1 :
名無しさん@ピンキー:
なかったので立ててみた
立てたものの自分は書けないので職人さんの降臨
お待ちしてます
保守
健吾と梨沙が読みたいです!!
職人さんお願いします〜。
保守
あの後は健吾の家に帰ってエチーしたってことでおk?
もう何か待ちきれないから自分で書いたった
文章無茶苦茶だけども
健吾×梨沙で最終回の続きっていう設定で
しかも途中で力尽きたってゆうね…
帰り道がこれほど短く感じたことはなかった。
クラゲという消えない流れ星の前で、再び愛を確かめあった健吾と梨沙―
2人の足は自然と岡田家へと向かっていた。
マリアの作品のこと、健吾の新しい仕事のこと、梨沙の兄・修一のこと…
ゆっくり、ゆっくりと歩く2人の間に会話が尽きることはなかった。
気がつくと玄関まで来ていた。
「何か、懐かしいな。全然変わってない」
感慨深げにつぶやく梨沙に健吾はふふっと笑みをこぼした。
梨沙がふと横に目をやると、さらに懐かしいものがそこに置いてあったのに気づいた
――健吾が梨沙に買った自転車だった。
「まだ置いてあったんだ、これ」
「うん。……乗り方、覚えてる?」
いたずらっぽく尋ねる健吾に当たり前だろと口を尖らせる。
忘れるわけがなかった。
あの日のこと――あの夜のこと。
――いつかは離さなきゃ――
あの時の健吾の言葉は、梨沙の胸を強く締め付けた。
健吾の手から自転車が離れると同時に、このまま2人が離れ離れになってしまう予感がしたからだ。
このままがいい、このまま2人でずっと一緒にいたい――
流れ星は、一年遅れてこの願い事を叶えてくれたのだ。
自転車を見ている内にいろいろな思いが頭の中をめぐって梨沙の目頭は熱くなる。
「大丈夫…?」
うっすら涙を浮かべた梨沙の横顔を見て、健吾が声をかけた。
「ん…ごめん。」
「…冷えるから、入ろう」
「うん」
「ただいま」
いつものように居間に入ってくる健吾に、母親の和子と妹のマリアがおかえりと答えた。
「健吾、梨沙さんは…」
言いかけた言葉が止まる。
健吾の後に続いて少し俯きながら入ってくる梨沙に和子とマリアは驚いた。
「梨沙…さん」
ほら、と健吾に促され、梨沙は2人の前に歩み出た。
「…ただいま」
梨沙の不安げな声を打ち消すかのように和子とマリアはにっこりと微笑んだ。
「おかえり」
「おかえりなさい、梨沙さん」
2人の言葉に、梨沙は心の底から安堵した。
ようやく見つけた自分の帰る場所――健吾と梨沙は顔を見合わせ、笑い合った。
その後、健吾と梨沙は遅めの夕食によばれた。
「ごめんね。梨沙さんが帰ってくるって知ってたらもっとごちそうを…」
「いいよ別に。あたしはこの味が好きだから」
「でも一回梨沙さんのカボチャの煮物が食べてみたいなぁ〜」
「母さんには負けるけどほんっとおいしいから」
「だから、負けてないっつーの」
このような楽しい会話の尽きない晩餐となった。梨沙にとっては何もかもが幸せに思えた。
世の中にこんなに楽しい食事があるのかと改めて実感した。
時計は午前0時を廻っていた。
部屋のベッドに腰掛ける健吾と今は何も入っていない水槽を見つめる梨沙――
「ホントにいなくなっちゃったんだなークラゲ」
寂しそうに水槽を撫でる梨沙を見て、そうだね、と健吾が呟いた。
「他は変わってないのに、あんたの部屋だけは別のとこみたい。
クラゲがいなくなっただけなのにね」
「はは、そうかな」
「もうさ、水族館の仕事はやらないの?」
水槽を見つめながら梨沙は尋ねた。
「…うん」
「そっか」
「初めてあんたに会ったときってさ、水族館でだったよね」
「そうだね」
「クラゲについてすっごい説明してきてさ、その時のあんたは――」
「ん?」
「――何か、キラキラして見えた」
付き合っていた彼氏に振られて新たな借金が増え、どん底だった梨沙は、
運命に導かれるように水族館にたどり着き、そこで健吾と出会った。
力尽きた
続き書けたら書きます
続きを早く!
初っぱなから神降臨とは!
神キテターー!!
しかも何という生殺しw
続きを禿げ上がるくらい楽しみにして待ってますw
どう考えても立てるの遅すぎだろ…
>>8の続きです
遅くなってすいません
エロ突入します
******************
クラゲのようになりたい――
余計なことを何も考えずにただ水の中を漂っていられたら、どれだけ楽だろうか
――そう思っていた時があった。
だが、今は違う。健吾と一緒にいられるなら、面倒なことでも考えるのだって悪くない。
「ありがとね」
「え?」
「あんたに出会わなかったらあたしは一生、暗い海の底を漂ってたんだろうなーって」
「……それは俺もおんなじだよ。」
健吾の言葉にようやく梨沙は視線を水槽から健吾に移した。
「梨沙に出会わなかったらこんな感情、生まれなかったかもしれない」
「こんな感情って?」
「大切な人を…、何がなんでも幸せにしたいっていう強い感情が――」
今度ははっきりと2人の視線が噛み合った。
健吾の凛としたまなざしは梨沙の視線をとらえ、鼓動を急速に速めた。
顔の温度がどんどん上昇していくのがわかった。
先刻の展望台でのことが急に脳裏に浮かび、無性に恥ずかしくなる。
傍から見れば、どう見ても恋人同士の戯れにしか見えなかっただろう。
その戯れを、目の前の愛しい男としていた――そう考えるだけで正気ではいられなかった。
とにかくこの状況から脱したかった梨沙は、じゃあおやすみと言い残し、健吾の横を足早に通り過ぎようとした。
次の瞬間、健吾は梨沙の腕を掴み、強く抱き寄せた。
梨沙の体はぐらりと傾き、健吾の膝の上に乗りながら抱き締められるという形になった。
不思議なもので、健吾に抱き締められると、梨沙の眼には自然に涙が溢れ出てくる。
――海で抱き締めてくれた時もそうだった。冷めきった心を一瞬にして温めてくれた。
健吾の肌のぬくもりは、梨沙を心の底からほっとさせた。
「もう、どこにも行くな…」
梨沙の項に顔をうずめながら、しぼりだすように声を発する健吾の唇が、梨沙の首筋を這いながら、耳元へ到達する。
「…梨沙」
自分の名前を呼ぶその声のいつになく艶っぽい響きに、梨沙は全身の力がふっと抜けていくのがわかった。
そして、どちらからともなく互いの唇を合わせた。
健吾が、梨沙を抱く腕にさらに力をこめると、梨沙もそれに応えるように健吾の首に腕をまわす。
――健吾はもう止められる気がしなかった
貪るように激しく口づけしながら健吾は梨沙の体をベッドにゆっくりと横たえた。
首を這いまわる梨沙の手が健吾をさらに刺激する。
静まり返った部屋に、唾液が絡み合う淫靡な音だけが響き渡る。梨沙にはそれがとてもいやらしく思えた。
風俗嬢の自分がこんなこと思うのもなんだけど――と心の中で苦笑する。
首筋から徐々に下のほうへ唇を這わせながら、健吾は梨沙の寝着のボタンを一つ一つ外していく。その行為にいちいち梨沙の体がびくんと反応する。
ボタンを外し終え、寝着を肌蹴させると、つんと上を向いた形の良い乳房が露わになった。
健吾はふと目線を下のほうにやった。
一年経ち、マシにはなってきているものの、梨沙の腹部には手術の傷跡がはっきり刻み込まれていた。
白く透き通るような肌だけに、余計に傷が目立つ。
「…覚えて、くれてる?あたしの、お腹…」
呼吸を荒げながら梨沙がおそるおそる尋ねた。
「もちろん。それに――」
――そのままの、梨沙が好きだから
健吾の手が梨沙のお腹の傷痕を優しく撫ぜる。
健吾に触れられてるというだけで傷が癒えていくような気がして、とても心地がよかった。
その手がゆっくりと移動し、梨沙の乳房に触れた。
「やっ…」
咄嗟に出た声は再び健吾の唇によってふさがれる。
「んぅ…ふっ」
乳房を愛撫される度に、下半身がどんどん湿り気を帯びていった。
健吾の舌は梨沙の歯列をなぞり、なめるように舌に絡みつく。
唇を離すと、唾液が二人が離れるのを惜しむかのように一本の糸をひいていた。
少しの息継ぎも勿体ないとばかりに、再び温かい舌を梨沙の口に差し入れた。
同時に梨沙のズボンと下着に手がかけられる。
「あっ――」
声を発する間もなく一気に脱がされ、黒い恥毛に覆われた秘所が露わになった。
そこから発せられるほのかな女の香りに、健吾は唾を呑んだ。
綺麗な曲線を描く腰を経由してすらりとした脚に辿り着き、それを開いて間に自分の体を押し当てた。
「いや…っ」
言葉とは裏腹に身体は正直なもので、貪るような口づけと乳房への愛撫によって、
梨沙の下半身は熟れて、健吾を激しく求めていた。
「梨沙…、挿れるよ」
健吾が自身を梨沙の秘所へとあてがう。
「あぁ…っ、やぁ…!」
「梨沙…」
耳元で囁かれ、ふっと力が抜けた梨沙はすんなりと健吾のモノを受け入れた。
「…大丈夫?」
「ん…う、動いて」
梨沙の言葉を受け、健吾はゆっくりと腰を動かし始めた。
快楽による悲鳴とともに、梨沙の秘部は健吾をきつく締め付ける。
――健吾とひとつになっている――
健吾と繋がれたことの嬉しさと快楽によって梨沙の目から涙がぽろぽろ零れ落ちる。
それを見た健吾はすでに限界に達していた。
腰の動きも徐々に速くなる。
「あっあっ…んぁっあぁんっ…!!」
2人の呼吸がペースが上がっていく。
「けんご…っ!」
健吾は梨沙のなかで果てた。
「初めて…名前、呼んでくれたね」
「ん…」
ふふっと笑いがこぼれ、2人はもう一度しっかりと抱き締めあった。
以上です
エロって本当に難しい…
文章支離滅裂でサーセンwwww
何か健吾のキャラが若干変わってるように感じるけど気にしないw
続き来てた*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(゚∀゚)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!
GJ!梨沙かわいいよ梨沙!!
GJ!!!
健吾の低音ボイスハアハア…
DVDの特典に入れてほしい
未公開シーンとしてw
二人が脳内で演じているよwwgj!
20 :
名無しさん@ピンキー:2010/12/30(木) 01:29:34 ID:EZkqUUPc
***エロではないけど、エピローグあるいは余韻として・・・
水の入っていない水槽は、朝日を柔らげることなく梨沙の横顔を照らした。
眩しさに目を開けると、すぐ傍に健吾の寝顔があった。
ゆっくりと健吾の右腕から頭を擡げ、半身を起こす。二人とも裸だった。
全身に、微かな痛みと心地よい疲労感が残っていた。
“・・そうだった・・”
梨沙は、昨夜の出来事を思い返した。
アクアショップでのすれ違いから展望台での思いがけない再会。
後ろから強く抱き締められ、耳元で聴いた愛の囁き。
不器用すぎる言葉と懐かしい健吾の匂い。
オリオンとクラゲに見守られた抱擁と接吻。
手をしっかり握って、寄り添うように下った家の前の小径。
家に入れば、和子もマリアも暖かく迎えてくれた。
まるで、今朝、家を出た自分が帰ってきたかのように・・・
夕食を摂る二人を見つめる和子とマリアの笑顔が暖かかった。
お義母さんが言った、「テーブルのイスが全部埋まっているのは、いいものね・・」
という言葉が、心に染みた。
そして・・・初めての夜。
ずっと夢に見た甘美な瞬間がそこにあった。
傷跡を撫でる健吾の指が優しかった。
愛しい人と肌を重ねることが、これほどの幸福感を与えてくれるものなのだと、
自分は始めて知ったと思った。
手術の翌朝、目を覚ました時に見た健吾の寝顔は、疲れているように見えた。
しかし今、傍らで寝息をたてる健吾は、安らかで満ち足りているように見える。
梨沙は、静かにベッドを出ると服を着け、ブラインドを下ろした。
ベッド脇に脱ぎ散らしてあった健吾の服を畳みながら、時計を見上げる。
針は七時少し前を指していた。
今日は、忙しくなる。
いや、忙しくしよう。
そうしていないと・・・ちょっと・・恥ずかしい。
梨沙は、健吾の寝顔を見つめ、「これからよろしく、ねっ、ダーリン」とつぶやき、
その頬に軽く口づけして部屋を出た。
GJGJ。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・
梨沙かわええよーww
その後の健吾も読みたいです!!
