【朝ドラ】ゲゲゲの女房でエロパロ3【昭和のかほり】

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1名無しさん@ピンキー
村井夫妻でちょっこし妄想(もちろん村井夫妻以外もおk)

前スレ
【朝ドラ】ゲゲゲの女房でエロパロ2【昭和のかほり】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1280985565/

保管庫
ttp://www.h01.i-friends.st/?in=llgegegell
2名無しさん@ピンキー:2010/11/18(木) 07:36:40 ID:fBnqXxoZ
前スレ500KB行きましたので立てました。

そして前スレのいちせん職人さん、グーーーーッジョブ!!
3名無しさん@ピンキー:2010/11/18(木) 14:44:19 ID:Fm8UCq8I
前スレのラストのSSの職人さん、GJでした
レス出来なかったので驚いたわ
4名無しさん@ピンキー:2010/11/18(木) 18:30:39 ID:Dy5uGuHE
前スレラストのいちせん、最高!
自分の大好きな妊娠お腹ナデナデが!
やっぱ職人さんすごいなー
5名無しさん@ピンキー:2010/11/18(木) 18:55:23 ID:AV268bz1
>>1乙!&だんだん!
3スレ目キタねーー!!
まだまだゲゲゲで萌え死にたいよ!!

前スレ>733
いちせん、キタコレ!
このままドラマやってくれないかな〜
いや、濡れ場は無理としても、4代目できたよ、のあたりで向井&松下を想像すると絶対悶え死ぬ。
エロも気遣いたっぷりの、しっぽりしててイイ!
6かそけき男1:2010/11/19(金) 15:46:13 ID:7uy0QcX+
 昭和四十二年。次女の喜子が生まれ、安来の実家からフミエの妹のいずみが
手伝いに来て、人の出入りの多い村井家は、ますますにぎやかになった。
 そんなある日。村井家に、以前二階の部屋を間借りしていた中森が訪れた。

「この家も、ずいぶん様変わりしましたねえ。もう、以前の間取りがわからない
 ですよ。」
「私ら家族でも、迷子になることがあるんですよ。」
「先生のご活躍は、よそながら喜んでおりました。『悪魔くん』の放映の時は、
 家族全員で見せてもらいましたよ。」
「今、お仕事は何をされとるんですか?」
「家内とふたり、室内装飾の仕事で独立しましてね、マンガをやっとったことが
 少しはデザインの役に立って、なんとか食べていっとりますわ。」
懐かしい人の訪問に、仕事漬けの毎日を送る茂はうれしそうに談笑していたが、
すぐにアシスタントの倉田に呼ばれ、名残惜しそうに仕事場へと去った。
「お忙しいんですねえ。・・・貸本マンガが駄目になってきて、われわれマンガ家が
 食うや食わずだったときも、水木さんは何かが違う、いずれきっと、日の当たる
 日が来る、そんな気がしとりましたよ。」
「・・・あの頃は、大変でしたねえ。中森さんが片道の電車賃だけ持って出版社へ
 原稿届けに行って、原稿料もらえなくて、水道橋から調布まで歩いて帰って
 来られたことがありましたっけ。」
「あの時、奥さんにごちそうになった砂糖たっぷりのコーヒー、あれで生き返り
 ましたよ。お茶漬けまでいただいて・・・。あれがなかったら、飢え死にしとった
 かもしれません。」
 そばで聞いていたいずみは、ふたりがさもなつかしそうに、壮絶な
貧乏話に花を咲かせるのを聞いて、目をまるくして驚いた。
「そうやって話しとると、中森さんとお姉ちゃんって、まるで戦友みたいだね。」
「いやいや、私なんて。傍観者にすぎませんよ。本当の戦友は、先生と奥さんです。
 昔は奥さんも、先生の仕事を手伝っておられて、よく夜中にカリカリカリカリ、
 ペンの音がしとったもんです。夫婦で、戦っておられた。いいもんだなあと
 思って見とったんですよ。」                    
7かそけき男2:2010/11/19(金) 15:47:01 ID:7uy0QcX+
 フミエは、アシスタントをしているところを、中森に見られていたとは意外だったが、
茂が売れっ子になって専門のアシスタントもつき、自分が茂の仕事に役に立てることが
ほとんどなくなったさびしさを感じている今、あの苦しかった時代のことを中森と
話し合えたことがうれしかった。                        
「あの苦しい時代を先生が乗り越えられたのは、奥さんのおかげですよ・・・。」
 現在のフミエのさびしい心境を知ってか知らずか、フミエにとってはとても
嬉しい言葉を残し、中森は相変わらずの透明感で去っていった。

 志なかばで去っていったあの日と同じように、曲がり角へ消えていく中森を
見送りながら、フミエは中森がこの家にいたころを思い出していた。
 思えば中森は、茂とフミエの結婚生活のほとんど最初から、この家の同居人だった。
結婚どころか出会ってからでさえそれほど経たぬ茂との、不安だらけの新婚生活に、
さらに得体の知れぬ男の存在は、フミエは当惑させるばかりだった。
 しかし、それから1年半ちかくを同じ屋根の下で過ごすうち、衰退していく
貸本マンガ業界への不安の中で、同業者の中森を、頼もしくこそないが、
同じ闘いを戦っている同志のように思うようになった。
 だが、新婚夫婦にとって、この安普請の家の中に他人の男性がいるというのは、
いくら空気のようにかそけき中森とはいっても、非常に気を遣うものでもあった。
茂との仲がふかまるにつれて、激しさを増していく愛の行為の際に、こみあげる
悦びの声をおさえなければならないのはつらいことだった。         
8かそけき男3:2010/11/19(金) 15:48:12 ID:7uy0QcX+
(そう言えば・・・。あの時は危なかったなあ・・・。)
茂の留守中に上がりこんだ浦木が、突然よからぬ考えを起こしてフミエに
襲いかかったことがあった。
何がなんだかわからないうちに、帰ってきた茂が浦木を追い払い、事なきを得たのだが、
茂は危うく奪い去られそうになった妻を取り戻すかのように、その場で荒々しく抱いた。
昼ひなか、まるで犯されるかのような交わりに、ショックを受けたフミエだったが、
いつしか快感の波にまきこまれていった。
 いつもは穏やかで、愛しあう時も自分よりずっと余裕がある茂のそんな衝動に、
茂の自分に対する愛のはげしさを思い知らされた。
 行為のあと、茂は「忘れるな。」と言い捨てて仕事部屋に入ってしまった。
そこへ中森が帰ってきたのだ。とっさに洗面所に走り、なんとか身づくろいをして
応対したが、衣服や髪の乱れ、上気したほお、拾い上げる暇がなかった下着・・・
情交のなごりが中森の目に留まらないかと、フミエは気が気ではなかった。
 中森が二階へ去ると、フミエはへなへなと床にくずれ落ちた。両腿のあいだから、
先ほど茂が放ったものがつたい落ちていた。いつの間にか後ろに来ていた茂が、
フミエを後ろから抱きしめた。
フミエは振り向くと、茂の胸でわっと泣き出した。
茂は、しゃくりあげるフミエの唇に、何度も口づけした・・・。
 あの日の茂の激しさ、やさしさ・・・。フミエは思い出してぞくりと身体を震わせた。
あれは、たった6年前のことなのに・・・。
 茂が忙しすぎて、ゆっくり話をするヒマすらない今、フミエにはあの頃のことが
何十年も昔のように遠く思われた。       
9かそけき男4:2010/11/19(金) 15:49:00 ID:7uy0QcX+
 中森は、去り際、角を曲がる前に、もう一度すっかりきれいになった村井家を
ふり返った。5年前、失意の中ここを去った時、中森はそれでもたまっていた
家賃の半分をフミエに渡した。
「男の、けじめです。」
大阪へ帰る汽車賃すらない中森が、家財道具いっさいを売り払ってつくった
血の出るような金だ。躊躇しているフミエの手に押しつけるように渡すと、
「水木さんには、きっと日の当たる日が来ます。」
励ますように言って歩き去った。不思議と、さわやかな気分だった。

(奥さんは、知ることがないだろうな。なんで僕がマンガをあきらめて
 家族のもとに帰る決心がついたか、ということを・・・。)

 6年前、中森は東京の貸本マンガ業界で新規まきなおしをはかるため、家族を
大阪に残して単身上京してきた。たまたま知り合った浦木の紹介で訪れた村井家は、
下宿屋などではないうえに、家主の村井夫妻は新婚ほやほやだった。
さすがに悪いと思ったが、今夜泊まるところもないうえに、無駄な金は一銭も
使う余裕がなかった。すでに浦木に、紹介料をとられていたのだ。
 最初は明らかに迷惑そうだったフミエだったが、生来の人の良さと育ちの良さから、
隣人?に邪険にすることなど出来ないようで、じきに親しみを見せてくれるようになった。
(いい家庭で、愛されて育ったんだろうな・・・。)
フミエは、新婚のわりにはそれほど若くないようだったが、貧しい境遇にあっても
清楚なたたずまいは失われていなかった。フミエの夫に対する献身ぶりは、見ていて
ほほえましく、茂のマンガを嬉々として手伝っている姿には心温まるものがあった。
 慣れない土地でたったひとり、貧困の中奮闘する中森にとって、そんなフミエの存在は、
大きな慰めとなっていた。                  
10かそけき男5:2010/11/19(金) 15:50:05 ID:7uy0QcX+
 冷たい雨の降る、二月のある日、中森は片道の電車賃だけで水道橋の出版社に
原稿を届けに行ったものの、そんな原稿は頼んだ覚えがないと言われて原稿料がもらえず、
何時間もかけて調布まで歩いて帰ったことがあった。
 村井家の玄関までたどり着くと、気がゆるんで思わず倒れこんだ。物音に驚いた
村井夫妻が助け起こしてくれ、ちょうど飲んでいたコーヒーに砂糖をたっぷり入れて
飲ませてくれた。「ひだる神」にとり憑かれていた中森にとって、それは旱天の慈雨
とも、甘露とも言うべきものだった。やっと口をきくことが出来るようになった中森は、
出版社のしうちを二人にうったえた。
 その日はフミエも、茂が恥をしのんで描きあげた少女漫画の原稿を届けに行ったものの、
出版社の社長に茂のマンガをくさされ、原稿料を半分に値切られて帰って来た所だった。
「この業界じゃよくあることですけん、自分は慣れとりますが・・・。こいつはお嬢さん
 育ちだけん、こたえたようですわ。」
茂は笑ってフミエを見やった。フミエの目には泣いたあとがあった。
 コーヒーに加えてお茶漬けまでごちそうになり、中森は礼を言って自室に戻った。
空腹が満たされたとたん、激しい疲れがおそって来て、布団に倒れこんで眠りにおちた。

 ふと目覚めると、あたりは真っ暗で、中森はのどの渇きをおぼえた。
階下の台所で水を汲もうと、階段を降りかけた、その時・・・。
 中森の目に飛び込んできたのは、白くゆらめく女の裸体だった。
一瞬、中森は自分が見ているものの正体がわからなかった。次第に目が慣れてくると、
それはフミエと茂が愛しあう姿だった。茂の上に乗ったフミエは身体をくねらせ、
長い髪をふり乱して茂を愛していた。美しい曲線を描いてしなるフミエの白い身体は、
暗闇の中で光を発するようで、男女の痴態というよりは、うつくしい幻としか思えなかった。
11かそけき男6:2010/11/19(金) 15:51:06 ID:7uy0QcX+
 魂を奪われたように、どれくらい見ていたのだろうか・・・。やがてフミエは絶頂を
迎えたらしく、身体をふるわせた。だが、絶頂のただ中で必死で口を手でおさえ、
悦びの声を押しころそうとした。抑えきれぬ悲鳴がかすかに尾を引いた。
茂がすばやく起き上がって、ぐったりと弛緩する妻の身体を抱きとめた。
 中森はハッとわれに返った。
 しばらく抱きあったままフミエを休ませていた茂は、フミエの顔をあげさせると
いとおしそうに口づけした。フミエも両手で茂の顔をはさむと、このうえなく優しく
口づけを返した。何度も繰り返すうち、口づけは次第にふかく激しくなり、ふたりは
今度は向かい合ったまま、ゆっくりとゆれ合い始めた・・・。

 中森は、元々うすい存在感をさらに空気よりうすくして、自分の部屋へ戻った。
今見た光景に、足元は霞を踏むような心地だったが、不思議と劣情をいだくようなことは
なかった。食うや食わずの中森に、そんな気力は残っていなかったのかもしれない。
そうでなかったとしても、ふたりの姿はお互いへの愛に満ちていて、下衆な考えを
起こしたりしたら申し訳ないような気がした。
 中森のほおに、自然と涙が流れた。むしょうに妻に会いたかった。
幼なじみで自然に結ばれた妻・・・。地味でおとなしい女だが、中森との間には
静かでおだやかな絆がはぐくまれていた。三人の子をかかえ、極貧の中で、
ろくに仕送りもできない中森を待っていてくれる。
 いつ叶うかわからない自分の夢のために、かけがえのない妻につらい思いをさせて
きたことへの後悔が、これまでになく中森の胸をかきむしった。              
 
 そしてもうひとつ、中森の胸に去来したものは、この家での自分の存在が、
異分子でしかなかったことへの痛切な反省だった。
 新婚家庭に下宿するからには、中森もこれ以上ないほど気は遣って来た。
今日は疲労困憊のあまり破ってしまったが、階下での用は、遅くとも宵のうちまでに
済ませる、それらしい気配がある時は、仕事に没頭するなどして、失礼な想像を
はたらかせないようにする・・・そんなルールを自分に課していた。だが・・・。
 家主夫妻、特にフミエに好感を持っている中森は、はた目にも深く愛しあっている
ことがわかるこの二人が、自分に気を遣って自然な交歓が出来ずに生活してきた
であろうことに対して、申し訳なさでいっぱいになった。
(そろそろ、潮時かな・・・。)
中森が、マンガをあきらめて大阪へ帰ることを初めて具体的に心づもりし始めたのは
この夜のことだった。      
12かそけき男7:2010/11/19(金) 15:58:43 ID:7uy0QcX+
 大阪へ帰るとは決めたものの、業界のしがらみやら仕事の都合やらで、実際に
帰るまでには三ヶ月を要した。家財道具を何もかも売り払って汽車賃をつくり、
初夏のある日、中森は村井夫妻に別れを告げた。
 不安そうなフミエに、中森は「水木さんのマンガはきっとものになります。」と
励ました。何の根拠もなかったが、そう信じたかった。

 大阪へ帰った中森は、懸命に働いて家族の暮らしを立て直した。コツコツと働いた
甲斐あって、新しい仕事に乗り出す余裕も出来た。茂の活躍を知ったときは
自分のことのように嬉しく、はげみにもなった。
 今日、法事で上京したついでに村井家を訪れたのは、自分もなんとか生き延び、
茂のマンガ家としての成功を喜んでいることを伝えたかったからだ。
 村井夫妻は、苦労をともにした昔なじみに会えてうれしそうだった。だが、フミエは
茂があまりにも急に売れっ子になったため、激変する状況に戸惑っているようだった。
「私のような素人の出る幕は、もうありませんけん・・・。」
少しさびしそうなフミエに、
「あの苦しい時代を先生が乗り越えられたのは、奥さんのおかげですよ・・・。」
中森は精いっぱいの言葉を贈った。

 村井家を辞去した中森は、そのまま都心に出て大阪へ帰る電車に乗りこんだ。
夕闇がせまり、流れ行く車窓の風景を、中森は感慨深げに眺めた。
(奥さんは、気づいておられんようですな。先生の描く自画像・・・。先生は丸顔なのに、
 夫婦そろって長い顔に描いておられる。あの頃から、ずっとそうです。
 先生はあなたのことを、一心同体、自分の身体の一部のように考えておられるんですよ・・・。)
フミエの(自分は夫にとって必要な人間ではないのではないか?)と言う不安は、
この先長い間フミエを苦しめることになる。だがその答えを、傍観者の中森は知っていた。

(奥さん、いつかきっと、わかる日がきますよ・・・。)
過ぎし日、中森が夢をえがいた東京の街の灯りは、後ろへ後ろへと飛び去って行く。
心の中で、中森はフミエにそっとエールを送った。 
13名無しさん@ピンキー:2010/11/19(金) 15:59:46 ID:7uy0QcX+
>>1さん、乙です。
 新スレ最初に投下するほどのものでもないのですが、前スレに投下しそこないまして・・・。
 
 あれだけ愛されたキャラなので、一度は書いてみたかったのです。書いてる時にちょうど
前スレ終盤で、中森さんが話題に出てきたのでびっくりしました。
 中森さんが後年村井家を訪れて、フミエがアシスタントをしてるところを見ていた、
と語った時、「見てたのかよ!」というレスがたくさんあったっけw。
 
 題名の『かそけき男』というのは、以前、リクエストに応えて書いた、
浦木がフミエを寝取り未遂の話(『おしおき』)に出てきた中森さんを評した表現です。
あの話は、タイミング重視であまり推敲できなかったために、尻切れトンボになって
しまったので、この機会に乗じてフォローしちゃいましたw。
14名無しさん@ピンキー:2010/11/19(金) 16:40:53 ID:jz9XaH+t
中森さん切ないっす、GJ!
15名無しさん@ピンキー:2010/11/19(金) 17:38:06 ID:R8QpLLcG
GJ!中森さん、やっぱり良い人だ…
というか や っ ぱ り 見 ら れ て た か
16名無しさん@ピンキー:2010/11/19(金) 22:44:40 ID:JkzuJGeh
GJ
本当にいろいろ見てそうだな中森さん
でも見るだけで終わっちゃうとこが中森さんらしくていい。
これが浦木なら…
17名無しさん@ピンキー:2010/11/19(金) 23:23:54 ID:bkm++oXw
ゲゲにフルボッコ→つまみ出されて終了。
18名無しさん@ピンキー:2010/11/20(土) 06:02:33 ID:RerKkIs+
>>6
GJ!新スレ初投下乙!
なんか感動した!
布美ちゃんたちのエロを見て、奥さん思い出しちゃうとことか
あやうく目から汁が…
んで、そっから帰郷への流れが普通の物語的に納得できたよ。
3スレ目も絶好調だな

時間の経過的に、もしかして藍子仕込みはこの頃なのか?とも思ったが。
19名無しさん@ピンキー:2010/11/20(土) 14:50:05 ID:CFxuisap
>>18
最後の一行、自分もちょっこしそう思いつつ・・・。
20名無しさん@ピンキー:2010/11/20(土) 22:46:42 ID:N43ltRIp
前スレ>>733-738

凄い名作だ。。。無料で読ませていただくのは申し訳ないくらい

プロの書き手の方なのかなぁ>職人さん

あ、詮索するつもりはないのでスルーしてください
超々、超〜だんだんです!

しかしあの短編地デジ宣伝ドラマから、こんなに豊かで胸キュンなエロが湧きあがるなんて
やっぱり凄いや〜
21名無しさん@ピンキー:2010/11/20(土) 22:58:42 ID:N43ltRIp
そして>>6中森さんキターww

早速この回のVTRを見に自室に消えますっw
22名無しさん@ピンキー:2010/11/21(日) 18:09:21 ID:fob9PuB+
しげさんが霊園で迷った時の階段から降りてくるふみちゃんの足がすごくキレイだ
あと起きたら藍子がしげさんと外に居たうたた寝の時の足も素晴らしい
23名無しさん@ピンキー:2010/11/21(日) 22:42:28 ID:56V5pfa1
しげるの腕の血管とふみえの脚の綺麗さには、いつも見とれてしまいます。
24名無しさん@ピンキー:2010/11/21(日) 23:39:53 ID:xyq4uvIX
前スレ、いちせんパロ>>733
・・・禿萌えた!GJ!!
特にずっと読みたかった付き合うまでのきっかけが可愛くて切なくて萌え死んだ
あの短い映像と僅かな設定で、ここまで素晴らしい話が創れる職人様、尊敬します!エロも思いやりがありつつ素直でスケベな所が素晴らしいw
二人が幸せそうだとこっちも嬉しくなるー
また是非いちせんパロ書いて下さい
25名無しさん@ピンキー:2010/11/22(月) 00:25:48 ID:QVjcZZZV
ふみちゃんが初めて漫画の手伝いをした時の、二人で文机に向かう後ろからの2ショットは
今でも私のPCの壁紙になっています

ふみちゃん裸足なんだよなぁ。。。綺麗、そして大きい足の裏w
26ミヤコ:2010/11/22(月) 00:36:55 ID:QnOCw314
11文ありますけんねぇ
27名無しさん@ピンキー:2010/11/22(月) 08:46:51 ID:AA/ZdT3P
>>6
GJ!
何か
28名無しさん@ピンキー:2010/11/22(月) 08:51:18 ID:AA/ZdT3P
>>6
だんだん!
途中で書き込みボタン押してしまったorz

何か

29名無しさん@ピンキー:2010/11/22(月) 09:01:52 ID:AA/ZdT3P
>>6
だんだん!
途中で書き込みボタン押してしまったorz

嫉妬ゲゲに、すんごく萌えました
あれだけ貧乏で追い詰められても、一度もフミちゃんを
外に働きに出そうという発想が無かったゲゲだしねえ
「お前は心配せんで家の事だけやっとったらええ」
って亭主関白っぽく言ってたんだろうね
向井の童顔とのGAPがまた良いんだよなあ

30ゆきおんな1:2010/11/22(月) 15:21:21 ID:JrX/0rRO
珍しく、藍子の寝かしつけを茂が任された夜。
藍子は小さな布団に頭から包まり、茂はその横でごろりと腹ばいになって、
ふたりで囲む絵本はなるほど、1月の真冬らしく「雪女」だった。

「『…そうして、お雪は吹雪の中に消えていったそうな。』おしまい」
ぱたりと本を閉じると、藍子はきょろりと大きな瞳で茂を仰いだ。
「どうして?いなくなったの?」
「自分が雪女だってことを誰にも言ってはいかん、という約束を破ったから、
 怒っていなくなったんだろ、…多分」
「ごめんなさい、言っても?許してくれないの?」
「うーん、そういう次元の話ではなくて」
「ジゲン?」
時折、子どもの素朴な疑問に、本気で頭を悩ますことがある。
特に3歳になりたての藍子はここのところ、「どうして?」症候群に取り付かれている。
そうしてあれこれと問いかけられると、意外と答えに窮することがあったりで、
自分でも普段知らず知らずに、訳もわからず納得「させられている」ことが多いという事実に気づかされる。

茂は寝転んだまま頬杖をつき、顔をしかめてウンウンと考えた。
「確かに、なして出ていく必要があるんだらか。惚れあっとるなら別に妖怪でもなんでも
 一緒におったらええ話だわな。イマイチよくわからん女だな、雪女って」
「ホレアットル?」
「好きで結婚しとるということ」
「おとうちゃんとおかあちゃん?」
「え?」
布美枝ゆずりの、大きな印象的な目玉が、茂をじっと見つめた。
「好きだからケッコンしたの?」
「…」
一段と答えに詰まる問いかけを投げられた。

自分と布美枝の場合、好きだのなんだのという以前に一緒になったわけで。
かといってそんな大人の事情を3歳児に理解できるはずもなく。
しかしそういう感情が皆無かといえば、そんなはずはない。
現にお前自身がその感情のもたらした結晶ではないか、などと。
これまた子どもに説明するには高等すぎる。
答えは単純な二文字なのだけれど…。

また茂が頭を掻きむしりながらウンウン呻っていると、
「藍子、よー寝とりますね。だんだん」
控えめな声で布美枝が現れた。
えっ、と思って藍子を振り返ると、既にすやすやと規則的な寝息を立てていた。
答えにかなり窮する難問を投げかけておきながら、憎らしいほどの安らかな顔。
独り真剣になっていた自分が、いつの間にか取り残されていたことに、少しだけ照れた。
31ゆきおんな2:2010/11/22(月) 15:22:08 ID:JrX/0rRO
「雪女?…ふふ、おとうちゃんらしい」
枕元の絵本を手にしながら、布美枝がぱらぱらとページをめくる。
その緩やかな微笑みに、少しの間見蕩れた。
茂の視線に気づいたように、顔を上げた布美枝が「ん?」と目をぱちくりさせる。
藍子の目玉は、心底こいつの遺伝だ、と思った。
ぱっと顔を背けて、茂は自分の布団に横になった。
「その絵本の雪女、お前に似とると藍子が言っとった」
「そげですか?」
「白くて、ひょろっとしとって、…薄っぺらいとことかな」
「あ、もうっ!」
膨れ顔の布美枝を、からかうように笑って布団をかぶった。
「消しますよ」背中で布美枝の声がしてから、やがてふっと暗くなった。

…そろそろ、かなと茂は思う。
先週から、女性の「理」が布美枝の身体に訪れていたのだが。
日数的にはもうそろそろ解禁されても良いはずだった。
とはいえ、自分からまだかまだかと催促するのも卑しい感じがして、
いつもこのタイミングを見極めるのは難しい。
目を閉じれば眠れないこともないのだけれど。

「…おとうちゃん」
どきっと一瞬鼓動が反応した。
「…寝た?」
「…いや、なんだ」
「…………そっちに…行っても…ええ、です、か」
―――きた。図らずも、向こうから。

待ってましたというのが正直なところだが、そんなことはおくびにも出さずに、
ただ黙って布美枝を振り返ると、そっと布団を持ち上げた。
すすす、と滑り込んでくる細い身体を、布団と一緒に抱きしめた。
「ふふ…あったか」
「うわっ、冷た」
抱きしめた布美枝の身体は、まるで氷のように冷たい。
「雪が降っとったんです」
「どうりで寒いはずだな」
「キレイだけん、ちょっこし見蕩れとったらこげなってしまって」
ぴたっと両手を茂の首に宛てた。
「冷…っ!こら!」
「ふふふ」
悪戯っぽく微笑む布美枝をじろりと睨む。
布美枝は微笑んだまま、茂の首に腕を絡めてそっと自分の方に引き寄せた。
ちゅ、と軽く触れ合って、それからぱくりと食べるように包まれて、
すぐに舌が伸びてきて、互いの口唇を行き交った。
32ゆきおんな3:2010/11/22(月) 15:22:44 ID:JrX/0rRO
名残惜しそうに唇は離れて、少し余った息を吐く。
「…ええのか?」
問いかけに、小さく頷く答えが返ってきた。
布美枝の手が、腰のあたりで適当に結んであった茂の帯を解き始めた。
時々こうして茂よりも積極的な布美枝になる夜がある。
特に禁を解かれたあとの日などは、その傾向が顕著だ。
女の生態は未知の領域。
異様に引き潮の日もあれば、思いもよらず荒波の日もあり。
穏やかな波が打ち寄せていたかと思えば、満ち満ちる満潮の思いが伝わる日もある。
本当に女の心理は不可解。
『嗚呼、永遠の女なるもの…』などと、ゲーテの言葉が思い浮かんだが、
背中に這った布美枝の冷たい手に、ぞくっと震えて続きは忘れた。
「寒い…ですか?」
さすがに申し訳なさそうに布美枝が問いかけた。
「まあ、ええ。風邪ひかんようにしぇ」
気を取り直して、今度は茂が布美枝の寝間着に手をかけた。

藍子が絵本の雪女を布美枝に似ていると言っていたのは本当で、
暗闇の中、白く映える布美枝の身体は、本当にあの絵の女のようだった。
外からの明かりに、ぼんやりと浮かび上がる白い乳房の先端に、
花の蕾のように小刻みに震えるピンク色を、包み込むように咥えた。
「ふっ……ぁ…」
まるで甘い菓子のような、ふわりと鼻腔をくすぐる香りがあった。
舌で包み、ざらりと舐めまわしたあとに、甘く噛んでみる。
一瞬、肩をすくめて小さく喘いだ反応を愉しんで、
今度は指で硬く尖らせ、柔肉とともに揉みしだいた。
相変わらず冷たい布美枝の身体は、熱くなっていく自らの身体と合わされば
逆に丁度良いのかも知れないな、などとぼんやり考えながら、
細い首に口づけたり、長い髪を弄んだりしてみる。
布美枝の小さな口づけも、時折茂の肩や胸に吸い付いて、
遠慮がちな紅の痕を付けてみたりしているのが微笑ましい。
硬直して先走る自身の下半身を押さえ込みつつ、布美枝の愛撫に目を細めた。
33ゆきおんな4:2010/11/22(月) 15:23:14 ID:JrX/0rRO
今一度、深い口づけを絡ませながら、下腹を通って秘所を探る。
すると布美枝は、茂の右手を両腿で挟んで、べーっと舌を出してみせた。
くすりと苦笑してから、耳に齧り付く。
「ゃんっ…」
ねっとりと舌を這わせて囁く。
「ここだけは、温いな」
「ん…あ…」
弛緩する腿から右手を引き抜き、直接下着の中へ指を忍ばせた。
ぴちゃり、と音がする。
「…あ、…っっ…ん」
吸い込まれるように中指を挿し入れると、溢れた愛液で掌が濡れた。
茂の視線から逃げるように、顔を背けて恥らう布美枝に、
わざと聴かせるように音を立てた。
「や、あ…っ…!」
掻きまわすたびに溢れる淫液が、やがてぐっしょりと滴るほどに茂の手を覆う。
「ほれ」
意地悪く布美枝の眼前に掌をかざして、羞恥を誘った。
「やっ!」
不意に布美枝がその手を握り締め、がばりと起き上がり、茂を組み敷しいた。
どさり、と意外にも大きな音がしたので、一瞬藍子を振り返った。
こちらには背を向けて、すやすやと肩を揺らしているのが見え、ほっとする。
組み敷かれたとは言っても、片腕でぽいっと容易く投げられるほどの軽さ。
お好きなように、と挑発するように、布美枝を見上げた。

瞬間、その姿態に釘付けになる。

ゆらめく白い肌、長い黒髪が唇に引っかかり、恍惚の瞳が茂を見下ろす。
冷たい手が、すす、と茂の胸板をなぞると、ぞくりと背中に寒気が走った。
妖しい、美しさがそこにあった。
身動きが取れない。まるで妖術にかかったかのように。
妖艶な裸体を見上げて、ただただ固まった。

「雪女…」
「え?」
34ゆきおんな5:2010/11/22(月) 15:23:58 ID:JrX/0rRO
思わず呟いた茂の言葉に、きょとんとした顔は既にいつもの布美枝だった。
「まだ言う。もぅ、怒りますよ」
「あ…」
大袈裟に、がぶりと首筋に食いつかれて、我に返った。
「ふふ…」
「一瞬、本当に…」
「おとうちゃん…」
茂の言葉を遮るように口づけられる。
目を閉じて、先ほどの妖美な姿を手繰り寄せようとしたとき。
自らの隆起した先矛が、布美枝の胎内へ押し込まれる感覚に再び目を開いた。
「は…っ」
眉をひそめる布美枝の額に口づけ、その腰を掴んで挿入を手助けた。
ぐっと奥まで踏み込んだ瞬間、茂の上の白い身体がのけぞった。

茂は起き上がり、布美枝の背中に腕を回す。
布美枝もその冷たい身体をぴったりと茂に寄り添わせて、腰を動かし始めた。
「あっ、ん…ふ、ぅ、あんっ…」
貫くたびに洩れる嬌声と、揺れる乳房に、茂の支配欲は掻き立てられる。
そういうことを、布美枝は本能で知っている。
そんなあたりが、この女の侮れないところだ。
「し…げぇさ…」
喘ぎに名前が入り込んでくると、自然と口の端が緩む。
いつもは「おとうちゃん」を連呼する布美枝が、自分の名前を口にすることは少ない。
まして、快感に逆上せた嬌声まじりの呼びかけは、それだけで茂の「雄」を刺激する。
氷のような身体とは正反対に、布美枝の中は熱い。
内側の襞が、搾り取るようにして陽根を掻き抱き、亀頭の先が奥壁にぶつかる。
ぬめる卑猥な音を聴きながら、布美枝の唇を貪り喰った。
「しげ…も、ぅ……ん、ぁっ…」
言葉にならない呻きで、茂に絡み付いてくる。
抱きしめる細い身体が、やっと熱を持ってきたことにほっとした。
最後のときが近い。
茂は布美枝をそのまま押し倒し、潤む瞳に口づけた。
「溶けるなよ…雪女」
激しく数度揺さぶって、熱い迸りを膣奥へ注ぐ。
息を整える間、絡まってきた布美枝の足先は、やっぱりひんやりと冷たく。
(本物の雪女かもしれん…)
ふうと、ため息をついて苦笑した
35ゆきおんな6:2010/11/22(月) 15:24:34 ID:JrX/0rRO
― ― ―

布美枝の長い髪で遊ぶのは、少し楽しい。
くるくると指先に絡めてみたり、するすると櫛梳いてみたり。
くすぐったそうに身をすぼめて、寄り添ってくるのもひとつの楽しみだったりもするが。

「雪女はなして、自分から正体明かすようなことして出て行ったんだと思う?」
「そげですね…」
女の生態は女に聞けばわかるのかも知らん。茂はぽつりと問いかけた。
「おとうちゃん、実はね」
「ん?」
「あたし、雪女なんです。だけん、こげに手も足も冷たいでしょう?」
にこりと笑って、こちらを見上げる。
「…と、ある日あたしが言ったらどげします?」
「だら。冗談か」
「あら、本当だと思った?」
くすくすと笑われて、少し癪に障った。
冷たい鼻先をつまんで、うにうにと左右に振ってやった。「痛い痛い」とそれでも笑っている。

「こっちは藍子に宿題出されとるんだ。女心は俺にはわからんからな」
「好きな人に、自分のことを怖がられとるのが嫌なだけでは?」
「ん?」
「巳之吉は、雪女に襲われて怖い思いをしたことをいつまでも覚えていて、
 自分の女房に話したんでしょう?その女房が雪女だと知らずに」
「うん」
「大好きな人に、本当の自分はとても怖れられているって分かったら、つらいですよ。
 一緒に暮らすのは毎日つらいと思う。いつか何かのはずみに自分の正体に気づいて、
 離れていってしまうのなら、いっそ全てを話して自ら消えてしまおうって思ったんじゃないかなあ」
「そこがわからん。巳之吉の思いは聴かんのか」
「男心はあたしにはわかりませんけん」
「好きなら妖怪だろうが人間だろうが関係ないだろ」
「うふふ」
笑うような答えだっただろうか?布美枝を見やると、ちゅ、と軽く接吻された。
「…なんだ」
「なんでも」
そういって、なにやら含み笑いの布美枝は茂の胸の中で目を閉じた。
永遠の女なるもの、我を「悩み」に導いていく…だったかな。
ゲーテの言葉が、いまいち思い出せない茂だった。
36ゆきおんな7:2010/11/22(月) 15:26:48 ID:JrX/0rRO
― ― ―

「おとうちゃぁん…」
小さな雪女が、茂の布団に潜りこんで来た。
「んん…冷たいなあ、藍子、どげした…」
抱きしめた愛娘の冷えた身体に、寝ぼけ眼も醒めようというもの。
眩しい朝の光が差し込んで、きん、と冷えた冷気に吐く息も白い。

「おかあちゃんは?」
「下でおるんじゃないのか」
「いないの」
「え?」

布美枝の寝床は片付けられていたが、それはいつものことだった。
が、階下に布美枝がいないのはおかしい。
藍子を抱えて階段をやや急ぎ足で降りたが、確かに布美枝はどこにも居なかった。

『あたし、雪女なんです』
布美枝の声が蘇ってきた。
いつまで経っても冷たい身体。
一瞬固まって見入ったほどの妖艶な裸体。
正体を明かした途端に消えた女房。
茂の鼓動が、どくどくと嫌な音を立てて内側から胸を叩く。
まさか、本当に本物の…?

藍子を抱えたまま、ぺたりとその場に座り込んだ。
不思議そうに父を見つめて、それから藍子はふと耳をすませた。
やおら、茂の腕から離れて、藍子は玄関の扉へ向かう。
思わず茂も立ち上がり、そのあとを追って扉を開いた。

「あら。起きたの?おとうちゃんまで。めずらしく早いねえ」
白銀の情景の中、雪女がにっこりとこちらを振り返った。
37ゆきおんな8:2010/11/22(月) 15:27:34 ID:JrX/0rRO
「おかあちゃん!」
「…なに…しとるんだ」
「雪が積もっとったけん、ほら、雪だるま。ちょっこし小さいけど」

玄関先に並んだ小さな雪だるまを見て、藍子は歓声を上げて飛び跳ねた。
そんな藍子を、布美枝はいつもの優しい笑顔で見つめていた。
ほう、と肩から力が抜けていく感覚に、茂は少し戸惑った。
布美枝が本物の雪女で、正体を明かして消えていったのではないか、と。
まるで絵本の通りの出来事に、かなり焦った自分がいた。

「さ、朝ごはんにしよっか。寒いけん、温かいお味噌汁、作ってるからね。
 藍子、顔洗っといで。おとうちゃんも」
「はーい」と小さく返事をして洗面所へ向かう藍子。
あとから入ってきた布美枝は、放心したような顔の茂に首を傾げた。
「おとうちゃん?」
その顔をじっと見つめ、茂は思わず口づけた。
「え」
掠めるほどの、軽い口づけだったが、布美枝を驚かせるには十分だったようで。
白い肌が、一気に紅潮した。

「だら」
「な、なんで?」
疑問符だらけの布美枝を残し、洗面所へ向かった茂の顔は、満面の笑み。

藍子、絶対に秘密にするなら教えてやろう。
「好きだからケッコンした」わけではないけれど、
おとうちゃんは、おかあちゃんのことが「好き」みたいだわ。



おわり

38名無しさん@ピンキー:2010/11/22(月) 19:39:39 ID:QVjcZZZV
>>30
うわぁん、GJ!
小悪魔雪女ふみちゃんと惑わされるゲゲが凄く可愛くていい!
39名無しさん@ピンキー:2010/11/22(月) 20:40:56 ID:fhoiF4z3
ゲゲ、カワユス。GJ!
40名無しさん@ピンキー:2010/11/22(月) 22:27:35 ID:v8XVsTP8
小悪魔ふみちゃんすっごくいいゲゲも可愛いし超ーGJ
始まりから終わりまでめちゃくちゃ好きだー特徴つかんでるし職人さんすごすぎる
41名無しさん@ピンキー:2010/11/23(火) 01:18:09 ID:I29NKmYs
>>30
フハッ!禿あがるほどGJ〜!!
藍子もゲゲもフミちゃんも皆可愛い!
密かに大好きな小悪魔フミちゃん責め、最高ですけん!
裸体に黒髪が絡まって…とかビジュアルも想像するだけで萌る〜
これからは毎日体温高そうなゲゲに暖めて貰ってごしない!

42名無しさん@ピンキー:2010/11/23(火) 22:00:14 ID:F52yqAB1
GJ!大きい雪女も小さい雪女も可愛いよしげさんテラウラヤマシス
妖怪絡みですごくゲゲ女スレらしいし何よりエロい!
鼻うにうにのいちゃこらがツボった
43名無しさん@ピンキー:2010/11/23(火) 22:25:02 ID:vvBHDGO0
>>30
だんだん!
妖艶な小悪魔フミちゃんに禿萌えたw
44名無しさん@ピンキー:2010/11/24(水) 06:56:12 ID:FvbCKivE
こんなん見っけ。
何のドラマか映画か、
相手が誰かわからんけど…
脳内変換で!
http://m.youtube.com/watch?gl=JP&client=mv-google&hl=ja&rl=yes&v=PXpR43wjwZQ
スレチだったらすみませんorz
45名無しさん@ピンキー:2010/11/24(水) 18:35:16 ID:HgDSzESV
>>44
BeeTVのsweet roomだな。見たことある。
エロの脳内変換には持って来いだね。ムカイリがキレイに思える。
でも役どころはゲゲと正反対の、イマドキの大学生なんだおw
無骨な大正男のゲゲとは比べもんにならんくらいに
サプライズに余念がないw
46名無しさん@ピンキー:2010/11/24(水) 20:25:01 ID:ITbSBpm5
>>44
あーsweet roomね。
見た見た。
ゲゲふみで脳内変換するより、いちせんの祐綾で脳内変換した方が
しっくりくるんだよね〜
47名無しさん@ピンキー:2010/11/24(水) 23:55:09 ID:HgDSzESV
自分で書いといてなんだが、ゲゲも結構サプライズで布美ちゃんのこと
喜ばせてはニンマリしてたなあ。
謹呈 村井布美枝殿とか、エアひな祭りとか。
(喜子の)名前はもう決めてあるぞ、とか。
48名無しさん@ピンキー:2010/11/24(水) 23:56:17 ID:m0a+H6Q9
>>44
それ、ゲゲゲ本スレで見た記憶が
フミちゃんの方はあまりそういうのが無いな
49名無しさん@ピンキー:2010/11/25(木) 00:29:51 ID:mwSpf+W3
>>44
この向井、色っぽいよなあ。
確かにゲゲふみというより祐綾っぽいかも。
50名無しさん@ピンキー:2010/11/25(木) 01:07:40 ID:uKPwfWM5
sweet roomってやつだったんですね!
確かにいちせんのイメージですね。

ふみちゃんの方は自分が知ってる限りでは
http://m.youtube.com/watch?warned=True&&&gl=JP&client=mv-google&hl=ja&v=9xXzRKKXoE8
が1番濃厚というかなんというか…
51名無しさん@ピンキー:2010/11/25(木) 02:15:22 ID:3FgLk5W1
>>47
サプライズ結構あるなー
そして喜ばなかった時のムッとしっぷりww

>>50
おお…映画のヤツですな
ゲゲゲ出演者が多数出てたドラマの冒頭の誘いっぷりもなかなかセクシーだったけどやっぱ全然違うなぁ
52名無しさん@ピンキー:2010/11/25(木) 10:04:18 ID:mpaPbx6R
>>47
「謹呈 村井布美枝殿」の本は、ザブトンの下に隠してあったんだよね。
最近DVDで発見したw。その前、ずっとニヤニヤしてるし。
藍子生んで退院してきた時、部屋ポカポカにしてあるし。
ゲゲゲの主題歌は「一番はじめに見せようと思って。」とか…。
でも、一番のサプライズは、自転車かなあ。
53名無しさん@ピンキー:2010/11/25(木) 12:52:50 ID:ULsob5gF
>>50
そのドラマのフミちゃん、エロかったが、あまりにもDQNすぎてショックを受けたw
54名無しさん@ピンキー:2010/11/25(木) 12:53:49 ID:ULsob5gF
スマン、レス番間違えた
>>51
55名無しさん@ピンキー:2010/11/26(金) 21:23:26 ID:9tImqBEV
少年ゲゲとフミエ初号機のロリエロが読みたいです。

このロリ(ry
56名無しさん@ピンキー:2010/11/27(土) 16:41:25 ID:RHjYaxtD
>>50
何か「りゅうちゃん」が「祐ちゃん」に聞こえるw
DVDで見たときは思わなかったのにw
57名無しさん@ピンキー:2010/11/28(日) 02:27:01 ID:djJdK0Cg
>>50
スマソ、自分それ見れないんだが、なんてドラマ?映画?
ようつべで布美ちゃん関連見てると、結構ゲゲゲ出演してた人と
過去に共演してるの多いな。源兵衛さんとか美智子さんとか。

>>55
ふたりが会ったのって、布美ちゃん7歳だから、ゲゲは17なんだよな。
あのゲゲは中学生くらいにしか見えんのは自分だけ?
29と39だから結婚するのは別に不自然には思わんかったが、
10歳と20歳とかで想像するとちょっこしアレだなw
58名無しさん@ピンキー:2010/11/28(日) 08:12:53 ID:BH8kUJeD
>>57
アジアンタムブルーっていう映画です

確かに過去共演多いですよね
上半身裸になった仔犬のワルツでは、
パートナー?役が風間トオルさんでびっくりした…
59名無しさん@ピンキー:2010/11/28(日) 23:55:27 ID:GAVgEG1e
普段はロリが好きだけどゲゲふみに限り歳くった二人がかなり好き
見始めたのがかなり遅くて若い二人をリアルタイムで追えなかったせいもあるけど
60名無しさん@ピンキー:2010/11/29(月) 23:03:13 ID:LZ17HhHe
>>58
だんだん。今度DVD観てみようかな。
なぜ風間トオルの話が?と思ったが、船山さんか!
意外と自分の中で船山さんの存在が薄くて驚いたw
それにしても上半身裸って?!船山さんと布美ちゃんのエチシーンあるんスか?!

>>59
年くった二人のおやおやあらあらのケンカシーンが好きだw
年月重ねてきてるなーって感じで。あそこアドリブだったって
どっかの番組で布美ちゃんが言ってたな〜。
61名無しさん@ピンキー:2010/11/30(火) 12:58:26 ID:H9fRoCi9
>>60
上半身裸ピアノ、ネタバレ







脱いで、体の傷痕を大勢の人に見せる為
船山さんとのエロシーンではない
62名無しさん@ピンキー:2010/11/30(火) 22:33:13 ID:AqikAD+R
むかいりが役を通じて片手で靴紐結べるようになったくらいだから
しげさんは拘束プレイもお手の物なんだろうなぁ…
63名無しさん@ピンキー:2010/12/01(水) 13:42:57 ID:DwjhAKxz
倉田君の中の人のブログを見る限り、ゲゲも相当日焼けしてるんでないかと想像。

布美「お父ちゃん、ずいぶん日焼けしとるね」
ゲゲ「南国帰りだけんな」
と紅白に出てきやしないか。
64名無しさん@ピンキー:2010/12/01(水) 19:41:45 ID:GkEG7MRB
流行語大賞受賞オメ!
このスレ的にはゲゲフミも追加だなw
65名無しさん@ピンキー:2010/12/01(水) 19:56:18 ID:ZMRYGJhr
大賞オメ!
祐綾と評判だったウエディング雑誌を衝動買いして今日届いたので個人的に嬉しさ倍増です
66名無しさん@ピンキー:2010/12/01(水) 21:13:56 ID:aqRYRHlR
>>65
見てみたいです…
ちょっこしUPしていただけませんかね?

ウエディング…いちせん…
前スレラストのいちせん、最高だったなぁ…
67名無しさん@ピンキー:2010/12/02(木) 22:46:13 ID:sgewTghh
DVD BOX3到着。
特典映像の「収録、最後の一日」最後、松下さん&向井さんが二人
手を握りながらスタッフにおじぎしている場面は良かった。

でもやっぱり抱擁の映像は無かったか…

ちょっこし、本当にちょっこしだけ期待してたんだけどね。

まあそんな映像見たら萌え死に確実だけどwww
68名無しさん@ピンキー:2010/12/02(木) 23:16:39 ID:MaVn7Cgd
ウラヤマシス
これだから地方は…orz

くすだまのおててムギュムギュはあった?
69名無しさん@ピンキー:2010/12/02(木) 23:27:26 ID:sgewTghh
>>68
自分も地方民ですよ。
でも3カ月も前から予約してたからね。
だから早くきたのかな〜って思ってるw

くすだまのお手手ムギュムギュは無かったです。
70名無しさん@ピンキー:2010/12/02(木) 23:44:55 ID:0bSQoEVs
>>65
いいなぁ
オク等で見ると、ネット記事には載ってなかった写真もあるみたいだな
自分も買おうっと
71名無しさん@ピンキー:2010/12/03(金) 10:43:33 ID:wgVlRqVM
>>62さんのお題をいただきました。
時代は、結婚から1年以上あと、三海社がなくなって、
少女マンガでも何でも描いていた頃です。
72あぶな絵の女1:2010/12/03(金) 10:44:45 ID:wgVlRqVM
「うーーーーーーん。」
ある夜、仕事部屋から聞こえてきた茂のうなり声に、フミエは寝支度の
手を止め、閉じられたフスマの向こうをうかがった。
(どげしたんだろう?お仕事がはかどらんのかな・・・。)
心配になるけれど、おいそれと覗きに行くわけにもいかない。マンガの
ストーリーや下書きが出来あがってからなら、ワク線ひきやベタ塗りなど
フミエにも手伝えることはあるが、構想の段階では、とても無理だった。
こういう時は、そっとしておくほかない。

「おい、ちょっこし来てくれ。」
茂の声に、いそいそと立ち上がってフスマを開け、仕事机のそばに座った。
「きゃっっっ!」
茂の前に広げられたたくさんの色あざやかな錦絵・・・そこには半裸の男や女が、
あるいは縛り上げられ、あるいは逆さ吊りにされ、血にまみれた地獄図を
繰り広げていた。
フミエは吐き気を覚えて目をおおった。
「すまんすまん。ちょっこし仕事の参考にしようと思ってな。」
 三海社がなくなって以来、どんな仕事でも受けるようになっていた茂は、
マンガ出版社ではない会社にも当たってみたところ、エログロ雑誌の小説の
さし絵をたのまれたのだという。少女マンガの時も苦手分野に四苦八苦したが、
あの時は天のたすけでなんとかなった。
「俺はグロは得意だが、エロの方はな〜。小説のさし絵だけん、ストーリーを
 考えんでええのはええが、俺の持っとる資料は、こげな血まみれの
 ばっかりだし・・・。」
茂はふと話をやめて、フミエの顔をじっと見た。
「これは、明治時代の月岡芳年という人の錦絵でな・・・。夜中にひとりでこげな
 絵を見とると、それはそれはええアイディアが湧いてくるんだが・・・。
 いかんせん、頼まれたのはこげな昔の残酷物語じゃなーけん。血やら衣装やら
 ないところを見たいんだが・・・。」
(え・・・?)フミエはイヤな予感がした。
「お前、ちっとモデルになってくれんか。」
「い、いやです、そげな。わ、私は全然色っぽくなんかないですし・・・。」
「そげなことはええんだ。女を縛ったところが見たいだけだけん。」
そんなこと、もっといやだった。いったいどんな小説なのだろう?フミエのように
育ちのよい娘には、想像も出来なかった。                   
73あぶな絵の女2:2010/12/03(金) 10:45:46 ID:wgVlRqVM
「お前、俺の役に立ちたい、といつも言うとるじゃないか。」
・・・それを言われると弱かった。茂のいたって真面目な面持ちに負け、言われるまま
たんすから着物のひもを出すと、茂の前でおずおずと浴衣の帯をといた。
帯ははらりと落ちたが、まだ浴衣を羽織ったままのフミエに、
「前にもモデルになったことあるだろう?早やことせえ。」
着ているものをすべて脱がせると、茂は立ったままフミエの両手を後ろにまわさせた。
・・・早くも涙ぐむ瞳に、吸い寄せられるように口づけると、
「・・・たのむ。」
(女房なんだけん・・・。お仕事のためだけん・・・。)
フミエは自分に言い聞かせ、持たされたひもを握った。茂が器用にひもをまわし、
魔法のようにしばりあげる。驚いて声も出ないフミエに、
「こりゃあ、戦地で捕虜をしばるやり方だ。もっとも、敵さんは姿も見せんで
 いきなり撃ってくるばっかりで、こげな悠長な戦争じゃなかったけどな。」
茂はそのままフミエを立たせておいて、スケッチブックを取り上げた。
「本当は、吊ったところが見たいんだが、このボロ家にお前を吊り下げたら、
 家がこわれるけんな。」
「もぉっ・・・。」
「おっ、お前の『もぉっ。』が出たな・・・。」
茂がほほえんだ。フミエも笑ったことで、ちょっとだけリラックスできた。
それでも、美術のモデルとは違う、隠微な緊縛のくわわった裸体が恥ずかしく、
茂の顔を見ることもできない。
 立ち姿をいろいろな角度からスケッチし終えると、今度はフミエを座らせる。
やわらかい肌に硬いひもがくい込み、座らせるためにフミエの身体を抱いた茂の
腕に、えもいわれぬ感触を味わわせた。
 座ったポーズの次に、茂はフミエをやさしく抱いて布団の上に横たえた。
後ろ手にしばられ、自然と突き出された胸、くの字に曲げられた長い脚・・・。
真剣に観察しながら写しとっていく茂の、視線に犯されているようで、フミエは
ほおが火照り、しばられた身体がうずくのを感じた。             
74あぶな絵の女3:2010/12/03(金) 10:46:50 ID:wgVlRqVM
 手は着実に仕事をしながら、茂は次第に妖しい気分にとらわれていくのを
禁じえなかった。
 自分の妻が、全裸で緊縛され、ころがされている。自分でやったことなのだが、
何か、フミエが誘拐され、汚されたような錯覚におちいり、猟奇的な劣情に、
鼓動が早くなるのを感じる。
フミエが寒くないよう、ストーブをつけてあるが、早春にしては暖かい陽気のせいか、
あるいは羞恥のせいか、フミエの肌はなまめかしく上気して染まり、茂の額には
汗の粒が浮かんだ。
フミエを横向きにさせ、後ろから観察すると、ぴったりと閉じられた両腿のあいだに、
てらてらと光るものが見える。
(フミエも、感じとる・・・。)
そう思うとたまらなくなって、思わず顔を寄せ、ひもで上下を縛され強調された乳の、
桃色に息づく突起を口にふくんだ。
「や、やめてぇっ・・・!」
視線だけでたかまっていた身体に、直接的な刺激をうけ、四肢をつらぬくような
快感が身体中にひろがった。茂が唇をはなすと、たかまる情欲が、もっともっとと
フミエを内側からせっついた。
「や、めない・・・で・・・。」
フミエはこきざみに震えながら、胸を突き出して哀願した。
「やめるのか、やめんのか、はっきりせえ。」
茂はそれ以上のことをせず、フミエを見下ろしている。
「これ・・・解いて、ごしない・・・。」
このまま抱かれたら、どうなってしまうかわからない恐ろしさに、フミエは訴えた。
「解いてやってもええが、そしたらそのまま寝るんだぞ。」
「・・・いじわる・・・。」
身動きできないのに、火をつけておいて、じらすなんて・・・。
「してほしいんだったら、して下さいと言え。」
ずきずきと痛いほど脈打つ中心部が、欲しいと言え、とフミエを責め立てる。 
75あぶな絵の女4:2010/12/03(金) 10:48:04 ID:wgVlRqVM
「・・・・・・し、て・・・くださ・・・!」
言い終わらぬうちに、唇を奪われ、気がとおくなる。
 フミエの首と言わず胸と言わずむさぼりながら、もどかしげに茂は着ているものを
脱ぎ去り、自分を待ちこがれる女の身体を抱いた。やわらかい肌と、硬いひもが
交互に肌にあたり、自由を奪われた細い身体が、茂の加虐心をあおりたてる。
 うしろ手にしばられたフミエの手が痛くないように腰をあげさせ、自分の太腿の
上に乗せる。脚を大きく開かされ、大変なことになっているそこを、茂に見られて
いると思うと、恥ずかしくて死にたいくらいだったが、同時に茂になら何をされても
いいという不思議な安心感をおぼえ、フミエはただひたすら貫かれる瞬間を待った。
 ずくり、と音がしたかと思うほどの衝撃に、ぎりぎりまでたかぶらされたフミエは、
茂をあわてさせるほどの悲鳴をあげたが、もうその声もフミエ自身には聞こえなかった。
 抜け落ちそうになるほど腰をひいては、容赦なく突き上げられる。わきおこる激しい
快感は、けれども行き場をうしなって、フミエの身体を内側から引き裂きそうだった。
「あ・・・や・・・いやっ・・・やぁっ・・・!」
突かれるたび、せつなげな悲鳴があがり、高くかかげた脚がゆらゆらとゆれる。
大きな波が近づいてくるのを感じ、茂にしがみつきたいのに・・・。
(このままじゃ、おかしくなる・・・!)
そう思った瞬間、いましめを解かれ、自由になった腕で茂に抱きついた。
「あ・・・ぁあああああ―――――!」
つよくつよく、茂を抱きしめながら、フミエの意識はとおのいていった。

・・・シュルッとひもが引き抜かれる感触にふと気づくと、茂が赤くなったひものあとを
指でなぞり、いやすようにひとつひとつ口づけている。見ていると、ふと目があい、
どぎまぎしてフミエは目をそらせた。
(こげな時だけ、やさしくして・・・。)
じわり、と涙がうかんでくる。
(ずるいんだから・・・。)
こうやっていつも茂にまるめこまれてしまう自分もどうかと思うけど・・・。
そんな茂が好きなんだから、しかたがない。
「・・・痛かったか?」
「まだちょっと、しびれとって・・・。」
茂が、しびれた腕をさすってくれる。
「こげなこと・・・もう、せんでごしなさいね・・・。」
「安心せえ。お前が手伝ってくれんと縛れんのだけん。」
茂の温かくて大きな手が気持ちよくて、そのままフミエは眠ってしまった。 
76あぶな絵の女5:2010/12/03(金) 10:49:38 ID:wgVlRqVM
 茂はフミエの寝顔を見ながら、先ほどのめくるめく時間を思い起こしていた。
二の腕や乳の上下に残る赤い縄目を見ると、罪悪感といとしさが同時につのる。
(女を縛って何が嬉しいんだろうと思っとったが、これはこれでそそるものがあるな。
 ・・・だけど、もうこれっきりにしとこう。)
結婚して1年以上が過ぎ、無垢だったフミエも、茂との交わりに深いよろこびを
得られるようになってはいたが、この劇薬のような快楽は、なんとなくフミエには
似つかわしくないように思われた。
(それに、普通のでじゅうぶん、気持ちええけんな。)
すやすやと眠るフミエの頭をなでると、茂は仕事部屋に戻っていった。

 つぎの日。茂に呼ばれて部屋に行くと、茂ができあがったさし絵を見せてくれた。
それは正視できないような淫らな光景だったが、茂が描いただけあって一種の凄み
と迫力があり、官能的な作品にしあがっていた。
「どげだ?よく描けとるだろ。」
息をのんで絵をみつめているフミエの、無言にしびれをきらして茂が聞いた。
「むね、が・・・。」
顔が変えてあるのは当然だが、さし絵の女は、フミエとは似ても似つかぬほど豊満で、
むちむちとした肉身が、くい込んだ縄目からはみ出すようだった。
「ああ、こういう本を読む連中には、この方がうけるけん。」
(私ってやっぱり、色気がないのかなあ・・・。)
ちょっとショックを受けているフミエに、茂が笑いながらスケッチブックを見せた。
「俺はこっちの方もええと思うがな。」
(きゃっっっ・・・!)
それは、ゆうべのフミエのスケッチだった。フミエはあわててそれを奪い取ろうとする。
「それ・・・捨ててください!もういらんのでしょ?」
茂は、スケッチブックを抱きかかえ、フミエに取られまいとして言った。
「勝手に捨てたりしたら、またやってもらうけんな。」
「もぉっっっ!・・・絶対、誰にも、見せんでごしなさいね!」
フミエは、しかたなくあきらめて、台所へ戻っていった。
 茂は、あらためてできあがったさし絵を満足そうにながめた。この手の嗜好は
理解できないと思っていたが、実際に縛られたフミエを抱いてみて、ちょっと
その気分がわかり、この絵にそれを生かすことができた。
(ふーーーーむ。なんでも実践してみることが大事だな!)
いずれまた、茂の実践の手伝いをさせられる運命とも知らず、のんきなフミエの
歌う『埴生の宿』が、台所から聞こえてきた。
77名無しさん@ピンキー:2010/12/03(金) 18:54:13 ID:wQ+2c5O4
>>72
う〜わ、エロ〜いw
「勝手に捨てたりしたら、またやってもらうけんな。」 に萌えた。
なんだろう、ニヤニヤしちゃうよ。自分結構縛りプレイすきだったのか。
GJ!&だんだん!
78名無しさん@ピンキー:2010/12/03(金) 23:10:49 ID:C8wvAmbA
また実践の手伝いをさせられる運命にワロタw
79名無しさん@ピンキー:2010/12/04(土) 15:15:18 ID:1csJON0N
>>72
ふみちゃんの乱れっぷりにハアハアでした
なんだかんだ最後は優しいしげさん素敵
そして何より自分のネタを拾ってくれてほんとうにだんだん!すごくうれしい!
80名無しさん@ピンキー:2010/12/06(月) 18:42:34 ID:QWf10eQo
>>72
GJ!
ふみちゃんから求めるのがやらしさ倍増ですごくイイ


DVD3見てるけど村井夫婦やっぱ可愛い
ふみちゃんがしげーさんの肩揉んでる時おっぱいが後頭部に当たるんじゃなかろうかとか考えてしまう
81名無しさん@ピンキー:2010/12/06(月) 19:27:56 ID:UUDNDLcW
本スレにあったからプロデューサーのブログチェックしてきた。
ゲゲ布美&布枝さんの新撮映像あるそうだ<総集編wktk

DVD3うちにもついに届いた!
やっぱり「おとうちゃんみとれてるよ〜」がイイ…(ノ∀`●)⊃
82名無しさん@ピンキー:2010/12/07(火) 18:48:50 ID:/sov33PK
間取り図見て思ったんだが、ネーム室って台所と居間のあったあたり?
ふみちゃんが主婦としての仕事をしてた場所で、ふみちゃんが手伝いに使ってた天板使って
しげさん的にはふみちゃんとずっと一緒に仕事してたつもりだったのかなぁと空想してときめいてしまった
83名無しさん@ピンキー:2010/12/08(水) 19:20:21 ID:tULDm32d
>>82
ネーム室は確かに昔の台所(流し)があったところだよね。
自分はあの間取りいつもみて思うのは、
昭和56年頃のゲゲ布美のイチャコラ部屋はどこなんだよ!ということだ。
84名無しさん@ピンキー:2010/12/08(水) 21:08:19 ID:Kmq5QhaP
>>83
自分も間取り図見て最終週で見た夫婦の寝室どこ?って思った。
85名無しさん@ピンキー:2010/12/09(木) 15:08:00 ID:AX3LVzI8
最近ちょっこし寂しいですね。
枯れ木も山のにぎわい、こげなものでもよろしければ…。

花嫁衣裳のフミちゃんを見て、しげぇさんは何を考えていたのか?
勝手に手首フェチにしてしまいましたがw。
86小袖の手1:2010/12/09(木) 15:09:10 ID:AX3LVzI8
「それではいけん。もっとこう、垂直にペンを落とすんだ。」
〆切りも間近のある日の夜ふけ、フミエは茂のアシスタントをしていた。
背景の点描をまかされたフミエの手元を見ていた茂が、突然フミエの手を
後ろからつかむと、そのまま点を打って手本を示した。
「・・・はい・・・。」
・・・茂の大きな手が自分の手をつかみ、後ろから抱かれるように身体が
重なっている。茂のはく息が顔にかかり、低い声がいつもより深く耳にひびく。
 茂は仕事となると邪念などには全くとらわれないのだろう。けれどフミエは
思わぬふれ合いに、胸のドキドキが止まらない。
(いけんいけん。私ったら、大事なお仕事の最中に・・・。)
茂が自分の机に戻ってからもしばし呆然としていたが、あわててペンを握り直し、
習ったとおりに点々を打ち始めた。
・・・どのくらい時間が経っただろうか。
「ずいぶん丁寧に打ったな。もうそれでええ。明日もあるけん、お前はもう寝え。」
茂の声にわれに返ると、恐ろしく細密な点描が出来あがっていた。

(・・・しげぇさんは、すぐ手首をつかむんだから・・・。)
寝巻きに着替えて布団に入ったたフミエは、さっき茂につかまれた手首を
そっと握って、感触を思い出していた。
結婚して半年以上が経つ夫婦だから当然のことだが、フミエはもう数え切れない
くらい茂と肌をあわせてきている。
それでも、思いがけない時に手首をつかまれると、動揺してしまう。
それは、「手首をつかんで引き寄せる」ことが、愛の行為ののはじまりを意味する
から・・・だろうか?
二人の夜のはじまりに、甘いささやきなどあったためしがない。照れ屋の茂は、
いきなりフミエの手首をつかんで引き寄せ、唇を奪うことも多かった。    
87小袖の手2:2010/12/09(木) 15:09:59 ID:AX3LVzI8
「手も握ったことがない。」と言うように、男女のふれあいの最初は、手を握る
ことから始まるらしい。祝言の日に初めて顔を合わせた時代ならともかく、今は
たとえお見合い結婚でも、婚約後、すこしは恋人気分でデートすることもできる。
そんな淡いつきあいもなく、いきなり結婚したふたりは、お互いに相手をよく
知りもしない内に身体が先に結ばれ、日々をかさねるうちに心も通い合うようになった、
と思えるこのごろだった。
 フミエは、今さら手を握られることにドキドキしている自分をおかしく思った。
(私たちは、いろいろ人と順番がちがうけん・・・。)
茂と、ドキドキしながら手を握り合うところから始めたかった・・・と、すこし
残念に思いながらも、不思議なえにしに感謝し、フミエは眠りについた。

 フミエが眠った後も、茂はペンを動かし続けていた。その指がふと止まり、
ペンを置いて自分の手をみつめる。
(細うて、白うて・・・なんというか・・・。)
先ほどの、フミエの手の感触を思い出し、たまらなくなる。
(いけんいけん。そげなことをしとるヒマはない。今は〆切りに向かって
 ばく進しとる最中だけん。)
首をふって、邪念を振り払おうとするが、
(あの手首をつかんで、引き寄せると・・・。)
羞じらいながらも、素直に茂に身をもたせかけてくるフミエの、やわらかい肌の感触や、
髪の匂い・・・五感にはたらきかけるさまざまな記憶になやまされる。
(だ〜〜〜!!もう!なにもかも〆切りがすんでからだ!)
ぼりぼりと頭をかきむしり、再び仕事に没入していった。              

 婚礼の日。
白無垢の花嫁衣裳をまとったフミエを初めて見たとき、茂の心に去来したものは、
世間一般の花婿の感想とはやっぱりちょっと違っていた。
 とにかく真っ白だ、と思った。そして次に気づいたのは、花嫁衣裳の丈が
ちょっこし足りないらしい、ということ。ゆきも足りないのか、手首がすっかり
出てしまっている。
(小袖の手、だな・・・。)
フミエが似ている妖怪を、またひとつ見つけた、茂は会心の笑みをうかべて
フミエに微笑みかけた。     
88小袖の手3:2010/12/09(木) 15:11:00 ID:AX3LVzI8
 (手・・・あの手だ!)
翌々日、徹夜で原稿を仕上げた茂は、おそい朝食をすませると、なにごとか
胸に期するところを秘めながら、出版社に出かけていった。
「いってらっしゃい。気をつけて。」
「お・・・おう。」
「?・・・何か私の顔についとりますか?」
「い、いや、なんでもない。・・・ほんなら行って来る。」
茂は、いまだにフミエに見送られることに慣れないようで、かゆくもないのに
頭をぼりぼりとかきながら角を曲がっていった。
(おかしな、しげぇさん。)
フミエは、ほほえみながら家の中に戻った。

 その日、茂が帰ってきたのは午後もおそく、二時を過ぎてからだった。
「おかえりなさい。おなか、すいたでしょう?」
「おう。チキンカリー買うてきたけん、今夜はこれにしてくれ。」
原稿料が入った日は、缶詰のカレーを食べることが、二人のささやかな
ぜいたくだった。
 遅い昼ごはんを食べた後、ここのところ徹夜つづきだった茂は、
猛烈な眠気におそわれた・・・。                            

ふと目覚めると、部屋は真っ暗で、いつの間にか布団に寝ている。
となりを見ると、フミエも自分の布団で眠っている。
(今、何時だ?)
時計を見ると、二時だった。
(よ、夜中の二時か?しまった・・・。)
昼飯を食べた後、つい眠り込んでしまい、なんとそのまま夕食も食べずに
12時間ちかく眠ってしまったことになる。フミエが布団に誘導してくれた
のだろうが、まったく覚えていない。
(腹が減ったなあ・・・。)
それよりも、おとといからおあずけをくっていたことがある。
89小袖の手4:2010/12/09(木) 15:12:28 ID:AX3LVzI8
少し暑いのか、フミエは布団から手を出している。茂はその手首の内側の、
やわらかい部分に唇をあてた。舌にここちよい感触に、思わず吸い上げ、
甘噛みして味わうと、フミエが目を覚まし、眠そうな声でたずねた。
「んん・・・。あ、あなた・・・どげしたんですか?」
「すまん、起こしたか。・・・腹が減ってな。」
「・・・何か、こさえましょうか?」
そう言うフミエの顔をのぞきこみ、やわらかな唇に喰らいついた。
まだ目が覚めやらぬまま、むさぼられていたフミエだったが、茂の激しい口づけに
しだいに応えはじめた。
「はぁ・・・あ。あ・・・あの・・・ごはんは・・・?」
唇が離れると、息をはずませながらも、フミエは茂の空腹が気になった。
「こっちが先だ。」
茂が、乱れたゆかたの胸もとに顔をつっこみ、ふたつの果実を交互にあじわう。
乳首を舌でなめころがすと、フミエが身悶えて茂の頭をかき抱いた。
その間にも、指は下着をおろそうとする。手伝おうとするフミエの手をつかんで
おのれの昂ぶりをにぎらせ、あとは足で引きおろした。
フミエの左足をつかんで大きくひろげさせると、濡れそぼつ中心部を貫く。
もう片方の太腿を足で抑えるようにして、左足をつかんだまま深く突き込んだ。
「ああぁっ…んっ。」
甘い衝撃にフミエの腰が反り返る。いつもと違う角度の責めにとまどい、
茂の背を求めて腕をのばすが、すがるものもなく、フミエの手はむなしく
布団の上に落ち、敷布をつかみしめた。     
90小袖の手5:2010/12/09(木) 15:13:37 ID:AX3LVzI8
 声を漏らすまいと手の甲を噛むフミエを見下ろしながら、茂は腰の動きを
早めた。フミエがくぐもった叫びをあげて昇りつめた。
茂はフミエの右手をつかむと、ぐいっと引っぱり起こした。まだわなないている
内部をさいなむ剛直の角度が変わり、フミエが弱々しい悲鳴をあげる。
身体に力が入らず、後ろに倒れそうなフミエの背中を抱いて支えてやる。
絶頂の余韻に身体をふるわせているフミエは、痛々しくもたまらなくいとおしく、
茂の嗜虐心をあおりたてた。
フミエの腕を首にまわさせると、右手を後ろについて強く腰を突き上げ、
容赦なく責める。
「だ・・・めっ・・・そげに、したら・・・。」
「何度でも、いったらええ。」
フミエは必死で右手で茂の肩につかまりながら、左手は後ろについて、
茂の動きにあわせて啼きながら身体を揺らした。
お互いの足を斜めにからませあいながら、一番感じる部分をこすりあううち、
動きは止まらなくなり、ふたりの切迫した息づかいだけが室内にひびいた。
「あぁっ・・・あ・・・ぁああああ―――――!」
絶叫とともに、フミエの腰ががくがくとうちふるえ、茂はつよい収縮の中に
すべてを吐き出した。
つながりあった身体の、たがいの脈動だけを感じながら、ふたりはしばらく
そのままつよく抱きしめあっていた。                       」
91小袖の手6:2010/12/09(木) 15:14:52 ID:AX3LVzI8
 ・・・熱が去ったあと、フミエは布団の中で茂の胸に顔を寄せ、甘い余韻に浸っていた。
今日のように激しく責めた後は、罪悪感にかられるのか、茂はフミエが甘えるのに
まかせて黙って抱いていてくれたり、とりとめのない話をしてくれることが多く、
フミエは愛された後のそんな時間をとても大切に思っていた。
「・・・エラかったか?」
「・・・死ぬかと、思いました・・・。」
「でも、よかったんだろ?」
「・・・知りません!」
羞じらうフミエの肩を抱いて、甘く口づける。フミエの中ではまだ悦びの残滓が
くすぶっており、ほんのわずかな刺激でまた燃え上がってしまいそうな自分に
戸惑った。
 茂がふとフミエの腕をつかんで空中にさし上げた。
(え?また・・・?)
ドキッとしたフミエをよそに、茂はその手をおいでおいでをするように動かした。
「小袖の手・・・という妖怪を知っとるか?」
「?・・・いいえ。」
「着物の袖口から白い手がはえて、まねくんだ。」
フミエの脳裏に、衣桁にかけられたうつくしい小袖から白い手が出ている情景
が浮かんだ。
「いやっ・・・。」
ゾッとして茂にしがみつく。さっき茂と愛し合っていたときは気にならなかった
深い闇が、悪意を持ってせまってくるように感じられる。
「そげにこわがらんでもええ。小袖の持ち主の恨みが宿って災いをまねいたという
 話もあるが、持ち主が大切に愛用したために魂が宿ったという説もあるんだ。
 器物の怪というて、いろいろな生活の道具に魂が宿って動き出す、という考え方が、
 日本には古来からある。大切なモノには、魂があるような気がするだろ?」
フミエは、祖母のくれたかんざしや、母が夜なべして縫ってくれた着物のことを
思った。それらは、ただのモノではなく、フミエにとっては、くれた人の魂が
こもっているように思える大切なものだった。       
92小袖の手7:2010/12/09(木) 15:16:05 ID:AX3LVzI8
「婚礼の時な、花嫁衣裳を着とるお前を見て・・・。」
茂がその後に続けた言葉は、フミエの淡い期待を大きく裏切るものだった。
「『小袖の手』に似とるなあ・・・と。」
「もぉ〜、また、妖怪ですか・・・。」
フミエはちょっとふくれてみせた。だが、茂にとって妖怪は気味の悪いものでは
ないらしい。フミエを妖怪にたとえるのは、ちょっと変わった愛情表現なのだ。
「白い着物から、ニョキーッと出とったからなあ。」
「もうっ、そのことは、言わんでください・・・。」
引っ込めようとするフミエの手を茂ははなさず、手首の内側に唇をつけて強く吸った。
「あ、あとになってしまうけん・・・。」
「ええじゃないか。俺のもんだという印だけん。」
(しげぇさんの、もの・・・。)
フミエは、恥ずかしくて茂の胸に顔をうずめた。愛された後のこころよい疲れが
身体をひたし、しあわせな気分で目を閉じた・・・。

