「私≠彼女」の二話を投下します。
「だからね、今度はグラウンドの線引きをしてみようと思うんだー」
「線引きって、何書くんだよ」
「陸上で使うトラックの線」
「ああ、そういえば大分消えてたっけ」
「そうなんだよ。それに、あのカタカタ押す奴楽しいから、一回全部描いてみたかったんだよね」
椚田はショートカットの黒髪を風に揺らせながらそう言い、コロッケパンにかじりついた。
すると、もとからたれ気味な目がさらにへらーと緩んでいく。
その表情が本当に幸せそうで、僕は思わず口に入れかけた自分のコロッケパンを放置し、その様子を眺めることにした。
これだけ安上がりな舌をもつ娘に育ってくれて、彼女の両親はえらく助かっていることだろう。
ちなみに椚田はコロッケパンが好きというより、コロッケが好き、というわけでもなく単純にお惣菜パンが好きなのだ。
焼きそばパンやカレーパンなども好物らしい。
だから、僕はそんな椚田に気を使って、パンを買う日はそういうものしか買わないことにしている。
それというのも椚田は僕と同じものしか昼食として選ばないので、そうしないと彼女が好きなものを食べられないからである。
どうしてそんな不便な規則で自分を縛っているのかは正直わかりきっているのだけれど、それでも好きなものぐらい好きな時に食べろと言いたい。
僕は別に毎日惣菜パンだろうとスナックパンだろうと特にこだわりはないので気にはしないし、本人がいいならそれでいいけど。
「悠一君、そろそろ食べ終えないと予鈴が鳴るよ」
いつの間にやらコロッケパンを全て胃の中へ収めた椚田が、右腕に嵌めた腕時計に目をやってそう言った。
もうそんな時間なのか。素早くパンを口に詰めてゴミを回収しながら、咀嚼も大概にさっさと飲み込む。
「次は、数Tか」
「うん。今日は悠一君の列が当たるんだよね」
「お前もだろ」
僕の真ん前に座っているんだから。
「とりあえず、絶対に答えが合っている答案を、私は書いてきました」
「そうか。じゃあ、後でお互いに答案の確認をしよう」
「うんうん」
嬉しそうに数回頷いた椚田に一度相槌を打ってから、屋上の扉へと向かっていく。
10月下旬のやや冷たい風を全身に浴びつつ、ふと冬になってもここで昼食をとるつもりなのかと考えた。
まあ、防寒対策をしっかりしておけば問題ないだろう。
「明日は雨が降るらしいよ」
「そうか」
意味のない含みのない振りでも何でもない彼女の呟きに頷いて、僕らは屋上を後にした。
***
友人である雲井曰く、椚田は僕のストーカーらしい。
曰くも何も、雲井に言われるまでもなくそれぐらいは気付いている。大方同じ昼食を持参できるのも僕の行動を監視しているからに違いない。
見られて困るような日常生活は送っていないので、監視されていようが盗撮されていようが尾行されていようが構わないのだけど、
傍にいるのなら声をかけてくればいいのにと思う。
学校以外の場所で椚田と会った記憶がないから、一度くらい会ってみたいと思うのだ。好きな相手の私服姿なんて誰でも夢見るものだろう。
「どうしたの? 悠一君」
放課後、たまに立ち寄る図書室で向き合いながら読書に勤しんでいると(僕は少しも集中していなかったけれど)、
じっと見られていたことに気付いたのか、椚田が分厚い新書から顔を上げた。
その表情は疑問一点のみで占められており、こんな彼女が本当に自分を付け回しているのかと思うと妙な感じがした。
人間見た目や雰囲気だけでは分からないものだ。
「椚田って、休日は何してるんだ」
直接私服を見せてくれと言っても良かったのだが、どんな反応がくるのか想像もつかないのでやめることにした。
「休みの日は、勉強してる」
「クラスの女子とどっか行ったりしないのか」
「しないよ。高校生になって、いろいろ忙しくなっちゃったから」
遊ぶ暇がないんだよ。と椚田は何でもないように笑みを浮かべた。
「だって、悠一君とも外で会ったことないでしょ? できれば会いたいし、遊びたいんだけど、時間がないんだ」
「なら、仕方ないな」
「悠一君は私と外で会いたいと思う? 遊びたいって思う?」
「たまにな」
「そっか、そっか……うん、ええと……うん、じゃあ今度の日曜日は学校で遊ぼう!」
「小学生か」
反射的にそう突っ込むと、彼女はだよねーと呟きながら苦笑いを浮かべた。
そういえば、以前に椚田が見たい映画があると話したので、じゃあ見に行こうと言ったそのときも話は有耶無耶になってしまったのだったか。
どうやら、学校外で人と会いたくはないらしい。随分と変わった趣向である。
それでも、僕を付け回す時間はあるしそのためになら外へ出るなんて、変な話だ。
もしかすると、ずっと僕を付け回しているから忙しいのかもしれない。まあ、これはさすがに被害妄想か。
被害妄想……いやいや、僕自身は何も害は加えられていないのだから無害妄想、むしろ理想妄想。
こうだったらいいのにということをさらに妄想している。
好きな相手に追いかけまわされるのなら誰だって嬉しいだろう。
そんな調子でぐだりぐだりと会話をしていると、図書室のカウンターから大げさに本を閉じる音がした。
目を向けてみると、今日の受付当番らしき図書委員女子がこちらをじいっと睨みつけている。
同じ眼鏡でも雲井とはかけ離れたきつい目と、グラス越しに視線を合わせた。
「ごめん川瀬さん」
椚田が申し訳なさそうにそう言うと、
「これでもう8回目の注意ですよ椚田さんに遠野さんここは読書をする場なのであって男女がいちゃつく場所ではないのですお分かりですか?」
