぁって、クラッズ相手だもんねー。経験少ないトカゲには優しい大きさ……ですよね?」
「大きさが?」
よく意味のわかっていないバハムーンに、ドワーフはただにんまりとした笑みを送る。
「でもさー、慣れてくると緩くなりそうだし……知ってる?おまんこの締めつけ強くしたいんだったらねー、お尻の穴をぎゅーっと
締めるといいんだよ」
「なっ……い、いきなり何を!?」
唐突な言葉に嫌な予感を覚え、ノームとバハムーンはドワーフから距離を取る。
「あ、これほんとなんだからねー。こう、締めつける筋肉は括約筋っていうんだけど、ここの筋肉はおんなじようなところ使うんだよ?
もちろん、おまんこの方だけ締められるんならそれでいいけど…」
言いながら、ドワーフは視線をノームへと滑らせる。
「……ねえ、ノーム?」
視線と言葉を向けられ、ノームはビクリと体を震わせる。
「な、何よ…!?」
「ノームって、その体新しいし、力もそんなにないし……おまんこ締める感覚、教えてあげようかー?」
「ふ、ふざけるな。大体あたしは…」
「サイズに頼ってばっかりじゃ、進歩なんて望めないよー?それに、昨日のおしおきもあるしー。だからぁ……私がしっかり、
教えてあげようかなーってさー」
じりじりとにじり寄るドワーフに、ノームは顔を真っ青にしながら後ずさる。やがて、浮遊能力を使って逃げようとした瞬間、
ドワーフは素早くその足を捕え、浴場の床に押し倒した。
「ふ、ふざけるな!この雌犬!放せ!」
「うふふー、いいじゃないー?フェルパーだって喜ぶと思うけどー?」
「だ、だからってあんたに好き勝手させるつもりはっ……きゃあっ!?や、やだ!やめてよ!お、大きいの!お願い、助けてっ!」
「え〜?私がおんなじ目にあってたとき、姉ちゃん助けてくれなかった」
冷たく言い放つバハムーンに、ノームは珍しく怯えきった目を向ける。
「こ、今度は助けるから!だからお願い!こいつ引き剥がして!」
「やだ、私が狙われると嫌だもん。先にお風呂入ってるー」
「そういうわけでぇ〜……ノーム、覚悟ぉー!」
「い、いやあああぁぁぁっ!!!」
その頃、男湯ではフェルパーが湯船を出ようと中腰になっていた。
例によって、声は筒抜けである。フェルパーはしばらく停止した後、またそろそろと湯の中へ戻った。
「フェルパー、出るんじゃなかったの?」
「諸事情により出られなくなった」
「うん、僕もだよ。しょうがないよね」
そんな二人から少し離れたところで、ディアボロスは湯船に浸かっている。しかしその顔は真っ赤で、玉のような汗が浮かんでいる。
「……ディアボロス、そろそろ出たら?暑いんじゃないの?」
「……俺はもっと出られない…」
「ああ……君、タオル頭に巻いてるものね」
とりあえず今しばらくは湯船に浸かっていることにし、三人は大きく息をついた。それは呼気により、少しでも体を冷やそうという
意図も存在していた。
「ところでフェルパー、いきなりだけど質問いい?」
不意に、クラッズが口を開いた。おまけにその顔はひどく真面目で、ともすれば迷宮の探検中よりも真剣に見える。
「ん?なんだ急に改まって?」
「仮に、だよ。もし、目の前に金の宝箱があったとして、その中にはすごい財宝があったとして……それを諦めたら、女の子におっぱいを
揉ませてもらえるって言われたら、君はどっち取る?」
それを聞いた瞬間、フェルパーの顔もまた、ひどく真剣なものになった。
「おっぱいだ」
「……よし、僕は正常みたいだね」
「男ならしょうがない。というかそれは既にこの上もない宝だろ」
「………」
そんな二人を、ディアボロスは『なんだこいつらは』とでも言いたげな目で見つめている。
「僕は気づいたんだ……あれに勝るものなんて、この世に存在しないってことに…」
「ん、待て。聞き捨てならないな。俺はどっちかっていうとお尻派だ」
やはり真剣な表情のまま、二人は睨み合った。
「胸の方がいいでしょ!?膨らんだ胸っていうのは、それこそ女の子だけの特権で、あのふにふわの柔らかい感じが最高でしょ!?」
「いや、お前はわかってない!こう、きゅっと締まった、張りのある尻に勝るものはない!」
「フェルパー……初めて君と意見が割れたねえ」
「ああ。けど、ここは譲れない……たとえ相手がお前でもだ」
この上もなくしょうもない主張のぶつかり合いではあったが、そこには何者も介入できない真剣さが存在していた。
「男の憧れはおっぱいでしょ!?」
「いや、尻だ!お前は俺が男じゃないとでも言うつもりか!?」
「君こそ同じようなこと言ってるじゃないか!」
「お前が先にっ……いや、待て。落ち着こう。俺達二人だけじゃ、決着はつかない」
そう言うと、フェルパーはディアボロスに視線を向けた。
「ディアボロス、君はどこがいいと思う!?君はまず真っ先にどこを見る!?」
「………」
恥ずかしいからか、単に暑いからか、ディアボロスは顔を真っ赤にしながら考え、やがて静かに口を開いた。
「……角」
「うん、ごめん。なんか基準が全然違うみたいだね」
「予想外過ぎるね、それは……ていうか、君ドワーフと仲良かったけど、角はなくない?」
「……最近は尻尾もいいと思うようになった」
「うん、やっぱりごめん。よく考えたらドワーフ凹凸ないもんな」
「なんて言うか……君はひどく通というか、変わり種というか……うん、ありがとう。全く参考にならない」
女湯の会話が筒抜けであるということは、その逆もまた然りである。ほぼ丸聞こえだった会話に、女子連中はすっかり呆れていた。
「うーん、クラッズとフェルパーもあんな話するんだなー」
「そうね……お尻派なんだ…」
蟹ばさみの状態で床に倒されつつ、ノームは呟く。その彼女を拘束しているドワーフは、さすがに少し落ち込んでいるようだった。
「……聞こえてないと思って好き勝手言って……私にだって凹凸あるのに…」
「はいはい可哀想ね、万年発情期の仔犬ちゃん。多少の凹凸はあっても、立派な凹凸はないからしょうがないね」
「うう……二人みたいな凹凸はなくったって、私だってぇ…」
「あんたも一人前に落ち込むことはあるのね。そういうの興味ないんだと思ってた」
さりげなく蟹ばさみから脱出し、ノームは湯船に向かった。その間にも、男連中の声は聞こえてきている。
「あ〜、変な話したせいで余計出にくく……フェルパー、なんか落ちつける方法ってない?」
「えっ……と……逆に萎えるようなこと考えればいいなんじゃないか?たとえば……イワナガ先生の裸とか」
「ああ、効くねそれ。若い頃は色々やってたみたいだけど」
「気兼ねするようなのもいけるか?ここのシュピール先生が誘ってくるとかは?」
「それは萎えるどうこうっていうか、犯罪の臭い…」
「……ごぶっ!!」
突然、大きな音が響き、同時にクラッズとフェルパーの悲鳴が響いた。
「うわあっ!?吐血!?ディアボロスどうしたのー!?」
「いやちょっと待て……それ鼻血じゃねえか!それが口に回ったんだろ!おいディアボロス!こっち来い!お湯をお前色に染めるな!」
「何!?君、そっちの趣味あったのっ!?」
「……わ、悪くな……がはっ!」
「いや答えなくていいよ!いいから鼻血を何とかしてー!」
そんな大騒ぎの男湯様子は、やはり女湯でも手に取るようにわかった。
「……ロリコンだから、ちびっこのあんたと付き合えるのね、あの悪魔は」
「うーん、私、得なんだかどうだか…」
「シュピール先生、可愛いもんなー。ちょっと気持ちわかるぞー」
「あんたの場合、わかってるようでわかってないでしょ」
そこへ、ようやく立ち直ったドワーフも湯船に入ってきた。
「まあ何にしてもさ、トカゲとクラッズって、需要と供給は見事にマッチしてるんだねー。クラッズはでっかい胸が好きで、トカゲは
小さいのが好きでさ。その辺は幸せだよねー」
その言葉に、バハムーンは首を傾げた。
「別に私は、クラッズが小さくなくたって好きだぞー?」
「……ふーん」
ドワーフとノームは顔を見合わせ、フッと笑う。
「ほんっと、幸せだねー」
それは皮肉などといった意図は微塵もない、純粋な二人の言葉だった。
それから数分後、ディアボロス鼻血事件のおかげであっさり風呂を上がれるようになった男三人は、脱衣所で着替えをしていた。
「あ〜、びっくりした。色んな意味でびっくりした」
「ディアボロス、大丈夫か?もう一回ヒールしとくか?」
「………」
何も言わず、ディアボロスはこっくりと頷く。鼻血まで出したのが恥ずかしかったらしく、風呂を上がった後もディアボロスの顔は
赤いままだった。
「いやぁしかし、人の趣味って色々なんだな。その辺ではクラッズ、お前はずいぶん幸せだよな」
「ん、何が?」
「お前の趣味って、バハムーンにばっちり合ってるだろ?だから幸せな奴だなーってさ」
すると、クラッズは笑った。
「ははは、やだなあ。そこが幸せなのは否定しないけど、それだから幸せってものじゃないよ。バハムーンの胸が平たくったって、
僕はバハムーンが好きだよ」
フェルパーとディアボロスは顔を見合わせ、クラッズにわからないように笑みを交わした。
「そうかそうか。そこまではっきり言えるぐらいになったか。なおさら、幸せな奴だな」
「何だよー?君だってノームといい関係でしょー?」
策略によって築かれた関係。しかしそれとは関係なしに、今やクラッズとバハムーンはお互いを大切な存在だと思うようになっていた。
これまでは、恋人のような、兄妹のような、しかしそのどちらでもないという微妙な関係だった。
それが今では、恋人のような、兄妹のような、そのどちらとも言える大切な仲間となっている。
それを祝福する仲間は、策略が成功したからという理由ではない。
ただ純粋に、仲間が大切なものを手に入れたということに対する祝福。
仲間達もまた、二人の関係を、策略とは関係なしに大切なものだと思うようになっているのだった。
以上、投下終了。
思春期の男子って大体こんな会話してた記憶がw
ちなみに、ぼちぼち終わりも見えてきているのですが、もう少々お付き合い願います。
それではこの辺で。
GJでした
笑ったり忙しかったです、本当にGJ
乙!そしてGJ!男共のそういう会話って楽しいよね!
GJ。
相変わらずおもしろすぐる。
俺もこんな話書きたいわー。
73 :
名無しさん@ピンキー:2011/02/09(水) 02:38:27 ID:WdrsjK9n
GJ!!
いつもの事だけど面白かったよ!
GJです!
ディアボロスはあいかわらずおいしいとこ持っていくなぁ。
75 :
名無しさん@ピンキー:2011/02/15(火) 18:28:35 ID:uL86pvxb
保守
こんばんは。予定の上では今回が最後のエロ分で、お相手はドワ子。
そして次回が最終の予定です。
注意としては、お尻ネタでレイプもの。なので苦手な人はご注意を。
それでは楽しんでもらえれば幸いです。
すう、と、バハムーンが大きく息を吸い込む。直後、紅蓮の炎が吐き出され、一直線に標的へと向かって行く。
橋の上から放たれたそれは、渓谷を飛び越え、木々の上を通過し、目標に命中した。
ジュウ、と音が響き、水のカーテンの如き滝に穴が空く。しかしそれも一瞬のことで、滝はすぐに元の姿へと戻っていた。
「んんー!やっぱり入学した頃よりはずっと強いなー!」
「まったくトカゲは、いつまで経ってもガキなんだからー」
嬉しそうなバハムーンに、ドワーフが呆れ切った声を出す。
一行は今、古き聖戦士の渓谷に来ていた。それは拠点の移動と、鍛錬の目的と、そして以前ノームが腐った牛乳を飲んで迷惑を
かけたということで、お詫び代わりにいくつかの武器を作ったため、それの試しも兼ねている。
「……ま、ちょっと楽しそうだと思ったけど」
「だろー?」
「………」
楽しそうに言うバハムーンを、ディアボロスはじっと見つめていた。そしてやおら息を吸い込むと、彼女のブレスにも負けない猛炎を
吐き出した。
ジュッと、かなり大きな音が響き、滝に大穴が空く。やはりすぐに水は流れ始めたものの、一瞬滝の音が止まるほどに強力なブレスだった。
「おおー、すごいなー!今音止まったよなー!?」
「まったく、ディアボロスまでー。トカゲ調子に乗りそうだから、あんまり乗らないでね」
そんな三人の様子を、フェルパーは尻尾をピンと立てながら見つめている。
「……ク、クラッズ、あれ俺も参加していいのかな…?」
「気持ちはわかるけど、君がやると滝ごと吹き飛ばすでしょ。そんな尻尾ブルブルさせて、絶対力加減間違うから、やめた方がいいよ」
「……ちぇ」
「小さいの、フェルパーに意地悪しないでよ。その村雨、また分解するよ」
「ノーム、ノーム、別にそいつのは意地悪じゃなくて、結構的確な忠告だから、突っかかるなって。それにまあ、目の青い子供じゃ
あるまいし、魔法を無闇やたらに使うわけにもいかないしな」
そのフェルパーの言葉に、バハムーンが首を傾げた。
「……『目』の青い?お尻の青い、じゃないのかー?」
「え?言わない?え、何?もしかしてこれ、普通違うのか?」
「ああ、僕は君と一緒だったからあんまり疑問に思わなかったけど、それ君の種族の言い回しだよね」
「あ〜、フェルパー族ってその辺も猫と一緒だもんねー。私のとこだと、牙も生えてない、とか言うかなー」
「それ、言われた覚えあるな俺…」
「私のとこだと、ブレスも吐けない、とか言うなー。へぇ〜、結構言い回しって違うんだなー」
一行の会話は、いつもより多い。それは新たな武器にはしゃいでいるという面もあったが、根底は全く違う部分から来ている。
二日ほど前、突然の日食が起こった。珍しい現象に怯え、あるいは浮かれていたのも束の間。その日食は、彼が思うより遥かに大きな
意味を持っていたのだ。
中央の大陸に位置する、始原の学園。そこへの扉が開かれる合図。それが、今回の日食だった。
当然の如く、学園でも有数の力を持つ彼等は招集を受けた。つまりそれは、現在のパーティを解散し、フリーランサー、リトルブーケ、
六傑衆に戻らねばならないということである。
とはいえ、すぐにという話ではない。他の二つのパーティも迷宮にいたり、課題をこなしている真っ最中だったりと、それぞれに
事情がある。そのため、集合までに一週間の猶予を与えられたのだ。
必ず訪れる時ではあった。しかし、それはずっと先のことのように思っていた。だが、今それは目の前にあり、厳然たる事実として
目の前に付きつけられている。
突然ではあった。しかし、いつかは来ると思っていたのも事実。彼等の選んだ行動は、悔いの残らないように徹底的に遊ぶという
ものだった。幸い、少しずつこなしていた課題のおかげで、単位不足を気にする必要もない。そのため彼等は、一週間を丸々全部
遊びに費やすことにしていた。
現在、彼等の行先はタカチホに向けられている。というのも、プリシアナの個室の風呂や、ドラッケンの大浴場と違い、タカチホの風呂は
天然の温泉なのだ。つまりは、温泉に入りにタカチホへ行こうという話である。
そこまでの道のりは、あえてスポットや飛竜を使わず、徒歩で移動していた。魔法や飛竜を使えば、確かに目的地へはすぐに着く。
しかし、あえてその足で歩き、モンスターを警戒し、協力して戦いながら進む道のりは、今の彼等にとって仲間との大切な時間なのだ。
とはいっても、もはやそこらの迷宮では役不足と言えるほどに実力を付けた一行である。タカチホへは思いのほか早く着いてしまい、
彼等は温泉が混みだす前に用事を済ませることに決めた。
「……なあ、クラッズ。俺達って何か避けられてるとか、他の人が嫌う臭い出してるとかあるのかな?」
「いや、単に運だと思うけど。空いてるのはいいことじゃない?」
ドラッケンに続き、なぜかタカチホにおいても貸切状態である。こちらも最初は数人の生徒がいたのだが、先客は彼等が入るのと
すれ違うようにして上がってしまった。
それは女湯の方も同じだったらしく、そちらからは仲間の三人の声しか聞こえてこない。
「気持ちいいな〜、温泉。これ、うちの学校にも欲しいな〜」
「ちょっと熱いけどねー。う〜、私ちょっとダウン…」
「あたしもちょっと熱い……肌ピリピリする…」
「お前等、暑いのに弱いんだなー」
「あんたが強すぎるの、このトカゲ」
話の内容と聞こえる位置から察するに、どうやらノームとドワーフは暑過ぎて湯から上がっているらしかった。クラッズはそれを
聞くともなしに聞いていたが、不意にフェルパーが肩を叩く。
「ん?」
「………」
フェルパーは何も言わず、尻尾で男湯と女湯との仕切りの壁を指した。最初はわからなかったクラッズだが、よく見れば彼が指した
ところには、小さな穴が開いていた。どうやら木製の壁なのをいいことに、誰かが節をくり抜いたらしい。
「……!」
二人は顔を見合わせ、同時に頷く。そしてその穴を覗き込もうとした瞬間、二人の前にぬっと手が伸びた。
「……!?」
ディアボロスは無言のまま、二人の行く手を遮る。それに身振りで抗議しようとすると、ディアボロスは手で離れるように示した。
意味のないことはせず、また微妙にずれた善人でもあるため、二人は渋々それに従う。すると、ディアボロスは髪を留めていた
タオルを外し、その長い髪を穴の前に垂らした。
タンッ、と乾いた音が響き、その穴から打ち根の鋭い矢尻が覗いた。
「うわあっ!?」
「ノーム、ナイスショット」
「ん、小さいのそっちにいたんだ」
ノームの無表情な声が響く。どうやら本気の殺意を込めて投げつけたらしい。
「な、何考えてるんだノーム!?」
「だって、急に静かになって気配が消えて、そこの穴が暗くなったから、覗きかと思って」
「………」
ディアボロスは黙ったまま、二人に笑いかけた。
「そ、そんなことないぞ!それに、その覗いたのが俺だったら、どうするつもりだったんだよ?」
「っ!?」
姿が見えなくてもわかるほどに、女湯から動揺した気配が伝わった。
「そ、そんなに見たいんだったら、別に覗かなくたってここ分解してっ…!」
「ちょっと、ノームストップ、ストップー!ノームは良くても、私はよくないってば!」
「ノームやめろー!私も嫌だぞそれはー!」
途端にうるさくなった女湯に苦笑いを浮かべていると、ディアボロスが二人に手招きをする。何かと思って近づいてみると、そこには
節の穴ほど大きくはないが、小さく縦に亀裂が入っていた。覗こうと思えば、十分に覗けるぐらいの穴である。
「………」
「………」
三人はそれぞれに親指を立て合い、クラッズとフェルパーは早速覗きを開始する。そんな姿を微笑ましく見つめつつ、ディアボロスは
黙って湯に浸かっていた。
温泉から上がった一行は、タカチホで早めの夕食を取ると、飢渇之土俵へと向かった。既に時刻は夜に近いが、そのまま寮で一夜を
明かすなどということは時間の無駄にしか思えなかったのだ。
とはいえ、夜の砂漠は非常に寒い。おまけにだだっ広い砂漠とあっては、たとえモンスターが弱かろうと、次の拠点まで辿りつくのは
時間がかかる。結局、彼等はトコヨに辿りつくことができないまま、辺りは真っ暗になってしまった。
氷点下にまで下がった気温は、温泉で温まった彼等の体を容赦なく冷やす。特にフェルパーとバハムーンが寒さに弱いため、一行は
先に進むことを諦め、そこで野宿をすることに決めた。
幸い、近くにはオアシスがある。そこからトコヨまではもう一歩というところだが、六人揃っての野宿というものは経験したことが
なかったため、彼等はわりと楽しげに準備を進めていた。
フェルパーが火を起こし、バハムーンがあり合わせの材料でお菓子を作り、ノームは周囲に簡単な柵を設置する。その間に、他の仲間は
寝袋や毛布などを取り出し、寝る準備を整えておく。
「見張りは最初、僕でいい?この刀、本当にいいね」
「ずっとやっててもいいよー。それにしてもノーム、クラッズに村雨、トカゲにマカーナ、ディアボロスにチャネリウィップなんて
作ってるのにさ、なんで大好きなフェルパーには何もなしなの?」
「だ、だって……いい杖作りたいけど、素材ないんだもん……あんたのせいなの、この白髪犬!」
「まあまあ、ノーム。俺だって何も貰ってないわけじゃないし…」
「ってことはやっぱり……か、体で……払ったん、ですか…?」
「………」
顔を真っ赤にして黙りこむノームは、彼女の言葉を肯定しているも同然だった。
「と、と、とにかく!あんたにパリパティなんて買ってやったせいで、お金なくなったんだからね!」
「別に頼んでないけどねー。それはともかくとしてさ、みんなもう寝るの?」
できたてのあんまんを頬張りながら、ドワーフが尋ねる。
「ん、何かするのかー?」
「いや、別に私が何するわけじゃないけど。ちょっともったいない感じがしてさ」
そんなドワーフの言葉は、バハムーンの作ったあんまんのせいでほぼ掻き消えている。
「あ、この漉し餡うまい。バハムーン、前にこっち来てから妙に腕上げたよな」
「そりゃなー!タカチホって、パティシエのいい先生いるだろ!?」
「パティシエの…?誰だろ、和菓子作れるの?イワナガ先生かウヅメ先生?」
「いや、違う違う。あのー、ほら、ドワーフのでっかい……そうだ!サルタ先生だサルタ先生!」
「校長先生!?君、校長先生に直接教わってたの!?」
「え、あれ校長先生だったのか?すごく丁寧で、優しく教えてくれて、でもお菓子に関してはすっごく厳しくて、いい先生だったぞ」
「そういえば、和菓子職人だって聞いたような覚えもある……知らなかった…」
ほぼ無視を食らったドワーフの隣に、ディアボロスがそっと座る。
「あ、ディアボロス。ねえ、何か寝るのもったいなくない?」
「………」
「だよね!せっかくだから何かしたいけど、何かいい案ない?」
「………」
ディアボロスは黙ったまま、道具袋を漁ると二つの空き缶を取り出した。そしてその中に砂を入れると、ドワーフに渡す。
「……何、これ?」
「……マラカス」
「まら…」
「……楽器」
空想の世界に旅立ちそうになったのを見て取り、ディアボロスは即座に言い直した。
「楽器?あ、ダンス見せてくれるの?」
ディアボロスは例によって、黙って頷いた。
「えーっと、じゃあどんな感じ……こう、シャンシャカシャンシャン、って感じでいいかな?」
「………」
ディアボロスは黙って頷き、激しく燃える火の前に立った。しかし何か足りなかったらしく、再び道具袋を漁ると、透明な布を
取り出し、それを背中に回して両手首に縛りつけた。
「準備いい?」
「………」
「よーし、それじゃ!」
ドワーフが空き缶を鳴らし始めると、ディアボロスはふわりと腕を広げ、大きく腰を振って踊りだした。それに気付き、他の仲間も
そちらへ目を向ける。
「お、さすが本職の踊り。あいつもうまいよなあ」
「タカチホのとは違うけど、ああいうのもいいね。ただ……どう見ても、女の子の踊りだけど」
薄布をひらりひらりと舞わせ、悩ましげに腰を振るディアボロス。微かに俯き、腕を掲げて交差させ、指先を腰の動きに合わせて
揺らめかせる姿は、もはや一つの芸術作品のようにも見えるほど美しい。
「……ふん、悪魔の踊りはどうでもいいけど……せっかくなら、もっと楽しい方がいいんじゃない?」
そう言うと、ノームは道具袋からいくつかの素材を持ち出し、あっという間にチターを錬成した。そしてドワーフのマラカスに
合わせ、エキゾチックな音楽を奏で始める。それはディアボロスの踊りと、非常によく合っていた。
「お、この曲知ってるぞー。それじゃ、私は歌担当なー!」
実に楽しげに言って、バハムーンもその曲に合わせて歌い始める。
「あなたを照らす月になりたい 明るく輝く太陽は あなたを焼いてしまうから あなたを冷たく照らしていたい 温められなくたって
いい あなたと一緒にいられれば」
演奏と歌を担当する女子連中に目をやり、ディアボロスはほんの一瞬、笑顔を浮かべた。その表情はすぐに消え、心持ち口角の上がった
無表情のまま、ディアボロスは踊り続ける。無表情故に、顔を上げれば笑顔に見え、俯けば悲しげに見える。
「雲が出れば姿が陰り 太陽が出れば消えてゆく それでも私は月になりたい あなたを静かに見つめていたい」
大きく左右に腰を振り、透明な布を閃かせるディアボロスの姿は、指先の動き一つすら艶めかしく映る。さらに、時折見せる儚げな
表情がまた、見る者の心を惹きつける。
「……なあ、クラッズ」
その踊りから目を離さず、フェルパーが口を開く。それに対し、クラッズも目を離さずに答える。
「何?」
「風呂の時も思ったけど……本っ当に、男なのが残念な奴だな、あいつは…」
「あ〜……あれで女の子で、バハムーンいなかったら、確実に僕惚れてると思う」
「同じく……極めて残念な男だよ、ほんと……ドワーフはあいつのどの辺が気に入ったんだろうな?」
「意外と男らしいところもあるんじゃない?あるいは、男だったら誰でもいいのかも…」
そんな男二人の会話などつゆ知らず、その本人はこれまで培ってきた全ての技術を注いで踊り続ける。表情こそ踊りと歌に
合わせているものの、本人もどことなく楽しそうだった。
「ま、いいか。さぁて、俺もちょっと盛り上げるの手伝うかな!」
「いいなあ、そういう技能あって。じゃあ僕は、手拍子でも入れようか」
意識を集中し、フェルパーは燃え盛る火の勢いをさらに上げてみせる。炎に照らされるディアボロスの姿は、より一層美しく映える。
「でも一つ 私のわがまま許されるなら 時々私を思い出して 光に消えていたとしても 雲に隠れていたとしても 私はずっと
ここにいるから」
妖艶な踊りと、それを盛り上げる歌と演奏。結局、彼等はその後大いに盛り上がり、夜が白々と明け始めるまで遊び続けるのだった。
あっという間に五日が過ぎ、パーティ解散の日まであと二日となった。だが正確に言うと、七日目には元のパーティに戻っていなければ
いけないため、実質はあと一日である。
さすがにここまで来ると、一行の会話も減っていた。口を開けば別れの話になってしまいそうで、全員が何ともなしに話すことを
敬遠していた。一緒に朝食を取りながら、これからどうするかと全員が考えていると、ノームが口を開いた。
「あたし、今日一日フェルパーと二人で過ごしたい。ていうか、過ごす」
「確定!?」
有無を言わさぬ口調に、異論を許さない内容であった。とはいえ、その気持ちは全員よくわかり、またそれも一つの案かと、全員が
納得していた。
「まあ、ゆっくりできるのは今日が最後になるしねえ……うん、いいんじゃない?あ、じゃあ僕もバハムーンと一緒にいようかな」
「お、兄ちゃんと二人?へへー、私もちょっと嬉しいな」
「みんな二人で過ごすんだー。じゃ、私もー」
話はあっさりとまとまった。無論、他の面子も大切なパーティの仲間だが、やはり恋人となると、また違った思いもある。
その後、各自朝食を済ませると、それぞれ思い思いの場所へと向かった。フェルパーとノームはスポットを唱えてどこかへ行き、
クラッズとバハムーンは徒歩でどこかへと旅立つ。ただ、荷物の中にはいくつかの転移札が入っていた。
残ったドワーフとディアボロスは、行先をどうするか悩んでいた。少し考え、ドワーフがディアボロスの顔を見上げる。
「じゃあディアボロス!ローズガーデン、行かない!?ローズガーデンの、宿屋に、行きま、せんか!」
「………」
相変わらずだと、ディアボロスは苦笑いを浮かべる。しかし断る気もなく、ディアボロスは快く承諾した。
飛竜召喚札を使い、二人はローズガーデンへと向かう。風を切って飛ぶ飛竜の背中の上、ドワーフはディアボロスにぴったりと寄り添い、
目が合うとにっこりと微笑みかける。それに対し、ディアボロスは注意しないとわからないぐらいの笑みを返し、頭を軽く抱き寄せる。
上空から眺めるローズガーデンは、えもいわれぬ程の美しさだった。しかし、ディアボロスはともかく、ドワーフはそれを鑑賞するという
趣味は欠片もないらしく、ただディアボロスの腕の中で鼻息を荒くしているばかりである。
眼下に広がる一面の花畑が、少しずつ大きくなる。やがて、視界に入りきらないほどに広がり、花の香りが届くほどになったところで、
二人は飛竜を飛び降りた。
「ん〜、変わんないねここも。あの時と一緒」
「………」
ドワーフの言う『あの時』とは、フリーランサー、リトルブーケ、六傑衆が一堂に会し、現在のパーティを組んだ時のことだろう。
だが、ディアボロスがそのことに思いを馳せる間もなく、ドワーフががっしりと腕を掴む。
「それはともかくとして!早く行こ!宿屋、早く、行きましょう!」
ずるずると引きずられるようにして、ディアボロスはドワーフと共に宿屋へ向かう。
必要な時すらほとんど喋らないディアボロスに代わり、ドワーフが部屋を取り、代金を自分とディアボロスの財布から払い、
部屋に荷物を投げ置くと、あとはもう当たり前のように、二人ともベッドの上にいた。
獣のような視線でディアボロスを見つめ、服を脱ぐドワーフ。ディアボロスも既に慣れ切っており、脱いだ自分の服とドワーフの服を
丁寧に畳んでベッドの脇に置いておく。
「ふふふ〜、ここ一週間ご無沙汰だったから、楽しみー!それに…」
そこまで言うと、ドワーフの表情が少し曇った。
「……今日で、最後だしね…」
「………」
「だからっ!今日は思う存分、ヤりましょう!」
「………」
言うなり、ドワーフは尻尾をぶんぶん振りながらディアボロスに抱きついた。それに押し倒される形で、ディアボロスは仰向けに
転がる。
「ふふー、今日もきれい……肌もすべすべー」
「っ…!」
ドワーフはディアボロスの胸にキスをすると、そのまま胸からうなじまでを丁寧に舐め上げる。最初のうちこそ、そうされても
くすぐったいだけだったが、何度も同じ愛撫を受けているうち、ディアボロスはその刺激を快感として感じるようになっていた。
「あ、お尻に当たってる……ふふ、もっと舐めちゃお」
「くっ…!」
一度舌を離し、もう一度首筋に舌を這わせ、尖った耳を舐める。いつも通りの、ドワーフが主導権を握った行為だったが、
不意にドワーフが体を離した。
「あ、そだ。ねえディアボロス、せっかく最後なんだからさ、何かしたいことない?」
「………」
ディアボロスは少し荒い息をつき、胸の上のドワーフを見上げている。
「何でもさせてあげるよ。あんまり大きくないけど、おっぱいで挟んであげてもいいし、尻尾で扱いてあげたっていいよ。だから、ね?」
「………」
しばらく何かを考えていたが、やがてディアボロスは体を起こし、ドワーフを押し倒した。そして体を持ち上げてうつ伏せに直すと、
まだ何もしていないにもかかわらず、すっかり濡れそぼった秘裂に自身のモノを押し当てる。
「あっ、後ろから…?ん、いいよ。攻められてるって感じで、いいかも…」
腰を持ち上げると、ドワーフは自ら尻尾を上げる。そんな彼女を焦らすように、ディアボロスは先端で何度か割れ目をなぞると、
ゆっくりと腰を突き出した。
「あうっ……うわぅぅ…!す、すごい……変な感じだよぉ…!」
なおドワーフを焦らすように、ディアボロスは極めてゆっくりと腰を進める。ドワーフは何度か腰を押しつけようとしたが、その度に
ディアボロスは腰を止めてしまい、結局は余計焦らされる結果となってしまう。
「あ、うぅ……焦らすのダメぇ…!奥まで突いて……あう!あっ……お、奥来たぁ…!」
ようやく、ドワーフの中に根元まで入り込む。それをぎゅっと締め付け、ドワーフは早速その感触を楽しむ。
だが、それも束の間。ディアボロスはしばらくそのままにしていたが、やがて不意に彼女の中から引き抜いた。
「あんっ!や、抜いちゃやだ…!ディアボロスぅ、早く入れ……きゃあっ!?」
突然、後ろの穴に何かが押し当てられ、ドワーフは悲鳴を上げた。
「ディ、ディアボロス、そこ違うよぉ!もうちょっと下……ひっ!?ちょ、ちょっとディアボロス!?」
最初は、単に間違っただけだと思っていた。しかし、ディアボロスは入れ直すどころか、ドワーフの腰をしっかりと拘束し、グッと
腰を突き出してきた。
「ちょ、ちょっとディアボロス!ダメ!そこはダメだよぉ!!お、お尻は入れるところじゃないし、雑菌だらけで汚くてっ……それに、
えっと……アナルセックスなんて、ディアボロスも病気に……ひいっ!?やだ、やだぁ!!そんなとこ入れないで!入れちゃダメぇ!!」
ドワーフは体を捩って逃げようとし、それが無理とわかると、その手を引き剥がそうとするが、背後を取られていては本来の力など
全く出せない。
「嫌っ、嫌ぁ!!ディアボロスやめてぇ!!な、何でもいいって言ったけど、お尻だけはダメなのぉ!!やだっ、お尻なんてやだぁ!」
尻尾を下げようとし、逃げようとし、ドワーフは必死に暴れる。ディアボロスはそれを力づくで押さえ込み、さらに強く腰を突き出す。
「やっ!い、痛いっ!!痛いよっ!!ディアボロス、やめてぇ!!無理だよ、無理だよぉ!!そんなの入らない!!やだ!!嫌だぁ!!」
もはやろくな抵抗もできず、ドワーフは必死に穴を締め付け、侵入を拒もうとする。元々力の強い種族であるため、実際にそれは
多少の効果はあった。しかし、ずっと締めつけていることはできず、一瞬でも力が抜けると、ディアボロスのモノが無理矢理肉を
押し分け、めり込んでくる。
「やだ……やだぁ……お、お尻なんてやだぁぁ…。やめて、やめてよぉ……あぐうぅぅ!!やだあああぁぁぁ!!!そ、そこ以外なら
何でもするからぁ!!何でも言うこと聞くからぁ!!いぎっ……やめて!!もうやめてぇぇ!!」
まるでドワーフをいたぶるかのように、ディアボロスのモノがじわじわとめり込んでくる。痛みと恐怖と嫌悪感に、ドワーフは
とうとう泣き出してしまい、必死に逃げようとする。ベッドを引っ掻き、蹴飛ばし、四つん這いで逃げようとすると、ディアボロスは
いきなり腰から手を離し、ドワーフの両腕を後ろ手に捻りあげた。
「い、痛っ!!ひぅ……や、やだ、こんなのぉ……お尻裂けるっ……ほ、ほんとに、何でもするからぁ…!だ、だから……ひっ、ぎっ!
だ、だからぁ!!もう入れないでぇぇ!!!」
ドワーフの懇願を無視し、ディアボロスは力の緩んだ瞬間を逃さず、強く腰を突き出した。そしてとうとう、亀頭部分が彼女の腸内に
めり込んだ。
「あっ……がっ…!い……痛いぃぃ…!」
あまりの痛みに、全身を強張らせるドワーフ。ディアボロスはそんな彼女の腕をそれぞれの手に持ち直すと、腰を突き出すと同時に
強く腕を引いた。途端に、一気に根元までが彼女の腸内に侵入した。
「い、痛あああぁぁぁっ!!!!」
一際大きな絶叫。ドワーフの全身はぶるぶると震え、無理矢理押し広げられた腸内はディアボロスのモノをきつく締め付ける。
そこでようやく、ディアボロスは彼女の腕を放した。ドワーフはそのままベッドに突っ伏し、ただただ震えながら激痛を耐える。
「い……痛い、痛いよぉ……痛い、痛い、痛いぃ…!」
ぽろぽろと涙をこぼし、うわごとのようにそれだけを繰り返す。そんなドワーフを無表情に見つめながら、ディアボロスはしばらく
じっとしていた。
やがて、再び彼女の腰を掴むと、ディアボロスは大きくゆっくりと腰を動かし始めた。途端に、ドワーフは悲鳴を上げる。
「痛いっ、痛いっ!う、動かないでぇ!お尻裂けるっ……痛いのっ!本当に痛いのぉ!!」
しかし、彼がドワーフの哀願を受け入れる様子はない。腸内のきつい締め付けを楽しむかのように、ディアボロスはゆっくりと
引き抜き、強く突き入れる動きを繰り返す。
引き抜かれるときには、排泄に似た感覚が襲い、突き入れられれば無理矢理広げられる激しい痛みと、内臓を突き上げられる鈍痛が
襲いかかる。その感覚全てが、腸内を犯されているのだという実感を与え、ドワーフに強い嫌悪感と苦痛を与える。
「痛いいぃぃぃ……痛い、痛い、痛い、痛い…!お、おね……が……も、もう抜いてぇ…!抜いて、抜いてよぉ……抜いてぇ…!」
ディアボロスのモノが愛液に塗れていたため、滑り自体はそれほど悪くない。しかし、自身で弄った経験もない肛門に、慣らしもせず
太い物を無理矢理突き入れられ、その筆舌に尽くしがたい激痛にドワーフはただただ痛みを訴え、通じぬ哀願を続ける。
「痛い……痛いよぉ……ぐすっ、ひっく…!痛い……痛い……抜いて……よぉ…!」
その言葉を無視し、ディアボロスは少しずつ腰の動きを速めていく。それに比例して苦痛も跳ね上がり、ドワーフの悲鳴も大きくなる。
「痛い痛い痛い!痛いよ、痛いよぉ!!お願っ……ぐぅぅ!!お、お願いだからもうやめてぇ!!お尻痛い!!熱いぃ!!」
裂けそうなほどの痛みと、体内に感じる鈍痛。それらから逃れようと、ドワーフは暴れ、叫び、哀願する。
再びディアボロスの腕を外そうとし、体を捩り、尻尾で彼の胸を叩き、腰を引く。だが、それらは苦痛を強める結果にしかならず、
また痛みと激しい動きによる疲労で、ドワーフの動きはだんだん小さくなっていく。
一方のディアボロスには、それらは心地よい刺激となっていた。また、彼女の腸内は非常にきつく、しかし滑り自体はいいため、
それは大きな快感を与える。
しつこく胸を叩く尻尾を、ディアボロスはぎゅっと握った。そして、今度は尻尾を乱暴に掴んだまま、ドワーフの腸内を荒々しく
突き上げる。
「い、痛い痛い痛い痛い!!!もうやめて!もうやめてぇ!!痛いよ、痛いよおぉ!!うわぁぁーん!!」
大声で泣き出すドワーフ。激痛と嫌悪感に加え、今や彼女はディアボロスに強い恐怖を覚えていた。だが、逃げることもできず、
されるがままになるしかなく、ドワーフはただ泣き喚く。
ディアボロスの動きが、だんだんと荒くなる。その意味はドワーフもよくわかり、あと少しで終わるかと思った瞬間、ディアボロスは
突然、ドワーフの中から引き抜いた。
「あうっ……う、あ…」
途端に、ドワーフはベッドに突っ伏した。だが、終わりと思ったのも束の間。ディアボロスは彼女を仰向けに直すと、再びドワーフに
のしかかった。
「……うぅ〜…!」
その胸を、ドワーフは両手で必死に突っ張った。そして、子供のようにかぶりを振り、涙に濡れた目でディアボロスを見上げる。
「やだ……もうやだ、もうやだぁ…!」
それに対し、ディアボロスは無表情のまま、ドワーフの両腕を掴み、ベッドに押さえつけた。
「やだ、やだ、やだぁ!お尻やだ!痛いのもうやだぁ!」
もはや暴れる体力もなく、乱暴に犯された肛門は力が入らない。ディアボロスは再びそこにあてがうと、一気に腰を突き出した。
「い゛っ……あ、がっ…!はぐっ……う、ぅぅ…!」
再び襲う激痛。あまりの痛みに声すら奪われる彼女を気遣うことなく、ディアボロスは荒々しく突き上げる。
ベッドの軋む音と、粘膜の擦れる音、そしてドワーフの切れ切れの悲鳴が部屋に響く。一突きごとに、ドワーフは短い悲鳴を上げ、
同時に中がぎゅっと締め付けられる。抜かれれば肛門が捲れ上がりそうな痛みと錯覚が襲い、泣き声を上げる。
そんな彼女の姿を楽しみながら、ディアボロスは少しずつ腰の動きを強めていく。一度抜いたとはいえ、ドワーフのきつい締め付けに
長く耐えられはせず、ディアボロスも低い呻き声を漏らす。
「痛ぁい……やめてぇ……ぐすっ……もう、やめてよぉ…!」
涙で滲んだ視界の中、ドワーフはディアボロスがかなり追い込まれた表情になっていることに気付いた。そして、彼が射精すれば、
もうこの拷問のような時間は終わりだということにも気付く。
「んう……ううぅぅ〜…!」
激しい痛みを堪え、ドワーフは必死に彼のモノを締めつける。それによって、突き入れられる時の痛みは跳ね上がり、ドワーフは
ぽろぽろと涙をこぼしつつも、ただ早く苦痛から逃れたい一心で、それを続けようとする。しかし、あまりに乱暴に犯されすぎ、
締めようにも力が入らなくなってくる。ドワーフは文字通り全身を使い、足全体を閉じるようにして何とかそれを維持する。
「くっ……う…!」
ディアボロスが呻き、さらに動きが乱暴になる。それこそ、裂けるような痛みが走り、ドワーフは思わず力を抜きそうになるが、
辛うじてその痛みに耐える。
「い、痛い、痛いぃ…!は、早く……お願い、だからっ……ぐすっ……早く、出してぇ…!」
たまらずそう口にし、ドワーフは必死に力を入れる。
「ぐぅ……う、あっ!」
一際強く、ディアボロスが腰を叩きつける。彼のモノを必死に締めつけていたドワーフは、それが自身の腸内で動いていることを知る。
「えぅ……だ……出し、たの…?」
まるで、そうであってくれと哀願するように尋ねるドワーフ。ディアボロスは答えず、ただ彼女の腸内に精液を注ぎ込む。
締め付けが強いだけに、射精が終わるまでには時間がかかった。普段の倍ほどの時間をかけ、完全に出なくなるまでドワーフの
腸内に流し込むと、ディアボロスはようやく腰を引いた。
「あうっ!」
ディアボロスが引き抜くと同時に、ドワーフの体がビクンと震える。相当に消耗したらしく、ドワーフはしばらくの間、目を閉じて
荒い息をついていたが、やがてうっすらと目を開けた。
見下ろしていたディアボロスと目が合う。そこでようやく、ドワーフは自身が何をされていたかを実感し始めた。
「う……うぅ…!」
たちまち、ドワーフの目に涙が溜まった。
「ふ、ふええぇぇ〜〜〜ん!」
大きな声で、ドワーフは再び泣き出した。肛門を犯され、あまつさえ腸内に射精されたという事実は、ドワーフにとってひどく
ショックだった。まして、それがディアボロスとなればなおさらだった。
わんわん泣き喚くドワーフを、ディアボロスは無表情のまま見つめていた。その目には、彼女を強姦したことに対する罪の意識も、
また彼女を気遣うような光も見えなかった。
「ふええぇぇ……ぐす、ひっく…!ど……どう、してぇ…?う、うえぇ……私……私、何もしてないよぉ…!なのに、なんでぇ…?
う、うえぇ〜ん!」
ディアボロスは、受けた仕打ちは何倍にもして返す男だということは知っている。しかし、ドワーフにはこれほどの仕打ちを受ける
理由がまったくわからず、それがまた彼女にひどいショックを与えていた。
なおも、ディアボロスは泣き続けるドワーフを見つめていたが、やがて静かに口を開いた。
「……初めて、お前としたとき……お前は、俺のを思いっきり握った」
「……ひっく……ひっく…!」
「ものすごく、痛かった。それに対して、お前から謝罪を受けてもいない」
「……ぐすっ…」
言われてみれば、覚えがあった。ただ、自身が達しかけていた上での行動だったせいで、今まで完全に忘れていた。
「だ、だからってぇ……なんで、今ぁ…?」
「お前は、何してもいいと言った。お前との間に、遺恨を残したくなかっただけだ」
「………」
ディアボロスの言葉は、いくつかの取り方ができる。ドワーフは一瞬悩み、震える声で尋ねた。
「私の、こと……嫌い、だった…?嫌いに、なった…?」
「………」
ディアボロスは答えなかった。その沈黙が肯定のように感じられ、ドワーフはまた泣き出しそうな表情になった。
その瞬間、ディアボロスはドワーフの隣に寝転がると、彼女を胸の上に抱き上げた。
「……好きだから、遺恨を残したくなかった」
「……!」
涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔に、ぱあっと笑顔が浮かぶ。そして、ドワーフはディアボロスに思い切り抱きついた。
それに応えるように、ディアボロスも強くドワーフを抱き締める。その力は意外と強く、ドワーフは何となく対抗意識を煽られ、
もっと強く抱き締めてみる。
「……えへへ」
「………」
ディアボロスは全力でドワーフを抱き締める。その腕はぶるぶると震え、かなりの力が加わっていたが、元々が筋肉質なドワーフは、
それを上回るほどの力で抱き返した。あまりに強く抱き締めたため、ディアボロスの背中がコキリと鳴る。
「………」
「へへ〜」
にんまりと笑うドワーフ。ディアボロスは少し不満そうに彼女を見つめていたが、目の前にあった耳を突然ぱくりと咥えた。
「ひゃっ!?」
思わず力が緩んだ瞬間、ディアボロスはドワーフの顔を思い切り胸に押しつけた。こうなっては抱き返そうにも、うまく力が入らない。
「………」
上目遣いに不満を訴えるドワーフに、ディアボロスはニヤリと笑いかける。すると、ドワーフは視線を落とし、少し顔を傾けると、
彼の乳首にぺろりと舌を這わせた。
「うあっ…!?」
思わず怯んだ瞬間、ドワーフは体勢を立て直し、ディアボロスの体をぎゅっと抱き締めた。
目と目が合う。二人は同時に笑いかけ、改めて普通の力で抱き合うと、そっと目を閉じた。
直接感じるお互いの体温。それは二人に大きな安らぎをもたらし、疲労感が眠気を誘う。しかし、それに屈する前に、ドワーフは
自身の気持ちに気付いた。
これほどまでに、離れたくないと思う相手。これほどまでに、嫌われたくないと思う相手。そして、これほどまでに、好きな相手。
―――遊びのつもり、だったのになあ。
気付けば、こんなにも彼に惚れている。それはドワーフ自身、驚くべき変化だった。
ただ単に、見た目が非常に女っぽく、しかし男のモノがあり、それが非常に良かったから、付き合ってきた相手。
だが、今は違う。今はそれらと関係なしに、彼のことが好きだった。
―――覚悟……決めようかな…。
一人そう心に決め、ドワーフは意識を手放した。胸に感じる体温が、とても暖かかった。
変な時間に寝てしまったため、二人は夜になってから目を覚ました。とはいえ、疲れのせいかまだ多少眠く、全身がひどくだるい。
おまけに、二人して汗をかいていたせいで、かなり臭いが強い。
そんなわけで、二人は宿の共同浴場へ向かった。ディアボロスは例によって無駄毛の処理をし、長い髪を洗っていたが、そこに誰かが
入ってきた。その人物はディアボロスと二つほど空けて座り、シャワーで全身を流し始める。
お互い、特に意識はしていなかった。しかし、彼が尻尾を軽く振った拍子に、水滴がディアボロスに飛んでしまった。
「あっ、すいませ……ん?あれ?もしかして、ディアボロスか?」
「………」
見れば、それはタカチホのフェルパーだった。先客が仲間だったと知ると、フェルパーはディアボロスの隣に席を移した。
「お前もここ来てたのかー!てことは、ドワーフも?」
ディアボロスは答えず、黙って頷く。
「そうかそうかぁ。考えは一緒だったってことか」
二人は体を洗うと、揃って湯船へと向かった。そんなに金の掛けられていない設備らしく、男湯と女湯は簡単な仕切りで
区切られているだけで、湯船の底の方は繋がっている。おかげで、隣の声はよく聞こえる。
「あれー、ノーム?ノームも来たんだ」
「ん、ドワーフ。奇遇ね。いや……奇遇でもないのかな」
女湯の声は、いつにも増してよく聞こえる。それを聞くともなしに聞いていると、ドワーフが大きな声を出した。
「ちょっとーぉ!なんでトカゲまで来るのー!?」
「おおー、ドワーフー!あ、ノームまでー!」
その言葉に、フェルパーとディアボロスは顔を見合わせた。
「……バハムーンまで?て、ことは…」
ガタンと浴室のドアが開けられ、小さな人影が入ってくるのが見えた。その人影に、フェルパーは声を掛ける。
「おーい、クラッズ。お前だろ?」
「え?フェルパー?あ、じゃあまさか、脱衣所にあったスカートは、ディアボロス?」
「そう、こいつ。いやー、やっぱりみんな、考えることは一緒なんだなー、ははは」
ここ、ローズガーデンは、一行の出会いの地でもあった。そのため、全員自然と、最後の時間をこの地で過ごすことを選んだのだ。
「兄ちゃんと二人も良かったけど、やっぱりお前達も一緒だといいなー!」
「私はうんざりだよー、このトカゲー。なんで最後の最後まで、あんたと一緒なのよー」
「お似合いじゃないの。最後くらい仲良くしてやれば」
実に仲のいい男湯と違い、女湯は相変わらずの雰囲気である。
「やだよ、こんなのとー!あ、でも、ノームとなら……いい、ですよ?」
ドワーフがいつもの調子で言うと、ノームはおもむろに近くの桶を取り、意識を集中した。すると、それは見る間に形を変え、
いくつかの球が連なった物に変化した。
「それ以上近づいたら、これをあんたのお尻に突っ込むけど」
「っ!?」
ビクウッ!と、傍目からもわかるほどにドワーフの体が震えた。その目は真ん丸に見開かれ、耳は完全に垂れ下がり、尻尾までもが
完全に内側に丸めこまれている。
「あんたが書くいかがわしい本の参考にしたいならいいけど、そうじゃないなら寄らないでね」
「は……はい…。わかり……ました…」
「……?」
予想以上の反応に、ノームは訝しげな顔をする。ノームは再び錬成し、手に持った物を元の桶に戻しても、ドワーフはまだ震えていた。
試しに、手を顔の前でひらひらと動かしても、ドワーフの反応はない。
「ドワーフ、生きてる?」
「えっ!?だ、大丈夫大丈夫!心配……ないよ!」
頭の回転に関しては、ノームは一行の中でも随一である。おおよそ何があったかを理解し、ノームは溜め息をついた。
「最後の最後にトラウマ作るとか、あんたとあの悪魔は何やってるんだかね…」
「ん?ドワーフどうしたー?なんかボーっとしてるぞー?」
「え、う、ううん!そんなことないよ!わふっと元気だよ、わふっと!」
ようやくいつもの表情を取り戻したドワーフ。彼女達の細かい会話は聞こえていなかったらしく、男湯の方からは呑気な話声が聞こえる。
「何だかんだで、あいつら仲いいよなー。ノームも、もっと笑えばいいのなあ。笑った顔、一番可愛いのに」
「僕、ノームの笑った顔なんてほとんど見たことないよ……そういう意味では、貴重だからよりよく見えるっていうのもあるかもね」
可愛い、と言われたノームは、ポッと顔を赤らめ、湯船に顔半分ほどを沈めてしまう。
「ああ、でもバハムーンはよく笑ってるけど、それでも笑った顔が一番好きかなあ、僕は」
「やっぱり笑った顔が一番可愛いよなあ。ディアボロスもそうじゃないか?」
話を振られたディアボロスは、ほんの一瞬考え、口を開いた。
「……泣き顔が一番可愛い」
「な、泣き顔……いや、まあ、ドワーフの泣き顔見たことないけど……ていうか、何して泣かせたんだよお前は」
「う〜ん、た、確かに貴重ではありそうだけど……君ってほんと、色々基準が違うね」
その泣き顔が可愛いと評されたドワーフは、女湯で一人どんよりとした表情を浮かべていた。
「あ、あんな顔気に入られても……ディアボロス、考え直してくれないかなあ…」
「大丈夫かドワーフ?いじめられたのか?」
「いや、そういうわけじゃ……そう……うん、いじめではないんだけどね…」
本気で心配そうなバハムーンに、ドワーフは歯切れ悪く答える。そんな彼女を、ノームは呆れたように見つめる。
「……ご愁傷様」
「うう、ノーム慰めてくれる…?じゃ、じゃあせっかくだからもっとわふっと体で慰め…!」
「これで慰めていいなら」
「……いえ……ご、ごめんなさい…」
初めて顔を合わせた時と、彼等は同じ場所にいる。しかし、その時からは想像もつかないほどに、関係は変わった。
今や、彼等全員が、入学当初からの仲間だったかの如く、固い絆で結ばれている。
だが、それも夜が明けるまで。明日になれば、彼等は元のパーティに戻る。
どんな思いがあろうと時は流れ、彼等は風呂を上がるとそれぞれの部屋に戻った。
月が昇り、星が巡り、やがて月の光は、太陽の光に取って代わられる。とうとう朝になり、宿屋を出た六人は、それぞれの学校の
組へと分かれていた。
「それじゃ、ディアボロスとノーム……気を付けてな」
「……フェルパーも」
ローズガーデンは、プリシアナの隣である。なので、二人はここで別れ、徒歩でプリシアナに帰ることになっていた。
「またねー、ディアボロス。じゃ、フェルパー、送るのよろしくねー」
「ああ……それじゃ、行くぞ」
いつもよりやや遅い詠唱で、フェルパーがスポットを唱える。たちまち四人の姿は消え、次の瞬間にはドラッケン学園の正門前に
辿りついていた。
「うー、兄ちゃんとはここまでかぁ…」
「まあ、ね……バハムーンも、ドワーフも、またね」
「はいはい、またねー。二人も気を付けてねー」
ドワーフの言葉を聞きながら、フェルパーは再びスポットを唱える。そして、フェルパーとクラッズはタカチホ前に立っていた。
「……なあ、クラッズ。ちょっといいか?」
「ん、何?」
「あのな、昨日ノームと話したんだけど…」
すると、クラッズは目を丸くした。
「あれ、君も?僕も、バハムーンと遅くまで話してたんだけど…」
その頃、ドラッケンの二人も、同じようなことを話していた。
「なあドワーフ。あのな、昨日兄ちゃんと話したことがあるんだけど…」
「あれ、奇遇。私もディアボロスと話したんだけど…」
一方のプリシアナ勢は、歓迎の森を実に険悪な雰囲気で歩いていた。
「………」
「………」
二人に会話はない。そんな二人の前に、一匹の一つ目魔道が現れた。
「雑魚が……うざったいのよ…!」
「………」
ノームとディアボロスが同時に構える。そして、二人は同時に攻撃を繰り出した。
「龍虎双天牙ああぁぁ!!!」
お互い嫌っているはずだったが、その攻撃はなぜか妙に息が合っていた。その犠牲になった一つ目魔道は、不幸としか言い様がない。
申し合わせたわけでもなく、ごく自然に合ってしまう行動。それは、この二人に限った話ではない。
彼等が話し合った末、どのような答えが出たのか。その答えを示す時が、近づいていた。
以上、投下終了。
ドワ子とディアボロスは動きやすいから書きやすかった。
それではこの辺で。
乙!そしてGJ!
