【現在】ブラックラグーンVOL.13【ドライブ中】

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1名無しさん@ピンキー
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*保管庫
2chエロパロ板SS保管庫
ttp://sslibrary.gozaru.jp/
ttp://red.ribbon.to/~storage/index.html
2名無しさん@ピンキー:2010/07/30(金) 19:53:13 ID:BZsUv2s1
>>1

まぁ、世は全て乙ってこった
3名無しさん@ピンキー:2010/07/30(金) 21:01:39 ID:NFDW9YrW
乙です

*前スレ222『居候』と対になってますが、そちらを読んでなくても無問題です


この頃少し、レヴィがおかしい。

「じゃあな、お疲れ!」
返事も待たずに、レヴィは風のように事務所から去って行った。
帳簿から顔を上げると、開け放たれたドアの向こうに
後ろでひとつに結んだ長い髪の先っぽがひゅるんと踊るのが見えて、
それから勢い良くドアが閉まった。
ドアの向こうからは、コンバットブーツの遠ざかって行く荒々しい音がした。
あれは走っている。
弾むように。
そんなに急いで、どこへ行こうと言うのだ。

そう、この頃少し、レヴィはおかしい。

夕方といえどもまだまだ明るい外を見やって、俺はため息をついた。
彼女は最近、やたらと帰るのが早い。
夕刻になるとそわそわと時計を気にし出し、
無いようで一応はあるラグーン商会の終業時刻になると、電光石火の勢いで事務所を飛び出す。
目的は不明。
以前の彼女からは考えられない。
終業時刻が定められているとは言っても、ラグーン商会の業務は流動的だ。
いざ仕事が入れば日付をまたぐことなどざらであるし、
反対に暇な時は暇だが、だからといって特にすることも無いので、
なんとはなしにラグーン商会の四人全員が夜まで事務所に残っていることが多い。
その後は、レヴィとふたりでイエロー・フラッグに赴くか、屋台で食事をするか、
そうでなければ、残ったメンバーでやはりイエロー・フラッグか市場に繰り出すか。
どちらにしろ、業務後は彼女と過ごすことが多かったのだ。

それがどうだ。
最近の彼女は、時計の長針が12のところを過ぎると同時に、
待ちかねたとばかりにうきうきと帰って行く。
まるで、業務後にデートを控えたOLのように。
いつもは「契約のリミットまでに終わらせればいいんだろ」とばかりにマイペースな彼女だが、
近頃は、なんとしてでも定時までには終わらせる! 
という並々ならぬ決意を全身から漲らせている。
慌ただしく帰って来たと思ったら、その足ですぐさま別のどこかに飛んで行く。
のんびりと話をする暇も無い。
なにかあるのは確かだが、探りを入れる機会さえ無い。
しかも、その“なにか”は間違いなくレヴィにとって相当に優先順位の高い、心躍るような楽しい“なにか”、だ。
なんとなく、面白く、無い。
釈然としない気持ちを抱えたまま、俺は手元の帳簿に目を戻した。

絶対に、この頃かなり、レヴィはおかしい。

「あれー、彼女、もう帰ったのか」
続きを片づけようかと思った時、マグカップを手にした同僚のベニーがやって来て、
拍子抜けしたように俺ひとりしかいない室内を見回した。
「ああ、たった今、帰ったよ」
マシンのメンテナンスが終わったのだろう。
少し疲れたような顔で、くせのある金髪を伸ばして一本に束ねた頭を掻く。
「へぇ、早いな。ここのとこずっとじゃないか」
「ああ、そうだね」
「どうしたのさ、ロック。君も行かなくていいのかい?」
ベニーがこちらにやって来て、俺の座っているソファーの正面に腰かけた。
「行かなくていいのかもなにも、俺はなにも知らないよ」
ふうん、と意外そうな、しかしどこか面白がっているような顔をして、
ベニーはマグカップのコーヒーを啜った。

彼の好奇の視線を額に感じつつ、俺は帳簿に集中しようとした。
しかし、頭は勝手に別のことを考え出す。

――いつからだっけ……?

レヴィの様子がなんとなくおかしい、そう感じた一番初めは、いつだったか。
やけにてきぱきと仕事を片づけるのも、妙に帰りが早いのも、業務後の誘いを端から断るのも、
おかしいと言えばすべてがおかしいのだが、最初は――、

――そう、あの時だ。

十日ほど前、事務所に入ると、珍しくレヴィがパソコンを立ち上げ、
熱心に画面を覗き込んではなにかメモしているところだった。
彼女がパソコンを使ってなにかをしているところは、ほとんど見たことが無い。
だから、おや、と思って意識が向いた。
すると、俺が入って来たのに気づいた彼女は、明らかに慌てた様子でブラウザを閉じた。
あたふたとパソコンの電源を落とすレヴィの脇をすり抜けようとすると、
ふと、彼女がメモしていた紙が目に入った。

『玉ネギ、長ネギ、ニラ、ラッキョウ、ニンニク、イカ、タコ、アワビ、アジ、イワシ、サバ』

――なんだこれは?

盗み見するつもりなど無かったが、意外な単語の羅列に、思わず目が吸い寄せられた。

――食材?

「見んじゃねぇ」
すぐさまレヴィの手が机の上のメモを乱暴にさらっていったが、
妙な組み合わせの単語はしっかり記憶に焼きついてしまった。

――こんなものが必要な依頼、入ってたっけ?

俺の記憶には無かった。
第一、仕事で必要なものだったら、こんな風に慌てる必要などどこにも無い。
堂々と調べれば良いし、それよりも彼女のことだ、
どうせ俺かベニーに「調達しとけ」とか言って丸投げするに決まってる。

とすると、私用か?
レヴィが? 食材を? 私用で?
あのレヴィが?
……まさか、まさかとは思うが、もしかして、……手料理?

レヴィが料理。
余りにも似合わない光景だ。
まだ爆弾の調合でもやっていてくれた方がしっくり来る。
というか、どんな材料を使って料理しても爆発物に類似したなにかが出来上がる気がする。
レヴィが料理など、考えられない。
しかし、それ以外にあの食材のどんな使い道があるのかと問われると、それが思い浮かばない。

他に考えられるものといえば、……魔よけ?
ニンニクとかイワシで……。

――いや、駄目だ。

レヴィが吸血鬼や鬼なんか信じているわけがないし、
そもそも彼女を見たら吸血鬼や鬼の方が先に逃げ出すだろう。

――料理、なぁ……。

俺はしっかり脳裏に刻みついた食材をもう一度、思い浮かべた。
材料が妙に偏っている気がする。
野菜と、魚介類。
そういえば、レヴィはアメリカ育ちなのにタコは大丈夫なんだろうか?
欧米人はタコを忌み嫌うと言うではないか。
ふと頭をかすめたが、即座に打ち消す。
駄目なわけがない。
いくら「悪魔の使い」と言われていようがなんだろうが、レヴィがそんなことで怯むようには見えない。

あの組み合わせだと、どんな料理が出来上がるのだろうか?
あまり自分で料理をしないのでよく分からないが、炒め物とか、か?
俺は貧困な想像力を働かせた。

――レヴィが炒め物、ねぇ……。

野菜を刻んだり、魚をおろしたりするのだろうか。
あのレヴィが?
酢の物――は、違うか。
レヴィが知ってるわけがない。
じゃあ、マリネとか?
レバーとニラでレバニラとか?

俺は色々想像してみたが、レヴィが一品一品料理を作っていくなど、似合わないにもほどがある。
全部ぶつ切りにして煮込み料理、ぐらいならまだなんとか……。

――鍋、みたいな。

そこまで考えた時、俺はあのリストの先に連なっていたものを思い出して血の気が下がった。

そう、あれには続きがあった。
俺はあのメモに並んだ単語を頭の中で再生させた。

『レバー、牛乳』

これは良い。
彼女が牛乳を飲んでいるところなど見たことが無いが、これはまだ良い。
問題はこの先だ。

『チョコレート、ココア、コーヒー、お茶、香辛料、アルコール』

あのメモには、そう続いていた。
そして、俺の見間違いでなければ、こんなのもあったはずだ。

『生卵の白身、魚・鶏の骨』

これは一体なんだ!?
魚・鶏の骨って?
こんなものが必要な料理があるのか!?
俺が知らないだけ?
出汁に使うとか?
でも、そんなのわざわざ書くか?
生卵の白身、ってなんだよ!

食材全部ぶちこんだ鍋料理のようなものならレヴィ作の料理としてなんとか想像がつく、と思ったが。

――これ全部入れたらどんな闇鍋だよ!

俺はくらくらしてきた。
そういえば、日本人なら誰でも知ってる青いねこ型ロボットが出てくる漫画のガキ大将が、
たくあんや大福を入れた世にも恐ろしいシチューを調合していたが、
もしかしてあれに張る料理が出来上がるんじゃないか。
あのリストにセミの抜け殻が入っていたら、完璧に「ジャイアン・シチュー」だ。

――どうする?

俺は、その料理を、食べるのか?
真剣に、真剣に、俺は悩んだ。
レヴィの手料理。
危険すぎる。
が、興味はある。
……というか、正直に白状すれば、ちょっと食べてみたい。
かなり、真剣に、――是非。

大丈夫、食材もしくはそれに準ずるものしか入っていないのだから、食べて死ぬことは無いはず。
きっと彼女もこちらを殺そうとして作るわけではないだろう。
問題は味ではない。
心意気だ。
彼女が料理を作ったという、その事実が大切なのだ。
俺だって男だ!
彼女をがっかりさせることだけはすまい。
……そのためにも、心の準備ができて良かった。

――と。

そう思っていたのに!

手料理どころか、あれからレヴィとは食事すら一緒にしていない。
一人でここまで妄想を繰り広げた俺が馬鹿みたいじゃないか。
馬鹿みたいというか、馬鹿そのものだ。

そう、確かにあの時が違和感を覚えた始まりだった。



――じゃなくて、帳簿帳簿……。

一向に埋まらない欄をどうにかしようと意識を紙面に戻した時、
レヴィが出て行ったばかりの事務所のドアが開き、ラグーン商会のボス、ダッチが帰って来た。
コーヒー色をした大柄な体がドアをくぐり抜ける。
「お帰り」
「……あぁ」
端切れ悪く返すダッチの顔は、どこか憮然としている。
「今そこでレヴィとすれ違ったんだが……」
黒いサングラスの向こうの表情は見えないが、声には困惑が滲んでいた。
「あいつ一体どうしたんだ? 今日なにかあるのか、ロック。あいつ、地面から十センチほど宙に浮いてたぞ」

――俺に訊かないでくれ……。

ため息が漏れ出た。
「ロックも知らないんだってさ」
額に手をやった俺に代わって、ご親切にもベニーがダッチに説明してくれる。
「お前も知らないのか?」
「……知らないよ」
自然と渋面になった俺の顔を見て、ダッチが唇の端を歪めて笑った。
「ほう、お前さんも知らないとはねぇ」

「浮気じゃないの?」
さらりと、本当にさらりと、「トイレじゃないの?」とでも言うかのようなさりげなさでベニーが言った。
「はぁ!? なんでそうなるのさ」
「ロック、君は分かってないよ。
日本人はシャイなのかもしれないけどね、女性にはきめ細やかに対応しないと。
君は素っ気なさすぎるよ。
それじゃあ他の男に横からさらわれたって文句は言えないんじゃないかな」
涼しい顔をして、ベニーはマグカップを口に運ぶ。
「……レヴィはそんなこと――」
「おやおや、たいそうな自信だね」
マグカップの縁から、ベニーの視線が向けられた。
「いや、そうじゃなくて――」
「ベニーボーイ、あんまりいじめなさんな。俺はむしろちょっとばっかり安心したぜ」

最も良識のあるこのボスが助け船を出してくれたかと思いきや、
「安心」などというわけの分からない単語が飛び出してきて、
ほっとしかけた俺はまた顔を引き締めた。
「“浮気”ってのは、定まった恋人なり連れ合いなりがいる奴のするもんだろ。
俺はお前等が一体どうなってんのか、セイモア海峡の渦潮のごとく気を揉んでたんだぜ。
――ま、そういうことになってたんなら話は簡単だ。
あとはお前さんが男を見せて奪い返せば良いだけの話だ。なぁ、ロック?」
「……………………」
ため息すらつく気になれない。

――楽しんでる。このふたり、絶対楽しんでる。

しかし、言われてみれば、レヴィとは「おつき合い致しましょう」「そうしましょう」
といった取り決めを交わしたわけでは無いので、俺たちはまだ“浮気”すら成立しない間柄なのだ。
レヴィがなにをしていたって、それに文句をつけられる立場では無い。

――いや、でも、レヴィに限ってそんな……!

「――帰る!」
俺は帳簿をたたんで、ソファーから立ち上がった。
「そうか。お疲れさん」
「対処するなら早い方が良いと思うよー」
どことなく笑いを滲ませた声を背中に聞きながら、俺は帳簿を所定の場所に戻した。
「じゃあ、お先に」
ドアを閉めた途端、中からふたりの笑い声が聞こえてきたが、
意志の力で気にしないことにして、俺は事務所を後にした。



まだ昼間の熱気が残る往来を歩きながら、さて、これからどうしよう、と考える。
夕食をとるのに良い頃合いだが、ダッチやベニーと一緒に飲みに行くという選択肢は無くなった。
レヴィ――は、あんなに急いで出て行ったのだから、なにか用事があるのだろう。
尋ねて行って追い返されたり、誰か別の奴といるところを目撃するのは御免被りたい。
屋台か自分の部屋で夕飯、でも良いが、ひとりの食事というのはどうにも味気ない。
なんだかんだ言って、業務時間外は結構いつもレヴィと一緒にいたんだよなぁと、俺は虚しく思い出した。

――イエロー・フラッグにでも行くか。

少なくとも、部屋でひとり侘びしく食事をするよりかはましだ。
そう考え、俺はこの街の中でも最もきな臭い行きつけの酒場へと足を向けた。

 * * *

まだ夜も浅い店内の客はまばらだった。
照明を落とした店の中に、ジャズ・ファンクが低く流れる。
その16ビートを聞くとはなしに首の後ろで感じながら、俺は丸テーブルの間をすり抜けた。
全部のテーブルが埋まればかなりの人数を収容できそうなホールを突っ切り、カウンターのスツールを引く。
わずかにスツールをきしませて腰かけると、
カウンターに背を向けてグラスを磨いていた店主のバオがこちらに気づいた。
「よぉ、ロック。――ひとりか? “トゥー・ハンド”はどうした」

――まただ。

みんな同じセリフしか言わない。
「ひとりだよ。レヴィは知らない」
うんざりして吐き出すと、肩越しにこちらを見ていたバオが正面を向いた。
「……なんだよ、機嫌悪いな」
「別に悪くないよ。――ハイネケンひとつ」
「――はいよ。……それのどこが悪くねぇんだ。この頃あいつの姿見ねえから訊いただけだろ」
「だから、知らないって」
レヴィはイエロー・フラッグにも来ていないのか。
頭の片隅でそんなことを考えながら、俺は栓を抜いて渡された壜をあおった。
早くも表面に水滴をつけ始めている壜は、一日分の熱を溜め込んだ手に冷たく、
すっきりと冷えたビールは開いた喉をすべり落ちてゆく。
熱さにぐったりしていた食道が生き返り、炭酸が鼻の方に抜けた。

――ああ、やっぱり仕事の後の一杯は最高だ。

「いよ――――――ォ、ロック! ひっさしぶりィ!」
少しだけ気分が上向いたと思ったら、聞き覚えのある声が背中から降ってきた。

この声は、と思った一瞬後に、どさっ、と隣のスツールに勢いよく女が座った。
「や、やあ、エダ……」
確認するまでもないが一応目を向けると、そこには思った通り、暴力教会のシスターがいた。
「なんだよなんだよ、シケた顔してんなぁ」
シスターはシスターでも、エダはそんじょそこらのシスターではない。
黒いサングラスの向こうで好奇心丸出しの顔をした彼女は、
普段着ている黒い尼僧服の鬱憤を晴らすとばかりにハジけた格好をしている。
お世辞にも上品とは言えないロゴの入った短いキャミソールに、タイトなミニスカート。
ミュールをつっかけた脚をぷらぷらさせながら
「おーいバオ、あたしワイルド・ターキーな」
などと注文している様子は、どう考えてもシスターなんかには見えない。

――しょっぱなからワイルド・ターキーかよ……。しかも、ロックで。

顎をきゅっと上げて見事な飲みっぷりを見せたエダは、グラスを置くと、
「で? お前の片割れはどうしたよ」
ニヤニヤと、面白いものを見つけた捕食者の目で見てくる。
「片割れって?」
「なぁーにスッとぼけてんだよ。レヴィのことに決まってんだろ」

――あぁもう、どいつもこいつも俺の顔見りゃ「レヴィ」「レヴィ」って、他に言うこと無いのかよ!

なんだか疲れがぶり返した気がする。
頭も口も回るエダを体よくあしらえる元気など、どこにも残っていない。
「一緒じゃないよ」
「んなこたぁ見りゃ分かるんだよ。なんで一緒じゃないのか、っつってんだろ。痴話喧嘩か?」
なんでそこに「痴話」がつくんだ……。
しかし、こんなことで反応していたら彼女の思う壷だ。
「喧嘩した覚えは無いよ」
俺は極力そっけなく言った。
「じゃ浮気か?」

――またこれだ。

腹の奥底から深いため息が出そうになった。
俺はうんざりしたが、さっきの二の舞は御免だ。

――その手には乗るか。

なかなかあいつもやるじゃねぇか、サルだサルだと思ってたが、やっと人間に進化したらしいな!
とかなんとか言いながら愉快そうに笑うエダを遮って、俺はなるべく感情的にならないように言った。
「レヴィと俺はそんなんじゃないよ。レヴィが他の男といても、別にそれは“浮気”じゃない」
すると、エダは急にぴたりと笑いやんだ。

「ヘイ、ロック。そいつはどういう意味だ?」
ひたとこちらを見据えてくる。
突然、真顔になった気がする。
サングラスの奥の目が全く笑っていない。
「……どういう意味もなにも、レヴィと俺はそういう間柄じゃない、っていう意味だよ」
「……へェ? 『そういう間柄じゃない?』 
じゃ、楽しむだけ楽しんで、あいつはキープって、そういうわけかい?」
「え!? 楽しむって、どうして俺の話になってるんだよ!」
俺は仰天した。
あまりにもびっくりしたせいで、声が一瞬高く飛んだ。
今、口の中になにも無くて良かった。
なにかあったら確実に噴出していた。
藪もつついてないのに蛇が出た気分だ。
「黙れ。それともラブドールの代わりか?」
「ちょっ! ちょっと待ってくれ! どうしてそう話が飛躍するんだ!」
慌てて話の流れを修正しようとしたが、エダは自分のペースを少しも乱さず、
カウンターに肘をついて新しくワイルド・ターキーを注ぎ足し、優雅にあおった。
「飛躍? どこが飛躍だ。ヤることヤっておきながら、『そういう関係じゃない』ときたもんだ。
だったら、キープか遊び、ラブドールかフッカー代わり。他になにがある?」
とん、とグラスをカウンターに置く。
余りに余りなその選択肢に、俺は唖然とした。
そりゃ、あいつだって浮気のひとつもしたくなるわな、というエダの声が右から左に抜けていく。

――参った。なんでそんな話になるんだ……。

言葉が出ない俺を、エダは冷たく見ている。
「図星か」
「違っ! だいたい『ヤることヤって』って、どうしてそれ前提なんだよ!」
「お前な、エレメンタリー・スクールのガキじゃねぇんだぞ。それともヤってねぇってのかい?」
「…………」

……そういうわけではないのだが、そんなこと、人に知らせるようなことでは無い。
正直に申告して猥談のネタを増やすことは無い。
あの時のレヴィの様子なんか、他人の頭の中で一瞬だって想像されたくない。
しかし、ここで「ヤってない」などときっぱり断言するのもどうだろう?
これが他の誰かならそれで良い。
だが、今の相手はエダだ。
もしかしてレヴィからなにか聞いて知っているのかもしれない。
レヴィが女友達にその手のことをべらべら喋るとは思えないが、
それでも、エダがなにか知っていた場合、「ヤってない」などと嘘をつけば、
ますます「本気じゃないけど都合よく彼女を利用してるだけの人」みたいではないか。
もっと困るのは、俺が言ったことがレヴィに伝わることだ。
「ヤった」と言えば怒るだろうし、「ヤってない」と言えば悲しむだろう。
――いや、「悲しい」など決して本人は認めないだろうが、彼女の表情が凍りつく様が目に浮かぶ。
……こういうことを考えるのが「たいそうな自信」なのか?
いや、「自信」なんか無い。
それとは違うのだが……。

――あああもう、どうしてこんなことに? 

俺は頭を抱えたくなった。
どちらかと言うと、可哀想なのは浮気を心配する立場の俺の方じゃないのか? 普通に考えたら。

適当に流そうにも、エダの目はチョモランマの万年雪級に冷たい。
とてもじゃないが、このブリザードを笑ってやり過ごせる空気では無い。
俺がなにか言うまで百万年でも待ってやる、という勢いでエダはこちらをじっと見ている。

――なにか言わなきゃ、なにか……! ……でも、なにを?

言わなければ、言わなければ、なにか言わなければ、と焦ると余計に言葉はもつれて絡まる。
時間が経過すればするほど、言葉を出すタイミングのハードルは上がる。

「……言いたくない」
沈黙に耐えきれず、絞り出した言葉がそれだった。

――「言いたくない」ってなんだよそれ! そんなことで見逃してくれる相手じゃないだろ!

自分で言った言葉ながらあんまりな選択に、俺はどっと自己嫌悪に襲われた。
もっと他に上手い言いようは……、と脳味噌を総ざらえしようとしたその時、
エダが突然、腹を抱えて笑い出した。
こちらに背を向けていたバオすらぎょっとして振り返るような大笑いだ。

「……な、なに……?」
……今俺は、そんなに面白いことを言っただろうか。
この場をうまく収めるのに適しているとは思えないセリフだったと思うのだが、
これの一体どこにそんな爆笑されるような要素が?
アメリカ人のジョークのセンスは、いまいちよく分からない。
俺は呆気にとられてエダを見た。

エダはなんとか笑いを収めると、指をサングラスの奥に伸ばした。
目尻に溜まった涙を拭っている。
「あー、やっぱお前ら最高だわ」
そしてまた、肩を震わせてくっくっと笑った。
「あの……」
なにをそんなに笑っているのか、問い質そうにも俺の存在は綺麗に無視だ。

なにがなんだかさっぱり分からない。
しかも「お前ら」ってなんだろう。
「ら」って。
複数形。
話の流れからして多分レヴィのことだと思うのだが、
この一筋縄ではいかないシスターに訊いたって、まともに答えてくれそうに無い。

……なんだかどっと疲れてきた。
このハイネケンの残りを片づけたら退散しよう。
そう思った時、またしても後ろから声がかかった。

「おぅ、ボンクラに尼さん、久し振りね」
振り返らなくても分かる。このたどたどしい英語。
シェンホアだ。
長い黒髪の女が赤いチャイナドレスの裾をはためかせながら愛想良く近づいて来て、エダの隣に肘をついた。
「おー、“ですだよ”か。どうよ最近」
「お前まで“ですだよ”呼ぶないね。お前にやられるました怪我、ようやく完治したところですだよ」
「そりゃ良かったな」
「ちっとも良いないね! お陰でお仕事上がったりよ!」
「おいおい、私情持ち込むんじゃねぇよ。お前だってあたしの首とろうとしてたじゃないさ。
ありゃビジネスだろ? ビジネスはビジネス。プライベートはプライベート。
お前もプロだったらきっちり線引きしな」
「……お前もこれ、無駄に口回るタイプね。私そういう奴、一等苦手よ。
――おぅ、ところでボンクラ、あのアバズレ、一体どうしたか?」

ふたりが仲良く会話をしている隙にそっと退散しようと腰を浮かせかけていたのに、
タイミング悪く話を振られて、俺は仕方なくまた腰を下ろした。
「……どうしたって?」
「私、道ですれ違うましたら、あいつ、尻に羽生えてたね。笑顔でスキップ、そこし怖いでしたよ」
「スキップぅ!? スキップだって!? こいつぁ良い!」
自分の膝を叩いてげらげらと笑うエダの横で、俺はがっくりと体中の力が抜けるのを感じた。

スキップって、本気か?
いい大人がスキップだなんて、聞いたことがない。
「こりゃあ本格的に浮気かもしれねぇぞ、なぁコキュ?」
思わず額に手をやった俺の顔を、エダが面白そうに覗き込んだ。
「……誰がコキュだよ」
うらめしくエダを見ると、それを耳聡く聞き留めたシェンホアが首を突っ込んできた。
「おや、お前ふられるましたのか? さすがボンクラね」
にゃはははははははは、と彼女は高らかに笑う。
……笑いすぎだ。

「こいつ、あのエテ公が今頃他の男と腰振ってんじゃねえかって心配してたんだぜ」
俺を指さしながら楽しそうにシェンホアへ説明していたエダが、「な?」と首をこちらに巡らせる。
「な?」って、俺に同意を求めないで欲しい。
シェンホアはそれを聞くと、呆れたようにため息をついた。
「あのアバズレが浮気、本気で思うますのか? お前、アホと違うますか?」
「え……」
なんだか失礼な言われようだが、この人、実はなかなかまともな人なのかもしれない。
俺はほのかに期待した。
ようやく真っ当なことを言ってくれそうな人がここに……。

「あのアバズレと寝る男、それ自殺志願者か、たいそう頭の足りない子ですだよ。
あんなのに突っ込んだら根本から食いちぎられるますね」
前言撤回。
まともな人なのかもとか期待した俺が馬鹿だった。
ちっともまともじゃない!

エダはエダで、ちょっとそれ失敬なんじゃないかと思う勢いで大口開けて笑っている。
「――だってよ、自殺志願者」
エダはミュールを履いた足で、ガン、と俺の座っているスツールを乱暴に蹴飛ばしてくる。
かなりの衝撃が伝わってきてスツールが微妙に移動したが、言い返す気力すら沸かない。

もう駄目だ。
これ以上この食えない女たちの相手をしていたら、胃に穴が開く。
俺は「自殺志願者」だろうとなんだろうともうどうでも良い気分になり、
さっさと支払いをして退散しようと、尻ポケットの財布に手を伸ばした。

その時、「あらッ!」という声が頭上から降ってきた。
階段の上から聞こえてきたらしい、と気づいた時にはもう、
「あらあらあらあらッ!」
という声が、上下から平行に立体高速移動して俺の方に迫ってきた。
地鳴りと共に。

俺は肩越しに振り返り、その高速で突っ込んでくる巨体の姿を認めた。
「……マダム・――」
フローラ、の声は、その本人の体当たりによって塞がれた。
「ンマ――――――! 久し振り! やっと来てくれたのね! ンもう、待ちくたびれたわ!
来る前におデンワちょうだい、って言ったのに! 今日来てくれるなんて知らなかったワ。 
でもいいの、こうして来てくれたんだから。腕によりをかけてサービスしちゃうわよ!
あ、それから、アタシのことはマダムじゃなくてフローラって呼んでちょうだいネ!」
そう呼ぼうとしたのに、後ろから羽交い締めにされたので苦しくて声が出せなかっただけなのだが、
それすらも言葉にならない。
スツールに座った状態で後ろからみっちりと肉に圧迫され、身動きがとれない。
どこが胸なのか腹なのか腕なのかも分からない、ずっしりとした肉の塊に押しつぶされそうだ。
ウォーターベッドにのしかかられたら、きっとこんな気分だろう。

このままだと呼吸困難で死ぬ。
圧死、という言葉が頭をかすめた。
俺は必死に手を伸ばし、首に巻きついている腕の間に、なんとか呼吸する隙間を確保した。
「フ、フローラ、悪いけどこの腕、ちょっとゆるめてくれるかな?」
「あらーッ、ごめんなさいね」
ようやくぎゅうぎゅうに締めつけられていた拘束が解けて、俺は何度も荒い呼吸を繰り返した。
「で? どんな子がお好み? うちの子は一級品よ。あのじゃじゃ馬娘なんかにも負けないんだから!」
「あー、ちょっと、待って、くれる、かな、フローラ」
このまま黙っているととんでもない方向に話が進みそうだったので、
俺は回復していない呼吸の裏で、息も絶え絶えに彼女を止めた。
「あら、なにかしら?」
「その、今日は二階に用事があって来たわけじゃないんだよ」
必死で日本人の特技“愛想笑い”を発動させる。
「まあ、そうなの? やっとあのお邪魔虫を置いて来てくれたのかと思ったのに……」
“お邪魔虫”とはレヴィのことだろう。
ああ、彼女がいないと、こんな災難にも対処しなくちゃいけないなんて……。
俺は嘆きつつも、極力穏やかな表情を顔に貼りつけた。
「ああ、申し訳無いけど、違うんだ」
しかし、どうにも頬が引きつるのを感じる。
最近、愛想笑いの完成度が落ちたような気がする。
「そうなの……。とっても残念だわ……」
マダム・フローラの人差し指が唇に寄せられ、ふくよかすぎる体がしなを作る様を見ながら、俺は後じさった。
「じゃあフローラ、俺はこれで……」
「あらン、もう帰っちゃうの?」
「ええ、またいつか――」
日を改めて、などとつけ加えて本気にされたら困る。
俺は社交辞令を飲み込んで、急いで財布から飲み代を引っぱり出してカウンターに置いた。
「バオ、どうも、ごちそうさま」
「おぅ」
バオはそれ以上なにも言わなかったが、目が「ご愁傷様」と面白そうに笑っていた。

「お? これからレヴィとソープオペラかァ? せいぜい頑張れよ、ロメオ!」
そそくさと出口を目指す俺の背後からエダの声が追いかけてきた。
誰がロメオだ、と文句のひとつも言ってやりたいが、とにかくもう一刻も早くこの場から立ち去りたい。
「修羅場、そんな根性、あのボンクラ無いですだよ」
言いたい放題のシェンホアの声も聞こえてきたが、
俺はそんな彼女たちの声を振り切るように扉を開け、外によろめき出た。
 
散々だ。
本当に散々だ。
俺はどっと疲れの増した体を引きずるようにして自分の部屋へと戻った。
頭の中では、今日何人もの人に言われた「浮気」という言葉がこだまする。
もう何回言われたか、数え直す気にもなれない。
部屋の鍵を閉めてベッドに腰を下ろすと、自然とため息が出た。
そのまま後ろに体を倒し、天井を見上げる。

みんな面白がっているだけに決まっているが、そう言われると俄に心配の種が芽を出す。
レヴィはそういうことはしないタイプだと根拠も無く信じていたが、それが傲慢だと言うのだろうか?
俺に自信があるとかそういう話では無いのだが……。

俺は、彼女との短くないつき合いの中で見た様々な顔を思い浮かべた。
仲間に淫売扱いされるのは我慢ならないと感情の抜け落ちた顔で言った彼女、
自分を女らしく見せる気など全く無く、意地でも男に媚びを売らない彼女、
初めて抱き寄せるために触れた時、反射的に体を強ばらせた彼女……。
どうしても、レヴィがそっちの方面の遊びをするようには思えない。
そこまで考えたところで俺はひとつの可能性に行き当たり、はっと体を起こした。

――本気だったら!?

そう、「浮気」などではなく、「本気」だったら?
彼女とは浅からぬ関係になってはいるが、「恋人」でもなんでも無いのだ。
俺は勝手に相手は彼女だけと思っていたが、彼女もそう思っていてくれる保障など、どこにも無い。
彼女の方は仕方無く相手をしているだけだったという可能性だって、大いに有り得る。
そんな彼女が本気で惚れた男を見つけたとしても、俺はなにも文句を言える立場では無い。
彼女に男っ気が無かったのは、彼女自身にその気が全く無かったからだ。
彼女さえその気になれば、尻尾を振ってついて行く男など、ごまんといるだろう。
彼女に誘われてついて行かない男など男ではない。
正常な男なら、確実について行く。

しかし、それでも俺は、抱き締め返してきた彼女の手が背中でシャツを握り込む感触や、
抱き寄せて胸と胸を合わせた時、彼女の体からすぅっと力が抜けて俺の体に馴染む瞬間や、
俺の耳元で漏らす甘苦しい声のかけらまでもが幻想だったとは、どうしても思いたく無かった。

彼女はそんないい加減な女じゃない。
俺は自分に言い聞かせるように疑惑の塊を追いやった。

彼女があんなに浮かれて男とよろしくやってるわけがない。
男を連れこんでいるよりも、捨てねこでも拾って来ていると言われた方がよっぽど納得がいく。

――ああ、そうだ、そうに違いない。

なにかに情けをかけるだなど下らないといつもシニカルな彼女が、
動物風情のためにあんなに飛ぶように帰って行くだろうか、と言われると首をひねるところだが、
きっとそうに違いない。
俺は自棄に似た気分で、無理矢理そう結論づけた。

これ以上考えていても、あらぬ想像がむくむくと膨らむだけだ。
もう彼女の部屋に行って、この目で確かめてみれば良い。
明日の朝早くにでも行けば、逃げられることも無いだろう。
俺はそう決め、一日分の汗――今日の場合はほとんどが嫌な汗だ――がしみ込んだワイシャツを脱ぎ捨てた。
頭から冷たいシャワーを浴び、明日は絶対彼女に会いに行って真義を問い質す、
そう決心して、俺は雑念を洗い流した。




20名無しさん@ピンキー:2010/07/30(金) 22:34:36 ID:lLfDZoTQ
リアルタイムで投稿遭遇キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
21名無しさん@ピンキー:2010/07/30(金) 22:34:37 ID:GdCrfWzh
うほぉあああああああ
リアルタイム神様ktkr
生殺しらめぇ
22名無しさん@ピンキー:2010/07/30(金) 22:39:52 ID:smf35zc0
わあああぁあ!神が降臨なされたYO
しかもぬこのロック視点が読みたいとずっと思ってた!
ありがとう神!
23名無しさん@ピンキー:2010/07/30(金) 23:02:43 ID:NFDW9YrW
早速新作来てる!!待ってました!

フローラ登場が地味に嬉しいw
24名無しさん@ピンキー:2010/07/30(金) 23:50:41 ID:nMj7hCVS
俺はシェンホア登場がうれしいよ 
25名無しさん@ピンキー:2010/07/31(土) 11:51:45 ID:SoMX4Jpr
>>1乙っぱいくらべ!

新スレ早々ネ申がッ…しかも神ぬこ話がッッ!!
幸先よすぎるGJ!!
はやくぬことじゃれ合ってるレヴィたん見たいおハアハア
26名無しさん@ピンキー:2010/07/31(土) 19:56:37 ID:U/CobvYL
思ったよりロックはやきもきしてたんだねw
ぬこvsロック。俺はぬこの味方だよ。レヴィと風呂入っちゃえ!
>>19の続き

*本投下分にエロ無し

 * * *

次の日の朝。
俺は早めに起き、まっすぐにレヴィの下宿へと向かった。
途中、思いたって屋台で適当に朝食を買う。
レヴィも俺も朝はまともに食べないが、呼ばれてもいないのに手ぶらで押しかけるのもなんだろう。
これで本当にレヴィの部屋に男がいたら、目も当てられないが……。
俺はうっかり、レヴィが誰とも知らぬ男の腕の中ですやすやと眠っている光景を思い浮かべてしまい、
慌てて振り払った。
そんなはずは無い。
そんなはずは。
レヴィに限ってそんな。
……多分。

一人脳内で栓無いことを考えているうちに、あっという間にレヴィの下宿の前に着いた。
薄暗い廊下を突っ切って、階段を上がる。
決心したくせに、一歩一歩彼女の部屋に近づくごとに胸が騒いだ。

――緊張してるのか、俺……。

ついに彼女の部屋のドアの前に立った。
部屋の中は静かだ。
なんの音もしない。
ノックをしようと手を伸ばし、軽く深呼吸して一拍置いてから、思い切って軽く叩いた。
そして、ドア越しに呼びかける。
「レヴィー、いるー?」
なんとなく、中で起きた気配がした。
俺は合い鍵を取り出した。
「レヴィー、入るぞー」
鍵を鍵穴にさし込み、中からの返事を待たずに鍵をひねった。
室内からはレヴィのものらしき慌てた声がして、布がばさばさ音をたてている。
もうどうにでもなれと思い、俺はためらうこと無くドアを開けた。

その部屋の中の光景を見た時、俺は一瞬にして自分の顔がゆるんだのを感じた。
「おはよう、レヴィ」
さっきまでの不安はどこへやら、安らかな気分に満たされた俺に対して、
起きたばかりらしいレヴィの方は、めくりかけのシーツを掴んだまま困ったようにむくれて、
ベッドの上から睨みつけてきた。
俺は買ってきた朝食の入った袋を小さなテーブルの上に置き、
シーツをめくった姿勢のまま硬直しているレヴィに近寄った。
彼女はますます眉間の皺を深くする。
「浮気現場発見」
俺は、黒いタンクトップに飾り気の無い黒い下着姿のレヴィと、
彼女の腕の中に収まっている可愛すぎる浮気相手を見下ろした。

――ねこ、か……。

レヴィの片腕の中で、やはり今まで寝ていたのだろう、ぽやんとした顔をして見上げているのは、
小さなねこだった。
生まれたてには見えないが、片手でひょいと難なく持ち上げられそうなほどに小さく、
大きな丸い目であどけない顔立ちをしたねこは、まだおとなとは思えなかった。

――にしても、シーツの下に隠そうとしたわけ?

喉の奥から、小さく笑いが込み上げてきた。
いくら小さいとはいえ、そしていくら慌てていたとはいえ、シーツの下にねこを隠そうとしていたなんて。

レヴィはようやくめくったシーツから手を離すと、ふてくされたようにあぐらをかいた。
脚の間にちょこんと小さなねこが収まる。
「……女が寝てるとこに勝手に入ってくんじゃねェよ」
睨みつけながらむっすり言う彼女に、更におかしさが増す。

――勝手に入ってくんじゃねェって、いつも平気で人を目覚まし代わりに使うくせに。

朝に弱いレヴィは、外せない仕事があると「起こしに来い」と俺をこき使う。
電話は引いていない、目覚まし時計はまた寝てしまうから役に立たない、お前が起こしに来い、と。
だいたい合い鍵まで持たせておいて、しかもこれまで何度もレヴィの寝姿を見て、
隣で目覚めることだってざらなのに、この期に及んで「女が寝てるとこ」だなんて。

「――え? この子、女の子なんだ?」
おかしさをこらえて言うと、レヴィが目をつり上げた。
「ふざけんな、ロック!」
彼女に加勢するように、にゃあ、と小さなねこが鳴いた。
「あたしのどこが男に見えんだよ!」
ばつが悪いのか拗ねているのか、レヴィはわずかに唇を尖らせた。
いつもは女の子扱いをされるのを嫌うくせに、
女扱いされないのもそれはそれで気に食わないのだろうか。

――可愛い女。

「ん? 見えないよ。見えないけど、寝てるとこに俺が勝手に入っていってもいい女だと思ってる」
勘違いされてはたまらないので正確に訂正すると、今度はうっすら赤くなってうつむいた。
「……ふざけんじゃねェぞ」
「今更だろ? なに? そんなに見られて困るところだったの?」
うつむいたレヴィの眉が忌々しそうに寄せられた。
いかにも不本意そうな顔をして目を逸らす。

そうだろう。
彼女にとっては困るのだろう。
この様子だと、ねこと一緒に寝ていたに違いない。
冷笑的に現実を見据え、世の中を皮肉な舌で切って捨てる彼女にとって、
小さなねこを拾って世話してやり、あまつさえ一緒に寝ていたなど、不本意の極みだろう。

「おかしいと思ったんだ。ここのとこ、ずっと帰りが早いからさ」
それにしても、毎日毎日あんなにうきうきと飛んで帰っていたのは、このねこのためだったのか。
街中に違和感をばらまいて。
野良ねこでも拾って来ているのでは、と考えたことは考えたが、ここまで見事に的中するとは思わなかった。
決まり悪そうに脚の間に小さなねこを囲うレヴィを見ていると、ひどくほほえましい気分になった。

「俺はこの子に負けたのかー。悔しいけど可愛いな」
ここ数日のもやもやした思いは綺麗さっぱり消え去っていた。
茶色いトラ柄の体に、鼻先と喉元から腹にかけて、そして足先に白い毛の入ったねこだった。
あちらこちらに怪我をした痕があるが、まだ治っていないらしい傷はレヴィが手当をしたのだろう、
包帯が巻かれていた。
痩せてはいるものの、毛はふわふわしている。
レヴィの握りこぶしくらいの大きさしかない小さな頭に比べると、くるっとした目は大きい。
その目の色は、レヴィによく似たつやつやの茶色だ。

俺は、レヴィの脚の間にちょこんと収まっているねこに手を伸ばした。
その途端、小さなねこは弾かれたように身を翻してベッドから飛び下り、部屋の隅にすっ飛んで行った。
「あれ、嫌われたな」
レヴィの腕の中にいた時はあんなに無防備な顔をして見上げていたくせに、
俺に触られそうになった瞬間、突然獣に戻った。
警戒心剥き出しの目で俺を見てくる。
……仕方が無い。
ここでしつこくしても更に嫌われるだけだ。
俺はねこの方は早々に諦め、レヴィに機嫌を直してもらう方を優先することにした。

間が悪いのか照れているのか、
「あいつが勝手についてきた」だの「仕方なく置いてやってるだけ」だの、
無理矢理いつもの“シニカルなトゥー・ハンド”の体面を立て直そうとするレヴィをなだめて、
「他の奴には言わない」と約束をすると、彼女はどうにかそれで折り合いをつけたらしかった。

晴れて買ってきた朝食を広げ、渡された器によそおうとすると、レヴィが脇から覗き込んできた。
「カーオ・トムの具はなんだ?」
普段朝食などまともに食べないので粥ぐらいがちょうど良いと思って買ったが、
買い物をした時は正直上の空で、どんなの具を頼んだのかすらよく覚えていなかった。
「えーと、魚の肉団子かな」
目の前にある肉団子状のものと記憶とを、なんとかすり合わせる。
「肉団子か。だったらあいつも食えるだろ」
レヴィは、俺が肉団子をあのねこの小さな口にも入るように箸で割るのをじっと見つめ、
それ、玉ネギ入ってねェよな、とつぶやいた。
多分入ってないと思うけど、と返したところで、俺はようやくあのメモの正体に気づいた。
レヴィの態度に違和感を覚えた発端。
パソコンをいじるレヴィのそばにあった、不思議な取り合わせの食材が並んだ、あのメモ。

――ねこが食べられないものか。

そう気づいてみれば、玉ネギもイカも、ねこに食べさせてはいけない食材の代表みたいなものだ。
レバーや生卵の白身も駄目だとは知らなかったが、
それにしても、ねこを拾って来てそそくさと食べられないものを調べていたのかと思うと、また頬がゆるんだ。

聞くと、最初は凄い食べっぷりだっただの、チキンを喜んでいただの、レヴィは機嫌良くあれこれと話した。
ふと部屋の隅の冷蔵庫に目を向けると、側面にあのメモが張ってある。
毎日あれを睨んでは、ねこが食べられそうなものを買って来てやっていたのだろうか。
想像するだけでほほえましいが、ここでにやにやしたら、せっかく直ったレヴィの機嫌がまた悪くなる。
俺は必死で頬を引き締めた。
レヴィの口振りからすると、ふたりは仲良く同じものを食べているようだ。
人間用の食事は味が濃いし、バランスも偏るだろうから、
ねこ用のドライフードなり缶詰なりの方が良いのではないかと思ったが、
結局それは口には出さなかった。

レヴィは食事に構わない。
昼食は大抵デリバリーのピザで済ませ、夜は酒ばかり呑み、まともに食べない。
そして朝は前の日の酒が残っているか、ただ単に眠いかで、やはりまともに食べない。
そんなレヴィがちゃんと人間らしい食事をしているのだ。
レヴィにとっては絶対にそちらの方が良い。
そう思って、俺はなにも言わなかった。

「青ネギ入れんなよ」
粥の上にぱらぱらと散らばっている青ネギを細かく刻んだものを指してレヴィが言う。
「ああ」
ねこの分の器には入らないように気をつけてよそうのだが、どうしても紛れ込んできてしまい、
俺は箸でそれをちまちまと取り除いた。
とろりとした粥の中を逃げていく刻みネギを追いかけて奮闘していると、
部屋の隅にいたねこがそろそろと戻ってきた。
俺を警戒したまま、レヴィの側からベッドにのぼる。
「お、どうしたー? メシにつられたか?」
腰のあたりにすり寄られたレヴィが見下ろすと、ねこは彼女の脇の隙間から顔を差し入れ、
そのまま太ももに絡みつくようにてろんと伸びた。
「コラコラ、もうメシ食うんだから、起きてろ」
太ももの上でもぞもぞされてくすぐったいのか、レヴィは笑って身じろぎをした。
起きてろ、と言われてもねこは更に深く顔をうずめるばかりで、一向に言うことを聞く気配が無い。
隣から覗き込むと、俺の視線を感じたのか、ねこが目を上げ、
「なに見てんの? なんか文句でもある?」とでも言いたげに睨んできた。

「膝まくらか……。羨ましい……」
つい本音がぽろっと漏れた。
膝まくらなんて、自慢ではないが一回もしてもらったことが無い。
レヴィとはもう短いとは言えないつき合いになるというのに、一回も、だ。
俺だって四六時中べたべたするのは苦手だが、一回ぐらい
あの張りのあるやわらかな太ももに顔をうずめてみたいと思っても、罰は当たらないのではないか。
彼女の太ももの感触を知らないわけではないが、照れくさいのかなんなのか、
触れるのを許してくれるのはベッドの中でだけだ。
それに不満があるわけではない。
わけではないが、一度くらい穏やかに膝まくらをしてみて欲しいと思うのが人情というものだ。
膝まくらは男のロマンだ。

なのに、どうだろう。
一体何日一緒に暮らしたのか知らないが、
一か月足らずのつき合いであることは間違いないこの小さな新参者は、
さもそれが当然の権利だとでも言うかのように、
思う存分すりすりと顔をレヴィの太ももにこすりつけている。

「……ああ、可愛いのは卑怯だ」
恨みがましくうめくと、レヴィは勝ち誇ったように鼻で笑った。
「あんたは可愛くねェもんなぁ、ロック」
そうして、だれがするか、と俺に見せつけるように小さなねこの眉間を指でこすり、
耳のうしろを軽く掻いてやっている。
ねこは嬉しそうに、「もっと」とねだるようにレヴィの手に頭をすり寄せる。

俺も、これぐらい小さくて可愛くて、ふわふわしてたら……。
ついそんな事を考えてしまったが、俺が毛だらけでも気持ち悪いだけだろう。
この小さなねこの前には白旗を上げるしか無かった。

ようやくすべての青ネギを除去した肉団子入りの粥をレヴィに渡すと、
レヴィは器の中身を見せて「魚の肉団子入りの粥」と親切にねこに説明してやっている。
「ほれ、お前、魚も好きだろ?」などと、まるで人間の子どもに対するみたいだ。
レヴィは一旦器をねこの前に置いたが、その器にねこが口をつけそうになると、
思い直したようにもう一度取り上げた。
「あー、ちょっと冷ましてから食え」
そして、スプーンを突っ込んでかき混ぜ、唇をすぼめて何度も息を吹きかけて冷ました。

――なんだなんだ、この世話焼きっぷりは……。

俺は唖然とした。
ねこはねこ舌で熱いものは駄目なのだろうし、
買ってからそれなりに時間が経っているとはいえ、粥は粘度が高いせいで冷めにくい。
にしてもこれは、過保護というものではないか。
俺なんか一度もこんなこと……。
短時間のうちに膝まくらと粥の息吹きかけ冷ましという奇跡の光景を目の当たりにして、俺は眩暈がしてきた。

「ほれ」
しかし、この小さな幸せ者は、それがどんな僥倖であるのかには思いも及ばない様子で、
差し出された器に顔を寄せた。
レヴィが冷ました粥はまだねこにとっては熱かったようで、
小さなピンク色の舌が粥についた瞬間、びくっと震えて身を引いた。
しかし、また匂いにつられるかのように寄っていって、
ふんふんと白い鼻先をうごめかせてから少しずつ食べ始めた。
「――気に入ったか?」
レヴィがねこの細い首筋に声をかけても、振り向くことなくぴちゃぴちゃと食べている。
「……合格点のようだぜ」
「良かった」
これ以上レヴィの同居人に嫌われたくない。
俺はとりあえずほっとして、詰めていた息を吐いた。

買ってきたもう一品、ヤム・ウンセンには、レヴィは一向に手をつけた様子が無い。
さっきから箸を伸ばすのは俺だけなので、それを指摘すると
「うっせーな、野菜キライなんだよ」と返ってきた。
「野菜キライって、どっちが子どもだか分かんないな……」
先ほどレヴィのねこに対する態度はまるで母親が子どもに対するもののようだと思ったが、
レヴィの態度だって充分子どもだ。
どうやら、ヤム・ウンセンに入っている細切りのニンジンやキュウリが嫌らしい。
「レヴィは野菜足りてないよ。それにほら、これは野菜だけじゃなくて春雨も入ってるだろ?」
これこそ本当に子どもをなだめてるみたいだ……。
なにやってるんだろう俺、と思っていると、レヴィがきゅっと唇を尖らせた。
「……春雨なんかに騙されるか」
まるっきり子どもの表情だ。
「いや、騙すとか騙されるとかそういう問題じゃないだろ」
俺は呆れて、春雨と野菜が絡み合ったヤム・ウンセンを皿に取り分けた。
「ほら、これはレヴィの分」
皿を差し出すと、レヴィはまるでこのヤム・ウンセンが諸悪の根元だ、
とでも言うかのように皿の中身をじっと睨みつけた。
しばらく無言で睨んでいたが、突然俺の手から皿を引ったくっていったかと思うと、
レヴィはくるりとねこの方を向いた。
粥の器に小さな頭を突っ込んでいるねこに声をかける。
「お前も野菜足りてねえよなー? ほれ、遠慮せずに食え食え」
まさにねこなで声で、ずい、と皿を押し出す。

信じられない。
こいつ、ねこに押しつける気だ。
自分が嫌いだからって。

押しつけられたねこの方は、と思って見てみると、
もの凄く嫌そうな、そしてもの凄く困ったような顔をして、レヴィを見上げている。
凄く迷惑なのだが、大好きなレヴィの言うことだからどうしよう、そんな顔だ。
「好き嫌いしてるとデカくなれねェぞー」などといい加減なことを言うレヴィを、俺は引きとめた。
「……レヴィ、自分を棚に上げてその子に無理強いするなよ」
ため息をついて、俺はねこの前からレヴィの皿を取り上げた。
「ほら、ねこは香辛料も駄目なんだろ? これ、それなりに辛いよ」
ヤム・ウンセンには結構唐辛子が効いていた。
確かあのメモには香辛料も駄目だと書いてあったはずだ。
それを言うと、レヴィはむっすりと膨れたまま、それでもねこに押しつけるのはやめにしたようだった。
「ほら、半分手伝うから」
俺はレヴィの皿からヤム・ウンセンを半分減らしてやった。
それでもレヴィは、気が進まなさそうに箸で突っついている。
「なに? ひとりじゃ食べられない? 食べさせてあげようか?」
一口分を箸で取って、ほら、あーん、とレヴィの口元に寄せると、
まったく忌々しい、という顔で手荒く振り払われた。
「ッざけんな!」
「――っと、危ないな」
「ひとりで食える!」
「それは良かった。じゃあ食べて」
めでたく合意が成立した。
俺はにっこり笑って皿をさし出した。
レヴィはめっぽう不服そうだったが、買ってきた朝食はすべて無事に二人と一匹の胃袋に収まった。

その後、レヴィと揃ってラグーン商会に出勤すると、
おや、とダッチとベニーに意味ありげな目で見られたが、
レヴィと「他の奴には言わない」という約束をした手前、下手に説明することもできない。
なにも問題無いよ、と目配せで伝え、さも仕事が忙しくて仕方がないかのような振りをした。
やらねばならない作業が残っていたことは事実なので、正確に言うと「振り」でもないのだが、
問い詰められるのは御免だった。
夕方になると、いつものごとく風のように去っていくレヴィの後を追うように、俺もそそくさと事務所を後にした。
さて、次はいつレヴィの部屋に行こう。
そう考えながら。

 * * *

ねこというやつは、家の中で一番心地良い場所を知っている。

寒い日は、ストーブの前の特等席や、日だまりの中。
暑い日は、ひんやりした床の上か、風の通り道。
そして、今現在のレヴィの部屋では――

――レヴィの胸の間。

休日の午前中にレヴィの部屋を尋ねた俺は、ドアを開けた瞬間、その場に崩れ落ちそうになった。

レヴィはベッドであおむけに横たわって眠っている。
そのレヴィの体の上には、小さなねこが乗っかって、こちらもよく眠っている。
ねこの尻はレヴィの削げた腹の平らな窪みにちょうど良く収まり、
てろんと伸びた体は、みぞおちと肋骨の上をのびのびと縦断し、
小さな頭はレヴィの柔らかそうな胸の間にことんとはまっている。
レヴィの寝息で小さなねこの体が上下し、
それよりも少し速いリズムで、ねこの柔らかそうな腹もふくふくと膨らんだりしぼんだりする。
ふたりともそっくりな顔をして、無防備にくぅくぅと寝ている。
垂れ下がっていたねこの細く長いしっぽが、するん、とレヴィの脇腹をなでるように引き寄せられた。

――なんだこの生物兵器は……。

俺は思わずドアの枠に手をついて体を支えた。
体中の力が抜ける。
この光景を見せたら、人類のほとんどが戦意喪失するだろう。
八割、いや、九割は固い。

なんだか呼吸困難で胸まで苦しくなってきたが、俺はふたりを起こさないようにそっとドアを閉めた。
ベッドの枕元で雑誌が開いたまま壁際に押しつけられているところを見ると、
朝に一度起きてはいるのだろう。
きっと、寝転がって雑誌を読みながらじゃれ合っているうちに眠ってしまったに違いない。
レヴィの部屋のおんぼろエアコンも本日は快調らしく、充分すぎるほどに室内を冷やしている。
黒いタンクトップと下着だけという姿のレヴィも、
剥き出しの腹のところにやわらかそうなねこがふんわり乗っかっていて、さぞかし快適な温度だろう。
ねこの方は言わずもがな。
若干タンクトップがめくれ上がっているレヴィをベッドにして、
心地良いふたつのふくらみの間に顔をうずめて寝るだなんて、これで快適じゃないわけがない。

俺は静かに椅子を引いて腰かけた。
ふたりはぐっすり眠っていて、まるで起きる気配が無い。
午前中のまだ透明感のある光が窓から射し込んで、ふたりを照らす。
ねこの毛並みは良好とまでは言えないのだろうが、ちゃんと清潔に保たれて、細い毛が一本一本輝いていた。
白い毛は混じりけなく白く、茶色いところはレヴィの髪の色に似て、太陽の熱を集めている。
レヴィは片手を顔の脇に投げ出して寝ている。
この女の寝顔はひどくあどけない。

なんだか時間のエアポケットに入ってしまったように、穏やかな時間だった。

――俺、前は休日になにしていたんだっけ……?