・・・茂は、急に空腹感におそわれた。
(そうだ、腹が減っとったんだ。)
「おい、フミエ、なんか食わしてくれ。フミエ・・・。」
フミエは、急速に深い眠りにおち、起きそうにない。
無理やり起こすのも、かわいそうになり、茂はしかたなく台所に立っていった。
(やれやれ。あげにいじめんだったらよかったかな。)
フミエは、茂が起きないので、夕食は残り物ですませたようだ。
冷や飯に味噌汁の残りをぶっかけてかきこみ、なんとか空腹をおさめると、
茂はフミエのかたわらにもぐりこんだ。
カレーを温めようかとも思ったが、やめておいた。
(フミエがあっためた方がうまいけん・・・。)
カレーの缶詰など、誰が温めても同じようなものだが・・・茂はフミエが温めた
カレーが食べたかった。
(明日こそは、喰うぞ・・・。いや、カレーをだ。)
あどけない顔をして、こちらを向いて眠っているフミエの、ほおの下になっている
手首に、茂に愛されたあとが残っている。茂はそっとその手を顔の下からはずして
にぎると、満ち足りた思いで眠りにおちた。
93名無しさん@ピンキー:2010/12/09(木) 22:33:10 ID:SWTCcP5h
>>86
GJ〜だんだん!
>(明日こそは、喰うぞ・・・。いや、カレーをだ。) にワロタw
エロの強引さにドキドキする。
てかさすがゲゲは妖怪物知り博士。小袖の手なんて知らない。
とことん妖怪にしか例えられない布美ちゃんカワイソスw

最近はマターリ進行だけど、スレは毎日のぞいてる。細く長く続くのがいいよね。
自分も書くけど、遅筆でいけん。
94名無しさん@ピンキー:2010/12/09(木) 23:57:15 ID:cHrEeNRV
>>86
だんだん
フミちゃんの乱れ方がエロくて良いw
95名無しさん@ピンキー:2010/12/10(金) 21:31:10 ID:Nrssi3h2
>>86
GJ!
ふみちゃんの乱れっぷりもさることながら手首ちゅーがすごくイイ!萌えた!
96名無しさん@ピンキー:2010/12/11(土) 00:37:26 ID:HXznBpBK
>>86 GJ!
ふみちゃんは手が大きい分
細い手首がさらに細く見えるから、
ゲゲの目もより惹きつけられそうだ
まあ、ゲゲが見とれるのは手首だけじゃないけどw

それにしても、
こんなに何度も繰り返して読むスレは
ここが初めてだ…
職人さんがた、ほんとにだんだん!
97新春の風1:2010/12/11(土) 04:54:53 ID:m9Q7oZTc
棚の上のラジオと、出窓に置かれた時計が同時に0時を報じる。
昭和37年の始まり。
新旧の年を跨いで深く交わされる口づけは、こみち書房のキヨからお裾分けでもらった甘酒の味。
安来から送られてきた出雲そばを、茂が年越しそば代わりに食べていた、
その丼もまだ片付けていないのに、もう背中の方でしゅるしゅると帯が解かれる音がしている。
ラジオからは賑やかな音楽が流れてきて、新年を祝う人々の声。
「っ…ん――っ…」
じたばたと、やや抗ってみる。
その抵抗に少しだけ顔を離した茂が、しかしまた不敵な笑みを浮かべて口を塞ぐ。
「んっ、も…」
既に半分顕わになってしまっている素肌に、滑り込んでくる指がこそばゆい。
「待っ、ちょ…んっ、あな、た」
どんどん奪われていく理性が、瀬戸際のところで攻防している。
背中を支えられて、突き出すような姿勢になった乳房を舐り吸われて、
自分でも驚くほどの甘ったるい嬌声が、布美枝の喉からこぼれた。
「あっ……っ、ゃっ…んっ」
細い首筋から、胸の谷間へ、そして乳輪に円を描くように舌は這いまわり、
背筋はむず痒く、鳥肌が起つ。
「貴方…待っ…てって…」
「なんだ」
返答するのもおざなりに、茂は布美枝を貪るのを止めない。
今日の愛撫は、いつもの激しさとはまた違った趣がある、と布美枝はふと思った。
その理由も何となく判る…。

―――さすがに正月ということもあって。
間借り人の中森は、どこから工面してきたのか、故郷への電車賃を捻出し、
昼間に軽い挨拶をすると、ほくほくと家族の待つ大阪へ戻っていった。
「気をつけて」
気のない見送りの言葉を投げたあと、茂が意味ありげな視線をちらりと布美枝に寄越した。
そのときの眼差しの「意味」が今夜のこの激情だとしたなら。
(助平なんだけん…)
中森に恨みこそないけれど、いくら存在感の薄い同居人とはいえ、
ふたりにとって二階の住人の存在は、睦事の際の最大の気がかりではあった。
それがここにきて結婚以来初めて、この家にふたりきりになったのである。
98新春の風2:2010/12/11(土) 04:55:39 ID:m9Q7oZTc
布美枝は茂への抵抗を諦め、その情熱に身を預けることにした。
寝間着を奪われ、寒さと羞恥に咄嗟に掛け布団をかぶると、
「こら」と軽く怒られた。
「だって…寒い」
「…ったく」
自らも厚い胸板を晒して、茂は布美枝を抱きしめ、今一度愛しげな口づけをくれた。
もともと布美枝は冷え性で、特に冬場は手足がいつも冷たい。
けれど茂は逆にいつでも温かく、普段から戯れでアンカ代わりに身を寄せると、
怒りながらも抱きしめて温めてくれる。
愛しい男に包まれる幸せは、身体の温もりよりも布美枝の心を温めてくれる。

「ふ…」
硬く尖った乳房の先端を甘噛みされながら、秘部へ右手の侵入を赦す。
会陰を楕円になぞられ、突端の陰核を摘み弾かれる。
やがて花弁の奥に包み込まれた入り口へ、長い指が入り込み、何かを探るように蠢いて進む。
快感に震える腰に力が入らず、身体の支えを求めて茂に縋りついた。
顎をのけぞらせてぎゅっと目を閉じると、耳元で低い声が囁く。
「もっと啼け」
「え?あっ!…やっ」
左脚を抱えられ、ひょいと簡単に腰が持ち上がった。
股の間に埋めた茂の顔が、しっかりと見える。
「…あぁっ…!」
何とも言えない痺れが全身を貫き、ずくずくと疼く場所から液が溢れ出す。
甘い蜜でも吸い取るかのように、それを舐め吸う夫の猥らな顔を、直視することなどできなかった。
「あ、…っ、なたっ…!んっぁ……っやぁ」
包皮を剥いて入り口を探り当てた舌が、ぬるぬると割り入ってくる感覚に、叫びに近い声で喘いだ。
尻にまで伝う唾液と膣液が、より一層の恥辱を誘って布美枝を昂ぶらせる。
胎の奥のそのまた奥から、放たれる決壊の予感に、しかし抗うことはできずに、
焦らされるようにじわじわと昇らされてから、すとんと一気に堕とされた。
99新春の風3:2010/12/11(土) 04:56:20 ID:m9Q7oZTc
身体中がじんじんして、横たえる姿態が我ながらだらしないとも思ったが、
自身の身体でありながらもうどうにもコントロールが利かない。
俎上の鯉よろしく、茂の成すがままに身を任せるしかなかった。
が、ここまできてやっと、嵐のような茂の攻めがぴたりと止んで、
柔らかく緩く、慈しむようにふわりと覆いかぶさってきて、布美枝の頬を撫でてくれた。
ぼんやりとその顔を、顎から瞳までゆっくりと眺め上げた。
「…意地、悪…」
「なして」
心外だ、という風で、茂は口を尖らせる。
「新年の…挨拶も…させてくれん、で…」
少し正気に戻って、火照った顔を隠しながら背けたが、
うなじのあたりに吸い付く唇に、また内側の燻ぶりを刺激された。
「あんたのそういう律儀なとこ」
空気を震わせることなく直接耳に入り込んでくる声音は、それだけで悦を与えられる。
「親父さんそっくりだな」
父の襲来からこちら、何かにつけて茂は源兵衛を持ち出してきては布美枝をからかう。
けれど夜伽の最中にあの厳つい顔を思い出させられると、少し気恥ずかしい。
くすくすと笑う低調の音と、甘い息を耳に吹き込まれて、目を閉じて小さくのけぞる。
しばらくそうして啄ばむようなじゃれ合いをしていたが、
「…も、ええか?辛抱が利かん…」
ぬめった隆起を宛がわれ、先ほどまでの優しい愛撫は、自分を気遣ってくれていたが故なのだと、やっと悟る。
茂に我慢を強いたことを申し訳なく思いながら、
言われずとも、こちらももう疼きを抑えきれない、というのが本音で。
むしろ強請るように布美枝は頷いた。
100新春の風4:2010/12/11(土) 04:57:10 ID:m9Q7oZTc
茂の首に腕を絡ませ、彼の熱を受け入れる。
狭い経路に割り入ってくる男根に、鎮められた昂ぶりを再度奮い起こされた。
口づけの狭間で零れる茂の官能的な呻きに、心臓が鷲掴みにされたように収縮する。
「……っ…あ…」
布美枝の肩に顔を埋め、ひとときの波をやり過ごしている様子が窺える。
顔にかかる茂の髪がくすぐったくて、首を振り払った。
横を向くと、横目で布美枝を見返す茂が、ふ、と口の端を上げて、眼で何かを予告する。
瞳の中の思惑を読み取ることができずにいると、いきなり大きく腰を引かれた。
「…はっ…!」
充填が外れてしまうかしまわないか、というところから、また一気に突き上げられる。
大きく揺さぶられる、あまりの力強さに床が軋んだ。
「ああっ…っ!」
遠のきそうになる意識を必死で追いかけて、茂に縋る手の力が強くなる。
烈する貫きに思わずぎゅっと目を閉じると、視覚以外の触覚が余計敏感になる。
夫の熱を感じ取り、息遣いを聴き、髪の匂いを吸い、唇の甘さを味わう。
声を枯らすほど喘いでも、「もっと聴かせろ」と耳元で妖しく命じられる。
「あ、あ、っ…ふ、ぅ…んっ、んん…!」
請われたせいでなく声高になるのは、きっと今夜の熱情はあまりにも狂おしいから。
所詮、理性が飛んでしまえば獣なのだと、自らの性に開き直るほどに。
「貴方…ぁ…っも、ぅ…、いけ…んんっ」
うっすらとぼやけていく視界の中に、快感と苦しみの間の表情の夫が見えた。
いつまでも見ていたい、愛しいひと…。
やがて放たれた白熱が胎を潤していくのを、布美枝は恍然の中に受け止めた。
101新春の風5:2010/12/11(土) 04:57:55 ID:m9Q7oZTc
― ― ―

深夜のラジオから流れてくるのは、歌謡曲のリクエスト集か。
夢見心地で茂の腕枕に寝そべり、軽く口ずさむ。

「朝になったら初詣にでも行くか。深大寺」
「…はい!」
布美枝の笑顔が輝いて、大きく何度も頷いた。
「いつもと違って人がようけおるけんな」
「そげですか」
「あんたはいつまで経っても田舎くさくてぼんやりしとるけん、すぐ迷子になりそうだ」
「む…」
今度は大袈裟に頬を膨らませて、子どものようにふてくされた。
「ははっ、餅が膨らんだわ。美味そうだの」
「もうっ」
恨めしげに下から見上げてみても、微塵も気にしてないようだ。
「…手を…繋いでくれとったら、迷子にはならんのですけど」
「…だら。人前でそげなこっ恥ずかしい真似できるか」
「けち」
ふたりきりになったら、あんなに激しい情を交わしてくるくせに…。
布美枝はまたぷっと膨れてみたが、茂はもう目を閉じて静かになり始めた。
今月末には結婚して1年になる。紙婚式なんて、茂は覚えてくれているだろうか。
そっと手をのばしてラジオを止め、温かな胸の中へ沈む。
窓際の時計が時を刻む規則的な音に、布美枝もやがて眠りに落ちた。

翌朝、晴天に恵まれた初春の空気は格別に清々しい。
自転車を準備して、約束の初詣に出かけようとしたとき。

「あーっ、いけん」
「どげしました?」
茂ががちゃがちゃと自転車のチェーンをいじくっていたかと思うと、悔しげな声をあげた。
「チェーンが外れて直らん」
「あら」
ずいぶん年季の入った茂の自転車は、時折妙にギコギコという音をたてたり、
パンクを繰り返したりと、どうも老衰に近い状態にある。
「歩きますか?」
「うーん」
ぼりぼりと頭を掻いてから、ちらと布美枝の自転車に目線を移し、
「仕方ない」独りごちて、布美枝から自転車のハンドルを受け取った。
102新春の風6:2010/12/11(土) 04:59:46 ID:m9Q7oZTc
「乗れ」
「えっ?…って」
「歩いていくにはちょっこし遠いけんな」
「けど」
「大丈夫だけん、ほれ、早く」
言いながら、サドルに跨る。
布美枝もおそるおそる、後ろの荷台に横乗りして、茂の服を掴んだ。
「しがみついとかんと振り落とすぞ」
「え、は、はいっ」
慌てて広い背中に抱きつくように、両腕をまわす。
「大丈夫ですか?」
「おう、行くぞ」
こぎ始めこそふらついたものの、いったんスピードに乗ると安定し始める。
最初は片腕で自転車というのでも少し面食らったのに、
この人はどこまで器用なんだろう、と布美枝は思った。

やがて商店街にさしかかった辺りで、「まずい」茂がぽつりと呟いた。
「スピーカーだ」
「え?」
ややスピードを上げたような気がして、前方を覗いてみると。
「あーら、先生と布美枝ちゃんじゃない!」
なるほど、商店街のスピーカー三人衆、靖代、徳子、和枝の姿があった。
茂は小さく「どうも」と言うと、ますますペダルを強く踏んで一目散で三人を遣り過ごした。
後ろで三人の甲高い声が聞こえる。
「やーだ、お正月から仲いいことー!」
「ご馳走さまー!」
きゃらきゃらと笑われたのが、布美枝も照れくさくて俯いた。
手を繋いで歩くより、ずっとこちらの方が恥ずかしかったかも。
火照る頬をそのまま茂の背中に擦り宛てて、その温もりに浸った。

新春に吹く風は冷たく、けれどその風の盾になってくれるこの背は温かく。
力強く進む茂に寄り添って、きっと今年も幸せに暮らせますようにと。
布美枝は目を閉じて祈った。


おわり
103名無しさん@ピンキー:2010/12/11(土) 16:27:00 ID:HxUgKCAE
>>97 GJ!
「はじめてのお正月」は、書かなきゃいけんwと思っとりました。
しかし、中森さんいないとこんなに盛り上がるとは(中森さんゴメン)、このど助平が!w
でも、このころはまだ大阪に帰る余裕があったかと思うと嬉しいw。

そしてまさかの2ケツ…!もうオープニングのあの画像をちょっこし修正して
脳内で動画になっちょりますw。
104名無しさん@ピンキー:2010/12/11(土) 19:22:58 ID:H+FoNFao
>>97
GJです!
自転車の二人乗り、可愛くて映像が目に浮かびます
新婚時代のエピソードはやっぱり初々しくていいなぁ〜
105名無しさん@ピンキー:2010/12/12(日) 15:51:09 ID:qEPJOeBx
>>97
GJです!
初々しい!

前スレ最後のいちせんエピ、
もう一回読みたい…
落ちてしまってるからなぁ…
106名無しさん@ピンキー:2010/12/12(日) 17:21:49 ID:brjVoFhR
>>97
GJGJ!
もっと啼けとか助平すぎるよしげさん…!
新婚からその後も割と声抑える環境だもんな…思う存分聴きたいよな
二人乗りを女将さん達にからかわれてるのも可愛い
107名無しさん@ピンキー:2010/12/12(日) 19:04:30 ID:NQAOKhkj
>>97
GJ!
ドラマでは見れなかった、自転車二人乗りエピが読めて嬉しい
ガッツリ脳内再生させてもらいましたw
年越しのキスも何かエロくて、イイ!
108名無しさん@ピンキー:2010/12/13(月) 20:21:52 ID:n1QdaX3U
>>97
だんだん
エロも素晴らしいし餅のようだとからかったり手を繋いでほしいと言ってみたり夫婦かわいすぎる!
109名無しさん@ピンキー:2010/12/14(火) 18:53:00 ID:1f5POy3T
昨日の某バラエティーでおかあちゃんの中の人が目玉の親父さんにキスした時に
頭の中で自動的に親父さんがおとうちゃんにすり変わった
きっと真っ赤になってだらっと言ってくれるに違いない…
110名無しさん@ピンキー:2010/12/14(火) 19:01:16 ID:LQV5rpzL
>>109
らくだ色タイツのムカイリ?!やめてくれ〜〜w
慎吾ちゃんは必死でシェイカー?振る真似してたけど、あの腰振りは
どうしても違う方向のイメージをしてしまっていかん!
111名無しさん@ピンキー:2010/12/15(水) 00:55:13 ID:tziih6Br
>>110
なんで頭部だけなんだよwww
112名無しさん@ピンキー:2010/12/15(水) 01:15:16 ID:h3oBQi4+
>>86
>>97
だんだん!!
お二人の職人さんが描くゲゲ、萌え萌えでしたw
亭主関白で、照れ屋で、ちょっこし強引な所
ドラマのまんまですね
また宜しくお願いします!!
113名無しさん@ピンキー:2010/12/15(水) 01:26:16 ID:h3oBQi4+
らくだ色のタイツは履いてないけど
らくだ色のシャツは初夜の時に着ていましたよね
青いチェックっぽい浴衣?の下にw
あの夜は多分、らくだ色のももひきもお揃いで履いていたのではないかとw
そういうジジ臭い服装や話し方、向井氏の爽やかさ・・・それらが良い感じでバランスとっていましたね
114名無しさん@ピンキー:2010/12/15(水) 21:24:23 ID:n51v69py
浴衣&布団が、パジャマ&ベッドになると色々と雰囲気変わるな
115名無しさん@ピンキー:2010/12/15(水) 22:32:21 ID:9hLxjLPu
今日の日テレの歌番組然り、この前のスマスマ然り
民放でゲゲフミを観ると、物凄く得した気分になるw
116名無しさん@ピンキー:2010/12/16(木) 00:13:18 ID:DGhNGFJ5
民放で映像使う時は名場面的なのが多いからゲゲフミ率高くて良いよね
妄想女将のシーンもってきたマニアックな番組もあったなw
117名無しさん@ピンキー:2010/12/16(木) 00:48:37 ID:RFCBzTl3
>>116
ネプチューンのブットバース!で流れてたなw>妄想女将etc.
あれはあれでヨカタ
118名無しさん@ピンキー:2010/12/16(木) 15:22:20 ID:OtWcHILZ
ガラにもなく、いちせんパロに初挑戦してみました。
極端に情報量が少ないので、年齢や職業以外はほとんど捏造wしてみました。
それぞれに解釈があるでしょうが、もし違っていてもひらにご容赦!

でも、どうしてもゲゲふみが宿ってしまう。現代的になってはいるけれど、
わりと古風なふたり、という感じもするし。そこがいいんですが。
119誰にも言えない1:2010/12/16(木) 15:23:37 ID:OtWcHILZ
「誕生日おめでとう、綾子。」
「ありがとう、ゆうちゃん。」
今日は綾子の23歳の誕生日。
 小さな広告会社で働く綾子と、家業のせんべい屋をきりもりする祐一が、
つきあいだして4年ちかく経った。週休二日の綾子と、平日が定休日の祐一は、
休日が合わないのでなかなかゆっくりデートもできない。
今日は、明日の定休日に合わせて綾子が有給休暇をとってお泊りデート。
感じのいいレストラン。スプマンテで乾杯すると、祐一がプレゼントを渡した。
「わあ。かわいい。」
箱の中のピアスを取り出して耳に合わせてみせる。ふだんよりちょっと
ドレスアップした綾子の、ノースリーブのワンピースから伸びる腕がうつくしい。
「あの、さ・・・綾子。」
「ん?なに?」
「いや、何でもない・・・。」
祐一はまぶしそうに綾子から目をそらした。

ホテルの一室。窓からクリスマスのイルミネーションが見える。
「わあ。もうイルミネーションやってるんだ。きれい・・・。」
歓声をあげて窓辺に近づいた綾子を追って、祐一もそばに立った。
「なあ・・・。こういう時って、ご両親にはなんて言うの?」
「ああ・・・。うちの父ね、『もう大人なんだからなんでも自己責任でやれ!』
 って言うひとなの。でもね、母から聞いたところでは、だからといって
 それを娘の口からは聞きたくないらしいの。だから、母に「デートに行ってきます。
 帰りは明日になります。」って言うだけ・・・。それが暗黙の了解。」
「ふうん。娘を持つ父親って、やっぱりつらいんだな。」
「ふふ・・・。ゆうちゃん、申し訳なくなっちゃった?」
「・・・この話は、これでおしまい!」
祐一は、綾子のむき出しの肩に口づけした。綾子が祐一の髪をいとしそうに撫でる。
120誰にも言えない2:2010/12/16(木) 15:24:32 ID:OtWcHILZ
祐一が綾子のほほを手で包んで口づけしようとした時、
「ん・・・ゆうちゃんの手、おせんべいのにおいがする・・・。」
綾子が小さく笑った。祐一はあわてて手をひっこめた。
「・・・よく洗ってるのに・・・。しみついちゃってるんだな。」
祐一がちょっと暗い顔をした。
「なんでだめなの?香ばしくていいにおいなのに・・・。」
「ダサいだろ?」
「ふふ・・・。」
綾子はいたずらっぽく笑うと、祐一の指をパクッと口に入れた。
長くて、形のいい祐一の指・・・祐一には内緒だけれど、時々その動きにみとれて
しまう、綾子の大好きなそれを、口にふくんで舌でチロチロなめる。
「よせよ。くすぐったいっ。」
祐一はちょっと抵抗したが、その行為がなんだか扇情的で、綾子はほんの
冗談のつもりだったのに、祐一に火をつけてしまったようだ。
「ふゃっ!」
祐一が綾子の口の中で指を折って、上口蓋をひっかいた。くすぐったがって
指を離そうとする綾子の顔をとらえてなおも口中を指で愛撫する。
「ん・・・んっ・・・ふっ・・・うぅん・・・。」
唾液が口のはしからこぼれ、ちょっと戸惑っている綾子の顔を引き寄せて指をぬき、
唾液ごとなめあげるように口づける。
「ふ・・・ぅふぅ・・・んん。」
下唇を食べたり、舌と舌を突き出してなめあったり、恋人同士にしか出来ない
セクシュアルなキスの応酬に、綾子の膝からだんだん力がぬけていった。  
121誰にも言えない3:2010/12/16(木) 15:25:32 ID:OtWcHILZ
「いますぐ・・・いいか?」
「だ、め・・・シャワー・・・浴びなきゃ。」
「シャワーなんかいいよ・・・。今ほしいんだ。」
祐一が綾子をひょいっと抱えあげてベッドまで運んだ。
「やっ・・・やぁん!おろして、おろしてって!」
恥ずかしがって脚をばたつかせる綾子をそっとベッドにおろすと、キスしながら
背中のジッパーをおろす。下からあらわれたランジェリーの冷たくなめらかな感触に
手をすべらせ、すそのレースにたどり着いた指が、綾子の肌をなであげながら
全てをはぎとってゆく。                               
綾子も、祐一のワイシャツのボタンをはずし、たくましい胸から肩に手をすべらせる。
ふたりは深く口づけあいながら素肌と素肌をからませ、たかまりあっていった。    
 綾子の両手をあげさせて指をからめ、祐一が胸の突起を口にふくんで吸う。
「はぁ・・・ん。あ、あ・・・。」
もう一方の乳首を指でこねると、綾子がピローを握りしめてあえいだ。
祐一がだんだんと愛撫の位置を下げていく。綾子の両脚の間に身体を入れて
大事な場所のふくらみにキスすると、ひざの裏に手を入れて脚を持ち上げた。
「それ・・・しなきゃ、だめなの?」
いつもは秘められたその部分が、急に大気にさらされてひやっとする。
だがその冷たさとは逆に、羞恥と欲望が内側から綾子の身体を火照らせた。
「・・・綾子は、気持ちよくなってればいいの!」
祐一はかまわずにそこに口づける。思わずかばおうと下りてきた綾子の手をとって、
自分の両腿を持たせた。
「ほら・・・恥ずかしがらないで、ちゃんと持ってるんだぞ。」
祐一に舌と唇でここを愛される時は、自分の手で両脚を大きく広げさせられる。
祐一にすべてを見られていると思うだけで、そこが赤く充血し、愛液がとろとろと
とめどなくあふれてくるのがわかる。  
122誰にも言えない4:2010/12/16(木) 15:26:27 ID:OtWcHILZ
「今さら恥ずかしがることないだろ?俺、綾子のこと、すみからすみまで
 ぜ〜んぶ、知ってるんだからな。」
はじめてこうさせられた時は、恥ずかしくて恥ずかしくて泣いてしまった。
もちろん、その後、このうえなく優しくなぐさめてはくれたのだけれど・・・。
 今だって、恥ずかしいのは変わらない。責められ始めると、本能的に脚を閉じて
しまいたくなる。
「どうして、こんなかっこう・・・させるの・・・?」
「だって、綾子すぐ脚とじたり、逃げようとするだろ?じっとしてなきゃだめだよ。」
友達感覚でつきあってはいるけれど、ベッドでは圧倒的に祐一がリードしていた。
祐一にみちびかれ、自分の中から引き出される怖いくらいの快感と、彼の残酷なやさしさの
とりこになっている自分を(ちょっと危険かも・・・。)と不安になることもあるけれど、
祐一のことを大好きな気持ちに変わりはなくて、全てを受け入れてしまう・・・。      

 祐一は脚の間に顔を入れ、わざと周辺部から軽い口づけを始めた。自分の両脚の間に
祐一の顔があるのを正視できなくて目を閉じると、こんどは100%の感覚に直撃される。
これから与えられる責め苦のような快感のまえでは、綾子はまったく無力だった。
 指よりもやわらかい舌は、綾子の真珠を確実にとらえ、またとがらせて侵入してくれば、
綾子を狂乱させるほど残酷な動きをした。
「かわいいよ・・・あや・・・。」
祐一が綾子の中に指をしのびこませる。長い指を中で折って責めながら舌で敏感な
部分を舐め擦られ、綾子の脚をつかむ指が白くなるほど力が入った。
「がまんしないで、いっちゃえよ・・・。」
「ん・・・ゆうちゃ・・・あぁ・・・ん。ゆうちゃ・・・ん・・・・・・んぅっ…!」
綾子は、祐一の巧妙な愛撫の前に、なす術もなく腰をふりたて、この責め苦からの
解放を求めて無意識に秘部をつきだした。
広げられた部分をさらに剥き出しにし、祐一が舌を押し付けた。
「やっ・・・やぁ、んっ・・・。だめっ・・・そっ・・・あっ・・・ああ―――――!」
容赦なく圧迫をくわえると、綾子の内部は中に入ったままの祐一の指を食いしめ、
脈動をきざんで絶頂をつたえた。
123誰にも言えない5:2010/12/16(木) 15:27:10 ID:OtWcHILZ
「ぅ・・・うぅ・・・ぅっ・・・。」
綾子が顔をおおって泣きだした。つぷり、と指をぬいて祐一が綾子のところまで
顔を近づける。
「・・・ごめん。いじめすぎた・・・?」
「は、ずかし、すぎるよ・・・。」
祐一が、なだめるように小さく口づけながら、涙を吸ってやる。
「食べたいんだよ、あやのこと・・・。」
祐一は、ふだんは綾子、と呼んでいるのだけれど、愛しあう時は「あや」と呼ぶ
ことが多かった。そう呼ばれる時はこういう性愛のさなかにいる時、とすりこまれて
いるせいか、呼ばれるだけで綾子はだらしなく溶けていってしまう。
(なんだか、ふわふわする・・・。)
しびれる身体が、シーツの上で浮かんでいるように気持ちいい。              
「もっと食ってもいい?」
・・・もちろん、唇で食べるだけではすまないことはわかっている。
「ほら・・・あやのこと欲しくて、こんなになってるよ・・・。」
祐一に握らされたものは、これ以上ないほどみなぎって、綾子の手に脈動を伝えている。
キスしようとして頭を下げかけると、祐一がそれをおさえて、
「だめだよ。もたなくなっちゃう。また後でして。」
横向きに向かい合ったまま、綾子の左脚をあげさせる。じゅうぶんすぎるほど
うるおってうずいているそこに昂ぶりをあてがうと、グッと突き上げた。
「はぁっ・・・ん・・・あぁ・・・ん・・・ん〜っ。」
深く突き入れながら、祐一が起き上がって、綾子の肩をつかんで引き寄せ、さらに
奥までつらぬいた。
「ああ・・・ん。ゆうちゃ・・・ん・・・ゆ・・・うちゃ・・・ぁん。」
「気持ちいいよ・・・あやのなか。」
祐一はしばらく綾子の内部の感触をたのしんでから、リズミカルな動きをはじめた。
「あぁっ・・・ま・・・た・・・っちゃ・・・ぅう・・・ん。」
深く突きこんでこねあげると、達したばかりの綾子の内部は再びけいれんした。
「感じやすいよね・・・あやは。」
祐一は嬉しそうにそう言うと、今度は綾子の両腰をつかんで揺さぶった。
「ぁん・・・だめ・・・だめっ・・・ゆうちゃんっ・・・!」
「あや・・・俺も・・・。」
きつく抱きしめあって同時に昇りつめながら、お互いの鼓動を全身で感じあった。  
124誰にも言えない6:2010/12/16(木) 15:29:15 ID:OtWcHILZ
・・・愛しあったあと、シーツの中でこうしていつまでも祐一と寄り添っているのが
綾子は好きだった。あたたかくて、でもさっきのみだらな余韻がのこって少しエッチな
気分・・・。いつまでもこうしてまどろんでいたい・・・。
「ちょっと待ってて。」
祐一が起き上がってベッドから出て行った。綾子はちょっと寂しい気持ちで待った。
「綾子・・・起きて。」
(え〜?なに?)
綾子はしかたなくシーツを胸に巻きつけてベッドの上に起き直った。腰にバスタオルを
巻いただけの祐一が、ベッドのわきにひざまずいている。
「綾子・・・。俺と結婚してください。」
そう言って、祐一はベルベットを張った小箱をさし出した。
「え・・・。」
小箱をあけると、小粒のダイヤモンドの指輪。
(な・・・なんでこんな時にこんな所で・・・しかもこんなかっこうで?)
「・・・だめ?」
「だ、だめじゃないけど・・・。」
「ごめん・・・でも、今じゃないと、言えなくなっちゃいそうで・・・。俺、今日ずっと
 綾子にプロポーズしようと思いながら言い出せなかったんだ・・・。」
「な・・・なんで?」
「急に自信がなくなってきたんだ。俺と結婚することで、本当に綾子がしあわせに
 なれるのかな・・・って。今の綾子って、夢だった仕事ができてイキイキしてるだろ?
 俺と結婚したら 店も手伝ってもらわなきゃならないし、親ともつきあって
 いかなきゃならない。そんなに儲かってるわけでもない小さい店の女房って、
 今の仕事と比べたらやりがいあるのかな・・・って。」
「・・・ゆうちゃんは、おせんべい屋さんに、やりがい持ってないの?」
「俺は・・・持ってるよ。大学でるまでなんにも考えてなかったけど、3年修行して、
 やっと納得できるせんべいが焼けるようになった。親父が倒れてからこの1年、
 店の切り盛りもやるようになって、責任感も出てきたんだ。でも・・・だからこそ、
 毎日店にいると、このせんべいの匂いの中に、綾子を引っ張りこんでいいのかな?
 って思っちゃうんだ・・・。」                     
125誰にも言えない7:2010/12/16(木) 15:30:44 ID:OtWcHILZ
「・・・だから、さっき、おせんべいのにおいがするって言った時、手をひっこめたの?」
「せっかくのデートなのに、気分こわれるだろ?」
「・・・私ね、バイトしてる時、ゆうちゃんが厨房で働いてる姿見て、好きになったんだ。」
綾子は、恥ずかしそうに、でもまっすぐ祐一の顔を見た。
「ゆうちゃんが『いつか結婚しよう。』って言ってくれた時、ずっとゆうちゃんの
 働くところ見ながら暮らせるんだ・・・って思って、すごくうれしかったの。
 ・・・ずっと、待ってたんだよ。プロポーズしてくれるの・・・。」
最後の方は涙声になって、綾子は両手で口をおさえた。
「ごめん・・・。俺、一人前になってから・・・って思ってたから、3年も待たせちゃったな。
 ほんとはまだ、自信ないけど・・・。ぐずぐずしてたら、綾子をとられちゃうかも
 しれないって思ったら決心ついたんだ。」
「え?・・・どういうこと?」
「綾子は会社に勤めてるだろ?どこでどういう出会いがあるかわからないじゃないか。
 バイトしてる時だって、けっこうモテてたし。」
「ええ?私が〜?なんだぁ、そういうことは早く言ってよ。」
(言うわけないだろ?・・・俺が狙ってたんだから。)
(ゆうちゃんの方がすごかったのに、知らないのかな?ゆうちゃん目当てのお客さん、
 けっこういたんだよ。)
「とにかく!俺は綾子以外の女と結婚とか考えられないの!・・・ところで、さっきの
 返事、まだちゃんと聞いてないよ?」
「え・・・あ。えーと、その、はい・・・、私、祐一さんと、結婚・・・します!」
「やったあ!」
祐一が綾子を抱きしめた。・・・さっきまで激しい愛を交わしていた肌が密着して、
濃密な記憶がよみがえる。
 抱き合いながら、ふたりは同じことを考えていたらしい。綾子が祐一の耳元で
ささやいた。
「『どんなシチュエーションでプロポーズしました(されました)か?』って
 披露宴とかでよくある質問だよね・・・。」
「うん・・・。」
「これって、ちょっと、誰にも言えないよね・・・。」
「明日、横浜かどっか行って、改めてプロポーズするか?」
「うん・・・公式にはそっちってことにして・・・。」

 本当のプロポーズは、誰にも言えない、ふたりだけの秘密・・・。
126名無しさん@ピンキー:2010/12/17(金) 01:23:02 ID:0NtDM6jy
>>119
いちせんキタコレ!GJ!
あ〜あ〜なんだよ、イチャコラしやがってw
ちょっこし、sweet roomを思い出して、そちらで脳内補完させていただきました。
気持ちよくなってればいいの!てとこが萌えた…。
あとお姫様抱っこ。ゲゲがお姫様抱っこできないのは本当に惜しい!
いちせんパロとゲゲゲパロって雰囲気違うんだけど、それを同じスレで読めるのは
本当にありがたいよ〜〜。
127名無しさん@ピンキー:2010/12/17(金) 20:07:02 ID:A+66IWYy
>>119
GJ!
綾子さんの指ぺろぺろエロいです
ゆうちゃんは素直でいいな…
128名無しさん@ピンキー:2010/12/17(金) 22:51:57 ID:igJrjvlI
なにをいう素直なゲゲなんてゲゲじゃない。

アノ時だけ「あや」呼びなえろいゆうちゃんGJ。
129名無しさん@ピンキー:2010/12/18(土) 20:48:57 ID:/Y0wsVfY
茂が死んでも言えなさそうな台詞も
ゆうちゃんなら言ってくれそうなimg
130名無しさん@ピンキー:2010/12/18(土) 23:24:42 ID:S1ldcdKl
ゲゲ→ツンデレ
祐ちゃん→デレデレ
131名無しさん@ピンキー:2010/12/19(日) 01:29:19 ID:fe/Po2MO
デレデレというより素直クールかな
132名無しさん@ピンキー:2010/12/19(日) 17:24:10 ID:luS5w+kB
しげーさんは重い方の荷物持ってあげたりしてわりと紳士だからなぁ
ゆうちゃんが恥ずかしがる行動をフツーの態度でやりそう
133名無しさん@ピンキー:2010/12/20(月) 12:33:39 ID:/bKy08OE
ツン素直と聞いて
134名無しさん@ピンキー:2010/12/20(月) 13:53:56 ID:94Q1f/L5
携帯で松下さんの新ドラマ情報をみたら、相手役が向井君で、
予告の小さい写真?が裸で抱き合ってる写真だった、
という夢をみた。。
起きてすぐ、夢か現実かわからなくなってたけど、
夢やったと気付いてショックだった…
135名無しさん@ピンキー:2010/12/20(月) 15:21:13 ID:Ch0D1wbC
はるこの話です。
「はるこ」と聞いただけで・・・という方は、どうぞこの先はスルーで
よろしくお願いします。

中の人に対する好悪がはげしいせいか、放送中もはるこが出る日は本スレが荒れましたね。
中の人のことはおいといて、はるこって、村井家の春の時代を代表する人物じゃないかなあ、
と言う想いから、中森さんと並んで書いてみたかったキャラです。
春って、今はまだ少し寒いけど、希望がある感じ・・・。勝手な分類ですが、夏の時代は
豊川さんやアシスタント3人組・・・なんか熱いですからw。

それにしても、結局一番言いたいのは、ゲゲふみって、ただ幸せに暮らしてるだけで
周りの人間をモヤモヤさせる、魔性の夫婦だなあ・・・ってことだったりしますw。
136春風1:2010/12/20(月) 15:22:04 ID:Ch0D1wbC
「先生。この背景、『桃源郷のようなところ』としか書いてありませんけど、
 どうしたらいいんですか?」
「ああ、そこは空けといてください。まだどうするか思いつかんのです。」
河合はるこが東京へ出てきてから半年が経った。初めて茂のアシスタントをして以来、
はるこは時々、仕事が休みの日に村井家を訪れては、「勉強させてください。」
と言って、無料で手伝うようになっていた。

 はるこの問いに、茂はペンを置き、あごを手で支えて想像をめぐらせ始めた。
その視線の先には、かわいらしいペン立てがある。
「先生、そのペン立て、奥様の手づくりですか?」
「う・・・うぉえ?な・・・なんでわかるんだ?」
ペン立てをみつめながら自分の世界に入っていた茂は、唐突な問いに狼狽して
変な声を出してしまった。
「わかりますよぉ。居間にある、一反木綿の額縁とかいろんなものと、感じが似てますもん。
 先生、よくそれ見ておられますよね。」
(・・・女の子っちゅうのは、どこを見とるかわからんな。)
茂は照れ隠しに資料の棚に向かうと、「極楽」と書いてあるファイルを取り出し、
それを参考に桃源郷の絵を描き始めた。
「すごい資料の量ですねえ。」
感心するはるこに、茂はさとした。
「資料があればいいというもんでもない。絵やストーリーの着想は、結局は自分の
 頭から出てくるもんです。頭がなければ、どの資料を使ったらいいのかさえわからん。
 あんたのような若い人はまず、アイデアが出てくるような頭を作ることが先決です。」
「頭を作ること、ですか・・・。」
「俺は、貸本マンガの前は、紙芝居を描いとったんです。十枚ひと組の紙芝居を
 毎日一本、人気の出るような話と画面を脳ミソ振り絞って何千枚、何万枚描いたか・・・。
 今になってみれば、その経験が、マンガを描くのにどれだけ役立っとるかわからん。」
茂はあまり口数が多い方ではないが、ことマンガのこととなると、親身になって、
はるこの様なポッと出の小娘にも心にしみるようなアドバイスをくれるのだった
137春風2:2010/12/20(月) 15:22:48 ID:Ch0D1wbC
 上京してくるまで、はるこは少女マンガ以外のマンガ、それも怪奇ものなどには
全く興味がなかった。だが、三海社の深沢が激賞する茂のマンガを読んでみて、
目からうろこが落ちる思いだった。一見適当に見える登場人物は、精緻な背景の中で
他の凡百のマンガ家の描く人物にない存在感をはなち、ストーリーや画面構成は
独創性に満ちていた。
(私の描いた子鹿を「犬ッコロ」と言うわけだわ・・・。)
はるこは、茂への尊敬と憧れがつのる一方、自分の眼前にはてしなく広がる荒野の
ような遠い道のりに、出るのはため息ばかりだった。
 
 村井家をちょくちょく訪れるようになってから、はるこは茂の妻のフミエとも
親しくなった。パチンコ屋の仕事と出版社めぐり以外は、部屋にこもってマンガを
描くことに没頭しているはるこにとって、フミエと過ごす時間ははほっと気の許せる
楽しいひとときだった。茂が留守の今日も、茶の間で、フミエが茂のセーターを
解いた毛糸を巻く手伝いをしながら、おしゃべりに花を咲かせていた。
「フミエさん。女学校のころ、下級生にラブレターもらったりしませんでしたか?
 フミエさん、スラッとして背が高いし・・・。」
「ええっ?そげなことありませんよ。ああいうのはスポーツが出来るかっこいい
 先輩でしょ。私なんて運動神経も頭も悪いし・・・家でぼんやりしとるうちに
 ええ年になってしまって・・・。」
「それなら、先生がはじめての恋人ですか?」
「う・・・うぉえ?わ・・・私たちは、そげなええもんでは・・・。」
フミエはうろたえて、慌ててきつく毛糸を巻きすぎたため、手が抜けなくなって
やり直すはめになった。
(ププッ。先生とおんなじ反応してる・・・。かわいいひとだなあ。)
 フミエは茂のことを「お父ちゃん」と呼んでいたが、何かの拍子に「しげぇさん」
と無意識に呼ぶことがあった。ふたりが「お父ちゃん」と「お母ちゃん」に
なる前に、こう呼んでいたのか、あるいは今も、ふたりきりの時には・・・。
(いいなあ・・・。)
 茂のマンガは、その質の高さのわりにはさっぱり売れず、家計はそうとう
苦しいようだった。だがフミエは、貧乏の中でも、努力してあたたかい家庭をつくり、
茂を支えている。大変な忍耐のはずなのに、フミエは明るく幸せそうで、
大きくふくらんだお腹をかかえて微笑む姿は、燭光のようにぼうっとした光に
つつまれて見えた。  
138春風3:2010/12/20(月) 15:23:45 ID:Ch0D1wbC
 はるこは、村井一家と一緒に写った写真を浦木から受け取った。
藍子が生まれ、出産祝いに訪れた時、浦木に撮ってもらったものだ。
「藍子ちゃんと一緒に写りたいな。」
はるこ一人の写真を撮ろうと懸命な浦木をよそに、はるこは、藍子を抱いた茂と
フミエの、4人で写真におさまった。
その写真を、出版社の売り込みに「お守り」として持っていくというはるこに、
「およしなさい。あんな貧乏神にとり憑かれた一家の写真なんぞ縁起がわるい。」
としぶい顔の浦木にはかまわず、はるこは4人で写った写真に見入った。
「あんな終わっとる連中のことなんぞ置いといて、僕たちの未来について語り合い
 ましょう!」
「・・・浦木さんって、かわいそうな人ですね・・・。」
先生のマンガの価値も、フミエさんの魅力もわからないなんて・・・。
あわれむようなまなざしで浦木を見ると、はるこは礼を言って喫茶店を出て行った。
「ちょ・・・はるこさん、待ってくださいよ〜!」
浦木はあわてて後を追ったが、店を出てみると、もうどこにもはるこの姿はなかった。
「あ〜あ、また口説きそこねた。だが、まてよ・・・。『かわいそうたぁ、惚れたってことよ。』
 と言うじゃあねえか。」
浦木は、またぞろ自分に都合のいい解釈をしてほくそえんだ。

 パチンコ屋の二階のさむざむしい部屋で、はるこは写真をながめていた。
赤ん坊を抱いた茂の、メガネの奥の黒い瞳をじっとのぞきこむ。本物の茂に
相対した時には、こんなにまっすぐその瞳を見ることなどできなかった。
(先生・・・。)
茂を人として、マンガ家として尊敬している、貧乏にもめげず茂を支えるフミエ
のことも、すてきな人だと思う。かわいい藍子も加わり、理想の家族・・・。
その写真を、マンガ家をめざす自分のお守りにしたい・・・その気持ちに嘘はなかった。
けれど、それとは別に、いつからか芽生えたこの写真の真ん中に立つひとへの気持ちは、
打ち消しても打ち消してもつのるばかりだった。
 茂をはさんで反対側に立つフミエの視線が痛くて、手で隠してみる。
「ごめんなさい、フミエさん・・・。」
フミエが隣にいない茂など、考えられなかった。ふるえる手をフミエの上から離し、
今度は反対側の自分を隠してみる。そこには、しあわせな家族の肖像があった。
はるこの目から、大粒の涙が流れた。
139春風4:2010/12/20(月) 15:24:43 ID:Ch0D1wbC
 昭和三十九年秋。はるこが上京して、二年半が経とうとしていた。
深沢の手紙に勇気づけられ、家を飛び出したものの、いちどは連れ戻されたが、
はるこの真剣な想いに、父はとうとう「3年でマンガ家として認められること。」を条件に、
東京へ出ることを許してくれた。父との約束を、破るわけにはいかなかった。
(あと半年・・・。もうよけいな仕事をしてる場合じゃない!)
浦木からのカットの仕事も断り、はるこは自分のマンガだけに集中していった。

 夢の中で、はるこは茂に抱かれていた。
唇がかさなり、あの大きな手が身体の線をなぞっていく・・・。
だが、茂の腕の中で愛されている自分は、はるこではなく、フミエになっていた。
茂に貫かれたと思った瞬間、はるこは茂になってフミエを見下ろしていた。
はるこの下で身もだえ、あえぎながらフミエは夫の名を呼んだ。
「しげぇ・・・さん・・・。」
凶暴な衝動にかられ、せつなげな声がもれる半開きの口を口づけでふさいだ。
口中を蹂躙しながら、甘い凶器でフミエを穿った。
・・・自分が茂なのか、フミエなのか・・・わからなくなる恐怖にあがいて、目が覚めた。
知らぬ間にほおが涙でぬれていた。
 フミエになって、茂に愛されたい・・・。
 茂になって、フミエに愛されたい・・・。
「このままじゃ、私・・・!」
どうにもならない想いをかかえ、肝心のマンガも行き詰って、すべてが中途半端な自分・・・。
 3年の期限まであと一ヶ月。はるこは、誰にも告げずに勤め先をやめ、行方をくらました。

 そんな中、マンガを見てもらいに訪れた三海社で、ばったりフミエに会ってしまった。
今、一番会いたくない人だった。その場を逃げ出したはるこに、フミエが追いついた。
「・・・フミエさんに、苦しみながらマンガ描いてる人間の気持ちがわかるんですか?」
でこぼこ道でも、まっすぐに、茂の広い背中だけをみつめて歩いているフミエが
うらやましくて、憎かった。
 だが、なんの罪も無いフミエの心を刺した自分が一番ゆるせなかった。   
140春風5:2010/12/20(月) 15:25:23 ID:Ch0D1wbC
 とうとう約束の3年目にあたる4月がやって来た。
乾坤一擲、勝負をかけた作品を、雄玄社に持っていった。だが、3年間描きつづけた
はるこへの最終評価は・・・。絵はまあまあだし、根性もありそうだから、アシスタントと
してならいいが、作家として売り出す個性はない・・・というものだった。
 三海社の深沢には、「自分を見失っている。いちから考え直した方がいい。」と言われた。
このひと月というもの、仕事もやめ、わずかな金で食いつなぎながら背水の陣で
マンガを描いてきたはるこに、いちからやり直す時間はもうなかった。
 絶望したはるこの足は、自然に調布の村井家に向かっていた。

 フミエさんにこの間のことを謝ろう、そう思ってきたのに、フミエは留守だった。
茂とふたりだけでこの家にいることは、今のはるこにとって刃(やいば)の上に
座っているようにつらかった。出直そうとして引きとめられ、茂の前に座ってしまった。
 精魂込めたマンガを否定された・・・でも、本当に悲しいのは、自分のマンガが駄目だと
自分でもうすうすわかっていたことだった。
(もう、先生に会えなくなる・・・。)
この3年の想いを、ぶちまけてしまいそうになる。慌てて立ち上がりかけた拍子に、
袋から飛び出した原稿にお茶がかかってしまった。
茂が、片手で一生懸命原稿をふいて、そのまま立ち去ろうとするはるこを呼び止めて
渡そうと追いかけた。
「先生、私・・・。」
はるこはたまらなくなって、目の前にある茂の胸に、ぶつかるように顔をうずめてしまった。
「あんた、何しちょーかね?!」
聞き慣れぬ年配の女性の声に、はっと我に帰ると、けげんな顔をした老夫婦の後ろに、
凍りついたフミエの顔が見えた・・・。
 はるこは、とっさに頭を下げると、逃げるようにその場を去った。 
141春風6:2010/12/20(月) 15:26:10 ID:Ch0D1wbC
 つぎの日。はるこは再び村井家の門の前に立っていた。
昨日にも増して、城壁のように敷居が高かったが、二人に会わずに田舎に帰ることは
出来なかった。はるこは自分を励ますように両手でほおを叩くと、声をかけた。
 茂とフミエは、昨日のことをどう思っているのか、いつもどおりに迎えてくれた。
はるこは、結果はわかっていても後半部分を描き直し、少女ガーデンの編集部にもう一度
原稿を持って行ったことを語った。
「今の私に描ける最高のマンガになったと思います。・・・でも、ダメでした。
 私、今、空っぽです。」
三年間を無駄にしただけかもしれない・・・そう語るはるこに、茂は
「マンガ家魂」
という言葉をくれた。三年間描き続けたそれを、ずっともち続けていけばいい、と。
砕け散って、何も残っていないと思っていたはるこの心の中に、新しいエネルギーが
ふつふつと沸いてきた。
 あした山梨に帰ると言うはるこを、ふたりは門前まで見送りに出た。
はるこはこれが最後になるかもしれない茂の顔をじっと見た。
(先生、さようなら。・・・ありがとうございました。)
昨日、お茶をこぼしてしまった原稿を、茂が必死でふいてくれた時、はるこは
その行為に、かえって冷徹な事実をつきつけられた気がした。
(先生は、私のことを、対等なマンガ家として扱ってくださっている。私の下手クソな
 原稿をあんなに大切そうに・・・。でも、ただそれだけなんですね・・・。)
やっと、あきらめることができる・・・。いつまでも、私の尊敬する先生・・・。
はるこは、茂に明るく言った。
「先生、フミエさんを私に貸してください。」
3年間、パチンコ屋の仕事とマンガ描きばかりだった。何か、思い出がほしかった。
これで最後だから・・・、もう少しフミエに甘えたい気持ちがあった。 
142春風7:2010/12/20(月) 15:26:55 ID:Ch0D1wbC
 桜ふぶきの中、フミエと深大寺を歩き、なずなをつんだ。
他の草よりもひょろっと背が高いのに、ちっとも目立たない草。でも、よく見ると
清楚で可憐な花をつけている。
(この花、まるでフミエさんみたい・・・。)
はるこは、茂が牛乳びんに挿したこの花を、いとおしそうにみつめていたことを
思い出した。
赤駒、なずな、ペン立て・・・はるこの知らない、ふたりの歴史がありそうだった。
でも、フミエが大切にしているだろうそれらの思い出に、割り込むことはできない。
私も、いつか誰かと、そんな大切な記憶を紡いでいきたい・・・。
「この間は、ひどいこと言ってごめんなさい。」
『そばで見ているだけの人に、苦しんでマンガを描いている人間の気持ちはわからない。』
・・・三海社での暴言を、やっと謝ることができた。
そのとおりかもしれない、とさびしそうなフミエに、はるこは自分にも言い聞かせる
ように言った。
「フミエさんでなきゃ、ダメなんですよ・・・。」
茂の心の中に咲いている花は、なずなだけ・・・。忘れたはずの想いが胸をしめつけた。
「私、先生のことが好きだったんですよ。あ、変な意味じゃなくて。先生のマンガが好き。
 先生のマンガにかける情熱が好き・・・。それから、先生のご家族が好き・・・。」
茂への想いを、フミエに直截に告げることはできない。けれど、ふたりが大好きだった、
その気持ちにも嘘はなかった。
 かみしめるように語るはるこの笑顔を、フミエは複雑な想いでみつめた。
 はるこが手帳にはさんだこの写真を落とした時、はじめて直感したはるこの想い・・・。
茂を人として、マンガ家として好きと言いながら、言外に茂への思慕があふれている。
(私の好きなひとを、はるこさんも好きだったんですね・・・。)
自分も茂のことを哀しいほど好きだから、はるこの気持ちがわかると言ったら、
妻の座にいる者の不遜だと言われるだろうか・・・。
フミエは何も言えなくて、はるこの思いを受けとめてそっと胸にしまった。
あたたかい春の風が名残りの花びらを舞い上がらせて、空へとはこんでいった。

 翌日、山梨へ向かう列車の中で、はるこは自分の初めての単行本をひらいていた。
本にはさんだ押し花は、昨日つんだ、なずな・・・。
 マンガ家になる夢は破れたけれど、この三年間を無駄とは思わなかった。
 つらい恋だったけれど、後悔はしていなかった。
(先生、フミエさん。いつまでもお元気で・・・。)
はるこの乗った列車は、すこし遅い春の中へ、飛び込んでいくように走り去っていった。
143名無しさん@ピンキー:2010/12/20(月) 20:39:53 ID:hUoYP4ei
>>134
自分もその夢が見たいw
144名無しさん@ピンキー:2010/12/21(火) 00:36:52 ID:gxM/V9zv
>>136
だんだん
夫婦が同じ反応であわあわしてるのに萌えた!
あとはるこが、どっちかじゃなく夫婦の両方を夢で体験するってのに滾った
145名無しさん@ピンキー:2010/12/21(火) 00:54:36 ID:x4lNldow
>>136
乙です!はるこの思いが溢れていますね〜

私はどちらかというと、はるこの中の人が気になって
放送中は「はるこ」というキャラクターを余り評価できずにいたのですがw
確かに彼女は貧しい貸本漫画家生活の描写の中にあっても、明日を夢見る「春」の存在でしたね

最後の汽車に乗って故郷に向かうシーンが胸を打ちます、GJです
146名無しさん@ピンキー:2010/12/21(火) 01:11:52 ID:uLTpQaMr
>>136
はるこバッシングの中、勇気と爽やかさと萌えとちょっこしエロの投下乙!
はるこがゲゲだけじゃなくて、布美ちゃんや藍子を含めた村井家が好きって言ってたように、
自分もはるこを含めた「ゲゲゲの女房」が好きだよ。
貧乏神も、税務署の人も、サイパン刑事も、ネゴシックスも好きだあ〜w
あでも有害図書追放の人はキライ(矛盾してる…
147名無しさん@ピンキー:2010/12/21(火) 22:43:20 ID:XJBrNiZw
職人さん、いつも力作ありがとうございます。
最近いちせんコンビに嵌ってます!!
ゆうちゃんとあやちゃんが、バイト仲間だった頃の、
互いを意識しながら告白できない(やきもちあり)→恋人へ
のストーリーを是非読みたいな〜
148名無しさん@ピンキー:2010/12/21(火) 23:57:17 ID:ENSyZJON
現代っ子なんだが、爽やかで古風な面もある二人が良い>祐綾
149名無しさん@ピンキー:2010/12/22(水) 00:35:22 ID:jkCAkvSV
祐ちゃんがこっそりプランしてた南の島への旅行にも行かせてあげたいw

せんべい屋さんの若夫婦っていうシチュエーションが、
真面目で一生懸命な二人に合っててとてもそそりますよね〜
150名無しさん@ピンキー:2010/12/22(水) 19:10:57 ID:jfr5yCrl
おとうちゃんがおかあちゃんの応援に来るね!
源兵衛ミヤコもええのだが、藍子喜子は来ないのかなぁ。
そして大本命だった浦木の名前がないのはどうなんだ。

それにしてもN○Kでプリキュアとは…嫌な予感もするが。
151名無しさん@ピンキー:2010/12/22(水) 19:49:01 ID:2ZeRGVga
新春食わず嫌いもゲゲフミ
152名無しさん@ピンキー:2010/12/22(水) 20:00:52 ID:RLIyaGqj
>>147、149
バイト仲間編も南の島も良いなw

ゲゲふみ、祐綾共に幸せいっぱいの二人が読めると嬉しいw
もうすぐクリスマス
153名無しさん@ピンキー:2010/12/23(木) 01:21:07 ID:xXMzEZrR
ゲゲふみ的にクリスマスをまともに祝える頃には娘達が居るから誕生日の方が比重がでかそうだ
一年目だと深沢さんまだ倒れてないしまだすこし余裕あるかな?
ケーキプレイはやはりいちご大好き綾子さんに期待するしかあるまい…
154名無しさん@ピンキー:2010/12/23(木) 01:48:21 ID:miTQVgEV
>>151
マジで?!すげー楽しみなんだけど!
てかあの二人お互いの嫌いな食べ物とかもう知ってそうじゃね?

クリスマスSSってそういや無かったなあ〜。
恋人たちのイベント的なものって、
クリスマス、正月(?)、バレンタイン、誕生日、初○○記念とか。
そういやゲゲ布美の誕生日っていつなんだろ。
155名無しさん@ピンキー:2010/12/23(木) 10:24:26 ID:5JoBV26s
>>154
正月ときいて姫はじめと思ってしまった自分が嫌だ…
紅白と食わず嫌い楽しみ
156名無しさん@ピンキー:2010/12/23(木) 15:45:25 ID:JmBLkRuc
>>154
フミちゃんの誕生日は免許証アップのシーンをよく見ると、「1月〜日」に見える。
あと二人の初登場シーンで、おばばが二人の生年月日言ってなかったか?
あとで録画を見直してみる
157名無しさん@ピンキー:2010/12/23(木) 16:13:37 ID:YBYpuaQd
リアル水木先生が3月8日生まれ
布枝さんが1月6日生まれだから
ドラマ内の設定も同じじゃないかな
158名無しさん@ピンキー:2010/12/24(金) 14:56:00 ID:T20hztbI
裸エプロンで登場すれば視聴率海老蔵
159名無しさん@ピンキー:2010/12/24(金) 22:49:38 ID:AF1PvwZy
藍子喜子誕生日おめでとう!
160名無しさん@ピンキー:2010/12/25(土) 20:31:48 ID:IuMZbAlo
ケーキのいちごを独り占めしようとする綾子さんと
それを呆れながら眺めるゆうちゃんを妄想する作業
おまえらめりくり!
161名無しさん@ピンキー:2010/12/25(土) 22:12:33 ID:Nc3rlMcY
祐綾→いちごケーキ
ゲゲフミ→ホットケーキ

このスレの皆も良いクリスマスを〜!
162貴方の傍に1:2010/12/26(日) 01:21:06 ID:LyqUd1Zm
まるで珍しい動物でも見るかのように、浦木は台所に立つ布美枝を、
下から上へ、舐めるようにじろじろと見つめ上げた。
やがてその視線に耐えられなくなったのは、見られている本人ではなく、茂の方だったらしく。
「だらっ!見るな!」
大きなゲンコツが思い切り浦木の後頭部に炸裂した。
「…ってーな、乱暴はやめろ。何もしてないだろうが」
「目つきが厭らしい!」
「欲情したわけじゃないぞ」
「黙れ!」
もう一度拳を構える。
浦木はさっと身構えて、ちゃぶ台に沿ってその身をすすす、と茂の対角線へ持っていく。
ふたりの小さな諍いを、やれやれという顔で見やり、布美枝は卓に湯呑みを並べた。
茂に微笑んで気を落ち着かせるよう合図する。その笑みには早くも母性が滲み出ていて。
それを見た茂は、振り上げた拳を乱暴にぼさぼさの髪へ戻し、口を尖らせてがしがしと掻き毟った。
交互に夫婦の顔を窺いながら、浦木はにやりと口の端を持ち上げる。
「まあ、何はともあれめでたいことじゃないの。究極の朴念仁と、日本一の引っ込み思案に、
 はてさて、子どもができたとはね。淡白な夫婦だと思っとったが、やることはやっとったんだな」
「この…っ!」
鎮火しかけた火に油を注ぐような言葉を、平気で口にするのが浦木の浦木たる所以だが、
さすがの布美枝もこの台詞には紅潮した顔が強張った。
163貴方の傍に2:2010/12/26(日) 01:21:46 ID:LyqUd1Zm
「それにしても…」
卓に並べられた湯呑みを、穴が開くのかと思うほどに凝視したあと、
顔を上げた浦木は、眉をひそめて不憫そうに布美枝を見上げた。
「うっすい茶ですなあ」
「すんません、ちょっこしでも色が着いとったら、白湯よりましかと」
茶葉も、色が出る極限まで使うことにしている。
富田書房の経営危機のあおりを喰らって、今の村井家の財政は非常に逼迫していた。
「文句言うな」
限りなく白湯に近いお茶をすする茂を一瞥して、はあ、と浦木はため息を吐く。
「おいゲゲ、大丈夫か」
「何が」
「奥さん、腹は膨れてきとるようだが、頬はずいぶんこけたように見えるがなぁ」
どきりとして、布美枝は頬に手を宛てる。
「こ、この間までつわりであんまり食べられんだったけん…。けど、心配ないんですよ。
 お医者様も大丈夫だと仰っとられたし、定期健診では順調だと言われとるし…」
「ほぉ〜、それならええですが…」
顎にやった手を、しわしわと動かしながら、浦木は茂に目線を移す。
「相変わらず家計の苦労をさせとるのではないのか?
 妊婦が満足に喰えんような生活をしとるのでは、腹の子にも影響するぞ」
ぴたりと茂の動きが止まった。
「ふたりでも喰うや喰わずの生活をしとるのに、子どもなんぞ持って大丈夫か?
 まして生まれてからはもっと金がかかるぞ?そういうことをお前は解っとるのか?」
布美枝の胸が徐々に波打ちだした。
茂の神経を逆撫でさせたら天下一のイタチが、また好からぬことをぺらぺらと喋りだした。
このままだと、いつものパターンで浦木はつまみ出され、茂の不機嫌がしばらく続く。
浦木のことはともかく、機嫌の悪い茂は、布美枝をもあまり近寄らせない。
どうかどうか、やめてごしない…。祈る思いで布美枝はその場を見守る。

「どうせ何とかなる主義で誤魔化そうとしとるんだろうが、世の中がそれほど甘くないことは
 お前もよーく知っとるはずだ。そろそろ抜本的な現状の打開策をだな」
祈りも虚しく、浦木のこれでもかという厭味の応酬に、茂の周りに黒雲が立ち込める。
目線を落として、軋む音さえ聞こえそうなほど歯噛み、苛々と台の上で指を打ち付けている。
ハラハラと胸を抱えて、布美枝は浦木に目で合図を送るのだが、さっぱり受け取ってくれない。
「ええ機会だ、どうにも売れん貸本漫画など、そろそろ見切りをつけたらどうだ」
思わず布美枝が半分身を乗り出したとき。
164貴方の傍に3:2010/12/26(日) 01:24:08 ID:LyqUd1Zm
―――――ばんっ!!
茂の右手がちゃぶ台を激しく叩き、勢いで湯呑みが倒れ、浦木のズボンに白湯茶が零れた。
「あっつ!ゲゲ!おま、ちょ、落ちつけ」
どうしてこの男は、長年付き合っているという割りに、茂の性分というものを理解していないのだろう。
とうとう爆発してしまった茂が、次に浦木に浴びせる怒声に備えて布美枝は耳を塞いだ。
…が、しばらくしてもしんとしたまま、あの「だらっ!」が聞こえない。

そっと様子を覗うと、茂は閉じていた目をゆっくり開き、浦木を見据えて凄んだ。
「…浦木」
「…お、おぅ」
ようやくその不穏な空気を読み取ったイタチが、恐る恐る返事をする。
「お前何しに来た。用がないなら帰れ」
「え、いや、俺ははるこさんに会いにだな…」
ここに来れば、はるこに会えるかも知れないと思い来た、と説明する浦木を無視して、
茂はのそりと立ち上がると、物も言わずに仕事部屋に篭ってしまった。
言い訳めいたことを必死で訴えてくる浦木をよそに、布美枝は小さく首を傾げた。
いつもなら大声で怒鳴り、浦木を蹴飛ばしてでも家から放り出す茂が、
今日は何故かその怒りが妙に静寂だった。と言うよりも少し、その表情は哀しげでもあった。
夫の異変にざわつく心もちが、ひどく居心地が悪くて仕方なかった。

― ― ―

その日の遅く、ため息を吐きながら寝間に現れた茂が、原稿の仕上がりを告げ、明日出版社に行くと言う。
「お疲れさまです。肩、揉みましょうか」
ぐったりと首をもたげた茂の背中を、愛おしく、慈しみ、温かさに安堵する。
石のように硬くなった首や肩を揉みながら、また今度生姜の湿布を作ろうと思った。
「…あんた」
小さく、茂が呟いた。大きな背中に似つかわしくない小さな声。
「はい?」
何事かと聞き漏らさないよう、耳に髪を引っ掛けた。
次の言葉を待っているのに、なかなかそれは発せられない。
しばらく黙ったままうなだれていたが、急にくるりと向き直り、布美枝に相対する。
こちらを向いた茂は、ぽん、と布美枝の肩に右手を乗せ、きょとんとする妻を見つめた。
「明日原稿料もらったら、その金で安来へ帰れ」
「え」
じっと見つめる黒い瞳の中の真意を、その瞬間は読み取ることができなかった。
呆然と、見つめ返した。
165貴方の傍に4:2010/12/26(日) 01:24:43 ID:LyqUd1Zm
「…もう安定期なんだろ?長旅だが、帰れんこともないと思うんだ」
磔にでもされたかのように、身体が動かず声も出ない。
「あんたのためだ。ここにおってもひもじい思いをするだけだし、それに。
 …お産のときも実家の方が何かと安心だろ。こっちには義姉さんしか頼れる人間はおらんのだし」
耳に入ってくる茂の言葉は、ただただ残酷に布美枝の心を黒く蝕んだ。
冷静になれば、茂の言わんとすることは十分解る。それが自分を思ってくれているが故のことだということも。
けれど、どこかで理解などしたくない感情があった。
安来に帰ってお産に備える安心感と、目の前に居る愛しい男の傍。
どうしてそんな、際どい天秤を突きつけるのか。

ぽろぽろと、布美枝の瞳から大粒の涙が溢れた。
ぎょっとして茂は、口をあわあわとさせている。
「な、なんも、離縁すると言っとるわけじゃないぞ!落ち着いたら戻ってきたらええんだけん」
胸がいっぱいで、涙に邪魔され言葉が出ない。
布美枝は言葉の代わりに、茂に抱きつくことで伝えるしかなかった。
広い背中に腕をまわし、厚い胸にぎゅっと頬を押さえつけた。
6ヶ月目に入り、膨らんだ腹がつっかえたが、構わずぎゅうぎゅうと顔を埋めた。
嗚咽が止まらず、しゃくりあげる肩を、大きな右手が包んでくれる。
(解ってください、あたしは、貴方の傍に…!)