毎度ながら氏の作品は素晴らしい!次回が楽しみです!
93 :
名無しさん@ピンキー:2011/02/18(金) 16:39:26 ID:fQ26OEHS
全部一気に読んでしまった・・・GJ!!!
次回にすごく期待しております。
GJ!
次で最終回ですか…
楽しみだけど、寂しいような、怖いような
ともあれ、全裸でお待ちしております
GJです!
◆BEO9EFkUEQ 様のドワーフいじめにはえもいわれぬキレがありますね。俺得俺得。
ドワーフのケツが切れたことはなかったように思いますが。
96 :
『使用人』の輩:2011/02/20(日) 06:22:34.03 ID:TFVSL7qZ
めっきり投下がなくなりましたね。大丈夫だろうか、このスレ…。
◆BEO9EFkUEQ さんの連載が終わったら、一気に寂しくなりそうです。
投下を迷う人よ、どうか来てくれ。
結構好意的に受け取ってもらえるものですよ。私でさえGJもらえましたし。
…さて、今回はセレスティア♂×クラッズ♀で。玉さぁ〜い!
97 :
『使用人』の輩:2011/02/20(日) 06:26:33.36 ID:TFVSL7qZ
たいそうなしどけない彼女はなりになっていた、
庭の大樹は無遠慮に
葉の先で、窓の硝子を撫でていた
思わせぶりに、しげしげと。
ちょっとした下心でしかなかった。
セレスティアがその場に居合わせたのは。
ここしばらく居ついている漁村で、彼はクラッズの女と密会を重ねていた。
その夜は、彼女の寝姿を覗きたかっただけだ。
カーテンが閉まっていなければ、彼は彼女の面影を抱いて、甘美な夢を見られるはずだ。
1,2割程度の期待をしながら、小さな恋人の寝室の窓を覗き込む。
開いたカーテンの向こうで、ベッドに背を預けた彼女が、思いつめた様子で、眉間に銃
口を押し当てていた。
セレスティアは激しく窓を揺さぶった。
それに驚いた彼女が引き金を引いてしまうかもしれなかったが、彼にそんな冷静な判断
力はなかった。
ちょっとした下心が功を奏したようだ。
セレスティアはどうにか、オフィーリアの悲恋の詩を謡う羽目にはならなかった。
クラッズはその手から銃を取り落とし、焦点の合わない目を濡らしながら、喘ぐような
手で、覗き犯の体を探していた。
自殺未遂の場で不謹慎にも、セレスティアは平静を失いつつあった。
クラッズの身なりは、彼女には少々大きすぎる、白いワンピース一枚。
薄い生地は汗で濡れ、張り付いた肌が、微かに透けて見える。
ほっそりとした体のラインがくっきりと浮かび上がっている。
セレスティアは恥じて目をそらした。
クラッズのただでさえ目立つ胸が、サイズの合わない服のせいで、露出しすぎていたからだ。
小人のイメージの割りに深い谷間が、肌の色をむき出しにしている。
白い布地の下の先端(今にもこぼれ出そうだ)が、微かに透けているように見えるのは
気のせいか。
彼女の指が、セレスティアの胸を探り当てた。
指先がその上を不安げになぞっていく。
目は開いていた。合わせる焦点のない、虚ろなゼラチン玉。
止め処なく涙をこぼしながら、姿も知らない恋人を、暗闇だけの瞳に映そうとでもいうのか。
98 :
『使用人』の輩:2011/02/20(日) 06:29:35.25 ID:TFVSL7qZ
僕の大きな椅子により、
半裸体、彼女は両手を組んでいた。
床の上、可愛い彼女の足先は
気安げにわなないていた、ぴくぴくと。
セレスティアは、ゆっくりとクラッズの額をなでた。
馴染みのその合図に、クラッズは目を瞑った。
そしてセレスティアは、クラッズの濡れたまぶたに唇をあてがう。
乾いた唇を、彼女の涙で潤すようにする。
密かに会ったときにいつもすることだ。
そうしながらセレスティアは、クラッズの小さな背中に腕を回し、その体を抱き上げて
から、彼女のベッドに倒れこんだ。
接吻は目から鼻、頬へと下りていく。流れ落ちた涙を舐めとるように。
体同様に熱くなっていく吐息が、彼の首筋に絶えずかかっている。
クラッズの唇を舐めてやる。彼女の体に、僅かな震えが走った。
そうして濡らした唇に、そっと自分の唇を重ねる。
食み、吸うようにその表面を濡らし、温めた後、表面を一舐めしてから、内側に侵入する。
ふさがれた恋人の喉から、時折吐息と共に、甘く濁った声が漏れ出ている。
密着した肌と布団で、互いの体温が上がっていく。
離した口から糸を引きながら、セレスティアはまたクラッズを抱え上げた。
そうしてその体を、ベッドに寄りかかって座らせるようにした。
彼女は両手を組んで、胸を覆うようにした。
肌にぴったりと張り付いた薄いワンピースは、その内の肌をろくに隠していなかった。
足が僅かに震えているのは、足が上ほどに温まっていないからか。
彼女は羞恥心を隠そうとしなかった。
それが、セレスティアに対して最も有効な誘惑だということも、恐らく分かっている。
蝋ほど血の気を失って、僕は見つめた。
ひと筋の木漏れ日が、ばらの木の蜂さながらに
彼女の微笑から乳房へと
ちらちら飛び移るのを!
実際には、クラッズはセレスティアの椅子でなく、彼女のベッドによっている。
彼女の肌を照らすのも木漏れ日ではなく、窓から差しこむ月明かりだ。
だが、それらに大した違いなどない。
クラッズは、明かりの差さない目をなおも濡らしながら、身をよじるようにして、その
身を震わせている。
羞恥に悶える彼女の体は、恋人の無遠慮な視線の気配に過敏になっていた。
焼いたマシュマロのような視線を感じた肌は桜色に染まり、激しくなっていく心臓は、
声を漏らさずに呼吸することを許さなかった。
セレスティアは、自分の息が苦しくなっていくのを感じていた。
今のようなクラッズの姿を、何かの弾みで拝んだときから、彼はこの村を離れられなくなった。
99 :
『使用人』の輩:2011/02/20(日) 06:31:53.68 ID:TFVSL7qZ
僕は接吻したものだ、彼女の華奢な足頸に。
不自然に、彼女はしばらく笑ってた、
甲高い顫音(せんおん、トリロ)になって散るような
水晶の笑い声だった。
敏感な足指をくわえられながら、クラッズは奇妙な表情を浮かべていた。
恥ずかしい刺激に顔を歪めながら、口元だけは、くすぐったさに笑っている。
恥ずかしそうな、くすぐったそうな声を震わせて、喘ぐようにセレスティアの名を呼んでいる。
可憐な足は逃げ込んだ、シュミーズ(胸から腿までを覆う女性用下着)の裾の中へと、
「よしてようお!」どうやらこれで
最初の無躾は赦されたわけ
笑いが罰すと見せかけた
彼女は何も言わない。
胸を覆い、足を引っ込めながら、泣き笑いのような表情を浮かべている。
以前から、不安の晴れない人ではあった。
何があったかは知らないが、その臨界が来てしまったのだろうか。
はあはあと息をつきながら、何も映さない目が泳いでいる。
傍にあって欲しいものが、離れていっていないかと。
わななく足から唇をはなすと見せて、
今度はそっとこの人の瞼の上に接吻した。
可愛い顔をうしろへ引いて
「あら、こんなこと、なおいけないわ!
銃まで持ち出すほどだ。相当大きな不安に取り付かれているのは間違いない。
ほんの一時でも離れれば、彼女は視覚以外の感覚も、虚無の暗闇に墜としてしまうだろう。
足を離したぐらいで冷めはしないと、セレスティアは、クラッズの額に唇を這わせる。
そこにくるとは思っていなかったのか、クラッズは、んっ、と甘く呻き、小さな体を震わせた。
そして逃げるように、体を横にそらしてベッドに寄りかかる。
セレスティアは口元がにやけるのを止められなかった。
彼女の反応は、彼にとっていちいち理想的だった。
100 :
『使用人』の輩:2011/02/20(日) 06:34:25.66 ID:TFVSL7qZ
あなたっていけない方ね、叱っておくわ、あたくしが……」
後は僕一切を、大きな接吻にまとめあげ、
彼女の胸ぐらへおんまけた、
すると彼女が笑ったものだ、合意を告げてにこやかに……。
無駄な遠慮はここまでにしよう。
今の彼女は、恐らく理性的なものを求めてなどいない。
せめて今ばかりは、溺れさせてやるとしよう。
そして落ち着いてから、じっくり聞き出せばいいのだ。
今必要なのは、安心させること。
自分がまだ、彼女から離れる心配がないと。
セレスティアは、半端に残った理性を捨て去った。
ワンピースの裾をいくらか破りとり、その布切れで、クラッズの両手首を交差させ、ベ
ッドの柱の一本に縛りつけた。
両手を挙げた状態で縛られた彼女は、いやぁと喘いで身をよじった。
こうされると、もう笑みを浮かべる余裕もないようだった。
汗に塗れた肌が月に照らされ、剥き出しの上半身を光らせている。
セレスティアの腕が、ぜえぜえと弾む体を抱き上げた。
左手で、背中だけを持ち上げて抱き寄せる。
突き出すようにされた露な胸に視線を感じてか、クラッズは息も絶え絶えになっていた。
誇示するように突き出されたふくらみが、深い呼吸で大きく前後している。
どうせ死ぬなら、心を許す人に、いいようにされて死ぬがいい。
羞恥心で、人は殺せるだろうか。
そんなことを思いながら、セレスティアはしばらく腕の中の恋人を、視線でなぶっていた。
次第に彼女の顔から、羞恥という理性の影が消えていった。
締りのなくなった口からは、何もしていないのに小さな喘ぎが漏れ出し、熱くなった股
間を、セレスティアの腹にこすり付けている。
腰をゆっくりと回転させる動きで、反らしてさらされた上半身が、妖しく揺らめいている。
もう限界だった。セレスティアは力任せに、小さな体をベッドに叩きつけた。
ベッドのスプリングの反動で、クラッズの体は前後に激しく揺さぶられた。
胸の上で膨らみが荒れ狂い、熱く濡れた腰が何度も跳ね上げられた。
突き出される股間は様々な体液で濡れ、ぴったりと張り付いた布地は完全に透けていた。
セレスティアは、クラッズの大きく露出した胸元に顔を埋め、肌を濡らす汗やら何やら
を丹念に舐め取った。
恥ずかしそうな、そのくせどこか悦んでいるような吐息と共に、背が浮き上がる。
いったん顔を離したセレスティアは、突起のようになって透けた布地を突き上げている
乳首を眺めながら、クラッズの顔を窺ってみた。
見えていないはずの目が合った。
泣き続ける目が訴えている。……
もう情け無用だ。
セレスティアはワンピースの裾を引き裂き、剥き出しになった下半身を持ち上げ、胸よ
り下を逆さまにした。
クラッズの両足は蛙のように開かざるを得ず、腿に引っ張られていっぱいに開いた割れ
目は、待ちきれないとばかりに開閉している。
どろどろしたもので濡れたそこを、セレスティアは容赦なく舐めあげた。
101 :
『使用人』の輩:2011/02/20(日) 06:39:15.12 ID:TFVSL7qZ
たいそうなしどけない彼女はなりになっていた、
庭の大樹は無遠慮に
葉の先で窓の硝子を撫でていた
思わせぶりに、しげしげと。
セレスティアの羽根は、すでに白くなかった。
だが、どうせクラッズには見えていない。
見えていたところで、何の意味があろうか。
落ち着いたら、絶対聞き出さなければ。何があったのか。
だが今は、そのときではない。
現実逃避も本気でやれば、気力を取り戻すきっかけにもなるだろう。
喘げ。喚け。泣け。叫べ。そうだ、もっとだ。
壊れそうなほどに貪りつくして、お前は一度死ぬのだ。
次に起きたとき、お前の意識は、緩やかに覚醒する。呆けたように。
そしてそこから、再始動するのだ。
以前の悩みが、他人事であったかのように。
冷静になったお前に対して、俺は誠実でなければならない。
真剣なお前に、相応しい応対をしなければ。
そして晴れて、俺の助けによって、
お前の苦悩が去ったなら、今度はお前に聞いてもらおう。
だから俺よ。今言うんじゃない。
そう、今じゃないんだ。
俺はあくまでアドバイザー。介護者じゃない。
彼女がそう望んだし、俺もそうであるべきだと思っている。
いい声で泣くな、お前は。
嫌とかやめてとか恥ずかしいとか。
これほど俺好みなよがり声もない。分かってんだろ?
こんなに上半身を揺らして。
揉んで欲しいか。それとも舐めるか。
ぶるんぶるんしてるのを、ただ見てたほうがいいか。
クラッズにしとくのが勿体無いよ、お前は。
そんなに嬉しいのか?
誰かに求められるのが。期待されるのが。
期待は失望と表裏一体だってのに。
……まあ、お互い様か。
……何だ?舐めるだけじゃ嫌か?
この態勢、好きなんだけどな。わかったよ。
濡れてても、きついのには違いないんだ。痛くなっても知らないぞ。
人は俺を堕天使と恐れる。
……俺が真性の堕天使ならば、それを喜んだだろう。
こんな不安定気味な女に、こだわることもなかったはずだ。
……所詮俺も、他者の承認を求めずにいられない、軟弱な人間でしかなかった。
その翼は、白でも黒でもない、灰色。
汚れてくすんだ、ネズミの毛皮みたいな灰色だ。
無頼を気取りながら、自己満足だけに生きられず、
白を保つことも、黒に墜ちることもできなかった、半端者。
俺には似合いの色だ。
そんな俺でも、こいつを励ますことぐらいは出来ると思いたい。
まさに共依存関係。危険な状態だ。
……まあいい。クラッズの寿命など、大したことない。
こいつを円満に看取る。
それを、今の目標にしよう。
注:二文字空けて引用した詩は、『三度接吻のある喜劇』。
『ランボー詩集』ランボー著 堀口大學訳 新潮文庫 より。
102 :
『使用人』の輩:2011/02/20(日) 06:47:23.31 ID:TFVSL7qZ
投下完了。楽しんでもらえますように…。
ランボーが詩を書いていたのは、16〜19歳という僅かな間。
家出と放浪に日々を暮らした彼の詩は、何かにつけていやらしいです。
自尊心と不安、どこか現実逃避的な色目。
ある意味とともの。の二次創作のモチーフとしてはあつらえ向きに見えるのです。
103 :
名無しさん@ピンキー:2011/02/21(月) 10:27:27.03 ID:GtosdnnL
>>102 考えるな、感じろって言葉が浮かんだ
ともかくGJ!
腕斬り落とすとかの出血は全然平気だけど、鼻血とか破瓜とかみたいに粘膜からの出血は実は卒倒しそうなほど苦手。
あとドワ子は丈夫そうだし……そんなわけで出血表現があまりないのです。
続き投下します。が、今回はエロ分なし。
それと今回で終わる予定だったんですが、思った以上に長くなってしまったので二回に分けます。
少々長いですが、楽しんでいただければ幸いです。
プリシアナ学院の学生寮。その日、そこの入り口は非常に賑やかだった。
「セレちゃーん!何、何、そんな真っ黒な羽になっちゃってー!」
「おー、堕天使だ堕天使だ。にゃん。セレスちゃんイメチェン?」
「ふふ、そんなところですよ。わたくしのところ、術師ばっかりでしたから」
「無事でよかったよ、そこのリーダー含めて。にゃ。これでも心配したからね。にゃにゃん」
「おっとぉー、もうエルフがリーダーなんて言わせないよー!?軟弱風術師より、リーダーはナイトたるこの私だぁー!」
「な、軟弱…」
「………」
プリシアナの精鋭、リトルブーケ。半数以上が女子で構成され、特にその中のヒューマン、フェルパー、セレスティアが姦しい。
異常な無口のディアボロスに、冷たく辛辣なノームが在籍してなお、リトルブーケの空気はその三人が作っていた。
「あー、じゃあこれから君がリーダーやるかい?僕は助かるけど……ああでも、じゃあ今回の挨拶だけは、僕にやらせてくれないかい」
「お、いいよー。そしてその次が、新リーダー就任式!」
「そんな暇ないって」
そんな異常な賑やかさの中、唯一男らしい男であるところのエルフは、コホンと咳払いをして口を開いた。
「それじゃあ、みんな。この中の四人は、長い間それぞれ分かれてたわけだけど、またこうして六人揃うことができてよかった。
そこで、今回集まったのは、多分みんな知ってると思うけど、始原の学園へ向かうパーティとして、僕達は選ばれたわけだ。
これには、大陸に伝わる伝説の他に、闇の生徒会の本拠地へ乗り込むという意味合いもある」
そんなエルフの話を、ノームは退屈そうに聞いていた。
「危険な旅になると思う。けど、僕達なら、それを乗り越えられると…」
「少し、いい?」
エルフの言葉を遮り、ノームが口を開いた。
「ん、ノームかい。何だい?」
「御高説賜ってるところ悪いけど、あたしは伝説にも、始原の学園にも、闇の生徒会にも……このパーティにも、興味ない」
「え?」
突然の言葉に、全員が驚いてノームを見つめる。
「行くなら勝手に行って。元々、あたしはこのパーティじゃ浮いてる方でしょ?消えたところで、そう支障が出るわけでもないし、
寂しいと思う奴がいるわけでもない。そういうわけで、あたしはこのパーティ抜ける」
「えー、ノーム行っちゃうの?宝箱ぉ〜…」
「代わりの誰かでも探せば。あるいは、誰か人形遣いでもやればいいでしょ」
「せっかく元通りになったと思ったのに、また減るんだ。にゃ。まあ、無理に止めはしないけど」
フェルパーの言葉を否定する者はいない。そこに寂しさなど微塵も感じず、ノームは彼女達に背を向ける。
「じゃあね。もう二度と、会うこともないでしょ」
冷たく言って、ノームは寮を出て行った。その背中を見送り、ドアが閉まるのを見届けてから、エルフは改めて口を開く。
「えー、じゃあ一人減ったけど……とにかくそういうわけで、僕達はこれから…」
「……すまない。俺も、行くことはできない」
今度はディアボロスが、エルフの言葉を遮った。
「ええええっ!?どうしてどうして!?ディア君なんでー!?」
「いいお化粧とか毛繕いのしかたとか、聞きたいこといっぱいあったのにー!にゃー!」
「……わ、わたくしは別にいいと思いますけど…」
ノームと違い、ディアボロスの言葉にはかなり大きな反響があった。それら一つ一つを噛み締めるように、一つ大きく息をつくと、
ディアボロスは再び口を開く。
「放っておけない奴がいる。一人にできない奴がいる。それに、離れたくない奴も。それは……ここではない」
「あうぅ〜、ダンス教えてもらおうと思ってたのにぃ〜…」
「にゃん。女湯に引きずり込んで遊ぼうと思ってたのにぃ〜」
「フェルパーさん、それはさすがにちょっと……わたくしはそれ止めますからね?」
女三人とは別に、エルフはディアボロスに諦めの笑顔を向けた。
「ノームと同じく、止めても聞く気はないんだろ?」
「………」
「いいさ。いい居場所が見つかったんなら、そこに行くことを止めはしないよ……男一人、寂しくなるけどね」
「……すまない」
謝るディアボロスに、エルフは笑いかけた。
「気にしないでいいさ。ただ、いつかまた会うことがあれば……ゆっくり、お茶でも飲みながら愚痴を聞いてもらうよ」
冗談めかして言うエルフに、ディアボロスは小さく笑う。そして、彼も四人に背を向ける。
「……いつか、また」
「絶対また会おうよー!?」
「宿屋で見付けたら女湯に引きずり込んでやるからー!」
「だからフェルパーさん、それは嫌ですってば!」
騒がしく、華やかなリトルブーケの面々の声を聞きながら、ディアボロスは寮のドアを押し開けた。
一歩外に出、一息つく。背後でドアの閉まる音がすると同時に、声が聞こえた。
「やっぱりあんたも来たのね、悪魔」
見れば、先に出たはずのノームが、壁を背に寄りかかっていた。
「………」
「意外そうね。どうせあんたも来るだろうと思ったから待ってたんだけど、何か悪かった?」
「………」
ディアボロスは黙って首を振る。そして二人は、微妙な距離を空けつつ並んで歩きだす。
「一応、勘違いしないでほしいのは、仲間であることと、個人の感情は別ってこと。あたしは、あんたなんか大っ嫌い」
それを聞くと、ディアボロスはフッと笑った。
「……気が合うな。付き合えばうまくいったかもな」
「冗談。考えただけでゾッとする。あんたと付き合うなら、死んだ方がマシよ」
「俺もだ。やっぱり気が合うな」
「ふ……あんたも、冗談言うくらいはできるのね」
二人はお互いを睨み合う。しかし、その口元は楽しげに笑っていた。
「まあ、どうでもいいけど。さあ、行くわよ悪魔」
「………」
かつて、新たなパーティに属するときに言った言葉。それを再びなぞりながら、二人はプリシアナから旅立って行った。
ドラッケン学園、正門前。そこに、クラッズを中心とした一つのパーティが集まり、周囲の仲間は親しげに会話を交わしている。
「ああリーダー、よく無事だったねえ!僕はもう、心配で心配で夜も眠れないくらいだったよ!」
「あれだけ昼寝をすれば、誰だって夜は眠れないでしょうね」
「……ノーム、野暮な突っ込みはなしで頼むよ?心配してたのは本当だったんだから」
「エルフとノームは、相変わらずね。わふちゃん、そっちも変わりはなかった?」
「もっちろん。わふっと元気だよ、私達は」
「リーダーもフェアリーも、なんか強そうになったなー!お、フェアリー少し逞しくなったかー!?」
「ちょっ、ギブ、ギブ!バハムーン、やめてくれ!死ぬ!君はもっと逞しくなってるんだから、締め殺す気かい!?」
普段は、いかにも同年代の友人同士といった感じのフリーランサー。しかしそんな雰囲気も、リーダーであるクラッズが声を掛けると
即座に変化する。
「じゃあみんな、これからの話するからちょっと静かに」
途端に、他の五人は口を閉じ、クラッズの言葉に耳を傾ける。
「これから私達は、中央に現れるっていう大陸にある、始原の学園へ向かうことになる。それは同時に、闇の生徒会との戦いにも
繋がる。他に向かう面子は、うちのキルシュとその取り巻きチーム、ジークチーム、及び他の学園の精鋭。まず、リトルブーケと
六傑衆も来るだろうね」
誰も口を挟むことなく、クラッズはさらに続ける。
「で、ここからが本題。これは課題扱いで、これをこなせば卒業単位にはまず届く。各自、ここまでにもそれぞれのパーティで単位は
稼いで来たとは思うけど、これは落とせない。そんなわけで、各人の働きに期待するよ。……で、ここまで言ったけど、何かある人?」
「はーい」
早速、ドワーフが手を上げた。
「ん、わふちゃん。どうしたの?」
「あのねえ、クーちゃんには悪いんだけど、私別に、最短での卒業とか、もうどうでもよくってさ。正直、今回の課題にもまったく
興味ないんだよねー」
その言葉に、一行は驚いたように彼女を見つめる。
「だからさ、私はここで降りようかなーって思ってる」
「……わふちゃん、本気?」
「本気も本気。ね、トカゲー?」
いきなり話題を振られたバハムーンは、困ったような表情になりながらも口を開いた。
「……リーダー、ごめん……あの……私、も……ドワーフと、一緒に抜ける…」
「おいおいおい〜?一気に女の子二人も減るとか、勘弁してくれないかい?」
「エルフうるさい。でも……確かにねえ、困ったね」
ドワーフとクラッズは、じっと見つめ合う。ドワーフはその顔に微笑みすら浮かべ、クラッズは全くの無表情である。
「わふちゃんがいるから、フェアリーが攻撃役として活きる。バハムーンがいるから、硬い相手でも前衛が活きる。それが崩れると
なると、全員に迷惑がかかるんだよねえ」
「フリーランサーに入れるって言えば、私とトカゲの代わりなんかすぐ見つかるでしょ?」
「本気で思ってる?わふちゃんと、ましてバハムーンほどの才能の持ち主なんか、一年に一人いるかいないか。これほどの逸材を、
二人も同時に失うなんてなるとね……私としても、卒業が遠のくから歓迎しないんだよね」
「元の才能も大切だけど、重要なのはその後の努力。混成組んで、実感しなかった?」
「それも含めての、二人の評価のつもりだけど?」
少しずつ、二人の間の緊張感が高まってくる。他の仲間も、その行く末を固唾を飲んで見守る。
「わふちゃん。私は、わふちゃんを失いたくない。だから、わふちゃんの言うことは承認できない」
「だろうね。でも、私もクーちゃんの言うことを大人しく聞くつもりはないよ」
「なら、どうするか。わかってるよね?」
「もちろん。覚悟の上だよ」
快活に笑うと、ドワーフはキッと真面目な顔になった。
「放したくないなら、力づくで止めてみれば?トカゲ!」
ドワーフがその場を飛び退ると、その前にバハムーンが立ちはだかる。そんな二人に、クラッズ以外の仲間は動揺していた。
「お、おいリーダー、どうするよ?あの子ら、本気みたいだぞ?」
「……何も、迷うことなんてない」
低い声で言うと、クラッズは二人を見据えた。その目は既に、それまでの彼女のものではない。
「ノーム、フェアリー!後列より攻撃!エルフ、後列より銃撃支援!」
「お、おいおい!僕に彼女達を撃てって!?」
「エルフ、命令復唱!」
「はいはいはい、後列より銃撃支援だよね。参ったなあ、こりゃ……やり辛いよ」
「リ、リーダー、本当にいいのかい?」
「……もちろん、殺すつもりはない。だから、古代魔法まではいらないけど、それぐらいのつもりで行くよ。」
「……了解。ドワーフ、バハムーン、悪いけど、覚悟してくれよ!」
一方のバハムーンとドワーフは、それぞれに得物を持ち、身構えていた。
「トカゲ、昨日の打ち合わせ通りだよ。わかってるよね?」
「わ、わかってる……頑張る」
「よし、いい返事……頼りに、してるよ」
両者はしばし、睨み合った。お互いに手の内を知り尽くしているだけに、迂闊には動けない。
先に動いたのは、クラッズの方だった。
「まずは小手調べ。ノーム、フェアリー、全体魔法を。エルフ、後列狙撃。行くよ!」
クラッズが地を蹴った瞬間、ノームとフェアリーは詠唱に入り、すぐさまフェアリーの魔法が発動した。
「悪く思うなよ、サンダガン!」
巨大な雷が、二人に降り注ぐ。その直前、二人は素早く盾をかざした。
「……魔法の盾、か。ちぇ、そんなに効いてないな、あれは」
盾をかざすバハムーンに、クラッズが迫る。咄嗟に盾を下ろした瞬間、クラッズはその盾を持つ腕に斧を叩きつけた。
「うっ……ぐああぁぁ!!」
ざっくりと刃が食い込み、バハムーンの目に涙が浮かぶ。しかしそれでも、バハムーンはその場を動かず、右手のマカーナを振りあげた。
咄嗟にその場を飛びのいた瞬間、目の前を鈍器が通り抜ける。その勢いは凄まじく速く、当たればクラッズといえど、ただでは済まない。
一瞬遅れ、銃声が響いた。だがすぐに、ガギッと硬質な音が続く。
「追撃、いきます。ウッドガン」
二人の周囲に、ナイフのように高質化した葉がいくつも襲いかかる。
「トカゲ!」
「う、うん!」
二人は咄嗟に背中を合わせ、腰を落として盾の陰に隠れた。魔力を帯びた盾は、小さな葉を容易く弾き返し、二人はほとんど傷を負わずに
凌ぎきった。
「トカゲ、まだいけるよね!?」
「ま、任せろ…!絶対、負けないからな!」
ドワーフのヒールを受け、バハムーンは再びドワーフの前で仁王立ちになる。
そんな二人を見ながら、クラッズは一度自陣まで引いた。
「悪いね、リーダー。この角度じゃ、バハムーンが邪魔で……おまけにドワーフ、盾でしっかり射線遮ってるんだ」
「さすがわふちゃん。自分は戦闘苦手でも、戦い自体はうまいね」
なぜか嬉しげに言って、クラッズは笑みを浮かべる。
「補給線を断つことが、戦いの基本。となると、ここはわふちゃん狙いが定石…」
「でも、その定石を、私が読んでないとは思わない」
ドワーフは静かに呟いた。もちろん、お互いの声は聞こえていないのだが、二人は既にお互いの思考を読んでいた。
「リーダー、こっちは数で勝る。いっそ包囲しては?」
「それも考えたけど、わふちゃんはともかく、バハムーンの突撃……ノームとフェアリー、耐えられる?」
「想像したくありませんね」
「あ〜、確かに……一点突破されてもこっちの負けか」
「でも、確かに数では勝る。消耗戦ならこっちが有利。ノーム、状況維持。エルフはバハムーンを集中攻撃。フェアリー、反撃を
視野に入れて、遊撃よろしく」
「了解。気は引けるけど、早めに済ませたいなら、手早く片づけるしかないか」
直後、クラッズ達の猛攻が始まった。ノームが全体魔法で削りにかかり、他の三人が揃ってバハムーンを狙う。
攻勢に出ることもできず、バハムーンはただひたすらに防御を続ける。ただでさえ学園きっての精鋭である彼等は、離れていた期間に
ますます力を付け、二人の反撃を許さない。
傷つくバハムーンを、ドワーフは必死に回復していた。自身もノームの魔法で傷つきはするが、元より体力のある彼女は、多少の傷など
ものともしない。
「トカゲ、まだいけるよね!?」
「くっ……ま、負けないぞ…!みんな強いけど……絶対、負けない…!」
「……ごめん、トカゲ……もう少し、もう少し頑張って…!」
有利と踏んだ消耗戦ではあったが、クラッズは徐々に戦略的な失敗を感じ始めていた。
二人はこの状況を読んでいたのか、その装備は完全に魔法への対策がなされていた。おかげでノームとフェアリーの魔法は効きが悪く、
期待される削りの効果はあまりない。また、バハムーンにドワーフという、非常に体力のある相手に対し、こちらはクラッズにエルフ、
フェアリーにノームと非力な種族の集まりである。おまけに、すぐに尽きると思われたドワーフの魔力は、いつまでも尽きる気配がない。
さらに、この猛攻にあっては、いくら二人といえど、反撃の一つもできていない。そうなると、万一に備えてのフェアリーは役として
死んでしまっている。
「ちいっ、やっぱり攻めきれないか…!」
クラッズの様子を見て取ると、ドワーフは懐を探った。
「トカゲ、行くよ!」
「う……い、いいよ!来い!」
注射器を取り出し、手早くバハムーンに打ち込む。すると、バハムーンの筋肉が、目に見えて盛り上がった。
ただでさえ攻撃力に優れた彼女に、強化注射が打たれた。その効果時間は短いため、相手がじっくり待つことはない。
となれば、クラッズの取るべき手段もおのずと限られた。クラッズは仲間に向けて、声を張り上げる。
「全員、集中攻撃行くよ。バハムーンさえ排除できれば、あとは容易い!」
「リーダー、焦ってないかい?戦いに焦りは…」
「短期決戦が妥当と踏んだ!これで満足!?タイミング合わせて行くよ、攻撃準備!」
仕方ないというように、フェアリーは魔法詠唱の構えを見せる。それを見て、ドワーフとバハムーンは身構えた。
「ここが正念場……バハムーン、耐えてよ!」
「大丈夫!」
たった一言で答えるバハムーン。しかしその言葉には、揺るぎない自信と、厚い信頼が篭っていた。
「行けえ!」
四人が攻撃の構えを見せ、バハムーンは身構えた。だが、予想とは裏腹に、ノームとフェアリーの魔法はドワーフ目掛けて襲いかかった。
「えっ!?」
完全に油断していた。突然の地震にバランスを崩し、倒れた彼女を闇の球が飲み込んだ。
「ドワーフ!?」
「もらったぁ!」
クラッズの斧が襲いかかる。直前で気づき、バハムーンは何とかそれを叩き落とし、首への一撃をかわす。さらに一撃、エルフの銃弾が
襲いかかったが、クラッズの一撃によろめいたため、それは肩を掠めたに過ぎなかった。
「弾かれた!?うそ!?」
「ちぃ、仕留め損なった!」
闇が消え、中から傷だらけのドワーフが現れる。しかし、彼女の口はまだ動いており、顔を上げると、バハムーンに笑いかけた。
「ちゃんと、見てるよね?」
「う、うん!姉ちゃん、任せて!」
「よし…!」
倒れたまま、ドワーフは詠唱を続けた。高まる魔力に呼応し、パリパティが光を放ち、そして、魔法が発動した。
「いくよ!シャイガン!」
ドワーフの声と共に、巨大な光の球が現れ、四人目掛けて襲いかかった。
「なっ……うわっ!」
「ぐっ!?あ、あいつ、光術師取ってたのか!?」
完全に意識の外の攻撃だった。ドクターであるドワーフと、パティシエであるバハムーンに、攻撃魔法などあり得ないもののはずだった。
「う……武器が、パリパティの時点で疑うべきだった……え!?」
辛くも耐え抜いたと思ったのも束の間。今度はバハムーンが、ドワーフの方を見ながら何か詠唱していた。
「えっと、こうやって、こうで……いっくぞぉー!真似っこ、シャイガン!」
「うわっ!?ちょっ……うあぁ!!」
全く予想だにしない攻撃が、再び四人に襲いかかった。威力こそ、ドワーフのものと比べるべくもないが、ただでさえ動揺を
受けたところへ、さらにもう一撃奇襲を食らっては、いかに歴戦の彼等といえど、そうそう耐えられるものではなかった。
バハムーンに打った強化注射は、完全なフェイントだったのだ。
「な、何が……がはっ!う、嘘だろ…?」
「しまったぁ……バハムーン、妹学科取ってるって聞いてたのに…!」
崩壊は一瞬だった。前衛であるクラッズとエルフも痛手を受け、ノームとフェアリーはかなりの重傷を負ってしまった。
「油断……シましタね…」
「リ……リーダー、どうする…!?がはっ!あ、相手は、どう出る…!?」
「くっ…!」
クラッズは素早く相手の状況を観察する。ドワーフは再び魔法詠唱の構えを見せ、バハムーンはそのドワーフを見つめている。
再び魔法を受ければ、こちらの後衛が倒されてしまう。そして、こちらが全滅すれば、もはや彼女を止めることはできない。
おまけに、あのドワーフの性格を考えれば、それを狙う可能性が最も高かった。
「……フェアリー、エルフ、回復に回って!ノームは防御!全員、生き残りを最優先!」
バタバタと体勢を整える相手を見て、ドワーフはにんまりと笑った。
「バハムーン、行くよ」
「おう!」
ドワーフはクラッズを見つめ、笑顔を見せる。いよいよ攻撃が来るかと、クラッズが身構えた瞬間。
突然、二人はくるりと背を向け、校門へ向かって走り出した。
「なっ……逃げた!?何とまあ鮮やかな……惚れ惚れするね」
「リーダー、どうする!?このままじゃ逃がすぞ!」
ギリッと歯噛みをし、クラッズは叫んだ。
「みんなは指示通り!私が止める!」
「あ、おいリーダー!」
止める間もなく、クラッズは走り出した。元々俊敏な種族だけに、足の速さではドワーフもバハムーンも勝てるわけがない。
あっという間に校門の前に立つと、クラッズは身構えた。
「トカゲ、右へ!その先は振り向かないで、とにかく走る!」
「わかった!ドワーフ、絶対来いよ!」
「あんたこそね!」
二人は二手に分かれると、それぞれ校門を目指す。クラッズ一人では、そのどちらかしか止められない。
迷うことなく、クラッズはドワーフの前に立ちはだかった。
「わふちゃん、止まって!止まらないなら、殺してでも止める!」
「やってみなよ、クーちゃん!私は止まらない!止めたいなら、殺してみなよ!」
距離にして、約十歩。ドワーフはさらに地を蹴る。
「わふちゃん、私、本気だよ!直前で止めてもらえるとか、期待しても無駄だよ!」
「いいよ、私だって本気!クーちゃんに殺されるなら、悪くない!」
二歩、三歩。二人の距離は急速に縮まる。そして、クラッズは斧を振り上げた。
「最終通告だよ……止まらなきゃ、殺す!」
「答えは変わらない……殺す以外に、私を止める手なんかない!」
さらに一歩踏み込む。クラッズは振り上げた斧に力を込めた。
「そう。なら……止めてやるっ!!!」
筋肉が盛り上がり、斧がゆらりと揺れた。
重撃の待つ死地へと、ドワーフは迷わず飛び込んでいく。そして、斧が加速する。
さらに踏み込む。完全に間合いの中へと入り、二人の視線が交錯する。
降りかかる刃には目もくれず、ドワーフはクラッズの顔を正面から見つめ、クラッズもまた、ドワーフの顔を見つめていた。
フッと、ドワーフが笑う。その笑顔は、皮肉や含みのあるものではなった。ただ、クラッズの決定を、ありのままに受け入れるという、
一種の覚悟と慈愛を帯びた笑顔だった。
「……くっ!!」
斧はもはや止まらない。軌道を曲げることすら不可能だった。
だが、ただ一つ。方法があった。
刃が真下へ向く直前、クラッズはすんでのところで斧から手を離した。
「どわああぁぁ!?」
間一髪、斧はドワーフへの直撃を避け、回復中の仲間達の元へと飛んで行った。しかし、急激に負荷のなくなったクラッズの体勢は、
そこで完全に崩れてしまった。
「やばっ…!」
そこに、ドワーフが飛び込んでくる。右手に光るパリパティを見つけ、クラッズは思わず顔面を腕で庇おうとした。
その腕を、ドワーフが弾く。そしてドワーフは、クラッズの首を掻き抱いた。
「んうっ…!?」
ドワーフの唇が、クラッズの唇と重なった。強引に舌がねじ込まれ、驚くクラッズの舌に絡む。
まるで味わうように、ドワーフはクラッズの口内を舐り尽くす。頬をなぞり、舌をつつき、歯茎を撫でる。最後にもう一度、舌全体を
ねっとりと舐めながら、ドワーフはクラッズを抱き締めたまま、体勢を入れ替える。
そっと唇を離す。二人の間に唾液が白く糸を引き、切れた。
「ばいばい…」
静かに囁くと、ドワーフはさっと背を向け、学園の外へと駆けて行った。クラッズは、それをただ呆然と見送る。
「……リーダー、追わなくていいのかい!?」
そこへ、ようやく回復を終えた仲間達が駆け寄ってきた。しかし、クラッズは手を上げてそれを押し留める。
「……ま、しょうがないよー。あんなにはっきりフラれちゃあねー」
妙にさばさばした口調で言うと、クラッズは溜め息をついた。
「て言うか、何?リーダー、ドワーフとマジもんの関係だったの?」
「ん、そうだけど。前から、いちごミルク連発してたでしょ?」
「いやぁ〜、それでもマジもんだとは思わないって……キルシュ王女みたいのもいるのは知ってるけど、こんな身近にいるとはさ…」
「別に隠したつもりもないけど、わざわざ教えてもいないし、まあそれが普通かな。何にしろ……フラれちゃったねー」
もはや、ドワーフもバハムーンも、後ろ姿すら見えない。クラッズは校門に背を向け、先程投げてしまった斧を回収する。
「きっと、私よりいい人見付けたんだね、わふちゃんは。なら、無理に留めることもないでしょ。バハムーンもわふちゃんも惜しいけど、
しょうがない、よ…」
最後だけ、僅かに声が震えた。それに対してフェアリーが口を開こうとすると、先にクラッズが言葉を続けた。
「……リーダー命令。全員、耳塞いで後ろ向いて」
「……了解」
三人は大人しく、クラッズに背を向けた。
「……ぐすっ……わふちゃんの、ばか…」
ぽたりと、涙がこぼれた。クラッズはすぐにそれを拭うと、ハンカチを出して思いっきり鼻をかんだ。
くるりと、クラッズが振り返る。そこにはもう、悲しみの色など欠片もなかった。
「よし、命令解除!それじゃ、四人になったけど、それでもドラッケンとフリーランサーが一番だって、世界に教えてやろう!」
「おおー!」
全員が、それに応える。そして四人は、揃って普段の表情に戻った。
「さてリーダー、次の恋人候補に僕なんかどうだい?僕と二人で、蜜のように甘い時間を…」
「あなたのように軽佻浮薄な者の言葉は、一番信用ならないと思いますが」
「ノーム、いくら僕だってリーダーに嘘つくわけないだろう?君は僕を過小評価しすぎだよ」
「で、それについてリーダーはどうだい?」
「あー、全力でお断りだから安心して。私も君の人間性に関しては過小評価だから」
「ぐはっ!き、厳しい……だけど、そんな辛辣でお堅いリーダーは大好きだよ?」
「まったく……ま、気遣いだけはありがたく受け取っておくよ、気遣いだけは。だけは」
大切な仲間との別れ。恋人との別れ。しかしそれでも、彼女達が足を止めることはない。
自身の目標と、仲間との絆と、由緒正しき学園の誇りを胸に、フリーランサーは激戦の地へと旅立って行った。
移民の文化を色濃く残す、タカチホ義塾。そこからいくらも離れていない飢渇之土俵に、精鋭と知られる六傑衆は集まっていた。
「さて、みんなこうして、また集まれたわけだけど……まずは、お疲れ様。各々、何かしら得るものはあったかい?」
その班長であるヒューマンを前に、五人は並んでいた。
「わたくしは、不屈の精神というものがいかに重要か、この目でしかと見てきましたよ」
「ああ……君とフェアリーのところはひどい構成だったね。あのフリーランサーの班長は、尊敬すべき人物だね」
「指示もうまいよー、あの子!それに弱音絶対に吐かないし、班長としてすっごく理想的だった!」
「はは、僕も見たかったなそれは」
元々落ち着いた雰囲気のヒューマンだが、今はさらに物腰穏やかで、洗練された動きになっていた。一番変わったのは彼だというのが、
班長を除く全員の共通意見である。
「班長は、何か学科を習ってきたんですか?」
「ん、ああ、執事って学科をね。プリシアナの学科だけど、刀を主要武器として教えてたんだ。三本刀としては、いつまでも普通科じゃ
格好が付かないだろう?それに、タカチホ以外で刀を教えてるなんて、つい嬉しくてね」
「侍に、くのいちに、執事。なんか、一人だけ異彩を放ってますね。ははは」
一年先輩でもあるため、後輩四人は敬語で話す。そのため、彼等の雰囲気はドラッケンやプリシアナのものより落ち着いている。
「得るものがなかった、なんて人はいなさそうだね。大変結構。それじゃあ、できるならもっと話したいところだけど、ここからは
大切な話だから、みんな静かに聞いてくれ」
ヒューマンの言葉に、五人は居住まいを正す。
「これより、僕達は始原の学園へ向かう。また、闇の生徒会と一戦……いや、何度も刃を交えることになるだろう。その道のりは、
辛く険しいものとなる。だけど、行くのは僕達だけじゃない。プリシアナ、ドラッケン、各学校の精鋭達が、そこに向かう。
フリーランサー、リトルブーケ、彼等の強さは、君達も間近で見ただろう?素質に限って言うなら、君達を大きく上回る人達も、
たくさんいただろう。だけど、君達はそれに負けない力を持っている」
そこで一度言葉を切ると、ヒューマンは一同の顔を見回した。
「君達は、元々の素質としては褒められたものじゃない。だけど、君達には何より大切な才能……努力できるという才能を持っている。
それを一心不乱に続けた結果、君達は素質で上回る者達に、勝るとも劣らない実力を付けている。僕は、その力を信じている。
そして君達も、自身の力を信じていい。恐れず進めば、必ず道は開ける。いいね」
その言葉を噛み締め、一同は頷いた。
「よし、僕からは以上だけど……誰か、何か喋りたいって人はいるかい?」
「……では、失礼して」
セレスティアが、静かに手を上げる。意外な人物の行動に、一行は少し驚いていた。
「セレスティア?どうしたんだい?」
「……皆さん、一番変わった方は、誰だと思いますか?」
突然の質問に、仲間達は首を傾げた。どうにも、その質問の意図は測りかねる。
「班長は、確かに変わりましたよね。より落ち着いた雰囲気になって……ですが、わたくしは、もっと変わった人がいると思います」
そう言うと、セレスティアはフェルパーに目を向けた。
「フェルパーさん」
「ん、何だよ?」
「わたくしは、光術師の他に牧師という学科を学びました。その学科では、光も闇も教えてくれたのです」
「………」
不穏な空気を察し、フェルパーの雰囲気が変わる。
「元々、あなたとクラッズさんには、大きな闇が存在しているのは知っていました。そして、わたくしが牧師として見てきた者達と、
あなたを見比べてみたところ、気付いてしまったんです」
一度言葉を切り、フェルパーとセレスティアは正面から見つめあった。
「消えるどころか、さらに膨れ上がった闇。あなたは……人を殺しましたね」
「えっ!?」
フェアリーが驚いてフェルパーを見つめる。それを意に介さず、フェルパーは頷いた。
「ああ、殺した」
その場の空気が、はっきりと変わった。
「その目つき……人を殺した者は、目つきが変わるんですよ。そう、あなたもです、クラッズさん」
「すごいなあ、セレスティアは……よくわかったね」
フェルパーとクラッズは目配せを交わし、余計な手間がなくなったとでも言いたげに笑った。
「クラッズ、フェルパー。その話、本当なんだね?」
「ええ、班長。確かに、殺しました」
「どうしてですか!?どうして、そんな…!」
言いかけたセレスティアを手で制し、ヒューマンは口を開く。
「僕は言ったはずだよ。復讐など、するべきではない。人として、もっと強くあるべきだ、と」
「班長……つまりそれは、泣き寝入りをしろってことですよね?」
フェルパーではなく、クラッズが口を開く。
「違う。復讐などしても、あとに何が残る。また一つ、この世に怨念を増やすだけだ」
「お言葉ですが、僕はとても清々しい気分です。妹を殺した奴を、この手で殺せたのでね」
「そうか……これは、僕の失敗だな。君達から、目を離すべきではなかった。元より、君達二人は、セレスティアとエルフとは、
質の違う才能の持ち主だった。ある目標に向かって、全てを犠牲にできる……というね。それを良い方へ導ければと思ってたが、
どうやらもう、それは叶わぬ願いらしい」
悲しげに言うと、ヒューマンは首を振った。
「ですから班長、僕達はもう、この班を抜けようと思います」
「ああ、僕も君達を、班に留めることはできない。そして……君達を、野放しにもできない」
突如放たれた殺気に、クラッズとフェルパーは身構えた。
「班長!?」
「セレスティア、フェアリー、下がっていてくれ。班長として、僕は責任を取る義務がある。この二人は、危険だ。殺しに、何の抵抗も
抱いていない」
「……だってさ。フェルパー、どうする」
「どうするもこうするも……既に、戦闘は始まってるらしいぞ」
構えを解かずにフェルパーが言う。さっきまで隣にいたはずのエルフが、いつの間にか姿を消しているのだ。
「あの時と同じだ、クラッズ。こっちは任せろ」
「そんな、フェルパーさん!」
思わず叫んだセレスティアに、フェルパーは耳だけを向けた。
「悪いね、セレスティア。別に、君に迷惑かけるつもりはなかったんだけど……君が言わずとも、なったこと。仕方ない」
「フェルパーさん…!」
周囲を警戒し、エルフの姿がないことを確認すると、フェルパーはクラッズから距離を取った。
確かに、近くにはいるはずだった。しかし、くのいち学科であるエルフは姿を見せず、気配も悟らせない。
注意深く、辺りを見回す。フェアリーとセレスティアは少し離れた所にいるが、セレスティアが不自然に翼を開いているのが気になる。
普通に考えるなら、エルフはその後ろにいるのだろう。だが、相手はそれまで旅を続けた仲間であり、また裏をかくことが得意な
忍の者である。そうなると、セレスティアに協力を仰ぎ、そちらに意識を向けさせるための偽装ともとれる。
―――怪しすぎるせいで、素直に疑えないってのも……厄介なもんだな。
その時、フェアリーが弓を持ち、矢を番えた。直後、矢が気の抜けたような軌道を描き、フェルパーのすぐ脇を飛び抜けた。
それに目を奪われそうになりつつ、フェルパーはその衝動に抗う。その行動は、明らかに陽動のためのものだったからだ。
サクッと、背後で矢の刺さる音がする。その時、フェルパーはその音を隠れ蓑に、エルフが攻撃を仕掛ける可能性に気付いた。
背後に首を巡らせる。だが、直前まで目を離さなかったのが幸いした。
視界の隅で、何かが飛び出すのが見えた。瞬間、フェルパーは自分の足元に巨大な火柱を召喚し、その場を飛びのいた。
咄嗟に弁天丸をかざし、エルフは顔を庇う。水の力を持つ刃は、僅かながらも炎から主人を守った。
「やっぱり、君の後ろだったか。いくらエルフでも、ここに隠れる場所なんて、そう無いもんな」
「……私達は、もう手出ししないから。エルフも仲間だけど、君達も、仲間だから…」
「十分ですよ、フェアリーさん。この状況で、一騎打ちさせてもらえるんですから」
「………」
体勢を整え、エルフが冷たい殺気を放つ。弱い者なら、それだけで戦意を失うほどの殺気を真っ向から受け止めつつ、フェルパーは
首を傾げた。
「……?」
しかし、その疑問を問い質すことはできない。エルフが左手を振り払うと、そこに隠されていた手裏剣が飛び出した。
杖で打ち払う。その時既に、エルフは自分の間合いに踏み込んでいた。
逆手に振られた刀をかわし、戻りを利用して杖を振り払う。瞬間、エルフは足元の砂を蹴り上げ、飛びのいた。
咄嗟に目を細めて防ぎ、飛び込もうとしたエルフへ火球を放つ。彼女は大人しくそれを避け、再び構え直した。
さらに強まる殺気。背筋に冷たい汗が流れる。だがやはり、フェルパーは大きな疑問を感じ続けていた。
一方のクラッズは、ヒューマンにも負けないほどの殺気を放ち、刀へと手をやっていた。
「班長、考え直してくれませんか?いくら僕だって、仲間を、まして恩義ある方を斬りたくはないですよ」
「それは僕も同じだ。だけど、今ここで君を斬らねば、何人の者が斬られるか」
元より、説得などお互いに諦めている。クラッズは村雨を抜き放つと、鞘を地面に放り投げた。
「どうやら、君は生きて帰るつもりがないようだね。鞘を捨てるなんて」
「動きを阻害する物を付けたまま戦う方が、よっぽど勝つ気がないと思いますがね。鞘はあなたを殺してから、ゆっくり拾いますよ」
対するヒューマンは鬼丸国亡。それを下段に構え、クラッズを見据える。
「戦う前に、一つ聞いておく。君にとっての、剣の道とは何だい」
妖刀を逆脇構えに構えながら、クラッズは嘲笑じみた微笑を浮かべる。
「剣術は殺しのための技術。刀は人斬り包丁。勝つことにこそ意味がある」
「なるほど、よくわかった。やはり君は、斬らねばならないようだ」
ヒューマンが飛び込む。首への突きを開いてかわし、流れるように変化した袈裟斬りを屈んでかわす。同時に、クラッズは思い切り
横へ跳び、逆胴を狙う。
間一髪、ヒューマンは下がってそれを避ける。振り向いた瞬間、下から白刃がせり上がった。咄嗟に体を反らすと、鼻先を白刃が
飛び抜けて行った。そしてクラッズの頭上で、刃と峰の向きが入れ換わる。
金属のぶつかり合う音と、激しい火花が散った。辛うじて剣を受けたヒューマンは、それを押し返すように力を込める。クラッズも
それに応え、刀を強く押し返す。
瞬間、ヒューマンは刀を流した。体勢の崩れたクラッズに、刀が風を斬りながら襲い掛かる。
ガツッと、硬質な音が響く。ヒューマンの目が、驚きに見開かれた。
「柄止め…!?」
「せりゃあ!」
柄に食い込んだ刃を、今度はクラッズが投げるように流す。そのまま得意の逆脇構えに直ると、ヒューマンの首を狙う。
しかし、その刀が振られることはなかった。ヒューマンは崩した体勢を立て直そうとせず、そのまま転んだのだ。そして転がって距離を
取り、即座に片膝をつく。そこに追撃しようとした瞬間、ヒューマンは懐に手を突っ込んだ。
「飛び道具、失礼」
ヒューマンの手には、次元銃が握られていた。途端に、クラッズの表情が変わった。
パン、と乾いた音が鳴る。だが、撃ち出された銃弾はクラッズの刀の上を滑り、あらぬ方向へと軌道を変えられていた。
即座に銃を戻し、刀をかざす。それに構わず、クラッズは振り上げた刀を思い切り振り下ろした。
