利劍は薄蛍の唇に自らの肩を押し付け、髪と背中を撫でながら
そのまま一気に奥へと侵入していった。
「─ひっ───」
という薄蛍の声にならない悲鳴を聞いて胸が痛む。
薄蛍の犬歯に肩を食われてしまったが相手の痛みに比べれば気にすることもない程度の痛みだろう。
そうしてそのままの姿勢で、子どもをあやす様に抱きしめ続けた。
薄蛍は痛みが若干引いてきた頃、自らの口の中にある鉄の味に違和感を覚えた。
こじ開けられる辛さ、突き破られる衝撃、まだ中心がじくじくと痛むが幾分落ち着いた。
しかし口内は全く痛くない。
利劍の顔を見たいと自らの顔を上げると肩に二つの傷が現れた。
すぐに血が珠のようになる様は傷の深さを物語っている。
眉が下がっているのは自分でもわかっているが、とりあえず治療をしなければと慌てていると
ぽん
と頭に手を置かれて口づけられる。
俺の痛みはお前に比べるべくもないし、傷が治らないのならば、それはそれで本望だ。
確かに伝わるその感情に、薄蛍は体の力を抜いて愛しい人の胸にすっぽりと収まった。
痛みを感じる体でも、自分の中心にあるものは意識せざるを得なかった。
なにしろとても熱い。
薄蛍は恥ずかしくなって身じろぐ。
そうすると困るのは利劍だ。
きつく自分を受けとめる薄蛍の中は、本人の様に優しく繊細に動き
それだけでも信じられないほどの刺激なのだが、身動きをとられるとさらに刺激が高まる。
「─っ薄蛍っ」
いつになく語気の強い利劍の言葉に、薄蛍は身を固くする。
「…あ…」
そして薄蛍からふふっと笑みが零れた。
─かわいい
目の前の男性とは似ても似つかない言葉に、笑いが止められない。
「利劍様っ」
くふくふと笑いながら笑顔を見せる女と、苦虫を噛み潰した様な顔を見せる男。
そして女は意地悪されたお返しに、と耳元で囁く。
「だいすき、です」
緩やかに腰が動き始める。
突き上げる度蠢き、きつく形を変えながら優しく受け止められる。
まだ体は痛むだろうに「大丈夫ですから」と微笑まれれば
自分の欲望を優先してしまった。
つくづく俺は薄蛍に甘えてしまっているな…
その意識もじゅくじゅくと鳴る水音と肌の重なる音で遠くに追いやられてしまう。
そして、きゅうと薄蛍の中も、自分にしがみつく腕の力も強くなってきた頃
二人で抱き合って
そして部屋は静かになった。
「いたたたた…」
気づくと薄蛍は自室にいた。
体もさっぱりしているし、浴衣も着崩れることなく布団に入っていた。
だから、昨日の事を証明するのは様々な所に感じる体の痛みだけ。
とりあえず体が動かなかったものだから、体調を崩したことにして一日お休みを頂くことにした。
ざくろと雪洞、鬼灯、櫛松にまで「誰よりも家事をしてるんだから、少し休んでいい」
と言われてしまったのが心苦しい。
だから布団の中に入って大人しくしているのだが、そうしていると考えてしまうのは昨日のことで
反射的に顔が赤くなってしまい、慌てて布団の中に逃げ込んだ。
桐と桜が襖の外で走る音がする。
それともう一つ、とても耳慣れている足音。
「ねーぇ、薄蛍のお見舞いしてもいいー?」
「駄目だ。風邪が移ったら薄蛍が悲しむだろう?」
だからもう少し良くなってからだ
という会話が聞こえてきて、益々布団から出づらくなった。
「はーい!」と元気に離れていく二つの足音。
そしてそっと開く襖。
枕元で止まり、何かを床に置く音がする。
ちゃぷんといったから、恐らく水を持ってきてくれたのだろう。
「薄蛍」
「…すまなかったな」
そうしてぽんと布団を叩いて立つ音がして、恥ずかしいけど寂しくて。
そろそろと布団から顔を出した。
「起きてたのか」
「…はぃ」
「何か食べるものを持ってこようか」
「大丈夫…です」
では水を、湯呑みにと水を注がれて差し出された。
なんで利劍様はこんなにも普通なのだろう
やはり夢だったのかしら
と湯呑みを取る際触れた手から
色々な謝りの言葉と同時に、まだ雪に隠れきっていない南天の実が沢山見えて
早くなった動悸を落ち着かせるために一気に水を飲んだ。
306 :
281の人:2011/09/19(月) 18:22:26.43 ID:uUQMIFk4
終わりです。
人少なくて寂しいから、もっと色々な人が書いたの読みたいなー
最後に、みんな南天の花言葉を調べてきゅんきゅんするといいよ!