「…そ、ば、に…っ」
やっと声が出た。堰を切ったように伝える。
「傍に、居ったらいけんですかっ。…っ、あたし、ここに居ったら…め、いわくっ…ですかっ」
「そげでなくて」
「貴方の…足枷になるくらいなら、っ、…帰ります、けど!」
顔を上げて、強く見つめた。布美枝の勢いに気圧される茂が、息を呑んだのが判った。
「お金のこととか、身体のこととか…そげなことを気にしとられるなら…」
喉の奥を焼かれたように、声を発するたびに熱くて痛かった。
けれどそれ以上に胸の奥の疼痛に耐えかねた。
安来へ戻れと言った茂の心遣い、それを解っていて我侭を言って困らせてしまう。
つくづく嫌気がさす不安定な心情に、またしても涙で言葉を詰まらせた。
手の甲で拭っては鼻をすすりあげ、子どもが駄々を捏ねているみたいだ、と情けなくなる。
見かねた茂が、寝間着の袖でぐしゃぐしゃと顔を拭いてくれた。
きっと鼻の頭は真っ赤だろうな、などと少し惨めにも思えた。
「…言わんで」
声が震えた。その声を自分で聴いて、またじわっと視界が潤んでくる。
「帰れなんて…言わんでごしない…」
俯いた布美枝の顔を、温かな右手が掬った。
166貴方の傍に5:2010/12/26(日) 01:25:17 ID:LyqUd1Zm
何かのまじないのように、両の目尻に軽く口づけられると、やがてぴたりと涙が止まった。
親指で頬を撫でられ、促されて見上げた夫の顔に、きゅっと胸が締め付けられた。
切なく、哀しげな、そして温かく、優しい眼に、囚われて閉じ込められる。
ゆっくりと近づく唇を、目を伏せて受け止めると、ふわ、と茂の匂いに包まれた。
このひとときを、失うことが何より辛い。例えそれが愛しき故郷と引き換えだと言われても。
交わす口づけの甘さに浸り、蕩ける内側をじんわりと意識する。
何度も何度も唇を包み込まれ、柔い舌が入り込み、強く淫らに吸い上げられる。
布美枝の肩に置かれた右手が、ゆっくりと降りてゆき、左胸を揉み揺らした。
寝間着越しに、反応した先端が尖り始め、親指の腹で捏ねられる。
「ん…っ…ぅ」
息も絶え絶え翻弄される唇の隙間から、思わず快の呻きが零れた。
とたんに茂ははっとして身体を強ばらせ、布美枝の肩を押して自分から引き離した。
「…っ、…すまん」
俯き加減で顔を背け、ぱちぱちと頬を叩いている。

茂は自らに禁忌を課しているようで、身篭って以来、布美枝を求めてくることはなかった。
もちろん、ちょっとしたじゃれ合いや口づけの愛撫を受けることはあったが、
それ以上は一切踏み入ってこなかった。
夫の思いやりは、常日頃淡々としているあたりからは想像できないほど、深くて広い。
けれど。
ずっと我慢を強いているような気がして、布美枝の方が気が引けた。
それに、時折疼く身体を互いに押さえ込んでやり過ごす夜は、やはりこれ以上もなく虚しかった。

布美枝はそっと両手を伸ばすと、茂の頬を包み、軽く口づけた。
唇を離す代わりに、額を合わせて請うように囁いた。
「…これ以上は…いけんの、ですか」
「え…」
恥ずかしさに、ぎゅっと目を閉じた。
ややあって、再び布美枝を優しく引き離し、わざとらしい明るい声で茂は軽く笑った。
「…俺に、気を遣っとるならええんだ。あんたの身体の方が大事なんだけん」
気を遣っているのはそちらのくせに…。布美枝の八の字眉が、茂を見上げる。
「…そんな目で見るな」
目を逸らして、右手で顔を覆う仕草。
そのまま髪を掻き毟り、「ああ、もう」と乱暴に吐き捨てる。
「見るな…っ!」
ひときわ大声で怒鳴られ、反射的にぎゅっと目を閉じた。
167貴方の傍に6:2010/12/26(日) 01:25:51 ID:LyqUd1Zm
――――― それなのに。相反して口づけられた。
唇から伝わる、矛盾する「男」の本音。
ただそれが、今の布美枝には心底嬉しかった。

「…もう…どげなっても知らんぞ…」
「……はぃ」
「…だら、そげなことではいかんだろうが」
「ど、どっちなんですか」
怒ったように顔を見合わせて、やがて同時にぶっと噴出した。
「笑い事ではない」軽く額で小突かれる。
「貴方こそ」応戦して、両頬を捻ってやった。
少し考えこんだあと、茂は緩やかな丘陵の腹に手をやり、すりすりと撫でながら、
「…途中で辛くなったらちゃんと言え。ええな」
「…はい」
再び、甘い唇で布美枝の全てを包み込んだ。

つっかえるお腹を考慮して、茂が背後に回ってくれた。うなじに落とされる唇がくすぐったい。
脇の下から持ち上げるようにして包まれた乳房を、揺する右手がどこかぎこちなかった。
やはり最大限の遠慮が、指の先一本一本から伝わってくる。
帯を解いて、肩からするりと寝間着を落とすと、岩田帯に包まれたぽってりした腹が現れた。
もどかしげに帯を解く右手を手伝うと、優しく目を細める茂が肩の向こうに見える。
露わになった腹を、またすりすりと撫でながら、くすくすと背中で笑い声。
「…なんですか」
「いや、なんか…ここから見下ろすと面白いぞ。胸より出とる」
「ん、もぅ」
首だけ捻って睨みつけると、また笑いながら頬を啄ばまれる。
背中に押し当てた唇から、舌が背骨に沿って首の裏まで舐め上げ、ぶわっと一気に鳥肌が起った。
「あ…ふっ…っ」
腹を撫でていた手がするりと下方へ移動し、柔毛の辺りで少し躊躇する。
「だい…じょぅぶ、です」
布美枝の声に後押しされるように、割れ目をなぞり、襞をかき避け、指が侵入する。
一方で、布美枝の耳元では熱い吐息が舌とともに、直接脳へと淫猥を働きかけ、
狂わされた神経が制御を忘れ、身体が勝手に反応し、熱が内側に篭って疼きだす。
長い間、放ったらかしにされて乾いてしまっていた身体が、今再び潤いを取り戻し始めた。
「…ぁっ…あっ…!」
羞恥心も忘れ、脚を開いてその身を茂に預けた。
指先に花の芯を捉えられ、擦られる度にその場所がじんじんと充血していくのが分かる。
ずるずると落ちていってしまう布美枝の身体を、支えきれないと思ったか
「横になるか?」茂が優しく問いかけた。
168貴方の傍に7:2010/12/26(日) 01:26:30 ID:LyqUd1Zm
ここのところ仰向けになりにくい布美枝を、茂はよく知っていた。
「楽な格好でええ」と言って、横臥のままにさせ、いったん布美枝の臍のあたりに唇を落とす。
ちら、と布美枝の顔を見、布美枝も「大丈夫」と笑顔を返した。
ゆっくり上側の脚を持ち上げられ、肩に乗せると、内股に顔が埋まり、繁みの奥へと舌が伸びた。
「ぁ…ん」
潜り込んでくる舌の動きに思わず腰が引けたが、文字通り身重の身体は、思うように動かせない。
久方ぶりの刺激に、下半身が既に半分麻痺している。
「ん…ふぅ…あっ…」
陰唇に押し当てられる、やや硬めの舌先に、絡めとられていく愛液の音が卑猥に響いた。
唾液の艶を纏った萌芽を、上歯が齧り、舌が舐る。
びくびくと反応すると、はた、と茂の動きが止まり、様子を窺われる。
その間が耐えがたく恥ずかしかった。
会陰全体を貪られるこれ以上のない快感に、褥に顔を擦りつけ、指を噛んで抗う。
自分の身体なのに、この場所だけは茂の方が何もかもを良く知っている。
どんな色で染まるのか、どんな形に変わるのか、どこが最も感じるのか…。
後にも先にも、誰にも見せることのない、ただ茂にだけに暴かれる秘密。
その指で、舌で、息で、追い詰められる奮える最高潮へ。
「っ…ぁ………っ」
静かに、昇りつめた。

しばらくぼうっと横たわったまま、やがて目線だけで夫を仰いだ。
寝間着を脱ぎ捨てたものの、果たしてどうしたらよいのか、と戸惑う様子が見えた。
腕を伸ばすと、それに気づいて右手で掬ってくれる。指が絡み合い、ぎゅっと握る。
「…きて…」
布美枝は、その気怠るい身を四つん這いに起こして、頭をぐっと下げた。
寒いわけでもないのに、勝手に腰が震える。
引き攣るその場所へ、後ろから熱い肉塊が宛がわれ、ぐっと踏み込んだ。
169貴方の傍に8:2010/12/26(日) 01:27:00 ID:LyqUd1Zm
「っ…!」
押し込まれた反動に、思わず前に一寸よろける。
「おいっ」
「だいっ…じょぶ、です…」
腹に力が込められないぶん、支える腕に集中させる。
「もっと…きて…」
さらに進んでくる。が、もどかしいほどに侵入の速度が極端に緩い。
布美枝を気遣ってのことなのだろうが、却って内側がずくずくと疼いて辛い。
「もっ…と…」
「ああ」
躊躇しつつ、のそりのそり進んでは後戻りする。
奥まで届かない場所で、軽く揺さぶられる。
「あっ…ん」
「大丈夫か」
「は、ぃ…ぃ…っ!」
とことんまで思慮深い振動が、布美枝の長い髪を揺らした。
「…ぁ…っ…も、っと、好きに、しても…っ」
短い摩擦の繰り返しが、逆に焦らされているようで堪らない。
「…ぁっ……、…あっん…」
いつもとは違う、優しすぎる交わりに、たまらず目を閉じる。
背中で少し昂ぶった声がして、急に速度が上がった。
「もう…終わらせ、る」
「あ…あたしは、だいじょ…ぅ」
「いや、俺のが、持たん」
「え」
何やらもごもごと「久々過ぎて…」などと呟いたかと思うと、一層の加速度で突き上げられた。
「あっ!ああ…っ!」
2度3度、大きく揺さぶられた。瞬間。
大きな脈動と熱を感じた。深く息を吐く音を背中で聴く。
ぬるりと、身から熱が取り出され、精が溢れ出る感触に小さく震え、茂を振り返った。
「何ともないか」
「…はい」
「はあ…なんか…今日はくたびれた」
尻もちをつくようにして脚を放り投げ、ため息を吐いている。
何だか少し可笑しくなって、互いに照れたように微笑った。
170貴方の傍に9:2010/12/26(日) 01:27:50 ID:LyqUd1Zm
― ― ―

「あ、ん…ちょっこし、きつい、かな」
「あーもう、加減がわからん」
茂が布美枝の周りを回って、岩田帯を巻き戻す。
文句を言いながらでも、手伝ってくれているのが嬉しかった。
「昼間…」
「ん?」
「浦木さんの言っとられたことを、気にされとったですか」
「………ん、まぁな」
帯のヨレを直しながら、茂が頷いた。
「毎日見とるけん、わからんだった。よー見たら腕なんか骨と皮だけになっとる」
「肉がないのは昔からですけん…」
帯の端を渡され、きゅっと締め上げると、後ろからふわりと寝間着がかけられた。
「だんだん」ぺこりと頭を下げる。
そういえば、安来へ帰れの件はどうなったのだっけ、とふと思い出す。
急に不安になって、茂を見上げた。
布美枝が物問いたげにしているのを察して、ごほんとわざとらしく咳払いし、
「よー考えたら、明日まともに金がもらえても、せいぜい姫路くらいまでしか行けんかもな」
「え…」
「水道の払い、溜まっとるんだったか?」
「は、はい、ガス代も、待ってもらっとります」
顔をしかめて首を振り、「参ったな」と繰り返す。
「あの…あたし…。ここに居っても…?」
「金が足りんのでは、放り出すわけにいかんからな」
胡坐をかいて、やや照れくさそうに顔を背ける茂を見て、ほうっと安堵のため息が出る。
互いに安心したようで、自然と笑みが零れた。
171貴方の傍に10:2010/12/26(日) 01:28:53 ID:LyqUd1Zm
しなやかな茂の腕枕の中で、うっとりと目を閉じてその匂いに浸る。
頭上では「そういえば」と呟く声。
「浦木のやつ、何しに来たんだった?どうせ晩飯にでもありつくつもりだったんだろうが、
 もうしばらくあいつを家に上げんでええからな」
どうやら昼間の怒りが再燃しているようだ。
布美枝はくすっと微笑って、茂を仰ぎ見る。
「『ゲゲを持ち上げるわけではありませんが…』」
「ん?」
わざと抑揚をつけて、浦木の口調を真似てみた。

「浦木さん、帰りしなに言っとられましたよ。貴方は小さい頃ガキ大将で…」
「それがどげした」
「『それなりに広い縄張りのガキ大将をしとると、当然子分も多く養っていくことになります。
  縁もゆかりもない、近所のガキばかりでしたが、ゲゲはガキの扱いが上手かったですよ。』」
浦木の言葉を、思い出しながら話して聴かせた。
自分の知らない頃の茂を知らせてくれる浦木は、正直厄介者ではあるけれど、
布美枝にとってはとても有難い存在でもあるのだ。
「『近所のガキでも親身になってあれこれと世話を焼ける男です。ましてそれが我が子となれば。
  …生まれてからのことは、まあ、心配要らんのかも知れませんな。』…ですって」
茂は眉をひそめて訝しげに布美枝を見、「ふうん」とため息まじりに呻った。
「あいつの言うことを真に受けるな」
「あら、すっかり間に受けて落ち込んどられたのはどちら様でしたっけ」
意地悪く問い詰めると、口を曲げて睨まれた。
その子どもっぽい表情が可笑しくて、肩を揺らして笑った。

「浦木さんも、ちょっこし反省しとられたのでは?貴方が向こうへ行かれてしまってから、
 妙にそわそわしとられましたよ?」
「放っとけ。どうせまたひょこひょこ何事もなかったようにやって来るぞ」
それもそうだな…と、布美枝は思った。やはりそれが、彼の彼らしいところなのだろう。
大きく深呼吸をした茂が、布美枝の背に回した腕をそっと我が身の方へ引き寄せた。
布美枝の額のあたりに唇が触れ、髪を避けるようにして頬ずりされる。
「…100年に1度くらいは、あいつもまともなことを言うもんだ」
独り言のようにぽつりとこぼした言葉は、きっと照れ隠しなのだろう。
けれど、茂だけでなく、布美枝もまた浦木の言葉に救われた気持ちだった。
くすくす、と笑いが互いに伝染する。
見つめるすぐ先の愛しい笑顔は、布美枝と、そしてその胎内に眠る小さな命の未来を、
鮮やかに彩ってくれるかのように輝いて見えた。


おわり
172名無しさん@ピンキー:2010/12/26(日) 21:36:46 ID:ZIcl5rnU
>>162
がいにGJ!
まさかの妊娠プレイにおどろきつつもしげーさんの不器用な優しさとふみちゃんのエロさに悶えた!
ほんと愛おしい二人だ…
173名無しさん@ピンキー:2010/12/26(日) 23:46:47 ID:ivWy/GEF
妊婦もの苦手だけどGJ
174名無しさん@ピンキー:2010/12/26(日) 23:55:27 ID:xpa8/kct
>>163
だんだん
泣きじゃくるフミちゃんがカワエエ〜!
優しいゲゲも良い!
175名無しさん@ピンキー:2010/12/27(月) 10:12:44 ID:LtlHOPvh
あーごめんなさい、162ですけど。注意書きしとくんだった。
「妊婦に優しいゲゲは好き」傾向があったので大丈夫かと思ってて…。
苦手な人、すみません。けど読んでくれたみたいでありがとう。
176名無しさん@ピンキー:2010/12/27(月) 14:14:46 ID:JGBhLf6R
>>162 力作GJ!
着物を質に入れるときとか、オカズに野草を摘むとことか、自分のふがいなさに
凹むゲゲにグッとくるので(自分Sなんだろうかw?)冒頭の静かな怒りと哀しみに
あふれるゲゲにグッときましたww。
里帰り出産しろと言われて泣いちゃうフミちゃんも可愛いし。
浦木もいいこと言ってるし。(浦木の意見って実は結構いつも核心をついてるんだけど。)
177名無しさん@ピンキー:2010/12/27(月) 17:23:49 ID:cEcfGD58
>>175
ドンマイ、そしてGJ!
浦木も久しぶりに日の目を見て喜んでいると思うw
178名無しさん@ピンキー:2010/12/27(月) 23:53:32 ID:6qwBIU07
>>157
じゃあ、ふみちゃんの誕生日に食わず嫌い対決するのか
179名無しさん@ピンキー:2010/12/28(火) 20:38:28 ID:hw9rk/08
>>178
やっと予告を見れたんだけど、ゲゲが
「この女にだけは絶対負けたくない」と言っていたのが、色んな意味で楽しみだ。
てか、ゲゲゲ以外で夫婦共演したのってみたことないので
(スタパとか、アサイチとかも常にひとりずつ出てたし)
つくづく紅白と食わず嫌い楽しみなんだよな。
本スレでも予想レスがあったけど、
紅白はゲゲとして出るのか、ムカイリとして出るのか?どうなんだろね。
180名無しさん@ピンキー:2010/12/29(水) 18:17:03 ID:LApgRHjJ
かばんをしげさんに持ってもらった時のふみちゃんの「だんだん」はやっぱ可愛いなー
村井さんって呼んでたり初々しくてたまらんでした総集編
181名無しさん@ピンキー:2010/12/29(水) 20:09:22 ID:sjok7yrC
>>179
衝撃の罰ゲームらしいなw


いちせん、ゲゲゲ公式HP終了と同時期に公開終了だそう。
保存出来るページはとっておいた方が良さそうだ
182名無しさん@ピンキー:2010/12/29(水) 22:18:58 ID:6XPAb976
>>181
えぇ〜?!
いちせん公開終了しちゃうの〜?!
なんてこったい…
DVDになったりしないのかなぁ…
絶対買うのに〜(´;ω;`)
183名無しさん@ピンキー:2010/12/30(木) 11:17:23 ID:UrsibmA3
いちせんのDVD化は予定無しと出ていたね。

ゲゲゲ&いちせんのHP閉鎖はいつ頃なんだろ?
184名無しさん@ピンキー:2010/12/30(木) 16:30:55 ID:7zDx2J8Q
総集編、ええ男発言シーンがカットされてて寂しかった…
185しのだ妻1:2010/12/30(木) 19:40:43 ID:DAa4HAfn
 さすような師走の風がボロ家に吹きつけ、すきまから入り込んでくる。
妹の家を訪れている暁子は、本来ならぶしつけにあたるが、あまりの寒さに
コートを着たままフミエと話し込んでいた。美容院で整えた髪にイヤリング、
上等のウールのコートから香水の匂いのする姉は、この陋屋にあまりにも
不似合いで、フミエは申し訳なさに小さくなっていた。

「フミちゃん。輝子おばちゃんからの手紙、読んだでしょ?・・・どげ思うの?」
「え・・・。どげ思うって・・・。」
「私もね、まだ別れてもおらんのにどげなもんかとも思ったけど、輝子おばちゃんが
 心配する気持ちもわかるのよ。」
「お父さんは、わかってくれたよ・・・。」
「お父さんは男だし、女の苦労はわからんよ。お母さんも心配はしとるけど、
 お父さんの言うことにはさからえん。おばちゃんが一人でがんばっとるんだよ。」

 昨日着いた輝子おばからの手紙の内容は、こんなところだ。
『 フミちゃん、元気でやっとる?
 義兄さんの話では、貧乏だが明るく暮らしとるというけど、暁子に聞いたら
 ずいぶん困っとると言うだないの?姉さんも、義兄さんには言えんけど、
 内心ではずいぶん心配しとるのよ。
  東京でのことはなかったものと思って帰ってきなさい。ええ縁談もあるのよ。
 昔、お話のあったにしき屋さんね、あの後お嫁さんに先だたれて、小さい子を3人も
 抱えて後添いをさがしとるの。本人がイヤで断ったわけではないけん、フミちゃんさえ
 気にせんのだったら、ええ話だと思うのよ。こちらも出戻りになるけど、あちらも
 子持ちのやもめだから、つりあいも取れとるしね。
  とにかく一度、安来に帰ってきなさい。』
186しのだ妻2:2010/12/30(木) 19:41:54 ID:DAa4HAfn
 フミエは、輝子からの手紙とお見合い写真を前に、ため息をついた。
「縁談なんて・・・。私は結婚しとるのに・・・。」
「だから、帰って来いって言うとるのよ。」
「私は今のままで、じゅうぶん幸せです。」
「何言っとるの。一日じゅう家事と茂さんの手伝いに追われて、そのうえ毎日の
 暮らしにも不自由して・・・。お父さんが持たせてくれたお金、嫁入り道具買う前に
 生活費に消えてしもうたんじゃないの?」
「・・・今は、ちょっこし仕事が少ないけん。仕事が入れば、お金もできるよ・・・。」
「そげに・・・茂さんのことが好きなの?」
真っ赤になって黙ってしまったフミエの表情が、その答えだった。
二十九にもなって、やっと嫁いだ妹・・・。初めて添うた男に、そんなに心を奪われて
いるのか・・・。暁子たちの心配をよそに、自分はしあわせ、と言い切るフミエの様子は、
どこかあぶなっかしくて、暁子はそんな妹が不憫でならなかった。
 まわりあわせとは言え、ふたりの姉が嫁いだ後、年とった祖母や病弱な母にかわって
家事や家業の手伝いにフミエを便利に使ってしまった・・・という長女として申し訳ない
気持ちも暁子にはあった。
「親に心配かけたくないけん、ここで我慢しとるのかと思っとったけど、あんた・・・。
 女だけん、初めての人と添い遂げたい、言う気持ちはわかるよ。でもね・・・。
 茂さん、あんたを本当に幸せにしてくれるの?」
「・・・駆け落ち夫婦でもないのに、なんでそげなこと言われんといけんの?」
「そりゃあ、お父さんが気に入って嫁にやったんだけん、文句は言われんかもしれん。
 けど、フミちゃんだって、こげな生活とは思わんだったでしょ?だまして連れてきた
 ようなもんだわ。」
フミエは、茂のことを悪く言われるのは何よりもつらかったが、姉の言うことにも
一理あるうえに、自分を思って言ってくれているのだと思うと何も言い返せなかった。
187しのだ妻3:2010/12/30(木) 19:42:46 ID:DAa4HAfn
 そこへ、茂が帰ってきた。フミエはとっさに輝子の手紙を座布団の下に隠した。
「お邪魔してます。」と暁子。
「あ、これはどうも・・・。」
茂は、この義姉が苦手だった。暁子が、妹のフミエに貧乏暮らしをさせている茂に
いい感情を持っていないだろうことは、あまり細かいことを気にしない茂でも
じゅうぶんにわかっていた。それにどうやら、今もその話をしていたようだ。
 気まずい雰囲気の中で、フミエが茂の分も茶をいれた。
「それじゃ俺は仕事がありますけん・・・。どうぞごゆっくり。」
茶碗を持つと、仕事部屋に消えようとした茂に、暁子が問いかけた。
「失礼ですけど、フミエにちゃんと生活費を渡してやって下さってるんでしょうか?」
「・・・いや、今月はちっと、出版社が支払いをしぶっとって・・・。」
「それじゃ、どうやって生活していくんですか?フミちゃん、こげにやせてしもうて。
 この子はね、こげな生活しとってええ子じゃないんですよ。」
「・・・ウチの暮らしに、口出しせんでもらえますか?」
険悪な雰囲気に、フミエが割って入った。
「あ・・・アキ姉ちゃん、遅くなるけん、そろそろ帰ったら?駅まで送っていくけん。」
不服そうな暁子を押し出すようにして、フミエは外に出た。
 並んで歩きながら、フミエは口をひらくと涙がこぼれてしまいそうで、何も
言えなかった。そんなフミエがかわいそうで、暁子もそれ以上何も言わず、だまって
駅まで歩いた。
「何かあったら、言うてきなさいよ。おばちゃんの話も、よう考えてね。」
別れ際にそれだけ言うと、暁子は帰っていった。
 
 ふたりが出て行くと、茂は不機嫌そうにちゃぶ台の前にどっかりと腰をおろした。
座布団の下から、何か白いものがのぞいている。とりあげると、一枚の写真がこぼれ
落ちた。
(・・・なんだ?この男。)
それは、見合い写真だった。茂は思わず輝子からの手紙を読んでしまった。  
188しのだ妻4:2010/12/30(木) 19:43:33 ID:DAa4HAfn
 フミエが帰ってくると、茂は部屋におらず、机の上に手紙が放り出してある。
(しげぇさん!・・・読んだ?)
フミエがあわててフスマを開けると、茂はいつもどおり仕事をしていた。
「あ、あの、しげぇさん、ちがうの、これはただ・・・。」
茂は仕事の手を止め、うつろな表情でフミエを見上げて言った。
「・・・叔母さんの、言うとおりかもしれんな。」
「・・・な・・・にが・・・ですか?」
「ここでの暮らしは、なかったものと思うた方がええのかもしれん。」
「そげな・・・。」
「俺のような男が、結婚なんかしたらいけんだったんだ。義姉さんの言うとおり、
 お前にこげな暮らしをさせとくわけにはいかん。」
不甲斐ない自分への憤りが、茂に思いもしない言葉を吐かせた。フミエを手放す
つもりなど毛頭ないのに・・・みじめてたまらなくて、自分をみつめるフミエから
茂は目をそらした。
「結婚せんだったらよかったって言うの?・・・ひどい・・・。」
「今からでも遅くないけん、安来に帰ったらどげだ?」
茂の口から出た言葉は、フミエを打ちひしいだ。
「あ・・・あなたには、ひとの心がわからんのですか?」
見るともなく原稿に目を落としていた茂が、サッと向き直ってフミエの肩をつかんだ。
「っっ・・・!」
フミエはびくっとして身を硬くした。茂はハッとしてその手を力なくおろした。
それからもう一度手をのばして、フミエのほほをそっとつつんだ。
フミエは目を閉じ、その手に自分の手をかさねた。
「こげに・・・好きにさせておいて、帰れだなんて、あなたはひどい人です・・・。」
フミエがどれほど自分を好きか、自分がどれほどフミエを手放したくないか・・・。
わかっているのに、心にもないことを言ってしまった。 
189しのだ妻5:2010/12/30(木) 19:44:26 ID:DAa4HAfn
 静かに流れる涙が茂の手をぬらした。茂が顔を寄せ、そっと口づけした。あたたかく
とけあい、なにもかも奪われる・・・茂としかかわせない、いつもの口づけ・・・。
「・・・今、抱いてもええか?」
「抱いて・・・。いま、すぐ・・・。」 
ふたりは抱きあったまま倒れ、何度も何度も口づけをかわした。少しでも離れたら、
永遠に会えなくなってしまうかのように強く抱きしめあいながら・・・。
「はぁ・・・は・・・ん・・・んん・・・。」
焦れる手で、お互いに着けているものを脱がせあう間も、唇は離れずむさぼりあう。
それぞれのたかまりを確かめあうと、待ちきれないようにつながりあった。
「ぁあ・・・あ・・・あ――!」
どうして女は、ここが欠けているのか・・・それは、愛する男とつながりあうため・・・。
茂でなければ埋められない空隙を満たされ、心も身体も茂でいっぱいになる。
もっともっとひとつになりたくて、服を着たままの茂のシャツの下に手をさしこんで
肌をまさぐった。
「こ、こら、やめろ。くすぐったいっ。」
茂も、フミエのブラウスのボタンをはずして下着の下から乳房をまさぐり、揉みしだいた。
「あぁぁ――ん・・・あぁ・・・ん。」
フミエが腰をくねらせ、佳境にはいっていく。茂のシャツの下にもぐりこんだフミエの
手は背中にまわり、茂をぐっと引き寄せた。
「あな・・・た・・・もっ・・・と。・・・もっと・・・はいっ・・・て・・・。」
これほどまでに自分を求めるフミエがたまらなくいとおしく、さらに深くうがちながら
きつく抱きしめる。
「あ・・・好きっ・・・しげぇ・・・さんっ・・・すき・・・。」
好き、と言いつづけていないと、声をはなって泣き出してしまいそうだった。
そんな唇を喰らうように奪い、熱情の漏れる隙間をふさいで、激しく責め立てると、
行き場を失った嵐はフミエの中で爆発した。
「うぅ・・・ん・・・ん・・・んあぁぁぁっ――――!」
断続的に茂自身をしめあげる収縮をやりすごしながら、背中をきつく抱きしめている
フミエの腕が次第にゆるむのを待った。そっと手をはずすとゆっくりと上半身を起こす。
まだ余韻にふるえていたフミエは、急に二人の間にあいた空間を哀しそうにみつめ、
茂に向かって手をのばした。
 茂はその手に指をからめ、フミエの顔の横に縫いとめると、フミエをいとおしそうに
見つめながら、ゆっくりとまた責めはじめた。
「あぁ・・・や・・・やぁっ・・・だめっ・・・また、いっちゃっ・・・。」
からみあった指にぎゅっと力が入り、フミエが身体をわななかせた。
「く・・・ぅっ・・・!」
全てをからめとられるような絶頂の中に、茂も自らを解き放った。 
190しのだ妻6:2010/12/30(木) 19:45:08 ID:DAa4HAfn
 冬の短い日が落ち、うす暗くなった室内に、フミエのしろい肢体が夢のように
浮かび上がっている。上半身にだけ乱れた衣服を着けたまま、みだらな情交の名残りを
とどめるさまは、もの哀しくも、このうえなくなまめかしかった。
 まだしびれている身体を出来る限り茂に近寄せ、彼のにおいに包まれながら、
(まだ、1年経っとらんのだな・・・。)
こうまで、この人を好きになるとは・・・フミエはあの日のことを思い出していた。

「覚えとる?婚礼の日の夜・・・きつねの声を聞いたこと・・・。」
「そげだったかな・・・。」
「あなたは酔っとられたから・・・。」
「初夜なのに、なんもできんだったな。・・・あの日なら、あんたをきれいなまま、
 帰してやることもできたんだが・・・。」
「・・・まだ、そげなこと言うの・・・。後悔しとるの?・・・私とこげな風になったこと。」
「俺が、よごしてしもうたけん、あんたは・・・。」
「ふ・・・ふふ・・・そげだわ。もうお嫁に行けんようになってしもうたけん・・・あなたが
 一生面倒みてごしなさい。」
「ずっと・・・ここにおってくれるのか?」
「おるも何も・・・私の家はここですけん。ここに置いてごしない。」
「・・・しのだ妻のように、ふいっとどこかへ行ってしまうなよ。」
「・・・しのだ妻?」
「平安のむかし、安倍保名という人がおってな。その人の妻はきつねだったんだ。
 ある日、犬に追われて正体がばれ、妻は子供を置いて出て行ってしまった。
 『恋ひしくば たずねきてみよ いずみなる しのだの森の うらみ葛の葉』
 と和歌(うた)を残してな。」
「・・・つらかったでしょうね、子供を置いて出て行くなんて・・・。」
「・・・亭主を置いて行くのは、ええのか?」
茂の不服そうな顔に、フミエは吹き出した。茂も笑い出し、やっとふたりに
笑顔がもどった。
 フミエがいたずらっぽく茂の耳元に口を寄せてささやいた。
「ねえ・・・。もういっぺん、よごして・・・?」
「だらっ。ひと晩にそげになんべんもできるか!」   
191しのだ妻7:2010/12/30(木) 19:45:51 ID:DAa4HAfn
 その夜。
 ・・・夢の中で、茂は一面の銀の穂がゆれるススキの野原にいた。とおくに、
白い着物を着たフミエの去ってゆくうしろ姿が見える。
「待て!待ってくれ!・・・行くなあぁっ!」
ススキの銀の穂のなかに、白いしっぽがするりと消えたと見るや、ハッと目が覚めた。
あわてて隣りを見ると、フミエはちゃんとそこに眠っている。
結婚したての頃より、こころなしかやつれて見えるそのほおにかかる髪をよけてやった。
「・・・どこへも、行くなよ・・・。」

 つぎの日。フミエは買い物のついでに、商店街の公衆電話から暁子に電話をした。
「アキ姉ちゃん。きのうはごめんね。・・・輝子おばちゃんには、私から手紙を出すけん。
 あの話は、きっぱり断るよ。アキ姉ちゃんからも、よろしく言っといてくれんかね。
 アキ姉ちゃんと、おばちゃんには、心配してもらって本当にありがたいと思ってます。
 でも、私、ここでやっていくって決めとるけん・・・。だから、心配せんでごしない。」
「うん・・・。わかったわ、フミちゃん。あんたが覚悟を決めとるなら、私はもう何も
 言わんわ。がんばーなさいね。・・・ふふ、本当いうとね、私、フミちゃんのことが
 ちょっこしうらやましいんだわ。あげにだんな様のこと好いとるなんてね。
 あ、私だって主人のことは大切に思っとるよ。・・・でも、フミちゃんのは、まるで・・・
 恋しとるみたいなんだもん。」
「・・・や、やあだ、アキ姉ちゃんたら!・・・そげにええもんじゃないよ。」
「・・・まあええわ。輝子おばちゃんには、フミちゃんはすっごく幸せですーって言うとくよ。
 ・・・でも、身体だけは気をつけてね。」
「うん・・・。アキ姉ちゃん、だんだん。」
電話を切ると、フミエはポストに輝子への手紙を投函した。
(輝子おばちゃん、いつも心配してくれとって、あーがとございます。
 でもね、私、しげぇさんと離れたくないけん・・・。いつか・・・わかってごしなさいね。)
目を閉じて、祈るように心の中でつぶやいた。

(はやく、しげぇさんの赤ちゃんが欲しい、な・・・。)
茂がそそぎこむ愛の証は、いつ実を結んでくれるのだろうか・・・。
師走の風が、身を切るように冷たく吹き付けた。フミエは思わずお腹を守るように
両手でコートをかき寄せた。
(しのだの森のうらみ葛の葉・・・か。だんなさんのこと、好きだったろうに・・・。)
フミエは昨夜の茂の話を思い出してしみじみしたが、ふとひらめいた。
(しのだの森のきつね・・・あぶらげ・・・!お揚げを使った料理に、しのだ〜ってつくのは、
 それでなんだ!)
「そうだ!今日はしのだ巻きにしよ!」
私ってけっこうたくましいかも・・・。フミエは何かがふっきれたように微笑んで、
軽い足取りで歩き始めた。
192名無しさん@ピンキー:2010/12/30(木) 20:29:37 ID:nHeZx8uS
>>185
うわぁぁぁん!切ない!そして萌える…!
gjです!
常連の職人様でしょうか。あなたのssに今年いっぱい、萌えさせて頂きました。だんだん!

いよいよ明日は紅白だー。おかあちゃん頑張れ!
193名無しさん@ピンキー:2010/12/31(金) 10:53:31 ID:nYV0XyeY
>>185
GJ
こういう感じの好きです。
実は暁子ねえちゃんも長女体質でいい人だよね
194名無しさん@ピンキー:2010/12/31(金) 12:01:51 ID:ZaRZKqLy
>>185
GJ!ゲゲは布美ちゃんにベタ惚れだな!
エロの最中に「すき」って繰り返し言われると更にエロい…w
本編で絶対言わなかったから余計ね。

総集編は萌えシーンがことごとくカットされててズッこけたけど、紅白で何とか補完したい…!
今年はゲゲゲとこのスレのおかげですごく充実してた!
来年もずっと続くことを祈ってます!!
195名無しさん@ピンキー:2011/01/01(土) 00:37:10 ID:NRcCPzpr
>>185
切ないゲゲGJ〜!
優しいフミちゃんもええ子や…

2010はゲゲゲで始まりゲゲゲで終わったなぁ
職人さんや、保管庫の管理人さん、だんだん
今年もまだまだゲゲフミでイチャイチャ小説読みたいです!
あけおめ&ことよろ!
196 ◆ChdC8VZqyE :2011/01/01(土) 00:44:34 ID:hapAwNHW
貧乏神なのでおみくじだま無いです
今年は更新何とかします
197名無しさん@ピンキー:2011/01/02(日) 01:14:13 ID:cm+X6sx8
あけおめ!ことよろ!
おお!貧乏神さん、お久しぶりです!!更新、楽しみにしてます。
紅白のおとうちゃん、応援どころか布美ちゃんが緊張してるのをむしろ愉しんでなかった?
ドSゲゲ健在だったな…w
198名無しさん@ピンキー:2011/01/02(日) 12:21:34 ID:za+QRe30
ゲゲは秀忠になってもどSだろうな
199名無しさん@ピンキー:2011/01/02(日) 12:27:21 ID:xHnrLK0W
紅白の名場面集がゲゲふみ祭すぎて悶えた
総集編3はお粥と着物に見惚れるシーン残っててニヤニヤした
200名無しさん@ピンキー:2011/01/02(日) 20:09:45 ID:HtMvoqi2
職人さん方、スレ住人の皆さん、あけおめことよろです!
紅白のVTRのほうが総集編より萌え萌えでしたよね〜
201名無しさん@ピンキー:2011/01/03(月) 18:22:28 ID:BtxPBcpp
紅白やら総集編やらで名場面ばっかり見たらまた全編通して見たくなってしまったよ…
リアルお母ちゃんがテレビに映る度にテレビに近寄ってたらしいリアルお父ちゃんかわいい
202名無しさん@ピンキー:2011/01/04(火) 01:03:53 ID:vwj+kLQv
ゲゲゲの総集編、3時間あまりでは無理ありすぎだったな〜。
例えば萌え萌え総集編を作るとしても、軽く1時間番組くらいにはなるとオモw
「境港のきつね初夜」「あんたは手先が器用だなあ」
「ネクタイイチャコラ」「ええ男だなあ」「おやおやあらあら痴話げんか」
「花と自転車」の週の土曜日なんて、15分まるまる萌え回だし。
203名無しさん@ピンキー:2011/01/04(火) 01:33:06 ID:GFw/C6QB
あけおめ、ことよろ!
昨年はゲゲゲとこのスレで毎日萌えまくって楽しかったw
ゲゲフミとこのスレの皆様にとって幸多き一年になりますように

>>202
アシスタント一年生も土曜日の回は丸々15分萌え回だなw
204名無しさん@ピンキー:2011/01/05(水) 17:17:28 ID:C/hBQ0DF
スーパーのチラシにいちごの日と書いてあって、こじつけて大量に買い込む綾子さんを妄想してニヤニヤしてしまった
205名無しさん@ピンキー:2011/01/05(水) 18:53:28 ID:y+2oDs4+
いつも楽しく読ませていただいています。
ちょっこし思い浮かんだ内容があったんで、書いてみました。
初めてなんで、表現とか日本語とか変ですが…
特に営みの表現が下手すぎてorz
時期的には授賞式の2,3ヵ月後のつもりですが、
おかしな点がばかりかもしれません…
題名もちょっこし内容に合ってないかも…
ご了承ください。。。
206愛の実り 1/5:2011/01/05(水) 18:55:24 ID:y+2oDs4+
「ホント、寝方はしげぇさんにそっくり」
愛する旦那との愛の結晶である藍子の頭を撫でながら、フミエはくすっと笑った。

「藍子、眠ったか?」
襖をそーっと開けて、茂が入ってきた。
「はい。よお寝ちょります。」
「そげか…」
茂は後頭部をボリボリ掻きながら、ぐっすり眠る愛娘の隣に座った。
「もうお仕事ええの?」
「ああ。明日締め切りの分はもう描き終わった。
次の締め切りはまだ先だけん、今日はもうおしまいだ。」
そう言いながら茂はフミエを両脚で挟む様に座りなおし、フミエの背中に額をあてた。
「どげしました?眠たいんですか?布団敷こうか?」
「ああ。敷いてくれ。」
そう言いながら茂はスススと尻を前進させ、フミエの体に股間を押し付けた。
「!?……お父ちゃん?」
茂の股間の変化に気づいたフミエは、驚いた顔でそっと後ろを振り返った。
「ん…っ」
その瞬間茂に唇を奪われた。
久しぶりのキス。
久しぶりすぎて、フミエにはとても長く感じた。
唇を離した後、茂はフミエの耳元で囁いた。
「近頃締め切りに追われてばっかりだったけん、こげな時間がなかったな。
時間ができたと思いきやお母ちゃんの月のものと重なったり、来客が来たり…。
そろそろやらんと、気が持たん。」
207愛の実り 2/5:2011/01/05(水) 18:56:06 ID:y+2oDs4+
茂が漫画賞を受賞して以降、以前と比べ物にならないほど漫画の注文が殺到した。
フミエにとっても茂にとってもそれは良いことであるが、何せ夫婦の時間が取れない。
更に頻繁に原稿取りが来る状況であるため、キスすらできない毎日が続いていた。
フミエ自身もそのことをとても気にかけており、愛する旦那との営みを心の奥底から欲していた。
だから久しぶりに締め切りの間が開き、旦那との時間ができたことはとても嬉しかった。
しかし、せっかくゆっくりできる時間ができたのならしっかり休んでほしいという思いもあり、
フミエは複雑な心境だった。

「お、お父ちゃん…せっかく早く寝れるんですけん、
今日はぐっすり休んでごしない…」
「嫌だ。」
「もう…子供みたいな言い方して…」
フミエは困ったふりをしながら、そっと茂の唇にくちづけをした。
「ちょっこし待ってください…すぐに布団敷きますけん…」
「おや?今日はやけにあっさりと受け入れるな…。
ほほぅ。そうか。お前も俺を欲しとったんだな。」
「なっ!そげな!…こと……あります…」
フミエは自分でも不思議なぐらい正直に言ってしまい、
恥ずかしさのあまり顔が真っ赤になってしまった。
「ふ、布団敷けませんけん、ちょっこしどいて下さい!」
「今日のお母ちゃんは素直だなあ。
ほれ、早く敷いてくれんと、俺の息子が待ちくたびれるわ。」

すやすや眠る藍子のすぐそばに布団を敷き、その上でお互いに脱がせ合った。
「こげに近くで、藍子起きちゃいませんかね?」
「大丈夫だろ。俺の娘だ。ちょっとやそっとじゃ起きんわ。」
「そげですね。あ…電気…消してごしない…」
「何今更恥ずかしがっとるんだ。お前の体は隅々まで知っちょる」
そう言うと茂はフミエをゆっくりと布団に押し倒した。
(久しぶりにじっくり見たが…30過ぎに見えんぐらい綺麗な体しとる…)
(久しぶりのしげぇさんの裸…逞しい右腕…やっぱり私にはこの人しかおらん…)
茂はそっとフミエの胸の谷間に唇を落とした。
臍…乳頭…首筋…唇…次々と…
まるで自分のものだという印を付けるかのように…
208愛の実り 3/5:2011/01/05(水) 18:56:37 ID:y+2oDs4+
「フミエ……」
(いかん……久しぶりだからか、もう限界に近づいとる…)
「しげぇさん?どげしたの?」
フミエが軽く頭を上げ、茂の方を見た。
茂は無言でフミエの秘所へ手を伸ばした。
もうそこは十分茂を受け入れる準備ができていた。
「あっ…ん……しげぇ…さん…い…れて…」
「…いくぞ……んっ…」

はちきれんばかりの茂の分身を一気にフミエの中へ挿し込んだ。
「あぁっ……!」
「っ…はぁ……動くぞ…」
茂はゆっくりと腰を動かし始め、しだいにスピードを上げていった
「あっ…あぁ…しげぇさん!…あぁっ…す…き…」
「っん…ハァっ…っく…ああ……わかっちょる…」

「あぁっ…」
「ハッ…っっく…」
最後は二人同時に果てた。

「ハァ……ちょっこし早すぎた…久しぶりすぎたか…」
「…え?」
「せっかくだからもっとじっくり味わいたかったんだが…体がいうことをきかん…」
「そげですね……また…してごしない?」
「ああ。しないと鈍るってことがよくわかった…」
「クスッ…もう年ですからね…」
「だらっ」
209愛の実り 4/5:2011/01/05(水) 18:57:18 ID:y+2oDs4+
裸のまま向き合いながらクスクス笑っていると、突然バンッと音が鳴った。
「「!?」」
驚いて音がしたほうを見ると、藍子が寝返りをうった後だった。
「なんだ…寝返りか…」

呟くフミエの下腹部に突然あたたかい重みがきた。
「ど…どげしました!?」
茂がフミエの下腹部に大きな右手をそっとあてたのだ。
「ん…藍子にもそろそろ姉妹が必要かなと思って…」
「そげですね…一人だと寂しいでしょうね…」
「実っとらんかな?」
そう言いながら茂は優しく腹をなでている。
フミエはその右手に両手を重ねた。
「どげでしょうね?こげなことは神様にしかわかりませんけん」
「そげだな。…あ!」
「どげしました?」
「実っとったらそれはそれで困るなぁ…一年以上もお預けを食らうことになる…」
「もう!そげなこと言って…本当に実っとったらどげするんですか!困るだなんて……」
フミエはそう言って茂の手を払いのけた。
「冗談だ。ごめんごめん。」
茂はそっとフミエを抱き寄せた。

「冗談でも…そげな事言わんでくだ…あれ?」
茂は一瞬の間に眠りについてしまっていた。
「もう…すぐ寝るんだから…。あ!」
フミエは重大なことに気がついた。
「裸!お、お父ちゃん!風邪引きますよ!お父ちゃん!」
必死に揺すってみたが、全く起きない。
「もう!!風邪引いても知りませんからね!!」
210愛の実り 5/5:2011/01/05(水) 18:58:27 ID:y+2oDs4+

――――――数ヵ月後――――――

「……気持ち悪い…」
「え…」
「あっ…」
フミエが口を押さえながらバタバタと部屋を飛び出していった。
「おい!大丈夫か!」
「気持ち悪い…俺が!?」
鏡で自分の顔を見ながら口をワナワナさせている浦木を放ったまま、
茂はフミエの後を追いかけ洗面所へ言った。

「何か悪いもんでも食ったか?」
「明日、病院に行ってみます」
「病院!?そげに悪いのか?」
「もしかしたら…できとるかもしれません…」
「できとるって…え、赤ん坊か!?」
「はい」

(なるほど、つわりだったわけか…。この夫婦にも二人目、やることやっとるのう)
浦木が二人の様子を覗きながら小さく拍手をしていることに二人は気づいていない。

「そげか…。」
茂はそっとフミエの下腹部を触った。
「ちゃんと…実っとったようだな。」
「え?」
「あの時、ちゃんと実っとったんだ。」
茂は嬉しそうな笑顔を浮かべながらそっと腹を撫で続けている。
「あの時って…」
「だら!もう忘れたのか。藍子に姉妹が欲しいって話をしただろ?」
「あぁ!ほんと、ちゃんと実っとったんですね。これで藍子も寂しい思いせんですみますね。
あ…お父ちゃんにはちょっこし我慢してもらわないけんけど…」
そう言ってフミエは茂の手に自分の手を重ねた。
「ああ。………大事にせえよ。」
「はい。」
フミエの腹の上に手を重ねたまま二人は幸せそうに見つめあった。


(まったく…お熱うございますね…
おっと、覗き見してるのがばれたらゲゲの拳骨を食らうことになる…
早いとこ退散せねば…)

そして浦木はそーっと村井家から出て行ったのでした。
end...
211名無しさん@ピンキー:2011/01/05(水) 19:05:05 ID:y+2oDs4+
誤字発見orz
212名無しさん@ピンキー:2011/01/06(木) 04:24:29 ID:KZ6nYG89
>>206
おおっ、初エロパロ乙です!
ドラマで実際にあった台詞の続きや、浦木が目に入らない感じがイイw

ふみちゃんの背中に額を当てて甘えるゲゲを実際見てみたかったなぁ
その後の流れも含めて絶対に放送されないだろうけどw
213名無しさん@ピンキー:2011/01/06(木) 20:13:47 ID:0nVhMZE5
>>206
そんなに謙遜しないでも、新しい書き手さん大歓迎ですよ。
あの浦木きもちわるい→洗面所でのシーンは珍しく生々しくてよかったよねww。
一人目と違ってゲゲにもすぐわかってハッピーな感じで。
浦木は人知れず拍手するのがシュミなのかw。
214名無しさん@ピンキー:2011/01/06(木) 22:47:26 ID:mAZEUO9N
>>206
乙!事後の二人の会話がなんかツボだ

ふみちゃんぬのえさん誕生日おめでとう!
ついでにふみちゃんの中の人食わず嫌い勝利もおめでとうw
215名無しさん@ピンキー:2011/01/07(金) 00:20:58 ID:5p1+onVj
>>206
初投下乙!新規の書き手さん、嬉しいよ〜。
「すき」→「わかっちょる」にニヤけたw
んでもって今日は食わず嫌いで夫婦喧嘩が見れてまたニヤけたw
216待つとしきかば1:2011/01/07(金) 11:10:52 ID:KyBk91ub
 昭和四十七年元旦。
茂とフミエは、藍子と喜子を連れて深大寺に初詣に出かけた。
 ふだんは殺人的なスケジュールに追われる茂も、年末進行とやらを死ぬ思いで
切り抜けた後は、さすがに暮れから三が日くらいは水木プロを休みにした。
アシスタントたちも故郷のある者は故郷に帰り、ひさしぶりに家族水入らずの
正月を迎えていた。
 休みとはいえ、新年からの仕事のことを思えば、構想を練ったり資料を見たりと
茂はついつい仕事部屋に遅くまでこもりがちで、朝はそのかわり寝坊し放題。
元旦と言うのに起きたのは昼ちかくで、雑煮を祝った後、子供たちにせがまれて
やっと初詣に出かけたところだった。
 おまいりを終え、新春の明るい日差しを浴びながら4人でゆっくりと自転車を
こいだ。茂と自転車で出かけることなどほとんどない子供たちは大喜びで、とりわけ
やっと補助輪つきの子供用自転車に乗れるようになった喜子は必死でペダルをふんだ。
すずらん商店街にさしかかると、
「あけましておめでとうございます。まあ〜おそろいで珍しいわねえ。」
「あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。」
自転車を降りて歩く一家に、顔見知りの人々が次々に挨拶する。
 商店街を少しはずれた亀田質店の前で、店主の亀田をみつけ、茂とフミエが近づいて
笑顔で挨拶すると、
「あけましておめでとう、村井さん。今年もよろしく・・・っつっても、お宅はもう、
 ウチにゃ用がないねえ。」
「そげなこと・・・。亀田さんにはお世話になりっぱなしで。」とフミエ。
「そげそげ。またいつお世話になるかわかりませんからなあ。」とは茂。
「またぁ〜。そんなこと言っちゃって。ご商売繁盛なんでしょ? 
 こないだも、先生が編集の人に追っかけられてるの見ましたよ。
 それにしても 義理堅い人たちだねえ。苦しい時は頼ってきても、
 楽になったら知らんぷり、なんて客ばっかりですよ、この商売はね。
 誰だって質屋にやっかいになったことなんか、人に知られたくないもんね。
 だから店も目立たないとこにあるの。」
感慨ぶかげに話す亀田に、喜子が無邪気に聞いた。
「おじさんのお店、なにを売ってるの〜?」
「う〜ん。喜子ちゃんにはまだ難しいかな。もうちょっと大きくなったらお父さんに
 聞いてね。」
亀田は別れをつげて去っていく一家の後ろ姿を見送りながら、ひとりごちた。
「水木先生、長いおつきあいだが、ウチに用がなくなってよかったねえ。
 ・・・わたしゃちょっとさびしいけどね。因果な商売だよ、まったく。」    
217待つとしきかば2:2011/01/07(金) 11:11:50 ID:KyBk91ub
 家に帰ると、藍子は習字の道具を出して書初めの宿題を始めた。
練習用の新聞紙に何枚か書いてみて、いざ本番の半紙に向かったものの、なかなか
会心の作とはいかず、たちまち部屋中に失敗作が広がった。
「う〜ん。うまくいかないなあ。」
「なんだ、宿題か?習字なら、お母ちゃんがうまいけん、教わったらええ。」
「へえ、お母ちゃんがお習字うまいなんて知らなかった。お父ちゃん、どこで見たの?
 もしかしてラブレターでももらったとか?」
「いやだ、何言っとるの、藍子。・・・お父ちゃん、藍子に話してもええですか?」
「ああ、ええぞ。亀田さんはああ言っとったがな、別に恥ずかしいことなぞ
 何もない。親が苦労した話を子供にして悪かろうはずもないしな。」
「・・・あのね、藍子。亀田さんのお店は質屋さんといって、品物をあずかって
 かわりにお金を貸してくれるの。お父ちゃんのマンガが売れるようになる前、
 亀田さんにはずいぶんお世話になったのよ。質流れといって、ある期間を過ぎると
 預けた品物が返してもらえんようになるんだけど、亀田さんはずいぶん待って
 ごしなさったり、相場より多めに貸してくれたりしたのよ。」
「ふうん。でもそれが、なんでお習字に関係あるの?」
「おい。百聞は一見にしかず、書いてみせてやれ。」
「いやですよ。恥ずかしい。」
「そう言わずに書け!」
フミエはしかたなく筆をとってさらさらとしたためた。   
218待つとしきかば3:2011/01/07(金) 11:12:41 ID:KyBk91ub
『たち別れ いなばの山の峰に生ふる まつとし聞かば 今帰り来む』

「お父ちゃんもお母ちゃんの習字は一回しか見たことないけどな、これを
 お母ちゃんの着物を質屋にあずける時に、お母ちゃんが紙に書いて、
 たとう紙にはさんで入れておいたんだ。」
「何それ?なんかのおまじない?」
「『今、私はとおくへ行くけれど、あなたが待っていると聞いたなら、またすぐ
  帰ってきますよ。』というような意味だ。・・・本当は、いなくなった猫が
 帰ってくるおまじないなんだが、お母ちゃんは質草が無事に返ってくるのにも効く、
 と言い張ってな。お母ちゃんはお父ちゃんと結婚する前は、質屋なんかにゃ縁のない
 お嬢さんだったけん。」
「でも、本当に返ってきたんでしょ?おばあちゃんが縫ってくれた着物、
 見せてもらったことあるもん。」
「ああ。お父ちゃんは質草を流したことがないのが自慢だけんな。」
「亀田さんがずいぶん待ってくださったんじゃないですかねえ。」
フミエが笑った。
「藍子がお腹におる時でね。生まれた後も、4年くらいは苦しかったけん、ミルク代やら
 ずいぶん亀田さんにはお世話になったのよ。だけん、藍子は亀田さんのおかげで
 大きくなったようなもんだわ。会った時はちゃんとごあいさつするのよ。」
(ウチって、そんなに貧乏だったんだ・・・。)
藍子はちょっとショックだった。今でも家の暮らしはそれほどぜいたくではないし、
きれいになる前の家のこともうっすら覚えてはいる。
(でも、私のミルク代もないくらい、困ってたんだ・・・。)
藍子は子供心にもなんだかしみじみした。だが一方で、そんなつらい思い出なのに、
なつかしそうな父母が不思議でもあった。                      
        
「あ〜っ!!おしゅうじ〜!喜子もやりたい〜〜!!」
階下で遊んでいると思っていた喜子が、いつの間にか後ろに来ていて、藍子の筆を
とろうとした。
「だめ、よっちゃん!これは宿題なんだから、汚さないで!」
筆のとりあいになり、ふたりの顔はスミだらけ、仲裁にはいったフミエもとばっちりで
スミをつけられるやら、しみじみした気分は一転、大騒ぎになってしまった。 
219待つとしきかば4:2011/01/07(金) 11:13:32 ID:KyBk91ub
 茂はネーム部屋にこもって新年からの仕事の構想に早くもとりかかっていた。
ふと手を止めて、さっきフミエが書いた行平の和歌をしみじみと見る。
(ラブレター・・・か。藍子もそげなこと言う年齢(とし)になったんかな。
 誰に贈ったうたか知らんが、業平の兄貴だけん、やっぱり相手は女かもしれん。
 ラブレターでもあっとるかな。)
 艶っぽい和歌の文句とは裏腹に、このうたの思い出はほろ苦いものだった。
もうじき子供が生まれると言うのに、富田書房の手形が不渡りになり、家の月賦も
滞って立ち退きをせまられ、あまりの収入の少なさに税務署に所得隠しを疑われる始末。
そんな時、フミエが取り出してきたのがあの青海波の着物一式だった。
「これは・・・ダメだ。しまっとけ。」
押し返す茂に、
「今、私、これですけん。着る用事ができるまでちょっこし預けとってごしない。」
フミエは大きなお腹をなでて笑ってみせた。
女にとって着物、それも嫁入り道具の着物には男の想像以上の思い入れがあるに違いない。
だが、今は母親として、子供を無事に生んで育てることが何よりも優先する。
茂の男としてのプライドを傷つけないように明るく、さも何気なさそうに着物を差し出す
フミエの、母としてのつよさを、茂はまぶしい思いで受け取った。
 着物には、『待つとしきかば』の和歌がはさんであった。
「これは、迷い猫が戻ってくるおまじないでなーか。」
「きっと効きますよ。信じる気持ちの問題ですけん。」
ふたりはなんだかおかしくなって笑った。こんな時に、こんなことをする、
フミエという女が、心底可愛いと思った。
「決して流してはならんと言う、自分に対するおまじないです。」
いぶかしげに和歌をながめる亀田に、茂は自らに言い聞かせるように言った。
(もう決して、フミエにあげな思いはさせん!)
貧乏生活に戻りたくないという一心から、茂は火のタマのように働かずには
いられなかった。来る仕事は絶対に断らないから、殺人的なスケジュールに
ならざるを得ない。忙しすぎて、最近ではフミエとろくに会話するヒマもなかった。
(アイツは、待ってくれとるのかな?)
茂は、ふと立ち上がると、仕事部屋を後にした。 
220待つとしきかば5:2011/01/07(金) 11:14:21 ID:KyBk91ub
 近ごろでは、藍子が喜子と一緒にお風呂に入って面倒をみてくれるようになった。
ふたりを寝かしつけると、フミエは夜おそくなってから一人でゆっくりお風呂に入った。
(・・・ふたりとも、大きくなったなあ。特に藍子は、すっかりお姉さんらしくなって。
 だけど、ラブレターだなんて、藍子もそげなこと言う年齢になったんだね。)
「待つとし聞かば、いま帰り来む・・・か。」
(あの頃は、大変だったなあ。お母さんが夜なべで縫って持たしてくれた着物、
 手放す時は本当は涙が出そうだったけど、そげなこと言っとったら、藍子を
 無事生むこともできんかったかもしれん。)
フミエの着物を受け取って質屋へ出かけて行く茂のつらそうな後ろ姿・・・。
藍子が生まれてからも苦戦はつづいた。料金が払えなくて電気を止められたり、
安来から贈られた、藍子の初節句のためのお金を生活費にまわしてしまったり・・・。
あの綱渡りのような日々・・・。あの中で子供を持つなんて、ひと様から見たら非常識と
そしられるくらい無謀だったかもしれない。
(でも、精いっぱい生きとった。それに・・・。)
かたわらにはいつも茂の笑顔があった。「なんとかなる。」と思うことができた。
(昔のことを思うと夢みたい。だけど・・・。)
フミエは新しく快適になった風呂場の湯ぶねにつかりながら、思い切りのびをした。
昔は薪でたく風呂で、風呂場は寒く、木製の湯ぶねは古くなって、毎回こすっても
「あかなめ」が出そうなくらいすぐ汚れてしまったものだ。
(昔はよくお父ちゃんの背中を流したもんだったけど・・・。)
今の茂は、いつ寝られるのかもわからないほど忙しいため、真夜中に入ることも多い。
(さびしい、なんて言ったら、ぜいたくだろうか・・・。)
貧乏生活からは抜け出せたけれど、そのかわり、今の茂は家の中にいても
遠いところへ行ってしまっているような気がした。
(私には、待っとることしかできんけん・・・。)  
221待つとしきかば6:2011/01/07(金) 11:15:06 ID:KyBk91ub
 その時、ガラス戸がカラリと開く音がして、誰かが脱衣所に入ってきた。
「おい、入るぞ。」
「え?ちょ、ちょっと待ってください。」
茂はあわてるフミエにかまわず、さっさと衣服を脱ぎ捨てると風呂場の戸を開けた。
「私はもう出ますけん。」
「ええけん、ゆっくり入っとれ。」
フミエは明るすぎる照明の下に裸体をさらすのも恥ずかしく、しかたなく湯ぶねに
つかっていた。茂はそんなフミエにかまわず石けんを泡立てると身体を洗い始めた。
「ん。」
茂が泡だらけのタオルをフミエに渡して背中を向ける。
「冷えるけん、そっからでええ。」
フミエは湯ぶねの中でひざ立ちになって茂の背中を洗った。泡だらけの広い背中を
見ていると、たまらなくなって抱きついた。
「だらっ。泡だらけになるぞ。」
そう言いながらも茂は、フミエの手をつかんで前にまわすと、自らの男の部分に
ふれさせた。
「よう洗ってくれ。」
「もぉ。お父ちゃんのエッチ・・・。」
「エッチはお前の方だろ。背中にあたっとるぞ。」
フミエが泡のついた指でやさしく茂自身を洗うと、柔らかだったものが次第に
充実してくる。
「もうそれくらいでええ。」
茂はお湯をくんでざっと流すと、フミエの手と胸についた泡をぬぐってくれた。
泡をぬぐう時、必要以上に撫でまわされ、フミエは息をはずませた。 
222待つとしきかば7:2011/01/07(金) 11:15:52 ID:KyBk91ub
 茂が湯ぶねに入ってくる。と思いきや、湯には入らず、湯ぶねの縁に腰かけた。
目の前に半勃ちになったものを見せつけられ、フミエは思わず目をそらした。
茂がフミエの肩をつかんで引き寄せる。フミエは羞じらいながらも、素直に顔を寄せた。
そっと手で支えながら口に含むと、さっき洗った時よりもさらに硬度を増した。
自分の行為で茂が感じてくれる、この愛し方がフミエは嫌いではなかった。
次第に熱が入り、頭を上下させる。茂がいとおしそうにその頭を撫でた。
「もう・・・離せ。」
フミエがゆっくりと口を離すと、みだりがましい粘液が糸をひいた。
しばし余韻にひたるフミエの前にそのまま身を沈めた茂が、フミエの秘所に手を伸ばす。
「やっぱり濡れとる。お前はすぐその気になるなあ。」
「だって・・・んんっ。」
茂の指に翻弄され、フミエは身をよじった。フミエが口唇で茂を愛するだけで
したたらせてしまうのはいつものことで、それをいちいち告げるのは茂の意地悪だった。
茂は湯の浮力でフミエの身体を持ち上げると、屹立する自身でフミエを下からつらぬいた。
「あ・・・ぁあ・・・ん。」
ぞくぞくするような充足感に満たされ、フミエはうめいた。だが・・・。
「だ・・・誰か来たら、どげします?」
「年寄りと子供は寝とるだろ。お前が起こすような大声を出さんだったらええんだ。」
「も、もぉ・・・。」
「おや?こげなとこに墨がついとるぞ。喜子にやられたな。『袖に墨つく』というのは
 誰ぞに惚れられとる、と言うが『耳に墨つく』のは何だろうなあ?」
言いながら茂は、フミエの耳たぶについた墨を舌でねぶった。
223待つとしきかば8:2011/01/07(金) 11:16:53 ID:KyBk91ub
 明るい照明に照らされたふたりの裸体も、茂が責めるたびちゃぷん、ちゃぷんと
波立つ水音も、恥ずかしかったのは最初のうちだけで、フミエはそのうち悦びの声を
かみ殺すことだけに必死にならざるを得なくなっていった。
「あ・・・や・・・だ、めっ・・・お、とうちゃ・・・あぁ―――――!」
茂にしがみつき、手で口をおおったフミエは、茂の上でびくびくと身体を震わせた。
茂はそんなフミエをそっと支えると、湯ぶねにもたれさせ、片脚を持ち上げて
湯ぶねのへりにかけ、大きく開いた中心部をさらにえぐった。
「だめっ・・・だめっ・・・こえが・・・出ちゃ・・・。」
茂はフミエの哀願にはかまわず結合部をこねまわすように容赦なく責めた。
「んん・・・んぁ・・・ん―――――!」
フミエは茂の肩に口を押しつけた。くぐもった絶頂の悲鳴を聞きながら、茂も
フミエの中にすべてをそそぎ込んだ。

・・・しばしの真っ白な恍惚のあと・・・。茂が荒い息をおさめながら口づけしてくれた。
フミエはいとおしそうに濡れたその髪をかきあげながら、ふと茂の肩の歯形に気づいた。
「す、すみません。痛かった?」
「おお、食われるかと思ったぞ。」
茂が笑った。
「快かったか?・・・まあ、聞かんでもわかるけどな。」
茂はまだつながったままの身体を揺すぶって、フミエに小さな悲鳴をあげさせた。

「さてと・・・。俺はまだ仕事があるけん。先に出るぞ。」
茂は湯から出ると、ざっと身体を流して風呂場を出た。
フミエは、まだしびれている身体を、ぐったりと湯ぶねのふちにもたせかけ、
風呂場のガラス戸のでこぼこしたガラスの向こうにぼんやり見える茂をみつめていた。
こんなにも激しく愛しておいて、さっと離れて行ってしまう茂がちょっとうらめしかった。

「おい。仕事場の『無為に過ごす』とゲーテの箴言な。」
「は、はい。」
茂がいきなりガラス戸を開けて顔を出したので、フミエはびっくりして起き直った。
「あれ、古くなってだいぶ黄色くなっとるけん、お前書き直しといてくれ。」
「・・・はい!」
茂はそれだけ言うと、脱衣所の戸を開けて行ってしまった。
(あげな風だけど・・・。ちょっとは気をつかってくれとるんかな?)
今日は、子供たちを連れて深大寺に初詣に行ったり、フミエをたっぷり愛してくれたり
・・・。茂としては大サービスデイだったのかも・・・。
フミエはちょっとおかしくなって、笑いをこらえながらゲーテの箴言を思い出し始めた。
224216:2011/01/07(金) 11:25:18 ID:KyBk91ub
お正月のネタなのに、すっかり遅くなってしまいました。
なんとか松の内に間に合った・・・w。
「書初め」の話題なのに、やっぱり「○はじめ」になってしまう、
おめでたいふたりですww。
225名無しさん@ピンキー:2011/01/07(金) 17:13:31 ID:xF7kpiyk
紅白の松下さんのピアノ演奏を見直していたんですが、
あれはヤバイ!
萌えシーン集めすぎですよね
特に頭ナデナデとか…
自分は松下×向井が好きなんだなと改めて思いましたw
いつもは携帯で見たり書き込んだりしてるんですが、
規制中なんで久しぶりにパソコン。
もうすぐなくなっちゃうってことで、いちせんもう一度見てきますw
226名無しさん@ピンキー:2011/01/07(金) 17:47:42 ID:fThT3Axe
>>216
姫はじめGJ!
お風呂で泡プレイに滾ったw
ちょうどフミちゃんの着物を質に出す辺り観直したんで
自分的に神タイミングでしたw
亀田さんいい人だなぁ
227名無しさん@ピンキー:2011/01/07(金) 20:40:56 ID:QxiyjU8n
≫206
新しい書き手さん嬉しいです!
よっちゃん製造秘話乙
≫216
風呂プレイもさることながら、亀田さんのキャラがイメージ通りで感激した
228名無しさん@ピンキー:2011/01/07(金) 20:48:28 ID:xF7kpiyk
いちせん既に公開終了したんですね…
でもなぜか本編のページだけ見れた…
メイキングが見たかったorz
ついつい前スレのいちせんのやつ思い出しちゃいますw
229名無しさん@ピンキー:2011/01/08(土) 01:14:25 ID:4Nvu+A6y
>>216
GJ!うわー!何気に初?風呂プレイ北w
思わず昼休み中に悶えたわ!そんでまた今改めて読んで萌える…!
イカルに気づかれんだっただろうか、どきどき。
230名無しさん@ピンキー:2011/01/08(土) 03:30:15 ID:TRoVJ5EZ
>>216
新婚も熟年もいいけど、この頃の村井一家はやっぱいい!
ふみちゃん的にショボンな時期だけど、
書き手さんの創造で救われるわぁ〜。

ドS情報は知ってたとはいえ、
食わず嫌いでのムカイリの奈緒ちゃん口撃や「水木しげる」の呼び捨て連続に
ちょっこしおののいていたんだけど、
随所で聞こえる奈緒ちゃんの“お父ちゃんラブ”っぷりに
「俺は向井だ‼」の思いが爆発したんだと勝手に妄想することにした。
中の人は中の人、とは重々承知してるけど、
この二人の並びが好きなんだもん(´・ω・`)
231名無しさん@ピンキー:2011/01/08(土) 05:26:22 ID:AQTktIxv
>>216
うわぁ、お風呂でLOVE注入!w
GJです!
232名無しさん@ピンキー:2011/01/08(土) 05:48:09 ID:jdMdhA/P
実食の時の目を合わせながら
「ん?」
「ん?」
ってお互い疑いあってる二人に萌えちゃったじゃねーか
233名無しさん@ピンキー:2011/01/08(土) 06:23:03 ID:AQTktIxv
久し振りにいちせん見てきた!
エロパロスレの住人になったので、就寝時の会話シーンに注目したw

前は気付かなかったけど、ダブルタイプのお布団ってあるんですね
ベッドでいうところの「ハリウッドツイン」みたいに、くっついてるけど分かれてるみたいなの
和室で寝る新婚さん用なのかな?
234名無しさん@ピンキー:2011/01/08(土) 06:32:50 ID:AQTktIxv
あと、綾&祐ちゃんがTVのデータ放送を見るシーンだけど、
料理番組で作っているのが「つみれ」で笑ったw

撮影中に「私、実は鰯のつみれが苦手なんですよ〜」とか話さなかったんだね
235名無しさん@ピンキー:2011/01/08(土) 18:04:24 ID:jpIpLXF6
>>216
お風呂で泡プレイktkr!
背中におっぱいをおとうちゃんよく堪えたなぁ…歳のせい?w
村井姉妹もかわいいし亀田さんにも愛があってほんとGJです
236名無しさん@ピンキー:2011/01/08(土) 23:47:49 ID:CRxOTHCI
>>230
向井氏の毒舌にもニコニコしてたなw>奈緒ちゃん

年が明けても民放で二人の萌えシーンが見れて嬉しい
237名無しさん@ピンキー:2011/01/09(日) 12:36:27 ID:/f8luECb
>>234
すごいうろ覚えだけど、メイキングのNGシーンだと二人が見てるのが壁で
テレビ自体が無かったような気がするから合成なんじゃないかなぁ

食わず嫌い、料理しないじゃんのくだりは好きな人の前で見栄をはる妹をおちょくる兄に見えた
お前いつもそんなことしてねーじゃん的な
今思うと、料理しないという目の前の身近な嘘に惑わされてたんだなぁ…w
238名無しさん@ピンキー:2011/01/09(日) 19:25:02 ID:bZ3Vxj4K
>>237
あそこで、なぜ見え透いた嘘を奈緒ちゃんがついたのか、
よーく考えれば引き分けになったかもしれないのにねw
239プロポーズ1:2011/01/10(月) 22:36:18 ID:+3FSSv0s
風呂上りに少しだけ、ペンを走らせていた茂にそうっと近寄る影がひとつ。
気づいてそちらを見やると、含み笑いでこちらを窺う布美枝がいた。
「今日は何の日か、覚えとられますか?」
その問いかけに茂はわざと答えずに、ぽりぽりとペンの尻で頭を掻いた。
本当は、昼間から気づいていた。どこかそわそわしている様子に、今日は何かある、と。
よくよく考えてみれば、1月30日だったので合点がいった。
けれど敢えてこちらから言い出すことはしない。というより出来ない。
そういうところが、茂の不器用なところだった。

「…結婚記念日」
ぼそっと呟くと、ぱあっと布美枝の顔が輝いたような気がした。
紅潮した頬に満面の笑みを浮かべて、
「これ」
後ろ手に持っていた包みを、さっと差し出す。
鹿の子柄の包みに、ご丁寧にリボンまで付いている。
店で買った風はなく、どうやら布美枝のお手製のようだ。
リボンを解いて包みを開くと、青墨色の毛糸で編んだマフラーが入っていた。
「散歩のときにどうかと思って」
恥ずかしそうに付け加えた。
「ふうん、ええ色だな。いつの間に編んどったんだ」
「おとうちゃんは仕事に夢中になっとると、こっちには全然無関心だけん。よーはかどりました」
皮肉っぽく言われたけれど、まったく刺々しさがない。
くすくすと笑う声に、茂も苦笑った。
「すまんが、俺はなんも用意しとらん」
「ええです。あたしが勝手にやっとるだけですけん」
「何でも欲しいもん、買ったらええ。服とか、化粧品とか」
昨年末に、雄玄社の漫画賞を受賞したばかりだ。
雑誌に連載を持ち、暮らし向きは上がってきているし、それくらいの余裕はあるはずだった。
「欲しい物なんてないです。服も化粧品も、家と商店街の往復しかしとらんあたしには無用の長物です」
この女房は、いつまで経ってもそういう風だから、呆れてしまう。
たまの贅沢は精神に潤いをもたらす、という茂の持論は、
布美枝の前では右から左へ流されていってしまうのだった。
ため息を吐いて、ペンを置く。
「今日はもう閉店」
言ってからちらりと布美枝に意味深な視線を送ると、
敏感にその暗号を受信して、思わず口元を緩めて頬を染めたのが判った。
240プロポーズ2:2011/01/10(月) 22:37:14 ID:+3FSSv0s
― ― ―

茂があとから寝間に現れると、布美枝は藍子の傍らでその髪を撫でていた。
伏し目がちに娘を愛でる横顔が、つくづく美しいとは思うものの、口に出してはとても言えない。
惚気た自分を慌てて繕うように、ごほん、と咳払いをして布団に座った。
布美枝は藍子の様子を窺う振りをして、その実、背中でこちらとの間合いを測っている。
そんな小細工などせずに、寄り添ってくれば良いのに、と思う反面、
強引に腕を引っ張って抱き寄せ、胸の中で羞恥にたじろぐ様を見るのも愉しい。
そんなことを考えていたものだから、思わず零れた下心の含み笑いが、布美枝をきょとんとさせて、
「おとうちゃん?」
訝しげに覗きこまれた。
「何か可笑しい?」
「あ、いや、あの、あれだ。えーと…」
要するに、さっさと来い、ということだ。
茂は布美枝の腕を引っ張って、自らの胸に埋め込んだ。
布美枝は驚いたように小さく叫んで、しかし為すがままに身を預けた。
さらりと伸びる黒髪を、手櫛で梳かしながら、女体の柔らかと香しさにぼんやりと蕩ける。
「…なぁ」
「…はい?」
やはり少しだけ気がかりで、改めて問うてみる。
「遠慮せんでも、欲しいもんがあったら言うてみろ」
「はあ…」
茂の言葉が意外だったのか、布美枝は気の抜けたような返事をしてから、
「そげですね…」と呟き、眉間に皺を寄せて頭を捻りだした。
「ないのか、何も」
茂の問いかけに、布美枝は目を閉じて天を仰ぎ、うんうんと呻る。
「色々あるだろう、ネックレスとか、イヤリングとか」
ぶるぶると首を振って、また首を傾げて考え始める。
「食うもんでもええぞ。豊川さんが前に土産に持ってきた、あれなんだ、洋菓子、美味かったな」
今度は腕組みまでして本格的に悩み始めた。
この女はどこまで欲がないのだろう、と感心するのを通り越して呆れ果てた。
241プロポーズ3:2011/01/10(月) 22:37:51 ID:+3FSSv0s
しばらくそうしていると、やがて、はた、と何かに閃いた布美枝が
ぱっちりと目を開け、ゆっくりと大きな目玉で茂を仰いだ。
「思いついたか」
「…」
口を半分開けたまま、何かを言おうとした布美枝だったが、
「…やっぱり、ええです」
はにかむように笑って顔を背けた。
「何だ?気になるでないか」
「えへへ…」
何か妄想でもしているのか、独りにやけている布美枝を急かすように突っついた。
「言ってみろ、少々値が張ってもええ」
「お金は…要らんのだけど」
「?…なんだ、それ」
「いやぁ〜…」
「あーあー、もうっ。気になる!早やこと言え」
「けど…」
じりじりと座り心地が悪くなって、布美枝に迫るように上半身を圧しつける。
近づいてくる茂の顔を両手で押さえながら、布美枝はにやけ顔を元に戻せないでいる。
「言ったら…絶対にくれますか」
「俺ができることならな」
「じゃあ…」
思い直したように、布美枝は茂を押し戻し、姿勢を正して座ると、俯き加減でぼそぼそと喋り始めた。
「あの…えーと、えと、…プ…」
「ぷ?」
「…プロポーズ、して欲しい、…です」
「―――――――――は?」

思いもよらない意外な要求に、一瞬真っ白になった茂の頭の中では、
やがて字引がパラパラとめくられて、「プロポーズ」を検索する。
よくよくじっくりと調べてから、ようやく言葉が声となって伝達された。
「何を言っとるんだ。それは求婚するときに言うもんだ」
「はい」
ごもっとも、という顔で布美枝は茂を見上げる。
「もう一緒になって随分経っとるんだぞ」
「けど、あたし一遍も言われたことないですけん」
「…なして今更」
「一生に一遍のことですけん、言われてみたいんです」
「何の得をするんだ」
「損得の問題じゃなくて」
242プロポーズ4:2011/01/10(月) 22:38:28 ID:+3FSSv0s
今度は逆に、茂が布美枝にじわじわと詰め寄られてきていた。
のらくらと本題をかわそうとする茂に気づいたのか、布美枝はじれったく身を揺する。
妙なことになったと思いながら、茂はじっと見つめ上げてくる目玉に動揺していた。
無言の圧力に押されながら、目を逸らすことは出来ずに、ごくりと唾を飲む。
「…ほ、他のもんではいかんのか」
「他?…なしてですか?言ったら…くれるって仰ったじゃないですか」
子どものようにふてくされた顔で、じろっと睨み上げられる。
茂は今まさに、自身の最も苦手とする分野の頼みを迫られているのである。

誤魔化して一蹴したって良い。けれど、圧倒的に今回はこちらが形勢不利だ。
何よりこの目玉には弱い。じっと見据えられると、逃げられなくなる。
こういうときには、つくづく浦木が羨ましい。
あのぺらぺらと、どこから引っ張り出せるのか、薄っぺらい世辞を並べられる能力は、
不器用な茂には到底真似のできる芸当ではない。
そういえば大昔にヤツが持ってきた、跪いて愛してると言えとかいうふざけた内容の本があったな。
あれをもう少しきちんと読んでおけば良かったかも知れない、などと。
思考回路がぐるぐると目まぐるしく回転する中で、余計なことには神経が回る。
肝心な言葉は何も浮かんでこないのに…。

「…もうええです」
「え?」
痺れをきらしたように、布美枝は身体ごと、ぷいと横を向いた。
「そげに困るようなことなら、もうええです」
つっけんどんな言い方に、茂の心臓がずく、と疼いた。
「意味ないですよね、こげなこと。…馬鹿みたい…」
苦笑して作られた笑顔が、あからさまにがっかりしていることは、流石の茂にも判った。
思わず、かっとなる。
「だらっ!」
吐き捨てるようにして怒鳴ったので、布美枝もややむっとして見つめ返してきた。
「お前が…っ、意味ないとか言うな!…どげな高価なもんよりお前が欲しいって言うけん、
 こっちは真剣に考えとるんだろーが!そげに簡単に言えてたまるかっ!」
考えるより先に口が勝手に動いた、というのはこういうことなのだと、後になって気づいた。
ぽかんと口を開けた布美枝の顔が、みるみる紅潮していくのが分かって、
茂もようやく自分の口から出た言葉に驚き、うろたえた。
けれど、同時に何かを掴んだ気もした。
うわべだけの甘い言葉や、嘘臭い愛の語らいなどは出来るはずもないし、
そもそも布美枝はそんなものを欲しがっていたわけじゃないはずだ。
ただひたすら、夫からの真心のようなものを、示して欲しかっただけなのだろう。
243プロポーズ5:2011/01/10(月) 22:39:04 ID:+3FSSv0s
気まずい空気が流れたところに、藍子がぱたりと寝返りを打った。
慌てて布美枝はそちらを振り返ったが、すやすやと眠る姿を確認すると、ほっと息を吐いた。
背中を向けた女房に向かって、いよいよ茂は静かに語り始めた。
「…っぅ、う、上手くは言えんが、あー、お前は、よー、やっとる、と、思う」
一言一言、言葉を、単語を、選びながら。
「何とか喰っていけるようになったが…それでも、明日はどげなるか分からん。そういう商売だけん」
じっと聴き入る布美枝の背中が、微かに震えたようにも見えた。
「………もしまた貧乏で電気が点かんような生活に戻ったとしても」
肩に力が入って、どうにも居心地が悪いな、と首を傾げながら。
「………お前、なら、多分。……また、何とかなるって、言うてくれるんだろう、と、思っとる」
遂にくるりと布美枝が振り向いた。
慌てて目を逸らす。まともに顔を見て続けることなどできなかった。
「えー、あー、………っと、とにかく、あれだ、その」
「おとうちゃん」
震わせた布美枝の声が、掠れ気味に聞こえた。
ちら、と目だけ持ち上げて窺うと、件の女房は早くも瞳を潤ませてぐっと口元を引き締めている。
「…ほれ見ろ、すぐに泣く」
「だって…」
ゆっくりと近づいてくる細身を、腕を拡げて迎え入れる。
ぎゅっと抱きしめて、額に口づけた。
「……ずっと………付いてこい。一生、…お前の一生かけて、付いてこい…」
「…はいっ」
泣き笑いでぐしゃぐしゃになった笑顔に、茂も照れて苦笑した。
寝間着の袖で雫を拭い、また子どものように笑う布美枝に口づける。
言葉で伝えられるのは、思いの全てではない。
こうして唇から、そして全身で、その身でしか与えられない思いもある。
そしてそれは布美枝も十分よく知ってくれている。何もかも、ふたりはふたりの絆で解りあっていた。
244プロポーズ6:2011/01/10(月) 22:39:33 ID:+3FSSv0s
息継ぎの間に零れる布美枝の吐息が、茂の欲を奮い起こし、尚更息苦しくさせる。
けれど何故だか無性に離しがたくて、口づけたままで布美枝の方へ体重をかけた。
褥に身体を横たえると、布美枝が身悶えて首を捻った。ようやく唇が離れる。
そうして隙ができた細い首筋に、すかさず齧り付いた。青い脈に沿って耳元まで舐り、
わざとらしく、ぬめった音を立てて舌を這わせ、耳たぶを噛む。
弾む息の合間に微かな嬌声が混じりはじめ、茂を扇動するかのように頭の中でこだまする。
服を剥くのと同じように、少しずつ少しずつ、妖しく淫らになっていく様にこちらが酔わされる。
僅かに潤んだ瞳に見上げられ、危うく囚われるところでまた激しく唇を貪った。

