1 :
名無しさん@ピンキー:
ここは、ヤンデレの小説を書いて投稿するためのスレッドです。
○小説以外にも、ヤンデレ系のネタなら大歓迎。(プロット投下、ニュースネタなど)
○ぶつ切りでの作品投下もアリ。
■ヤンデレとは?
・主人公が好きだが(デレ)、愛するあまりに心を病んでしまった(ヤン)状態、またその状態のヒロインの事をさします。
→(別名:黒化、黒姫化など)
・転じて、病ん(ヤン)だ愛情表現(デレ)、またそれを行うヒロイン全般も含みます。
■関連サイト
ヤンデレの小説を書こう!SS保管庫 @ ウィキ
http://www42.atwiki.jp/i_am_a_yandere/ ■前スレ
ヤンデレの小説を書こう!Part38
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1288097839/ ■お約束
・sage進行でお願いします。
・荒らしはスルーしましょう。
削除対象ですが、もし反応した場合削除人に「荒らしにかまっている」と判断され、
削除されない場合があります。なるべくスルーでお願いします。
・趣味嗜好に合わない作品は読み飛ばすようにしてください。
・作者さんへの意見は正直なものを。罵倒、バッシングやべた褒めはお門違いです。議論にならないよう、控えめに。
■投稿のお約束
・名前欄にはなるべく作品タイトルを。
・長編になる場合は見分けやすくするためトリップ使用推奨。
・投稿の前後には、「投稿します」「投稿終わりです」の一言をお願いします。(投稿への割り込み防止のため)
・苦手な人がいるかな、と思うような表現がある場合は、投稿のはじめに宣言してください。お願いします。
・作品はできるだけ完結させるようにしてください。
・版権モノは専用スレでお願いします。
・男のヤンデレは基本的にNGです。
・過度の自分語り、前書き、後書きは荒れる元なので、常識の範囲でお願いします。
・男の娘のヤンデレは、注意書きをした上でならOKとします。
2
3
にーさん!!!
(・ω・)乙
これはポニーテールじゃなくておつなんだからね!
まあみんなカッカなさるな。
子供がいると賑やかでいいじゃないか
たまにはこういうのもいいと思う
>>1乙
乙
はい、重複してるのでこっち終了
テンプレ改竄してるし
あっちはもう削除されるお!(b^ー°)早くも終了ですね
議論も何も、前スレで
814 :名無しさん@ピンキー:2010/11/09(火) 18:38:57 ID:Oss/fXBy
綺麗な女装子か可愛い男の娘のヤンデレなら激しく見たい
パッと見じゃ女にしか見えないような
って意見があった時に、誰も反対しなかったじゃないの
絶対嫌だというんだったら、もっと本気で論議しておけばよかったのに
少数派の意見と言えども、反対されない限りは有効だよ
つか、ガタガタ言ってる奴が荒らしか
元々
・苦手な人がいるかな、と思うような表現がある場合は、投稿のはじめに宣言してください。お願いします。
ってあるじゃないか
男の娘が嫌なら注意書き見てスルーすればいいだけのこと
それに
・男のヤンデレは基本的にNGです。
で言うところの男ヤンデレは、男の立場で女に対してヤンデレすることであって
男の娘が男にヤンデレするのとは根本的に違うだろ
子供じゃないんだから人の意見にはちゃんと耳を傾けろよ
13 :
名無しさん@ピンキー:2010/11/13(土) 15:45:05 ID:O3vPjvBc
男のヤンデレって…………。
狂愛であってヤンデレとは違うのですか?
男の嫉妬や横恋慕は、見苦しくもみっともないだけだからな
その点男の娘は、体は男でも心は純粋に女だから
先に立ったこっちでいいだろ。
荒れるほど男の娘SSが投下されるとは思えんし。
最悪なのは最初に投下するSS書きの人が「踏み絵」状態になること。
男の娘関係は正直どっちでもいいがさっさと決めんと
もともと男の娘モノの投稿なんてほとんど無かったし注意書き程度で十分だろ
そだな、それで十分
18 :
AAA:2010/11/13(土) 17:00:02 ID:pL7a4ISK
投下します
俺の作品がPart39の最初を飾っていいのだろうか・・・
「ねぇ、何とか言いなさいよ!!」
耐えられなくなった私が、彼女を止めるために、翼を助けたい思いで声をかけようとした時だった。
「・・・あ」
「・・・翼?」
「何よ、言いたいことがあるならはっきりと・・・」
彼女が言い終わろうとした次の瞬間
「あ・・・・あ・・あ・あああああああぁあああああああぁああああああああああああああああああああ!!!」
「「!!」」
突然、翼が両手で頭をおさえ大声をあげた。私も彼女も、クラスのいた全員の心臓が驚きで止まりそうになった
昼休みで騒がしい校内にも響き渡るほどの声をあげ、彼は何かに取り付かれたかのように発狂していた
「翼!翼!」
「あぁあああああああぁああ!!俺は!俺はぁぁぁぁぁぁ!!」
「翼!落ち着いて!私は怒ってないし、責めてもいないから!」
「あああぁああ!!来るな!来るな!来るなぁーーーーーーーーーーー!!!!!!」
翼の焦点は何もとらえず、私の声も、存在も認めていない。話しかける内容が思いつかず、私がアタフタしている間も翼は壁に頭を打ちつけたり、爪を立て自分の顔を傷つけたりして
見えない恐怖から逃れようとしているように見えた
そして、翼のまわりの壁や机に赤い斑点が付着し、教室のほんの一部が少しだけ赤く染まった時、翼は糸の切れた操り人形のようにその場に倒れた。
翼が倒れたあとに教室には声一つ無く、翼を見ている傍観者達がいるだけだった。
「・・・保健室、連れて行ったほうが・・・いいんじゃないか?」
クラスの誰かの言葉で、私は、クラスの人達は見えない束縛から解放された。なぜ気が付かなかったんだろう
目の前で翼は怪我をして倒れているのに、私は見てるだけであって助けようとしないで、さっきの言葉が無かったら、私は・・・翼を・・・見殺しにしていた?
その後、私はクラスの男子2人と一緒に、彼を保健室まで運んだ。彼をベッドに寝かせると男子は昼食を取るために教室に戻っていった。私は校医の先生に今までの事を話し
彼の横にパイプ椅子を出し、それに座って彼に付き添った
「私・・・用事があるから、何かあったら職員室の先生を呼びなさいね・・・。あと、彼のヘアバンとリストバンド、外しておいてあげなさい・・・」
「(リストバンド?)」
校医の先生が保健室を出て行ったあとで、私はすぐに彼の手首を見てみた
「あ・・あった」
手首はブレザーで隠れていた為に今まで見る事も無くその存在すら知らなかった。体育の時も彼はジャージを着用していたので見る機会は無かった
ふと気付くと急に悲しい気持ちになっていた。私は1ヶ月も彼と一緒にいたのに気付かず、校医の先生は一目で気付いた
好きとか言っておきながら、こんな物にも気付か無かったと思うと、涙ぐんできた。
「・・・ごめんね」
言葉が溢れ出す。目の前の彼に聞こえるはずも無いのに、そもそも何に謝っているのかも自分で分からない
悲しい気持ちに浸っていたいが、校医の先生の言葉を思い出し左手のリストバンドを外す。そして、自分の目を疑った
「何・・・これ・・・・」
もう片方のリストバンドも、ヘアバンドも外す。それらで覆っていた所には同じようなのがあった。翼・・・あなたは、何を抱えているの・・・?
ここはどこだ?・・・暗闇。俺は誰だ?・・・風魔 翼。違う、さっき本物がいた。じゃあ俺は誰だ?・・・・・分からない・・・
さっきから自問自答ばかりしている。しかも、同じ質問で止まり、また最初に戻るの繰り返しだ
あいつは言った「偽る偽者は消えろ」と。俺は、何を偽っていた?あぁ・・・全てか・・・・
自分を心のそこに埋め、人と普通に触れ合いたいのに過去のトラウマのせいで“人”を避け、自分を守るつもりが他人を傷つけ・・・
そんなたくさんの偽りを持つ俺は・・・生きていていいのだろうか?
「答えは決まったか?偽者」
突然、目の前に黒い旋風が起こり、風の中からあいつが、黒い俺が現れた
「・・・俺を消したいんじゃないのか?」
「それじゃつまらないからな、俺自らここに来てやったんだ。いわば、最後のチャンスだ。俺の質問の答えを聞いていなかったしな」
「・・・フッ」
「何がおかしい?」
「おまえ、見かけによらず、優しいな」
「はぁ?」
「消したい相手にチャンスを与えるなんて・・・普通ありえねぇし」
「仕方ねぇだろ、俺とお前はある意味“一心同体”お前の優しさが俺にも影響を与えるんだからな」
影響って、大げさだな・・・・・・・あれ?今あいつは、何て言った?「お前の優しさ」?
優しさ・・・やさしさ・・・ヤサシサ? 考え中にあいつが「考えてもお前の頭じゃ答えは出ねぇだろ」とか言った様な気がするが、それはこっちに置いといて考るのを続ける
その時、一つのワードが頭をよぎった。それはよく俺が呟き、俺の行動をいつもそいつのせいにしていたのを思い出す
「まさか・・・そうなのか?」
「俺に聞くな」
「・・・答えが出たかもしれない」
「なら、聞かせろよ。お前がこれからどう生きるのか?そして、お前、“風魔 翼”とはなんなのか!」
深く深呼吸をする。大丈夫だ、何も不安になる事はない。だって、この答えに行き着いたのは俺だからだ。俺じゃないとこの答えは出ない
「俺、“風魔 翼”は“人”を恐れ“人”と関わるのを拒む人間だ。そして・・・」
「そして?」
「そんな嫌いな“人”にさえ、優しさを見せる人間。それが俺だ。今までは良心のせいにしていたけれど今思うと、その良心が俺自身だったんだ」
「・・・で?」
「で?」
「お前がどんな人間かはなんとなく分かった。けれども質問はもう一個あるぞ」
「今後の生き方か・・・そういえばお前言ったよな」
「・・・」
「新たな選択肢も考える事もできず。つまり選択肢を増やして良いってことだよな」
「それで?選択肢は増えたのかよ?」
「俺は、“自分と他人を守る”」
「は?」
「他人と接するようにし、俺の優しさで他人を守る。これが俺が考えた選択肢だ」
「そんな考えだったから、あんな悪夢を見るはめになったんじゃなかったのか?」
「いま俺の周りにいる人達は、あのときのあいつらじゃない、だから悪夢は見ないと思う。せめて最初から親しくしてくれている人間だけは信じてみる事にするよ。もちろん最初から素の自分を見せることはできない、見せられたとしても30%〜40%かな」
「・・・」
「どう・・かな?」
「馬鹿だろ、お前」
「へ?」
「そんな安易な考えが通じるほどこの世はあまくねぇぞ」
「分かっている。だからもし俺が潰れそうになり守る物の為に何かを傷つけなければいけなくなった時は、お前の力を貸してくれよ・・・クロウ」
「・・・クロウ?」
「お前の名前、黒い翼、黒い翼でイメージするのはカラス、だからクロウ」
「センス悪・・・」
「・・・ウルサイ」
「そう簡単に俺が力を貸すと思ったら大間違いだバカヤロウ。また、全てを偽る人間になった時は容赦せずに入れ替わってやるから、覚悟しとけよ」
「あぁ・・・」
「絆を創れ・・・スワン」
その言葉を最後にクロウは黒い旋風と共に消えていった
「スワン?白い翼だから白鳥か・・・お前もセンス悪。でも、悪くない名前だな」
暗闇が段々と薄れ辺りが白い光で包まれそうになった時、一つ気付いた事があった。暗闇に飲まれた時から俺の左手がなぜか温もりを感じている事を。
そして、俺の意識は光の中へと消えていった
俺が意識を取り戻し最初に視界に入ったのは・・・白い壁?
いや俺は今寝ている状況みたいだからあれは・・・天上か。俺の現状はベッドで仰向けに寝ているという事、あと分かるのは、そのベッドをカーテンが囲んでいるという事。このような光景をどこかでみたことがある気がする
「・・・保健室?戻って・・これたのか」
とりあえず自分が現実に戻ってこれた事に安心を感じた、けれども一つだけあの空間と変わらない事があった。左手の温もりだ
視線を左手に向けると、そこにはベッドに突っ伏しながら俺の左手を握ってくれている睡眠中の人がいた
「大空・・・」
「・・・ふぁえ?」
あ、起きた。トロンとしている目が可愛く見える
「!・・翼?」
「・・・」
「翼・・・・翼ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
「うわっ!?」
思ってもいなかった。現実に帰ってきて最初に出迎えてくれるのが大空だったなんて、あんなひどい言動を取った人間にずっと付き添ってくれていたと思うと、ものすごく申し訳なく思えた
「良かった!本当に、グスッ、本当に良かった!」
「大空、お前泣いているのか?」
「グスッ、翼が起きてくれて本当に良かった!」
「分かった、分かったからとりあえず俺から降りてくれ・・・」
跳びついて来るのはいいが、今度は圧迫死するかも・・・
でも嬉しかった。こんな俺を心から心配してくれて、俺が起きたという小さなことに心から喜んでくれる人がいることが、今まで孤独だった俺にとっては嬉しい事だった
(せめて最初から親しくしてくれている人間だけは信じてみる事にするよ)
あの世界で俺が言った言葉。あの時は具体的な人名を挙げなかったが今なら言える
“大空 舞”俺を信じてくれているであろう人。俺はこの人を信じ、俺の優しさで守ろうと思う。素の自分は出せないけれど、この人にならいつか本当の俺を見せられる気がする。そう思ったんだ
スワン、お前は分かっていない。この世は優しさだけで生きていけるほど甘い物じゃない。そしてお前の優しさが誰かを傷つけるかもしれない事をお前はまだ知らない
見届けてやるよ。お前の優しさがハッピーエンドに続くか、破滅のバッドエンドに続くかを・・・
22 :
AAA:2010/11/13(土) 17:06:28 ID:pL7a4ISK
以上です
病みネタはもうしばらく先になるかも・・・(_ _)
>>22 GJ!!
いよいよ来たぜ!!しかし舞が病まなかったのが残念!!次に期待です!!
次は触雷!かリバース来て欲しい
やった!
スレのエース、AAA氏がこっちについてくれた
これで勝てる
氏のSS投下は以後責任をもって保障します
勝てる?誰と戦ってんのお前?
スルーしても居なくなら無い奴は居るけどね!
あ、俺のことです!(b^ー°)
◯NG指定推奨!
>>25 にあるように一部スルー対象者にはNG指定することをお勧めします。
コテをご丁寧につけてるみたいですしね。
そんな事行ってもボクが何か書けばNG外して見るんでしょう!(b^ー°)
作品投下まだかな?
兎里…お前もういいだろ。元はといえば自演したお前が悪いんだからさ
素直に謝れよ。いつまで荒らしてるんだ。もう引き返せないんだろうが…
(=゚ω゚)ボク 兎里 ちがう
???
誰もコテが兎里とは言ってないが?
……語るに落ちる。こんな簡単な引っかけで自白すんなよ
言うと思ったwww
ん?俺は只独り言言っただけなんだがねwww
アンカ付けてないっしょ
釣れたと思ったら逆に釣られちゃったねXUVHTTb6クンw
小便小僧はクソして寝な|( ̄3 ̄)|
いや…一応言っておいてあげるが、つかまぁ気づいた人もいるだろうが
それが引っかけで自白になってるんだが…気づいてない?
※ニ時間後二人はキスします
うん、そうだね!(b^ー°)
でもそれがどうしたの?
俺に何かデメリットでもあるの?
それで俺が消えるの?
素直に自分が釣られたこと認めようぜ小便小僧
ロマサガ3おもろい
>>37 お前はウナ何とか目指しての?
目障り何だけど?
ごめん、誤爆った
釣られたって俺が最初に言って…つか認めちゃって…
まあ……なんというか、頑張れ
んで、返事は「うん頑張る!」かな
嫌なら見るな!(b^ー°)
あぼーんしなさいね
>>41少年探偵団で言うところのゲンタポジのお前でも解るように言ってやるよ
お前は少ない脳みそ使って引っ掛けた積もりで居るようだが俺ははぐれ刑事で例えれば安田刑事ポジだからそんな事余裕で見破ったわけ、で、逆にお前を釣る為に餌をまいた
ウナ重の事しか頭に無いお前はホイホイ引っかかったわけ
以上おわり!(b^ー°)
安浦刑事な!
恥ずかしいから今日はもう寝るモン(*ノωノ*)
もしかして
お前のことなんか言ってないのになんで反応したの?←俺もアンカつけてないからお前には言ってない。お前が釣られた
って言ってるの?
そうじゃなくて、マジで気づいてないならかなり面白いんだが
寝かせてくれ(^_^;)
だからね、げんた君、何て言ったら君が釣れるか考えて、かつ俺は兎里だと思われて何のデメリットもない
だから
ボク 兎里 ちがう
っつー餌つけたの!
真剣に思った
こいつ本当に馬鹿だ
>>46に騙されてるのまだ気づいてない
作品投下まだかなー
_,====ミミミヽ、
,,==≡ミヽミヾミミミ、ヾ、
_=≡≡三ミミミ ミミヾ、ソ)),,》 .
彡彡二二三≡ミ-_ ミミ|ノノj )||ヽ, )、
__,,,,,,,,,/彡二二二 ,- __ミ|/ノ ノノノノ) ||
-=二ミミミミ----==--'彡 ∠ミミ_ソノノノノ ノ
//>=''"二二=-'"_/ ノ''''')λ彡/
,,/ ̄''l 彡/-'''"" ̄-=彡彡/ ,,-''",,,,,,,ノ .彡''"
(, ,--( 彡 ,,-- ===彡彡彡"_,-_ ヽ Υ
ヾ-( r'''''\ //=二二''''''彡ソ ̄ ∠__\ .\ソ .|
\;;;; \ Ζ彡≡彡-'''',r-、> l_"t。ミ\ノ,,r-v / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
\;;;; \ 彡""彡彡-//ヽ" ''''''"" ̄'''""(エア/ /
\;; \'''''')彡ヽ// | (tv /| , r_>'| <一体みんな誰と戦っているんだ
\;;; \'" \ ,,"''-,,ノ,r-", / r'''-, .j \
\;;; \ /,,>--'''二"''' r-| 二'" / __ \______
\;;r'""彡_l:::::::::::::::::::::: /./_ " / ̄ ̄"===-,
)''//rl_--::::::::::::::::/:/ヽ"'=--":
もう荒れたのか。はやいな
52 :
名無しさん@ピンキー:2010/11/14(日) 01:45:44 ID:TF4f57aV
スレ立てる必要なかったな。
>>31 ◆m10.xSWAbYの野郎が兎里であろうとどうでもいいのになぜ、いらん話をむし返す
ってお前が荒らしだからか
というより◆m10.xSWAbYもお前も2人揃ってどっから流れ込んできた
お前らが連携プレーで荒らそうとしているのが臭う
二週間に一回このスレを開いてからレス検索で「ぽけもん」と打ち、無かった場合まとめサイトで最新話が無いかチェックする作業を続けてる俺
荒らしは誰かって特定ばっかしようとしてるけど、荒らし行為自体は明らかに目に見えてんだから、荒らしが誰なんてことは気にせず、その行為自体を放っときゃいいんだよ。
「荒らしてるの○○だろ」「残念違いますバーカ」の繰り返しで、あまりにやってることがくだらなすぎる。
人間なんて顔と顔合わせなきゃ相手の意見聞かずに自分の意見通そうとする気違いばっかなんだから無視するのが一番だよ。
作品投下まだかな?
一方その頃俺の家では・・・
ドコドコドン ミ ))←俺
I / // /
_ ヽO丿 __ /O> O セックス!!
( () ∧/ ←母 〔 TV 〕 __ /V \
I ̄I ) || ̄.|| |PC | /> ←父
おはようございます。
前置きは抜きにして、日常に潜む闇 第7話 投下します。
〜Side Seiji and Misae〜
「ちょ、ちょっと美佐枝さん」
「どうした誠二」
保健室からだいぶ離れた所で、誠二の呼び掛けに天城が応じた。
「待ってください……あ、いえ、待ってよ美佐枝さん」
敬語になりかけて、天城の無言の圧力で訂正する誠二。
「どうしてあんな無茶苦茶な説明をするんだ。他にもやりようはあったはずだよ」
「ならば誠二はどう説明したんだ?」
「えっと、先輩には心の支えになってもらったって……」
「その答えでは結局私が説明した時と同じような反応をするぞ、あの後輩は。あの状況で心の支えになってもらったなどと言ってみろ。つまりは付き合っているということを暗に意味していると思わないか」
「それは――」
違う、と誠二は言えなかった。
紬原友里からしてみれば、親密な間柄を思わせるくらい久坂誠二と天城美佐枝の物理的距離は短かった。正確には彼女が誠二に寄り添っていた、と表現したほうがいいだろう。
その状況下で誠二のその言葉は、もはや恋愛的意味合いで交際しているということを意味しているだろう。
その誤解を解くための方法は確かにあった。それは唯一絶対にしてもろ刃の剣だった。
自分が苛められて精神的に弱り果てていた時、天城美佐枝が助けてくれた。心の支えになってくれた。
そう説明すれば、付き合っていないと断言できたのだ。
しかし誠二は口が裂けてもそんなことは言えなかった。
苛められていると、どうして自分の口から彼女に告白出来ようか。
否だ。
自分を好いていると言ってくれた女の子を心配させるわけにはいかない。そう、自分如き存在で、不安にさせるわけにはいかないのだ。
朝の一件で、彼女は勘付いている。それは分かっていた。
それでも自分自身の口から彼女に告げれば、余計に精神的負担となってしまう。
誠二はそれだけは避けたくて、敢えて言わなかった。
でもまさかこんな展開になろうとは予想外だ。
「誠二。お前はあの後輩に迷惑をかけまいとしているのだろう?」
「そう、だよ……」
突然の天城の問いに、誠二は驚きつつも、しかしはっきりと肯定した。
天城美佐枝はうんと頷いて、誠二を自分の胸元に抱き寄せた。
「あっ……」
「私はな。そんな健気なお前を見ていると胸が苦しいんだ。
別に同情しているわけじゃない。誠二、お前が好きで、それでいて苦しみもがいているお前がいることに、私が耐えられないんだ。
お前があの後輩に余計な負担を強いたくないのは分かっていた。だから誠二がさも私を選んだかのように私がほのめかすことで、あの後輩が、お前が自分を捨てたのだと、そう思わせてお前を嫌いにさせる。そうすれば、お前が負担を負わせたくないと思う必要がなくなるんだ。
これが正しいとは思えないだろう。しかし私はお前のためにはこれしかないと思って選んだんだ。…………こんな、偽善的な女ですまない」
「そんな……美佐枝さんは僕のためを思ってやってくれたんでしょ? だったら、謝るのは美佐枝さんじゃなくて僕のほうだよ」
まさか天城がそこまで計算してあんな言動を放っていたとは思いもよらなかった。
誠二は、そこまでして自分のことを考えていてくれた彼女に、申し訳なさと深い感謝の念を抱いていた。
「ふふふ。誠二は優しいな。まったく、これで据え膳なのだから、待つ身としてはたまらなく辛いよ」
言われ、誠二は顔を赤くした。
凛とした天城美佐枝がそのようなことを臆面もなく口にしたその時の言動に、胸が高鳴ったのだ。果たして彼女は誠二がこれまで思っていた以上に美しく、愛おしい存在だっただろうか。
天城は誠二の手を優しく包むように掴み、歩き始める。
「誠二ともっと話がしたい。一緒に来てくれ」
「あ、はい……」
誘われるままに誠二は天城の後へついて行った。
〜Side Siichi Kusaka (observer)〜
「ふむ。なるほどアレは思っていた以上に狡猾だ――おっと、知略に長けている、というべきか。だがアレの本性を知った時、弟はどう出るか……気になるな。もちろんゴシップネタを嗅ぎつけたブン屋としてではなく、可愛い可愛い弟を心配する兄としてだが」
軍用に販売されている双眼鏡で外の光景を眺めながら久坂誠一はそんなことを呟いた。
「もう一つの駒は戦意喪失か? いや、そうでもないな。むしろ燃えているか。主に怒りで。うむ、実に弟が羨ましい。
しかし俺としては昼ドラみたいな泥沼は避けておきたいな、うん。俺はまだ死にたくないからな。それにしてもどうしてアイツはあんなにモテる。酷い噂が立っているのに周りには美少女だと?
うらやまけしからん。それなら俺にカワイコちゃんカモンってやつだ。そう! 可愛い女の子よ! 俺に来たれ!」
ガタン! と一際大きな音を立てて誠一は飛びあがった。
直後、周囲が静まる。
「おい、久坂……」
前方――正確には黒板のほう――から眼鏡をキラリと輝かせた女性教師が静かな怒りをたたえて声を発した。
「ん? ああ、どうされました坂上教諭?」
「貴様……今は何をしている時間か分かるか?」
「皆は貴女が教える数学を学び、私は人間関係を観察することでそれを学ぶ時間です」
ボキリ、と坂上が持つチョークが一発で三つ四つに分裂した。
「ほう? 貴様は私の授業を聞かなくてもこの問題が解けるんだな?」
「当然です! 今は先週やった内容の復習では――あり……ませんね」
黒板に書かれているのは、どう考えても高校の履修範囲から少し外れている、高度な問題だった。
「今すぐこれを前に出て解けぇ! できなきゃ私自らしっかりと教えてやろう。もちろん、お前と私の個人授業で、だ!」
「なっ……! こ、これが孔明の罠か!?」
「黙ってさっさとやらんかぁ!」
周囲のクラスメイトからは畏怖と失笑の眼差しを浴びせられたことは言うまでもないだろう。
〜Side Yuri Tsumugihara〜
何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故
どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして
「おい、大丈夫か?」
保健医が話しかけても彼女は反応しない。
反応できないほど混乱しているのだ。
友里はどうして誠二があの先輩を選んだのか、理解できないでいた。
そして、段々と友里の思考は落ち着いていく。狂気の方向へ。
「私たちは運命の赤い糸で結ばれているはずなのに……どうしてあんな先輩のところに行っちゃうの……? 私を捨てないでよ……もう、一人は嫌なの…………だから、誠二君を取り戻すためならなんだってしていいよね? ううん、何をしてでも誠二君を取り戻さなくちゃ」
「お、おい……?」
ぶつぶつと呟き続ける友里に、保健医は戸惑いを隠せずにいた。
落ち着きを取り戻したかと思えば、意味不明の言葉を呟き始めたのだ。
そして彼女の困惑はさらに深まることになる。
「うふ。うふふ。あははははっ」
誠二君はあの子猫――いいえ、雌猫にたぶらかされている。
そうでなければおかしいもの。そうでなければあの時、私を助けた理由が成立しない。
だから、あの雌猫を始末する手段を、誠二君の目を覚ます方法を、それが人の倫理にそぐわないとしても選び実行しなければならない。
しかし問題がある。あの雌猫を抹消するには手間がかかる。なによりも、私が誠二君と一緒に居られない危険だってある。
合法的、しかし確実にあの雌猫を誠二君の周りから消すにはどうすればいいだろうか。
考えて、今結論出すことを止めた。
まずは誠二君の目を覚まさなくてはならない。
そして友里が踵を返した時、天城に踏みつけられて壊され、中身がぐちゃぐちゃになった弁当箱が視界に入る。
「誠二君にお弁当、作ってあげなくちゃ」
呟き、壊れた弁当箱だけを回収して友里は保健室を後にした。
〜Side Hiroshi Yukishita〜
1限目の授業が終了しても友人、久坂誠二は戻って来なかった。いや、それどころか紬原友里も2限目の授業に出席していない。
サボりとは思えない。少なくとも、網にかかった内容から紬原友里は誠二がいる保健室に向かったことだけは確かだ。しかしその後の足取りがつかめていなかった。
まさか二人きりで会っているのだろうか。
そんな、嫌な想像が弘志の脳裏をよぎる。しかし頭を振って考え直す。
あの二人に限ってそれはないだろう、と。
そして今朝から考えていたことに再び没頭し始めた。
網に引っ掛かった情報。それはほんのささいで、けれども見逃せないものだった。その情報は、提供者から又聞きしたようなものなので、真偽は定かではない。
生徒会長が噂をしきりに気にして、複数の人間から話を聞いている。
弟を心配するただの兄と決めつけることもできるが、弘志にはそれができなかった。
久坂誠一。
この男は権謀術数に長け、優秀でありながらもその性格はひどく破綻している。なによりも奴は快楽主義者だ。自分が楽しむためには、例え弟であろうと家族であろうと利用することに躊躇しない。
その証拠に、この男は数年前、とんでもないことをしでかしている。
法的には訴えることができないにしても、間違いなく罪人だ。
そんな血も涙もない男が弟の噂をしきりに気にしているという。これを疑わずして、どうしていられようかというものだ。
携帯電話をこっそりと開き、授業の最中、協力者たちに生徒会長の詳しい情報を送ってもらうよう要請する。
送信が完了した直後、窓際に居た生徒が、いきなり比較的大きな声をあげた。
「おい、あれ久坂じゃねえか?」
「おい! あいつ女連れて学校帰ろうとしてんぞ」
釣られて隣に居た生徒がそんなことを言うから教室中が騒然として、窓際にドタバタと移動する。
教師は当然何事かと驚くばかりだ。
「あれって副会長の天城さんじゃねえ?」
「ああ、天城先輩だ!」
「まさかアイツ副会長にまで手ぇ出したってわけ?」
「うっわ。ドンだけ」
どうやら騒ぎはこのクラスだけでなく、他のクラスにも飛び火しているらしい。
何やらメールや電話でこのことを知らせているバカもいるようだ。
「なにやってんだよ……」
弘志のその呟きは周囲の騒ぎに掻き消された。
〜Side Seiji and Misae〜
「ふふふ。どうやら皆が私達を祝福してくれているらしい」
彼らの慌てぶりや罵りは渡り廊下にいる2人にもしっかりと聞こえていた。
天城は嬉しそうにしているが、誠二からしてみれば祝福どころか茨の道への歓待にしか聞こえない。
「いや、そういうことじゃなくて、まだ授業終わってないんだから不味いって……」
「気にするな。私達を邪魔するものは実力で排除するのみ。それにな、私はお前がいてくれるだけでいいんだ」
「いや、それはうれしいんだけど……ってそうじゃなくてだから授業を途中ですっぽかすのは…………」
「誠二は私よりも授業が大切なのか?」
突然立ち止まったかと思えば詰問するような口調で天城が尋ねてきた。
その迫力に、思わず圧迫された気分を味わう誠二。
「それとこれとは話が別――」
「誠二。お前は、私が何よりも大切だよな?」
「それはっ――!」
ここで誠二ははたと気づく。
もし、ここで否定すれば、それは心の支えを失うということだ。
今の誠二には、天城美佐枝を失うことはできなかった。
「……大切、だよ…………」
「だろう? だから私たちは私たちだけの世界に行くんだ。さあ、行くぞ」
微笑み、天城は誠二の腕に自信の腕を絡ませ、軽やかな足取りで歩いて行った。
日常に潜む闇 第7話 以上です。
病み成分足りなかったかな、と投下しておきながら不安に思ってます。
というよりもこの先も病み成分は少なめかなと、かなり不安です。
次回は友里の話になる予定です。
それと12月、もしくは11月末に中期の出張が入りました。
言葉の壁に戦々恐々としていますが、まあとにかくその関係で次の投下からだいぶ間が開くと思います。
皆さまのご理解、よろしくお願い致します。
>>64 GJ!!
やべぇ、兄も色んな意味で吹っ飛んでる…
>>64GJ〜だけど〜
誤字多いよ、自信→自身ね
確か前も自信になってたお!(b^ー°)
GJ!兄貴の過去が知りたいな
さて、触雷!はまだかね
今ちょろーんとプロット組み立ててる途中なのでありますが、
具体的なエロシーンって必要ありますでしょうか?
モロなセクロス描写があんまり無い作者様方も見られたようなので……
必要ないわけじゃないけどそれで話を作るのが進まなかったりするんだったら止めておいた方がいいんじゃない?
>>69 18禁板だし、入っていても大丈夫だと思う。
エロをどう扱うかは作者さんの好みだと思うよ。
入っていなくても大丈夫かどうか聞いてるんだと思うが・・・
結論・「大丈夫だ、問題ない。一番いいエロを頼む」
'エロ'パロ板って名前だけどこのスレはエロがメインってわけじゃないし
ヒロインが病んでデレてる描写がしっかりあればエロなぞどうということはない
>>70-
>>76 ご意見痛み入ります
出来得る範囲で入れ、かつ程々にという方針で行きたいと思います
浅学非才の身であります故、スレの方々の御期待(期待されているかはさておき)に
添えることが出来るかはわかりませんが……努力する方向で
また、こんな時間になってしまいましたが……。
第三話、これより投下します。
ジャンが合同墓所に着いた時、既に太陽は南の方角に昇りかけていた。
街の正門をくぐり、レンガで舗装もされていない道を歩くこと小一時間。
赤錆びの目立つ鉄製の策に囲まれた、寂しげな場所にそこはあった。
街の教会に墓を持たない人間は、この合同墓所に埋葬されることになる。
そのほとんどが、どこの誰とも知らない曰くつきの者ばかりだ。
旅の途中で行き倒れ、身元も分からないまま埋葬せざるを得なくなった行商人。
怪しげな呪いを使うとされ、神父に看取られることもなく亡くなった老婆。
不運にも、旅の途中で山賊に襲われ、そのまま命を落としてしまったジプシーの一団。
この合同墓所は、そういった街の墓所に入れない人間達の遺体を、一重にまとめて埋葬しているような場所なのだ。
墓所の入口近くにある小屋の鐘を鳴らすと、管理人と思しき老人が中から姿を見せた。
その目はどんよりと光を失って濁っており、背中は醜く曲がっている。
手にしたスコップを杖代わりにして、老人は訝しげな顔をしながらジャンを見た。
「なんだね、あんたは。
こんな墓場に、真っ昼間から何の用だい?」
「ある男の埋葬をお願いしたくてやってきました。
ここに、その遺骨があります」
ジャンは鞄から父の遺骨が入った袋を取り出したが、老人はちょっと見ただけで、すぐに興味なさそうに目を逸らした。
「あんた、変わった人だな。
骨しかないってことは、体を焼いちまったんだろう?
どうして焼いた場所に埋めず、わざわざこんなところまで持ってきた?」
「この人は、この土地で生まれた人です。
旅先で亡くなったんですが、教会に墓が作れるような人じゃありません。
だから、仕方なく遺体を焼いて、ここまで持って来たんです」
「それはまあ、ご苦労なこった。
あんたがどんな人間かは知らんが、まあ、ここは聞かんでおこう。
その方が、あんたも何かと都合がええじゃろうて……」
老人の淀んだ目に、一瞬だけ光が戻ったような気がした。
低く、鼻にかかるような声で笑うと、隙間だらけの黄色く汚れた歯が覗けて見えた。
「それじゃあ、埋葬をお願いします。
何か、必要な書類とかはありますか?」
「そんなもんは要らんよ。
まあ、あえて言うならば、お布施の代わりでも欲しいかの。
わしは別に神父でもなんでもないが……街の連中から渡されておる補助金だけじゃ、とてもではないが暮らして行けんのでな」
「だったら、これを使ってください。
少ないですけど……何かの足しにはなるはずです」
そう言って、ジャンは何某かの金と共に、父の遺骨を手渡した。
老人からは埋葬するところまでつき合えと言われたが、さすがにそこまでするつもりはなかった。
形だけとはいえ、父の骨は故郷の土に帰したことになる。
それ以上は、自分が何かを義理立てする筋合いはない。
墓の場所にも興味はない。
流浪の医師である自分が墓参りをすることなど、未来永劫ありはしないのだから。
墓守の老人を一人残し、ジャンは踵を返して墓地を後にした。
が、すぐに振り返ると、金を数えながら墓地の奥へと向かう老人に声をかける。
「あっ……ちょっと、言い忘れましたけど!!」
「なんじゃ、若いの。
まだ、何か用かね?」
「そのお金、お酒を買うのに使ったら駄目ですよ!
これ以上飲んだら、次にお墓の下に入るのは、おじいさんの番になるかもしれませんからね!!」
遠くからでも聞こえるように叫んだつもりだったが、老人はジャンの言葉に返事をしなかった。
そのまま杖代わりのスコップをついて、墓地の中へ入って行く。
(あれは、たぶん駄目だろうな……。
あそこまで末期だと、口で言っただけじゃ、どうにもならないか……)
初めて老人の顔を見た時、ジャンは彼がアルコール中毒患者であることを見抜いていた。
そのため、最後に釘を刺しておこうと思ったのだが、どうやら無駄骨に終わったようだ。
アル中の管理人に守られた合同墓所で、誰に看取られるまでもなく静かに朽ちて行く。
自分の父親のことではあったが、ジャンは同情などしなかった。
医師としての務めを放棄してまで己の探究心を満たそうとした男の末路としては、これはこれで相応しいのではないかと思っていたからだ。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ジャンが宿場に戻って来たのは、正午を過ぎて二時間程経った頃のことだった。
一階の酒場はまだ開いてはいなかったが、特に気に留める必要もなかった。
昼食は、既に外で済ませてきている。
リディに頼めば何か出してくれそうなものだが、さすがにそこまで甘えられない。
二階へ続く階段を上り、ジャンは夕方までの時間をどう過ごそうか考えた。
いつもであれば、旅先で困っている病人がいないかどうか探し、その家に往診にでも行く時間である。
しかし、彼にとって生まれ故郷でもあるこの街は、同時に彼にとって酷く冷たい街でもあった。
自分の素姓が街の人間に知られたら、問答無用で叩き出されるだろう。
父の骨も手放したことだし、明日にでもこの街を発つことにしよう。
そんなことを考えながら、ジャンは二階への階段を上って行った。
受付の前まで来ると、そこにはジャンを待つリディの姿があった。
「お帰りなさい、ジャン。
あなたにお客さんが来てるわよ」
「お客さん?
特に、誰かと約束したつもりはないけど……。
どんな人なんだい?」
「なんだか、ちょっと冷たい感じのする人。
どこかの御屋敷の執事みたいだけど……」
「執事?
そんな人が、僕になんの用だろう……」
訝しげな表情を浮かべながら、ジャンはリディに案内される形で奥の部屋に入った。
それにしても、この街に自分を尋ねて来る人間がいるとは驚きだ。
まさか、父のことを知っている人間が、自分を追い出しに来たのではないだろうが……とにかく、話を聞いてみないことには始まらない。
リディに案内された部屋に入ると、なるほど、そこには黒い正装に身を包んだ一人の男がいた。
感情のない、刺すような視線がジャンに向けられる。
敵意があるわけではないのだろうが、どうにも冷たい印象を抱いてしまう。
「ジャン・ジャック・ジェラール様ですね」
ジャンが自分の名前を言うよりも先に、男が言った。
「お初にお目にかかります。
クロード・ラ・シールと申します」
「は、はぁ……」
腕を胸の前に添え、男はジャンに深々と頭を下げた。
こういった空気には慣れていないのか、ジャンもリディも完全に呑まれてしまっている。
「私は、テオドール・フラド・ツェペリン伯爵にお仕えする者です。
本日は訳あって、ジャン様をお迎えにあがりました」
「僕を迎えに?
でも……いったい、なんで……」
テオドール・フラド・ツェペリン。
その名前に、ジャンは聞き覚えがなかった。
目の前の男が言うには伯爵ということだが、そもそもこの街に、そこまで名のある貴族が住んでいるという話は聞いたことがない。
少なくとも、ジャンがこの街を出た十年程前においては、であるが。
未だ要領を得ないジャンであったが、執事の男、クロードは、先の調子をまったく変えずに話を続けた。
「私の御主人様であるテオドール伯は、病を患っておられます。
私はジャン様に、御主人様を治していただくべく、こうしてお迎えにあがらせていただいた次第であります」
「それはまた、随分なことだね。
でも、僕なんかでいいのかい?
この街にだって、もっと腕のいい医者がいるだろうに……」
「私も初めはそう考えて、街の医者を頼りました。
しかし、街の医者の出す薬では、御主人様の病には効果がなかったのです。
その点、ジャン様は東洋医学にもお詳しいとのこと。
最後の頼みの綱として、我々は長らくジャン様を探していたのです」
「ま、まあ……確かに僕は、そっちの方の話も少しは分かるけど……」
自分の内面まで丸裸にされているような気がして、ジャンは思わず身構えて言った。
確かに、自分は東洋の医学に関するある程度の知識を持っている。
なんのことはない、父の残した医学書の中に、主に薬草に関してまとめられた東洋医学の本があっただけだ。
如何わしい魔術書のような本の中でも、それだけは唯一まともな本だったと言ってもいい。
実際、その本に載っていた薬草の類は、確かに効果があった。
詳しい理由はジャンにも分からないが、効能だけは確かだったのだ。
薬によっては行商人から買わねば材料が揃わないものもあったが、必要に応じてバザーなどで買い揃えるようにしていた。
(それにしても……)
目の前に現れた謎の男の言葉に、ジャンは無言のまま考える。
クロード・ラ・シールと名乗った執事の男。
彼は、いったいどこまでこちらのことを知っているのだろうか。
自分はそこまで有名な医者でもない。
東洋の医学に詳しいという話も、一部の患者を除いては知る者などいない。
ならば、クロードはどこからその話を聞きつけたのか。
そして、彼を遣わせたテオドール・フラド・ツェペリン伯爵とは、いったい何者なのだろうか。
今はまだ、わからないことが多すぎる。
不安でないと言えば嘘になったが、謎を解くためにはクロードの申し出を断るわけにはいかない。
それに、自分を求める患者を放り出して逃げ出すなど、ジャンにはできそうもなかった。
「わかりました。
僕で力になるかどうか、少し不安ですけど……とりあえず、できる限りのことはやってみます」
「それはありがたい。
では、早速私と共に来ていただけますか?」
「はい。
ところで……テオドール伯の御屋敷は、ここから遠いのですか?」
「ええ、少し……。
外に馬車を待たせてあります。
詳しくは、そこでお話しましょう」
相変わらず、クロードは無機的な声で答えた。
申し出を受け入れてもらえたというのに、喜ぶ素振りも見せなければ表情も変えない。
ただ、宿の近くに馬車を待たせていたという手際の良さだけは、ジャンも感心せずにはいられなかったが。
「と、いうわけで、悪いけど仕事が入っちゃったよ。
今晩は何時に帰れるかわからないから、夕食の用意は要らないよ」
「ええっ、そんなぁ……。
折角ジャンに食べてもらおうと思って、お昼から仕込みをしてたのに……」
「ごめんよ、リディ。
まあ、帰ってきたら、また賄いのシチューでも食べさせてもらえればいいさ。
それじゃあ、ちょっと行ってくる」
足元に置いた鞄を手に、ジャンはクロードと共に部屋を出た。
その後ろ姿を名残惜しそうに見つめるリディだったが、そんな彼女の瞳に、ジャンが気づくはずもなかった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
テオドール・フラド・ツェペリン伯爵の屋敷は、街から少し離れた丘の上にあった。
丘の上からは冷たい吹き下ろしが流れ、それが街に流れ込んで冬の訪れを告げる。
ジャンが物心ついた時から、これだけは変わりがない。
街外れの丘に貴族の屋敷があることは、ジャンも幼い頃から知っていた。
だが、ジャンが以前に聞いた話では、そこは別荘のような場所であるとのことだった。
なんでも、隣国にいる名のある貴族の持ち物で、夏の間だけ避暑地として訪れることがあるという話だった。
クロードの話によると、テオドール伯は三年程前に、隠居するような形でこの地を訪れたのだという。
隣国にあった土地や屋敷、果ては所有していた農地や鉱山までも売り払い、本来は別荘でしかない丘の上の屋敷に移り住んだのだというのだ。
テオドール伯が、何を考えてこの地にやってきたのか。
それはジャンにもわからなかった。
ただ、自分が街を離れていた間にやってきたため、伯爵の名前を聞いたことがない理由だけは納得した。
馬車の揺れが収まり、クロードが扉を開けて外に出る。
彼に促されるようにしてジャンも外へ出ると、彼の前には立派な屋敷が姿を現していた。
「それにしても、凄い御屋敷ですね。
丘の上に貴族の屋敷があることは知っていましたが……こうして間近で見るのは初めてです……」
屋敷の屋根を見上げるようにしてジャンが言った。
その隣にいるクロードは、やはり表情一つ変える様子はない。
主君の家を誉められても、喜ぶこともしなければ謙遜もしない。
「テオドール伯がお待ちです。
どうぞ、こちらへ……」
余計なことは一切語らずに、クロードはジャンを屋敷の中に招いた。
彼に先導される形で、ジャンも屋敷の入口へと足を踏み出す。
その時、ふと、こちらを見つめているような視線を感じ、ジャンは思わず顔を上げた。
彼の見つめる先にあるのは、屋敷の二階にはまっている大きな窓ガラス。
場所からして、恐らく窓の向こう側は廊下でなく部屋だろう
二階から見下ろすような視線を感じたジャンだったが、クロードに屋敷へ入るよう促され、それ以上は確かめることはできなかった。
あの視線は気のせいなどではない。
では、いったい誰が、自分のことを見ていたのだろうか。
取るに足らないことではあったが、ジャンには妙に気になって仕方がなかった。
「どうされました、ジャン様?」
ジャンの微妙な変化を感じ取ったのだろう。
クロードが、やはり表情は変えずとも、ジャンに尋ねた。
「い、いや……。
ちょっと、緊張していてね。
テオドール伯に失礼があったらいけないだろうから……」
適当な理由をつけて、ジャンはその場をごまかした。
それに、今は余計なことを考えている場合ではない。
入口の扉をくぐると、そこは大きな階段のあるエントランスルームだった。
階段には赤い絨毯が敷かれ、いかにも貴族の屋敷といった感じがする。
異国の珍しい彫像品でも置いているかと思われたが、美術品の類は見当たらなかった。
階段を上り、正面にある一番大きな扉を開ける。
その先は廊下になっており、更に奥の方に別の扉が見えた。
「こちらです、ジャン様」
左右の壁にある扉には目もくれず、クロードは一番奥の扉へとジャンを招いた。
クロードに案内された部屋に入ると、そこには白い口髭をした、いかにも厳格そうな老人が座っていた。
「御主人様。
ジャン・ジャック・ジェラール殿をお連れ致しました」
「うむ、御苦労。
後は、私から話をする。
お前はもう、下がって良いぞ」
「はっ……」
椅子に座ったままのテオドール伯に向かい、クロードは一礼をしてその場を去った。
後に残されたジャンは、しばし呆然とした様子でその場に立ちつくす。
「なるほど。
君が、ジャン・ジャック・ジェラール君かね?」
「えっ!?
あっ……は、はい……」
「なんだ、緊張しておるのか?
別に、とって食ったりはせんよ」
そう、口では言っているものの、伯爵の顔は険しいままだった。
長年、貴族としての誇りを持ち続けて生活してきた故に、仕方のないことなのかもしれないが。
「あの……。
ところで、伯爵はご病気と伺いましたが……。
いったい、どのようなもので?」
このまま突っ立っていても仕方がない。
場の空気を変えるためにも、ジャンは伯爵へ問診を始めることにした。
「ふむ、どのような病気、とな……」
重い腰を上げるようにして、伯爵が椅子から立ち上がる。
腰はそこまで曲がっていないものの、杖をつかねば歩くのも辛そうだ。
口で何かを言う代わりに、伯爵はジャンの目の前に左手を突き出した。
節くれだった関節と、皺の目立つ皮膚。
だが、それ以上に、右手と比べて明らかに不自然な方向へ向いている指先が気になった。
「これは……リウマチですね」
「その通りだよ。
ここ数年で、病状が酷く悪化してな。
街の医者に見せて薬も出させたが、大した効き目はなくてな」
「なるほど。
それで、最後の頼みの綱として、僕を呼んだというわけですか」
「うむ。
噂によれば、お主は東洋の医学にも詳しいと聞く。
それを使って、なんとかならんかと思ったのだが……」
「なんとか……ですか。
でも、リウマチは完全に治す方法などありませんよ。
僕の持っている東洋医学の本にも、痛みを和らげたり症状を軽くしたりするための薬しか載っていませんし……」
「それでも構わんよ。
どの道、老い先短い人生だ。
ただ、痛みで夜も眠れないというのは、さすがに勘弁願いたいのでな」
険しい顔は変わらなかったが、伯爵の話す口調は幾分か穏やかなものになっていた。
それにしても、テオドール伯は、いったいどこでジャンの噂を聞きつけたのだろうか。
先ほどから気になっていたのはそこである。
クロードの話によれば、方々の街に遣いを出して、ジャンの足取りをつかませるようなことまでしていたらしい。
それだけ自分にかけている期待が大きいのだろうが、ジャンとしては複雑な心境だった。
「あの……テオドール伯爵」
「なんだ?
まだ、他に病気のことで聞きたいことがあるかね?」
「いえ、そうではありません。
ただ、伯爵がどうして僕のことを知ったのか……。
それが、少し気になりまして」
「そんなことか。
まあ、他愛もない話だがね……」
立っているのが辛くなったのか、伯爵は再び椅子に腰かけて話を続けた。
「君は、以前にフレデリック・セギュールという男に会ったことはないかね?」
「フレデリック……?
そう言えば、そんな名前の患者がいたような、いないような……」
「実は、彼は私の古くからの友人でね。
私が病で苦しんでいることを知り、君のことを手紙で紹介してくれたのだよ。
もっとも、その時には君もフレデリックの下を去っていただろうから、手紙をもらった後に方々を探しまわらせることになってしまったがね」
「そうだったんですか……」
伯爵と話をしている内に、ジャンの頭にも昔の記憶がおぼろげながら蘇ってきた。
フレデリック・セギュール。
以前、ジャンがとある山村で診た老画家である。
若い頃は貴族のパトロンを後ろ盾に、比較的安定した生活を送っていたが、現在は隠居暮らしをしているとのことだった。
テオドール伯の言っているフレデリックとは、あの老画家のことで間違いない。
恐らく、以前にフレデリックのパトロンだったのが、ツェペリン家の人間だったのだろう。
「それにしても……」
不自然な形に歪んだ伯爵の指を診察しながら、ジャンが何気なく尋ねる。
「伯爵は、なぜこのような辺鄙な場所に引っ越しを?
やはり、療養のためですか?」
「なぁに、そんな大した理由などではない。
私の父が若かったころは、ツェペリン家も名のある貴族だったがね。
どうも、私が生まれる前の戦争で、軍資金を使いこみ過ぎたらしい。
それでも、平和になってからは画家や音楽家のパトロンなどもやっていたが……すぐに先祖の財も底を尽きた。
以来、私が後を継ぐ頃には、ツェペリン家もすっかり没落貴族でな。
とうとう祖国の土地を売り払い、丘の別荘に隠居することになったのだよ」
「そうだったんですか……。
すいません。
なんだか、失礼なことを聞いてしまって……」
「いや、構わんよ。
事実は事実。
物笑いの種にされようと、こればかりはどうにも変わらん」
伯爵の口調は、いつしか哀愁を含んだようなものに変わっていた。
富を失い、祖国の土地を追われ、最後は異国の別荘にて余生を送る。
そんな自分とテオドール伯の姿に、ジャンはどこか親近感のようなものを抱いていた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
結局、その日は伯爵に手持ちの薬を処方して、宿場に帰ることになった。
ジャンの渡した薬に伯爵は満足していたようだが、果たしてどこまで効果があるかはわからない。
その上、東洋医学における薬には、即効性が期待できるものが少ない。
様々な薬を組み合わせながら、毎日飲み続けることが大事なのだ。
そうやって、身体の中から徐々に体質を変えてゆき、病に対する回復力や抵抗力を高めるのが、東洋ならではの治療法なのである。
この様子では、当分の間、自分は伯爵の下を訪れて治療をせねばならないだろう。
正直、早く街を離れたかったのだが、患者から頼まれた主治医とあってはそうもいかない。
そんなことを考えながら屋敷を出ると、ジャンは再び二階から自分を見降ろすような視線を感じた。
気になって後ろを振り向くと、そこには二階からこちらを見つめる二つの赤い瞳があった。
「君は……!?」
聞こえるはずなどないのに、ジャンは思わず口にした。
その途端、瞳の主は窓辺から離れ、カーテンの向こう側に姿を消した。
窓辺からジャンを見下ろしていたのは、赤い瞳をした一人の少女だった。
幽霊のようにか細い身体に、雪のように白い肌。
髪はブロンドにしてはやけに色が薄く、白金色と言った方が正しい。
そして、なにより極めつけだったのは、やはり血のように赤いその瞳だった。
窓の向こう側に消えてしまった今では確かめる術もないが、あまりに人間離れしたその容姿だけは、忘れようにも忘れられない。
あの少女はいったい何者だったのか。
伯爵の子どもにしては若すぎるし、使用人でもなさそうだ。
ならば、伯爵の孫娘といったところだろうか。
彼女の正体が気になったジャンだったが、今の彼にはそれを確かめるための術などなかった。
クロードに促されるまま、ジャンは帰りの馬車に乗って宿場へ戻る。
伯爵の病のことや薬の材料を手に入れるための手段も心配だったが、それ以上に、屋敷で最後に見た奇妙な少女の姿が頭から離れなかった。
とりあえず、今日はこれで投下終了です。
第三話にして、ようやく主要な人物を全て登場させることができました。
最後に出て来た女の子は……後々、話に絡ませて行く予定です。
リアルタイムGJ
続き楽しみに待ってます
GJ
これから楽しみ
この作者さんめっちゃ好きで投下本当に嬉しいです!
リディが段々かわいらしくなっていってるのでいつ爆発するのか楽しみですね
GJです
作品投下まだかな?
173 : ◆ UDPETPayJA 2010/11/12(金) 22:25:29 ID:ts6FS2cAO
お久しぶりです。
「天使のような悪魔たち」を書いていた者です。
約一年半ぶりの投下になりますが、本スレがひどく荒らされているようなので、こちらに第10話、第11話を投下させていただきます。
自分は現在wikiを編集できる環境にないので、よろしければ、保管庫への保存をお願い致します。
174 : 天使のような悪魔たち 第10話 ◆ UDPETPayJA 2010/11/12(金) 22:27:20 ID:ts6FS2cAO
さて、ついに俺と結意ちゃんは伏魔殿−−−もとい、飛鳥ちゃんの自宅前までやって来た。
インターホンを鳴らしてみる。が、反応はない。試しにドアノブを静かに捻ってみたが、鍵もしっかりかけられている。
まあ当たり前だが。 どうやら飛鳥ちゃんはまだ帰ってきていない。
「うーん…どうすっかねぇ、結意ちゃん」と、さりげなく視線をちら、っ横にやった。
「その木刀で、ドア壊してみる?」
「だめ。ドアが頑丈すぎて、木刀が耐えられないよ。」
「じゃあ、ガラス割って忍び込んでみる?」
「…いいかもね。でも、あまり音は立てたくない。」
なんとまあ、俺の予想とは打って変わって、結意ちゃんはこの期に及んで冷静だった。
てっきり飛鳥ちゃんの事で熱がいっぱいだと思っていた俺は、少し感心してしまっていた。
「大丈夫。私に任せて。」
「ん? あ、ああ」
言うや結意ちゃんは制服のポケットから針金を三本ほど取り出した。それを鍵穴に差し込み、かちゃかちゃといじくりだした。
結意ちゃんはピッキングができるのか? と疑問を投げ掛けようとした瞬間、がちゃ、という音がした。
「開いたよ。」
随分と早いもんだ。結意ちゃんは針金を鍵穴から抜き、ポケットにしまうとドアノブに手をかけ、静かに扉を開いた。
侵入成功、か。ここから先は、俺は結意ちゃんの援護に徹するとしよう。
「…………待て!」
背後から、聞き慣れた男の声がした。その声の主は、俺の親友であり、結意ちゃんの想い人でもある。飛鳥ちゃんだ。
175 : 天使のような悪魔たち 第10話 ◆ UDPETPayJA 2010/11/12(金) 22:29:14 ID:2YOmX9T2O
* * * * *
間一髪、俺たち三人は隼と結意が家に上がり込む前に辿り着けた。
走りまくって息も絶え絶えだが、とりあえず「待て!」と隼たちを牽制した。
「よう、飛鳥ちゃん。白馬の王子様はどっちの姫君に手を差し延べるのかな?」
「その前に、その木刀で何をするのかを教えてはくれないかな、結意?」
「何って…飛鳥くんを苦しめる悪い虫を退治するためだよ。」
「お前………そんな訳わからない理由で明日香を?」
「斎木くんが教えてくれたの。私に冷たくするのは、妹ちゃんに脅されてるからだ、って。
もうすぐ、飛鳥くんを自由にしてあげるからね?」
なんだと…隼が?
そう言えば、何故今、隼は結意の傍にいる?
昼休みに結意の弁当箱を隼は持ってきた。よく考えれば、結意が弁当箱を自分から他人に預けるとは思えない。
そして、さっきの台詞だ。
『白馬の王子様はどっちの姫君に手を差し延べるのかな?』
「っ…隼、てめえが黒幕か!」
「黒幕、とは人聞きが悪いねぇ。どちらかと言えば、黒幕はお姉サマだぜ。」
「姉ちゃん? 姉ちゃんが何の関係があるってんだ!?」
「まだ全てを思い出すには早いよ、飛鳥ちゃん。飛鳥ちゃんには結意ちゃんと同等の痛みを味合わせて、それから思い出させてやるよ。
自分が今までどれだけ残酷な事をしてきたのかを、な。
さあ、行きなよ結意ちゃん。ここは俺に任せな。」
隼はいよいよ俺達を塞ぐように家の前に立ち、両腕を開いてみせた。
その隙に結意は、ついに家の中へと上がり込んだ。
「待て、結意! 隼てめぇ、そこを退けよ!」俺は道を塞ぐ隼に苛立ちを覚え、拳を握り打ち出した。
だが隼は俺の拳を受け流したかと思うと、そのまま腕を引き、足払いを決めてきた。
「ぐぁっ!」
「やめときなよ飛鳥ちゃん。喧嘩じゃ俺は負けないぜ? 俺は飛鳥ちゃんの何倍もの修羅場を潜り抜けてきてるんだからな。
安心しな、結意ちゃんが怒るからあまり痛くはしないさ。」
我ながら随分とあっさり倒されたもんだ。だが確かに隼は、追撃をして来なかった。
俺は咄嗟に跳ね起き、隼から距離を置いた。
−−−隙がない。一見飄々として見えるのはいつもの事だが、その実あらゆる攻撃にも対処できる。そんな構えだ。
「神坂。」佐橋が俺の耳元に顔を近づけ、喋りかけてきた。
「あいつは只者じゃない。よくわからんが危険だ。」
「なんでそう思う?」
「…未来が読めないからだ。あいつの近くに来てから、一切の未来が読めない。お前の死も、な。
それによく考えろ。俺がついさっき見た未来は、あの結意とかいう女の死だ。つまり、返り討ちに遭う可能性が高い。」
「結意ちゃんに限ってそれはないよ。」
隼は、佐橋の話を聞き逃さなかったようだ。
176 : 天使のような悪魔たち 第10話 ◆ UDPETPayJA 2010/11/12(金) 22:31:09 ID:CkzHf342O
「亜朱架さんは今、力を使えないはずだからね。」
「…姉ちゃん? 力って、何の話だ?」
「…仕方ないねぇ。綺麗さっぱり忘れてるんだから、これくらい教えてやるよ。」
隼は両腕をさらに大袈裟に開き、まるで演説をするかのように語り出した。
「亜朱架さんの持つ力、それは…"存在を無に還元する"力さ。
念じるだけで物質を消去することができ、記憶を消すこともできる。
思い出してみるといいさ、飛鳥ちゃん。記憶の中に、抜け落ちた部分があるはずだからな!」
「存在…記憶……?」
隼の言葉に促され、俺は一瞬、最近の記憶を振り返ってみた。
今日の事は全て覚えている。朝から結意に追い回され、図書室に逃げ込み、佐橋と出会った。
昨日…突然姉ちゃんが帰ってきて…その前に明日香が何故か結意の家にいて…ん?
一昨日…俺は学校が終わったあと………どこにいた?
三日前…この日も朝から結意に付きまとわれ、それから…何があった?
よく考えたら、思い出せないことだらけじゃないか。いくら人間が昨夜の晩飯の内容を忘れることがある生き物だからって、
こんなにも記憶に穴があるなんて、いくらなんでもおかしい。
隼の言っている事は本当なのか…?