わああ
>>301ちがう!差し替え
節ばった指が、背中、胸、そして腰へと何度も往復する。
もはや意識がどこかに流れ出ていってしまったような薄蛍は
その度に高い声を出して鳴く。
そんな状態であったから、薄蛍の足を開かせるのはいとも容易い事だった。
閉じられた口は撫でれば蜜を溢れ出させ
侵入者を簡単に受け入れる。
ただ、生きてきた間に経験した事のない、自分の中で何かが蠢く感覚に
薄蛍の意識は幾らかはっきりとし
「やっぱり…はしたない…」と力なく抵抗した。
利劍は口元を緩ませると
薄蛍の髪を撫でて、再びぼんやりとした世界に連れて行く。
…腰が指を追ってしまっていることは、秘密にしておこう
そう決めて、侵入者の数を増やした。
再度ぼんやりとした世界に沈み込まされた薄蛍も、自らの腹に当たるものに何とは無しに気づいていた。
それがひどく異質なものに感じて。
気になるから、とりあえず触れてみる。
そうすると目の前の身体が跳ねた。
蕩けた頭では、それがどういう行為なのか全くわからない。
…なんだかおもしろい
さすったり弄ったりすると益々熱を帯びるし、体が跳ねるものだから
新しい玩具で遊ぶように薄蛍は暫くそれと戯れた。
ひさしぶりの投下だー!
ありがとう!GJGJ!薄蛍可愛いなぁ…。
GJでした!
おなかいっぱいになったぜ
保守
保守
保守
保守
保守
保守
保守
保守
保守
保守
保守
保守
323 :
名無しさん@ピンキー:2012/06/30(土) 13:01:12.00 ID:PwBR/+hM
保守
まだスレが残っていた事に感動した。
そんな
>>281が再度利劍さん×薄蛍を投下。
またしてもエロ前まで。
7巻終わりくらいのイメージです。
淡く輝く月を縁側に座って見上げながらふぅ、と薄蛍はため息をついた。
今日もまた眠れない。
昼間は「才色兼備な令嬢」を演じねばならず
─「エス」という不思議な慣習によって仲間と顔を合わせることも出来るから以前より心強くはなったし、琴や生け花が嫌いでないのは幸いであったが─
また、屋敷に戻れば大奥様による作法の躾があり、妖人だからと区別されないのはうれしいが心身に負担がないとは言えなかった。
【小さいお嬢様】方に無い者として扱われるのも、また堪えた。
女中と話をしてもそういった事は口に出すことができず、ましてや妖人に対する偏見も全く無くはない訳で。
またため息が一つ零れる。
折角、利劍様にお会い出来たのに取り乱して縋って泣いてしまった。
同じ屋敷にいるのにとても遠い所にいるみたいで。
道場にいたときは幸せだったのに、次に会えるのは何時になるかわからない。
嬉しかった逢瀬すらも今となっては切なくて、心の澱は溜まるばかり。
そんな中、遠くで鳴った床の音に息を呑む。
「─あ」
ここ数日で気がついたのだが、薄蛍のあてがわれた客用の離れは遠くに家人の行き来する廊下が見える。
そこを稀に利劍が通るのが見えるのだ。
遠さも暗さも夜目が効く自分にはなんの問題もない。
大きな体躯の割に静かな歩みの音(これが聞こえるのも妖人ならではなのだが)を感じ、薄蛍は息を潜め目を凝らしてしまうのだった。
自分に言えた義理は全くないが、薄蛍は自分の感情をよく押し殺す。
お祖母様の躾は厳しい事で有名であるし、妹達が辛く当たっている事も知っている。(が自分が下手に動くと、反撃の術がない薄蛍にさらに…とも思い上手い方法を考え倦ねている訳で)
他にも抱えていることが山ほどあるだろうに、笑って言うのだ。
辛くはない、と。
きっと薄蛍は知らないだろう。