やっぱ健吾と梨沙いいわー
にしても健吾の部屋で堂々とエッチって…
マリアとか感づいてそうw
朝、勝手に健吾の部屋に入ってきて裸で寝てる兄を見て
あ〜…ってなるマリアw
23 :
名無しさん@ピンキー:2010/12/31(金) 03:17:56 ID:QYV4ltZ1
ご要望に答えて・・・但し、エロくはないですよ
健吾は満足していた。自分の周りを無数のクラゲが乱舞している。
この塩湖のマスティギアス(タコクラゲ)には毒がない。外界から隔離されて
天敵が侵入しない環境では、防衛手段を進化させる必要がなかったのだろう。
健吾の肌を、幾つもの個体が触れていく。その感覚は、さながら愛撫のようだった。
ふと気付くと、先ほどまで一緒だった美奈子の姿が見えない。
あたりを見回す。その時、不思議なものが眼に映った。
「・・ミズクラゲ?」
無数のマスティギアスに交じって、二匹のミズクラゲが水中を漂っていた。
しかも、このミズクラゲには色がある。空色と淡い桃色。
四つあるはずの生殖腺が二つしかない。
新種かも知れない・・・健吾の意識から美奈子が消えた。
観察するために近づこうとした健吾の視界を、一群のマスティギアスが遮った。
群れが通り過ぎたあとにミズクラゲの姿はなかった。
呆然とする健吾の左頬に触れるものがあった。
それは、柔らかく、しかも暖かで愛おしい感触を健吾に与えた。
振り返った健吾に、パラオの陽光を浴び、漂い去る桃色のミズクラゲが見えた。
続きは、年明けに・・良いお年を・・・
保守
ああいう純情そうなカップルに限って
一度エッチの良さを覚えると毎日ヤッてそう
当たり前だけど過疎ってるな
空気を読まずに投下
健吾×梨沙で
>>20の続きみたいな感じ
ちなみに流れ星のサントラの「流れ星」をBGMに書いた
************************************
健吾は息を切らしながら自転車を漕いでいた。
いつもなら自転車を降りて登る坂道も、今夜だけは降りることなく全速力で駆け上がった。
何より一刻も早く確かめたかった。
――愛おしい人は自分の家にいてくれているだろうかと。
自分の目でその姿を確認したかった。
自分の耳でその声を聞きたかった。
その思いは、仕事帰りの疲労を忘れさせ、自転車を漕ぐのを後押しした。
玄関の前に来て、健吾は目を瞑り、一度ふぅ、と深呼吸をする。
ドアを開けて中に入り、ただいまと言おうとした時、台所の方から賑やかな声が聞こえてくるのに気がついた。
マリアの黄色い笑い声も混じっている。
台所に向かうと、食器をテーブルの上に並べているマリアの姿が見えた。
「あ、お兄ちゃん、おかえりー」
「おかえり、健吾」
ふと視線を右にずらした。
和子と一緒に料理を作っている長い髪の女性。
――間違いなく梨沙だった。健吾は心の中で深い安堵のため息をついた。
朝、目が覚めたときはすでに梨沙の姿はなく、ベッド脇にきれいに畳まれた自分の服が置いてあるだけだった。
母親に尋ねても、「出かける」と言って出て行ったことしかわからずで、
仕事中も、そのことばかりを考え手につかなかった。
もしかしたら、昨日のことは夢だったのではないか。
梨沙と展望台で再会したことも、その後一緒に帰宅して、4人で夕食を食べたことも、
愛を確かめ合ったことも、全て――
ベッドで自分が裸になっていても、梨沙の肌のぬくもりや匂いが残っていても、
梨沙がいないだけで、本当に帰ってきてくれたのだろうかと自身が持てなくなる自分が情けなかった。
だが、実際こうして梨沙の姿を目の当たりにして、ようやく健吾の目の前に光が広がった。
「…おかえり」
梨沙の優しい声は、健吾の不安を一気に吹き飛ばした。
「何ポカーンとした顔してんのお兄ちゃん」
マリアの声ではっと我に返る。
「あっ…いや、ただいま」
「今日はねー、梨沙さんが夕食作ってくれるんだよっ」
「梨沙が?」
一年ぶりね、と微笑みかける和子の横で、梨沙がもはや慣れた手つきでカボチャを切っているのが見えた。
「今度もカボチャの煮物なんだ」
ははは、と笑いながら言う健吾に梨沙はムッとして答えた。
「マリアが食べたいって言うから…イヤなら食べなくてもいいけど」
「いやいや食べる食べる、すっごい食べたい」
「絶対思ってないじゃん。またかって顔したしさ」
「いやしてないよ」
「した」
「はいはい、痴話喧嘩なら後で二人っきりでやってくださーい」
二人のやりとりにマリアが思わず割って入った。
――岡田家は幸せな笑いに包まれた。
その夜、部屋のベッドに少し距離をあけて座る健吾と梨沙の姿があった。
「マリア、梨沙の料理食べてすごく喜んでた」
「…まぁ、当たり前だけどね」
「ありがとう」
「いいよ、別にあれぐらい」
「それで、今日…」
「ん?」
「どこ行ってたの」
突然声のトーンが変わり、梨沙は健吾の方を向いた。
健吾は俯いて足元を見ている。
「仕事探しに行ってた」
「何で黙って行ったの」
「何でって、寝てたから…」
――本当は違う。
激しく互いを求め合った相手と、翌朝どんな顔で過ごせばいいのかわからなかった。
確かに新しい仕事を探しには出かけたが、所詮それは口実でしかなかった。
身体が火照っているのを冷ましたかった梨沙は、時間を置こうと思い、家を出た。
健吾はそのことを怒っていたのだ。
「頼むから心配かけないでくれよ」
「…ごめん」
しばしの沈黙が続く。その沈黙を打ち消すように健吾は突然立ち上がり、
机の上に置いている鞄の中から、用紙を取り出し、梨沙に手渡した。
「これって――」
健吾側の記入事項が全て書かれた婚姻届だった。
「今日、取りに行ってきたの?」
「本当は、今日出したかったんだけど…」
頭をポリポリと掻く健吾に、梨沙は思わず笑いがこぼれた。
「明日、ふたりで出しに行こう」
梨沙は思わず、健吾の胸に抱きついた。健吾も梨沙の背中に手をまわし、ぎゅっと抱きしめた。
「梨沙」
「うん?」
「結婚しよう」
「…それ、初めて聞いた」
「でしょ?」
二人は笑いながら抱き締め合った。
――今夜も長い夜になりそうだ。
以上です。間違えて3/4で終わってしまってすいませんw
エロくないし
規制でなかなか書き込めなかった
>>29のオチでちとワロタけどGJです!
なんかそのまま最終話の続き読んでるみたいだw
これからも職人さんの降臨待ってます
せめてドラマ中に立っていれば…
いい感じに妄想できそうなカップルだったのにもったいないのう
ドラマ中の健吾と梨沙の妄想も読みたかったなー
終わってからだから1パターンぐらいしか思いつかないけど
ドラマ最中、それこそ4話5話あたりなら
これからどうなるかというワクワク感がいろいろ発想を広げてくれたろうに
移植前にキレイなおなか覚えててほしい、つって
リサが健吾に迫るパターンとか?
5話でカーセックルとか
37 :
名無しさん@ピンキー:2011/01/12(水) 21:20:24 ID:2bt0zSel
上戸はHIROと交際→結婚したほうがいいな
松下・北川・戸田がいるから必要なし
松下主演初回 18.4% 21:00-22:04 CX* [新]CONTROL〜犯罪心理捜査〜
藤木>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>竹野内
38 :
名無しさん@ピンキー:2011/01/12(水) 21:21:23 ID:2bt0zSel
HIROとカーセックル♪
5話は上着かけてやりながらリサの寝顔にチューぐらいはしててもおかしくない
マスコミ逃れてツインの部屋に2人でいた時は「お」と思った。
あれどうなったんだっけ。
>>40 あの時の梨沙の寝顔はヤバいくらい可愛かった
ベッドに座った健吾にもどきどきした
42 :
名無しさん@ピンキー:2011/01/18(火) 23:20:14 ID:GoA8XHWm
唐突ですが23の続き、一部重複部分あり
振り返った健吾に、パラオの陽光を浴びて漂い去る桃色のミズクラゲが見えた。
腕を伸ばし、捕らえようとするが、わずかの差で指先をすりぬける。
健吾はミズクラゲを追って浮上してゆく。なぜか右腕の動きが鈍い。
ようやく、両手で桃色のミズクラゲを包み込んだ時、健吾は水面に出ていた。
最初に眼に映ったものは、畳まれた衣類だった。
半ば降ろされたブラインドのフィンが上に向かって細く開いて、天井と壁に縞模様の
コントラストをつくっていた。
それは、初冬の光に包まれた水槽の中にいるような錯覚を、健吾にもたらした。
健吾は立ち上がり、畳まれた衣類に手を伸ばす。
衣服の上にクラゲの携帯ストラップが置かれているのに気づき、慌てて部屋を見渡す。
入口近くの壁に、自分のジャケットと並んで梨沙のコートが掛けてあるのが眼に入った。
ストラップを手に取り、じっと見つめる。
『ペアでつけちゃう?』梨沙の声が聞こえた気がした。
“そうか・・それで・・・”
健吾は身支度を済ませると机の上から一枚のディスクを取り上げ、空の水槽を見た。
“またここに海水を満たそう。そして、・・・水族館にもどろう”
“そうでないと、梨沙が哀しむ・・・”
健吾は意を決し、ストラップを握りしめて階段を昇っていった。
ディスクには英文で「閉環境におけるクラゲの音響刺激に対する反応について」とあった。
「梨沙さん、健吾、そろそろ起こさないと・・」
「はいっ・・」
テーブルに四人分の食器を並べていた梨沙が歩きだそうとした時、階段を昇る足音が聞こえた。
「おはよう・・」健吾の低く柔らかな声が梨沙の耳に響いた。
「・・おはよう・・」伏し目がちに健吾の脇をすり抜け台所に入る。
そんな梨沙の動きを眼で追いながら、健吾はいつもの席に腰を下ろした。
「はい、コーヒー」
梨沙の差し出すカップを受取りながら、もう一方の手でクラゲのストラップを
梨沙の眼の前にかざした。
「携帯、どうしたの?」
「・・・解約した」
「そう」
台所で和子が、顔をあげた。
「・・また、ペアで付けてくれる?」
梨沙の掌にストラップを置く。
「うん」頷く梨沙の瞳は、手の中のストラップを見つめていた。
野菜がたっぷり入った岡田家秘伝のスープをよそいながら、和子が満足そうに微笑んだ。
GJ!
今の月9が物足りなさ過ぎて…
大人カップルな二人がまた見たい
本スレまでなくなりよった
DVDが出る気配もないし
職人さまお待ちしております
マジで出ないんかDVD
お互い寝顔見つめてるとことかすげー良かったなあ
梨沙は早くから健吾のこと好きになっちゃってたみたいだけど
健吾の方はいつあたりからだ?
妹の手術すむまではそれどころじゃなかったのかいやでもなあ
6話で梨沙が「マリアのことを本当に助けたいって思ってるよ」って
言った時あたりじゃないかな
その時の健吾の顔がドキッとしている顔だった
エゴでも何でも助けたいって思う気持ちは本物じゃん、のあたり?
あそこは確かにそう思った
マリアをぶったのはあの後になるんだっけ?
いつも穏やかで優しいイケメンが
自分を引き止める時だけ感情をあらわにしてくれるとかたまらんすなあ
あの坂道ダッシュとか
腕ガシッとか
惚れない女がいるわけない!!
