(15)
「見つけたわッ!!あたしについて来てッ!!」
ややあって、高らかに響き渡った叫び声に、優子は、束の間、考え込むような表情を浮かべた。
目の前の少女が、この種の追跡行動を必ずしも得意とはしていないという事情を、蒼髪の<戦士>は薄々ながら承知していた。
その彼女がこうもあっさりと残留思念を辿れた、という事実は、
あるいは、勝利を得た敵に油断が生じた故なのかもしれないが、その一方で、自分たちを誘う撒き餌である可能性も捨て切れない。
慎重を期した状況判断が求められる局面である。
――――だが、逡巡の時は、さほど長くは続かなかった。
(・・・・たとえワナだろうと、陽子とレムネアを救出するためには飛び込んでいく他無い)
行く手にはどんな悪辣な陥穽が待ち受けていようとも、
自分の判断ミスの結果、捕囚の境遇に落ちてしまった友の身を案ずるならば、
撤退など、優子には到底受け入れ難い選択肢だった。
躊躇いを振り払った<ヴァリスの戦士>は、
眦を決して、チャイナドレスの裾をはためかせながら疾駆する退魔師少女の後を追いかけていく。
彼女のすぐ後ろを、惑星ラルの王女がオレンジ色のポニーテールを翻しつつ、随走していった。
無論、二人の犠牲によって、からくも虎口を脱したキャロンとて、抱く想いは優子と全く変わらない。
いかなる危険が待っていようと、二人を助け出さねば、という不退転の決意に背中を押されるまま、
<第108代魔物ハンター>と<ヴァリスの戦士>、そして、<リバースの剣士>は、
<鏡面世界>の荒涼たる大地の奥深く分け入っていくのだった――――。
(16)
――――同時刻。<鏡面世界>。最深奥部。
『クックックッ・・・・愚かな連中よ。罠と知りつつ、向かってくるとはのう・・・・』
姿見に映る、三人の<戦士>たちを眺めやる<鏡使い>
・・・・陰鬱な髑髏面に黒々と穿たれた眼窩の奥に蔑みのこもった嘲りの笑いが張り付いていた。
――――彼がそのように断じたのも無理は無いだろう。
傍らに居並んだ、全部で13ある不吉な黒曜石の石棺の中では、
つい先刻、新しくその列に加わったばかりの二人を含めた、4人の虜囚・・・・本能寺飛鳥、ライディ、朝霧陽子、レムネアが、
意識を封印された状態で、深いまどろみに落ちている。
もう一人、綾小路麗夢の棺もあるが、彼女だけはかろうじて意識を保っていた。
とはいえ、漆黒の牢獄を破る力などとうに無く、<鏡使い>の意のままに、強制的にエネルギーを絞り取られる身となってからすでに久しい。
彼女から奪い取られたエネルギーは、<夢幻界>に赴いた<ドリームハンター>
――――正確に言えば、麗夢の魂の一部を邪悪な魔道の技によって本体から吸い出し、仮初めの肉体へと移して作り上げた"人形"――――へと供給され、活動を支えている。
その『麗夢』からの最新の報告では、ヴァニティ城の守りについていた<戦士>達についても、
逃走に成功した麗子以外の4人を悪夢の牢獄に閉じ込めるのに成功した、とある。
何かと小うるさい<夢幻界>の女王への抑えとして『麗夢』は残しておく必要があるとしても、
程無くしてこの場に転送されてくる筈の4人を併せれば、優子たちの迎撃に仕える手駒・・・・"人形"は8体に達するのである。
(17)
『・・・・魂の座も、残るは4つ・・・・最早、埋まるのは時間の問題、と言っても差し支えあるまい・・・・』
(・・・・くっ・・・・)
肉の削げ落ちた頬をカタカタと揺らしながら、<鏡面世界>の魔道士がくぐもった笑い声を立てるのを、
碧色の髪の少女は、幽閉されている黒曜石のガラスケース越しに眺める事しか出来ないでいた。
こうしている間にも、邪なる魔道の技によって、全身からは絶え間なく生命力と精神力が奪われ続け、
時空を超えて、自分の魂と肉体を複製して作られた"人形"の許へと注がれている。
どうやら、コピーが活動している間は、本体の方も一定の意識レベルを保っていなければならないようだが、この状況では脱出も抵抗も到底不可能だった。
実際、ライディや飛鳥とほぼ同じ時期に囚われの身となって以来、幾度となく、力を奪われるために強制的に覚醒させられ、
その度に、考えつく限りの方法で、魔牢からの脱出を試みてきた麗夢だったが、
努力が部分的にでも実を結んだ例しは、今現在に至るまで一度も無い。
(18)
『・・・・我が主、偉大なる<影の女王>よ・・・・』
大仰な身振りで、<鏡使い>は、
(麗夢自身を含む)美しき囚人たち――――同時に、生贄でもあるが――――の封印された5つと、
未だ空っぽのままの8つの石棺が、環状列石のように取り囲む闇の中心を振り仰いだ。
漆黒の闇を湛えた眼窩の内部で、不浄なる炎がいつになく烈しく燃え盛っている。
酷薄無比なる不死者にも、長年にわたって待ち望んだ瞬間を目前にして、
生身のカラダを失った時に忘却の彼方へと打ち捨てた筈の喜悦の昂りが舞い戻ってきているのかもしれない。
『・・・・時は満ちつつございますれば、どうぞ、心安らかにお待ちあれ。
今しばらく、今しばらくのご辛抱にござりますれば、何とぞ、何とぞ・・・・』
生ある存在全てに対する憎悪に支配された眼差しが見据えるのは、ひときわ巨大でおぞましい姿の黒水晶の岩塊。
聳え立つ漆黒のモニュメントは、周囲に設けられた13基の生贄台から絶え間なく放射される、負のエネルギーを吸収して、
その奥深くに封印された何者かの許へと送り続けていた・・・・。
(19)
――――<夢幻界>。ヴァニティ城。女王ヴァルナの居室。
「今です、ヴァルナさまッ!!早く封印をッ!!」
追手を振り切って室内へと駆け込んだ赤毛の少女が、
白亜の光沢を帯びた両開きの大扉を乱暴に締め、ガチャリ、と錠を下ろした。
相前後して、切迫した口調で、封印の呪文が詠唱されたかと思うと、
一瞬、宙に浮き上がるかのような感覚が全身を包み込む。
「・・・・もう、扉から離れても大丈夫ですよ、麗子。
この部屋の空間自体を、城内の空間から切り離して隔離しましたから・・・・」
部屋の主・・・・<幻想王女>ヴァルナにそう言われて、ようやく緊張を解く、<ヴァリスの戦士>。
実体化させていた、ぬばたまの愛剣を静かに下ろすと、
大量の魔力を放出したせいで呼吸を弾ませている主君の前に片膝をつき、謝罪の言葉を口にする。
「申し訳ございません。私が、もっと早く城内の異変を把握していれば、こんな事態には・・・・」
(20)
「麗子は、まだ傷が癒えずに臥せっていたのでしょう?貴女の責任ではありませんわ」
気遣わしげなヴァルナの眼差し。
――――だが、黒衣の<戦士>は首を横に振って、なおも自分を責めるのをやめなかった。
「・・・・たしかに仰る通りですが、だからと言って、警戒を緩めるべきではありませんでした。
警備責任者である私のミスです。まったく、優子たちに合わせる顔がない・・・・」
口惜しそうに下唇を噛み締める、赤毛の少女。
目の前の主君の顔に弱り切った表情が浮かぶのには気付いていたものの、
生真面目な性格の彼女は、それぐらいの事で、取り返しのつかない過誤を犯してしまった自身の迂闊さを許す気持ちにはなれなかった。
(21)
――――変事が起きたのは、小一時間ほど前である。
始まりは、ヴァニティ城に詰めていた侍女たちの何人かが、自室で休息中だった麗子の許を訪れ、
城内の回廊を走り抜ける怪しい影を目撃した、と告げた事だった。
後から考えれば、シルキスや茜たちにではなく、傷を負って休養中の自分にそんな報せを持ってきたという話自体、違和感を覚えねばならなかった所だったが、
<変幻戦忍>を撃退した直後で、心のどこかに緩みが生じていたためだろうか?