普通の刀ならば、即座に折れるほどの衝撃。ヒューマンは辛うじてそれに耐えたが、クラッズは自分の刀の峰に左肩をぶつけた。
「ぐあっ!?」
「ヒューマン!?」
辛くも寸前で止めていた刃が、ヒューマンの額に食い込む。流れ出す血を見ながら、クラッズは狂気じみた笑顔を浮かべた。
「ははははぁ〜。班長、冗談が過ぎますよぉ?そんな物使われたら、本気で殺したくなるじゃないですかぁ」
「くっ…!な、なんて力だっ…!」
本来ならば、力比べでヒューマンが負けるということはあり得ない。しかし、今のクラッズの力は、まるでバハムーンを相手に
しているような錯覚を覚えるほどのものだった。
分が悪いと判断し、ヒューマンは咄嗟にその場を飛びのくと、真っ向から刀を振り下ろす。それに対し、クラッズは左手を峰に当て、
正面から受け止める構えを見せた。
刃と刃が触れあう。しかし、音はほとんどなかった。
触れた瞬間から刃を引いて衝撃を弱め、勢いが死んだ瞬間、左手を押して自身の刃を覆い被せる。まるで大波が打つように刀が動き、
ヒューマンは容易く体勢を崩された。峰に添えられた左手が動き、ヒューマンの脇腹に刃先が導かれる。そして、クラッズは腕に
力を込めた。
瞬間、ヒューマンは崩れた体勢のまま、クラッズに体当たりを仕掛けた。予想外の攻撃に、今度はクラッズが体勢を崩し、そこに
反撃の刃が迫る。咄嗟に顔を逸らすと、目の前を冷たい殺意が飛び過ぎて行く。
上段からの振り下ろし。それは、クラッズの刀より遥かに速いはずだった。だが、クラッズは片手で刀を振り回し、それを下から
跳ね上げた。ヒューマンは体重を掛け、それを封じ込めにかかる。するとクラッズも力を込め、上下での鍔迫り合いが始まった。
力を抜けば、その瞬間に斬られる。お互いの刀に篭った殺意は、もはやそれが刀に宿ったものではなく、殺意そのものが刃を
象った物であるかのようになっていた。しかし、二人の目は刀ではなく、相手の目を正面から見つめていた。
「狂気に溺れれば、隙も見せるかと思ったが……狂えば狂うほど、動きが洗練されるとはね」
「言ったでしょ?剣術は人殺しの道具、勝ってこその剣術。殺したい相手に、技術を忘れるわけがない」
二人の刀から、力が抜けることはない。互いに隙を窺いつつも、二人は言葉を交わす。
「復讐者は、いつか同じ復讐の刃に倒れる。狂気の刃は、狂気の刃に倒れる。どうしてそれがわからない」
「ご心配なく。それはよくわかってるよ。ただし、狂気の刃も復讐の刃も、倒れるのは相手の方。勝つのは常に僕だ」
「復讐の連鎖は終わらない。君如きが、それを断ち切れるとでも言うのか」
「どっちかが諦めれば終わるよね。なら、向こうに諦めてもらうまでさ」
「それまでに、何人斬るつもりだい」
「さあね。来るなら、何人でも」
ヒューマンが口を開こうとした瞬間、クラッズが蹴りを放つ。咄嗟に金的への直撃を避けると、クラッズの追撃を突きで封じる。
「……憎しみなんて、空しいものだ。それが君に何を与えた?」
二人は距離を取り、それぞれ下段と逆脇構えという、得意の構えに戻った。
「憎しみは、何も生み出しはしない」
「お言葉ですが、あなたの額に付いてる傷は何でしょうね?僕は、その空しい憎しみのおかげで、ここまでの力を手に入れた」
「目的のない強さに、何の意味がある」
「意味なんか必要なのかい?目的がなきゃ、弱者でいなきゃいけないのかい?何より、いくらでも後付けで作れる理由に、意味なんか
あるのかい」
「君は既に復讐を遂げた。それでなぜ、なおも力を求める」
「奪われる側は、もうまっぴらなんでね……禅問答は、そろそろ終いでいいかい?」
クラッズの構えに気迫が篭る。それに対し、ヒューマンも気迫で応じる。
次の一太刀が決着の時だと、お互い口にせずとも、そう感じていた。
剣の道とは何か、クラッズが答えた時、エルフはほんの僅かに口角を持ち上げて笑った。だがすぐに、その笑みは消える。
次々に襲いかかる火球を、エルフは驚くべき俊敏さでかわしていく。詠唱の一瞬の隙を突き、糸を引いて手裏剣を回収すると、
即座にフェルパー目掛けて投げつける。
手裏剣は曲線を描き、フェルパーの首に襲い掛かる。飛んでくる方へ一歩進んで避けた瞬間、エルフが突っ込んでくるのが見えた。
左腕への一閃。杖から手を離してかわし、片手での突きを繰り出す。エルフは体を開いてかわし、目潰しを放った。それを左手で
打ち払い、不意打ちで蹴りを入れるも、エルフはそれを肘で叩き落とした。
「うあっつ!このっ…!」
「あっ…」
打ち落とされた足で、フェルパーは膝目掛けて前蹴りを繰り出した。それは予測できなかったらしく、エルフは慌てて飛び退いた。
おかげで威力は殺されていたが、そうでなければ膝を折られていたところだった。
距離を取り、しばし睨み合う。エルフは既に手裏剣を引き戻しており、フェルパーはいつでも詠唱できる準備を整えている。
互いに、距離があることの優位性はない。そのまま相手の出方を窺うかと思われたエルフだが、突然彼女は視線を外した。
自然な動作で懐に手を入れ、財布を掴み出す。そして、その中身を無造作に掴むと、空中へとばら撒いた。
貨幣に目が引き付けられそうになり、フェルパーはその危険性に気付いた。
意識を集中し、視覚と聴覚以外の感覚を全て遮断する。
エルフはじっと、こちらを見つめている。打ち上げられた硬貨が、放物線を描いて落下を始めた。
まだ動きはない。ぱす、ぱすんと砂地に硬貨が落ちる音が聞こえ始めた。
いくつもの硬貨が、辺りに降り注ぐ。その内の数枚が、フェルパーの頭を叩き、落ちる。チャリンと、硬貨同士がぶつかる音が響く。
上から、一枚の硬貨が降ってくる。エルフは動かない。目の前を硬貨が通過し、エルフの姿を一瞬隠す。
ザッと、砂を蹴る音。エルフの姿が消えている。落ちる硬貨の陰から、エルフの足が覗いた。
再び、砂を蹴る音。思ったよりも近い。だが今動けば、確実に追撃を受ける。
全神経を聴覚に集中する。荒い息遣い。既に間合いに入られていた。殺気が迫る。全身に鳥肌が立つ。
風を斬る音が聞こえた。ほぼそれと同時に、フェルパーは思い切り体を反らした。
目の前の空気を切り裂き、白刃が通過する。即座に左足を引いて体勢を立て直すと、フェルパーはエルフの顔に右手で棒尻を突き出した。
思わぬ反撃にも、エルフは咄嗟に左へ打ち払い、その突きをかわした。
直後、棒先が唸りを上げて襲い掛かった。エルフが打ち払った力がそのまま攻撃力となり、彼女の側頭部に迫る。
ガツッと鈍い音が鳴り、エルフが吹っ飛んだ。しかし、フェルパーの顔には苦々しい表情が浮かんでいる。
「ちっ、あれをかわすかよ…!」
吹っ飛んだエルフは受け身を取り、即座に体勢を立て直す。攻撃を避けきれないと判断し、彼女は自分から飛んで衝撃を和らげたのだ。
一瞬、気を抜いた瞬間を、エルフは逃さなかった。手裏剣を投擲し、それを杖で受けた瞬間、既にエルフは目の前に立っていた。
鼻先が触れ合いそうな、異常な近距離。そこから振られた刀を杖で受けると、エルフが左手の指先を揃えた。その意図に気付き、
フェルパーはエルフの胸の谷間に拳を押し当てた。
「ふっ!」
「ぜあぁ!」
一瞬、二人の体が捩じれたように見えた。直後、エルフが激しく後方に吹っ飛ばされた。
「くっ…!」
「ぐぅおっ…!」
地面を転がり、ばねのように体を跳ねあげて立ち上がるエルフ。しかし、そこに追撃はない。
一方のフェルパーは、拳を突き出した姿勢で荒い息をついていた。脇腹には血が滲み出し、その傷が浅くはないことを物語っている。
エルフの貫き手は、もう少しで内臓まで達するところだった。ほんの一瞬の差で、フェルパーの至近からの正拳が、エルフを
吹っ飛ばしたのだ。互いに、打ち込む距離は全くなかったが、己の体を武器とする二人にとって、それは大した問題ではなかった。
血を流し、それでも呼吸を整えるフェルパー。普通ならば、獲物を狩る狩人が如く、エルフは即座にとどめを刺しただろう。
それをしないのは、フェルパーによって胸骨を砕かれていたためだった。表情こそいつもと変わらぬ無表情だが、その肉体が受けた傷は
決して浅くない。とどめを刺さないのではなく、刺せないのだ。
「……強いな」
「………」
フェルパーの言葉に、エルフは答えない。ただ、その身に漲らせる殺気を、さらに鋭く発するのみだった。それが再び、フェルパーに
大きな疑問を抱かせる。
別に、仲間を本気で殺しに来ていることには、何の疑問もない。くのいちである彼女にとって、殺しとは日常生活の一部のような
ものである。これといって、特別な行動ではない。
だからこそ、この鋭い殺気には疑問が残った。まるで呼吸するように相手を殺せるエルフが、なぜこうも殺しに特別な感情を抱くのか。
だが、それを考えている余裕はない。胸骨が砕けているにもかかわらず、エルフは再び戦いの構えを取った。
エルフが地を蹴る。それを近づけまいとするように、フェルパーは紅蓮の炎で迎え撃った。
構え、相手を見据えたまま、両者は睨み合っていた。その永遠に続くかと思われる時間を破ったのは、硬貨のぶつかり合う音だった。
瞬間、二人は地を蹴った。神速の刃は風すら斬り裂き、両者の眼前で激しく火花を散らした。
そのまま鍔迫り合いに移りながら、二人は互いを睨みつける。
「殺しへの抵抗は、ないみたいだね」
ヒューマンの言葉に、クラッズは笑みを浮かべる。
「殺しに来てる相手に、殺しを迷ってどうするのさ」
「戦闘不能に追い込めれば、それで済む話じゃないのかい」
「殺しに来てる相手を、どうしてわざわざ生かす必要があるのさ。相手が殺しに来る以上、こっちも殺しにかかるよ」
「それが、君にとって正しい剣の道か!?」
「理想の押し付けは鬱陶しいんだよ!清く正しく美しく、なんて、一体何の役に立つんだい!?モノノケが自重してくれるとでも!?」
「人とモノノケは違う!」
「だから何だって言うんだよ!僕は、班長の言うことには賛同できない!僕の妹を殺して、逃げて、今までのうのうと生きてた奴等を
許すなんて、絶対にごめんだね!」
結局のところ、根底はそこにあった。復讐を認めないヒューマンと、そのために生きてきたクラッズの間には、埋まることのない溝が
存在していた。
「それとて、不幸な事故だろう!?殺す必要がどこにあった!?」
「不幸な事故、ね……暴発が事故にしろ、あいつらが逃げなきゃ妹は死ななかった!己可愛さにそこから逃げて、妹を死なせるような
奴を、許せるもんか!班長は、フェアリーさんを誰かに殺されても、不幸な事故だ、復讐なんて馬鹿げてるって、許せるのかい!?」
その言葉に、ヒューマンではなくフェアリーがうろたえた。もし、彼が肯定すれば、それはあまりに悲しい。だが否定すれば、
主張が一貫性を欠くことになってしまう。そうなれば、自分のせいでヒューマンに迷惑をかけたように感じてしまう。
「うぅ……ヒュ、ヒューマン、私はっ…!」
「いい。言わないでくれ、フェアリー」
クラッズから目を離さず、強まる力にやや押されつつも、ヒューマンはそう声を掛けた。
「……卑怯だな、君は」
「卑怯?あんたがその主張を続けるなら、いずれ直面する可能性のある問題でしょ?そこから目を逸らし続けて、ただただ机上の空論を
振りかざす方が、よっぽど臆病で卑劣だと思うけどね」
「フェアリーを巻き込むことがだよ。君は、侍としての心も忘れてしまったのか…!?」
「冒険者に、武士道なんて似合わない……不要なものは、全部捨てるよ。それがたとえ、かけがえのない大きな恩義でもねっ!」
クラッズが左手を離した。ヒューマンの刀を片手で抑え、その手は脇差へと伸びる。
シュッと鞘走る音が響き、同時にヒューマンの悲鳴が上がった。
「ぐああっ!!」
「ヒューマン!」
逆手で抜き打ちに斬り上げた脇差は、ヒューマンの右頬から目を通り、眉にかけてを斬り裂いた。辛うじて目を瞑り、失明は
免れたものの、そこに大きな隙ができた。それを逃すはずもなく、クラッズは右手の刀を振り上げた。
「ぐぅぅ……でやぁ!」
「うあっ!?」
怯みながらも、ヒューマンは迫るクラッズに向け、思い切り刀を振り回した。思わぬ反撃に反応が間に合わず、クラッズの左の頬が
ざっくりと斬り裂かれた。
両者は一歩下がり、お互いの様子を探る。深手こそ負ったものの、その気迫も殺意も、全く衰えてはいない。
ややあって、不意にヒューマンが殺気を消した。
「ん…?」
構えを解き、ヒューマンは刀を鞘に収めた。予想もしない行動に、クラッズは出方を悩んでいた。
「……行け」
「え?」
「この傷は、君の免許皆伝の証。その傷は、僕からの破門の証。もう僕は、君の行く手を遮ったりはしない……エルフ!」
呼ばれたエルフは、即座に戦闘を中止し、ヒューマンの隣へと駆け戻った。突然のことに、フェルパーも呆気に取られてそれを見ている。
「班長……一体、どういう風の吹き回しです?」
「僕は、君の言葉を認めることはできない。だが、そこに一理ないわけでもない。それに君の剣は、思ったほど分別を知らぬわけでも
なさそうだからね」
戦闘は終わったと判断し、セレスティアが遠慮がちにエルフに近づき、ヒールを唱える。
「君が、その道を正しいと信じるなら、行ってみるといい。ただし、君の選んだ道は……誰一人、歩ききった者はいない」
フェルパーも戦闘終了とみなし、自身の傷にヒールを唱えた。
「それでも君は、その道を進むかい?」
「ええ……引き返す気は、ありませんよ」
投げ捨てられた鞘を拾い、フェルパーはそれをクラッズに渡す。納まるものを得た村雨は、ようやく彼の腰に落ち着いた。
「餞別もないが、ここでお別れだ。フェルパー、クラッズ、達者でな」
二人は一度、互いに目配せを交わした。そして二人並ぶと、揃って頭を下げる。
「班長……お世話に、なりました」
声を揃えて言い、顔を上げる。続いて、二人はそれぞれ話すべき相手へと顔を向けた。
「セレスティア、後衛を君一人にしちゃうけど……悪いな」
「いえ……ついこの前まで、前衛一人の班にいましたからね。むしろ、気楽なものですよ」
クラッズは、ずっと黙っているエルフに顔を向けた。
「エルフ、入学した時から一緒だったけど、お別れだね。刀が一本減るけど、普通は三本も差さないから、ちょうどいいよね。はは」
「………」
「君は相変わらず無口だなあ……みんなと、仲良くね」
言い終えると、クラッズはフェルパーに視線を送る。フェルパーは黙って頷くと、杖を掲げ、意識を集中した。
「それでは、これにて」
クラッズの言葉だけを残し、二人はどこかへ転移して行った。それを見送ると、セレスティアがおずおずと口を開いた。
「あの、班長……本当に、クラッズさんは大丈夫でしょうか?」
「不安かい?これでも僕は、名伯楽って呼ばれてるんだ。それなりに人を見る目はあるつもりだよ」
「あ、いえ、疑うわけではないのですが…」
言い淀むセレスティアに、ヒューマンは優しく微笑んだ。
「善と悪……僕は彼等を、善に導きたかった。それは、善というのが易しい道だからだよ。この世に、悪の栄えたためしはない。
でもそれは、互いの善と善がぶつかりあい、負けた相手を悪としていたからだよ。つまり、悪とは少数派、苦難の道。だけど、
彼等ならきっと、その道も歩いて行ける」
「で、でもヒューマン、闇の生徒会とか、勧誘されたら…」
フェアリーが言うと、ヒューマンは笑った。
「ははは、それはないよ。あの二人は、光が眩しすぎて闇に行ったわけじゃない。自らの意思で光を拒絶し、闇に染まっていったんだ。
闇から光への道は易しい。そこに至る道筋が見えるから。だけど、光から闇へは、難しい。光に慣れた目では、道が見えなくなるから。
でも、あの二人は外道に堕ちてはいない。危ういところではあったろうけど、邪道は邪道なりに、きちんと道を歩んでる。だから、
あの二人は心配ないさ」
その時、ヒューマンはエルフが悲しげな表情をしていることに気付いた。彼女が表情を表に出したのは、狩人からくのいちに
転科して以来のことだった。
「……どうしたんだい、エルフ?」
「……此方は、あの方の刃と、闇と、なるつもりだったのです」
声だけは無表情のまま、エルフはぽつりぽつりと語りだした
「心に闇を潜め、一途に気高く、美しく……あの方のためなればこそ、此方は殺しの技を磨き、並び称される者となり……けれど、
僅か離れている間に、あの方のほうから近づいてくれたと思ったら、もう二度と、手の届かぬ所へ行ってしまわれた…」
そこでようやく、彼等はエルフの本心に気付いた。
「そうか……君は、クラッズが…」
ヒューマンが言いかけると、エルフは静かに首を振った。
「闇に生きる者なれば、同じ闇より、影をより濃く映し出す炎の方が、似合い……これで此方も、晴れてまことのくのいちとして、
修行に励むことができます」
言い終えた時、既にエルフの顔は無表情に戻っていた。
「討ち取るは、闇の生徒会。目指すは、敵の本丸。相違、ありませぬね?」
「ああ。それを成し遂げるのが、僕達の務め。さあ、行こうか。伝統あるドラッケン、新進気鋭のプリシアナ、それらも参戦するんだ。
誇りあるタカチホの生徒として、後れを取るわけにはいかないぞ!」
刃を交え、語り合い、互いに否定しつつも、認め合った関係。大切な友、入学以来の盟友、想い人との別れ。
大切なものを失えど、彼等が歩みを止めることはない。己が信じる道の上、彼等は強い意志の元、力強く一歩を踏み出した。
その日、各校の代表とも言えるパーティから、二人ずつの欠員が出た。フリーランサー、リトルブーケ、六傑衆改め、四天王が中央の
大陸に向かう中、彼等はその時々、あらゆる場所で見かけられた。しかしその動きを掴むことは、各校混成のパーティであるだけに、
容易ではない。
ただ、気の赴くままに各所を巡り、探索し、そして今、彼等の行方は杳として知れない。
以上、投下終了。
次回はそんなに長くなりません。エピローグ的なものなので、少し日を置いてから投下します。
それではこの辺で。
乙です!
ドラッケンのバトルが好きだなぁ。
ブラフから奇襲かまして三十六計しかも去り際にべろチュウ。ナイス。
では最後、投下します。
特に注意とエロ分はなし。楽しんでいただければ幸いです。
始原の学園跡に程近い、忘れられた荒野。そこに美しい歌声と、激しい戦闘の音が響き渡る。
魔侯爵キサッズドの魔曲砲を受け、プリシアナの生徒達が吹っ飛ぶ。だが、彼女達は即座に受け身を取り、その一撃を耐え抜いていた。
「いったぁーい!こんの、ぐるぐる頭ぁ!倍返ししてやるー!」
「ヒュムちゃん!うにゃにゃ!いちごミルクいく!?」
「今度は、わたくし達の番ですよ!あの縦ロール、ぶった切ってやりましょう!」
「……じゃ、回復は任せてくれ」
暗い闇の世界でも、変わらず華やかで騒がしいリトルブーケ。勝手気ままに戦っている彼女達だが、ふとヒューマンが寂しげな表情を
浮かべる。
「にしても……ディア君とノームいてくれたら、少しは楽だったかな…」
その呟きに、エルフが小さく笑った。
「いや……今でも、十分楽になってるさ」
しかし、そこに思いを馳せる暇はない。四人はそれぞれに戦闘態勢を整え、再び自由気ままに戦闘を開始した。
背中は、仲間の誰かが守る。そんな好き勝手な、しかし厚い信頼を胸に秘めながら。
灼熱の溶岩が流れる、礼節を灼く洞窟。そこの最奥では、大地を揺らすほどの衝撃と轟音が響いていた。
魔男爵ゴフォメドーが腕を振り回し、タカチホの生徒を狙う。エルフはその腕を蹴って空中に飛び上がり、後方に宙返りしつつ
仲間の元へと戻った。
「エルフさん、大丈夫ですか!?」
「……強い」
「お腹壊しててあれでしょ!?調子良かったら、どれだけの力…!」
「まったく。でも、力では負けても、今の君達は十分に対抗できる力を持ってる。自分と仲間を、信じるんだ」
顔に付いた大きな傷。それは、六傑衆が四天王に、三本刀が二本刀へと減った時に付いた傷だった。そこへ無意識に手をやりながら、
ヒューマンは仲間を励ます。そこから連想されたのか、セレスティアが暗い声で呟いた。
「回復は任せてください。ですが……隣が少し、寂しいですね」
「ああ……隣は、ね」
含みある声で言うと、ヒューマンは笑みを浮かべた。そして再び、彼等は強大な相手に正面から向かって行く。
信頼する班長の言葉に、信頼できる仲間達。その繋がりがある限り、彼等は決して負けないと信じていた。
入るものを全て凍りつかせる冷気を纏う、信義も凍る氷窟。その氷すら溶かしかねないほどの、戦闘の熱気。そしていくつもの魔法が
炸裂する。
守護防壁を展開していたにもかかわらず、魔王エリカンテットの魔法は、ドラッケンの生徒達を確実に追い込んでいた。
「うあっ……ふーっ、きれいな花には棘があるとは聞くけれど、この冷たさ、苛烈さ、美しさ!たまらないね!」
「黙ってください。気が散ります」
「ああもう、君達は……リーダー、どうする!?」
「あと一回、守護防壁は機能する。ノーム、マジカシードを。フェアリーは回復、エルフは真面目に戦って」
リーダーの指示に、彼等は忠実に従う。フリーランサーの強さの元である連携は、どこにいようと崩れはしない。
「了解。攻め手は減るけど……回復はドワーフの役目だったのになあ。バハムーンも真面目だったしさ」
思わずフェアリーがそう漏らすと、クラッズは一瞬、動きを止めた。
「わふちゃん達は、今自分が為すべきことをしてる……離れてても、変わんないよ」
再び魔法が襲い掛かり、それを受け止めた瞬間、守護防壁は消えた。しかし、彼等は決して焦らず、個々の為すべき役割をこなす。
仲間をまとめるリーダーへの信頼。それに必ず応えるという仲間への信頼。相手が魔王であろうと、それは決して揺らぐことがなかった。
阻止すべき災厄、アゴラモートの復活。始原の学園へ乗り込んだ生徒達の目的はそこに集約し、そのために全員が力を合わせてきた。
しかし、それは為されてしまった。結果で言うならば、彼等の努力は徒労に終わっていた。
この世の終わりすらもたらす、圧倒的な滅びの力。彼等だけであれば、あるいは諦めていたかもしれない。
だが、そこにいた誰もが諦めなかった。ドラッケン、プリシアナ、タカチホ、そして闇の生徒会までもが力を合わせ、彼等はその強大な
力へ立ち向かった。
「ヒュムちゃん、エルフ!ここは任せて!にゃん!」
「現リーダーに、元リーダー、頼みますよ!」
他の生徒達に混じり、リトルブーケのフェルパーとセレスティアは無数に生み出されるモンスターと対峙した。するとそこに、
タカチホの生徒が並ぶ。
「わたくし達も、ご一緒しますよ」
「ヒューマン、エルフ、頑張ってよ!」
四天王のフェアリーにセレスティア。アゴラモートとの戦いを二本の刀に託し、二人は手下の掃討に回った。
「リーダー、フェアリー、僕達も援護に回ります」
「ああ、できることならリーダーと一緒にいたいよ……どうして君なんかと」
それはフリーランサーも同じだった。彼等の行動は、決してリーダーの指示ではない。しかしそれが最善だということは、長い付き合いの
中で、自然と把握できていた。
増え続ける手下達。見る間に力を取り戻すアゴラモート。そして、未来を自分達に託し、モンスターと戦う仲間達。
それらを見ながら、フリーランサー、リトルブーケ、二本刀の六人は武器を構えた。
「ははは。これじゃまるで、混成パーティ作ったときみたいだな、リーダー」
「実際、知った顔も二人。でも今度こそ、三本……いや、二本刀の実力、この目で見られるね」
「あなたの話は、セレスティアとフェアリーから聞いたよ。その実力、僕も楽しみにしてる」
「……負けない」
「おっとぉー、私達だって負けないからねー!君達全員、まとめて守ってやるんだからー!」
「負けない相手は、アゴラモートか隣の仲間か。主役は任せる、援護は任せてくれ!」
これまでにない強大な相手に、さすがの彼等も、絶対に勝てるという確証は持てなかった。だからと言って、逃げることはできない。
「もう少し……手数が、あればなあ」
思わずフェアリーが呟く。それは戦いを前に脱退してしまった仲間達に対する言葉だったが、各パーティのリーダーは、小さく笑った。
「いや、これで十分さ」
「むしろ、助かってるかもね」
「僕達は、それに応えなければね」
リーダー達は仲間の顔を見回し、そして同時に叫んだ。
「この戦い、勝つぞ!」
その言葉を合図に、彼等はアゴラモートに向かって突進した。後に、伝説に残る戦いの火蓋が、切って落とされた。
それに気付いていたのは、僅かな者達。リーダー達に加え、幾人かが気付いていたにすぎない。
そこに至るまでの間に、既にモンスターは大量に生まれており、それらはアゴラモートを死守することを使命としていた。それがなぜ、
戦いが始まったというのに、一匹として部屋へ侵入しないのか。
彼等の戦いが始まるのと、ほぼ時を同じくして、部屋の前では激しい戦いの音がこだましていた。
一気に扉へ迫ったモンスター達が、一瞬にして両断される。辛うじて耐え抜いたモンスターも、続く脇差での一撃に、首を落とされた。
「これでも、タカチホ義塾の元六傑衆にして三本刀が一人。仲間に、手出しはさせない」
頬の傷を誇らしげに見せ、部屋の前に立ち塞がるクラッズ。そこに新たなモンスターが迫るが、突然閃光が走ったかと思うと、
モンスター達は凄まじい業火にその身を焼かれていた。
「後ろに控えまするは、同じく元六傑衆の炎術師にして格闘家。この扉、そう簡単には開けさせないぜ」
両側からモンスターが迫る。すると右手に、大きな影が立ち塞がった。
「行かせないぞー!お前等なんか、叩き潰して伸ばして捏ねて、ケーキの材料にしてやるー!」
どちらかというと仲間にとって物騒な台詞を述べ、バハムーンは手に持った棒でモンスターを片っ端から弾き飛ばす。そこに、遠距離から
モンスターが魔法を放つ。バハムーンはそれを盾で防ぐが、モンスターは更なる詠唱に入った。
瞬間、闇に光が閃いた。
「ここを切れば、杖は持てない。ここを切れば、立ち上がれない。そしてここを切れば…」
腕の腱、足の腱と続けざまに斬られ、モンスターは転倒した。その首筋に、ドワーフはナイフを押し当て、にやりと笑った。
「出血は、死ぬまで止まらない!」
ナイフが一閃し、血が噴き上がる。その返り血を浴びながら、ドワーフはバハムーンにヒールを唱える。
「ドワーフ、助かったぞー!」
「手間掛けさせないでよ、このトカゲ。ま、気ぃ引いてくれたおかげで、接近楽だったけどね」
「これこそ、フリーランサーの戦い方だな!」
まだまだ敵は多い。折しも扉の左手側から、大量のモンスターが突進してくるのが見えたが、その足元にいくつもの丸いものが転がった。
直後、凄まじい爆発音が響き、先頭にいたモンスター達は跡形もなく吹き飛ばされていた。さらにその一団の後方から、いくつかの
悲鳴が上がる。
「不用心もいいところね。前だけ見てちゃ、足をすくわれるどころか、背中を斬られるっていうのに」
いつの間にか、そこにはノームが回り込んでいた。慌ててそちらに向き直った瞬間、鋭く風を切る音が辺りに響いた。
二本の鞭が、モンスターへ襲い掛かる。その動きはまるで生きているようであり、激しく振り回されているにもかかわらず、鞭同士が
絡むこともない。
「………」
ディアボロスが鞭を引くと、それはあっという間に手元へ戻る。それを輪のようにして持ち、ディアボロスは更なるステップを踏む。
疾風の踊りを踊ると、ディアボロスは再び身構えた。その効果を受けた仲間達も、攻撃の構えを見せる。
誰が言うともなく、彼等はこの地に来ていた。誰の目にも留まらず、ほとんどの者に気付かれず、それでも彼等は、元の仲間達を
陰でずっと助けてきたのだ。
「ノーム、左翼を殲滅する!手伝ってくれ!」
「うん。フェルパー、行くよ!」
フェルパーが意識を集中する間、ノームはその隣でありとあらゆる道具を駆使し、敵の接近を妨げる。
「いっくぞぉ…!吹き飛べ、ノヴァ!!」
凄まじい爆発の起こる中、バハムーンはクラッズの隣に駆け寄った。
「兄ちゃん、ここは私達で守ろう!」
「よし!バハムーン、頼むよ!」
仲間達の目の届かないところから扉に迫るモンスター。それらを、二人は全力で排除する。
「と、ずいぶん来たな……バハムーン!」
「任せろー!しっかり真似してやるー!」
「行っくよー!白刃一閃!」
数え切れないほどの敵の群れ。いくら彼等でも、それを無傷で捌き切ることは不可能だった。
そんな仲間達を、ディアボロスとドワーフがしっかりと支える。
「メタヒーラス!みんな、わふっと気合入れてー!」
「……行け」
ドワーフが回復を一手に引き受け、仲間の傷を癒す。ディアボロスは活力の踊りで、仲間の減った魔力を回復する。もちろん、
それだけではなく、戦闘となれば二人とも必要十分な実力を示す。
「それにしても、中のみんなは大丈夫かなー?できれば手伝いたいところだけど…」
「大丈夫だよ、班長達なら。それに今更、どの面下げて会えばいいんだか」
「ははは、それもそうだよな。俺達はこうやって、陰で支えてるのが合ってるよ」
「そうだよなー。誰にも見てもらえなくったって、ちゃんと頑張ればそれでいいよなー」
「力を付けるにも、この状況は最高。まだまだ、殺す相手は尽きないしね」
「……守るべきものを、守る。それだけだ」
そして再び、彼等は果てなき戦いへと身を投じる。その顔に、笑みすら浮かべながら。
世界を救った、三校の英雄達。彼等の戦いは、その後もずっと語り継がれる。
だが、その陰で戦い続けた、もう一つの三校の英雄達は、誰にもその活躍を知られることはない。
実際、彼等は英雄かと言われれば、疑問符がつく。自身のためだけに力を振るい、他者や世界より自分達だけに重点を置き、
欲望に忠実な者達。彼等の脱退の理由を知る者であれば、その評価はなおさら揺るぎないものとなる。
それでも、彼等を英雄と評する者はいる。それは皮肉にも、世界を救った英雄達の中の、さらに一握りの者達。
復讐者たるクラッズとフェルパー。時に目的のため、手段を選ばないドワーフ。悪魔のように歪んだ善意を持つディアボロス。
他者を冷酷に突き離すノーム。唯一、子供のように純粋な心を持つバハムーン。
そんな六人が英雄であるとは、誰も思わないだろう。それでも、その一握りの者達は、彼等を英雄と称する。
「彼等は、元のパーティよりも強い結束を持ってしまった。ただ、それだけのこと」
それが、彼等の共通意見だった。そして彼等は、言葉を続ける。
「本当は彼等こそ、最も早くに学校を超えた結束を育んだ者達なのかもしれないね」
今日も彼等は、どこかで迷宮探索を続けている。ただ強くなるため、ただ知的好奇心を満たすため、ただ知識を深めるため、
ただ愛する者といたいがため。
どこにいるかは気分次第。何をするかも気分次第。足の向くまま気の向くまま、突然どこかに現れる。
各校の代表と称されながら、その地位を捨てた者達。そんな彼等を、落伍者と称する者もいる。利己主義だと言う者もいる。あるいは、
冒険者とは元々そんなものだと語る者もいる。だが、そんな日陰者だということは、本人達が一番知っている。
圧倒的な技量と力を持ち、しかし表だって動くことはなく、常に日陰を行く者達。後ろ指を指されようと、間違っていると言われようと、
信じた道だけを、仲間と共に歩き続ける。その果てに見えるものは、果たして光か、浮かぶことのない闇か。
彼等は今も闇の中、道を見失わずに歩き続けている。
以上、投下終了。
長らくのお付き合い、ありがとうございました。
それではこの辺で。
お疲れ様でした!面白かったです!
GJ!!
とっても面白かったよ!
お疲れ様でした!
135 :
名無しさん@ピンキー:2011/03/06(日) 23:14:38.93 ID:WiSoOZ3A
保守
亀レスだがGJ。
相変わらずアツイバトル描写。
終わり方もイイ。
ともかく、お疲れさまでした。
137 :
名無しさん@ピンキー:2011/03/17(木) 17:58:48.59 ID:ye/BIIuy
保守
誰かイワナガ先生のハードエロを書いてくれる兵は居らんかのう・・・
そこでウヅメ先生じゃなくてイワナガ先生を選ぶお前に脱帽
実は俺もイワナガ先生ドストライクです。
でもエロにしにくいお人ではある。
そこでニーナの名台詞の出番なわけだな
「だってバb(ry」
イワナガ先生は選んだ学校によっては出ないんだ
悔しいだろうが仕方ないんだ
143 :
名無しさん@ピンキー:2011/03/24(木) 18:04:23.48 ID:gIAQamKD
イワナガ先生まだあってないな
シュトレンに彼女いることをしって何か書こうか考え中
久々に来たら混成PTの話終わってた
エピローグで流れ星の英雄思い出して胸が苦しい(;ω;`
後れ馳せながらお疲れ様でした
145 :
名無しさん@ピンキー:2011/03/25(金) 17:44:48.86 ID:1ob/PmHc
昨日考えてたシュトレンの話が完成したので投下してもよろしい?
こういうの書くのは初めてだから一応聞いてみる
ダメな理由がない
147 :
マルメンライト:2011/03/25(金) 19:52:48.33 ID:1ob/PmHc
おk、んでは投下する
諸注意としては、オリキャラ出てます、ついでに百合です。
いちおう、この投稿の間はこの名前でとおすのでよろしくお願いいたします。
148 :
マルメンライト:2011/03/25(金) 19:56:39.10 ID:1ob/PmHc
「傷」
―――
「というわけで、このクエストを受けるぞクラティウス」
ドラッケン学園の図書館、ある意味、この図書室の主ともいうべきディアボロスの少女キルシュトルテは専用に用意された机の上に一枚の紙を置き、
腕を組みながら反対側に座るフェルパーのクラティウスにそう言い放った。
「わかりました、さっそく御用意をさせていただきます」
「うむ」
クラティウスの言葉に満足そうにうなづいたキルシュトルテは紅茶を優雅に飲みながらこちらを向く。
「聞いておったか、シュトレン」
「聞いてるよ〜、とは言ってもボクは特に用意するようなものは無いしね〜」
確認のためだろう、ボクにそう聞いてきた姫様に私はいつもの言葉を返す。
「ふむ、まぁそなたはいざとなれば武器等無くても戦えるそうじゃからな」
「まぁね〜」
ボクが専攻している学科はくのいち、一応、刀なんかを使って戦うのが仕事だが、モンスターの息の根を止めるだけなら別に刀は無くてもどうにでもなる。
それに食料や水分の問題も彼女たちと冒険する分には用意する必要はない、どうせ、クラティウスが用意してくれるからだ。
「まぁ、でも、姫様がまた、別の人の邪魔をしろっていうんなら別だけどね」
以前、入ってきたばかりの転入生たちが受けたクエストでのことを思い出す。
まさか、6人相手に戦うことになるとは思わなかった。
あの時は適当に相手してから逃げたけど。
「安心せい、わらわにしてみればたいしたクエストではない、1名ほどパーティの増員を行う予定じゃが、それ以外はピクニックの様なものじゃ」
「ふ〜ん、でその人って誰?」
姫様がボクたちの正式なパーティに増員を行うことはそう多くない、あんまり人が増えると自分が目立たない、そんな理由でボクたちはずっと3人で組んできたのだ、そんな姫様がわざわざパーティに加えたくなったというその人物に私は少し興味をひかれていた。
「予定だとそろそろ来るはずじゃが・・・遅いのう?」
「遅れました〜〜〜!」
と、図書室のドアがガラリと大きな音を立て開き、焦った表情の黒髪の少女が入ってきて・・・
「きゃあっ!」
こけた、白だった。
白の子もとい、黒髪の少女はエリスと名乗った
「見ての通り、種族はヒューリンで、学科のほうはガンナーとパティシエを専攻してます」
「へ〜姫様にしては珍しい人を選んだね〜」
専攻の内容から考えて、彼女は完全な戦闘要員だ、しかも敵を排除する、という意味での。
クエストをある意味、遊びとして見ている姫様にしてはずいぶんと珍しい。
「うむ、少し前に、どこのパーティにも所属していないガンナーがいると聞いてな、腕前もなかなかであった故、もったいないと思ってな」
「あはは、そこまでの腕じゃないですけど、脚は引っ張らないように頑張ります」
姫様の言葉に苦笑いしながらそう答える彼女、だが、その表情に一瞬陰りの様なものが混ざる。
―ん?―
「ガンナーは、大勢に囲まれても対応できる技があるという、そなたの働きに期待しておるぞ、今まではクラティウス一人にまかせっきりじゃったからな」
そういいながら姫様は傍らに控えるメイドをみる。
「姫様、私のことを思っていただいていたなんて・・・」
「よい、そなたのためを思えば・・・」
始まった、姫様とクラティウスのストロベリータイム
私とエリスを置いて、主従は二人の空間を展開しはじめる。
「えっと〜・・・」
「あ〜、しばらくすれば、二人の世界から帰ってくるからそれまで、適当に待ってようよ」
「あ、はい」
「んじゃ、これからよろしくね」
「あ、よろしくお願いします・・・」
握手をしようとして、お互いに手を伸ばしたところで彼女が止まる。
ああ、忘れてた。
「はじめまして、ボクはシュトレン、見ての通りクラッズ、専攻はくのいちね、よろしくねエリス」
あらためて、名乗ってからもう一度手を出す。
「…よろしくお願いしますシュトレンさん」
そのとき彼女はなぜか一瞬悲しそうな顔をした気がした。
それこそ、気のせいかと思うくらいに。
149 :
マルメンライト:2011/03/25(金) 20:12:34.53 ID:1ob/PmHc
「傷」その2
―――
約束の雪原、雪の降りしきる白銀の世界、ちかごろそこでクマのような魔獣が現れ、人を襲っているらしい。
それを倒すだけだから確かに簡単なクエストには間違いない、魔獣を探す道中でのエリスの活躍あって探索は順調に進む。
先ほどまでのおとなしそうな気配が消え、右手に構えた拳銃で、モンスターを打ち抜いていく。
「うむ、やはりなかなかの腕じゃな、まぁわらわには及ばんが」
実際に彼女は強かった、ガンナーではあるが彼女の希望で、前線に立ちモンスターを引き付け、確実にモンスターの体に銃弾を撃ち込んでいく。
腕、脚、そして、モンスターが機動力を失ったところで、もう片手に持ったナイフをモンスターに突き立てる。
ガンナーとしては奇妙な戦い方ではあったが、別段気にするほどでもない。
戦いの最中、何度か彼女が何かを恐れるように呼吸を乱していることが気になったが、まだ慣れないパーティで緊張しているのだろう、そう考えていた。
だが、それが違うということを知るのは、クエストを終えたあとでのことだった。
「お疲れ様です、姫様」
「うむ、苦しゅうないぞ、クラティウス」
目的のモンスターを軽々と撃退し、いったんの休憩をとる
「でも、なんだかんだ、かかっちゃったね〜、今日はスノードロップで泊まって明日学校に帰る形かな」
日はだいぶ傾いており、このまま学園に帰るには少し遅い、おそらく、途中で完全に夜になってしまうだろう。
「よし、ならば、今日は早く、スノードロップに帰ろう、早いとこ暖を取りたいのじゃ〜」
そう言って姫様が立ち上がった瞬間だった。
「グロォォォ!!」
「何!?」
死んだと思っていたはずの魔獣が再び立ち上がり、姫様に襲いかかる。
不意を打たれた形になり、クラティウスの反応が遅れる、だから、ボクが動くほうが先になった。
「ごめん姫様!」
「なに、っきゃん!?」
一瞬で間合いを詰め、姫様の頭を踏み台にして、魔獣に飛びかかる。
狙いは首、私は走り寄った勢いそのままに体ごとぶつかり魔獣の喉にナイフを突き刺す。
「ガァァァァァ!!!」
絶叫と同時に魔獣が放った火球は私の髪を少し燃やしてはるか後方へ飛んでいく。
少し、遅れていたら火球は姫様の体を焼きつくしていたことだろう。
手をひねり、魔獣の体を蹴って背後に飛ぶ。
着地と同時に魔獣の首から大量の血液が噴水のように溢れ、その勢いに押されるように魔獣の体が倒れ込み、動かなくなる。
―危なかった―
緊張の糸が切れ、ボクはその場にへたり込む
「これ、シュトレン、わらわを足蹴にするとは・・・」
魔獣が完全に沈黙したと分かったらしい姫様が私に駆け寄って軽く頭をたたいた。
「あはは、ごめん、姫様、とっさだったからついね」
「お怪我はありませんか姫様」
クラティウスがあわてて姫様に駆け寄り、傷がないかを確認する。
「うむ、その点ではシュトレンの見事な技で助かった例を言おう」
「はは、それほどでも」
立ち上がって雪を払いながらナイフを鞘におさめる。
そこで、先ほどの火球が背後を通過したことを思い出し
もう一人の仲間に声をかけようとして、振りかえる。
「ん?」
彼女は銃を持ったまま固まっていた、それも荒い息を繰り返し、魔獣が動かなくなったのに気づいていないかのように。
「エリス?」
もう一度声を、かける。
ぱっと見で、彼女に傷は無い、しかし呼びかけに反応することは無くただ彼女は荒い呼吸を繰り返すだけだ。
もう一度、声をかけようと彼女に近づこうとしたところで、私は何かが轟音とともに迫ってくる音に気付く。
―マズイ!―
ズズズ…
音は勢いを増しながらこちらへ近づいてくる。
「クラティウス、結界を!」
「!?」
ボクの言葉に反応して、姫様を抱きかかえるようにしながらクラティウが瞬時に魔法壁を展開する。
だが、少し離れていたエリスまでは守りきれない。
「エリス!!」
考えている暇はない、
ボクは、急いで駆け寄り、彼女を抱きかかえる。
その瞬間、猛烈な雪崩が私たちを襲った…。
150 :
マルメンライト:2011/03/25(金) 20:17:59.61 ID:1ob/PmHc
「傷」その3
―――
「う、う〜ん」
しばらくして、目を覚ます、何とか生きているらしかった。
「みんなは?」
辺りを見回す、すると、一面の雪の白にまじり見覚えのある黒髪が目に入った。
「エリス!」
急いで駆け寄り、彼女を掘り起こして揺さぶる。
しかし、何度揺さぶっても彼女が眼を覚ます様子はない。
まさか、と背中に冷たいものが流れるが、口元に手を当てるとかすかな呼吸が聞こえる。
生きている。
「とはいえ・・・」
少しまずい、どれくらいボクが気を失っていたのかわからないけど、彼女の体は明らかに体温を奪われており、このまま放っておいたら大変なことになるのは分かっている。
何かないか他の二人はいないか、もう一度辺りを見回すが辺りにはボクたち以外の姿は無い。
魔法壁はあらゆる衝撃や攻撃を吸収する。クラティウスの魔力で展開し続ける限り、彼女たちは無事だろう。
とうなると、問題はボクとエリスのほうだ。
彼女は意識を失っているし、このまま放置するわけにもいかない。
そして、現在どこにいるのかが分からないこともあって、転移魔法で帰還することもできない。
こういうときに帰還魔法があれば少なくとも宿までは帰還できたであろうに、ボクはそれを知らないしいつも通り全ての用意をクラティウスに任せたせいで少量の食料と武器ぐらいしか所持していないのも悔やまれる。
「とりあえず…」
雪に埋まってしまっているエリスを掘り起こし、担ぐ。
彼女をこのままにしておくわけにはいくまい。
「どこか、ほら穴でも探して寒さをしのがないと…」
時期に日が落ちる。
ボクは、彼女を背負って、雪の降りしきる森を歩きだした。
151 :
マルメンライト:2011/03/25(金) 20:27:56.98 ID:1ob/PmHc
「傷」その4
それから彼女を背負ったまましばらく歩き続けるうちにほら穴は見つかった、もともとは何かの獣の巣であったのか、奥にたまたま敷き詰められていた木の枝を拾い集め、魔法で火をともす。とりあえずの灯りと暖は確保できた
「エリス…」
しかし、ここを見つけるまでに時間をかけすぎたのか、すでに彼女の体は冷え切り、唇も紫色に変色してしまっている。
「仕方ない、か…」
このままこのほら穴が温まるまで彼女をそのままにしておくわけにはいかない。
「不可抗力だから…ごめんね?」
意識のない彼女にそう言って、ボクは自分のブラウスのボタンに手をかける。そうして、上着を脱ぐと、もう一度、心の中で彼女に謝り、彼女のブラウスのボタンを一つ一つ外していく。
全てのボタンをはずすと、白くきめ細やかい肌と、それによくあった純白のブラジャーが現れる。
制服の上からだとよくわからなかったが、彼女の胸は意外とボリュームがある。
「ん…」
手が冷たかったのだろうか、彼女の口から小さな吐息が漏れる。
―な、何だろう、何か変な気分になってきた―
胸が異様なほどバクバクと音を立て、頬が熱くなってくる、そのまま手をまわし彼女のブラジャーのホックに手をかけ…
「って、何をやってるんだボクは!?」
ぶんぶん、と頭を振り邪念を振り払い、彼女の体を抱きしめ、互いのブラウスのボタンを掛け合わせて、熱が逃げ出さないようにする。
こうやってやれば、互いの体の熱で彼女の体温が下がりすぎてしまうのを防げるはずだ。
少なくとも、ほら穴の中がある程度温まってくれば、何とかなるはず。
彼女の冷えた体を温めるにはこれしか方法が…
「ふぅ…うう…」
「っひん!?」
―こ、これは…別の意味でマズッ…―
普通に考えれば、そうなるのは分かってた。
クラッズであるボクはヒューマンである彼女に比べて小柄だ
その彼女を何とか温めようとするために抱き合うには、彼女の頭はボクの肩に乗せて固定するのが一番簡単である。
「ふぅ…」
「くあっ…!?」
耳に温かい息が吹きかけられ、そのたびに背筋をゾクゾクとした感覚が走る。
―よ、よし、こういうときは深呼吸をして…―
自分に言い聞かせながら、息を吸い込んで吐く、息を吸い込んで吐く
―あれ、何か、いい香り…甘い、匂い…―
パティシエ学科にも所属している彼女の制服に移っていたのだろうかお菓子のような甘いにおいが彼女から漂ってくる。
彼女の匂いだ…そう思いながら息を吸い込むたびに頭がくらくらしてくる。
「あ…」
小さな水音が鳴った。
静かにボクは自分の下着に手を触れる。
そこは、ぬめりを帯びた液体でほんのり濡れていた。
―落!ち!着!け!ボ!ク!―
―そうだ、こういうときは素数を数えよう!?―
―えっと?1、2、3、5…って1は素数じゃない―
「エリス?エリス?」
このままだとどんどんおかしくなる、というか、すでにおかしくなってる気はするけど。
熱を逃がさない様に注意しながら彼女の体をゆする。
ゆするたびに首筋や耳に息がかかって、変な気分はどんどん増してくる。
理性はすでにパンク寸前、顔からは火が出そうなほどだ、なにかきっかけがあれば彼女の意識がないことをいいことに、変なことをしかねない自分をひたすらに抑え、彼女に呼び掛ける。
すると、
「ん・・・」
シュトレンの想いが天に届いたかは分からないが小さな吐息と共に彼女の瞼が動き、ゆっくりと目を開く。
「シュ…トレ…?」
「あ、よかった気が…」
ついた?
そう言うつもりだった。
が、意識を取り戻しかけた彼女が体を起こそうとしたのだろう、伸ばされた手がたまたま、ボクの敏感な部分をなでた。
さすがに予想していなかったボクはその刺激に耐えられなかった。
「んんん!?」
彼女の体を抱きしめたままぶるぶると震える。
まだ、完全に意識が覚醒していないのか、ぽかんとした表情のエリスを抱きしめながら、ボクは必死に声を抑えるのだった。
152 :
マルメンライト:2011/03/25(金) 20:38:33.94 ID:1ob/PmHc
「傷」その5
―――
「そ、それにしても気がついてよかったよ」
なんとか、彼女が完全に覚醒する前に戻ったボクは衣服を正しながら焚火の前に座る。
あえて焚火の近くに寄ったのは、まだ赤い顔を隠すためだ。
「こ、こは?」
「ボクが見つけたほら穴、あのままだと凍死しちゃいそうだったから…」
ちなみに、エリスはまだ胸元をはだけたままなので目のやり場に困る。
「ほら穴?キルシュタイン様とクラティウスさんは?」
「はぐれた…私たち雪崩にのまれたんだけど…覚えてない?」
そこまでいうと、彼女はようやく全てを思い出したかのように目を見開いた。
「思い出した?」
「…はい、シュトレンさんが、助けてくれたんですね」
自分の服がはだけている様子と、さっきまでの様子から何があったか察したらしい。
彼女の言葉にボクは頭を少し恥ずかしくなって頬をかく。
「私のせいで…すいません」
「いいよ、気にしないで」
「本当に…」
「謝らない、仲間を助けるのは当然でしょ?」
ほおっておけばいつまでも謝り続けそうな彼女を私はそういってたしなめる。
少し、戸惑った表情をしたが、彼女は静かにうなづいた。
「それよりも…」
制服をただし、焚火の向こうに腰かけた彼女に向けてボクは呟く、気になっていることがあった。
「あのとき、何があったのか聞いてもいい?」
あのとき、倒したはずの魔獣が立ち上がった時、彼女はあの魔獣を止めようと銃を抜いたはずだ。
状況的に考えればそのとき、何かがあって彼女は動けなくなっていたに違いない。
「もし、いいたくないんなら言わなくていいけどね」
おそらく、何らかのトラウマなのだろう。
しばらく、彼女はいうべきか悩んでいるのか、顔を上げたり、うつむいたりを繰り返す。
「隣に座ってもいいですか?」
「…うん」
「もともと、私は別のパーティに参加していたんです、そのころの私は、特待生としてこの学園に入ってきて、一言でいえば、うぬぼれていました」
彼女は話しだす。
「私ができていることが、他のみんなにできない、それが腹立たしくて、それでも、私は冒険者にずっとなりたかったから…」
仲間との衝突も幾度ともなくあったという。
そんな時、彼女はある仲間の一人と喧嘩をした、きっかけはとても些細なことだった。
本来ならば大した事のない、何もなければ、後で笑ってしまうようなくだらない理由。
「そんな仲間を、モンスターとの戦闘中、私が誤射をしてしまったんです」
たび重なる戦闘で疲弊していた。
ほとんどの仲間は戦う力を失い、余力を残した彼女一人が戦っていた。
その時に喧嘩をしていた一人が意地でモンスターに飛びかかったのだ。
たまたま彼女が狙い、銃弾を放ったモンスターに。
まっすぐ急所に向かって放たれた弾丸はモンスターと、飛びかかった仲間の両者を貫いた。
今の時代、冒険者のロストはあり得ない、きっとその人物も治療によって良くなりはしたんだろう。
だが、たまたまとはいえ喧嘩をしている最中の相手を彼女が誤射してしまったというのが問題だった。
「仲間は、私を怖がりました」
当時のリーダーであったバハムーンの少女は彼女の故意による行動ではない、と仲間を説得した。
されど、もともと彼女に対して不満がたまっていた他のメンバーの感情を抑えることはできなかった。
次は自分の番なのでは?本当は事故ではなかったのではないか?