52 :
名無しさん@ピンキー:2011/01/30(日) 01:33:21 ID:MCVnLDOS
2012.3.10 16:34
「母さん・・・梨沙は?」
「処置が終わって、いまは眠ってる・・・」
連絡を受け、新江の島水族館から藤沢大学病院にきた健吾は、
和子にいざなわれて病室に入った。
梨沙は、点滴をされて窓際のベッドに横たわっていた。
長い髪が枕の上に扇形の黒い海を作っている。
色白の顔は血管が透けるほどに青ざめ、長い睫毛が微かに震えていた。
健吾はベッド脇の椅子に腰かけると、右手の中指で梨沙の唇に触れた。
ふっくらして弾力のある下唇には幾つかの赤い点があった。
「噛んだみたい。・・よっぽど苦しかったのね・・・」
「なにがあったの・・?」
健吾の問いに和子は首を振った。
「合格祝いをするんだって、張り切ってマリアと買い物に行ったんだけど、スーパーで急に倒れたって・・・」
「じゃあ、マリアが?」
「お店の人が救急車を呼んでくれたって・・」
「そう、・・・マリアは?」室内を見回す。
「家に着替えとかとりに行ってる」
「岡田さん・・」谷中教授が初めて見る若い医師と、看護師の中島留美を伴って病室に入ってきた。
「谷中先生、妻は?」健吾が立ち上がる。
「大丈夫ですよ。軽い貧血ですから・・・ただ、」
「えっ・・」健吾と和子が驚いたように顔を見合わせる。
「どこか、悪いところでも・・」
「いやいや、これは言い方が悪かったな・・」谷中教授が苦笑した。
「奥さまは、妊娠なされています」
若い医師が健吾の顔を見つめ、笑顔で告げた。
「えっ!!」
「四週目に入ったばかりですので、おそらく自覚症状はなかったと思います」
「おめでとうございます」中島留美が深々と頭を下げた。
留美にとって、二人の結婚と梨沙の妊娠は免罪符だった。
自分の軽率な行動が、想い合う二つの魂を引き裂き、穏やかな家族を崩壊寸前にまで追い詰めた。
あれから一年半。私がここにこうして居られるのは、岡田さんが全ての罪を背負ってくれたから・・。
和子さんやマリアさん、そして梨沙さんが耐えてくれたから・・留美はそう思っていた。
岡田さん夫妻に子供が生まれ、新たな生命(いのち)の繋がりが始まった時、
あの日から止まったままの私の時間が、ようやく動き出す。今度は誰にも邪魔させない・・・
下を向いた留美の眼から溢れた涙が、リノリウムの床に落ちて弾けた。
53 :
名無しさん@ピンキー:2011/01/30(日) 01:37:58 ID:MCVnLDOS
「こちらは、担当の上杉です」谷中が隣に立つ背の高い医師を紹介した。
「上杉紗綾です。奥さまを担当させていただきます。」そう言って端正な顔立ちの若い医師が頭を下げた。
「よろしくお願いします」健吾と和子が挨拶を返した。
「先生、梨沙が、妻が倒れたのは、妊娠のせいなんですか?」
健吾の問いに谷中と上杉は一瞬、顔を見合わせ答えを譲り合っていたが、
「君から説明しなさい」谷中の言葉で上杉紗綾が話し始めた。
「今回、倒れられたきっかけは、そうだと思います。しかし、主因は他にありそうです。」
「ご承知のように、奥さまは生体肝移植のドナーになられています」
「肝臓は、一部を切除しても元通りになるものですが、奥さまの肝臓は、まだ・・・」言葉が途切れた。
「奥さまは、痩せていらっしゃいますが、食の細い方でしょうか?」
和子が「いえ、そんなことはないと思いますが・・・ねえ」と健吾に同意を求める。
「ええ、」
「偏食とか、好き嫌いは・・」
「いいえ、母が作ったものは、何でもよく食べます」
「そうですか・・ともかく奥さまの肝臓は、術後の回復が遅れているように見えます。これは精密検査の
結果を待たねばなりませんが、代謝に問題があるようです。今回、電解質のバランスが崩れているところ
に妊娠初期の急激な糖質低下が起きて、一時的な貧血状態を起こしたものと思われます。
しかも、微量元素である・・・」
「ご心配なさりませんように、そちらにも専門の医師を付けますから・・」
上杉の説明を谷中教授が遮った。
どうもこの娘(こ)は、話し始めると止まらなくなる癖がある。入院したばかりの患者さんの家族が知りたい
のは病の程度と病院の対応であって、専門的な知識などでは無い、といつも言ってるのに・・・
「それから、倒れた時に右腕を何かに引っかけたようで、上腕に裂傷がありました。そちらの処置も
終わっています。それ以外は今のところ問題なさそうです。新しい命にも別状ありません」
まじめで優秀なんだが、熱心すぎるきらいがある。・・特に好みの異性の前だと・・
おいおい矯正していかねば・・そうした意味でこの患者はいい症例になると谷中は思った。
「一週間ほど入院していただいて、様子を見ましょう」上杉紗綾が健吾を見て笑顔で締めくくった。
54 :
名無しさん@ピンキー:2011/01/30(日) 01:49:17 ID:MCVnLDOS
「お兄ちゃん・・・」
その時、入口からマリアの声がした。両手に紙袋を下げ、息が弾んでいる。
「では、これで・・」谷中と上杉が病室を出て行った。
入れ違いに病室に入ってきたマリアが通り過ぎる上杉紗綾を見て「誰?」と質問する。
「梨沙を担当してくれる上杉先生」健吾の答えに
「綺麗な人・・・はい、これ、お母さん」紙袋を差し出す。
「わかった?」和子が紙袋を受取りながらマリアに言った。
「うん、とりあえず、下着とタオルとスウェットとか持ってきた」
紙袋から梨沙の衣類を取り出して備え付けの引き出しに仕舞う。
「お義姉ちゃんの具合、どう?」マリアが健吾を見て尋ねる。
いつの間にか“梨沙さん”が“お義姉ちゃん“になっている。
「落ち着いたみたいだよ」
「そう・・よかったぁ」
梨沙の寝顔を心配そうに覗き込むマリアの額には、汗が噴き出していた。
きっと、家から病院の間を自転車で全力疾走したのだろう。
「マリア、汗、拭きなさい」和子がタオルを手渡す。
「お兄ちゃん、お義姉ちゃんの寝顔って、なんか子供っぽいよね」
顔の汗を拭いながらマリアが意外なことを言った。
「そうかな」
「今みたいにおでこ全開だと特にそう、二十八には見えないよ、ねぇお母さん」
「そうね」
「よかったね、お兄ちゃん。こんなに若くて可愛いお嫁さんで」兄をからかう。
「何言ってんの、あんたの寝顔なんて赤ちゃんみたいじゃない・・」
そう言ってマリアのおしゃべりを止めた和子は、しかしマリアの気持ちはよく判った。
大好きな義姉(あね)が眼の前で苦しみながら気を失い、救急車で病院に付き添ってきたのだ。
その心細さはいかばかりだったろう。自転車で家からここへ戻るまでの間、かつて自分が私や健吾に
掛けてきた心配を痛感したのだと思う。そして、不安が安心に変わった時、
何かしていないと身の置き所がなくなってしまったのだろう。・・・和子はそう思った。
「さあ、下の売店に足りないもの買いにいくわよ」
「あっ、ちょっと待って、お母さん」
「お兄ちゃん・・これ」ポケットから何かを取り出した。
差し出されたのは梨沙の携帯電話だった。ピンクのクラゲが揺れている。
「お義姉ちゃん、お兄ちゃんに電話しようとして、急に苦しみだしたの・・」
「何の用だったんだろう?」携帯を受取り、健吾は梨沙を見てひとり言のようにつぶやいた。
「お味噌汁の具」
「えっ」予想外の答えにマリアを返り見る。
「お豆腐となんにしようかって・・・」
「マリア、いくわよ」和子が入口で声を掛ける。
「はぁ~い」つむじ風のような妹が去ったあと、病室にはようやく静けさが戻った。
「マリアちゃん、元気になりましたねえ」
先刻から黙って待っていた中島留美が感慨深げに声を発した。
「4月から大学生なんですよね。・・・YCU(横浜市立大学)の医学部ですって?」
「ええ、本人も驚いてます・・・」健吾の顔に微かに誇らしげな笑みが浮かんだ。
「そんなこと・・・きっとマリアちゃん、良いお医者さまになりますよ」
「ありがとうございます」マリアの合格を一番喜んだのは、梨沙だったのかもしれない。
「ところで岡田さん、今日は付き添われますか?」
「はい」梨沙が覚醒たとき、傍に居てやりたい・・そう思った。
「わかりました。簡易ベッドを用意します」
「そうそう、それと、お休みになってから奥さまは、うわ言で御主人の名前を二度呼ばれました・・」
そう言って、留美は病室を後にした。
二人きりになった病室で、健吾は椅子に腰かけると窓の外を見た。
日の落ちた東の空では、獅子座の下で赤い星がその光を強めている。
健吾は、梨沙の額にかかる前髪を除け、両手で右手をそっと包み込むと、
「おめでとう・・・ありがとう」眠る妻に小さく声をかけた。
リアルタイムでキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
続きを待ってます!
おおうなんかきてる
梨沙が身ごもったってだけでもなんか萌えるw
けど続きあり?お待ちしております。
ドラマ板にあるのよりこっちのがずっと「流れ星の続きを考えてみるスレ」になってんねw
でもイイヨイイヨー
「妻」萌
健吾はいいお父さんになるよな絶対
留美ちゃんはノベライズじゃえらいことになってるもんな
ドラマでは穏やかな描写でよかった
60 :
名無しさん@ピンキー:2011/01/31(月) 01:44:27 ID:spl3tO5M
2012.3.10 17:05(54の続)
「ねえ、見た?」
五階のナースセンターに戻った北村詩織は、同僚の大貫柚月に声をかけた。
「見た、見た、505の岡田さんでしょ?」
週末の準夜勤体制にシフトしたばかりのナースセンターには、他に三人の看護師が残っていた。
「あの人って、例の・・・だよね?」詩織が小声で言った。
「でなきゃ、谷中教授が来る訳ないじゃん。しかも担当が深沢先生と上杉先生だよ」と柚月。
「えー、そうなの? 循環器内科と産科のエースが二人も付くの?」
「そうみたい、だから内科病棟(ここ)に居るんだし、それに中島先輩がさっき簡易ベッドを運んでた」
「なにそれ、VIP並みじゃん・・・」詩織が驚く。
「でもさ、あの二人って、結局夫婦だったってことだよね?。だったら、あの騒ぎはなんだったの?」
「・・・」
「でも、岡田さんの御主人ってカッコ良いよね。背が高くて、イケメンだし」
「それは言えてる!、江の水の主任研究員なんでしょ」
「クラゲに関しては、世界的に有名らしいよ」
「そうなんだぁ・・・でもさぁ、じゃあなんで、そんな男性(ひと)が年の離れた元風俗嬢と夫婦なの?」
「さぁ、それは判らないけど、それより、上杉先生よ。」
「あっ、そうだ!、紗綾ちゃん、絶対好みだよね」
「懲りないからなぁ、あの先生(ひと)も・・・」
そんなところで切らないでくれw
いいぞいいぞ活気づいてきた
うわー めちゃめちゃ引き込まれた!GJGJGJ続きが気になるー
紗綾ってぇとTomorrowの緒川たまきを思い出す
ていうかDVD-BOX発売決定きたわぁ
65 :
名無しさん@ピンキー:2011/02/01(火) 21:42:46 ID:56WJyKfH
64<正解です
42の続き