「おい神坂! ぐだぐだ考えてる場合かよ!」突然、瀬野が大声で叫んだ。
「このままじゃ結意ちゃんが人殺しになっちまうだろ!
それに、よくわからんが佐橋の言う通りなら、結意ちゃんが…!
おい、シュンとか言ったな! テメェは結意ちゃんが人殺しになってもいいってのかよ!」
「…人殺し、ねぇ。大切な人の為なら、人殺しにだってなれる。それこそが人間ってもんだろう?」
「知るかよんな事!」
瀬野は木刀を振りかぶり、隼の元へと突進していった。
…だめだ。隼なら簡単にかわせる。
177 : 天使のような悪魔たち 第10話 ◆ UDPETPayJA 2010/11/12(金) 22:32:10 ID:CkzHf342O
「…神坂。」と佐橋が呼んだ。
「隙を作る。その間にお前だけでも行け。」
言い終わると佐橋も瀬野に続いて走り出した。
「うおぉぉぉぉぉ!」瀬野が木刀を横一閃に振り抜く。だが隼はそれを左手でいとも簡単に掴みやがった。
「遅いよ。」隼は木刀を逆に引っ張り、瀬野の体を引き寄せ、膝蹴りを腹に打ち込んだ。
「ぐ…はっ…」瀬野は嗚咽を漏らし、ふらついた。
瀬野がよろけたところに、今度は佐橋が握り拳を間髪入れずに打ち込んだ。
さすがに隼も二段構えの攻撃には驚いたようだ。だが隼は即座に片足を半歩引き、拳撃をやり過ごそうとした。
だが佐橋はパンチはしなかった。握り拳を下に振り下げたかと思うと右足で軽く跳ね、体を半回転させて左足で踵落としを仕掛けた。
半歩下がった程度ではかわしきれない。チャンスだ。
隼は両手を頭上でクロスして、踵落としを受け止めた。
「ちっ…あんたも、飛鳥ちゃん程度には強いみたいだねぇ」
「油断大敵って言葉、知ってるか?」
言うと佐橋は今度は残った右足を無理矢理跳ね上げ、空中でブロックされた左足で踏ん張り、蹴り上げに移行した。
…なんつー動きだ。
蹴り上げはようやく隼にダメージを与えるに至った。佐橋のつま先は、隼の顎をついに捉えたのだ。
「がっ…!」
隼は口元を押さえて顔をしかめた。その一瞬のうちに俺は全力ダッシュで隼の横をすり抜けた。
「あっ…待て、飛鳥ちゃん!」
慌てて隼は俺を追おうとするが、足は俺の方がわずかに速い。
「待っ…!? ぐあぁぁぁぁぁ!」
−−−突然、隼が大声で苦しそうに呻いた。
あまりに苦しそうな声に、俺は無意識に振り返ってしまった。
「…馬鹿な。俺の力で抑えられない…? ゆ、結意ちゃん…!」
言っている意味はさっぱり理解できん。だが、あれは間違いなく演技ではない。
「神坂! 早く行け! あとは任せろ!」瀬野が大声で俺を促す。
確かに瀬野の言う通りだ。隼のことは二人に任せよう。
俺は三人を尻目に、ようやく自宅へと入ることができた。
178 : 天使のような悪魔たち 第10話 ◆ UDPETPayJA 2010/11/12(金) 22:34:57 ID:LAKqI2RQO
* * * * *
「さて、詳しい事を説明してもらうぞ。」
外に残された三人。俺は神坂に代わり、隼という男にそう尋ねた。
だが、わざわざ聞かなくても想像はついた。
隼の話が真実ならば、神坂の姉は異能力者(それも、俺とはベクトルがまるで異なる)であり、
神坂はその姉によって都合のいいように記憶を消された?
そしてこの男は、不自然なくらいに詳しい。結意という女を、そんな能力を持った相手の元へ平気で向かわせるということは、
何らかの対策がある、という事になる。
異能力に対抗するには、異能力しかないだろう。つまり隼は…
「お前、神坂の姉の力を相殺できるんだろ?」
「…さすが、うちの高校で一番頭が良いだけはあるねぇ…くっ…」
「だが今のお前には負荷がかかっている。神坂の姉の力が強まってるのでは?」
「それは違うね…亜朱架さんは、ぁくっ…良くも悪くも、成長しない…たぶん…いもう、と、だ…」
「…なんだと!」
最悪だ。神坂の妹までもが同等の力を持っているとしたら、隼一人では力を相殺できないのでは!?
「おい瀬野!手伝え!」
「なんだ佐橋!」
「隼の肩を持て。…中に入る」
「いいのかよ!こいつは…」
「もう俺達の邪魔をする理由はこいつにはない!それより、こいつの力が必要なんだ!」
しかし、連れてったところでどうする?
止められないかもしれない。…だが、やらないよりはマシだろう。
「…佐橋歩、なんで君はそんなに必死なんだ? 君からしたら、他人事なのに。」この期に及んでまだ減らず口を叩く隼。
それに対し、俺はこう言ってやった。
「未来を…変えるためだ!」
180 : 天使のような悪魔たち 第11話 ◆ UDPETPayJA 2010/11/12(金) 22:42:40 ID:H0fw2t4IO
結意は土足で上がり込んだようで、靴がない。まず一階からざっと目を通してみたが、姿はなかった。
すると二階か。だが、物音がまったくしない。結意が木刀を以て暴れれば、少しは物音がしてもおかしくはないのに。
…嫌な予感がする。俺は駆け足で階段を登り、二階の、明日香の部屋の扉をやや乱暴に開いた。
「なっ……結意!?」
結意はいた。ただし、木刀は手に持ってはおらず、気を失っているのか、目を見開いたまま床に倒れていた。
「おかえり、兄貴。」
「遅かったわね、飛鳥。」明日香と姉ちゃんも、部屋にいた。
「斎木くんが絡んできたせいで私の力は使えなくなっちゃったけど、
まさか明日香も力を使えるようになった、とは思ってなかったみたいね。」
「姉ちゃんまで訳わかんないことを……それより、"コレ"はどういう状況だ!?」
「ああ…心配しなくてもいいわよ。知覚神経が混乱して、意識を失っているだけだから。
まあ目が覚めても、何も聞こえず、何も見えないただのお人形さんになってるけどね。」
それはつまり、結意から光と音を奪ったのか。
そんな事が、本当に可能なのか?
「ところで飛鳥…やたらその女の事を気にかけるわね。記憶は消したはずなのに…心は消せない、って事かしらね」
「…やっぱり、俺の記憶を…!?」
「大丈夫だよ兄貴。全部終わったら、きれいに忘れさせてあげる。だから、"少しじっとしてて"ね?」
…なんだ、一瞬視界が黒く歪んだ気がする。
そう思った時には俺の体に力が入らなくなり、床に崩れ落ちた。
立ち上がろうにも手足に力が入らない。それどころか、"手足がある"という感覚すら感じない。
「な、んだよこれ…俺に何をしたッ!!」
181 : 天使のような悪魔たち 第11話 ◆ UDPETPayJA 2010/11/12(金) 22:43:57 ID:zV03YPhMO
これが姉ちゃんの…いや、"明日香の"力なのか。
明日香はしかし俺の質問には答えなかった。
代わりにと言わんばかりに、どこからか刃物を取り出した。…始めから、手に持っていたのか?
「じゃあね。私のお兄ちゃんを汚した罪は、償ってもらうよ?」
明日香は動かない結意の体に跨がり、刃物を高く掲げ……
「やめろ!明日香ぁぁぁぁぁ!」
一気に…振り下ろした。
「っ…うあぁぁぁぁぁぁ!」
激痛に襲われた結意は目を醒ましたようだった。だが様子がおかしい。
虚空を見つめ、もがく手は必死に空を掻く。すぐ隣に俺がいるというのに。
「飛鳥くん!嫌ぁ!嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
結意の叫び声は耳を裂かんばかりだ。
「ふふっ…発狂したかな? 目が醒めると同時に、お兄ちゃんに拒絶された瞬間の記憶が蘇るようにしたからね。」
明日香はまるで楽しそうに、嬉々としてそう言った。
「大丈夫だよ。ちょっと狙い外れたけど…ゆっくり、苦しみながら死んでね?」
結意は虚ろな瞳から涙をこぼし、次第に呂律が回らなくなり、息苦しそうにしながらも、俺の名前を呼んでいる。
「あ…すか…くん…ぃゃ…ぃかなぃでぇ……」
体を刺された痛みよりも、俺に拒絶された痛みの方が大きいというのか。
「神坂ッ!」佐橋の声がした。俺は唯一動く顔だけで、振り向いた。
どうやら隼を連れて、二階まで上がってきたようだ。
「あら、随分と無様な姿ね、斎木くん?」
「…お蔭さまでね、お姉サマ。」
「滑稽ね。貴方は私の力を上手く抑えこんだと思ったみたいだけど、その逆。
私が貴方の力を抑えていたんだからね?
今だって過負荷で、他人の肩を借りなきゃろくに動けないんでしょう?」
「…今回ばかりは、否定できませんね。でも、妹ちゃんも、もう限界みたいですよ?」
182 : 天使のような悪魔たち 第11話 ◆ UDPETPayJA 2010/11/12(金) 22:45:44 ID:H0fw2t4IO
限界? 隼の放った一言に、俺は明日香をもう一度見やった。
…鼻血を流している。結意の返り血ではない。明日香自身の血液だと見てわかった。
それに、顔色がすこぶる悪い。
「あはははは!無様だねぇ!泥棒猫には相応しい姿よね!きゃはははは…ごほっ」
明日香は微かに咳込んだ。
その時、わずかに血液が吹きこぼれたのを、俺は見逃さなかった。
「………わかってるわ。だから今夜だけでも、明日香を幸せにしてあげたかった。
今の明日香が力を使う事は命取りになるとわかってても、私は…
あんたたちの邪魔さえなければ、明日香はもっと長く生きられたのに…!」
姉ちゃんの声は今までにないくらい重く、哀しそうだった。
「さあお兄ちゃん、泥棒猫に見せ付けてあげようね。私達が愛し合う姿を。」
明日香は結意の頭に手をかざすと、手の平から白い光を放った。
「私達が愛し合う姿を見て、絶望しながら死んでね。」
「あ…飛鳥、くん? ここに、いたんだぁ…」
結意の瞳に光が戻ったようだ。
それを狙ったかのように明日香は俺の顔をぐい、と自身の方へ正対させた。
「お兄ちゃん…大好きだよ。」
明日香は結意に見せ付けるように、血の味のする口づけを俺にした。
「あ………はは、あはははははは…あははははははは…あはははははははははは!がふっ…あはははは、あはははははは!」
結意は笑った。壊れたスピーカーのように、無機質な笑い声を上げ、黒く淀んだ瞳からは一層大粒の涙を流し、
口からは時折間欠泉のように血を吹き出しながら。
「ありがとう………飛鳥。」
突然、明日香の体がびくん、と跳ねたと思うと、どさり、と力無く俺の上に倒れ込んだ。
「あ…明日香?」名前を呼ぶが、返事はない。
それ以降はまるで動かない。呼吸音も聞こえない。まるで糸の切れた人形のように。
静かだった。その瞬間、結意以外の全員が言葉を失い、沈黙が訪れた。
183 : 天使のような悪魔たち 第11話 ◆ UDPETPayJA 2010/11/12(金) 22:48:03 ID:zV03YPhMO
「瀬野、救急車を呼べ。」
「あ、ああ!」
瀬野は佐橋に促され、携帯を取り出した。
佐橋は口元を押さえ、壁にもたれる。顔色がひどく悪いのが見てわかった。
「…まさか、こんな結末になるなんて、ね」
隼は既に佐橋の肩から降り、自分の足だけで立っていた。
「過負荷は妹ちゃんにもかかっていたんだよ。
もともと体の造りが脆弱なクローン体。寿命だって近づいていたのにこんなにも負荷がかかったら、
それこそ一日と保たないさ。」
隼は気障ったらしく両手を掲げ、何かを念じた。
瞬間、視界が白に染まる。俺の体に力が戻った感覚を覚えた。
同時に、記憶が洪水のように押し寄せる。
(まっててね飛鳥くん!今日は飛鳥くんの大好きな焼き魚にするから!)
(だからぁ、飛鳥くん以外のとこにお嫁になんか行かないからね! )
(飛鳥くん………大好きだよ!)
それは、今まで失っていた記憶のかけら。俺は確かに、結意と愛し合っていたんだ。
「俺の持つ力…それは歪められた因果律を修正する能力さ。
亜朱架さんの力とは、まるで正反対のね。
ただし…失われた命までは元に戻せない。それをわかってて、何故妹ちゃんを?」
「…もう限界だったからよ。」
姉ちゃんは淡々と、語り出した。
「明日香の体は既にぼろぼろだった。まさか四年の間に劣化がこんなにも進んでいたなんて。
だから私は急いだ。明日香の願いを叶える為にね。
だけどこれ以上は苦しむだけしかなかった。だから、明日香が一番幸せを感じた瞬間に………
苦しまないように…脳を破壊したの…」
何だと。それじゃあ明日香は………
明日香は、死んだのか…?
「明日香、返事しろよ。」
俺は明日香の肩を掴み、前後に揺さぶる。だけど力なく体は弛緩していて、首ががくがくと動くだけだった。
…明日香は、本当に死んでしまったんだ。
俺は明日香の体を揺さぶるのをやめ、静かに寝かせた。
「ごめんな、明日香。本当に…ごめん」
それは、最期まで明日香の気持ちに応えられなかったからか。
明日香を、死なせてしまったからだろうか。
それとも、明日香が死んだ今も、結意を死なせたくない、と心の片隅で思っているからだろうか。
たぶん…全部だろう。
184 : 天使のような悪魔たち 第11話 ◆ UDPETPayJA 2010/11/12(金) 22:49:16 ID:H0fw2t4IO
「結意。」
俺はいよいよ衰弱してきて、声も出せなくなった結意の体を抱き起こした。
「今までごめん。俺、やっと思い出したよ。」
「…………………」
何かを言いたそうに結意は口を動かしたが、声は発せられてない。
だけど口の動きを見れば、なんとなく何を言ったのかわかった。
「ああ、俺もだよ。だから…」
だから、死ぬな。
185 : 天使のような悪魔たち 第11話 ◆ UDPETPayJA 2010/11/12(金) 22:50:12 ID:CkzHf342O
* * * * *
瀬野の通報により、救急車はわりとすぐやってきた。
だが、救急隊員が来た時点で結意は意識を失っていた。
顔色もどんどん青ざめ、一目見ただけで危険な状態だとわかる。
しかしそんな状態でも、結意は決して俺の手を掴んで離さなかった。
やむなく俺は、救急隊員と一緒に結意を救急車へと運び込み、そのまま最寄りの病院まで同行した。
付き添いとして、佐橋が同行してきた。多分、この未来の結末を見届けたいが為だろう。
まあ、佐橋がいてくれたお陰で、俺は無傷。結意もまだ、かろうじて命を繋いでいるのだから、知る権利はある。
…明日香だけは、救えなかったが。それは互いにあえて口には出さなかった。
残った三人はどうなったかというと…
姉ちゃんは、明日香の遺体を抱えて一足先にどこかへ去っていった。
「終わったら会いに来る」と言い残して。
恐らくは明日香を弔いに行ったのだろう。
姉ちゃんはさらにこう言い残した。
「最期の瞬間、確かに明日香は幸せだったわ。"私自身"の事は、私が一番わかる。
だから、どうか気に病まないで。」
隼の話によると、明日香は姉ちゃんに万一の事があった時の為に造られたクローンだったらしい。
だからこそ二人は6つも離れてるのにあんなにも似ていたのだろう。
当然、現代の技術では不完全で、細胞の劣化が引き起こされ…あと三か月保つかどうかだったと聞かされた。
その隼も、瀬野と一緒に後から病院に来るだろう。
搬送されてすぐ行われた結意の手術は、二時間半にも及んだが、無事成功した。
ただ意識が戻るにはまだ半日以上かかるという。
俺は結意が目を覚ますのを、隣で待つことにした。
「飛鳥ちゃん…これ、食うだろ?」
隼は鞄から弁当箱を出してみせた。それは俺が拒否した、結意の作ったものだった。
「ああ、食うよ。…結意は料理が上手なんだぜ、隼。」
「へぇ…意外だね。」と言い残し、隼は病室を出ていった。
恐らくは気を遣ってくれたのだろう。
「さて、腹が減ったし…食うか。」
包みを解いて膝の上に弁当を置き、蓋を開けた。中身はアスパラベーコンに、綺麗に巻かれた卵焼き等、どれもうまそうな出来映えだ。
…米の上に海苔でハートマークが貼られているのは、もはや気にしない。
箸で一口、また一口と食べ進んでいった。
「うまいよ、結意。こんなことなら、もっと早く食っとけばよかったなぁ………」
全部食べ終わる頃には、視界は涙でぼやけていた。
隼のやつ…こうなる事をわかってたんだろうな。
「元気になったら………また作ってくれよな。
お前の料理だったら、朝飯とかぶっても大丈夫だから。」
俺は未だ眠り続ける結意に、そう言った。
186 : ◆ UDPETPayJA 2010/11/12(金) 22:52:32 ID:CkzHf342O
今回はここまでです。
失礼します。
>>94 いや、転載されなかったんじゃなくてしなかったんじゃない?
>本スレがひどく荒らされているようなので、こちらに第10話、第11話を投下させていただきます。
これってこっちに投下はできたけど状況見て控えたってことでしょ。
まぁなんしてもGjだな!
先が気になるけど未完のまま終わると思ってた作品の一つだから嬉しい!
GJ!!
GJ!!
停滞していた方が来るとは…嬉しい限りです
懐かしいssがきたなあ
gj
GJ
天使のような来てたか保管庫みて気付いた。
カフェアンサングランデもGJ
ラフェだったなスマン
作品投下まだかな?
113 :
名無しさん@ピンキー:2010/11/16(火) 09:00:36 ID:Uz5Gygj+
まあまあ。
更新を待ってる事は誰でも一緒ですから。
結局荒そうが煽ろうが評論家気取ろうが
閲覧者数大して変わらなかったし書き手さんの投稿も続いてるな
ヤンデレスレ大勝利!!
第七話、投下します。
学校を出て駅から反対側に少し進んだ所に、寂れた停留所がひとつある。
昔はそれなりに利用されていたらしいが、地理的な利点を考えて新設された駅側のバス停のせいで、それはまもなく廃線にされた。
我が校の生徒も、大半がそちらを利用していて、わざわざこちら側に足を運ぶ物好きなど誰も居ない。今も私がひとりベンチに座っているだけで、制服を着た人間はおろか、通行人すら見えなかった。
私は、そこで彼女を待っていた。
時間は放課後を少し回ったぐらいで、季節柄日が落ちるのも早く、夕方ももう終盤を迎えていた。青かった空も、今では赤く焼けている。
「ごめんなさい。待たせちゃって」
と、言いながら駆け寄って来たのは、恋人である田中キリエだった。
いいえ、全然待ってませんよ。
なんて、ありふれたやり取りがしてみたいと思ったが、実際にそれなりの時間待っていたので、私は黙って微笑んでいた。
何故、こんな中学生のカップルみたいに、人目を避けてこそこそと待ち合わせているのか。そんなことを聞くのは、野暮というものだろう。
私は錆びたベンチから腰を上げ、カバンを手に持った。
「それじゃあ、行きましょうか」
「うん」
喜色満面といった様子で、彼女は頷いた。
昼休みの約束通り、私達ふたりは並んで下校する。
わざと人の少ない路地を選んで、まるで逃亡者のように身を窶しながら、ゆっくりゆっくり駅へと歩いて行った。
そんな平和な帰り道の中でも、私はいつ昼のことをぶり返されるのかと、内心びくびくしていた。
しかし意外なことに、田中キリエがそのことを話し出す気配は一向に表れなかった。てっきり、昼休みのような押し問答が繰り返されると思っていた私は、どこか拍子抜けしてしまう。
一応待ち時間の間に、中々筋の通った言い訳を考えていたのだけれど、どうやら使う機会は消えたらしい。
「寒いね」
彼女は、自分の吐く白い息を見ながらそう言った。かけている大きな黒縁眼鏡も、少し雲ってしまっている。
「そうですね」
私も応えた。
「自分は寒いの苦手なんで、ここ最近は特に辛いですよ。寝る時なんかは、湯たんぽ必須の人間ですからね。私個人としては、早く春が来て欲しいものです」
「春かぁ。春になったら、私達も三年生だね。鳥島くんは卒業したらどうするの? やっぱり進学?」
「まあ、進学でしょうね。学歴は持っておいて損は無いですから」
「行きたい大学とかはあるの?」
「今は特に。でも、結局は自分の偏差値に見合ったところに行くと思いますよ。大学に入ってから、やりたいことも無いですし」
「そっかー、それなら私も大変だな。鳥島くん頭いいから、ついていくのも一苦労だよ」
彼女がそう言って苦笑するのを、私は複雑な心持ちで見ていた。
ついていくのも一苦労、か。
もしかして彼女は、私と同じ大学に進学するつもりなのかしら。
「まあ、私も言う程頭いい訳じゃないですけどね」
「そんなことないよ。テスト後に貼り出される順位表見ると、鳥島くんいつも上位に居るもん」
「いえいえ」
と、やんわり否定しながらも、実際に私はかなり頭がよかった。順位表でも、十位から下に落ちたことがない。
けど、それにはちゃんと理由がある。
一番の理由としてはやはり、私に友達がいないからだろう。
いや、いないと言うのは少々言い過ぎかもしれない。もちろん私にも、クラスで談話を興じたりする友人はそれなりにいた。
しかし、それはあくまで上辺だけの付き合いに過ぎない。放課後に一緒に帰ったり、休日に楽しく遊んだりする友人は、私にはひとりもいなかった。
そのせいか、基本的に私はいつも暇なのである。その上無趣味。
家に帰ってすることといえば、帰結的に勉強しかなくなる。帰れば勉強、休日も勉強。これで頭がよくならなかったら嘘だ。無駄に、偏差値ばかりが上がっていった。
田中キリエと付き合ってからは、幾らか改善されたとはいえ、私の生活基盤は未だ変わらずにいる。
「けど、今はそんな遠い未来よりも、目先の期末テストを心配しなくちゃ、だけどね」
彼女は憂鬱そうに溜め息をした。
だけど私にはイマイチ、試験を憂うという気持ちがわからなかった。勉強関係で困ったことなど、今まで一度も無い。
「そんなに心配しなくても、大丈夫だと思いますよ。高校のテストなんかだと教師の気質が特に表れやすいんで、返って対策がしやすいですし」
「うわっ、余裕の発言だね」
「余裕なんかじゃないですよ。ところで、そう言う田中さんはどうなんですか? 田中さんも結構、頭よさそうに見えますけど」
「私は全然だよ」
と言って、彼女は肩をすくめた。
が、それは只の謙遜だろうな、と私は思った。
彼女が切れ者であることは、もう十分すぎるほどに理解している。勉強の出来ない切れ者など、見たことがない。
「けど、しいて言うなら、化学とか生物とかの理系科目はわりかし得意かな。私、お父さんが製薬会社に勤めてるせいか、小さい頃から理系関係のことには、よく興味を持ってたんだ。ほら、親の仕事は子供に影響するって、よく言うでしょ」
「へぇ、お父さんが製薬会社に勤めてるんですか。けど、それだと私とは真逆ですね。自分は文系科目は得意なんですが、理系科目はちょっと苦手でして」
――あなたって心が無いくせに、なんでこんなに国語の点数が高いのかしら?
昔、斎藤ヨシヱにテスト結果を見せた時に、そう皮肉られたことを思い出した。
どうやら、魔女の呪いはまだ有効らしい。
田中キリエは、目を丸くして私を見ていた。
「意外だね、鳥島くんにも苦手な科目ってあるん――」
中途半端に言葉を切って、彼女は何かを思い付いたように、ハッと顔を上げた。
「そっ、それならさ。今度、私と一緒に勉強しない?」
「一緒に勉強、ですか?」
「うん、私の家でさ。テスト期間中って、下校時間も早いでしょ? だから、学校が終わってから一緒に勉強しようよ。
「私の苦手な文系科目は鳥島くんに教えて貰って、鳥島くんの苦手な理系科目は私が教えるからさ。お互いがお互いの苦手なところをカバーし合えば、勉強の効率もいいし、一石二鳥だよ」
彼女の誘いに、私はふむと顎を撫でた。
確かに、田中キリエの提案は道理にかなっているように思えた。勉強というのは一人でやるよりも、人に教えてもらいながらやったほうが、何倍も覚えがいいものだ。
「いいですよ」
断る理由も無かったので、私はとりあえず了承しておいた。
「本当? やったあ」
田中キリエは、少々大袈裟すぎる程に喜んだ。
そして、ルンルンとステップを踏み始め、私より先を歩く。余程気分がいいのか、鼻歌まで歌っていた。
曲目は、ベートーヴェンの交響曲第九番“歓喜の歌”だった。
安直な選曲だな、と私は思った。
「私、鳥島くんと付き合ってから、本当に幸せ」
田中キリエが不意には立ち止まり、振り返って私を見た。その笑顔は、生まれたばかりの赤子のように、惚れ惚れするほど純粋無垢なものだった。
「今まで生きてきて、こんなに幸せだった時は無かったよ。これからも、ずーっとこんな毎日が続くと思うと、幸せでおかしくなっちゃいそう。最近は、バチが当たるんじゃないかって怖くなるぐらい」
彼女は真面目な顔で、私に問いた。
「ねぇ、鳥島くん。鳥島くんは、私と付き合ってよかったと思ってる?」
「ええ、思ってますよ」
私は即答する。
その答えに満足したのか、彼女はうふふと笑って、再びステップを踏み始めた。
そんな彼女の後ろ姿を、私は冷めた目で見つめている。
これからもずーっと。
なんだろう。さっきから、彼女の言葉がやけに鼻にかかった。まるで私達の関係が、永遠に続くような言い方をしているではないか。
永遠の愛なんてものは、この世に無いというのに。
そもそも人というのは、特定の人間を長く愛することが出来ない。
肉親ならともかく、他人。
一生ひとりの他人を愛し続けるなんて、それこそ無理難題であり、かつ難行苦行でしかない。
付き合った当初は、大好きだの愛してるだの言い合っていた男女が、半年もすれば違う相手に同じことを言っている。
そんなのは、もはやありふれた光景のひとつだ。私の通っている高校にだって、そんな男女はごまんと見れた。
付き合ったと思ったら別れ、別れたと思ったらまた付き合う。まるでインスタントラーメンのように、恋愛というものは手軽に生まれていく。
田中キリエも、今はああ言っているが、おそらく三年生になる頃には、二度と私に同じ台詞を吐かないだろう。その頃にはきっと、彼女の隣には違う男が歩いているに違いない。
だから今の内、言わせるだけ言わしておけばいい。私は何も、気にすることはないのだ。
ちょっと、寂しい気もするけど。
そんなことを考えながら歩いていると、今度は鼻歌ではなく口笛が聞こえてきた。
最初は田中キリエが吹いているのだと思ったが、それは違った。
音の発生源は、私の口からだった。
どうやら、無意識の内に口笛を吹いていたらしい。
せっかくなので、前方を歩く彼女に聞こえないように、私は口笛を吹き続けた。聞き慣れたメロディーを、虚空に向かって演奏してやる。
曲目は、フランツ・シューベルトの歌曲“魔王”だった。
駅には案外あっさりと到着した。
我が校から駅までは、徒歩にして約三十分程かかる筈だから、どうやら体感しているよりも長く歩いていたらしい。
「もう、着いちゃったね」
隣に立つ田中キリエが、名残惜しそうに呟いた。
そうですね、と私も相槌を打つ。
今現在、私達は駅から少し離れた通りに立っていた。
さすがに駅前は人が多く、我が校の制服を着た人間もちらほらと見えるため、これ以上近付いたら、二人でいるところを見られてしまうからだ。今まで散々こそこそと隠れてきたのだから、最後の最後で手をぬきたくなかった。
腕時計を見る。
この時間だと、私の乗る電車は後十分程で到着する。
「鳥島くん」
呼ばれて、視線を時計から彼女に移す。
田中キリエは顔を赤くしていて、もじもじと身をよじりながら私を見ていた。
これは何か言い出すな、と瞬時に思った。
「なんでしょうか?」
「あの、さ……。明日って、学校はお休みだよね」
「はい、日曜日ですから」
「だからさ、あのさ……良かったら、明日……その……」
言葉尻をゴニョゴニョとさせるので、上手く聞き取れない。
辛抱強く待ってみたが、次の言葉は中々出て来なかった。
私は電車の時間を気にする。
これ逃してしまったら、次に来るのは更に二十分も先になってしまう。
あまり急かすような真似はしたくないが、仕方ない。
手助けしてやるか。
「田中さん、いつまでもそんな風に気をつかわなくたって、大丈夫ですよ。もっと気楽にやってください。だって私達は――」
恋人なんですから、と笑顔で付け加えると、彼女は漸く安心したように表情を崩した。
我ながらキザな物言いだとは思うが、なんだかんだでうまくいくものだな。
私の言葉に田中キリエは、そうだよね、恋人だもんね、と納得したように頷いて、意を決した表情で口を開いた。
「あの、良かったら明日、私と一緒にお出かけしませんか?」
彼女がそれなりの勇気を振り絞って出した言葉は、まあ、なんというか全く予想通りだった。
一緒にお出かけ。つまりは、デートのお誘いである。
というか、恋人に休日の予定を聞かれれば、十中八九誰だって気づくだろう。むしろそのことを聞かれた時点で、自分から誘ってもよかったなと、今更ながら思った。
それはさておき、デートの誘いに乗ることは決定である。
先述したように、私は基本的に暇人なので、もちろん明日も何の予定も入っていない。真っ白で、空っぽだ。
それに、今回は田中キリエからのお誘いなので、エスコート云々は全部彼女に任せてしまえばいいし、心理的にも色々と楽だった。
だから私は、二つ返事で了承――
「はい、それじゃあ明日――……ああっと……すいません。……明日はちょっと“ヘビセン”の方へ家族と買い物に行く予定があるので、だから、ごめんなさい。明日は少し、都合が悪いです。本当、すいません」
――しなかった。
苦笑を浮かべて、からくり人形のようにペコペコと何度も頭を下げる。
天国から、一気に地獄へ。
先程の幸せな表情とは打って変わり、田中キリエの顔は悲愴感溢れるものへと変化した。
そんな彼女を見ていると、私は罪悪感を感じた。針で突いたみたいに、胸の辺りがチクチクと痛む。
やっぱり、オーケーしとけばよかったかな。
そのような後悔が襲ってくる。
無言で佇んでいる私に気付いたのか、彼女は取り繕うように言った。
「う、ううん。お願いだから、謝ったりとかしないで。明日の今日でいきなり言い出した、私が悪いんだから。鳥島くんにだって、都合とかあるもんね」
そう言って田中キリエは、あははと笑ったが、その笑顔はどこかぎこちなく感じた。
気まずい沈黙が流れる。
私はふと、どうしてデートを断ったぐらいでこんな雰囲気になるのだろう、と疑問に思った。そんな顔をされるほど、自分は悪いことしている訳じゃあないと思うんだけど。
ああ、なんかだんだんうんざりしてきた。
思わず嘆息を漏らしそうになるのを必死で堪え、目の前で萎縮する田中キリエを見下ろす。
まあ断ったのは自分だし、フォローでもするかな。
そう思って、口を開きかけたのだが
「それじゃあ、私行くね。また明後日」
などと言い残して、田中キリエは駅前の人込みの中へと駆け出して行ってしまった。
彼女の姿は雑踏に紛れ、すぐに視認出来なくなる。
取り残された私は、開きかけの口をそのままに今度こそ嘆息をした。
……なんだかなあ。
まあ、いいけど。
と、あまり自分ものんびりしていられないことを思い出した。
急がなくては、乗車予定の電車が到着してしまう。
そのことに気付いた私は、小走りで駅へと走りだし、途中ちらりと腕時計を見たのだが、まあ、これもまた予想通りのオチだった。
絶え間無く運動を繰り返していた両足は、緩やかに減速していく。
時計の針は、ちょうど電車が駅から発進している時間を指していた。
いやはや。
残り二十分、どうするかな。
私は行き場の失った足を休憩させ、所在なげに立ち尽くす。
すると、風がびゅうと吹いて私の体を叩いた。
「寒い……」
亀のように首を引っ込ませて、外気の寒さから守るために、両手をポケットにしのばせる。
コツン、と右ポケットに硬い感触を感じた。私の携帯電話だ。
取り出してみる。
携帯電話は、しばらく機種変更していないため、塗料が剥げて緑と黒の斑模様になっていた。買い換えよう、買い換えようといつも思うのだが、面倒臭いのもあって未だに機種変更していない。
私はその硬い表面を、乾燥した手で撫でながら考える。
やるなら、今か?
直前になって、田中キリエの誘いを断ったのには、もちろん理由がある。
昼休みに感じた、あの感覚。
あれが私の勘違いならば、何の問題は無い。このうっかり屋さんめ、で済む話なのだ。
けれど、もし勘違いでないとしたら、状況は少し煩雑としたものになる。
あれが本物ならば、もうあまり時間は残されていない。信号でいうなら、青信号から黄信号に変わったところ。前と同じことを繰り返したくないのなら、早急に動いたほうがいいだろう。
しかし、同時に躊躇いもあった。
自分が今やろうとしていることは、目の前に垂れ下がったチャンスを、自らの手で握り潰すということだ。それが惜しくない訳がない、無念だと思う気持ちも確かにある。
だが、そこに私情を挟んではいけない。
ほんの少しでもリスクを内包しているのなら、やはり黙過すべきではないのだ。事態が厄介なものへと変わる前に、さっさと終わらせたほうがいいに決まってる。
よし、思い立ったら即行動。
ぐずぐず迷ったりせずに、早く済ませてしまおう。
そう思って、私は携帯電話を開こうと指に力をこめたのだが、既の所で止める。
……やっぱり、今はやめとくか。
思い返してみれば、今日はとことんツイてなかった。
やることなすこと全てが裏目に出て、あちらこちらで墓穴を掘りまくる一日だった。
こういう日は何もしないで、じっとしているのが最善である。やるのは日付が変わってからでも遅くないし、ここは慎重にいくべきだろう。
急がば回れ、だ。
さっきと言っていることが全然違うけど。
私は携帯電話をしまうと、駅へと歩き出した。
実行は、今夜の散歩のついでにでもやっておこう。
そう思いながら、自分もまた雑踏の中へと加わっていった。
カリカリ、と紙面に文字を書き込む音が自室に響く。
数学の証明問題は思ったよりも手強く、何度も手を止めたり、椅子の前脚を浮かせてのけ反ったりとしながら、なんとかクリアした。
私は言い様の知れぬ達成感を感じ、ふぅと一息ついてから、持っていたシャープペンシルを離した。
机の上には、文字がびっしり詰まったノートと、使いこまれた参考書が並べられている。テスト期間が近いので、今夜は普段以上に勉強していた。
壁に備えつけられてる掛け時計を見て、時刻を確認する。時計は、もうじき今日が終わることを告げていた。
ちょうどいい時間だな、と私は思った。
ノートや参考書を机の中にしまい、椅子から腰を上げて、大きく伸びをする。長い時間座っていたせいか、体中の間接が悲鳴をあげていた。
さて、それじゃあ準備するかな。
クローゼットを開け、中から厚手のコートとマフラーを取り出した。最近はよく冷えるので、防寒を怠ってはならない。
それらを片手に持って、部屋の電気を消してから、自室を出た。
と、いけない、いけない。
踏み出した片足を慌てて戻して、ベッドの上に投げ捨てられていた携帯電話を、ポケットに突っ込む。
普段利用する機会が少ない分、私は携帯電話を忘れることが多い。けど、別段それで困ったこともなかった。着信なんて、稀にしか来ない。
私は階段を下りて、玄関で靴を履いた。
コートを羽織り、首元にマフラーを巻く。中にも大分着込んでいるので、寒がりの私でも、これで大丈夫だろう。
「いってきます」
振り返って、冷たい廊下に向けてはっきりと声を上げた。
しかし、返事は返って来ない。リビングには光が灯っていて、人の気配もあるというのに。
もう一度言ってみようかしら、と思って再び口を開けるが、やっぱり止めた。
返事が返ってきたことなど、一度も無いことを思い出したからだ。
私は、そっと家を出た。
深夜の空気は刺すように冷たくて、鋭利な刃物を思わせる。
思わずぶるりと体を震わせて、私は門を出た。
出発する前に、我が家を振り返る。
自室の隣の部屋の電気が、まだついていた。あそこはリンちゃんの部屋だ。
きっと、まだ眠れずにいるのだろうな、と私は思った。
>>124 GJ!!
なんということでしょう!!今週は停滞作品復活祭か!?
妹の姿を思い浮かべる。
彼女は小さい頃から、慢性の不眠症を抱えていた。
いつも目の下にクマをつくっていて、よく眠い眠いとぼやいていたのを思い出す。
発症したのは、たしか彼女がまだ幼稚園児の時だったか。
母は最初、子供だから色々と不安定なのだろうと、あまり気にしていなかったのだが、一向に回復の兆しが見えなかったので、遂にリンちゃんを病院に連れていった。
しかし何回診察を受けても、不眠の原因はわからなかった。
当時、リンちゃんは規則正しい生活を送っていたし、ストレスらしいストレスも無い、何の変哲もない至って健康な女の子だったからだ。本人も、特に心当たりが無いと言っていた。
医者には、副作用の少ない睡眠薬を服用することを進められたが、リンちゃんがそれを強く拒否したので、結局、彼女の不眠症は治らずじまいに終わったのだ。
それは高校生になった今でも続いているようで、彼女の部屋の電気が消えることは滅多にない。
早く治ればいいのに。
私は部屋の窓を見つめる。
その時。
んっ?
今、一瞬。カーテンが揺らいでいたような気がした。
風かしら、と最初は思ったが、外はこの寒さだから窓を開けている筈がない。それでいて
妹の姿を思い浮かべる。
彼女は小さい頃から、慢性の不眠症を抱えていた。
いつも目の下にクマをつくっていて、よく眠い眠いとぼやいていたのを思い出す。
発症したのは、たしか彼女がまだ幼稚園児の時だったか。
母は最初、子供だから色々と不安定なのだろうと、あまり気にしていなかったのだが、一向に回復の兆しが見えなかったので、遂にリンちゃんを病院に連れていった。
しかし何回診察を受けても、不眠の原因はわからなかった。
当時、リンちゃんは規則正しい生活を送っていたし、ストレスらしいストレスも無い、何の変哲もない至って健康な女の子だったからだ。本人も、特に心当たりが無いと言っていた。
医者には、副作用の少ない睡眠薬を服用することを進められたが、リンちゃんがそれを強く拒否したので、結局、彼女の不眠症は治らずじまいに終わったのだ。
それは高校生になった今でも続いているようで、彼女の部屋の電気が消えることは滅多にない。
早く治ればいいのに。
私は部屋の窓を見つめる。
その時。
んっ?
今、一瞬。カーテンが揺らいでいたような気がした。
風かしら、と最初は思ったが、外はこの寒さだから窓を開けている筈がない。それでいて、カーテンが揺らぐということは、もしや中から――
と、そこで慌てて思考を打ち切り、私は顔を赤くして頭を振った。
馬鹿か、そんな訳ないだろう。
ほんの少しでもそんなことを考えてしまった自分が、急に恥ずかしくなる。
今のは、ただの私の見間違いだ。そうあって欲しいという自身の願望が、それを見せたに過ぎない。
兄を慕っていた妹は、もういない。
彼女は私のことを嫌悪し、心底恐れている。その事実は変わってないし、これからも変わらない。
変な幻想を抱くのは、よせよ。
私はがりがりと頭を掻く。
途端に居たたまれない気持ちになり、足早に家を後にした。
もう一度我が家を振り返る気には、なれなかった。
何故、こんな夜更けに出歩いたりするのか。
一言で言えば、それが私の習慣だからだ。
深夜になると必ず散歩をする。
最初に始めたのは、確か中学生の時だったと思う。
どうしてこんなことを始め出したのか、今ではもう動機はわからないけれど、なんせ血気盛りな中学生の頃だ。多分、深夜に出歩く俺カッコイイとか思ってたに違いない。
私の散歩コースは、隣町の自然公園まで歩き、そこでゆったりしてから帰宅する、というものだった。
始めた最初の頃なんかは、ただ徒に近所をほっつき歩いているだけで、たとえ家を出ても直ぐに戻っていたのだけど、今ではむしろ、日に日に外出時間が長くなっている。
警察の補導にさえ気をつければ、深夜という時間帯は考えごとをするのに最高だった。
私は針穴みたいに小さい星屑を眺めながら、自然公園へと足を進めて行った。
自然公園に着いた。
隣町だけあって、ここまで歩くのには中々時間がかかった。既に時計の針は、最後に見た時から一周以上している。
私は、入口付近に設置されている自動販売機で、暖かい缶コーヒーをひとつ買ってから、公園の中へと足を進めていった。
するとすぐに、左右に枝分れした標識が現れる。左右それぞれに“北ブロック”“南ブロック”と彫られていた。
自然公園は、主に北と南のブロックに分けられる。
南側の方は、主にレジャー施設として利用されることが多く、広大な芝生や子供用の遊具、アスレチックなどが豊富に設けられていて、休日などはよく家族連れで賑やかになる。
それに対し北側は、主に散策やランニングのコースとして使われていた。季節ごとの観葉植物も沢山植えられているので、ついでに植物鑑賞も楽しめる。
私がいつも利用するのは、北ブロックのほうだった。
“北ブロック”と書かれた矢印の標識に従って、自然公園の中枢へと向かっていく。
相変わらず、自然公園には人っ子ひとりいない。
私は数年間、この北ブロックに通い続けているが、未だに此処で誰かと出くわしたことがなかった。まるで、この北ブロックだけが世界と隔離されてしまったように、過度なまでに閑散としている。
この有様だからかな、と私は周囲を見回した。
昼の和かな雰囲気に対して、深夜の北ブロックは、ただただ不気味でしかない。
生い茂った木々がコンクリートの道の上で天井をつくり、木の葉を擦り合わせてざわざわと音を立てる。しかもやけに街灯の数が少ないので、嫌でも暗闇が目立ち、どこか動物的な本能が警鐘を鳴らすのだ。
だから、みんな無意識に此処を訪れることを避けているのかもしれない。なんて、勝手な憶測をたててみる。
しばらく歩いていると、お気に入りの古い木製ベンチを見つけた。この散歩のゴール地点である。
私は、夜露で湿ったそれに腰を下ろし、缶コーヒーのプルタブを引き上げ、熱い液体を喉に流し込んだ。
落ち着くなあ。
全身が弛緩するのを感じる。この瞬間だけは、何物にも代え難いといつも思う。
私は、ぐにゃぐにゃに柔らかくなった意識の中で、ぼんやりと前方を眺めた。
目の前には、背の高い森林達でも覆い隠せぬほど大きくそびえ立つ、この市で一番の高度を誇る高層マンションがあった。
出来た当初なんかは、マスコミにも騒がれていた高層マンションだ。芸能人の誰々が買ったー、なんて言って一時期クラスでも盛り上がっていた。
あそこのてっぺんには、一体どんな人が住んでいるのだろう。
ボーっとしながら、きらびやかに光る最上階を見つめた。
時は一刻と過ぎていく。
と、まずい。
少しまったりしすぎたか。危うく、本来の目的さえ忘れてしまうところだった。そんなことになっちゃあ、正に本末転倒だろう。
私はポケットから携帯電話を取り出し、二つ折りのそれを開いた。
ディスプレイに映る日付は、既に変わっている。昨日の不幸な一日はリセットされ、新しい一日が始まったのだ。
大丈夫、これでいつも通りだ。
指を動かし、メニュー画面からアドレス帳を開く。
登録数が異様なまでに少ない私のアドレス帳の中には、ひとつ新しい名前が増えていた。今日の昼休みに登録されたばかりのものだ。
一応、保険をかけておいて正解だったな。つくづくそう思う。
私はその名前まで矢印をスクロールし、数秒迷ってから、親指で通話ボタンを押した。携帯電話を耳に当てる。単調な電子音が鼓膜を揺らす。
そして数回のコールの後、電子音が途切れ、相手が出た。
応答の声は無い。
おそらく、見知らぬ番号からの着信に警戒しているのだろう。
なら、こっちからいくか。
私は舌で唇を湿らせてから、おもむろに口を開いた。
「ああ、どうも。夜分遅くにすいません、鳥島タロウですが――って、ちょっ、ちょっ、ちょっと、切らないで切らないでっ! 切らないでくださいっ!
「……ふぅー、危なかったなぁ。今、絶対に切ろうとしてたでしょう? 気配でわかりましたよ。ああ、危ない。せめて、話くらいは聞いてくださいよ。乱暴だなぁ。
「えっ? どうやって番号を知ったか、ですか? ……まあ、細かいことはいいじゃないですか。私なりに、色々と調べたんですよ。
「ハハハ、嫌だなぁ。勿論、用なら有りますよ。私だって、ふざけてあなたに電話した訳じゃあ、ありません。
「ああ、それがですね。さっさと、と言うわけにもいかないんですよ。あまり、電話で話せるようなことでも、ないですしね。
「はい、はいはい、ええ、そうです。まあまあ、そんなこと言わないで。
「だから、前田さん――今日のお昼頃って、時間空いてますか?」
投下終わります。
途中、投下ミスしましたが気にしないでください。
133 :
名無しさん@ピンキー:2010/11/16(火) 16:21:29 ID:Uz5Gygj+
これからどんな展開になるのやら。
ワクワク。
GJです
それにしても荒らし消えたね
さぁて次の作品投下はまだかね?触雷!とリバース来てくれればかつるんだが
荒らしが消えるのは良いことじゃないか(^ω^)
ウェハースきてくれー!
>>131 GJ
これからの展開が全然読めないです。すんごくワクワクしながら待ってます!
まあ、向こうが落ちるまでのことだけどな
作品投下まだかな〜
ヤンプラ+の続きが読みたいな
全裸待機中・・・
ぽけもん黒ずっと待ってる
もう投稿しないなら一言欲しいぜ・・・
深夜にこんばんわ。今回は18話を投下します。
よろしくお願いします。
翌日の放課後。俺は職員室に呼び出されていた。呼び出したのは担任の黒川先生だ。
「まあ座ってくれ。悪いな、急に呼び出して」
「……俺、何かしましたっけ?」
先週提出締め切りの科学のレポートはちゃんと出したはず。
確かに多少ネットから切り貼りしたが、大半は自分でやった。まさかやり直しなのかと思わず身構える。
「そう身構えるな。別に怒るために白川を呼び出した訳じゃない」
「あ、そうなんですか……」
「まあレポートの切り貼り部分についてはまた今度たっぷりと搾るけどな」
「ぐっ!?」
やっぱりばれてたのか。でも用件はそれではないらしい。
「……話は兄貴から聞いた。大和の方はもうすぐ退院するそうだし、美空の方は会社が隠すから誰かに伝わる心配はないだろう」
「えっと……あ、先生の兄貴って……あの医者」
「ああ。私もこないだ聞かされた時には驚いたよ。まさかいつも愚痴って……いや、心配していた生徒が兄貴の患者だったんだからな」
一瞬本音が出かけていたが気にしないことにした。そういえばこないだあの医者、黒川さんがそんなこと言っていたな。
じゃあ先生も一部始終を知っているのか。……勿論俺のしたことも、だろう。
「白川、お前は大丈夫なのか?」
「俺は……大丈夫です」
大丈夫……一体何に対しての質問なのだろうか。いずれにしろ大丈夫だと思わなければやっていけない気がした。
「……記憶喪失になっても白川は白川だ。誰が何と言おうとお前は私の知っている生意気な白川要だよ」
「……はい」
先生も何だかんだで心配してくれていたらしい。一人ぼっちだと思っていたが、意外と自分が思っているより世界は優しかった。
「お前には信じてくれる仲間がいるはずだ。大事にするんだぞ、そういうのは」
「……はい!」
「良い返事だ。呼び出してすまなかったな。もう良いぞ」
先生は微笑みながら俺の背中を叩いた。初めて見る先生の笑顔はどこかぎこちなかったけれど、とても心が暖かくなった。
「失礼しました」
先生に一礼して職員室を出る。……色んな人に支えられていたんだな、俺。
「要、お疲れ様」
振り向くと遥が壁に寄り掛かっていた。こんな所で何をしていたのだろうか。
「おう。職員室に用事か?」
「ううん、偶然要が入って行くの見たから……その……待ってようかなって」
「そ、そっか」
顔を赤らめながら上目遣いで話す遥。思わず昨日のことを思い出してしまう。
遥の唇、柔らかかった……って落ち着け俺。心なしか自分の顔も赤くなっている気がしてならない。
「あ、あのね……もし良かったら……映画行かない?」
「映画……?」
「う、うん。気晴らしになるかなって……要が暇だったら、だけど」
心臓が高鳴っているのが自分でもよく分かる。緊張しているんだ、俺。
「行く。いや、行かせて下さい」
「じゃあ早く行こう?」
途端に笑顔で俺の右腕を掴んで歩き出す遥。彼女の動きに合わせて揺れる綺麗な白髪につい目を奪われてしまう。
それくらい遥のことを急激に意識している自分がいた。
駅前の映画館から出て来た時には既に辺りは真っ暗になっていた。もう12月の初めということもあって駅の中心部には大きなツリーが設置されていた。
「……物凄い映画だった」
「ああ。てっきり純愛物だと思ったのにな」
俺達は歩きながら先日公開してブームを巻き起こしている映画、『先輩(僕)は後輩に恋される』について話していた。
タイトルだけ見ると純愛物に見えるのだが中身はホラーサスペンスラブロマンス……。
要するに後輩であるヒロインの愛が恐すぎる、という一言に尽きる。
「でも後輩役の女優さん、凄く可愛かった」
「確か今話題のモデルだよな?えっと……神谷何とかって言ってたような」
映画の話をしながらも内心は心臓バクバクな状態だ。話題の映画、しかも純愛風ということもあって周りはほとんどカップルだった。
そのせいか隣にいる遥を妙に意識してしまったのだ。
「神谷……美香だった気がする」
「そ、そうだっけ」
話しながら横目で遥を見る。今までよく見ていなかったが普通に可愛い。
ぱっちりとした目鼻立ちに小さな唇。そして遥だからこそ似合う真っ白で肩まである髪。
どう見たってトップクラスの可愛さだ。意識しなかったことが奇跡としか思えない。
「今日はありがとう。付き合ってくれて」
「い、いや……俺の方こそありがとな」
気が付けば遥は帰ろうとしていた。そういえば今日は夜からバイトって言っていたな。
「じゃあわたしは――」
「バイトって何時から!?」
無意識だった。つい叫んだ自分がいた。このまま帰したくないと素直にそう思った。
遥はいきなり出された大声に目を丸くしている。
「え、えっと……8時からだけど……」
時計を見る。まだ6時前だった。
「だ、だったらちょっとお茶しないか。"向日葵"のコーヒー、久しぶり飲みたくってさ」
言った瞬間顔が真っ赤になっているのが自分でも分かった。何だよこれ。めっちゃ格好悪いじゃん。
「……いいよ」
「ほ、本当か!?……あっ」
遥を見るとまた恥ずかしさが振り返してくる。そんな俺を見て遥もまた顔を赤らめていた。
喫茶店"向日葵"は何時にもなく混んでいた。何とか二人席に通して貰い一息つく。
「今日は何か混んでるな……」
「いつもと正反対」
とりあえずいつものコーヒーを二人分注文する。店内は人の多さはあるものの、コーヒーが醸し出すゆったりとした雰囲気をちゃんと保っていた。
「これだけ人がいるとマスター大変だろうな」
「ずっと暇って愚痴ってたからちょうど良い」
「ははっ、違いない」
遥と二人きりで話すのは久しぶりだが凄く落ち着く。変に気を遣わなくて良いし自然と話せる自分がいた。
もしかしたら学校で疎遠にされている分、そう感じるのかもしれない。しばらくして来たコーヒーを飲む。いつもと同じ、変わらない味だった。
「さすがに忙しくてもこの味だけは変わらないな」
「変わらないことは難しい。でもその分変わらなければ覚えていてくれるから、だから変わらないことは良いことだと思う」
「……遥はさ、何で要組に入ったんだ?」
遥とじっくり話してやっと分かった。彼女は口数こそ少ないが自分をしっかりと持っている人だ。
そんな遥が要組を依り処にした理由が聞きたかった。優のように弱さを隠す為なのだろうか。それとも別の理由なのだろうか。
「……それは要が思い出して。じゃないと意味無いから」
「……そりゃそうか」
「ただ、一つ言えるのはね……その……」
急に言葉を詰まらせる遥。何か言いにくいことを言おうとしているような気がした。
「……遥?」
「か、要だよ!……要がいなかったら……わたし……きっと入らなかったから」
最後の方は今にも消え入りそうな声だったが辛うじて聞き取れた。顔を真っ赤にして俯く遥を見て同じくらい自分も赤いような気がした。
「そ、そっか……」
「う、うん……」
恥ずかし過ぎて遥をちゃんと見られない。どうしちゃったんだ俺。いくらなんでも意識し過ぎだろ。そう思っても中々心臓の鼓動は収まらなかった。
「じゃあ……バイト、行くね」
「おう。引き止めたりして悪かったな」
結局あの後会話は続かず二人で黙ってコーヒーを味わった。不思議とそれもそれで落ち着けて悪くなかったのだが。
「ううん。……嬉しかったから」
遥は今まで見せたことのない柔らかい笑みを浮かべた。とても魅力的で他の誰かに見られなくない、そんな笑顔だった。
「遥……ありがとな」
「……要はやっぱり変わらない。ずっとわたしを照らしてくれる。だから……好きだよ」
「……えっ?」
俺が言葉の意味に気が付く頃には遥はもう走り去っていた。それでも遥の小さな背中を見つめてしまう。
「……好き、か」
すっかり冬になった星空を見上げながら俺は一人思う。遥の"好き"と俺の"好き"は同じ意味なのか、と。
自分が虐められることには慣れていた。思えば小学生くらいには既に潤と一緒に虐められていたし、そのせいか耐える術も身につけた。
ただ人が虐められているのを見過ごせなくなってもいた。分かってしまうのだ。その人の苦しみや悲しみが。
何より当時の、虐められていた時の自分はひたすらに"誰でも良いから助けて!"と願っていたから。
「……助けて、なんて言ってない」
「気にすんな。俺が勝手に割り込んだだけだから」
だからこの時、遥を虐めから助けた時も特に他意はなかった。ただ誰かが虐められている現場を見たくはない、それだけの気持ちだったんだ。
「余計な……お世話」
「分かってる」
「分かってない!気まぐれで助けられても迷惑なだけ!」
遥の家は貧乏だった。後で聞いた話だが父親は既に他界していて、母親も働いてはいるが病気がちで思うように働けないのだそうだ。
遥も生れつき喘息持ちで抑制する薬の影響で髪が白くなってしまっていた。それらが女子の間で噂となり、世渡りがあまり上手くない遥は虐めの対象になっていた。
「……俺は春日井の髪、真っ白で綺麗だと思うけど」
「う、煩い!お前なんかに何が分かる!?どうせ虐められたことなんて――」
「あるよ。少なくとも今の春日井よりはね」
母親が死んで叔父さんと叔母さんに引き取られて桜ヶ崎に来るまではずっと虐められていた。
別に彼女に同情しているわけじゃない。だけど彼女が虐められていた時、自然と身体が動いていた。
「わ、わたしは誰も信じない!独りで生きて行くって……決めたんだから」
「……もし独りが嫌になったら生徒会室に来てくれ。待ってるからさ」
春日井は俯いていた。俺に出来るのはここまでだ。後は彼女が決めること。
大丈夫。誰だって独りでなんか生きては行けない。だからきっと春日井は来てくれる。そう信じて俺はその場を後にした。
「要、起きなよ」
「……英か」
今のは夢、というか忘れていた記憶か。周りを見渡すと既に教室には人があまりいなかった。
どうやら爆睡していたらしく5時間目を軽くすっ飛ばして放課後になっていたようだ。
「よく寝てたな要。夜中に一体何やってたんだこのエロチック小僧!」
亮介がこっちに近付いて来る。クラス中に避けられている為か誰も起こしてくれなかったらしい。
「うるせぇ亮介。英、起こしてくれてありがとな」
「最近色々あって要も疲れているんじゃないかな?今日はもう早く帰った方が良いよ」
「そうだな……」
遥は今日すぐに駅前のレンタルビデオ屋でバイトらしい。
「……行ってみるかな」
「ん?どうした要」
「何でもねぇよ」
亮介に言ったら面倒臭いことになりそうだし黙って行くか。
「まあその前にいつもの一杯なわけですが」
駅前喫茶店"向日葵"は昨日の満席状態とは打って変わってガラガラだった。まあこの方が俺は好きなんだけどさ。
「マスターいつものね」
「はいよ」
奥から二番目、ここがよく要組で集まっていた場所と昨日遥が言っていた。
座ってみるとやはり落ち着く。マスター渾身のコーヒーを飲みながら物思いにふけてみる。
「……春日井遥、か」
ここ2、3日で遥との距離が一気に縮んだ気がする。むしろ俺が積極的に絡んでいるのかもしれないな。
遥のあの穏やかな笑顔が頭から離れない。もしかしたら俺は遥のことが――
「あ、先約か」
「えっ?」
声がしたので咄嗟にそちらに顔を向けるとそこにはサングラスを掛けた赤髪の美少女がいた。
……何処かで見たような――
「あっ!?昨日見た映画の――」
「声がでかい!」
「ぐはっ!?」
一瞬で腹部に蹴りを入れられる。なんつーキレのある蹴りなんだ。
つーかこの声……やはり昨日見た映画に出ていたモデルさんだ。確か名前は……。
「か、神谷美香(カミヤミカ)……?」
「あーあ、ここならばれないと思ったのにな」
サングラスを取る赤髪の女性。目の前にいる彼女は紛れも無く昨日スクリーンの向こうで見ていた神谷美香だった。
「へぇ、じゃあ白川君はまだ高校生なんだ。若いなぁ……」
「神谷さんこそ19歳には見えませんよ」
「ああ!?喧嘩売ってんのか!?」
「いや、褒め言葉ですから」
人は見かけで判断できないというが神谷さんはまさにそれだった。
明らかに高校生にしかみえない容姿(ここでは褒め言葉とする)に、可愛らしい雰囲気とは裏腹に豪快で何と言うか……男気溢れるといった感じだ。
「しかし懐かしいなぁ。この街も半年ぶりだし」
「今はモデルのお仕事をされているんですよね」
「…………」
「……ん?どうかしましたか」
気が付くと神谷さんが俺の顔をじっと見つめていた。
「……ううん。ただ白川君がわたしの好きな人に、ちょっと似てたからさ」
「好きな人……ですか」
「ほんのちょっとだけだけどね」
神谷さんは少し寂しそうに笑った。一体彼女が好きな人とはどんな人何だろうか。
「しかし君とは何か気が合うね。たまたま仕事ついでに寄ったけど、君に会えて良かったよ」
「俺もモデルさんと会えるなんて思わなかったんで嬉しいです」
「……可愛いな、コイツ!」
「か、神谷さん!?」
神谷さんが近寄ってきて頭を撫でられた。何だか恥ずかしいが神谷さんは気分良さそうに俺を撫で続けている。
「いやぁ久しぶりに癒された。あ、折角だから連絡先交換しよっか」
「良いんですか?モデルさんなら事務所とか……」
「良いの良いの!どうせわたしがいないと困るのあいつらだし」
何と言う暴君。赤外線を使って連絡先を交換する。まさかこんなところで人気モデルと連絡先を交換するなんて夢にも思わなかった。
「ありがと。……今時誕生日と名前なんて古風だね。しかもピリオド二つか」
「いや、あんまり良いのが思い付かなくて……二つ?誕生日と名前の間に一つだけですけど…」
新しく携帯を買った時に潤と一緒にアドレスを考えたが、分かりやすいようにピリオドは間に一つだけにしたのだが。
「でもほら、二つあるよ?」
「……あれ?可笑しいな……勘違い…か」
何かが腑に落ちない。何だこの感じ。何かとてつもなく大事なことを見逃しているような――
「……白川君、大丈夫?わたしそろそろ行くけど」
「あ、ああすいません。俺も一緒に出ます」
結局何が原因かは分からず仕舞いで喫茶店を出て神谷さんと別れた。
「……今日は帰るか」
本当は遥に会いに行くはずだったのだがアドレスの件が妙に頭の隅に残っている。
「……また明日、だな」
俺はそのまま家に帰ることにした。
「神谷さん!また貴女勝手に抜け出して!自分の立場分かってるの!?」
「休憩時間中に何処行こうとわたしの勝手でしょ」
スタジオに戻ると案の定マネージャーが烈火の如く怒っていた。
「貴女ねぇ!売れっ子モデルっていう自覚あるの!?変なファンが何するか分からないんだからね!?」
「自分の身くらい自分で守れるから。……どっかの極悪メイド以外ならね」
このマネージャーで5人目。皆わたしの身勝手さに疲れて辞めて行った。別にそんなに嫌がらせしてるつもりはないのだが……。
「……新しいマネージャー募集しようかな」
何故か白川君の顔が思い浮かぶ。あの人に、先輩にどことなく似ている彼の顔が。
「……変なの」
「神谷さん聞いてる!?」
「はいはい、気をつけますよ。早く続きやっちゃいましょ」
先輩を待ち続ける気持ちに変わりはないのだけれど、ちょっと白川君が気になった。
久しぶりに部屋で勉強をする。気が付けばもう12月。冬休み前の期末テストまで後一週間を切っていた。
「微分が……?つまりこの場合Xは0にな――」
『だから……好きだよ』
「……ちょっと休憩」
シャーペンを放り投げてベッドに横になる。
遥のことが気になってしまい、実際勉強どころではなかった。やはり今日バイト先に行くべきだったのか。
「好き……かぁ」
遥の気持ちはすごく嬉しいし俺も遥のことは好きだ。でも果たして俺の"好き"はどういった種類の好きなんだろうか。
自分でもよく分からない。仲間として好きなのは確かなのだけれど……。
「わっかんねぇ……」
「……兄さん?ちょっと良いかな」
そんな時、ドアがノックされた。どうやら潤がいるらしい。
「どうぞ」
「お邪魔します。兄さん、実は話があるんだけど……」
「話って……どうした?」
潤はいつにもなく神妙な顔つきをしていた。思わずベッドから起き上がる。潤は俺の隣に腰を降ろしたまましばらく黙っていた。
「……潤?」
「……あ、あのね兄さん。落ち着いて聞いて欲しいんだけど」
「……何だ?」
「もしかしたら……兄さんは罠にかけられたかもしれない」
潤が真剣な表情で言うのでとりあえず聞くことにした。
「罠……?」
「兄さんのアドレス、最近ちゃんと確認した?」
「……やっぱりか」
先程気になっていたこと。まさか潤に言われるとは思っていなかった。
「うん。明らかにピリオドが一つ多い、でしょ?」
「俺も今日気付いた。でもこれが何だって――」
潤は無言で自分の携帯を見せてきた。表示されているのは俺のアドレスだ。
「……あれ?」
「ね?私の携帯にはちゃんとピリオド一つだけで登録してあるの。可笑しいと思わない?」
確かに。何故俺と潤の携帯に登録してあるアドレスが違うのだろう。
「でも確かこの前の写メは時間かかったけどちゃんと俺に届いたよな」
「そう。"時間かかって"ね……。つまりいるんだよ」
「いるって……どういうことだよ?」
何かとてつもなく嫌な予感が、聞いてはいけない何かがある気がする。
「兄さんのアドレスを使ってメールを経由する誰かさんが、ね」
「……えっ」
潤は冷たく微笑んでいた。まるでその誰かさんが分かっているかのような、そんな笑みだった。
今回はここまでです。読んで下さった方ありがとうございました。
投下終了します。
華麗に一番槍GJをかっさらう(≧∇≦)
一体誰がアドレスを掌握しているのだーー!
