ヤンデレの小説を書こう!Part35

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1名無しさん@ピンキー
ここは、ヤンデレの小説を書いて投稿するためのスレッドです。

○小説以外にも、ヤンデレ系のネタなら大歓迎。(プロット投下、ニュースネタなど)
○ぶつ切りでの作品投下もアリ。

■ヤンデレとは?
 ・主人公が好きだが(デレ)、愛するあまりに心を病んでしまった(ヤン)状態、またその状態のヒロインの事をさします。
  →(別名:黒化、黒姫化など)
 ・転じて、病ん(ヤン)だ愛情表現(デレ)、またそれを行うヒロイン全般も含みます。

■関連サイト
ヤンデレの小説を書こう!SS保管庫 @ ウィキ
http://www42.atwiki.jp/i_am_a_yandere/

■前スレ
ヤンデレの小説を書こう!Part34
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1280579073/

■お約束
 ・sage進行でお願いします。
 ・荒らしはスルーしましょう。
  削除対象ですが、もし反応した場合削除人に「荒らしにかまっている」と判断され、
  削除されない場合があります。必ずスルーでお願いします。
 ・趣味嗜好に合わない作品は読み飛ばすようにしてください。
 ・作者さんへの意見は実になるものを。罵倒、バッシングはお門違いです。議論にならないよう、控えめに。

■投稿のお約束
 ・名前欄にはなるべく作品タイトルを。
 ・長編になる場合は見分けやすくするためトリップ使用推奨。
 ・投稿の前後には、「投稿します」「投稿終わりです」の一言をお願いします。(投稿への割り込み防止のため)
 ・苦手な人がいるかな、と思うような表現がある場合は、投稿のはじめに宣言してください。お願いします。
 ・作品はできるだけ完結させるようにしてください。
 ・版権モノは専用スレでお願いします。
 ・男のヤンデレは基本的にNGです。
2名無しさん@ピンキー:2010/08/23(月) 08:10:34 ID:xRIKe3cb
乙です
3名無しさん@ピンキー:2010/08/23(月) 09:47:02 ID:i5udLu3T
>>2
お疲れ様ですってちゃんと書きなさい!
4名無しさん@ピンキー:2010/08/23(月) 11:11:47 ID:I0qfdgTK
お疲れ様です
5名無しさん@ピンキー:2010/08/23(月) 12:37:11 ID:PDiDQrq9
>>1
お疲れ様です
6名無しさん@ピンキー:2010/08/23(月) 13:26:40 ID:xRIKe3cb
>>3
すんません

>>1
お疲れ様です
7名無しさん@ピンキー:2010/08/23(月) 14:39:09 ID:U0RSUvp5
子供は何人欲しい?私は三人欲しいな。女の子がふたり、男の子がひとりね。名前は>>1くんが決めてあげて。
私ってあんまりネーミングセンスないから。えへへ、どっちに似ると思う?私と>>1くんの子供だったら、きっと男の子でも女の子でも可愛いよね。
それで庭付きの白い家に住んで大きな犬を飼うの。犬の名前くらいは私に決めさせてね。>>1くんは犬派?猫派?私は断然犬派なんだけど、あ、でも、>>1くんが猫の方が好きだっていうなら、勿論猫を飼う事にしようよ。
私、犬派は犬派だけど動物ならなんでも好きだから。だけど一番好きなのは勿論>>1くんなんだよ。>>1くんが私の事を一番好きなように。
そうだ、>>1くんってどんな食べ物が好きなの?
どうしてそんな事を聞くのかって思うかもしれないけれど、やだ明日からずっと私が>>1くんのお弁当を作る事になるんだから、ていうか明日から一生>>1くんの口に入るものは全部私が作るんだから、やっぱり好みは把握しておきたいじゃない。
好き嫌いはよくないけれど、でも喜んで欲しいって言う気持ちは本当だもんね。最初くらいは>>1くんの好きなメニューで揃えたいって思うんだ。
お礼なんていいのよ彼女が彼氏のお弁当を作るなんて当たり前の事なんだから。でもひとつだけお願い。私『あーん』ってするの、昔から憧れだったんだ。
だから>>1くん、明日のお昼に『あーん』ってさせてね。照れて逃げないでねそんなことをされたら私傷ついちゃうもん。
きっと立ち直れないわ。ショックで>>1くんを殺しちゃうかも。なーんて。
それでね>>1くん、怒らないで聞いてほしいんだけど私、中学生の頃に気になる男の子がいたんだ。
ううん浮気とかじゃないのよ、>>1くん以外に好きな男の子なんて一人もいないわ。ただ単にその子とは>>1くんと出会う前に知り合ったというだけで。
それに何もなかったんだから。今から思えばくだらない男だったわ。喋った事もないし、喋らなくてよかったと本当に思うわ。
だけどもやっぱりこういう事はさいしょにちゃんと言っておかないと誤解を招くかもしれないじゃない。そういうのってとっても悲しいと思うわ。
愛し合う二人が勘違いで喧嘩になっちゃうなんてのはテレビドラマの世界だけで十分よ。もっとも私と>>1くんなら絶対にその後仲直りできるに決まってるけれど、それでね>>1くんはどう?
今までに好きになった女の子とかいる?いるわけないけども、でも気になった女の子くらいはいるよね。いてもいいんだよ全然責めるつもりなんかないもん。
確かにちょっとはやだけど我慢するよそれくらい。だってそれは私と出会う前の話だからね?私と出会っちゃった今となっては他の女子なんて>>1くんからすればその辺の石ころと何も変わらないに決まってるんだし。
>>1くんを私なんかが独り占めしちゃうなんて他の女子に申し訳ない気もするけれどそれは仕方ないよね。恋愛ってそういうものだもん。
>>1くんが私を選んでくれたんだからそれはもうそういう運命なのよ決まりごとなのよ。他の女の子のためにも私は幸せにならないといけないわ。うんでもあまり堅いこと言わずに>>1くんも少しくらいは他の女の子の相手をしてあげてもいいのよ。
だって可哀想だもんね私ばっかり幸せになったら。
こぴぺです。
8名無しさん@ピンキー:2010/08/23(月) 15:57:34 ID:Yyi0soB7
スレ立て乙。
9名無しさん@ピンキー:2010/08/23(月) 17:19:23 ID:WJBIma/p
お疲れ様っす
10名無しさん@ピンキー:2010/08/23(月) 19:07:42 ID:P7PlQ1Mk
お疲れ様です
11名無しさん@ピンキー:2010/08/23(月) 23:11:52 ID:K7JMBVEr
>>7
めだかボックス…
12sage:2010/08/23(月) 23:21:17 ID:NfYKucXb
めだかのは、ヤンデレじゃないと思う・・・俺だけ?
13名無しさん@ピンキー:2010/08/24(火) 00:23:49 ID:fg5lRApM
>>12
sageは名前じゃなくてメアドのほうに入れるん
14名無しさん@ピンキー:2010/08/24(火) 01:35:44 ID:QcfS4EcE
死ね
15名無しさん@ピンキー:2010/08/24(火) 01:57:20 ID:4eWWTdDv
>>7
それ見るたびにムカつくから貼るのやめてくんね?
漫画を見れば分かるが、ヤンデレじゃなくてただの尻軽ビッチだ
しょせん糞西尾原作のキャラなんだよな
16名無しさん@ピンキー:2010/08/24(火) 02:18:07 ID:L8VdD59P
>>15
ヤンデレじゃないのは読んだことあるやつなら分かるっての
それとアンチスレでもないのに糞つけるのやめろ
見てて不愉快
それともお前の好きな作家の頭にも糞ってつけられたいわけ?
17名無しさん@ピンキー:2010/08/24(火) 03:01:12 ID:QcfS4EcE
信者乙
18審判:2010/08/24(火) 03:01:53 ID:/s1Xxd57
ピーピピピピーッ!
19名無しさん@ピンキー:2010/08/24(火) 03:03:05 ID:/s1Xxd57
レフェリー乙
あと>>1
20名無しさん@ピンキー:2010/08/24(火) 03:52:21 ID:Bfz+7ORe
ラオウはヤンデレ
21名無しさん@ピンキー:2010/08/24(火) 04:47:38 ID:vnTbIuE5
ラオウよりジャギの方がヤンデレだと思うのは俺だけですね
22名無しさん@ピンキー:2010/08/24(火) 05:15:43 ID:wNgqYfVZ
一番のヤンデレはカイザーだとなぜ気付かん・・・
23名無しさん@ピンキー:2010/08/24(火) 07:24:36 ID:jpYS9McT
カイザーって誰だ…光帝バランか?
24名無しさん@ピンキー:2010/08/24(火) 11:34:01 ID:M5UGUsSw
デジモンカイザーじゃね?
ワームモンの方がヤンデレ臭いが
25名無しさん@ピンキー:2010/08/24(火) 12:47:10 ID:WXWAOIW0
まさかサウザーの事では‥‥
26名無しさん@ピンキー:2010/08/24(火) 12:54:44 ID:vnTbIuE5
何かヤンデレから北斗ネタになって来たぞ……みんなぁ!!オラにヤンデレを分けてくれぇ!!
27名無しさん@ピンキー:2010/08/24(火) 14:08:39 ID:xru5lLir
>>26
正に「嫉妬玉」…! いや「独占玉」? あるいは「怨嗟玉」?

…最近ケ〇ロ読んでないなぁ
28名無しさん@ピンキー:2010/08/24(火) 15:18:26 ID:i9cT6wbM
このスレのSSで、燃えるものってどれかな。
焼き餅も焼かれたいが、カタルシスも欲しいんだ。
29名無しさん@ピンキー:2010/08/24(火) 15:24:33 ID:2+i5lSpN
>>25
ソレダ!
カイザーじゃなかったかwww

嫉妬玉でベジータがセーター編んでるAA思い出した
30名無しさん@ピンキー:2010/08/24(火) 21:13:22 ID:7Ee+OfqO
いやサウザーよりもシンだろ。殉星の男シン・・・安らかに・・・
31名無しさん@ピンキー:2010/08/24(火) 21:40:16 ID:vnTbIuE5
早く作品投稿来てくれぇ!!このままじゃヤンデレ掲示板が北斗掲示板になっちまう!!
32名無しさん@ピンキー:2010/08/24(火) 21:46:25 ID:7OzbJg8B
最近規制が多いので仕方ない
お茶でも飲みながら
マッタリと待つのが吉…
33名無しさん@ピンキー:2010/08/24(火) 22:17:37 ID:szQID3z4
そんな気長に待ってたらその間に監禁されt
34名無しさん@ピンキー:2010/08/24(火) 22:36:57 ID:jpYS9McT
>>32
ヤンデレさんが淹れてくれたそのお茶の中に何かの薬か彼女の体組織が混入されているかもしれません
しかし相手がヤンデレかどうかも分からないのに優しい笑顔で「どうぞ」と出されたお茶を拒否できるのか、いやできない
35名無しさん@ピンキー:2010/08/24(火) 22:38:27 ID:7Ee+OfqO
>>35
ヤンデレ「新しい木人形だぁ〜!」
36名無しさん@ピンキー:2010/08/24(火) 23:18:15 ID:QcfS4EcE
ざつだんたのちー!
37名無しさん@ピンキー:2010/08/25(水) 01:39:09 ID:URjOQF7N
規制ばっかりしゃがって
運営やjimは虐め型のヤンデレなのか…
38埋めネタ:2010/08/25(水) 01:39:35 ID:W5/rP/Xg
埋めネタを落として行きますよ。
39名無しさん@ピンキー:2010/08/25(水) 01:39:58 ID:W5/rP/Xg
ごめん、誤爆した。
40名無しさん@ピンキー:2010/08/25(水) 02:15:08 ID:Nv6JPON0
◆ Uw02HM2doEさんって個人で作品まとめサイトとかもってないのかな?
保管庫見てたら過去作品のキャラとクロスオーバーあるみたいだしもっと見たいわぁ
41名無しさん@ピンキー:2010/08/25(水) 12:50:20 ID:4zDdfkie
お茶会の人、上書きの人、ヤンデレ家族の人はサイト持ってるみたいだよ。
42名無しさん@ピンキー:2010/08/25(水) 13:54:38 ID:WnyPyh/2
お茶会の人HP持ってるの?
保管庫読んで続きが気になってる作品がある
サイト名かアドを知りたい…
43名無しさん@ピンキー:2010/08/25(水) 13:58:10 ID:5BEFeMkS
ググればすぐ分かるよ
44 ◆ZWGwtCX30I :2010/08/25(水) 14:51:35 ID:IV3nlGlo
規制、酷いですね……

我が幼なじみ、投下させて頂きます
45我が幼なじみ ◆ZWGwtCX30I :2010/08/25(水) 14:53:27 ID:IV3nlGlo
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
風奈の部屋にて

「風奈……今から大事な話しをするから、ちゃんと聞いてほしいんだ」
「なーにー?」

まだ何も知らない風奈は、俺の胡座の上に座って、笑顔で聞いてくる
この無邪気な風奈の笑顔を、俺が崩さないといけないんだ

「あのな……父さんと母さんが二人で、海外に転勤することになったんだ」

やはり、風奈は驚いた顔をしている
無理もない、いきなりそんなことを言われて驚かない方がおかしいと思う

「え……本当?」
「あぁ……本当だよ」
「じゃあ、もうお母さんとお父さんには会えないの……?」
「ずっとじゃないよ」
「じゃあ……どれくらい?」
「それは……分からない」

風奈の瞳は揺れていて、今にも泣き出してしまいそうだ

「……そんなの、やだ!」
46我が幼なじみ ◆ZWGwtCX30I :2010/08/25(水) 14:54:41 ID:IV3nlGlo
そして……

「やだぁ……やだよぅ!うわぁぁぁぁぁん!!」

風奈は泣いてしまった
俺は、しばらく風奈を抱き締め、頭を撫でていた
これで少しでも風奈が落ち着いてくれたらと思いながら

「うぅぅ!やだよぉ!うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」

正確な時間は覚えていないが
かなりの時間、慰め続けていたと思う

段々と、風奈が泣き止んできた
そして、風奈は俺を見て言う

「うぅ……ひっぐ…お兄………ちゃん……は?」
「大丈夫、俺はちゃんと居るよ」
「……本……当?」
「勿論!本当だ!」

俺は、風奈が安心できるように笑顔で言った

「……うん、良かった……お兄ちゃんは居なくならないでね……」
「安心しろって!」

親以外の唯一の「家族」である俺が残ることを知り、風奈も少し落ち着いたみたいだ
47我が幼なじみ ◆ZWGwtCX30I :2010/08/25(水) 14:56:52 ID:IV3nlGlo
そういえば、まだ説明してないことがあったな

「……それに由美子も一緒なんだ、寂しくはないと思うよ」

俺がそう言うと

「え?何で……由美子お姉ちゃんが出てくるの?」

一瞬、風奈の表情が変わった気がした
それに、なんだか引っ掛かる言い方だな……

「あぁ、実はな……」

とりあえず俺は、風奈に何故由美子も一緒に暮らすのかを説明した

「それじゃあ仕方ないね……ねぇ、お兄ちゃん……」

「ん?なんだ?」

「今日は……一緒に寝てもいい?」

きっと、風奈も不安なんだよな

「おう!久しぶりに一緒に寝るか!」
「ありがとう、お兄ちゃん」
「兄妹なんだから、遠慮すんなよ」
「……うん!今日は沢山、お兄ちゃんとお話ししたい!」

やっぱり可愛いなぁ、こんなことを言われて喜ばない奴なんているのか?

そう思っていた俺だが、結局、朝日が登るまで風奈の話しを延々と聞かされる羽目となった……
まぁ、今日は休日だから良かったけど

嬉しいんだろって?そんな気持ちはもう、微塵も残っていませんよ……
48我が幼なじみ ◆ZWGwtCX30I :2010/08/25(水) 14:59:29 ID:IV3nlGlo
「風奈……もう寝てもいい?」

もう限界だ、これ以上睡魔と闘う精神力が、俺にはない

「……うぅ、もっともっと話したいのにぃ」

そう言って、風奈は頬を膨らませた
それより、もっと話したいって……どうして話のネタが切れないんだ、おかしいだろ……

「ごめんな風奈、起きたら、また話そうな」

そう言って、風奈の髪をくしゃくしゃにした
風奈は、これをやられると嬉しいらしい、理由は気持ち良いからだそうだ、俺には理解できない

まぁ、俺には誰もそんなことをしてくれる人がいないから、理解できないのは当然なんだろうけど
一度くらい、やられてみたいとは思うな、まぁ風奈や由美子には頼めないけど……恥ずかしいし

なんだか、色々考えていたら、余計に眠くなってきた……

「ん……えへへ〜お休み、お兄ちゃん!」

お休みと返事をして、さっさとベッドに潜り込む
これでようやく眠れるんだ……


「お兄ちゃん……お兄ちゃんは風奈だけのモノだよ……あんな女と一緒になったら許さないから……」
49我が幼なじみ ◆ZWGwtCX30I :2010/08/25(水) 15:00:45 ID:IV3nlGlo
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
由美子

お父さんには感謝しないとね
優君のお父様とお母様を、どこか遠くに連れてに行ってほしいって言ったら、本当に遠くに連れて行ってくれたんだから
それに……かなり長い間は帰ってこないようにね

優君には悪いかなぁと思ったけど、仕方ないよね?
私と優君の邪魔をする、あの糞虫を消さなきゃいけないんだから
優君もきっと分かってくれる筈!

……それにしても、楽しみだなぁ
夢にまで見た、優君との同棲生活……
今の内に料理の練習をしとかなきゃね!

だって……美味しい料理をたっくさん作って、優君に恩返しするんだから!
50我が幼なじみ ◆ZWGwtCX30I :2010/08/25(水) 15:01:50 ID:IV3nlGlo
以上で投下終了です
お付き合い頂きありがとうございます
51名無しさん@ピンキー:2010/08/25(水) 15:31:43 ID:ozNrMvVr
GJ!
規制解除されたら大量投下が待っているんだろうか…?
52名無しさん@ピンキー:2010/08/25(水) 17:29:38 ID:sNrhk+GX
前スレへ捧げる


絶対、例えスレが落ちても私は覚えてる、いや、私のものだからね?
Part34君・・・。

過去ログ倉庫で一緒に暮らそ?



『私』はどこのスレなんだろうか
53名無しさん@ピンキー:2010/08/25(水) 21:32:34 ID:Vllq0CDi
私はヤンデレ! 
安らぎは受け取らぬ!
男のいる世界に安らぎをもたらすのだ!
天国で割腹!
54名無しさん@ピンキー:2010/08/25(水) 23:32:31 ID:h+YBmpMy
PCの奥深くに眠っていた書きかけss
続き書く気もほぼないので投下

続きはみなさんの愛で頼みます。
55名無しさん@ピンキー:2010/08/25(水) 23:33:19 ID:h+YBmpMy
必ず、結果には原因がある。
それはどんなことであっても。

じゃあ、彼女を狂わせた原因は−−−?



毎日毎日鉄板の上で焼かれるたいやきがあるように、毎日毎日学生は学校へ向かう。
周りの大人は将来の為とかいうけど、別に決まってないし。
こんな風に憂鬱な1日がいつものように始まる。

「おはよー」
眠そうにあいさつをしてくれたのはクラスメイトの 鈴川 蓮花(すずかわ れんか)だ。
一応挨拶は返しておこう。
「おはよう」
すると蓮花が急に目を見開いた。
「ね、ねぇ、才斗。まさか今『おはよう』とか言った?」
そんなに驚くことかなぁ。
あ、才斗ってのは俺の名前。及川 才斗(おいかわ さいと)だ。
「おはようって言ったけど。耳悪いのか?補聴器いかがっすかー」
「耳は悪くないよ!ただ、いつも『ああ』しか言わなかった才斗がさぁ!」
「そういやそうだったな」

「ついに私に『おはよう』って!!」

顔を真っ赤にしてやがる。意味わからん。
さっきまであんなにテンション低かったのに。
その後蓮花は自分の世界に入って行ってしまった。
まぁいいや。

「よう才斗」
声をかけてきたのは 相原 未来(あいはら みらい)だ。
56名無しさん@ピンキー:2010/08/25(水) 23:38:28 ID:h+YBmpMy

「未来か。おはよう」
すると未来は大きな弁当箱を俺の机にドンと置いた。
「どうしたんだ?」
「この前行っただろ?才斗に弁当作ってくるって」
そう言われてみれば。
「それで、これを俺に?」
「あぁ。それでなんだけど・・・」
歯切れが悪くなる。どうしたんだろ。
「か、感想を聞きたいからさ・・・、一緒に昼飯食べてくれないか///」

「ちょっと待った!」
顔を見なくともわかる。小学校からの悪友、 加藤 優也(かとう ゆうや)だろう。
「聞いてしまったよ才斗!」
「何をだよ」
「未来との昼食会の話をねぇ!」
「いや、まだ決まった訳じゃ」
すると未来が泣きそうな目で訴えてくる。
ヤバい。かわいい。
「才斗、ダメなのか・・・?」
「ほら未来もこう言ってるんだし、いいだろ?俺も一緒にいくから」
「はじめからそれが目当てだろ」
「そ、そんなわけ、ないじゃないか」
「ふーん、あっそ」


なんだかんだしてたらHRが始まった。
でも、なぜだろう。
ものすごい睨まれてる気がする。



57名無しさん@ピンキー:2010/08/25(水) 23:42:00 ID:h+YBmpMy

才斗、おかしいよ?
私に挨拶してくれたからようやく次に行こうと思ったのに。
あんな漢女と一緒にだって?
考えられない。

でもね、私の才斗への想いは何よりも強いから。

だから、安心してね♪


ちょっと位、クラスメイトがいなくなってもいいでしょ?


お花も・・・、泥棒にはいらないよね!
58名無しさん@ピンキー:2010/08/25(水) 23:43:45 ID:h+YBmpMy
ここまでです。

エロのエの字も出てない。
すいません。

失礼しました。
59名無しさん@ピンキー:2010/08/25(水) 23:47:13 ID:h+YBmpMy
あと、抜けちゃってたんですが、蓮花はポニテ、
未来はボーイッシュな少し大きめショートカットです。

60名無しさん@ピンキー:2010/08/26(木) 00:54:08 ID:i/Ipv10J
>>59
漢女(をとこおんな)に吹いた。
なんかすごい覇気を感じる。
6159:2010/08/26(木) 01:49:30 ID:FpHgoeX/
>>60
その点については
投下する段になって当時の俺に吹いた。

表現が残念だったな
62名無しさん@ピンキー:2010/08/26(木) 20:53:35 ID:9gPw97dJ
110 名前: 黒い陽だまり ◆ 4kLn5BFD9Y 2010/08/26(木) 01:58:13 ID:YolO5loE0

「黒い陽だまり」第二話です。
規制に巻き込まれたので、こちらに投下させていただきます。
63名無しさん@ピンキー:2010/08/26(木) 20:53:49 ID:9gPw97dJ
111 名前: 黒い陽だまり ◆ 4kLn5BFD9Y 2010/08/26(木) 02:01:49 ID:YolO5loE0

十時頃、会社のデスクで累々と並ぶ仕事を黙々と消化していると、ポケットの中の携帯がこれみよがしに振動を伝えてきた。
メールが届いたようだ。
見てみると、送信者の欄には市川龍治と表示されていた。
彼女の、兄の名前だ。
ここ五年程は会っていなかった。
内容は、今日の午後に会えるかどうかを尋ねるものだった。

うちの課では、仕事の大部分は個人の裁量に任されている。
とにかく仕事の期限を守り、きちんとこなすことだけが要求される。
確かに仕事は多少残っていたが、どれも急を要するというほどではなかった。
時間が作れないわけではない。
しかし、気は進まなかった。
とはいえ、彼女が死ぬ前も死んだ後も、龍治さんには数え限れないほどお世話になっていた。
それを考えると、無下に断る事も出来ない。
僕は少し考えてから、午後三時に、彼女が死ぬ前に三人でたまに集まっていた喫茶店で会いたい、という旨の内容のメールを送信した。


その喫茶店は、あの日彼女と訪れたレストランから歩いて五分程度の所にあった。
大学から近いものの、少しわかりづらい場所にある上、独特のたたずまいをしているせいで大学生のたまり場とはなっておらず、落ち着いた雰囲気を保っている。
そこが気に入って、僕たちはよく談笑の場としてこの喫茶店を使わせてもらっていた。

少し薄暗い照明に、木目調の古びた壁。店内は、あの頃とほとんど変わっていなかった。
マスターも当然同じ人だったけど、対応を見る限り僕のことを覚えている訳ではなさそうだ。
多くはないだろうが、ここにも大学生が来ないわけではない。毎年新しく現れる大学生の顔を全て覚えていろ、という方が酷な話だ。

十分ほど待ったところで何とはなしに窓を見ると、ちょうど遠くの方から龍治さんがやって来るのが見えた。
昔から龍治さんは、別段変わった外見ではないのに、妙に存在感のある人だった。
例えば渋谷のセンター街で後姿をチラリと見ただけでも、僕はその人が龍治さんだとすぐに当てられるだろう。
表現しにくいのを無理やり言葉にするなら、彼はどこか街に溶け込んでいないところがあったのだ。
以前、街が彼を拒絶しているのか、それともその逆なのかをじっくり考えてみたことがある。
結局、結論は出なかった。
今思うと、どちらも当たりでどちらも外れな気がする。
それ以上は、僕には説明できそうもない。
龍治さんは、そういう人だった。
「やあ、久しぶりだね晃文君。わざわざ時間を取らせてしまって申し訳ない」
店の中に入った龍治さんは、手をあげながら柔和な笑顔で歩いてきた。
龍治さんの風貌は依然とたいして変わっていなかったけど、僕はそのどこかに小さな違和感を感じた。
「いえ、僕は別に大丈夫なんですけど、龍史さんの方こそお時間大丈夫なんですか?」
それは無視できるほど小さな違和感だったから、僕は気にせず話を続けた。

龍治さんは、僕が卒業した大学で教授をしている。
僕がいた頃は講師をやっていた。
頭でっかちではない柔軟な思考、斬新な語り口、権威に媚びない姿勢。
決して単位を取りやすいというわけでもないのに、当時から龍治さんのの講義は定員に収まったことが無いほど人気だった。
若くして教授になった今では、数多くの講義を受け持っていると聞く。
研究も精力的にしているようだし、そうそう時間が作れるというわけではないだろう。
「何、一杯の茶のためなら、世界なんて滅びたって構わないんだ。それに、たった一つの講義が休みになった程度で、学生達が気にするものか」
今頃、教室一杯の生徒達が待ちぼうけを食らわされているのだろう。
想像すると、すこし微笑ましい。
64名無しさん@ピンキー:2010/08/26(木) 20:54:12 ID:9gPw97dJ
112 名前: 黒い陽だまり ◆ 4kLn5BFD9Y 2010/08/26(木) 02:03:16 ID:YolO5loE0

「今時、ドフトエフスキーなんて流行りませんよ」
「いやいや、最近の学生はこういう冗談を分かってくれなくてね。理解してくれる人間と話すのが久々で、つい嬉しくなってしまったようだ」
「僕がいた頃も、そんな小難しい冗談が分かる人間はそういなかったと思います」
僕にしたって、龍治さんに勧められていなければドフトエフスキーなんて読みはしなかったと思う。
「ああ、確かに君は、あの頃から中々異質な存在だったな。しかし、あの頃の学生にはまだ君みたいに個性的で面白い奴が何人かはいた。ここ数年は一人も見ないな」
龍治さんはそう言って、小さく苦笑した。その体は驚くほど小さく見える。
恐らく、昔から深い親交のある僕だから気づいたんだと思う。
龍治さんの体は、どこか以前と違っていた。
知性をたたえた静かな眼差しは、確かに変わっていない。
しかし、あの頃の龍治さんの中にあった決定的な何かが、全く消えて無くなっていた。
それは、少し見る分にはわからないほど些細な変化だ。
だけど、それなしでは十年前の龍治さんを語れないほど、重要な何かを今の龍治さんは失っていた。
以前は、大きいとはとても言えないその体躯から、圧倒的な圧力―『カリスマ性』とでも言えばいいだろうか?―を放っているような人物だった。
目の前の人間からは、それが欠片も感じられない。
そして、あの精力に溢れた青年と、目の前にいる小さな男性をつないでいるのは、十年という歳月だと言う。
だとしたら、僕はその十年を好きになれそうもなかった。

「何となくなんですけど」と僕はしばらくしてから呟いた。「今は世界が面白すぎるんで、学生の方で面白くなる必要が無いんだと思います」
「どういうことかな?」
唯一昔と変わらないその静謐な眼差しで、龍治さんは僕の視線を鋭く捉えた。
「この前テレビで見たんですけど」と僕は説明のために話しだした。
「街角で聞いた今年の上半期のニュースランキングを特集した番組をやってたんです。首相の辞任は四位だったんですけど、一位は何だったと思います?」
僕がそこまで言うと、龍治さんはゆっくりと目の前の紅茶を口にした。
深く味わっているのが、傍から見ているだけでもよく分かる。
昔から、ここの紅茶は龍治さんのお気に入りだった。

少し飲んだあと、龍治さんは満足げにカップから口を離した。
この人は、本当にうれしそうに紅茶を飲む。
たとえ紅茶アレルギーの人であっても、この姿を見たら思わず紅茶を口に運んでしまうことだろう。
龍治さんが紅茶アレルギーの人と無縁であることを願うばかりだ。

紅茶の余韻を楽しみながらも、龍治さんは僕の質問について深く考え込んでいるようだった。
「それ以上のニュースなんて、あったかな」と龍治さんは長い沈黙の末に、諦めたような口調で答えた。
「もしかしたら僕が忘れているだけで、本州が真っ二つにでも割れたのかもしれない」
「一位は、Wカップでした」
ちなみに、僕はWカップを見ていない。全く興味がなかったからだ。
龍治さんは、遠くを見るような瞳で外を眺めた。

「少し予感はしていたけど、なげかわしいことだね。それで?」
少しばかりの間があった後、彼はそう答えた。
「自分が住んでいる国のトップの首がすげ変わったことより、遠くで開催されたスポーツ大会のほうが大きな扱いを受ける。これって、凄く面白くないですか?」
「確かに」と、彼は得心のいったような顔と、諦念の滲み出たような声で答えた。
「わざわざ自分たちが面白くなる必要性が感じられないほどに、愉快な話だ」
「多分」と僕は答えた。「そういうことなんじゃないかと思ってます」
「久々に君とこういう会話が出来て、本当に楽しいよ」
彼は人懐っこい笑顔でそう言った。
「そう言ってもらえると、こちらも嬉しいです」
もちろん悪い気はしないけど、僕はこういう会話をしに来たのではない。
「で、本題は何なんですか?」
そのことに気づいた僕は、龍治さんに続きを促した。
「ああ、その目も久しぶりに見るな。怜悧でこの上なく澄んでいるのに、不思議な意志を感じさせる力をどこかに秘めている。とても面白い」
龍治さんは、楽しげに笑っている。
「話をそらさないでください」
気恥ずかしさもあって、僕は少しつっけんどんに言った。
65名無しさん@ピンキー:2010/08/26(木) 20:54:26 ID:9gPw97dJ
113 名前: 黒い陽だまり ◆ 4kLn5BFD9Y 2010/08/26(木) 02:03:58 ID:YolO5loE0

「いや、悪かった。気を悪くしないでくれ。じゃ、本題に入ろう」
龍治さんはそう言ったあと、またゆっくりと紅茶を口にした。
「実は、話したいことが二つほどある。まず一つ目だが、これは言わなくても分かってるんじゃないかな」
分かっていた。
彼女の、墓参りの誘いだ。
「その話でしたら、毎年断っているはずです」
「もう十年になる」と龍治さんは諭すように言った。
「それだけあれば、八歳だった子供はもう大学生になる。その子供次第だが、もしかしたら個性的な大学生にだってなれているかもしれない。違うかね?」
違わない。
確かに、恋人の死を乗り越える期間として、十年という歳月が短すぎるとは言えないだろう。
「僕も」と、僕は半ば自問するように言った。「僕も、よく分かってないんですけど」
「彼女が死んだときに僕が感じたあの感情は、どうも悲しみという言葉をつけていいような代物じゃない気がするんです」
「興味深いことに違いはないんだが」と彼は苦笑しながら言った。「君はもう少し分かりやすい物の言い方を学んだほうがいいかも知れないな」
「昔から努力はしてるんですが」と僕も顔をしかめた。「中々難しいもんです」
「まあ、それはそれで個性とも言えるのかな。さあ、続きを聞かせてくれ」
「分かりました。彼女が死んだとき、僕は確かに塞ぎこみました。周りの人は皆その原因が、彼女の死にあると思ってました」
「違うと?」
龍治さんは、僕の眼の奥にある何かを見つめるような視線を送ってきた。
「もちろん違いません。でも、それで全てではない気がするんです。それに、本当に何となくなんですが、原因となる感情が悲しみや喪失感だけとも思えません。
そのことについて僕の中で整理ができるまで、彼女に会うことは出来ません」
彼女との最後の会話の内容は、誰にも言っていない。
龍治さんにもだ。
この僕の思いは、おそらく龍治さんには想像もつかないんだろう。
当たり前のことだ。
当人だって良く分かっていない上に、龍治さんはあの会話を知らないんだから。
それでも龍治さんは、僕が何かを抱えていることを何となく感じとったらしい。
龍治さんは、恐ろしく深いため息をついた。
強く、老いを感じさせる。
十年前を知る僕にとって、その姿は正視に耐えない。
「なんだかね」と彼は郷愁を誘うような声で言った。「妹の死によって本当に何かを失ったのは、肉親以外では君だけじゃないかと思うんだ」
そんなことは、ない。
「もっと多くの人達です」
「うん?」
「これから彼女と出会うはずだった人達も、皆、得られたはずの何かを失いました」
彼はまたあの遠い眼差しで、どことはなしに上の方を見た。
別に、何が見たいというわけではない。
それが考えに耽る時の癖だということは、昔からよく知っていた。
「君は、若いんだな」
その声には、微かに羨望の響きが含まれていた。
「あなたと十も離れてませんよ」
僕は、それをあえて無視するようにして言った。
龍治さんという人間と、若さへの羨望の二つが、僕の中で全く一致しなかったのだ。
「老いはそんなもので決まりはしないよ。君は確かに若い。僕はそう思う」
そう言う彼の姿からは、確かに若さが感じられない。
僕はその時、この世で最も残酷なのは殺人鬼でも独裁者でもなく、案外時間だったりするのかもしれないとぼんやり思った。
「しょうがない、諦めるとしよう。だが、万が一決意が変わったら連絡してくれ。命日までまだ一週間ある」
「一つめの話は、終わりですね」
66名無しさん@ピンキー:2010/08/26(木) 20:55:03 ID:9gPw97dJ
114 名前: 黒い陽だまり ◆ 4kLn5BFD9Y 2010/08/26(木) 02:05:11 ID:YolO5loE0

「急かさなくてもすぐ話すさ。二つ目の話だが、仕事は普段何時頃に終わるかね?」
「大体六時ぐらいですかね。相当早い方だと思います」
質問の意図はよくわからなかったけど、僕はとりあえず答えた。
退社時間が早いのは、別にうちの会社の方針というわけではない。
ただ単に、僕がそれまでに仕事を片付けているというだけのことだ。
割合暇な部署なので、それでも十分にこなせている。
「ふむ。で、年収はどのくらいだ?」
隠すような関係でもない。
僕はその質問に対して事実を答えた。おそらく、同年代の平均ぐらいのものだろう。
「そうか」と彼は言ったあと、しばらく考え込んだ。
「君は、希を覚えているか?」
市川希。龍治さんの姪の名前だ。龍治さんのお兄さんの子供と聞いている。
確か初めて会ったときは7歳だったはずだ。
両親とは小さい頃に死別しており、それ以来龍治さんと二人で暮らしていた。
そのせいか、龍治さんは本当の子供のように希ちゃんを可愛がっていたし、希ちゃんの方も龍治さんに懐いていた。
「もちろん覚えてますよ」
「君が、希にとても懐かれていたことも?」
もちろん覚えている。
龍治さんの家にはたびたび遊びに行っていて、その時にはよく希ちゃんと遊んであげていた。
僕の何を気に行ったのかは未だに分からないけど、希ちゃんは僕が来るたびに全身で喜びを表現してくれた。
夏休み中は、家庭教師のまねごとをして宿題の手伝いをしたこともある。
勉強嫌いの希ちゃんが、その時ばかりは喜んで勉強してくれたことは、今でもよく覚えている。

彼女が死んでからも惰性で時々遊びに行っていたけど、少しづつ訪れる間隔が伸びていき、三年の夏にはもうほとんど行かなくなっていた。
希ちゃんが、成長していくとともにどんどん彼女に似てきたからだ。
ほどなく、希ちゃんを見るたびに彼女を思い出してしまうようになった。
あまり来なくなったことをひどく悲しむ希ちゃんに愛情を感じていなかったわけではないけど、
僕は希ちゃんに彼女の面影を見てしまうことに耐えられなくなっていた。
一ヶ月に一回くらいの頻度でしか行かなくなった頃には、僕が帰ろうとするたびに希ちゃんは泣きながら必死でぼくに抱きつき、決して離そうとしなくなった。
一番ひどかった時は、結局龍治さんの家に泊まることにして、希ちゃんが寝ている隙に帰ることにしたほどだ。
しかし、希ちゃんは寝ている間に僕がいなくなることを恐れて、決して眠ろうとしなかった。
結局、朝方になって希ちゃんがうたた寝した隙に逃げ帰った。
あの年齢であそこまで眠らずに耐えたのは、今思うと相当つらかったはずだ。
「お兄ちゃんがもううちに来なくなっちゃう」と龍治さんに涙ながらに相談したこともあるらしい。
それを聞いて心が痛みはしたものの、小さい頃の記憶なんて、大人になればそのうち忘れてくれるだろう、ぐらいに考えていた。

「もちろん覚えていますよ。希ちゃんがどうかしたんですか?」
「今、希は高校二年生だ。大学受験も考えている」
「はあ」
「大学受験には、何が必要だと思う?」
「忍耐、ですか?」
「いいや、もっと根本的なものさ。勉強、だよ」
言われてみれば、確かにその通りだ。いくら忍耐力のある人間でも、なにも学んでいなければ受験はできないだろう。
「私は、そろそろ希を塾にでも入れようと考えていた。しかし、希はそれを強く拒絶している」
「まあ、勉強嫌いな子供でしたからね」
「そういうことじゃない。希は、勉強することに反対したわけじゃない。塾で勉強することを拒絶したんだ」
一体、何が言いたいのだろう。
「君は、夏休みに希の家庭教師をやってくれたことがあったな」
「ほんの真似事みたいなものでしたけどね」
「希は、あの時以上に熱心に勉強したことがない」
少し、話が見えてきた。
67名無しさん@ピンキー:2010/08/26(木) 20:55:19 ID:9gPw97dJ
115 名前: 黒い陽だまり ◆ 4kLn5BFD9Y 2010/08/26(木) 02:06:06 ID:YolO5loE0

「家庭教師を、今一度やってくれないか。希はそれを強く希望している。というか、そうしてくれなければ大学受験なんてしない、とまで言っている」
「急にそんなこと言われても、困ります」
「頼む。希の将来がかかっているんだ。君だって希と久しぶりに会いたいだろう。時給は二万円出そう。日曜だけでもいい。もっと言えば、勉強を教える必要もないかもしれない」
「え?」
「希は、お前に会いたがっているんだ。病的なほどに。昔からことあるごとに懇願されたが、全部断っていた。
君が会いたくないなら、私にはどうしようもないと思っていたんだ。だが、もう見ていられない。希を助けてやってくれ。
それに、君にとってもふんぎりをつける良い契機になるんじゃないか?」
確かに、その意見も分からないことはない。
「君と会わなくなってから、希は段々無気力になってきている。希に、活力を戻してやってほしいんだ。
おそらく、君が話すだけで希は元気になるだろうし、勉強もやってくれるはずだ」
希ちゃんがそんな状態になったのは、僕の責任だ。
そのことを考えると断りづらい。
一度成長した希ちゃんと話してみたい、というのもある。
それに、日曜はどうせ家でごろごろしているだけだ。
考えてみると、断る理由は一つもなかった。
「分かりました、やらせていただきます。ですけど、いつ出来なくなるかは分かりませんよ」
「いや、それで構わない。ありがとう、助かったよ」
龍治さんはほっとしたように笑った。
こころなしか、僕には龍治さんが昔の姿に少し戻ったように見えた。
龍治さんが急速に老けこんだのも、希ちゃんのことでの心労が原因かもしれない。
僕は、少なからず責任を感じた。

「ところで、希ちゃんは今どんな感じなんですか?」
子どもにとっての十年は、恐ろしく長い。外見だってあの頃とは相当変わっているはずだ。
「ああ、ちょっと待ってくれ。ちゃんと写真を持ってきてるんだ」
龍治さんはそう言って、一つの写真を机の上に置いた。
そこには、十日後に命日を迎える彼女が写っていた。
恐らく、龍治さんが彼女の形見として携帯していたのを、間違えて出してしまったのだろう。
ただ、少し僕の知っている彼女より若く見える。
まあ、それもおそらく気のせいだろう。

「龍治さん。写真、間違えてますよ」
僕は茶化すようにして、龍治さんにそのことを伝えた。



「え?いや、その写真で合っているよ。それが、希だ」
龍治さんはごく自然な口調で、そう答えた。
68名無しさん@ピンキー:2010/08/26(木) 20:55:47 ID:9gPw97dJ
116 名前: 黒い陽だまり ◆ 4kLn5BFD9Y 2010/08/26(木) 02:10:45 ID:YolO5loE0

投下終了です。読んでくださった方、ありがとうございました。
後、投下中に気づいたんですが、コテが何でか変わりました。
同じ言葉を使ったはずなんですけど…。
原因はよくわかりません。
117 名前: ◆ 4kLn5BFD9Y 2010/08/26(木) 02:16:40 ID:YolO5loE0

スイマセン、自己解決しました。
118 名前: ◆ 4kLn5BFD9Y 2010/08/26(木) 02:17:42 ID:YolO5loE0

重ねてすいません、間違えて書きこみました。
申し訳ないです。
69名無しさん@ピンキー:2010/08/26(木) 21:12:34 ID:ImpzdEMx
投下、および転載乙

娘も知り合いの姪も似てきてるとかなにこれこわい
気づけば回りの女性みんなが似てましたとかなったらどうしよう

続きを期待して待ってます
70名無しさん@ピンキー:2010/08/26(木) 21:40:12 ID:tPvhYhZV
GJです
71名無しさん@ピンキー:2010/08/26(木) 23:44:04 ID:85Z01HOx
かつての彼女の魂が二つに分散されたんか!?きっとこのまま会わなかったら彼女の二の舞かもしれんの……
72名無しさん@ピンキー:2010/08/26(木) 23:46:34 ID:NbViaSo9
GJ
希ちゃんの依存っぷりに期待!
73名無しさん@ピンキー:2010/08/27(金) 03:31:46 ID:r7MYAiEO
GJです

黒い陽だまりは病みの表現が個人的にはとてもたまらなく好きです。これからも連載が続けばとても嬉しいです
74ナカンダカリ:2010/08/27(金) 03:43:08 ID:kIEm2usF
OKOKOK。
乗ってきたよ〜。
俺も近日投下するかもよ。筆が進むぜ〜。
75名無しさん@ピンキー:2010/08/27(金) 04:26:28 ID:qWjH8b8H
面白いね。
もうちょい早いペースで投下してくれたら言うことないんだけど…
あんまり間が空くと話を忘れてしまう
76名無しさん@ピンキー:2010/08/27(金) 07:36:44 ID:zxb2EEcy
その度に読み返せばイインダヨ!
77名無しさん@ピンキー:2010/08/27(金) 10:37:03 ID:nhxcyvS8
GJ!
面白かったわ。

が、極左政権の宇宙人の辞任なんかより、W杯って最も競技人口が多いサッカーの4年に一度の祭りだぜ?
盛り上がるなというほうが無理ってもんだぜ。
78名無しさん@ピンキー:2010/08/27(金) 19:15:32 ID:aVWdJ+R0
GJ
よかったです
79名無しさん@ピンキー:2010/08/27(金) 19:29:42 ID:sfkhPchK
ここのスレでの人気SSなんだろう?
俺的には
ヤンデレ家族
触雷!
黒い陽だまり
80名無しさん@ピンキー:2010/08/27(金) 19:47:44 ID:8ALMBJ9t
誰も聞いてないよ
81名無しさん@ピンキー:2010/08/27(金) 19:49:14 ID:bGdjpdaC
>>80
いいから聞けよ!!
82名無しさん@ピンキー:2010/08/27(金) 19:57:05 ID:qWjH8b8H
俺的に人気ってどういう意味?マジで意味不明なんだが…
俺のお気に入りってこと?
83名無しさん@ピンキー:2010/08/27(金) 20:12:24 ID:2hR732KJ
あんまりかまうとヤンデレが拗ねんぞ

ともあれ投下&転載gj
84名無しさん@ピンキー:2010/08/27(金) 20:34:21 ID:IHhRsFuz
現在嫉妬深い女の子がこのサイトみたらどうなるんだろう
85名無しさん@ピンキー:2010/08/27(金) 21:21:59 ID:0MwcZcYZ
>>84
何でこんなサイト見てるの?○○君を世界で一番愛してるのは私よ的な
こと言って荒らすんだと思う
まてよこれが本当のことだとしたら・・・
荒らしさんたちはもしかして
86名無しさん@ピンキー:2010/08/27(金) 21:23:46 ID:RPqy+lNM
まあ隙あらば嫉妬スレの二の舞にしてやろうと画策してる連中が存在してるのは間違いないわけだが…
87名無しさん@ピンキー:2010/08/27(金) 21:54:09 ID:sfkhPchK
作品投稿まだかなぁ…
88名無しさん@ピンキー:2010/08/27(金) 22:02:17 ID:aRIWTQN6
ここのスレでの人気SSなんだろう?
俺的には
ヤンデレ家族
触雷!
黒い陽だまり
89名無しさん@ピンキー:2010/08/27(金) 22:03:05 ID:CVER46mJ
おにいちゃん、昨日読んだばっかりでしょ。
90名無しさん@ピンキー:2010/08/27(金) 22:46:32 ID:Gc4qNwxs
>>67
GJ!毎回病み具合がとてもイイわ!

>>88
誰も聞いてないよ
91名無しさん@ピンキー:2010/08/27(金) 23:07:35 ID:Vjpu/vPS
そういえばサトリビトがこないな
92名無しさん@ピンキー:2010/08/27(金) 23:11:12 ID:fVC8CCKP
こんな糞スレ潰すのになに手間取ってんだ
口程にもないな、ウナギモドキ
93名無しさん@ピンキー:2010/08/27(金) 23:41:08 ID:cZP/oB2h
あんまり更新がないとついに連れて行かれたのかと少し悲しくなる
94名無しさん@ピンキー:2010/08/28(土) 00:34:25 ID:M30mmeWk
 ある日、私は自分の部屋中央につっかえ棒を設置しておいた。
 こうすることで、隣に住むヤンデレとして名高い女が壁ドンした際に、
その衝撃と音が部屋をはさんだ反対側の部屋――男君の部屋にも流れる。
 メリットは特に何もないけど、デメリットとして私が壁ドンしたと思われることと
部屋の真ん中に邪魔なポールがある事と、強くつっかえさせたせいで、
壁を突き破ってしまったことだ。
95名無しさん@ピンキー:2010/08/28(土) 01:06:39 ID:Q0G5YC1X
>>88はともかく>>79は悪気なくてわかってなくて質問したんだと思うよ

作者さんが書いてくれてること事態に感謝しないといけないからSS同士を比べあうような流れ作るコメントは控えてね

比べられて下の評価くらったりしたら嫌な気持ちなるでしょ
96名無しさん@ピンキー:2010/08/28(土) 02:06:32 ID:Vf/P0d9x
18過ぎた野郎にわざわざ言うことかと思うけど
言われないとわからない奴いるんだよな
一回でいいから割とガチで会ってみたいわ
97名無しさん@ピンキー:2010/08/28(土) 03:24:40 ID:AGDwggFg
>>96くん…だれにあいたいの?
わたしというだいじなひとがいるのにいったいどこのだれにあいたいというの?
そんなどろぼうねこはけさなくちゃ!
98名無しさん@ピンキー:2010/08/28(土) 08:30:48 ID:MqYbK3wc
マジレスすると18越えてない
99名無しさん@ピンキー:2010/08/28(土) 08:48:18 ID:RAbGs3Xo
マジレスすると私永遠の17歳
100名無しさん@ピンキー:2010/08/28(土) 08:51:31 ID:bDr/nbZ5
ここのスレでの人気SSなんだろう?
俺的には
ヤンデレ家族
触雷!
黒い陽だまり
101名無しさん@ピンキー:2010/08/28(土) 09:20:09 ID:dRZCv1aC
ここの人気レスなんだろう?
俺的には
>>79
>>88
>>100
102名無しさん@ピンキー:2010/08/28(土) 10:08:43 ID:4cOCdcmJ
ぽけもん黒来るといいな
103名無しさん@ピンキー:2010/08/28(土) 11:20:09 ID:fwzjjv65
>>102
禿同
104名無しさん@ピンキー:2010/08/28(土) 13:55:17 ID:ZYJcHu+L
ぶっちゃけ>>100みたいな基地外に比べられても屁でもないけどな
多分今後もムキになって書いてくると思うがヌルー推奨だな!
みんな違ってみんな良い、これソクラテスの言葉な
105名無しさん@ピンキー:2010/08/28(土) 14:11:25 ID:C3LoV84w
つか、作者は定期的に投下しろよ
何ヵ月も間空くならブログでやれ
ヤンデレ家族以外は一回投下したら何ヵ月も投下しないじゃん。作者にも仕事や生活があるってんなら、最初から投下すんな
106名無しさん@ピンキー:2010/08/28(土) 14:16:03 ID:tPI+nbtz
たまげた暴論だなあ
107名無しさん@ピンキー:2010/08/28(土) 14:16:28 ID:BulrgL4U
お前がここ数スレを全く見てないのは良く分かった
108名無しさん@ピンキー:2010/08/28(土) 14:29:40 ID:C3LoV84w
見てたよ
普通に何ヵ月も投下しないクズばっか。話覚えてるわけねーだろ。保管所読めとかバカすぎ
109名無しさん@ピンキー:2010/08/28(土) 14:38:21 ID:Q0G5YC1X
はいはいスルー検定のお時間ですよ
110名無しさん@ピンキー:2010/08/28(土) 14:38:57 ID:6uq+wWTP
じぶんではとうかはしないんでつか(^p^)
111名無しさん@ピンキー:2010/08/28(土) 14:40:30 ID:8LKaImP9
SSで金儲けてる訳じゃないからなぁ…。
個人の暇つぶし程度に書かれてるモノに怒ってもしかたない。

まぁ、数ヶ月放置なら考えものだな。長作なら尚更何年かかるんだよって思う。
112名無しさん@ピンキー:2010/08/28(土) 14:58:45 ID:+w6d5djd
これがゆとりか
113名無しさん@ピンキー:2010/08/28(土) 15:14:44 ID:Q0G5YC1X
>>112
子供の相手なんかしないで俺とスルー検定しようぜヾ(。・ω・。)ノ゙

とりあえず投下投下ってうるさい人でてきたからヤンデレSSリンク置き逃げ

(・ω・。)ノ=з
http://yomou.syosetu.com/search.php?word=%83%84%83%93%83f%83%8C&p=1
114名無しさん@ピンキー:2010/08/28(土) 15:37:56 ID:WilFiABv
>>108

とりあえずリバースってSSが
最後に投下された日を見てみようか。

どうみてもヤンデレ家族と同じ一週間前だろうが
115名無しさん@ピンキー:2010/08/28(土) 15:44:39 ID:zCzmDeGV
スルー以外は荒らしと同じ
116名無しさん@ピンキー:2010/08/28(土) 15:50:19 ID:C3LoV84w
ああそう。じゃあリバースはよく投下してくれるね。

全体の話をしてんだよ。バカだなマジで
何ヵ月も投下できないんならブログでやれや。そのくせ久々に投下してきて無反応だったら自演で反応しろよ、とか喚きだす。
バレてないとか思ってんの?
117名無しさん@ピンキー:2010/08/28(土) 16:12:07 ID:ZYJcHu+L
自分に自信ないとやたら攻撃的な口調になるよね
あ、これ独り言ね
118名無しさん@ピンキー:2010/08/28(土) 16:27:50 ID:KHI3LeF/
作者がいなくなるわけだ
119名無しさん@ピンキー:2010/08/28(土) 16:56:15 ID:ao/8JKfJ
そんなに待つのが嫌なら、ここのss読まなければいいんじゃね?
そうすればイライラしないし万事解決でしょ
120名無しさん@ピンキー:2010/08/28(土) 17:13:59 ID:Q0G5YC1X
ここはやんでれスレです
 楽しく使ってね
 仲良く使ってね

 (三三三三三三(@)
 || ̄8 ̄ ̄8 ̄||
 || /  /  ||
 ||∧_∧/チンポ||
 |(・ω・`)  ||
  0 0)   ||
 /( ( /)   ||
(三三三三()彡 ||
 ||     ||
゙゙゙^゙゙゙゙^゙^゙゙゙゙^゙゙^゙
121名無しさん@ピンキー:2010/08/28(土) 17:30:37 ID:i9yGi654
そのように投下を待ちながら毎日毎時間ごとにこのスレを見ていましたよね。分かりました。
あなたの根性が本当に羨ましいです。
122名無しさん@ピンキー:2010/08/28(土) 17:49:35 ID:GLNe/7zI
修羅場スレの次はこのスレが終焉か‥いいぞもっとやれ!
123名無しさん@ピンキー:2010/08/28(土) 18:26:53 ID:FzLqc07M
ゆ・と・り!ゆ・と・り!
116はゆ・と・り!
124名無しさん@ピンキー:2010/08/28(土) 19:37:57 ID:XlFT+KOH
そんなことしたら喜んじゃうでしょう!
125名無しさん@ピンキー:2010/08/28(土) 20:02:07 ID:jwDHBRY+
>>116
そんな幼稚なこと言ってないでママに慰めてもらえよwwwww
あ、いないか
サーセン
126名無しさん@ピンキー:2010/08/28(土) 21:38:43 ID:vxkfJu5A
最近週末が楽しみなのは俺だけじゃないはず…
127名無しさん@ピンキー:2010/08/28(土) 21:52:43 ID:bDr/nbZ5
ここのスレでの人気SSなんだろう?
俺的には
ヤンデレ家族
触雷!
黒い陽だまり
128名無しさん@ピンキー:2010/08/28(土) 22:06:47 ID:5g5X3oUT
俺は、このスレが好きだ
129名無しさん@ピンキー:2010/08/28(土) 22:31:55 ID:XbtQ8Q18
妹がほしいなぁ
病んでる妹が
130名無しさん@ピンキー:2010/08/28(土) 22:33:07 ID:3oFblYq3
>>129
ここでなくとも専用のスレがあるでよ

と思ったがSSじゃなくて本物が欲しいのか
131名無しさん@ピンキー:2010/08/28(土) 23:14:47 ID:vxkfJu5A
病んでる姉と妹に囲まれた生活をしたい…
132名無しさん@ピンキー:2010/08/28(土) 23:34:15 ID:XlFT+KOH
夏だなぁ
133名無しさん@ピンキー:2010/08/28(土) 23:58:17 ID:ZYJcHu+L
妹か姉か1つに絞ろうとしたけど無理だった
と言うわけで双子の妹が欲しいよまいぺあれんつ!
実際は妹だが双子のため自分が姉だと言い張る1粒で2度美味しいと言うエコっぷり
ここまで書いたけどキモウトスレ向きだな
134名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 01:05:51 ID:/v5/K9nU
>>133

 主人公と双子ってのも良いけど(文字通り「生まれてから死ぬまで一緒」だからな)、吸血鬼キャラでヤンデレというのも良いものだと思ふ。
 「ずっと一緒だよ」→ガブッ! みたいな感じで。
 そのまま血を吸い尽くされて死ぬか、はたまた不老不死(ただし絶対服従)の下僕にさせられるかはその娘次第だろうけど。
135名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 01:10:34 ID:WAPlF6z7
しかし兄(弟)はグールになってしまった
どうやら既に泥棒猫と一線を越えていたようである

あるいは「吸血鬼になるって分かってたら夜寝てるうちに部屋に忍びこんで童貞奪ったりしなかったのに」と
136名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 04:32:20 ID:UKO1zRKx
俺的には
>>79
>>88
>>100
137名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 04:35:02 ID:Fn7XcpHZ
双子のヤンデレは素晴らしい
138名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 04:42:56 ID:7IcS0f/2
双子のヤンデレ
A、主人公と双子の関係
B主人公の幼なじみで、ヤンデレ×2
Aも良いけどBは胸熱
139名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 04:48:13 ID:jfGiE2Zs
個人的には俺も幼馴染バンザイだが幼馴染である必要も無いよな
Bの変則タイプとしてヤンデレ×2とその兄か弟ってパターンもあるが、
それとAのパターンはキモ姉妹スレ行った方がいいかもしれない
140名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 10:10:22 ID:mB5p4mg2
119 名前: リバース ◆ Uw02HM2doE 2010/08/28(土) 23:37:17 ID:dieu1QOw0

土曜の夜にこんばんわ。

またもや規制に巻き込まれてしまいました…。
どなたか転載の方、お願いします。

今回は8話を投下します。よろしくお願いします。
141名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 10:10:45 ID:mB5p4mg2
120 名前: リバース ◆ Uw02HM2doE 2010/08/28(土) 23:39:03 ID:dieu1QOw0

桜ヶ崎市にある廃ビルに俺と桜花の姿はあった。
会長によると桃花らしきメイドの目撃情報はいくつかあるらしく、俺達はその一つである廃ビルに来ている。
廃ビルの中は暗くあまりよく見えないが桜花の暗視能力で何とか最上階まで来れた。
「……ここで鉢合わせたら最悪だな」
まあこういう時に限って現れたりするものだ。
「大丈夫です。私が全力でサポートしますから」
桜花は俺の真横にぴったりと寄り添っている。確かに暗視能力は助かるのだが。
「…桜花」
「なんでしょう?」
「……ちょっと近すぎじゃないか」
距離が全く無い上に腕を組まれているので否応なしに弾力がこちらに伝わってくる。
……いくらアンドロイドって言っても意識しない方が難しい。
「この状態の方がより正確にサポート出来ますから」
「そうなんだけど…だけどさ」
桜花に正しい暗闇での男女の距離の取り方を教えようとした瞬間
「…っ!?静かに!……誰かこちらに来ます…!」
桜花が前方の何かに気付いた。
「……何処だ…?」
前に広がる闇を見つめる。
時間が経ってきたので暗闇には慣れてきたが人影は近くには見えない。
「気配を…殺しています。それともう…!?」
「わっ!?」
桜花がいきなり俺に飛び掛かって来たので反応出来ず地面に倒れる。
そしてそのすぐ上を何かが通過していった。
その何かは向こうの壁にぶち当たり轟音が廃ビル内に響く。
「くっ…!間一髪…です」
「………あ、ありがとな。よく分からないけど助かった…」
「……なるほど。貴女でしたか」
氷のように冷たい声がした方向、つまり何かが猛スピードで飛んできた方を見るといつの間にかそこには人影があった。
「……まさかコイツが…」
「……はい。どうやらたどり着いたようですね、彼女に」
闇夜でも輝きを放つ銀髪に燃えるような紅い目。
正に写真で見た桃花というメイドそのものだった。
142名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 10:11:03 ID:mB5p4mg2
121 名前: リバース ◆ Uw02HM2doE 2010/08/28(土) 23:40:16 ID:dieu1QOw0

「本当に久しぶりですね、桜花。10年ぶりですか」
「…はい。よく覚えていましたね」
そして見れば見るほど桃花とそのアンドロイドである桜花はそっくりだった。
唯一違うのは桃花が金髪で桜花は銀髪だというところだ。
「自分を基にしたアンドロイドですよ?忘れる訳がありません」
桃花はゆっくりとこちらに近付いて来た。
漂っている雰囲気だけでも相当な重圧を感じる。
「さっきのは…」
「…ああ、あれは近くにあった空き缶を蹴っただけです。ほんの小手調べですかね」
あの轟音が空き缶…。やはりコイツは普通じゃない。
果たしてこんな化け物みたいな奴に勝てるのだろうか。
「…要、行きますよ」
……勝てるとかじゃない。勝たないといけないんだ。英の右腕の分もきっちりと償ってもらわなければ。
「……よし、いつでも良いぜ」
桜花と二人で桃花と対峙する。冷たい目が俺を捉えていた。
「……一般人…ではなさそうですね」
「………お前が桃花か」
俺達と桃花の距離は20m程。ここならまだ射程外と判断して探りを入れる。
「そうですが……ああ、あの時の英様のご友人ですか」
「あの時…?」
一体あの時っていつだ。そういえば会長が半年前に俺達が桃花と遭遇したって…。
「要っ!!」
「……えっ?」
一瞬だった。
意識がほんの少し逸れた瞬間に桃花は20mもあったはずの俺達との距離を一瞬で詰めていた。
つまり気が付けば俺の懐には桃花がいたのだ。
「さようなら」
そして次の瞬間には桜花をも上回る高速を遥かに越えた、言うなれば光速の蹴りが既に繰り出されていた。
「っ!!?」
桜花と鍛えていたおかげで咄嗟に右腕で防御したが激痛と共に思い切り蹴り飛ばされた。
そのままもろに壁に激突する。空き缶の時と同じような轟音がフロア全体に響いた。
143名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 10:11:24 ID:mB5p4mg2
122 名前: リバース ◆ Uw02HM2doE 2010/08/28(土) 23:43:00 ID:dieu1QOw0

「要っ!?」
決して華奢ではない彼の身体はまるで空き缶のように蹴り飛ばされた。
「まずは一人」
そして彼を空き缶のように軽く蹴飛ばした張本人が目の前にいる。
「くっ!?」
瞬時に距離を取り分析をする。やはり圧倒的な強さだった。
いくら私が彼女のコピーだと言っても敵わない。アンドロイドには限界があるのだ。
すぐに逃走手順を展開しようとする。
「…………」
今は一時撤退が最善策だということは分かっている。分かっているが身体が動かない。
彼、白川要の存在が私のプログラムにバグを与えているのだろうか。
「…逃げないのですか?今ならば見逃してあげますが」
「……たとえ勝てなくてもここで逃げる訳にはいかないんです」
桃花を見つめる。私と同じ顔立ちに燃えるような紅い目。
唯一違うのは髪の色でそれ以外は見分けがつかない。
でも桃花から感じられる身体的、精神的な強さ私とは比べものにならない。
だから所詮私では桃花に勝つどころか傷一つすらつけられないかもしれない。
「…アンドロイドの貴女らしくないですね。そんなにあの少年が気になるのですか」
「要は私が守ります。これ以上、桃花の好きにさせる訳にはいきません」
「私に敵わないとしても、ですか」
それでも戦わなければならない。戦闘用アンドロイドだからじゃない。
要が私のことを必要としてくれたから。だから私は戦うんだ。
「要と一緒にいるために私は戦います。…かつて桃花が里奈様の傍にいることを誓ったように」
私は知っている。桃花がこれ程にも強い訳を。
英様の姉である里奈様の専属メイドだった彼女には里奈様が全てだったから。
だから桃花は里奈様を守るために強くなった。
今の私も桃花と同じなんだ。戦闘体制に切り替える。
もう逃げない、迷わない。私はただ前を向き続けるんだ。
「…では容赦はしません。排除します」
桃花が急加速して私の懐に入る。さっきの要と同じパターン。
でもここは避けない。決めるなら一発だ。
この戦い、長引けば長引くほどこちらの勝率は下がる一方だ。ならば一撃で沈める。
わざと隙を作ってそこに打たせて逆にカウンターを喰らわす。
「っ!!?」
そう、これは要との特訓で身につけた技。確か『肉を切らせて骨を断つ』とか言っていた気がする。
144名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 10:11:38 ID:mB5p4mg2
123 名前: リバース ◆ Uw02HM2doE 2010/08/28(土) 23:44:12 ID:dieu1QOw0

この二週間で私は要に教えてもらった。人は強い意志さえあればどこまでも成長出来るということを。
特訓と称していたけれどいつの間にか私の方が要に色々教わっていた。
アンドロイドの私でも好きな人を守って良いんだ。
……そうか、私は要のことが好きなのか。だから私は負ける訳にはいかない。
もう一度彼と、今度は誰かの命令じゃなくて私自身の意志で一緒にいるために。
「くっ!!」
「なっ!?」
自ら後ろに飛び桃花の右ストレートの衝撃を少しでも緩和する。
破損は激しいが距離は取られなかった。そして同時にこちらも渾身の一撃を叩き込む。
「っぁぁぁぁぁあ!!!」
「っ!!?」
桃花はほぼ零距離でそれをまともに受けて弾き飛んだ。
「……うっ…」
膝をつく。
腹部は桃花の攻撃で損傷が激しく、また無茶なカウンターのためにフル稼動したので著しくバッテリーを消耗していた。
今の一撃は確かな手応えがあったがもし仕留めきれないようなら打つ手がない。
「…はぁはぁ……」
桃花を弾き飛ばした方向を見つめる。暗くてよく見えないがまだ人影は捉えることが出来ない。
このまま桃花が起き上がって来なければ……。
「……流石、と言ったところですか」
「………くっ…」
……やはり一撃では倒せなかったようだ。
頭から血が真っ白な頬に垂れており多少のダメージは与えたが、むしろ桃花はそれを喜んでいるようだった。
こちらを見つめながら微笑む桃花の姿は何処か神秘的なものを感じた。
「血を流したのは久しぶりです。私のコピーだけあって中々のようですね」
「………コピーじゃない」
今にも機能停止しそうな身体を動かし立ち上がる。
どうやら立ち上がるのが精一杯のようだ。それでも私は桃花を見つめる。
「私は……桜花…です」
「見事です。ですが私の里奈様への気持ちには敵いません」
桃花が私の目の前に立ちゆっくりと右手を後ろへ引く。私はただそれを見ていることしか出来ない。
「……か……なめ……」
「さようなら」
フロア内に何かが砕け散る音が聞こえた。
145名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 10:11:52 ID:mB5p4mg2
124 名前: リバース ◆ Uw02HM2doE 2010/08/28(土) 23:45:36 ID:dieu1QOw0

激痛で目が覚める。真っ暗闇だ。一体ここは何処で俺は何をしていたんだ?
「…………っ!」
不意に思い出す。
そうだ、俺は桃花に吹き飛ばされて壁にぶち当たったんだ。目の前にあるのは瓦礫か。
「いってぇ……」
瓦礫を退けて立ち上がろうとすると右腕に先程の激痛がまた走った。
どうやら桃花の攻撃を咄嗟に防いだ時に右腕を折られてしまったようだ。
……一回防いだだけで折られるとは…やはり尋常じゃない。
とりあえず今、桜花が桃花と戦っているはずだ。一刻も早く戻らなければ。
「…………うっ…」
瓦礫を退けると人影が見えた。右腕は使い物にならないがいないよりマシか。
人影の方向へ走る。どうせ気付かれるなら出来るだけ早く桜花の元へ行った方が良い。
「桜花!?………………え?」
確かにそこには桜花と桃花がいた。でも立っているのは桃花だけで足元には"何か"の部品が散らばっている。
……何かじゃなくてあれは…いや、考えるな…でも桜花は一体何処に…あれは…あれは………。
「……生きていましたか。右腕で咄嗟に防ぐとは…でも遅かったようですね」
「……………桜花は…」
「そこに散らばっているパーツがそう"だった"物ですが?」
ゆっくりと"それらに"近付いてゆく。
パーツはそこら辺に散らばっており暗くてよく見えなかったがそれでも足や手だと思われる破片を見付けてかき集めた。
…何故こんなことをやっているんだろう?俺は桜花を探しているんじゃなかったっけ?
「……か……な……」
「桜花っ!?」
声のする方へ駆け寄るとそこには下半身と右腕を失い、至る所の外装が剥がれ機械が剥き出しになっている桜花がいた。
顔も左側は所々外装が剥がれている。
「…すい…ませ…ん…私……やっぱ……り…」
「桜花!大丈夫か!?」
桜花を抱き上げる。半分しかない桜花の身体はとても軽かった。
俺が隙を作ったせいで桜花が…。何が特訓だ。結局俺には桃花を倒すどころか女の子一人も守れないのか。
146名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 10:12:13 ID:mB5p4mg2
125 名前: リバース ◆ Uw02HM2doE 2010/08/28(土) 23:47:31 ID:dieu1QOw0

「……でも……最期に……良かっ…た……」
俺を見つめる桜花。言葉はたどたどしくいつ事切れてもおかしくなかった。
「最期とか言うな!待ってろすぐに………桜花?」
返事はなく桜花は目を閉じていた。
「桜花?…おい、桜花!?しっかりしろよ!?」
「もう使い物にはなりませんね」
いつの間にか真後ろには桃花がいた。
…そういえばコイツを倒すのが目的だったんだっけ。でも今はそんなことどうでもよくなっていた。
「……桜花は」
「はい?」
そっと桜花を床に下ろす。コイツだけは許す訳にはいかない。
「桜花は物じゃねぇ!」
「……意味が分かりません。どうみても彼女は人間ではありませんが」
桜花を物扱いしやがったコイツだけは、簡単にバラバラにして辱めたコイツだけは許せない。
「ふざけんなっ!!」
「っ!?これはっ!?」
無意識に折れている右腕を真後ろにいる桃花に向かって振る。激痛が走ったが怒りからかあまり気にならない。
桃花はバックステップでそれを軽く避けたが何故か吹き飛ばされた。
「うおぉぉぉぉお!!」
桃花を追いかけながらもう一度右腕を思い切り振る。
すると振った方向に衝撃波が発生した。桃花はそれを防ぐことが出来ずにさらに吹き飛ばされる。
「くっ!?衝撃波!?腕は折れているはず……!」
風の流れを感じる。どうすれば衝撃波が生まれるのか、自然と頭の中に浮かんでくる。
もしかしたらこれが以前に師匠が言っていた俺の力なんだろうか。
桃花に対する怒りに満ち溢れている一方で、どこか冷静な自分もいた。
「あぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
「ぐぅ!?」
衝撃波を防ぐのでやっとという感じの桃花に走って近付き、その勢いのまま桃花の脇腹を蹴り飛ばす。
桃花の苦痛に歪む顔を初めて見た。
右腕が折れているため蹴りしか出来ないが、それでも無防備だった桃花にはかなり効果があったようだ。
脇腹を押さえながら燃えるような瞳でこちらを睨みつけている。
衝撃波をもろに喰らったのかメイド服はボロボロだった。
147名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 10:12:35 ID:mB5p4mg2
126 名前: リバース ◆ Uw02HM2doE 2010/08/28(土) 23:48:55 ID:dieu1QOw0

「はぁはぁ…。まさか衝撃波を生み出せるとは……あの女そっくりですね」
「…あの女?」
俺以外にもこんな芸当が出来る奴がいるのか。気が付けば桃花はこちらに構え直していた。
「ですか私は負ける訳にはいきません。こんな所で負けてしまっては里奈様が……」
「……英の姉さんもこのビルにいるのか?」
桃花は少し動揺している。つい口を滑らせたのだろうか。
いずれにしろ英の姉さん、里奈さんもこのビルにいるらしい。
そしてここが最上階なのを考えるとおそらくこの先の屋上にいるに違いない。
「…会わせて貰うぞ。英の姉さんに」
「させません。私は里奈様の専属メイド、桃花。里奈様を汚す者は何人たりとも通しません」
そう言い終えた瞬間桃花が突っ込んで来た。不意を突いて一瞬で終わらせる気か。
だが俺だってこの二週間ひたすら桜花と特訓してきたんだ。
見ていてくれ桜花、お前が居てくれた意味を俺が示すから。
「おらぁぁぁぁぁあ!!」
「ぐうっ!?」
桃花の光速の連撃を間一髪で避け右腕を思い切り振り抜く。
そしてそのまま衝撃波に捕まっている桃花の懐に飛び込んだ。
「なっ!?」
右腕が折れているから足技しか来ないと思っていた桃花は完全に意表を突かれていた。反応が一瞬遅れる。
「はぁぁぁぁぁぁあ!!」
桜花が言っていた。要の右腕の一発は凄まじいから最後の決め手にするべきだ、と。
だから打つ。折れていようと関係ない。これが俺と、そして桃花がコピー扱いした
「桜花の力だぁぁぁぁあ!!!」
「っ!!?」
右アッパーが綺麗に桃花に入り彼女は宙に浮く。そして受け身も取らず背中から床に落ちていった。
「はぁはぁ……くっ…!」
右腕はもう感覚すらなかった。慣れていない衝撃波の使いすぎだ。果たしてちゃんと治るのだろうか。
桃花に近付くと死んではいないが気絶しているようだった。
「……勝った…のか…」
でもこれで終わりじゃない。屋上に行って確かめなければならない。
英の姉さんである里奈さん……半年前の事故で行方不明になったらしいが果たしてこの先にいるんだろうか。
もしいたとしたら何故半年間も身を潜めていたのか。
そして桃花は何故英の父親を襲ったのか。
全ての答えがこの先にあるはずだ。
「桜花、もう少し…待っててくれ」
俺は一人屋上へと向かった。
148名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 10:12:56 ID:mB5p4mg2
127 名前: リバース ◆ Uw02HM2doE 2010/08/28(土) 23:53:42 ID:dieu1QOw0

今回はここまでです。
次回は里奈登場です。里奈については「きみとわたる」という
完結作品を読んで頂けるとより楽しめると思います。
ご迷惑おかけしますが転載よろしくお願いします。
149名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 10:27:59 ID:BQtd85ZW
転載&作者さんGJ!

