【あかほん・濱中】氏家ト全 30時間目【妹・生徒会】

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396IQ180少女の苦悩(その4)
 しかしスズは一片の疑念が心の底から沸きあがってくるのを止められない。
 少女雑誌の性体験特集の読者投稿が思い出されてしまう。
「えっちを拒んでいたので彼氏に浮気されて捨てられた私」
「彼とするのが怖くて、彼を失ってしまった初恋」
 その「彼」の姿にタカトシがかぶってしまうのを止められない。

 スズは津田タカトシがそんな男だとは思わない。
 思わないが、それでも生まれて初めて恋を知ってそれを失うことに臆病になってしまっている少女は
疑念を捨て去れないでいる。

シノ会長を見ているときのタカトシの嬉しそうな目を思い出してしまう。
アリア先輩と話しているときのタカトシの視線の先を見て辛くなる。

タカトシが自分から去っていってしまうという想像。
至福の抱擁も、雲の上にいるみたいな幸せなキスも。
優しい瞳も、ステキな声も。
あのいい匂いも、固い胸板や腕も。
すべてなくなり、だれか他の女の子のところに行ってしまう。

それは想像であっても息が出来なくなるくらい、苦しい。
去年までは当たり前だった日常。
津田タカトシがいない生活。

それは今のスズにはとても考えられない。
灰色の、無味無臭な毎日。
鉛色の暗い雲に覆われたどんよりとした日常。

それは間違いなく、自分の心を壊してしまうだろう。
スズにはそれが実感できた。
タカトシが、他の女の子と幸せそうな笑顔で歩いている光景。
誰か自分ではない、他の女の子とベッドの中で抱き合っている情景。
タカトシの硬くて巨大な男根が、破瓜の血に染まりながら睦言を囁いている状況。

魔法みたいにスズを気持ちよくさせてくれるタカトシの大きな手のひらが。
知らないどこかの女の手のひらと繋がれている。

それは想像であってさえもスズの心を切なくさいなんでいく。

――泣いちゃダメ。
泣きはらした目をみて、恋人がどう反応するかということをスズはたやすく思い浮かべることができる。
――泣いたら、明日アイツは心配するから。
泣かないように努力をしても、その想像はスズの鼻の奥を刺激し、タカトシの体操着に涙のしみを作る。


――津田っ
スズは胸の中で大好きな男の子の名前を呼ぶ。
――わたし、つだのこと、だいすきだからっ
届くはずもない告白をしてしまう。

――なんでも、してあげるから……わたしのこと、きらいにならないでっ………

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今日はここまでー
次回(5)で完結予定