一息でこんなことを言い終えた。注意されるたびに思うが、この人は本当に滑舌が良い。
感心すべきところはそこかと言われそうだ。
「でも他には誰もいないんだし、いいんじゃないか」
「私がいるんですよ」
カチャリと音がしそうな程に、眼鏡を押し上げる仕草がさまになっていた。
なんとうか、とても古典的な図書委員。そう形容するのが一番正解に近いと思う。
確か同学年のはずだが、クラスも別であるため、川瀬さんに関する情報の持ち合わせはもうない。下の名前すら僕は知らない。
「そもそも、学校内での男女交際は禁止されているはずです図書室での決まりごとよりもよっぽど重要なことですよ」
「……前から思ってたんだけど、川瀬さんは生徒会長になるべきだよね」
「……それもまた古典的な生徒会長になりそうだけどな」
「……古典的って王道な感じでいいと思うよ私」
「……その前に川瀬さんが当選すれば校則強化は必須だ、誰も投票しないだろ」
「聞こえていますから」
声を細めてはいたものの、三人しかいない空間での秘密話なんてそうそう成立しない。
まあ、僕らに聞こえないようにしようなんて気遣いが全くなかったからだともいえる。
「それに、私は高校生活三年間を全て図書委員の委員会活動に充てようと思っているので、そんなものに立候補する暇はありません」
「自分で灰色学園生活のエンジョイ宣言しちゃったよ……」
今度こそぼそりと呟いた椚田と目を合わせて、そろそろ出るかということを確認し合い席を立とうとした時だった。
ガラガラ――ッと勢いよく引き戸を空ける音が室内に響き、その引き戸が壁へぶつかった衝撃音と共に
「みおちゃんゆうくん、みいいいつけたあああぁぁああ!」
爆音にも近い大声量の、聞き覚えのある声の持ち主が図書室へと入ってきた。
僕と椚田は慣れているため引き戸の音が聞こえると同時に耳を塞いでいたが、慣れていないらしい川瀬さんは目を白黒させてぐらぐらと身体を揺らせていた。
ああ、そういえば図書室へ襲撃に来たのは初めてか。ここまでくればもう兵器の威力だな。
「ふたりともひどいなあ! 今日は剣道の試合があるから見に来てっていったのに!
もいくんは負けちゃったけど、あたしとこのちゃんは大活躍だったよ! さすがあたし、さすがこのちゃん!
さてさてどうして来なかったのか理由を30字ぴったりで述べてね!」
無茶ぶりだ。
にこにこと笑顔でひたすら叫び続け(喋るという音量ではない)ながらポニーテールを揺らして近づいてくる小柄な先輩に、
とりあえず「すみません」と頭を下げた。
「椚田と話しこんでたもので」
「次の試合は見に行きますから」
ふたりで宥めるようにそう言うと、先輩は少しむうっと頬を膨らませてぷいっとそっぽを向いてしまった。
「次来なかったら、ホントに怒るからね!」
「わかりました」
空気を読んで、すでに怒ってるじゃないですかとは言わない。
もいくんとは、この人間拡声器という別称をもつ先輩――篠宮(しのみや)先輩と同じ剣道部に所属する僕の友人、雲井のことである。
それにしても、あいつ負けたのか。とりあえず、慰めの言葉を考えておこう。
「というかねっ、みおちゃんに返そうと思ってたものがあるから、ちょっと道場まで来てほしいと思ってね!」
「ああ、村主先生の課題レポートのですね」
「そうそう! あれめちゃくちゃ助かったよっ、むらさんの観点よくおさえられてて! これで評価はA行けそうだよ!」
「あの先生、結構やらしいところみてきますからね、正攻法じゃAなんて無理ですもん」
「そうなんだよそうなんだよ!! あたしのクラスで一番のかしこさんでも、毎回B+評価だもん!
えっへっへ〜みんなでいい評価とって、むらさんびびらせるんだあ!」
それは逆に不自然に思われそうだが、やっと先輩の機嫌が直ったところなので水はささないでおこう。
先輩に腕を引かれて出て行った椚田の「悠一君もきてね」という言葉に頷き、広げられたままの新書をもとの棚に戻してから椚田と自分の分の鞄を手に取った。
彼女の鞄が妙に重かったのは、きっと教科書をいちいち持って帰っているからだろう。
休日は勉強漬けで置き勉もしないとは、変なところで真面目な奴だ。そう受付カウンターの前を通り過ぎ、引き戸に手をかけたところで、
「遠野さん」
川瀬さんに呼び止められ、とりあえず足を止め振り返った。
「なに」
「前々から思っていたのですが……その、椚田さんは、どうしてあんなことができるんですか?」
怪訝そうに、そしてどこか不安げにそう聞かれて、僕は数回瞬きをした後その問いに答えた。
「あんなことって、教師のレポート観点を知ってるってところか」
「そうです。あなたたちは、ここでもよくテストや授業に関して妙な会話をしていますし……まさか職員室を荒らしているのではないでしょうね」
「さあ。聞くなら椚田に聞いてくれよ」
僕も知らない。教えてほしいぐらいだ。そう言い終えて今度こそ引き戸を開け、僕らは最後にこんな会話をした。
「いきなりですみませんが、あなたたちは本当にお付き合いをしているのですか?」
「いや、純粋な友達関係」
「純粋、ですか……しかし、それなら校則には違反していないのですね。それは良いことです」
***
「くーもーいー、もう疲れたし帰ろー」
「篠宮先輩が、戻ってくるまで帰るなって言ってただろ?」
「いいじゃん、試合おつかれさまーって感じで帰っちゃおうよー」
「お疲れ様の前に片付けな」
ぶつぶつと文句を垂れ流しながらも道場の片付けに励む緋本は俺の言葉へ「はいよ」とため息交じりに頷いた。