微笑む直前の瞳が憂いを帯びていることや耳がしおれていることが。
言葉と反する表情が刹那に現れること。
それもすぐに優しい笑みに紛れてしまい、結局自分が薄蛍に甘えてしまう。
今日もまたなんだかんだと外に連れ出され、帰宅したのは大分夜も更けてから。
気づいていながらも結局は言い訳をして、何もしてやれない自分に反吐が出る。
立ち止まって見上げた月は雲に隠れて朧気で、すすきが風に揺れる。
しゃらしゃらと鳴る音に紛れて一人呟く。
「薄蛍」と。
「え?」
今、風の音に紛れて自分の名を呼ぶ声が聞こえた。
思い違いかもしれないけれど、それでもやはり嬉しい。
音をたてない様に袖口を目元にそっと遣り、利劍様の姿が見えなくなったらそろそろ床に就かなきゃ、なんて考えていると
明らかに目が合った。
その途端心臓が跳ね上がる。
なぜわかったの?と混乱している間に目が合った人間が庭石をじゃりじゃりと鳴らしながらこちらへ歩いて来る。
頭が働かないながらもどう言い訳しようか…などと頭をぐるぐるさせているといつの間にか目の前にいて
「どうかしたのか?」
そう尋ねる声がとてもやさしくて、言い訳がどこかに流れてしまって惚けてしまった私の頭をやさしく撫でてくれた。
気づいたのは完全に勘としか言い様がない。
何やら気配を感じると、暗がりに光る瞳。
今客室を使っているのは一人しかいない、と思うと同時に足がそちらに向かっていた。
近づくにつれて怯えた様な表情が窺える。
「どうかしたのか?」
そう尋ねるがこちらを見つめたまま動かなかったのでいつもの様に頭をなでる。
そうするとほっとした様な表情に変わり、やっと口を開いた。
「いえちょっと…月を見ていたんです」
「そうか」
と返したものの頭から滑らせた顔は随分と冷たくなっていて、月を見るにしてはあまりに長い時が経っていたことがわかる。
「眠れなかったのか?」
「いえ、まぁ」
本当に薄蛍は嘘をつくのが下手だ。
節目がちに言葉を紡ぐ姿を見ているのがいたたまれなくて、顔が見えないように胸元に寄せて抱きしめる。
「辛かったな……」
誂えた様にすっぽりと収まる細い体にぐっと力を込めると嗚咽が聞こえ始めた。胸元の着物がしっとりとしているから泣いているのだろう。
こういう時にかける言葉が見つからない己の気の効かなさが悔しいが、かと言って良い言葉も見つからず幼い子をあやす様に背中をさする。
そうして暫くすると、胸元は嗚咽からすやすやとした寝息に変わっていた。
目の端には涙が溜まっているが、ふわりとした寝顔。
優しい夢を見られます様に
そう願って、利劍は薄蛍を起こさぬようそっと体を抱き、床の中まで運んだのであった。
翌日
薄蛍が人目を気にしながらぱたぱたと駆け寄ってきて
「申し訳ありませんでした……昨日は、いつの間にか寝てしまっていて」
「疲れていたのだろう」
「布団までつれていって下さったのは利劍様ですか?」
言えば恐縮するし、言わずとも伝わってしまうのであえて言わずに目の前の頭にぽんと手を置いた。
耳がしゅんとなっていたが遠くの足音を聞きつけた様で、何かを言いたそうにしながらも
「ありがとうございます」
とだけ残し足早に去っていった。
そして、この夜更けの逢瀬は暫く続く。
雨が降り、会わずに終わる日もあったが大抵皆が寝静まった頃に縁側で時を過ごした。
薄蛍が直ぐに眠たそうな様子を見せるので長い時間ではなかったが。
ある時は星をただ静かに眺めた。
一度自分にもたれかかりながら薄蛍は寝入ってしまった様で、起こさずに運ぶのもしっかりと握り締められている着物から指を一本ずつ解くのも難儀した。