GJ!
次回も楽しみにしてます!
>>144 GJ!!
リバースキターーーー!!!テンション上がって来たぜぇ!!!ありがとうございます!!これで触雷!来れば完全無双
Gt
GJ!
遥が可愛いんだが。普通に要と遥にカップルになって欲しい。
ヤンデレだから無理かもしれんが。
触雷はまず贖罪を果たさなきゃ
今のままじゃ到底受け入れて貰えないだろ
なんにせよダンマリはよくない
謝るなら謝る、止めるなら止めるの一言あってもいいだろ
散々スレの世話になっといて、これはないよ
GJ!リバース来てた!
遥可愛いな。神谷って何処かで聞いたような気がする。
>>151 Good Job!
すごくおもしろかったです。前作ネタがくるとなんだかちょっとうれしいですね
アドレスは誰を経由してるのか遥はこれからどうするのかめっちゃ楽しみです!
作品投下まだかな?
触雷!作者は荒れたこと気にする必要なし
本物だか偽者だか知らんが兎里が勝手に触雷を槍玉にあげただけだから別に
あんたが遠慮することはないよ
というわけでどんどん作品投下こい
作品投下まだかぁーいつまでもズボンが履けないではないか
要モテすぎ地獄におちろGJ
節操なしの多いこと(^_^;)
黙って待てないの貴様ら
作品投下まだかな?
コイツ人の話聞いてねぇ(^ω^;)タラーリ
俺巨乳より美乳派
作品投下まだかな〜
>>169え、何コイツスルーしてますアピールですかf^_^;
やったろーじゃん!(b^ー°)
作品投下まだかな
って、これ新しい荒らしの常套句?これでスレ潰そうとかしてるのか?
ID:5tKNS3V0これは確実に荒らしだろうよ
>>173ほんまかいなwww
ヤメテクレ(*ノωノ*)
>>173 まあまあ、でれるなってw
ここはでれはでれでもヤンデレスレ
おおっ、規制とけてた!
早いな
自分に文才がないことは重々承知だけど、また続きを書いてみました。
投下します。
*********
「朝は酷い目に遭ったよ………」
「大丈夫?」
あれから俺は怪力馬鹿力を誇るゴリラ似父と冷酷殺人化した幼なじみ二人を相手になんとか誤解を解きながら命を保たせることに成功した。
しかし朝食を完食できずに俺と星奈は一足先に自分達の通っている高校に向かった。
今年で3年になる俺等は今日から入学する1年生の入学式の準備をしなければならない。
入学式は午後からなので、今年1年の妹の愛と両親は後から来ることになってる。
「やっとまた………と一緒になれる………」
出かける際こんなことを言うもんだから父さんに殺されるところだった。
俺の妹はなかなかのブラコンだ。記憶喪失以前のときのことは知らないが、現在は間違いなくブラコンである。
そのせいで俺は毎日あのジャングルの猛者、ゴリラ父さんにありとあらゆる鉄槌を受けてきた。
だから俺の性格がひねくれるのもまた当然のことだ。
しかし何故ブラコンになってしまったのやら。
少なくとも俺が中学2年生の時までは普通の兄妹の態度だった。しかしある日を境に何故か俺に過剰に好意が感じられる態度 になった。
過去の俺は結構鈍感だったらしいが、記憶喪失で頭のメモリー量が空き、頭の回転が速くなったのか過去の俺よりは鈍感ではなくなった。
事実、俺は妹の他にあの完璧超人幼なじみの星奈からも俺に対して好意的なものを嫌でも見受けられる。てか、毎日アピールされる。
星奈曰わく『まるで別人みたい………いや、別人よ!』と。
当初は記憶喪失のためか人格がまるで別人のようだったらしい。口調はもちろん誰か別人と会ってるようだと会う人ほとんどから言われた。
恥ずかしいことに俺は意識を取り戻してから2週間は記憶はあやふやで、入院時のこともあまり覚えてない。
唯一家族や星奈が毎日お見舞いしていたことは覚えていた。
しかし父さんの存在を確認したのは退院してからのこと。最初会ったときは何でゴリラがいるんだろうとよく疑問に思ったことだ。
バナナをあげたときのテンションの高さはゴリラそのものだったから………。
まあ、人間と話ができる時点で頭のどこかでは人間かと思ったが………まさか自分の父親だったとは………
せめて親戚のゴリラでいて欲しかった。
まあ、見た目通りがさつで乱暴、ゴリラとマイナス3ポイントだが、妹にはめちゃくちゃ甘い。
どのぐらい甘いかというと炭酸の抜けたファンタ以上に甘い。
母さんには普通の夫婦としての態度であるが、たまに恐れていることがある。
「しかし母さんは何故あんなゴリラと結婚したんだろう?」
自分の親にこんなこと言うのはなんだが、母さんは結構綺麗なほうだ。
流石に40の後半に入ったので若々しい20代みたいとは言えないが、どこか気品が良い雰囲気を感じ、昔はモテただろうなと思わせることも多々ある。
「お義父さんのことをあまり罵倒しちゃ駄目だよ。いいじゃない、たくましくて素敵だと思うよ。」
星奈の今の台詞は母さんから訊いた父さんの好きなところの一つで、実はあの二人の結婚の話に持っていったのは母さんからの方だった。
このことは記憶喪失以前の時も訊いたようだが、どちらも答えようとはしなかった。
「あんなに昔はお義父さんを尊敬してたのに……陽太はあの時から結構変わったね………」
何故だろうね、昔の俺よ………
それよりもまた星奈が哀しげな顔になった。
星奈はよく記憶喪失前の俺と今の俺を比較する。
今の俺は根本的な何かが違うらしい。星奈だけではなく、友達、親戚、そして両親にも一度だけ言われたことがある。
唯一、妹だけは言わなかったが………ブラコンのためだろう。
たまに記憶喪失してから一人だけ仲間外れにされてる疎外感があり、一度はまた世界から逃げようと考えたこともあった。
しかし挫けそうになった時、俺が………違うもう一人の俺が力強い魔法の一言で勇気をくれる。
そして同時に例の約束も俺を元気づける大切な一つになってる。
「………ねえ、聴いてる?」
「…ん?何が?」
少し自分の世界に浸り過ぎてた。
「まったく………なんかそーゆうところは変わってないね。」
「褒められたの?」
「好きなところの一つって言ったの!」
いや唐突すぎるでしょう。
いつも通りにくだらないやり取りをしながら学校まで幼なじみの相手をして向かった。
どうしてか、俺は高校生活最後のこの年に新しい出逢い達よりももっとかけがえのないことが起きると思った。
学校に着くとげた箱の前にホワイトボードが6つ並んである。そこには俺達の新しいクラスメンバー表が堂々と貼られてた。
ホワイトボードに集まる人をかぎ分けながら3年生のクラスが張り出してるボードに向かった。
「3組か………」
「やった!あたしも3組!」
どうやら俺と星奈は同じクラスだ。
「何だ、お前らも3組か。」
後ろを向くと少し柄の悪い男子高校生が立っていた。
「おはよう、貴幸(たかゆき)。」
「おはよう、雨野。」
柄が悪いせいか奴の笑みはどうしても悪人の笑いにしか見えない。一応、良い奴の比率が高いであろう雨野 貴幸は俺と星奈を見ながらニヤニヤしていた。
その姿は悪人予備軍だった。
「また夫婦で登校かい。いつ見てもアツイね〜。」
確か警察は110番だったか?俺は目の前の悪人予備軍を悪人になる前に通報することにした。
「おいっ、待てよ!?冗談だから早くその携帯をしまってくれ!」
「そうだよ陽太。恥ずかしい気持ちは分かるけど照れ隠しに通報はあんまりだよ。」
「断じて照れてない!!」
大声を出してしまったせいで周りから冷たい視線が集まりながらもその後の入学式を迎えることができたのは奇跡に近いはずだ。
+++++++++
今日から高校生の俺はいつもより早く起きていた。
入学式は正午からだが、ついつい楽しみで朝5時という驚異的な時間に目を覚ましたのだ。
「陽ちゃん、今日から高校生だよ。良かったね。」
幼稚園児みたいな扱いを受けてるのは気のせいだ。
母さんこと優子さんは過剰に俺に甘く、近くに寄りそう。別にわるくないんだが家でならともかく、外でも接し方が家と同じなのはやめてほしい。
「おっ!早いな陽太。おはよう。」
「おはよう。」
リビングの奥の和室からひょっこり雲下家の大黒柱である父、陽大(ようだい)さんが珍しく寝間着姿でリビングに来た。
陽大さんは一言で言うとダンディーだ。渋くてかっこいいし、常に冷静で時々暴走する優子さんを止めることができる数少ない人だ。
ちなみに俺は優子さんの暴走を止めるなんて無理だ。逆に火に油を注ぐようなもんだから。
「今日から高校生だな。頑張ってこいよ。」
「はい。」
陽大さんの前では敬語になってしまうがそれも慣れてきた。
それから雲下家の朝食は俺が高校に向かうまで続いた。やっぱり家族と一緒に飯が食えるのは最高なことだな!
優雅な朝食を済まし俺は新しい自分の学校へ向かった。そして新しい日常と予想外の波乱が今後起こると知らずに。
投下終了です
>>182乙です
あまり最初に自虐的な事書かない方が良いョ
文章の感じ方は人それぞれだし
(自分は味が有って良い文章だと想うよ)
それにまだ嵐が完全に居無くなって
無いかもしれんし
(付け込まれるからね)
>>182Good Job!!!
今後も期待して待ってます。
そして、もう少し文の量が多いと
読ませてもらってる身としては、嬉しいっす
GJ!!
ようやく来た…かれこれ約2ヶ月ぶりかな?まさに復活祭!
おはようございます。
昨晩は諸事情により投下できませんでした。
仕事に行く前に、第四話投下して行きます。
ジャンがテオドール伯の屋敷から戻った時には、既に太陽は西の空に沈みかけていた。
日中は陽射しに恵まれているものの、夜が近づくと途端に冷え込む。
伯爵の屋敷のあった丘からの吹き下ろしが、夕方から夜にかけて街を冷やすためだ。
ジャンとクロードを乗せた馬車が宿場に着いた時、通りにいる人影は既にまばらだった。
昼間は活気あふれる市場としての顔を見せる商店街も、今はなりを潜めている。
「それでは、また、明日の昼ごろにお迎えにあがります。
それまでジャン様は、どうか御身体をお休め下さい」
「わざわざ見送りまでしてもらって悪いね。
本当だったら、僕がその足でテオドール伯の御屋敷に向かえればいいんだけど……」
「滅相もございません。
本来であれば、こちらがジャン様のためのお部屋をご用意せねばならぬところを……旅の途中、わざわざ御引き留めまでして往診していただくのですから。
せめて、お見送りくらいはさせていただかねば、御主人様としても納得はされないでしょう」
「そこまで気を使ってもらうと、なんだかこっちの方が申し訳ない気がしてくるよ……。
まあ、なにはともあれ、僕もしばらくはこの街にいることになりそうだ。
明日は行商人から薬の材料が買えないかどうか、その辺も調べてみることにするよ」
「左様でございますか。
では、本日は、これにて失礼させていただきます」
馬車を降りたジャンに深々と礼をして、クロードは再び馬車の中へと戻った。
御者に簡単に支持を出し、馬車は丘の上の屋敷へと帰って行く。
だんだんと遠ざかって行く馬の蹄の音を聞きながら、ジャンはクロードが最後まで表情を変えなかったことを思い出した。
(なんか、色々な意味で凄い人だったな……。
きっと、筋金入りの使用人なんだろうな……)
帰り道、ジャンはクロードに彼の立場について質問した。
クロードは自分よりも少し上の年齢に見えたが、それにしては位が高そうに見える。
思い切って尋ねたところ、彼の立場はツェペリン家の執事長ということだった。
初め、その答えを聞いた時、ジャンは思わず自分の耳を疑った。
執事長と言えば、使用人の中でも最高に値する地位である。
クロードはまだ二十代に違いないが、その若さで、テオドール伯に仕える全ての使用人を取りまとめる立場にあるのだ。
始終、感情を表に出さずに話すのは、きっとクロードの癖なのだろう。
彼はテオドール伯に仕える最高位の使用人。
だからこそ、任務に私情を挟むことなく、与えられた仕事だけを黙々とこなすことを生甲斐としているのかもしれない。
そう考えると、彼の感情が希薄になるのも納得のゆく話だった。
「さて……。
とりあえず、夕食には間に合ったけど……明日から、どこに泊まろうかなぁ……」
翌日からのことを考えながら、ジャンは思わずそんなことを口にした。
リディには、明日には街を発つと言ってしまった。
このまま彼女の宿場に泊まり続けても良いのだろうが、さすがにそこまで甘えられない。
かといって、伯爵の行為に甘えて屋敷に部屋を用意してもらうのも気が引ける。
ここは一つ、明日の内に別の安宿でも見つけておくしかないか。
クロードの話では、街にいる間の滞在費用は伯爵家が出すとのことである。
もっとも、それで調子に乗って最高級の宿に腰を下ろそうなどという、下品な下心は持ち合わせていない。
今後の宿のことを思案しながら宿場の戸をくぐると、酒や料理の匂いに混ざり、男達の豪快な話声が聞こえて来た。
日没までにはまだ少しだけ時間があったが、どうやら早くも階下の酒場が賑わっているらしい。
「おや、戻ったのかい、兄さん。
リディの姉さんが、上で御待ちだぜ」
一階の酒場を切り盛りしている店主の男が、ジャンの顔を見るなり言った。
相変わらず、気さくで人当たりの良い男だとジャンは思う。
昨晩に入った、不味い酒を出す店のマスターとは大違いだ。
「わざわざ伝えてくれて、すみません。
昨日は明日にでも発つ予定だったんですが……僕も、もう少しだけこっちに留まることになりそうです」
「そうかい、そいつはよかった。
リディの姉さんの作る夕食があるなら別に必要ないんだろうが……しばらくいるってんなら、たまには、俺の店でも飲んで行ってくれよ」
「ええ。
それじゃあ、早速今晩お世話になります。
実は……帰りがいつになるかわからなかったんで、リディに夕食は要らないって言っちゃったもので……」
「気づかいが裏目に出たな、兄さん。
まあ、そうがっかりしないで、今日は好きなだけ飲んで行けよ。
最初の一杯なら、俺の奢りでタダにしておくさ」
「ありがとうございます。
でも、あんまり飲み過ぎると、そのリディに叱られそうで怖いですけど」
「なるほど。
そいつは違いねえ!!」
ほんの軽い冗談のつもりだったが、ジャンの言葉に店主は豪快に笑って答えた。
街の人間はジャンに冷たい者が多いのではないかと勘ぐっていたが、この男だけは、他人を色眼鏡で見るようなことはしない人間に思えた。
ジャンがカウンターの前にある席に腰を下ろすと、店主の男は店の奥から一本のボトルを出して来た。
言われるままに、ジャンはグラスに注がれたワインに口をつける。
口に入れた瞬間、甘酸っぱい果実の味と香りが広がった。
プラムやベリーを思わせるような香りと、程良い渋み。
それらの味を上品な酸味が上手にまとめ、飲み干した後の口当たりも良い。
昨日の晩、一口飲んだだけで悪酔いしそうな酒を飲んだ後だったが、まったく気にせず飲むことができた。
むしろ、この酒が薬となって、昨晩の酒を中和してくれるのではないかとさえ思ってしまった。
「良いお酒を出しているんですね。
どこで手に入れた物なんですか?」
「残念だが、そいつは企業秘密ってやつだ。
どんなに粘られても、こればっかりは教えられねえ」
店主の男が悪戯っぽい笑みを浮かべて言った。
もっとも、ワインの出所を教えたくないというのは本音なのだろうが。
それからジャンは、差し出されたパンとチーズを片手に男と他愛もない話をして楽しんだ。
が、しばらくすると、店も本格的に忙しくなり、男は客の相手をするので手一杯になってしまった。
店の奥では、客の注文を受けて料理を作る女性の姿も見受けられる。
どうやら店主の妻のようだが、こちらもまた忙しそうだ。
作った料理を運んでは店の奥に戻るの繰り返しで、とてもではないが話しかけられそうな雰囲気ではない。
話相手を失い、ジャンは何をするわけでもなく目の前の皿に残っているチーズを摘まんだ。
最初に勧められた一杯より先は何も飲んでいなかったので、そこまで酔いが回っているわけでもない。
それよりも、ハムとチーズくらいしか口にしていないため、空腹感の方が大きかった。
こんなことなら、リディに夕食を作ってもらうのを断るべきではなかったか。
そう、ジャンが考えた時、彼の横の席に誰かが座る音がした。
「ねえ、ジャン。
隣、いいかしら?」
声をかけてきたのはリディだった。
いつもは二階の宿場にいる彼女が降りてきているということは、夕方の仕事は一通り終わったのだろうか。
「どうしたの、リディ。
宿場の仕事、終わったのかい?」
「どうしたのってことはないでしょ。
ジャンこそ、夕食の時間に間に合ったんなら、どうして直ぐに帰って来たって言ってくれなかったの?」
「いや、ごめん。
なんか、中途半端な時間に戻って来ちゃってね。
お店の親父さんの勧めもあったし、仕方ないからちょっと飲んでた」
「ちょっと飲んでたって……。
でも、夕食まだなんでしょ?
空き腹にいきなりお酒なんて入れたら、それこそ身体に毒だよ」
「そんなこと言ったって、リディには夕食は要らないって言っただろ。
今さら、何か作ってもらうっていうのもなぁ……」
「大丈夫だよ、ジャン。
こんなこともあろうかと、ちゃんとジャンの分は取っておいたから。
それよりも、ジャンが無理して身体を壊しちゃう方が、私は心配だよ」
別にそこまで悪い事をしている気などなかったが、リディは本気でジャンを心配しているようだった。
それに、たしかに腹が減っているのも事実だ。
店主の男には悪いが、酒を飲んであれこれと語らうのは、また今度の機会にさせてもらうしかなさそうである。
「すいません、親父さん。
それじゃあ、お代はここに置いておきますんで……」
「おう、ありがとな。
しばらくこっちにいるってんなら、また飲む機会もあるさ」
ワインのボトルを布で拭きながら、店主が答えた。
ジャンは代金が足りているか勘定するように伝えたが、「信じているから必要ない」の一点張りで、金を数えることなどしなかった。
まったくもって、最後まで気前の良い男だ。
ほのかにワインの香りが漂う一階を離れ、リディと共に二階に上がる。
食堂に移ると、リディはすぐさまジャンの分の夕食を持ってきた。
昨日の夜に食べた賄いのシチューなどではなく、鶏肉にハチミツソースをかけた、割としっかりとした料理だった。
何時に帰るかも伝えていないのに、妙に手際が良い。
そう思ったジャンだったが、リディ曰く、宿場の経営者として基本のことらしい。
部屋が満室にでもならない限り、常に急ぎの来客でも対応できるように準備をしておくこと。
それが、宿の評判を高く保つための秘訣なのだそうだ。
空腹だったことも相俟って、皿の上の料理はすぐになくなった。
食器を片づけに来たリディに、ジャンは少し困った顔をして告げる。
話の内容は、もちろん明日の宿のことだ。
「ねえ、リディ。
ところで……明日もあの部屋、空いてたりってするかい?」
「えっ!?
まあ……別に、急なお客さんがいるわけでもないし……。
多分、大丈夫よ」
「だったら話が早いな。
実は、テオドール伯の病気なんだけど、どうも治療に時間がかかりそうでね。
しばらくは、この街に留まって診察を続けないといけないんだけど……生憎、明日の宿がないんだよ」
「なんだ、そんなこと。
それなら、あの部屋をジャンに貸してあげるわよ。
この街にいる間、そこで暮らしたらどう?」
「でも、さすがに宿の一室を、そう何日も借りるわけにはいかないよ。
僕だけじゃなく、他のお客さんだって泊まるだろうしさ」
「そうねぇ……」
食事の終わった皿を片手に、リディもしばし考え込んだ。
一家の私財を全て投げ打って手に入れたこの宿は、決して大きい物ではない。
設備は驚くほど整っているものの、宿泊客のための部屋が、そう何十もあるわけではないのだ。
(お客様用の部屋は、数も限られているしなぁ……。
私は別に、ジャンに貸してあげてもいいんだけど……)
リディにとっては、ジャンに部屋の一つを貸すことなど何の負担でもなかった。
むしろ、ジャンが自分の側に留まってくれるのであれば、部屋の一つや二つ、安いものだ。
だが、そうは言っても、ジャンはあの通り生真面目な性格である。
自分がリディの商売の邪魔になっていると感じた瞬間、この宿を出て行ってしまうかもしれない。
宿泊客を泊めるための部屋は貸し出せない。
だとすれば、考えられる案はただ一つだ。
食器を片付け終え、再びジャンの下に戻るリディ。
ジャンは部屋に戻ろうとしていたようだったが、彼女はあえて、それを引き留めた。
「ねえ、ジャン。
もし、よかったらでいいんだけど……」
「なんだい?
言っておくけど、僕にタダで部屋を貸すなんて提案は、さすがにお断りだよ。
いくら昔の仲でも、君にそこまで甘えられない」
先手を打たれた。
そう思ったリディだったが、今さらここで引くつもりもなかった。
ジャンを少しでも自分の側に繋ぎ止めておきたいという想いは、絶対に譲ることのできないものだったからだ。
「実は、この宿場なんだけど、従業員用に作った部屋が空いているの。
三階にある仮眠室みたいな場所なんだけど、そこだったら、ジャンにずっと泊まってもらうこともできるよ」
「仮眠室か……。
でも、いいのかい?
従業員用ってことは、下のお店の親父さん達だって使うんじゃないか?」
「それは大丈夫。
あの人達の部屋は、ちゃんと一階に用意してあるから。
二階の部屋は、今は誰も使ってないのよ」
「そういえば、リディの他に、この宿場で働いている人は見なかったな。
やっぱり、一人で切り盛りしているってことかい?」
「うん、まあね。
さすがに、人を雇うような余裕はないし……。
昔、お母さんが寝ていた部屋を利用して作ったんだけど、今は持て余してるの」
決まりの悪そうな顔をしながら、リディがジャンに言った。
以前、今は亡きリディの母が使っていた部屋を、従業員用の仮眠室に改造したのは事実だ。
しかし、作ったのはいいものの、人を雇ってまで宿を大きくするような余裕もなく、結局は部屋を遊ばせているだけだった。
宿泊客を泊めるために貸し出そうとも考えたが、他の部屋に比べると少し狭い。
それに、隣室が自分の部屋であることを考えると、四六時中気を使ってしまいそうで嫌だった。
「従業員用の仮眠室か……。
まあ、リディが良いって言うなら、遠慮なく使わせてもらうけど……。
本当に大丈夫なのかい?」
「うん、平気だよ。
どうせ、これから先も人を雇う余裕なんてないだろうしね。
それに、部屋だって、誰かに使ってもらった方が嬉しいはずだから」
「わかったよ。
だったら、今日からその部屋にお世話になることにするよ。
明日の朝になって荷物を動かしたりするのは、さすがに慌ただしくなりそうだからね」
「そうね。
それじゃあ、私は部屋を少し片付けて来るから。
掃除が済んだら呼ぶから、ジャンはそれまで二階にいて」
最後の方は、どこか嬉しそうな表情でリディは言った。
そのままジャンを二階に残し、三階へと続く階段を上って行く。
リディの足音が遠ざかって行くのを聞きながら、ジャンはふと、今日の帰りに見た少女のことを思い出した。
幽霊のように白い肌と、ほとんど色の無い白金色の髪。
抱けばそれだけで折れてしまいそうに細い身体と、血のように赤く染まった二つの目。
同じ赤でも燃えるような熱さはなく、どこか寂しく儚げなその視線は、忘れようにも忘れられない。
少女が普通の人間でないことは、ジャンも薄々気がついてはいた。
医師として各地を転々とする生活を続け、早数年。
自然の悪戯は、時に生まれながらにして、人間離れした容姿を人に与えることもある。
伯爵の屋敷に着いた時に感じた視線も、恐らくは彼女のものだったのだろう。
あの時は、相手が二階から見降ろしていることに気がつかなかったに違いない。
彼女はいったい何者なのか。
自分には関係ないと思いつつも、ジャンはそれだけが気になって仕方がなかった。
医師として、彼女のことを憐れむ気持ちもあった。
また、ジャン自身、その容姿に幻想的な美しさを抱いていなかったかと言えば、それも嘘になる。
(まあ、今は考えても仕方ないか。
機会があれば、伯爵の屋敷に行った時に聞いて見るか……)
受付の前にある椅子に座ったまま、ジャンはぼんやりと天井を仰いで考えた。
もっとも、その時はそれ以上の感情を少女に抱くこともなく、今日の出来事をすぐに頭の隅に追いやった。
ジャンにとってはむしろ、自分のことを煙たく思う人間が多くいるであろう街に、思いのほか長く滞在することへの居心地の悪さの方が大きかった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
夜になると、街は凍てつく風に支配される。
丘からの吹き下ろしが通りを駆けまわり、ガタガタという音を立てて窓ガラスを叩く。
十年以上も前から変わらない、この街にとってはごく当たり前の冬の光景だ。
その日の夜、仕事を終えて自室に戻ったリディは、ベッドの上でジャンの顔を思い浮かべていた。
十年前、自分の前から別れも告げずに街を去ったジャン。
あの時は、まだ幼い子どもだった自分の無力さが悔しくて仕方がなかった。
なぜ、ジャンまでが街を追い出されなければならないのか。
この街に住めなくなることは仕方ないにしても、せめて別れの言葉くらい言って欲しかった。
もしくは、必ず戻って来ると、自分の前で約束して欲しかった。
だが、彼女の願いは何一つ聞き入れられることなどなく、ジャンはリディの前から姿を消した。
そして、何の音沙汰もないまま、瞬く間に歳月は過ぎていったのだ。
もう、ジャンには会えないかもしれない。
宛てのない旅路の先で、生きているのか死んでしまったのか、それさえも分からない。
心のどこかでジャンが帰ってくることを信じながらも、どこか自分の中に大きな空白が生まれてしまったような感じがした。
ジャンがいなくなったことで生まれた虚無感は、何をしても埋められるようなものではなかった。
「ジャン……。
ようやく、戻ってきてくれたんだよね……」
誰に言うともなく、灯りの消えた部屋の中でリディは呟く。
あまりに突然なジャンの帰郷。
嬉しさと戸惑いと、その両方の感情が合わさって、自分でも気持ちをうまく表現できない。
リディの中のジャンは、十年前に別れた時の姿のままだ。
少なくとも、今まではそうだった。
ジャンのことを想うことはあっても、その姿はリディの頭の中で考えた想像の産物である。
しかし、昨日の夜にジャンが戻ってきたことで、十年前から止まっていた時間の歯車が再び動き出した。
リディの前に現れた、大人の姿のジャン。
癖のある金髪や翡翠のような色の瞳はそのままに、顔からは随分と幼さが抜けていた。
身体つきは相変わらず華奢に見えるが、背丈はリディのそれをはるかに越していた。
自分の心の中にしまっていた、幼き日のジャンは消えた。
今、リディの側にいるのは、彼女が想像した夢物語の主人公ではない。
ジャンは戻って来てくれたのだ。
大人になって、それこそ、リディの思い描いていた姿よりも、はるかに立派で素敵な男になって。
「でも……」
そこまで考えて、リディはふっと溜息をつく。
「ジャンは……ずっと、この街にいるわけじゃないんだよね……」
ジャンが街に留まることになった理由。
それは、自分の患者であるテオドール伯の往診のためだ。
伯爵の病が完治するか、そうでなくとも快方に向かえば、ジャンはすぐにでも街を離れるつもりなのだろう。
このままでは、ジャンが再び自分の前からいなくなってしまう。
あんな思いをするのは、もうたくさんだ。
十年間。
自分は、十年間も待ったのだ。
例え望みは薄くとも、いつかはジャンが戻って来るかもしれないという、儚い希望にかけてきた。
父が亡くなり、母を失ってもなお、この街で宿場を続けてこられた理由。
それは一重に、ジャンが帰って来ることを信じてのことだった。
今、自分の隣の部屋には、夢にまで見たジャンがいる。
だが、そんな彼を離したくないという気持ちとは反対に、どうすれば彼をこの街に引き取られるのかが思いつかない。
どうすれば、ジャンに再び自分のことを見てもらえるようになるのか。
それが分からない。
―――― 約束通り、ジャンのお嫁さんにして!!
これは駄目だ。
そもそもジャンは、幼き日の約束さえ覚えているかどうか怪しい。
まずは、約束を思い出してもらわないことには、この台詞に効果はない。
―――― 私もジャンと一緒に旅がしたいの!!
たぶん、これも駄目だろう。
宿場の仕事を捨ててまで自分に同行することなど、あのジャンが認めるはずもない。
それに、医学の知識が何もない自分がジャンの旅に同行しても、足手まといになるだけだ。
―――― 私の病気を治せるのは、ジャンだけなの!!
最早、論外である。
恋煩いに、つける薬などありはしない。
これはリディ自身が一番よくわかっていることだ。
それに、こんなことを言ってジャンを困らせ、嫌われでもしたら元も子もない。
結局、その日の晩は、ジャンを引き止めるための良い言葉が思い浮かばなかった。
手を伸ばせば、すぐに届きそうな場所にいるにも関わらず、常に別れのタイムリミットに怯える不安感。
それを打ち払うには、一刻も早くジャンを自分に振り向かせねばならない。
(こうなったら、ジャンにも私のことを見てもらうしかないよね……。
大人になった私を見てもらって……それで、ジャンにも私を好きになってもらって……最後に気持ちを伝えればいいんだ。
よし、そうしよう!!)
時間に限りはあるが、希望を捨てるにはまだ早い。
これから先の生活で、徐々にジャンの瞳を自分に向けさせて行けばよいのだから。
機会は必ず訪れる。
その言葉を信じ、リディは胸の前で手を合わせたまま静かに床に就いた。
投下終了です。
GJです
次回も楽しみにしてますね
屋敷に居る少女が気になる・・・
GJ!!
最近投下ラッシュが続いて嬉しいぜ
199 :
名無しさん@ピンキー:2010/11/18(木) 12:53:40 ID:jQZJzqbl
同感です。
200 :
名無しさん@ピンキー:2010/11/18(木) 13:40:10 ID:DlIpB3Ss
GJ!!
淡々と投下されている今の状態最高です。
187 名前: ◆ UDPETPayJA 2010/11/18(木) 01:12:38 ID:iSmIiHj2O
12話から本スレに投下しようとしたところ、規制されていました。
なので、またこちらに投下させていただきます。
188 名前: 天使のような悪魔たち 第12話 ◆ UDPETPayJA 2010/11/18(木) 01:14:02 ID:3K65OnHYO
一週間後。
あの事件は、俺を今までとは違う世界に導いてくれやがったような気がする。
「飛鳥ちゃん、この後は…病院か?」
「ああ。…お前も来るか?」
「いや、俺は遠慮しとくよ。じゃあまた明日。」
学校に行けば、隼とは相変わらず親友をやっている。ただ、互いに事件の事を話題にすることは一度もない。
…あれだけの事があって、よくもまだ親友でいられたものだ。
もっとも、そう思っているのは良くも悪くも俺だけなのかもしれないが。
家に帰れば、俺は一人だ。明日香も姉ちゃんもいない。
飯くらいは作る事はできるし、一人を不便に感じることもなかった。
ただやっぱり、一人がどうしようもなく寂しくなる時はある。
失ったものもあれば、得たものもある。
あれ以来、佐橋とは何度となく会い、隼と会話するようなノリで話せる仲になった。
その佐橋も、以前よりは笑顔を見せるようになった、と佐橋の彼女が言っていた。
瀬野とも、何だかんだよく会う。
なんでも、俺は「結意ちゃんファンクラブ・名誉顧問」という役職に就任しているらしい。
そんなファンクラブ聞いたことないし、第一勝手に就任させんな馬鹿、と言ってやったが。
瀬野とも打ち解けた…って事でいいのかねぇ。
学校が終われば病院に見舞いに行く、というパターンがもはや定着しつつあった。
結意は手術後から一日で目を醒まし、今では病院食だけでは足りない、と言うくらい食欲旺盛だ。
医師の話によれば、あと二、三日様子を見て、術後の状態が良好であれば退院できるらしい。
隼は一度も見舞いには来なかった。隼曰く、
「もう俺は結意ちゃんのボディガードはしなくていいから」だそうだ。
恐らく、姉ちゃんが結意を殺す理由はもうなくなったからだろう。
姉ちゃんの力に唯一対抗し得る隼の力。その使い道は、それ以外ないらしいんだ。
「あーすーかーくーんー、もう病院食飽きたよー。」
「我慢しろ。他の患者さんだって、同じ事思ってるさ。」
「むぅー、早く退院したいなぁ。そしたら飛鳥くんとあんな事やこんな事…きゃ♪」
結意は両手で頬を押さえ、顔を赤らめながらそう言った。
………うん、すっかり元通りだとだけ言っておこう。
と、不意にコンコン、と病室の扉をノックする音がした。
扉が開き、病室に入ってきたのは…一週間前から行方が知れなかった姉ちゃんだった。
「久しぶりね、飛鳥。」
「おかえり、姉ちゃん。今日はいったい?」俺は、以前と変わらない所作で姉ちゃんの帰りを迎えた。
189 名前: 天使のような悪魔たち 第12話 ◆ UDPETPayJA 2010/11/18(木) 01:15:12 ID:NvqGxPHEO
「結意さんと少しお話がしたくてね。…ああ、大丈夫よ飛鳥。あんたもここにいて。
でないと結意さん、不安がるでしょう。」
姉ちゃんは結意のいるベッドまで接近すると、カーテンを閉めて外から見えないようにし、
近くにあったもう一つの椅子に腰掛けた。
「まずは、結意さん。妹の為とはいえ、勝手な理由で貴方を傷付けてしまった事をお詫びするわ。…ごめんなさい。
」
「………ううん。私こそ、妹ちゃんを殺す気でいたから…あなたが謝る必要はないわ。」
「…そう、ありがとう。
その上で本題に入るわね。もう知ってると思うけど、私は記憶を消す能力を持ってるの。
もし貴女が望むなら、今回の事件の事、記憶のない時の飛鳥に拒絶された事を忘れさせてあげる。
勿論、貴女が飛鳥を好きだという感情は消えないわ。」
「……………。」
何故姉ちゃんは今更そんな事を提案してきたのか。その理由は解せなかったが、
結意はいつになく真剣な表情で、思考した。
仮に俺なら、好きな人にああも拒絶された事など、忘れてしまいたいと思うだろう。
そして何より、自分が人を殺そうとまで思い詰めた事、刃物で腹を刺された痛み、
目の前で想い人が他の女と唇を重ねた場面、みんな忘れてしまいたい。
あの時の結意の笑い声は、心の痛みそのもの。あの声は一生忘れられないだろう。
だが結意は。
「記憶は消さない。」
「−−−なぜ。」
「飛鳥くんに関する事は、何一つとして忘れたくないよ。
だって私、飛鳥くんのことが大好きだから。
私は、嫌な記憶ごと全部まとめて愛せる自信があるわ。」
一片の迷いもない。凛とした笑顔で結意はそう答えた。
「−−−そう。悔しいけど、いい顔してるわね。
飛鳥。あんた、こんないい娘二度と見つからないわよ。…大事にしてあげなさい。」
「わかってるよ。…今度は、何がなんでも守ってみせる。」
「いい返事ね。…それじゃあ、私はこれで失礼するわ。飛鳥、悪いけどまたしばらくは留守にすることになるわ。」
「今度はなんなんだ?」
「………強いて言えば、後始末かしらね。ああ、心配は無用よ。
私は死ねない体だからね。
…それじゃあ、末永くお幸せに。」
「…どうでもいいけど、ちゃんと帰って来いよ?父さんも母さんも、ろくに帰って来ないんだし。」
ええ、と言い残し姉ちゃんは病室を出ていった。
190 名前: 天使のような悪魔たち 第12話 ◆ UDPETPayJA 2010/11/18(木) 01:16:11 ID:NvqGxPHEO
…姉ちゃんの残した言葉が気になる。
死ねない体だから心配はいらない。それはつまり、常人なら耐えられず死んでしまうかもしれない事をする、という事なのだろうか。
事件直後に隼から聞かされてはいた。
姉ちゃんと隼は二人とも成長ないし老化が停止していて、
かつ細胞が形状記憶よろしく固定されていて、体へのダメージもすぐに修復される体質だと。
…それでも、痛みは感じるんだという。
「…飛鳥くん。」不意に、結意は俺の体に抱き着いてきた。
「どうした、結意…あ」体が震えている。
「怖かったのか、結意。」
「あ…ごめんなさい、飛鳥くん…。でも私…震えが、止まらなくて…
飛鳥くんのお姉さんなのに…」
「…いいよ。よく頑張ったな。」俺は結意をそっと抱き返し、頭を撫でてやった。
「う…うぁぁぁぁん…」
結意はついに俺の腕の仲で泣き崩れた。
失ったものもあれば得たものもある。
それは果たして、みんなにも言える事なんだろうか…?
191 名前: 天使のような悪魔たち 第12話 ◆ UDPETPayJA 2010/11/18(木) 01:16:56 ID:NvqGxPHEO
* * * * *
「で? 神坂くんからは何か提案はないんですか?」
「提案つったって…てか、何で俺に聞くんだよ?」
「文化祭の出し物決めるっていうのに、上の空だったからです! さぞかし名案があるんでしょうね!?」
次の日の授業、三限目はいわゆる学活というやつだ。
言い方を変えれば、ロングホームルーム。だが長ったらしいので敢えて学活と言わせてもらおう。
そういやそろそろ文化祭の時期だった事を、俺はすっかり忘れていた。だって別に興味ないし。
去年の文化祭は隼と一緒に屋上でサボっていた。
文化祭といっても、うちの高校は白陽祭などとご立派な名前だけは名打っているが、
実際のところは、謝肉祭よろしく、大・食い物市場と化すのだ。
そして極めつけは、軽音部のへったくそなオナn…もといライブで締めくくられる、
なんとも無意義な文化祭。それこそが白陽祭の正体なのだ。
「そうだなー…」俺はやたらとまくし立てる穂坂をどうにかやり過ごすべく、
適当な出店を考えてみた。
「メイド喫茶とか?」
「……………は?」
瞬間、教室内の空気が凍り付いた。
「はーい、俺もそれ賛成っ!むしろマンセー!」
などと、俺のジョークに馬鹿丸出しな同意をしたのは隼だった。
それに続くかのように、他の男子たちもノってきた。
「たまにはいい事言うな神坂!」
「俺も!俺もそれ賛成!」
「ウチもー!なんか面白そうじゃん!」
なんと、女子までもが!
「あ…あんたたちねェ………!」
穂坂は怒り心頭に、握り拳を作りながら眉を歪めた。…今にもデコに血管が浮きそうだ。
と、紙屑が後方から飛んできて、俺の机に着弾した。
どうやらメモをくしゃくしゃに丸めたもののようだ。投げたのは…隼か。
俺はメモを広げて、内容を確認してみた。中には、こう書かれている。
「えー………いいんちょのメイド服姿見てみたいなー…? …はっ!」
気づいた時には既に声に出してしまっていた。まずい、穂坂に殺されるかもしれん!
あんの野郎…ただじゃおかねえ。
だが穂坂の反応は俺の予想とは違っていた。
「あ………ぅ………わ、わかったわよ!メイド服でもなんでも着てやるわよ!
ハイ、メイド喫茶で決定!面倒だから異議は認めません!以上!」
だいぶ投げやりになりながらも、ついに俺の意見を認めてしまった穂坂。
こうして、うちのクラスの出し物はメイド喫茶に決定したのだった。
192 名前: 天使のような悪魔たち 第12話 ◆ UDPETPayJA 2010/11/18(木) 01:18:58 ID:NvqGxPHEO
* * * * *
本日最後の(俺にとってはだが)チャイムの音と同時に、俺は鞄を持って脱兎の如く
教室から脱出した。
なぜ素早く去る必要があるかって? なぜなら、さっきから穂坂がもの凄い目つきで俺を見てくるからさ。
というか、今まですっかり忘れていたが今日こそは、結意に破壊された携帯の代わりを用立てようと決めていたんだ。
故に俺の足が向かう先は、携帯ショップ。すでに授業中に新しいメルアドは考えた。
さっき保坂に「上の空」といびられたのは、アドレスを考えていたからなのだ。
昇降口で外履きに履き変え、いざ出発。
なに、校内からの脱出に成功すればあとは何も怖くはない。
「あらー、文化祭実行委員さん、もうお帰りですかぁ?」
−−−その声に、背筋が凍り付いた。
俺はがちがちな笑みを浮かべながら、首だけで振り返る。
首から、ギギギ、と音がしそうだ。
振り返るとそこには、片手を腰に当て、つま先をトントンとさせ、
苛立ちオーラを醸し出しながらも引きつった笑顔の穂坂がいた。
「あ、あれ。俺文化祭実行委員だったっけ?」
「…忘れたとは言わせませんよ!あなた、文化祭実行委員は文化祭の時期しか仕事がないから楽だ、
などと抜かしてたわよね!?」
「あー、記憶にございませんなぁ…」と、俺はどこぞの議員のような台詞を真似た。
「…ちょっと来なさい。粛清してあげる。」
「しゅ、粛清!?」
「そうよ。私、穂坂吉良が粛清しようというのよ神坂飛鳥!」
「ひいっ−−−!?」
なぜだ。なぜ今日の穂坂は結意ばりに怖いんだ。
まるで某ネオジオンの総裁のような威圧感だ。こ、これがニュータイプ…!
「というわけで神坂飛鳥ッ!あなたには今から買い物に付き合ってもらいます。」
「か、買い物…?なにを買うんだ?」
「メ イ ド 服 に決まってるでしょうがッ!あなたのあのアホみたいな提案が、審査通っちゃったのよ!?
責任とりなさい!責任とって、今からクラスの女子全員分のメイド服を調達しに行くのよ!」
「はあ!?なんで俺gわかったわかったからアイアンクローだけはやめtいてててて!」
ちくしょう…こんな事なら文化祭実行委員など選ぶんじゃなかった。
隼と同じ図書委員にしとけばよかったぜ…。
「へっくしょい! うぅ、誰か噂してんのかねぇ…?」
193 名前: 天使のような悪魔たち 第12話 ◆ UDPETPayJA 2010/11/18(木) 01:19:52 ID:c5UVfGPsO
* * * * *
と言いつつも、穂坂は先に携帯ショップに行くことを許可してくれた。
ただし…条件付きで。
「あら、なかなかかっこいい携帯ですね。」
「そうか? まあ、最新機種だからな。」
新しい携帯は、以前と同じメーカーの機種にした。その方が使い勝手がいいからな。
そして、穂坂の突き付けた条件ってのは…実はなんてことはない。
「別にアドレスくらい、普通に教えてやるのに。」
「いいから!終わったら次はドンキ行きますよ!」
随分とせっかちだな。とはあえて口には出さなかった。
下手に刺激してまた鉄の爪を喰らいたくはないからな。
しかし、メイド服といえばドンキ、なんて実に単純な発想だ。ドンキの品なんて、粗悪で長持ちしないに決まってる。
まあ文化祭でしか着ないのなら別に構わないのだろうが。
携帯ショップを出て、ドンキを目指してしばらく歩いていると、さらに面倒な奴に遭遇した。
「あ、神坂。こんなとこで会うとは奇遇だな。」
「できれば会いたくなかったぜ、瀬野。」
瀬野 遥。ついこの前とは異なり、特攻服ではなく、意外とシックな装いをしていた。
「特攻服なんかよりそっちのがよっぽど似合うぜ、瀬野。」
「あれは俺にとって願掛けみたいなもんなんだよ。てめーこそ、俺の妹連れて、ナニしようってんだ!?」
「は?妹?どこにいんの?」
「てめーの隣にいんだろ。…知らなかったのか?俺の妹だ、って。」
「は、はぁぁぁぁぁぁ!?」
ととと隣って…穂坂の事か? だって、苗字違うし全然似てないし!
こんな野獣のような男の妹が、王道いいんちょ娘だなんて、まったく理解できん!
「うちの親、四年前に離婚してるんだよ。吉良は母方で、俺は父方に引き取られたんだ。」
「私は、あなたみたいな男を兄とは認めてないですけどね。」
「んなっ!なぜだ!?」
「当たり前でしょうがッ!何が"結意ちゃんファンクラブ"よ!あなたわかってんの!?
言い方変えれば、あんたらストーカーなのよ!?馬鹿!恥さらし!三回死ね!」
俺のことなどお構いなしに口喧嘩を始めた二人。
これは…今のうちに逃げられるのでは? 俺は忍び足で一歩、また一歩と距離を離してみたが、
「あら、どこに行くんですか?」
ガシッ、と後頭部を掴まれてしまった。
地味に、女子特有のやや尖った爪を立ててきて万力のようn痛い痛い痛いって!
誰か…俺をこの地獄から解放してくれ…。
194 名前: ◆ UDPETPayJA 2010/11/18(木) 01:21:55 ID:ZFbraib6O
12話はここまでです。
>>201 GJ!!
楽しみにしてました!!頑張ってください!
荒らしが現れてから、なんかGJが不当なまでに軽く扱われるようになったな
前はこんなんじゃなかったのに
虚しいというより悲しい
妄想に過ぎない
脅迫観念にとらわれてるみたく、以前ならスルーされるようなのにまで過剰にGJついてるし
古参の住民としては、ちょっと痛々しい微妙な感じがする
次の作品投下まだかな?
古参?笑っちゃうね(^ω^)
俺は心からGJしてるよ!(b^ー°)
だからみんな頑張って(≧∇≦)ノシ
気長に元にもどるまでまつしかないさ
そ〜ですね(^∀^)ノ
忘れた頃に作品投下
記憶の片隅にでもあったら光栄ッス
投下します
217 :
ヤンデレ世紀:2010/11/19(金) 00:52:39 ID:uoAUKegH
あれから結局数人登校して来て我がクラスの現段階最高出席率になった。………28人ですが…
それから4時間、僕は睡魔と土田さんの過激なアッタクと攻防し、どちらにも勝つことができた。それよりも土田さん、授業中にチョッカイは本当に止めてほしい。睡魔に負けれなくなるじゃないか。
午前中の授業は一応全て終わり、昼休みに入った。
「瀧斗ー、飯食おう。」
中林が毎度の如く昼飯を誘いに来た。
「………佐藤くんっ!お昼にしましょ!!」
そしてこちらも毎度の如く僕と昼飯を食べに来た。本当に一途でいてくれるなあ…。
そして空気を読んだのか、ただ痛い目に遭いたくないのか中林は外の男子の所に行った………が、
「秋田、飯食お「秋田っ、わ…わたしと一緒に食べるわよ!」………」
「お、山森よ俺とめ「孝さん、ご飯にしましょ。」…」
「ほz「保澄、私との愛を語り合う時間よ…」……」
見事に恋する女子の力に駆逐された。今日は傷が多いせいか苛められっ子のようで哀れで痛く見えた。そしてそれを見て何にも感じない僕自身に怒りを感じた。
218 :
ヤンデレ世紀:2010/11/19(金) 00:53:58 ID:uoAUKegH
ここでまた過去を振り返ってみるとヤンデレ世紀になってから苛めはほぼ皆無となった。いや、正しくはみんなが苛めを苛めと認識できなくなってしまった。
ヤンデレ世紀に突入した当初、流行りと言っていいのかわからないけどツンデレ的な病み女性が極端に多かったらしい。わかりやすく言うと“好きな子を苛めたくなるドSがたくさんいたのだ。
当時の彼女らは多分一種の愛情表現のつもりかもしれないけど被害を受けてる方からではそれは苦痛以外の何でもない。
軽度な苛めもあれば重度な苛めも多くあり、自殺者も多かったとか。
政府も打開策を出したが、未成年者隔離育成案の時同様に大臣らが殺されまた失敗に至った。
未成年者隔離育成案とは男子女子を成年になるまで隔離しながら育てる法律で当時の総理大臣が暗殺され中止となった案。ヤンデレさん達に大いに反対され、世界的初めて病んだ女性の力を世に示されることになった出来事。
話が逸れたけど苛めは昔のように問題視されなくなってしまった。さらに言うと監禁、殺人が当たり前になってきた世の中じゃ苛めは二の次にならざるおえない。
「…仕方ない。トイレで食うか…」
結局いつも通り中林は一人で便所飯を食う羽目になった。
特に声をかけられなかったので中林はさっさと教室を出てしまった。
「今日のご飯はハンバーグだよ!」
悪気があるのかないのかしらないが土田さんが笑顔で僕に寄り添うが昼のこの時間帯だけは心の底から止めて欲しかった。………どうせ言えないけど。
心の大部分にモヤモヤ感を残しながら土田さんと何気ない日常の1ページへと戻った。大概が熱愛宣言を受けるだけだけど。
219 :
ヤンデレ世紀:2010/11/19(金) 01:00:21 ID:uoAUKegH
中林side
いつもいつもトイレで便所飯をする俺、中林拓海は今日も例外なく便所飯を行うのだった。
1階の片隅にある隠れ家的なトイレがあるので俺はそこを利用させてもらっている。
中に入るとやはり誰もいない。
いつもの定位置である一番奥のトイレに入り弁当を広げ飯にする。鍵はめったに誰も来ることはないから開けっ放しにする。
「いただきます。」
母さんの作ってくれた飯を一つひとつ味わいながらおかずに手をつける。母さんは甘党なので砂糖を使う料理には多めに入れ甘ったるい品々になるが今の俺にはその甘さがちょうど良かった。
最後の卵焼きを口に頬張り今日のランチは終了となった。…デリシャスデリシャス、ヤミーヤミー。
「ごちそうさまっと。」
飯も食い終わったので教室に戻り午後の授業の予習でもやろうと思い、空になった弁当箱を持ちトイレから出た。
「よお、しげみ。」
「………うっす。」
不幸なことに俺の天敵で井上にぞっこん中である都塚玲に遭遇してしまった。
「何で弁当箱を持ってここから出てきた?」
相変わらず良い性格してやがる。俺と二人っきりになるとこいつは本当の自分をさらけ出す。井上や他の奴らが見たら驚愕するな。まあ俺もこいつの前じゃ無愛想でいるが
だがこいつよりは絶対にマシなはずだ。
都塚が嫌みったらしい笑みをしながら俺の方へ近づいて来た。勿論俺はそれに比例し数歩下がる。
「お前もどうしたんだこんな寂れた場所のトイレに来るなんて。下痢か?」
「女性に向けて使う言葉じゃないな……痛い思いに遭いたいの?」
背を少し丸めいつでも襲いかかろうと威圧する都塚。汚い。本当にやることが汚い。
早くこんな場所から離れたい俺は少し遠回りになるが行きと違う道で教室まで帰ることにした。
「んじゃな。お前も早く戻らねーと井上が違う女子に盗られるぞ。」
そう最後に捨て台詞を残し立ち去った。
「待って。」
220 :
ヤンデレ世紀:2010/11/19(金) 01:04:04 ID:uoAUKegH
肩を強く掴まれた。
「…何だよ…」
「お前には好きな人はいる?」
驚いた、まさか都塚からこんな質問をされるなんて………そして俺はその質問直後にある一人の女子が頭から浮かんできた。
「いないよ。」
感づかれないように普段通りに応えた。
「ふうん…」
「んじゃな。俺はこう見えても忙しい身だから。」
肩に掴まれた腕を気に触れない程度に振り解き、今度こそ帰ろうとした時、
「私はいるよ。」
答えなくてもわかっいる。井上が好きで好きで仕方ないんだろう?
「そうかい。」
「ああ、私はそいつのことが好きで好きで愛していてそいつの全てが欲しくなるぐらい依存してしまってる。」
やはり都塚もヤンデレか………後で井上に警告しとかないと。
「冷静になれ。もっとその人のことを貪欲に想うんじゃなくてお互い分かち合いながら交際しろよ。」
念のためいや、井上のため都塚に一応アドバイスをして俺は教室に向かった。………俺も結構腹黒いのかな。…さて、いつもみたいに明るくならなきゃな!
〜〜〜〜〜〜
中林君がどっかに行ってしまった。多分お昼を食べに行ったんだろう。
ああ、私が勇気を出してお昼を誘えば中林君もあんな寂しそうな顔をしなくて済むし、私も中林君と一緒にご飯が食べれて嬉しい。まさに一石二鳥!
よし!明日こそ…明日こそはお昼を誘うぞ!………あっ!?そうだ、今日一緒に帰れるか訊いてみよう。やばい私積極的だ!
「望?どうした?」
「へ!?…な…何でもないよ!!!」
この後友達二人にいじられたのは私の痛恨のミスでした。
以上昼休みの出来事でした!………あれもう僕ここだけ?
投下終わります
毎度のようにミスがあったらスミマセン
GJ!速く続きを!
乙です。しかしこのスレ投下ペースすごいな。
224 :
名無しさん@ピンキー:2010/11/19(金) 08:59:08 ID:+7gaZZ/X
この調子でバンバン完結していって下さい。
何時までも未完結だと主人公やヤンデレ(+その他登場人物達)が報われない…。
さて、次の作品投下まだかな?
226 :
224:2010/11/19(金) 09:56:18 ID:Yym5wN0p
皆さんが完結して欲しい作品は何ですか?
:MY投票:
・ぽけもん黒(修羅場が白熱して 続きが見たい)
・キモオタと彼女(約束の日。一体何を頼まれるのだろうか)
・サトリビト(主人公は修羅場を回避しつつ,どんな方向へと向かうのか)
・僕は自分が大嫌いだ(イジメられっ子主人公は一体どうなってしまうのか)
・風の声(主人公の気持ちがちょっとだけ共感)
227 :
224:2010/11/19(金) 09:59:56 ID:Yym5wN0p
あ。
:MY投票に一部訂正:
『キモオタと彼女』の部分が『相反する2人』です。
間違えました。ゴメンなさい
そういう投票いらないからどっかチラシの裏でやってくれ
嵐に餌を与えたいのか?それとも工作か?
ウザイから死ね!それと二度と書き込むなゴミ虫!
>>226完結してほしい作品かぁ〜
強いて挙げるとすれば君の人生かな!(b^ー°)出来るだけ早く完結させてね(≧∇≦)ノシ
次の作品投下まだかな〜
贖罪!まだかなぁ〜
とねかむを読めんようにしたことへの謝罪と説明を求められてるんやさかい
贖罪!で間違いないんとちゃうん?
・本物か偽者かはわからないが、兎里が触雷!の投下後に妬みの発言
・その後兎里と作品に対しバッシング
・兎里消える
これのどこに触雷!作者が責任取る余地がある?読めんようにした、とか笑わせるなよw
本物が最初に妬み書いたなら自業自得ざまぁw、ってなるし偽者なら本物巻き込まれて
カワイソスってなだけの話
もし、他作品の投下後に同じことがあったらその作者に謝罪求めるわけか
カオスな論理展開ご苦労様です
237 :
名無しさん@ピンキー:2010/11/19(金) 16:14:13 ID:Yym5wN0p
>>226さん、誹謗中傷はよくある事ですので気にしない方が良いですよ。
test
test
次の作品投下まだかな〜
書き手なら誰だって下手くそなSSにGJ付いたら腹立つもんだ
触雷なんて糞駄文にGJ付けた浅はかな住民もギルティ
そして騒動の元は、脱糞した触雷の作者本人なんだから謝るのは当然だろ
節子ぉ
触雷やない、贖罪や
>>自業自得ざまぁw
お前らの本心は分かった
自分の好きなSSさえ読めればそれでイイっていうゲス野郎だよ
>>241 兎里の行動は感情剥き出しのガキと一緒
「こいつ、面白くもないのに話長いから殴って黙らせた」とか言ってるやつを
認めて殴られたやつを全否定してるようなもんだぞ
>>243 自演して叩かれて消えるとか典型的な自業自得パターンだろ
次の作品投下まだかな〜?
触雷!が糞作っていうところだけは確かだけどな
誰かが糞だと思った作品は別の誰かが神だと思った作品何だぜ!(b^ー°)
万人受けする作品書ける奴なんてそういないんだから糞だと思っても胸ん中しまっとくのが出来る男、つまり俺
我慢できずに声高にのたまう奴は小便小僧な
(^∀^)ノよっ小便小僧
俺は触雷じゅうぶん面白いと思うがな
まともな奴は合わないssはスルーする
酷評する奴は荒らしにもなれない池沼
>>249 そりゃ生みの親であるお前にとって面白くないはずないよな
書いた本人にとっては商業誌並みの名作なわけだし
>>251とりあえずメンタルクリニック池f^_^;
ストレス溜まりすぎだろお前(≧∇≦)
>>251批判したければ自分のブログでやれ!