さして気にかけるでも無く、彼女たちの案内で城の一角へと足を運んだ<ヴァリスの戦士>
・・・・そこで見出したのは、正体不明の侵入者ではなく、女王の傍らで警護任務に就いている筈の<白翼の騎士>と<アルテラの三剣士>の姿だった。
異変を悟り、短いが激しい戦闘の末に、4人の仲間を昏倒させて
――――無論、回復不可能なほどの手傷を与えた訳では無かったが、さすがに正気を取り戻させる時間的余裕までは存在しなかった――――、
全速力で主の許へと駆け戻った黒衣の<戦士>。
少女のラベンダー色の双眸に飛び込んできたのは、今まさに主君であるヴァルナの身柄を拘束せんとしていた侍女たち
・・・・生まれながらにして女王に忠誠を誓う、忠良なる臣下であった筈の<夢幻界>の住人の一斉蜂起だった。
(22)
「・・・・全ては私の責任です、ヴァルナさま。
私がアスカの逃走に気を良くして、
もう一人の刺客・・・・おそらくは、<ドリームハンター>綾小路麗夢が、城内に潜伏している可能性を見落としていた油断こそが、今の窮地を・・・・」
途中まで言いかけたところで、ううっ、と、苦しげに呻き、脇腹を押さえる。
<変幻戦忍>との死闘による消耗から回復しきれていない身体で、4人もの<戦士>を相手に戦い、全員の戦闘能力を奪い去った後に、
彼女たちよりは遥かに技量は劣るとはいえ、数においては圧倒的に優る侍女たちを残らず昏倒させてのける、という離れ業を成功させた代償は、
麗子の全身に無数の傷跡となって残っていた。
華奢なカラダを覆う漆黒の甲冑にはあちこちに斬撃の痕が走り、
防御フィールドを以てしても防ぎ切れなかったダメージが乙女の柔肌に紫色の痣を生じさせている。
(23)
「いけません、麗子。すぐに傷の手当てを!」
駆け寄ってきたヴァルナが、傷口に手をかざし、口早に治癒の呪文を唱えた。
流れ込んでくる清浄な癒しの力に、<ヴァリスの戦士>の表情から苦痛の色が消えて行く。
深い悔恨と自責の念までは消え去りはしなかったものの、その口調は幾分和らいだものへと変わっていった。
「うくっ・・・・か、感謝いたします、我が君・・・・」
未だカラダの各所に残る、不快な疼痛感に悩まされながらも、
<ヴァリスの剣>を杖に立ち上がり、呼吸を整える、女王の側近。
対する<幻想王女>は、彼女がようやくいつもの落ち着きを取り戻してくれた事に、胸の奥で小さく安堵の息をついた。
自分たち二人を取り巻いている状況が何ら改善した訳では無かったが、
黒衣の<戦士>がこうして傍らにあって、ラベンダー色の双眸で静かに見守ってくれるだけで、
たとえ何が起ころうと大丈夫だ、という安心感が湧き上がってくる。
(24)
(・・・・ヴァルナ、さま・・・・)
主君の気持ちに思い至ったのだろう、麗子は、少し面映ゆそうに微笑みを浮かべ、
そして、湧き上がってきた感情を誤魔化すかの如く、軽く咳払いを発した。
主の心遣いは有難いが、いつまでもそれに甘えている訳にはいかない。
まずは、今からどう動くべきか?を早急に決定しなければならなかった。
(空間ごと外部から切り離した以上、室内にいれば、いくら<ドリームハンター>でも手出しは出来ない筈だわ。
代わりに、私たちも外界には介入できないけれど・・・・)
腕組みをして考え込む、黒衣の少女。
籠城を続けて、<鏡面世界>に赴いた仲間たちが帰還してくるのを待つ、というのも一つの戦術ではある。
だが、麗夢とて、それぐらいは予想しているだろうし、
加えて、この部屋以外のヴァニティ城の全てを掌中に収めた今、
自分たちが留守にしている間に本拠地が陥落していようとは露程にも予期していない筈の優子たちを待ち伏せし、罠にかける方法など幾らでもあると言って良い。
――――もっとも、(さしもの麗子も、そこまでは考えが及ばなかったのだが)この時、アスカを追って<鏡面世界>へと出撃した優子以下の探索隊は、
巧妙に張り巡らされた罠に嵌り、<夢幻界>に帰還するどころではなくなっていたのであるが。
(25)
(何とかして、城内の状況を皆に伝えなければ・・・・でも、一体、どうやって?)
目の前の主君に余計な不安を与えまいと、努めて冷静さを保とうと試みる赤毛の<戦士>だったが、
困惑の表情を完全に隠し切るのはどうやら出来ない相談のようだった。
優子たちに急を知らせるためには、安全が保証されているこの場所を離れて、一旦、通常空間に出なければならない。
通常空間に出て、通信を送った上で、再度、外界と隔絶されたこの空間に戻ってくる事も理論上は不可能ではなかったが、
その間ずっと、狡猾な<ドリームハンター>の目を誤魔化し切れる自信は、さしもの彼女も持ち合せてはいなかった。
隠蔽と隠密行動は自分の十八番だが、同時に、<夢守りの民>の末裔である麗夢の得意とする分野でもあるのだから・・・・。
「・・・・麗子・・・・」
重苦しい沈黙を破ったのは、幾重にもわたって思案を重ねる赤毛の側近を、無言のまま、じっと見つめていた<幻想王女>の一言。
色素の薄い唇が静かに動き、囁くような声――――緊張の為だろう、微かな震えを帯びていた――――を絞り出す。
だが、同時に、薄青色の双眸には、今まで麗子が殆ど目にした経験の無い、決意に満ちた視線と強い意志を感じさせる光が宿っていた。
<夢幻界>の女王であり、同時に、<ヴァリス>の力を司る<明>の最高司祭でもある者としての、威厳と叡智に満ちた眼差しが、
ハッ、として顔を上げた少女の瞳を射抜き、迷走に迷走を重ねていたその思考にはっきりと道を指し示す。
(26)
「構いません、麗子。貴女の判断に、全てを委ねます。
・・・・<夢幻界>、そして、多元宇宙に存在する、全ての<世界>の運命を・・・・」
(・・・・ッ!?ヴァルナ・・・・さまッ!!)
――――――――TO BE CONTINUED.