俺たち以外の剣道部員は今回の試合で芳しい結果を得られなかったため、篠宮先輩の刑罰宣言により道場裏の草むしりを行っている。
あの人は小柄で始終にこにこと笑っている可愛らしい先輩なのだが、部のことになると非常にスパルタになるのだ。
「みんな凄く頑張ったと思うよ! それは本当にそうなんだけどねっ、あたしも分かってるんだけどねっ、自分への戒めとして草むしり頑張ってね!」
道場内に大声を反響させてから、少し用があると言って先輩本人は素早くどこかへ行ってしまった。
ちなみに俺自身は負けている、にも関わらず道場内の掃除とはこれ如何に……緋本は結果を出したので当然だとして、これはおかしい。
「先輩に好かれてるからじゃないのー? うわあ、あやかりたいねー」
「んなわけあるか」
くるくるとした癖っ気のある茶髪を夕陽に照らし、緋本は皮肉めいた口調でそう言った。
先輩が俺を後輩以上に思っていることなんてあるわけがない。
それにしても、男女混合の部で男子は全敗、数少ない女子部員たちが全勝ってどういうことだ。情けないねえな男共、しっかりしろ。
その男共の中に自分を含めつつ、明日からの部活も頑張ろうと心に決めた。
誰とは言わないが、成果を見せたい相手くらい俺にもいるのだ。
しばらく緋本とは背を向け合ってお互い掃除に集中していると、道場の扉を開ける大きな音がしたので耳を塞いだ。
その数秒後、
「ただいまああぁぁぁああああ!」
という爆声音と共に帰ってきた先輩の方へ振り返ると、そこにいたのは篠宮先輩だけではなかった。
あの椚田ミオリも、いた。先輩の後ろ、入り口あたりで耳を塞いでいる。
どうして、こいつまでいるんだっ……。
「ああっとッ、もいくんとこのちゃんはみおちゃんと初対面!? じゃあ荷物とってくるから、その間に自己紹介でもどうぞ!」
ハイテンションにそう言って、篠宮先輩は奥へと行ってしまった。
緋本はけだるげに目を細めながら、俺は眉をひそめながら椚田と少し間隔をもって向き合う。
「1年C組の椚田ミオリ」
言って右手を軽く上げ、椚田はにこりと笑った。
「俺は、」
「1年E組の雲井君だよね」
「……雲井ー、知り合い?」
椚田から目を離さずに聞いた緋本の声は、いつも通りだるそうだった。
その言葉に首を横に振り「知らん」と返す。俺はまだ椚田本人と接触をとったことはなかった。
悠一を正気に戻すためにはいつか話を聞かなければいけないとは思いつつも、まだできていなかった。
得体のしれない体質をもつわけのわからない女と積極的に関わりたいと思えるほど、俺は物好きではない。
これを機に知り合っておけという何かのお達しだろうか。
「雲井君って、悠一君の友達なんだよね。もうすぐ、悠一君も来るよ」
「もう来てる」
そう言って入り口の影から淡々とした面持ちで出てきたのは、紛れもなく悠一だった。
「雲井負けたんだってな。次頑張れ」
「ありがとよ」
今回も頑張ったことは頑張ったんだけどな。地味に傷を抉る奴だ。
そうするのが当たり前のことのように椚田の横に立った悠一を見て、何なんだろうなあとため息をつきそうになったが、寸でのところでこらえた。
本格的に悠一へ忠告できないのは、椚田が悠一と付き合うつもりがないように見えるからだ。
それによって真意が全く掴めず、行動がとりづらい。
決定的な行動でもとってくれれば、それを理由に説得するなり問い詰めるなりできるんだがなあ……。
いや、ストーカー行為を許容してしまっているあたり、やっぱり説得は難しいのかもしれない。
違和感か……そんなものどうやれば取り戻せるんだろう。
「それで、君が大活躍の『このちゃん』か」
「雲井君のクラスメイトで、緋本此乃子(ひもとこのこ)さんだっけ」
「そーだけど」
クラスが同じというわけでも顔見知りというわけでもないのに名前を言われた緋本だったが、特に動じず頷いていた。
きっと悠一の言った『このちゃん』呼びは篠宮先輩の特権であるため、おおよそ先輩に話を聞いたのだろう。
椚田については今は何も言うまい。偶然知ったのかもしれないし、そうでないという可能性もある。
ちなみに、緋本も抗体のある体質ではないらしく、こうした部分へ違和感を持つことはない。
篠宮先輩もきっとそうなのだろう。なんだかひどく疎外感を感じた。
校内にひとりでも違和感を持っている奴がいれば、それだけで大分安心するんだけどな……。
「ちょっと、雲井」
「なんだよ?」
考え事をしている最中に緋本につつかれ目線をそちらへ向けると、
「椚田さんの自己紹介は聞いたけど、この男子だれ?」
「友達の遠野悠一」
「……遠野か。んー、りょーかい。ふたっともよろしくー」
寝ぼけているような口調で緋本がそう言い終えると同時に、再び道場の奥から軽い足音がドタドタと聞こえ始めたため、
四人一斉に聴覚器官の入口を封じた。
「自己紹介おわったかな!? わおいっ、ゆうくんも来てるねおっけおっけ! じゃあ、これ本当にありがとうねっ、みおちゃん!!」
「どういたしまして」
耳を完全に塞いだところでまだうるさい篠宮先輩から椚田は何やら紙袋を受け取り、笑顔で頷いていた。
……何なのだろう。
「じゃあっあたしは草むしりに行ってくるから! もいくんこのちゃん道場よろしくね!!」
俺の疑問など露知らず、先輩は駆け抜けるように(実際駆け抜けていたが)にこにこと笑って道場裏へと向かって行った。
戒めとは言っても他人にだけさせるだけではなく、言いだした先輩本人もしっかりとやり遂げるため、試合直後に草むしりと言われても文句を言うやつはいないのだ。
「それじゃ、私は帰るね」