彼女は故意でなかった、しかし、他のメンバーは故意なのではと疑った。
憶測は憶測を呼び疑惑へと変わる、そして、疑惑は彼女への不信へつながった。
誰も彼女を信用していない、気付いた時、そこに彼女の居場所はどこにもなくなっていた。
「結局、私は逃げるようにそのパーティから抜けることになりました、それ以来です」
あの異変が私に起きるようになったのは、と彼女が呟く。
「怖いんです、また失うのが…、どうしても、思い出すんです」
しゃべりながら彼女は静かに涙を流し始めた。
153 :
マルメンライト:2011/03/25(金) 20:45:39.26 ID:1ob/PmHc
「傷」その6
―――
特待生であった彼女はすぐに他のパーティから誘いを受けることになる、だが、戦いのたびに思い出す光景に彼女は引き金を引く力を失っていく。
「また、私は誤射するんじゃないか、繰り返すんじゃないかって」
戦うための力を失った彼女は新たなパーティでも居場所を失っていった、そして結局、彼女は耐えられなくなって、そのパーティからも逃げ出した。
専攻学科を変え、銃を扱うことは一度は考えた、しかし、素早さではフェルパーやエルフに劣り、力ではバハムーンやドワーフに劣る、ディアボロスやセレスティアの様な魔力もない。
彼女が特待生であれたのは銃の扱いに秀でたその能力だった。
涙を流し、震える彼女の肩を抱きしめると、既知感と共に、ある思い出がよみがえってくる。
「…そのときだったんだ、ボクとあったのは」
「え?」
覚えているの?そう言いたげに彼女がボクを見る。
記憶の中の彼女と目の前の彼女の姿が重なり、ある思いと共に封印した記憶がよみがえってくる。
「…覚えてる、ううん思い出した」
姫様に雇われる前のことだった。
あるとき、ボクが暇つぶしの探索をしている時、1人の少女が3人の男に囲まれているのを見つけた。
役立たず、仲間殺し、そんな言葉をぶつけ、男たちが少女を蹴る
一方的な暴力、彼女を見つめる男たちの下卑た視線
暇つぶしを探していたボクはたまたまそいつらに囲まれていた少女を助けた。
自分を子供と侮った男たちを叩き伏せ、囲まれていた少女の手を引いてたまたま持っていた帰還符を使い学園に帰還する。
その後、彼女とは、何度となくあった
夜毎に、射撃の訓練を繰り返す彼女を遠目から見たり、時には一緒に食事をとったり。
姫様に雇われ仕事が忙しくなると、彼女を見に行く時間が減り、少しずつ彼女のことをボクは忘れていった。
―いや、違う、忘れたのはそれが理由じゃない―
思い出すのは夜毎、彼女を思って一人慰めていたあのころの自分。
「ボクはさ、大丈夫だよ」
「え?」
「もし、撃たれてしまっても別に気にしない、わざとかどうかなんて気にしない、君を信じてるから」
「何で……信じられないよそんなの…」
「仲間だったのに、仲間だって信じてくれなかったのに!何で信じられるの!?」
涙を流しながら彼女は立ち上がってずっと抱えていた思いを吐き出す。
「君がどれだけ、練習してたのかも思い出した」
「忘れてたのに!?」
「それはごめん、言い訳はしない」
図書室であいさつした時、彼女が残念そうだったのは、彼女はまだボクを覚えていてくれたからだろう、悪いことをしたと思う。
「じゃあ、なんで!?」
自分の気持ちに気付いてみれば答えは、簡単に出てきた。
「好きだから」
「え?」
ボクの答えに、彼女は動きを止める。
「好き、といってもlikeじゃなくてlove恋愛感情のほうね」
―なんだ、姫様のこといえないじゃんボク―
「何であのあと、しばらく君とずっと一緒にいたのか、何で突然いなくなったかっていうと、理由は単純で怖かったから」
「どういう…こと?」
初恋ってやつだった。
偶然助けた彼女、一生懸命な彼女、一緒にいるうちに好きになって、それが普通の好きという感情とは違うことに気づいて…
夜毎、その日の彼女のことを思い出し、妄想の彼女に犯されながら自分を慰める。
同性に対する本来ありえない感情、本来なら異性に感じるべき感情をボクは彼女に持ってしまっていた。
「拒絶されたらどうしよう、それが怖くて…」
気持ち良さそうに寝ていた彼女を見るうちに自分の中の黒くよどんだものを知って。
それでも、自分の感情を抑えながら、日々を過ごし…、でも、抑えられなかった。
ある時、ボクはいつものように昼寝をしている彼女を見つけた。
パティシエとしての勉強を始めたばかりだという彼女からはお菓子の甘い匂いが漂っていた。
疲れて眠る彼女の無防備な寝顔を見つめる、そう、見つめるだけ…そう思っていたのに
気付いた時にはボクはその無防備な彼女の唇を奪っていた。
彼女が目を覚まさないのをいいことに何度も何度も…
しばらくして彼女が目を覚ましそうになるとあわててボクは何事もなかったように装い、いつもの他愛のない話をして、彼女が自分の部屋に帰っていくのを見送る。
そして、彼女の去った後に残ったのは彼女に対する罪悪感と、素知らぬ顔で彼女と接する自分に対する嫌悪感。
だから、姫様に雇われた時、ボクは彼女から逃げ出した。
154 :
マルメンライト:2011/03/25(金) 20:51:13.89 ID:1ob/PmHc
「傷」その7
――――
「ははは、気持ち悪いでしょ?」
こんなことを今言ったところで拒絶するかもしれないと分かっているのに、
自嘲気味に笑って、彼女から離れる。
今の弱い彼女を見ていたら、また、あの自分が抑えられなくなりそうで…。
「ちょっと、まき拾ってくるね」
消えそうな火を理由に私は立ち上がり、ほら穴を出ようと歩き出す。
「まって」
エリスがそう言ってボクの手をつかんだ。
「私のこと、本当に好き?」
「…うん」
もはや自分の気持ちは隠さない。
彼女が後ろから私に抱き付いてきたのを背中の感触で感じる。
「本当に私を信じてくれるの?」
「うん」
「じゃあ・・・」
彼女の顔が私の耳元に近づくそして、
「証拠を見せてよ」
その言葉と共に、柔らかい感触がボクの口をふさいだ。
「私が貴方を信じられるように、抱いてほしい…」
155 :
マルメンライト:2011/03/25(金) 21:08:07.65 ID:1ob/PmHc
「傷」その8
―――
新たに薪をくべられた焚火がほら穴をほのかに照らす。
「本当にいいの?」
心臓がバクバクいっていた、先ほどの体を温める行為のためでなく、これから行われる行為への期待はいやおうなく高まっていく。
コクリと彼女は首を縦に振ってこたえると床に腰をおろし、ブラウスのボタンを焦らすように一つ一つはずしていく。
ボクも一つずつ、ブラウスのボタンをはずすがなぜかうまく外せない。
「…あの」
「な、なに!?」
エリスの声にボクはあわてて彼女を見る、彼女はすでにブラウスのボタンを全て外し前をはだけさせていた。
「…はずそうか?」
「え?」
ボクが答えに詰まっていると、彼女の手が伸び、ボクのブラウスのボタンをはずしていく。
「……はい」
「あ、ありがとう?」
落ち着いているのか、彼女はあっという間にはずしてしまった。
「もしかして経験あるとか?」
「そんなわけ…ない、ほら」
そういいながら彼女はボクの手を取って自らの胸に潜り込ませた、ブラジャーの内側に…。
―柔らかい―
「心臓の音、聞いて…」
言われるままに意識を集中させると、彼女の心臓はボクに勝るとも及ばない勢いで脈打っていた。
「こういうことをするのは初めてだけど…できるだけ頑張るから」
エリスの言葉に胸が熱くなる。
「ボクも初めてだけど、できるだけやさしくするよ」
そういいながら空いた手を伸ばし、エリスのブラジャーのホックをはずす、ピクンと彼女の体がはねた。
やっぱり、行為に対しての緊張が高まってきたらしい。
ボクのブラウスのボタンをはずすとエリスはボクのブラジャーのホックを探しているのか背中に手をまわしてさする。
「くふぅ…」
耳ほどではないが、指が肩甲骨のふちをなぞるように触れるとくすぐられるような快感がやってくる。
「ボ、ボクは前にあるタイプのやつをつけてるから」
彼女の手が背中からわき腹をなでてボクの胸の前に伸び、パチンと、小さな音を立てて胸からブラジャーが外れる。
お互い、隠すものはほぼなくなったわけだ。
「触るね」
ボクは一応、断ってからエリスの胸に手を伸ばす、ゆっくりとやさしく、円を描くようになでるとエリスの体が静かに震える。
自分とは違ってボリュームのある柔らかい胸の感触に夢中になっていく、快感を抑える彼女の表情にボクは嗜虐心を刺激されながらも、理性を総動員して耐え、膨らみだした右胸の突起を口に含んだ。
「ふぁっ!?」
エリスの体がはねる。
「胸が弱いんだ」
「そんなこと・・・」
ない、と消え入りそうな声で顔を真っ赤にしながら呟く彼女。
意地悪がしたくなって、突起の周りをなめ、左の胸をやさしく揉み、突起を指でつまみ、右の胸をあまがみする。
「きゃう!?」
かわいらしい彼女の反応にボクの中の欲望がどんどん溢れてくる。
―もっと、感じてほしい、もっとかわいらしい顔を見せてほしい―
胸をいじりながら空いた右手をのばし、背中から腰にかけてなでおろし、そしてそのまま手を伸ばし、彼女の下着に触れる。
その部分は先ほどのボクのようにぬめりを帯びた液体が染み出してきていた。
「濡れてる…」
「そ…それは…胸ばかりいじるから…」
ボクが呟くと、彼女は涙を浮かべながら恥ずかしそうに答える。
「ああ、ごめん」「え?」
「こっちもほぐさないとだめだよね」
そう言って、僕は彼女のショーツをずらして指を一本彼女の中に潜りこませた。
156 :
マルメンライト:2011/03/25(金) 21:15:43.37 ID:1ob/PmHc
「傷」その9
――――
「ふぁ!?」
「あったかい…」
彼女の中は火傷をしそうなほど熱くて私の指を逃がさないようにぎゅうぎゅうと絞めつけてくる。
更に奥を目指して指をどんどん沈みこませていく、彼女の吐息が、耳にかかってくすぐったい。
「シュトレン…」
「ん…?っくぅ!?」
彼女の声に顔を見ようとすると、ボクの中に何かが入ってくる感触がやってくる。
たまらず、背中をそらせて、天井を仰ぎ見る。
「ホントだ…あったかい…」
彼女の言葉に自分のその部分を見ると、びっしょりと濡れたショーツをずらして、彼女の指が私の中にのみ込まれているのが見えた。
―負けるわけにはいかない―
変な感情が湧きあがり、ボクは彼女の中に入れる指を2本に増やし、更に彼女の大事な部分のピンク色の突起を口に含み、カリッとかむ
「くぅぅぅ!?」
「痛っ!?」
彼女の体がビクンと、跳ね上がり、同時にボクの中の彼女の指が奥まで突き立てられる。
処女膜が押し上げられ、ぴりっとした痛みが下半身に走る。
ボクの声にあわてて彼女は指を入口まで引き抜く。
「はうっ…」
抜ける瞬間に感じたのは快感、もっともっと続けてほしいという気持ちがわきあがり、自然に言葉が出た。
「だ、だいじょうぶ」
だけど、彼女は泣き出しそうな表情でごめんなさいとくり返す。
それならばいっそ…
ボクはある決心をして彼女から両手を離して彼女の腕をつかむ。
―奥まで…入るかな?―
もはや意味を果たしてないショーツを脱ぎ、あらわになったそこに彼女の指を2本そろえてあてがう
軽く、押しあててみたけど、がんばれば入らなくもないだろう。
―大丈夫そうかな―
ボクの入り口は十分に濡れていて入り口で浅く抜き差しを繰り返す分にはスムーズに動く。
「シュトレン?」
「大丈夫だよ、心配しないで」
そういってボクは意を決して一気に腰を落とした。
157 :
マルメンライト:2011/03/25(金) 21:27:50.48 ID:1ob/PmHc
「傷」その10
―――
勢いとは異なり先ほどまでとは比べものにならない圧迫感が襲い、指はなかなか奥までたどり着かず、ゆっくりゆっくり沈みこんでいく。
気持ちだけがあせるが思うようにいかない、それでも次第に彼女の指はボクの奥深くに沈んで何かに触れてとまる。
私の行動が理解できないのか、ただ、私と繋がっている部分に彼女の視線が集中する。
そして、ボクは勢いをもう一度つけるため、少し彼女の指を抜き、もう一度自分に打ち込む。
次の瞬間、ブツリ、とボクの中で何かがちぎれる音が確かに聞こえた。
瞼の裏が真っ赤に染まって、光がはじける。
「いったぁぁぁぁ…」
―よ、予想外に痛いんだけど…―
たまらず、僕は地面に両手をついて痛みに耐える。
大きく息を吸い込み、吐き出して、自分の筋肉の硬直をといていくと、少しだけ痛みが治まった。
「しゅ、シュトレン!」
彼女があわてて自分の手を引き抜くと、そこにはボクの初めてを失った証がまとわりついていた。
「ははっ、なんか、邪魔でさ…」
痛みをこらえながら彼女に笑いかける。
「さ、もうこれ以上痛くなることは無いから遠慮なくどうぞ?」
まだずきずきとした痛みはするけど、痛みには慣れてる、それに、余計なものがなくなったから、彼女が何かを心配する必要もない。
そんなボクを彼女はやさしく抱きしめる。
「なんで…」
「いや、君に泣いてほしくないし」
何よりも、どうせ誰かにあげるなら彼女にもらってほしかった、そうおもうと痛みより満足感の方が大きい。
「それよりもさ、続きしてもいいかな?」
自分が原因とはいえ、中途半端なところで中断したせいで理性を保ち続けるのがつらくなってくる。
互いに触れ合っている胸、彼女の匂い下腹部の熱がどんどん高くなってくるのが分かる。
「いいけど、条件が一つ…」
「何?」
何かを決心した彼女の表情
「私のもシュトレンがもらって」
何を、とは聞かない
理性を保ち続けるのも、そろそろ限界だった。
158 :
マルメンライト:2011/03/25(金) 21:31:35.33 ID:1ob/PmHc
改めて行為を始めると、私は両手で彼女の胸をいじりながら大切な部分に顔をうずめる。
「何を…」
「いや、もらうのはいいけど、その前に一回ぐらいは達してもらったほうがいいかな?と思って」
「そんなこと言ったら、シュトレンは…」
彼女を温めるとき、偶然とは言え、彼女の行為で達してしまったことを思い出し、赤くなる。
「ボ、ボクはいいの!!」
「でも…」
まだ、何か彼女が言いたそうだったが私は行為で黙らせることにした。
彼女の敏感な部分の突起を噛み、胸にのばしていた手でピンク色の頂上をつまみあげる。
「あっ!?」
そうして、いじり続けながら、彼女の中に舌をつき込んでいく
「ふっ、し、舌が入って」
彼女の腰が逃げるように浮きあがるが私はその腰をしっかりと押さえこんで、逃れられないように固定する。
「しゅ、しゅとれ…」
甘い、彼女が甘い
ボクは夢中で彼女の中をなめしゃぶり、彼女の蜜の味を堪能する。
しょっぱいような不思議な味だが、彼女のだと思うと、なんとなく甘い。
―もっと、もっとほしい―
「だめ、だめ…」
息を切らしながら彼女が私の頭を離そうと手で押してくる。
―邪魔しちゃ…駄目だよ?―
小さな抵抗を止める為にボクは歯で敏感な部分をこすり挙げる。
そして、中を舌でいじるスピードをどんどん上げると、彼女は手を離し、快感をこらえるように顔をおさえる。
「へんに、へんになっちゃう!!」
絶頂が近いんだろう
「いいよ、イって」
―イって、かわいい顔を見せてほしい―
とどめ、とばかりに、彼女の敏感な突起を強くつまみあげる。
「あああああ!」
ギュウゥゥゥと、彼女の体が収縮し、頭が足に挟まれ、強く押し付けれられる。
しばらくすると、収縮がやみ、力を失った彼女の体が地面に落ちる。
―ああ、やっぱり思った通りでかわいいなぁ…―
汗で張り付いた髪、口の端からこぼれたよだれ、はぁはぁ、と荒い息使いを繰り返す彼女、その全てが愛おしくなり、その唇に自分の唇を重ねる。
―ただのキスでは終わらせないよ?―
唇を重ねたまま舌を伸ばし、歯茎をなめあげる。
初めは戸惑ったような表情を浮かべていた彼女だが、行為を続けるうちに、おずおずと舌を伸ばしてくる。
その舌に自分の舌をからませながら唾液を彼女におくると、彼女はそれを嚥下する。
少し前まで残っていた下腹部の痛みが熱に変わり、彼女の全てを奪ってしまいたいという感覚が私を襲う。
ゆっくりと唇を離すと、唾液が橋を作り、切れる。
トロンとした彼女の眼がボクを見つめ、静かにいいよ、と呟いた。
159 :
マルメンライト:2011/03/25(金) 21:37:53.75 ID:1ob/PmHc
いい加減に邪魔になってきた彼女のショーツを脱がせ、指をまず1本、彼女の中に沈め抜き差しを繰り返す。
かなり狭いけど、クラッズである私の指なら
その感触に彼女は眼を閉じ、ふぅふぅと方で息をしながらその時を待つ。
指を増やすたび、次第に彼女の腰が動き初め3本目を受け入れるころには指の動きに合わせて彼女の腰が動くようになっていた。
ハァハァと、彼女は荒い息を繰り返し、すがるようにボクの背中に手を回す。
すでに、ボクを攻めようという考えは無いらしい。
繰り返して彼女のそこがほぐれてくるとボクの指も次第に奥に奥に導かれるように進み、ついにはその部分に到達する。
―これがエリスの…―
ほんの少し前まではボクの中にもあったかと思うと感慨深いものがある。
「いくよ」
そういうと、彼女はコクリとうなづく。
ボクは少し指を引いて勢いをつけ、彼女の純潔に指を突き立てる。
「いっ!」
「…ん!」
背中にまわされた彼女の爪がボクの背中に突き立てられる。
そして、ブツリという音とともに、抵抗がやみ、ボクの指が深く彼女の中に埋没する。
「くぁっ!?」
「大丈夫?痛いでしょ?」
ボクの言葉に彼女は涙を流しながらも何度もうなづき、呟く
「でもね、でも…これで、私は貴方のもの…」
けして消えない傷という形で彼女の言っていた証拠が刻まれる。
「ありがとう」
いったん指を引き抜くと、そこには私が彼女を奪った証がまとわりついている。
ぺロリとなめるとそれは鉄の味がした。
「もう…おわり?」
まだ痛むだろうに彼女はそう言ってボクに抱き付いて首筋をなめた。
「まだ痛いでしょ?」
少し前に味わったからその痛みがどれほどのものか分かる。
「痛いけど、シュトレンには最後までしてほしい」
「…最後ってどこまで?」
「……イかせてほしい」
消え入りそうな声でささやく彼女
「うん、分かった」
もう一度、深くキスをして、手についた彼女の純潔の血を彼女自身にすりこむように胸をなでる。
「ふぅ…はぅ…」
そうしながら、空いた手の指を再び、彼女の中に差し入れる
一瞬彼女が顔をしかめるが、浅く抜き差しを繰り返すと、次第に声の調子が変わっていく。
「はぁ……はぁ…」
「気持ちいい?」
私の言葉に彼女はコクコクと頭を縦に振る。
指を2本に増やし、抜き差しの速度を上げると、呼吸は更に荒くなる。
「シュトレン…シュトレン…!!」
「エリス…エリス…!!」
「は、はぁぁぁ!」
突然彼女が叫んで、私の指をきつく締めあげる。
達したんだろう。
まだ忘我の彼方で荒い息を繰り返す彼女に再び口づけると、舌をからめているうちに彼女が起き上がり、体勢が入れ替えられて今度はボクが仰向けに押し倒された。
160 :
マルメンライト:2011/03/25(金) 22:01:34.30 ID:1ob/PmHc
「うまく、できないかもしれないけど…いい?」
ボクが無言で首を縦に振って答えると、彼女の手がボクの薄い胸に触れる、ゆっくりと、中心の突起部分をあえてよけるように、円を描きながらなでられ、自分のそこが少しずつ、膨らみ始めるのが分かる。
「…小さいから、あんまり、手ごたえないでしょ?」
「ううん、あったかくて…とっても柔らかい」
ボクの言葉に彼女はそう答えながら膨らんできた中心をつまむ。
「ん、くすぐったい」
自分の胸に自分以外が触れる感触に私は身をよじる。
そして、彼女の顔が吸い寄せられるように胸に近づき、中心を軽く噛む。
ピリピリと電流が走るみたいな快感が胸の頂上から背中に抜けていく、妄想じゃない、本当の彼女に犯されている。
自分でする時とは違い、いつどんな時にどこが刺激されるかわからず、次はどこだろうという期待で胸がいっぱいになってくる。
「ねぇ…」
「っひゃん!?」
胸からの刺激に夢中になっていて、彼女が何か耳打ちしようとしたことに気づいていなかった。
不意打ち気味に耳にかけられた熱い吐息に、ついつい甘い声を出してしまう。
「な、何?」
耳を押さえ、顔を真っ赤にしながら彼女に応えると、彼女の眼があやしく光った。
161 :
マルメンライト:2011/03/25(金) 22:12:51.65 ID:1ob/PmHc
「耳が感じるの?」「そ、そんなこと…」
必死で否定しようとするがそれよりも先に彼女の手が耳を押さえていた私の手を掴んで引き剥がす…そして、
ふっ、と息が吹きかけられる、たまらず、ボクは甘い声を出して反応してしまった。
拘束されていない手で口を抑えるがもう遅い、彼女の顔が耳に近づき、生温かい感触と水音が直接耳に響く。
「そんなとこ…ふくぅぅ」
耳の穴に舌が差し入れられ、耳たぶが齧られる。いつ、感触が襲ってくるかが分からなくて、空いた手が宙をつかむ。
―気持ちいい、こんなことがたまらなく気持ちいい―
下腹部が熱くなって、いつまでも訪れない刺激を待ちわびるように何度も足をすり合わせる。
「エ…リス…エリス!」
「なに?」
「耳ばっかじゃやだ、他のとこも、他のとこもさわってよ」
さきほどまでエリスに行っていた行為のせいですでにボクは限界に近かった。
分かった…、そう呟きながらエリスは耳に差しこんでいた舌を抜き、首筋からゆっくりと下腹部を目指すように舌を這わせていく、手もそれに合わせ胸から腰にかけてのラインをなぞり、やはりもどかしいスピードで下っていく。
だが、舌は目的地の下腹部に到着することなく、途中のへそで動きを止めた。
「ひぁっ!?」
突然の刺激にボクは思わず跳ね上がる、彼女の舌はへその中に潜りこみ、その中を丹念になめあげていた。
―気持ちいい、気持ちいいのに…―
いつまでもとれない下腹部の熱に我慢できず自分で手を伸ばすが、その手はエリスの両手につかまれ動きを止められてしまう。
必死で手を動かそうとするが彼女の意外な筋力に阻まれて手は全く動かせない。
かわりに送られてくる彼女の熱がボクをどんどん熱くしていく、ついに、せつなさが抑えられなくなって涙がこぼれた。
びくりと彼女が震える、私が泣いていることに気付いたのだろう。
「シュ…シュトレン…」
「早く、早く早く……熱いの、熱くて頭がおかしくなっちゃう…」
ボロボロと勝手に流れ出す涙が抑えられない。
彼女がほしくて仕方ない、おなかの中をかき回してほしい、頭の中がそれだけでいっぱいになる。
ふらふらと怪しい光を目に宿した彼女が私を抱きしめる。
「早く、早く!」
幾度となく繰り返すと彼女は入口の周りを指でなぞり上げる、まだじらされていた。
「お願いだから…早く入れてください…」
はしたないお願いを口にすると彼女は満足そうに笑って力強く指をあて突きいれた。
「くぁぁぁ!?」
かなり乱暴な挿入だったが待ち望んでいた刺激に、ボクは入れられただけで達してしまう。
限界まで彼女の指を締め付け、自由になっていた手で彼女を抱きしめる。
ふわふわと宙を浮くような感覚が訪れ、落とされる。
酸素を求めるようにボクは方で息をして荒い呼吸を繰り返す、体の緊張が解け、彼女の腕が解放される。
同時にボクの体も彼女の手から解放……されなかった。
イったばかりのボクの中を彼女の指が蹂躙する。
「イった、まだイったばかりだから」
たまらず、彼女の背中をたたくが、イったばかりということもあって抵抗にしてはかなりかよわいものになってしまう。
ゆえに彼女の動きは止まらない、指は2本に増え、抜き差しの勢いはさらに早くなる。
下腹部の熱をかきだそうとするかの様な動きに私は再び上り詰める。
「ふぅぅぅぅぅ!?」
2度目の絶頂は瞼の裏で火花がはじけたかと思うと真っ暗に染まるようなとても激しいものだった。
「…ごめんなさい」
ようやく、絶頂から解放されたボクにエリスが土下座してそういった。
2回も続けて絶頂を迎えさせられたせいで腰はガクガクいって。
いくらなんでもセックスをして、イケないせいで自分が泣くとは思わなかった、しかもエリスはSだし。
「泣いてるシュトレンがかわいくってつい…」
変なスイッチが入ってしまったと彼女が応える。
「あの…なんでもするから許して…」
上目づかいでそういう彼女に、昔押さえていた黒い欲望を満たしたくなってくる。
「なんでも?」
ボクの言葉に彼女は静かにうなづく。
―ねぇ、エリス?ボクは妄想の君に犯されるだけじゃなく、ずっとずっと妄想の君を犯してたんだ?―
「ねぇ、エリス」
彼女がボクを狂わせる。
「お願いが、あるんだ…」
夜はまだ始まったばかりだった。
162 :
マルメンライト:2011/03/25(金) 22:20:24.61 ID:1ob/PmHc
「つかれた〜」
「うん」
空も白みだしたころ、黒い欲望を吐き出しきったおかげでようやく私は理性を取り戻す。
幾度となく達したせいで腰はがくがくとなり、大量にかいた汗は愛液とまじりあって何とも言えない行為の後の匂いをほら穴の中に漂わせている。
今、ボクは彼女の膝に腰かけ抱きかかえられるようにして座っていた。
何でそんな風にしているかというと、互いになんとなくはずかしくて、まともに顔を見られないからだったりする。
「あ〜腰ががくがくする〜エリス激しすぎ〜」
なんでもさせてくれるといった割には攻守が再び逆転すると、信じられないくらいエリスの攻めは激しかった。
弱い部分を見つけると、そこを丹念に攻めながら焦らしに焦らしてボクに懇願させてからとどめをさす。
そして、ボクが達したばかりで敏感になっていても攻めを止めない。
やはり、彼女にはSの気があるようだ。
「シュトレンこそ…まさか、私の中に腕全部入れる何て…」
「あはは…」
「なんでもするとはいったけど…」
指が3本入ったんだから、クラッズのボクの腕なら入るんじゃないかと腕を入れ、中で手を開いたり、握ったりしたのはさすがに悪いとおもってる。
「シュトレンの形になっちゃったらどうするのよ…」
「そしたら責任とって嫁にもらってあげるよ」
「…そうしないともらってくれないの?」
「ふふ…」
彼女がボクにすがるようにそうつぶやく、そんな彼女がかわいらしくて仕方ない。
「そうじゃなくても、むりやり嫁にするけどね」
彼女の言葉にそう答えると彼女の顔が真っ赤に染まった。
「…まだボクがいなくなるか怖い?」
「ううん」
彼女は首を振った。
「だって、シュトレンの初めての人は私だしね」
もう、忘れられないでしょう?笑いながら彼女がそういう。
「そんなこと言ったらエリスの初めての人もボクだけどね」
おかしくなって二人で笑いあって私はある事に気づく。
「あ、そういやボク、エリスから返事もらってない」
何のことかわからないといった表情を浮かべる彼女
まぁ、しかたないのかもしれない、だから改めてこういった。
「エリス…好きだよ、ボクの恋人になってほしい」
彼女は一瞬、悩んでいるかのように沈黙し少し間をおいてから
「…大切にしてね」
恥ずかしそうに笑って、そう答えた。
そうしてもう一度、キスをして、ボクたちはそのまま抱き合って眠りについたのだった。
163 :
マルメンライト:2011/03/25(金) 22:21:43.96 ID:1ob/PmHc
翌朝、ボクたちは現在の位置がどこなのかを調べながらスノードロップを目指して歩く。
微妙に二人ともガニ股気味なのは気にしない。
昨日、余りに激しく愛しあいすぎて忘れてたけど両方ともまだ初めてを失ったばかり。
特に無茶をしたボクに至っては起きてすぐは、生まれたての小鹿の様な足取りだったせいでエリスに笑われた。
自業自得だけど…
「あー、早くスノードロップに帰って温かいベットに横になりたい」
「うん…」
隣を歩くエリスの姿は昨日とは少し異なり、腰には拳銃を入れたホルスターが二つ取り付けられ、よりガンナーらしい格好へと様変わりしている。
彼女が変わった理由を姫様たちに知られたら何を言われるかわかったもんではないがバレたらそれはそれで仕方ないだろう。
「でも、姫様たちも同じくらい進んでるんじゃない?」
思っていたことがボクの口から出ていたのかエリスがそう答える。
「どうだろ、クラティウスとか奥手だからね〜せいぜいキスぐらいじゃない?」
そう思うと、ボクたちは一晩でずいぶんと進んでしまったものだ。
お互いに昨日のことを思い出したのか、顔が赤くなる。
「お〜い、シュトレ〜ン、エリス〜おらんのか〜?」
「お」
「噂をすれば、だね?」
遠くから声が聞こえてくる。
「姫様〜お〜い」
こちらが答えるとボクたちに気付いたらしい姫様とクラティウスがこちらに向かってくる。
「あ〜無事でよかった〜」
ほっと胸をなでおろそうとする。
と、目に見える距離まで二人が近づいてきたところで二人の後ろにモンスターが現れる。
―マズイ!―
二人はこちらに夢中になっているのか、後ろの気配に気づいていない。
急いで走ろうと足に力を入れる。
「いたっ!」
下腹部に鈍い痛みが走る。
マズイ、全力では走れない、間に合うだろうか、そう思いながらせめて二人に気づかせるために全力で叫ぶ
「二人とも後ろ!!」
「何!?」
ボクの声にようやくモンスターに二人が気付いたが間に合わない。
最悪の状況を想像しながら、痛みをこらえて走り出す。
と、その時だった。
164 :
マルメンライト:2011/03/25(金) 22:24:12.55 ID:1ob/PmHc
走り出したシュトレンの速度が昨日よりも遅い、まだ残る痛みが彼女の動きを阻害しているんだろう。
このままだと間に合わない。
「伏せて、二人とも」
そう思った瞬間、私はそう叫んでホルスターから相棒である2丁の拳銃を抜き出し、二人の背後に立つモンスターに狙いをつける。
瞬間、あの時の光景が目に浮かび、胸が締め付けられるような痛みが襲ってくる。
だけど…、それ以上にシュトレンが私を愛してくれた結果の痛みが私を現実に引き戻してくれる。
「ごめんね…」
―いつか貴方達としっかり向き合うから、それまで、この傷を抱えて私は歩んでいくから…走るのは苦手だし、いつ追いつけるかわからないけど…必ず、いつか追いついてみせるから…だから―
「バイバイ…また逢いましょう」
決意を胸に私は引き金を引いた。
辺りに獣の咆哮にも似た銃声が響き、二人に迫っていたモンスターはそのまま仰向けに倒れていく。
放たれた2発の弾丸は見事にモンスターの頭を打ち抜き、沈黙させた。
「エリス…」
銃声を放った人物のほうを向くと、少し震えながらも彼女は拳銃をしまってボクに笑いかける。
驚く二人をしり目に、彼女はボクに近づいて大丈夫と耳打ちした。
「いこう、シュトレン」
「うん」
二人で手をつないで、歩き出す。
「二人とも大丈夫〜?」
「うむ、お主らも無事で何よりじゃ」
「なんとかね〜」
ふと、クラティウスが何かに気付いたように私たちを見る。
「お二人とも、怪我をなされているのですか?血の匂いが…」
―…しまった、フェルパーの嗅覚忘れてた!!―
「なんじゃと!?今すぐ治療を」
「あ〜えっと…」
なんて応えるべきよう、考えていると
「大丈夫です、これは…」
「エリス?」
「いわゆるところの名誉の負傷ってやつですから」
二人はわけが分からないといった表情を受かべていたが、エリスは私だけに見えるように舌を出して笑った。
「だね」
私もそれに合わせて静かに笑った。
165 :
マルメンライト:2011/03/25(金) 22:25:33.26 ID:1ob/PmHc
さてと、何はともあれ、クエストは達成じゃの」
「さようですね姫様」
静まりかえった図書室、主人と従者は専用の机に“2枚の紙を広げ”、呟く。
一枚は雪原に現れた魔獣の退治
もう一枚はとあるバハムーンの生徒からの依頼
「それにしてもシュトレンはどのように彼女を立ち直らせたのかのう?」
キルシュトルテは達成済みのハンコを二つの書類に押し、隣に控える従者に手渡す。
「さぁ、そればかりは彼女しか知りません…が」
まさか一発やって立ち直らせたとは知らない二人は、状況から確認できる彼女の変化を結果として知ることしかできない。
「いい表情をしていたと思います、もう、彼女が立ち止まることは無いでしょう」
「…うむ」
従者クラティウスは書類を達成済みの棚に入れながら思い出したように呟く。
「姫様も随分と、思い切ったことをなされましたね」
従者の言葉に姫はうん?と不思議そうな顔をした。
「彼女を我々のパーティに加えたことです」
エリス、ヒューマンの少女、学科はガンナーとパティシエ
ある事件を境に、敵と自分の間に味方がいると戦うことができなくなっていた少女
従者の言葉に姫はそれか、と呟いた。
「シュトレンにいったことは偽りではない、確かにお主の負担を減らしたかったのは事実じゃしな」
くすくすと、いたずらがうまくいった子供の様な笑みを浮かべて姫は応える。
「彼女の存在は昔、シュトレンから聞いたことがあってな、凄腕のガンナーがいると、
シュトレンは忘れておったようじゃが、わらわは覚えておる、あ奴が認めるほどの腕じゃ、腐らせておくのはもったいない、それに依頼のこともあったしの」
しまっている最中のクエスト依頼の紙をクラティウスは確認する。
依頼人はバハムーンの少女
――――
昔、私の至らなさのせいで傷つけてしまった少女がいる。
噂で、彼女は未だにそのことを抱えて苦しんでいるということを聞いた。
彼女にわびるには、私はまだ未熟すぎる、彼女も私と会うことで苦しんでしまうかも知れない。
勝手な話かも知れない、それでも、誰かに彼女を助けてほしい
むしのいい話かもしれないが、彼女には前を向いて歩いてほしい
――――
「…依頼主に報告をしておいてくれるかの?クラティウス」
紅茶を口にしながら姫は従者にそう命じる。
「はい、姫様」
パタンと、棚をしめた従者は姫がまとめた報告書を受け取る
「報酬はいらん、その代わりに、いつか謝れるようになったら彼女にちゃんと謝るように伝えてほしい」
「わかりました、それでは…」
166 :
マルメンライト:2011/03/25(金) 22:54:40.99 ID:1ob/PmHc
去りゆく従者を見送り、一人残されたキルシュトルテは離れている間に溜まった書類を片付ける。
まず、最初の書類は新たに実zからのパーティに加わった少女の部屋割に関する書類。
寮の部屋には限りがあり、
「……別にシュトレンとエリスの部屋は相部屋でいいじゃろう」
167 :
マルメンライト:2011/03/25(金) 23:03:16.11 ID:1ob/PmHc
去りゆく従者を見送り、一人残されたキルシュトルテは離れている間に溜まった書類を片付ける。
まず、最初の書類は新たに自らのパーティに加わった少女の部屋割に関する書類。
「……別にシュトレンとエリスの部屋は相部屋でいいじゃろう」
クラティウスは気づいていただろうか?
学校までの道で常に手を組んでいた二人に…
「少し、妬けるの…」
彼女の呟きは、図書室の空気にとけ消えていった…。
―――
以上で投下終了です。
駄文失礼しました。
エピローグだけなのに、最後の最後で書き込みミスったorz
素晴らしい乙
いいねいいね、GJ!二人とも可愛かった
しかしいきなりフィストとかシュトレン進み過ぎだろw
ただちょっと気になったのが、メール欄にsage入れてほしいのと、投下するときはあらかじめ
メモ帳なり何なりに書いてからコピー&ペーストでやってほしいな
170 :
マルメンライト:2011/03/26(土) 01:17:57.34 ID:hRr8Tvdn
メール欄sage入れるのは完全に忘れてました、申し訳ない
コピー&ペーストに関しては、いちお、ワードに書いてコピペしたんですが…
「改行多いよ」と怒られて直している際にミスってしまい申したorz
また書くことがあったらその辺り注意しておきます。
地味に小ネタ
ドS→ドエス→トリエス→リエス→エリス
鳴かされるシュトレンが可愛すぎて俺のモップがグングニルになったどうしてくれる。GJだ!
172 :
マルメンライト:2011/03/27(日) 01:06:13.20 ID:Yf13He0A
今更ながらにとんでもないミスを発見してしまいました…
死にたいorz
なぜかヒューマンがすべてヒューリンになってる。
なんだヒューリンって…
ぐっじょぶ!
NPCの見えない所を掘り下げるネタは妄想のご馳走です
174 :
マルメンライト:2011/03/29(火) 21:06:33.46 ID:anhWlOhy
みなさま前回はシュトレンとドSの子のお話にGJいただきありがとうございました。
拙い文ですがまた投下させていただきます。
諸注意 フェルパー♀×ディアボロス♂
エロ、多分少なめ?
175 :
マルメンライト:2011/03/29(火) 21:08:28.86 ID:anhWlOhy
あいつと私は最初からあまり仲が良くなかった。
あいつはいつも煙草を吸っていて、まじめな姿を見たことがなくて、「くだらねぇ」が口癖で。
侍のくせに武士道なんざどうでもいい、といつも口にしていた。
一言で言うなら、ロクデナシ、そんな言葉がよく似合う。
おなじ侍なのにこの違いはなんだろう?種族の違い?性別の違い?
私はフェルパー、あいつはディアボロス、私は女で、あいつは男。
本当はそんなことは関係ないのかもしれない、力があるのにやる気がない、結局私はそれが気に入らない。
だから、私たちはいつも喧嘩をしているのだった。
タカチホ義塾の食堂、そこにはフェルパーの少女とディアボロスの少年がテーブルを挟むように座っていた。
なぜか、剣呑な雰囲気を纏って…。
「いいかげんにしなさいよ!」
ばん、と私はテーブルを叩いて立ち上がった。
「うるせぇなぁ…、何がきにくわねぇんだよ?」
灰皿に煙草を押しつけ、火を消しながらあいつが私を見た。
「あんた、また朝の稽古にこなかったじゃない、侍たるもの武士たるもの日々の稽古を忘れてはいけないとそんなこともわからないの?」
侍の基本ともいえる事なのに、最近のこいつは顔すら出しに来ない。
「これでも、いろいろ忙しくてな、行きたくても行けないんだよ」
へらっ、といつもの軽薄な笑みを浮かべて笑う、どうしようもなく腹が立った。
「はいはいそこまで二人とも、君らはホントに仲がいいな」
変わらない態度に怒りが抑えられず、殴りかかろうとしたところで、私たちの間に見覚えのある影がわって入る、彼はチームのリーダーであるヒューマンだった。
「こんなやつと仲がいいなんて吐き気がする。」
「奇遇だな、俺も仲良くなるならテメェ見たいな貧乳よか、他のやつとお近づきになりたいね」
「このっ!」
人がひそかに気にしていることを言われて、ついカッとなって刀に手をかける、が…。
「そこまで…俺はそういったはずだが…聞こえなかったか?フェルパー、ディアボロス」
ヒューマンは銃を抜いてその銃口を私たちに向けた。
「ちっ、わかったよ、だからその物騒なもんしまってくれ、ったくホントにくだらねぇ」
「ごめんなさい…」
あいつと私がそういうと、ヒューマンは静かに銃をしまった。
「分かってくればいいんだ、分かってくれれば」
その顔にはいつもと変わらない笑顔が浮かんでいる。
「あれ?みんなどうしたの」
何も知らない顔で入ってきたのはチームメンバーでヒューマンの彼女であるフェアリーだった。
「なんでもないよ、フェアリー、それよりも今日のヘアピン、似合ってる」
「あ、気付いた?ヒューマン、この間ノームがつくってくれたの」
彼女の言うノームとはフェアリーのルームメイトで私達のチームメンバーである。
今はこの場にいないがきっと今の時間なら彼女は恋人のバハムーンと食事でもしていることだろう。
「それよりも、ヒューマン、今日はどうするの?」
「ん、今日は何にもクエストもないし、自由行動かな、最近はクエスト続きだったからみんなにも休息が必要でしょ?」
「そいつは良い、俺もゆっくり休めそうだ」
「あんたはいつも、そうでしょうが!」
ヒューマンの言葉に口笛を吹きながら答えるあいつに、私は我慢できなくなって叫ぶ。
「フェルパー…」
たしなめるようなやさしい声、フェアリーがいるからだろう、だがその目には、黙れ、と言葉には表わさない意志が宿っていた。
「…休みなら、私は稽古してる」
言いようのないむしゃくしゃとした気持ちが私の胸にわだかまっていた。
176 :
マルメンライト:2011/03/29(火) 21:15:52.12 ID:anhWlOhy
初めてあいつを見た時、素直にすごいな、と私は感じた。
身の丈ほどの大太刀、鬼切をまるで自分の腕の延長のように扱うあいつ、すごい技を持っているのに、あいつはめったに使わない。
私にはまねできない才能を持っているのに…
鋭い呼吸と共に放った一閃は確かに的をとらえ断つ。
刀を納めると、わらでできた人形は静かに滑り落ちた。
まだ…足りない…
自分の愛刀である刀に視線を注ぐ。
何の変哲もない、無名の日本刀、ある意味今の私にはふさわしい代物だと思う。
繰り返しの鍛錬でだいぶ痛んでしまっているし、そろそろ研ぎにだしたほうがいいかもしれない。
「すごいね…真っ二つ……」
不意に声をかけられて振り返る。
そこにいたのはノームだった。
表情こそほとんど分からないがぱちぱち、と手をたたく彼女の姿から私のことをほめてくれているのだと分かる。
「私なんてまだまだだよ」
「どうして?」
「ノームはあいつ…ディアボロスの居合を見たことがあるか?」
私の言葉に、ノームはふるふると首を横に振る。
「私も、一度しか見たことはないけど、一度しか見ただけでもあいつのすごさは分かる」
そもそも、居合には大太刀は向いていない、踏み込み、呼吸、鞘から刀を抜く角度。
それらをそろえなければ、刀の速度は死に、十分な力は発揮できない。
その点で、大太刀には長さの問題がある。普通に踏み込む程度では大太刀で居合など到底できるものではない。
それなのに…、今でも思い出せる。
腰だめにあいつが刀を構え抜き放つ、キン、という音がなって刀が鞘に収まる。
まるで、剣術の手本を演じるかのような、ゆったりとした動きだったのに放たれてから収まるまでの軌道が私には見えなかった。
「こんなもんか…」
あいつがそう言って煙草に火をつけ、わら人形を指ではじく、ようやく切られたのを思い出しかのように2つにわかれるわら人形。
「…想像できない、そもそも彼が練習してるとこなんて私は見たことない」
「だろうな、私もあいつが稽古している所を見たのはその一度だけ」
だから余計に腹立たしい。
「…フェルパーはあいつのこと嫌いなんじゃないの?」
「嫌いだよ」
何がどうしたというのだろう。
「…その割には今の話をしてる時、悔しそうだった」
「それは、対して練習もしないのにあいつがそんな腕を持ってるのは悔しいじゃない」
「そうじゃない…」
ノームが何を言いたいのかよくわからなかった、表情が皆無なこともあわさって余計によくわからない。
「こういうのは自分で気づくべき?」
頭の上にクエスチョンマークを浮かべて彼女が首をかしげる。
「いや、ごめん、何が言いたいのかさっぱり分からない」
「まぁいいや…そろそろバハムーンのとこに戻る」
彼女はそれだけ言うと、ふわふわと、漂うように去って行った。
結局、彼女が何を言いたかったのか、私にはよくわからなかった。
仲間はみな休んでいるから、修行のために遠くへ行くことはできない
だが、やはり鍛えるには実践しかないのだからと、私は飢渇之土俵へと足を運ぶ。
この辺りには何度も足を運んでいることもあって、別段苦戦するようなモノノケはいない。
一人で修業するにも別に危険はないだろう、ただひたすらに作業のようにモノノケを見つけ、狩る。
―強くなりたい…、あいつを超えられるぐらい強く…―
より強く、この道を極める為に、あの背中を超える為に…。
―強くなってあいつを超えて…―
「あいつを超えて…私は何がしたいんだろう」
あいつがすごい技を持っているのは知っている、そして、それを超えたいと思っている。
だけど…、私はあいつを超えて、何がしたいのだろう?
分からない…一体自分が何をしたいのか…苛立ちが募る。
モノノケを狩る、この苛立ちをぶつけられるなら何でもいい。
しかし、刀には迷いが宿り、切れ味は鈍っていく。
「…今日はもう帰るか……」
そう思い、学園へ引き返そうと歩き出した時だった。
177 :
マルメンライト:2011/03/29(火) 21:24:30.02 ID:anhWlOhy
ここによくいるモノノケなど比較にならないほどの気配、心を引き締め、腰の刀に手を添える。
どうやら私の隙を窺っているようだった、やはり、ただのモノノケではないらしい。
「隠れてないで出てきたらどうだ?」
すると、私の言葉にこたえるように風が集まって竜巻が起こり、その中心から一匹のモノノケが姿を現した。
「ずいぶんと吠えるな、小娘…よくもわが眷族をいたぶってくれたものよ」
黒い鳥の翼をもつ、鳥と人を合わせたようなモノノケ、烏天狗
見たことはある、倒したこともある、しかし、その時は自分一人ではなく他の仲間もいた、当然あいつも、だが、今ここにいるのは私一人、この迷いに濁った刀で戦うことができる相手だろうか?