このク・ソ・荒・ら・し・く・た・ば・れw
お前こそ、糞作を脱糞したかったら自ブログでも作って1人でやってなよ
誰も読みに来てくれないだろうけどなw
生みの親と商業誌並みの名作ってフレーズ前にもこのスレで見たな
結局は一人か二人の基地外が喚いているだけにすぎない
こういうアス症野郎はブタ箱に突っ込んでおくべきだ
じゃないとこうやって健常者の方々に不快な思いをさせるからね
猿ほどの知能しかないから言葉も通じないし、やっぱり隔離施設に閉じ込めておかないと
前スレから同じようなこと言ってれば嫌でも特定できる
IDを変えないのも特徴
むしろ触雷がウサギサトを巻き込んで無理心中を目論んだんじゃねぇのか?
だとすればウサギは被害者だと思う
基地外は1人か2人かも知れないけど
自分が上手いって思っている(住民に思わされてる?)勘違い野郎は一杯いるな
>>257 触雷の投下の後に兎里(もしくはそれを騙る偽者)が発狂したんだ
投下によって別の作者巻き込むとかどんだけ心理読めるんだよ
兎里を被害者に持ち込むためにしてもぶっ飛んだ考えしすぎだろw
260 :
名無しさん@ピンキー:2010/11/19(金) 21:42:35 ID:4mNwhJvk
ウナギイヌはまた自作自演でアホなことをしているのか
お前の住処の嫉妬スレがお留守になっているんだけど?
英文学に光彩を添えたトマス・ハーディが小説を書かなくなったのは、心ない
批評のせいであり、
天才詩人トマス・チャタトンを自殺に追いやったのもまた
批評であった。
批評も非難もするべきではない。
そろそろやめようぜ
沈黙は金
雄弁は思う壺也
その何とかって天才、よっぽどダメな詩人だったんだな
断筆も人のせいにするべきじゃないだろ
>>241 別に謝らせなくても、本人がもう来なけりゃ問題ないだろ?
わざわざ長々と謝れ謝れ書く必要ない。
てゆうかこんなスレで謝れとか、場違いにも程がある。
触雷が謝らなきゃ兎里氏が続きを投下できないだろ
そりゃ確かに触雷なんか来なくても何の問題もないけどな
つまらないことが原因でとねかむが中断されるのはファンとしては大問題だ
>>259 バカはお前さまの方ですよ
触雷!が偽の兎里氏になりすましてあんなレス付けたと言ってるんです
そんな簡単なことすら、説明されないと理解できないのですか
このスレの住民の知能レベルも知れたもんですね
道理でつまらない作品にまでGJを連発するわけです
懺悔、反省、謝罪なんつうのは違うスレでやれ。このスレはあくまで作品投下用のスレだ
このスレを謝罪するしないで使われる自体流れがおかしいし、謝罪なきゃ
投下できないような作品なら別になくても構わん。どっちがどうだろうが正直
どうでもいいよ面倒くさいから
他作品が投下できにくいような流れに持っていくなカスどもが
>>267推理力無さ過ぎワロタ(^w^)
蝕雷には兎里を貶める動機が有りませんよf^_^;
アナタは蝕雷の人気に嫉妬してどうにかして潰したいだけ
これが俺の推理(^ω^)どうでしょうこのコナン君張りに冴え渡る推理力!すごいとおもいませんか(≧∇≦)
存在がキモイです
(・ω・;)えっ……
つか、悪いことしたら謝るのは普通じゃないのか?
>>272「した」ならね
「してない」から謝らないんだろ?お前はんなこともわかんねーのかバーロー(^w^)
どうしたウナギイヌでもいるのか
>>274 いるかもね
少なくとも工作員は混じってそうだな
前スレでの明らかな荒らし行為がこんなにあっさりと引くわけがない
もう兎里はNGでいいだろ
いまさら兎里の名前出すなんて荒らしが目的のヤツぐらいだし
保管庫繋がらない
えっ何なんでこんなに荒れてんの
それはともかくwikiが見れんでござる
今も見れないよ
見れるんよ
m10.xSWAbY君はどうして私以外の子にかまっちゃうのかな?かな?
このスレの荒しって本当に大人?よくこんなことかけるな
284 :
AAA:2010/11/20(土) 15:00:58 ID:HDFmdNk0
風、投下します
「(どうしようかな・・・)」
現状を整理しよう。ここは前回(?)と変わらず保健室。大空が俺の上から降り、俺が保健室にいる理由を話してくれた
ものすごい惨状だったらしいが自分は覚えていない、けれども顔に残る痛みがそれを立証している。
暴れた理由、そして俺の過去の事を話したいのだがどう話せばいいのか分からずにいる。
「どうしたの?何か、ものすごく悩んでいるみたいだけど」
「へ?」
大空の言葉で気付いたのだが自分でも気付かないうちに頭に手を当てて他人から見ても分かるほどの“悩んでいます”オーラを出していたらしい
そして同時に気付いた事があった。ヘアバンがない。それだけでなくリストバンドも、額と手首に付けている感覚が無かったのに何で気付かなかったのだろうか?
俺はあわてて辺りを見回す
「あ・・・リストバンドとヘアバンドならそこだよ」
大空が枕元を指差し、視線をやるとそこにあった。身に着けようと思ったが一つ気になる事がある。なんで大空が知っているんだ?
「外したのは・・・お前か?」
「うん、校医の先生に言われて」
「見たのか?」
「!?・・・何を?」
「動揺しすぎだろ・・・本当のことを言ってくれ、頼む」
「・・・見たよ・・その“傷跡”なら」
やはりな。俺がリストバンドとヘアバンドをつける理由、それは“傷跡”を隠す為だ。手首には縦横無尽に刃物でつけられた傷のあと
額には刃物ではないが一つ大きな傷跡が残っている。手首の傷は自分がつけたものと他人につけられたもの、額の傷に至ってはなぜか記憶が無い・・・
「・・・あのさ」
「私・・・そろそろ戻るね」
「待ってくれ・・・聞いて欲しい事があるんだ」
時計を見ると昼休みが終わるまではまだ余裕はある。このぐらいの時間ならギリギリ全て話せるだろう。大空が椅子に再び座ったのを確認し俺は話し出した
数分後・・・
自分でも驚くほどに上手く話せたと思っている、元々話す事はそんなに得意じゃないのに、今回にいたっては一度も噛まず次から次へと言葉が出た。
「・・・」
「だから・・・その・・・俺は」
「ごめんなさい!!」
「へ?」
「私何も知らないで、翼の心の傷をえぐったりして・・・『迷惑なんだよ、テメェの存在が』なんて言われて仕方ない事してたのに。それなのに、私・・・私!!」
「違う。謝らないといけないのは俺だ。その言葉を言っていた時、俺はひどい事を言っているという自覚があったのに止めなかった。知っていながら傷つけるのを止めなかった」
「でも・・・でも!!」
「それに大空はこんな俺にずっと付き添っていてくれるほど良い奴だよ・・・大空は何も悪くないよ」
「・・・翼」
キーンコーン カーンコーン
「私・・・行くね」
「あぁ」
「翼・・・」
「何?」
「私が・・・私が翼を守ってあげるから」
そう言って大空は保健室を出て行った。俺は少し複雑な気分だった。守られるのは嫌いじゃない、けれども男子が女子に守ってもらうというのも・・・ねぇ?
大空と入れ替わりで保健室に来たのは校医の先生、別名“白衣を着た貞子”と言われるほど髪も長く・・・・・怖い
隼先生と同じ白衣のはずなのに、着る人の印象が変わるものなんだと思った
そんな事を考えながら先生の事を見ていると、それを察したのか先生がこっちを向いた
「・・・何?」
「いえ・・・同じ白衣なのに何か違う気がして」
「誰と比べてだ?」
「総合病院で精神科医をしている人なんですけれど・・・」
この言葉を言った瞬間、先生に元々ある黒いオーラが増えた気がした
なんか表情がやばくなってきているんだけど・・・大丈夫かな?
「総合病院・・・・・・・・精神科医・・・・風魔・・・・・・・翼!」
何でそこで俺の名前が出るんだろう?っていうかこの人医者だよね!?死神に見えるのは俺だけだろうか?
「お前が・・・・・お前がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
「!!?」
叫び、1秒も経たない速さで俺の上に乗り(俗に言う馬乗り)俺の眉間にメスを突きつけてくる先生。マジで怖ぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!
「えっ!?ちょっ、待っ!!!」
「殺す殺す殺す殺す殺す殺すコロスコロスコロスコロスコロコロコロコロココココココココココ!!!!!!!!!!!!!」
最後の方ちゃんと言えてないし、つうか文字じゃなくて感嘆符になってるし・・・
「ちょっ、先生!俺何かしましたか?」
「黙れ・・・・あの人を・・・大輔をたぶらかす餓鬼がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「大輔って・・・隼先生の事ですか!?」
「そうだ!私とあの人は運命の黒い糸で結ばれているのだ。なのに、あの人の口からは教え子の、風魔 翼、お前の話しか出てこない!」
「(黒い糸!?)」
「お前を殺せば・・・あの人は私だけを見てくれる・・・邪魔者を消した私を褒めてくれる!」
あんた医者だろ。消すんじゃなくて助けるのが仕事だろ。それに俺、何も邪魔してないし・・・。って言うかメスが既に刺さってるし!
このまま死ぬのを待つだけ・・・と思っていたらメスが抜けた。俺の眉間に赤い線を残して、先生も俺の上から降りてくれた
「ここは学校だからな、死人が出れば学校に迷惑がかかるし、私も職を失う」
「(職を失うで済む問題じゃないと思う・・・)」
「お前を殺すのは別にここじゃなくてもいい。通学路、通学に使っている乗り物の中、お前の家、その他、チャンスはいくらでもある」
「(その他が気になる・・・)」
「今後、あの人に1度でも近づいたら・・・・・・・・・・・するからな」
「・・・・・・・はい・・・」
今すぐにもこの保健室を出たかった、けれども教室には戻りづらい。クラスの奴らは俺をどう見ていたのだろうか?
驚き?恐怖?興味?関心?・・・最後の2つは無いな
そう思うと体は動かず、俺が唯一取れた行動はベッドでもう一度寝る事だけだった
ベッドで横になっている俺を見ている先生の視線により安眠、それ以前に寝る事もできず、先生の恐怖におびえその後を過ごした
結局、帰りのHRまで保健室で過ごす事となった
「どうしたの?考え事?」
「まぁ・・・・・・そんな・・ところ」
保健室の後について少しだけ
嫌悪渦巻く視線で見られることを覚悟した俺が教室に入ると意外な反応が待っていた。クラスメイトが気まずそうにしながらも俺に話しかけてきたのだ。
何でも、教室に戻った大空が皆に俺の事を説明し誤解(?)を解いてくれていたらしい、それにより俺のイメージは少しばかり向上したらしい。
担任の先生からは事情徴収され、あんな事になった理由を先生に話すついでに、クラスメイトにも俺の口から説明する事になった。
話は大空の時とは違い、たまに噛んだりもしたがとりあえずは伝わった。話の最中に自分の左手首の傷を見せた時にはクラスから驚きの声が上がった
中には話を聞いて涙ぐんでいる女子(俺を殴った人)もいた。そして、HRが終わり今に至る。ちなみに今の場所は駅に向うバスの中の大空の右隣である
「何か不安な事とかでもあるの?」
「まぁ・・・ね」
不安な事、それは明日からの学校生活だ。今までの俺とは違い少し丸くなった俺で生活しなければいけない為、少々不安が生じる。
さらに、もしもいじめられて出血したときに保健室に行きづらいのも不安要素の一つである。
今日、保健室を出るときなんか後ろからメスが飛んできた。
そんな不安要素をうなりながら考えているうちにバスは終点の駅に到着した。
「フッフッ♪」
「どうしたんだ?」
「だって、前の翼は話しかけても無反応だったのに、今の翼はちゃんと反応してくれるから、少し嬉しくて」
「そう・・か・・・・・一応人と接するように努力するって決めたからな・・」
「うん!いいことだと思うよ。応援しているから頑張れ!」
「・・・あぁ」
「じゃあ、私はここで」
「あのさ・・・」
「ん?」
「俺・・・・明日から変わるから・・・あと・・その・・」
「?」
「急にこんな事言うのもなんだけど・・・俺と・・・・俺と!」
「!!!」
「俺と・・・・・・・・友達になってくれないか?」
「うん!!友達に・・・えっ!?」
「ダメ・・・・かな?」
「う、ううん。私でよければ」
「マジで!?ありがとう・・・」
「その代わり条件が一つ」
「条件?」
「私の事を名前で呼ぶ事、私は“翼”って呼んでいるんだから、そっちも“舞”って呼んでくれると嬉しいな♪」
「・・・・今のままじゃ・・・ダメ?」
「だ〜〜め!」
「・・ま・・・・ま・・・・・・・・・・・・ま・・い?」
「顔、真っ赤だよ?」
「ウ、ウルサイ・・・」
ともあれ、舞は嬉しそうな顔をして改札を通っていった。やっとできた友達。大切にしていこうと思う
友達ができたからか、少し緩い気分でいると後ろから何か殺気が・・・・・あったような気がしたが、多分気のせいだと思う。気のせいだと思いたい・・・・・・
明日からの学校生活は不安があるが、その片隅には少しばかりの楽しみがあった
その日の夕方、とある病院のパソコンに3通のメールがあった。持ち主は早速そのメールに目を通した
1通目、高校に通う元教え子
『先生、俺・・・人を信用してみる事にしました。多分ぎこちない形でこれからの生活が始まると思うけれど精一杯努力します』
2通目、恩師
『お前の教え子は案外強い子みたいだ、心配して無駄じゃったよ(笑)』
そして3通目を開こうとした時持ち主の表情が変わった。あいつからだ・・・読みたくないけれど読まないと殺される。刺される、開かれる、掻き混ぜられる、変な薬打たれる
つまり、読まないと命の危機に陥る訳だ・・・・
3通目、彼女気取りの人
『今日、大輔に媚びる餓鬼を殺し損ねちゃった。でも大丈夫。2人の愛を邪魔する奴は私が排除してあげるから、だから・・大輔は私だけを見てればいいの
私も大輔の事だけを見続けるから、見なくなった瞬間・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だからね♪
愛してるよ大輔♪この世界中で誰よりも・・・。他の者なんていらない、私とあなたさえいれば・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
持ち主の指が動き出す。返信先は1通目の元教え子のみ。
『頑張れ。 PS 保健室には近づかないように・・・・』(送信)
5秒後メールが来た・・・・・・彼女気取りの人からだ
『何で、私じゃなくてあの餓鬼にメールを送るの?別に怒ってないよ。ただ不思議に思ったから聞いているだけ、ねぇ、どうして?どうして?どうして?
どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして
どうしどうしどうしどうしどうしどうしどうどうどうどうどうどうどうどうどうどどどどどどどdddddddd??????????????????
ドウシテ?』
部屋の気温が13℃ほど下がった気がした
どうして、友達なんだろう。少しショックだな・・・
・・・翼の事は私が守る、誰にも触れさせはしない。私が・・・・・・・私だけが守りぬけるんだから・・・・・・
289 :
AAA:2010/11/20(土) 15:07:56 ID:HDFmdNk0
以上です
PS 6話が行方不明。見つけた方は保管庫まで(T_T)
gj!これからも期待です
せっかくみんながスルーしていたのに
たった一人のお調子者のせいでおじゃんだよ
293 :
名無しさん@ピンキー:2010/11/21(日) 03:04:52 ID:jjAShRG0
荒らししか脳のない馬鹿はスレから消えてほしいな、ホント。
(=゚ω゚)ノお断りします!
195 名前: ◆ 0jC/tVr8LQ 2010/11/21(日) 00:39:05 ID:IDuC1ZxQ0
規制に巻き込まれました。
第20話を投下します。
196 名前: 触雷! ◆ 0jC/tVr8LQ 2010/11/21(日) 00:40:03 ID:IDuC1ZxQ0
「……という訳よ」
屋敷に戻った私は、一室に母とエメリア、ソフィを集め、詩宝さんからの電話について話した。
「お嬢様。長木に詩宝様を連れ出させたのは、堂上の差し金と見て、間違いありませんね」
「他に考えようがないわ」
エメリアの意見に、私は賛成した。
「あの3流プロレスラーが……詩宝様の友人面をして全く余計な真似を!」
額に青筋を立て、ソフィが憤る。その通りだ。
詩宝さんと私が結ばれるのは、誰にも変えようのない運命であって、これを邪魔立てするなど神に戦争を仕掛けるに等しい大罪である。
「あの男、どうやって地獄に叩き落としてやろうかしら……」
書斎にある、『世界一凄惨な拷問の教科書』の内容を思い出しながら考えていると、母が声をかけてきた。
「待ちなさい。舞華ちゃん」
「何を待てと言うの? お母様」
水を差された私は、いささか不機嫌になりながら母を振り返った。
「堂上なんて虫ケラ、後からどうにでもできるわ。それよりも、今は詩宝ちゃんを取り戻すことよ」
「……そうね」
私は反省した。堂上に血の制裁を加えることなど、詩宝さんを取り戻すのに比べたら、優先順位は下の下だ。
「もう一度、詩宝ちゃんに逢うことだわ。逢って5人できちんとお話しすれば、詩宝ちゃんだってきっと分かってくれるはずよ」
「ええ」
母の言葉に、私は頷いた。そのとき、エメリアが口を挟む。
「奥様の仰る通りではありますが……今の時点では、詩宝様と連絡を取る手段がありません。堂上の家に強行突入できないのは、あのメイドのときと一緒です」
「何か考えがあるの?」
私がエメリアに聞くと、彼女は頷いた。
「はい。まず詩宝様と堂上を引き離すことです」
「堂上を消しますか?」
エメリアの言葉に応えて、ソフィが言った。あたかも、“コーヒーでも飲みに行きましょうか?”と聞くような気軽さだ。
「いいえ。隠蔽工作が面倒臭いわ」
エメリアは反対する。私も、すぐに堂上を殺す気にはなれなかった。あのゴミ蟲には、うんと苦痛や絶望を味わわせ、死ぬ以上の辛さを与えてやりたい。
「警察を動かして、堂上を逮捕させるのがよいかと」
そう言って、エメリアは私達3人の顔を見回した。
「罪名は何でもいいのです。詩宝様をお連れするまでの間、一時的に拘束するだけですから」
「悪くないわね」
私は、賛同の意を表した。
「それじゃ、善は急げよ。早速やりましょう、舞華ちゃん」
「ええ、お母様。ソフィ、電話機を持ってきて」
「イエス、ボス」
やがて電話機が運ばれてくると、私は首相官邸の電話番号を押した。
197 名前: 触雷! ◆ 0jC/tVr8LQ 2010/11/21(日) 00:40:39 ID:IDuC1ZxQ0
『はい。こちら首相かんて……』
「中一条舞華よ。総理を出しなさい」
『な、中一条様と言われますと、あの中一条グループの……?』
「そうよ。早くして。機密漏洩罪で逮捕してほしいのが1人いるわ。一刻の猶予もないの」
『あの、それが、総理は只今、明日の国会答弁の準備で……またお時間を改めていただけますでしょうか?』
「国会答弁って、“理解していませんでした”“心から謝罪します”“辞任しないことで責任を取ります”ってだけ言ってりゃいいんでしょ? 九官鳥でも出しときゃいいじゃないの」
『いや、さすがにそういうわけには……』
「いいからガタガタ言ってないで総理を出しなさいよ!」
『いえ、実は、総理は今、外遊の準備中で……何しろそれだけが楽しみの方ですので、どうか』
「さっきと言うことがブレてるじゃないの!」
『ブレたのではありません。これは進化です』
「税金泥棒! 死ね!」
話にならない。私は受話機を叩き付けた。
「お嬢様……」
「聞いての通りよ。使えないにも程があるわ」
「致し方ありません。時間がかかりますが、順当に痴漢の冤罪を着せましょう。何でしたら、そのまま少年院送りにすることもできます。お嬢様が堂上に痴漢されたと言えば、まず間違いなく警察は信じますから」
「そうするしかないかしらね……」
私がエメリアの意見に傾きかかったとき、母がまた発言した。
「ちょっと、発想を転換したらどうかしら?」
「発想の転換ってどういうこと? お母様」
「堂上じゃなくて、詩宝ちゃんを逮捕するのよ」
「お母様……詩宝さんは何の罪も犯していないわ。逮捕なんてできるはずがないじゃない」
「まあ、聞いてちょうだい。あのね……」
母の説明が終わったとき、私達は頷いていた。
「そういうことなら、分かったわ」
「素晴らしいです、奥様」
「それなら、確実に詩宝様を取り戻せますね」
「じゃあみんな、早速準備しましょう」
「ええ。やるわよ。エメリア!ソフィ! すぐ例の場所に行って、必要な機材を調達してきて! 屋敷の方の準備は、私がやっておくわ!」
「はい、お嬢様!」
「イエス、ボス!」
エメリアとソフィは、高揚した面持ちで慌ただしく部屋を出て行った。
もちろん私も安閑とはしていられない。2人の後に続いて部屋を飛び出す。
もう少しで、また詩宝さんに会える。
私が詩宝さんと離れたばっかりに、今の状態を招いてしまったが、ミスはもうすぐ取り返されるのだ。
198 名前: 触雷! ◆ 0jC/tVr8LQ 2010/11/21(日) 00:41:29 ID:IDuC1ZxQ0
「あうう……」
晃と最初に交わってから、どれくらいの時間が経っただろうか。
最後の一滴まで晃に搾り取られた僕は、精根尽き果て、ホテルのベッドから起き上がることができなかった。
「はあ。気持ちよかった……」
ずっと僕に跨り、腰を振り続けていた晃は、まっすぐ前に体を倒し、僕に抱き付いてきた。
「うへへへへ……初めてなのに滅茶苦茶感じちゃったよ。あたしってば淫乱かも。ま、そうしたのは詩宝だけどね」
ムチュ……
唇が触れ合う。晃はそのまま舌を突っ込んできた。
全く抵抗できない僕は、されるままに口の中を舐め回された。
「んんっ……んんんん……」
「…………」
気持ちよさで、だんだん気が遠くなってくる。失神寸前になったとき、ようやく晃の舌は僕の口から離れていった。
「ぷはあっ! 詩宝の唾液おいしい」
「…………」
「それじゃ、そろそろ成金豚も引き上げただろうし、帰ろっか」
「……?」
僕には、晃の言っていることの意味は分からなかったが、どちらにしろ体は動かない。
「す、少し休ませて……」
「もう、しょうがないなあ。それじゃ添い寝してあげるから、一緒に寝よ」
裸のまま、晃が抱き付いてくる。僕はそのまま眠りに落ちた。
しばらくして目が覚めると、いくらか気分がすっきりしていた。
「んっ……」
「大丈夫、詩宝?」
「じゃ、行こっか」
「うん……」
僕が頷くと、晃は服を着始めた。
馬鹿でっかい胸を隠すためのコルセットを締め、その上から学ランを羽織る。
僕ものろのろと動き出し、晃に剥ぎ取られた服を着ていった。
ホテルを出た僕と晃は、少し歩いて大通りに出た。そこでタクシーを拾い、晃の家に向かう。
「さあ。入って入って」
「お、お邪魔します……」
「ただいま、でしょ? 当分ここが詩宝の家になるんだから」
「た、ただいま……」
晃の言う通りにしてみたものの、違和感があるのは否めなかった。
「あの、晃……帰って早々だけど寝かせてもらっていいかな? 明日学校だし。あ……制服も鞄もないや!」
そのとき、僕は初めて、中一条家から何も持たずに出てきたことに気付いた。
このままでは学校に行けない。一度家に戻らないと……
しかし、晃は平然と言った。
「明日は学校、行かなくていいよ」
「え?」
「学校辞めるんだよ。あたしも、詩宝も」
「な、なんで……?」
「成金豚と一緒の高校なんか通ったってしょうがないじゃん。あたしは女として別の高校に入り直すから、詩宝も一緒に来る。いいね?」
「で、でもどうするの? プロレスの方は? 女の子だってばれちゃったら……」
「辞める。てかうちの団体、当分再起不能っぽいし」
「…………」
総日本プロレスで、一体何があったというのだろうか。
恐れおののくしかない僕は、あまりにも無力だった。
199 名前: 触雷! ◆ 0jC/tVr8LQ 2010/11/21(日) 00:42:15 ID:IDuC1ZxQ0
「ようし、寝よ寝よ。あ、言っとくけど、睡眠取るって意味じゃないよ。せっかくだからもう一回戦……」
晃は口から涎を垂らしながら、僕を奥へ引っ張って行こうとした。
そのとき、玄関でインターホンが鳴らされる。
ピンポーン
こんな時間に、誰だろう。もしかして、紅麗亜か先輩が、怒り狂って怒鳴り込んで来たんじゃ……
僕は戦慄する。
「成金豚かも。あたしが出てくるから、詩宝は奥に隠れてて」
「あの、それなら、居留守使った方がいいんじゃ……?」
我ながらチキり過ぎだとは思うが、今先輩か紅麗亜と晃が出くわしたら、第3次世界大戦級の争いが勃発してもおかしくない。できればやり過ごしてほしい。
「大丈夫だよ。きっちり追い返してやるから。詩宝は奥で待ってて」
でも、あまりにも自身たっぷりに晃が言うので、僕はつい頷いてしまった。
「う、うん……」
僕は奥へ引っ込み、晃は玄関口へ向かって行った。
しばらく、静寂が続く。
そして、晃の大声で、突然それは破られた。
「ふざけんなあっ!!」
やっぱり来たのは先輩か紅麗亜だったのだろうか。
僕は口の中で、小さく「ひいっ」と悲鳴を漏らした。
そして、ドタドタと足音が聞こえる。
姿を現したのは、2人の大柄な女性警察官だった。制服を着て土足のままで、僕を見下ろしている。片方が僕に問いかけて来た。
「紬屋詩宝君ね?」
「そ、そうですけど……」
「あなたには、婦女暴行の容疑がかかっています。署までご同行ください」
もう1人がそう言って、僕の手にガチャリと手錠をかけた。
僕は顔から、血の気が引いて行くのが分かった。
怒り狂った先輩が、僕にレイプされたと被害届を出したに違いない。
薬を盛られたと主張したところで、政治家の公約ほども信用してもらえないだろう。
少年院行き決定だ。
「待て! 詩宝は無実だ! 証拠だってある!」
追い付いてきた晃が叫ぶが、2人の女性警察官は歯牙にもかけない。
「それなら、裁判で提出することね」
「あ、邪魔すると、公務執行妨害であなたも逮捕しますよ。フフフ……」
「くうっ……」
晃の方を見ると、彼女は僕がかつて見たことのない形相でキレていた。
だが、僕はどうすることもできず、ミニパトの後部座席に乗せられる。
片方の女性警察官が運転席に座り、もう片方が僕の隣に座った。
そしてミニパトは、夜の街を走り出す。
「あの……」
「静かにしていてください。お話は署で聞きますから」
「その警察署を、今通り過ぎちゃいましたけど……」
「そうみたいですね」
「…………」
平然と答える女性警察官。僕は疑心暗鬼になった。
先輩は、一体どこの警察署に被害届を出したんだ? 石垣島か?
そのとき、運転していた女性警察官が言った。
「もう、いいんじゃないですか?」
「え?」
「そうね」
すると、僕の隣の女性警察官が、顔から肌色のものをべりべりと剥がし始めた。
あれだ。スパイ映画とかでよく出てくる、変装に使うやつだ。
やがて彼女は変装用のシールをはがし終わり、素顔を見せた。
「エメリアさん……」
「はい。あなたの第1愛人、エメリアです」
「じゃあ、前にいるのは……」
「第2愛人のソフィですよ。詩宝様」
運転していたソフィさんが答えた。
「一体、どこに向かって……?」
「もちろん、お嬢様のお屋敷ですよ。そこでじっくりと“取り調べ”をさせていただきます」
艶然と笑うエメリアさん。
僕は、少年院入りを覚悟したときより恐慌状態になっていた。
200 名前: ◆ 0jC/tVr8LQ 2010/11/21(日) 00:42:50 ID:IDuC1ZxQ0
今回は以上です。
gj!主人公大変だな
エメリアソフィ怖すぎ泣いた
続き待ってます
やっと来てくれたか
GJ
>>301 GJ!!
この時をどんなに待ち望んだか…
改めて読むと、どうという作品じゃないな
煽ててるのもID変えて浮かれてる1人だけのようだし
それより、この騒動の始末はどうつけるつもりなの?
そっちを聞きたい
普通に前(荒らしくるまえ)みたいにしてればいい話でしょ
もう騒動は収まったようなもんじゃないか
触雷の作者様も避難所に投下してるようだし、平常運転に戻りつつある
始末をつけるとか、その発想が荒らしみたいだ。
次の作品投下まだかな〜?
gj
次は現物支給か
逆レイプはそろそろお腹一杯たから、甘い奴が欲しいな
そうか
今日は週間勘違いの発売日だっけw
作者が敢えて避難所に逃げてるのに
わざわざ転載する奴って相当のバカだろw
314 :
名無しさん@ピンキー:2010/11/21(日) 18:35:07 ID:b70e8LfL
避難所?
白い翼 五話です
ちょっと、暴力的シーンがあるので嫌悪なさる方は見ないことを勧めます。
投下します。
私が、片翼を失ってから二年。
そして、もう片翼を失って一年。
私の背中に、もう翼なんてたいそうなものは、なかった。
あるのは―――いや、無いのは翼。
すべて、失ってしまった。
神として、生を受けた私。〈ミハネ〉という名をもらい、生を受けた私。
―――翼をもらい、生を受けた私。
「………………」
暗闇と、孤独……これが今の私にあるすべて。
だから、欲しかった。色が、世界が。人が。純君が。
「ここは、どこだ?」
変わらない物語の始まり。
「私は昔、神様だったの」
そして
「じゃあねー……死んで」
「ガ―――ァァアアアアアアアアアアア!」
いつもと変わらぬ物語の終焉。
彼の夢はもらいうけたけど、夢はいつか覚める。
覚めなかったら、今度は現実世界の彼が死んでしまう。
すると、もうこの世界でもあえなくなる。
ずっとそばにいたい、ずっと抱きしめあっていたい、ずっとその声を聞きたい、ずっと愛し合っていたい―――――そう私がどれだけ思ったところで、時間が迫り、彼の還る時間が迫り、私が彼を殺す。
皮肉なものだ。
一年もたつのに、一年も時が流れたのに―――いや、こんなことを言っても仕方ない。
それに私たち神にとって、時間など無意味なことであったのに、すでに神ではない私は、こんなにも時間を恨んでしまっている。
いい加減、彼を殺すことに慣れてしまってもいいのに―――
「じゅ、ジュン君っ、えぐ、じゅ、ジュンく―――」
―――どうして涙が止まらないんだろう?
彼が夢の世界から消えるまでの間、彼が現実世界に戻るまでの間、その瞬間に。
私はいっぱい彼にキスをした。
〈あたかも滑稽たる少女の末路〉
「どうして、どうしてよッ!」
彼女、〈萩原空〉は、近所迷惑など考えずに叫ぶ。
叫び続ける―――――たくさんの黒服たちに取り押さえられながら。
「は、萩原さん……」
いつも笑みの絶えなかった彼女の顔が、焦りを隠せず、いつもきれいに整えられた髪は、服は、土に乱れ、彼女の自慢の木刀は、へし折られていた。
どうしてこんなことになったんだ―――?
「〈神坂純〉さんですよね」
一人の女性――――二十歳くらいのメイド服の女性が俺に話しかけてきた。
「え、あ、はい」
俺は唖然としながらも、彼女に言葉を返す。
「旦那様から連絡がありました」
「………はい?」
俺にはわけが分からなかった。
だってそうだ。さっきまで寝てた? んだから? ……ん? 寝てたんだっけかな?
まあいいや。とにかく……。
体がやけに重いな、そう感じながら起きたら、どこかの豪邸の敷地内だった。
目の前にはメイドさん、左隣には、屋敷、そして右隣りには、取り押さえられる萩原空。
どういうことがあれば、こんなことになるのやら。
あ、でも……頭を働かせてきたら……だんだんと……。
「痛ッ!」
不意に、頭に痛みが走る。
触ってみると、軽く包帯が巻いてあるようではあったが、その包帯に血がにじみだしていた。そう言えば、……そうか、全て思い出したぞ。
俺は、萩原空に気絶させられたんだ。
そしてここに連れてこられた。
さしずめ、この屋敷やら黒服やらメイドさんやらは皆、萩原家の使用人たちであろう。
でも、だったら――――と、再び空の方向を見る。
「やめて、離してよ!」
「それはできません、お嬢様」
抵抗する空に、それを押さえつける数人の黒服たち。
どう考えてもおかしな構図だ。
自分のご主人様の娘である空を、捕まえているのなんて。
そこまで思考して、やっとさっきのメイドの言葉に通じる。
旦那様から連絡がありました″
つまり、本当に使用人たちの主である空のお父さんからの娘をとらえろ″という命令なのだろう。だから彼女はとらえられた―――。
「そして、空様に変わりまして私たち一同が、あなたに対する比類なき御無礼を謝罪させていただきます」
と、メイドさん……いや、その後ろにいたメイドさん、黒服たちその他大勢が、一斉に俺に向かって頭を下げた。
折り目正しく、規律正しく、皆一斉に、だ。
「え、えっと」
何というか、俺の方もこうされては戸惑ってしまう。
照れ隠しと、それから気まずさにとっさに視線が泳いでしまった俺は、萩原空をとらえた。
「何で、なんで、ナンデ、なんで、何で邪魔するのよ! なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで――――――――」
彼女はあたかも壊れたスピーカーのごとく叫んでいた。
それも何だか見ていられなくて、正面に視線を戻す。
「では、まずはお手当の方をさせていただきますのでこちらに」
と、二十歳くらいのメイドさんが、屋敷の方へ指を指す。
「………………ねぇ」
そんな彼女に向かって僕は言葉を発した。
「そんな手当よりも先に、叶えてほしいことがあるんだけど……いいかな? それで今回の件はチャラってことで」
「純さまがお望みとあらば私たちも全力でその件に当たらせてもらいます」
それを見て僕は、ふっと笑ってしまった。
「萩原空を、解放してほしい」
謝罪も済まないうちに触雷!は許されないだろ
あの屋敷から一時間ほど経ったであろうか?
俺と空は一緒に夜の学校へと足を踏み入れた。
「……………………」
「……………………」
お互い――――沈黙したままである。
いつも見慣れた下駄箱で、互いに靴を履き替え、
いつも見慣れた廊下を、静かに歩き、
いつも見慣れた教室を、開けた。
月夜が舞い込む教室に入って数秒、時計を見た俺は空に一言告げた。
「ごめん、萩原さん。ちょっと待ってて」
「………………ぇ?」
うつむき加減だった空に俺は一言告げて、教室を出た。
ドアを背に、もたれかかる。
理由は明快。ただいまの時刻は十一時五十五分。
妹、美咲に電話を入れなければと思ったのだ。
携帯電話を取り出し、電話帳の―――神坂美咲″を、押した。
携帯を耳にあて、つながるのを待った。
連絡を入れるのは、いつもは口げんかばかりしている妹だが、こういうときに美咲は心配してくれる心やさしい子だと俺は知っていたからだ。
だから俺は―――――
「あぁ、もしもし」
「萩原空はどうなったの?」
―――違和感に包まれた。
「……………」
そう、それは嬉々とした声で。
てっきり美咲は俺への心配ごと……たとえば俺の予想であれば「兄さん! 今何時だと思ってるのよ! 心配し―――てはないけど、でもでも、心配だったんだからね!」と、良く分からない言葉を発してくると思っていた。(実際昔に一度あった)
それなのに―――これって……。
「ん、どうしたの? 兄さん……萩原空はどうなったの?」
「萩原空って……一応お前の先輩だろ、萩原先輩と言え、萩原先輩と――――――ってか、やっぱり萩原さんのお父さん〈萩原総一〉さんに連絡をしたのはお前か」
「ん、そだよ」
そだよ、って、軽く言ってくれるな。
〈萩原総一〉とは、萩原グループの社長で俺の親父と旧知の仲である。
お袋が死んだ時も親父が死んだ時も、いろいろお世話になった人だ。
引き取ってくれるとも言った。でも断らせてもらった。
だから俺も美咲も電話帳のリストにはしっかりと〈萩原総一〉という名が刻まれていた。
つまりこういうことであろう。
何らかの方法で、今回の空の暴挙を知った美咲が、総一さんに連絡をかけた。
――――キーンコーンカーンコーン
そして総一さんが問答無用で、空をとらえるように使用人たちに言ったのか。
……さっきチャイムが鳴ったから、今十二時だな。
と、俺はサクサク思考を進める。
「…………学校か」
「ん、何だ?」
ボソッ、と、美咲が何かをしゃべった気がするが、あいにくのチャイムで聞こえなかった。
「ん、何でもない……それより兄さん、さっきの話の続―――」
「許したよ」
美咲の言葉が言い終わる前に俺は言い返す。
さっきから何度も聞いてるからな。
「…………………………………………………ハ?」
しばらくして、美咲のか細い声が返ってきた。
「萩原さんのことでしょ? だからさっきも言ったように許したって」
そう、俺はあの屋敷で萩原空に関するすべての罪を許したのだ。
辺りのみなは驚愕の顔をしていたが、俺が被害者であったため、総一さんが返ってくるまでこの件は保留、ということになった。
……総一さんは忙しいからな、今ニューヨークにいる。
「な、なんで? なんで兄さん、そんな奴のこと許すの?」
「そんな奴とか言うなよ。しっかり萩原先輩と言いなさい。お兄ちゃん悲しいぞ、美咲がそんなグレた言葉づかいをするなんて………あぁ、後それと、萩原さん可愛いし」
「…………………………………………………」
静寂が返ってきた。
何の変哲もない静寂。
まるで電話の向こう側の世界が止まってしまったのではないかと錯覚するほどの―――物音ひとつない静寂だった。
「おい、美咲?」
「………………………………チッ」
プツッ
プ―――――プ――――――――――――――。
「………」
あ、あれ……おかしいな?
俺は電話の切れた携帯を見る。
そして――――ポツリ
「妹への電話が舌打ちして切れるって――――え?」
ちょっと泣いてしまいそうだった。
さっきまで廊下でうずくまっていた―――べ、別に泣いてたわけじゃないんだからね!
ただ、その……ちょっとナイーブになってただけなんだから! と、自分に自分で言い訳をつけ、十数分後、俺は教室に戻る。
相変わらず、うつむき加減の萩原空がそこにはいた。
「ぁ……ぅ」
すこし戸惑う空。何も言えないのだろう。
そんな彼女を視界からはずし、俺は窓際まで歩いた。
窓を開け外の月を見ながら、俺は空に語りかけた。
「俺、昔一度だけ―――負けたことがあるんだ。たぶん、きっと、いや絶対、君に」
「ッ!」
彼女にも思い当たる節があったのであろう。
机が少し揺れる音が聞こえた。
「さっき、妹にも言われたんだけどね、どうして俺が萩原さんを許すんだって……」
「……………」
「それはさ―――」
誰も待っていないのに再開なんて
どれだけ自意識が強いんだよw
おそらく、多分、いや絶対。今の俺の顔を言語で表すなら
喜″
であろう。
過去の俺(バカ)が、過去の俺(じゃくしゃ)が――――ただ、一度だけ負けた存在。
天狗になっていた俺の鼻をへし折った張本人、そんな人物を見つけたんだから笑うしかない。もう一度戦いたい、そう思っていたころもあった。
そして、この教室で、それがかなった。
しかし。
―――不意打ちだったとはいえ
―――あちらが武具を使用していたとはいえ
俺は再び〈萩原空〉に負けたのだ。
そう考えると、俺はどうでもよかった。
だって俺は、たとえ身体的に優れていたとしても、精神的には赤ん坊と、なんら変わらない人間なんだから。
だから俺は呟く。
「結局のところ、俺にはどうでもいいのさ」
いや、違う。それ以外のことに頭を回せるほど利口ではないのだ。
―――他がどうなろうと関係ない、俺は家族と己の強さを磨くだけさ。
そう、俺は言い捨てた。
「ふーん、じゃあこの女いらないね」
グサッ、プシャ――――――――――
多分、擬音語にするとこんな感じ。
…………………………。
………………………。
……………………。
…………………。
………………。
…………。
……。
…。
たったこれだけのことを頭で処理するために、俺は十数秒要した。
「…………………ハ?」
そして俺は、処理されたことを理解する行動に移すが、―――できない。
いや、脳が、体が、この結果を理解したがらない。拒絶している。
目の前で、赤く染まった少女の肢体が揺らめき、あたかも糸の切れた操り人形のごとく、彼女は地面に吸い寄せられた。
「は、萩原さん!」
そして今の俺には、なぜこのようなところに―――血塗れの包丁を持った〈神坂美咲〉がいるのかさえ、理解し得なかった。
―――俺は叫ぶ、駆ける、彼女の方に向かって。
そして、血まみれの彼女を抱き抱えた。
「いや、嫌、イヤ、嫌、イヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤヤイヤアアアアアア―――――」
空の悲痛の叫びを俺は聞く。見ている方からも、痛みが伝わってきそうなくらいの。
「萩原さん! くそっ、救急車を!」
俺はとっさに携帯電話を探すが――――――くそっ、無い!
もしかしたら廊下に落としたのかもしれない!
こんな時に限って俺は何をしてるんだ!
「死にたくない、死にたくない、しにたくない、シニタクナイ、死にたくないよぉ! 純君! 純君! 純君、純君」
語尾に近付けば近付くほど空の声は衰え、彼女の血に染まりし手が俺の頬を触れる。
彼女は、もう俺の姿は見えていないのではないかというほどの、オドつかない手さばき。
それが、その行動を見ていた俺は、焦りを増し、混乱する。
混濁する。
思考がうまくできない。
頭が働かない。
何も――――――できない!
「純君―――――」
「ッ!」
さらに一段と弱弱しくなった彼女の声。
やばいっ! とか、なんとかしないと! とか思いつつ、結局は何もできずにいる俺。
―――ただ呆然と、ただ唖然と、頬に迫った彼女の手を掴んでやることしかできなかった。
「――――」
「!」
そして彼女は動かなくなった。
最後に唇の動きだけを残して。
助けて″という、虚(むな)しい言葉を最後に残して、齢十七歳のこの少女〈萩原空〉は、
―――死んだのだ。
「……………」
呆然と立ちすくむ俺に―――
「アハハハハハハハハハッハハハハハ!」
―――声がした。
耳障りな笑い声がした。
この場に最も似つかわしくない喜″の感情を含むその笑いは、俺の頭をヒートアップさせるには、十分すぎる材料だった。
「美咲ィイ、お前ェ――――!」
初めてだった。
俺―――〈神坂純〉がここまで妹―――〈神坂美咲〉に対する嫌悪感、いや違う、
―――憎悪感″を持ったのは初めてであった。
俺の激昂を聞いた美咲は、笑うことをやめ―――いや、発声という人間的笑いの表現を動物的笑いの表現――――つまり、表情で笑うことに変化した。
そして、一言、言った。
「だって、そうでしょ? お兄ちゃんは自分の強さと家族、つまり私だけが大事なんだよね? だったらこんな女、いらないよね?」
゙'. '.;`i i、 ノ .、″
゙'. ,ト `i、 `i、 .、″
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,.イ:、ヽ/ー`-、-ヽヽヽ、−´ .l゙`-、
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,.-l,i´.、".`ヽ,,,.".` `゙゙'"`'-ー"``"``r-ー`'": _.‐′ 丿 ,!
j".、'ヽ,".、".、"`''`ー、._、、、 、._,、..-‐:'''′ .、,:" 丿
゙l,"`"`''ヽヽ"`"` ```゙'''"ヽ∠、、、、ぃ-`''''": ` 、._./` ._/`
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確かに、俺がいましがた言った言葉に間違いない。
その通りだ。
しかし、しかしだな―――
「そ、そういうことじゃないだろ!」
そうなのだ。
俺の言ったことは、いらないものをすべて殺して無くしてしまえという殺人的ものでは決してない。そして、そんなことも分からない俺の妹でもないだろうに。
でも、それでも――――美咲は、空を、殺したんだ。
「…………………」
「私にも一つ言えることがあるんだ、お兄ちゃん」
押し黙ってしまった俺に、美咲は窓から入り込む風にそっとのせて告げる。
―――他がどうなろうと関係ないよ。私には、ただお兄ちゃんが、〈神坂美咲〉のお兄ちゃんである〈神坂純〉が存在してくれれば、私を愛してくれれば、それでいいんだから。
「これでもう邪魔ものはいなくなったよ、お兄ちゃん―――一緒に、なろぉ?」
甘くとろけるような声を出し、美咲は俺に手を伸ばす。
月明かりに、煌めく血液。
無気味な風が、この場を突き抜ける。
「――――――ッ!」
―――瞬間、俺の心に恐怖が駆り立てた。
〈あたかも滑稽たる少女の末路〉 裏T
―――策士策に溺れる、とはこの事だ。
私こと〈萩原空〉は、彼の後ろにつきながら、夜道を歩く。
静寂が包むこの世界で、お互いに何も言えずに時は流れて行った。
「……………………」
「……………………」
私は恐怖していた。怖がっていた。彼に嫌われてしまうのではないかという未来を。
今回の件で、あの雌の事があったと言えど、やりすぎた。
いや、やりすぎてなんかはいないけど……失敗するなんて夢にも思わなかった。
使用人たちが裏切ることなんて考えてもおらず、父が出てくるなんて考えておらず……そして何より……
―――彼に触れることが怖くなるなんてこと、夢にも思わなかった。
嫌われたらどうしよう? 嫌われたくない! 無視されたらどうしよう? いや! 触れた手を振り払われたら? もう二度と口をきくなとか言われたら? いや、嫌、いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや。
そんなのは絶対に嫌だ!
だから私は黙りこむことしかできなかった。
現状維持、成り行き任せ、そう言うのもあったけど。
なによりも、彼が私を助けてくれた理由についてが、一番聞きたかった。
「…………」
そして。
いつも見慣れた下駄箱で、互いに靴を履き替え、
いつも見慣れた廊下を、静かに歩き、
いつも見慣れた教室を、開けた。
月夜が舞い込む教室に入って数秒、時計を見た純が私に一言告げた。
「ごめん、萩原さん。ちょっと待ってて」
「………………ぇ?」
突き放されたような感じがした。
誰だってそうであろう、恐怖に包まれているときに、一人投げ出されてしまったら。
当たり前の考えを、当たり前に感じてしまった、私。
そしてこの教室の静寂がただただ嫌で、ひとりにしないでッ、と唇を動かした。
帰ってきた純。そんな彼に一目散に飛びつきたくなるが……抑える。嫌われたくないから。
「ぁ……ぅ」
戸惑う。何も言えない。
そんな私を見かねてか、純は私を視界からはずし、窓際まで歩いた。
窓を開け外の月を見ながら、純は私に語りかけた。
「俺、昔一度だけ―――負けたことがあるんだ。たぶん、きっと、いや絶対、君に」
「ッ!」
その事で、私は思い出してしまった。
二年前の戦闘を。
―――私が彼を惚れた理由も。
―――ガタっ、と机を少し揺らしてしまった。
「さっき、妹にも言われたんだけどね、どうして俺が萩原さんを許すんだって……」
「……………」
私も知りたかった。
「それはさ―――」
純の言葉の途中で私は気付いてしまう。
ドアから気配なく、音なく入ってきた少女の姿をッ
―――〈神坂美咲〉の姿を!
「結局のところ、俺にはどうでもいいのさ……他がどうなろうと関係ない、俺は家族と己の強さを磨くだけさ」
「ふーん、じゃあこの女いらないね」
そのタイム差コンマ一秒。
私は身動き一つできずに、ただ呆然とするしかなかった。
グサッ、プシャ――――――――――
多分、擬音語にするとこんな感じ。
…………………………。
………………………。
……………………。
…………………。
………………。
…………。
……。
…。
理解できなかった。どうして私の体が地面に吸い寄せられているのか。
「は、萩原さん!」
純の声が小さく聞こえる。そして、純に抱きかかえられた。
それでやっと気付く。あれ、私もしかして死ぬの? と。
そう思ったら、自然と言葉があふれた。
「いや、嫌、イヤ、嫌、イヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤヤイヤアアアアアア―――――」
叫ぶ、みっともなくとも、私は叫ぶ。
「――――! ―――、――――!」
純が何を言ったかも、まともに脳が理解してくれない。
「死にたくない、死にたくない、しにたくない、シニタクナイ、死にたくないよぉ! 純君! 純君! 純君、純君」
ただただ心のままをぶつける。
ただただ人のぬくもりを探す。純のぬくもりを探す。
「純君―――――」
「―!」
そして最後に、私は一言発するしかできなかった。
「助けて」
〈あたかも滑稽たる少女の末路〉裏U
―――あ、殺そう。
私こと〈神坂美咲〉は、舌うちで携帯通話を締めくくり、家を飛び出した。
包丁を手にして。
「まったくもう、兄さんは甘いんだから」
ちょっと拗ねたように、頬を膨らませて走る私。
まったく兄さんが甘いのは昔からだ、変わっていない。
まぁ、そういうところも私は好きなんだけど―――その甘さが他人に使われるのがとてつもなく腹が立つ。
せっかく私が、〈萩原空〉を陥れようとしたのに。
あの騒ぎの後、私がした事は至極簡単。
気絶した兄さんを運ぶ萩原空を影からこっそり写メ。
それを、父である萩原総一に送りつける。
ちなみに「助けて、お兄ちゃんが、お兄ちゃんがッ!」
とか泣き声で言ったら、案の定、総一は手筈をしてくれると言った。
最高に気分がよかった。私の兄さんに手を出した雌が落ちる様は……。
でも兄さんは萩原空を許してしまった。
なら仕方ない。
私が殺すしかないじゃないか!
「結局のところ、俺にはどうでもいいのさ……他がどうなろうと関係ない、俺は家族と己の強さを磨くだけさ」
私が入った瞬間、兄さんは気付かなかったが、萩原空は一瞬にして気付いた。
まったく、感の良い雌だ。そう思いながらも、実は私は兄さんの発言を聞いて喜んできたのである。家族、つまり私のことをどれだけ大切に思っているかが分かる言葉だったから。
だからだからだからだから、嬉しくて嬉しくて嬉しくて嬉しくて、もう!
「ふーん、じゃあこの女いらないね」
一瞬にして萩原空を殺した。
その後兄さんと萩原空が言葉を交わし合うのを見て吐き気がした。
でもやっと、話し合いが終わったみたいで―――
「美咲ィイ、お前ェ――――!」
―――兄さんは私に熱い視線を向けてくれた。
初めてだった。兄さんが私にこんなにも熱い視線を送ったのは。
嬉しかった、嬉しかった。
それにこの周りの静寂が、まるで二人だけの世界みたいで。
そんな中で兄さんが私を熱い視線で見てくれるなんて。もう笑いが止まらないよ。
そして、一言、言った。
「だって、そうでしょ? お兄ちゃんは自分の強さと家族、つまり私だけが大事なんだよね? だったらこんな女、いらないよね?」
その通り、今兄さんはそう言ってくれたのだ。
世界のだれよりも、私を愛していると!
「そ、そういうことじゃないだろ!」
まったく、いまさら何を照れているのだろうか。
この場には二人―――厳密にいえば、変な物体が一つあるけどそれはともかくとして二人きりなのだ。こんなときくらい甘い一言を言ってくれないとだめだぞ、と私は感じる。
「…………………」
でも兄さんはだんまり。
仕方ないなぁ、兄さんは……いや、お兄ちゃんは、だったら私から言ってあげる。
「私にも一つ言えることがあるんだ、お兄ちゃん」
押し黙ってしまった純に、私は窓から入り込む風にそっとのせて告げる。
―――他がどうなろうと関係ないよ。私には、ただお兄ちゃんが、〈神坂美咲〉のお兄ちゃんである〈神坂純〉が存在してくれれば、私を愛してくれれば、それでいいんだから。
「これでもう邪魔ものはいなくなったよ、お兄ちゃん―――一緒に、なろぉ?」
甘くとろけるような声を出し、私は純に手を伸ばす。
月明かりに、煌めく血液。
無気味な風が、この場を突き抜ける。
「――――――ッ!」
―――瞬間、私の心が躍りだした。
投下終了です。
見たくない人はスルーしてください。
ありがとうございました。
ん?
作品の投下でもあったのか?
透明あぼ〜んでよく分からないけど
>>329 アレじゃないか?
一万年が書いてるって疑いのある糞作品
タイトルは覚えてないけど
神や天使の生まれ変わりとかの題材や人命がモロに被ってるんだよね
奇作『一万年と二千年前から愛してる』に
一万年は「風の声」じゃなかったのか
ずっとあれが「続一万年」だと思ってたぞ
荒れすぎだろワロエナイ
GJでした
続き期待してます
この後、333がIDを変えてしつこくGJで煽りまくる予感w
投下GJ
これからは、過去の騒動を引っ張り出すようなレスは総スルーで
GJ
作者様は気にしないように
GJ
荒らしを気にしちゃだめだぜ
何でこんなに荒れてんだろうなー(´д`)
ここを見る人の平均年齢が下がったのかな?
まともな人間なら投下に横槍など入れたりしない。
自ら正当性を放棄し、荒らしであることを認めたわけだ。
従って一連の批判は自演の可能性が濃厚。
今からこれを否定するのは無理だろうな。
(=゚ω゚)ノ呼ばれた気がする
イマドキの荒らしはスルーじゃ消えてくれないヨ!(b^ー°)
どうすればいいかは自分で考えな(`ヘ´)
荒らしも人間
盗人にも五分の利を認めてあげましょう
GJ少ないよ
なにやってるのっ
>>339 やっぱり、二度とこのスレでウナギイヌをバカにしたり
あっちのことを話題に出さないと誓うしかないんじゃない
形としては触雷!が白い翼の投下に迷惑を掛けたことになるのかな
こういうことがあるだろうから転載なんかするなって言われてたんだ
保管される時には無問題だけど
なんだかなぁ
344 :
名無しさん@ピンキー:2010/11/21(日) 22:53:36 ID:cwoNvMtJ
触雷!が転載されてなきゃ、あんな話題がSSの合間に付くことはなかったろうに
とばっちりで作品を汚された白い翼が可哀相だとは思わないのか?
転載なんかしたバカは今すぐ首吊って氏ね
Vampire☆Generationで
>太一郎は闇夜を走り抜けた
なのに希が「こんばんは」じゃなくて「こんにちは」なってるな
>>345 転載したのは作者本人だよ
怖くて向こうに投下したけど、誰にも読んで貰えないので寂しくなって
他人の振りして自演転載したんだろうよw
投下の目的はチヤホヤして貰うことにあるんだからな
お前らまとめて逝ってよし!
ひどい自演を見たぞf^_^;なぁ
>>347君、他人のフリは君の専売特許だろ(^w^)
みんな投下の目的なんてどうでも良いんだよ、SS読めればおKって奴が多数
俺としても人が居なくなるのは困るから 必然的に作者を擁護しないとダメなんだ( ̄∀ ̄)解ってクレ
ていうか触雷ってイマイチ主人公に魅力感じないのよな
優しいキャラづけなのか知らんけど、見てる側からすればただヘタレ繰り返してるだけにしか見えんのよ。
ヒロイン達の恐さはいい感じだと思うけどいかんせん主人公の駄目さが。2話でお嬢様が主人公を誠実勇敢優しいって褒めちぎってるけど、完全に設定だけになってるよねこれ。
いい加減そろそろ主人公の男気をみたいよね。主人公にひきつけられる説得力が欲しい。
>>347 そこまで自信満々で断定するなら証拠出せ
無理に決まってるじゃん
あれだけ必死に頑張ったのに
何事も無かったかのように投下されて
悔しがっているだけなんだからな
>>345 投下宣言したあとに故意的に荒らしがやっているんだ
そんなのは作者云々以前の問題
荒らしどもが異様に謝罪を求めるのは「謝るくらいなら最初から投下なんてするな」
とか基地外な理由で作者潰しやりたいだけだろ
354 :
名無しさん@ピンキー:2010/11/21(日) 23:41:03 ID:b70e8LfL
>>349 何故巨乳?デカければいいもんじゃないぞ
考えを改めろ
fusianasanすればほとんどの自演が分かるが
作者叩きをしてるのは修羅場スレでも暴れてた奴と同一犯だな
確か、熱海にいる自称大富豪だった
ウナギ帝国の一員だろ
ことのはぐるまの続きはもう読めないの・・・
まあ、触雷!が投下または転載されるだけで酷く荒れることだけは分かった
いつの間にやら日付変更線を越えてしまいましたがこんばんわ。
日常に潜む闇 第8話 投下します。
〜〜友里の回想‐retrospect‐〜〜
過去、と言っても今から数年前の話だ。
私は恐怖と絶望のどん底に居た。
理由は極めて単純。家庭内暴力だ。母親からの過度な期待に応えることができなかった私に対して、母は家事の一切を任せていた父を酷く責め立てた。それからというもの、父は母からの精神的な攻撃に遭い始め、その矛先は私にまで向いていた。
「どうしてあなたはいつもそうやって適当にやるのかしら? 本当にやる気あるの?」
「ま、待ってくれ。俺はお前が仕事で疲れてるだろうと思って、その、それで……」
「それでこんな出来そこないみたいなものを私に寄越すのね? ふうん、これって私に対する嫌がらせ? それとも皮肉かしら?」
そう言って母は、食卓に並べられているグラタンに冷めた視線を向けた。
父は先ほどからフローリングの床に正座させられ、頭上から辛辣な言葉を浴びせられている。
「お母さん、お父さんをそんなに責めなくても……」
「できそこないは黙ってなさい。大体、娘のあんたもあんたよ。どうしてあれしきのことができないのか不思議で仕方無いわ。
本っ当、父娘揃って最悪ね。娘のあんたがしっかりしないからこの人は駄目なのよ。ついでに言えばあなたがしっかりしないから娘のこの子もあんなくだらない失敗をしたの。分かる? あなたたち二人は駄目人間、出来そこないも同然なのよ?」
「……………………」
「……………………」
人格をも頭ごなしに否定する母の言葉に黙りこんでしまう父と私。
何もそこまでいわなくても、と思う。
父は単に母をの苦労をねぎらうために、普段は作りなれていないグラタンを、レシピを見ながら調理したのだ。味が少しだけしょっぱくて、表面の焦げ付きが多少酷いからって、ここまで責める必要があるのかと思う。
「…………いつまでも黙ってちゃ埒が明かないのよ。それにあんたのその顔、見てるだけで腹が立ってくるわ」
パシン!
父が驚いて、顔を上げる。そして何が起きたのか理解して、慌てて立ち上がった。
「な、なにをするんだ! よせ!」
「あんたがつまらない失敗をするから!」
パシン!
「あんたさえ躓かなければ!」
パシン!!
「やめろ! やめるんだ!」
「私は恥をかかなかった! あんたみたいなできそこないを生んだ覚えも育てた覚えもないわ! 死んでしまえ! 出来そこないなんて死んでしまえ!」
何度も、何度も頬を平手打ちされ、私の両頬は鋭い痛みを伴って赤く腫れていた。
母に責め立てられ、それに押されるようにして私はダイニングから駆け足で逃げ、自室に籠もる。
鍵をかけ、ベッドに潜り込んで泣いた。当然声は布団で押し殺す。そうしなければ母がうるさいと言って平手打ちをするからだ。
ドアと布団を通り越して、ダイニングからガラガラガッシャーン! という何かが落ちて割れる音が耳に入り込んで来た。
「あなたが教育に失敗したからあの子はあんなできそこないに落ちぶれたのよ!