次の日そう言って笑ったら、恐縮されると同時に「起こして下さってもよかったのに」と拗ねた様に言われてしまった。
またある時はゆるゆると話しをした。
口数の少ない彼女であるが、昼間は感情を抑えているせいか夜になると常よりも饒舌になった。
「起こして下さってもよかったのに。
─でも、誰かより先に眠れるって嬉しいですね」
利劍様には申し訳ないですけど、そう言ってふふっと笑った。
どうして、と問う前に
「昔はざくろ達と一緒に寝ていたんです。
お喋りしていてもいつの間にか皆寝ていて。
私はお布団の真ん中で寝ていたからこうやって空を見る為に動くこともできないし、時計の針の音も怖かったし、周りの寝息を聞くと焦ってしまうんですよ。
だからこうして、起きていてくれる人がいると安心するんです。」
そうして欠伸を一つ。
欠伸はこの密会の解散の合図だった。
おやすみ、と声を掛け合い部屋へと入る薄蛍を見送り、自身の部屋へと戻った。
数日後は静かな新月だった。
利劍が帰ってきたのはやはり人々が寝に入ってからしばらく経とうとする頃だった。
習慣になってしまった行動を変えることができず、庭石が鳴らない様に静かに歩を進めると彼女もやはり縁側にいた。
ただ、何も気づいていない様子で星空を見上げながら膝を抱えている。
ひんやりとした外気に触れて若干血の気の引いた唇を結んで、ぼんやりと遠くを見つめる姿は夜の闇に吸い込まれてしまいそうだった。
「今日も、眠れないのか?」
声をかけるまで全く気づかなかったと見え、同時に体が冷えた事にも気づいたのか薄蛍は華奢な肩を暖める様に抱いてから「はい」と答えた。
縁側に腰掛けて上着を掛けてやると、「それでは利劍様のお体が冷えてしまいます」と言う。
いいからと半ば押し付けるとありがとうございますとくるまっていた。
「体に障るから気をつけた方がいい」
「……なかなか新月の日には眠れないんですよね」
それに明日は女学校もお休みですし大丈夫ですよと微笑んだ。
「寝るぞ」
「……え?」
そうして上掛けごと薄蛍を抱えて寝所まで連れて行く。
その体は布越しにも冷えているのがわかって、伝わる温度とは反対に腹が熱く煮えたぎっていった。
薄蛍は混乱と、触れている場所から感情を読み取ったのか、顔を青ざめさせながらひたすらにごめんなさいと呟いていた。
布団に連れて行って座らせると、薄蛍は瞳に涙を湛えながらごめんなさいと再度か細く言った。
その言葉には答えずに冷えた体を暖める様に抱く。
「もっと自分を大切にしてくれ」
これは自分の我が侭なのだ。辛い思いを閉じ込めて、何故自分を頼らないのかと。
ただ理由も判っている。
言い訳をしては何もせずにいる人間に何を頼ると言うのか。
そんな自分に尚気遣いを見せる薄蛍に八つ当たりをしてしまった。
「もっと頼れる様な男にならなくてはな」
言葉と同時に力が入ってしまったのだろう。腕の中で身じろぎをされる。
慌てて力を緩めると薄蛍の顔が正面に来て、そのまま澄んだ空気の様に冷えた唇が触れた。
「……私は充分すぎるくらいに利劍様に助けて頂いているんです。
だから、そんなに悲しい顔をなさらないで。」
もう自分がどれほど情けない顔をしているのか、これ以上失態を曝したくはなかった。
「我が侭を言わせて下さい。
……暖めて、欲しいんです。」
そうしてまた唇同士を触れ合わせた。
また書けたら投下しに来ます。
数レスお借りしました。
>>330 久々のりすすGJでした!
続き楽しみにしてます
>>330 久々に投下きてたー!GJ!!