「覚悟はできておるか?」
烏天狗が余裕の表情でつぶやく。
「は、ぬかせモノノケ、刀の錆にしてくれる」
鼻で笑って刀を抜くそして私は烏天狗に切りかかった、キン、と金属が打ち合う音が響く。
烏天狗がゆらゆらと惑わすように飛び、襲いかかる、その攻撃を刃で受け流し、反撃する。
白刃がきらめき、烏天狗の体をとらえるが、浅い。
「なるほど…この程度か」
「次はその羽をいただこう」
私がそういうと、烏天狗は何がおかしいのか笑いだす。
「何がおかしい!」
「何がおかしいだと小娘!きさまのその刀で、どうやってわが羽を切り落とすというのだ?」
烏天狗の言葉に私は愛刀に目をやる。
見慣れているはずのその刃には、見たことのないヒビが刻まれていた、まるで、今にも折れてしまいそうなほどに…。
「傑作だな小娘、そのような刃で我を倒すなどと方腹痛いわ!!」
烏天狗が再び迫ってくる、先ほどの要領で再び受け流そうとした私の耳にピシリと、何かが壊れるような音が聞こえる。
あわてて私は受け流すのではなく、攻撃を回避することに専念する。
「遅いわ」
「しまっ!」
キィィン……
回避しきったと思った瞬間放たれた追撃が私の体をうちすえる。
「くっ!」
とっさに受けたおかげで幸い傷は浅い、だがそれ以上の問題があった。
私の手に握られているのは愛刀のなれの果て…、その刃が中ほどから折れて失われていた。
失敗した、今のは私にあえて刀で受けさせるために放った攻撃だろう。
その誘いにまんまと引っ掛かったせいで刃は失われた。
「くくく、覚悟するがいい小娘」
私は折れてしまった愛刀を鞘に収めながら術を紡ぐ、でも遅い。
「遅い、遅い!」
立て続けに放たれる攻撃に術を中断され、攻撃ができない、このまま体力を消耗すればやられるのは目に見えていた。
―マズイ、どうすれば…―
思考を回転させる、一撃は受けるつもりで術を確実に当てるしかない…
迫る烏天狗に向かい、回避を捨て術を完成させる、攻撃を受けるつもりで真っ向から相手を見据える。
が、その瞬間、烏天狗の姿がかき消えた。
―フェイント!?―
完全に虚を突かれる、放った魔法は烏天狗をとらえることなく、空に向かい消えていく。
「もらった!」
死を覚悟した瞬間、今までの思い出が頭の中に駆け巡る。
これが、走馬灯か…。
なぜか、あいつの顔ばかりが浮かんで消える。
―何でこんな時まであいつのことを…―
そう思いながら襲ってくる衝撃に備える。
「伏せてろ貧乳」
…あいつの声が聞こえた気がした。
―言われなくても伏せるわよ、そうしないと、堪えられないだろうから…―
次の瞬間、予想外のことが待っていた。
「ぐああ!」
―え?―
衝撃は来ない、それどころか、烏天狗の悲鳴が辺りに響く。
「貴様何者だ!」
目をひらくと、烏天狗は何か刃物で切られたような傷口をおさえながら私の背後を睨んでいた。
何が起きたのか分からない、そんなことを思っていると、背後から聞き覚えのある声が響いた。
「通りすがりの、イ・ケ・メ・ン」
そいつはいつものように煙草をくわえて、いつもの様な軽薄な笑みを浮かべてそこにいた。
178 :
マルメンライト:2011/03/29(火) 21:28:04.13 ID:anhWlOhy
「小僧、貴様この小娘の仲間か…」
怒りに震えた声で烏天狗があいつを睨む、だが、あいつは臆する様子もなく、煙草を吸っている。
「残念ながらね、ま、俺もテメェ見たいなモノノケは嫌いだし?ちょっとまぁ…」
区切るようにそう言って、煙草を投げ捨て、
「死んでくれや」
笑った。
「ぬかせ小僧!」
烏天狗が襲いかかる。
「すげえなぁ、速い速い」
手をポケットに入れたまま、あいつが笑って回避する。
よけきれなかったのか頬がさけて血が滲む。
「このっ!」
攻撃をよけられた烏天狗が血走った眼でうちわを振るうと竜巻が巻き起こり、あいつに向かって竜巻が勢いを増しながら迫る。
「ディアボロス!!」
叫ぶ私にあいつはわらって、ポケットから折り紙で作られた何かを取り出し。
迫る竜巻に向かってほおった。
「かえる」
彼の言葉に反応して、投げられた折り紙が魔力を発する。
「な、何!?」
ぱん、と何かがはじける音と共に竜巻が消えた、驚く烏天狗がもう一度、竜巻を起こすためにうちわをふるう、が…。
「ぐぁぁぁ」
響きわたる烏天狗の絶叫…、消えたはずの竜巻は烏天狗の目の前に現れ、その体を打ちすえる翼が奇妙にねじ曲がり、浮力を失った烏天狗は地面に向かって落ちていく。
そして、その烏天狗を睨み、あいつは目を閉じ静かに刀を腰だめに構えると息を整え、紡ぐ。
「疾き太刀の…白刃で作る赤花で…舞う白雪を…桜に変えんと…」
あいつが静かに息を吐いて…目を…開く
「…天剣絶刀!」
言霊と共に抜き放たれた剣線は無数の斬撃へと変わり、烏天狗の体を引き裂いた。
乾いた絶叫が辺りに響く、引き裂かれた烏天狗の体が石に変わり、石に変わった体を斬撃が刻む。
「まったくもって…くだらねぇなぁ」
後には何も残らない…烏天狗であった砂とあいつの吐いた煙草の煙が、風に吹かれて消えていった。
179 :
マルメンライト:2011/03/29(火) 21:30:25.37 ID:anhWlOhy
「…なぜ助けた」
立ち上がりながら、私はあいつに向かってそういった。
「別に…」
いつものようなへらへらとした笑いが、感に触る。
「私はお前なんかに助けてほしくなかった」
「そうかよ」
自分の無力が恨めしい、情けなくて…涙が出る。
「お前なんかに助けられるくらいならいっそあのまま…」
「オイ…」
あいつが何かを言おうとしたけれど、私は八つ当たりするようにその言葉をいった。
「あのまま死んだほうがましだった!!」
シン…と辺りが静まり返る。
「オイ…調子乗ってんじゃんぇぞ貧乳」
ゾクリと、背筋が凍るような冷たい本当に怖い声色であいつがそう言って、私の胸倉をつかんだ。
「テメェが俺を嫌うのは勝手だがな…死んだほうがマシだ?」
怖い、今まで見たことのない、本当に怒っている声、何か触れてはいけないものに触れてしまったのだと直感的に悟る。
「生きてる分際で生意気いってんじゃねぇよ!ああ!?あいつはな!ずっと苦しんで、苦しんで、それでも生きて!生き続けたかったのに死んだんだぞ!死んだほうがマシだ?pライドだ!?武士道だ!?くだらねぇ!」
力はどんどん強くなって私は呼吸を奪われる。
怖い…怖い…こんなこいつ見たことない。
いつもへらへら笑ってるのに、いつもふざけてばかりなのに。
そんなこいつが本気で怒ってる。
「ごめんなさい…ごめんなさい」
怖い…怖い…
「…胸糞わりぃ、二度とツラ見せんな」
吐き捨てるようにあいつが呟いて、私は砂漠に落とされる。
舌うちをして、あいつが去っていく。
「あ…あ…」
―いかないで…―
あいつの背中に手を伸ばす。
「…かないで…」
―嫌わないで―
去っていく背中に手を伸ばす。
あいつの姿が視界から消えていく。
「いやだ、行かないで、ごめんなさい、謝るから嫌いにならないで!」
あいつの姿が涙で滲んで見えなくなる。
「う…う…うぁぁぁ…!!」
去りゆくあいつの背中を見るうちにようやく、私は、あんなにあいつに追いつきたかったのか、それが分かった。
いつも、背中を追っていた。
あの背中を追いかけて、いつか追いついて、隣に並んで歩きたくて…。
だから、あいつの背中を見てたんだ…
「嫌だよ…いかないでよ…」
いつの間にか、私はあいつのことがどうしようもないくらい好きになっていた…。
180 :
マルメンライト:2011/03/29(火) 21:32:24.39 ID:anhWlOhy
重い足取りで、学園に帰る、食事の時間あいつは集合場所にこなかった。
みんなはいつものことだろうと、食事を始めたが、私はあいつの言葉が頭から離れない。
「二度とツラ見せんな」
なんで自分があんなことを言ってしまったのか深い後悔にとらわれる。
結局、私は食事に手をつけなかった。
逃げるようにみんなから離れ、一人で泣く。
刀は折れ、あいつには嫌われてしまった。
「ふっ…うっ…」
もうあいつといつものように喧嘩することもできない。
あの癇に障るいつものような笑顔をあいつはもう私に見せてくれない。
「いやだ…いやだよ…」
悲しい…苦しい…
折角自分の気持ちに気付いたのに、気持ちを伝える前に嫌われてしまった。
プライドなんか気にしないで、素直に助けてくれてありがとうと言えばよかった。
何度も繰り返した後悔に胸が痛む。
「…あいつと何かあったんだな……」
不意にかけられた声に振りかえる。
「バハムーン…」
あいつの幼馴染、ノームの彼氏…
「あいつ、お前を追いかけて飢渇之土俵にいったんだ、それなのに帰ってきたときは不機嫌で、何にも言わずに部屋に帰って行った」
あいつが、私をおってきてくれていたことがうれしいのに、同時にそんな彼になんてことを言ってしまったんだろうと、悲しみが押し寄せる
「わたしが、わた、私がわるいの、助けてもらったのに、もらったのに、あんたに助けられるんて、しんだほうが…死んだほうがマシ…って」
「そいつは…」
バハムーンが顔を苦しげにゆがめる。
「怒ってた、あいつ、生きてくせに、って、あいつは生きたかったのに死んだって」
「…」
バハムーンは私の話を黙って聞いてくれた。
「…まず、落ち着け、落ち着いたら、少し…あいつの話をしてやる」
「…うん」
深呼吸をして、自分の気持ちを落ち着ける。
苦しいけど、無理やり、自分に言い聞かせて落ち着かせる。
しばらくそうしていると、バハムーンがポツリと呟いた。
「あいつが冒険者になったのはな…あるアイテムがほしかったからだ…」
「ある…アイテム?」
私の言葉にバハムーンは静かにうなずく。
「蘇生の果実、どんな病気であってもどんなにひどい傷であっても治すことができる幻のアイテム」
「なんで…」
「あいつにはな…妹がいたんだ、先天性の病気で、ずっと苦しんでいた…」
181 :
マルメンライト:2011/03/29(火) 21:34:28.42 ID:anhWlOhy
あいつの妹がかかっていたのは生み出される魔力に耐え切れず体がむしばまれる病
薬や魔法は効かなくて、治療法はなかった。
そんな時、ある冒険者から、あいつはそのアイテムの話を聞いた。
助けられるかもしれないと希望を持った。
助かるすべはそれしかないのだと、あいつはそれを求め狂ったように戦いに明け暮れた。
目につくモノノケは殺し、手に入れた宝を売り払って金を作る。
自分の力なんか関係ない、噂を聞いては旅立った。
でも、幻は幻…探しても探しても見つからなかった。
そして…
「結局、あいつは助ける事が出来なかった…」
妹は兄の帰りを待ちながら、自らも冒険者になることを夢見ながら…目覚める事は無かった。
「あいつが、折り紙士をやってるのはしってるか?」
「…うん」
「妹がさ、言ってたらしいんだ、お兄ちゃんが敵と戦うなら、私はそれを助けるんだって、戦うんじゃなくて、守るんだって…」
「それは…」
「…妹が死んで、あいつは抜け殻みたいになった、何をするでもない、ただ、何もかも失ったみたいに…」
「あいつ、そんな風に見えなかったのに…」
生きたかったのに、生きれなかった妹、助けたかったのに、助けられなかった兄
いつもへらへらしているあいつからは想像もできない。
「…お前は似てる、あいつの妹に…」
「私……が?」
ああ、とバハムーンは呟いた。
「妹はな、お兄ちゃんは侍なんだから、武士たるもの日々の稽古を忘れちゃいけないとかいつも言ってた」
「あ、それは…」
私が、あいつにいつも言っていた…
―私たちは侍でしょう?武士たるもの日々の稽古を忘れてはいけないと、そんなこともわからないの?―
「あいつはな、いつもそれにへらへら笑ってたんだ」
―俺はいろいろ忙しくてな、したくてもできないんだ―
「うれしかったんだろうな、お前とあって、あいつはいつもお前を気にしてた」
「それなのに…私は…」
私は、あいつを傷つけてしまった。
「…私、謝ってくる」
「…そうか」
「謝って許してもらえるとは思ってないけど…」
許してくれるなら何でもしよう、心に…誓う。
許してくれなくてもいいせめて…
「私を許してくれなくても…良い、でもせめて、あいつを傷つけたことを謝りたい」
私の言葉にバハムーンは静かに笑った。
「あいつならたぶんまだ部屋にいる、帰ってきてすぐに部屋に帰ったからな」
「…ありがと、バハムーン」
そう言って、私は寮に向かって走り出した。
182 :
マルメンライト:2011/03/29(火) 21:35:53.81 ID:anhWlOhy
あいつと私は最初からあまり仲が良くなかった。
あいつはいつも煙草を吸っていて、まじめな姿を見たことがなくて、「くだらねぇ」が口癖で。
侍のくせに武士道なんざどうでもいい、といつも口にしていた。
一言で言うなら、ロクデナシ、そんな言葉がよく似合う。
でも…
そんなあいつが気になって、そんなあいつを目で追って。
あいつの背中を追いかけて、あいつの隣に並びたくて、並べない自分が苛立たしくて。
あいつのことを傷つけて、自分の気持ちをようやく知って。
謝りたくて走り出す、今なら自信を持って、胸を張って言うことができる。
私はあいつが好きだった。
183 :
マルメンライト:2011/03/29(火) 21:37:57.40 ID:anhWlOhy
準備を終えて、私はあいつの部屋の前に立つ。
部屋の灯りは消えている、それでも、私にはあいつがまだ中にいる事が分かった。
忘れるわけがない、あいつの煙草の匂いが漂ってきてる。
コンコン、と部屋の扉をノックする。
少し遅れて、声が返ってくる
「…誰だ」
「…私、です」
「何しに来た、二度とツラ見せんなっ、つっただろうが」
扉越しに、あいつの不機嫌な声が響く。
逃げだしそうな自分を叱咤し、私は彼の言葉に応える。
「謝りに…来たの」
「謝るだ?いまさら何を謝る気だ?帰れよ」
「貴方に…ひどいことを言ってごめんなさい」
見えるわけじゃないけど、扉の前で、土下座して彼にわびる。
「…」
「貴方は、私を助けてくれたのに…それなのに、そんなあなたを私のちっぽけなプライドで傷つけて…ごめんなさい…」
泣いてはいけないと思ってるのに、ホントに彼に申し訳なくて、涙がこぼれる。
「…聞いたんだな」
何をとは聞かない、分かっていた。
「…うん」
「あのクソトカゲ…」
忌々しそうにあいつが呟く…。
「ほんとは、嬉しかった、あの時…貴方が助けてくれて」
あいつは黙って聞いてくれる。
「貴方が助けてくれて、ホントはありがとう、って言いたかった、でも…言えなかった」
「お前…」
「認めたくなかった自分でそのことを、だからあんなことを言って……」
貴方を、傷つけてごめんなさい…
ガチャリ、と小さな音が鳴って、部屋の扉が開かれる。
「…入れよ、そんなところで泣かれて変なうわさがたったら困る」
あいつの声が、扉越しじゃなくて、直接聞こえる。
「…うん」
そう言って、彼の手を取って立ち上がって、導かれるまま部屋に入る。
今まで見たことなかったけれど、意外ときれいな部屋だった。
「その辺にでも座ってろ」
あいつがそう言ってキッチンに向かう。
―なんでもするって、誓ったから…―
心の中で私はそう呟いた…。
184 :
マルメンライト:2011/03/29(火) 21:38:53.67 ID:anhWlOhy
「これでも、のめ…って何してんだお前!?」
戻ってきたあいつが、お茶をお盆にお茶を載せ、私の姿を見て驚いた。
「…だって、私貴方にお詫びするにも、何も持ってない…」
私はほとんど裸だった、制服ははだけ、スカートはすでに床に落ちている。
ブラも今にも落ちそうで、心もとない。
「だからって嫌いな男に抱かれるだ?それがお前の武士道か?そんなもん…」
「違う!!!」
彼の言葉をさえぎるように叫ぶ。
「嫌いなんかじゃない、武士道なんて関係ない、私はただ…」
「ただ…なんだよ」
「ただ、貴方に本当にお詫びがしたいの…」
「…下らねぇ…な」
私の言葉に、彼がいつもの口癖を呟く、お茶がテーブルに置かれ、毛布が私に投げられる。
「やっぱり、私なんかの体じゃ…だめだよね」
やっぱり私は彼に何もできない…そうつぶやく
「ちげぇよ…」
彼の言葉に私は彼の顔を見る。
そこにはいつもの癇に障るあの笑顔があった。
「俺がくだらねぇ、っていったのは俺自身だ、お前に下らねぇプライドなんざ、捨てろとか言いながら、俺の下らねぇプライドでお前を傷つけてる、お前はあいつじゃないのにな…」
自嘲気味に、あいつが笑う。
「結局、俺もお前もおんなじだ、だから、今回のことは痛み分けってことで許してくれ…」
彼が、さっき私がしたように、土下座の姿勢になる。
「悪かった…」
「う…」
うれしいのか、悲しいのか分からない、ただ、胸がいっぱいになって涙がこぼれる。
「ううう…う」
我慢できなくなって、私は彼の胸に飛び込んだ。
驚きながらも、彼は私をやさしく抱きしめてくれる。
「ごめんなさい、ホントは、ホントに、助けてくれてうれしかったの」
「…そうか」
彼の手が、私の頭をなでてくれる。
「ずっと、ずっと貴方に追いつきたくて…」
「俺を?きらいだったんじゃねぇのか?」
「ううん」
そんなわけない…、こんどこそ伝えよう、勇気を出してこの胸の想いを。
「ずっとずっと、前から…ずっと前から…貴方のことが大好きです」
「…俺もだ」
そう言って、彼が私の顎を掴んで自分に向かせる。
私は静かに目を閉じる。
初めてのキスは煙草の味がした。
185 :
マルメンライト:2011/03/29(火) 21:41:32.64 ID:anhWlOhy
「落ち着いたか?」
「…うん」
気持ちを伝えたと思ったら、気が抜けてしまったのか、私は涙が止まらなかった、そんな私を彼は泣きやむまでずっと抱きしめてくれていた。
「…にしても服着てくれないか?」
そう言われて、毛布で覆っているけど、自分がほとんど裸のような格好をしていることを思い出す。
「何で…?」
「何で、ってお前それは…好きなやつにそんな恰好で抱きつかれてりゃ…襲いかかりたくなるだろうが…」
「別に…いいよ、貴方なら…」
私の言葉に、彼があわてる、抱きしめられた胸から彼の鼓動が伝わってくる。
「ドキドキしてる」
「お前な…」
「ねぇ…」
なんだ?と言おうとした、彼の手を取って私は自分の胸にあてる。
「お、おい」
「ほら、私もドキドキしてる…」
「…ホント…だな」
彼の手は少し冷たかったけど、気持ちが伝わってくるような気がして、胸が温かくなる。
不意に、彼の頬にできた新しい傷に目をやる。
「ごめんなさい、私のせいで怪我させて…」
「こんなのくだらねぇ怪我、怪我のうちになんかはいらねぇよ、どうせすぐ治るだろ」
彼がいつもの笑顔で笑う。
そんな彼が愛しくて…
体を離して、毛布を脱ぐ。
「ねぇ私にも、1つくらい貴方の傷を刻んでよ…」
ほとんど落ちたブラを脱ぎ去る。
「ああ…」
彼が熱に浮かされたように私を御姫様だっこの状態で抱きあげる。
そして、そのまま抵抗することなく、私はベッドの上に下ろされた。
電気が消え、ベッドに横になった私に彼が覆いかぶさる。
「その…」
「なんだ?」
いまさらになって恥ずかしくなって、私は言えなかったその言葉を彼に呟く。
「初めてだから…やさしくお願いします…」
これから、あなたに抱かれるという、私なりの意志表示、きっと彼の眼に映る私は真っ赤な顔をしてるんだろう。
「気にすんな、俺もすんのは初めてだ」
186 :
マルメンライト:2011/03/29(火) 21:49:31.61 ID:anhWlOhy
彼の手が私の薄い胸をなでる、むにむにと、彼の手で私の胸が形を変える。
「ごめんなさい…胸薄くて…」
「あ〜そのなんだ気にすんな…それに」
「きゃっ!?」
突然、胸の中心をつままれる刺激に私は声をあげる。
「これだけ敏感なら十分だ」
恥ずかしくて声が出ない、自分でもよくわかるくらい、胸をつままれた時の声は快感を感じている声だった。
「それよりもお前…もしかして…」
「…うん、シャワー浴びてきた」
「やっぱりな、シャンプーのにおいが残ってる」
最初から、私は彼に抱かれるつもりだった、結果として、今のようにやさしくしてくれているけど、そんなことをされずにされてしまうことも想定して。
「…嫌い?こんな女」
ぽふんと、頭がなでられる。
気持ちいい、このまま全て捧げてしまいたい。
彼の舌が私の首をなめ、強く吸われる。
「あ、こら…痕ができちゃう…みんなに見られたらどうすんの…」
そういいながらも、彼のものの証なのだと、嬉しくなる私もいる。
「見られても気にすんな、それに…そんなこと、すぐ言えなくなる」
言葉と共に、胸が彼の口に含まれた。
「ふみゅ!?」
生温かい感触が胸をいじる、かたい感触に中心が挟まれる、必死で抑えているのに声が出る。
「駄目、声が、出ちゃう」
必死で押さえているのに、胸を刺激されると何も考えられなくなる。
「ぬがすぞ」
言葉と共に下着で隠していたそこが空気に触れ、水音を立てた。
彼に私の裸が見られている、私の全てがさらされる。
ピチャリと音が鳴って、温かくて、少しごつごつした感触がそこをなでる。
「すごいな…」
そう言って、彼が私の目の前に指を見せつける。
彼の指はぬめりを帯びた液体がまとわりついて糸を引いていた、そして、それが自分の愛液なのだと気づいて…
「っ〜〜〜!バカバカバカ!」
「ちょっ!やめろ!」
恥ずかしくて、彼の背中をたたいた。
「見せつけないでよ!恥ずかしいでしょ、まるで私がみだらな女みたいじゃない」
「悪かった!悪かったから…」
はずかしくて死にたい、初めてなのに彼の愛撫であんなに感じてしまうなんて、自分では分からなかっただけに、あんな風に見せつけられてしまうともしかして本当に私はみだらな女なんじゃないかと思ってしまう。
「みだらな女じゃないもん、あんただから濡れてるだけだもん」
「落ち着けよまったく…」
彼が呆れたように呟く、そして不意打ち気味に私にささやいた。
「心配しなくても、お前は十分良い女だ」
そして、彼の顔が私の足の間に消えていく、指とは全く違った感触に体が震えた。
「そんなとこなめちゃだめ…」
彼の舌が、敏感な部分を見つけ出して、かんだ。
「噛んじゃだめ!」
彼の口が押しあてられて、中にたまった愛液がズズズズという音とともに、吸い上げられる。
その全てが気持ちいい。
「だめ…だめ…駄目だよ…」
体に力が入らない、意識と感覚だけが鋭敏化して、もやもやとした何かが集まっていく。
「あ、あ…やめて、なんか変、なんか変になっちゃう」
「イクのか?」
彼はそういいながら愛撫を続ける。
ぱちぱちと、瞼の裏で何かがはじける。
「やめてよ、このままじゃ私壊れちゃう…!」
こんな感覚私知らない、こんな感覚感じたことない、もやもやはどんどん大きくなって、彼に刺激されてる場所あたりが熱くなる。
「いいんだよ、…そのまま感じて…イっちまえ」
彼の指が私の中に入ってきて、浅い抜き差しを少しずつ繰り返す。
体は言うことを聞かなくなって、びくびくと痙攣を繰り返す。
もやもやはどんどん膨らみそして…何かがはじけた。
体全体に快感が駆け巡り、筋肉が勝手に収縮する、足を開いていられなくて、あいつの頭を挟んで締め上げる。
歯を食いしばって、ベッドのシーツを強くつかんで、私は、今まで感じた事のないその感覚に酔いしれた。
187 :
マルメンライト:2011/03/29(火) 21:52:00.32 ID:anhWlOhy
「はぁ、はぁ…はぁ…」
「お疲れ…イイ顔してたぜ」
彼が、私にそう言って口づける、彼がほしくて、私は唇を合わせたまま舌を伸ばす。
彼の舌が私の舌に気付いて、絡みついてくる、唇が離れて糸を引く。
体は未だに電流が走っているかのように震えてた。
「ショックウォールにぶつかってるみたいだった」
「…お前な、他にもっと良いたとえかたないのかよ」
「そんなの…しらない…」
ふと、腿のあたりに何かが当たっているのが分かって、私はそこに目をやる。
そこにはパンパンに膨らんだ彼のズボンがあった。
「うにゅ…」
けだるい体を起して、彼のズボンのチャックを口で下ろす。
「おいおい…」
「いいから…」
バネが飛び出るように飛び出てきたそれは彼の指など比較にならない大きさでパンパンに膨れて、先から何か液体が漏れている。
「はむっ」
「くあっ!お、お前…」
おもいきって口にふくむと、青臭い変なにおいがする、そして、とても熱い
「んちゅ…あむ…はむ」
ぺろぺろの先をなめ、その裏の辺りをなめあげる。
びくびくと彼が震えていた。
「お前…初めてっつってたよな」
焦ったような、何かを抑えようとするかのような声が私に掛けられる。
「んむのーむは。ほうふふほ」
「咥えたまましゃべんな!」
「ぷはっ、ノームが…男はこうすると喜ぶって前…」
表情に乏しい友人のことを思い出しながら言うとディアボロスがバハムーンの部屋があるらしい方をみて呟く。
「あのトカゲ…ずいぶんやることやってんのな…」
気を抜いた彼をしり目に、彼自身を私はもう一度加えて棒のようなそれを上下にこする。
「うあっこれは…マズ…!」
彼が立ち上がって逃げそうになるのを、私は腰を掴んで離さない。
「おい、フェルパー離せ!このままだと口の中に出しちまう!」
「ひぃひほ、はひへ…」
「だからお前は咥えたまましゃべんな!」
そう言って彼が私の頭を掴んで無理やり引き剥がす。
「ぷはっ!」
「うぁ!」
ビクンビクンと彼の腰が震え、彼自身の先から白い濁った液体が私に降り注ぐ。
「あっつい…」
顔についたそれを手ですくってなめてみる、青臭くて、苦い変な味がする。
「あんまりおいしくない…」
「お前なぁ…」
「ノームはおいしいって言ってたのに…」
「…クソトカゲ…」
また彼がバハムーンの部屋らしいところを睨む、つられて見える部屋ではベッドの上で影が上下に動いていた。
188 :
マルメンライト:2011/03/29(火) 21:53:10.07 ID:anhWlOhy
「おい…フェルパー」
「はい!」
ぴん、と尻尾を立てて私は彼と向き直る。
「そろそろしていいか?」
「う、うん」
何をなんて、聞かない、彼のそこはびくびくと脈打っていたから。
私は彼のベッドに両手と両足をついて彼に向けて腰を見せつけるような形で横になる。
「…それもノームに聞いたのか?」
なぜか、彼が顔を赤くしながらそう言う。
「うん…」
「あのトカゲ、明日殺すか」
何か、私は間違ったのか、不安になって彼を見る。
「あの…」
「大丈夫だ、任せろ」
「…うん」
じっと、彼が私のそこを見る。
「な、何か変?」
私は何かおかしいのか不安になって彼に声をかける。
「いや?きれいなもんだと思って、じっと見てた」
「ばっ!…どうせ、これから好きな時に見れるんだから、じっと見なくていいじゃない」
「ああ、そうか…そうだな」
そう言って彼が私の腰を掴むびくり、と尻尾が震えた。
温かい感触が押しあてられる。
「え?これってあ、嫌だ、ちょっとまっ!…あっ、あ、あああっ!」
「わ、悪い」
「いきなりこんな…ふぅぅ」
入口が広がっているのが分かる、肺の中の空気を押しだされるような圧迫感に体が震える。
「痛いか?」
彼がやさしく背中をなでてくれる。
初めて、男の人を受け入れるそこは限界まで広がって少し息苦しい。
「いいから…まだ、一番奥まで入ってないでしょ?」
よく見ると、彼のそれはまだ先の部分が私の中に入っただけでほとんどまだ、中におさまっていない。
「…痛いんだろ?」
「でも、私が死んだ方がマシって言った時貴方はもっと痛かったんでしょう?」
私の言葉に、彼が笑う。
「仕方ないな…我慢しきれなかったらすぐ言え」
首を縦に振ってこたえる、それに合わせて彼の手が力強く私の腰を掴んだ。
189 :
マルメンライト:2011/03/29(火) 22:11:41.78 ID:anhWlOhy
勢いよく、彼の腰が私の腰にたたきつけられる。
私の中で何かがちぎれる音が響いて、体を2つに割かれるような痛みが背中をかける。
痛い、痛い、今まで感じた事のない激しい痛みに涙が止まらない、それでもしばらく我慢して待っていると、おなかの内側が何かにたたかれる感触がやってきた。
「全部…入ったぞ…」
彼の言葉に私は繋がっている部分を見る、私と彼の腰はぴったりくっついて、その間から私の腿を伝って赤い液体が彼のベッドに赤い染みを作る。
痛いことは確かに痛い、ズキズキするし、おなかの中の異物感で呼吸が苦しくなる、でもそれよりも、それよりも…
「私、貴方を受け入れられたの?」
「ああ」
うれしい気持ちで心が満たされる、ずっと追いかけ続けた彼がすぐそこにいる。
彼が頭をなでてくれるのがくすぐったくて…気持ち良い。
「…動いていいよ…男の人は動いた方が気持ちいいんだよね?」
「痛いだろ?」
確認のため、軽く腰を動かす、ゆっくりならあまり痛みは感じなかった。
「ゆっくりなら大丈夫…」
「分かった」
のろのろと、緩やかなスピードで彼のものが入口まで引き抜かれ、また奥深くに沈んで私の中をノックする。
「ふあっ…」
おそらく、子宮、そこが彼のものでノックされた時、ゾクゾクとした快感で腰が震えた。
「奥が良いのか?」
初めてで痛いはずなのにそこを叩かれると腰がとけてしまいそうなほど気持ち良い。
あまりの気持ちよさに何度も首を首を振って彼に応える。
少しずつ彼の速度が上がってくる、そうすると、奥がたたかれる感覚も短くなって次第に痛みがマヒしてくる。
彼の速度が増す、もっと早くしてほしい、もっと早くたたいてほしい。
「どう…した」
既に腰はたたきつけるようなスピードで何度も何度も奥がたたかれるのが分かる。
「はっ!あっ!きっ!気持ち!気持ちいいのが!」
体から力が抜けて、手が体重を支えられない、初めてなのに、感じてしまう。
「とまらないの…初めてなのに、初めてなのに…こんなに奥が…」
腰の動きに合わせて胸を揉まれる、敏感な部分がいじられる。
先ほどとは比較にならないほどの感覚が迫ってきているのが分かる。
突然、ぎゅっと、力強く尻尾がつかまれる。
握られた尻尾の痛みと抜き差しを繰り返す彼自身が与えてくれる感覚が混ざって、痛みを快感に感じてしまう。
「いたいの!いたいのが気持ちよくなっちゃうの!」
ぎりぎりと彼が胸の先端をちぎるかのようにねじる、痛いのに、痛いことが気持ちいい、頭の中がパンクしてしまいそうで変な性癖が目覚めてしまいそうになる。
パンパンと腰を叩きつける音がリズミカルに部屋に響く。
「お…い、フェルパー」
腰を叩きつけながら彼が私の足を掴んで私の体を回転させる。
それまでとは違う場所がこすられて、びりびりする。
「にゃ…にゃに?」
もう呂律が回らない、彼が私の方に手をまわして抱き上げる、繋がってる部分に体重がかかって、奥が余計に強くたたかれる。
「はぁ!もう、りゃ、りゃめ…イク…イっちゃ…」
「俺も…だ」
そういいながら彼が唇を重ねる、私はその唇をむさぼるようにキスを重ねる。
不意に、また尻尾が握られる、その瞬間に、私の奥に深い一撃がたたき込まれた。
「あっ!あ、ふぁああああああああ!!」
びりびりとした刺激に私は全身で打ち震える。
「くっ!くぉぉぉ!?」
達した私の締め付けに彼が限界にたっしてその欲望が私の中に注ぎ込まれる。
溶岩のような熱さががおなかに吐きだされ、満ちていくと、疲れ切った表情で彼が倒れこむ。
「悪い、膣内に出しちまった」
「いいよ、今発情期じゃないし」
発情期だったら間違いなく出来ちゃっただろうけど…。
あふれ出てきた精液を彼がティッシュで拭ってくれる。
「ねぇ、ディアボロス…今日、ここでそのまま寝てもいい?」
「…好きにしろ」
いつものような癇に障る笑顔であいつが笑う。
「愛してるフェルパー」
「私も、貴方を愛してる」
そうして、彼の腕に抱かれたまま、私は幸せな気持ちで眠りに落ちたのだった。
190 :
マルメンライト:2011/03/29(火) 22:15:38.93 ID:anhWlOhy
あいつと私は初めのころあまり仲が良くなかった。
あいつはいつも煙草を吸っていて、まじめな姿を見たことがなくて、「くだらねぇ」が口癖で。
侍のくせに武士道なんざどうでもいい、といつも口にしていた。
一言で言うなら、ロクデナシ、そんな言葉がよく似合う。
あいつと俺は初めのころあまり仲が良くなかった。
あいつは、死んだあいつによく似てて、ふざけた姿を見せたことがなくて、
「侍たるもの」そう言って、いつも俺に突っかかってきた。
一言で言うなら、クソマジメ、そんな言葉がよく似合う。
そんなあいつが気になって、そんなあいつを目で追って。
あいつの背中を追いかけて、あいつの隣に並びたくて、並べるわけがないだろう、
勝手に思い込んでいた、だから今あいつに聞きたい。
なぁ…俺は、お前と一緒にいても良いか?
ねぇ…私は、貴方と一緒にいても良いの?
191 :
マルメンライト:2011/03/29(火) 22:17:10.41 ID:anhWlOhy
嗅ぎなれた煙草の匂いと、鳥の声に目を覚ます、布団で胸元を隠して起き上がると、少し痛みがやってくる。
「…起きたのか」
「うん、ちょうど今ね」
いつもの稽古の時間はだいぶ前に過ぎている。
「初めて稽古さぼっちゃった…」
「そういやそうだな、まぁでもどちらにしろこれじゃ無理だな」
彼の言葉によく見ると、そこには折れた私の刀が広げられてる。
そういえば、私の刀は折れてしまったんだ
毛布を体に巻きつけて、彼の隣にすわって、柄から抜かれた刃に目を落とす。
だいぶ痛んでいたんだなと、心のなかで小さく呟く。
「あとで、他の素材と合わせて、ノームに新しい刀作ってもらえ、材料は俺の持ってるやつをやる」
そう言って、袋におさめられた何かを彼が私に差し出した。
「あ、これ…」
折れてなくなったはずの私の刀の刃が布に巻かれて他の素材と一緒に入っている。
「…見つけといてくれたんだ」
「さっき、たまたま見つけてな」
そう言う彼の体は汚れをあわてて落としたのだろう、まだ少し濡れていた。
「ありがと、ディアボロス」
今度は素直にそう言って、頬にキスをする。
「ふん、くだらねぇ…」
赤い顔をそむけるように、彼がそうつぶやく。
「一本頂戴」
そう言って、煙草をケースから一本ぬきだすと、お前が吸うのか?と言わんばかりの顔で見られた。
「貴方の隣に立てた記念」
わらって言うと、いつもの癇に障る笑顔であいつが笑って火をつける。
―へんな味…―
彼は何でこんなのが好きなんだろう?
もっと、彼を知りたいと思う…、だから…。
192 :
マルメンライト:2011/03/29(火) 22:18:18.65 ID:anhWlOhy
ねぇディアボロス」
「なんだ?」
煙草の煙を吐き出して、彼が私を振り返る。
「私とつきあってくれませんか?」
彼の真似して煙を吐き出す…少し、むせた。
「ははっ!」
彼が楽しそうに笑う。
「煙草にむせながら言うセリフじゃねぇよ…馬鹿…しかたねぇから付き合ってやる」
「あはは、ごめんね」
笑う私のことを彼が真剣な目で見つめて。
「フェルパー…」
「はい」
私の名前を呼ぶ、なんて言いたいのかなんとなく察して、笑みがこぼれる。
「俺の女になってくれ」
「ふふっ」
彼の言葉に思わず笑う。
「なんだよ?」
「いや、結局、私達って意地っ張りなんだなって思って」
気付いたように彼も笑う。
「違いねぇ」
「それと、答えだけど…こんな私でよければどうぞ」
193 :
マルメンライト:2011/03/29(火) 22:22:21.00 ID:anhWlOhy
タカチホ義塾の食堂
その日、食堂は静かだった、いつも喧嘩している二人が向かい合って食事をしているのに。
皆が不思議に思いながら遠巻きに眺めていると、彼らのチームのリーダーが二人の元へ寄っていく。
「ほんと君たちは仲いいね」
いつもと変わらぬ問いかけに、皆がいつもとおなじ光景を相応し、食堂が静まり返る。
だが、
「うん、私は彼のこと好きだからね」
「まぁ、俺はこいつのこと好きだからな」
あの二人の豹変に、食堂に動揺が走る。
何があったと憶測が飛び、ヒューマンが洗脳したんだと誰かが叫ぶ。
すると…
「おい、黙れテメェら、食事ぐらい静かに食えや、そんなに鉛玉を腹いっぱい食いたいか?」
唯一いつもと変わらないヒューマンの言葉に再び食堂は静まり返る。
死にたくない、そんな皆の思いとは裏腹に二人は楽しそうに食事を続ける。
タカチホ義塾は今日も平和だった。
194 :
マルメンライト:2011/03/29(火) 22:33:57.93 ID:anhWlOhy
あいつと私は昔、仲が良くなかった。
あいつはいつも煙草を吸っていて、まじめな姿を見たことがなくて、「くだらねぇ」が口癖で。
侍のくせに武士道なんざどうでもいい、といつも口にしていた。
一言で言うなら、ロクデナシ、そんな言葉がよく似合う。
おなじ侍なのにこの違いはなんだろう?種族の違い?性別の違い?
私はフェルパー、あいつはディアボロス、私は女で、あいつは男。
でも、今となっては関係ない、あいつは彼氏で、私は彼女
喧嘩もするし、キスもする、なんてことないただのカップル。
事実はそれだけ、それだけだ。
―――
以上で投下終了です。
うちのフェルパーとディアの転生24回記念に書いてみました。
ちなみに性別逆ですが他のメンバーはまだ20回しかしてないので
私の中でキャラが薄いです。
お目汚し失礼しました。
超乙!
GJ。
いいぞもっとやれ。
197 :
マルメンライト:2011/04/01(金) 21:39:21.81 ID:OeyhiU7Q
たびたび失礼いたしております。
またひとつ書きあがりましたので投下させていただきたいと思います。
今回はあまり諸注意というほどの諸注意もありません。
一応 ノーム♀×バハムーン♂
ノームの設定に少しオリジナルな設定が入ってます。
前回の話と少し関係があります、同PTです。
198 :
マルメンライト:2011/04/01(金) 21:43:15.95 ID:OeyhiU7Q
求める事が罪ならば、私は咎人なのだろう。
偽ることが罪ならば、この身は咎そのものだろう
されど、この気持ちは本物だと、私は自信を持って言える。
貴方に甘えていいですか?
貴方のやさしさに甘えていいですか?
貴方を好きで良いですか?
下から突き上げられる感覚に私は打ち震える。
「出すぞ、ノーム!」
「来て…」
私の奥深くまで突き刺さった彼のものが震えて、温かい熱が私の中に放たれる。
「ん…」
自分の中が満たされるこの感覚が私はとても好きだった。
虚ろな私が確かにここにいると感じられるから。
「…大丈夫か?ノーム」
「うん、バハムーンでおなか一杯、満足」
私の言葉に、彼が笑って頭をなでた。
「んちゅっ…はむ…」
性を放って汚れてしまった彼のものを私はなめてきれいにする。
彼の匂い…彼の味…麻薬のように私を興奮させる。
「あはっ…」
こらえられない笑みが勝手にこぼれる。
「ありがとう、ノーム」
「…うん」
そんな私を彼は温かい目で抱きしめてくれる。
こんな人形のような私を、彼は愛してくれる。
それがとてもうれしい…
感情をうまく表せない私の気持ちに、彼はすぐ気付いてくれる。
だから、私は彼が大好きだった。
フェルパーは私が彼の好きなようにされていると言っていたけど事実はちがう。
求めているのは私、求められているのは彼。
彼の全てを奪いたくて、ただひたすらに彼を求める。
欲望に忠実な浅ましい女、それが私だった。
199 :
マルメンライト:2011/04/01(金) 21:44:21.33 ID:OeyhiU7Q
タカチホ義塾食堂
最近は静かになったそこで、私はフェルパーと話をしていた。
「最近、ディアが私と一緒に稽古してくれるんだけど、やっぱりディアは凄いよ、でも、私だって負けない、この間ようやくディアから一本取ってやったし」
煙草を手に嬉しそうに笑うフェルパーはディアボロスと付き合いだしてからだいぶ変わったと思う。
雰囲気は柔らかくなったし、前はあんなに嫌っていたディアボロスのことをいつも嬉しそうに語る。
煙草を吸うようになったし、前は「あいつ」と呼んでいたのに今は親しげに「ディア」と彼を呼ぶ、そして何より、女性らしくなった。
どこが、と言われても私にはわからないけど、その変化は良いものなのだと私は感じる。
なにも、変わったのはフェルパーだけじゃない。
ディアボロスも変わったと思う、くだらねぇが口癖で、稽古などろくにしている所を見たことなかった彼が、最近は毎日フェルパーと共に朝早く稽古しているのを私は知っている。
昔彼女が嫌いだった笑みは変わらないし、口ぶりもほとんど変わらない。
なのに、それでも変わっている。
200 :
マルメンライト:2011/04/01(金) 21:45:37.62 ID:OeyhiU7Q
「…うらやましい」
「そう?私はノームのこともうらやましいと思うけど?」
「?なぜ?」
私の言葉にフェルパーが煙草の火を消して答える。
「ノームとバハムーン、ホントに息ぴったりだしね、私とディアなんてまだまだ」
「私とバハムーンはラブラブ…」
頬に手を当てて恥ずかしいという気持ちをアピールしてみるけど、フェルパーは苦笑いで返す。
やっぱり、彼以外に感情を読み取ってもらうのは難しい。
「ノーム」
ふと、声をかけられて、私はその声の主の姿を探す。
「バハムーン」
ふわふわと漂いながら彼の胸に飛び込む、私の行動を予想していたように彼は私を抱きしめてくれる。
「フェルパーと何を話していたんだ?」
「彼氏自慢、いえ〜い」
「そんなに恥ずかしがるくらいなら無理して言わなくて良い」
「ばれた…」
そんな私達のやり取りをフェルパーが新しい煙草に火をつけながらじっと見ていた。
「?どうしたフェルパー」
彼がその視線に気づいたのか彼女を見る。
「いや…、バハムーンはよくノームの感情が分かるな〜って感心してた」
「ふむ、ずっと見てきた俺からするとかなりノームは感情豊かなのだが…周りから見るとそういうものか」
彼が納得したように首を振る。
フェルパーの言うとおりだと私も思う、自分が感情を表に出すのは苦手だということは知っている、そういう意味で彼は特別だった。
「お〜い、フェルパーいるか〜?」
がらりと、食堂の扉を開けてディアボロスが入ってくる。
「あ、ディア、どうしたの?」
「いや、煙草切れちまった一箱くれ」
「…自分で買いに行きなさいよ」
「いや、そんな下らねぇことのためにわざわざ買いに行くのは面倒だろ、お前なら買いだめしてるんだろうし」
「まったく…」
やれやれ、といった表情をしながらフェルパーが懐から封を開けていない煙草をディアボロスに放る。
それを受け取ると彼女の隣にディアボロス自然に座って煙草に火をつけた。
やっぱり、なんだかんだ二人はよく似合っていた。
ヒューマンはこの二人をロクデナシとクソマジメの正反対カップルと言っていたけど、私は似たもの同士なんじゃないかと最近思っている。
「どうした?ノームあいつらがうらやましいのか?」
「それなりに…」
互いが互いを信頼し合ってる、その関係がうらやましい、私はただ、彼のやさしさに依存しているだけだから…
「気にするな、お前には俺がいる」
「ありがと、バハムーン」
彼が頭をなでてくれる、彼は本当にやさしかった。
だけど、彼のやさしさに触れるたびに私は思う。
もし彼を失うことがあったら、私はどうなってしまうのだろうと…
201 :
マルメンライト:2011/04/01(金) 21:47:41.73 ID:OeyhiU7Q
「っ!?」
目を覚まし辺りを見回す、そこは見覚えのある自分の部屋、隣のベッドを見るとルームメイトのフェアリーがすやすやと心地よさそうに眠っていた。
「…バハムーン…バハムーン」
居るはずのない彼の姿を探す、自分の部屋なのだから彼がいるはずがない、それは事実のはずなのに、私の胸を締め付ける。
怖かった…彼が隣にいないことが…。
私は寝巻のままベッドから起きると、そっと部屋を抜け出しバハムーンの部屋に向かった。
夜が怖い…彼が隣にいないことが怖い。
彼のぬくもりを感じていないと、全ては私が見ている夢で、本当は彼などいないのではという錯覚にとらわれる。
だから、私は今日も彼の部屋に行く。
足音をたてないように廊下を浮遊して気配を消して誰にも見つからないように。
コンコン
「ノームか?」
「うん…」
扉越しに聞こえてきた声に、私は安堵に包まれる。
扉が開き彼の姿がみえると、私は彼の胸に飛び込んだ。
「また、夢を見たのか」
「…うん」
最近、よく見るようになった夢だった。
ノームである私は本来睡眠など必要としない、なのに最近は気付くと眠りにおち、夢を見るようになっていた。
私の隣に彼がいない、そんな夢。
「大丈夫だ、俺はちゃんとお前のそばにいる」
「うん…」
彼が私の顎を掴んで唇を重ねる。
彼の舌に私の舌を絡めると、ようやく心が落ち着いてくる。
それでも、まだ足りない。
「バハムーン、ごめんなさい…今日も抱いてほしい…」
「分かった」
浅ましい…そう思う、夢を見るたび彼のことがどうしてもほしくなる。
夢の見る回数はだんだん多くなってきて最近はほぼ毎日のように彼に抱かれていた。
彼が私を抱きかかえ、扉を閉め、ベッドに向かう。
少し乱暴にベッドに下ろされ、彼の手が手早く私の服をはぎ取る。
彼の手がブラを押し上げ、胸を揉む、乱暴な手つきに私の胸が激しく形を変える。
「はぁ…はぁ…」
私は彼に少し乱暴に愛されるのが好きだった。
痛みを感じるぐらいの力で胸が揉まれ、ちぎるように胸の中心をねじられる。
彼の歯が私の胸を噛みちぎるように突き立てられる
「ああ…あはっ…」
ほとんど濡れていない私の中に彼の指が力強く突き込まれる。
他の人間が見たらきっとバハムーンが私のことを犯しているように見える事だろう。
「感じてるな、ノーム」
耳元で彼が囁く。
「ええ…でも足りないの…もっと…バハムーン…もっと、壊れるくらいに…」
壊れたい…彼に壊されてしまいたい、不安など感じられないぐらいめちゃくちゃにしてほしい。
彼の乱暴な愛撫がたまらない、どうしようもないほど感じてしまう。
痛いのが好きなわけじゃない、それでも、痛みは自分と彼、その両方がちゃんと存在しているのだということをおしえてくれる。
じっとりと私のそこが濡れていくのが分かる。
突き立てられた彼の指が、私の中をえぐるような力で抜き差しを繰り返す。
びくびくと体が震える。
「気持ちいい…気持ちいいよバハムーン」
快楽で何も考えられなくなる。
彼の頭が私の両足の間に潜り、敏感な突起を見つけ、歯を突き立てる。
「ふぅぅぅ!?」
訪れる絶頂を私は抵抗することなく受け入れる。
荒い呼吸を繰り返し、筋肉が収縮する、彼の指を私の膣が締め上げる。
202 :
マルメンライト:2011/04/01(金) 21:48:16.82 ID:OeyhiU7Q
「イったか?」
絶頂に震える私を見ながら彼が呟く、それに首を縦に振ってこたえ、私は膨らんだ彼のズボンに頬を寄せる。
「悪いな…ノーム」
彼が申し訳なさそうな目で私を見つめる、そんな目で見なくて良いのに。
「いつも気持ちよくしてもらってるお礼…」
ジッパーを下ろし、飛び出してきた彼のものを、私は自分の胸で挟み込む。
両手で自分の胸を抑え、彼を挟んだまま上下にこする。
胸の間から姿を見せている彼のものを私は舌でなめて口に咥える。
「ああ…良いぞノーム」
「はむっ…んちゅ…あむ…」
彼の先端の割れ目に舌を差し入れ、中を刺激する、彼の腰が跳ね上がるように震え、びくびくと痙攣を繰り返す。
「ねぇ…気持ちいい?バハムーン」
「ああ、腰がとろけそうなほど気持ちいいぞ、ノーム」
快感をこらえる彼の顔が愛おしい。
「うれしい…から続ける…」
彼の裏筋をなめあげ、胸で挟んだまま彼の袋のようになっている部分を揉む。
「っく!出すぞノーム」
彼が私の頭を掴んでしっかりと固定する。
そして、ビクビクと彼自身が大きく震え、私の口の中に白く濁ったものが吐き出される。
「んぐっ、んぐっ」
私はそれを一滴たりとも逃さないようにごく、ごく、と喉を動かして粘りを帯びたその液体を嚥下する。
そして、口の端から漏れたそれを舌でぺろりとなめ、彼のものの中に残った精液を吸い上げて全て飲み干す。
「ふぅ…ごちそうさま」
青臭くて、独特の苦味がして、でもその味が私は好きだった。
「おかわりはいるか?」
びくびくと、すぐに力を取り戻したそれを私に見せつけて彼が囁く。
「うん、今度はここに頂戴…」
手と足をついて腰を高く上げ、十分に濡れたそこを自分の指で彼に見せつけるように広げる。
分かった…そう彼が呟いて、彼のものが押しあてられる。
「行くぞ…」
「ん…」
彼のものは何の抵抗もなく私の中を突き進み、一番深い場所を叩いてとまった。
「動くぞ…」
彼は短く呟いて、私の腰をしっかりとつかむ。
彼のものが入口まで引き抜かれ、私を突き破るような力強さで根元までたたき込まれる。
ガンガンと激しく腰がたたきつけられる、そこには普段のやさしい彼からは想像できないほどいっさいの遠慮や手加減がない突きあげ、獣のような体勢で私はまるで獣のように犯される。
「バハムーン、バハムーン…」
狂ったように私は彼を求める、彼の与えてくれる快感を抗うことなく受け入れる。
「行くぞ…ノーム」
「来て…バハムーン」
獣のような咆哮と共に彼が欲望を解き放つ、体の中が満たされていく満足感に私は静かに震える。
「悪い…ノーム、また乱暴にしてしまった」
行為が終わると、彼が私の体を拭きながらそう謝ってくる、もう、何度も繰り返された光景だ。
「乱暴にされるのは嫌いじゃない」
むしろ乱暴にされる方が感じるのだから乱暴にしてもらった方が私はうれしい。
「私は貴方の物」
誇らしげに私の体に刻まれた歯型を見せつける。
「ああ…」
そんな私を彼が抱きしめる。
そのまま、私は彼に抱きしめられたまま眠る。
私は彼が好きだった。
203 :
マルメンライト:2011/04/01(金) 21:48:54.48 ID:OeyhiU7Q
溺れることが許されるなら、私は彼に溺れたい。
彼の優しさに溺れて死ねるなら、それは本望だと私はいえる。
貴方に溺れていいですか?
貴方のやさしさに付け込んでいいですか?
私は貴方が好きなんです。
204 :
マルメンライト:2011/04/01(金) 21:50:10.65 ID:OeyhiU7Q
その日、目を覚ました私は自分が熱っぽいことに気付いた。
「…体が重い」
彼との行為で感じるのとは異なった倦怠感、そして体になにか違和感を感じる。
彼はまだ眠っていた。
いつものように先に起きてる、と書置きを残し、食堂に向かう。
だが、そこに向かう途中も自分の体の違和感は取れない。
―なんか…気持ち悪い―
いつものように浮遊しているだけなのに、いいようもない嘔吐感がこみ上げてくる。
普通に歩けばマシになるかと思って歩き出すと今度は息がすぐ上がる。
ついに耐えられなくなって私はそのまま廊下に座り込む。
頭が重い。
「…ノーム?」
「フェル…パー?」
朝の稽古をしてきたのだろう、ディアボロスと一緒に歩いてきた彼女が私を見つける。
「ちょうどよかった」
最近、彼女がドクターとしての勉強を始めたのは知っている。
「保健室…連れてって」
私の言葉に彼女があわてて駆け寄ってくる。
「これはまさか…ディア!職員室にウヅメ先生呼びに行って!」
「お、おう!」
フェルパーが私の目を見つめ、抱き上げる。
「ノーム、貴方…」
「ははは…」
まいったな…
「舌噛まないように、気をつけてね」
「…うん」
彼女の言葉に私は静かにうなづく、彼女の表情で、私はなんとなく自分の不調の原因を悟った。
「…バハムーンには内緒でお願い」
「…それは確認が終わってからね、まだ勉強し始めの私じゃ、なんとも言えない」
その割に彼女は何かを確信しているようだった。
205 :
マルメンライト:2011/04/01(金) 21:50:55.97 ID:OeyhiU7Q
「これは…困ったわねぇ…」
保健室のベッドに寝かされた私をどこか楽しそうな目をしたウヅメ先生が見下ろしていた。
「…あのウヅメ先生……」
ここに私を運んできてくれたフェルパーが確認を終えたウヅメ先生に話しかける。
ディアボロスは保健室の外いるらしい。
「フェルパーさんの考えているとおりよ」
「やっぱり…」
「よくわかったわね…」
「そりゃ、私も女ですし…一応、医学勉強してますしね」
ゆっくりと私は体を起こす。
「バハムーンには言わないで…」
「そうもいかないでしょう?どうするの?」
私の言葉にウヅメ先生が真剣な表情で私を見つめる。
「お願い…します」
私の言葉にウヅメ先生はやれやれ、といった首を振った。
「しばらく、迷宮探索には出ちゃダメよ?」
「はい…」
先生の言葉に私はうなづく。
「それじゃね、後は任せたわ、フェルパーさん」
「…はい」
去っていくウヅメ先生をフェルパーが見つめる。
彼女がいなくなると、私はこらえ切れなくなってフェルパーに泣きついた。
「どうしよう…フェルパー…」
「どうしようも…いつまでも隠せるわけないわ、いつか彼も気づくはず…」
椅子に座った彼女が、いつものように煙草に火をつけようとして…やめる。
「でも、怖い…バハムーンに嫌われたくない」
怖い、このことを知った彼がどうなってしまうのかが…
彼のことが好きだから、彼の重荷になりたくない
「認めないといけない、ノーム今、貴方はね…」
「…うん」
「妊娠しているの」
206 :
マルメンライト:2011/04/01(金) 21:52:20.21 ID:OeyhiU7Q
はっきりとそう言われると認めざるを得なくなる。
「父親は…バハムーン以外いないか…」
「当然…彼以外が私を愛してくれるわけがない」
だからこそ、怖い、彼に嫌われてしまったらどうしよう、あの夢が現実になってしまったらどうしよう、と…
「幸い、私の種族の子供なら成長してもおなかは大きくならない…」
私達ノームは半霊体だ、妊娠によって生まれる子供も当然半霊体で、親が子供のアストラルボディを用意し、生まれた子供がそれに宿ることによって初めてノームの子供になる。
「でもそれ、なんの解決にもなってないよ」
「そんなのはわかってる…でも少し時間がほしい、私がこの子をどうするか考える時間が…」
「時間があれば…いいのか?」
がらりと保健室のドアを開いてディアボロスが入ってくる。
「ディア…」
「わりぃな、さすがに聞こえちまった」
「別に…気にしない」
もともと、ディアボロスは私を見つけた時点で気が付いていた節がある。
そうでなければ、保健室の外で待っていた理由がない。
「このままでいても、どうせ気付かれるぜ、あのトカゲ、あれでいてカンが良いからな」
「…知ってる」
保健室に沈黙が満ちる。
そして、堪え切れなくなったようにディアボロスが呟いた。
「1日、1日だけ俺が考える為の時間を用意しよう」
「…え?」
予想外の提案に少し驚く。
「できるの?ディア」
「これでもあいつの幼馴染だからな、理由をつけて1日だけあいつを学園から引き離す、
ただ、あいつもカンが良い俺が学園からあいつを引き離したがってることに気づけばすぐにでも学園に帰ろうとするだろう、
それに時間に余裕があれば決心が揺らぐ、だから1日だけ俺が時間を用意してやるよ」
つまり1日やるからその間に考えろ、ということなのだろう。
「…分かった、今日の間に考えて、どうするか決める」
「…それじゃフェルパー、一日だけ出かけてくるわ」
「…うん、行ってらっしゃい」
私の目の前でフェルパーとディアボロスが口づけを交わす。
「さて、ディアが頑張ってくれるらしいからバハムーンはこれで大丈夫」
フェルパーの声には彼への信頼がこもっていた。
「…あとは、私がどうするか」
「そういうこと、ま、私や彼、そしてバハムーン以外にも貴方には仲間はいるんだしね、みんなで一緒に考えましょう」
フェルパーがそう言って手を差し伸べてくる。
私はその手を取って静かに立ち上がった。
207 :
マルメンライト:2011/04/01(金) 21:58:37.15 ID:OeyhiU7Q
タカチホ義塾、会議室、本来は複数のパーティで何かを行う際の作戦会議などに使われる部屋だが、今ここに集まっていたのはディアボロスとバハムーンを除いた、私達のチームのメンバー4人だけだった。
「なるほどね…なかなか難しい問題だ」
わけを聞いたリーダーのヒューマンが静かに考え込む。
普段は銃を使った説得が得意な彼だが、今までにも何度もチームの問題を解決してきただけあって、頼れる存在だった。
時折考えをまとめるようにして、紙に筆を走らせる。
しばらくそれを繰り返すと不意にヒューマンが顔をあげた。
「確認したいことが3つほどある」
ヒューマンが静かに手を挙げる。
「…なに?」
「一つ目はフェルパーに確認、君とウヅメ先生の診断結果としては今のノームは母子ともに安定しているということでいいのかな?体調不良に襲われていたとのことだけど」
「うん、その点に関しては問題ない、
ノームの妊娠プロセス的には母体に発生する一種の“揺らぎ”が子供の半霊体を形成している証拠、
今朝の不調の原因は簡単に言うと、つわりのようなものだと思ってくれれば良い」
ドクターとしての知識を発揮するフェルパーの姿はまさに医師そのものであった。
「なるほど、それでは2つ目の確認事項だけど、これもフェルパーに聞きたい、出産を行う場合予定日はいつになる?」
「私達とはそもそもの妊娠のプロセスが違うから、予定日という概念は無い
子供にある程度の半霊体が形成されれば、あとはアストラルボディを用意するだけ
今現在のノームのお腹の子供は、アストラルボディを作るだけ、子供の半霊体の形成はほとんど終わってる
今まで気付かなかったのが、おかしいレベルではある」
なるほど、とフェルパーの言葉にヒューマンがまたうなづく。
「3つ目、ノーム自身の意志としてはどうなんだ?産みたいのか、産みたくないのか、バハムーンに伝える伝えない以前にまずそれをはっきりするべきだ」
ヒューマンの目が私をまっすぐ見据える。
私の意志、私自身の気持ち…言われてみれば、彼のことばかりで、言われるまで自分自身の気持ちなど考えていなかった。
私自身はどうしたいのだろうと考えると、答えは意外と簡単に浮かんできた。
208 :
マルメンライト:2011/04/01(金) 21:59:36.11 ID:OeyhiU7Q
「…産みたい」
そう、私は産みたい彼の子供を、でも彼の重荷になってしまうのではないか、彼がいなくなってしまうのではないか、とそれが怖い。
「なるほど、確認したかったのは以上だ」
そう言ってヒューマンはまた考え始める。
「何か私にはノームが難しく考えすぎてる感じがするね」
それまで静かに座っていたフェアリーがぽつりとつぶやいた。
「…考えすぎてる?」
うん、と私の言葉にフェアリーがうなづく。
「産みたいという意志はあるのに、バハムーンに関しての問題では彼に否定されることが前提になっているように私は感じる、ねぇ、ノーム貴方の知る彼はそれほど信頼に欠ける人物なの?」
「…そんなわけない、それでも私は彼の重荷になりたくない」
「ふむ、なるほどこれはバハムーンというよりやはりノーム自身の問題だな」
私の言葉にヒューマンが納得した表情でそうフェアリーに告げる。
「でしょ?」
私自身の問題?
「心のどこかで彼を疑ってる、そう言いたいんじゃない二人は」
フェアリーとヒューマンを見ながらフェルパーがそう告げる。
「おおむね、そう言うことだね」
そんなはずない、と言いたいのになぜかそれが言葉にならない。
私は彼を疑っている?
「疑ってなんかない…」
絞り出すように私はそう言う、私が彼を疑うはずがない。
「言い方を変えようか、ノーム、君はバハムーンに好かれているという自信がないんだろう」
「それは…」
ヒューマンの言葉に私は何も言い返すことができなかった。
確かに私は彼のことを愛している、でも…
「だって…愛してるなんて、好きだなんて…私、一度もバハムーンから言われたことない…」
209 :
マルメンライト:2011/04/01(金) 22:00:47.34 ID:OeyhiU7Q
「なるほどね…」
ようやく私の態度に納得いったというようにフェルパーが呟いた。
彼女は懐から煙草を取り出して咥える。
そして窓辺に座って火をつけると、静かにその煙を吐き出した。
「ノームが不安がるのもわかるけど…くだらねぇ、あいつならきっとそう言うかな」
「ディアボロスなら確かにそういいそうだね」
フェルパーの言葉にフェアリーが笑う。
やれやれ、といった顔でヒューマンが首をすくめた。
「…どういうこと?」
みんなは分かっているようだけど、私だけが分からない。
「あのね?ノーム、バハムーンが何で貴方の感情を感じ取れるか考えたことないの?」
まるでヒントを与えるかのようにフェアリーが私をみてそう言った。
「え?」
バハムーンが私の感情を読み取れる…理由?
そんなこと考えたこともなかった。
「…なんで、だろう」
「好きだから…でしょ?」
私が悩んでいると、フェアリーが私の頭をなでながらそう言う。
「え?」
「好きだから、貴方のことを知りたくて、ずっと貴方を見てきたから、彼には貴方の感情がわかるんじゃない?違う?」
「あ」
ふと、私は彼の言葉を思い出す。
―ふむ、ずっと見てきた俺からするとかなりノームは感情豊かなのだが…周りから見るとそういうものか―
ずっと見てきた、私のことを…こんな人形のような私を彼はずっと見てきてくれた。
彼と初めて会った時、彼はただよろしくと手を差し出した。
初めて彼に抱かれた時、彼は俺を選んでくれてありがとう、と言ってくれた。
夢を恐れて彼の部屋に逃げるたび、彼は私を抱いてくれた。
こんな欲望に忠実な私を見てきてくれた。
ずっとそばにいてくれた。
言葉で伝えられたことは無いけれど、彼はきっと私を思ってくれていた。
「みんな、ありがと、決心ついた」
もう、心に迷いなんてなかった。
明日、彼に伝えよう、彼のことを信じているから。
210 :
マルメンライト:2011/04/01(金) 22:01:34.51 ID:OeyhiU7Q
この子が許されるならば、私は望んで罰を受けよう。
貴方を信じていいですか?貴方が祝福してくれると
貴方は許してくれますか?私がこの子を産むことを
私は望んで良いですか?この子と貴方と歩むことを
私の願いはただ一つ…ただ、この子に祝福を…
211 :
マルメンライト:2011/04/01(金) 22:02:58.51 ID:OeyhiU7Q
タカチホ義塾、学生寮
その中のある一室の前に私はいた。
コンコンとドアをノックする。
そう言えばこんな時間に彼の部屋に来るのは初めてだった。
「どうしたノーム?」
「ん、話したいことがある」
私が緊張している、ということに気づいてくれたのか彼は静かに部屋の中に招き入れてくれる。
「それで…話というのは…」
「うん…私…妊娠した…らしい」
言ってしまった、恐る恐る彼を見る。
彼はすこしおどろいたようだけど、いつものやさしい表情で私を見る。
「なるほど、いつ生まれる?」
「あの…ある程度私の中ではっきり半霊体ができないといけないから…ひと月くらい、あとアストラルボディもつくってあげないといけない…」
「ひと月ほどで生まれるのか…なるほど」
彼の言葉を私はひたすら待つ。
「…すまないノーム…」
ぎゅっと、手を握る。
やはり、許してくれないのだろうか?
「男なのか女なのか分からないと、名前のつけようがない」
「え??」
予想の斜め上をいく答えが返ってきた。
「ん?あとひと月だから急いで名前を考えろ、ということじゃないのか?…そうか、両方を考えれば良いのか?いや…しかし…どうしたノーム?」
何か自分がすごく無駄なことで悩んでいたようで体から力が抜ける。
みんなの言うとおり、私は難しく考えすぎていたのかも知れない。
心配そうに私を見る彼に、あんしんして、と呟いた。
「女の子の名前、それだけ考えてくれれば良い」
「そうか、なら二人でこれから考えよう、それと…ノーム」
ん?と顔を上げると、彼が私の唇を奪う。
「ありがとう、俺の子供を授かってくれて…それと…今まで恥ずかしくて伝えられなかったが、愛している」
「っ!」
我慢しきれなくなって私は彼に抱きついた。
外には少し時期の早い雪が舞っていた。
212 :
マルメンライト:2011/04/01(金) 22:03:43.90 ID:OeyhiU7Q
それから3カ月後
本格的な冬を迎えたタカチホ義塾の食堂、そこはざわざわとした気配が包んでいた。
向かい合って食事を続けるバハムーンとノーム、そしてそのノームの膝の上にはクラッズと見間違えるような小柄な少女が座っていた。
短い尻尾を足に巻きつけた、幼いバハムーンにも見えるし、ノームのようにも見える白い髪をした小さな少女。
その少女をバハムーンとノームはやさしい目で見つめていた。
「ぱぱ、ぜりー、ぜりー」
「駄目だ、まず皿の隅によけたピーマンをちゃんと食べろ、食べたらパパのゼリーをやろう」
「や〜!まま食べて!」
「…パパの言うこと聞かなきゃだめだよ、スノウ」
「ぶ〜」
スノウと呼ばれたその少女は膨れながらも皿の端によけたその野菜を口にする。
母親とは違って一目でわかるほど苦そうに顔をゆがめた彼女の姿に、親になった二人が破顔する。
そんな彼らの光景に食堂にまた噂が伝播する。
今、間違いなくパパっていったよな、知らないの?あいつら結婚したんだよ?
マジで!?ホントホント何で知らないの?俺この3カ月学園にいなかったしそんな会話が交わされて、にわかに食堂が騒がしくなる。
そんな食堂の扉が勢いよくあけ放たれ、拳銃を両手に構えたヒューマンが姿を現す。
「オイ、テメェら…俺は前に食事ぐらい静かにしろっつたよな」
「サー!申し訳ありません、サー!」
彼の言葉に騒いでいた食堂の全員が背筋を伸ばし、現れたヒューマンに敬礼する。
そして、ただひらすらにもくもくと食事を再開する。
「ひゅーにゃん〜かっこいい〜」
キャッキャと、スノウが笑う。
「ヒューマンだ…いい加減覚えろスノウ、トカゲ!ガキに俺の名前をちゃんと覚えさせろ!」
「無茶言うな、そもそもスノウはまだ2カ月だぞ、意志疎通できるだけ奇跡と思え、それにそもそもお前はマシな方だ、フェルパーとディアボロスはそれぞれ、にゃーにゃー、ともーもーだぞ…それと言っとくが…もし娘に手を出したら…コロス」
「出すか阿呆」
そう答えるバハムーンの顔はすでに立派な父親としての威厳に満ちている。
「…スノウ、パパが目を離してるうちにパパのお皿にピーマン移すのはだめよ」
「む〜」
母親となったノームは、愛するわが子の頭をなでてそうつぶやく、その顔には確かに慈愛の感情が満ちていた。
恋人から夫婦、新たな関係を歩みだした二人。
そんな二人を見つめながらフェアリーは小さく呟いた。
「彼らに神のご加護がありますように…」
タカチホ義塾は今日も平和だった。
213 :
マルメンライト:2011/04/01(金) 22:08:17.53 ID:OeyhiU7Q
以上で投下完了です
フェルパーとディアは恋人になる二人だったから今度は恋人の次の関係に進む二人が書きたかったので書いてしまいました。
今回諸注意でいっていたオリジナルの設定はノームの妊娠に関してです。
私としては種族として存在する以上、妊娠できるんじゃね?とか考えております。
実際どうなんだろう?