靴を脱ぐこともなく入り口でずっと立っていた椚田は、紙袋をもち直してからこちらへ手を振った。
とりあえず俺は「ああ」とだけ言って、緋本は「んじゃねー」と欠伸交じり。
「校門まで送っていく」
淡白にそう言った悠一に対し、椚田は嬉しそうに微笑んで「やったッ」と返事をしていた。
「雲井はまだ残ってるよな」
「あ? ああ……」
「なら、また戻ってくるから、一緒に帰ろう」
「わかった」
友達とは言え、男に下校の誘いをされるとは……なんてしょっぱいんだ。
何事か話しながら道場を去っていくふたつの背を目で追って、今度こそ俺はため息をつく。
「幸せはーため息つくと、逃げるんだー」
短歌のようなリズムでそう言った緋本へ向き直ると、そいつは珍しく目を完全に開けて、こういった。
「私、あいついやだよ」
***
「ねー、悠一君」
「なんだよ、椚田」
「今さ、楽しい?」
「どういう意味で」
「学校とか、友達とか」
「まあ、楽しいな」
「そっかあ、よかった」
「それが何だ」
「何でもないよ、悠一君が楽しいならそれでいいんだー」
「そうか、俺もお前が楽しいならそれでいいよ」
「悠一君にそう言ってもらえて感動っ」
「大げさだろ」
「そうかな。大げさでも何でもいいよ、悠一君が楽しいなら」
「これからもっと楽しくなるといいね」
***
我慢だ我慢我慢我慢、我慢。
ああでも無理かなもう無理かもそろそろもうねえ限界、リミッター越え寸前誰か止めてくれればいいんだけど、誰かいるかな。
さてさてさてさて最初は誰にしよう彼に声をかけてくるあれか笑顔を見せるあれか彼に近いあれかさあさあさあどうしようね。
私はもう十分に我慢したよでも気付いてくれないんだもんならねさくっとぐいっとぼいっとがちゃっとぐにゃっとしようかな。
どんどんなくなっちゃえばいいんだよねえ消えちゃえばいいんだよ消してしまえばいいんだって私ずっと思っててね、あはは。
ええっと私が変だっておかしくなってるって? いやいやそんなことないよだって好きな人には自分だけ見てもらいたいもの。
こう思うのは当たり前でしょ、よし自己正当化完了私はもう限界を超えましたということでそろそろはじめようとおもいます。
てんきよほうではあしたのてんきはあめですよーって。
おもむきがありすぎ、むしろうんざり、だ。
明日は晴れがいいなー、雨って嫌いなんだね。あーあ。
これで02の投下終了です。
ありがとうございました。
>>802の「雨って嫌いなんだね」は「雨って嫌いなんだよね」です。
文字抜け申し訳ない。
GJ
狂っているのは誰なのか気になりますね
週末なのに投下なしか…
>>805 ここ最近投下ラッシュだったからな…たぶん力尽きてるのではないかな?名作ばっかだったから
もう週末のヤンデレ家族がないんだね…
無事完結したのは嬉しいけど・・・やっぱり寂しいな・・・(´;ω;`)ブワッ
触雷!と迷い餓の詩があるやん
お前らはいつまでヤンデレ家族に依存してるつもりだ
触雷!は俺も待っているんだがなぁ
ウェハース第二話投稿行きます
夏の夜は短いけれど、いそがしい暇にでも見ていただければ嬉しいです
では行きます
あれから一週間。僕は藤松さんと登校を四回、下校を三回共にした。
彼女は見れば見るほど魅力的で、話せば話すほど不可思議な存在だった。
まず、待ち合わせは必ず破られる。これは約束の時間に遅れるとか、場所に来ないとかそういうのじゃない。
忘れっぽいとかいうそんな野暮な話でもない。
必ず約束の場所へ僕が向かう前にわざわざ向こうから出向いて来る。
本人曰く待ち切れなかったらしいが、少し怪しい。
他にも付き合い始めてからは外出の時によく彼女と遭遇するようになり、よく買い物や散歩を一緒にするようになった。
その時の彼女はとても楽しそうで僕としても嬉しいが、よくよく考えてみると少し怖いというのが僕の本音だ。
外出の際にはよく後方に視線を感じるようになったし、学校にいても彼女とよく視線が合うようになった。
僕が彼女の事をいきなり気にし始めたせいもあるんだろうが、これはどういう偶然なんだろう?理解できない理由が怖いのは人間の動物としての本能で当然だ。
それにまだ、ドッキリ宣言も無い。
でも……怖い反面、楽しいというのもまた本音なんだ。
少し臭いが、彼女の僕といる時だけに見せてくれる屈託の無い笑顔が好きだ。
学校や、友人達の前ではあまり見せない彼女の笑顔。それを僕の前では惜し気も無く見せてくれる。
それが嬉しい。少し自分でも自分が歪に見える。
それから僕の心の中に一つの疑問が浮かんできた。
もしかして、ドッキリじゃないかもしれない。ありえない。
だってまだアドレスも知らなかった二人が、まだ五、六回しか話したことが無い男女が恋なんて出来るわけが無い。
それは恋じゃない、勘違いだ。夢想だ。偽者だ。
確かに僕はモテないし、異性と駆け引きもしたことも無い。
でもこれだけは知ってる、賭け値無しに動く人間なんていないんだ。
そうしている内に、一つの不安が芽吹いた。
好きになってしまったらどうしよう。
僕が彼女のことを本当に好きになってしまった頃、彼女が今僕に抱いている恋心の正体に気付いたら僕が捨てられるという不安。
嫌だ、そんなの嫌だ。
だったらどうしたらいい?決まってる。期待しなければいい。
僕が好きにならなければいい。僕が好きになるよりも早く、彼女に今の気持ちが偽者なんだって気付かせてやればいい。
ねえ、どうして? どうして私(の作品)を見てくれないのよ!
あの女(作品)はもういないのよ!泣いたって騒いだってGJしたって、もう帰って来ないのよ!