やっぱり利すすは可愛いなあ
続き楽しみです
保守
保守
保守
保守
上で利すす書いた者です。
筆がすすまない間に本誌で利すす的神回を迎えそうなので、その前に駄文投下。
次から数レス、エロあり。
昔から、何かを強請ることは少なかった。
妖人省(当時はその様な名ではなかったが)に連れてきてもらい、食べることも着ることにも困らなくなって何の不満もなかったし、ざくろが櫛松にせがめば自分も手に入れることができた。
石を投げないで欲しいとか
おばあちゃんに会いたいとか
本当に欲しいものは強請っても祈ってもどうしようもなかったから、余計に言わなくなった。
目の前にいる人は強請らなくても色々くれた。
ビスケットなんてかわいいものから
悪意の視線を遮る広い背中や、寂しい心を満たす優しさとか。
これ以上望むものなどないはずなのに、間違いなく今自分は強請った。
ただ引き留めるための我が侭。
それでも何も言わずぎゅっと肩を抱いて包まれて、身も伝わってくる感情も暖かくて自然と瞳が潤む。
頭がぼんやりとして思わず顔を見上げれば微笑んでくれて。
ふわっと顔が近づいてきて、浅ましくも瞳を閉じる。
直ぐに離れた唇だけは冷たかったから、何故なのだろうと可笑しくて見上げて笑った。
向けてくれる笑顔がもっと暖かくなったからますます可笑しくてもう一度唇に触れる。
座りながらでさえ埋まらない身長差は、相手の肩を支えにして埋める。
再度触れた唇もやっぱり冷たいかった。
途端身体が軋むほど抱きしめられて、思わず肩に置いていた手を首にまわす。
次は深く深く繋がって暖かく滑っていた。
自分の口を割って入ってくる舌に絡めとられて、冷えた体のどこからこんなに熱い吐息が出るのだろうと不思議になった。
ただ自分の冷たい首筋に、暖かい掌が触れて意識が覚醒する。
ぎゅっと、相手の服を握って一瞬の間を置き、言葉を紡ぐ。
「……わたし、いいんでしょうか?」
また瞳が潤んできて、伝わる疑問の声に答える。
「わたし、色々なものを利劔様から貰っているのに。まだ、望むなんて」
自分の言葉に反応して涙が溢れそうになる。
そうすればまた身体を抱きしめられ、耳が口元に触れるか触れないかの距離で囁かれる。
「なら、俺が……欲しい」
もう一度唇が触れて、腰に手を回され縋りついてしまえば後はもう為すがまま。
苦しくなる位の長い口付けに呼吸が荒くなって、深呼吸をした瞬間に首筋で舌をなで上げられて息が詰まる。
ほんの少し残った理性が声を喉の奥に留めたが余計に苦しく肩で息をする。
休む隙もなく、寝間着が上下する肩からするりと落とされた。
あぁ、新月でよかった。
元々女性としての魅力が乏しい身体はここ最近食が進まずさらに凹凸が減った。
暗闇ではそんな姿は人の眼に映らないはずだから。
抱きとめられて撫でられて、身体は充分なくらい暖まったのにまだ熱が足りないと
自分がやられた様に上手くいかないが思っているより簡単に露わになった厚い胸板に縋りよってしまう。
「痩せたか?」
「少し」
「……すまないな」
「大丈夫です」
「お前の言う大丈夫は当てにならない」
苦笑しながらの言葉に耳が萎れる。
たまに私の心も読まれているのではと思うのだが、頭に手をぽんと置かれて撫でられれば途端に嬉しくなって摺りよってしまうのだ。
「利劔様、狡い」
「何が」
「なんでも」
ふふっと笑って身じろぐと片手の指が腰に触れた。
くすぐったくて
「ひゃんっ」
と高い声が出てしまい、あまりにはしたない声に人の眼には見えないはずの暗闇にも関わらず顔を両手で覆う。
今度は偶然でなく腰の窪みに指が触れたから
手の中に吐息が漏れ出した。
指の流れは止まずに何往復もするから息苦しくなって、離れたいのに離れたくなくて、支えがないと起きていられないから自然としがみつく。
「ッり、劔様ッ………そこっずるっ……ッ!」
「……何が?」
「っあ、んぅっ」
背中を撫でられ胸を撫でられ、とまったかと思えば抱きしめられて口付けられて、たまに肌にひっかかる掌の固い皮の部分に喘ぎ