「引っ越し、どうするの?」健吾の問いに、
「大丈夫、そんなに荷物ないから・・・車、借りるね」
梨沙がコールスローを頬張りながら答えた。
「えっ、梨沙さん、運転出来るの?」
「あたりまえだろ・・・」梨沙の顔に心外そうな表情が浮かんだ。
「あたし、免許持ってない・・」
「車は大学に入ってからって、言ってるだろ・・」
「一人で大丈夫?」健吾が梨沙を見て心配気に尋ねた。
「うん」
「明後日(あさって)の日曜なら・・・」
「早いほうがいいわよ!」健吾の言葉に和子のめずらしく強い声が重なった。
驚いたように健吾とマリアが、同時に和子を見た。
二人の視線に気づき、「そういうものなのよ」
和子が今度は柔らかく言ってスープボールを手に取った。
「ねっ、お義母さんも言ってるし・・・」
「そう」
そこには大人の女性にしか判らない何かが在るのだろうと思い、健吾は同意してマリアを見た。
「あたしが手伝う!」まだ大人に成りきれていない妹が予期した通りの言葉を発した。
和子と梨沙の口元に笑みがある。
「学校は?」と梨沙。
「期末試験はきのう終わったし、終業式までやることないし」
「それに私、ダブってるからクラスでちょっと浮いてるんだ・・」
「そうなんだ、受験は?」
「センター試験の一次が来月の14、15だよ。いまごろ慌ててたら無理だって」
「ふーん、自信あんだ」
「自宅療養が長かったからね・・その間、暇だったし」
「どこいくの?」
「横浜」
「学部は?」
「まだ秘密(ないしょ)・・・」
「造形じゃないの・・・まっ、いいけど、・・・来る?」
「うん!、お母さんいいでしょ?」
クールな姉とスウィートな妹、しっかり仲の良い姉妹の形になっている、と和子は思った。
「はい、はい」
義姉(あね)と母の同意を取り付けてから厳しい兄を見る。その大きな瞳はキラキラ輝いていた。
踏み込み過ぎず、押し付けもしない、といって決して気にしていないわけでもない。
ある意味サラッとした優しさが梨沙の美点だ、と健吾は考えた。
「いいよ」マリアにあの顔をされると、拒むことが出来ない自分に健吾はもどかしさを感じていた。
「ごちそうさま」健吾は席から立つと財布を取り出し梨沙の前に三万円を置いた。
「こんなにいらないって」梨沙が健吾を見上げて言った。
「いいから、それと、これで携帯を買って。通話料の引き落としもこのカードで・・」
差し出された銀色のカードには、“KENGO OKADA”と刻印があった。
66 :
名無しさん@ピンキー:2011/02/01(火) 21:45:00 ID:56WJyKfH
65の続き
「お兄ちゃん、なにか食べてきていい?」
「いいよ」モンテインの青いパーカを手に取る。
「あのさ、」梨沙が立ち上がり健吾を呼び止めた。
「なに?」
「・・・携帯の名義なんだけど、」
「んっ?」
「・・・岡田梨沙でいい?」
「もちろん、・・・運転、気を付けてね」
「うん」
「じゃあ、いってきます」
「いってらっしゃい」
三つの異なる音程(トーン)の女声(こえ)に送られて健吾は職場へと向かった。
「用意してくる、ごちそうさまぁ!」マリアが部屋へ駆け下りて行った。
「ごちそうさま」
「梨沙さん、ここはいいから貴女も用意して」和子が食器を片づけながら言った。
「うん」
「・・・お義母さん」
「なぁに?」
「・・・ありがと」
「いいのよ」和子がテーブルを拭きながら答えた。
67 :
名無しさん@ピンキー:2011/02/06(日) 00:23:29 ID:dHUJ2VOK
60の続き
2012.3.10 20:45 藤沢大学病院内科病棟505号室
感覚は、手足の先端から戻りはじめた。
続いて背中がなにか堅いものに触れている感触があった。
体全体が冷えているなか右手だけに暖かさがある。
次に痛みがきた。右腕に刃物で切られたような鋭い痛みがあった。
右耳の奥で大量の水が流れるような“ゴーッ”という音が聞こえる。
心臓が脈を打つリズムが徐々に早まってゆく。
そして・・・ゆっくりと覚醒ていった。
「気がついた・・・」健吾の声がした。
「・・どこ?」視界が霞んでいる。
方向感覚がない。
「大丈夫?」再び聞こえた。
頭を右に傾ける。
そこに、心配そうな健吾の顔があった。
「・・・ここ、どこ?」
「藤沢大学病院」
「マリアは?」
「母さんと家に帰ったよ」
「うぅっ!」起き上がろうとした梨沙の顔に苦悶の表情が浮かび、横に倒れそうになった。
健吾が慌てて梨沙の体を支えた。
「無理しちゃだめだよ」
ゆっくりとベッドに横たえる。
「・・・ご・・め・ん・・・」息があがっている。
「いま、看護師さん呼ぶから」
「うっん」
健吾は枕元に伸びるコールボタンを押した。
68 :
名無しさん@ピンキー:2011/02/06(日) 00:26:59 ID:dHUJ2VOK
2012.3.10 20:51 藤沢大学病院内科病棟ナースセンター
「岡田さん、どうかなさいましたか?」大貫柚月が答えた。
「妻が眼を覚ましたんですが、体が痛いようなんです・・・」
インターフォンから低く柔らかな男性の声が、ナースセンターに響いた。
「判りました。すぐ行きます」
柚月がナースセンターを出ようとした時、
「どうしたの?」中島留美が他の病室から戻ってきた。
「505号の岡田さんなんですが、奥さんが眼を覚ましたって・・・」
「そう、いいわ、私が行きます」
「あっ、先輩」
「なに?」
「上杉先生から、岡田さんからコールがあったら知らせるようにって・・・」
「いいわ、きっと起きただけでしょ、なにかあれば連絡します」
留美はそう言って歩速を早めるとナースセンターに立ち寄らず通り過ぎていった。
69 :
名無しさん@ピンキー:2011/02/06(日) 00:30:27 ID:dHUJ2VOK
2012.3.10 20:58 藤沢大学病院内科病棟505号室
「岡田さん」
「中島さん・・・すみません」
「いいえ、梨沙さん、どっか痛い?」留美がベッドに近寄りながら言った・
「右腕と、お腹が・・・すこし・・・」
「起きようとしたんでしょ?」留美の眼が笑っている。
「だめですよ、無理しちゃ」
点滴の量を調整しながら留美が梨沙を見て言った。
梨沙の顔に困ったような表情が浮かんだ。
「痛みで眼むれそうにありませんか?」
「うぅん・・・こうしてればそうでもない・・・」梨沙が答えた。
「そうですか、では、私はナースセンターに居ますから、遠慮なく呼んでださい」
「岡田さんちょっとよろしいですか?」
健吾と中島留美は廊下に出た。
「こんなことを言うのは、ほんとうは越権なんですが、」と前置きして、
「梨沙さんの体調なんですが・・・かなり無理をなさっていたのではないかと思います」
「それは、・・・判ります」と健吾が下を向いて答えた。
「つまり、はっきり言って栄養が足りていないのではないかと・・・」語尾がかすんだ。
「先刻上杉先生おしゃたように、肝臓は普通に栄養を摂っていればもとにもどるものなのですが
梨沙さんの肝臓は切除した時のままなんです。」留美の顔にすまなそうな色が浮かんだ。
「岡田さん。この1年、なにがあったかはだいたい想像できます。梨沙さんを、奥さまを大事に
してあげてくださいね」
そう言って、中島留美は戻っていった。
70 :
名無しさん@ピンキー:2011/02/06(日) 00:36:20 ID:dHUJ2VOK
2012.3.10 21:12 藤沢大学病院内科病棟505号室
「ちゃんと食べてたの?」中島留美を見送って病室に戻った健吾が梨沙に言った。
「どうだろ・・・ぎりぎりだったからね」梨沙は天井を見上げている。
「そう、でもこれからはちゃんと栄養つけてくれないと、一人の体じゃないんだから」
「えっ・・?」瞳だけを健吾に向けた。
「赤ちゃんができたって」
健吾の言葉に、梨沙の眼が大きく見開いた。
「これで、・・・また禁酒かぁ」また、天井を見る。
しかし、気持ちと正反対の言葉は両眼に膨れあがる涙によって否定されていた。
梨沙が喜びの感情を隠そうとする癖は、
まだ自分の知らない彼女の哀しい過去からくるのだろう、と健吾は思った。
“抱きしめたくなるほど・可愛らしく屈折した・純粋(ピュア)な魂”
母の言葉の意味が判る気がした。
そして。梨沙が一日も早く喜びは喜びとして表現できるようになることを願った。
せめて、家族の前だけでも・・・
その日が来るまで抱きしめ続けることが、彼女を愛した自分の務めなのだと健吾は誓った。
梨沙の切れ長な目尻から零れた涙が枕に染みを作っていた。
「なんか、逆だね」しばらくして、梨沙が呟いた。
「なにが?」
「だって、普通は奥さんから言うもんでしょ・・・」
「そうだね」
「産んでもいいの・・・」
「母さんもマリアもすごく喜んでるよ」
「あんたは?」
「俺?」健吾は笑顔で梨沙の頭を優しく撫でた。
「あのさ、・・・あたし、一度・・・」
「あぶら揚げ・・・」健吾の声が梨沙の言葉を遮った。
「えっ」
「電話・・・豆腐とだったら、あぶら揚げ」手は梨沙の髪を撫で続けている。
「だよねぇ」小さな間を置いて、梨沙が嬉しそうに言った。
「マリアの奴はナメコだって言うんだ・・・」
「それも悪くないけど・・・」
「どっちがいいんだよ」健吾を睨む視線が柔らかい。
「退院したら作ってくれる?」
「うん」
「けんご・・・」梨沙が初めて名前を呼んだ。
「んっ」
「キスしてくれる?・・・御褒美に」
「おぅ」健吾は小さく頷くと顔を近づけた。
「やっぱ、いいや」期待に閉じていた眼を開くと顔を背ける。
「なんで?」
「・・・口内炎があるの・・・三つも」恥かしそうに梨沙が答えた。
「かまわないよ」
そう言って、健吾は左腕を梨沙の首の下に差し入れると半ば強引にその口唇(くち)を吸った。
梨沙は、いっさい抵抗しなかった。
「お昼、なに食べた?」
顔を離したあとで梨沙が言った。。
「んっ?」
「ケチャップの味がした」眼が笑っている。
「でも、なんか、少し痛くなくなった」
「お義母さんのコーンビーフオムレツが食べたいなぁ」
梨沙は健吾を見つめ聖母(マリア)のように微笑んだ。
71 :
名無しさん@ピンキー:2011/02/06(日) 00:43:28 ID:dHUJ2VOK
2012.3.10. 21:18 藤沢大学病院内科病棟505号室外
“キスして・・・”
“かまわないよ・・・”
505号室のすぐ外まで来ていた上杉紗綾の耳に、甘えるような女性の声と低く柔らかな男性の声が
聞こえた。足音を忍ばせ開いたままの入口から中を見た。
岡田健吾が中腰になり、横たわる梨沙の首を抱くと唇を重ねる姿が見えた。
右手の長い指が髪にからみ、梨沙の小さな顔を自らの唇に押し付けている。
健吾に身をあずけ、うっとりと閉じられた梨沙の瞼が微かに震えているのまで見えた気がした。
思わず身を隠し病室の外の壁に背を付けた。
最初に感じたのは“羨望”だった。
健吾にあんなふうに抱きしめられたなら・・・“妄想”が広がる。
鼓動の高まりと歩調をあわせるように、“嫉妬”に変化した。
お金の為に体を売っていたくせに、肝臓まで売ったくせに・・・
どうしてあんな素敵な男性(ひと)に愛されてるの?