以上、第9章をお送りいたしました。
お楽しみ頂けたのであれば、幸いに存じます〜。
各世界の<戦士>たちが、(敵も味方も)一カ所に集まり始め、
文字通り、『戦士集合!』という形になってきました。
さすがにその全員を、同時に、かつ、平等に描写するのは困難ですので、
その中の何人かにスポットを当てて描くしかないのですが、
なるべく多くの<戦士>たちに、少なくとも一度は活躍シーンを割り振りたいな〜、と考えています。
さて、次回ですが、『3V(ヴァリス・ヴァルキリー・バージョン)』の第30章をお送りする予定です。
11月中の完成・発表を目指していますので、またしばらくの間、お待ち下さいませ。
それでは、本日はこの辺で〜。
捕手
皆様、大変お待たせいたしました〜。
『3V(ヴァリス・ヴァルキリー・バージョン)』の第30章、完成しました。
本日の22:00頃からSSの投下を開始いたしますので、あとしばらくお待ち下さいませ〜。
お待たせしました〜。
只今より、『3V(ヴァリス・ヴァルキリー・バージョン)』第30章の発表を開始します。
『夢幻戦士ヴァリス』最大の悪役、<暗黒王>ログレス陛下最後のステージ、お楽しみ頂ければ幸いに存じます〜。
759 :
ARCH DUKE:2013/11/06(水) 22:05:14.87 ID:z/mACyXk
(1)
――――<暗黒界>。帝都ヴェカンタニア上空。
それは、まさに壮観と言って良い光景だった。
天空を覆い尽くさんばかりに展開していた大艦隊・・・・
<暗黒王>ログレスの発した動員令によって広大な<暗黒界>の全土から根こそぎ掻き集められた、空前絶後の大兵力が、
断末魔の悲鳴を上げながらのた打ち回り、潰滅の危機に瀕している。
深海に生息する魚類のようなグロテスクなフォルムの次元航行艦やイカともタコともつかない、醜悪な海棲生物を模した機動要塞が次々と業火に呑まれ、
オレンジ色の火球と化して地上へと墜落していく様は、さながら流星雨を思わせた。
ヴェカンティの支配者の威信を知らしめる目的で、堅牢かつ重厚な外観を備えた戦艦群。
彼らに対して、あたかも、炎を撒き散らす巨大な邪竜に挑む聖騎士の如く、白銀の輝きを放つ聖なる剣を振り下ろしているのは、
華奢な体躯を揃いの黄金の甲冑に包んだうら若き乙女の一団・・・・
<夢幻界>の女王ヴァリアによって、サザーランドから導かれた<戦士>の魂を受け容れた、<現実界>の少女たちに他ならない。
(2)
「ヤァ――――ッ!!」「ハア――――ッ!!」
勇壮な雄叫びと共に、自分の身の丈の数十倍から数百倍はあろうかという巨大な敵に対して、白刃を煌めかせて吶喊していく無数の<戦士>たち。
ある者は炎に包まれた刀身を打ち下ろし、別の者は疾風を纏わせた刃で切り裂く。
雷光が唸りを上げて巨艦のどてっ腹に炸裂し、氷の切っ先が装甲版の継ぎ目の僅かな隙間を正確に抉り抜く。
『ええい、怯むなッ!!』『対空砲塔は何をしているッ!?とっとと撃ち払えッ!!』
無論、<暗黒界>の艦隊も必死に応戦し、密集体型を組んで濃密な砲火を浴びせてくる。
だが、本来、自身と同程度か、それ以上のサイズの戦闘艦艇や地上目標を攻撃するために設計された艦砲では、
飛来してくる<ヴァリスの戦士>たちを正確に狙う事は不可能だった。
ましてや、艦体に取り付かれたり、艦内にまで侵入を許してしまえば、もはや、打つ手は無いと言って良いだろう。
その上、急遽徴集されただけあって、艦は兎も角、それに搭乗する兵には戦闘経験を積んでいない者も多い。
十分な訓練を積み、良好な装備を与えられた部隊や将兵、そして、彼らを束ねていた経験豊かな指揮官たちは、
少し前に実行されたサザ―ランドへの侵攻作戦に投入され、
反逆者ヴォルデスと<夢幻界>の<戦士>の反撃によって多大な損害を被っていたのである。
(3)
「そらそらッ!!どうしたァッ!!」「ヴェカンティの軍勢の実力はこの程度なのッ!?」
反対に、<ヴァリスの剣>と黄金の聖鎧に身を固めた少女たちは、
(自身は戦闘経験など皆無だったにも関わらず)サザーランドの魔道装置の中で出撃の時を待ち焦がれてきた魂を受け容れたおかげで、
各自が一騎当千の強兵に匹敵する戦闘技量を会得したのと同じ状態にあった。
彼女たちが自らの意志でやり遂げねばならないのは、
たとえ何が起ころうとも<剣>を握り締め、絶対に手を放さないでいる事、そして、しっかりと両目を見開いて、意識を保ち続けている事の二つだけ。
それ以外の全ての行動は、心身に宿った<戦士>の魂が代わりに判断し、実行してくれるのである。
<暗黒界>側による迎撃の試みは、徒に屍の山を量産するばかりで、撃退に成功する例は皆無に近かった。
「増援は・・・・増援はまだかッ」「だめだ、もう戦線を維持できんッ!!」「後退、後退――――ッ!!」
未だ数の上では優勢を保っていたにも関わらず、
帝都上空に展開した艦隊は完全に統制を失い、通信には悲鳴と怒号が溢れ返っていた。
個々の艦艇による、あるいは、各艦内における兵士たちの抵抗は未だ熾烈だったが、
全艦隊を統一的に指揮して、危機に対処可能な者は何処にもいない。
もっとも、仮にそのような者がいたとしても、
もはや、戦場の混乱ぶりは、いかなる采配を以てしても、立て直しなど到底不可能なレベルにまでに深刻化してしまっていたのだが・・・・。
(4)
――――因果地平の彼方。何処とも知れぬ場所。
『フフ、どうやら、間に合ってくれたみたいだね・・・・』
陽炎のような影が、ユラユラとゆらめく。
生と死の狭間を漂う、その幽鬼じみた存在は、
<黄昏の地>サザーランドを建設した<夢幻界>の魔道士にして、
永きにわたり<暗黒五邪神>の一柱を占めた、青年のなれの果て。
かつて、<夢幻界>と言わず<暗黒界>と言わず、数多の美女たちを魅了してきた眉目秀麗な面立ちは見る影も無く、
ご自慢のプラチナ・ブロンドもすっかりと色褪せてしまっている。
・・・・否、肉体を失い、魂魄のみの存在となってよりこの方、
類い稀な魔道の才覚を以てしても防ぎ得ない衰えは着実に彼を蝕み、
今では、往時の容貌はおろか、人間らしい姿形の維持さえも困難になりつつあった。
(5)
『・・・・まったく、すんでの所で、全てが台無しになるところだったよ。
私の可愛い<戦士>さんたちにも、困ったものだ』
――――だが、半ば透き通りかけた薄いクチビルが紡ぐ言葉は、
以前と変わらぬシニカルな響きの中に、傲然たる、と形容しても過言では無い程の自信を湛えていた。
『困ったものだ』と言いながらも、彼の口調は、あたかも、計算外の事態を愉しんでいるかのようですらある。
『とはいえ、あの子たちの置かれていた状況を考えれば、良くやった、と誉めてやるべきだろうね。
何にせよ、彼女たちは仕事をやり遂げてくれたのだから
・・・・私が、長い時間をかけて張り巡らし、準備を整えた計画通りに』
口元を歪めつつ、くつくつと笑うと、彼――――アイザードは切れ長の眼をすっと細めた。
『――――さて、そろそろ此処を出て、新たなステージへと移るとしようか?