私(の作品)だけを見てよ……わたし……だ……け…………を……………………
お兄ちゃーん、こまちちゃん来たー!」
この可愛らしい声の主は今年で五歳になる妹、穂波だ。歳の差は十二もある。
両親にも、僕にも懐いてくれているので可愛い事この上ない。
その穂波の最近のお気に入りは僕の登校前に僕の家に訪れる人物、藤松さんだ。
僕とは違い、幼さの赴くままに貪欲に人と接する妹は僕を迎えに来た藤松さんもその貪欲な好奇心を寄せ、今では藤松さんを誰よりも早く出迎える存在となっている。
歯磨きを終えて玄関に顔を出すと、もうさっきの声の主の姿は無かった。
ワンスターのスニーカーを足だけで履いて、玄関を出ると、この一週間でもはや当たり前になりつつある光景があった。
藤松さんと穂波の僕が来るまでの談笑だ。
藤松さんはしゃがんで穂波と目線を合わせ、真剣に穂波の話を聞き、穂波は真剣に話を聞いてくれる藤松さんを退屈させまいと身振り手振りも合わせて、しどろもどろになりながらも必死に話しを面白くしようとしている。
「ごめん、遅くなった」
「あっ!お兄ちゃんまって!」
僕を遮って、穂波は藤松さんに何かを耳打ちする。それから二人は笑顔で僕を見上げる。
「なんだよー穂波、お兄ちゃんにも教えてくれよー」
「お姉ちゃんと二人だけのひみつー!」
穂波は悪戯っぽく笑って、藤松さんに目配せする。
「そうだよ、私と穂波ちゃん二人だけの秘密だもんねー」
藤松さんもニコニコと笑みを浮かべながら穂波に調子を合わせる。こうやって二人並んで見ると、仲いい姉妹っぽく見えるな。
「じゃあね、穂波ちゃん」
「いってらっしゃーい!」
腕がちぎれんばかりに穂波はブンブン手を振って僕らを見送る。それも藤松さんと僕が突き当たりの角を曲がるまでずっとだ。
もしかして母か父が止めるまで振ってるかもしれない。
「毎朝ごめんね、迎えに来ちゃって」
僕としては迷惑でもないし、さっきみたく穂波も喜んでる。
穂波……そういえば今日、母さん夜勤だったな。保育園に迎えに行かなきゃ…。
「大丈夫だよ、無問題」
「ごめんついでに、今日帰り一緒に……」
待て、少し待て。
「じゃあさ、帰るついでに……」
何を考えている。落ち着け、冷静になれ。何を期待している。
「一緒に保育園に穂波を迎えに行かない?」
駄目だ、言うな!!
「えっ?いいの、私も行って」
「うん、穂波も喜ぶ」
藤松さんはウフッといった感じで笑うと僕の手を握った。
いきなりだったから手の触れ合いや、見知らぬ他人の温かさが心に刺さって、言葉を遮った。
「お言葉に甘えて、……すごく嬉しい」
「なんで?」
「だって、初めてじゃない?神谷君から……、真治君から誘ってくれたの」
戻れなくなるぞ。
グラウンドの隅、木陰覆われたベンチ。僕たちはいつもそこで昼ごはんを食べる。
ベンチ自体は僕と平沢がベルマークを集めて回り、学校に寄付して申請させた物だ。
「どうしよう…」
食が全くと言っていいほど進まない。憂鬱が箸もとい、食欲を塞ぎ止めている。
「まだ今朝言ってた事気にしてんのか?」
カレーパンを齧って、平沢が僕のコーヒー牛乳を開ける。
「勝手に開けるなよ」
「いいじゃん、それに開けてやったんだ」
僕が見るに平沢は豪快な奴だ。懐が大きいといってもいい。それに声もデカイ。
それから変なところが繊細で、こういう人の事を見所のある人物って言うんだと思う。
顔もいいから異性からも人気がある。入学から二ヶ月で二人振っただけはある。
「それに、もうそれドッキリじゃないと思うよ?」
僕は食べあぐねていたカツサンドから、平沢へ視線を移動させた。
「あーっと、聞いてみたんだけどさ。頼まれてた事」
「うん」
「藤松さんの交流関係。どうもドッキリの企画とか無いみたいだわ。さっきサンシャインのグループに聞いてみても藤松さんとはたまに話すくらいらしい」
サンシャインとはウチのクラスで最大の女子グループのリーダーで、これもあだ名の由来のキャラクター通りの顔をしていて、何だか正方形っぽい、というか顔が角ばっているのだ。
おまけに僕らが一年の頃、彼女が変に格好をつけてある女子生徒の非行を庇った発言をしたのが先生バレ、咎められた時。
彼女は泣きながら「私にも友情はあるんだー!」と叫んだ事から、庇われた生徒のあだ名は阿修羅マンとなった。
例に漏れず、阿修羅マンも中々のブサイクである。
「よかったじゃん、マジもんだぜ告白は」
「それならなおさら駄目だ」
平沢は僕のコーヒー牛乳を一口含んでから僕の方を見た。
「いいよ、今日は奢ってやる」
「いや、こっちじゃなくて」
「少しは気にしろよ」
「駄目って方だよ、俺の気になってんのは」
コーヒー牛乳の侘びは必ずさせてやる。
「だって、話したこと……無いんだぜ?アドレス交換したのも告白された当日だし」
「そんなにこだわるトコかね?どうせ高校生活が終わるか、それぐらいには別れてるだろ?」
「嫌なんだよ、そういうの。」
「何で?楽しいぜ?」
「そんなん犬畜生と変わらん」
平沢はムッとしたのか、眉間に皺を寄せて、コーヒー牛乳をまた口に含んだ。
「お前、意外と付き合うと重いタイプなんだな。少し意外だわ」
「無駄に傷つくのが嫌なだけだ」
「何も知らんくせに、この童貞が」
「童貞の方が義理堅くて信頼出来るんだよ、俺は」
「じゃあ、大人は信頼できんのか?」
「ああ。全く」
そこまで言うと平沢は黙った。第一童貞だ、じゃないは関係ない。
即物的に考える。そういうのが好きじゃないんだ、僕は。
>>813 ナイス!!何かすげぇ嫌な予感しかしないのはきっと俺だけだ!!