その上、子供まで授かって・・・
いや、それは妹の為に体にメスを入れてくれたことへの贖罪ではないのか・・・
きっと、・・・そうだ。
健吾は梨沙を心から愛しているわけではなく、そう思おうとしているだけ・・・
負の感情が紗綾の意識を占めていった。
紗綾こえぇw
羨ましいのは上杉先生に同意する
健吾が優しすぎてクラクラするわ
うわー素敵過ぎてwktk
でも上杉先生やばい怖いw
こんなスレがあったなんて・・・
今気づいた
これから時々覗かせていただきます
76 :
名無しさん@ピンキー:2011/02/10(木) 22:22:28 ID:dif8lwqq
2012.02.10.20:25 岡田家マリアの部屋
部屋をノックする音がした。
「はーい」
机に向かっていたマリアが音に向かって答えた。
「あたし、・・いい?」ドアの外から梨沙の声がした。
「どうぞ」
肩にバスタオルを掛け、水族館のロゴが入ったTシャツを着た梨沙が入ってきた。
灰色のプーマのスウェットパンツがすらりと伸びた脚を隠している。
「お風呂、あいたよ」
「うん、お兄ちゃんは?」
「まだ」
「勉強中だった?」言いながらマリアの前を過ぎるとベッドに腰を下ろした。
梨沙の長い髪から漂う柑橘系の香りが、部屋を満たした。
“わたし、梨沙さんのこの匂い大好き”
「どうかした?」
眼を瞑り香りの余韻に浸っていたマリアに、梨沙が訝しげに声をかけた。
「ううん、なんでもない」
「二次試験、いつ?」
「再来週の土曜日」
「あと二週間か」
「うん」
「そろそろ、教えろよ」梨沙が命令口調で質(たず)ねた。
「志望校のこと?、・・・横浜市立」
「横浜市立って、美術学部あんの?」
「ううん、ないよ。だって受けるの医学部だもん」
「医学部?」梨沙の声に驚きの色が混ざった。
「うん、でも、お母さんとお兄ちゃんには、まだ内緒ね」
「なんで?」
「笑われちゃうよ・・・」マリアが椅子を左右に振りながら言った。
「そんなことないだろ」
「あるの、お兄ちゃんにとって、わたしはいつまで経っても子供なんだ」
「でも、医学部って金かかんだろ?、だったら、早く言っといたほうが・・・」
「一応、公立だから、それに5番以内で受かってみせるから」
マリアの自信に満ちた言葉が梨沙の声に被さった。
「それだと、入学金も学費も免除なんだ。」
「そのかわり、研修が終わって4年間は県内の病院に勤めなきゃならないけどね」
「そうなんだ」
「うん、それにさ、もし入れなかったとして、お兄ちゃんが“だめ”って言うと思う?」
「だなっ」不合格になることなど考もしないマリアを、梨沙は頼もしく感じた。
そして、いつからこんなに強くなったのだろうと考えた。
77 :
名無しさん@ピンキー:2011/02/10(木) 22:24:16 ID:dif8lwqq
「ねえ梨沙さん。梨沙さんも、もう少しお兄ちゃんに甘えたほうがいいと思うよ。」
「えっ」大人びたその言い方に一瞬“ドキッ”とした。
「わたしは、そうするよ。それで、お兄ちゃんと梨沙さんが本当に困った時は、わたしが助ける」
「なんちゃって・・・」
「なんだよ、それっ」最後は冗談めかしたが、この義妹(こ)は本気なのだ、と梨沙は思った。
「なぁ、マリアはバレンタインのチョコって作ったことある?」
暫しの沈黙の後に梨沙が言った。
「なぁーに、お兄ちゃんに手作りチョコあげるの?」マリアの口元に好奇の笑みが浮かぶ。
「まあ・・・」梨沙が視線を逸らした。
「毎年(まいとし)作ってるよ。お兄ちゃんとお母さん、それに川本さんと柏原さんに、・・・全部で10個くらい」
指を折りながらマリアが言った。
「お母さん?」顔をあげマリアを見た。
「うん、喜ぶよぉー」
「そうなんだ」
「梨沙さんはいままでどうしてたの?」
「既製品ばっかかな、作ったことないなぁ・・・」
「ふーん」
「まあ、相手もそんなにいなかったしね」
梨沙が、何かを考え込んでいる。
「なぁ・・・」
「いいよ、梨沙さん今年は一緒に作ろうよ」
梨沙が嬉しそうに頷いた。
マリアは可笑しかった。
普段はクールで大人の梨沙さんが、お兄ちゃんのことになると、とたんに年下の処女(おとめ)に変貌する。
きっと、この愛らしい落差にお兄ちゃんも、お母さんも参ったんだろうなとマリアは思った。
そして、そんなことを考えている自分が可笑しかった。
その時、「ただいま」廊下で健吾の声がした。
瞬間、梨沙の顔に艶やかな微笑が浮かぶのをマリアは見逃さなかった。
立ち上がりドアへ向かう梨沙の長い髪が“サラサラ”と音を立てるかのように後方に流れた。
再び、甘い香りがマリアの鼻孔をくすぐった。
ドアノブに手を掛け振り向いた梨沙が、「マリア」と言って、厚みのある唇の前に指を立てた。
「わかってる」
答える間もなく梨沙は部屋を出て行った。
『お帰り』
『ただいま』
『ごはんは?』
『川本先輩と食べてきた。マリア、何が分かってるって?』
『あんまり根を詰めるなって、言ったの』
『そっか、・・・ありがとう』
廊下から聞こえるやり取りを耳にして、マリアは“比翼連理“という言葉を思い出した。
『在天願作比翼鳥、在地願爲連理枝』
(天に在っては、願わくば比翼の鳥と作(な)り、地に在っては、願わくば連理の枝と爲(な)らん)
声に出して長恨歌の終節を吟じた。
「ねえ、お兄ちゃん、梨沙さん幸せオーラ満開だよ、ちゃんと見えてる?」
マリアは半ば自分自身に呟くと、夢を現実にするため机に向かった。
”エロパロ”なのにエロくない文章ばかりですみません。
なんかきてるううううううう
多分このドラマに関しては梨沙と同じで
オトメになっちゃう人多いからだいじょぶだと思うw
このやりとり目に浮かぶようだね
80 :
名無しさん@ピンキー:2011/02/10(木) 23:36:11 ID:dif8lwqq
78<ありがとうございます。・・・ということで調子に乗ります。
2012.3.15 13:15 藤沢大学病院屋上ベランダ
「ごちそうさま・・・美味しかったぁ」梨沙が入院して五日が過ぎた。
当初は起き上がることにさえ苦痛を伴った病状もようやく快方に向かいつつあった。
二人の医師が言ったように電解質の平衡化に合わせて顔に血の気がもどり食欲も出てきた。
「やっぱり、お義母さんのごはんが一番・・」
藤沢大学病院の屋上ベランダで、和子が作ってきたお弁当を食べた。
健吾の青いパーカを羽織り、久しぶりに出た戸外の解放感も食欲を刺激した。
「イチゴも食べて・・・」和子は立ち上がり、梨沙の頭を包んであったタオルを取ると、
その髪をブラシで梳し(とか)始めた。染めるのを止(や)めて三月(みつき)、漆黒の髪は背の半ばを覆う長さがあった。
二日ぶりに洗った髪の清々しさと満腹感とが相まって、梨沙は眠気を覚え大きな欠伸をした。
「ふぁりあのほぉうはくいわいは(マリアの合格祝いは)?」
「梨沙さんが退院してからでいいって。今日、健吾と入学手続きに行ってる」
「そう、悪いことしちゃった・・・」
「そんなことないわよ、その時は、貴女のお祝いもしなくちゃね」
「うん」
「ねえ梨沙さん・・・髪、切らない?」
「えっ?」唐突な和子の言葉に眠気が飛んだ。
「これからお腹が大きくなってくると・・大変でしょ?」
梨沙は思い出したようにイチゴを摘むと、口に運びながら胸にかかる髪を見た。
毛先にわずかばかり褐色が残っている。
「そうだけど・・・」この色には思い出がある。
「・・けど、何?」
梨沙は振り返ると、躊躇(ためら)いがちに言った。
「お義母さん、・・・健吾って、長い髪が好きなんじゃ・・・?」
「・・どうして?」
「前に、マリアに言ったんだ」肩に掛っていたタオルを手に取る。
「長い髪が好きって?」
「ううん・・・」小さな頭が微かに横に振られた。
「じゃぁ、なんて?」
「マリアが伸ばそうかなって言った時、今のほうがいいよって・・」
「私は長い髪が似合う(・・・・・・・)けど、マリアは今のままが似合ってるって・・・」
甘酸っぱい花の香りを含んだ微風(かぜ)が、乾きかけた梨沙の髪に触れていく。
「・・それだけ?」
「・・うん」タオルを畳みながら梨沙が頷く。
和子は、声を出して笑った。
“この娘(こ)の頷く仕草は、男の人を放っておかないのではないか・・?”
そんなことを考えながら、和子は梳し(とか)終えた真直ぐな髪を首筋あたりで一つに束ねると
黄色のリボンで結び、「はい、出来た」そう言って、梨沙の前の椅子に腰を下ろした。
「おかしいかな・・・」和子を見る梨沙の瞳は困惑の色を滲ませている。
「笑ったりして、ごめんね」
「梨沙さん、健吾の・・というより男の人の言う事をいちいち気にしてちゃだめよ」
和子は、初めての恋に戸惑う愛娘を諭しているかのような感覚を覚えた。
「あの子はね、長い髪が好きなんじゃないの、・・・貴女が良いの(・・・・・・)」
「お義母さん・・」
梨沙の頬がほんのりと朱に染まる。指先がタオルの繊維を引っ張っり出している。
81 :
名無しさん@ピンキー:2011/02/10(木) 23:37:03 ID:dif8lwqq
それを見て、和子は続けた。
「・・貴女の行方がわからなくなって半年くらいたった時だったかなぁ・・・」
「健吾が一度、前に勤めていた運送会社の女性(ひと)を家に連れてきたことがあったのね」
「すごく綺麗で、優しそうな女性(ひと)だった」
「それでね、半月ぐらいしてからどうなってるのか健吾に聞いたの・・」
「・・そうしたら別れたって、そもそも付き合ってたわけじゃないって」
「その言い方が、なんかあっさりしてるって言うか、どうでもいいっていうか・・」
梨沙は、手を止め真剣な面持ちで聞き入っている。
「その時にね、マリアが言ったの・・・」
「お兄ちゃんは、梨沙さんじゃなきゃだめなんだって・・・」
「誰も梨沙さんにはなれないんだよ、って」
「それでね・・・言われて私もそう思ったの。一緒に食事してても・・・なにか違うの」
「だからね、私もマリアも待つことに決めたの・・・」
「・・・」
和子を見つめる梨沙の瞳が潤みはじめる。
「梨沙さん・・ありがとうね」
「・・なにが?」必死で声にする。
「誰も気づいてあげられなかったあの子の心の傷を、癒してくれたのは貴女なのよ」
和子の言葉が、梨沙の脳裏に一つの記憶を呼び起こした。
あの夜、空の水槽の前で健吾が言った言葉。
『俺は、本当に大切なものがなんなのか、あの日(・・・)から、ずっと見失っていた気がする・・』
“あの日とは、お義父様が亡くなられた日?・・・その日から健吾の心のどこか大切な場所に、
後悔という澱が少しずつ沈殿していったのだろう。和解すべき相手がいないという悔恨(おいめ)。
それは、いつしか健吾に自らの幸福(しあわせ)を希める気持ちを失わせていったのかも知れない”と梨沙は思った。
マリアを捜した山梨への旅で知った、健吾の心の深い闇。
梨沙の双眸(め)から大粒の涙が頬を伝い、テーブルの上に雫となって落ちた。
和子が慌てて立ち上がる。
「どうしたの・・・」和子の声が遠くに聞こえた。
梨沙は健吾に出会ったことで、あらゆる意味で救われたと思った。
しかし、梨沙もまた健吾を救っていた・・・
そして、義母(はは)も義妹(いもうと)もそのことを解っていてくれた。
“わたしを、必要としてくれる人がいる”
幼い頃から求め続けたものがここにある。
梨沙は両手で顔を覆い、声を上げてその場に泣き崩れた。
和子は、子供のように泣きじゃくる梨沙の肩を抱くと、その頭を優しく撫でた。
屋上から見る早春の空は高く澄み渡り、昼下がりの暖かく穏やかな光が、そんな二人を包みこんでいた。
一筋の飛行機雲が青空を横切っていく。それは、真昼の『流れ星』のように見えた。
おおうなんかきてる再び
お母さんGJw
とても素敵ですねえ
ほっこりします
1話だけのスペシャルがあったならこのストーリーがいいですね
それに流星の2番目の歌詞の内容も込められてるし
84 :
名無しさん@ピンキー:2011/02/11(金) 23:53:03 ID:8XAUUmp2
65の続き
2011.12.16.17:45 日本通運横浜支店藤沢センター
藤沢市辻堂にある日本通運の大規模集積センターは、近接地への配達を終えたトラックと
関東地区全域から集まる荷物の搬入で混雑していた。
一旦、この場所に集められた荷物は仕分けされて全国へと送られてゆく。
これから、深夜にかけて混雑はさらに激しくなるのだろう。
センター全体を昼のように照らしだす照明によって、夜空に恒星(ほし)が見えなかった。
岡田健吾は一日の配達を終えて事務所に戻った。
「おつかれさまです」
二宮真絵美が伝票の束を受取ると健吾に声をかけた。
「おつかれさま」
「岡田さん・・」真絵美が躊躇いがちに名前を呼んだ。
柔らかく波打つ豊かな髪から花の香りがした。
「んっ?」真絵美を見た。瞳が何かを訴え掛けている。
「あのぉ、週末に飲み会があるんですけど、・・・一緒にいかがですか?」
健吾が返事をしようとした時、携帯電話が鳴った。
「もしもし」
「健吾か?」
「はい」
「吉村です」
健吾は真絵美に向かって手を上げると、そのまま事務所を出た。
「教授・・・おひさしぶりです」
「佐伯君に聞いた。今日、来たんだって?」
「はい」
「なんで、待ってないんだ」
その言い方が昔と少しも変わっていない事に健吾は安堵した。
「すみません、仕事の途中だったので・・・」
「そうか、・・・ところで、読ませてもらったよ」
「あれは、お前が一人で書いたのか?」声色が教授の笑顔を想像させた。
「はい、・・・どうでした?」
「良い出来だ。久しぶりに読み応えのある論文(もの)を読ませてもらった」
「ありがとうございます」
「でっ、どうしたい?」
すぐに本題に入るところも変わっていない、と健吾は思った。
「できれば、教授と連名で発表していただければ・・・」