滅びゆく運命の旧き世界を糧に生まれ変わろうとしている、新しい、そして、完全なる世界の、
約束された高み、至尊なる神の玉座へと・・・・』
(6)
<暗黒界>。ログレス城地下。最深奥部。
――――ザッ、ザッ、ザッ。
闇よりも黒く禍々しい瘴気の奥から近付いてくる、規則正しい足音に、
ヴェカンティの支配者は、半ば反射的に背後を振り返った。
暗示がわずかに弱まり、今まさに絶息せんとしていた<夢幻界>の王女が、低い呻き声と共に地面へと崩れ落ちる。
ログレスの腕で絞め潰されている・・・・と、幻覚の力で信じ込まされていた白い喉元には、
ヴァルナ自身の両手の指の跡が真っ赤な痣となって残っていた。
「・・・・」
常人ならば、触れただけで気が狂ってしまいかねない程の濃密な<ヴェカンタ>の帳を破って現れたのは、
左手に<レーザスの剣>を下げた<ヴァリスの戦士>――――優子。
その反対側の手首に、所々に血痕らしきものが飛び散った、見覚えのある布切れが巻き付けられている事に気付いた黒衣の魔王は、
仮面の奥の双眸を不快げに細め、吐き捨てるように呟いた。
『麗子め、しくじりおったか。最後まで役に立たぬ奴だ』
(7)
「・・・・」
ログレスの言葉に優子の足が止まる。
引き結んだクチビルの内側で、奥歯を軋らせる音が、ぎりっ、と小さく鳴り、
地面を向いていた魔剣の切っ先が静かに持ち上げられた。
『フン、死に損ないの小娘を倒したぐらいで、いい気になるなッ!!』
怒気と共に、<暗黒王>の影が真っ黒な鱗に覆われた大蛇の群れの如く、蒼髪の<戦士>に向かって殺到していく。
<夢幻界>の王女の目には、それは、先程、自分が散々に味わい、危うく生命を落しかけた幻覚攻撃
――――<ヴェカンティ>の支配者が最も得意とする禁忌の魔呪として映っていた。
たとえ幻だと分かっていても決して逃れる事など出来ない、圧倒的なまでの現実感を備えた死の幻影・・・・。
「ああッ!!だめッ・・・・逃げてぇッ!!」
鉤爪の生えた黒い触腕が幾本も伸びて、少女のカラダを絡め取ろうとしている
――――直接の対象となった訳でも無い自分でさえ、
そう、はっきりと知覚可能な程の恐るべき幻を目の当たりにしたヴァルナが、かすれかけた声で叫んだ――――次の瞬間。
(8)
「えっ!?」『むううっ!?』
王女と魔王の口元から、異口同音に驚きの叫びが発せられた。
優子に殺到した筈の無数の黒い刺客
――――半ば物質としての実体を備えていると言っても過言では無い程の、邪悪な魔道技術の産物たる死神の腕が、
彼女の華奢な身体に触れた瞬間、跡形も無く、フッ、と消え去り、闇へと還元される。
ヴァルナは勿論、ログレスすら驚愕を隠せない中、
唯一人、表情を動かさなかった<ヴァリスの戦士>は、相変わらず、一言も発しようとせずに前方を睨み据えていた。
「・・・・・・・・」
その視線は、地面にうずくまったまま、ぽかんと自分を見上げている<夢幻界>の魔道士にも、
目の前で起きた出来事が信じられずにその場に立ち尽くしている<暗黒王>にも、向けられてはいなかった。
少女の薄青色の瞳が睨めつけているのはただ一点
・・・・闇の奥に聳え立つ巨大な<ヴェカンタ・オア>のモニュメント、
そして、その内側に封印されている筈の、原初の邪神に他ならない。
(同じ手は二度と喰わないわ・・・・ログレス、いいえ――――)
<レーザスの剣>が低く唸り、深紅の魔力光が長大な刀身から溢れ出した。
我に返った<ヴェカンティ>の支配者が、黒衣を翻しつつ、優子と漆黒の巨石とを結ぶ射線上に立ち塞がる。
彼の動きを冷ややかに一瞥すると、蒼髪の少女は、魔剣の刀身を大きく振りかぶって、断魔の斬撃を撃ち放った
――――足元を這う、赤錆の浮いた、鉄の鎖に向かって。
(9)
ガァアアアァアアァンッッッ!!!!
あたかも、何百何千もの雷霆が天空から地上の一点を目掛けて降り下ったかの如き、大音声が轟き渡った。
<暗黒界>の開闢以来、決して破られる事の無かった沈黙が引き裂かれ、
ぞっとするような陰鬱な音色の木霊が大鍾乳洞の岩肌に反響して、殷々と鳴り響き続ける。
『オオ・・・・オオオッ!!』
ログレスの双眸が大きく見開かれ、全身がガクガクと揺れ動いた。
闇の深奥より生まれ出し最も不浄なる存在が、
おそらくは初めて味わうであろう感情――――恐怖に狼狽え、震え慄いている。
「・・・・教えてくれたのは、麗子よ」
身じろぎもせずに突っ立っている、ヴェカンティの支配者に向かって、優子は静かに言い放った。
薄青色の瞳は、眼前に立つ彼ではなく、深紅の霊光を刀身に纏わせた<レーザスの剣>、
そして、その切っ先が深々と突き刺さった赤鉄の連環を真っ直ぐに見つめている。
その視線の意味に、ハッ、として表情を変えるヴァルナ。
無言のまま小さく頷いてみせた蒼髪の少女は、
封印の鉄鎖を更に深く刺し貫くべく、魔剣の柄に体重を乗せて押し込んでいく。
(10)
『ば、莫迦なッ!!麗子が、だと!?一体、どういう事だッ!?』
「麗子は気付いていたわ・・・・お前の真実にッ!」
気迫のこもった優子の眼差し。
気圧されたかのように、<暗黒王>が押し黙り――――唐突に、大きくたじろいだ。
足元の錆びついた鎖から、ぎしッ、ぎしッ、という軋ばんだ音が響くたびに、
黒衣に包まれた体は大きく揺らぎ、安定を失って傾いでいく。
その場を支配する雰囲気に圧倒されつつ、
二人の間で交わされるやり取りを反芻していた<夢幻界>の王女は、
やがて、薄水色の双眸を大きく見開き、驚愕に喘いだ。
(な、何てコトなのッ!?それでは、ログレス・・・・いいえ、わたくし達がログレスだと思っていたモノの正体はッ!?)
「――――封印の内側から魔力を放ち、誰かを操る事でしか世界に関与できない、哀れな存在。
現実の力は何一つ持たず、ただ、他人に幻を見せて自滅へと追いやってきた、それだけの存在。
そんな惨めな存在によって作り出された無数の幻の中の一つ・・・・それこそがお前の正体よ、<暗黒王>ログレスッ!!」
(11)
『ウッ・・・・ウォオオオオッッ!!!!』
黄金の仮面の下から、凄まじい絶叫が迸った。
憤怒、憎悪、呪詛、絶望、恐怖・・・・あらゆる負の感情が綯い交ぜとなった怨嗟の叫び声が、
あたかも、そのものが一匹の巨大な魔物と化したかのように、地下の闇を切り裂きながら幾重にも木霊する。
暴風の如く溢れ返る<ヴェカンタ>の瘴気が、
五体を八つ裂きにせんとばかり、<ヴァリスの戦士>に向かって掴みかかろうとした――――その刹那ッ!!