マイルドセブンに火をつけながら、俺はもう滅多に思い出さなくなった日本での生活を振り返った。
旭日重工に勤めていたあの頃。
平日は疲れた体に鞭打って、這うようにして会社に出勤し、休日返上で働くこともざらだった。
たまの休日は、その疲れを取り返すかのように夢も見ずに午後まで眠り、
出かけるのも面倒なのでパジャマのままカップ麺か前の日の残り物をもそもそと食べる。
たまった洗濯物を洗濯機に放り込み、雑然とした部屋を掃除していると、洗濯機が洗い上がったことを知らせる。
たっぷり眠ったはずなのに、一気に寝すぎたせいで却って体がだるく、
あぁ疲れたと思いながらぼんやりしていると、外は早くも日が暮れ始める。
明日はまた仕事だ、行きたくないなぁなどと憂鬱な気分で形だけの夕食を済ませると、もう一日が終わっている。
残ったのは、乾ききらずにじっとりと垂れ下がっている洗濯物だけ。
狭苦しいひとり暮らしの部屋から一歩も出ずに、休日は終了。

学生の頃だって大して変わりは無い。
それなりの学校生活を送り、それなりの成績しか取れず、
出来の良い兄貴とは違うのだと、俺は随分昔からなにかを諦めていた。

実家はいつも清潔に整えられていたが、無菌室のようなそこは息が詰まった。
そう広くも無いが閑静な住宅地に建てたことだけが自慢の家は、毎日隅々まで掃除がなされ、
テーブルクロスはいつだってぴったりと平行に収まり、ティーカップには一筋の茶渋すら残っていなかった。
小さい頃、俺は動物を飼いたいとひそかに思っていたが、それは結局言い出せずに終わった。
母親にとってペットとは、磨き上げられた家具を傷つけ、清潔な部屋を毛で汚し、
清浄な空気を獣の体臭で汚染させるだけの厄介な存在でしかなかった。
それに、出来の悪い俺がなにかをねだることなど、許されるはずもなかった。

俺は息をひそめて生きていた。
それなりの大学を卒業して、それなりの企業に勤めて、それなりの結婚をして、それなりに子どもでも出来て、
それなりに人生が終わるのだろうと、そう思っていた。

――それが、こうだもんなぁ……。

俺はマイルドセブンを肺の奥まで吸い込み、大きく煙を吐き出した。
今、目の前に広がるのは、清潔とはほど遠い古ぼけた部屋だ。
剥げかかった壁紙に、くすんだ天井。
建てつけの悪いドアや窓に、微妙に足の長さが違うテーブルとイス。
歩くときしむ床は、拭き掃除などここ四半世紀されたことも無いだろう。
そして、ここはちょっとした展示場かと思う勢いで並んだ銃器の数々。
日本でぼんやり暮らしていた頃の俺が見たら、これを見ただけで竦んでしまっていたに違いない。
けれど、そんな乱雑な部屋で眠る女と小さなねこを見ていると、ひどく安らいだ気分になった。

冷静に考えてみれば、俺は正常な世界から既にフェードアウトしてしまっており、
安寧とは最も遠い場所に置かれているはずだった。
しかし、記憶の彼方の平和な日本はモノクロで輪郭を失っており、
今、この地図にすら載っていない街の小さな部屋こそが、確かな色彩を持って迫ってくるように感ぜられた。

俺はレヴィに出会ったあの日に死んだのだと思っていたが、
きっと、あの日から生き始めたのだろう。

「ん…………」
レヴィが寝返りをうった。
あおむけになっていた体が横むきになって、軽く丸まる。
それにつられて、レヴィの腹の上に乗っていたねこも、ずるずるとずり落ちた。
シーツの上に着地したねこは、そのままそこで丸まるかと思ったが、
半分以上眠ったままレヴィの腰を這いのぼり、肋骨と腰骨の間、
そこだけ骨が無くてきゅっとくびれたウエストのくぼみに、すとんと顎を落ち着けた。
レヴィの腹にへばりつくように体を安定させると、また安心したように眠り出す。

――どうしてもレヴィにくっついていたいのか。

俺は笑いを噛み殺した。
この調子だと、絶対いつも一緒に寝ているに決まってる。

――俺なんか、レヴィに触れるだけでも一年かかったっていうのに……。

こうして当たり前のように彼女の体温を享受している姿を見ると、
つい恨み言のひとつも言ってみたくなる。



飽きもせず、どれくらいそうやって眠るふたりをただ見ていただろうか。
ようやくレヴィが目を覚まして、部屋にいる俺に気づいた。
長い睫が、ゆっくりと上下する。
「……来てたのか、ロック」
寝起きのかすれた声で「来てたんなら起こせよ」と言い、レヴィはまだ眠そうに目をこすった。
それからシーツの上で腕を思い切り伸ばして、んーっと伸びをする。
背中がしなやかに反った。
その隣でねこも目覚め、レヴィと同じように伸びをした。
その背中の反り具合がよく似ていて、俺は思わず小さく笑いを漏らした。

――そっくりだ。

いつもレヴィはなにかに似てると思っていたが、そうだ、ねこだ。
俺は思い当たって、ひとりで合点した。
ソファの上でごろごろし、気づくと丸まって寝ているところも、
寝起きに思いっきり伸びをするところも、
気分屋のところも体がやわらかく俊敏なところも。
そう、ねこにそっくりだったのだ。

「……んだよ」
俺が笑ったのが耳に入ったのだろう、レヴィが軽く眉をひそめた。
「なんでもない」
笑いを押さえつけて言うと、レヴィはしばらく不審そうに見ていたが、
「変な奴」
俺を一瞥するとベッドから降りて、裸足でぺたぺたと向こうに行ってしまった。
小さなねこは、本当によくレヴィに懐いていた。
レヴィの手から直接、小さくちぎったピザの耳をもらって食べることすらあった。
彼女の話によると、路地裏で怪我をしてうずくまっていたねこがついて来てしまったらしいが、
野良ねことはこんなに人に懐くものなのだろうか?
俺は、レヴィの手からピザのかけらをもらって
あむあむと嬉しそうに小さな口で食べるねこを、信じられない思いで見た。
もしかしたら人に飼われていたことがあるのかもしれない。
そう思って俺もピザの耳をさし出してみたが、
レヴィのことはあんなにとろけた目で見ていたくせに、俺が手を寄せると一転、視線が鋭く尖った。
警戒したように、じりっと身構える。
「よせよせロック、あんたにゃ無理だ」
レヴィは得意げに、今度はサラミを口元に近づけてやる。
すると、ねこはころっと豹変して、レヴィの手から素直にサラミをさらっていった。

――なんだよ、この差は……。

俺は、食べてもらえなかったピザの端っこを、仕方なく自分の口に放り込んだ。

明らかに、このねこはレヴィのことが好きなのだ。
そして、俺のことは好きではないのだ。

――なんでレヴィ? 俺の方がずっと人畜無害なのに……。

なんだか納得がいかないが、もしかするとケモノ的同族意識なのかもしれない。
自分と同じレベルで同類だと思っているから、あんなに懐いているのではないか?
あのねこ、実はレヴィが産んだのだと言われても、
レヴィが人間の赤ん坊を産んだと言われるよりは驚かないかもしれない。
口に出したら絶対にレヴィに殴られるだろうことを、俺はこっそり考えた。

それにしても、レヴィはすっかり母ねこ状態だが、
あの子はレヴィのことを母親だなんて微塵も思っていないだろう。
恋人だとでも思っているに違いない。
そして、断言しても良い。
あの子はオスだ。
絶対に、オスだ。
俺には分かる。

――その手はなんだ! その手は!

俺は、おなかがいっぱいになってレヴィに甘え出した小さなねこの手を見逃さなかった。
レヴィの膝の上に乗っかって胸元に顔をうずめているが、
その小さな手がしっかりとやわらかい胸に沈んでいる。
レヴィはそうやって甘えられるのが嬉しいらしく腕で抱いてやっているが、
そのねこの陶然と体をくねらせる様子と言ったら!
あれは絶対オスだ。
オス以外に考えられない。

なぜ俺は本気でこんな小さなねこを羨ましがっているのだろう、と我に返ったが、
レヴィは、滅多に見せない邪気の無い顔で笑っている。
いつもの棘のある目線はすっかりなりをひそめ、子どもみたいな笑顔を見せている。

――そんな顔も、できるんじゃないか。

俺には滅多に向けてくれない表情に羨望の思いも増したが、
それよりも、この上なく和やかな思いの方に満たされた。
俺はこっそり、心の中でこの小さなねこに感謝した。



40名無しさん@ピンキー:2010/07/31(土) 22:18:25 ID:U/CobvYL
続きキター!!GJGJ!
何故この猫は俺の願望を知っているのだ・・
レヴィの胸に・・くそっうらやま憎いぜ
41名無しさん@ピンキー:2010/08/01(日) 16:02:19 ID:yyH0pYQI
続キタキタキタキタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━!!!!
GJすぎて目眩がする。
茶トラぬこかあいいよう茶トラぬこ(*´Д`)

ロックどんまいw
ロクレヴィ派だけどこの話に限っては俺もぬこの味方だぜ。
仕方なくとか勝手についてきたとか言っておきながら猫の食べれないもの熱心に調べるレヴィたん優しいよレヴィたん
>>39の続き

 * * *

その後も俺は、レヴィと小さなねことの蜜月っぷりをこれでもかという勢いで見せつけられ続けた。
ある日レヴィの部屋を訪れてみると、今度はレヴィは起きていた。
「おー、ロック。ちょうど良かった」
一応、歓迎もされた。
しかし、
「煙草取ってくれ」
まだドアも閉めていないというのに、二言目に言われたのがそれだ。

レヴィはベッドに腹這いに寝そべって、雑誌を読んでいる。
「……自分で取れよ」
煙草ぐらいで来たばかりの人を使うな、
というか、煙草取ってもらうのに「ちょうど良かった」のか?
肩を落とすと、レヴィは
「取れねェんだよ」
と肩越しに自分の腰の上を指さす。

彼女の指の先にあるのは、丸まった茶色い毛のかたまり。
レヴィの背中の上で、くるんとアンモナイトみたいに丸まった毛玉の中から、尖った耳がちょんと出ている。
生きた毛玉は只今絶賛大殿籠り中らしく、やわらかそうな腹がくぅくぅと規則的に動いている。
レヴィの背中のくぼみが世界で一番安心できるところです、とでも言うかのように熟睡している。

――かなわない。

この小さな毛玉には、どうしたって対抗できない。
俺は諦めて小さく息をついた。
「で、どこにあるって?」
テーブルの上には無いようだが、と思って周囲を見回すと、レヴィは
「そこそこ」
と、片手を頭の方に伸ばしてひらひらさせる。
「え?」
レヴィの手が伸びているのは、枕元のサイドチェストだ。
ひらひらさせている指先の、ほんの三十センチほど先にお目当てのラッキーストライクがある。
「……自分で取れるだろ、これぐらい」
こんなに近くにあるんだったら、ちょっとずり上がって手を伸ばせばすぐではないか。
つい非難がましい口調になると、レヴィはそんな風に言われるのはまったく不当だ、という顔をした。
「こいつが起きんだろ」
馬鹿かお前は、とでも言うかのように睨んでくる。
「…………はいはい」

この扱いの差はどうだろう。
俺は心の中で嘆きつつも、煙草を一本取り出した。
「はい」
二本の指ではさんでレヴィの口元に近づけると、彼女は首を伸ばして顎を上げた。
赤い唇がわずかに開く。
その唇に煙草をくわえさせてやると、レヴィの息が手をかすめる。
それからライターで火をつけると、レヴィは煙を吐き出してから、煙草を唇の端に引っかけて見上げてきた。
「どうも」
くぐもった声で簡素な礼を言う。
「どういたしまして」

俺はその時、小さなねこに餌づけして嬉しそうにしていたレヴィの気持ちが分かった気がした。
「餌づけ」などと言ったらレヴィに殺されそうだが、今のはちょっと餌づけに似ていた。
そう思うと、口元がゆるむのを止められなかった。

どうやら背中の毛玉が起きるまで動く気は無いらしいレヴィの枕元に、俺は腰かけた。
「外、暑かったか?」
レヴィはベッドに寝そべったまま見上げてくる。
「ああ、火にかけられたフライパン並に暑かった」
「あー、外出たくねェなー。パンケーキにされんのは御免だ」
「買い物は――」
「行きたくねェ」
「……だよな」

枕に顔をうずめながらごろごろするレヴィと、そんなたわいもない会話をするのもこれはこれで悪くない。
しばらくして小さなねこが目覚め、俺を認めて「むっ、邪魔者」みたいな顔をしてようやく、
レヴィは立ち上がった。

「じゃあ、あたしちょっとシャワー浴びてくっから」
「あ、ちょっと……!」
こんなに警戒心丸出しのねことふたりっきりにされても困る、
俺は動物なんか飼ったこと無いんだから、と言おうとしたが、
その言葉はあえなくシャワールームのドアに遮られた。

ねこの方も、置いてきぼりにされた捨てねこみたいな――みたいな、じゃなくて本当にそうだったか――顔をして、
俺を最大限に避けて壁際を伝って歩き、シャワールームのドアの前に行った。
にゃあ、と小さく鳴いてドアをかりかり爪で引っ掻いていたが、
それでもドアが開かないのを見ると、諦めて部屋の隅っこで香箱を作った。

そうやって距離を取りながらも、ねこは油断なく俺の方を見て警戒している。
俺はベッドに腰かけて無意味に笑ってみたが、効果無し。
非常に気詰まりだ。

――なにか無いのか、こう、ねこが喜ぶおもちゃみたいなの……。

藁にも縋る思いで部屋を見回したが、それらしきものは見当たらない。
部屋は、常よりきちんと片づいているようだ。
飲み終わったビールの空き缶や食べ終わったピザの空き箱も無いし、
いつもそのへんに散乱している弾丸のケースやら銃の手入れをする道具やらオイルやらも無い。
ずらりと並んだ銃器も、倒れてこないように紐で押さえてある。
目につくのは、タオルを籠の中にしいたレヴィのお手製らしき小さなベッドと、
箱の中に砂を敷き詰めたねこ用のトイレだ。
すっかり、ねこ仕様の部屋になっている。

部屋の中を眺め回すのにも時間を持て余し始めた頃、ようやくバスルームのドアが開いた。
ドアノブの回る音を聞いたねこは、待ちかねたとばかりに小走りにレヴィに近寄って行った。
「おー、どうしたー? 仲良くやってたかァ?」
レヴィは下着一枚で髪をタオルで拭きながら、俺にではなく明らかにねこの方に話しかけている。
しかし、レヴィを待ちかねていたのは俺も同じだった。
「レヴィ、なにかおもちゃとか無いの?」
「はァ? おもちゃ?」
「ねこ用のだよ。なんかこう、あるじゃないか。ねこじゃらしみたいなやつ」
身振り手振りを加えて説明すると、レヴィは眉をしかめた。
「ねぇよ。なに言ってんだ、バカ。んなもん使って人に慣れさせたら、外出た時大変じゃねェか」

――「人に慣れさせたら」……?

俺は呆気に取られた。
レヴィはこんなに仲睦まじく毎日毎日ねことイチャイチャしておいて、
これで「人に慣れさせ」るつもりは無いとでも言うのか?

「ったく、相変わらず過保護だな、ロック。この暑さで脳味噌溶けたか?
冷却水が足りてねェぞ。今なら只でシャワー貸してやるから頭冷やして来いよ」
「い、いや……いいよ」

――過保護はどっちだ!

口だけは丁重にシャワーを辞退しながらも、理不尽の海に体が沈んだ。

それにしても、いつものことではあるが、レヴィは下着一枚でタオルを首に引っかけたまま、
そこらへんをぺたぺたぺたぺた歩き回る。
ちゃんと拭ききれていない水滴が、腕や脚、背中に残っていて、床を濡らす。
長い濡れ髪からも水がしたたって、つぅっと背中を伝った。
「……レヴィ、ちゃんと体拭いて服着ろよ……」
二リットルのペットボトルから豪快に水を飲んでいたレヴィに言うと、
彼女は振り向いて、ベッドに腰かける俺を睨んだ。
「なんか文句あるか。――あっちィんだよ」
レヴィは髪からぽたぽた水滴をたらしながらペットボトルを冷蔵庫に戻すと、乱暴に扉を閉めた。
「別に文句っていうんじゃ無いけど……」
「けど、なんだよ。嫌なら見んな」
ここはあたしの部屋だ、文句があるんだったらお前が出てけ、と言わんばかりの態度でレヴィは部屋の中を闊歩する。

嫌だというわけではないし、見たくないわけでもない。
……どちらかというと、その逆だ。
鍛え上げた伸びやかな肢体はどこにもたるんだところがなく、
かといって筋肉でごつごつと固まっているわけでもなく、全身はなめらかな曲線を描いている。
歩くたびに浮き上がる縦に通った脚の筋やアキレス腱は美しく、
下着一枚で歩いていてもだらしがないという印象は不思議と無い。
なんだか野生のヒョウかカモシカでものし歩いているような、そんな感じ。

けれど、
「レヴィ」
俺はベッドから腰を上げ、レヴィに近寄って片方の手首を取った。
「なんだよ」
レヴィは振り向き、掴まれた手を肩の高さに上げて、自分の手首を取っている俺の手を不快そうに見た。
「服、着ろって」
俺は一歩、距離を詰めた。
「……後で着る。あたしに指図すんな」
レヴィの肩から下がったタオルはちょうど胸を隠していたが、その丸くやわらかな輪郭や、
普段タンクトップに覆われて日に当たっていない白い胸元までは隠しきれていなかった。
睨むように見上げるレヴィの髪からまた新たに水がこぼれて首筋を伝い、浮き出た鎖骨を乗り越え、
二つのふくらみの間のくぼんだ谷間をすべり落ちていった。

「――それ、試してんの?」
「は?」
目を見開いたレヴィを、俺は後ろの壁に押しつけた。
手首も壁に縫いとめる。
レヴィは一瞬驚いたようだったが、すぐにまた鋭い視線を寄越してきた。
「どけよ」
「嫌だ」
俺は更に距離を詰めた。
レヴィの手首を捉えたまま壁についている手に、体重をかける。
「俺さ、我ながら結構理性的な人間だと思ってるんだけど――」
シャンプーの匂いが鼻先にただよう。
レヴィの呼吸が首元をかすめた。
「俺も一応、男なんだよね」
更に身を寄せると、レヴィが身を引くように体を反らせたが、後ろは壁だ。
彼女が思ったほど距離は離れず、俺の着ていたシャツがレヴィの肌に触れた。
「……言われなくても知ってる」
レヴィは顔を逸らし、床を睨みつける。
「――知ってる? なら話が早い」

俺はレヴィの手首を更に強く固定して身を屈め、レヴィの鎖骨に残っている水滴を唇で吸い取った。
「――ちょ、やめ……っ!」
レヴィがもがいたが、残った方の手首も捉えて拘束し、首筋に口づける。
洗ったばかりでまだ水をたっぷり含んだ肌の感触を唇に感じた。
「――ロック!」
舌先で首筋を這いのぼると、レヴィの体がぎゅっと固まって、捉えた手首が震えた。
首筋をゆっくりと舌でなぞり、耳元にも口づけてから、やわらかい耳たぶを唇ではさみ込む。
レヴィが息を飲んだ。
耳たぶをたっぷりと舌でこね、そのつけ根や耳の後ろのくぼみにまで舌先を沈めてから唇を離すと、
すっかりレヴィはおとなしくなっていた。
速くなった鼓動が布越しに伝わってくる。
見上げるレヴィに顔を寄せると、ゆっくり睫が落ちていく。
唇を重ねると、やわらかく湿った感触がした。

もう、抵抗は全く無い。
俺はレヴィの両手首を解放して、強く腰を抱き寄せた。
まだ濡れた体についた水滴が俺のシャツにしみ込むが、構わない。
唇を割って、そっと舌を絡めとる。
その瞬間、レヴィの体が溶けて、やわらかく俺の体に馴染んだ。
まるで、固体だったものが液体に変わったかのような変わり様だった。
この瞬間が、俺は好きだった。
唾液がなめらかに絡み合うのを感じながら、濡れた髪の中に手をさし入れる。
レヴィの手が俺のシャツの肩口を掴んだ。
俺はレヴィの後頭部を引き寄せ、誘うように舌をさし入れた。
またわずかに体が反って、受け入れられる。
応えるレヴィを感じながら、ゆっくりと舌をすくい上げる。
舌が動くたびに、唾液のかき混ぜられる音が頬の骨を伝って響いてきた。
抱き寄せる手に力をこめると、喉の奥でレヴィがかすかな声を上げた。
それでも手の力はゆるめず、しかし舌だけは穏やかに、何度も絡ませ合う。
俺のシャツ一枚を隔てた向こうに、レヴィの胸のやわらかさを感じる。
そうやって互いの熱を交換した後、
彼女の肩にかかっているタオルを取り去ろうと、俺は一旦唇を離した。

その時、後頭部に妙な視線を感じた。
首筋がちりちりする。
俺は気になって、首だけで振り返った。
すると、俺の背後には、部屋の端っこからこちらを凝視している一対の目があった。
透明な丸い目が、こゆるぎもせずに俺たちをじぃーっと見つめている。
レヴィも俺の様子で気づいたらしかった。
俺の肩越しに覗き見る。

「……めっちゃ見てんな」
「……ああ、めっちゃ見てる」
ガラス玉みたいな目をしたねこは、こちらから視線を逸らそうともしない。
「あれ、そのうち飛びかかってくんじゃねェの?」
レヴィが喉の奥で小さく笑った。
「……有り得る」
心持ち姿勢が低いのは気のせいだろうか。
これ以上あの子の前でレヴィになにかしたら、怪我のひとつは覚悟しておいた方が良いかもしれない。

すっかり水を差された形になって力のゆるんだ腕の中から、レヴィはするりと抜け出した。
「どうしたー? お前、見すぎだぞー」
レヴィはすたすたとねこの方に行ってしまう。
彼女の姿を目で追うねこのそばまで行くと、ひょい、と首の後ろを二本の指で軽々とつまみ上げた。
レヴィが片腕で抱くと、ねこは彼女の首もとに鼻を寄せ、ふんふんと匂いを嗅いだ。
「ちょっ、くすぐってェよ」
ぺろりと小さな舌でなめられてレヴィは首をすくめたが、ねこは構わず首筋に小さな頭を突っ込む。
「やめろって」
言いながらも、レヴィはくすぐったそうに笑うだけだ。
ねこは更に匂いを嗅いでは、いぶかしげな顔をしてレヴィを見上げる。
なんだかいつもとちがうにおいがする、とでも言いたげだ。
レヴィは、首だの耳だの嗅ぎまわるねこのされるがままだ。
「くさいかー? 悪い悪い」

――くさくて悪かったな!

どうせ俺はくさいですよ。
ええ、たった今、俺がレヴィに触りましたよ。
くさくてどうもすいませんでしたね。

どうしてへんなにおいがするの? と不審そうなねこと、それを面白がるレヴィを、
俺はなにか敗北感のようなものを感じながら眺めた。

レヴィが服を着たりタオルを片づけたりしている間、ねこはひとりで部屋の隅で遊んでいた。
なにか興味を引くものでも自分で見つけたのだろう。
俺はそんなねこを目の端で捉えながら、煙草に火をつけた。
確かにレヴィの言った通り、特におもちゃなど必要無いのだろう。
わざわざ人間に構われずとも、遊びたければ勝手に遊ぶ。
そうやってねこの好きにさせておくのが一番良いのかもしれない。

イスに座ってテーブルに肘をつき、ぼんやりと煙草をふかしているうちに、
部屋の隅でじたばたしていたねこがおとなしくなった。
そして、俺の目の前を小走りに横切ってゆく。
長いしっぽをぴんと伸ばして、軽快な足取りで。
レヴィのところへ行くのかな、と彼女に目を移したところで、
今見たねこの口元になにか不穏な茶色っぽい物体がはさまっていた気がして、俺は慌ててねこに視線を戻した。
嬉しそうにレヴィの方へ向かうねこの小さな口からは、
その人形のように可愛らしい顔とは不釣り合いな不気味な物体が覗いている。
細い足が何本かと、グロテスクなまでに太く長い足が一対……。

「うわあああああああああああああああああああっ!」
ねこが口にくわえているものがなんなのかを把握した俺は、反射的に叫び声を上げていた。
レヴィのところにたどりついたねこが、「ほらみて!」と言うように、ぺっと彼女の背後にそれを置く。
「――んだよ、うるせェな」
俺の叫び声を聞いたレヴィが振り返った。
「レレレレヴィ! それ! それ!!」
俺は逃げ腰になりながら、そのおぞましい物体を指さした。
「あん?」
レヴィが俺の指の先に目線を落とす。
彼女の足元には、ぬめぬめした気味の悪いまだら色の体をして、
いかにも強靱そうな一対の無駄に長い足を持った、
バッタを巨大化させたような茶色っぽい虫が転がっていた。
まだ完全に死んではいないらしく、やけに質量を感じさせる、くの字に折れた長い足が時折ぴくぴくと痙攣している。
バッタ状と言っても、五センチ以上は優にある。
ただでさえ生理的嫌悪を引き起こす形態をしているのに、このサイズはもう凶悪としか言えない。
だが、レヴィはそれを一瞥しただけで事も無げに言った。

「これがどうした。カマドウマじゃねェか」
「……どうした、って! カマドウマだぞ! なんだよその大きさ!」
カマドウマを見たことが無いわけではないが、日本で見たカマドウマはそんな冗談みたいに大きいやつではなかった。
しかしレヴィは、別にこんぐらい普通だろ、とまるで動じない。
「ったく、だらしねェなぁ、ロック」
呆れ返ったように俺を見てから、
レヴィの足元で「ほめて、ほめて」と期待に充ちた目で座っているねこの前にしゃがみ込んだ。
「お前の方がよっぽど男らしいなぁー」
よしよし、と小さな頭をなでてやっている。

――俺が男らしくないんじゃなくて、レヴィがたくましすぎるだけだろ!

俺は思ったが、
「これ、お前が獲ったのか? すげぇなぁ。良くやったぞー」
などと言って、得意げな顔をしているねこの白い顎の下をかりこり掻いてやっているレヴィに、
慌てて意義をとなえた。
「やめろよ! そんな褒めたりしたら、また獲って来ちゃうじゃないか!」
きっとこれは、この子なりの愛しのレヴィへのプレゼントのつもりだろう。
レヴィに褒められたりなどしたら、気を良くして今後もせっせと半殺しの虫を運んで来てしまうかもしれないではないか。

しかし、俺の意義は「ごちゃごちゃうっせェなぁ」の一言で切り捨てられた。
「一匹くらいでガタガタ言うんじゃねえよ。インディアナ・ジョーンズになれねェぞ。
ま、インドの山奥くんだりまで行かなくたって、閉めきった物置小屋なんかはパラダイスだけどな。
前、一夏中閉めっぱなしだった物置開けたらよ、水の残ったバケツの中にごっそりと……」
「あああああ! やめろ! 聞きたくない! それ以上言うな!」
にこにこと極上の笑みを浮かべるレヴィを、俺は大声で遮った。
しかし、時既に遅し。
頭はしっかりと、昔見た虫地獄のスクリーンと
バケツの中のパラダイス・オブ・カマドウマを想像してしまっており、
ざわざわと悪寒が背中を這い回った。

レヴィは鳥肌を立てる俺に更に追い打ちをかけてくる。
「ったく、こんなもん、そのへんの屋台で売ってんじゃねえか」
「屋台……?」
レヴィは床の上に積み重なっていた雑誌を一冊手に取って丸めた。
「なんだ、知らねぇか?」
その丸めた雑誌を、レヴィはすぱーんと迷い無く、死にかけのカマドウマの上に叩き下ろした。

――うわ。

今まで不規則にぴくぴくとうごめいていたカマドウマの息の根が、完全に止まった。
俺は、つぶれて更に醜悪な様相を呈しているそれを極力見ないようにしたが、
一度見てしまったものはしっかりくっきり脳内に刻み込まれてしまった。
ひしゃげた体から、なんだか変な汁まで出ていた気がする。

――ああ、駄目だ。夢に見そうだ……。

「色んな虫売ってんぞー。
タガメだろ、タマムシだろ、バンブーワームだろ、ああ、どっかでタランチュラも見たな」
レヴィは中空を見上げながら、鳥肌が立つような名を次々と挙げていく。
「今度連れてってやろうか?」
「いやっ! いいっ! いいです! いらない! 絶対嫌だ! 死んでも嫌だ!」
とんでもないレヴィのお誘いに、俺は激しく首を横に振った。

レヴィとの食事は、いつも素っ気ない屋台か飲み屋かといったところで、
改まって食事のためだけに約束を取りつけて出かけたことはまだ無い。
その初めてのまともな外食が昆虫食だなんて、笑えなさすぎる。

俺は断固として辞退の意を表した。
しかし、レヴィは呆れたように俺を見た。
「お前な、昆虫も栄養あんだぞ。森ん中で三日も遭難すりゃ、天のお恵みかと思える。
それだってバッタみたいなもんじゃねぇか」
つぶれたカマドウマを顎で指す。
三日も遭難って、そんな特異なシチュエーションを気軽に出されても困るのだが、レヴィは淀みなく先を続ける。
「ま、ちょっと足は固いかもしれねぇからプチプチっともいでだな、香辛料でカラッと炒めれば――」
「やめろよ! 想像させるな!」
にこにこと虫の食べ方を説明するレヴィを、俺は必死で制止した。

――なんでこんな身の毛がよだつことをこんな特上の笑顔で言うんだ、この女は!

「……んだよ、面白くねェなぁ。虫なんかエビと大して変わらねぇだろ。
どうしてエビが良くて虫が駄目なんだ。細い足がうぞうぞしてるとこなんかそっくり――」
「だからやめろって! エビ食えなくさせる気かよ!」
「意識の問題さ、ロック。だいたいカニとクモがどう違う? クモのでかいのがカニ――」
「うわあああああ! やめろやめろやめろ!! 俺、カニ好きなんだから!」
誰かこの女を黙らせてくれ!
俺は両手で耳を塞いだ。

――絶対、わざとだろ……。

レヴィに「きゃあっ! 虫っ!」などというリアクションは期待していないが、
それにしてもこれはあんまりなのではないか。

そもそも虫に対して人間が生理的嫌悪を感じるのは、
虫には毒を持つものが多いことから、虫を忌避することによって生命を保持しようという本能に基づくものであり、
従って、これは人間の生存本能に植えつけられたしごく真っ当な反応で……
という反論をする元気も無く、俺はベッドにへたり込んだ。

 * * *

レヴィの小さな同居人は一向に俺には懐かなかったが、
それでもレヴィが可愛らしいねこと戯れている様は見ているだけで心和むもので、
俺は頻繁にレヴィの部屋を尋ねた。

これならあの子も食べられるんじゃないか、あれも大丈夫なんじゃないか、
そんなことを言い合いながら市場を物色して食事を調達するのは楽しかった。

その日の夕方も、そうやって市場に寄ってからレヴィの部屋に行くと、
ドアを開けた途端、小さなねこが出迎えるように駆け寄ってきた。
レヴィを待ちかねていたのだろう。
しかし、レヴィの後ろにいる俺の姿に気づくと、きらきらした目の色が瞬時に固くなった。
「やあ、元気だったかい?」
良好な関係を築くべく、俺はにこやかに声をかけてみたが、つんとそっぽを向かれた。

――……つれない。

「――嫌われてるみたいだ、俺」
レヴィのようにとは言わないが、こんなに何度も会っているのだ。
せめてちょっとだけでも気を許してくれても良いではないか。
そして、あわよくば、あのやわらかそうな体に触らせてくれたりはしないだろうか。
俺はため息をついた。

だが、レヴィには、そんな俺とあの子との間を取り持ってくれる気はまるで無いらしい。
俺がそばにいた時は遠くに逃げて行ったくせに、レヴィが俺から離れた途端、たっと走り寄って行くねこに、
「お、感心感心。お前、なかなか人を見る目があるじゃねェか」
などと言ってご満悦だ。
「なんだよそれ……」
人を見る目って、確かにレヴィに目をつけたこの子は慧眼と言うべきだろうが、俺だって……。
しかし、俺の呟きは綺麗に無視された。
「感心な奴にはごほうびだな。さ、メシにするか」

メシ、とレヴィが言った途端、ねこの目が輝いた。
元々大きな目が、更に二割り増し大きくなった。
歩くレヴィの足元にくねくねと絡みつき、白い喉をさらして、にゃあーん、と甘い声で鳴く。
「ちょっ、お前、危ねぇよ。踏んじまうだろ」
小さなねこは、レヴィの脚にやわらかい体をこすりつけながらついてまわる。
いつもの食事前の光景ではあるものの、何度見てもまったくほほえましい。

それにしても、ねこがこんな絵に描いたように「にゃあーん」と鳴くなんて知らなかった。
こんな声で鳴かれたら、レヴィでなくともイチコロだろう。
しかも、レヴィ以外の人間――と言っても、今のところ俺だけだが――にはちっとも懐かないときてる。
これは可愛くてたまらないに決まっている。
俺には向けない無邪気な笑顔を浮かべるレヴィを見ていると少しばかり悔しい気もしたが、
それならば良いかという気分になってくる。
レヴィにはそういう風に笑っていて欲しい。
多分レヴィは、世界の端っこからこぼれ落ちそうな、昔の自分とよく似た小さなねこを放っておけなかったのだ。
レヴィを救うのは、脳ばかりが発達した面倒くさい人間などではなく、
言葉も通じないこの小さな毛玉のような生き物なのかもしれない。
俺はそんな愚にもつかないことを考えながら、仲睦まじいふたりを眺めていた。

小さなねこの体重はなかなか増えないようだった。
怪我は大分良くなり、包帯の面積は少なくなっていたが、相変わらず綿埃のように軽そうだった。

その日の夕食はカオマンガイだった。
ゆでた鶏と、その鶏をゆでたスープで炊いた米で作るカオマンガイは、
鶏のスープが米粒にしみ込んで結構美味い。
適当な幅に切り分けられた鶏は脂っこくなく、ほど良く脂肪が抜けてやわらかい。
チキンを喜んでいたというねこも気に入るかもしれない。
いつものように小さなねこにも一人前に取り分けてやって、晩餐の始まりだ。

ねこの前にはご飯と鶏肉をよそった器を置いてやり、レヴィと俺はシンハービールを空けた。
毎日うんざりするほど暑いのも、ビールが美味いのだけは有り難い。
冷たいビールで人心地ついてから、生春巻きをつつく。
半透明の薄い皮からゆでたエビの赤い色が透けて見え、
そのエビの存在に先日レヴィが言ったとある嫌なことを思い出しかけたが、
それが頭の中で像を結ぶ前に急いで振り払った。
ねこはやはり鶏肉が好きなのだろう、ご飯よりも鶏を先に食べてしまっている。
「これ、食べるかい?」
俺は自分の皿から一切れ、鶏肉をねこの器に移してやった。
しかし、ねこは「なにするんだ」と言わんばかりの顔で迷惑そうに見てきた。

――いや、好きそうだったから……。

純粋に好意からさし上げただけで、決してこの子の食べ物になにかする気では無かったのだが、
自分の器に触るなと言うような刺々しい目線に、俺はすごすごと引き下がるしか無かった。

「もっと食えよ」
レヴィが再三促したが、ねこは結局俺の贈呈した鶏肉には手をつけず、
ご飯の方もほとんど残したまま食事を終えた。
そして、まだ食事をしているレヴィの膝の上に無理矢理よじのぼってきた。
レヴィの太ももにはっしとしがみつき、器用に脇の方から体をねじ込んでくる。
「――っと」
ビールを手にしていたレヴィは慌てて缶を置き、膝の上で身をよじっているねこの白い腹を支えてやった。
ずり落ちそうになっていたねこを引き上げ、レヴィの腹の前で落ち着かせてやると、
ねこは、満足、といったように、ちょこんとレヴィの膝の上に収まった。

「……ほんとにその子、レヴィのことが好きなんだな」
俺は、レヴィと彼女の腕に支えてもらって満ち足りた顔をしたねこを、ただ見ていた。
箸を動かすのも忘れるほどに。
もう、苦笑しか出てこない。
「俺には指一本触れさせてくれないのに……」
「あったりめェだろ。なー? お前はあたしが大好きなんだよなー?」
レヴィは得意げに言って、ねこの脇の下に両手を入れた。
そして、くるりと自分に向き合わせ、その小さな頭に額を寄せる。
にゃあ、と、まるでレヴィの言葉に返事をしたかのように、ねこが鳴いた。
なんだかねこの方も自分の額をレヴィにこすりつけて笑っているように見える。
長いしっぽがくにゃんと優雅にしなり、その先っぽの方までが「嬉しい」と言っているようだ。
額と額をくっつけて笑い合うふたりは、まるで恋人同志のようだ。
「くそ……妬けるなぁ……。なんだよその相思相愛っぷりは……」
ねこに嫉妬してどうするんだと思ったが、うっかり本音が漏れた。
レヴィはにやりと笑うと、今度はねこを両手で抱きしめて、これ見よがしに頬ずりし出した。
やわらかい胸に、これまたやわらかそうな毛のかたまりを抱き込んで、指はねこの喜ぶ喉元をくすぐってやっている。
ねこはいっそう嬉しそうに、うにゃうにゃと喜んだ。

――これ、ほんとにねこかよ……。

俺はわずかな疎外感を感じながら思った。
ねこって、こんなに分かり易く甘えるものなのか?
しっぽの先までくにゃくにゃさせて喜んでいるが、しっぽ振るなんて犬じゃあるまいし……。
俺はねこを飼ったことは無いのでよく分からないが、
ねことはもっとプライドが高く、つんつんした生き物かと思っていた。

――中に小さいおっさんでも入ってるんじゃないか……?

しかしこの子の俺に対する態度を思い起こしてみると、それは確かに「ねこらしい」態度のような気がする。
俺に対しては非常にそっけない。
……つまり、レヴィのことは大好きで、俺のことは好きじゃない。
そういうことだろう。

俺のため息を聞いて、レヴィが面白がるように唇の端をつり上げた。
「羨ましいだろ」
ふふん、と鼻を高くし、
「あー、こいつの体、気持ち良いなァー! やわらかくってよー」
見せつけるように手の中のねこをこねくりまわす。
「ああ、羨ましいよ」
俺は正直に言った。
そうだろうそうだろう、とレヴィはしたり顔だ。
「――その子がね」
つけ足すと、得意げだったレヴィの顔が一瞬考え込んで、
その後ようやく、どちらが羨ましいと言われたのか気づいたのだろう、わずかに目元を赤くして睨んできた。

「なんかさ、その子とレヴィって似てるよね」
俺は睨むレヴィの視線をかわして、常々思っていたことを口に出した。
すると、俺は別に今までのお返しをしようなどというつもりは無かったのだが、
レヴィの眉間に不本意そうな皺が寄った。
「どこがだよ」
いかにも不服です、と顔に書いたレヴィに、
なんでねこに似ていると言われてそんなに嫌がるんだ、と俺は不思議に思った。
普通、ねこに似ていると言われて怒る女はそういないのではないか。
いや、レヴィはちっとも「普通」ではないが、女性はねこっぽいと言われて喜びこそすれ、怒りはしないのでは。
俺だって「あたしってねこに似てるってよく言われるんですぅー」などと言う女は勘弁願いたいが、
まさか睨まれるとは思わなかった。
「ん、目が大きいとことか、瞳の色とか、こう……しぐさっていうか、行動とか」
決して馬鹿にしたわけではないことを分かって欲しくて俺は色々と挙げ連ねたが、
レヴィは、「はァ? 行動!?」と声のトーンを一段上げた。
「こんな鈍くさい奴とか? こいつ、ベッドに飛び乗ろうとして床に落ちたんだぜ」
ねこに対して鈍くさいって、と思ったが、ベッドから床に落ちるのは確かに鈍くさいかもしれない。
俺はその様子を想像して噴き出した。
一体どうやったらベッドから落ちられるんだ?
ねこのくせに。

おかしくなって笑っていると、まるで自分のことを言われているのだと分かったようなタイミングで、
にゃあ、と抗議するようにねこが鳴いた。
「なー? んで、知らん顔しようとしたんだよなァ?」
レヴィはねこの顔を覗き込む。

知らん顔って。
ということは、レヴィはその一部始終を見ていたのだろうか。
ねこがベッドに飛び乗ろうとするのも、失敗して床に落ちるのも、そして知らん顔しようとしたところも、全部?
ああ、俺もその場面見たかったなぁ、などと思いながら、
よく似た目をしてじゃれ合うふたりを見ていると、おかしいのとは別の、温かな笑いが胸を満たした。

「明日は?」
食べ終わったものの、すぐに片づけるのが面倒で
食後の煙草をふかしながらだらだらと話をしていると、レヴィが訊いた。
次の日はふたりとも休みだ。
「特になにも」
「ふーん」
俺の方は予定が入っていない。
「どうする?」
問い返すと、レヴィは煙草をくわえたまま少しの間宙を見ていたが、
「どうでも」
煙と一緒に吐き出して、短くなった煙草を灰皿に押しつけた。
「そうだなぁ……」
休みの日にしたいことと言っても、買い物か映画を見るぐらいしか思いつかない。
どうせ明日も暑くなるのだろうから遠出は避けたいし、
第一レヴィはあの子を置いたまま長く部屋を空けたくはないだろう。
いつものように昼頃までベッドの中でごろごろして、適当に食事をして、というかんじで良いのだが、
と思ったところで、レヴィがなにやら考え込んでいる様子なのに気づいた。

「どうした?」
「ん?」
「いや、なにか考え込んでるみたいだったから」
「ああ、いや……」
レヴィにしては珍しく歯切れが悪い。
「なに?」
また新しく煙草を取り出すレヴィを促すと、妙に口の重い彼女が「なぁ」と切り出した。

「ロック、動物病院知ってるか?」
「動物病院?」
知ってるって、そういう存在があるということは知っているが、
「この街に、ってこと?」
問うと、レヴィは「ああ」と肯定する。
「…………いや、見たことないな」
頭の中をまさぐるが、特に気をつけて見ていなかったせいもあって、とんと記憶に無い。
「だよな」
レヴィも知らないようだ。
この街でレヴィが知らないことを俺が知っているはずがない。
「どうしたのさ、どっか悪いの?」
俺は部屋の隅の小さなベッドで丸くなって寝ているねこに目をやった。
「うーん、いや、あたしはよく分かんねぇんだけどよ、あいつ、元気無くねえか?」
「……え?」
「最近あんま食わねぇし、全然太らねえんだよ」
「…………うん」
そう言われてみれば、確かに今日も食べ方が少ない。
「なんか寝てること多いしよ……」
「それは、ねこだからじゃないかな……」
「そうなのか?」
「いや、俺も良く分からないけど……」
一度も飼ったことが無いので、普通のねこがどんな状態なのかちっとも分からず、
俺は自信無く言い淀むしかなかった。
「この前も吐いたんだけどよ、ねこって頻繁に吐くもんなのか?」
「うーん……、いや、どうかなぁ……」
そういえば、ねこを飼っていた奴が、よく飼いねこが吐いたとかなんとか言っていたような気がしたが、
俺にはよく分からない。
「ごめんレヴィ、悪いけど俺にはお手上げだ。心配だったら一度病院連れて行こう。
この街に無さそうだったら、車出して大きな街まで行けば良い」
うーん、とまだ煮え切らないレヴィに、俺は重ねて言った。
「ほら、ちょうど明日は休みだろ。車借りて行ってみよう。
ここでただ気を揉んでいてもどうしようもないじゃないか。
暗闇の中でベッドの下のブギーマンを心配するくらいなら、明かりをつけてみれば良いんだよ」
レヴィは、ここまで情けをかけてやるのは自分らしくない、などと体面を気にしてるのかもしれないが、
本当にどこか悪いのだったらそんなことに構っている暇はない。
それに、俺はよく分からなかったが、
一緒に暮らしているレヴィがおかしいと思うところがあるのだったら、なにかあるのかもしれない。
「な?」
そうしよう、と言うとようやく、レヴィはぎこちなく頷いた。
「ま、餅は餅屋だな」
そう言って。



58名無しさん@ピンキー:2010/08/01(日) 23:08:07 ID:x050brl3
久々のエチ来るかと思ったがこないか…
でもGJ
次回に期待
59名無しさん@ピンキー:2010/08/01(日) 23:13:29 ID:5NUGilXP
わあああ!今日はこないかと思ってたらきてた!!
ぬこ可愛いようぬこ
丁寧すぎるぬこ描写と盛るロックに2828しっぱなしだぜ
60名無しさん@ピンキー:2010/08/02(月) 15:13:22 ID:/AaWbogi
ぬこかわいすぎるw
あああ・・・・でもこの先のこと考えると早くも視界が(´;ω;)

なんでこのネ申はこんなに話作りが巧いのか
61名無しさん@ピンキー:2010/08/02(月) 17:48:27 ID:RUr9SNPO
神愛してるよ神
もしねこが人間の子供だったらロックは嫉妬どころじゃ済まなかっただろうねw
62名無しさん@ピンキー:2010/08/02(月) 20:37:07 ID:Du2HvBMT
俺の妄想半分やるから、◆JU6DOSMJRE神を半分よこせ!!

カマドウマって、便所コオロギのことか!正式名称初めて知ったよ。
何気に難しい漢字とか読めるようになったり、神のSSは勉強にもなる。

レヴィたんとちっちゃいぬこがでこ合わせてる描写とか頭に絵が浮かぶ。
63名無しさん@ピンキー:2010/08/02(月) 21:25:59 ID:RUr9SNPO
カマドウマ軽い気持ちでググってロックだらしねえなと思っていたら
巨大なそれの画像を見てしまい・・うう
64名無しさん@ピンキー:2010/08/03(火) 20:47:33 ID:tq7rafIN
思わず画像検索してしまったが、これは絶対無理だ

>>57の続き


 * * *

食事の片づけが済むと早々に、俺はレヴィを引き寄せた。
今夜はねこは自分のベッドで眠っている。
深々とレヴィに口づけても、起きてはこなかった。
思えばこの小さな同居人が来てから、すっかり俺はレヴィのベッドの隣を新参者に明け渡していたのだ。
抱き寄せてレヴィの呼吸を肌で感じ、舌をさし入れて口腔内の熱が絡むと、もう駄目だった。
抱くことが目的で一緒にいるわけではないが、それでもレヴィを知った体は貪欲に彼女を求め出す。
それなりに我慢を重ねた体は、久し振りのレヴィの肌の感触に、すぐに熱くなった。

「今夜は隣で寝かせてくれるんだろ?」
俺はレヴィの耳元でささやいた。
くっ、と小さくレヴィが笑う。
「あいつが起きるまで、な」
同じように耳元でささやかれる。
レヴィの少しかすれた低い声が吐息とともに耳の中へそそぎ込まれ、
それだけで神経を直接なでられたようにぞくりとした。

「じゃあ、起こさないようにしないと」
レヴィの耳たぶに唇がつくかつかないかの距離で言ってから、俺は部屋の明かりを消しに行った。
明かりのスイッチをオフにし、真っ暗になった室内をつまづかないように手探りで歩く。
そして、レヴィの影を捕まえた。
二の腕を掴んで、腰を引き寄せる。
まだ目が暗闇に慣れず、レヴィの姿はなにも見えないが、
今腕の中に収まっているのが引き締まった腰であることも、
俺の脇腹を通りすぎて背中に伸びていったのがレヴィの手であることも、
胸に感じる布越しの感触がやわらかな乳房であることも、すべて分かった。
首元をレヴィの呼吸が温かくかすめる。

レヴィの肩口から首筋に向かって手を這わせ、顎までなで上げる。
頤にたどりついたところで縁をなぞるように耳の後ろまで手をさし込むと、応えるように首が揺れた。
顎の線を親指のつけ根で捉えて、暗闇の中、頭を落とす。
視界はまだ暗い。
だが、感覚だけに頼ったにも関わらず、ちゃんと唇はレヴィの唇の上に降りた。
下唇をやわらかくはさみ込むと、逆に上唇を軽く吸われる。
わずかに離してから、また角度を変えて重ね合う。
お返しに上唇をついばむと、今度は下唇をすくわれた。
唇の内側の濡れた粘膜が絡み合って、溶け出してきた唾液が互いの唇を濡らした。

強く抱き締めて舌をさし入れると、レヴィの体が反った。
その後頭部を支えながら、舌をつかまえる。
膝がレヴィの脚を割り、四本の脚が交差した。
レヴィの両腕が、しがみつくように俺の背中を抱きしめる。
やわらかい舌の裏側にまで舌先をもぐり込ませ、レヴィの舌を誘い出す。
奥にさし入れ、浅いところまで引き抜く。
そしてまた、奥へ。
口の中の粘膜はレヴィの体の中の感触を思い起こさせ、
それを自覚してしまうともう、胸苦しくなるほどに昇ぶっていくのを止められなかった。

唇をつなげたまま、レヴィの後頭部にやっていた手で喉元をなで下ろす。
鎖骨を通りすぎ、タンクトップの上から乳房を包み込んですくい上げると、
それは俺の手の動きに合わせてやわらかく形を変えた。
ゆっくりと何度も旋回させていると、レヴィの鼓動までもが掌に響いてくるように思われた。

長く重ねていた唇をそっと離すと、はぁっ、とレヴィが吐息を漏らした。
紙一枚ほどしか離れていない距離で、濡れた唇がレヴィの息にくすぐられる。
レヴィの頬、耳元、首筋に唇で触れていきながら、手はレヴィのベルトを外す。
ゆるいデニムのホットパンツの隙間から手を差し入れ、下着の上を這うように奥へもぐり込ませると、
レヴィが息を飲んだ。
そのレヴィが息を飲んだところで手を止め、指の腹でかすめるようになでると、彼女の全身がきゅっと縮む。
そっと、やわらかく、しかし何度も執拗にこねると、もう片方の手で支えている腰が震え出す。
指を更に奥に進ませた時、下着の内側がゆるゆると溶けている感触を指の腹に感じ、
俺の腹の底までもがひどく疼いた。

レヴィのホットパンツとその下の下着を引きずり下ろし、
体の中からあふれる粘液を絡めて指を沈めると、彼女が短く息を漏らして俺の首筋を湿らせた。
やわらかい体内を傷つけないように指をすすめ、根本まで沈めきる。
指全体がとろけた粘膜に包まれて、きゅうっと締めつけられた。
そっと引き抜いて、また、割り開くように押しすすめる。
それを繰り返すと、異物の侵入から体を守るかのように温かい体液がにじみ出し、指に絡みついた。
ゆっくりと上下させるたびに指の感触はなめらかになり、レヴィの体温は高くなる。
指のつけ根いっぱいまで埋め込むと、掌の方までレヴィの熱でうるむ。
引き抜いて、濡れた指で襞の間を探り、また戻って熱を絡ませてから優しくこすり上げる。
指を動かすごとに、レヴィの息は震えた。
わざと立てているわけではないのに、レヴィの体の中に沈めた指を引き抜くたびに濡れた音が空気を湿らせた。
先端の突起の方まで濡れた指でとろかし、根本まで丁寧に分け入ってなぞる。
そして、ほんの少しだけ指先に力を入れて脇から押しつぶすと、
レヴィの手が瞬間的に俺のシャツを強く握り締め、細い声を短く上げた。

我慢に我慢を重ねていた体はそのあたりで限界で、
服を脱ぎ去るのももどかしく、俺は素肌のレヴィとベッドにもつれ込んだ。

夜になると割に涼しくなるが、それでも今は冷房が必要だろう。
そう思って、いつものようにエアコンのリモコンへ手を伸ばすと、その手をレヴィに制された。
「……あいつ、寒いの苦手なんだよ」
ちらりと部屋の片隅で眠るねこに目をやり、首を横に振る。
――こんな時でもあの子のことは忘れないんだな。
思わず顔がゆるんだ。

俺は頷いてリモコンを置き、代わりにベッドの脇の窓を細く開けた。
気休めだが、風が少しでも入るのと入らないのとではかなり違うだろう。
暗闇に慣れた目は、外からさし込むわずかな月明かりだけでも充分にレヴィの姿を捉えられるようになっていた。

俺は仰向けになったレヴィの上に覆い被さり、膝を開かせてその間に割り込んだ。
「いい?」
耳元で訊くと、彼女が小さく頷いた。
手で自分の体を支えつつ腰を押し込むと、レヴィの体が小さく震える。
熱い体の内側までもが収縮したのが直接伝わってきて、
俺は一気に奥まで貫いてしまいたい気持ちを必死で抑え、じりじりと体を沈めた。
やわらかい粘膜の壁を、ゆっくりと押しひろげる。
ぴったり収めきると、ようやくレヴィが息を吐いたが、
それでも先ほど指を沈めた時よりもずっとずっときつく締めつけられる感覚に、快楽が急速に膨れ上がった。

慎重に体を揺らすと、レヴィの体がまた緊張して、喉の奥が鳴った。
眉が歪み、胸元を覆った手が握り締められる。
俺はその手を取って、シーツの上に移動させた。
握られた手に自分の指をさし入れて、開かせる。
もう片方の手もレヴィの顔の脇で重ねると、またゆっくりと体を揺らした。

「…………ぁ…………………………っ」

俺の耳のすぐそばで、レヴィの苦しげな声が小さく漏れる。
重ねたレヴィの手が、ぎゅっと俺の手を握り締める。
レヴィの指先が、手の甲に食い込んだ。
異物を押し出そうとするかのように閉じる彼女の体から身を浮かせ、また狭い内部に沈ませる。

「――――――ん……っ!」

レヴィの顎が上がって、瞼が震えた。
締まった腹が更に落ちくぼみ、肋骨が浮き上がったのを感じた。
強く握られた手は小さく震えている。
苦しげな呼吸が耳をうつ。
きつくきつく締め上げられる感覚に頭の芯まで陶然としながらも、
こらえるように息を詰めるレヴィの姿に、
こんなに狭くやわらかい体の内側に入ってこられる方は苦しくないわけがないだろう、と俺は頭の隅で思った。

「……ん、――――ぁ………………ッ」

それでも一度動き出した体は止められるはずもなく、
俺にできることは、自分が暴走しないようにただ手綱を引き締めることだけだった。

――レヴィ、苦しいのか?