要は熱い主人公で好きだわ
次はいよいよ里奈様なんですね?
こりゃあ全裸待機だ
150名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 10:35:49 ID:NK/mXES8
リバース来た!gj!

要カッコいいな。そりゃモテるわけだ
とりあえず次に期待!
151名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 10:44:54 ID:iaeSEcoc
転載さんと作者さんGJ!

桃花の執念に思わずぞっとしたぜ……。
きみわたから読んでるから里奈出てくるのは嬉しいな。
是非回文も出して欲しいわ。
152名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 11:43:24 ID:1OIlLnHC
リバースきたーGJ

桃花が十六夜咲夜にしか見えん俺は病気か
153名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 11:54:19 ID:urkN8GIN
やっぱりリバースはおもろいっ!里奈が出てくる続きが気になってしょうがない

GJっす!!
154名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 13:53:46 ID:onnB30SS
そろそろヤンデレ家族来るかな(*^_^*)?
155名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 14:18:55 ID:7IcS0f/2
リバースGJ
ヤンデレ家族の方は今週キモスレに投下してるから無いんじゃない?
来たら万々歳だが
156名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 16:52:55 ID:NYhUGY2B
ヤンデレに一気に惚れてまう瞬間

【1】凶器の趣味や構え方が良かったとき
【2】人間関係において好き嫌いが多かったとき
【3】他の女の悪口をよくしゃべるとき
【4】結婚願望があることをアピールされたとき
【5】姉妹に対して言葉遣いが荒いことがわかったとき
【6】料理や洗濯などの家事が得意だとわかったとき
【7】一般常識や倫理を自ら捨てたとわかったとき
【8】とても束縛するタイプだとわかったとき
【9】初めての恋愛だが搦め手や力技を駆使するとわかったとき
【10】処女だと分かったとき
157名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 17:00:46 ID:JSTkkHJt
それ…
なんかずれてるぞ…
158名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 18:50:58 ID:MVS1FVay
逆に<<156がヤンデレの件
159名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 18:53:49 ID:ZMhfAePQ
頷きながら読んでいたが、5だけは冷静に考えるとないな。
160名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 18:55:31 ID:SvuJj1jv
【1】とか訳分からんw
161名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 19:19:03 ID:x2abeePa
8以外はてなマークがついてしまう
凶器の構え方とかどうでもいいから
小さい頃に姉妹やら幼馴染みと交わした結婚の約束とか
彼のために一生懸命に覚えた料理とか
気づいたら交遊関係が彼女にコントロールされていたとか…

なんというか情念的なものがほしいんだよ俺は!
162名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 19:39:20 ID:pNUec9oh
>>154
顔文字うざい
163名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 19:49:54 ID:ZMhfAePQ
いや、凶器のチョイスと扱いの習熟は重要だろ……科学的に考えて……
164名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 19:56:16 ID:7IcS0f/2
とりあえずヤンデレ=凶器っていうのは違うと思う
165名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 19:58:39 ID:nP+fTgRf
>>163
人間工学的にもか?
166ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/08/29(日) 20:00:43 ID:smCxXBM3
こんばんは。SSを投下します。
兄弟喧嘩編、その三です。
167ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/08/29(日) 20:03:22 ID:smCxXBM3

 結論から書くという手法は、作文や説明文を作る時によく使われるやり方の一つだ。
 かく言う俺も結論を先に書くタイプである。
 次に、なぜその結論に至ったかを長々とした文章で綴っていく。
 最後に結論を再度述べて締める、という書き方をする。
 そうすると、読む側の人間に、言いたいことが最初に伝わる。
 ああこいつはつまりこう言いたいんだな、と考えさせ、文章への理解を誘えるのだ。
 結論があると、自分で書く時も混乱しない。ぶれることが少ない。
 かつての、作文の書き方が分からなかった俺は、このやり方を知ってから、作文の課題で困らなくなった。

 まあ、なんで文章の書き方なんてものについて考えているかというと、だ。
 さっきまで我が家で繰り広げられていた事態について、説明するのが非常に困難だったからだ。
 何かとっかかりが欲しかった。
 最初に起こった出来事から説明してしまえばいいのだが、混乱している今の頭ではそれすら難しい。
 なので、簡潔に結論を述べよう。

 我が家を訪ねてきた人々は、大きな怪我もなく、全員無事に帰宅した。
 以上、説明終わり――としたいところである。
 しかし、たった一行や二行しか書かれていない作文を提出しようものなら、教師から書き直しを要求されることは必至。
 なので、全員が無事帰宅するに至った経緯を説明する。

 まずは状況について。
 俺ら三人兄妹、澄子ちゃんと藍川、玲子ちゃん、花火。
 これだけのメンツが俺の家に集合した。
 特に決めたわけでもないが、集合場所は、玄関前に広がるたいして広くない庭だった。
 妹は俺に抱きついたまま、特に何も口にしなかった。
 澄子ちゃんと花火は正面から視線をぶつけ合っていた。
 藍川と玲子ちゃんは何のアクションもとらず、じっとしていた。
 弟のやつは、家に澄子ちゃんが居たことが予想外だったようで、明らかに困った顔をしていた。
 俺はというと、中学の制服を着ている妹の感触を味わっていた。

 この中で複雑な関係にあるのは、弟と花火と澄子ちゃんの三人である。
 花火と澄子ちゃんはお互い対立関係にあるようだった。弟の取り合いが原因だと思われる。
 三人が一堂に会しているので、修羅場になることは容易に想像できる。
 だから俺は、妹の感触に胴を包まれながら、内心戦いていた。
 無事に収まるのだろうか。ひょっとしたら怪我人が出るんじゃないか。主に俺が無事じゃ済まないのでは。
 そう俺が思ってしまうのは、最近の傾向から鑑みた結果である。
 いい加減、そういうワンパターンなのはやめてもらいたい。
 たまには俺以外の人の身が危険にさらされろ。たとえば弟とか。
 もしくは高橋でも良い。親友なら、俺のことを助けてくれるに決まってる。
 溺れる者は藁をもつかむとは、その時の俺を的確に言い表していた。

 結果は俺の予想から外れた。
 花火と澄子ちゃん、二人の修羅場。二人を鎮めることができれば。俺はそう考えていた。
 その考えは、なんというか、小っちゃかった。
 異常な事態を沈静化する方法は、何も一つだけではない。
 飲み込んで、無かったことにしてしまえばよかったのだ。
 女二人の修羅場すら飲み込むような、へんちくりんな事態。
 それが目の前で起こり、そのあまりの勢いに、俺の心の冷静な部分まで飲み込まれてしまったようだ。
 今も浮ついているようなものだが、ちょっとだけ落ち着きを取り戻した。
 説明しよう。俺の家という限定された空間において、何が起きたのか。

 あれは、今から遡ること三十分。
 小腹の空き始める、午前十時頃のことだった。

 :
 :
168名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 20:04:00 ID:x2abeePa
また凶器=ヤンデレ論か…
狂気的なまでに昇華した愛情はいるけど
安易に凶器を出すのは反対だな

ヤンデレにとって凶器は最終手段だろ
そう簡単にポンポンだされても
お前の主人公への愛はそれっぽっちなのかとおもってしまう
逮捕されたらそうそう会えなくなるんだしさ
169ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/08/29(日) 20:05:14 ID:smCxXBM3

「……なんだ、懲りずにこんな所まで来ていたのか、木之内澄子」
「お生憎さま。あれぐらいで懲りるほど、アタシの決意は甘くないのよ。葵紋花火」
 対峙する花火と、澄子ちゃん。
 花火は弟を背にして、澄子ちゃんは俺の家を背にして、立っている。
 
 澄子ちゃんが背中を向けているので、彼女の顔は見えない。彼女がどこを見ているかはわからない。
 だが、あの様子では花火の目を真っ直ぐに見つめていることだろう。
 二人の間に何があったのか、詳しいことは知らない。
 調べようがなかった。弟は知らないと言うし、花火とは会話する機会すらなかった。
 それでも、ある程度の推測は立てられる。
 バレンタインに起こった弟誘拐事件の犯人は澄子ちゃんだと、俺は花火に教えた。
 そうしなければ、妹の身が危なかったからだ。
 弟の居場所を知った花火は、澄子ちゃんの家に向かい、澄子ちゃんと対面したはず。
 そこで、花火は何らかの方法で、澄子ちゃんから弟の身を救い出した。
 花火が澄子ちゃんと交渉して弟を解放したのなら、いい。穏やかな方法だ。
 しかし、純粋な暴力で取り戻したのだとしたら? この場で、一体何が起こりうる?

「しばらくの間学校で見なかったから、てっきりくたばったのかと思っていたよ」
「物事はそう上手くいかないものよ。かなり危ないところまでいったけど、もう回復したわ。
 さ――早く返してもらおうかしら。あなたは彼にふさわしくないわ」
「はっ。負け犬がぬかしやがる。こいつは一度もお前のものになったことはない」
「……負け犬? あら、知らないのかしら。どっちが本当の負け犬かっていうこと。
 ねえ、葵紋花火には教えていないの?」
 澄子ちゃんが弟の方を見た。弟の表情が少しだけ硬くなる。
「なんだ。まだ教えていないの。じゃあアタシから伝えてあげるわ。……彼はもう、とっくにアタシが」
「――言うんじゃない! 花火はとっくに知ってるよ、そんなこと!」
 澄子ちゃんの言葉を遮ったのは、弟の怒鳴り声だった。
 珍しい。弟が怒鳴っている様子を見る機会というのは、そうそうあるものじゃない。
 弟は、俺を含め、家族の誰とも喧嘩をしない。
 誰にも反発したことがないから、反抗期を経験していないのではないだろうか。
 大人しいのが一番だ、とは言えない。それはそれで危うい。
 ひょっとしたら弟の中には抑えられた不満がいくつも溜まっていて、それが爆発寸前だったりするのかもしれない。
 今日、こうして怒鳴っていることで噴火してしまうかも。

「そうなんだ。そりゃそうよね。なにせ、アタシの部屋に居る彼のところへ駆けつけたんだから。
 格好を見れば、どんなことをされたのかなんて、簡単に想像つくわよね」
 特に口調を変えず、澄子ちゃんはそう言った。余裕たっぷりに。
「真実を知った時の気分はどうだったかしら、葵紋花火?」
「……はらわたが煮えくりかえったよ。お前を八つ裂きにしてやろうと思った。
 お前の家にある物を全て破壊し、跡形も残さず消してやりたくなった」
「なら、どうしてアタシはここに居るのかしら? 殺してやろう、とか思わなかったわけ?」
「思ったさ。お前を倒した後、実際にそうしてやろうと思った。だけど……」
 花火が肩越しに弟を振り返る。弟の顔を確認した後、また正面を向いた。
「こいつが止めたから、なんとか踏みとどまることができた。
 それに、こんなくだらないことで犯罪者になる気はない。
 私にはまだ、こいつとやりたいこと、こいつにやってあげたいことが一杯ある」
「ふうん――甘いわねえ」
「あ?」
170ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/08/29(日) 20:07:27 ID:smCxXBM3

 澄子ちゃんが右腕を上げる。彼女の指が差したのは、花火の顔。
「甘いって言ってるのよ、葵紋。
 彼が止めたから、やめた? 彼が居たから、アタシにとどめを刺せなかった?
 よくもその程度の覚悟で、アタシを負け犬なんて呼べたものね。
 油断している時に手を出さない。チャンスがあっても手を伸ばさない。
 これまで恵まれてきたからって、いつまでもそれが続くなんて思うんじゃないわよ。
 ……日常の崩壊なんて、ほんの些細な乱れから始まるんだから」
「言ってろ。どんなことが起ころうと、こいつだけは傍に居てくれる。
 これからも傍に居るって、そう言ってくれた。お前はそんなことを言われたか、こいつから」
「無いわねえ。ただの一度も。
 だけど、これから彼の気持ちが変わらないなんて、言えるのかしら?
 絶対にアタシのことを好きにならないなんて、あなたに言える?」
「言える。こいつは絶対に私を裏切らない」
「そう断言できるところが、アタシには理解できないのよ。
 葵紋は葵紋、彼は彼。まったく違う他人だっていうのに。どうして、お互いにわかり合っているのかしら?」
「決まってる。こいつと、私の気持ちが……一緒だからだ」
「あらそう。それなら、どうして二人は付き合ってないわけ?
 それって、結局他人同士のまま、いえ、友達のままってことでしょう」
「それは……それは」
 花火が弟の方をちらりと見る。
「私だって、本当はこいつと、一緒、に……」
「葵紋、この世は結果が全てなの。思いが通じ合っている気でも、二人は恋人同士でもなんでもない。
 あんたはね、葵紋。彼にとってはただの胸がでかいことが特徴的な女に過ぎないのよ」
「――木之内、てめえっ!」

 花火が澄子ちゃんに凄み、一歩踏み出す。
 澄子ちゃんは半身退き、左手を突き出して牽制する。手から突き出ているのは、銀のボールペン。
「やる気? いいわよ、別に。
 けど、よく考えてみなさい。この場で喧嘩したらどうなるかしら。
 ここが誰の家なのか、もちろんあなたにはわかっているわよね。
 何か壊したら、先輩や彼はどう思うかしらね」
「この、卑怯者が」
「謂れのない中傷ね」
171ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/08/29(日) 20:10:51 ID:smCxXBM3

 一触即発の空気。掴みかからんとする花火と、武器で牽制する澄子ちゃん。
 間近にいた弟は二人を止めようとしている様子だが、割り込むきっかけを掴めない。
 妹は緊張を感じ取ったのか、自分のやっていることが恥ずかしいと思ったのか、俺の身体から離れていた。だがすぐ傍に居る気配は感じる。
 藍川は澄子ちゃんに何か言おうとしていたが、弟と同じ理由で、アクションをとらない。
 玲子ちゃんは、なんで喧嘩しているんだろう、とでも考えているはず。そのままで居てくれ、頼む。
 さあ、この状況をどうするか。
 せめて一瞬だけ。花火と澄子ちゃんの気を逸らすことができれば、弟か藍川が止めてくれる。
 でも、手元にカードはない。
 たとえ俺が何を言っても、他の誰かを使って止めさせるよう言っても、どうにもならない。
 昨日から葉月さんと付き合いだした、という隠し事を暴露しても、一体何の効果があろう。
 せいぜい玲子ちゃんにからかうネタを提供するぐらいだ。
 ちっ、と。心の中で舌打ちした。

 ――そんな小さな思考が、奇跡を起こしたと言うほどではないにしろ、世界の因果か宇宙の法則に作用したらしい。
 まあ、これは言い過ぎか。俺以外の人間には、唐突、ふと、いきなり、前触れ無しに、って感じだろうし。
 だけど俺の主観では、俺がきっかけになって事態が変化したように見えた。
 いったい何が起こったかというと。

「……あら、なんだか騒がしいと思ってたら」
 そんなことを言いながら、ある人が姿を現わした。私服姿の葉月さんだった。
「は、葉月? なんであんた、ここに?」
 なんで居るんだろう。妹と同じく、俺だって聞きたかった。
 葉月さんの行動パターンを読めば答えはわかるけど、聞いてみたいときだってある。
 たぶん、俺に会うため、俺の家に来たんだろう。

「決まってるじゃない。彼に会いに来たのよ」
「……あっそ。どうせそんなことだとは思ってたけど。
 それで、なんであんた正面からじゃなくて、横から出てきたわけ?」
「ちょっと驚かせようと思って。つい彼の部屋がどこか探しちゃった」
「ストーカーまがいのこと、してんじゃ……あ、あんた、まさか!
 さっき私の部屋を覗いてたの、葉月、あんたじゃないの!」
「あたり。ごめんなさい。見るつもりはなかったのよ、本当に。
 妹さんにだって、隠したいものはあるもの。寂しいところって、誰にも見せたくないわよ……」
 寂しいところって、なんだ?
 俺が立ち去った後で、妹が壁を背にして体育座りでフローリングの木目を数えていたとか?
 まず、あり得ない。もしそうだったらそのまま抱きしめてやりたいところである。もちろん本気ではない。

「さ、寂しいですって! 寂しくなんか無いわ! 賑やかよ! カーニバルよ、フェスティバルよ!」
「いえ、見栄を張らなくてもいいのよ……大丈夫、まだまだ、あなたには未来があるわ……」
「笑いを堪えながら喋ってんじゃない! あーもう! むかつくわ、あんた! 最高にむかつくわ!」
「語彙が貧弱ねえ。貧弱なのは体だけで充分……あら、口が滑った。聞かなかったことにして頂戴」
 妹の敗北。とうとう大声でわめく子供みたいに、退行してしまった。
 今の妹と口喧嘩すれば、玲子ちゃんでも勝てるだろう。
 そうか。妹の体は寂しいのか。改めて認識することでもないが。
 別に俺は妹の体が貧しい、いや寂しくても何の問題もない。そもそも、そうであったから俺に何の影響があるんだ。
 あ、葉月さんにからかわれた妹が俺にあたる危険があるか。
 前言撤回。たわわに実れ、妹よ。
172ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/08/29(日) 20:14:14 ID:smCxXBM3

 葉月さんと妹は置いといて。
 先ほど緊張感を生み出していた二人はというと。
「ちょっと、離しなさいよ、京子!」
「花火、落ち着くんだ」
 葉月さんが現れたことで、花火と澄子ちゃんの対立が生む緊張は無くなっていた。
 弟が花火を、藍川が澄子ちゃんを、それぞれ止めていた。

「落ち着け、澄子。お前も言っていただろう、ここはジミー君の家だ。
 暴れたらジミー君の家族に迷惑だ」
「そんなの、そこの女が仕掛けてきたから悪いってことにしてやるわ!」
「いいから来い。今のお前には何を言っても無駄だ。ちょっと頭を冷やせ」
「せっかく決着を着ける機会なのに、邪魔しないでよ!」
 いや、やめようよ。ここ、俺の家だし。
 藍川がこの場に居てくれて、助かった。たぶん俺が相手じゃ、澄子ちゃんはここまで素直に言うことを聞かない。
「花火」
「止めるな。あいつ……」
「大丈夫。僕には君だけだ。安心してくれ」
「そうじゃない。あいつ、許せないんだ。お前を、あんなことに」
「僕のことは、気にしなくていい。花火はこれ以上、気に病まなくていい」
 もういいんだ、と。
 弟は花火の体を抱きながら、言い続けている。
 花火はまだ何か言っているようだが、声が小さくて俺には聞き取れない。弟にしか聞こえていないだろう。
 見れば見るほど、お似合いの二人だ。
 これで付き合っていないっていうんだから、なんともおかしな関係だ。
 
 とりあえず、この場は収まってくれたか。
 葉月さんが現れてくれたおかげだ。彼女が現れなければ、ここまで平和的に事態は解決しなかっただろう。
「ありがとう、助かったよ」
 そう言って、葉月さんと妹の方を見る。
 まだ二人は言い争っていた。もっとも、妹が一方的に喋っているだけで、葉月さんにやる気は見られない。
「どうしてお礼なんか言うの? 私が居なくて寂しかった?」
「お兄さんがそんなことで寂しがるわけ、ないじゃない! 普段から一人なんだから!」
 妹が俺を貶しているが、無視。いちいち相手をしていたらきりがないし、今の妹は相手をするに値しない。
「そうじゃなくて、葉月さんが来てくれたから、あの二人が静かになったから」
「あの二人? ……どの二人のこと?」
「ああ、いきなりだからわからないか」
「弟君と、葵紋花火のこと? それとも…………そこにいる、愛しの澄子ちゃんのこと?」
 は?
「……そういえば、そうだった。しばらく会わなかったから、すっかり忘れてたわ」
「葉月、私を無視するんじゃ――――」
「黙りなさい。寂体」
 葉月さんがそう言った。
 その後すぐ、妹がひっくり返った。何の誇張もない。本当にひっくり返った。
 目を疑う光景だった。葉月さんに突っかかっていた妹が、突然後ろを振り向き、体の天地を逆転。
 重力に従い、妹は地面に向かい、頭からではなく、体からうつぶせに着地した。
 うめく妹の体をまたぎ、葉月さんは歩き出す。
「ちょっと、待ち、なさいよっ」
「寂体だから、胸のクッションが無くて痛そうね。喜ぶ必要はないわ。嘆きなさい」
「くっ……馬鹿にして!」
 葉月さんが今何をしたんだろうとか、疑わなくなっている自分が居ることを自覚した。
 数ヶ月前なら、絶対に今の技が何だったのかについて考察していたはず。
 今の俺は、葉月さんならやってもおかしくない、できるんだから仕方ない、とか考える。
 これは決して成長ではない。ただ環境に適応しただけだ。
 いちいち反応していたら、次の状況に対応できないから、こういう思考をするようになったのだ。
 妹は動けないだけで、無事そうだ。一応手加減はしてくれたんだろう。
173ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/08/29(日) 20:17:39 ID:smCxXBM3

 さあて――どうしよう。
 今の妹のやられっぷりを目前で見た俺としては、非常に逃げたい心地なのだが。
 なぜ俺の身体は、わざわざ葉月さんの進行方向に立ち、両手を拡げた大の字の格好で、通せんぼをしているのか。
 反射だからどうしようもないんだが、それだけで済ますのも、自分が考え無しに動く浅薄な人間みたいだ。分析してみよう。
 理由は二つ。
 一つ目はこれ以上喧嘩をさせないため。
 やっと平和的に解決しそうなんだから、これ以上混乱を招きたくない。
 喧嘩はよくない。平和が一番。
 こんな白昼から喧嘩したら、ご近所の迷惑だ。
 二つ目は、葉月さんを止める義務が俺にあるから。
 一応彼氏だし? 好きな女は大事にしたいっていうか? 俺、マジだから。
 ……うわ。なんだかこの喋り方、すげえむかつく。似合わない。絶対に、二度とやらねえ。
 言い方はともかく、そういうことだ。
 俺は葉月さんに喧嘩して欲しくないのだ。止められるものなら止めたいと思っている。
 以上の理由から、俺はこうして葉月さんを止めようとしているのである。分析終わり。

「葉月さん、駄目だよ」
「どいてちょうだい。どうしてその女をかばうの? そんなに好きなの?」
「そういうわけじゃないって。俺の気持ちは言ったばかりじゃないか?」
「そういう問題じゃないのよ。私の気持ちはどうなるの?
 そこの木之内澄子に私は大事なものを奪われたんだから。
 もう取り戻せないそれの代わりに、私はあの女を誅しなきゃならない」
 チュー? あ、誅か。
「駄目だ。そんな気持ちで復讐しちゃ。悪意に悪意で応えたら、悪意の連鎖は続くんだ。
 どこかで――止めなきゃいけないんだ」
 今を生きる人は、過去は過去だと割り切らなきゃいけない。
 先日、俺はそれを悟った。
「無理。到底無理。絶対無理だわ。復讐するは我にあり」
「だったら、俺は、葉月さんを力尽くで止める。どんな手を使っても」
「あら、そう」

 その言葉を聞いた後、俺は葉月さんに掴みかかろうとした。
 彼女を止めるには、ショックを与えるしかない。
 そう思っての行動だったが、実にあっさりと右手を掴まれ、俺は妹の後を追うことになった。
 葉月さんのうなじが見える高さまで浮き、少しの間だけ墜落していく鳥の気分になり、地面に勢いよく抱擁した。
 ――もしも私が鳥だったら。きっと私は天に向かって嘆きの歌を歌うでしょう。どうして人間にしてくれなかったんだ、と。
 まさにそんな気分だ。
 鳥になんかなりたくない。生まれ変わっても、鳥になるのだけは御免だ。

「ごめんなさい。痛かったでしょ? あとでいっぱい慰めてあげるから、許して」
 謝るなら最初からやらないでほしい。慰めで済むなら警察と民事裁判は要らない。
 くっそ。立てない。どうなってるんだ、これ。
 投げられただけじゃないのか? ここまで足下がぐらつくって、腕を地面にまっすぐ立てられないって、変だ。
 平衡感覚を頭の中からすっぽり抜きとられ、別方向に投げ飛ばされたみたいに、立ち直るきっかけを掴めない。
 地面に貼り付いてないと、空に向かって落ちていきそう。地面を滑り続けているみたいに不安定。
 ちくしょう、もう、こうなったら。
「に、逃げろ……四人とも! 葉月さんはまともじゃない!
 相手をするな、早く逃げるんだ!」
174名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 20:18:06 ID:myXOgjZD
支援
175ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/08/29(日) 20:21:21 ID:smCxXBM3
*****

 地面に倒れたまま、兄さんが逃げろ、と言っている。
 その通りだ。逃げるのが一番の正解だ。戦うなんていうのは、愚かな選択だ。
 でも、逃げ切れるか?
「きっと逃げられないわね、あの葉月さんからは」
 澄子ちゃんが言った。
 僕も全くの同意見。逃げたとしても、葉月先輩は追いかけてくる。
 そして、目的を果たす。
 葉月先輩の標的は、花火か、澄子ちゃんか。
 おそらく僕ではない。澄子ちゃんの友達らしき人でもなさそう。
 狙いが二人だけなら、やりようはある。
「葵紋、手を貸しなさい」
「断る。お前と手を組むなんてやっていられるか。私は帰る」
「は、言うと思った。じゃあさっさと帰りなさい――と思ったけど、
 ここで戦ったらあんたを守ったみたいで気持ち悪いわ。最低最悪の気分だわ。
 やっぱりあんたも残って戦いなさい」
「くだらない。やっていられるか」
 そう吐き捨て、花火は帰ろうとする。僕の手を握って。
 足を踏ん張って、花火の手を外す。

「ごめん、先に家に帰ってて。僕も後で行く」
「残るつもりか? なら、私も」
「いいや、僕一人で残るよ。澄子ちゃんと、友達の人も、帰った方がいい。葉月先輩は、僕が説得するから」
 葉月先輩と対面する。手を伸ばしても届かない位置にいるのに、すごい威圧感。
 皮膚をかきむしられている錯覚がする。腕を掠めてダンプカーが走り抜けていってるみたい。
 葉月先輩のことを知っているつもりだったけど、僕の認識は甘かった。
 この人は、花火や澄子ちゃんと同レベルで語るにふさわしい人じゃない。それぐらいじゃ、役不足だ。

「……無理よ。あなたじゃ、ね」
 澄子ちゃんが言う。僕を見下した言い方だった。
「先輩の二の舞になるだけよ。あなたこそ逃げて。葉月先輩の相手なら、何回もしたことはある」
「僕じゃ無理って言うのは、つまり、僕が澄子ちゃんより弱いから?」
「みなまで言わせないで。自分でわかってるでしょう?」
 その言葉にカチンと来たわけじゃない。けど、やるなら今しかない。
 説得しないと、花火の身が危ないんだ。
 もう、こうするしかない。
「ごめん、わからないや。僕は兄さんみたいに頭がよくないから」
 横に並んでいる澄子ちゃんに近づいて、がら開きの脇に掌をあてて、腕を突きだした。
 骨と内臓がへこんで形を変える感触が、皮膚を通して直に伝わってきた。

「ぁ……ぇ?」
 澄子ちゃんの顔が苦痛に歪む。二回口を閉じ開きして、その場にくずおれた。
「えっと、澄子ちゃんの友達の人」
「藍川京子だ」
「藍川さん。澄子ちゃんを」
「うん、わかっているよ。まったく近頃のこいつは、無茶ばかりする。おかげで振り回されっぱなしだ。
 こんな活き活きとした澄子は久しぶりに見た。……そうか、君が、そうなんだな」
「早く行ってください」
「そうさせてもらう。じゃあ、無事で。ジミー君の弟君」
 藍川さんは澄子ちゃんを担ぐと、自分の車に向かっていった。
176ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/08/29(日) 20:23:27 ID:smCxXBM3

「花火も、ほら早く」
「本当に、いい?」
「うん。僕を信じて」
「……家で、待っている」
 花火はそう言うと自分の家へ帰っていった。
 こういうとき、花火との短縮会話は楽で良い。時間をとられない。
 僕と花火の間だけでしか通じないのが不便だけど。

 再度、葉月先輩と対峙する。
「葉月先輩」
「弟君……あなたは、何?」
「質問の意味がわからないんですけど」
「そのままの意味よ。あなたは何者かってこと」
「兄さんの弟です。もうすぐ高校二年生になります」
「質問を変えるわ。さっきの掌底。あなた……素人じゃないわね? 私と同じ、いえ、多分それ以上。もしかしたら……」
「そうですか。もう花火と澄子ちゃんをおいかける気はなくなったんですね。
 よかった。それなら、家に上がってお茶でもどうですか? それともコーヒーにします?」
 葉月先輩は、返答せず、僕に向かって手を伸ばしてきた。
 その意図は分からないけど、止めた方がいい気がしたので、手首を掴んだ。
 やっぱり女性だ。手首が細い。
 僕の手首も結構細いけど、やっぱり骨に厚みがある。
 女性の方が、ずっと細くて、脆そうだ。
 こけた時に骨が痛まないのかな、なんて場違いな感想が浮かんだ。
「……良く止められたわね、今の」
「あれ、止めちゃいけませんでしたか?」
「それは、嫌味かしら」
「言いがかりですよ、それ」
 本当にそう思っただけだ。
 先輩の手を止めたのだって、止めた方が良いと感じたから止めた。ただそれだけ。
 他の意図が介入する余地はない。僕は誰かを貶めようと思わない。
 自分にそんな権利があるなんて思っちゃいない。

「今私が、あなたに何をしようとしたか気付いてた? あなたの内臓狙って掌底を打ったのよ。
 手加減抜きの全力で。一撃で倒すつもりで」
「……なんでそんなことするんですか。僕のこと、そこまで嫌いなんですか?」
「いいえ。嫌いなわけ無いわ。あなたはいつか、確実に私の義弟になるんだもの」
 葉月先輩の言葉に厚みがある。確信という名の層ができている。
 やっぱり、兄さんと葉月先輩は。
「でも、この場ではあなたを倒さなきゃならない」
「わけわかんないですよ、なんでですか!」
「あなたは危険だわ。そのことに気付いていない。自分が強いと思っていない。
 あなたは――強すぎる。おそらく、身体的な面において」
177ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/08/29(日) 20:27:23 ID:smCxXBM3

 強い? 兄さんじゃなくて、僕が?
「身体的に弱い人は、とっさの危険から身を守る方法を身につけていない。
 でも、自分の弱さを知っている人間は、わきまえて行動することができる。
 強い人間も同様に、わきまえて行動しなきゃいけない。同じぐらい強い人間たちと一緒に居るべき。
 弟君、気付きなさい。あなたは、自分が思っている以上の武力を持ってる」
「武力? 僕は武道なんか習ってません。ただ、その……特撮ヒーローが、ちょっと好きなだけです」
「稀に居るらしいのよ。お父さんから聞いた話だけど。
 瓦一枚割れない、白帯のまま、だけど他人と組ませてみたら、結果は全戦全勝無敗。
 プロテクターが有っても無くても、揺るがない実力を持つ人間。
 基礎をすっ飛ばして、積み上げを全くの無駄にしてしまう、極端な実戦派、というタイプの人間が。
 お父さんですら、又聞きだったらしいから、私が会うことなんかないと思っていたけど。
 そんな人間を公の場所に出したらいろいろと問題になるらしいわ。
 そりゃそうよ。私みたいな凡庸な人間のやってきた鍛錬が、たった一人の人間に否定されるんだから。
 あなたはまさに、そういうタイプ。生まれつきの天才肌。対人格闘のスペシャリストよ」
「あの、言ったら悪いとは思いますけど、葉月先輩は凡庸とはとても」
「強さを自覚しなさい、弟君。あなたの一番危険なところは、弱いと思い込んでいるところよ。
 放って置いたら、いつか必ず他との軋轢を生むわ。
 葵紋花火と上手く付き合っていきたいなら、なおのこと、心構えを改めるべきよ」
「そんなこと、ないです。僕は澄子ちゃんに二回も倒されてます」
「油断していたんじゃないの。もしくは、最近になって覚醒したか」
「さっきから僕的にわくわくすることばっかり言ってくれますけど、買いかぶりすぎてます。
 絶対に葉月先輩の方が強いですよ。クンフーが足りてるっていうか、鍛錬を続けた先輩みたいな人間が強いに決まってます」
「なら――どうして私はあなたを投げられないのかしら?」

 投げる? さっきから葉月先輩は何かしていたのか? じっとしているだけだと思ってた。
「もしもあなたが、彼や妹さんみたいに武力を持たなければ、今頃倒れて気絶してる。
 あの二人の後を追わないというのは、あなたが強いという証明に他ならないわ」
「先輩が手加減しているだけでしょう? それか、投げるつもりがないか」
「言っておくわ。私は、ここまで誰かを投げたい衝動に駆られるのは久しぶりよ。
 私の想像の中では、弟君は、今頃家の屋根に突き刺さっているのよ」
「そこまで本気ですか」
「投げ飛ばされなさい、弟君」
「絶対に嫌です」

 どうしたらいいんだ。
 このまま葉月先輩を取り押さえてしまおうか?
 いや待て。僕は聞きたいことがあったんだ。
 兄さんに聞くつもりだったけど、この際だから葉月先輩でもいいや。
「先輩、聞きたいことがあります」
「なに? 言ってみて」
「兄さんと、いつから付き合いだしたんですか?」
「昨日の夕方、六時四十六分からよ。それがどうかした?」
 あっさり教えてくれた。教えて欲しいなら私に投げられることね、とか言われるかと思ったのに。
「そうなんですか。おめでとうございます」
「ありがとう。あなたは喜んでくれるのね。それはともかく投げられなさい」
「もちろんです、二人が幸せになってくれたら、僕も嬉しい。でも投げられるのは嫌です」
「どうしてそう思うの? あなたには葵紋花火がいるじゃない。空を飛びたくないの?」
「兄さんに彼女が出来てから、花火とは付き合うつもりだったんですよ。僕は空を不自由に飛びたくないです」
 そうか。やっぱり付き合ってるんだ。
 ――やった。やった! これで、花火と付き合うことができる。恋人になれる!
「ありがとうございました、葉月先輩! 僕は急ぐので、これで!」
「え、ちょ、弟君! 逃げるんじゃないわよ!」

 早く、早く、花火の家へ。
 言いたいことがあるんだ。君の気持ちに応えることができるんだ。
 待ってて、花火。すぐに行くから!
178ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/08/29(日) 20:30:49 ID:smCxXBM3
*****

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 やりとりが繰り広げられているのを、俺は寝そべって見つめていた。
 弟が走り去るところまで見てから、脳を洗濯機の中でグイングイン回されてるみたいな錯覚に耐えきれなくなって、目を閉じていた。
 じっと吐き気を抑えて待ち、今ようやく目を開けることができた。
 取り出した携帯電話の時刻表示は、間もなく十一時になると示していた。時刻は自動調整されるから、誤ってはいないだろう。

「あの、ジミー、大丈夫?」
「ん……玲子ちゃんか?」
 天を仰ぐと、俺の顔を覗き込んでいる幼い従妹の顔があった。
「へいき? まだ気分悪そうだけど」
「その通りだよ。悪いけど、しばらくじっとさせてくれ」
「うん、じゃあボク、ジミーの顔観察してるから」
「花は咲かないし、華も無いぞ、俺の顔は」
「なにそれ、なぞなぞ? 花がさかなければ花がないのは当たり前じゃん」
「わからなければいいよ。俺の戯言だと思ってくれ」
 ザレゴトってなに? と言って、玲子ちゃんは首を傾げた。

 あれ、葉月さんと妹はどこに行ったんだろう。
 葉月さんは逃げた弟を追いかけていったとして、妹は?
 あー、駄目だ。体を起こさないと見回せない。
 あとちょっとで体は動くから、それから確認しよう。

 しかしさっきのはいったい何だったのか。
 弟は葉月さんの前に立ちふさがっていた。葉月さんの手首まで掴んでいた。
 てっきり、弟も俺と同じ目に遭うだろうと読んでいたのに、何も起こらなかった。
 わからん。あいつ、何かやったのか? 実は口八丁だとか?
 最近弟のことがわからない。もうちょっと理解してやりたい。
 ……変なの。変だろ、俺。
 今年で俺、十八だぜ。弟は十七になるぜ。そんで妹は十六だ。
 それぐらいの年齢なら、知っていることより、知らないことの方が多いのは当然だ。何もおかしくない。
 わかってるんだけど、なあ。
 どうして放任主義に徹しきれないんだろうか、俺は。
 弟も妹も、きっとすぐに俺なんか追い抜いちまう。
 いつまでも兄貴面で面倒を見る必要なんか無いっていうのに。
 とっとと弟離れ、妹離れしろ。ブラコンとシスコンの二重苦から逃れろ。
 自分から苦しもうとしていたら、いつまでも苦難に愛され続けて、離れられなくなるぞ。

 とりあえず、気分は回復した。
 ゆっくりとなら立ち上がることも可能だろう。
 さしあたって、今の俺がすべきことは何なのか。
 玲子ちゃんの太腿とスカートの隙間からちらちら見えている、それについて言及すべきか。
 詳細が分かるまで、ここでじっと観察しているべきか。
 俺の意図に気付いた玲子ちゃんが、真っ赤な顔で俺の顔を踏みつぶしにきたらよく見えるかもなあ。
 なんて不届きなことを考えながら、俺は日向ぼっこに徹するのだった。
179名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 20:32:07 ID:smCxXBM3
今回はここまでです。まだ話は続きます。
また次回、お会いしましょう。
180名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 20:33:06 ID:eRAD9JNq
GJ!
弟の潜在能力すげえええ!!

次回も待ってまーす
181名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 20:40:23 ID:MGeypIZL
まさかの弟が邪気眼持ちww
182名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 20:42:26 ID:eDKClNGX
IF編に本編が近付きつっあるなGJ!
花火と弟の事も気になるけど、残った玲子ちゃんや葉月さん達の行動も気になる…
ヤン傍はキャラの個性がハッキリしていて読んで安定感が有る。
次回も投下お待ちしております
183名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 20:42:48 ID:NVEZpliS
ジミーの普通の変態さに泣けてくる乙
184名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 20:52:08 ID:QiWviwHD
これは花火がジミーにデレる気配皆無だな。
185名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 21:00:57 ID:QyrYZHXa
一気に厨二展開になってきたな
186名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 21:07:39 ID:MVS1FVay
GJ!!


IFみたいに葉月さんが弟にくっつかないことを心から願うのは俺だけか
187名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 21:14:24 ID:7IcS0f/2
それは杞憂だと思うぞ
葉月さんにとって
兄≫≫≫≫≫その他みたいなところあると思うし
まあ絶対に無いとは作者じゃないから分からんが
188名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 21:55:17 ID:jfGiE2Zs
あーそうか、磨いてないだけで素体はIFと同じなんだよな
さて、兄と葉月さんが付き合いだした事を知った妹はどうなることやら
そして兄弟喧嘩編と銘打たれているだけあって弟と花火はこのまますんなりとはいかないだろう
続きに期待だ
189名無しさん@ピンキー:2010/08/30(月) 00:11:26 ID:gwllVSj8
髪の話の続き投下します
190名無しさん@ピンキー:2010/08/30(月) 00:12:26 ID:gwllVSj8
声を掛ける前に松本尋は顔を上げ、こちらを確認してから、大きく溜め息をついた。
携帯電話をしまって、玄関前から少しだけ移動した松本が、目の前に立つ。
「携帯」
暗い夜道でもよくわかる、不機嫌な表情と不機嫌な声で、一言言い放った。
そしてその言葉で、理由にすぐ思い当たる。携帯電話を取り出すと、やはりというか、電源が落ちていた。
「あんたさ、いつになったら携帯を充電するって習慣を身につけるの」
「いや、待ってくれよ。あるだろ電池切れることくらい」
ちょっと言い訳しようと思ったが、松本の睨みが鋭くなっただけだった。
「まあもういいわ。そうだろうとは思ってたけど、やっぱり心配だから、連絡は取れるようにしといてよね」
神経質な発言なのだが、どうも松本は連絡を取ろうとして取れないと落ち着かないらしかった。出会った頃からそんな感じで、連絡が取れないとなると、大した用事がなくてもこうして直接会いに来たりする。
でも随分と久しぶりだ。ここ最近は、朝に学校で嫌味を言われるだけで、家に来たりはしていなかった。
「松本が来たの、半年振りくらいか?」
「そのくらいかな。前に来たときは、髪切ってもらったときだし」
「……お前、髪伸びたな」
時間が経つと髪は伸びる。毎日のように顔を合わせているとあまり意識しないものだが、ふと何かの拍子に、ああこいつ髪伸びたなと思ったりするのだ。
松本は特に自分の髪型に拘りがないのか、伸びて切ってを単純に繰り返していて、今は髪が長い時期ということになる。
「今日、他の奴にも言われてさ。用はそれ。明日、髪切って」
用事はあったようだ。となると、連絡がつかなかったのは本当にいらついただろう。
こんな風に、松本は何度か散髪を頼んできたことがある。修行中の身としては、人様の髪に手を出すのはよろしくないと思うのに、実際に松本の頼みを断ったことはない。
無料で散髪ができる奴と、本物で練習ができる奴。損する奴はおらず、得しかない。ついでに実は、誰にも言えない狙いがあったりもする。
こう、髪に一家言ある人間としては、友人の髪にも注文をつけたいというか何というか。
「明日かよ。まあ、いいけどさ」
「うん。じゃあ私、もう帰るから。また明日ね」
「送ってくか?」
「いいよ、一人で帰る」
軽く手を振って、松本は歩き出してしまった。目的を果たせば、さっといなくなるのも、まあ慣れたものだ。
191名無しさん@ピンキー:2010/08/30(月) 00:13:59 ID:gwllVSj8
「今日俺、掃除当番だったわ」
次の日の朝、相変わらず先に教室にいる松本が正面に座り、放課後の予定を改めて確認しようというところで、凄く地味な問題が発生していた。
「つっても、どうせ夜までは店使わせてもらえないでしょ」
「それまでどうする? 何やるにしても、待たせることになるんだけど」
「別に掃除くらい待つよ。あー、でも、待って。それなら夜まで依子と遊ぶかも」
そう言って携帯電話を出して、松本は友人と連絡を取り始める。大宮依子というのは中学時代の友人の一人で、今でも松本とは仲がいいらしい。
「まあ、昼までにはメール返ってくるから、そのとき決める」
「お前メール打つのはえーなー」
問題と言っても、この程度の話。そもそも、予定が変わるような事件なんて、そんなに起こるものではない。
ましてやつい先日、事件と言えるような出来事を体験しているのだから、しばらくの間は何もないに決まっている。

メールは本当に昼に返ってきたそうで、松本は夜まで大宮と遊ぶことになり、放課後は松本を待たせることなく掃除となった。
教室の掃除は基本的に適当だ。当番の掃除なんてものを真面目にやるつもりはなく、周りの連中と揃って終始だるい感じにやり終えた。毎回そんなもので、学生のうちは多分ずっとこうなんだろうと思う。
ちょっと床に落ちている長めの髪の毛なんかが気になったりもしたが。あの日に綺麗に全部片付けられるとは思えないし、昨日の掃除だってどうせ適当だっただろうから、少し残っていたのかもしれない。


掃除当番を終えて、普段より少しだけ人の少なくなった校舎を出て、いつものバス停へ向かう。
極少数しか使わないバス停は、こうして時間を外すと誰もいないのが常で、今まで掃除当番の日に誰かと居合わせたことはなかった。もっと遅くなれば朝は一緒であるバスケ部の奴が使うみたいだが、帰宅時は部活が休みの日にしかそいつと遭遇することはない。
なので、木村千華が立っていることに気付いたときは、かなり驚いた。
192名無しさん@ピンキー:2010/08/30(月) 00:15:36 ID:gwllVSj8
昨日と同じように、こちらに気付いた彼女が声を掛けてくる。
「今、帰り?」
「ああ、うん。木村も?」
聞き返すと、彼女は首を振った。
「大須賀君を、待ってたの」
またか、と思ったが、その後に何か考えるより早く、彼女から質問が飛んできた。
「大須賀君、松本さんと付き合ってるの?」
「……あー」
付き合ってない。と言うのは簡単だが、それにしてもこの質問、一体何度目になるかわからない。
クラスメイトの男子にも聞かれたし、女子にも聞かれたことのある質問だ。否定した後日、再確認するように聞かれたこともある。
確かに、少し女友達にしては距離が近いかなあとは思うものの、松本は他人との距離が元々近い奴なので、中学時代の別の男友達ともこんな感じだった。
大宮を加えたその四人でつるんでいたのだが、環境が変わり、二人になって途端に目立つようになったということだろう。
「付き合ってないよ。友達」
と、結局は簡単な返答になってしまう。
「そうなんだ。よかった」
「よかったって」
「あの女は駄目だよ」
一瞬、何を言われているのか理解できなくて、理解しても何を言われているのかわからなかった。
193名無しさん@ピンキー:2010/08/30(月) 00:16:26 ID:gwllVSj8
「今日は、それを伝えたかったから、待ってたの」
「……ちょっと待ってくれよ。松本が何だって言うんだ」
あまりに唐突な物言いだ。まあこの子はいつだって唐突だったが、それにしても内容はとても軽く流せるようなものじゃなかった。
「理由は、言えない。言ったら、大須賀君が、松本さんに教えちゃうから」
そして今までと同じように、木村千華は笑った。
「友達だからって、信用しちゃ駄目。私を信じて。あの女のこと、よく見てみて」
正直、彼女の言葉に頭がついていけてないという事態が起きていたのだが、彼女が松本に対して、明確な敵意を持っているということくらいは理解できていた。
ここは怒るところなんだろうか。俺の友達を悪く言うなよ、と。
「いや、信じてって言われても」
でも、そんなどうしようもない返しが精一杯だった。
曖昧な返事に対して、彼女は明確な何かを持って、忠告らしい言葉を締める。
「気をつけていれば、きっと気付くから」

そのまま一緒のバスに乗り込んだが、何を話していいかわからなかったし、彼女から新たに話を振られることもなく、彼女が降りるまで、もう見慣れ始めていた彼女の笑顔をちらちらと窺い続けた。
194名無しさん@ピンキー:2010/08/30(月) 00:17:18 ID:gwllVSj8
投下終わります
続きはまた今度で
195名無しさん@ピンキー:2010/08/30(月) 00:24:11 ID:TU5CNG/9
髪の話待ってた
超乙
196名無しさん@ピンキー:2010/08/30(月) 00:43:53 ID:Nt6ek1sz
極乙
197名無しさん@ピンキー:2010/08/30(月) 01:00:01 ID:kcldOPqy
神乙………とまでいかないけどGJ。髪の話大好きッス


それからヤンデレ家族ですが、自分もIFみたいに花火がジミーのコトが好きみたいな展開期待してます。こちらもGJ!
198名無しさん@ピンキー:2010/08/30(月) 01:20:28 ID:GM6isZz1
ヤンデレ家族
髪の話
超乙!
また1週間頑張れます!
199名無しさん@ピンキー:2010/08/30(月) 02:58:23 ID:mf5KrvzF
どうだ!ヤンデレパワーがここに溜まってきただろ!
200名無しさん@ピンキー:2010/08/30(月) 03:14:21 ID:wjx8u1Z6
両作品ともGJ!

美少女に凶器って燃えない?
201名無しさん@ピンキー:2010/08/30(月) 10:18:44 ID:3SwfyPSO
>>200
それは燃え系の作品の担当だ。
ヤンデレの凶器は核兵器のように、交渉に用いるためだけの手段であるべき。
「鮮血の結末」は、核兵器のスイッチを押してしまうぐらい追い詰められたから、ああなった。
あの時点で萌えも燃えもあったもんじゃない。ありゃ悲劇だ。可哀想すぎる。
202名無しさん@ピンキー:2010/08/30(月) 12:40:57 ID:FTF9VmiY
>>200
それって邪悪娘やら武器持ちの女の子のジャンルだと思うが…
凶器を簡単に持ち出されても男がひくだけだし
へたすりゃ捕まる
一般常識のない電波やらファンタジーな世界観ならともかく
たいして力やら金やらないような女の子にとって
実力行使ってのは最終手段だろ
203名無しさん@ピンキー:2010/08/30(月) 12:44:33 ID:Q77Q+06y
>邪悪娘
邪気眼に見えた
204名無しさん@ピンキー:2010/08/30(月) 13:41:07 ID:Swhjywo2
病んでるかどうかは別にして美少女に武器は燃えるな
日本刀いいよ日本刀
205名無しさん@ピンキー:2010/08/30(月) 16:10:54 ID:pWIqkLOP
>>203
それ頭の病気だから病院行きな
206名無しさん@ピンキー:2010/08/30(月) 16:57:11 ID:IkPr1yuO
暴力よりあれ?何か俺の逃げ場もう無くね?
みたいのの方が萌える
207名無しさん@ピンキー:2010/08/30(月) 18:01:14 ID:f2I9ZXO1
>>187
今回の話読んで葉月さんにとって
自分の意思≫≫≫≫≫兄≫≫≫≫≫その他

と思った俺は異端なのか
208名無しさん@ピンキー:2010/08/30(月) 18:04:04 ID:CzlQqD+h
うーん…というかちょっと厨二すぎてついていけなかった
強さとか、そういうのは求めてないし
209名無しさん@ピンキー:2010/08/30(月) 18:36:25 ID:d1qyOZmB
しかし、ジミーと弟って一歳差だったんだな
もう少し離れてるイメージだったわ

>>206
俺も搦め手の方がヤンデレらしいと思う
いや、強い女の子は嫌いじゃないが、痛いのは嫌です
210名無しさん@ピンキー:2010/08/30(月) 18:43:03 ID:FTF9VmiY
ヤンデレっぽいのは力ずくで云々より
真綿で絞めるように先の先を読んでというのが好きかなぁ
直情傾向の女の子が自分の愛情に我慢に我慢をした結果大爆発して
怒濤の攻めというのもそれはそれで好きだけどさ
とりあえず我慢弱すぎるのはヤンデレっぽく見えづらいんだよね
211名無しさん@ピンキー:2010/08/30(月) 19:57:09 ID:1Cy3FKgt
ヤンデレに監禁されるパターンが好きだな
212名無しさん@ピンキー:2010/08/30(月) 19:57:34 ID:0Hy1lAPb
>>206 
そんな君には角川スニーカーの「ピーチガーデン」をオススメする
物語としてはアレで三巻で終わったが、良いヤンデレがいる
213名無しさん@ピンキー:2010/08/30(月) 20:48:17 ID:pBlIRTb4
「嘘つきみーくん壊れたまーちゃん」もなかなかのヤンデレだぜ
214名無しさん@ピンキー:2010/08/30(月) 20:51:42 ID:RaaqQp1g
みーまーはただのアーパー女だろ
215名無しさん@ピンキー:2010/08/30(月) 21:10:43 ID:p4Q2b9WN
なんか時々ヤンデレの大前提である
「愛情が行きすぎた結果病む」というのを
履き違えたやつがいるよね
ひぐらしとかひどかったぜ
216名無しさん@ピンキー:2010/08/30(月) 21:25:45 ID:IOP+4b9N
>>215
レナの話か?
詩音はガチなヤンデレだと思うが・・・あれはどちらかと言えば八つ当たりか
217名無しさん@ピンキー:2010/08/30(月) 21:32:59 ID:CzlQqD+h
世間ではヤンデレ=凶器だからな
声優の話題出してすまんが、ある声優が凶器持ってる女の子の何がいいんでしょうね?普通に怖いだけですよ
とか言ってるのを聞いて、こういう風に誤解されてんだなと思ったよ
まぁ声優ならそういうの勉強しとけカスとも思ったが
218名無しさん@ピンキー:2010/08/30(月) 21:47:16 ID:erKSS0kh
詩音だってヤンデレじゃねーだろw

つかひぐらしのキャラをヤンデレ扱いしたら
うちの運命に立ち向かう高尚なキャラは
男に媚びた最低のヤンデレなんかじゃないって
竜ちゃんに怒られるぞw
219名無しさん@ピンキー:2010/08/30(月) 22:16:38 ID:pBlIRTb4
最近のヤンデレで、自身の人気を利用して主人公を集団でいじめる奴も出て来たな(主人公の周りに人が寄り付かないように)
220名無しさん@ピンキー:2010/08/30(月) 22:22:11 ID:f2I9ZXO1
>>219
kwsk
221名無しさん@ピンキー:2010/08/30(月) 22:24:12 ID:edeLKMrk
どっかのSSで見たときあるなそんな内容
イジメを仕向けて主人公の味方は自分だけ‥これで勝つる!
222名無しさん@ピンキー:2010/08/30(月) 22:30:50 ID:WpAALF9W
ヤンデレ家族のイラストの妹可愛すぎた゛ろ
GJ
223名無しさん@ピンキー:2010/08/30(月) 22:31:32 ID:f2I9ZXO1
完結してないけど「桜の幹」って話がそんな話だった気がする
224名無しさん@ピンキー:2010/08/30(月) 22:38:53 ID:kXqXn4Um
言われて気づいた
日付からして今日投下されたばかりのようだな
妹の髪型以外は俺の脳内イメージに合致しててGJすぐる
225名無しさん@ピンキー:2010/08/30(月) 23:17:14 ID:fAy2moIu
>>223
それは未だに続きを待ってるんだぜ
まだ修羅場すら発生してないし、まだまだこれからだと信じてたのに・・・

小学校時代から主人公孤立させてるからな
だが桜が可愛いから許す 
226名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 01:01:49 ID:j6tM44l/
>>222
携帯からじゃ見れないのかな?
指定サイトが見つからないとでる…。
227名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 01:16:29 ID:L7l4Hp9I
敢えてもしもしで見る必要あるか?
俺も端末で見たけどやっぱPCで見た方がいいぞ
228騎士と王女、忠義と偏愛 ◆KaE2HRhLms :2010/08/31(火) 01:24:37 ID:F10oRcq2
イラスト投下記念ということで、短編を落として行きます。
229騎士と王女、忠義と偏愛 ◆KaE2HRhLms :2010/08/31(火) 01:27:55 ID:F10oRcq2

 少年は迷っていた。
 自分より身分の高い少女のお願いを断るべきか、叶えるべきか。
「お願い。私を連れて、お城の外に行って。外に連れて行って」

 少女は、一国の王女だった。
 娘を溺愛する王の元に生まれたため、城から滅多に出られない。
 外の世界に出られるのは、せいぜい年に二回。王の誕生日と、王女の誕生日のみ。
 王女は城の外の世界に憧れを抱いていた。

 去年の誕生日パレードで見た、美味しそうな飴を売る売り子さんの居るお店に行きたいわ。
 お父様が誕生日に食べていた、美味しそうな果物を食べてみたい。お城の中じゃなくて、お外で。
 パレードの行列はとっても長く続いているけど、どれぐらい長いのかしら。一度で良いから走ってみたい。
 お城の中じゃ、どれも味わえないんだもの。
 いっつも同じ場所で食事してるから、飽きちゃった。走ってもすぐに壁に当たっちゃうから、つまらない。

 野心に燃え、大陸の中で分裂した国家を、一代で制圧しまとめた王。その男の娘。好奇心は人一倍強い。
 いくら城内が広かろうと、十歳の誕生日を迎えた王女にとっては、退屈な場所でしかなかった。
 これまで遊ばなかった場所は、一つもない。

 少年は、王女の遊び相手として王に迎え入れられた、孤児だった。
 王女が生まれた日、戦争の後で荒廃した国を視察していた王が、気まぐれで拾った赤ん坊が、彼だった。
 そのため、二人の誕生日は同じ日になった。
 王女のように盛大に祝われることはなかったが、城の使用人全員から祝われた。
 少年と王女は、家族のように仲が良かった。
 王女のわがままとわんぱくぶりに振り回される役目を、彼は負っていた。
 そして、ついでと言わんばかりに、王女を止める役目まで任されていた。

「駄目です。外につれて行ったら、僕が王様に怒られてしまいます」
 王女が外に出たがる度に、少年はその台詞を口にした。
 今まではそれで引き下がるのだが、この日だけは引き下がらなかった。
「いや。連れて行ってくれるまで、ずっと今日は付きまとう」
「じゃあ、こうしましょう。いつか僕が王女を外の世界に連れて行きます。それまでは我慢していてください」
 あまりに王女がしつこいため、少年はそう言った。
 とりあえずこの場をしのげば、明日にはこんな約束は忘れているだろう。
 少年は、王女の性格をよく理解していた。
「わかった。絶対よ。絶対に私を、外につれて行って。その時は、あなたも一緒だからね」

 王女はそう言うと引き下がった。
 少年はそれきり、王女に言った約束を忘れてしまった。
 幼い少女の心に、どれだけ強く言葉が刻みつけられたか、理解せぬままに。
230騎士と王女、忠義と偏愛 ◆KaE2HRhLms :2010/08/31(火) 01:29:58 ID:F10oRcq2

 時は流れ、王女と少年は十八になった。
 少年はたくましい青年に育ち、騎士になっていた。国を守るために闘い、王族に忠誠を誓う職業に就いた。
 騎士になるまでは、平坦な道程ではなかった。
 様々な苦難があった。己の血を幾度も飲むほど、厳しい経験を経た。
 乗り越えられたのは、拾ってくれた王への感謝と、王女への愛情のおかげだった。
 王に報いるためには、騎士として生きるしかない。騎士になれば王女を守って戦うことができる。
 青年は、騎士になるための修行を毎日欠かさなかった。
 剣を振り、槍をかざし、弓を引き、盾を携えて走り、強くなった。
 そのために、多くのものを青年は犠牲にした。
 美味しい食べ物も、娯楽をもたらす書物も、若い女との会話も、全て、全て。
 犠牲にしたものの中には、もちろん、王女と過ごしたはずの日々も含まれていた。

「汝、これよりいつ如何なる時も、王の剣となる覚悟を負うと、誓うか?」
 厳正な空気に包まれた王の間。
 手を縄で縛られた鎧姿の青年が、大仰なドレスに身を包んだ王女の足下に跪いていた。
 騎士任命の儀は、王族の人間が執り行うしきたりだった。
 新たに騎士となる人間は、忠誠の証を見せなければならない。
「その覚悟を伴い生きると誓うなら、汝、行為で示せ」
 青年が恭しく、縄で繋がれた両腕を掲げる。
 王女は、天に向けて大剣をかざす。

 剣が振り下ろされる。
 青年の髪が数本床に落ちる。刃は青年を戒める縄を断ち切った。
「……汝、天に許された。今この時、王の剣は新たな力を得た」
 王女が大剣を鞘に収め、青年に差し出す。
「この剣を折らぬことを願い、我はこれを託す。受け取れ、王の剣よ」
「……確かに、御剣を賜りました。私は王の剣。
 王と民を守り、国の平和を尊び、発展のために命を賭し、生きる騎士となりました。
 天におわす主神と、王の信頼を裏切らぬ事を、ここに改めて誓います」

 王女が跪く青年の背中に手を伸ばし、抱きしめる。
 騎士任命の儀の、最後の締めだ。
「――今度は、二度と破ることの無いように」
 王女が耳元で呟いた言葉を、青年は確かに耳にした。
 それに確かな強い恨みが籠もっていることを、青年は感じ取った。
231騎士と王女、忠義と偏愛 ◆KaE2HRhLms :2010/08/31(火) 01:31:49 ID:F10oRcq2

 王国がパニック状態に陥ったのは、王女の十九の誕生日だった。
 城下町の大通りを行進するパレードが終わり、王女が馬車から降りた時、臣下の一人が王女の首を掴み、短剣を突きつけた。
 臣下は、王に制圧された国からやってきた刺客だと言った。
 王女を無事に返す代償として、自分たちの国の領土を解放するよう要求した。
 言い残し、刺客は立ち去った。王女と、王女を乗せていた馬車を道連れにして。
 警備についていた大勢の騎士は、誰一人として動けなかった。
 もちろん、王女を守るため騎士となった、新米騎士の青年も一緒だった。

 誘拐当日のうちに、王女救出のために国は総力を挙げた。
 国を守る最低限の戦力を残し、全ての騎士と兵士が捜索に向かった。
 単身で捜索に向かう騎士が居た。彼らは騎士の中でも、選りすぐりの実力を持つ人間達。
 例外も居た。
 複数人で捜索に出たのに、はぐれた振りをして、単独で行動を開始する無謀な騎士。
 まだ若く、実戦経験の少ない新米騎士。王女の幼なじみの青年だった。
 王女を目の前でさらわれたことが悔しくて、いてもたってもいられなかったのだ。
「絶対に助け出します、王女、待っててください」
 青年には、騎士の倫理より、個人的な感情の方が、行動に駆り立てるだけの説得力があるように思えたのだ。

 突発的な行動だったため、青年には食糧も貨幣も無かった。
 ある物は、全身を包むライトアーマーと、王女から授かった大剣のみ。
 行軍するために簡素化された鎧であろうと、朝から晩まで飲まず食わずで歩き回れば、力は尽きる。
 とうとう青年は喉の渇きに耐えきれなくなり、どことも知れぬ森の、大木の根元に座り込んだ。

 そして、眠りについた。
 喉の渇きのせいで、その晩に見た夢は、兜を被ったまま水瓶に頭を突っ込んで、抜けなくなるという滑稽なものだった。
232騎士と王女、忠義と偏愛 ◆KaE2HRhLms :2010/08/31(火) 01:34:49 ID:F10oRcq2

 水の跳ねる音を聞き、青年は目を覚ました。
 熟睡していたせいで、喉の渇きは限界に達していた。
 近くに水、おそらく河原がある。いったいどこだ、どこにある。
 水の音はまだ止まない。欲求で研ぎ澄まされた聴覚が、体を音源へ導く。
 青年は河原へ辿り着いた。山から流れ出る湧き水が河へ流れていた。底にある岩が見えるほど、透き通っている。
 水際に滑り込み、顔を水面に突っ込んだ。
 そして、思う存分青年は体を潤した。水が美味しいと感じたのは、久しぶりだった。

 喉を潤した青年は、ふと嗚咽の音を耳にした。若い女性の声だった。
 声のした方向を向くと、森の茂みから女性が姿を現わした。
 ところどころ破けた、かつては白かったであろう、ボロボロのドレスを身に纏っていた。
 青年は、そのドレスに見覚えがあった。
 女性の金の髪は乱れ、砂がこびりついていた。見たことのある意匠の施されたティアラが、女性の頭部に斜めに乗っていた。
 足には何も履いていない。裸足だ。無数の赤い線が、女性の白い脚に走っていた。

「王女! ああ! なんてことだ!」
 青年は女性に駆け寄った。近くで見ると、確かにその人は、王女だった。
 命を賭して守り抜こうと誓った、大切な王女だった。
「いったい……一体何が!」
「逃げてきたの。あいつらの目を盗んで」
 王女の喋り方は、王女らしさを失っていた。
 まるでどの町にでも居る、年頃の娘のよう。上品さなど、欠片もない。
「逃げてきた、とは」
「あいつらが寝静まった時に逃げたの。疲れていたみたいで、逃げるのは難しくなかった」
「それでは、体はなんともないのですか?」
「…………穢された」
「え――」
「あいつら、よってたかって私を犯したの。手を縛って、目隠しをして。
 ドレスを裂いて、大事なところをさらけ出して――貫いて、処女を奪った」

 青年は、どこまでも墜ちていくような、そんな絶望の心地だった。
 弱々しい目で、淡々と王女は語る。
「笑ってたわ。王女様、どんな気持ちだ、下賤な人間に犯されるのはどんな気持ちだ、って。
 答えたくなかった。でも言わされた。気持ち悪い、死にたい、って言った。
 そしたら、男達はまた笑うの。ドレスを全部脱がして、全裸にして、地面にねじ伏せて。
 股を強引に開いて、腰を叩きつけてくるの。動きが止まると、中に出されて。
 次の男が汚いモノを入れて、今度は下から貫いて、そのまま犯してくる。
 やめて、やめて、出さないでって、何度も頼んでも、やめてくれなかった。
 そうやって、地べたの上や、汚い男の上で強姦されるのが、王女様にはお似合いだ、って――」
「王女、もう、もう言ってはいけません!」
 青年が王女の体を抱きしめる。歯を食いしばり、涙を堪えて。
「思い出してはいけません。もう、もう!」
「忘れられると思う? こんな屈辱、忘れられない。
 もう、嫌。死んでしまいたい。こんな穢れた体で、お城には戻れない。お父様には会えない」
「それは……」

 黙っていればわからない。そう言おうとして、青年は口を噤んだ。
 王に隠し事をする、王に偽りを報告する。それは、騎士として最も重い罪。
 裏切りがばれてしまえば、極刑の後、死骸を無惨にさらされる。。
 過去、王に背いた者達は皆そうなってきた。王が重用していた臣下であろうと、それは変わらなかった。
「お願い。何も言わないで、私に従って――お願いを聞いて。
 私は城に戻らない。これからは、庶民の女になる。
 王族も、お城も、煌びやかな衣装も、全て捨てる。
 遠くへ行きましょう。お父様から逃げるの。お父様の目が届かないぐらい、どこか遠くへ。
 一緒に来て。これは王女としての命令じゃなくて、家族としての、お願い」
「……わかりました。行きましょう」
 青年はこの時、騎士としての誇りを捨て去った。
 王女は青年の返事を聞いて、満足そうに微笑んだ。嬉しくてたまらない、という風だった。
233騎士と王女、忠義と偏愛 ◆KaE2HRhLms :2010/08/31(火) 01:38:03 ID:F10oRcq2

 青年と、元王女は、小さな集落で居場所を見つけた。
 そこは離れた町と町を結ぶ、宿場のような場所だった。
 あるものは家屋、食糧、水ぐらいのものだったが、二人にとってはそれだけでありがたかった。
 そこに長く住んでいるのは、町での生活に飽きた人間ばかり。全部で六人。
 うち、男性は二人、女性は四人。
 そこに青年と元王女が住むようになり、男女一人ずつ増えた。

 小さな宿場とは言え、人が住んでいる以上、蓄えはある。
 わずかな蓄えを狙って襲ってくる野党を遠ざけるのが、男達の仕事だった。
 今は騎士ではないが、青年は厳しい試練を乗り越えて騎士になったほど、腕が立つ。
 元王女は、好奇心旺盛な性格もあり、物事を覚えるのが早かった。
 豪奢な料理を味わってきたため、舌が肥えていて、味覚が鋭かった。
 料理は、元王女の負けん気を刺激する最高の趣味となった。
 青年と元王女は、すぐに集落の人間に気に入られた。
 素性が明らかでなくても、集落の人間にとっては、それは些末なことだった。

 だが、元王女には気になることがあった。
 この集落には、男が少ない。若い男は、青年一人だけだった。
 残る女達は、指導役を請け負う経験豊富な中年の女性を除き、全員が若い女ばかり。
 中には、元王女より年下の女まで居た。
 それだけならまだ、元王女の心は平静でいられただろう。
 しかし、男日照りの環境にいた、若い女の情欲が青年に向くまで、それほど時間は掛からなかったのだ。

 ある日のことだ。
 元王女は集落を訪れた大勢の商人のための料理を作り、青年から長い間目を離してしまった。
 ようやく料理を作り終え、青年の元へ向かった時、彼女は見た。
 青年と、自分より年下の若い少女が、森の茂みから出てくるところを。
 二人が何をやっていたのか。そんなことはどうでもよかった。
 青年の隣を歩く少女を見て、元王女の怒りは真っ赤に燃え上がった。
 すぐさま少女を押しのけ、青年の隣の位置を取った。
「おう……いや、どうしたんだい、そんなに顔を赤くして?」
 青年の服から漂ってくる、少女の匂いがうっとおしくて、たまらなかった。
 
 翌朝、商人達が出発する直前。
 元王女は、一人の商人に、小さな宝石と小包を手渡した。
「その宝石はあげる。好きに使ってくれて良いわ。
 ただし、条件があるの。その小包を、この国の王様のところへ届けて。
 上手く届けてくれたら、そんな小さな宝石よりも素晴らしいお宝を、あなたは手に入れる。
 頼まれてくれるかしら? なんなら、もう一つ宝石をあげましょうか?」
 元王女の自信に満ちあふれた言葉に、商人は力強く頷いた。
234騎士と王女、忠義と偏愛 ◆KaE2HRhLms :2010/08/31(火) 01:39:54 ID:F10oRcq2

 それから、青年と元王女が城に連れ戻されるまで、三日ほどかかった。
 青年は、すぐさま牢屋に閉じ込められ、拷問にかけられた。
 その全ての責めを、青年は受け止めた。
 王女が穢されたのは、自分のせいなのだと、青年は信じて疑わなかった。

 王が問題としているのは、青年が王女を連れて集落に紛れていたことだった。
 王女を連れ戻したなら、すぐさま城に戻り、その旨を報告する義務が、騎士にはある。
 義務を怠り、王を欺いた者は全て反逆した者だと、王は厳格に決めていた。
 しかし、青年の場合は私情を挟まざるを得なかった。
 青年を殺してしまえば、王女が悲しむのではないか。それに、長年育ててきたから、情もある。

 王族のみの会議の場で、王はとうとう、青年の処分を口にしようとした。
「お待ちください、お父様」
 王女は、物怖じせず、大勢の王族を前に告げた。
「私を見つけ、あの集落に連れていったのは、彼ですわ。その責は問うべきでしょう。
 しかし、彼が最初に私を発見したのも事実。そこは彼の功績でしょう。
 皆様は納得されないでしょうから、ここは私に処分を任せていただけないでしょうか?
 彼の忠誠心を試すために、最適の方法があります」
 王族は、黙って王女の言葉を聞いていた。
 毅然とした態度を取る王女の言葉からは、青年に対する甘さが一片たりともにじみ出ていない。
 しかして、王女は青年への処分を口にする。

 その言葉は残酷なものだった。
 王を含む王族にとってはもちろん、口にした王女にとっても。
 王女は、自分がこれほどに黒い考えをできる人間なのだと知った。
235騎士と王女、忠義と偏愛 ◆KaE2HRhLms :2010/08/31(火) 01:43:24 ID:F10oRcq2

 青年が人を殺めたのは、その日が初めてだった。
 それまでは模擬戦闘ばかりで、真剣を他人に向ける機会がほとんどなかった。
 生身の人間に対して、真剣を向けるなど――もとより優しい性格の青年には、非常に辛いことだった。

 王族に背くものに、死を。
 騎士の甲冑を纏うことを許された青年に課せられた使命は、王国に危機をもたらす不穏分子の抹殺。
 青年と王女が隠れ住んだ集落は、反乱分子の巣窟である。殲滅せよ。
 それが、国の最高権力者である、王の命令だった。
 騎士にとって、王の命令は絶対。青年は王の命令に、盲目的に従った。
 集落の人間が反乱分子だと王が決めたなら、そうなのだ。
 どれほど世話になった人達であっても、王の剣なら、殺さなければいけない。
 それが、この国の騎士の倫理だ。

 大剣を振りかぶり、切りつける。
 この辺の地面には石ころが多いから、倒れたら投げろ。そう教えてくれた、ルイスさん。
 彼の大きな腹から内臓が飛び出し、地面を赤黒く染めた。

 振り返り様、水平に一閃。
 もうすぐこの集落に人間がたくさん来る。それまでは一緒に頑張ろうぜ。ゲインさんは肩を叩いて励ましてくれた。
 彼のこめかみに大剣が食い込み、頭が爆発して、目玉と脳漿が宙に飛んだ。

 鉄兜に小さな衝撃。青年にダメージは無い。
 遠慮しないでたくさん食べな。ちょっとでも残したら承知しないよ。ロザリーおばさんの言葉はきついけど、暖かかった。
 今飛んできたばかりの包丁を手に取り、投擲。彼女の悲鳴と一緒に、ドサリ、という音がした。

 これは僕の罰だ。僕が悪い。
 僕が騎士の倫理を裏切って、単独で行動したから、全ておかしくなった。集落の人間を殺したのは、僕の意志だ。
 一人一人、青年は集落の人間の命を奪っていく。
 深夜の奇襲だったため、住人は皆、家屋の中で寝ていた。
 この時間を選んだのは、自分の姿を見られないため、そして親しんだ人の死に様をできるだけ見ないため。
 しかし、逆効果だった。
 外では激しい雨が降り続け、雷まで鳴っている。
 暗闇、激しい雨、体を揺さぶる雷。全てが、青年にとって忘れられない記憶として刻まれるだろう。
 初めて人を殺したという、忌まわしい記憶と共に。

「あ……あぁぁ……」
 最後の一人は、一番仲の良かった少女だった。
 名を、エイミーという。ファーストネームだけしか、彼女は教えてくれなかった。
 あの夜。大勢の商人が訪れた夜、エイミーは青年を誘った。
 彼女の身体は暖かかった。
 王女を守れず、自分を責めてばかりいた心を、癒してくれた。
「おねがい、たすけて……」
 助けたい。でも、それはいけないんだ。
 もう僕は、国を――王女を裏切れない、傷つけられない。
 騎士になったその時に、僕は誓ったんだ!