パキィィィンッッッ!!!!
金属ともう一つの金属とがかち合い、噛み破り、砕け散る、恐ろしい程に澄み切った金属音が、
漆黒に閉ざされた地下空間全体に響き渡った。
ログレスの息遣いが急停止し、ヴァルナの表情が凍り付く中、
有史以来、決して破られる事の無かった封印に小さなヒビが入り、そして、加速度的に広がっていく。
「これで最後よッ!!闇に還れ、ログレスッ!!」
ビシィッ!!!!
裂帛の気合いを受けて、<暗黒王>の黄金の仮面が亀裂を生じ、弾け飛んだ。
幾千年にわたり、どんな強者の、いかなる力を浴びようとも、傷一つ負わなかった己れの肉体が、毀たれ、崩れ落ちていく。
その事実に、計り知れない衝撃を受ける、ヴェカンティの支配者
・・・・そこには、もはや、魔王の威厳も傲岸さもなく、
破局の訪れを前に周章狼狽する、哀れな痴人の姿があるだけだった。
(12)
ゴゴゴゴゴ・・・・!!!!
立ち竦む黒衣の王の背後から、地鳴りを思わせる圧潰音が轟き渡り、
天を衝いて聳え立っていた邪悪のモニュメント――――<暗黒界>それ自体を生み出す母胎となった、原初の<ヴェカンタ・オア>が崩れ始めた。
『ヤ・・・・ヤメ・・・・ロ・・・・』
黒衣に包まれたカラダが大きく傾ぎ、ガラガラと騒々しい物音を立てながら地面へと倒れ込んでいく。
黄金の仮面を失ったフードが捲れ上がり、ほんの一瞬だけ、中身が垣間見えたが
――――案の定、そこには何も無く、虚無そのもののような黒々とした影が存在していただけだった。
次の瞬間には、漆黒の長衣自体が形を失い、
更には、物質としての実体を維持できなくなって、原子のチリへと還元されていく――――。
「・・・・・・・・」
口元をきつく引き結んだまま、眼前の光景をじっと凝視し続ける、蒼髪の<戦士>。
封印の破壊に、持てる力の全てを使い尽くしたのだろう、
いつの間にか、<レーザスの剣>からは輝きが消え失せ、土くれのように色褪せていく。
だが、<ヴァリスの剣>を喪失した時ほどには感慨も湧いて来ないのか?
優子は僅かに黙礼しただけで、すぐに別の対象へと関心を切り替えてしまった。
(13)
(麗子、やったわ・・・・)
薄青色の双眸が見つめるのは、右の手首に決して解けないよう幾重にもきつく巻き付けた、薄い布切れ
・・・・ログレスによって運命を狂わされた挙句、非業の死を遂げた、赤毛の親友の唯一の形見の品。
頬を伝った一筋の涙が、在りし日の赤毛の少女がバンダナ代わりに愛用していた薄布へと滴り落ち、音も無く吸い込まれていく。
――――その、次の瞬間だった。
「優子、危ないッ!!」
ヴァルナの鋭い警告が発せられるのと同時に、
濛々と立ち込める瘴気の帳の奥から、鱗に覆われた野太い触手が飛び出してきて、優子の身体を烈しく打ち据えた。
予想だにしなかった攻撃を受けて、どう、と地面に倒れる<ヴァリスの戦士>。
無防備な背中に、鞭の如くしなる肉縄が、二度、三度と容赦なく振り下ろされ、
幻覚とは断じて異なる、灼け付くような現実の痛みを刻み付けた。
同時に、激痛に顔を歪めながら、必死に立ち上がろうと試みる蒼髪の少女の耳朶に、
地獄の底から木霊する亡者の呪詛の如き怨念に満ちた言葉が押し入ってくる――――。
(14)
『ぐる・・・・ぐるるるっ!!ころス・・・・ころシテヤル・・・・<むげんかい>ノせんしっ・・・・!!』
闇の中から漏れ聞こえてくる濁み声は、まるで人語を覚えたばかりの幼児のそれを連想させた。
否、『言葉』と形容するにはあまりにも幼稚な単語の羅列に過ぎず、
まるで、チンパンジーか何かが人語を真似て無理矢理に声を発しているかのようですらある。
「だ、大丈夫ですかッ!?今、助けに・・・・うわあッ!?」
鈍い打撃音と共にヴァルナの悲鳴が聞こえ、すぐに途切れた。
その間に、振り下ろされる肉鞭を掻い潜り、何とか身を起こした蒼髪の<戦士>だったが、
反射的に手を伸ばした腰には<ヴァリスの剣>は既に無く、<レーザスの剣>もいつの間にか姿を消してしまっている。
ならば魔法で、と精神を集中し、口早に呪文を唱えようとする優子。
だが、次の瞬間、音も無く忍び寄ってきた触腕が両足首へと巻き付き、
ブーツごと足の骨を砕かれかねない凄まじい怪力で、彼女のカラダを再び地面へと引き摺り倒してしまった。
『ぐるぐうううっ・・・・みちづレダ・・・・オまえモ、オまえノなかまモ・・・・ミンナ、みちづレニシテヤルッ!!』
背後から絡み付いてきた触手が細い喉元を締め上げ、情け容赦なく気道を圧迫した。
声帯も潰されたため、呪文の詠唱も出来なくなった少女を地面に押し付けた異形の肉鞭は、
更に執拗に背中を痛めつけ、残ったなけなしの体力までも冷酷に奪い去ろうとする。
(15)
『ぐるるるっ・・・・モットダ、モットくるシメ・・・・!!
幾重にも垂れ込めた瘴気のヴェールの向こうから、禍々しい唸り声が響き渡る。
窒息の瀬戸際で喘ぎつつ、必死に前方を仰ぎ見る蒼髪の少女。
霞んだ瞳に映ったのは、これまでに一度も目にした事の無いような、醜悪な姿の魔物だった。
身の丈は自分の数倍、いや、十数倍はあるだろう。
サイズそのものは<暗黒五邪神>中、最大の巨体を誇った、<双頭の雷竜>ヴォルデスには及ばないものの、
ブヨブヨにたるんだ筋肉と皮下脂肪にまみれて、何処までが胴体で何処からがそれ以外の器官
――――頭や四肢なのかすら明瞭ではない体躯は、ヴォルデス以上の重量感と威圧感を醸し出している。
大雑把な形状は、さしずめ、人間の上半身とカエルの下半身を持つ怪物、といったところだろうか?
全身の皮膚はヌルヌルとした不気味な粘液で覆われており、
至る所から、緑色のウロコの生えた、大蛇のような触手が幾本も伸びていた。
頭部は、全長に比してかなり小さかったが、それでも、一般的な人間の首から上の部分の2、3倍はある。
全体的にのっぺりとした顔面の中では、
赤黒く血走った目とカメレオンのような長い舌を垂らした、涎まみれの大きな口だけがよく目立っていた。
(ぐぅっ・・・・こ、こいつが、<始原の魔>の正体ッ!!