それでは今回も駄文失礼いたしました。
>>213 GJ末永く爆発しろ! ってどうして俺が一番槍・・・
久々に来たら新作増えててうれしかったッス!
GJGJ。ノームの繁殖は言及されてないだけに夢が広がるな
216 :
マルメンライト:2011/04/05(火) 23:28:27.67 ID:tUYjDRWw
計画停電が最近ないので先日から仕事が再開して今、帰宅
みなさんGJありがとうございました。
シリーズものっぽくなってたら良いなと思いながらまた投下します。
諸注意 ヒューマン♂×フェアリー♀ チョイ暗め?
前回、前々回とまた同じPTの6人改め7人です。
エロはそれなりに頑張ったつもり
それではよろしくお願いします
217 :
マルメンライト:2011/04/05(火) 23:30:27.73 ID:tUYjDRWw
俺はどこかが歪んでる。
あいつの笑顔をみるたびに、苦痛で歪む姿がみたい
細い体に爪をたて、その体を引き裂いてしまいたい
あいつが俺を呼ぶたびに、細い首を絞め、苦しむあいつの姿がみたい
俺をあいつに突き立てて消せない傷を刻みたい
あいつがどうしようもないくらい好きなのに
あいつを壊してしまいたい
ああ、俺はどうしようもないくらい歪んでる。
218 :
マルメンライト:2011/04/05(火) 23:31:17.09 ID:tUYjDRWw
抜き打った練習用の拳銃は、木製の練習刀に弾かれ飛んで行った。
「どうしたよヒューマン、調子悪いじゃねぇか」
組手の相手をしてくれたディアボロスが僕を見てそうつぶやいた。
5戦、0勝5敗、普段の僕なら考えられない成績だと彼は言いたいのだろう
「…どうにも、欲求不満でね」
最近は手ごたえのないクエストが多くて、僕の胸に抑えている暴力的な衝動はたまり続ける一方だった。
「たまってんなら彼女のフェアリーに処理してもらえば良いじゃねぇか」
煙草を咥えたディアボロスが軽薄な笑みでそう言ってくる。
「黙ってろ、二度とモノが使えねぇようにしてやるか?」
「おお、怖ぇ怖ぇ、そいつは簡便だな、フェルパーを満足させられなくなる」
「ちょ!ディアなにいってるの」
傍らで僕らのことを見ていたフェルパーが真っ赤になりながら近づいてくる。
「ははは、ホントに君らは仲いいね」
苦笑いで彼に言った言葉は本心だった。
自然体で接し合える彼らがうらやましい、彼らがつきあいだしてからもう9カ月ほどにもなっていて昔の彼らからくらべると想像もできないほど二人は変わった。
顔を合わせるたび喧嘩が絶えなかった二人は楽しげに会話をするようになったし、フェルパーは煙草を吸うようになり、ディアボロスはこうして稽古をするようになった、互いに影響を与えあっているということが二人を変えた。
フェルパーはディアボロスの妹のような人間を助けるようになりたいからと、ドクターとして勉強を始めた。
その腕はパーティ内でもかなり信頼におけるものとなっていて、4か月ほど前にノームの妊娠が発覚した時もその知識を発揮し問題の解決に一役かってくれた。
ノームとバハムーンも子供が生まれてからだいぶ変わった。
昔はほとんど表情や感情をうかがい知れなかったノームは母親になってからは少し、感情が分かりやすくなった、僕らの中で最も年下ではあるけれど、精神的な面でいえばうちのパーティでもっとも大人として意見を言えるのが今の彼女だと思う。
そして、昔はあまりしゃべることがなかったバハムーンはかなり口数が増えた、そのほとんどはまだ幼い娘の話ばかりではあるけど、それもある意味もっと父親らしいことだと思う。
みんな変わってきている。
初めて僕らがあった時から…。
変わっていないのは僕…、未だに胸の中に抱える歪みのせいで、好きな彼女との関係を進める事すら恐れている僕。
ときおり自分が彼女のことを好きでいるのは別の理由なんじゃないかと思う自分がいる。
依存させるだけさせて、裏切った時どんな顔をするのか見たいだけなんじゃないかと、自分自身が信用できない。
それが、俺に彼女との関係を進めさせることを拒んでいる。
余計なことを考えたせいか俺の中の歪みが獣のように暴れだす。
「あ〜クソ…」
胸糞が悪い、何もかもぶち壊してしまいたい。
219 :
マルメンライト:2011/04/05(火) 23:32:33.17 ID:tUYjDRWw
「ヒューマン腕だして、精神安定剤注射してあげる」
俺を見たフェルパーがドクターとしての顔でそう言う。
「悪いが頼む、すげぇ気持ち悪ぃ…」
「でしょうね、ひどい顔」
傍らに置いた鞄を開き、中から注射器を取り出し、アンプルを片手で開けて、中の薬剤を注射器で吸い上げ、軽くはじいて空気を取り除く。
そして、慣れた手つきでアルコールを含ませた綿で僕の腕を吹き、注射器の針を腕にさし薬剤を押しこむ、薬が注射されしばらく休んでいると少しだけ暴れてた馬鹿がおとなしくなってきて心がだいぶ落ち着いてくる。
早く、こんな薬の世話にならなくて良いようになりたいものだ。
「よし、ディアボロスもう一回やろうぜ、ちょっとばかし暴れてぇ」
薬だけでは抑えきれない分が少しだけ、まだ暴れてた。
「はいよ、リーダー」
ほんの少しでも良い、この衝動を抑えられるようにするのが僕の目標だった。
タカチホ義塾、食堂
ここにはあるルールが存在していた。
曰く、とあるヒューマンに逆らってはいけない。
曰く、そのヒューマンに何かを言うときは言葉の頭と終わりにサーをつけないといけない。
ある意味食堂の掟とも言うべき彼はチームのメンバーと共に静かに食事をとっていた。
ゆえに食堂は静かだった。
「…平和だね〜」
冬も過ぎて温かくなってきた、だがそれ以上にぽわぽわと温かい空気を漂わせてフェアリーが呟く。
「僕としては少し物足りないかな、なんか思いっきり暴れられる相手がほしいよ」
「ヒューマンは戦うの好きだもんね」
「戦うのも好きだけど、フェアリーのことも大好きだよ」
心の中の凶暴性を抑えながら僕はフェアリーにそう答える。
「やだ、ヒューマン」
僕の言葉にフェアリーが頬を染めて恥ずかしそうに笑った。
彼女は僕が抑えている凶暴性に気付いているだろうか?
彼女に笑顔を見せながら心の中で、彼女は首を締めたらどんな顔をするのだろう、という暗い想いを抱いている。
「でも、確かにヒューマンの言うことも分かる気がする、なんか最近静かすぎ…その分、子育てに専念できるから私はうれしいけど」
腕の中で眠る、生まれて約半年になるわが子の頭をなでながらノームはぽつりとつぶやいた。
「まぁ、今はいろいろ忙しい、クエストの依頼も内容が限られるだろう」
バハムーンは眠るわが子、スノウの頬をつつきながらそう答える。
しばらくすると、三学園の交流戦が開かれる、その準備もあって、受けられるクエストもその準備にちなんだものが多い。
そんなこともあって、最近の僕らは暇だった。
「ディアは少しうれしいんじゃない?」
「まぁな、フェルパーが毎日俺の部屋にくるから退屈はしねぇし」
少し離れた位置で煙草を吸う侍カップルはもはやこの食堂の名物と化している。
ふと、僕はそんな二人をフェアリーがうらやましそうに見ているのに気がついた。
「どうしたの?フェアリー」
「…ん、なんでもない」
僕の言葉にそう答えるフェアリーは言葉とは違って少し悲しそうだった。
220 :
マルメンライト:2011/04/05(火) 23:33:32.45 ID:tUYjDRWw
俺はどこかが歪んでる。
彼女の悲しそうな顔を見るたび、俺だけのものにしてしまいたいと思う。
何かを耐える彼女を見るたび、泣き叫ぶ彼女を夢想する。
彼女のことを汚したい、彼女のことを壊したい…
彼女の服を引き裂いて、彼女に自分を突き立てて、あの羽を爪で切り裂いて…
ああ、俺はやっぱり歪んでる。
彼女の全てを奪いたい…
食事を終えると、僕は散歩と称して一人で学園を後にする。
いい加減爆発してしまいそうな衝動を発散させておきたかった。
ノームに作ってもらった薬を振りまいて、モノノケが集まってくるのを待つ。
衝動に一度身をゆだねてしまうと僕は仲間であっても傷つけてしまう。
フェアリー以外のみんなは知っていて、何も言わずに協力してくれる。
それがとてもありがたい、彼らとパーティを組めて本当によかったと思う。
次第に集まってきたモノノケを見ながら、僕はゆっくりと自分の心を縛る枷をはずす。
今この瞬間だけ、僕は俺という獣になる。
集まったモノノケの中心に飛び込み、手じかなモノノケの頭を拳銃でポイントし吹き飛ばす。
辺りに血が飛び散って、集まったモノノケが騒然とする。
そうだ…おびえろ…
拳銃では味わえない感触が楽しみたくて、俺は拳銃をホルスターにしまう。
目の前の恐怖にとらわれたモノノケが、恐怖の原因を排除しようと俺に飛びかかる。
「…くはっ!」
笑みが、こぼれる、ああこれだからたまらない。
飛びかかってきたモノノケの首をつかみ、地面にたたきつけ、暴力的に引きちぎる。
一瞬で絶命できなかったモノノケが苦しげに暴れ、辺りに血をまき散らせながらゆっくり力尽きる。
息を大きく吸い込むと、血の匂いが胸を満たす。
「くはは!くはははは!」
ああ、楽しくてしょうがない。
次のモノノケに手を伸ばす。
俺はただただ衝動を満たすため。素手でモノノケを屠り続ける。
モノノケを狂ったように引き裂いて、その体をまき散らす。
狂った行為に酔いしれる。
――――
「…はぁはぁはぁ」
ようやく衝動がある程度おさまる頃には辺りは血の海と化していた。
歪に引きちぎられたモノノケの死骸が散乱し、スプラッタ映画の様相を見せている。
これを自分がやったのだと思うと、その醜悪さに吐き気がする。
「うぐ…」
こみ上げてくる嘔吐感に僕は胃の内容物を吐き出した。
僕と俺、どちらが本当の自分なのかが分からない。
僕は彼女が大好きで、彼女のことを守りたい。
俺は彼女が大好きで、彼女のことを壊したい。
「ははは…ホント自分がやんなるなぁ…」
どうしてこんなにも自分は歪んでしまっているんだろう
「でも、僕は君といたいんだ…」
だから僕はこの行為をやめられない。
抑えておいた衝動を発散させ、理性で縛れるようにしなければいけない。
彼女を傷つけないように、彼女に嫌われないように…
僕は歪んでる、彼女を傷つけないために、他のものを代わりに傷つけないと自分を保てない。
「歪んでんなぁ…」
楽しいことなんて何にもないはずなのに、なぜか笑いが止まらなかった。
221 :
マルメンライト:2011/04/05(火) 23:35:05.54 ID:tUYjDRWw
ぽつぽつと地面に広がる染みにヒューマンが歩みをとめた。
「あー…雨が降っちゃったか」
「う〜ん急いで帰れば大丈夫だと思うけど…」
今、私と彼は二人きり、ただのお使いのようなクエストを受け、ヨモツヒラサカへ来ていた。
学園を出てきたときは雨など降るとは思っていなかったし、当然雨具など用意しているわけがない、予報士の私にしては気を抜いてしまったなと思う。
「最悪あんまり強くなるならどこかで雨宿りしよう、ある程度すれば、弱まると思う」
「フェアリーがそう言うなら、それで行こう」
彼が私にそう言って歩き出す。
「そういや、二人きりっていうのも久しぶりだね」
「そうだね」
私達はチームだから何かをするのも6人一緒だった。
「スノウちゃん大丈夫かな?」
「フェルパーもいるから大丈夫だよ、きっと」
本来は今日のこのクエストだって6人、いや7人で行く予定だった。
先生に頼まれたアイテムをヨモツヒラサカに買いに行くだけ、だからピクニックみたいな感じで行こうと言ってたのだけど…。
今朝になって、ノームの娘、スノウちゃんが熱を出した、バハムーンは大慌てで、ノームは冷静だったけど、結局二人は子共の看病をするため、クエストに向かうのを断念した。
更に不幸は重なってウヅメ先生が出張とのことで不在だったことからドクターでもあるフェルパーも学園に残ることになった。
ディアボロスは「この状態で、俺だけ行ったら馬に蹴られて死ぬからやめとくわ」とか言ってたけど、友人の娘のために薬を調達しに行ったのを私は知ってる。
そんなこんなで今、私と彼は二人きり。
次第に強くなる雨から逃げるように足早に歩く。
「結構強くなってきたね」
「…うん、このままだとまずいね」
予想外に天気がひどくなってきている。
空は黒い雲に覆われて、どんよりと濁り遠くからはゴロゴロと私の苦手な音が聞こえてくる。
雨の勢いも強くなって、しばらく弱まりそうにない。
「あそこ…あそこで雨宿りしよう!」
「分かった!」
少し遠くに見える洞窟を指差し、彼と一緒に走り出す。
どうせゆっくり向かっても濡れてしまうのだからなるべく雨に濡れないように、などといったことはもはや気にしない。
ルートなんか無視して手じかな洞窟へ走り込む。
「う〜びしょびしょ〜」
思ったよりも距離があったせいで結局びしょぬれになってしまった。
「何か、取り合えず火を用意しよう」
「うん」
彼の言葉にうなづきながら洞窟の中を調べると、枯れた草や木の枝のようなものがすぐ見つかる。
「ん、これなら大丈夫かな?」
とりあえずそれをかき集めて広いところへ移動させる。
「あつめてきたよ〜」
「ありがと、フェアリー」
そう言って彼が私の集めた草に向かって札を投げる。
「火遁」
ボッっと火が燃え上がって草や枯れ木に燃えうつる。
洞窟内が少し明るくなって、彼と笑い合おうとして、私を見た彼があわてて目をそらした。
「ん?どうしたのヒューマン?」
「その…フェアリー、なんて言うか…透けてる」
彼の言葉の意味をすぐには理解できないけど、彼の顔が赤くなっていることに気づいて…。
私はあわてて背を向けた。
確かに、少し自分で子供っぽいと思ってる緑のストライプのブラが透けていた。
「あはは…多分すぐ乾くから、それまで…ごめん、見ないでほしい」
「うん」
私の言葉にヒューマンは背中を向けて洞窟に座る。
少しはずかしいけど、私は上着を脱いで、焚火の近くに置いておく。
しばらく、私の上着が乾くまで私達は無言だった。
222 :
マルメンライト:2011/04/05(火) 23:35:50.45 ID:tUYjDRWw
ようやくある程度乾いた上着を着て、下着が透けていないのを確認する。
「ごめん、ヒューマンもういいよ」
「ああ」
さすがにもう、落ち着いてきていた。
外の様子を見てみるが、雨は先ほどよりも強くなっている。
「雨…弱まらないね」
「そうだね、ディアボロスとかが迎えに来てくれれば良いんだけど…」
もしかしたら迎えには来ているかもしれないけど、このような洞窟にいるのでは気付かないかもしれない。
「気付かない…かな?」
「だろうね」
私の言葉にヒューマンがうなづく。
「火が消えちゃいそうだからもっと草とか持ってくるね」
「分かった、僕は一応、ディアボロス達が来ないか外を見とくよ」
洞窟の奥に再び向かって、枯れた草を拾い集める。
その中に私はふと特徴のある草を見つけた。
「この草…どっかで見た気がする」
何だっただろうか、思い出せないけど…毒とかそういう草ではなかったはずだ。
「まぁいいか、大丈夫だよね」
そう言って私は彼のもとに戻る。
その草が、どんなものであるかも知らずに…。
223 :
マルメンライト:2011/04/05(火) 23:36:55.55 ID:tUYjDRWw
「ただいま〜」
そう言って彼女が返ってくる。
「お帰り、少しは弱くなってきたからもう少しの辛抱だろうね」
「本当?よかった…」
彼女がそう言って火に持ってきた草を足していく。
ぱちぱちと火が再び強くなって、燃えた煙が洞窟に満ちていく。
―ん?―
その匂いに、何か嗅いだ事のある匂いが混じっていた。
麻酔効果を持った葉の匂い。
そんなものがこのあたりにあるはずがない、僕はそれを気のせいだと思い、雨がやむことを彼女と祈っていた。
だが、しかし、時間がたってくると、異変がやってくる。
頭に時折、鈍い痛みが走る。
彼女にばれてしまわないように、僕は洞窟の壁に背を預けて、その痛みに耐える。
「どうかしたの?ヒューマン」
彼女が僕を心配したのかそう言って僕のところにやってくる。
「ん、大丈夫、なんともない、ちょっと疲れたな、と思って」
僕の言葉に、そっか、とフェアリーが隣に座った。
少し、彼女も熱っぽいような感じがする
だとすると、やはり、あの草の中に僕の予想通りのものが混じっていたのだろう。
嗅いだ事のある匂いはまだ漂っている。
麻酔効果といっても体の痛みをマヒさせるためのものじゃない、理性を少しだけマヒさせる一種の媚薬みたいなものだ。
少ない量だから彼女に与える影響は小さいからちょっと熱っぽくなる程度、だけどその少ない影響でも今の俺には十分に辛い、危ういバランスを保っていた理性が崩れそうだった。
くそったれ…
心の中で俺は吐き捨てた。
「ホントに大丈夫?ヒューマン」
「うん、大丈夫だよ、フェアリー」
だから今の俺に近づかないでくれ…
ゴロゴロと空がなる。
そう思ったかと思うと空が白く光った。
「きゃあ!」
フェアリーが小さく悲鳴を上げて、抱きついてくる。
彼女の匂いが漂ってくる。
「こわかった〜」
彼女がそう言って、顔を上げる。
思わず、俺の目が彼女の細い首に行く。
理性がきしんだ音を立てる。
「大丈夫?ヒューマン?」
「ああ…」
彼女の声が遠くで聞こえる気がした。
だれでも良い、今の俺を止めてくれるなら。
いつも抑えてる暴力的な衝動が、俺の胸に襲いかかってくる。
まだ大丈夫、だけど、お願いだ、もうこれ以上、俺に彼女の弱い姿を見せないでくれ。
自分が抑えられなくなってしまう。
だが、現実は非常で、再びの稲光と共に彼女が俺に飛びついてくる。
俺の腕に彼女の柔らかい感触が触れている。
意識が黒く、塗りつぶされていく。
「雷やめてほしいのに…っごめん!」
何かに気づいて恥ずかしそうにあわてて離れた彼女の眼に涙が見えて…
その彼女をほしいと思った。
一度、思ってしまうと俺の理性なんてもろい…抑えていた衝動が暴れだす。
理性の崩れる……音が聞こえた。
224 :
マルメンライト:2011/04/05(火) 23:37:50.00 ID:tUYjDRWw
「雷やめてほしいのに…」
思わず、彼を抱きしめていたことを気付いて、あわてて離れる。
「ご、ごめんヒューマン思わず…」
続けようとした言葉が彼の唇でふさがれた。
―え?―
突然の行動に、頭が真っ白になる。
強引に彼の舌が私の口の中に入ってくる。
無理やり舌をからませて、口の中が蹂躙される、重ねられた唇から、彼の唾液が私の中に流れ込んでくる。
遅れて到達した思考が、彼が私の唇を奪っているということをようやく、伝える。
「んん!!」
逃げ出そうとするけど、頭は強く抱かれて、動かせない。
彼の舌から逃げるように必死でからめられている舌をはずそうともがく。
逃げる私の舌が彼の舌と激しく絡み合う。
息が苦しくなって、あばれると、ようやく彼が私を解放する。
呼吸を整えようと大きく息を吸い込むと、その瞬間、再び頭を抱かれて唇を無理やり奪われる。
「ん〜〜!!」
呼吸がまともにできない。
苦しくて思わず叫んで、涙が出る。
酸欠で倒れそうになると、ようやく拘束が解放され私はあわてて息を大きく吸い込んだ。
「ヒュー…マ、いきなり…なんで」
肩で息をしながら彼にそう問いかける、でも彼は何も答えず私の肩を掴んで引き倒す。
「いたっ!」
石の床にたたきつけられ、背中を打った。
なんとか立ち上がろうと床についた手が、彼によってひねられる。
「やめて!痛いよ、痛いよ」
でも、彼は何も答えない。
ただ、どこか楽しそうな目で私を見ている。
怖い…怖い……
「いや…いや……」
思わず彼から逃げるように後ずさる。
「にげんなよフェアリー…」
ゾクっとするほどの冷たい声で彼がようやく言葉を発する。
彼が私の肩を掴んで強くきしむぐらいの力でがかけられる。
「痛い!痛い!!やめて、やめて!!」
「ああ、その声だその声でもっと泣けよフェアリー」
彼が楽しそうに笑う。
見たことのない澱んで歪んだ笑み。
そのまま私は再び冷たい石の床に押し付けられる。
もがいた両手が頭の上で彼に拘束される。
ようやく、私は彼が何をしようとしてるのかを察して叫んだ。
「ヤダヤダ!やめてよ、こんなのヤダ!こんな無理やりなんてイヤーーー!!」
もがくように暴れる私を彼が暗い笑みで見下ろしている。
こんなのヒューマンじゃない、こんな怖いのが彼であるはずがないと私は今目の前で起きていることが信じられない。
私だって、彼に抱かれることを考えたことがないわけじゃない、でも、こんな風に無理やりされるのは、恋人がするものとは絶対に違う。
ビリビリと布が裂ける音が響いて、胸に直接冷たい空気が触れる。
犯される…彼が怖くて仕方がない
絶望が私を包んでく。
「もう…やめて…いつもの貴方にもどってよ…」
―怖いよ、助けてよヒューマン―
襲っているのは彼なのに、私は心の中で彼に助けを求める。
ぼろ布のように犯される姿が頭に浮かんで恐怖で涙があふれてくる…。
「もう…やめてよ…ヒューマン…こんなの…やだ…」
―初めてが…こんなの…いやだよ…―
私が彼の名前をつぶやくと、ビクンと彼の体が震えた。
225 :
マルメンライト:2011/04/05(火) 23:40:19.46 ID:tUYjDRWw
涙でゆがんだ視界の中で彼の眼にようやく正気の光が戻ってくる。
そして、私の姿と自分の両手を見つめ何かを恐れるように震える。
「ご…ごめ…フェア…リー…僕は…俺は…そんな…」
頭を押さえてヒューマンが震える。
自分が何をしていたのか、それを思い出すかのように震え
「ヒュー…」
「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!!!」
彼の絶叫が洞窟内に響きわった。
「ああああ!!!!」
涙を流し、叫びながら洞窟の壁を殴りつける、頭を叩きつける、拳に血が滲み額が裂けて血があふれる。
「ヒューマン!大丈夫、わたし大丈夫だから」
あわてて駆け寄って彼をゆする。
だけど彼は私が目に入らないかのように壁を殴り、頭を叩きつける。
「もうやめて…!私…こんなふうに…あなたにこんなふうになってほしくなんて…」
拒絶したけど、ただ初めては彼の部屋で優しく奪われたいだけだった…
あんなふうに一方的に奪われたくなかっただけなのに…
痛々しい彼の姿が見ていられない。
耳をふさいで目を閉じて震える。
―聞きたくない、見たくない―
彼を止めなきゃいけないのに…私は目をそむけてしまう。
「オイ、どうした!!」
聞き覚えのある声に私は顔を上げる。
フェルパーとディアボロス、その二人が驚いた表情で立っている。
「ヒューマンを…ヒューマンを止めてよ…このままじゃヒューマンが」
狂ってしまったように壁を殴り、頭を叩きつける彼の姿にフェルパーが叫んだ。
「ディア!ヒューマンを!」
「くそ!このいい加減にしろ!っこのバカが!!」
ディアボロスがヒューマンを壁からひきはがし、取り押さえる。
「ああああああああああ!!!!」
だけど普段のヒューマンからは想像できないような暴れ方でディアボロスを弾き飛ばす。
「くそっ!正気失うとめんどくせぇやつだ!」
殴られた腹を押さえて立ち上がったディアボロスがもう一度ヒューマンと組み合う。
「今だ!やれ!フェルパー」
その言葉に応えるように、フェルパーが二人の脇を駆け抜け、ヒューマンの背後に回り込む。
「…ごめん!ヒューマン!」
キン!と何かが鋭い音をたてて、鳴った。
ヒューマンの体から力が抜け、倒れる。
「ヒューマン!」
「安心して…峰うちよ」
フェルパーはそう言って懐から注射器を取り出すと、意識を失ったままのヒューマンの腕に注射する。
そして、注射器をはずすと、ようの無くなった注射器を背後に投げ捨てる。
「疲れた…」
「ほんとだよまったく…くだらねぇ…」
安心したように呟き、煙草に火をつける二人の姿に、ようやく私も力を抜いて倒れこんだ。
私達を二人は迎えに来てくれたらしい、どこかで雨宿りしていることを考えながら探している時に、悲鳴と絶叫が聞こえたからたまたま場所が分かったらしい。
「ヒューマンは…?」
「鎮静剤打ったからしばらく目を覚まさない、それよりもフェアリー」
はい、と彼女が袋から取り出した白衣を私に投げる。
「とりあえず、それ着て」
私はただうなづいてそれを着る。
何があったのかを察してるみたいだった。
「…よし、とりあえず、こんなとこにいつまでもいるわけにもいかねぇし帰るぞ…」
ディアボロスがヒューマンを担いで、呪符を取り出す。
どこからともなくやってきた飛竜の背に飛び乗って、私達は学園への帰路を急いだ。
だれも言葉を発すること無い。
雨はようやく止んだのに、空は黒い雲に覆われたままだった。
226 :
マルメンライト:2011/04/05(火) 23:42:11.01 ID:tUYjDRWw
タカチホ義塾の食堂、もう夜も遅いこともあって生徒の数は多くはない、その一角に私とフェルパーとディアボロスの3人は座っていた。
「…それで、突然、ヒューマンが私に襲いかかって…怖くなって…ようやく正気に戻ったと思ったら…」
「なるほど…」
私の話をフェルパーは静かに聞いてくれていた。
話がちょうど終わったころになって、食堂の扉が開いてバハムーンが姿を現した。
「とりあえず、保健室に寝かせてきた」
ヒューマンのことだろう、バハムーンがそう言って椅子に腰かける。
「ごめん、スノウちゃんだって大変なのに…」
「…気にするな、スノウの熱は大したことなかったし、ディアボロスが持ってきた薬のおかげでほぼ治っている、今頃ノームが寝かしてやってる、それに俺にとっては子共と同じくらい仲間も大切だ、仲間が大変な時だけに俺だけ何もしないわけにはいかん」
私の言葉に、バハムーンが私の頭をなでてそう言ってくれる。
「それで、フェルパー、ヒューマンはもとに戻るよね、いつもにみたい戻ってくれるよね」
彼が、どうしてあんな風になってしまったのか分からないけど、なんとなく、自分がその原因の一つであることに私は気付いてる。
私のせいでヒューマンが傷ついてしまった。
「わたし…わたし…」
私があのまま彼に犯されていれば、彼はあんなに傷つくことはなかったかもしれない。
私が怖がったりなんかしなければ、彼はあんな風にならなかったかもしれない。
「私のせいで…」
「フェアリー、お風呂入ってきなさい、風邪ひいちゃうよ、それに体が温まれば多分少しは落ち着くと思う
まずは貴方が落ち着かないと、彼のことを思うなら余計に…」
繰り返す私の肩をフェルパーがそう言ってたたく。
「…うん」
私は静かにうなづいた…。
227 :
マルメンライト:2011/04/05(火) 23:43:19.99 ID:tUYjDRWw
「重傷かもね…」
フェアリーの背中を見送ってからフェルパーが呟いた。
「…フェアリーか?」
犯されそうになって動揺しない女が居るわけがねぇからな…。
だが、冷静な目をしたフェルパーはただ事実だけを俺に言う。
「ううん、フェアリーはショックが大きくてまだ心がついて行ってないだけ、少し落ち着けばきっと大丈夫、それよりも問題は、ヒューマンのほう」
俺の言葉に、フェルパーはそうつぶやいた。
「確かに、あいつからしたら自分がフェアリーを傷つけたってのはダメージが相当デカイだろうな…馬鹿な真似しなけりゃいいが…」
ずっと、あいつはフェアリーを傷つけたくないといって、薬や他の行為でごまかし続けていた。
それなのに、あいつはついに自分で傷つけてしまった、未遂とはいえ、フェアリーに消えない傷を刻むことになっていたかもしれない。
あいつがあんなにまで理性を失って暴れる姿は初めてみた。
「ごめん…ディア、悪いけど……」
「わかってる、ヒューマンは俺が見ておく、だからお前は自分のするべきことをしろ」
「うん……でも、私いつもどおりにできるかな」
俺の言葉に、フェルパーが自分の体を抱いて震える。
だから俺は、そのフェルパーの唇を少し強引に奪った。
俺と同じ煙草の匂い、俺が変えた女の匂い。
「弱気になんなよフェルパー、テメェは俺の女だろ、くだらねぇことに惑わされんな」
「うん、そうだよね」
懐から煙草を出して、フェルパーが火をつける、そして、更に一本抜きとって俺に差し出した。
「…そうだ、お前はそれで良い」
それを受け取り火をつけて、俺はあいつの頭をなでてヒューマンのもとに向かう。
―ヒューマンにはいろいろ恩義もあるいな…たまにはフェルパーみたいに武士道ってやつを通してやっても悪くねぇ―
腰に感じる相棒、鬼切の重さを感じながら俺は心のなかでそうつぶやいて、歩き出した。
228 :
マルメンライト:2011/04/05(火) 23:47:08.98 ID:tUYjDRWw
タカチホ義塾、大浴場、そこはこの時間には珍しいことにほとんど人がいなかった。
大きな湯船につかりながら私は今も眠る彼を思う。
「ヒューマン…ごめんなさい」
彼のことが大好きなのに拒絶してしまった。
彼は目を覚ました時、また私に笑いかけてくれるだろうか?
「そんなわけ、ないよね」
あの時の彼の顔を思い出す。
自分がしたことに脅える彼のことを。
一人、静かに湯船につかっていると、脱衣所の扉が開いて見覚えのある顔が姿を現した。
彼女はふわふわと地面から少し浮いて入ってくる。
「ノーム…スノウちゃんは大丈夫?」
「うん、大丈夫、私とバハムーンの子供だから…元気、眠っちゃったからパパに任せてママは休憩」
そう言って笑うノームは6人の中で最も年下でありながら、だれよりも大人の雰囲気を漂わせていた、母親という立場である事が彼女を変えたのだろう。
「…フェアリーなんか悩んでる、ううん後悔してる」
「…すごいねノームは」
「…一児の母だからね」
私の言葉に彼女は誇らしげにそうつぶやく、前はあんなに子供のことで悩んでたのに。
そんな彼女に、私は自分の想いを呟く。
「私が…ヒューマンにあのまま犯されてたら、ヒューマンは苦しんでなかったのかな?」
拒絶なんかしなければ、彼は自分を傷つける事等なかったのではと、そんな思いが私を責めていた。
「…それは、違うね」
湯を体にかけて風呂の縁に座った彼女が呟いた。
「え?」
「…フェアリーは処女?」
「……うん」
彼女が何を言いたいのかは分からないけど、私は素直に答えた。
母親という、私達よりも少し違う立場の彼女の意見が聞ききたかった。
229 :
マルメンライト:2011/04/05(火) 23:48:02.28 ID:tUYjDRWw
「…初めての想い出は女の子にとって大切、でも男の子にとっても、大切」
「…どういうこと?」
「…フェアリーが犯されて、傷ついたら、今みたいに彼と居られる?居られないよね、絶対彼を見るたび、思い出して、怖がる、そんなフェアリーを見たら彼も自分がしてしまったことを苦しみ続ける」
彼女の言葉が心にしみわたる。
「…ホントに?」
「…未遂にすんだのに、今苦しんでる、きっと未遂じゃなければもっとひどい」
「…そうだね」
「…少なくとも私はバハムーンに初めて抱かれた時、彼に、「ありがとう」と言われてうれしかった、死んじゃうんじゃないか、裂けちゃうんじゃないか、ってくらい痛かったけど、それでも…それでも、そう言われて、彼を受け入れられて良かった、って思った」
何かを思い出すように、どこか遠くを見ながら。
「だから自分が傷つけばよかったなんて、冗談でもいっちゃだめ」
め、と彼女が私のおでこを指ではじいた。
「女の子が犯されてればなんて言うもんじゃない」
「なんか、ノームお母さんみたい」
「…だって私、お母さん」
私の言葉に彼女は胸を張って笑う。
「…だから、フェアリー」
「うん……」
「…怖かったんなら、泣いてもいいの、泣いて怖かったって思いを吐き出して、またいつものように笑えるようになって、少しぐらいなら、お母さんの代わりできるから…」
「ノーム…」
そういって彼女が私を本当の母親のやさしく抱きしめてくれる。
「怖かった!ヒューマンがいつものヒューマンじゃなかったの…!無理やりキスされて、服を破られて…!犯されるって……!私…」
「…よしよし…怖かったね」
彼女の胸に抱かれながら私は声をあげて泣いた。
「名前を呼んだらヒューマンが……」
「…そっか、ヒューマンは、貴方を守ってくれたんだ」
「うん……うん……」
私は泣き続けた、母親のような優しい彼女の胸の中で…
しばらく泣き続けると、やっと心が落ち着いてくる。
「…ありがとうノーム…ホントにお母さんみたいだった」
「……どういたしまして、また、お母さんに聞いてほしいことがあったら言ってね?」
くすくすと、彼女が笑う。
私もつられて、笑う。
私はちゃんと笑えてる。
流した涙をぬぐって、頬をたたいて、私は一つの決意を固める。
「よし…!」
「…なんか決めたって顔だね、いつものフェアリーらしい顔してる」
「うん、確かにおどろいちゃったけど、あれもヒューマンの一つなんだから、私は受け入れる、助けてもらったし、今度は私がヒューマンを助ける!!」
「…そう…それじゃ、上がりましょう、のぼせて、フェルパーにこれ以上迷惑かけてもいけないし」
「だね」
ノームのそんな軽口に笑って答えて、お風呂からあがる。
―ヒューマン、私決めたよ、私貴方が好きだから―
新しい制服に身を包み、その決意を言葉にする。
「貴方の全てを受け入れる」
そう誓った瞬間に、脱衣所の扉が勢い良く開かれて、白い髪の少女が飛び込んできた。
「まま、りーりーたいへんたいへん!ひゅーにゃんともーもーが!!こーてーで!!!」
「フェアリー、行きなさい!!」
スノウの言葉に、ノームが全てを察した表情で私に叫ぶ、彼女の言葉に私は走り出した
230 :
マルメンライト:2011/04/05(火) 23:49:01.90 ID:tUYjDRWw
ひどい頭痛で目を覚ます。
「ここは…」
灯りがないからよくわからない、ただ、辺りを見回すとなんとなくそこが学園の保健室であることに気づく。
なんで、こんなところに居るのか記憶をたどる。
「そうか…俺は理性を失って…」
危うく、彼女に消えない傷を刻んでしまうところだった。
あの時、彼女が呼んでくれなかったら、間違いなく俺は彼女を傷つけていた。
「畜生…」
結局、僕なんかどこにもなくて、俺が嘘を塗り固めて猫を被るように僕を演じてただけだったんだ。
鏡を見ると手と、頭に包帯が巻かれている。
「フェルパーがやってくれたんだな」
ウヅメ先生は今学園に居ないはずだ、どこまでも彼女たちに迷惑をかけている。
「…」
俺は何も言わずベッドから体を起して、保健室から校庭に出る。
―もうここに居るわけにはいかない―
何も言わずに去るのは心苦しいがあいつらならきっとうまくやってくれる。
そう思って歩き出す。
「ずいぶんと遅い時間に散歩に行くんだな、ヒューマン」
聞き覚えのある声が背後から投げかけられた。
231 :
マルメンライト:2011/04/05(火) 23:50:01.37 ID:tUYjDRWw
「ディアボロスか…」
ふりかえると、保健室の壁に背を預けてディアボロスが立っていた。
「…逃げる気か?」
「彼女を傷つけてまで、俺はここに居るつもりは…ない、もう俺なんか居なくてもお前らはどうにかなる、リーダーはフェルパーあたりがうまくやってくれるはずだ…」
そう言った俺に、あいつが煙草に火をつけて、並んだ。
「男なんて、どうせ女を傷つけて泣かせるもんだ」
静かに、俺を追い越して、背中を向けてそうつぶやく。
「お前らしい、言い方だな」
ああ、とディアボロスが呟く。
「にげんなよ、ヒューマン、馬鹿みたいにフェアリーに謝って、またフェアリーのことを守ってやればいい」
「守れるわけが…ないだろう、許してくれるわけがないだろう」
悔しくて拳を強く握った。
「んなはずねぇよ、これまでお前は、自分自身からフェアリーを守ってきたんだ、それに…お前の中のフェアリーはそんな器量の狭い女か?」
「うるせぇ…したり顔でナマ言ってんなクソったれ!!」
苛立ちが抑えられなくて、俺は銃を引き抜いた。
「てめぇに俺の何が分かる!!」
「お前のことなんざ分かるか、俺はくだらねぇことが嫌いなんだよ」
ディアボロスは刀に手をかけ、振り返る。
「どけよ、ディアボロス、俺の邪魔をするな」
最後通告、そのつもりで俺はディアボロスに銃を向ける。
それにあいつは煙草を吐き捨て、嫌だね、と呟いた。
「侍たるもの恩義は忘れず、お前には恩があるからな、一時的な感情で出ていこうとするお前なんか認めてやらねぇ、俺の女に重荷を押しつけようっていう魂胆が気に入らねぇ…お前が間違ってると思うから俺はお前を行かせるつもりねぇ……」
「そうかよ、それなら好きにしろ、ただし俺も好きにする」
イライラする、何もかもが思い通りにいかない。
「タカチホ義塾、侍学科、ディアボロス、受けた恩義に報いる為、ここから先へは進ません」
真剣な表情であいつが構える。
「どけや、クソガキ、邪魔すんなら俺はてめぇを倒して、勝手にいかせてもらう」
暴れたがってる衝動を解放する。
「勝負!!」
互いに叫んで走り出す。
戦いが始まった。
232 :
マルメンライト:2011/04/05(火) 23:53:01.37 ID:tUYjDRWw
激しい銃撃の音と斬撃の音が交差する。
火花が散って地面を穿つ。
―止められるか?―
向かってくる銃弾を切り落としながら俺は思う。
あいつは六連リボルバーのシャドーバレル、対して俺は大太刀、鬼切。
ただでさえ得物のリーチに開きがあるのに、俺はあいつを殺さないように止めなきゃいけない。
それに対して、もはやあいつは俺を倒すべき敵としか見てない、必要があるなら殺すだろう。
相手を殺してしまうより、相手を殺さないことのほうが難しい。
―状況も不利とは…くだらねぇ…―
どこまでもくだらねぇ、なにもかもくだらねぇ、そんな思いが胸によぎる。
何より一番くだらないのが…
―ホントくだらねぇよ、ヒューマン…結局テメェはそれだけフェアリーが好きなんじゃねぇか―
アイツ自身の考えだった。
好きならその想いをちゃんとぶつければ良い。
―傷つけるのが怖い?くだらねぇ…―
俺だって一度はフェルパーを傷つけた、フェルパーに傷つけられもした。
それでも俺たちは向き合った、傷つきあってようやく並んだ。
なのにこいつは向き合うことすら逃げようとしている。
それが何より気に入らない。
何が何でも行かせるわけにはいかない。
心の中で意志を磨き上げ、ただひたすらに銃弾を切り落とす、反撃の機会を待つ。
あいつを止める為の反撃の機会を待つ。
切り落とす銃弾の中に不意に呪符が混じる。
「ちっ!」
「火遁!!」
呪符がはじけて炎が迫る。
「アクアガン!」
とっさに水の術を放って襲いかかる炎を相殺する。
厄介なこと極まりない、武器だけじゃなくて術まで使ってきやがる。
―それだけ、本気って、わけだよな―
「ホント、忍者ってのはきたねぇもんだ」
「折り紙士のお前に言われたくねぇよ」
ガンナーにして、忍者、その二つを学んでいるあいつの動きは異様なまでに素早くて、一切の手加減もこもってない。
「そんなにてめぇが本気なら俺も本気でいかせてもらうぜ!」
233 :
マルメンライト:2011/04/06(水) 00:01:29.70 ID:tUYjDRWw
懐に手を突っ込んで、ため込んだ鶴を空に放る。
百ではあいつに届かない、二百でもあいつに届くはずがない、ゆえにその数は千。
「千鶴!あの馬鹿を止めろ!」
言霊に反応した鶴が魔力を帯びて、式としてあいつに向かっていく。
「千鳥!」
あいつが叫んで、連続した銃声が響く、一斉射撃、向かう式が一つ
二つと撃ち落とされる、銃撃は止まない。
「オイオイ…」
視界を埋めるほどの式は銃撃にものすごい勢いで撃ち落とせれる。
鳴り響いた銃声がようやく止む、最後の一体があいつによって撃ち落とされた。
辺りには元の紙に戻った俺の式とあいつが捨てた薬きょうが転がっている。
馬鹿げてる、これでも本気だったのに千匹分の式があっさり撃ち落とされちまった。
「手品は終わりか折り紙士?ならこいつはお代だ…とっときな!!」
あいつがそういって笑う、狙い澄ました一撃が俺に向かって放たれた。
「遠慮しとくぜ、まだまだ終わってないんでな」
もはや、傷つけないようにあいつを止めるのなんて無理だと察する。
「かえる!」
式を放って攻撃を捻じ曲げる。
反射の式、一度だけならどんな攻撃だろうが跳ね返す。
それに反応できるわけ…。
「ははっ!謙虚なやつだ、胸糞割りぃ」
あいつはわらって、跳ね返る銃弾に狙いをつけて、撃ち落とす。
跳ね返った銃弾はおなじ力を持つもう一発の弾丸に相殺されて吹きとんだ。
むちゃくちゃすぎる。
それでも攻撃の手を弱めるわけにはいかない。
息を吸い込み、ブレスを吐く。
あいつに見せたことのない数少ない技の一つ。
炎はあいつめがけてまっすぐ伸びた。
「なるほど…遠距離攻撃は水術だけかと思ってたがちゃんと用意してんだな」
言葉と共にその姿が薄れるようにかき消えた。
―マズイ!―
とっさにブレスを中断し、地面をけって回避する。
少し前まで俺の居た場所に苦無が突き刺さる。
振り向きざまに俺は頭上の木の枝を薙いだ。
何かがそれをよけるように、飛ぶ。
「よく、よけたな…」
地面に突き刺さった苦無を引き抜いてあいつが呟く。
「何度かお前がその技使ってるのは見たからな」
暗殺、物騒な名前をした忍者の技。
銃だけに警戒していたらやられてたかもしれない。
つくづく、厄介なやつだと思う。
俺の得意な術は水術、対してあいつの得意な術は炎術、得物の間合いは一方的で、折り紙士としての最大の技でもある千鶴も破られ、式での攻撃は無意味だと判断する。
そもそも最近大したクエストがなかったこともあって、式を折るのをさぼっていた、おかげで式の在庫が心もとない。
防御用の式の在庫は十分だが、攻撃用の式は使えばすぐに使い切ってしまいそうな量しかない。
こんなことならフェルパーとヤってばかりじゃなくて、もう少し攻撃用の式を折っておくのだったと思う。
おかげでほとんど八方ふさがり、もしもの時の切り札だったブレスもばれてしまった以上、対策はすぐにされるだろう、あまり効果は期待できそうにない。
あとはあいつの弾切れを期待したいところだが、ガンナーであるあいつの弾丸が切れるより俺が力尽きる方が間違いなく早い。
それでも時間はだいぶ稼いだはずだ、だれかが気付いてくれていることを祈る。
あと、もうほんの少し、ほんの少しだけ、時間を稼ぐ。
こいつを止めるために…自分の持つ技の中で最も自信のある技を思い浮かべる。
たった一つだけ、あいつを止められそうな技が思い浮かんだ
234 :
マルメンライト:2011/04/06(水) 00:02:19.08 ID:tUYjDRWw
不意に、ずっと続いていた攻撃がやむ、俺の気配にあいつが何かを察したのだろう。
「…どうした、来いよ、ディアボロス、来ないなら…俺から行くぜ?」
「あせんなよ、ヒューマン」
刀を鞘に納めて、腰だめに構え、呼吸を整える。
「どうもお前とこのまま戦ってても決着がつきそうにないんでな…俺のできる最大の技を使わせてもらうわ、お前も手品は飽きただろ?」
「へぇ?」
ヒューマンの顔が奇妙に歪む、笑っている。
すぐに、そのむかつく顔やめさせてやる。
「疾き太刀の…白刃で作る…赤花で…舞う白雪を…桜にかえんと…」
こいつで止められないならば、俺にはもうこれ以上こいつを引き止める事は多分できないだろう。
―お願いだから、死なないでくれ、お願いだからこれ以上動かないでくれ―
あいつが止まってくれることを信じて、誰かが間に合ってくれることを信じて、刀を解き放つ。
「天剣…絶刀!!」
無数の斬撃が、あいつに降り注いだ。
235 :
マルメンライト:2011/04/06(水) 00:03:37.52 ID:TXilUtod
さすがに…これはよけられそうにねぇか…
あいつの最大の技…天剣絶刀、縦横無尽に降り注ぐ、不可避の斬撃、俺は回避することを捨てて耐え抜いての反撃を考える。
薬莢を排出し、次弾を装填、視線の先のディアボロスに狙いを定める。
引き金はまだ引かない、今引けば、あいつの式で跳ね返されて俺の負け。
ぎりぎりまでたえる、受けきれば俺の勝ち。
賭けになるかもしれないがそれしかない。
そう心に決めた瞬間だった。
「もうやめて!!」
不意に校庭に大きな叫び声が響く。
迫る斬撃をさえぎるように俺の目の前に虹色に輝く壁が形成される。
―なんだ?―
斬撃は俺の目の前に現れた虹色の壁に吸収されて消える、全ての斬撃がやむと、虹色の壁はガラスが砕けるような音を立てて崩れ去った。
「これは…」
反撃を忘れ、俺は呟く、ありとあらゆる攻撃を吸収する魔法壁、パーティでこの技を使えるのは彼女しかいない…予報士としてその技を磨いてきた彼女しか。
「ヒューマン…」
背後から聞こえてきた声に、震える。
―そんなはずがない、俺は彼女に拒絶された、そんな彼女が俺を守るなんてことがあるわけが…―
そんな俺を見たディアボロスは、再び静かに刀を納め、煙草に火をつける。
「時間切れ…また俺の勝ちだなヒューマン…」
236 :
マルメンライト:2011/04/06(水) 00:04:54.97 ID:TXilUtod
何を言ってるんだ、俺はまだ立っている、戦える、弾丸はまだあるし、呪符だってまだ沢山ある、俺はまだ戦える、あいつの切り札はもうないはず。
「俺は…まだ」
「いい加減、腹くくれ、お前らしくねぇ」
ディアボロスの吐いた煙が消える。
「また、お前の負けだ」
―そうか…―
カシャンと俺の手から銃が落ちる。
お前の言うとおりだよ、ディアボロス…俺の負け…だ。
もともと、こいつは俺を引きとめていれば良かったんだ。
静まりかえったここで戦えば、当然のように誰かが気づく、そうすれば、嫌でも他のメンバーに伝わる、他のメンバーと合流されてしまえば…勝てるわけがない…。
分かっていた、だから一度は暗殺を使ってまであいつを倒そうとした。
しかし、倒せなかった、俺はこいつの作戦に負けたんだ。
「…ヒューマン」
再び名前を呼ばれ、俺は振り返って彼女と向かい合う。
真剣な目が俺を見ていた。
そして、自分が彼女にしたことを思い出して…息が詰まる。
「ヒューマン…」
彼女がそう言って俺に近づいてくる。
「やめてくれ…俺に近づかないでくれよ…フェアリー」
もう君を傷つけたくないんだ…。
「大丈夫、私は大丈夫だよ、ヒューマン」
そう言って、彼女が俺を抱きしめる。
遅れてきたフェルパー達が俺を見ていた。
「決めたんだ…やさしいヒューマンも、怖いヒューマンも…ヒューマンのことだから受け入れる」
彼女が震える。
「だから…私のせいで、そんなに傷つかないで…ヒューマン」
なんで、彼女はこんな俺のことを…
「なんでだよ…俺はお前を」
君のことを傷つけるとこだったのに…
「それでも…貴方は最後まで私を傷つけなかった」
「そんなの…結果論だ」
傷つけるだけじゃない、いつか彼女を殺してしまうかも知れない。
「それでも…私は貴方が好き」
「君はバカだ…」
「うん…」
彼女に抱かれたまま俺は泣く…。
「俺も…馬鹿だ…」
こんなにも俺を愛してくれる女を捨てて逃げようとしてたなんて…。
また彼女を傷つけるかもしれない…それでも彼女と離れたくない、そう思った。
「悪かった…フェアリー、こわがらせて…ごめん…」
俺は泣く…僕は泣く…
優しい彼女に抱かれながら、子供のように泣き続けた。
彼女への謝罪を繰り返して。
ディアボロスが言ったように馬鹿みたいに謝り続けた。
237 :
マルメンライト:2011/04/06(水) 00:05:50.75 ID:tUYjDRWw
タカチホ義塾、食堂
もう僕らぐらいしか人はいない、集まった5人、いや6人に僕はその言葉を告げる。
「みんなに迷惑をかけて…すまなかった」
今回のことで、迷惑をかけてしまったことを謝る。
「気にするな、お前にはもっと迷惑をかけている」
バハムーンが笑った。
「…うん、私も、この子が生まれる時に、相談に乗ってもらったんだし、少しぐらいの迷惑は…お互いさま」
ノームがスノウの頭をなでて笑う。
「ひゅーにゃん、いいこ、りーりーとなかよし」
スノウが笑う、もう調子は良くなったのだろう、ノームのくせに母親とは正反対に感情が分かりやすい、ただうれしいのだということが伝わってくる。
「気にしないで、みんなを助けるのが私の仕事だしね」
煙草をくわえてフェルパーが笑う。
「気にすんな、てめぇにはまだまだ恩があるからな、それにたまに本気でやり合うのも悪くねぇ」
ディアボロスはいつもの軽薄な笑みを浮かべて笑った。
「フェアリー」
「うん」
「こんな僕を好きになってくれて、ありがとう」
彼女が恥ずかしそうに笑う。
「…さてと…もう寝ましょうね、スノウ」
「うん!ぱぱきょうも、ごほんよんでごほん」
「分かった、今日はスノウも手伝ってくれたから読んでやろう」
ノームが小さく呟いて、子供を抱き上げ、バハムーンと一緒に食堂を出ていく。
気を使ってんだろう。
「ディアボロス…」
フェルパーがディアボロスに何か耳打ちする。
「…そいつはいいな、言葉に甘えさせてもらうぜ、明日になって文句言うなよ?」
食堂を出ていくフェルパーに続いてディアボロスも出ていこうとして、俺とすれ違う時、肩をたたいて呟いた。
「ハメをはずしすぎんなよ、ヒューマン」
言われなくてもわかってる、だからだまってろディアボロス。
軽口を言っていたあいつだが、なんだかんだ空気は読んだらしい。
また、僕ら二人が残される。
…なんとなく、話すきっかけがつかめない。
「あの…ヒューマン…」
フェアリーが恥ずかしそうに僕を見る。
「ヒューマンの部屋に行ってもいいかな?」
まだ怖いだろうに、彼女は僕のことを求めてくれる。
彼女の言葉に、僕は静かにうなづいた。
238 :
マルメンライト:2011/04/06(水) 00:07:25.84 ID:tUYjDRWw
二人で手をつないで、寮の自分の部屋に戻る。
心臓がバクバクうるさい音を立てていた。
理性を失ったときには何も感じなかったのに、緊張して仕方ない。
理性があるとこんなにも緊張するものなのだな、ふとそんなことを思った。
部屋のカギを開け、彼女を部屋に案内すると、彼女がベッドに腰を下ろす。
「…緊張する」
「…ぼ…俺もだ」
彼女の言葉に俺自身を偽るのをやめて、そう答える。
「…やっぱり制服破りたい?」
彼女がごまかすように上目づかいで俺を見た。
「…それは言わないでくれ」
「ご、ごめん」
確かにそう言う欲望もあるけれど、今はただ彼女を愛したい。
「フェアリー…」
彼女の肩をつかんで唇をかさねる。
「ん」
目を閉じて、彼女はそれを受け入れてくれる。
互いに舌をからませて、何度も何度も口づけを繰り返す。
彼女の制服に手をかけて、優しくそれを脱がしていく。
彼女はそれに抵抗しない。
彼女のつつましい胸とそれを覆う布が俺の目にさらされる。
どうはずせばいいのか分からない、戸惑っていると彼女が俺の手を導くように伸びてきた。
導かれるままにしておくと、金属の留め金に指が触れる。
「つまんで…軽くひねれば外れるから…」
彼女の言葉通りに留め金をつまんで軽くひねるとパチンと小さな音が鳴って、布が緩んだ。
肩ひもに手をかけて、それをはずす…。
「…触るぞ」
「うん…いいよ」
彼女にそう言って、その胸に優しく手を触れる。
柔らかくて温かい、俺が軽く握ると握った形に形を変える。
ぴくぴくと彼女が震えた。
「気持ち良いか?」
「…うん」
恥ずかしそうに彼女が答える。
優しく、繊細に彼女の胸を揉むと、ピンク色のふくらみがプックリと、立ち上がる。
それを軽くつまんで指の腹で転がしてみる。
「ん、なんかヒューマンの触り方、いやらしい」
赤い顔で彼女が呟く。
「いやらしいことしてるんだから、当然だろ?」
こりこりした乳首の感触に夢中になって、俺は彼女の胸を弄ぶ。
指、舌、歯、その全てで彼女の感触を味わう。
彼女が震えて、あえぎ声を繰り返す。
暴力的な衝動がまたやってくる。
彼女の細い首を食いちぎりたいと心の中の獣が笑う。
だけど…
239 :
マルメンライト:2011/04/06(水) 00:08:27.32 ID:TXilUtod
―今、イイトコロなんだから引っこんでろ、駄犬―
うるさい獣を黙らせる。
お前程度の衝動なんか、今の俺には関係ない。
衝動なんかじゃなくて彼女に対して酔いしれていた。
残った下着をはぎ取って、彼女のそこに手を差し入れる。
自分の中に異物が侵入する感触に彼女の体がはねた。
そこは十分に濡れているけど、彼女の体のサイズもあって、小さくて、狭い。
指がぎちぎちと締め上げられる。
彼女に自分を入れたら壊れてしまいそうで、不安になる。
「大丈夫…」
不安な表情が表に出ていたんだろう、彼女が耳元で囁いた。
「大丈夫だよ、ヒューマン…痛くても、怖くても、優しくても…その全部が貴方なんだから」
「ありがとう…フェアリー」
俺はこれから彼女に消えない傷を刻む。
俺のモノはすでに限界に近かった。
ズボンを脱いで、下着を脱ぎ棄てる。
ガチガチになったそれがそそり立っている。
「さ、さっきはああ言ってみたものの…お、おっきいね、ホントに入るかな?」
俺のモノと彼女が自分のそこを見比べて呟いた。
「多分…入るだろ」
それを、彼女の小さな割れ目にあてがう。
「いくぞ、フェアリー」
「うん、大丈夫、来てヒューマン」
俺のモノが彼女の中を引きさくように、彼女の中に沈んでいく。
「いっ…た…さ…け…」
彼女はその痛みを必死で耐えながら、俺の背に爪を立てた。
俺のものが進むたび、背中に刺さった爪が深く食い込む。
この程度の痛み、彼女が今感じている痛みに比べればきっとどうってことない。
俺のモノの先端が何かに阻まれ、動きを止めた。
彼女の純潔が今、すぐそこにある。
涙をこらえながら、彼女が静かにうなづいた。
俺はそれに口づけで返し、彼女の純潔を引き裂いてゆく。
「っ!!!」
彼女が声にならない悲鳴を上げた。
240 :
マルメンライト:2011/04/06(水) 00:09:46.19 ID:TXilUtod
それでもそのまま力をこめると、不意に抵抗が緩んで、俺のものが彼女の更に奥へと埋没する、かなりきつくて狭いが俺のものは何とか彼女の中におさまった。
彼女と繋がっている部分から彼女の初めての証が俺を伝ってベッドに赤い染みを作る。
「ヒューマンの…ものに…なっちゃった」
痛いだろうに、彼女が目に涙を浮かべたまま笑う。
「ああ、フェアリー、お前は俺のものだ…」
ありがとう、感謝のつもりで彼女の頭をなでる。
彼女の中は痛いくらいに俺を締め付けている。
「動かなくて…良いの?」
「ああ…このまましばらく、お前を感じたい」
そっか、とフェアリーが呟く。
彼女が呼吸を整えていくと、少しずつ締め付けが緩んでくる。
「…おなかの中にヒューマンがいる…」
恥ずかしそうに彼女が自分の腹をなでる。
「ああ、こんなに小さいのに全部入るんだな…」
俺の言葉に彼女がぴったりとくっついた部分を見る。
そして、自分の腿についた血を指ですくい上げた。
「これが、私の初めての証なんだ…」
「ああ」
その指をなめる、鉄錆のような味がする彼女の血の味がした。
「おいしい?」
彼女がそう言って笑う。
俺は自分の指で彼女の腿の血をすくうと、彼女の口にそれをくわえさせる。
彼女がぺろぺろと指をなめる、くすぐったい、そんな感触が指に伝わってくる。
「血の味がする…」
「ま、血そのものだしな」
指を引き抜くと、それは彼女の唾液で濡れていた。
「動いていいよ、ヒューマン」
「ああ…」
浅く、ゆっくりと腰を動かす。
まだ痛むのか彼女の眉が苦痛で下がる。
「…だいじょうぶ」
彼女が囁く。
だから俺は腰をゆっくり動かす。
抜き差しをするのではなく、円を描くように、ゆっくりと、ただひたすらゆっくりと。
彼女の胸に手を伸ばし、愛撫を再開する。
胸を揉みながら入口まで俺のものを抜いて、胸の中心をつまみながら、奥まで自分を埋没させる。
繋がった部分の近くの真珠のような突起を指の腹で擦る。
「ふう…」
彼女の口から、苦痛以外の吐息が漏れる。
それに気づいて、彼女の頬が染まっていく。
「かわいいなフェアリー」
「ん、ありが…ふぅっ!」
彼女の言葉をさえぎるように、腰を動かす。
「ふぁ…くうっ…はふっ…」
抜き差しに合わせて彼女があえぐ。
「気持ちいいか?フェアリー」
「うん、気持ちいい、ヒューマンは?」
腰を動かすと、彼女の中が俺を逃がさないように吸いついてくる。
「気持ちいいぜ、フェアリー、狭くて、きつくて…すぐにでも出そうなくらいだ」
「うれしいな…ヒューマンに喜んでもらえて…」
抜き差しを繰り返す。
彼女と溶け合って一つになるような感覚が気持ちいい。
射精してしまいそうになるのをこらえながら、彼女の中をじっくりと味わう。
241 :
マルメンライト:2011/04/06(水) 00:11:09.68 ID:TXilUtod
「ヒューマン…気持ち良いよ…」
次第に彼女の締め上げてくる力がまた強くなってくる。
だいぶ腰を動かすスピードは速くなっていて、痛くないか心配だっただけに、その言葉がうれしい。
ふと、ある事に気づいて動きを止める。
だが、抜き差しは止まらない…。
彼女が自分から腰を振っていた。
「あ…」
彼女が自分の行動に気づく、それでも彼女の腰は動きをやめない。
「あ、やだなんで?なんで?勝手に体が…恥ずかしい…ヒューマンも動いて…」
彼女が懇願する、イキたくて仕方ないかのように…
「分かった」
動きを再開する、今度は突き上げるような感じで力強く。
「ふくぅ…ふあぁぁ…ふぅぅ…」
彼女の腰に合わせて、より深く、突き込む、腰の動きが加速する。
常にうごいていないと射精してしまいそうで、彼女を少しでも長く味わいたくてただ腰を激しく振る。
「ヒューマン…私…もう…」
彼女が俺にとどめを刺してくれとねだる。
「俺も…イクからもう少しだけ我慢してくれ」
「うん…うん!」
そんな彼女と唇をかさね、むさぼり合う、そして、抜ける寸前までモノを引き抜いて一息でそれを一番奥まで突き込んだ。
「くぅぅぅぅ!!」
彼女のが俺を強く締め上げて、叫んだ。
「うぐっ!」
あまりの締め付けの強さに我慢しきれなくなって俺も彼女の中に欲望を吐き出す。
「ああ、あっついヤケドしちゃう!」
モノを引き抜こうとするが彼女が腰をしっかりつかんでいて離さない。
ぎゅうぎゅうと彼女の中が俺を絞りあげる。
抵抗をやめ俺はドクドクと彼女の膣内に欲望を注ぎこむ。
彼女の体が痙攣してぴくぴくと震えている。
長い射精が終わってもまだ彼女は絶頂を感じて震えていた。
「はあ…」
彼女が深いため息をついた。
「フェアリー…」
彼女の額に口づける。
「ヒューマンのせいで…初めてなのに…イっちゃった」
恥ずかしそうに笑いながら、彼女が俺の胸に頬を擦り寄せる。