 そして、叫びは雷鳴にかき消される。
236騎士と王女、忠義と偏愛 ◆KaE2HRhLms :2010/08/31(火) 01:45:36 ID:F10oRcq2

 それからずっと、青年は騎士であり続けた。
 忠誠を誓った王が死に、新たに女王が王位に即位した時には、女王の側近の地位についていた。
 女王の傍に居て、守り続ける。いつまでも変わらない、彼の騎士としての誓い。
 他の騎士は、彼のことを血も涙もない人間だという。
 女王の言うことを忠実に守るだけで、己の意志を持たない、剣みたいだと。
 その中傷は、彼の姿を的確に言い表していた。

 後輩の騎士が噂話をしていても、彼は何も感じない。
 青年の生き方こそが、青年にとっての、騎士の在り方だからだ。
 女王に逆らわず、純粋な王の剣として、玉座に座る王に頭を垂れる。
 彼は、そうやって生きていくしかないのだ。
 誰かに間違っていると言われても、老齢の騎士団長にねじ伏せられても、彼は考え方を変えない。
 正義とは、自分自身で決めるものだから。

 夜が訪れ、青年は女王の部屋を訪ねる。
 王族の誰も通されない、二人きりの会議。
 何が行われているのか、城内の誰も知らない。
 知っているのは、女王と側近の騎士の二人だけ。
 二人だけの、秘密の遊びだった。

 女王は最も忠実な騎士をベッドに招く。
 そして、全く同じ言葉で、誘うのだ。

「今夜も、私と一緒に居てくれるわね?」
237名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 01:49:34 ID:F10oRcq2
終わりです。
それではまた次の機会に。
238名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 01:51:00 ID:x0s7s+B+
gj
ヤンデレ家族も楽しみにまってます
239名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 01:53:13 ID:L7l4Hp9I
基本的にはGJだが
一応、苦手な人が多そうな属性が入るとき(グロ、NTR等)は注意書きを書いてくれないか?
俺は全然大丈夫だが余計な摩擦をうまないようにさ
240名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 01:56:47 ID:F10oRcq2
>>239
すいません、入れ忘れてました。以後気を付けます。
241名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 02:08:17 ID:L7l4Hp9I
はい、ヤンデレ家族の方も待ってます^^
242名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 02:23:14 ID:V0WxJwju
寝取られは…ヤンデレの中でも禁じ手……
243名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 02:25:53 ID:XmbVFlwJ
だが王女が穢された証拠は何も無い^^
244名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 02:33:08 ID:iaNKvTjZ
確かに人を雇って一芝居打った可能性もあるが真実はただ作者の頭の中に
245名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 04:15:56 ID:XmbVFlwJ
よく体で男を骨抜きにするなんて言うけれども、いくらなんでもそこまでなるかなぁ・・・
246名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 04:46:35 ID:KJLYnocI
↑作者必死だな
普通にNTRじゃん。少なくともヤンデレではやめろよ
247名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 04:50:24 ID:V0WxJwju
ヤンデレで寝取られネタ使って叩かれた例が「スクールデイズ」言葉が寝取られたってことでめちゃくちゃ荒れたからね
248名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 04:56:49 ID:L7l4Hp9I
ハイこの話はこれでお終い!
以下ヤンデレに履いて欲しいパンツの色についてのレスが30ほど流れる模様↓
俺は黒だな
249名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 06:27:42 ID:nRI23inJ
>>239白っす。

まあヤンデレとネトラレ(これも定義広いよね)ってある意味対極にある属性だからこのスレではやめては欲しい。上の作品は汚された恐怖に根ざしてヒロイン動き出すのが萎える。病んでるけど違う意味でだし。
特殊な場合を除いて噛み合わない(主人公の非ヤンデレ彼女がビッチだとかそういう設定だったらまだしも)。
個人的に言わせてもらえば、寝取られ展開って書いてるほうは読者の心を揺さぶれるの分かるから楽しいけど、読む方は恐くてきつくて鬱だし。奪われる恐怖の中での性欲ってもの凄い刺激だけど、突き詰めればただ単に怖がってるだけだからね読者。
読んじゃった方読んじゃった方で、あんまり恐怖の刺激が強いもんだから、
何度もそれ系のジャンルを確認しに言っては刺激に浸り、性癖と勘違いすることでそれを克服しようとするし。しかも属性の人、恐いからってそれを他人にまで広げて安心とかしようとするし。
友達にいるけど、端から見てて正直たまらないです。
読んだ人ほぼ全員の心を揺さぶるという意味において、寝取られ以上のものはないんだろうけど。
それで楽しいのはキホン書く人だと思う。そういうのを意識すると逆に冷静になるんだけど。

とにかくヤンデレのなかでのネトラレ展開は嫌いっす。何か違くね
250名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 06:29:36 ID:nRI23inJ
あまちがえた>>248
251名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 07:14:44 ID:KJLYnocI
>>249
また次の機会に、なんて臆面もなく寝取られおいていく荒らし紛いのカスより(もしやウナギ?)
俺はあんたの考察が素晴らしいと思ったよ。
なるほどなぁ…怖がってるのを性癖と勘違いしてる、か。そういう考えは全くなかった
252名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 09:30:43 ID:g3KFwB5b
>>247
あんなストレス溜まるアニメも珍しい
253名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 10:37:47 ID:V0WxJwju
ヤンデレ好きで「スクールデイズ」の黒歴史知っている上でネトラレ出したならまだ良いよ。知らないで出したなら恥ずべき無知。キャベツとレタスの区別が出来ないくらい恥ずかしいよ
254名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 12:18:12 ID:nkQvaRuP
>>253
切ってない状態だとキャベツとレタスの違いが
わからない自分はどうすれば……
255名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 12:27:45 ID:UP8QOEma
>>254
俺はレタスを切らないものだと思っていたんだ…
256名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 12:50:00 ID:1D6uQlKt
食べてみれば違いがわかるかもしれない
257名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 13:25:08 ID:jY+WgQPp
さあ、飲み込もう
258名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 13:31:00 ID:V0WxJwju
基本ヤンデレ好きにとってネトラレはかなり気分害するものだから止めた方が良いよ。つーかこれ基本知識ね
259名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 13:32:05 ID:g3KFwB5b
>>255
レタスなんか切らないだろ
260名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 13:43:47 ID:RQz4Amlv
味覚音痴の自分にはキャベツとレタスの区別なんてっ…

>一芝居打った
王女さまなら初めてであることもさらりと誤魔化してそうだ
261名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 13:45:41 ID:edn0vau9
>>260
音痴なんてレベルじゃねーぞ
262名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 13:55:02 ID:1D6uQlKt
緑色っぽいのがレタスで緑色の奴がキャベツで緑色みたいなのが白菜だよ
263名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 16:48:13 ID:73VrmIe/
ヤンデレ好きは自分を愛してほしくて仕方ない云々、っていう分析?も昔あったしみんなネトラレ嫌いだよな

そもそもネトラレって誰得
264名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 17:05:13 ID:tFTTepDv
>>237
おもしろかたおつ


この作品で誰が誰に寝とられたの?
誘拐レイプのこと?
265名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 17:06:52 ID:edn0vau9
主人公が寝取られる
266名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 17:10:53 ID:V0WxJwju
>>264
それそれ、「王女と騎士 忠義と偏愛」だっけ?あれはネトラレ入れなけりゃ良作になったのにな。ネトラレという余計なもん入れたせいで一気に台無し。まぁ、作者の趣味もあるんかもしれんがよ、ヤンデレちゃんと勉強してからこのスレ来いって話だよ。
267名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 17:14:31 ID:ddtvGnHP
>>263
そういうひともいるけど
自分みたいに昼ドラ感覚のやつもそこそこいるとおもうが
主人公が女の子の愛情に困惑したり次第に逃げ道を塞がれていったりする姿が好きみたいな感じ
女の子に萌えるというよりもそのシチュエーションやら
主人公のへたれ具合に萌えたりする

だから別段ハッピーエンドになろうがなるまいが
過程がちゃんとしていれば問わないってかんじ
268名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 17:15:39 ID:edn0vau9
こんなにも独占欲が強いなんて
まるで男のヤンデレじゃないか
269名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 17:17:17 ID:tFTTepDv
レイプされた時の快感が忘れられなくてそっちに走っちゃうぐらいじゃないと寝とられじゃなくない?
寝とり寝とられスレも見てるからそんな気がする

何でもめてんのかわかったのでこの話はもういいです
270名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 17:28:24 ID:V0WxJwju
レイプもネトラレと同じだ。どっちにしろ、「王女と騎士 忠義と偏愛」の作者はヤンデレに関してあまりに無知過ぎる。そんなにレイプとネトラレ好きなら他のスレ逝け。
271名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 17:35:41 ID:edn0vau9
男主人公が逆レイプされて寝取られるってなんて修羅場フラグなんだ
272名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 17:42:00 ID:V0WxJwju
>>271
ここにヤンデレ博士が光臨された!!ヤンデレで逆レイプはヤンデレ作品を一気に盛り上げるが、レイプ・ネトラレは逆に一気に駄作にする。王女と騎士の作者は>>271の垢を煎じて飲んで見習え!!
273名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 17:44:49 ID:AgQt1FNv
GTRってカッコイイよね

次の投下をお待ちしております
274名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 17:44:50 ID:KJLYnocI
普通にセンスあるやつならヤンデレと寝取られは水と油ってすぐにわかると思うけどな
寝取られの定義は色々あるだろうけど、ここはそういうのに敏感なんだってぐらいヤンデレを理解してたら普通気付くだろ
まぁ寝取られって書いてる作者は楽しいらしいから、俺らは気分を害する壮大なオナニーを見せられたってわけだ。他の作品でも中二みたいなの書いてんじゃないの?
荒れるからスルーしたいけど、マジでうざいわ糞が
275名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 17:56:10 ID:V0WxJwju
>>274
感動した……つーか良く言った!!ヤンデレ好きの鏡だ!!「王女と騎士 忠義と偏愛」の作者見てるか?これがヤンデレというもんだ。オメェは全ヤンデレファンを敵に回したんだよ、無能
276名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 17:59:37 ID:g3KFwB5b
>>274
いらんこと書きすぎだ
マジでうざいわ、で止めとくべきだったな。
277名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 18:07:51 ID:L7l4Hp9I
人のSSなんて全部オナニーだぞ
煽ってるだけだと荒れるだけだ。嫌な作品ならスルーしろ
後投下する人は>>1をよく読んで注意書き付けるなりしてくれ 、それ有るだけで読んで気分害した奴は自業自得だから
どんだけ叩かれようと作者だけは自分の作品を守れよ
278名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 18:10:08 ID:ddtvGnHP
ここまで延々と繰り返されると
さすがに叩いてるやつが自演っぽくみえるんだが
同じことをいうために何回もレスつけんなよ…

あんまりやりすぎると叩かれてる作者以外も
来なくなるぞ
279名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 18:16:35 ID:KJLYnocI
確かにな。さすがに寝取られだから自演だとは思わないが悪のりしてるやつはいるし



それよりヤンデレには巨乳がいいか貧乳がいいか話し合おう
280名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 18:22:28 ID:r8CNAMjm

貧乳に一票
でも、巨乳の方が実際は多いような気もするな
ちっこい貧乳ヤンデレ眼鏡っ子だったらもろストライク
281名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 18:25:11 ID:ncGW5wDT
ヤンデレ貧乳は妹系だと比較的良く見るような気がするけど
ヤンデレ眼鏡ってあんまり見ないな。何でだろう

暗いイメージ同士を掛け合わせるのを作者が無意識的に自重しているんだろうか
282名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 18:30:16 ID:ZwBGl5MK
メガネかけてたら虚ろな瞳が見えないじゃないか・・・
283名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 18:35:00 ID:edn0vau9
>>279
巨乳でヤンデレとか無敵だろ
昔乳のでかさとヤンデレ度は比例するという妄想をした事がある
284名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 18:35:56 ID:wAyKWktG
嘘を嘘と見抜けないと(掲示板を使うのは)難しい

良く言ったものだ、与えられた情報がすべて真実というわけではない
条件反射は犬でもできるよ
285名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 18:37:01 ID:TnAj0qWn
>>282
外せばいいじゃない。かけたり外したりできるんだから。

眼鏡って、いいアイテムになると思うんだぜ。
眼鏡スキーの彼の気を惹くために、伊達眼鏡をかけるヒロイン。
俺だったら、この健気さでクラッとくるね。

しかし、彼は伊達眼鏡を認めないにわか眼鏡スキーだった。
頑張ってアピールしても彼は振り向いてくれない。
どうしたらいいの……とか、いろいろ想像できる。
自分が眼鏡をかけているということで、実は美少女なのに、
不細工だと思い込んでたら、より萌える。

と、眼鏡っ娘スキーの俺は考える。
286名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 18:37:45 ID:1D6uQlKt
おいお前の後ろに巨乳でも貧乳でもない子が立ってるぞ
287名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 18:39:23 ID:FvfvMW/U
ギャップってのもあるんじゃね?
普段は男勝りだったり完全無欠だったり
頼りがいがある先輩だったりが
主人公のこととなると目の色変えるのが好きとか?
288名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 18:43:39 ID:KJLYnocI
ちょっと待ってくれ
乳のでかさがヤンデレの度合いに匹敵するならヤンデレの乳は爆乳どころじゃすまない
289名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 18:45:31 ID:FvfvMW/U
>>286
常々欠点が多い子か完全無欠の子か
それとも可もなく不可もなくの子がいいのか悩むことがある
結果全部いれて修羅場にすればいいんじゃねと解決する

普通乳はリアルじゃ需要それなりにあるけど
二次元だと途端にいらない子扱いされるからなぁw

優等生キャラも食い飽きられやすいから
エロゲーだとメインヒロインのはずが
濃いキャラばかり集まる作品とかでは空気だったり
290名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 18:48:18 ID:ncGW5wDT
普通乳と書くとアレだが、美乳と書くと急に需要が増えるぜ
291名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 18:49:45 ID:edn0vau9
>>288
最早歩けない所まで想像して
それからは考えるのをやめた
292名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 18:52:47 ID:x0s7s+B+
なんかヤンデレ家族の作者叩いてる人がいるけどヤンデレ家族の人気に嫉妬してるから適当な理由つけて叩てんの?(笑)
293名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 19:02:44 ID:KJLYnocI
誰か↑に日本語を教えてやってくれ

俺はちょっとヤンデレにお前より幼なじみが好きなんだと伝えてくる
294名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 19:06:30 ID:1D6uQlKt
幼なじみもヤンデレだったらどうするんだ
295名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 19:10:19 ID:nXyqvcen
>>294
ヤンデレ自体幼馴染の変装で同一人物なんだろ
で、>>293はまんまと引っかかったと
296名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 19:11:45 ID:cRKFtYuD
キモ姉妹でヤンデレの幼馴染…マジで禿げるわwwww
297名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 19:33:29 ID:V0WxJwju
いくらなんでもネトラレ・レイプはマズすぎる!ヤンデレ家族作者はこれ分かった上でやったのか?ハッキリ言って見損なった…
298名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 19:42:17 ID:L7l4Hp9I
乳の大きさ=包容力
つまり乳が小さいほどよりヤンデレになりやすいと言う俺の分析(キリリッシュメント
299名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 19:47:59 ID:KJLYnocI
巨乳だと体を武器にできる
貧乳だとできない、つまりはそういうことだ
300名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 19:51:29 ID:9GGuNUR4
一応聞くけど、お前ら叩いてる作者がヤンデレ家族の人ってことは理解してるよな?
301名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 19:51:53 ID:QkohnWx8
巨乳ビッチvs貧乳ヤンデレ

しかし巨乳キモウトが貧乳スキーの兄に
ヤキモキするssもあったなぁ
302名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 19:53:00 ID:L7l4Hp9I
なる程、自らのボインでビンタして気絶した男君をお持ち帰りか
それもアリだな!
つつましい胸の利点と言えば…つっかえる所が無いから通風口の中にも潜伏できる事くらいかな
303名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 19:55:30 ID:edn0vau9
乳がでかいぶん愛もでかいんだよ!重いんだよ!
304名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 19:57:28 ID:V0WxJwju
>>300
もちろんさ。いくらヤンデレ家族の作者だとしてもレイプ・ネトラレは許されん。いつも楽しみにしてたのに…裏切られた気分だよ。これ本人見てれば良いが
305名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 20:00:20 ID:9CF9nIGq
いやぁ赤IDは強敵でしたね・・・
306名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 20:00:49 ID:X61Xrrei
ID:V0WxJwjuの頭の弱さがひどすぎて
同じこというのにどんだけレスすれば気がすむんだ…
お前の言いたいことはわかったからさ
オウムのようにくりかえしてんじゃねーよ
307名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 20:00:56 ID:KJLYnocI
いや、さっき気付いた
でもぶっちゃけ、この作品を書いてるから寝取られみたいなのを書いてもいい、という結論にはならんだろ。ヤンデレ家族を書いてるからって何をしてもいいのか?そんなもん免罪符にならん
もちろん、だからってヤンデレ家族を楽しみにしないわけじゃないけどね。普通に毎週楽しみにしてるし

というか、もういいだろ。馬鹿が悪のりしてくるし俺にも責任あると思ったから雑談にしようと思ったのに。いくら何でもこのスレで寝取られはやめろよ…
308名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 20:01:31 ID:g3KFwB5b
>>304
おまえしつこいよ?
309名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 20:03:14 ID:KJLYnocI
っと、ヤンデレに襲われて訳のわからん言葉を口走っちゃったぜ
そろそろヤンデレに結婚することを伝えないとな…
310名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 20:16:12 ID:iaNKvTjZ
前々からこのスレを潰そうとしてる奴がスレの大黒柱についた傷を見つけたから集中攻撃してんだろ
311名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 20:16:27 ID:svGY0knx
赤ID共黙れ
ここはお前らの日記じゃねぇ
312名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 20:17:58 ID:ZQDRLuFy
ヤンデレ好きって潜在的に独占厨だし
自分(主人公)を他のやつには目もくれず盲目的に愛してくれるヒロインが好きっていう
313名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 20:52:44 ID:JM+vDHt8
>>312

認めたくないが、そうなんだろうな………

でも独占欲はないな…。


しかし作者投稿少なくなったね。
314名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 20:59:03 ID:056D/OTE
アホが何と言おうが投稿はできるし、内容も作者次第
異常なレスで伸びているがいつもぐらいのコメントついてるじゃん
315名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 21:18:46 ID:r8CNAMjm
投稿、してもいいんだろうか……この空気
316名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 21:21:31 ID:ncGW5wDT
どうぞどうぞ
317名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 21:24:10 ID:r8CNAMjm
よかった。
では、投稿します。

一応注意、グロありませんが人は死にますので。
318後の空白すらも私だけに:2010/08/31(火) 21:28:33 ID:r8CNAMjm

「はいこれ」
「ノート?」

 こくりと笑顔で頷いた野崎に僕は思わず首を捻った。
 彼女にこんなノートを貸した覚えはない。
 第一、そのノートは僕の趣味とはかけ離れたファンシーな柄の表紙、これが僕のものでないことは明らかである。
 それでも野崎は笑顔のまま何も言わないので、仕方なくこちらから聞いてみることにした。 

「これ、何だよ」
「日記帳」
「日記帳?」

 ただのノートだとばかり思っていた。
 どこにもそれを示唆する文字がなかったので、まあ気付かなくても無理はない。と、自己弁護に励んでみる。
 相変わらずにこにこと満面の笑みを浮かべている野崎は「いやいやー」と照れたように呟いていた。
 なんだ、自分の日記を僕に見せてくれるのか。

 そう言うと、彼女はハッとして右手を大げさに左右へ振って、否定の意を表した。

「ち、違う違う! これは君の!」
「僕の?」
「そう。だって、最近学校とか遅刻気味だし、テストの成績も良くないっておばさんから聞いたんだよ!」
「それが何だ」

 おばさんてあれか、僕の母親か。自分の息子の成績を暴露して何が楽しいんだよ。いや、そんな成績を取る僕が悪いのか?
319後の空白すらも私だけに:2010/08/31(火) 21:30:56 ID:r8CNAMjm
 
「だからね、日記でも付けるようになれば持続性も養われるし、
 なにより毎日文章を書くってことが小論文とかに役立ったりするんだから。ね」
「ね。じゃない。そんな面倒くさいこと、いまどき小学生でもやらないぞ。
 夏休みの一行日記は毎日《楽しかった》がデフォな時代だ」
「どの時代でも不真面目な子は誰でもそうだったと思うよ」
「……とにかく、僕が貰ってメモ用紙になり下がるよりも、お前が持って有効的に使った方がいいだろ」

 じゃあなと別れを切り出すと、野崎はあからさまに項垂れて「そっかー……」と小さく呟いた。
 そんな様子を見ていると、自分がとてつもなく悪いことをしてしまったんじゃないかという罪悪感に苛まれる。
 まあ、こいつと絡んでいれば日常茶飯事付け回るものだ。なにをいまさら、こいういうときは、

「わかったよ、もらう」

 折れてしまえばいい。
 言った瞬間に野崎はパアッと明るい笑顔になり「じゃあ、はい」とそのノートを手渡した。
 良く見れば鍵付きのノートだった。これなら母親や妹弟に読まれて冷やかされることもないだろう。
 
 なんというかその、な。
 正直実感は未だないのだが、野崎は彼女(二人称的な意味ではなく)なのだから貰わないわけにもいかない。
 一度は断ったくせにと言われそうだけれど。まあ、そのあたりは僕が天の邪鬼なのだと思ってくれれば問題はない。多分。

「毎日はつけないだろうけど」
「できる限り頑張って!」
「できる限りな」
「あと、勉強も頑張ってね! 来年受験なんだから」
「……できる限り、な」
320後の空白すらも私だけに:2010/08/31(火) 21:33:43 ID:r8CNAMjm
《10月14日 野崎に日記をもらった。》
《10月15日 順調に二日目。今日は近藤がやたらと絡んできた。
 「ねえねえ野崎さんとはどこまでいったのー?」にやにやしながら聞くな阿呆。》
《10月16日 よし三日目だ、よし。今日は野崎の機嫌があまりよくなかった。
 いつもは能天気に笑ってるくせに、風邪か? 心配だ。》

《10月18日 三日坊主を体現しそうになった、なんとかセーフ。
 野崎に日記のことを言われなかったら、そのまま放置するところだった。今日は雨が鬱陶しかった。》

《10月20日 大崎たちと本屋へ行った。》
《10月21日 今日は野崎と本屋へ行った。料理雑誌って、主婦か。》

《10月25日 大崎が彼女と喧嘩をしたらしい。僕は力になれないが、仲直りできるといいな。
 僕は野崎とうまくいっているので、喧嘩の兆しもなし。》

《10月27日 近藤が映画へ行こうと誘ってきた。気持ちは嬉しいが野崎に誤解されるとまずい。
 本当に悪い、次なんかおごるから、そんな目で見ないでくれ。》
《10月28日 野崎が始終へばりついてきた。悪い気はしないが、さすがに周囲の視線が痛かった。》

《10月31日 野崎がハロウィンパーティーがどうたらと言い始めたので、
 適当に菓子をやったらその3倍のお返しをもらった。ハロウィンなのか、これは。》
321後の空白すらも私だけに:2010/08/31(火) 21:37:11 ID:r8CNAMjm
《11月14日 一か月も続いている。よくやってるな。》

《11月16日 餅田が勉強を教えてくれと言ってきた。もちろん速攻で断った。僕にそんな技量はない。
 ……どうして女ってこう頼みごとを断ると罪悪感を覚えさせられるんだろう。》
《11月17日 今日は野崎とは帰らなかった、用事があるらしい。とりあえず大崎や小川と帰った。》

《11月19日 餅田から変なメールが送られてきた。
 自分のアドレス削除してくれってどういうことだ? 後で電話をかけようと思う。》
《11月20日 昨日電話に出なかったので、放課後に餅田を捕まえて聞いてみるとなんでもないと言われて逃げられてしまった。
 何なんだ?その直後に野崎が追いかけてきたので、とりあえず野崎と下校した。》

《11月22日 相変わらず餅田には避け続けられている。
 ……僕が何かしたのか? 勉強を教えるのを断っただけだぞ?》
《11月23日 野崎や他の奴と話していても餅田のことが気にかかる。
 明日もう一度話を聞いて、次に避けられたらもう諦めよう》
《11月24日 うそだ》

《11月30日 僕のせいか?》

《12月04日 餅田が亡くなって10日以上たつ。
 あんなことを断ったぐらいで死ぬわけがないとは思う。でも、あいつが飛び降りる理由も他にない。》
《12月05日 野崎が最近、以前に増して優しい。気にかけてくれているんだろう。
 ありがとう、ごめん》
《12月06日 今日は近藤が野崎や大崎たちと明日は遊びに行こうと言ってくれた。
 明日は普通に学校なんだが、承諾してしまった。》
《12月07日 僕もそろそろ立ち直ろう。このままぐずぐずしていても仕方がない。
 餅田のことは未だいろいろと調べているが、一般高校生に掴めるものなんてたかが知れている。でもやろう。
 今日は、確かに楽しかった。ごめん。》

《12月10日 期末試験だ……学校滅べ、テスト問題もそのデータも紛失してしまえ。》
《12月11日 野崎も近藤もこの間僕らと遊んでたよな? 何でそんなに出来たような顔してるんだ? 
 その脳を僕にくれよ……。》

《12月15日 終わった。いろいろ。》
《12月16日 授業なんてもういいだろ?冬休みにしてくれよ頼むから、しかも今日土曜だぞ?
 とりあえず大崎が振られたことが判明した、小川に彼女ができたことが判明した。大崎生きろ。》
322後の空白すらも私だけに:2010/08/31(火) 21:38:51 ID:r8CNAMjm

《12月19日 野崎は今日も元気だった。近藤にクリスマスは野崎と過ごすのかと聞かれた。当たり前だろ。》
《12月20日 いつも以上に機嫌の良い野崎が一緒に帰ろうと言ってきたが、断ってしまった。
 今日は先に近藤と約束したんだ、ごめん。前回のことがあるので断れなかったんだ。》
《12月21日 野崎の機嫌が悪い。昨日断ったからか?
 埋め合わせをすると言ったら「ああごめん、違う違う。君が気にすることじゃないんだよ」と言われた。意味がわからん。》
《12月22日 近藤が学校の階段から落ちて、救急車で運ばれていったらしい。落ちるという言葉がトラウマになりそうだ。
 とにかく見舞いへ行こう。明日から冬休み。》
《12月23日 野崎に一日中ひっぱりまわされたせいで見舞いにはいけなかった。
 断りきれない僕も僕だ……。明日は行こう。》
《12月24日 言いたいことがあるとここへ書くくせがついてしまったらしい。
 まあ、吐き出せば気も晴れる。野崎の我儘具合がひどい、前はこんな調子じゃなかったのに。》
《12月25日 野崎と近藤のところへ見舞いに行った。足の骨を折ったらしい、ギブスをしていた。
 クリスマスなので、昨日野崎と別れた後に買ったストラップをあげると異様に嬉しがってくれた。
 あそこまで喜んでくれたのなら送り主として本望だ。
 野崎は他の知人が入院しているらしく近藤とは顔を合せずに、その見舞いへ行った。クラスメイトなんだから顔ぐらいみてもいいだろうに。》

《12月29日 野崎から連絡が全くない。さすがに不安だ。》
《12月30日 大掃除が面倒だった。ワックスがけとかいいだろもう、水ぶきで十分。
 野崎がメールをしてきたことにかなり安心した。風邪を引いていたらしい、言えば見舞いぐらい行ったのに。》
《12月31日 今年も終わる。来年は受験だから、さすがに勉学に励もう。》
《01月01日 野崎のさそいで初詣に行った。絵馬には『世界平和』と書いておいた、無難だ。
 野崎は見せてくれなかったが、後で確認すると僕とずっと一緒にいたいと書かれていた。
 ……素でこういうことを書く辺りあいつは可愛い。そうなるといいな。》
323後の空白すらも私だけに:2010/08/31(火) 21:40:55 ID:r8CNAMjm
《01月08日 新学期。近藤が松葉杖をついて学校へ来ていた。元気そうでよかった。》
《01月09日 近藤に野崎との様子を聞かれる。
 順調に決まっているだろと言ったら、渋い顔をされた。なんなんだよ。》
《01月10日 何度考えても餅田が自殺をしたとは思えない。
 あいつの葬式でも、ご両親が同じようなことを言っていた。やっぱり何か変だ。》
《01月11日 寒い、冷暖房完備の学校がうらやましい。
 近藤は昨日から風邪で休んでいるし、野崎も調子が悪そうだ。このまま学級閉鎖へもつれ込んでくれ。》
《01月12日 近藤から「野崎さんのこと、ちゃんと見てる?」と電話があった。
 僕以上にあいつのことを知っているやつはいないぞと惚気てみたら、無言で電話を切られた。なんだ?》
《01月13日 ついに野崎まで休んでしまった。メールには大丈夫とあったが、本当だろうか。
 大崎や小川は僕と同じく馬鹿の部類に入るので風邪などとは無縁の様子。》
《01月14日 再び近藤から電話。野崎とは別れた方がいいと言われたので、何を言っているんだこいつはと思った。
 が、話を聞いてみると本気で僕の身を案じているような口ぶりだった。野崎が近藤に何かしたのか?》

《01月15日 まだ足が治っていないのに、何で行方不明になるんだよ!? 》

《01月16日 近藤はまだ見つかっていない。そして、ずっと野崎を避けてしまっている。
 野崎は関係してなんかいないと思いたいでも近藤の言動が》
《01月17日 近藤は遺体で発見された。立ち入り禁止の学校の屋上で、脇腹を刺されて……
 誰かが殺したんだ近藤をあいつが殺される理由なんて(この先は滲んでいて読めない)》
324後の空白すらも私だけに:2010/08/31(火) 21:47:05 ID:r8CNAMjm
《1月18にち 野崎が怖い。
 近藤が行方不明になったときにあいつは休んでいたし、病院でも避けているように見えた。
 まさか近藤は野崎に突き落とされたんじゃないのか? 違うと思いたい。でも近藤は野崎を危険視しているようだった。
 実は自分が野崎に突き落とされたと知っていて、それで……野崎をちゃんと見ているかって……別れた方がいいって。
 だとしたら僕はとんでもないことをしてしまった近藤は伝えようとしてくれたのに僕は聞かなかったんだ
 あいつが殺されてしまった今そうとしか思えない学校の屋上なんかで普通人を殺すか? 
 そんな考えに至るのは学校の人間だけでも野崎が近藤を殺さなくてはいけない理由って何だ? 
 あのふたりはあまり口をきく方ではなかったから喧嘩をしようにも理由がない共通の知人など僕ぐらいだろうじゃあ僕がその原因?
 また僕か? 餅田のときもそうだったじゃないか真偽は分からないが原因は僕の知りえる限り『僕』だけ……
 まさか餅田が死んだのは それは さすがに ないだろ な? 
 とにかく野崎本人にそれとなく近藤の話をふってみて反応を見てみよう。僕はお前が人殺しだなんて思いたくないんだ――――
325後の空白すらも私だけに:2010/08/31(火) 21:50:57 ID:r8CNAMjm
「嘘つきさんだなあ、私のことなんて信じてないくせにー……。
 これ、絶対近藤さんを信用してるよね、私じゃないんでしょ? 私が殺したと思ってるんだよね? 
 わかってるよわかってるよ、もう嘘つかないで嘘つきさんは嫌いだよ、ああでも君なら許せる。
 そんなところも大好きだって言えるから。だって大好きだから一緒にいたいから一緒にいたいなら、全部許容しなくちゃね。 
 ね? だからこれからは私のことも許容してね? 近藤さんを骨折させたことも刺したことも餅田さんを突き落としたことも全部全部許してね? 
 いいよねこれからずっと一緒なんだから。でも君、本当に考えなしだよ、これだけ疑ってるのに単身私のところに来るなんて、
 ああわかった。むしろ私にああしてほしかったってこと? だって私がひとり暮らしなの知ってたでしょ? 実は君も私とずっと緒にいたくてわざと? 
 そっかそっか天の邪鬼さんなんだった、ごめんね気付かなくて。でもこれからは本当にずっと一緒だよ。
 邪魔な人を消すよりふたりしかいない場所へ行った方が楽だって、私やっと気付いたんだ。
 うわッ、そろそろ帰らないと目覚めちゃうかも……一応口塞いで拘束しておいたけど、起きてすぐそんな状態だったら怖いもんね。
 よし、待ってて今すぐいくから! そうだ日記見てたこと謝らないと……最初から日記のスペアの鍵をとって、毎晩読みに来てたって言わなくちゃ……
 でも私は好都合だったな……君の思ってることがすぐに分かるから。手足の拘束がとれるようになったら、また日記帳渡してみよう。
 それにしても楽しみだなあこれからずっと一緒にいられる好きだよ好きだよ大好きだよ
 君は私とだけいればいいんだからできることなら君に触れた人間全員いなくなってほしいぐらい
 でもそんなことしてるより君といたいからやめておくねああ本当に早く帰らないとっ」
326名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 21:54:53 ID:r8CNAMjm

これで投下終了です。
ありがとうございました。
327名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 21:57:34 ID:r8CNAMjm
最後の七行目の「ずっと一緒」が「ずっと緒」になってます。
誤字申し訳ない。
328名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 22:17:49 ID:L7l4Hp9I
赤IDですいませんね
GJです!
329名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 22:25:04 ID:ncGW5wDT
>>327
投下乙
これは妙手だな
監視カメラとか使えない学生には良いかもしれん
330名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 23:12:30 ID:1TZ1wkUZ
gj
投下のおかげで空気がかわってよかった
331名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 23:29:42 ID:g3KFwB5b
GJ面白かった。
332名無しさん@ピンキー:2010/09/01(水) 00:16:44 ID:hfbsCEWR
日記が恐怖をそそる
333名無しさん@ピンキー:2010/09/01(水) 00:28:25 ID:YqOO5BB1
 面白かったです。
 話の展開が日記でしか分からないのが逆に良いですね。
334名無しさん@ピンキー:2010/09/01(水) 18:37:41 ID:MqpQmAGM
他人に危害を加えないソフトヤンデレが好き。
335名無しさん@ピンキー:2010/09/01(水) 19:09:58 ID:hfbsCEWR
前に双子ヤンデレが話題になった事あったよなぁ…題名のない短編集10から25くらいの間にあったな
336名無しさん@ピンキー:2010/09/01(水) 22:01:39 ID:mcHGsXvy
>>335
…1から66まで読んでしまったじゃないか。
でも、好きなヤンデレで一発抜いて満足だ。

ところで、双子ヤンデレは何処にいたんだろう?
337名無しさん@ピンキー:2010/09/01(水) 22:11:30 ID:BjLEqIgD
皆にとって男の娘のヤンデレってアリ?ナシ?
338名無しさん@ピンキー:2010/09/01(水) 22:14:29 ID:Mch4aRgR
出たよ……
もうこういうの本当に空気読めって思うわ
339名無しさん@ピンキー:2010/09/01(水) 22:20:26 ID:46d3mNL5
某CDの奴はアリだと思った
340名無しさん@ピンキー:2010/09/01(水) 22:21:45 ID:1PjZzrrr
グっとくればアリ
341名無しさん@ピンキー:2010/09/01(水) 22:22:01 ID:fQum02/7
男の娘って女装した男だっけか。ならとりあえず>>1読め

男装少女なら今考えてる
が、落とし所が決まらなくて詰まってるところだ
342名無しさん@ピンキー:2010/09/01(水) 22:29:58 ID:Mch4aRgR
なーにが男の娘だ
ただのホモだろうが。気持ち悪い
343名無しさん@ピンキー:2010/09/01(水) 23:06:00 ID:Nuprr9ga
まぁ自分は見た目がかわいい女の子で心も女なのなら
男の娘でも余裕だけど
女装キャラって結構好みが激しいし
ただでさえ荒れぎみなんだからだすべき話題ではなかったな
344名無しさん@ピンキー:2010/09/01(水) 23:11:46 ID:hfbsCEWR
ネトラレ書いただけでこうも荒れるとはなぁ…ある意味病んでる
345名無しさん@ピンキー:2010/09/01(水) 23:18:26 ID:46d3mNL5
個人的にはここ本当に18未満立ち入り禁止の板なのかと思うぐらいだけどね
割と人が多いからこういうことが起きるのかもしれないけど
346名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 00:07:32 ID:/3sWOET5
この属性からして
人一倍愛に飢えてて
(自分だけをみててほしいという)独占欲があって
ハーレム願望(複数の女性から好かれたい)
という処女厨ホイホイなしろものだしね
347名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 00:10:45 ID:YzVNH+dv
だがここはそういうスレだ。
何も問題は無い
348名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 00:11:56 ID:jWnxsZLI
荒れるも何もルールはきちんと>>1に書いてるし、
男なら男専用スレがあるのに突撃してくる腐女子まがいのやつが悪いと思うぞ。なんでもかんでも擁護する方もおかしい
ネトラレも家族の人が書いてなかったら俺だって叩きたかったし
需要とかルール無視したら叩かれるのは当たり前なんじゃ?荒れるの嫌ならスルーしないと
349名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 00:14:04 ID:YzVNH+dv
>>348作者によって態度変えるとかクズ過ぎる
350名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 00:20:43 ID:jWnxsZLI
あー、まぁそれを言われるとな。だからずっとスルーしてたんだが・・
じゃあこの際だから言わせてもらえば、今回に関しては家族の人や専用スレがあるのに男ヤンデレを投下しようとする人じゃね、って思う
351名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 00:45:36 ID:sBI/XcjX
いつまでやってんだ?
352名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 00:48:12 ID:l+vzZUwM
それもスルーすればいい話。作品が来ればネタを引きずることも滅多にないし
反応して空気悪くして作品来なくなるのは勘弁
353名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 00:54:45 ID:EXLWfcMH
半角二次元でやれ
354名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 00:56:33 ID:YV3bHfGX
ぽけもん黒来てくれるかなあ
355名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 01:23:46 ID:V1hu/4WR
>>350
おまえもうこのスレ来ないほうがいいよ
多分それだけで、平和になるから。
356名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 02:16:57 ID:jWnxsZLI
は?
じゃあネトラレや男ヤンデレでも投下していいってこと?じゃあそうしようか?これからそういうの巧妙に混ぜていこうか?
叩きすぎや荒らしは駄目だけど、ルールを守らなかったり見なかったら注意されるのは当たり前だろ
357名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 02:36:56 ID:AAkeQJau
ざつだんしてすれつぶすのたのしい!
358名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 03:09:25 ID:yvPq/BIS
>ルールを守らなかったり
どこにもNTR禁止なんて書いてないですけど

他の叩いてたやつらもそうだがNTR嫌いなのは別にかまわんがそれを他人に押しつけるな
今後作者が注意書き付ければ済むし話だし、NTR作品が投下されてることすら嫌だってんならNTR禁止のスレに行け

てかまずあんなのはNTRに入らんし
強姦=NTRとか刃物=ヤンデレのレベル


長くなってスマンが俺と同じ考えの住民もいると思うからレスしてみた
359名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 03:10:03 ID:zTg8K1pm
・荒らしはスルーしましょう。
  削除対象ですが、もし反応した場合削除人に「荒らしにかまっている」と判断され、
  削除されない場合があります。必ずスルーでお願いします。
 ・趣味嗜好に合わない作品は読み飛ばすようにしてください。
 ・作者さんへの意見は実になるものを。罵倒、バッシングはお門違いです。議論にならないよう、控えめに。
今からスルースキル選手権開始!
気に入らない話題→スルー、気に入らない作品→スルー、荒らし→スルー
名指しでレスされてもスルー
ムカついてもスルー
自治厨もスルー
評論家気取りもスルー
クレクレ厨もスルー
360名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 03:10:45 ID:JL0pyDZq
>>356
男ヤンデレならまだいい、家族っていう作品に男ヤンデレいるぜ。ネトラレは絶対ダメだ。
今回の火種のヤンデレ家族の作者…この状況になるの分かってやったのかな?
361名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 03:13:01 ID:A2drE/AM
この流れを断ち切ってくれる投下に期待
362名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 03:19:39 ID:yvPq/BIS
>>360
どうして絶対ダメって言い切れるのか聞いていいか?
別に喧嘩ふっかけてるわけじゃないから勘違いしないでくれよ?
363名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 03:47:08 ID:jWnxsZLI
俺と同じ考えの住人もいると思うとか・・まるで俺が総意で代弁してやるとでも言いたいのか?
言っておくが、それを言うなら他の奴も言ってたが定義は様々なれど、
俺みたいにネトラレ嫌いのやつはヤンデレスレなら絶対多いからな。荒らしたくないだろうし、家族の人だからあんまり言いたくないだけで

男ヤンデレに関しては専用スレがあるし、>>1にもヒロインがと書いてあるわ文盲
364名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 03:53:42 ID:YzVNH+dv
寝取られが駄目なのではなく、そう言った属性が入るなら注意書きした上で投下してくださいって事で良いだろ
>>1にも書いてある
解 決
365名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 03:55:10 ID:+WdfbV26
自信満々にネトラレだーなんだって言ってるけど、言葉の使い方間違ってるから
別に寝取られてねーじゃん。レイプされたかもしれないのが嫌なだけなんだろ、だったらレイプと言え
その誤用のせいで自演というのがバレバレな件

それに作品内の情報を鵜呑みにして鸚鵡返しすんな
ブラフかもしれんだろ、低脳かよ
366名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 04:04:19 ID:A2drE/AM
ゆっくり投下を待とうぜ
367名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 04:07:58 ID:YzVNH+dv
>>365
寝取られとは、自分の愛する人が他人の男女と関係を持つことを言う
広い意味で誤用ではないな
まぁ今回については作者も王女のドレスを破ったのは誰でしょうか?とも言ってるから寝取られでは無いんだろうが作中にそう言う描写が有ることは確かだからファビョられても仕方ない
368名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 04:11:28 ID:zTg8K1pm
[Yandere] family's author doesn't come by this.
[Numade] and [tterokono] low brain death
I understand only Japanese though it apologizes.
It is not possible to do by through one or this foolishness :.
369名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 04:21:44 ID:rT7NyhgN
ファッキンジャップくらい分かるよバカやろう
370名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 04:30:16 ID:goRm8KcB
別にヤンデレもNTRも大好物だからどうでもいい
371名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 04:43:13 ID:JL0pyDZq
次スレ立てるときは 「ネトラレ・レイプネタは控えて下さい」と追加しといた方が良いですね。
素朴に思ったんですが、こんなに荒れまくっているいうのにその根本的な火種になったヤンデレ家族の作者さんから何も無いというのは当の本人は全く反省していないように思えるのですが
372名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 05:50:01 ID:ls2S1D0n
>>194
久しぶりにスレ見たら続きがきてたから驚いた
だんだんヤンデレっぽさが増してきて嬉しい
次回が待ち遠しい、楽しみにしてるよ
373名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 05:52:10 ID:zTg8K1pm
Yanderesure is foolish.
Cannot you evade?
Cannot such an easy thing be done?
And, I think that I should controvert it until you die. This low brain
Yandere family's author has not already thought coming. It is sad.
これが俺の気持ちだ!
374名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 06:04:12 ID:JL0pyDZq
>>373

ヤンデレ好きは愚かなことだ
あなたは逃げるんですか?
あなたはこのようなことを平気ですることが出来るんですか?
そして、私はあなたが死ぬまで反論すべきだと思う。
この低脳な「ヤンデレ家族」の作者はそんなことを全く考えていないことが悲しい。
375名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 06:09:21 ID:JL0pyDZq
…つまり今回の荒らしの原因を作った「ヤンデレ家族」の作者は「自分は全く悪くない」「自分は正しい」「自分は良い作品書いてるから何でも許される」と思っていることですね?
376名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 06:15:06 ID:SKLMp0ia
またあのときの赤idがー暴れてるのか
言いたいこといったらさっさと消えろよ
お前はねちっこすぎてキモいよ…
なんで何回も何回も同じことくりかえすんだ
377名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 06:54:25 ID:8bIXHQE2
ウナギイヌがアップを始めたようです
378名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 06:58:14 ID:8bIXHQE2
ていうか、1回NTRぽいSS投下しただけで許さないとか見損なったとか阿呆か
たかだか二次創作になんでそこまで真剣になるのかわからない
379名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 07:23:18 ID:RZFB54/C
こんなところでスレの消費するのが寂しい
380名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 07:31:32 ID:zTyyMiW9
みんなこう考えるんだ

好きな作者が他のジャンルに浮気して
「へ〜、そうゆうのが好きなんだ……。
 私だけを見てくれないなら、いっそ……。」
な感じでヤンデレ化

こう考えれば……やっぱりダメか…
381名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 08:10:35 ID:Y/FEvBmu
てか、投下した時点では何の注意書きも無かったんだろ?
だったら次からは注意して下さいくらいでいいだろ
反省しろとか何様のつもりだよ
重大なミスしたわけじゃないだろうに
これで作者来てくれなくなったらどうすんだよ
382名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 08:22:25 ID:cvBShYwh
オナカスイタヨー
ナデナデシテー


ツマンナイヨー
383名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 09:06:40 ID:23cKsERM
スルー推奨
というか別に>>1のテンプレにも禁止なんてこと書いてないし、唯一人がわめいているだけだろ・・・
例えるなら学校給食に自分の嫌いなものがあってブチ切れる子供というあたりか
384名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 09:59:11 ID:V1hu/4WR
>>375
いや、荒らしの原因を作ったのはお前だよ
寝取られた、寝取られたって自分自身の事の様に騒ぎやがってバカじゃねーの?
385名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 10:18:45 ID:8ZZQVu/b
スルーせずに荒らしの要因を作る
ヤンデレ娘がSSじゃなく私を見てということか
386名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 12:55:12 ID:o5WKJyOz
ただ彼の事が好きだった。
 
細くて垂れた目がなくなる笑顔が好きだった。いつもヘラヘラしている頼りなそうな彼が、真剣に語る時の顔が好きだった。少し高めの声が好き、腕に浮いた血管が、脱色して傷み気味の髪が。家族と仲良くしているところが、全てが。
私のものにしたいなんて贅沢な事は望んでいない。彼は私とは違うから。家族にすら愛されなかった私とは違うから。素敵な女性と結ばれなくてはならない。
私なんかが彼を求めるなんて、分不相応すぎる浅ましい望みでしかない


彼がバイトをしているのをお店の外から見守っているだけで、全てが満たされた。ボランティアをしている彼を遠くから見つめると、胸が温かくなった

彼には私なんかと違って、真っ当な幸福を掴んで欲しかった。彼女が出来た時だって、より幸福に……と祈ったのに
 
ねぇ、その女は駄目。あなたを幸せに出来ない。その女には、あなたとは別に彼氏がいるの。騙されないで……
 
人を信じ、疑わないのは彼の美点だ。私は彼の全てを愛しているし、守りたいと思っている。彼にはいつも笑顔でいて欲しい
 
さて、あの女をどう排除しよう……
 
 
 
 
SSなるものを書いてみようとしたけどダメだった。設定だけ考えたけど展開が思いつかない

職人さん達ってすげぇな!
387名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 13:42:44 ID:2XPjuTQI
>>386
あきらめんなよ!!
388名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 13:50:06 ID:QE1f9jXE
せっかくスレ最大の支柱たるヤンデレ家族を潰すチャンスが来てるのにゴミみたいな作文投下すんなカス
389名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 13:54:33 ID:rQame408
>>388お前が消えろ


お前が充分病んでいることはわかったから消えろカス
390名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 14:25:20 ID:rpFCqGVC
心が病んでいく過程を書くのってムズいな…。

今、病んでいく過程を書いているところなんだが一向に手が進まん…orz


自分が思い描いていることをうまく言葉に表す事のできる作者さんたちの凄さを改めて思い知ったぜ…
391名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 15:12:42 ID:cvBShYwh
388はツマンナイヨー
388はツマンナイヨー
388はツマンナイヨー
388はツマンナイヨー
388はツマンナイヨー
392名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 15:24:44 ID:YzVNH+dv
対象の幸せを願う正統派ヤンデレさんだな!
GJ
文才有ると思いますよ!
393名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 15:25:41 ID:YzVNH+dv
あ、>>386
394名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 16:39:33 ID:JL0pyDZq
>>388
支援するわ。無責任な上、謝罪も全くしない「ヤンデレ家族」の作者は消えるべき。もう書かなくていいよ、お疲れさん
395名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 17:06:34 ID:l4hTMkzf
夏休み終わった筈なのに…
396名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 17:18:57 ID:5sC2RcrB
まだ気分を引きずってるんだろうね、たぶん半ドンだし
397名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 17:26:40 ID:23cKsERM
>>386見てて思ったんだが好きすぎて幸せにしたいから自分じゃなくて
他人とくっつけようとするっていうのもヤンデレに分類するのかな
398名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 17:40:15 ID:jWnxsZLI
ま、何でもかんでも擁護するのはどうなのよとは思う
ここは女ヤンデレスレでネトラレ嫌いが多いなんてちょっと考えればわかる気がするが
擁護するあまり何でもOKにしたら後々絶対に修羅場スレのようになる
399名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 17:45:14 ID:wAOzd7PA
>>397
それもヤンデレかと
愛してるがゆえに病むのがヤンデレだから
愛してるがゆえに自分の幸せなど考えずに
相手に幸せになってもらおうと身を犠牲にする

ヒロインが小さい頃から仕えてるメイドで主人の幸せを願うばかり
主人の幼馴染みである良家のお嬢様と結婚させようとするとか
400名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 17:50:20 ID:wAOzd7PA
そして壊れたラジオのように
同じことばかり繰り返しレスるやつって
頭の構造どうかしてるんじゃないか?
空気嫁としかいいようがない
こうやってネチッコクいうたびに
作者たちはうんざりしてるんだぜ
修羅場スレがどうとかいうくらいならさっさと黙れ
401名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 17:56:00 ID:rQame408
>>394無責任なのはお前だろ?

確かにヤンデレ家族の作者にも非はあるかもしれないが、容赦なく叩くお前はなおいらない。


荒らしお疲れ。もう寝てろ。
402名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 17:58:02 ID:JL0pyDZq
ヤンデレ家族の作者が謝罪すれば丸く収まる
403名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 18:05:20 ID:DXMK8asu
常識的に考えてする必要ないだろ
404名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 18:09:39 ID:KI4SuHYZ
そもそもアレがNTRなのかって問題もあるしな
あのくだり全部、騎士を堕とすための姫の狂言かもしれないんだぜ

前置きなしで、そういう風に取られる文章を書いたってのは責められるべきだが
それについての謝罪は既に>>240でしているんだから、それ以上を求めるのはおかしいだろう
405名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 18:09:41 ID:rQame408
>>402お前が謝罪しろ

事の大きさをここまで悪化させたのはお前だろ。
406名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 18:14:59 ID:DDXvmU/9
厨房どもの微笑ましい議論のおかげで大分レス消費が早いな
そろそろ自重汁
407名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 18:21:08 ID:mAZNEA/X
スルー推奨スルー推奨

>>399
いいな、そういう自己犠牲的な形
なんかそういうのでオススメとかあるかな?
408名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 18:22:41 ID:YzVNH+dv
荒らしは単独
様々な回答を無視して蒸し返す手口を見ろ
ただ荒らしたいだけの奴にこれ以上脊髄反射でレスすんな
さぁ俺と一緒にROMろうか
409名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 18:28:41 ID:wAOzd7PA
>>407
どっかでssみたようなきもするが…
そういえばちょっとかわるけど
金田一少年の事件簿で
とある女が自分の赤ん坊を小さい頃金持ちの赤ん坊とすり替え
育ててきたんだけど
自分の血の繋がった息子がかわいいあまり
血が繋がってないとはいえ今まで育ててきた息子を殺す
という話があったなぁ
最後は実の息子に毒殺されるんだけど
そのことにきづいてなお息子を庇って
「自殺だ」と言い張りながら死んでった
このスレの望む形とはちょいちがったけど
あれは病的な愛情だった
410名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 19:06:10 ID:DDXvmU/9
>>409
首狩り屋敷だかなんだかってやつだろ?
あれって毒殺されるんじゃなくって毒だとわかっていながら
自分で飲んだんじゃなかったっけ?
411名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 19:55:11 ID:JL0pyDZq
>>410
首吊り坂な。毒飲んで自殺するのは八墓村な
412名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 20:13:49 ID:ls2S1D0n
>>378
二次創作?
413名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 20:17:58 ID:8bIXHQE2
保管庫のSSを読んでて思ったんだけど、最初からヤンでるの多いな

ヤンデレは病むまでの過程が一番いいと思うんだが
414名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 20:47:03 ID:UngHDE/k
>>413 短編だと病む過程出すのが厳しいし
後は回想とかで病む過程もだせるし
どっちかというと病む過程というより
どれだけ病んでいるかがストーリーが
進むごとにバレる感じがおおいんだろうな
415名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 21:03:22 ID:YV3bHfGX
>>411散々大口叩いてsageねぇのかよゴミが
お前このスレに二度と来るな
416名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 21:30:31 ID:Q7Wh17ne
おっぱい
417名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 21:31:34 ID:3cNenicy
読みたくなかったら、あぼーんすればいいじゃん。自分はそうしてるよ。
418名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 21:31:54 ID:V1hu/4WR
>>413
ヤンデレになる過程を書いてると、その時点で見てるヤツらから「ヤンデレか?」とか「スレ違いだろ!」とか書かれるからだろ。
だから始めから分かりやすいヤンデレじゃないとダメなんじゃないの。
419名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 21:39:38 ID:uPvlqCPy
おっぱい
420名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 21:52:42 ID:nmq69Dz/
>>418
なんだか週刊ジャンプの打ち切りシステムみたいね。早めに人気出しておかないと連載できないってやつ。
後から面白くなっていくお話だってあるだろうに。
421名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 21:59:03 ID:V1hu/4WR
>>420
面白い面白くないは後々気づくことだからねぇ…。
それまで待てずにただの一回の投下だけで住人が「面白くないわ」って突き放すと作者はやる気を失うんだよきっと。
422名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 22:05:54 ID:cNxqugjB
ぽけ黒みたいに病むまでに時間かかるからっていう注意書きをつけてやってくれれば一番良い。
病んでいく過程はやはり大事だろ。
423名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 22:09:26 ID:FsRdZxVb
そういえば、ヤンデレって、逮捕して罪に問う事は出来るのか?
424名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 22:11:16 ID:mAZNEA/X
やってる行為によるだろw
425名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 22:12:16 ID:V1hu/4WR
>>423
警察の上層部がヤンデレじゃなかったら逮捕できるかもねw
426名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 22:13:26 ID:fuDTcuPP
そういえばストーカー型のヤンデレssてすくないよな
まぁ主人公と絡ませづらいしホラーっぽくなるのが原因だろーけど
427名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 22:24:35 ID:ybM2klPD
俺が警察なら毎日俺の後を付けたりするぐらいは無罪だな
428名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 23:02:30 ID:8bIXHQE2
興味がなかった時と、好きになった時のギャップがいいんだ ヤンデレは
429名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 23:34:22 ID:w9zpOka1
>>428
デレたときの行動が過激で変化をかんじやすいからかい?
430名無しさん@ピンキー:2010/09/03(金) 00:06:50 ID:pLrLiKJ3
>>427
※ただし(ry
431名無しさん@ピンキー:2010/09/03(金) 00:25:45 ID:CKa04Ys6
ツンデレがヤンデレになるまでの過程が至高
432名無しさん@ピンキー:2010/09/03(金) 00:33:44 ID:17md9+Y3
>>426
つ「風雪」の第三話
433ヤンデレの娘さん 告白の巻:2010/09/03(金) 02:56:25 ID:E//dvSBC
 こんばんわ、前スレで「かんきんされてるのは、ぼく」を投稿させてもらったモノです。
 今回はヤンデレとしては少しヌルめ(?)かもしれないですが、お手柔らかにお願いします。
434ヤンデレの娘さん 告白の巻:2010/09/03(金) 03:16:42 ID:E//dvSBC
ゴールデンウィークを終え、学園自慢の大桜も花もひとつ残らず散ってしまいましたね。
花の命もはかないものと言いますが、こうして散っていく様を見ますと少し寂しくも感じますね。
毎日お昼休みになると大桜の下で一時の休息をされる御神くんも同じ思いだと存じております。
毎日拝見させていただく御神くんの安らかな寝顔は、呆気なく散っていく大桜の花などよりも麗しく、私の卑しい心が癒されております。
ただ、大桜の木を物憂げに見つめる貴方を見る度、視線を向けられる大桜に悔しさを覚えることもあります。
ああ、大桜!大桜!大桜!大桜!大桜!樹木の分際で御神くんに見られ観られ魅られる栄誉を得ている大桜を、何度燃やしてしまおうかと思ったことでしょう。
あるいは、私以外のものに向く御神くんの視線を、眼球をえぐり取ってでも独占してしまいたいと何度思ったことでしょう。
ご挨拶はこれくらいにして、今回こうして突然のお手紙をお送りしたことをまずはお詫び申し上げます。
ですが、貴方様にどうしても、この命に代えても叶えていただきたいお願いがあってお手紙を送らせていただいた次第なのです。
聡明な御神くんならもうお気づきのことでしょう。そう、大桜。
435ヤンデレの娘さん 告白の巻:2010/09/03(金) 03:20:55 ID:E//dvSBC
 四月には見事な花を咲かせていた大桜。その下で愛を誓い合った男女は必ず結ばれ、その愛は永遠となるという伝説のある大桜。
憎々しくも忌々しくも私達にとって最後の希望である大桜。その大桜の木の下にいらしていただきたいのです。理由は言うまでもないものと思います。
私はあなたを愛しているから。私は御神くんを愛しています。好きです。好きです。大好きです。超愛しています。いえ、超なんて言葉では足りません。
大愛しています。その十倍愛しています。百愛しています。千愛しています。万愛しています。億愛しています。極愛しています。極大愛しています。
とにかく愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。
愛しています。愛し愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。
愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。
愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。
愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。
愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。
愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。
愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛してます。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。
愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。
愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。
愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。
愛しています。愛しています。愛しいます。ています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。愛しています。
436ヤンデレの娘さん 告白の巻:2010/09/03(金) 03:23:38 ID:E//dvSBC
愛さずには居られません。あなたをずっとずっとずっと1年365日見続けて愛せない女がいるでしょうか。
もしそんな女がいるのなら、それは女ではありません。人間ではありません。動物ではありません。
生物ですらありません。むしろ生きる価値がありません。あ、でも、私と御神くんの仲を引き裂こうとするモノも生きる価値とかありません。
そう思うだけでも罪です。存在するだけでも罪です。
判決で言えば死刑です。いえ死刑でさえ生ぬるいですよね。愛を邪魔するモノは存在するだけで罪なのです。周囲に毒を振りまいているようなものです。
存在自体が毒です。そんなモノが今この瞬間存在して酸素を消費していると考えるだけでも怖気がしてきませんか?してきますよね。私は毎日怖気を感じています。
怖くて夜も眠れないです。あ、そう言う話じゃありませんでしたね。とにかく、大桜の木の下にいらしてください。私の愛を受け取るために。愛の為に。
もし万に一つ、いえ億に一ついらっしゃらない場合は、当方どんな手段を用いてでも来ていただく覚悟があるのでご了承ください。
それでは、また会える時を一秒千秋の思いでお待ち申し上げております。