少しは責任ってものを感じないの? 最低最悪極まりないわ。やっぱりあなたにませるべきではなかったみたいね。期待して損だった」
たぶん、グラタンの入った器が床に落ちて割れたのだ。
時折父の悲鳴が聞こえるから、もしかしたら母が蹴りを入れているのかもしれない。
半年前、父は脚を骨折し一度だけ入院していた。
ここまで容赦がないと、次は命が危ないのでは、と私は危機感を抱き始めていた。
殺そう。あの人を殺そう。
いつしか私は実の母親に殺意を抱いていた。
今思えば実に愚かな行為だったと思う。しかし当時の私にはそれが唯一絶対の、安穏を手に入れるための正義だとしか思えなかった。
そうして決行に移ったのは去年の冬だった。
というよりも殺さざるを得なかった。その夜、父は数十年来の親友が危篤と聞いて、その人が入院している病院に向かっていた。そのため、夕飯は必然的に私が作ることとなった。
「なに? あんたが作るの? 下手なもの作ったら容赦しないわよ」
帰宅するなり母は私を一瞥してそう言った。
腹立たしい。しかし今は耐えなくては。この肉親とも思えない母親に最高のプレゼントをしてやるまであと数日の我慢だ。
母は、テレビをつけ、特殊法人が放送するニュース番組を見ている。
私はチラリとそちらを一度見て、また調理に没頭した。
炒める段階に入って、火力の調整を失敗したためか焦げ臭いにおいが辺りに漂い始めた。
「ちょっとなにしてるの? ――って、何焦がしてるのよ!? これだから出来そこないはムカつくわね……!」
「……………………」
「何よ? 文句でもあるの?」
「……………………」
「――その反抗的な目が気に入らないって言ってんでしょ!!」
いつまでたっても答えようとしない私に痺れを切らした母は、すぐ傍にあった包丁を手に取り、私に突きつけてきた。
「きゃっ!」
咄嗟にコンロで火にかけていたフライパンを母に向ける。それも中身をぶん投げるように。
「ぎゃあ! あ、熱いぃ!」
運良く、と言うべきか、炒め物が母の顔面に直撃。手から包丁を離し、両手で目を押さえながらよろめいた。
この時私はこの後生じるであろう恐怖に震えていた。母が体勢を取り戻したらきっと私にこれ以上の手段を以って復讐するだろう、と。いや、もしかしたら殺されるかもしれないとさえ思い始めていた。
「……殺される、くらいなら」
私は、床に落ちていた包丁を掴む。
目標は母の首筋。頸動脈。
「殺してやるっ!!!」
その叫びに、ようやく視界を取り戻せたらしい母がこちらに顔を向けたのが分かった。
しかし今から抵抗してももう遅い。
包丁の刃は、私の突進による運動エネルギーが上乗せされて、事態を把握しようとしていた母の首筋を深さ3センチから4センチメートルほど抉り、貫通した。
「あがっ! ぎ、ざばぁ……! よぐも……」
憎しみと恐怖を伴った視線を向け、何事か喋りながら前のめりに母だったモノは倒れた。
そしてピクリとも動かなくなる。
私は、酷く興奮していたが、自分が殺したのだと言う証拠を隠すために工作しなければならない。
まずは包丁から指紋をふき取らなければ。
そう思い、自身の服で包丁の柄を拭く。
どうせ返り血で使い物にならないのだ。最後くらいは雑巾にでもなって活躍してもらおう。
次に、手に着いた血を洗い場で流すと部屋へ戻り、替えの下着と服を用意し、風呂場で全身にこびりついた血を洗い流した。
風呂場から出て、真新しい服を着ると、今度はキッチンへ向かう。
返り血を浴びた服はゴミ袋に詰めて、どこか別の場所へ投げ捨てなくてはならない。
台所から持って来た不透明なビニール袋に脱いだ服を放りこみ、空気を十分に抜いてから口を縛る。持ち運ぶための鞄に違和感無く入るか心配だったが、特に問題はなかった。
死体はこのまま放置する。解体してどこかへ捨てることも考えたが、手間がかかるうえに後始末が面倒なのでやらない。
全て、事前の計画通りに進んでいる。順調過ぎて、私は不覚にも笑みをこぼしてしまった。
しかしまだ証拠隠滅の工程が残っている。気を引き締め直すと、私は靴を履き、鞄を肩に提げて外へ出る。
投棄する場所はなるべく人目につかない場所が良いと思ったのだが、逆に警察の捜査の手が及びそうで怖い。しかしこの時間帯ではそこに捨てるしかないだろう。
だが前々から計画を練っていた私は、もしもの時のためにと、本命とそれ以外の幾つかの候補をリストアップしておいてあった。やはり複数の案は用意しておいて正解だった。
捨てる場所は、予定を変更して捜査の手が伸びないであろう遠い位置を選んだ。
この時私は間違いなく正しいことをしたのだと信じて疑わなかった。
その後、父が帰宅し、惨状を見てすぐさま警察と救急に通報。私はその様を呆然と眺めているような振りをしていた。いや、振りをしていたはずだ。
警察の捜査では、物色された様子がないことから怨恨の線で殺害事件として扱われたが確定的な証拠が出るわけでもなく平行線をたどり、規模は縮小。
父は、どうしてか母の死を嘆き悲しんでいた。
なぜ暴力を振るうあの人の死を悲しむのか私には理解できなかった。
告別式の後、父が私に話があると言って、ダイニングへ来るよう言った。
「母さんが亡くなって悲しいが、二人で頑張っていこう」
「…………」
父の泣き腫らした赤い目を見て、私は言葉を返すことができなかった。
間違いなく父はあの人を愛していたのだと、例え何かにつけて暴力を振るうような人間でも、確かに一人の女性で会いしていたのだと初めて気付かされた。
私が殺したと告白できなくて、どうしてあんな人を今も愛し続けられるのか聞けなくて、感情が爆発するように私は家を飛び出していた。
父が後ろで何か言っていたかもしれない。しかし私は自分の感情に振り回されるままに街へ逃げていた。少しでも、現実から目を逸らすために。
それは何の皮肉か、クリスマス・イヴの日であった。
〜〜友里の回想‐retrospect‐其の二〜〜
今日はよりもよってクリスマス・イヴ。あの人にとって最悪の、そして私たちにとって最高のプレゼントが贈られるはずだったクリスマス・イヴ。
しかし現実はどうだろうか。あの人はともかく、少なくとも私たちにとっては最悪のクリスマスプレゼントが贈られた。
私には罪の意識、父のもとには最愛の妻の死というプレゼントが届いた。
本当に、これは何の皮肉だと思う。
だが今更自首をしたところで元には戻らないし、私は自首をする気にはなれなかった。
怖くなったのだ。
今までは正義の下で行動していたのに、その根拠が崩れた。
だから私は怖くなった。自分が実親を殺したという、その事実が。
だから、自首したくなかった。
しかし殺人を犯した私はどうして生きていられようか。
そう思うあたり、私もまた父のようにあの人を愛していたのだろう。
これで私宛の最悪のプレゼントが二つになった。
笑いたい。自身への嘲りを以って笑いたい。
きっと鏡を見れば、今の私は酷い顔をしている。
ああ、死にたいな。
いつしかそんなことを思って街中をフラフラしていた。
赤信号に捕まり、交差点の手前で立ち止まる。
今ここで足を踏み出せば、楽に死ねるだろうか。
悶々と考えていた時だった。
突然、つんざくような音が聞こえ、金属と金属が衝突して潰れるような音がしたと思えば周囲の人が騒ぎ始めた。
何事だろうか。
顔を上げた時、目の前から、バンパーがひしゃげたバスが、私に向かって突っ込んでくるのが見えた。
フロントガラスの向こう側に居るバスの運転手は、どうしたことかハンドルにもたれかかるようにぐったりとしている。
しかし私はここで死ねるのだと。これが私への最高のクリスマスプレゼントなのだと思えた。
そう思って目を瞑る。
ところが急に身体が大きく横に振られたかと思うと、半身が地面に叩きつけられたような痛みに襲われた。
驚いて目を開ければ、私に覆いかぶさるようにして一人の男の人が意識を失っている。
私は助かったのか……。
その事実にどうしてか安堵の思いを抱きつつ、私もまた気を失った。
目を覚ませばそこは見知らぬ場所だった。あまりのも周囲が白いので、ここが天国なのかと思ったほどだ。
しかしすぐに病院だと悟る。
点滴の管やチューブ、パックが視界に入ったからで、なによりも隣から話しかけられたからだ。
「ああ、意識取り戻したみたいだね」
隣に居た男の人は、私を助けた人だった。
その後、看護師とともに医師がやって来て、異常がないか簡単な問診と検査をした。当然、異常はなかった。
医師たちが帰った後、私たちの間には沈黙が降りかかる。
どうやら大部屋のようだが、どうしてか私たち二人だけのようだ。広くて誰もいない分、シーツの衣擦(きぬず)れまで聞こえてしまいそうだ。
「どうして私を助けたんですか?」
沈黙に耐えきれなかったからか、それとも助けられた時から思っていた疑問を尋ねたかったのか。自然と友里の口からこぼれていた。
「え? いやまあ目の前で死なれると嫌だからかな。うん、それに助けられるなら助けたいに決まってるじゃない」
彼の言葉に、私の胸の中で、確かに何かが芽生えた。
温かい、それでいて、渇きにも似たとてつもない欲望。
私を生かした。それは貴方からのクリスマスプレゼントですか?
それがどうであれ、私を生かしてくれたんだから、とことこん貴方について行きます。それが、私から貴方へのクリスマスプレゼント。
覚悟してくださいね。
待ってました、週間勘違い
日常に潜む闇 第8話 投下終了です。
それとしばらくの間投下できなくなります。1〜2ヶ月程度の出張があるためです。
まあ向こうで合間を縫ってやれれば良いのですが、英語圏のため忙しくてそんな暇もないと思うので、投下は休みます。
こういう作品がキレる子供を生みだして社会問題に発展するんだよな
駄文氏って、いったん英文で作品を書き上げて、それを日本語翻訳ソフトで訳して投下してるんでしょう?
たまに意味が分からなくなったり、ぎこちない表現なのはそのせいだったんですね
ただの下手くそだと思っていてごめんなさい
2ヶ月後を楽しみにしています
>>368 PINKちゃんねるは18禁
だから謝罪だとか社会問題だとか世の中わかってます的な言動をとりたいならVIPに行きな
お前らと歳の変わらん厨房がいっぱい相手してくれるからよ
ここは下の毛もない小学生が来るとこじゃないんだよわかりましたか?
GJ!作品を書くこともしないで騒ぐ屑がいるけど気にしないで書いてね
GJ!!
作者の文才に嫉妬とは…才能が無いって可哀相だなぁ…
GJ
出張頑張って下さいまし
荒らすだけなら誰でもできるからな
一人でも作家を潰せれば満足なんだろう
GJ
本当に作者潰す(笑)だわな批判が全然的を得てない
ってか潰すとか小学生のいじめかよキンモー☆
揚げ足取るべきじゃなかったなスマンカッタ(>_<)
さっき食べたおっとっとの中にクリオネが有ったからそれでテンション上がってしもうた(;_;)
378 :
名無しさん@ピンキー:2010/11/22(月) 07:34:48 ID:ezPNo7QY
>>377 何故巨乳?デカければいいもんじゃないぞ
考えを改めろ
なんか、昨晩は投下してよさそうな空気ではなかったので……。
仕事前に第五話、投下して行きます。
終盤にホラー要素含みますので、苦手な方は避けて下さい。
窓から射し込む朝日に顔をしかめながら、ジャンはゆっくりと目を覚ました。
昨日は寝坊をしてしまった上に酒も残っていたが、今日は割と目覚めもよかった。
身体を起こし、頭を二、三回ほど振って意識をはっきりとさせる。
枕元に置いてある眼鏡をかけると、今までぼやけていた視界が急にくっきりと開けた。
「今日は、薬の材料を探しに行かなきゃいけないんだよなぁ。
その辺のバザーに来てる行商人が、運よく持っていればいいんだけど……」
昨日、テオドール伯に渡した分で、ジャンの持っていた薬は最後である。
他の薬なら余りもあるが、東洋医学に関する薬はあれで終わりだった。
東洋の薬は、どちらかと言えば伝統的な薬草療法に近いものがある。
この地で手に入る素材もあったが、足りないものは行商人から買わねばならない。
稀に足元を見られることもあったが、それはそれ。
旅を続けて行く間に、それなりの交渉術は身につけていた。
本当ならばテオドール伯に頼んで、取り寄せられる素材は直々に取り寄せてもらった方が、話も早く済む。
が、しかし、今は伯爵のリウマチも経過観察中である。
素材の質の善し悪しで薬効も微妙に変わってくるだろうし、しばらくは自分で買い揃えることも視野に入れた方が無難だろう。
着替えを済ませて階段を下りると、そこには既にリディが朝食の準備をして待っていた。
他の宿泊客が食堂に来るには、まだ少しだけ時間がある。
にも関わらず、リディは既に朝食の準備を完璧なまでに終えている。
さすがというか、やはりこの辺りの手際のよさは、ジャンも感心せざるを得ない。
「おはよう、ジャン。
部屋が変わったけど、昨日はちゃんと眠れた?」
「なんか、前も同じようなこと聞かれたような気がするけど……とりあえず、大丈夫だったよ。
従業員用の仮眠室にしては、随分と立派な作りの部屋だったしね」
「お母さんが亡くなってから、殆どそのままの状態だったから。
こまめに掃除はしていたけど、実はそれ以外、あまり手をつけていないの」
「そうか。
まあ、何はともあれ助かったよ。
しばらく厄介になると思うけど、できるだけリディに迷惑はかけないようにするよ」
「迷惑だなんて……。
私は、全然そんなこと思ってないから、平気だよ」
最後の方は、少し恥じらいの混ざった言い方になった。
リディにとっては、ジャンがこの宿場にいてくれることが嬉しいのだ。
そのためならば、部屋の一つや二つなど惜しくない。
ジャンが望むならば、宿泊料などもらわなくても良いとさえ思っている。
だが、それだけではジャンを宿場に留めることには繋がらない。
寝床を用意するだけならば、誰にでもできる。
これから先、ジャンに少しでも自分の好意を伝えるには、この宿場と自分自身が、彼にとっての拠り所になる必要がある。
「ねえ、ジャン。
今日も、夕飯までには帰るわよね?」
「ああ、そのつもりだけど」
「だったら、今日はジャンの好きな物作って待ってるよ。
だから、なるべく早く帰って来てね」
「わかったよ。
でも、夕食のメニューは、別に僕の好き嫌いに合わせる必要はないから。
他のお客さんだっているだろうし、あんまり高級なものはお願いできないよ」
「そうは言っても、ジャンだって、もう居候みたいなものじゃない。
遠慮なんてしないで、して欲しいことがあったら何でも言ってね」
「居候って……。
まあ、確かにそんな感じにはなっているけどさ……。
でも、僕は別に、好きでこの街に留まっているんじゃないんだよ」
リディが持ってきたフレンチトーストを口にしながら、ジャンは少し項垂れるようにして言った。
口の中に残るパンを、コーヒーを流し込んで無理やり飲み込む。
簡単な朝食を終えると、コーヒーの湯気で曇ってしまった眼鏡をハンカチで拭いた。
「それじゃあ、僕はもう行くよ。
今日は市場で薬に使うための素材も買わないといけないしね。
行商人から、うまく仕入れられるといいんだけど……」
椅子の下に置いてあった鞄を手に取り、ジャンは忙しない様子で食堂を出た。
その後姿を、リディは皿を持ったまま見守ることしかできない。
我ながら、不器用な性格だとリディは思う。
ジャンに気持ちを伝えるだけならば、直接口にして告げた方が、どれだけ早いことか。
だが、ジャンの気持ちを考えれば、軽率な行動に出るのは躊躇われた。
それは、先ほどのジャンの口から出た言葉からもわかる。
ジャンは、この街を嫌っている。
彼がこの宿場に泊まっているのは、必要悪に過ぎない。
向こうからすれば、一刻も早くこの街を離れたいと思っているに違いないのだ。
気持ちを伝えるのは今ではない。
この街が嫌いであっても、それでもなお、リディの側にいたいと思わせられなければ、ジャンは間違いなく自分の下を去る。
(ジャン……。
私は絶対、あなたにとっての居場所になってあげるからね。
それまで、ほんの少しだけ……我慢して待っていてね……)
このチャンスは、きっと神様がくれたものなのだ。
だからこそ、リディは自分の想いを成就させるための機会を、軽率な行動で失いたくないと思っていた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
その日の往診は、昨日よりも簡単に済んだ。
伯爵に昨晩の様子を尋ねたところ、久しぶりに良く眠れたという。
なんでも、身体が芯から暖まったような感じがして、夜の寒さが関節に響くこともなかったらしい。
体質など、そう簡単に改善されるわけではない。
ましてや、リウマチは完治させるための術などない。
そうわかっていても、自分の与えた薬に効果があったことは嬉しかった。
この調子なら、当分は同じ薬を処方し続けるので大丈夫だろう。
幸い、必要な素材も朝方の内に買い揃えることができていた。
これで駄目なら、伯爵の力も借りて、必要な薬草の類を様々な経路でかき集めてもらわねばならなくなるが。
(はぁ……。
とりあえず、思っていたよりは、問題もなかったかな……)
帰りの馬車に揺られながら、ジャンはぼんやりと考えた。
しがない旅の医者の自分が、テオドール伯のような高貴な者の診察をする。
最初は緊張していたものの、二日目にして早くも伯爵邸の空気に慣れてきている自分がいた。
長年、旅慣れてきたせいか、環境の変化に戸惑うようなことは少なくなっていたのかもしれない。
そんなことよりも、ジャンにはやはり、昨日の帰りに見た不思議な少女のことが気になった。
今日、伯爵の屋敷を訪れたとき、彼女は姿を見せなかった。
伯爵やクロードに彼女のことを聞こうとも考えたが、診察に関係のないことを勘繰るのも気が引けた。
あの娘は、いったい何者なのか。
昨日から、それだけが気になって仕方がない。
窓越しに見た血のように赤い瞳が、頭に焼きついて離れない。
「着きましたよ、ジャン様」
クロードに言われ、ジャンはそこで我に返った。
あれこれと考え事をしている間に、いつの間にか宿場に戻って来ていたようだった。
「あ、ああ……。
悪いね。
ちょっと、考え事をしていて……」
別にごまかす必要などないのに、ジャンは思わず言葉を濁らせて言った。
クロードの刺すような視線に見据えられると、それだけで心の中を見透かされているようで怖かった。
「あの……」
「なんでしょうか?」
ジャンの言葉に、クロードが間髪いれずに尋ねる。
一瞬の間さえ置かずに言われたことで、ジャンは喉まで出かかっていた言葉を飲み込んだ。
やはり、聞けるはずもない。
あの少女が何者で、伯爵と何の関係があるのかなど。
所詮は単なる好奇心。
それ以上の、なにものでもない。
興味本位で余計な詮索をして、クロードや伯爵から睨まれるのは得策とは思えなかった。
「いや……なんでもないよ。
もうしばらくは、経過を診させてもらうことになると思う。
効き目がないようだったら、別の薬も試してみる必要があるけれど……」
「わかりました。
では、本日はこれで……」
相変わらず、愛想笑いの一つもないまま、クロードが馬車の扉を閉めた。
御者に「出せ……」とだけ告げ、今しがた来た道を戻って行く。
丘の上にいた時は感じなかったが、街に降りると早くも冷たい風がジャンの頬を打った。
思わずコートの襟を締め、足早に宿場へと戻る。
一階の酒場の店主に簡単な挨拶をして二階へ上がると、そこにはリディが夕食を用意して待っていた。
「お帰りなさい、ジャン。
今日も寒かったね」
「ああ、そうだね。
冬場に冷たい風が吹くのは変わらないな。
十年前も、今も……」
「そう言うと思って、今日は温かいスープを作っておいたわよ
荷物を置いたら、食堂まで来てね」
「助かるよ、リディ。
正直、コートを着ていても、外の寒さには耐えられそうになかった」
古めかしいコートを脱ぎながら、ジャンはそう言って安堵のため息を漏らす。
仮住まいとはいえ帰る場所があることが、今のジャンにとっては数少ない癒しだった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
それから数日は、比較的穏やかな日々が続いた。
朝、仕事の支度を済ませ、昼から夕方にかけて伯爵のいる屋敷へと向かう。
そこでテオドール伯の容体を診察し、経過を診ながら薬を出す。
それ以外は特に変わったこともない、至って平穏な日々だった。
だが、そんな毎日を送っていながらも、ジャンは心のどこかで早く街を離れたいという気持ちを抱いていた。
自分の父を追い出した街の人間が、今に自分のことも色眼鏡で見るのではないか。
異端者として、再び街から排斥されるのではないか。
そう考えると、あまりいつまでも街に居座ることは、やはり躊躇われた。
(テオドール伯の身体が快方に向かうまでは、街にいるって言っちゃったからなぁ……。
でも、正直、そう簡単に人の体質が変われば苦労はしないよ……)
丘の上の屋敷の一室で、ジャンはその日に買い集めた薬草の類を煮詰めながら考える。
乾燥させた薬草の類を粉末にした物とは違い、時には直に薬を煮出さねばならない物があることが、西洋医学と東洋医学の大きな違いだ。
手持ちの薬を与えるだけで済む従来の医療とは異なり、医者がその場で薬を処方せねばならないのだから。
一昔前ならば、自分は教会から魔女の仲間として真っ先に弾圧を受けていただろう。
それでなくとも、自分の父は如何わしい研究の果てに街を追い出された負い目のある男だ。
その息子である自分が、街外れの屋敷で薬草を煮詰めている姿を見ればどう思われるか。
答えなど、今さら口にするまでもない。
「さて、と……。
後は、もうしばらく薬を煮詰めないと駄目だろうな」
鍋にかけている火を弱火にしつつ、ジャンは誰に言うともなく呟いた。
行商人から手に入れた東方由来の薬草が入った鍋からは、何やら異様な臭いが漂っている。
履き潰した古靴下を煮詰めたような、そんな匂いだ。
傍からすれば毒にしか思えない香りだが、これが薬として効くのだから、不思議なものである。
鍋の中で薬が煎じられている音だけが、石造りの部屋に響いていた。
普段は厨房として使われている場所だが、今はジャンが薬を作る場として貸し出してもらっている。
自分と鍋以外、音を立てる者さえもいない場所。
そんな場所だからこそ、ジャンは扉の向こう側にいる来訪者の気配に容易に気づくことができた。
「そこにいるのは誰だい?」
恐らくは、扉の向こう側にいるであろう相手に向かって、ジャンは問いかける。
別に遠慮などする必要もないはずだが、相手に警戒心を与えないよう、できるだけ優しい声で言った。
金具と金具が擦れ合う、軋むような音が部屋に響いた。
木製の扉が開かれ、その向こう側から黒いドレスに身を包んだ一人の少女が姿を現す。
「君は……」
忘れるはずもなかった。
雪のように白い肌と、色のすっかり抜けてしまった髪。
そして、血のように赤い二つの瞳。
間違いない。
この屋敷に初めてやってきた時、窓辺からジャンのことを見つめていた少女だ。
「あの……」
少女が何か言いたそうに、それでいて、どこか申し訳なさそうな口調で言った。
見たところ伯爵の血縁者のようだが、それにしては、妙に怯えたような態度が気にかかる。
貴族の血を引く者ならば、もっと堂々としていてもよいだろうに。
「僕に何か用かい?
今、テオドール伯のために、薬を煎じているところなんだけど……」
「すいません。
特に、用があるというわけではないのですが……。
ただ……厨房から、少々、おかしな匂いがしていましたもので……」
口調は丁寧だったが、それでも威厳の感じられるようなものではなかった。
世間知らずの箱入り娘が、好奇心から厨房を覗いたのかもしれない。
ただ、それにしては、やはり過剰に何かを恐れているような態度が気になったが。
「なんだか、変に気を使わせちゃったみたいで悪いな。
この、変な匂いなんだけど……実は、テオドール伯のために煎じている薬の匂いなんだ」
「お薬……ですか?
では、あなたは、お父様の主治医の方で……?」
「まあ、そんなところだけど……。
ところで、お父様ってことは、君は伯爵の娘さん?」
「はい。
ルネ・カルミア・ツェペリンと申します……」
少女がジャンに頭を下げながら言った。
人の上に立つ者の態度ではないと感じたが、それ以上に、ジャンには少女の年齢が気になった。
見たところ、彼女は十四歳か十五歳くらいの年齢だと思われる。
しかし、テオドール伯は見ての通り、七十の齢を越えている年齢だ。
娘というには歳が離れ過ぎており、どちらかと言えば、孫娘と言った方がしっくりくる。
人間離れした容姿に加え、明らかに離れ過ぎている伯爵との年齢。
疑問に思うことは多々あったが、今はそれを尋ねるのも憚られた。
「ところで……」
なるべく、相手に警戒させないよう、ジャンは可能な限りの優しい笑顔を作ってルネに語りかける。
子どもの患者に問診をする際、その緊張をほぐす時に使う手だった。
「まだ、名前を言っていなかったね。
僕はジャン・ジャック・ジェラール。
君のお父様の病気を治すために、クロードさんに頼まれた旅の医者さ」
「お医者様なのに、旅をなさっているのですか?
でも、どうして……」
「別に、深い理由があるわけじゃないよ。
ただ、同じ場所に留まり続けるのが苦手なだけさ。
もっとも、伯爵の病気が快方に向かうまでは、しばらくこの土地にいることになると思うけど……」
伯爵の娘相手ではあったが、ジャンはあえて砕けた言葉を使って話し続けた。
その方が、相手に警戒心を抱かせずに済むし、なによりも会話が途切れて微妙な空気になるのを避けることもできた。
「あの……ジャン様……?」
「なんだい?」
鍋の火を気にしながらも、ジャンはあくまで固くならないように注意しながら尋ねる。
心なしかルネの表情も、先ほどに比べると少しだけ緊張が解れているようだった。
「ジャン様は、色々な場所を旅してまわっておられたのですよね?
だったら……一つ、お願いをしても宜しいでしょうか?」
「お願い?
まあ、僕にできることであれば、別に構わないけど……」
「では、申し上げます。
私に、ジャン様が旅して回った場所のことを、お話していただけないでしょうか?」
「僕の旅の話を!?
まあ、あまり面白い話じゃないと思うけど……それでよければ、聞いてくれるかな?」
伯爵の娘が直々に、自分に対して願い事をする。
初めに聞いた時は何を言われるのかと思ったが、その内容を耳にしたジャンは、思わず肩すかしを食らったような気になって拍子抜けした。
自分の旅の話など、貴族の令嬢に語るような話ではない。
それでも聞きたいというのは、この娘の純粋な好奇心なのだろう。
やはり、外の世界を知らない箱入り娘ということなのだろうか。
高飛車な印象はないが、浮世離れしていることだけは確かなのかもしれない。
「それじゃあ……とりあえず、その辺の椅子に座ってくれるかな。
こんな厨房で、立ち話もなんだしね」
「はい。
よろしくお願いします、ジャン様」
ジャンに促されるままに、ルネは近くにあった椅子に腰かけた。
椅子は一つしかなかったので、ジャンは立ったままルネに向かって話をする。
旅の道中は辛いことの方が多かったが、同時に地方の珍しい文化に触れる機会もあった。
国の南端に近い、海辺の街を訪れた時の話。
南部の国境近くにある、山間の村を訪れた時の話。
そして、のどかな田園風景が広がる田舎の街に立ち寄った時の話。
貴族の令嬢が好みそうな話ではないと思ったがジャンだったが、ルネは実に興味深そうに、ジャンの話に耳を傾けていた。
「……で、そこの村には至るところにブラック・ベリーが実っていてね。
秋に行くと、どこの家でもジャムを作っていたし、野原に生えているのを摘んで食べても、誰も文句を言わなかったよ」
「羨ましいですわ……。
ジャン様は、私の知らない場所のことも、色々と知っておられるのですね」
ルネが、妙に感心した様子で言った。
ジャンにしてみれば下らない話でしかないというのに、何故、この少女はここまで目を輝かせて話を聞けるのか。
そう、ジャンが不思議に思った時、何かがガタガタと揺れるような音がした。
続いて、熱い金属に触れた水が、瞬く間に蒸発してゆくような音が聞こえて来る。
「あっ、しまった!!
薬、火にかけてたのを忘れてた!!」
慌てて鍋を火から外し、こぼれた部分を布でふき取る。
気付いたのが早かったためか、煮詰めすぎて薬が駄目にならなかったのが不幸中の幸いだ。
「す、すみません。
私が変なお願いをしたばっかりに……お父様のお薬が……」
「いや、君のせいじゃないよ。
僕も不注意だったし、君があまりに面白そうに話を聞いてくれていたから、少し調子に乗っていたかもしれないしね」
鍋に残った薬をかき混ぜて、ジャンはそれを冷ましながらルネに告げる。
古靴下を煮詰めたような匂いは相変わらずだったが、今日の分の薬はなんとか煎じ終えた。
「それじゃあ、僕はそろそろ、この薬を君のお父様のところへ持って行くよ。
でも、どうして急に、僕の話を聞きたいなんて言い出したんだい?」
「それは……」
何気なく尋ねたつもりだったが、ルネの顔に一瞬だけ影が射した。
「それは……私を見ても、ジャン様が恐れなかったからです……。
私に初めて会った方は……大抵は、私のことを恐れて近寄ろうとしませんから……」
ルネの赤い瞳が、錆びついた鉄のような色に見えた。
彼女の言わんとしていることは、ジャンにも分かる。
明らかに白すぎる肌と、色の抜け落ちたような髪。
そして、血のような赤い色をした二つの瞳。
生まれつき、そういった姿をしている人間がいることは、ジャンも父の持っていた医学書で読んだことがあった。
先天的に身体が弱く、強すぎる陽の光は返って毒となる。
稀に、食用のウサギにこのような姿をしたものが現れることがあったが、人間で同じような姿をした者を見たのは、ジャンも初めてだった。
恐らく、その特異な容姿から、ルネは長らく他者からの好奇と偏見の眼差しに晒されてきたのだろう。
それが彼女を極端なまでに内向的な性格にし、貴族としての威厳や誇りさえも奪い去ってしまったに違いない。
ジャンが初めてこの屋敷に来た時、彼女はこちらの様子を窺うようにして二階から覗いていた。
これも、見知らぬ相手に怯えていたと考えれば納得が行く。
相手が自分の敵となる者か、それとも味方になる者か。
それを見定めようとしていたのだろう。
「ルネ……って言ったよね。
僕は君のこと、別に怖いとは思わないよ。
むしろ、僕にはとても繊細で綺麗に見える。
その髪も、瞳の色もね」
お世辞ではなく、それはジャンの本心だった。
異端者として扱われ、身内以外には心を開く相手さえも見つけられなかったであろう少女。
彼女の境遇と自分の境遇を重ね合わせ、その悲しみと苦しみに共感したという部分もある。
が、それ以上に、ジャンには目の前にいる少女のことが、純粋に穢れのない存在に映っていた。
他人のことを色眼鏡でしか見ない、故郷の街の人間達とは違う。
その肌の色と同じように、外の穢れた世界を知らず、ガラスのように繊細な心を持っている。
同じ異端者でありながら、不貞の父を持ったジャンとはえらい違いだ。
「あの……ジャン様……」
去り際に、ルネが名残惜しそうにジャンに言ってきた。
「明日も来られるのでしたら……また、お話を聞かせていただけますか?」
「えっ……!?
まあ、僕は別に構わないけど……」
「よかった。
お父様やクロード以外の者とお話するのは久しぶりだったので……今日は、ありがとうございました」
服の裾を摘まみ、ルネは深々とお辞儀をして一礼した。
本来であれば自分の方が目下の存在であるため、ジャンは少々気まずくなる。
が、それでもルネが最後に少しだけ見せた笑顔が、ジャンの心をどこか晴れやかなものにしていたのは事実だった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
夜の帳が空を包み、街と丘を漆黒の闇が覆い隠す。
ジャンの去った後、テオドール伯の屋敷は元の静けさを取り戻していた。
もとより、来客さえ殆どない丘の屋敷である。
使用人の数も今は限られており、重要な仕事は全てクロードがこなしていた。
執事長という職に就いてはいるものの、彼とて後ろで命令ばかり下しているわけではないのだ。
山から吹き下りる風は、丘を抜けて街へと下る。
木々の梢を震わせ、街の窓ガラスを叩いては、冬の訪れを告げる冷たい空気を運んでくる。
その日は珍しく、月の出ていない新月の晩だった。
いつもであれば青白い月明かりが丘を照らしているが、今日はそれさえもない。
暗く深い、影よりも濃い色の闇が、夜半の世界を支配している。
片手に古びたランプを持ったまま、クロードは屋敷の階段を上った。
伯爵を始め、他の者は既に寝静まっている時刻。
足音で寝ている者を起こさないように気をつけつつ、夜の廊下をそっと歩く。
「失礼いたします……」
廊下の一番奥にある部屋の戸を軽く叩き、クロードは呟くようにして言った。
扉の向こうから答えはなかったが、彼は何も言わずにドアの取っ手に手をかけると、それを静かに前に押した。
暗闇の中、ランプの明かりに照らされて、一人の少女の姿が映し出される。
窓辺に佇むその身体は、少し力を入れて抱けば折れてしまわんばかりに細い。
「まだ、起きておられたのですね……お嬢様」
クロードがやってきた部屋。
それは、ルネの部屋に他ならなかった。
音を立てないように注意を払いながら、クロードはランプを持っていない方の手で扉を締める。
深夜、突然の来訪であるにも関わらず、ルネは全く意に介していない様子でクロードを見る。
「ねえ、クロード……」
「なんでしょう?」
「今日、お父様の主治医の方とお話をしましたわ。
あの方、とっても面白い方ですわね」
「ジャン様に会われたのですか?
しかし……珍しいこともあるものですね。
お嬢様が、初めてお会いになった方と、何ら臆することなくお話をされるなどとは……」
「心配してくれているのね、クロード。
でも、私は大丈夫ですわ。
あの方は、他の人とは違う。
とっても優しくて……親切な人でしたわ……」
薄明かりの中、ルネの顔にふっと柔らかな笑顔が浮かんだ。
それを見たクロードは一瞬だけ戸惑うような仕草を見せたものの、すぐにいつもの調子になって切り返す。
「それはなによりです。
ルネ様のお姿を見て、ジャン様が驚かれると思っていましたが……どうやら、私の取り越し苦労だったようですね」
ルネのことを、クロードはジャンに告げていなかった。
告げる必要もないと思っていたし、万が一、ルネが傷つくようなことがあってはならないと考えてのことだった。
もっとも、今のルネの表情を見る限りでは、自分の考え過ぎだったらしい。
ジャンがルネの姿を見て何の偏見も抱かなかったということには驚いたが、クロードとしては、そちらの方が都合もよかった。
「クロード……」
薄明かりの中、ルネが呟くようにして言った。
その声の調子から、クロードはこれから目の前の少女が告げるであろう言葉を悟る。
「喉が……渇きました……」
どこか力の無い、魂の抜けたような声だった。
先ほど、ジャンとの語らいを思い出して、笑顔を浮かべていた少女のものではない。
知らない者が聞けば、これが本当に同じ人間の発している声なのかと疑いたくなるところだろう。
「かしこまりました、お嬢様……」
ルネの言葉に、クロードは何の躊躇いも見せず上着のボタンを外す。
胸元をはだけ、肩口をさらすと、立て膝をつくような形で腰を落とした。
ルネの細く白い手が、露わになったクロードの肩にそっと置かれた。
色白の指が絡みつくようにして肩を押さえ、ルネはクロードの首筋に唇を這わせる。
唇が触れる温かい感触が伝わった瞬間、クロードの首筋に鋭い痛みが走った。
だが、刺す様な痛みは一瞬だけで、すぐに全身の感覚が麻痺してゆくような高揚感が身体を駆け巡る。
自分の身体を流れるものが吸い出されてゆく感覚に身を委ねながら、クロードは事が終わるまで、始終ルネにその身を任せていた。
やがて、ルネが彼の首筋から口を離すと、何も言わずにハンカチを取り出して首元を押さえる。
「渇きは治まりましたか、お嬢様……」
首元に残る微かな痛みを感じながら、クロードはルネの方に向き直って言った。
その言葉に、ルネも無言で頷く。
彼女の口からは、クロードの首から啜ったと思しき鮮血が雫になって垂れており、それが一筋の赤い線を描いていた。
投下終了です。
五話目にして、ようやく二人目のヒロインメインに書けました。
彼女の正体については、また後日ということで……。
>>391 やべぇ、ものすごく好みの展開になってきた。リディかわいいと思ってたらルネもすごくかわいいわ。次が楽しみです
GJ!
書く姿勢だけじゃなく作品の方も批評したいけど
如何せん、読む気がまったく起こらないからなあw
次の作品投下まだかな〜?
血って催吐性あるから飲めないって聞いた(o^∀^o)
そこんとこどーなのよ、誰か教えなさい(`ε´)
そんな知識は、つか、先の展開すらまだ作者の頭にないのに
思いつくまま勢いで、行き当たりばったりに書いているんだから黙ってなさい
>>396 普通の人間なら飲めないと思うが、彼女がヴァンパイアフィリアなら飲めるんじゃない?
んで結局◆m10.xSWAbYって誰?作品でも書いてたわけ?
マサイ族がご馳走として山羊か何かの血を飲んでた気が
401 :
名無しさん@ピンキー:2010/11/22(月) 14:41:26 ID:TEl1mlvG
>>399単なる池沼顔文字目立ちたがり屋の厨二(>Σ<)トリやコテの意味も分かって無い基地害だからスルー推奨
そのとおりナリ〜|( ̄3 ̄)|
スルー推奨ナリ〜(o^∀^o)
さらに付け加えると
好きな食べ物はおっとっとのカレー味ね!(b^ー°)
>>391 週末明けたのに、勘違い野郎がまだ残ってたか。
五話目にしてこれじゃあ、さすがに板違いな話だって他の連中も気づくころだろうな。
やたら長ったらしい文章なだけで、ヤンデレ要素が欠片もない。
いいかげん、ホラー板かオカルト板にでも行けよ。
東方のヤンデレもので面白いの見つけた。
「ルナティック幻想入り」、でググると読めるっす。
◆m10.xSWAbYってニート君なのか?????
そうだすると恥ずかしすぎるだろお前wwwwwwwwwwwwwwwww
>>404 てめえがどこかに行けよクズが
まともな文章も書けないアホが作品を批判するのは百万年早いってことに気付けよ
どうせ、お前なんか作品の一つも書けない低学歴なんでしょ
発散する場所がここにないからと言って、荒らし行為するのは人間のクズ。いや、社会のゴミだな
>>408 感情的になったら負けだぜ
言いたいことはよく分かるが、落ち着けよ
うむ・・・・
>>408 相手にするだけ無駄だよ
それに投下してる書き手さんはもはや気にしてないんじゃない?
荒らしが横行してるんだから中傷されてもはいはいって感じでしょ
まあ結果的に作品も投下され続けてるし荒らしの敗北だろ
所詮クズじゃどう頑張ってもスレは潰せない訳だ
無意味な会話も投下されるとすぐに中断して正常化するんだもの
作品待ちの暇つぶしでツンツンつつかれている程度の扱い
本当は荒らしを怖れているからしつこく「気にしてない」を連発してるんでしょw
帝国は10年スパンで戦略を立ててるから、長い付き合いになりそうだな
SS書くより、ブーたれてるだけの方がよっぽど楽だし
触雷!おもしろかった。ぜひ続けて欲しい。
こんばんわ。今回は19話を投下します。
よろしくお願いします。
「誰かが経由してる……?」
「そうだよ。そう考えれば全てつじつまが合うの」
潤は相変わらず冷たい笑みを浮かべていた。それは誰かさんへの死刑宣告にも見える。
「つじつまって…一体どういうことなんだよ」
「私の携帯にはピリオド一つで登録してある。多分他の人もそう。でも兄さんの携帯にはピリオド二つで入っている」
「だからそれが何なんだよ」
ついイライラしてしまう。ただムカつくからじゃない。
……怖いのだ。潤の言わんとしていることが、その意図が何となく分かってしまうから。
「兄さん、最近アドレス変えた?」
「……変えてない」
「だったら簡単だよ。誰かが兄さんの気が付かない内にアドレスを変えて、誰かさんは兄さんの元のアドレスに変える」
潤は淡々と話す。あまりの急展開に頭がついていかない。そんな俺を尻目に潤は説明を続ける。
「つまりね、誰かが兄さんのアドレスを奪って代わりに私たちとメールしてた、ってことなの」
呆然とする俺に「簡単でしょ」と付け加えて潤は説明を終えた。
つまりどういうことなんだ。俺のこのアドレスは勘違いとかじゃなくて、誰かの偽装工作の結果ってことなのか。
「……待てよ。今の話だと皆のメールはその"誰かさん"経由で来るんだよな」
「そうだよ」
「確かに俺のアドレスを使えばそれは可能かもしれない。でも逆はどうだ?」
「……逆?」
そう、まだ矛盾は残っている。受信に関してはアドレス一つで十分だが送信に関してはそうもいかないはずだ。
「例えばこれは潤のアドレスだよな」
「……確かにそれは私のアドレスだよ」
「でも俺がこの携帯でメールしたら、確かにお前に届くよな」
「ああ、そういうこと。送信も同じだよ。誰かが兄さんのメールを経由して私達に――」
「でも俺は潤のアドレスに送ったんだぞ?そっちは弄られてないんだろ」
そう、送信に関しては俺は相手のアドレスに送っている。この"罠"があるならピリオド二つのアドレスで潤に送られているはず――
「ふふっ、まだ気が付かないの、兄さん?」
「……気が付かない?」
「今の兄さんの携帯はね、恐らく何処に送っても一カ所に送られるように設定されてるの。そしてそれを"誰かさん"が経由して私達に送信する」
「この携帯が……」
そんなこと有り得るのだろうか。だってこれは確かに俺の携帯じゃないのかよ。
「その携帯は偽物だよ。だって――」
潤はそこで言うのを躊躇う。
実は要の携帯の電池パックの裏に潤が印を付けていて、それがその携帯にはない。だから兄が持っている携帯は偽物だ、とは言えない。
ただ潤は分かっている。こんな手の込んだ方法で兄と周りを隔離して兄を虜にしようとするのが、一体誰なのかを。
この情報操作能力と独りになったところを付け入ろうとする性質。間違いなくずっと共にいたあいつの仕業である、と。
「兄さん、最近誰かに携帯を貸したり取られたりした?……一瞬でも、だよ」
「いや、そんなことねぇけど……」
「……そう、とにかく気をつけてね。特に受信メールは"誰かさん"に弄られている可能性が高いから」
「あ、ああ……」
そういうと潤は部屋を出て行った。途端に部屋が静まり返る。
ふと机を見ると開いたままの数学の参考書が目に留まった。そういえば俺、勉強していたんだっけ。それで遥のことを思い出して――
「……遥?」
さっき潤が言っていた。最近携帯を貸したり取られたりしていないか、と。
「……でもあれは一瞬だしな」
そうだ。確か英の屋敷に逃げ出したあの日、俺が床に投げつけた携帯を取ってくれたのは遥じゃなかったか。思い切り投げたのに意外と丈夫だったような――
『その携帯は偽物だよ』
「まさか……」
携帯を見つめる。当たり前だが何の変化もない。ただ今の俺にはこの携帯が妙に恐ろしく思えた。遥が……細工をした……?
「……何でそうなるんだよ。馬鹿馬鹿しい」
そう言いながらも震えている自分がいた。潤も俺も考えすぎているだけなんだ。そうに決まっている。
あんなに笑顔を見せてくれる遥が何で俺にそんなことする必要があるんだよ。
「……もう寝よう」
ベッドの中で何度も否定しようとしても結局疑惑は消えなかった。
潤は自室に戻ると携帯を開いた。そしてメールを送る。勿論相手は――
「次は遥の番、だからね」
自分が言っても効果は薄い。それに兄さんのことだ、絶対に信じないだろう。
大事なのは兄さん自身がこの策に気付いて、春日井遥の本性に絶望することだ。
「待っててね、兄さん。もう少しだから」
全て上手くいっている。予定通りだ。途中で"大和撫子"と"里奈"というイレギュラーも現れたが大した問題ではない。
「……里奈、か」
里奈のことを思うと少し胸が痛む。兄以外を信じて来なかった潤からしてみれば、これは驚くべきことであった。
「……でも進まないと」
けれども潤は決意する。なぜなら一番最初に彼女が好きになったのだから。
二人きりの時、兄だけが彼女の支えだった。潤の思考の中に彼女以外が要の隣に立っていることは有り得ないのだ。
「…………」
しばらく目を閉じた後、潤はゆっくりと送信ボタンを押した。
「はぁはぁ……。何で冬になると体育はマラソンになるんだろうね」
「くそぉ……もっとこう、燃えるような何か激しいスポーツがしたいぜ!」
翌日。
俺達2年4組は体育の授業の為、校庭に来ていた。先程の英と亮介の会話からも分かるようにマラソンの最中である。
空は鉛色に染まり気温もとても低く長ジャージを着ていても肌寒い。
「亮介は無駄に暑苦しいけどな。つーか何で短パン何だよ、死にたい系男子か」
俺と英の少し前を走る亮介は何故か短パンだった。周りを見回しても皆、上下長ジャージで身を守っているというのに、だ。
「本当にもやし君だな要は!寒い時だからこそ短パンになって耐える、これが漢(オトコ)ってもんよ!」
「亮介は元気だよね。要も見習ったら?」
「無茶言うな!凍死する……あ」
少し遠くの方で準備運動をしている集団の中に潤と遥を見つける。どうやら冬は全学年マラソンのようだ。そういえば去年もそうだったしな。
「お、潤だね。おーい、潤!」
「遥も居やがる!遥ぁ!」
二人に大声で呼ばれた潤と遥は半分驚いたように、そして半分恥ずかしそうにこちらを振り返っていた。遥と目が合って手を振ってきたので俺も手を――
『その携帯は偽物だよ』
「っ!?」
どうしても思い出してしまう。結局そのせいで今日は一睡もしていなかった。やはり本人に聞くべきなのだろうか。
「……どうしたの要?遥の方じっと見て」
「い、いや……何でもねぇよ」
鉛色の空を見上げる。今にも雨が降ってきそうで、いっそ振ってきてこの悩みを洗い流して欲しかった。
昼休みも終わり一番睡魔が襲って来る4時間目に最も寝てはいけない黒川先生の科学が入っていた。
教室はまだ5分前だというのに殆どの生徒は席に着いている。そしてコーヒーを一気飲みしたり目薬を点したりして眠気対策をしていた。
「支配もここまで来れば立派な恐怖政治だな……」
しんと静まり返ったこの状態は今の俺にはむしろありがたい。周りとの疎外感を気にする必要がない。
「……はぁ」
しかしここまであからさまに避けられるのは何故なんだろう。ただ会長の影響力だけでここまで疎外されるのか。
いや、この一週間ほど感じていたのはむしろ俺個人への憎悪だった。
……じゃあ俺がクラスの皆に何かしたのか。
「よし、授業を始めるぞ!と、その前に一つ。入って来て良いぞ」
考え事をしていたらいつの間にか黒川先生が来ていたので気を引き締める。
なにやら先生が廊下にいる人物を手招きしている。こんな時期にまさかの転校生か、と教室の皆が少しそわそわし始めていた。
「足元、気をつけてな」
「はい……」
しかし入って来たのは転校生ではなく右足を包帯で巻き松葉杖をついている怪我人だった。
そして最も特徴的なのがポニーテールにした藍色の――
「「「な、撫子っ!!?」」」
何人かの女子が授業中にも関わらず入口付近にいる大和撫子に近寄って行った。
「大丈夫撫子!?」
「交通事故って聞いたけど!?」
「撫子会いたかったよ!」
女子の群れは段々と大きくなっていく。止めようとしていた黒川先生も諦めた様子で、黒板に「自習」とだけ書いて教室を出て行った。
「良かったね、要」
英が撫子の方を見ながら俺に話し掛けてくる。
「これで要はまた彼女持ちに戻っちまうわけだ」
亮介もすぐにこっちに来る。
「亮介、別に大和さんが入院してたって要の彼女であることに変わりはないんだよ?」
「いやぁ、でも実感ってやつが湧かなくてさ。な、要」
「あ、ああ……」
彼女じゃない、そう反論したかったが出来なかった。
撫子が入院してから何度かメールをしたが一通も帰って来なかったし、すっかり嫌われたのではないかとすら思っていた。
でも反論しようとした瞬間撫子と目が合った。いや、彼女がずっと俺を見ていたのかもしれない。
ただ彼女の目は何かを訴えかけるようで思わず黙ってしまった。
「……要、どうかしたの?顔色悪いよ」
「……いや、大丈夫だ」
結局4時間目は撫子と女子達の久々の再開を見ているだけで終わってしまい、俺が話し掛ける機会はなかった。
「大丈夫。トイレくらい一人で行けるから」
「本当に?無理しないでね」
「ありがとう、皆」
教室を出て女子トイレに入る。鏡には頭と右足に包帯を巻いたみすぼらしい自分が写っていた。
「……要君に、話し掛けられなかった」
お礼を言うことから始めればいい。あの時は助けてくれてありがとう、って。要君の背中、すごく落ち着けたって――
「……出来るわけないじゃん。こんな顔で……嫌われてるのに」
教室で目が合った時、彼は明らかに戸惑っていた。それもそうか。入院中メールを何通か送ったけど結局一通も返って来なかったんだし。
嫌われたに決まっている。あんな血だらけのみすぼらしい姿まで見せてしまったのだから。もう嫌われても――
「……泣いているんですか?」
「っ!?」
振り向くとそこには栗色の髪をした綺麗な女の子が立っていた。心配そうにこちらを見上げてくる。
「……別に。顔を洗っていただけだから」
「そうですか」
女の子は微笑んだままあたしに近付いてくる。何だろう、この寒気は。彼女の微笑みの裏には何かがありそうで怖い。
「じゃ、じゃああたし行くから」
「知りたくないんですか」
彼女のはっきりとした口調に思わず立ち止まる。
「な、何を……?」
「決まってるじゃないですか」
女の子はゆっくりとあたしの耳元で囁いた。
「貴女と白川先輩の仲を引き裂いた張本人が誰か、ですよ」
放課後。
結局撫子とはその後も一言も話せず仕舞いだった。携帯を開くと遥からメールが届いており、体育倉庫前に来て欲しいという内容だった。
「一体何の用だ……?」
ふと昨日の潤の言葉が頭を過ぎる。
『……そう、とにかく気をつけてね。特に受信メールは"誰かさん"に弄られている可能性が高いから』
「……やっぱり聞くしかねぇ、か」
信じたくはない。遥がそんなことをしているなんて。それに遥がやっているという確かな証拠もない。だからきっと大丈夫。
どうせ遥のことだ、聞いたら一言「つまらない冗談」とか言って一蹴してくれる。だから大丈夫。
「……よし、行くか」
俺は鞄を持って教室を出た。
季節は冬真っ盛りということもあって体育倉庫前は落ち葉で一杯だった。至る用具に落ち葉がかかっている。
「うわ、このラインカー埋もれてるし」
空はほんの少し衝撃を与えただけで雨が降ってきそうだ。そういえば傘持って来るの忘れたな。俺が帰るまでもってくれよ。
「お待たせ、要」
「おう」
寒さからか頬っぺたが赤くなっている遥が俺に近付いて来た。遥は真っ赤なマフラーを巻いていて白髪と対照的でよく似合っている。
「ゴメンね、こんな所に呼び出したりして」
「いや、それは良いけど何か用事か」
遥は俺の目の前まで来ると深呼吸をする。何だか緊張しているようだった。そして遥は俺を見つめて言った。
「好きです。付き合って下さい」
「……えっと……それって……」
「見つけた」
告白なのか?と聞く前に誰かが口を挟んできた。そいつは瑠璃色のポニーテールを揺らしながらゆっくりと俺達に近付いて来る。
「……今、取り込み中なんだけど」
「くくっ、あははははは!!大丈夫、すぐに終わるからさぁ!」
そう言ってそいつ、撫子は遥に突進して行った。
一瞬だった。撫子が遥に向かって飛び込む。右足を骨折しているらしく、走るといるよりは左足での跳躍といった感じだった。
とにかく次の瞬間には撫子もろとも遥は落ち葉が積もる地面へと崩れ落ちていた。
「お、おいっ!?遥っ!?」
吾に返って慌てて二人に近付く。撫子の右手には紅く濡れたナイフが――
「……嘘……だよな」
そして遥は仰向けに倒れていた。両手で腹部を押さえながら呻いている。両手からは真っ赤な液体が流れ出ていた。
「遥っ!?しっかりしろ!?遥っ!!」
必死に遥に近付いて抱き抱える。見た目通りとても軽かった。遥は苦しそうに息をしている。
「かな……め……」
「遥っ!?喋るな、今病院に――」
「逃がさない!そのハイエナだけは!」
「撫子っ!?」
撫子がまた突進してくる。何とかそれをかわすが足がもつれて遥を抱き抱えたまま倒れてしまった。
「くっ……」
「何で……何で庇うの?要君はあたしの味方なんでしょ」
撫子は虚ろな目をして俺達を見下ろしていた。右手には紅く光るナイフがしっかりと握られている。
「庇う……?意味分かんねぇよ!?遥がお前に何したっていうんだ!」
「したよ……。要君も本当は分かってるんじゃないの?」
「分かってるって……」
『その携帯は偽物だよ』
……まさか。いや、そんなの嘘に決まってる。
「聞いたよ?要君、クラスの皆から避けられてるんだよね。理由、知りたくない?」
「……うるさい」
「あたし、要君に沢山メール送ったんだ。でもきっと一通も届いてないんだよね」
「うるさい……」
「全部ね、全部一人の仕業なんだよ。そこにいる――」
「うるさいっ!!」
吐き気がする。まともに歩けない。早く遥を病院に連れていかないと……。
他のことは一切考えるな、何も考えちゃいけない。
「……かわいそうな要君。すっかり毒されちゃったみたいだね」
「……うるさいって言っただろ」
「そいつの鞄、調べてみたら?それではっきりするでしょ。きっと本物の要君の携帯、持ってるよ」
遥を見つめる。小刻みに震えて今にも死んでしまいそうだ。今すぐにでも病院へ連れて行くべきなのは分かっている。分かっているのだが……。
「……ゴメン、遥。すぐ終わるから」
遥を抱き抱えながら彼女の鞄を開ける。こうしなければ遥を信じられそうにない自分が恥ずかしい。でもこれで遥が無実だと分かれば良いわけだ。
「……あ」
鞄の中を探っていた左手が冷たい何かに触れる。恐る恐る引き上げて見ると、薄ピンクの遥の携帯が――
「……えっ?」
それだけではなかった。遥の携帯のストラップに絡まってもう一つ見覚えのある、いや見覚えどころか俺が普段使っている携帯が出て来た。
「……ふふっ」
「撫子……?」
撫子は虚ろな目でその携帯を見つめている。そして勝ち誇ったかのような笑みを浮かべた。
「やっぱりあった!これでそいつが犯人だって分かったでしょ!?」
携帯を開くと確かにそれは俺の物でアドレスを確認するとピリオドが一つだけだった。そう、これが俺の本物の携帯。
……遥が俺を陥れた張本人だということか。興奮している撫子とは対照的に段々と冷静になりつつある自分がいた。
「……ゴメン、遥。待たせたな。今、病院連れて行くから」
遥をしっかりと抱き抱えて歩き出す。そんな俺の前に撫子が立ちはだかった。
「……撫子、通してくれ」
「か、要君……そいつは要君を陥れようとしたんだよ?」
「……そうだな」
確かに遥は潤や撫子が言っていたように俺の携帯を使って俺を陥れようとしたのかもしれない。
「だったら!」
「でも遥をこんなに追い込んじまったのは、俺の責任でもあるんだ」
「要君の……責任?」
撫子は俺の言葉に戸惑っていた。本当は全速力で横を走り抜ければ良いのかもしれない。でもちゃんと撫子にも伝えないといけないんだ。
「確かに遥のしたことは許されることじゃない。でも……それは俺が遥の気持ちに気が付けなかったからなんだ」
「…………」
「だから俺は遥の側に居てやりたい。……まだ遥の気持ちに返事、してないからさ」
「側に……居て……やりたい……」
撫子は呆然としていた。目は焦点が定まっておらず俺の言葉を反芻している。
「……じゃあ俺、行くよ」
このまま立ち止まっていても仕方ない。とにかく遥を病院に連れて行くことが先決だ。呆然と立ち尽くす撫子の横を通って正門へ向かって歩き出す。
「……どうしたら振り向いてくれるの」
そんな俺の背中に撫子は呟いていた。一瞬振り返りそうになるがそのまま歩き続ける。
「そう……だったら……」
「っ!?」
急に背中が熱くなる。そして叫びそうになる程の痛みが背中を走った。
「……だったら、もう良いや。要君を殺して……あたしも死ぬだけだよ」
「っ……!」
思わず倒れそうになるのを何とか堪える。俺の腕には遥がいるんだ。倒れるわけにはいかない。
「次は両想いだと良いな……」
撫子は俺の目の前に立ってナイフを構えると――
「くうっ……」
「……えっ?」
自分の腹部に向かって思い切り突き立てた。呆然とする俺の目の前で撫子は血を流しながら地面へと倒れる。彼女の血で落ち葉が紅く染まり始めていた。
「撫子っ!?……あ、あれ?」
力が抜けて地面に膝をついてしまった。遥を支えていた両腕も急に痺れてきた。後ろを振り返ると結構な量の血が垂れている。どうやら血を流しすぎたらしい。
「もう……誰も傷付けないって……そう決めたんだけどな……」
最後の力を振り絞って遥をそっと落ち葉の上に寝かせる。
「……畜生……」
もう優のような犠牲者を増やしたくない。そう自分の中で決めたはずだったのに、また繰り返してしまった。
必死に立ち上がろうとするが力が入らない上に意識が朦朧としてくる。そしてそのまま俺の意識は途切れた。
要が倒れてからすぐに潤が物陰から飛び出して兄の手当を始めた。
「……少し体温は低いみたいだけど大丈夫みたいだね」
兄は命に別状はないようだ。昨日の寝不足が祟ったのかもしれない。
とにかく救急車は既に呼んであるから大丈夫だ。潤は一安心した後、他の二人を一瞥した。
「……遥は……殺さない方が良いかな」
ここで死なれると兄の記憶に強く残る可能性が高い。むしろ生かさなければならないのだ。
「全く……けしかけたのは失敗だったかな」
潤は撫子を見ながら呟いた。まさかここまで暴挙に出るとは思わなかったのだ。潤が様子を見に来た時には既に遥が刺されており、動向を見守るしか術がなかった。
まあ彼女にとっては撫子は兄を諦め、遥の工作も兄さんの知るところとなったので結果オーライではある。
「とりあえず……ご苦労様」
サイレンの音が近付く中、遥はぽつりと倒れている撫子に向かって呟いた。
今回はここまでです。読んで下さった方、ありがとうございました。
投下終了します。
JGでした!要さんヤンデレ美少女にモテモテで羨ましい
GJ!!
なんという策略家なんだよ、遥…怖過ぎる
>>424GJ!
やっぱり携帯は遥の仕業か…。これからの展開に期待!
待ってましたのGJ!
撫子は報われないな…そして潤怖すぎだ。
JGとかGJ!!とかGJ!とか……
1人だと思われないための浅知恵、ゴクロー様です
むしろ根拠のない言い掛かりしか出来ない荒らし、ゴクロー様です
おっ
携帯からの書き込みを覚えたねw
おっ
馬鹿なりに反論出来ないことに関してはスルーすることを覚えたねw
潰すまで10年かかるとか無害すぎる
gj 普通に潤の仕業だと思っていた俺涙目w
せっかくだけど“潰れても”10年だよ
たとえ無人の野になったとしても、何度でもスレを立ててあげるから
今スレみたくw
「何度でも蘇るさ」
というのがこのスレの本質
ちと遅いが楽しい作品ありがとう
>>391さん
雰囲気が俺好みで読むのが楽しみです。
10年かけるなら自分の生活何とかしろよ
やっぱり季節の変わり目は頭おかしい奴が多くなるって本当なんだな•••
しかもそんな釣り針じゃ大半の人は釣れないから
もうちょっと煽りの勉強してからきてくれ
ラ・フェ・アンサングランテもリバースもGJでした
>>424 GJです。要が次にどんな行動に出るのか期待!
次の作品投下まだかな〜?
10年…
80歳が寿命だとしても人生の1/8、しかも20代30代の一番いい時を荒らし行為で無駄にするとか…
とても真似できないわ
荒らしはだいたい現実逃避したくて、こうしたいんだよ!職のある俺は勝ち組!
荒らし=就職できない+仕事無い+友達いない+話し掛ける友達いない=人生負け犬組
せっかく落ち着いてきてたのにたった二人の若造のせいで台無しだ
お前ら全員悪いわ。
こんな糞スレを荒らすのなんか創作活動の片手間で充分だろ
次の作品投下まだかな〜?
>>449(b^ー°)の前に必ず半角びっくりマークを入れようね偽物ちゃん!(b^ー°)
物書きのイロハも分かってない素人が乞食に餌を与える見返りに
チヤホヤ煽ててもらっていい気になってるだけのスレじゃないか
まあ、プロの作家の気分を味わえて楽しいんだろうけどさw
見ていて痛々しい
>>453 えっ、それに該当しないスレってあんの?