「うん、いま、追試の準備をさせている。おかげで、浜崎君もゼミの学生も今日は徹夜だろうな。
・・・表の2と4、それに16と27に関しては今週中にも結果が出せると思う。」
さすがだ・・・その四つの関連性に気づくのに自分は一箇月かかった。
この人がいれば、ローマは一日で成ったのではないか、と健吾は思った。
「教授も泊りですか?」
「いや、俺は帰る。で、その後はどうする?」
「できれば、水族館に戻れればと・・・思っています」
「江の水か?・・・ここに就職(く)る気はないのか?」
「・・・」健吾が返事を渋っていると、
「まあ、おまえらしいと言えば、らしいな・・・」
「ともかく、全ては結果次第だ」
「わかっています」健吾の顔に真剣な表情が浮かんだ。
「結果が良ければ、俺から館長の堀さんに連絡する・・・それでいいか?」
「はい、ありがとうございます」
「健吾、俺は追試の結果を全然心配していない。お前は俺にとって最高の教え子だった。
いままでも、そして恐らくこれからもなっ」
「お前もこの一年、いろいろあって大変だったらしいな・・・」
85 :
名無しさん@ピンキー:2011/02/11(金) 23:54:57 ID:8XAUUmp2
84の続き
「ともかく、来週一度こっちに来い、俺に連がらなければ佐伯君に言っておく、いいなっ」
「そうさせて頂きます」健吾は夜空に向かって頭を下げた。
「そうだ、川本も連れてこい。じゃぁ、その時に」電話が切れた。
健吾は携帯を見つめ、恩師が気にかけていてくれてことに感謝した。
そして、意識から真絵美のことが消えていた。
また電話が鳴った。表示された番号には覚えがなかった。
「もしもし・・・」
「あたし」
「えっ?」思わず口に出た。
「梨沙っ!」
「あぁ、」
「あぁ、って・・・買ったから、携帯・・・番号、見えてる?」
梨沙独特の助詞を使わない二音節の言い回しが耳に響いた。
「おぅっ・・・いま、どこ?」真似してみた。
「まだ、東京。これからマリアと食事するから、・・・帰るの九時過ぎると思う」
「母さんは?」
「さっき、連絡した」
「あんたは、どこ?」
「会社を出たところ。これから帰るよ」
「梨沙。・・気をつけて帰っておいで」
「うん」機嫌が良い時の“うん”が聴けた。背後でマリアの笑い声が聞こえた。
86 :
名無しさん@ピンキー:2011/02/13(日) 10:15:28 ID:3wrnW4FI
coffee-brake (4話を見ていて・・・)
2011.12.2x.02:15 岡田家健吾の部屋
“ドスン”
何か重たいものが高いところから落ちた。
「いったぁーっ」
ベッドの下から声がした。
「また、落ちたの?」
這い上がってきた梨沙に健吾があきれたように声を掛けた。
「ごめん・・起しちゃった」
「そりゃ、起きるでしょ」
「・・大丈夫?」
「うん」
答えながら梨沙は健吾に背を向けて布団の中にもぐりこんだ。
「梨沙」
「んっ?」
「おいで」
「うん」
梨沙は寝返りを打つと健吾の胸に顔をつけた。
梨沙の鼻腔に健吾の匂いが広がった。
健吾は右腕を梨沙の頭の下に入れるとその肩を抱いた。
梨沙の体が健吾の胸から腹のあたりで子猫のように丸くなった。
「こうしてれば、もう落ちないね」
「うん」
「もう少し大きなベッドにしようか」
「そうだね」
「ふふっ」梨沙が含み笑いをした。
「なに?」
「なんか・・・こうしてると・・・しあわせ」
「そう、・・・おやすみ」
「うん、お・や・・す・・・」
言い終わらぬうちに、梨沙は健吾の胸のあたりで柔らかな寝息を立て始めた。
あらカワイイ
梨沙は寝相が悪いからなぁ
その時梨沙は服を着ていたのかどうかが気になるぞw
90 :
名無しさん@ピンキー:2011/02/15(火) 01:07:17 ID:xxvCwg93
71の続き
2012.3.10 21:21 藤沢大学病院内科病棟505号室
「岡田さん」
上杉紗綾が、入口から顔だけを覗かせて笑顔で呼びかけた。
健吾が歩み寄る。
紗綾は軽く会釈すると、『仲がよろしいんですね』と健吾の耳元に囁いた。
そして、ベッド脇まで来ると覗き込むような姿勢で梨沙に声をかけた。
「眼が覚めましたか?」
両腕でカルテを抱きしめている。笑顔が近い。
梨沙は、キスの痕跡を探されているような気がして顔を背けた。
「梨沙、担当の上杉先生」
「どうも・・・」短く抑揚のない挨拶が返る。
「上杉です。痛いところはありませんか?」
言いながら、上杉紗綾が背筋をのばす。身長が隣に立つ健吾とあまり変わらない。
「右腕がすこし、それに動こうとすると胸とお腹が・・・」
「そうですか、腕にはけっこう深い傷があって十針ほど縫いました。胸と腹部が痛いのは
打撲によるものだと思います。それと、少し内臓が弱ってるかな・・・」
そこまで言うと、コールボタンを押して、
「上杉です。505の岡田さんのところへ、ソセゴンとアタラックスPを15o、注射器に入れて
持ってきて」と指示を出した。
「点滴に鎮痛剤を少量入れますね」紗綾が健吾を見て言った。
「先生、鎮痛剤とか、赤ちゃんに・・・」梨沙が心配そうに聞いた。
「大丈夫ですよ。この程度なら、煙草やお酒のほうが何十倍も悪いんです」
「奥さん、あまり我慢しないでくださいね。痛みは回復を遅らせます。」
「わかりました」答えたものの梨沙の瞳には不安の影があった。
91 :
名無しさん@ピンキー:2011/02/15(火) 01:08:44 ID:xxvCwg93
2012.3.10 21:25 藤沢大学病院内科病棟ナースセンター
北村詩織が指示を受けた。
中島留美が処方を確認する。
“ソセゴンとアタラックス”消炎鎮痛剤と鎮静剤。
量も組み合わせも極一般的。副作用の危険度(リスク)も小さい。
「いいわ、持ってって、合わせて15oよ」
「はい」詩織が薬品保管庫へ入っていった。
その背中を追いながら、思いすごしかな?、と留美は考えた。
病状説明の時の上杉紗綾の態度に少々引っ掛かるものを感じていた。
とかく噂のある女性(ひと)だから・・・
確かに、あのルックスで言い寄られて、拒める男性は少ないだろう。
その上、自分が相手にどう見えるかを知っているから始末に負えない。
まあ、駄メンズ好きの私から見ても、健吾さんは素敵だけどね。
でも紗綾ちゃん、あの二人はだめよ。
「それだけは、私が許さない。」
留美は一人きりのナースセンターで呟くと、業務日誌に眼を落した。
92 :
名無しさん@ピンキー:2011/02/15(火) 01:11:45 ID:xxvCwg93
2012.3.10 21:30 藤沢大学病院内科病棟505号室
「上杉先生」
北村詩織がトレイに乗せた注射器を差し出しベッドを盗み見た。
梨沙は窓の外を見ている。
傍に立つ健吾の右手が梨沙の左手を握り、親指が手の甲の上で円を描いていた。
その光景を見て、綺麗だけど、“凄く”という形容詞は似合わないなと詩織は思った。
顔を構成する一つ一つのアイテムはごく普通の作りなのに、
それが、絶妙な大きさの中にバランス良く配置されて、見る者に魅力的な印象を与えている。
言ってみれば、上杉先生とは真逆のタイプ。
色が白く実年齢より若く見えるのも、岡田さんのように穏やかな年上の男性に
好かれる理由かな、と詩織は考えた。
「ありがとう、もういいわ」
紗綾が注射器を受取り詩織に言った。
トレイをベッド脇のテーブルに置くと、詩織は小走りに出て行った。
針からキャップを外す。溶液の量を見て一瞬“おやっ?”と思った。
しかし、すぐに気を取り直して点滴の所まで来ると、
サブラインを使わずラクテックのパックに直接刺して薬剤を注入した。
“なるほど、留美さんが居るのね”
針だけを残し注射器を回収する。そして、点滴の速度を調整(おと)した。
「これで治まらないようなら呼んでください。今日は当直ですから院内にいます」
「はい」健吾が答えた。
「腕のほうは明日の朝、もう一人の担当の深沢が診(み)にくると思います」
「骨折はありませんので、数日で痛みも無くなると思います」
「奥さん、安静にしていてくださいね」紗綾が梨沙に向かって言った。
「はい」返事をした梨沙の顔が、なぜか朱くなった。
「では、お大事に」
病室の入り口に向かう紗綾の瞳が健吾に廊下に出るよう告げていた。
「梨沙、ちょっと・・・」そう言って健吾は廊下を指差した。
「うん」
出て行く二人の後ろ姿を梨沙の眼が追った。
「奥さまの検査結果をみますと、体脂肪率や血中酸素飽和度などから考えてあきらかに痩せすぎです。
過度なダイエットは控えるように、御主人から言われたほうがよろしいと思います」
「いえ、妻はダイエットをしていた訳ではないと思います」
「と言いますと?」
「なにか、特別な御事情でも?」紗綾が覗き込むような風情で健吾を見て言った。
「・・・」
この医師(せんせい)は本当に何も知らないのだろうかと健吾は訝った。
谷中先生や留美さんは、話してはいないのだろうか?
だとしたら、どこまで話せばいいのだろうか、と健吾は思った。
「わかりました。では、これを・・・」
黙っている健吾を見て、紗綾は名刺を取り出すと裏側に自宅と携帯の番号を記して差し出した。
「なにかありましたら、何時でもかまいませんので連絡してください」
「あっ、それから、差し支えなければ岡田さんの携帯番号を・・・」
「はい、090‐1xxx‐6xxx」
紗綾が左手の甲に番号を書いた。
93 :
名無しさん@ピンキー:2011/02/15(火) 01:13:15 ID:xxvCwg93
2012.3.10 21:42 藤沢大学病院内科病棟廊下
「困った顔もすてきよ、岡田さん。いえ、健吾・・・さん」
上杉紗綾は医局に戻る廊下で、ひとり呟いた。
“知ってるにきまってるじゃない。二人のいきさつも、貴男が奥さんを、
梨沙さんを本気で愛しているわけじゃないことも、全部知ってますよ・・・
「Nature」に掲載(の)った貴男の論文は読ませてもらいました。
専門外なので内容は理解(わか)らなかったけれど、貴男にはもっと相応しい
地位も名誉もある女性が必要なことは良く判りました。・・・例えば私のような“
「ふふっ」
左手の甲に書かれた携帯電話の番号を見て、上杉紗綾は含み笑いをもらした。
94 :
名無しさん@ピンキー:2011/02/15(火) 01:14:55 ID:xxvCwg93
2012.3.10 21:43 藤沢大学病院内科病棟505号室
「なんか、色気ムンムンの先生だね」
病室に戻った健吾に梨沙が呟いた。
「そうかな」
健吾の態度も返事も、あっさりしたものだった。
“そうだった”・・・健吾を見つめながら梨沙は思った。
この男(ひと)は、私の愛した男(ひと)は、とても不器用な人。
一つの事が心を占めると、それ以外の事に関心が無くなってしまう。
いまは、・・・梨沙はそれが自分の事であることを祈った。
「梨沙」健吾の眼が燃えていた。
「んっ」
答える間もなく、唇を塞がれていた。
梨沙は眼を閉じると、自由になる左腕を健吾の首に廻した。
健吾と梨沙という同じ名前の人が出てくるだけの別物だな
とにかくもう梨沙を悲しませる展開にしないでくれ
96 :
名無しさん@ピンキー:2011/02/18(金) 21:38:05 ID:o6JSNsbH
cofee-brakeU
2014.07.1x.19:10 沖縄県慶良間諸島渡嘉敷島
渡嘉志久(とかしく)の海には色がないと、梨沙は思った。
これまで、海の色といえば青とオレンジくらいしか思い浮かばなかった。
あっ、それと、家から見える夜の相模湾の黒。
しかし、この海はありとあらゆる色に変化した。
高く澄み渡った空の碧(あお)、その空に浮かんだ雲が映す乳白(しろ)。
茂る木々の翠(みどり)、島影が織りなす濃淡のある墨(くろ)。
何色にでも染まるのに、本質は決して変わることがない透明性。
それが、渡嘉敷島の海なのだと、思った。
「お腹、冷えてない?」
左上から声がして、梨沙の夢想は破られた。
「うん、大丈夫」見上げながら答えた。
健吾の右手が梨沙の左手を優しく包んだ。
「冷たいよ」
梨沙は、手を開くと指を絡めるようにして強く握りなおした。
「平気、こうすれば、すぐに温(あった)かくなる・・・」
ダイビングスーツに身を包んだ二人は浜辺をコテージに向かい歩いていた。
健吾が左腕のダイバーウォッチを見た。
「少し長く潜り過ぎかな」
「心配し過ぎ、三人目だよ、もう安定期に入ったし」
「それに、やっと見れたじゃん」笑顔を向けた。
「そうだね、・・・ようやく約束を果たせた」
「んっ?」
「まえに梨沙が言ってた新婚旅行・・・」
「うん」嬉しかった。
四年前、半ば冗談で言った約束を健吾は忘れないでいてくれた。
「なにを願ったの?」
「ひみつ・・・」
乾いた海風が南国特有の甘い香りを運んできた。
梨沙は、『消えない流れ星』に願ったことを思い出した。
“お腹の子が男の子でありますように・・・”
上の二人は女の子だった。佳奈と早李、健吾と私の二つの宝石。
でも、家の中に自分以外の男性が居ないのでは健吾が少し可哀想な気がした。
「なんかさぁ、あたしって結婚してからお腹に子供がいない時間のが短い気がする」
「そうかな」健吾が嬉しそうに微笑んでいる。
「おかげで、お酒に弱くなったし・・・」
コテージが近付いた。海に向かって建つ家のウッドデッキで、
義母(はは)が早李を膝に抱き、籐椅子に腰かけていた。
和子の傍らで佳奈が手を振っている。
二人は顔を見合わせ、あいている方の手を振り返した。
「パパ、ママ、見てぇー、オレンジ色の海だよ・・・」
佳奈の言葉に振り向いた二人の眼に夕日に染まり始めた東シナ海が映(み)えた。
その色は、オレンジというよりは、むしろ紅色(あか)に近いと、梨沙は想った。
> オレンジ色の海だよ・・・
いいですねぇぇぇぇ
梨沙が5人ぐらい子供うむって発言は生かされるのかw
94の続きまだぁ〜?