あなたの緋月三日より
437ヤンデレの娘さん 告白の巻:2010/09/03(金) 03:25:54 ID:E//dvSBC
 「字大杉」
 あ、上手いこと言えなかった。
 もとい、俺こと御神千里(みかみせんり)は下駄箱の前で、そう突っ込まずにはいられなかった。
 下駄箱の中に入れられていた、「御神千里さまへ」と書かれた手紙。
 内容は「恋がかなう伝説の大桜の下に来てください」
 今時ベタを通り越して古風でさえある手法。
 こうした類の物を受け取った際はドキドキしたり舞い上がったりするのが礼儀なのであろう。
 それに対して、我ながら無粋な感想を言ってしまったものである。
 大体、送り主がこの場にいるわけでもないので、口に出して言っても仕方ない。
 「うーい、みかみんどーした。ってなんっじゃこりゃあああああ!」
 後ろからクラスメートAがどっかのドラマみたいな声を出した。
 「誰がクラスメートAだ…じゃなくてこのヤンデレた手紙だよ!」
 クラスメートAこと親友(悪友?)の葉山正樹が強烈なツッコミを入れてくる。
 「んーこれー?入ってた」
 自分の下駄箱を指さし、俺は笑顔で答えた。いやまぁ、普段から糸目だからあんま変わらないけど。
 「あー、ウチの学園って扉付きの下駄箱だかんなー。そういうのも出来るんだよなじゃなくて手紙の内容だよ!笑えねーよ!不幸の手紙かよ!『愛してます』とか上から下までみっちり書いてあるし!」
 「字、綺麗だよねー」
 「確かにキレーだがよ!内容がこえーよ!むしろ見た目からこえーよ!誰だよこんなの書いたの!」
 矢継ぎ早に突っ込んでくる。
 一言で通常の三倍くらいになって返ってくる男だ。
 「名前はあるけど、コレ、何て読むと思う?」
 最後の行(て言うか便箋の一番下)を指さす俺。
 そこには『緋月三日』と書いてある。
 「ええっと、どれどれ…ひ、づ、き…ひづきみかァ!!!」
 あ、エクスクラメーションマークが増えた。
 って言うかそれくらい驚いた。
 「よく分かったねー。ソレ、『みっか』って読むのかと思った」
 「…え、アレ、知らないの?って言うか気付いてないの?」
 まるですごい意外なことのように、問いかける葉山。
438ヤンデレの娘さん 告白の巻:2010/09/03(金) 03:26:32 ID:E//dvSBC
 「もしかして、俺知ってる?そのコ?」
 あんま人間関係にはコダワリ無いからなぁ、俺。
 「いや何ってありゃお前のストー…ヒイイイ!」
 何かを言いかけて、まるで幽霊に会ったような叫び声を上げる葉山。
 「どしたの?」
 「ああ、い、いや、何か背後から怖気が…。いやまぁ、マジメな話、同じ名前のヤツ、ウチのクラスにいるぜ?」
 そーなの?
 「よく覚えてるよねー。4月に同じクラスになったばっかりなのに」
 「いや、近くの列のヤツ位覚えとけよ」
 「近くの人はお前しか覚えて無いからなー。」
 「そりゃ、オレは隣の席だからな!」
 そんなトークをしながら、ちょっと自分頭の中を検索する。
 確か、後ろの方の席の…
 「あー、あの?」
 やっと思い出した。
 「そうそう、あの地味ーで暗ー…ヒイイイイイイイイイイ!!」
 葉山はまた怖気を感じたらしい。
 風邪かな?
 「地味ってか、髪長い子だよね。すごいキレーな」
 「キレー?お前あんな感じの顔が好みなん?」
 「髪の話ー。ぶっちゃけ、顔はまだ覚えきれてない」
 僕は答えた。
 教室の中に時々、何やら触りたくなるほどサラサラヘアーの女子がいるとは思っていたのだ。
 「…ちょっと行ってみたいかも、大桜の下」
 「ええー!」
 僕の呟きに、大げさに驚く葉山。
 「なぜそんな驚くかな」
 「だって、緋月って地味だし友達もあんまいない感じだしヒイイイ!」
 また叫びだす葉山。
 そろそろ本気でコイツの体調が心配になってくる。
 「葉山、はやまん、風邪っぽいならとりあえず保健室行っとく?あと、風邪に効く料理のレシピとかも書くわ」
 「お前って意外と甲斐甲斐しいよな…」
 大丈夫、と手をひらひらさせつつ、葉山は言葉を続ける。
 「と、とりあえずその手紙はイタズラなんじゃね?多分」
 「イタズラ?」
 「木の下に来てくださいってハナシでここまでみっちり書く奴はいないぜ、フツー?」
 葉山の言葉には納得しかねるモノがあるが、この手紙の内容には微妙に足りない部分がある。
 それが無い以上、リアクションの取り様が無い。
 ――ってコトはイタズラの手紙ってことになるのだろうか。
 「まー、確かにイタズラっぽいけどねー」
 「だろ?だろ?んじゃ、この話はコレでおしまいだよな!」
 どこか強引にそう言いながら、話を打ち切る葉山。
 そして、別の話題を葉山とダベりながら教室に向かう。
 「でもなー」
 葉山のバカ話を聞きながら、俺は呟く。
 「イタズラでここまで丁寧にやる奴もいなくね?」
439ヤンデレの娘さん 告白の巻:2010/09/03(金) 03:26:52 ID:E//dvSBC
 御神千里は気がつかなかったが、そのやり取りの一部始終を物陰から見ていた者がいた。
 そして、その人物は今も千里の後ろ姿を見つめている。
 「…イタズラ、なんてウソですよね。御神くん」
 その人物はささやくように言った。
 「…私、本当にどんな手段を使ってでもあなたを手に入れますよ…?」
 そして、ぐっと両手を胸の前で握りしめる。
 「…私、頑張ります」
440ヤンデレの娘さん 告白の巻:2010/09/03(金) 03:27:57 ID:E//dvSBC
 緋月三日。
 今年から俺と同じクラスになった少女。
 内気そうな印象の少女。
 友達は多くは無く、しかし居ないわけではなく。
 成績は悪くはないらしい。
 ただし、体育の方はどうも壊滅的のようだ。
 体育の授業中に女子の方を見ると、何やらすっころんでいたり、いかにもどんくさいのが居たが、どうもそれが緋月らしい。
 体型も触れれば折れてしまいそうな細身で、ぶっちゃけ運動には向いていない。
 華奢と言えば聞こえは良いが、その分胸囲とかは察してくださいとしか言いようがない。
 そして何より髪が綺麗。
 今時珍しく腰まで伸ばした長い髪は柔らかそうな髪質のサラサラしたストレート。
 色白細身な体系もあって、いかにも和風美人(?)といった感じである。
 まぁ、不細工と言うほどの顔立ちではないが、誰もが振りむく美人というのとも違う。
 そんな癖のある顔立ちでも無く、肌がきれいなのも相まって、良く見れば結構可愛いじゃん、といったカンジ。
 メイクさんやってるウチの親なら磨けば光る素材、と評するだろう。
 以上が、葉山から聞いた情報と自分の乏しい記憶を統合しての、緋月三日のプロフィールだった。
 「…って、何でそんなにアイツのこと気にするかな、みかみん」
 「髪綺麗な女は気になんの」
 「髪フェチ!?」
 「それに、あの手紙のこともあるし」
 「……」
 今は昼食の時間。
 隣の席の葉山とゆるゆる喋りながら弁当(自作)を食べていた。
 「…忘れろよ、あんなんただのイタズラだって」
 本気で不愉快そうな顔をしてそう言う葉山。
 「でもさー」
 俺はそう言って胸の内ポケットから今朝の手紙@緋月(仮)を取りだす。
 「こんなキレーな字書く女子、イタズラでも会ってみたくね?」
 「…ゴメン、お前のツボは分からん」
 葉山が言う。
 「ってか、最後まで、字キレーなんだよね」
 文面を見ながら、俺は言った。
 糸目をちょっとだけ見開き、改めて読み流す。
 便箋の上から下まで文字で埋め尽くした上に、いずれの文字も丁寧なのだ。
 これは、単に字が綺麗だからというのではない。
 一文字一文字にしっかり気を使っているからだろう。
 並の労力ではないし、時間もかなりかかっただろう。
 それを考えると、この手紙は芸術的でさえある。
 …まあ、一カ所だけ書き損じがあるが。
 それを差し引いても、ただのイタズラにしては手がこみすぎている。
 頑張りすぎているのだ。
 ただのイタズラや嫌がらせならもっと手を抜いている。
 手を抜いて良いところだ。
 「字キレーで、頑張りやさん、か」
 そう呟き、何の気なしに教室の後ろの方に目を向ける。
 緋月の席は教室の奥の方、窓側の後ろの方にある。
 ふと、緋月と目があった気がして思わず互いにそらしてしまう。
 そうこうしているウチに弁当は食べ終わり、昼休み開始のチャイムが鳴る。
 「ご飯の後ってやっぱ眠くなるよなー」
 ふわ、とあくびをしながら俺は言った。
 「まぁなー。…ってまさか」
 葉山がシブい顔になる。
 「昼寝ー。いつもみたく大桜の下で」
 「行くのかよ!」
 ガタンと立ち上がる葉山。
441ヤンデレの娘さん 告白の巻:2010/09/03(金) 03:28:18 ID:E//dvSBC
 「落ちつきなよー。あの手紙はイタズラなんだろ?」
 「そりゃそーだけどよ…」
 食い下がる葉山。
 「もし本気だったとしても、ぶっちゃけ送り主はいないと思うしなー。だから、手紙とは関係ナシ」
 んじゃなーと言って、俺はいつものように向かう。
 その下で愛を誓い合った男女は必ず結ばれ、その愛は永遠となるという伝説の大桜へ。
 尤も、そんなのに関心の無い俺にとっては絶好の昼寝スペース以外の何物でも無いのだが。
 「みかみん、お前マジ緋月のヤバさ知らなさすぎ。って言うか、何で気付かないんだよ」
 葉山が後ろで何か呟いているようだが、よく聞こえない。
 「アイツ、去年の間お前をずっとつけまわしてたストーカーなんだぜ…?」
442ヤンデレの娘さん 告白の巻:2010/09/03(金) 03:28:49 ID:E//dvSBC
 私立夜照学園(ヨルテルガクエン)名物大桜。
 元々は随分昔に偉い人が寄贈だか何だかしたものだそうで、学園設立当時くらいからあるらしい。
 そんな由緒正しい代物だけに、学生の噂話の常連でもある。
 ある時は学園七不思議のネタにされ、ある時は様々なジンクスの元となった。
 現在伝わっていないモノもあるんじゃないかな?
 そんな噂の中でもっとも有名なのは、「大桜の木の下で告白し、愛を誓った男女の愛は永遠の物となる」というもの。
 一体いつのゲームの設定かと思わなくもないが、ともあれ夜照学園の生徒にとってこの大桜の木の下で告白するのは鉄板となっている。
 で、いつの時代も恋する乙女の注目を集めるそんな大桜は、校庭とかの辺りとは少し離れた位置にある。
 だから、それこそ愛の告白をしたい人間くらいしか、ココに訪れることはない。
 だから、静かに昼寝をするには絶好の場所だったりする。(罰あたり)
 そして、今日もいつものように木の下に訪れる。
 「やっぱり、来てくれたんですね…」
 その声は、後ろから聞こえた。
 聞き覚えのある声だと思った時には、俺の首筋に電流が走っていた。
443ヤンデレの娘さん 告白の巻:2010/09/03(金) 03:29:41 ID:E//dvSBC
 「コレをこうして…、ここをこうやって…」
 次に気がついた時、俺は大桜の下で仰向けになっていた。
 ウン、いつも通り。
 違うのは、聞き覚えのある声=緋月のささやくような声が聞こえること、頭の下に柔らかいものがあたっていること(膝枕?)、手足が動かないこと、ぶっちゃけ手足が縛られていること。
 …明らかに、いつも通りでない所の方が多い。
 間違い探しが楽と言うレベルではない。
 「最後に、ハンカチで口をふさいで…」
 そー、っと真っ白なハンカチが見覚えのある顔と一緒に近付いてくる。
 「いやいや顔が近いから」
 びくぅ、とハンカチと顔を離す緋月。
 「ってか、緋月?緋月三日?」
 「はい!」
 「取りあえず、確認したいことがあるんだけど、聞いて良い?」
 俺の言葉にブンブンと首を縦に振る緋月。
 いー感じに緊張しているっぽい。
 視界的には緋月が上なのだが、無駄に身長の高い俺と話すのは怖いのかもしれない。
 「質問その1。口をふさいでどうするよ」
 取りあえず、分かる所からツッコミを入れよう。俺は葉山じゃないんだし。
 「…イニシアチブを取る、ためです」
 相変わらずささやくような声で言う緋月。
 それにしても良い声だな。よく声優になれって言われません?
 「イニシアチブ?」
 いや何の。
 「意中の異性を手に入れるためには、肉体的、心理的に優位に立つことが必要不可欠。その為に、まずは相手の動きを封じることが大切、とこのマニュアルに書いてあります」
 見れば、緋月の手にはいかにもお手製な小冊子が握られている。
444ヤンデレの娘さん 告白の巻:2010/09/03(金) 03:30:15 ID:E//dvSBC
 「何のマニュアルだよ、それ…」
 俺はうめいた。
 何か、表紙が黒いし、明らかに諸悪の根源っぽい臭いがする。
 まぁ、そこは今あまり重要でも無く。
 「ま、いいや。質問その2。もしかして、今朝の手紙は君が書いたの?」
 「はい!頑張りました!」
 全力で答える緋月。
 頑張ってたよな、確かに。頑張りどころを間違えている気がしたが。
 「マジメな話、やっぱ本気で俺にここに来てほしかったって訳?イタズラとかじゃなく?」
 俺の言葉に、緋月の瞳からハイライト(生気)が消える。
 「…御神くん、まさかあのクラスメートAの言葉を真に受けて無いですよね…?私の愛の限りをこめた手紙をイタズラだなんて本気で思っているはず無いですよね…?」
 「うん、自然な動作で首に手をかけるのは止めようなー」
 何かすごいことしようとしてるので、ツッコミをいれておこう。
 桜の下で本当に死体になりたくは無い。
 しかし、緋月はその白く細い指で俺の首を包みこんだ。
 包みこんだだけだが。
 「…痛くないんですか?」
 「別にー?」
 首のあたりに多少圧迫感があるかないか、というところだ。
 俺のリアクションに、一生懸命首をしめようと試みている(らしい)緋月。
 ただ、彼女は「首の締め方」的な物をどうにも心得ていないらしく、一向に痛くならない。
 何しろ首の横から力入れてんだもんなー。
 真上から体重をかけられたらさすがにちょっとは痛いだろうけど、単純に筋力(しかも非力)で何とかしようとしてるから、全く効果が無い。
 うんうん言いながら頑張る緋月の姿は結構ほほえましいものがある。
 …目的は俺の首を絞めることだが。
 「話を戻すけどー」
 何やら頑張ってる緋月の顔をアップで見ながら俺は言った。
 「俺がココに来る時間って、今で良かったわけ?」
 「時間?」
 僕の言葉に動きを止め、きょとん、とした顔をする緋月。
 内気そうに見えて、中々表情豊かだ。
 癒されるものがあるねー、こんな状況でなかったら。
 「大桜の下に来てほしい、とは書いてあったけど、『いつ』来てほしいとは書いてなかったじゃん?だから、どうしたものかなって思ってたわけ」
445ヤンデレの娘さん 告白の巻:2010/09/03(金) 03:30:55 ID:E//dvSBC
 『昼休み』に来てください、なのか、『放課後』来てください、なのか、明日かもしれないし、一週間後かもしれない、そう取れる内容だったと言える。
 俺の言葉に緋月は目を白黒させる。
 「う…そ…」
 おお、パニくっとるパニくっとる。
 「うそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそう」
 字面だけ見れば死ぬほどヤンデレらしいが、実際は涙目で困惑してるだけである。
 あんまり表情が変わるような印象の無い娘なので、涙目はかなり新鮮―――というよりぶっちゃけ可愛い。
 「ほんとだぞー」
 ひょい、と例の手紙を手渡す俺。
 それを受け取り、上から下まで読み返す緋月。
 「そんな…。がんばったのに…頑張って、勇気を出して書いたのに…」
 事実に愕然とし、顔を手で覆いさめざめと涙を流す緋月。
 「泣くな泣くな。お前が頑張ったのはこの手紙を読んだ俺も良く知ってる。」
 ぽんぽん、と柔らかく緋月の背中をたたく俺。
 「…分かって、くださるんですか?」
 「ああ、もちろん。それに、結局俺はお前がいる時間にココに来たんだから、結果オーライじゃないの」
 昼寝のためだった、とは言えんがな。
 「…私の頑張りは、無駄じゃ無かったんですね…?」
 「さぁそれはどうだろうなんてことは無かったぜ。バッチリ報われてるぜ」
 俺の言葉の途中で緋月がまた泣き顔になったので慌ててフォロー。
 決してまた首に手をかけられたからではない。
 「んじゃ、そろそろ質問その3。お前の望みを言え」
 「どんな望みも叶えてくれる!?」
 泣き腫らした目のまま打てば響くようなリアクションを返す緋月。
 内気に見えて、中々リアクションの才能があるっぽい。
 「や、そこまでは言ってないし。 まぁ、何の代償も要求しないけど」
 ネタが分かる人っぽいのでそこはフォロー。
 俺の言葉に居住まいを正し、深呼吸をする緋月。
 「あなたに、私への愛を誓っていただきたいのです」
 泣き腫らした眼で俺の眼をまっすぐ見つめ、そう宣言する彼女は、思いのほか魅力的だった。
 不覚にも見惚れてしまうほどに。
 しかし…
 「うん、何か色々すっ飛ばしてるよな」
446ヤンデレの娘さん 告白の巻:2010/09/03(金) 03:31:44 ID:E//dvSBC
 俺の言葉は、半分は照れ隠しだが、残りは明らかな本音である。
 …つーか、俺らの人間関係始まってもいない気がする。
 そこで愛を誓えってのは第一話に最終回やれってくらい無茶ぶりだろ。
 とはいえ、また涙目になる(&首に手をかける)緋月がいたたまれないので一応フォローしよう。
 「そもそも、何で俺なのかって理由を聞きたい。ウチの学園には俺よかイケメンの奴とかたくさんいるし」
 これがギャルゲーなら主人公だから、で納得するんだけど、別にそんな設定は無いからなー。
 いや、桜の下でいきなり縛られるゲームがあったら嫌すぎるけど。
 「…御神くん以外の男子なんてゴミみたいな人です。むしろ、御神くん以外の人がゴミのようです」
 「それ、某ラ○ュタネタだよな。分かりづらいだけで。そうでなかったら、そんな酷い表現使っちゃいけませんと親御さんの代わりにお説教をしてるところだぞ」
 だとしても、某宮崎監督が泣きそうな使い方だ。
 「みんながゴミなら俺はクズとか?」
 伝説の大桜の下で昼寝しようって言う、空気の読めない罰あたりだもんな。
 「違います!御神くんは優しい人です!!私がそれを一番よく知っています!!!」
 今度は悪鬼のごとき表情で怒りだす緋月。
 俺の為に怒ってくれんのは嬉しいが、その顔芸は止めような。
 他人に見せられん顔になってるもの。
 「…覚えていますか?去年の今日、まだこの学校に不慣れで迷子になっていた私を、御神くんが教室まで案内してくれたことを」
 「いや、全然」
 「お、ぼ、え、て、い、ま、す、か?」
 一生懸命首絞めをしながら聞きなおす緋月。
 本人的には精いっぱい威圧的に言っているのだろうが、涙目なので迫力に欠ける。
 白い指がひんやりして心地良い…じゃなくて、乏しい記憶力をフル回転する。
 以下回想
 ―――どしたの、君?小動物見たく辺りを挙動不審に警戒して―――
 ―――…あ、あの…きょ、教室が分からなくて…―――
 ―――あーこの学園、無駄広いからなー。中等部からいる俺でも把握しきれないし。君、何年何組?―――
 ――――…い、一年十三組です…高等部の…―――
 ―――何だ、隣のクラスじゃん。一緒に行く?―――
 ―――…い、良いんですか…?―――
 回想終了
 「ああ、あのおかっぱ!」
 「そ、そうです!おかっぱでした!」
 全力でうなずく緋月。
447ヤンデレの娘さん 告白の巻:2010/09/03(金) 03:32:09 ID:E//dvSBC
 首を動かす度に長い髪が乱れて、何かエロい。(変態)
 あったあったそんなこと。
 あの後、後ろにその女の子を伴って教室に戻ったんだっけか。
 ただ、その女の子は黒髪おかっぱの髪型だったので、今の緋月(ストレートロング)と結びつけるには少し時間がかかった。
 ホント、女の子って髪型変わるだけで印象変わるや。
 「一年で随分髪伸びたよなー」
 「…あの日から、気がついたらあなたの姿を目で追うようになっていました。」
 「無視かい」
 恍惚とした表情で語りだす緋月。
 「…気がついたら、あなたの姿を見つめるのが日課になっていました」
 「そりゃ初耳」
 「…気がついたら、四六時中あなたの姿を追うようになっていました」
 「…四六時中?」
 「…気がついたら、あなたのいる所にはどこでもついていくようになっていました」
 「気がつけよ!」
 いや、緋月もそうだが俺も気がつけ。
 何でこんなキレーな髪の女子が近くに居るのに気がつかんのだ。(論点が違う気もするが)
 「…そうしているうちに、いろんなことを知りました。あなたについて」
 「ほうほう」
 「…他人に無関心に見えて誰に対しても優しい所とか。時々見せる笑顔が素敵な所とか。意外と家庭的だったりとか。早起きさんなところとか。自慰行為は一日何回やっているかとか」
 「最後に下ネタ!?って言うか男の前で自慰行為とか言うなよ!嫁入り前のコが!」
 って言うかプライバシーの侵害にもほどがある。
 「…大丈夫です、これからは私が満足させます」
 「あんの!?ソッチの経験!?」
 「………が、頑張ります」
 「あー、無いのね。別に無くて良いけど」
 内心、なんかホッとしてる自分がいる。
 「ってか、それも段階飛ばしすぎだろ。手つなぎイベントとか、初キスとか、その前に色々あるっしょ。ラブコメ的に」
 「…どんな要求にも応えます。御神くんが私の要求に応じてくれるように」
 「…びみょーな表現使うなぁ」
 苦笑を浮かべる俺。
 何か、本気でどんな要求にもこたえそうだわ。
 死ねと言われたら死にかねない。
 …逆に、俺も死ねと言われたら死ななきゃならないらしいけど。
 「まぁ、何となく事情はわかった」
 コイツの人となりもね。
 ぶっちゃけ、かなりとんでもないことをしてる娘ではあるが、それ以上に頑張り屋なのだろう。
 頑張りどころをかなり間違えている感もあるが―――まぁ、そこはおいおい治していく感じで。
 ゆるゆる生きてる俺にとって、何かのために頑張れる人間ってのは、かなり眩しく見えるモノで。
 それが自分の為だってのは中々に感動的な物がある。
 ま、髪もキレーだしね。
 ロングなのもポイント高い。
 …おや、付き合わない理由が無いな。
 その上であえて言おう。
 「だが断る」
448ヤンデレの娘さん 告白の巻:2010/09/03(金) 03:33:30 ID:E//dvSBC
 ばしゃん!
 そう答えた瞬間、緋月の手にはたくさんの凶器が握られていた。
 ハサミ、カッターナイフ、十得ナイフ、ダガーナイフ、伸縮式警棒、ワイヤー、アイスピック、妙なスプレー、スプーン、包丁、お玉(注:調理用具はもっと丁寧に扱いなさい)その他諸々
 …あ、スタンガンもある。アレで俺を気絶させたのな。
 「愛を誓ってくれなければ、私を殺してあなたも死にます」
 「逆逆」
 いや、あんまり変わんないけどね。
 「つまりね、別に愛を誓おうが恋を誓おうが良いんだけど、こっちにも条件があるってコト、みたいな?」
 凶器の山に臆することなく、俺は言った。
 使い手が無害なことが分かってるからね。いや、だから逆に危ない気もするけど。
 「…え?」
 俺の発言に、緋月の手から凶器の数々ががしゃがしゃと落ちる。
 「愛を誓うならまず君から誓え」
 「命令形!?」
 緋月は驚くが、一応手足を縛られているこの状況である。
 いい加減俺が優位に立ってもバチは当たんないと思う。
 「…うう、最初から羞恥プレイを命じられるとは思いませんでした…」
 「何が羞恥プレイだ。見た目的には俺の方が恥ずかしいわ」
 縛られてるしね。
 「あうう…」
 顔を真っ赤にしながらうつむく緋月。
 「…愛しています」
 「聞こえなーい」
 「愛してます!頭のてっぺんから足の先まで魂の奥底まで愛しています!他の女には渡しません!他の女になびいたらショックで死にます!あなたを殺してから!だから私だけの御神くんになってください!」
 「良いよー」
 俺はさくっと返した。
 「「軽!」」
 ツッコミは緋月からだけでなく、意外なところからもやってきた。
449ヤンデレの娘さん 告白の巻:2010/09/03(金) 03:34:21 ID:E//dvSBC
 葉山だ。
 何か木陰からでてきた。
 「おお、はやまんじゃん。どしたの?」
 「心配になって来てみたら。お前ナニイテンダ!」
 葉山の言葉が興奮で喝舌がすさまじいことになってる。
 「お前この女にずーっとつけ回されてたんだぜ!ストーカーだぜ!何っでそんなのと付き合うんだよ!考え直せ考え直せ考え直せ。付き合ってロクなことになるわけがない」
 必死で俺の説得にかかる葉山。
 そうは言うが、コイツずっと見てたのか、今のやり取り。それこそストーカー見たく。
 「いやまぁ、頑張る所を間違えてるよなとは思うけど、見られてただけで実害があったわけじゃないし」
 むしろ、近くに置いといた方が面倒が無い気もする。
 「見られすぎだろ!」
 「見るのだって楽じゃないっしょ」
 「のっけから恋人とか超展開すぎだろ!」
 「とりあえず、世間のお見合い結婚カップルに謝ろーな」
 「怒られてる!?」
 「それに、ぶっちゃけ遠くから見られるよか近くに置いておいた方が面倒が無…もとい面白いし」
 「「それ言い直す必要無いよな(ですよね)!?」」
 葉山と緋月の声を背景に、俺は立ち上がる。
 そろそろ予鈴だ。
 「んじゃ、そろそろ戻るか」
 言って、緋月に手を伸ばす。
 「はい!・・・って」
 しっかり手を取り、フリーズする緋月。
 「私、御神くんの手足を縛ってましたよね!?」
 「…そんな設定あったっけ?」
 「ありました!」
 「…うん、ゴメン。結構ゆるゆるだったってか、すごいあっさりほどけてたわ」
 「いつから!?」
 「結構最初から」
 「そんな!?」
 がびーん、とか言いそうなくらいショックを受ける緋月。
 「まー、努力は報われたんだからそんなショックを受けなさんな、マイラヴァー」
 「は、はい!」
 歩き出す俺にとことことついてくる緋月。
 カルガモの子供みたいで中々可愛らしい。
 そして、三人でダベりつつ教室に戻る。
 「ホントに良いのか、みかみん。クーリングオフとか効かないぞ、コレ」
 「良いんじゃない?何かイロイロツボったし」
 「…良いのか、それで」
 「…葉山くん、どうしてそんなこと言うんですか?…もしかして、あなたも御神くんを…」
 「「無い無い」」
 「…息がぴったりです」
 「付き合い長いからねーって愛情的な意味じゃないからなー。あ、そうだ緋月。お昼とかいつもどうしてる?」
 「…こ、購買でパン買ってます」
 「それじゃ足りないっしょ。育ち盛りなんだし。明日から俺弁当作ってくるわ、恋人っぽく」
 「い、良いんですか!」
 「何か逆だぞそれ!本当に甲斐甲斐しい男だな、みかみん!」
 「うるさいよ」
 と、まあ、こうして俺の楽しくも不穏当な青春は過ぎてゆく。
450ヤンデレの娘さん 告白の巻:2010/09/03(金) 03:35:03 ID:E//dvSBC

 おまけ
 「そう言えばひづきん、その凶器やら黒い表紙のマニュアルやら、どっから調達してきたん?」
 「…あ、コレは母が珍しく用意してくれたんです(いきなりあだ名付けてくれた…)」
 「親御さんが?」
 「…何でも、母はこういった物を使って父を手に入れたのだそうです」
 「…」
 「…この『恋人絶対拉致入門』以外にも、『泥棒猫の■し方』とか『素敵な監禁生活AtoZ』とかも用意して下さったんですよ。御神くんも読みますか?」
 「…いや、いいわ」
 お母さん、俺の彼女の母親はヤンデレのようです。
 つまり、俺の彼女はヤンデレの娘さん。
451ヤンデレの娘さん 告白の巻:2010/09/03(金) 03:37:25 ID:E//dvSBC
 以上になります。
 まぁ、何と言うかヤンデレるには人それぞれ向き不向きがあるよね、というお話?でした。
452名無しさん@ピンキー:2010/09/03(金) 03:43:54 ID:zQiD+1jY
>>451
乙です

関係ないけど虫歯が痛いとヤンデレどころじゃないな。
今ならヤンデレの子に執拗に責められても
「うるせぇ!歯がいてえんだよ!」
で追い払える気がする。
453名無しさん@ピンキー:2010/09/03(金) 04:07:38 ID:QmdukEAV
>>451良い恥じらいヤンデレだった
IDも恥じらってるなぁ
GJ
454名無しさん@ピンキー:2010/09/03(金) 04:09:44 ID:QmdukEAV
あげちゃたすまそ^p^
455名無しさん@ピンキー:2010/09/03(金) 04:33:03 ID:3ngq8EeG
>>451
乙さんです。
これはいいドジヤンデレだな!
456名無しさん@ピンキー:2010/09/03(金) 10:50:20 ID:0H0OvLaL
>>452
大丈夫、私がなんとかしてあげるから
そぉいっ!
457名無しさん@ピンキー:2010/09/03(金) 13:02:22 ID:17md9+Y3
中世のヨーロッパのヤンデレは斧か果物ナイフがいいよね
458名無しさん@ピンキー:2010/09/03(金) 13:24:56 ID:5AmZk16A
庶民ならそれでいいが貴族なら刀剣類でも可
…持てなさそうだけど。筋力的な意味で
459名無しさん@ピンキー:2010/09/03(金) 13:40:13 ID:FfwB9fFh
>>451
なにこの可愛いヤンデレ
御神の飄々さも相俟って緊迫感がカケラもねぇw
GJ!
460名無しさん@ピンキー:2010/09/03(金) 15:27:12 ID:4RPNaBdv
ヤンデレSSで癒されるとは思わんかった

GJです
461名無しさん@ピンキー:2010/09/03(金) 15:33:50 ID:k1SU/A2k
母親からヤンデレ要素だけ受け継いで能力は父親ゆずりということかねえ
462名無しさん@ピンキー:2010/09/03(金) 17:59:56 ID:Wtj09Ue9
こんなヤンデレな娘ほしいな
463名無しさん@ピンキー:2010/09/03(金) 21:06:19 ID:XfTmdaJf
GJ
464名無しさん@ピンキー:2010/09/03(金) 22:17:17 ID:z4du8+0d
ほのぼのしてていい話だった!
GJ!
465名無しさん@ピンキー:2010/09/03(金) 23:57:54 ID:StmfU9bZ
空気が読めてなかったらすみません、投下します。
百合ヤンデレ、虐めなどの表現があるので注意してください。
466名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 00:01:28 ID:StmfU9bZ
……あれ?
すみません、やっぱり出直します。
467名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 00:02:40 ID:lmTOVrsq
投稿前に宣言してくれればいいと思うよ
468名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 01:58:01 ID:1rBoqydD
>>466
あれって書かれても状況が分からない。
469名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 05:20:05 ID:3+TplzhK
百合板でやれ
470名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 06:32:37 ID:Xy4XaPIa
今週もヤンデレ家族の投下が楽しみだ(^-^)
471名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 08:10:05 ID:EeICvJMU
禿同
472名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 10:33:22 ID:7d1GhlZ4
129 名前: リバース ◆ Uw02HM2doE 2010/09/04(土) 00:44:08 ID:YjbkacLc0

こんばんわ。
相変わらず規制続きなのでこちらに投下します。
今回は9話ということで少し短めですがよろしくお願いします。
473名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 10:33:46 ID:7d1GhlZ4
130 名前: リバース ◆ Uw02HM2doE 2010/09/04(土) 00:48:16 ID:YjbkacLc0

廃ビルの屋上にはコンクリート製の小屋が端の方に一つ佇んでいるだけだった。
ということはおそらくこの中に里奈さんがいるはずだ。
「……ふぅ」
小屋の前で深呼吸をする。もしかしたら俺の記憶にも関わることかもしれないから。
「……行くぞ」
ドアノブをそっと捻るとドアが開いた。どうやら鍵は掛かっていなかったようだ。
無用心だなと思うし、同時に何かの罠かもしれないとも思う。
「……暗いな」
小屋の中は暗くてよく見えない。
だが今俺がいる場所はどうやら玄関のようで目の前には外と同じ形状の扉がある。
「…………」
同じ扉のはずなのに開けられない。ドアノブに触るのがやっとだった。
冷たいドアノブの感触が唯一俺を現実に繋ぎ止めている。
……この中にいるはずなのだ。英の姉さんが。桃花が全てを捧げている人が。
この一連の事件の元凶かもしれない人物が。心臓の鼓動が早くなるのを感じる。
……本当にこの中に誰かいるのだろうか。
むしろ誰もいないことを心をどこか隅の方で祈りながら俺は
「……よし」
扉を開けた。



「…………」
部屋の中には蛍光灯の光が広がっており簡素なベッドだけが隅にある。
他に家具は見当たらずこの部屋が最低限の寝床でしかないことを示していた。
「……えっ?」
「………あ…」
そして部屋の真ん中には確かに人がいた。
……いたのだが目の前の女の子は明らかに小学生くらいで英の"姉さん"である里奈さんとは到底考えられなかった。
艶のある黒髪と大きな目が印象的な日本人形のような端正な顔立ちである。
いずれにしろこの前英に見せてもらった『藤川里奈』ではないことは明らかだった。
「……えっと」
「………き」
いや、待て。今問題なのはそういうことじゃない。
そうじゃなくて目の前の日本人形のような女の子が何故か裸で手には可愛らしい白い布を持っているということが問題なんじゃないか。
だってこの状況はどうみても覗き魔にしか見えないし、もしここで叫ばれでもしたら……。
474名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 10:34:06 ID:7d1GhlZ4
131 名前: リバース ◆ Uw02HM2doE 2010/09/04(土) 00:51:50 ID:YjbkacLc0

「お、俺は別に怪しい者じゃ……」
「きゃぁぁぁぁぁあ!?」
何とか説得しようと一歩中に入った瞬間に叫ばれて思い切り頬に平手打ちをされた。
ごく一部のマニア以外、少なくとも俺にとっては全く嬉しくない少女からの平手打ちを受けてしまった。
そして突然の出来事に戸惑っている俺を尻目に少女は部屋の隅にあった黒い塊を掴みこちらに向けていた。
「こ、来ないで!来たら……バリバリするからね!?」
「スタンガンかよ……」
少女の手には鈍く黒光りしているスタンガンがあった。
スイッチを入れるとバチバチと景気の良い音が狭い室内を包む。
スタンガンについては全くの素人だが少女のスタンガンは明らかに改造してあるのではと思った。
なぜなら本来相手を無力化することはあっても殺すことはないスタンガンからは考えられない稲光のようなものが走っていたからだ。
おそらく当てられれば気絶だけでは済まないだろう。
「ト、トウカはどうしたの!?」
「……桃花の知り合いか?」
「答えなさいよっ!」
「おわっ!?」
少女がこちらにスタンガンを突き出すので急いで一歩後ろへ下がる。
まさか桃花を倒した後にこんな小さな敵がいたとは……。
とにかく落ち着かせないと話も出来ないような状態だった。
何とかして少女から里奈さんのことを聞き出さないと。桃花の知り合いなら里奈さんのことを知っている可能性はある。
「トウカに何かあったら絶対に許さないんだからっ!」
涙目になりながら必死にこちらを睨みつける少女の姿に自分がしたことを後悔した。
いくら襲撃事件の犯人で英が傷付けられたとしても桃花にも大切にし、されている誰かがいるはずだから。
そして桃花の場合、それがこの少女だったのだ。
「……桃花は生きているけど俺が傷付けた。本当にゴメン」
だからこそ嘘をつけなかった。
少女を余計に混乱させることは百も承知だったがどうしても無理だった。
この少女を見ていると何故か鮎樫さんを思い出す。
……彼女も大切な誰かを待っているような、そんな表情をしていた。
「き、傷付けたって!?……あ!」
「へっ?」
少女は大声を俺へ、正確にいえば俺の背後へと向けた次の瞬間、後頭部に鈍い衝撃が走った。
「…はぁはぁ……里奈様には……指一本触れさせません」
「トウカッ!!」
……どうやら詰めが甘かったらしい。自分の迂闊さを反省しながら俺は意識を手放した。
475名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 10:34:27 ID:7d1GhlZ4
132 名前: リバース ◆ Uw02HM2doE 2010/09/04(土) 00:55:30 ID:YjbkacLc0

「中々面白いわね、貴方」
「くっ……」
立とうとするが膝に力が入らない。怪我をしているからじゃない。
圧倒的な力量差を見せ付けられ本能的に戦いを放棄していたのだ。
それ程彼女の戦いは華麗、そして独占的で圧倒的だった。
「どうやら一般よりは才能がありそうだし…まあこれからに期待、かな」
「ちっ…くしょう……」
正直余裕で勝てると思っていた。
自分はこの地域では負け無しだったし師匠からお墨付きが出る程だった。しかも相手はどうみてもか弱そうな女の子。
いくら師匠が注意しろと言っても舐めてかかったことは認める。
「ふふっ、久しぶりに楽しめそうね」
「……はぁはぁ…」
しかしそれらを抜きにしても彼女の強さは異常だ。
仮に最初から舐めずに全力で挑んだとしても今のように一撃でぶっ飛ばされていたかもしれない。
とにかく彼女の力は常人のそれを遥かに凌駕している。
これが俺の彼女に対する第一印象だった。
「名前、教えてもらっても良い?特別に覚えてあげる」
「……白川…要」
見下ろしてくる偉そうな態度が気にくわなくて教えたくなかったが、何故か自然と名前を教えていた。
やはり俺なりに何か感じている所があったのか。
「意外と素直なのね。私の名前は……」
或いはただ単に彼女の名前が聞きたかっただけなのかもしれない。
彼女は長い黒髪を払いながら名前を言った。
彼女の名前は……。
476名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 10:35:01 ID:7d1GhlZ4
133 名前: リバース ◆ Uw02HM2doE 2010/09/04(土) 01:00:58 ID:YjbkacLc0

「……んっ」
久しぶりに変な夢を見た。でも今回は潤や会長、遥でもなく……。
「……鮎樫さん?」
「貴方からその名前が出て来るとは思いませんでした」
「おわっ!?」
「おはようございます、要様」
いきなり桃花に声をかけられて思わず飛び起きる。何故桃花が目の前にいるのか。
というかそもそもここは何処なんだ。俺は確かあの廃ビルの屋上で……。
「ここは……?」
「あの廃ビルはバレてしまいましたからね。要様たちの情報収集力には正直驚きました」
無表情で俺に語りかける桃花。
確かに桃花の言う通りこの部屋はさっきの廃ビルと比べるといくらか生活感がある。
相変わらずベットは一つだが冷蔵庫やキッチンもあり扉の奥には廊下がある。
この分だとシャワーやトイレもちゃんとありそうだった。
「……俺を気絶させたのは…」
「申し訳ありません。ああでもしない限り要をここへ連れては来られないと思いまして」
「…何で俺を連れてきた?大体要"様"って一体どういう心変わりだよ」
「私は自分より強い方には敬意を示します。そして要様には里奈様を託す為に来てもらいました」
真剣な口調で桃花が言う。
でも里奈様を託すってどういうことだ。そもそも俺の目的でもある里奈さんは一体何処にいるんだ?
「トウカ〜?タオル何処〜?」
「申し訳ありません!今持って行きますので!」
廊下から幼い声が聞こえてくると桃花が慌てて部屋から出ていった。
手にタオルを持っていた所を見るとどうやら持って行く途中だったようだ。
477名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 10:35:21 ID:7d1GhlZ4
134 名前: リバース ◆ Uw02HM2doE 2010/09/04(土) 01:08:07 ID:YjbkacLc0

しばらくすると扉が開きさっきのスタンガン少女と桃花が出て来た。
少女の髪の毛がまだ濡れていて風呂上がりのようだ。桃花が少女を俺の目の前まで連れて来る。
少女は何やら気まずいようでしばらく黙っていた。
「…………」
「………えっと…」
こっちまで気まずいので何か話し掛けようとすると
「ご、ごめんなさい…」
「えっ?」
少女が口を開いた。
「あ、あたし……カナメのこと…悪い人だと思って……」
ここまで聞いてさっき小屋でスタンガンを向けられたことについてだと分かった。
まあ夜にいきなり男がノックもせずに入って来たら不審者だと思われても仕方ないよな。
……というか悪いの俺じゃないか?
「それで……何とかしないとって…あたしっ!」
「ゴメンな。悪いのは俺の方だよ。わざわざ謝ってくれてありがとな」
妹がいるからだろうか。無意識に少女の頭を撫でる。
真っ黒で艶のある髪の毛は風呂上がりで少し濡れていたが良い手触りだった。
「あっ……」
少女の方は頭を撫でられ慣れていないようで緊張気味だったが、しばらくすると目を細めてリラックスしていた。
こうして見るとまるで猫みたいだな。
「どうやら仲直り出来たようですね」
「うんっ!トウカの言う通りカナメは良い人だね!」
桃花に呼びかけられ彼女の方に飛びつく少女。ピンク色のパジャマが似合う彼女はよく見ると誰かに似ている。
最近何処かで見たような……有り得ない。だってこの少女はまだ小学生くらいだ。
有り得るわけ……ない。
「……せっかくだから自己紹介してはどうですか?要様も気になっていらっしゃるようですし」
桃花が俺を見ながら言う。
彼女の燃えるような紅い瞳が妖しい光を湛えていた。
少女が頷いて口を開く。
……ああ、そうか。だから桃花は少女に敬語を使っていたんだ。
信じられなかった。有り得るわけないと思っていた。
でも少女からは確かに彼女の面影が見られて……。
「あたしの名前は里奈!よろしくね、カナメ!」
笑顔で自分の名前を言った少女こそが……英の姉さんである藤川里奈だったんだ。
478名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 10:35:42 ID:7d1GhlZ4
135 名前: リバース ◆ Uw02HM2doE 2010/09/04(土) 01:14:53 ID:YjbkacLc0

今回はここまでです。
毎回規制で申しわけありません…。転載よろしくお願いします。
次回は新展開です。投下終了します。
479名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 11:39:25 ID:bMu14AoM
リバースGJ!!
里奈は一体何があったんだ!?まさかクローン!?
480名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 11:41:39 ID:1WZl5V1i
転載と作者さんGJ


リバース待ってました!まさかの里奈若返りか!?
ロリヤンデレも良い…
481名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 11:48:26 ID:dJ0lFSfG
gj!

リバース来た!次回に期待!
482名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 11:55:28 ID:oXGpa1rj
超GJ!転載&作者乙

>>480
若返りなのか?
俺は桜花と同じアンドロイドだと思ったんだが…
483名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 14:19:25 ID:HEywCc/i
 夏終わったのに、良作多いですな。
 自分も投下してみようと思うのですが……。

 コミカルな作品も多い中、ガチのシリアス路線ってのは良いのだろうか……?
484名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 14:34:47 ID:IStLhly3
ラストオーダー
485名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 14:49:06 ID:0wKLmJ3o
>>483
GO
486名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 15:50:10 ID:HEywCc/i
では、今から投下します。
徐々に病んでゆく様子を書きたいので、病みが発動するまで、少し時間かかるかも……。
487迷い蛾の詩 【第零部・蟲哀歌】:2010/09/04(土) 15:51:31 ID:HEywCc/i
―――― 宵の闇に 誘われ

―――― 月夜の晩に 羽開く


―――― 水面に映りし 己が姿

―――― 見つめて 嘆くは 夜の 迷い蛾




―――― あなたは なぜ 

―――― そうまでして 光を求めるの




―――― 灯火に触れた その先に

―――― 待っているのは 破滅だけ


―――― 紅蓮の炎に 身を焦がし

―――― それでも 光に憧れる




―――― 闇は闇に 灰は灰に




―――― 虚ろな夢を 胸に抱きて

―――― 焔に 焼かれる 夜の 迷い蛾
488名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 15:52:24 ID:HEywCc/i
≫487

これは序文。
次からが本編です。
489迷い蛾の詩 【第壱部・恋時雨】:2010/09/04(土) 15:53:49 ID:HEywCc/i
 月乃繭香≪つきのまゆか≫にとって、学校というものは、至極つまらない場所だった。

 こんな感情を抱き始めたのは、いったい何時の頃からか。
 思えば、小学生の時から既に、そんな気持ちは芽生えていた。

 繭香の家は、未だ下町風情の残る街の中においても、一際裕福な家の一つだった。
 それ故に、周りの人間は皆、彼女に対して妙に気を使った接し方しかしてこない。
 男も女も、繭と話す時は、まるで腫れ物に触れるような態度でしか近寄って来ない。

 物心ついた時から、繭香に対する周りの態度は既にそうだった。
 まだ、物の分別もつかない年齢の時から、繭は周りの子が妙によそよそしいのを感じていた。

 今になって考えてみると、あれは親が自分の子に言い聞かせていたのだろうと思う。
 あの子は良家のお嬢様。
 だから、お付き合いする際には、失礼のないようにせねばならないと。

 繭香にしてみれば、まったくもって要らぬ世話だった。
 家の名前など関係なく、本当は周りの子と一緒になって遊びたかった。
 それこそ、男の子も女の子も関係なく、服の汚れなど気にせずに外を駆けまわりたかった。

 だが、そんな彼女の気持ちとは反対に、周りは繭香に対する態度を変えようとはしなかった。
 小学校、中学校と上がる度に、繭香はそれを強く感じた。

 幼い頃は、単に大人しく礼儀正しい子としか見られていなかった繭香。
 しかし、年齢を重ねるにつれ、周りの評価というものも徐々に変わってくる。

 中学に上がると、繭香に対する周囲の評価にも変化が現れた。
 もっとも、それは決して繭香が望んだ形ではない。
 改善などという夢のような言葉ではなく、むしろ改悪とさえ呼べるものだった。
490迷い蛾の詩 【第壱部・恋時雨】:2010/09/04(土) 15:54:27 ID:HEywCc/i



―――― 無闇に近寄ってはいけない子。



 それが、中学において繭香に貼られたレッテルだった。

名家の令嬢で品行方正。
 誰にでも優しく、常に清楚で大人しい。
 だが、それ故に、決して無礼を働いてはいけない人間。

 いつ、誰が言い始めたのかは分からないが、気がつけば、そんなイメージだけが独り歩きしていた。
 当然、本音で語り合える友達などいない。

 周りは全て、先入観だけで自分を見ている。
 それは、繭香に無用の期待を強いるもの。
 繭香に道化を演じるように、無言の枷として彼女を縛る。

 人は皆、他人に何らかの期待を抱いている。
 繭香はそれを、幼い頃から知っていた。

 父も母も、繭香を月野家の娘として恥じないように行動するよう躾けてきた。
 家でも外でも、決して本当の自分を出す事は許されない。
 父母の期待を裏切れば、後に待つのは地獄だけだと分かっていたから。

 無償の愛などありえない。
 自分は月野繭香として、周りが望むように生きねばならない。
 誰にでも優しく、清楚で大人しく。
 俗っぽい趣味には手を出さず、学業でも常に優秀である。

 絵にかいたような、理想のお嬢様であること。
 それが、周りが繭香に求めたものだった。

 正直なところ、これを演じ続けるのは息苦しかった。
 自分の意志など関係なく、あるのはただ、周囲からの視線のみ。
 しかし、繭香は苦痛を感じながらも、いつしかそれを受け入れていた。

 期待を裏切った時、人がどれほど冷酷になるか。
 その事を知っているだけに、自分は道化を演じ続けるしかない。
 ある種、達観した考えの下、繭香はただひたすらに、本当の自分を隠して生き続けた。

(本当の私を知れば、皆が私を嫌いになる……)

 虚構の偶像によって生み出された、束の間の人間関係。
 しかし、例えどのような関係であっても、それを失うことは恐ろしかった。

 誰にも見てもらえず、独りになること。
 孤独という名の悪夢は常に、繭香の心の奥で彼女の恐怖心を煽り続けていた。
491迷い蛾の詩 【第壱部・恋時雨】:2010/09/04(土) 15:55:06 ID:HEywCc/i
 転機というものは、本人の意思とは関係なく唐突に訪れる。
 高校に上がった繭香にとっても、それは同じだった。

 繭香の通う高校は、市内にある私立の進学校だ。
 元より勉強は不得意でなかったため、入るのにそう苦労はしなかった。
 もっとも、中にはこの高校へ入るために、暇さえあれば足しげく学習塾へ通う者もいるらしいが。

 中学とは違い、高校は比較的同じレベルの人間が集まりやすい場所である。
 生徒は皆、入試という関門をくぐり抜けて集まった者達なのだから、考えてみれば至極当然のことだ。
 繭香にとってもそれは同じだったが、彼女からしてみれば、新たなスタートを切るのに好都合だったといえる。
 
 学力も、なにより考え方も同じような人間の集まる私立高校。
 経済的にも裕福な層が集まっているわけであり、自分のことを色眼鏡で見る者も少ないだろう。
 そう思ってのことだった。

 ところが、実際に高校生活が始まってみると、彼女の期待は脆くも崩れ去った。
 
 私立の高校とはいえ、地元の人間が全く通わないわけではない。
 繭香の中学から入学した者も、当然のことながら複数名存在する。
 そんな者たちの噂話は、繭香が新しい人間関係を築くよりも先に、早くも校内に浸透し始めていた。

 噂を聞いた人間は、繭香とは初めから距離を取っている。
 それでいて、繭香にステレオタイプな名家の令嬢の姿を重ねるのだから始末に悪い。

 結局、ここにも自分の居場所はなかった。
 平穏な日常を送るためには、自分が周りの考えている月野繭香の姿を演じ続けるしかない。
 そうでなければ、彼らは裏切られたと感じ、更に自分との距離を取るに違いないのだから。

 いつ終わるとも知れぬ、道化の上に成り立つ人間関係。
 正直、もう疲れ果ててしまった。
 このまま自分は、一生周りの顔色を窺いながら生きてゆくしかないのだろうか。
 
 そんな繭香に転機が訪れたのは、高校に入学してから二月程経った頃。
 湿った空気が煩わしい、六月のある日のことだった。
492迷い蛾の詩 【第壱部・恋時雨】:2010/09/04(土) 15:56:07 ID:HEywCc/i
 その日、繭香はいつもの如く、校門前のバス停に立っていた。 
 彼女の家は、ここからバスで十分程の場所にある。
 停留所から少し歩くものの、近所のバス停と家との距離は目と鼻の先だ。

 ところが、その日に限り、なぜかバスは時間通りに来なかった。
 電車とは違い、道路の状況に左右されるバスのこと。
 数分の遅れなどは、日常茶飯事のことである。

 しかし、それでも今日のバスは、繭香が首を傾げる程に遅れていた。
 既に、時計の針は予定時刻よりも三十分を過ぎている。
 これほどまでに遅れるとは、いったい何があったのか。

「ねえ、今日のバス、やけに遅くない?」

 後ろから声がして、思わず繭香は振り向いた。
 見ると、自分の他にもバスを待っていた数人の生徒が、自分の携帯電話を片手に喋っている。

「なんか、今、友達からもらったメールなんだけどさ……。
 駅前の交差点で、交通事故があったらしいよ」

「げっ、マジで……。
 じゃあ、今日はバスが来ないかもしれないってこと!?」

「たぶんね。
 このまま待ってても、もう無駄じゃないかなぁ……」

 横から聞こえてくる、誰とも知らぬ生徒達の会話。
 それを耳にした繭香は、半ば絶望に近い気持ちになって俯いた。

 自分の家の近くは、残念ながら目ぼしい電車の駅がない。
 歩いて最寄りの駅に向かうと、それだけでも二十分はかかってしまう。

 このまま歩いて帰るにしても、やはり時間がかかり過ぎる。
 その上、ふと空を見上げたところ、灰色の雲が一面を覆っている。
 今日はうっかり傘も忘れてしまったため、帰宅途中に降りだされたら最後、ずぶ濡れになる他に道はない。

「やれやれ……。
 今日はもう、バスで帰るの諦めよっかなぁ……」

 後ろで話していた女子生徒の一人が、そんなことを呟いているのが聞こえてきた。

「諦めるって……。
 じゃあ、どうやって帰るつもりなの?」

「とりあえず、彼氏にメールして迎えに来てもらうわ。
 彼、バイク持ってるからさ。
 後ろに乗っけてもらえば、バスなんかよりも早く着くし」

「いいわね、男持ちって。
 それじゃあ、私は独り寂しく、電車で帰ることにしますか」

「悪いわね。
 それじゃあ、また明日」
493迷い蛾の詩 【第壱部・恋時雨】:2010/09/04(土) 15:57:26 ID:HEywCc/i
 そう言って、繭香の後ろでバスを待っていた女子生徒達は方々へと掃けて行ってしまった。
 後に残されたのは、八方塞がりになった繭香のみ。

 当然のことながら、繭香にはバイクで迎えに来てくれる彼氏などいない。
 電車で帰るにしても、駅から家までは二十分。
 その間に雨に降られれば、結果は同じことだ。
 だが、歩いて帰るという選択肢は、今の繭香にとっても利点は何もない。

(どうしよう……)

 こんな時、気軽に声をかけられる友人がいれば、どれだけ助かることだろう。
 ちょっと同じ方角に帰る友人に、一緒に帰ろうと言えばよい。
 雨が降りだしても、相手と二人で一つの傘を共有すれば濡れずに済む。 
 家の名前や他人の目など関係なく、誰とも気さくに話せる人が羨ましい。

 電車で帰るか、歩いて帰るか。
 どちらに進むかも決められないまま、時間だけが過ぎてゆく。
 その間にも繭香の前を、家路を急ぐ生徒達が次々に通り過ぎてゆく。
 いつしか空は先程よりも黒く染まり、今にも大粒の雨を降らせそうな様相だ。
 まるで、今の繭香の心情を代弁するかのようにして、徐々にその黒さを増してゆく。

 このまま雨が降りだしたら、それこそ自分は帰れなくなる。
 そう、繭香が思った時だった。

「君、どうしたの?」

 突然、後ろから声をかけられた。
 それが自分に向けての物だとは分からずに、繭香は振り返るまでしばらくの時間を要してしまった。

「あ、あの……」

 それ以上は、喉から言葉が出なかった。
 今まで、いきなり声をかけられることなどなかっただけに、柄にもなく緊張してしまっていたのだ。

 繭香に声をかけてきたのは、同じ高校の制服を着た少年だった。
 取り立てて優れた容姿でもなければ体系でもない、どこにでもいそうな、至って平凡な高校生。
 通学用の自転車に乗り、前籠には学生鞄が無造作に放り込んである。

 鞄についているクラス章を見る限り、彼は繭香と同じ一年生のようだった。
 もっとも、大きな高校だけに、繭香は彼の顔はおろか名前も知らない。

「なあ。
 君、一人なのか?」

 再び、少年が聞いてきた。
494迷い蛾の詩 【第壱部・恋時雨】:2010/09/04(土) 15:57:49 ID:HEywCc/i
「は、はい。
 あ、あの……。
 私に、何か……?」

「いや、何ってわけでもないんだけど……。
 君、バスを待ってるんなら、今日は諦めて帰った方がいいよ。
 たぶん、駅前の事故のせいで、今日は時間通りに動いていないはずだから」

「それは知っています。
 でも、私の家、バスじゃないと帰りづらくて……。
 それに、歩いて帰るにしても、今日は傘も持ってないし……」

「なんだ、そうだったのか。
 でも、こんなところで待ってても、どうしようもないと思うけどな。
 なんだったら、俺の自転車の後ろに乗ってくかい?」

 少年が、自転車の後ろを叩きながら軽く笑った。
 普通ならば、この様な申し出などは、新手のナンパとして断ってしまう。

 だが、今の繭香にとっては、まさに渡りに船であった。
 なによりも、こんな風に自分に接してくれたのは、今まで生きてきた中でも彼が初めてだ。

 打算も下心もない、純粋な親切心から来る行為。
 今時、珍しいくらいに紳士的な少年である。

「それじゃあ……お言葉に甘えても、よろしいでしょうか……」

 最後の方は、恥じらいから声が小さくなってしまった。
 同学年とはいえ、男の人の自転車の後ろに乗せてもらうことなど初めてだ。

「よっし。
 だったら、君の家の方角を教えてくれるかな。
 俺、この辺の地理には詳しいから、たぶん迷わずに案内できるよ」

「えっと……。
 私の家、森桜町の方なんですけど……」

 自転車の後ろにそっと腰かけて、繭香は申し訳なさそうに言った。
 こんな時でも、お淑やかな姿を演じてしまう自分が情けない。

「森桜町か。
 この天気だったら、ちょっと急がないとマズイかもな……。
 君、悪いけど、後ろに跨るようにして乗ってくれない?
 そんな御姫様みたいな座り方だと、降り落としちゃうかもしれないからさ」

「えっ……。
 で、でも……」

「いいから早く。
 後、俺の腰、しっかり掴んでおいてくれよ。
 急ブレーキかけたりすると、その衝撃で後ろにひっくり返るかもしれないから」

「わ、わかりました」
495迷い蛾の詩 【第壱部・恋時雨】:2010/09/04(土) 15:58:41 ID:HEywCc/i
 少年の強い言葉に、繭香は半ば流されるようにして身体を動かした。
 後ろの荷台に跨るようにして腰を降ろし、学生鞄を肩からかける。
 両手を彼の腰に回すと、否応なしに体が近づいてドキリとする。

 同学年とはいえ初対面。
 そんな男子の背中に自分の身体を預けてしまうなど、今までには考えられなかったことだ。

 だが、不思議と悪い気はしなかった。
 むしろ、自分の名前や立場など気にせずに、こうして気さくに話かけてくれたことが嬉しかった。

 曇天の下、繭香を乗せた自転車が走る。
 不安定な二人乗りながらも、少年は可能な限り急いでくれているようだった。

 このまま行けば、程なくして家に着くだろう。
 そう思った繭香ではあったが、天気というものは、実に気まぐれで移り気なものである。

 先ほどまでは辛うじて保っていた空は、ついに限界を迎えて大粒の雨を降らせ始めた。
 梅雨時の雨は長く穏やかだと言われるが、今日に限ってそれは当たっていない。
 雨は瞬く間に勢いを増し、少年と繭香の身体を濡らしてゆく。

「やれやれ、気まぐれな空だよな、まったく……。
 降るなら降るで、もう少し穏やかにしてもらいたいもんだよ……」

 自転車をこぐ足を止め、少年が憎々しげに空を見る。
 この雨では、もう二人乗りのまま走り続けるのは危険だろう。

 少年は仕方なく繭香を降ろし、そのまま二人で近くのコンビニの軒先へと避難した。
 雨は一向にやむ気配もなく、空は相変わらず黒い雲に覆われたままだ。

「なんか、格好つけて、返って悪いことしちゃったな。
 結局、君を家に送る前に、二人ともずぶ濡れになっちゃったわけだし……」

 そう言って、少年は繭香の方へと顔を向けた。
 が、すぐにその顔を横に逸らし、なにやら気まずそうな表情で空を見る。

 顔を赤らめ、落ち着きのない様子で手を動かしている少年。
 そんな彼の姿を不思議に思った繭香だが、ふと自分の胸元に目をやったとき、その疑問は解けた。

 雨に濡れ、水気をたっぷりと含んで身体に貼りついた白いシャツ。
 柔らかな布地に隠されていた、健康的な身体のラインがはっきりと浮き出している。
 それだけでなく、シャツの下に着ていた下着までもが浮き出して、繭香の胸元を妙に艶っぽく強調していた。

「あっ……」

 自分のあられもない姿に気づき、思わず胸の前を腕で覆う繭香。
 少年が先ほどから気にしていたのは、きっと、繭香のそんな姿を直視することを避けてのことに違いない。
496迷い蛾の詩 【第壱部・恋時雨】:2010/09/04(土) 15:59:14 ID:HEywCc/i
 互いに視線をそらしたまま、なんとも言えない気まずい空気が流れてゆく。
 その間にも、雨は容赦なく二人の前に広がる道路を打ちつけてゆく。
 激しい雨音にかき消され、他の音が殆ど聞こえなくなっているだけに、どうしても近くにいる相手のことを意識してしまう。
 それが互いの心の中で、恥じらいの気持ちを更に強めてゆく。

 どれくらい固まっていたのだろう。
 時間にして五分程のことだったのかもしれないが、繭香にとっては一時間近くの時が流れたようにも感じられた。

 コンビニの自動ドアが開き、中から客が出てきたことをきっかけに、少年は繭香に背を向けたまま自分の鞄を取った。
 二人と同じく軒先に退避させていたため、鞄の中身はそこまで濡れているわけではない。
 その鞄から紺色のジャージを取り出すと、少年は半ば押しつけるようにして、繭香にそれを手渡した。

「これ、着てろよ。
 そんな格好じゃ、その……俺も、目のやり場に困るって言うか……」

 男としての素直な気持ちを抑えた、ぎりぎりの言葉だった。
 
 借り物の、しかも男子生徒のジャージを着ることに、繭香自身も抵抗がなかったわけではない。
 だが、それでも彼女は少年からジャージを受け取ると、何も言わずに素早くそれを上から羽織った。
 このまま人目を気にしつつ、胸元を隠し続けているよりはマシだったからだ。

「それじゃあ、俺はちょっと、この店で傘でも買ってくるよ。
 このままじゃ、二人とも帰るに帰れないからさ」

 そう言うと、少年は繭香の返事を待たずにコンビニのドアをくぐって行った。
 後に残された繭香は、未だ雨を降らせ続ける黒雲を、ぼうっとした顔で眺めながら考える。

 あの少年は、なぜ自分に、ここまで優しくしてくれるのだろう。
 何か、打算があってのことなのだろうか。

 自分が良家のお嬢様であるから、少年は繭香を助けたのか。
 いや、それはない。
 少なくとも、今まで出会ってきた男の中で、それを理由に繭香に近づいた者はいなかった。
 年頃の欲と本能に忠実な男子にとって、繭香のようなお嬢様は、むしろ面倒臭い女だったはずだ。

 では、それ以外に何か理由があるのだろうか。
 残念ながら、今の繭香には思いつきそうにもない。
 自分が外に向けて見せている顔のことを考えると、少年が自分に近づいてくる理由が他に思いつかないのだ。
497迷い蛾の詩 【第壱部・恋時雨】:2010/09/04(土) 16:00:25 ID:HEywCc/i
 そうこうしている内に、少年がコンビニから戻ってきた。
 右手には一本の黒い傘を持ち、左手には口の開いたままの財布を持っている。

 少年の目は、自分の手にした財布の中身に向いているようだった。
 その瞳が、どこか寂しげだったのは気のせいか。 

「あの……。
 傘、買えました?」

「ああ、なんとかね。
 けど、今日は生憎、持ち合わせがなくってさ。
 ちゃんとしたやつを買ったら、それで財布の中身が空っぽになっちゃったよ」

 少年が、苦笑しながら繭香に言った。
 彼は買ってきたばかりの傘の包装を剥がし、それを繭香に差し出して言う。

「これ、君が使いなよ。
 俺はどうせ、こいつに乗って帰らなきゃならないしさ」

 少年が、コンビニの軒先に止めた自転車を軽く小突いた。

「そ、そんな……。
 でも、それじゃあ、あなたが濡れてしまいます」

「もう、十分に濡れているから一緒だよ。
 それに、俺のことだったら大丈夫。
このくらいの雨、俺はなんとも思わないからさ」

「そうなんですか?
 で、では……ありがたく、お借りします……」

「ああ、そうしてくれると、俺も嬉しいかな。
 それじゃあ、俺はそろそろ行くよ」

 サドルに着いた水滴を払い、少年は再びハンドルを握って自転車に飛び乗る。
 そのまま立ち去ろうとする彼であったが、繭香はぎりぎりのところで少年を引き止めた。

「あ、あの……!!」

 自分でも、信じられないくらい大きな声だった。
 大地を穿つ雨音が、一瞬だけ聞こえなくなった程である。

「今日は……その……本当に、ありがとうございました!!
 私……なんだか、迷惑かけっ放しで……」

「なんだ、そんなことか。
 別に、全然気にすることじゃないよ。
 人として、当然のことをしたまでなんだから」

 あくまで軽く、流すようにして少年は言う。
 しかし、繭香には、少年の行為が決して普通の人間には真似できないものだということが、よく分かっていた。
 今時、ここまで無償で他人に優しくできる人間は、少なくとも繭香の知っている者の中にはいなかったからだ。

「あの……最後に、お名前だけ聞かせてもらっても宜しいですか?
 この傘とジャージも、いつかはお返ししなくてはいけませんし……」
498迷い蛾の詩 【第壱部・恋時雨】:2010/09/04(土) 16:00:54 ID:HEywCc/i
「名前?
 そういえば、言ってなかったっけか」

 少年の言葉に、繭香は傘を胸に抱いたまま頷いた。

「俺、陽神亮太≪ひのかみりょうた≫。
 クラスは一年E組だよ」

「私、月野繭香って言います。
 E組の陽神君ですね。
 今日のお礼は、いつか必ずしますから……」

「へえ、月野繭香さんか。
 なんか、綺麗な名前だね」

 繭香が最後の方に言った言葉は、少年はよく聞いていなかったようだ。
 名前に対して率直な感想を述べた後、少年は雨の中へと自転車にまたがり走り去った。

 黒い雲から降り注ぐ雨は、未だその勢いを弱める様子はない。
 そんな中、傘を渡されたにも関わらず、繭香はしばしの間、その場でぼうっと呆けていた。

(私の名前が、綺麗……)

 別れ際、亮太と名乗った少年の言った言葉が頭に響く。
 今までにも、容姿や服装を誉めてもらったことはあったが、名前を誉めてもらったのは初めてだ。

「陽神亮太君、か……」

 雨空の下を行き交う人々の姿さえ、今の繭香には見えていない。
 彼女は、ただひたすらに、自分の心の奥から湧き上って来る感情に酔いしれていた。
499名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 16:01:42 ID:7d1GhlZ4
支援してみる
500名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 16:04:00 ID:HEywCc/i
 とりあえず、第壱部終了。
 これだけならば、単なる恋バナで終わるはずですが……。

 次回以降、少しずつですが、病んだ部分を出して行く予定。
 今日のところは、これで投下終了します。
501名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 17:07:43 ID:agmLRhD1
支援支援
繭香さんの病んでいく過程が楽しみ、よしこれから日通いしよう。
502名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 17:13:08 ID:agmLRhD1
続けざまに申し訳ない、465です。
前回は書きこんでからネットの繋がりが悪くなってしまったので
出直しました。

投下する前に、百合ものってやめておいた方がいいんでしょうか?
503名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 17:21:24 ID:63UQCVOo
トリップつけて投下前に注意書きすればいいと思うよ
504名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 17:32:26 ID:agmLRhD1
なるほど、ではそのようにします。
ありがとう。

では投下します。
百合ヤンデレやイジメなどの表現がありますので注意してください。
ちなみに「後の空白すらも私だけに」を投下した人間です。
505名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 17:34:14 ID:F7UKO/lq
>>500
なんかシリアスっぽいのが来たGJ!
今後の病み化に期待しています!