他スレには上手くて面白いSSも少しはあるもんだけど
ここのは気位ばかり高くてダメだな
横文字のタイトル付けたり、一回一回サブタイトル付けていい気になってるようなのは最悪
文句は金払って言えネット乞食
その考えはおかしい(^_^;)
>>457 こっちはネット接続料を払い、貴重な時間を使って素人の書いた拙いSSを読んでやってんだよ
お前も書き手なら、這いつくばって礼を言うのが筋ってもんじゃないか
他人のお流れでチヤホヤされてるからって、その気になるなよ大天狗様
住民が本当に求めている真打ちは、お前の脱糞してる糞SSじゃねぇよ
※これはスルー検定です
むやみにスレ消費するのはやめようね!
おにいさんとのお約束だぞ!
>>456 どれも他と変わらんけど、タイトルも
面白さは好みの問題だろ
例えばどこのスレよ?
ヤンデレ読みに来てるのにヤンデレじゃないSSが多かった
てのは、ここだけの秘密だぜ
>>461 その書き込みは他のスレにも害を及ぼすから止めとこうぜ。
喧嘩するならこのスレ内で頑張れ。
>>459 はぁ?こちとらROM専だよ池沼
書き手がこんなカス以下のところでわざわざお前の相手をすると
本気で思ってるのか?マジウケルわwwww死ねよクソ馬鹿
ここだけの話
死ねって言って逮捕されたネラーが居たらしい
よくあること
ここだけの話なんてイラネ
>>459 そういう台詞は働ける歳になったら言おうね。
要するに、書き手が誰からも叩かれないような上手いSS書きゃいいって話だろ
自分の文才の無さを棚に上げて、なに言い訳ばっかりしてるんだ
誰からも叩かれたことのない名作なんて世界中探したって1つもねーよ
誰からも見向きもされない作品は星の数ほどあるけどね
>>470 触雷!とかとねかむの話だな、よく分かる
イジメの理論を出すのはどうかと思うけど
叩かれる作品には、やっぱり叩かれるだけの理由があるんだよ
作品の内容か作者の姿勢か、どちらなのかは分からないけど
>>472 荒らしにケチつけられればそれが叩かれる理由ってか?イチャモンなんてどうやったってつけられるんだよ
どこまで歪んだ思考してんだお前はw
なんだかんだでここのスレは平和だよな
少し度が過ぎてる感もするけど漫才みたいに見えるし
それに一役買ってるのが俺ですv(^ω^)v
感謝してね(o^∀^o)
キミは自重してね
↓ ↑ /. : : : : : : : : : \ お
↓ ↑ /.: : : : : : : : : : : : : : ヽ
↓ ↑ ,!::: : : :,-…-…-ミ: : : : :', 前
↓ ↑ {::: : : :i '⌒' '⌒' i: : : : :}
└─┘ {:: : : : | ェェ ェェ |: : : : :} の
. , 、 { : : : :| ,.、 |:: : : :;!
. ヽ ヽ. _ .ヾ: :: :i r‐-ニ-┐ | : : :ノ 事
} >'´.-!、 ゞイ! ヽ 二゙ノ イゞ‐′
| −! \` ー一'´丿 \ だ
ノ ,二!\ \___/ /`丶、
/\ / \ /~ト、 / l \
早速つれたお!
v(^ω^)v
479 :
sengoku38:2010/11/25(木) 02:01:39 ID:0Iqj0eAc
今日も薄暗い部屋にPCのモニターの光が漏れる
「ふはは・・・はは・・あはははははは!」
この人物は“A”名無しなので性別その他は不明だ
「・・に・・・逆らうから・・・こうなるんだ・・・」
Aは不特定多数が利用する巨大掲示板の
ssサイトに毎日の様にレスを付ける
別に小説とかに興味が有るわけではない
Aは物語は書けないし、的確な感想を指摘出来るワケでもない
趣味も特技無い・・それどころか友達も恋人もいない
職場でも空気扱いだ
只社会生活に置いて、いても居無くても
分からない埋もれた不特定多数の一人である
Aが出来る事は掲示板のコミュニティーを荒らし、その成果を悦に成って喜ぶだけだった
最初はその盛況な集団の中で普通にひっそりとAらしい無個性なレスをつけていた
二回〜三回とレスをするうちに空気の読めないAがスレのタブーに触れると
スレの住人が激昂する
最初気の弱いAは落ち込んでいたが、その度に孤独で無力な自分にも小さな世界を混乱させる力があるとゆう快感に酔いしれる感情に気付かさせられるのであった
何も出来無い小さい子供が自分にも“出来るんだ”とばかりに得意げに罪のない蟻を夢中で踏み潰す様に
「あは・・あははは・・ざまあぁ〜・・・・・の・・・るんだ・・・」
ぶっぶっと呟くAの独り言が今日も薄暗い部屋に虚しく響くのであった
はいはい。おりこうたんですね。ほめてあげますよー。
あ〜あ、このスレ荒らしてもチミ達がニートで穀潰しなのは変わりませんよ〜♪
分かりまちたか、おバカたん(・∀・)お?
最近偽物おおいね(^_^;)
本物のせんごく君は鳥つけなしあ!(b^ー°)
なんか、最近朝型になってきました。
第六話投下します。
窓を叩くパラパラという音に、ジャンはベッドの中でゆっくりと目を開けた。
この季節、ジャンのいる国では雨が多くなる。
農家にとっては恵みの雨なのだろうが、街で暮らす人間にはたまらない。
日の出ている時間も徐々に短くなるため、本格的に寒さが身にしみる季節となってくるのだ。
足先の冷たさに、ジャンは目覚めるなり体を起こし、同時に足を毛布の中に引っ込めた。
寒い。
昨日までの晴れていた天気が嘘のようだ。
身体の芯から氷で冷やされているような感覚に、思わず胸の前を両腕で抱えて震え上がった。
「やれやれ……。
どうやら、本格的に冬がやってきたみたいだな。
この寒さで、伯爵の病気が悪化しなければいいけど……」
テオドール伯の病のことを考えると、ジャンは少々気が重くなった。
彼の病気は、薬を飲めば治るようなものではない。
体質を変え、痛みを和らげ、病気の進行を食い止めることはできても、根本から治療する術などありはしない。
昨日、伯爵に処方した薬だけでは、もう間に合わなくなるだろう。
こと、この地方の冬の寒さは厳しく、老齢の伯爵にはこたえるはずだ。
リウマチを患っている者にとって、冷えは大敵である。
ベッドから抜け出して服を着替えると、ジャンは鞄の中身を確認してから部屋を出た。
一応、必要な薬の材料は一通り揃えてある。
当分はこれで持つだろうが、雨が続くようでは買出しにも支障が出る。
やはり、伯爵の力を借りて、どこぞの行商人と直接契約でも結ばねば駄目なのかもしれない。
安定した診察と治療を続けるには、それも仕方がない。
そんなことを考えながら、ジャンは服の襟を正して部屋を出た。
リディは既に起きて朝食の準備をしているようで、三階の廊下はしんと静まり返っていた。
二階へ続く階段を下り、そのまま食堂へと向かう。
部屋の扉を開けると、何やら香ばしい匂いが鼻をくすぐった。
「あっ、おはよう、ジャン。
今日は寒いね」
「ああ。
どうやら、完全に冬がやってきたみたいだね。
僕も寒いのは苦手じゃないけど……昨日と比べても、今朝はちょっと寒過ぎる気がするよ」
「大丈夫、ジャン?
もしかして、風邪とかひいてない?」
「平気だよ。
こう見えても、父さんと一緒に旅していた頃は、野宿するようなこともあったしね。
屋根のある部屋と上等なベッドで眠れるだけでも、僕には十分さ」
強がりではなく、それは本心だった。
リディは心配そうにしていたが、ジャンは自分自身、そこまで身体が弱いとは思っていない。
小さい頃は読書好きでモヤシのような子どもだったが、父と十年も放浪の旅を続ければ、自然と暑さや寒さに対する抵抗力もついていた。
「そうそう。
今日は寒いから、朝から体が温まるものを作っておいたんだよ。
よかったら、出かける前に食べて行かない?」
ジャンを気遣うような表情はそのままに、リディが尋ねた。
先ほどの香ばしい匂いは、やはり朝食の仕込みをしていた際のものだったようだ。
「そうだね。
折角だから、いただこうかな。
でも……今日は雨だし、クロードさんが来るのは昼過ぎだから、それまでは宿にいることになると思うけど……」
「なぁんだ。
まあ、ジャンが喜んでくれるなら、別に私は構わないけどね」
口では少し残念そうに言っているものの、口調そのものは明るかった。
軽快な足音と共に、リディは階下の厨房へと続く階段を下って行く。
宿場の構造上、調理場だけは下の酒場と共有するような形になっていた。
程なくして、リディがスープの入った鍋を持ってきた。
鍋の蓋の隙間からこぼれ出る湯気に混ざって、チーズの焦げたような匂いが漂ってくる。
蓋を開け、レードルでスープを皿に取り分けると、リディはそれをジャンの前に置いた。
「リディ……。
このスープ……」
「うん。
私のお母さんが得意だったチーズスープだよ。
ジャンも、昔、私の家に遊びに来たとき、食べたことがあったよね」
「ああ、覚えているよ。
僕の母さんは、料理はあまり得意じゃなかったからね。
あの時は、本当にリディの家が羨ましく思えた」
「そこまで言われると、ちょっと恥ずかしいかな。
それに、私の料理の腕だって、まだお母さんには及ばないと思うしね」
自分の分のスープをよそいながら、リディは多少の謙遜も込めてそう言った。
この街にいる間だけでも、ジャンには自分の作った美味しい料理を食べてもらいたい。
その一心から、ここ最近の調理の仕込みは一段と力を入れてきた。
メニューはどれも家庭料理の域を出ないものだったが、かけている手間と時間が違う。
それこそ、自分の母の腕には及ばなくとも、ジャンに満足してもらえるだけのものを出しているという自信はあった。
テーブルに備え付けられたバスケットからパンを一切れ取り、ジャンはそれをスープの皿の横に置いた。
目の前に席にリディも座り、二人で少し早目の朝食を始める。
他の宿泊客は未だ目覚めていないのか、食堂にはジャンの他に誰かが来るような気配はなかった。
「ねえ、ジャン。
私の作ったスープ……どうかな?」
「うん、美味しいよ。
昔、リディの家で食べさせてもらったのと、全然変わらない」
「本当?
無理して、お世辞とか言ってない?」
「いや……。
お世辞なんかじゃなくて、普通に美味しいよ。
君がこんなに料理が上手だなんて、今まで知らなかった」
「そ、そうかな……。
別に、普通だと思うけど……」
ジャンは率直に思ったことを述べたつもりだったが、リディは嬉しそうだった。
少し、はにかんだ表情になりながらも、ジャンに誉められたことは満更でもなさそうである。
それから二人は、互いに他愛もない話をしながら簡単に食事を済ませた。
パンとスープだけの朝食だったが、冷え込んだ朝に暖かいスープが食べられたことだけで、ジャンは十分に満足だった。
食器の片付けをしながら、リディがふと窓辺に顔を向ける。
外では未だ大粒の雨が窓ガラスを叩いており、窓に張り付いた雨粒は、そのまま雫となって下に流れ落ちて行く。
「雨、止まないね……」
呟くように、リディが言った。
その顔がどことなく影を帯びているように見えるのは、果たして薄暗い空のせいだけだろうか。
「ジャン。
あなたは、雨って好き?」
食器をまとめたリディがジャンに問う。
何気ない、本当に他愛もない問いかけだったが、なぜかリディの表情には元気がなかった。
「そうだなぁ……。
天気に関して好きとか嫌いとか、あまり考えたことはなかったよ。
少なくとも、農家の人にとっては、この時期の雨は大切みたいだけどね」
「ふうん。
私は雨、あまり好きじゃないな。
雨の日の思い出って、嫌なことしかないから……」
「嫌なこと?」
「うん……。
私のお母さんが亡くなった日も、こんな雨の日だったの。
今日みたいに、冷たい雨の降る日に……お母さん、風邪をこじらせて、そのまま死んじゃったんだ……」
いつしかリディの声は、聞きとることが難しいほどに、か細いものになっていた。
その声に、いつものはつらつとした様子はない。
重たい空気が部屋を包む中、ジャンもリディに何を言ってよいのか躊躇われた。
もし、自分がこの街に残り、今のように医者をやっていたらどうだったか。
病に伏せるリディの母親を救い、彼女に今のような思いをさせずに済んだのではないか。
馬鹿らしい考えだということは、自分でもわかっていた。
別に、自分が街に残っていたからといって、リディの母親の病気を確実に治せたというわけでもない。
しかし、その一方で、別れの言葉さえも告げずに街を去ってしまった自分自身、どこかでリディのことを裏切っていたのではないのかという罪悪感もある。
リディ自身がそんなことを言うとは思えなかったが、今のような顔をされると、やはり後ろめたいものを感じてしまう。
何とも言えぬ気まずい空気が食堂に流れた。
互いに次の言葉を出せなくなり、外から響いてくる雨音だけが、妙に大きな音に感じられた。
「あの……ごめんね、ジャン。
急に、こんな話しちゃって……」
沈黙を破ったのは、リディの方からだった。
この場の空気を気まずくした原因が自分の言葉にあると気付き、さすがに申し訳なさそうに俯いている。
「いや、別に君が気にする必要はないよ。
リディだって、色々と苦労はしたんだろ。
それに……嫌な思い出ってものは、忘れたくてもなかなか忘れられないものだからね」
「ありがとう、ジャン。
でも、私はもう平気だよ。
家族はみんな死んじゃったけど、代わりにジャンが帰って来てくれたんだものね。
だから、今はちょっとだけ、寂しいのも我慢できるかな」
そう言って、リディは無理に笑顔を作るような素振りを見せたが、彼女の言葉にジャンは答えなかった。
いったい、リディは何のつもりで、こんなことを言うのだろう。
思わずジャンは、そんなことを考えながら彼女を見た。
伯爵の病気が快方に向かえば、自分は街を去ってしまうのだ。
それをわかって言っているのだろうか。
やはり、この街に帰って来たのは間違いだったのかもしれない。
今後もリディがこの街で宿場を続けて行くことを考えると、自分はこれ以上、リディに深く関わることは避けるべきなのかもしれない。
階下の厨房に食器を片づけに戻るリディに、ジャンはクロードが迎えに来たら呼ぶように言って食堂を去った。
これから他の宿泊客が朝食のために食堂を訪れることを考えると、この気まずい空気は早めに払拭しておきたい。
それに、下手にリディに同情しすぎて、彼女に妙な依存心を抱かせてしまうのもよくないと思った。
人のいなくなった食堂に、再び静寂が訪れる。
先ほどまでの話声は既になく、あるのは規則的に窓ガラスを叩く、雨の音だけだった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
クロードがジャンのいる宿場を訪れたのは、昼を少し過ぎた辺りのことだった。
最近になって気づいたのだが、彼はいつも寸分狂わぬ時間で宿場にやってくる。
一、二分の誤差はあるものの、迎えの時間が大幅にずれたことなどまったくない。
時間にルーズな者の多い、ジャンの国の人間とはえらい違いだ。
これも一重に、異国から流れてきた者の感覚の違いというやつだろうか。
その日は午前中にすることもなかったので、ジャンは独り部屋の中で、適当に本を読んで暇を潰していた。
とはいえ、仕事のことを完全に忘れたわけではなく、読んでいたのは、例の東洋医学の本である。
本格的に冬が訪れた今、伯爵に処方する次の薬を考えていたのだ。
リディに呼ばれ、ジャンは本を片付けて一階へと降りた。
クロードに案内されるままに馬車に乗り、そのまま伯爵の屋敷に向かう。
もう、この街に来て、かれこれ一週間近くは同じ生活を続けているだろうか。
街を濡らす雨の音に混ざり、馬車を引く馬の蹄の音が聞こえてきた。
時折、水溜りを踏んでいるのか、パシャパシャと何かが跳ねるような音がする。
それ以外は何も聞こえず、雨の街中は不気味なほど静かだった。
もう昼を過ぎているというのに、馬車を包むこの静寂はなんなのだろうか。
単に雨が降っているというだけでは、あまりに説明がつきそうにない。
空気が冷たく感じる原因は、ジャンにもわかっていた。
何のことはない、隣にいるクロードが、あまりに無口で無表情なためだ。
いつもジャンの送迎に現れるものの、その顔は同じ人間として、あまりにも変化に乏しかった。
つい、目の前の男には感情というものがあるのかと、本気で疑いたくなってしまう。
馬車を使えば伯爵の屋敷までは決して遠くはなかったが、ジャンにはそれまでの道中が長く重苦しいものに感じられた。
今朝のリディといい、今日はどうにも気分が滅入る。
リディは雨が嫌いだと言っていたが、このままでは自分も雨嫌いになってしまいそうだ。
ところが、そんなことを考えていたジャンの気持ちを他所に、その日の静寂を破ったのはクロードの方だった。
「ところで、ジャン様……?」
突然名前を呼ばれ、ジャンはしばし驚いた表情でクロードを見つめる。
彼の方から話を振ってくることなど、これまではまったくなかったのだから。
「昨日、ルネお嬢様に会われたようですね」
クロードの口から出た言葉に、ジャンは思わず顔を強張らせた。
ルネ・カルミア・ツェペリン。
テオドール伯の娘である、赤い瞳をした少女。
昨日、ジャンが厨房で薬を煎じている際に現れ、そこで束の間の談笑をした。
まさか、昨日のことで、自分は何か咎められるようなことをしてしまったのか。
特に無礼を働いたつもりはなかったが、それでもやはり不安になる。
無表情な分、何を考えているのか分からないクロードの存在が、更にその不安をかき立てる。
だが、そんなジャンの心配を他所に、クロードは「屋敷に着いたら話があります」と告げただけだった。
それ以上は何も語らず、いつもの無口な執事長に戻る。
その瞳は、既にジャンの方へと向けられてはいない。
クロードは、いったい何を考えて、ジャンにルネとのことを問うたのだろう。
横目に彼の顔を見てみるものの、そこには答えなど書かれてはいない。
今日は朝から、自分の周りを気まずい空気だけが漂っているような気がする。
なんだか自分の目の前まで黒い雲で覆われそうな気分だったが、狭い馬車の中では逃げ場もない。
いつしか馬の足音は、石造りの道を歩くそれから土を踏むそれに変わっていた。
雨は未だ止む気配を見せなかったが、伯爵の屋敷のある丘までは、目と鼻の先まで近づいていた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ジャンが伯爵邸に着いたとき、外はまだ雨が降り止んでいなかった。
屋敷の廊下を歩いている分には雨音も幾分か和らいだように思われたが、ふと窓辺に目を向けると、そこには雨垂れが止まることを知らない滝のように流れ落ちているのが見て取れる。
これでは、むしろ朝方よりも雨が強くなっているのではないか。
そんなことを考えながら、ジャンはクロードに連れられたまま屋敷の廊下を歩いた。
いつもであれば、このまま伯爵の部屋に赴いて往診をし、その後、病状に合わせて薬を煎じる。
もう、かれこれ一週間近く、こんな生活を続けている。
ところが、その日にジャンが連れてこられたのは、果たしてテオドール伯のいる部屋ではなかった。
「どうぞ、こちらへ……」
人目を憚るようにして、クロードがジャンを部屋の中に招き入れる。
決して大き過ぎる部屋ではなかったが、それでもジャンは、案内された部屋が十分に広いものであると感じていた。
品の良い内装品に彩られた部屋の様子が、より一層、その場の空気を高貴なものにしていたからかもしれない。
ガチャリ、という扉の閉まる音だけがして、部屋にはジャンとクロードの二人きりとなった。
相変わらず、クロードは必要以上のことを語ろうとしない。
彼が何を考えているのかが分からないだけに、先ほどから妙な不安にまとわりつかれているような気がしてたまらない。
「あの……この部屋は……?」
たまらず、ジャンがクロードに尋ねた。
これ以上の沈黙を続けることは、心の方が先に悲鳴を上げてしまいそうで怖かった。
「ここは、私の部屋ですよ、ジャン様。
この部屋であれば、人目を憚ることなくお話ができるというものです」
「人目を憚るって……。
何か、僕だけに話さなくちゃいけないことでもあるのかい?」
「ええ。
昨日、ジャン様がお会いになったルネお嬢様ですが……彼女のことについて、少々お話があります」
やはり、そう来たか。
自分の予想が悪い方向に当たってしまったことを感じ、ジャンは思わず指に力を込めて手を握った。
執事長であるクロードが、自分の部屋に客人を直々に呼び出して話をする。
彼の立場から考えれば、これは余程のことだ。
昨日、ルネとは互いに談笑をしただけだったが、やはりどこかで無礼を働いてしまったのか。
この先、自分はどんな断罪を受けることになるのだろう。
そう思って身構えるジャンだったが、クロードの口から出たのは意外な言葉だった。
「では、ジャン様。
単刀直入に申し上げます」
「な、なんだい……?」
「ジャン様には、お嬢様の……ルネ様の話し相手になっていただきたいのです」
「えっ……!?」
あまりのことに、ジャンはしばらく時が止まったような感じがした。
自分の耳を疑ってみたくなったが、クロードは至って真剣な眼差しでこちらを見つめている。
もっとも、目の前の人形のような執事長が、冗談を言うとは間違っても思えないのだが。
「あの……話し相手って……」
クロードの言っていることが上手く呑み込めず、ジャンは言葉を切りながら聞き返した。
「ですから、ジャン様にはお嬢様の話し相手になっていただきたいと……そう、申し上げているのです」
「でも、話し相手って言ってもなぁ……。
見ての通り、僕はしがない旅の医者だ。
テオドール伯の診察のために、この御屋敷に通わせてもらっているだけで……貴族のお嬢様が楽しめるような話なんて、そう知っているような者じゃないよ」
「これは、ご謙遜を。
昨晩、お嬢様はジャン様のことを、いたく気に入られたご様子でした。
見ず知らずの他人に、お嬢様があそこまで心を開くようなことは、滅多にないことなのです。
故に、ジャン様にはお嬢様の、お話し相手になっていただきたいと思った次第なのですが……」
「それはまた、随分と過大評価されたものだね、僕も……。
でも、さっきも言ったけど、僕はあくまで伯爵の病気を治すために訪れた旅の医者さ。
クロードさんが、僕のことをどう思っているかは知らないけれど……あなたの言うお嬢様の話し相手には、やっぱり吊り合わないんじゃないのかい?」
自分のことを誉められて悪い気はしなかったが、それでもジャンは、あえて自分を卑下するようにして言った。
所詮、自分は気まぐれで帰省した旅の医者。
定住の地など求めてはいないし、何よりも自分を追い出したこの街に、そこまで長くいるつもりもない。
他人と深い繋がりを持つこと。
それは、旅の医師である自分には不要な関係だ。
今朝のリディを見ても分かるように、下手な優しさは相手の依存心をかき立てる。
その結果、不幸な別れしか残らないのだとしたら、最初から深い繋がりなど持たない方がよいのだ。
「なるほど。
ジャン様のお考えは、わかりました……」
クロードが、小さな溜息と共にそう言った。
いつもは感情の片鱗さえ見せないだけに、こういった仕草さえも珍しく感じられる。
「では、質問を変えましょうか」
何も言わず、あくまで自分を下に見ることで距離を保とうとするジャンに、それでもクロードは諦めずに尋ねる。
「ジャン様は、お嬢様のお姿を見て……どう思われましたか?」
「ど、どうって……」
「御覧の通り、お嬢様は普通の人間とは、その容姿を大きく異にしておられます。
故に、他の者から好奇の目で見られ、拒絶されることも多かったのです。
心無い者からは、魔女とまで呼ばれたこともありました」
「魔女、か……。
まったく、馬鹿馬鹿しい発想だね。
彼女だって、望んであの姿に生まれたわけじゃないだろうに……」
「ええ、その通りです。
ですが、お嬢様はその体質故に、光に臨むことは決して叶わないのです。
日中の太陽の光は肌を焼き、酷いときは全身に飛火や瘡蓋ができます。
他の者たちが容易につかむことのできる光でさえ、お嬢様には身を焦がす毒でしかないのです」
いつしかクロードの口調は、ややもすると熱を帯びたものに変わっていた。
普段、感情の欠片さえ見せない男だったというのに、そのどこにこれだけの想いを隠していたのかが不思議だった。
クロードの言わんとしていることは、ジャンにも分かる。
ルネが、他者とは異なる容姿で生まれついたが故に、好奇と偏見の目に晒され続けてきたという現実。
物心ついた時から奇異の眼差しを向けられてきたとあっては、その心を貝のように閉ざしてしまうこともまた、至極当然のことだったのだろう。
しかし、だからこそ、そんなルネが自分から心を開こうとした相手を逃したくない。
ルネのことを理解してくれる人間に、彼女の側にいてもらいたい。
その気持ちは、ジャンにもわからないでもない。
「僕は……」
慎重に言葉を選びながら、ジャンは大きく息を吸い込んでクロードに言った。
自分は医者だ。
例えどのような姿で生まれ、どのような瞳や髪の色を持とうとも、それらに偏見を抱くようなことがあってはならない。
それに、自分のせいではないというのに、他者から拒絶され、意味嫌われる辛さは痛いほど知っている。
「僕は……彼女のことを、容姿で判断したりはしないよ。
それが医者としての、人に対する接し方だし……彼女だって、自ら望んで人とは違う姿に生まれてきたわけじゃないんだろうからね」
「なるほど。
それが、あなたの答えというわけですね」
「ああ、そうだよ。
まあ……しいて言えば、僕は彼女のことを、とても美しい人だと思った。
こんなことを言えるような立場じゃないってことは、自分でもわかっているけど……彼女がとても純粋な人だってことは、僕にもわかる」
その場を取り繕うための方便ではなく、これはジャンの本心だった。
全身の色が抜けてしまったかのようなルネの身体は、たしかに知らない者が見たら驚くだろう。
だが、ジャンにはそんなルネのことが、とても純粋で美しいものに思われた。
自分と同じ異端者でありながら、穢れを知らず、一点の曇りもない眼差しを持っている。
下らない、身勝手な幻想だということは、ジャンも十分にわかっていた。
ただ、同じ異端者という立場が奇妙な同族意識を生み、そこに共感することで、自分自身を慰めようとしているのだということも知っていた。
自分がルネに抱いている感情は、結局のところ自分勝手な妄想に過ぎない。
そう思っていたジャンだったが、彼の言葉を聞いたクロードは、どこか安心した様子でジャンに答えた。
「美しい……ですか。
そのようなことを言われたのは、あなたが初めてですよ、ジャン様。
お嬢様を御自分の養女として迎えたテオドール伯でさえ、彼女にそこまでの言葉をかけることはありませんでしたからね」
「養女!?
それじゃあ、ルネ……いや、お嬢様は……」
「ええ。
ジャン様のお考えの通り、御主人様の本当の娘ではございません。
四年前、まだ我々が隣国にいた際、御主人様がご自身の養女にされたのです」
「そうだったのか……」
テオドール伯とルネは、血の繋がりのある親子ではない。
クロードの口から語られた言葉は衝撃的だったが、彼の言葉によって、ジャンの中で疑問に思っていたことが一つ解決した。
伯爵とルネは、父親と娘というには、あまりにも年齢が離れ過ぎている。
母親に当たる人物が屋敷の中にいないこともあり、どうにも奇妙な感じを抱いていたが、養女という関係であればなっとくがゆく。
「四年前……お嬢様は、家族の者と峡谷を馬車で移動している際に、不幸にも落石による事故に遭われました。
その現場に偶然居合わせた私と御主人様が、お嬢様を助け出したのです」
「落石事故、か……。
だったら、彼女の本当のご両親は……」
「ええ。
既に、この世を去られています。
お嬢様も酷い怪我をされていましたが、奇跡的に命を取り留めました。
以後、御主人様は彼女を養女にされ、亡くなられたご両親の代わりに育てておられるのです」
話を続けているうちに、クロードの口調はいつものそれに戻りつつあった。
昔の話をすることで、少しは気も静まったのだろうか。
「御主人様は、ジャン様と同じように、人の容姿に関して偏見を抱くようなことはされません。
だからこそ、身寄りのないお嬢様を、何の躊躇いもなくお引き取りになられたのです。
例え、その髪の色や肌の色、瞳の色が、他の者たちと異なるものであったとしても……」
ジャンに背を向け、窓辺に流れ落ちる雨垂れを見据えながら、どこか遠くを見るような表情でクロードは話し続ける。
人を見た目で判断しないというテオドール伯の考えには、ジャンも共感する部分はあった。
だが、それにしても、クロードが自分を個室に招き入れた理由はなんだろうか。
先ほどから、不思議に思っていたのはそこである。
ルネと伯爵の関係については謎が解けたが、それとは別の疑問がジャンの頭の中に浮かんできた。
ルネについての話をするのであれば、別に移動中の馬車の中でもよかったではないか。
確かに聞き手を選ぶような話かもしれないが、別に人目を憚る必要があるとは思えない。
「あの……クロードさん。
話はわかりましたけど……それなら、どうして僕を、わざわざこんな個室に呼んだんですか?
話をするだけなら、別に馬車の中でもよかった気がしますけど」
「そうですね。
確かに、御主人様とお嬢様の関係をお話するだけであれば、それで済んだでしょう」
クロードが、どこか意味ありげな口調でジャンに告げた。
まだ、こちらには伝えたいことがある。
そう言わんばかりの表情で、無言の圧力をかけてくる。
「ですが、お嬢様のお話し相手になっていただくのであれば、ジャン様にも知っておいていただきたいことがあるのです。
そして、それは……なぜ、私がジャン様に、このようなお願いをしたのかという理由でもあります」
「知っておいて欲しいこと?
なんだい、それは……?」
「口でお伝えするよりも、お見せした方が早いでしょう。
医師であらせられるジャン様であれば、私も抵抗なく秘密をお話できます故に……」
そう言うと、クロードはジャンの方に向き直り、徐に自分の服についたボタンに手をかけた。
何事かと思うジャンではあったが、クロードはそんな彼に構うことなく、己の着ている服のボタンを外してゆく。
脱ぎ去った黒い燕尾服を椅子にかけると、今度はその下に着ていた服のボタンにも手をかけた。
投下終了です。
一番最初のやつ、タイトル入れ忘れました。
やはり、朝の慌ただしい時間に投下するのはよくないのか……。
とりあえず、今日も仕事行ってきます。
次の投下は週末にでも……。
こんな風に長々と自分語りするから作家気取りだって揶揄されるのに
ローカルルールをよく読めや
495 :
sengoku38:2010/11/25(木) 09:21:04 ID:0Iqj0eAc
>>493GJ
>>494はいはい。おりこうたんですね。
作者を腐しても 坊やが屑でニートで
友達がいない事実はかわりまちぇんよ〜〜
今日も一日中ネットに粘着でちゅか〜〜
気持ち悪いでちゅね〜〜w
>>493 GJ
悪い流れの豚切りご苦労さん
>>494 俺はルール知ってるぜ、お前ら知らないの?(キリッ
とか気取っても別にかっこよくはないw
497 :
名無しさん@ピンキー:2010/11/25(木) 10:30:35 ID:ag2tbqTT
499 :
名無しさん@ピンキー:2010/11/25(木) 12:35:51 ID:YMOj6XZC
やめましょうよ。
投下後は待ってたかのように毎回叩く奴が出てくるな
>>493 GJです
俺はこの話すごい好きだしこの作者さんの過去のSSも秀逸だと思ってます
これからも投下待ってます
>>493 GJです
雰囲気が凄く好みです
スレの空気が悪い中毎度投下ご苦労様です
次回も楽しみにしてますね
まったく魅力のないキャラに、全然感情移入できない舞台設定
つまらない話を下手くそな文章で読まされるのは最高に辛いな
単発でチラホラ付いてるGJが、余りにも見え透いていて痛々しい
>>503 自分に文才が無いからって嫉妬しちゃうなんて…かわいちょうでちゅねぇwww慰めてあげまちょうかぁ?www
>>501 >>502 そもそも朝のあんな時間に、普通の社会人が呑気に駄文投下しているのがおかしいと、いいかげんに気づいたら?
一般のサラリーマンなら、とっくに会社に出社して朝礼に出ている時間だろうに……。
キモオタニートが必至こいて自分の身分を隠そうとしているのが必至だなw
どうせ朝までグダグダとネットサーフィンして、寝る前に思い出したように脱糞して行ってるだけの癖に……。
見え透いた嘘と小学生の書いた作文以下の文章を考えている暇あったら、まずはちゃんと仕事して、社会に貢献しろよ。
俺の公平なジャッジによると評論家>お前らの構図だぞw
悔しさに顔真っ赤にしてリアル叩きなんかして……サムッ(^_^;)
荒らし同士なれ合ってるのさ
次の作品投下まだかな〜?
(・w・;)公平なジャッジて言ってるし……内容批判されてんなら内容の擁護しなさいよ(^_^;)
>>505 サービス業関係者なら、朝は接客マニュアルでも読みながら発声練習でもしとれ!!
公安職なら、税金の無駄遣いせずに、少しはまともな仕事せい!!
そもそも朝一の脱糞投下なんて、真人間のやることじゃねえだろ?
作家気取りのカスニートなんざ、擁護する価値もないぜw
513 :
名無しさん@ピンキー:2010/11/25(木) 21:15:08 ID:ag2tbqTT
G&J
アレな人はスルーして投下を待つべし
, -─-、
/ \
l彡 ミ | まあまあ
ぐ | l |
ぐ る | r──ァ l__ ∩2z、
る ん _ - | l__ノ / ― ニ二./ /
十 ん ヽ____ノ /`/
, ' _ l´ '⌒ヽ-‐ / / } } +
/ / / リ | | / ノ
C、/ / ╋ / | |/ / //
& \____/ / ノ/ _/―''
⌒ヽ-、__/  ̄ ̄ ̄`ヽ '´ / 十
/  ̄ ̄`ー- ...,,_*__,/| / +
/ ノ {= | |
+ ∠ム-' ノ,ィi、ヽ、
ミ`ー‐、
`⌒丶、'ー-、_ + 十
 ̄\―ヽ._ 二_‐-
\ \  ̄ ‐-  ̄二二_ ―_,r'⌒ヽー、
 ̄\ ̄ \‐- ╋__..ニ -―― ´ ̄ __... -―一┘
+ ニニ ー--\ ⌒Y´ ̄ `丶 __,. -‐二´  ̄ ― +
 ̄\ ! =,. -‐ 二_
_ ヽ.._ ノ
 ̄ 〉 ー- ノ三二 +
十  ̄―/ ,' /二  ̄ _ 落ち着いて
ニー/⌒∨ / 二/ /⌒'l  ̄
_ / l /二 / ,イ |二_
/ /| / .ノ 〈. ′ / | _|__ ╋
 ̄_/ _/_ヽ_, .__,/ | |_
彡ニ ,ノ __i´ ヽ _ | |───
+ `⌒  ̄| | | |__
| | 二 | |二
| | | |
ヽ___ノ 〈__ 三ミ +
あからさまな煽てに簡単に乗っちゃってる作者が可哀相
スレの雰囲気を良くしようという住民がGJ付けているだけなのにね
本当はまともに読んでいる奴なんて誰もいないんだよ
まあ、ピエロには哀愁が必要だと言えばそれまでだけど
そのおめでたい頭で10年スレ立て奴隷として頑張って欲しい。
521 :
sengoku38:2010/11/26(金) 11:39:15 ID:vcR0GGtX
頭を冷やしなさい
空白をみて叩く事の愚かしさをこの話題に反応して投下を遠ざける事のバカバカしさを認識しなさい
522 :
名無しさん@ピンキー:2010/11/26(金) 12:29:09 ID:HVJ8EBh1
sengoku38wwwwwwwwwwwwwww
作者だって人間なんだから、ピエロ扱いされたら悪態の一つも吐きたくなるだろうよ
∨
___ _
/ ____ヽ /  ̄  ̄ \
| | /, −、, -、l /、 ヽ きみ頭だいじょうぶ?
| _| -|○ | ○|| |・ |―-、 |
, ―-、 (6 _ー っ-´、} q -´ 二 ヽ |
| -⊂) \ ヽ_  ̄ ̄ノノ ノ_ ー | |
| ̄ ̄|/ (_ ∪ ̄ / 、 \ \. ̄` | /
ヽ ` ,.|  ̄ | | O===== |
`− ´ | | _| / |
仕事の疲れをここで爆発させるとはw
愚かな愚者ばっかだなw
こんな大人にはなりたくないと思う中学生からでしたw
>愚かな愚者
>愚かな愚者
>愚かな愚者
釣り針ちいせぇな( ̄∀ ̄)ププッ
>>527 せっかくコテ名乗ってるんだから何か書いてみない?
SS書くのって楽しいよ。
>>528 コテは皆文才0っていうか、ダメ人間に何やらせてもダメなもんはダメだべ
>>525 ここは十八禁だぜ。
中学生は、グラビア水着の写真でも見てオナニーでもしてなさいw
>>528 コテつけてる連中なんて、自己顕示欲強いだけのナルシストだろ?
しかも、こんなちっぽけな場所でしか、それを出せないという・・・。
そんなやつに、また糞みたいな駄文を投下されてもねぇ・・・。
ニョホホ( ̄∀ ̄)何とでも言ってクレ
実はこのスレに完結作品を持ってます|( ̄3 ̄)|マジだぴょん
>>531正直冷静さ保ってるから不快感少ないねw
顔文字多いけどw
後は乙!!!まあこれを叩いてストレス解消しといてくださいよw
>>528 書いてる本人だけが楽しんでるだけで、読まされる方は結構辛いんだよ
下手の横好きって奴ほど迷惑なものもないな
◆m10.xSWAbYは 自作自演のプロだぞ
受け入れたら最後
最後も何ももうこんなクズが住み着いた時点でこのスレは終わりだよ
たまには新作の短編を読みたい…
539 :
sengoku38:2010/11/27(土) 01:35:56 ID:tGnXm+42
職人を叩いてる人へ・・・それで叩いて君自身は幸せに成るのかね?
自演もしくは煽られてる人へ・・・それでスレが過疎って君達は満足かね?
自分自身の愚かさに気づかぬ者は何時までも愚かなままであるーー言者忘却
>>531 じゃ、そんときのトリップつけて
>>534 何で読まなきゃいけないみたいな義務感を覚えてるんだよ
>>540今も別スレでやっとるけん、それはできんとばい(ノ△T)
次の作品投下まだかな〜?
202 名前: ◆ UDPETPayJA 2010/11/27(土) 00:44:48 ID:VEHMP8H2O
規制が解けません。
こちらに13話投下させていただきます。
203 名前: 天使のような悪魔たち 第13話 ◆ UDPETPayJA 2010/11/27(土) 00:51:34 ID:8HvnfPjAO
「メイド服が欲しいだぁ?何言ってやがる。」
と、語尾を荒げながら言ったのは瀬野だ。
「ちょっと神坂くん、いくらうちの兄さんが変態のバカでも、メイド服はさすがに持ってないでしょ。」
「まあ、な。いくら瀬野が変態でバカでストーカーで露出狂でも、持ってないだろうな。」
「おい、好き勝手言ってくれるなおまえら!」
露出狂とはずいぶんとかけ離れているのに、露出狂と言うのは単なるボケ、
という事を瀬野は察してくれなかったようだ。
だが俺は瀬野を無視して話を続ける。
「瀬野は持ってなくても、ファンクラブの連中なら誰かツテがあるかもしれない。
おい瀬野、ちょっと探してくれないか?」
「命令すんな!第一、文化祭は俺らには関係ないだろうが!」
「まあ待て瀬野。もちろんタダとは言わないさ。」
この交渉なら、瀬野はもちろんファンクラブの連中もノってくるはず。
むしろ、持ってなくてもメイド服を調達してくるだろう、という自信が俺にはあった。
「………一週間以内にメイド服をうちのクラスの女子の分用意してくれたら、
結意にもメイド服を着させてやる。」
「よし、乗った!」
こいつ、やはりバカだ。
速攻で携帯を出し、仲間内に連絡網を回しているらしい瀬野。
それを尻目に、俺と穂坂は小声で会話をした。
(ちょっと、神坂くん。大丈夫なの?)
(大丈夫だ。こいつは結意のためなら何でもするからな。)
(まあ…確かに、ね。というか神坂くんは、織原さんの事避けてたと記憶してるけど?)
(うーん、いろいろあって、ね。俺達付き合うことになったの。)
(……………………そう。)
詳しい説明をするのはやめておいた。
穂坂のような一般人には、あの事件の顛末を話したって、信じないだろうから。
だが、「そう」と呟いた穂坂の声色が、いやに冷たいような気がした。
「………私、そろそろ帰るわね。メイド服の心配はいらないみたいだし。」
かと思うと、穂坂は急に帰る、などと言い出した。
…気分を害しているのは、見てすぐわかった。
やはり、穂坂は結意を毛嫌いしていたようだ。
まあ色んな意味で問題児だからな、結意は。
「お、送ってくぞ吉良。」
「あなたみたいな変態の手を借りなくても帰れますッ!」
「な…なんか機嫌悪くね?」
そう言って穂坂はさっさと歩を早めていってしまった。
「わりぃ、なんか心配だから後追ってくわ。…メイド服の件は、任せとけ。」
「頼んだぜ、瀬野。」
瀬野も慌てて穂坂のあとをついていった。
結局、俺一人だけがぽつりと街中に残されてしまったのだ。…ちくしょー!
仕方ない…今からでも結意の見舞いに行くとしよう。
もともと俺は、携帯を買ったらその足で見舞いに行くつもりだったのだ。
余計な用事がなくなった分、好都合というものだ。
204 名前: 天使のような悪魔たち 第13話 ◆ UDPETPayJA 2010/11/27(土) 00:54:37 ID:5raIXZYwO
* * * * *
市内病院−−−−−
結意が運び込まれたのは、佐橋の友人の知り合いが勤めている病院だったらしい。
かつて佐橋も、ここでお世話になったのだと、以前聞かされた。
その知人とやらのお陰なのか、腹部を刃物で刺されるという、
明らかに事件性を匂わせる傷だったのに大騒ぎにはならなかった。
その結意は、二階の病室で入院している。病室には他に誰もおらず、とても静かなもんだった。
俺は病室のドアを軽く二回ノックしてから、中に入った。
「…すぅ……くぅ………むにぁ……」
なんとも可愛らしい寝息がかすかに聞こえてきた。
ベッドに近づいてみると、布団がややはだけ、結意は赤ん坊のように丸まって眠っている。
「ちくしょー………悔しいけど、やっぱ可愛いなこいつ。」
そう、喋れば変態だが、こうして眠ってれば美少女なんだ。それも、かなりハイレベルの。
俺は何となく、無防備に眠る結意のほっぺたをつねってみた。
「んっ……ひゅぅ……」
ぴくりともしない。どんだけ深く眠ってるんだこいつは。…つか、やわらけぇ。
「んにゃ……あひゅはふん……らめらよぉ……」
「!?」
今、俺の名前呼んだ!?
いや…結意は眠ったままだ。…すると、寝言か。…どんな夢見てんだか。
しかし、悪い気はしない。夢の中でさえ想われてるなんて、意外と嬉しいもんだ。
「もぉ………あひゅはくんのえっひ……♪」
…前言撤回。夢の中でさえナニされてんだかわかったもんじゃねえ。
とは言え、外は大分薄暗い。俺まで少し眠たくなってきた。
…どうせ家には誰もいないんだ。少しだけ、ここで寝かせてもらおう。
俺はそばにあった椅子に腰掛け、ベッドに突っ伏して、目を閉じた。
205 名前: 天使のような悪魔たち 第13話 ◆ UDPETPayJA 2010/11/27(土) 00:56:48 ID:VEHMP8H2O
* * * * *
薄暗い。いや、漆黒の空間が視界に広がる。
夜の星さえ見えず、足を付けている地面すら、黒。
まるで暗闇に放り出され、さ迷っているような錯覚を覚えた。
もちろん、こんな空間は現実では有り得ないだろう。俺はこれが夢である、ということを自覚した。
それにしても、ここはなんて異質な場所なんだ。一歩踏み出そうにも、足が地面に飲み込まれるような錯覚がして、まともに動けない。
一切の光が射さない空間。それがこんなにも不気味だなんて。
『くくく………悪いね、こんな場所まで呼んで。』
女性の声がした。だけど、どっちから聞こえたのか、その判別がつかない。
『ああ、無理に探さなくていいよ。見つけるのは無理だろうからね。僕が君の傍に行くよ。
この場所はもう慣れたからね。』
言うと、女性は確かに俺の真正面に現れた。何故か、自分の体すら目視できないのに、
その女性の姿だけははっきりと映った。
『初めまして。僕は灰谷 瞳と言います。
今日は君にひとつ、教えておかなければいけない事があるんだ。』
『あんた……なぜ』
何故、灰谷と名乗った女性は、姉ちゃんや明日香にそっくりなんだ。
唯一違う点と言えば、二人よりは幾分か成長していて、ある程度成熟した女性の姿だという部分だけだ。
『…その理由は、今は教えられないね。残念ながら時間が限られているんだよ。
今回は、僕の話を聞いてほしい。大丈夫、いずれ話すからね。』
『あ…ああ。』
ん?俺今、喋ったか?
『言わなくてもわかるさ。君の言いたい事はね。さて、本題に入ろうか。
亜朱架のいた研究所から、刺客が送り込まれた。
近いうち、君達のもとへ現れるだろう。用心することだ。』
『だ、誰だよ刺客って!』
『僕にはわからない。ただ、亜朱架はこの事を知っている。"後始末をつける"と言っていただろう?』
『…どこまで、知ってるんだ。』
『知ってるのはそれだけだよ。…では、またの機会に。そろそろ眠り姫がお目ざめだよ?』
灰谷と名乗った女性は、言いたいことだけ言うと、再び宵闇に消えていった。
同時に、俺の平衡感覚が失われる。灰谷という"目印"をなくした事で、一気に感覚が狂ったようだ。
『う…うあぁぁぁぁぁぁ!』
落とし穴に吸い込まれる様な錯覚は、俺の(夢の中での)意識を奪い去った。
206 名前: 天使のような悪魔たち 第13話 ◆ UDPETPayJA 2010/11/27(土) 01:00:06 ID:VEHMP8H2O
* * * * *
「………かくn……飛鳥くん!大丈夫!?」
ぐらぐらと体を揺さぶられて、俺は目を覚ました。
「あれ……結意?ここは…」
「もぉ……心配したよぉ…すごくうなされてたんだよ…?」
結意はベッドの上にちょこん、と正座して、俺を涙目で見ていた。
「はは…何泣いてんだよ。大丈夫、俺はちゃんと、ここにいっからよ。」
少し気だるい体に鞭打ち、俺もベッドの上に腰掛け、結意と並んだ。
強がってはみたものの、頭がふらふらする。夢を見てこんなに疲れたのは、生まれて初めてだ。
「結意。わりぃ、ちょっと肩貸して…」俺は隣に座る結意の肩に、頭をもたげた。
「ひゃっ!?」
「変な声出すな。…ったく、ほんと………やわらけー。」
あ…ひとつ発見。こうしていると、恐ろしく幸せな気分になる。
「………ばか。」
「ん…?
「私だって………ずっと寂しかったんだよ?でも、また嫌われるのが怖くて…
頭では「そんなことない」ってわかってても、心のどこかで、怖がってるの…!
だからずっと我慢してたのに…こんなに近くにいたら我慢できないよぉ………ぐすっ」
「結意…」
「ごめんね……嫌いにならないでね……。」
結意は俺を半ば突き飛ばすようにベッドに押し倒した。
そのまま、覆いかぶさるように、マウントポジションをとった。
「飛鳥くんは動かなくていいからね。」
「馬鹿。傷口開くかもしんねーぞ。」
「それでもいいよ。……もう、自分でも止めらんない。」
口調が、雰囲気が少し、以前とは変わったような気がする。…いや、これが結意の本質なのか?
俺に見放される事をひどく怖がり、今もこうして、俺を無理矢理犯そうとしている。
別に、振りほどこうと思えばできるのだが。
俺の意思を聞かずに一方的に押し倒すのは、ぱっと見て勇気あるように思える。
だけどその実、勇気がないからこうせざるを得ないのかもしれない。
結意は壊れ物を扱うようにそっと、俺の頬に手を触れ、そっと唇を重ねてきた。
牛乳を舐め取らんとする仔犬さながらに、必死に舌を絡めてくる。
「んっ…っは、ぴちゃ……じゅる……」
咥内をなぶられる度に、背筋がぞくり、とざわつき、身体の芯から熱を持つ感覚を覚える。
何もするな、という方が無理だ。媚薬並にタチが悪い。
「ぷは……飛鳥くんも、元気になったね。」
結意は舌を出しながら、妖艶な笑みを浮かべた。
その舌先からは唾液が糸を引き、いやらしさをより一層引き立てる。
「そう言えば以前、"男の子が好き"とか言ってたよね。…お尻、試してみる?」
「バカ、あれは嘘に決まってんだろ……。ヤローなんかより、結意の方が1000倍いいさ。」
「あはっ…冗談だよ。でも、シタくなったら言ってね。ちゃんと準備しとくから。」
結意は冗談を交えながらも、パジャマのズボンを下ろした。
…既に純白の下着は、水分でひたひたになっているのが見てわかる。
結意は股下の部分をずらし、俺の手をとり、その指を一本、自らのナカへ導いた。
207 名前: 天使のような悪魔たち 第13話 ◆ UDPETPayJA 2010/11/27(土) 01:05:47 ID:ndQabWYgO
「すげ………熱い。」
「あん…飛鳥くんの…ゆ…びぃ…♪」
俺の指を使って秘裂を弄りながら、器用にも片手で俺のズボンのベルトを外し、チャックを下げた。
指先で下着の窓を開き、俺の愚弟を外気にさらけ出す。…ホントに器用だな。
「えへへ…前よりおっきいね。」
「…なんだかんだ、十日ぐらい溜まってるからな。」
「じゃあ…いっぱい濃いのちょうだい?」
結意は俺の指を抜くと、俺のモノをしっかり掴んだまま跨がった。
先端が、入口に擦りつけられる。その刺激だけで、限界を迎えてしまいそうだ。
「いくよ………うっ、あ、ぁっ」
結意は入口で固定し、一気にすとん、と腰を落とした。
じゅぷり、と粘着質の音を立て、俺のモノは根元まであっさり飲み込まれた。
「ふぁぁ、あっ、にゃあぁぁぁぁん!」
「くっ………声、抑えろよ…」
にゃあん…って、猫かよ。などという余裕も俺にはなかった。
結意はすぐに激しく腰を振り始めた。肉と肉がぶつかり合う音は、水音を若干含む。
肉壷の奥の奥、子宮口にがつがつ当たる感覚がした。
「だ、だって、これ、すごくいいよぉ………ひぁ、あん、あんっ!」
歯をがちがち震わせ、すっかり蕩けきった顔をして結意は、さらにペースを上げた。
結意の自慢の巨峰が、ぶるんぶるん震える。
…本気で、傷口開くんじゃねえかと心配になってきたが。
それよりも、俺もいつ限界を迎えてもおかしくなかった。むしろ、必死で堪えている状態だ。
気を抜けば、二秒と保たない。
だって仕方ないだろう?結意とセックスするのは、十日ぶりなんだから。
セックスはおろか、自己処理すらしてなかったんだから。
「らめぇ…こし…とまんないよぉ……ま、もう…わらひ……」
つうか、無理だ。気持ち良すぎる。
「ごめん…結意、俺もう…保たない…っ!」
「うんっ!いいよっ、一緒にぃっ…ふぁ、イこっ!?」
「結意…ゆいぃ……うぁっ…!」
「ひっ−−−!?」
どくん、どくん、と俺の相棒が脈打つ。それは、結意のナカに、溜め込まれた欲情が一気に放たれた事を意味していた。
「…ごめ、ん…俺、早っ……」
俺は前回よりもはるかに早く限界を迎えてしまったことを詫びようとした。
だが結意は、
「んにゃ、あぁぁぁぁぁん!」
ここが病院であることを忘れたかのように、絶頂しながら喘ぎ叫んだ。
「バカ…声…」と俺は促してみるが、結意はベッドに手をつき、肩で息をしながら余韻に浸っている。
時折、身体をぶるっ、と震わせているのは、小刻みに絶頂が続いているからだろう。
実際、結意の膣壁は俺をこれでもか、と締め付け、最後の一滴まで搾り取らんと蠢いている。
「あひゅか…くん……もう…はなさない…から…ね…」
虚ろな瞳で俺を見据えて一言いうと、結意の両手から力が抜け、重力に従って俺の胸板にダイブしてきた。
「…こし…ちから、はいんなぃ…」
「前も同じ事言ってたよな…。」
二人揃って、ぐったりしていた。これから後始末をしなきゃいけないし、
ベッドシーツを交換してもらって、気まずい雰囲気になるのが目に見えているのに。
…もうどうでもいい。今はこの幸せな時間を満喫していたい。
「俺だって……離したくねえよ…。」
俺はもう、この天使から離れられないんだろう。
208 名前: ◆ UDPETPayJA 2010/11/27(土) 01:10:18 ID:iYRj63J+O
短いですがエロパート入りました。
今回はここまでです。
552 :
ナカンダカリ:2010/11/27(土) 11:01:28 ID:/CM+wybm
>>551お疲れさん。
おれも、投下したいんだけど叩かれるかなぁ?
ここは駄文を許す雰囲気?それとも逆?
>>543 GJ!!
ヒャッハー!!久し振りの投下だー!
わざとらしいはしゃぎっぷりが白々しくて、余計に作者の哀れを誘うなあ
可哀想だから俺もGJあげようかな
>>551 GJ!!
病み全開の娘もいいけど、たまにはこういう甘いのもいいね。
>>552 許すも許さないも、ここはもともと趣味を同じくする人達が妄想を書き綴るためのスレですよ。
テンプレに違反してなければ、基本OK。
完成次第、どんどん投下すればいいんですよ。
叩く事しかできない人間は、他人の楽しみをぶち壊すことでしか優越感を感じられないアホです。
>>554 作者だけでなく支援者まで叩くとは、君はいったい何様のつもりかね?
それも、毎日毎日、まあ飽きもせずに……。
俺から言わせてもらえば、あんたのその行動の方が、よっぽど哀れだよ。
gj
誰も転載なんか依頼してねぇだろうが
マルチまがいの行為は荒らしだぞ
559 :
sengoku:2010/11/27(土) 14:44:46 ID:tGnXm+42
>>558哀れな人だ・・・
みんなこの可哀想な人を慰めてあげよう!
558に祝福を・・
評論家サンの一人勝ちですね!(b^ー°)
あ、一人だけ勝ったと思い込んでる事ですヨ( ̄∀ ̄)
破綻した主張をムリヤリ通そうとしてんのがミエミエでサムイわ
562 :
sengoku38:2010/11/27(土) 15:22:24 ID:tGnXm+42
>>561彼を責めてはいけない・・・
弱者には優しくしなさいって小学校で習っただろう?
>>562お前馬鹿なの?
優しく諭したらコイツは消えんのかwめでてーなてめー
次の作品投下まだかな〜?
>>556 このスレは、自分の自慰行為を他人に見てもらいたい変態と、他人の自慰行為を見ることでしか満足できない変態の巣窟ってことだな。
よくわかったぜw
で、そんなスレに君は何故いるんだ とgdgd続きそうだな
>>558 今までも、依頼の有無に関係なく転載は行われていましたよ。
テンプレにも違反していないし、マルチまがいの行為と結びつける批判も的を得ていませんね。
そもそも、転載か否かに関係なく、投下そのものを否定するのはスレの存在そのものを否定することでしょうが。
はっきり言って、その行為の方が十分に荒らし。
どうしてもスレの存在を否定したいのなら、アンチスレにでも行くか、自分でアンチスレ立てなさいな。
スレが荒れるから我慢してるだろうけど、無断転載された書き手はハラワタが煮えくりかえってるよ
それに投下を否定してるんじゃなくて、いい作品を待っているだけなの
どうでもいいけど、的なんか得るなよ
本人はかっこいいこと言ったつもりだけに、大笑いされてるよ
じゃあなぜ向こうに投下したのか?
規制されてるからじゃないのか?
無断転載してほしくないんだったら規制解けるまで待ったほうがいいよな
駄作と思っても他人にとっては良作であることもある。
評価できないと思うなら読まなきゃいい。
>>1も守れないID:3og6iNZhの方が荒らし。
言うまでもないんだろうけどな。
じゃあなぜ規制が解けるまで待たなかったのか?
一刻も早くチヤホヤされたかったからじゃないのか?
まあ、本当のとこ転載されるのを望んでのことだろうけどw
あっちに投下しても誰も読んでくれないからなぁ
自称大文豪先生様としては辛いもんねぇ
>>568 前々からずっと思っていたのだが、あなたには読心術でもあるのかね?
ほぼ全てのGJに対して白々しいだの何だのと言っているが、GJと書き込んだ人間の本心がリアルタイムで読めるとでも?
ネットを通じて他人の心が読めたら、そりゃ超能力者だ。
それ以外にも、勝手に書き手のハラワタが煮えくりかえっていると言ってみたり、住人の全員が作者を見下しているように言ってみたり……。
大笑いしているのも、あなた一人でしょう?
他人の心を勝手に代弁する前に、なぜそうまで言い切れるのか、根拠の一つでも挙げてみなさいよ。
落ち着け
安価ミスってるぞ
>>575 申し訳ない。
しばらく頭を冷やしてこよう……。
>>574 読心術はなくても、人の心理状態くらいは読めるだろう
根拠を要求してるようだけど、例えば今の君は
>>マルチまがいの行為と結びつける批判も的を得ていませんね。
などと初歩的な文章ミスをしたことを揶揄され、羞恥心にまみれて我を忘れるほど怒り狂ってるよね
「的」は「射る」ものだし、「得る」なら「当」だ
的を得るなんてのは、書き手ならやってはならない誤用の典型だろう
それを小馬鹿にされたように指摘されて、頭に来てるってわけだ
冷静さを装ってみても、アンカーミスまで犯してるのが何よりの証拠だよ
>>573 相手をミスリードさせたりするためには、わざとブレたりもするもんさ
君だってそういった心理戦には長けていて、よく引っ掛け作戦を使ってるじゃないか
揚げ足まで取り出して絶好調だな
もう相手にすんなよ
>>569 んなことで荒らしに餌を与えるてめえみたいな面倒な野郎に対してハラワタが
煮えくり返るってもんだ
あそこに投下されたものは規制とかで本スレに書けない作者が投下するところ
で、毎回転載されているんだから自分の作品もそうなることはわかっているはず
それに対して何も書かなかったってことは転載されてもいいってことだ
何、「俺は作者の心理を見事読みました」みたいなあのレスはw
モニター越しに心理読めるならこんなところで心理戦云々を語るより、もっと
怪しいサイト行って何かしでかしそうなやつを止めるなりなんなりして社会貢献
してこいよ
581 :
sengoku38:2010/11/27(土) 22:49:22 ID:tGnXm+42
ふう・・・
やれやれ、ID:3og6iNZhは他スレにも公言している前々からの確信犯なんだから論戦を交えても排除出来ない
恨み辛みが有る阻害された元職人だか何だか知らないが
スレが口論で荒れて投下を出来ない様にするのが目的だから
小馬鹿にして流しておいて削除依頼出すのが一番なのに・・・
まあ、悔しい気持ちは分かるが、このまま投下が途絶えたら奴の思う壺だな
>>580 >>それに対して何も書かなかったってことは転載されてもいいってことだ
そうそう、それだからこそ
11 :名無しさん@ピンキー:2010/11/13(土) 15:09:26 ID:ZdzuDpTp
議論も何も、前スレで
814 :名無しさん@ピンキー:2010/11/09(火) 18:38:57 ID:Oss/fXBy
綺麗な女装子か可愛い男の娘のヤンデレなら激しく見たい
パッと見じゃ女にしか見えないような
って意見があった時に、誰も反対しなかったじゃないの
絶対嫌だというんだったら、もっと本気で論議しておけばよかったのに
少数派の意見と言えども、反対されない限りは有効だよ
という主張が通って、荒らしが立てたこのスレが正当スレと認められたんだったよなw
つまり反論されなきゃ、その意見が全て正しいというこったな
どうやらこのスレには俺以外にもエスパーがウヨウヨしているようだ
正直、荒れたコメよりもかわいいヤンデレっ娘が見たいんだが。
とりあえず無駄なコメントとそれにかみつくコメントがめんどくさいからROMろうず
それが一番
え、ヤンデレさんの実演にハァハァするスレッドじゃなかったのここ
,、‐'''''''''ヽ、
/:::::;;-‐-、:::ヽ _,,,,,,,_
l::::::l _,,、-‐"iiiiiilllllllllllliiiiii、__ゞ:::::::::::`ヽ,
ヽ::`/: :::..: iiiiiilllll||llllliiiiii: : : : ヽイ~`ヽ:::::::i
. /;,..-;;;;;;;;;,,,,, : l|l: : : : : : : : : : : : : \ ノ:::::}
/: /: : "" ""::::..... ;;/´: `ヽ : : : : : :ヽ:::ノ
. !: : : .,,ぇzv、..,::;: :::: '^W;;a=z_: : : : : : :.!
|: : : :.`'':::.:;;'`::.; .:.:: -z-a:、,, : ::<iiii|
|: : ::. ..:::::.. `.':::':::''^ ´ : : : :.|
|:::..... .;'' '::::::;;i;.. ..:;; : : :i
/:.ト;;;;;;;;.......'ヾ ::.::;iii;;ノ: :.. ..;;,.イ: : :.i
 ̄|: ::';;;`':::;' ,,、`,,' '::::;;,,,,;;;::'''::::<iii/
. /!.: ::. ヽ.'',,,,::;;;v;;;;;:.... '''' :-─/─
ヽ :. .... ヾ;i;f",,i",_i.j;;;''"".. ,,:ヽ/
\;::: ヾ';;;;;;;;;;;::''' ...::'':: ,,::::::/\
`''‐、、__  ̄ ̄ __,,,,、-‐"
_, イ´\三ヾー‐'ブ__/¨ト、__
┌'─┴───────‐┴‐‐`ト、
/ミ} みんな r‐┴ミ、
厂 ̄``! >--- ',
|  ̄ ̄) いい子だから (` ̄ |
| `二 〕 (二´_ノノ
`ー┬' 喧嘩はやめよう ├‐'
>>493 保管庫の分も読んだが、なかなか雰囲気が良いではないか!