ラブラブ展開希望。
職人降臨待ち
101 :
名無しさん@ピンキー:2011/03/01(火) 11:22:44.14 ID:LhzkPIZ0
85の続き
2011.12.16.17:55 東京上野広小路交差点
『気をつけて帰っておいで』
健吾の低く柔らかな声が梨沙の耳に心地よく響いた。
その言い方が健吾らしいと思った。
「うん」少し含羞んだように頷いた。
「お兄ちゃん、何だって?」
マリアが携帯を閉じた梨沙に聞いた。
「気をつけて帰って来いって」
中折れ式の白い携帯電話にぶら下がったピンクのクラゲが笑っていた。
「心配性だなぁ」
「あぁ・・・でっ、なに食べる?」
「うーん、何がいいかなぁ」
「肉でも中華でも、何でもいいよ、まだ二万五千八百円も残ってる」
「じゃあ、回転寿司!」
梨沙とマリアは腕を組んで中央通りを上野駅に向かって歩いて行った。
大都市の夜空には星がなかった。
102 :
名無しさん@ピンキー:2011/03/01(火) 11:25:18.49 ID:LhzkPIZ0
2011.12.16.18:05 日本通運横浜支店藤沢センター
「ねぇ真絵美、あんた岡田さんとどうなってるの?」
自転車に乗る岡田健吾の後姿を見送りながら、福永美緒が二宮真絵美に声をかけた。
「どうって?」
聞き返す真絵美の眼は心なしか潤んでいるように見えた。
「付き合ってるんでしょ?」
「付き合ってるわけじゃないよ」
「だって、家まで行ったんでしょ?、夕飯を一緒に食べたんでしょ?」
「そうだけど・・・」
「なにっ?」歯切れの悪い答えに少し苛つく。
どうしてこの娘はもっと自分に自信を持たないんだろう?
あんたは去年のミス湘南なんだよ。この10年間で一番だって言われたんだよ。
その気になれば、男なんか幾らでも捕まえられるのに・・・そう言ってやりたいと美緒は思った。
二人は同期ではなかったが、年が近いこともあって仲が良かった。
性格が正反対なことも二人にとってプラスに働いていた。
大人しい真絵美が岡田さんに好意を持っていることを知って、
『罠』と言ってもいい計略を巡らし二人を接近させたのも美緒だった。
真絵美が岡田さんの家で夕食を御馳走になったと聞いた時は、思わずガッツポーズが出た。
しかしそれきりだった。岡田さんの態度は同僚に接する以上にも以下にも変化しなかった。
故意に噂を流したこともあった。けれど、会社を休んだのは真絵美の方だった。
“年は離れてるけど、こういう娘には、岡田さんみたいな温和な人が合うと思うんだけどなぁ”
美緒は、あらためてそう思った。
103 :
名無しさん@ピンキー:2011/03/01(火) 11:29:31.75 ID:LhzkPIZ0
102の続き
「妹さんの眼が笑わないんだ・・・」
突然、真絵美が小さな声で言った。
「妹って、なにそれっ、なんか言われたの?」
「ううん、明るくてとっても感じの良い子。
映画の事とか好きな物の事とか、いっぱい話したよ、
頭、良いんだ、それに顔がすっごく可愛いの。
一瞬、こんな妹がいたらいいのにって本気で想ったよ。
でも、眼が笑ってくれないの・・・」
「どういうこと?」
「私の話を真剣に聞いて、冗談を言って顔は笑うんだけど、瞳が冷静なの・・・
本当は、聞いてないし、笑ってもいない感じ」
「ははぁ、その子ってブラコンなんだ」美緒が断定的に言った。
「えっ?」
「ほら、岡田さん家ってお父さんが亡くなられてるじゃない、
小さい時からそばにいる異性が兄貴だけだったりすると・・・
よく聞くじゃないその手の話しって、あんたにお兄ちゃんを盗られると思ったんだよ」
「ううん、そういうんじゃないと思う」
「だったら、なに?」
「うーん、なんて言ったらいいんだろう・・・
そう、私の肩越しに誰かをみてる、そんな感じ?」
「やだっ、心霊(こっち)系?」
美緒が両手を胸の前でダラリと下げた。
「そうじゃないよ、ブラコン(そっち)でも心霊(こっち)でもないよ。
でも、誰かと比べられてた気はする。」
「そんなぁ・・・」
「その椅子に座る女性(の)はあんたじゃないよって、そう言ってる眼だった。」
「てっ、なに、岡田さんには彼女が居るってこと」
「うん・・・『居た』なのかもしれないけど・・・」
「あんたってそういうとこ、鋭いもんねぇ・・・」
“だから、彼氏が出来ないのよ。こんなに美人なのに・・・”
美緒は真絵美の整った横顔をじっと見た。
“あの妹(こ)が心の底からの笑顔を向ける相手って・・・どんな女性(ひと)なんだろう?”
二宮真絵美は健吾の背中を追うように、夜の闇の一点を見つめていた。
104 :
名無しさん@ピンキー:2011/03/01(火) 11:33:20.17 ID:LhzkPIZ0
2011.12.31.16:00 岡田家 台所
大晦日の夕方、岡田家の台所では和子が年越しの準備をしていた。
車のドアが閉まる音と同時に梨沙とマリアの笑い声が聞こえた。
どうせまた、マリアが健吾の昔話を面白可笑しく脚色して、
梨沙さんを笑わせているのだろうと和子は思った。
「ただいまー」
玄関が勢いよく開き二人の声がした。
「おかえり」
両手にエコバックを下げた二人の娘に和子が顔を向けた。
「混んだでしょう?」
「すごかった、134号は1号との合流まで滞(つな)がってるって」
「そう」
首肯したものの、和子には道路のことは良く分からなかった。
「レジで10分も待たされちゃったよね」マリアが梨沙を見て言った。
「どっちに行ったの?」
「結局、さいか屋まで行った」
テーブルの上に買ってきたものを並べながら梨沙が答えた。
「お餅はあった?」
「あった」生餅の入ったパックを和子に見せる。
「でも、あんまり高いんでびっくり」
「まあ季節ものだからね」
「あれっ・・・まだ?」
コートを脱ぎながら、梨沙の眼が健吾を探して部屋を見廻した。
「さっき電話があって、6時過ぎるって、携帯にかけたみたいよ」
梨沙が携帯電話を開いた。
「なあに、お兄ちゃん今日も仕事なの?」
健吾からの不在着信が二件あった。
スーパーの雑踏のなかで気付かなかった。
「あたしの事で何日も休ませちゃったから・・・」
携帯を閉じた梨沙がすまなそうに言った。
「さあ、二人とも手伝って」
和子が台所から梨沙とマリアを呼んだ。
105 :
名無しさん@ピンキー:2011/03/01(火) 11:38:43.70 ID:LhzkPIZ0
2011.12.31.17:45 岡田家 台所
「お義母さん、これ全部入れていいの?」
梨沙が皿に盛られた黒砂糖を見て尋ねた。
「そうよ、入れたら落とし蓋をして弱火にしてね」
「はい」
「あっ、これも入れて」
和子が綿布に包まれた棒のようなものを手渡した。
「なに、これ?」
「釘」
「くぎ?」梨沙が聞き返す。
「そう、錆びた五寸釘」
「五寸釘(こんなもの)、いれるの?」梨沙が驚いた顔で和子を見た。
「艶が出るのよ。それに女性に不足がちな鉄分も・・・」
「へーえ」梨沙は感心したように呟き、鍋に釘の束をそっと沈めた。
「ねえ梨沙さん、梨沙ん家のお雑煮ってどんなの?」
「どんなって?」
「だから、お餅は丸いとか、白味噌仕立てとか・・地域で色々あるでしょ」
「どんなんだったんだろう、憶えがないなぁ」
一瞬遠くを見つめた梨沙が、記憶の糸を探るように言った。
和子が“しまった”という表情で梨沙を見た。
隣で灰汁(あく)をすくっている梨沙の横顔にはなんの変化もなかった。
「お正月らしいことなんか何(なん)もしなかったから・・・」
梨沙がひとり言のようにつぶやいた。
「そうなの。岡田家(うち)はね、下町風なのよ。あっ、さっきのお鍋に差し水して」
「はい、・・・下町風って?」
梨沙は既に用意してあったコップの水を鍋の中に静かに廻し入れた。
それを見て和子は、“やはりこの娘には料理のセンスがある”そう思った。
「鰹節でとった出汁(だし)にお醤油とお酒とみりん、
焼いた角餅、鶏のもも肉と小松菜に紅白の蒲鉾、その上に三つ葉とゆずを散らすの」
「ふーん、旨そう」
食材からおおよその味が想像できた。それは梨沙の好みにぴったりだった。
「お餅、好き?」
「うん」
「健吾もマリアも大好き、二人とも食べすぎるから気をつけてね」
「わかった」
「元旦(あす)の朝、作ってみる?」
「なにを?」
「お雑煮」
「いいの?」確認するように和子の方を見た。
「いいわよ、貴女はもう岡田家の若奥様なんだから、すこしづつ憶えてね」
「うん」梨沙が大きく頷いた。
94の続きは次週くらいから・・・
103 の続き気になるわぁ
一騒動ありそうw
健吾に華麗にスルーしてもらいたい・・・
107 :
名無しさん@ピンキー:2011/03/05(土) 23:59:02.10 ID:lyRvvc5f
106<81を見てください。
2011.12.31.19:40 岡田家 居間
「では、母さん」
健吾の言葉に、和子が背筋を伸ばしてその場に座りなおした。
健吾とマリアが炬燵を出て正座した。
梨沙は最後の料理を並べると、健吾のすぐ横に座った。
「今年も色々あったけど、こうして、無事に年の瀬を迎えられました。
健吾、梨沙さん、あらためて結婚おめでとう。
マリア、来年は受験ね、頑張ってね」
家長である和子が、一年をそう締めくくると、
「母さんも健康で・・・乾杯!」
健吾がグラスを上げた。
「かんぱーい!」
三人の女性が唱和し、それぞれのグラスを合わせた。
「梨沙」
健吾が隣からビール瓶を向けていた。
梨沙がグラスを差し出した。
「あんたにお酒を勧められるなんて、初めてだね」
健吾の顔に苦笑気味の笑顔があった。
ビール瓶を受取り健吾のグラスにも注ぐ。
「はい、お義母さんも・・・」
「おいしい」
注がれたビールを一気に飲み干し和子が言った。
「お義母さんも呑めるんだ」
「健吾より強いかもよ」
和子が息子夫婦を見て笑った。
「このカニ玉、めちゃめちゃ美味しい!」
「それ、梨沙さんが作ったの」
和子が我がことのように喜んだ。
「こんなの誰でも作れるって」
梨沙が含羞み、和子が作った鳥の竜田揚げを箸でつまんだ。
「そうなの、じゃあこんど教えて」
梨沙を見るマリアの瞳が期待を膨らませていた。
「うん、いいよ」
梨沙は一瞬、視線を健吾に向けると柔和な笑みを浮かべた。
健吾はささやかながら満ち足りた幸せを感じた。
母、妻、妹、大晦日の夜に自分にとってかけがえのない三人に笑顔がある。
今年は良い年として記憶されるだろう。
誰も見ていないテレビで、紅白歌合戦が始まっていた。
浜崎あゆみの高い声が、ゆったりとした曲を奏でている。
その曲名を健吾は知らなかった。
108 :
名無しさん@ピンキー:2011/03/06(日) 00:04:42.02 ID:lyRvvc5f
皆さんに質問です。
105で梨沙と和子が作っていた料理はなんだと思いますか?
107で最後に梨沙が並べた料理はなんだと想像しますか?
105は 黒豆
107は カニ玉?