>>502
う〜ん。個人的には病み百合は大歓迎(禁じられた恋&ヤンデレとか最高)なんだけど……
このスレにも、百合嫌悪派はいるようだし、どうだろう……?
506いつものげこうふうけい ◆RgBbrFMc2c :2010/09/04(土) 17:35:14 ID:agmLRhD1
「藤崎さん、今帰り?」

 日の沈んだ校内の下駄箱でぼんやりとしている彼女へそう話しかけると、彼女はこくりと頷いた。
 今自分がどういう状況であるかをまったく気にしていないような、平然とした表情で私から顔をそむけ、
 砂埃まみれのローファーを地面へと静かに置いてから靴を履き始めた。
 今日で何回目だろう、こんなやりとりは。
 何だか背筋がぞくぞくとして、今自分の浮かべている笑みとは全く違う種の笑い声をあげてしまいそうになった。
 藤崎さんに頭のおかしな奴だとは思われたくないので実行に移したりはしなかったけれど。

 私がそんなことを考えているうちに靴を履き終えたらしく、いつの間にか彼女はゆっくりと歩き出していた。
 綺麗な黒髪を風になびかせて、静かに私の元から離れていく。
 これは普段通りの光景、いつも通り別れ方、通常通りのやりとり。だから私は、いつものように悲しげな声を装って彼女に言った。

「力になれなくて、ごめんね……」
「別にいいよ」

 振り返らずに澄んだ声色で返答する彼女はやはり昨日と同じだった。
 すっかりボロボロになってしまった学生鞄を僅かに揺らせて、藤崎さんはあっという間に昇降口から出て行った。
 その後ろ姿があまりにも小さくて、
 今日も藤崎さんは可愛いなあ、いつまで我慢すればいいんだろうなあと呟きながら自分も靴を履くために下駄箱からローファーを取り出した。
 その代わりに上靴をぽいと中に投げ込んで、靴に足を入れつま先を鳴らす。
 さて私も行こうかな。そう伸びをした後、毎日の確認事項を点検するために藤崎さんの下駄箱の中を覗いてみた。

 中は紙くずやカッターナイフの刃、虫の死骸に土泥砂。この間の雀の死骸程ではないけれど、とりあえず合格点。
 ひとりで声を殺しながら笑い、彼女の下駄箱の前で声にはできない思いを告げた。

「    」

 さあ、早く彼女の後を追わないと。
507いつものげこうふうけい ◆RgBbrFMc2c :2010/09/04(土) 17:38:28 ID:agmLRhD1
 私の大好きなもはや愛していると言っても過言ではない藤崎さんは酷いイジメに遭っている。
 陰口物隠し些細な嫌がらせからクラス規模の大きな嫌がらせまで、一手に引きうけているなかなかの嫌われ者だ。
 別に彼女の容姿が劣っているからだとか頭が悪いだとか、そんな理由からではない。
 彼女は多少性格は変わっているものの、小柄でかわいらしい顔をしているし頭も良い、スポーツもできる。
 数週間前までの彼女はクラスの中心人物ともいえた。

 けれどほんの些細なことで今のような泥沼状態が始まったのだ。
 ありがちな陰口から始まって、そこへ脚色を加えられていった結果、クラスからは彼女の味方が表面上どこからもいなくなった。
 クラスの皆もストレス発散のはけ口ができたようで嬉しそうにしているけれど、まあそいつらはどうでもいい。
 私はただ、いつになれば藤崎さんが自分に縋ってくるのかということだけを考えている。
 ボロボロと涙を流しながら嗚咽をあげて、私の名を呼ぶことを想像するだけで頬が上気する。

 しかし、何日たっても藤崎さんは泣かないどころか嫌な顔一つしないで学校へと登校していた。
 悪口を言われても顔すら伏せない、下駄箱の惨状を見ても驚かない、友達だったクラスメイトに絶交を言い渡されても彼女は泣かなかった。
 ただぼんやりと、何も気にしていないように無表情だった。
 最初はいろいろな段階をすっ飛ばして壊れてしまったかと思い心配していたのだけれど、それはどうやら違うようで――――
508いつものげこうふうけい ◆RgBbrFMc2c :2010/09/04(土) 17:39:20 ID:agmLRhD1

「……何で、何でよ……私、何もしてないのに……」

 彼女はちゃんと泣いていた。
 普段の淡白な声からは想像もできない悲痛な感情で溢れた声を上げ、彼女は泣いていた。
 下校途中、人通りの少ない小道で誰に訴えるわけでもなく、静かにポロポロと涙を流していた。

 藤崎さんは無感情なわけでも気にしていないわけでも壊れたわけでもなく、ただ我慢していたのだ。
 弱みを見せることを我慢して、誰かに頼ることを我慢してイジメが始まってからずっとずっと何カ月も。
 それに気付いてからは、彼女の帰りを待ち伏せして後をつけながらそれを聞きつつ帰るというのが私の日課になっていた。
 できることなら今すぐに抱きしめてあれやこれやとしてしまいたいのだけれど、それでは駄目だ。

 彼女自身が縋ってくる姿を、私は見たい。
 私だけに泣き縋る彼女が見たい。他の誰かには絶対に見せない表情で、もう私だけしか見えていない瞳の彼女が見たい。
 
「よくなんてない……力になってよ、お願いだから……」

 傍にいてくれるだけでもいいから。
 嗚咽交じりに呟くその言葉の対象が私なんだろうなあと思うと、自然に笑みがこぼれた。
 それを私の目の前で早く言ってくれればいいのに。
 そのためだけに毎日声をかけてるんだから、そのためだけにこんなこと始めたんだから、ねえ。

「愛してる」

 今にも崩れてしまいそうな弱々しい背中にそう告げて、
 私は今日も彼女を待っている。
509名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 17:45:09 ID:agmLRhD1
投稿終了です。
ありがとうございました。

>>505

忠告を見逃してしまいました、すみません。
百合嫌いな方には不快な思いをさせてしまったかもしれない……。
注意書きの効力を信じます……。
510名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 18:35:57 ID:bMu14AoM
いや、百合もありだと思うよ。こないだ荒れたのはレイプやったからであってネトラレ・レイプネタじゃなければ大丈夫
511名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 18:40:29 ID:TEOAc10E
>>1にもあるけど読みたくないやつは勝手にNGにすればいい訳だし
注意書き忘れなければ問題無いと思うよ
512名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 18:43:44 ID:1rBoqydD
>>510
なにその区別。
513名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 19:05:02 ID:3+TplzhK
>>509
百合板でやれ気持ち悪い
514名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 19:13:18 ID:3+TplzhK
>>510
つまり荒れなければ何してもいいんだな?
515名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 19:24:27 ID:6shofGho
お前それしか言えないのな
どうせ荒らすのはお前だろ
516名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 19:44:46 ID:q3wEx8Od
>>509面白かったヨ
517名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 19:49:08 ID:RFEsCgrD
大体百合ヤンデレはこのスレにも昔からあったじゃん
嫌ならそのとき反対しておけよ
前例があるのに今更反対とかただの新参のワガママ
518名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 20:51:08 ID:2H9yYqL9
スクイズ(笑)でヤンデレに興味示したちびっ子が流れ着いたんだろう
519名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 21:02:47 ID:ksOmaGTL
題名の無い短篇の十は百合でレイプありだったが…
気に入らないなら読まないでスルーできないものか?
520名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 21:03:53 ID:a+LrKbN0
スクイズ関連で残念なのは、「鮮血」みたいなシーンばかりがもてはやされ、過程をすっ飛ばされていること。
ヤンデレの萌えは、じわじわ暗黒面に染まっていくヒロインの姿にある。
到着地に至るまでの過程を楽しもうぜー。旅を楽しみ尽くすなら、過程も楽しむべきだよ。
521名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 21:17:57 ID:3+TplzhK
>>517
じゃあタイムマシンくれよ
522名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 21:20:26 ID:3+TplzhK
>>518
何年前の話だ
>>519
ならNTRに文句言うな。ヤンデレが途中でチャラ男に寝取られても何も言うな
523名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 21:21:00 ID:3+TplzhK
おおっとsgae忘れ
524名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 21:21:30 ID:3+TplzhK
訂正:sage忘れ
525名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 21:22:12 ID:3+TplzhK
おっとまたミスだ
526名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 21:28:40 ID:q3wEx8Od
ヤンデレって土日何してるんだろう?
温泉巡りかな
527名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 21:31:28 ID:6QzmXpwO
>>521
クレクレ厨はお帰り下さい。

>>522
スクイズは2005/04/28発売だから5年とちょっと前になるね。
ちなみにアニメ版は2007年7月頃だからほぼ3年前。

>>526
家に引き籠って勉強しているかも。
528名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 21:33:03 ID:agmLRhD1
好きな男の写真を見ながら、キャッキャウフフしてたら可愛い。
そのあとに脳内デート繰り広げてにへにへしてるんじゃないだろうか。
529名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 21:35:56 ID:q3wEx8Od
自由研究で男君の夏休みに密着したせいで他の課題やっていないことに気付いて必死でやってるのか!
萌え
530名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 21:38:47 ID:q3wEx8Od
>>528 あ、あいでぃー!
>>528萌え
531名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 21:43:45 ID:oGYxsvxF
キモオタとヤンデレはどうなったの?
532名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 22:25:44 ID:cUcyJZB7
>>526
浮気もさせないように朝から押し掛けて男君にべったりではないだろうか。
533名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 22:26:58 ID:QY83qSMS
チャラ男にntrからむしろチャラ男がヤンデレに…
という電波を受信した
かわいい子捕まえていつものごとく自分色に染めようとしたら
むしろ自分が染められていたというポルナレフ状態
534名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 22:29:18 ID:ksOmaGTL
>>522
NTRに文句言ってないよ。
自分に合わないものが投下された事に
過剰に批判する輩には文句言うが。
535名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 22:53:25 ID:6QzmXpwO
>>533
ヤンデレと付き合ったが為に共依存の泥沼に嵌り込んでいくく主人公はマジで素敵。
もっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっと
もっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっと
もっともっともっともっとそんな主人公とヒロインが増えて欲しいと思う今日この頃。
536名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 23:11:52 ID:/vVhe+iK
>>533
残念ながらヤンデレ男だけは基本NGなのよ
だからヤンデレ女側からの策略でチャラ男がNTRしたと思わせるだけで勘弁してくれ
537名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 23:37:01 ID:9TLmgH46
>>535
同意。話的には微妙な救いにもなるし。
いや、本人達的にはハッピーエンドでも、客観的に見ればアレなんだろうけど。
538537:2010/09/04(土) 23:37:43 ID:9TLmgH46
 上げてしまった。すみません…
539名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 23:44:55 ID:9s3niffA
※嫉妬スレの工作員潜入中、作者をスレから排除するのが目的なのでご注意を
116 名無しさん@ピンキー sage 2010/09/03(金) 13:20:24 ID:Gzaddmcr
ウナギモドキもせっかく綻びを作ったのに、攻めが単調すぎたから住民に修復の時間を与えてしまったな
もう少し違う方向からの攻撃を混ぜていれば、スレに大穴を開けられたのに
頑張ったとは思うけど、あの辺りが彼の限界なのかな
540名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 00:23:38 ID:246ySnI+

>>539
どう解釈すべきだ……新参なものでよくわからない。
541名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 00:30:49 ID:y6uy+l/f
まあ荒らしの効果があったかどうかは今週無事にヤンデレ家族が投下されるかどうかにかかってると思う
ここの所IFイラネだのNTRだの付け入る隙がちょっと目立ってから心配ではあるが
542名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 00:33:51 ID:1tUnso65
>>541
なんか毎週投下される前提みたいな話になってるけど
作者のハードル上げるような(プレッシャー与えるような)発言は控えたほうがいいかと
543名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 01:03:13 ID:9NzJaSpr
あれ?ホントに18歳以上の集まりか?
やけに年齢層が低く見える
544名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 01:08:10 ID:rZ+bZKHo
>>543
ヤンデレな娘さんなら18歳未満でも大歓迎なんだけどな
545名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 01:08:14 ID:9TWYexgY
ヤンデレ家族のIFは良かったと思うが、今回の短編は流石にないと思うよ
546名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 01:52:14 ID:bLq5SiM9
>>545
だから作者が気分害すコメントは控えろよ

作者さん投下前に注意入れ忘れたの謝ってたじゃん

547名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 02:16:47 ID:9TWYexgY
>>546
違う違う。短編ってのは王女と騎士のことです
548名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 02:32:14 ID:qETKbN+y
まるで話が噛み合っていない……
落ち着け。とりあえずゆっくり眠っていってね。
549名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 02:39:32 ID:bLq5SiM9
>>547
勘違いごめんm(_ _)m
550名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 02:49:18 ID:KUZcs8/r
終わった話を蒸し返す奴は例外なく荒らしなのに何でスルー出来ねぇのお前ら?
荒らしはレス乞食なんだからレスされたら喜ぶに決まってんじゃんまじふざきんな!!!111
551名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 03:06:40 ID:yz1c4QRK
ヤンデレ家族はまだ来てないか…
花火がジミーにデレてくれると信じたいぜ。

ここ最近はヤンデレ家族やリバースとか新たな作品も出てきて週末が待ち遠しくなった。
そのおかげで仕事を頑張れる俺がいる!!
552名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 03:10:15 ID:yz1c4QRK

文ミスった…
正しくは
ヤンデレ家族やリバース、髪の話などはもちろんその他にも新しい作品が出てきて週末が待ち遠しくなっただ。
無駄にレスしてしまいスマン
553名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 04:29:21 ID:rZ0KBoRr
今年入ってからの作品で気になるのいっぱいあるけど更新なくて寂しい
554名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 04:56:09 ID:zziDz/ET
ヤンデレSS書こうにも文章が幼稚っぽいから無理なんだぜ・・・。
555名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 07:06:59 ID:iHSwaNw/
心配しなくても、ちゃんと向上心を持って二年くらい書いてたら誰でもそれなりには上手くなるよ
それなりにはね


ヤンデレ家族が楽しみだな
花火がジミーにデレて弟と兄が修羅場るのかな
楽しみだ
556名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 10:30:51 ID:cFe65ikz
現時点ではデレるとは思えないがな
557名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 11:11:09 ID:gXUmkjQj
ぽけもん黒の作者もう居ないのかな?
558名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 11:13:23 ID:gumK7QHb
>>555
未だに二年経っても日本語がおかしい作家とかいるんだけど
559名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 11:26:34 ID:049toPBP
>>557
俺も待ってるがあんまり言うと叩かれるぞ
560名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 12:05:09 ID:/6TMHTQ4
>>556
もう、デレないだろーね。
>>557
ポケモンの最後の投下ってそんなに前の話か?
561名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 14:11:28 ID:gXUmkjQj
>>559
すみません

>>560
確か2、3ヶ月前だったような気がする
562名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 15:37:32 ID:2aiNsx0o
ヤンデレ家族が来ない…
563名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 15:40:02 ID:a2BOOfis
ヤンデレ家族は月曜投下予定らしいよ
564名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 16:01:26 ID:246ySnI+
>>563
どこでわかるの?
565名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 16:03:13 ID:WUH7KbzZ
作者様のHPに書いてあるよ
566名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 16:07:52 ID:246ySnI+
>>565 
そうなのか。
ありがとう、ちょっと行ってくる。
567名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 16:55:06 ID:yRAWFYFv
マジかよ、俺の憩いが遠のいたorz
568名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 17:35:37 ID:Ihx6bOHJ
ほトトギすの作者さんはまだいるのだろうか
好きな作品だけに気になる
569名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 17:44:24 ID:WUH7KbzZ
>>568
無形氏はつい5ヶ月くらい前に投下してたよ
570名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 18:04:45 ID:21xiy4T5
えっと、投下します。ついでに言うと初めての投下です。
ついでに言う必要ないんですけれどね。

とりあえず暇つぶしぐらいになればいいんですけど。

題名は ほのぼのヤンデレ です。

題名どおりそんなシリアスでもないです。
571ほのぼのヤンデレ:2010/09/05(日) 18:09:13 ID:21xiy4T5

 とある日の放課後。私は人気のない第三校舎の裏に向かっていた。
 何故かと問われると、今朝、ベタというかなんというか、下駄箱に手紙が入っていたのである。
 字が非常に綺麗で、無心で何度も読み返してしまうぐらい綺麗だった。差出人は無く、文字的に女子からの呼び出しかと思ったが、私は別の可能性も即座に考えた。
 最近、なんとなく正義のヒーローごっこで不良共を片っ端から叩き伏せていたから、それについての呼び出しかもしれないと。勿論、不良さん達からである。
 まぁ、別に叩き伏せればいいんだし、過剰防衛にならないぐらい。
 とりあえず、と、近くに都合良く落ちていた鉄パイプを拾い、私は黙々と足を進める。
 鉄パイプを拾ったのは、流石に漫画や小説みたいに一人で何人もぼっこぼっこにはできないから、自衛の為に持っていくだけであって、あくまで自衛。
 過剰に防衛するかもしれないけど正当防衛だから大丈夫。
 で、目的の場所に着いたわけだが、不良さん達はいなく、私の通う高校の制服を着た女の子が一人いるだけだった。
 女子からの呼び出しだったか。
 ぽいっと鉄パイプを投げ捨てる。女の子が若干怯えていたからだ。
 ――それにしても。

 目の前の女の子は非常に可愛かった。
 艶があり、手触りがとてもよさそうな、今まで見てきた中で最上級の高価さを誇る綺麗な黒髪を、背中の中ほどまで伸ばしたロングヘア。
 黒々とした、綺麗で可愛らしい大きな瞳は今は少し不安に揺れている。
 それらに加えてさらに、紅くて小さくて愛らしい唇。そして全ての元となる雪のように白いキメの細かい肌。
 ――なんというか、二次元幼女がそのまま三次元に迷い込んだような容姿をしている。
 つまり可愛い。だが、忘れてはいけない。彼女は私の通う高校の制服を着ているが、ロリなのである。幼女である。身長、150センチぎりぎりいってるかいってないかぐらいだ。
 私と20センチ近くはなれている。私服で手を繋いで歩いたら私がロリコンと勘違いされかねない容姿だ。
 というか、この短時間で手を繋いで一緒に歩くことを妄想させるとは、なんとも罪な可愛らしさである。

 いけないいけない。そろそろ本題に入らなければ。
「それで、何の用だ? 私をここに呼んだのはお前だろう?」
「え、と。はい、そうです」
 緊張した表情で返す彼女に、思わず手が伸びそうになる。
 何だこの、動く麻薬。可愛すぎる。よく戒めないとついうっかり摂取してしまいそうだ。
「それで、用件は?」
 そう訊くと、途端に彼女は頬を真っ赤にして俯き、もじもじしはじめる。何故か少し息も荒い。
 それを見て私は――
「げほっ、がはっ!!」
 口から血を吐き出しながら倒れた。受身を取れずに諸に背中を打ちつけてしまう。
 現世にこんな少女がいるなんて。彼女は、言葉遣いがアレで、影では愚痴ばっか言ってそうな感じの今時の女子高生とは遠くかけ離れた存在だ。
 そして美少女、じゃなくて美幼女。これは、まさに絶滅危惧種。
 まさか、悪勢力(主に不良)の間で【断罪者】などという痛い通り名を付けられた私が、たかが可愛い幼女に吐血して地に伏せられるなんて・・・・・・。
 さっさと、終わらせなければ、死ぬ。死因、萌死になんてのは許されることじゃない。
「よう、けん、は?」
「そんな死にそうな感じで喋らないでください!」
 いやいや、さっさと用件を言ってくれないと血が止まらない。
 というか、貴方、姿はロリなのに口調は後輩キャラなんだね。もうちょっと、こう、わがままをよく言う子に育って欲しかったりもしたけど、これはこれで、あり、かも。
「よ、ようけんをいってくれ」
「あ、うぅー」
 もう一度繰り返すと、やっぱり頬が真っ赤に染まる彼女。
 もしかして、私への告白だろうか? 
 それとも、私の幼馴染である神崎 翔への告白を手伝って欲しいとかだろうか。
 多分、後者な気がする。アイツは絶賛ハーレム拡大中だからな。顔もいいし、運動もできるし、勉強もできるし、性格もいいし、チャラくないし。
「散れ!!」
「ふみゅ?!」
 しまった、妬みのあまり突然叫びだしてしまった。彼女は相当驚いている。普通驚くだろうから彼女の反応は普通なんだけれども。
572ほのぼのヤンデレ:2010/09/05(日) 18:15:43 ID:21xiy4T5
「それで、用件は何? どうせアイツなんでしょ? アイツへの告白を手伝ってもらいたいんだよね? 
 あっはっはっはっ。一時でも私への告白かと思った私が馬鹿だった。滑稽だな。
 というか前にも数回こんなことがあったな。今回は相手が可愛すぎるから忘れていたが。
 あーもう、アイツなんて皆にロリコンロリコン言われて死ねばいいのに。
 というかもう刺されなさいよ、あんなに嫉妬されてるんだからそろそろ刺されてくれてもいいじゃないか。
 ヒロイン何人だっけ? 担任、生徒会長、私の義妹、アイツの義妹、クラス委員長、お嬢様、風紀委員長、後輩、メガネっ娘、アイドル、クラスメイト。
 挙句の果てに、幼女まで?! アイツの攻略キャラの数が多すぎる。
 いや、もう何人か病んでいいよ。刺されていいよアイツ。
 昼ごはん五月蝿いよ。私もすぐ近くにいるんだから。昼ぐらい静かに喰え。
 いや、死ねよもう。主人公体質の癖して鈍感じゃないし、うまく皆を丸め込んでるし、いつも悪い人たちに襲われたときには私を頼るし、その割には見返りないし。
 バレンタインなんてアイツのハーレムメンバーの何人から義理チョコを送られるだけなのに対して、アイツはハーレムメンバー以外にも先輩、同級生、後輩からたくさん貰ってるし。
 しかも何故か媚薬入っていてアイツ暴走して大変だったし、そうだよね、いつも無表情で無口みたいなキャラ設定が認識されている上に、顔が女の子にしか見えない、というかもはや女の子である私が告白されるはずないもんね。
 というか女性としてみればアイドルにも勝てるぐらいのレベルとはどういうこと? 
 私はニューハーフじゃないもん、男だもん。レズでもないもん、うぅぅぅぅ。」
「あ、あの。鬱宮先輩?」
「ぐすっ、そもそもだな、前提として――え? あっ!」
 美少女に話をかけられ、ようやく自我を取り戻す。だいぶ、恥ずかしいところを見せてしまったようだ。というかあんなに長々と喋ってしまうなんて、馬鹿だ、迂闊だ。終わったことだから気にしても仕方ないけれど。
「あ、あのですね、先輩は勘違いをしています」
「勘違い?」
 彼女の、さっきから紅みがかっていた頬が更に真っ赤に染まり、首筋までそれは至った。
「わ、私が好きなのは、鬱宮先輩です」
573ほのぼのヤンデレ:2010/09/05(日) 18:16:53 ID:21xiy4T5
「・・・・・・」
 今、彼女なんて言った? 私が好き? フフフフフフフフ、馬鹿にしてはいけない。この私が普通の告白で初対面の女性と付き合うなんてことありえないというのに。
「駄目だな。笑っちゃうぐらいお前は甘い」
「そう、ですか・・・・・・」
 彼女があからさまに落ち込むが、勿論私はそんなことは気にしない。
「お前、私のことが好きなのか?」
「好きです!! この気持ちは本物です!」
 ロリが自分の平らに近い(つまり平らではない)胸に手を当て、必死に私へと語りかける。
「だったら、監禁でもして私を閉じ込めて、私を脅して、私と付き合えばいいだろう!」
「か、監禁なんて犯罪じゃないですか!」
「その正常な反応が既に私に好意を寄せる者として失格だ。私を愛しているんだったら、私を手に入れられる可能性を100パーセントにするぐらいじゃないと全然駄目だ。例えば、脅したり、気絶させたりしてな」
「じゃ、じゃあ監禁するので付き合ってください!!」
 私は手加減して彼女の頭を叩く。
「そこは私の首を絞めたり、ナイフで脅したり、スタンガンで気絶させる場面でしょうが!」
「は、はぃ!」
「というか、面と向かって監禁すると言われても・・・・・・やっぱり強制的な監禁じゃないと萌えないな」
 私が馬鹿なことを呟いている間、彼女は慌てて近くに置いてあった自分のバックを探っていた。筆箱を取り出し、そして何かを取り出す。
 ハサミだった。まぁ、合格。
 彼女がそれを私の方に突き出しながら、また告白をし始める。
「わ、私と付き合ってください。付き合ってくれないと、こ、殺します」
 がくがくぶるぶるでまったく怖くなかったけど、想像して欲しい、可愛い幼女が、ハサミを持って、付き合わないと殺すと言う、震えながら。
 とても萌える。生きた麻薬とはこのことだな。一日一回拝まないと吐血しそうだ。
「そうだな、私と付き合うんだったら毎日、電話100回、メール100回が課題だな」
「が、がんばります」
「それと、登下校は、んー、帰るときは一緒でもいいけど、登校中は私の後を隠れながら移動しろ」
「先輩の家は近いから問題ないですけど、どうしてですか?」
「可愛い後輩が先輩をストーカーするなんてとても萌えるじゃないか」
「ぅ。そ、そうですか」
「あれ? そういえば何で私の家を知っているんだ?」
 そう訊いた瞬間、いきなり彼女は慌て始めた。
「い、いや。あの、先輩の妹さんから訊いたんです。決して後をつけてたとかじゃありません!」
「ふぅん。まぁ、いいや。それじゃ、さっそく一緒に帰るとしよう。その間に、私と付き合うときの心構えを叩き込んでやる」
「はい!!」
 幼女が、私に向けて満開の笑みを浮かべた。それを見た私は大量の血を口から吐き出し、ぶっ倒れたことは言うまでもない。

574ほのぼのヤンデレ:2010/09/05(日) 18:18:51 ID:21xiy4T5
 そして現在、帰宅途中に至る。
「まずだな、私に近づく女は全員殺せ。勿論、冗談じゃないぞ」
「うぅぅ。そんなこと出来るわけないじゃないですか」
「今のところは私に近づく女性なんて深言ぐらいだから別に殺さなくてもいいが」
 ちなみに深言とは彼女のことである。言寄深言(ことよりみこと)これが彼女のフルネームだ。ちなみに私は鬱宮病(うつみややまい)だ。非常に微妙な名前である。
「とにかく、私を愛するんだったら、私は狂愛を求める。たとえ体が他の男に支配されても、心だけは私へとあり続けるような、そういう女性が一番だ」
「大丈夫です! ちゃんと病のことは愛しています!」
 ちっこい少女に名前を呼び捨てにされ、愛を叫ばれる。これ以上萌える場面が他にあるのだろうか?
「そして、三日以内に私の部屋に盗聴器を仕掛けること。勿論、家族や私に見つからないように。本当は今日中にしてもいいぐらいだが、深言は素人だからな、三日以内で許してやる」
「あ、ありがとうございます?」
「私の家はここです。送ってくださってありがとうございました」
 そのまま彼女は家に帰ろうとするものだから、思わず肩を掴んで止める。
「どうしたんですか?」
「そこは普通キスをするところでしょうが! 家に誘い込んで眠らせたり、今ここでスタンガンも可!!」
「えぇ?!」
「どうした? まさかとは思うが、私を愛する者として別れ際に私にキスをするぐらいは常識だよな?」
 キスをしやすくするために少し屈んであげる。
「うみゅぅぅ。は、恥ずかしいです」
「順調に行けばどうせそのうちそういう関係になるのだから、大人しくキスぐらいはしなさい」
「わかりました! えぃ!」
 私の後頭部に手を添え、一気にキスをしてくる深言。彼女はちゃんと当たる瞬間に減速し、歯がぶつかるということはなかった。
 問題はこの後だった。
 唇と唇が触れ合った瞬間、言葉では言い表せないような甘さが頭を直撃し、一瞬にして理性が崩壊した。
 二秒で崩壊した理性を理性と呼べるのかどうか定かではないが、私は彼女の家の前で、堂々と彼女の口腔内に舌を進入させてしまったのである。
 だが、理性が崩壊したのだから仕方がない。彼女が驚いているのを確認しつつも、彼女の暖かい口の中で私の舌は暴れまくっている。
 必死に舌を奥に突き入れ、深言の反応がアレなところを重点的に責める。そしてたまに焦らす。彼女の後頭部を押さえつけているため、顔が離れるなどということは一切起きない。
 そんなことが続いて五分ぐらい経っただろうか。舌が疲れるなどということがまったくなく、もうずっとディープキスだった。途中からは彼女も積極的に舌を絡め、もはや二人の顔面は唾液塗れである。
 それでもディープキスを続けるものだからもし人が見ていたら呆れるしかないだろう。
「んっ、んっ、んっ。ん、んんんんん!!」
 彼女がビクビクと体を震わせ、若干私に体重を預けてくる。どうやらイってしまったらしい。
 深言がイってなおディープキスは続いた。達した後だからか、少しの間、彼女の舌は動かなかったが、すぐにまた絡まり始める。
 どうしよう。これ、本当に麻薬だ。頭が甘く痺れて、蕩けて、何を考えているかわからなくて。もうぐちゃぐちゃで。
 十分後、ようやく私は深言を解放した。それまでに彼女は三度もイき、私は嬉しく思った。彼女を感じさせることができたのだ。
 まさかキスだけで行くなんて事が現実で起こりえるとは思いもよらなかったが、多分、愛故だろうと勝手に納得しておいた。
 頬を染め、荒い息をついている、蕩けきった表情の幼女の頬に軽くキスをしてあげる。というか、深言も我に返らないと危ない人だ。
 薬をやっているようにしか見えない。スカートからはぽたぽたと何かが太ももを伝って垂れてきている。名称は言えないけれど。
「それじゃ、明日私をストーカーするように」
「や、病」
「何?」
「ぁ、愛してます」
「フフフフ、私も愛してるよ」
 もう片方の頬に軽くキスしてあげる。
「ばいばい」
 未だに呆けている彼女を尻目に、私はようやく家へと向かった。
「気持ちよかったな・・・・・・」
 口の中に残っている深言の唾液をこくこく飲み干しながら、上機嫌に家の中へ入る。
「ただいま」
 明日が楽しみだった。
 そして、深言はちゃんと電話100回、メール100回をこなしたのである。ご褒美に何をしてあげようと、ますます上機嫌になりながら、私は眠った。
 そういえば、何で私のことが好きになったのか訊いていなかったな。明日にでも訊くか。
 私の意識は闇の落っこちた。





 続くんだろうか?
575ほのぼのヤンデレ:2010/09/05(日) 18:20:46 ID:21xiy4T5
投下終了です。

初めてなので、本文が長すぎるとか改行が多すぎるとか出て、かなり焦りました。

多分、というか恐らく続きます。
576名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 18:22:29 ID:epn04f/s
>>575
リアタイで読ませて貰いました。
カオスすぎGJ
577名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 19:06:54 ID:yRAWFYFv
>>575
癒された。これで明日の日常に向かえるわ。
578名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 19:09:47 ID:2aiNsx0o
>>575

GJwww

主人公の痛さ加減がwww
579名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 20:13:06 ID:q5v+wqMg
また新しいヤンデレですな。こっからドンドン病んでいくのか楽しみだ

gj
580名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 20:44:15 ID:rZ+bZKHo
>>575
ヤンデレ育成とは新しいな、期待GJ!
581名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 21:05:21 ID:Hi90yhyP
jkjdiandkndujhniwhuwn;h4ikoka

tesuto
582 ◆5EAPHNCJOY :2010/09/05(日) 22:01:50 ID:OqtieVaV
初めまして、初投稿になります。
以前スレで出ていたアルビノを元に書かせていただきました。

病み成分は「幸せなヤンデレさん」が好きなので薄めだと思います。

今回は第一話を投稿します。
583 ◆5EAPHNCJOY :2010/09/05(日) 22:04:20 ID:OqtieVaV
初めは好奇心からだった。
あの屋敷に少女の幽霊が居る、という噂を聞いたのが事の発端だった。
今考えれば小学生特有の噂話だったのに、当時の自分はそれを鵜呑みにして、屋敷へと乗り込む計画を立てた。
当然、話をしてきた友人にもその計画を話し、共に目的地まで向かおうと思った。
しかし本当に自分が行くとは思っていなかったらしい。若干額に汗をかきながら、身振り手振りを使って丁寧に断られたのが記憶に残っている。
仕方なしに自分一人で計画を進め、春休みに行くことにした。
春休みに両親は海外へ何日間か出張に出かけてしまう。その間自分一人だけで家を任されることになった。
「もう最高学年だから大丈夫よね」と母の少し不安げな顔。それとは対照的に自分の中では、あの屋敷へ行ける、という興奮で一杯だった。
どうやらそのエネルギーに満ちた表情が母への安心につながったらしい。夫婦二人で海外へと旅立っていった。
計画実行日、リュックの中に水筒とお菓子を詰め込み、懐中電灯と御信用のバット。
自分は嬉嬉として単身屋敷へと乗り込んだ。
584名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 22:05:00 ID:UApte6kA
受け入れ型の主人公は好きだなナイス投下ありがとう!
585 ◆5EAPHNCJOY :2010/09/05(日) 22:08:42 ID:OqtieVaV
夜の静けさに包まれた屋敷は、高い塀に囲まれており、中の様子は一切見えない。
大きな門にもしっかりと錠がかけられていて進入はできないように思えた。
――が、好奇心とは恐ろしいものである。広い屋敷の塀を学校帰りに毎回くまなくチェック。入れる場所を探し続けた。
結果、屋敷をぐるりと回った裏手。小さな木製の入り口を見つけた。もともと屋敷は少し町から外れたところにある。広い敷地の裏手に向かうひょうきんな者はいないと思ったのだろう、鍵は存在しなかった。
取手に手をかける――それだけで、異世界に繋がっているような気がして身が震える。恐る恐る自分は中へと入っていった。
広い庭があり、芝もしっかりと整えられ、綺麗に手入れがされている。
しかし何故だろうか、人の住んでいる気配は全くしない。屋敷の中は月明かりに照らされ懐中電灯など必要がなかった。ゆっくりと、芝の上を踏みしめるように進んでいく。
夜だからだろうか、急に幽霊の噂話を思いだし、バットを構え、辺りを見回す。
どうやら屋敷は門とは逆向きに凹の字型にできているようだ。
想像していた廃墟とは全く違う綺麗な屋敷に若干拍子抜けする。
しばらくすると、コの字の凹んだところに丁度たどり着いた。

586 ◆5EAPHNCJOY :2010/09/05(日) 22:10:44 ID:OqtieVaV
――美しい光景に息を呑んだ。
正面からは死角になっていて決して見えないその場所。そこには沢山の満開の桜があった。
月明かりに照らされ、薄桃色の桜が幻影的に映し出される。風が吹く度に花びら一枚一枚がひらひらと落ちていく。光の屈折でそれはまるで白い雪の様にも見えた。
自分が住んでいるこの地域に、こんな美しい場所があったのか。無意識のうちに、その世界へと同化するように桜の木々達の中へと入った。


「あら、貴方はだあれ」
――不意に、澄んだ、玲瓏たる美声が静かなこの場所に響く。
今度は驚愕ではなくではなく、恐怖として息を呑んだ。
ギュッ、とバットを握りしめる力が強くなる。
背中には不快な汗。大丈夫、幽霊なんていないさ。そう思いこみ、決心して声のする方を見る。

その一夜だけで自分の寿命はどれほど減っただろうか。

春の雪の中、美しい少女がこちらを見ている。
純白のワンピース。白い陶磁器のような肌。そして特筆すべきは、雪白の長い流動的な髪と、鮮紅色の切れ長の目。
それは当時小学生でも分かる、美だった。
587 ◆5EAPHNCJOY :2010/09/05(日) 22:11:23 ID:OqtieVaV
暫く口を開けながら少女に見とれてしまう。返事がないのを気にしたのだろうか。頭の上にクエスチョンマークがつくかのように、不思議そうに顔を傾ける少女。その動作一つ一つが綺麗で目を奪われてしまう。


――今思えば、このときから、既に彼女に心を奪われていたのかもしれない。

自分は――僕は勇気を出して彼女に一歩近づいた。
不思議なことに、未知の者に対する恐怖はなかった。

「ぼ、ぼく綾足(あやたり)一葉っていうんだ」
少しどもりながらも僕は自分の名前を伝える。
「い、ち、よう・・・?」
彼女は僕の名前を反復する、不思議な名前だったのだろう。確かに、男の子らしくない名前である。
「なんだか詩人みたいな名前ね」
そう言うと、気に入ったのか彼女は笑った。
「わたしは妹尾(せのお)咲夜っていうの」
名前を聞きながら、笑顔も綺麗だな、と僕は思った。

そう、これが僕/綾足一葉と、少女/妹尾咲夜の最初の出会いだった。



夜になす

開幕

588 ◆5EAPHNCJOY :2010/09/05(日) 22:12:59 ID:OqtieVaV

高校生というのは実に活動的な時期である。
学業に勤しみ、部活動に励む、そして恋愛にも挑戦できる。そんな高校生活も3年目を迎えると進路という壁が自分達の前に立ちふさがる。
2年生まではなにも考えず一日一日を過ごすことができたけれど、3年生になると自分の目指す場所を考えなくてはいけない。
普段は騒がしかった休み時間の教室でも、一人また一人と机に向かう者が増えていく。
その中には無論、僕/綾足一葉、も含まれている。
今やっているのは英語、面白くも何ともないけれど、受験のためにはやるしかない。
長々と書かれた英文を読んでいく作業、怪しいところは線を引いて和訳と照らしあわせる。その作業を延々と繰り返す。
英文を読んでいると背中を細い何かでつつかれた。呼ばれたのだろう、振り返ると難しい顔をしている友人の顔があった。机には数学の参考書。
「一葉この問題が分からん。」
友人は参考書の向きをひっくり返しこちらに向けた。
僕は人よりも成績が良い。だからよく友達に質問されることが多い。いつものことなのですらすらと図を書きながら説明していく。説明し終わると納得したような顔をしてまた問題に取り組み始めていた。
体の向きを戻しまた勉強を再会しようとしたところで授業のチャイムが鳴った。

その後行幾つかの授業を聞いてHRを経て今日も学校が終わった。
2年生まではあんなに学校が楽しかったのに、3年生になって急につまらなくなってしまった。目ぼしい行事もなく、あるとしたら受験という大イベントがあるのみ。
これが後何ヶ月も続くかと思うと先が思いやられる。
机の中の参考書を通学鞄の中にしまい、僕は下校の準備をする。
そして、受験生になった今でも変わらず続いている。
――もはや日課になってしまったであろう、彼女/妹尾咲夜の家に向かうことにした。
589 ◆5EAPHNCJOY :2010/09/05(日) 22:14:02 ID:OqtieVaV
…ちゃんと投稿出来てるかな?

今回はこれでお終いです。
頑張って終わらせます、有難う御座いました。
590 ◆5EAPHNCJOY :2010/09/05(日) 22:15:18 ID:OqtieVaV
題名を忘れていました。

「夜になす」

です、申し訳ないです。
591名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 22:29:46 ID:246ySnI+
>>589
咲夜さんどういう関係になってるのか気になるな……。
続きが楽しみだ、GJ!!
592名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 23:20:49 ID:sMl2haWI
GJ
593名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 02:44:18 ID:H5nacoMQ
gj!
594 ◆KaE2HRhLms :2010/09/06(月) 16:14:10 ID:lkTTUBmU
こんにちは。「ヤンデレ家族と傍観者の兄」の作者です。

日曜日には間に合いませんでしたが、書き終わりましたので、アップロードしました。
全部で六話分です。すべてSS保管庫の方に収めさせていただきました。
リンク先は全てSS保管庫です。

第四十話(兄弟喧嘩編)
http://www42.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/1824.html

第四十一話(兄弟喧嘩編)
http://www42.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/1825.html

第四十二話(兄弟喧嘩編)
http://www42.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/1826.html

第四十三話(英雄編)
http://www42.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/1827.html

第四十四話(英雄編)
http://www42.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/1828.html

第四十五話(エピローグ〜傍観者の兄〜)
http://www42.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/1829.html

四十五話で「ヤンデレ家族と傍観者の兄」は完結です。
長らく読んでくださった皆様、本当にありがとうございました。
失礼します。
595名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 16:19:29 ID:1gLE15kE
一気に6話‥だと‥!?
596名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 16:37:47 ID:qgrGVABb

終わっただと…
597名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 16:40:47 ID:qgrGVABb
これは後日談が欲しくなる終わり方だ
特に妹とか玲子ちゃんとか

それにしてもGJ!!
598名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 16:43:31 ID:nwfeA6dH
>>594連載当初から楽しみにしていました
よくこれほどの量を書ききってくれました!
惜しみないGJを
しばらく休んでまた新しい作品を待っています!
599名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 17:14:19 ID:2OIyoXoA
お疲れさま。
良かったけど、なんか寂しい…。
600名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 17:30:03 ID:43oxJR72
葉月さん&ジミーの本名が気になるな
スピンオフで書いてくれんかな?
高橋と篤子サンの話も読みたいぜ!
長編完結GJでした!
601名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 17:39:57 ID:I3YDWFiI
◆KaE2HRhLms氏に感謝とGJの言葉を捧げます…
また充電して素晴らしい話を書いていただける事を祈っておりますーーーフアンより
602名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 17:47:07 ID:mR2bJ7uA
今週はもうないのかと思ってたら
投下キター
しかし完結ですか…
長い間本当に楽しませて頂きました

作者様に惜しみないGJを‼
603名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 17:59:04 ID:NgrCWxqx
>>594
GJすぎる
もし良ければ次回作も期待してます
604名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 18:15:25 ID:izjwFhxx
うむ…そういえばもう1年位前にblogで「結末の形はもう決まってる」とか言ってらしたよな…
温めてたものに道が繋がったから今回の一斉放出に繋がったのかな

何にせよ長い間お疲れ様でした。
俺がこのスレに居つくきっかけになったのはヤンデレ家族に出会ったのが切欠です。
おかげで他にも多数の面白いヤンデレ作品に出会う事もできました。
本当に、有難うございました。

…けど何だろう、今回ので弟への好感度が下がってしまった
あと藍川に幸あれ。本編でもIfでも
605名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 18:18:43 ID:XR5rT983
ROMってたが、コレにはGJと言わざるを得ない
606名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 18:47:07 ID:7JX+TI+5
いろんな作品を読みましたが
ヤンデれ家族は本当に面白かったです
本当に好きな作品でした
そういえば
かなり前に投稿された
ことのはぐるま
ってやつ、やっぱり更新されないんでしょうか・・
あの作品がいまだに気になっている
おっと話がずれた
とりあえず
GJ
そしてお疲れ様です
607名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 18:55:18 ID:NgrCWxqx
ヤンデレ家族の後日談待ってます

ハーレム好きの俺としてはifも期待してる
だかifでは葉月さんがorz

このさい弟も入れて全メンバーでハーレムを‥‥
608名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 19:23:06 ID:T9f3Xraw
葉月さんの名前がすごく気になります
609名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 19:26:48 ID:ulpmWDwN
幼馴染と妹のヤンデレss最高だ!
色んな意味で
610名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 19:54:57 ID:zFxR3d4b
いい作品に出会えて本当によかった
611名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 20:06:20 ID:bwgP6Mgu
今年は本当にいい作品ばかり!!
作者さんありがとうごさいます!
612名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 20:08:25 ID:ZFpVyE1z
連載期間丸3年か、流石に乙
613名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 20:14:21 ID:2OIyoXoA
ジミーと花火の仲直りを望む俺は高望みだよな…。
614名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 20:15:01 ID:wuLOedI5
花火と澄子は時限爆弾だね。今は大丈夫だがいつかは爆発するぞ。
最後に兄さんと花火が仲直りすることは見たかったが惜しい。

とにかくGJ! 良い話を見せてくれてありがとう。
615名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 20:35:54 ID:EkF4vqVR
マジで乙
しかし妹修羅場はまだ終わってねぇ!
616名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 20:58:10 ID:TjHPhiF6
ヤンデレ家族完結オメ!週末の楽しみの一つだっただけに嬉しくもあり悲しくもある

次回作期待してます

617名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 21:03:36 ID:4EDAYLem
単発の埋めネタがまさか此処まで成長するとは……
作者様お疲れ様でした そしてたGJ!!
618名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 21:23:14 ID:mPUUmjgg
今まで乙でした!最高の作品に出会えて良かった!

GJ!!
619名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 22:08:38 ID:bUN+XHNJ
あああ、更新履歴にあった45話から読んでしまった!
うわあああうわあああ
620名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 22:14:14 ID:wDaZDefA
完結おめでとうございます!ガチでおもしろかった
続編でもスピンオフでも次回作でも出来るのであれば・・・
兎にも角にも今までお疲れ様でした!また時間がある時にでもお願いします。
何よりありがとうございました!
621名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 22:17:27 ID:wV0MOw5x
物語を完結乙です!
素晴らしい物語をありがとう
622名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 22:28:00 ID:oRlJYb2T
ヤンデレ家族終了か…。作者さま、イイ作品をありがとう。お疲れ様でした。
623名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 22:32:24 ID:ugkr3Yhz
お疲れ様!ありがとう
ほんとに楽しませてもらったよ
終わるのはさびしいけどハッピーエンド?でよかった
624名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 22:34:35 ID:CWRqXcfo
オツカレー
625名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 22:55:52 ID:OQahwknt
ヤンデレ家族お疲れ様です。ありがとうございました。
626名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 23:12:12 ID:P1ZS3FrC
ヤンデレ家族の連載お疲れ様でした!
良い作品をありがとう!

627名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 23:16:49 ID:Sebdv7Sn
完結乙。

…まあちょっと待て、この後の朝食シーンだけでも
レポートするべきだと思うんだが。俺は。
628名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 23:19:40 ID:6zSQnXZu
完結乙です!
若干の火種を残しながらも兄弟共にハッピーエンドでホッとしました。
次回作も楽しみにしてます!
ありがとうございました!!
629名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 23:19:45 ID:OwQBZTbX
GJ。
 正直、葉月さんとジミーくんのいちゃつきぶりを見てみたかったかもです。
630629:2010/09/06(月) 23:20:30 ID:OwQBZTbX
すまん、上げてしまった。
631名無しさん@ピンキー:2010/09/07(火) 00:20:52 ID:/BvPq1Fr
作者様乙

あとおまえ等落ち着け
きっと傍観者としての話は終わったが・・
これからは兄自身の話になるに違いない
632名無しさん@ピンキー:2010/09/07(火) 00:23:27 ID:cokK6Lpj
>>594マジで乙&GJです。
45話もの長編をキチンと完結させるって、もうそれだけでも凄いことだよ。
内容が良ければ尚更に。
633名無しさん@ピンキー:2010/09/07(火) 00:23:32 ID:gd4lZfEF
ヤンぼう完結したGJ!!
長いこと粘着しててよかった……
本当によかった!!
634名無しさん@ピンキー:2010/09/07(火) 00:35:31 ID:HDrZASjy
 ヤンデレ家族、完結ですね……。
 読み手に徹していた時期から気になっていたのに、とうとう終了。
 ちと寂しいですが、兎にも角にも、作者の方には敬意を表したい。

 未完の傑作は、完結した駄作に劣ると言う。
 では、完結した傑作は……最早、言わずもがなですな。
635名無しさん@ピンキー:2010/09/07(火) 00:57:08 ID:ivlT7PH8
花火とボールペンだけは最後までクズだったなw
あと後半の弟のウザさがマッハ
こいつらは死ね
636名無しさん@ピンキー:2010/09/07(火) 01:01:29 ID:j8k06y9Z
よくいろいろ叩かれたり褒められたりで精神を削りながらも完結した。絶対に俺には無理だ。
最大のgjを捧げます。次回作を期待
637名無しさん@ピンキー:2010/09/07(火) 01:07:27 ID:ivlT7PH8
あれだけアンチに邪魔されながらもよく完結できたもんだよな
賞賛に値するタフネスだ
もうこのスレでは書かないかもしれないが、これからも頑張ってほしい
638名無しさん@ピンキー:2010/09/07(火) 01:07:37 ID:e1TNeh6s
作品投下お疲れ様でした!

次回作も楽しみにさせていただきます
639名無しさん@ピンキー:2010/09/07(火) 01:08:56 ID:rrXO7gyJ
ヤンデレ家族、長い間お疲れ様でした
主要人物がほとんどヤンデレでありながらこの軽妙洒脱な語り口、素晴らしかったです
長期にわたり面白い話を書き続け、完結させる。同じ書き手として本当に頭が下がります
本当にGJでした
640名無しさん@ピンキー:2010/09/07(火) 01:29:35 ID:YUqPPTlr
突然の完結にもしや先週のアレでやる気が折れての事かと思ったが…
一気に六話も投下してる時点でそういうわけでもなさそうだしなぁ
展開急ぎすぎな気もするけどそれは完結を惜しむ俺の心がそう思わせてるのか…
641名無しさん@ピンキー:2010/09/07(火) 01:54:36 ID:Bdoesveh
ヤンデレ家族お疲れ様です。葉月さんとのイチャラブと妹のデレがもう少しみたかったが
兄はあくまで傍観者だから最後まで一歩引いた視点がとてもよかった
また長編書くなら応援します!
642名無しさん@ピンキー:2010/09/07(火) 03:31:31 ID:OqTbuz2i
>>640
先週のアレってまさか……おや、誰か来たようだ?
643名無しさん@ピンキー:2010/09/07(火) 05:53:22 ID:q70gAo0j
GJ
なんかwikiにヤン家族のイラストあったけど葉月さんのはないの?
644名無しさん@ピンキー:2010/09/07(火) 06:03:25 ID:F6nOFPK2
ヤンデレ家族終了か…長い間、週末の楽しみをありがとう。

リアルなヤンデレが隣で寝息を立てているので、眠っているとかわいいんだがなあ、と微笑んでみる(*^_^*)

…いや、メールじゃないから。2ちゃんだから。いつから起きてた?
誰か助けて。
645名無しさん@ピンキー:2010/09/07(火) 08:03:11 ID:6jeSTd4r
>>644頼むから半年ROMれ
646名無しさん@ピンキー:2010/09/07(火) 09:55:01 ID:8301OcKq
ヤンデレ家族ありがとう!!
お疲れ様でした!
葉月さんとジミー君のイチャイチャに期待。
647名無しさん@ピンキー:2010/09/07(火) 10:24:32 ID:ZVcv7U3G
ヤンデレss見てると、ついこう言ってしまう
「Nice boat.」
648名無しさん@ピンキー:2010/09/07(火) 12:19:17 ID:OqTbuz2i
>>647
志村ぁ−!うしろぉ−!
649名無しさん@ピンキー:2010/09/07(火) 12:26:54 ID:W1u1ggQN
ヤンデレ家族お疲れ様でした。
途中投下が途切れて不安になったこともあったけど無事完結してくれてよかった。
お兄さんも葉月さんとお幸せに。
楽しい日々をありがとう。
650 ◆ZWGwtCX30I :2010/09/07(火) 12:36:46 ID:mdmmz4nL
どうも、我が幼なじみを投下します
651 ◆ZWGwtCX30I :2010/09/07(火) 12:38:02 ID:mdmmz4nL
終業式

「ふぅ、やっと終わったか」

この猛暑の中、いくら体育館だからといって、耐えられたもんじゃなかった

「どうして、校長の話しってあんなに長いんだ?意味分かんねぇ……はぁ」

誰もが人生の中で、一度は口にするようなことを言って、溜め息をついたのは俺の親友

河谷龍太

中学からの友人で、久し振りに由美子と登校した時に、俺を質問責めしたアイツだ

「そう愚痴るなよ、これからは夏休みなんだから」

俺がそう言って肩を叩くと、龍太は目を輝かせて言う

「そうか……そうだよな!これからは夏休みなんだよな!崎山、早く帰ろうぜ!」
「あ〜ごめん、俺は他の奴と帰る約束してるから、一緒には帰れん」

敢えて名前は隠す、こいつには誰と帰るかを話す訳にはいかないからな

「そうなのか?珍しいな……まぁいいや、じゃあな〜!」

そう叫びながら、龍太は走って行ってしまった

俺も早く帰りたいから、さっさと目的の人物と合流しようと教室を出たところで、声を掛けられた
652 ◆ZWGwtCX30I :2010/09/07(火) 12:39:15 ID:mdmmz4nL
「あ!優君!一緒に帰ろ?」

俺の目的の人物、由美子だ

「一緒に帰ろうなんて、聞かなくてもいいだろ?」

そう、由美子は今日から俺の家に住むことになる
そして今日は、由美子の家から荷物を運んだり、運んだ荷物を俺の部屋のどこに置くかを考えたり、とにかく、色々な準備をしなくてはいけなかった

「それはそうだけど……なんとなく聞いちゃうんだよね」
「まぁ……いきなり一緒に暮らせなんて言われても、あんまり実感湧かないよな」

実際に俺も、由美子と一緒に生活、ましてや同じ部屋で生活するなんて、未だに信じられない

「うん……ごめんね?迷惑かけて……」
「別にいいって、由美子が悪い訳じゃないんだから」

どちらも、親に振り回されているだけだ、それで由美子が謝るのは何か違うと思う

「うん……ありがと」
「じゃあ、帰ろうぜ」

親が転勤したのは昨日、転勤の話しを聞かされてからすぐだった。
風奈は親の前でこそ泣かなかったが、親が出て行ったのを確認してから、すぐ泣いてしまった。
653我が幼なじみ ◆ZWGwtCX30I :2010/09/07(火) 12:40:03 ID:mdmmz4nL
まぁ、そりゃそうか。風奈は一度親に捨てられてるんだ、きっと、また親が居なくなってしまうんじゃないかって、感じてしまうんだろう。

まぁ、俺は風奈じゃないから何とも言えないんだけど

それにしても、今日は暑いなぁ……

「優君?何考えてるの?」

由美子が顔を覗き込んでくる
じっと見つめてくる由美子を見て、不覚にも胸の高鳴りを感じてしまった

「なんでもないよ」

そう言って目を逸らした
あの状態が長く続けば、俺は恥ずかしさに、どうにかしてしまうんじゃないかと思ってしまう程、その顔は魅力的だった

「そう?……それにしても、今日から一緒に生活するんだね〜」

由美子の奴、なんだか楽しそうだな
まぁ、嫌な顔をされるよりは全然いいけどさ

「そうだなぁ……」
「ちょっぴり楽しみかも……ふふっ」

どこがちょっぴりだよ……すっげー笑顔じゃないか

それに、俺には理解できない、俺だったらいくら綺麗な人と一緒に暮らせるからといって
一人になれる時間が減るのは辛い事だから、特に思春期の男にはね
654我が幼なじみ ◆ZWGwtCX30I :2010/09/07(火) 12:41:11 ID:mdmmz4nL
「そんなに楽しみか?」

俺がそう尋ねると

「!……ちょっ、ちょっぴりだけだもん!」

そう言って、由美子は走って先に行ってしまった
アイツ、鍵持ってないのに
それに、「ちょっぴりだけ」ってなんだ?
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
自宅にて

「おじゃましま〜す」
「なんだよ、おじゃましま〜すって、ただいまでいいんだぞ?」

ちょっとカッコつけてみる

「あっ……そっか、えへへ」

そう言って、由美子はにっこりした
正直、茶化してくるかと思っていたから、予想外の返答に戸惑った

「そっそれと、遠慮は要らないからな?」
「うん、ありがとう」

そう言って、制服のままソファーに座る

「それじゃあ少し、休憩してから行く?」
「え?どこに?」
「どこにって……荷物取りに行くんだろ?」

俺がそう言うと、由美子はハッとして言った

「そうだった!すっかり忘れてた!」

由美子が続けて言った

「やるんなら、早くやっちゃいたいな」

俺もさっさと風呂に入りたいからな

「そっか、んじゃあ今から行くか」
655我が幼なじみ ◆ZWGwtCX30I :2010/09/07(火) 12:42:06 ID:mdmmz4nL
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
夕方

駄目だ……疲れた……早く風呂に入ろう

「優君!手伝ってくれてありがとう!」

面と向かって言われると、なんだか照れくさいな

「あぁ、とりあえず俺、風呂入ってくるから適当に寛いでてくれ、俺の部屋は知ってるだろ?」

そう言うと、由美子は慌てて俺に言う

「あ……待って!私も入る!」
「じゃあ、先に入るか?」
「い……一緒に」

……え?

「はぁ!?なっ何言ってんだよ!?」
「……駄目?」

由美子が上目遣いで俺に言う。相変わらず、殺人級の威力を誇っているが、二度も同じ手は喰わない

「当たり前だろ!」

頼むから、引いてくれよ?
一緒に入ったりしたら、俺の理性が持たないんだから

「でっでも!昔はよく一緒に入ってたよ?」

そんな時期もあったなぁ……しかし!

「昔は昔!今は今!お互い、もう高校生だろ?」

くそっ!
正直入りたい!!俺だって一人の高校生なんだ!何より男なんだ!
目の前でそんなデカい胸を見せられて入りたく無い奴なんているのか!?
656我が幼なじみ ◆ZWGwtCX30I :2010/09/07(火) 12:43:03 ID:mdmmz4nL
「でっでも――
「とにかく、駄目なものは駄目だ!」

耐えろ!耐えるんだ!俺!

「うぅ……分かったよぅ」

……何でそんなに悲しそうなんだよ……
なんだか俺が悪者みたいじゃないか……

ん〜やっぱり、惜しいことをしたかな……
って何考えてんだ俺!由美子だぞ!?

……はぁ、さっさと風呂入っちゃおう

〜〜〜〜〜〜〜〜〜
由美子

はぁ〜優君のいけずぅ〜
何で駄目だったんだろう……優君は巨乳好きの筈なのに……

この髪型だって、優君の好みのショートにしたのに……

はぁ……優君のたくましい体……見たかったなぁ

ん?待てよ?優君はお風呂……下着……自由……!

えへへ〜これから毎日、優君の脱ぎたて下着で○○○ーし放題だぁ!
幸い、あの糞虫はいないしね

ではでは、早速!
イッてきま〜す!!
657我が幼なじみ ◆ZWGwtCX30I :2010/09/07(火) 12:44:00 ID:mdmmz4nL
以上で投下終了です
658名無しさん@ピンキー:2010/09/07(火) 13:01:21 ID:ZVcv7U3G
投下お疲れさん
659名無しさん@ピンキー:2010/09/07(火) 14:19:59 ID:OqTbuz2i
由美子変態過ぎる…安心して下着しまえないじゃないか…しかも汚れも増える…
660名無しさん@ピンキー:2010/09/07(火) 16:08:33 ID:fazoLbAG
ヤンデレ家族今まで楽しかったよ
作者さんお疲れ様です
次回も楽しみにしてます
661名無しさん@ピンキー:2010/09/07(火) 17:08:54 ID:O+S73750
投下します。
長編です。

ヤンデレ成分は薄かったり濃かったりします。
特殊設定を含むので、少しややこしいかもしれません。
662彼女≠私 01  ◆RgBbrFMc2c :2010/09/07(火) 17:10:42 ID:O+S73750

 椚田ミオリ。
 彼女はおかしなことをごくごく当たり前のようにやりのけてしまう一風変わったクラスメイトである。
 こう言ってしまうとまるで彼女が絵にかいたような暴走型少女であるように思われてしまいそうなのでひとつ断っておくと、
 椚田はそういうタイプの人間ではない。

 彼女は始終冷静で暴走しているところなど見たことがないし、何より他人に迷惑をかけない。
 かく言う僕も頼みごとひとつされたことがない程だ。
 それが己の信用感のなさによって招かれているものだとしたらさすがに認識を改めなければいけないが、それはないものとして話を進めよう。

 しかしまあ、おかしなことと言っても例をあげなければ伝わるものも伝わるまい。
 よってこの先は少しばかり彼女の代表的な珍行動を紹介したいと思う。
 僕としては珍というよりも謎というか秘密にまみれた黒いものを感じるのだけれど、その話はまた後ほど。

 まずは定期テストでどの教科でも平均点ピッタリ賞をとるというところである。
 当たり前だが、実際うちの学校にそんな賞はない。
 しかし、その点数が小数点第一位まで合っているともなれば、これはもう感心するしかないだろう。
 ピッタリ賞を作るべきだとすら思わされる。

 ちなみにそれを故意でやっているのか、本当に偶然偶々すべては運命の悪戯としてなされているのかは定かでない。
 まあ、故意でやっているとしか思えないけど。
 テストの点数見るたび「やったッ」とガッツポーズを決めているぐらいだから、そうなんだと思う。
 以前そんな点数を取るそして、平均点を予測するコツを聞いてみたところ、

「そうだなあ、ぴーんときてががーと書いたら当たるよ」

 と言われた。危ない電波をキャッチしていそうだ。
 他には何度席替えをしても僕の前に席を落ち着けていたり、
 クラスの皆にテストの山を予言したり(全部記号問題の記号だけを予言する。しかも外れがない)、
 僕の弁当と全く同じおかずを自分の弁当に入れてきたり、
 校内の窓ガラスのたたき割りならぬ雑巾がけをしたり、
 うっかり僕が忘れ物をしてしまったときに忘れ物そのものを持ってきてくれたり
 (僕の母親に頼まれるのだそうだ。ちなみに椚田の家は学校を挟んで真反対の方角にある)。
 
 ほら、おかしなことばかりだけど誰にも迷惑はかけてない。
 ひょっとするとテストを作った教師の意には反しているかもしれないが、椚田の予言はせいぜい3問程度なので出る点数のぶれは毎回10点弱である。
 教師本人も予想点数との差は誤差の範囲内だと思っているだろうし、問題はないだろう。
 そして僕自身に関することについては、どれだけ椚田が前に居座り続けようと僕は彼女のことが好きなのでむしろ歓迎している。
 おかずが同じだからと言って何か僕に不利益があるわけでもないし、忘れものに至ってはただただありがたい。
 よって僕も彼女を迷惑だなどと思ったことはない。

 つまり、椚田ミオリは確かにおかしな奴ではあるが、基本的には良い奴なのだ。
 だから僕も他のクラスメイトたちも、一クラスメイトとして彼女に接し、学校生活を共にしている。
 
663彼女≠私 01  ◆RgBbrFMc2c :2010/09/07(火) 17:11:20 ID:O+S73750

「……いや、絶対おかしいって」
「だから、おかしいことはおかしいって言ってるだろ」
「そうじゃない! そのくすきだ、さんだっけ? その人も十分おかしいけどお前もお前のクラスもおかしいんだよ!」
  
 バンと机を叩いて、特徴は眼鏡、あだ名はめがね、ハンドルネームはメガネな友人が叫んだ。
 
「くすきだじゃない、くぬぎだ」
「ああそうだったな……悪い。って違う! だから、そんな化け物許容すんなよっていうか普通にストーカーだろお前の!」
「うんまあそうだろうな」

 ところでめがね、改め雲井。
 ここは昼休みの教室などではなく普通のファミレスなのだから、あまり叫ぶとご退場を願われてしまう。

「落ち着けよ、椚田は過程はどうあれ結果的には良いことをしてるんだ」
「その過程を重要視しよう、それ絶対危ない橋渡ってるだろ。職員室のテスト保管してる棚とか漁ってるだろ」
「疑わしきは罰せず精神でいこう」
「残念だけど明らかな黒には適合しないんだ、ちなみにこれ常識な」
「全校の窓を雑巾がけなんて健気過ぎて涙出てくるだろ」
「俺はいっそ割ってくれと言いたい……何なんだよ雑巾がけって」

 ため息をつきながらちらちらと周りの様子を気にした後、雲井は頭を抱え込んでしまった。
 こいつとこんな話をするのは一体何度目だろうか。高校へ入学し、雲井とクラスが離れてからはずっとこんな雰囲気だ。
 ちなみに椚田と出会ったのは小学生の頃で、雲井とは市立の中学校で友人関係になった。
 その中学校生活の中で椚田はどうしていたのかというと、私立中学校を受験し見事合格してしまったので全く知らない。
 とりあえず、この春に高校でばったり再会してから現在までの7ヶ月間でまたかなり親しくなった。今では毎日昼食を一緒にとる間柄である。

 なにやら突き刺さるような周囲客と店員の視線は気にしないことにし、
 氷でかなりかさ増しされているであろうアイスコーヒーに口をつけていると雲井がハッとしたように顔を上げた。
664彼女≠私 01  ◆RgBbrFMc2c :2010/09/07(火) 17:11:56 ID:O+S73750

「おい、さっきこれ以上にない自然な流れでその、椚田さんのことが、好きとか言わなかったか?」
「言ったな」
「友達として?」
「いや、異性として」
「…………お前、本当におかしいぞ」

 そんなストーカー女、好きになる奴いないだろ……。
 そう呟いた雲井は僕の顔色を窺うように目をいぶかしめ、苦い表情を作っていた。

「何でそんなに椚田を持ち出すんだよ」

 ただの興味本位でそう聞いてみると、雲井は口ごもるように黙った。
 雲井との間で椚田の話題が出始めたのは9月末に行われた体育祭の後だったと思う。
 彼女と屋上で昼食をとっていた現場を目撃されたのだ。

 最初のうちこそそれをネタにいじられているだけだったのだが、いつからか急に椚田に対して否定的な意見ばかりを言うようになっていた。
 あんな良い奴でも、嫌われたりするのか。世渡りというのはやはり難しいものらしい。

「あいつがお前に何かしたのか、変な噂でも飛び交ってるのか、訳が知りたいんだ」
「……別に何もされてないし噂もないけど、それがむしろ変で不気味なんだよ」

 妙に真剣な顔でそう言った雲井は、眼鏡をかけ直して何故か周囲を見渡し、こう言った。

「お前の話を聞く限り、その椚田さんっていうのはかなり凄い人なんだよな……それで噂にならないっていうのが、まずおかしいだろ」

 なあ、そう思わないか?
 悠一。
665彼女≠私 01  ◆RgBbrFMc2c :2010/09/07(火) 17:12:33 ID:O+S73750

 ***

 俺の友達である遠野悠一は、物静かで何事も達観しているような男である。
 別に嫌味というわけではなく、本当にそうとしか言い表せないのだ。自分の感情をあまり交えずに言葉を発し、行動し、表情を作る。
 だから、中学からの付き合いがあるとはいえ、俺もたまに悠一の言っているこれは本心ではないんじゃないかと疑ってしまうことがあった。
 そこが妙に頼もしく見えてしまったりするせいで、現在進行形あの男は女子からそこそこ人気を得ているというのがたまに苦々しい。
 加えて顔もいいからな、むしろこっちが重点かもしれないけどな。
 所詮世の中顔なのかと認識させられたのも悠一所為だった。

 とは言ったものの、実際話してみればなかなか面白い奴だと分かるし、
 向こうもとりあえずは友達認識をしてくれていそうなので、仲がこじれたということはない。

 ただ、最近は少し状況が違っていた。いや、本当は高校に入学した4月のあの日から違っていたのかもしれない。
 何の違和感も感じさせず、それは侵食していたのだ。悠一を、そして悠一のクラスメイトを、そして、実は、俺たちの学校にいる人間全てを。
 どれだけ危険なことをしようが笑顔で済ませられる日常を作り出し、どれだけ不可思議なことをしても問いただされず、
 どれだけ不気味なことをしても許容されて、またそれを平凡な日々だと認識させる、おかしな空気が俺達の学校には流れていた。

 その原因は何か、俺と悠一のやりとりを見ていたのならそれは誰もが答えられる、非常に簡単な問題だ。

 椚田ミオリ。

 おかしなことをおかしいと感じさせない。
 違和感を麻痺させる女、椚田ミオリこそがその原因である。

「あの子はそういう体質なんだよ」

 俺が椚田ミオリの存在に気付き、その異常性、むしろ悠一を含む周囲の反応が異常だと
 クラスメイトや部活の部員、教師たちに話しまわっていたときにそう言ったのは養護教諭の山名先生だった。

 誰へ話しかけても、
 「それのどこがおかしいんだ」「まあ、椚田さんだしね」「つまり、君は何を言いたいんだい?」そんな答えしか返って来ず、
 全く俺の意は伝わっていないと、むしろ俺がおかしくなってしまったんじゃないかとすら思い始めていた。
 テストを作っている教師までそんなことを言うなんて、思ってもいなかったのだ。

 そんなことを続けているうちに担任は俺がどうにかなっていると思ったらしく、カウンセリングをかねている山名先生のところへ行かされた。
 どうせこの人も真に受けてくれないんだろうと思ってはいたが、どうしても望みが捨てられず考えていることをその先生に全て話した。
 そして返ってきた言葉が、

「あの子はそういう体質なんだよ」

 この言葉だったのだ。
666彼女≠私 01  ◆RgBbrFMc2c :2010/09/07(火) 17:13:11 ID:O+S73750

「私はミオリさんがその体質を利用して、テスト問題の答えを数問公言するなんて可愛らしいこと以上の悪事を働かないかどうか、監視しているんだ」

 どこかの非日常系学園小説に出てきそうな位置づけだろう?
 向かい側に座っている山名先生はそう言ってにっこり微笑んだ。が、そんなことをいきなり言われても俺には全く理解できなかった。

「君はあの子の体質に対する抗体をもっているから、現状が異常であることに気づけたんだ。
 ちなみに、抗体っていうのは生まれつきだから、あまり深く考えないでいいよ」

 そうきりだして、山名先生は椚田の体質についておおまかなことを教えてくれた。
 それはどれだけおかしなことをしたとしても、それをおかしいと認識されない体質で、
 効力は椚田ミオリ自身が操っているため正確には分からないが、少なくともこの校内には確実に広まっているということ。
 現在の目的は遠野悠一と平和に学校生活を送ることなので、あまり危険性はない、そう聞いた。
 
「あの子が本当にテストの答案をくすねているのか、何を思って全校の窓を掃除したのか……。
 そんなことは私の思考範囲外だからなんとも言えないけれどね」

 そう言って山名先生は苦笑した。

「君が遠野悠一の友人で、ミオリさんの過剰な愛情から離れさせたいなら私は君を止めはしない。
 しかし、おすすめもしない。だって、あの子は無害だろう?」
「無害でも、友達がこのままずるずる変な方向へ行ってしまうのは見てられません。下手すれば一生あのままなんですよね……あいつといる限り」
「まあ、そういうことになるかな。……変な方向ねえ、ふうん。君は随分友達想いだね」
「そいつのやり方が、嫌なんですよ」

 相手の感覚狂わせてまで、自分を受け入れてほしい。そんなのはただのエゴだ。
 結局その女は自分のことしか考えていない、おまけにストーカー行為を働くような奴はどうしたってろくでもない奴だ。

「ま、せいぜい頑張りなよ。話ぐらいならいつでも聞いてあげるから。ところで、今までの話しに質問はあるかい?」

 目を細めて和やかに笑った山名先生の言葉に、少し考えてから、 

「……あの、山名先生って本職は先生じゃないんですか?」

 実はかなり気になっていたことを聞いてみると、ああ、というような顔をされた。

「免許は持っているけど、本職ではない。今の監視だって、ミオリさんの両親に頼まれてやっていることだしね」

 ではその本職がなんなのかというと、というところまでは教えてもらえなかった。
 少し残念だと思いながらも、その日から悠一と話すたびになんとか椚田ミオリの異常性を訴えようとしたのだが、やっぱり効果はなかった。

 やり方を変える必要があるな……。
 ファミレスから帰って自室のベッドに寝転がりながらそう考え、次の策を練っている間に、俺は眠ってしまった。
667彼女≠私 01  ◆RgBbrFMc2c :2010/09/07(火) 17:13:52 ID:O+S73750

 ***

 椚田ミオリが憎い。

 憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い
 憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い
 憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い
 憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い。

 あの女がいなければ私は彼の傍にいられるのにあいつさえいなければ、あの女さえいなければ、私は彼に近づけるのにッ。
 早く消えて今すぐにでもこの世からいなくなってしまえ、
 そして彼の前に現れるな彼を騙しているだけの女に彼を渡してたまるか絶対に、絶対に絶対にッ。

 でも、あいつがいなくなればきっと彼はもう私のことなど見てくれない。
 ああああああどうしてこうなってしまったのだろうどうして私は、私はただ、悠一君が好きなだけだったのに。

 好きになって欲しかっただけなのに――――。
668名無しさん@ピンキー:2010/09/07(火) 17:15:32 ID:O+S73750

01投下終了です。
ありがとうございました。

女の子は次からたくさんだそうと思います。
むさくて申し訳ない。
曖昧な部分や矛盾点を多く含んでいると思いますが、
意図的にしていることだと解釈していただければありがたいです。
669名無しさん@ピンキー:2010/09/07(火) 17:41:42 ID:4HCN3QU8
続編あるとしたらタイトルは
ヤンデレ家族と傍観者だった兄
ってとこかな?
670名無しさん@ピンキー:2010/09/07(火) 17:44:51 ID:4HCN3QU8
>>668
GJ
671名無しさん@ピンキー:2010/09/07(火) 17:59:16 ID:6jeSTd4r
>>669今も傍観者なんじゃないか
672名無しさん@ピンキー:2010/09/07(火) 18:05:53 ID:6/yCAVtT
テストの点数で64.5点とかとることあるとか意味わからんぜ
673名無しさん@ピンキー:2010/09/07(火) 18:11:14 ID:6jeSTd4r
>>6721問1点以下の場合もある
意味分からなくは無いが特殊だな
674名無しさん@ピンキー:2010/09/07(火) 18:31:36 ID:Mhuiv8u7
79.5点とか取ったことあるな…
675名無しさん@ピンキー:2010/09/07(火) 18:45:49 ID:YUqPPTlr
他人に答えを教える事によって自分の点数だけでなく平均点の方をxx.0に操作するという荒業かもしれん
何にせよ続きに期待
676名無しさん@ピンキー:2010/09/07(火) 21:43:19 ID:YAGw6qTY
tst
677名無しさん@ピンキー:2010/09/07(火) 22:20:07 ID:q70gAo0j
葉月さんのイラストかわいい
678名無しさん@ピンキー:2010/09/07(火) 22:42:12 ID:6jeSTd4r
色が欲しいな欲を言えば
679ヤンデレの娘さん 交際の巻:2010/09/07(火) 22:49:11 ID:eE7Ry3FM
 こんばんわ、「ヤンデレの娘さん」を投下したモノです。
 前回感想・反響をくださった皆さまありがとうございます。
 続きのネタが浮かんだので投下させていただきます。
680ヤンデレの娘さん 交際の巻:2010/09/07(火) 22:49:38 ID:eE7Ry3FM
 ガキの頃の俺は、割と聞きわけの良い子供だったと思う。
 ただし、「聞きわけの良い」というのは「全くわがままを言わない」という意味である筈も無く。
 後から考えてみると驚くほどのわがままを言うこともあった。
 そんな時の夢を、時々見る。
 今日の夢は、3歳くらいの時のこと。
 保育園へ俺を預けようとする親に、俺が駄々をこねている。
 ―――いっちゃやだ!―――
 幼い俺が涙と鼻水をたらしながら言うのである。
 それに対して、親は何と言っているのかは分からない。
 なだめているのかもしれないし、わがままを言うなと叱っているのかもしれない。
 現在の俺自身はその光景を他人事のように見ている。
 ―――おとうさんはぼくのことなんてきらいなんだ!―――
 親に向かって、小さな俺が一方的に言葉をぶつける。
 今思えば残酷なものだ。
 妻を亡くした親にとって、俺はたった一人の家族なのに。
 ―――おとうさんはぼくよりもおしごとのほうがすきなんだ!―――
 どこの奥さんだよと現在の俺、この光景を客観的に見ている俺がツッコミを入れる。
 親が俺とほとんど一緒に居られないほど頑張って働いていたのは、他ならぬ俺の為だと言うのに。
 ―――もっといっしょにいて!―――
 小さな俺が悲痛に叫ぶ。
 ―――もっとやさしくして!―――
 小さな俺がわがままをぶつける。
 ―――もっと愛して!―――
 心から、欲しいものだから。
 そこで、ふと、小さな俺の姿が歪んだ気がした。
 歪んで消えて、代わりに1人の少女が立っている。
 細い肢体に艶やかな黒髪。
 緋月三日。
 昨日からお付き合いを始めた、俺の恋人。
 ―――愛してくれなきゃ、―――
 その緋月が両手いっぱいに凶器の束を持っていた。
 ―――私を殺してあなたも死にます―――
 その全ての凶器を現在の俺、その光景を客観的に見ている俺に向かって振り上げて―――
 