そして、喧嘩売るつもりは無いがヤンデレ家族の作者らしき奴をネトラレSSで見掛けたのだが
七月になってから六月の下旬からの蝉の声はピークに達していた。
五月蝿い蝉達の熱烈なセックスアピールとのせいで午後の授業は全く眠れなかった。午後最後の授業は担任の籠谷の国語だったため、そのままホームルームに突入し、無事僕たち、学徒の一日が終了した。
「んじゃ、明日の日直は宮部ね。はい起立!礼!解散ー」
僕が席を立った直後、肩を叩かれた。
振り向くと、あのウフッ感じの笑顔を浮かべた藤松さんがいた。少し、寒気がした。
「帰ろう?」
「あっ、うん。そうだね」
クラスメイトからの視線が痛い。特に男子からの……。
告白翌日はもっと騒がれていたが、人の噂も七十五日。一週間経てば視線が突き刺さる程度になる。
ちなみにこの熟語に使われている『七十五日』というのは稲が植えられてから実るまでかかる日数だそうだ。
「おい、かみやー」
この間の抜けた声、平沢だ。
「今日こそ、一緒に帰るぞー、最近付き合い悪いんだよ…お前……。もしかして今日もか?」
「えっと……」
「うん。そう今日もなの。ごめんね、平沢君」
僕が弁明するよりも先に、藤松さんが断った。目が据わってる。
「ああ、全然構わんよ。藤松さんの頼みなら仕方ない」
承諾したにしては、ガン飛ばしすぎだろ、平沢。
「いこ、真治君」
「し、真治君?おい、神谷…」
「じゃあね、平沢君」
また僕が釈明するよりも先に藤松さんが手を引いて教室を出て行くことになった。
最後まで、平沢を含むクラスの男子からの殺気を孕んだ視線が僕の後頭部に突き刺さっていた。
帰りのバスも同様に、僕の手を嬉しそうに握る藤松さんを尻目に僕はただただ小さくなる事で視線が突き刺さる面積を減らすのに必死だった。
嬉しそうな藤松さんに手を離してなど調子が狂いっぱなし僕が言えるはずもなく、やっと緊張が切れたのは電車に乗って二駅通過した後だった。
「藤松さん……」
「うん?」
相変わらず嬉しそうな藤松さんとは対照的に、僕は憔悴しきっていた。白髪が増えたかも知れない。
「学校で手を繋ぐのはやめよう?恥かしいし……」
「私は恥かしくないけど……、私と手を繋ぐの、イヤ?」
「うん。嫌じゃないけどね、バカップルっぽいでしょ?そう見られるの、藤松さんも嫌でしょ?」
藤松さんは少しの間僕をジッと見つめると、溜息を吐いた。
「分かった。私も少し浮かれ過ぎたね、ごめん」
謝るのは、僕の方だ。勘違いでも、こんな僕を好きになってくれた。
それを罰ゲームで、なんて疑った僕の方が謝るべきなんだ。
「あら神谷くん、あの子カノジョ?」
穂波を呼んでもらって、穂波が藤松さんとじゃれていると不意にそんな事を聞かれた。
「…はい、そうです」
「穂波ちゃんから聞いたわよ。可愛い子ねぇ、良い子?」
「はい……。僕には勿体無いくらいで」
「おーにぃーちゃーんー!!」
穂波が僕を急かす声が聞こえる。
「すみません、じゃあ」
「はい、またね」
頭を下げて、穂波と藤松さんの方へ向かう。
帰り道はいつもの三倍も長くなった。
穂波の道端での当たり前に対する発見、それに付き合う俺と藤松さん。
笑い声が絶えない帰り道。藤松さんの左手を穂波が握り、穂波の右手を僕が握る。なんだか親子って感じだ。
家までの直線の道に入った時、穂波が僕の手を引いた。
「お兄ちゃん、ほなみカギ開けてくる!」
「よし、穂波隊員!ドアのロックを解除してきてくれ」
回りに車、自転車がいなくなったのを見計らって、僕は穂波に自宅の鍵を渡した。
それと同時に一気に穂波は駆け出した。
「こけんなよー」
藤松さんと穂波の後姿を見送る。
「今日はありがとう、保育園まで付き合ってくれて」
「ううん、お礼を言いたいのは私の方。すっごく楽しかったもん」
彼女の語尾の『だもん』って言葉だけで胸がキュンとした。
「家に帰っても、ずっと一人だし……」
「えっ?」
藤松さんの表情が暗くなる。穂波を見送った笑顔を浮かべたまま。
「私の家ね、昔は貧乏だったの。私小五の時、新聞配達してたんだから。それでね、お父さんとお母さんに謝られちゃった。ごめんね、もっと私達頑張るねって」
藤松さんの手が寂しそうに見えた。待て、落ち着け。
「それからお父さんは海外に単身赴任、母さんは病院に非常勤に行くようになった。だからね、家じゃいつも一人なんだ、だから穂波ちゃんが羨ましい」
勘違いに決まってる。彼女を暗闇から救い出せるのは、僕以外にもいる。僕よりもふさわしい人も。
「あのさ……藤松さん」
「うん?」
「穂波を僕が迎えに行く時は決まって親父と母さんが迎えに行けないときなんだ。そんなのが月に五回くらいある。そういう時は僕と穂波で晩御飯を作るんだ」
でも、でもさ、今は。今は僕しかいないんだ。
「藤松さん。今日、晩御飯一緒に食べない?」
そう言って、僕は藤松さんの手を握る。
だってこのまま、また来た道を一人で帰る藤松さんの背中を見送る自身が僕には無かったんだ。
後悔なんて、反省なんてご飯を食べた後にでも僕が一人ですればいい。素直に、そう思ったんだ。
「……いいの?」
「うん、藤松さんがいいなら。穂波も喜ぶしね」
何より、握り返してくれた藤松さんの手は温かくて、力強くて、その事が僕は嬉しかった。嬉しかったんだ。
投稿終了です
途中のレスは本編とは関係ありません
ありがとうございました
ごめんなさい
最後の見送る自身がなかった〜のとこ、自信です
誤字表記すみませんでした
GJ!
ウェハース楽しみにしてます!
GJ!&割り込みスマソ
GJ!
>>823 ID見れば関係ないことはすぐわかるし
よくあることだから気にしなくていいと思うよ
GJ!