588 :
名無しさん@ピンキー:2010/11/28(日) 13:38:24 ID:mUcXQu/b
ヤンデレ女騎士団長に逆レイプされたい・・・・\^0^/
>>588 クーデレ → ヤンデレ という形の変貌ってこと?
確かに、ちょっといいかもしれない……。
達磨にされて監禁されるのは勘弁だけどね。
591 :
名無しさん@ピンキー:2010/11/28(日) 15:00:45 ID:mUcXQu/b
それは、ちと勘弁−−だけと、ブリュンみたいな子に犯されたいといえば犯されたいぬ
専用スレにどうぞ
はなはだしくスレ違いだから
593 :
名無しさん@ピンキー:2010/11/28(日) 15:35:13 ID:mUcXQu/b
申し訳ない><
逆レイプはヤンデレの醍醐味!!
達磨はあまり好きじゃないな…
足切断で監禁が好きだ
なんか白けたな
いつものこと
おはようございます。
ただいまより、第七話を投下いたします。
男ヤンデレ……ではありませんが、それに近い描写があります。
また、先天的に身体に障害を抱えた人物が登場します。
それらの表現が苦手な方は、読むのを避けてください。
屋敷の外から聞こえる雨音と、衣服を脱ぐ音だけが部屋に響く。
呆気にとられるジャンを他所に、クロードは次々と着ている服を脱ぎ、椅子にかけてゆく。
胸元に巻きつけていた晒のような布もとり、最後は下着さえも脱ぎ去って、一糸まとわぬ姿となる。
「あ、あの……」
突然のクロードの奇行に、ジャンは言葉を失って立ちつくすしかなかった。
だが、彼が言葉を失ったのは、何もその行動に対してだけではない。
自室に客人を連れ込んで、前置きもなしに衣服を脱ぎ去る。
知らない者が聞いたら変な誤解を生みそうな行為だが、それ以上に、ジャンは衣服の下から現れたクロードの身体に釘付けとなった。
ルネほどではないにしろ、その肌は白く美しい。
均整の取れた体つきも相俟って、見る者を魅了しないかと言えば、それは嘘になる。
そして、何よりもそれ以上に特異だったのが、クロードの胸元にある二つの膨らみだった。
その顔立ちと声色からして、彼は間違いなく男性である。
少なくとも、ジャンは今までそう思っていた。
現に、生まれたままの姿となったクロードの下半身には、列記とした男性器の姿が見て取れる。
しかし、その一方で、彼の胸は女性のそれを思わせるほどに、柔らかな膨らみを帯びていた。
決して大きくはないが、形の取れた二つの乳房。
晒布で締めつけていたこともあり、服の上からでは気づかなかった。
が、一切の縛めを解かれた今、胸元だけ見れば、彼の身体は間違いなく女性のそれだった。
「もう、おわかりでしょう、ジャン様……」
躊躇いも恥じらいもない、鋭く刺すような視線。
裸体をさらしているにも関わらず、クロードはまったく臆することなくジャンに語りかける。
「私は『ふたなり』なんですよ。
生まれた時は、自分のことを純粋な男だと思っていましたがね。
大人になるにつれて、胸元が女性のように大きく膨らみ……果ては、女性特有の月の物まで始まるようになりました」
「月の物って……。
それじゃあ、君は……」
「ええ。
私は生まれつき、男の身体と女の身体を併せ持っていたのです。
ここからでは見えませんが……女性が子を作り、育てるための場所も持っております。
その一方で、男としてのそれも、何ら問題なく機能しますが……」
自分の下半身に目を落としつつ、クロードがどこか憂いを帯びたような口調で言った。
両性具有。
またの名を、ふたなり。
父の持っていた医学書からの知識で、ジャンもそういった人間がいることは知っていた。
が、実際に目の前にするのは初めてであり、やはり驚きを隠せない。
男でありながら、同時に女の身体も併せ持って生まれてきてしまったという事実。
それを知った時、目の前の男は、どれほど深く苦悩したことだろうか。
今までは純粋な男だと思っていた自分の身体が、徐々に異質な物へと変貌してゆく様。そのことに、どれほど震え、また怯えたことだろうか。
「先ほど、ジャン様にはお話したはずです。
御主人様は、人を容姿で判断するような狭量な御方ではないと」
「あ、ああ……。
確かに、君に言われると……そう納得せざるを得ないかな……」
「御主人様はお優しい方です。
現に、私のような者でさえ、こうして召し抱え……果ては、執事長という役職まで下さるのですから……。
人として扱われず、周りからは化け物と呼ばれてきたようなこの私に、生きる意味を与えて下さったのですから……」
己の裸身をさらしたまま、クロードは胸元に手を添えて静かに言った。
その言葉に、何も返すことができないまま、ジャンは茫然と立ち尽くしている。
生まれながらにして、人とは異なる肌や瞳を持ってしまった少女、ルネ。
そして、その身体が大人に変わるにつれて、男でも女でもない存在となってしまった青年、クロード。
医者である自分でさえ、ともすれば彼らに好奇の眼差しを向けかねないとも限らない。
ならば、医学的知識もない一般の者からすれば、彼らの姿は正に異端者だ。
下らない、迷信じみた差別に振り回され、彼らは今までも周囲の冷たい視線に耐え続けてきたのだろう。
「ジャン様。
これは、私の御主人様からのものではなく、私自身の願いです」
「あなた自身の?」
「はい。
私にとっての生きる意味とは、生涯をかけて御主人様に尽くすこと。
お嬢様が養女になられてからは、その尽くす対象に、お嬢様も含まれるようになりました」
迷いのない真っ直ぐな瞳と、真っ直ぐな言葉だった。
異端者として忌み嫌われてきたクロードを、テオドール伯は何の偏見もなく召し抱え、その側へと置いた。
その事実がクロードに、伯爵への極めて深い忠誠心を抱かせているのはジャンにもわかる。
「昨晩、お嬢様はジャン様のことをお話された際、珍しく笑顔になられたのです。
普段であれば、決して笑うことなどないお嬢様が、ジャン様の話をされた時だけは、天使のような笑顔を浮かべたのです」
「天使って……。
そんな、大袈裟な……」
「いえ、大袈裟などではございません。
現に、私も今までお嬢様に尽くして参りましたが……あのような笑顔を見たことは、一度たりともなかったのです」
最後の方は、少し残念そうな口ぶりだった。
恐らく、ルネとてクロードに感謝していないわけではないのだろうが、それが彼女の笑顔に繋がるかと言われれば、必ずしもそうとは言い切れない。
もっとも、己の職務に忠実になり過ぎるあまり、冗談の一つも言えないであろうクロードが、人を笑わせることができるなどとは考え難いということもあるが。
「今一度、無理を承知で申し上げます、ジャン様。
お嬢様の、お話し相手になっていただけませんか。
例えそれが、御主人様の病が快方に向かう間だけのものだったとしても……お嬢様の笑顔のためであれば、私は地に頭をつけてでも頼み込む次第です」
「わ、わかったよ。
わかったから、そう改まらないでくれないかな。
それと……まずは、早く服を着た方が……」
断ることなど、この状況では出来なかった。
ただ、目の前で頭を下げるクロードに対し、ジャンは当たり障りのない言葉をかけて、その場を凌ぐだけだった。
クロードが伯爵に心酔してしまう気持ちは、ジャンにもわからないではない。
己の存在全てを否定されたクロードに、唯一手を差し伸べたのが、テオドール伯だったのだから。
そして、そんな伯爵への強過ぎる忠義心は、伯爵の養女であるルネにも向けられるようになったのだろう。
本当は、ルネとこれ以上の関係になりたいとは思わなかった。
昨日、厨房で話をしたのは、単にその場に現れたルネに合わせただけのこと。
今朝のリディの態度もあり、ジャン自身、この土地に自分を縛り付けるような枷を残すべきではないと考えていた。
だが、目の前でこうも頼み込まれれば、ジャンとて断るに断れない。
クロードの望みは実にささやかなものだったが、本人にとっては重要なものなのだろう。
そして、それはジャンにとっても同様だ。
気軽に頼みを引き受けた結果、別れの際にルネを傷つけることになりはしないか。
彼女に深い喪失感を抱かせるのであれば、自分はあくまで行きずりの医者であるべきではないか。
そんな考えも頭をよぎったが、クロードの刺す様な眼差しの前には、ジャンも彼の頼みを断る口実が見つからなかった。
彼らは今まで、はみ出し者として辛い人生を送ってきたのだ。
ここで自分がクロードの頼みを断れば、それこそ二人を傷つけることになるかもしれない。
ルネも、そしてクロードも、己の奇異な姿故に、ジャンから拒絶されたのではないかと思うようになるかもしれない。
結局、ジャンはクロードの頼みを聞き入れて、ルネの話し相手になる他になかった。
無論、伯爵の病気が快方に向かうまでという条件付きではあるが、それでもクロードは納得してくれたようだった。
自分は別に、同情からルネの話し相手を引き受けたわけではない。
彼女に過度な期待を抱かせないよう、適度な距離を保ちながら接するように注意せねばならない。
そう、自分の肝に銘じながら、ジャンは服を着直したクロードと共に部屋を出た。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
冷たい雨が、午後の街を濡らして行く。
夕暮れ時には早すぎる時刻だというのに、灰色の空の下、街は入相の頃のように薄暗い。
午後の仕事を一通り終えたリディは、宿場の自室で窓の外を眺めながら考えた。
雨は未だ止む気配を見せず、憂鬱な気分だけが広がってゆく。
夏の暑い盛りに降る雨ならばまだしも、冬の冷たく湿った雨は、どうにも好きになれない自分がいる。
今朝、ジャンと食堂でした会話を思い出し、リディは頬杖をついたまま大きな溜息を洩らした。
自分はなぜ、ジャンにあんな話をしてしまったのだろう。
何の前置きもなくあんな話をすれば、ジャンが困ることなどわかっていただろうに。
(馬鹿だな、私……。
あんな言い方したら、まるで私の方が、ジャンに甘えているみたいじゃない……)
心の中でそんなことを呟いたが、ジャンに甘えたいというのはリディの本心でもあった。
ジャンがこの街を訪れてから、早くも一週間と少しが経とうとしている。
相変わらずこちらの気持ちは告げられないままだが、ジャンが自分の側にいる生活は、決して悪いものではない。
だが、リディが望むものは、そんな中途半端な関係ではなかった。
自分がジャンにとっての居場所になり、ジャンにこの街に留まってもらうこと。
そして、最終的には自分にジャンの想いを告げ、幼き日の約束を果たすこと。
そう、頭では理解していたが、やはり心の寂しさだけは埋められなかったのだろうか。
もっと、ジャンの側にいたい。
十年間、ずっと会えなかった分だけ、彼に自分を見てもらいたい。
十年分の寂しさを、彼の胸で癒して欲しい。
それらの想いが高まって、今朝はつい、ジャンに自分の弱い一面を見せてしまった。
自分の寂しさをわかって欲しいという気持ちが先走り過ぎて、返ってジャンに気まずい思いをさせてしまった。
「はぁ……。
この分だと、私……嫌われちゃったのかなぁ……」
今朝の食堂にあった重い空気は、リディとて気づいていた。
失敗したと思った時は既に遅く、ジャンはリディの言葉に何も答えてはくれなかった。
今さらながら、自分の軽率な行動が悔やまれた。
感情に任せて甘えた結果、返ってジャンを遠ざけてしまった。
本当は、自分の方がジャンの居場所になってあげなければならないのに、それさえもできなかった。
時間は無尽蔵にあるわけではない。
今のまま無難な関係を続けていても、進展はまったく望めない。
このままジャンとの距離が縮まらない内に、彼が自分の前から去ってしまうこと。
それだけは、なんとしても避けねばならない結末だ。
「でもなぁ……。
私がジャンのためにできることって、いったいなんだろう……」
自分は別に、何か特別な力があるわけではない。
知識ならばジャンの方が圧倒的に上であるし、ジャンが往診に通っている伯爵のように、富や権力に恵まれているわけでもない。
結局、自分にできることは、ジャンのために快適な寝床と食事を用意することくらいだ。
傍からすれば他愛もない、誰にでも出来ることに思われるだろう。
だが、宿場の仕事とは、そもそも旅の人間の疲れを癒すところにある。
ならば、自分がジャンのために精一杯仕事をすれば、それはジャンにとっての癒しにもなるのではないか。
「そうだよね……。
私だって、ジャンのためにできること、あるはずだよね」
外は未だ雨が降っていたが、リディの気持ちは少しだけ前に向いて動き出していた。
一人でじっくりと考えたせいか、幾分か気持ちも落ち着いてきたようだ。
今日はジャンのために、久しぶりに豪華な夕食を作ろうか。
連日の往診で、ジャンとてきっと疲れているはずだ。
少しでも美味しい物を食べてもらいたいというのは、リディの純粋な想いでもある。
「よしっ!
そうと決まれば、行動開始よね。
今日は久しぶりに、気合入れて夕食作るわよ!!」
机を両手で軽く叩き、そのまま勢いをつけて立ち上がる。
自分にできることは決して特別なことではないが、それでもジャンのことを癒してあげたいという気持ちだけは、誰にも負けないつもりだった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
夕刻が近づくにつれ、雨も幾分か小降りになっていた。
窓辺を雫が流れ落ちるような激しさは既になく、ポツポツと、小さな水滴が窓に張り付いてくるだけである。
この分であれば、夜にはこの雨も止むだろう。
窓の外で、雨に濡れている木々の梢を見ながら、ジャンは少しほっとした。
このまま夜半まで雨が続けば、必然的に夜は冷え込むことになる。
リウマチを患っている伯爵にとっては、あまり好ましいことではないからだ。
「お茶が入りました、お嬢様」
白磁の陶器が乗った盆を持ち、クロードが部屋へと入って来た。
相変わらず、無機的な表情は変わらない。
己の秘密をジャンに明かした時とは違い、その顔はいつもの冷静なそれに戻っている。
「ありがとう、クロード。
では、お茶にしましょうか、ジャン様」
目の前で紅茶を入れるクロードに簡単な礼を述べ、ルネがジャンに向かって言った。
今、ジャンがいる場所は、他でもないルネの部屋だ。
伯爵の娘の話し相手とはいえ、自分は流れ者の医者である。
執事や女中が見張る中での会話になると思っていたが、ルネはあえて自分の部屋で話を聞きたいと申し出た。
どうも、他人に見張られた状態で話を聞くのは、ルネにとって好ましいことではないらしい。
「では、ごゆっくりと……」
紅茶を入れ終わったクロードが、ティーポットを乗せた盆だけを持って部屋を出た。
そういえば、ジャンはこの屋敷でクロード以外の使用人と話をしたことがない。
廊下を数人の執事や女中が歩いているのは見かけたが、ジャンと話をするのはクロードだけだ。
そして、伯爵やルネと直接話をしているのも、クロードだけのように思われた。
現に、今もクロードは、執事長という立場でありながら、ルネの部屋に自ら紅茶を運んできた。
己の深い忠誠心故に、伯爵やルネの世話を可能な限り自分で行いたいという感情の現れなのだろうか。
そんなクロードが、自分とルネが一つの部屋で二人きりになることを許す。
普通に考えれば、これは理解し難いものがある。
こちらを信用してくれているのか、それとも試しているのか。
どちらにせよ、目の前の令嬢に失礼なことがあってはならない。
ルネに非礼を働けば、それは即ち、ジャンの身の保証がなくなるということである。
「どうされました、ジャン様?」
先ほどから何も言わずに黙り込んでいるジャンの顔を、ルネが覗きこむ様にして見る。
相手の視線に気づき、ジャンは思わず咳払いをすると、少し慌てた様子でルネの方へ顔を向けた。
「えっと……。
いや、ちょっと外を眺めていたんだ。
少しは小降りになったとはいえ、まだ雨が止まないからね。
このまま夜まで降り続いたら、伯爵の病気にも良くないと思ったんだよ」
「そうですわね。
でも……私は、晴れの日よりも雨の日の方が好きですわ。
真昼の日差しは、私にとっては、少しばかり意地悪ですから……」
「君の身体のことは、クロードさんから聞いたよ。
でも、今はその話をするのはよそう。
君だって、こんな話をするために、僕を部屋に招いたわけじゃあないだろう?」
「うふふ。
お優しいのですね、ジャン様は」
紅茶を一口だけ飲み、ルネはジャンに微笑みかける。
以前、ジャンが初めて屋敷を訪れた時に、窓辺から不安そうにこちらを見降ろしていた顔ではない。
厨房で出会った時もそうだったが、あの少女にこんなにも穏やかで純粋な笑顔が作れることが、ジャンは不思議でならなかった。
「それじゃあ、今日は何の話をしようか。
君が聞きたいというなら、僕の旅した場所のことは、余すことなく話すつもりだよ」
「そうですね……。
では、ジャン様。
雨についてのお話など、お持ちでしょうか?」
「雨、か……。
特にこれといって、珍しい話はないけど……」
「別に構いませんわ。
私、雨が好きなんです。
いつもは見慣れた庭の草木も、雨に濡れた姿を見ると、いつもより美しく思えるんです。
雨露に濡れて装いを変えた花壇の草花を見ると、それだけで、草花の息吹を感じられる気がしますわ……」
最後の言葉を言った時、ルネの視線は、どこか遠くを見つめるような視線になっていた。
生まれながらにして日光に弱く、外の日差しの下を歩くことさえも許されない。
その容姿故に外界から隔絶され、決して表の世界を知ることなく育った少女。
それなのに、どうしてこうも、ルネは自然の変化を繊細なまでに感じ取ることができるのだろうか。
恐らく、永きに渡り閉鎖された世界にいたことで、逆に感覚が鋭敏になっていたのだろう。
四季折々の自然の変化、空気の流れ、そういったものの変化を、普通の人間よりも強く感じられるようになったに違いない。
彼女は純粋だ。
ルネの言葉を聞いたジャンは、改めてそう思った。
その肌の色、髪の色と同じく、その心もまた穢れを知らない。
人々の好奇の眼差しに怯えながらも、心の奥底にある、美しいものを愛でる感情は失われていない。
だが、それ故に、ジャンはルネのことが少しだけ怖くもあった。
彼女は周りの変化に敏感な人間だ。
それはなにも、自然の変化だけとは限らない。
自分と関わる他人の目、口調、そして放たれている空気から、自分がどう思われているのかを察知する。
下手に気づかいを見せれば同情から話し相手になったと思われるだろうし、距離をとり過ぎれば、それは拒絶として受け取られる。
クロードは、自分を信頼してルネの話し相手になって欲しいと申し出てくれた。
だからこそ、自分はその期待に答えねばならない。
いずれは街を去ることを考えると、ルネと深い関わりになることは避けたかった。
が、すぐさまクロードの身体のことが頭をよぎり、その考えを否定する。
あんなものを見せられては、ジャンも引くに引けなかった。
「それじゃあ、今日は僕が南西の山間部を旅した時の話をしようか。
幸い……って言うのもおかしな言い方だけど、僕が訪れた時、そこは雨だった」
もう三年、いや、四年ほど前の記憶だろうか。
まだ父と共に放浪の旅を続けていた頃の話だが、ジャンはあえてそこは伏せて話を始めた。
目の前で期待に溢れた眼差しを向けてくるルネに対し、不貞の父の話をすることなどは、あまりに無粋に思えた。
あの日、自分が山間部の村を訪れた際、そこでは雨が降っていた。
雨天の最中に山を歩くことは不快で仕方がなかったが、村に着いたことで、その苦痛からも解放された。
そして、村で一晩過ごした翌日の朝、ジャンは森の広がる峡谷にかかった、大きな虹を見たのである。
雨が美しい物を生みだすと知ったのは、この時が初めてだったように思う。
それまでは、ジャンにとって雨など煩わしいだけの存在だった。
こと、父と旅をするようになってからは、道中の雨に幾度となく悩まされてきた。
その記憶があまりに強かっただけに、山と山を繋ぐ橋のようにして現れた虹は、ジャンにとって衝撃だった。
淡々と話を続けるジャンの横で、ルネは食い入るような眼差しを向けながら、その話に聞き入っている。
きっと、彼女の頭の中では、ジャンの話している場所の光景が、ありありと再現されているに違いない。
一度も見たことのない場所でさえ、その豊かな想像力で頭の中に思い描き、感動を共有する。
旅先で見た物の話を続けながらも、ジャンはそんなルネの姿に、やはり神秘的な何かを感じていた。
「……で、そこの村には、ちょっと変わった伝説があってね。
なんのことはない、子ども向けの御伽話なんだけど……そこに出て来る主人公の名前が、僕の名前と同じなんだ」
「まあ、そうですの?
それでしたら……きっとその方も、ジャン様のようにお優しい方なのでしょうね」
「いや……。
まあ、確かに気立ては良い人だとは思うけど……。
でも、その話の中のジャンは、僕とは似ても似つかない怪力の大男だよ」
「見た目は関係ありません。
例えその方が大男であったとしても、ジャン様と同じ御名前の方でしたら、お優しいに決まっています」
まだ、話の最初すら口にしていないのに、ルネはジャンに向かってきっぱりと言い切った。
その口調は丁寧かつ柔らかなものだったが、同時に自身に溢れた気丈さも併せ持っている。
厨房で初めて話した時とは違い、もしかすると、これが彼女の本来の性格なのかもしれない。
面と向かって自分のことを優しいなどと断言され、ジャンはどこかくすぐったいような気持ちにさせられた。
自分の気持ちをはぐらかすようにして懐中時計に目をやると、既に時刻は夕食の時間に近づいていた。
「おっと、もうこんな時間か。
残念だけど、今日はこの辺で御暇させていただくことにするよ」
「あら。
もう、そんな時間になりましたの?
もし、ジャン様がよろしければ、クロードに御夕食の用意をさせますのに……」
「いや、さすがにそこまでは甘えられないよ。
僕だって一応は、お金を貰って仕事をしに来ているんだからね」
「そうですか……。
では、ジャン様。
続きは、また明日にでもお聞かせ下さい」
「ああ、そうさせてもらうよ。
それと……その、ジャン様ってのは、やめてくれないかな?
何度も言うようだけど、僕は行きずりの医者にしか過ぎないし……クロードさんからも、君とは友人のようにつき合うよう、言われているからね」
去り際に、ジャンはルネに向かってそう告げた。
ルネと初めて会った時に砕けた話し方をしたのは、相手を警戒させないための措置だ。
しかし、クロードからルネの話し相手になるよう頼まれた後も、ジャンはルネと友人のような話し方をするよう努めていた。
養女とはいえ、相手は伯爵の娘。
普通であれば、そのような接し方はルネに対して非礼に値する。
が、しかし、生まれながらにして人の目を気にして生きてきたルネにとって、身分も容姿も気にせずに話ができる相手は貴重だった。
そのことを汲んだ上で、クロードはあえて、ルネと話す時は畏まらないようジャンに告げたのだ。
「わかりました。
では、この次からは、ジャンと呼ばせていただくことにします。
これでよろしいのでしょう?」
部屋を出るジャンを笑顔で見送りながら、ルネは最後にそう言った。
本当であれば、あの敬語混じりの口調もなんとかして欲しいところだったが、さすがにそこまでは要求できない。
養女とはいえ、ルネも貴族の令嬢である。
彼女の言葉の一つ一つに気品があることは、むしろ自然なことなのだから。
帰りの馬車に揺られながら、ジャンはふと後ろを振り返った。
細かい様子はわからなかったが、遠ざかって行く屋敷の窓辺から、こちらを見つめている確かな視線を感じたからである。
投下終了です。
読んでいただけた方、ありがとうございました。
リアルタイムgj!!!
この人、なんでいつも自虐的なまでにへりくだってんだろ
叩かれないようにとの予防線張ってるつもりなんだろうけど
腹の底が見え透いていて、かえって腹立つなあ
ID:fTF8HbJd
>>608 GJ
>>610 >・苦手な人がいるかな、と思うような表現がある場合は、投稿のはじめに宣言してください。お願いします。
>>1読めやksg
613 :
名無しさん@ピンキー:2010/11/29(月) 09:57:27 ID:roGjxCaA
悪いけど、スカしたタイトルの作品なんぞ読んじゃいないよ
投下の態度がキモイって言ってるんだ
お前こそよく読め
>>609 GJ
病む布石が少しずつ敷かれて行ってますね。
コレがどう起爆するのか…
ヒキニートは無視しようぜw
どの時間帯の投下後でも我慢できずにすぐ書き込むからバレバレw
過去ログ見たら投下後1時間以内には必ず書き込んでるっぽいな
なんの訓練だよw
ID:fTF8HbJd ←嫉妬してる文才ないコイツ徹底的に叩きのめしてぇなwww
ID:fTF8HbJd は基地外粘着童貞便所虫知恵遅れ大平
なんかもう必死だね
ID切り換えたり携帯使ったりして、書き手を擁護するのと荒らしを叩くのを一人でやるのって大変だろうに
ヒキニートがバレたからって拗ねるなよw
>>620 「荒らしを叩く」って自分が荒らしだって自覚あるのか
尚更救えない馬鹿だな
俺の公平なジャッジによると今回はスレ民>評論家だな( ̄∀ ̄)
次、頑張って!(b^ー°)
ID:fTF8HbJd ←こいつを徹底的に叩こう!!あるいみ[美乳より巨乳派]目立ちまくってるからいつかコテの座奪われるんじゃね?
ID:fTF8HbJd←作品も投下出来ないのに叩くことしか出来ない子
626 :
三月(。・×・)。うさぎ☆ ◆FftnfEKoTc :2010/11/29(月) 14:22:50 ID:j2cG6REu
>>623君ウナ御本人?それともKさん?
Kさんならそろそろ 例の作品を書いてもらいたいんだが・・・
ID:fTF8HbJd ←自称・評論家のこいつを徹底的に叩こう!!あるいみ[美乳より巨乳派]より目立ちまくってるからコテの座奪われるんじゃね?www大事なことなので2回言いました!
628 :
名無しさん@ピンキー:2010/11/29(月) 15:14:03 ID:AfbAyZNz
なんかもっと変態的なヤンデレが見てみたいな。
>>626俺に関しては一切ノーコメンツで(^_^;)
あと。(・x・)。←キモいから止めれ
このタイトルは日本語でなんて意味なの?
631 :
名無しさん@ピンキー:2010/11/29(月) 21:58:02 ID:INB+Zp5g
632 :
名無しさん@ピンキー:2010/11/29(月) 22:32:53 ID:AfbAyZNz
火薬
633 :
名無しさん@ピンキー:2010/11/29(月) 22:39:30 ID:AfbAyZNz
火薬
次の作品投下まだかな〜?
ヤンデレSSもっと読みたいんだけど、そういうのって何処へいけばいいんですかね?
wikiで閲覧済みの話が分かりにくい
色が変わらないから何度も同じ話をクリックしてしまうんだけど
配色変えられないの?
それって、実は同じ話じゃないんだよ
似たような作品ばかりだから「あれ、これって前に…」って思うのも無理はないけど
>>630 >全部訳すと『血まみれの妖精』とか『返り血を浴びた妖精』という意味になります。
だそうです
>>635 このスレや関連スレの過去ログ、嫉妬スレ保管庫のまとめや情報交換スレや
普通に検索したり、アルカディアのSS捜索板の
ヤンデレまとめなんかからあたってみれば?
ようやくこっちが正当スレだと公式に認められたな
やっぱり世の中は正しい方が勝つようにできてるんだよ
スレであろうとレスであろうとね
644 :
名無しさん@ピンキー:2010/11/30(火) 19:34:24 ID:sSh+yRM+
冷徹だが論理的で、常に正しい判断を下してくれる運営者に感謝します
>>645 コイツこの前散々叩かれて逃げ出した荒らしじゃん
馬鹿は懲りないんだな
は?なにが?
ID:vEOyqCXK ねぇ……確かに似たような事言って消えた奴いたなぁ…まぁ、ID:fTF8HbJd に比べればマシじゃね?アイツは批判しといてろくに作品書けない口だけ馬鹿だからな
こいつは驚いた
日付が変わるとIDも変わるってシステムを知らない初心者が紛れ込んでるよw
半年でいいからROMりましょうね
>>649 あっ、噂をすれば影だねー[美乳より巨乳派]さーん、出番奪われますよー
必死だな…(^_^;)
なんつーかお前ら
人生乙にゃん( ^ω^)ミコッ
次の作品投下まだかな〜?
次の作品投下は・・・ございませんっ!!!
残念現在ここは自重できないアホ共の隔離場です
スレ正常化は年明け以降になるでしょう!
年が明けてもヨロティクね( ^ω^)
657 :
三月(。・×・)。うさぎ☆ ◆FftnfEKoTc :2010/12/01(水) 04:41:42 ID:GR1jBB7k
>>656自分自身の作品やホームの更新はしないの〜〜〜
(¬_¬)ジトーーーッ
↑sageろ
ヤンぼうの葉月さんとちゅっちゅしたい
春は近くの公園で花見して桜に関する蘊蓄をひけらかしたい
夏は海に行って女ナンパして嫉妬させたい
秋は特に何も思い浮かばん
冬はスキーに連れて行って白銀のゲレンデにシュプールでアイラブユーと刻みたい
まぁ普通だよね!(b^ー°)
秋ってなんかあったっけ(^_^;)
おまえらのレス邪魔だからどっか他のところでやってくれ
俺はここに抜きに来てるの
おまえらのレスとか読んですらないの
作品から次の作品までスクロールするのがめんどくさいんだよ
ROM専より
>>661だったら保管庫いけしwwwいけしwww
で。秋はなんかないの?
黒姫と来たらカチュアっしょ
TOはマイルドになったな
石化やら移動可能呪文やら修正入って
ただリメイクされてもカチュアはカチュアだったナ( ̄∀ ̄)
>>664 作者でもないのにコテとかよっぽど自己顕示欲が強いんだね
現実で目立たないから荒らして満たされようだなんて可哀相だな
でもコテ無かったら大した内容でもないし顔文字でごまかしてるのがまた哀れだわ
煽られるとリアル叩きだすやつほどリアルしょっぱいっていう不思議www
くやしいのうwww
あなたの必死さも大概ですがね
天気がいいんだから散歩いでもしてこいw
あらら、今度はw使ってごまかすんだね
でも全く反論出来なかったみたいだしコイツもこの程度か
くやしいのうwww
もうそれでいいよ(^_^;)一人勝ちしてな
670 :
名無しさん@ピンキー:2010/12/01(水) 10:55:58 ID:NsXs9srk
こんなクソスレ状態だと、職人が離れるわな。
顔文字使ってもやっぱりつまらないね。散々大口叩いてこれか…
一人負け、お疲れ様です
>>671 事実を言ってやるなよ
またキ印に変なスイッチ入ったら面倒だろ?
673 :
名無しさん@ピンキー:2010/12/01(水) 12:10:20 ID:s4GVs9oY
ふふ・・・・うまく荒れてくれたわ・・・・これで作者君は私だけを見てくれる・・・
674 :
三月(。・×・)。うさぎ☆ ◆FftnfEKoTc :2010/12/01(水) 14:21:11 ID:GR1jBB7k
※嵐がスレを荒らす理由
@住民が謝罪しないから
A自分がGJをもらえないから
Bバカにされフルボッコにされた恨みから
C某スレのウ〇ギ〇ヌのせい
D自分の主義主張
Eニートだから
F暇だから
Gチョンだから
Hネトウヨだから
I自作自演
J女(男)にふられたから
Kリアル生活で虐められてるから(八つ当たり)
L腐れ女子だから
Mピンク運営の陰謀
N面白いから(子供だから)
ニヤニヤ(・∀・)
>>673 なにを自惚れているの?
貴女の企みなんて、所詮私の掌のうち……
なんて言うか・・・落ち着いてよ、みんな。
あかんよ
このスレは、もううちのもんどすさかいに
>>677の如く京都弁でゆったり脅してくるヤンデレがいたらそれはソレで絵になるんだろうな
荒れろ荒れろ!!
荒れろ荒れろ!!
荒れろ荒れろ!!
荒れろ荒れろ!!
荒れろ荒れろ!!
荒れろ荒れろ!!
荒れろ荒れろ!!
荒れろ荒れろ!!
荒れろ荒れろ!!
荒れろ荒れろ!!
荒れろ荒れろ!!
荒れろ荒れろ!!
荒れろ荒れろ!!
>>678 ネタに使わんといて
うちがスレに手ぇ貸してるみたいに思われたら叶わんわぁ
堪忍してや
キモいぞオッサン
とうとうこの程度のことしか言えなくなったかよw
( ^ω^)もっと言って欲しいの?
684 :
名無しさん@ピンキー:2010/12/01(水) 23:07:30 ID:QW5w8ljz
だが、断る
SS初投稿です。byナカンダカリ
前編
見晴らしの良い丘の上にそびえ立つ、とある学園。
俺はこの学園に通う3年、闇雄だ。いろいろ悩ましい時期を過ごしている。
進路に勉強、友や青春との別れが俺の心をさいなむ。
だが、悩ましい時期を無理にでも過ごさなくてはいけない、一番の原因がある。
それが今回のお話だ。
・
・
・
・
「あの〜さっきから何?」俺は堪らず言った。
「なっ、てめぇ忘れたとは言わせねぇ。」
この口の悪い女は病子、ロングヘアのチビだ。うん、俺の説明は以上。
「お前、私にノート貸してくれるっていったじゃないか!よこせ!」病子は強くせがむ。
「悪い、もう貸しちまったよ、すまんね。」と手をひらひらさせながら軽めに言い放った。
病子はとても残念そうに早口で捲し立てた。
「お前、私が国語不得意なの知ってるだろ?昨日、お前に「数学秘伝ノート」貸してやったろ。
そんときに「交換な!」って約束したろ・・・」
そうそう、こいつは文系がからっきしダメなやつだ、毎回「国語奥義手帳」貸してやってるんだ。
英語も俺よりできないんだよなぁ・・・、難儀なやつだな。
病子はあきれた表情で「おい、聞いてんのか、おまえって奴ぁ・・・忘れっぽいな。で、誰に貸したんだよ。」
俺は素早く「来張子(ライバルこ)だよ。」と返した。
「え・・・あ、まじ、そっか・・。」病子の表情が曇る。
病子が急に残念そうな顔をしたので、びっくりして「ごめん、俺忘れっぽいから。次な!」
「へぇ〜・・・お前があいつとそんなことする仲なんだ、そうなんだ・・・。」
俺は明るい表情を装って「あいつ国語苦手でもない癖になんでだろうね〜、
俺が国語に関してはクラストップだから借りたんかな。なんつって。」
「そうか・・?違ぇだろ、闇雄・・。あ、HR始まるからよ・・。」
俺はこの気まずい雰囲気から解放された安堵感から「おっ、そうか、そういやぁいってなかったな」と言い放った。
病み子が振り向きざまに「なに?」と訊ねると、
俺は「おはよう・・・。眠い朝だな。」と囁いた。
病子が一瞬だけ微笑みながら「お前って、ほんと律儀なやつだな、馬鹿みたい・・。」と、ニッコリ微笑んだ。
〜放課後〜
ライ子(来張子の愛称)が机に突っ伏す俺に、急に声を掛けてきた。
「あんたのノートのまとめ方すごくない!?感動しちゃった。コツ教えてよ。」
ライ子が急に絶賛から始めたので、言葉に詰まった。
矢次に「あたし、結構ムズイ大学うけるんだよね、前に言ったけ?
それで、どういう風にノートをまとめたら頭に入るかな〜って考えていたら、
あんたの神ノート出会ったわけ。暇なときでいいから、ね?」
ライ子は学年一の可愛い子ちゃんなので、俺は最高に嬉しかった。なんというサプライズ。
ショートカットの長身美人タイプに弱い俺は、日本男子らしく嬉しさを表情に出さずに、
「まぁ、今日からでもいいよ、放課後やる?」
ライ子は待ってましたと言わんばかりに「ほんと!?優しいね〜。4時半位から始めよっか。」
「任せとけや。」と、根拠なき自信で言い放った。
ライ子は、俺に微笑みを投げかけたのち、教室を出ていった。
全く、なんて可愛いんだ、罪だぜ・・・、と心で呟いた。
「裏切りもん、この女好き。」と、内想を背後から踏み倒す声が聴こえた。
病子だ。俺の顔を覗きながら、続けて「お前が声掛けられるとか、あり得ねぇ、
何かの間違い。騙されてんだよ。」、と漏らした。
俺はムカっとするどころか、妙に納得した表情で
「まぁ、一瞬俺の脳にもそれがよぎったけど、考えないことにした、
この幸せな瞬間を噛み締めるわ。」としみじみ語った。
俺は、得意げな調子で続けて「お前もイケメン引っかければ?」と言った。
病子は即答で「ふざけんな、興味ない、私は一途な性格だから。」と、含みのある言い方をした。
すると病子は廊下側を覗いて、帰り支度を性急に始めた。どうやら、帰るらしい。
病子は俺のそばの通り際に、「闇雄はホントバカだよ!」と小さく吐き捨てつつ、教室を出て行った。
いくらなんでも、怒りすぎだろ。女ったらしが嫌いなのかな・・・。
直後に、ライ子が華麗に登場。教室には、まばらにしか生徒が残っていないが、
これが人気者のオーラか、一応みんな軽く一瞥してしまう。もちろん、凝視する奴もいるが。
その後の幸せタイムの描写は省かせていただきます。あしからず。
ただ一つ、気になることライ子に言われた。「ヤミって、あんたのこと好きじゃないの?だったら、ごめん」と。
俺は、そんなことあり得ないと、言い切った。
急にそんなことを切り出されたので、少なからず動揺してしまった。
「小動物的で顔もカワイイくない!?反対に、性格は威勢がいいよね。このギャップいいと思うけどなぁ〜。」
俺は照れ臭そうに「俺なんか願い下げだろ、それに今更そんな気持ちになれないよ」と返した。
そうそう、そうなんだ、ただの友達なんだ・・。10年近く、勘違いされたり、はやし立てられたりしたが、
俺たちは気の許せる幼馴染で、親友、それ以下でもそれ以上でもないんだ・・・。きっと、そうだろ・・・。
〜病子、自室にて〜
「あいつ、なんなんだよ、嬉しそうにするんじゃねぇよ。俺の前で、ひでぇよ・・・。」
病子は帰宅後、すぐさま自室で目を泣き腫らしながら、呟き続けた。
「私が奥手なの知ってるくせに、ホントは好きなの気付いているくせに卑怯だろ・・。
でも、あいつの事が好きなんだよな、責められない、好きな人を責められない。
てか、なんで私はあいつのせいにしてるんだ。卑怯な女。だから、振り向いてもらえないんだ。
あいつに意識させなきゃいけないのに、自分勝手に口悪く虚勢を張ってばかり。」
ベットに無造作に寝転がり、白いクマさんのぬいぐるみを抱きしめながら、その黒い瞳を見つめて言った。
「変わらなくちゃ、今がチャンスなんだ・・・。」
怖い、拒絶されたら今のラフな関係は築けなくなる、そういった悲観的な事も考えたが、
もういたずらに時を過ごすのはやめよう、という冷めた情熱が勝った。
〜翌日〜
病子は普段は早めに登校する、意外に真面目な性格なのだが、今日に限っては、
社長出勤になりそうな予感がする。HRまであと3分。
そうな事を、机に突っ伏しながら考えていたら、ライ子に話しかけられた。
まさか、こんなに仲が良くなるなんて夢にも思ってなかった、
むしろ、昨日の教授で俺の悪い部分が見抜かれて、逆に、
嫌われるのではと思ったが、非常に好感を持たれたようだ。
「闇雄!昨日は勉強になった上に、面白い話いっぱいできてグッジョブだったよ。」
ライ子の声は、あまりにも響く高音なので、周りの男子がちらちら見始めた。恥ずかしくなって、頷くだけだった。
「あと一週間頼むよ大将!時給も出すよ、ね!?」と肩を3回ほど叩き、
軽やかな歩みで窓際の席に戻って行った。え、一、一週間?ながっ!
会話が終わったのち、前に座っていた野郎史(ヤロフミ)が「浮気か、浮気なのか?!」と悔しそうな笑みで捲し立てた。
俺はその意地悪な問いに対して「俺は彼女いねぇ〜し、それにライ子が困るだろ、そんなこと言っちゃ。」返した。
すると野郎史は「おまえ、ホント勿体ないよな、病子ってカワイイじゃん、
それに意外と優しい奴だと思うぜ。」と、なぜか誇らしげに語った。
「そうかも知れんけど、俺が病子と、どうこうって事は絶対にないから。ないない。」ときっぱりと答えた。
そう言い切った瞬間、野郎史はバツが悪そうな顔をした。
俺は、まさか?しまった!と感づいて、あたりを見回した!・・・・病子だ。
「・・・闇雄おはよ。邪魔して悪りぃな。・・・じゃ。」と、すぐさま振り向き席へと歩んでいった。
俺は後ろを振り向いたまま、固まってしまった。ああ、やってしまった。
変な冷や汗をかきつつ、深く後悔した。あいつは、ああ見えてナイーブな奴だから、多少の事で傷つく。
動揺したために、病子がどんな顔をしていたか覚えておらず、
廊下側の一番後ろの俺には、角度的に顔を窺い知ることができない。
しかも、話題を振った本人は澄ました顔をして空を眺めてやがる。なんてこった、謝らなきゃ。
HRが終わってすぐさま、彼女の元へと歩み寄った。
ごめんな、と謝った。すると彼女は、「気にすんなよバーカ、お前らしくねぇーぞ。まあ良い心がけだけどさ。」と
病子は微笑みながら、いつもの調子で返してくれたので、俺は杞憂だったと安堵した。
すると彼女は急に声のトーンを落として、「闇雄、放課後空いてるか?」と質問してきた。
俺は彼女に対し、多少の躊躇いはあったものの、先客があるために2度目のごめんなさいをした。
すると彼女は悲しそうな顔で「そっか、しゃーないか・・、じゃ明日はあけてくれよぉ?」
と今までに見たことないくらい、いじらしい態度で懇願した。
が、一週間頼む、と言われた事を告げると「強引じゃないか、断りなよ・・。」と、病子が不満げに提案した。
俺は「でもよ、あの天下のライ子だぜ?ちょっと無下には断れないし、なんか勿体ないだろ。
あんな子と1対1でみっちり、面白おかしく、かつ知性的な語りあいができるなんてなぁ、
俺みたいな万年非モテ男には天恵なんだよ。わかるだろ・・?なあ?」と、自虐しつつ正当性を主張した。
病子は「私だって女だよ・・・、わかってるだろぉ。頼む。断ってくれ。」と俺の瞳を、
彼女の大きく、幼子のような純真な瞳が、何時になく強く捉えてきた。
俺は見つめられた恥ずかしさからか、なぜか周りを見渡して、「休み時間に」話そうか。」と訊ねた。
彼女も俺の心境を察して、頷いてくれた。後ろから、熱いね〜っとはやし立てる声がかすかに聴こえたが無視。
そして、席に戻った俺は、汗をかなり掻いていたことに気付いた。俺は汗を掻くタイプではないが・・。
昨日までの腐れ縁的な幼馴染から、女の子だと意識せざるを得ない、
俺への接し方に新鮮さを覚えつつも、一校時目の準備を始めた。
〜休み時間〜
「へい、お待ち。」と平手を挙げて、4階・階段の踊り場の段差に腰かけていた、病子に挨拶した。
緊張した面持ちで、やっと来たか遅い、とでも言うように、若干怒りっぽい調子で俺に挨拶を返した。
だけども、表情のほうはどこか落ち着かない、緊張した面持ちのままだ。
俺は間髪いれずに「うーん、じゃ、本題にはいろっか。」と訊ね、
病子も少し間を開けて「おっ、おう。本題に入るぞ・・、いいのか?しっかり聴けよ。」と、
重大発表でもするのかと思うくらい、真剣な眼差しで言った。
「ウチらって、いつから遊びに行かなくなったり、一緒に行動しなくなったけ?」
本題に入るぞ、とか言ってたので、てっきり予約交渉からスタートするのかと思いきや、
意外な回顧話から始まった。
「小6あたりじゃね?難しい時期だろ、あの頃は。ま、今もそうだけどさ・・。」
俺の応答に、病子は少々驚いた様子で、「覚えてんのかよ、ホント意外・・。あんたの事、見直した。」
おいおい、これくらいの事は覚えてるっつうの!、と心で呟きながら、
病子が何を言いたいか察した俺は、いじわるっぽい口調で、
「だから、久しぶりに一緒に遊ぼうってか?」
病子は「分かってんじゃん、つまりそういう事。ナイスアイディアだろぉ。」と誇らしげに言った。
だが、俺は(一方的だが)先に交わした約束を反故になんてできない性格のため、
「一週間我慢してくれ、その後はどこなりと行けるからね。」と断った。
そして、少しの沈黙が流れた後、「わかった、待つ。絶対忘れんなよ!一週間後だからな。わかったな!?」
と、健気な笑顔で俺を指さしながら言った。
俺はその指された指を右手で掴み、軽く頷いた。
〜放課後〜
放課後になると、机でひじをついてた俺は、ライ子に声を掛けられた。
「闇雄!4時半から図書館でやらない?あっの方が落ち着くからさ。ね?」
俺は少し間を空けて「確かに。昨日は教室に他の連中共がいたから落ち着かなかったな〜。うん、賛成。」
「連中なんて言っちゃダメだよ、クラスメイトなんだから。説教会に変更するよ!?」
「え〜、ごめんごめん。拙者、気をつけますゆえ。」
「ははっ、なんなのその変な言い回し。でも、面白いから許す!」
「どうも。じゃぁさ、俺、先に図書館で待ってるわ。早く来なよ。」
「お行儀良く待っているのよ?行ってらっしゃい!」
「はいはい、お行儀よく待ってます。」
俺は重い腰を上げ、教室を出て窓際を歩きながら、一つの感情が湧きあがった。楽しい、である。
ライ子は一言交わすだけで、楽しい気分になる、俺も自然と笑みがこぼれてしまう。
やはり、これが誰からも好かれる超人気者、来張子が持つ強力な特殊能力に他ならない。
それにしても、色々と最高の女子と、たった昨日の数時間で仲良しになれるなんて、人生捨てたもんじゃないね。
4時半きっちりに颯爽とライ子登場。なにやら、巨大な袋を抱えている。
「なんなの、そのでっかい袋?」俺は訝しげに訊ねる。
俺の真正面の席に腰を下ろした彼女は、袋に手をつっこみながら「お菓子とジュース。これがなきゃ始まらないよ〜。」
俺は多少躊躇いながら、「図書館でそんなもん食ったらまずいって!怒られる。」
ライ子は即座に「じゃぁ、司書さんから見えない席に移ろうよ。ほらいくよ!」
ライ子も俺が思ってた以上になかなかのワルらしい。そんな事を思いながら、
満面の笑みを見せる彼女に指定された席に着いた。
その一時間後、残念ながらこの図書館にとって許しがたき悪行は、バレて怒られたのだが、彼女との楽しいひと時になった。
ちなみ、ノートの上手いまとめ方なんて、初日で伝授済みだったので、半ば俺のための勉強会兼懇親会になって、
俺の方がなんだか申し訳ない気持ちになり、なお且つ、バイト代まで強引に渡してきたので、
俺自身が尽くして貰ってるような、なんともいえない気持ちになった。
〜闇雄の想い〜
そんなこんなで、一周間が過ぎようとしている。
ライ子のとき折見せる破天荒な行動と、無邪気さは俺の心を射止めてしまった。
容姿だとか、ステータスだとかはもう関係ない。内面に強く惹かれたのだ。
俺がこんな気持ちになるのは初めてだった、こんなに胸の躍る一周間もお初。
彼女は俺のことなど微塵も意識していないかもしれない、だが、それでも彼女に感謝したい。
ただ、この一周間で心に引っかかったことがある、病子のことである。
病子は最近元気のないように思えたし、俺とライ子が話している時、常に病子の視線を感じた。
そして、いつしか俺は気付いたんだ、病子は俺に嫉妬しているんじゃないかって。
「今更?鈍感・ニブチン!」なんて言われるかもしれないが、彼女も俺に異性的好意を今まで微塵も見せたことはなく、
俺に対して「魅力が微塵もない男、第一位闇雄!」なんて事を、再三言っていたこともあり、
俺たちの関係はその程度なんだと考えていた。
なので、俺が女の子と仲良くなろうが、我は関せず、を貫いてくれると思ったが、違ったようだ。
杞憂に越したことはないが、俺を遊びに誘ったり、一連の態度、異性アピールは明らかに、
今までとうってかわり、攻勢をかけてきた感がある。
でもまあ・・・、嫉妬=俺の事が好き、ということにはならないからね・・。俺の妄想過剰だと信じたい。
〜病子の想い〜
病子は登校途中、闇雄への想いを沈んだ心で思案した。
なんであいつ、ライ子とあんなに仲良くなってんだ。まさか、ライ子に恋してるとかないだろぉ。
やめとけよ、釣り合わないし、ライ子はお前の事を一ミリも理解してねぇよ。
比べて私はお前が思ってるより、お前のこといっぱい知ってるし、それに世界中の誰よりも大好きなんだ。
確かに、私はお前を突き放すようなことばっかりして、悪い男友達のようなポジションに居座り続けていた。
でも、これは素直になれない私の好きの裏返しで、その度に私は後悔ばかりしてきたし、泥沼に嵌っていった。
闇雄なら、私の愚行、ゆるしてくれるよな・・・。闇雄は優しくて、思いやりがあるもんな。あ・・、都合良すぎか・・?
だから、私はもうお前に告白して、当たって砕けようと思う。それを、今回遊びに行く時実行したかった。
もちろん怖い。でも、このまま闇雄とあやふやな関係のまま、お前が私から離れていくのはもっと怖い。
もし、私とお前が一緒になったあかつきには、いままで、素直になれなかった分、
いっぱいいっぱい・・愛してやるからなぁ・・・、私はお前のためなら何でもできる気がするぞぉ?
すぐに私を彼の世界の中心に据えてやる・・。待ってるんだぞ・・、闇雄・・。
〜ライ子との勉強会最終日〜
ライ子との至福の時間もいよいよ終わりか・・・。
俺はセンチメンタルな気分になりながら、彼女が楽しく喋る姿を、温かく見つめていた。
そして、なぜか俺はつい、頭で思ってる事を小さく呟いてしまった。
「かわいいなぁ・・・。」
ライ子の会話がピタリと止まった。
下心丸出しな事を言ってしまったので、焦って弁解に努めた。
「いやぁ、ちょっとなんていうか、つい、口に出してしまって。気に障ったかな?ゴメン!」
彼女の表情がパァーと明るくなって「ありがとう嬉しいよ・・・。急に言われちゃったから、
ビックリしちゃった・・・。照れるな〜。この色男!」
俺は笑って間を繕ったが、彼女がいつの間にか上目使いになって俺の耳元まで迫り、こう囁いた。
「私も闇雄のこと、いいなってずっと思ってたんだ。この意味、分かるよね・・・?」
物凄い爆弾発言を耳にしてしまった。俺は当然の事ながら、固まってしまった、耐性がないので仕方がない。
彼女は俺からの言葉を待っているようだったので、「ビックリでした〜、って事ないよね?」と確認を求めた。
即座に彼女は「ビックリでした!残念!」と意地悪な笑顔で言い放った。
俺はがっくしと肩をおとしながら「やっぱりね〜。夢見れたんで良かったよ。」と笑い飛ばした。
だが、次の瞬間、ライ子は至極真面目な表情になり、
「うそ。ビックリじゃないよ・・。あたし達なら上手くいくよ。ほら、決めて・・乙女の心は移ろいやすいよ・・。」
彼女のこの表情を見て、本気で言っているんだと思い、少し考えながら、
「俺でよければ、お願いします・・・・。」
俺の返事を聞いた彼女は、机から身を乗り出し、とても柔和な笑みで、
「ほんと?嘘じゃないんだよね、嬉しいな・・。ありがとう、闇雄・・・。」
「でも、俺なんかでいいのかな、ちょっと信じられない、夢みたいだ。あ、そういやぁ、
俺のどこが良くて、こんな酔狂な決断してくれたの?」
「全部。酔狂な事じゃないよ、最初からこうなる運命だったの。闇雄も望んでいたでしょ・・。」
「そうか、じゃぁ、俺もライ子の全部だよ・・。えーと、俺、絶対ライ子のこと、
楽しくさせるからさ・・・。全力で頑張るよ。」
愛の誓いとでも言えば良いのだろうか、その後も二人で、相も変わらず、会話が盛り上がった。
俺は幸福期に突入したらしい。幸せすぎて、もう、ライ子のことしか考えられねぇ・・・。
〜闇雄、自宅にて〜
家に戻った俺は、メールが5件・着信が3件、留保されているのをスタート画面で確認した。
ライ子のメール1件以外は全て病子のものであった。
もちろん、真っ先にライ子のメールを開き、返信したのだが、お付き合いホヤホヤなためか、
メールの返信の応酬を一時間に渡って続けた。普段、ケイタイをいじるのは(機械音痴なため)苦なのだが、
今回ばかりは、この文明の利器に感謝しつつ、ニヤニヤしながらいじり続けた。
ライ子とのメールのやり取りを終えた後に、病子のメールを確認したのだが、案の定、
明日のお出かけの概要が羅列されてあったが、意外に驚いたことに、超過密スケジュールなのだ。。
病子はかなり計画的にスケジュールを組んであるようで、今回のお出かけに、なみなみならぬ真剣具合が見て取れた。
だがここで、一つのためらいが脳裏をよぎった。
約束とはいえ、恋人のいる人間が、他の女子と仲良くお出かけなんてしてよいのであろうか?
ライ子への愛を誓った矢先に、他の女の子と一緒に出かけるなんて、到底申し分が立たない。
許可を取って出かけるなんて馬鹿な真似はできないし、
それに、俺はライ子以外の女性と触れ合いたいと現時点では思わない。病子を異性だと意識していないにしてもだ。
よし、そうだ、断ろう。しっかり理由を話して、ちゃんと詫びを入れさいすれば、あいつも分かってくれるだろうし、
それに、あいつはあっさり・さばさばした性格だし、意外に物わかりのいい奴だ、いける。
俺は確信を秘めた心で、電話にて直接伝えることにした。数秒間の呼び出し音の後、
「おーい!遅かったじゃねぇか。待ち過ぎて化石になるところだったぞ!」
病子の嬉しそうな幼くも強気な声が、大音量で耳をいきなり刺激した。
「おいおい、普通、電話ってのは、もしもし○○です、から始まるもんだぞ。それに、声でかいよ。鼓膜破る気か・・。」
「わかってるって。早速本題に入りたいんだけどよぉ、明日は朝8時待ち合わせで・・・、・・っておい、
人が喋ってんのに遮るなよ。このおバカぁ!」
「すまん!ちょっといいか?あのな、明日は行けないんだ・・・。」
「えっ・・・なんでぇ?気分でも悪いのか?親戚の用事が急に入ったとかかぁ?」
病子のテンションが急激に下がったので、理由を言うのは控えた方がいいんじゃないか、という考えが一瞬脳裏をよぎったが、
これをまた一瞬で振り払い、ひと呼吸、間をおいて、ゆっくり小さく伝えた。
「ライ子と付き合うことになったんだ。ほら、なんていうか・・、
他の女の子と遊びに行くのは、浮気になっちゃうしさ・・・。」
想定外の発言のためか、病子は沈黙した。
5秒間の電話のノイズ音が流れた後、彼女のいつものひそひそ笑いが聴こえてきた。
「な、意味わかんねぇよ。こういう冗談は、寝言でほざけ!なんなら、私が起こしにきてやろうかぁ!?」
彼女は冗談だと思ったようだ。
俺は一瞬、気付かれなくて良かった、という安堵感に満たされたが、
それでは意味がないと自らに言い聞かせ、先程の言葉を繰り返した。
「俺はライ子と付き合ってるから、他の子と遊びになんか行けないよ、
男友達のような関係だったとしてもね・・・。」
俺の真剣な口ぶりに、彼女はまたもや押し黙った。
そして今度はかなり長い沈黙だ。長い、数十秒そこらであったであろうが、
その何倍の尺に思えた。俺の心の鼓動が速くなり、胸を締め付けられつつも、固唾を飲んで彼女の言葉を待つ。
「嘘だって、騙されてんだよ。あんたは詐欺に引っ掛かりやすいもんね。」
彼女は蚊の鳴くような小さな声で言った。
俺はすかさず、「彼女がそんな事したって何になるんだよ、ともかく、行けない。ゴメン、ホントにごめん・・・。」
「なんかの罰ゲームでもやらされてんだよ。そんなの無視して、行こうぜ。私、一生懸命プラン練ったんだから。」
「とにかく行けないからね、ごめん、切るよ、いつか埋め合わせはするからさ。おやすみ。」
「まだおわってな・・・ブツン!ツーツーツーツー・・・・・」
会話の途中で切ってしまった。
きりがなさそうだったので、心苦しいがこのような決断をして、事態を収拾することにした。
すると、手元の携帯が震えた。思ったと通り、病子からのようで、電話に出るか迷ったが、
無情にも携帯をマナーモードにし、枕の下に押し込めた。
十年来の幼馴染に、このような仕打ちをするのは心苦しいが、こういうちょっとしたドタキャンなんて、
誰しもがいつかはしてしまう、と自らに言い聞かせ、ベットに寝ころび、瞼を閉じた。
もちろん、眠るためにベットに寝ころんだわけだが、今日一日いろんな事があり過ぎて、
その事が頭を巡り、全く寝付けない。
ライ子とのこれからを考えたときの幸福と不安・・、病子に対しての罪悪感とこれからの償い・・・。
それにしても、病子は全然信じてくれなかったな、態度もなんか不気味な感じだった、今頃凄い怒ってんだろうな・・。
そうこう考えているうちに、玄関のチャイムが響いた。まさか!?マジかよおい・・・。
俺の家は2階建ての一軒家で、一階が各々の家族の部屋となっているため、
一番玄関に近い部屋を持つ俺が、大抵は対応する事になっている。
俺はベットからすぐさま体を起こし、部屋をでて、廊下を通り抜け、玄関のドアノブに手を掛けた。
やはり、病子がいた。俺は彼女の目を見た瞬間、胸が締め付けられた。
さっきまで泣いていたのが容易に予想できるくらい、目が赤く腫れており、表情はなんとも弱弱しい。
俺は戸惑いながら、彼女を部屋に招き入れ、ふかふかの白いソファーに座らせた。
ときどき点滅する天井の蛍光灯が、なんともいえぬこの気まずい雰囲気を相乗して演出した。
第一声は俺から発せられ、「蛍光灯が最近、死にかけてさ・・・、でも取り換えを躊躇っちゃうんだよね〜。
電灯のカバーに溜まった死んだ虫とかを見るのがなんか嫌でさ・・・。病子はどうね?」
と場を和まそうと、下らないことをほざいてしまった。
すると病子は、体育座りをしながらザラザラした床に視線を落としつつ、
「私もさ、死んだ虫とか苦手だぁ。大抵の虫なら触れるけど、死んだやつぁ絶対触れねぇな。」と返した。
病子は下らない質問でも、嫌がらずにちゃんと返してくれる、ノリのいい奴だ、
という事を再確認しつつも、俺の心の中は気が気でなかった。
すると、無理に愛想笑いをしていた俺に、
「ライ子とホントに付き合ってんの?悪い冗談だろぉ、なぁ?」と涙を溜めた目で俺を見上げた。
「・・・付き合うことになったんだ、本当だよ。図々かもしれんけど、
彼女いない歴が塗り替えられた俺を祝ってくれんか、いや、
どっかのラブコメみたいに、はやし立てるのも大いに結構だよ・・。俺、マゾっ気あるし・・なんてな。」
病子は無地の壁を見つめ、
「・・・・・本当なんだ、そうなんだ。そんなに嬉しいのかよ・・、ライ子と付き合えて。なんなんだよ・・。」
そう言い終えたあと、病子の目から一筋の涙が零れた。
俺はやっと確信を持ってこう思った。この涙は、突然キャンセルを言い渡された悔しさ・失望からではない、
俺の事が好きだったからだ、なんて気付くのか遅いのか。最低な男だ。
勇気を振り絞って、彼女をしっかりと見つめ言った。
「もしかして俺の事、異性として好きだったのかな・・?あ、違ってたら今の質問、未来永劫わすれてくれ・・。」
彼女は質問を聞き終えると、急に立ち上がり、俺の腰かけるベットに彼女も腰かけ、すぐ隣でこう囁いた。
「そうだよぉ、ずっと大好きだったよ、闇雄の事をさ・・・。」
俺は閉口し、頭が真っ白になった。だが、心臓は相変わらず鼓動をさらに加速させる。
病子は俺の横顔を、涙で霞んでいるはずの視界で、柔和な痛々しい表情をもって見つめ、
「やっと言えた・・・、でも、こんなバットタイミングで言うつもりじゃ無かったんだけどよぉ・・。
あ、案外私ってロマンチストでよ、明日あの綺麗な噴水前でいうつもりだったんだ。」
俺はただ、謝ることしかできなかった。ごめん、を続けて4回も言った。
それを聞くと病子は一瞬だけ微笑んで、
「お前って、謝ってばかりだよなぁ。私なんか、自分が全面的に悪くない限り、絶対謝らねぇし。」
続けて、「私がお前の彼女だったら、簡単には謝らせないのになぁ・・、
男なら堂々としろっ!、とか言って檄入れてやるのに・・・。」
さらに続けて、「逆に私がごめんって謝らなくちゃいけねぇのになぁ、私が闇雄を好きでさえいなければ、
こんな事にはならなかったよなぁ。ホントにごめんよぉ、でも、まだ闇雄の彼女を諦めきれないよ・・。」
病子の健気さに俺の心は苛まれ、気がつけば、俺の目の縁にも涙が溜まっていた。
ライ子に告白されていなければ、あるいは、病子の気持ちをもっと早く察し、告白していれば・・・、
そういった今更どうにもならない数種の仮説が、頭の中で浮かび上がり、闇の奥へと消え去った・・。
いつの間にか、部屋は静寂に包まれ、鬱屈な空気だけが目に見えるかにごとく漂っている。
1分くらい経過したころだろうか、病子が自ら持参したレースのハンカチで俺の涙を拭ってくれた・・。
すると病子は何か決意したらしく、無理やり作ったであろう、沈鬱な笑顔で俺の手を優しく握ってこう言った。
「なぁ闇雄?今からでも闇雄の一番に・・・なるよ・・・。」
俺は即座に、どういう意味か?と訊ねたが、
病子は急に立ち上がり、部屋のドアノブに手を掛けてゆっくりと開き、振り向きざまに、
「待っててね・・。」と非常に微々たる声量で、謎の泣きっ面の微笑みとともに、部屋を後にしていった。
全く訳がわからず、茫然と座りすくした。意味深なセリフ、なにやら決意を秘めた表情、急に部屋を出て言った事。
固まった俺は、そのままの位置からベットに雪崩のように倒れこみ、疲れのためか、そのまま眠ってしまった
ここまでが前編です。一旦投稿終了。byナカンダカリ
はいはい、おつかれ。
永遠に終了しててね。
荒らし様に決まってるだろ、言わせんなはずかしい//
703 :
sengoku38:2010/12/02(木) 02:31:20 ID:RPwOpxGs
>>699投下GJでした
>>700は仕事にも友人にも恵まれない可哀想な痛い人なので気にしないでねw
こんな駄作でスレをどないかしよなんて、おこがしいんとちゃいますのん?