<暗黒界>とログレスを生み出した、<ヴェカンタ>の申し子ッ!!)
(16)
『ぐぇるるるぅ・・・・!!らくニハしナセテヤルモノカッ!!
オまえノ力ヲ吸イ尽クシテ、ボロボロニシテカラ・・・・ころシテヤル・・・・みちづレニシテヤルッ!!』
喉元に巻き付いていた肉縄が僅かに緩み、呼吸がほんの少しばかり回復した。
激しく咳き込む優子
――――どうやら、宣言通り、すぐには生命を奪う気は無いらしい、と分かって、小さく胸を撫で下ろしたのも束の間、
その表情はすぐに苦痛と屈辱に歪む事になる。
<魔>は、<ヴァリスの戦士>の両手首に巻き付いた触腕を手繰り寄せ、
未だ半分方、締め付けられたままの気管をひゅうひゅう鳴らして、必死に息を啜っていた彼女を強引に引き摺り上げた。
為す術も無く宙吊りにされる、蒼髪の少女。
苦しさに堪えかねて口元を大きく開け拡げた途端、狙い澄ましたかの如く別の触手が飛来してきて、口腔へと突入する。
「うぐッ!?・・・・うぐぅううッ!!」
ぞっとするような腐臭と得体の知れない汚濁汁の感触が流れ込んできて、少女は堪らず喘鳴を漏らした。
激しくかぶりを振って異形の触手を吐き出そうと試みるものの、頸を絞められているため、上手くいかない。
口内の占拠に成功した侵入者は、まるで別の生き物であるかの如く、グニョグニョと蠢き始め、
先端部分から、ドロリ、と粘ついた体液をさかんに分泌し始めた。
(17)
「あぐッ・・・・くうう・・・・うくぁああッ!!」
あまりのおぞましさに、我知らず、涙を滲ませる、蒼髪の<戦士>。
苦しさのあまり、舌が勝手に暴れ回り、嫌悪の意志とは裏腹に口中の異物を舐めしゃぶる形となってしまう。
細かく震える小さな舌先が触れる度、極太の触手は硬直と痙攣を交互に繰り返し、
まるで人間の男性器を模したかの如く、いやらしくくびれた先端部分から、何とも言えない生臭さを帯びた液汁をさかんに放出した。
「んんッ!!うくぅぅッ!!」
おぞましい感触にえずきつつ、少女はフラフラと力無くかぶりを振りたくった。
・・・・更に、下半身に何かが張り付く感覚を覚えて、思わず、呻き声を漏らす。
視線の先では、まるでニガウリのような、全体が小さなオデキ状の突起物で覆われた触腕が、
巨大な芋虫の如く、もぞもぞと蠢きながら膝から太腿に向かって這い上がろうとしていた。
(あああ・・・・い、嫌ぁっ!!)
口元を塞がれていなければ、間違いなく、悲鳴が迸っていた筈である。
ニガウリ触手はヒコヒコと前進運動を続け、太腿から腰、脇腹を経て胸元にまで到達した。
そして、イボイボだらけのカラダを、乳房とそれを護る黄金色の胸甲の間の僅かな間隙へと突き入れ、潜り込ませていく。
普段ならば、とっくの昔に防御障壁が発動されているところだったが、
これまでの激闘の連続で力を消耗し尽くし、あまつさえ、<ヴァリスの剣>さえ失ってしまった現状では到底不可能な話だった。
むしろ、こうして、まがりなりにも物質としての存在を保ち、主の身体を覆っている事自体が奇跡的と言って良いだろう。
・・・・もっとも、防御力の大半を喪失し、形ばかりの存在と成り果てた甲冑には、
もはや、不埒な侵入者への対抗手段など望むべくもなかったが。
(18)
「んッ・・・・えぐぅ・・・・うううっ!!」
胸当ての縁に当たったオデキがプチプチと弾け、
内包されていた半透明な膿のような体液が乳房の表面を汚していく。
未だ黄金の防具が何とか胸元をガードし続けてくれているため、その光景を直接目にせずに済んでいるが、
色白のバストが艶めかしく濡れそぼり、美しい半円を描く下乳部分からはローション状の淫汁が糸を引きながら滴り落ちているのは自分でも良く分かる。
武骨そうな外見によらず、ブヨブヨとして柔らかいニガウリ触手は、
器用にカラダをよじらせつつ前進を続行し、とうとう双乳の谷間にまで侵入を成功させた。
形の良い二つの脹らみに挟み込まれた途端、ゴムのような感触が唐突に変化して、ピチッと張り詰める。
人間の男根を連想せずにはいられない、その反応に、眉根を寄せて嫌悪感を露わにする蒼髪の少女。
だが、両手を拘束された身では抵抗など不可能だった。
反対に、侵入者の方は、塗りたくった蜜を潤滑油代わりにして胸甲の内側を這い回り、
肌の張りも柔肉のボリュームも申し分ない美乳を存分に堪能し始める。
(あぅ、あうう・・・・胸が・・・・ち、乳房が・・・・熱い・・・・)
必死に堪え抜こうとしたものの、所詮はムダな足掻きだった、と言う他無いだろう。
媚薬成分の含まれた分泌液は、異形のマッサージ・ブラシによって胸乳全体にくまなく塗りたくられ、
ただでさえ敏感な肉のフルーツを性感帯の塊へと変えてしまっていた。
本来ならばひんやりとして冷たい筈の胸脂肪が燃えるように熱い。
頭の中は、霞がかかったかの如く、ぼう〜〜っとなり、唇の間からせわしなく漏れる吐息までもが熱気を帯びていた。
(19)
(ううっ・・・・ダ、ダメぇッ!!熱い・・・・オッパイが、火傷しそう・・・・)
ガチガチに硬直した肉縄によって激しく嬲られる感触が、
火照りを帯びた乳肌をますます熱く燃え立たせていく。
ムクムクと屹立した乳首は、今にも弾けそうなくらい、パンパンに膨張し、
ズクンズクン、と、鈍い痛みを発していた。
一方、口腔内でも容赦ない凌辱は続いていた。
呼吸のたびに、嫌々ながらも、突き入れられた異物に舌を這わせてしまう優子。
触手から分泌されている不気味な液汁は、単に催淫作用をもたらす媚薬というよりも、
深層意識に作用して心の奥底に埋もれている本当の感情を暴き立てる、ある種の麻薬に近い効能を有しているのだろう。
普段は決して表面に現れない被虐への嗜好が、全身を火照らせる官能の焔をますます大きく燃え上がらせていた。
「むぅぐ・・・・んく・・・・んぐくぅううっ!!」
喉の奥まで犯されているというのに苦しさは殆ど感じられない。
それどころか、肉の筒先がガシガシと擦り立てる口腔粘膜が、摩擦によって不思議な触感を発生させていた。
丁度、食べ物を飲み込む際の喉越しの感覚と粘膜を舐られる悦楽とが混然一体となり、
えも言われぬ快美感と化して口の中を席巻している。
(20)
『オオオ・・・・いイゾ・・・・なかなかニよイきぶんだ・・・・』
<魔>が、声をわずかに震わせつつ呻いた。
興奮が増しているのか、喉奥や乳房を犯している異形のモノ達は勿論、
手足に絡み付いている触腕の群れもザワザワと蠢いている。
<ヴェカンタ>の瘴気を掻き分けるようにして、新たな触手が現れた。
ニガウリ型と良く似ているが、今度のはイチジクのような形状をしており、
窄まった先端部分の周囲をイソギンチャク状の繊毛が取り囲んでいる。
一瞥した途端、蒼髪の少女は、本能的にその用途を悟り、下半身の筋肉