ほんの少しずつですが危うくなってきてる感じが良い。
826 :
名無しさん@ピンキー:2010/09/12(日) 01:09:58 ID:w4fDNcXL
名作揃いで感動しました!!
僕も頑張ってみようかな
初めてまして
そして初投稿です
++++++++++
「もう我慢できないよ。」
ここはとある中学校の屋上。大抵の中学校は屋上への出入りは禁止で、ここも例外ではなく屋上へ行くことは堅く禁じられてる。
「星奈(せいな)。落ち着け!早くその物騒な物を捨ててくれ!!!」
しかし今はいろいろと訳があり、スタンガンを持った少女とその少女に追い込まれた少年が学校の放課後の屋上にいる。
最近の若者は性が乱れていて、人気のない場所で躊躇なく性行為をやるのが当たり前となってきている。
しかし見る限りそのような雰囲気ではなく、更なる危機的状況が起きていた。主に少年に。
「あはは。 変な陽太。あたしは素直になれない陽太(ようた)のためにここまでしてあげてるんだよ。」
少女は焦点が定まっていない淀んだ瞳で外に追い込んでいる少年を愛しそうに見つめながら、徐々に少年に迫っていった。
少年も迫って来る少女から校庭が見える外側に逃げていた。
「だからそれはお前の被害妄想だ!」
「うん。あたし達は相思相愛だよ。」
「くそっ、こっちくんな!!!」
少年はついにフェンスまで追い込まれてしまった。
「大丈夫だよ。陽太は少しビリビリなって寝てもらうだけだから。」
「それが嫌なんだ!この馬鹿!」
「もう!………ちゃんとその後にあたしとの営みができるから。」
「お願いだからもうやめてくれ……」
フェンスに寄りかかりついに涙を流す少年。
その時だった。いきなりバキッと大きな音が聞こえ、突如フェンスが折れてしまい、校庭に落下した。
もちろん、寄りかかっていた少年もフェンスと一緒に校庭に落ちていった。
「おああぁぁっ!」
悲鳴も虚しくあっという間になくなった。
「………いや………いやいやいや………いやあぁぁぁぁっ!!!」
新たな悲鳴。しかし今度は少年ではなく少女からのものだった。
彼女は焦点こそは取り戻したものの、絶望的な表情に変わりすぐさま少年の落ちた場所に駆けて行った。
※※※※※※※※※※
………ああ、綺麗な花だ………見たことないよ………てか、花にこんな感心するなんて俺は………綺麗な花だ………
………あれ?他にも人いたんだ………お兄さん、こんにちは………
………ああ、こんにちは………君は誰だい?………それよりもここはどこだい?
………僕は陽太………ここは綺麗な場所だよ………お兄さんは?
………俺も陽太だよ………綺麗な場所はわかった………具体的にここがどこだか教えてほしい
………具体的…決定的には言えないけど………多分あの世だよ
………マジか………俺は死んだのか………
『………太……陽太……』
………声が聞こえるね
………ああ………
………お兄さん、早く返事に応えなよ………あなたのことを待っている人が返事を待ってるよ
………おいおい、俺とは限らないだろ………同じ陽太なんだからお前かもしれないぞ?………お前こそ早く返事に応えろよ
………違うよ………僕は余命3年と宣告されていて、宣告通りに死んだんだよ………だから絶対に違うよ
………しかし
………いいんだ、もう……
………諦めんのかよ?
………え?
………諦めんのかって言ってんだよ!!!
………!!!…
………確かに余命宣告されその通りに死んだかもしれない………けどな、まだお前が生きることを願い信じている人がいるんだ………その奴らの気持ちを見捨てるつもりか
………だったらお兄さんだって同じでしょう………お兄さんこそこの声に応えてあげなきゃ
………俺は大丈夫だ………これの次にまた呼ぶ声が聞こえるはずだ………俺は多分何かの間違いで来ただけだと思うからな
………でも………
………俺の方が多分お前より長く生きたんだ………気にするな
………約束して下さい
………何を?
………必ずあなたも生き返ることを
………ああ、当たり前だろ
『…陽太………陽太…』
………ほら早くしろ
………絶対ですよ
………わかったわかった
………また現世で会いましょう
………ああ、現世でな
++++++++++
………また現世で…か………ぶっちゃけ俺は戻りたくないな………
『……太……陽太………陽太』
………………………
『…陽太………陽太…』
………約束しちまったもんな………仕方ない、ややこしい件があるがいっちょ蘇るか…
『陽太!!!』
+++++++++
「うーん………なんか花がムズムズするな…」
『おい!!今棺桶から声が聞こえなかったか!?』
棺桶?えっ?今俺はどのような状況なの!?
「おーい、暗いんだが」
蘇ってみたらいきなり暗い場所にいるなんて俺はどこにいるんだ?後せまいし無駄に花臭いし…
『やっぱり聞こえたぞ』
『本当か』
『いや俺も聞こえた』
待て、さっき棺桶と聞こえたがまさか………
「だ…出してえぇぇぇ」
火葬だけはごめんだ。
投稿終わります。
無駄に長編です
あなたはよたですか?
とんでもないミスをしてしまいました
×Are you Yota
○Are you Youta?
本当にすみませんでした。他にも誤字脱字があったら訂正します
そろそろ次スレか?