レヴィの顔が逸らされて、枕に押しつけられるのを見ながら俺は思った。
もし苦しいんだったら言って欲しい。
耐えるのではなく、言って欲しい。
ひとりの殻の中に、逃げ込まないで欲しかった。

くぅ、とレヴィの喉の奥が細く鳴って、俺の喉まで締めつけられるように思った途端、彼女の腕が背中にまわってきた。
しなやかな腕が絡みつき、強く抱き締められる。
なめらかなレヴィの肌に拘束される。
そして、首筋に顔がうずめられた。
はぁっ、と鋭い吐息が熱く肌にしみる。

固く体を強ばらせながらも、次第にレヴィは俺の動きに合わせて揺らめき始めた。
背中を抱き締める腕は相変わらず強かったが、段々と内側からやわらかく溶けていくのが分かって、俺は安心した。
首筋に顔をうずめたまま一向に顔を見せようとしない彼女の後頭部に手を伸ばし、支える。
顔を見せて、と言いたかったが、レヴィがしたいように、レヴィの好きなようにすれば良い。
俺はレヴィを静かに抱き寄せた。
波うつ彼女のやわらかい胸が触れて、俺の心臓の速さまでもが伝わってしまいそうだった。

そうして、すがりつくように俺の首筋に顔を押しつけた後、
ずっと頭を浮かせていて疲れたのだろう、レヴィが頭を枕の上に戻した。
俺を見上げる彼女の目はぱっちりと開いていて、頭の中身までをも見透かすようだった。

――なに?

視線を返したが、レヴィはなにも口に出しはしなかった。
俺はレヴィの形の良い額に手を伸ばし、指先で前髪をかき分けた。
そのままこめかみを伝い、やわらかな頬を包み込む。
すると、彼女の頬がわずかにゆるんだ気がした。
大きな目の下瞼の縁も、穏やかに細まったように見える。

――レヴィ、今、笑った?

時折、彼女はこうしてひそやかな笑いを見せるようになった。
肌を重ねた時しか見られない、しかも一瞬で消えてしまうことの多い表情だったが、
俺は闇の中で見るレヴィのこの顔が好きだった。

唇を落とすと、やわらかに受けとめられる。
小さな木の実を摘み取るような強さで、お互いについばみ合う。
俺の呼吸を読んだかのように、レヴィの唇は俺の唇を寄せるのと同じ速さで近づいては離れていった。
お互いの唇がわずかに開いたり閉じたりするたびに、粘膜の湿った音が耳をうつ。
レヴィの髪をなでながら、浅い口づけを繰り返す。
彼女の手が俺のうなじに伸びて、くすぐるようになでられると、ぞくりと体が騒いだ。

唇でつながった粘膜の感触に、自然、腰の方もその感触を求め出す。
とろりとした熱に包まれて、全身がレヴィの中に溺れてしまいそうだった。
今すぐ激しく突きたてたくなるのをこらえて、それでも深く奥を探ると、レヴィが喉の奥で高い音を上げた。
その音が、耳からというよりは繋がった口の中から骨を伝わって響いてきて、頭の内側を満たした。
甘い余韻が体中に伝わっていく。
呼吸はどんどん荒くなるのに、未練がましくいつまでも唇をつなげて、
そうして、互いに息苦しくなってからようやく離すと、またレヴィがかすかに笑った。

早く高みへ、と望む衝動もあったが、少しでも長くレヴィとつながっていたくて、俺は体を起こした。
レヴィの背中を支えて引き寄せると、彼女も察したように自分で腹筋を使って起き上がった。
座った膝の上に、向かい合ったままレヴィを乗せる。
レヴィがゆっくりと腰を落として、また奥まで埋め込まれる。
ぴったりと深くつながると、震えたため息が落ちてきた。

レヴィは俺の肩に両手を置いて見下ろしていたが、しばらくの後、ゆっくりと顔を寄せてきた。
顔の両脇から、長い髪がこぼれる。
俺はレヴィからの口づけを静かに受けた。
それはただ唇を重ね合わせるだけの穏やかなものだったが、
なんだかレヴィに赦されている気がして、俺は満たされた。

なかなか動こうとしないレヴィの腰を引き寄せると、やっと体が波うち始めた。
うねるように、内側も締めつけられる。
唇が離れると、レヴィの両腕が首にまわってくる。
しなやかな腕がきゅっと首に絡んで、なめらかな肌に包まれる。
レヴィが体を揺らめかせるたびに、湿った吐息がこぼれてきた。
絞り上げるように上下する彼女の腰をつかまえて、強く密着させて揺すると、レヴィの吐息に小さく声が混じった。
いつも余裕綽々の彼女が見せる、数少ない切羽詰まった表情だった。
もうすっかり暗闇にも慣れた目が、窓の外からさし込む月明かりの中にレヴィの肌がほの白く浮かぶのを、はっきりと捉えた。

俺は、レヴィの首筋に唇を寄せた。
南国の熟した果実のような香りが、レヴィの肌の奥から匂いたつ。
火薬の臭いとも煙草の臭いとも違う、甘酸っぱい女の匂いだった。
薄い肌に唇を押しあて、そのまま吸い上げてしまおうかと思ったが、結局それはしなかった。
情事の痕を、誰にも見られたくなかった。
誰の頭の中ででも、レヴィがどう体をしならせるのか、どう吐息をつくのか、どう声を漏らすのか、
一瞬だって想像されたくなかった。
そう思う俺は、随分と独占欲が強いのかもしれない。
――俺は、果たしてこんな人間だっただろうか。
自分でも首をひねるばかりだが、事実なのだから仕方がない。

俺はレヴィの乳房を掌で包み、もう片方の手で背中を引き寄せた。
目の前に迫った乳房の先端、まわりの肌よりも一段濃い影となっているところを唇ではさみ、そっと吸い上げる。
レヴィの胸の奥から押し出された息が空気を揺らし、腕の中の体がくねった。
しなやかに、やわらかく、反って、崩れる。
細い髪が、レヴィの背中にあった俺の手に舞い降りてきた。

穏やかな交わりはそこまでだった。
なるべく長く。レヴィのペースで。
そう思っていたはずだったが、もう、レヴィから与えられる刺激だけでは足りなかった。
レヴィから主導権をもぎ取って下から突き上げてもまだ足りずに、
俺はレヴィを抱きかかえると、元の姿勢に押し倒した。

「――――――――ッ!」

姿勢を変えた時にぎりぎりまで抜けかかっていたのが、
シーツに押しつけた瞬間、また勢いよく奥まで沈んで、レヴィが息を飲んだ。
全身が固く縮んで、震える。
芯まで締め上げてくるレヴィの体を、俺は大きく行き来した。

「――――ぁ、あ………………っ」

レヴィの声が、甘く響く。
乱れた息も、歪む眉も、強ばって小刻みに震える体も、すべてが俺を煽る要素でしかない。
内側からあふれるレヴィのとろりとした体液が、俺の動きを助けた。

ベッドが激しくきしみ、レヴィのこらえきれない声が喉で鳴る。
それは「声」と言うよりは、彼女の体がきしむ音そのもののように感ぜられた。
その音すらもこらえようとするせいで却って鋭くなった吐息が、俺の鼓膜に突き刺さる。
レヴィは何度も、吐息の裏で甘くかすれた声を小さく上げた。
あの小さなねこの鳴き声が一瞬で途切れたような、鳴き声のかけらみたいな音だった。

レヴィはそんな苦しげにも聞こえる声を漏らしながらも、体は俺の動きに合わせて揺れていた。
求められている。
それが分かると、体は更に熱を持った。
とろけた内部が絡みつく。
レヴィの体が寄せられ、肌が溶け合い、これ以上無いほどに彼女を近くに感じる。
まるで自分の一部であるかのように。
レヴィの快楽は俺の快楽。
どこまでが俺の感覚で、どこからがレヴィの感覚なのか、もうよく分からなかった。

――レヴィ、いけよ。

ひどく野蛮な気持ちで、俺は彼女を揺さぶった。
うるんだ体が溶けた音を漏らす。
ともすると俺の方が先に果ててしまいそうになるのをぐっとこらえて、何度も奥を突きたてた。

俺の背中にまわっていた両腕が強く締まったのと、大きく脈動するようにレヴィの体が収縮したのは同時だった。
一瞬レヴィの呼吸が止まって、その後、荒い息が戻ってくる。
すがりつくように何度も体をうねらせては収縮を繰り返す彼女の内側を、
今度は自分のためだけに往復することを、俺は自分に許した。
自制を取り去った後は、一瞬だった。
頭の芯まで脈打つかのような快楽に襲われ、俺はレヴィの奥で達した。


俺が崖の上から突き落とされるように急速に墜ちた後も、レヴィはまだわずかに痙攣を繰り返していた。
収縮するたびに、荒い息が吐き出される。
弱々しい震えが完全に消え去るとようやく、レヴィの体から力が抜けた。

気づいてみればレヴィも俺も、ふたりとも海から上がってきたばかりの人のように汗みずくだった。
どちらのものとも知れぬ汗が、肌の上で混ざり合っていた。
力無くシーツに沈んだレヴィが俺を見上げていて、
なにか言いたいような、なにか訊いてみたいような気分になったが、
結局しっくりくる言葉は見つけられず、代わりに口づけを落とした。
レヴィも物言いたげな目をしているように見えたが、その唇は開くことなく、俺の唇を受けとめるだけだった。

名残惜しいような気がしたが、ずっとつながっているわけにもいかない。
俺はそっと体を引き離した。
抜いた時の刺激が感覚に触れたのだろう、レヴィが短い吐息を漏らした。
そこに混ざった声が甘く聞こえ、また俺をざわつかせたが、レヴィも俺もすぐには無理だ。
俺は脳をなだめてティッシュに手を伸ばした。


レヴィに背を向けて後始末をし、振り返ってみるともう彼女は横むきに丸まってほとんど眠っていた。
足元の方でくしゃっと溜まっている上掛けを引き上げてレヴィにもかけると、
緩慢に片手を伸ばして端っこを掴んだが、すぐに力が抜けた。
隅の方に追いやられていた枕も戻してはみたものの、レヴィはベッドの中ほどですっかり落ち着いている。
俺は無理に枕を薦めるのはやめ、レヴィの隣に体を横たえた。
狭いところが安心する、と言うかのようにレヴィが身を寄せてきて、寝場所を探った。
俺の胸元に、レヴィの額と鼻先がこすりつけられる。

――そういうところが、ねこみたいって言うんだよ。

首筋に手を伸ばして髪を指に絡めながらなでると、その手を喜んで誘い込むように顎が揺れた。
その珍しくあどけない様子に、ああ、野良ねこを手なずけた時の気分っていうのは
もしかしたらこんなかんじなのかもしれない、と俺は思った。
眠ってしまうのはもったいない気がしたが、俺の方も段々と意識が薄れていく。

「おやすみ、レヴィ」

彼女の頭の上で言うと、レヴィはただ反射で返しただけのようなくぐもった声を返した。
首筋にあった手を彼女の背中の方にまわしたのが、その日最後の記憶だった。





俺たちは、すっかり忘れていたのだ。

俺は久し振りのレヴィの肌に我を忘れ、迫り来る睡魔にあっという間に連れ去られた。
すぐさま睡魔に引きずり込まれたのは、レヴィも一緒だった。
俺たちは、この時のことを何度後悔しただろう。


空けた窓を、閉め忘れていたことを。


 * * *

次の日の朝、俺は慌ただしい物音で目が覚めた。
起き上がってみると、レヴィが顔色を変えて部屋を歩き回っていた。
「どうした、レヴィ」
そのただならない様子に、おはようの挨拶もすっ飛ばして尋ねると、レヴィが青白い顔で振り返った。
下着にタンクトップを着ただけで、まだ髪もぼさぼさのままだ。
「いねぇんだ」
「え?」
レヴィの唇が、色を失っていた。
「あいつがいねえんだよ」
俺は狭い室内を見回した。
ねこの小さなベッドはもぬけの空だ。
部屋の中は、レヴィがあちこち引っかきまわした跡がある。
「――どっかの隙間に隠れてるんじゃないか?」
言いながら、俺もベッドを降りて急いで服を着込む。
「探してる」
レヴィは、ゴミ箱の中だの、引き出しの中だの、冷蔵庫の中だの、
いくらなんでもそんなところにはいないだろうと思うようなところまでひっくり返している。
俺は、もうとっくにレヴィが探したであろうベッドの下やシャワールームの中を覗き込んだが、
小さくてふわふわしたねこの姿はどこにも見当たらなかった。

探せるところは全部探してしまったレヴィと俺は、どちらともつかず顔を見合わせ、そして目線を落とした。
散らかった室内で、俺たちはなすすべもなくたたずんだ。

目の端にずっと映ってはいたものの見ないふりをしていた窓に近寄ったのは、レヴィの方だった。
ベッドに膝立ちになり、昨夜の記憶よりも隙間の広くなっている窓に手をかけた。
そして、外側に大きく開いて下を覗き込む。
レヴィはしばらくの間、窓から身を乗り出して下を見回していたが、やがてのろのろと体を起こした。
静かに窓を閉める。
掛け金を落とす小さな音が響いた。
「……窓、閉めんの忘れた」
「……うん」
レヴィは指先で窓枠をそっとなぞった。
背中を向けたまま顔を伏せる。
俺はそんな彼女にどう声をかけて良いのか分からず、馬鹿みたいに突っ立っていた。


ぽつりと、レヴィが呟いた。
「……出てくんだったら、そう言ってけ」

俺は我に返った。
「――レヴィ、こうしてる場合じゃないよ、早く探さなきゃ」
窓を向いていたレヴィが、ゆるゆると振り返る。
「うっかり窓から出ちゃって、戻って来れなくなってるだけかもしれないじゃないか」
沈鬱な顔をしているレヴィを、俺は急かした。
「まだそのあたりで迷ってるかもしれない。ほら!」
レヴィは俺の言葉が耳に入っているのかいないのか、
焦点の合わない目を伏せて膝立ちをしたまま動かない。
なにか考えているのか、それともなにも考えられないのか、全く伺い知れない目だった。
しかし、のそのそとベッドから降りると、デニムのホットパンツに脚を通し始めた。
「ふたりで手分けして――ああ、いや、戻って来るかもしれないから、どっちか部屋に残ってた方が良い」
落ち着いていると言ってもいいほどに緩慢な動作で仕度をするレヴィに対し、
俺は焦る気持ちを抑えきれなかった。
「どうしよう、レヴィが残ってる?」
訊くと、レヴィは首を横に振った。
「……いや、あたしが行く。あんたはここに残ってろ」
「……分かった」
ドア、ちょっと開けとけよ、戻って来たらなんか食わせてやれよ、そう言って、レヴィは出て行った。

散らかった部屋にひとり取り残されて、俺はため息をついた。
この部屋をすぐ片づける気にもなれず、ベッドにへたり込んだ。

――なんで窓閉めなかったんだ……。

悔やんでも後の祭りだった。
あの子の怪我はまだ治りきっていなかった。
体も痩せ細ったままで、あんな状態で外に出たらどうなるのだろう?
そうでなくても、この街は野良ねこが生きるには厳しすぎる。
レヴィは「出て行く」と言ったが、あんなにレヴィのことが大好きで、
一瞬たりとも離れたくないといったように懐いていたあの子が、突然自分から出て行ったりするだろうか?

考えれば考えるほど、不吉な想像が俺の頭を埋め尽くしていった。

どうか、ほんの好奇心で出てしまったのであって欲しい。
早くあのドアの隙間から、小さな顔をひょっこりと覗かせて欲しい。
そして、大きな丸い目をきょろきょろさせてレヴィを探し、お前じゃない、と言うように俺を睨んで欲しい。
そうしたら、今度は俺があの子のためにレヴィを探しに行って、すぐに会わせてやるから。

――どうして出て行ったりしたんだ……。

さみしかったのだろうか。
レヴィが俺と寝ていて。
自分がのけ者にされたのかと思ったのだろうか。
そんなことは無い。
のけ者だなんて、断じてそんなことは無いのに。
レヴィがあの子をどんなに可愛がっていたか。
見ていれば分かる。
あんな顔をして笑うのも、明るい日の光の中で抱きしめてくれるのも、粥を冷まして食べさせてくれるのも。
みんなみんな、あの子にしかしない。

――それが分からなかったって言うなら、お前、馬鹿だ。

あの子がさみしがる必要なんか、どこにも無かった。
戻って来たら、それがどんなに希有なことであるか、あのくるくるした丸い目を見て言い聞かせてやりたい。
そしてレヴィと一緒に大きな街の動物病院に行って、
「大丈夫、心配ありませんよ」
と、お墨つきをもらって帰って来るのだ。
「杞憂だったね」
「とんだ無駄足だったぜ」
などと言いながら。

しかし、もし、さみしいのではなくて出て行ったとしたら……。

――昨日が最後と知っていれば、一緒に寝かせてやったのに。

また縁起でもない想像に取りつかれているのに気づいて、俺は頭を振った。

レヴィと一緒になんでもなかったような顔をして戻って来てくれたら最高だが、場合によっては――。


俺は、レヴィにあの子を見つけて欲しいのか、それとも見つけて欲しくないのか、
それすらもよく分からなくなっていた。

俺は重い腰を上げて、ドアの外を気にしながら散らかった部屋を片づけた。
それから、ドアの外を覗いてみたり、前の通りまで出て行ってみたり、
物陰を覗き込もうとして今この瞬間に帰って来たら困ると慌てて部屋に戻ってみたりを繰り返した。
手持ちぶさたでテレビをつけても雑誌を手にしても、ちっとも集中できない。
じりじりとしか進まない時計を睨んで、俺は果てしなく長い一日を過ごした。



レヴィが帰って来たのは、外が暗くなって大分経ってからのことだった。
「……お帰り」
「……ああ」
彼女はひとりだった。
「……どう?」
訊くまでもなかったが、レヴィは黙って首を横に振った。
ひどく疲れた様子で、崩れ落ちるようにイスに座った。
そんな彼女にかける言葉が無くて、俺は冷えた缶ビールをさし出した。
「はい」
レヴィは受け取ったが、タブに指をかけることなくテーブルの上に置いた。
代わりに煙草を取り出してくわえ、火をつける。

ひとりにしてやった方が良いのだろうか、それともこのままここにいた方が良いのだろうか。
俺はどうして良いのか全く分からず、テーブルをはさんだ向かいに座って、レヴィと同じように煙草を取り出した。


白い煙が室内を満たし、灰皿の吸い殻が山となり始めた頃、
レヴィが煙草をくわえたまま、かすれた声で小さくなにか言った。

「ここが嫌だったんなら、最初っからついて来んな……」

とぎれとぎれの声だったが、俺にはそう聞こえた。
「レヴィ……」
「…………手間、取らせやがって」
彼女の伏せた顔は、前髪が影になっていてよく表情が読み取れない。

「レヴィ!」
俺の声は、思いの外強くなった。
「あの子が自分から出て行ったって、どうして分かるんだ! ここがが嫌で出て行ったわけ無いだろ!」
打ちひしがれた様子の彼女に怒りをぶつけたいわけではなかったが、
俺はどうしても、言わずにはいられなかった。
「ちょっと夜の散歩に出ただけさ。そして道に迷ったんだ、きっと。
ここが嫌だったなんて、そんなことは有り得ない」
「――やめろ、ロック。相変わらず甘ちゃんだな。ベビー・ルースのチョコ・バー並に甘いぜ。
そんな譫言は聞きたくねえ」
氷のように冷たいレヴィの声が返って来た。
暗い目が見据える。
今のレヴィは一触即発だ。
しかし、俺は言い募った。
「譫言でも慰めでもない。事実だ」
レヴィの冷え固まった瞳を、負けじと見返す。
「あの子がレヴィのことをどんなに好きだったかなんて、レヴィが一番よく知ってるはずだろ」
レヴィを見ると駆け寄ってきて、撫でて欲しいと体をすり寄せ、喉元を掻いてもらうと、うっとりと目を細めたあの子。
そんなあの子にほだされるように笑って、嬉しそうに抱き締めていたレヴィが、知らないはずは無い。
まっすぐ見ると、レヴィの眉が歪んで、視線が落ちた。

分かっている。本当は分かっている。
レヴィも俺も。
あの子が出て行った理由には、もうひとつ可能性がある。
レヴィは、どうしてもそこから目を背けたいのだ。
しかし俺は、結果的にその可能性を高めることになったとしても、レヴィの言を聞き逃すことはできなかった。

「……レヴィ、他人の好意を否定するのは、無礼だ」

レヴィはきっと、誰かから愛されることに慣れていない。
今回も、いつものことだと言い聞かせて、どうにかやり過ごそうとしているに違いない。
やっぱりな、慣れている、などと嘯いて。
俺はそんなレヴィが哀しかった。
彼女が何度期待を裏切られたのかは知らないが、
だからと言って、確かにあった事実まで無かったことにはして欲しくなかった。

レヴィは分かったとも分からないとも言わず、長いことうつむいていた。
「……ロック」
しばらくして、低い声がレヴィの唇からこぼれた。
「ん?」
「……あんたは、言って行けよ」
「え?」
伏せていたレヴィの顔が、ゆるりと上がった。
「あんたは、ここから出てく時、ちゃんと言って行けよ」
レヴィの目は、苦い色をしていた。
「出てくって、俺は出て行ったりなんか――」
「ロック!」
――しないよ。そう続けたかった言葉は、レヴィの強い語気に遮られた。
「そんなことは訊いちゃいねぇ。あたしの訊いたことにだけ答えろ。
出てく時、ちゃんと言えるのか言えねぇのか。イエスかノーかだ。赤ん坊でも答えられる」
それ以外の返答は許さない、とばかりにレヴィは俺を睨んだ。

――なんでそんなこと……。

俺は納得がいかずに更に反論しようとしたが、レヴィの鋭い目線はそれを許さなかった。

「………………イエス」
しぶしぶ絞り出すと、レヴィは小さく頷いた。
「……それで良い」
いいな、約束したぞ、かすれた声でそう言って、レヴィは席を立った。



――神様。

神も仏も信じたことのない俺が、祈るような思いで懇願していた。

――もう、彼女からなにも奪わないでくれ。

彼女が予め与えられたものはひどく少なく、諦めを知った彼女は多くを望まない。
そのなけなしのものまで奪われた、ほとんどなにも持たない彼女から、更になにを奪おうと言うのか。

神などいない。
レヴィが恐らく十年も前に悟っていたことを、俺は今になって思い知った。

「出て行く時は言って行け」と、そんな歪んだ約束事しかできない彼女がやるせなかった。
「お前は行くな」と言ってくれれば、迷わず「イエス」と答えたのに。


 * * *

その次の日、俺はレヴィが仕事に来ないのではないかと思ったが、レヴィはあっさりと業務開始時刻に現れた。
そして、重苦しい陰をまとわりつかせてはいたが、怖いくらい淡々と仕事をこなした。
ダッチやベニーと気の利いた会話を交わし、皮肉な笑みを浮かべる。
テーブルの上に足を乗せてピザを食べるのもいつも通りだ。
しかし、夜になると、いつの間にか彼女の姿は消えていた。



数日後、彼女の部屋を訪れてみると、部屋の中はすっかり元通りだった。
籐のかごのベッドも砂を敷き詰めたトイレも消えていて、
前のように乱雑に雑誌が積み重なり、弾丸の箱も床の上で口を開けている。

俺が部屋を見回していると、レヴィが強く睨んだ。
「まだ帰って来るかもしれないじゃないか」という俺の言葉を制するように。

「どうした」
レヴィは体全体から「あの件はもう終わりだ」と言うような、ぴりぴりとした空気を発散させている。
俺はその雰囲気に圧倒されそうになりながらも、ハンカチに包んだものをさし出した。
「これ……」
「あ?」
レヴィはハンカチの中を覗き込んだ。
「部屋のドアの前に置いてあった」
中にあるは、カマドウマの死骸。
こうしてハンカチ越しであっても気色悪いのをこらえて、さし出す。
レヴィはそれを見ると、なにも言わずにハンカチごと受け取った。

「レヴィ、これ、きっとあの子だよ」
レヴィは、息絶えているカマドウマをじっと見下ろす。
「ほら、レヴィ、褒めてやっただろ? 獲って来た時、よくやった、って。
だから、お礼のつもりじゃないか?」
彼女の眉がわずかに歪んだ。
そんな、と言うように、小さく首が左右に振られる。
「どうして出て行ったのかは分からないけど、あの子はレヴィといる時、幸せそうだったよ。とても。
幸せそうだった。
……それだけは、確かだ」
うつむくレヴィに、俺は重ねて言った。
「――あの子はとても、幸せだったんだよ、レヴィ」
レヴィはぎゅっと唇を引き結ぶ。

「今もきっと、どこかでたくましく生きてるさ。
大丈夫、レヴィにしか懐いてなかったんだ。
ちゃんと警戒しながら生きてくよ。俺にしたみたいに、ね」
そのうち、またどこかで会うかも。
そう言うと、レヴィは無理矢理、皮肉な笑みを浮かべようとした。
「……だからあんたは甘ちゃんだ、ってんだ。呆れた楽天家だぜ、ポリアンナ。
世の中そんな、クリスマスのボンボンみたいに甘くねえ。
もう終わったのさ、ロック。幕は下りた。そろそろお家に返る時間だぜ」
しかし、その笑みは成功しているとは言えなかった。
つり上げようとした唇の端が震えた。
「……でも、まだルーレットの球がハウスナンバーのダブルゼロに入ったと決まったわけじゃない。
ストレートアップが的中するかもしれないだろ?」
開き直って言うと、レヴィはもう一度、手の中のカマドウマを見つめた。
そして、ぽつりと言う。
「…………馬鹿な奴……」
泣き出す寸前のような表情をして顔を歪ませたかと思うと、
レヴィはすいと立ち上がり、キッチンのゴミ箱へと片づけに行った。

俺は黙って、その背中を見つめていた。



俺のしたこと。
それを知ったら、レヴィは怒るだろうか。
それとも、呆れる?
百人に訊いたら百人ともが、「馬鹿なことを」と言うかもしれない。

しかし、それでも俺はレヴィに、幸福な日々は幸福なまま記憶に留めておいて欲しかったのだ。

彼女は俺を「甘ちゃん」と言った。
確かにそれは正鵠を射ている。
しかしここで、「ねこは死に際を飼い主に見せない」などということを彼女に告げて、なんになるだろう。
一体誰が、そんな結末を望むだろうか。

あのねこは、レヴィと幸せな日々を過ごしたのだ。
レヴィと出会う前どんな風に過ごし、そして今どうしているかに関わりなく。
あの子は、レヴィと過ごした日々だけは、確実に、幸せだった。
それがすべてだ。



もし注意深い人がいて、少し気をつけて見たなら、あのカマドウマには
ねこの小さな歯形なんかどこにもついていないことが分かるだろう。
それを、人は「無意味」と言うだろうか。
現実をねじ曲げるのは愚かなことだ、と。

けれど、欺瞞は本当に罪だろうか?
無駄で意味の無いことだろうか?
確かに、いくら優しく偽ってみたところで現実は変わらない。
しかし、俺はレヴィに、厳しすぎる現実を生きるために
確かに存在した光のかけらまでもを黒く塗りつぶして欲しくはなかった。

真実とはなにか。
簡単だ。
ある時、レヴィという女と幸せに暮らした小さなねこがいた。
それがレヴィと俺が知る限りの真実だ。



誰に揶揄されても嘲笑されても構わない。
俺はこれからも、迷いなく虚言を吐き、平然とはったりをきかせ続けるだろう。


レヴィのためなら、何度だって。





80名無しさん@ピンキー:2010/08/03(火) 21:45:12 ID:PNLSLO3E
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
GGGGJJJJJJ!!!!!!
81名無しさん@ピンキー:2010/08/03(火) 23:23:02 ID:8x23NUEc
泣かせるなよばかやろう・・
GJすぎる・・
ロックがあんなにカマドウマを嫌がった伏線がここにあった訳か
ロックを愛しているが故にぬこは・・辛いな
82名無しさん@ピンキー:2010/08/04(水) 00:25:51 ID:essVGX8k
やべぇ涙と鼻水が止まらねーよう
保管庫読み返したら、さらにこみ上げた
gjすぐる、神様ありがとう
83名無しさん@ピンキー:2010/08/04(水) 01:27:58 ID:iLlAu5/2
ぬこはどこで息絶えたんだろうな・・
レヴィに見つけてほしいようなそうでないような複雑だ
84名無しさん@ピンキー:2010/08/04(水) 11:37:23 ID:GO9QmSEs
オレ、ロックが猫を見つけて葬ってやるのかと予想してたんだが。
さらに上を行かれた気分だ。
85名無しさん@ピンキー:2010/08/04(水) 16:01:08 ID:iLlAu5/2
もしロックがぬこの視線を無視してやろうとしたら・・

下着を脱がす→指を入れようとする→ふぎゃああぁああ→レヴィの大事な所を体で死守
「おいお前・・ちょっ・・・毛玉がくすぐってぇよ」
「・・・なんてうらやましいコトしてんだ」

雰囲気ぶち壊してすまん。反省はしていない
86名無しさん@ピンキー:2010/08/04(水) 16:23:46 ID:nx33rUiC
これどこの本屋で買えますか?

素晴らしい作品を有難うネ申・・・そして乙でした。
読んでて自分も、ドアの隙間からひょっこり顔を出してくれよ、そして「何でレヴィじゃなくてコイツがいんだよ!」ってまたロックさんを威嚇してやってくれよ・・・って思ったわ。
やっとやっと幸せを掴んだのに(泣
87名無しさん@ピンキー:2010/08/04(水) 21:22:04 ID:5j3W//jE
ねことロック、それぞれの愛し方に本気で泣けてきた…
毎回思うがいつもラスト一行が神がかってる

しかしまさかカマドウマに泣かされるなんて思わなかったよ
88名無しさん@ピンキー:2010/08/05(木) 05:53:07 ID:JS6m1H1Z
週末にじっくりゆっくり読もうと思ってたんだけど、我慢できずに夜中一気読みしちまったい。
はあぁぁぁァア・・・・ぬこおおおお(´;ω;`)
普通に物書きとして食ってけるんじゃないかってくらいGJ
ぬこ視点と合わせて読むとまじでクル。。

寿命って単語に何で寿なんてめでたい字が使われてるのか、それは また会える からだって女優力だかなんだかの深夜ドラマでいってたのを思い出した。またね、か・・・また逢えてほしいお・・・
89名無しさん@ピンキー:2010/08/05(木) 15:51:20 ID:fE9b4KqZ
きっとまたあえるよ・・
今度はロックとレヴィがいちゃいちゃしてても寂しくないように事務所で飼ってもらいな
でもレヴィはあいつ以外は受け入れないとか思ってそうだから
ちゃんと僕だよ僕!って言わないとダメ(おい
90名無しさん@ピンキー:2010/08/05(木) 22:05:07 ID:826ySepv
今朝、通り道でリアル茶虎ぬこの死体見ちまった…
マジ泣きしそうになった
91名無しさん@ピンキー:2010/08/05(木) 22:47:44 ID:fE9b4KqZ
うーむ本気でネコ飼いたくなってきた
しかしレヴィたんの為にどんな叫び声を上げながらカマドウマを捕まえたのか考えると・・
ロック泣かせるぜ・・
そのあとレヴィたんがどのように立ち直ったのか・・神よ教えてくれ
92名無しさん@ピンキー:2010/08/06(金) 01:03:11 ID:Ev9IRzZG
ttp://m.youtube.com/watch?gl=JP&warned=True&client=mv-google&xl=xl_blazer&hl=ja&xl=xl_blazer&v=Ne3L99fjhyo

こんな風にレヴィたんの部屋で元気に走り回ったり一生懸命とことこレヴィの後付いてったりしてたのかな
93名無しさん@ピンキー:2010/08/07(土) 10:37:17 ID:qVcTGREu
話自体は素晴らしいんだけど、作者さん、北海道か東北の人でしょう…
以前の作品にさりげなく方言が混ざってたから何となくそう思ってたんだけど…タイの暑さ無視の描写多すぎない?
窓開ける前は部屋閉め切って冷房無しだったってことなのかなー。
94名無しさん@ピンキー:2010/08/07(土) 16:39:45 ID:aassDQ+E
>>92
かわいいよぬこかわいいよ’`ァ,、ァ(*´Д`) ’`ァ,、ァ
95名無しさん@ピンキー:2010/08/07(土) 16:56:16 ID:KMlyAQVC
>>93
んん?基本的に常時クーラーが入ってるのだという描写が多々あったよ
ネコがはじめて来た夜も「機械から冷たい風が〜」とあったし
レヴィのおなかに乗って寝てる時も入ってたし

「夜になると割と涼しくなるが冷房が必要だろう」
だけどこの日、具合が悪いと気づいたネコの為に暑いけど我慢したんじゃん
でもそれが裏目に出てネコは開けた窓から出て行った・・と
書いてて哀しくなったわ
96名無しさん@ピンキー:2010/08/07(土) 21:15:28 ID:XGHJG51o
◆JU6DOSMJRE氏に本気で同人誌出して欲しい
97名無しさん@ピンキー:2010/08/07(土) 22:27:37 ID:qVcTGREu
>>95
一生懸命的外れな解説書いて哀しくなってる君を想うとこっちも哀しくなった
つまり、窓開ける前はエアコン切れてたんだよね?

季節を考えようか。
雨の描写が無いから雨季では無い
南国生活に慣れてる2人がうんざりしている描写があるから乾期でも無い
フライパンみたいに暑い=暑期
BLはタイ南部の設定
暑気でも乾期でも、北部の山岳地帯なら兎も角、南部の密閉型のアパートで夜といえど窓締め切ってたらどうなると思う?
風通し重視の南国仕様の住居でも無い限り、薄く窓開けただけでどうにかなると思う?
で、その状態でセックスして火照った身体で隙間無く引っ付いて布までかけるなんて、好きな相手でもうげーとなるよ。

暑さに関する認識が北国よりなのはこの方のSSに一環してると思うけど
夜が冷えるって表現、凄く多い。
(北国の方だと思う根拠は以前出てきた「うるかす」という表現。こんな言葉は東北・北海道人しか使わない)
他は申し分無いから、「多分あなたが思ってるより暑いよ」と伝えたかっただけなんですがねー。
98名無しさん@ピンキー:2010/08/07(土) 22:41:49 ID:X7lx2WpW
夏休みって怖いね
99名無しさん@ピンキー:2010/08/07(土) 23:02:41 ID:KMlyAQVC
ん?ごめん何か誤解しているようだ。
哀しくなったというのは嫌味ではなくて、ただ話を思い出して哀しくなったという事だじょ
別にけんかを売っているわけでも何でもないよ(誤解されるような書き方してすまんかったが)

本文に関してはなるほどなあと思った。貴兄はタイに行ったことあるのか?
タイ未経験の身としては夜になると冷えるというのは別に疑問にも思わんかったなー
しかしなんか思わぬ所で怒らしてしまって悪かったなあ・・言葉は難しいぜ

100名無しさん@ピンキー:2010/08/08(日) 01:13:52 ID:SZnUPjYs
このスレが荒れるのを楽しみにしてる人をたまに見かけるんだ
どう、この流れ気に入った?

101名無しさん@ピンキー:2010/08/08(日) 02:07:44 ID:TKX+4AO5
>>99
普通に>>95で話思い出して悲しくなったって伝わったぜよ。

>それが裏目に出て〜…
って解釈にやるせなさがこみ上げたぜ…っ

まじでこれ同人で読みたいね
102名無しさん@ピンキー:2010/08/08(日) 09:20:51 ID:2/0o6GSO
色んな感想を聞きたいとか、作品は好きだけど馴れ合いばかりの同人界隈とは関わりたく無いとか、サイト作るの面倒だとか、
2ちゃんに投稿するにはそれぞれ理由があるだろうに。
同じ方向でマンセーしない感想は荒らしとか、同人で出せだとか、やっぱりこのスレ気持ち悪い。
103名無しさん@ピンキー:2010/08/08(日) 16:52:48 ID:7oaR+ywD
>>102
大丈夫?暑さでやられたの?
レス自体じゃなく雰囲気が荒れたってことだろ。流れって言ってんじゃんw
誰も同人出せなんて言ってない。同人で読みたいほど面白いって賛辞でしょうが
日本語の機微も読み取られへんのかいや。気持ち悪い
104名無しさん@ピンキー:2010/08/08(日) 19:25:22 ID:1MCsFknu
102の察しの悪さは破滅的だな
自分以外空気読めてない的思考の典型
読めてないのはその自分だけなのに
以前どっかで誰かにこっぴどくやられた経験でもあるの?
それの八つ当たりならよしなね。

書き手氏のやる気がそがれないことを祈るわ。
105101:2010/08/09(月) 03:12:41 ID:N31P2Hxq
いや実際に出せとは言ってないしそんな要求する資格もないからw
あくまでそれだけ感動s(ry

って解説しようとしたら、既にしてもらってたw
まさか言葉のまま受けとめる人がいるとは思わなかった。
10696:2010/08/09(月) 06:51:04 ID:xRJ4tgl0
すまん、あくまで>>103が言ってくれたままの意味で書いたんだけど
この流れの原因の一因を作ってしまったようで申し訳ない

それだけ職人さんの作品が好きなだけなんだ
107名無しさん@ピンキー:2010/08/09(月) 18:05:36 ID:/zW9sjkS
別に気にすることはないさ。誰だって普通に分かることなんだから。
あいつは一度ファビたんにあそこ蹴り上げられて省みた方がいいな。
108名無しさん@ピンキー:2010/08/09(月) 18:25:25 ID:DTCTBeCU
よくわかんないんだけど同人だと何かいいことあるの?
109名無しさん@ピンキー:2010/08/10(火) 00:20:50 ID:1Ed9Vjw3
本になって実際手に取れるってとこじゃないか?
110108:2010/08/10(火) 01:13:01 ID:5pZNYmM5
そんだけ?自分達にとって嬉しいことだけ?
それって賛辞の対象にとって凄い手間とコストかかる(よね?)上にメリットの無いことを前提としてる例えな気がする。

何で揉めてんだろうと思ってログ読んだら同人誌出してって実際書いてるし、
それを嗜めた人を「空気」読めて無いって詰ってるけど、
同人にどっぷりの一部の人しか理解出来ない「空気」にかなり違和感…同人誌に興味無い私には読めない…。

そんな身内にしか通じないよくわからない賛辞より、例えば一手間かけてお得意の絵でも描くとかする方が余程感動伝わると思うんだけど(あくまで例えね)。

わざわざこんなこと書くと同人さんに揚げ足取られて、空気悪くしやがってって言われるんだろうけど、
身内のなあなあでしか通じ無い理屈にどうしてもすっごく違和感…悪いけどどっちともメンドクサイ人にしか見えないよ。



あと、誰も作品と作者さんを悪く言ってないよ。
111名無しさん@ピンキー:2010/08/10(火) 01:21:10 ID:1GDuaoxn
もう放置しろよ
雰囲気最悪じゃねーか
112名無しさん@ピンキー:2010/08/10(火) 02:05:42 ID:1Ed9Vjw3
>>110
あのさあ・・コストかかるとかメリットないとかって・・本気かい?
賛辞の後のなんら強制力のない作者からクレームが来た訳でもない言葉を、何故に賛辞以外の意味に取れるのか。
貴方がもし作者なら「賛辞の意味だよ」ってわざわざ付け足すけど、あの神がそんな簡単な行間も読めない人だとは思えないし。
俺も同人なんか滅多に読まないけど普通に「それほど感動したんだな」って思ったけども。
たとえ分からなくとも、ただ同人出さなきゃいい話なのに何を怒ってるのかわからん
それをダシにしてスレ自体の悪口とかケンカ腰で、そりゃ嫌われるっつーのw
このスレには作者さんも他の関係ない人もいるんだぞ。それぐらい同人に興味なくてもわかるだろ。
あれを嗜めたとかよく言うよ。人の事言えないけど嗜めるってのは悪口言うことじゃねえんだぞw
113名無しさん@ピンキー:2010/08/10(火) 03:49:45 ID:HgygA1RZ
ここまで一から十まで言われないとわからないって・・・
ちょっと三合会に依頼して闇の掃除屋さんにお掃除してもらったほうが(ry


まあそんなことよか聞いてくれ。
最近ガッキーの十六茶のCM見ると

「♪レっヴィは 朝っ(チャチャッチャチャッ♪)銃乱射から〜 

あっさっ ブラッド 銃〜乱射♪ぜっこーちょー☆」

って浴衣着たレヴィたんが踊ってる姿が浮かぶんだ。
114名無しさん@ピンキー:2010/08/10(火) 06:06:43 ID:/spLiPOF
うん・・・なんだか申し訳ないんだけど、耳鼻科か精神科行ったらいいんじゃないかな・・・・・・
115名無しさん@ピンキー:2010/08/10(火) 06:26:02 ID:1Ed9Vjw3
第一、賛辞の仕方にいちゃもん付ける権利あるのって作者だけなのにね
なんで迷惑かけられたわけでもない、関係ない人が急に怒り出したのやら・・
同人界でよほど嫌な目にでもあったのかね。あの世界も色々だっていうからわからんではないが
このスレにしたらとんだとばっちりだわ。
神話が読めて漢字覚えたり、関西にいながら東北の方言のレクチャーも受けれたりする良スレなのに・・

>>113
ガッキー見たら吹きそうになるからやめてけれw表紙で着物着てたりしたけども
俺はタバコときたらラキスト、メイドときたらメガネ黒髪しか浮かばない体になったぞ
116名無しさん@ピンキー:2010/08/10(火) 08:52:06 ID:6cm6ho/d
たまにでいいんでアメリカンスピリットとかゴロワーズのことも思い出してやってください
117名無しさん@ピンキー:2010/08/11(水) 02:27:47 ID:jdAbnRpI
>>116

マイルドセブンもな



俺はガラムだが・・・
118名無しさん@ピンキー:2010/08/11(水) 06:46:31 ID:ao0cZB9g
>>113

十六茶銃乱射・・・
だれうまwww

想像したら可愛かったじゃないか!!
119名無しさん@ピンキー:2010/08/12(木) 00:37:38 ID:GvCBlh9I
>>117
俺の兄貴もマイルドセブンだったなー
ロックみたいにかっけくなかったがw
120名無しさん@ピンキー:2010/08/12(木) 18:41:56 ID:GcJxq+M6
俺は煙草吸わないのにレヴィたんに惚れた勢いでラキスト買っちまったぜ
121名無しさん@ピンキー:2010/08/12(木) 20:56:33 ID:uvc4EVNU
酒に凝りはじめたオイラは少数派なのかw
122名無しさん@ピンキー:2010/08/13(金) 00:26:39 ID:uTE32h60
>>120
ラキスト値上げの記事を見て思わず涙したぜ

最近ぬこvsロックの妄想が止まらない・・
ベッドの取り合いをしたらレヴィはどっちをとるのか、興味深いところだ
123名無しさん@ピンキー:2010/08/13(金) 00:38:26 ID:Q7f7lT6i
近所で花火大会があったので
思わず日本編半年前の、高校最後の夏休みに銀さんの屋台を手伝う雪緒を
想像したら目から汗が出てきた
124名無しさん@ピンキー:2010/08/13(金) 02:22:42 ID:3DqCkhCC
普段はマルボロ吸ってるのだが、今日出先で手持ちを全部吸い付くしたので、
ラッキーストライクのBoxを思わず買ってしまった俺に謝罪と賠償を
してくれるのは誰だいw
125名無しさん@ピンキー:2010/08/13(金) 03:04:21 ID:LC9WQuOq
>>121

バカルディよりハバナクラブが旨い
126名無しさん@ピンキー:2010/08/13(金) 05:06:47 ID:uTE32h60
>>124
レヴィたんが払ってくれるはずはないので、張の旦那にたんまり小遣い貰ったロックに払わせろw
127名無しさん@ピンキー:2010/08/13(金) 07:07:14 ID:1grOaSZs
>>122

そこは敢えて猫であってほしいw

いやだって短い命なんだ……ロックとはこれからいくらでもイチャイチャできるから
128名無しさん@ピンキー:2010/08/13(金) 20:44:18 ID:3DqCkhCC
ラム酒はハナベイのが好き
129名無しさん@ピンキー:2010/08/14(土) 08:21:05 ID:SMjRyYbG
みんな酒強くていいな。
俺なんてラミーってチョコ食っただけでくらくらしたっつーのに。
レヴィはかき氷にもラム酒をかけるのか。
130名無しさん@ピンキー:2010/08/15(日) 02:02:22 ID:2H8nZlx2
レヴィ猫萌え話だと思って読み進めたらベネズエラ人の反感を買いそうな
ブラックギャンブラーロックさん話だった。

>「あんたは、ここから出てく時、ちゃんと言って行けよ」

これをレヴィに言わせた作者の勝ちだな、こりゃ。
131名無しさん@ピンキー:2010/08/15(日) 09:37:24 ID:DVZMmXXk
ラキストの箱デザインが好き
132名無しさん@ピンキー:2010/08/15(日) 09:41:43 ID:HO574Pne
133名無しさん@ピンキー:2010/08/15(日) 09:42:19 ID:HO574Pne
>>131

この赤丸に当ててみな!!



カチャ・・・ターン!!
134名無しさん@ピンキー:2010/08/16(月) 19:53:24 ID:x/KhyhI0

ラキストにじゃれるぬこを受信した・・!
135名無しさん@ピンキー:2010/08/17(火) 04:03:14 ID:7yES0rZE
レヴィ「こらこら!それはオモチャじゃねえぞ」
136名無しさん@ピンキー:2010/08/18(水) 08:58:25 ID:BIGQpvVk
「レヴィ・・最中にねこ構うのはやめてくれ・・」
137名無しさん@ピンキー:2010/08/19(木) 16:52:44 ID:NU9Iog6A

ロックの息子はほったらかしか?ロックかわいそスw
138名無しさん@ピンキー:2010/08/19(木) 21:38:41 ID:fHc2QC+L
全裸で指パチンパチン鳴らしながら何とかレヴィたんの気を引こうとする
半泣きの岡島さんを想像してしまった
139名無しさん@ピンキー:2010/08/19(木) 23:58:46 ID:VBB8U6VN
がらがらガシャーン!!!

「あーっ!アイツ空き瓶ひっくり返しやがった!・・・割れてねェだろうな?!」
ささっ(レヴィ、ベッドを抜け出す)

「ちょwwwえwwwww」

「全く大丈夫かよ?!怪我したら危ねえだろ・・・」

「みゃ〜(ゴロゴロ)」

「わかったわかったヨシヨシ」

「・・・・・・」
戻ってきたらどうお仕置きしてやろうか企てる犯島さんであった
140名無しさん@ピンキー:2010/08/20(金) 18:49:38 ID:uDrY1XmV
「・・・なんかおめえ汚れてねえか?」

「・・え・・あのレヴィさん・・・?」

「しょうがねえ、風呂のついでに洗ってやるか」

「うみゃああぁぁあああ」ジャージャバジャバ

依然放置プレイ続行中の黒島哀れであった
141名無しさん@ピンキー:2010/08/20(金) 19:09:55 ID:tG74ViUQ
捨て猫だった猫って寂しかったからか寝る時飼い主の指をしゃぶる癖があったりするんだよね。

てことでレヴィのおっぱいしゃぶるぬこ想像中。
142名無しさん@ピンキー:2010/08/21(土) 14:40:10 ID:CJxDpYnW
ちょっおま、たぎるコト言うなよw

「あーさっぱりした、お前今日はここで寝るか?」
「みゃあ〜」
「ちょっオマエどこ吸い付いてんだよ!やめろって・・ん・・・あ!」
「・・・・・レヴィ?」

こうですか?ワカリマテン!
143名無しさん@ピンキー:2010/08/21(土) 20:10:04 ID:M1xsDkwm
俺にもレヴィのB地区ちゅぱちゅぱさせてください
144名無しさん@ピンキー:2010/08/22(日) 12:23:29 ID:EWLkLKPG
許さんぞ
145名無しさん@ピンキー:2010/08/22(日) 12:50:29 ID:bgpeEBdU
レヴィたんはソーヤーの功績によって脇腹が弱いことが判明したから、ねこのしっぽでこちょこちょ攻撃だ!