681ヤンデレの娘さん 交際の巻:2010/09/07(火) 22:50:38 ID:eE7Ry3FM
 「うどわぁ!」
 そして、俺は自分の情けないと共に跳ね起きた。
 ごちん!
 「ぐあ!」
 「ぎゃう!」
 二人の額が勢いよくぶつかり、思わず悶絶。
 って、「二人」?
 俺は額の痛みを我慢しつつ、頭突きをかましてしまった相手を見る。
 「…い、痛いです…」
 部屋の中で痛みに悶えている制服姿の黒髪和風少女、緋月三日。
 期せずして、夢の中で俺に凶器を振り上げていた相手だった。
 …まだ夢の中じゃあるまいな。
 そう思って頬を引っ張ると、しかし確かな痛みがある。
 それ以前に額が痛い。
 つまり現実である。
 …何で、昨日付き合い始めたばかりの恋人が俺の部屋に居るんですか?
 「ええっと、ひづきん?」
 困惑しながら、昨日ノリでつけたあだ名で呼びかける。
 「…お、おひゃようございます…」
 「おはよう。ってか、痛いのに無理して喋んなくて良いから…。今、氷とってくるね」
 そう言って台所からビニール袋に氷をつめたものを用意して、緋月の額を冷やす。
 「…朝からこんな情熱的な一撃を頂くとは思いませんでした」
 「あはははは…。ゴメン」
 額を冷やしながら涙目になっている緋月に謝る俺。
 って、そう言う話では無く。
 「そう言えばひづきん。どうしてこんなところに?」
 「…光ある所に影があるように、御神くんの行くところに私がいるのです」
 「…どっちが影やねん」
 無駄に恰好良い台詞だった。恰好よすぎてシチュエーションに合わないどころか答えになって無いが。
 「つまりはおはようのご挨拶にと」
 「ああ、なるほど。鍵は親が行きがけに開けてくれたんかな?」
 俺の親、御神万里(ミカミバンリ)。多忙を極めるメイクアップアーティストで、特に今は某特撮番組の役者さんの担当だとかで、撮影開始時間の関係で最近は死ぬほど朝が早いのだ。
 「…はい、お母様のお陰で入れました。……ピッキングではどうにもならなかったので」
 「それは犯罪だ!」
 「…窓から入ろうとも思ったのですが…」
 「それは危険だ!」
 ってかお母様って…ああ、ウチの親のことか。
 その呼び名、かなり誤解入ってるんだけどなァ…
 と、タイミング良く俺の携帯電話にメールが入る。
682ヤンデレの娘さん 交際の巻:2010/09/07(火) 22:51:03 ID:eE7Ry3FM
 6:05
 from:親
 件名:パパよぉん
 本文:
 こんなカワイイ彼女がいたならアタシに報告しなさいヨ☆
 イマドキこんなにアナタのことを想ってくれるコはいないわよぉ?
 カノジョ、大切になさいネ♪
 どれだけ恋をバーニングさせても良いけど、避妊はキチンとなさい。相手の為にも。
 あと、今夜はサバミソでヨロ!ヒロくんのドラマ見てたら食べたくなっちゃったわン。

 「オッケー。サバの味噌煮ね」
 了解、と返信する。
 御神万里、その生物学上の性別は男である。
 「…お母様、素敵な方ですよね」
 「まぁなー…」
 オカマのクセにパッと見分からないんだものな。
 フツーに男に口説かれることもあるらしいし。
 「そうだ、緋月。ご飯まだなんじゃない?」
 「…だ、大丈夫です」
 ぐぅ〜
 緋月の腹から、言葉とは裏腹な音が聞こえる。
 「遠慮するなよ、恋人なんだしー」
 「……はい」
 顔を真っ赤にして答える緋月。
 「んじゃ、すぐ用意するから、ダイニングルームで待っててくれる?」
 そう言った俺の頭からは、さっきの夢の内容などすっかり消えていた。





683ヤンデレの娘さん 交際の巻:2010/09/07(火) 22:51:25 ID:eE7Ry3FM
 サクッと制服に着替えると、俺は台所に向かう。
 隣のダイニングでは、緋月が朝食を今か今かと待っている。
 ちなみに、俺の母は俺を産んですぐに亡くなっており、もう一人もご存じのとおりもう仕事に出かけている。
 だから、この家にいるのは俺と緋月の二人だけだ。
 「今日の朝食はホットケーキでございますー」
 食卓にお皿を並べ、俺は言う。
 「いただきます」
 「…いただきます」
 手を合わせ、緋月がホットケーキを小さく切り取り、控え目に口に運ぶ。
 「…すごく、美味しいです…」
 「よろこんでもらって何より」
 緋月の言葉に偽りは無いようで、次々にホットケーキを口の中に放り込む。
 こんな美味しそうに自分の作ったものを食べてもらうのも、久しぶりである。
 何か緋月の目もキラキラしてるし…。
 片親ゆえに必要に迫られて身に付けた料理スキルに感謝したのも久しぶりかもしれない。
 自然頬がゆるむ。
 「お姉様の作った物よりずっと大きくて柔らかくて…」
 「緋月って、お姉さんいるんだ」
 ホットケーキを美味しそうに食べる緋月に、俺は頬笑みながら言った。
 言われてみれば納得である。
 「三」日という名前も三日月からの連想だけでなく、三番目に生まれた子供だからかもしれない。
 「はい、二日(ニカ)お姉様とおっしゃって…」
 そこで、雷に打たれたような顔になる緋月。
 「お姉様ごめんなさいごめんなさいもう我が侭しません言いませんですからお仕置きはやめてやめてやめて〜〜〜〜!」
 「ちょ、緋月!?」
 何か、トラウマスイッチが入ってしまったらしい。
 その後、錯乱した緋月を落ち着かせるのには、少し時間がかかった。
 …名前出すだけでトラウマを思い出すって、どれだけおっかないお姉さんなんだろう。









684ヤンデレの娘さん 交際の巻:2010/09/07(火) 22:51:50 ID:eE7Ry3FM
 その後、俺達は二人連れだって学校に向かっていた。
 普段は1人か、途中から葉山と登校しているので、女の子と2人でというのは中々新鮮なものがある。
 ちなみに下校時も葉山と一緒。
 ホモか、俺らは。
 …しっかし、良く見るとウチの学校の生徒にもカップルっぽい連中は多いものである。
 イチャついてたり、手つないでいたり、チューしてたり、ナイフ持って追いかけっこしてたりと色々な奴らが居る。
 こっちも対抗して手くらいつないでみたりする。
 「…み、御神くん、私達って周りからどう見えると思いますか?」
 俺の隣を歩く緋月が、顔を赤らめ、上目遣いで見上げながら聞いた。
 小柄な緋月に対して、俺の身長は無駄に高いので、緋月が話しかける時はどうしてもそんな体勢になる…と、思う。
 これを計算でやっていても恐ろしいが、天然でやってるとしても恐ろしい。
 つまり、その、うん、…萌え。
 「んーと、同じ学校に通う仲の良い兄妹…って冗談冗談」
 俺の答えに緋月が結構真面目に涙目になったので、からかうのをやめる。
 「…ひどいです御神くん。もちろん、私は一日(カズヒ)お兄ちゃんのことが大好きですけど…」
 「お兄ちゃんって…、いきなり萌え属性を追加するなよ…」
 「?」
 ブラコンて…
 もしかして、俺に告白したのって、その一日さんに似ていたからじゃないだろうなぁ…
 だとしたらちょっと悲しい。
 そんなことを緋月に言うと、
 「…そんなこと、無いですよ?」
 そう、緋月は穏やかに言った。
 「…それは、一日お兄ちゃんのことは大好きですけど、御神くんほどではありません。それに、一日お兄ちゃんと御神くんは、全然違う感じです…。堂々としていて、頭が良くて…。あ、でも、背の高いところは似てるかもしれません」
 どこか柔らかい表情でそう言う緋月。
 その表情には、どこか兄に対する親愛の念が感じられて…
 「…ふぅん」
 「嫉妬!?嫉妬ですかそうなんですね!?」
 ぶっきらぼうな俺のリアクションに、緋月が過剰反応する。
 「いやいやいや」
 手を横に振って誤魔化す俺。
 …実は、結構図星だったり。
 無理矢理でも話をそらそう。
 「あ、でも、お兄さんの呼び名は『お兄ちゃん』で、お姉さんには『お姉様』なのな」
 俺の言葉に凍りつく緋月。
 「……あの人、いえあの御方は恐れ多くて『お姉ちゃん』なんて呼べません」
 ガタガタ震えながら緋月は言った。
 「…呼べないのか」
 一体どんな人なんだろう。
 まぁ、緋月とのお付き合いを続けてれば、彼女の『お兄ちゃん』や『お姉様』とも会う機会もあるかもしれない。
 ……双方とも気が合う気がしないけどな!











685ヤンデレの娘さん 交際の巻:2010/09/07(火) 22:52:56 ID:eE7Ry3FM
 「よぉ、みかみん…ってウゲェ!緋月!?」
 教室に着くと、葉山正樹が居た。
 「よーはやまん、朝から挨拶が御挨拶だな」
 「…」
 気軽に手を上げて応じる俺に、上目遣いで葉山を睨む緋月。
 横に居るだけでも負の念を感じるようだ。
 「こら、ひづきん」
 「ひぎぃ!」
 ぎゅむ、と髪を引っ張る。
 「あれは葉山も悪いけどさ、少しは仲良くしようとなさいな。睨んでばかりじゃ上がる好感度も上がんないよー」
 「痛い痛い痛い痛いごめんなさいごめんなさいだから髪引っ張らないでくださいぃ!」
 「ハッハッハッ!良い気味だな緋月三日!」
 「葉山…」
 高笑いを上げる葉山をジト目で見る俺。
 お前も仲良くする気無いなぁ…
 その時、
 「お前も仲良くするのだ〜!」
 ガバッ!と葉山と緋月をまとめて抱きしめたのは、クラスメイトの少女だった。
 髪は短髪、茶色がかった色は水泳部だからか。
 細身ではあるが、適度に鍛えられていて不健康な印象は無い。
 ニコニコ笑う彼女のことは、去年も俺や葉山と同じクラスだったので、割と知っている。
 「ぐぉぇ!朱里!?抱きしめると言うよりラリアットみたいになって痛いんですけどぉ!?」
 その少女、明石朱里(アカシアカリ)に対して、葉山がギブアップの動作を取る。
 「胸当ててんだから文句言わない!」
 「…いや、お前の胸って正直無いに等しいからありがたみが無…ギブギブギブ〜!」
 …はやまん、言ってはならんことを。
 「でさ、みっきー!」
 明石は緋月の方に目を向ける。(こちらはほとんど締まって無い)
 ってかみっきー?ああ、緋月三日→三日→みっか→みっき→みっきー、か。
 どうやら、緋月と明石は随分仲が良いらしい。(「隣の席だからな」と横で葉山が言っている)
 「話は聞いたよ。ってか、噂は聞いたよ。やったじゃん、大好きな御神ゲット出来て!」
 俺はぽ○もんか。
 「…はい、これも朱里ちゃんが大桜の噂を教えてくれたお陰です」
 「それ以外にも、色々情報流したけどね〜。アタシも頑張った甲斐があったよ!」
 「…対価は、いずれ」
 「期待してるよん!」
 最後の方、微妙にワルいふいんき(変換不可)なのは気のせいか?
 「ってか、噂って?」
 「誰と誰がくっついたとか、そう言うのはフツーに噂になりやすいよ?アタシが事情通なのも差し引いても。アンタらが付き合いだしたことはもう全校生徒が知ってるんじゃない?」
 俺の答えに対して明瞭に答える明石。
 「なるほど〜」
 「今頃、何人の女生徒が涙をのんでるんだろうね!」
 「人をジゴロみたいに言うなよ〜」
 俺と明石がそう言う横では、またまた負のオーラをまき散らす緋月が。
686ヤンデレの娘さん 交際の巻:2010/09/07(火) 22:53:52 ID:eE7Ry3FM
 「…全校生徒…、女生徒…、つまり全校生徒が泥棒猫…、全校生徒が敵…!これは殺すしか!」
 「ンな訳あるか」
 ぎゅむ!
 「ひぎぃ!」
 俺は再度髪を引っ張る。
 「つーか、俺も信用無いよなぁ。付き合ってるってのにそう簡単によそのコにホイホイなびくような軽い男だと思われてたなんて、お兄ちゃん悲しい…」
 よよよよ、と泣き真似をしてみる。
 「たかだか付き合って1日で信頼関係もへったくれも無いんじゃないかな、ひそひそ」
 「よりにもよって告白への返事が『いいよー』だったもんなー、ひそひそ」
 「…なんで『お兄ちゃん』なんですか、ひそひそ」
 「そろそろホントに泣いていい、俺?」
 3人が3人、あまりにもあんまりなリアクションを取ってくれやがる。
 …つーか、いわゆるヤンデレ的対応って、基本的に意中の相手への信用が無いよな。
 いや、往々にして男の方が悪かったりするけど。
 「マジメな話、うまくいくようにアタシの方で『イイ』噂を流しとくから大丈夫だとは思うけどね!」
 不気味なくらいニッコリ笑って言う明石。
 …どんな噂だ。
 「…ありがとうございます、朱里ちゃん」
 「いやいや〜」
 「…対価はいずれ」
 「期待してるよん」
 だから、対価って何だ。
 「ま〜そんな心配しないでよ、彼氏クン。親友からボッたくるほど、アタシは鬼じゃないよ。ただ、必要なモノを必要なだけ欲しいだけ!」
 グッと親指を立てる明石。
 …不安だ。
 「なぁ、緋月。イザとなったら俺を頼りなよ」
 「…ありがとうございます」
 「…信用無いね、アタシ」
 その時、予鈴が鳴り響く。
 「んじゃ、アタシらはそろそろ自分の席に戻るね!ばいびー、正樹!」
 「…………また、授業後に」
 元気よく戻る明石に、超名残惜しそうな緋月。
 「緋月と明石って仲良いのな」
 席に戻る二人を見ながら
 「あ〜、俺もあんま知らんかったわ」
 俺の言葉に返すのは葉山だ。
 「あ、そうなの?」
 「まーなー。やっぱ幼馴染でも、女子側のことは分かりづらくなるしなァ…」
 「幼馴染!?」
 なんだその今時ゲームでしか聞かないようなフレーズは。
 「言ってなかったか?俺と朱里はガキの頃から家近くて、学校も同じなんだよ」
 「ゲームとかだったら、そのままゴールインだけどなー」
 「無い無い。お互い腐れ縁、付き合い長い友達くらいにしか思ってねーよ」
 ひらひら手を振る葉山。
 そうは言うが、普通それでも離れていくものではないのだろうか。
 だから、高校になっても親しい異性の幼馴染なんてのはゲームくらいにしか居ないわけで…
 親しくするにも、親しくあるにも相応の理由と努力があるわけで…
 「もしかして、もしかしなくてもそう言うこと、なのかな」
 もしそうなら、恋人の友達の恋愛成就を反対する理由は無いかな、と思った。
 え、葉山の意志?
 ……それはそれ、これはこれ。








687ヤンデレの娘さん 交際の巻:2010/09/07(火) 22:54:56 ID:eE7Ry3FM
 お昼の時間
 「ひづきんひづきん、一緒にご飯食う〜?」
 俺はゆるゆると緋月の席の方に近付く。
 「ラブラブだな、お前ら。いっそそのまま二人の世界に入って、俺にとばっちりが来ないようにしてくれよ?」
 葉山は何を言ってるんだろう?
 「お前も来るのよ?」
 「当然のように怖いコト言うなよ!?」
 ガタンと立ち上がりオーバーリアクションをとる葉山。
 「じゃあ間を取ってアタシも仲間に入るじぇい!」
 そう言うのは明石だ。
 実は俺の方から提案するつもりだったのだが、その前にノッて来てくれたようだ。
 「…では、私は購買でパンを」
 そう言っていそいそと教室から出ようとする緋月。
 その行動に、なぜかとてもとてもとてもとても(中略)とてもイラっときた。
 お前は…
 「………」
 ぎゅむ!
 「ひぎぃ!今無言で全力で髪引っ張りましたよね!もしかして結構怒ってますか怒ってますねそうなんですね!?私そんな悪い事言いましたかごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
 「お前は今すぐ『告白の巻』を読み返せ」
 「メタなことを!?」
 「取りあえず、お前はもう離さない」
 「何と言う求婚!?って、髪の毛をどうするんですかぁ!?」
 そう言う緋月の髪を、この場から離れないように無理矢理机に結びつけ、俺たちはそれぞれの机を1カ所に集める。
 「もしかして、彼氏クンの方がヤンデレ度高い?」
 「そりゃ、あんなのと付き合う位だからな…。俺らはアイツを見誤ってたのかもしれん」
 なぜか俺達を見て失礼なことを言う明石と葉山。
 「…ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい私のような雌犬にはご飯なんていらないんですねそうなんですね…」
 「自分のこと雌犬言うな」
 そう言って、俺は緋月の前に弁当箱と飲み物を置く。
 「…え?」
 「…弁当、これからは俺が作るって言ったでしょ?」
 「…冗談だと思ってました」
 「こっちは忘れられたかと思った」
 「…ありがとうございます」
 そして、互いに手を合わせていただきます。
 「ところで、アタシらで考えたことがあるんだけど!」
 食事中にビシっと手を上げる明石。
 「何の話ー?あ、緋月、そっちのスプーンはデザートに使ってくれ」
 「あ、はい…」
 「椅子に縛ってたせいで髪、ちょっと乱れてるな。ブラシ持ってきたから髪梳いて良い?」
 「…はい」
 「話を聞けー!」
 ビシっとツッコミを入れる明石。
 基本、俺らはボケ属性なので彼女や葉山のようなツッコミが居るとマジ助かる。
 「さっき、みっきーと話してたんだけど!」
 「何をー?」
 緋月の髪をすきながら、相槌を打つ俺。
 しっかし本当に良い髪してるな、このままずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと梳いていたいくらいだ。
 「おい、みかみん。瞳からハイライト消えかかってるぞ」
 「おっと危ない。それで、明石、何だって?」
 「アタシら4人で、この週末、どっか出かけないかって話よ!」
 くじけそうになりながらも、ずびし、と力強く宣言する明石。
688ヤンデレの娘さん 交際の巻:2010/09/07(火) 22:56:03 ID:eE7Ry3FM
 それに葉山がブーイングをかます。
 「何でこのカオスな面子なんだよ!」
 「良いじゃない、暇でしょ、どうせ」
 明石の言葉に、「まぁそうだがよ…」と引き下がる葉山。
 俺の方は、特に反対する理由も無い。
 「次の土曜は俺も暇だけどなー。ひづきんはどう?」
 「…はい、私も大丈夫です。それにしても、何だか…」
 そこで、緋月は一瞬何かを思い出すように宙に目を泳がせ…
 「男女四人デ出カケルナンテ、何ダカだぶるでーとミタイデスネ」
 「オヤ、言ワレテミレバソウダネ、みっきー」
 緋月と明石が棒読みでしらじらしく言う。
 …何この小芝居。
 いやまぁ、「そういうこと」なんだろうが。
 「そりゃ無ーよ!ハブとマングースが仲よくダンスする位無ーよ!」
 空気を読まない男、はやまんがロクでもないツッコミを入れる。
 …うわぁ、コイツ酷ぇ。
 明石の表情も一瞬ひきつった。
 鈍感も過ぎると罪なのな…。俺も人のこと言えないけど。
 「ま、まぁ、参加する面子の内二人はお付き合いしてるんだし、ダブルデートと言えばダブルデートなんじゃない?」
 「俺ぁ認めて無いけどな…」
 じっとりとした目を向ける葉山。
 「何でそんなイジワル言うかなー」
 「俺が去年一年間、どんっっだけ緋月の視線(プレッシャー)に耐えてきたと思ってきたんだよ!これだから鈍感は…」
 うわぁ…、葉山の最後の一言に、明石がスゴい目で葉山を見てる。
 「…ゴシュウショウサマ」
 「心が籠もってねぇ!」
 「…いや、だって…」
 「「「ねぇ?」」」
 俺と明石、加えて緋月の台詞がハモった。
 「何で!?」
 葉山が抗議するが、奴の言葉を聞く者はいなかった。




689ヤンデレの娘さん 交際の巻:2010/09/07(火) 22:56:38 ID:eE7Ry3FM
 その後ゆるゆると授業を受け、俺は放課後もまたゆるゆると過ごしていた。
 「…御神くん、一緒にかえ…」
 「御神センパイ!料理部に助っ人お願いします!」
 「ん〜、良いよ〜、でも俺なんかで皆の助けになるかなぁ?」
 「何言ってるんですか、先輩くらい料理できる人ウチの学校にそうは居ませんよぉ」
 「持ち上げるねー。まー、そこまで言わせちゃったら来ないわけにもいかないかー」
 「「「ありがとうございまーす」」」
 「んじゃ、そう言うことだから、緋月またねー」
 「………御神くん」

 料理部部室(家庭科室)にて

 「んーと、そこはもっとこう手早く軽快な感じでー」
 「はい、センパイ!」
 「あ、そんな力入れちゃダメだよー。趣味の料理なんだし、もっとお気楽極楽にね」
 「オレ、彼女に手料理作るためにこの部に入ったです!アイツが『イマドキ料理もできない男なんてダサい』って言うから…!」
 「なら、その相手のことを考えて作ってみると良いよー。それだけでも、楽しくなって色々出来ることが見えてくるし。…今朝の俺がそうだったようなそうでなかったような」
 「そう言えば御神君!御神君が女の子と付き合いだしたなんてウソよね!」
 「…あ、それホント」
 「そんなァ!今『御神×葉山』本を書いてるのに!」
 「ええっと…、どこにそんな需要が?」
690ヤンデレの娘さん 交際の巻:2010/09/07(火) 22:58:12 ID:eE7Ry3FM
 部活時間終了後
 「うーん、今日もゆるゆるした一日だったなぁ」
 「…どこがですか?」
 料理部の皆さんと一緒に家庭科室を出ると、後ろから恨めしげな視線が。
 「もしかして待っててくれたのー?」
 振りかえると、予想に違わず緋月がいる。
 あまりの負の念に、料理部員や他の生徒が軽く引いている。
 「…見てました、ずっと」
 「ウン、何と言うか、ゴメン」
 部活時間中ずっとほっぽっちゃってたからなぁ…。
 「…そんなに女の子に囲まれたいんですか?」
 「人をジゴロみたいに言うなよー。大体、彼女持ちがそんな願望抱くと思う?」
 「…お母さんが言っていました。恋人とは蝶のようなもの。その美しさにどれだけ魅了されても、つなぎとめておかなければすぐにどこかへ行ってしまう、と」
 「独特なカンジで人差し指を掲げて言うあたり、お前も好きだね。その手のネタ」
 大仰なBGMが欲しいところだ。
 緋月の瞳からハイライトが消えていなければ、だが。
 「…となればこの部活、潰すしか…!」
 「逆に潰されるパターンだよな、お前の体力的に」
 「うう…」
 否定できないのか、黙り込む緋月。
 「でも、本当にゴメンねー、不安にさせて」
 くしゃ、と俺は愛おしげに緋月の頭をなでる。
 「…安い台詞、なのです」
 「埋め合わせは、必ずするよ」
 「今して下さい」
 「時々鋭いよな!」
 今回の緋月は、中々機嫌を直さない。
 放っておかれたのがよほど嫌だったのだろう。
 いやまぁ、緋月の言うことも分からんでも無い。
 愛して欲しい相手が他のことにかまけていると、実際はどうあれ、まるで相手から愛されていないような気になってしまうものだ。
 ウチは片親で、昔から親が留守がちだったから、その気持ちはよくわかる。
 今朝の夢では無いけれど。
 「分かった。何が欲しい?」
 「御神くんが」
691ヤンデレの娘さん 交際の巻:2010/09/07(火) 22:58:35 ID:eE7Ry3FM
 瞬時に切り返した緋月の言葉に、一瞬言葉に詰まる。
 …うん、聞いてる方が恥ずかしくなる台詞をナチュラルに言ってくれるよな。
 「俺はもう上から下までお前のモンだよ。特にご飯とかご飯とか!」
 俺は照れをごまかすため、ことさらにおどけて言った。
 「なら、その証拠を見せてください」
 「何を!?」
 「…キス、してください」
 …まったく大胆な。
 いや、相変わらず頑張りすぎな。
 まぁ、どっちにしても恥ずかしい台詞を言わせちゃったのは俺が悪いわな。
 今回といい、告白の時といい、何のかんので彼女にリードされっぱなしな気がする。
 お前にリードされっぱなしなのは、これっきりにしなきゃな。
 俺は返事の代わりに少し身をかがめ、自分の唇と緋月の唇を重ねる。
 柔らかい、と当然の感想。
 あまりに心地よい感触に、一瞬我を忘れそうになる。
 て、言うか忘れた。
 主に理性を。
 そして、理性を失った欲望が緋月の奥を求める。
 「…!」
 いきなり俺の舌が口の中に侵入してきて、緋月が驚きに目を見開く。
 けれど、それを拒絶することなく、自分の舌とからめる。
 何分そうしていただろう、と思った時にふと気がつく。
 濃密な触れ合い。
 この会話は、部活終了直後から始まっているわけで。
 周りには料理部の皆さんだけでなく、他の生徒もいるわけで。
 そして、彼らは俺らの姿をガン見してたりするわけで。
 「…」
 「…」
 ええ、もう。
 それに気付いた時には恥ずかしさで悶絶しましたよ、二人して。











692ヤンデレの娘さん 交際の巻:2010/09/07(火) 22:59:02 ID:eE7Ry3FM
 おまけ あるいはその夜の通話記録
 「チュー!?ディープなチュー!?それも白昼堂々公衆の面前で!?アタシはみっきーのことそんなやらしい娘に育てた覚えはありませんザマスよ!」
 「ななななな!?炊きつけたのは朱里ちゃんじゃないですか!?『泥棒猫たちの前でキスの1つでもかませば排除完了っしょ!』ってぇ!?」
 「はっはっはっ!そぉんなジョークを真に受けるなんて、みっきーも素直すぎて笑っちゃうな!」
 「明らかに『やれ!』的な流れでしたよ!」
 「でも、ヤじゃ無かったでしょ?
 「…それは、そうですけど」
 「だったら終わりよければすべてよし!」
 「…。…ところで、そちらはどうだったんです?」
 「ウン、お陰さまで久々に正樹と一緒に二人きりで帰れたよ。それもこれもみっきーが御神を引きつけてくれたお陰だね!アイツ、いつも御神と帰ってたんだもの、男同士で何が楽しーのやら。」
 「…私も、あの後なし崩し的に一緒に帰れましたから。…恥ずかし過ぎてほとんど会話ありませんでしたけど」
 「アハハハハハ!」
 「笑いすぎですよぉ!」
 「いやぁゴメンゴメン。お互い権謀術数の限りを尽くしてるのにウブでウブで…。こっちも、キンチョーしちゃって気の聞いた会話なんて全然だったよ。…笑っちゃうよね。裏じゃ正樹に胸キュンな女子を噂使って引き離したりと汚いこともしてるのにさ」
 「…でも、それは…」
 「ま、そだね」
 「「それだけ好きだから」」
 「…ねぇ、朱里ちゃん」
 「何、みっきー?」
 「これからもがんばりましょう、お互いに」
 「だね」

 通話終了
693ヤンデレの娘さん 交際の巻:2010/09/07(火) 23:02:48 ID:eE7Ry3FM
 以上になります。
 御神や緋月の家族が登場する話を書くかは未定(笑)ですが、緋月の家族に関してはヤンデレと変態しかいないイメージです。(三日の兄観はかなり主観が入ってます)
 なお、緋月と朱里は恋愛に関してかねてから共同戦線を張っています。
 恋愛関係で利害が一致してたのがいつの間にか友情へ…というイメージ。
694名無しさん@ピンキー:2010/09/07(火) 23:38:35 ID:KQNne8Lm
GJ!
695名無しさん@ピンキー:2010/09/07(火) 23:47:56 ID:L749osAo
葉月さんとジミーのイラストGJすぎる

この勢いで登場人物全員描いてくれ!
696名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 00:12:39 ID:yPljZxOJ
>>657
>>666
それぞれGJ
697名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 00:14:32 ID:yPljZxOJ
>>693
gj
698名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 00:15:51 ID:0jd8dhh0
葉月さんいいねGJ
花火と澄子ちゃんも見てみたい
699名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 00:27:50 ID:a/56FzF8
作品投下すごいな…嬉しいぜ!このまま「触雷!」「風雪」来て欲しいぜ!
700 ◆fyY8MjwzoU :2010/09/08(水) 00:46:22 ID:qOFIA8eP
期待に添えないけど軋んでいく歯車8話投下させていただきます。
701 ◆fyY8MjwzoU :2010/09/08(水) 00:46:52 ID:qOFIA8eP
「はぁ……」
「どうしたんですか? 藍さん」
 今日は正敏と会長と一緒に藍さんの喫茶店に来ていた。
 どこか元気のない藍さん。どうしたのだろうか。
「きっとあれだな。ふむ。ズバリ恋の悩み」
「違いますよ。私は恋で悩んでいません」
「なら〜どうして〜悩んでいるのですか〜」
 少し溜めてから藍さんはこういった。
「あなたたちが学校サボって私の店に来ているのに困っているんです」
「うぐっ」
 現在四時間目……正直悪いことをしたと思っています。
「別に〜一回ぐらいサボたって〜大丈夫ですし〜」
「平気だ。生徒会に所属しているため学校のためにすることなら基本許される」
 俺はこの二人の暴走をいい加減止めたほうがいいのだろうか。
「ここでゆっくりすることがどう結びつくのですか?」
 藍さんは当然の質問をする。正直自分も聞きたい。
「ここでゆっくりするといい案が出るかもしれないだろう」
「なるほどー。それは一理あるかもしれませんね」
「いや! 一理もないから! 確実にサボりの口実ですから!」
 自分の周りには常識を持った人は少ないのだろうか。
「落ち着いて〜」
「正敏……」
「あんな〜つまらない〜授業なんて〜サボって当然だよ〜」
「このばかやろっ!」
「げぶらっ!」
 ついついグーでなぐちゃった。まあ正敏だしいっか。
「会長。今日はいいですがさすがに二回目はないようにしてくださいね」
「ああ、わかった。今度からは卓也は誘わないようにしよう」
「いや、授業めんどくさいので誘ってください」
「本音出ていますよ卓也さん……」
 はっ! 何やっているんだ自分は!
「それで〜本当のところは〜どうなのですか〜」
 正敏が珍しく真っ当に質問をした。珍しい。本来それこっちの役割なのに。
「えー……それはですね。嬉しい悲鳴ではあるのです。お客さんが多すぎて手が回らないというのが少々」
 なるほど。嬉しい悲鳴であることは間違いないだろう。けれども人が多くなると手が足りなくなるのも事実……
「そうか……それなら。私を使ってみないか?」
「葵……さんをですか?」
「ああ、私は基本的に暇人なのでな。それに暇人つながりで卓也も入れれば大分楽になるだろう」
 人の意見を聞かないで話進めるよね。ほんと。
「それはいい考えですね。なら自給700円でアルバイトしませんか?」
「いやアルバイト代は残ったデザートを毎日くれるだけでいい。残らなかったらつくってくれ」
「それはそれでいいですね。ではそれでお願いしますね。あ、今日からでよろしいですか?」
「ああ、かまわない。どうせ今日は生徒会会議なんてないからな」
「明日からなら僕も〜参加するから〜。僕のバイト代も同じくデザートで〜」
「それなら自分はバイトしないので」
「「拒否権は無い」」
「ですよねー」
 ということで生徒会重要ポジションの三人はバイトに精をだすことになった。
702 ◆fyY8MjwzoU :2010/09/08(水) 00:47:16 ID:qOFIA8eP
「はいこれ制服です」
 そう言われ手渡される制服。清潔感がある服装だ。……。
「店長、これ女ものです」
「ごめんなさい。男の子用の制服は在庫切れで」
 この人経営者として駄目だと思うのだが。
「すまない卓也。私がここの男子制服を買占め正敏に渡して屋敷のメイドに男装キャンペーン銘打ってタダで渡さなければ」
「狙ったよね! それ確実に狙ってやったね!!」
「なにを言うか。私は正敏の屋敷のメイドにはお世話になっているからこれくらい当たり前だ」
 しかしその行動は俺にむけてとても悪意あるものに感じてしまう。
「ごめんなさいね。卓也さん。私もついつい女装した卓也さんが見たくて。いいよね卓也ちゃん。女の子だもんね」
「俺は男です!!」
 このままじゃ話がすすまない……仕方が無い。
「エプロンだけ貸してください。学校の制服で働きますから」
「エプロンなんてありません」
「その腰の物体はなんですか!!」
「いいじゃないか。妹を助けた時だって女装したし去年の学園祭でも女装しただろう」
「ぐ、ぬー!!」

「これでいいかよ!!」
 渡された制服を着た。脛毛を剃り腕毛も剃りウィッグを装着してウェイトレス服を着る。
 なぜかサイズが少し小さい気がする。ニーソックスが少し食い込みすぎてる気もする。
「ぐっしょぶです〜は〜……」
 藍さんは顔がとろけきっているように見える。
 なんかむず痒い気もするが会長が笑いを堪えているので苛立ちしか覚えない。
「でもこれじゃばれると思いますよ。顔の土台が土台ですし」
 藍さんはどこからともなくポーチを取り出した。
「安心してください! 私が化粧しますから。それにかわいいですから平気です」
「い、いえ結構です。それより学生服じゃだめですか?」
 なんかいやな予感しかしないので逃げる準備をしようとする。
「ふふふ、逃げれると思うか」
「えへへ、そうですよ〜」

「いらっしゃいませ、何名様ですか?」
「二名だけど、壁際の席あいてるか?」
「ええ、あいていますよ。ご案内しますね」
 ……屈辱だ。物凄く。
「お嬢さん、もしよければ俺たちとお茶でもしませんか」
「あなた方のような気持ち悪くて男らしいところもなくナルシストでこのような場所をいかがわしい店と同じように扱うかたとのご同席は当店では実施していませんので遠慮したします」
「あ、ああそうですか……」
 ま、引き受けたことだし明日には男物も準備できてるだろうし頑張ろう……はっ! ……女装にそこまで抵抗がなくなっている自分がいないか!?
「ご注文はお決まりですか」
「あなたを一つ」
「ギャル男の丸焼き一つですね。今かまどへ持ち運びますので少々お待ちください」
「すいませんでしたー!」
「謝罪したいのならこの一番高いメニューを三つ頼んでくださいね。ディナーセットではなくて単品で」
「はい!!」
 たまたま懐に抱えていた担架を近くの壁の担架入れにいれておく。意外な使い道があったな担架。
 邪魔だから運んでおいてといわれたか運んでいただけなんだけど。
 それにしても男ってばれないのだろうか。って! またドアが開く音がしたよ。
「いらっしゃいませー」
 うう、がんばろう……
「九夜ちゃん、九夜ちゃん」
「なんですか店長。それに卓也と呼んで下さいよ」
「どうでもいいね。さて今から三回後に来た人にクラッカーで一万人目おめでとうございますといってくれないかな」
「分かりました」
 また俺はオーダーをとりながら出迎えに行く。
703名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 00:47:34 ID:t9dKlBW5
ちょっと待て
まだ投下するな
704 ◆fyY8MjwzoU :2010/09/08(水) 00:48:07 ID:qOFIA8eP
「いらっしゃいませ」
 一人目か。そういえば学校も終わって結構時間経ったからすこし客足緩まってきたかもしれない。
 この店に来る客の7割が学生だと思うしね。
「今ご案内いたしますね」
「ね、ねえ。き、きみって新しく入ったひ、人ですか」
「ええ、杉岡九夜《すぎおかくや》と申します。九夜とお呼びくださいね」
「九夜ちゃんか……よ、よろしく」
「ええ、それではこちらの席に。こちらがメニューとなります。お決まりになったら呼んで下さいね」
「はひぃ」
 急にそばにいる会長が話しかけてきた。
「なかなか様になっているな。感心だ」
「うるさい会長。自己嫌悪しているんだから」
「そうかそうか。九夜ちゃんはバイト中にこぉんなこという娘だったのか」
「ぐぬ……」
 そうだ。今は九夜。うん九夜だからこんなセリフ言ったらいけないんだ。
「わかりました。精一杯仕事をしてまいりますね。葵さま」
「あ、ああわかった」
 自分は九夜。自分は九夜。

「いらっしゃいませー。何名様でございますか?」
「二名です」
「はいこちらにどうぞ」
 席へと案内しメニューを渡す。
「本日のオススメは季節のパスタですがどうしますか?」
「あ、ならそれであとドリンクに特製フルーツジュースを」
「私もー」
「かしこまりました。季節のパスタに特製フルーツジュース二つずつですね」
 伝票を藍さんのところへともって行く。
「あ、あのー九夜ちゃん、いいかな?」
「はい、何にいたしますか?」
 さっきのオタクっぽい感じのお客から注文がきた。
「この、ハヤシライスをお願いします」
「分かりました。ドリンクは頼みますか?」
「え、えっと…オレンジジュースを」
「ありがとうございます。それでは」
 カランカランと鐘の音が鳴る。三人目だな。カウンターからクラッカーをとりだしお客に近づく。
「いらっしゃいませー、おめでとうございます! お客様で一万人目となりますので我が店よりプレゼントがあります」
「そ、そうか」
 ん? 聴いたことある声だな?
「困ったな……目立つの好きじゃないのに……」
 って姉御かよ!! 違う違う。楓さん楓さん。
「お客様? どうしたのですか?」
「い、いやなんでもない……えっとプレゼントって一体何なんだ?」
「これになります」
 懐からチケットを取り出してそれを渡す。たぶんタダ権だろうなー。
「明日がお暇ならぜひいらしてください。そのチケット明日にしか使えませんので。来店時に見せてくれれば適用されますよ」
「は、はぁ……」
「一名様ですね。それではこちらへどうぞ」

「は〜終わった〜」
 午後9時になりバイトは終了となった。とりあえず初めてだけど上手く動けたと思う。
「お疲れ様です」
 前には藍さんが立っていた。
「藍さんこそ」
「そうかもしれませんね」
 笑顔で答えてくれるが少しぎこちない気がする。
「そういえば本当に悩んでいたのは何ですか?」
 何気なく聞いてみる。あれが本当の悩みだとは思えなかったから。
「やっぱりばれちゃうよね。……私ね。恋してるの」
705 ◆fyY8MjwzoU :2010/09/08(水) 00:48:43 ID:qOFIA8eP
 少し胸がチクッとした。やはり自分自身この人が好きだったから少し残念だったのかもしれない。
 いやでも家族愛っぽいものかもしれない。姉を見送る弟みたいな感じかな。
「そうですか……がんばってくださいね。俺も弟として応援してますよ」
 少し悲しそうな顔をした。悪いと思っているのだろうか?
 本当の家族じゃないんだし、それにいつでも会えるのになぜこんな顔をしているのだろうか?
「そう……ね。でも少し叶いそうにないかも」
「そんなこと無いですよ! 藍さんは魅力的ですから」
「ねえ」
「はい?」
「今だけでいいからお姉ちゃんってよんでくれないかな?」
 どうしたのだろうか? どうしてここまで今日は言うのだろうか?
「自分でよければね。お姉ちゃんは魅力的だから大丈夫ですよ」
「うん……もしさ私が卓也くんにせまったらどうする?」
「それは……断るかもしれません。家族なら」
「そうよね……」
「でも……一人の男としてなら……付き合いたいですね。それほど魅力的な女性ですから!」
「……ん、ありがと」
 まだ顔が沈んでいるけど大丈夫だろう。藍さんならきっとまた笑顔になってくれると思うから。
「どういたしまして」
 次の瞬間藍さんが頭を撫で始めてきた。
「う、うわ! 藍さんやめっ!」
「お姉ちゃんでしょ! おりゃ、おりゃー!」
「あーはい! お姉ちゃんやめてください!」
「いやだー。かわいい弟があんなかっこいいセリフ言うから悪いのー」
「どっちにしろ撫でるんじゃないかー!」
「えへへー」
 それから開放されたのは午後十一時だった。
 思いっきり校則違反な時間だったがかなり精神が充実していた。
 楽しかったから。あんな姉弟のようにふざけあうのもなかなか面白いと思った。
 しかし遅く帰ってきたためか妹が泣きながら俺の腰に飛び込んできた。
 まったくもう少し上にずれていたらみぞおちにどーんだったぞ。
706 ◆fyY8MjwzoU :2010/09/08(水) 00:50:10 ID:qOFIA8eP
以上ですが…すいませんでした。リロードしなくて。
707名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 01:04:13 ID:SRA/mULY
GJです!
多分今回は投下間隔の事だと思います
明確な決まりは無いですがまぁ2〜3時間くらい開ければ問題ないかと思います
失敗は誰にでも有ることなので、気を落とさず頑張って下さいね
708名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 02:25:48 ID:a/56FzF8
>>706
GJです!
そういやあの馬鹿野球部とその担任どうなったか気になる
709名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 13:36:00 ID:LXNL4zOh
gjです
やっぱりいい作品ばっかです
無知ですいませんが
ここに投稿されているものって
全部ウィキにいっているんでしょうか?
無知ですいませんが誰か教えてください
710名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 14:33:53 ID:SRA/mULY
>>709作者が拒否らない限り基本的にはwikiにあるはず
wikiに無いのは過去ログ漁るしかないかも
711 ◆mN6lJgAwbo :2010/09/08(水) 15:19:27 ID:FVc3vYTG
どうも、初めてですが投下します。
タイトルは『異色の御花』、長編です。

ちなみに、まだ病み部分は出て来ません。
空の色がすっかりオレンジ色に染まった頃。
時間で言えば、5時を少し回った辺りだろうか。
体育館裏の倉庫で荷物の出し入れを行っていた俺は、ふと空を見上げながら思った。
(きれいな夕暮れだな……)
特段、夕暮れを見る事が少ないわけではない。
だが、普段放課後にはさっさと帰宅する自分にとって、学校にいながら見る夕暮れというのは、なんだか別のもののように思えた。


ホームルームが終了し、各々が鞄を手に教室を出ていく中、それに倣い帰ろうとする自分を、担任兼体育教師の森井直弥が引きとめた。
「おい、榊原」
「えーと……、何ですか?」
「お前、これから何か用事があるか? なければ手伝いを頼まれてほしいんだが……」
「今日は特に急ぎの用もありませんし、いいですよ」
「すまんな。あいにく他に暇そうな奴もいないし……じゃあついてきてくれ」
そんなやり取りがあり、自分は担任と供に体育倉庫の整理を行うことになった。
本当ならば、放課後に学校に居残ることなどしたくはないのだが、それもこのクラスでは仕方のないことだ。
自分が通っているこの学校は、普通校ながら、全員部活制という制度を取っている。
その内容は、高校入学後の4月末までに、必ずどこかの部活に入部しなければいけないというもの。
そのため、この学校の全校生徒は、基本どこかの部活に所属していなければいけないことになるのだが、俺はこれを「一人暮らしのため」という理由で断っている。
そう、俺はどこの部活にも所属していない帰宅部であり、クラスでそれは俺一人なのだ。
ただ、その全員部活制が強要されるのはあくまで最初だけだ。
入った部活を、「性に合わない」などといった理由で退部する生徒は何人もいて、自分のように理由があるわけでもなく、無所属の連中は何人もいる。
だが、残念なことに、クラスの中にはそういった生徒はいない。
結局、白羽の矢は自分に立ってしまうことになるのだ。
「もう5時過ぎか……。粗方整理は終わったし、後は先生がやるから、お前は帰っていいぞ。今日はありがとうな」
「いえいえ。それでは自分はこれで」
夕焼け空を見上げつつ作業をしていると、先生から帰っていいというお達しが出た。
この場はその言葉に甘え、倉庫を後にする。
(案外早く終わったな。帰ったら何しよう……)
そんな事を考えながら、校舎へと続く外廊下を歩く。
廊下にもやはり夕陽は差し込んでいて、部活動中なのだろう、生徒達の声も木霊してくる。
放課後であれば当たり前なのだろうその光景に、何故か気分が高揚していくのを感じる。
俺は、祭りを外から眺めるのが好きだ。
祭りの中心に行って盛り上げようとするでもなく、盛り上がりにまざろうとするでもなく、ただ外から眺めて満足するだけ。
昔から目立つのを避けて生きてきた為に身に付いてしまった、ある意味自分にとって仕方のない楽しみ方だった。
この場においても、放課後に部活動に励む生徒達を遠くから眺めるという自分の行動に、多少酔ってしまった部分があるのかもしれなかった。
そして、そんな事を考えながら歩いていた時だ。
彼女と初めて出会ったのは。
外廊下の途中に、三人の男女がいる。
内二人は男子で、ブレザーのネクタイの色から同学年である事が分かる。
知った顔ではないので、別のクラスの生徒なのだろう。
そして、残りの一人が女子で、リボンの色からやはり同学年である事が分かる、のだが……。
俺の目はそんなものよりも、その子の髪に釘付けになっていた。
腰まで届くほどの長さを誇るその髪は、赤みがかった黒色をしていた。
地毛としても、校則という規則からしても有るまじき色だ。
しかし、俺はそれを純粋に綺麗だと思った。
それに、その女の子からは親近感というか、自分に近いような何かを感じる。
気がつけば俺の足は一歩を踏み出し、その方向は彼らの方へと向いていた。
(こういうのはあまり柄じゃないんだけど……)
本来、自分はこんな他人の間へ割って入る事などしない。
自分の存在が目立つ事へ繋がるような行為は、俺は極力避けてきたからだ。
でも、その事を振り切ってしまうぐらいに、何故か彼女の存在を、俺は酷く放っておけなかった。
歩きながら、改めて三人の状況を確認する。
男子生徒二人は、女の子を囲んで口々に話しかけている。
だが、女の子の方は俯いていて、二人の話に反応している様子はない。
そんな彼女の反応に対して、男子生徒二人は顔を曇らせている。
どうやら、楽しくお喋りをしているというわけではないようだ。
だが、かと言って、いじめがなされているような険呑な雰囲気でもない。
とはいえ、彼らを取り巻く空気が良いものであるとも思えなかった。
(何にせよ、事は穏便に済ませないと……)
そう思い、俺は男子生徒二人に声をかけた。
「あの、ちょっといいかな」
「ん?」
俺の声を受けて、男子生徒二人はこちらを振り向く。
自分に近い場所にいる男子は、こちらの姿を一瞥すると、もう一人に小声で話しかけた。
「お前の知ってる奴か?」
「いや、僕も知らない」
そう返事を受けると、改めてこちらを見遣り、話しかけてくる。
「なんだよ。こっちはあまり暇じゃないんだけど」
「えーと、特にそちらのやり取りに口を挟むつもりはないんだけど……」
そう前置きし、話を続ける。
「俺さっきまで森井先生を手伝って、体育倉庫の整理をやってたんだ。もう後は片づけと戸締りだけだったし、そろそろこっちに来るんじゃないかな」
「まじかよ」
二人は顔を青くする。
それもそうだろう。
森井先生は絵に描いたような熱血教師で、規則にも厳しく、多くの生徒から恐れられている。
今の彼らの状況は、周りから見ていてあまり良い気のしないものだし、声をかけられるのは確実だろう。
例えやっていることが悪い事でなくても、先生に見つからないに越したことはない。
「仕方ねえ、今日はもう帰るぞ」
「う、うん」
「じゃあな、蕗乃」
少し慌てながらも彼女に一声かけると、二人は手早く帰って行った。
「…………」
自分と『蕗乃』と呼ばれた彼女が残り、その場を沈黙だけが支配する。
蕗乃は顔を上げてこちらを見ていて、今はその全体像を確認する事ができる。
先程は俯いていて見えなかった顔は、その小柄な体に似合う、可愛らしいものだった。
それでいて、服の上から見ても分かるぐらいにスタイルは良く、美少女と評価しても申し分ないくらいだ。
(おっと、いつまでも見てるわけにはいかないな)
そう思い直し、蕗乃に声をかけようする。
「えっと……」
だが、続く言葉が出てこない。
こんな時にどう言葉を掛けてよいか分からないうえ、そもそも自分は女子と話す事さえ少なかった。
どうしようという焦りが頭の中をぐるぐると回り、余計に何も浮かんでこない。
そんな折、先に言葉を発したのは蕗乃の方だった。
「助けてくれたことに関してはお礼を言います。ありがとうございました。でも…………私には、あまり関わらないで下さい」
言葉ほどにはとがっていない、弱々しい口調でそう言うと、蕗乃は踵を返して校舎へと去って行った。
(拒絶、されたんだよな。じゃあなんで……)
振り返り際の彼女の顔を、俺は確かに見ていた。
(なんで、あんなに悲しそうな顔をしてたんだろう)
翌日の昼休み。
昼食のパンを購買で買い終えた俺は、教室への帰り道、昨日の男子生徒二人と廊下で出くわした。
「お前は昨日の……」
「や、やあ」
相手の言葉に対し、ぎこちない返事を返す。
まさか、昨日の今日で出くわすとは思ってもいなかった。
(さて、何を話したものか)
そんな事を考えていると、あちらの方から先に話しかけてきた。
「お前って、蕗乃と付き合ってんのか? それとも、友達か何かか?」
思ってもいなかった問いが投げかけられる。
何故そんな事を聞かれるのだろうか。
(昨日仲裁役みたいなのをやったからかな? だとしても安直な考えだとは思うけど)
「いや、そんな事はないし、彼女と会うのは昨日が初めてだけど」
「まあそうだよな、あいつに彼氏なんているわけないか。そもそも、友達すらいないだろうしな」
「そうだね」
自分に話しかけてきた気の強そうな方は、詰まらなそうな顔でもう一人の線の細い方に話しかける。
(『友達すらいないだろうしな』か。とすると、昨日の事もそれに関係するのかな……)
本来ならば、関係のない自分が立ち入っていい事ではないかもしれない。
だが、
(彼女のあんな表情見たら……)
立ち入らずには、いられなかった。
「あのー、差支えなければ、昨日何の話をしていたか教えてもらってもいいかな?」
自分の言葉を聞くと、二人は顔を見合わせた。
「他のクラスの奴には関係のないことだけど、まあ隠しておく事でもないか」
「そうだね。うちのクラスの皆は知ってることだし、後々の事を考えたら、別に言っておいても悪い事ではないと思うよ」
そして、気の強そうな方が話を始める。
「あいつ、名前は『蕗乃火乃花(ふきのほのか)』って言うんだけど、入学当初から今まで、クラスの奴らと関わろうとしたことが全くないんだよ。大概どのクラスにもいつも一人でいる奴っていると思うんだが、蕗乃と比べたら全然ましだ。」
今までの事を思い出しているのか、一拍おいてから話を続ける。
「授業では自分から発表することなんかしないし、同じくクラスの話し合いとかで進んで意見する事もない。クラス委員と係りも、最後まで余ったどうでもいいような奴をやってる。それぐらいならいいんだよ、俺もそんなもんだし。だけどあいつは……」
「ほら、クラスの皆で頑張らなきゃいけない行事とかあるでしょ。文化祭のクラスでの催し物とかさ。蕗乃さんってそういうの全然やってくれようとしないんだ。僕ってクラス委員長やってるんだけど、そういうことがあるたびに蕗乃さんに言い聞かせなくちゃいけなくてさ」
苦笑しながら、線の細い方が言う。
昨日の様子から見ても、その結果は芳しくなかったのだろう。
「一人でやる仕事は真面目にやるんだけどな、皆でやる事になるとすぐ逃げ出すんだよ。昨日はいい加減その態度を改めてほしくて放課後呼び出したんだ」
「2年への進級、まあつまりクラス替えを再来月に控えた今になって言うのもどうかと思ったんだけど、今後の事を考えれば、むしろ今の方が彼女の為でしょ」
「なるほど……」
話は納得できた。
だが、となると昨日の自分の行動は、彼らにとって邪魔なものだったのではないだろうか。
「じゃあ、昨日は俺邪魔な事を……」
「いや、別にいいんだよ。そこまで期待してたわけじゃないし、実際あの結果だしね」
「ああ。それに森井に目を付けられても厄介だしな」
「それならよかった」
二人の返事にほっとしつつ、今の話から蕗乃火乃花について考える。
蕗乃と俺は、ある意味似ていた。
自分も、クラスでは割りと一人でいる事が多い。
彼女は人との接触を拒むことによって、自分一人でいる空間を多く作ろうとしているようだ。
それに対し自分は、目立つ行動をせず、話しかけられる機会を極力減らす事で、人と親密になる事を避けている。
どちらも、人との関わり合いを避けているのだ。
だが、蕗乃と俺が似ているのはそこまでだ。
俺は蕗乃ほど徹底してはいない。
クラスで積極的な行動こそしないが、クラス行事では目立たないながらも皆でやる事にはちゃんと従事している。
それに、少ないながらもクラスの連中たちとは話もする。
唯一人ではあるが、親友と呼べる者も存在する。
蕗乃と俺とでは、社交性という部分で大分やり方が違ったのだ。
ただ、それでも、その根底にあるものは一緒なのだろう。
そんな事を、何の根拠もないというのに、俺は納得してしまった。
「なあ、それよりもよぉ」
気の強そうな方が、俺の頭を指さしながら言う。
「昨日初めて会ったときから気になってたんだが、それって……」
蕗乃の話の最中から、二人の視線は時折自分の頭の方へ向いていた。
恐らく、尋ねたくてたまらなかったのだろう。
「ああ、これは――」
俺は何の事もなく、いつものようにその問いに答えた。


次の日。
昼休みの来訪を告げるチャイムが鳴り響いてから、既に5分ほどが経過した。
教室の中では既に大半の生徒が弁当を広げ、昼食を取っている。
自分はというと、昼食をどうするかという問題で、一人思案していた。
昨日と違い、弁当はある。
冷凍食品ばかりを詰め込んだ、非常に雑な弁当ではあるが。
問題は、一緒に昼食をとる相手がいないことだ。
小学校来からの友人であり、いつも食事を供にしている『小笠原博人』は、今は教室に居ない。
博人は部活動無所属の自分と違い、弓道部に所属している。
今日は部のミーティングがあるので、昼食を一緒にとれないとの事だった。
こういった事は今回が初めてではなく、今まではその度に教室で一人で食事をとっていた。
だが、今回は場が悪かった。
教室の隅の方に席があれば問題はなかったのだが、2月の頭に行われた席替えで、自分は見事に教室のど真ん中の席を獲得してしまったのだ。
これでは、周りがうるさいうえに、非常に肩身の狭い思いをしながら食事をしなければいけない。
かと言って、博人の他に気軽に食事を供に出来る相手は居ない。
(どうしたもんかな……。あ、そうだ)
思案の末、一つのアイデアが思い浮かぶ。
俺は弁当の入った鞄を担ぐと、そのまま教室を後にした。
目指すのは、校舎裏だ。
自分が通うこの学校の校舎は、H字型に建っており、一方はグラウンドを挟んで校門と面していて、もう一方はちょっとした林と面している。
林と面している方は、そこからは外との通り抜けが出来ないので、もっぱらそこが校舎裏らと呼ばれていた。
外で昼食をとる時に使われる場所は、大体が校舎と校舎に挟まれた中庭だ。
校舎裏にも一応食事スペースはあるのだが、そこはほとんど使われていない。
林に面したその場所は、中庭ほど広くなく、更には木々や植物が多いせいか、年中じめっとしている。
その陰気な雰囲気が、多くの生徒には受けていないらしい。
そのため、昼休みを除いても、校舎裏には人が居ないのが常だった。
とはいえ、冬真っ盛りの今の季節では、中庭ですらそう人は居ない。
そして、校舎裏ならば輪をかけて誰も居ない筈だ。
この寒さの中外に出るのは多少辛い部分もあるが、以前から校舎裏のような静かで緑に囲まれた場所で、一人で食事をとるということをやってみたいと思っていた。
今がその絶好のチャンスなのだ。


一階の廊下を進み、外廊下へつながる扉を開く。
「……寒い」
外から冷え切った空気が入ってくる。
おもわず外へ出るのを躊躇ってしまうが、流石にここまで来ておいて引き返すわけにもいかない。
幸いにも今日は風が吹いていないので、幾分寒くはないだろう。
歩みを再開し、外廊下を進む。
ここを数メートル進めば、そこはもう校舎裏で、すぐそばにベンチが一つある筈だ。
今日はそこで昼食としよう。
そう考えながら、校舎裏へと辿り着いたとき、
「あっ……」
そこには、思わぬ先客が居た。
彼女はベンチの真ん中に腰を下ろし、膝の上に弁当を広げ昼食を取っていた。
寒さ対策なのか白いコートを着ていて、その白さ故、腰まで伸びる赤みがかった髪が綺麗に映えている。
それはまるで、雪上に落ちた赤い椿の花のようだった。
そう、蕗乃火乃花が居たのだ。
「あなたは……」
蕗乃も自分に気付き、箸を止める。
そして、一昨日に続き、またも沈黙が流れる。
非常に気まずい。
(これは、帰った方がいいのかな。でも、今さら戻るのもなぁ……)
そう思った俺は、思い切って蕗乃にある提案を出した。
「あの、良かったら弁当一緒に食べてもいいかな?」
「えっ……」
精一杯の笑顔で、そう申し出る。
恐らく、蕗乃の目にはぎこちない笑みを浮かべる俺の顔が映っていることだろう。
そんな俺を見る蕗乃の表情は、驚きに満ちていた。
それもそうだろう。
大して知りもしないような男に、いきなりこんな事を言われたのだから。
だが、しばらく考えている様子を見せた蕗乃は「隣で良ければ」と言い、ベンチの端の方へと体をずらした。
「あ、ありがとう」
こちらも、ベンチの端へ腰を下ろす。
自分が弁当を鞄から取り出し、食事を始めるのを見届けた蕗乃は、ようやく食事を再開した。
寒さの所為だけじゃない、緊張の所為も相まって、箸の動きがぎこちない。
(なんで、蕗乃さんは俺の申し出を断らなかったんだろう)
ちまちまと箸を動かす蕗乃の姿を横目で眺めながら、俺はそんな事を考えていた。
校舎裏なんて所で蕗乃に出会った事ですっかり頭の中から飛んでいたが、一昨日自分は蕗乃に『関わらないで』と言われていたのだ。
昨日聞いた話からしても、ここは俺の申し出を断るのが本来の彼女の反応ではないだろうか。
(気まぐれ……ではないか。入学してからずっと人を遠ざけていたんだろうし。じゃあ一体――)
「あの、何か?」
「えっ?」
まずい、ちらちら横目で見るのが、考え事をしていた所為でガン見になっていたようだ。
蕗乃は怪訝そうな顔でこちらを見ている。
俺は取り繕うように、頭に浮かんだ事をそのまま言った。
「いや、その髪、すごく綺麗だなぁと思ってさ」
嘘は言っていない。
実際一昨日はその髪に惹かれ、そしてその髪を持つ彼女に惹かれたのだから。
蕗乃はまたも驚いた顔をすると、すぐに俯き、こう言った。
「おかしな事を言いますね、この髪が綺麗だなんて」
「そうかな? 今まで言われたことなかったの?」
「ありますよ。でも、大体の人が、私と最初に会った時に珍しがって言うだけで、あくまでその程度のものでしかないんです」
「そんな言い方をするって事は、やっぱりその髪は……」
「はい、地毛です」
「立派なものだね」
「それを言うなら貴方だって」
蕗乃は俺の髪を見ながら言う。
「紺色の髪の人間なんて、普通は居ませんよ」
「あはは……まあそうだよね」
視界にちらりと映るその前髪を右手で摘まむ。
そう、俺の髪も蕗乃と同じで、地毛にしてはありえない色をしていた。
その色は、紺。
「これも君と同じで、地毛なんだ」
「そうでしょうね。でなければ、真っ先に先生に注意されて元に戻されるでしょうから」
そう言うと、蕗乃はまた俯き、黙り込んだ。
(『この髪が』か……。その言葉からして、あまり自分の髪を好きじゃないんだろうな……)
周りに驚かれるのはもう慣れたが、自分だって、この髪を大好きであるわけではない。
だが、なんとなくではあるのだが、彼女にはその髪を嫌いになってほしくはなかった。
「でも、やっぱり俺は、その髪は綺麗だと思うよ」
蕗乃は、またか、とでも言いたげな顔でこちらを見る。
「その赤い髪、君の象徴だと思うんだ」
「私の……象徴?」
「そう、君の象徴。君を表す君自身。だからこそ、君には似合うし、君にしか似合わないと思う」
俺の言葉を聞いた蕗乃は、まるで呆けてでもいるかのように、口を開けたままの表情で固まっていた。
驚いているのだろうか。
そして自分はというと、今しがた自分が言ったことのあまりの恥ずかしさに、言ってしまってから気付いた。
「……なんて、たいして君を知らない俺が言っても何も説得力ないよね。ごめん、今のは――」
「蕗乃」
「え?」
「蕗乃火乃花です、私の名前。貴方の……名前は?」
俺の目を見つめながら、蕗乃は言う。
「俺の名前は、葵。榊原葵」
「そう、ですか……」
そう言ったきり、蕗乃はまた俯く。
その、俯いた蕗乃の頬が朱に染まっていたのは、自分の見間違いだったのだろうか。
結局、その後は特に会話もなく、昼食と昼休みは終わった。
だが、別れ際に「それでは、また」と蕗乃が言ってくれたが、自分は嬉しかった。
また、昼休みにお邪魔してもいいということなのだろう。
今の時刻は、7時を少し回ったところ。
買い物などで町を周っていると、すぐにこんな時間帯になってしまった。
空は既に暗く、星も瞬き始めている。
家であるアパートまでの帰途に着く中、俺は改めて今日蕗乃に言った事を思い返していた。
それは、『象徴』という言葉。
あの時は、蕗乃に自分の髪の事を嫌ってほしくなくて、あんな事を言ったが、自分にとってのこの髪……紺髪は、決していい意味での象徴ではなかった。
何故ならば……。
俺は、辺りに誰も居ない事を確認し、買い物袋を持っていない右手の手の平を見つめる。
すると、蒼白い光が僅かに走り、その後の手の平には、先程まではなかった筈の氷の塊が鎮座していた。
「こんな変な力の、象徴なんだから……」
721 ◆mN6lJgAwbo :2010/09/08(水) 15:49:14 ID:FVc3vYTG
投下終了です。

先に述べた通り、病み成分が出るのは割りと後になりますが、
長い目で見て頂けたらと思います。
それでは。
722名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 17:49:20 ID:IqA1/LdN
そういえば紺髪も赤髪も実際にいたらおかしいな。
アニメ、ゲームとかでは色彩的に普通だが。

それはともかくまだ病んでないけど蕗乃が結構可愛い感じ。
病みそうな素地は十二分だがw
723名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 17:52:04 ID:Lfmrj8pX
評論家さんカッコイイ! 尊敬しちゃう! 二度とこないで!
724名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 17:55:07 ID:IqA1/LdN
>>723
すまなかった。
725名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 18:10:48 ID:LbpOZgQw
>>724 お前は悪くない気がする
726名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 18:37:11 ID:SRA/mULY
>>723コイツがゴミなだけだな
727名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 18:55:47 ID:a/56FzF8
色ってそこまで気にするか?
728名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 19:17:37 ID:SRA/mULY
実際にいたら目立つよねって話しただけだと思うぞ
別に文句言ってるわけじゃないとおもわれる
729名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 19:36:58 ID:o+b27a/S
別に評論してるわけでもなく普通の感想だと思う
ちょっと目くじら立てすぎだっぺ
730名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 20:39:50 ID:ZrsVNzxN
137: ◆ Uw02HM2doE 2010/09/08(水)17:08:12 ID:akRFxQac0
夕暮れ時にこんにちわ。
本日も規制なのでこちらに投稿させていただきます。
今回は10話です。よろしくお願いします。
731名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 20:41:47 ID:ZrsVNzxN
138: リバース ◆ Uw02HM2doE 2010/09/08(水) 17:10:54 ID:akRFxQac0

10年前、ある密約が二つの大企業のトップ同士で結ばれた。
元々美空開発と藤川コーポレーションは様々な事業を提携することが多かったが、ある時お互いの"持ち物"に目を付けたのだ。
美空開発の社長である美空昴は藤川家のメイドにして当時すでに軍隊並の戦闘力を持つ桃花を欲した。
そして桃花のDNA情報を基にアンドロイドの桜花を作った。
逆に藤川栄作が欲しかったもの。それは保険だった。
早くに妻を亡くしその妻に似ている娘の里奈を溺愛していた栄作が一番恐れていたもの。それは里奈を亡くしてしまうこと。
だから彼は"保険"として美空開発の力を借り、里奈のクローンを生み出すことにした。
結果的にそれは成功しもう一人の藤川里奈がこの世に誕生した。それが今から10年前の出来事。
お互いの密約は関係者以外には知らされず、特にもう一人の里奈に関しては藤川栄作と美空昴、クローンを担当した科学者、
そして桃花以外は里奈本人すら知ることがなく10年の時が流れたのだった。


「半年前の爆発事故で里奈様は瀕死の重傷を負い……亡くなりました」
あの少女、里奈を寝かしつけた後、俺は桃花に誘われ散歩に出ていた。
空には満天の星空が広がる。
「里奈様が逝ってしまった後、私もすぐに後を追おうとしました」
桃花は俺の少し前を歩いているので表情は分からない。
だけれどもその声は少しばかり震えているようだった。
「でも思い出したんです。"もう一人の里奈様"の存在を」
「もう一人の……里奈」
「旦那様は里奈様を溺愛しておられました。そして里奈様はいつも苦しまれていた」
「苦しむ……?」
愛されて苦しむことなんてあるのだろうか。桃花は俺の言葉を無視して話し続ける。
「だから今度は外にすら出さないかもしれない。そう思うと自然と旦那様の所へ向かっていました」
「……どうした?」
ふと立ち止まる桃花。つられて俺も立ち止まる。桃花は星空を眺めていた。
「……里奈様が亡くなった夜も確かこんな星空でした」
桃花の横に並んで星空を見上げる。本当に綺麗な星空だった。
ちらりと桃花の顔を見て後悔した。コイツは桜花の敵なんだ。
……そんな泣き出しそうな顔、見るんじゃなかった。
「今思えば……同じだったのかもしれません」
「……同じ?」
「里奈様が亡くなった後も執着して、私はもう一人の里奈様を誰にも触れさせませんでした」
もしかしたら桃花は分かっていたのかもしれない。自分のしたことが間違っているということを。
それでも彼女には里奈が全てだったから止めることは出来なかったんだ。
732名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 20:43:05 ID:ZrsVNzxN
139: リバース ◆ Uw02HM2doE 2010/09/08(水) 17:12:32 ID:akRFxQac0
「結局私も……旦那様と同じだったんです」
「……違うだろ」
「要…様?」
我慢出来なかった。
確かに桃花は今まで色々な人達を傷付けた。それは絶対に許せない。
でももし彼女と同じ状況になったとしたら自分ならどうしただろうか。
俺は桃花の行動を否定なんか出来ない。
「さっき見ていたけど桃花といる時の里奈は本当に幸せそうだった」
「…………」
「だから…俺は…桃花は英の親父さんとは違うと思うんだ」
桃花はずっと星空を見上げている。俺もしばらく一緒に見上げていた。
「……要様なら里奈様を託すことが出来そうです」
「……えっ?」
気が付けば桃花は俺を見つめていた。
改めて見る彼女はとても神秘的だった。銀色の髪と深紅の瞳。まるで人ではない何かのようだ。
「私にはやはり逝ってしまった里奈様しかいないんです」
「桃花……」
桃花は悲しそうに微笑んでいる。
初めて見る彼女の微笑みが悲しそうなのがとても残念だった。
「私は里奈様のメイドです。だから……後はよろしくお願いします」
「お、おいっ!?」
そのまま何処かへ行こうとする桃花の腕を掴む。
右腕が折れていることに今更気が付くが、包帯が巻いてあるので桃花が手当てをしてくれたようだ。
「里奈様は案外そそっかしい方です。私がいないと……お困りでしょうから」
「…………」
桃花の目からは涙が零れていた。それでも彼女はその涙を拭うこともせずただ涙を流している。
「今の里奈様には手紙を残してあります。私より強い貴方なら……任せられます」
「……何処に行くつもりなんだよ」
果たして行く当てがあるのだろうか。
……それともそのまま主人の元へ逝ってしまうんだろうか。
「少し考えてみます。桜花に教えてもらいましたから」
「桜花に?」
「はい。生きる意志を桜花に。……彼女には謝らないと行けませんね」
「……ああ」
桜花はやっぱりすごい。氷のように冷たかった桃花の心でさえ溶かそうとしているのだから。
「…私がもし戻って来られたら、謝りに行きます」
「……本当に行くのか?里奈は…」
また桃花は俺に背を向けて立ち去ろうとする。
でも何故か今度は彼女を引き止めることが出来なかった。
733名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 20:44:23 ID:ZrsVNzxN
140: リバース ◆ Uw02HM2doE 2010/09/08(水) 17:14:40 ID:akRFxQac0
「要様に任せます。……最後まで迷惑をおかけして申し訳ありません」
「……分かった。里奈は俺が預かる。だから……絶対に帰って来い」
桃花が何処に行くのか。
何をしに行くのか。
そして本当に帰って来るのか。
いつ帰って来るのか。
今の俺には何一つ分からない。かといって桃花を助けられる程の力もない、無力な高校生だ。
だから俺は里奈と一緒に桃花の帰りを待つ。
それが桃花のためにしてやれる唯一のことだから。
「ありがとうございます。……それではお元気で」
桃花は振り返らず去って行く。俺はその背中に
「待ってるからな!だから絶対に帰って来いよ!」
精一杯のエールを送っていた。