「感じてくれたなら本望だ、にしても、よく入ったよな」
繋がったところをみるとそこから彼女の血と混じった俺の精液があふれ出てきていた。
「…た、たしかに、改めてみると、す、すごいことに…なってるかも…」
彼女のそこは限界まで広がって、俺のことを飲み込んでいる。
「なんか…じっとしてると…か、形が分かって…」
フェアリーの顔がどんどん赤く染まっていく。
そんな彼女を見ていると、下半身に血が集まって彼女の中でまた俺のものが硬くなる。
「あ…、びくびくして…また元気に…私の中で大きくなってる」
自分の腹をなで、俺のそれを彼女が確認する。
「ごめん」
まだ彼女を求める自分に恥ずかしくなる。
「もう一回…しようかヒューマン、今度は…」
彼女は…俺の耳もとで小さく囁いた。
242 :
マルメンライト:2011/04/06(水) 00:13:01.51 ID:TXilUtod
「…本気か?」
彼女の言葉に自分の耳を疑う。
「大丈夫…お願い…」
いわれたとおりに彼女の制服を拾って彼女に渡した。
彼女がそれを身につけている間に僕は自分を引き抜いて彼女のそこから溢れるそれをティッシュで拭う。
時折彼女が感じるように震えながらも、なんとか彼女は制服を身に付けた。
ただし、下着はつけていないから、制服の胸元で突起がとがっているのが分かる。
立ち上がって彼女がベットから離れて深呼吸をした。
「いいよ、ヒューマン」
「ああ」
俺に近づいてきた彼女の腕を引いて、ベッドに力強く押し倒す。
「きゃっ!?」
彼女がかわいい悲鳴をあげる。
両手を頭の上におさえつけて、片手でそれを固定する。
あいた手で制服の胸元をつかみ、力任せに引き裂いた。
びりびりと音を立て、制服の布がちぎれる。
破れた制服の隙間から見える胸にかぶりつく。
「ふうっ!」
ビクンと彼女が震える。
彼女が声を抑えるように自分の手で口をふさぐ、彼女のことを犯しているみたいで、頭がくらくらとしてくる。
もう片方の胸を力任せに揉む。
「い…」
何かを言いそうになって彼女があわててその言葉を飲み込んだ。
俺はわざと自分の理性を壊していく、彼女の申し出に応えるために…。
彼女の中に指を突きいれ、中にたまった俺の精液をかき出すように、動かす。
「ふぅ!それ…刺激…つよ…かき出され…おなかが…!」
両手を拘束された彼女がその刺激から逃れるように腰を振る。
―今度は…洞窟でしようとしたみたいに…私を犯して、もしヒューマンがまたそうなったときに受け入れられるように―
先ほど彼女は俺の耳元でそう囁いた。
彼女はバカだと俺は思う、そんな彼女が大好きな自分はもっとバカだ。
指を彼女から引き抜いて拘束していた手を放してやると、
犯される自分を演じる彼女は体をひねって俺から逃れようとする。
その腰を掴んで引き寄せた。
「ああ…」
彼女の口から悩ましい声がこぼれる。
そして、彼女の腰を掴んだまま、自分自身を彼女に押し当てる。
カリカリと、彼女がシーツを引っかいて逃げるようなポーズを繰り返す。
「行くぜ?」
ただ一言それだけ告げて答えも聞かずに一気に彼女を貫いた。
243 :
マルメンライト:2011/04/06(水) 00:14:16.50 ID:TXilUtod
「ふぁぁぁ!」
彼女の眼が見開かれ背中が大きくのけぞる。
びくびくと彼女が震え、達したのだと気づく…そんな彼女が愛おしい。
だから俺は腰を激しく突き込んだ、休憩なんかさせるわけがない。
「ちょっと!ヒューマンすこし、少し待って!イった、イっちゃったから休憩させて!」
そんな彼女の懇願を俺は無視して激しく彼女を突き上げる。
「ふひゃぁぁぁ!くひぃぃぃ!はぁぁぁ!くぅぅぅぅ!」
達して敏感になった彼女のことを犯すみたいに蹂躙する。
「やめて…イキすぎて変に…!変になる!」
絶え間なく彼女はイキ続ける、絶頂を感じている最中に、俺の突き上げで無理やり絶頂を感じさせられている。
そりかえる背中をなめると、それだけで彼女が達する。
「死んじゃう…イキすぎて…死んじゃう」
彼女がそう俺に訴える。
「俺も…イクからあと少し」
「早く!早くイッて!イキすぎてくるしい…!」
言葉とともに、彼女が僕を強く締め上げた。
「くぅぅ!」
思わず射精しそうになるのを歯を食いしばって耐える。
「何で、何で耐えるの耐えちゃだめ!イッてよ!イッてってば!」
彼女がそれに気づいて、むちゃくちゃに腰を振る、イキ続けている彼女は俺止まれば休憩できることが分からなくなったらしい、俺をイかせるために更にイキながら無理やり腰を動かした。
「ぐあっ!」
むちゃくちゃな動きに耐えられなくなって射精がはじまる、俺は最後の抵抗で腰を彼女の一番にたたきつけ残りの欲望を吐き出した。
「ふぅぅぅ!」
体の熱が全て奪われるような感覚に腰が震えた。
「くひぃぃぃ!」
ようやく訪れた終点に、フェアリーはシーツを強くつかんで震える。
幾度となく絶頂を迎えていたせいだろう彼女の痙攣は止まらない。
しばらく背中をそらせてぶるぶる震え、糸が切れたように突然ベッドに倒れこむ、長い絶頂がようやく終わったらしい。
「もう…無理…これ以上イカされたら…死んじゃう…」
ぐったりとした様子で俺にそうつぶやく、その体はまだ少し震えていた。
「…悪い」
自分の欲望を目の当たりにしてみると、少し後悔の念が襲ってくる。
まだ2回目の体験なのに、彼女をあんな激しく責めてしまった。
だが、彼女はそんなことを気にしてる様子などなく、満面の笑みを浮かべて俺を見る。
「でも、これでもう、ヒューマンが襲いかかってきても大丈夫だよ」
「…お前な、犯されることの予習してどうすんだよ」
胸が満たされた感覚は確かにあるけど、それ以上に呆れながら俺は彼女の頭をなでた。
俺の胸に彼女が頬をすりよせる。
「それだけ、ヒューマンが好きってこと」
「もう猫かぶるのもやめるけどな」
「いいよ、ヒューマンはその口調のほうが似合ってるし」
そんな彼女の言葉に満たされる。
俺はもう一度彼女の唇を奪って目を閉じる。
「お休み、フェアリー」
「お休み、ヒューマン」
俺はフェアリーを腕に抱いて、その温もりを感じたまま
やってきたまどろみに身をゆだねた。
244 :
マルメンライト:2011/04/06(水) 00:16:17.46 ID:TXilUtod
私はきっと歪んでる。
優しい彼を見るたびに、怖い彼も見たいとおもう。
彼が歪んでいるのを私は知っている、それでもそんな彼が私は大好き
だから、きっとそんな私も歪んでるんだ。
歪んでいるから引き合った。
私はそう、信じてる。
私は…歪んだ彼を愛してる。
だから私は歪んでる。
二人で歪んでいるのだから…
きっとそれが、ちょうど良い。
245 :
マルメンライト:2011/04/06(水) 00:17:36.51 ID:TXilUtod
ふと眼を覚ますと、彼はまだ眠っていた。
その寝顔は優しくて、私はその頬に口づけて、体を起こそうとする。
昨日、彼を受け入れた場所は少し彼がまだ中に入ってるような感覚があった。
幸い、痛みはあまりないけれど足に力は入らない。
「…腰ぬけちゃった、飛べるからいいけど」
ボロボロになっている制服の上着を脱いでまとめる、スカートのしわを伸ばして、下着を身につけ私の上着の代わりに部屋の隅にかけられた彼の予備の制服を見つけてそれに袖を通す。
とりあえず、羽を出すため、勝手に背中に穴を開ける
私には大きすぎてブカブカなそれをきて、眠る彼の隣に座った。
昨夜の行為を思い出し少し恥ずかしくなる。
「…初めてが普通で良かった」
ノームの言うとおり、初めてはすごく痛くて、体が裂けてしまいそうだった。
彼が優しくしてくれたから途中から感じる事が出来たけど、もし私の初めてがあの洞窟で奪われてしまっていたら、きっと私は耐えられなかった。
2回目にあの洞窟で彼がしようとした行為を受け入れて、その激しさをこの身で知った。
一度感じたあとだったからこそ、受け入れられた、彼の与える刺激を快感として受け止められた、絶頂を感じて、絶え間なく絶頂しつづけられた。
もし、あの洞窟で初めてをあの激しさで失っていたら、きっと痛みしか感じなくて、私はその痛みを与えた彼を受け入れられたか分からない。
あの快感が全部痛みだったら、思わず体が震えてしまう。
あの激しさを受け止められたのは彼が私のために苦しんでくれたからだと私は思う。
彼は私を傷つけたと思っていたけど、改めて、私は彼に救ってもらったんだと、そう思う。
「ん、フェアリー…」
彼が私を探して腕を伸ばす。
「大丈夫…私はここにいるよ…」
彼の手を握る、安心したように彼の寝顔がほほ笑みに変わる。
ずっと、彼は自分の想いに苦しみながら、私と共にいてくれた。
今度は私がそれを受け入れていく番、彼の欲望を受け入れていく番。
優しい彼と、激しい彼、一度、受け入れた私に受け入れられないはずがない。
「いつでも、求めていいんだよ…」
眠る彼に囁いた。
246 :
マルメンライト:2011/04/06(水) 00:18:34.44 ID:TXilUtod
「…そんなこと言ってると、後ろの初めてだって奪っちまうぞ」
どうやらいつの間にか起きていたらしい彼が私にそう言う。
後ろの初めてというのはお尻の穴のことだろうか?ノームにもらった本を読んで変則的にそこですることもあるのは知識として知っている、経験は当然ないけど、彼はもしかしてそれがしたいのだろうか?
「別に?したいなら良いけど?」
本では気持ち良さそうだったから、正直すこし興味がある。
「アホか…前であれだけ限界なんだから後ろでやったらお前の後ろがガバガバになるわ」
呆れたように彼が呟く。
…ちょっとされてみたいかも、と思ったのは内緒にしておく、言ったら多分この場で実行される、さすがに今日この場でされるのは遠慮したい。
体を起して残った眠気を払うかのように頭を振って彼は私の姿を見た。
「それ…俺の予備の制服だよな?」
何で着てるんだとばかりに彼が私を見る。
「いや…私の制服の上着、あれだし…」
私の制服の上着…もとい、かつて制服だったはずのものを指差す。
もはや制服というより糸くずと布らしきものの塊だった、どう見ても着れそうにはない。
「…ごめん」
彼が謝る。
「大丈夫…それよりヒューマン」
彼に向けて手を伸ばして目をつぶる。
「ん…」
口づけを交わす。
不意に、視界の端で布団が膨らんでいるのが見える。
布団をはがすと、彼のそこが元気に天井に向かってそそり立っていた。
「朝から元気だね…」
「…生理現象だからな」
彼が少し恥ずかしそうに頬を掻く。
そっと私はそれに、手を伸ばす、触ってみると思ったよりも硬くてびくびくと震えて温かい。
「…どうかしたか?」
じっと彼のモノを見つめる私に彼がそう言ってくる。
「辛い?」
彼に私は聞いてみる。
「いつものことだ、しばらく待ってればおさまる」
そう彼は言うけれど、びくびくと脈打つそれはどう見ても苦しそうに見える。
不意に、私はあることを思い出した。
「…ねぇヒューマン、口でしてあげようか?」
247 :
マルメンライト:2011/04/06(水) 00:24:34.07 ID:TXilUtod
「は?」
彼が私の言葉に目を丸くする。
「…ノームにもらった“ご奉仕させてご主人さま”って本読んで、そう言うのがあるって私、知ってるよ?」
「…あいつ母親だよな?」
ヒューマンがどこか遠くを見ている。
本では確か…
「ご主人さま…私にご奉仕をさせていただけないでしょうか?」
こんな感じで、上目づかいで見るのが正しかった気がする。
「…」
ヒューマンが私を無言で見てる、手の中のソレがまた少し固くなった。
「…頼む」
なぜか、ヒューマンが少し恥ずかしそうにそう答える。
「はい、それでは…ご奉仕させていただきます」
本でドレスみたいな服を着ていたフェルパーの少女の言葉をそのままなぞって口にする。
口を大きく開けて、彼のそれを咥える、大きくて少し顎が辛い。
本でしていたように、先をなめて、棒のようなそれを上下に手で擦る。
「はむ…ん、あむ…」
もう片方の手で、彼の袋のような場所を揉み、アイスキャンディーのようにそれをなめてみる。
「うあっ…いい…ぞ、フェアリー」
「ほんふぉ?」
彼が気持ちよさそうな顔をしている。
うれしくなって夢中で彼をなめしゃぶる。
次第に彼の先から汁のようなものが溢れてくる、なめてみると少ししょっぱい。
続けているうちに、私もお腹が熱くなってくる。
―なんか変な気分…―
だんだん体が火照ってくる。
不意に、行為を続ける私のそこを彼の手がなでる。
「…濡れてるなフェアリー」
「な、なんでだろ…なめてたら、変な気分が…」
「続けてくれ…俺も続ける」
「うん」
彼に愛撫を受けながら彼のそれを夢中で味わう。
与えられる快感を返すように。
「く、フェアリー…出る…」
彼が苦しそうにそう言っている。
「ふーふー」
私も彼の愛撫のせいで達しそうになっていた。
頭がボッーとして、彼をひたすら味わうことしか考えられない。
「うぁ!」
彼の腰が震えて私の口の中に欲望を吐き出す。
「んん〜」
少し驚きながら喉に叩きつけられるそれを、私は少しむせながらのみこんでいく
彼の熱が喉を伝わって、お腹の中が熱くなる。
―変な味、でもあったかい…―
「おい、フェアリーお前…まさか」
「ん?」
彼が私を何か驚いた眼で見ている。
「飲んだのか?」
「え?飲んじゃいけないものだった?」
本だと確かに飲んでたはずだけど…?もしかして何か間違ってたのかも知れない。
そう言えば本では口をあけて、たまったものを見せていた気がする。
「あ…ごめん、私すぐ飲んじゃった…口にためて見せて、「いいよ」って言われてから飲まないといけないのに…」
あんなにしっかり覚えたと思ったのに驚いて手順を一つ飛ばしてしまった。
「いや…まぁすぐ飲んでも、問題はない」
「そう…よかった…今度するときは気をつけとく…」
248 :
マルメンライト:2011/04/06(水) 00:27:23.85 ID:TXilUtod
それよりも…なんか、むずむずする、彼はイったけど私はまだイってない、昨日初めて失ったばかりなのに、あれだけ愛してもらったのに何というか……すごくしたい。
「あの…ヒューマン、なんていうか、その…」
なかなか言い出すことができなくてもじもじ震える。
みだらな女と思われないだろうか?
そんな私をみた彼が笑って、横になったまま私を自分の腰をまたがらせるように、抱き上げる。
「フェアリー、悪いな」
「ふぇ?」
「あんなのみたら我慢できない」
彼が私のことを求めていた、そして同じように私も彼のことが欲しいと思っていた。
だから、答えは簡単だった。
「…いいよ、またしよう…ヒューマン、今度は私も頑張って動くね」
「そいつは魅力的だな」
彼が下着をずらして突き込んでくる。
腰は少し痛いけど、頑張れば動ける。
快感に震えながら、私は再び彼の欲望をこんどこそ自分から受け止めた。
249 :
マルメンライト:2011/04/06(水) 00:35:27.90 ID:TXilUtod
3回目になる行為を終えると私のお腹が小さく鳴った。
「そろそろ朝ごはん、食べにいこっか」
彼のお腹の上に乗ったまま彼にそう告げる。
「先にデザートを食べた気もするが、そうするか…服着るからどいてくれ」
「は〜い」
乱れた制服を直しながら、私は彼と繋がりをといた。
「ふいてやろうか?」
抜いた瞬間あふれ出た精液をみて彼が言う。
「いや…良い、ヒューマンにされたら多分濡れちゃう」
「…そうか」
はずかしかったけど、ティッシュをもらってふきとった。
ちなみに、下着はスカートに入れていた予備を履いた。
彼も下着をはいて自分の制服に袖を通して起き上がる。
ベッドに座ってそれを待ちながら、立ち上がった彼の腕に自分の腕をからめて羽で浮遊する。
「自分で歩けよ」
恥ずかしそうに彼が笑った。
「無理、あんなにしたから歩けない」
「今夜が楽しみだフェアリー」
「そうだね〜」
そんなことを話しながら私達は食堂に向かう。
曲がり角を曲がるとちょうどディアボロスの部屋があいてフェルパーとディアボロスの二人が出てきた、そして普通に目があった。
「あ」
私達4人の声が重なる。
「お、おはよう二人とも」
「お、おはよ、フェアリー、ヒューマン」
少し肌のつやが良いフェルパーが答える、ただなんか様子がおかしい。
「よう旦那、昨夜はずいぶん楽しんだみてぇだな」
腕に抱きついている私を見たディアボロスが煙草をくわえたままヒューマンの肩をたたく。
「だまってろディアボロス、お前は人のこと言えんのか?」
様子のおかしいフェルパーをみたヒューマンが笑ってディアボロスの胸を叩く。
「フェルパーがご褒美くれてな、“花見”とかいろいろ楽しんだぜ…まぁ、見てるだけじゃなくて、ついつい手を出して散らしちまったがな」
意味深にディアボロスが笑うとビクン!とフェルパーの尻尾が立った。
なんか、フェルパーが自分のお尻を気にしてる気がする。
「……痛いかったのに…痛いのがあんなに…絶対、私変なの目覚めた…目覚めちゃった、もうお嫁にいけない…」
多分、気にしないであげた方が良いんだろう。
「…お前何した、なんか散ったというか、むしろ咲いたみたいなことうちのドクター口走ってるぞ」
ヒューマンが少し引いてる。
「いや…調子に乗っていろいろやったら、なんか目覚めたらしい」
新境地に達したらしい彼女に感想をきいてみたかったけど、フェルパーが危険そうだからやめておく。
「お前たちは廊下で何を話してるんだ、少しは学生として節度を考えろ馬鹿者どもが」
スノウを肩車したまま階段をおりてきたバハムーンが私達を見て呆れたように呟く。
「子持ちのお前が節度を語るな」
ディアボロスとヒューマンの声が重なった。
「……それもそうだな、すまん、だが娘がいるからやめろ」
「ままーおたのしみってなに〜?」
「…スノウも大人になったらわかる」
「ふーん」
娘の問いにノームはほほ笑みながらそう答える。
「あの…ノーム」
その答えはさすがにどうかと思う。
「…嘘は言ってない、それに女の子だからいつかは経験する」
「…そうだね」
この話題はスノウの今後のためにやめとこう。
250 :
マルメンライト:2011/04/06(水) 00:36:29.57 ID:TXilUtod
折角集まったから私達は7人そろって食堂に向かうことにした。
「あ、そうだノーム、後で制服直して」
「…昨日おろしたばかりなのにまた?」
「ヒューマンお前、猫かぶるのやめたんだな」
「ああ、もう温かい季節になったからな、かぶる必要ないだろ」
「にゃーにゃー、どしたの?おしりいたい?」
「痛かったのに…痛くて…でもそれが…気持ち良くて…痛いのが良くて…」
「スノウ、フェルパーは今悩んでるから静かにしてやれ、それよりも今日こそピーマン食べろよ」
「え〜!?もうぴーまんや〜」
くだらない、何気ないことを話しながら私達は歩いていく。
…一名だけ、新しい自分と戦ってるけど。
251 :
マルメンライト:2011/04/06(水) 00:37:36.91 ID:TXilUtod
先頭のヒューマンが食堂の扉を開くと、食事をしていた全員が立ち上がって彼に敬礼する。
今まではずっと不思議だったけど今なら理由がちょっとわかる。
「それにしても、フェアリー、どうしてずっとヒューマンの腕にくっついてるの?」
意地悪そうな笑みを浮かべてノームが笑う。
私もそれにのることにした。
「その…ヒューマンが激しくて…腰が…」
頬を染めて照れてるようにそうつぶやく。
嘘はついてない、実際今の自分が一人でまともに歩けるかはわからない。
朝起きてから更にしてしまったというのもある。
私の衝撃的な発言に食堂に緊張が走った。
「テメェら…お前らは何も今聞かなかった…そうだよな?」
ヒューマンが自分を見つめる視線に銃を引き抜く。
「イエス、サー!私達は何も聞いておりません、静かに食事に集中しております、イエス、サー!」
彼らの言葉に彼は笑う。
「まぁ良い、今日は好きなだけ騒げ、今日の俺は気分が良い多少の騒ぎは許してやる」
そう言っていつもの指定席に座る彼を見ながらひそひそと会話が交わされる。
今、あの軍曹、信じられないこと言わなかったか?
つかあのフェアリーの服どう考えても軍曹のサイズだよね。
おい、余計なことを言うな!死ぬぞ!
そんな言葉が交わされる。
そんな彼の向かいに私は座る。
みんながそれぞれ自分の席に座って食事の前で手を合わせる。
「いただきます」
「まーす」
そんな声が食堂に響く…
タカチホ義塾は今日も平和だった。
252 :
マルメンライト:2011/04/06(水) 00:39:35.33 ID:TXilUtod
俺はどうしようもないくらい歪んでる
今でもあいつのことを壊してしたくて
あいつが居ないと心配で
気づけばあいつのそばにいて
あいつの気持ちに付け込んで
それでもあいつといたいから
隣であいつが笑うから
あいつのことを守ってやろうと俺は再び胸に誓った。
きっとそれが、あいつに俺がしてやれる、たった一つのことだから
それが歪んだ俺の中にある
たった一つ真っ直ぐな想い
253 :
マルメンライト:2011/04/06(水) 00:45:58.54 ID:TXilUtod
以上でフェアリー×ヒューマンは投下終了です。
ディアが言ってた"花見"はまた後日投下するかもしれません
…仕事が片付けば
とりあえず今日はフェルパー×ディアボロス、ノーム×バハムーン、
フェアリー×ヒューマン3つのまとめ?になるチームとしてのエピローグを
投下
254 :
マルメンライト:2011/04/06(水) 00:53:11.19 ID:TXilUtod
うっそうと生い茂った森に、激しい戦いの音が鳴り響いている。
プリシアナゴーレム、そう呼ばれる石の巨人と6人、いや7人の少年少女が戦っていた。
「いくぜ、合わせろフェルパー!」
「オーケイ、いくよディア」
鏡に映るように背中合わせに立った二人が呼吸を整え、最大の技を放つ。
『天剣…絶刀!』
降り注ぐ二重の斬撃の嵐に、ゴーレムの体が軋んだ音を立てる。
だが、ゴーレムはその刃の雨を耐え抜いて、反撃とばかりにその巨大な腕をその2人に振りおろす。
しかし、二人はよけない、むしろ余裕の表情でそろって煙草に火をつける。
そして、それを証明するかのように、ゴーレムの攻撃は突然現れた虹色の壁に壁に遮られた。
「二人とも、仲が良いのは良いけど、スノウちゃんも居るんだから外でラブラブしすぎちゃだめだよ?」
壁を作りだしたフェアリーが、魔道書を開いたまま二人をたしなめる。
壁に攻撃が防がれたゴーレムは再度の攻撃のため腕を振り上げる。
しかし、振り挙げられた腕は振り下ろされることなく宙に舞った。
「…ふむ、ゴーレムといっても多少硬い程度だな、…ノーム」
両手に巨大な剣を持ったバハムーンは斬り落とした腕を踏みつけ、背後の妻の名を呼ぶと灼熱のブレスをゴーレムに放つ。
「…了解…」
彼の言葉に応えるようにノームは杖を大きく振って呪文を紡ぐ。
「…凍っちゃえ…ブリザード」
急速な過熱と冷却により、ゴーレムの体には無数のヒビが入っていく。
それでもまだあがくようにゴーレムが健在な腕を無防備なノームめがけて振り下ろす。
「ままをいじめちゃだめ!ひっさ〜つ、りーりーのまね〜〜!!」
ノームの背後に隠れていた白い髪のノームの子供がそう叫んで手を前に突きだす。
「まねっこ、まほーへきー」
緊張感が全く感じられない言葉とは裏腹に、強大な魔力で作られた魔法壁はゴーレムの最後の抵抗を受け止めて、残ったゴーレムの腕と共に砕け散る。
攻撃の手段を失ったゴーレムの目の前に、獣のような笑みを浮かべたヒューマンが立つ。
「あばよ、意外と楽しめたぜ」
銃声は一発…森が大きく震え、ゴーレムの体が砕け散った。
タカチホ義塾
この年現れたそのパーティはその類まれなる才能と力を持って見事、三学園の交流戦で優勝という輝かしい栄光を残した。
されど、彼らのチームには名前がなかった。
ただ、何かに導かれるように集まった寄せ集めのチームが、1年の時を経て、結束を深め6人から7人、本当のチームへと成長していっただけだったから。
だから彼らはこう呼ばれた
「ネームレス」
名状しがたい、そんな彼らをたたえるように…。
―――――――
以上でチーム「ネームレス」の話は終了です。
あんまりシリーズ物っぽくなかったのに
無理やりシリーズ物っぽくしました、ごめんなさいorz
楽しんでいただけたら幸いです。
拙い文しかも連続で大量投下と失礼いたしました。
改めて前回、前々回GJいただきましてありがとうございました。
どうなることかと思ったが、最終的には幸せそうでよかった
GJでした
GJ。
バハ×ノムの話の時にあった
「フェルパーはにゃーにゃー、ディアボロスはもーもー」
でディアは牛かよって思ったけど
にゃーにゃー言ってる仔フェルパーを想像して悶えたのでおk。
お疲れ様ですた。
お疲れ様です。GJでした!
彼らがとても好きになったので花見にもきたいしています。
ととモノ3DSとかあるけど、2Gみたいなものでしょうかねあれは。
とりあえず一本投下します。
注意としては、セレ子×ドワ子の百合モノでお尻ネタあり
楽しんでいただければ幸いです。
彼のパーティは、時に掃溜めと称される。
しかし、それは一般に想像される、いわゆる使い物にならないものの集まりとは少し違っていた。
「おいフェアリー、肉食わねえのか、肉!?もらっていいかそれ!?あ、ドワーフもそれ食わねえならくれー!」
「ダメだよぉ、楽しみに取ってあるんだからぁ…」
いつも異常なほど元気なヒューマンに、非常におっとりとしたドワーフ。この二人は、最も早くからパーティを組んだ者達である。
「あー、好きなのとっとく派かー!んじゃ、フェルパー……は、肉ねえのか…」
「肉」
ヒューマンの言葉に、フェルパーはそちらへ顔を向けた。
「お前、飯食うの早えよなー!」
「うん、早い」
「うまそうに食うしなー」
「おいしい」
「幸せそうだな」
「しあわせ」
ほぼオウム返しに近い受け答えしかしないフェルパー。極度の面倒臭がりで、非常にマイペースな彼女は、受け答えすら最低限の言葉で
済ませてしまうのだ。
「ヒューマン、みんなの邪魔しないでやってくれよ。楽しく食べるのは結構だけどさ」
「えー、邪魔してねえぞ俺ー!」
「まあ、会話があるのはいいことだけど……バハムーンとセレスティアは、ほんと喋らないね」
フェアリーの言葉に、バハムーンは顔を向け、セレスティアは完全無視で黙々と食事を続ける。
「話す内容がない。必要性もない」
「ちぇー、気取りやがってこの野郎!あ、そうだ!飯食ったら勝負しろよな!今度こそ勝ってやる!」
「お前には一生かかっても無理だ。だが、挑んでくるなら相手はしてやる」
「二人とも、喧嘩なんてダメだよぅ……仲良くしようよぉ」
「止めたいならこいつに言え。頭の中身も相当に下等らしくてな、俺にはどうやっても勝てないのをわかろうとしない」
そんな仲間の様子を見ながら、フェアリーは溜め息をついた。
ヒューマンは、格闘家として非常に優れた資質を持っていた。それに加え、個人的に好きな種族なので真っ先に誘った相手なのだが、
その彼を、バハムーンはいとも容易く降した。その試合内容が、また圧巻だった。
まずは格闘家同士として戦い、指一本触れさせずに勝利。次に戦士として戦い、相手を全く寄せ付けずに勝利。最後には風術師として
戦い、もはや動くことすら封じた上での完全勝利。
彼は、異常とも言えるほどの天才だった。そのせいか、種族の中でも飛び抜けて自尊心が高く、他人の全てを見下している。そんな彼を、
フェアリーは苦心して仲間に引き込み、結果としてヒューマンが事あるごとに勝負を挑み、バハムーンがそれを降し、ドワーフが
泣きそうになりながら治療するという構図がすっかり出来上がっている。
だが、その彼が唯一、同等に扱う存在。それがセレスティアだった。
彼女もまた、驚異的な天才だった。翼の漆黒に染まった堕天使。時に器用貧乏とも称される学科だが、彼女の持つ技量は専門職に
勝るとも劣らない。欠点があるとするならば、彼女はセレスティアという種族であるにもかかわらず、信仰心というものを微塵も
持っていないというぐらいだろう。
また、彼女は滅多なことでは口を開かず、仲間に心を許している気配もない。自分は自分、他人は他人というように、心の中で大きな
壁を作っているようだった。
それとまったくの正反対と言える存在が、ドワーフである。
食事を終え、各人はそれぞれの行動を開始した。セレスティアはさっさと部屋に戻り、バハムーンとヒューマンは体育館へ向かい、
その後をフェルパーを持ったドワーフが追いかける。いつものように、決着が早々につくのが目に見えていたため、フェアリーは
自分の部屋に戻り、次の探索の準備を整えていた。
装備品の手入れを終え、消耗品を調達しに購買へ向かう。その帰り、ヒューマンの治療を終えたらしいドワーフとばったり出会った。
「お、ドワーフお疲れ様。結果はどうだった?」
「もう、見てられないよぉ〜……ヒューマン君、またぼろぼろになっちゃって、すっごく悔しそうだったよぉ…」
「それでも諦めないんだから、よくやるよ」
「頑張り屋さんなのはわかるけどぉ……仲間同士なのにぃ…」
そう呟き、彼女の表情は少し暗くなってしまう。そんな雰囲気を変えようと、フェアリーは話題を変えることにした。
「あ、そうそう!さっき購買に行ったんだけどさ、色々買ったら値段がちょうど777ゴールドだったんだよ。で、1000ゴールド
出してお釣りもらう時に『333ゴールドだよね』って言ってみたんだけど、さすがに引っかかってくれなかったよ。ははは」
彼の言葉を、ドワーフはきょとんとした顔で聞いている。そして、いかにも不思議そうに言った。
「……333ゴールドじゃないのぉ?」
「………」
彼女は、全てにおいて要領が悪く、おまけにドワーフという種族では珍しく、計算も非常に苦手としていた。
「お?お前等、何話してるんだー!?俺も混ぜろよー!」
「おー、ヒューマン。体はもう平気なのかい?と、それより、ドワーフに計算教えてやってくれないかな。1000引く777が、
333だと思ってるらしいから…」
「え?合ってるだろそれ?」
「………」
ヒューマンも、格闘家としては優れた資質を持っているが、それ以外では何も持っていない。特に頭脳労働は壊滅的だった。
「……二人とも、繰り上がりって知ってる?まずね、777に3を足したら、780になるだろ?」
「あ、わかったぁ。123ゴールドだぁ」
「違う……違う」
「えぇ〜?でも、7に3足して、次が8になるから2足して、次が9に…」
「ならないよ!そこが違うよ!いいかい?まず777に3を足して780!ここに20を足したらいくつ!?」
「えーっと……80と20で……100になるから…」
ドワーフとヒューマンは、両手を使って必死に計算している。
「えと、800?」
「そう。だからそこにいくつ足したら1000になる?」
「200だな!」
「そう。で、今の計算を合計して、お釣りはいくら?」
「223……あれぇ?なんでぇ?」
「『なんで?』じゃないだろっ!777に1000出したら、お釣りは223なの!」
頭痛と胃痛を覚えながら、フェアリーは必死に説明する。
「そうか、なるほど!777に220を足すと997で、そこに3を足せば1000なんだな!」
「え?……あ〜、そっかぁ。ヒューマン君、すごいねぇ」
「……いや〜、僕からすれば君達二人ともすごいよ…」
こんな二人では、もちろん他のパーティから誘いなどあるはずもない。おまけにドワーフは、冒険者として致命的とも言える問題を
抱えている。
一夜明けて、一行は冥府の迷宮にいた。そこの敵は周囲と比べて格段に強く、この辺りから後衛も火力としての動きを期待され始める。
「早速お出ましか。フェルパー、敵だ」
「敵!」
バハムーンが言うと、彼の担ぐ道具袋がピクリと動き、中からフェルパーが飛び出した。一度尻尾を震わせると、その先端が二股に分かれ、
指には鋭い爪が伸び始める。
「ちょっと数が多いな。なるべく魔法で減らすけど、ドワーフ…」
「………」
ドワーフは泣きそうな顔でフェアリーを見つめ、手にしたぱちんこを封印でもするかのようにきつく握りしめている。
「やっぱり、期待はできないかい?」
「だ、だって、だって……モンスターさんだって、こんなので撃たれたら痛いよぉ……し、死んじゃうかもしれないんだよぉ…?」
「ふん、殺しに来てる相手に、そんな気遣いなど不要だ。それもわからないのか、お前は。もっとも、自分が殺されかけてもその態度を
貫く点に関しては、認めてやるがな」
ドワーフは、優しすぎるのだ。モンスターですら傷つけることができず、その結果、彼女は最初にいたパーティから役立たずとして
放り出された。もちろん、フェアリーも最初は彼女のことなど眼中になかったが、ただ一つ、彼女が何者にも負けない力を持っていたため、
パーティに誘ったのだ。
「バハムーン、今日はツンデレ学科かい。となると、全体魔法は期待できないね」
「魔法が使えても、使う気はない。隣の馬鹿に、格の違いを教えてやらなきゃいけないんでな」
「何だとー!?そんな変な学科になんか、負けないんだからなー!」
「ふん、そうか。まあ、馬鹿にするのは結構だが、どうせ負けるんだから後が辛いぞ」
「ふざけんなー!絶対俺が勝ってやるから、見てやがれー!」
二人が言い争っている間に、セレスティアとフェルパーは戦闘を開始していた。
セレスティアの鎌が無慈悲に相手を切り裂き、フェルパーの爪が相手を引き裂く。それに続き、ドワーフ以外の全員が攻撃を仕掛けていく。
当然、敵も黙ってやられてはいない。攻撃を受け、傷つく仲間を、ドワーフはそれこそ泣きそうな顔で見つめていたが、やがてしっかりと
手を合わせ、その場に跪いた。
「神様……お願い、みんなを助けて…!」
その瞬間、祈りは魔力となり、仲間達全員の傷が一瞬にして消えていく。恐らくはヒーラス程度の魔法なのだが、彼女が使う回復魔法は、
他の誰が使うものよりも高い効果を発揮した。賢者であるフェアリーのルナヒールですら、彼女の使うヒールと同レベルなのだ。
冒険において、彼女が持つ唯一と言ってもいい能力は、その類い稀な信仰心による高い回復能力だった。
しかしもう一つ、彼女はこのパーティにおいて、重要な役目を持っている。
戦闘を終え、フェルパーが道具袋に潜り込む。それをバハムーンが担いだところで、ドワーフはセレスティアにそっと近寄る。
「あのぉ、大丈夫?怪我、もうない?」
「……ええ、大丈夫」
ほんの僅かに笑みすら浮かべ、セレスティアは答える。この信仰心を持たない堕天使は、なぜかドワーフにだけはある程度ながらも
心を許していた。そもそもが話しかけ辛い雰囲気を持っているために、誰も彼女に近寄りたがらないのだが、ドワーフはあまり
気にしていないらしい。
フェルパーとヒューマンが前衛を務め、セレスティアとバハムーンがその中間を担い、ドワーフとフェアリーが後衛を担当する。
そうしている限りは、彼等のパーティはなかなかに優秀な戦績を収めていた。だがそれでも、彼等は掃溜めと称される。
というのも、フェアリーを除き、彼等は誰も彼もがパーティから追放された者達なのだ。
その理由を、彼等が互いに尋ねることはない。理由を知るのはフェアリーのみだが、彼もあえてそれを話すことはない。
無事に探索を終え、プリシアナに戻った彼等は学食へ向かうことになった。だが、セレスティアと、道具袋の中でおにぎりを
盗み食いしていたフェルパーは、部屋へ戻ると言う。
「ご飯、一緒に食べないのぉ…?」
「お腹空いてないし、付き合う義務もない。それより…」
そう言うと、セレスティアはドワーフの耳元で何か囁いた。
「そういうことだから、わたくしはこれで」
フェルパー入りの道具袋を担ぎ、セレスティアは去って行った。それを見送りながら、バハムーンがぽつんと呟く。
「あの猫女にも困ったもんだ」
「そうだね。今度っから、フェルパーの入ってる袋には消耗品入れないようにしよう」
「……そうだな」
その後は、いつもと変わらぬ光景である。ヒューマンがバハムーンに手合わせを挑み、それをドワーフが止め、バハムーンが軽い挑発を
混ぜて承諾し、フェアリーは出番がない。リーダーのはずが、最近影が薄くなっているのが、フェアリーの密かな悩みだったりする。
食事を終え、バハムーンとヒューマンは体育館の一角を借りて手合わせをし、やはりバハムーンの圧勝に終わる。ヒューマンの治療を
終えると、ドワーフはようやく自分の部屋に戻ってきた。
一日分の汗を吸った服を脱ぎ、備え付けの浴槽に湯を張る。それが溜まるまでの間に、ざっと全身にブラシを掛け、余計な抜け毛を
取っておく。ついでに翌日の用意も整えておき、枕元に着替えを用意したところで浴室に向かう。
浴槽に入り、中に座るようにして、ゆっくりと体を湯の中へ沈めて行く。太股が入り、尻尾が入り、尻から腰、腹へと浸っていく。
しばらくの間、ドワーフはその温かさを味わうように、ただじっと目を瞑っていた。やがて目を開け、石鹸を手に取ると、まずは腕から
洗い始める。
さすがに汚れているらしく、泡立ちはかなり悪い。ドワーフは丁寧に石鹸を塗り込み、それを湯に浸して泡立て、洗い落としていく。
それが済むと、今度は上半身に石鹸を付けていく。首を擦り、肩を擦り、胸に手をやったところで、ドワーフは一度手を止めた。
「………」
自身の、あまり膨らんでいない胸を眺める。そこをしばらく見つめてから、ドワーフはそこを丁寧に石鹸で擦る。
「……ふ〜…」
少し恥ずかしげにそれを終えると、ドワーフはハッとしたように腋の臭いを嗅ぐ。
やはり汗をかいただけに、臭いがだいぶ強い。石鹸を湯に浸し、それを手で擦ってしっかりと泡立てると、ドワーフは丁寧に腋を洗う。
それを終えると、一度肩まで湯に浸かり、しっかり擦って石鹸を洗い流す。しばらくそのまま体を温めてから、今度は立ち上がり、
下半身に石鹸を付け始める。
下腹部から太股、続いて尻尾と手を滑らせる。普段ふさふさした尻尾は、濡れたせいでかなり貧相な姿になっている。
その裏側、特に付け根部分に、しっかりと石鹸をつける。さすがに表情は少し恥ずかしげだったが、彼女の手が止まることはない。
それも終えると、ドワーフは一度大きく息を吐いた。心を落ち着けるように石鹸をもう一度湯に浸し、手にしっかりと泡立てる。
心持ち足を開き、臀部にざっと石鹸をつける。そして割れ目をなぞるように、しっかりと擦る。
「ふ、んっ……はぅ…!」
指が動く度、全身に快感が走り抜け、ドワーフは熱い吐息を漏らす。それでも手は止めず、さらには秘部の方までしっかりと洗う。
「んんっ……ふぅ〜」
それが終わると、ドワーフは力尽きたように座り込んだ。何度か息を深く吸い込み、呼吸が落ち着いて来ると、先程石鹸を付けた部分を
丁寧に洗い流す。
最後に髪を洗い、全身をシャワーで洗い流すと、風呂を出る。全身湿っているため、服はなかなか着られない。とにかく胴体部分だけを
しっかりと拭き、辛うじてタンクトップとハーフパンツを着られる程度まで乾かし、あとは毛が乾くまでのんびりと待つことにする。
体毛が元のふさふさ具合を取り戻すまでには、さすがに長い時間がかかり、気付けば消灯直前の時間にまでなっていた。
ドワーフは急いでジャージ上下を着込むと、鍵を持って部屋を出る。きょろきょろと辺りを見回し、人気がないことを確認すると、
パタパタと廊下を走りだす。しばらくして、とある一室の前で足を止めると、ドワーフは遠慮がちにドアをノックした。
ややあって、カチャンと鍵の外される音がする。部屋に入ろうとドワーフが手を伸ばした瞬間、パッとドアが開き、中から伸びた手が
彼女の腕を掴んだ。
「あっ、わっ?」
強く腕を引かれ、ドワーフはよろめきながら室内に引き込まれる。彼女が完全に中へ入ると、セレスティアは即座に鍵を掛け、ドワーフを
ぎゅっと抱き締めた。
「いらっしゃい。ふふ、時間ギリギリ」
「あ〜、びっくりしたよぉ。ごめんねぇ、毛がなかなか乾かなくってぇ…」
「わかってる。それにこれだけギリギリなら、今日も泊まってってくれるでしょう?」
「う、うん……見つかったら、怒られちゃうもんねぇ」
「嬉しい。ん……ふわふわっ!」
まるでぬいぐるみを抱き締めるように、セレスティアは力いっぱいドワーフを抱き締める。ドワーフの方もまんざらではないらしく、
少し困った顔をしつつも抵抗は全く見せない。
頭に顔を埋め、セレスティアは深く息を吸い込む。
「……頭、しっかり洗ったのね。石鹸の匂い」
「あっ……う、うん。ちゃんと、しっかり洗ってるよぉ…」
さすがに少し恥ずかしいのか、ドワーフは軽く身を捩る。しかし、セレスティアはしっかりと捕えて離さない。
「本当?じゃあ、ここは?」
「やんっ……あ、洗ってるってばぁ……ねえ、その、セレスティアちゃん…」
もじもじしながら声を掛けるドワーフに、セレスティアはいたずらっぽく微笑みかけた。
「ふふふ、もうベッド行きたいの?」
「ん〜…」
ドワーフは俯き、尻尾を落ち着きなく振りながら、こくんと頷く。
「エッチ」
「ちっ、違うよおっ。だって、その、こんなところで……あの……えっと…」
「こんなところでじゃれてないで、ちゃんとしてほしい?」
「違うの違うのっ、そうじゃなくて……だから…」
心底困り果てた顔で必死に弁解するドワーフを、セレスティアは満面の笑みで見つめている。
「ふふ、可愛い。素直でいい子……いじめたくなっちゃう」
いかにも堕天使らしい台詞を吐くと、セレスティアはドワーフの肩に腕を回し、そっとベッドへと促す。それに押されるように、
ドワーフは彼女のベッドへと上がった。
一緒に上がったセレスティアは、どこか不安げな、しかし期待するような目をするドワーフを、そっと抱き寄せた。今度はドワーフの方も、
彼女を抱き返す。
「ふさふさで、あったかい」
セレスティアが言うと、ドワーフの尻尾がパタパタと揺れ始める。
「セレスティアちゃんも、あったかいよ」
二人は少し体を離し、お互いの顔を見つめあった。やがて、相手の体に回されていた腕が、どちらからともなく首へと回される。
目を瞑り、そっと口づけを交わす。唇同士を触れ合い、軽く吸い、時折ちゅっと小さな音を立てる。
セレスティアのキスにドワーフが応え、唇を吸う。すると、セレスティアは素早く唇を離す。玩具を取られた子供のような目で
見上げると、セレスティアは満面の笑みを浮かべ、彼女のキスを受けてやる。
一度意地悪を受けると、ドワーフはセレスティアをなじるようにぎゅっと抱き締め、不器用な口づけにも熱が入る。そんな彼女を
宥めるように応えながら、セレスティアはドワーフの服に手を掛ける。
ジャージを脱がせ、その下に着ていたタンクトップに手を掛ける。するとドワーフは恥ずかしげにそれを遮り、代わりにその手を
ぎゅっと握る。セレスティアは優しく微笑み、ドワーフの体を再び抱き締める。
温もりを全身で味わいながら、二人はしばらく抱き合った。しばらくして、セレスティアが再びタンクトップに手を掛けると、ドワーフは
ピクリと体を震わせたが、もう抵抗はしなかった。
背中の方から、焦らすようにゆっくりと捲り上げる。胸元辺りまで来ると、ドワーフの腕に少し力が入った。そのままでは脱がせることが
できないのだが、彼女が協力してくれる気配はない。セレスティアは片手を服から放すと、ドワーフの胸をそっと撫でた。
「あっ」
小さく声を上げ、ドワーフは驚いたように体を震わせる。そこでようやく顔を上げると、セレスティアは服を摘んで引っ張ってみせる。
その意味するところを察すると、ドワーフは恥ずかしげに俯きつつも、脱がせやすいように腕を上げる。セレスティアは素早く服を
剥ぎ取ると、それをベッドの下へ放り投げた。
「あなたも……ね?」
「う、うん…」
耳元で囁かれると、ドワーフはおずおずと体を離し、慣れない手つきでセレスティアの服を脱がせ始めた。
留め具を吹っ飛ばしかけ、袖を破きそうになり、見かねてセレスティアが自分から袖を抜くと、ドワーフは焦ってしまって、ますます
その手つきが覚束なくなっていく。
「えっ……と……ん……あ、あれ…?確かこう……あれ?え、えっとぉ…」
殊に、ブラジャーを外すのはひどく手間取っていた。最初は片手で外そうとし、出来そうもないとみると両手を使い、それでも外せずに、
セレスティアにしがみつくような格好で、背中を見ながら必死に外そうとしているのだが、それでも外せない。
「……早くしてね?」
「う、うん。えっと、えっと…!」
彼女の言葉にますます慌て、ドワーフはもう泣きそうな顔で格闘している。そんな彼女を、セレスティアは実に楽しげな笑顔で見つめる。
やがて、ようやくブラジャーがずるりと落ちた。ただしその直前、留め具のあった部分からビリッという音が鳴ったのだが。
「………」
「ご……ごめんなさぁい…」
耳をしゅんと垂らし、尻尾も内股に巻き込んだドワーフを、セレスティアは変わらぬ表情で見つめる。
「あとでちゃんと直してね」
「うん、ほんとにごめ……ひゃっ!?」
言い終える前に、セレスティアはドワーフの尻尾の付け根を撫でた。途端に、ドワーフは背中を仰け反らせる。
背筋に指を当て、つっと下へなぞる。再び尻尾の付け根を通り、その裏側に指を滑らせると、ドワーフは小さな喘ぎ声を漏らす。
「あうぅ……尻尾、ダメぇ……んっ!」
「ふぅん、そう」
気のない風に答え、セレスティアは構わず尻尾を撫で続ける。包むように撫でつけ、指先でくすぐり、その度にドワーフは悲鳴のような
小さい喘ぎ声を上げ、耳を落ち着きなく動かす。
セレスティアは尻尾を弄りつつ、目の前でパタパタ動く耳を眺めていたが、それが目の前に来た瞬間、いきなりパクリと咥えた。
「ひゃうっ!?み、耳ダメぇ…!あっ、な、舐めないでぇ…」
「ふーん」
「やっ!?か、噛むのもダメッ……くぅ、あぁっ!」
耳朶を噛んで拘束し、口の中で毛づくろいでもするようにねっとりと舐める。耳を動かそうとすると少し強く噛み、動きが止まると
柔らかい甘噛みに変え、片手では変わらず尻尾を愛撫し続ける。
ドワーフの身体から、少しずつ力が抜けていく。抵抗が無駄だと悟ったのか、それともセレスティアの責めに腰砕けになったのかは
わからないが、セレスティアに体重を預け、与えられる刺激に素直に反応する彼女の姿は可愛らしかった。
耳から口を離し、空いている手でそれを手前に折り返すと、セレスティアは耳の裏側に鼻をつけた。
「やっ……セレスティア、ちゃん…!」
大きく息を吸う。そこも頭などと同じく、石鹸の匂いがした。
「本当に、きれいにしてきてるのね」
「あぅぅ……だ、だって、きれいにしなきゃ……あんっ……セレスティアちゃん、汚れちゃうもん…」
「優しい子。嫌いじゃないわ……ん、少しあなたの匂いがする」
セレスティアが言うと、ドワーフはビクッと体を震わせた。
「えっ、えっ、ちゃんと洗えてなかったぁ…?」
「ううん。きっと、気持ちよくなってきて、あなたの匂いがし始めたのかもね」
なぜかセレスティアは、ドワーフの体の匂いを嗅ぐのが好きだった。ドワーフもさすがに年頃の女の子なので、汗臭いなどと言われると
それなりに気になる。なので、セレスティアと会う前にはしっかりと体を洗うのだが、セレスティアはどこかしら、石鹸以外の匂いの
する場所を探し出し、その匂いを堪能している。
「や、やだぁ……恥ずかしいよぉ…」
「これからもっと、恥ずかしいことするのに?」
「あぅ…」
そう言われると、ドワーフは黙ってしまった。そんな彼女を抱き締めながら、セレスティアは耳の裏から頬、顎と通り、首筋に鼻を埋める。
「ここも、あなたの匂い」
「やぁ……言わないでぇ…」
ドワーフが恥ずかしがるほど、セレスティアは楽しげな表情を浮かべる。そして、尻尾を弄っていた手が、ショーツの中へと侵入する。
「あっ!?」
途端に、ドワーフは体を強張らせた。その緊張を解そうとするかのように、セレスティアは彼女の形のいい尻をゆっくりと揉み始める。
「んっ……ん、んあっ……くぅぅ…!」
セレスティアの手が動くのに合わせ、ドワーフは抑え気味の声を漏らす。ゆっくり円を描くように手を動かすと、ドワーフの体が
強張り、熱い吐息が漏れる。徐々に慣れてくるのか、体から力が抜けるのを見計らい、尻たぶを開かせるように動かすと、途端に
しがみつく腕に力が入る。そうやって遊ばれても、逃げようにも逃げられず、ただただドワーフはセレスティアにしがみついている。
その体温の変化を肌で感じていると、セレスティアも少しずつ、自身の昂りを抑えきれなくなってくる。
揉み応えのある尻から手を離す。刺激がなくなると、ドワーフの体からがくんと力が抜け、代わりにひどく荒い呼吸が部屋に響く。
「そろそろ下も、脱がせていい?」
「はぁ、はぁ、はぁ……じゃあ、セレスティアちゃんも一緒に…」
「一緒がいいの?ふふ、わかった」
二人は膝立ちになると、お互いのショーツに手を掛けた。セレスティアは、ドワーフの色気も何もないショーツを太股辺りから
くるくると丸め、それを膝のところへ落とす。一方のドワーフは、左右を紐で結んであるだけのショーツを脱がせるのに、なぜかひどく
手間取っていた。三十秒ほど格闘し、ようやくそれを解くと、今度はそれを丁寧に畳んでベッドの脇に置く。
「ありがと」
「あっ」
直後、セレスティアはドワーフを押し倒した。期待と不安が半々になった顔で見上げるドワーフの姿は、彼女にとってひどく扇情的に映る。
胸に手を這わせる。必死に声を抑えるドワーフを見つめながら、セレスティアはゆっくりと手を動かす。
申し訳程度の膨らみを撫で、何度か握るように指を動かす。やがて、指先に硬い手触りを確認すると、セレスティアはそこに顔を近づけた。
毛を掻き分け、小さく尖った乳首に舌を這わせる。
「ひゃ!やっ、あっ!」
思わず頭を押そうとするドワーフを押さえつけ、セレスティアは舌先で嬲るように責め、ドワーフの抵抗が弱まると、そこを摘んで
指の腹で転がすように刺激する。そうしながら、彼女の無いに等しい谷間に顔を埋めると、セレスティアは再び匂いを嗅ぎ始める。
「あうぅ…!い、息、くすぐった……ふあうぅ…!」
少しずつ、嗅ぐ場所を下へとずらしていく。胸から腹、下腹部と通り、セレスティアは一度顔を上げてドワーフに微笑みかけると、
足を開かせ、その間に顔を埋めた。途端に、ドワーフの体がビクンと跳ねる。
「やぁ!そ、そこはっ……はぅぅ!や、ダメぇ!セレスティアちゃん、ダメだよぅ!」
「ん……エッチな匂い、してる。可愛い……ふふっ」
少し顔を離す。そして口を開くと、セレスティアはかぶりつくように口をつけた。
「きゃあ!や、だっ…!あう!ふっ、くぅ!セレスティア、ちゃん…!そ、そんなとこ、汚いよぉ!」
「ん……そんなことない。とってもきれい」
「だ、だってぇ……あうっ!」
襞を舌で押し分け、とろりとした蜜を溢れさせる割れ目に舌を入れる。そのまま中で舌を動かし、愛液を舐め取るように内部をなぞると、
奥からさらに濃い匂いの蜜が溢れだす。
「あう……あうぅ…!セレ、ス……ティア、ちゃんん…!」
「あなたの、おいしくって……いい、匂い…」
「やだぁ……あっ!そ、そんなこと、んっ…!い、言わない、でぇ…!」
セレスティアの舌が動く度、ドワーフの体に強い快感が走り抜け、脳を痺れさせる。それと同等の羞恥心も、今や快感を高めるための
興奮剤でしかなくなっている。
「ふ、う……うあっ…!やぁ……セレスティア、ちゃん…!胸、も……ダメぇ…!」
ドワーフの言葉に、セレスティアは意地の悪い笑みを浮かべ、一度舌を抜いた。
「嘘をつく子は、嫌い」
「う、嘘なんて……んむぅ!?」
乳首を弄っていた指を離し、人差し指と中指をドワーフの口に突っ込む。喉の奥まで入りそうになり、ドワーフは慌てて舌で押し返すが、
セレスティアは構わず奥まで突き入れようとする。
「んんっ!?んぐっ、がふっ!うぇ…!ん、ん……んっ……あぇ…!や、ぐぅ…!」
「気持ちよかったでしょ?」
「ん、んうぅぅ!うぅ〜!」
軽くえずいて涙目になりながら、ドワーフは必死に頷く。それを満足げに眺め、セレスティアは少し攻勢を緩めてやった。
「でも、胸はダメなのね。なら、しっかり舐めて」
「んん……ふっ、んっ……んむ…」
言われたとおり、ドワーフはセレスティアの指を丁寧にしゃぶり始める。指先を舌で包み、間に舌を挟み、吸い上げる。そんな舌の動きを
一頻り楽しんでから、セレスティアは指を引き抜いた。
「ふぁ?あ…」
「ん?もう少し舐めたかった?」
「………」
答えに詰まったドワーフを、セレスティアは天使の笑顔で見つめる。
「でも、胸よりしてほしいところあるんでしょ?なら、応えてあげなきゃ」
「あっ……あ…」
その意味するところを悟り、ドワーフの全身の毛が膨らんでいく。その毛を掻き分け、セレスティアは再び秘裂に顔を近づける。
「あなたの場合、こっちの方よね」
「んっ!」
言いながら、後ろの穴に白く長い指を押し当てる。触れられると、そこはヒクっと動き、尻尾が僅かに下がる。
「ふふ。両方、可愛がってあげる」
中指を小さな窄まりに押し当て、グッと力を込める。
「う、うあっ!あっ、あっ!あっ!!」
腸内に指が侵入し始める。ドワーフは切れ切れの声を上げ、同時に指がぎゅうっと締めつけられる。根元まで一気に突き入れると、
セレスティアはドワーフに笑いかけた。
「どう?気持ちいい?」
「うぅ……そ、そんなこと、聞いちゃやだよぉ…」
「ふぅん。気持ちよくないんなら、もうやめてあげる」
言うが早いか、セレスティアは指を引き抜き始めた。
「やっ!?だ、ダメぇ!ぬ、抜いちゃやだぁ!」
「どうして?気持ちよくないんでしょう?」
「う、うぅ〜……き……き…………気持、ち……いいよぉ……だ、だから、抜いちゃやだぁ…」
泣きそう、というより、実際に涙目になりながら、ドワーフが哀願する。すると、セレスティアは満面の笑みを浮かべた。
「前とお尻と、どっちがいい?」
「……お……おし、り、の……方、が…」
「シスターなのに、出すための穴で気持ちよくなっちゃうなんて……変態ね」
「だ、だってだって……シスターだから、純粋……じゅ、純真…?純…」
「純潔ね」
「そ、それ、守らなきゃいけないんだもん…!」
「だから、お尻の穴ならいいの?お尻の穴に指入れられて、気持ちよくなってるあなたが、純潔を保ってるって言える?」
「……ま、守ってるもん〜…!」
たちまち涙を溢れさせたドワーフに、セレスティアは伸びあがってキスをした。
「ん、ごめんね。あなたみたいな子、つい意地悪したくなっちゃうから」
「……くすん…」
涙を舐め取るようにキスを繰り返し、頭を優しく撫でてやる。やがて、少し落ち着いてきたところで、セレスティアは腸内に入れたままの
指をそっと動かした。
「あうっ!」
「いっぱい、気持ちよくしてあげる」
再びドワーフの足の間に戻ると、セレスティアは秘裂に舌を這わせ、腸内の指を動かし始めた。途端にドワーフは大きな声を上げ、
全身をピンと強張らせる。
「んあっ!あっ!くぅ…!う、あああっ!」
舌は襞を掻き分け、入るか入らないかの部分を刺激し、指は腸内を出し入れさせ、時折内部で曲げてみせる。その刺激一つ一つに、
ドワーフは素直に反応し、それを見ているセレスティアも、だんだんと我慢が利かなくなってくる。
「はっ、あっ!はっ、はっ、はくっ……んっ!?」
突然、刺激がなくなる。途切れた快感に不満を感じる間もなく、セレスティアが体の向きを変え、ドワーフの上に跨った。
「わたくしにも、してくれる?」
「あ…」
既にセレスティアの秘部も、すっかり濡れていた。目の前のそれを、ドワーフはどこかぼんやりした目で眺める。
「それとも、汚いから嫌?」
「う、ううん……セレスティアちゃんのは、平気だよ…」
「あなたのも変わらないと思うけど……あっ、それと」
いきなり声の調子が変わり、ドワーフは何事かと耳を傾ける。
「その、わたくしは、お尻はいいから…」
「……そぅお?わかったぁ」
「あなた、こういうのはお尻でするものと思ってるみたいだからね……初めての時、何の迷いもなく舐められた時はびっくりしたわ」
「頑張るね……ん…」
おずおずと、ドワーフはセレスティアのそこに舌を這わせる。同時に、彼女の翼がピクッと動いた。
「んっ……もっと、強く…!」
「うん……んっ…!ふっ…!」
「ふあっ…!そ、そう、そこぉ…!んんっ!」
再び、セレスティアはドワーフの秘部に舌を這わせ、腸内に指を突き入れた。
「うあぅ!?そ、そんな強く……え!?やぁ!!」
後ろの穴に、もう一本指が押し当てられる。ドワーフが抵抗する間もなく、セレスティアは彼女の中へと突き入れた。
「あううぅ!き、きついよぉ!おなか、苦しいよぉー!」
「んっ……ふふ、その割には、すんなり入ったじゃない。ほら、こんなことも…」
言うなり、セレスティアは二本の指をぐりぐりと回す。もはやドワーフの動きは完全に止まってしまい、ただガクガクと体を
震わせるばかりになってしまっている。
「あぐっ……あっ、あっ、あぁっ!」
「お口がお留守よ?ちゃんと頑張って」
「あぐっ!はっ、あっ!す、少しっ、じゃあっ、優しくっ……んんーっ!」
それでも何とか言われたとおり、ドワーフは必死に舌を伸ばし、セレスティアの秘裂を舐める。それはひどく拙く、その刺激による
快感などほとんど無いようなものだが、彼女の必死さがセレスティアにとって何より大きな興奮剤となっている。
時折、気持ちよさそうに表情を崩しつつも、指と口の攻め手を決して止めないセレスティア。
その快感に翻弄され、嬌声を上げ、身体をくねらせ、止まりがちながらも必死に舌での奉仕を続けようとするドワーフ。
互いに水音を響かせ合い、汗に濡れる身体をしっかりと抱き合う。顔こそ見えないものの、セレスティアは一旦顔を上げると、
必死の奉仕を続けるドワーフに笑顔を向けた。
「んんっ……必死になっちゃって、可愛い。それじゃ、ご褒美」
言うなり、腸内の指を大きく開く。その状態で動かすと、途端にドワーフの奉仕は中断された。
「うあぁっ!?そ、それダメ!やだぁ!ふ、ふわって来るのっ!やぁ!来るのっ、来ちゃうよぉ!」
ガクガクと震えだす体を翼まで使って押さえつけ、セレスティアはさらに刺激を強めた。
「あぐっ!やっ、はっ!ダメダメっ、ダメぇ!来ちゃう!来ちゃうって……やっ……ほんっと…!ふわって……う、浮いちゃっ……セレ、
セレスっ……あ、く、あ、あ、ああっ、ああああぁぁぁぁ!!!」
一際大きな嬌声を上げ、ドワーフの体が弓なりに仰け反る。同時に膣内と腸内が激しく収縮し、未だ中に残るセレスティアの指を
強く締め付ける。その力が少しずつ弱まったところで、セレスティアはドワーフの小さな突起を口に含んだ。
「きゃああ!?だめ!だめぇ!来ちゃったよぉ!!い、今ふわってなってぇ!!今もう来ちゃったからぁ!!だっ……だめ、って…!