時々でいいんで俺もレヴィたんの備蓄ちゅぱちゅぱしていいですか?
146名無しさん@ピンキー:2010/08/22(日) 21:56:27 ID:Jmjyv09q
レヴィたんを筆責め……考えるだけで股間が熱くなるな……

ところで例のおまけアニメ見てたら、妄想が暴れまくって
日本編で性転換SSが出来てしまいそうだよ。
ロックが巨乳の女なのはともかく、チャカがガチレズになっちまったのは何でだぜ orz
147名無しさん@ピンキー:2010/08/23(月) 02:28:09 ID:GNE83w7Y
YOUss書いちゃいなYO!
てかチャカまでメンバー入ってるってどんだけw
148名無しさん@ピンキー:2010/08/23(月) 10:41:07 ID:sMBeyfCg
>>147
本来だとロック(男)がレヴィの前でボッコボコにされるところで
チャカ(女)がロック(女)の乳揉んだりするわけですよ。
腰元に手を出そうとするバカ殿様みたいに笑うわけですよ。
で、シェンホアさんもびっくりのノーパンノーブラだったりするわけですよ。

……やっぱりちょっと岡島緑さん書いてくる
149名無しさん@ピンキー:2010/08/23(月) 10:45:24 ID:SxbOG+BT
寧ろレヴィたん筆責めが見たいです
150名無しさん@ピンキー:2010/08/24(火) 08:47:44 ID:fxL4HaYs
作者が色々失言してるけどこのスレの神はいなくなりませんように
151名無しさん@ピンキー:2010/08/24(火) 13:54:23 ID:OTZNpoYK
もう俺は神のファンでもある・・
152名無しさん@ピンキー:2010/08/24(火) 14:09:57 ID:IHALMAlW
神なんだからファンではなく信者だろう

「聖お兄さん」でも読んで勉強したまえ
ガリラヤの湖上を歩いた希代のトリックスターとその父親の詳細がわかるぜ!
あと息子がトイレ大好きな福耳のアンちゃん(元王子)とかな
153名無しさん@ピンキー:2010/08/25(水) 20:33:01 ID:djeGqWci
>>151
ロックに関しては話によってはぶっちゃけ神達の方が好きだったりするw

もしレヴィたんが日本語勉強したら
「『ぶん殴る』って何で『ぶん』なんだ??」
とか
「『とんとん拍子』と『カンカン帽子』のとんとんとカンカンって(ry」
とか
「気にすんなよロック、明日は明日の風邪をひく とかいうじゃねえか!」

とか言い出すのかな
154名無しさん@ピンキー:2010/08/25(水) 21:04:18 ID:N9Z66Z5T
黒島も白島も好きだ

保管庫にある「赤」みたいに、
レヴィの為に人殺す勢いの岡島さんを原作でやって欲しい
155名無しさん@ピンキー:2010/08/25(水) 22:04:44 ID:8lwpRgJq
>>152


違う違う!!今日は涅槃じゃないから!!
156名無しさん@ピンキー:2010/08/26(木) 07:56:40 ID:j6F8yHCy
>>153

言葉もだけどそれ以上に日本人の習慣が不思議だったろうな。

地下鉄で移動するとき普通に電車内で足元に荷物置いて寝てんのとか見て「こいつはアホか…?!」と思ったに違いない。
あとポケティ貰ってはしゃいだり居酒屋でおしぼり渡されて喜んだり。
岡島はちょっと恥ずかしいので暫し他人のフリ。
157名無しさん@ピンキー:2010/08/28(土) 19:12:36 ID:5+vHkQYU
レヴィたんへの萌には抗えない保守
158名無しさん@ピンキー:2010/08/28(土) 20:50:04 ID:8ZVWE5p5
突然、髪下ろしたスーツ姿のレヴィたんが見たくなった
159名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 00:52:00 ID:0pVCs+F9
突然ロックにじゃれるレヴィが見たくなった
160名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 07:01:43 ID:6XdAig4z
>>158

勿論、パンツスーツだよな?
161名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 19:10:15 ID:UEzVD0TU
ジェーンがどの辺を見て、ロックをレヴィの彼氏と認識したのか気になる
162名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 21:52:33 ID:yFSsj+W2
そりゃアンタ、偽札編で仕事上は一応ジェーンを率先してガードしなきゃなんないのに、
あんだけ名前を連呼して叫びながら周りにいる誰よりも先ずあの銃も持ってない役立たず男(にジェーンは見えた)を必死になって守ろうとする姿見りゃ、少なくともレヴィたんの方はベタ惚れしてんだなとは思うだろうよ。


若しくは港に着くまでラグーン号でギシアンしてたのを目撃したか。
163名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 22:33:56 ID:0pVCs+F9
ギシアンw
確かに偽札編でのデレヴィ率は高かった。エダに嫉妬するは名前連呼でw
あの鉄火場で何回ロックと叫んだか
164名無しさん@ピンキー:2010/08/30(月) 00:57:15 ID:yyH+Q/WN
「ロック!」
「ロック!」
「ロックッ…!!!」←半分ひっくり返った声。かなり切羽詰まった感じ。
「ロック無事かっ?!」

ロック「なんとも言えないw」


さっき見て確認した。
レヴィたんまじでロックロック言い過ぎワラタwww
165名無しさん@ピンキー:2010/08/30(月) 03:09:27 ID:6+7V302x
依頼者のジェーンはそっちのけwレヴィたん正直すぎる・・w
166名無しさん@ピンキー:2010/08/30(月) 21:57:38 ID:xrdAtoGr
偽札編はレヴィの怪我を心配するロックも良かったな

ロベ復讐編はもっと重傷だったのにスルーしてて悲しかったが
167名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 02:50:35 ID:RmYAEOmP
レヴィたんのギシアンが見たい・・・
168名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 09:24:47 ID:x2Hr/LcK
復讐編で怪我スルーだったのは、あの時点でもう予定を遥かに上回る長さになっちまってたから、そういう細かい描写してられる余裕なかったんだろな。
故意にスルーさせたんだとしたらマジキチだがw

日本編で容赦なく刀引き抜いたのは・・・まあ日本刀刺さったまま街中ほっつき歩くわけにもいかないからか。
何処で治療したんだろう。普通の病院?
169名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 20:49:13 ID:RmYAEOmP
ホテルモスクワの医療班かな?
しかしあのタイツ脱がせて治療したかと思うとエロいな・・
170名無しさん@ピンキー:2010/09/01(水) 00:11:47 ID:R4Tevr8Y
レヴィさんは
銀さんのポン刀で刺された後に
ロックのイチモツでも刺された訳か
171名無しさん@ピンキー:2010/09/01(水) 01:07:34 ID:ELnyTf5t
レヴィを治療する医療班になりてえ
てか武器屋の親父とかもぐりの医者と仲良くしてんの見ると萌えるわ
172名無しさん@ピンキー:2010/09/01(水) 05:49:09 ID:ZUAfmBZw
刺された箇所が伝線してるのもエロい>タイツ

鬼畜ロックは松葉杖でレヴィたんの股間をぐりぐりしたんですね
173名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 08:41:25 ID:d2wlkR6V
三大悪男

夜神月
伊藤誠
岡島緑郎
174名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 12:26:50 ID:HeY44Vri
そこまで酷くないだろw
175名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 22:15:42 ID:LVsZvee6
保管庫見るとたまに酷いロックがいるw
176名無しさん@ピンキー:2010/09/03(金) 00:17:22 ID:sVhRkdR8
それ以上にひどい若様がいる…

パパショタは受け身以外認めないからね!!
177名無しさん@ピンキー:2010/09/03(金) 19:27:01 ID:mmy1OQb/
「ぐっ……グハッ、ガハァ……ッ!!グボォ!ウッ…ウボェー!!」

「ひどいよ…っ!えいっ!自分だけ…婦長様と幸せになろうなんてえええ!!」

「ファ、ファビオ……ガクッ」

「ファビオラの言ってること、本当かどうか、確かめさせて頂きます。では、ご堪能下さいまし」

スパーッ!ぐちゃぐちゃ

「やっとwwww二人きりwwwwですわねwwwwwwww若様wwwwwwwww」


こうですか?
178名無しさん@ピンキー:2010/09/03(金) 23:26:15 ID:One/agIk
なんだろう
原作が原作だけに違和感が無い
179名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 00:27:48 ID:gLrD4cMc
あの三人は、いずれ修羅場るか、世間の価値観とずれた強固な絆で結ばれるかどっちかだな

個人的に後者希望
日替わりまたは同時に貧乳と爆乳を堪能できるとは、若様になりてえw
180名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 02:04:26 ID:ubMVELXB
スクイズ自重w
本当に違和感ないなw
片方はDQN冥土で片方は病ん冥土。

それにしても
>>173
偉くなったなロック
181名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 07:24:31 ID:FAt7WMCx
>>177
かぁ〜なぁ〜し〜みの〜♪
って曲が聴こえてきたじゃねーかwww

巻末漫画みたいだw
182名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 22:00:10 ID:bXZvMyGB
グレイフォックス隊員への拷問が怖かったなぁ

>>5『居候』のおまけ
*エロ無し


「レヴィ、これ、きっとあの子だよ」

ロックがそう言った時、あたしは耳を疑った。

――ありえない。

ロックが「部屋のドアの前に置いてあった」と言って差し出したハンカチの中には、
カマドウマの死体が転がっていた。
ぴくりとも動かないまだらの茶色をした虫を、あたしはただ凝視した。

少し前、どういう風の吹きまわしか、小さなねこがあたしの部屋までついてきて、そのまま居座った。
怪我の手当てをしてやって、食事と寝る場所をくれてやったそいつは、ついこの間、勝手にいなくなった。

「ほら、レヴィ、褒めてやっただろ? 獲ってきた時、よくやった、って。
だから、お礼のつもりじゃないか?」
ロックの言葉が脳味噌を通過していく。
あいつは、ぽやぽやしたベビーフェイスに似合わず、
自分の口からはみ出るほどデカい虫を捕まえて、あたしのところへ見せにきた。
小さな口から長い虫の脚を飛び出させて、得意げに。
どうやらロックは、一言の挨拶もなしにいなくなったあいつが、このカマドウマを持ってきたのだと、
そう言いたいらしい。

――ありえない。

あたしは言葉を失っていた。
表の通りを、ジョン・F・ケネディがマリリン・モンローと腕を組んで、
フランク・シナトラを歌いながら歩いていたと聞いたって、こんなに驚かなかっただろう。


ロックの言うことが「信じられなかった」からじゃない。
それは本当に、「ありえない」ことだったからだ。


 * * *

ふらりとやってきたあいつは、閉め忘れた窓の隙間から出て行った。
「さよなら」も言わずに。
ロックは「早く探さなきゃ」と言ったが、あたしには予感がしたのだ。
もう、会えない、と。

バーのカウンターに並んで酒をかっくらい、「じゃあまたな」と挨拶した奴が、
次の日の朝にはどぶ川に背中を見せて浮かんでいる。
ここは、そんな世界だ。
澱んだ濁流が渦巻くこの街では、一度手を離してしまえば二度目は保障されない。
あいつとあたしの手は離れた。
だから、もう、会えない。
――少なくとも、生きては。

それでも、「まだそのあたりで迷っているかもしれない」と言うロックに背中を押されるようにして、
あいつを探しに外へ出た。
あいつが万が一、部屋に戻ってきた時のためにロックを部屋に残し、あたしはひとりであいつを探した。
太陽の光が段々と強さを増し、肌をじりじりと焼いた。
こんな暑い日の真っ昼間からふらふらと街中を歩きまわるなんてのは、阿呆のやることだ。
我が物顔の太陽が照りつけている間はおとなしく室内ですごし、
その暴君がはしゃぎ疲れて沈んだ頃になって、人間はようやく行動開始。
賢いやつなら、そうする。

けど、あたしは阿呆だから、首筋を汗が伝うのもそのままに、
路地裏という路地裏に入りこみ、ゴミ捨て場をひっかきまわし、地面にはいつくばっては、停車している車の下をのぞいた。
薄暗い路地裏に積み重なったプラスチックの残骸を蹴り崩し、腐った水を吸って重くなった段ボールをめくりあげる。
ゴミの山からつき出ている金属片を掴んで、腐臭を放ちはじめている生ゴミがはみ出した袋を転がす。
通りがかりの奴等の不審そうな視線を感じたが、
あたしがそちらに目を向けると慌てたように目を逸らし、足早に去って行った。
こんなことをしていても、ねこなんか見つかるわけがない。
警戒心の強いあいつらは、簡単に人間の目に届くようなところでのうのうとはしていない。
しなやかな体で、するりと街の隙間にまぎれこむ。
分かってはいたが、あたしは聞き分けの悪いガキのように、ひたすら街をさまよい歩いては、
塀の上を見あげ、小さな隙間に目をこらした。

そうして、喉の渇きを覚えはじめた頃にのぞきこんだ路地裏で、
あたしは自分の予感が的中していたことを知らされた。

――もう、会えない。

すぅっと、暑さが遠のく。
頭から冷水を浴びせかけられたかのように、血の気がひいた。
血管が凍りつく。

――見ろ、あたしの勘は冴えてるぜ。絶好調だ。

喉は鉛をしこたま飲みこんだように重く、足は地下に根を張りめぐらせた木のように動かなかった。

――もう、会えない。少なくとも、生きてるあいつとは。

ほそい路地裏の行き止まり、ジュートの残骸が吹き溜まったその間から、見慣れた毛並みがのぞいていた。
だらりと投げ出された四肢。
茶色い縞模様。
足の先と腹が白い。
顔の周辺はジュートの下になっていて見えないが、忘れるわけがない。

――あいつだ。

近寄らなくたって分かる。
あの小さな足も、長いしっぽも、茶色い縞の入り方も。

――あいつだ。

それは、一瞬見ただけで、もう生きてはいないと知れた。
とろける毛並みは薄汚れた毛のかたまりとなり、
触るとやわらかく手に馴染んだ体はただの肉と化しているのが分かった。
物体。
もうそれは、ただの物体だった。
元、ねこだったもの。
息づかいも、体温も、なにも感じられない。
有無を言わせぬ、死の気配。
お馴染みの匂い。


あたしは、根の生えていた足を、どうにか地面からひきはがした。
一歩ずつ、近寄る。
記憶違いであって欲しい、人違い――いや、ねこ違いであって欲しい、
そんな期待を裏切って、一本の脚に巻きついた包帯が見えた。

――あたしが巻いてやった。

頼りない足取りでひょろひょろと部屋までついてきたあいつは、
使い古しの雑巾でもこれよりはましというほどにボロボロだった。
長い間、路上で暮らしていたのだろう、汚れで固まった毛はたばになっており、
ろくに食べていないらしい体は、骨が透けて見えるほどに痩せほそっていた。
怪我をした傷痕は生々しく赤い口を開けており、このまま放っておけば化膿することは必至に思われた。
ついてくるなと思ったが、まん丸な目で見あげられて、つい、ほだされた。
嫌がるあいつを無理矢理洗って、傷口を消毒してやり、包帯を巻いた。
しばらくの間はよろよろしていたが、洗ってやったせいで毛づやだけは良くなった。
よく、器用に体を曲げては小さな舌を出し、ぺろぺろと体中を舐めていた。
段々と怪我が治ってきて、包帯も一箇所、また一箇所と取れていった。
もう少しだ。
もう少しで、治る。
そう思っていた、最後の一箇所だった。

あたしは、薄汚れたジュートの隙間から伸びた四本の脚の前に立った。
そして、しゃがみこんで、上半身にかぶさっていた布の残骸を取り払った。

――ああ。

顔を見る前から、あいつだということは分かっていた。
それでも、埃まみれのジュートの下に、小さな頭と、白い鼻先、ほそい喉元を見た瞬間、
あいつだ、という現実が、洪水のように迫ってきた。
喉の奥から、重いかたまりがせりあがる。
どうにも動かしようがない「死」という現実に飲みこまれそうになって、
あたしは思わず、片手で口を覆っていた。
眠っている間にも時折小さくふるえたほそいひげは、今はぴくりとも動かず、
光にあたるとピンク色に透けた耳の内側は、澱んでいる。
撫でてやると心地よさそうに目をほそめ、ごろごろ鳴った喉は、もう二度と鳴らない。
グラスについだラム酒のような色をした目は、力なく落ちた瞼に遮られ、もう二度と見られない。
小さな体に相応しい「にゃーん」というやわらかい鳴き声も、もう二度と聞けない。

――遅かった。

あたしは自分の間抜けぶりを呪った。
思えば、符号はいくつもあった。
最初のガリガリに痩せほそった状態からは抜け出したものの、その後も不思議なほどに太らなかった。
食事を出してやっても、食べ方が少なかった。
なんとなくだるそうにしていて、吐いたこともあった。
エアコンの冷たい風を嫌がり、暖かいところを探して丸くなったり、あたしで暖を取るようにくっついてきたりした。
おかしいなとは思ったが、部屋に帰ると小走りに近寄ってきたり、
「メシだぞ」と言うと目を輝かせて、くにゃくにゃと脚にからみついてきたりしたので、
そんなに深刻になることはないのかと、高をくくっていた。
暖かいところを探し歩くのも、
エアコンを止めてやると、あたしの腹のところに落ち着いて眠り出したので、
少し体調が悪いだけなのかと、油断した。

でも、そんなはずはなかったのだ。
このクソ暑い中、いくらねこだからといって、エアコンを止めてちょうど良いなんてのは明らかに異常だった。
本当なら、とっくに病院へ連れて行っていなければならなかったのだ。

――気づいて、いたのに。

中途半端に情けをかけてやるくらいなら、いっそ全くかけない方が良い。
だれかを助ける、他の命をひき受けるということは、自分が滅びる覚悟をするということだ。
そうでなければ、だれかを救済することなどできない。
その場限りの優しさなんて、クソほどの役にも立たない。
善いことをしてやったという、自分可愛さの自己満足でしかない。
善人である自分に酔っているだけ。
安全なところから見下して、自分は豊かなまま、余った分だけを恩着せがましくほどこすのだ。
――偽善者め。
あたしはそういう人間を忌み嫌っていた。
なのに、気づけばあたしも同じ穴の狢だ。

――お前、なんであたしなんかについてきた?

あたしの専門は、殺しだ。
他のだれかの命をひき受け、助けてやることなど、まったくの門外漢。
慣れないことをするから、こうなった。

――馬鹿な奴……。

もっと別のだれかについて行っていれば、もう少しは長く生きられたかもしれないのに。
あたしは、おそるおそる、小さな頭に手を伸ばした。
茶色い毛に覆われた額に触れた瞬間、かくん、と軽い頭が動いた。
ちょうど触れた手の強さの分だけ、正確に動いた。
胡桃の殻のような軽さだった。
耳の後ろへ滑らせても、ただあたしの手が物体を動かしているだけ。
それは明らかに“モノ”の手触りだった。
耳の後ろを掻いてやると、「もっと」というように頭をすり寄せてきたあの体温は、もうどこにもない。

あたしは埃だらけの地面に腰を落とし、乾いたポリバケツの間に体を押しこめた。
やっぱり、ひとりで探しに出て正解だった。
膝を抱えて、顔をうずめる。
だって、こんな顔は誰にも見せられない。

部屋ではロックが待っている。
行って、告げなければ。
ことの顛末を。
分かってはいたが、あたしはそこから動けなかった。

――言えるか?

あたしは自問した。
部屋で待っているロックに、
「あいつなら、路地裏でくたばってたぜ」
そう、言えるか?
乾いた声で、平然と、いつものように。
答えは簡単に出た。

――ノー、だ。

乾いた声、どころじゃない。
今のあたしときたら、一言だってまともに言葉を発せそうにない。
あたしは奥歯を強く噛みしめた。
頭蓋骨までもが強ばって、頭が痛くなってくる。

自分の湿った呼吸に窒息しそうになって、あたしは腕の中にうずめていた顔をあげた。
路地裏から見あげた細長い空は、馬鹿みたいに晴れていた。
クレヨンのスカイブルーを力まかせに塗りたくったように、雲ひとつない快晴だった。
こんなちっぽけなねこが一匹死んだことなど、痛くも痒くもない。
そうやってせせら笑うかのように、暴力的な光の束を投げつけてきていた。

そう、こんなのは、まったく見慣れた光景だ。
珍しくもなんともない。
この街では、コカ・コーラ・カンパニーの自動販売機よりも死体の数の方が多いくらいだ。
人間の死体なんて、飲み終わったコークの缶と同じ。
ましてや、ねこの死体など。
あたしはそんなものを見てもなんとも思わない。
そのままにしておくと、腐って腐臭が漂い出す。誰か片づけてくれねぇかな。
そんな程度だ。

なのに、今は駄目だった。

――お前、そんなにあたしのところが嫌だったのか?

あたしは茶色い背中を撫でた。
肉の薄い背中。
こんなに痩せているのに、ふわふわした毛皮の下からはちゃんと、強ばった肉の硬さが伝わってきた。
死の手触り。
横にすべらせると、背骨を掌に感じた。
あの夜、今にも死にそうな体で、そんな体であっても出て行きたかったのだろうか。

――あたしのところよりも、こんな薄汚い路上の方が、良かったのか?

外の空気が吸いたかったのだろうか。
高い空を見たかったのだろうか。
こいつは、あの狭い部屋も悪くないと思ってるんじゃないかと、そんな風にあたしは感じていた。
でも、それは大変な勘違いで、あたしはただ、こいつを狭苦しい部屋に閉じこめておいただけだったのではないか。
こいつのためだと言いながら、あたし自身のために――。
こいつがあたしを必要としてたんじゃない。
逆だ。
本当は、あたしの方が――。

あたしは、こみあげてくる嗚咽を噛み殺した。
もう、ただの物体となり果てたあいつを見る。
生気を失った毛は少々ぱさついているが、小さな体はまだ綺麗だ。
――けれど、じきに、その皮膚の下には白い蛆虫がはいまわり、腐肉を食らい、
小さな体を民主的な蝿どもが黒く覆い尽くすだろう。
死んでしまえばただの物体。
みんな同じ。
こうやってみすぼらしく路地裏に転がろうが、白い花に囲まれて盛大に賛美歌を歌われようが、
死ねばみな同じだ。
弔いなんて、残された者の気休めだ。

それでもあたしは、こいつをここに残して立ち去ることはできそうになかった。
このまま腐敗するにまかせ、蛆虫や野良犬どもに食らわせてやるなんてことは。

あたしは、あたりに折り重なっているジュートの中から適当な大きさのものを掴み出して広げ、
小さなねこの体をすくいあげて、そのジュートで包んだ。
ロックも、最後に会っておきたいだろうか。
部屋でやきもきしているに違いない男のことが頭をかすめた。
こいつはロックにはちっとも懐かなかったが、どんなに素っ気なくされても、
ロックはめげずにあたしの部屋へやってきて、目をほそめてこいつを見ていた。
あの男もあの男なりに、こいつに愛惜の念を覚えていたに違いない。
ロックにも会わせてやるべきだ。

しかし、あたしは部屋に戻ることはできなかった。
体に芯を入れ直して、なんとか往来を歩けるくらいには回復した。
――けど、ロックにはバレる。
このままロックと顔を合わせれば、部屋に戻る前のあたしがどんなだったか、確実に、バレる。

――許せ、ロック。

あたしは心の中でロックに謝り、ジュートでくるんだ小さな体を持ちあげた。
生きていた時に抱きあげると、くにゃりとした体が、腕にやわらかくからみついた。
なのに、今の体はよそよそしく、あたしの腕を拒絶するように固まっていた。
持ちあげた体は、哀しくなるほど軽かった。


あたしは雑貨屋でスコップを一本買って、海とは逆の方向に歩いた。
太陽が容赦なく照りつける街並みを、機械的に、脚を交互にただ動かした。
街はずれまで行くと、建物がまばらになってくる。
じきに、植物の方が多くなって、草木の匂いが濃くなった。
道はゆるい上り坂となっていた。
道ばたに生えた木が海からの風を受け、葉をざわつかせた。
街外れには、なだらかな丘があった。
あたしは雑草を踏みしだいて、人気のない丘を登った。
木の陰に入ると少し暑さがやわらぐ。
伸び放題の下草が、ふくらはぎに擦れた。
雑草をかき分けながら、あたしは上を目指した。

木立の間を抜けると、開けた頂上に出た。
さほど高い丘ではないが街と海が一望できる。
あたしは手頃な背の低い木を見つけ、ジュートの包みをその根元に置いた。
そして、ちょぼちょぼと草の生えている土にスコップをつき立てた。
土を掘りおこして、捨てる。そしてまた、つき立てる。
土をすくって、捨てる。何度も、繰り返す。

あたしは穴を掘った。
小さなねこにはいささか深すぎる、カラスや野良犬に掘り返されたりしないくらいの穴を。
そうして、その底に、ジュートの布ごと小さな体を置いてやった。
あとは、この穴のまわりで山となっている土をかぶせるだけ。

その時、急激にあいつの顔が見たくなった。

――もう一度。

この土をかぶせてしまえば、もう、二度と見られない。
あの、つんと上向いた鼻筋の曲線も、とがった耳も。
写真なんか一枚もない。
もう、これが最後だ。

あたしは地面に膝をついて、ジュートの布を取り払った。
中には、相変わらず小さな顔が、ことんと垂れていた。

――忘れない。

また喉が狭くなるのを感じながら、あたしはやはり部屋に戻らなくて良かった、と思った。
ロックの前でも、きっと抑えることができなかった。

あたしは塩からい唾を飲みこんで、近くの灌木に走った。
そして、その灌木にからみつくように咲いていたブーゲンビリアを、ひきちぎった。
つる状の部分がずるずるとついてくるのを、力まかせにたぐり寄せる。
あたしの腕の中は、たちまち、濃いピンク色をした花であふれた。
その薄く乾燥した、キャンディーの包み紙を寄り集めて広げたような花の群れを、あいつが横たわる穴の中に落とした。
殺風景だった穴の中は、少しだけ陽気になった気がした。

――じゃあな。

こんなのは気休めだ。
あたしの、身勝手な気休めだ。
でも、こうでもしなければ、あたしはあいつの上に土をかぶせることができなかったのだ。
まったく情けない話だ。
もう数えるのもアホらしくなるくらいに人を殺した女が。
そんな女が、花に囲まれたあいつを何度見てもなお、なかなかスコップを手に取ることすらできなかっただなんて。

笑いたければ笑うがいい――。

すっかり穴を埋め戻したあたしは、木の根本に腰を下ろし、幹に頭をもたせかけた。
空は相変わらず、どこまでも青い。
この世の中に憂うことなんかなにもない、とでもいうかのように。
あたしは指一本動かす気になれずに、ぐったりと座りこんでいた。
しばらく経って、ひどく喉が渇いていることに気がつき、あたしはのろのろと立ちあがった。
丘を下りてペットボトルの水を買い、また丘を登る。
ペットボトルの栓を開け、まず、埋め戻したばかりの土の上に水をかける。
乾燥した土に、水はじゅうじゅうと音を立ててしみこんでいった。
そして、今度はペットボトルに直接口をつけて、あおった。
重たい水が一気に喉に流れこんできて、むせる。
咳き込んで、今度は慎重に流しこんだ。
喉の渇きはおさまったが、空っぽだった胃にものが入ってくると急に気分が悪くなって、
あたしはまた木の根本にへたりこんだ。

空の青が黄色っぽくなって、オレンジ色に変わっても、あたしは同じところに座っていた。
ラッキーストライクの箱を取り出して、最後の一本をひき抜き、火をつける。
慣れた匂いの煙が、今日はやけに目の奥にしみた。
――あいつが部屋までついてきた日も、こんな空の色だった。
つい、ぼんやりとそんなことを考えていて、あたしは頭を振った。

――早く立て直せ。

早くしっかりと立って、いつものあたしに戻らなければ。
部屋に帰って、ロックに告げる仕事が残っている。


けれどあたしは結局、とっぷりと日が暮れて海風が陸風に変わるまで、
そこから腰をあげることはできなかった。


重い足をひきずって自分の下宿へと歩きながら、あたしはロックが帰ってしまっているといい、と思った。
正確な時間は分からないが、あたしが部屋を出てから半日くらいは経っているだろう。
これだけ時間をおいてもまだ、ロックにあいつのことを告げるのは気が重かった。

果たして、下宿の前にたどりついてみればあたしの部屋の明かりはついていて、
ドアを開けるとロックは律儀に待っていた。
「……お帰り」
「……ああ」
ロックは、あたしと、あたしの周囲を小さく目で探った。
「……どう?」
あたしはただ首を横に振って答えた。

――あいつなら、路地裏でくたばってたぜ。

その一言を口に出すことが、どうしてもできなかった。
口に出したら最後、必死で押しこめている感情があふれてしまいそうだったからだ。

そして、ドアを開けた時、無意識に、駆け寄ってくるあいつの姿を探していた自分に気づいて、
あたしは愕然とした。
この手で埋めてきたばかりだというのに。
完全に、無意識だった。
頭とは別のところで、感覚が自然にあいつを探していた。

あたしはイスをひいて腰かけた。
「はい」
ロックが缶ビールを差し出してきたので、なんとなく受け取ったが、
今なにか胃の中に入れたら確実に胸が悪くなるような気がして、
あたしはそれを開けずにテーブルの上へそのまま置いた。
代わりに、帰る道すがら買ってきたラッキーストライクの箱から一本取り出して、くわえた。

ロックはなにも言わずに、ただ差し向かいに座っていた。
煙草は便利だ。
なにも喋らなくて済む。
この男だって、訊きたいことは山ほどあるだろう。
あいつがどこで最期を迎えたのか、どんな様子だったのか、そして、あたしがどうしたのか……。
けれど、この時のあたしは、自分のことだけで精一杯だったのだ。

自分の部屋を見れば見るほど、居心地の良さとは対極にある部屋だ、と思う。
家主そのままを表すかのように、古ぼけて薄汚い部屋だ。
ねこが喜びそうなものなんか、ひとつもない。
あたしはいい気になって寝床を提供してやったつもりになっていたが、
こんなところ、長居をしたい部屋では断じてない。

また間違えた、と思う。
もしかしたら、あいつもここが気に入ったんじゃないかと、そんなことを考えていた。
夜になるとベッドにもぐりこんできて、やわらかい体を寄せて眠るあいつを見ていると、
貧相なガキだった頃の自分を思い出した。
ニューヨークの路上をねぐらとしていた頃のあたしも、こうだった。
あの街は寒い。
下手すると命取りとなる寒さをしのぐため、あたしたちストリート・チルドレンは身を寄せ合って眠った。
集団でいれば、謂われのない暴行を受けることも少しは減る。
おかげで、あたしは今でも狭いところが落ちつくし、腹を見せて眠ることができない。
――お前も、そうか?
弱い者どうしが身を寄せ合うように、眠っていたのだろうか。
ここは安全だ。
ここにいたければ、いてもいい。
あたしの腹のあたりでくるんと丸まるあいつを見て、そんな馬鹿なことを考えていた。

けれど、あいつは出て行った。

あたしは何度間違えば気が済むのだろう。
生まれた時から疎まれ続け、ずっとはみ出し者だった。
あたしの手を取ってくれる者はだれもいなかった。
だから、つい気になる。
あの頃のあたしに似た奴を見ると、つい――。
もしかして、こいつも、あたしのように……、と。

でも、違う。
その後待っているのは、手酷い拒絶だ。
お前とは違う。
そうやって、手を振り払われる。

分かっていたことだ。
何度も繰り返した。
その度に、学んだ。
あいつとあたしとは違ったんだ。
思い違いをしたあたしが馬鹿だったんだ。
そうやって学んで、――そしてまた、どこかであたしと同じ、別の誰かを探していた。

もう期待はしない。
期待しなければ失望もしない。
今はマスターしている。完璧に。
そう思っていたのに。

「ここが嫌だったんなら、最初っからついてくんな……」

おかげであたしは、いい笑い者だ。
相手もいないのに、たったひとりでタンゴを踊った。

「レヴィ……」
ロックのつぶやく声が遠くに聞こえる。
「…………手間、取らせやがって」
あたしは本来、ねこの死体なんか見ても、顔色ひとつ変えずに通りすぎることができる女なのだ。
死体を見たその足で酒場に繰り出し、酒を呑み、場合によってはそれを肴にして呑んでやったっていい。
そんなあたしが、あんなご丁寧に丘の上に埋めてやっただなんて。
葬儀屋の真似事なんて、まったくの予定外だ。

――あたしは、あいつの墓を作ってやるために部屋に入れたわけじゃねぇ。

「レヴィ!」
突然、ロックの鋭い声が鼓膜につき刺さった。
「あの子が自分から出て行ったって、どうして分かるんだ! ここが嫌で出て行ったわけないだろ!」
ロックはテーブルを挟んだ向かい側から、眉をひそめてあたしを見ていた。
そして、むきになったように言いつのった。
「ちょっと夜の散歩に出ただけさ。そして道に迷ったんだ、きっと。
ここが嫌だったなんて、そんなことはありえない」
ロックの、あたしに都合の良い言葉が、うすら寒く響く。
夜の散歩? 道に迷った?
「――やめろ、ロック。相変わらず甘ちゃんだな。ベビー・ルースのチョコ・バー並に甘いぜ。
そんな譫言は聞きたくねえ」
そう、譫言。
まったく筋道の通らない、根拠のない言葉だ。
そんな言葉を聞かされたって、虚しいだけ。

――じゃあ、どうして出て行った。

ここが嫌で出て行ったわけじゃないなら、どうして出て行ったっていうんだ。
あたしが問い返すより先に、ロックは言い切った。
「譫言でも慰めでもない。事実だ」
あまりにも厳然と言い放たれて、あたしは一瞬言葉に詰まった。
「あの子がレヴィのことをどんなに好きだったかなんて、レヴィが一番よく知ってるはずだろ」

――違う。

「どんなに好きだったか」、じゃない。
「好きだったらいいと思っていたか」、だ。
あいつが、あたしのことを。
まったく滑稽だ。
そんな期待は、とうの昔に捨てた。
そう嘯きながら、性懲りもなく、また期待した。

「……レヴィ、他人の好意を否定するのは、無礼だ」

ロックの声が低く響く。
“好意”?
あたしは唇を醜く歪めて笑ってやりたかった。
“好意”なんて、あたしが知ると思うか?
誰からも好かれたことのない女、誰からも思いを寄せられたことのない女が、“好意”のなにを知る?
そんなものは知らない。

あたしは誰かを殺したり傷つけたりすることしかできず、
そんなあたしのそばからは、みんな去っていく。
今ここで、もっともらしい御託を並べている男だって、いずれ――。

――手を離せ。

この男も、いずれはあたしの元から去って行く。
分かりきっていることだ。
間違いはもう二度と繰り返さない。
いつかは去って行くのだったら、今ここで、手を離してしまえばいい。
あたしの方から。
手を振り払われるよりも、自分から離した方が、痛くない。

――言え。

ロック、あんたも出て行ったっていいんだぜ、と。
そうしたら、この男はほっとしたように出て行くだろう。
こんな扱いにくい女のご機嫌伺いはおしまい。
お役御免。
ほっとした。
せいせいと、軽やかな顔で。

――さあ、言うんだ。

「……ロック」
あたしは口を開いた。
「ん?」
「……あんたは、言って行けよ」
「え?」

しかし、口からこぼれ出た言葉は、
言わなければいけなかった言葉とは随分とかけ離れたものだった。
「あんたは、ここから出てく時、ちゃんと言って行けよ」
結局あたしは、未練がましい臆病者だった。
「出てくって、俺は出てったりなんか――」
「ロック!」
あたしは無意味な上っ面だけの言葉を遮った。
そんな薄っぺらい言葉なんか聞きたくなかった。
「そんなことは訊いちゃいねぇ。あたしの訊いたことにだけ答えろ。
出てく時、ちゃんと言えるのか言えねぇのか。イエスかノーかだ。赤ん坊でも答えられる」
本当は、「お前も早く出て行け」と言わなければならなかった。
けれど、言えなかった。

部屋に戻る途中、この男が帰っていてくれればいいと思った。
でも、今はいてくれて良かったと思っている。
人間がふたりいても不在者の穴ばかりが際立つこの部屋に、
もしもひとりっきりだったなら、多分あたしは駄目だった。
暗い部屋のドアを開け、電気をつけたと同時にあいつの影を探し、それに一瞬遅れて、
ああ、あいつはもういなかったのだと気づく。
あたしはその不在の重みにひとりで耐えられただろうか。
甚だ、自信がなかった。

だから、もう少しだけ、この男にはそばにいて欲しかった。
もう少しだけでいい。
一度にふたつの喪失を味わうのは、いささか気が重い。
もうひとつの喪失は、先延ばしだ。
できることなら前もって告げてくれれば、なお良い。
そうすれば、ちゃんと「さよなら」が言える。
「じゃあな、暇つぶし程度には楽しかったぜ」
なんだったら、それぐらいの言葉はサービスしてやったっていい。

だから、それくらい、「イエス」と言って欲しい。

「………………イエス」
沈黙の後、望んでいた答えがやってきて、あたしは頷いた。
「……それで良い」
ほっと小さく息を逃がしたが、「いいな、約束したぞ」と口に出してすぐ、自己嫌悪に襲われた。

――女々しい。

約束など、やぶるためにあるのだ。 
こんな口約束を取りつけたって、その時がくれば、この男は何事もなかったかのように去って行くだろう。
あたしが気づくのは、すべてが終わってしまった後。
ロックはこんな約束をしたことすら、忘れているだろう。
あたしひとりが、下らない約束にすがって――。

そんな女々しい自分に、吐き気がした。


次の日、あたしは業務が終わると逃げるように部屋へ帰った。
もう用済みとなったタオルやカゴ、砂を片づける。
あいつを思い出させるものは、処分してしまおう。
あたしは手早く粗大ゴミとなったものをまとめて、部屋の隅に積みあげた。

――喜べ。

あたしは思った。
もう、このクソ暑い中、あいつのためにエアコンを我慢することも、
ただでさえ狭いベッドを空けてやって、小さなあいつをつぶさないように気をつけながら寝ることも、
決して多いとはいえない賃金からあいつの食費をさくことも、
面倒なトイレの処分も、傷の手当も、なにもしなくていい。

けれど、それは逆効果だった。
ふわふわとやわらかい手触りや、大きな丸い目が輝くところ、
長いしっぽの先だけがぱたぱたと小さく動く様子が、鮮明に思い出されただけだった。
あたしはすっかり慣れてしまっていたのだ。
あいつのいる生活に。
楽しかった、と思う。
でも、嬉しそうにすり寄ってきて額をこすりつけたあいつも、
あたしの腹の上で安心したように眠りこけるあいつも、
今となってはすべて、あたしの虫のいい脳味噌が見せた幻影なのではないかという気がしてきた。

――ほんとは、どうだったんだよ。

あたしはぼんやりと空中を見あげた。

答えは、なかった。
当たり前のことながら。



 * * *

あたしはロックの差し出したカマドウマを受け取ったまま、固まっていた。
脳裏をあの日の出来事が、すさまじい勢いでよぎっていった。

――ありえない。

あいつはあたしがこの手で埋めた。
だから、このカマドウマをあいつが持ってきただなんて、そんなことはありえないのだ。
絶対に。
これがメイン州ラドロウだったなら、あるいはそんなことも起こるかもしれないが、
あいにくここはタイの魔都、ロアナプラだ。

そして、あたしはロックが大変な思い違いをしていることに、この時はじめて気がついた。

――まだ、あいつが死んだと知らないのか――。

あたしはすっかり、ロックがあいつが死んだことを知っているのだとばかり思っていた。
はっきり「死んだ」とは言わなかった気がしたが、当然伝わっているつもりになっていた。
けれど、いざ思い返してみると、あたしはあの時、ただ首を振っただけで、他にはなにも言わなかった。
その後の会話に齟齬がなかったから、思い違いをしていたのだ。

――ロック、違う。

「どうして出て言ったのかは分からないけど、あの子はレヴィといる時、幸せそうだったよ。とても。
幸せそうだった。……それだけは、確かだ」
ベッドに腰かけていたあたしの頭の上から、ロックの言葉が降ってくる。

――やめてくれ。

あたしは耳を塞ぎたかった。
あいつはもう死んでしまっている。
ちゃんと言わなかったのはあたしが悪い。
でも、やめてくれ。
その虫は無関係だ。
甘い幻想にひたるのはやめろ。
――怪我をしたねこは元気になって、その後ずっと、末永く幸せに暮らしましたとさ。
めでたしめでたし、――と?
そんなのは、ウォルト・ディズニー・カンパニーが吐き出す夢物語だ。
その虫には、なんの意味もない。

「――あの子はとても、幸せだったんだよ、レヴィ」
あいつは幸せだったと、ロックは何度も繰り返した。

――やめろ、ロック。あいつはもういない。

声をあげそうになったその瞬間、あたしは唐突に気づいた。

――あたしの、ためか……?

あいつがこれを持ってきたのは、あたしと一緒に暮らして楽しかったからだと、
ロックはそう言いたいのだろうか?

「今もきっと、どこかでたくましく生きてるさ。
大丈夫、レヴィにしか懐いてなかったんだ。
ちゃんと警戒しながら生きてくよ。俺にしたみたいに、ね」
そのうち、またどこかで会うかも。
ロックは続けた。
自分がそう信じたいというよりも、あたしに言い聞かせるように。

――馬鹿な……。

あたしは声が上擦りそうになるのを必死で抑えて、なんとかしぼり出した。
「……だからあんたは甘ちゃんだ、ってんだ。呆れた楽天家だぜ、ポリアンナ。
世の中そんな、クリスマスのボンボンみたいに甘くねえ。
もう終わったのさ、ロック。幕は下りた。そろそろお家に帰る時間だぜ」

『諸君、喝采を。喜劇は終わった』
あいつはとっくにくたばってるんだぜ、ロック!
柄にもないことをした滑稽な女の喜劇は、これにて終幕。
さあ、笑え! 笑えよ!

そうやって両手を広げて笑いとばしてやっても良かった。
ロックの言っていることは、まるで巨大なウェディング・ケーキだ。
外側はパステルカラーの甘いクリームに彩られているが、内側は空洞。
けれど、あたしはそれがただの張りぼてだと、指を差して嘲笑してやることができなかった。
ロックの、言っている内容とは裏腹の、切迫感を伴った真剣さのために。

「……でも、まだルーレットの球がハウスナンバーのダブルゼロに入ったと決まったわけじゃない。
ストレートアップが的中するかもしれないだろ?」
ロックはめげずに続ける。
――ダブルゼロなんて話じゃない、本当は。
有り金全部巻きあげられて、とっくにゲームオーバー、だ。
ストレートアップは、永遠にこない。

あたしは、ロックから受け取ったハンカチの中のカマドウマをじっと見た。
ロックは、一体どんな顔をしてこのカマドウマを捕まえたのだろう?
あいつがカマドウマをくわえてきた時、ロックは心底この虫を嫌がっていた。
見ただけで目玉が腐り落ちるという勢いで。
情けなく叫び声をあげて、腰は完全にひけていた。
そんなこの男が、ただあたしのためだけに、
あいつがあたしと楽しくすごしたのだと、ただそれだけのことを言いたいがために、これを、
こんな一文の得にもならない嘘をついてまで……?

「…………馬鹿な奴……」

反射的に顔が歪んで、あたしは急いで立ちあがった。
ふるえそうになる唇をきつくひき結んで、キッチンへと向かう。
ゴミ箱へカマドウマを投げこんで、あたしは思った。

――いいだろう、騙されてやる。

ロックがそこまでするのなら、騙されてやってもいい。
理由は分からないが、あの小さな生き物はここを気に入っていた。
あたしが帰ると駆け寄ってきて、嬉しそうにやわらかい体をこすりつけていたのは、
あたしの幻影なんかじゃなかった。
少なくともロックの目には本当にそう見えていたのだということが、あたしを少し心強くさせた。


あたしは、この世にはもういないあいつの顔を思い浮かべた。

お前は、こんな街に生まれついてしまって、面白くもなんともない一生を送っただろう。
だから、今度生まれてきたら、優しい人に飼われるといい。
あたしみたいなうつけ者なんかじゃなく、ちゃんと気のつく、優しい人に。
あたしは来世なんか信じちゃいないが、お前は仏教国タイの生まれだから、
もしかしたら輪廻の渦に巻きこまれるかもしれない。
もし、もう一度戻ってくることがあったなら、次は一生苦労することなく、
優しい飼い主にたらふく好きなものを食わさせてもらって、死ぬほど可愛がられて、幸せにすごすといい。
お前はこのロアナプラで、きっと来世の分まで苦労しただろうから、多分それは叶う。
世の中、トータルで見れば、それなりにバランスが取れてるものだ。
次こそは、幸せになれよ。





――けど。

けれどもし、また捨てられたり、路頭に迷ったりして、どうしようもなくなったら。
その時はまた、この街までたどりついてみせろ。
ここは吹き溜まりの街。
すべてのものの終着点。
このしょうもない街に、なんとしてでもたどりつけ。
山があったら越えてこい。
海があったら渡ってこい。
お前は可愛い顔に似合わず、意外と根性のある奴だったから、それくらいはできるだろう?
そうして、たどりついたら。

その時は、また、あたしが拾ってやる。

――もちろん、お前が望むなら、の話だが。





201名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 23:22:18 ID:gx+SHoAA
正直に言う。号泣した。
レヴィ視点が一番堪えるわー。今も目からカトラス状態だけどw
切なすぎる後日談GJ!
202名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 01:55:42 ID:FVPjWlAF
乙です!
203名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 02:37:53 ID:6RIprAHO
うっ不意打ちくらった・・ぬこシリーズは涙腺がやばい・・・!埋めるまでの流れがもう・・
最後そういう事だったのかーー!伏線でファビ出てきてた?
204名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 03:09:34 ID:DJ1khAgo
全作3回ずつ読み直すぐらい良かった。こんな話でも全体から失われない緊張感が切ない。
この3視点を二人に読ませてやりたいわ…
205名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 16:30:13 ID:QuYLr9RM
ロベルタにしばかれたい
206名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 20:24:12 ID:qETkDlIo
まさかのレヴィ視点まで書いて下さるとは…ネ申GJすぎるよネ申

最後で泣いた。ぬこの「ありがとう」が聞こえてくれたらどんなにいいことか(´;ω;`)
不器用で脆いレヴィたんが愛おしい
207名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 22:30:39 ID:ZmOt/rxb
あああ、確かに二人とも決定的な事は言ってなかったんだよな…またしても上を行かれた!
これ読んでからぬこ視点のとロック視点の読み返したら、更に込み上げてきた
瞼ぶんむくれだよ°・(ノД`)・°・

神すぎて何と言ったらいいのか分からない、ありがとう!
208名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 23:12:04 ID:pD/9reb8
三者それぞれが優し過ぎて泣いた…
レヴィの為に離れたねこ、レヴィの為に嘘をつくロック、
わかっていながら騙されるレヴィと、
相手を思いやる故に嘘をつくそれぞれがもう切なすぎる

素晴らしい三部作ありがとう
209名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 00:39:32 ID:y7bf2f0D
これはこれで泣いたがエロいのも希望
あんたのエロは気持ちを揺さぶられるから好きだ
次回作にも期待
210名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 04:38:26 ID:JDysJi2k
エロといえば月と枝視点も2部作だったな
第三者視点のエロはよりエロいなとおもたっけw
211名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 06:28:49 ID:Bo5U4sr+
写真とかの記録が何もないって言ってたから、枝さんが外し忘れてた隠しカメラが一つだけあって、そこにぬこと幸せそうに笑ってじゃれあって一緒に寝て過ごすレヴィたんの映像が!

ってのを勝手に希望。
だめだ我慢できないから俺もぬこ×レヴィ絵殴り描こう
212名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 22:29:18 ID:y7bf2f0D
いかん…張兄貴分が不足してきた
213名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 23:35:13 ID:EnrZgvDK
B'zのRosy(古い)をRevyで歌ってみた
214名無しさん@ピンキー:2010/09/07(火) 00:23:02 ID:zj4HBnUC
>>208
三者それぞれの優しさか。
レヴィたんが優しすぎるのは既に原作でわかりきってることだけど、いつも一人で優しくて報われないって言うか。
レヴィたんへ向けられる愛情は(作風柄仕方ないけど)殆ど無いからな。

動物は一番本能的に優しさを感じ取るから、そう考えるとやっぱ神は凄い。
215名無しさん@ピンキー:2010/09/07(火) 04:39:55 ID:KjSkmAP3
保管庫覗いてみたけど大神竜一郎さん、新作の投下はまだですか?
半年以上あいてるんですが、、、
自分的には8と12が好きなんであんな感じの切ない作品の投下を待ってますよー。
216名無しさん@ピンキー:2010/09/07(火) 05:13:29 ID:kuLJ8X5D
>>212
張がかっけえ「1987年ビッグ・アップル」てのがあったな。何故か保管庫には保存されてないが。
エロくて退廃的でもう一度読んでみたいが・・
217名無しさん@ピンキー:2010/09/07(火) 21:46:02 ID:Iikn84nL
作中でしっかりと恋人同士としての描写があるのって
ベニーとジェーンくらいなんだよな
この二人(特にジェーン)が普通に幸せになれるとは思えないが
218名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 02:38:09 ID:mi9PpZkN
>>211
ぬこレヴィは何をしてもレヴィが怒らないだろうという点で非常にエロいな
219名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 06:15:45 ID:u40z7n+a
ねこのきもちをこっそり購読しようとしていたレヴィ萌え

ねこになってレヴィの乳に埋もれたい
220 ◆ct8rrWlYpc :2010/09/09(木) 02:32:46 ID:f919buFY
副業で同人誌を描かせてもらっているものですが
◆JU6DOSMJRE 氏のSSに大変な感銘を受けぜひ漫画化したいと思いましたのでレスさせてもらいました
できるのならば話をまとめて冬コミで発表したいと考えているのですが
連絡が取れないので、もしよろしいのでしたらこのスレでお返事よろしくお願いします
221名無しさん@ピンキー:2010/09/09(木) 02:49:46 ID:f3L1ZyHr
他人だがマジレスすると権利関係(主に金)でもめるぜ。
あと誰でも見れるココである限り、他人がアンタを騙って勝手に描いてもわからねぇ。

・金についての権利ややり取りをはっきりさせる(委託で持ち逃げするやつってのもいるからな)
・何かの方法で「確定でおまえとそいつ」ってわかる方法を取る(なりすまし防止)

この2つが必要になるぜ。
それだけアタマつっこんどくこったな。
222名無しさん@ピンキー:2010/09/09(木) 03:16:37 ID:aFrAXIPi
えらい口の悪い親切な人だw
ところで、ついさっきクーラーが壊れたんだが直すべきかこのまま秋になるのを待つべきか・・
223 ◆ct8rrWlYpc :2010/09/09(木) 03:52:02 ID:f919buFY
さんくす
確かにいろいろめんどうそうなことになりそうなので
オリジナル(2次創作でオリジナルというのもなんだが)で同じくらい面白い話ができるよう頑張ります
224名無しさん@ピンキー:2010/09/09(木) 03:54:40 ID:f3L1ZyHr
>>222
直せ。いいから直せ、な?
秋過ぎたってじきに冬が来んだろーが。
どっちにしろ直す必要があんなら、とっととやんねぇと次要るときになってからバタバタする事になっちまうぜ。
225名無しさん@ピンキー:2010/09/09(木) 04:17:11 ID:aFrAXIPi
そうだな・・明日休みなんで修理頼むか
>>220
神と貴方次第なので部外者は何もいえないが漫画化読んでみたいなあ
226名無しさん@ピンキー:2010/09/09(木) 04:51:21 ID:f3L1ZyHr
まあ、アレだ。
どうしても描きたかったり見たかったりする場合、ひとつの方法としては無償公開って手もある。
他人がタダで書いた話を基にして金儲けしたいってワケじゃねぇんなら、だがな。
やり方なんざ知らねぇよ、ZIPだの虹だのなんでもあるだろうが。
冬コミで、となると印刷代・売価etc どうやったって金が絡んでくる。

喋りすぎたな。ROMに戻らぁ。
227名無しさん@ピンキー:2010/09/09(木) 08:36:17 ID:tTM0hNHj
無償公開か。
同人じゃないけどいつだかレヴィスレで、スレ内にあるロクレヴィ2828妄想をイラストにしてうpしてくれた人がいたな。

何はともあれレヴィ本出してくれるんならこっちも無償で応援するよ。
頑張れ。
228名無しさん@ピンキー:2010/09/09(木) 09:52:05 ID:vx8pZwyI
ともあれここに投下された作品に影響されて
やる気のある人が出てくるのは嬉しいね

二次の二次?は上の人が指摘するように、
ちょっとややこしいことにもなりかねないかもしれないが

それも全て描き手次第
がんがれ!応援してるよ
あ〜俺もなんか書いてみたいなぁ〜
229名無しさん@ピンキー:2010/09/09(木) 11:03:32 ID:O/MhmtWz
>>220がフリーメールを公開する
→その気があるなら神が連絡とる

で、連絡が取り合える状態になったところで、
1.神or>>220が、本来の自分のトリで書きこむ。
2.IDが変わらない内に適当なトリ付けて書きこむ。
3.そのトリを相手に連絡する
4.連絡貰った方がそのトリで書きこんでみる→2と同じトリが出る

これで、本人同士が連絡取り合ってるって確認だけは取れるけどね。
あとの権利関係うんぬんは知らねw
230 ◆JU6DOSMJRE :2010/09/09(木) 19:19:26 ID:7xL/XRXZ
>>220 ◆ct8rrWlYpc氏
もう話は収束しているのかもしれませんが、漫画化のお話、ありがとうございます

著作権については、放棄はしませんが、主張やそれに基づく請求もしません
◆ct8rrWlYpc氏の著作物の中に元ネタの存在を明記して頂ければ充分です

本人確認に関しては>>229氏の方法で確認可能かと思いますので、
もしまだお気持ちがあるようでしたら差し支えないアドレスをお教え下さい
連絡します

色々アドバイス下さった方々もありがとう!
231名無しさん@ピンキー:2010/09/09(木) 20:27:50 ID:sIiiqQqc
>>230
そういうなあなあなのを始めると、後々ご自分だけの問題じゃすまなくなるかもよ。
もし今後、(このスレに限らず)誰かの二次作品を更に別の誰かが…となった時に、誰しもあなたみたいに寛容になれるとは限らない。
その時に、「あの人は何も要求しなかったのに、お前はケツの穴が〜」云々と引き合いに出されるかもよ。
あなたのためじゃなく、未来の誰かに迷惑かけないように、許可するにしてもあまりなあなあにし過ぎない方がいいんでないのか?
232名無しさん@ピンキー:2010/09/09(木) 20:30:36 ID:2Phmb5mw
疑心暗鬼っていうか、始まってもいないのに
外野があんまりああだこうだ指図がましいのも
どうかなぁと思う
233名無しさん@ピンキー:2010/09/09(木) 20:49:17 ID:sIiiqQqc
物事を始めてから、終わったと思ってから、色んな問題出て来て「こんなハズじゃ…」となるより、予め想定されることを把握しておくのは悪いことじゃないと思うよ、社会出て仕事したことないの?
「やってみなくちゃわからない」というなあなあ根性でやるから同人業界はトラブル多いんだしさー。
234名無しさん@ピンキー:2010/09/09(木) 20:58:40 ID:VZHRqJCd
何でそんなに棘のある言い方してるんだ?
235名無しさん@ピンキー:2010/09/09(木) 21:04:29 ID:aFrAXIPi
はいはい、心配してるのはわかるから部外者は静かに見守ろうぜ。
>>230は経験豊富そうだし神は俺たちより賢明そうだ
236 ◆JU6DOSMJRE :2010/09/09(木) 22:10:03 ID:7xL/XRXZ
ごめん、書き方が悪かった

著作権に関しては、これで契約内容の全てが決定したというわけではなく、
◆ct8rrWlYpc氏との個別の話し合いに至る前に
著作権に基づく金銭的請求権は行使しないというこちら側の基本姿勢を明らかにした、
ぐらいに受け取って下さい

ただ、こういう姿勢を明言したことによって今後やりにくく思う人がいたとしたら、それは配慮が足りなくて申し訳なかった
もっと気をつける
237名無しさん@ピンキー:2010/09/09(木) 23:21:05 ID:tTM0hNHj
神愛してる
作品毎回楽しませてもらってるよ
238名無しさん@ピンキー:2010/09/10(金) 01:20:17 ID:+Mg1HuTu
なんか上手い方向に行きそうでほっとした
すげえな、二次の二次だぜ!