投下乙
新作きてくれてうれしい
ん?494 KBか…次だな…
新作乙、埋めネタ期待
>>837 乙です。
迷い蛾の詩、第参部完成しました。
今から投下開始いたします。
今回は、ラストにチョイ修羅場あり。
崩壊への伏線を、少しずつ張って行きます。
その日の朝も、梅雨時にしては晴れていた。
夏の日差しの下、煩わしい雨から解放された人々が、何かに憑かれるようにして道を急いでいる。
しかし、そんな空模様も、夕刻になれば様変わりするものだ。
昼過ぎには空一面を覆ってしまった灰色の雲は、今や大粒の雨を辺り一面に撒き散らしていた。
雨の多い季節とはいえ、誰もが常に傘を持ち歩いているわけではない。
朝の天気だけ見て油断した生徒達が、それぞれに文句を言いながら下校して行く。
折り畳みの傘を持っている者は良いが、そうでなければ雨宿りだ。
「やれやれ……。
こんなことなら、今日は歩いて来るんだったかな……」
軒先に滴る雫を眺めながら、陽神亮太はうんざりした顔をして言った。
通学に自転車を使っている亮太にとって、この季節の雨は天敵である。
朝、晴れていると思って自転車を使えば、今日のように夕方からは雨が降り出す始末。
傘を差して自転車に乗るのは危険だし、かと言って、屋根もないような学校の駐輪場に自転車を放置しておけば、瞬く間にチェーンやギアが錆びついてしまう。
生憎、今日は折りたたみ傘を鞄に入れて来るのを忘れてしまった。
その上、置き傘の類もない。
「仕方ないな。
濡れるの覚悟で、自転車で帰るしかないか」
諦めにも似た独り言をこぼし、亮太は下駄箱の中から自分の靴を引っ張り出した。
この視界が悪い中、自転車で帰る事を考えると気が滅入ったが、それも仕方のないことだ。
そう、亮太が思った時だった。
「あ、あの……」
自分が声をかけられたと気づくのに、数秒の時間を要した。
亮太が振り向くと、そこにいたのは黒い傘を胸に抱えた少女。
昨日、わざわざ自分にジャージを届けに来た、月野繭香だった。
「月野さん?
どうしたの、こんなところで?」
「陽神君、今日は自転車だったんですね。
だったら、調度いいです。
この傘、先日お借りしたものですけど……今、お返ししますね」
そう言って、繭香は亮太に傘を手渡した。
まさに渡りに船といった状況だったが、それでも亮太は、不思議そうな顔をして繭香を見る。
見たところ、繭香は自分に手渡した他に、傘を持っていない。
通学にはバスを使っているようだったが、それでも傘なしで帰るわけにはいかないはずだ。
「ねえ、月野さん。
傘を返してくれたのは嬉しいけど、君は大丈夫なの?
学校にはバスで通っているみたいだけど、君だって、傘がなければ困るんじゃないか?」
「は、はい……。
ですから……よかったら、一緒に帰りませんか?」
「一緒にって……そう言われてもなぁ……。
俺、自転車だし……。
月野さんと一緒にバスで帰って、自転車を雨ざらしにするわけにもいかないよ」
「それなら平気です。
実は、今日は私もバスの定期券の期限が切れてしまって……。
今日だけ切符を買うのも勿体ないから、歩いて帰ろうと思っていたところなんです」
「そうなの?
だったら、別に問題ないかな。
どっちにしろ、俺も自転車を押して帰らなきゃいけないし……」
繭香の言葉に、亮太は何ら疑問を抱かずに頷いた。
そんな彼の姿を見て、繭香も思わず笑顔を返す。
定期券の期限が切れたというのは、実のところ嘘だ。
ただ、亮太と一緒に帰るためには、そのくらいの嘘も必要だと思った。
どのみち、自分は既に多くの者を欺いて生きているのだ。
それに比べれば、この程度の嘘など可愛いものではないか。
亮太も傘がなくて困っていたようだし、別に咎められるような事をしているわけではない。
「それじゃあ、俺は自転車を取ってくるから。
月野さんは、ちょっとここで待っていてくれよ」
繭香から渡された傘を片手に、亮太の姿が駐輪場の方へと消えてゆく。
その後ろ姿を見送る際、繭香の胸の中を、ほんの少しだけ寂しい気持ちがよぎった。
降り続く雨の中、一つの傘の下で身を寄せ合って歩く少年と少女。
少年は自らの傍らにある自転車を押し、少女の歩調に合わせて足を進める。
路線バスで十分程かかる道は、歩いてゆくと、それなりに距離のあるものだった。
いつもは、バスの座席の上でまどろむ暇もなく通り過ぎてしまう通学路。
それも、こうして歩いてみると、なかなかに遠く感じられるものである。
だが、今の状況は、繭香にとってはむしろ好都合だった。
こうして他愛もない話をしながら、亮太と同じ時を過ごせるのだから。
「ねえ、月野さん。
君の家って、どの辺りなの?」
「森桜町のバス停から、少し歩いた場所です。
電車の駅まで遠いから、使うのは、いつもバスなんですよね……」
「それ、ちょっと不便だね。
俺みたいに、自転車で登校したりとか、考えないの?」
「たぶん、無理だと思います。
今日みたいに雨が降った時は、さすがに自転車を使うのは危ないですし……」
「そっか……。
まあ、それもそうだな。
雨の日は視界も悪いだろうから、転んでケガでもしたら大変だし」
繭香の言葉に、亮太は妙に納得した表情で頷いた。
彼にしてみれば、何気なく言った一言。
しかし、それを聞いた繭香は、亮太の言葉を純粋に嬉しく思った。
今まで、自分に向けられてきた心配は、裏を返せば心配している者自身の保身だった。
親も、友人も、教師も、その誰もが、繭香が傷つくことで自分が恥をかく、もしくは自分が責められることを恐れていた。
己の可愛さ故に向けられる、歪んだ同情。
そんなもの、繭香は欲しいとも思わなかった。
ただ、亮太のように、本心から自分の事を心配してくれる者が欲しかった。
妙な損得勘定は抜きに、真っ直ぐに自分を見てくれる人と話したかった。
学校でのこと。
趣味の話。
好きなものや、嫌いなものについて。
僅かな時間の間でも、こうした話ができる相手と一緒にいるのは楽しかった。
未だ、堅苦しい敬語を交えた言葉でしか話せないものの、自分から積極的に他人とかかわろうとしてこなかった繭香にとって、これは大きな前進と言える。
もっとも、それは亮太の持っている、誰にでも対等に向き合おうとする姿勢があるからこそ出来たことなのかもしれないが。
気がつくと、既に雨は止んでいた。
空は未だ灰色の雲に覆われていたが、とりあえず、傘を差して歩く必要はなさそうだ。