や、だ……またっ…!やだ、やだっ、また浮いちゃっ……あ、あ、やあああぁぁぁ!!!」
再び激しく痙攣するドワーフを、セレスティアは無理矢理押さえつける。そして今度はとどめとばかりに、まだ痙攣を続けるドワーフの
腸内を激しく掻き回し、充血しきった陰核を舌で転がし、強く吸い上げる。
「も、もうむり!もうむりぃ!もうきもちいいのだめっ、もうきたぁ!もうきたからぁ!あぐっ!お、おしりやめっ……う、あ、あっ!
あぐぅあああぁぁぁ!!!もうやだふわってやだぁ!もうやめて、やめてやめてやめてぇ!!ゆる、しっ……やだ、あああぁぁぁ!!!」
回らなくなり始めた口で必死に哀願するドワーフに、セレスティアはようやく口を離し、腸内から指を引き抜いた。
「ふふ……満足、できた?」
「……っかふ!はぐ……ぅ……はぁ……はぁ……はぁ…」
ようやく快楽地獄から解放され、ドワーフは焦点の定まらぬ目でぼんやりと天井を見上げ、荒い呼吸を繰り返している。
そんな彼女を愛おしげに見つめ、セレスティアは向きを直すと、ドワーフの隣に寝転んでしっかりと抱き締める。
「今日も可愛かった。お尻とここ、同時に責められて四回もイっちゃって……本当、可愛い子」
「はぁ……あふ……も、もうきもちいいの、いいよぉ…」
怯えたように言うドワーフを、セレスティアは優しく撫でてやった。
「もうしない。でも、今日は頑張ってたし、ご褒美あげる。何かしたいこととか、してほしいこととか、ある?何でもしてあげる」
その言葉に、ドワーフはぱちくりと目を瞬かせた。
「……あ、あの、ほんとに何でもい〜い?」
「うん」
「あの、じゃあ、えっとぉ……おっぱい、吸ってみたい…」
「え?」
思わず聞き返すと、ドワーフは慌てて口を開いた。
「あ、あのね、私、お母さんいなくって……だから、その、おっぱい吸ったことなくて……セレスティアちゃん、おっぱい大きいから、
一回吸ってみたくって……だ、ダメ…?」
だんだんと耳を垂らすドワーフに、セレスティアは優しく笑いかけ、頭を撫でてやる。
「甘えんぼ。いいよ、何でもするって約束だし」
布団を軽く掛けながら、セレスティアは横向きに寝転がると、ドワーフの頭を胸元に抱き寄せた。すると、ドワーフは嬉しそうに
そこへ顔を埋める。
「ありがと……ん」
「んっ…!」
早速ドワーフが乳首に吸いつくと、セレスティアはピクリと身体を震わせた。しかし振り払ったりはせず、黙って吸わせてやる。
それこそ赤ん坊のように、ドワーフはセレスティアの乳房にしっかりと吸いついている。乳首を強く吸い、舌は自然とそこを包むような
形になり、吸うと同時に動く舌が、乳首全体を刺激する。時折強く吸いすぎ、ちゅっと音を立てて口が離れると、ひんやりとした空気が
新たな刺激になるとともに、すぐまたドワーフの温かい舌が乳首を包む。
「ん、くっ……は、あ……あっ…」
思わぬ快感に、セレスティアは必死に声を押さえ、ドワーフに余計な気遣いをさせないよう頑張っている。だが、その努力は意外と
早い段階で必要なくなった。
「んんっ……ん……ん…?」
刺激がだんだん弱まり、程なく消えてしまったことに疑問を感じ目を開けると、目の前にはドワーフの寝顔があった。
「んん……んふ…」
しっかりと乳首は咥えたまま、安らかな寝息を立てるドワーフ。中途半端に刺激され、やり場のない衝動を必死に堪えつつ、
セレスティアも目を瞑る。
「なんで胸吸うのはこんなにうまいのかしらね……今度するときは胸やってもらおう」
そう独りごち、セレスティアはドワーフの頭を抱き寄せる。その匂いを胸一杯に吸い込むと、僅かに汗の匂いがした。
「いい匂い……ふふ」
最後に頭を一撫でし、意識を手放す。胸の中の体温と匂いは、何だかとても落ち着けるものだった。
翌日も、一行の生活は何ら変わりなく進む。朝食は六人揃って食べ、それが済むとバハムーンとヒューマンの手合わせがあり、ドワーフが
負けたヒューマンを治療し、セレスティアはどこに行ったかわからず、フェルパーは誰かしらの近くで袋に入って寝ている。
「くっそぉー!また負けたぁー!絶対、絶対勝ってやるからなぁー!」
「ヒュ、ヒューマン君、落ち着いてよぉ……まだ怪我残ってるんだよぉ…?」
「……ドワーフ、後は頼むよ。割と怪我ひどそうだし、探索に行くのは午後からにしよう。セレスティアとバハムーンにも伝え…」
そう言って移動しようとすると、いつの間にか真後ろにセレスティアが立っていた。その胸に顔をぶつけ、フェアリーは地面に落ちる。
「痛たた……でもちょっと幸せだった。それはともかく、いつの間に来てたんだい?」
「わたくしに報告の義務が?」
「……いえ、ありません」
「話は聞いた。それまでぶらぶらしてる」
「了〜解。じゃ、バハムーン……と、フェルパー探してくるよ」
ヒューマンの治療をするドワーフを、どこか楽しげに見つめるセレスティア。それを横目に見ながら、フェアリーは体育館を出る。
さすがに、学生寮に戻っていることはないだろうと思い、近くのカフェを探す。すると、柱の陰になっている場所からバハムーンの
声が聞こえてきた。
「勝てもしないのに、毎日毎日、飽きもせず……何が楽しいんだかな」
「……?」
ばれないように身を隠し、柱の陰からそっと様子を窺う。すると、バハムーンは椅子の背もたれに寄りかかり、膝には丸まった
フェルパーを乗せ、まるで独り言のように喋り続けていた。
「老化は早いくせに、実力の成長は亀の歩み。力も精神力も、何一つ突出したものを持たず、それでも格闘家という学科にしがみついて、
勝てもしない手合わせを続けて……本当に、救いようのない馬鹿だ、あいつは」
「……くぅ〜……すぅ〜…」
「ガンナーにでもなれば、少しはまともに戦えるだろうに。もっとも、あいつが銃を扱えるとも、思えんがな。あいつも、ドワーフも、
底なしの馬鹿だからな」
あまりに棘のある言葉に、フェアリーは一言諌めてやろうかと思ったが、その前にバハムーンが言葉を続ける。
「勝てないこともわからず、諦めもせず……諦めるということを知らず、いつか勝てると信じ切って、馬鹿正直に手合わせを続けて、
いくら倒しても、起き上がる。本っ当に、馬鹿だ。会ったこともないほどの馬鹿だ、あいつは。導いてやる気が失せるほどの、な」
その口調は、何とも楽しそうで、フェアリーは出しかけた足を戻した。そしてやはり気付かれないように、そっとカフェを後にする。
「……あれはあれで、いい関係なんだな、きっと。ドワーフとセレスティアも悪くないし、案外いいパーティかもなあ」
そう呟き、フェアリーは体育館に足を向ける。が、まさに飛び立った瞬間、聞き覚えのある騒がしい足音が急速に近づく。
「おー、フェアリー!なー!俺すげえの見ちゃったんだぜ!ほんとすげえの!」
「待ってぇー!ヒューマン君やめてよぉー!」
やたらに楽しげなヒューマンと、その後ろをパタパタと必死に走るドワーフ。さらにその後ろを、無表情のセレスティアが空中から
追いかける。
「どうしたんだいヒューマン?」
「あのなあのな!さっきセレスティアとドワーフがな!キスしてたんだぜー!」
「もぉー!ヒューマン君やめてってばぁ…!」
「ふ、ふーん…」
泣きそうな顔になるドワーフと反比例して、セレスティアの顔には笑みが浮かんでいく。その異様な光景は、ヒューマンの言葉よりよほど
気になってしまい、気のない返事しかすることができない。
「……あれ?そんなに驚かねえの?」
「え?あ、いや、まあ……ほら、挨拶代わりのキスだってあるし…」
「え、そうなのか!?あれって男と女がするもんじゃねえの!?」
「あー、いや、もちろんそういうのも多いんだけど…」
「なぁんだぁ……ドワーフかセレスティアのどっちかが男なんだと思ったんだけどなあ…」
「ち、違うよぉ〜。二人とも女の子だよぅ…」
「おい、やかましいぞ。何もできねえくせに声ばっかりでかく張りあげやがって。少しは黙ったらどうなんだ」
そこに、バハムーンがうんざりした顔でカフェから出てきた。小脇にはフェルパーをしっかりと抱え、彼女は彼女で構わず眠っている。
「大体、女同士でキスしてたからと、そんな大声で言いふらすもんでもねえだろう。それともお前は、同性愛者に差別意識でも
持っているのか?」
「バ、バハムーン君ってばぁ!私は、その、セレスティアちゃんは……えっと……えっとぉ…」
困惑しきってしまったドワーフを、セレスティアはとうとう堪えきれなくなったのか、後ろからぎゅっと抱き締めた。
「ひゃっ?な、何〜?セレスティアちゃん、何〜?」
「可愛い。いい匂い」
「や、やめてよぉ。ダメだよぉ、こんなところでぇ…!」
「匂い?そんな匂いするかぁー?普通の匂いだと思うけどなあ、俺は」
「で、それがどうすごいと?まあ、お前のような奴には、格闘以外のことは何でもすごいことなのかもしれねえがな」
「何だとぉー!?お前、自分の方が強いと思って偉そうにー!今に見てろよぉ、絶対お前なんかこてんぱんにしてやるんだからなー!」
「……くか〜…」
そんな仲間達を見ながら、フェアリーは一人頭を抱えていた。
「……前言撤回、かな……自分で集めた仲間ながら、ほんっと面倒臭い……あー、ほらほら、みんな。とりあえずね、探索は午後からに
するから。わかった?ねえ、わかったかい?ちょっとみんな、僕の話聞いてる?おい、こら、ちょっとー!」
特に優秀なわけでもなく、かといって落ちこぼれというわけでもなく、ただ周りより少し浮いた存在である、通称『掃溜め』の彼等。
周りから見れば少し変わった、しかし彼等から見れば、これも至って普通の、平和な日常なのだった。
以上、投下終了。投下中に強めの地震とか来るのは勘弁w
それではこの辺で。
GJです
ドワ子が可愛らしすぎる…!
275 :
マルメンライト:2011/04/08(金) 02:30:59.62 ID:xgqPf3DF
ホストh220-215-161-081.catv02.itscom.jp
名前: マルメンライト
E-mail: sage
内容:
GJです!
ドSな感じのセレスティアが可愛いですね。
やはり攻める子は良い。
仕事が長引いて帰ってきたら1時になってたけど
◆BEO9EFkUEQ さんの作品が読んだらすこし元気が出た気がする。
お疲れ様でした!
276 :
マルメンライト:2011/04/08(金) 03:02:29.34 ID:xgqPf3DF
↑ミスって余計なものまでつけてしまった申し訳ない
相変わらず◆BEO9EFkUEQ氏の話はいいなぁ。
ドワ子とセレ子萌え。
てかまだ300レス行ってないのにもう468KBか…
早いなー。
278 :
マルメンライト:2011/04/09(土) 17:03:28.77 ID:LDP15HCK
スレほぼ埋まりかけだけどダイジョブかな?
小ネタが書きあがったので投下します。
諸注意:ネームレスのフェルパーさんとディアボロス
お尻ネタ
279 :
マルメンライト:2011/04/09(土) 17:04:44.13 ID:LDP15HCK
真っ暗な視界の中でたまに私に触れる彼の手がもどかしい。
光のない世界で、私は彼の刺激を欲していた。
「はぁ…はぁ……」
小さなタイマーがなっているのが聞こえる。
「これで2分だな」
「まだ2分…あと…8分も我慢しないと…いけないの…」
「あとたったの8分だ」
笑いながらディアの指が私の中を優しく、ただひたすらゆっくり動いている感触がある。
「…もっと…動いてよ…もうイキそうなの…分かってるんでしょ?」
いっそ、自分でその中をかき回してしまいたい、彼に自分で慰めているのを見られてしまっても構わない、それぐらいイキたくて仕方なかった。
なのに、今の私はそれすらできない、両腕は背中の後ろで縛られ、刺激しようにも自分の尻尾くらいしかつかめない。
その尻尾も今は彼の手の中で軽く握られている。
「ディア…ディア…お願いだから…イかせて…」
ポタポタと私から溢れた愛液が、足を伝っている。
「もうすこししたらイかせてやる、そもそもお前が言い出したんだしな」
彼がそう言って尻尾を握る。
「いたっ…!」
ピリピリした痛みが、断続的に送られてきて、頭の中がぐちゃぐちゃになっていく。
「いったけど…だって…目隠しされてると…不安で…しかも…感覚が…敏感になってるしてるせいで…ひゃん!!」
敏感な私の濡れた場所の突起を彼が軽く噛んだ。
「いつも以上に感じる…だろ?」
「わかってるんなら…もう許して…今すぐイかせて…」
「だめだ、限界まで焦らしたらお前がどうなるのかが見たい」
突然耳元でささやかれて、ぞくぞくする、目隠しされているせいで、次に彼がどこに来るか、今どこに居るのかもあいまいにしか分からない
「私のばかぁ…」
なんでこんなバカみたいなことをいってしまったのか。
いまさらながら少し前の自分を非難する。
そもそも、今なんでこんなことになっているのかというと全ては私自身のせいだった。
280 :
マルメンライト:2011/04/09(土) 17:06:41.54 ID:LDP15HCK
「花見?」その2
――――――
パタンと、彼の部屋の扉がしまると、私は誰も入ってこれないようにカギをかける。
「で?俺にご褒美って何くれるんだ、つかそもそもなんでご褒美くれるんだ?」
ベッドに腰を下ろした彼が、楽しげに笑って煙草の煙を吐き出した。
「ディア実は結構ヤバかったでしょ…」
彼の隣に座って私も煙草を吸いながら、傍らの彼に告げる。
「まぁな…にしてもアイツマ、ジでバケモノじみてんな、弾丸を弾丸で撃ち落とすやつ俺初めて見たわ」
まるで自分の事のように数分前、本気で戦っていた相手であるヒューマンのことを楽しげにディアが話す。
わらっているけど…ホントは大変だったはずだ。
「…ディアって、ホント馬鹿みたい」
くすくすと私も笑う。
そして、彼の肩に頭を載せて呟く
「私さ…怖かった」
「…そうか」
灰皿に煙草の灰を落としながらあいつが私の肩を抱く。
「…あのとき、ディアにヒューマンが馬鹿なことしないように…って頼んだのに」
ディアは何も言わず、私の頭に手を載せる。
「怖くて…ヒューマンが本気でディアを殺しちゃうんじゃないか…って」
あの時、ディアが背中に纏っていた真剣な気配が、逆に私を不安にさせた。
それでも、いつも通りの私でいろと、あのときディアが言ったから私は彼を見送った。
見送ってからは不安で仕方なくて、スノウが起きてしまったのは半分私のせいだと思う。
バハムーンが彼とヒューマンが戦っていることに気付いた時、怖くて私は身にいけなかった。
もし、フェアリーが許しても、彼が死んでしまったら私がヒューマンを許せなくなってしまう。
「死なねぇよ…、お前みたいなさびしがりや、俺が見捨てて一人で死ぬわけ、ないだろ」
「…うん、ありがと」
私は煙草の灰を灰皿に落とす。
そして、ゆっくり彼の肩から体を起こす。
「だからね、私のために帰ってきてくれたから、今日はディアにご褒美をあげたいの」
満面の笑みを浮かべて、あいつを見る。
「ホント…お前は良い女だな」
煙草を灰皿に捨て、ディアが笑う。
「良い男に惚れたからね、つられてちょっと悪い女になっちゃったけど」
昔の私なら絶対吸うはずのない煙草は、彼との行為を重ねるうちにいつのまにか私の一部になっている。
短くなった煙草をディアと同じように灰皿に捨てる。
「で、ご褒美って何してくれんだ?」
「…ディアってさ、初めてしたときから何度もしたのに、私がいやがるといつもやめてくれたよね」
幾度も体を重ねたから、彼の手が触れてない所なんてほとんどない。
「そりゃ、お前が嫌がるのに、無理させたくないからな」
―やっぱりディアは優しい―
彼が愛しくて、だから私はある事を考えていた。
281 :
マルメンライト:2011/04/09(土) 17:08:28.44 ID:LDP15HCK
「花見?」その3
―――――――――
「多分、私がしても良いよ、っていってもディアはしないよね?」
「…まぁ我慢してもらってヤるのは面白くないしな、俺はただよがるお前が見たいだけだ」
てれ隠しにそういったディアの顔が赤い。
ホントに彼は良い男だと、私は思う。
―だから…―
私はタイマーをテーブルに置き、服を脱いで目隠しで目を覆う。
「何してるんだ?」
私の行動に彼の困惑した声が聞こえる。
「ごめん、ディア、とりあえずこれで私の手縛って」
背中に手をまわして、彼にリボンを渡す。
「なんだかよくわからねぇけど…」
彼がそう言いながらも手を縛る。
「外れないようにね?」
「はいよ」
私の言葉に彼が答える。
心なしか、いつもと違う私の姿に彼の声は興奮してるように感じた。
「うんしょ」
手を背中の後ろで縛られて目隠しまでつけた状態で、初めてしたときのように彼のベットに4つんばいに転がる。
「さて、ちょとしたゲームしましょ?そのタイマーは10分に設定してあって、1分毎に音が鳴るの、私が合図すると開始、ちなみに不正はできません」
彼の姿がみえなくて、すこしドキドキする。
「なるほどな…」
彼がようやく気づいたように嬉しそな声で言う。
「その10分私は頑張ってイくのを耐える、耐えきったら私の勝ち、10分以内にイかせれば…」
「俺の勝ち、ってわけだろ?」
「そ、そんでディアが勝ったら…そのまま朝まで私に好きなことを好きなだけして良い」
勝負である以上彼だけに利益があるわけじゃない。
この条件なら彼は自分のしたいことをしてくれるはず、私に悪いと思って出来なかったことをしてあげたい、そのために私が用意したご褒美の一つ。
「もしフェルパーが勝った場合はどうなる?」
言うと思った。
「私さ、そろそろ発情期なんだよね…」
「それで?」
楽しそうにしている彼の声がうれしい。
「もし私が勝ったらディアは私が発情期の間、毎日私とセックスしなければいけない、私が満足するまでね…当然避妊はしないでイク時は私の膣内に全部出す、意味分かるでしょ?」
「負けたら俺も父親か…」
発情期がはっきりと決まっているフェルパーは、発情期以外にしてもまず子供はできない、だが逆に、発情期にすればまず間違いなく出来る。
「むしろあえて負け…なんでもない、なるほど、たしかに面白そうだな」
彼が唾を飲む音が聞こえる。
私も負けたら彼がどんなことを求めてくるのか不安でドキドキする。
「…いってからやっぱ無しってのは?」
「武士に二言はないのよ?」
確認するように呟いた彼に私が答える。
「オーケー…少しは俺も武士道に生きてるから二言はない、俺が負けたらお前が孕むまで、発情期の俺の権利を全てやる、何なら授業の最中に呼んでも良い」
彼が笑っているのが声の調子で分かる。
「言ったね、私が勝ったらディアはパパ決定…それじゃスタート」
私の言葉に反応して、タイマーが作動の音を鳴らす。
彼の手が私の体に触れた。
282 :
マルメンライト:2011/04/09(土) 17:12:01.09 ID:LDP15HCK
「花見?」その4
――――――――
そうして、2分、結果は火を見るより明らかだった。
どうして私は10分なんて時間を考えたんだろう…そもそも普段、彼の愛撫で10分耐えたことない気がする。
「イかせてよ…切ないの…」
1分経過した時点で早くも敗北を悟っていた。
何度も体を重ねた彼が私の弱点を知らないわけがない、さらに目隠しのせいで感覚が敏感になってしまったことも合わさり、彼の巧みな攻めで1分の間にあっさり私は陥落した。
そしてそれを知った彼は、一方的な有利な状況に今度はほとんどの攻めをやめ、私のことをひたすらに焦らして焦らしぬいている。
「まだ2分チョイだろ…折角だから最高に気持ち良い勝利を味あわせてくれ、その代わりフェルパーには最高に気持ち良い敗北を教えてやる」
「降参…降参させて…このまま10分…ぎりぎりまで焦らされたら…頭おかしくなっちゃう…」
ピピピ…
「はい、3分」
そう言いながら彼が強く尻尾を握って、指を深く突きいれた
「ふきゃあ!!!」
突然の強い刺激に体を震わせる、もやもやした感触がはじけそうになって、絶頂を感じる直前でとまる。
次第に頭はおかしくなってきてしまったのか、尻尾が握られる痛みでさえ、快感を感じてしまった。
「感じたか?」
彼の声が笑ってる。
声の位置は背中のほう、四つん這いになった私のお尻の方から聞こえてくる。
「なんで!何でやめるの!今、イけそうだったのに!もうイかせてよ」
目隠しはつけられたままで見えるはずもないのに、振り返って思わず叫ぶ。
そんな私が可笑しかったのか彼は声をあげて大きく笑った。
「いやぁ…マジで良い、これも一種のご褒美だな、最高に可愛い彼女がいて、目の前には俺が咲かせた満開の花、それでも後ろは未だに蕾のままのまま、今までで最高の“花見”だな」
「もうやだぁ…イキたい…イかせて…ディアのを私に頂戴…ディアの大きいので私の中かきまぜて…」
「俺の大きいの…ってこれのことか?」
ぴちゃり、と水音を立てた私のそこに、温かい彼のものが触れる。
「それ!ディアの…ディアのソレを頂戴!!それでかきまぜて!いつもみたいに私の子宮たたいて!もう無理!今すぐイキたいの!!」
恥ずかしさなんて、もうどうでもいい、みだらな願いを私は懇願するように叫ぶ。
私の濡れた場所はすぐそこにある彼を待ちわびて、ぱくぱくと開いていた。
「…むしろ、こっちに入れてみたいな」
「ふひゃあ!!」
予想にもしていなかった場所に彼の指が入ってくる。
排泄のためにある小さな穴、私のお尻の穴だった。
「そっちじゃない!そっちは汚い場所で…」
本来、排泄のための穴に彼のごつごつした指が奥に入ってくる。
苦しくて、額に汗が出る。
「お前に汚い所なんてない」
私の言葉をさえぎるように、彼の生温かい舌の感触がそこなぞった。
「ふにゃぁぁぁ!」
ゾクゾクした感覚が背中を駆けあがる。
指はまだ入れられたままで苦しい、苦しいのに苦しすぎて……気持ち良い。
「なめちゃだめ!指抜いて!!苦しいのと痛いのがこのままじゃ」
一瞬自分が思ったことが、信じられない。
283 :
マルメンライト:2011/04/09(土) 17:13:49.51 ID:LDP15HCK
初めて彼に抱かれた時も一瞬そうなってしまいそうになったけど今回は状況が違う。
まだ時間は7分近くある。
たった2分、その間焦らされているだけで苦しいのや痛いのが気持ちよくなりかけている。
それなのに、このまま焦らされ続けていたら…。
初めて彼としたときに芽生えかけたものが体を起こす。
―違う…私、そんな女じゃ…―
「フェルパー、お前実はマゾ?」
心の中で否定を続ける私を知ってか知らずか、ついに彼がその言葉を口にした。
「違う!違うもん!気持ちよくなんかない!でももうやめて…このままじゃホントに…」
彼の指は私のお尻にまだ入ったままで苦しくて仕方ない、尻尾だって握られたら痛い。
なのに、少しずつ、私はそれを気持ちいいと思い始めてしまっている。
「限界なの…このまま痛いのと気持ち良いのされたらホントに…マゾになっちゃうよ…」
私は、助けを求めるように彼に呟いた。
「…」
彼は何も言わない、私の発言を気持ち悪いと思ってるのかも知れない、表情が見れないことが怖い。
彼の動きはぴたり、と止まって指はゆっくり引き抜かれた。
抜かれるときに感じたのは、このまま彼がいなくなってしまうんじゃないかという不安と、ほんの少しの快感。
「ディアボロス…」
彼の名前を呼ぶ。
「おい、フェルパー、力抜け」
「え?」
彼が突然腰を掴んでそう言う。
そして、先ほどまで彼の指が入っていた場所に比べモノにならない大きさと熱を持ったそれが押しあてられる。
「待って!ディア今そこに入れられたら私…!私…!」
あんなにイきたいと思っていたはずなのに、心がそれを拒絶している。
「駄目だ、時間はまだたっぷりあるのに降参とかいったから、オシオキだ、このまま目覚めさせてやる」
ぐっ、彼の手に力がこもり、彼のモノがだんだんそこに入ってくる。
「痛い!痛い!」
―気持ち良い、そのまま奥まで―
体と心が全く別の反応を返す。
―イかせてくれる、私を壊してくれる―
背中にゾクゾクした快感が走る。
「ああぁぁあ」
お尻に彼が入ってくる、痛くて、苦しくて、気持良くて…ずっと私の中で芽生えていたそれが花を咲かせ始める、本来それを止めるはずの理性も半ばショートして、与えられた感覚を一つのものとして私を包んでいく。
―入ってる、私のお尻にディアが入ってる―
拒絶したいのに、体がそれに応じない、そして私が戦っている間に不意に、彼の動きが止まった。
「悪いなフェルパー全部入っちまった」
しれっというディアに私は答えられない。
それどころじゃなかった。
たまっていたもやもやが破裂してしまう。
歯を食いしばって、イッてしまいそうな自分を引きとめる、今イッたら目覚めてしまう。
―変態になんかなりたくない―
「フェルパー?」
心の中で葛藤を続ける私を不思議に思ったらしい彼が、私の目隠しを外す。
そのせいで彼のものが私の内側を刺激する。
ずるずると連続した背徳的な快感が背中を駆け上がっていく、それに私は耐えられなかった。
284 :
マルメンライト:2011/04/09(土) 17:14:59.62 ID:LDP15HCK
「ふきゅぅぅぅぅぅ!」
目の裏で火花がはじける、体が勝手に痙攣する、私のお尻の中にいる彼を限界まで締め付ける。
ふわふわとした感覚が広がって、意識が不意にたたき落とされる。
「ディアの…馬鹿、入れちゃだめって言ったのに…」
びくびくとからだが勝手に震える。
「お前、イッたな?」
私を見ながら彼が言う。
「うん、私の負け、良いよディア…このまま朝まで私を貴方の好きにして…」
彼の言うとおり、ついにイッてしまった。
10分間なんてやっぱり無理だった、あのきたいのにイケない事から解放される。
その事実を受け入れ、口にする。
負けを認めた私の言葉に、タイマーが最後に小さく鳴って、静かに鳴る。
「どんなオマエでも俺は愛してる。」
私の頭をくしゃり、とディアが優しくなでた。
「にしても、えらくきついな」
ゆっくりと彼のものが私のお尻から抜けていく。
「それは…くはぁぁぁぁ」
体が勝手に震える。
「あ、悪い、痛いか?」
心配そうな顔で彼が見る。
「痛くないわけないじゃない…」
本来、排泄のためにある穴で何かを入れる為にあるわけじゃない、ぎちぎちと無理やり広げられ、正常にする場合とは明らかに違う異物感と苦しさ、そして無理やり広げられているせいで激しい痛みがある。
「へんなところに入れるから痛くて、苦しくて、気持悪くて」
いつまでもとれない痛みと苦しみが頭を溶かす。
「苦しすぎて…気持ちよく…なっちゃった…」
ついに、私はそれを口にする。
痛みと気持ち良い、もはや私には区別がつかない、どっちもピリピリしてて気持ち良い。
あんなに焦らされて、苦しいのと一緒に気持ち良くなったら、私なんかがそんなものに耐えられるわけなかった、彼があんなに欲しかったんだから、我慢できるわけがなかった。
「痛いのと苦しいのが気持ち良くなっちゃった…」
ディアに初めてを奪われ女になって、煙草を知って悪い女になって、ついには痛みや苦しみを気持ち良いと感じてしまう変態になってしまった。
苦しくて、今すぐ抜いてほしいのに、苦しすぎてずっとこのままにしてほしいと思ってしまう。
「花がきれいすぎてな…蕾のままにしておきたかったのに、ついつい手を出して散らしちまった」
ディアが笑う、いつもの彼らしい軽薄な笑み。
「このサディスト」
「何だ?元貧乳のマゾヒスト」
私の言葉に彼が笑って答える。
「私の初めて全部奪って、貧乳というステータスまで奪って…これ以上私の何を奪うの?」
私は胸に秘めていたその想いを口にする。
「決まってるだろ?」
私の言葉に、彼が私を助けた時のように笑う。
「お前の心だ」
「バカみたい、そんなの…」
恥ずかしいセリフを口にする彼に、私は笑いをこらえられずに言った。
285 :
マルメンライト:2011/04/09(土) 17:16:08.36 ID:LDP15HCK
「そんなのとうの昔に奪ったじゃない…初めてよりも、キスよりも前に…」
「ははっ、それじゃ、奪うものを見つける為にお前のそばにずっといるさ、でもってお前の全てを俺のものにする」
ディアの言葉に体が震える。
―奪れてばかりじゃ、ダメだよね―
そのまま私は、笑う彼の唇を自らの唇を重ねて黙らせた。
「で、動いてもいいか?」
「…痛くしないでね?」
初めてをあげた時のように彼に呟く、そんな私を見ながら彼は耳元で囁いた。
「痛くない方が良いか?」
「…ときどき尻尾を握ると、良い声で啼くかも……」
半ば目覚めかけてしまっているその感覚を恥ずかしさをこらえてそう言った。
そんな私に彼は答えるように彼は少しつよく尻尾を握る。
「んひゃあ!」
尻尾にピリピリした痛みが走ってそれが私のほとんど壊れた理性を溶かす。
―痛いのに、気持ち良い…―
背中をゾクゾクする快感がかける。
「確かに良い声だ」
彼が自分を私からゆっくり引き抜く。
「はぁぁぁぁ…」
ずるずると、彼のものが引き抜かれると、連続した排泄感が快感としてやってくる。
「気持ち良いか?」
「うん、気持良いの…痛いのに、苦しいのに、それが全部気持ち良いの…」
入ってくるときは苦しくて気持ち良くて、抜けるときは子宮がたたかれる小刻みな快感とは違った連続した長い快感がある。
「痛いよディア、もっと頂戴…私をもっと苦しくして…」
どこか矛盾した言葉が勝手にあふれ出る。
「まだ、やめれば戻れるかもしれないぜ?」
「…無理、戻れないよ、きっと私はもともとそういう性癖が軽くあったの…」
いつくしむような彼の言葉を私は自ら否定する。
「だって、こんな気持ち良いのに、やめたらきっと余計に変になっちゃう」
知ってしまったから、多分、私は自分でそれを求めてしまう。
完全に目覚めてしまったわけではないけど、少し芽生えたそれを抑えていられないことを本能的に察する。
そんな私を見てディアが楽しそうに笑った。
「確か、今日は朝まで好きにして良いんだよな」
「?うん」
何だろう、それよりも早く動いてほしい。、体が彼を求めていた
「んじゃ、今日は朝までの間にフェルパーを完全に目覚めさせるわ」
「え?」
少し意味が分からない、目覚めさせる?私を何に?
遅れて思いついた思考に、私はあわてて逃げようとする。
「ちょっとまってディア!何考えてんの!?許して、私はプチMでいたいの!!」
芽生えかけたままでいられると思っていたその感覚を彼が完全に芽生えさせてしまおう
そう言っているように私は聞こえて、逃げ出したくなる。
だが、手は縛られたままで彼もまだ刺さったままだからうまく動けない。
逃げようとすると彼がゆっくりと抜けていって、背中がゾクゾクする。
「武士に二言は無い、だろ?」
「ふひゃあああ!?」
あとちょっとで彼が抜けるところで、腰をつかまれ、また彼が奥深くまで突き込まれた。
笑ってるのに、ディアの目はかなりマジだった。
―このままじゃ、本物のマゾにされちゃう!?―
その想像に背中がゾクゾクして私のそこが水音を立てる。
286 :
マルメンライト:2011/04/09(土) 17:17:22.99 ID:LDP15HCK
「やっぱうれしいよなフェルパー、たっぷりと痛くして、苦しくして、最高に気持ち良くしてやるよ」
彼が私のそこをじっくりとみている。
彼に咲かされた私の大切なところと、今まさに咲かされている蕾。
「やっぱ良いなこの花見…」
「ホンモノはだめ!本当のマゾにしないで!!」
逃げるように這って彼を抜こうと私がもがく。
彼が私を掴んで強く突き込む。
「ふひゃああ!?」
「フェルパー、今のは気持ち良いと苦しいどっちだ?」
彼が楽しそうに私の耳元で囁く。
「お願い、本当に咲く!咲いちゃうのマゾになっちゃうの!このまま続けられた…ら!?」
私が逃げる、彼が引き寄せる。
お尻から与えられる感覚でまた下半身にもやもやしたものが集まってく。
ぎゅっと彼が私の尻尾を強く握る。
「ひぁぁ!?」
「今のが痛い、だったよなフェルパー」
「やめて!気持ちよくなっちゃう!痛いのがホントに全部気持ちよくなっちゃう!!」
痛みがだんだんどんなものか分かんなくなってきてしまっていた。
尻尾を握られた感覚はびりびりと私の子宮を刺激する。
「前も欲しいよな?フェルパー?」
不意に、開いたままのその場所に彼が私の尻尾を突きいれた。
さわさわした毛の感触がずっと刺激を待ちわびていた、私の膣内をなぞり挙げる。
「ふきゃぁぁ!!」
刺激の強さに思わず、自分の前と後ろの穴を限界まで締め付けた。
強すぎる締め付けで尻尾に、痛みが走る、走ってしまう。
「ディア抜いて!?尻尾痛くて気持ち良くてお腹の中も気持ち良くて!このままじゃ!」
「このままじゃ?」
そう言いながら、彼は尻尾をつかんで、より深く、腰と共に突き込んだ。
子宮が、毛でなでられる。
「イっくぅぅぅうぅう!」
もやもやした感覚が再びはじけて、再び彼を締め付ける。
自分の尻尾を締め付ける。
「んじゃ、俺も動いてやるかな」
イッている最中に彼が本格的に動き出す。
「まってぇ…」
限界だイッてしまう、彼が止まっているからまだ私は完全には咲かずにいられる。
「今動かれたら、本当にドMになっちゃうよ…」
彼に泣きだしそうになるのを必死でこらえて、彼に言った。
287 :
マルメンライト:2011/04/09(土) 17:18:25.26 ID:LDP15HCK
そんな私に彼はたった一言だけ呟いた。
「おめでとう、フェルパー」
言葉と共に彼の腰が動き出す。
イッてすぐの私のお尻で彼が動き出す。
「まって!まってディア!前ならいくらでもして良いから、赤ちゃんできなくなるぐらいしていいから、お尻はもうやめてぇ!」
痛みはどんどんなくなっていく、蕾だったそれがあっという間に開かれてしまう。
「だ〜め」
耳元で彼がささやく、痛みや快感が混ざりあったもやもやした感覚が集まっていく。
「だめ!ホントに、このままじゃ私」
限界を感じて、私は必死で彼に懇願する。
「気にすんな、フェルパー、お前がどんな風になったって、俺はお前と共にいる」
「ディア…?」
真剣な表情をした彼の顔がそこにある。
「だから、イっちまえフェルパー」
「ちょっ!まっ!」
言葉と共に彼が激しく動き出す、不意を打たれた形になってついに耐えていたものが決壊する。
「ふにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
痛みで感じた快感がもやもやした感覚を突き破る。
「だめぇぇぇぇぇぇぇ!!」
私の言葉がむなしく響いて、彼の熱が私の奥に放たれた。
これ以上ない快感が私を包む。
「ふみゅう…」
けだるい感覚に包まれながら、私はそのまま意識を失った。
288 :
マルメンライト:2011/04/09(土) 17:19:30.89 ID:LDP15HCK
「…う?」
目を覚ますと、彼の部屋の天井が見えた。
―なんでディアの部屋にいるんだっけ?―
まだ頭は寝ぼけているのか、昨日何をしていたのかがあまり思い出せない。
窓からは日がさして、朝になったことを告げている。
体を起こすと、ズキズキした痛みがお尻にある。
―…なんでこんなところが、それに…―
痛いはずなのに、なぜか、心地よく感じてしまう。
そもそも、なんでお尻何かが痛いんだろう?
不意に記憶を探りながら、傍らで静かに寝息を立てているディアを見る。
「…あ」
その瞬間、昨夜の光景が全てよみがえってくる。
恥ずかしくて死にそうだった。
「違う…私はドMなんかじゃない、そんな変態じゃないもん…」
あんなふうに感じてしまったのはきっと最初に焦らされたせい、自分自身に言い聞かせる。
―でも…気持ちよかったな…―
興味本位で、自分の尻尾をつかんでみる。
ピリピリした痛みが走って、背中がゾクゾクした。
「…え?」
痛いはずなのに、気持良い。
「ま、まさかね…」
あれはきっと何かの間違い、そう思いながら再び尻尾を握る、今度は先ほどよりももっと力を込めて。
「ふぁ…!」
思わず大きな声を出してしまいそうになってあわてて自分の口をふさいだ。
―き、気持良かった?…―
恐る恐る自分のそこを見る、そこには、昨日の行為とは関係ない、新たな感覚でしっとりと水気を帯びていた。
自分が今なんと感じたか、確かな証拠がそこにある。
「…嘘」
きっと夢だろうと思いながらディアの体を揺さぶる。
「起きて!起きてディア」
「…どうしたフェルパー?」
寝むそうに目をこすりながら彼が体を起して私の唇を奪う。
「ん」
のばされた舌を絡めて、たっぷり彼を味わってから、私は思い出したように彼を見る。
「ディア…ちょっと尻尾つかんで、思いっきり全力で!」
「…良くわからんが、まぁわかった」
自分でやってるから、きっと無意識に手加減してしまったのだと、自分に言い聞かせま少し寝ぼけた彼に尻尾をつかませる。
「んじゃ、握るぞ…」
「うん!」
目を強く閉じて、送られてくるはずの痛みに備える。
ぐっ、と彼の手が私の尻尾を強く握る。
そして…
「ふみゃぁぁぁ!」
襲ってきた感覚に思わず叫び声をあげた。
289 :
マルメンライト:2011/04/09(土) 17:21:02.09 ID:LDP15HCK
二人で学食に向かおうと部屋を開けると、ちょうど、同じ様に食堂に向かっているらしいフェアリーとヒューマンとちょうど目があった。
「あ」
私達4人の声が重なった。
「お、おはよう二人とも」
ヒューマンの腕に抱きついたままのフェアリーが顔を赤くしながら挨拶してくる。
「お、おはよ、フェアリー、ヒューマン」
あわてて、私はいつもどおりに挨拶をしようとして、少し噛んだ。
そんな私達女性陣をしり目にディアは煙草を咥えたままヒューマンの肩をたたいた。
「よう旦那、昨夜はずいぶん楽しんだみてぇだな」
いつものディアのような楽しそうな笑い、ヒューマンの腕に抱きついたままのフェアリーを見てニヤニヤしてる。
昨日はどうなることやらとおもったけど、ヒューマンのものらしい制服を着たフェアリーとその様子を見る限り、確かに、昨日は楽しんだんだろう。
そんなことを考えていると、ヒューマンがふと、私を見た。
―まさか!?―
ばれてしまったのかと思い、私はあわてて自分のお尻に手を当ててしまう。
それをみたヒューマンがニヤリと笑った。
「だまってろディアボロス、お前は人のこと言えんのか?」
―気付かれた…!―
自分が目覚めてしまったことにまでばれてしまわないか体がびくびく震える。
そんな私を知ってか知らずか、ディアは意味深にわらってヒューマンに言い返す。
「フェルパーがご褒美くれてな、“花見”とかいろいろ楽しんだぜ…まぁ、見てるだけじゃなくて、ついつい手を出して散らしちまったがな」
ビクン!と自分の尻尾が立った。
―何言ってんのディア!!―
花見、散らす、その言葉に私は動揺が隠せない、さらに昨日の行為をまた思い出してしまってお尻のズキズキした痛みが気になってしまう。
頭がパニックになって私の口から勝手に言葉が漏れる。
「……痛いかったのに…痛いのがあんなに…絶対、私変なの目覚めた…目覚めちゃった、もうお嫁にいけない…」
―大丈夫、ディアが結婚しようと言ってくれたし、お嫁にはいける―
「………」
「………」
何かヒューマンとディアが言っているけど何も聞こえない。
ただフェアリーの視線が気になって仕方がない。
幸せではあるけれど、新しい自分を受け入れられるかはまだまだ分からなかった。
290 :
マルメンライト:2011/04/09(土) 17:24:10.86 ID:LDP15HCK
以上で小ネタ投下完了です。
ネームレスの中ではやっぱりこの二人が一番書きやすいと
そう思いました。
前回からGJいただいた方がた、ありがとうございます。
今回も連続投下、拙い分で失礼しました
480KB超えたのでこれから新スレたてます。
それでは皆様、これからもよろしくお願いいたします。
LVが足りなくて、スレッドが立てられない…だ、と…!
大変申し訳ないですがどなたか立てられるLVの方いませんか?
実際のマイパーティでヒューマン♂(名前はカイト)とフェアリー♀(名前はマナ)が両想いなんですが、彼ら二人をネタにするのはありですか?
また、この場合子供はできるんでしょうか?
ここももうすぐ埋まるなー、正直このスレそろそろ消えちまうと思ってたけど続いてくれてる。
職人に感謝