105→黒豆or昆布巻き
107→カニ玉
オレも同じ
105→正月の準備しかも釘を入れるので"黒豆"(姉貴に聞いたんだけど^^)
107→流れから"カニ玉"しか思いつかない
質問しっぱなしですか
113 :
名無しさん@ピンキー:2011/03/20(日) 21:32:54.41 ID:SP7000J+
114 :
名無しさん@ピンキー:2011/03/21(月) 14:27:28.10 ID:b84ECue6
先日の地震でPCが破損しました。
暫らくの猶予を・・・
105→黒豆
107→かぼちゃの煮物
を想像して書きました。
りょうかい!
了解
>>114 「このカニ玉、めちゃめちゃ美味しい!」ってあるから
普通に考えてカニ玉だと思っちゃうけど
続編気長に待ちますよ
お待ちしてます(。・_・。)ノ
続き気になるー
楽しみにまってます
DVDまであと10日ー
121 :
名無しさん@ピンキー:2011/04/12(火) 08:09:17.32 ID:0kILNFeO
ご無沙汰しています。
PC、修理不能でデータの復旧もできませんでした。
書き溜めてあった文章もすべて無くしました。
これも、目を盗んで会社で書いてます。
OsがWinでもMacでもないので使い方が良くわかりません。
ということで、軽めのものから書いてみました。
122 :
名無しさん@ピンキー:2011/04/12(火) 12:36:02.61 ID:0kILNFeO
cofee-brakeV
2011.10.7.19:40 岡田家和子の部屋
「お母さん、これとこれしかないよ?」
マリアが部屋に入るなり和子に言った。
「うわー、なに?」
部屋に拡げられた純白のドレスを見て、驚きの声を上げた。
「どお?」
和子が立ち上がり、ドレスを体に当てポーズを取りながら言った。
「素敵・・・でも、どうしたの」
「私がお父さんと結婚したときに着たものよ」
ビーズとレースをトップにあしらった肩ひものないウエディングドレスは、
ウエストのタックがふんわりと膨らみ、ボックスプリーツのスカートが優雅なラインを作っていた。
「へえー」
お母さんが着たドレスなら、相当昔の物のはずなのに少しも古めかしく見えなかった。
『流行は循環し、普遍的な美は時の浸食に揺らぐことがない』
美術の先生の言葉を実感するとともに、若い頃の母はスタイルが良かったのだと思った。
「直しておこうと思って・・・」
「梨沙さんに?」
「そう」
「そっか、でも帰ってきてくれるかなぁ・・・」
マリアが寂しそうにに呟いた。
「ほら、採寸するから」
梨沙が残していった二着のワンピースをテーブルの上に広げた。
微かに残った梨沙の香りがした。
「ねえ、お母さん」
「なぁに?」
「私、最近想うんだ」
「梨沙さんがドナーになってくれたのって、お金の為でも、お兄ちゃんの為でもないんじゃないかって・・・」
「そうね」
「どうしてるんだろう・・・」
「携帯も接続(つな)がらないし」
「大丈夫」
「健吾が梨沙さんじゃなきゃだめなように、きっと梨沙さんも健吾でないとだめなのよ」
「あの二人は出会った瞬間(とき)から、そう決まっているの」
和子の言葉は、不思議な自信に満ちていた。
マリアは、改めてウエディングドレスを見た。
このドレスを着た梨沙さんが、正装したお兄ちゃんの隣に立つ時・・・
マリアは、その日が近いことを強く願った。
お待ちしてました
素敵なシーンですね♥
124 :
名無しさん@ピンキー:2011/04/12(火) 12:48:38.57 ID:0kILNFeO
cofee-brakeW
挫けた心を再起動するために、
皆さんのイメージを教えてください。
俳優さん、女優さんならば誰を想像しますか?
()内の年齢は参考です。(堀館長を除く)
上杉紗綾(31)
藤沢大学付属病院産婦人科医師、梨沙の主治医、思い込みが激しく惚れっぽい
深沢 茂(36)
藤沢大学付属病院循環器内科医師、梨沙の主治医、12.03.11朝、登場予定だった
吉村林太郎(67)
東京海洋大学海洋科学科海洋生物学部教授、健吾と川本の恩師
上村夏実(30)
東京海洋大学海洋科学科海洋生物学部講師、健吾の論文の追試で徹夜した
佐伯ひかり(26)
東京海洋大学職員、吉村教授の秘書
二宮真絵美(25)
日本通運藤沢センター職員、2009年ミス湘南
福永美緒(26)
日本通運藤沢センター職員、真絵美の親友でおせっかいやき
北村詩織(27)
藤沢大学付属病院内科病棟看護師、噂話が大好き
大貫柚月(26)
藤沢大学付属病院内科病棟看護師、詩織の同僚
堀由紀子(71)
新江の島水族館館長(実在人物)、傾きかけた水族館を建直した傑物
書き出してみて、気付いたのですが、
新しい登場人物が少ない事と、女性が多いことに驚いています。
>>124 >
> 上杉紗綾(31)→黒谷友香
> 深沢 茂(36)→要潤
> 吉村林太郎(67)→山本圭
> 上村夏実(30) → 片瀬奈々
> 佐伯ひかり(26)→貫地谷しほり
> 二宮真絵美(25)→綾瀬はるか
> 福永美緒(26)→石原さとみ
> 北村詩織(27)→加藤ローサ
> 大貫柚月(26)→満島ひかり
> 堀由紀子(71)→白川由美、加賀まり子あたり
>
>こんな感じはどうですか?雰囲気で考えてみましたー
上杉紗綾のみですが小西真奈美のイメージかな
127 :
名無しさん@ピンキー:2011/04/19(火) 10:58:38.09 ID:X7bGqhaY
ありがとうございます。
黒谷友香さんは、映画”shinobi”の時の妖艶な感じが紗綾のイメージに合うと思います。
小西真奈美さんもWOWOW版”マークスの山”の記者役が良かったですね。
綾瀬はるかさんは、整った容姿と少し天然で、おっとりした感じがピッタリ。
片瀬奈々さんは、文句を言いながらも与えられた仕事をきっちりこなしそう。
それ以外も、素敵な人選だと思います。
因みに、私は
紗彩と真絵美は、それぞれ吉瀬美智子さん、満島ひかりさんのイメージで書いていました。
吉瀬さんは、その美貌と身長で・・・年齢が少し上ですが・・・
満島さんは、いま、面倒くさい女をやらせたら最高に上手い人だと思います。
二人以外は、モデルは特になかったので、参考にさせていただきます。
128 :
名無しさん@ピンキー:2011/04/21(木) 06:29:39.26 ID:r3GULULf
2011.12.20.16:55 国道134号線鎌倉海浜公園前
平日の国道134号線は、夕方の混雑が始まる前の静けさの中にあった。
黄橙色が水平線を縁取り、夜の帳が富士山の柔らかな稜線を覆いはじめていた。
月の居ない空で、宵の明星と木星とがその輝きを競っている。
もう少し夜が深くなれば、二つの惑星(ほし)の間に天王星と海王星が連れ人のような姿を見せるだろう。
健吾はシエンタの前照灯を点けた。
淡い光の束が、夕闇の国道を上下に切り分けた。
「はい」
助手席の梨沙が、駅前のスターバックスで買ったコーヒーをカップホルダーに挿した。
「市役所の人、驚いてたね」
カフェミストを両手で包み健吾を見た。
「そうだね」
「やっぱ、憶えてたのかな」
「同じ人だった」
健吾が思いだしたように笑った。
二人の名前と顔とを何度も見直していた係員は、
それでも最後は“お幸せに”と婚姻届を受取ってくれた。
“?”付きの笑顔と、擦れた声で・・・
129 :
名無しさん@ピンキー:2011/04/21(木) 06:31:14.81 ID:r3GULULf
車は七里ケ浜高校の前を過ぎ、行合橋を渡った。
「あれ、どこいくの?」
梨沙が、後方に流れてゆく信号機を眼で追いながら言った。
家に戻るには、いまの三差路を川に沿って北に昇らねばならない。
「水族館」
「もう閉館時間だよ」
「わかってる」
左前方に見える江の島展望台に灯りが点った。
「なんかあんの?」
「到着(つい)てから・・・」
一瞬、梨沙の方を向いた健吾の口元には微かな笑みがあった。
「うん」
”健吾(このひと)が私にする事は全て、優しさに裏付けられた意味がある”
離れていた一年の時間が、そのことを梨沙に教えてくれた。
”安心して隣を歩いていけばいい”
カフェミストを一口飲んだ。
ふわふわのミルクが口いっぱいに拡がった。
”今度こそ、幸せになれる”
確信に近い予感がある。
梨沙は、ハンドルを握る健吾の横顔を見つめると小さく頷いた。
130 :
名無しさん@ピンキー:2011/04/21(木) 06:33:17.40 ID:r3GULULf
2011.12.20.17:25 新江の島水族館
職員用のドアは鍵が掛っていなかった。
”ここから入るのは、三度目”と梨沙は思い出した。
コンクリートの通路の両側には、たくさんの水槽が並び、色とりどりの魚が飼育されていた。
その大半は見たこともない魚だった。
水を循環させるポンプや発電機の低く唸る音でバックヤードは騒がしかった。
見なれた水槽があった。
しかし、その大きさとクラゲの数に圧倒された。
「梨沙」
水槽の前で立ち止まっていると、健吾に呼ばれた。
通路の先で健吾が振り返り、手を差し伸べていた。小走りに後を追う。
手を掴んだ健吾の顔には、いつもと変わらぬ穏やかな表情があった。
「行くよ」
展示場に通じる鉄の扉が開いた。
131 :
名無しさん@ピンキー:2011/04/21(木) 06:34:48.24 ID:r3GULULf
展示室は水槽の明かりも消えて暗かった。
室内にはピアノが奏でるゆったりした曲が流れている。
天井のミズクラゲの形をした照明だけが青く点り、
グラスタワーを柔らかな光で浮き上がらせていた。
ワイングラスの中でクラゲが窮屈そうに揺れていた。
「きれい・・・」
タワーの発する幻想的な光と影に梨沙の眼が吸い寄せられた。
「ねえ」
「んっ?」
「クラゲ(このこ)たちって、展示が終わるまでずっとこのままなの?」
「そんなんことないよ」
健吾が背後から梨沙の肩を抱いた。
「毎日、選手交代する」
「よかった」
梨沙が健吾の顔を見上げた時、光と音が爆発した。
全ての水槽が光を発し、クラッカーの破裂する音が室内を満たした。
梨沙は驚き、あたりを見廻した。
「おめでとう!」
部屋のいたるところで祝福の声が聞こえた。
ありがとうございます。
読んでいて胸がいっぱいになりました
涙うるうるです
又つづき書いてくださいね
職人待ち
んーーー
待ち遠しい
135 :
名無しさん@ピンキー:2011/05/02(月) 22:50:41.46 ID:/HzORrVh
4月29日のロイヤルウエディング、素敵でしたね。という事で131の続きを・・・
2011.12.20.19:05 新江の島水族館クラゲ展示室
職員の手で展示室は教会に姿を変えた。
ミズクラゲの水槽の前に小さな祭壇が設けられ、
十字架を背に立つ堀由紀子が周囲(あたり)を睥睨し、厳かな雰囲気を作っている。
再び照明が弱められた室内には、
わずかに差し込む白色光が海水に反射して、
四方の壁にゆらゆらとした陰影を映していた。
「はーい、お出ましですよー」
厚手のカーテンで仕切られた一画からマリアが良く通る声を発した。
祭壇に続く絨毯の両側に並ぶ全員の眼が、一斉に声の方を向いた。
川本千鶴と佐伯ひかりがカーテンを左右に引く、
淡い光の中に梨沙が佇んでいた。
136 :
名無しさん@ピンキー:2011/05/02(月) 22:52:56.94 ID:/HzORrVh
ビーズとレースをあしらった肩ひものないウエディングドレスは、
ウエストがキュッと締り、裾の長いプリーツのスカートが膨らんで
痩身の梨沙を少しだけグラマラスに見せた。
オレンジ色の薔薇のブーケが純白のドレスによく映えた。
花弁の上で小さな雫が微かな光を放つ。
隣で和子が頭を下げた。
燕尾服姿の吉村林太郎が梨沙の手を取ると、赤い絨毯の上をゆっくりと歩き始めた。
マリアと瑞希が一歩後ろに付き従う。
梨沙はわずかに顔を上げると祭壇で待つ健吾を見た。
初めて見るタキシード姿の健吾は、ベールを通してさえ眩しく思えた。
青く輝く水槽のなかで、ムーンジェリーが柔らかなダンスを踊っていた。
続き待つ
もう職人さん来てくんないかな?
一応保守
ネタ切れ?