「ふ、…ぅ…っん」
寝間着の合わせ目から右手を挿し入れ、柔らかな乳房を弄る。
顎と口で肩を肌蹴させ、白い肌に唇で自らの痕跡を残した。
武骨な指の合間から覗く、野いちごのような赤い実にたどり着き、赤子のように吸い付く。
気のせいだとしても、本物の果実のように茂には甘く感じられた。
布美枝が背を仰け反らせたところで、纏わりついていた寝間着を奪う。
恥ずかしがって顔に持って行こうとするその手をも奪って、ぎゅっと握り締めた。
八の字眉でこちらを見上げる、少し逆上せた表情が、茂の内側を掻き毟って、
再び白い肌に唇を寄せ、触れていない場所などないほどに、そこかしこに口づけた。

「は…ぁ…っ、っふ、…」
最大限、藍子に遠慮した小さな喘ぎ。父親失格と言われても、この時だけは娘に嫉妬する。
愛し合う時間の束の間は、全ての神経を自分にだけ捧げて欲しい、強烈な独占欲。
「おかあちゃん」の布美枝が、女の顔になる時はただ独り、自分だけが知っている瞬間だ。
茂は、もどかしく纏う物を脱ぎ捨てると、布美枝に再び覆い被さり、
隙間がなくなるほどぴったりと身体を合わせた。
おずおずと背中に回された布美枝の腕が、堅い肌を優しく撫でる。
蒸気した熱で、ふわりと漂う女の甘い匂いにくらくらと惑わされ、胸に埋めた顔を上げた。
闇の中で、月光を反射して黒光りする瞳とかち合い、ふ、と口元が緩んだ。
つられて微笑んだ布美枝が、背に回した腕を茂の後頭部まで持っていき、自らの方へ引き寄せた。
もう何度も交わしているのに、いつまで経っても物足りないという風に、
頭を交差しながら深く深く、互いの口唇を奪い続けた。
245プロポーズ7:2011/01/10(月) 22:40:06 ID:+3FSSv0s
繰り返す愛撫のうちに、布美枝の腿の下へ自らの膝を潜りこませる。
下腹に、冷たい愛液の潤いを感じて指で弄った。
「や…っ、あ…」
充血した陰核を探りあて、二指で摘んで捏ねてみる。その都度昂ぶる喘ぎが切迫してくる。
「おと…ちゃ…」
途切れ途切れの微かな悲鳴。興奮は茂の雄を極めさせる。
割れ目を掻き分け、雫の滴る源泉へ指を挿し入れると、ずくずくと内側に持っていかれる。
その指の間をすり抜け、止めどなく溢れてくる液が、茂の掌に拡がっていく。
ぬめる亀頭を核に宛がって、揺さぶりをかけた。
「…は…ぁ、あ…」
やがてふたりの淫液が潤滑油の代わりとなって、茂の勃立した下半身はするりと中へ吸い込まれた。
「あっ…!」
ぎゅっと目を閉じて、硬い熱の侵入に布美枝が一次身を強ばらせたのが判った。
けれどやがてしゅう、と弛緩していく。ゆっくりと目を開けたところへ、すかさず覗き込む。
「は…ぁ…おとうちゃ…」
「名前で」
と、思わず命令するように口にしてしまった。
そんなこと、こちらから乞わなくてもいつも喘ぎの中に混じってくるのに。
突発的に口をついた、ある種の「おねだり」のようなものに、勝手に焦った茂には気づかず、
布美枝は「しげさん…」と優しく呟く。
照れ隠すように、ぐい、と最奥まで腰を打ちつけた。
「あ!…っぁ…しげ…ぇさ…」
絡めてくる腕に誘われて、また身体をぴったりと重ねた。
緩やかに抜き挿しすると、動きに合わせて官能の声が上がり、何度も名を呼ばれる。
左脚を抱えて、密着の度合いを更に強める。卑猥な水音が繋がった部分から洩れ聞こえた。
246プロポーズ8:2011/01/10(月) 22:40:36 ID:+3FSSv0s
「あっ…あ、あ…ぁ、お、ねが…」
苦しそうに寄せられた眉間の皺に口づけたとき、僅かに布美枝が囁いた。
「しげ…さ、おねがい…っ」
「…なんだ」
「呼んで…?」
「え?」
「なま、え…」
蚊の鳴くような声に、しかし思わず動きを止めてしまった。
茂の額に浮かんだ汗を、優しく拭ってくれる布美枝が、はにかむように微笑んだ。
甘美な微笑にしばし見蕩れていると、そっと細い腕が茂の腰に絡んできて、ぎゅっと押し付ける。
続きを強請る仕草に、胸が締め付けられた。

結婚記念日の記念品然り、いつも欲しいものを欲しいと言わない布美枝の遠慮深さは、
数多の情事の際にも何も求めてこようとはしなかった。
けれどこうして哀願される切なくも美しい表情は、
布美枝への愛しさ、興奮、欲、淫ら、ありとあらゆる昂ぶる感情を取り混ぜて、
茂の身体中の神経という神経を刺激し、その全てが布美枝に占拠される。
名を呼ぶなんて、単純で簡単なこと。けれど茂には最も難しいこと。惚れた女でなければ。
(絶対に、呼んでたまるかっ…)

「…布美枝っ」
込み上げてきた声とともに、刹那、強く貫いた。
「は…ぅ…っ!」
「ふ、みえっ…布美枝…ふ、…」
打ち付ける腰の速度を上げて、熱病でうなされる病人のごとく、荒い息の中、何度も何度も呼んだ。
仰け反った布美枝の顎から、首筋から、胸元から、音を立てて吸い付く。
布美枝の中で蠢く襞に、必死で抗ってみても、その実極めさせられているのか。
判然としなくなってきた意識の中で、自分を呼ぶ布美枝の声だけが頼りだった。
意識ははっきりしてなくても、本能的なものだけで身体は動くのだな、
などと、やたら冷静なことが頭を掠めたが、やがて布美枝の声も耳に届かなくなり、
滾る欲望の塊が、限界に近いほど膨れ上がってきたのを感覚で受け止める。
しなやかに捩れる姿態を見下ろしながら、白けていく視界のうちに、
自ら吐き出した欲の熱をうっすら感じて目を閉じた。
247プロポーズ9:2011/01/10(月) 22:41:13 ID:+3FSSv0s
― ― ―

やたら疲れたのは、ここのところ仕事が詰まってきているせいだ。
年のせいなんかじゃない、はず…。自分に言い聞かせながら、茂はぐったりと寝転んだ。
右腕に抱いた細い身体から、すすす、と腕が伸びてきて、目にかかる前髪をさらさらと掃う。
「髪、伸びましたね」
布美枝の声が、こんな近距離に居ながら随分遠くから聴こえてくるような気がした。
「明日切りましょうか」
目を閉じたまま、答えるのも気怠るくて無言でいると、
「もう寝たのかな…」
と独りごちて、つまらなそうにしている空気が伝わる。
本当は起きているけれど、今日は少し気恥ずかしくて目を開けられないのが本音だった。
哀願されるままに、乞われた以上に名を呼んで果てた今夜の情事は、
快感を与えて悦に入るいつもの事後の満足感を、せせら笑うように覆す。
敗北感にも似た、脱力。「惚れたが負け」などと俗に言うやつだ。
(いつからこげな…)
名を呼ぶだけで、愛しさが増すようになったのだろう。

茂が悶々として、自らの心と探りあいをしていると、ふわりと軽く、唇に柔らかなものが降りてきた。
すぐに離れた布美枝の唇は、茂の唇の上でじんわりと温かく、甘い跡を残す。
「…すき」
鼓膜が異常を起こしていなければ、確かにそう聴こえた。
そそくさと、茂の腕に潜りこむ布美枝に、しかし問い返すことは出来ない。
向こうはこちらが眠っていると思っているのだろうから。
心臓が左側にあって良かった。
少年のように反応してしまったこの鼓動の音に、絶対に気づいてくれるなと、茂は必死に祈った。
やがて規則的な寝息をたて始めた布美枝を、ようやく見やることができた。
努力などせずとも、すとんと落ちていける眠りの世界に、
今夜だけは昂ぶった神経と格闘し、なかなか入って行けない茂が、大きくため息を吐いた。


おわり
248名無しさん@ピンキー:2011/01/11(火) 01:20:24 ID:GD3olKjc
甘〜!GJ!
なんか結婚っていいなって思ってしまった
249名無しさん@ピンキー:2011/01/11(火) 10:57:21 ID:21ihI6Rr
>>239
五年目のプロポーズ?
この二人には絶対ないと思ってたプロポーズをこんな形で!
その着想に感心するとともに、ゲゲが苦吟の末w搾り出したプロポーズの言葉に萌えた。
このドラマって、いろいろ制約がある中で工夫して萌えをひろげるのが楽しいですよね。
そして繊細なエロ・・・。自分はこういうの書けないので感心してしまう。
250名無しさん@ピンキー:2011/01/11(火) 19:07:22 ID:7RSAm5Hp
>>239
GJ!
しげーさんの大正男っぷりがほんとたまらん
まさかの夫の心得と年のせいじゃないはずに盛大に吹いた
ほんとエロいしかわいいよ村井夫婦
251名無しさん@ピンキー:2011/01/12(水) 01:47:43 ID:gPXGsESC
GJ! GJ! (*´∀`*)
252名無しさん@ピンキー:2011/01/13(木) 01:15:58 ID:MsBGXXMx
布美「あれ、豊川さんからもらったどらやきがない」
ゲゲ「食ったぞ。俺もどらやきが欲しくてな」
布美「あたしのどらやきですよ。何で勝手に食べ…」

ちゅ

布美「…」
ゲゲ「すまん」

という脳内補完。しかしあのCMのゲゲはともするとセクハ…w
253名無しさん@ピンキー:2011/01/13(木) 18:46:09 ID:Cs0nqYCT
>>239
傑作だわ、GJ過ぎます!
254名無しさん@ピンキー:2011/01/14(金) 14:49:34 ID:/1XZc12+
源兵衛まつり保存会のものです。
脇キャラに興味ない方は、どうぞスルーでお願いします。

以前、レスくださった方々、ありがとうございました。
すっかり間があいてしまいましたが、祝言の夜にはじめて会った花ムコが
こわくて逃げ出したかったミヤコさんが、源兵衛さんの意外な優しさに
心を溶かされてめでたく結ばれる、という前話のつづきになります。
飯田家子だくさんの秘密、とでも言いますかww。
255ひとつ屋根の下の恋1:2011/01/14(金) 14:50:39 ID:/1XZc12+
「も・・・だ・・・め・・・あ・・・ぁあああ―――――!」

 風に夏の匂いがまじり始めたある夜のこと。離れ座敷の閨の中には、睦みあう
二人の熱気がこもっている。
 祝言の夜からまだ数ヶ月、娘むすめしたところが抜けないミヤコを、
大切に抱こうと心がけてはいるものの、初々しくもけなげに応えてくるさまが
いとおしくて、ついつい熱情が奔りすぎてしまう源兵衛だった。
 源兵衛の激しい突きあげに、だんだんと身体がずり上がり、何度目かの
絶頂とともにミヤコの頭は布団から落ちてしまった。
自らもミヤコの中にそそぎ込んで、息をおさめていた源兵衛が、畳の冷たい感触に
ふと気づくと、白いのどをさらして、ミヤコがぐったりとしている。
「おい、大丈夫か?」
あわてて抱き起こし、布団に横たえる。なかば気を失っているミヤコのほほを
そっとたたくと、目をあけて弱々しくほほ笑んだ。
 
 前の晩、いくら源兵衛に責めさいなまれても、翌朝は必ず誰よりも早く起きて、
登志とともに台所に立つミヤコだった。閨の中では愛情こまやかな源兵衛だが、
母や使用人の前ではミヤコに対し亭主関白にふるまった。けれどミヤコは、源兵衛に
「だらず!」を連発されても、つらくはなかった。家のこと、家業のこと・・・、
わからないことを少しでも早く覚えて、源兵衛の役に立ちたかった。

 ふっくらと可愛かったミヤコの顔は、少し輪郭がするどくなった。普通なら
嫁の苦労のせいで、となるところだが、姑の登志はむしろきびしい源兵衛から
庇ってくれるほどだし、その源兵衛も、二人きりのときはやさしかった。
ミヤコの憂愁は、べつのところにあった。
 初めての夜、源兵衛は、かたくなだったミヤコの心を辛抱づよくほぐし、やさしく
女にしてくれた。結ばれた後、「二人だけのときは、本当の名で呼んでほしい。」
と照れくさそうに頼まれた。身体も心も強そうなこの男が、誰にも見せない心の中の
やわらかい部分を、自分にだけ見せてくれた。・・・その瞬間から、恋におちていた。
 ひとつ屋根の下に暮らす、それも正式な夫婦になった相手に、恋をして苦しい
というのも変な話だが、出会った夜に身も心も奪われ、嵐に巻き込まれるような恋に、
淡い想いすら知らなかったミヤコの心が惑わされずにいられるはずもなかった。

 骨がきしむほど愛されても、身体が離れたとたん、さびしさに襲われる。
こんな自分は、なんと欲のふかい女なのだろう・・・。
それは、幸せなさびしさというものだよ、と教えてくれる人は誰もいなかった。
256ひとつ屋根の下の恋2:2011/01/14(金) 14:51:32 ID:/1XZc12+
 次の朝、台所で朝飯の後片付けをしていたミヤコは、かまどの前でうずくまり、
食べたものを少し戻してしまった。
 医師が呼ばれ、帰りがけに、部屋の前で心配そうに待っていた源兵衛に向かって
「奥さん、おめでたですぞ。よかったですな。」
と声をかけた。部屋に入ると、ミヤコが
「あなた・・・私、ややが・・・。」
しあわせそうにそう告げた。かたわらの登志もにこにこしている。源兵衛は感激で
言葉も出ず、ただうなずいた。

 それからの数ヶ月はまたたく間にすぎた。ミヤコはつわりがひどく、暑い季節とて
華奢な身体がますます小さくなるようだった。源兵衛ははれものにさわるように
ミヤコをいたわり、ようやく秋風の立つ頃には安定期を迎えた。
 栄養を摂るように勧められ、そうつとめた結果、ミヤコは結婚当初のように
顔に丸みを帯びて、はためには幸せそうに見えた。

 だが、このごろのミヤコは、妊娠前とはまた違ったかげりを心にかかえていた。
源兵衛の子を身ごもったとわかった時、よろこびと誇らしさで胸がいっぱいになった
ミヤコだったが、同時に、これで闘いから降りることができたような安堵感もあった。
けれど、おだやかな日々の中で、寂しさを感じずにはいられなかった。
 源兵衛が、近ごろあまりミヤコのそばに寄らなくなったことも気がかりだった。
梅雨明けごろまで、源兵衛はミヤコのまだふくらみもせぬ腹をなでては、たわいもなく
喜んでいた。それが、このごろでは夜遅くまで帳簿をつけたり、寄り合いと称した
酒席に出かけたりで、ミヤコには早く寝るように言いつけて、自分は遅くなってから
寝床に入るようになった。
 源兵衛は侠気があって村の若者たちに人望があつく、なにかと会合に呼ばれては
夜出かけることが多かった。それでも、以前は夜おそく帰ってきてからもとめられ、
そんな時はしらじら明けまで愛してくれたものだった。
 そういう生業の女で、無聊をなぐさめてでもいるのだろうか・・・。男同士のつきあいで、
そういう店に行くのは、しかたのないこと・・・ものわかりよくそう思おうとしても、
自らの身にきざまれた甘い記憶がミヤコをくるしめた。
257ひとつ屋根の下の恋3:2011/01/14(金) 14:52:34 ID:/1XZc12+
 ある夜、寄り合いから帰ってきた源兵衛は、夫婦の部屋にそっと入ると、ミヤコを
起こさないように静かに布団に入った。
・・・部屋にはミヤコの香りが満ちている。
この部屋で過ごしたさまざまな夜々のことが脳裏によみがえり、たまらなくなる。
源兵衛は、どうしようもなくきざしてきた自身を、自分で慰めはじめた。
ミヤコの美しい肢体、その惑乱のさまを思い浮かべ、息を荒げていると・・・。
「あなた・・・、大丈夫ですか?」
うなされているとでも思ったのだろう、ミヤコが声をかけ、のぞきこんできた。
源兵衛は、はだけた浴衣からそそりたつものを、あわてて隠そうとしてはね起きた。
ミヤコは、驚いて声も出ないようだったが、やがて意を決して、
「・・・私に・・・させて下さい。」
白い手をのべて、源兵衛のたかぶりを、そっとにぎった。
「よ、よせっ・・・。」
口ではあらがったが、ふいをおそわれた驚きと、あたたかくやわらかい手のここちよさに、
力が抜けて、それ以上は何も言わず、ミヤコのするにまかせた。
・・・だが、いかんせん、おぼこなミヤコのすることゆえ、ただ握ったりはなしたりする
のみでは、蛇の生殺しのようなものだった。
「口で・・・してくれんか。」
たまらずに源兵衛が頼むと、ミヤコは、驚くほど素直に、源兵衛の股間に顔を寄せた。
「待て。それじゃあ腹が苦しいだろう。」
源兵衛が横になると、ミヤコは少し下の方に下がって自分も横になった。        

 ・・・目の前に揺れているものは、これまで幾度となくミヤコを貫き、啼かせてきた
ものだが、こうもまのあたりに見ることは初めてだった。ミヤコは少しこわいような、
いとおしいような、圧倒されるような気持ちで、手をそえて先端にそっと口づけた。
絹のような感触に、そっと唇をすべらせる。不意にゆらりとゆらめき、驚かされる。
「い、いきなりそこはよせ・・・。口に・・・ふくむんだ。」
源兵衛の言葉に、口を開けてみるが、ためらわれて、胴の部分を横ぐわえにしてみる。
唾液が出てきて、すこし円滑になり、だんだんと先端の方に移動して、口にふくんだ。
ずっと口を開けているので口角が痛くなり、また深くふくみすぎてえずきそうになる。
だが、ミヤコは涙目になりながらも一生懸命源兵衛のそれを口で愛した。
源兵衛は、敷布をつかみしめて、凶暴な衝動をおさえていた。
目を閉じて、規則的な動きを繰り返すうち、ミヤコは、なんだか下を犯されているような
錯覚にとらわれ、夢中で口を動かした。
258ひとつ屋根の下の恋4:2011/01/14(金) 14:53:38 ID:/1XZc12+
元々自分で刺激していたこともあり、また清純なミヤコが思いもかけぬ隠微な行いを
する図に、源兵衛はほどなくして強い射精感をおぼえた。
「もっ・・・もうええ。放せっっ・・・!」
ミヤコが驚いて口を離すのと同時に、源兵衛の放ったものが、ぴしゃりとミヤコの
ほほにかかり、とろりと垂れた。
「うっ・・・げほ、げほん!・・・」
一瞬おそく、少し飲んでしまったらしく、ミヤコがせきこんだ。
源兵衛は、あわててミヤコの背中をさすった。
すこし落ち着いて顔を上げたミヤコの口の端から、おのれの放ったものがこぼれている。
源兵衛はたまらずにその唇を奪った。
長く、深い口づけに、ミヤコは気が遠くなりそうになりながら、夫の背にしがみついた。
・・・唇がはなれ、まっすぐ見つめてくるまなざしに、素直な言葉がでた。
「もう、こげなふうにしてもらえんのかと思っとりました・・・。どこぞの女の人と・・・。」
「だらっ!そげなことしとらんけん、さっきのようなことをせねばいけんのじゃないか。」
「だって・・・。最近、お仕事やら寄り合いやらで、いっしょにおってもくださらん。
 もう、私のこと、いやになったのかと・・・。」
「・・・いっしょにおったら、欲しくなってしまうだろうが。」
ミヤコは、驚いて源兵衛の顔をみつめた。源兵衛は、照れくさくなってがばっとミヤコを
抱きしめてささやいた。
「俺はな・・・ようけ子供がほしい。俺と、お前の子だ。商売女に病気をうつされてみろ、
 お前が子を生めん身体になってしまう。だけん、俺はよその女と寝たりせんと決めたんだ。
 それに・・・お前で充分間に合っとるけん。他の女はいらん。」
・・・お前に惚れとるけん・・・そんな言葉は決して出てこないけれど、ミヤコはちゃんと受け取った。
「俺たち、ちょっこし焦りすぎとったかもしれんな。これから何十年もいっしょに
 おるんだけん。ゆっくりやったらええ、な・・・。」
ミヤコは、源兵衛の広い胸の中に抱き込まれながら、やっと息ができる、と思った。
259ひとつ屋根の下の恋5:2011/01/14(金) 14:54:41 ID:/1XZc12+
 月が満ちて、ミヤコは無事に女の子を産んだ。
ミヤコが産褥の床をはらってひと月ちかくが過ぎ、自室で赤子に乳をやっていると、
源兵衛がやって来た。
白く張った乳房から、まぶしそうに目をそらし、赤子を見て相好をくずした。
「暁子はよう乳をのむのう。」
「ええ、よう肥えて・・・。」
「・・・お前は、どげだ?もう、身体の方はええのか。」
「はい。もう大丈夫です。」
「・・・それは、もう夫婦のことをしてもええ、という意味か?」
「え・・・。は、はい・・・。」
消え入りそうな声で、ミヤコが答えた。
源兵衛も真っ赤になり、急にそわそわと、
「ほんなら、俺は店があるけん・・・。」
部屋から出て行った。

 夫が去った後を、目で追うくせはまだぬけないけれど・・・。
(もう、大丈夫だけん・・・。)
ひとつ屋根の下の恋は、終わったわけではない。
かたちを変え、おだやかに、これから何十年もつづくのだ。

 障子ごしのやわらかな日差しの中で、おなかがいっぱいになった暁子が
小さなあくびをした。   
260名無しさん@ピンキー:2011/01/15(土) 04:16:41 ID:5ibOHu6Q
>>255
GJ!ミヤコさんは10代で嫁いでいる幼な妻でしたっけ

>俺はよその女と寝たりせんと決めたんだ。

武骨な源兵衛さんの愛情告白沁み入るなぁ〜
261名無しさん@ピンキー:2011/01/15(土) 21:38:29 ID:O3wvjeQU
>>255
おお源ミヤ!GJ!
口の端から液とろりはイイよねクるよね
262名無しさん@ピンキー:2011/01/15(土) 22:26:32 ID:61E6ino4
>>233
首周りまでしか映ってないが、パジャマもお揃いっぽく見えるw

前にゲゲゲ本スレで
「いちごが綾子で、せんべいが祐ちゃんなら、
タイトルはいちごのせんべい(綾子の祐ちゃん)でも良いじゃん」って書き込み読んで萌えてしまったw
263名無しさん@ピンキー:2011/01/16(日) 15:13:01 ID:pyf+JtL1
最近、いちごジャムが嫌いになった綾ちゃん・・・
264名無しさん@ピンキー:2011/01/16(日) 20:19:56 ID:qLueIi0r
>>252
逆にふみちゃんがゲゲのどらやき食べようものなら間違いなくふみちゃんもろとも食われるな…w

>>255
GJ!
源兵衛さんもゲゲも妻に対する不器用な優しさが好きだ
265名無しさん@ピンキー:2011/01/16(日) 23:49:27 ID:Jyt2RD38
>>255
GJ!源兵衛祭りありがとうございます!
アキ姉ちゃんの巻があったということは、最低あと5回は祭りが開催されるのですなw
関係ないけど「飯田家子」って誰?!と一瞬思ったw
266名無しさん@ピンキー:2011/01/18(火) 10:56:17 ID:PVErc+nZ
戌井さんちからの帰りに、霊園で一晩中ぐるぐるさせられたゲゲが
びしょぬれで帰ってきて、お風呂にも入らず「寝る。」と言った時、
(当然、フミちゃんが人肌であっためるよね?)と思ったものですw。
低体温には、山小屋方式が最適ですよねww。
それと、ドラマにはなかった授乳シーンも無理やりw。
267おまじない1:2011/01/18(火) 10:57:11 ID:PVErc+nZ
 梅雨時のある日。
わずかな晴れ間に自転車で国分寺の戌井を訪ねて行った茂は、夜になっても
帰ってこなかった。
(お父ちゃんはお酒も飲まんけん、戌井さんのところにごやっかいになる
 理由もないし・・・。電話がないけん、連絡もつかん。・・・どげしよう?)
フミエは心配でまんじりともできずに一夜を過ごした。
夜が白んできたころ、茂はようやく帰ってきたが、水がたれるほど濡れそぼち、
身体は冷え切って疲れ果てているようだった。
「・・・お父ちゃん!いったいどげしたの?・・・こげにずぶぬれで!」
「・・・わからん。霊園を通り抜けて近道しようとしたんだが・・・。どうしたわけか、
 出口がみつからんのだ・・・。」
茂は放心したように一点をみつめて、抑揚のない調子で話した。
フミエの脳裏に、真っ暗な中、吹きつける雨に打たれながら必死で自転車を
こいでいるのに、周りの風景がまったく変わらない茂の姿がうかんだ。
「慣れとる道のはずなのにな・・・。走っても走っても、出られんだった。」
「お風呂わかしますけん、入ってください。」
「いや。・・・疲れたけん、寝る・・・。」
茂はよろよろと階段を上って行った。

 フミエはありったけのタオルを持ってそれを追いかけた。
まずはびしょぬれの服を脱がせ、タオルで冷えきった肌をごしごしこすった。
いつもなら、こうして世話をやかれると「痛い!」だの「くすぐったい!」だの
文句を言いとおしで大さわぎの茂なのだが、茫然とした顔でされるがままに
なっているところを見ると、よほど憔悴しているようで、かえって心配になる。
 乾いたゆかたを着せ、布団をしくと、茂は倒れこむように横になった。
フミエは、濡れた服やタオルを集めると、階下へおりた。
(お父ちゃん、どげしたんだろう?いくら雨が降っとったからって、迷うような
 道じゃないのに・・・。まさか、狸に化かされたとか?)
婚礼の次の日、東京へ向かう列車の中で、茂から「東京にもたぬきの住んでいる
所がある。」という話を聞かされたことを思い出した。昔の話だと言っていたが、
雑木林が多く残るここ調布のような田舎なら、まだいるのかもしれない。 
268おまじない2:2011/01/18(火) 10:57:55 ID:PVErc+nZ
 それにしても・・・。
(走っても走っても、抜け出せない暗闇・・・。働いても働いても貧乏から
 抜け出せない、私たちの暮らしみたい・・・。)
フミエは寒気を感じた。6月とは言え、梅雨寒の言葉どおり、昨日からしとしとと
降り続く雨で、身体に感じる気温は低かった。
(しげぇさん、寒くないだろうか・・・。)
心配になって、二階にいくと、眠っている茂の額に手をあてた。
(熱はないみたいだけど・・・氷みたいに冷たいわ。)
そっと掛け布団を持ちあげて茂の手にさわると、やはり冷たくかじかんでいた。
(どげしよう・・・。このままじゃ、風邪ひいてしまうわ。)
フミエは両手で茂の手をさすった。
「う・・・う〜ん。」
茂は顔をしかめて向こうを向いてしまった。茂が寝ていた部分に触ってみても、
ちっとも温かくない。フミエはエプロンをとると、そっと茂の布団に入った。
後ろから茂の背中を抱きしめて温める・・・つもりが、背中が広すぎてフミエの
細い身体ではおおいきれない。
(こっち向いてくれんかな〜?)
思ったとたん、また茂がこちらを向いておおいかぶさってきた。
「きゃ・・・。」
つめたい。死人のようだ。フミエはぞっとして浴衣のえりの間から茂の胸を
こすった。
(もぉ〜、こうなったらしょうがない!)
フミエは起き上がってブラウスと下着を脱ぐと、またブラウスを羽織って
布団に入り、裸の胸と胸をあわせて温めようとした。
(つめたい・・・お父ちゃん、大丈夫だろうか?)
必死で手で背中をこすりながら、脚で茂の脚に触れると、こちらも石のようだ。
恥ずかしいけれど、すべてを脱ぎ、茂のゆかたの帯を解いてその中におさまった。
ゆかたの中で手を背中にまわし、脚もぴったりとくっつける。ほおとほおを合わせ、
思わず口づけると、唇までもが冷たかった。
 フミエは、腕が痛くなるのもかまわず、いつまでも茂の肌をさすり続けた・・・。  
269おまじない3:2011/01/18(火) 10:58:39 ID:PVErc+nZ
「うーーーーん。・・・あ、あれ?」
茂は目を覚ましたが、一瞬何がなんだかわからなかった。外はうす明るい。
自分のゆかたの中に、裸のフミエがいる。
「こげなことした覚えはないが・・・。ん〜・・・そういえば。」

・・・夢の中で、茂はまだ墓場をさまよっていた。
雨に打たれて自転車で走り続けるうち、身体は冷え切り、手足の感覚がなくなってきた。
そのうち、同じところをグルグルまわるどころか、周りの風景がまったく
変わっていないことに気づいてゾッとした。
 果てしなくつづく墓の行列のそこかしこに蒼い燐火が燃え、亡者たちの
白い顔が見えるようだ。
(死者の街に、迷い込んでしまったのかもしれん。)
 お化け、幽霊お手の物の茂だが、気配や音を感じたことはあっても、実際に
お目にかかることは初めてだった。それに・・・。
(こいつらには、なんだか悪意を感じるな。)
身体は冷え切っているのに、いやな汗が吹き出してきた。ハンドルを握る手が
ぬるぬる滑り、メガネは曇って前がよく見えない。
(自転車から落ちたら、おしまいだ・・・!)
なぜかそういう確信があった。たくさんの青白い手が背後にせまってくる気配を感じ、
前だけをみつめて、必死でバランスをとりながらこぎ続けた。
(フミエ・・・!藍子・・・!)
漆黒の闇だけが広がる前方の空に、茂は必死で家族の姿を想いえがいた。
「俺は・・・死なん!」
フミエのことを想うと、なぜか身も心も温かくなり、目の前が明るくなった。  
270おまじない4:2011/01/18(火) 10:59:36 ID:PVErc+nZ
「ん・・・。あ、あな、た・・・やだ、私、寝てしもうた?」
フミエは朝の明るい部屋の中、茂の胸の中で裸でいる自分に気づいてどぎまぎした。
昨夜、帰らない茂が心配で眠れなかったせいで、必死で茂をさするうちに疲れが出て
眠ってしまったらしい。
「お前・・・そうやってあっためとってくれたのか?」
「だって・・・お父ちゃん、石みたいにつめたかったんだもの。私、必死で・・・。」
道理で、温かくなったはずだ・・・。
(還ってこれたのは、フミエのおかげか・・・。)

「どうやら俺は、亡者に招かれとったらしい。」
「ええっ?」
フミエはぞっとして茂にしがみついた。
「・・・だが、なんとか帰ってこられたらしい。でも、なんだかまだ奴らがとり憑いとる
 ような気がする・・・。」
フミエが不安そうなまなざしで茂をみつめた。
茂は大まじめな顔でいながら、目はなんとなく笑みをふくんで、またフミエの想像を
うわまわるようなことを言い始めた。
「ここは、魔をはらうまじないが必要だな。・・・古来より、日本の神々は、夫婦和合、
 男女のまぐわいを嘉(よみ)したもう。・・・邪気を祓うには、コレがいちばんだ。」
茂は、あっけにとられているフミエの唇に、勢いよく口づけた。
「それでは、行うぞ。」
「お、おこなうって・・・。こげに明るいのに。あ、藍子にミルクをやらんと・・・。」
「よう寝とる。今のうちだ。」
やっぱり変人だ・・・あんなにまいっていたのに、なんでこうなるの・・・?
フミエの心の叫びをよそに、茂は言うところのおまじないをおごそかに執り行いはじめた。
271おまじない5:2011/01/18(火) 11:00:34 ID:PVErc+nZ
 お互いに一糸まとわぬ姿で布団の中で身体をくっつけているのだから、ことは簡単だ。
むさぼるように口づけながら、きつく抱きしめると、胸にあたるフミエの乳首が
ぴんと硬くなるのがわかる。
「はっ・・・はぁっ・・・あぁ・・・ん。お・・・とうちゃ・・・あ・・・。」
息ができないほどの口づけに、フミエの目尻に浮かぶ涙が、朝の光の中でうつくしい。
「お日さんが、顔出したな。天の岩戸だ。」
どういう理屈なのかわからないが、フミエはもうそんなことはどうでもよくなっていた。
フミエの下腹部に、茂の猛りが固い感触をつたえる。求められるよろこびに、身体中が
とろけるようで、フミエは自ら身体をひらいて茂を迎え入れた。
「あ・・・しげぇ・・・さん、きも・・・ち・・・い・・・。」
茂とひとつになると、生きていることの充足感に、かえって茂のくぐりぬけてきた
危険の恐ろしさを思い知らされる。フミエは、凍てついた茂をあたためていた時と
同じ気持ちで茂をつつみこんだ。
 フミエの肌身のあたたかさ、内部の熱に、茂も生きている実感をつよく覚えた。
(・・・戻ってこれた・・・。コイツのおかげで・・・。)
こみあげる想いを言葉にはできず、茂は身体ごとフミエを愛しつづけた。
「あっ・・・あぁ・・・いや・・・しげぇさ・・・い、やぁっ・・・!」
「いや。」と言うのは、フミエのイイ時の口ぐせ・・・茂の名を呼ぶのもそうだ。
「イヤ、じゃないだろう?がまんせんで、イッたらええ。」
茂はフミエの唇をなめあげるように口づけながら、いっそう激しく責めた。
「いや、いやぁ・・・ああああぁ―――――!」
世界中に、茂の存在しか感じられなくなるこの瞬間、まっ白な意識の中で、
自分の最奥に茂の情熱を浴びせられる・・・。
(しげぇさん・・・しげ・・・さ・・・ん。)
痺れるような幸福感の中で、フミエは夫の名を心の中で繰り返した。        

 事後のけだるさの中で、ふたりは口づけを繰り返していた。深く執拗な唇の愛撫に、
「だ、め・・・。また・・・ちゃうから・・・。」
フミエが追ってくる茂の唇を避け、ふるえる声で抗議した。
「ん?なんだ?よう聞こえんぞ。」
「・・・もぉ〜。時計、見てください!今度こそ起きんと。」
「そういえば、腹が減ったな。昨夜から、なんにも食っとらん。」
「そうですよ。何かお腹にいれんとあったまりませんよ。」
「あっつい味噌汁が、のみたいな。」
「はい、はい・・・。」
 フミエは、起き上がって衣服を身につけ始めた。 
272おまじない6:2011/01/18(火) 11:01:40 ID:PVErc+nZ
 ほぎゃあ、ほぎゃあ、と藍子の泣き声がする。
「ああ〜、藍子が起きてしもうた。ごめんね〜、藍子。」
上半身にブラウスを羽織って、フミエは藍子を抱き上げた。お腹をすかせた
藍子は必死で口で乳首を求め、吸い始めた。
「ごめんね・・・出んのよ・・・。」
本来なら乳が出るはずだが、ミルクに切り替えたため、もう母乳は出ない。
いったんはおさまった藍子が、また激しく泣き始めた。
「俺が抱いとってやるけん、早ことミルクつくってやれ。」
茂が藍子を抱きとってあやし始めた。
 腕の中で、熱くなるほど激しく泣いている赤子を見ながら、茂はその生命力の
強さに圧倒されていた。
(赤ん坊の泣き声・・・これも魔除けになると言われとるな。なるほど力強いもんだ。)
死霊の手にからめとられそうになっていた時、必死で藍子とフミエの顔を
思いうかべて闘った。出口の見えない闇の中を、手探りするような生活の自分たち
だけれど・・・。
(こいつらがおるかぎり・・・、俺は、負けん!)
生きる力がわいてくるのを感じ、茂は藍子のにおいを胸いっぱいに吸い込んだ。 

 梅雨の晴れ間のまぶしい太陽の下、フミエは藍子をおんぶして洗濯物を干した。
茂の濡れた衣類と、予定外のシーツまで洗うはめになり・・・。
(お日さまってありがたいなあ。ゆうべのことがうそみたい・・・。)
唇までも冷え切っていた茂の身体、語られた霊園での恐ろしい体験・・・。
フミエは思い出してぞっとしたが、同時に、ついさっき自分の身体を奔りぬけた
茂の熱と力強さもがよみがえり、また別の戦慄におそわれた。
(お父ちゃんはつよいひとだけど・・・。ときどき無茶するけん。寿命がちぢまるわ。)
フミエは茂がいつも来ているシャツを物干し竿にかけると、すそをつかんでぴん!と
伸ばし、本人に対するように向かい合って言った。
「もう、危ないことは、せんでごしないね?」

背中の藍子が、ごきげんでキャッキャと笑い、木々の葉のつゆが陽射しにきらめいた。
273名無しさん@ピンキー:2011/01/19(水) 17:34:04 ID:YkpPyKbP
>>267
山小屋方式ktkr!GJ!
あのシーンの憔悴しきったしげさんと心配するふみちゃん大好きなのでその続き的な話が読めるのが本当に嬉しい
274名無しさん@ピンキー:2011/01/19(水) 23:41:28 ID:dw1ixNTL
久しぶりにきたら源ミヤがきてたー
GJGJGJ 職人さんありがとう
275名無しさん@ピンキー:2011/01/19(水) 23:46:47 ID:0AhDbyTi
>>267
GJ!ゲゲの全くわからんまじないの理屈ワロタw
要するにヤりたいんだろ、とつっこんどく。
あのずぶ濡れでげっそり肩落として帰ってきたゲゲはどこいったんだと。

おかげで昨日はこの回のDVDを見始めて、結局夜中の2時までずっと続きを見てしまった…。
総集編のDVD買う人いる?正直、本編はどっちでもよくて(完全版3巻揃ってるから)
特典映像が豪華すぎてどうしようか迷う…。
276名無しさん@ピンキー:2011/01/20(木) 00:05:15 ID:UAnbTySy
某局ドラマでフミちゃんとスガちゃんが再共演してた
ゲゲフミもいつか再共演してほしい

>>275
スタパも5月の番宣も録画してるから、買わないつもり
写真集は気になるが
277名無しさん@ピンキー:2011/01/20(木) 22:04:07 ID:jvPcsdSp
>>267
GJ!
しげさんを暖めるのに必死だったり本人じゃなく服に話し掛けるふみちゃんが健気で好きだ

>>275
DVD全部買って総集編録画したのに特典にホイホイされて予約した俺が通りますよ
このスレで作品を知った邪道な人間なので番宣とかほとんど見れてないから楽しみ
278名無しさん@ピンキー:2011/01/21(金) 19:17:06 ID:ssvQlUxv
>>276
自分もスタパと番宣は録ってるからいいんだが、その写真集だ!
公式がずっと残っててくれたらDVDは買わないんだが、その写真集だけがひっかかる!
山小屋のな〜、ゲゲ独り→クリック→背中から布美ちゃん、ばあっの
付き合って2ヶ月目のイチャコラカップルみたいなノリに、ころっとイかされる自分がイタイよ…。
>>277の潔さが欲すぃ。
279名無しさん@ピンキー:2011/01/21(金) 20:35:48 ID:4kC763d7
エランドールおめ!
授賞式楽しみ
280名無しさん@ピンキー:2011/01/22(土) 18:49:07 ID:dZWvuVOW
上京した時に東京タワーは今度って言ってるけどゲゲふみの東京タワーデートってどんなもんだろうな…
なんか最終週の時代くらいまでなんやかんやで行ってなかったりしそう
281名無しさん@ピンキー:2011/01/22(土) 23:29:18 ID:WXBslM01
というかあれ、完璧その場しのぎの「また今度」って感じだったな
282名無しさん@ピンキー:2011/01/23(日) 03:31:58 ID:O7ocATz0
>>280
さあ、その妄想を膨らませて文章にするんだ!
283ねこの恩返し1:2011/01/24(月) 14:50:58 ID:L/KcYubr
 ある春の日。幼稚園から帰ってきた喜子が見せた絵は、フミエをたいそう落胆させた。
「喜子・・・。これが『私のおとうさん』? お父ちゃんはこげなヒゲ面じゃないよ。」
「あれっ?・・・そうだったっけ?」
「あんた・・・お父ちゃんの顔を忘れてしもうたの?」
幼稚園から意気揚々と持って帰った絵が、母親をここまでがっかりさせたことに、
喜子はなんだか自分まで悲しくなってうなだれた。
「なんだ、何を叱っとる?」
「あっ、お父ちゃん。見てくださいよ、喜子の絵・・・。これ、お父ちゃんだって
 言うんですよ。」
「はっはっは。うん、こりゃーよう描けとる。喜子は個性的な子だ。子供の描いた絵を
 大人がどうのこうの言ったらいかんぞ、お母ちゃん。」
「はい・・・。でも・・・。」
 フミエも幼い喜子が一生懸命描いた絵をけなしたいわけではなかった。だが、
自分の父親の顔もちゃんと覚えていないとは、情けないと思わずにはいられなかった。
これと言うのも、茂がほとんど子供たちにかまってやれないほど忙しいからだ。
食事でさえ、他には読むヒマがないと言う理由で新聞を読みながらとる。
小さな喜子が父親の顔を見るのは一日に一回あるかどうか、という有様だった。
 茂に絵をほめてもらった喜子は、たちまち元気になって、歯の抜けた顔に
満面の笑みをうかべ、おやつを食べ始めた。
 茂は、今夜も遅くなるから出前を取るように頼みに来ただけで、またそそくさと
仕事部屋へと戻って行った。
 フミエはため息をつきながら、それでもその絵を子供部屋の壁に飾ってやった。
284ねこの恩返し2:2011/01/24(月) 14:51:53 ID:L/KcYubr
「兄貴、どこ行くんだ?」
「・・・ちょっと息抜きだ!」
矢継ぎ早にスケジュールを説明する弟の光男に、茂はうんうんとうなずいて
OKを出していたが、急に立ち上がって部屋を出た。
 仕事部屋には編集者たちが、自社の原稿だけは逃すまいと朝早くから詰めきっている。
その無言の圧力と、人間の限界を超えた仕事量に、アシスタント達も殺気立っていた。
(ちょっこし一人にならんと、たまらん・・・!)
とは言え、外へ逃亡するのは最後の手段。この家でとりあえずプライバシーが
保てる場所はトイレしかなかった。
(便所の窓から見える木々の緑だけが心のいこいか・・・。まるで囚人だな。)
本来の目的で来たわけではないので、ズボンもおろさず便器に腰をおろすと、
ため息をつきながら窓の外を見た。

 目の前の塀の上では、ここら辺でよく見かけるキジ猫が、さかりのついた声を
張り上げ、かわいいメスの白猫をしきりに口説いている。
「・・・猫はええなあ。気楽で・・・。」
現実から逃避したい茂は、心の底から野良猫をうらやましく思った。
 キジ猫は、さかんに鳴きながら白猫につきまとったが、白猫はしっぽを
ふん、と振ると、塀の向こうに去ってしまった。
「はは・・・振られたな。」
茂は思わず声を出して笑った。そのとたん、キジ猫が口を開いてしゃべった。
『まだ終わったわけじゃねえよ・・・。あれがあいつの手管なんだ。』
「お前いつぞやの・・・人語を話す猫じゃないか!」
『先生、あいかわらずだニャ。あれだけ働いて、そんな狭いとこにこもるのだけが
 楽しみとは、気の毒なこった。』
「一個分隊を養わなきゃならん。お前らみたいに気楽じゃないんだ、人間は。」
『ふふん、俺たちゃ戦争は自分ひとりでするがね。分隊だの指揮だのって、人間て
 やつぁ、下にいばり散らすだけで、てめえ一人じゃいくさもできニャイんだな。』 
285ねこの恩返し3:2011/01/24(月) 14:53:01 ID:L/KcYubr
 春の陽射しの中で、キジ猫は前足をなめては毛づくろいをし始めた。
『家族のためと言って働いてるうちに、娘に顔も忘れられる始末だしニャ。』
「・・・むむ。そげなことまで知っとるのか。」
『ヒゲ面の男かぁ・・・。案外、奥さんの心の中にいる、別の男だったりして。』
「な、なんだと!そげなこと、あるわけないだろ。」
『わからんよ・・・。子供ってえのは、俺たち猫に近いところがあるからニャ。
 おっかさんの心の中が見えたのかもしれんよ。学校に行くようになると、
 つまらん大人の価値観を押し付けられて、そんな能力も無くなっちまうけど。』
キジ猫の目がほそーくなって、ニヤニヤ笑いながら茂を見た。
『・・・あんた、奥さんをちゃんとつかまえてんのかい?』
「・・・ちゃんと満足させてやっとる!」
『ふふん。・・・イカせりゃいいってもんじゃないぜ。普段は放ったらかしのくせして、
 忘れた頃に抱いてやりゃあ満足だろうなんて、女ごころがわかってないのにも
 程があるニャ。それじゃあ、俺達がナワバリを主張するためにオシッコかけるのと
 おんなじだぜ。』
「なっ・・・このエロ猫が!」
『俺たちゃ、人間と違って女房子供を養ったりしねえ。だから、メスどもも
 食わせてもらってるから仕方なくお相手するか・・・なんて思わねえ。
 一世一代いいとこ見せて、命がけで口説かなきゃあたった一度の逢引もできねえのさ。
 人間は、一年中発情してるわりに、ひとつひとつを大事にしねえんだな。』
「大事にしとらんって・・・。お前まさか、のぞいてでもおるのか?」
『見なくったってわからあ。・・・もっとも、この家も昔に比べるとスキマが
 なくなったけどニャア。』
「・・・いったい何年生きとるんだ?!この化け猫め!」
その時、白いメスねこが塀の上に再び現れ、思わせぶりにキジ猫の方をふり返った。
「ニャ〜〜〜〜〜ァオン。」
キジ猫は、これ以上ないくらい甘い声を出してその後を追いかけた。
「あっ!おい、ちょっと待て!」
茂はあわてて呼び止めたが、キジ猫は塀の向こうに姿を消した。
「先生!先生!そろそろお願いします!」
編集者の北村がトイレのドアをノックして催促する。
(ちくしょーーーー!!猫に説教された!)
人語を話す猫にまた会ってしまった・・・そのことよりも、猫に上から目線で
諭されたことのくやしさの方が勝っていた。                    
286ねこの恩返し4:2011/01/24(月) 14:53:45 ID:L/KcYubr
 その夜。
 茂は今夜も夜ふけまでアシスタント達と仕事に没頭している。フミエは子供達を
寝かせた後、いつものようにひとりで床についた。
 今日は外でしきりと猫の求愛の声がしている。常の鳴き声と違う、発情期の
声は聞きぐるしく、いやがる人もいるが、せっぱつまったその声に、
(猫も必死なんだけん、なんだかかわいそう・・・。)
この時期になると、身体の内側からの欲求に狂わされるように、恋の相手を求めて
さ迷わずにはいられない猫たちを、フミエはあわれに思った。
 このごろの暖かさには心も身体もほぐれるようだった。だが、愛するひとが
隣りにいないさびしさは、春の夜のこ惑的な空気の中では、いっそう身に沁みた。
狂おしく鳴く猫の声が、そのさびしさに重なるようで、フミエは思わず自分で
自分の身体を抱きしめた。
 ・・・茂のゆびの感触を思い出しながら、曲線に沿ってわが手をすべらせる。
くちびるに指でふれ、口づけの恍惚をなつかしむ。乳首をつまむ二指をこすり
あわせても、与えられる快感は予期する以上のものではない。もどかしく思いながら、
下へ這わせる手が、秘められた場所へと降りていった。
 茂を思いながらわが身に触れるうち、そこはとろりとした潤いをたくわえていた。
あのひとはいつもどんな風にしてくれたっけ・・・。フミエは慣れない指づかいで
快感を追い始めた。
 
 フミエが自らを慰めなくてはならないほど渇きを覚えることは多くはない。
殺人的な忙しさの中でも、茂は時おりフミエをもとめてくれる。けれど、いつも
何かに追われているようで、昔のような語らいの時間はのぞむべくもなかった。
慣れ親しんだ身体は、簡単な愛撫にとろけ、フミエを陶酔の頂きに押し上げてはくれる。
 少しあじけないけれど、昼間、話もできない分、身体を交わす間だけでも
茂とつながれている気がして、気まぐれな訪れを心待ちにしている自分がいた。
・・・だが今夜、人を誘惑するような春の大気と、せつなげな猫たちの声に、フミエの
心と身体はまどわされていた。                   
287ねこの恩返し5:2011/01/24(月) 14:54:35 ID:L/KcYubr
「・・・俺よりも、そっちの方がええのか?」
わびしいひとり遊びでもいつしか高まって、眉根を寄せ、喉をさらして吐息を
もらし始めていたフミエは、突然声をかけられ、凍りついた。
 布団の傍らには、今まさにその愛撫を思い描いていた男がいた。
いつから見られていたのだろう・・・。掛け布団に覆われていても、フミエが
何をしていたかは明らかだったにちがいない。フミエは恥ずかしさに、金縛りにあった
ように身動きできずにいた。
 茂は布団の中に手を入れて、フミエが自らを慰めていた右手をつかむと、
その指を口に含んだ。
「やっ、だめっ・・・いけん!」
フミエは手を引っ込めようとしたが、茂は放さずに指をべろりとなめた。
「・・・ひとりでしてもええけどな・・・。」
指を口から離すと、手首をつかんだままぐっとフミエの顔のそばに押し付け、
真上からフミエの目をじっと見つめて言った。
「俺のことを思いながらにせえよ。」
(・・・あなたのこと以外に、何を思えと言うの?・・・)
フミエの瞳がそう語っている。茂はその瞳に吸い寄せられるように唇を奪った。
「ん・・・ぐ・・・ふぅ。・・・は・・・ぁ・・・はぁ・・・。」
時おり息をすることを許しながら、茂は深く執拗にフミエの唇をむさぼり続けた。
 ひとり遊びを茂に見られてしまった・・・消え入りたいほど恥ずかしく、一方で
俺のことを考えながらしろ、なんて、しれっと言い放つ茂がうらめしかった。
(あなたが、そばにいてくださらんから・・・!)
茂の気まぐれに振り回される自分が腹立たしい。だが、焦がれていたほんものの
口づけに、フミエの全身は痺れ、気がつけば着ているものを全て剥ぎとられ、
一糸まとわぬ姿になっていた。掛け布団に隠れようとする抵抗もむなしく、さらされた
無防備な肌に、服を着たままの茂がおおいかぶさってくる。茂のシャツやズボンの感触が
素肌につめたく、フミエはさびしさと、なんだか自分がおもちゃにされているような、
もの悲しい気分を覚えた。
 けれども、フミエのいいところを熟知している手と唇があたえる快感は、自分で
触れたときとは比べものにならないくらい深く大きく、フミエの官能を芯からゆさぶった。
288ねこの恩返し6:2011/01/24(月) 14:55:29 ID:L/KcYubr
「はぁ・・・は・・・やっ・・・い、やぁ・・・。」
腰骨のあたりを吸い上げていた唇が、中心部に近づく。脚を広げさせ、太腿の内側に
歯を立てると、フミエが悲鳴を上げて脚を閉じ、両手で茂の頭を押しやろうとした。
「暴れるな・・・。それに、子供やちが寝とるけん、静かにな・・・。」
フミエが思わず両手で口を押さえたそのスキに、茂は濡れそぼつ中心部に口づけた。
「――――――――――!!」
逃れようとするフミエの脚を腕で押さえつけ、
「そのまんま口を押さえとれよ。」
命じると、フミエのいちばん弱いところを唇と舌で愛し始めた。
「やめてっ・・・やめて・・・ください・・・おねがい・・・。」
茂にこんなことをさせてはいけない・・・勝手に腰が踊ってしまうほどのつよい快感と
闘いながら、フミエは小声で哀願した。
「ええけんじっとしとれ。・・・イクまでやめんぞ。」
「うぅ・・・う・・・くぅ・・・んっ・・・んん――――!」
手では押さえきれない悲鳴を、フミエは枕のはじをかんで押し殺した。
茂の舌がフミエのいちばん感じる核心を圧迫すると、フミエは声にならない声を
あげながら、びくびくと身体を震わせた。
 茂は唇を離すと、自分の衣服をすべて脱いだ。そして震えているフミエの裸身を
ゆっくりと抱きしめた。あたたかい空気の中、絶頂をむかえたフミエの肌はすこし
汗ばんで、茂の肌にしっとりとなじんだ。
 ・・・とろりとした陶酔にひたっていたフミエの瞳に、意外そうな表情がうかんだ。
すべてを脱いで素肌と素肌を重ねたのはいつ以来か・・・。
(今日は、どげしたの?・・・しげぇさん。)
「・・・お前も、俺のことを忘れるんじゃないかと思ってな・・・。」
忘れるなんて・・・そう思いながらも、魂を奪われるような口づけや、素肌と素肌の
ふれあう幸福感を、しばらく味わっていなかったことに気づかされる。 
289ねこの恩返し7:2011/01/24(月) 14:56:19 ID:L/KcYubr
 茂が、甘く口づけながらフミエの身体をひらき、ゆっくりと押し入ってきた。
「あ・・・ぁぁ・・・ン。」
思わず鼻にかかった鳴き声をもらし、フミエはあわてて口を押さえた。
茂はそんなフミエの様子を満足げに見下ろしながら、大きく腰をつかい始めた。
フミエの惑乱が激しくなる・・・。両脚を茂の腰にからめ、茂の動きにあわせて
フミエの腰も大きくゆらめいた。
「も・・・もぅ・・・だめ・・・。」
声が、おさえられない。涙でいっぱいの瞳に、茂はつ、と顔を近づける。
フミエが、口を押さえていた手を離して茂に抱きつく、と同時に、唇をふさがれた。
「・・・・・――――っっ!!!」
フミエの絶頂の叫びは茂の中に吸い込まれ、茂の腕の中でフミエはがくがくと
震えながら滂沱と涙を流した。
フミエの絶頂のすべてを吸い取りながら、茂も存分にそそぎ込んだ。

 ・・・忘我のときが過ぎ、荒い息がおさまると、茂は仰向けになって目を閉じた。
「・・・ちょっこし寝るけん。お前が起きる時に起こしてくれ。早番の奴に
 指示を出さんといけん。」
素肌と素肌をあわせたまま、茂の腕の中で眠りたいのはやまやまだけれど、
子供たちがいてはそうもいかない。フミエはそっと身体を離すと、寝巻きを
着なおした。茂に掛け布団をかけようとふり返ると、もう寝息をたてている。
(ちょっこし、無理されたかな・・・?)
慢性的な睡眠不足と働きすぎで、なんだかやつれて見える顔をのぞきこみ、
フミエはそのほほのあたりにそっと口づけた。
(・・・ほんものの方が、ええに決まっとるでしょ?)
疲れているだろうに、無理をしてフミエを愛してくれたのだ・・・。せつないほどの
いとしさがこみあげて、また新たな涙があふれ出した。 
290ねこの恩返し8:2011/01/24(月) 14:57:25 ID:L/KcYubr
 つぎの朝。子供たちを学校と幼稚園に送り出したあと、フミエは庭先を掃いていた。
そこへ、顔見知りのキジ猫がやってきた。
「あら?キジ猫ちゃん、ひさしぶりだね。ニボシ食べる?」
フミエがニボシをやると、キジ猫はゴロゴロ言いながら食べ始めた。
「ゆうべ鳴いとったのはあんたなの?お嫁さんみつかった?」
『奥さんこそ、昨夜はダンナとよろしくやったかい?』
だが、キジ猫の言葉は、フミエにはニャアニャア、としか聞こえない。
『目に泣いたあとがあるが・・・悲しい涙じゃないらしい。ダンナには、
 俺がよ〜く意見しといてやったからニャ。』
キジ猫は、まぶたは少しはれぼったいが穏やかな微笑をうかべるフミエの顔を
見て、安心したように微笑んだが、フミエにはあくびの様にしか見えなかった。

「・・・猫ちゃん。そう言えば、私がこの家に来たばっかりのころ、あんたに
 そっくりな猫がこの辺にいたわ。・・・あんた、あの子の息子だったりしてね。」
『・・・奥さん、それも俺なの。あん時も、世話になったね。だけど俺、今度は
 長い旅になりそうなんだ。気が向いたら、いつかまた戻ってくるけどニャ。』
キジ猫は、ニボシを食べ終わると、前足をさかんになめては口元をぬぐい、
すっくり立ち上がってしっぽをピン、と立てた。
『あんな男だけど、奥さんのことを大事に思ってるのだけは間違いないみたいだ
 からニャ。見捨てないでやってくれよ。』
フミエには、相変わらずニャゴニャゴ言っているようにしか聞こえないのだが、
キジ猫はフミエに別れの挨拶をすると、オダマキの咲き乱れるしげみに
するり、と姿を消した。
『じゃあニャ。・・・あばよ。』
「・・・あ、あれ?今だれか『あばよ。』って言った?」
フミエは、キジ猫に別れを言われた気がして、あわてて後を追ったが、もうどこにも
その姿は見当たらなかった。
291名無しさん@ピンキー:2011/01/24(月) 23:46:56 ID:oQ5zJnTJ
>>283
GJ!!
292名無しさん@ピンキー:2011/01/25(火) 01:05:49 ID:sOr5qV8R
>>283
ぬこGJ!てかどんだけ上から…w説教されるゲゲおもろい。
声はもちろん波平さんで自動再生。
結構いつも強引なゲゲを書いてくださる職人さんだと思うんだが、
今回のエロのときのゲゲは優しめだったな。猫師匠に言われたこと、反省してたのか。
293名無しさん@ピンキー:2011/01/25(火) 20:19:37 ID:CD+T5kwv
>>283
GJ!
ふみちゃんの自慰とその指を嘗めるしげさんの流れがすごくエロい
ぬこ様ありがとう

今日お見合いの日なんだなー
しげさん一目惚れ記念日ですな
294名無しさん@ピンキー:2011/01/27(木) 01:46:46 ID:0TlOUHGS
豊川さんがガ○バーのCMに出てるのがえらく嬉しくなって、豊川さん登場あたりのDVDを見直す。
そんで、テレビくんの原稿もらったあと、布美ちゃんと豊川さんが玄関先で話すシーン、
「面白い方ですね」って言った豊川さんをみて、あ、豊さんて布美ちゃん好きだよね?
みたいな勝手な妄想が働く。そして投下するこのネタは、なんとも落ち着きのねえ豊川さんだw
紳士な豊川さん好きな方はスルーでおながいします。
そんな自分は、豊川さんというより眞島さん好きw
295布美枝〜豊川の場合〜1:2011/01/27(木) 01:47:48 ID:0TlOUHGS
豊川悟が編集部に戻ると、同僚の梶谷が「お疲れ」と声をかけてきた。
「豊さん、電話あったよ。水木先生の奥さんから」
意外な人物からの連絡に、少しだけ胸がざわついた。
「電話が通ったんだって。いつでも連絡くれって。これ、番号」
メモを受け取ると同時に、事務的な内容だったことにがっかりした。
そして何故か「がっかりした」ことに一瞬戸惑った。何を期待していたのだろう?
気を取り直して早速電話に向かう。
ちょうどいい。正式に鬼太郎の執筆を依頼しようと思っていたところだった。
ダイヤルをまわすと、すぐに件の奥方の声がした。少し緊張する。
『…はい、村井でございます。冷やし中華ですか?』
「…え?」
いくぶん不機嫌そうな声で、訳のわからない問いかけがあった。
「あの…雄玄社の豊川ですが…」
『あっ!豊川さんっ!すんませんっ。おとうちゃんっ、豊川さん…!』
その慌てぶりに、思わず噴き出す。冷やし中華?
それにしてもこの女性は本当に…面白い。

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万を超える部数を誇る少年雑誌を扱っている豊川の慢心が、
衰退著しい貸本漫画にしがみつく漫画家というものに、
正直なところいささか無粋な興味を持たせたのが、全ての始まりだった。
が、その漫画家の作品はどれもやけに「ざらつく」感覚で、やたらと心惹かれて堪らない。
編集部の面々からは「恋心にも近いほどの執心ぶり」などとからかわれもしたが、
その漫画家に出会ってから、豊川の編集者魂とでも言うものが、
俄然、燻ぶりから一気に炎に燃え上がったのは言うまでもない。
それが水木しげるその人だった。
そして、その漫画家の傍らに居た女房に、興味を覚えたのはつい最近のことだ。
ひょろりと背が高く、細い身体でおっとりとしていて、田舎言葉を喋り、朗らかに笑う。
徹頭徹尾控えめで、夫の半歩後ろに佇んでいる。
あの奇天烈な男の女房という割には、あまりにも地味な印象だったが、
なぜかふとした瞬間に、ぼんやりと心の中に入ってくる。
まさか年上の、しかも人妻に懸想をするなど、我ながら考えたくもないことだったが、
だからといって全否定できる自信もない。
奪いたいとか、そういう肉欲的なことではなく、どこかプラトニックな感情だと思った。
(理想…なんだよな)
妻にするなら、という意味で。
しかし、女性の社会進出目覚しい昨今、彼の女房のような女性は意外と少ない。
傷心に近い心持ちで、豊川は小さくため息をついた。
296布美枝〜豊川の場合〜2:2011/01/27(木) 01:52:06 ID:0TlOUHGS
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茂の「テレビくん」がその年の漫画賞に決まった。
豊川はその知らせを聞いた瞬間、信じられない思いでその場に立ち尽くした。
梶谷が痛いほどバシバシと肩を叩いてきて、やっとその現実を実感し始め、
ぶるぶると震えが起こり、同時に茂を初めて訪ねたときに見た、あの背中を思い出した。
本物だ、と直感したあの時。間違いではなかった。
そして大急ぎで受話器に向かう。ダイヤルがゼロに戻るその僅かな時間でさえ、永劫のごとく感じた。
きっと茂本人はこの報せを飄々と受け、そして流すのだろう。
豊川は何より布美枝の反応が見たかった。あの朗らかな笑顔が、泣き笑いに染まり、
夫の功労に心から歓喜するのだろう。
思った通り、電話口に出た茂は淡々と受賞の報せに、「分かりました」と返事をしただけだった。
梶谷はそれを聞いて、呆れた顔で笑った。「面白い人だな」苦笑して豊川は頷いた。

数日後、やはりどうしても茂夫婦のことが気になった豊川は、
受賞祝いと称して、銀座でとびきりの羊羹を買い、電車に飛び乗って調布へ向かった。
電車に揺られながら、やはりここのところの我が身はおかしい、としみじみ思った。
横恋慕に過ぎない布美枝への淡い想いは、日に日に色づいてきているような気がする。
けれど、決して届くはずもない絶望も隣り合わせて、身の程を弁えることも重々理解していた。
茂の隣に居てこその彼女なのだ、そしてその隣に居てこその笑顔を、どうしても見ていたいのだ。
矛盾してもなお欲する訳のわからない感情に、今日もまた突き動かされている。

駅から遠い村井邸にようやく着いた頃には、すっかり冬めいてきたにも関わらず、薄っすらと汗をかいていた。
動悸がやけに速いのは、歩く速度が速かった所為だと言い聞かせ、いつものように明るい声で扉を開いた。
「豊川さん」
出迎えてくれた布美枝は一瞬驚いて、そしてふわりと微笑んだ。
「どげされたんですか?締め切りはまだ先だと思っとりました」
島根の出だという彼女の訛りが、また格別その人柄を柔和に見せる。
「あ、いや」
貴方の笑顔が見たくて、などと言うわけにもいかず、つい言葉に詰まる。
「先生に、受賞のお祝いをと思いまして」
少し慌てて、土産の包みを差し出して見せた。飽くまで、茂に会いにきたのだと強調してみる。
また、柔らかく微笑む顔に、何故だか照れて咄嗟に俯いた。
しかし茂は散歩に出かけて不在だと言う。
「もう少ししたら帰ると思いますけん、どうぞ上がって待っとって下さい」

夕飯の支度をしていたのか、居間に通されると土野菜を煮込む匂いがする。
茂の仕事部屋では、娘の藍子が座布団を枕にすやすやと眠っていた。
間違いなく、偉大なる水木しげるの娘だけあって、随分とお絵かき好きのようだ。
そして同じく布美枝の娘だけあって、くるくるした瞳は言葉で表現できない魅力があった。
愛くるしい寝顔に、ふっと頬が緩む。
ふと、奇妙な空気だ、と豊川は思った。
独身の身分でこんなことを思うのは不思議だったが、すごく居心地が良い。
夕食の準備をする妻と、父の帰りを待ちくたびれて眠る娘。まるで、我が家のような。
緩んだ顔に、やがてはっと我に返り、ごくりと唾を呑み込んだ。
主人が不在の家に上がりこんで、妙な妄想を繰り広げる自分に、慌てて姿勢を正した。
297布美枝〜豊川の場合〜3:2011/01/27(木) 01:52:45 ID:0TlOUHGS
豊川は自身の所在なさに、出直そうかと思い始めたが、
背中から、小さく「そうだ」と布美枝の声がして、反射的に振り返った。
「…豊川さん、ちょっこし…お願いがあるんですけど」
「え?あ、はい。何でしょう」
すると布美枝はすっと豊川の喉元を指差し、
「…ネクタイの結び方、教えていただけませんか」
少しはにかむようにして言った。
「は…」
豊川は、自分の首に結んであった濃いブルーのネクタイに手を宛てた。
「結婚する前に兄に教えてもらったんですが、すっかり忘れてしまって」
「?はあ…」
「授賞式、12月にあると仰っておられたでしょう。今度、背広を新調することにしたんです。
 ちゃんとネクタイ締めて行かんといけませんけんね」
「ネクタイ…、…あ!」
豊川はようやく、布美枝の言わんとすることに合点がいった。
「そうか、先生、ネクタイ結べないんですね」
隻腕の茂はしかし、何事も全て器用にこなす男だったので、
豊川は時折、そんなことはすっかり忘れてしまうようになっていた。
しかしなるほど、確かにネクタイは片腕では結べない。
「先生に、教えていただいたら…」
「それが…見栄を張ってしまって。結べますから大丈夫ですって、言い切ってしまったんです」
そこで兄と練習したときの記憶を手繰り寄せたのだが、忘れてしまっていたのだと言う。
少し恥ずかしそうに、しかし見栄を張った手前引き下がれないという意地のようなものも垣間見え、
その様子がやけに可笑しく、豊川は自然と笑ってしまっていた。
「や、すみません。奥さん、なんか、可愛らしい方ですね」
「え」
やや、頬を染められたような気がして、はっとして目を逸らす。
「あ、いや、え、っと…」
慌しくネクタイを解いて、おずおずと布美枝に差し出した。
「どうぞ…」
手渡す瞬間、その細い指が触れた。たったそれだけのことで、かっと身体が熱くなった。
一歩踏み寄ってくる布美枝に、思わず後ずさりしそうになる。
長身の布美枝の顔は、相対すると真っ直ぐに瞳同士がかち合う高さになり、
どうしようもない焦りが豊川の全身を包んだ。
ふわり、とタイが首にかけられて、また一歩布美枝が近づいた。

「…ま、まず、結ぶ方を長く持って、胸の前で交差させて…」
真剣な眼差しが、豊川の胸の辺りにぶつけられて、一気に鼓動が加速度を増した。
聴こえやしないかと気が気でないが、布美枝の意識はタイに集中しているようだった。
「下から、ここに…そうです、そこに通して…」
しなやかな指が、頬を掠めそうになって避ける。
いつの間にかまた、ぐっと距離が縮まってきているように感じた。
不徳なことこの上ない、豊川はどきどきしながら自分を責めた。
不純すぎる激しい動悸が、尊敬する茂への裏切りのような気がして、自分自身を酷く苛んだ。
何とかこの状況を打破したい、身動きが取れない状態で、頭だけをフル回転させた。
298布美枝〜豊川の場合〜4:2011/01/27(木) 01:53:16 ID:0TlOUHGS
「あ、ああ、そうだ、お祝いを言いそびれていました!」
「え?」
きょとんとこちらを見つめる布美枝の視線を、まともに見ることはせずに、
結び目を再び解きほぐしたネクタイを持つ、薄桃色の手の爪先に目を落とした。
「おめでとうございます!年に1度の賞です。本当に素晴らしいことです!」
布美枝の笑顔を見たかったとはいえ、茂の受賞にも未だ心身打ち震える感動が豊川の中には残っている。
自分が信じたあの背中が、こうして認められたことに胸を張りたい。
「先生、いかがでしたか」
「いかが…?って?」
「電話では随分、あっさりとされていたので」
タイの長さの塩梅を確認してから、布美枝はくす、と微笑った。
「当然だな、と言っとりました」
「ははは、先生らしいですね。私は、信じられない思いでいっぱいでした。今もです」
「ふふ…」
「びっくりして、しばらく放心しましたよ。同僚たちと抱き合って喜んだりして」
興奮気味に話す様子を、にこにこと聴いてくれている。
ややあって、勢いよく熱弁をふるっていたことに、少しだけ気恥ずかしくなり、
豊川は軽く頭を掻いて咳払いをした。落ち着いた声で、尋ねる。
「…奥さんは、いかがですか」
「あたしは、豊川さんとはちょっこし違いました」
「え?」
ずっと合わさないようにしていた目線を、思わず布美枝に向けた。
「信じられんとかは、全然思いませんでした。なんというか…。こういう日は、
 遅かれ早かれきっと来ると思っとりました。必死で漫画を描いとる後姿を見たときから…」
「…」
「疑いもしませんでした。…来るべき時が来た。それだけです」
凛とした眼差しが、真っ直ぐに豊川を見つめた。
その眼は、豊川の胸の中心をぐっと鷲掴み、ぎゅうっと締め付けた。
やがてゆっくりと悟っていく。茂と布美枝の間の、揺るぎない絆、
布美枝が茂に対して抱く、尊敬よりも深い敬い、愛情よりも深い愛。

「けど、豊川さんには本当に感謝しとります。
 貴方がおらんだったら、未だにその時は来とらんだったかも知れません」
結び目の形を整えてから、一歩下がって目を細める。
重苦しい胸を抱えて、豊川はその姿をぼんやりと眺めた。
何故このひとは自分の隣に居ないのだろう。何故他の男のものなのだろう。
自分が持っていない、他の子どものおもちゃを羨ましく思うような、酷く幼稚な感情を恥じた。
299布美枝〜豊川の場合〜5:2011/01/27(木) 01:53:45 ID:0TlOUHGS
目の前にある白い肌や、揺れる黒髪、長い睫、凛とした黒い瞳、柔らかく潤む唇。
微かに漂ってくる、何とも言えない甘美な香りが、じわりと背中に汗を浮かばせた。
いかほどの時間も経っていないはずなのに、豊川にはその時間が永遠のように思えた。
息が詰まって苦しい。ぐるぐると頭の中がとっ散らかってくる。
このまま、この細い腕を掴んだら、この細い身体を抱き寄せたら…。
出来ないことはない、けれどとたんに全てが崩れてしまう。
たった一時の衝動に全てを流されてしまうほど、自分のふたりへの親愛は浅くはないはずだ。
ぐっと息を呑んで、持ち上がりそうになる腕を必死で抑えた。

「…なんか不格好だなぁ…」
やおら呑気そうな布美枝の声がして、ようやく、ほう、と脱力する。
そして咄嗟に身構えるようにして早口で言った。
「す、すみません。もう帰らないと!編集会議があるんでした!」
自分でも随分声が上ずってしまったな、と思ったが、お構いなしにぺこりと頭を下げると、
傍らに脱いであった上着と鞄を手にとり、大急ぎで玄関へ向かった。
「あ、あのっ…」
後から追いかけてくる布美枝の顔を、しっかりと見ることはできずに、
また勢いよく頭を下げて、逃げるようにして出ていった。
あまりにも不自然なのは自分でも解っていたが、この家に1秒でも居ることができなかったのだ。
走って走って、何かを振り切るように、豊川は脚が地を跳ね上げる限界まで走った。

- - -

とぼとぼと重い足取りで駅の手前まで来ると、公衆電話が目に入った。
そういえば他の作家との打ち合わせの段取りを、今日中に電話しなければならなかったことを思い出す。
腕に引っ掛けてあった上着のポケットをまさぐって、手帳を探す。
「…あれ、無い…?」
何処かで落としたのだろうか、どこにも無かった。
編集者にとっての手帳は命綱。スケジュールから電話番号から、ありとあらゆる情報が詰め込まれている。
もしかしたら、あの家に落としてきたのかも知れない。家に入る前、暑くて乱暴に脱ぎ捨てた記憶が。
今更また戻るのは、ここまでの距離を考えるとうんざりしたが、
それ以上に鬱々としてしまうのは、やはり布美枝に再び相まみえるだろうことだった。
少なからず彼女に対して好からぬ妄想を抱いたことに、罪悪感を感じずにいられない。
まるで裁判官の前に立たされる罪人の気分だった。
300布美枝〜豊川の場合〜6:2011/01/27(木) 01:54:20 ID:0TlOUHGS
重い足を引きずりながら、せめて道端にでも落ちていて欲しいと、きょろきょろしながら引き返した。
けれど望み虚しく、結局また茂の家まで戻ってきてしまう。
あれこれと事前に言うべきことを口の中で反芻し、極力事務的に、短時間で済まそうと考える。
逃げ腰なのが我ながら情けなく思いつつ、ひとつ深呼吸をして、きっと戸口を睨みつけた。
ゆっくりと入り口に近づいたとき、勝手口の向こうから人の声が聴こえて、瞬時に歩みを止めた。
やや体勢を変えて外から覗き込むと、布美枝が洗濯物を取り込みながら、誰かと話している様子が見えた。
声の主は、茂だった。いくぶんほっとした。
布美枝とふたりだけで相対するよりは、茂が居てくれる方が緩衝材になる。
気を取り直して声をかけようと、一歩踏み出した。
刹那、身体ががっちりと石のように固まった。

くすくすと微笑う布美枝の唇が、茂のそれと合わさり、ふたつの影がひとつになる。
その瞬間を目の当たりにしてしまった。
二度三度、戯れのように啄ばんで、くすくすと今度は両者が笑う。
それから見つめあって、茂の右腕が布美枝の身体を引き寄せた。
ゆっくりとまた触れ合った接吻が、やがて熱を帯びて深くなる。
見てはいけないと思いつつも、目が離れない。
少し離れては、追いかけてまた合わさり、息継ぎの間も惜しむように、互いの唇を掬い上げる。
布美枝の、うっとりと閉じられた瞼から湾曲に伸びる睫も、やや紅潮した柔らかそうな頬も、
つい先ほどまでは自分の眼前にあったはずの全てだった。
細い骨を思わせる頼りなげな腰まわりには、茂の右腕が指定席のごとく収まっている。
名残惜しむように口づけを終え、額を合わせて息を整えるふたりの横顔が、
映画のワンシーンのように美しく見えて、豊川はただ呆然と立ち尽くしていた。

「…おかあちゃ〜ん」
家の中から、母を探す娘の声がした。
布美枝、茂、そして豊川も、その声に我を取り戻す。
慌てて豊川は、本来の目的をすっかり忘れてその場から退散してしまった。
ひたすら歩いていると、今見た光景にやっと動揺が始まる。
けれど、決して黒い感情は沸いてこなかった。不思議と心が軽くなる気持ちがあった。
失恋というのとも違う、落胆とも違う、むしろ悟りに近い。
301布美枝〜豊川の場合〜7:2011/01/27(木) 01:54:45 ID:0TlOUHGS
結局、豊川が思慕した布美枝という女性は、あの男の隣に居るときでこそのものだったらしい。
茂の隣で笑う布美枝、茂を語る布美枝、茂を愛する布美枝、茂に愛される布美枝…。
豊川の本能は知っていた。布美枝を我がものとしたとたんに、きっと布美枝は布美枝でなくなる。
茂のものであり続けるということこそが、豊川が布美枝を慕った必要条件であった。
触れたいとは思っても、決して茂から布美枝を奪おうとは思えなかったのはそういうことだ。
きっと無理矢理にでもこの手中に収めたとき、布美枝は儚く消えてしまうのだろう。
豊川にとって布美枝とは、ただひたすらそういう女性だった。

ひとつため息を吐いたとき、
「豊川さん」
後ろから呼び止められた。振り返ると、茂が小走りでこちらに向かってくるのが見える。
「良かった、追いついた」
「…先生」
ふたりは気づいていなかったとはいえ、夫婦の愛の営みを垣間見てしまった後だと、
どうしても気恥ずかしくて、豊川は思わず俯いてしまった。
「あんた、これを落としていったようですな」
差し出された茂の手には、豊川の手帳が握られていた。
ここでやっと、手帳を探しに戻ったのだということを思い出し、思わず苦笑した。
「すいません、あちこち探してました。ありがとうございます」
「随分慌てとったようですな。ネクタイがくたびれて歪んどりますぞ」
「え…あ、はは…」
(これは貴方の奥方が…)
豊川は苦笑して、ネクタイに手を宛てた。
冷たい風がひゅうっとふたりの間をすり抜ける。
布美枝に結んでもらったネクタイをゆっくりと解くと、その風がひらりとタイを巻き上げた。
同時に、自身の内側で燻っていたどうしようもない残り火が、ふっと吹き消されたような気がした。
風とともに解き放たれた淡い想いは、冬の訪れを告げる冷たい空気に溶けて消えた。
豊川はそれを見送るように空を仰ぎ、そしてゆっくりと茂に向き直って、
猫のような、やや小生意気な笑みを浮かべてみせた。
「先生、気分転換の散歩も結構ですが、締め切り、来週ですよ」


おわり
302名無しさん@ピンキー:2011/01/27(木) 02:47:50 ID:/NjillTd
>>294
ひゃーーーーーーーーーーーーーーー
GJ!
こんな豊川さんが読めるとは!(もちろんいい意味で、です)
なんていうか、豊川さん視点のふみちゃん描写にものすごーくdkdkしてしまいました
303名無しさん@ピンキー:2011/01/27(木) 15:23:46 ID:uwSFfZQ9
豊川さんスキーな自分には最高です、ありがとう!
ゲゲあってのふみちゃんに惹かれる豊川さんイイ。
ネクタイエピもうま〜く絡んでドキムネ。
304名無しさん@ピンキー:2011/01/28(金) 17:23:21 ID:J9mwsqVH
>>295
GJ!年相応(?)の落ち着きのない豊川さんも素敵だ!
しげーさんが嫉妬して拗ねてふみちゃんが宥めるためにちゅーしたに違いないww
305名無しさん@ピンキー:2011/01/29(土) 06:22:46 ID:SnZsORRp
うまい!
306名無しさん@ピンキー:2011/01/29(土) 16:32:45 ID:zgbESpni
>>295
超GJです!
ゲゲゲを知らなくても読み物として秀逸!
豊川さん好きな私も○リバーのCM、嬉しかったですw
307名無しさん@ピンキー:2011/01/29(土) 19:31:11 ID:mGSolXbV
やっと書き込める〜
規制が憎かった!