吸われる首と胸に声を抑えることも難しくなれば指を銜えさせられて。
相手の様子だの声だのはもう届かないくらい翻弄された。
そうして腰で留まっている服が皺になる頃には首にぶら下がって横抱きに膝の上に座っていた。
力が入らず身も意識も溶けた状態でもたれかかる。
最奥はさらにどろどろで熱くて、先程まで自分の口内にあった指が入り込んでも、んあぁとやはり甘く溶けた声で身じろいで摺りよるだけで。
あまつさえ自ら足を開いてしまうなど常の自分であれば有り得ない事だが今はそれもどうでもいい。
足りないものをなんでもくれる
利劔様がいけないの
そう考えたら「もっと」という言葉が口から零れていた様だ。
そっと布団に横たえられて鳴り続けていた水音が止む。
離れたことで湿った体が少しひんやりとする。
離れた熱が恋しくて寂しい。
「本当にいいのか……?」
そう尋ねる重低音の声すらじれったい。
「…ぃやぁ……!」
そう想いとは裏腹な言葉を発して空中に手を差し伸ばせば手を握られ、ずっしりとした重みの体躯がかぶさって、熱い何かに貫かれる。
息をのめばやはり口を肩に持っていかれて、堪えきれずに歯をたててしまう。
微かな血の味に怯みつつ、揺さぶられ続けてくぐもった声で鳴いて、その味すら幸せに思うなんて
やはり私は人ならざる者なんだ
何だっていい。
与えてくれて満たされて。
貫かれながら抱き起こされて奥まで掻き回される。
ずちずちと淫靡な音をたてて身体が上下すると圧迫感と開放感で上りつめさせられる。
苦しくて気持ちいい。
切ない。
そこまで思って、意識は途切れた。
「……きほたる……薄蛍」
何度か呼ばれてぼんやりと意識が戻る。
そこにあるのは桶に入った湯と手拭いだった。
身体にかけられていた寝間着と布団をはがすと節々が熱く傷む。
あぁ、どうしよう寝間着の皺がひどい。朝一番で洗濯場に持っていこう。
そこまで思ってはたと気づく。
何故皺になっているのか?
手拭いを絞る手がとまり、硬直する。
「──────────っ!」
声にならない悲鳴を挙げて顔を覆う。
利劔様は!?そう思ってそちらを見ると背を向けて座っていたから慌てて体を拭いて手拭いを濯ぐ。
寝間着を皺のまま着て勢いよく布団に座る。
が、声がかけられない。
こういう時どうすればいいの?
やっぱりこの人は心が読めるのでは?と思うくらいに自然な間で振り向きこちらへと向かってきてそのまましゃがみ、ぽんぽんと頭を撫でて布団へ入れてくれた。
「───」
布団の中から見上げれば枕元に座っている。
「俺がここにいては眠れないか?」
「わかりませんけど……」
心臓が早鐘を打っていて確かに眠れそうもない。
「なかなか寝付けないのだろう?」
いない方が良いなら出て行くが、と続いたのではっと息をのむ。
「では、手をつないで貰っていてもいいですか?」
そう差し出した手は暖かく包まれて、早鐘を静かに収めてくれたからすぐに夢の中に沈んでしまった。
342 :
あとがき:2012/10/29(月) 23:49:41.03 ID:V10NL7B4
暗闇だけどたぶん利劔様は見えてる。
薄蛍は寝つきが悪いだろうなという所から始まりました。
数レスお借りしました。
久しぶりの投下ありがとうございます!
超GJ!りすす可愛いよりすす
保守
保守
どうも上で2作投下させてもらった利すすの人です。
なんか過疎ってていつ落ちるかわからないし保管もされてなさそうなので
少し修正して他所に投下してもいいものなのかね?
(特に最初に投下した方は順番ミスしたし修正したい・・・)
347 :
名無しさん@ピンキー:2013/02/16(土) 15:36:23.82 ID:/APOGcPH
>>346 いいと思うよー
せっかく書いてくれたのに勿体無いし
乙でした!
保守
保
薄蛍
この漫画で和服とブーツのフェチさに今さら気付く。
どちらも脱がす、解くことにエロさがあるんだなー。