神以外の作品が最近はなかなか出てこないのにやきもきしてたが、救われた気分
神のもですだよ+6d+ゴス女のほのぼの家族ネタの続きがそろそろ見たいな
あれも張兄貴がかっこよかったし
239名無しさん@ピンキー:2010/09/10(金) 02:04:27 ID:0pgjKiZN
あのー、盛り上がってるトコ悪いんだが、早い段階で言い出した人がリタイア表明してるんだし、
あんまり舞い上がらない方がいいんでないのか?


いや、やっぱやるって言うならならやるでいいんだけど、リタイア宣言以来何も発言してないのに
外野だけ勝手にその気になって盛り上がってもさー。
金銭とか、著作権とかを厚意だけでクリアしてもこれだけ厳しい目と期待の目の両方ある中で、
リアルでツラ晒して本出すのはかなりのプレッシャーだろうし、あとは変に囃し立てないで当人同志だけでいいのでは?
どうやら他人の褌の褌を無償公開するほどの熱意も無いみたいだし。
240名無しさん@ピンキー:2010/09/10(金) 02:43:35 ID:6Gstx7tl
>変に囃し立てないで当人同士だけでいいのでは

この部分には激しく同意だ。だけどそう思うなら熱意が無いとかも勝手に決め付けるのはどうかな。
忙しく仕事してる人かもしれないのに、勝手に決め付けるのいくない
盛り上がり過ぎるのもよくないけど、そう思うならそういう発言もよくないよ
君の言う通り、あくまで当人同士の事なんだから
241 ◆ct8rrWlYpc :2010/09/10(金) 03:11:26 ID:QZftJIYN
すいません
僕の発言からいろいろ荒れてしまったようです
思いつきで始めようとした僕が悪いのですがいろいろと問題も多そうなので今回の件はやはりリタイアすることにします
サークルの仲間と相談した結果そうしたほうがいいという結論になったので覆ることはないと思います
神のSSは本当に面白かったのであのストーリーを超えるものを作れるように精進します
それではこの話はここまでということで以下お願いします
このトリではもうここに来ることはないと思いますがこのスレで神の新作に出会えるように見ていくのでまた素晴らしい作品を拝める日を楽しみにしています
242名無しさん@ピンキー:2010/09/10(金) 03:24:11 ID:6Gstx7tl
>>241
そうかあ・・漫画化見たかったから個人的には残念だけどしょうがないね。
神の話は漫画描きたくなるほど完成度が高いってことだな
俺でも光景が脳内再生されるくらいだもんなー。ぬこ可愛いよぬこ
243名無しさん@ピンキー:2010/09/10(金) 06:19:03 ID:LiENiKwx
サークル活動してる人がここで良い刺激貰ったってことだけでも、よかったじゃないか。

つーことでぬこ飼いたいよぬこ。
244名無しさん@ピンキー:2010/09/10(金) 21:56:50 ID:YvLSqwPu
ブラクラ本に飢えまくってるから
活動中のサークルさん達を心から応援してるぜ

しかしいつか竹中編冒頭のような無防備レヴィが
ロックとひっついて寝てるシーンを原作で描いて欲しいもんだ
245名無しさん@ピンキー:2010/09/11(土) 00:19:16 ID:mZ3kTloE
無防備レヴィという字面がなんかクルw
246名無しさん@ピンキー:2010/09/11(土) 00:29:46 ID:GWokTi+L
今北。

冬のネタ無い
  ↓
そうだ、パロスレのSS元ネタに漫画描けば無条件で俺も神扱い♪
サークルの宣伝にもなるしなっ♪♪
  ↓
はぁ?イキナリ横槍入ったし
金?元々タダで公開してたんだろ?著作権?そもそも2ちゃんに投下した二次創作だろ
ああマンドクセ!
ぁぁぁぁあああ?無償公開?ザケんな、何で手間かけて描いたモンタダで公開しなきゃならん!?
てか他人様にタダを要求するとか超図々しくないか?
  ↓
メンドクサイし俺の利にならないコトはやーめた♪

つまりこうですね?

え?えぇぇぇぇぇぇぇえええっ???違うの??
どこがどう違うのぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜??教えて教えて〜〜

マ ジ レ ス で ! ! ! ! !

感動したなら時間かかろうとタダだろうと漫画っちゅー得意分野で個人としてそれを表現すりゃいい、職人さんみんなタダで公開してる
職人さん達が思いついた話や展開をサラサラ書けてると思ってるのか?
大昔に(他ジャンルだが)SS書いたことあるから何となくわかるが、そんな人一部だけだろ
色々試行錯誤しつつ、それぞれに推敲して時間かけて書いて投下してるに決まってるだろが
例え金とか絡まなくても
感想や突っ込みのレスすらされず、まるっきり無視されてしまったSSだってある
豊作の時期に埋もれてしまった良作もある
それを言われれば、スレは「つまんねーからだろ、レス乞食は死ね」と切り捨てる
だが、それはこういう「仲良し」でちやほやされるわけでない場に投下している以上は仕方ない
そうは言っても過去スレ見返すと心底申し訳ないと思うこともある
今更感想書きたくなっちまうSSだって数年前にある
そんな無償でありながら死屍累々のスレで、敢えて「描きたい」と名乗り上げてお願いしておいて、金儲けの絡む冬コミに拘って
「『面倒くさいから』や〜〜めたっ♪」と言う理由
マジで心底わかんねー

サ ー ク ル の 宣 伝 に し た か っ た ん だ ろ う け ど よ

もしも「違う」というなら俺の誤解かもしれないから教えてくれー??
マジで。
マジレスで。
何も無いのだとしたら、無償で労力を費やして下さった歴代の神々にとてつもなく失礼な人だったというだけで俺の中で決着するけどな
247名無しさん@ピンキー:2010/09/11(土) 00:40:43 ID:4rp5LGL0
>暇だからこのスレ掻き回してやろうかな

まで読んだ
248名無しさん@ピンキー:2010/09/11(土) 00:46:04 ID:mZ3kTloE

嵐かと思ったら本文読むと意外と真面目な人だったw
249名無しさん@ピンキー:2010/09/11(土) 00:51:56 ID:4rp5LGL0
まぁ何にしても終わりする宣言してるのに蒸し返してる時点でスルーでおk
250名無しさん@ピンキー:2010/09/11(土) 00:54:20 ID:zS7m07lS
お互いの了解のうえ神作品を元にしたマンガをロダで公開すればメイウェンティ
って思った欲張りさんはオレだけなんだろうなw
251名無しさん@ピンキー:2010/09/11(土) 01:13:24 ID:GWokTi+L
>>249
終わりならそれでいい
ただ、漁夫の利を掠め取ろうとして(他レスを借りるなら他人の褌の褌を取ろうとして)、
自分に利が無いと見るや尻尾巻いただけの人にしか見えないってだけさ

元SS書きとして忘れて欲しく無いのは、このスレは他人の無償の労力で楽しませて貰ってるってことだ
252名無しさん@ピンキー:2010/09/11(土) 02:30:25 ID:IrtWKnNt
>>244
いつもソファでは伸びてるくせに自分のベッドだと横向きで体丸めてるのがイイw

ロックが慣れた手つきで起きたと同時に煙草差し出すのにも萌えた
253名無しさん@ピンキー:2010/09/11(土) 10:00:13 ID:mZ3kTloE
69が見たいロックだけに・・
254名無しさん@ピンキー:2010/09/12(日) 08:28:49 ID:rTdHB2nc
ロクレヴィもう同棲しちまえばいいのに
255名無しさん@ピンキー:2010/09/12(日) 10:38:38 ID:QNmjf8Wg
ぬこが許さんばい
256名無しさん@ピンキー:2010/09/12(日) 12:05:03 ID:rTdHB2nc
ロック「よし、じゃあ、一緒に暮らすか」

レヴィ「……は?!!えっ………(どうしよう嬉し恥ずかしい!)」

ぬこ「ギロリ(こっちくんなこっちくんなこっちくんなこっちくry)」

ロック「(何この生命の危機感…)」

ぬこ「うにゃん♪(ゴロゴロ」

レヴィ「おーよしよし(ニマニマ」



こうなるんですか?
257名無しさん@ピンキー:2010/09/12(日) 22:56:42 ID:k+wCTkvz
ベッドで寄り添って眠るレヴィとねこ、
床に寝かされる岡島さんまで妄想した
258名無しさん@ピンキー:2010/09/12(日) 23:19:36 ID:77Pb6aE6
>>251
漁夫の利って言ってもコミケなんて印刷費とか雑費を差し引いて黒字になるところって一部だよ
一発当てるレベルだったらもうほんのわずかしかない
儲けるって言う点から考えればまず売れ線抑えないといけないし
当然ブラクラなんて売れ線から外れたものなわけで
利益得ようとしてたわけじゃないと思うんだけど
259名無しさん@ピンキー:2010/09/12(日) 23:37:54 ID:4ChzjM9g
中には「お前の話を原作にして描いてやったんだから印刷代よこせ」というのもいてだな
(被害者の昔話)
260名無しさん@ピンキー:2010/09/12(日) 23:51:22 ID:X+aIlqFT
金銭の黒字だけが「利」ではないと思うんだが
261名無しさん@ピンキー:2010/09/13(月) 00:38:21 ID:biG/U7wV
悪いけどそういう面倒なのは余所で気が済むまで語り尽くしてくれないかな。

ここはレヴィを全力で犯し尽くしたりシェンホアのヒールに踏まれたかったりまきちゃんにバールで頭カチ割られたかったりするスレだから。
262名無しさん@ピンキー:2010/09/13(月) 02:23:47 ID:bZiAp1yd
まきちゃんw
しかしよく考えたらあの子雪緒が死んだあとのショックたるや・・
263名無しさん@ピンキー:2010/09/13(月) 04:15:08 ID:824VWBd0
日本編の後日って見てみたいよなあ……エロならなお良し
264名無しさん@ピンキー:2010/09/13(月) 09:41:47 ID:BoRgHvHi
新聞の訃報or雪緒の家を通りかかったら葬式で雪緒の死を知るまきちゃんはちょっと想像した事ある

…が、よく考えたら雪緒って家に友達を連れてきた事なさそうだよね
うろ覚えなんだけど鷲峰組の構成員って全滅してたっけ?
雪緒・銀次ともに親戚づき合いも絶えてそうだし、もしそうだったら葬式あげてくれる人もいない訳で
下手したらあの二人無縁仏で葬られてそうな気がする
265名無しさん@ピンキー:2010/09/13(月) 16:56:24 ID:kJRaCsAv
エロ成分が足りない…
SS倉庫でも潜るか
266名無しさん@ピンキー:2010/09/13(月) 17:23:15 ID:bZiAp1yd
ロックが死ぬ話はいくつかあったけど、海で死ぬやつが一番救いがなくて心に突き刺さったなー
267名無しさん@ピンキー:2010/09/13(月) 19:43:49 ID:kJRaCsAv
「レヴィねーちゃーん」 と甘え風呂にも一緒に入る名探偵岡島少年
268名無しさん@ピンキー:2010/09/13(月) 22:29:48 ID:M9pBUozz
あの鬱展開の話はかなり来たなあ
結局レヴィに絶望しか残らない容赦のなさに読んでて苦しくなった
話は大好きだけど辛くて何度も読み返せない感じだ

個人的には別職人さんの救済話でかなり救われた
269名無しさん@ピンキー:2010/09/13(月) 23:53:24 ID:waalxC1w
鬱展開ウェルカムだぜ
ブラクラは暗くてなんぼ

世の中の巨大な闇をトワイライトゾーン(ロック視点)から垣間見るのが原作の醍醐味だし、
二次でキャラ(ロック含む)が痛め付けられるのは原作の雰囲気に合って最高
そこを痛快に解決してもいいし、解決できなくてもいい
270名無しさん@ピンキー:2010/09/13(月) 23:55:11 ID:5dPx/6SB
個人的にはあの救済策はいらんかった
元の話の容赦ないのがブラクラっぽくて読みながら辛かったがしかしそこがいい!だったし
余韻ブチ壊しだよ
本人が書いた救済策なら別にきにならんかったが、何勝手にやってんだよだったわ
271名無しさん@ピンキー:2010/09/13(月) 23:57:36 ID:waalxC1w
>>270
お前とはいい酒飲めそうだ

つ バカルディ
272名無しさん@ピンキー:2010/09/14(火) 00:44:18 ID:w//2y43G
さあ、早くスルーされないSSを書くんだ、今度こそな!
頑張りやがれ、コノヤロー
273名無しさん@ピンキー:2010/09/14(火) 01:50:54 ID:vw2zwSiL
>>272
お前が勝手に書けっての。
書きたくなったら勝手に書くし。
大体「スルーされない」って何だよ、お前何様。
だから嫌なんだよこのスレ。
274名無しさん@ピンキー:2010/09/14(火) 03:35:09 ID:CxT4w8IO
「だから嫌なんだよ」ってお前の都合聞ーてねーし。
嫌なら来なきゃいいし。
お前も何様。
275名無しさん@ピンキー:2010/09/14(火) 04:18:09 ID:LmNOVpTo
どうしたおまえら。
ホレ、ホットドリンク飲んで頭冷やせ。
っピス
276名無しさん@ピンキー:2010/09/14(火) 06:19:50 ID:cWEH8BeT
下戸な俺はカルピスでいい。

>>267
レヴィたんの体を隅々まで虱潰しに調査する名探偵か。
277名無しさん@ピンキー:2010/09/14(火) 07:10:08 ID:II0dndCx
隅々まで・・やらすい
278レヴィとロック 日本編:2010/09/14(火) 08:43:58 ID:2VhV/543
※巻末漫画ネタ

-------------------------------------------------------------

 日本での滞在は、元々予定されていた日数を若干過ぎてはいたものの、
その遅れは充分、想定の範囲内に留まっていた。
既に仕事を終えた『ホテル・モスクワ』の面々は、自分たちより数日早く
バンコク行きの直行便へ乗り込んでいたし、こちらはこちらで飛行機のチケットを取る予定だったから、
全く問題はなかった。
 カウンターでチケットを購入し、印字されている日付どおりに空港へいき、搭乗手続きを終えて、
アナウンスに従って搭乗口へ並び、席をみつけ、あとは誰も見ていない機内安全ビデオをチラ見したりしながら、
そうこうするうち飛行機は飛んで、都合6時間半のバンコクへのフライトが始まる。
 機内食というもの、あれは悪くない味だが何故か飽きるのだという例のクソッタレの呟きを聞きながら、
空の上で酔っ払うのも悪くないと──

 いや、訂正しよう。ひとつだけ、問題はあった。何しろそれは致命的だった。

 つまり──
 デスクに居た女の忌々しい──
 多分I'm sorryではなくExcuse me程度の意味の困り顔──
 タイヘンモウシワケゴザイマセンという枕──
 “本日中のバンコク行きのフライトは全て満席でございます”。

 多分自分もクソッタレもちっともそんなことは想定しておらず、
酷く間抜けな“えっ”“えっ”という鳩が豆鉄砲食らったような顔をしたのだと思う。
“Execute you”と呟いてみるヒマさえなかった。
 思い描いていた予定はその時点で鳩が9mmパラベラムを食らったかのように崩れ去っていった。
結局は翌日発の直行便にどうにか空きが見つかって、ともども胸を撫で下ろしたのだが。
 半ば本気で“パリ空港の人々”ごっこをしようとしていた自分の意に対し、“連れ”は一言の下にそれを却下した。
勿論、どうせならちゃんとしたところへ泊まろうという提案は悪くなかったし、何しろ自分にはこの国の寒さが堪えてもいたので、
おう、とだけ言って手配を任せてみることにした。
279レヴィとロック 日本編:2010/09/14(火) 08:46:12 ID:2VhV/543
 少し考えれば分からないことではない。
 ここ日本は今、冬である。
 加えて自分たちが日本に滞在している期間中は、クリスマスから新年にかけてを含んでいたのである。
“36週間後に赤ん坊が量産されるためのお仕込み”に忙しい連中は大体のホテルを占拠しており、
ようやく宿泊の手はずを付けられたのは、青とピンクという矛盾したネオンで身を飾り、
入り口は客の姿が見えないようなアプローチのある──
 ──要するに(要さなくても)ラブホテルだった。

 カラオケやゲームに、大画面のテレビに、そのテレビの傍らのシェルフにある電子レンジ、
一緒に置かれたインスタント食品なんかをいちいち見つけてはしゃいでいる姿。
 居酒屋で腹はくちくしてきたし、それなりに酒も入っている。後は風呂をつかって寝るだけだ。
どちらが先かの順番を決めるより早く、少し引きずりがちの足音はバスルームに消えていき、
自分がようやっと半生解凍するころ、上機嫌に戻ってきた。
 嫌々服用してはいたけれど、痛み止めに何かそういう、ハイになる類の成分が入っていたんじゃないかと思うほどそれは無邪気で、
部屋のほとんどを埋めているベッドへさっさと入り込み、“シーツが冷てェ”と笑う。

 分かっているのか分かっていないのか、分かっているけれど口に出さないのか。

 時間稼ぎのために、ごうごう音を立ててドライヤーを当てて、髪は完璧に乾かした。
7割ほど乾いたところで冷風に切り替える。アメニティの櫛も遠慮なく使わせてもらう。
防曇加工がされているはずの鏡が湯気のせいでぼんやりとしているのが気に食わず、
しっかりしてくれと呟きかけるが、これでなまじはっきりと自分の情けない表情を映し出されても困るので、
溜息だけをその表面に吹きかけ、バスルームを出た。

 ──つまりそれは、ちょっとした事故のようなものだったのだ。

 あいつの身体が、封筒みたいにぴっちりくっついた布団の片方を剥がして滑り込んでくる。
あいつがバスルームから出てくる寸前、思いついてベッドの片端に寄って寝たふりを決め込んでいたのが良かったのかもしれない。
 互いの身体はベッドの右と左の端に、収まり悪くしゃちほこばって、背中を向けて横たわっている。
 ──同じ生き方を望むべきじゃないと言われた。
 ──帰れと、一度は跳ねつけた。
 ダブルサイズのベッドの、ふたりの身体の間には、深くて渡れない河があるような気がした。
 さもなければ、宇宙に散らばった星と星。近くに見えても光年単位で離れていて、
間に横たわった空間を曲げてくっつけでもしなければ、永遠に出会うことはない。
 オレはシーツを背中で後ずさる。左半身が擦れる。
 あいつはシーツを腰で後ずさる。右半身が遅れてついて来る。
 ちょうどそれは、平たく焼いたスポンジ生地を左右両側から巻き込んで作るロールケーキにも似て、
偶然ながら中央で、背中同士が邂逅した。
280レヴィとロック 日本編:2010/09/14(火) 08:48:20 ID:2VhV/543
 静止している影にもうひとつ影を近づけていくと、触れる寸前、
動かないほうの影が何故かほんの少し動いて、接近してきた影のほうを迎え入れる。
 その現象のように、後は──“なしくずし”という名を付けてもいいぐらいの自然さだった。
 お互いが振り向いて、身体をぶつけ合うようにして抱き合う。
 肩に額がぶつかり、胸で胸が潰れ、足は絡まってぎこちなくシーツを泳ぐ。
はあはあと荒げた息はけだものじみて、常夜灯のオレンジ色の差し込む布団の中で、
ようやく探り当てた唇を重ねると、内側の歯がカチンと音を立てた。

 髪もぐしゃぐしゃに絡めながら頬を手挟んで、自分でもなんだコレと可笑しくなるほど真剣に、
あいつの唇を吸っていた。そして何より恐ろしいことにだ、この自分が、──“二挺拳銃”と呼ばれる自分が、
あいつの顔を見るのが怖いなどという弱気を起こそうとは。
 お互いの胸を肌蹴させようとまさぐりあう爪は、手の甲を引っかいたり手のひら同士が吸い付き合ったりでまったく上手くいかず、
とうとう前歯に挟まれた唇が充血して痛み始めて、ようやくバスローブの帯に気付く。
そこを解かなければパイル地は前開きに乱れていくばかりで、脱がせることは出来ないのだ。

 何か言えよ。
 なんか言えって。

 硝子も曇るほど熱い息を吐きながら、言葉が同時に押し出される。
 “大きなダイヤ”、“確実に成功するヤツ”。筋金入りの変人かつ博識な我らがボスは、
何を思ってその名をこいつに与えたのだろう。音としては決して間違っていないのだが、日本語でgreenだというこいつの名前の字は、
確かにロクという音も持っているらしいが、それにしたって過分だろう。
 ただ納得できるのは、こいつが迂闊に触れればこちらの手指を痛めかねない、
そんな存在であるということだけだ。どんな男をも迎え入れるために柔らかく緩い娼婦たちの肌とは違って、誰にも足跡を記させない肌の持ち主だ。
 だが、“ダイヤモンドは砕け散る”。何物にも追随を許さない、やり方を変えないその硬度は、強い力で別のものをぶち当てられれば、粉々になる危険をも秘めている。
ロアナプラに飛び交う弾丸は、どんなものでも、その威力を持っている。
 震えているのはどちらの肌か、胸に生暖かく染みるのはあいつの涙か、それとも自分の汗か。
281レヴィとロック 日本編:2010/09/14(火) 08:50:34 ID:2VhV/543
 なんか言えよ。

 ぎくしゃくと肘を立てて、重なり合う身体に、かろうじて隙間を作った。
 あの双子の時もそうだった。一発殴ってキスすれば直るだろうとねぐらを訪ねていった自分を、
こいつは今とそっくりな、鼻の頭に皺を寄せて唇を引き結んだ表情で見つめてきた。
 そして、いざ押し倒して挑みかかろうとした時に──泣かれた。ケトルの蓋が弾け飛ぶようにこいつは泣いた。
ワンダーランドのアリスのごとく共々溺れ死ぬんじゃないかと危惧するぐらいに泣いた。
 髪に唇で触れてやっと分かる湿り気。あのロアナプラで、空からまるで雨のように日差しが降り注ぐ街で、
どうやってこいつの髪はこの柔らかさを保っているのか。
豊かな胸の谷間にもキスをする。バスローブの帯に作られた蝶の翅を手繰り、
輪の部分が結び目を通り抜けていくと同時に、駄目押しで囁いた。

 “二挺拳銃”は伊達じゃねェ。
 死ぬほど悦くしてやるから、さっさと脱いでとっとと足開いとけ。

 そんな物言いしか出来ない自分を呪いながらも、鼻を鳴らしたこいつは、いつものレヴィだ、と笑うのだ。
全くの無駄に終わるかもしれないが、キスして舌を絡め胸を弄り全身に手を這わせ足を開かせ以下略というお作法を引っ張り出す。
 しかし、もう痛くないように重ねた唇の威力で、ありがちなHow toは木っ端微塵に吹き飛ばされて、そこからはもう、停まらなくなった。
 軋まないベッドの上で、オレは初めて、彼女を抱いた。
 名前のない女を抱くのではなくて──彼女と、オカジマミドリと、多分ほんもののセックスを、した。
282レヴィとロック 日本編:2010/09/14(火) 08:53:23 ID:2VhV/543
エロないよって書くの忘れたorz

巻末漫画=男の子女の子編で日本編、という妄想。
レヴィはあんまり変わらない、ロックは巨乳、という呪文を唱えつつ書いてたけど
チャカはやっぱりガチレズだろうと思った。ノーブラノーパン系の。
283名無しさん@ピンキー:2010/09/14(火) 09:06:35 ID:nYO75bZz
朝からなんかすごいのキター!!!
これ続き熱望、いやガチで

ガチレズ女チャカが回想シーンで出てくると俺歓喜w
284名無しさん@ピンキー:2010/09/14(火) 09:16:15 ID:DA/tFRLj
え、でもチャカさんはガングロ系なんじゃ…

投下かんげき!!
285名無しさん@ピンキー:2010/09/14(火) 14:26:03 ID:II0dndCx
男女逆転ピンとこなかったがこうなるのか・・結構イイな
てかロックにああいう意味があるのは知らなんだ
286名無しさん@ピンキー:2010/09/14(火) 23:30:13 ID:qXVMTcLO
ギャル系のエロは大好物。
伊達に『チョベリグ』毎号買ってた時期ないぞ。
なのでガングロでノーパンノーブラな百合っ娘チャカをぜひ!
287名無しさん@ピンキー:2010/09/15(水) 01:04:28 ID:phgkBicE
チャコは整形美人だけど根性の悪さがにじみ出ている感じなキャバ系。
鷲峰系列クラブの雇われママ。
不良米兵の女だった過去があり、銃の扱いも知っている。

なんでこんな奴の細かい設定が浮かぶんだ…
288名無しさん@ピンキー:2010/09/15(水) 02:55:01 ID:qua5vA78
チャカさんへの愛がパねぇな皆www
289名無しさん@ピンキー:2010/09/15(水) 03:16:28 ID:AAB3DeiI
詰め襟メガネの雪男きゅんハァハァ
290名無しさん@ピンキー:2010/09/15(水) 04:02:21 ID:l3wRZPWt
性転換って文章だとどっちが喋っててどっちがどっちなんだかぶっちゃけわかんない・・・

ギャグネタ程度なら楽しめるけど
291名無しさん@ピンキー:2010/09/15(水) 08:17:49 ID:3LKA0u6W
正直俺も混乱しているw
292名無しさん@ピンキー:2010/09/15(水) 09:08:40 ID:O09q+RVi
あ、なんか俺がいる…
いや、俺の読解力が無いせいかもしれんが、これって男レヴィたんの一人称だよな?
けど、途中で女ロックの視点もしくは三人称が紛れ込んでないか?

…やっぱ俺がアフォなだけかw 細かい事言ってすまん
293名無しさん@ピンキー:2010/09/15(水) 10:15:55 ID:EWSwDr+T
>>289
そうなると着物姿も色っぽい人斬りお銀さんになる訳ですか…いいなー、それいいなー
294名無しさん@ピンキー:2010/09/15(水) 20:27:37 ID:YAFghv6M
性転換日本編の人GJでした
男レヴィの思いラブい
ミドリたん側の描写もいい

ほかの方も仰ってるけどチャカさん出して続きを書いてくれたら嬉しい
295名無しさん@ピンキー:2010/09/15(水) 20:32:13 ID:ekwL0EEF
チャカさん人気ありすぎw
296名無しさん@ピンキー:2010/09/15(水) 20:53:51 ID:YAFghv6M
あんな美味しいキャラいないって
297名無しさん@ピンキー:2010/09/15(水) 20:58:40 ID:ekwL0EEF
レヴィにちょっかい出したりロックをボコったりと、
確かに命知らずな美味しいキャラだったもんな
298名無しさん@ピンキー:2010/09/15(水) 23:08:14 ID:z49Qalen
知らなかったとはいえレヴィをナンパする強者
299名無しさん@ピンキー:2010/09/15(水) 23:24:23 ID:xLEsolLZ
あれは男キャラだから腹立つのであって、女キャラなら逆に萌えるんだよ
わかるかなぁ、わかんねえだろうなぁ
300名無しさん@ピンキー:2010/09/16(木) 01:26:41 ID:ACo/hN11
>>291-292
同じやつがいてちょっと安心したw
俺も自分の頭ヨワスなせいかと思ってたw
一人称違うと誰だかさっぱりわからんくなる
301夢の続き・ロクレヴィ:2010/09/16(木) 19:48:12 ID:jJWdsKqE


これは夢なのか―それとも現実なのか――今の俺には判断がつかなかった。
何故かと言えば――。
まあ後から思えば、何故この時に自らの存在をアピールしておかなかったのかと少々悔やむ事になるのだが―。



目を開いた時、最初に見えたのは白いカーテンだった。
そして簡易ベッドを仕切る、少し開いたその隙間からレヴィが立っているのが見える。
こちらに半ば背を向けて、今日貰ってきたのであろう新型銃の試作品を手に取っていた。
微かに笑みを浮かべながら慣れた手つきでそれを調べる姿はまさに、人食い虎―。
少し靄がかかった頭でそんな事を考える。


少し俯きながら銃に没頭するレヴィの睫が、
船体に嵌め込まれた丸い窓から入る朝日に照らされて艶やかに煌いている。
そしておもむろに銃を置くと、今度は自分の愛銃を抜きバラシ始めた。
鮮やかな手つきでメンテを終えると、ふう、と息を吐き髪をほどく。
流石に眠いのか、欠伸をかみ殺しながら目を擦るレヴィ。
少し微笑ましい気持ちでそれを見ていると、レヴィはホルスターを身体から外し、黒い上着を脱ぎだしだ。


誓って言うが、その時の俺は普通じゃなかった。まあ、ありていに言うと寝ぼけていた訳だが。
面積の少ない上着からその腕を抜き、下着のホックを外し乱暴に放る。
さらりと流れる赤い前髪に睫が隠されていくのを残念に思いながら目で追うと、
古い傷が走る背中が意外と華奢な事に気付く。
その奥から白い胸がちらりと見えて―。
302夢の続き・ロクレヴィ:2010/09/16(木) 19:49:52 ID:jJWdsKqE

なんというか、言い訳のようだがようやくここに来て俺の目は覚め始めてきていた。
今まで夢か現実か判別できないままに、なんとなくレヴィが服を脱いでいくのをぼんやりと見ていたが、
カーテン一枚隔たれた目の前で、生身のレヴィがどんどん裸に近づいていく光景を、
俺の鈍い頭はやっと現実だと認識しだしたのだ。


そうだ、何故こんな事になっているかというと、
昨日ロアナプラから少し離れたこの街に、三合会の張さんに依頼された新型銃の積荷を引き取りに来て―。
しかし、いざその問屋に行ってみると、まだ半分しか完成していないという。
なぜその時点で連絡をよこさないのかと、俺たちは当然激怒したが(主にダッチとレヴィが)
そこの親父曰く、張に連絡して命を粗末にするより、俺たちに半殺しにされる方がなんぼかましという事らしい。
まあ依頼主の依頼主を勝手に殺す訳にはいかないという、俺たちの事情と足元を見たこの街らしい選択だった。
その言い草に間髪置かずブチ切れたレヴィを止めつつ、ダッチがその新型銃を何丁か貰う事、
今後の銃のメンテをタダでやる事などを条件に、張さんを取り成し何日かなら待ってやる事を承諾したという訳だ。


そういう事情から、俺たちは予期せぬ数日の休暇を手に入れたわけだが、
その間、ロアナプラを拠点にしている俺たちには仕事が入りにくい。
当然金も入らないといわけだ。
張さんからの仕事は多少金払いは良いにしても、ただ船で待っているだけじゃ能が無い。
という事でダッチは昼夜問わず街へ情報収集に、レヴィは銃器の整備と危険が増す夜中の船の警備担当、
ベニーはひたすら愛する機器のメンテとネットからの情報収集をしている。
俺はといえば、船に経理の書類を常備している訳も無く、いささか手持無沙汰だった。
まあそれでも皆の食料の調達や食事の用意、ベニーやダッチの細々とした手伝いなどやる事は色々とあった。
船の安全面からも、俺とベニーは昼間働き、レヴィとダッチは主に夜動くという事で落ち着いた。
303夢の続き・ロクレヴィ:2010/09/16(木) 19:52:25 ID:jJWdsKqE

しかして2日目の朝になり、警備の終わったレヴィが自分の仮眠室に入って来た事は至極当然のことだった。
ただ、しばらく使っていなかった向こうの部屋の俺のベッドが壊れているという事態を、
果たしてレヴィが納得してくれるかという、実に勝算の薄い望みに賭けるはめになったのだが――。


そんな俺の事情とは関係なしに、レヴィはもう上半身はすっかり裸で、
その手は手馴れた仕草でベルトを外し、小さなジーンズを足から抜かんとしている。
その引き締まった身体、白い胸やこちらに向けられたパンティからこぼれた尻は、
ぼんやりした俺の頭にはもうそれだけで飽和状態だった。
にも関わらず、あの小さな尻の奥には何人の男が通り過ぎたのだろう、恋人はいたのだろうか?それとも見も知らぬ客に――?
つい、そんな勝手な想像と、詮無い嫉妬じみた考えを巡らせてしまう。


しかし意図せずレヴィのストリップを覗き見しているこの状況に、子供じみた優越感も抱く。
ロアナプラの男共の誰もが、一度はやりたいと密かに思っている事は俺も知っている。
機能と美を併せ持つ完璧な身体の相棒を、しばし眩しく見つめる。


だが自分は皆と同じようでいて、少々ベクトルの違う気持ちを抱いている事に、最近気付いていた。
レヴィの気持ちを推し測る事は俺には不可能だが、一度街中でド派手な喧嘩をやらかしてから、
決して自惚れではなく、二人の間には何か言葉では言い表せないものが横たわっているのは確かだった。
「相棒」「バディ」「仲間」そんな言葉の中に胸の奥がもどかしく、もっと近づきたいような、
でなければいっそ離れてしまいたいような正体不明の何か―――。

304夢の続き・ロクレヴィ:2010/09/16(木) 19:54:14 ID:jJWdsKqE
そこまで考えるに任せ、はたと、もうそんな場合ではないことに気付いた。
目の前のレヴィはもう黒いパンティに手を掛けていて、今まさに下ろさんとし――。


「レ―っう・・ゴホッ・・・!」


何か言おうとして口を開いたものの、興奮と緊張から喉が張り付いていて、
挙句出たものといえば水分の乏しい咳払いだけだった。
果たして、シャッと勢い良く引かれたカーテンを握るレヴィは、震えるもう一方の手で急いで太腿まで上げかかった下着を握っていた。
初めて見るレヴィの裸に、自分の顔が赤くなっていくのを自覚しながら俺は自問した。
かろうじて、まだ全裸では・・ない。間に合ったのか・・?――いやそんなわけはなかった。
レヴィの恐ろしいまでの笑顔を見れば―――。


ゆっくりと、しかし一見冷静に下着を履き直し、レヴィはやっと口を開いた。
「―――バッカヤロウ!!―何やってんだッ!!お、お前の寝床はあっちの部屋だろーが!!」
ごもっとも。レヴィ、何もかもお前の言う通りだ。だけど
「・・むねっ・・・胸をかくせレヴィ――」
出たのは言い訳ではなくしごく真っ当な忠告だった。少なくとも俺にとっては――。
「あぁん?てめえそんな事言えた義理か!?散々っぱら人の裸見といてよお?ぇえ?」
だがどうやらレヴィにとってはもう今更な事らしかった。


片手でカーテンを、もう一方の手で俺の首根っこをぎりぎりと握り、
怒りもしくは羞恥からか少し顔を赤くして凄むレヴィに、俺は一言も無い。
いや、無いで済まされる話ではないので、一応口を開く。
「ご、ごめんレヴィ、ここに寝てたのは向こうのベッドのスプリングがいかれてたからで―」
「ベッドはもうひとつあるだろうが」間髪入れず返される。
「そっちはベニーが使ってるんだ」
「・・ああそうかい!」
ッチっと舌打ちをして、ようやくレヴィは乱暴に俺のシャツを放してくれた。
305夢の続き・ロクレヴィ:2010/09/16(木) 19:55:56 ID:jJWdsKqE

「それならそうと、何でもっと早く声かけねえんだよ!」
「だからそれは寝てたからで・・」
最早そうとしか言いようのない言い訳を口にする俺の顔に、レヴィはぐいっと顔を近づけて呟く。
「・・・お前、今さっき起きたわけでもなさそうだな?えぇ?」

―鋭い。やはり顔を見ただけでも判るもんだろうか。
「声の感じでもわかんだよ!なめんな」
心の中を読まれたように言われて、内心苦笑した。
やっぱりレヴィには敵わない――。


でもやはり完全に故意ではない事だけは、名誉の為に主張しておかねばならない。
「その、少し前に起きたのは確かだけど、つまりその、夢かと思ったんだ」だからすぐには声を掛けそびれて・・と言った俺に、
「夢ぇ?なんだそりゃ・・」といぶかしげな顔。
「何で船にあたしがいるのが夢と結びつくんだよ?てめふざけてんじゃねえぞっ」
「そうじゃない、ふざけてないよ。たまたま見てた夢にレヴィが出てきてたんでつい続きかと思って・・・」

焦った俺は急いでそこまで喋って、ふとある事に気が付いた。
自分は何かとんでもなく恥ずかしい事を言っていることに―。
そして、レヴィの顔が何だかさっきよりも赤くなっていることに。


やばい!なんだか途轍もなくやばい。
この、主に俺が恥ずかしい雰囲気は何なんだ――!
「―レ、レヴィこそ、お前ともあろう者が他人の気配に気付かないなんてどうかしてるんじゃないか?」
冷静な態度を努めつつ、懸命に話題をそらす。
「もしかして、どこか身体の調子でも悪いのか・・?」
聞きながら半ば本気で心配になってきた俺に、何故かもっと動揺したレヴィがいた。
306夢の続き・ロクレヴィ:2010/09/16(木) 19:59:24 ID:jJWdsKqE

「・・お前の――」
「え・・・?」
レヴィにしては珍しく小さな声で何か言ったと思った。
「――おまえに今更警戒してどーすんだよ!・・はっ笑わせんな」
「身体の調子なんて絶好調だぜ!ふざけんなよっ」
「おまえごときに心配されるいわれなんぞねえ――!!」
なぜレヴィがこうも激しく怒っているのか、なぜ少し泣きそうになっているのか、この時俺には解らなかった。今の俺には―。


ただ、とりあえず目の前のレヴィを抱きしめてみる。
こう見えても俺は子供の扱いには慣れているんだ。
そして、今レヴィはまるで子供に見えた。
なぜ怒っているのかも定かでない、自分の感情に翻弄されている子供――。
そう多分レヴィもこの時、自分でも感情の出所が掴めなかったに違いない。
それだけは俺にもわかった。

「ごめん、レヴィごめん・・・」
訳もわからず、でも俺は真剣に謝った。これ以上ないってくらい真剣に。
何故かそうしないと、いけない気がした。


「・・・レヴィ、泣きやんだか、ん?」
大人しく俺の腕に抱かれている彼女が可愛くて、顔を覗き込み少し意地悪く聞いてやった。
するとレヴィは黙って俺の腕を振りほどき、つけあがりやがってこの野郎、という顔で見上げてくる。
それがおかしくておかしくて、でも愛しくてたまらなかった。
しかし実際に口に出さなかったのは、彼女にしては極めて珍しい事だ。
それに少し気を良くした俺の顔をじとりと一瞥し、無言で備え付けのシャワー室へ向かう。
「レヴィ?」少し焦った俺に「ったく、張り紙くらいしとけっつーんだ!」とようやく捨て台詞を吐いて、ドアは気の毒なくらい勢いよく閉められた。


レヴィ?許してくれた?レヴィ、
そしてお前も、俺と同じ気持ちを抱えているのか?レヴィ――。
実際には聞けない言葉を心の中で問いかけつつ、同時に俺は無意識に、先程の光景を反芻するという不埒なことをやってのけた―。




Fin

307名無しさん@ピンキー:2010/09/16(木) 20:41:07 ID:1JoBYJvc
またキター!
GJだがえっちはしないのねw
こういう、肉体関係を匂わす会話好きです
308名無しさん@ピンキー:2010/09/16(木) 20:45:35 ID:4Oh/mCaY
初々しいロクレヴィも良いな
GJでした
309名無しさん@ピンキー:2010/09/17(金) 17:29:41 ID:88L6Ggik
おおおGJ!
なんか色々想像掻き立てられる書き方だな。
ロックは一体どんな夢見てたのかとか、レヴィたんは何を考えていたのかとか
310名無しさん@ピンキー:2010/09/18(土) 02:55:09 ID:rL82at79
レヴィ可愛ええぇ!レヴィたん!
311名無しさん@ピンキー:2010/09/18(土) 09:19:48 ID:AkPrEcw1
単行本最後でロックが毎日桟橋で一人黄昏てるってことを知ってるレヴィたんは、毎日こっそり後をつけて物陰から心配そうに見つめてるのか
312名無しさん@ピンキー:2010/09/18(土) 20:54:06 ID:zWvrQ7Bk
あのシーン、張さんがわざわざ「レヴィから聞いたんだが」
って言ってるのが良いな

しかし本誌再開はいつなんだ…ドライブの続きが早く見てえ
313名無しさん@ピンキー:2010/09/18(土) 23:08:21 ID:rL82at79
>>312
ドライブとか響きがwktk
せっかくふたりきりなんだからちょっとは進展しろYO
314名無しさん@ピンキー:2010/09/19(日) 00:29:39 ID:U7uJEk2Z
志村動物園でここのぬこ話みたいなのがやってた(´;ω;`)
315名無しさん@ピンキー:2010/09/19(日) 02:19:51 ID:t896FT48
おうふっ実家から戻ってきたら新作があ!
お着替えレヴィたんかわいいよお
316名無しさん@ピンキー:2010/09/19(日) 09:20:55 ID:t896FT48
>>314
ところでぬこ話みたいなのってどんなのだた?
317名無しさん@ピンキー:2010/09/19(日) 10:17:34 ID:U7uJEk2Z
>>316
生きることに無関心な無気力女子高生が泥だらけで小刻みに震えてる三匹の捨て猫を見つけ、気が進まないものの拾って飼う。
ぬこの世話をしてく内に愛着が沸いてくる。

ある日三匹の内一匹がごはんを吐くようになる。
動物病院に行って診せたら巨大食道症という食べても直ぐに戻して仕舞には餓死に至るという病気と判明。

女の子の懸命な餌やりのお陰で、余りにも小さかった猫はなんとか体重が増えて手術可能の兆しが。

ぬこは病に蝕まれた痩せ痩けた体で毎晩女の子のいる二階の部屋へ上がってくるようになる。
そんなことが出来るまで元気になったんだと喜んでいたけど、ぬこは残り少ない時間を少しでも一緒に居たくて無理をして階段を登ってきていた。

ぬこは長生きはできなかったけど幸せでした。
318名無しさん@ピンキー:2010/09/19(日) 11:35:39 ID:t896FT48
にゃるほど・・健気なぬこほど泣けるものはないな
レヴィにゃんの胸の谷間で寝たあいつほど幸せだったらいい
319名無しさん@ピンキー:2010/09/20(月) 18:00:02 ID:ovvfrLOl
レヴィたんのやわらかおっぱいの谷間に顔突っ込んでパッフパッフしたい
320名無しさん@ピンキー:2010/09/20(月) 20:12:16 ID:CY/HUKsi
おま、死ぬぞwロックでもぎりぎり許されるレベルだ
321名無しさん@ピンキー:2010/09/20(月) 20:46:47 ID:SvuLQT1s
ロックになってレヴィのけしからん太ももで膝枕されたい
322名無しさん@ピンキー:2010/09/21(火) 01:45:05 ID:0m0vJh5K
猫ネタ飽きた
そうやってひとつのネタに執着して延々雑談されたら、職人もそうやって勝手に周りに持たれたイメージ打破するのに苦心するぞ
神を殺すのは信者だ
323名無しさん@ピンキー:2010/09/21(火) 02:25:05 ID:pS8GHIMQ
>>312
張さんとレヴィがロックの事話してんの想像するとなんかわからんがたぎるw
324名無しさん@ピンキー:2010/09/21(火) 07:11:48 ID:DUAg3L7O
>>322
そういう空気の読めなさが一番神だけじゃなくスレそのものをぶち壊す発言だということはわかった
325名無しさん@ピンキー:2010/09/21(火) 14:25:13 ID:2tTX+zdl
でも実際飽きた
326名無しさん@ピンキー:2010/09/21(火) 14:53:24 ID:pS8GHIMQ
じゃあなんの話したいの?(^ー^)ノ☆*.。
327名無しさん@ピンキー:2010/09/21(火) 14:59:26 ID:HX6YseAA
ダッチの話しようぜ
328名無しさん@ピンキー:2010/09/21(火) 15:07:31 ID:pS8GHIMQ
却下☆
329名無しさん@ピンキー:2010/09/21(火) 15:11:49 ID:I+usF52+
噛みつき返してる人って、ずーっとネコの話してれば満足なの?
ネコの話は楽しませてもらったし、秀作だったと思うけど、ブラクラそのものの話がしたいよ
該当の職人さんの作品も、バラ姐×軍曹とかシェンホア×張兄貴の話にガツッときた自分みたいなヤツはさ
330名無しさん@ピンキー:2010/09/21(火) 15:29:37 ID:pS8GHIMQ
ブラクラ話、どんどんすればいいじゃん。皆大歓迎じゃないか?
基本過疎ぎみのスレだから、何日もレスが無い時だってあるのに何故今までしなかったの?
331名無しさん@ピンキー:2010/09/21(火) 15:45:51 ID:JsiPliWk
短時間に進んでるから投下があったのかと思えば…
過剰反応するバカが一人わいてんのか
332名無しさん@ピンキー:2010/09/21(火) 16:29:00 ID:0m0vJh5K
おれ>>322だけど、荒れる原因作ってすまん

猫のSS自体は切なくていい作品だったと思う
超GJ

しかし延々スレ違いの猫話続けるヤツがいいかげんうざくなっちまった
我慢できなくて悪かった
333名無しさん@ピンキー:2010/09/21(火) 18:47:30 ID:1zjv9I7H
そーゆーのは飽きた飽きたって直に言うより
それとなく話題を変えるんだよ
それが大人の対応ってもんよ
334名無しさん@ピンキー:2010/09/21(火) 19:51:14 ID:JsiPliWk
>>333
だったら一人を責めてないで、さりげなく話題を変えたら?
その御大層な大人の対応とやらで
335名無しさん@ピンキー:2010/09/21(火) 20:10:13 ID:F586/bpS
張さんとバラライカさんとこのご夫妻(双子の子供のあれ)の話が唐突に見たくなるオレに愛の手を
336名無しさん@ピンキー:2010/09/21(火) 20:45:08 ID:PMCKpaqJ
>334
何カリカリしてんだよみっともない
顔の見えないネットといえども人と対話してることには変わりはないんだよ
337名無しさん@ピンキー:2010/09/21(火) 22:08:51 ID:F586/bpS
別に普通に双子の話でもいいんだぜ?
ぼっちゃんあたりの話だって美味しい。
338名無しさん@ピンキー:2010/09/21(火) 22:57:05 ID:McZSOM05
ここは間をとって、何かの拍子にロックにマジ惚れしたエダさんが
ポンポンを両手に持ちながら、どうやってレヴィを亡きものにしようか可愛く悩む話にしてくれ
339名無しさん@ピンキー:2010/09/22(水) 01:12:38 ID:mjM67XfQ
きっと今頃>>322は「計画通り」って顔してんだろな。

何にせよ自分がおもしろくないネタ、CPの話題に我慢ができないような奴はエロパロスレとか向かないよ。
こんなのエロパロ内どのスレでも常識(ファンの多いメジャー作品スレでは1で書かれてたりするし)
340名無しさん@ピンキー:2010/09/22(水) 01:39:34 ID:T+2yjohP
ですだよと頭が火星に行ったにーちゃんのエロを想像したい
341名無しさん@ピンキー:2010/09/22(水) 01:47:51 ID:Gzuzr1et
どうして延々猫ネタばっか続けたがるのかイミフ
本人も他の職人も身動き取れなくなってると思う

終いにゃ他の職人投下しようと猫ネタだしさー
342名無しさん@ピンキー:2010/09/22(水) 02:03:29 ID:Dc0eetWj
確かにそろそろウザいよな。
正直難民あたりに猫の隔離スレ作ってずっと引きこもっててホスィ。
343名無しさん@ピンキー:2010/09/22(水) 02:18:17 ID:SylIDu8c
>>340
このスレずっといるけど初めて同志を見つけたw
いいよな、ですだよ×ジャンキー
344名無しさん@ピンキー:2010/09/22(水) 02:30:50 ID:T+2yjohP
>>343
さあ握手をしようじゃないか同士よ。
初見のときからあいつらが好きだったんだがすげえ肩身が狭くてなあ
345名無しさん@ピンキー:2010/09/22(水) 03:03:56 ID:uFD20hYD
火星から呼び戻すため、騎乗位で頑張るシェンホアか…

または、六tとのセクロス見せ付けるようにして覚醒させるか?
346名無しさん@ピンキー:2010/09/22(水) 03:12:55 ID:SylIDu8c
>>344
ジャンキーは原作からリタイアしたからなw
ほとんどチョイ役だし、その割に凄まじいインパクトだったけど
ネタキャラに近いのが悪いのかね?