>>283
ぬこ師匠GJ!w
いじらしいフミちゃんはあはあ…
ゲゲの独占欲はええですなぁ!

>>295
豊川さんktkr!!!
豊川さんの繊細な心情の表現にキュンキュンした!
一線越えないのがな〜何とも言えない!w
是非熟年フミちゃんと久し振りに会った豊川さんのお話も読みたいな

あ〜やっぱりゲゲゲは良い…職人様大感謝です
308名無しさん@ピンキー:2011/01/30(日) 18:56:39 ID:dftN0hhA
金婚式おめでとう!
狐はコーンと鳴いてるだろうか
309名無しさん@ピンキー:2011/01/30(日) 22:21:03 ID:ekEEvuZH
金婚式おめ!
ここの結婚記念日関連のSSを思い出してニヤニヤしてしまうw
310名無しさん@ピンキー:2011/01/30(日) 22:49:01 ID:EHhhEAl3
特に1年目のときなんかな。
「今夜はごちそうです」とか言われてゲゲもすっかりその気だったからなw
311名無しさん@ピンキー:2011/01/31(月) 14:38:35 ID:ICnvmbnI
ユキエと横山さんの物語です。
脇役に興味のない方はどうぞスルーでお願いします。

DVDで改めて見ると、お見合い後の家族会議?の時のフミちゃんは、ちょっこし
ほっぺが紅くて目がウルウルしてて、すごくきれいなことに気づきました。
そんな、嫁ぐ日を目前にしたフミちゃんのお話でもあります。
あ、横山さんは初号機でw補完よろしくです。
312むすびの神1:2011/01/31(月) 14:39:37 ID:ICnvmbnI
 急に決まった嫁入りまであと四日。父も母も、あまりに急転直下な話の運びに、
何をどう用意していいものやら右往左往している中、近くの村に嫁いだ二番目の姉の
ユキエが祝いに訪れた。
 源兵衛とミヤコがそれぞれにまた用事を思いついてそそくさと去った後、ユキエは
あらためてフミエにお祝いを言った。
「このたびはおめでとうございます。・・・それにしても急な話だね。あんたが東京へ
 行ってしもうたら、次はいつ会えるかわからんけん、顔を見に来たんだよ。」
「うん・・・。時間があったら、気持ちが揺れるかも知れんけん、かえってこの方が
 ええんだわ。」
 迷いが出る前に結婚してしまえ・・・そうとも取れるフミエの言葉に、ユキエはふと
表情を曇らせた。
「ええ人なの?村井茂という人・・・。」
「いっぺん会っただけではええ人かどうかわからんけど、もっと知りたい気がしたの。」
そう答えるフミエの顔は、頬は上気して瞳はうるみ、いつになくはなやいでいた。
(フミちゃんを不安にさせるようなことは言わん方がええね。・・・フミちゃんが
 選んだ道なんだけん。)
ユキエは、のどまで出かかった言葉を飲み込んだ。
「・・・あれ?おばばの写真。これ、東京へ持って行くの?」
「・・・うん。東京にはアキ姉ちゃんもおるけど、そうしょっちゅうは会えんだろうし、
 『お前のことは、ずーっと、おばばが見守っとるけん』って、亡くなる前に
 言うてくれとったけん・・・。」
この小さな町が大好きで、温かい家族に囲まれて二十九年を生きてきたフミエが、
会ったばかりの男と遠い東京で暮らしていくことは、さぞかし不安なことだろう・・・。
ユキエは、自分が嫁いだあと、引っ込み思案ながら一生懸命みんなのために
がんばって来た妹の、遅い春を心から祝福してやりたかった。

「フミちゃんは、私たち夫婦の縁むすびの神だけんね。むすびの神にむすんで
 もらったんだけん・・・って、ケンカしてもすぐ仲直りしてしまうんだよ。
 そのむすびの神のフミちゃんが、幸せになれんわけないよ。・・・がんばってね。」
「・・・ユキ姉ちゃん。だんだん。」 
313むすびの神2:2011/01/31(月) 14:40:29 ID:ICnvmbnI
 若い頃のユキエは、評判のきりょう良しで頭の回転も速く、父の源兵衛が
『わしに一番似とる。』と言うとおりの激しい気性の持ち主だった。親の言うままに
見合いで結婚し、この田舎町で一生を送るような人生にはあきたらなさを感じ、
戦局のきびしくなる中でも、精一杯のおしゃれをしたり、源兵衛の目をぬすんで
デートをしてみたりする、大胆な娘だった。
 そんなユキエが、近在の農家の跡取り息子の元へ嫁いだのにはあるいきさつがあった。
源兵衛に強硬に見合いをすすめられ、安来の港の叔母のところへ家出していたユキエは、
見合い相手の横山が断ってきたと聞いて現金に家に帰ってきた。
 フミエから、横山が見合いを断ってきたのは、父と姉のいさかいを悲しむフミエに
頼まれたからだったこと、それにもかかわらず急病で倒れた母のミヤコのため、
医師の田村先生をおぶって走ってくれたのが誰あろう横山だったことを聞き、ユキエは
はじめて自分の愚かさと横山の広い心を知り、激しく揺れ動いた。
 その後、横山とあらためて見合いが行われ、慌しく婚約がととのった。戦時中のこととて
万事簡素な婚礼に、黒引きの振袖のユキエは横山信夫のもとへ嫁いでいった。

 嫁入りから数ヶ月が経つと、ユキエもずいぶん新しい暮らしになじんできた。
農作業を手伝いながらの家事は大変だったが、信夫は思ったとおり優しい青年で、
慣れない妻を何かと思いやってくれ、ユキエは幸せに暮らしていた。
 とりわけ、ふたりだけの時間、やさしく愛されて深い陶酔をともにするとき、
ユキエはあらためて、自分が信夫に本当の恋をしていることを実感するのだった。
 見合いをするまでの本当の経緯は誰も知らず、ただ、「信夫は嫁御の母親の命の恩人」
という一大ロマンスだけが村人の間にひろがっていた。そのことで冷やかされると、
信夫は照れくさそうに言葉を濁すだけだったが、その胸中にある想いを、幸せで
いっぱいのユキエはその時はまだ知るよしもなかった。 
314むすびの神3:2011/01/31(月) 14:41:17 ID:ICnvmbnI
 その日。信夫はいつもより口数も少なく、ユキエを避けるようなそぶりがあった。
ユキエが風呂からあがって寝間に行くと、信夫はもう布団に入って目を閉じている。
(もう寝とられるの・・・?疲れとるのかな。)
ユキエは、夫が抱擁どころか、おやすみの挨拶もせずに寝てしまったことを
少しさびしく思いながら、鏡台の前で髪を梳いていた。
「なあ・・・。」
寝ているとばかり思っていた信夫が、布団の上に起き直って話しかけてきた。
「!・・・寝とられとるとばっかり・・・。どげしたんですか?」
「い、いや・・・やっぱりええ。」
「いやだ。言いかけてやめるなんて。はっきり言うてください。」
信夫はさんざんためらったあげく、とうとう切り出した。
「・・・思いきって聞くが・・・。あんた、結婚する前に、好きな男がおったんじゃないのか?」
「え・・・。なしてそげなこと・・・。」
「新田のもんが言うとったんだ。・・・あんたが以前、街で男と逢引しとった・・・ってな。」
ユキエの顔から血の気がひいた。・・・この時代、安来のような田舎で、嫁入り前の娘が
親の知らない男と逢引したりしたら、『ふしだら』という烙印を押され、ひどい場合は
嫁入り後に離縁されても文句は言えなかった。
「・・・男の人と、二人きりで会ったことがあるのは本当です。」
このひとには、正直に話したい。ユキエは腹をくくった。
「おととしの夏ごろ、付け文もらって・・・。私が女学校の頃から見とった・・・って。
 勤めの帰りに何度か 会って話したり、一度だけ映画館にも行きました。」
信夫はと言えば、つらそうな顔をしてただ聞いている。
「けど、それだけです。好きも何も・・・。すぐに遠くの学校に行ってしまわれたし・・・。
 今思うと、私、ただ自由恋愛いうものに憧れとっただけで、何もわかっとらんだった。
 その人とは、本当に何もありませんでした・・・!」
「あんたが・・・わしが初めてだったのは、わしが一番よう知っとる。」
 婚礼の日。、黒引きの振袖に純白の角かくし・・・十九歳の花嫁はまぶしいほど輝いていた。
憧れていた娘をその腕に抱く幸せ・・・一点の曇りもない白い肌に、信夫は
夢見ごこちで自分の肌をかさねた。灼熱のいたみにつらぬかれるユキエに心を
いためながらも、愛する女の純潔を捧げられた僥倖に震えるほどの感動を覚えた。
おのが男を濡らした鮮血を目にした時、「この女を生涯まもり抜かなければならない。」
と言う決意がわきあがった。  
315むすびの神4:2011/01/31(月) 14:42:20 ID:ICnvmbnI
「・・・誤解せんでくれ。逢引したことを責めとるわけじゃないんだ。」
ユキエと別れるつもりなど毛頭ない。ただ信夫の心を苦しめているのは、結婚前から
ずっと抱いていたある疑念だった。
「わしがひっかかっとるのは・・・あんたが、おっ母さんのことで、わしに負い目があって
 それで・・・それで、嫁に来てくれたんじゃないか・・・って。」
「・・・!そげな・・・ちがいます!」
「あんたとの縁談があった時な、写真見て・・・こげにきれいな人を嫁にもらえるのかと、
 その晩はうれしくてよう寝られんだった。待ちきれんで、ウチでとれた卵持って
 のこのこあんたの実家まで挨拶に行ったりしてな。そん時ちょうど困っとる
 フミエちゃんに会って・・・、卵をやってしもうたけん、挨拶はできんだったけど。
 だけん、フミエちゃんに、姉ちゃんがわしとの縁談をいやがって家出しとる、
 と聞いた時には目の前が真っ暗になった。」
「・・・私、父にいきなり見合いせえと言われて学校もやめさせられてしもうて。
 その後すぐ叔母の家に行ってしもうたけん、あなたの写真も釣書きもよう見とらんのよ。」
「・・・うん。それは後でわかったけん、ええんだ。おっ母さんのことがあって、それから
 とんとん拍子に話がすすんで、結納から婚礼まで・・・。わしはその間じゅうずっと、
 あんたはわしに恩義を感じとるからこの話を受けたんじゃないかと・・・そう思いながら
 黙っとった。あんたが欲しかったけん・・・わしは、卑怯もんだ。」
律義者の信夫は、大変な罪を告白するように目を伏せ、顔をゆがめた。
「このままずっと一緒に暮らしていけば、情もわいてくる・・・そげ思っても、わしは・・・
 それじゃいやなんだ。わしは、あんたのことが・・・。」
信夫は、感きわまったように、ユキエを抱きしめた。
「だけんあんたにも、ちょっこしずつでええから、わしを・・・好きになってほしいんだ。」

「・・・いったい、どげしたら好きになれるんですか。」
腕の中のユキエの言葉に、信夫はぎょっとして身体を離した。
ユキエの黒目がちな瞳の中に、青い炎が燃え、細い身体からはぴりっと電気が奔るかと
思われるほどの激情がほとばしった。
「・・・これ以上!どげしたら!?・・・あなたにはわからんの?好きでもない人に抱かれて、
 『このまま死んでしまいたいほど幸せ』って思うわけないだないですか?」
夜ごと身体のとけあう中で、想いも届いていると思っていたのは、間違いだったのか。
ユキエは悲しくて、抱こうとする信夫の手を振り払ってわんわん泣いた。
・・・ユキエの抵抗はいつしかおさまり、信夫はユキエを胸の中でしばらく泣かせてやった。
「・・・不思議だな。わしも、あんたの中におる時、『このまま死にたいほど幸せだ。』・・・
 って思うんだ。」
信夫の意外な言葉に、ユキエはハッとして顔を上げた。
「わしもあんたも、おんなじことを思うとったんだな・・・。」
二人は顔を見合わせて思わず笑った。   
316むすびの神5:2011/01/31(月) 14:43:10 ID:ICnvmbnI
 信夫の胸にもたれたまま、ユキエは静かに話し始めた。
「お母さんのこと、もちろんあなたが命の恩人やと思うてます。・・・けど、それと
 あなたと結婚したこととは、全然別のことです。
 私・・・あの時、何にも事情を知らんで、叔母とあなたの悪口言うてしもうたでしょ。
 あなたはそれを聞いとったのに、命の恩人やのに、何の言い訳もされんだった・・・。
 男らしい人だなあ・・・って思うて。いろんな想いが胸の中で飛びかって、その夜ひと晩、
 寝られんだった・・・。それで、次の朝いちばんに、父に頼んだんです。
 『あの人に会わせてください。』って。会って心から謝りたい・・・それから、
 もっとあなたのことを知りたかったの。
 父は、『それは見合いをする、ということになるぞ。』と言うたけど、それで
 よかったの。・・・あなたの方からも仲人さんに話が来とる、と聞いたとき、どげに
 うれしかったか・・・。」
「つまらんこと言って、すまんだった・・・。わし、あんたがそげな風に思うてくれとる
 なんて、全然知らんで・・・。」
「ううん。かえって良かった。・・・あなたの気持ちがわかったけん。」
ユキエは腕の中から抜け出ると、まっすぐ信夫の目を見ながら言った。
「すき。・・・あなたが好き・・・信夫さん。信じてくれんかもしれんけど、私はあなたに
 恋をして、お嫁に来たの。」
最後の方は涙声になり、気を張った顔がくしゃっと崩れた。そんなユキエを、信夫は
信じられない思いで抱きとめた。
「そげなこと言われたら・・・、幸せすぎてどげしたらええかわからんが。」
信夫は、ユキエをギュッと抱きしめると、泣き笑いの顔に口づけした。  
317むすびの神6:2011/01/31(月) 14:44:21 ID:ICnvmbnI
 唇をむすんでは離し、いとおしそうに互いの顔をみつめては口づけを繰り返すうち、
くるおしい情熱にのみこまれ、ふたりは抱きあったまま床(とこ)にたおれた。
 帯をとき、浴衣を剥ぐと、あらわれたユキエの裸身は、二の腕から先や足先が真っ黒に
日焼けして、まっ白な肌身との対照が鮮烈に信夫の目に映った。
「日に灼けて・・・しもうて・・・。」
ユキエは恥ずかしがって胸を腕で隠そうとする。白い乳房の突端は、無垢だった頃よりも
濃く色づいて、青い果実を思わせた固い身体は、悦びを知って柔らかくほぐれていた。
日焼けも、処女から新妻へと変わった身体も、信夫との暮らしがもたらしたものだ。
「いや・・・すごく、きれいだ・・・。」
信夫は、ユキエを変えてしまったのは自分だと思うと、痛々しい思いの反面、
突き上げられるような凶暴ないとしさにかられ、胸を隠す腕を引き剥いで紅い実を吸った。
「あ・・・あぁん・・・。」
手を押さえつけたまま、下へと唇を這わせる。柔らかな茂みにたどり着くと、
両脚をひらかせ、そこに熱くあふれ出す泉を味わった。
「やっ・・・いやぁっ・・・!」
ユキエの手が、宙をかいて信夫の手を求めた。その手を握ってやると、
「いや・・・いや。そげじゃ、なくて・・・。」
信夫の手を引き寄せ、熱くささやいた。
「きて・・・来て。はやく・・・。」
早く、あなたとひとつになりたい・・・ユキエにもとめられ、信夫はたぎるような熱情を
おさえられなくなった。
 ユキエの白い肌身に、信夫の細身だが鋼のように鍛え抜かれた裸身がかさなった。
「あ・・・あぁぁ―――――!」
ただつながっているだけで、はげしい快美と幸福感に全身をつらぬかれ、ふたりは
身動きも出来ず、つよく抱きしめあった。
「あ・・・ぁ・・・もう・・・。」
快を訴えるユキエの熱い吐息が信夫の耳に注ぎ込まれる。
「ゆ・・・きえ・・・。」
信夫はこのままユキエの中にほとばしらせてしまいたい衝動をこらえながら上体を起こし、
苦悶とよろこびの入り混じったユキエの顔をいとおしげにみつめた。
 指と指をからませ、ゆっくりと責め始めると、甘い叫びを上げながらユキエも腰を
揺らした。
 一方通行だったたがいへの想いが、ようやく混じりあい、ひとつの大きな奔流となって
荒々しくふたりを押し流していった・・・。

 ユキエの美しさへの妬みもあって、狭い村では何かと噂する者もあった。
だが、お互いへの愛を確かめあったふたりが、信じあい、睦まじく穏やかに暮らすうち、
つまらない噂は消えていった。
 ・・・ユキエが、信夫の子供を身ごもったことに気づいたのは、それからまもなくの
ことだった。
318むすびの神7:2011/01/31(月) 14:45:11 ID:ICnvmbnI
「ユキ姉ちゃん・・・どげしたの?ボーッとして。」
 妹の、もうすぐ嫁ぐ娘に特有のふわりと浮かぶような華やぎを目にするうち、
ユキエは自らの新婚のころを思い出していた。
「あ、ああ、ごめんね。ちょっこし考え事しとって。」
ユキエは照れ隠しに、目についた古い裁縫箱をつと手にとってふたを開けた。
「・・・私があげた『モロッコ』のパンフレット!懐かしいねえ。
 恋人を追って砂漠を行くなんてロマンチック・・・って、憧れとったけど、考えたら
 どげな運命が待っとるかわからんね。でも、それがこのひとの選んだ道なんだよね・・・。」
ユキエは、とおい日の夢のかけらをそっと裁縫箱にしまった。
「農家の嫁より、町でつとめ人の奥さんする方が楽だろうに、と言う人もおるけど、
 どこでどげな人と暮らしても、苦労がない、ということはないと思うわ。
 困ったことにぶつかった時でも『自分で選んだ道なんだけん。』と思えば覚悟もきまる。
 私は信夫さんと一緒に、農家の女房として生きる、と自分で決めたけん。
 信頼できる人と一緒なら、どげな苦労も乗り越えられるもんだよ。」

 ユキエの経験から紡ぎだされる言葉は、あたたかくフミエの胸に沁みた。
子供の頃は、ユキエの気性の激しさ大胆さに、おとなしいフミエが振り回されることも
あった。美しく何でも出来る姉に、気後れを感じることもあった。
 だが、子供たちの母となり、相変わらず細いけれども、野菜のいっぱい入った
背負い籠をせおって遠い道のりを歩いてくるたくましさを身につけた今のユキエは、
昔の驕慢さはなりをひそめて、穏やかに美しかった。

「婚礼にはもちろん出席するけど、東京へ出発する時も、見送りに行くね。
 うちの人が、そうしてやれって言うんだわ。」
「だんだん・・・お義兄さん、相変わらずやさしいね。」
「うん。・・・あげにやさしい人は他におらんわ。」
「やだぁ、ユキ姉ちゃん。ひとの結婚祝いに来てのろけとったら世話ないわ。」
「あはは、ほんとだ。」
「・・・姉ちゃんと話しとったら、なんだか安心したわ。だんだん。」
「よかったね。・・・お父さんがええと言うひとなら間違いなーわ。・・・私が言うのも
 ナンだけどね。」
ユキエのいたずらっぽい顔に、フミエは吹き出した。

 ひとしきり思い出話に花を咲かせて笑い、ひさしぶりに姉妹のおだやかな時間を
過ごしてユキエは帰っていった。
 急に動き出した運命に、戸惑いと不安を感じていたフミエの心に、ユキエとの
時間はほっとしたやすらぎを与えてくれた。
(東京へ行く前に、ユキ姉ちゃんと話せて、ほんによかった・・・。
 自分で選んだ道なんだけん・・・か。私も、がんばるけんね。)
ユキエにもらった言葉を胸にきざみ、フミエは婚礼の日に持っていくトランクを
ぱちん、と閉めた。
319名無しさん@ピンキー:2011/02/01(火) 01:12:01 ID:bkBbo/iO
>>312
横山夫妻キタ―(゚∀゚≡゚Д゚)ムハァ―!!
ユキ姉ちゃんも初号機で補完しますた!
お互いの愛情溢れるエエ話だ。だんだん!
320名無しさん@ピンキー:2011/02/01(火) 21:26:37 ID:A2IX22S0
>>312
横山夫婦!だと!GJ!
横山夫婦も良い夫婦だよね
いちゃいちゃしやがって…ええぞもっとやってごしない
321名無しさん@ピンキー:2011/02/02(水) 15:03:29 ID:ZH/LBmTz
ふみちゃんの中の人が今やってるドラマでゲゲゲネタ出て来てかなり動揺してしまたwww
322名無しさん@ピンキー:2011/02/02(水) 17:01:11 ID:Ge/fjaOv
>>312
超GJです!
横山さんもユキ姉ちゃんも一番最初の人がイメージにぴったりだわ
この二人も大好き!
323名無しさん@ピンキー:2011/02/02(水) 19:26:13 ID:+FN9pvTr
>>321
「ゲは3回で!(`・ω・´)キリッ」
324名無しさん@ピンキー:2011/02/03(木) 01:13:14 ID:GiOMNuBo
明日(つか今日)のエランドール受賞式は、久々のゲゲ布美ツーショットあるだろうか?
記者会見とか夜っぽいから、明後日の朝のワイドショーとかに出たりするかなあ?
密かにwktk
325名無しさん@ピンキー:2011/02/04(金) 07:48:38 ID:YEI8sd9F
ゲゲふみ&スタッフの皆さん、
エランドール受賞おめでとうございます!
326名無しさん@ピンキー:2011/02/04(金) 18:45:37 ID:lXbQeUzg
朝からワイドショーはしごしてた!ゲゲ布美ツーショット久々!
色々話したりとかするのかなあ。まだ「おとうちゃん」呼びなんだろうか。
ああしてみると、ムカイリが60過ぎまで演じてたのはスゴイなあと思うほど童顔w
327名無しさん@ピンキー:2011/02/04(金) 23:40:51 ID:2MzyVkAz
>>326
日テレ系のwsでは仲良そうな二人の様子が映ったらしいな
録画しておけばよかったorz
328名無しさん@ピンキー:2011/02/05(土) 21:53:05 ID:3HHXye5e
ゲゲふみは昭和夫婦だから近年定番の黒くて太いものをくわえるふみちゃんネタが出来なくて残念ですな…
329名無しさん@ピンキー:2011/02/05(土) 23:45:24 ID:TTcSbvj+
>>328
恵方巻き?それともフェラ?
330名無しさん@ピンキー:2011/02/06(日) 23:53:25 ID:tjjsJfkR
なるほど、恵方巻きは認知度が最近のものだからな。
それもそうなんだが、2月の定番ネタのバレンタインとかも調べると
流行?定番化してきたのは昭和後期らしく、ネタにしづらい。
エロ「パロ」だからいいじゃねえかと思いつつも、「昭和のかほり」の看板掲げてるしな。
331名無しさん@ピンキー:2011/02/07(月) 00:33:08 ID:txNlX2WM
関西では結構昔からある習慣で
ゲゲふみ新婚時代なら家庭で作って食べてたらしいけどね
境港はどうなんだろうね
332名無しさん@ピンキー:2011/02/07(月) 19:40:36 ID:qHYdkjG3
境港も安来も、山陰ってそういう民間の行事が特殊そうだよね
まあバレンタインも恵方巻もなんでもウェルカムですが!
333名無しさん@ピンキー:2011/02/08(火) 12:39:51 ID:oIDh7/5f
最近、過疎気味だね
みんな噂板の方に行ってるの?
334名無しさん@ピンキー:2011/02/08(火) 13:34:38 ID:MxvT+9AY
んな所行かない
335名無しさん@ピンキー:2011/02/08(火) 20:25:59 ID:DQBqUo7b
中の人は中の人コンビで好きだけど二人の演じたゲゲふみが好きすぎて好きすぎて
DVD見てるとすごく幸せな気分になる
336名無しさん@ピンキー:2011/02/08(火) 23:24:19 ID:0zItbhf+
ドラマが終わって年も明けたし、1日1レスあればいいな〜と思ってる。
新規開拓しようと思って、リアルタイムで見れてない知り合いとかにDVD貸す運動してるけど、
「面白かったよ、ありがと」ってすげーあっさり返されるだけで、とても萌えを語れる相手には巡りあえず(泣)
「朝ドラ?そんなのお年寄りが見るもんじゃないのpgr」みたいな空気の人も居た…。
萌えを語りてえと思ったら、やっぱりここが一番なんだよ〜。
337名無しさん@ピンキー:2011/02/09(水) 00:31:23 ID:acF1/s9G
ふみちゃんの中の人に贈られた誕生日ケーキを見て
前スレラストのいちせんSS思い出してニヤニヤしてしまったw
338名無しさん@ピンキー:2011/02/09(水) 17:14:09 ID:cyGR3lHi
>>335
あなたは私かっ!ナカーマ
339名無しさん@ピンキー:2011/02/09(水) 21:14:22 ID:5Z5mqLB/
>>336
自分も正直このスレがきっかけでゲゲゲが気になるようになる前は朝ドラなんて派だったなー
これまでもいくつか朝ドラ系のスレは読んでたけど読むだけでドラマ自体を気にしたことはなかった
ゲゲふみの魅力を余すことなく伝えてくれた書き手さん達には本当に感謝したい
340名無しさん@ピンキー:2011/02/10(木) 23:42:56 ID:2yr2KiMO
狸耳のおとうちゃんと狐耳のおかあちゃんとか萌えるじゃないか…
341名無しさん@ピンキー:2011/02/11(金) 18:51:13 ID:4hYbEYOl
フミちゃんと綾子がそれぞれの時代にワープしちゃって
フミちゃんは祐ちゃんと、綾子はしげさんと
Hしないと元に戻れんとゆう展開はどうだろうか。
外見はソックリだけどやっぱり違う、
でも重なる部分があったりして戸惑っちゃったりするんだな。
そして初夜をもう一度経験する二組。
そんな妄想。
342名無しさん@ピンキー:2011/02/11(金) 21:21:30 ID:OGByGjEe
>>341
ゆうちゃんとふみちゃんのコンビを想像したらなんかほのぼのした
入れ替わった事に気づかないで店番させられてあわあわするふみちゃんハアハア
綾子さん美術系だからしげさんの原稿見たら喜びそうだな
しげさんの綾子さんへの対応が一番謎だ…どんなかな
343名無しさん@ピンキー:2011/02/11(金) 23:50:42 ID:iHrp2KsJ
>>342
ふみちゃんはスターラーメンの悲劇再びって感じか?
綾ちゃんは漫画のアシスタント出来そうだね
しかし現代っ子があのボロ家見たら、たまげるだろうなw
344名無しさん@ピンキー:2011/02/11(金) 23:51:37 ID:kPm/8OxT
>>341
全裸で待ってるお!(o`・∀・´o)
345名無しさん@ピンキー:2011/02/12(土) 00:33:48 ID:x4dTStGu
>>341
えええぇぇ。。。。どんな理由があっても不貞にしか思えない
ゲゲふみの不貞行為は読みたくないなぁ

二人が好き過ぎて駄目だわ
346341:2011/02/12(土) 01:30:50 ID:J4sgzlpU
特殊なネタなので嫌いな人もいますよね。
スマンです。
347布美枝〜茂の場合〜1:2011/02/12(土) 04:52:44 ID:YTYWIm4k
夕日が落ちかけて、空が薄赤く染まる頃、茂はぶらぶらと帰途についた。
おんぼろの我が家から、ほのかにカレーの匂い。ふっと頬が緩むと同時に、ぐう、と腹が鳴る。
建てつけが悪くて、開けっ放しになってあった引き戸をくぐると、
ちょうど勝手口から布美枝が出てきて、洗濯物に手をかけた。
「ええ匂いだな」
茂の声に一瞬驚いて振り返る。夫の姿を確認すると、やや呆れた顔で微笑んだ。
「さすがおとうちゃん。カレーの匂いに誘われて帰ってきた」
くすくすと笑いながら、洗濯物を取り込み始める。
「肉は入っとるんだろうな」
「まあ、ちょんぼし?」
「だら、たまにはええ肉を食いきれんくらい買ってみろ」
いつまで経っても貧乏性の布美枝に、やや呆れて軽く頭を小突いた。
「おとうちゃんももうええ年なんだけん、若い頃みたいに食べとったらすぐにぜい肉がつきますよ?」
やや嫌味っぽく、目を細めて諭される。癪に障るので、反撃に出た。
「そげなら今晩あたり、久々におかあちゃんでも食うかな」
「えっ」
振り向いた顔が紅くなっているのは、夕日に照らされている所為ではない。
「なかなかええ運動になる」
「…もぅっ!」
いつだってこちらが一枚上手でなければ面白くない。
照れながら、それでもくすくす、と笑う布美枝に近寄って、その艶やかな唇を吸い寄せた。
じゃれ合いのようにして二度三度口づけ、やがて細い腰に手をまわして身体をぴたりと合わせる。
既にうっとりとしている布美枝の瞳に、映る自分の顔を確認し、改めて濃厚に接吻した。
離れればすぐに俯く布美枝の唇を、下から掬って重ね合わせる。
当たり前のように、布美枝の身体は我が身に馴染む。そうなるように最初から創られていたかのように。
額を合わせて、息を整えながら橙色に染まる布美枝の肌を撫でた。

「…おかあちゃ〜ん」
勝手口の向こうから、藍子の声がした。慌てて互いに一歩ずつ後ずさる。
昼寝でもしていたのか、寝ぼけ眼で扉からのろのろと現れた藍子の手には、
ずいぶんと使いこんで、ぼろぼろになった黒い手帳が握られていた。
「おちてた」
「…あ!もしかしたら豊川さんのかも」
布美枝は手帳を受け取り、裏表を確認してから、そう言って茂を振り返った。
「さっきまでいらしとったんです。用があるとかで急いで帰られたんですけど」
布美枝から手帳を受け取り、茂はパラパラと2、3ページめくってみた。
確かに見覚えのある斜め書きのクセのある字は、豊川のものらしかった。
「ひとっ走り行ってくる。まだその辺におるかも知れんからな」
頷く布美枝を見、まだぼやっとしている藍子の頭をくしゃっと撫で、茂は小走りに駆け出した。
348布美枝〜茂の場合〜2:2011/02/12(土) 04:53:35 ID:YTYWIm4k
- - -

(韋駄天の名を欲しいままにしていたあの脚力は、いずこ…)
布美枝に言われたことは癪だったが、下駄で走っていることを差し引いても、
踏み出す足はどんどん鉛のように重くなり、吸い込む空気の薄さに苦しむ。
確かに若くはないかもな、と茂は悔しそうに顔を歪めた。
ふと顔を上げると、商店街を抜けた先のあぜ道を、とぼとぼと歩く見知った背中を認めた。
「豊川さん」
息切れした声でなんとか呼び止める。
ぎくり、と一瞬肩をすくめて、ゆっくりと振り向いた豊川は、いささか青ざめたようにも見えた。
「あんた、これを落としていったようですな」
茂が手帳を差し出すと、はっとした顔をして、しかし何故かすぐに苦笑って礼を言った。
やけに歪んだネクタイに手を宛て、また少し微笑ってからそれを解く。
空を仰ぎ、何かを見送るように目を細める豊川の視線を、茂も追って同じく空を見上げた。
もう冬だな、髪を巻き上げる冷たい風に、茂はぼんやりと思った。
「先生、気分転換の散歩も結構ですが、締め切り、来週ですよ」
いつもの勝ち気な猫のような笑みを浮かべながら、豊川はくるくるとネクタイを巻き、ポケットに仕舞う。
ぼりぼりと頭を掻きながら苦笑した。
「今日は何か用がありましたか」
「ああ、ええと、受賞祝いに寄っただけです。おめでとうございます」
深々と頭を下げられる。慌てて茂も姿勢を正した。
「あんたのおかげです。あんたがおらんだったら、こげなことには」
そう言うと、豊川はまた少し笑った。
「奥さんにも同じことを言われました」
「はあ」
布美枝が同じことを?布美枝と豊川がどんな会話を交わしたのか、少し気にかかった。
ゆっくりと歩き出した豊川に倣って、茂も歩を進めた。

「…先生?」
「はい」
「先生と奥さんはどうやってお知り合いになったんですか?」
話題が急に妙な方向へ進んだので、茂は思わず締まりのない顔を豊川に向けてしまった。
が、どうやら冷やかしなどではなく、相手は真剣な様子でこちらを窺っている。
「…見合いです。親が無理矢理決めてきたようなもんで」
「へえ…!意外だな。随分と仲がいいので、大恋愛なんだと思ってました」
「いや、あんた、普通、ですよ」
周りからはそんなに仲がいいように見えているのだろうか?それこそ大恋愛の成就したような?
照れくさくなって俯きかけたところへ、ぴたりと歩みを止めた豊川の脚に危うくぶつかりそうになる。
顔を上げて豊川を見ると、何か言いたげな表情がやけにもの哀しく見え、一瞬戸惑った。
349布美枝〜茂の場合〜3:2011/02/12(土) 04:54:17 ID:YTYWIm4k
「どげしました」
問いかけても、「いえ」と微笑して目を逸らす。
何か悩み事でもあるのだろうか、今日の豊川はやけにセンチメンタルな趣きがある。
「ははあ、さてはあんた、嫁でももらおうと考えておるのではないですか?」
茂の言葉に、豊川は驚いたように顔を上げ、そしてすぐに破顔した。
「あははは、いえ別に。そういうわけではありません」
「悩んでおるように見えたんだが。まあ、あんたほど男前がええなら、嫁探しに苦労はせんでしょう」
「とんでもない。理想の女性はなかなか居ないものです」
「理想がおるんですか」
はた、と豊川の表情が一変する。
また先ほどのもの言いたげな、どこか申し訳なさそうな表情だった。
豊川は少し俯いて、ネクタイを仕舞ったポケットに手を入れ、再び茂に向き直った。
「先生、私はね、先生の奥さんが理想なんです」
「…は」
「私は、奥さんのことが好きでした」

(――――――………)
絶句、とは本当に言葉を失くすことなのだと思った。
瞬間、頭が真っ白になって、やがてじわじわと脳内で勝手に言葉の咀嚼が始まる。
が、理解をして呑み込むまでに相当の時間がかかった。
「あ…あんた、ど、…え?」
何しろ、想い人だと言うその亭主に向かって、堂々と宣告したのだ。
余程の自信家か、本物の馬鹿正直か、どちらかしか居ないだろう。
「それで…」
どうしたいのだ、と問う前に、茂の反応に慌てたのか、済まなさそうに豊川が補足する。
「あ、けど、だからと言って何もありません。奥さんには何も言っていないし、
 言ったところでどうこうしようとか、そんなことを考えているわけではありません。
 それに、もう整理はついてます。本当にただ、好きだった、というだけのことです」
豊川の心情は測り兼ねたが、「だった」を強調したところを見ると、今はもう諦めているということなのか。
「それでええんですか」
ふいに、問いかけたあとで、問うてどうするのかと思った。
豊川も意外な面持ちで茂を見、そして苦笑した。
「…いいも何も。欲しいと言ったらくれるんですか?」
「あ、いや…」
言葉に詰まった茂に、豊川は笑って「冗談です」と言った。
「これからだって、何も変わりませんよ。私はただの編集者で、貴方は漫画家で。
 そしてあのひとは…ずっと貴方の妻です。何も…何も変わらないんです」
まるで自らに言い訊かせるようにして、豊川は神妙に頷いた。
布美枝を「あのひと」と呼ぶ、思慕を匂わせる言い方が、やや茂の内側をちくりと刺した。
「あんたは随分…もの好きですな」
ようやく得心して、ため息とともに声が出た。
「鈍くさい田舎者ですよ。ぼんやりしとるし、顔は空母みたいに長い。
 いっつも大人しい分、何かあるとこげに目を吊り上げて怒り出して…」
「のろけにしか聴こえませんね」
すかさず皮肉めいて言われ、ぴたり、と茂の口が止まった。
くっくっと笑われるのに耐え難く、髪を掻き毟って俯いた。
「すみません、突然変なことを言い出して。どうにも吐き出しておきたかったみたいです」
すっきりした、という表情は、本当に晴れ晴れとしていて、不思議と茂も肩の力が抜けた。
「…不毛な横恋慕でしたね」
ひゅるりと冷たい風が舞った。それを見送ってから、豊川は「さて」と息を吐く。
「社に戻ります。先生、また来週お伺いしますから、原稿お願いしますよ」
先ほどまでの憂いじみた表情は消え、すっかり仕事の男の顔になった豊川がそこには居た。
ぺこりと一礼して、去っていった豊川の背中を、茂はしばらく見るとも無しに見送っていた。
350布美枝〜茂の場合〜4:2011/02/12(土) 04:54:56 ID:YTYWIm4k
- - -

女房に懸想を抱いていたと告げられても、いささかの嫌悪も抱かなかったのは、
やはり豊川の人望とその誠実さゆえのことなのだろう。人徳というヤツだな、と茂はしみじみ思った。
回想するその傍らで、豊川の「愛しの君」とでも言うべき布美枝は、何も知らずに墨を塗っている。
一心に原稿を睨みつける眼と、その横顔を、しばしぼーっと眺めた。
風呂上りの、ややもたついた長い黒髪を耳に引っ掛けてあると、白い肌と対照的に互いを際立たせ、
白はより白く、黒はより黒く、鮮やかさが増していた。
なで肩のラインから伸びる腕は、茂の指をぐるりと回して掴んでしまえるほど細く、
微細な線の間に筆を運ぶしなやかな指は、茂のそれと絡ませたときには、
簡単に折れてしまうのかと思わせるほど頼りない。
今はきゅっと引き締められた唇も、口づければとたんにほわりと緩んで潤んでしまう。
白い肌が上気して紅色に染まる瞬間は、何度見ても内側から何かに突き上げられる感覚を生む。
布美枝に惹かれる男が居たということは驚きだったが、おかしな話ではないと思う。
亭主の自惚れと言われても、この女には妙なところに人を惹きつける魅力があるのは間違いない。
ただし、快感に淫れる最上の艶やかさを知るのは、ただ独り自分だけだけれど。

と、さすがに茂の視線に気づいたのか、件の女房は、きょとんとした顔を向けて首を傾げた。
「ん?」
慌てて机に向き直り、筆を進めるふりをする。ちらと横を窺ってから、小さく咳払いをした。
「…き、今日、豊川さんとどげな話をしとったんだ」
「どげなと言われても…すぐに帰ってしまわれたから…。
 あ、漫画賞の受賞、おめでとうございますと仰っとられました」
「それだけか」
「編集部の方と盛り上がったみたいですよ。抱き合って喜んだって」
「うん、それから?」
「受賞の電話をもらったとき、おとうちゃんが随分あっさりしとったから、
 様子が知りたくていらしたんじゃないかなあ」
「そげか。他には」
「…」
「…なんだ」
急にぴたりと口を閉ざし、何やら怨めしそうに茂を見つめてくる目に、思わずたじろぐ。
「…どげしました?さっきからやたら矢継ぎ早にあれこれ訊いてきて?」
訝しがる布美枝を前に、茂は心の中で舌打ちをした。
豊川を不快に思うことなどなかったとはいえ、それでも二人の仲が気にかかるのは正直なところ。
知らず知らずにそこを探り出そうとしていた本音に、釘を刺されたような気がした。
「べ、別に。ただ訊いてみたかっただけだ」
「ふうん…?」
小さく首を捻りながら、布美枝は再び原稿に向かった。
351布美枝〜茂の場合〜5:2011/02/12(土) 04:55:31 ID:YTYWIm4k
「…あ」
と、すぐに顔を上げた布美枝が、「あ」の口のまま茂をしばらく見つめて
「豊川さんに何か…言われたんです、か…?」
おずおず、上目遣いで尋ねる。どこか、ばつがわるそうな表情だった。
ぴん、と茂の第六感とでもいうところが、勢いよく撥ねあがった。
「思い当たることがあるのか」
「え…や…、あの…」
今度は形勢が逆転する。攻めるのは茂の方だった。
じりじりと詰め寄ると、どんどんと背を丸め、電信柱が小さくしぼんでいく。
「なんだ、何を隠しとる?」
「え、と…」
布美枝の顔は紅潮し、一向に茂と目線を合わそうとしない。
筆を置いて、両拳を胸の前で交差させ、ぶつぶつと言い訳めいたことを呟いている。
誰が見ても、その身体全体で、「豊川との間に秘密を持った」と物語っているではないか。
万が一にも豊川と布美枝に限って、そのようなことはないと思っていたが、
男の腕ならばこの細い身体、いくら長身の布美枝でも動きを封じることは簡単だ。
豊川は確かに整理がついた、と言っていた。それは一体どういうことだったのか。
あの屈託なく、下心も垣間見せなかった笑顔は、全くの作り物だったのか。
「おい!」
茂は煮えたぎる腹の内に勢いをつけ、布美枝の肩をがしっと掴んだ。と同時に、
「あーっもうっ、そげに意地悪く焦らさんでもええでしょ!」
布美枝の叫びに近い声が飛んだ。
「何がだ!」
「だから、聞いたんでしょ…」
「はっきり説明せ!」
「そげに怒らんでも…二人であたしのこと笑っとったんでしょう」
「…は?」
下唇を突き出して、子どものように布美枝は拗ねだした。
が、茂には全くその意味が解らない。
「だから、ネクタイのことですっ」
「え?」
「兄に教えてもらったからネクタイ結べますって言っといて、結び方すーっかり忘れてしまっとったから、
 豊川さんに教わって練習台になってもらっとったこと、聞いたんでしょう?!」
いよいよ開き直ったという風に、ふてくされた顔で乱暴に言い捨てる。
「見栄張っといてやっぱり出来んっていうの、格好悪いから黙っといて欲しかったのに。
 豊川さんも人が悪いわ。どうせおとうちゃん、それ聞いて知っとったから、
 意地悪くあたしのことからかおうとしたんでしょ」
じろっと睨みつける眼を、茂はただぽかんと口を開けて見つめ返すしかなかった。
352布美枝〜茂の場合〜6:2011/02/12(土) 04:56:14 ID:YTYWIm4k
ネクタイ…ネクタイ…はて、そういえば、やたらくたびれて歪んだネクタイを締めていたな。
茂がそれを指摘すると、慌てた様子で解いていたような気がする。
それはしかし、どこかうっすらと、はにかんでいたようにも思える。
「今日の、あれ…お前が結んだのか」
「…そうですけど…。あれ?豊川さんから聞いたん、…ですよね…?」
無垢な顔で茂を見上げる布美枝の向こうに、ネクタイ結びの練習台にさせられる豊川が浮かぶ。
豊川の気持ちを知らなかったとは言え、想い人にネクタイを結んでもらうその行為は、
逆に何も知らなかったからこそ、あまりに酷な気がした。最中の彼の心境を測れば、やや同情もする。
「…豊川さんの名誉のためにも言っとくが、そげなことあの人からは何も聞いとらん」
「えっ…」
「墓穴を掘るとはこういうことだ」
かーっと血の気が布美枝の顔を昇っていく様に、茂は堪えきれずに笑った。
布美枝は両手で顔を扇ぎ、何とか鎮めようとしながら、それでも治まらない赤面に、遂に顔を覆う。
「だらず。練習なら俺でやれ」
「だ…だって」
ため息を吐きながら、茂は諌めるようにして布美枝の頭をぽんぽんと叩いた。

茂が一瞬抱いた「疑念」は、やはり豊川に限ってあり得ないことではあった。
が、何かの拍子にその淵へ転がされてしまう危うさを、布美枝は自らに潜めていることを知らない。
知らなかったこととはいえ、思慕を寄せてくる男に対して無防備を晒す、
危なっかしい布美枝の行動には小さく苛立ってもいた。こいつは男というものを、解ってなさすぎる。
「他所の男のネクタイなんぞ結んどるんじゃない」
優しく言うつもりが、ややきつくなってしまったかも知れない。
申し訳なさそうに、うっすら涙目になっている布美枝に見上げられると、少しだけ胸が痛む。
と同時に、そこはかとない独占欲にも灯がともる。
こうなったら転がり落ちるだけだった。ただただ、布美枝を貪る獣の淵…。
「おと…っ」
乱暴に唇を奪っても、驚きこそすれ、やがて自然と交わりを許してくれる。
しん、とした部屋に互いの息切れの音が響く。息継ぎの僅かな間も惜しむほどに、深い接吻だった。
「…ちゃ…ん?」
しっとりした後ろ髪を持ち上げ、広がった首筋に口づけていると、耳元で布美枝が囁く。
「お仕事…」
「もう今日は無理だ」
「…なら…二階…に」
半分蕩けた身体を捩りながら、理性の端の端で布美枝が呟く。
「駄目だ。お前は藍子がおったらこっちに集中せんからな」
「集中って…ゃ…っん」
寝間着を肌蹴させ、柔らかな乳房に辿りついて吸い付く。
背を支える茂の右手を、手助けるように茂の首に巻きついていた布美枝の両腕が、微かに力を失った。
布美枝の乳首が簡単に尖るのは、寒さの所為ではないはずだった。
丁寧に舌で舐めまわし、ときおり軽く歯噛んでみると、ぴくりと反応する。
乱れた寝間着は、実のところ真っ裸よりそそるな、などと茂は頭の隅の方で考えていた。
353布美枝〜茂の場合〜7:2011/02/12(土) 04:56:57 ID:YTYWIm4k
「し…げ、さん?」
「む?」
乳房にかぶりついたまま、目だけで布美枝を仰いだ。
「あの…ね?」
一番柔らかい部分へぎゅっと口づけの痕を残して、乳房へ別れを惜しみつつ、
顔を上げると、また布美枝の頬から耳へ唇を移動させた。
耳元で「なんだ」と囁きながら、舌を這わせて耳をねっとりと覆った。
肩をすくめながら、小さく喘ぐ声に気をよくして、しばらく耳元を舐っていた。
「怒っとるの?」
少し緩んだ口元に、悪戯っぽい布美枝の眼がこちらを見つめていた。
「貴方が勤め人だったら、毎日ネクタイ結んであげとったかな?
 他所の男の人の、奥さんみたいなことして…ちょっこし、ヤキモチ妬いてくれた?」
常にぼんやりしているくせに、時折妙に鋭く心理を言い当ててくることがあるので、油断がならない。
まさに図に星というところを指摘され、茂は言い返す言葉を失っていた。
ふふ、と軽く微笑うと、布美枝は茂の頬に両手を置き、ちゅ、と軽く唇を触れた。
そのまま手を首から肩へ移動させ、茂の上半身の寝間着を肌蹴させ、露わになった堅い胸元をさすった。
茂の懐に今一歩入り込み、先ほどまで茂がしていたように、今度は布美枝が耳元に唇を寄せた。
かぷり、と耳たぶを甘噛み、吸い付く。首筋へ舌を這わせ、頬にも何度か口づけた。
「しげ、さん…」
甘い吐息とともに耳に直接吹き込まれる妖しげな呼びかけ。茂は目を閉じて布美枝を抱きしめた。
「きゃ」
途端にバランスを崩し、茂の方向へふたりは倒れこんだ。

何かそういうきっかけになるような釦でもあるのか知らん…と布美枝を仰ぎながら考えた。
(今日は釦を押してしまったかな…)
いつもは茂の為すがままに、その身を預けて快悦に昇っていく布美枝だが、
時々こうして主導権でも執ったかのように、あれこれと前戯を施してきたりすることがある。
そのほとんどが、虫でも這うようなこそばゆい愛撫だったが、それでも茂は身を任せた。
決して得意ではないことに、それでも懸命な布美枝は、極上にいじらしい。
茂の広い胸の上で、小鳥が餌を啄ばむように、小さな唇があちこちに落とされた。
首筋に戻ってきた舌が、また耳元を舐る。くっくっ、と茂が笑うと、布美枝もふふ、と笑った。
背中に回してあった右手で、布美枝の唇に触れ、口づけを誘う。
ゆっくりと降りてくる柔らかな感触と、隙間から入り込んでくる温い舌触りに、しばし酔っていた。
と、しばらくして、やおら布美枝の右手が内股あたりを弄り始めた。
おや、と思って目を開けると、布美枝は少し躊躇した表情で今一度口づけ、すっと茂の視界から消えた。
354布美枝〜茂の場合〜8:2011/02/12(土) 04:57:34 ID:YTYWIm4k
「…っ…」
次の瞬間、下着の上から、やや傾き、角度をつけ始めた下半身を唇の先で突かれた。
思わずびくっと反応して、腰が引けた。
指と舌で先端をくすぐられるように弄られ、じわりと先走るものの気配を感じる。
ゆっくりと、剥かれるようにして下着を取られ、窮屈に押し込まれていた先矛が、ひんやりと空気を纏った。
頼りない指がそれを包み、上下に緩く扱かれる。舌が先端をちらちらと舐めた。
「ん…」
くすぐったさに、身を捩ったところで声が洩れた。
一層の角度をつけ、膨れ上がってくる肉棒に、今度は上下に舌が這う。睾丸も舐られた。
まるで犯されているような錯覚に囚われ、茂は羞恥に襲われる。と同時に、もっと、と心中で乞うてもいた。
布美枝は最大になった茂のそれを、無理矢理口に収め、何度か上下させ始める。
茂を包み込む布美枝の口内は、じんわりと温かい。
眉をひそめて懸命に夫を愛する妻の表情に、ぎゅっと胸が締め付けられた。
このまま吐き出してしまいたい欲求と、もうひとつの場所を味わいたい欲求が、しばし茂を苛んで…。

布美枝の後頭部に右手を置き、ぽんぽんと合図する。
「も…えぇ…」
かなり限度まできていたのだな、と自分でも驚いたほど、か細い声だった。
はあ、はあ、と息を切らせた布美枝が、手の甲で口を拭った。その姿がどうにもまた淫らに見える。
体勢を起こし、布美枝を抱きしめた。何度か労いの口づけをしながら、右手で繁みを探る。
「ぁ…」
とろとろと蕩けだした淫液で、掌が簡単に濡れそぼった。
下着を剥ぎ取り、自らの屹立の上に腰を下ろさせる。
「あ…は…」
吸い込まれるようにいとも簡単に、布美枝の中へ収まる。ふうっと茂は深い安堵のため息を吐いた。
「こっちもええが…」
と、布美枝の唇を、ちょんと指で突っつき、
「こっちも、ええ、…な」ずい、と腰を突き上げた。
「やっ…あ!」
仰け反った布美枝の背を支え、突き出された乳房に喰らいついた。
「あんっ…」
茂の髪を無意識に掻きまわす指先、ぎゅうと縋りついてくる細腕。
熱い内側は、口内とは全く違って、襞が絡み付いて締め上げてくる。
溢れ出す互いの愛液にまみれ、ぐちゃぐちゃと卑猥な音がした。
「あっ、あ、ああ、し…げ…ぇさ…!」
その合間に耳元で聴こえる布美枝の喘ぎが、一段と茂の衝動を駆り立てる。
豊川のような、ただ見つめるだけの愛もあっていいだろう。
が、自分にはそんな愛し方は出来ないと、茂は思った。
心も、身体も、布美枝の全てを独占し、時には掻き乱してみたくもなり、時には優しく触れたくもある。
(要するに我侭なんだ…)
ただひたすら我侭にしか、この女を愛することは出来ないのだと思った。
白い欲を内に吐き出す瞬間に、茂はひときわ強く布美枝を抱きしめた。
言葉では伝えられない不器用さを、その右手に全て込めて。
355布美枝〜茂の場合〜9:2011/02/12(土) 05:04:08 ID:YTYWIm4k
- ‐ ‐

―――――翌日。

「はいっ、おとうちゃん、そのまま」
「あ?」
不浄の用から戻った茂を、にこにこと出迎えた布美枝の手には、くたびれたネクタイが握られていた。
「練習、させてくれるんですよね」
「ああ?今から?雄玄社の原稿、早やことせんといけんのだが」
とたんに、口を尖らせて睨みつけられる。やれやれと頭を掻いて、応じてやった。
ひょい、と首にタイをかけて、「じゃあいきますよ」と鼻息が荒い。
こういうところもまた、愛嬌というやつなのだろうか、と茂は少しにやけた。

しばらく布美枝はああでもない、こうでもないと、タイを捩り、結んでは解きを繰り返していたが、
「ここからどげでしたっけ」
と、茂を見上げた。
「…俺は知らんぞ」
「えっ?!」
「戦争行く前はネクタイなんぞ結んだことなかったしな。腕がなくなってからは、
 イトツか兄貴に結んでもらっとったから、結び方は知らん」
「ええーーっ!!」
布美枝の絶叫に、傍らの藍子は思わず耳を塞いだ。茂も顔をしかめる。
「だって、昨日、練習は俺でやれって…」
「練習台になってやるとは言ったが、結び方を教えてやるとは言っとらん」
「…」
「適当でええが」
がっくりと肩を落として呆然とする布美枝と、口を尖らせる茂を、藍子は交互に見上げて首を捻る。
「これじゃあ練習にならんーーーっ!」
脱力して座り込む布美枝の頭を、子どもをあやすように藍子が撫でる。
茂は呵々と笑って、首にかかっていたタイをひょいと解き、くるくると布美枝の首に巻きつけてやった。


おわり
356名無しさん@ピンキー:2011/02/12(土) 11:01:17 ID:yGUSXfna
>>347
GJです!
豊川さん、ふみちゃんへの思いをゲゲに告っちゃったんですねw

しかし、台詞の方言使いが上手ですね〜!
357名無しさん@ピンキー:2011/02/12(土) 22:21:08 ID:40G42smR
>>347
GJ!
さすが豊川さんは爽やかだなー
しげさんのふみちゃん考察がだんだんヤラしくなってくのが素晴らしい!
あと藍子がすごいかわいいw
358名無しさん@ピンキー:2011/02/13(日) 23:54:14 ID:ELecRs4K
GJ!
エロもさることながら、最後の親子三人のやりとりが目に浮かぶようです
359名無しさん@ピンキー:2011/02/14(月) 20:11:03 ID:/tmSq0A1
ゲゲふみは貴重なチョコを二人で口を介して分け合っているに違いない
360名無しさん@ピンキー:2011/02/14(月) 22:55:04 ID:Aiv12zfX
>>359
「あら、チョコレートなんて食べて。そげなものどこにあったんですか?」
「そのへんを歩いとる米兵にもらった」
「終戦直後じゃあるまいし、何言っとるの。また黙って買ってきたんでしょう」
「美味いぞ、食うか」
「贅沢は敵です」
「戦時中じゃあるまいし」
「いいえ、欲しがりません、勝つまでは」

―――ちゅ、…もご。

「……あま…」
「はい、あんたの負け」

新婚時代の2月14日である。
361名無しさん@ピンキー:2011/02/15(火) 00:37:01 ID:2/26vvjm
>>360
美味いっ!いや、上手いw
362名無しさん@ピンキー:2011/02/15(火) 15:51:15 ID:1rzZpisZ
>>360
このシチュほど、映像付きで観たいものはない…!!
イイよー。甘いよー。ゲゲふみ欠乏症だよー。(´;ω;`)
363名無しさん@ピンキー:2011/02/16(水) 22:10:57 ID:bOGR6mbD
>>360
359だけど、ネタを拾ってくれてだんだん!
二人のやりとりがすごく二人らしくて自分の妄想以上でした
364名無しさん@ピンキー:2011/02/18(金) 00:20:58 ID:NecwNlfa
「あら、チョコレートなんて食べて。わざわざ買ってきたんですか?」
「戸棚に入っとったぞ」
「あ、それ!藍子と喜子のおやつですよ!」
「…」
「あーあー、もう半分以上無くなっとる。おとうちゃん、ふたりに怒られますよ」

―――ちゅ、…もご。

「……あま…」
「ほい、お前も共犯」

熟年時代の2月14日である。

あー、なんか最近こんなことしか思いつかん!
365名無しさん@ピンキー:2011/02/18(金) 23:30:28 ID:xu7HxJ8V
>>364
何故だろう…藍子様に見られている気がしてならない…ww
共犯ってのがヤらしくて良い響きですな…
366名無しさん@ピンキー:2011/02/19(土) 23:33:13.02 ID:FF3Lndr5
>>364
半分以上食ってるあたりさすがだおとうちゃんw
367名無しさん@ピンキー:2011/02/20(日) 19:42:47.09 ID:laqNGw99
何度見ても紅白の名場面集の萌え度の高さは異常
サイクリングやらアシスタントやらヤッターダンスやらもうゲゲふみネ申すぎる
368名無しさん@ピンキー:2011/02/21(月) 08:17:37.47 ID:eEJM5u2d
>>367
あれは萌えましたなー。
その後の「ありがとう」の飯田親子ショットまでの流れも神。
ミヤコさんとフミちゃんが綺麗すぎて…。
この二人を嫁に持つ源兵衛とゲゲ、マジ勝ち組。
369名無しさん@ピンキー:2011/02/22(火) 00:50:45.00 ID:bd7Rc1wD
>>362さんの言う通り、映像付きで見てみたい妄想は自分も色々ある。
がっつりエロは無理にしても、これくらいはやって欲しかったという妄想を垂れ流し。
370プレゼント:2011/02/22(火) 00:52:25.30 ID:bd7Rc1wD
「ご苦労さん、おかあちゃん」
「…だんだん…おとうちゃん」
互いに見つめあって、照れくささに思わずぶっと噴出す。
緩んでくる頬を無理矢理引き締めながら、茂は布美枝の腕の中の我が子を覗き込んだ。
「抱きますか?」
「おう」
布美枝はゆっくりと、茂の右腕に赤ん坊を委ねた。
小さな小さな身体が、小さく小さく仰け反って、声とは程遠い小さな小さな呻きが洩れた。
「…うわ、軽っ」
「そげですか?」
「あんたが随分よたよたと歩いとったけん、どんだけ重いんだと思っとったが…」
「もぅっ!貴方も一回妊婦をやってみたらええんですよ!」
「それは無理だな」
にやりと笑う茂に、膨れ顔をした布美枝もすぐに笑顔に変わった。

「お前のせいでホットケーキを食い損ねた」
赤ん坊の鼻先に、自分の鼻の頭をくっつけて、茂は恨めしそうに呟く。
「ゃあ」と猫のように呻いて、赤ん坊は鼻に皺を寄せてむずかった。
「…名前、貴方が決めてください」
「ん、分かった」
腕の中の娘を見つめながら、茂は強く頷いた。布美枝は溢れてくる幸福感に身体が癒されていくのを感じた。
「いつ退院できるんだ」
「調子が良ければ、4、5日で」
「そげか。ならそれまでに考えとく」
「お願いします」
「おかあちゃんに任せといたら、犬みたいな名前をつけられてしまうけん、な?」
ふあふあと欠伸をする娘に向かって、茂は笑いながら話しかけた。
「もぅっ!」
布美枝の反応を面白がって笑う茂に、しかし今日は何でも許せてしまうような気がした。

やがて布美枝の腕にそっと赤ん坊を戻すと、茂は「そろそろ帰る」と告げた。
「何か要るものがあったら」
「姉に頼んでありますけん。大丈夫です」
「そげか。じゃあ…」
言ってから、少し間を置いて、ごほんとひとつ咳払い。
そしてきょろきょろと部屋を見回してから、茂はそっと布美枝に顔を近寄せた。
「あ…」
触れた唇から、じんわりと温もりが伝わる。労いと、感謝が交じり合う口づけ。
長く、永く、優しく、深く。
何度も。

「…ふ、ふ、ふ…ぁぁぁぁ…」
ふと、布美枝の腕の中の小さな生命が、精一杯の主張を始めた。
「…怒られた」
本気で拗ねた表情をした茂に、布美枝は可笑しくなって笑った。

クリスマスイブのこの日、茂と布美枝の元には小さなサンタクロースが訪れた。
これから毎日、ふたりにプレゼントをくれる。
ひとまず今日は、家族という贈り物。
そして日々に、幸せという贈り物。


おわり
371名無しさん@ピンキー:2011/02/22(火) 16:58:16.34 ID:YvMErM3D
藍子かわいいよ藍子(*´Д`)=3
素晴らしいプレゼントをだんだん!
372名無しさん@ピンキー:2011/02/23(水) 17:15:51.81 ID:ejqF03Ch
>>370
いちゃいちゃしやがって夫婦可愛すぎる!
食い損ねた〜とか犬みたいな名前〜の台詞にドラマに対する愛を感じる
373ひなまつり1:2011/02/24(木) 15:30:19 ID:ExAVN8zG
 河原の桃の花のつぼみもふくらんできたある春の日、フミエは小学校から
帰ってきた藍子と、ひな人形を飾りつけていた。
 居間にしつらえた段の上に、お内裏様とおひな様ふたりだけのひな飾り。
紅い毛氈を敷いた下の段には、桜と橘やひし餅、白酒、ひなあられなどが並んだ。
「また、その紙のおひな様も飾るの?」
藍子の初節句の時に茂が描いてくれた紙の七段かざりを、フミエが注意ぶかく
広げると、藍子がちょっと不服そうな顔をして聞いた。
「もう色も褪せてるし・・・。折り紙もいたんでるよ。これはもうやめたら?」
「だって、藍子の初めてのおひな様なんだよ。お父ちゃんが描いてくれたんだし。」
「藍子のはこれで、あのお内裏様とおひな様はよっちゃんのなの?」
「え・・・。別にそげなことは決まっとらんよ。」
「だって、よっちゃんが生まれた年のひなまつりにあのお人形買ったんじゃん。
 私、小さかったけど覚えてるよ。いずみちゃんと車で買いに行ったもん。」
「・・・あの頃になって、ようやくおひな様買う余裕ができたから買ったんだよ。」
「おひな様買うお金って、安来のお祖父ちゃんがくれたんでしょ。女の子が生まれると、
 お母さんの実家でくれたお祝いでおひな様買うんだって聞いたよ。私にもらった 
 お祝いはどうしたの?」
小学校二年生になった藍子は、ずいぶんと賢くなって、時々大人をたじたじとさせる
ようなことを言うようになった。
「ごめんね・・・。藍子にもらったお祝いは、お父ちゃんとお母ちゃんが、ちょっこし
 借りてしまったんだわ。」
「えーっ?ひどい・・・。それで藍子のは紙のお人形なんだ・・・。そんなボロいの、いやだよ!」
藍子が紙の七段飾りをバサッと押しやったとたん、折り紙で出来たお内裏様の身体が
ビリッと破れてとれた。フミエはそれをてのひらに載せて、悲しそうな顔でみつめた。
「ご、ごめんなさい・・・。」
「ええよ・・・。後で直すけんね。」
藍子はバツが悪そうな顔で「遊んでくる。」と出て行ってしまった。 
374ひなまつり2:2011/02/24(木) 15:31:30 ID:ExAVN8zG
 夜。フミエは茂の仕事場に顔を出した。
「お父ちゃん・・・ちょっこしええですか?」
「・・・なんだ?」
「もうじきひなまつりですし、藍子に借りたものを返してやりたいと思って。」
「藍子に借りた・・・なんのことだ?」
「藍子の初節句のお祝い金、生活費にしてしもうたでしょ。それで、おひな様買って
 やれんだったけん。」
「ひな人形なら、喜子の初節句の時のがあるんじゃないのか?」
「私たちの頃は、きょうだいも多いし、みんなでひとつでしたけど、考えてみたら
 藍子は長女なのに買ってやれんだったのは、かわいそうかなと思って。」
「まあ、あいつにはいろいろ借りがあるけんな・・・。金は、足りるのか?」
「そげに高いものでなければ、なんとか・・・。」
「お母ちゃんが大丈夫と言うなら、買ったらええ。」
「・・・だんだん。」

 その日は忙しくて、フミエは折り紙のお内裏様を折り直すことができなかった。
夜、布団の中で目をつむると、今日の藍子の悲しそうな顔が浮かんだ。
(あげなわがまま言う子じゃないのに・・・。おひな様って女の子にとっては特別なのかな。
 それに、きょうだいで差があると気になるんだろうなあ。・・・私は姉ちゃんたちと
 十も八つも離れとったし、昔は男の子と女の子で扱いが違うのはあたりまえだった
 けん、気にならんだったけど・・・。)
フミエは、故郷の安来の家で、七段飾りを飾りつけ、姉たちと晴れ着を着せてもらって
母や祖母の心づくしのごちそうを食べて祝ったひなまつりを、懐かしく思い出した。
(私にとって、あの紙のひな飾りはすごく大事なものだけど、藍子にあれで満足せえと
 言うのは、かわいそうかもしれんね・・・。)
フミエの脳裏に、八年前の藍子の初節句の、ほろ苦くも甘い思い出がよみがえった。   

 あの頃、戌井の北西出版の出す貸本マンガの短編集に、茂はつぎつぎとマンガを
描いていたが、さっぱり人気は出ず、立ち上げたばかりの出版社は、早くも危機に
立たされていた。そんな現状では原稿料の値上げも言い出せず、もらった原稿料は
家の月賦の支払いに右から左へと消えた。
「お父ちゃん。ちょっこし・・・藍子に借りましょうか。」
薄氷をふむような毎日の暮らし、藍子のミルク代もないのではひな人形どころではない。
フミエはとうとう、安来の実家から贈られた、藍子の初節句の祝い金を差し出した。
「しかたないな・・・。」
茂は了承したものの、つらそうに背を向けて仕事部屋に入ってしまった。
 夜遅くまで仕事を続けていた茂が茶の間のフスマを開けると、フミエがちゃぶ台に
つっぷして眠っていた。その手元には、作りかけの折り紙でできたひな人形があった。
375ひなまつり3:2011/02/24(木) 15:32:18 ID:ExAVN8zG
 次の日。せめて何かひな祭りらしいものをとひなあられを買って、フミエが買い物から
帰ってくると、茂が藍子を抱いて、わざわざ玄関まで出迎えた。
「早こと上がれ。ひな祭りの用意が出来とるぞ。」
「うわあ・・・。」
茂がもったいをつけてフスマを開けると、そこに貼ってあったのは、大きな紙に描いた
七段飾りのおひな様。お内裏様とおひな様は、フミエが折った折り紙を利用してあった。
「初節句だけん、デラックスに祝うぞ。・・・何から食うかな。」
「じゃあまず、お白酒いただきましょうか。」
白酒を飲んで酔っぱらったつもり、ひし餅を盗み食いしてのどにつっかえたつもり・・・。 
商売道具の紙と絵の具に、茂の腕・・・お金は一銭もかかっていないけれど、殺風景な部屋が
ぱっと華やぎ、何よりも、茂の思いやりがうれしかった。
 いい年をしたふたりが、ひなまつりごっこをして笑った。笑いながらも、フミエは
藍子の初節句のお祝いが生活費に消えてしまったさびしさを、そっと心にしまった。   