――――特に、肛門の括約筋になけなしの力を注ぎ込んで、何者をも通さないように守りを固めた。
『フフフ・・・・むだナあがキヲ・・・・ソノていどノマモりデ、われヲこばメルトデモおもッテイルノカ?』
少女の必死の抵抗を嘲笑うかの如く、
新たな刺客・・・・イチジク触手がゆっくりと動く。
予想通り、背後に回った凌辱者は、丈の短いスカートを捲り上げると、
桃肌にぴっちりと張り付いた純白ショーツへと取り付き、
極薄の布地越しに、ふっくらと丸みを帯びた尻たぶへの愛撫を開始する。
「んんっ・・・・くっ・・・・はううっ!!」
程無くして、切迫した喘ぎが口をついて漏れ出した。
未だ敏感なあわいには直接触れられた訳ではないにも関わらず、早くも感じ始めてしまった事実に愕然となる優子。
だが、尻への責めと並行して、口腔と胸乳という二つの性感帯への刺激も続けられている事を考えれば、それぐらいは仕方ないと言う他無い
・・・・否、むしろ、良く持ち応えていると言っても過言では無い程の健闘ぶりである。
もっとも、少女が置かれた状況は、良く言ってもジリ貧状態に過ぎず、
逆転の可能性はおろか、現状維持の見通しすら立たない窮地に変わりは無かったのだが。。
(21)
『フン・・・・やセがまんハからだニわるイゾ。はやクこうさんシタラドウダ?』
悪意を込めて言い放つと、<魔>は更なる肉鞭を出撃させた。
今度は、先端部分だけでは無く、全体にびっしりと吸盤が生えたゲソ型触手。
向かった先は、現在、イチジク型が攻めあぐねている地点よりもやや上、長く伸びた蒼髪の下に隠された生白い背中から腰椎に至る一帯だった。
「ひうッ!?はぐぅッ・・・・ふぐぅうううッ!!」
新たな攻撃の成果はすぐに現れた。
微細な刺激に耐え切れずに、剥き出しの背筋は、ビクビクビクッ、と不規則な痙攣を発し、
一斉に鳥肌立った毛穴からは小さな汗の粒が無数に噴出する。
無論、堪えようとはしたものの、背中のウィークポイントはあちこちに点在し、
ここへの刺激さえ耐え抜けば大丈夫、という急所が存在しないのが守りを困難にしていた。
加えて、ゲソ触手の動きは、ねちっこい上に緩急に富んでおり、
力を入れるべきタイミンクと緩めるべきタイミングを熟知している。
意図しての行動か否かは不明だったが、
時には、噛みつくような勢いで肌に吸い着いたかと思えば、その直後には、くすぐったく感じるような微かな刺激へと転じたり、
と、責め方のパターンに捉えどころが無い。
・・・・しかも、そのようにして、好むと好まざるとに関わらず、背面への責めに意識を奪われていくうちに、
力んでいた尻の筋肉が徐々に緊張を失い、イチジク型への対応が後手後手に回るようになっていくのだった。
(22)
(ううっ・・・・か、下半身に力が入らない・・・・)
焦燥に駆られつつ、必死に括約筋を引き絞ろうとする優子。
だが、尻孔の守りに気力を傾注すれば、今度は背筋への愛撫から注意が逸れがちになり、
狡猾なゲソ型に無防備状態の性感帯を晒け出す結果となってしまう。
だからと言って、両方を同時に守るのは更に非現実的だった。
触手同士の巧みな連係プレーは着実に少女を追い込んでいく。
未だ強烈な嫌悪感を引き摺りながらも、彼女の心は明らかに動揺をきたし始めていた。
巨大淫魔によって拘束された直後から、煽り立てられ促進されてきた性感の炎が、
堪える術とて無い強烈な官能の衝動となって全身に広がっていく・・・・。
「あううッ!?」
イチジク型の先端部を取り囲むようにして密生している、イソギンチャクを連想させる繊毛
――――と言っても、長さも太さも、かなり大きめのサイズのミミズぐらいはあるのだが――――の幾本かが、
ショーツの縁を捲り上げて内側へと侵入してきた。
程好く引き締まったヒップを、まるで形を確かめるかの如く這い回る凌辱者たち。
元より、彼女の下半身は、10代後半の健康的な女子生徒のそれを基礎にして、
幾多の戦いを経る毎、本人も自覚しないうちに自然と鍛えられ、柔軟さと強靭さを併せ持つ理想的な肢体へと発展を遂げていた。
殊に、臀部は、尻エクボが出来る程に筋肉に恵まれている一方、女の脂も適度に乗った美しい形状に仕上がっている。
表面はプリプリとしてみずみずしいが、力を込めて押せば素晴らしい弾力で弾き返される
・・・・そんな、一級品の美尻を好き放題に這い回っていたミミズ繊毛の一つが、
双丘に挟まれた股溝へと迷い込み、中心にある窄まりに向かって這い進んできた。
警戒を募らせる蒼髪の少女だったが、
ただちに防衛態勢をとろうとまではしなかったのは、
侵入者が、ゲソ型やイチジク型とは比べ物にならない程小さなサイズだったためである。
――――その判断が大きな間違だったと少女が思い知らされるまでに、さほどの時間は要しなかった。
(23)
「はうッ・・・・うくぅううッ!!」
下半身を走り抜けた痙攣は、自分でも驚いた程激しいものだった。
殆ど本能的に、肛門の入り口にあらん限りの力を集め、ギチギチに食い縛ろうとする優子
――――だが、動きに関してはミミズ型の方がほんの一瞬だけ素早かった。
「あうッ・・・・あああッ!?」
窄まりが閉塞されるよりも、コンマ何秒かだけ早く、小触手は尻孔の内部に身を躍らせる。
直後に、持てる最大限の筋力を投入して括約筋が引き絞られたものの、不埒な侵入者は既に目的を遂げた後だった。
そして、一度侵攻を許してしまえば、両手が使えない以上、自力でこれを排除する手段は少女には存在しない。
一方、ミミズ型の方は、たとえ体のごく一部であっても挿入に成功すれば、
本体であるイチジク型の中から水分を融通して貰い、自由自在に内径を膨張させる事が可能だった。
侵入に成功した時点では、鉛筆よりも若干太い程度だった肉筒は、
あれよあれよという間に太さと体積を増して、人間の親指と同じくらいにまで成長を遂げていく――――。
(24)
(ゆ、油断したわ・・・・まさか、こんなコトになるなんてッ!!)
歯ぎしりする思いの蒼髪の少女だが、後悔先に立たず、だった。
むりむりむりっ、と肉茎が内径を増していくにつれて、肛門が内側から拡げられていく。
必死に力を込めて押し返そうとすると、
体表からヌルヌルとした体汁が大量に分泌され、アナルの粘膜との間で潤滑油のような働きをして圧力を巧みに逃がしてしまう。
そのせいで痛みは殆ど無かったが、
ミミズ型――――否、大きさから言っても、形から言っても、もはや、ウナギ型とでも形容した方が適切な存在となっていた――――の動きを阻むのは事実上不可能となり、
程無くして、肉筒の尖端は結腸部にまで到達してしまった。
(ああッ!!く、くはぁうッ・・・・お尻が、お尻の穴がぁァァッッッ!!!!)