>>345
どっちもいいと思います
つーか両方やればいいと
347名無しさん@ピンキー:2010/09/22(水) 06:48:07 ID:lytTpzEn
好きなら好きを発散すればいいだけなのに
自分の萌えがマイナーなことに逆恨みして他カプや属性を攻撃するんじゃないよ…
348名無しさん@ピンキー:2010/09/22(水) 08:07:15 ID:s7dMMHFj
誰も他カプや属性は攻撃してないんじゃ……
メジャーでもマイナーでも歓迎だけど猫は違う
作品自体は感動した
349名無しさん@ピンキー:2010/09/22(水) 08:27:35 ID:VuWHstZI
>>347
禿同。誰も話題ふりしない閑散としたところにまったり会話してただけだろうに
住人少ないここでいくらでも自分の萌えを言う時間はあっただろ
それをやらないで誰かを責めてる奴なんなの
>>343
張×ですだよもいいけどレガーチ×ですだよは意外と萌えるなw

350名無しさん@ピンキー:2010/09/22(水) 08:37:46 ID:70s3fS/c
>>322>>332です
おれは別に計画的にこのスレを荒らそうと思って言ったわけじゃないし、特定のカプや属性を
貶めたつもりもないです
そう取った人がいたらごめん
おれの言い方も悪かった

だけど、他に話題ないとしてもブラクラの話じゃなくて猫の話ばっかりってどうよ、って思った
みんなブラクラの話がしたいからここにいるんであって、猫の話がしたいんだと思わなかったから

確かに猫のSS、すげえよかったよ
けれどみんなが猫猫猫ってずっと言ってたら、猫のSS書いてくれた職人さんも、それにひきずられて
自分の書きたいSS書けなくなっちゃうんじゃないかって

悪かった
バカルディで顔洗ってくる
351名無しさん@ピンキー:2010/09/22(水) 08:48:03 ID:lytTpzEn
それは杞憂ってもんだ
場が荒れたほうがよっぽど投下もしにくいと思うがなあ
さてレヴィを起こしてくるか
352名無しさん@ピンキー:2010/09/22(水) 12:05:43 ID:ngoUYUqF
猫話否定=ロクレヴィ否定=他カプの僻み

いつの間にこんな話になった?
353名無しさん@ピンキー:2010/09/22(水) 14:32:27 ID:mjM67XfQ
おこちゃんが一人自分で新しい流れを作る努力もしないで不平不満だけを声高に吠えただけだよ。

つーか神は流れに関係なく作品が出来たら普通に投下するし、何気張ってんだろうな。
354名無しさん@ピンキー:2010/09/22(水) 16:02:25 ID:T+2yjohP
さて、エダの昔話でも誰か始めてくれないものか
355名無しさん@ピンキー:2010/09/22(水) 19:36:59 ID:YyfGgmYg
>353
お前成人にしては痛すぎ
未成年なら帰れよ
お前がおこちゃんとか言うからよけい荒れることに気づけ
356名無しさん@ピンキー:2010/09/22(水) 20:04:06 ID:Oun36p7q
みんな落ち着け
もういいからgxのレヴィ柄iPhoneジャケット買おうぜ
357名無しさん@ピンキー:2010/09/22(水) 20:06:51 ID:0LfYJW1f
事実を指摘されて火病っちゃったのか?
おこちゃんは

しかしここのスレの職人さんは冷静な対応
ができる人が多いようで助かる
358名無しさん@ピンキー:2010/09/22(水) 20:23:42 ID:VuWHstZI
んだな。エロパロスレの中ではまあ冷静で穏やかな方だ
gxはまだ見れてないんだよな・・早く行かんと
359名無しさん@ピンキー:2010/09/22(水) 21:09:00 ID:FR8jONEM
>>357
しつこいよ

お前みたいなのが冷静な対応してくれた方が100倍助かる
360名無しさん@ピンキー:2010/09/22(水) 21:13:21 ID:Gzuzr1et
>神は流れに関係なく作品が出来たら普通に投下するし


正直、こんなふざけたこと言うヤツにまで書き手さん達は冷静にならなくてもいいと思う
361名無しさん@ピンキー:2010/09/22(水) 21:14:08 ID:AAcdF9qU
なんか自演臭いな
プンプン匂うぜ
362名無しさん@ピンキー:2010/09/22(水) 21:18:59 ID:razj0sIi
匂うのはレヴィたんのクツだけでいいのに
363名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 00:44:37 ID:JqcKDZwq
つ 座布団十枚
364名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 01:25:47 ID:Z8ill7BE
レヴィたんとロイクラトン行きたい
365名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 01:31:05 ID:jBEZ8BBO
>>362
クツ『だけ』でいいのかい?
366名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 01:48:15 ID:NJZjXJwm
俺はダメだ・・・
>>362.>>365のレス、見間違えて変態かと思ってしまった
正直、すまんかったorz
367名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 03:57:42 ID:fmEsJTtq
ここまでの流れ

我慢できない坊やが喚く→正論を言われて火病る→レヴィたんをクンカクンカ


エロい流れになればなんつうか、オーライってことで
368名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 09:59:53 ID:R/k89CM+
流れ読めないか解ってて読まないバカが呟く
結果、いつまでたっても終わらない
369名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 10:46:31 ID:JqcKDZwq
今日は雨か・・!
370名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 13:52:58 ID:+03umhbN
そういやブラクラは舞台のせいか雨の描写ないよな
雨のロアナプラとか絶好のエロシチュエーションになりそうだ
371名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 14:15:24 ID:sLXVUd6w
>>368
お前みたいなバカが煽ってるんだろ、死ね
372名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 15:00:05 ID:JqcKDZwq
>>370
そうそうスコールとかな!無人島とか超エロくて良作だった
373名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 17:21:56 ID:qIGWAcTV
お礼>>322
374名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 17:25:46 ID:qIGWAcTV
おれ>>322>>332だけどこのスレが荒れて投下しづらい空気つくるのが目的だったんだよねwwwwwサーセンwwwwwwwwww

ROMに戻るよ自演してサーセンwwwwwwwwww
神は余計な責任とか感じなくていいからね!ゆっくりしってってねwwwww
375名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 18:35:11 ID:d2g41gc3
バカヤロウ、おれが>>322>>332>>350

カプ叩きとか趣味じゃないけど、なんかこういうことする人って…いや、なんでもない
ただただきもすぎる
376名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 18:36:16 ID:d2g41gc3
また荒れるようなこと言ってごめん
だけど、うん、背筋がぞわっとした
なんだろう…生理的に相容れない
377名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 18:45:04 ID:WCqFkVg+
で、お前は何に萌えるのか?
語ってから消えろ
378名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 18:45:34 ID:d2g41gc3
ぼっちゃま×ファビ
379名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 18:57:48 ID:JqcKDZwq
ああ、ファビの人か。まあ世の中色んな人がいるさ
2巻のスリーブ見て元気だせ。ただ平和に語ってる人の会話を邪魔しちゃいかんよ
380名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 18:58:30 ID:fmEsJTtq
また荒れる源がきたのかよ。
個人的感情からくる文句や愚痴はツイッターにでも呟いてろよ。
381名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 19:18:54 ID:8yubLXdp
ガルシア×ロベルタが好きでせう
382名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 23:03:26 ID:mv63Qxrj
俺は若様×ロベルタが好きだな
383名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 23:52:43 ID:9oDg+fV2
埃と俗世間の垢にまみれたロアナプラをスコールが洗う
郊外の幹線を流す一台のアメ車

助手席で退屈そうに爪を磨くトライバルタトゥーの女
ラジオの奏でるビートに合わせハンドルを人差し指で軽く叩くネクタイの男

二人の間に会話はない
エンジンサウンドの他にはただ、ワイパーの作動音とラジオしか聞こえない

…という妄想が浮かんだ
384名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 00:22:03 ID:lh4//Jo0
>>383
うおお雰囲気!映画の冒頭みたいじゃよ
俺の心に一陣の風が吹いたぜ
385名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 01:13:52 ID:Eo5Yly6i
平和ったっていい加減スレ違いだったのを指摘されただけだろ…
386名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 03:59:03 ID:bOEJf3M4
>>383
( ゚∀゚)o彡゜ 続き!続き!
387名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 05:43:23 ID:Obwc03uV
若ロペ飽きた
児ポルじゃねぇか
388名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 11:29:43 ID:UuqaILrx
飽きるほどには若ロベが投下されてない件
389名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 21:19:47 ID:gGMRF6vd
>>383
良いねえ
390名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 23:56:18 ID:CsWqrZqw
ですだよの少女時代の戒厳令下の台湾のハートフルストーリーきぼん
391名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 07:01:50 ID:NUnzsAX3
雨に濡れたレヴィたんの髪の毛をタオルでわしわし拭いてあげたい!
392名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 12:17:35 ID:MOh8wrC8
びしょびしょ濡れのトレーナーが乾くまで抱き合った
夏の昼下がり

393名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 20:52:50 ID:O0mycWle

あっと思った時にはもう遅かった。

身体は引き裂かれ血がほとばしり、その身体は宙に舞って、そして甲板に放り出された。

ああなるはずだった身体。指先で触れている自分の身体。

何故かばった・・・?

あたしが、おまえを守るはずだったのに

そんなに早く死にてえか?

いつだって守護神のはずが――死神だったのは誰・・・・?

思考は止まっているのに、何故か身体だけが動く

無音とスローモーションの中

気付いたらもう動くモノは自分だけ・・

ロック・・ロック・・・!!

近寄っても、もう息はしていない―

なのに、なぜ触れるのか自分でもわからない・・

血まみれの額を掻き上げて、羽のようなキスを贈る

いつかのベッドでおまえが、してくれたように――
394名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 21:46:49 ID:6WrARbyV
>393
おお、暗い系の新作キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
GJ!!
395名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 21:52:01 ID:yfrdeHMJ
GJ!こういう鬱話も大好物だ
396名無しさん@ピンキー:2010/09/26(日) 13:48:09 ID:FEc4cIRH
ベネズエラは美人が多いと聞いて調べたら、目鼻立ちがくっきりした美女の画像がごっそり。
ロベルタもこんな眉目秀麗な感じなんだろうか。色白で整った顔に憂いが差すと凄まじい色香が漂いそう
397名無しさん@ピンキー:2010/09/26(日) 18:16:04 ID:DiZsqzs3
>>393


> あっと思った時にはもう遅かった。

> 身体は引き裂かれ血がほとばしり、その身体は宙に舞って、そして甲板に放り出された。

> ああなるはずだった身体。指先で触れている自分の身体。

> 何故かばった・・・?

> あたしが、おまえを守るはずだったのに

> そんなに早く死にてえか?

> いつだって守護神のはずが――死神だったのは誰・・・・?

> 思考は止まっているのに、何故か身体だけが動く

> 無音とスローモーションの中

> 気付いたらもう動くモノは自分だけ・・

> ロック・・ロック・・・!!

> 近寄っても、もう息はしていない―

> なのに、なぜ触れるのか自分でもわからない・・

> 血まみれの額を掻き上げて、羽のようなキスを贈る

> いつかのベッドでおまえが、してくれたように――
398名無しさん@ピンキー:2010/09/26(日) 18:21:25 ID:DiZsqzs3
>>393
短いのにせちねぇ。GJ

レヴィたんにとってロックを守ること=今の自分の存在意義みたいな感じだから、それを失ったときの状態を考えたら……
399名無しさん@ピンキー:2010/09/26(日) 21:40:41 ID:AUqpboiJ
実際にロックを失ったらレヴィはどうなってしまうだろうな
あんだけ依存しちゃってるし、考えるだけで切ねえ
400名無しさん@ピンキー:2010/09/27(月) 00:24:20 ID:U09Xqz1s
発狂するか、心を凍らせるか・・NY時代に戻ってしまうのかもな
401名無しさん@ピンキー:2010/09/27(月) 03:39:01 ID:GmT0+aJQ
>>396
ろべるたんはデフォルトで美人だと思う。
物心つく前からロベルタと一緒にいて、彼女より美しい女性を見たことがなかったために
刷り込み的に愛情を抱き、いつしか性欲の対象にしてしまう若様。
薬物乱用の副作用でうなされるロベルタに欲情し、衰弱しきって抵抗もままならない身体に覆いかぶさって…
402名無しさん@ピンキー:2010/09/27(月) 07:08:06 ID:QcsdRodq
だからそんなに依存するくらいなら同棲しろと(ry


「ハラヘッターロックーなんかねーの?」

「あーそういや何もないな。あるのはごはんと卵くらいだ。嫌なら買いに池」

「これだけでどうしろっつんだよ・・・」

「あーもーたまごかけごはんにでもすればいいだろ」

「??何だそれ?」

「TKGだよTKG!いいかこうやってごはんの真ん中に穴作ってそこに卵落として・・・ry」


以来たまごかけごはんにハマってしまい、事務所にも炊飯器とmy茶碗を持ち込むようになったレヴィたん
403名無しさん@ピンキー:2010/09/27(月) 09:23:22 ID:hcV6WRH9
生卵?気持ち悪ッ
そんなの食って腹壊さねえのかよ
404名無しさん@ピンキー:2010/09/27(月) 11:55:57 ID:wWwHCnJ7
>>402
ちょwwwかわいすぎるぞレヴィたんw
405名無しさん@ピンキー:2010/09/27(月) 12:07:13 ID:N/y868IZ
ロアナプラに売ってる卵でTKGとか怖すぎるwww
406名無しさん@ピンキー:2010/09/28(火) 00:41:00 ID:OrrX4KSa
確かにwロアナプラの市場wktk
407名無しさん@ピンキー:2010/09/28(火) 02:08:26 ID:5nqB6Mtx
>>405
んなこと言ったら肉料理はもっと怖い
408名無しさん@ピンキー:2010/09/28(火) 02:28:56 ID:c25y0y1U
そもそも何の肉かがわからない
409名無しさん@ピンキー:2010/09/28(火) 06:46:34 ID:KeqtyUYH
その肉はソーヤーがry
410名無しさん@ピンキー:2010/09/28(火) 15:04:34 ID:OrrX4KSa
よそ者にはソーヤ精肉店が対応wロックはレヴィがいたから大丈夫だた
411名無しさん@ピンキー:2010/09/28(火) 17:59:01 ID:5nqB6Mtx
> ソーヤ精肉店

何故か合い挽き肉だらけなんですね
412名無しさん@ピンキー:2010/09/28(火) 18:54:04 ID:r2WJrlI0
煮…込ミ…も、…ある、ワ…
413名無しさん@ピンキー:2010/09/28(火) 23:01:40 ID:nlCHWdXZ
ソーヤー精肉店

夜中にこっそりと

『実は防腐剤使ってました』

って暴力教会で懺悔する姿思い浮かんだ。
414名無しさん@ピンキー:2010/10/02(土) 09:22:19 ID:HJLOnoCe
ソーヤ精肉店でホルモンやらハツを買って食べた人の人格が変わるという怪現象が。

うまくいけばレヴィが淑女になるかも
415名無しさん@ピンキー:2010/10/02(土) 12:49:56 ID:l8rkJJhD
リアルに人間が人肉を食したら狂牛病みたいなことになるのかな

416名無しさん@ピンキー:2010/10/02(土) 14:20:08 ID:r2Py1RRO
>>414
ロックが逆にびびっちまうよw
ベッドの中だけそうならいいかも・・おや誰か来たようだ
417名無しさん@ピンキー:2010/10/02(土) 14:30:17 ID:laIN7jGr
酔っ払ったファビオラが見てみたい
418ロック×レヴィ ロアナプラ編:2010/10/02(土) 17:30:54 ID:2CnvC5Rm

では性転換話が好評で嬉しかった自分が空気読まずにロクレヴィを。
ちなみに指摘があったとおり、途中でミドリたんと視点が入れ替わってます。
ミスリードを誘いたかったんだけど、ごっちゃになって読みにくかったと今になって思った。スマソ

///////////////////////////////////////////////////////////

 ──きっかけというのは、いつだって何だって、ささいなものだ。

 イエロー・フラッグで痛飲し、上機嫌そのもののレヴィに飲み直しを提案され、
じゃあどこへ行こうかと提案した時、彼女が取り出したのは一枚の硬貨だった。
「レヴィ、それは俺に奢れってことなのか?」
「ちッげーよバカ! 表が出たらあたしん家、裏が出たらお前ん家だって──……
ああクソ、ロック、お前、あたしのことそんなしけたツラで見るんじゃねえよ!」
 あっはっは、と表現するにはいささか下品方向へ傾いた笑い声を上げて、何がそんなに可笑しいのか、
レヴィは硬貨を握りこんだまま腹を抱えて笑っている。目尻には涙まで浮かんでいる。
この女が相当──相、ッッッ当にアルコールの回っている状態であることだけは、
誰に問いかけても間違いあるまい。
 一週間ほどの航海を終えて、今日の夕方ようやくロアナプラに戻ってきたのだ。
船に否応なしに慣れさせられた自分は当然疲れていたし、レヴィも同じことだろう。
まあまあ景気のいい依頼主から回された仕事だったこともあり、今夜は飲むぞ、
とイエロー・フラッグへ座を占めて、気づけばダッチもベニーも隣にいない。
 レヴィは基本的に、酒が回るとすこぶる機嫌が良くなる、性質のいい酔っ払いだ。
しかしこんなにも箍が外れた感じに酔っ払うのを見るのは初めてで、
ごく普通に接しながらも、ロックは心の中では三歩ほど引いていた。
大体飲み物はラムで通す彼女に、日本でいうところの“チャンポン”を説明したのが悪かったのだろか。
いやしかし、店を出ようとしたレヴィの前のカウンターに、様々な種類のグラスやらボトルやら、
いかにもそれぞれ違う種類の酒が入っていましたよという容器が複数転がっていたからとて、
そこから喉の奥まで見せて笑う彼女を想像せよというのは無理がある。
 結局、コイントスは提案だけで試みられることはなく、汚泥の海から生まれた云々だの、
鳥も魚も鏖(みなごろし)だの、ひたすら上機嫌に歌って歩いていく彼女のあとを、
ロックは若干とぼとぼとした足取りで追いかけたのだった。
419ロック×レヴィ ロアナプラ編 2/4:2010/10/02(土) 17:35:21 ID:2CnvC5Rm
「──……、だからレヴィ、何で話がそんなほうへ行くんだよ?」
「うるせーバカ。姉御から聞いたんだから間違いねェ。イタリア人は女好きの馬鹿で、
 ヤポンスキはHENTAIで、かつ、救いようのねェ大馬鹿だってな。
……ああ畜生、お前“じゃあロシア人はどうなんですか”って聞いて来いよ今から! バーカ!!」
 ──先程まで、騒がしくはあるけれど楽しく飲んでいたというのに、この落差は何なのか。
 今のレヴィはアルコールでバッドトリップしているのか、それとも愚痴上戸であるだけなのか、
ほとんど凶相丸出しにロックを睨みつけながら、左手にラムのボトルを抱き、
右手にグラスを握り締め、いつ果てるともしれない繰言のループに突入している。
 確かレヴィがこうなったのは、ブーゲンビリア商会の女ボス、
彼女が姉御と呼ぶバラライカの話題が出てしばらく経った頃だと思ったが、
話のアウトラインを辿っていても、どうにも彼女の不機嫌の理由が掴みかねる。
確かあそこは、高級コールガールも商売のうちに云々だとか、召抱えられている女たちは、
主な“仕事場”がサンカンパレス・ホテルで羨ましい限りだとか、そんな──
「……どうせお前も、…………みてェなのだいいんだろ」
 まるで“ナナ”のような、衣装と髪に月二千万、下着に三千万、
靴に千二百万、食事に五百万をかける、絵に描いたコルティジャンヌ・オネスタなど、
影を見るのも空恐ろしいとか、そんな──
「どーせ若くて細くてぺったんこなのがいいとか言うんだろバーカ」
 思わず、ロックはまじまじと、唇を曲げたレヴィを見てしまう。
 最初は物凄く迂遠で攻撃的でなおかつ判りづらいが、彼女の情動は、
一度気づいてさえしまえば、仕掛けのバレた騙し絵を見るようなものだ。すぐに気づける。
 すっかり氷の溶けて温くなったラムをちびちび舐めながら、微妙に視線を逸らしている、
それでいて恨み言をこちらに向けてくるレヴィの頬の赤みは、一体何のためか。
 何と言ってもロックは男でレヴィは女。お互いを憎からず思うようになってからは、
幾度か、そんな機会が巡ってきそうになったことはある。
ただ今までは無意識のうちに、二人ともが決定的な瞬間を避けて避けて逃げてきたように思う。
 結局彼女も自分も、相手のほうを見ずにボールを放り、行き違いを繰り返しているのだ。
たとえ向き合っても、彼女が経験してきた今までの人生からは、
顔面を狙うようなボールしか放てず、避けられるかぶつけた相手が昏倒するか、
そんなコミュニケーションしか送って来れなかったのではないか。
 そんな風に分析し類推することの下世話が、だが今は、
思わず唇を緩めたくなるような、くすぐったいものへと変わっていく。
声の調子が弾んだものになったりしないように、細心の注意を払って口を開いた。
「……なあ、……なあ、レヴィ?」
「なんだよバカ」
「あのさ、確かに日本人のセクシュアリティは物凄い種類が多いし、それを否定はしないよ。
けどさ、俺はつるんぺたんとしたのは好みじゃないんだ。
どっちかって言うと、胸もしっかり大きくて重みのあるほうが──」
「…………言うに事欠いておっぱい星人かよテメエ!!」
「な、ん、──なんでそんな言葉知ってるんだよ!?」
「ベニーから聞いたんだよバーカ!!」
 グラスを投げんばかりの勢いで手を振りかざすレヴィをどうにか宥め、
それでもロックは胸中で笑いをかみ殺しきれなかった。
過剰な悋気は鬱陶しいだけだというが、唇を尖らせそっぽを向いているぐらいなら、
後ろから膨れたその頬をつついてみるような、そんな悪戯を仕掛けたくもなる。
 ブツブツ言いながら、今度は背を向けてしまった彼女に、膝でにじり寄る。
肩をばしんとやるぐらいのボディタッチはあるとはいえ、これは大いに賭けだ。
「あのなあレヴィ。──この際だからな、はっきり言っておくぞ」
「手前ェのベッドん中の趣味なんざ聞きたくねぇ」
「……だからなんでそこに拘るんだか……とにかくレヴィ、俺はな──」
「うるせェ黙れ、ッ、──ロ、ォック!?」

 むにゅん。

「……レヴィのことが好きなんだよ!!」
「ろ、っ、く…………」
420ロック×レヴィ ロアナプラ編 3/4:2010/10/02(土) 17:38:11 ID:2CnvC5Rm
 ──説明せねばなるまい。
 ロックに背を向けたレヴィの格好は、いわゆる三角座りであった。
 それも、腿の裏を抱え込んでいるのではなく、立てた膝に両腕をもたせかけたものであった。
 イタリアの有名なスポーツブランド、フットサルシューズを中心としたラインナップを揃える、
あのメーカーのロゴマークの左側に酷似した姿勢であった。
 肩を両側から包もうとすれば当然振り払われる。ならば、空いているところを狙うしかない。
しかるにロックが選んだのは、彼女の脇腹から手を滑り込ませ腕で抱きしめる、そんな格好だった。
 そして、そんな格好をすれば当然、レヴィが己の胸に携えている、豊満ながら形よいものが、
否応なしに身体の前側で交差する手のひらに触れてしまう。
むしろ、触れてしまう、というか──直前の談義の内容が何しろソッチの方向であったがため、
かなり意図的にした部分はあった。
 大体、命知らずに定評のあるトゥーハンドに、このような悪戯を仕掛けるなど、
理知らずのロアナプラといえども、誰一人存在はしないだろう。
たとえ、もし仮に、億にひとつの確率でもって、そんな人間が存在したとしても、
一瞬後にはソード・カトラスによる乱射で、丁寧にミンチ肉にされているはずだ。
 ロックが触れたそこは、とにもかくにも前人未到の、甘やかな部分なのだ。
「──……ヘイ、ロック。このあたしに──なん、何のマネだ?」
「…………だから言っただろ、レヴィが好きだって。後レヴィ、イントネーションおかしい」
「るせッ……てめェ、今“レヴィ”の後に、絶ッッ対ェ“のおっぱい”って入れただろ」
「入れてない、入れてない。……というか、好きなひとの身体なんて全部好ましいに決まってる」
「ふざけんなロック! ロンリをチョーヤクさせてンじゃねェよ! ファック! とっとと手ぇ離、ッ……」
 レヴィの抗議を無視して、ふに、と柔らかく、両方の乳房を揺らす。
 途端に彼女の背中が跳ねて、びくん、と断末魔のように強張った震えが走る。
全く愛でられた経験を見出せないその箇所は、扱いのぞんざいさを示すかのように、
下着の類に包まれていなかった。今レヴィが着ているタンクトップを脱げば、素肌だ。
酸欠の金魚のごとくレヴィが口をぱくぱくさせている気配だけを感じながら、ロックは慎重に、
たわわで繊細なふくらみに、服の上から指を這わせ始めた。
 脇と腹のほうから軽く持ち上げる。床に座ったレヴィの腰がもがく。
 側面に触れている親指で、先端には触れないように撫で上げる。
 同時に、手のひらに確かな重みを伝えてくる乳房を、人差し指から小指を使って、
犬か猫の毛をかしゃかしゃと掻くように、ごく柔らかく揺らす。
 そうした時に漏れるレヴィの溜息は、深く、そして震えていた。
膝に乗せた腕の上に額を伏せて、ロックの指の呼び起こそうとするものに耐えている。
「──レヴィ、好きだ」
「…………、は、ッ……」
「好きだ、レヴィ。レヴィが好きだ。──俺にしてみたら、世界で一番いい女だ」
「……ロック、──……!」
「大体さ、何でふたりして生殺しになってなきゃいけなかったんだ?
 俺も……だけど、レヴィは全然気づいてないし──気づかない振りしてただろ。
 しないで後悔するより、ヤッて……じゃない、やって後悔したほうが、何倍も……」
「……てめェ、ソレ、女の胸揉みながら言う台詞かよッ……この、クソッタレ!」
 タンクトップ越しの五指に、彼女の乳房がしっとりと張り詰め、湿り気を帯びたのが判る。
憎まれ口はそのままながら、レヴィはロックを振り払おうとはしない。そうしたければ、そうできるにも関わらず。
そのありさまが憎たらしいやら愛しいやらで、ロックの手には自然熱がこもる。
 未だ三角座りのままの彼女の後ろから、足を伸ばしてその腰を抱え込むように座り、
ひくひく震える背中にシャツの胸を密着させる。お互いの鼓動が、熱せられた鉄を叩く槌のようだと思った。
 指を食い込ませるでもなく、柔く、何度も、粘っこく。
421ロック×レヴィ ロアナプラ編 4/4:2010/10/02(土) 17:38:51 ID:2CnvC5Rm
 レヴィの豊かな乳房に、ショートケーキの上に搾り出されるクリームのような、
自分の指による筋がついてしまうぐらいに──途中からは彼女の腰にみっともなく股間を擦り付けさえしながら、
ロックはひたすら、悦びを引き出すためのステップに終始した。
 好きな女が腕の中にいて、抱きしめるだけで素っ頓狂な声を上げて、
しかも普段触れさせないようなところに触っても逃げないのだ。
そこから官能に繋げていくプロセスを、作業だなどとは呼びたくない。決して、絶対に。
 そうして布地に淡い陰影を生む乳首を、やはりタンクトップの上から掠ると、
レヴィはスタッカートの利いた溜息をついた。ためしに押し込んでみると、フェルマータ。
摘まんで捏ねて、指の腹でごくごく軽く抓って、吐息の種類がそのたび増える。
彼女は拗ねたように立膝の上に乗せていた腕を力なく横に落としていて、
その分だけロックの動きは自由自在になっていく。
「レヴィ、俺にもたれて。背中、それじゃ苦しいだろ」
 ロックが促すと、ぎこちなく、実にぎくしゃくと、レヴィの身体がリクライニングしてきた。
汗と、煙草と、アルコールと、発情したおんなの肌の匂い。くらくらする。
矢も盾もたまらなくなって、夢中で唇を吸った。舌を絡めようとして歯がぶつかり、
かちんとお互いの口蓋に火花が散ったが、もうそんなことを気にしている余裕が無い。
 タンクトップをようやくたくし上げて、表面は汗で冷たいのに、
内側に燃えるような熱を孕んだ彼女の素肌に、直接触れる。
「──……、っう……んふ、──はァ、ぁ、ふ…………!」
 接吻はやめられず、しかしレヴィの乳房を愛でることも止められず、
身体の各所のつながりはばらばらにされていく。神経が焼け焦げていく、快感。
指の股で乳首を挟み込んだまま、どこまでも柔らかくとらえどころなく手のひらに吸い付く、
レヴィの胸乳を堪能する。彼女が身を捩ろうとして切なく腰を振るたび、
その裏側で押しつぶされているロック自身までもが揺さぶられて、殺人的に心地よい。
「レヴィ……レヴィ、レヴィ。好きだ、レヴィ。お前のことが好きなんだ」
「……ロック、……クソ、呼ぶなよ、ぅふ、ンッ……! そんな、あッ、声……やめろッ……」
 癒着しかかったような唇をもぎ離して、ひたすらレヴィを呼んだ。
 このままいけば、乳房から送り込まれる快楽だけで彼女の悦びを極めさせられるのではないかと、
そんなことを思うが、自身はもうひとつの脳のように、レヴィの胎内を掻き回したいと叫ぶ。
「…………レヴィ、じゃあ、──二択で答えてくれ。俺は、お前が好きだ」
 好意にはそれに見合った裏事情や、唾棄したくなるばかりの行為が伴う。
その後遺を彼女から取り去ってやれるなどと傲慢は言うまい。
ただ受け取って欲しいから、快楽と苦悶と、相反する表情に染め上げられたレヴィの顔を見ないように、
耳朶に唇を近寄せて、その端をくすぐりながら、ロックは囁いた。
「だからレヴィ、…………“I love you.”か“Me too.”で──答えをくれ。
 ……答えがなかったら、“No”だってことだから──そしたら、止める。」
 レヴィの唇が震える。
 動きを止めてしまったロックの手のひらに、彼女の乳房の揺れが伝わってくる。
 ハイかYesしか突きつけていない、身勝手な男の言葉に、甘く掠れたハスキーな声で女が返した答えは、
すぐに重なる接吻に隠され、ロアナプラのヤモリの耳にも決して届くことはなかった。

fin.
422名無しさん@ピンキー:2010/10/02(土) 18:00:23 ID:r2Py1RRO
わああリアルタイムでキター!GJGJ!
さっきまでOVA2巻の乳首見てたから余計エロく感じるw
ロックは確かにおっぱい星人ぽいなw
423名無しさん@ピンキー:2010/10/02(土) 21:30:33 ID:Yr5lO62Q
これはGJ!なんかもうレヴィ可愛すぎる
424名無しさん@ピンキー:2010/10/03(日) 00:18:23 ID:Ro+injfo
レヴィたんのおぱいktkrちょっとロックそこ代われw
425名無しさん@ピンキー:2010/10/03(日) 13:58:26 ID:hmCzD43L
ヒャッハー!GJだ!!
426名無しさん@ピンキー:2010/10/03(日) 21:18:24 ID:kj+jevtK
乳だけで本番がないのにエロい…素晴らしい
427名無しさん@ピンキー:2010/10/03(日) 22:06:23 ID:IWbvFRR5
>>418->>421です。GJありがとう。
レヴィたんのオパーイは手にずっしりと来つつも柔らかく、
汗ばんでしっとりふんわりしていると思うんだ。
これからもチョコチョコ投稿するかと思うのでそのときはどうぞよろしく。

>>426
さし当たってはこれの本番を書きたいと思ってます。
428名無しさん@ピンキー:2010/10/04(月) 00:08:21 ID:bPvJEaG/
続きとな!?めっちゃ楽しみにしてますv
429名無しさん@ピンキー:2010/10/04(月) 00:51:40 ID:gvbHyrNX
>>427
>さし当たってはこれの本番を書きたいと思ってます。
全裸はきつい季節になったんだ。風邪引く前に頼むぜ。
430名無しさん@ピンキー:2010/10/04(月) 14:51:42 ID:w+3M8Zu9
出遅れたが・・・
なにこのおっぱい祭り!
( ゚∀゚)o彡゜ おっぱい!おっぱい!

一瞬レヴィたんの乳房の上にショートケーキのようなホイップクリームを搾ったプレイすんのかとドキドキしたじゃねーか!!

二択でしか答えを求めないって・・・ずるいです><
431名無しさん@ピンキー:2010/10/05(火) 00:37:48 ID:G5EFqBWy
レヴィたんはきっとmetooって応えたんだろうな
俺も言われたいw
432名無しさん@ピンキー:2010/10/05(火) 02:16:19 ID:1uNaLzsM
「metoo」が「motto」に見えた俺は完全にムラついてる

レヴィの乳はおっぱいの理想型だと思います
433名無しさん@ピンキー:2010/10/05(火) 09:14:16 ID:ohJYffZ5
レヴィたん「(*゚∀゚)o彡°Motto! Motto!!」

レヴィたんのおっぱいの形状は間違いなく理想の釣鐘型。
で、立位を保っている状態だと、下側が重力に引かれてたゆんとし、
上側はゲレンデのようななだらかな傾斜となり、
タンクトップにはビーチクがぽっちりとry
434名無しさん@ピンキー:2010/10/05(火) 09:54:54 ID:+JR1yVmW
正直ノーブラであの形を保ってるのはフィクションでしかないよなw
いくら東洋人は白人より劣化しづらいとはいえ。
435名無しさん@ピンキー:2010/10/05(火) 14:40:34 ID:rNJi9OhE
レヴィの部屋にブラジャーなかったっけ?
436名無しさん@ピンキー:2010/10/05(火) 20:42:14 ID:G5EFqBWy
あったあった。紫のブラな
437名無しさん@ピンキー:2010/10/05(火) 21:48:22 ID:E+6hCH/F
シャワーシーンのレヴィの下着、原作は白だったのに
OVAは黒っぽいのになってるのが何故だか解らないが残念だ
438名無しさん@ピンキー:2010/10/06(水) 00:56:16 ID:aZEQkDYy
>>437
白黒の漫画原稿なら違和感なかったけど、
カラーのアニメではレヴィが白下着だと何かイメージに合わなかったとか?
439名無しさん@ピンキー:2010/10/06(水) 12:51:43 ID:4lE5mUp+
単純にタンクの色と合わせただけじゃ?

レヴィたんのB地区筆攻めしたい
440名無しさん@ピンキー:2010/10/06(水) 20:47:00 ID:T88A3ZNa
目覚めるとロックの顔があった。
ぼさぼさの髪に朝日を浴びて、すやすやとガキみてぇに緩みきったツラで眠りこけている。
「間抜けヅラ」
カラカラに渇いた喉から、掠れた声を絞り出して笑ってやる。

昨晩は久しぶりだった。
クソ眼鏡様が死体と瓦礫の山を築き上げたあの日からこっち、ロックの野郎は肋をやられただけに止まらず、延々ふて腐れるは、
あたしもあたして腕に開いたトンネルが生のまま治らず、全くと呼んで良いほどそんな空気にゃならなかった。
医者に言わせると、あたしの腕が治らねぇのは鎮痛剤のせいらしいが、そんなん知ったことか、いちいち構っていられねぇ。
痛ぇ時に痛みが引けばそれでオールOK!…それが正直なところだった。
だが、ロックはそうもいかなかったらしく、野郎なりの負い目だか何だか知らねぇが、どうやらコソコソと常備薬の見直しと応急措置の勉強を始めたらしい。
大概ヒマな男だと思う。

内心呆れるも、久方ぶりに訪れた、コイツの腕の中でまどろむ時間。不本意ながらも幸福感が満ちてくる。
そう、不本意だ。
物凄く。
嬉しくてたまらないクセに全くもって面白くねぇ。
だからかどうかは知らねぇが、つい悪戯をしたくなって、まだ疼きを孕む右の腕を持ち上げる。
左半身が下になっているのだから仕方ねぇ。
苦痛に漏れそうになる声を、息をとめてやり過ごし…。
ふに。
軽く。指に力を入れると腕が痛いから、軽く。
緩み切った頬の肉を摘んでやる。
ロックは起きない。
口角が上がる。
目元と頬の筋肉が解けていく。
男の頬は少し汗ばんでいる。
指を緩めて頬を撫でる。
昨晩は痛む肋骨に歯をぎちぎちと食いしばり、脂汗を流しながら、それでも一度始めた行為を止めようとはしなかった。
それどころか、何かを吹っ切るようにがむしゃらに身体を揺らす。
犯すように貪られるのは嫌いではない。相手がロックに限って、のことだが。
だが、やたらと腰を振るくせにモノは萎える一方。
あまりにやせ我慢が過ぎるので、あたしが上に乗るか、さもなくば口でしてやると提案したが、嫌だと言って縋り付くから好きにさせた。

「ばーか」
結局射精できずにぐったりと崩れ落ちた男をそう嗤ってやると、情けなく笑い返して来た。
薄明かりでも判るほどに蒼白な顔。
いつもならば熱い身体は、癒え切らぬ患部が火照るばかりで、全身冷たくなっていた。

「ばーか」
思い出して、思わず口をつく。
頬を撫でていた指で、すぐ横の鼻をつまむ。
「ばーかばーか、くそったれ」
あたしはアンタのナンなんだ。もう二度と聞けない問いを胸中で繰り返す。
その代わりのように「ばーか」と壊れたラジオのように繰り返すあたしの口。
ロックの野郎はちっとも起きる気配がない。
たかだかファックのためにどんだけ無理したんだコイツ。やっぱり馬鹿だ。
なのに、こんな風に悶々と悩むのはあたしだけ。
ムカつく。
早く起きやがれ。無理矢理起こされて不機嫌な顔で「おはよう」って言いやがれ。
だが、ガキみてぇな間抜け面から多少は締まりのある顔(険しいだけとも言うか?)にはなったが、ちっとも起きねぇ。
ムカつく。
ムカつくのに。
……………好きでたまらねぇ。

起きねぇなら、好きにするさ。
かと言って、腕に抱かれたまま出来ることなんかたかが知れてる。
この腕を抜け出すのだって嫌だ。

だから、キスした。
441名無しさん@ピンキー:2010/10/06(水) 20:47:53 ID:T88A3ZNa
それでほんの少しの勝利感に浸るつもりだった。
だが、ほんの少し触れるだけの筈のソレは、思いの外長く粘っこいモノになった。
つまりロックは起きてたんだ。
唇同士を合わせた瞬間、肩を抱き寄せ、舌を突っ込んで来やがった。
ずるいと歯噛みするも求められるままにキスを交わす。
そうこうするうちどさくさに紛れて胸を揉まれた。
抗議の意味を込めて声を漏らす。
明るい朝日を浴びながらなんざ、御免こうむる。
アレの時の顔をしげしげ観察されて気分がイイわけねぇだろ?
第一、昨日の今日でコイツがまともに女を抱けるとは到底思えなかった、いつ気絶するかと気が気でないセックスなど二度と御免だ。

だが、ロックは止めるつもりはないようで、掌で乳房を執拗に撫でると、頭を下へと移動する。
「や、馬鹿…!」
だが、吸われると思っていた突起には目もくれず、二つの山の谷間に顔を埋めると、甘えるように鼻先を擦り付ける。
「馬鹿馬鹿って、うるせぇ…もっと別のこと言えよな」
拗ねた声。生暖かいため息が薄い皮膚をくすぐる。
「んだよ、ソレ。傷ついたなんざ言わねぇよな?」
「…………さぁ?」
傷ついたと言いたいのだろうか、NOともYESとも言わず、そのくせ胸から顔を上げもしねぇから、やっぱり「ばーか」と笑って髪を撫でてやった。

嫌じゃねぇ。こんな風に甘えられるのは。むしろ嬉しいくらいだ。
こいつがこんな風にガキみてぇに甘えられんなはきっとあたしだけ。
昨晩みてぇな我が儘をぶつけてくるのもあたしだけ。
だからいつだってどんなことだって好きにさせてやる。

「…あ。」
髪を梳く指の隙間。
黒々としたしげみの中、違和感を撒き散らし自己主張する、それ。
「何?」
不意に零れたあたしの声に、ロックは眠そうな声でどうかしたのかと訊いて来た。
「………………白髪」
気付くとそれは一本だけではなかった。
ロックの後頭部…少し左寄りだが、奥に潜むように…5本…いや、7本はあるか…とにかくまばらに白い髪が見え隠れしている。
明るい場所でこんな風に長々とくっつくコトも無ぇから気付かなかった。
第一、髪を梳くのはいつもコイツで、あたしは専ら梳かれる方だったのだから、当然だ。
新発見とも呼べるそれに、あたしはまた一つささやかな達成感を覚えた。
有り体に言えば嬉しかったのだがしかし。
ロックは不満そうに呻き、「…オヤジがさ、白髪多かったんだ」と言い訳すると、何本あるかと尋ねて来た。
心底嫌そうなロックに、「とりあえず、7本」と、まだありそうだと匂わすと「いやだなぁ」と、本当に嫌そうに情けない声でぼやいてる。
「何かさ、まばらにあると不潔なカンジするだろ?」
同意を求める声に、「そうかぁ?」と笑ってやる。
「ああ、落ち着かない。ズボラに見える気がするし」
そう言って、髪をかきあげて本数を数えようとするあたしの手を「やめろよな」と振り払う。
「…染めようかな」
本気で落ち込んだ様子でロックはぼやく。きっとコイツの生きてきた社会じゃそれが当たり前だったのだろう。
アホくせ。
そうやって全てが同じ色をしてしないと落ち着かない。「異物」はそうやって排除されるか塗り潰される。
それを息苦しかったとぼやくくせに、やっぱその頃の感覚を棄てることも出来ねぇのだろう。
「別にイイんじゃねぇ?そのままで。増える度に笑ってやる、また増えたぜってよ」
いいじゃねぇか、白髪くれぇ。
ロックはロックだ。
442名無しさん@ピンキー:2010/10/06(水) 20:52:26 ID:T88A3ZNa
だが、ロックは「わかってないなぁ」とでも言いたげに溜息を吐く。
「…お前は俺のオヤジの頭を知らないんだ、数え切れるようなシロモノじゃあない」
それがどうした。わかってねぇのはアンタの方だ。
いっそ坊主にしたらどうだと言いかけ、ダッチと二つ、丸々した頭が並ぶ様を想像して吹き出しそうになった。
口にすれば笑いを堪えられねぇ!そう思ったからこう言ってやった。
「そんときゃ黒い方数えてやるさ、で、また減りやがったって馬鹿にしてやる」
些細な嫌がらせのつもりだった。
こんな下らねぇことでも少しばかり落ち込んでくれれば、この男のずるさに気を揉むあたしの鬱憤もほんの少し晴れる気がしたのだ。
だが、ロックは数秒の間時を止めたかと思うと、ボツリとこう呟きやがった。
「…………………悪くないかもな」
意味が解らず「はぁ?」と頓狂な声を上げるあたしを面白がるように「うん、悪くない」と繰り返すと、ナンだか妙に嬉しそうに「ふふっ」と笑っている。
つくづく意味不明な野郎だ。
「もう少し寝ようよ」
胸元からの声。
これもいつもと逆だ。まだ寝足り無いとシーツで丸くなるあたしを引きずり起こすのはいつだってコイツ。
だが、もうひとからかいするべく吸った息があたしの声帯を震わせる前に、ロックは言った。
「どうせこの先長いんだ、いいだろ?たまには。そうだ…レヴィの皺は俺が数えて笑ってやる。実にフェアだ」
絶句した。当たり前だ。皺?このあたしのドコにそんなモンあんだよ、くたばれ!
だがそれを言えば、何が返って来るのだろう。期待なんかしない。絶対に。だから、「ふん」と鼻で嗤ってやる。
そんなあたしの胸で、ロックはもぞもぞと納まりのいい角度を探してやがる。
こっちは「何か言えよ」ともやもやしてるってのに、やがて穏やかな寝息が聞こえて来た。
あたしはと言えば、この口八丁男の発言をどこまで間に受けるべきかを悶々と考えあぐね、昼にコイツが目を覚ますまで二度寝を貪ることは出来なかった。
443名無しさん@ピンキー:2010/10/06(水) 22:20:54 ID:4Ep4fesH
あま〜い!あまいよレヴィたん!
これが策士のプロポーズか。あのレヴィを考え込ませるとはな・・gj!
444名無しさん@ピンキー:2010/10/06(水) 22:49:01 ID:32uHce31
すげーGJ!9巻後の二人か
ロックが甘えるパターンって新鮮で良いな
原作の絵で想像したらもうニヤニヤが止まらん
445名無しさん@ピンキー:2010/10/06(水) 23:49:30 ID:4lE5mUp+
久々にブドウ糖加糖液糖甜菜糖吐いた。GJ!

こういうプロポーズ大作戦とか二択返答とか、なんでこんな巧いこと思いつくのもう大好きだ
446名無しさん@ピンキー:2010/10/07(木) 00:32:35 ID:v670p3gF
「お前百までわしゃ九十九まで」ですねわかります>白髪と黒髪を数えましょう
447名無しさん@ピンキー:2010/10/07(木) 00:39:40 ID:64DkE4+5
でもお互い長生きできないとわかっているから(特にレヴィは)その約束が切ないな…
448名無しさん@ピンキー:2010/10/07(木) 03:10:13 ID:DktLlMvg
おっぱい祭りに糖分祭りで幸せです
GJ!
449名無しさん@ピンキー:2010/10/07(木) 23:04:40 ID:EuWZeyRd
「ばーか、くそったれ」
暴言なのにレヴィがロックに対して言うと
死ぬほど萌えるフレーズだから困る

二人ともらしくて素晴らしいです、GJ
450名無しさん@ピンキー:2010/10/08(金) 00:47:10 ID:EElR55vd
それが天邪鬼なレヴィの愛の言葉なんだよな。ロック限定の
451名無しさん@ピンキー:2010/10/08(金) 07:46:01 ID:tq//tzuQ
相変わらずややこしい女だな!(褒め言葉
452名無しさん@ピンキー:2010/10/08(金) 07:50:11 ID:/6ZWvtn3
レヴィたん語(※ロックへ向けての)で
「クソバカ、バーカ、死ね!」

「スキスキ、大好き!」
と読みます。
453名無しさん@ピンキー:2010/10/08(金) 20:12:42 ID:Mrf/+3c6
おっぱい星の住人の岡島さんをリスペクトしたはずが、何か思わぬ方向に好評を得てしまったので、岡島視点でリベンジしてみる
思いつきだけの走り書きですがご笑納下さい


「ばーか」
レヴィの声が聞こえた。
「ばーかばーか。あほんだら。くそったれ。」
鼻を摘まれている。少し苦しい。
「ばか」
瞼が開かない。けれど、それでいい。
俺が起きている時には何も言わないのだから。


レヴィは何も言わなかった。
俺の選択を否定も肯定もしなかった。
そう、何も言わないのは、彼女と、あとはせいぜいベニーくらいのものだ。

事後の話をしに行った先では、脚を撃たれた女の嫌味の嵐。
彼女の特徴ある甲高い声に頭痛が酷くなった。
もっとも、掃除屋は本業繁盛で、随分と機嫌が良かったが。
あの大量の身元不明の遺体をどう処理したのかなんて知らないし、知りたくもない。
だが、数日後には裏道に立ち込めていた死臭が消えていたのだから、何か方法があるのだろう。

レヴィは何も言わなかった。
ボスが吐き出す嫌味の雨霰に曝される俺を尻目に、ソファで銃のカタログをめくっていた。
どうやら今回の収入で新調するつもりらしい。
人を殺し殺されるためだけの、それを。

レヴィは何も言わない。
あの日、彼女が腕に傷を受けたことを知っていながら、俺は目の前のチェス・ゲームに夢中だった。
彼女がまともな手当てをするわけが無いなど、まともな頭ならばわかることなのに。
俺が俺の愚に気付いたのは、ロアナプラに戻ってからだ。
客の少女がどうやらレヴィと悶着あったことは想像していた。
目に掛けていた少女を含む依頼人の生死で賭けを持ちかける程度には、彼女は腹を立てていた。
俺を撃った少女と、その主人を彼女の物差しで切り捨てた後、部屋に篭った。
彼女が客を見送らぬのは、単に機嫌のせいだと疑いもしなかったし、俺自身の混乱のせいで全く彼女に関心を払わなかった。
つまり、俺たちが街に戻る何時間も前から、彼女が痛みと発熱でベッドに胃液を吐き散らしていたことなど知る由も無かったわけだ。

レヴィという女は基本自分の体調に無関心だ。
適当に手当て(と呼んでいいのか?)しただけの腕の痛みを、痛み止めをラムネ菓子のように食い散らかして治めようとしていたなんて。
その上、寝てやり過ごそうと酒を一瓶も開けていたなんて。
ましてや、当たり前のように常備していた痛み止めによって、出血が止まらなくなっていたなんて。
俺が少しでも何かに気を払えば、ああはならなかったに違いない。

彼女への負い目。
少女に浴びせられた罵声。
俺を頼ってくれた筈の少年の、軽蔑の視線。
死体の山。
街に漂う死臭。
目に付くもの、思い出すもの全てに責められた。
だが、死体の一つになっていたかもしれないレヴィは、俺に何も言わない。
お前に興味を無くしたのだと、そう言われている気がした。

逃げるように、毎日海を眺めた。
そこから見えるのは、海と空だけ。
何も見ずに済む。
誰とも会わずに済む。
レヴィと会わずに済む。
硬く噤まれた彼女の口が開いた時、どんな言葉を浴びせられるのか、怖かった。
454名無しさん@ピンキー:2010/10/08(金) 20:17:39 ID:Mrf/+3c6
何もしない時間、ただぐるぐるとあの数日の事を考えた。
何度考えても、結局どうするべきだったのかが判らない。
俺の言動は問題があったかもしれない。
だが、それを差し引いたところで、少年の願いを果たすため…同じ選択をしたように思うのだ。

後悔はある。
だが、どれもレヴィのことばかり。
依頼について、反省はあれど…後悔は、無い筈だ。

俺を最初に訪ねてきたのはミスタ・張だった。
彼はレヴィに場所を訊いて来たのだと言った。
レヴィは俺がここでこうしていることを知っていた。
興味を無くされたわけでは無いのかもしれないが、やはり俺に何も言うことは無いのだろう。

彼との会話で俺の問題が解決したかと言えばNOだ。
彼はただ、自分で考えろと、そう言ったに過ぎない。
言われなくても、ずっと考えていたさ。


彼女に話すつもりはなくたって、話はしておくべきだと思った。
渋る彼女を巻き込んだのは、俺だ。
重い腰を上げてレヴィの部屋を訪ねた時、彼女は無表情で俺を招き入れた。
だが、差し入れたメシを2人で食う間も、何も言わなかった。
俺も掛ける言葉を見つけることが出来ず、ただ無言で食事を進める。
軽く飲んだつもりが、血流であばらが痛み始める。
レヴィも同じようで、左手で食事をしていた。

「痛むか?」
尋ねた俺に、「別に」とだけ答えて、レヴィはまた口を噤んだ。
「見せろ」
半ば無理矢理包帯を暴く俺に、レヴィの目は苦痛を乗せる。痛いのならば、そう言えばいいのに、言わない。
アスピリンが抜けた傷口は、俺の記憶と比べてまともにはなっていた。
だが、案の定おざなりな手当てしかしていないのだから、見ていて痛々しくてたまらない。
どうしてもっと自分を大切にしないのかと静かに怒りが沸くが、手当てし直して理解した。
おざなりにしたいのではなく、彼女一人では上手に出来なかったのだと。

当たり前の話だ。
だってそうだろう、利き腕に、左手で手当てするのだ。
体調に無頓着な女にとって、他人に頼む選択肢などあるはずが無い。
まただ。
レヴィの体調に気を配れるのは自分だけなのだと理解した筈なのに、結局こうだ。
彼女の目を見ることが出来ない代わりに、傷だらけの掌を撫でる。

「明日も、見に来るから」
「勝手にしな」
拒まれなかった。


レヴィは何も言わない。
そう。俺が起きている時には。
本当に無口だった。
それでも、しつこく訪ねる俺を拒むでも無く、メシにも付き合うし、簡単な会話には応じる。
今の俺には、傍にあることを拒まれないだけで、十分だった。

昨夜、食事の後傷が痛んでベッドを拝借した。
薄れる意識の中、テレビの音に紛れて彼女の声が聞こえた。

「悪かったな。守ってやれねぇでよ」

455名無しさん@ピンキー:2010/10/08(金) 20:20:46 ID:Mrf/+3c6
気が付いたら、彼女をベッドに引きずり込んでいた。
寝ていると思っていた俺の狼藉に、レヴィは目を丸くする。
「何で起きてんだよ」
「レヴィがあんな事を言わなければ、今頃は夢の中だ」
罵倒される方がどれだけよかっただろう。
傷が痛いと弱音を吐かれる方が余程ましだ。

多分、罵倒されたかったのだろう。ぶん殴られたかったのかもしれない。
まるで強姦するかのように身体を重ねた。
いや、彼女に抵抗するつもりがあれば容易いのだから、俺の我侭を受け入れてくれただけなのだ。
だが、傷が痛いと横になっていた人間が、無抵抗とは言え女を組み敷いて犯し続けるのは無理がある。
果ては、怒らせたかったはずのレヴィに「溜まってんならあたしが乗る。横になんな」と困り顔で心配される始末。
冗談じゃない、お前は今レイプされてるんだ、何で俺の心配なんてするんだよ。
俺が嫌だと拒否すると、「なら口でしてやっから…な?」と肩を押すから、もう一度嫌だと言って抱き締めた。

互いに快楽とは程遠い交わり。
痛みと呼吸困難によって自分の顔が青褪めていくのが、解った。
レヴィは何も言わなかった。
ただ、射抜くようにじっと俺の顔を見つめ返すだけ。

動けなくなった俺に一言、彼女は馬鹿だと罵った。
ようやく聞けた彼女の罵倒に、あの日以来初めての笑みが零れた。






だが、他に言う事は無いのだろうか。
鼻を摘まれたまま、ひたすら馬鹿だの阿呆だのくそったれだの、子供の喧嘩ような罵声を聞いていると、ぼやきたくもなる。
そうは言っても声は晴れ晴れと嬉しそうなのだから、ここは聞き流すしかあるまい。
諦めて狸寝入りを決め込む。
だが、段々と、ボキャブラリーの貧困さに呆れて来る。レヴィという女の罵倒は、常にもっと独創的であったと思うのだ。

俺が起きるタイミングを逸していると、不意に罵声が止み、溜息と共にレヴィが動く気配がした。
近寄ってくる身体。彼女の髪が頬に触れ、淡い期待が膨らむ。そして、与えられた乾いた唇。
起きるのは今しかない、腕に力を込めて抱き寄せる。
俺が出した舌を、レヴィの唇は待っていたと言わんばかりに受け入れ、彼女の舌もまた、絡み付いてくる。
そう言えば、昨晩はまともにキスもしなかった。
思い出して、更に彼女の唇に吸い付く。ちゅうと湿った音が鳴り、腕の中の身体が微かに震える。
胸板に押し付けられる彼女の柔らかい胸。
患部に響いて痛みが走るが、彼女の乳房なのだからここは甘受するべきだ。
痛いが、暖かく柔らかで気持ちいいのだから。
それにしたって男はどうしてこうも女の胸が好きなのだろう。
そんな一瞬の自問自答。
狭苦しいベッドの中、ずっと触っていても飽きる気がしない膨らみを掌で堪能する。
掌から溢れる乳房は本当に柔らかい、つんと勃った乳首が可愛い。
俺と合わせたままの彼女唇の隙間から声が上がる。
もっと声が聞きたくて唇を解放し、魅惑的な乳房に擦り寄ると、またしても「馬鹿」と降ってきた。
正直に言おう…落胆した。

もっと別のことを言えよ!