 その夜。二階の寝室に布団を敷いて、寝巻き姿になったフミエは、ベビーベッドに
眠る藍子の枕元に置いた、安来の母からの手紙を手にとった。
『・・・藍子の初節句ももうすぐですね。よくミルクを飲み、よく寝て元気に育っている
 ようで安心しています。本来なら私たちが用意すべきなのでしょうが、遠方ゆえ
 これでひな人形をあつらえて下さい・・・。』
藍子の誕生を喜び、初節句の祝いを贈ってくれた両親・・・。その、心のこもったお金を
暮らしのために使わざるを得ない現実に、フミエは打ちひしがれた。
「お父さん、お母さん、ごめんなさい・・・。」
古びた木の箱の上には、いつもフミエを見守ってくれている祖母の登志の遺影があった。
「おばば・・・私たち、これからどげなるの?」
さびしくて、心細くて、茂の前では絶対に見せないようにしてきた涙が、一人になった
とたん、こらえきれずにあふれ出し、フミエは声を押し殺して泣いた。
376ひなまつり4:2011/02/24(木) 15:33:11 ID:ExAVN8zG
「泣いたらええよ・・・。親として、こげな情けない事もないけんな。」
いつの間にか二階に上がってきていた茂に突然声をかけられ、フミエはハッとして
背を向けた。あわててたもとでふいても、せきをきったように涙がとまらない。
茂がその肩を抱きしめる。腕の中で震えている妻の、細い身体がいじらしくて、なんと
言葉をかけていいかわからず、ただ黙って抱いていてやるしかなかった。
「・・・すみ・・・ヒック・・・ませ・・・泣いた・・・ヒック・・・りして・・・。」
 茂の胸は温かく、抱かれているとさびしさも溶けていくようだった。
しゃくりあげがおさまったフミエの唇に口づけると、塩からい涙の味がした。
泣いた後の弛緩した身体と心に、やさしい抱擁と口づけが、温かく沁み込んでくる。
・・・繰り返される口づけは、いつしか深く、激しく、いつもの愛の行為につながって
いくものに変わっていった。茂の唇が耳や首すじにうつろい、浴衣の脇やすそに
入り込んだ手がフミエの肌に熱を与えていく。
「・・・ま、待って・・・。」
「泣きたかったら泣く、したかったらする、と言うのが天然しぜんの生き方だ。」
「こげな・・・時に・・・?」
「つらい時こそ、楽しいことをせねばいけんのだ!」
またヘンな理屈・・・と思いながらも、フミエの身体はまるで熟れた果物のように、
皮いちまい下は形をうしなって甘くとろけていきそうだった。自分の内側からの声に、
フミエは素直に茂の言う「天然しぜんの生き方」とやらに身をまかせていった。
 しどけなくゆるんだ浴衣をまとっただけのフミエをいとも簡単に素裸にして、
茂が抱き倒す。いとしい重みを受けとめながらも、やわらかい素肌に茂が着たままの
セーターがひどくチクチクした。 
377ひなまつり5:2011/02/24(木) 15:34:06 ID:ExAVN8zG
「チクチクするけん・・・脱いで・・・。」
「お、すまんだったな・・・。」
茂がセーターを脱ぐと、フミエが手を伸ばしていとおしそうにシャツのボタンをはずした。
温かくさらりとした素肌が重なり、茂がやさしく押し入ってくる。息がつまりそうな
はげしい幸福感におそわれ、フミエは小さくうめいた。
 熱く押しつつんでくる柔肉をしばし味わってから、茂は腰ごと捻じ込むように
突き入れたり、大きくまわしてから突き上げたり、激しい攻勢をかけ始めた。
「あ・・・やっ・・・んんっ・・・ぁ・・・あっ・・・あぁっ・・・。」
突きまわされて次第にずり上がり、フミエが思わず頭上に伸ばした手が、鏡台がわりの
木箱にぶつかって、茂が責めるたび、隣りのたんすのカンがその振動でカチャ、カチャと
音を立てる。
「――ゴッ!」
振動が伝わったのか、木箱の上の姫鏡台に置いたハンドクリームのびんが落ちてきて、
茂の頭を直撃した。
「いっ・・・てーーー!」
「プッ・・・クククッ・・・。」
フミエはつい笑ってしまった。茂の災難を、それもこんな時に笑うのはどうかと思ったけれど、
おかしくてがまんできなかった。
「なんだ、人が痛い思いをしとるのに。」
「すみません・・・。でも、おかしくて・・・。」
「お前はいっつも、最初は気がのらんようなことを言っといて、いざ始めると夢中になって
 大暴れするんだけんな。」
茂はちょっと怒って見せたが、やがてやさしく微笑んだ。
「やっと笑ったな。・・・どげな時でも、笑えれば大丈夫だ。」
それから、フミエの腰を抱くと、つながったままぐっと引き寄せて後ろにさがった。
「あっ・・・あぁ・・・んっ・・・。」
その動きにフミエは激しく感じてしまい、大きくあえいだ。
「よし、これでええ。これ以上被弾してはかなわんけんな。」
充分な空間を確保して、茂がまた律動を再開した。こんなこともなんだかおかしくて、
フミエはたかまる快感にあえぎながらも微笑んで茂を抱きしめた。
(私は、こげなしげぇさんがすき・・・大すき・・・。)
 悲しみは、二人で分け合えば半分になると言う・・・。初めての子に、ひな人形も買って
やれない悲しさを忘れたわけではないけれど、それもまたフミエの心を彩る陰翳となり、
茂との愛がより深まさるのをフミエは身体じゅうで感じていた。
378ひなまつり6:2011/02/24(木) 15:35:03 ID:ExAVN8zG
 小学生になった藍子が、そんな悲しくも幸せなフミエの思い出のある紙のひな人形を
破ってしまった次の日。
 フミエは日本橋のデパートに車ででかけた。帰ってくると、藍子が
バタバタと出迎えた。居間にひっぱって行かれると、あの紙の七段飾りが壁に
かけてある。破れたお内裏様も、新しい折り紙で直してあった。
「これ、藍子が折ったの?・・・ようできとるね。」」
「学校の図書館で、折り紙の本借りて折ったの。お母ちゃん、このおひな様には
 いい思い出があるんでしょ?・・・ボロいなんて言って、ごめんなさい。」
「いい思い出・・・かな?今になって思えば、ね。お父ちゃんの心がこもっとるけんね、
 このおひな様には。」
フミエは、藍子がこのおひな様の大切さをわかってくれたことが嬉しかった。
「・・・このおひな様は、お母ちゃんがもらってもええ?藍子には、ええのを買って
 来たけんね。」
 フミエは車から、今日の買い物らしい大きな箱を運んで来た。ひもを解き、
バラの模様の包装紙をはがすと、立派な木の箱が出てきた。
「これ・・・もしかしておひな様?」
「そうだよ。藍子には長いこと借りとったけど、やっと返せるね。」
木の箱を開けると、紅い毛氈を張った段になった台と、ていねいに紙に包まれた
たくさんのひな人形やひな道具が入っていた。どれも手のひらに乗るほど小さいけれど、
木目込みの人形の顔や衣裳も、道具の蒔絵も良い細工で、品がよかった。
「うわあ・・・かわいいね。」
「普通のおひな様だと、うちにはもうひと組あるし、これならもうひとつあっても
 場所とらんけん、ちょうどええと思って。」
フミエと藍子は、小さな小さな楽器や冠や道具などをいためないように、細心の注意を
払いながら飾りつけていった。     
379ひなまつり7:2011/02/24(木) 15:35:56 ID:ExAVN8zG
「うわーーー!これ、どうしたの?」
祖父母の部屋でおやつを食べていた喜子が、歓声をあげて走りこんできた。
「ちょっとよっちゃん、気をつけてよ!」
藍子が、喜子の勢いから守るように両手を広げて人形たちをかばった。
「これは、お姉ちゃんのなんだからね。」
「えー?よっちゃんもこれがいいー。」
「よっちゃんのはもうあるでしょ。」
「あれはお姉ちゃんのじゃん!」
姉妹の間の空気が険悪になってきた。フミエがあわてて仲裁に入る。
「・・・先にお嫁にいく方が、好きな方を持っていくことにしたらどげかね?」
「ええーー?!」
藍子と喜子が顔を見合わせた。
「私の方が年上だから、先にお嫁にいくにきまってるよ!」
「そんなのわかんないじゃん!」
フミエの一時のがれの提案は、姉妹の言い争いに油をそそいだだけだった。
「なんの騒ぎだ?やかましい・・・。」
茂がのっそりと現れた。
「どっちが先にお嫁にいくかでもめとるんですよ。先にいく方が好きなおひな様を
 持って行けるけん。」
「なんだとー!そげに早く嫁に行かれたらお父ちゃんさびしくっていけんぞ。
 ・・・お母ちゃん、ひな飾りは四月まで飾っとけよ、ええか。」
ハサミを取りに来ただけの茂は、妻と娘たちとひな飾りの、女の園といった風景に
なんとなく面映さを感じるようで、そそくさと仕事部屋に帰っていった。
「おひな様を四月まで飾っておくと、なんかいいことあるの?」
藍子がけげんそうな顔でたずねた。
「お節句が過ぎてもおひな様を飾っとくと、お嫁に行くのが遅くなるって言うんだよ。」
「ええー?そしたら、売れ残りになっちゃうじゃん。」
「・・・売れ残りもわるくないよ。お母ちゃんは、行き遅れとったけん、お父ちゃんと
 出会えたんだけんね。」
藍子が「また出た。」と言いたげな顔でにやにやした。
「あ〜あ、お母ちゃんがまぁたのろけちょー。」
「まぁたのろけちょー。」
藍子が、大好きないずみおばちゃんの真似をすると、意味がわからないながらも、
喜子も真似をした。
「もぉーっ!あんたたち、親をからかって!」
フミエは笑って、ふたりを抱き寄せた。仲の良い母娘を、人形たちがやさしい顔で
見守っていた。
380名無しさん@ピンキー:2011/02/24(木) 23:24:40 ID:sykgrNA7
>>373
GJ!やはりエアひな祭りの日には一発あったのか。
ゲゲの意味不明な理屈にワロタ。それにのせられる布美ちゃん…w
「まぁたのろけちょー」久しぶりだな。ほんとにニヤけさせられるよ、この二人。
381名無しさん@ピンキー:2011/02/25(金) 22:09:35 ID:12TXZzag
>>373
GJ!
しげさんのなんか妙に納得してしまう屁理屈が好きだw
藍子はいい子だなー…いずみの真似でからかう姉妹可愛いな!
382名無しさん@ピンキー:2011/02/26(土) 23:14:37.56 ID:uO6l0ETm
>>373
GJ!
383名無しさん@ピンキー:2011/02/27(日) 02:53:52.61 ID:N+T03VRe
ここで一時期話題になった、布美ちゃんの「アジアンタムブルー」今日スカパーでやってたらしいが
「遺恨あり」も同じく、ダブルで見逃した…orz
ゲゲのエロは色々見たことあるんだが、布美ちゃんのエロは意外とないので前者は特にショック。
384名無しさん@ピンキー:2011/02/27(日) 12:25:35.21 ID:LcKUQUiH
>>383
今月4回ほど放送ありました
書き込んでおけばよかったですね…
来月も放送するかと思ったんですが、
チェスト!だけしか放送しないようですね…
385名無しさん@ピンキー:2011/02/27(日) 12:31:13.98 ID:c6Uo7aOH
>>383
際どいシーンなら人間の証明とかでも出てくるよ
DVDでしか見れないと思うけど
386名無しさん@ピンキー:2011/02/27(日) 21:24:25.40 ID:ONBShXhY
今までタイミングが合わなくて昨日やっと録画できたからじっくりと妄想しながら見るぜ…>アジアン
387名無しさん@ピンキー:2011/03/01(火) 01:16:02.42 ID:3WUnH10N
そういえば3月はおとうちゃんの誕生日が…!誕生日ネタクルー?!
388名無しさん@ピンキー:2011/03/01(火) 22:06:25.76 ID:ax26W4JU
一週間後ですなぁ
自分おとうちゃんと同じ誕生日なんだが、今年はその意味を存分に噛み締めながら祝うよ
ふみちゃんが祝ってくれるんだよねハァハァ
389名無しさん@ピンキー:2011/03/01(火) 22:45:39.77 ID:hurSHlFK
>>386
別スレであの背中は別の人だと言われてたが、そんなの信じたくない
390名無しさん@ピンキー:2011/03/02(水) 23:18:38.34 ID:nC6okpoc
昨日おかあちゃんの中の人のドラマで自ら手錠をかけて繋がれててなんかグッときた
ゲゲふみに置き換えるなら資料の手錠をうっかりとかだろうか…
391名無しさん@ピンキー:2011/03/03(木) 23:59:45.28 ID:/H+wWrDm
エア雛祭りの夫婦のかわいらしさは異常
392名無しさん@ピンキー:2011/03/04(金) 15:46:02.78 ID:FjwLdI6R
エビスビールのCM、一瞬あのふたりかと思ってしまった。
男優さんの方は、似てるって言われてる人だけど。
HP見たら、繊細な手つきで料理する男性と、日曜大工の得意な男前な女性の
新しいカップル(新しくもないな〜w)というコンセプトらしく、本当は
あのふたりでやりたかったんだろうな〜と憶測。(アサヒにとられちゃった?)
JAのCM(ドラマ撮影中ver)なんか、もろにフミちゃんだもんね。
393名無しさん@ピンキー:2011/03/04(金) 19:04:20.98 ID:dq/KP2LA
>>391
おとうちゃんが白酒で酔っ払うところが自分の萌えポイントだw

>>392
ク○アアサヒは以前布美ちゃんがやってたもんね(まあトータスメインだったが)
続投してもらってツーショットが見たかった。
394名無しさん@ピンキー:2011/03/05(土) 20:11:54.91 ID:miyzLERr
>>392
エビスのCM見たよー
書き込みを意識して見たせいか余計ふたりに見えたw

なんかもう日が経つにつれてどんどんゲゲふみが恋しくてヤバい
395名無しさん@ピンキー:2011/03/06(日) 22:44:21.00 ID:WqCCIE3+
公式の写真集のタイトルバックの並んでるゲゲふみ見てると
腰に手を廻しやすそうとかでこちゅーしやすそうとかそんな事ばかり考えてしまう
あと昭和47年版村井家の可愛さが脅威
396名無しさん@ピンキー:2011/03/07(月) 22:53:27.19 ID:Tz7449Jt
>>395
公式のタイトルバックってどんなだったっけ?二人でベンチ座ってるやつ?
公式閉じられてから、布美ちゃんひとりの写真だけになったみたいだが、
どうせなら、そのベンチのやつに設定してほしかった。
397395:2011/03/07(月) 23:45:55.91 ID:BuSPYYb6
>>396
公式の写真集のページのタイトルバック追加撮影の「時間が経っても布美枝の乗る自転車は茂がプレゼントしたものでした」みたいなステキ台詞つきで
自転車を持ってるふみちゃんの横に立ってるしげさんの写真の事のつもりだったんだ
398名無しさん@ピンキー:2011/03/08(火) 18:18:35.95 ID:YWvjWGcU
>>397
ああ〜あれか。確かに二人の身長差がエエ感じのヤツだな。んだんだ。
総集編のDVDの特典としてついてくるだろうか、その写真?総集編買う人、是非教えてほしい。

今日はリアルおとうちゃん誕生日ですな!おめでたい!!
そんでもって>>388もオメ!
399名無しさん@ピンキー:2011/03/08(火) 20:04:31.63 ID:F0Gyzff4
リアルおとうちゃんおめでとう!
このくらいの時期っていったん暖かくなった気温がまた寒くなりがちだから
ゲゲふみはいちゃいちゃして暖めあえばいいと思います

>>398 388だけど、だんだん!
400名無しさん@ピンキー:2011/03/09(水) 21:57:03.60 ID:BPrBsjGY
このスレ大好きだ
ゲゲゲという作品に対する愛情と敬意が、作品から溢れているから

あのテイストを崩さずにいつも妄想を具現化してくれる職人さん達に感謝!
401名無しさん@ピンキー:2011/03/10(木) 21:24:33.71 ID:U4rfYpes
朴念仁のおとうちゃんはホワイトデーにお返しとかするんだろうか…
402名無しさん@ピンキー:2011/03/11(金) 00:30:58.21 ID:wmARuu/h
>>401
そりゃあやっぱりホワイトデーだけに、白い液状のミルクチョコレートをだな…
403名無しさん@ピンキー:2011/03/12(土) 00:19:22.13 ID:n3ARG2KW
住人のみなさま、ご無事ですか?
ゲゲは大阪で舞台やってたみたいだが、布美ちゃんは大丈夫なんだろうか?
404 ◆ChdC8VZqyE :2011/03/12(土) 04:37:11.92 ID:kns0ut1B
ジュモクですが
うん
いわゆる長岡に住んでるですよね
過去二回のよりは揺れないけど、遠くで揺れてる感を感じると何だか気が重いですよ…
※長岡は市町村合併を繰り返してかなり広くなってます

スレに関係なかったり最近更新滞っててほんとすみません!
生きてるので更新できますので!

それより宮城の書き手読み手さんは大丈夫なのかと
405名無しさん@ピンキー:2011/03/14(月) 00:57:22.70 ID:8u7xdqzo
自分は無事だったから今日も元気にいかにして貧乏時代のしげさんに液状のホワイトチョコを手に入れていただくか妄想するぜ
406名無しさん@ピンキー:2011/03/15(火) 01:46:46.96 ID:cQ1FrE6M
いやだからそれはゲゲ自家発電(?)による白くて熱い液状のものを布美ちゃんにぶちかますという、だな。
407名無しさん@ピンキー:2011/03/16(水) 00:39:06.00 ID:dnkcL+es
自家発電による白いものそのものも良いけどやはりチョコレートプレイも捨て難いですな
ゆうちゃんはきっと家にたくさん常備されてるコンデンスミルクを使えば良いよ
408名無しさん@ピンキー:2011/03/16(水) 16:07:11.96 ID:i6Rd3XgP
チョコレートプレイを思いつかなかった自分はエロパロ板住人としてはまだまだだな
409名無しさん@ピンキー:2011/03/16(水) 20:15:00.34 ID:3y1U/K10
>>407
コンデンスミルクを綾ちゃんのいちごに直接かけて食べるわけですね。分かります
410名無しさん@ピンキー:2011/03/16(水) 20:35:36.78 ID:qRxjdMYs
ホワイトデー三景

ゲゲふみの場合
布美「あぁ、ん…。しげぇさん、もう許し…て」
茂「話に聞くとお返しは三倍返しが基本…。
この日の為に耐え難きを耐え、せっせと弾薬を貯めとったんだ!タップリとお返ししてやるけんな?」

祐綾の場合
祐「俺もイチゴ食べていい?」
綾「もう、全部食べちゃったよ。」
祐「ここにあるじゃん。綾子の可愛いイチゴが」
綾「ああんっ。そこは違…」
祐「練乳もたくさんあるし、このイチゴはいくら食べてもなくならないね。」
綾「お返しなのに、祐ちゃんが喜んでるし…やぁん冷たいよぅ。」

中の人の場合
向「奈緒ちゃん、チョコありがとう。お返しのシャンパンだよ。
これはフランスから取り寄せた希少価値の高い…
ってもう飲み干した!もうちょっと味わってよ!だいたいシャンパンてのは…」
奈「ウマー」
やぐP「もったいない飲み方を…!向井君からのシャンパン…!」

今の私にはこれが精一杯…。
本スレのネタお借りしますた。
411名無しさん@ピンキー:2011/03/17(木) 00:00:59.43 ID:i6Rd3XgP
>>410 GJ!ワロタw やぐP…
412名無しさん@ピンキー:2011/03/17(木) 03:12:49.60 ID:ocSqTC+q
>>410
GJ!
ここからさらに広げてくれる職人さんお待ちしておりますw
(もちろん>>410さんご自身でも!)
413名無しさん@ピンキー:2011/03/18(金) 18:52:42.37 ID:ts//c59n
>>410
祐綾に一番悶えた
そうか祐ちゃんのホワイトデーはあげるのももらうのもたらふくのイチゴか…!
414はつ恋1:2011/03/19(土) 04:04:02.12 ID:D6M3HURL
雀がさえずる声に促されるようにして、布美枝はぼんやりと目を開けた。
視界に入り込んできたのは、ぐしゃぐしゃの寝間着と、その合わせ目から覗く堅そうな胸板。
うっすら無精髭の生えた尖った顎。形のよい薄めの唇に、すっきりとした鼻筋。
そして、切れ長の目から、漆黒の瞳がじっとこちらを覗きこんでいた。
目に入ってくるものを、漠然と意識もせずに、ただぼーっと眺めていたが、
それが夫となった村井茂の顔だと脳が認知した次の瞬間。
「…ひゃっ!」
身体中の血液がどっと頭に昇ってきて、勢いよく後ろに身を引いた。
狭い布団の、そのまた端に居たのか、布団からはみ出した身体に、冬の朝の冷気を纏う。
急激に行動を開始した心臓から、循環する熱い血潮が顔面ばかりに集まってくる。
真っ赤に染まった頬と、どくどくと喧しい胸に手を宛てて、座り込んだ布美枝はその場に硬直した。
「…珍しいな。あんたが俺より遅く起きるのは」
茂もその身を起こしながら、やや顔をしかめて右腕をゆっくりと伸ばした。
「いてて…」
「あ、あ、あ…!す、すんません、あたし…」
どうやら彼の唯一の腕を、枕として占領していたらしい。
痺れているのか、曲げたり伸ばしたりを繰り返し、ぶらぶらと振ってみたりしている。
「だい、じょうぶ…ですか」
「心配いりません」
今度は大きく肩を回しながら、茂が小さく微笑んだ。瞬時に見蕩れてぼーっとしてしまう。
「ん?」と見つめ返されて、ようやく我にかえった布美枝は、また顔を赤くして慌てて俯いた。

昨晩、それまで紙切れだけの夫婦だったこの男と、云わば本物の夫婦の契りを交わした…。
はっきり言って、快感などというものはほとんど覚えていない。
ひたすら引き裂かれるような痛みばかりが思い出される。
緊張と恥ずかしさで、ただただ茂を困らせてしまっただけだったかも知れない。
けれど、優しく頬を撫でる右手や、労わるように降りてくる唇の感触を思い起こせば、
ささやかな幸福感のようなものにも包まれる。
ぎこちなくも熱い交わりののち、ひとつの布団に収まり、まだ熱を持った彼の身体に埋もれ、
背に回された右手から伝わる、小さな鼓動を感じながら目を閉じた瞬間は、
甘い甘い、魔法をかけられたような不思議な感覚があった。
415はつ恋2:2011/03/19(土) 04:04:47.26 ID:D6M3HURL
寒さに肩をすくめて鼻をすすっている茂をちらりと観察すると、
先ほどまで騒がしかった胸が、今度はきゅっと締め付けるように高鳴る。
恋愛小説や、少女漫画のような大恋愛は、未だかつて経験がない。
夫婦になったとはいえ、恋だの愛だのはすっ飛ばした結婚だったから、
本当にこのひとを愛しているかと問われたら、頷ける自信は正直まだない。
だから、この不思議な感情が、愛と形容するものなのかどうかもわからない。
が、今となってはもう、後にも先にもこのひとしかいないのだな、という覚悟はできた気がする。
(少なくともあたしは―――…)
と思いかけて、茂の視線を感じ、またきゅんと胸が痛くなる。

「腹、減りませんか」
「えっ」
いつまでも俯いたまま、もじもじしている女房がじれったくなったのか、
茂がぽりぽりと顔をひっ掻きながら、催促するように訊ねてきた。
「す、すみません!すぐに、用意します!」
布美枝は慌てて朝餉の準備を始めた。

− − −

――――――それにしても。
こんなに胸のつかえる朝食は人生のうちで初めてだ、と布美枝は思った。
茂と相対して取る食事は初めてではないのに、何故か異様に喉から先へものが進まない。
ぼそぼそと、箸の先で米粒ひとつずつを掴まえて口に運ぶ布美枝を、茂は怪訝そうに見つめていた。
「具合でも悪いですか」
堪えかねた茂の方から、やや遠慮がちに声がかかる。
ぱっと顔を上げた布美枝は、しかしまたさっと俯いた。
「い、いえ、そげなことは…」
慌ててせっせと白飯をかきこんで、無理矢理笑顔で取り繕う。
「おいひいでふ(美味しいです)」
「ぶっ…」
頬と鼻を膨らませた布美枝に、茂が思わず噴き出した。
くっくっと笑われ、また赤面する。すぐに反応が顔に出てしまう自分を、小さく呪った。
416はつ恋3:2011/03/19(土) 04:05:19.55 ID:D6M3HURL
茂は昨夜のことを、どう思っているのだろう。どうとも思っていないようにも見えるが。
慣れているのだろうか。それとも虚勢を張っているのか。
わけもわからずに受け入れることだけに必死だったけれど、あれで良かったのだろうか。
あんなことで、このひとは満足してくれたのだろうか。
眺めて愉しめるような身体つきではないし、触れられてもいちいちびくびくしていた気がする。
ガチガチに緊張した身体をほぐしてくれるのは、それなりに骨が折れたのではないだろうか。
考えれば考えるほど、昨夜の我が身が情けなく、そして茂に申し訳なかった。

布美枝が独り、自己嫌悪に落ち込んでいる隣で、茂はさっさと箸を進めている。
やがて、ずずずと味噌汁を吸い込む音がして、「ご馳走さまでした」と軽く頭を下げた。
咄嗟に顔を上げた布美枝と、茂との目線が合う。
「あのっ…」
「ん?」
果たして何と言うつもりだったのか、反射的に声をかけただけで、深い考えはなかった。
しかし、また黙り込んでしまうのも不自然すぎて、何かかける言葉を探しまわった。

「…ゆ、昨夜は、あの、す、すみませんでした!」
探しあてた言葉がこれか…と、言ってからがっくりとしたが、時既に遅し。
さすがに茂からも言葉がかからない。しん、と重い空気が漂った。
何とか打開しようと、あれこれとまた頭の中の引き出しを引っ張り出す。
「あたし、何も分からんもんで…ちゃ、ちゃんと、でき、できとったんでしょうか」
「は…?」
ますます訳のわからないことを言い始めた、ということは頭の片隅で解ったのだが、
今はもう、昨夜のことしか頭に浮かんでこず、そしてその勢いは止まらない。
「よー、覚えとらんですけど、あれで、良かったのかどうか…。さっぱり分からんで。
 次、からは、ちゃんとできるように、が、がんばりますけん」
「次…」
「あ、いやあの…次というか、今度、があったら、という意味で。ぅわ、何言っとるんだろ…」
自分の言葉の回収に懸命になればなるほど、頭は真っ白になっていくばかりだ。
そんな状態だから、目の前の夫が小さく肩を震わせていることに、気づくはずもなかった。
417はつ恋4:2011/03/19(土) 04:05:46.38 ID:D6M3HURL
「何とかもぅちっと、ましに、というか、えと、…色々、是非ご指導、ご指南いただけたら…」
そして遂に茂は腹を抱えて笑い出した。
布美枝はただただ、茂の笑いが止まるまで、八の字眉でそれを見つめているしかなかった。
「ははっ、あーはは、あー可笑し!」
「あの…」
「いや、失礼。あんたが真面目な人だということはよー分かりました。けど、そういうことは
 こげな朝っぱらから、委細細かくあれこれと訊ねるものではありません」
「あ…!す、すみません!!」
くすくすと含み笑いながら、茂はぽんぽんと布美枝の頭を軽く叩き、
「まあ少なくとも、昨日はよー眠れました。あんたは?」
「は…えと、…はぃ、眠れまし、た」
すると茂はふわりと柔らかな笑みを浮かべて「なら良かった」と布美枝の頭を撫でた。
ぎゅっと締め付ける胸の痛みに、布美枝の息が一瞬止まった。
仕事をすると言って襖の向こうへ消えた背中を、ただただぼーっと見送りながら、
これまで経験したことのない、複雑な鼓動を訴える左胸あたりを、ぎゅっと拳で握り締めた。

− − −

そうして日々はぎこちなくも穏やかに過ぎていく。
相変わらず茂は仕事部屋に篭りがちで、さほど口数も多くはなかったけれど、
軽く交わす冗談めいた会話や、時折見せる彼の柔らかな笑顔に、
胸躍らせている自分を、布美枝は次第に自覚していくようになった。
そして夜中まで漫画を描き続ける茂を、襖の隙間から洩れてくる光に目を細めて、
こちら側から覗き見るのが布美枝の夜の日課のようになっていた。
旦那様より先に眠るのは心苦しいし、かと言って話しかけるのは気が引ける。
大きく丸まった背中が、手にしたペンとともに小刻みに揺れる。そんな姿をじっと見つめていた。

茂に見つめられていないときは、緩やかな鼓動がこだまして、じんわりと身体が温まってくる。
時折ぎゅっと締め付けて息苦しくなる感覚が、戸惑いもするし、やや幸せにも思える。
目を閉じれば、そこに思い起こされるのは、見合いの席で見た笑顔。
結婚式のときの、タキシード姿の堂々とした佇まい。
酒に悪酔いしていたのに、父をたててくれた義理堅さ。
境港の夜に垣間見えた、少年のような横顔。颯爽と歩いていく広い背中。
漫画に向き合うひたむきさ。それ故に譲れないこだわりの深さと激しさ。
自分を気遣ってくれる優しさ。風変わりな趣味。けれど一緒に居ることの心地よさ。
逞しい身体。くすぐったい吐息。優しい唇。熱い眼差し…。
たった一月足らずの彼しか知らないのに、もう心臓が壊れそうだ。
418はつ恋5:2011/03/19(土) 04:06:18.80 ID:D6M3HURL
しかし結局彼が、あの夜の自分のことをどう思っているのか、分からずじまいで。
拙い相手だと思われたのか、それでも満足してくれたのか。
自問自答を繰り返すうち、ますます不安に駆られていく。
茂の全てが眩しすぎて、それ故に自分はまるで釣り合っていないように思えてもいた。
彼に相応しい妻になりたいと、切実に思う日々。
茂への想いが募れば募るほど、自分への嫌悪感が増していく。
日々の幸せと背中合わせに、時折そうして鬱々としてしまうことがあった。

その日の夜も、仕事をする茂をときどき覗き見ながら、布美枝は布団の中で本を読んでいた。
布団を頭から被って、隙間から洩れ入る仕事部屋からの光だけを頼っていた布美枝に、
襖を開けた茂が驚いて一瞬後ずさった。
「びっくりしたぁ…まだ起きとったのか」
「あれ、今何時ですか」
時計を見ると、深夜の1時を過ぎている。布美枝も我ながら驚いて「わ」と小さく叫んだ。
「のめりこんでしまって…こげな時間とは思わんだった」
「何を読んどるんです」
「貴方の本です。すみません、勝手に棚から…」
ぱたりと本を閉じて、茂に表紙を見せた。「少年戦記」だった。
おや、という顔をして、茂が少しはにかんだように見えた。
怪奇物を夜に読むのは勇気がない、と告げると、軽く苦笑される。その笑顔を見るのが何より嬉しかった。
「漫画が好きなら、ほれ、あの貸本屋で借りてきたらどげです」
「特別好きというわけでは…貴方の本だけん、読んどるんです」
「はあ」
「旦那様がどげなお仕事をされとるのか、ちゃんと知っておきたいので」
「…」
ぽりぽりと頬を掻いて小さく咳払いすると、茂は座った位置から少し、布美枝に近寄った。
どきりとして、身を固くする。
無言のかけひきなど、布美枝にできるはずもなく、そのままぎゅっと目を閉じた。
ふわりと髪を撫でられ、心臓が飛び跳ねる。とことん正直すぎる身体に、いい加減嫌気がさしていた。
頬に置かれた手が、するりと滑って顎を掬い、俯いた顔を持ち上げられた。
419はつ恋6:2011/03/19(土) 04:06:44.93 ID:D6M3HURL
―――――ところで、くすくすと笑い声。
じわりと目を開けると、困ったように微笑う夫の顔が見えた。
「…ぁ…の?」
「そろそろ、慣れて欲しい」
「…す、すみません…」
ようやく温かな右手から解放されると、慌てて顔を覆った。何だか情けなくなってくると同時に、
じわりと涙すら溢れてきた。必死になって隠そうとしても、ややあって気づかれる。
涙の訳を問いたげな表情の茂を見ると、またしても視界が潤む。
「すみません…あたし…」
ぐすぐすと、子どものように手の甲で拭った。茂はただ黙って畳の筋を見つめていた。

「…あの」
「ん?」
少し落ち着いたところで、思い切って顔をあげた。
「あたし…貴方の傍におってもええんでしょうか」
「…なして?」
落ち着いた、優しい声が耳から入って、布美枝の内側に沁みる。
「あたし、何のとりえもない、つまらん女です。田舎者で、鈍くさくて。
 連れて歩いても見栄えがするわけでもないし。…のっぽだし。
 貴方のお仕事のこともようわからん。どれだけ大変なのか、どげな苦労があるのか。
 気も利かんから、貴方のこと怒らせたり、呆れさせたりで。家事だって、得意なのは裁縫くらいで…」
黙って聞き入る茂をちらと見て、ごくりと唾を呑み込んで続けた。
「だけん、せめて…せめて、その…よ、夜の、お相手くらいは、ちゃ、ちゃんと…と思って」
喉におもりがぶらさがったように、上手く言葉が出ない。けれど、懸命に声を張る。
「だのに、い、いつまで経っても、こ、こげな調子で…。つまらんです、よね。
 この前だって、貴方に気を遣ってもらうばっかりで、あたし、何もつ、妻らしいこと、できんで」
「妻らしいことって?」
「…………旦那様の、お相手は、女房の務めですけん。ちゃんと、貴方が満足できるように…」
「待った」
ぴしゃり、と言った茂の声に、思わず顔を上げた。
少しむっつりと、怒ったような表情でこちらを見ている。
420はつ恋7:2011/03/19(土) 04:07:28.87 ID:D6M3HURL
「あんた、この間のことをそげ思っとったんですか」
「え?」
「相手という言い方が気に食わん。俺は金であんたを買ったわけじゃない」
「そ、それは」
「務めって何です?ああいうことをするのは、一緒になった以上、義務みたいなもんだとでも?」
「そんなこと!」
厳しい口調の茂の気迫に、気圧されそうになる。
見つめられる、濃黒色の瞳を、こちらは見つめ返す余裕はない。
はあっと大きくため息を吐いて、茂は大袈裟なくらい頭を掻き毟った。
それから静かに、ぽつりと呟く。
「…少なくとも俺は、務めやら義務やらであんたを抱いたわけじゃない」

ほわりと、胸の中に火が灯った気がして、布美枝は顔を上げた。
どこか照れくさげな夫の横顔を、どきどきしながら見つめた。
――――では、あの日、あの夜、どうしてその腕に抱いてくれたのですか?
す、と寝間着の揺れる音とともに、彼の右手が布美枝の頬を撫でた。
「あんたが」
高まる胸の音に、その声がかき消されないよう、必死で耳をすました。
「あの日俺を受け入れたのは…ただの義務感からだけ?」
ゆっくりとまた緩んでいく涙腺。ぼやけた視界を振り払うようにして、布美枝はかぶりを振った。
「…っ、違…だ、って」
(そうでも言わなければ、貴方に抱いてもらう理由などないと思ったから…)
日に日に募る、夫への想いは、彼にとっては重いものでしかないのではと。
それは勘違いだったと思っていいのですか。
むしろ自惚れてもいいのですか。貴方があたしを欲しがってくれていると。
そう訊きたい衝動を抑え、ゆっくりと重ねられる唇を受け止める。
数日ぶりに触れた夫のそれは少し冷たく。けれど優しく。
騒がしかった胸を落ち着かせてくれる。そして緩やかな、温かい鼓動を呼び起こす。

「あたしで…え、ええんですか?」
「ん?」
茂の右手が、耳にかかった布美枝の髪をさらさらと櫛梳く。
くすぐったさに肩をすぼめて、おそるおそる問う。また顔が近づいてくるのを気配で感じる。
「ま、まだ、ようわからんで…また…困らせるかも知れん…」
ぴたりと、唇まであと数センチというところで止まる。そしてくすっと小さな笑い声。
421はつ恋8:2011/03/19(土) 04:07:56.41 ID:D6M3HURL
「あんたはもぅちっと男心を勉強したほうがええかも知れん」
「おと、こ…ごころ?」
「困らされるのが、愉しいということもある」
「どういう意…」
「解らんでええ」
最後まで言わせてもらえずに、唇は塞がれた。
勉強したほうがいいと言われたのに、解らなくてもいいとは…。ますます不可解だった。
ぐるぐる廻る思考回路は、しかし、割り入ってくる温い舌の感触に強制停止させられた。
冷え冷えした部屋に、互いの息遣いだけが熱を帯びて響く。
膝の上で握り締めていた両手を、思い切って茂の首に巻きつけた。より一層口づけが深くなる。
肌と肌を触れ合わせていることが、震えるくらいに嬉しい。
息も出来ぬほど詰まる胸のうちを、必死になって唇から伝えようとしていた。
「ん…っ、ん」
布美枝の背に回されていた茂の右手が、ばしばしと背中を叩く。
はた、と我に返った布美枝の一瞬の隙をついて、茂は「ぶはっ」と顔を離した。
「っはーっ、く、るしぃ…」
「あ!す、すみませ…」
募る想いが腕にこもり過ぎて、茂を羽交い絞めにしていたらしい。
しばし肩で息をしていた茂が、堪えきれずに笑い出した。ほっとして布美枝も笑う。
「すみません…」
「いや、ええ。あんたはそれで」
「けど」
「思ったままに、俺を困らせたらええ」
目を細めて見つめられ、再び軽く口づけられる。
ややあって、腰に巻きついてある帯に手がかけられ、しゅるりと解かれた。
もう迷いはなかった。今も、これから先もずっと、この広い胸にただただこの身を預けるのみだ。
422はつ恋9:2011/03/19(土) 04:08:27.79 ID:D6M3HURL
首筋に潜る口づけに、喉を反らせる。顎の先から鎖骨の窪みまで、丁寧に吸い付かれた。
ゆっくりと肌蹴られていく寝間着に少し焦って、ぎゅっと彼の肩に置いた手を握り締めた。
するとその手をそっと取られて、甲に口づけられる。
そのまま見上げられる視線に、布美枝の全ては支配されてしまう。
眼力に圧されて自然と背中方向に傾いていく身体を、右腕が優しく補助してくれた。
闇に映る夫の顔は、昼間のそれとは別人のように鋭い気がした。
けれど決して厳しくはなく、情熱的とも言える表情がたまらなく美しくも思える。
ぼうっと見蕩れていたからか、きょとんと首を傾げて見つめ返された表情が、
今度はやたら幼くなって、ふ、と頬が緩んでしまう。
微笑んだ布美枝を見て安心したのか、茂はそっと寝間着の上から柔らかな胸を撫で擦った。
「…っ…」
徐々に反応し、硬くなっていく乳首を摘みながら、もう一方の乳房へ唇を落とす。
温かな吐息で包み、ねっとりと舐め吸われる。ぞくぞくと背筋に走るものがあった。
やがて露わにされる白い肌と、ピンク色の蕾に、再び舌が絡みつく。
「ゃ…あ」
時折歯を立てられると、びくりと肩が勝手に跳ねる。すると癒すように舐られる。
繰り返し口に含み、舌で弄られる。いつか飴玉のように蕩けていってしまうのではないか。
もう既に、茂の首に回した腕には力が篭らない。彼の唇と舌だけで、理性は簡単に剥かれていく。

「…寒いか」
耳元で、低く問われた。その間も、耳を舐られる音がじゅくじゅくと聴こえる。
布美枝の身体がいつまでも冷たいことに心配したのか、その気遣いがじんと沁みた。
「貴方が…温かいです、けん。大丈夫」
微笑んでみせた。安堵したように、茂も微笑う。
ぐしゃぐしゃと纏わりつくようになっていた互いの寝間着を取ると、茂がぎゅっと抱きしめてくれた。
どうして同じ人間なのに、男というのはこんなにも堅く、逞しいのだろう。
うっとりと目を閉じると、肩越しにふわりと墨の匂いがした。
しばらくして茂は、布美枝の額にひとつ、頬にひとつ、口づけ、表情を窺うようにして見、
そして、す、と下着へ右手を進めた。
一瞬どきりと跳ねた鼓動を、布美枝は無理矢理抑えつけ、ぎゅっと目を閉じる。
下着の上から秘部をなぞり、円を描くように指を滑らせた。
「ふ…」
首を振って悶える。恥ずかしさと、こそばゆさが混じって、自分の指を噛み締めた。
そろそろと下着を降ろされ、繁みを掻き分けた指が、直接割れ目を擦る。
茂の長い指が、わずかに内側へ侵入したとき。
「いっ…」
身を硬くした布美枝に、茂も瞬時に動きを止めた。
423はつ恋10:2011/03/19(土) 04:09:12.19 ID:D6M3HURL
「痛いか」
「す、みませ…」
「悪いのはこっちだ」
謝罪の代わりに、瞼に軽く唇で触れた。

緊張は未だ布美枝の身体を包んで、まるで茂を拒んでいるかのように硬い。
「大丈夫、ですけん…」
心は彼に全て支配されているのに、身体は頑なに応じようとしてくれない。
焦る布美枝は、縋るように茂の首に抱きついた。「続けてください」耳の傍で小さく強請った。
茂は自身に絡みつく頼りなく細い腕を、やがて優しく解くと、再び胸の谷間に顔を埋めた。
わざとらしく音を立てて、乳房や脇腹を啄ばみ、臍や腰骨の線を舌と唇で辿る。
言い知れぬこそばゆさに、身を捩る布美枝。
茂はそれを押さえつけ、左脚を腕に抱えると、脚の付け根に顔を埋めた。
「えっ!」
あまりのことに、身が竦んだ。
けれど、すぐそのあとには、如何とも形容し難い痺れが下半身から脳天を貫いた。
「やっ…っ!」
秘所を直接刺激される舌の動きに、布美枝の全身の肌が粟立った。
「や、やめてくださ…っ、そげなとこっ」
我が身であってもじっくりと見たこともないその場所を、夫が弄り、舐り、食んでいる。
必死の思いで抵抗をしたが、左脚ごと片尻も持ち上げられており、上手く力が働かない。
そのうち、右脚も左肩に圧し掛かられ、開脚に甘んじる体勢になってしまった。

「は…っ、ん、ふ、っんんっ」
放り投げられていた茂の寝間着を掴み、抱きかかえて口にあて、声を押し殺した。
しかし、寝間着から香る茂の匂いが、却って興奮に拍車をかけ、背を仰け反らせて喘いだ。
幾重かの花弁に包まれた紅色の場所に、ぬるぬると舌が這い、花芽を突つかれる。
やがて沁み出してくる愛液を、音をたてて吸い上げられた。
小粒の陰唇に歯を立て、布美枝がびくりと震えると、ざらりと舌で舐め掬う。
そして溢れる液を自ら求めるように、その源泉へと舌を蠢かせて探り入れられた。
「ぁっ…!んぅ…っあぁっ…」
いつしか抗う力は抜け、羞恥の壁も越えた。
粘つく水音を聴きながら、夫の匂いに蒸せられる。
やや上気した茂の荒い息遣いと、それでも止まない愛撫の執拗さに、感覚が遠のく。
424はつ恋11:2011/03/19(土) 04:14:28.09 ID:D6M3HURL
無意識に左手を天井に向けて伸ばすと、気づいた茂が指を絡ませて受け止めくれた。
ぐい、と二の腕で口を拭うと、先ほど辿って行った路とは逆に、
腹から乳房へ唇を移動させ、首筋から耳元へ口づけながら、布美枝の横顔まで戻ってきた。
「は……」
直視できない夫の顔を側面に感じながら、勝手に溢れてくる涙を抑えきれずに零す。
茂は丁寧にその一粒ずつを唇で掬い、急かすこともなく布美枝が落ち着くのを待った。

優しい接吻は額や頬をくすぐり、大きな右手がさらさらと、褥に広がる髪を撫でる。
ようやく息を整えた布美枝が、逆上せた表情で茂を見上げた。
「…ええ、か」
厭だなどと言うわけがない。
布美枝の中の空洞が、茂の侵入を待ち望んで疼いているのが分かる。
ひたすら痛みに耐えた前回と決定的に違うのは、脳ではない場所がそれを欲していることだった。
言うなれば本能とでも。
そこを埋めることができるのは彼しかいないと、布美枝の内側は知っていた。

ゆっくりと、脚の間に腰を沈められ、その場所へ角度をつけた硬直が宛がわれた。
一、二度、ゆるゆると先端で確かめられ、そしてぎゅっと挿し込まれる。
「…っは…」
大きく息を吸い込んだ布美枝が、頭を仰け反らせた。
掴んだままの茂の寝間着を、また一段と強く握り締める。
「痛むか」
目を閉じたまま、首を横に振った。
それに安心したのか、もう一歩踏み込んでくる。
「んっ…ぁ」
茂が入り込んでくるたびに、そこから押し出される愛液が尻まで伝った。
うっすら目を開けて茂を仰ぐ。眉根を寄せて、布美枝の内の熱に耐えるさまが、やたら艶だった。
なまめかしい男の表情に、布美枝の女が反応して、秘部辺りの肉がひくひくと痙攣する。
一段と硬度を極めた男根が、その全てを布美枝の中に埋めた。
「…大丈夫か」
「は、っ…い」
答えると同時に、茂の匂いの寝間着を抱きすくめて目を閉じた。
「こら、そげなもん邪魔だわ」
「え…ぁ」
そういうと茂は、顎でぐいぐいと寝間着を避け、布美枝の左手を取って自らの身体へ絡ませた。
布美枝に覆いかぶさり、右腕を頭の下へ潜らせ、ぎゅっと抱きしめる。
「寝間着なんぞ抱きしめとらんで、俺に掴まっとけ」
わざわざ枕に顔を埋めた状態でぼそぼそと呟く。
(…照れとられるんだろか…)
胸がきゅっと鳴った。微笑んで布美枝は、広い背中に両腕を廻した。
425はつ恋12:2011/03/19(土) 04:14:54.73 ID:D6M3HURL
「動くぞ」
言うなり、軽く腰を引かれ、そして打ち込まれる。
「あ…!」
経路に隙間が出来る一瞬が、やたら感じて身悶えた。
今度はもっと激しく揺さぶられた。背に廻した腕に、力が入る。
「あ、あっ、ん、ふっ…」
顔を上げた茂が、喰らいつくようにして布美枝の唇を貪った。
それでも腰の動きは止まない。息苦しいのに、もっと欲しいと思った。
茂の、少し長めの後ろ髪に指を絡ませ、より激しさを乞う。

耳たぶを食まれ、吐息を吹き込まれる。熱い息なのに、ぞくぞくする。
やがて口づけは、茂の身体に絡まった腕に移り、優しくそれを解かれる。
やや離れた身体に寂しさを隠しきれずにいると、曲げた脚を彼の胸の前で閉じさせられ、
膝が顎にぶつかりそうになりながら再び揺すられ始めた。
「は…ぁっ…んっ、あっ、あっ…!」
締めた場所に無理矢理出入りする肉塊の、力強さに悶える。
解かれたまま、心もとなく自分の膝に置いてあった左手を、
茂の右手が絡み取って、力強く握り締められ、ぐっと布団に押さえ込まれた。
同時に茂の上体が伸し上がって、ほぼ上から落とされるように腰を打ち付けられる。
ぐちゃぐちゃと卑猥な音が、繋がった場所から聴こえても、
先ほどまでの恥じらいなど戻ってきそうもない。
互いに欠けている部分を擦り合わせ、何処とも知れない高みへ昇らされる。
「あっ、は…あ、ぅ…ぁなっ…た…っ!」
火照り、昂ぶっていく正直な身体に、ここまできては抵抗などできるはずもない。
遠のく意識と感覚に戸惑いながら、曇る視界の向こうの夫を仰ぎ見た。
うっすら汗を滲ませた官能の表情が、儚げな女性のように、やけに色気づいて見えた。
「…イけ」
命じられたことの意味は解らなかった。
けれど、退いては挿される茂の膨張の熱が、やがて自らの内側で爆ぜていくのを感じながら、
布美枝は真っ白の世界へ堕ちて行った。
426はつ恋13:2011/03/19(土) 04:15:51.59 ID:D6M3HURL
− − −

熱情の波が引いてしまうと、途端に恥ずかしさに苛まれて、
布美枝は布団に包まり、丸くなって茂に背を向けていた。
もぞもぞと潜り込んできた茂が、背後から肩甲骨に唇を宛てる。
「こっち向け」
首の下に右腕を入れられ、無理矢理抱き寄せられてくるりと回転した。
「…あっ」
慌てて顔を覆って、茂の胸の中へ逃げ込む。
悪戯な右手は、布美枝の背中をこちょこちょと愉しそうに這い回っていた。
くすぐったがって身を捩ると、意地悪そうににやにやと笑う。
「もぉ…っ」
拗ねてみせて、拳で胸板をどんと叩くと、茂はわざとらしく咳き込んで笑った。

甘い余韻にしばし浸る。やがて訪れた静寂の空気に、わずかに寂しさを覚え、
ひょいと布美枝は顔をあげ、茂の様子を窺った。
茂は、ちらりと布美枝に視線を落とすと、すぐにその頭を抑えこみ、
再び自らの胸の中へ埋め戻した。ぎゅっと、力が篭められる。
先ほどまでとの雰囲気の違いに、布美枝はどきどきした。
「あんたにひとつだけ言っとく」
頭上で、低い声がくぐもって聞こえた。

「俺は誰でもええと思って一緒になったわけじゃないけん」
「…」
「つまらん女だとか、自分でええのかとか、そういう言い方はもうやめなさい」
そしてもう一段強く、抱きしめられた。
茂の胸元からは、寝間着についていた彼の香りがもっと強く漂ってくる。
布美枝を酔わせる媚薬のように、くらくらと蕩けそうだ。
力を失うように、布美枝はこてん、と額を茂の胸に宛て、その奥の鼓動に耳を澄ます。
目を閉じ、ぎゅっと抱きついた。
(好き…)
言葉にすると、小さすぎる気がした。
そんなことでは表わせない想いが、布美枝の中には確かに在った。
梅桃の花の咲く季節に同じく、布美枝の遅い春に膨らみ始めた初恋の淡い蕾は、
やがて花開き、この先一生枯れることなく、茂の隣で咲き続けることとなる。
これはその序章のお話。


おわり
427名無しさん@ピンキー:2011/03/19(土) 20:32:17.61 ID:19y5x0kM
GJです!
茂さんの為だけに美しく艶やかに開花するフミちゃんに
ドキドキしました〜。
フミちゃん視点の茂さん描写も色気があってうっとりしてしまいます
投下ありがとうございます!
428名無しさん@ピンキー:2011/03/19(土) 22:43:21.80 ID:CPwJD7/8
>>414

ありがd!!!感謝感謝
新作、首を長〜くしながら待っていました♪♪
旦那さまに恋するフミちゃんが可愛いし
朴念仁だけれど、彼なりの愛し方で
フミちゃんに向き合うゲゲが本当に素敵でした

茂目線の作品も、また是非とも、お願いします!!!
429名無しさん@ピンキー:2011/03/20(日) 00:36:19.98 ID:ergFxzmW
>>414
gj〜!!
ゲゲの表情、リアルに想像出来てふみちゃん級にドキドキした〜w
職人様がゲゲふみ大好きなんだな〜って伝わってきたよ
幸せな二人が、もっともっとこれから幸せになれるような
第二弾!心待ちにしちょりますw
だんだん!
430名無しさん@ピンキー:2011/03/20(日) 23:31:22.46 ID:taKR/Xt1
すごく萌えたー!!
フミエの初恋は、まさしくゲゲなんだよねw
勿論ドラマでわかってたけど、改めて再確認できた作品だあ
実はゲゲもそうなのかもしれないね
(もともと恋愛には無縁な感じだしw)
ああーなんて可愛い夫婦なんだあーーー
431名無しさん@ピンキー:2011/03/21(月) 00:19:33.57 ID:ZVJ7PuO5
>>414
GJ!
しげさんが敬語混じりの新婚初期の破壊力はすさまじいな…!
喘ぎをしげさんの寝巻きで抑えるのが堪らなかったです
恋をしあってる夫婦かわいいよ夫婦
432名無しさん@ピンキー:2011/03/21(月) 21:39:10.57 ID:WPyD652d
そういやゲゲは布美ちゃん以前に経験はあったのだろうか?
自分的には余裕もって布美ちゃんをリードしていける程度の経験はあって欲しいと思うけど。
433名無しさん@ピンキー:2011/03/21(月) 22:52:45.37 ID:fHGVHiNS
上手く貼れてなかったらスマン
このゲゲ絵萌える・・・w

http://m.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=13477596&PHPSESSID=969a47b0f8fb24e11be99d7a569c6598&guid=ON

しかし、意外とゲゲフミ絵があってビックリした
(脇キャラ推奨の作家さんが多いと思ってたから)
434名無しさん@ピンキー:2011/03/22(火) 00:08:48.72 ID:PBDGLiDC
>>433
直貼りすんな
435名無しさん@ピンキー:2011/03/22(火) 15:08:34.20 ID:p0FRyD3N
>>432
あってほしいけど、なんかしげさんなら経験なくてもすごく余裕そうな気がする…
知識も豊富そうだし
436名無しさん@ピンキー:2011/03/22(火) 22:44:30.29 ID:MypdLin3
実際の水木先生がどうだったのかはわからないけど
自分は断然、経験無い方が良いな
(ただし、一応知識はあってイザと言う時は余裕w)

ドラマの茂は深大寺で(二回も!)目が合うと逸らしちゃう程のウブだったし
(ふみちゃん以外の)女性に全く興味を示さない朴念仁キャラ
向井のヴィジュアルと上手くバランス取れている感じで良かったと思う
437名無しさん@ピンキー:2011/03/23(水) 19:29:48.88 ID:CHcy3e+s
新婚時代のゲゲふみ描きました。
見にくかったらすいませぬ。
http://beebee2see.appspot.com/i/azuYlfbiAww.jpg
438名無しさん@ピンキー:2011/03/23(水) 22:27:19.60 ID:bFoaN5Wy
自分の超勝手なイメージは、ゲゲは経験なくはないけど多くはない、
で、自分が初めてって女性はフミちゃんが初めてって感じ

何か深大寺デートとか会報作りのときのウブさって
フミちゃんのウブさとおっとりお嬢様オーラに引っ張られてる感じがする
439名無しさん@ピンキー:2011/03/24(木) 00:42:22.34 ID:TpZy3W0c
マジレスすると・・・
確か初夜は、秘所がどっちなのかわからなくて
翌日だかにイトツへ打ち明けたら、何か言われて
励まされたんじゃなかったかな?(うろ覚えスマソ)

ま、あの時代だから婚約者以外の恋人っていうのは無いに等しい
経験の相手はプロか、そういうのが嫌いな場合は童貞もありだな
440名無しさん@ピンキー:2011/03/24(木) 02:52:55.63 ID:S/qk7Es+
おお、新婚萌えな大作が(*´д`*) GJ!

ゲゲは初めてじゃなかったけど
初夜翌日に
あるべきところに穴がなかったみたいなことをイトツに相談した
っていう話をどっかでみた気がする
441名無しさん@ピンキー:2011/03/24(木) 10:46:56.28 ID:d6hgQJaY
戦争に行く前に、粋人のイトツがしかるべき場所に案内したと妄想。
(もちろんイカルには内緒w)戦後はそれどころではなかった。
素人DTだけど、足りない部分は創意工夫wで補って、あとは愛の力wで。
442名無しさん@ピンキー:2011/03/24(木) 11:51:01.54 ID:JVBFFgxD
>>440
「探せば何処かにあるだろう」byイトツ
443名無しさん@ピンキー:2011/03/24(木) 18:43:08.73 ID:zdZLYIps
なんかだんだん経験少なめで何回か妖怪相手な気がしてきたww
大体は>>438と同意見だなぁ


>>437
ほんと美男美女ですなぁ
ふみちゃんの手が良い
444名無しさん@ピンキー:2011/03/24(木) 19:10:07.51 ID:wOBY4z8h
神作品が続々と投下されておる・・・!
職神様、超だんだんです

>>410
まさか練乳イチゴにこんなに萌えてニヤける日が来るなんて思わなかったw
イチゴを活用した次なるプレイに期待

>>414
ふみちゃんが可愛くてエロくて、もうたまりません
色気があって包容力もあるゲゲルもイイ!

>>437
ゲゲふみ絵キター!
新婚時代大好きだ。二人の眼差しが色っぽくて素敵です
第二弾もお待ちしてます

色んな形で幸せいっぱいの二人を拝む事が出来て嬉しいな
このスレ本当に大好きだ
445名無しさん@ピンキー:2011/03/25(金) 20:26:07.34 ID:HaiORirn
ふみちゃんがいつからしげぇさんって呼ぶようになったのか気になって朝も8時までしか眠れないんだぜ…
446名無しさん@ピンキー:2011/03/25(金) 22:33:59.12 ID:O6v5BCuB
某映画のふみちゃんCA姿を見て、真っ先にコスプレネタを想像した自分が嫌だ
447名無しさん@ピンキー:2011/03/26(土) 10:42:59.26 ID:J7Fqdl6w
>>445
驚いた。それ今構想中のssに出てくるよ。ここの雑談レス読んでると、みなさんと
萌えを共有してるな〜って思います。
まだ時間がかかるけど、いずれ投下しますね。
448名無しさん@ピンキー:2011/03/26(土) 21:14:30.59 ID:dG70e6tf
自分は「あなた」って呼ぶフミちゃんも大好きだ

「しげぇさん」は藍子が生まれてからじゃない?
ゲゲの方も出産を境に「あんた」から「お前」に変わったな〜
449名無しさん@ピンキー:2011/03/27(日) 20:33:33.81 ID:30AP69Ja
>>446
某ドジでのろまな亀のドラマをダシにして…と思ったがあれ1983年なんだな
ゲゲふみの年齢的にキツいな…

>>447
のんびり待ってる!

>>448
自分は佐知子さんが会社の手伝いに来はじめてから影響されて…だと妄想してる
450名無しさん@ピンキー:2011/03/28(月) 01:12:14.92 ID:iH3pz0DI
突然ですが、初投稿です。正直書き込み方もよく判らんですが、ゲゲゲを愛する気持ちには
自信があるので、思い切って。エロ全くなしの完全スピンオフ。おまけにしげーさんは出て来ません。
そんなんいるか!という方はスルーして下さい。
451或る店主の呟き1/2:2011/03/28(月) 01:22:09.78 ID:iH3pz0DI
「あーあ、持ってっちゃったよ」
集まって来た買い物客達の誰に言う訳でもなく、雑貨屋の主人が呟いた。
「こっちは置いてっちゃったし」
落とした視線の先にあるのは、端から葱が飛び出した布製の肩掛け鞄だ。
二月に月が改まったばかりの日の午後。春はまだ遠いことを告げる冷たい風が、ぴゅうっと商店街を吹き抜けた。
  ◆
私は名を橋木という。東京調布は小石町のすずらん商店街で、親父の代からのささやかな店を営んでいる。
商うのは、保存食を中心とした食品といくらかの日用雑貨、そして酒。近場に酒屋がないこの界隈のご家庭の晩酌を支えているのは、主にうちの商品だ。ちなみに今の売れ筋は「隠桜岐」である。
ニッパチ景気で世間が荒むのを警戒してか、この商店街では今月が警備強化月間だった。スリや置き引きに注意しろという声が拡声器から流れる中、どうやら本当に置き引きが発生したらしい。
被害者は雑貨屋の女性客だった。黒いバッグを盗られ、売り物の買い物籠を持ったまま犯人を追いかけていったその女性は、遠目にも目立つほど背が高かった。
「あんた、あのご婦人、知ってるかい?」
私は雑貨屋の主人に尋ねた。
「いや、知らんな。橋木さんは?」
「俺も知らんね。地図らしい紙切れ持ってきょろきょろしてたし、この辺の人間じゃないな」
雑貨屋は客人の忘れ物を取り上げ、物陰にしまいながら苦笑した。
「この辺りに引っ越して来たんじゃないのかね。夕飯の買い物してたようだよ。まあ『八百善』の特売では買いそびれたらしいが」
「へえ。大丈夫かね、追いかけたりして」
走り去ったほうへ目をやりながら私はふと、或ることに気付いた。
「ちょっと、それ…」
「うん?何、これかい」
女性客が忘れていった鞄を手に取る。若い女性が夕飯の買い物をする際に持つようなものではないが、物自体は何処にでもあるような、ただの肩掛け鞄だった。
(これ、何処かで…)
見たことがある、と思った。はて、何処だったか…と思い巡らしはじめたその刹那、店に来た客のためにその考えは雲散霧消してしまった。
452或る店主の呟き2/2:2011/03/28(月) 01:40:40.25 ID:iH3pz0DI
それからしばらく経って。
「こんにちは」
「いらっしゃい」
もう何十年の癖で、考えるまでもなく出る言葉と共に振り返ると、そこにいたのは件の女性だった。
「ああ…」
どうやら盗られたものは取り戻せたらしく、手には例のバッグと、結局買い求めたらしい雑貨屋の籠を持っている。そして肩にはあの鞄が掛かっていた。
追いかけた後の顛末が気になりはしたが、聞く訳にもいかない。まあ、そのうち誰かの口からこの耳に入って来るだろう。
「何かお探しで?」
「はい、あの、お醤油を」
「あ、それなら、こっちです」
促すと客人は力のない笑顔を見せて、軽く会釈をした。
恐る恐るといったふうで店の奥へと移る。醤油の並んだ棚を見つけると、真剣な表情で選び出した。
男の私が視線を上げる程の長身、そして細身。長い黒髪。しかし間近で見ると何より印象的なのは、その大きな眼だった。
「…何でも揃う、笑顔が集う、お買い物ならすずらん、あなたも…」
商店街に流れる能天気な声が、品物を選ぶ丸まった背中に、虚しく響く。
しばらくの後、客人は醤油の一升瓶と白菜の漬物を持って、勘定場に来た。
「まいど。奥さん…でよろしいですかね」
「あ、はい」
「最近こちらに?」
「はい。下野原です。これからいろいろお世話になりますけん、宜しくお願いします」
下野原か。遠いな。配達ではよく行くが、自動車がないとつらい場所だ。
「ご主人の転勤か何かで?」
「え?いえ、あの…しゅ、主人はもともとこっちに住んどるんです。その、結婚して、私がここに」
へえ、新婚さんか。ならもっと明るい顔してもよさそうなもんだが。まあ、置き引きに遭ったばかりでは、元気も出ないか。
「お名前は?」
「い…、じゃない、む、村井です」
そう言って「村井夫人」は、ほんの少しだけ、頬を赤らめた。
(下野原の村井ねえ。そんな家あったか?)
思い出しながら算盤を弾いていると、「村井夫人」が、ずらっと並んだ酒瓶を、思い詰めたような顔で見つめているのに気付いた。
「いかがです、一本。ご主人のお好みは?」
「あ、いえ、あの…うちの主人は、お酒は呑まんので」
なんだ、旦那は下戸か。ならうちと馴染みがないのも頷ける。
釣銭を渡し、礼を言おうとすると、
「あの…」
「はい?」
「出雲錦は…」
「は?」
なんだ?出雲錦?
一瞬考えて、島根の酒だと判った。大きな眼が、何かを言いたげに、じっとこちらを向く。
「ええと…」
「あの、いえ、やっぱりええです。ありがとうございました」
客人は慌てて買ったばかりの買い物籠に、醤油の一升瓶と漬物を入れると、店を出た。
「ああ、ありがとうございました。またどうぞ、ご贔屓に」
こちらも店の外に出て見送る。「村井夫人」は少し歩くと、律儀にもこちらを振り返り、深く頭を下げた。長い髪がばさっと、肩で揺れる。
体を起こすその拍子に、籠と鞄を持ち直して体勢を整えたのが判った。
「あれ持って、下野原まで帰るのかねえ…」
勘定場で見せた、縋るような眼を思い浮かべた。里が島根なのだろうか。それとも父親の好みの酒なのか。
(旦那着いて来てやれよ。新婚だろうが)
アーケードを潜って遠ざかる細身の背中に、葱を入れた白い鞄が揺れているのを、私はいつまでも眺めていた。
453名無しさん@ピンキー:2011/03/28(月) 01:49:54.16 ID:iH3pz0DI
こんなのでスレ消費してすみません。続きを考えてはいますので、また投稿するかも。
お読み頂き、ありがとうございました。
454名無しさん@ピンキー:2011/03/28(月) 05:56:19.85 ID:oSCgUhhZ
>>451
初投下GJです!
フミちゃんってあぶっなかしくて、天然で
でも一生懸命なのが伝わってきて見てるこっちがはらはらドキドキ。
そこがかわいいんですが。
すずらん商店街の住人視点でとても面白かったです!
また投下してくださいね。
455451:2011/03/28(月) 21:15:38.16 ID:iH3pz0DI
すみません、最後に「終わり」とか入れるの忘れました…

>>454
レスありがとうございます。ゲゲゲワールドの住人達を「すずらん商店街物語」の登場人物だと思って観ると、
また凄く面白いんですよー。ゲゲゲスタッフすげぇ!って改めて思います。
(個人的にはその目線で観たお陰で、とある部分の時系列を勘違いしてたのに気付けました)
如何せんエロは絡められませんが…
456名無しさん@ピンキー:2011/03/29(火) 00:46:14.74 ID:Q63aQqH8
>>451
初投下乙!斬新な視点だな!
新婚当初の布美ちゃんの戸惑いと、ちょっとした照れが出ててイイ!
最近スレの賑わいが復活してきて嬉しいな〜。
457名無しさん@ピンキー:2011/03/29(火) 03:50:38.18 ID:Q3u2SULm
乙! おもしろかった
書き手さんってすごいなあ

TVnaviを見たらふみちゃんもゲゲも青い服を着てて
なんだよおまいらニヤニヤ と思ってたら、
隣ページの浅野温子の服も青かったよ
458名無しさん@ピンキー:2011/03/29(火) 03:54:37.03 ID:Q3u2SULm
ああ、放送開始一周年だ!
長かったような早かったような…
ここまでハマるとは思わんだった
このスレにも出会えてしあわせだ(*´∀`*)
459名無しさん@ピンキー:2011/03/29(火) 18:52:52.55 ID:CczXdOYf
一周年オメ!

>>458
自分も朝ドラ見て萌えまくる日がくるとは思わなかったw
二人と、このスレに出会えて幸せ

>>457
最後の一行ワロタw
460名無しさん@ピンキー:2011/03/30(水) 00:23:09.43 ID:/9vzHABI
遅ればせながら一周年おめでとう!
こんなに可愛い夫婦を愛でられて幸せだ

>>451
乙!言葉の隅々から本編が垣間見れて読んでてとても楽しかった
馴染みの銘柄に故郷を求めるふみちゃんが切なくも可愛いですなー
461名無しさん@ピンキー:2011/03/30(水) 10:55:06.88 ID:YyqsJmHg
いちせんパロですので、興味のない方はスルーでお願いいたします。

ずっと以前のレスで、綾子と布美枝が入れかわり・・・というネタがあったので、
偶然コラボを考えていた自分はちょっとドッキリしました。
このお話では、フミちゃんはTVの中にしか出てこないんですけどね。

放送開始から一年が経つんですね。ここに出てくるのは第六週ですが、あの
神週連発の日々をなつかしく思い出しつつ・・・。
462ふたりの女房1:2011/03/30(水) 10:56:09.92 ID:YyqsJmHg
 朝食の後かたづけをすませ、綾子はTVの連続ドラマに見入っていた。かたわらの
祐一は、早朝の仕込みをすませ、朝食後のひと休みに新聞を読んでいる。
朝九時から開店しているせんべい屋『ささき』の一日が始まる前の、ちょっとだけ
ほっとする時間だった。
 ドラマの中では、ヒロインがかっぽう着姿もかいがいしく、せっせとガリ版で
夫の漫画のファンクラブの会報を印刷し、製本している。その手際を、めずらしく
夫に誉められ、純情なヒロインが有頂天になる様がかわいらしい。
「・・・こんな亭主のために、よくがんばるよな。」
いつの間にか新聞から目を離していた祐一がつぶやいた。
「え・・・私はこの男優さん、ゆうちゃんにちょっと似てると思うんだけど・・・。」
「俺は、こんな亭主関白じゃないだろ?」
てっきり見ていないものと思っていた祐一が、意外に話を把握していることに
綾子は驚いた。
「それより、この奥さん、いいよな・・・。ちょっこし、綾子に似とる。」
祐一が、綾子の顔を見ながら、ドラマの口調を真似て言った。
(見てないような顔して、しっかり見てるじゃん。)
綾子はなんだかおかしくなったが、自分がこのドラマのヒロインに似ているなどと
今の今まで思ってもみなかった。
(私は、こんなにけなげな奥さんじゃないけどな・・・。)
ドラマの中のヒロインは、時代が違うとはいえ、会ったばかり同然の男性と見合いで
結婚するという、綾子のような現代女性には信じられない人生を歩んでいた。だが、
引っ込み思案なヒロインが、与えられた暮らしの中で懸命に生きていく姿に、
朝のニュースからの流れでなんとなく見ていた連続ドラマだったけれど、このごろでは
欠かさず毎日見ないではいられなくなっていた。
463ふたりの女房2:2011/03/30(水) 10:57:00.50 ID:YyqsJmHg
(ここで、私にできることって、何かなあ・・・?)
綾子が祐一と結婚し、下町のせんべい屋「ささき」の若女将になってから、
一ヶ月あまりが過ぎた。六年前、学生だった祐一と綾子は、バイト先の居酒屋で
出会った。バイトの先輩である祐一は、新米の綾子にビシビシダメ出しをし、
綾子は綾子でそれに反発・・・。相性最悪に見えたふたりは、いつしかお互いが
最も気になる相手になっていた。祐一が大学を卒業すると同時にふたりは
つきあいだしたが、家業のせんべい屋を継ぐため修行中の祐一が、綾子に正式に
プロポーズしたのは、つきあい始めてから三年後のことだった。
 先代である祐一の父は病にたおれ、母はその看病にかかりきりのため、「ささき」の
経営は実質若夫婦にまかされていた。
 祐一は修行を始めてから四年経ち、もう一人前のせんべい職人としてあぶなげはなく、
経営も順調だった。綾子は家事のかたわら店を手伝っているが、まだいまひとつ
何をしていいかわからず戸惑っていた。昨日も常連客の好みを覚えていなくて
さんざん嫌味を言われたり、山葵せんべいの「山葵」が読めない女子高校生たちに
試食を勧めてもかわされたり・・・。

 自分は、祐一の役に立っているのだろうか・・・?新婚旅行から帰り、ようやく
新生活にも慣れて日常が戻ってきたとたん、何をしていいかわからなくなってきた。
「・・・まだ一ヶ月だもん。考えてないで、仕事仕事!」
一足先に工場へいった祐一を追って、綾子も階下へ降りていった。
464ふたりの女房3:2011/03/30(水) 10:57:43.78 ID:YyqsJmHg
 その夜。綾子が二階の夫婦の寝室の引き戸を開けると、祐一はもう布団にもぐり
こんでいて顔が見えなかった。
(ゆうちゃん、もう寝ちゃったのかな。最近、寝不足気味だったから・・・。)
 このところ、祐一は仕事のことで考え込むことが多く、夜も熱心に新製品の開発や
現行の商品の改善に取り組んでいる。今日はせんべいを焼く器械の調子が悪く、
明日の仕込が大幅に遅れ、祐一は遅くまで仕事をしなければならなかった。さっき
ようやく遅い夕食をとると、ざっと風呂に入って寝室に行ってしまった。
 夕食の片づけをすまし、風呂に入ってから寝室に来た綾子は、祐一がおやすみの
あいさつもせず寝てしまったことをちょっと寂しく思った。
(おやすみのキスくらい、してくれたっていいのに・・・。)
綾子は、入りかけた布団から出ると、祐一の顔を隠している布団をそっとはぎ、
目を閉じて唇を寄せた。
「きゃっ・・・!」
寝ているとばかり思っていた祐一にガバッと抱きしめられ、綾子は悲鳴をあげた。
何か言い訳したくても身動きもさせてもらえず、じたばたする。
「眠れないの?・・・綾子。」
腕をゆるめられ、やっと顔をあげると、祐一のからかうような笑顔があった。
「・・・だって、おやすみのキスもしてくれないんだもん。」
綾子がそう言うと、祐一が下から軽くキスをした。
「・・・んじゃ、おやすみ!」
(ええ〜?)
綾子の物足りなそうな顔を引き寄せて、祐一がもう一度ゆっくりキスをした。
・・・唇が離れると、ふたりとも真剣な顔になって、今度は深く口づけあった。
「んん・・・ふぅ・・・ン・・・。」
口づけながら、祐一の手が下から綾子の胸を愛撫する。綾子は自分の内なる泉が
早くもあふれ出すのを感じながら、溶かされていった。
 口づけと愛撫を繰り返しながら着ているものを脱ぐと、肌と肌をかさねて
抱き合った。ぎゅっと肩を抱かれ、寄せられた乳首を祐一の右手の長い指が
同時にさいなむ。深く口づけあっている綾子ののどがせつなげにあえぎを漏らした。
唇を離すと、片方の乳首を吸いながらもう片方をいじり、さらに右手は綾子の
しげみの奥をさぐり、敏感な粒をもてあそんだ。
「ん・・・や・・・ぁ・・・ぁぁん・・・。」
最も感じるポイントを同時につかれ、綾子の全身を戦慄にも似た快感がつきぬける。
祐一の右手が綾子の手をとって反り返る男性をにぎらせた。手の中のたしかな量感が、
これからつらぬかれ、確実に導かれる絶頂を予感させ、綾子を息苦しくさせる。
 祐一が起き上がって、綾子の身体をうつぶせにさせる。腰を持ち上げられ、さっき
確かめさせられた昂ぶりをつきつけられる。一気に、ではなく、じりじりと
捻じ入れられ、苦しいほどの充実に声も上げられず、綾子はうめいた。
「あや・・・すごく快いよ・・・しめつけてくる・・・。」
背中におおいかぶさり、祐一が綾子の耳を舐めるようにしてささやいた。
 恥ずかしい格好をさせられて下を向いた乳房を、祐一の右手が揉みしだいた。
くさびを打ち込まれた秘部からの快感が全身をおかし、さらに祐一の手指に
与えられる愛撫がそれを増幅する。綾子は、自分の心と身体のすみずみまでも
祐一の存在に浸透され、支配される感覚に身をまかせた。 
465ふたりの女房4:2011/03/30(水) 10:58:38.57 ID:YyqsJmHg
「あぁっ・・・あぁ・・・ん・・・ゆうちゃ・・・ん・・・ゆ・・・うちゃ・・・ぁぁ・・・ん・・・。」
綾子が祐一の名をを繰り返し呼ぶ声も止まらなくなっていく。祐一は綾子の身体を
後ろから抱きしめ、首筋に、耳に、熱く口づけながら身体全体を揺すぶった。
「あっ・・・あぁっ・・・ぁあああっっ―――――!」
祐一に顔を見られないですむのをさいわいに思うほどみだらな表情をさらし、綾子は
枕をにぎりしめ、声をあげて身も世もなく達した。
 祐一を奥へ奥へと引き込むような綾子のなかの運動が、真の絶頂を如実に伝えてくる。
そのただ中にほとばしらせたい衝動を唇をかんでこらえ、そっと自身を引き抜くと、
震えている綾子の身体をやさしくあおむけにする。脚を広げさせると、達したばかりの
中心部に、まだ勢いを失わないもので再び侵入した。
「んん・・・や・・・ぁあ―――――。」
「あやは、このかたちが好きだろ・・・。」
祐一もたかまる快感に耐えながら、綾子の耳元でささやいた。愛を交わすように
なってから月日がたち、祐一にどんな形で愛されても深い悦びを得られるように
なっている綾子だけれど、最後は正常位で抱きしめあいながら一緒に登りつめるのが
好きなことを、祐一はよくわかっていた。
(だって・・・一番、愛しあってるって感じがするんだもん・・・。)
口づけを待ち焦がれ、綾子は手を伸ばし、祐一の首に腕を巻きつけて引き寄せた。
涙でぼやける目に、いとしい人の顔が近づいて、目を閉じ唇を重ねあわせる。
 さっきまでの容赦のなさとはうって変わって、祐一はただ全身の感覚を解き放って
温かい綾子の海の中に溺れるような錯覚を味わっていた。綾子がゆるゆると
自分のところまで下りてくるのを待って、またゆるやかに責め始める。
 どこもかしこも過敏になって、すぐにでも祐一の腕をすりぬけてしまいそうな綾子を
つかまえ、リズムを早めていく。
「はぁっ・・・あ・・・ん・・・あぁ・・・ん。ゆ・・・ちゃ・・・。」
綾子が背中にまわした腕に痛いほどの力がこもる。脚が祐一の脚にみだらにからんで
腰を揺すり、祐一の与える律動に呼応するのは、もう無意識のことだった。
「あぁ・・・あ・・・あぁぁ―――――!」
飛び立とうとする綾子を抱きしめ、祐一もその身体の奥深く精を放った・・・。

 結婚してから変わったことのひとつが、愛し合うとき二人の間に介在していた
薄い膜がなくなった事だった。結婚してから、ふたりは子供を持つことを考え、
話し合ってそれを使うことをやめたのだ。
 いつまでも恋人同士でいたいという気持ちもあるけれど、ごく自然に授かれる
ものなら、いつでいいという思いもあった。祐一を直接感じ、彼の熱情を最奥に
浴びせられる時、綾子は結婚して初めて味わう幸福感に満たされた。
466ふたりの女房5:2011/03/30(水) 10:59:27.44 ID:YyqsJmHg
 綾子の熱い柔肉につつまれ、その中に解き放った祐一は、しばらくはめくるめく
感覚に身をまかせ、口もきけず綾子の上に突っ伏して荒い息をついていた。
やがて少し息がおさまると、顔をあげて綾子を見た。ゆっくりと目を開けた綾子は、
長いまつげが涙の粒で飾られ、その瞳は夢見るように祐一をみつめた。
 祐一はしどけなく半開きになった唇をふさぐように口づけた。口づけながら、
そっと身体を離すと、ふさがれた綾子の唇がわずかにうめきをもらし、身じろいだ。
祐一は紙をとってまず自分を清めてから、ぐったりと横たわる綾子の脚を少しだけ
開かせて、綾子の秘所にこぼれた自分の欲望の残滓を確かめ、ぬぐい始めた。
「や・・・見ない・・・で・・・。」
綾子は手で祐一の視線をさえぎり、脚を閉じようとしたが、祐一がこの行為を
するのはもう恒例になっているようで、抵抗はあまり長く続かなかった。
「・・・理解できないかもしれないけど・・・好きな女に自分の痕(あと)が残ってるのを
 見るのって、男にとってはたまらないんだ。・・・オスの本能ってやつかな。」
自らの放ったものを両脚の間からこぼす綾子の姿にかきたてられ、祐一は激しい
いとおしさと独占欲をつのらせた。
「・・・いつ、来てくれるかな?」
祐一が、綾子の平らな下腹を撫でながら言った。愛し合い、注がれることで
新しい命が生まれる・・・不思議な気持ちがして、綾子は祐一の手に自分の手を重ねた。

 恥ずかしい時間を耐え、寝巻きをつけた綾子は、祐一と並んで布団におさまり、
愛された後の心地よい疲れに身をゆだねていた。
「・・・ねえ、ゆうちゃん。」
「ん?」
「いつか、子供にこの店を継いでほしい?」
「うーん・・・。それはそいつの意思しだいだな。」
「そっか・・・。」
「俺だって、親父やお袋に継げって言われたことないし。なんか自分の中で
 この仕事をやりたいって気持ちが二十年かけて育ったって感じなんだ。」
「ふーん。」
「それより、俺たちの代で何が出来るか?ってことの方が大事だよ。子供は、
 その姿を見て何かを感じてくれたらいいと思うんだ・・・。」
祐一は、頭の後ろで組んでいた両腕をうーんと伸ばし、あくびをした。
「明日もあるし、寝よ寝よ!」
そう言って目を閉じた祐一は、本当にすぐに寝息をたて始めた。うらやましいぐらい
寝つきのいい夫の寝顔を、薄闇の中で綾子はいつまでもみつめていた。
(ゆうちゃん、将来のこととかちゃんと考えてるんだなあ・・・。)
祐一はこの家に生まれ、小さい頃から自分の将来について自問自答してきたのだろう。
飛び込んだばかりの綾子と違うのは当たり前だった。
(『俺たちの代で何ができるか?』・・・俺 た ち ・・・って言ったよね?)
祐一が、綾子を同志のように考えてくれているのが嬉しかった。
(私にも、何かできるかな・・・?)
答えはまだ浮かばないものの、綾子は胸の中に何かが芽生えるのを感じていた。
467ふたりの女房6:2011/03/30(水) 11:00:26.06 ID:YyqsJmHg
 金曜日。綾子は夕方から行われる同級会に出るため、午後から実家に帰った。
祐一はゆっくりしてくるように言ってくれたけれど、綾子は土曜日の昼ごろ帰ってきた。
「ただいまー。ごめんね、ゆうちゃん。お店番やすんじゃって。」
「なんだ、今日いっぱいゆっくりしてくればいいのに。」
「だって、お店休みじゃないもん。あ、パスタ?おいしそう。」
「ん。ソースまだあるから、綾子も食べれば?」
 パスタを茹でるお湯を沸かそうとして、ふとTVが目に入った。あのドラマの
昼の再放送の最後の場面で、ヒロインが何やら不思議な踊りをおどっていた。
「あーーーっ!今朝見るの忘れちゃった!!!」
綾子はもともと朝のドラマの視聴習慣があったわけではないので、実家に帰った
とたん、のんびり寝坊してしまい、今朝は見るのをすっかり忘れていたのだ。
「どうしよう?土曜日に見ないといろいろ解決しないんだよね・・・。もう再放送
 ないし・・・。ゆうちゃん、録画なんてしてないよね?」
ドラマを見逃してくやしがる綾子を、祐一はパスタをフォークに巻きつけたまま
あきれて見ていた。
「・・・綾子ってさあ、もしかして総合しか見てないの?」
「え・・・?」
「このドラマって、一日五回やってるって知ってる?土曜日なんて一週間分の
 再放送合わせると六回だよ。」
夜の七時半からBSで再放送があると教えられ、綾子はほっとしたが、
「受信料払ってるんだからさ、もっと理解して使わなくっちゃ、ね?」
(もっと理解して使わなくっちゃ・・・かぁ。)
また祐一に笑われてしまった。冷静沈着で緻密な性格の祐一に失敗を指摘されると、
綾子は自分がすごく大ざっぱな人間のような気がして凹むのが常だったが、
再放送があることにはほっとして、パスタを茹で始めた。

 夜。夕食の後かたづけもそこそこに、綾子は朝見逃したドラマに見入っていた。
暑い夏の日、ヒロインは精魂かたむけて漫画を描く夫の背中を見て涙を流す。
夫のほんものの努力にうたれ、ヒロインもほんものの献身を決意する瞬間だった。
初めて筆をとり、夫の漫画のアシスタントをした夜。机を並べ、夜が白むまで
ひたすら描き続けるふたりの後ろ姿・・・。
『あなたの夢がいつからか、ふたりの夢に変わっていた・・・』最近、ラジオや巷で
よく耳にするようになったこのドラマのテーマソングには、TVでは流れない部分に
こんな歌詞があったことを思い出す。
(いいなあ・・・。)
ヒロインのまっすぐな生き方がうらやましかった。漫画という、今まで何の縁も
なかった世界に生きる夫に寄り添って、精いっぱい生きていく・・・。
(好きな人の一生の仕事だもん。うんと考えれば役に立てることあるよね?)
「女房」と言う言葉に古臭さしか感じていなかった綾子だけれど、なんだかすごい
言葉のような気がしてきた。なんとなくOL気分の抜けていなかった綾子にも、
せんべい屋「ささき」の主人、祐一の女房として生きる覚悟が生まれてきたのかも
しれなかった。
(ゆうちゃんが精魂こめて焼いてるおせんべい、お客さんにもっと知ってもらいたい・・・!)
綾子の中で、漠然としていた想いが、ようやく形をとりはじめた・・・。
468名無しさん@ピンキー:2011/03/30(水) 12:40:25.53 ID:lmsnyPEb
>>462
ゲゲゲ×いちせんコラボキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!
自分、入れ代わりネタ書いたものですが、すごく嬉しい!
GJです!