直腸を限界まで引き延ばされる、気も狂わんばかりの感覚に、表情を歪める優子。
深々と突き刺さった触手ウナギは、
カラダの長さと太さとを自由自在に増減させるだけで、抜き差ししているのと同様の効果をもたらしている。
幸か不幸か、少女が強要されている姿勢では、己れの排泄孔の惨状を直接目にする事は叶わないが、
代わりに、異形の本体――――イチジク部分が、膨らんだり縮んだり、せわしなく大きさを変えて、
ウナギの体幹内に体液を流通させている様子が、嫌でも視界に飛び込んでくる。
恥ずかしい器官の奥で異物が跳ね躍るたび、
妖しげな快感が生まれては、下半身が、ガクンガクンと打ち震える。
アナルを犯されるのは(不本意ながら)今回が初めてでは無かったが、
このようにして尻穴を常に占拠されたまま、というのは、今まで一度も経験の無い責め口だった。
窄まった括約筋と蠕動する肉ピストンとが擦れ合う喜悦と排便がいつ果てるともなく続いているかのような違和感とが尻の中で淫靡に混ざり合い、
とろん、と蕩けかけた双眸から愉悦の涙となって流れ落ちる。
(25)
「あはぅっ・・・・うはぁっ・・・・くはぁああっ!!」
涎にまみれた口元から、切迫し切った喘ぎ声が零れ出す。
肛門に入りきれなかった残りの触手たちは、
腹いせとばかり、次々と下穿きの内側へと侵入し、美しいカーブを描く生白いヒップに群がっていた。
分泌される半透明な濁液は、破断寸前の極薄ショーツの繊維が吸収し切れる量を遥かに超え、
幾筋もの卑猥な流れが太腿にまで垂れ落ちている。
ずるッ・・・・じゅるるッ・・・・ずじゅるるるッ・・・・!!
全身を這い回るおぞましい感触が、さらに勢いを増していく。
肉ナメクジが放出した汚濁汁がべったりとこびりついている喉を、ぐぐっ、と仰け反らせる優子。
黄金の甲冑の下に潜り込んだニガウリ型により、乳房と乳首に絶え間ない刺激を送られ続けている胸元も、ベトベト状態であるのは同様だった。
剥き出しの背中をゲソ触手が這い回るたび、お腹の真ん中では、可愛らしいおヘソがヒクヒクと戦慄いている。
手足の筋肉はとうの昔に抵抗の力を喪失し、
ひっきりなしにカラダを走り抜ける快感電流に反応して不規則な痙攣を発するだけの存在と成り果てていた。
(26)
(あああ・・・・も、もうダメ・・・・こ、これ以上、堪えられないッ!!)
アナルを犯しているウナギ触手は更に深く侵入し、腹腔の中を好き勝手に這いずり回る。
彼の放出する淫液に反応して、
少女自身の腸壁から湧き出したサラサラの腸液が蠕動運動によって肛門の外にまで溢れ、
雑多な触手共の格好のエサとなっていた。
カラダの内外を問わず、種類も大きさも様々な凌辱者たちに這い回られ、敏感な場所を徹底的に責め抜かれて、
優子の意識は何度となく吹き飛ばされそうになる。
「ふごっ・・・・ぐふぅ・・・・んごぅうううッ!!」
アドレナリンをはじめとする大量の昂奮物質が分泌され、心臓がバクバクと脈を打つ。
喉の大部分を塞がれかけているために充分な量の空気が肺に届かず、
酸欠に陥る寸前まで追い詰められた、蒼髪の少女。
・・・・だが、異形たちは手加減する素振りすら見せる事無く、各自の目の前にある性感帯を貪り続けるのみだった。
獲物の身体がどうなろうとも構わない、生きていようが死んでいようが関係無い、とでも言いたげな凄まじい凌辱。
本来ならば、失神していてもおかしくないところだったが、今の彼女は全身が肉のヨロコビに包まれている。
たとえ、気管や腸の内部を掻き回されようとも、
喜悦にカオを緩ませ、あさましく咽び泣くだけで、痛みも苦しさも全く感じない。
否、もはや、苦痛に対して肉体が放ち上げる悲痛な叫びですらも、
交感神経に伝わった瞬間に、狂おしい官能にすり替えられて、抗し難い愉悦へと変容してしまうのである。
(――――あうう・・・・らめぇ・・・・も、もうなにも・・・・考えられ・・・・ない・・・・)
(27)
『・・・・おやおや、困ったな。
こんな所で屈してしまうのかい、私の可愛い<戦士>さん?』
(28)
(ッ!?い、今の声は・・・・まさかッ!!)
驚愕のあまり、一瞬、優子は全ての感覚を忘れ去った。
強烈な快感によってもたらされる脳内麻薬によって支配されかかっていた意識に正常な思考が舞い戻り、
だらしなく弛緩し切っていた手足の筋肉が力を取り戻す。
『ば、ばかナ!!イッタイ、なにガおコッタのだっ!!』
驚いたのは巨大淫魔も同様であったらしく、少女を嬲っていた触手の動きが停止し、拘束が緩んだ。
半ば以上本能的な動作で地面に身を投げ出す、<ヴァリスの戦士>。
絡み付いていた肉縄がバラバラと外れ落ち、口腔と肛門が久方ぶりに異物の感触から解放された。
その直後――――。
「清浄なる光よッ!!刃となって、闇を切り裂きなさいッ!!」
裂帛の気合いを込めたヴァルナの叫び――――渾身の魔力を注ぎ込んだ、高位魔法の呪文が高らかに響く。
何百もの雷光を一筋に集束したかのような、凄まじい閃光が瘴気に閉ざされた地下空間を照らし出し、
耳をつんざく轟音が岩肌に嚮鳴して、天井から大小の岩石が雨霰と降り注ぐ――――――――そして。
『グギャアアアアアッッッ!!!!』
<ヴェカンタ>の闇を切り裂いて、<始原の魔>の絶叫が轟き渡った。
――――TO BE CONTINUED.
以上、第30章をお送りいたしました。
お楽しみ頂けたのであれば、幸いに存じます〜。
正直、ログレス陛下の最期とそこで明かされた真の姿については、
(ゲーム版とのギャップに)どうしたものかな?と、一度ならず考え込みましたが、
今回のSSの中では、ZOL先生のコミック版に忠実に描く事にいたしました。
(ゲーム版のような)最後の最後まで威厳ある悪の帝王として振る舞い続ける、格好良い散り様をご期待だった方がいらっしゃれば、お詫び申し上げます。
さて、次回ですが、今回の続き、
『3V(ヴァリス・ヴァルキリー・バージョン)』の第31章をお送りいたしたく存じます。
ただ、これから年末にかけて仕事の方が忙しくなって参りますので、
完成・発表の時期に関しましては、来年の1月中旬から下旬頃とさせて頂きます。
大変申し訳ございませんが、またしばらくお待ち下さいませ。
それでは、本日はこの辺で〜。
まあエロパロならZOL版ログレスの方が相性がいいよねw
790 :
名無しさん@ピンキー:2013/11/11(月) 04:12:24.89 ID:Rx1Dp+U8
伊頭遺作vs麻生優子