初投稿とか言うて予防線張りはるんも見苦しおすし
男はんやったら、もうちょっと堂々としはったらよろしおすのに
大方振られたかなんかして自暴自棄になってんだろ
そのうち病んだ彼女が性格改造するだろうから経過を生暖かく見守ってやろうや
706 :
名無しさん@ピンキー:2010/12/02(木) 12:18:04 ID:ZM0aPltI
G&Jの提供でおおくりしました。
>>ID:pnEIqxKJ
わざとらしい関西弁きもちわりい
頭の悪い小学生が必死でモノマネしてるようにしか見えない
人のこと言えないね
そやかて、うち祇園の出どすさかい、仕方あらしまへんやん
いけず言わはって、うち嫌やわぁ
>>708 しまへんやんってなんだ?
なんかごっちゃになってない?
710 :
名無しさん@ピンキー:2010/12/02(木) 18:35:07 ID:Frd8SIrf
>>708 冗談抜きでキモイ。自分のレス見直してみ。寒気がするから
てか、もうこのスレ終わったんじゃないのかよ
711 :
sage:2010/12/02(木) 19:05:05 ID:KVuM6cnk
>>710 終わったやつは終ったと思ってればOK
終ってないと思ってるやつは終ってないと思っとけばOK
人それぞれだな、うん
712 :
sengoku38:2010/12/02(木) 19:38:26 ID:RPwOpxGs
名無しの掲示板なので荒らすのも投下するのも自由だが
紋切り型のレスも自作自演も嫉妬スレに居た荒らしに比べれば大分落ちる・・・
只エロパロ板の場合→荒らす→職人が逃げる→ROM専も減るの循環で“荒らした者が勝ち”の風潮はなんとかして欲しいものだ
まあ、結局吹き溜まりの中では破滅と再生のループしか無いのだろうが
いや、低レベルな物を投下してるやつこそ荒らしだろ!!
オナニーは布団の中だけにして後悔しないでwwwww
>>713 オナニーは布団の中だけにして後悔しないでwwwww
715 :
sengoku38:2010/12/02(木) 22:18:33 ID:RPwOpxGs
結局投下の為のスレなのに投下が有る度にケチを付ける、自分は対抗して投下しない(もしくは投下した事実を隠す)
そのケチの付け方も紋切り型の感情論で具体的に的を得た指摘もしない
自演もバレバレ・・・
だから三流なんだ(-.-)zzZ
だからといって別にに嵐は止めろとは言うつもりは無い
・・・なんせ自由な匿名掲示板だからね
只自由とは自分自身に責任が有るとゆうことだ
圧力団体のごとく反対の為の反対をする者に理解出来無いとは思うが・・・・・・
糞コテもいりません
なんかもう、完全に末期だな。
とてもじゃないが、投下なんてできる空気じゃない。
作品に対する建設的な意見がまるでないよ……。
今まで投下が続いていた作品も、ここ最近はぱったりと見ないし、もう職人さん達は粗方引き揚げてしまったのかな?
続きが気になっていた作品もあったのに、残念だけど……こうなったら、もう後は過疎るだけなのか……。
荒しって本当に社会人なのか?
意外と会社ではまじめだったりするんだぜ
ネットでは現実では出来ないようなことしちゃうもんなんだよ
今が山場だ、これを抜ければいつものスレに戻るさ。
俺もなんかss考えようかな・・・
>>699 GJ!
面白かったです!ベタベタの展開だけど、大好きです!病子が可愛い。
後編がどうなるのか楽しみです。期待して待っています。
いや、でも実際に荒らしの職業を調べることができたら
どこぞの動画サイトみたいに無職か消防厨房ばかりになりそう
さすがにこんな連中が社会人で真っ当な職に就いているとは考えたくない
まだまだ、挨拶替わりの軽いジャブの段階だから
このままじゃ今後もあちこちから愉快なのが流入して来ると思うよ
二度とあちらの話題をここで出さず、互いに不干渉を貫くと約束してくれるだけでいいんだけどな
それが確約されれば即時撤退も有り得るんだが
724 :
名無しさん@ピンキー:2010/12/03(金) 04:01:44 ID:duWUTK03
一生のお願いです…荒らしはこのスレから消えて下さい…
>>723 あのさ…前にも約束がどうたらこうたらってあったけど、約束ってなに?
小学生がする口約束みたい事か?
誰がそんなもん守るの?マジで
>>723不干渉も何も最近そっちには書き込み無いじゃねぇか…
それにお前さんにも制御出来て無い奴等も居るんだろう?
職人に代表して謝れなんて無理難題をふっかけるなんて嵐の大義名分としか思えん
本当に和解したいなら喧嘩両成敗で今後一切互いのスレに書き込みしないで良いんじゃないか
そちらも大概嫌がらせしてるんだし
バカにされたから荒らすって子供じゃ無いんだから(苦笑い)
それとも相手をボコボコにして泣いて土下座をさせないと気が晴れないのかい
ここの普通の住民は大多数がそちら側の事を敬遠してるとゆう事をそもそも認識して欲しいね!(愉快犯の嵐は知らないが)
加えて発端のモドキはそもそもそちらの住民だろう?
自分も昔はそっちにも居たがそちらも早く正常化してssを投下出来る様に成って欲しいとは思ってるよ
アンタも他スレでGJもらってる職人ならもう、非生産的な事は止めなさいよ
荒らしに関する話はフシアナしてやってくれないかな
この状況では悲観的な書き込みも含めて荒らしの自演と思われて終了だ
とりあえず落ち着いて呼んでみよう
>>1から引用
■お約束
・sage進行でお願いします。
・荒らしはスルーしましょう。
削除対象ですが、もし反応した場合削除人に「荒らしにかまっている」と判断され、
削除されない場合があります。なるべくスルーでお願いします。
・趣味嗜好に合わない作品は読み飛ばすようにしてください。
・作者さんへの意見は正直なものを。罵倒、バッシングやべた褒めはお門違いです。議論にならないよう、控えめに。
ステレオ〜を投下します。中編です。
>>729 そうそう、荒らしなんて徹底的にスルーして、存在を曇らせりゃいいんだ。
彼らにはそれが一番堪えるよ
中編
〜次の日〜
結構長い間寝てしまったようだ。
手元の目覚まし時計を、寝ぼけ眼で確認したところ、
午前11時を過ぎた頃であると分かった。
この時間帯になると、母以外は絶対にいない、
いつも俺だけグータラ生活さ・・・。
ちょうど時を同じくして扉越しに、お母さんが俺に、
2階に病子が来ていると知らせてくれた。
うん?・・・ちょっと待てよ・・、え・・・病子!?
俺はもしやと思い、人目にギリギリさらせる程度に身回りを整え、
部屋を出て2階に上がると、病子は相も変わらず少女趣味な私服で、
ソファーに浅く腰かけていた。
「闇雄っ!お前ってホント、寝ぼすけ野郎だな〜。
それに、顔も散らかり放題!」
と、俺を見つけるなりいつもの調子で言い放ち、歩み寄ってきた。
俺は、いつものあいつに戻ったと内心ホッとしたが、それも束の間、
彼女は自らのか細い手を、俺の頬に滑るように2・3回ほど這わし、
屈託のない笑顔で「朝起きたばっかりの無防備な闇雄も最高・・・、
あ・・、私が朝の身支度してあげる?」
俺は突然、この一連の行為を朝っぱらからされたため、
驚き、一歩後ろに引いてしまった。
それを見た病子は「お前の全ての事に、遠慮せずに踏み行っていくからね、へへ・・・、
きっと直に、私なしじゃ暮らしていけないくらい好きになってもらうからなぁ、
覚悟しとけよぉ・・。」
あ〜、幻覚でも見ているのだろうか、病子がこんなことするはずがない、
きっとこれは夢だ。
昨晩のことで、心労が溜まっているのだろうか。そんな誇大妄想を打ち破るかのごとく、
「夢みたいだろ?でもよ、近いうち闇雄のパートナーになるんだからよ、
寝起きでもこれくらい熱々じゃなくちゃ、嫁失格だからな・・・。
なぁ、そう思うだろ?」
と、臆面もなく言った。
俺は、まだフル起動していない頭で、即座に、
「おいおい、いろいろと何なんだ?分けわからんよ。」
「まあまあ、そんなことは置いといてよぉ、朝ご飯は私が作っておいたから、
ありがたく味わえよぉ!」
「その前にさぁ、嫁とかって何?ちょっと説明して・・。」
彼女はこの上ない満面の笑みで「ライ子には、早散りの彼女の地位をやるけど、
私は一生涯のお嫁さんの地位を代わりにもらった!分かったか?」
「なるほど、そういうことね・・・、いや、なんかおかしくないか。」
「何がおかしいんだ?外はライ子で、私が内だ。これでも、譲歩したんだからな・・、
お前に告白するタイミングがあと後数時間早かったら、
お前の伴侶に、即就任オメデトーだったのによ、マジ後悔。」
「いや、俺にはライ子がいr」
病子は俺の喋っている途中に割って入って、
「ライ子より私のほうが楽だぜ〜。ライ子はさ、高嶺の花みたいな存在だろ?
だから色々と気ぃ使わなきゃいけないだろぉ。彼女モテモテだし、
憧れている連中の手を払うの大変だぜ・・。それに比べてさぁ、
私なんて何にも遠慮しなくてオッケイ。
悪い部分も全部受けてめて・・・まとめて愛してやるよぉ・・・。」
「え〜と、ま、まぁ、一理あるけどさ・・・・。
でもそれって二股かけてることになるから、駄目だって。」
すると、彼女は急に目を瞑って、大きく深呼吸をし、目を見開いてこう言った。
「私のこと好き?」
すかさず、肯定した。もちろん、昨晩のことを加味してだ。そのような質問をされて、
首を横に振るなんて、俺には到底出来るものではなかった。
俺の反応に彼女は、純朴な照れ笑いをたたえた表情で、
「じゃ、じゃあさぁ・・、お嫁に貰って?私みたいな、
チビスケだれも貰ってくれない。
段ボールに入れられたチビ猫みたいな感じ・・。憐れだろぉ?」
「俺なんかより、ずっといい男なんて五万といるよ?それに、ロリc・・じゃなくて、
華奢な幼い感じの子が好みの人には、ド真ん中ストライクだとおもうけどな。」
「悪いけど、闇雄以外興味はねぇよ、これからも一生そう・・・。」
「でもやっぱり、無理だよ。」
そう否定すると、彼女の顔を昨日見たあの沈鬱な表情へと変化しつつあった。
こんな昼間っから、昨日のことを繰り返してしまうことを恐れ、焦った口調で、
「おおう!貰うよ、うん!」
病子の表情が上った朝日のように明るくなり、
「ホント!?嬉しい、大好き!!」
と言い切る前に、俺の胸に飛び込んできた。
俺は初めて女の子に抱きつかれたため、無免疫の影響で半ば硬直してしまった。
135弱ほどしか身長のない彼女は、非力な力で、
俺の胸周りを精いっぱい強く抱きしめた。
彼女より40cm以上も大きい俺は、彼女の勢いにのまれ身動きが取れなくなり、
病子を見下す形で彼女と目が合った。
その瞳は、異様なまでの輝きと歓喜に満ちていた。
「嘘じゃないんだよね、
言ったよね!私がお前の最愛のパートナーになったんだよな!」
「そ、そうだな・・。」
「凄くねぇかぁ!?ロマンチックってやつだよ、
10年の時を超えて・・みたいな・・、
ああ私幸せ、運使いきっちまったよぉ、・・・愛してる闇雄ぅ!」
俺はやっとの思いで病子を引き離し、この件に関して一番重要であろう、
人物の名を恐る恐る言った。
「ライ子との関係はこのまま続けるよ、それは分かってるよね・・。」
ああ、最低なセリフだ、言いたくなかった。
二股をかけるなんて死に値する、低俗行為だ。
だが、恋愛に関して経験が全くない俺には、この選択肢しか選べなかった、
それに、どのような選択肢を選ぼうとも、
それに伴う結末はより良いものには思えなかった。
罪悪感を密かに感じていた俺に、追い打ちをかけるように、病子が
「私は事実上の妻ってやつでしょ。
じゃぁ、浮気だね・・別れてよ。ライ子と。」
俺は何を言われたか一瞬理解できず、動揺した。
病子は俺のどっちつかずの表情を見るなり、
「当然だろぉ!妻がいるのに他の女といちゃつかれちゃー
、私、嫉妬で怒り狂っちまうだろぉ?」
「ライ子と付き合ったばっかなのに、そんなこと出来るか!!!
ライ子の身にもなれよ!!!!!」
俺は誠に自分勝手ながら、病子に向ってえらい音量で怒鳴ってしまった。
続けて、「俺が付き合うって言ったのも、ただの応急処置なの。
つまり、その場凌ぎに言っただけ。分かった!?
それに、こんな不義理なことは馬鹿げてるよ。
いいか?言うぞ、お前と俺はただのダチ、しつこい!!!」
と鼻息荒く早口で言い放った。
病子は俺のあまりの威圧的な物言いに、かなり怯えた表情を見せた。
まるで、何事にも震えが止まらない子猫のように。
病子は何回も頭を下げて、「ごめんなさいごめんなさい、闇雄、
私馬鹿だから調子に乗っちゃって・・・あのさ・・」
俺はもうすでに心の中で、怒鳴ってしまったことを後悔したが、
虚勢を張って冷たくこう言い放った。
「早く出てけ。」
病子は涙で潤いが増したつぶらな瞳で俺を見つめ、
「大好きでごめんなさい。」
そういうと、小走りで階段を下り、玄関へ向かっていった。
彼女がこの家を去ったのち、俺はただ、天井を仰ぐことしかなかった。
お前の拙い文章で綴られた駄作が一番曇ってるっての
作品自体は完全にスルーされてるのに
〜病子、自室にて〜
病子は白い枕を、大量の涙でぬらしていた。止めどなく溢れ出す、
悲しみの洪水は、防波堤をいとも容易く吹き飛ばし、
あらゆる幸福の記憶を洗い流していった。
彼女は、瞼を閉じることで生まれた暗闇の中で、
愛しの彼にこう呼びかける。
闇雄・・・。ごめんなさい。私馬鹿だから調子に乗っちゃうんだ。
自分でライ子の存在を許容しておいて、闇雄が貰ってやると言った途端、
舞い上がってあんなことを言っちゃうんだから、
どうしようもないねぇな、私。
世界のだれよりも優しく、素敵な笑顔を投げかけてくれる闇雄を、
あんなにも豹変させてしまうなんて、私はなんて酷い言葉を投げかけたのか。
私の全てをいつしか占めるようになった闇雄に嫌われて、
一体私は何を糧に、目標に生きていきゃぁいいんだよぉ。
そういえば・・・、闇雄のことが好きになったきっかけは何だっけ?
あ・・・そうか、中学生の時のライ子が関係してるんだっけなぁ。
中学入りたての頃、闇雄とライ子が楽しそうに喋っているのを見たとき、
何とも言えない疎外感?嫉妬?羨望?
ともかく変な気持になった。今思えば、あれがキッカケだったんかなぁ。
それと同時期くらいに、闇雄が私にあまり構ってくれなくなった。
ずぅーっと寂しかったなぁ。
私ともう遊ばないっ!て、言われた日のこと、今でもはっきりと覚えている。
突然言われたから、理由が分からなくて呆然としちゃったんだよなぁ・・。
そのあと家に帰ってもショック状態で、
ご飯が全く喉を通らなくて、真夜中になって、
なぜか私一人で、闇雄の家にごめんなさいをしに行ったけ。
闇雄の家族みんなを起こすことになっちゃてさぁ、お目当ての闇雄には、
意味がわからない変な奴とは絶対遊ばない!って、
言われてさらに泣いちゃって・・・。
闇雄のことで一日中頭いっぱいになる日なんて、ざらにあったなぁ・・・。
闇雄が話すたびに
闇雄が笑うたびに
闇雄が頑張るたびに
闇雄が悩むたびに
闇雄が悲しむたびに
闇雄が勉強をするたびに
闇雄が走るたびに
闇雄が読書をするたびに
闇雄がゲームをするたびに
闇雄が歩みを進めるたびに
彼を意識せずにはいられなかった。
いつも、彼の些細なことに傷つき、喜び、そして体が疼いた。
そして彼に対する、ある種のためらい・罪悪感を覚えつつも
、私の手は夜の暗闇の純白のベットの上で、
秘所に到達し、その手は彼の手である、
と無理やり擬制しゆっくり滑らかに這わせた。
絶頂に至り行為を終えた後、彼女であればこんなことはしなくても良いのに、
と一抹の孤独感を感じていた。
それはともかく、あのライ子の告白さえなければ、
こんなことにもならなかった。
たった、一日遅かっただけで、
10年間の私の闇雄との素晴らしい触れ合いの日々が、
ライ子のたった5日間の浅い色目使いに屈する?そんなこと認めない。
なんで、ライ子なんて上辺だけの浅い女と、恋仲になるんだ?
変だ、不自然だ、。
そうだ、きっと闇雄は騙されてるんだ。ライ子が騙してなかったとしても、
ライ子では彼を幸せにすることはできねぇよ。
私だけしか彼を幸せに出来ないし、幸せにする特権を持ち得ていねぇ。
もう、妥協しない、彼への愛を存分さらけ出す。ああ・・・、
闇雄、ごめんね、したくなってきた・・・。
また一人エッチに使うね・・・。
病子は自らの幼く発達した自らの体を、
闇雄の汗ばんだ体で激しく犯されている場面を想像し、自慰に耽った。
彼女の目の縁にはもう涙は残っておらず、
あるのは、愛と狂気を忍ばせた漆黒の純真一途な瞳だけである。
〜闇雄、その晩〜
俺は徒労感に襲われながらも、病子に悪いことをしてしまった、と後悔し、
次会う機会に謝ろう、と決意した。
思わず「俺ってホント謝ってばっかだな・・・、ギネス級だよ。」
と口に出してしまった。
一緒に食卓を囲んでいた母、弟に兄ちゃんは独り言ヤバいよな〜、
それに虚言癖も王者レベル、と、
笑われたが俺はつかさず反論、それが約20分間続く。
こんなどうしようもない話題で盛り上がってしまうあたり、家族だ。
少々癒されて、部屋に戻り、携帯をチェックすると、
ライ子から着信が来ていた。
用件は特になく、ただ俺の声を聞きたかった、
というものであったが、彼女のあっけらかんとした、
抑揚のついた親しみ深い声が、俺をベホマ並みに癒してくれた。
どうやら彼女のことが、当然ながら大好きらしい。
会話中に時たま病子のことが脳裏をよぎったが、
俺は今目の前の幸せを噛み締めることにした・・。
「そうだ・・、好きで好きで堪らないんだ、私はあいつに何されたっていい、
あいつのために何したっていい。
そして、私たちの愛を切り裂く部外者どもは、
私が闇雄に代って殺してやる!!」と叫んだ。
すると、居間は静まりかえり、近くに置いてある水槽の稼働音だけが響いていた。
ライ子は相変わらず怯えた表情で、私をなだめた。
「落ちついてよ・・ね?」
「私はあいつの事が死ぬほど大好きなの、
あいつに今日の今頃告白するつもりだったんだよぉ!!
それをライ子・・・あんたが邪魔した!」
「ごめんなさい、そんなに好きだとは知らなくて。」
「そうだろそうだろ?闇雄は私の人生の全て。
みんなが私と闇雄のカップル誕生を祝福し、お似合いのカップルだと、
町中の噂にり、その熱々ぶりはみんなの羨望を集める。
夜は闇雄と朝明けまで愛し合って、
闇雄によく似た愛嬌たっぷりの子供をたくさん作って、
私たち仲良く暮らすんだ。子供が大きくなって家を出て行ってからは、
静かなところで二人っきりで余生を過ごして、これでハッピーエンド。」
私が闇雄との完璧なプランを聞かせてやっているってのに、
なにやら携帯を右手でこっそりいじってやがる。
「こそこそなにやってんだ!」
「闇雄を呼んだの・・、私たちだけじゃ、解決しなさそうだもんね・・・。」
「あ!もしかして、別れを切り出してくれんのか!さすがライ子!!」
「と、ともかく待っていようよ・・・。」
「はぐらかすな!チビだと思って、馬鹿にしてたら痛い目みるぞぉ・・・。」
「分かった・・・、別れるから・・・そんなに怒鳴らないで・・、
今のヤミーをみるのはつらいよ・・・。」
「本当!?本当だよな、ありがとう!祝福してくれよぉ。」
ライ子は半べそをかいていたけど、そんなの関係ない。
本当の愛の前ではこんなこと小事だろぉ?闇雄・・・。
その後私はお礼に、闇雄へのなみなみならぬ愛を語ってあげた。
〜病子と闇雄・ライ子〜
闇雄の声が玄関先から聞こえた。ライ子が対応しようとしたようだが、
それを制止して私が玄関扉を開けた。
愛しの闇雄は息を切らしながら、「なんかあったのか?」
私は嬉々とした表情で「なんかさぁ、
ライ子が言いたいことがあるらしいよん!」
闇雄は失礼します、と廊下奥に向かって一声かけ、私のそばを通り過ぎたが、
振り返って「前はごめんな、頭に血が上っちゃって・・・。」
私は即座に「全然かまわないよぉ、愛してるからな!」
それを聞くと闇雄はなぜか微妙な顔をして、居間に向かっていった。
なんでだろ?恥ずかしかったのかな・・?
私は彼の後ろにぴったりとついって行き、居間に到達すると、
闇雄とライ子が当然ながら鉢合わせになった。
ライ子は助け船を得たような表情で、闇雄の腕を掴もうとしたが、
私が視線を送ったのでやめた。
闇雄は、どうしたんだと訊ね、少し間を置いて、
ライ子が私にとって待ちに待った言葉を口にした。
「自分勝手でごめんなさい、別れてください・・・。」
その言葉を聞いた闇雄は呆然としていた。
そんなに、ショックなんか受けなくても・・・と、嫉妬したがまぁいい。
そんなことより、早く闇雄に抱きつきたい。
いや、そういえばチューしてもらってないぞ、まだ・・・。
闇雄は魂の抜けたような表情で、
「嘘だろ・・まじかよ・・・そ、そうだよ!理由を聞かせてくれ!」
ライ子は涙を拭いながら、
「私なんかより、ヤミーのほうがいいよ。
もの凄い愛情をあなたに注いでくれると思うの、だから、ね?」
闇雄は私を一瞬鋭い眼差しで一瞥して、
再びライ子の方へとむき直し「脅されたんだろ?」と迫った。
やだ・・・、闇雄ってば、
私のことそんな真剣な目つきで目配せしてくれるなんて・・・、嬉しい・・。
ライ子は首をゆっくり横に振り、「ヤ、ヤミーは関係ないよ。
私がタチの悪い女だっただけ。」続けて、
「短かったけど楽しかったよ・・・、
ほら、男の子でしょ、堂々と帰りなさい!・・・ね、お願い。」
居た堪れない気持ちになっていた闇雄は、楽しかった、
とだけ言い残して彼女の元を去った。もの凄く、悲しそうなをしていたけど、
私が慰めてやりゃぁ、すぐに元気になるもんな!と思い、
ついでに私も彼女にさよならして後を追った。
ライ子は、お幸せに、と返してくれた。
嵐のような時間が去って、居間に一人座り込む彼女は、
一歩も立つことが出来なかった。
そして、大粒の涙が彼女自らの膝を濡らした。
〜帰り道〜
これが失恋か。別れは突然やってくる、とはよく聞くがまさにその通りだ。
街灯もまばらにしかついていない、
この町一帯を包む深淵の闇がさらに俺の心を暗くした。
あ〜、彼女の心境や今何をしているか考えると
何ともいえぬ喪失感に、打ちひしがれていた俺に、病子は脳天気な口調で、
「こ〜んな夜に女の子の手をつながず歩かせてたら、
私さらわれちゃうぞぉ!いいの!?」
絶対こいつが原因だろ。だが、確証が持てないし、
もう、言い争いになることはしたくない・・・。
かと言って、ライ子に直々確認をとるのも、
あんな事があったあとだと聞きにくいし、それに、
病子は関係ない、と言った彼女を疑ってしまうことになり、やはり躊躇してしまう。
物思いにふけってる内に、いつの間にか病子は俺の腕に抱きついていたが、
俺にはもう振り払う力は残っていない。俺は一つため息をついて、
「あのなぁ、動きにくい。それに、
おまえが返り討ちにでもすんだろ、その人さらい。」
「え〜、私ほんとはもの凄く非力でさぁ〜、だから、
闇雄に守ってもらわねぇとな・・・、えへっ・・。」
彼女は赤の他人が見れば、ピュアで天真爛漫な印象を持つだろうが、
こいつの元来持つ情緒不安定なところや、俺への重すぎる愛、
ライ子宅での疑惑等の様々な事を体験することによって
生成された違和感が嫌でも拭えず、
俺は彼女を、
いつもの気の許せる友達としての目線で見れなくなっていた。
「ところでさぁ、私を嫁に貰ってくれるんだよね・・・?」
彼女は例の強引な要求をしてきた。
俺は堪らず、「しばらく一人にしといてくれよ。
もうこの2日間で疲れちゃってさ・・・。」
病子は当然食い下がると思ったが意外にもあっさり、
「おう、しゃーねぇよな。闇雄は頑張ったもんな・・。」と、
柔和な笑顔でねぎらった。
「頑張ったも何も、俺がみんなに迷惑をかけちまったようで、
ホントに申し訳ないよ。
大した色男でもないのに、変な色恋沙汰に発展させちまって・・、
ああ・・・ライ子・・・。」
「ライ子のことはもういいじゃねぇか。結局、ハードルが高すぎたんだよ。
それに比べてほら、私はハードル低いよ。
あんたの物だよ・・・蹂躙し放題だよ。」
そうか、そうだ・・・、そもそも俺にはライ子なんて不釣り合いだったんだ、
そう考えてしまうと、案外、別れてしまって良かったのかもしれない、
と思えるようになってきた。
他の女子連中と比べて大人っぽさが段違いであり、
彼女は頭も運動もできるし、見た目も群を抜いて良く、
それに彼女の人柄なんて最高だ、
そんな彼女の横に付いている冴えない男、考えるだけでも気が滅入る。
「おい、闇雄!もうおまえんち着いちまったぞ。
もう、意識して歩かないと危ないぞぉ。」
どうやら、考え込んでいる間に自分の家に到着したらしい。
俺が病子の手を振り払い、おやすみ、といって玄関扉を開けようとすると、
病子は名残惜しげに「また明日!迎えに行くからな!」と、言った。
え・・・、迎えにいく?
俺は真意を訊ねようと振り返ったが、もうすでに居なかった。
一旦投稿終了します。ここまでが中編です。
GJ!
病子の健気な姿に惚れた
病子かわいいね
こういう短編増えて欲しい
>彼女は自らのか細い手を、俺の頬に滑るように2・3回ほど這わし
「手」が這ってるんじゃなく、彼女が這わしてるんだから「滑るように」はおかしい
正しくは「滑らせるように」だな
>俺は突然、この一連の行為を朝っぱらからされたため、 驚き、一歩後ろに引いてしまった。
どんだけ拙いの、この文章構成。声に出して読んでみれば?
>お前の全ての事に、遠慮せずに踏み行っていくからね、へへ・・・
×踏み行って ○踏み入って。笑ってる場合じゃないな
>「いや、俺にはライ子がいr」
作品全体からも滲み出てるけど、ここが典型的な中二病表現だな
>悪い部分も全部受けてめて・・・
受けとめて
>そう否定すると、彼女の顔を昨日見たあの沈鬱な表情へと変化しつつあった。
彼女の顔を変化しつつある(w)主体は何なの? 「てにをは」の誤りは致命傷だよ
>非力な力
馬から落馬。女の婦人w
>彼女より40cm以上も大きい俺は、彼女の勢いにのまれ身動きが取れなくなり、 病子を見下す形で彼女と目が合った。
一文の中に同じ代名詞を何度使ったら気が済むの? 拙すぎて萎える
>無理やり擬制し
法律用語を強引に使った完全な誤用
>幼く発達した自らの体
??? 発達してるのか、はたまた幼いのかよく分からない
>俺ってホント謝ってばっかだな・・・、ギネス級だよ。
最近の軽薄なラノベに影響された悪のり表現で、まったく面白くない
>俺はつかさず反論
すかさず
>私たちの愛を切り裂く部外者どもは
文学的というか慣用的には普通「引き裂く」だろうな
つか、真面目に書く気なんかないだろ
真面目に校正しててバカらしくなってきたよ
かっこいいこと言った割には肝心の作品はダメダメだなあw
>>741GJ
しかし・・・
>>737から
>>738は飛び過ぎじゃないか?というか1場面抜けてるとしか思えない・・・
>>744は偏見混じってるけど校正に関しては間違っていない。
投稿する前に推敲してみ?グッとよくなるよ。
GJ まぁ間違ってるかもだけど内容はおもしろいです
後編投下楽しみにしてます!!
GJ!最高だ、後編も頑張れ!
あと荒らしに構う奴も荒らしだ
>>741 GJです!!
文章なんて、書いているうちに上手くなりますよ。
ネタがあったら出し惜しみせず、まずはどんどん投下しよう!!
749 :
名無しさん@ピンキー:2010/12/03(金) 23:18:36 ID:W+AqN0fS
>>748 GJです!!
文章なんて、書いているうちに上手くなりますよ。
ネタがあったら出し惜しみせず、まずはどんどん投下しよう!!
>>741 GJ!
個人的には病子にはこのまま幸せになって欲しい、とか思ってしまう。
とにもかくにも、面白く読ませていただきました!
続きを楽しみに待っています!
単発による不自然なまでの擁護
相変わらずだなあw
だいたいまともに読んで貰おうという書き手が、自キャラにこんな名前つけるわけないだろ
からかわれてるんだよ
>>741 GJ!
ちょっと展開早すぎかなーとは思うけど、何よりヤミーかわいいよヤミー。
わめけばわめくほど惨めになっていくなぁw
必死に盛り立ててみても虚しいだけだよ
如何なる戦いにも負けたことのない帝国を相手にしてるんだからさ
“個人”の力じゃどうにもならないよ
馬鹿の一つ覚えか
荒らしにケンカ売ったのに隙だらけの文書くなんて…もしや
>>741も荒らし?みんな気を付けろ!(b^ー°)
分かってる人は分かってるようだな
バカばかりじゃないようで安心したよ
759 :
名無しさん@ピンキー:2010/12/04(土) 02:06:19 ID:xiFyuC1S
なんでみんなとねかむの作者のあの発言から荒らしが始まってるって指摘しないの?
みんな自演?
>>758自分のスレを一週間近くほったらかしてw何が目的なんだ
謝罪させたいのか・・・
構って欲しいのかwそれとも単に滅茶苦茶に死体だけか
昔から上辺だけの抗議で自己正当化するのは変わらんなw
どうせ何したって撤退する気は無いんだろう・・・
それとも“あいつは嵐だから気をつけろってか(爆)
>>759 ひょっとしてモグリなの?
もっと前から荒れてたろうが、この糞スレは
言うに事欠いて、あっちのスレの非難までおっぱじめやがったくせに
正当防衛を主張するつもりはないが、これは報復措置なんだよ
>>761結局バカにされたから 「ボク怒ったぞ!」か!?
貴様が本人かどうか知らんが
今回はそちらに利は無いぞ
そちらの住民も荒らしてたことも事実だからな
それにここ最近そちらのスレの話題も貴様がアピールするまで出て無いしな
不干渉?報復措置?
聞いて呆れるわw貴様は単なる基地害に成り下がっただけだ
コテちゃんかわいい。
>>762 まあ、何とでも言いたまえ
基地害からすれば常人こそ基地害に見えるもんだからな
「やれるもんならやってみな」的な論調で個人攻撃を受ければ、応えたくなるのが人情だろ?
こっちはまさに「ボク怒ったぞ!」状態なんだよ
こうなった以上、後はどちらが相手を許せるかってことだわな
もしくは徹底的に、廃墟と化すまでやり合うかだが
元々は無関係のスレだし、不干渉協定を受け入れる準備は常に整っているよ
どうやら本人の様だな・・・
>>764不干渉協定って何よ?
結局前回そちらのスレでも全住民が謝罪レスの後一週間いちゃもんを付け無かったら撤退するとかだったな
冷静に考えてみろ…荒らしが居るのに無理難題な注文だったろ?
今回は何だ?確か職人が代表して謝罪しろか?そっちのスレでも一番最初に逃げ出したのは職人だったろう?
発表の場は何処にでも有るのに職人がそんな責任を負うわけ無いだろうw
結果貴様自身が言ってる
“どんな下手糞でも投下出来る場所”
を貴様自身が潰してるんだよ!
それに今回は完全に“私怨”だしな
荒らすのが本意では無いのならもっとリアリティの有る不干渉協定の話をしてもらいたいもんだなウ〇ギ〇ヌ君
私怨はいつだって義憤より強いものなのだよ
さあ、どうするね?
君がスレの命運を背負ってみる気はないかな
その真剣さに免じて、君をスレの代表と見なしてもいい
君の言葉で協定を持ち掛けてくるのなら、喜んで受け入れよう
ココだけの話しだが自分は嫉妬スレが崩壊した時は悲しかった・・・
まだ学生だったがね
もう二度とあの様な悲劇は繰り返したくないと思ってるし
自分はスレの崩壊はアンタが悪いとは思って無かったし
ヤンデレのssは今後も読みたいし不干渉協定大いに有り難いことだと想うよ
今後一週間嫉妬スレとウナの話が出なければ成立と思ってくれ
但しこちらにも快楽犯罪者の粘着嵐が存在している
住民と粘着嵐の違いは言わなくても分かるよね
そろそろ出勤時間なので返答が欲しいんだが・・・
最後の言葉は“き〇う〇う”に散々煮え湯を飲まされたアンタには分かるよ話だろう
お前らの戯言、チンパンジーの喧嘩見てるみたいでSS見るより面白いわ
帝国とか協定とか妄想がキチガイじみてるな
どれだけ偉そうな言葉並べても結局ただの荒らしにしか過ぎないわけだ
771 :
名無しさん@ピンキー:2010/12/04(土) 07:06:50 ID:dhjyZ48s
一ついえるのは、投稿後の賞賛以外極力皆だまれはまいいだけのことだ
一番怒ってるのはスレを下らん嵐に汚された住人だろ
いや、むしろ呆れてるか
209 : ◆ UDPETPayJA 2010/12/04(土) 01:11:39 ID:SKB/54JEO
まだ規制が解けません。
今回もこちらに第14話を投下します。
210 : 天使のような悪魔たち 第14話 ◆ UDPETPayJA 2010/12/04(土) 01:13:03 ID:SKB/54JEO
冬が次第に近づき、寒さが厳しくなっていく。
就寝前に風呂に入って体を暖めてから、熱が冷めないうちに布団に潜るのが寒季の俺の日課だ。
もちろん、髪はドライヤーでしっかり乾かす。
でなければ翌朝寝癖で髪がえらい事になり、下手すれば風邪を引いてしまう。
目覚まし時計だけはしっかり三つセットする。三つも使うようになったのは、この家に俺一人だけになってからだ。
昔から俺は朝が弱い。特に冬は暖かい布団からなかなか出られずに二度寝を繰り返し、
時間ギリギリになって明日香に叩き起こされる、なんてのは日常茶飯事だった。
…迂闊。自分で言っておきながら、なんだか悲しくなってしまった。
明日香は気が狂うほどに実の兄である俺を愛し、幸せの絶頂で姉ちゃんの力で死んだ。
だけど俺はたまに思う。明日香は本当に幸せだったのか?と。
* * * * *
『………で、またここかよ。』
前回に引き続いて、真っ暗闇の空間。自分が立っているのか、はたまた浮いているのか、なんとも気持ち悪い。
だが前回の経験を生かし、俺は対策を練っていた。それは…
どうせ真っ暗なんだから、いっそ寝転んで目を閉じてしまおう!と考え、さっさと実行に移した。
…うん、立っている時よりははるかにマシだ。気を抜けば凄まじく気持ち悪くなりそうだが、
俺は必死に自分に「俺は寝てるんだ」と言い聞かせて、ごまかした。
211 : 天使のような悪魔たち 第14話 ◆ UDPETPayJA 2010/12/04(土) 01:13:52 ID:SKB/54JEO
『どうせいるんだろ?灰谷。さっさと来てくれよー。』
『僕ならもうそばにいるよ?』
『のわっ!?』
び、びっくりした…。いきなり耳元に話し掛けられたんだから。
脅かすなよバカ、と内心で悪態をつき、俺は目を開けた。
『三日ぶりだね、飛鳥。今日は君の疑問に答えにきたよ。ただし、僕の知ってる範囲でね。』
『! まじか。』
『うん。とは言っても、あまり時間はないけれど。』
言うと灰谷は自分の髪を手で掴み、即席ツインテールを作ってみせた。
『じゃあまず、前回の君の質問から答えようか。なぜ僕が亜朱架や明日香に似ているのか。
それはね…亜朱架は僕の子供だからだよ。』
『……は?』
本当に、言っている意味がわからなかった。だって俺の、俺たちの母親はこいつじゃない。
もう何年も会ってないが、その程度で母親の姿を忘れる、思い違うわけがない。
『ああ、彼女は…君が母親と思ってる人はね、代理母なんだよ。
亜朱架から聞いたと思うけど、亜朱架は普通の人間との間には子供を作れない。
それは染色体の数が異なるからなんだけど…僕も"そう"なんだ。
だから翔(かける)は、僕のコピーを二つこしらえ、片方には遺伝子操作を加えて、性別を改変した。
将来その二人がアダムとイヴになるために、ね。』
−−−衝撃だ。灰谷の語っている事は、あまりに次元が違いすぎる。
そして灰谷が語った中にあった人物、"翔"とは…恐らく神坂 翔。俺達の父親にして、遺伝子学のプロフェッショナルにちがいないだろう。
何より、俺がずっと母親だと信じてた女性が…代理母だったなんて。
『翔の唯一の誤算は、生まれた子供たち"も"特異な能力を宿していたこと。
その能力を研究するためだけに、明日香は作られた。
そして明日香は亜朱架の…つまり、コピーのコピー。故に脆弱な身体に生まれついた。
ではなぜ、実験動物として生を受けた明日香が、君と一緒に暮らしていたと思う?
その間、オリジナルの亜朱架は、何処で何をしていたと思うかい?』
『………まさか、そんなわけ』
ないよな、とは言えなかった。
そこまで言われてしまったら、答えは一つしか思い浮かばない。
『…姉ちゃんは、明日香の身代わりになってたんだな。』
213 : 天使のような悪魔たち 第14話 ◆ UDPETPayJA 2010/12/04(土) 01:14:51 ID:RU+w7x9wO
『そのとおり。幸い、亜朱架は僕と同じ要素を持っていたから、いくら実験されようと、"身体は"無事だった。
ときに飛鳥、君には僕は何歳に見えるかな?』
灰谷は左目でウインクをして、可愛い娘ぶってみせた。
『正直…大学生くらいの歳にしか見えん。』
チチは姉ちゃんとは比べものにならないくらいデカいが。
『ありがとう。亜朱架も、あと5年歳をとれれば僕くらいの大きさになったんだけどね。』
『…もしかして、俺の思考が読めるの?』
『今頃気づいたのかい?ホント、結意ちゃんといい、君はでかチチが好きだねぇ。』
…頼むから、"だっちゅーの"のポーズはやめてくれ。
『まあ冗談はさておき。明日香には、僕や子供たちに備わっている、"不死"の要素が引き継がれなかった。
だから明日香は、力の使いすぎで身体がズタスタになって…亜朱架に介錯されたんだ。』
『ま、まてよ!さっきから姉ちゃんや明日香の事ばっかだけど、俺は!?』
『…知りたいかい?』
灰谷はふっ、と冷ややかな笑みを浮かべた。
ぞくり、と背筋に悪寒が走る。まるで蛇に睨まれたかのように。
『率直に言おう。君は僕の子ではない。』
『…なん、だって。』
『つまり飛鳥、君は亜朱架や明日香とは、血が繋がっていない。染色体の数も、普通の人間と同じ46本だ。
本当の僕の息子は、亜朱架と同じく49本の染色体を持ち、亜朱架と対極の力を持っていて、
かつ、歳をとらない。…ここまで言えば、わかるかな?』
『−−−馬鹿な。それじゃああいつが!?』
心当たりは一人しかいない。中学時代に出会い、苦楽を共にし、つい先日対立こそしたが、
かけがえのない俺の親友………斎木 隼。
『隼が、姉ちゃんの弟なのか?』
『正解。』
『じゃあ俺はなんだ…俺はなんなんだよ!
なんで明日香は、兄貴を好きになった事を悩んで死んでいったんだ!
こんなの…ありかよ…!』
『…君は、隼の替え玉なんだよ。
亜朱架たちの代理母の名前は、斎木 静香。そして、君の実の母だ。
皮肉だろうね…つい今しがた、実の母親ではないんだ、とショックを受けたのに、実際は真逆。
君は亜朱架の弟ではなく、代理母の実の息子。…可哀相に。』
『−−−俺を哀れむなッ!』
悔しい?悲しい?そんな言葉では今の俺の感情は語り尽くせない。
強いて言えば、信じていたもの全てが虚だった。ただそれだけだ。
『まあ悲しいことばかりではないはずさ。君にはちゃんと、実の姉が存在する。
名前は斎木 優衣。優しい衣、と書いてユイと読む。
ただ、最後に会ったのは彼女が小学校に上がったときだったから、今はどうしているかは知らない。』
『…結意の事は知っているのに、か。』
『隼は僕とは波長が合わないんだよ。僕は基本的に、亜朱架の夢を介して外の様子を見ている。
僕は今、自分の意志では指一本動かせない状態だからね。
そして飛鳥、君は亜朱架と明日香の力を受けすぎた。そのせいで、僕と波長が合うようになったのさ。
ただそれはやはり、弱いつながりでしかない。あと数回、夢の中で会えばつながりも消えてしまうだろう。』
214 : 天使のような悪魔たち 第14話 ◆ UDPETPayJA 2010/12/04(土) 01:15:44 ID:6PxfUAJkO
実の姉が存在する、なんて、なんの慰めにもならない。
見たことも会ったこともない姉など、俺が姉弟(兄妹)だと信じてきた二人に比べれば、
俺にとってはなんの価値も見いだせない。
『………! そろそろタイムリミットだ。』
『…そう、か。』
『またね、飛鳥。どうかくじけずに、普通の人間としての生を全うしてくれ給え。
それは僕や子供たちが、どんなに願っても得られない生き方なのだから。
それと、最後にひとつ。僕は今年で36歳になるんだよ。…身体は歳をとらないんだけどね。』
その言葉を最後に、灰谷は暗闇の中に吸い込まれるように消えた。
瞬間に襲い掛かる、奈落に吸い込まれそうな感覚も、今の俺にはなんの脅威ですらない。
どうか早く目覚めてくれ。そしてどうか、全てジョークだと言ってくれ。
でなければ、あまりに寝覚めが悪すぎるだろう?
* * * * *
「…頭痛ぇ。」
215 : 天使のような悪魔たち 第14話 ◆ UDPETPayJA 2010/12/04(土) 01:17:09 ID:6PxfUAJkO
三つの目覚ましが鳴るよりもわずかに早く、俺は目を覚ました。
朝の日差し窓越しに浴び、ここが夢の世界ではないことを実感して、ひとまず安堵した。
独りになってから約十日経ち、朝の静寂さにも慣れた。
最初は漠然とテレビをつけ、空虚さをごまかしていたが、次第にそれすらしなくなった自分がいた。
誰もいない家に時間ぎりぎりまでいる必要性はない。
俺は台所に降り、トーストを仕込んで、その間にシンクで洗顔をすませた。
チン、とトーストが焼き上がった音がしたが俺はそれをスルーし、制服へと着替える事を優先した。
食事にありついたのは、7時半。トーストにマーガリンを塗っただけの、簡素を通り越して貧乏くさい食事だ。
口元のパン屑を払い、俺は玄関に向かう。手に持っているのは、筆箱しか入っていない、
およそ学生らしくない軽さの学生鞄だけ。
鍵を開けて外に出ると、家の前に誰かが立っていた。
いや、"誰か"と言っては随分なご挨拶だろう。家の前で待っていたのは、昨日退院したばかりの、結意だ。
「おはよ、飛鳥くん。」
「結意…」
「お弁当作ってきたよ。今日は飛鳥くんの大好きな−−−きゃっ!?」
俺は言葉を待たなかった。
結意の腕を掴み、強引に引き寄せ、力いっぱい抱きしめた。
「あ、飛鳥くん…どうしたの…?」
「…ごめん。しばらくこうさせてくれないか。」
「………何か、あったの?」
「…なんでもないよ。ただ−−−」
俺の信じていたものはすべて幻だった。そしてこの俺自身も。
俺は結意の胸元に顔をうずめ、さらに腕の力を込めた。
別にやましい気持ちからじゃない。…泣き顔を見られたくなかっただけだ。
それでも結意の体温は心地よくて、ずっとこうしていたい、と思ってしまう。
「独りが寂しくなっちまったんだ。父さんも母さんも、姉ちゃんも…明日香も、帰ってこない。
今、俺一人ぼっちなんだよ。」
「…私はずっと、飛鳥くんのそばにいるよ。」
結意は優しい手つきで、俺の頭を撫でてきた。
これじゃあ、こないだと丸っきり逆じゃないか。
216 : 天使のような悪魔たち 第14話 ◆ UDPETPayJA 2010/12/04(土) 01:18:34 ID:SKB/54JEO
* * * * *
俺こと佐橋歩は、チャイムぎりぎりに学校に着くのが当たり前の人間だ。
ろくに授業に出てないのだから遅刻してもいいんじゃないか?と思ったかもしれないが、甘い。
俺はこれでも、遅刻"は"してないんだ。
そんなわけで今日も、ぎりぎり間に合うくらいの時間に到着した。
「よう、佐橋歩!」
「−−−なぜ、あんたがいる。」
俺が"あんた"と呼んだのは、県内屈指のお騒がせ芸人、瀬野 遥だ。
瀬野の他に、瀬野と同じ制服を着た男が一人、見受けられる。
瀬野たちは、怪しげなキャリーバッグを四つ持っていた。
「誰が芸人だ!それより、手伝え!」
「何をだ。」
「こいつを運ぶのをだよ!さすがに20人分にもなると重くて仕方ねえ!」
「中身はなんだ。」
「メイド服だ。」
瀬野のその言葉を聞いて俺は、ひとつの決意をした。
−−−よし、通報しよう。
「もしもし110番…」
「だー待て待て!神坂だ!神坂に頼まれたんだよ!文化祭で使うから、って!」
「どちらにせよ俺には関係ないな。俺のクラスはメイド服など使わん。」
「いいから手伝ってくれよ!そしたら、いいモン拝めるぞ!?」
「なんだよ、変態。」
「それはな………結意ちゃんのメイド服姿だ。」
ああ、そういやこいつら、織原のファンクラブがどうとか言ってたな。
変態もここまでくると、畏敬の対象にすらなるぜ。
「よしわかった。手を打とう。」
「そうか、助かるぜ!」
「ただし………光の分ももらってくぞ。」
「て、てめぇ!」
当然だ。世の中ギブアンドテイクなんだ。
それに…自分の彼女ながら、僕っ娘メイドが見れるなんて、朝からツイてるじゃないか。
そうして、初めての遅刻と引き換えに、俺はメイド服を入手(半ば略奪)したのだった。
217 : ◆ UDPETPayJA 2010/12/04(土) 01:19:25 ID:SKB/54JEO
今回はここまでです。
転載終了したら480KB超えてしまった
次スレ立ててくる
荒しに構うのも荒しというけど
最近の荒らしって放っておいたら勝手に勝利宣言して
どこまでも増長してスレが廃墟になっても半永久的に荒らし続ける
傾向があるしただスルーし続けるのも限界があると思う。
>>781 GJ!!
なんか、衝撃の事実のオンパレード。
主人公は、このまま泥沼の共依存関係に陥ってしまうのか……。
個人的には、そんな関係も好きだけどね。
100%絶対的にスルーが徹底できれば効果あるだろうけどそうはならないからな
たかが小説でよくこんなに必死になれるよな
就活とサークルで忙しい自分にはなんでそんなに本気で議論してんのかがわからん
金もらえるならやるけど
よっぽど馬鹿で暇人なんだな
どうせこんなこともスルーできないんだろうな↓
788 :
龍馬暗殺:2010/12/05(日) 14:37:29 ID:ilBMG1Eo
「龍馬暗殺」
慶応3年11月15日深夜、京都河原町の近江屋・・・・・・
中岡慎太郎との議論に熱中していた龍馬で有ったが
階段からドドドーーーッ!!!
と大きな物音・・・
龍馬は「ほたえなや(土佐弁で騒ぐなという意味。)」と声をかけた。
それで龍馬の在室を確認したのだろう。
一人の麗人は二階奥の八畳間に飛び込んだ。
だが、部屋には男二人がいた。
坂本龍馬と中岡慎太郎だ。
とまどいながら、敷居上に麗人は正座して
「坂本様お久しゅう御座います」と恭しく両手をつく。
右にいた龍馬が「はて、どなたでしたかな」と答えると。
麗人は一瞬龍馬をにらみ、やおら目を瞑り短く深い息を吐くと「千葉佐那子で御座います。」と深々と畳に頭を付ける。
龍馬は大きく目を見開き突然の来訪者に驚いた様子だったが、直ぐに独特の人懐こい笑顔を浮かべると「佐那子さんか・・見違えるほどお綺麗になっとるから分からなかったぜよ!」
と佐那子に笑いかけた。
佐那子は目を潤まながら「まあ、坂本様って相変わらずなのね・・・私は直ぐ坂本様って分かりましたわよ」
と微笑む。
龍馬の横に居た慎太郎はじっと、この麗人の佐那子を見詰めていたが彼女と視線が合い微笑みを返されると慌てて
「千葉佐那子って・・・りょ、龍馬!ワシはちと席を外すけん」と立ち上がる。
龍馬は「慎太遠慮せんで良いぜよ」と笑うが空気を読んで居たたまれなく成った慎太郎はそそくさと奥に引っ込む。
佐那子は慎太郎に軽くお辞儀をすると龍馬に向かって「坂本様・・ご活躍は聞いております。」と笑いかける。
龍馬は「わしは自分の出来る事をやってるだけぜよ」と豪快に笑い飛ばした。
佐那子は“あの頃”と変わらない龍馬に安堵したのか柔らかい微笑みを浮かべるが・・・突然真剣な眼差しを龍馬に向けると
「坂本様・・・そう言えば風の噂で聞きましたが最近はお龍さんって“ヒト”と常に一緒に居るとか・・・」
と低い声で呟く・・龍馬は雰囲気が変わった佐那子に戸惑いながら
「お龍、お龍は、わしの・・女房ぜよ・・・・・・」
とぽっりと喋る。
佐那子は宙をさまよう様な虚ろな目をして笑みを浮かべると
「やだわ、坂本様・・・坂本・・いや、龍馬様の妻は私しか居ませんのに・・・」
佐那子の低い声が響く・・・龍馬は佐那子の奥の 狂気を感じ取ったのか狼狽えながら
「い、いや・・佐那子さん・・・」
789 :
龍馬暗殺:2010/12/05(日) 14:41:11 ID:ilBMG1Eo
「い、いや・・佐那子さん・・・」
と佐那子に話し掛けるが、彼女は龍馬を無視して
「龍馬様も今や天下の志士〜英雄色を好むと言いますから浮気の一つや二つで妻としてはとやかく言いませんけど・・・」
龍馬は蒼く顔色を変え
「違う!違うぜよ!佐那子さん!お龍は・・・」
と佐那子を制しょうとするが・・・
「嫌!聞きたくない・・・だって・・・言ったじゃ無いですか・・・私の事・・妻に・・するって・・・」
俯いて肩を震わせる佐那子に龍馬は両手を付いて
「す、すまん!佐那子さん!」
と頭を下げる。
「・・・下さい・・・」
小さいか細い佐那子の声に龍馬は「え!?」と聞き返す
「抱いて下さい!私の事を妻と想うなら!」
佐那子の渾身の叫びに龍馬は・・・
「すまん」と頭をさげるのみだった。
佐那子は龍馬を狂気で歪んだ顔で見詰める・・心配に成った龍馬が顔を上げると
「りょうまぁああーーー!!!」
と叫び抜き打ちざまに龍馬の額を真横に払った。
「さ、佐那子・・さん・・・」
龍馬が崩れ落ちるーーその時異様な叫び声を聞いて慎太郎が駆けつける
「りょ、龍馬!」
と喚きながら慌てて近寄る慎太郎に佐那子はーー 「こなくそ」と叫びながら後頭部を斬り裂くーー
龍馬は「慎太〜!」と叫び、そばにおいてあった刀を取ろうと後ろ向きになったところ 右側から腹部を佐那子に斬られる
さらに彼女は手を抜くことなく上段から剣を振り下ろした! 刀を手に取った龍馬は佐那子の剣を鞘で受け止めるしが、剣の勢いが強く鞘ごと削りとられ頭部に致命傷を負い脳しょうの一部が飛び散る。
致命傷を負ったのか龍馬は「お龍・・・」と一言呟くと事切れた・・・
「いやぁああああああ!!!!!」
と佐那子の叫び声が響き渡る。
慎太郎は「よ、よくも、よくも龍馬をーーー!!!」
と太刀を持ち応戦するが慎太郎も深手を負ってる上佐那子も北辰一刀流・・やがて太刀を弾かれ剣を短刀で受け止めるのが精一杯・・・
「あはははははははははははははははははははははははははははははは・・・・・・」
無き笑う異様な表情の佐那子の狂気の刃に慎太郎は切り刻まれ全身20箇所以上に負傷を負い動かなく成った。
一説によると龍馬の遺体には睾丸、性器が抉り取られてたとゆう・・・・・・
790 :
龍馬暗殺:2010/12/05(日) 14:42:35 ID:ilBMG1Eo
龍馬暗殺『千葉佐那説』では。
彼女も北辰一刀流だし、動機としてはお龍と結婚した事に腹を立てて、江戸からやってきたのでは。
それならば、中岡が襲撃後二日間も生存していたのにもかわらず、刺客について何も語ってはいない。 女にやられたのでは、言うに言えなかったのだと思う。
791 :
オマケ:2010/12/05(日) 15:19:34 ID:ilBMG1Eo
史実での「千葉佐那子」
天保9年、北辰一刀流千葉周作の弟、千葉定吉の長女として生まれる。
北辰一刀流免許皆伝の腕前を持ち、馬術、長刀にも優れていた。
佐那子が17歳の時、江戸に留学してきた坂本竜馬が八重洲の道場に
入門し、佐那子は坂本の修行の相手をつとめる。入門5年後、坂本は
師定吉から北辰一刀流長刀兵法の目録を得、また互いに思いあうようになっていた佐那子との婚約を許された。その際千葉家から坂本に
短刀一振が正式に贈られ、何も持っていなかった坂本は新しい紋付を
差し出したという。二人は天下静定の後に祝言をあげることを約束
した。坂本は土佐にいる姉乙女に佐那子に心が傾いていることをあ
らわした手紙を送っている。この後坂本は江戸を離れ、国事に奔走するうちに京でお龍と出会い、佐那子を忘れ、お龍と結婚する。
佐那子はそのことも知らず、婚約から9年後の慶応3年11月、坂本
の死の報を知る。その後佐那子は独身を貫き、坂本の妻として生きた。
坂本さん・・・自業自得ですね・・・
きったはったがヤンデレなこの時代は、どうにかならんもんかねぇ
ごめんなさいスルー出来ませんでしたGJ
795 :
ブラック☆プラチナスオード:2010/12/06(月) 09:52:01 ID:MDDw1B2e
ちゅまらん(ノ-"-)ノ~┻━┻
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(つ」7= (つ」7=∩ (つ」7=∩ (つ」7=∩- (つ」7=∩-(つ」7=∩
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