放送開始一周年、放送終了半年過ぎても、まだまだ熱いこの神スレに出逢えて
生きるのが楽しいー(*´∀`*)
ゲゲゲ大好きだ!いちせんも!
469名無しさん@ピンキー:2011/03/30(水) 20:31:38.20 ID:8K9WBr8K
>>462
いちせんいいですねー。めちゃめちゃ可愛い!GJです!!
祐一は綾ちゃんがゲゲを気に入ってそうなので、ちょっと妬いてると見ましたw

こんなエロ可愛いネタの後に何ですが、>451の続きです。橋木商店店主目線のお話
またエロなしゲゲなしでごめんなさい。ご興味のない方はスルーで。
と言うかほんとはしげーさん出す流れ考えてたんですけど、ゲゲゲワールドが深すぎて
辿り着けなかった…。続きを書けたら、次に出て来る予定です。ああゲゲ不足…
470祝いの湯呑み茶碗1/3:2011/03/30(水) 20:35:32.21 ID:8K9WBr8K
「ねえ、ねえ、橋木さん、知ってる?昨日ここで置き引きがあったの」
昼飯時が過ぎ、商店街が一時の静謐を取り戻した頃、隣の乾物屋「山田屋」のおかみが言った。
「ああ、そうみたいだね。そこの雑貨屋のお客がやられたとか」
私は昨日の下野原の新婚さんを思い浮かべた。
「その犯人捕まえたの、なんと美智子さんなのよー」
「えっ?『こみち書房』の?」
「そう。しかも警察に突き出さずに、そいつを店に置いてるんだって」
「はー、なんでまた…」
「さあ…。何か、いろいろ事情がある人なんだって、言うんだけど。美智子さんらしいっちゃらしいけどさ、でも相手は盗人よ?大丈夫かなあ…」
おかみは口を尖らせて、こみち書房があるほうを見やった。
「こみち書房」は田中という一家が営んでいる貸本屋で、この商店街から一本奥に入ったすずらん横丁にある。美智子というのはそこの女店主で、若い頃には活動写真の役者でもやっていたのかと思うような美人だった。
もっとも田中家といえば、少し前までは大衆食堂をやっており、本を読まない私にとっては、その頃のほうが馴染みがあった。看板メニューは唐揚げとポテトサラダ。うまかった。こう言っては何だが、アーチの向こうの食堂とは味の格が違う。
今では偶の買い物の時しか、顔を合わさない。酒の需要も多くない。田中の御亭主は「呑む」より専ら「打つ」男だった。
でも。
田中の御内儀は、月に一度は必ずうちへ来る。チョコレートやら、ガムやらを買いに。勿論、自身が食べる訳ではない。
私は、菓子類が並べられた棚を眺めた。
(品数増やしとくかな。子供が喜びそうな奴を)
そう、次の月命日までに。
しかし本当に大丈夫だろうか。あの置き引き犯、ほんのちらっとしか姿を見てはいないが、結構がたいが良かった。しかも妙に存在感があると言うか。
心配である。あそこの旦那は当てにならないし。
  ◆
山田屋に客が来て、おかみが店に引っ込むのと入れ替わるように、昨日の被害者、村井夫人がアーチを潜ってやって来た。
夕飯の買い物にはまだ早い時刻である。村井夫人は真っ直ぐ雑貨屋へ向かった。
(まさか、また置き引きなんかいないだろうな)
つい辺りを見回してしまう。今日は怪しい奴はいなさそうだった。
私が自分の店の客の相手をしていると、雑貨屋での買い物を終えた村井夫人が、再びやって来た。両手には品物をいっぱいに入れた紙袋を抱えている。
「こんにちは」
「いらっしゃい。昨日はどうも。今日は何か?」
「はい、あの、お茶の葉を。昨日買い忘れてしまって」
「ああ、それならこちらです。あの…」
「はい?」
大きな眼がじっとこちらを見る。私は何故だか、少々どぎまぎしてしまった。
「その…よかったらお預かりしましょうか、お荷物」
471祝いの湯呑み茶碗2/3:2011/03/30(水) 20:42:49.91 ID:8K9WBr8K
「え…」
村井夫人は大きな眼を更に見開き、私の顔と、膨れ上がった紙袋を、代わる代わる見比べた。
そして次の瞬間、破顔して言った。
「ありがとうございます。じゃあ、すんませんけど、これ、お願いします」
差し出した荷物を受け取ると、その細い指に、ほんの少し触れた。
かなりの重さだ。良くないとは思いつつ、つい紙袋の中身に目が行く。
フライパン、ざる、菜箸…。こんなものもないのか、村井という奴の家には。所帯を持つまでに、準備しておくものだろう、普通は。知らぬ土地へ嫁いで来たばかりの新妻に買わせるなんて。しかも一人で。
親も親だ。結婚なんて四、五日で決まるものじゃなし、花嫁道具くらいちゃんと用意してやったらどうなのだ。
ふと見ると、村井夫人は茶ではなく、店の隅に設えてある、食器用の陳列棚を眺めていた。
目の前に雑貨屋がある為、うちには食器の類はたいしたものはない。もう何年前に仕入れたか判らないような安物の和食器が、申し訳程度に置いてあるだけだ。
「これ、可愛ええですねえ」
それは女物の湯吞み茶碗だった。乳白色と薄茶色の二色に塗り分けられた釉薬に、桜の花びらの模様が、舞うようにあしらってある。
何の銘もない売れ残りの茶碗を、村井夫人は飽かず眺めている。私は彼女を喜ばせたくなり、その湯吞みをくるっと反転させた。
するとたちまち、花びらの模様が消える。
「わあ…」
「これ、角度によって模様が見えなくなるんです」
「面白い!違う湯吞みみたい…」
村井夫人は、零れるような笑顔を見せて言った。
そして私は、気付いた時にはもう、こう言ってしまっていた。
「よろしかったらそれ、差し上げますよ」
「えっ!?」
彼女は眼をまん丸にしてこちらを見た。
「ああ、ご主人の分もご一緒に。ご結婚のお祝いです」
「そげな…。昨日お会いしたばかりの方に、そげなこと、していただく訳には…」
「いいんです、お近づきのしるしも兼ねてってことで。その代わり、今後とも当店をご贔屓に」
私は自分に出来る最大限の優しい顔を作った。おそらくはここ数年、女房にさえ見せたことのないような顔を。
「ええんですか、本当に…」
「勿論。さあ、ご主人の分も、どうぞ選んで」
私は、まだどうしたらいいか判らないという顔をしている彼女を、強引に促した。村井夫人はぴょこっと頭を下げると、今度は男物の湯呑みの列を覗き込んだ。
一つ一つ手に取り、長い時間をかけて、じっくりと眺める。真剣な表情だ。
結局彼女が選んだのは、青色で深筒の湯吞みだった。
「あの、そげでしたら、お言葉に甘えて、これ」
村井夫人はおずおずと、二つの湯吞み茶碗を、勘定場に並べた。
そして、しばらくそれらをじっと見つめる。堅く、口を結んで。
472祝いの湯呑み茶碗3/3:2011/03/30(水) 20:49:19.92 ID:8K9WBr8K
「ご結婚おめでとうございます」
私が不意に言うと、驚いて顔を上げた。
「…」
「割れないように、しっかり包みますね」
「あ、はい。ありがとうございます…」
言葉の最後のほうは、もうよく聞こえなかった。
祝いの言葉を、言ってよかったのだろうか。
初めての街を、不安げに歩く姿。鍋や釜すら、ないような新居。
隣に寄り添ってくれるのだろうか、その村井という男は。この湯吞み茶碗のように。
「あっ!」
村井夫人は急に声を上げた。
「な、何ですか?」
「お茶の葉、買わんと!」
ばたばたと、店の奥へと急ぐ。
「こっちの分は、ちゃんとお金、払いますけん」
慌てて茶を選び出した彼女の横顔を見ていると、自然と暖かい気持ちになった。
湯吞み茶碗を、丁寧に包む。花びらの模様が、古新聞の下に消えていく。
もう少ししたら、この街にも本当の桜が咲くだろう。その頃には、どうか心からの笑顔が見られますように。
私は祈らずにはいられなかった。
  ◆
そろそろ夕刻。
もうじきかなと、アーチのほうに目をやる。
無事に茶を買った村井夫人は、夕飯の買い物にもう一度来ると言い残して帰った。昨日買いそびれた大根と蜆を買うのだと。
ご苦労なことだ。下野原と小石町を一日二往復である。
遅くなるようなら、私が送ろうか…などど考えていると、馴染みの親子がアーチの向こうからやって来た。
夫婦と子供二人。浴衣に、濡れた髪の姿。この商店街の向こうへ風呂に通っているらしく、よく見かける家族だった。もっとも、あちらのほうに風呂屋なんてあったかな、といつも思うのだが。
「すんませーん、コーラ一本」
旦那が小銭を出しながら言った。
「いらっしゃい。コーラ一本ですね」
「あなた、駄目ですよ、コーラなんて。甘いものは子供達の歯に悪いって、お義母さんが…」
奥方が、慌てて制した。ちなみにこの奥方は、どこぞの歌劇団のトップスターだと言ってもおかしくなくらいの美女である。
旦那はその手を振り払うと、
「ええんだ、ええんだ、黙っとりゃ判りゃせんわ。…おい、健太に波子、仲良く飲めよ。おばあちゃんには言うなよ、ええな」
「うん!わーい、コーラだ!」
「コーラ大好き!」
私は奥方の顔を見ないようにして、コーラの瓶を旦那のほうに渡す。
「…もう、何かあった時、言われるのは私なんですよ…」
奥方はまだぶつぶつ言っている。よっぽど姑に悩まされているのだろう。
そろそろ日が傾きかけてきた中を、その家族は、商店街を抜けた先にあるという自宅へ向かって、一本のコーラを分け合って飲みながら、帰っていった。

終わり
473名無しさん@ピンキー:2011/03/31(木) 01:08:03.21 ID:lAa+u+Fb
>>462
いちせんGJ!ゲゲにはできない三点同時攻撃エロいよ、祐ちゃん!
そしてお前は○HKのまわしもんかというほどの解説ぶりにワロタw何気に綾ちゃんより詳しいじゃねえか。

>>470
細かい描写に感嘆です。細部にわたってドラマのあれこれが拾われててスゴス。兄貴一家w
ちょいと老婆心ですが、投下のタイミング的に直前の職人さんにも少し気を遣われたほうが良かったかも。
474名無しさん@ピンキー:2011/03/31(木) 05:42:22.35 ID:bpTXeZR5
>>470
続き待ってました!
おなじみの顔がどんどん出てきて楽しい。
ゲゲの登場がどんなのかwktk

475名無しさん@ピンキー:2011/03/31(木) 18:54:40.86 ID:Zk5SAg6s
>>462
いちせん夫婦!GJ!
寝込みを襲おうとしたりふみちゃんを通して目標を見つける綾子さんかわいいよ綾子さん
ゆうちゃんの協会からの回し者っぷり吹いたwそしてそこはかとなく助平で素晴らしいw

>>470
またも本編の色んなエピソードが垣間見れる作品だんだんです
兄一家にワロタw
476名無しさん@ピンキー:2011/04/01(金) 00:48:22.84 ID:ggFhDoMG
>>462
いちせんパロすごすぎ!
最高!

なぜかこの前、大倉孝二と抱き合ってる夢みた…
かなりわけわからん夢でしたw
ちょいエロの夢見るのは、
このスレの影響ですよねw
なぜに兄…
関係ない話すみません
477470:2011/04/01(金) 19:38:19.75 ID:nEVYr4qf
>>473
あわわ、ごめんなさい。おっしゃる通りです…

「橋木商店店主話」は一話と二話で既に整合性が取れていない…という反省点を踏まえ(笑)
或る程度書き溜めてから順次投稿していきます。お読みくださっている方は、しばしお待ちを…
478名無しさん@ピンキー:2011/04/01(金) 21:12:40.54 ID:kpcO/hiw
>>477
気長にお待ちしております(*^_^*)


奈緒ちゃんの新CMが美しすぎる。
特にアーモンド型の大きい瞳が魅力的だ。
このスレのSSでも度々フミちゃんの美しい瞳が
エピソードとして出てきてましたね。
甘い褥の中であの瞳に見つめられたら、しげぇさんもたまらないだろう(*゚∀゚)=3
ちなみにむかいりのCMはさわやかすぎておとうちゃんなにやってんのっ!!と
恥ずかしくなってまともに見れないw
479名無しさん@ピンキー:2011/04/01(金) 23:59:38.63 ID:sg/NJQHC
布美ちゃんのCMってマーガリン(?)のやつだよね?指舐める仕草とか、衣装とかエロいよねw
480名無しさん@ピンキー:2011/04/02(土) 17:03:48.90 ID:uSS8qAZO
ふみちゃんの中の人のエロ目当てで見た亜細亜ンタムブルーでボロボロ泣いてしまった…
りゅうちゃんをゆうちゃんに脳内変換してたのも原因かもしれんw
481名無しさん@ピンキー:2011/04/03(日) 23:47:19.34 ID:wViZ3uWM
朝ドラ特番の名場面祭でやっぱゲゲゲは良いなぁと改めて思った
ほんと夫婦かわいい

>>478
あの瞳が潤んでしげぇさんを見つめるのを想像するとグッとくる
あとむかいりのCMで照れるの、すごいわかるwww
482名無しさん@ピンキー:2011/04/04(月) 13:07:36.31 ID:E68ypntT
またまた「橋木商店店主目線の話」です。三回分くらい書き溜まったので、とりあえず。
その後の話と矛盾が出ないか、びくびくもんですがw
相変わらずエロは全くないので、興味ねえ、と言う方はスルーで。
でも、しげーさんはちょっこし出てきます。やっとw
483東風解凍1/4:2011/04/04(月) 13:16:33.21 ID:E68ypntT
春の気立つを以って也、か。
日に日に暖かくなっているような気がするが、ただそんな気がするだけのような気もする、中途半端な時期だ。野の花は、どうやら咲き始めているらしいが。
見慣れない男が二人、商店街にやって来た。一人が小さな紙切れと地図を見比べている。
「ここが小石町か…。ゲゲの奴、駅からえらい遠いところに住んどるなー」
安物の背広とシャツ。妙ににやけた、見るからに怪しげな男である。
「大丈夫ですかね。実は私、今夜泊まるところもないんですよ」
「大丈夫、大丈夫。この私にお任せを。奴とは無二の親友、竹馬の友なんですから。…ただですね、私が中森さんからこちらを頂いてることは、奴には言わんでください。何かと面倒ですから」
その男は胸の前でこっそり、人差し指と親指で丸を作ると、もう一人の男の肩をたたきながら言った。
「はあ…」
連れの男は小柄で色白、人は良さそうだが、ふっと消えてしまいそうな儚さがあった。何処か体でも悪いのだろうか。
不思議な組み合わせの男達は、アーチの向こうに消えていった。
  ◆
その翌日。
午後、まだ早い時刻。
珍しいことに「あの男」が、うちの店にやって来た。
「あー、すんません」
「いらっしゃい、何か?」
「はあ、えーっと…」
きょろきょろと店内を見回し、菓子類の棚を見定めて言った。
「ちょっこし見せてもらっても、ええですか」
「はい、どうぞ。ご自宅用で?」
「はあ、まあ、菓子でも、と思って…」
見上げるほど長身の体を、窮屈そうに屈めて、棚を覗き込む。
品定めをしながら肩が上下するたび、体の片側にぶらさがる左袖がゆらゆらと揺れた。
この界隈で、よく見かける男。この男には、左腕がなかった。理由は知らない。
そもそも私は、どうやら近くに住んでいるらしい、そして東京の育ちではないらしいということ以外、この男のことを何も知らなかった。
商店街を、近くの野川沿いを、ふらふらと歩いていたり、自転車を走らせている姿を、しょっちゅう目にしていたが、それだけだった。いや…それだけではないか。
だが店に来るのは年に数回程度。ミセススミスのクッキーを一箱だけ買っていったのは、去年のいつ頃だったろう。
だからまあ、この男がどんな奴だろうが、どうでもよかった。絶対まともな勤め人ではないな、と思ってはいたが。
484東風解凍2/4:2011/04/04(月) 13:25:14.25 ID:E68ypntT
またクッキーでも買うつもりなんだろう。心なしか少々うきうきしているように見えるが、何かいいことでもあったのかも知れない。
「待てよ、菓子より、ラジオのほうがええかな…」
男はぶつぶつ言いながら、何事かを考え込み出した。残っているほうの手で、くしゃくしゃの頭をぽりぽりと掻く。
「なんか歌、歌うとったしな。気も紛れるだろうし…。そっちのほうが、気に入るかも知れん…」
(買わないなら、帰ってくれよ)
そんなことを思いながら見るでもなく、男を見ていると―。
「…!」
突然、何かが心に引っかかった。
思わず、男の横顔を凝視する。
いつも見かける、ただのご近所さんだった。様子はいつもと少々違うようだが、だからどうだということはない。ないのだが…。
こちらの視線に気付いた男が、不思議そうに顔を向ける。
「なんです?」
「いえ…」
何だろう。自分でもよく判らない。
だが、何かが気になった。何か大切なことを、忘れているような。
「橋木さん、お酒、選んで欲しいんだけど」
そこへ馴染みのご婦人がやって来た。手繰ろうとして掴んだ思考の糸が、ぷつんと切れる。
「あ、はい、お味はどんなのが…」
客の相手をしながら、どんどん考えが散らばっていった。男の姿は、視界の端のほうに追いやられる。
「うーん、関西からお客様がいらっしゃるんだけど…」
「ご主人、やっぱり、今日はええですわ。どうも」
振り向いた時には、もう店内にあの男の姿はなく、妙にはしゃいでいるように聞こえる足音だけが、遠ざかっていった。
  ◆
夕飯の買い物客が増え出した頃には、私はもう、そんなことはすっかり忘れ去っていた。
人ごみの中を、村井夫人がやって来るのが見えた。今日は特に元気がない。
肩を落とし、俯いて、のろのろと歩いて来る。
「こんにちは!」
元気付ける意味も込めて、私は明るく声を掛けた。気付いた彼女が、顔を上げる。
「…」
大きな眼が、虚ろに揺れている。
泣いていないのが、不思議なくらいだった。
「あ…、こんにちは…」
無理に笑顔を見せようとしているのが、余計に痛々しい。
私は、次の言葉が見つからなかった。
村井夫人は買い物もせず、空の籠を膝に置いて、ベンチに座り込んでしまった。
こちらに背を向けているので、顔は見えないが、力なく俯いた後ろ姿が、心を雄弁に語っている。
何か、よっぽどつらいことがあったに違いない。
強い風が吹きつけ、長い髪を舞い上がらせる。
どれ程冷たく感じているだろう。暦の上では、昨日からもう、春だというのに。
どのくらいの間、そうしていたろうか。村井夫人は、ふと顔を上げ、何かに目をとめた。
立ち上がり、吸い込まれるようにそちらへ行く。手を伸ばしたのは、魚屋「魚調」の向かいの店の前にある、赤電話だった。
縋るように赤い受話器を握る。故郷へでも、電話をしているのだろう。
その姿から、私は目が離せなかった。
485東風解凍3/4:2011/04/04(月) 13:33:15.10 ID:E68ypntT
一旦横丁のほうへ姿を消した後、再び商店街に戻って来た村井夫人は、少々元気を取り戻したらしく、意外にもかなりの量の買い物をして、帰っていった。
アーチを潜って商店街に来た時には、そんな気力はないのではないかと思われたが、案外しぶといのかも知れない。
日が暮れ、あちこちの家から夕餉のいい匂いがしてくる頃、私は閉めた店の中で、ずっと彼女のことを考えていた。
旦那に、何かきついことを言われたのだろうか。
それとも姑か。いや、包丁やまな板すらないような家に、他に女手があるとは思えない。
だが同居していなくても、嫁に嫌味のひとつくらい、きつい姑なら言うだろう。あの風呂屋通いの一家も、お姑さんとは一緒に住んではいないようだった。
帳簿をつける作業が、いっこうに進まない。
「出雲錦、出雲乃神、雷出雲…」
不意に背後から女房の声がした。私の肩越しに、手元を覗き込んでいる。
「なっ、なんだ、お前…」
「あんたこそ、どうしたの。ぼーっとして」
「いっ、いや、べっ、別に…」
慌てて算盤に手を伸ばす。
「それに出雲、出雲って、何よ、急に。縁結びの神様への願い事でも、出来た訳?」
「は?」
言われて初めて気付く。いつの間にか私は帳簿の隅に、島根の酒の銘柄を書き出していた。
「いっ、いや、これは、その…。ちょっ、ちょっと、散歩して来る」
様子を不振がる女房から逃げるように、席を立つ。首を捻りながらも店内の片づけを始めようとする女房の姿に、思わず声を掛けた。
「なあ、お前」
「はい?」
結婚した頃、つらいことはなかったか―?
「いや、何でもない」
そんなこと訊けるはずもなく、私はそそくさと家を出た。
486東風解凍4/4:2011/04/04(月) 13:42:44.23 ID:E68ypntT
散歩などと言って家を出たが、行くあてもなく、取りあえず駅のほうへ足を伸ばす。
結婚した頃…か。その頃私は、親父から商売を任され始めたばかりで、一日中店のことばかり考えていた。女房がどんな様子だったかなど、全く覚えていない。
(あいつもあの赤電話から、こっそり実家に電話をしたことの一度や二度、あったのかも知れないな)
ぶらぶらと駅まで来た。夜とは言ってもまだとば口、駅前はさすがに人の往来が絶えていない。
「あっ!」
切符を買う客の中に見知った顔があった。あの置き引き犯である。
「ちょっと、あんた…。『こみち書房』にいるって…」
思わず肩を掴んで、声を掛けてしまった。が、よくよく考えたら、この男は私のことを、知らないはずであった。
「へっ?」
案の定、男は細い目を見開き、きょとんとした顔で私を見つめる。
「いや、その、私は『すずらん商店街』の者なんだが、あんた、その…」
「ああ、もしかして、旦那は私のやらかしたこと、ご存知で…」
意外にも彼は、かなり腰の低い男だった。
「いやー、お恥ずかしい。出来心とは言え、本当、面目ないです。貸本屋の奥さんにも、随分ご迷惑をお掛けしちまって…」
「はあ…」
「せっかく機会をいただいたんで、今度こそやり直すつもりです。あそこの奥さんには、原田が感謝していたと伝えてください。あと…あの、私がバッグを盗った女性にも、申し訳なかったと」
話はよく見えなかったが、何となく想像は出来た。田中夫人がすることであるし。
男は、何度もお辞儀をしながら、改札を抜けていく。もう二度と会うことはないだろうが、原田という名の置き引き犯は、忘れがたい存在感を残し、去っていった。
  ◆
その後。状況は一変した。
いや、このすずらん商店街の毎日は、相も変わらず続いている。八百屋や魚屋の声が響き、そこに馴染みの買い物客が集まる。朝と午後には、ランドセルを背負った子供達が行き過ぎ、ベンチで憩う人々の口には、世間話の花が咲いている。
だが、そこにやって来るあの下野原の新しい住人の表情が、別人のように明るくなった。今となってはあの時の、電話を掛ける頼りなげな後ろ姿が、嘘のように思える。
何があったのだろう。変わったことと言えば、買い物に自転車で来るようになったことくらいだが。
数日そんな彼女の様子を見た後のある日、帰ろうとする村井夫人に声を掛けてみた。
「やっぱりいいですか、自転車は」
「えっ!?」
村井夫人は、あの印象的な大きな眼で、驚いたように私を見つめ、そして次の瞬間、にっこりと微笑んでこう言った。
「はい、ええですね、とっても」
視線を自転車に向け、愛おしそうにハンドルを撫でながら、呟くように続ける。
「大事にせんといけんですね。これからも、ずっと」
そして村井夫人は、頭を下げながらサドルに跨り、田舎道の向こうにあるであろう「我が家」を目指して、走り去っていった。
(よっぽどきつかったんだな、徒歩で買い物に来るのが)
頭の中でそう理由付けてはみるものの、笑顔の本当の理由は、きっと違うところにある―漠然とではあるが、私はそう感じていた。
アーチの向こうに消えていく、自転車に乗った後ろ姿を撫でる風は、確実に少し、暖かくなっていた。

終わり
487名無しさん@ピンキー:2011/04/04(月) 19:27:20.19 ID:3obF6Htb
>>483
橋木さん続きキタ!
ついにしげぇさんが出てきてくれましたね〜。
いつフミちゃんの旦那ってわかるのかなぁ、次も楽しみにしています!
488名無しさん@ピンキー:2011/04/05(火) 20:08:45.35 ID:ZDQhGEvp
>>483
少々うきうきしてるしげーさんと自転車を撫でるふみちゃんが可愛すぎる!
小ネタ満載でほんとすごい
489名無しさん@ピンキー:2011/04/05(火) 22:52:45.64 ID:RLdzaRQT
>>483
待ってましたgj!
細かい描写と
ゲゲゲヲタなら「あぁ!あの場面の頃ね!」って
思い出すエピが満載で
読んでて凄い楽しかった〜!
エロなくてもええですけん
続編期待しちょります!
490名無しさん@ピンキー:2011/04/06(水) 21:40:48.20 ID:AXzWzVYz
綾子さんがでかいとかバイト仲間にからかわれてるのを横目で見ながら
でも俺の前だけでは小さくなってかわいいんだよなとかニヤニヤするゆうちゃんがふと過ぎった
491名無しさん@ピンキー:2011/04/07(木) 00:36:05.10 ID:HslMWNp8
いちせんて1と2だけでも30分ないよな?つくづくここの住人の萌え妄想の豊かさに感心するw
492名無しさん@ピンキー:2011/04/07(木) 09:22:02.02 ID:+PaV6WIb
いちせん、われせん合計でも正味15分w
メイキングも好きだ
493名無しさん@ピンキー:2011/04/08(金) 11:29:44.73 ID:0+piXXdX
しつこいですが、全くエロなしの「橋木商店店主目線の話」です。
だからそんなのいらん、と言う方、すみません。完全スルーでお願いします。

今回はゲゲ回です。が、橋木の親父は今のところしげーさんに全く興味ないので
こんなふうになってしまいました。ゲゲすまん…。そのうち活躍させるよ。
ちなみに結構書き溜まっていまして、「源兵衛襲来」の回は力入りました。
あのこみちでの名場面はかけらも出て来ませんが、あの日は橋木さんにとっても
印象深い日になってます。
494隻腕の男1/3:2011/04/08(金) 11:40:28.86 ID:0+piXXdX
あの男の存在に初めて気付いたのは、いつのことだったろう。
数か月前?いや、一年以上前か。
とにかくしょっちゅう街中をぶらぶらしていた。昼夜関係なくである。そういえば朝方に見かけたことはない。
ある時気付いたのは、その男が、歩きながら、または自転車に乗りながら、やたらとぶつぶつ言っていることだった。
服はほぼ、着た切り雀、それにあの片腕。眼鏡を掛け、決して人相は悪くないが、はっきり言って胡散臭い。まあ、だからと言って、何か悪さをしたという話も聞いたことはなかったが。
今日も夕方頃、この商店街を通り過ぎていったのを、見かけたばかりである。
「どうもいけんなあ…」
「どうにも、ぱっとせん…」
などと言いながら、しきりに首を捻っていた。右手に持っていたのは、ぺんぺん草だったろうか。
世の中いろんな人間がいるものである。
  ◆
閉店の少し前くらいの時刻になると、一日の仕事を終えた若い工員達なども、店にやって来る。
この近くに寮がある製菓工場の従業員はお得意様で、顔見知りも多かった。
皆よくやっていると、つくづく思う。私などはここで生まれて育ち、隠居したとは言え、未だ健在の両親とずっと寝食を共にしている。若くして生まれ故郷を離れ、一人で都会暮らしをしつつ実家へ仕送りをするという生活の苦労は、私には計り知れない。
「真弓ちゃん、これ見て。うちの新商品、並んでる!」
「あー、本当だ。これ、おいしいよね。いろんな色があって、かわいいし」
「買っちゃおうかな、自分の会社のだけど」
「ねえ、小林さんはうちの商品だったら、どれが好き?」
真弓という女子工員が、たまたまうちに来ていた同じ会社の男子工員―太一に話し掛けた。どうやら彼らは知り合いらしい。
「…俺は、よく判んねえから…」
太一が口篭る。途端にこの場の雰囲気が、ぎこちなくなる。
何か新しい話題でも出して、盛り上げてやろうか、と一瞬考えた。だが、こちらが助け舟と思って出したものが、あちらにとってはいい迷惑、ということも十分あり得る。よく顔を合わせる仲のようだし、下手なことは出来ない。
俯いていた太一は、やがて何も買わずに、店を出ていってしまった。
(若いってのは、いろいろ大変だな)
一応男の端くれである私には、太一の気持ちが何となく判るような気がして、同情の気持ちを寄せずにはいられなかった。
そんな彼の後ろ姿を見送りながら、真弓嬢は問うてきた。
「ねえ、おじさん、男の人って、気味の悪い絵とか好きなの?」
「さあ…。俺は絵には興味がないけど、どうせ見るなら綺麗な女性の絵がいいな。どうして?」
中年男の軽口を、きゃっきゃと笑う女子工員達。そして真弓嬢が言った。
「やっぱり小林さんて変わってるよねー。この間、物凄く気味の悪い絵が載ってる漫画読んでたの。何処が面白いんだろう、あんなの」
「いい人ではあるんだけどねえ」
「ねー」
あーあ、可哀相に、太一君。若い女性は無邪気で、時に残酷だ。
どうやらいずれ近いうちに彼は、切ない思いを味わいそうである。
しかし、物凄く気味の悪い絵の漫画、か。なんだってまた、そんなものを。彼女達の気持ちも判らないではなかった。進んでお近づきになりたい相手とは、思えないかも知れない。
漫画に縁のない私には、申し訳ないが彼の趣味に理解を示すことは出来なさそうだった。ましてやそんなものを描いている人間が何処かに居るなんて、信じ難い話である。
495隻腕の男2/3:2011/04/08(金) 11:49:06.17 ID:0+piXXdX
村井夫人は、もうすっかりこの街に馴染んだようで、商店街の人間達とも打ち解け、特に隣の山田屋のおかみ、和枝とは買い物するたびに話し込むような仲になった。
盗み聞きするつもりはないのだが、これだけ近いとまあ、いろいろと聞こえてくる。
やはり故郷は島根だった。あの「安来節」で有名な、安来だそうだ。
残念ながら自分にとって山陰地方は、全く馴染みのないところだ。安来という土地についても、銭湯の旦那が宴会で「どじょうすくい」を踊ったなということくらいしか、思い付かない。
それから村井夫人の下の名前が「フミエ」だということも判った。 
が、未だに旦那がどういう奴なのかは、よく判らない。仕事は何をしているかくらいは、話題に出てもよさそうなものなのに。判ったのは、健啖家であるらしいということだけだ。
何日か前、畑の向こう側へ配達に行く機会があったので、ついでに車で少し回ってみた。だが、一口に「下野原」と言っても広く、結局何処に住んでいるかまでは判らなかった。まさか、家の番地まで訊く訳にもいくまい。
ちなみに近頃の村井夫人は、よくポストに葉書を一枚、投函している。
面白いのは、その時決まって困った顔をしていることだ。ポストの前で溜め息なぞ、ついていることもある。
「あーあ、とっておきの深大寺の桜の話も、これで書いてしまったなあ。次どげしよう…」
今日も出す前の葉書らしい書面を眺めながら、ベンチに座って思案に暮れていた。
何が理由か知らないが、眉を八の字の形にして悩んでいる姿に、私の顔はつい、ほころんでしまう。
真剣に困っているらしい御本人には失礼だが、どうしても以前の姿と比べてしまうのだ。同じベンチに座っていても、あの赤電話に目をとめた時の姿とは、まるで違う。
(上手くいってるんだろうな、旦那と)
あの葉書にまつわる悩み事だってきっと、幸せであるが故に生じる、ささやかなものなのだろう。
「深大寺の桜ねえ…」
村井夫人の言葉で思い出した。満開にはまだだが、その時期である。時が過ぎるのは早いものだ。
そういえば、あの男を深大寺でもよく見かける。カランコロンと下駄を鳴らして歩く姿、石段に座り込む姿。ぼーっとしていることも多い。よっぽど暇なのだろうか。いい御身分だ。
実は一度だけ、たまたま深大寺のお堂の前に座り込み、何か書き物をしていたあの男が、立ち上がって場所を移ろうとしているところに居合わせたことがある。その時、何となく跡をつけてみた。どんなところに住んでいるのか、知りたくなったのだ。
だが男が向かった先は、なんと墓場だった。供花の一基も持たずに墓参りか、と思ったが、どうやらそうではないらしく、かと言って墓場で何をしていたのかは結局よく判らない、という有様。
あちこちの墓を覗き込んだり触ったり、そして相変わらずぶつぶつ言う。しかも何だか嬉しそうなのだ。
本当に、世の中いろんな人間が居る。
確かにおかしな男だが、まあ、そういう奴がたまたま近くに住んでいるという、ただそれだけのことである。
496隻腕の男3/3:2011/04/08(金) 11:55:11.20 ID:0+piXXdX
「最近またぶり返してきてねえ…」
買い物を終えた田中の御母堂が、膝をさすりながら、困り果てたように言った。こみち書房のおばあちゃん、キヨだ。リュウマチの持病があるのである。
「大丈夫かい?横丁に帰るなら、手貸そうか」
「いや、大丈夫だよ。ちょっとここで休んでれば、すぐ治まるから」
よっこいしょ、と、キヨは店の前のベンチに座り込んだ。
向こう側のベンチには、随分前からあの片腕の男が、こちらに背中を向けて座っていた。考え事か、居眠りか。私が気付いてから、小半時ほど経つ。
だが今はそちらより、キヨのほうが気になった。
かなり痛そうだ。体を縮こまらせ、うっすら脂汗まで掻いている。
山田屋のおかみ、和枝も店から出て来た。
「おばあちゃん、ちょっと、大丈夫?美智子さん、呼んで来ようか」
「いいから大袈裟にしないでおくれ。大丈夫だから。ほら、少し良くなってきた」
ふーっと大きく溜め息をつき、顔を上げた。痛みの山はどうにか越えたらしいが、依然つらそうだ。
「また布美枝ちゃんにお灸してもらったら?」
和枝が不意に村井夫人の名を出した。
「へっ?フミエ…さんて、あの、畑の向こうに住んでる?」
私は思わず訊き返した。村井夫人が灸とは、初耳である。
「そう。お灸の名人なのよ。ね、おばあちゃん」
「ああ。確かによく効くんだよねえ、あの子のお灸は。なんかこう、優しい気持ちが、じーんと入ってくるようでさ…」
キヨは、うっとりとしながら言った。
「そうだねえ、今度あの子が来たら、また頼もうかな…」
へえ、そんな特技があったとは。感心しながら聞いていると…。
気付くと、いつの間にかあの男が、ベンチに座ったまま、振り返ってこちらを見ていた。
驚いたような、何かを悟ったような、今までに見たことがないような顔をしている。
何だろう、と思いながら私は、男の見慣れたシャツが、以前より何となくぱりっとしていることに、初めて気付いたのだった。

終わり
497名無しさん@ピンキー:2011/04/08(金) 13:48:52.56 ID:N5bk74y1
いちせん今後の希望案
そのいち。 朝ドラ化!出逢いから交際、結婚。そして跡継ぎ誕生まで。
また毎朝、2人に逢える!
そのに。 夜ドラ化!朝にはできなかった、ちゅ、チュー場面を、(ベッドシーンなどとは贅沢申しません)
そのさん。 DVD! DVD!
そのよん。 ゴールデンタイムに再放送。
えぬえっちけーさん、おながい!。・゚・(ノД`)・゚・。

>>494
シリーズ連載あーがとございます!
ゲゲゲを見直す時、橋木商店を注目してしまうようになってしまいましたw
498名無しさん@ピンキー:2011/04/09(土) 00:53:54.03 ID:U7bzCLDu
>>494
自分の知らなかった嫁の行動を褒められたときのしげぇさんの内心が色々想像できますなー
帰りはすごくご機嫌な気がするw
499名無しさん@ピンキー:2011/04/10(日) 15:06:55.32 ID:Qx9sA2hs
>>494
朝方に見かけた事ないにワロタww

総集編DVD届いた!
写真集保存してたからあんま期待してなかったけど一枚一枚が大きく見れてすごい良い!
パッケージもメニュー画面とかもすごく凝ってるしオタク心をとても満たしてくれたよ…
500名無しさん@ピンキー:2011/04/11(月) 00:02:06.35 ID:zbOnv820
いいな〜。総集編買うかどうしようか悩むな〜。
自分はサントラもまだ買ってないんだが、通勤の途中とかに聴けるし、サントラ買うかな〜。

今日のウルルンを見たあとに南国帰りの嬉しそうに踊るゲゲの回を見ると、中の人の熱意とゲゲの熱意がかぶっててなお楽しめた。
501名無しさん@ピンキー:2011/04/11(月) 01:42:06.64 ID:LvvTVp0S
放送を録画してたからDVDには手を出さなかったんだけど、
さっきアマゾンで一気にポチってしまった
なんか勢いに乗っかっちゃったんだが
今になって引き落としを考えてビビってきた…orz
502名無しさん@ピンキー:2011/04/11(月) 21:40:46.69 ID:kiQTYPN8
>>501
ファンの鏡のようなお人だ。
503名無しさん@ピンキー:2011/04/11(月) 21:45:51.72 ID:R5/bUvTw
>>501
二巻の映像特典で撮影してる中の人達かわいいよ!
三巻のクランクアップで手を繋いでお辞儀する夫婦かわいいよ!
504名無しさん@ピンキー:2011/04/12(火) 11:52:02.46 ID:L3AFD+H5
えー、また申し訳ないんですが、エロなしの「橋木さんの話」です。
次々すんません。エロなしなんて意味ねーし、って方、ほんとごめんなさい。スルーしてごしない。

今回は「山陰の○き○○ってどげなもんだろ」と思って調べたのですが、よく判らず
「フミちゃんは西の人だからきっと、○り○を知らないに違いない!」という思い込みから生まれた、超強引且つ適当な一篇。
「わし西の人間やけど、んなもん知っとるわ!」という方、すみません。飯田家はこうだったってことで、ご理解ください

ちなみに村井家流は完全無視になっちゃってますが、しげーさんは基本どんなんでもいいんでしょう、フミちゃんが作るものであれば
505女神の献立1/2:2011/04/12(火) 11:59:13.05 ID:L3AFD+H5
「『安来』ってのは『心が安らかになる』って意味なんだな…」
商品の説明書を読みながら、私は独り言ちた。
高天原を追放され、出雲に降り立ったスサノオが、その地を訪れて「安来」と名付けた…という説があるのだそうだ。
自分が散々悪さをした為に追い出されたというのに、行った先で「あー、此処はほっとするなあ」などとのたまうとは…。男というのは、神代の昔から勝手なものである。
「…やけに熱心ね」
横に居る女房が、探るようにこちらを見る。
「い、いや、日本酒の起源は出雲にあり、とも言うしな…」
私は慌てて、周りを片付け始めた。全く女というのは、いつの世も妙に鋭い。
「ふーん…」
女房は、店の奥の、酒瓶の並ぶ棚を眺めながら、何か言いたそうな顔をした。
別に気まずく思うことなど何もない、と自分に言い聞かせる。ここは私の店で、ここの売り上げで私は家族を食わせている。そうだとも、どんな商品を置くかについてだって、常にちゃんと考えているのだ。
「こんにちはー」
エプロン姿の女性客がやって来て、雰囲気を変えてくれた。続いて、帽子の男性。「いらっしゃい」と女房が、いつもの商売用の愛想を出し始め、こちらもほっとして、表に目を向ける。
その時、自転車に乗った村井夫人が、ちょうどポストの前にやって来た。手紙の束を握り締めている。
これが三回目?いや、四回目だろうか。ここ最近彼女は、月に一度くらいの割合で、大量の手紙を出すようになった。勿論何の手紙かは判らないが、厄介事ではなさそうだ。投函する時はいつも、何となく誇らしいような顔をしていた。
だが、今日は少々勝手が違うようだ。何処となく意味ありげな、複雑な表情をしている。
村井夫人は、手紙の束をいつものように投函した後、ぴょこっとポストに向かってお辞儀をし、そのまままた自転車に乗って、横丁のほうへ消えていった。
(そういえば―)
その後ろ姿を見送りながら、私は数か月前のことを思い出した。
あれは結局、何だったのだろう?
桜がまさに満開を迎えようとしている頃のことだった。この街に、見慣れない男達がうろつき出したことがあったのだ。
背広姿の二人組。いつも険しい表情で、何かを探っているようだった。
特に二人のうちの年長者のほうは、その大きな眼に、全てを見通すかのような鋭さがあり、私は何となく背筋が寒くなった。
商店街では、皆遠巻きにしながらも、何事だろうと噂はしていた。そいつらの正体も、この辺りにいる目的も判らなかったが、一つ確かなのは、彼らの目的のものはアーチの向こう側にあるらしいということだった。
数日経つと、事情通の輩から情報が集まってくる。
「どうやら警察らしいよ」
魚屋「魚調」の店主が言った。向かいの店の前の赤電話で電話している、その会話の内容が聞こえてきたらしいのだ。
更に何処からともなく、どうやら彼らは、この界隈に潜んでいる政治犯を捕まえようとしているらしい、という話が耳に入ってきた。
「下野原の高木さんの家の近くにいるらしいって、聞いたけど」
私にそう教えてくれた馴染みの女性も、又聞きの又聞きくらいであり、信憑性には欠けたが、「下野原」という地名は引っ掛かった。
そうこうしているうち、村井夫人が手紙の束を抱えて商店街にやって来た。おそらく、その時が初めてだったと思う。随分大量の郵便物だな、と思って見ていると―。
「えっ?」
近くに居るのは、あの男達だった。あの、政治犯を追っているという警察の二人組が、彼女をつけていたのだ。
(あの人が政治犯?そんな馬鹿な…)
訳が判らなかったが、事実だった。当の本人は全く気付く様子もなく、にこやかに周りに挨拶などしている。
その後は間がいいのか悪いのか、私があの二人組を見かけることはなかったが、彼らはしばらくの間この辺りに居たようだった。そして、いつの間にか、完全に姿を消してしまった。
結局のところ、政治犯は捕まったのか否かさえ、判らないままだ。勿論、村井夫人がどう関係していたかも。
506女神の献立2/2:2011/04/12(火) 12:06:43.24 ID:L3AFD+H5
季節は移り、この街にも、夏がやって来た。
うだるような暑さに、蝉時雨。一日中店に居ると、拭いても拭いても、汗が噴き出してくる。
商店街の毎日は相変わらずだが、村井夫人には、ちょっとした変化があった。
いや、いつも通り買い物をして帰るだけなのだが、何と言うか、その買い物に「気合いが入っている」のが感じられるのだ。
八百善や魚調で食事の材料を選ぶ際、かなりの時間を掛けているのが判った。店主達との会話も長い。いろいろ訊いているのだろう。
そんなある日、うちへ来た時に訊いてみた。最近お料理にお力を入れているんですか、と。
「『好機の到来』なんです!」
頬を蒸気させて、彼女は言った。
「は?」
「あ、いえ、あの…うちの主人の仕事が、今大変な時なんです。それで、少しでも精のつくものを、と思って。…なるべく、安上がりで」
「へえ、それで…」
甲斐甲斐しい話だ。あの大きな眼で、買い物籠の中を満足そうに見つめる。
「今夜はちょっこし、お茄子を焼こうかな、と」
籠からは、みずみずしい茄子が顔を覗かせているのが見えた。
そしてその数日後には、何を作るつもりなのか、村井夫人は、大量の生姜を買った。
  ◆
生姜をたくさん買い込んだ翌日辺りから、しばらくは、村井夫人の荒かった鼻息は少しおさまった。
だが一週間程すると、彼女はこんなことを言い出した。
「お祝いのお食事って、どげなものがええでしょうかね?」
嬉しさが隠しきれない、という表情である。こちらまで、ついつられて笑顔になる。
「お祝いですか。いいですねえ。ところで、なんの?」
「はあ、その…。主人の仕事がやっと、形になる、と言うか…」
まるで自分のことのように、誇らしそうだ。
「へえ、それは…。ご主人、何がお好きで?」
「何でも。しかもよう食べるんです。滅多にない機会ですけん、ちょっこし豪勢にお肉を…と思っとるんですけど」
その時、背後から声がした。
「だったら、すき焼きは?奥さん」
女房だった。いつの間にか、私達の会話を聞いていたのだ。
「すき焼き!ええですね。椎茸に春雨に…お野菜もたっぷり入れて」
「そうそう。ご主人、きっと喜ぶわよー。そうだ、割り下に入れるのにいいお酒、見繕ってあげましょうか?」
何だか女同士、妙に話が弾んでしまっている。すると、村井夫人がきょとんとした顔で言った。
「『ワリシタ』って、何ですか?」
「へっ?」
今度はうちの女房が驚く番だった。
「何って、『割り下』よ、すき焼きの。タレ、と言うか…」
「えっ、東京ではすき焼き用の『タレ』があるんですか。知らんかったです。うちの実家では、お醤油に、みりんやなんかで味付けしますけん」
「へえ、そうなの。面白いわねえ。奥さん、ご実家は?」
「島根の安来です」
「安来…」
それを聞いて女房が、こちらに視線を向けたのが判った。
まさに追放寸前のスサノオを睨む、アマテラスの目。私は思わず、関係のない方向を向く。
「はい。今年結婚してこちらに。へえ、お料理って地方によって、いろいろあるんですねえ」
無邪気に笑う村井夫人の顔と私の顔を、女房が見比べている。
全く、女ってのは…。
そんな私の心境を知ってか知らずか、うちのアマテラス―姉ではなく、妻だが―は、村井夫人を奥の棚へと促した。
「なら奥さん、お宅の地元のお酒もあるわよ、うちに。最近仕入れたの。島根風のすき焼きにも、お酒は使うんでしょう?」
棚に目をやると、たちまち村井夫人の顔が輝いた。
「わあ、『出雲錦』だ!これ、おいしいんですよー!香りが良くて、コクがあって…」
女達は酒と料理の話で盛り上がってしまい、私はすっかり蚊帳の外に置かれてしまった―。
  ◆
それから数日後、「夫の仕事がやっと形になる」日を迎えたらしい村井夫人は、すき焼きの材料をどっさり買い込み、嬉々として帰っていった。
この前うちで買った故郷の酒を、味付けに使うのだろうか。
それにしても。
誓いまで立てて邪心がないことを示したのに、追放されるようなことをしでかした弟が、下界で大蛇を退治し、英雄として語られるのを、アマテラスはどんな思いで見ていたのだろう。
それは判らないが、その時以来アマテラスは、自らと同じ性を持つ者全てに、その後継として相応しかるべき何かを、こっそり植え付けているような気がしてならない。
何にしても、その母が葬られ、その弟が名付けたという土地で生まれ育った、今は東京調布に住むあの女神の末裔は、今頃、降るように聞こえる蝉の声の中、何でもよく食べるという夫の為に、おいしいすき焼きを作ろうと奮闘しているに違いない。

終わり
507名無しさん@ピンキー:2011/04/12(火) 19:08:12.80 ID:jPpg4mYW
>>505
投下だんだん!
フミちゃんが無邪気で健気でかわいいなぁ~。
橋木のご主人、フミちゃんの事そうとう気にしてますねw
508名無しさん@ピンキー:2011/04/12(火) 19:40:00.93 ID:A6eGkI92
規制続きで書き込めず超ストレス。。

職人の皆様、だんだん!
未だにゲゲ女ワールドをさまよっている自分にとって、ここはもう宝物のようなスレです
エロありもなしも大歓迎、いちせんの二人も大好きだ〜

橋木商店のおやっさんシリーズも良いですね!
すっかりファンになってしまったw
>496のシャツの質感についての描写なんかたまりませんよ

と、書いていたらリアルタイムで新作キター♪
509名無しさん@ピンキー:2011/04/12(火) 19:43:15.69 ID:A6eGkI92
すみません、リロードし忘れてただけで、リアルタイムじゃなかったわorz
510名無しさん@ピンキー:2011/04/13(水) 19:47:45.30 ID:e7j41WFk
>>505
あのシーンあのシーンが蘇るようです
きょとんとするふみちゃんかわいいなー
嫁に欲s……おや、誰か来たようだ
511名無しさん@ピンキー:2011/04/14(木) 12:54:24.70 ID:KdGXzE1P
お前ら喜べ
JA銀行の新CMで、ふみちゃんの浴衣姿が見られるぞ!
512名無しさん@ピンキー:2011/04/14(木) 15:22:43.02 ID:FRH/h/jT
また特注だろうね
高校のジャージも特注だった
513初鳴き1:2011/04/14(木) 15:25:35.15 ID:ThqraS7I
 「あ・・・つくし!こんなに・・・。」
すずらん商店街からの帰り道、ぽかぽか陽気にさそわれるように、フミエは
すこし寄り道をして、自転車を押しながら川辺の土手道を歩いていた。
 土手いちめんにつくつくと顔を出しているつくしの群れに、思わず自転車を
とめて斜面に降り、夢中になってつくしを摘んだ。よもぎの若芽も目につく。
(草餅にしたいなあ。でも、小豆とお砂糖と米粉買わなきゃいけないし・・・。
 ちょっと手が出ないなあ・・・。)
 春を楽しみに来たのに、ついつい貧しい献立の足しにと考えてしまう自分を、
ちょっと悲しいと思いながら、フミエはどっさり摘んだつくしを買い物かごに
入れた。
『ホー・・・ホケ・・・ホケ・・・。』
その時、川辺の高い木の上で、うぐいすがさえずり始めた。
「うぐいす・・・!今年初めて聞くなあ。」
フミエは立ち止まって耳をすませた。そのうぐいすは、今年初めて鳴く若鳥か、
ホケ、ホケとかケキョ、ケキョとか言うだけで、まだ人を聞きほれさせる
あの歌を会得できていないようで、間の抜けたさえずりを繰り返していた。
「あんたも、新米なんだね・・・。」
フミエは、不器用なうぐいすに、今の自分を重ね合わせていた。

 思えば一月に縁談が来てからというもの、フミエの運命の転変たるや、実に
めまぐるしいものがあった。見合いからたった五日で結婚式を挙げて、翌々日には
もうここ東京の調布の家で夫となった人と暮らし始めた。夫とその親族の変人ぶり、
予想もしていなかった貧乏生活・・・。
 それでも、婚礼から一ヶ月あまりが経ち、フミエは新しい生活にもずいぶん慣れた。
茂の仕事の邪魔にならないように家事をしたり、茂の不規則な生活に合わせて
生活できるようにもなった。

 実は、茂とフミエが本当の意味での夫婦になったのは、婚礼からずいぶん日数が
経ってからだった。
 ひとつ家で暮らすようになってから長い間、茂が自分に指いっぽん触れなかった
ことは、フミエをずいぶん不安にさせた。けれど今になって考えれば、ずっと独りだった
生活に、突然現れた花嫁をどう扱っていいかわからず、仕事にかこつけてついつい
保留状態を続けてしまった・・・という茂の照れもあったかもしれないと思えた。
(器用なひとじゃないんだな・・・。)
自信も引っ込み思案で、特に異性に対してはひどくおくてなフミエにとってみれば、
茂のそんな性分はかえって好ましかった。
 最初はぎごちなかったが、茂は打ち解けてみればおおらかで楽しい人間だった。
茂の気取りの無いひょうひょうとした人柄には、ともすれば真面目すぎるフミエの、
肩に入った力をほぐしてくれるような温かさがあった。
 茂のことをつい「村井さん」と呼んでしまい、「あんたも『村井さん』だろ?」
とつっこまれて、やっと「茂さん」と呼べるようになったこの頃だった。    
514初鳴き2:2011/04/14(木) 15:26:55.54 ID:ThqraS7I
 フミエは茂と結婚するまで、家族以外の男性とろくに口をきいたこともなかった。
図抜けて高い身長を気にしていつも猫背気味に、自分より背の低い友人たちの
陰に隠れているようなフミエに、何かがが起こるわけもなく・・・。
 やがて適齢期を迎え、次々と嫁いでいく友人たちに取り残されるように、高すぎる
身長ゆえに縁遠かったフミエは、少女の頃の心のまま、二十九歳になっていた。

 慌しく決まった婚礼を前に、母のミヤコは、簡単な花嫁の心得をフミエに語った。
「あんたもええ歳なんだけん、少しはわかっとると思うけど・・・。何事も村井さんの
 言うとおりに、まかせておけばええんだよ。大丈夫だけんね・・・。」
それは遠まわしに初夜のことを言っているのだとはフミエにもわかった。
女ならみな経験することなのだから、自分だって耐えられるはず・・・そう思って
フミエは茂の妻となった。 
 初めて茂に抱かれた時、心は茂に女性として求められた嬉しさに満たされながら、
身体はただただ痛みと羞ずかしさに耐え、どちらかというと「乗り越えた」という
感じがつよかった。けれど、それは一度乗り越えればそれで終わりではなく、そこから
どんな愛の世界がひろがっていくのか、フミエにはまだよくわかっていなかった。
     
 たとえば口づけひとつとっても、想像とはまるで違っていた。自分には縁がない
ものの、結婚前のフミエはそれを漠然と「恋人同士の愛の表現」くらいに思っていた。
 だが、夜の床で愛しあう時に茂と交わす口づけは、ただの唇と唇の触れ合いなど
ではなく、それ自体が行為のひとつといえるものだった。身体をかさね、唇を溶け合わせ、
茂の舌に口内を愛撫されるだけで、秘すべき場所からとろとろとした液があふれ出す。
唇と言うものが、これほど淫らな器官であることをフミエははじめて知った。
 口づけだけでもこうなのだから、その後は言わずもがな・・・。茂を受け入れた後は、
わき起こる快感にさいなまれながら、醜態を演じないよう敷布をつかみしめ、
歯を食いしばって声を押し殺し、ただひたすらに終わりを待った。 
515初鳴き3:2011/04/14(木) 15:27:42.32 ID:ThqraS7I
 今のフミエは、たとえて言えば「ほんのりと好意を抱いた」相手と、いきなり
男女の関係になったようなものだった。茂のことをもっとよく知りたい、
茂にも自分をこのましく思ってもらいたい・・・そんな淡い段階なのに、一足飛びに
最も恥ずかしい行為をし、恥ずかしい自分を見られなければならない・・・。
 ゆっくりゆっくり、茂を好きになりかけている心を置いてけぼりにするように、
身体が馴らされて行く早さが、茂と分かり合う早さよりもまさっている気がして、
こんな結ばれ方をうらめしく思わずにはいられなかった。
(あの人は・・・どげ思っとられるんだろうか?。)
 電信柱のようだと、悪童たちにからかわれた自分が、煽られるままにのたうち、
顔をゆがめ、声をあげる様は見苦しいに違いない。愛されるのは嬉しいのだけれど、
茂にみっともない自分を見られたくない・・・。戦前の厳しい倫理観の中で育った
フミエは、感情を揺さぶられるまま泣いたり騒いだりすることは、最も恥ずべき
ことと教えられてきた。                                  

 ふと、昨夜の記憶がよみがえり、フミエの身体をざわつかせた。春の明るい
陽射しの中で、こんなことに心を悩ませている自分に、やるせない思いになる。
かといって、家で茂といる時に思い出すのはもっといたたまれなかった。
『ホーーーー、ホケッ・・・キョロ!』
はっと我にかえった時、上空ににとんびが現れ、うぐいすはあわてて飛び去った。
買い物帰りの道草が思いがけず長くなり、夕暮れ時が近づくと、春とは言え
少し肌ざむい風が吹き始めた。
「もう・・・帰らんと。」
フミエは気持ちを切り替えて、自転車に飛び乗ると、家路を急いだ。

 摘んできたつくしは、卵とじと混ぜごはんになってその日の食卓にのぼった。
「つくしのようなもんでも、こげな風にして食うとうまいな。」
「春の味ですね。」
 風流と言えないこともないが、実のところ土手に生えている雑草を採ってきて
おかずの足しにしている生活だ。だが、そんな現状の中でも、精いっぱいの工夫で
食卓を飾る妻の横顔を、茂がちょっとまぶしそうに見つめていることに、フミエは
気づかなかった。 
516初鳴き4:2011/04/14(木) 15:28:33.93 ID:ThqraS7I
「ん・・・。あ、あな・・・た・・・?」
その夜。遅く風呂に入った茂が、眠っているフミエの布団に入ってきた。
 茂は宵っ張りの朝寝坊で、フミエと一緒に床に入るということはほとんどなく、
求められる時は、眠っているところを起こされて・・・ということが多かった。
茂の気まぐれな訪れは、案外、いかにもこれから行為に及ぶ・・・と言う状況が
照れくさいからかもしれなかった。
 深い眠りから起こされ、フミエは半ば夢の中のように茂の愛撫を受け入れていた。
口づけしながら強く抱きしめられ、思わずあえいだ口の中に茂がしのびこんでくる。
うす闇の中、唇と素肌を重ねあっていると、世界に茂と自分の二人だけしか
いないような錯覚にとらわれ、いつまでもこうしていたいと思う。
 けれど、そんなはずもなく・・・。
 ふかまる口づけはフミエの四肢を痺れさせ、茂その人よりもずっと饒舌な指が
肌を奏で、フミエの弱点をさぐり出す。気が遠くなるほど愛撫され、とろかされ・・・。
やがて茂がフミエの手を自分の背中にまわさせ、ぐっと自らを挿入れてくる。身体を
ひらかれる痛みは薄れたが、いつもその瞬間は苦しいほどの存在感に圧倒された。
「あ・・・ぁん。あ・・・っは・・・ぁぁ・・・。」
フミエの手が茂の背から落ち、敷布をつかみしめた。それをちらと見やって、
茂がフミエの一方の乳首を甘がみし、もう一方をつまんで強めにひねった。
「ひぁっ・・・ぁ、ゃ・・・ぁあっ」
泣きそうな声をあげ、フミエが身体をよじった。
「ぁっ・・・ぁ・・・ぁあん・・・。」
動いたことで結合部から鋭い快感がはしり、フミエは思わずせつなげな甘い声を
もらした。あわてて手で口を押さえると、その分甘い衝撃が身を灼いた。
 茂は、その手をつかんで布団に押しつけると、腰を激しく動かして責めた。
「やぁっ、はなして!・・・放してぇっ!」
いつもなら、おぼこなフミエをいたわるように、そっと自分の快感だけを追って
終わらせてくれる茂なのに・・・フミエは少しこわくなって叫んだ。
「なして、俺にしっかりつかまっとらんのだ?」
「だっ・・・て、何か握っとらんと、ヘ・・・ヘンな声が出てしまうけん・・・。」
茂はフミエの手を放し、あきれたようにフミエの顔を見て聞いた。
「はあ?あんた、何を言っとるんだ?」
「あの・・・か・・・身体の中が、もやもやして・・・がまんできんようになって・・・。」
「がまんなんぞ、せんでええんだ。」
「だって、あ・・・あなたに、みっともないとこ・・・見せられんけん・・・。」
話しながらも、たかまる快感に肩で息をし、声も途切れがちなフミエに、茂は
(こいつは、どこまでおぼこなんだ・・・。)
と、なかばあきれながらも、強いいとおしさを感じた。
517初鳴き5:2011/04/14(木) 15:29:25.11 ID:ThqraS7I
「あのな、あんたがどげに泣いてもわめいても、俺はいっこうにかまわんぞ。
 男は、相手がええ顔をしたり、ええ声で啼いたりするのを見たいもんなんだ。
 ・・・あんたも気持ちようならんのだったら、つまらん。」
(ええ・・・顔・・・?ええ声・・・?あれが?)
茂は、信じられないという顔をしているフミエに口づけ、
「・・・ところで、続きをしてもええかな?」
そう聞くと、やおら下腹に手を入れてフミエの花芯をとらえ、指をはさんだまま
力強く腰をつかい始めた。
「んぁっ・・・だめっ・・・。し・・・げ・・・さん・・・。しげぇ・・・さ・・・。」
 やがて指を抜き取ると、茂はフミエの脚を大きく広げさせ、ぴったりと下腹部を
合わせたまま激しく腰を上下させた。今までさいなまれていた花芯を容赦なく
こすりあげられ、フミエの全身を鋭い快感がはしりぬける。フミエはもう無我夢中で
茂の首にかじりつき、腰を揺らして快感を追った。
「いやっ・・・い・・・ゃぁぁっ・・・しげぇ・・・さ・・・あぁっ・・・。」
「こげな時は『いや。』じゃなくて『いい。』と言うんだ。」
茂がそう教えても、フミエにはもう届かないらしく、突かれるたびいや、いやと
繰り返しながら追いつめられていった。

「やっ・・・いやぁっ・・・ああぁぁ―――――!」
 その瞬間、フミエは身体がばらばらに砕け散り、魂が抜け出だして、宙空に
ふわりと浮かび上がるような気がした。身体はがっちりと茂に捕らわれている
はずなのに、意識は高みへと翔けあがり、実体感のなさに恐ろしくなる。
 ・・・ゆっくりと意識が戻ってくる。そっと目を開けると、涙でぼやけて見える
茂の顔が、やさしい目でフミエをみつめていた。自分がたしかに茂の腕の中に
いることに、ひどく安心した
「・・・初めてだな、イッたの。」
(イッた・・・って・・・今・・・のが・・・?)
フミエは、自分の身体が、中心をつらぬいている茂という芯以外は溶けてしまった
かのように正体をなくし、余韻の中でたゆたっていた。

「・・・けどな、イク時はイクって、ちゃんと言うてくれんと。あんたが、勝手に
 イッてしまうけん、置いてけぼりくらったぞ。」
「・・・え・・・?」
茂は上体を起こし、つらぬいたそのまま、極限まで開かせていたフミエの脚を
ぴったりと閉じさせると、フミエの上にまたがるようにして腰を上下させ始めた。
「あ・・・あっ・・・だめ・・・いま・・・ったばっ・・・かり、なのに・・・。」
脚を閉じたわずかなすき間に、茂の剛直が勢いよく出入りし、達したばかりの花芯を
否応なくこすり続ける。いちど絶頂を知った身体は、手加減のない責めにも
たちまち応え、フミエは再び頂きに押し上げられた・・・。 
518初鳴き6:2011/04/14(木) 15:30:17.78 ID:ThqraS7I
「あんた・・・ええ身体しとるな。」
「え・・・ええっ?」
初めての、それも二度もの絶頂を身体に刻まれて、夢見ごこちのフミエの、甘い
吐息ごと味わうように口づけると、茂が意外なことを言った。フミエはとっさに、
無防備にむき出されている胸を腕で隠そうとした。
「そげな意味じゃなくて、・・・感度がええ、ということだ。」
茂は笑って、フミエの胸の突起を指でぴん、とはじいた。
「ぁ・・・んっ。」
「俺と・・・相性がええのかもしれん。」
(相性が・・・ええ・・・しげぇさんと・・・。)
フミエの心にうれしさが湧き上がった。自分の身体に自信など全くなかったけれど、
茂が「いい身体だ。」と言ってくれた。お世辞など全く言わない茂だから、
「自分と合う。」と言ってくれた事が本当に腑に落ちて、うれしかったのだ。

 茂がそっと身体を離すと、フミエは思わず小さなあえぎをもらした。もう少し
つながっていたい・・・離れたくない・・・そんな気持ちになったのは初めてだった。
全てを受け入れてもらえる安堵感の中で、茂が与えてくれた悦びに満たされ、
フミエは幸せそうに夫の顔をみつめていた。
 茂はそんなフミエの顔にまつわりついた髪をいとおしげに指ですいた。
「あんた、俺のことを『しげぇさん』と呼んどったな。イカルがそう呼んどるが・・・。」
(え・・・いけんだったかな・・・?)
フミエは、ちょっとドキッとした。たかまる快感に息があがり、思わずそう呼んで
しまっていた。けれど、房事の最中に、相手から母親と同じ呼び方をされたら、
気持ちが萎えてしまったかもしれない。
「あんたにそげな風に呼ばれると・・・なんか・・・ええな。」
フミエはほっとして、茂の胸に顔を寄せた。耳に響いてくる茂の声は、次第に
眠そうに途切れ途切れになり、見る間にすやすやと寝息をたてて眠ってしまった。
(しげ・・・さん・・・。しげぇ・・・さん。)
フミエは、茂の寝顔をみあげながら、その呼び名を何度も心の中で繰り返した。 
519初鳴き7:2011/04/14(木) 15:31:05.75 ID:ThqraS7I
 次の日。あのうぐいすが気になって、フミエはまた買い物帰りに河原の道へ
立ち寄った。ふきのとうをみつけ、いくつか折り取っていると、同じ木の上に、
いつの間にかうぐいすがやって来ていた。
「ホー、ホー、ホー・・・。」
「やっぱり、あんただね。」
フミエは、旧友に会ったようなうれしさを感じ、その稚拙な鳴き声に耳をすませた。
「ホー、ホー、ホーホー・・・。」
「がんばれ!もうちょっと・・・。」
ふみえが思わず手の中のふきのとうを握りしめたその時、
「ホー・・・ホ・・・ホケッキョ!」
完璧とは言いがたいが、曲がりなりにもうぐいすらしいさえずりが完成した。
「やった!できた!・・・やったねえ!」
その後も、不器用なさえずりを飽かず練習し続けるうぐいすをふり返りふり返り、
フミエは温かい気持ちで帰路についた。