桃花たちの隠れ家に帰ると寝たはずの里奈が部屋で待っていた。
目は赤く充血していて目元は泣き腫らしていたのか少し赤く腫れていた。手には手紙を握り締めている。
……おそらく桃花が里奈に残した手紙だろう。
何と声をかければ良いか困っていると里奈が抱き着いてきて大声で泣き出した。
俺は黙って彼女を抱きしめてやることしか出来なかった。



しばらくして泣き止んだ里奈を連れて自宅に戻ることにした。
どうやらここは桜ヶ崎から2、3駅離れた場所らしく電車に乗って桜ヶ崎駅を目指す。
途中潤に連絡しようとしたがポケットから出した携帯は見事に液晶が割れて使えなくなっていた。
「カナメの家って広いの?」
「まあな。両親は海外でいないし二人暮らしにしては広いと思う」
桜ヶ崎駅行きの電車の中で里奈とたわいのない会話をする。
外は真っ暗で終電が近いせいか、それともローカル線だからか人は疎らでこの車両には俺達以外には3、4人しかいなかった。
734名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 20:45:52 ID:ZrsVNzxN
141: リバース ◆ Uw02HM2doE 2010/09/08(水) 17:15:36 ID:akRFxQac0
「カナメって妹と暮らしてるんだっけ?」
「ああ、潤っていうんだ。ちょっとおっちょこちょいだけど良い奴でさ」
歩いている間、色々な話をした。
といっても話しているのは基本俺で里奈はそれを黙って聞いているか、間に質問をして俺がそれに答えるといった感じだ。
そんなやり取りを電車の中でも相変わらず続けていた。
「そうなんだ。潤……友達になってくれるかな?あたし、友達いないから…」
「おいおい、俺がいるじゃねぇかよ」
苦笑しながら里奈に尋ねる。
彼女はつい最近"生まれた"訳だから友達がいなくて当然だ。
そしてどうやら彼女は自分がクローンだとは知らないようだ。まあ当たり前といえば当たり前なのだが。
「カナメは……好きだけど友達じゃ……うーん…」
「……ぷっ」
一生懸命頭を悩ませて考える里奈を見ていると何故か吹き出してしまった。
記憶がないことや社会のことをほとんど知らない、俺以外にもそんな奴がいたことに親近感を覚えたからかもしれない。
「あー!今馬鹿にしたでしょ!?」
「してないしてない。ただ……まあその…くっくっくっ…」
「もうっ!カナメなんて知らない!」
頬を膨らませてぷいっとそっぽを向く里奈。何だかんだ言ってやっぱりまだ10歳の女の子なんだな。
……桃花が仕えていた里奈さんが20歳だったらしいから約半分、か。
里奈の頭を撫でながらふとそんなことを思い出す。
「ち、ちょっと!勝手に撫でないで……あうぅ…」
「……ん?どうした?顔真っ赤だけど」
「し、知らないっ!!」
里奈はまたそっぽを向いてしまったが頭は撫でられたままだった。
二人を乗せた電車はゆっくりと夜の桜ヶ崎市へと向かって行く。
735名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 20:49:04 ID:ZrsVNzxN
142: リバース ◆ Uw02HM2doE 2010/09/08(水) 17:17:08 ID:akRFxQac0

「さてと。とりあえず俺が話すから里奈は黙ってるんだぞ?」
「…………」
自分の家に入るのにこんなに緊張するとは。
そういえばここ二週間程は桜花との訓練に明け暮れていたせいであまり潤を話していなかった気がする。
それに……潤とキスしてしまったことが家に入るのを躊躇わせているようにも思えた。
「……大丈夫。俺が何とかするからさ」
「…………うん」
不安な顔をしながらも里奈が頷く。
そうだ、桃花に任されたんじゃないか。大丈夫、潤だって絶対分かってくれる。
深呼吸をしてインターホンを押す。ピンポーンと気楽な音が響いた。
『……はい』
抑揚が全くないが確かに潤の声だ。
久しぶりに声をちゃんと聞いたが今は早く返事をしないと。
「……ただいま。俺、要だけど」
名前を言った瞬間、いきなりインターホンが切れる音がしてドアが勢いよく開くと中から潤が出て来た。
「あ、潤…ただい」
「兄さんっ!!」
「ぐはっ!?」
そしてそのまま俺に抱き着きもとい突進してきた。堪えきれず後ろに倒れ込む。
それでも潤は俺を離そうとはしなかった。
「兄さんっ!!兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん
兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん
兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん
兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さんっ!!」
「……じゅ、潤?」
なぜだろう。
潤は俺の帰りを待ち侘びていてこんな状況になっている。
それは頭で理解出来ているはずなのにこの身体の震えは一体何なのだろうか。
そして潤の狂気じみている行動は一体……。
「兄さんっ!!探したんだよ!?昨日の夜、廃ビルに行った後連絡が着かなくなったって会長が言って!!それからずっと探したけど見つからなくて!!私、私また兄さんに見捨てられたって思って!!」
「お、落ち着けよ潤……」
急にまくし立てる潤を思わず押し退けようとするが潤は異常な程の腕力で決して離れようとはしない。
「兄さんは分かってない!!私には兄さんしかいないのに!!父さんの時だって兄さんがいなかったら私は!!母さんの時だって!!」
「い、一体何を言って……」
「し、静かにしないと近所迷惑……だよ」
いつの間にか里奈が俺達のすぐ後ろに立っていた。
途中で潤に睨まれながらも最後まで言い切る度胸はたいしたものだ。
736名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 20:50:28 ID:ZrsVNzxN
143: リバース ◆ Uw02HM2doE 2010/09/08(水) 17:18:22 ID:akRFxQac0
「……アンタ、誰?」
「え、えっと……あたしは……里」
「まあ別にアンタが誰だって構わないけど…邪魔だから何処か行ってくれない?」
「あ、あたし……」
思わず里奈が言い澱む程、潤の言葉は冷徹だった。
まるで里奈のことを心の底から憎んでいるような言い方だ。
「おい、潤!そんな言い方するな!」
「でもっ!」
「潤っ!……頼むよ。ちゃんと後で説明するから」
「兄さん……」
潤の力が弱まった隙に起き上がり里奈に駆け寄る。潤の言葉で泣きそうになるのを必死に堪えていた。
……早く休ませてあげたい。その一心で彼女の冷えた小さな手を掴み家に入る。
潤は何か言いたそうな目をしていたが黙って空いている部屋にベットを用意してくれた。
里奈は相当疲れていたようでベットに入った途端、すやすやと寝息を立てていた。
「……ふぅ、寝たみたいだな。良かった」
やっと一段落着いたのでソファーに腰掛ける。隣では潤が右腕の包帯を換えてくれていた。
「ありがとな。色々手伝ってくれて」
「家族だもん。当然じゃない。それよりあの女の子……」
潤が俺に寄り添いながら聞く。
……潤は悪くないんだ。誰だって家族が一日中家に帰らなかったら不安になる。
特に俺達は二人しかいないんだから……さっきのことは仕方ない。
ただ取り乱しただけだ。自分に言い聞かせる。
それでも胸の奥に引っ掛かった何かは消せなかった。
「……ああ。要組の皆を集めてくれないか?俺にあったこと、全部皆に話したいんだ」
「……分かった。ちょっと待ってて」
果たして何処まで皆に伝えるべきか。
特に英には何て説明すれば良いのか、全く思い浮かばなかった。
737名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 20:51:38 ID:ZrsVNzxN
144: リバース ◆ Uw02HM2doE 2010/09/08(水) 17:19:33 ID:akRFxQac0

リビングには要組のメンバーが集まっていた。
俺が話し始めて約1時間。誰ひとりとして口を挟まず、時折会長が煎れてくれた紅茶を飲みながら話を聞いてくれた。
色々悩んだが結局桃花や里奈さんのこと、そしてクローンの里奈のことを正直に話すことにした。
皆の反応は、特に英は信じられないといった様子だったが実際に寝ている里奈の顔を見た瞬間、信じるしかなくなったようだ。
「そんなことが私たちの両親の間で行われていたとはな……」
「……正直、まだ受け入れられないかな。姉さんが……死んだことも」
英と会長はショックを隠しきれないようだった。
お互いに両親がしたことを全く知らなかった上に英は身内を一人亡くし、いきなりその人のクローンがいたと言われた訳だから当然だ。
「……そういえば桜花は…」
「彼女なら廃ビルで保護した。幸いコアは損傷が軽くてな。一ヶ月程で完全修復するらしい」
「そっか。良かった…」
桜花は何とか助かったらしい。本当に良かった。
桜花と過ごしたあの日々は確かに彼女にも存在していることに安堵した。
「しかしアンドロイドにクローン…。正直突然過ぎてまだ実感がねぇな」
亮介の言葉に皆が頷いていた。確かにその通りだ。
もし俺が当事者でなかったならアンドロイドとクローンがいたと言われても、はいそうですかで納得出来る事態ではないだろうし。
そう思うと俺の話をすぐに信じてくれた要組の皆をとても心強く感じる。
「あの子、どうするの?」
「……とりあえずウチで預かろうと思う」
「に、兄さん!?」
遥の質問に答えた俺を、潤が"信じられない"と言った感じで俺を見ている。
「桃花に…託されたからさ。勿論、英が引き取りたいって言うなら……」
「……僕には、まだ無理かな。姉さんの死をちゃんと受け入れられるまでは」
英の表情は何処か辛そうでいつもの飄々としている彼からは掛け離れていた。
「英……」
「……ゴメンね、要。迷惑かけるけど……姉さん…をよろしく頼むよ」
「…ああ、任せとけ」
英と握手をする。よく見ると二人とも右腕を骨折していた。
しかも二人とも桃花にやられたことを思い出し苦笑する。
英も同じことを思っていたらしく何となく笑えてしまった。
「私も出来る限りのサポートをしよう。もし人手不足になった時は教えてくれ」
「俺もちょくちょく顔出すぜ。要っちが里奈ちゃんに変なことしないようにな!」
「りょ、亮介てめぇ…」
「ケーキ、貰ったら持って来る」
「おう、ありがとな遥」
場所が何処であろうと俺達が集まれば関係ない。
シリアスな雰囲気は何処へやら、気が付けばいつもの生徒会室での日常が繰り広げられている。
久しぶりの平穏につい気が緩んでいる自分がいた。
だから気が付けなかったのかもしれない。
その様子をさっきから無言で傍観している潤の存在に。
そして彼女の光のない澱んだ瞳にも。
「……認めないよ」
ぽつりと口にした言葉は誰にも届くことはなかった。
738名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 20:52:23 ID:ZrsVNzxN
145: ◆ Uw02HM2doE 2010/09/08(水)17:22:54 ID:akRFxQac0
今回はここまでです。
次回は潤の現状と反撃、妹のターンです。
ご迷惑おかけしますが転載の方、お願いします。
投下終了です。
739名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 20:57:16 ID:ZrsVNzxN
転載完了


GJ!リバース待ってました!

里奈好きだったから死んだのショックだわ……
でもロリ里奈がヤンデレることに期待!
740名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 21:27:31 ID:sT35M6vc
新作ラッシュで読みきれません><
頑張りすぎですほんと乙です。
741名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 22:05:06 ID:3TKN2SKx
GJ!リバース来た!


やっぱりクローンだったか!
なんか話がいっきに動く予感
潤さんタイム待ってます!
742名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 22:18:05 ID:s5o58UBS
最近投下多くて嬉しいです。

GJ
743◇HEywCc/i:2010/09/08(水) 23:16:04 ID:RCEah9PV
486:2010/09/04(土) 15:50:10 ID:HEywCc/i

>>737

 里奈さん復活と思いきや、今度は潤が……。
 彼女のターンを楽しみにしています。


 長編にも関わらず、前回、トリップつけてませんでしたね、自分……。
 その上、改行ミスや脱字も散見……orz


 今回より、◆HEywCc/i で行きます。
 迷い蛾の詩、第弐部投下しますので、そちらもよろしくお願いします。
 翌日は、昨日の雨が嘘のような晴天だった。
 天を覆っていた暗雲はどこかへ吹き飛び、白く爽やかな色をした雲が、ぽっかりと空に浮いている。

 陽神亮太が目を覚ましたのは、四限の終鈴が鳴り終わった時のことだった。
 いつもは居眠りなどしない亮太だが、今日に限っては睡魔の方が彼の気力の上を行った。
 久しぶりに訪れた温かな陽気に、つい気持ちが緩んでしまったのかもしれない。

「ったく、いつまで寝てんのよ。
 もう、とっくに授業は終わったわよ」

 突然、教科書で頭を叩かれ、亮太はハッとした様子で顔を上げた。

「なんだ、理緒か……。
 いや、ちょっと久しぶりに晴れたもんだからさ。
 ヤバいとは分かってたけど、つい睡魔に負けちゃったよ」

 両腕を大きく伸ばし、亮太は欠伸交じりに自分の頭を叩いてきた少女に向かって答える。

 天崎理緒≪あまさきりお≫。
 亮太とは、中学時代からの知り合いである。
 たまたま部活が一緒だった故に話をするようになった仲だが、気がつけば同じ高校を受験して、同じクラスになるという始末。

 しかし、そんな何かを期待させるような展開とは裏腹に、理緒との仲はあくまで女友達のままだ。
 もっとも、亮太自身にも理緒を異性として特別意識するつもりはないため、今の関係に不満はない。
 ただ、これが俗に言う『腐れ縁』というやつかと思っているだけである。

「で、ものは相談なんだけど……」

 先ほど、亮太の頭を叩いた教科書を手に、理緒がやけにとってつけたような口調で言った。
 妙に明るく、無理に笑顔を作って迫る理緒。
 こんな時、彼女の口から出る言葉はただ一つだ。

「今日もまた、宿題教えてくんないかな?
 五限の数学のやつ、まだ終わってなくてさ」

「相変わらず、計算は苦手なんだな。
 それで、どこまで終わってないの?」

「そ、それが……。
 しいて言えば、全部かも……」

 亮太にとっては、既にお馴染となっているお約束の展開。
 中学時代から、理緒は数学だけは駄目だった。
 おかげでいつも、彼女に宿題を教えるのは亮太の役目だ。

 毎回思う事だが、いったい何の間違いで、これほどまでに数学の出来ない人間が入試を突破できたのかと思う。
 きっと、国語と英語の点数が極めて高かったのか、奇跡が起きて補欠合格の切符を手にしたかのどちらかだろう。
 まあ、それ以前に、亮太の通う私立校は、数学の問題の難しさだけは群を抜いていると聞いた事がある。
 そのため、単に理緒も周りもさして出来はよくなく、数学では差がつかなかっただけかもしれないが。
「それじゃあ、昼ごはん食べたら、図書室で会おうか。
 今日の数学の宿題なら、二十分もあれば終わるからさ」

「ああ、やっぱり持つべきものは、気のいい友達よね。
 これで今日も、あのバーコードハゲに怒鳴られなくって済むってもんよ」

「先生に向かって、さすがにその呼び方はないと思うけど……。
 でも、友達が大切って意見には、俺も賛成かな。
 と、いうわけで……交換条件ってことでもないけど、さっきの四限のノート、理緒のやつを写させてくれないか?
 解説の部分で爆睡してたから、さすがに自力で後れを取り戻すのは、ちょっと辛くてさ」

「今更言うのもあれだけど、本当にマメねぇ……。
 ま、そのくらいだったらお安い御用よ。
 明日までに返してくれるんなら、今日は亮太にノートを貸してあげる」
 
 ごく普通の学校生活における、友人との他愛ない会話。
 いつもであれば、このまま購買部にパンを買いに行くことだろう。

 しかし、今日に限って、亮太は直ぐに昼食を買いに行く訳にはいかなかった。
 クラスメイトの男子生徒が、理緒との会話に割り込むような形で彼を呼んだのだ。

「おい、陽神。
 なんか、教室の入り口の方で、女の子がお前を呼んでるぜ?」

「女の子?
 それ、他のクラスの子かい?」

「さあな。
 なんでもいいから、早く行ってやった方がいいんじゃねえか?」

 それだけ言うと、男子生徒は亮太の前から去ってしまった。
 その生徒自身、亮太を呼んでいるという女子生徒との面識はなかったようだ。

「悪い、理緒。
 昼ごはん食べ終わったら、図書室に来てくれよ」

 購買部に向かうのを後回しにし、亮太は教室を後にした。
 こんな昼時に、自分をわざわざ呼びつけるのは誰だろう。
 もっとも、亮太自身、心当たりが全くないわけではなかったが。

 廊下に出て辺りを見回すと、彼を呼んだと思しき者の姿はすぐに見つかった。
 教室の前を行き交う生徒達の陰に隠れ、どこか落ち着きなく辺りを見回している。
 その胸には丁寧に折り畳まれた、紺色のジャージをしっかりと抱えていた。

「あれは、確か昨日の……」

 連れ立って廊下を歩く生徒達の間を器用にぬって、亮太はその少女の下へと歩み寄った。
 彼が側まで近付くと、ようやく相手も亮太の姿に気づいたようである。
「あっ、ひ、陽神君……」

「えっと……。
 確か、月野さんだったよね。
 昨日は、あれからちゃんと帰れた?」

「は、はい。
 お陰さまで、あれ以上は雨にも濡れずに済みました」

「そっか。
 だったら、よかったよ。
 あそこで風邪でもひかれたら、それこそ俺の格好がつかないからさ」

 照れ隠しのつもりなのか、亮太は右手を大げさに頭の後ろに回し、繭香に向かって笑いながら言った。
 彼にしてみれば、繭香に無用な気遣いをさせないための冗談だったのかもしれない。

 だが、そんな亮太の気持ちとは反対に、繭香は少しはにかんだ顔のまま亮太から視線をそらした。
 そのまま目の前にいる亮太に向かい、胸に抱えていたジャージを手前に突き出す。

「こ、これ……昨日、お借りした物です。
 あの後、きちんと洗って干しましたから……たぶん、変に湿気った臭いとか残ってないと思います」

 自分でも声が上ずっていることに気づき、繭香はますます顔が赤くなってゆくのを感じた。
 誰かに借りた物を返す。
 ただそれだけのことで、こんな風になったことは今までにもない。
 いつもなら、天使のような作り笑顔を振りまいて、何の躊躇いも恥じらいもなく返せるというのに。

 いったい、自分はどうしてしまったのだろう。
 こんな挙動不審な姿を知ったら、周りの者は幻滅するのではないだろうか。

 そう、心の中で考えてみるものの、どうしてか普段の調子が出ない。
 頭の中が真っ白になり、上手い言葉さえも見当たらない。

「なんだ。
 わざわざ届けに来てくれたのかい?
 それに、洗濯までさせちゃって……。
 なんか、こっちの方が申し訳ない気分だな」

 目の前に差し出されたジャージを受け取り、亮太が繭香に向かって言った。
 が、そんな彼の言葉も、今の繭香には聞こえていない。
 
「それじゃあ……私はこれで……」

 そう言うが早いか、繭香は一目散に廊下を駆け出した。
 正直なところ、これ以上はあの場にいられなかったというのが正しい。
 あのまま会話を続けていたら、自分の見せたくない一面、見せてはいけない一面をさらけ出してしまうようで怖かった。
「はぁ……はぁ……」

 亮太のいる、一年E組の教室とは反対にある階段までやって来て、ようやく繭香は足を止めた。
 普段であれば、人目を気にし、廊下を走ることなどまずしない。
 しかし、今はそんな事よりも、亮太の前から少しでも離れることの方が先だった。

 昼時の北階段は、南階段と違って人気がない。
 下駄箱にも体育館にも遠いこの場所は、化学室や生物室といった特別な教室へ向かう者以外、殆ど利用する者がいないからだ。
 ここならば、誰にも気づかれずに今の気持ちを抑える事ができる。

 自分の心の奥にある、妙に高揚感のある感情。
 それがいったい何なのか、繭香も当に気づいてはいた。

 間違いない。
 自分は、あの陽神亮太という人間を意識している。
 いや、意識というだけでは、あまりにも稚拙な表現だ。
 既に単なる意識を通り越し、好意を抱いているといった方がいいだろう。

 無償の愛などありえない。
 そんな考えしか持たなかった自分が、まさか誰かに好意を抱くとは。
 それも、昨日出会ったばかりの、顔も名前も知らなかった男子生徒にだ。

 いったい、自分はなぜ、こんなにも彼の事が気になってしまうのだろう。
 その理由もまた、繭香の中では大方の見当はついていた。

 あの日、バス停の前で困っていた自分に、何の躊躇いもなく声をかけてきた亮太。
 彼は、繭香がどんな人間であるかなど関係なく、一人の女の子として扱ってくれた。

 今までは、周りの期待に応えることでしか、好意的な感情を向けてもらえないと思っていた自分。
 そんな自分に、亮太はあくまで一人の人間として、極めて紳士的に対応してくれた。

 お金持ちの家のお嬢様。
 清楚でお淑やかで、品行方正で頭脳明晰。
 そんな作られたイメージとは関係なく、亮太は自分の意思で繭香に手を差し伸べてくれた。

 こんなことは、生まれて初めてのことだった。
 繭香にとって、他人との関係は相手の期待に応える事が全て。
 故に、一人の人間として彼女に声をかけてくれた者など存在しない。
 亮太は、そんな繭香にとって、初めて自分と対等に話をしてくれた相手だったのだ。

「陽神君……。私……」



――――あなたの事が、好きになりそうです。
 その言葉をなんとか飲み込んで、繭香は代わりに大きな溜息をつく。
 こんなこと、他人に聞かれでもしたら大事だ。
 それに、自分は好きになりそうなのではない。
 もう、とっくに好きになってしまっているはずなのだから。

 昼休み、昼食を食べることさえも忘れ、繭香はしばし北階段で呆けた顔を浮かべていた。
 
 できることなら、もっと彼と話をしたい。
 彼の事を、もっと知りたい。
 そして、いずれは自分の本当の姿を、彼にも分かってもらいたい。

 そこまで考えた時、急に階段を上る生徒達の声がして、繭香は現実に引き戻された。

「何やってるんだろう、私……」

 他愛もない会話をしながら階段を上ってくる生徒達とすれ違いつつ、繭香は大きく息をして感情を落ちつける。
 深呼吸を終えた時、そこにいたのは先ほどの繭香ではない。
 いつも周りに見せている、清楚でお淑やかな少女の姿だった。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 一学期末の定期テストまでは、まだ少しだけ余裕があった。
 とはいえ、昼時の図書室は多くの生徒達で賑わっている。

 彼らの多くは、自分の勉強をするために図書室を利用する。
 まあ、中には三度の飯より読書が好きで、それ故に足しげく図書室へと通っているような変わり者も存在したが。

 互いに向かい合うようにして座りながら、亮太は理緒に、彼女が解けなかったという数学の宿題を教えていた。
 亮太自身、そこまで勉強ができるという意識はなかったが、理緒からすると間違いなく秀才の部類に入る人間らしい。

「とりあえず、問3までは合ってると思うよ。
 問4だけど……これも、さっき教えた公式で解けるはずだから」

「そうなの?
 じゃあ、まずは自分で解いてみるね」

 設問数にして、たったの五問しかない簡単な宿題。
 出題されたのが昨日なだけに、分量としては妥当なところだ。
 亮太に限らず数学が得意な者からすれば、全てを解くのにものの二十分とかからない。
 理緒に簡単なヒントだけ与え、亮太は昨日出会った繭香のことを考えていた。

 四限が終わった時間を狙ったようにして、綺麗に洗濯されたジャージを持って現れた繭香。
 昨日、初めて声をかけた時も感じたが、彼女の仕草はどこかぎこちない。
 清楚で上品な印象の中に、時折、同い年の少女と変わらぬ姿を垣間見せる。
 学年も同じ自分に対し、常に敬語で話をするのも不思議だった。

 引っ込み思案で少々照れ屋。
 恥じらいを知らず、人前で堂々と化粧を直すような昨今の女子高生から比べると、繭香は十分に変わった少女だった。
 もっとも、かくいう亮太自身も変わり者と評されることもあり、あまり人の事は言えないと思うのだが。

「ねえ……ってば……。
 ちょっ……聞い……の……!?」

 目の前で机を叩く音がして、亮太は思わず我に返る。
 見ると、既に問題を一通り解き終えた理緒が、彼の顔に少々苛立った視線を送っていた。

「ああ、悪い。
 ちょっと、考え事をしていたんだ」

「考え事?
 まあ、別に構わないけどね。
 それよりも、この問題……答えはこれでいいの?」

「えっと、どれどれ……」

 理緒の指さすその先には、彼女が解いたと思しき計算の跡がある。
 かなり苦労して解いたであろう、複雑な文字と数字の羅列を、亮太は素早く読み取ってゆく。
 亮太にとっては造作もない事なのだろうが、数学嫌いの理緒は、ただただ感心する他にない。

「残念だけど、この答えは間違ってるね。
 式の先頭部分だけ見て、早とちりしている感じかな」

「えっ、そうなの!?
 でも、教えてもらった公式通りに解いたはずなんだけど……」

「一つの問題に対して、使う公式が一つだけとは限らないよ……。
 まあ、簡単に説明すると、この計算は……」

 相変わらず、理緒は数学に関しての理解が皆無のようだ。
 下手に専門用語を詳しく説明したところで、返って彼女の疑問を増やすだけである。
 
 亮太は要点だけ手短にかいつまんで話すと、一応、理緒に分かったか否かの確認をとった。
 もっとも、理緒は首を縦に振っていたが、本当に理解したのかは怪しいところだ。

 もうじき、昼休みも終わりを告げる。
 それまでに、残る最後の一問も片付けねばならない。

 亮太は理緒にそれ以上は説明をせず、さっさと最後の問題を教える事にした。
 六月は、一年の内でも最も日の長い月である。
 夏至を迎えた太陽は、冬場であれば当に暗闇に包まれている時間であるにも関わらず、何食わぬ顔をして西の空に光を残している。
 もっとも、同時に雨雲に覆われ易い季節でもあるために、あまり日の長さを実感するということもないのだが。

 その日、繭香は帰りのバスに揺られながら、今日の廊下でのことを考えていた。

 あの時、自分でも自分のことを上手くコントロールできず、どうにもぎこちない態度を取ってしまった。
 ジャージはきちんと返せたが、それ以前に、亮太から変な目で見られなかっただろうか。
 あそこで逃げ出してしまうなど、どう考えても不自然な行動だ。
 あんな自分の姿を見せて、幻滅されたりしないだろうか。

 住宅街を右へ、左へと抜けながら走るバスの動きに合わせるようにして、繭香の頭の中にも不安が渦巻いてゆく。
 ふと、窓に映った自分の顔を見ると、なんとも言えぬ沈んだ表情をしていた。

 いけない。
 こんなことでは、自分が見せてはならない一面を、他人に晒しているも同然だ。
 公衆の面前、どこで誰が見ているか分からない。
 日常の平穏を壊す鍵など、些細なところに転がっている。
 例え通学中のバスの中でも、油断は禁物だ。

 気がつくと、パラパラという音と共に、雨粒が窓ガラスを打っていた。
 昼までは気持ち良いぐらいに晴れていたのに、夕方にはもう雨が降る。
 本当に、夏の天気というものは節操がない。

 繭香は手にした傘の柄を、胸元に抱きかかえるようにして握った。
 無骨で飾り気のない、決して高級ではない黒い傘。
 昨日、亮太がなけなしの小遣いをはたいて買ってくれた、どこにでもあるような大きめの傘。

 本当ならば、この傘もジャージと一緒に返しておきたかった。
 しかし、まさか廊下で傘を返すわけにもいかず、下駄箱で亮太を待ち伏せするような勇気もなかった。

 まあ、傘の事は、今はいい。
 これは別の機会に返すとして、もうしばらくは貸してもらうことにしよう。
 そうやって、少しずつ彼に近づいて、その距離を縮めてゆけばよいのだ。

 バスの壁や天井についている、停車を示すブザーが一斉に鳴った。
 紫のランプが点灯し、次の停車駅がアナウンスされる。

 次の停留所は森桜町。
 繭香はバスの定期券を取り出すと、それを片手に車が止まるのを待った。
 バス停から住宅街へと伸びる坂道を上がった場所に、その家はあった。
 門を抜け、美しいガーデニングに彩られた庭を横目に、繭香は玄関の戸を開ける。

 月野家は、確かにこの辺りでは一際裕福な家庭の一つだ。
 昔ながらの下町風情が残る家が多い中、庭も車庫も付いた家というのは珍しい。
 が、所詮はそれだけである。

 いくら金持ちだからといって、誰もが御屋敷や御城のような豪邸に住んでいるわけではない。
 そんなものは、漫画かアニメの中の世界だけでの話だ。

 一部の人間が作り上げた、誇張の激しい解釈。
 それは、繭香の父母に対しても同じことだった。

 ロールスロイスで登校し、家には住み込みのメイドが何人もいる。
 毎日、食卓には高級な料理が並べられ、父親が高価なワインを片手に豪快に笑っている。
 そんな光景は、間違っても月野家の中で繰り広げられることはない。

 いくら金持ちとはいえ、それでも働かねば生活して行くことはできない。
 常にソファーでふんぞり返っている豪快な成金のイメージとは反対に、繭香の父は、よく仕事で家を空けていた。
 付き合いとしての接待も含め、金持ちとは言っても暇を持て余しているわけではない。

 母も、それは同様で、よく家を留守にすることが多かった。
 専業主婦に務めるセレブな奥様もいるのだろうが、繭香の母は間違っても家に籠って趣味に耽るような人間ではない。
 一流の会計士として日々慌ただしく働く、仕事のできる女性なのだ。

 脱いだ靴を揃えて玄関の隅に置き、繭香はそのままリビングへと向かった。

 今日も、父と母は仕事で帰りが遅くなる。
 日中は家政婦の人が家の掃除や庭の手入れなどをしてくれているが、それも夕方までの話だ。
 繭香の帰る頃になると、既に仕事を切り上げて帰っているのが常である。
 その日、繭香が食べるための、夕食をテーブルに置いたまま。

「結局、今日も一人か……」

 テーブルに残されたメモを見て、繭香はそう呟いた。

 夕食は、既に家政婦の人が作ってくれたものが用意されている。
 テーブルの上にラップをかけられて置かれた皿には、一人分にしては少し多い量の料理が盛られている。

「いただきます……」

 米と汁物だけは自分でよそい、それらをテーブルに並べた繭香が言った。
 無論、それに答える者はいない。
 今は、この広い家に自分一人だけだ。

 もう、何度、こうやって一人の夕食を過ごしただろう。
 確かに味気なく、そして寂しいものだったが、それでも繭香は夕食の時間が嫌いではなかった。

 家の中に誰もいない、夕方から夜にかけての時間。
 そんな時は誰の目も気にせず、素の自分でいられるような気がしたから。

 誰から見ても間違いなく高価な、しかし、自分にとっては味のしない料理を食べ終えて、繭香はそっと箸を置いた。

 やはり、一人で食べるには多過ぎる。
 用意された料理の三割ほどが、いつも余ってしまう。
 残すのは勿体ないと思いつつも、繭香はそれ以上箸を手にするのを止めた。
 なにも、無理して食べる必要はない。
 露骨に残せば両親から嫌な顔をされたが、いつも通り、残りはこっそり捨ててしまえばいいのだ。

 夕食の残りを隠すようにゴミ箱へ捨て、繭香はそのまま自分の部屋へと向かった。
 学生鞄をベッドの傍らに置くと、中から今日の学校で出された宿題を取り出して机に向かう。

 決められた勉強を終え、汗を流すために風呂に入り、その後はテレビを見て過ごす。
 家に他の人間が誰もいないことを除けば、世間一般の女子高生が送っているであろう、ごく平凡な日常。
 唯一の違いは、今見ているテレビの内容を、共に語らう仲間がいないことくらいだろう。

 周りの者は、自分に対して清らかで穢れの無い印象を抱いている。
 そのことが、過剰とも言える無言の要求として、繭香のことを縛りつける。

 学業は、常に完璧に修めること。
 俗悪なテレビなど見ず、余暇は読書をして過ごす事。
 確かに悪くはない生活かもしれないが、それだけでは息が詰まってしまう。
 高校生にもなって、両親に隠れてテレビを見ていることが、唯一の息抜きとは情けない。

 番組が終わりCMに切り替わった辺りで、繭香の携帯電話が唐突に鳴った。
 着信音から、電話ではなくメールだと判断する。


―――― 今日は、仕事で遅くなります。
―――― 帰りは11時くらいになりそうです。


 メールの相手は母だった。

 今日は、父も接待で帰りが遅くなる。
 夜更かしをしていても何の得もないため、繭香は早々にテレビを消して寝る事にした。

 家の鍵を閉めたことを確認し、再び二階にある自室へと向かう。
 部屋の電気を消すと辺り一面が闇に包まれたが、すぐに淡い光が窓から射し込んだ。
 カーテンの隙間から、月の明かりが部屋の中を照らしているのだ。

 ベッドの上で身体を丸めながら、繭香はその日にあった色々な出来事を思い出す。
 暗闇の中で独り回想に浸るのは、幼い頃からの癖だった。

 朝、自宅を出て学校へ向かう自分。
 その日の授業は無難に終え、昼休み、真っ先に亮太のいる教室まで向かった。
 腕には彼から借りたジャージをしっかりと抱え、妙に落ち着きのない様子で辺りを見回している。
 お目当ての相手は見つからず、結局、その辺にいた男子を捕まえて亮太を呼び出した。

 程なくして、教室から亮太が姿を現す。
 彼の顔が目に入った途端、心なしか胸の鼓動が激しくなっていたのを思い出した。

(陽神君……)

 そこまで考えた時、繭香の回想はふっつりと途切れた。
 頭の中に浮かぶのは、出会ったばかりの亮太の顔。
 彼のことを考えているだけで、妙な高揚感に陥ってくる。

 暗闇の中、顔を紅潮させたまま、繭香は右手をそっと自分の胸の上に添えた。
 ネグリジェの上から自分の胸を掴み、撫でるように手を動かす。
「んっ……ふぅ……」

 まだ、寝巻の上から触れているだけだというのに、早くも気持ちが高ぶってくるのを感じた。
 我慢できず、繭香は右手を寝巻の首元から服の中へと挿し入れる。
 そのまま左の胸に触れ、それを激しく動かした。

「あ……んっ……やぁっ……」

 寝巻の下で、繭香の右手だけが、まるで別の生き物のように動き回る。
 撫でるような動きから、それは徐々に、彼女の胸の膨らみに食い込むようなものに変わって行く。

 衝動に任せるままに、繭香は左手を寝巻の裾野の中へ伸ばしていった。

「んっ……んんっ……ぁぁ……はぁっ……」

 下着の上から触れただけでも、既に身体の奥から熱いものが溢れているのが分かった。
 躊躇う事なく、繭香は下着の中へと左手を滑り込ませる。
 そのまま自分の敏感な部分を弄り、徐々に激しく動かしてゆく。

 時に優しく、時に大胆に、繭香は自分の最も熱くなっている部分を指で刺激した。
 その度に、身体の中を何かが這いずるような快感が襲う。
 呼吸が荒くなり、胸をつかむ右手からも、自身の激しい鼓動をはっきりと感じられた。
 左手の先は温かい液体で濡れ、止め処ない衝動が彼女の理性を徐々に崩壊させてゆく。

 自分はいつ頃から、このような行為に耽ることを覚えたのだろうか。
 詳しいことは思い出せなかったが、少なくとも、中学に上がって間もない頃から、既に手を出していたと思う。

 いつも、周りの人間に見せている、清純で清楚な自分。
 そんな姿からは想像できないほどに、今の自分は淫らで背徳的だ。

 陽神亮太は、自分の名前を綺麗と言ってくれた。
 確かに、繭香の繭という文字は、穢れなき白さを連想させる言葉だ。
 普段、自分の周りにいる人間が思っている、清らかな姿に相応しい。

 だが、そんな美しい繭の中にあるのは、卑小で薄汚い茶色の蛹である。
 自分では木の枝に縋りつくことさえもできず、ただ繭の中に籠り、羽化の時を待つだけの存在。
 そして、繭を破り、その蛹から姿を現す者もまた、決して人に好かれるような存在ではない。

 純白の繭を破り現れるのは、醜く不格好な一匹の蛾。
 太陽の光の下、美しく舞う蝶ではなく、その醜さ故に、宵闇の中を舞うことしか許されない者。
 繭とは、そんな蛹や蛾の姿を包み隠し、外の世界から守るための壁だ。
 初対面であるにも関わらず、亮太は繭香に真っ直ぐに向き合ってくれた。
 彼ならば、自分の本当の姿を受け入れてくれそうな気もしてしまう。

 だが、果たしてそんな亮太でも、今の自分を受け入れてくれるだろうか。
 月光の下、独り背徳的な行為に耽る、こんな自分の姿を。
 外目には美しい繭の姿しか見せず、その中で蠢いている醜い蛹を。

「ひ、陽神君……」

 亮太がいかに心の広い人間でも、やはり嫌われてしまうかもしれない。
 こんなことは、本当は直ぐにでも止めねばならないのかもしれない。
 しかし、気持ちとは反対に、自分の身体を慰める手は止まらない。

 昨日会ったばかりの相手を想い浮かべながら、闇の中で自慰に及ぶ。
 相手に失礼な事だと分かっていても、その事実が余計に、繭香の身体と精神を刺激してゆく。

「き……嫌いに……なら……ない……で……」

 そう、口から漏らした瞬間、繭香の全身を痺れるような快感が走った。
 一瞬だけ、体を仰け反るようにした後、そのままベッドに沈みこんで動かなくなる。

 未だ火照った身体を冷ましながら、繭香は左手を寝巻の中からそっと引き抜く。
 虚ろな表情はそのままに、人差し指を口に咥えた。

 暗闇は、繭の中の自分をさらけ出せる数少ない場所だ。
 そんな事を考えながら、繭香は月明かりに照らされたまま、未だ身体の奥に残る快楽に身を任せていた。
755 ◆AJg91T1vXs :2010/09/08(水) 23:37:57 ID:RCEah9PV
 第弐部、これにて終了です。
 思ったより文字数が多くなって、文章を小分けにするタイミングに困った……。
 しかも、トリップの仕組みが良く分からず、最初の方で失敗してるし……。
 仕方なく、文字列変更しました。


 ちなみに、自分は露骨に卑猥な言葉を使うのが苦手なため、最後の方はかなり回りくどい表現を使っていると思います。
 少しでも臨場感が出れば……と思ったのですが、読みにくかったら申し訳ない限り……。

 基本、四日毎くらいの投下になると思いますので、気長に病み化をお待ち下さい。
756名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 23:54:00 ID:dwFBt2c1
GJ!

とても読みやすく、魅力的な文章でした。
757名無しさん@ピンキー:2010/09/09(木) 00:01:43 ID:HS9lt+Ah
gj!次に期待!


>>738
gj!投下ペース早いのにこのクオリティはすごいわ

今週もリバースのおかげで頑張れそうだ
758名無しさん@ピンキー:2010/09/09(木) 00:02:12 ID:rsqgJQ71
GJです。
どこまで病むのか楽しみです。
759名無しさん@ピンキー:2010/09/09(木) 00:09:23 ID:zg1YUuih
繭香いいよぉハァハァ
760名無しさん@ピンキー:2010/09/09(木) 00:48:14 ID:8afkDq9k
リバース来てたのか!
GJ!ついに役者が揃った感じだな…。


そういえばリバースの作者、
まとめサイト作ったらしいんだけど
詳細知ってる奴いる?
761名無しさん@ピンキー:2010/09/09(木) 01:04:47 ID:2cCAEEha
リバースも迷い蛾の詩もGJ!
最近投下多くて最高です!
>>760
自分で調べろ。つーかそれ何情報だ?
762名無しさん@ピンキー:2010/09/09(木) 01:32:27 ID:SXc4aog7
いい話だったな
763名無しさん@ピンキー:2010/09/09(木) 02:32:48 ID:urtHRDAY
異色の御花・リバース・迷い蛾の詩みんなGJです!

どれも素晴らしいのですぐに読み終わっちゃいますが投稿の間隔が短いのでかなりありがたいです。これからも投稿楽しみにしてます
764名無しさん@ピンキー:2010/09/09(木) 17:55:41 ID:QtbAxfUu
>>760
作者乙
765名無しさん@ピンキー:2010/09/09(木) 18:54:37 ID:fomY4jNw
>>761
保管庫の掲示板に書いてあるよ。検索してもひっかからないけど。
766名無しさん@ピンキー:2010/09/09(木) 19:05:09 ID:HY4blH7O
>>764先走りハズカチー
うんうん「作者乙」って言葉使って見たかったんだよね^^;
767名無しさん@ピンキー:2010/09/09(木) 20:15:29 ID:Cl4wq4fS
作者を想うが故にスルースキルが一向に身に付かないとは皮肉ですな
768名無しさん@ピンキー:2010/09/09(木) 21:52:21 ID:HY4blH7O
>>767別に作者の事なんか思ってねぇし^ω^#ピキピキ
馬鹿煽って遊ぼーと思っただけですし
間寛平がアースマラソン完走するまでROMっとけ♪
769名無しさん@ピンキー:2010/09/09(木) 21:55:33 ID:lHXPB2Wl
770名無しさん@ピンキー:2010/09/09(木) 21:58:33 ID:AsfEZZT0
147 名前: ◆ AW8HpW0FVA 2010/09/09(木) 17:20:29 ID:4w8x8SS60

まだ規制が続いています。なのでここに投稿します。
久し振りの変歴伝です。
771名無しさん@ピンキー:2010/09/09(木) 21:59:00 ID:AsfEZZT0
148 名前: 変歴伝 26 ◆ AW8HpW0FVA 2010/09/09(木) 17:22:16 ID:4w8x8SS60

「あっ……、あぁ……」
「さっ……三郎……、どう……して……?」
二人の声は震えていた。先ほどまでの殺気が嘘の様に薄らいでいく。
「…………はぁ…………」
諦観の篭った溜め息を吐いた業盛は、目を二人に向けた。その瞳には哀感が宿っていた。
「……今まで、お前達の仲の悪い理由が分からなかったが、今日やっと全て理解できたよ」
業盛が一言を発するたびに、二人は怯えた様な声を出した。
業盛の頭に、源蔵の事を攫って殺した葵、その平蔵の腸を食べていた名も知らない女、
自分の事を監禁しようとした菊乃が思い浮かんだ。
それ等の女は、傷となって業盛の心の奥深くに刻まれている。
もっと自分がしっかりしていれば、と業盛は何度となく思った。
そして、思うたびに自分はそんな女に絶対に引っ掛からないと決心していたのだ。
だというのに、現状はまったく違った。
まさか自分の周りにそういう女が二人もいたのだ。
いや、実際は、作ってしまった、というのが正しいかもしれない。
結局、教訓を活かす事が出来なかった。それがとても悔しかった。
再び溜め息を吐いて、二人に目をやった。二人共、既に目からは涙が溢れていた。
これも全て自分のせい。そう思うと、この二人が哀れで仕方なかった。
「もう……、止めよう……」
業盛の声音が一段と低くなった。
こうなった原因は自分にある。ならば、それの対処方法は一つしかない。
業盛は続けて口を開こうとしたが、
「さっ……三郎、わっ……私達、もう喧嘩なんてしないから……」
「ちゃんと仲直りします……から……、だから……、兄様……」
と、二人に遮られてしまった。どうやら、なにかを察したらしい。
しかし、業盛は口を止めなかった。
「いいんだ、二人は悪くない。……元はといえば、全て俺が悪いんだ。
俺がもっとしっかりしていれば、こんな事にはならなかったんだ……」
そこまで言って、業盛は一旦間を置き、二人を見据えた。
「もう……、一緒に暮らすのは、……止めよう……」
業盛の小さく、それでいて力強い声が、二人の間を通り抜け、川のせせらぎに消えた。
「嫌だ……」
業盛が背を向けたと同時に、か細い声が聞こえた。
「嫌だ……嫌だ嫌だ嫌だいやだいやだいやだイヤダイヤダイヤダァアアア!!!」
続けてどちらが発したのか分からない、悲痛な叫びが轟いた。業盛は振り返らなかった。
後ろで二人が、泣きながらなにか言っているが、それも業盛は聞き流した。
振り返ってしまったら、慰めてしまう。そうなっては元も子もない。
業盛は心を鬼にしていた。なんだかんだで妥協する業盛は、そこにはいなかった。
六波羅に帰った後、業盛は床に就いた。左右には誰もいない。
一緒にいると意志が挫けそうだったので、部屋に入ってくるな、と二人に命令したのだ。
部屋に入れない水城と彩奈は、ひたすら部屋の前で謝り続けた。
真夜中という事もあり、二人共、泣き叫びはしなかったが、その声は涙で擦れていた。
業盛から反応がないと分かった後も、二人は別々の部屋に戻り、そこでまたすすり泣いた。
厚いとはいえない壁を通して聞こえるすすり泣きの声は、
ただでさえ暗い業盛の心をさらに暗くした。
772名無しさん@ピンキー:2010/09/09(木) 21:59:32 ID:AsfEZZT0
149 名前: 変歴伝 26 ◆ AW8HpW0FVA 2010/09/09(木) 17:25:05 ID:4w8x8SS60

ここ数ヶ月、業盛は水城と彩奈によって、とても濃い内容の生活を送っていた。
しかし、それを生み出してくれていた水城と彩奈は、既に部屋にはいない。
朝方に、水城と彩奈を別な所で暮らさせる事を業盛が決めたからである。
責任を投げ出している様で、業盛は気に食わなかったが、全ての元凶は自分であり、
これ以上二人と一緒にいると、流血沙汰は避けられないと判断したが故の決断だった。
それに、この配慮にも意味がある。
伊賀は水城の本宅があり、丹波は業盛の故郷なので、色々と融通が利く。
そして二人の先導兼監視役は、弥太郎夫妻に頼む事にした。
弥太郎ならば家長と話を付けられるだろうと思ったからである。
弥太郎は、朝食中であった事と話の内容のために分かりやすいほど嫌な顔をした。
業盛はそれでも引き下がらずに弥太郎に頼み込んだ。
朝食中であった事もあるが、弥太郎は事情を聞くと目に見えて嫌な顔をして断った。
当然といえば当然であろう。他人の恋路、それも破局後の後始末の手伝いなど、
誰が好んでやってくれるだろうか。だが、そんな事は業盛も承知の上だった。
このまま放っておくと、事態はさらに深刻になっていくのは間違いのない事であり、
弥太郎にしても、姉である水城が血を流す様な事になったら取り返しが付かないし、
それは彩奈が傷付く事も同様である。業盛はその事を強く説いた。
しばらく俯いていた弥太郎は、考えがまとまったのか、頭を上げ、
「分かった。お前の頼みを聞くよ」
と、言ってくれた。業盛は弥太郎に頭を下げた。
早速、業盛は、弥太郎に家長宛の書状を渡し、鈴鹿には父宛の書状を渡すと、
水城と彩奈を頼む、と二人に言って、その部屋から出て行った。
業盛に出来る事は、最早それぐらいしかなかった。後は二人が正道に向かう事を祈るしかない。
業盛は水城と彩奈の悲鳴にも似た声を振り切り、部屋に戻った。
部屋の温度は、どこか冷え冷えとしたものになっていた。
昼頃になると、水城達が出て行ったという話を聞いた同僚数人が、
半ば面白半分で業盛の失恋を慰める宴会を開こうと言って部屋に集ってきた。
この宴会で酒の入った同僚達は、臆面もなく業盛への悪態を本人の目の前でぶちまけた。
ご愁傷様、独身生活にお帰り、ざまあみやがれ、などとまったく顧みない言葉ばかりである。
酒は人を正直にさせる効果がある、と聞いた事がある。
とすると、彼等の言っている事は全て本音という事になる。
業盛はたまらなくいらいらした。そのにへら顔をぶん殴ってやりたくなったが、
それでも必死に我慢した。そんな業盛の事などいざ知らず、
同僚達は相変わらず業盛に悪態を吐く、もしくは頭を叩く等、茶々を入れていた。
業盛の血圧は上がる一方だった。
むさ苦しい宴会は酣となった。同僚達は一向に終わらせる意思を見せない。
それ所か、同僚達はさらに酒が回ったためか、話の内容が悪態から猥談を変化していた。
「水城のあの見下した目はいいな、ぞくぞくする」
「彩奈の時折見せる、影のある表情が保護欲を掻き立てるんだろ!」
「それより、水城の服の切れ目から覗く健康的な太股、最高だとは思わんか?」
「あぁ、あれには俺も心打たれたよ。何度触りたい、舐めたい、と思った事か」
「馬鹿だな、脚なんかより胸の方がいいに決まってんだろ。
その点、彩奈のあの服を押し上げる巨乳が最高じゃないか」
「馬鹿はお前だ。巨乳なんてすぐに飽きるだろ。
貧乳こそ最高、故に水城の鎖骨が最高なのだ」
「脚とか胸とかで騒いでいるお前等も、まだまだ餓鬼だな。
水城のあの綺麗な項が最高に決まっているだろ。あの項を舐め回したい……」
「じゃあ、彩奈の腋は俺が貰った!」
「ずるいぞ!じゃあ、水城のむちむちの尻は俺がいただいた!」
「水城の臍で、舐め回してぇ〜」
「俺は水城に脚で踏まれたいぞ」
「いや、寧ろ性格のきつそうな水城を屈伏させた方が、征服感があっていいぞ」
「俺はあんなきつそうな奴より、大人しそうな彩奈の胸を揉みしだいて、
乳首を摘んで、吸い尽くして、あと……とにかく滅茶苦茶に犯したいなぁ〜」
などなど、なんという破廉恥な集団なのだろう。
業盛の中で、なにかが切れた。
773名無しさん@ピンキー:2010/09/09(木) 21:59:52 ID:AsfEZZT0
「……お前等、……少し、……頭、冷やそうか……」
と、満面の笑みを張り付け、近くにいた一人に殴り掛かった。
一瞬の内に、部屋は喧騒の場となった。
騒ぎを聞きた重盛が止めに入った頃には、部屋の中は鮮血で染まっていた。
この後業盛は、言い訳も聞き入れられず、重盛に散々どやされ、
さらに武士の心得を四時も正座で聞かされた。気付いた時には、外は白んでいた。
150 名前: 変歴伝 26 ◆ AW8HpW0FVA 2010/09/09(木) 17:26:15 ID:4w8x8SS60

「眠い……」
業盛は欠伸を噛み殺しながら、廊下の雑巾掛けをしていた。
業盛の仕事は鯉の餌やりと、水城の先導でいない弥太郎の庭の掃除だけだったのだが、
前日の宴会で重傷を負った同僚達の分の仕事もさせられる羽目になったのだ。
当然、この処置をしたのは重盛である。
「水城達の件は、私がしっかりと注意しておくゆえ、手を抜かずにやるのだぞ」
と、言われたら、断り様がない。
業盛は雑巾掛け、厠の掃除、庭木の剪定、風呂の掃除、その他諸々を黙々と終えていった。
全てが終わった頃には、昼も間近になっていた。
業盛は、久し振りに自炊をし、少し遅めの朝食を終えた。
しばらく部屋でごろごろしていた業盛はやおら立ち上がった。
今の所、悪い事続きの業盛は、ふと鍛冶屋に依頼していた刀の事を思い出したのだ。
依頼して既に一月も経っているのだから、もう完成しているだろう。
完成した刀を見て心を慰めよう、と業盛はそう思い、早足で都に向かった。
思った通り、刀は完成していた。
業盛はそれを手に取り、しげしげと眺めた。
刀は長く、剣先から柄頭まで真っ黒で、
鍔もなければ鞘もなく、まるで墨染めの大木刀の様である。
刃は鈍く、切れ味は期待出来ないが、先端が尖っているので、打突には優れていそうだった。
とにかく、刀としては異質だったが、業盛は満足だった。
いい気分で刀を眺めていた業盛だったが、
ふと横を見てみると、職人が真っ青な顔で自分を見ている事に気付いた。
その場の雰囲気にはまったくそぐわない表情だったので、業盛は思わず事情を聞いてみた。
「旦那……、あんた、本当に人間かい?」
それで返ってきた答えがこれである。
随分と素っ頓狂な事を聞いてくるものだと思った業盛は、
「私に角が生えている様に見えるか?」
と、多少冗談交じりに答えた。しかし職人は、それを冗談と受け取らず、
「それ、大の男が四人掛かりでやっとここまで運んできた代物ですぜ。
それを片手で平然と持つ様な奴を、……人間とは言いませんやろ」
と、言って、一歩退いた。その目には、恐怖の色がありありと浮かんでいた。
その視線は、業盛の心を酷く傷付けた。
結局、刀の完成も業盛の心の癒しにはならなかった。
774名無しさん@ピンキー:2010/09/09(木) 22:00:13 ID:AsfEZZT0
151 名前: 変歴伝 26 ◆ AW8HpW0FVA 2010/09/09(木) 17:27:11 ID:4w8x8SS60

長すぎる刀は、腰に差すと地面にぶつかるので、背負う事にした。
やはり重さを感じない。まるで空でも背負っている気分である。
周りの人達は、業盛の背中から飛び出している黒くて長いそれを見て道を開けていく。
なんだか汚いものの様に避けられているみたいで、とても気分が悪くなった。
そこで、気晴らしに果物でも買って食べようと思い店に入ろうとした。
だが、ごっ、という音と共に、業盛の身体は後ろに引っ張られた。
梁に刀が直撃し、後ろのめりにずっこけてしまったのだ。
業盛が天井を見たのと、火花が見えたのは、殆ど同時だった。
一瞬の間の後、笑いが起こった。店の全員に思いっ切り笑われた。
笑いが津波の様に押し寄せ、業盛を呑み込んだ。
恥かしさのあまり、業盛はその波に乗って果物も買わずに出て行こうとした。
勢いを付けて出口に向かう。業盛は忘れていた。そこに梁があった事を。
がっ、という音と共に、業盛は後頭部を敷居に強打した。血の臭いが口中に広がった。
再び笑いが起こった。業盛は顔を紅くして、今度こそ全速力で逃げ出した。
「らしくない!らしくない!!らしくない!!!こんなの、全然、らしく、ない!!!!」
そう叫びながら走る業盛は、刀を抜くと、大きく振りかぶって、ブン投げた。
異様な唸りを発しながら回転する刀は、勢い弱まる事なく、烈風を巻き起こしながら飛び、
偶然、女に絡んでいたごろつき諸共、後ろにあった漆喰の壁に激突し、
やっとその勢いを止めた。ごろつきは壁と刀に挟まれ、泡を吐いて気絶していた。
「まずいなぁ……、これは。また重盛様に怒られるかなぁ……」
ごろつきの事などより、説教される事が確定した事が、業盛を憂鬱にさせた。
ここの所、業盛に対する監視が強くなっているため、
例え小さな騒動でもあっても委細重盛の耳に入ってしまう。
今日はどれくらい説教されるのだろう、と業盛は頭を痛めながら、
壁にめり込んだ刀を引き抜いた際、壁が音を立てて崩れ去った。
慌てて業盛は逃げ出した。一歩遅れて屋敷の主が外に飛び出してきた。
主が見たのは、漆喰の瓦礫に埋まっているごろつきだけだった。
775名無しさん@ピンキー:2010/09/09(木) 22:00:33 ID:AsfEZZT0
152 名前: 変歴伝 26 ◆ AW8HpW0FVA 2010/09/09(木) 17:28:13 ID:4w8x8SS60

六波羅に戻る道中、辻まで来た業盛は立ち止まった。
「今日は、厄日だな」
そう言って、業盛は辺りを見回した。所々で殺気と視線が感じられた。
別段、業盛は驚きもしなかった。あちらにとっては隠れたつもりだろうが、
業盛から見れば、それはお粗末としか言えないものだった。
その様な者が放つ殺気や視線など、たかが知れたものだった。
影が動き始め、あっという間に四方の道が塞がれた。
塞いだのは、ごろつき達だった。
さっきのごろつきの報復ではない。だとしたら、どこの組の者なのだろうか。
よく見てみると、ぼろぼろの僧衣を着た者がちらほらといる。
その僧衣には、見覚えがあった。
「恩を仇で返されたか……」
業盛がそう呟くと、包囲陣の一角が割れ、そこを二人のごろつきが歩いてきた。
それはデカブツとチビで、以前業盛が鞍馬寺に送った男だった。
二人共殺気を孕んだ視線を業盛に向けていた。
「俺は、お前達の改心を願い、鞍馬寺に預けたはずだが……、
こんなにお仲間を連れて、どうしてここに?」
業盛は、比較的冷静な声音でデカブツに語り掛けた。それが気に障ったのか、デカブツは、
「改心だぁ……。ふざけんな!あれのどこが改心だ!」
と声を荒げた。横のチビも怒気で身体を震わせていた。
「てめぇのせいで……、殆どの奴らが墜ちちまった……。全部、てめぇのせいでだ!」
デカブツが業盛に指を差し、面責した。背後のごろつき達も気勢を上げていた。
周りが高揚しているのに対して、業盛は、腹を抱えて笑いながら、
「それは悪かったな。……まぁ、そいつ等は新たな幸せを掴めたのだからよかったではないか」
と、まるで思った通りの出来事が起きて、愉快であるという体を見せ付けた。
「てめぇ……、知ってて、わざとあんな所に俺等を預けたのか!」
業盛の会心の笑みを見たデカブツの顔色は真っ青になっていた。
怒りを通り越して、血の気が引いた様である。
「最初に言った事を覚えていないのか?これは仕置きだ、と。
……優しい仕置きがこの世にあるはずがないだろ」
そう言う業盛の笑みは、すでに邪なものに変わっていた。
デカブツの青い顔が再び真っ赤になった。
「ふざけやがって……、ふざけやがってぇえええええ!!!」
号令と共に、ごろつき達が一斉に襲い掛かってきた。
目測で、その数は大体二百ぐらいであろう。ただのごろつきにしては、相当の集兵力である。
しかし、相変わらず業盛は邪な笑みを浮かべていた。
身を守るための戦いは、重盛との約束には違反していない。
それに、これにこじつけて、最初のごろつきの奴もうやむやに出来そうである。
つまりは、思う存分、後腐れなく、イライラを発散する事が出来るという訳である。
「身に掛かる火の粉は……、払わねばなるまい!」
嬉々として業盛は、ごろつきの大軍に身を投じた。
776名無しさん@ピンキー:2010/09/09(木) 22:00:54 ID:AsfEZZT0
153 名前: 変歴伝 26 ◆ AW8HpW0FVA 2010/09/09(木) 17:29:03 ID:4w8x8SS60

結果として、この戦いは業盛の完全勝利に終わった。
業盛は新品の刀を使わず、素手とごろつきの武器を奪って戦った。
ごろつきの武器を使ったとはいえ、平時に人を殺すと、後が面倒なので、
業盛が使ったのは、手加減が出来る棒のみであった。
だというのに、ごろつき達は業盛に傷一つ付ける事も出来なかった。
「お前等、もう終わりか?」
倒れているごろつき達に、業盛は余裕の声で以って呼び掛けた。
その声音には、不完全燃焼の物足りなさも含まれており、
表情は相変わらず邪な笑みのままだった。
業盛は、近くに倒れているごろつきの顔に、足を押し付けた。
「復讐のために、仲間のために、俺を襲いに来たのだろう……。
だったらもう少し意地を見せてみろよ」
そう言い終わると、別のごろつきの許に歩み寄り、髪を掴み上げ、
「ほら……、憎くて憎くてたまらない仇の俺にこんな事をされて、滾ってこないのか?
やり返してやろうと思わないのか?どうなんだ、言ってみろよ?」
と、挑発の言を吐いた。それでも誰も立ち上がらないのを見て、業盛は失望した様に、
「所詮、お前等の意地など、そんなものだというのか!?
これほど簡単に砕けてしまうほど、脆いものだというのか!?
だとしたら、お前等など、ただの生きるごみ屑だ!生きる価値もない!」
と、言った。蹴り飛ばしてやろうかと思ったが、そんな気も失せてしまった。
ごろつきなど、どれほど集っても屑の集まりでしかなく、仲間意識などといっても、
それはただ単に、自分が周りと同じでなければ、
怖くてたまらないという臆病な感情の裏返しに他ならない。
なぜこんな屑がこの世に存在するのか、業盛は天に問い掛けたくなった。
しかし、どうせ答えてくれる者などいない。興醒めた業盛は、さっさと六波羅に帰る事にした。
業盛が重盛に対する申し開きを考え始めた辺りで、後ろから呼び止められた。
振り向いてみると、何人かのごろつきが土下座していた。
その数、二十八人。皆、十代後半から二十代前半ぐらいの若者ばかりだった。
業盛は見下した目付きで、
「なんだ、屑共。俺の不意でも衝こうとしているのか?」
と、言って笑ってみせた。酷虐な事を言われたというのに、ごろつき達は怒らず、
「確かに俺達は、やる事がないから同じ様な境遇の奴と組んで、適当に辺りをぶらついて、
むかつく事があったら、そこら辺の奴に喧嘩を売ってスカッとしていたもんだ。
あんたの言う通り、俺達の生活なんて、屑も同然だ。
だがな、俺達だって、本当はなにか目的のある事がしたいんだ。
なんのためでもいい。それで誰かが喜んでくれるなら、俺達はなんでもいいんだ。
だから、あんたの強さを見込んで頼む!俺達を、……家来にしてくれ!」
と、ごろつきの一人が言うと、他のごろつき達が何度も頭を地面に打ち付け始めた。
傍から見れば、壮絶な光景であった。
777名無しさん@ピンキー:2010/09/09(木) 22:01:30 ID:AsfEZZT0
154 名前: 変歴伝 26 ◆ AW8HpW0FVA 2010/09/09(木) 17:29:50 ID:4w8x8SS60

業盛の身体がふるふると震えだした。それはまるで感動している様だった。
しかし、次に放たれたのは、辺りを震わすほどの哄笑だった。
顔と腹に手を当て、倒れるのではないかと思われるほど仰け反らせた。
「お前等、この俺を笑い殺すつもりか?だとしたら、その冗談は本当に面白いぞ」
そう言った業盛の目には涙が溜まっていた。
「うっ……嘘じゃねぇ!俺達は本当に……」
「本当に……、なんだ?やりたい事でも見付けたとでも言いたいのか?
はっ、下らん、実に下らん!お前等の様な屑、すぐに脱落しておしまいだ!
第一、氏素性も知れんお前等を、誇り高き武士の従者に迎えるなど、出来るはずもないだろ!」
業盛の言っている事は、もっともな事だった。
やりたい事が決まりました、はい、どうぞ、という様に、
簡単に物事が進むほど、武士の世界は甘くはない。
ましてや、ごろつき等の様な社会のはみ出し者にその様な大事が勤まるはずがない。
「確かに、あんたの言う通りだ。だが、もう俺達には耕す田んぼがねぇんだ。
これを断られたら、俺達は一生屑のままなんだ。これが最後の機会なんだ」
「はぁ?そんな事知るか。そもそもは、お前等の素地の粗悪さが原因だろ。
耕す田んぼがないだ?だったら海で魚でも取るか、山に行って竹の根でも齧ってろ!
そんな簡単な事も浮かばないのか、お前等の頭は!」
「その魚を釣るための道具の知識も、そこまで行くための旅費も、俺達にはないんだよ!
もう、俺達にはあんたしかいないんだ!本当にこの腐った生活から抜け出したいんだ!
あんたの言う事は全て従う!どんなしばきも甘んじて受ける!だから、頼む!」
話が堂々巡りをして、まったく進展しない。いい加減、業盛も倦んできた。
ごろつき達も、業盛がはいと言わなければ引かないという表情をしている。
屑共が、と業盛は口走りそうになったが、ふと、それを収め、満面の笑みを浮かべた。
「分かった。お前等の熱意に負けたよ。それほど言うのなら、考えてやろう」
業盛がそう言うと、ごろつき達は、表情に光を蘇らせ、万歳の声を上げた。
「ふふふっ、楽しい昼になりそうだな……」
業盛は笑った。その笑みは、ごろつき達を引き連れて、
郊外に向かっている時も相も変わらずそのままだった。
まるで新しい玩具でも手に入れた子供の様なその表情は、
水城と彩奈を手放し、失意の底にいた業盛には不似合いなものだった。
778名無しさん@ピンキー:2010/09/09(木) 22:02:01 ID:AsfEZZT0
155 名前: 変歴伝26 ◆ AW8HpW0FVA 2010/09/09(木) 17:30:37 ID:4w8x8SS60

郊外の広場にごろつき達は集められた。
業盛はごろつき達の前で、地面に円を画いた。
円の大きさは、大股一歩ほどで、それほど大きくない。
業盛はその円の中に入った。
「これから、鍛錬を行なう。各々、得意の得物を持つなりなんなりして、
一人ずつ俺に向かって来い。俺を円の外に出す事が出来たら、お前等は一人前だ」
持っている刀を地面に突き刺し、自然体に構えた。
「わっ……分かっ……うがっ!」
答えようとしたごろつきの一人に、業盛の放った礫が直撃した。
「分かりました、だろ。言葉遣いには気を付けな」
と、業盛は言うと、再び構え直した。
気絶したごろつきが運び出された所で、鍛錬開始となった。
最初のごろつきが、業盛に向かって突進していった。
繰り出された拳を、業盛は首を傾けただけで躱した。
瞬間、打撃音が辺りに響き、ごろつきが倒れた。
左頬は、酒を飲んだ様に真っ赤になっていた。
「さて……、次」
満面の笑みで、業盛は手招きした。それはまるで、あっち側に誘う手の様である。
ごろつき達は、一体なにがあったのか理解出来ず、気付いた時には、血の気が引いていた。
実の所、今までこのごろつき達は、一対一で戦った事などなく、
言わば、これが始めての差しでの戦いであった。
ごろつき達は、次を誰にするかで揉め、互いに譲り合いだした。
結局、押し出される形で次の相手が決まった。
半ば半泣きで、そのごろつきは業盛に向かっていった。
しかし、そのごろつきは、円の中に入ると同時に、円の外に吹っ飛ばされた。
顔面には、草履の痕が刻まれていた。
「男の泣き顔に、需要なんてない。さぁ、次」
容赦のない言葉を吐き、業盛はまた手招いた。
完全にごろつき達は弱腰になった。皆、誰一人として前に出るものがいなくなった。
それを見た業盛は、
「お前等、軽く小突かれただけでこの様か、この程度で音を上げるのか!?
なにが、言う事は全て従う、どんなしばきも甘んじて受ける、だ!
お前等の言った事は全部嘘だったのか!?
俺はお前等の下らないごっこ遊びに付き合うためにここにいるんじゃないんだぞ!!」
と、怒鳴り声を上げた。その目には、先ほどまでの喜色は見られなかった。
業盛は本気で怒っていたのだ。その怒りの目で業盛はごろつき達を見回した。
ごろつき達は未だに意気消沈としており、誰一人向かってこなかった。業盛は溜め息を吐き、
「一瞬でも、お前等に見込みがあると思った俺が馬鹿だったよ……。
時間の無駄だったな。ほら、さっさと消えな、屑共」
と、言って、手を振った。水を打った様に、辺りは静まり返った。
誰一人として声を発せず、その場から立ち去る者もいなかった。
この沈黙は、ごろつきの一人が手を上げた事によって破られた。その目には涙が浮かんでいた。
「俺……、変わりたい……変わりたい!」
その一言に火が付いたのか、続々と手が上がり始めた。
ごろつき達は口々に、変わりたい、と連呼した。その目に、再び光が蘇った。
「業盛様、お願いします。もう一度、俺達……いや、私達に稽古を……」
そう言って、ごろつき達は皆、土下座をした。
それを見た業盛は、再び満面の笑みを浮かべた。
「そう来なくちゃ……面白くない」
再び業盛は円の中に入り、自然体に構えた。鍛錬の再開である。
いざ、とごろつきの一人が、業盛に向かっていった。