乳房に顔を埋め、さっきからずっと胸に秘めていたそれを伝えると、「傷ついたのか?」などと的外れなことを聞いてくる。
言っておくが、断じて傷ついたわけではない。単に呆れただけだ。
だが、それ以上拒む様子はない。
頬で乳房の弾力を堪能し、レヴィの匂いに妙に満たされ、子供のように安心する。
昔、お袋に抱き着いた時もこんな気分だったように思う。
お袋がしてくれたように頭を撫でてくれるレヴィの掌。
ああ、まるで子供扱いだ。
456名無しさん@ピンキー:2010/10/08(金) 20:23:54 ID:Mrf/+3c6
日本にいた頃。
接待で酔った客が「母ちゃんに似た女はいいモンだぞ、甘えさせてくれる」などとホステスに抱き着いていたのを思い出す。
その時は「マザコン野郎」と嘲笑してやったものだが、なるほど。もう手放せない。お袋には微塵も似ちゃいないが。
とろとろと蕩けるような心地よさに睡魔が忍び寄る。
そういえば、ずっと眠りが浅かったのだ、今日はいくらだって眠れる気がした。
血だまりに沈むレヴィの身体に絶望することも、彼女の首を捜して地面を這い回ることもない。
ここにいるのだ。


「あ」
何かに気づいたレヴィの掠れ声。
「なに?」
眠いが、彼女との会話が優先だった。これまでの不安を埋めるように、ただ話をしたかった。だが。
「白髪」
一言。彼女が悪気無く放ったであろうその単語は、これまでのどんな罵倒よりも激しく俺を打ちのめした。
取り敢えず親父のせいにしてみる。
が、落ち込むのはまだ早い、1本や2本小学生にだってある…そう思い直して尋ねると、いかにも愉快と言わんばかりに「7本」という宣告。
彼女が触っているのはほんの一部のエリア、そこに7本。
そういえば、あのセクハラマザコン野郎も、まばらに白髪があった。
思い出される、上司、親戚、取引先、ホームレス、雑踏の白髪頭の中年男。それに近づいているのだとレヴィに宣告されている。
たまらなく許せない。やるせない。
再び数え始めた彼女をムキになって制止する、本当に勘弁してほしい。
「染めようかな」
だが、一度染め始めると、元に戻すタイミングを逸するという話を聞いたことがある。
腰が曲がり、皺だらけなのに、髪は黒々。そんな老人も陰で嘲笑して来た。
もっともそんな年まで生きられるとも思わないが。
「別にイイんじゃねぇ?そのままで。増える度に笑ってやる、また増えたぜってよ」
数えるって、白髪をかよ。
「今日は5本増えてたぜ」とカウントアップされるのか?やめてくれ。
記憶にある親父の頭は30台でかなり白髪が多かった。あと何年だ?ぞっとする。
何度目かも解らぬ溜息を吐くと、「数え切れるようなシロモノじゃあない」と会話の打ち切りを試みた。
だが。
レヴィは解っていなかった。

「そんときゃ黒い方数えてやるさ、で、また減りやがったって馬鹿にしてやる」

いくら白髪が多くなったところで、黒髪の本数が数えられるほどに減ってしまうまで、何年かかるのだろう。
あと40年?50年かもしれない。
「悪くないかも」
そう呟いた俺に、レヴィは「はぁ?」と声を上げる。
レヴィは解っていない。
彼女は俺の親父を知らない。イメージ出来ないのだろう、俺の頭が真っ白になるまでの時間など。
そんな先も、一緒に居てくれるのだろうか。
一緒に居られる?
居られたら、いい。最高だ。

「悪くない」
レヴィの胸でもう一度呟く。
まどろみの中、自分の妄想に笑みが零れる。
「もう少し寝ようよ」
レヴィの胸に抱かれ、この幸せな夢物語を抱いて眠るのだ。
ああ、そうだ、眠ってしまう前に知らしめておかなければ。
「どうせこの先長いんだ、いいだろ?たまには。そうだ…レヴィの皺は俺が数えて笑ってやる。実にフェアだ」
この先ずっと、お前は俺の黒髪が無くなるまで隣に居なくちゃならないんだ。
お前が言い出したんだから、ちゃんと果たせよな。
大丈夫、お前の皺は俺がきっちり数えて記録してやる、グラフだって描いてやる。指差して笑ってやるんだ。ざまあみろ。

俺の夢想を鼻で嗤うレヴィの声。
本気だからな。
それを伝えるより早く、俺の意識は泥に沈んだ。
457名無しさん@ピンキー:2010/10/08(金) 20:27:02 ID:Mrf/+3c6
文章だけで弄り倒して吸い付きたくなるおっぱい書ける人ってすげえと思う
過去ログ読むと、水風船だとかふかふかだとか、ほんともう、何でそんな素敵なおっぱい表現出てくるの?と感服です
458名無しさん@ピンキー:2010/10/08(金) 20:52:34 ID:B2RFAYtO
職人さん連続投下ありがとう!もうラブラブ過ぎて死にたくなる

しかし最近の職人さんたちの乳描写は素晴らしいな
堪能できる岡島さんがひたすら羨ましい
459名無しさん@ピンキー:2010/10/09(土) 00:33:00 ID:7RsBfDcH
うおお変な時間に寝て起きたら続編が・・!
9巻以後のロックの心情描写の補完ぶりがすげえ!
銃と弾丸はつまり一心同体だから、レヴィは何も言わないんだなきっと
そして銃身のように包み込む
460名無しさん@ピンキー:2010/10/09(土) 18:17:58 ID:zU0q66F/
( ゚∀゚)o彡゜ おぱおぱおぱーい!!

ロック、ちょっと場所替われ!!

小籠包の中の汁啜るようにレヴィたんのB地区に吸い付き隊!
461名無しさん@ピンキー:2010/10/10(日) 00:45:30 ID:/di2urWH
ロックよりレヴィの方が傷は深いのに守ってやれないでとか‥レヴィたん健気っ
つんと立った乳首…ううたまらん
462名無しさん@ピンキー:2010/10/10(日) 19:29:21 ID:MpmIJ2qL
日本編でもそうだよね。
重傷負ってるのは自分の方なのに岡島さんに「傷つくから見るな!」って。
もう優しすぎる。
463名無しさん@ピンキー:2010/10/11(月) 21:12:34 ID:LAEwST0w
復讐編の後、
二人そろって療養してる光景を想像してたら激しく萌えた
464名無しさん@ピンキー:2010/10/11(月) 21:55:31 ID:QmhWQEpj
んでお互い脱がしあって治療すんだなw
465名無しさん@ピンキー:2010/10/12(火) 13:22:54 ID:6cMZT8zd
レヴィ「こんな傷、唾つけとけば治る……ってナニしてンだお前ッッ!!クソバカ…ッ!やめっ…や、やぁん!」 

ロック「唾付ければ治るんだろ?(2828」


実際口の中は菌でいっぱいだから舐めるのはよくないんだっけ、確か
466名無しさん@ピンキー:2010/10/12(火) 16:21:47 ID:c7A1mf94
いや、確か唾には殺菌作用があるはず。つまり

ロック「ほら大人しくして・・脱がないと治療できないだろ?」

レヴィ「だからってなんで全部脱がそうとすんだよ!?って舐めんなっ・・第一大怪我してんの腕だろーが!あっ・・こら・・ん・ぅんん」

となる
467名無しさん@ピンキー:2010/10/12(火) 20:51:50 ID:wgCv79F+
レヴィがロックの肋骨付近を舐めて治療するのもありだと思う
468名無しさん@ピンキー:2010/10/13(水) 07:32:51 ID:Nix4HXZa
ロック立っちまうw
あ、保管庫に最近のが入庫されてる。いつもありがとう!
469名無しさん@ピンキー:2010/10/16(土) 11:26:35 ID:v5HK4vpg
ロック「お前がもし銃だとすれば、俺は弾丸だ」


(せーのっ!)
♪でも そーんなーんじゃ だ〜め
もう そーんなーんじゃ ほ〜ら
マスターは 黒くなってく〜よ
もっと もぉっと♪
470名無しさん@ピンキー:2010/10/16(土) 13:44:21 ID:yih2qIN5
保管庫入ると良作揃いで幸せだわ。神愛してるぜっ
471名無しさん@ピンキー:2010/10/16(土) 14:58:15 ID:qPTlqIT6
>>469
レヴィサーキュレーションw
472名無しさん@ピンキー:2010/10/17(日) 00:33:45 ID:wg3ASpF+
マスターはレヴィたんの幸せをもっと考えてやれよう
473名無しさん@ピンキー:2010/10/17(日) 00:34:58 ID:uIbdkuev
このやるせない切なさが良いんだ

474名無しさん@ピンキー:2010/10/17(日) 22:05:08 ID:7s/b2wu7
物凄く今更だが、二人の身長差が実に良いね
475名無しさん@ピンキー:2010/10/18(月) 00:27:24 ID:7M0KUYG4
腕力的にロックも負けてないのもイイな
頑張れば押し倒せるかもってとこがw
476名無しさん@ピンキー:2010/10/18(月) 16:42:05 ID:jB/4ADI0
>>469
旭重工あ〜りがとう〜
身代金 とれなくても〜
め〜ぐ〜り 会えたことが〜
しあ〜わ〜せ〜 な〜の〜♪
477名無しさん@ピンキー:2010/10/20(水) 00:36:55 ID:cmKDRdLh
レヴィってスウェット持ってたんだな!あれしか持ってないのかと思ってたけどちょっと安心w
ロックはマスターなんだったらもっとエロ可愛いの買ってやれよな
478名無しさん@ピンキー:2010/10/20(水) 10:29:45 ID:5VQvqDUw
>>477
スウェットこそ至高だろ!
479名無しさん@ピンキー:2010/10/21(木) 01:41:11 ID:7jpMIGSq
下着姿で腹筋してたら鼻血吹くな・・
480名無しさん@ピンキー:2010/10/21(木) 16:00:55 ID:6NJQcVYL
乳の動きパネェだろうな。
パンツいっちょ手ブラ腹筋でもいい。
481名無しさん@ピンキー:2010/10/21(木) 17:02:28 ID:ctcJSHqo
正直レヴィの腹筋は芸術品レベル
482名無しさん@ピンキー:2010/10/21(木) 21:42:43 ID:a/xZ69zb
乳と尻と顔もだろ
483名無しさん@ピンキー:2010/10/21(木) 21:44:31 ID:uSg+fb3n
銃の腕前も芸術品レベルだよ
484名無しさん@ピンキー:2010/10/22(金) 02:17:48 ID:CjIeYcro
レヴィたんの部屋入り浸りとかロックうらやますぎる
485名無しさん@ピンキー:2010/10/22(金) 21:02:00 ID:2xGToLdI
単行本読み返してるがやっぱり偽札編良いな
「言いたくねえな」とか枝に嫉妬するレヴィとか
レヴィの腕の怪我を心配するロックとか
ニヤニヤするシーンが地味に多い
486名無しさん@ピンキー:2010/10/23(土) 04:07:19 ID:1fwgdaQb
にやにやした挙句ロックになったらレヴィに何をするかを妄想する病気にかかる
487名無しさん@ピンキー:2010/10/23(土) 06:34:27 ID:YnMd4sVU
俺はレヴィたんがやったことないこと、出来そうにないことをやらせて
「アルェー?こんな簡単なことも出来ないの?w」
って煽ってムキになるレヴィたんを観察したい
488名無しさん@ピンキー:2010/10/23(土) 07:04:38 ID:/EtltF4z
レヴィたんのふとももペロペロしたい
489名無しさん@ピンキー:2010/10/23(土) 22:33:03 ID:EJw6J2Yz
膝枕してもらって頭ワシワシされたい
490名無しさん@ピンキー:2010/10/24(日) 00:54:56 ID:aEmm+9i+
>>489
和む。母性本能を堪能するのもありだな
俺なら寝てるとこ抱きついて反応を楽しむか、突然キスして反応を愛でるな
ロックなら抵抗はしまい・・たぶん
491名無しさん@ピンキー:2010/10/24(日) 13:10:56 ID:NgbHD7N0
ロックの俺様気取りでレヴィのベッドに寝ころんでる姿を見ると、普段は突き放した淡泊系のくせに、実は隠れ独占欲が強いタイプなのかと思ってしまう
492名無しさん@ピンキー:2010/10/25(月) 11:35:23 ID:aVO+6BhU
日頃うだうだ弱気ってるのに
鬼畜攻めもできるとかおいしすぎます
妄想もいいけどいいかげん作者の
レヴィたんが見たいよー
493名無しさん@ピンキー:2010/10/26(火) 16:14:11 ID:E0JzcRTU
野生動物のようなレヴィに懐かれた?ロックは意外と凄いやつかもしれない・・
494名無しさん@ピンキー:2010/10/26(火) 17:06:30 ID:w9BnCmUf
日本編でロックがレヴィたんの掌にはーって息吹きかけながらしゃかしゃかさすってあげてるシーンを脳内でアニメーション
495名無しさん@ピンキー:2010/10/26(火) 21:04:53 ID:iJrngE6/
日本編で「寒い寒い!やってらんねえ」と言い訳じみた悪態つきながら
ロックのベッドに潜り込むレヴィたんを妄想した
496名無しさん@ピンキー:2010/10/27(水) 05:03:55 ID:KKA/M/9e
寒いやってらんねえとか超言いそうだw
そのくせいつもの下着姿でもぐりこんで来た日にゃあ
497名無しさん@ピンキー:2010/10/27(水) 07:12:16 ID:7NrSy2dc
寒いぃー夜だから〜♪

はなっからヤる気満々の
ダブルベッドもいいなぁ…

どうでもいいけどスレタイを
【現在】【ラブラブ中】と空目してしまったお…
498名無しさん@ピンキー:2010/10/28(木) 04:26:53 ID:iF8p6CF3
はいはい
最近季節柄寒くなってきてるよね
499名無しさん@ピンキー:2010/10/28(木) 13:57:59 ID:31XWlMVh
>>497
あながち間違いではないw
500名無しさん@ピンキー:2010/10/28(木) 23:58:24 ID:6NyiKN7G
レヴィたんとねんごろしたい
501名無しさん@ピンキー:2010/10/29(金) 03:59:21 ID:MIFYQOio
俺のベッドに何かの間違いで潜りこんでこねえもんか
502名無しさん@ピンキー:2010/10/29(金) 22:45:17 ID:I7hut3d0
会合が長くて早く部屋に帰りたいってダダこねるレヴィたんかわいい
503名無しさん@ピンキー:2010/10/30(土) 03:39:45 ID:cbky/Sb1
レヴィたんは基本だだっこ属性であるw
504名無しさん@ピンキー:2010/10/31(日) 12:43:27 ID:KC3pch0L
基本だだっこ属性が
だっこ属性に見えた。

レヴィたんが「抱っこー!抱っこして抱っこー!」ってせがんでくるのかと思った。
505名無しさん@ピンキー:2010/10/31(日) 20:30:00 ID:xhD6tqfx
おいwでも少女期のレヴィがロックに出会って懐いていく図が見えたぞ!
誰か書いてくれんかなあ
506名無しさん@ピンキー:2010/11/01(月) 00:08:07 ID:VexEzh0s
>>504
泥酔かヘンな薬キメたとしか思えんなそのレヴィw
507名無しさん@ピンキー:2010/11/01(月) 01:29:07 ID:p1tLKuF6
酒が入ると素直になるだけじゃないか。
508名無しさん@ピンキー:2010/11/01(月) 02:38:09 ID:WwIqfy6U
寧ろそういう泥酔ネタとして書いてもらっても全然構わない。

正気に戻った二日酔いフラフラレヴィたんにそのこと話したらカッとなって逆上しそうになるが、頭ガンガンでキレるにキレられないっていう。
509名無しさん@ピンキー:2010/11/01(月) 21:54:31 ID:jls3kli9
だっこと聞いちゃあおんぶも黙っていられまい。
というわけでおんぶお化けなレヴィたんと、
豊満なパイを押し付けられてそれどころでないオカジマンはどうだおまいら。

うん、抱っこと聞いたら一瞬で、にゃんま○にとびつこう〜♪と流れてしまったんだ。すまない。
510名無しさん@ピンキー:2010/11/01(月) 22:54:05 ID:inXsvQbK
それもう違うキャラだろw
みんな、最高にイカしてて最高にイカレてる女ガンマンが好きなのと違うんかい
511名無しさん@ピンキー:2010/11/01(月) 23:09:16 ID:V0dWq06p
普段イカれててたまにデレる所が最高
512名無しさん@ピンキー:2010/11/01(月) 23:33:49 ID:md0jj7Z/
このうえないくらいレヴィがヤキモチ焼く話を見てみたい
殺したいほど憎いとかではなく、可愛い、でも極限のヤキモチ
513名無しさん@ピンキー:2010/11/01(月) 23:36:06 ID:UmxzMSQz
エッチな興奮するゲームたくさんありました^0^

http://douzinbisyouzyom.girlfriend.jp/douzingameyoukai
514名無しさん@ピンキー:2010/11/02(火) 01:18:19 ID:ddV45prR
>>510
そんな女ガンマンがある一人の男にはデレデレニャンコになるところがいいんじゃない
515名無しさん@ピンキー:2010/11/03(水) 21:52:21 ID:6TLcxyr6
縁日での切ない表情は何度見ても最高だと思うんだが
俺がロックだったら場所などお構い無しに全力で抱きしめてる
516名無しさん@ピンキー:2010/11/03(水) 23:45:15 ID:0qJQQgRL
>>516
よく見ろちゃんとそのあと全力で抱きしめてるぞw
ビッチモードになっちゃってるけどな
517名無しさん@ピンキー:2010/11/03(水) 23:45:55 ID:0qJQQgRL
あ、すまん>>515だったわ
518名無しさん@ピンキー:2010/11/04(木) 01:56:41 ID:Pblfi5VN
神は?
519名無しさん@ピンキー:2010/11/04(木) 19:42:26 ID:0UgiYjEH
留守だよ。休暇取ってベガスに行ってる
520名無しさん@ピンキー:2010/11/04(木) 21:38:28 ID:Ph/AweaY
イエス様ならさっきルート66をチョッパーでかっ飛ばしてたぞ
521名無しさん@ピンキー:2010/11/05(金) 04:08:06 ID:iTxiRrR8
日本編だとサラリーマンが女子高生連れて歩いてるように見える
522名無しさん@ピンキー:2010/11/05(金) 06:51:22 ID:OMqRymCW
>>521
海外のアジア系女性は欧米人から見ると童顔だからわざと大人びた服や濃いめの化粧をするんだそうな。
レヴィがあんな露出の大きい服装してるのもそんな理由なのかも。
日本は寒いからつい普通の服を着てしまい幼く見えてしまったと・・・
523名無しさん@ピンキー:2010/11/05(金) 21:19:29 ID:6FohmsLo
>>518
休暇取って西川口行ってる
524名無しさん@ピンキー:2010/11/06(土) 04:38:52 ID:OURjGC8j
西川口ってどこだいwしかしレヴィがブラ持ってんのは判明したけど
着けるときと着けないときの差はなんなんだろう
525名無しさん@ピンキー:2010/11/06(土) 05:05:22 ID:C1DXBYat
生理期間中でおっぱいが張ってる時は着けないとか。
成長して今までのブラがキツキツになったから新しいの買うまで、とか。
レヴィたんくらいだったらまだまだサイズアップは見込める。
526名無しさん@ピンキー:2010/11/06(土) 09:41:00 ID:EHNbsRcP
>>524
西川口をしらんだと?・・・・・w
ブラなんか戦闘の邪魔です(´・ω・`)
527名無しさん@ピンキー:2010/11/07(日) 08:35:23 ID:Goo6lP67
貧乳ならともかくあれくらいおっぱい大きいとブラ着用してない方が邪魔だしw
特にぴょんぴょん跳ねまくり動きまくりのレヴィはボヨンボヨン揺れて大変だろ。

ま、レヴィたん程おっぱいないからそんな大きい人の苦労はそこまでわからないけどさ。
とりあえず外では着けてないと落ち着かない、帰宅したら外して乳解放!こんな感じ。
528名無しさん@ピンキー:2010/11/07(日) 08:40:49 ID:ppHnSkvy
てめぇが落ち着くか落ち着かないかなんかどうでもいい
529名無しさん@ピンキー:2010/11/07(日) 11:39:07 ID:g7BW0yxI
後半の文章は全くいらん
530名無しさん@ピンキー:2010/11/07(日) 12:57:33 ID:pY/FKP8I
落ち着くからとブラを装置する
「ブラ男子」なるものもいると聞く
531名無しさん@ピンキー:2010/11/07(日) 15:13:08 ID:x1KehhOb
「・・・ロック、お前がつけてるソレは一体何だ?」
532名無しさん@ピンキー:2010/11/07(日) 15:13:26 ID:cSCegPhB
アタクシ女ですわよってアピールうざい
533名無しさん@ピンキー:2010/11/07(日) 22:02:55 ID:FZdA+h2C
>>531
(`・ω・´)「ブラじゃない!! これは大胸筋育成サポーターだっ!!」
534名無しさん@ピンキー:2010/11/08(月) 06:40:06 ID:/7n1t+xT
なんかガキばっかだな。
エロパロスレに女子なんていない!いてはならない!とでも思ってるのか?w
レヴィファンて実際女性層多いみたいだし、いろんな意見が聞けるのは俺はいいことだと思うぞw
535名無しさん@ピンキー:2010/11/08(月) 07:02:30 ID:5b49WopA
女だからとかじゃなく、
いらん自分語りしてるからウザがられてるんじゃないのか
536名無しさん@ピンキー:2010/11/08(月) 07:45:29 ID:Jq4Yg20h
女は書き込むなとか読むななんて言うわけがないだろう
話を男女差別にすりかえんな
ウザい自分語りがむかつくだけだ
性別なんて関係ない
537名無しさん@ピンキー:2010/11/08(月) 10:39:43 ID:GTo/x6ix
まったくだ




というわけでレヴィのブラは僕がいただいていきますね
538名無しさん@ピンキー:2010/11/08(月) 12:55:47 ID:YWnWCVWQ
>>533

ブラでしょーそれどう見てもブラでしょー!!
539名無しさん@ピンキー:2010/11/09(火) 12:01:09 ID:c95cwtEY
レヴィたんの谷間に入れて温めておいたカイロでほかほかしたい
540名無しさん@ピンキー:2010/11/09(火) 17:42:45 ID:YexOVBFf
>>537
そんな事すると、レヴィにケツの穴を増やされた上にグリーン・チリを流し込まれるぞ
541名無しさん@ピンキー:2010/11/09(火) 18:46:42 ID:xsC9PqYm
>>539
むしろ最初から乳に顔突っ込んで暖まりたい
542名無しさん@ピンキー:2010/11/10(水) 16:11:50 ID:jxZIdrGB
そこはレヴィたんに心を許してもらって且つデレさせる才能を持ったものしか入ることの出来ない聖域です
543名無しさん@ピンキー:2010/11/11(木) 16:56:15 ID:bVowkCJX
レヴィのB地区発火するほど擦り上げてやんよ
544名無しさん@ピンキー:2010/11/11(木) 17:42:43 ID:hfH9l2pE
レヴィの夫になるのは難しそうだから俺はレヴィの子供になって母乳吸わせてもらうよ
545名無しさん@ピンキー:2010/11/11(木) 18:45:01 ID:Ip4BX3dN
>>544
それなにげに最強じゃんw無邪気なふりして一緒に風呂入りたいぞ・・
546名無しさん@ピンキー:2010/11/11(木) 20:40:06 ID:pAgSTCt7
母乳飲んで一緒に風呂入って添い寝におんぶか
最強だな
547名無しさん@ピンキー:2010/11/11(木) 23:04:41 ID:P5yT0PNm
レヴィの息子になれば、母親としての心はお前のものかもしれない
だが女としての心はロックのものなんだ
息子と母親はセックスできないぜ
父親から母親を奪えるか?

…はっ、これが『エディプス・コンプレックス』てやつか
548名無しさん@ピンキー:2010/11/12(金) 14:32:22 ID:ZCDvX+XK
まあロックに勝てないのはしょうがないな
だが一緒に風呂とかロックには恥ずかしがるかもしれんが子供なら大丈夫だ
549名無しさん@ピンキー:2010/11/12(金) 15:51:36 ID:SQ4DNXD8
毎晩覗き見できるという利点もあるな
550名無しさん@ピンキー:2010/11/12(金) 16:32:13 ID:VdgLrLk3
子供できても毎晩すかw
さすが犯島さんパネエwwww

しかしマジな話、子供とか死に別れとか、二次元キャラの行く末まで想像したくなるのは
この作品が初めてだ。
俺キメエwww
551名無しさん@ピンキー:2010/11/12(金) 23:43:01 ID:GHLQ2R5b
張さんの最期とかなら想像できるな

片足が使えなくなって壮絶に敵と戦いながら死ぬんだけど、次の回に実は双子だったとか言ってそっくりなキャラ五体満足で出てくんの
で、そいつが遺品のグラサンかけて戦う

その次の回は過去編で、本人がトレードマークのグラサン買ったときの話
552名無しさん@ピンキー:2010/11/13(土) 02:03:48 ID:ad1v7v1n
>>551

A better tomorrow
553名無しさん@ピンキー:2010/11/13(土) 06:50:37 ID:jiu0n095
>>548
とりあえずびーびー泣けばレヴィたんが困った顔でオロオロしながら抱っこしてくれる特典付きだ
554名無しさん@ピンキー:2010/11/13(土) 12:01:06 ID:S68SS9bN
混乱のあまりロックに投げ渡される可能性もあるけどな
555名無しさん@ピンキー:2010/11/13(土) 17:02:23 ID:l5dflaCj
子供ならレヴィたんに頬擦りしてもらえるってかこっちから頬擦りしてやんよ
556名無しさん@ピンキー:2010/11/13(土) 17:39:44 ID:jCN1zODV
>>554
目的即崩壊っすかw
557ロック×レヴィ 比翼・第一部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/13(土) 20:54:16 ID:tFYKTC0l

<注>
百合描写あり


558ロック×レヴィ 比翼・第一部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/13(土) 20:55:07 ID:tFYKTC0l



始まりは、いつも曖昧だ。

会話がふと途切れた時。
互いの視線が絡んだ時。
指先がかすめるように触れた時。

そんな些細なきっかけで、情事は始まる。


レヴィがロックの部屋でシャワーを浴び、ベッドに腰掛けてぼんやり煙草を吸っていると、
バスルームから出てきた彼が隣に座った。
わずかにベッドがきしんで、レヴィの体がそちらへ傾く。
ロックは煙草をくわえると、ライターを手にして火をつけた。
二人分の煙が白く立ちこめる。

「骨は?」
「もうついたよ」
「痛みは」
「もうない」
「そうか」
「レヴィの方は?」
「問題ない」
「本当に?」
「嘘ついてどうする」
「見せて」
「やめろ」

交わした言葉はどれくらいだったか。
手にしていた煙草は灰皿にねじりつけられ、ロックの気配が近づく。
腕に軽く触れてきたロックの手は、そのうちレヴィの肌の上をすべり出し、くるりと二の腕の内側に入り込む。
シャワーを浴びたばかりで湿った肌の体温と、互いの息づかいが絡む。
触れられたところが熱い。
伏せた視線が交差したあたりから、空気の色が変わり出す。
張りつめて、密度を増す。
呼吸が、混ざる。

目線を上げると、ロックの瞳とぶつかった。
レヴィが目を伏せていた間もずっと、ロックはこちらを見ていたようだった。
正面から視線がぶつかったのは一瞬。
唇は、どちらからともなく重ねていた。

ゆっくりと体を寄せる速度も、わずかに顔を傾け合う角度も、最初に触れ合わせる強さも、
もう、すべて了解している。
互いの唇の感触を味わって、ゆるんだ唇の隙間から差し入れられたロックの舌と、熱を絡ませ合う。
ロックの腕が背中にまわってくるのは、唇が触れ合う直前か、直後か、あるいは同時か。
よく分からないうちにレヴィの体はすでにロックの腕の中にあって、その腕に抱き寄せられる。
レヴィの腕も、気づけば彼の体にまわっている。
すべて、了解している。
ロックの手が、やがてレヴィの肩をゆるりと包んで押してくるのも、
そのあるかなきかの強さにレヴィが自ら体を後ろに倒すのも、
その後に行われることも、全部。
559ロック×レヴィ 比翼・第一部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/13(土) 20:55:58 ID:tFYKTC0l

結局、きっかけは何だったのだろう。
始まりは曖昧のまま、レヴィの体はロックのベッドに沈み、
唇を落としてきた男に首筋を撫でられると、体の中がざわめいた。

思えば、初めてこの男と交わった時から、きっかけは曖昧だった。
たぶん、「理由」と呼べるものなど何もなかったのだろう。
その時そこにいたから。
ただの成り行き。偶然。もののはずみ。
あの時二人の間に存在したのは、そんなものだけだったのだろうとレヴィは思う。
故郷を捨てて弱った男のそばにいたのは、故郷を持たない女だけだった。
平和なのか不穏なのかも分からない、すべてを飲み込み尽くす底知れぬ街トーキョーで、
二人は寄る辺ないみなしごのように互いを求めた。
暗くさかまく海流に流されまいとするかのように。
拠り所を失った男が闇雲に伸ばした手の掴んだ藁が、自分だった。
それは分かっていた。
それでも良い、それで良いと思った。
彼の真心がそこになくても、それで良い。
気を紛らわすためであっても、それで良い。
同じところで生きられるのなら、それで良い。
そう思った。

けれど、今では後悔している。
ひどく激しく。

仰向けに横たわった体を、ロックの手がやわらかく這う。
唇をつなげたまま、首筋の線をなぞり、鎖骨のくぼみに親指を沈ませ、肩を包み込む。
二の腕をすべり落ち、脇腹の方へと渡る。
肋骨を数えるように這いのぼり、乳房をすくいあげられると、呼吸が揺れた。
思わず喉の奥で声を漏らすと、ロックが唇を離した。
濡れた唇が、今度は首筋へと寄せられる。
顔をそむけると、ロックの指が髪の中に差し込まれた。
生え際に指先が触れ、ざっくりと奥へともぐってくる。
そして、耳のつけ根に唇の熱が押しつけられた。
そむけた顔が、まるでそこへの口づけを待ち望んでいたかのようで、レヴィは思わず眉をひそめ、
次いで、いや、まさに待ち望んでいたのだと自覚して、更に眉間の皺を深くした。
ロックの唇は何度も首筋に触れ、小さく湿った音をたてた。
皮膚の下に流れる大動脈を、つぅっと舌がなぞった。
ざわり、と。
悪寒に似た震えが全身をよぎって、レヴィは思わず体をこわばらせた。
舌の熱さで、脈動がさらに激しくなる。

──駄目だ。

頭の隅で警鐘が鳴る。
駄目だ。
こんなのは、駄目だ。

頭の中では激しくサイレンが鳴っているというのに、
レヴィの指は、首筋を順々に下がって鎖骨にまでたどりついたロックの髪に差し込まれた。
首もとで突き出ている骨をロックの唇が包み込み、舌がくぼみを探る。鎖骨の裏をなぞる。
自分では見えないのに、その舌によって今どんなに自分の鎖骨が浮いているのかを知らされ、
レヴィはそら恐ろしくなった。
鎖骨の浮き出ぐあいも、首のうしろの骨の存在も、肩胛骨の厚さも、全部全部、この男によって知らされた。
自分の体だというのに、知らなかった。
この男に触れられるまで、ずっと。
560ロック×レヴィ 比翼・第一部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/13(土) 20:57:01 ID:tFYKTC0l

ロックの唇が胸もとまで下がってきたあたりで、掌は乳房をやんわりと寄せあげるように包み込んだ。
心臓が温められるように、熱が染みてきた。
唇は丁寧にふもとから曲線を小刻みにのぼり、ようやく先端に到達したところで、じらすように周囲をなぞった。
それから、乳首がゆっくりと熱く濡れた粘膜に包まれた。
まだほのかにやわらかかったそこが、唇の中に取り込まれた瞬間、急激に尖った。
ロックは、唇の内側のなめらかな粘膜で乳頭の輪郭をなぞった。
尖ってかたくなった全体を口に含み、触れるか触れないかの強さで先に向かって唇を沿わせる。
じわじわと、粘膜がすべる。
すぼめた唇から濡れた先端がこぼれ出ると、急に外気にさらされて、ひやりと冷たさを感じた。
しかし、それも束の間、また熱に包まれた。
今度は舌を寄せられる。
唇でそっと挟み込んで、やわらかくした舌でそろりと舐められる。
舌は側面から優しく押しつぶしたかと思うと、今度は乳首のつけ根をくるりと周回する。
掌は、やわやわと乳房を包んで揺らす。
その指先が、ほんの少しだけ、やわらかく肉に沈み込んだ。

──駄目だ。

レヴィは溶けてくる頭の隅で思う。
駄目だ。
このままでは駄目だ。
今すぐやめなければ。

しかし、時はもうすでに遅く、唇に取り込まれた先端を軽く吸いたてられると、
レヴィの腕は反射的に男の頭を抱き込んでいた。
ロックの息で胸もとが熱い。
いや、熱いのはレヴィの体そのものか。
それを証明するかのように、ロックの手は乳房を離れ、肋骨を撫で下ろし、腹を通りすぎて、
薄い下着にゆきついた。
布の上を、指がそっとたどる。
薄布越しに這う指が神経をかすめ、体の芯が疼いた。
ロックの指は、下着の上からくぼみを探る。
指の腹を押しつけて、とろかすように揺らす。
揺らして、そしてなぞり上げた指は、正確に、レヴィの割れた線をたどっていた。
指は一点でぴたりと止まって、くすぐるような強さで撫でてくる。
脳が、溶ける。

またくぼみの方に戻った指に探られると、ぬるりと布がすべった。
レヴィの体がどれほどに溶けているのかを、ロックの指におしえられる。
そして、レヴィの胸の内がもっと蕩かして欲しいと待ち望んでいることも。

──駄目、だ。

サイレンの音はいっそう強くなる。
やめないと。
やめないと、戻れなくなる。
後戻りできなくなる。
561ロック×レヴィ 比翼・第一部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/13(土) 20:58:02 ID:tFYKTC0l

ロックの指は、下着が熱を吸って用をなさなくなり、
レヴィの腰が我慢できずに揺らめき始めてようやく、下着のラインを越えてきた。
熱をあふれ出させている源に直接触れられ、
レヴィは思っていたよりもずっと、自分の体がうるんでいたことを知った。
ロックの指がとろけた粘膜にひたされ、そこにあふれていた熱の中で揺らいだ。
まだ、指は表面を撫でるだけだ。
それなのに、まるで体の内側を撫でられているかのような感覚に、レヴィの膝は震えた。
ロックは指先でとろりとした熱を絡めとると、ゆっくりと襞の間をなぞりあげた。
やわらかい襞を押しひろげるように、ロックの指がすべる。
ぞく、と。
神経を剥き出しにされて直に撫でられたかのように、体が震えた。

下着をすべて取り去ったロックの指は、丁寧に襞の間をなぞる。
レヴィの体からあふれる体液をすくいとって、隙間を通って、先端へ。
神経の固まりのような先端を、濡れた指でやわやわとこねる。
根本をなぞり、そっと押しあげ、きゅう、と脇からやわらかくつぶす。
思わず腰を浮かせたくなったところで、指はまた襞の隙間を戻ってゆく。
そうやってたどられるごとに、うるみが更に増していくのが分かった。

ロックは、レヴィが欲しいと思うよりもほんの少しだけ弱い力で刺激を与え続けた。
まるでレヴィの心中が見えているかのような、忌々しくなるほどの正確さで。
もっと触れて欲しいと、レヴィが必死で抑え込もうとしている情欲が無理矢理引きずり出される。
表皮を全部剥ぎ取られて、したたる中身が露わになる。

──駄目。

その「駄目」が、これ以上続けてはいけない「駄目」なのか、
もうこれ以上我慢できなくなった「駄目」なのか、
すべてがないまぜとなって快楽に押し流されそうになった時、
ロックの指がレヴィのなかへとはいってきた。
第一関節、そして第二関節が通過していく。
すっかりとろけて神経が剥き出しになったかのような粘膜のせいで、
体のなかへはいってゆくロックの指のかたちが、はっきりと分かった。
銃を持たない、ロックの指。
ペンを持つのが一番似合う、ロックの指。
ロックの指は男にしては太くなかったが、それでも関節の太さはまぎれもなく男のそれで、
よく知った男の指を待ちかねたように、レヴィの体は震えた。

優秀なロックの指はレヴィのなかの角度を完全に覚えていて、
まったく痛みを感じさせることなく侵入してきた。
根本までうずめてしまうと、今度はゆっくりと引き抜く。
ぬるりと指がすべり出ていく。
そして、抜けきる前に、また沈む。
繰り返されると、さらに熱があふれる。
とろけた内側をかきまわされて、はぁっ、と思わず吐息がこぼれた。
562ロック×レヴィ 比翼・第一部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/13(土) 20:59:10 ID:tFYKTC0l

ロックのぬるついた指は、外側の襞も、その先の突起も、余すところなく蕩かした。
もう内側も外側も分からず、催促するようにうねる体を止めることはできなかった。
なけなしの羞恥心か、それとも更なる刺激を求めてか、脚が内側にきゅっと締まった。
レヴィの膝を割っていたロックの片足は、脚が閉じようとするのを阻止すると、ぐ、と膝を外側に寄せた。
閉じようとした脚は、逆に広げられた。
その開いた体に深く深く指を沈められて、レヴィは呼吸が止まりそうになった。
喉の奥で破裂しそうになった声の塊を、すんでのところで押し殺す。
しかし、唇で温かく包まれていた乳首を急に強く吸いあげられて、胸の中に抑え込んだはずの声があふれ出た。

「──あ…………っ」

不意打ちだった。
胸から意識が外れていたせいで、身構えることができなかった。
痺れのような刺激が体の芯を通って、心臓が肥大化したかのようにどくどくと脈打った。

ロックは静かに乳首から唇を離すと、みぞおちに向かって点々と口づけた。
肋骨からみぞおちに到達すると、くすぐったい。
腹に唇が落ち、へそを通り過ぎ、下腹に到達したところでようやく、
彼がこれから何をしようとしているのかに気づき、レヴィは慌てた。

「ロック、やめ──」

しかし制止は間に合わず、レヴィが上体を起こす前に、ロックは舌を襞の間に這わせていた。
「──────っ」
舌先は襞の奥を探り、そのまま舐めあげる。
指とは違った熱くやわらかい塊が生き物のようにうごめいて、レヴィの背中はシーツの上で反った。
粘膜どうしがぬるりと絡んで、レヴィの感覚を責めたてる。
ロックの唾液とレヴィの分泌液、二人の体液がロックの舌で混ぜ合わされて、ちゅく、と密やかな水音をたてた。

舌は、襞の間を何度も往復し、とろけた奥を探り、先端をころがした。
体がこわばり、膝が震える。
図らずもロックの頭を挟み込む形となった太ももを、ロックは両手で押し広げると、
両の親指でそっとレヴィの襞を開いた。
露出した粘膜をぞろりと舐めあげられて、レヴィは思わず息をもらした。
次の瞬間、剥き出しになった小さな突起を唇で包み込まれた。
腰の裏が甘く震える。
たまらず、手の甲を自分の唇に押しあてた。
そうしないと、胸の中でふくらんだ、情欲まみれの声があふれ出てしまいそうだった。
563ロック×レヴィ 比翼・第一部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/13(土) 20:59:47 ID:tFYKTC0l

ロックは、レヴィが手を口元にやったことに気づいているだろうに、構わず唇で包み込んだ突起を舌でつついた。
熱くやわらかい感触に、息が震える。
唇はそのままに、ロックは入り口に指を添えると、静かになかへ沈めた。
舌は押しあげるように突起をやわやわとつぶし、指はゆっくりと抜き挿しを繰り返す。

──やめろ。

レヴィは浮き上がりそうになる腰を抑えつけて、思った。
そこは、口をつけるに値するところじゃない。
何度も傷と汚濁にまみれた。
今は、浅ましい女の情欲が腐臭を放っている。
だから、やめろ。

そう言いたいのに、口を開けば出てくるのは言葉にならない声だけだということは分かりきっていたので、
レヴィはただ手の甲を唇に強く押しあて、目をぎゅっとつぶった。

──なんで。

なんで、こんなことをする?
レヴィは枕に頬を押しあてながら眉をひそめた。
こんなことをしても、男は気持ち良くなんかならない。
これは女が喜ぶやり方だ。
気持ち良くなりたいのならば、そんなことをしていないで、さっさと突っ込めばいい。
突っ込んで、揺さぶって。
濡れていないとやりにくいのだったら、唾でもローションでも何でも使えばいい。

──なんで、こんな──。

一瞬、真偽を問い質したいような気分になったが、その答えがひとつしかないことは承知していて、
だからレヴィは問いを飲み込んだ。

──決まってる。あたしの性欲を満たすためだ。

いくら押し隠そうとしたところで、上昇する体温と早まる鼓動までは隠せるわけもなく、
レヴィの体の奥からあふれる体液はまさに欲情のしるしだった。
564ロック×レヴィ 比翼・第一部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/13(土) 21:00:40 ID:tFYKTC0l

──見抜かれてる。

惨めな気分でレヴィは思う。
ロックは銃を持たずに悪徳の街で生き延びることを選んだ。
その為に必要だったのが、手を下してくれる他人。
もしくは、身代わり。
彼の至上命題は、銃になってくれる他人を手なずけること。
それが彼の命の明暗を分ける。
そして、彼は手に入れた。
思うままに動く、銃を。
銃はなかなか手に入らない。
殊に、ホワイトカラー上がりの、育ちの良い男には。
手に入れたものは慎重に飼い慣らし、できるだけ長く使うのがベスト。

誰が自分にとって有益なのかを見定め、
そいつが何を望んでいるのか、どうすれば望み通り動かせるのかを冷静に探る。
生き延びるためには、それが肝要だ。
この男がその理に気づき、そうして見極めた結果が、これなのだ。
レヴィという銃に必要なメンテナンスはこれと、判断した。

それは忌々しいほどに正しかった。
だからこそ、終わらせたかった。
この男に、醜い女の貌など見せたくなかった。
でも、「もう、やめよう」と、それが言い出せなかった。

最初は、好きに使えばいいと思った。
セックスなど反吐が出る。
でも、この男とならば我慢できるかも。
そう思った。

けれど、逆だった。
胸の奥で眠っていた性欲を、引きずり出された。
気づけばいつも、ロックはレヴィの頭の中身を見定めるような目で見ていて、
自分をコントロールできなくなるのはレヴィの方だった。

──どうして、あたしなんだ。

何度もそう訊きたくなって、でも、その答えをロックの口から聞きたくなくて、胸の奥に押し戻した。
訊かなくとも、あの冷静な目がすべてを物語っていた。
日本で出会った可憐な少女に、ロックは照れたような目で笑いかけた。
和やかに、優しげに。
あれこそが、丁重に扱うべき女を見る目だ。
レヴィはそんな目を向けられた覚えがない。
当然だ。
自分には、珠のように白くなめらかな肌も、華奢な肩の線も、高くはかない声も、何もない。
人を安心させる笑顔も、傷ついた精神を癒す手も、優しく包み込んで休ませてやる腕も、何も、何も。
あるのは、人を殺し慣れた血まみれの手と、死体を踏み越えていくための脚。
ロックが自分の方を向いてくれることは、決して、ない。
565ロック×レヴィ 比翼・第一部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/13(土) 21:01:22 ID:tFYKTC0l

そうであっても、続けるのか。
レヴィは自嘲に顔を歪めた。
あたしはセックス・フリークなどではない。
そんなことをしなくたって、ちゃんと護ってやる。
役割は心得ている。

それなのに「もう、やめよう」と言えないのは、なぜだろう?
結局、未練のあるのは情事にか?

──ちがう。そうじゃない。

ちがう。

──あたしは、あんただから──。

でもそれは、とても分かって欲しくて、そして絶対に知られたくないことだった。
いつでもやめられると思った。
いつでも戻れると思った。
けれど、いつしか帰る道を見失っていた。

これは成り行き。気まぐれ。それで良い。
そう思っていたはずが、ロックの優しげな手つきに、つい、期待が頭をもたげる。
指を髪に差し入れて、ゆっくりと梳くのはどうして?
首筋をなぞって、そっと口づけるのはどうして?
そんなに優しく触れるのは、どうして?
しかし、どうして、どうして、と繰り返しながら、それは真意を問う疑問などではなく、
結局ただひとつの答えを望んでいるだけなのだということに気づいた時、
レヴィはこの男と肌を重ねたことを、心から後悔した。

知らせないで欲しかった。
セックスが暴力の一形態などではないことも、
特別な男とするセックスがどんなものなのかも、
そのとき、自分の体がどうなるのかも。

──ロック、なんであたしを抱いた。

自分を棚に上げ、レヴィはロックを恨めしく思う。
抱かないで欲しかった。
自分を見てくれることが決してないなら、抱かないで欲しかった。
だって、期待する。
見ろよ、と。
あたしを見ろよ、と。
叶うはずのないことを、期待する。

でも、ロックが救いたいのはいつも別の誰かで、自分はそのための手段なのだ。
そんな女に対してここまでするとは随分と仕事熱心なことだと、皮肉のひとつも言ってやりたくなるが、
生き延びるためならそれぐらいのことは屁でもないことを、レヴィはよく知っていた。

なぜって?

──なぜって、あたしが、そうだった。

566ロック×レヴィ 比翼・第一部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/13(土) 21:02:48 ID:tFYKTC0l

 * * *

生き延びるためには何が必要なのか。
それを悟ったのは、レヴィがまだ「レヴィ」と呼ばれることなく、ただの「レヴェッカ」だった頃、
窃盗や傷害を繰り返した末に放り込まれたニューヨークの刑務所でのことだった。

塀の中は、歴然たる弱肉強食の世界だった。
恐ろしいのは看守や懲罰などではない。
囚人だった。
人間が複数いれば、上下関係ができる。派閥ができる。
自然、力のあるものが上にゆき、ヒエラルキーが形成される。

誰が何を望むか、見極めろ。
隙を見せてはならない。
一度弱みを見せれば、弱ったシマウマのようにハイエナにたかられる。
金は確かに力だった。
しかし、そもそもレヴェッカは金など持ってはいなかったし、
シマウマと認定されれば最後、金は交換価値を持たない紙くずとなる。
その日から安眠は保証されず、いつ煙草の火に肌を焼き溶かされるか、歯を何本なくすか、
そんな心配で頭をはち切れさせることになる。
死にかけのシマウマとして認識された者がたどる末路は、外の世界よりも非情だった。
誰が何を望むのか。
何をすれば安全が保証されるのか。
この身ひとつで乗り切らねばならない。
生き残るのに必要なのは、洞察力だ。
レヴェッカはそれを悟った。

だから、ある夜、刑務所の固いベッドで丸くなって眠っていた体をまさぐられた時、
一瞬びっくりしてその手を振り払いそうになったが、すぐに、これはチャンスだと思い直した。
レヴェッカの乳房に手を伸ばし、物欲しげに体を押しつけてくる女の腕を取り、耳元でささやいた。
「……ヘイ、気持ち良くなりたいんだろ?」
あたしが気持ち良くさせてやる。そこに寝転がりな、ハニー。
言って、体を反転させる。
女を見下ろす。

──生き残ってやる。

そのためならこれぐらい、なんてことはなかった。
敵を作るな。
気分良くさせろ。
使える奴だと思わせろ。
レヴェッカはそっと、女の肌を剥いた。
567ロック×レヴィ 比翼・第一部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/13(土) 21:03:41 ID:tFYKTC0l

そうやって相手をしたのは、十人か、二十人か。あるいは、もっとか。
一度相手をしてやった女は、決まって二度三度とベッドにもぐり込んできた。
「レヴェッカ、あんた、どんな男より巧いわ」
女たちは口を揃えた。

──当たり前だ。

レヴェッカは思った。
男は自分の快楽しか考えていない。
あたしは逆だ。
あたしは相手の快楽しか考えていない。
同じ女だ。
どこをどうすれば気持ち良くなるかなんて、手に取るようによく分かる。
そこに少しの観察眼と洞察力、そして思い切りがあれば、どんな男よりも気持ち良くさせることができる。

レヴェッカは、欲情してほてった女の肌を、丁寧に唇でなぞった。
首筋、胸もと、肩口。
耳たぶに吸いつく音を聞かせてやり、外耳道に熱い息を吹き込んでやることも忘れない。
這わせる手はあくまでも優しく。そっと。
間違っても、強く乳房を掴んだり、乳首をつねったり、充分に濡れる前の膣に直接触ったりしてはならない。
肌の薄いところを触れるか触れないかぐらいの強さでなぞってやり、その下の血を温める。
いくら早く終わらせたいと思っていても、性急にことを運んではいけない。
触れる手はゆっくりと、じらすように。念入りに。
首筋を吸い上げ、舌を這わせ、手は肩から胸もと、脇に至るまで入念に撫でて、煽る。
肌が熱くなってきたところで、ゆるゆると乳房を揺らす。
そっと包み込んで、掌で温め、ゆっくりとこねる。
豚の尻のように膨らんでいようと、鶏ガラのように貧相だろうと、変わらない。
血液を、リンパ液を、温めてやればいいだけの話。
そして乳首を口に含んでやると、女の体がうねる。
頭上から、欲情した声がもれる。
女の匂いが強くなる。
568ロック×レヴィ 比翼・第一部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/13(土) 21:04:29 ID:tFYKTC0l

そう、大切なのは洞察力なのだ。
相手が何を望んでいるのか。
それを見極め、相手が望むよりもわずかに少ない刺激を与え、もっと欲しいと思わせる。
ねだるように体をくねらせ始めるのを待ち、その期待に応えてやる。

勃った乳首を唇で包み込んで、脇腹を撫でてやりながら、
さて、この女はどうされるのが好きなのだろうと、神経を尖らせる。
このゆるい刺激をもっと続けて欲しいのか、それとも、もっと強い刺激がお好みなのか。
もどかしげに体を揺らしてくれば少し強めに吸いたててやり、
頭に手を伸ばされれば、その手の導くように移動する。
お望みとあれば、足の裏だって尻の穴だって舐めてやる。

性器に触れるのは、たっぷりと全身を溶かした、その後だ。
早く触れてほしいとぬらついているそこに、そっと指を這わせる。
ぬるりと生温かい肉の間に指をひたし、ゆるくかき混ぜ、撫で上げる。
乱暴にしてはいけない。
女は男が思うよりもずっと、繊細だ。
やわらかい襞を少しだけ広げてやる、それくらいのつもりでいい。
陰核に触れるときは殊更に慎重に。
充分に濡らした指で、そのぬめりを絡ませてやるように撫でる。
女の腰が物欲しげに突き上げられる。

そうして、女の陰唇と陰核が生ぬるい粘液でたっぷりとぬめった頃、いよいよ、指を挿れてやる。
内側を傷つけないように注意しながら。
女が満足のため息をもらす。
抜いて、また挿れる。
肉壁を撫でて、関節を曲げ、ざらざらしたくぼみを探しあてる。
指の腹でこすってやる。
女がよがる。

色々な女がいた。
やわらかく溶かされるのが好きな女、激しく責めたてられるのが好きな女、奉仕させるのが好きな女。
レヴェッカの体に触れてくる女もいた。
服の中に手がもぐり込んできて、肌を探られる。
乳房を指が這う。
生きた蔦のように這いまわって、絡む。
ねっとりと、浸食されるように指が沈む。
男の乱暴さとはまた違った女の手の不快感に、悪寒が走った。

──触るな。

あたしに、触るな。
叫んで、手を引き剥がしてしまいたくなるが、ぐっとこらえる。
男の手のように痛みを与えてくるわけではない。
これぐらい、どうということはない。
口づけをねだられれば、してやる。
吸いついてくる唇のねとついた粘膜と、獣じみた呼吸が顔にかかるのを気持ち悪いと思いながらも、
唇を吸い、開いた隙間から舌を差し入れてやる。
育ちすぎたなめくじのような舌を絡めとり、口内をかきまわす。

──何が望みだ?

