380 :
痴観男(後):
絢子は、『恋人がするように』アナルセックスに応じるよう強制されているらしかった。
背後から抱きしめられ、両腕で男優の頭を包み込みながら何度もキスを交わし、しっかと腰を掴まれたまま直腸を犯される。
カメラはその絢子のブロンズ像のように美しい前身を映しながら、
時に艶かしく踏み変えられる脚を映すこともしていた。
白くすらりと伸びた脚には夥しい汗が流れ、股の下には透明な雫がぽた、ぽたと滴っていた。
汗にしては滴る場所が不自然だ、それは肛門の内部から溢れている。しかし潤滑用のローションにしては透明すぎる。
「あーあ、腸液が溢れてきてやがる。いよいよ本気で感じてンな」
金岡は訳知り顔で笑っていた。腸液、が何なのかは知らない。
だが本能で理解できてしまった。それはきっと、膣の愛液と似たもの。肛門性交で感じた証拠の体液。
それが絢子の肛門から溢れ出ている。
『恋人ごっこ』のアナルセックスは、今やますます深まっていた。
男優がベッドに寝そべり、その上に絢子が仰向けで覆い被さる形だ。
というより、先ほどの後ろから抱く体勢がそのままベッドに移った、と言った方が適切か。
この男優も撮影というものをよく心得ており、絢子に大股を開かせてカメラにはっきりと結合部が映るようにしていた。
絢子はもう相当に感じ入ってしまっているのだろう。そのようにはしたない格好を取らされているにもかかわらず、
大の字に開いた四肢でシーツを掴み、たまらないといった表情で天井へ声を投げていた。
その首にはまるで力がなく、男の肩に預けるままになっている。
まるで恋人が、愛する男に全てを預けるがごとく。
そんなあられもない絢子の様子が、隠す術もなくカメラに撮られてしまう。
何分も、何十分も。
381 :
痴観男(後):2011/09/11(日) 17:00:16.72 ID:ao32pt0X
男の上で大の字になった絢子の股座に前貼りが見えていた。紙で出来た前貼りだ。
だがそれが、何ということか、絢子自身の溢れさせた愛液で溶かされている。
もはやそれは、前貼りの役目を果たしていない。ティッシュクズが絡まっているようなものだ。
金岡が笑った。
「へへ、何枚もペーパー重ねて作った前貼りだってのに、もう使い物にならねぇな。
奥さんの貞淑を象徴する前貼りだったのになぁ、もうありゃアウトだぜ」
金岡が言うのとほぼ同時に、絢子を抱く男とは別の男優が絢子の正面に回る。
そしてふやけた前貼りを取り去り、その奥まりへ逸物を押し当てた。
「え、いやぁッ!?××、××××!!!」
絢子が非難めいた声を上げる。前はダメだと言っているのだろう、実際最初に、前はしないと言っていたはずだ。
「おい、約束が違うぞ!!」
俺も同じく非難するが、金岡は涼しい顔だ。
「しない、とは言ってないぜ。前貼りがあるうちはやらなかっただけだ。
だがその前貼りが、奥さん自身の溢れさせる愛液でダメになってまった。解禁さ。
だが仕方ねぇよな、貞操を失っちまったんだから。ケツ穴で濡らさなきゃ、前も使われなかっただろうに」
「ふざけるな!!」
俺は金岡の胸倉を掴み上げる。しかし、金岡は逆に俺を睨みつけた。
「……俺に当たってどうする。犯したのは俺じゃねえぞ」
ヤクザそのものの気迫に、俺は思わず手を離し、力なくその場に崩れ落ちる。
382 :
痴観男(後):2011/09/11(日) 17:00:57.07 ID:ao32pt0X
放心状態となった俺の視界で、ビデオは続いていた。
前後から同時に挿入され、叫ぶ絢子。何度も何度も、徹底的に奥までを犯される、妻の姿。
「…………どうすれば、いい…………?」
俺は言葉を搾り出した。
「…………どうすれば、俺達は日常に戻れる?あいつと家に帰れるんだ?」
金岡に縋るような視線を投げかける。
すると金岡は、今までにないほど穏やかな笑みを見せた。
「買い戻すことだな、奥さんを。当初の借金に利子がついて、現状800万。
ついでに言うと、ウチは良心的な『トイチ』だ。
10日も待ってやっと1割ぽっち上乗せする。それをチョチョイと用立ててくれりゃいい」
「……払える訳が、ないだろう」
「何、今すぐじゃなくていいさ。働いて返せばいい。
ああ、ちなみに暴利だからって弁護士に相談したりするんじゃないぞ。
もしこの件で不穏な動きがあれば、二度と奥さんとは逢えなくなる」
金岡はそう言い残し、部屋を後にする。
嵌められた。ヤクザだ。これが、ヤクザなんだ。
10日で利子80万……返せるわけがない。そうと知っていて、絢子を奪うつもりだ。
ビデオの絢子が泣いている。俺に助けを求めているのか。
アイツは今、どこにいるのか。何もかも、解らない。