半時後、業盛は六波羅に帰ってきていた。
業盛の表情は、六波羅を出る前とは違い、満ち足りたものになっていた。
部屋に帰る途中、業盛は偶然重盛とばったり会った。

779名無しさん@ピンキー:2010/09/09(木) 22:02:09 ID:AsfEZZT0
「ただいま戻りました、重盛様」
業盛はそう言って、ゆっくりと頭を下げた。
「業盛」
部屋に入ろうとして、業盛は重盛に止められた。
「どこに行っていたのか詮索はしないが、随分と顔色がよくなったな。
なにか、よい事でもあったのか?」
重盛の表情は、説教をする時の厳しいものではなく、至極穏やかなものだった。
それを見た業盛は、説教はない、と確信し、
「えぇ、お陰で気が紛れました」
と、言って、部屋の中に入っていった。
780名無しさん@ピンキー:2010/09/09(木) 22:02:25 ID:AsfEZZT0
156 名前: ◆ AW8HpW0FVA 2010/09/09(木) 17:31:28 ID:4w8x8SS60

投稿終了です。どうかお願いします。
781名無しさん@ピンキー:2010/09/10(金) 01:13:53 ID:5GbSesVU
>>780変歴キテター
GJです業盛ひでぇw
規制大変ですが頑張って下さい
転載乙
782名無しさん@ピンキー:2010/09/10(金) 05:34:22 ID:YFC22Ldz
極乙
783ウェハース ◆Nwuh.X9sWk :2010/09/10(金) 11:21:16 ID:cZRhL+3d
初めまして、長編の予定で一話を書いてきました
暇つぶしになったら嬉しいです
投下行きます
784ウェハース ◆Nwuh.X9sWk :2010/09/10(金) 11:25:44 ID:cZRhL+3d
【放課後、四時半2年2組の教室まで来てください】
なんて事が書かれた可愛らしいデザインの手紙が自分の通学鞄の中に入っていたら、男子ならどう思うだろう?
ダーリン!とか言っちゃう宇宙人の襲来?それとも昼は高校生、夜は怪盗の二束草鞋の生活を送る高校生からの挑戦状?
答えはどちらもNO、放課後の四時半(僕は緊張しすぎて三時半から、つまり放課後になってからずっと)に僕を待っていたのはフィクションの美少女達ではなく、五、六回しか喋った事しかないクラスメートだった。
名前は藤松小町さん、通称マツコ。その人だ。
成績は上位にいつも名を連ね、得意科目であるらしい生物はこの間学年三位。
イメージカラーは赤、というか好きな色なんだが、赤い眼鏡を愛用している。
さらっと艶やかで細い黒髪、毛穴、シミ、そばかす、膿なんて無い白い肌、垂れ目がちな瞳、通った鼻筋、整った眉、のどごし最高の声。
抜群の小顔に、肩甲骨辺りまで伸びた髪から可愛らしくコンニチハしている美味しそうな耳。身長は百六十あるかないかぐらいで、胸はBかC、ウエストは細い。お尻は……水泳の時に見たが、何となく愚息が反応する。
パーツ一つずつ説明するとこんなものだが、簡単に言うところの少女類清純科美少女であり、彼女をオカズに励んでいる男子生徒の話も聞く。
噂によると、事後あまりの可愛さと、励んだ後による徒労感の相乗効果により精神薄弱になり、三日間は寝たきりになるらしい。
恐るべし、マツコ。
そのマツコが四時半になるか、ならないかぐらいで黒板側のドアをスライドさせ、颯爽と登場した。
ビックリしたのは二人共だったらしく、互いにリアクションを見せた。
僕としてはシーヤ派かシーア派の胡椒と山椒が効いたテロリズムジョークを想定して、教室の後ろの方に待機していたのだが、マツコの登場に思い切り舌を二回噛んでしまった。
マツコも僕が先にいることに驚いたのか、垂れ眼がちな大きな瞳をパッチリと大きく開いて、内心の驚きをドラクロアの『群集を導く自由の女神』並みに表していた。

「ごめんなさい、時間丁度になってから来ちゃって」
開口一番にマツコこと藤松小町は謝辞を告げてきた。相変わらず喉ごしのいい声だ。思わず聞き惚れてしまう。
そんな事を思いながら話し出そうとすると、また舌を噛んでしまった。
近く、舌癌になる恐れがある。
「いや、別にいいよ。それに丁度に来るってすごく器用だと思う」
慰めになっているか、いないかで競りに掛けられそうだ。ちなみになっている方の倍率は四百五十八倍、大穴だ。
「この手紙くれたの、藤松さん?」
彼女は首を縦に振って肯定を表現した。
「で、四時半に呼び出して、話って何?もしかして告白とか!?」
茶化したつもりだった。彼女はまた瞳を大きく開いて驚いた風に見せると、視線を四方に泳がせた。
それからさっきの喉ごしのいい声とは違う、うわずって擦れた声で小さくて弱い声で「うん」と言った。
「は?」
「えっと、だからその……」
「待て、藤松それって……」
「神谷君、す、好きです」
ウソ告だよね?
785ウェハース ◆Nwuh.X9sWk :2010/09/10(金) 11:29:56 ID:cZRhL+3d
この辺りで自己紹介と自己評価をしよう。
僕の名前は神谷真治(かみや しんじ)、八月二十九日生まれ、身長百七十二センチ、八十二キロ。
体型はぽっちゃり……、まぁちょっとした肥満体型でお腹のぜい肉には規律と言うものが無くだらしなく垂れ下がっている。
首を擡げれば、首の所に脂肪の塊で谷が出来る。
クラスに通っているキャラは面白い奴、愉快な奴、まぁ言うなれば道化師だ。
昔からそうやって来たから、これは僕の処世術であり、癖でもある。
断じて言うが、僕はモテない。
今までの人生の中で好意を向けられた事が一度たりとも無いのだ。経験の無い人は分からないだろうが、そう言った人はもうどこかに諦めを付けていて、仕方無いなとか思ってしまっている。
この間、というか中学卒業の打ち上げの帰りにその事を思い、一人自嘲気味に笑ってしまった。
生まれてきて十七年間に一人として僕のことを好きになってくれる異性はいなかったのだ。
これはある意味すごい事なのかも知れない。
恵まれていないルックス、服の上からでも薄っすらとだが分かる体型。
身なりにも余り気を使わなかった性か、ファッションセンスも無い。
あるのは、笑いを取るために培った人並み以上ぐらいの語彙数と知識。それから感覚。ただそれだけ。
面白い人が好きです!なんて女子は大概顔重視になりがちな傾向がある。皆も注意してほしい。
そんな僕にクラスのアイドルが思いを打ち明けた。
断言しよう、これは十中八九ウソ告だ。
知らない人がいるかもしれないので【ウソ告】について少し説明しよう。
ウソ告とは、愛の告白と言う聖なる行為を真似た悪質な手口で男子、または女子を異性、極稀に同性が告白し、告白した相手のリアクションを見て、小さな優越感を満たす詐称の手口の名称である。
ある学者によると、美人局の語源であるという説もある。
場合によるが、この手口を行うのは中学の男子または、中学から高校ぐらいの女子で罰ゲームと称して行われる事が多い。
さらに傾向として女子グループが狙うのはモテない男子を標的にする事が多い。
大概罰ゲームを行うのは可愛い娘である。
女子と言うのは面白い団体行動を行う生物で、ブサイクの方が性根が腐っている事が多く、その性格は狡猾で残虐。
いつも自分の誤魔化しきれない残念なルックスに対して行き場の無い怒りをどこかに発散させようと血眼でスペースを捜している。
女子グループはそういう奴が団体の主導者になることが多く、可愛い娘はそのブスに身に覚えの無い怒りをぶつけられるのである。
保身のために可愛い女子はブスの金魚の糞になることが多く、言いなりになってしまうケースも多く確認されている。
では今回のケースはどうだろう?
藤松こと、マツコはクラスではロンリーウルフ気味で、誰とでも喋れるが、誰とも仲良くないといった感じでどこにも属していない。
多分、何かの縁で先に上げたグループに属してしまい、こうやってウソ告をさせられているのだろう。
僕こと、神谷は確かにブサイクだ。クラスでも一番面白い奴だ。それは間違いない。
リアクションにも定評はある。だからこその選抜だろう。
判断材料がここまで揃うと心の準備も簡単に出来る。断言しよう、これはウソ告だ。
786ウェハース ◆Nwuh.X9sWk :2010/09/10(金) 11:33:18 ID:cZRhL+3d
だけどここで焦ってはいけない。冷静に考えるのが彼女に対する、ウソ告に対する礼儀だろう。
放課後の直後から教室にいた僕だ。もはやこの教室(フィールド)は僕にとってのサンクチュアリである。
座席は横八列。入り口の反対側である窓際を除いて縦は五列。窓際は四席の計三十九。
それが等間隔で並んでいて、教室には僕と藤松さんの二人だけ。
教卓の下、掃除用具入れのロッカーには人はいない。
自信を持って言える。この神谷の眼(ゴッドリバー・オブー・アイ)を突破してくる猛者はこの校舎には存在しない。
つまり、この告白がブラフだと仮定(ジャイ子とあだ名を付けられる女子がブサイクである確立くらい)した場合、仕掛け人兼、オーディエンスが僕たちを見ているのは廊下からとなる。
ここで僕は確認のために首を傾げた。
「へ?」
「……」
ここで藤松が入ってきたドアの方を確認した。
しっかりと閉められている。外の光が漏れてきていないからだ。さっきの藤松さんの声量では外には聞こえていないだろう。
ここで僕が事前に行っていた事も説明しておこう。
教室にはスライド式のドアが二つある。
黒板側、ぞくに言うところの前の扉。それから黒板の対極にある掲示板側にある扉、これを後ろの扉とする。
教室に二つ扉があるのは僕の高校だけでは無いはずだし、逆にポピュラーであると思うのでこのまま話を続ける。
僕は待っている間に後ろのドアを施錠しておいたのだ。
つまり聞き耳を立てていないと今なお続行されているウソ告の進行状況の把握は至難の業だ。
ふむ。
僕は内心安心していた。
これは藤松さんだから意味があるのだ。これがもしもエミリー・ローズという映画のヒロインからあだ名を付けられた、エミリーこと長友恵美だったなら僕はすぐさま窓を大きく開け放ち、
それから後ろ振り返る事無く飛び降りてルシファー降臨のための生贄になっていたに違いない。
ちなみにエミリー・ローズとはホラーサスペンス物の映画で、中盤まではまぁ面白かったので興味があるなら詳細は各自で調べて欲しい。

またリッカーと称される同じクラスの宮部理香だったなら僕はT-ウィルス感染者となり、親友である平沢を食い殺していただろう。
ちなみにリッカーこと宮部さんは前頭葉が異常に発達しているせいか眉の辺りから額が出っ張っていて、つぶらな瞳が少し怖い事になっている。
風の噂だが、リッカーの特技は舌だけでサクランボのヘタで蝶々結びを結ぶことらしい。
恐るべし、リッカー。
787ウェハース ◆Nwuh.X9sWk :2010/09/10(金) 11:34:21 ID:cZRhL+3d
藤松さんは緊張しながら僕の返事を待っている。なんで薄っすら涙が浮かんでいるんだろう。
分かってるよ、ドッキリってことぐらい。
しかし高校二年生になってウソ告とは低次元だな。
分かっていて付き合う僕はまだ良いとして、藤松さんが少し可哀相だ。
心にも無い事を言わされて、好きでもない男子と二人きり。僕が陰険な奴ならこれを気に嫌がらせを始めるかもしれない。
しかもこういうのは僕が恥を掻くのを恐れて告白を断ったりしたら場が白けて、グループに戻ったとき藤松さんに矛先が向くんだよな。
『お前の言い方にリアリティが無かった』とか『もっとらしく言えよ、ってかマジで付き合ったら?』とかさらなる難癖を付けられる。
まぁ、僕の最初の驚きのリアクションと、オーケーを出してからドッキリでしたー、と告知されてからのオーバーリアクションを込みにすれば藤松さんも胸を張れる結果となるだろう。
そうさ、僕みたいなぽっちゃりピエロにこんな可愛い女子が好意を寄せてくれるわけ無いだろ。
分かっているさ、分かっているけど……。
なんだよ、これ?全然面白くない。最低の笑いだ。
早く終わらせて、家に帰ろう。どっちかと言うと逃げように近いけど。
「お、おらで良かったら!ぜ、ぜひ!!」
ワザと噛んで、大きな声で答えを返す。
大袈裟なリアクションで、見え見えの罠に飛び込む。
最初に噛んだ患部が少し痛い。意外と深かったのか。
口の中が鉄の味で一杯になる。
さぁ、終わらせてくれ。
「本当?」
可愛らしく目を潤ませ、僕の返答を聞き返す。僕は大袈裟に首を縦に振って肯定を表す。
「よ、よかったー!」
そう言って、藤松さんはさっきから溜めていた涙を溢れさせた。
力無くその場に座り込む藤松さんさっきからずっと涙を拭っている。
そんなにドッキリ成功が嬉しいのか?
僕はそんな事を思いながら罰ゲーム終了を告げる仕掛け人の登場を待っていた。
788ウェハース ◆Nwuh.X9sWk :2010/09/10(金) 11:35:39 ID:cZRhL+3d
えらく長い罰ゲームだな。単純にそう思った。
告白成功から一時間、僕たちは帰路に着いていた。
藤松さんは初々しい感じの彼女といった感じで僕が喋った事以外反応を示さなかった。
それ以外は僕の顔を惚けた感じの普段見ない緩んだ表情で見ているだけで藤松さんから話題を振ることは無かった。
だからバス、電車で僕は藤松さんを笑わせるのに喋りまくった。
僕が話題を提供するたびにウフッといった感じで笑う彼女の表情は筆舌に尽くしがたいモノで、殺人級の代物だった。
危うく僕のオカズリストの石碑に彼女の名前が刻まれるところだった。
そうこうしている内に、地元の駅に着いた。
「じゃ、僕ココだから」
そう言うと、彼女も席を立った。
「あれ?」
「わ、私もここだから」
そわそわしながら、伏せ目がちな彼女は反則的に可愛かった。なぜか僕の方が申し訳なくなった。
「えと……じゃあ、いこっか」
彼女は小さく頷く。乗員からの殺気を孕んだ視線に気付いた僕は急いで車両を降りた。
改札をくぐり、駅を出る。
「神谷くんは…」
「あ、僕はこっち」
初めての藤松さんの問いかけに僕はすぐさま答える。
「私と一緒だね」
ここまでくると今日中のドッキリ宣言は無いのか?
僕がそんな事を考えていると、藤松さんが僕の顔を不安そうに覗き込んでいるのに気が付いた。
「どうしたの?」
くそっ!その上目遣いは反則だろうがっっ!!
「何でもないよ、大丈夫」
「そう?怖い顔になってたよ?」
「ちょっと来世について考えてただけ、大丈夫」
彼女はウフッとまた楽しそうな笑顔を浮かべると、歩き出した。
僕もそれに続いて歩き始めた。
789ウェハース ◆Nwuh.X9sWk :2010/09/10(金) 11:39:30 ID:cZRhL+3d
道中は彼女の緊張も解けたのか話題を二、三僕に話を提供してくれた。
どこの中学だとか、好きな食べ物はとか、取り留めの無いものだった。
それからは僕のバイトでの失敗談を話した。ピザの宅配をしていたらホームレスの集団に襲われてピザを取られた時の話だ。
これは鉄板ネタで大概は腹を抱えて笑う。
彼女も彼女の反応から見て腹筋の筋肉痛ぐらいにはなってくれたと思う。
彼女は頻繁に「嘘だよ!」と言っていたが、僕は見たことも無いほどテンションの高い藤松さんを見て嘘だろ?と何度も疑っていた。
話にオチが付いて、丁度僕の家が視界に入った。
その事を告げると藤松さんは残念そうな顔になり、「そう」と小さく呟いた。
「じゃあ、また明日」
「……うん、ばいばい」
どんだけ名残惜しいんだよ。
藤松さんはそのまま踵を返すと、来た道を戻っていった。
「家、もしかして通り過ぎちゃったのかな?」
なんだか悪いことしたな、と少し良心が痛んだ。それと同時に罰ゲームを思い出した。
いつ暴露するんだろう?
鞄を置いて、自室のベット寝転がっていると携帯が鳴った。
送信者は藤松さん。さっき帰り道の通学バスの中でアドレスを交換したのだ。それにしてもアドレスも知らないのに告白とは、いかにもウソ告っぽいな。
【明日は一緒に登校しない?】
そうか、登校の際にドッキリ宣告か。手が込んでるというか、暇な連中だ。
でも、やっぱり藤松さん可愛かったなぁ。
少し残念に思いながらも、僕は藤松さんに合わせるっといった感じの内容のメールを送信してから手を洗いに一階に降りた。
790ウェハース ◆Nwuh.X9sWk :2010/09/10(金) 11:41:34 ID:cZRhL+3d
投稿終了です
ハンドルネームのつもりでウェハースにしたのにタイトル変えるの忘れてたYO☆!
まぁ気取ってない感じだし、このままでいいけど
791名無しさん@ピンキー:2010/09/10(金) 13:10:23 ID:/GAeXgOc
GJ!!
792名無しさん@ピンキー:2010/09/10(金) 17:28:37 ID:fLoXsekB
乙です。

続きを楽しみにしています。
793名無しさん@ピンキー:2010/09/10(金) 21:10:02 ID:CiOQ0Oor
>>784
のどごし最高の声…?
794名無しさん@ピンキー:2010/09/10(金) 22:00:02 ID:eQJGz00C
「私≠彼女」の二話を投下します。
795私≠彼女 02  ◆RgBbrFMc2c :2010/09/10(金) 22:02:49 ID:eQJGz00C

「だからね、今度はグラウンドの線引きをしてみようと思うんだー」
「線引きって、何書くんだよ」
「陸上で使うトラックの線」
「ああ、そういえば大分消えてたっけ」
「そうなんだよ。それに、あのカタカタ押す奴楽しいから、一回全部描いてみたかったんだよね」

 椚田はショートカットの黒髪を風に揺らせながらそう言い、コロッケパンにかじりついた。
 すると、もとからたれ気味な目がさらにへらーと緩んでいく。
 その表情が本当に幸せそうで、僕は思わず口に入れかけた自分のコロッケパンを放置し、その様子を眺めることにした。
 これだけ安上がりな舌をもつ娘に育ってくれて、彼女の両親はえらく助かっていることだろう。

 ちなみに椚田はコロッケパンが好きというより、コロッケが好き、というわけでもなく単純にお惣菜パンが好きなのだ。
 焼きそばパンやカレーパンなども好物らしい。
 だから、僕はそんな椚田に気を使って、パンを買う日はそういうものしか買わないことにしている。
 それというのも椚田は僕と同じものしか昼食として選ばないので、そうしないと彼女が好きなものを食べられないからである。
 どうしてそんな不便な規則で自分を縛っているのかは正直わかりきっているのだけれど、それでも好きなものぐらい好きな時に食べろと言いたい。
 僕は別に毎日惣菜パンだろうとスナックパンだろうと特にこだわりはないので気にはしないし、本人がいいならそれでいいけど。

「悠一君、そろそろ食べ終えないと予鈴が鳴るよ」

 いつの間にやらコロッケパンを全て胃の中へ収めた椚田が、右腕に嵌めた腕時計に目をやってそう言った。
 もうそんな時間なのか。素早くパンを口に詰めてゴミを回収しながら、咀嚼も大概にさっさと飲み込む。
 
「次は、数Tか」
「うん。今日は悠一君の列が当たるんだよね」
「お前もだろ」

 僕の真ん前に座っているんだから。

「とりあえず、絶対に答えが合っている答案を、私は書いてきました」
「そうか。じゃあ、後でお互いに答案の確認をしよう」
「うんうん」

 嬉しそうに数回頷いた椚田に一度相槌を打ってから、屋上の扉へと向かっていく。
 10月下旬のやや冷たい風を全身に浴びつつ、ふと冬になってもここで昼食をとるつもりなのかと考えた。
 まあ、防寒対策をしっかりしておけば問題ないだろう。

「明日は雨が降るらしいよ」
「そうか」

 意味のない含みのない振りでも何でもない彼女の呟きに頷いて、僕らは屋上を後にした。
796私≠彼女 02  ◆RgBbrFMc2c :2010/09/10(金) 22:04:38 ID:eQJGz00C
 *** 

 友人である雲井曰く、椚田は僕のストーカーらしい。
 曰くも何も、雲井に言われるまでもなくそれぐらいは気付いている。大方同じ昼食を持参できるのも僕の行動を監視しているからに違いない。
 見られて困るような日常生活は送っていないので、監視されていようが盗撮されていようが尾行されていようが構わないのだけど、
 傍にいるのなら声をかけてくればいいのにと思う。
 学校以外の場所で椚田と会った記憶がないから、一度くらい会ってみたいと思うのだ。好きな相手の私服姿なんて誰でも夢見るものだろう。

「どうしたの? 悠一君」

 放課後、たまに立ち寄る図書室で向き合いながら読書に勤しんでいると(僕は少しも集中していなかったけれど)、
 じっと見られていたことに気付いたのか、椚田が分厚い新書から顔を上げた。
 その表情は疑問一点のみで占められており、こんな彼女が本当に自分を付け回しているのかと思うと妙な感じがした。
 人間見た目や雰囲気だけでは分からないものだ。

「椚田って、休日は何してるんだ」

 直接私服を見せてくれと言っても良かったのだが、どんな反応がくるのか想像もつかないのでやめることにした。
 
「休みの日は、勉強してる」
「クラスの女子とどっか行ったりしないのか」
「しないよ。高校生になって、いろいろ忙しくなっちゃったから」

 遊ぶ暇がないんだよ。と椚田は何でもないように笑みを浮かべた。
 
「だって、悠一君とも外で会ったことないでしょ? できれば会いたいし、遊びたいんだけど、時間がないんだ」
「なら、仕方ないな」
「悠一君は私と外で会いたいと思う? 遊びたいって思う?」
「たまにな」
「そっか、そっか……うん、ええと……うん、じゃあ今度の日曜日は学校で遊ぼう!」
「小学生か」

 反射的にそう突っ込むと、彼女はだよねーと呟きながら苦笑いを浮かべた。 
 そういえば、以前に椚田が見たい映画があると話したので、じゃあ見に行こうと言ったそのときも話は有耶無耶になってしまったのだったか。
 どうやら、学校外で人と会いたくはないらしい。随分と変わった趣向である。
 それでも、僕を付け回す時間はあるしそのためになら外へ出るなんて、変な話だ。
 もしかすると、ずっと僕を付け回しているから忙しいのかもしれない。まあ、これはさすがに被害妄想か。
 被害妄想……いやいや、僕自身は何も害は加えられていないのだから無害妄想、むしろ理想妄想。
 こうだったらいいのにということをさらに妄想している。
 好きな相手に追いかけまわされるのなら誰だって嬉しいだろう。

 そんな調子でぐだりぐだりと会話をしていると、図書室のカウンターから大げさに本を閉じる音がした。
 目を向けてみると、今日の受付当番らしき図書委員女子がこちらをじいっと睨みつけている。
 同じ眼鏡でも雲井とはかけ離れたきつい目と、グラス越しに視線を合わせた。

「ごめん川瀬さん」

 椚田が申し訳なさそうにそう言うと、

「これでもう8回目の注意ですよ椚田さんに遠野さんここは読書をする場なのであって男女がいちゃつく場所ではないのですお分かりですか?」

 一息でこんなことを言い終えた。注意されるたびに思うが、この人は本当に滑舌が良い。
 感心すべきところはそこかと言われそうだ。

「でも他には誰もいないんだし、いいんじゃないか」
「私がいるんですよ」

 カチャリと音がしそうな程に、眼鏡を押し上げる仕草がさまになっていた。
 なんとうか、とても古典的な図書委員。そう形容するのが一番正解に近いと思う。
 確か同学年のはずだが、クラスも別であるため、川瀬さんに関する情報の持ち合わせはもうない。下の名前すら僕は知らない。
797私≠彼女 02  ◆RgBbrFMc2c :2010/09/10(金) 22:09:54 ID:eQJGz00C
「そもそも、学校内での男女交際は禁止されているはずです図書室での決まりごとよりもよっぽど重要なことですよ」
「……前から思ってたんだけど、川瀬さんは生徒会長になるべきだよね」
「……それもまた古典的な生徒会長になりそうだけどな」
「……古典的って王道な感じでいいと思うよ私」
「……その前に川瀬さんが当選すれば校則強化は必須だ、誰も投票しないだろ」
「聞こえていますから」

 声を細めてはいたものの、三人しかいない空間での秘密話なんてそうそう成立しない。
 まあ、僕らに聞こえないようにしようなんて気遣いが全くなかったからだともいえる。

「それに、私は高校生活三年間を全て図書委員の委員会活動に充てようと思っているので、そんなものに立候補する暇はありません」
「自分で灰色学園生活のエンジョイ宣言しちゃったよ……」

 今度こそぼそりと呟いた椚田と目を合わせて、そろそろ出るかということを確認し合い席を立とうとした時だった。
 ガラガラ――ッと勢いよく引き戸を空ける音が室内に響き、その引き戸が壁へぶつかった衝撃音と共に

「みおちゃんゆうくん、みいいいつけたあああぁぁああ!」

 爆音にも近い大声量の、聞き覚えのある声の持ち主が図書室へと入ってきた。
 僕と椚田は慣れているため引き戸の音が聞こえると同時に耳を塞いでいたが、慣れていないらしい川瀬さんは目を白黒させてぐらぐらと身体を揺らせていた。
 ああ、そういえば図書室へ襲撃に来たのは初めてか。ここまでくればもう兵器の威力だな。

「ふたりともひどいなあ! 今日は剣道の試合があるから見に来てっていったのに! 
 もいくんは負けちゃったけど、あたしとこのちゃんは大活躍だったよ! さすがあたし、さすがこのちゃん! 
 さてさてどうして来なかったのか理由を30字ぴったりで述べてね!」

 無茶ぶりだ。
 にこにこと笑顔でひたすら叫び続け(喋るという音量ではない)ながらポニーテールを揺らして近づいてくる小柄な先輩に、
 とりあえず「すみません」と頭を下げた。

「椚田と話しこんでたもので」
「次の試合は見に行きますから」

 ふたりで宥めるようにそう言うと、先輩は少しむうっと頬を膨らませてぷいっとそっぽを向いてしまった。
798私≠彼女 02  ◆RgBbrFMc2c :2010/09/10(金) 22:12:39 ID:eQJGz00C

「次来なかったら、ホントに怒るからね!」
「わかりました」

 空気を読んで、すでに怒ってるじゃないですかとは言わない。
 もいくんとは、この人間拡声器という別称をもつ先輩――篠宮(しのみや)先輩と同じ剣道部に所属する僕の友人、雲井のことである。
 それにしても、あいつ負けたのか。とりあえず、慰めの言葉を考えておこう。

「というかねっ、みおちゃんに返そうと思ってたものがあるから、ちょっと道場まで来てほしいと思ってね!」
「ああ、村主先生の課題レポートのですね」
「そうそう! あれめちゃくちゃ助かったよっ、むらさんの観点よくおさえられてて! これで評価はA行けそうだよ!」
「あの先生、結構やらしいところみてきますからね、正攻法じゃAなんて無理ですもん」
「そうなんだよそうなんだよ!! あたしのクラスで一番のかしこさんでも、毎回B+評価だもん!
 えっへっへ〜みんなでいい評価とって、むらさんびびらせるんだあ!」

 それは逆に不自然に思われそうだが、やっと先輩の機嫌が直ったところなので水はささないでおこう。
 先輩に腕を引かれて出て行った椚田の「悠一君もきてね」という言葉に頷き、広げられたままの新書をもとの棚に戻してから椚田と自分の分の鞄を手に取った。
 彼女の鞄が妙に重かったのは、きっと教科書をいちいち持って帰っているからだろう。
 休日は勉強漬けで置き勉もしないとは、変なところで真面目な奴だ。そう受付カウンターの前を通り過ぎ、引き戸に手をかけたところで、

「遠野さん」

 川瀬さんに呼び止められ、とりあえず足を止め振り返った。
 
「なに」
「前々から思っていたのですが……その、椚田さんは、どうしてあんなことができるんですか?」

 怪訝そうに、そしてどこか不安げにそう聞かれて、僕は数回瞬きをした後その問いに答えた。

「あんなことって、教師のレポート観点を知ってるってところか」
「そうです。あなたたちは、ここでもよくテストや授業に関して妙な会話をしていますし……まさか職員室を荒らしているのではないでしょうね」
「さあ。聞くなら椚田に聞いてくれよ」

 僕も知らない。教えてほしいぐらいだ。そう言い終えて今度こそ引き戸を開け、僕らは最後にこんな会話をした。

「いきなりですみませんが、あなたたちは本当にお付き合いをしているのですか?」
「いや、純粋な友達関係」
「純粋、ですか……しかし、それなら校則には違反していないのですね。それは良いことです」
799私≠彼女 02  ◆RgBbrFMc2c :2010/09/10(金) 22:14:16 ID:eQJGz00C
 ***

「くーもーいー、もう疲れたし帰ろー」
「篠宮先輩が、戻ってくるまで帰るなって言ってただろ?」
「いいじゃん、試合おつかれさまーって感じで帰っちゃおうよー」
「お疲れ様の前に片付けな」

 ぶつぶつと文句を垂れ流しながらも道場の片付けに励む緋本は俺の言葉へ「はいよ」とため息交じりに頷いた。
 俺たち以外の剣道部員は今回の試合で芳しい結果を得られなかったため、篠宮先輩の刑罰宣言により道場裏の草むしりを行っている。
 あの人は小柄で始終にこにこと笑っている可愛らしい先輩なのだが、部のことになると非常にスパルタになるのだ。

「みんな凄く頑張ったと思うよ! それは本当にそうなんだけどねっ、あたしも分かってるんだけどねっ、自分への戒めとして草むしり頑張ってね!」

 道場内に大声を反響させてから、少し用があると言って先輩本人は素早くどこかへ行ってしまった。
 ちなみに俺自身は負けている、にも関わらず道場内の掃除とはこれ如何に……緋本は結果を出したので当然だとして、これはおかしい。
 
「先輩に好かれてるからじゃないのー? うわあ、あやかりたいねー」
「んなわけあるか」

 くるくるとした癖っ気のある茶髪を夕陽に照らし、緋本は皮肉めいた口調でそう言った。
 先輩が俺を後輩以上に思っていることなんてあるわけがない。

 それにしても、男女混合の部で男子は全敗、数少ない女子部員たちが全勝ってどういうことだ。情けないねえな男共、しっかりしろ。 
 その男共の中に自分を含めつつ、明日からの部活も頑張ろうと心に決めた。
 誰とは言わないが、成果を見せたい相手くらい俺にもいるのだ。

 しばらく緋本とは背を向け合ってお互い掃除に集中していると、道場の扉を開ける大きな音がしたので耳を塞いだ。
 その数秒後、

「ただいまああぁぁぁああああ!」

 という爆声音と共に帰ってきた先輩の方へ振り返ると、そこにいたのは篠宮先輩だけではなかった。
 あの椚田ミオリも、いた。先輩の後ろ、入り口あたりで耳を塞いでいる。

 どうして、こいつまでいるんだっ……。
800私≠彼女 02  ◆RgBbrFMc2c :2010/09/10(金) 22:15:33 ID:eQJGz00C

「ああっとッ、もいくんとこのちゃんはみおちゃんと初対面!? じゃあ荷物とってくるから、その間に自己紹介でもどうぞ!」

 ハイテンションにそう言って、篠宮先輩は奥へと行ってしまった。
 緋本はけだるげに目を細めながら、俺は眉をひそめながら椚田と少し間隔をもって向き合う。

「1年C組の椚田ミオリ」

 言って右手を軽く上げ、椚田はにこりと笑った。

「俺は、」
「1年E組の雲井君だよね」
「……雲井ー、知り合い?」

 椚田から目を離さずに聞いた緋本の声は、いつも通りだるそうだった。
 その言葉に首を横に振り「知らん」と返す。俺はまだ椚田本人と接触をとったことはなかった。
 悠一を正気に戻すためにはいつか話を聞かなければいけないとは思いつつも、まだできていなかった。
 得体のしれない体質をもつわけのわからない女と積極的に関わりたいと思えるほど、俺は物好きではない。 
 
 これを機に知り合っておけという何かのお達しだろうか。

「雲井君って、悠一君の友達なんだよね。もうすぐ、悠一君も来るよ」
「もう来てる」

 そう言って入り口の影から淡々とした面持ちで出てきたのは、紛れもなく悠一だった。
 
「雲井負けたんだってな。次頑張れ」
「ありがとよ」

 今回も頑張ったことは頑張ったんだけどな。地味に傷を抉る奴だ。
 そうするのが当たり前のことのように椚田の横に立った悠一を見て、何なんだろうなあとため息をつきそうになったが、寸でのところでこらえた。 
 本格的に悠一へ忠告できないのは、椚田が悠一と付き合うつもりがないように見えるからだ。
 それによって真意が全く掴めず、行動がとりづらい。
 決定的な行動でもとってくれれば、それを理由に説得するなり問い詰めるなりできるんだがなあ……。

 いや、ストーカー行為を許容してしまっているあたり、やっぱり説得は難しいのかもしれない。
 違和感か……そんなものどうやれば取り戻せるんだろう。

「それで、君が大活躍の『このちゃん』か」
「雲井君のクラスメイトで、緋本此乃子(ひもとこのこ)さんだっけ」
「そーだけど」

 クラスが同じというわけでも顔見知りというわけでもないのに名前を言われた緋本だったが、特に動じず頷いていた。 
 きっと悠一の言った『このちゃん』呼びは篠宮先輩の特権であるため、おおよそ先輩に話を聞いたのだろう。
 椚田については今は何も言うまい。偶然知ったのかもしれないし、そうでないという可能性もある。
 ちなみに、緋本も抗体のある体質ではないらしく、こうした部分へ違和感を持つことはない。
 篠宮先輩もきっとそうなのだろう。なんだかひどく疎外感を感じた。
 校内にひとりでも違和感を持っている奴がいれば、それだけで大分安心するんだけどな……。

「ちょっと、雲井」
「なんだよ?」

 考え事をしている最中に緋本につつかれ目線をそちらへ向けると、

「椚田さんの自己紹介は聞いたけど、この男子だれ?」
「友達の遠野悠一」
「……遠野か。んー、りょーかい。ふたっともよろしくー」

 寝ぼけているような口調で緋本がそう言い終えると同時に、再び道場の奥から軽い足音がドタドタと聞こえ始めたため、
 四人一斉に聴覚器官の入口を封じた。
801私≠彼女 02  ◆RgBbrFMc2c :2010/09/10(金) 22:16:56 ID:eQJGz00C

「自己紹介おわったかな!? わおいっ、ゆうくんも来てるねおっけおっけ! じゃあ、これ本当にありがとうねっ、みおちゃん!!」
「どういたしまして」

 耳を完全に塞いだところでまだうるさい篠宮先輩から椚田は何やら紙袋を受け取り、笑顔で頷いていた。
 ……何なのだろう。

「じゃあっあたしは草むしりに行ってくるから! もいくんこのちゃん道場よろしくね!!」

 俺の疑問など露知らず、先輩は駆け抜けるように(実際駆け抜けていたが)にこにこと笑って道場裏へと向かって行った。
 戒めとは言っても他人にだけさせるだけではなく、言いだした先輩本人もしっかりとやり遂げるため、試合直後に草むしりと言われても文句を言うやつはいないのだ。
 
「それじゃ、私は帰るね」

 靴を脱ぐこともなく入り口でずっと立っていた椚田は、紙袋をもち直してからこちらへ手を振った。
 とりあえず俺は「ああ」とだけ言って、緋本は「んじゃねー」と欠伸交じり。

「校門まで送っていく」

 淡白にそう言った悠一に対し、椚田は嬉しそうに微笑んで「やったッ」と返事をしていた。
 
「雲井はまだ残ってるよな」
「あ? ああ……」
「なら、また戻ってくるから、一緒に帰ろう」
「わかった」

 友達とは言え、男に下校の誘いをされるとは……なんてしょっぱいんだ。
 何事か話しながら道場を去っていくふたつの背を目で追って、今度こそ俺はため息をつく。

「幸せはーため息つくと、逃げるんだー」

 短歌のようなリズムでそう言った緋本へ向き直ると、そいつは珍しく目を完全に開けて、こういった。

「私、あいついやだよ」

 ***

「ねー、悠一君」
「なんだよ、椚田」
「今さ、楽しい?」
「どういう意味で」
「学校とか、友達とか」
「まあ、楽しいな」
「そっかあ、よかった」
「それが何だ」
「何でもないよ、悠一君が楽しいならそれでいいんだー」
「そうか、俺もお前が楽しいならそれでいいよ」
「悠一君にそう言ってもらえて感動っ」
「大げさだろ」
「そうかな。大げさでも何でもいいよ、悠一君が楽しいなら」

「これからもっと楽しくなるといいね」
802私≠彼女 02  ◆RgBbrFMc2c :2010/09/10(金) 22:20:34 ID:eQJGz00C

 ***

 我慢だ我慢我慢我慢、我慢。
 ああでも無理かなもう無理かもそろそろもうねえ限界、リミッター越え寸前誰か止めてくれればいいんだけど、誰かいるかな。
 さてさてさてさて最初は誰にしよう彼に声をかけてくるあれか笑顔を見せるあれか彼に近いあれかさあさあさあどうしようね。
 私はもう十分に我慢したよでも気付いてくれないんだもんならねさくっとぐいっとぼいっとがちゃっとぐにゃっとしようかな。
 どんどんなくなっちゃえばいいんだよねえ消えちゃえばいいんだよ消してしまえばいいんだって私ずっと思っててね、あはは。
 ええっと私が変だっておかしくなってるって? いやいやそんなことないよだって好きな人には自分だけ見てもらいたいもの。
 こう思うのは当たり前でしょ、よし自己正当化完了私はもう限界を超えましたということでそろそろはじめようとおもいます。

 てんきよほうではあしたのてんきはあめですよーって。
 おもむきがありすぎ、むしろうんざり、だ。

 明日は晴れがいいなー、雨って嫌いなんだね。あーあ。
803名無しさん@ピンキー:2010/09/10(金) 22:23:46 ID:eQJGz00C
これで02の投下終了です。
ありがとうございました。

>>802の「雨って嫌いなんだね」は「雨って嫌いなんだよね」です。
文字抜け申し訳ない。
804名無しさん@ピンキー:2010/09/10(金) 22:51:39 ID:5GbSesVU
GJ
狂っているのは誰なのか気になりますね
805名無しさん@ピンキー:2010/09/11(土) 15:34:43 ID:uleoOadI
週末なのに投下なしか…
806名無しさん@ピンキー:2010/09/11(土) 17:57:45 ID:7Ez7rak1
>>805
ここ最近投下ラッシュだったからな…たぶん力尽きてるのではないかな?名作ばっかだったから
807名無しさん@ピンキー:2010/09/11(土) 20:09:50 ID:J8yjhkTD
もう週末のヤンデレ家族がないんだね…
808名無しさん@ピンキー:2010/09/11(土) 20:34:12 ID:UdNvZhjb
無事完結したのは嬉しいけど・・・やっぱり寂しいな・・・(´;ω;`)ブワッ
809名無しさん@ピンキー:2010/09/11(土) 20:50:39 ID:7Ez7rak1
触雷!と迷い餓の詩があるやん
810名無しさん@ピンキー:2010/09/11(土) 21:16:53 ID:phtEQwDD
お前らはいつまでヤンデレ家族に依存してるつもりだ
811名無しさん@ピンキー:2010/09/11(土) 21:22:54 ID:uleoOadI
触雷!は俺も待っているんだがなぁ
812のどごしのいい声 ◆Nwuh.X9sWk :2010/09/11(土) 21:24:40 ID:jXR79SdM
ウェハース第二話投稿行きます
夏の夜は短いけれど、いそがしい暇にでも見ていただければ嬉しいです
では行きます
813ウェハース第二話 ◆Nwuh.X9sWk :2010/09/11(土) 21:26:28 ID:jXR79SdM
あれから一週間。僕は藤松さんと登校を四回、下校を三回共にした。
彼女は見れば見るほど魅力的で、話せば話すほど不可思議な存在だった。
まず、待ち合わせは必ず破られる。これは約束の時間に遅れるとか、場所に来ないとかそういうのじゃない。
忘れっぽいとかいうそんな野暮な話でもない。
必ず約束の場所へ僕が向かう前にわざわざ向こうから出向いて来る。
本人曰く待ち切れなかったらしいが、少し怪しい。
他にも付き合い始めてからは外出の時によく彼女と遭遇するようになり、よく買い物や散歩を一緒にするようになった。
その時の彼女はとても楽しそうで僕としても嬉しいが、よくよく考えてみると少し怖いというのが僕の本音だ。
外出の際にはよく後方に視線を感じるようになったし、学校にいても彼女とよく視線が合うようになった。
僕が彼女の事をいきなり気にし始めたせいもあるんだろうが、これはどういう偶然なんだろう?理解できない理由が怖いのは人間の動物としての本能で当然だ。
それにまだ、ドッキリ宣言も無い。
でも……怖い反面、楽しいというのもまた本音なんだ。
少し臭いが、彼女の僕といる時だけに見せてくれる屈託の無い笑顔が好きだ。
学校や、友人達の前ではあまり見せない彼女の笑顔。それを僕の前では惜し気も無く見せてくれる。
それが嬉しい。少し自分でも自分が歪に見える。
それから僕の心の中に一つの疑問が浮かんできた。
もしかして、ドッキリじゃないかもしれない。ありえない。
だってまだアドレスも知らなかった二人が、まだ五、六回しか話したことが無い男女が恋なんて出来るわけが無い。
それは恋じゃない、勘違いだ。夢想だ。偽者だ。
確かに僕はモテないし、異性と駆け引きもしたことも無い。
でもこれだけは知ってる、賭け値無しに動く人間なんていないんだ。
そうしている内に、一つの不安が芽吹いた。
好きになってしまったらどうしよう。
僕が彼女のことを本当に好きになってしまった頃、彼女が今僕に抱いている恋心の正体に気付いたら僕が捨てられるという不安。
嫌だ、そんなの嫌だ。
だったらどうしたらいい?決まってる。期待しなければいい。
僕が好きにならなければいい。僕が好きになるよりも早く、彼女に今の気持ちが偽者なんだって気付かせてやればいい。

814名無しさん@ピンキー:2010/09/11(土) 21:27:20 ID:J2a8wBPM
ねえ、どうして? どうして私(の作品)を見てくれないのよ!
あの女(作品)はもういないのよ!泣いたって騒いだってGJしたって、もう帰って来ないのよ!
私(の作品)だけを見てよ……わたし……だ……け…………を……………………
815ウェハース第二話 ◆Nwuh.X9sWk :2010/09/11(土) 21:29:10 ID:jXR79SdM
お兄ちゃーん、こまちちゃん来たー!」
この可愛らしい声の主は今年で五歳になる妹、穂波だ。歳の差は十二もある。
両親にも、僕にも懐いてくれているので可愛い事この上ない。
その穂波の最近のお気に入りは僕の登校前に僕の家に訪れる人物、藤松さんだ。
僕とは違い、幼さの赴くままに貪欲に人と接する妹は僕を迎えに来た藤松さんもその貪欲な好奇心を寄せ、今では藤松さんを誰よりも早く出迎える存在となっている。
歯磨きを終えて玄関に顔を出すと、もうさっきの声の主の姿は無かった。
ワンスターのスニーカーを足だけで履いて、玄関を出ると、この一週間でもはや当たり前になりつつある光景があった。
藤松さんと穂波の僕が来るまでの談笑だ。
藤松さんはしゃがんで穂波と目線を合わせ、真剣に穂波の話を聞き、穂波は真剣に話を聞いてくれる藤松さんを退屈させまいと身振り手振りも合わせて、しどろもどろになりながらも必死に話しを面白くしようとしている。
「ごめん、遅くなった」
「あっ!お兄ちゃんまって!」
僕を遮って、穂波は藤松さんに何かを耳打ちする。それから二人は笑顔で僕を見上げる。
「なんだよー穂波、お兄ちゃんにも教えてくれよー」
「お姉ちゃんと二人だけのひみつー!」
穂波は悪戯っぽく笑って、藤松さんに目配せする。
「そうだよ、私と穂波ちゃん二人だけの秘密だもんねー」
藤松さんもニコニコと笑みを浮かべながら穂波に調子を合わせる。こうやって二人並んで見ると、仲いい姉妹っぽく見えるな。
「じゃあね、穂波ちゃん」
「いってらっしゃーい!」
腕がちぎれんばかりに穂波はブンブン手を振って僕らを見送る。それも藤松さんと僕が突き当たりの角を曲がるまでずっとだ。
もしかして母か父が止めるまで振ってるかもしれない。
「毎朝ごめんね、迎えに来ちゃって」
僕としては迷惑でもないし、さっきみたく穂波も喜んでる。
穂波……そういえば今日、母さん夜勤だったな。保育園に迎えに行かなきゃ…。
「大丈夫だよ、無問題」
「ごめんついでに、今日帰り一緒に……」
待て、少し待て。
「じゃあさ、帰るついでに……」
何を考えている。落ち着け、冷静になれ。何を期待している。
「一緒に保育園に穂波を迎えに行かない?」
駄目だ、言うな!!
「えっ?いいの、私も行って」
「うん、穂波も喜ぶ」
藤松さんはウフッといった感じで笑うと僕の手を握った。
いきなりだったから手の触れ合いや、見知らぬ他人の温かさが心に刺さって、言葉を遮った。
「お言葉に甘えて、……すごく嬉しい」
「なんで?」
「だって、初めてじゃない?神谷君から……、真治君から誘ってくれたの」
戻れなくなるぞ。
816ウェハース第二話 ◆Nwuh.X9sWk :2010/09/11(土) 21:30:37 ID:jXR79SdM
グラウンドの隅、木陰覆われたベンチ。僕たちはいつもそこで昼ごはんを食べる。
ベンチ自体は僕と平沢がベルマークを集めて回り、学校に寄付して申請させた物だ。
「どうしよう…」
食が全くと言っていいほど進まない。憂鬱が箸もとい、食欲を塞ぎ止めている。
「まだ今朝言ってた事気にしてんのか?」
カレーパンを齧って、平沢が僕のコーヒー牛乳を開ける。
「勝手に開けるなよ」
「いいじゃん、それに開けてやったんだ」
僕が見るに平沢は豪快な奴だ。懐が大きいといってもいい。それに声もデカイ。
それから変なところが繊細で、こういう人の事を見所のある人物って言うんだと思う。
顔もいいから異性からも人気がある。入学から二ヶ月で二人振っただけはある。
「それに、もうそれドッキリじゃないと思うよ?」
僕は食べあぐねていたカツサンドから、平沢へ視線を移動させた。
「あーっと、聞いてみたんだけどさ。頼まれてた事」
「うん」
「藤松さんの交流関係。どうもドッキリの企画とか無いみたいだわ。さっきサンシャインのグループに聞いてみても藤松さんとはたまに話すくらいらしい」
サンシャインとはウチのクラスで最大の女子グループのリーダーで、これもあだ名の由来のキャラクター通りの顔をしていて、何だか正方形っぽい、というか顔が角ばっているのだ。
おまけに僕らが一年の頃、彼女が変に格好をつけてある女子生徒の非行を庇った発言をしたのが先生バレ、咎められた時。
彼女は泣きながら「私にも友情はあるんだー!」と叫んだ事から、庇われた生徒のあだ名は阿修羅マンとなった。
例に漏れず、阿修羅マンも中々のブサイクである。
「よかったじゃん、マジもんだぜ告白は」
「それならなおさら駄目だ」
平沢は僕のコーヒー牛乳を一口含んでから僕の方を見た。
「いいよ、今日は奢ってやる」
「いや、こっちじゃなくて」
「少しは気にしろよ」
「駄目って方だよ、俺の気になってんのは」
コーヒー牛乳の侘びは必ずさせてやる。
「だって、話したこと……無いんだぜ?アドレス交換したのも告白された当日だし」
「そんなにこだわるトコかね?どうせ高校生活が終わるか、それぐらいには別れてるだろ?」
「嫌なんだよ、そういうの。」
「何で?楽しいぜ?」
「そんなん犬畜生と変わらん」
平沢はムッとしたのか、眉間に皺を寄せて、コーヒー牛乳をまた口に含んだ。
「お前、意外と付き合うと重いタイプなんだな。少し意外だわ」
「無駄に傷つくのが嫌なだけだ」
「何も知らんくせに、この童貞が」
「童貞の方が義理堅くて信頼出来るんだよ、俺は」
「じゃあ、大人は信頼できんのか?」
「ああ。全く」
そこまで言うと平沢は黙った。第一童貞だ、じゃないは関係ない。
即物的に考える。そういうのが好きじゃないんだ、僕は。
817名無しさん@ピンキー:2010/09/11(土) 21:31:07 ID:7Ez7rak1
>>813
ナイス!!何かすげぇ嫌な予感しかしないのはきっと俺だけだ!!
そして、喧嘩売るつもりは無いがヤンデレ家族の作者らしき奴をネトラレSSで見掛けたのだが
818ウェハース第二話 ◆Nwuh.X9sWk :2010/09/11(土) 21:32:38 ID:jXR79SdM
七月になってから六月の下旬からの蝉の声はピークに達していた。
五月蝿い蝉達の熱烈なセックスアピールとのせいで午後の授業は全く眠れなかった。午後最後の授業は担任の籠谷の国語だったため、そのままホームルームに突入し、無事僕たち、学徒の一日が終了した。
「んじゃ、明日の日直は宮部ね。はい起立!礼!解散ー」
僕が席を立った直後、肩を叩かれた。
振り向くと、あのウフッ感じの笑顔を浮かべた藤松さんがいた。少し、寒気がした。
「帰ろう?」
「あっ、うん。そうだね」
クラスメイトからの視線が痛い。特に男子からの……。
告白翌日はもっと騒がれていたが、人の噂も七十五日。一週間経てば視線が突き刺さる程度になる。
ちなみにこの熟語に使われている『七十五日』というのは稲が植えられてから実るまでかかる日数だそうだ。
「おい、かみやー」
この間の抜けた声、平沢だ。
「今日こそ、一緒に帰るぞー、最近付き合い悪いんだよ…お前……。もしかして今日もか?」
「えっと……」
「うん。そう今日もなの。ごめんね、平沢君」
僕が弁明するよりも先に、藤松さんが断った。目が据わってる。
「ああ、全然構わんよ。藤松さんの頼みなら仕方ない」
承諾したにしては、ガン飛ばしすぎだろ、平沢。
「いこ、真治君」
「し、真治君?おい、神谷…」
「じゃあね、平沢君」
また僕が釈明するよりも先に藤松さんが手を引いて教室を出て行くことになった。
最後まで、平沢を含むクラスの男子からの殺気を孕んだ視線が僕の後頭部に突き刺さっていた。
帰りのバスも同様に、僕の手を嬉しそうに握る藤松さんを尻目に僕はただただ小さくなる事で視線が突き刺さる面積を減らすのに必死だった。
嬉しそうな藤松さんに手を離してなど調子が狂いっぱなし僕が言えるはずもなく、やっと緊張が切れたのは電車に乗って二駅通過した後だった。
「藤松さん……」
「うん?」
相変わらず嬉しそうな藤松さんとは対照的に、僕は憔悴しきっていた。白髪が増えたかも知れない。
「学校で手を繋ぐのはやめよう?恥かしいし……」
「私は恥かしくないけど……、私と手を繋ぐの、イヤ?」
「うん。嫌じゃないけどね、バカップルっぽいでしょ?そう見られるの、藤松さんも嫌でしょ?」
藤松さんは少しの間僕をジッと見つめると、溜息を吐いた。
「分かった。私も少し浮かれ過ぎたね、ごめん」
謝るのは、僕の方だ。勘違いでも、こんな僕を好きになってくれた。
それを罰ゲームで、なんて疑った僕の方が謝るべきなんだ。
819ウェハース第二話 ◆Nwuh.X9sWk :2010/09/11(土) 21:34:21 ID:jXR79SdM
「あら神谷くん、あの子カノジョ?」
穂波を呼んでもらって、穂波が藤松さんとじゃれていると不意にそんな事を聞かれた。
「…はい、そうです」
「穂波ちゃんから聞いたわよ。可愛い子ねぇ、良い子?」
「はい……。僕には勿体無いくらいで」
「おーにぃーちゃーんー!!」
穂波が僕を急かす声が聞こえる。
「すみません、じゃあ」
「はい、またね」
頭を下げて、穂波と藤松さんの方へ向かう。
帰り道はいつもの三倍も長くなった。
穂波の道端での当たり前に対する発見、それに付き合う俺と藤松さん。
笑い声が絶えない帰り道。藤松さんの左手を穂波が握り、穂波の右手を僕が握る。なんだか親子って感じだ。
家までの直線の道に入った時、穂波が僕の手を引いた。
「お兄ちゃん、ほなみカギ開けてくる!」
「よし、穂波隊員!ドアのロックを解除してきてくれ」
回りに車、自転車がいなくなったのを見計らって、僕は穂波に自宅の鍵を渡した。
それと同時に一気に穂波は駆け出した。
「こけんなよー」
藤松さんと穂波の後姿を見送る。
「今日はありがとう、保育園まで付き合ってくれて」
「ううん、お礼を言いたいのは私の方。すっごく楽しかったもん」
彼女の語尾の『だもん』って言葉だけで胸がキュンとした。
「家に帰っても、ずっと一人だし……」
「えっ?」
藤松さんの表情が暗くなる。穂波を見送った笑顔を浮かべたまま。
「私の家ね、昔は貧乏だったの。私小五の時、新聞配達してたんだから。それでね、お父さんとお母さんに謝られちゃった。ごめんね、もっと私達頑張るねって」
藤松さんの手が寂しそうに見えた。待て、落ち着け。
「それからお父さんは海外に単身赴任、母さんは病院に非常勤に行くようになった。だからね、家じゃいつも一人なんだ、だから穂波ちゃんが羨ましい」
勘違いに決まってる。彼女を暗闇から救い出せるのは、僕以外にもいる。僕よりもふさわしい人も。
「あのさ……藤松さん」
「うん?」
「穂波を僕が迎えに行く時は決まって親父と母さんが迎えに行けないときなんだ。そんなのが月に五回くらいある。そういう時は僕と穂波で晩御飯を作るんだ」
でも、でもさ、今は。今は僕しかいないんだ。
「藤松さん。今日、晩御飯一緒に食べない?」
そう言って、僕は藤松さんの手を握る。
だってこのまま、また来た道を一人で帰る藤松さんの背中を見送る自身が僕には無かったんだ。
後悔なんて、反省なんてご飯を食べた後にでも僕が一人ですればいい。素直に、そう思ったんだ。
「……いいの?」
「うん、藤松さんがいいなら。穂波も喜ぶしね」
何より、握り返してくれた藤松さんの手は温かくて、力強くて、その事が僕は嬉しかった。嬉しかったんだ。
820ウェハース第二話 ◆Nwuh.X9sWk :2010/09/11(土) 21:36:09 ID:jXR79SdM
投稿終了です
途中のレスは本編とは関係ありません
ありがとうございました
821ウェハース第二話 ◆Nwuh.X9sWk :2010/09/11(土) 21:40:03 ID:jXR79SdM
ごめんなさい
最後の見送る自身がなかった〜のとこ、自信です
誤字表記すみませんでした
822名無しさん@ピンキー:2010/09/11(土) 21:40:26 ID:UdNvZhjb
GJ!
ウェハース楽しみにしてます!
823名無しさん@ピンキー:2010/09/11(土) 21:59:02 ID:J2a8wBPM
GJ!&割り込みスマソ
824名無しさん@ピンキー:2010/09/11(土) 22:34:45 ID:GWwGi6SR
GJ!

>>823
ID見れば関係ないことはすぐわかるし
よくあることだから気にしなくていいと思うよ
825名無しさん@ピンキー:2010/09/11(土) 23:11:05 ID:Vmr0B95o
GJ!
ほんの少しずつですが危うくなってきてる感じが良い。
826名無しさん@ピンキー:2010/09/12(日) 01:09:58 ID:w4fDNcXL
名作揃いで感動しました!!
僕も頑張ってみようかな
827名無しさん@ピンキー:2010/09/12(日) 01:40:15 ID:CTgemWzS
初めてまして

そして初投稿です


828Are you Yota?:2010/09/12(日) 01:42:16 ID:CTgemWzS


++++++++++



「もう我慢できないよ。」

ここはとある中学校の屋上。大抵の中学校は屋上への出入りは禁止で、ここも例外ではなく屋上へ行くことは堅く禁じられてる。

「星奈(せいな)。落ち着け!早くその物騒な物を捨ててくれ!!!」

しかし今はいろいろと訳があり、スタンガンを持った少女とその少女に追い込まれた少年が学校の放課後の屋上にいる。

最近の若者は性が乱れていて、人気のない場所で躊躇なく性行為をやるのが当たり前となってきている。
しかし見る限りそのような雰囲気ではなく、更なる危機的状況が起きていた。主に少年に。

「あはは。 変な陽太。あたしは素直になれない陽太(ようた)のためにここまでしてあげてるんだよ。」

少女は焦点が定まっていない淀んだ瞳で外に追い込んでいる少年を愛しそうに見つめながら、徐々に少年に迫っていった。
少年も迫って来る少女から校庭が見える外側に逃げていた。

「だからそれはお前の被害妄想だ!」
「うん。あたし達は相思相愛だよ。」
「くそっ、こっちくんな!!!」

少年はついにフェンスまで追い込まれてしまった。

「大丈夫だよ。陽太は少しビリビリなって寝てもらうだけだから。」



「それが嫌なんだ!この馬鹿!」
「もう!………ちゃんとその後にあたしとの営みができるから。」
「お願いだからもうやめてくれ……」

フェンスに寄りかかりついに涙を流す少年。

その時だった。いきなりバキッと大きな音が聞こえ、突如フェンスが折れてしまい、校庭に落下した。
もちろん、寄りかかっていた少年もフェンスと一緒に校庭に落ちていった。

「おああぁぁっ!」

悲鳴も虚しくあっという間になくなった。

「………いや………いやいやいや………いやあぁぁぁぁっ!!!」

新たな悲鳴。しかし今度は少年ではなく少女からのものだった。
彼女は焦点こそは取り戻したものの、絶望的な表情に変わりすぐさま少年の落ちた場所に駆けて行った。

829Are you Yota?:2010/09/12(日) 01:48:29 ID:CTgemWzS

※※※※※※※※※※




………ああ、綺麗な花だ………見たことないよ………てか、花にこんな感心するなんて俺は………綺麗な花だ………

………あれ?他にも人いたんだ………お兄さん、こんにちは………

………ああ、こんにちは………君は誰だい?………それよりもここはどこだい?

………僕は陽太………ここは綺麗な場所だよ………お兄さんは?

………俺も陽太だよ………綺麗な場所はわかった………具体的にここがどこだか教えてほしい

………具体的…決定的には言えないけど………多分あの世だよ

………マジか………俺は死んだのか………

『………太……陽太……』

………声が聞こえるね

………ああ………

………お兄さん、早く返事に応えなよ………あなたのことを待っている人が返事を待ってるよ

………おいおい、俺とは限らないだろ………同じ陽太なんだからお前かもしれないぞ?………お前こそ早く返事に応えろよ

………違うよ………僕は余命3年と宣告されていて、宣告通りに死んだんだよ………だから絶対に違うよ

………しかし

………いいんだ、もう……

………諦めんのかよ?

………え?




………諦めんのかって言ってんだよ!!!

………!!!…

………確かに余命宣告されその通りに死んだかもしれない………けどな、まだお前が生きることを願い信じている人がいるんだ………その奴らの気持ちを見捨てるつもりか

………だったらお兄さんだって同じでしょう………お兄さんこそこの声に応えてあげなきゃ

………俺は大丈夫だ………これの次にまた呼ぶ声が聞こえるはずだ………俺は多分何かの間違いで来ただけだと思うからな

………でも………

………俺の方が多分お前より長く生きたんだ………気にするな



830Are you Yota?:2010/09/12(日) 01:51:28 ID:CTgemWzS
………約束して下さい

………何を?

………必ずあなたも生き返ることを

………ああ、当たり前だろ

『…陽太………陽太…』

………ほら早くしろ

………絶対ですよ

………わかったわかった

………また現世で会いましょう

………ああ、現世でな


++++++++++


………また現世で…か………ぶっちゃけ俺は戻りたくないな………

『……太……陽太………陽太』

………………………

『…陽太………陽太…』

………約束しちまったもんな………仕方ない、ややこしい件があるがいっちょ蘇るか…

『陽太!!!』

+++++++++

「うーん………なんか花がムズムズするな…」

『おい!!今棺桶から声が聞こえなかったか!?』

棺桶?えっ?今俺はどのような状況なの!?

「おーい、暗いんだが」

蘇ってみたらいきなり暗い場所にいるなんて俺はどこにいるんだ?後せまいし無駄に花臭いし…

『やっぱり聞こえたぞ』
『本当か』
『いや俺も聞こえた』

待て、さっき棺桶と聞こえたがまさか………

「だ…出してえぇぇぇ」

火葬だけはごめんだ。
831名無しさん@ピンキー:2010/09/12(日) 01:54:36 ID:CTgemWzS


投稿終わります。


無駄に長編です
832名無しさん@ピンキー:2010/09/12(日) 02:05:00 ID:dHakeeQy
あなたはよたですか?
833Are you Youta?:2010/09/12(日) 02:28:36 ID:CTgemWzS
とんでもないミスをしてしまいました

×Are you Yota

○Are you Youta?


本当にすみませんでした。他にも誤字脱字があったら訂正します
834名無しさん@ピンキー:2010/09/12(日) 09:28:13 ID:SgZsCTkU
そろそろ次スレか?
835名無しさん@ピンキー:2010/09/12(日) 09:43:49 ID:aY7u/G/U
投下乙
新作きてくれてうれしい
836名無しさん@ピンキー:2010/09/12(日) 09:49:31 ID:Eu5U+aqy
ん?494 KBか…次だな…

新作乙、埋めネタ期待
837名無しさん@ピンキー:2010/09/12(日) 10:04:41 ID:1MPWD8No
ヤンデレの小説を書こう!Part36
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1284253470/
838名無しさん@ピンキー:2010/09/12(日) 12:00:27 ID:aY7u/G/U
>>837
839 ◆AJg91T1vXs :2010/09/12(日) 12:25:28 ID:2Zg9Ktfl
 >>837

 乙です。

 迷い蛾の詩、第参部完成しました。
 今から投下開始いたします。

 今回は、ラストにチョイ修羅場あり。
 崩壊への伏線を、少しずつ張って行きます。
840迷い蛾の詩 【第参部・鬱蛹】 ◆AJg91T1vXs :2010/09/12(日) 12:27:54 ID:2Zg9Ktfl
 その日の朝も、梅雨時にしては晴れていた。
 夏の日差しの下、煩わしい雨から解放された人々が、何かに憑かれるようにして道を急いでいる。

 しかし、そんな空模様も、夕刻になれば様変わりするものだ。
 昼過ぎには空一面を覆ってしまった灰色の雲は、今や大粒の雨を辺り一面に撒き散らしていた。

 雨の多い季節とはいえ、誰もが常に傘を持ち歩いているわけではない。
 朝の天気だけ見て油断した生徒達が、それぞれに文句を言いながら下校して行く。
 折り畳みの傘を持っている者は良いが、そうでなければ雨宿りだ。

「やれやれ……。
 こんなことなら、今日は歩いて来るんだったかな……」

 軒先に滴る雫を眺めながら、陽神亮太はうんざりした顔をして言った。

 通学に自転車を使っている亮太にとって、この季節の雨は天敵である。
 朝、晴れていると思って自転車を使えば、今日のように夕方からは雨が降り出す始末。
 傘を差して自転車に乗るのは危険だし、かと言って、屋根もないような学校の駐輪場に自転車を放置しておけば、瞬く間にチェーンやギアが錆びついてしまう。

 生憎、今日は折りたたみ傘を鞄に入れて来るのを忘れてしまった。
 その上、置き傘の類もない。

「仕方ないな。
 濡れるの覚悟で、自転車で帰るしかないか」

 諦めにも似た独り言をこぼし、亮太は下駄箱の中から自分の靴を引っ張り出した。
 この視界が悪い中、自転車で帰る事を考えると気が滅入ったが、それも仕方のないことだ。
 そう、亮太が思った時だった。

「あ、あの……」

 自分が声をかけられたと気づくのに、数秒の時間を要した。
 亮太が振り向くと、そこにいたのは黒い傘を胸に抱えた少女。
 昨日、わざわざ自分にジャージを届けに来た、月野繭香だった。
841迷い蛾の詩 【第参部・鬱蛹】 ◆AJg91T1vXs :2010/09/12(日) 12:28:45 ID:2Zg9Ktfl
「月野さん?
 どうしたの、こんなところで?」

「陽神君、今日は自転車だったんですね。
 だったら、調度いいです。
 この傘、先日お借りしたものですけど……今、お返ししますね」

 そう言って、繭香は亮太に傘を手渡した。
 まさに渡りに船といった状況だったが、それでも亮太は、不思議そうな顔をして繭香を見る。

 見たところ、繭香は自分に手渡した他に、傘を持っていない。
 通学にはバスを使っているようだったが、それでも傘なしで帰るわけにはいかないはずだ。

「ねえ、月野さん。
 傘を返してくれたのは嬉しいけど、君は大丈夫なの?
 学校にはバスで通っているみたいだけど、君だって、傘がなければ困るんじゃないか?」

「は、はい……。
 ですから……よかったら、一緒に帰りませんか?」

「一緒にって……そう言われてもなぁ……。
 俺、自転車だし……。
 月野さんと一緒にバスで帰って、自転車を雨ざらしにするわけにもいかないよ」

「それなら平気です。
 実は、今日は私もバスの定期券の期限が切れてしまって……。
 今日だけ切符を買うのも勿体ないから、歩いて帰ろうと思っていたところなんです」

「そうなの?
 だったら、別に問題ないかな。
 どっちにしろ、俺も自転車を押して帰らなきゃいけないし……」

 繭香の言葉に、亮太は何ら疑問を抱かずに頷いた。
 そんな彼の姿を見て、繭香も思わず笑顔を返す。

 定期券の期限が切れたというのは、実のところ嘘だ。
 ただ、亮太と一緒に帰るためには、そのくらいの嘘も必要だと思った。

 どのみち、自分は既に多くの者を欺いて生きているのだ。
 それに比べれば、この程度の嘘など可愛いものではないか。
 亮太も傘がなくて困っていたようだし、別に咎められるような事をしているわけではない。

「それじゃあ、俺は自転車を取ってくるから。
 月野さんは、ちょっとここで待っていてくれよ」

 繭香から渡された傘を片手に、亮太の姿が駐輪場の方へと消えてゆく。
 その後ろ姿を見送る際、繭香の胸の中を、ほんの少しだけ寂しい気持ちがよぎった。


842迷い蛾の詩 【第参部・鬱蛹】 ◆AJg91T1vXs
 降り続く雨の中、一つの傘の下で身を寄せ合って歩く少年と少女。
 少年は自らの傍らにある自転車を押し、少女の歩調に合わせて足を進める。

 路線バスで十分程かかる道は、歩いてゆくと、それなりに距離のあるものだった。
 いつもは、バスの座席の上でまどろむ暇もなく通り過ぎてしまう通学路。
 それも、こうして歩いてみると、なかなかに遠く感じられるものである。

 だが、今の状況は、繭香にとってはむしろ好都合だった。
 こうして他愛もない話をしながら、亮太と同じ時を過ごせるのだから。

「ねえ、月野さん。
 君の家って、どの辺りなの?」

「森桜町のバス停から、少し歩いた場所です。
 電車の駅まで遠いから、使うのは、いつもバスなんですよね……」

「それ、ちょっと不便だね。
 俺みたいに、自転車で登校したりとか、考えないの?」

「たぶん、無理だと思います。
 今日みたいに雨が降った時は、さすがに自転車を使うのは危ないですし……」

「そっか……。
 まあ、それもそうだな。
 雨の日は視界も悪いだろうから、転んでケガでもしたら大変だし」

 繭香の言葉に、亮太は妙に納得した表情で頷いた。

 彼にしてみれば、何気なく言った一言。
 しかし、それを聞いた繭香は、亮太の言葉を純粋に嬉しく思った。

 今まで、自分に向けられてきた心配は、裏を返せば心配している者自身の保身だった。
 親も、友人も、教師も、その誰もが、繭香が傷つくことで自分が恥をかく、もしくは自分が責められることを恐れていた。

 己の可愛さ故に向けられる、歪んだ同情。
 そんなもの、繭香は欲しいとも思わなかった。
 ただ、亮太のように、本心から自分の事を心配してくれる者が欲しかった。
 妙な損得勘定は抜きに、真っ直ぐに自分を見てくれる人と話したかった。

 学校でのこと。
 趣味の話。
 好きなものや、嫌いなものについて。

 僅かな時間の間でも、こうした話ができる相手と一緒にいるのは楽しかった。
 未だ、堅苦しい敬語を交えた言葉でしか話せないものの、自分から積極的に他人とかかわろうとしてこなかった繭香にとって、これは大きな前進と言える。
 もっとも、それは亮太の持っている、誰にでも対等に向き合おうとする姿勢があるからこそ出来たことなのかもしれないが。

 気がつくと、既に雨は止んでいた。
 空は未だ灰色の雲に覆われていたが、とりあえず、傘を差して歩く必要はなさそうだ。