「ただいまもどりましたー!」
フミエは上機嫌で家に帰ると、仕事部屋の茂に声をかけて、買い物籠から出した
ふきのとうを新聞紙の上に広げて見せた。
「今日はこげにふきのとうが採れたんですよ。」
「ほぉ。あんたはタダの食料の調達に長けとるなあ。」
「ふふ・・・。ふき味噌にしましょうか?あ、しげぇさんは、苦いの大丈夫ですか?」
「・・・。」
「しげぇさん?ふき味噌は甘い方がいいですかね?」
ふきのとうをひとつ取り上げて匂いをかいだりしていた茂は、それを紙の上に戻すと、
そそくさと仕事机のほうに向き直り、とってつけたようにペンをとった。
「・・・しげぇさんったら。聞いとるんですか?」
「う・・・あんたにまかせる。俺は仕事があるけん。」
茂の顔は、夕焼けでもないのに夕陽に染まったように真っ赤だった。フミエは
なんだか悪いことをしたようで、あわててふきのとうを集めて籠に入れると、
台所へ戻った。

 流しでふきのとうの泥を落としながら、茂の動揺が伝染でもしたかの様に
フミエの胸もドキドキしていた。
(あの人でも、赤くなったりするんだ・・・!)
フミエが「しげぇさん」を連発したことで、昨夜のことを思い出したものか・・・。
いつもフミエを赤面させる側の茂が、思わぬことがツボにはまってしまったようだ。
それにしても・・・。
(ふだんもそう呼んじゃいけんのかなあ・・・。)
茂にああも赤くなられては、フミエも初めてそう呼んだ時のことを思い出してしまう。
 しばらくは、昼間そう呼ぶことはやめておこう・・・。しあわせな思い出に彩られた
その呼び名を、心の中であたためながら、フミエは夕食の支度を始めた。
520513:2011/04/14(木) 15:32:29.41 ID:ThqraS7I
 婚礼の夜、きつねの声を聞きながら茂が寝てしまった後の朝チュンと、
深大寺の日に戌井さんを見送った後、いきなり桜が咲いて一ヶ月経っていた時は
かなりずっこけましたw。
ドラマにない部分は、想像で補うしかありませんね。
季節が少しずれてしまいましたが、初夜から一ヶ月くらいのお話です。

 フミちゃんが茂を「しげぇさん」と呼ぶようになったのはいつからか?
という問題wで、自分はこのように考えておりましたが、ずっと前に
「佐知子さんに触発されて、藍子の出産後くらいから・・・。」というレスがあって
正直あせりました。なるほど、親戚の人とだったら名前を呼ぶのはありですね。
でも、無理やり「新婚時代から極秘にこう呼んでいたのだ!」と思い込むことに
しましたww。
521名無しさん@ピンキー:2011/04/14(木) 22:19:48.48 ID:mZpJ7xhD
>>513
うわぁぁ、なんて可愛いんだ!
グッジョブです!
522名無しさん@ピンキー:2011/04/15(金) 18:05:24.90 ID:gwYsFbrO
>>513
GJ!
置いてけぼりにされたゲゲかわいスw布美ちゃん二回もイカされるゲゲの絶倫エロス!!
523名無しさん@ピンキー:2011/04/16(土) 00:43:25.62 ID:qhvalWJ1
>>513
GJ!
野草料理とか感じるのをみっともないと恥ずかしがるふみちゃんが愛おしすぎる…
ふみちゃんに名前呼ばれて赤面するしげさんすごくイイ!
>>445なのですが、おかげで朝しげさん並に眠る事ができそうですw
524名無しさん@ピンキー:2011/04/16(土) 11:32:58.06 ID:bm0e2v8C
勝手にどんどん投下している「橋木さんのお話」の続きです。
当然エロのかけらもありませんので、ご興味ない方、スルーでお願いします。

今日のは、昔懐かしい「しむらー、うしろー!!」と叫ぶ子供の気持ちを
思い出して頂きたいとでも申しますか…。古い上に、意味不明ですがw
当然志村けんさんに当たるのが、橋木さんですww
525正体不明の男達1/3:2011/04/16(土) 11:41:22.19 ID:bm0e2v8C
夏の暑さも峠を越えたある日。見知らぬ男が店にやって来た。
度の強い眼鏡を掛け、少々人より前歯が出ている。だが、人柄は良さそうだ。
「あのー、ご主人、ちょっとお伺いしますが」
「はい、何でしょう?」
「『水木しげる』さんて、ご存知ですか」
「は?ミズキシゲル、さん?ええと…」
聞いたことがない名前である。
「失礼ですが、どなたかをお探しで?」
「あ、いいえ、人探しじゃないんです。ご主人が『水木しげる』って方をご存知かどうかを、知りたいんです、僕ぁ」
「はあ…」
何だかよく判らないが、それ以上事の次第を尋ねる気にもなれなかったので、訊かれたことに正直に答える。
「さあ、存じ上げないお名前ですね」
私がそう言うと、その眼鏡に出っ歯の男性は、残念そうに言った。
「そうですか、やっぱり…。そうかー、新作が出たばかりなのになあ。もっと宣伝しないと駄目だなあ…」
男は肩を落とし、ぶつぶつ言いながら今度は魚調に入っていった。どうやら、この辺りの店の人間に、片っ端から同じ質問をして回っているらしい。
魚調の店主がどう答えたか知らないが、魚屋を出ようとする際、その男が店主に「すみません、この辺りに、貸本屋ってありますか?」と訊いているのが聞こえてきた。
店主が横丁の方向を指し示す。こみち書房の場所を教えているのだろう。
男は頭を下げると、そちらの方角へ消えていった。
  ◆
その数日後。
私が同じ商店街の中にある床屋「バーバー三浦」に、散髪に行った時のことだ。
うつらうつらとしながら髪を切ってもらっていると、隣の席に貸本屋を営む田中家の御亭主、政志が座った。
「髯だけ頼むわ」
「あいよ。政志さん、今日はどうだった?馬のほうは」
「まあ、ぼちぼち…と言いたいところだが、最近駄目だね。ついてねえわ、俺は」
乾いた声で笑いながら、自虐的に言う。私はふっと田中夫人、美智子の顔を思い浮かべた。
他人の家のことだ。気軽に口出しなど出来ない。私は邪念を振り払うと、ここで初めて目が覚めたふりをして、改めて挨拶をした。
「よう、政志さん」
「よう」
政志の目は、やっぱり何処か投げやりだった。
ふと視線を他へ移して、店内に見慣れない貼り紙があるのを見つけた。それには太い字で、こう書いてある。
―調布在住の漫画家、水木しげる先生を応援しましょう!!―
(漫画家?水木しげる?)
私は、私の襟元で、器用に鋏を操っている床屋のおかみ、徳子に訊いてみた。
「徳子さん、この貼り紙、一体なんだい?」
「えーっ?ああ、それね」
手を止めずに会話を続けるのも、お手の物である。
「町内で宣伝することになったのよ。靖代さんとこにも貼ってあるわよ。…って、橋木さんところ、内風呂あるから銭湯行かないか」
「漫画家ねえ。調布在住って、この近くなのかい?俺は知らんが…」
「実は私も、つい最近まで知らなかったの。大きな声じゃ言えないけど、あんまり売れてないみたい。まあ、だから宣伝がいるんだけどさ」
「『水木しげる』ねえ…」
漫画家など一人も知らない私が、この名前は何処かで聞いたことがあった。少しの間考えて、思い出す。
「ああ、いつだったか、出っ歯で眼鏡の男が店に来て、『水木しげる』がどうのって言ってたな」
「そう、その人がきっかけ。その人も漫画家で…ええと、名前、イヌイさんだったかな、みんなに薦めてたの、こみち書房で。面白いから是非読んでって。あんまり熱心なもんだからさ、私達も協力しようってことになって」
「へえ…」
「まあ、私はちらっと眺めたくらいだし、読んだとしてもいいかどうかなんて判らないと思うんだけど、有名になってくれたら、嬉しいじゃない。ご近所さんなんだしさ」
床屋の亭主が、蒸しタオルを用意している。
「俺は読んだことあるよ。戦争ものを何冊かだけど」
不意に隣の政志が、会話に入ってきた。
526正体不明の男達2/3:2011/04/16(土) 11:46:20.57 ID:bm0e2v8C
「あら、ほんと、政志さん。どうだった?面白い?」
「うん、まあな…」
意味ありげな言い方だった。その表情が見たかったが、顔の上にはもう、蒸しタオルが乗っていた。
戦争もの、か。政志も漫画など、読まない男だろうに。
「ふふ、出っ歯に眼鏡…。確かにねー」
徳子が思い出し笑いをする。何となく、政志に気を遣って、話題を逸らしたように感じた。
「ああ、でも、きっかけは確かにその人だけど、応援したくなった理由は、奥さんかな。健気なのよー、まさに内助の功って感じで」
「へえ…」
売れない漫画家に尽くす妻、か。物好きな女もいるものだ。よっぽど旦那に惚れているのだろうか。
「内助の功ねー。お前には縁のない言葉だな」
床屋の亭主が軽口をたたく。
「うるさいわね。助けたくなる旦那かどうかが問題なのよ」
ははは、と笑いながら、政志にはこの会話のほうが耳が痛いんじゃないか、と思ってしまった。
水木か…。奥方のほうも、存じ上げないな、多分。この界隈にも、私が知らない住人が増えたものである。
  ◆
ほぼ同時に、私と政志は床屋を出、別れ際に彼はこう、問うてきた。
「橋木さん、うちの奴、今でも…」
言葉を最後まで継げない、シベリア帰りの男。気持ちは判る。判るが…。
「ああ、参ってるみたいだよ、毎月」
たまにはあんたも一緒に行ってやれよ。私も、その言葉を、どうしても言うことが出来なかった。
  ◆
時が経ち、この商店街にも、茶色く色付いた落ち葉が舞うようになった。
見る分には紅葉は綺麗だが、散り出すと掃除が大変である。掃いても掃いても店の前には、落ち葉の吹き溜まりが出来る。
「ゴホン、ゴホン」
見ると、立春の頃にこの街にやって来た、あの小柄で色白の男―中森という名だそうだ―が咳をしながら通り過ぎた。どうやら風邪気味らしい。
この男には、不思議な存在感があった。相変わらず消え入りそうに儚い風体、そして雰囲気なのだが、どういう訳か気になってしまう。見かけると、つい、目で追ってしまうのだ。本当に消えてしまわないか確認しないではいられない、といったところか。
それにしても今日の顔色の青白さは、尋常ではない。本当にかなり具合が悪そうだ。
「ああ、下宿代、払えないなあ。どうしよう…」
しかも悩みは尽きないようで、気の毒で仕方ない。私は思わず声を掛けた。
「あの、大丈夫ですか?」
中森は、驚いたように目を上げた。声を掛けたからどうだ、というものでもないのだが、熱でもあろうものなら送っていくことくらい出来るだろう。
「はあ、ありがとうございます。何とか…。あの、ご主人」
「はい」
「お茶っ葉って、食べられますかね」
「へっ?」
「い、いえ、何でもありません。お気遣い、ありがとうございます」
男は力のない笑顔で、丁寧に頭を下げた。
527正体不明の男達3/3:2011/04/16(土) 12:00:58.94 ID:bm0e2v8C
珍しく、村井家に客が来ているらしい。
見かけた訳ではないのだが、村井夫人が客用の酒を買ったのだ。つまみの胡瓜漬けも。
「ずっと神戸に住んでいた、年配の男性に振舞いたい」と彼女は言った。八百善の親父によると、今日は買い物籠に肉も入っていたそうだ。
私は早めに店仕舞いをし、喫茶店「再会」に来ていた。
コーヒーを飲みながら、村井夫人の顔を思い浮かべる。招かれざる客、という訳ではないのだろうが、どうにも気になる。何となく、元気がなかった。
カウンター席には、質屋「亀田質店」の店主、達吉がマスターと無駄話をしている。また明日辺り、店に来た亀田の奥方の愚痴を聞かされそうだ。
マスターが言った。
「そう言えば、今日珍しく、村井さんが来てましたよ、お客さん連れて」
「へえ、珍しいねえ、そりゃ」
(村井!?)
私は思わず、二人の会話に耳を傾けた。夫人のことだろうか。
「昔馴染みの方のようでしたね。妙に声がいい、ご年配の男性で。歌も上手そうだったな、あの人」
「いろんな面白い人知ってそうだもんな、村井さんて男は」
(旦那の話だ!!)
もう我慢が出来なくなり、私は、コーヒーカップを持ってカウンターに移った。その「連れ」というのが、夫人が酒をご馳走したいと言っていた客なのだろう。
「村井さんて、あっちのほうに住んでる村井さん?」
私は、畑の向こう側を親指で示す。
なるべくさりげなく話題に入った。根掘り葉掘り聞きたいところなのだが、如何せん皆近所の住民、何処から「私が根掘り葉掘り聞いていた」ということが、御本人達の耳に入るか判らない。
「そう。いやー、大変だよね、人気商売もさ。おかげでうちとの付き合いも、長いよー。大きな声じゃ言えないけど」
「ははは、そうかねえ」
人気商売―。何だろう、役者かなんかだろうか。実は物凄く手足が長くて顔の小さい、男前だとか。
「四十過ぎて芽が出ることなんて、あるのかねえ。まあ、あの業界のことは、よく知らないけどさ」
「四十…」
おいおい、新婚だろう。その年まで、独り者だったというのか。
いや、向こうは初婚ではないのかも知れない。女関係は、どうなのだろうか。
「様子どうだった?村井さん」
達吉がマスターに尋ねる。
「はあ、まあ…。変な雰囲気でしたね。お連れさんは駄洒落みたいなこと、言ってたような…。あ、虫歯が痛いって頬を押さえてました、村井さん。ああ、こっちか」
マスターは左手で左の頬を押さえていたのを、右に変えた。
歯なんぞ、左右どっちが痛かろうと、そんなことはどうでもいい。
私は、冷め切ったコーヒーを、スプーンでぐるぐると掻き回していた。
  ◆
すっかり暗くなってから、私は「再会」を出た。
帰宅する道すがら、無性に腹が立って仕方がなかった。
何なのだ、村井という男は。質屋の常連だって?どう暮らそうと構わないが、ちゃんと稼ぎで女房を食わせろよ。何が人気商売だ。
間違いない。今、村井夫人の顔を曇らせている問題の種は、旦那にある。その「神戸からの客」とかいう奴が厄介事を持ち込んだのだ。カネか、それとも女か。
この時私の心の中では、村井という男は、まともに勤めることもせず、ふらふらと好きなことをし、四十になってから純朴な田舎の女性を嫁にもらって生活の苦労をさせる、とんでもない男ということになっていた。
そして、仕事が上手くいっている時だけいいことを言って、それであの素直な人は喜んだりしているのだ、と。
まだ見ぬ村井氏に対し、沸々と怒りを煮えたぎらせているうちに、商店街に着いた。もう人気はなく、何処かで野犬が吼えているのが聞こえる。
ふと見ると、向こうから私に負けず劣らずの勢いで悪態をつきながらやって来る男がいた。あの、片腕の男である。
私のことは全く目に入らないといった様子で、怒り狂っている。
「富田の親父め!絶対に許さん!!断固、国交は断絶だ!!!」
訳の判らないことを言いながら、あっと言う間にアーチの向こうへ消えていった。
漫画家水木しげる、下野原の村井某、そしてあの片腕の男。
皆私の近くに居ながら、その正体がよく判らない男達なのであった。

終わり
528名無しさん@ピンキー:2011/04/16(土) 19:13:33.19 ID:EfWhuz/x
>>525
GJ!
いつも楽しく読んどります。
だんだんとパズルが揃ってきましたね〜。
今後も期待しています!
529名無しさん@ピンキー:2011/04/16(土) 21:57:44.82 ID:jAcSfdFG
ほんと、全部すごい。
エロ有りも、エロなしも。
毎回楽しみに読んでます
もう1年経ったのに、今だに萌えるw

茂夫婦以外の人がいるような所で、
夜の約束をこっそりとする二人を見てみたいな
とは思うが、自分では書けないorz
ちょっと考えてみよかな…
無理だろうけどw
530名無しさん@ピンキー:2011/04/16(土) 23:45:50.58 ID:RbMfwGH3
>>513
エロかわなフミちゃん、ええですな。
「しげぇさん」呼びで真っ赤になるゲゲ可愛いw

>>524
GJ!!
橋木さんが真実を知るのはいつの日かwktk
531名無しさん@ピンキー:2011/04/17(日) 19:10:42.57 ID:HNR4s/rt
船橋市に「祐ちゃんラーメン綾ちゃんギョーザ」というラーメン屋があるらしい
いつの間にラーメン屋に転身!?と思ってしまったよw
532名無しさん@ピンキー:2011/04/17(日) 20:51:27.06 ID:HeZpFU7l
>>525
ほんとに「うしろー!」って感じだww
紙芝居週あたりって事はそろそろ…!?

>>531
なにそれときめく
綾ちゃんが餃子ってのがふみちゃんを連想させてゲゲゲ的にもええですな
533名無しさん@ピンキー:2011/04/17(日) 21:10:25.44 ID:9xT7/dv3
>>531
マジっすかwww
534名無しさん@ピンキー:2011/04/17(日) 22:21:14.68 ID:jB/2N1hv
535名無しさん@ピンキー:2011/04/17(日) 22:32:26.22 ID:S3byfZPm
381 :名無しだョ!全員集合:2011/04/16(土) 12:30:46.49 ID:???
昨日「○○な話」で「赤ちゃんの夜泣きが激しいのは、妊娠中に夫婦喧嘩が多かったり
父親が大声出してたりするのが原因の一つだったりする」ってやってた

それ見て思わず「藍子腹に居た時、どんだけ仲良かったんだよ」と思ったw




本スレのこれ萌えた。
536名無しさん@ピンキー:2011/04/18(月) 18:23:36.56 ID:CuHwq9vf
>>534
生粋のいちせんファンなのか、全くの偶然なのか、後者だとしたら凄すぎる!
誰か店主に直接きいてくれないか。地方民の自分には無理だッ…!
>>535
自分もそれ読んで色々妄想したwここの住人が書いたんだと思ってた。
537名無しさん@ピンキー:2011/04/18(月) 22:53:11.73 ID:X+J4AV9c
友人からDVD借りて今さらドラマ見たんだけどがっつりハマってしまった…
ハグもちゅーもしない夫婦にじたばたしてたらここ見つけたw
やっぱりみんな思う事は一緒ないだなww

1から読んだけどまぁ萌えた。
職人さんほんとすごいなーだんだん。
自分はエロほとんど書かないんだが、ちょっこし試行錯誤してこようかな…
538名無しさん@ピンキー:2011/04/19(火) 00:50:25.57 ID:IchHS6iy
おお、ゲゲふみの森へようこそ〜
自分は読ませてもらうばかりですが、ホント楽しませてもらってます!
もう何度も1から読み返してるけど飽きなくて困…らない( ´ ∀ ` )

>>536
一つめのクチコミが2009年みたいだから、偶然っぽいね
すごすぎる…!
539名無しさん@ピンキー:2011/04/19(火) 01:44:01.44 ID:7hdRjSBm
>>537
ウェルカム!!DVDを貸してくれた友人ももしかしたらここの住人かもなw
540名無しさん@ピンキー:2011/04/19(火) 21:57:06.30 ID:TYV2v6LK
>>537
いらっしゃい
あの二人は本物の萌え夫婦ですけん

>>538
もしかしたら、いちせんの方が参考にしたのかもw

最近綾ちゃんの「祐ちゃん」初呼びシチェーションついて妄想してしまう
541名無しさん@ピンキー:2011/04/20(水) 11:04:04.56 ID:I7RG0wss
「橋木商店店主譚」です。エロなしにもかかわらず、勝手にレス消費しちゃってすみません
目障りだという方、スルーをお願いします
なんかどんどん書き溜まってしまい、こちらのフミちゃんは今、お腹大きいですw

えー、今回はえらく長くなってしまい、一話を二回に分けてしまいました
「だったら二話にして別タイトル付けろよ」って感じですが、自分の中では
一つの話なんです(汗)。バランス悪いったらないですが
542雄弁な瞳・前編1:2011/04/20(水) 11:41:42.81 ID:I7RG0wss
十一月下旬のある日。
今日は妙な一日だった。いや、初めのうちは、まさに穏やかな小春日和といった感じで、のんびりとしていたのだが、だんだんおかしくなってきたのだ。
最初は村井夫人だった。珍しく、余所行きらしい青色の服を着て、見慣れぬ女性と駅のほうへ去っていった。
友人か親戚か、色白で、親しみやすい感じの女性だった。喫茶店「再会」の菓子の箱を持っていたので、評判のモンブランでも土産に渡したのだろう。
そのまま何処かへ行くのかと思いきや、村井夫人はすぐ戻って来た。駅まで送っていっただけだったらしい。
その時には何だかすっかり元気をなくしていて、軽く溜め息などついていた。女性と喧嘩でもしたのだろうか。とてもそんな二人には見えなかったが。
そのまま横丁のほうへ消え、かなり長い時間戻って来なかった。

543雄弁な瞳・前編2:2011/04/20(水) 11:48:48.72 ID:I7RG0wss
夕方近くになって、あの風呂屋通いの一家が通り過ぎた。それはいつも通りなのだが、一家はあっと言う間に戻って来たのである。
何処まで行っているか知らないが、いつもに比べると余りにも時間が短く、見た感じでは、どうやら風呂には入っていないようだった。臨時休業だったのだろうか。
その一家が行って帰って来るまでの間に、ここを慌てて過ぎて行ったのが、もう一人の見慣れぬ女だ。
年の頃は四十手前といったところか。髪をアップにし、上等な茶色の服を着た、なかなかいい女である。
旦那はさしずめ銀座勤めか、と思われるような、いいところの奥様然とした女なのだが、その女の慌てっぷりが尋常ではなかったのである。何事か事件でも起きたのかと思ったくらいだ。何だったのだろう、あれは。
544雄弁な瞳・前編3:2011/04/20(水) 11:56:42.48 ID:I7RG0wss
日が暮れようとしている頃、あの片腕の男も通った。まあ、あの男がふらふらしているのはいつものことなのだが、今日は何か分厚い本を手に持ち、眺めながらやけににやにやしていた。
「これ見たらきっと、喜ぶぞー。何しろ百七十六ページだけんな」
などと、相変わらず、ぶつぶつ言っていたが。
暗くなり、店仕舞いを始めようとした時、前のベンチに誰かが座っているのに気付いた。
「わっ」
思わず声を上げてしまった。暗がりの中で、ぼーっと浮かび上がったその姿が、この世のものとは思えなかったのだ。
よくよく見ると、中森だった。小さな体を更に縮こまらせ、俯いて座り込んでいる。
「あの…中森さん?」
思わず顔を覗き込んだ。本当にふっと、消えてしまうのではないかと思ったのだ。
545雄弁な瞳・前編4:2011/04/20(水) 12:01:54.72 ID:I7RG0wss
「ああ、ご主人、どうも」
中森はいつもの力のない笑顔をこちらに向けて、座ったまま会釈した。
「今日、一六銀行に行きまして…。お恥ずかしい話なんですが」
「はあ」
「下宿代も溜まっていまして…。間借りさせてくださっているご夫婦が、とってもいい方達なので、なんとかやってるんですけど、それでもこの有様で。大阪では家族が私からの仕送りを待ってるんです」
「はあ…」
もう言葉がなかった。何の仕事をしているんだろう、とは思ったが、今訊けるはずもない。
「ああ、すみません、愚痴をお聞かせしてしまって。そろそろ帰ります」
そう言うと、のろのろと立ち上がる。
「あの柄杓、返してもらえるかな…」
そんなことを呟きながら、中森は去っていった。
546雄弁な瞳・前編5:2011/04/20(水) 12:11:40.60 ID:I7RG0wss
今日、驚きの事実が判明した。
なんと、村井夫人の御亭主、下野原に住む村井某とは、あの「漫画家水木しげる」だったのである。
その事実は、当の村井夫人が、紙に書いて知らせてきた。
あの、いろいろあった日の翌日、彼女は商店街でビラ配りを始めた。
何だろう?と思う間もなく、村井夫人はうちの店にも飛び込んで来て「これ、お願いします!」とビラを差し出した。
見ると、そこには「『マンガ界の鬼才』『調布の星』『水木しげる先生来店』」、更に「『水木しげる先生』と読者の集い」と書いてある。
この人も宣伝隊に入ったのだろうか、と思った次の瞬間、こう言ったのだ。あの、大きな眼をきらきらさせて。
「うちの人の、初めてのサイン会なんです!」
547雄弁な瞳・前編6:2011/04/20(水) 12:17:11.35 ID:I7RG0wss
唖然、呆然、二の句が継げないとはこのこと。「宜しくお願いします!」などと言いながら商店街を通り過ぎる人達の中を、くるくると動き回るその姿を、どれくらいの間、店の中からぼーっと見ていただろう。
「人気商売ねえ…」
改めて、ガリ版刷りらしいビラに目を落とす。「読者の集い」は今度の土曜日、こみち書房で催されるらしい。
成程、床屋のおかみ、徳子が言っていた、「内助の功を発揮している健気な奥方」というのが、村井夫人だったという訳か。
そして質屋の店主、達吉が言っていた「面白い知り合いの多そうな常連客」というのが、漫画家水木しげる氏なのである。
客が少ない時刻になって、私は女房に声を掛けた。
「ちょっと出てくるから、店頼む」
「え?」
私は女房の返事も待たず、店を出た。
548雄弁な瞳・前編7:2011/04/20(水) 12:23:41.58 ID:I7RG0wss
すずらん横丁に来るのは、久し振りだった。
こんな店構えだったのか、と少し離れた位置から、貸本屋の外観を眺めていると、
「太一君!」
大きな声で叫びながら、店主の美智子が飛び出して来た。
「あ、あら…橋木さん。こんにちは」
「ああ、こんちは。どうしたんです?」
「ううん、何でもないの。ちょっと人違い」
美智子はそう言って、寂しそうに笑った。
「で、橋木さん、今日は何か?」
「えっ、いやあ、その…。たまには本でも、と思って…」
「そう。珍しいわね。どうぞ、うちはいつでも大歓迎!」
美智子の後について、店内に入る。貸本屋というのは、こういう匂いがするのか。
壁一面に並ぶ本。一番上の棚に並べる時は、女手では苦労するだろうに。
549雄弁な瞳・前編8:2011/04/20(水) 12:29:03.24 ID:I7RG0wss
客は居なかった。忙しくなるのは、これからなのか。
気付くと、店の外にも中にも、「読者の集い」を知らせる貼り紙がしてあった。中には美智子の手書きのものも、何枚もある。
何の為にここへ来たのか、自分でもよく判らなかった。「漫画家水木しげる」とやらに、会えるとでも思ったのだろうか。
「なんでまた、ここで、サイン会なんか…」
そんなことを言いに来た訳ではないのだが、口から言葉が出てしまった。美智子は言った。
「私が無理にお願いしたの、水木先生に。ちょっと、いろいろあって…。ねえ、橋木さん」
「うん?」
「最近、橋木さんのお店に太一君、来る?」
「太一君?ああ、あの里山製菓の工員さん。いや、見かけないな。なんで?」
「そう…。いえ、いいの。何でもない」
そう言った時の横顔は、月に一度、うちの店に墓参用の菓子を買いに来る時の顔に、似ているような気がした。
550雄弁な瞳・前編9:2011/04/20(水) 12:34:43.88 ID:I7RG0wss
沈黙の一時。本を借りに来たと言ったにも拘らず、ろくに見ようともしない私に対し、美智子は何も言わない。
「うまかったなあ、ここの唐揚げ。それからポテトサラダも」
「ははは、懐かしいわね。でも橋木さんは、常連さんって程じゃなかったじゃない。奥さん、お料理上手だから」
「いやー、うちのなんか…。あのさ、美智子さん」
「何?」
「水木先生の奥さんて、ここによく来るのかい?」
「布美枝ちゃん?ええ、来るわよ。奥さんと親しくさせてもらってるから、今回お願い出来たようなものだもの」
「ふーん…。で、その…旦那さんのほうも?」
551雄弁な瞳・前編10:2011/04/20(水) 12:38:45.71 ID:I7RG0wss
「いえ、水木先生は、来たことないわね。今回直接ご自宅にお願いしにいって、初めてお会いしたのよ」
「へえ…」
で、どんな奴なんだい?喉まで言葉が出掛かった。美智子は、その切っ先を制するように言った。
「水木先生の漫画、とっても面白いわよ。うん、まさに『本物』ね、間違いなく。読んでみる?」
真っ直ぐな眼でこちらを見る。ビラを差し出した時の村井夫人と同じ眼だった。
「いや、今日は、いいわ」
私は小声でそう言うと、結局一冊の本も開かずに、こみち書房を出た。
552雄弁な瞳・前編11:2011/04/20(水) 12:43:31.28 ID:I7RG0wss
「読者の集い」当日。商店街中、貼り紙だらけだ。
私はなるべく、店の奥から出ないようにしていた。
周りはずっと、ばたばたしている。銭湯のおかみ、靖代が、酒粕と砂糖を大量に買いに来た。客に甘酒を振舞うらしい。和枝や徳子が、湯吞みがどうのと言っているのが聞こえる。
「徳子さんに頼まれたのよ。下の子連れて行くわ、これから」
角の荒物屋のおかみが、店先で女房に言っているのが聞こえた。
村井夫人が旦那を連れて、「うちの主人です」などと言って店に来たらどうしようかと思ったが、来なかった。いや、来たところで、どうということはないのだが。
「あんた、行かないの?」
女房がこちらを見ずに言う。
「うん?まあ、うーん…」
行きたいのか行きたくないのか、自分でもよく判らなかった。そもそも漫画に興味のない私が、売れない漫画家のサインなど貰っても意味がない、という大前提がある。
553雄弁な瞳・前編12:2011/04/20(水) 12:49:10.87 ID:I7RG0wss
突然、女房が店先で声を張り上げた。
「あら、ちょっと!布美枝さん、布美枝さーん」
びくっ、として反射的に奥に引っ込んだ。何をしているのだ、私は。これではまるで、隠れているようではないか。
「ごめんなさい、呼び止めちゃって。これからこみち書房に?」
「はい。お父さーん、こちら、いつもお世話になっている商店の方で…」
「あー、どうも。いつも娘が…」
父親が一緒らしい。島根から出て来ているのだろうか。
女房が何やら話し込んでいる。何を話しているのか、どんな父親なのか。様子を伺いたいが、奥から顔だけ出すのも格好が悪い。
しばらく経ってから、こっそり表を見てみると、もう件の二人は居なかった。
554雄弁な瞳・前編13:2011/04/20(水) 12:54:14.36 ID:I7RG0wss
店に出ると女房が言った。
「故郷のお酒を置いてもらってありがたいって、言ってたわよ。前から取り扱いたいと思ってたんだって、言っておいたけど。『日本酒の起源は出雲にあり』なんでしょ、あんた」
  ◆
しばらく店でいつも通り、商いをしていると、見知らぬ男がやって来た。
「すみません、この辺りに『こみち書房』ってありますか」
長身、細身、きりりとした太い眉に、はっきりとした目鼻立ち。よく響く声と、爽やかな笑顔。男の自分も見惚れてしまう程の、まるで時代劇俳優のような、いい男である。
「はい、あちらの道をですねー」
女房の声が急に高くなった。素直な奴である。
「いい男ねー。武蔵、いえ小次郎なんかやったら、ぴったりだと思うわー」
女房は後ろ姿を見送りながら、眼を輝かせて言った。
555雄弁な瞳・前編14:2011/04/20(水) 12:59:08.10 ID:I7RG0wss
それからどのくらい経ったろうか。やはり今日は、横丁のほうへ行く人が多い気がする。
そんな商店街をぼんやり眺めていると、不意に女房が言った。
「ねえ、行って来てよ、『読者の集い』」
「えっ…」
「こみち書房で、サインを貰いに来た人に、貸本のサービス券を配ってるんですって。私は並ぶの嫌だから、あんた、行って貰って来てよ」
私は女房の横顔を、まじまじと見つめた。彼女は何を考えているのか、酒瓶の一本一本を丁寧に拭きながら、ずっと目を伏せたままだった。

前編、終わり
556542:2011/04/20(水) 13:10:29.46 ID:I7RG0wss
沢山レス使ってしまってすみません。「本文が長い」とはじかれはじかれ、こんな細切れになってしまいました…
557名無しさん@ピンキー:2011/04/20(水) 19:15:44.30 ID:q+Mue1a9
>>542
焦らしますねぇ〜。
後編も楽しみにしています。

558名無しさん@ピンキー:2011/04/21(木) 00:57:33.25 ID:+43xrIsN
>>542
これが焦らしプレイというやつか…
次でゲゲの正体がいよいよばれるのかとwktkしながら正座してまっとります
559名無しさん@ピンキー:2011/04/21(木) 19:45:18.45 ID:IVOvV9Ww
>>105
まだ見てますか?
超亀だけど、こんなの見つけた
http://2nov.jam3.jp/nov/gegege/
560名無しさん@ピンキー:2011/04/21(木) 21:23:59.90 ID:m62GkSPp
>>542
相変わらずキャラの魅力が溢れまくりですなぁ
夫婦として並んでいる二人を見る時の店主氏の感想が気になって仕方ないんだぜ…!
561名無しさん@ピンキー:2011/04/22(金) 01:49:17.90 ID:1KE6U7/3
えー、何だか規制をくらいそうな予感がしますので、インターバル短いですけど「橋木さんの話」の続きを、投下しちゃいます。
エロが読みたいんだよ!って方、長々本当にごめんなさい。これ書き込んだら、少し間空けますんで。

「雄弁な瞳」は特に、ゲゲゲワールドの住人の皆様への感謝と尊敬の念を込めて書きました。
また細切れになったらごめんなさい。「本文が長い」とはじかれたせいです
562雄弁な瞳・後編1:2011/04/22(金) 02:09:11.87 ID:1KE6U7/3
ほんの二、三日の間に、二度もこみち書房へ行くことになるとは、思わなかった。
すずらん横丁への角を曲がった途端、長蛇の列。そして色紙を持って、その行列の脇を、帰ってくる人々。貸本屋の入口付近がどうなっているかは、全く見えない。
取りあえず、行列の最後尾に並ぶ。
先程女房が道を教えた、役者と見紛う程の好男子が、貸本屋のほうからこちらへ向かって歩いて来た。「読者の集い」に来た客だったのだろうか。その割には、色紙を手にしていないようだが。
「ああ、先程は、どうも」
彼は私に気付き、にこやかに会釈をして、去っていった。思わず私も、その後ろ姿を見送ってしまう程の格好良さである。
が、そうこうしているうちに、行列が多少進み、何やら甘い、いい匂いがして来た。店先で甘酒を配っているのだ。
小さくキヨの姿も見える。リュウマチは大丈夫なのだろうか。
563雄弁な瞳・後編2:2011/04/22(金) 02:14:08.12 ID:1KE6U7/3
「あっ」
甘酒をよそっている、村井夫人の姿が遠くに見えた。赤いカーディガンを着ている。
行列が進むにつれて、甘い匂いが強くなる。
「ちょっと待ってくださいねー」という声も聞こえてきた。
先頭のその向こうに、机が設えてあり、どうやら二人座っているらしい。
行列から少し横に体をずらせば、サインをしている人間の姿は、簡単に見ることが出来そうだった。だが足は、何故だか前にしか動かない。
並ぶ者たちの間から、二脚ある机の、手前に座っている男の顔が見えた。あの、イヌイとかいう出っ歯で眼鏡の男だ。
どうやら向こう側に座っているのが、「水木しげる」らしい。
やっと、その姿が目に入る。
その男は、筆でさらさらと、「水木しげる」という名前を書いていた。置かれた色紙を、左手で押さえることをせずに―。
564雄弁な瞳・後編3:2011/04/22(金) 02:21:49.34 ID:1KE6U7/3
顔を見て、息を呑んだ。
そこに居たのは、あの、片腕の男だったのだ。
「ああ、橋木商店のご主人!こんにちは」
突然、名を呼ばれた。ふっと我に返ると、そこには村井夫人のにこやかな笑顔があった。
「いらしてくださったんですか。ありがとうございます」
「あ、はあ」
我ながら情けないが、声に力が入らない。
「今、里から父が出て来てまして、さっき奥さんに、二人でご挨拶したんですよ」
「あ、ああ、聞きました、うちの奴から」
「そげですか、…あ、どうぞ、橋木さんの番ですよ」
565雄弁な瞳・後編4:2011/04/22(金) 02:28:01.25 ID:1KE6U7/3
気付くと、私が先頭に来ていた。「漫画家水木しげる」との対面である。
「あ、どうも、いつもお世話に」
筆に墨を付けながら、水木しげる氏は軽く頭を下げた。色紙に手早く絵を描き、サインをし、ふーっと軽く息を吹きかける。
筆を置くと、今筆を持っていた手で、今度は出来上がった色紙を持ち、こちらへ差し出す。
「どうぞ」と言って、眼鏡をかけた顔をくしゃっと崩し、人懐っこい笑い顔を見せた。
  ◆
「『水木しげる』って、本名じゃないですよね…」
甘酒の入った湯吞みを持ち、私は言った。
「勿論、本名は村井です。村井茂。『シゲル』はくさかんむりの『茂』です」
話しながらも、村井夫人は、次々と客に甘酒を注いでいく。
「へえ…」
立ち込める、甘い匂い。大鍋から上がる湯気。「水木しげる夫人」が注いでくれた甘酒は、一口飲むと喉から胃の腑にかけてが、じんわりと暖まった。
566雄弁な瞳・後編5:2011/04/22(金) 02:33:21.59 ID:1KE6U7/3
少し離れた場所で、次々と来る客にサインをしていく、隻腕の漫画家。
この男が「水木しげる」で、この人の旦那の「村井某」か。旦那のことを、私はとっくに知っていた訳だ。
「…!」
不意に、あることを思い出した。
何故、どうして今まで、気付かなかったのだろう。
あの肩掛け鞄である。村井夫人が、初めてすずらん商店街に来た日、ネギを入れていた鞄。
この男のものだったのだ。右肩に掛かっていたのを、しょっちゅう見ていたではないか。
夫人のほうがそれを持っているのを私が見たのは、あの時一度きりだったので、すっかり忘れていた。答えは常に目の前に、文字通りぶら下がっていたのに。
「どげしました?」
不思議そうに、村井夫人が私の顔を見つめた。あの大きな眼を、更に見開いて。
その肩越しに、彼女の夫の姿が見える―。
567雄弁な瞳・後編6:2011/04/22(金) 02:43:21.54 ID:1KE6U7/3
「いえ、あの、そろそろ店へ戻らないと」
「あ、そげですか。あの、今日はありがとうございました」
笑顔で軽く頭を下げる夫人に、私は空の湯吞みを返し、まだ大勢並んでいる行列の脇を通って、すずらん横丁を出て行こうとした。
「橋木さん」
その時、キヨが声を掛け、近寄って来た。
「今日はどうもありがとね。はい、これ」
私の手に握らせたのは、貸本屋「こみち書房」のサービス券だった。
  ◆
いつの間にか私は、深大寺のお堂の前に来ていた。
用事は済んだのだし、店に戻らなければ。そう頭では判っていても、石段に座り込んだまま、立ち上がれなかった。今日は女房から大目玉を食らうのは、覚悟するとしよう。
「あ、そうだ…」
貰った色紙を、まだまともに見ていなかったことに気付き、色紙の表面を、改めて眺めた。
568雄弁な瞳・後編7:2011/04/22(金) 02:50:11.26 ID:1KE6U7/3
「水木しげる」という名前の横に描かれているのは、少年の顔の絵だった。ぷっくりした顔に、ぎょろっと丸い右目。その中に描かれた、小さな点の黒目。上を向いた鼻。何故か、左目はつむっている。
「可愛くはないな、全然」
よく判らないのは、その子供の頭の上に、手足の生えた目玉が乗っていることだった。目玉―つまり眼球である。それに「体」が付いていて、顔全体が一つの眼球になっている、小さな人間のようだった。大きさは、掌に乗るくらいか。
描いてもらったところで、絵のことはよく判らなかった。上手いのか、下手なのか。この、顔が目玉の小人は何なのだろう。この子供は、どうして左目をつむっているのだろう。
569雄弁な瞳・後編8:2011/04/22(金) 02:55:00.89 ID:1KE6U7/3
いや、本当は絵のことなど、どうでもよい。さっきから考えているのは、別のことだった。
あの二人が夫婦。思いも寄らなかったことだが、判ってみると、いろいろと納得がいった。
まず二人は、言葉遣いが似ている。片腕の男、ではない、村井氏の生まれが何処かは知らないが、奥方と同郷なのかも知れない。
それにあのすき焼き。私には確か、あの日「旦那の仕事がやっと形になる」と言っていた。山田屋で嬉しそうに何かを報告していたが、あれはきっと描いた漫画が出版されると言っていたのだろう。
あの男がうちの店とあまり縁がなかったのも、酒が呑めないならば、無理もない。
「そうか、そういうことだったのか」
意味不明な独り言が口をついて出る。これは村井氏の十八番ではないか。
私は何だかおかしくなってきて、辺りに人が居ないのを幸い、晩秋の風が吹き荒ぶ古寺の境内で、一人、声を上げて笑い出した―。
570雄弁な瞳・後編9:2011/04/22(金) 03:01:14.48 ID:1KE6U7/3
甘酒で暖まった体が、またすっかり冷え切った頃、私は店に戻った。
「何があったの、こみち書房で」
帰るや否や、女房が訊いて来た。
「え?い、いいや、なんで」
何のことを言っているのか。どう答えればいいか判らず、逆に訊き返す。
「あんた、見てないの?なんだ。あのね、あんたが行ってしばらく経ってから、また布美枝さんがお父様と、ここ通ったのよ」
「へえ」
「さっきは本当に通っただけだったけど、二度目は商店街を案内してたって感じで。お父様も、嬉しそうなお顔なさってた。そしたらね」
女房曰く、その時太一が通りかかり、村井夫人は父親を放り出して、追いかけていったのだそうだ。一人取り残された父親は、喫茶店「再会」のほうへ、歩いていったらしいのだが…。
「しばらくして、お父様が、凄い剣幕で戻っていらして。こみち書房のほうへ、行っちゃったのよ!」
「…」
571雄弁な瞳・後編10:2011/04/22(金) 03:08:00.93 ID:1KE6U7/3
何だか女房が、やけに興奮している。
「あんた、驚かないのね」
「驚くも何も。『行っちゃったのよ』って、そりゃ行くだろう。娘婿がサイン会やってる場所なんだから」
「違う!あんたは見てないから、そんなこと言うのよ!本当に、尋常じゃないくらい、怒っていらしたんだから!!」
私は村井夫人の父親に、まだ会っていないことに気付いた。おそらくあの時、こみち書房の中に居たのだろう。こちらはそれどころではなかったので、目に入らなかったが。
「あの後、絶対何かあったわよ、こみち書房で。私、あんたはまだあそこに居て、事の顛末を見てるんだと思ってたのに…。今まで何処に行ってたの?」
「え…。まあ、ぶらぶらと、な。散歩、と言うか…」
「ふーん。これが、描いてもらった色紙?…なんだか、可愛くないわね、全然」
女房の感想は、どうやら私と同じらしい。色紙を、矯めつ眇めつ眺めた後、不意に顔を上げて言った。
572雄弁な瞳・後編11:2011/04/22(金) 03:13:02.41 ID:1KE6U7/3
「あ、そうだ、貸本のサービス券は?」
「あ、ああ。…あれ」
すっかり忘れていた。ごそごそと、ポケットの中を探す。ない。
「貰ってないの?」
「いや、貰ったんだが…」
持っているのは色紙だけ。そう言えば深大寺で石段に座っていた時には、もう持っていなかった。
キヨに手渡してもらった後、ポケットに入れた記憶もないし、馬鹿な話だが、どうやら横丁を出る前に、落としてしまったらしい。もしかしたら、あのすぐ後、こみち書房の前で。
「もー、なんなのよ。何の為に行ったんだか…」
女房はあきれて、店の奥に引っ込んだ。
  ◆
長かった一日が、ようやく暮れようとしていた。
「読者の集い」は、結局どうなったのだろう。女房が言っていたような「騒動」は、あったのだろうか。
573雄弁な瞳・後編12:2011/04/22(金) 03:21:23.19 ID:1KE6U7/3
朝からのざわつきが嘘のように、商店街は落ち着きを取り戻していた。
茜色に染まり始めた空を、ただ眺める。まだ親父が店を取り仕切っていた頃から、もう幾年、この店の中からあの空を、この街を、眺めていただろう。
そしてある日、あの人が、この視界の中に入って来たのだった。紙切れを握り締め、不安そうな眼をして―。
「あっ!」
思わず口を塞ぎ、身を潜めるように、物陰に隠れた。自分の店で商いをしているだけなのだから、隠れることなどないのだが。
村井夫人が、通りかかった。一緒に歩いている背広に帽子の男性は、件の御尊父だろう。
うちの女房が言っていたような怒っている様子はなく、彼は、穏やかな顔をしていた。何があったのかは判るはずもないが、その顔、その眼には、父として嫁いだ娘を思う心が溢れている。
他人が見聞きするものではないと思いつつも、私は、眼を逸らすことが出来なかった。
574雄弁な瞳・後編13:2011/04/22(金) 03:27:01.30 ID:1KE6U7/3
そう、私はずっとここから、この商店街を行き過ぎる人々を見るのだ。今までも、そして、これからも。
立ち止まり話す、父と娘。空の色が、二人の背を染めている。
会話の内容までは判らないが、微かに耳に届く、言葉の端々。
そして村井夫人の、この言葉だけは、不思議とはっきりと聞こえてきた。
「お金はないけど、私、毎日笑って暮らしとるよ―」
背中で聞く父は、今、どんな眼をしているのだろう。
ふと、少年のように顔をくしゃくしゃにして笑う、眼鏡を掛けた男の顔が浮かんだ―。
  ◆
「今晩は」
とっぷりと日が暮れてから、太一がやって来た。
「おお、久し振り。どうしてたんだい?」
「はあ、まあ、ちょっと、いろいろあって…」
人の良さそうな青年は、照れくさそうに笑って、頭を撫でた。
575雄弁な瞳・後編14:2011/04/22(金) 03:32:56.44 ID:1KE6U7/3
「こみち書房の美智子さんが、心配していたよ、君のこと」
「今日、行って来ました。俺の好きな漫画家さんの『読者の集い』っていうのを、あそこでやってて」
なんと、太一青年は、水木しげる氏の愛読者だったのか。
「ありがたいです。皆さん、俺なんかの為に、いろいろ。本当、ありがたいです…」
「…」
何があったかは知らないが、他人に感謝することが出来るなら、この青年はこれからもきっと、大丈夫だろう。
「で、今日は何か?」
「あ、食後に、なんか甘いもの、食いたくなって」
「そうか。じゃあ、お宅の商品でもどうぞ。君達が頑張って作ったものなんだから」
「はい」
店の奥へ行こうとする彼の小脇には、色紙と本が抱えられていた。
色紙の絵は、私のものとは違っていた。一面に大きく小船が描かれ、そこにはおいしそうにスイカを食べる、河童らしきものが二匹乗っている。
576雄弁な瞳・後編15:2011/04/22(金) 03:39:00.86 ID:1KE6U7/3
そして絵の下に小さめに書かれた名前は、「水木しげる」。
「なあ、面白いかい?水木しげるの漫画は」
太一は驚いて顔を上げ、一瞬私を見つめると、村井夫人や美智子と同じ様な、真っ直ぐな眼で言った。
「はい!すっげえ面白いです」
差し出して見せた本の表紙には、「鬼太郎夜話」という題名と、あの左目をつむった少年、そして目玉小人の絵が描かれていた。
577雄弁な瞳・後編16:2011/04/22(金) 03:44:51.85 ID:1KE6U7/3
その夜―。
布団に入ってからも、私はなかなか眠れなかった。
村井夫人の父親は、今頃島根へ帰る汽車の中なのだろうか。
どれ程心配だろう。遠い街へ、嫁がせた娘。何かあったとしても、駆けつけるのに一日掛かるのだ。
でも。
ご心配は無用です。そう、私は言いたい。
私は知っている。ただの、商店街の、とある商店の店主だが。いや、だからこそ。
知っているのだ、この数か月間の、村井夫人の変化を。
毎日笑って暮らしている―。彼女はそう言った。家での暮らしぶりを見ることは決して出来ないが、きっとその通りだと、確信している。
いや、本当は、私も昨日までは、その確信はなかった。だが、今は判る。村井夫人は、幸せだ。
578雄弁な瞳・後編17:2011/04/22(金) 03:50:03.65 ID:1KE6U7/3
今日の午後、貸本屋の店先で、夫のサインを貰いに来た者達に、飲み物を振舞う姿を思い出す。
きっと彼女は、永遠に知らないだろう。自分のことを、少し離れた位置から見つめる、夫の眼を。
あの男は、サインをする合間、次々と前に立つ客達が入れ替わる、その僅かな瞬間に、何度も、自分の女房を見ていた。まるで、宝物を見るような眼で。
惚れている、などという言葉では言い尽くせないその思いを、あの眼が雄弁に語っていた。
きっと、いつもそうなのだ。あの男は、きっといつでも、何処でも、そばに女房が居るなら、あんなふうに見ているのだ。
不意に視線がかち合うこともあるだろう。「どげしました?」と、懐かしい地元の言葉で、大きな瞳の女房が訊く。
きっとあの男は、語らない。どれ程愛しいかなど、男が言葉で言えるはずはない。
あの二人は、そんなふうに、暮らしているのだ。
579雄弁な瞳・後編18:2011/04/22(金) 03:55:01.26 ID:1KE6U7/3
「ご実家、酒屋さんなんですって」
まだ起きていたらしい女房が、急に言った。
「誰の?」
「布美枝さん。旧姓は飯田さんていって、あのお父様、安来で酒屋をやってらっしゃるんですって」
「へえ…」
酒屋の娘が、下戸の女房か。それはまた、皮肉な。
義父に銘酒を勧められ、困り果てるあの男の顔が浮かんで、暗闇の中、私はつい、笑ってしまった―。

後編、終わり
580名無しさん@ピンキー:2011/04/22(金) 04:22:46.57 ID:nzSIka2O
>>561
ふあー初めてリアルタイムというのを体験した!起きててよかった!
何度更新ボタンを押したことかw
橋木氏にとうとうゲゲの正体がバレてずっとひやひやしてたのが(前話の作者さんの「志村後ろー!」の表現がぴったりw)やっとすっきりした気分です。
第三者からの目線だとゲゲのフミちゃん大好き光線がこんなにも丸わかりとはww
恥ずかしい夫婦だけしからんもっとやれ!

余談ですが、今日たまたまDVDを見返してて橋木氏の店の場所を確認し、このシリーズを思い出してニヤニヤしてましたw
581名無しさん@ピンキー:2011/04/22(金) 08:58:03.76 ID:yn9RNOlR
>>562
ザラッときた…!
GJです、本当に!
なんだか橋木さんにしげさんが認めてもらえたようで、嬉しいや。
ゲゲゲワールドってなんて魅力的なんだろうと
改めて感じました(*´∀`*)
582名無しさん@ピンキー:2011/04/22(金) 14:38:30.26 ID:3pjyRiVa
GJ!!
週末はDVD漬けで過ごす(゚∀゚)=3
583名無しさん@ピンキー:2011/04/23(土) 00:28:40.54 ID:5XVW+v2r
>>559
遅レスだけど
すごい!
ナイスなもの見つけてくれてだんだん
584名無しさん@ピンキー:2011/04/23(土) 02:11:07.44 ID:QVklNR4S
>>562
しげさんがふみちゃんを見つめてた事に対する店主氏の考察がたまらん!
村井夫婦を筆頭にゲゲ女世界が愛おしくなる作品をだんだん
585名無しさん@ピンキー:2011/04/23(土) 21:34:37.12 ID:Me/s7E8F
>>562

GJ サインの合間しげぇさんがふみちゃんを…ってとこでウルウルしてしまいました

長くても全然気にならない(いやむしろ長くていい!)次回も楽しみにしています
586名無しさん@ピンキー:2011/04/24(日) 02:30:29.70 ID:Kn9vzltL
>>559
105じゃないけど、だんだん!自分1スレ目全然保存してなかったんで、久々の作品群にめっちゃ沸いた!
587名無しさん@ピンキー:2011/04/24(日) 11:28:03.35 ID:8I9uI1bC
割れせん久しぶりに見たら思ってた以上に綾子さんもゆうちゃんもデレデレしてて悶えた
588目覚まし女房:2011/04/25(月) 15:00:40.15 ID:zQFwyf+x
初投下です。
何回も見直しはしましたが、誤字脱字ありましたらすみません。
言葉遣いが…難しかった…職人さん凄いなぁほんと。

結婚から深大寺デートまでの間のお話です。
初夜前のエロなしですすみません。
これがあるとふみちゃんの結婚直後の不安が薄れてしまって話が
噛み合わなくなるかもなぁと書きながら思いましたが、まぁ妄想なのでw
次は頑張ってエロ書きます。
589目覚まし女房1:2011/04/25(月) 15:03:16.47 ID:zQFwyf+x
「どげしたもんかなぁ…」
東京、調布に嫁に来て三日目。布団にくるまりすやすやと寝ている茂を眺めながら、
布美枝は途方に暮れていた。

***

そもそも事の始まりは、布美枝が東京に来た翌日のことである。
その前日の夜、つまり東京に来て初めての夜、茂は夜更けまでずっと仕事を
していた。旦那が仕事をしているのに先に寝てはいけないと、布美枝はチラシで
折り鶴を折ったりなどして時間を潰していたのだが、水を飲みに仕事部屋から出て
きた茂にそんなところを見付かり、早く寝ろと逆に怒られてしまった。
茂の布団は居間に敷いてほしいと言われたのでちゃぶ台をどかして敷き、自分の
布団は悩んだすえ二階に敷いた。一人で風呂を沸かして入り、濡れた髪を拭き
ながら仕事部屋の茂に先に寝ると声を掛けたが返事はなかった。おそらく聞こえて
いないんだろうな、と寂しい気持ちになりながら、初めての東京の夜を一人で過ごし
たのだ。

その翌朝、いや、翌昼と言ってもいい時間、つまり東京二日目の昼のことだ。
結婚式後の境港での一件があったため、布美枝は茂が寝ぼすけだということは
承知していたし、自分ではまだ起こすことはできないだろうとわかっていた。なので、
居間でまだぐっすり寝入っている茂を起こさないように自分だけ軽い朝食をすまし、
なるべく音を立てないように掃除と洗濯をした。多少の物音が立ったからといって、
茂が起きる気配など一向になかったのだが。
(でも、さすがにお昼には起こさんと。〆切が近いようだし…昼御飯まで抜いて
しまったら身体に悪いけん…)
境港の義母のように起こせるだろうか、と、布美枝は茂の枕元に座り気合いを入れ
茂の顔を覗き込んだ―――…。
590目覚まし女房2:2011/04/25(月) 15:05:18.04 ID:zQFwyf+x
ぱちり。
「……わっ!」
今までしっかり閉じていた茂の眼が開き、覗き込んでいた布美枝は思わず飛び
上がった。実際には飛び上がってなどいないが、布美枝の気持ち的には30センチは
飛び上がったくらいの驚きだった。
「んん…あんたか…、あぁもう朝か…」
まだきちんと覚めきっていないのだろう、茂は起きあがり目を擦りながらぼんやりして
いる。窓から射す光を見ながら「いまなんじ…」とごにょごにょ言っていた、が。
「いけん…!!」
窓に置いてあった時計を見るなり大声で叫んで立ち上がると、「寝すぎた…」「また
遅れた…」などとぶつぶつ言いながら仕事部屋へ大股で進んでいく。
「あ、あの…!」
気付いたら呼び止めていた。昨日からまともに会話をしていない。少しだけでも、
話したかった。
「どげしました?」
「あ、いや…」
呼び止めたはいいものの、肝心の話題がなかった。聞きたいことは山ほどあったが、
一分一秒でも惜しいという目でこちらを見られたら、何を言ったらいいのかわからなく
なってしまう。
「…もうすぐでお昼ですけん、御飯できたら、声掛けますね」
それだけ言うのが、精一杯だった。
「あぁ、いらんです」
「え?」
「寝すぎてしまいましたけん、飯を食うてる時間も惜しいんです。あんただけ食べてて
ください」
「そ、そういうわけには…、朝御飯も食べとらんのですよ?」
「大丈夫ですけん、今までだって三食きちんと食ってなんかおらんかったし」
「そんな…」
境港の義母に茂の健康をよろしくと頼まれていたのに、御飯もまともに食べさせられ
ないだなんて。自分がこの家にいる意味をひとつ奪われてしまったような気がして
悲しみが込み上げてきた。
その時。
591目覚まし女房3:2011/04/25(月) 15:08:26.06 ID:zQFwyf+x
ぐ―――きゅるるる―――……

気まずい部屋に場違いな音が鳴り響いた。
布美枝は一瞬何の音か理解できなかったが、一気に赤くなった茂の顔にそれが
なんだか理解する。
「村井さん…」
「あ、いや、これは…」
さっきまでの堅い態度は何だったのか、あたふたし始めた茂におかしくなったが、
笑っていいものかどうか判断できず布美枝は少し思案した後、自分の言い分を通す
ことにした。
「腹が減っては戦はできず、ですけん。昨日の残った御飯でおにぎり作りますね。
それならすぐ食べられますよね?」
「はぁ、すんません、お願いします…」
そう言うと、茂はぼりぼりと頭をかきながら仕事部屋へ引っ込んでしまった。

おにぎりと味噌汁とお新香。寂しい食卓であったが、茂が食べてくれるならそんなこと
問題ないように思えた。
「あの、すみません、御飯できましたけん…」
仕事部屋の襖を開けて声を掛けると、珍しく一度で聞こえたらしい茂は居間へやってきて
ちゃぶ台の前に座った。
「味噌汁も作ったんですか」
「おにぎりだけじゃ寂しいと思って…いらんかったですか?」
「いや、構わんです」
言うと、茂は味噌汁を一気に全部吸ったあと、おにぎりが乗った皿にお新香を乗せて
立ちあがった。
「後は原稿しながら食うけん」
そのまま仕事部屋に入ろうとした茂に、あのぴっちりと閉まった襖を思い出して布美枝は
また悲しくなった。
だが、茂はおにぎりが乗った皿を持ったまま何か考えているかのように立ちつくした後、
また座り直し布美枝の顔を真っ直ぐに見た。
592目覚まし女房4:2011/04/25(月) 15:10:49.76 ID:zQFwyf+x
「ど、どげしました?」
「あんたにひとつ頼みごとがある」
頼みごと、と聞いて、もしかして余計なことはするなとかそんなことではないかと布美枝は
不安になった。
「朝、起こしてくれないか?」
「……え?」
「イカルに聞いて知っとると思うが、俺は朝に弱い。放っておくと今日みたいに昼まで
寝てしまうけん。普段ならいいがこう〆切に追われている身だとそれではいけん。そこで
あんたに目覚まし代わりになってもらいたい」
「私が…、ですか?」
「あんた以外に誰がおる。それともあれか、あんたも朝に弱いたちか?」
「い、いえ!ラジオ体操にも毎朝行ってましたけん、大丈夫だとは思いますが…」
「ラジオ体操…?まぁ、ラジオでもアラジオでもアマジオでもなんでもいいですけん。
頼みます」
「は、はい」
布美枝の返事を聞くと、茂は今度こそ仕事部屋に籠ってしまった。
この家に、茂に自分は必要なのだろうかと悩んでいた布美枝だったが、茂に頼りに
されたことよりも、あの茂の深い眠りから自分はどうやって目を覚まさせたらいいのか、
境港の義母のようにできるかという不安の方が大きかった。

***

茂を起こさないといけないというプレッシャーからか緊張してあまり眠れず、布美枝は
空がまだ明るくなる前に目覚めてしまった。
昨夜も茂は夜更けまで仕事をしていたようだしこんなに早く起こすのも気を引けて、朝食の
準備やら洗濯やらの家事をして時間を潰す。朝食が出来上がったころ、姉から貰った
時計が鐘を鳴らして七時になったことを告げた。
(そろそろ…かな…?)
昨日と同じく居間で寝息を立てている茂の枕元に座ると、ためしに小さく揺さぶってみる。
そんなことで起きるわけなく、今度は力強く揺さぶった、が、やはり起きない。
593目覚まし女房5:2011/04/25(月) 15:15:39.52 ID:zQFwyf+x
「どげしたもんかなぁ…」
今度は茂の顔を覗き込み、鼻を摘まんだり頬を抓ったり(意外にも柔らかくて驚いた)
してみたが、それでも反応はなかった。
布美枝はひとつ大きな深呼吸をした。そして布団を思いっきり引っぺがそうとしたが、
何かを察知したらしい茂は布団を掴んで離そうとしない。
「…起きて…、ごしない…っ」
境港の義母のように大声で怒鳴る勇気はまだなかったが、そのかわり全力で布団を
引っ張る。しかし男と女の差はあれど、寝ているくせにどこにそんな力があるのかと
思うくらいの茂の引きの強さに布美枝が先に力尽きてしまった。
「うぅ〜ん…」
唸ると茂は布美枝に背を向けてしまったが、少し睡眠から浮上したらしいその姿に、
布美枝はまたしても茂の身体を強く揺さぶる。
「起きてごしない…!〆切が、近いんでしょう…!?」
ぴくり、と茂の肩が動いた。〆切という言葉に反応したらしい茂は、仰向けになると薄く
目を開く。
「しめ…きり…?」
「そうですけん、〆切です。原稿をやらんといけんのでしょう?起きてごしない…っ」
開いた目を閉じさせないように必死に揺さぶりながら、布美枝は茂に懇願する。
「げんこう、は、だいじょうぶ…だけん」
「…へ?でも昨日…」
「あのとき、は、そうだったが、いまは…ええんだけん。もうすこし…」
そう言うと茂はまた目を閉じてしまった。
「大丈夫…なんですか…?」
揺さぶっていた手を止めて布美枝は考える。昨日まであんなに時間に追われていたのに、
大丈夫になった?そんなようには見えなかったが…。
594目覚まし女房6:2011/04/25(月) 15:21:16.79 ID:zQFwyf+x
しかし茂本人がそう言っているのだし、数日間一緒にいただけの自分にそんなこと判断
できるわけもない。もし本当に大丈夫なようなら、無理矢理起こすより少しでも多く寝て
いてほしいのは事実だった。
疑問は残ったが、とりあえず昨日と同じ昼近くなったら起こそうと、布美枝は洗濯物の
続きをしに行った。

「うわああああああ――――!!!」
廊下の雑巾掛けをしていると茂の叫び声が聞こえ、布美枝は慌てて居間へ向かった。
「どげしました!?」
居間に入ると、茂は布団から起き上がり真っ青な顔をしながら窓際の時計を見ていた。
「あ、あんた、朝に起こせと…」
「えっ?起こしましたよ?」
「じゃあ何故この時計は十一時を指しているんだ?壊れたのか?」
「いえ、今は十一時ですよ」
「俺は…朝に起こせと言わんかったか…?」
「はい、言いました。だけん七時に起こしたじゃないですか。でも原稿は大丈夫だって…
覚えとらんのですか?」
言うと、茂は信じられないという顔をして布美枝を見つめ、何かを手繰り寄せるように
考えた後、はっと思い出したようだった。
「………言っ……た……。しかし、それは……嘘だ」
「うそ…?」
それ以上茂は何も言わず、布団の上で頭を抱えてうんうん唸っていた。
状況がまだうまく飲み込めない布美枝だったが、きちんと起こさなかったことがいけなかった
ということはわかった。茂に初めて言われた頼みごとを言われた通りにできなかった自分が
悪いと気付いて、なんでこんな簡単なこともできないのかと自責の思いが一気に膨らんで
いった。
「あ、すみません…私が、ちゃんと起こせば…」
言うと、茂は布美枝の顔を見ないまま布団の横の畳をトントン、と叩いた。
「ちょっこし、こっちにきてくれ」
595目覚まし女房7:2011/04/25(月) 15:23:57.17 ID:zQFwyf+x
布美枝はびくびくしながらも言われた通りに布団の横に座った。情けなくて申し訳なくて
茂の顔を見れずに俯く。涙が零れそうになったが、泣いたって許されるわけじゃないと
必死に堪えた。
「あんたにひとつ言っとかなければならんことがある」
「はい」
「寝起きの俺を信用してはいけんです」
「はい。……――――はい?」
ぱちくり、という効果音が似合うように大きな眼を見開いた布美枝は、俯いた顔を上げて
茂を見た。
「原稿が大丈夫なわけがないが、寝起きの俺は睡眠が最優先だけん、大丈夫じゃない
もんも大丈夫と言ってしまう。だらずだからな。しかしそれに惑わされたらいけん。あんたが
信じていいのは起きてる時の俺だけです」
「は、はい…」
「だけん、起こしてくれと頼んだら、次の日寝惚けた俺が大丈夫だと言ってもなんとしても
起こさなければいけん。それがあんたの使命だけん。全うしてくれ」
「そげです、か」
「悪かったですな、寝汚いのは子供のころからで治らん。あんたにしっかりしてもらわんと
終わる原稿も終わらなくなってしまいますけん」
てっきり怒られると思っていた布美枝は、呆気にとられたような気持で茂を見た。茂は困った
ような可笑しいような、そんな顔をしている。
「わかったら、返事」
「は、はい!」
布美枝が言うと、茂は大きく伸びをして布団からのっそり出てきた。
「さて、遅れた分を取り戻してきますけん」
「はい、頑張ってごしない」
「……おにぎり」
「はい?」
布美枝がきょとん、と見返すと、茂はそっぽを向きながらぼりぼりと頭をかいていた。
「昼飯はおにぎりお願いします。あれは原稿しながら食うのにちょうどええ」
腹が減っては戦はできずだけんな、と言うと茂は、見合いの時のようなあのあどけない笑顔で、
笑った。


596名無しさん@ピンキー:2011/04/25(月) 16:40:23.67 ID:k1FDX39a
>>589
初投下、歓迎いたします!
寝起きの俺を信用してはいけないってw
本当だから困るww
寝ぼけしげさんは萌えるな(*゚∀゚)

エロも待ってますけん!
597名無しさん@ピンキー:2011/04/25(月) 18:35:56.87 ID:yd/hUiJx
>>589
GJ!!寝起きのゲゲがなんか可愛いw
式の翌日の境港のときの布美ちゃんの控えめな起こし方(布団だけゆさゆさするやつ)思い出して萌えた
598名無しさん@ピンキー:2011/04/26(火) 17:19:38.29 ID:SlFQxcM7
>>589
GJ!
やだもうゲゲふみマジかわいい
寝たいが為のしげさんの嘘が本当に言いそうでワロタww
ふみちゃんの布団ゆさゆさが見たくなってDVD見たらしげさんはラジオ体操知らないだろうって言われててより楽しめた
599名無しさん@ピンキー:2011/04/27(水) 09:01:04.51 ID:sngAWtWH
>>589
朝っぱらからGJ!
初投下とは思えぬクォリティの高さに感動した!
改めて良スレだと実感…

初々しいゲゲふみええですな〜
ふみちゃんが健気で甲斐甲斐しくて激しくイイ!
エロなくても大歓迎ですけん また投下してごしない!
600名無しさん@ピンキー:2011/04/28(木) 18:06:20.90 ID:ssIW2Lz1
このスレとゲゲふみが癒しすぎる…

ところでもうそろそろ500kbいっちゃいそうなのでどなたか次スレ立てていただけないでしょうか
601名無しさん@ピンキー:2011/04/28(木) 21:46:52.02 ID:+g4zb7r5
あ、ほんとだ。
レス番ばかり見ててそっち見てなかった。
たくさん投下あったもんな。

ちょっと挑戦してみる。
602名無しさん@ピンキー:2011/04/28(木) 21:54:34.85 ID:+g4zb7r5
立ったおー!

【朝ドラ】ゲゲゲの女房でエロパロ4【昭和のかほり】
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1303995098/

新スレの2はテンプレに入れてもいいか迷ったので、
別のレスにしといた。
603名無しさん@ピンキー:2011/04/28(木) 22:50:54.31 ID:ssIW2Lz1
>>602
だんだん!
604名無しさん@ピンキー:2011/04/29(金) 00:21:20.65 ID:ypQE5E64
>>602
ありがとうございます。
いつも橋木商店の店主さんの話を書き込んでる者ですが、一人で容量使っちゃってすみません(汗)

あと、レスたくさんありがとうございました。何とかまだ規制はくらってませんw
続きは新スレに投下したほうがいいんでしょうか?
605名無しさん@ピンキー:2011/04/29(金) 02:19:37.34 ID:+Yl6ud4A
>>602
だんだん!4スレ目か〜!なんだかんだで、ここも1周年とか余裕で迎えそう。
1スレめからずっといる自分としては、すごく嬉しい!最近また賑わってきてるし♪
>>604
そのほうがいいと思う。中途半端になってもイヤだし。
606604:2011/04/29(金) 11:14:39.04 ID:ypQE5E64
>>605
ありがとうございます。新スレのほうに投下させていただきます。
607名無しさん@ピンキー:2011/04/29(金) 11:20:12.03 ID:DRE9Gd0T
雑談で埋めるでおk?

初夜話って過去に2作品出てきてるけど、これ以上増やすのはまずいかな?
童貞ゲゲが奮闘する初夜話を書いてみたいんだが…
608名無しさん@ピンキー:2011/04/29(金) 11:47:23.75 ID:5TnW9hK/
>>607
全然OK
どんどんお願いします!
609名無しさん@ピンキー:2011/04/29(金) 11:57:13.92 ID:Mc7vQDBR
>>607
どんとこい!
いろんな初夜があっていいじゃないか
妄想も投下も自由だと僕は思うなぁ
610名無しさん@ピンキー:2011/04/29(金) 12:37:54.36 ID:DRE9Gd0T
>>608>>609
だんだん!
じゃあちょっこし挑戦してみる

前からゲゲは童貞か否かの話題が何度か出てきたけど私は童貞派なんだよねw
39歳童貞で初めてのセクスにテンパるゲゲ萌え〜
611名無しさん@ピンキー:2011/04/29(金) 13:10:01.74 ID:k/xXcUPx
>>609
戌井さん乙。
>>610
自分は境港初夜説をパラレルワールドと言い訳して書きましたよ。
諸説あってかまわんのです。
612名無しさん@ピンキー:2011/04/29(金) 21:40:34.80 ID:Mc7vQDBR
>>611
このスレならそうつっこんでもらえると思ってた!w
しげさん乙
613名無しさん@ピンキー:2011/04/30(土) 09:53:14.33 ID:6e80pa50
割れせんでアキバに行ってメイド喫茶行ってるの見ると綾子さんにメイド姿を期待してしまう
ミニスカよりロングで清楚な感じの方が似合う気がする
614名無しさん@ピンキー:2011/04/30(土) 13:37:19.92 ID:k52/Y2DC
>>607 >>610
すっごーく嬉しい!!

私も断然ゲゲ童貞派です
水木先生は謎に包まれていますがwドラマの村井茂はかなり童貞っぽかった〜w

変わり者で、朴念仁、結構男っぽくて
亭主関白で・・・そして長身の(童顔系)イケメン・・・
かつてみたことのないキャラですよね

お見合いで出会ってすぐ結婚・・・
お互いに恋していく2人に萌えていますw

あなたの作品投下、心待ちにしています!!!
615名無しさん@ピンキー:2011/04/30(土) 18:05:53.94 ID:usgJGTJd
>>613
いっそのことメイド煎餅屋
616名無しさん@ピンキー:2011/05/01(日) 03:23:32.45 ID:rOFBJsK1
>>615
そうなるとゆうちゃん専用になる
617名無しさん@ピンキー:2011/05/01(日) 19:43:22.58 ID:J0wS1QcD
しげさんが結婚まで童貞だと魔法使いってことになるのか…
自分はふみちゃんを余裕を持って優しくリードしてほしいけど童貞も捨て難い派

>>616
夜のゆうちゃん専用メイド煎餅屋…か…
ええですなぁ…
618名無しさん@ピンキー:2011/05/01(日) 20:09:36.95 ID:ymKe8Dl0
メイド煎餅屋も良いけどエロ下着や裸エプロンも捨てがたい
619名無しさん@ピンキー:2011/05/02(月) 00:00:05.87 ID:pxojAAJt
初夜・童貞版 まだかな♪
わくわくするぉ

ちょっと天然な綾子にジェラシーゆうちゃん
とかも禿しく見みたいな
620名無しさん@ピンキー:2011/05/02(月) 09:23:39.31 ID:AaXt5/VR
世間はゴールデンウイークだというのに、おまいらときたら…


大好きだーーーーーっ!!
621名無しさん@ピンキー:2011/05/02(月) 09:52:11.55 ID:29r4Cl4E
>>618
ゆうちゃんの誕生日に内緒でエロ下着を着て一日中お店に立つとかか
622名無しさん@ピンキー:2011/05/03(火) 00:43:53.52 ID:quWcG5LM
ここも、次スレも、携帯で見れなくなっちゃったーーーorz
一日の終わりにチェック、ベッドで眠る前の習慣だったのに・・・(泣
623名無しさん@ピンキー:2011/05/03(火) 01:05:10.04 ID:XaFoqJiQ
ん?なんかあった?自分は普通に見れるけど…。
そろそろこっちは容量いっぱいになりそうだね。
624名無しさん@ピンキー:2011/05/03(火) 15:44:17.19 ID:9bh/oL4d
このスレやっぱ癒されるー
大好きだ
625名無しさん@ピンキー:2011/05/05(木) 11:57:58.11 ID:T4WSusYT
>>621
閉店後は相当燃えるだろうなw
626名無しさん@ピンキー:2011/05/05(木) 18:05:30.72 ID:bPgL6sxr
下着をやたら意識してしまってだんだん身体が火照ってきてそれに気づかれて
「どうした?」っておでここっつんされて必要以上に反応してしまって…

とかなんとか妄想
文章は書けない(キリッ
627名無しさん@ピンキー
このスレ大好きです
職人さんも住人さんも、みんな大好き♪

ゲゲふみの世界を愛し過ぎて、未だに現実に戻れない自分w

たとえスピンオフをNHKが作ってくれなくても
このスレがある限り、ゲゲ女ワールドが生き続けるのが嬉しいのです

皆さんに感謝しています!