望むことは、何でもしてやる。
569ロック×レヴィ 比翼・第一部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/13(土) 21:06:13 ID:tFYKTC0l

そう、どの女も、彼女の望みに応えてやれば良いという点は同じだった。
そして、応えてやれば、どの女もだらしなく蕩けた顔をして浅ましく体をくねらせ、
股を広げて腰を振り、生臭い女の臭気を放つことも同じだった。
レヴェッカは、女のぬるついた膣に指を挿れてかき混ぜ、舌で陰核を舐め上げながら思った。

──この雌犬が。

発酵臭にも似た生臭い女の性器の臭いを嗅ぎながら、レヴェッカはそんな女たちを軽蔑していた。
性欲だけで脳味噌を膨らませ、年中発情している女。
犬ですら発情期があるというのに、人間は犬よりよっぽどたちが悪い。

時折、見当違いのサービス精神を発揮する女もいて、
お返しなどという殊勝なことを思いついたのか、自分だけ快楽に溺れているのが居心地悪くなったのか、
レヴェッカの脚の間に指を伸ばしてくることがあった。

──やめろ。

レヴェッカはそんな女の手を捉えると、引き離した。
触れというなら触ってやる。
舐めろというなら舐めてやる。
胸くらいなら揉まれたっていい。
けれど、性器には触れられたくなかった。
捉えた女の手をシーツに押しつけて、レヴェッカは薄く笑った。
「やめな、ハニー。あんたの仕事はそれじゃないだろ?」
女の耳元で低く言う。
「あたしが気持ち良くさせてやるから、おとなしくしてな」
大抵、それで本当におとなしくなった。

乱暴な物言いは女たちの機嫌を損ねることなく、むしろ好ましいものとして受け入れられた。
「レヴェッカ、あんたの声、すごくそそる」
そう溶けた声で言って、ぐねりと体を押しつけてきた。

──醜い。

自らも荷担しながら、レヴェッカの女たちを見る目は、「軽蔑」の一言だった。
生臭い雌の臭いをぷんぷんさせて、脂肪のつまった体をのたくらせる。
女の体は、それと知らずに触ってしまった腐ったオレンジの感触を思い出させた。
予期せず指が沈み、ぶよぶよした手触りが指先に残る。
組織が崩れ、腐った汁が染み出して、どろりと垂れる。
呆けた顔には、脳味噌の襞の間までもが性欲でいっぱいですと書いてある。
ん、んん、あ、ん、あ、あぁ、もっと──。
女の白痴のような喘ぎ声は不快感を煽り、生きた臓物に突っ込んだかのような指は気持ちが悪い。
饐えた女の性器の臭いは吐き気をもよおす。
腐ったカッテージチーズ、崩れて蝿のたかったショートケイクの臭い。
腐敗した生ゴミの臭い。

──売女が。

レヴェッカは、冷えた頭で女を見ていた。
不快だ。気分が悪い。
それでも、生き残るためだったらこれぐらいのこと、喜んでやってやる。

レヴェッカは、そうして、生き残った。





570名無しさん@ピンキー:2010/11/13(土) 22:39:46 ID:jCN1zODV
神――!!GJGJ
すれ違いバージョンきたYO!百合エピソードを見事に組み込んできたな〜
銃のメンテという負のスパイラル思考に陥るレヴィたん切なすぎるぜ・・
571名無しさん@ピンキー:2010/11/14(日) 03:02:48 ID:mQrDiqyF
せつなすなー
GJ
572名無しさん@ピンキー:2010/11/14(日) 14:27:14 ID:S4c9i527
GJ過ぎる上に続きが気になって仕方ない
573名無しさん@ピンキー:2010/11/16(火) 19:32:43 ID:jj5CGDwA
そしてスレが止まった・・・・・・・・
574名無しさん@ピンキー:2010/11/16(火) 22:16:43 ID:IglTbS+o
続きはまだお預けなのでしょうか…。
575名無しさん@ピンキー:2010/11/17(水) 02:52:26 ID:duK+Nqpy
な、1週間ぶりにきたら比翼なんて心魅かれるタイトルのロクレヴィが!
ロック頼むよ><
576名無しさん@ピンキー:2010/11/17(水) 06:48:36 ID:yJP7NICG
なんで俺は神が降臨してたとも知らずにネット開かなかったんだorz
こりゃ続きが気になって暫く眠れねぇw

ロックが本当に救ってやるべき相手はレヴィたんだというのは常々思ってました
577名無しさん@ピンキー:2010/11/18(木) 10:26:39 ID:yxdQ3eWy
務所で相手した云々発言はこういうことだったのか。
女子中学生とかよく抱きついてきたり腕組んできたりスカートめくってきたりするけど、レヴィはそういうの心底うざがるだろうなw
でも標的にされやすいという。

しかしこの時期全裸はキツいな。泣きそうだ。
578ロック×レヴィ 比翼・第一部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/18(木) 21:29:16 ID:wZRdb37h

>>569の続き


579ロック×レヴィ 比翼・第一部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/18(木) 21:29:58 ID:wZRdb37h


 * * *

──同じだ。

レヴィは、ロックの指に体のなかを探られ、舌と唇で陰核をもてあそばれながら、思った。

快楽に溺れる女を軽蔑していた。
理性も誇りも何もかも投げ捨てたような姿態で喘ぎ、
男の陰茎の代わりなら何でも良いとばかりに腰を振る女を、心底醜いと思った。

自分はちがう。
自分は決して、性欲なんかに溺れたりしない。
セックスのことしか頭にないような連中とはちがう。
そう思っていた。
けれど。

──あたしも、同じだ。

駄目だと思うのに、ロックに触れられると血が騒ぎ、彼の体温を求める。
肌を撫でられ、唇で吸われると、体の奥から湿った吐息がもれる。
全身をなぞられると、いつの間にか体が溶けて、ロックを待ち望むかのように震えている。
触れられるたびに体が波うち、ねだるように腰が浮く。

「────っ、ぁ……」

指をぬるりと差し込まれたと同時に、小さく尖っている突起をゆるく吸われ、声がもれ出た。

──同じだ。

刑務所の黴臭いベッドの上で女たちが上げた声と、何も変わらなかった。
欲情した、女の声。
ロックの指はなめらかに往復し、舌は襞の奥までもぐり込んで、突起を探り出す。
意思に反して、ロックの頭に押しつけるように腰が揺れた。
「……ロッ、ク…………、や、め──」
低く抑えつけたつもりの声は湿った吐息にまみれていて、レヴィはそれを途中で噛みつぶした。
ロックはようやく顔を上げると、レヴィの脚の間に陣取った位置はそのままに、
上半身を伸ばして上に戻ってきた。
そして、避妊具に手を伸ばした。
580ロック×レヴィ 比翼・第一部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/18(木) 21:30:56 ID:wZRdb37h

「いい?」
小さく訊かれて頷くと、体のなかにロックがゆっくりとはいってきた。
体は充分に溶けていたが、それでも、ロックは慎重に腰を進めた。
体のなかにぴったりとロックが収まると、ため息がこぼれ出た。
胸を合わせたロックの息と混ざる。
ロックはこめかみに軽く口づけて、それから動き出した。
奥を探るように小さく何度か動かし、それから、ゆっくりと抜く。
とろけた内壁をなめらかに移動される感覚に、胸のあたりまでもがざわついた。
ぎりぎりのところまで抜いて、また沈める。
押しつけるように、かき混ぜる。
外側も一緒にこねられて、レヴィは思わず、自ら腰を浮かせていた。

──駄目だ。

ロックは肘で体を支えたまま、押し上げるように何度も小刻みに揺らした。
そして、レヴィの前髪を寄せ上げ、頭を撫で、眉間に口づける。
首の裏側に手をすべらせ、そこを温めるように掌で包み込む。
深く、深く、体を沈める。
レヴィの体が反り返ると、そのシーツの隙間に手を入れて、抱き寄せる。
体を密着させて、さらに揺らす。

──こんなのは、駄目だ。

レヴィは、ぎゅっと目をつぶりながら思う。
物のように抱いてくれた良かったのに、と思う。
こんなやり方ではなく。
押さえつけて、道具のように。
レヴィの意思など、どこにも入り込む余地のないやり方で。
そうしたら、自分は変わらずにいられた。
セックスなんか下らない、セックスなんか大嫌いだ。
こんなものに溺れる奴の気が知れないと、冷笑して、蔑んで──。

こんな風にされると、快楽に飲み込まれてしまう。
そして、手を伸ばしたくなってしまう。
あるはずのない幻に向かって。

肌が溶けて、汗がにじむ。
密着した肌の上で、ロックの汗と混ざる。
ロックの吐息で、首筋が熱い。
体は、まるで最後のピースを得たかのようになめらかだ。
胸の中に、何か得体の知れないものが満ちる。

レヴィは目の前の体を抱きしめたくなって手を伸ばした。
ロックの背中に腕をまわし、体を寄せて──。
でも、その腕に力を入れようとしてふと、思いとどまった。

『触るな』

あたしに触るな、と。
刑務所の中でねだってきた女に対して、レヴィはそう思った。
満足なら、嫌というほどさせてやる。
だから、あたしに触るな。
触るな。
反吐が出る。
嫌悪をなだめつつ、行為を行う。
女のぬらつく肉の感触と、雌の体臭が蘇った。
581ロック×レヴィ 比翼・第一部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/18(木) 21:32:07 ID:wZRdb37h

──ロックも同じ、か?

レヴィの伸ばした手は、空中でぴたりと止まった。
ロックも、触れられるのが嫌だと、そう思っているのだろうか。
あの時の自分と同じように。
気持ちが悪いと──。

突然、胸の真ん中を刃で貫かれたように痛みが走った。
思わず眉がゆがむ。

──嫌だ。

自分が汚い体をしているのは、動かしがたい事実だった。
日に焼けた肌は傷だらけで、ふさがった傷跡も元通りにはならず、白っぽく盛り上がっている。
自分では見えないが、何人もの男に突っ込まれた性器はきっと、醜く爛れているのだろう。
それなのに、今では欲情した雌の臭いを放ち、男の陰茎をくわえ込む準備を整えている。
汚れた女。
それは自分が一番よく分かっていた。
けれど、この男に汚いと、気持ちが悪いと思われていると、それを考えると耐えがたい痛みが体を貫いた。

思えば、レヴィはロックに、きれいともかわいいとも言われたことがない。
ただの一度も。
そんなことを言われたいわけじゃない。
嘘をつかれるのは嫌いだし、そんな甘言を吐かれても、また何を企んでいるのだろうと思うだけだ。
けれど、一度も言わないということは、──そういうことなのだろう。

きれいだとも、かわいいとも思われなくていい。
それは事実ではないから。
でも、気持ちが悪いと思われるのだけは耐えられなかった。

「レヴィ」
体を揺らしていたロックの動きが止まって、密着していた体が少しだけ離された。
瞼を上げると、ロックの黒い目がレヴィを見ていた。
「……痛い?」
あの、頭の中を覗き込むような目で訊いてくる。
「痛くねェ」
上がった息を抑えつけて低く言うと、ロックの手が眉間に伸びてきた。
「──ここ」
ぴたりと指先が触れる。
「皺寄ってる」
触れられた指の下は、確かに皺が寄っていた。
「うるせぇ」
レヴィはロックの手を払いのけた。
「下らねぇこと言ってないで、さっさと動きな」
耳元で低くささやく。
そして、きゅっと体を締めて腰を浮かせてやると、今度はロックの眉間に皺が寄った。
止まっていた腰が動き出す。
徐々に、スピードが速まる。
一旦収まりかけた汗がまたにじみ出し、体温が上がる。
うるんでいた体のなかをロックにかき混ぜられて、粘着質な水音が響く。
ロックは湿った息をひとつ吐いて、唇を重ねてきた。
582ロック×レヴィ 比翼・第一部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/18(木) 21:33:21 ID:wZRdb37h

──痛いかって?

ロックと唇を合わせ、もう気持ちが悪いと思われようと知ったことかと背中に腕をまわしながら、レヴィは思う。

──痛ぇよ。

ロックが決して自分の方を向いてくれないと知りながら、
こうして抱き合うのも、口づけを交わすのも、耳もとで名を呼ばれるのも。
全部、全部、痛い。

──あたしだけか。

ロックは痛くないのか。
こんなに胸の奥が痛むのは、自分だけなのか。
レヴィは奥歯を噛みしめて、ロックの首筋に顔をうずめた。
ひどく惨めなのに、体は更なる快楽を要求するようにうねった。
ロックが与えてくる刺激に、脳内が浸食されてくる。
噛みしめた歯の奥で、喉が高く鳴った。
舌打ちしたいような気分で息を逃がし、また止める。

「レヴィ」
再度、名を呼ばれた。
今度はロックの呼吸も乱れている。
ロックの首に巻きつけた腕をゆるめて目を向けると、乱れた髪の隙間から言われた。
「声、出せよ」
黒々とした目で、射貫かれる。
「嫌だ」
低く、うなった。
「出して」
「嫌、だ」
まだ何か言いたげなロックを、レヴィは強く睨んだ。
この男は、これ以上更に、醜い本性を暴こうというのか。
ねばついた情欲を必死に押し込めようとしているのに、
その外皮を容赦なく剥いで、どろりとした中身を白日の下に晒せというのか。
「黙れ」
それ以上は許さない、とばかりにレヴィはロックの首に腕をまわし、強く拘束した。

──今更隠そうとしてどうする。

ロックを封じ込めながら、レヴィは自嘲する。
あの目に、レヴィの内に巣くう欲望を全部見透かされているというのに、
それでも淫らな本性を知られたくないと?
まったく無駄な足掻きだ。
素直に認めればいい。
自分も雌犬以下の売女だと。
そして今すぐこの男を下敷きにして、むさぼってやればいい。
それが、この世の酸いも甘いも噛み分けた『トゥーハンドのレヴィ』だ。
男に跨って、唇を歪めて言うのだ。
「おとなしくしてな、坊や。今からレヴェッカ姐さんが天国に連れてってやるぜ」
と──。

──でも。
583ロック×レヴィ 比翼・第一部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/18(木) 21:34:50 ID:wZRdb37h

やらなければいけないことはすべて分かっているのに、体が動かなかった。
溶け合った肌を離したくない。
目の前の体を、きつく抱きしめていたい。
そして、体にまわした腕を離さないで欲しい──。

結局レヴィは、ロックに絡めた腕をほどくことはできず、ロックの下で、達した。


頭の芯まで蕩かす快楽に体を何度も収縮させながら、
ああ、こうして達したこともすべてこの男に伝わってしまうのだろうと、レヴィは歯噛みしたくなった。
しかし体は何度もすがりつくようにロックへ押しつけていた。
まわした腕は強くロックの背中を抱きしめ、体のなかまでもが離したくないというようにロックを締めつけた。

溶けて混ざって、ひとつに融合してしまっていたかのような体を剥がされると、
まるで自らの内蔵を引きずり出されたような心地がした。
体の内側は、満たされているのか、それとも空虚なのか、それすらもよく分からなかった。
分かるのは、全身が汗でびっしょりなことと、つま先までもがひどく熱いことだけだ。
重なっていた体をほどいて、ベッドの端で横向きに落ち着くと、急激に眠たくなった。
体の内側は温かく溶けて、甘い余韻が満ちている。
首の下に伸ばされたロックの腕を、レヴィは特に何も考えずに迎え入れた。
つい先ほどまで、まるで自分の一部のようだった肌がすぐ近くに戻ってきて、
なんとなくもの寂しさが埋められるような気がした。
よく考えてみればこれは「腕枕」というやつで、何を馬鹿なことしているのだと思うが、
でも、このシングルベッドは狭いので、こうして身を寄せ合っていないと落ちてしまう。
だからこれは合理的なことなのだと自分に言い聞かせたのか、どうだったか。
もしかしたらそんなことは考える暇もなく、レヴィは眠りに落ちてしまっていたのかもしれなかった。

584ロック×レヴィ 比翼・第一部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/18(木) 21:36:03 ID:wZRdb37h

 * * *

少しの息苦しさを覚えて、レヴィは目を覚ました。
体はまだ眠りを要求している。
しかし、胸いっぱいに酸素を取り込みたくなって、レヴィは瞼を上げた。
何度かまばたきをして、ぼんやりとしていた意識が固まってくると、
どうやらロックの腕がぐるりと首に巻きついていることが分かった。
逆の腕は腰に絡まっている。
ちょうどロックに取り込まれるような格好で眠っていたせいで、息苦しくなったのだろう。
レヴィは顔の周辺に隙間を作り、大きく息を吸って、吐いた。
ロックは深く眠っている。
至近距離の睫は伏せられたまま動かない。
ただ規則的な呼吸だけが体を通じて伝わってくる。
レヴィは静かに一度身じろぎをし、
こんなにくっついていてこの男は寝苦しくないのだろうかと、まだ朦朧とした頭で考えた。

それとも。

──これもサービスの一環か?

それを考えた瞬間、すぅっと頭の芯が冷えた。
途端に、息苦しさが増す。
二人の間にこもった熱で、息が詰まる。
上掛けの中に立ちこめる情事の後の臭いが、急に迫ってきた。
生温かく、漂って絡みつく。
レヴィは思わず眉をひそめた。
生臭い。
発情した動物の臭い。
それは自分の臭いだった。
ロックはラテックスの中に吐き出した。
だからこれは、全部自分の臭い。
汗とはまた違った、発情した女の──。
首にまわされたロックの手が、顔のすぐそばにあった。
そのロックの指からも、女の臭いがした。
それに気づいたとき、レヴィはたまらなく気分が悪くなった。

刑務所で女の相手をした後の自分の指にも、同じ臭いが絡みついていた。
海の水を腐らせたような、それでいてどこか甘ったるいような、吐き気のする臭いだった。
すぐに洗い流したかった。
流水で手をこすり、石鹸を泡立て、爪の間からもすべて臭いを掻き出して──。
しかし、檻の中では存分に手を洗うことすらままならない。
特に夜ではシーツの端でぬぐうくらいが関の山だ。
そうして、次の朝に目が覚めて顔をこすろうとした瞬間、あるいは煙草を吸おうとした瞬間、
指先からふいに女の臭いが漂うのだ。
レヴェッカはそのたびに頬を引き攣らせた。

──ロックも?

レヴィは息苦しさを覚えながら思った。
ロックも顔をしかめているのだろうか。
交わった次の日の朝、指先から女の臭いがしていることに気づいて、不快感に眉をひそめて?
「やれやれ」とため息をつき、念入りに石鹸で手を洗って?
一人でゆっくり寝たかったと思い切り伸びをして、肌に残った女の臭いをすっきりと洗い流して、
歯を磨き、うがいをして?
585ロック×レヴィ 比翼・第一部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/18(木) 21:37:21 ID:wZRdb37h

だったらこんなことはしなくていい。
最後まで義務を完遂するかのように腕枕などしていないで、さっさと洗えばいい。
翌朝顔をしかめるくらいだったら、今すぐ洗えばいい。
疎ましく思うくらいだったら、帰れと言っていい。
気持ちが悪いと思われるよりは、その方がよっぽどましだった。

ひどく苦しくなって、レヴィは起き上がった。
上半身を起こして、ため息をつく。
自分の体に残る女の臭いに我慢できなくなり、レヴィはベッドを抜け出した。
シャワーを浴びたくなった。
他人の部屋で勝手にシャワーを拝借するのもどうかと思ったが、
ロックは熟睡しているし、わざわざ起こして了解をとるまでもないだろう。
きっと駄目とは言わないはずだ。
そう思って、レヴィは一度使ったまま椅子の背に引っかかっていたバスタオルをさらうと、そっとバスルームに向かった。

バスルームの電気をつけてドアを開くと、
暗闇に慣れた目に蛍光灯の光が突き刺さり、レヴィは一瞬目をすがめた。
目を細めたまま中に入ってドアを閉める。
そして手に持ったバスタオルを天井近くに渡っているバーに掛けると、バスタブをまたいだ。
シャワーカーテンを引いて、シャワーノズルを手に取る。
コックをひねると、水がほとばしった。
夜はやたらと音が響く。
シャワーの水は激しくバスタブの底を叩いた。
レヴィは水の温度を調節して、ゆっくりと首もとにあてた。
温かい水がじんわりと肌の奥に染みてきた。
頭を反らせて首の周辺をじっくり温めてから、胸、肩、腕、そして反対側の肩と腕にも温水をあてる。
全身をくまなく流すと、シャワーフックにノズルを戻して、ボディソープを泡立てた。
耳の裏、脇の下、脚のつけ根、隅々まで洗う。
全身泡まみれになった後、シャワーで洗い流す。
シャンプーまでは必要ないかと、頭はただ水をかぶるだけにして、シャワーを止めた。
生乾きのバスタオルでぐしゃぐしゃと髪を拭いて、全身の水気も拭き取る。
そうしてベッドに戻ると、するりとまたロックの隣にもぐり込んだ。
586ロック×レヴィ 比翼・第一部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/18(木) 21:38:12 ID:wZRdb37h

すべて洗い流したかと思った臭いは、しかしまだベッドに残っていて、レヴィの気分は再び滅入った。
レヴィはそっとため息をついた。
自分はこんなに情けない女だっただろうか、と思う。
こんなのはもう、終わりにしたい。
終わらせたい。
こんな対価などなくても護ってやると、気前の良いところを見せるべきだ。
レヴィという銃はそんなメンテナンスなど必要のない、優秀な銃なのだと。

──なぁ、本当はどう思ってるんだ?

いっそ正面から問い質してしまいたい言葉、何度も何度も胸の内で問いかけた言葉を、
レヴィは男の寝顔に声もなく投げかけた。

同僚? 相棒? 共犯者? それとも、道具? 手段?  
けれど、娼婦ではないといい。
そう思う。
特別な女だと思っていなくても、女として見られていなくても、
それでも、自分でないといけない何かがあるといい。
金では解決できない、他の誰かでは代替不可能な、何かレヴィでないといけない理由。
ロックから金を渡されたことはない。
レヴィはそれにすがる。

──なぁ、娼婦じゃないって、思っていいんだよな?

レヴィは、物言わぬ男の寝顔に、心の中で問いかけた。

声に出すことはできなかった。
答えを聞くのが恐ろしかったから。

587ロック×レヴィ 比翼・第一部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/18(木) 21:40:35 ID:wZRdb37h

 * * *

次の朝、目覚めてみるとだるかった。
筋力トレーニングは欠かさないのに、使う筋肉が違うのだろうか、体の裏側がべったりとだるい。
異物を取り込んだ影響はまわりの器官にも及んでいるのか、体の内側にもだるさは溜まっていた。
それに、睡眠も足りていない。
結局昨晩はあまり眠れなかった。
一度目が覚めても、少し気を抜くと容易に意識がシーツに吸い取られていった。
ロックが起き出したのは分かっていながら、レヴィはなかなかベッドから離れられなかった。

「レヴィ、そろそろ起きないと」
知らないうちにまた閉じてしまっていた目をなんとかこじ開けると、
もうワイシャツにスラックスを着込んだロックが見下ろしていた。
……う、と声にならない声で返事をすると、ロックは片手をベッドについた。
「遅れるぞ」
ロックの手にかかった体重で、ベッドがへこむ。
──ったく時間にうるせェな、ビッグ・ベン。
そう言ってやりたいが、口を開くのも億劫だ。
しかし、起きなければならないのはレヴィも分かっている。
仰向けになって、目の上に片腕を乗せた。
「ほら」
その腕を、ロックに取られた。
手首を掴んで、引っ張り上げてくる。
ブラインドの隙間からもれる光が目に刺さる。
「…………かったよ、引っ張んな」
仕方なくレヴィが体を起こそうとすると、ロックはレヴィの手を握って引き上げた。

レヴィはようやくベッドの上に座り込んだ。
しかし、とりあえず起き上がったは良いものの、頭はまだゆらゆらする。
また倒れ込んでしまいたい──。
その誘惑にそそのかされそうになった時、目の前に煙草が差し出された。
「はい」
目覚ましとばかりに、ロックはレヴィの口元に煙草を寄せてくる。
勧められるままにくわえると、今度はライターの火が差し出された。
条件反射で顔を近づける。
煙草の先端に火がついたのを確認してから深く吸い込むと、
ようやく少し頭がはっきりしてきたような気がした。

レヴィはのろのろと服を着込んで、ベッドに腰掛けた。
手際よくネクタイを締めるロックを眺めながら煙草を吸っていると、
「あ、そうだ」と何事かを思い出した風のロックが、部屋の隅の古びたクローゼットを開けた。
中を探って、ロックはボストンバッグを取り出した。
それを片手に提げて、ベッドに腰掛けるレヴィのところまでやってくる。
「これ、レヴィに渡そうと思ってたんだ」
ロックは、レヴィの足下にボストンバッグを置いた。
そのボストンバッグの開いた口からは、いくつもの札束が覗いていた。
レヴィは目をみはった。
588ロック×レヴィ 比翼・第一部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/18(木) 21:42:36 ID:wZRdb37h

「……んだよ、これ」
レヴィは、ぎり、と煙草のフィルターを噛んだ。
低くうなって、ロックを見上げる。
「なんだよ、この金」
残っていた眠気は、瞬時に吹き飛んでいた。
「この前の報酬だよ、張さんからの。ほら、ガルシア君たちの一件で──」
「金の出所はどうだっていい。なんであんたがあたしにそれを渡すのか、訊いてんのはそれだ」
目を細めると、ロックは戸惑ったように首をかしげた。
「あの件ではレヴィに世話になったから──」
「『世話に』? あたしはあんたを世話したつもりはねぇよ。金で雇われたつもりもねえ」
「──そういうわけじゃ……」
「じゃあ、なんだ? 給料ならダッチから貰ってる。あんたがあたしに金を払う理由は、なんだ?」

レヴィは吸っていた煙草を灰皿にねじりつけた。
「いいか、人は意味なく金を他人にくれてやったりはしねえ。
金にはいつも理由がくっついてんだよ。靴底にへばりついたガムみてえにな。
ゴールデン・アーチのカウンターに金を置く奴はビッグマックをお望みで、
貧しい子供とやらにしたり顔で寄付する奴はイメージと自己満足を買う。
金が乗っかった天秤の針はな、いつも平行なんだよ。
──で、今の問題はこれだ。
このアンチョビみてェにぎっしり詰まってる札束は、一体どういうわけだ?
こいつはバーで一杯おごるのおごられるのってェ話とは訳がちがう。
火ぃつけりゃサニーサイドアップのひとつでも焼けそうなこの札束の理由は?」
レヴィがロックの目を見据えると、困ったように眉が寄った。
「レヴィ、裏なんかないよ。勘違いしないでくれ。
今までだってずっと世話になってた。この前の一件だけじゃない。
いつも世話になってるのに、何も礼ができてなかったから──」

──「いつも」?

ひく、と頬が歪むのを感じた。
「……『いつも』って、なんだよ、ロック。『世話』って、なんのことだ」
レヴィはベッドから立ち上がって、ロックをねめつけた。
形良く結んだばかりのネクタイを、ぐいと掴み上げる。
「──『世話』って? どんな『世話』だ? あん?
……あんたのラブドールになってることか? は、今になってただ乗りに気が咎め出したか?」
「──ラブドールって、レヴィ、なに言ってんだ、意味が──」
「こんだけありゃあ立派な高級娼婦が買えるぜ。今度からそっちを買うんだな」
吐き捨てて、どん、とレヴィはロックの胸を突き飛ばした。
「レヴィ、待てよ、いい加減にしろ。俺は娼婦だなんて、そんなつもりは──」
手首を掴んできたロックの手を、レヴィは乱暴に振り払った。
「うるせェ。あんたがどんなつもりかなんて知るか。どうでもいいんだよ、そんなことは。
もう、我慢なんねェんだよ。確かに今まで世話してやったさ。それはあんたがひよこだったからだ。
細っこい脚でぴよぴよ歩くのが危なっかしくて見ちゃいられなかったからだ。
だが、いつまで下の世話までしてやらなきゃならない? もうそろそろ、巣立ちの時期だ。
──銃にはなってやる。……けど、てめぇの寝床はてめぇで探せ」
あたしは、こんなのはもう、御免だ。
低く続けると、ロックは掴んでいた手首を静かに離した。
「……嫌だったのか、レヴィ」

──嫌かって?

歪んだ唇の端から、乾いた笑いがもれた。
「……………………ああ」
「──本当に?」
ロックが探るように覗き込もうとする。
レヴィはその視線を避けるように顔をそらした。
「……ああ。嫌だった」
589ロック×レヴィ 比翼・第一部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/18(木) 21:43:51 ID:wZRdb37h

嫌だった。
彼の目が決して自分の上でとまってくれはしないことも、
そうと分かっていながら膨らむ期待を抑えきれないことも、
どんどん自分をコントロールできなくなっていくことも、
醜い本性をさらけ出してしまうことも、
惨めで情けない自分を突きつけられることも。
すべてが嫌だった。

レヴィはうつむいたまま、唇を強く引き結んだ。
古びた床の木の羽目板を睨みつける。
ロックはしばらくの間沈黙していたが、やがて、小さくひとつため息をついた。
「……分かった」
そして、一歩、下がった。
「……ごめん、レヴィ。──今まで、悪かった」
レヴィの頭の上から、いかにも申し訳なさそうな声が落ちてきた。
「──謝んじゃねェよ」
黒いインクの染みが広がるように、レヴィの胸に苦いものが満ちていった。

──謝るようなこと、したのかよ。

だが、それは皮肉というよりは、相手から否定の言葉を引き出すための、
最後の最後まで事実を認めたくない駄々っ子が突っかかっているだけの物言いにすぎず、
それを意識したとき、レヴィの苦みは痛みに変わった。

レヴィはロックの部屋のドアを開けた。
外の廊下に出て、ドアを閉める前に一言、言い残す。
「もう、ここには来ない」
「…………ああ。分かった」
敷居を挟んで向かい合ったロックは、それだけ言った。
顔を上げられなかったので、ロックがどんな表情をしていたのかは分からなかった。




590名無しさん@ピンキー:2010/11/18(木) 21:53:55 ID:nA8R5yTY
もうなんか胸が締め付けられる…しかしとてつもなくGJ!
続き期待して待ってます
591名無しさん@ピンキー:2010/11/18(木) 22:11:25 ID:YGdZ5J/9
うおーせつねえ!!!
あと近藤さんをラテックスって書いてるのもそれっぽくていいw
どうでもいいとこ突っ込んですまぬw
GJでした。
592名無しさん@ピンキー:2010/11/19(金) 04:07:24 ID:o/6DCVCP
神神ーー!gjすぎますぜ!!
591が言ってるように台詞がいいんだよな
金渡された時のレヴィのいい様もいい!てかロック喋ったと思ったらこんな事に笑
593名無しさん@ピンキー:2010/11/19(金) 18:39:20 ID:Xvufb0aO
きてたああああああ!GJ!!!J!
うああ切ねえ
続きどうなっちゃうの!
594名無しさん@ピンキー:2010/11/21(日) 10:12:05 ID:s6foQBkZ
そしてスレがとまった・・・・・・・・・・・・・・・
595名無しさん@ピンキー:2010/11/21(日) 11:38:39 ID:1CQaQjR7
まあゆっくり待とうぜ。
原作は止まってるのに書いてくれる神がいるってのは凄く有り難いことだ。
しかもこのクオリティときたもんだ。
596名無しさん@ピンキー:2010/11/21(日) 13:08:54 ID:1rwAifoZ
しかも原作での最新ネタ(ムショでの男役経験)を
上手に取り入れてくれてるのも嬉しい

つくづくここの職人さんたちは素晴らしいな
597ロック×レヴィ 比翼・第一部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/21(日) 21:17:32 ID:2Uj4fvu5

>>589の続き


<注>
レイプ、近親相姦あり


598ロック×レヴィ 比翼・第一部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/21(日) 21:18:53 ID:2Uj4fvu5


 * * *

その後の一日をどんな風にして過ごしたのか、はっきりとは記憶にない。
ただ何も考えずに、目の前の仕事だけをこなした。
ロックとは顔を合わせたくなくて、なるべく視界に入らないように動いた。
そんな風にしていたらいつの間にか夜になっていたので、さっさと自分の下宿へと帰った。
帰って、自分の部屋のベッドに腰を下ろすと、どっと疲労感に襲われた。

──失敗した。

レヴィは暗い部屋の中で頭を落とした。
下手を打った、と思う。
小さく頭を振って、レヴィはため息をついた。

あそこでは、金を受け取るべきだった。
おお、わりィな、あんがとよ、と。そう笑って。
金は力。
そう豪語する無神論者。
金の亡者。守銭奴。それが自分だ。

昔、嫌というほど思い知ったではないか。
金さえあれば。
金さえあればすべては解決。
信用できるのは金だけ。


あれは、十を少しばかり過ぎた頃だった。
深い海の底から小さな泡が浮かび上がるように、レヴィの脳の奥底から記憶が蘇る。


 * * *


レヴェッカは毎晩のように街角に立っていた。
眠らない街ニューヨーク、チャイナタウンの裏通り。花売り娘として。
しかし、売っているのは「花」などではなかった。
街角に立ち、変態オヤジどもが声をかけてくるのを待つ。
稼ぎがないと、もう一人の変態親父に家に入れてもらえない。
冷たい風が吹き抜ける街角で、震えながら立ちすくむ。
満足に着る物もないので、ひどく寒い。
体に合わないぶかぶかの服の間を風が吹き抜け、体温を奪う。
レヴェッカは、いつも寝不足で空腹だった。
肉の薄い体は体温を保っていてはくれず、レヴェッカは枯れ木のような腕で自分を抱いていた。
はやく温かいところに行きたい。
でも、行きたくない。
どうすることもできずに、レヴェッカはただ冷たい街角で震えていた。

やがて、品定めをするような目で男が近寄ってくる。
レヴェッカの前で立ち止まる。
見上げた顔は、覚えていない。
霞がかかったようにおぼろだ。
しかし、言うことは皆同じ。

「お嬢ちゃん、いくら?」

その声を、絶望とともに聞く。

599ロック×レヴィ 比翼・第一部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/21(日) 21:20:00 ID:2Uj4fvu5


そこらでむしってきた雑草と同程度のはした金を掴まされて家に戻ると、ようやく食べ物にありつける。
ただし、家で待ち構えている変態親父の相手をした後だ。
「出せ」
何を、とも言わず当然のように差し出す父の手に、よれよれの金を乗せてやる。
「ふん、こんだけか」
蛭のように唇をうねらせて幾枚かの紙幣を数えると、
父は自分の薄汚れたジーパンのポケットにその金をぐしゃりとねじ込んだ。
そして、レヴェッカを睨む。
「今日は何人相手した」
酒臭い息がレヴェッカの顔にかかる。
「ふた、り…………」
その臭気に顔をそむけて答えると、突然、横っ面を平手で張り飛ばされた。
身構える暇もなく床に倒れ込むと、胸ぐらを掴み上げられる。
「あぁ? 二人、だぁ? てめェ、時間見てみろ! まだ十二時もまわってねェだろ!
これからが稼ぎ時だろうが! なに帰ってきてんだ、クソボケが! 時計も読めねェのか!
たったの二人で帰ってきてんじゃねェぞ!」
そしてもう一度、顔を張られる。
口の中が切れて、じわりと生臭い血の味が広がった。
「…………なに見てんだよ。あぁ? なに見てんだ! その目はなんだ!」
父は、グローブのように分厚い手でレヴェッカの顎を掴んだ。
「反抗的な目じゃねェか。あ? 許さねェぞ。俺に反抗すんのは許さねェからな!」
顎を握りつぶすような強さで掴んでから、がん、と乱暴にレヴェッカの頭を固い床にぶちあてた。
そして、レヴェッカの薄い腹の上に馬乗りになる。
ボタンをむしり取るように服を開く。
「しょうがねェから今日はこれで許してやるよ、レヴェッカ。外は寒いもんなァ? ん?
お前も出たくねェだろ? 感謝しろよ、レヴェッカ」
ズボンを下ろされ、下着も剥ぎ取られる。

──ふん、帰りが何時だろうが、稼ぎがいくらだろうが、結局いつもこうして突っ込むくせに。
てめェが今ヤりたくなっただけだろうが、とレヴェッカは唾を吐きかけてやりたい気分になったが、
ここで何か言えば、さらに暴行がひどくなるだけだ。
──考えるな。何も考えるな。
レヴェッカは必死で感情のスイッチを切ろうとする。

しかし、体を押さえつける父の声は、レヴェッカを現実に引き戻す。
「この穴に男のディック挿れてたのか?」
膣に、太い男の指がねじ込まれる。
「ぶっといヤツをよぅ。ん?」
「──ぃ、」
すでに無理矢理挿れられ、遠慮会釈なく奥を突かれていたせいで、内側が炎症を起こしたように腫れていた。
痛い、の声が出かけたが、必死で噛み殺した。
痛がれば、余計に面白がらせるだけだ。
600ロック×レヴィ 比翼・第一部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/21(日) 21:21:01 ID:2Uj4fvu5

父はバックルをがちゃつかせてベルトを外した。
中途半端にずり下ろしたジーパンの隙間から、膨張した陰茎を取り出す。
「舐めろ」
レヴェッカの口もとに陰茎の先を突き出す。
小便と精液が入り交じったような臭気が鼻をついた。

──またか。

気が進まなかったが、拒絶という選択肢はない。
レヴェッカは、のろのろと口を開いた。
陰茎の先が口の中に入ってくる。
「もっとだ」
もっと大きく口を開けろと言われ、レヴェッカはしぶしぶ従った。
「歯ァ立てんなよ」
言ったかと思うと、激しく奥まで突っ込まれた。
口の中が陰茎でいっぱいになり、息苦しい。
生臭い臭気が顔のまわりに立ちこめる。
父は両手でレヴェッカの頭をとらえ、腰を前後させた。
床に頭を押しつけ、激しく抜き挿しを繰り返す。
レヴェッカの小さな口で、いびつに肥大化した陰茎をしごく。
唾液が絡む。
歯が触れたら殴られる、その恐怖感だけで口を開けるが、顎は限界だ。
喉の奥を突かれて、レヴェッカはえづいた。
食道が痙攣して、胃がきゅっと縮む。
胃液が遡ってくる。
喉がにがく、熱い。
しかし、ここで吐いたら殴られる。
レヴェッカは喉の方にまで侵入してこようとする陰茎に窒息しそうになりながらも、
必死で胃液を飲み込んだ。

父はレヴェッカの髪を乱暴に掴んで、強く腰を押し込んだ。
髪を掴まれて持ち上がった顔に、何度も陰茎を突きたてる。
引っ張られる髪の痛さと喉の奥の苦しさに、呻き声がもれた。
その声を押し込めるように、父はレベッカの頭を両手で持つと、喉の奥まで陰茎を埋め込んだ。
狭い喉の奥をこじ開けるようにして無理矢理押し込んでくる。
激しい嘔吐感に、涙がにじんだ。
泣きたくない。
泣きたくないのに、反射的に出る涙を止められない。
耐えきれずに、水に溺れた人のような音が喉からあふれた。

気道を塞ぐ陰茎が一旦抜かれると、唾液と胃液が混ざったような液体が糸を引いた。
息継ぎをしようとしたが、その暇もなくまた奥まで突っ込まれる。
喉を塞がれ、呼吸ができない。
掴んだ頭を思い切り引き寄せ、ねじこんでくる。
レヴェッカが苦痛に顔を歪ませるのを楽しむように、何度も何度も繰り返す。
酸欠で頭がぼうっとしてきた頃、頭が床に戻される。
そして、万力のような手で固定される。
固い床に押しつけられた後頭部が痛い。
父はレヴェッカの顔に馬乗りになって、何度も上下した。
苦しい。
でも、どこにも逃げられない。

涙が、目尻を超えた。
601ロック×レヴィ 比翼・第一部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/21(日) 21:22:07 ID:2Uj4fvu5

父は陰茎を引き抜くと、ぐい、とレヴェッカの脚を大きく開かせた。
レヴェッカの唾液でべたべたになった陰茎を片手で握り、膣口にこすりつける。
「今日はどんな風に挿れられた? 犬みてェに後ろからか?」
ぬるぬると、先端をこすりつけてくる。
「それとも、こういう風に、か?」
ず、と押し込まれ、レヴェッカは体をこわばらせた。
傷口を開かれるかのような痛みと、体の内部に押し入られる不快感。
悲鳴を上げて蹴飛ばしてやりたくなるが、ぎゅっと目をつぶってこらえる。

「レヴェッカ、突っ込まれる気分はどうだ? ん? 今日お前が相手した男と、どっちがイイ?」
太い陰茎を動かされて、まだ育ちきっていない体がきしんだ。
悲鳴の源が体の中で膨らむ。
「ん? 俺の方がイイだろ?」
分厚い手がレヴェッカの薄い腰を掴んだ。
自由を根こそぎ奪うように、がっしりと。

陰茎が前後する。
狭い内側をこじ開けられる。
体の中がこすれる。
乱暴に奥を突かれる。
ひどく内蔵が痛んで、顔が歪んだ。
腰を動かされるたびに、鈍い痛みが腹の底に響く。
子宮なのか腎臓なのかよく分からないが、臓器の位置を動かされているのかと思うほど苦しい。
これ以上はもう無理。
入らない。
それなのに、無理矢理陰茎を根本まで押し込まれて、レヴェッカは呻き声を上げた。
背中に冷たい汗がぶわっと噴き出し、骨盤がみしみしときしんだ。
けれど、腰を引き寄せるように掴まれているため、逃げられない。
内臓が押しつぶされる。

──痛い、やめて、お願い、やめて、痛い。痛い、お願い、痛い、やめて、痛い、痛い、痛い──。

頭はただ苦痛と懇願で埋め尽くされる。
けれど、「やめて」と言ってみたところで
その願いを聞き届けてくれることは決してないと分かっていたので、
レヴェッカはただ歯を食いしばって耐えた。
602ロック×レヴィ 比翼・第一部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/21(日) 21:23:35 ID:2Uj4fvu5

「なぁ、レヴェッカ、お前は俺のもんだぞ」
父は腐った息でレヴェッカの全身を絡め取るように言った。

俺のもんだ。俺のもんだ。レヴェッカ、俺のもんだぞ。俺のもんだからな。

熱に浮かされたように繰り返し、レヴェッカの腰を掴み、何度も陰茎を往復させた。
血が流れ出してもお構いなく、突きたてた。
陰茎を赤くぬめらせ、血の泡がたつほどに。

逃がさねえ。逃がさねえ。絶対逃がさねえ。逃がさねェぞ、逃げたら殺すぞ、いいか、殺すぞ──。

そう言いながら、父はレヴェッカの首に手をかけた。
がさついた手に力が込められ、首が絞まる。
たちまち顔に血がのぼって、頭が破裂しそうになる。
まわりの音が遠のき、頭蓋の内側が脈打つ。
圧迫する手を両手で引き剥がそうとするが、毛ほども動かない。
息ができない。
開いた口が、空気を求めるように喘ぐ。

──たすけて。たすけて。誰か、たすけて。

レヴェッカはまじないのように唱えた。
たすけて欲しい「誰か」の顔も思い浮かばないままに。
母はもうすでに亡く、レヴェッカに優しくほほえみかけてくれる者は誰もいなかった。
その汚れた小さな手を握ってくれる者も、骨っぽい体を抱きしめてくれる者も、誰も。
「誰か」が魔法のように現れて、レヴェッカをゴミ溜めから救い出してくれることは、決してなかった。
首を絞める手は、重たい鋼の首輪のようだった。
レヴェッカを家畜のようにつなぎとめる、決して外れない鋼の首輪。

たすけて。
たすけて。
たすけて──。

レヴェッカの声は、誰にも届くことはなかった。

603ロック×レヴィ 比翼・第一部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/21(日) 21:24:34 ID:2Uj4fvu5

そんなレヴェッカにとって、学校は唯一の避難所だった。
持って行くランチボックスはなく、
キャンディの包み紙のように色鮮やかな服に身を包んだ同級生はまぶしすぎて目が眩む。
いつもぶかぶかの薄汚れた服を着て、ぼさぼさの頭のまま教室の隅に座るレヴェッカを、
ふんわり甘い匂いさせて高い声ではしゃぐ同級生たちは遠巻きにして見ていた。
いや、「見て」すらいなかったのかもしれない。
レヴェッカは「そこにいないもの」として片づけられていたのかもしれなかった。
それでも、学校は誰かの暴力に怯えないで済む唯一の場所だった。
代数、幾何、生物、地学、アメリカ史、スペイン語……。
こんなものを覚えても役に立つことなどないと分かっていても、
貸し与えられた教科書をめくっていると、その間だけは現実を忘れられる気がした。


しかし、その安寧にも終わりがきた。
「お前、誰にでもヤらせてんだって?」
日が暮れかけた校庭の隅っこで、レヴェッカが金網に寄りかかってしゃがみ込んでいると、
数人の男子生徒に取り囲まれた。
のろのろと顔を上げると、薄笑いを浮かべる顔が並んでいた。
中には、どことなく見覚えのある顔もいた。
同じクラスか、隣のクラスか。
まともに顔を覚えている奴など一人もいなかったので、
レヴェッカにとってはそれが誰であってもどうでも良いことだったが。

無言で睨みつけていると、スニーカーの先で小突かれた。
「立てよ」
眉をひそめると、小突く足が増えた。
「立てっつってんだろ」
仕方なく立ち上がって靴底が当たったところを手で払っていると、取り囲む輪が狭まった。
「なァ、お前、ヤりまくってんだろ?」
肩を掴まれ、後ろの金網に押しつけられる。
下種な好奇心ではち切れんばかりの顔がレヴェッカを囲み、見下ろしていた。
「うるせェ」
レヴェッカは肩を掴む手を振りほどき、体で輪をこじ開けた。
足早に立ち去ろうとすると、後ろからまた肩を掴まれ、囲まれた。
「なぁ、待てよ」
「見たぜ、お前が財布のふくらんでそうなオヤジとしょぼいホテルに入るとこ」
「毎晩立ってんだってなァ、あそこの通りに」
にやにやと、薄笑いが取り囲んでいた。
その顔をぐるりと見回してから、レヴェッカは片頬を歪めて笑った。

「だから?」

唇の端を吊り上げると、取り囲んでいた少年たちは一瞬ひるんだ様子を見せたが、
肩を掴んでいた一人が突然、高く笑い出した。
それにつられて、他の者も笑い出す。
604ロック×レヴィ 比翼・第一部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/21(日) 21:26:14 ID:2Uj4fvu5

「面白ェ」

最初に笑い出した少年は、レヴェッカのど真ん前に顔を寄せて言ったかと思うと、
次の瞬間、もの凄い力でレヴェッカの腕を引っ張った。
レヴェッカの体がぐらりとかしぐ。
「な……っ」
振りほどこうとしたが、後から後から手が伸びてきて、引きずられるように体が持っていかれた。
「やめ……っ!」
体を掴む腕を引き離そうとしたが、まったくびくともしなかった。
そのうち、逆に両腕も拘束された。
突っ張ろうとする足はむなしく砂の上をすべるばかり。

引きずり込まれたのは、校舎の裏手だった。
背の高い樹木が立ち並び、藪が生い茂っていて薄暗い。
隅の方に、前年のキャンパス・フェスティバルででも使われたのだろう、
何かを解体した廃材が乱雑に積み重なっているだけで、人ひとり通る気配がない。
露出した土の上に、レヴェッカは仰向けに引き倒された。

「……の、っざけんな──」
両手両足をばたつかせようとしたが、押さえつけられた腕の上に膝で乗られて、骨が悲鳴を上げた。
ちょうど固い膝蓋骨が腕の骨に食い込んで、神経が麻痺するほどに痛んだ。
そうしているうちに脚も拘束され、トレーナーをめくり上げられた。
トレーナーの下はすぐ地肌だ。
剥き出しになった腹と胸がすぅすぅと寒かった。

「うわ、きめェ」
レヴェッカの素肌を見た少年が顔を歪めた。
服の下は、毎日のように殴られ、蹴られるせいで、一面にどす黒い痣が広がっていた。
黒ずんだ痣の間に、赤く鬱血した痕や青く変色した皮膚が混ざって、まだら模様となっていた。
気持ち悪いなら見るな、と思ったが、トレーナーは更に胸の上までめくり上げられる。
少年の頬がうねって、下卑た笑いの形を作った。

「見ろよ、こいつ、ノーブラだぜ!」
レヴェッカの体を、いくつもの目が覗き込んだ。
どろどろとしたタールが広がるように、蔑む笑いが沸き上がった。
少年の手はレヴェッカに向かって伸びてきた。
青白くふくらみ始めた乳房を掴んだかと思うと、乱暴に握る。
まったくの手加減なしに握られ、レヴェッカの喉から思わず悲鳴がもれた。
ふくらみかけの乳房の奥には固いしこりがあった。
ただ何かが触れただけでも痛かった。
なのに、そのしこりを握りつぶすかのように掴まれて、レヴェッカは激しく顔を歪めた。
「そうやって誘ってんのかよ」
「ちげーよ、すぐヤれるようにだろ」
「ミキディーよりもお手軽だなァ、おい」
「ラッピング剥がす手間がねえってか」
そんな言葉と笑い声が体の上で飛び交うのを、レヴェッカはどこか他人事のような気分で聞いていた。

──そうか、もうみんな、ブラしてんのか……。

そんなことをぼんやり思っていた。
605ロック×レヴィ 比翼・第一部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/21(日) 21:27:39 ID:2Uj4fvu5

ほとんど食べていないせいで手足は棒のように細く、体にはあばらが浮いているというのに、
胸は如実にふくらんできていた。
服の上からでも分かるようになってきた変化を、レヴェッカはぶかぶかの分厚い服でごまかしていた。
レヴェッカのまわりには下着を買い与えてくれる人などいなかったし、
同じ年頃の女はどうしているのだろうとちらりと思うこともあったが、
それを知ったところで下着を買う金はなかった。
ふくらんできた胸を、父は、名前も知らない男たちは、下卑た目で見て揉み、舐め、いじくりまわした。
女になどなりたくない。
そんなレヴェッカをあざ笑うかのように、胸はふくらみ、腰はくびれ、尻は曲線を描き出した。
体が女に変わろうとしている──。
初めて、傷によるものではない血の染みを自分の下着に見つけた時、
レヴェッカは絶望に似た気分で首を落とした。
父親に知られてはならない──。
レヴェッカはひとり、血で汚れた下着を洗った。
けれど、無駄だった。
すぐに、血のついた下着、使い終わったパッドやタンポンは、商品価値を持つものだと知らされた。

「月経は、女性が子供を産める体になったというしるしです。
 性交は愛を確かめ合い、互いを慈しみ合う行為なのです。
 そうして愛し合った結果に生まれるのが、子供です。
 みなさんも、そうやって生まれてきたのですよ」

もっともらしい笑顔で言う保健体育の教師の言葉が、ひどく鬱陶しかった。
腹の底で、どす黒いかたまりがむくむくと膨らむ。
愛? 慈しみ合う?

──あれの、どこが?

腹の中で膨らんだ黒いものが、胸を浸食し、喉もとまで迫る。
渦巻いて、膨張する。
体の中で、暴れる。
黒いかたまりは体の中だけに留まっていられず、今にも胸を食い破ってあふれ出てしまいそうだった。
レヴェッカは、叫んでしまいかった。
喉が切れて血がにじむほどに。
にこにこと嘘くさい笑顔を振りまく教師、
隠しきれない好奇心を覗かせながら神妙な顔をして席についている生徒、
そんな奴らの目の前で、ファックの現場を洗いざらいぶちまけて、
これのどこが「愛」なのだと、これのどこが「慈しみ合う行為」なのだと、
あたしに分かるように説明してみろと、そう大声で叫んでしまいたかった。

606ロック×レヴィ 比翼・第一部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/21(日) 21:29:11 ID:2Uj4fvu5


レヴェッカは大勢の少年の手に押さえつけられながら、必死にもがいた。
「──っざけんじゃねェぞ、離せ!……離せ!」
しかし、少年といえども押さえつける力は男のもので、抵抗はかなわなかった。
レヴェッカの体はがっちりと地面に固定され、穿いていたズボン、そして下着も剥ぎ取られた。
叫ぶ口もとは掌で塞がれた。
体重をかけて押さえてくる掌を振りほどこうと首を左右に振ると、ふいに圧迫がやんだが、
その一瞬後、無理矢理口に何かを詰め込まれた。
歯をこじ開けられて、布が押し込まれる。
──下着だ。
今しがた脱がされた、自分の下着。
気づいたが、すぐに上からダクトテープを貼られて、吐き出すことはできなかった。

「誰が先にいく?」
「どうする?」
「俺がいく。お前らしっかり押さえてろよ」
「おう」
「もっと脚開かせろよ」
「こうか?」
「もっとだよ、もっと」

開かされた脚の間に人の気配。
ベルトを解く音。
剥き出しにされた股間に、生ぬるいものがあてがわれる感触。
体が拒絶するようにこわばった。

「……くそっ、入らねェな」
「もっと思いっきり突っ込めよ」
「やってるよ、バカ」
「お前、実はヴァージンなんじゃねェの?」
「てめぇと一緒にすんな、ボケ」
「唾でもつけろよ」
耳の端に入った言葉通り、指が乱暴に唾をなすりつけていった。
その後、再度、強引に押し込まれる。

──痛…………っ。

先端を侵入させることに成功した少年は、遠慮なく奥まで腰を進めた。
レヴェッカは痛みに声を上げそうになったが、喉の奥の呻き声はすべて口の中の布が吸い込んだ。
体の中に無理矢理侵入され、みぞおちの方まで引き裂かれたかのような痛みが走った。
少年は、固く閉じようとするレヴェッカの体を、何度も大きく突き上げた。

──や、め……!

体を貫く痛みに、レヴェッカは拳をぎゅっと握り締めた。
痛いのは、自分がまだ子供で、大人の男の陰茎を受け入れられるだけの体ができていないせいだと思っていた。
けれど、相手が大人だろうと子供だろうと、痛みは何も変わらなかった。

──くそ、ガキだって痛ぇじゃねえか……。

レヴェッカは固く目をつぶり、込み上げる吐き気をこらえた。
無遠慮に前後されて、腹の底がずくずくと痛んだ。
607ロック×レヴィ 比翼・第一部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/21(日) 21:29:51 ID:2Uj4fvu5

「あ」
腰を振っていた少年が動きを止めて、声を上げた。
「血だ」
傷になっていたところが開いたのだろう。
レヴェッカの股の間には、ひりひりと焼けつくような痛みが張りついていた。
「マジだ」
「やっべぇ」
「汚ねェ!」
沢山の目が、レヴェッカの股に注がれた。
血を流しながら陰茎を突き立てられている股に。

「どうしたんだよ、ビビっちまったのか?」
「バカ言うな。──却って興奮するぜ」
ヒュウ、と口笛がとんだ。
途端、激しく奥を突きたてられた。
ほとんど闇雲と言っていいほどの勢いで、狂ったように前後する。
レヴェッカの喉からくぐもった悲鳴がもれた。
「へへ、すべりが良くなったぜ」
少年はレヴェッカからにじむ血を利用して、めくらめっぽうに突きたてた。
そして、レヴェッカの体の奥で、生ぬるい体液を吐き出した。

「次は誰だ?」

一人が終わって箍が外れたかのように、少年たちはレヴェッカに群がり、突きたて、押しつぶした。
押さえつけられ、ねじ曲げられ、レヴェッカは自分の体がどうなっているのかすらもよく分からなかった。
少年たちは代わる代わるレヴェッカにのしかかり、裏返し、逆流した精液をしたたらせる膣を見ては笑った。
その場にいたのは七人だっか八人だったか。
何人いたのかも、何回突っ込まれたのかも覚えていない。
けれど、「今度はうしろからだ」と言った声、あれは最初に突っ込んだ奴と同じ声だった。

はやく終われ、はやく終われ──。
レヴェッカはそれだけを、壊れたテープレコーダーのように繰り返した。


突然、瞼の裏が、ぱっと白く光った。
強い光に瞼を上げてみると、レヴェッカの上で腰を振る少年の向こうに、カメラが見えた。
それを認めた瞬間、またカメラのフラッシュが光った。
顔をそむけると、その顔を捉えられて無理矢理カメラの方に向かされた。
「ほら、ちゃんと見ろよ」
「記念撮影だぜ」
「いつも撮らせてんだろ?」
そうして、姿勢を変え、角度を変え、少年たちは何枚も何枚もレヴェッカを撮った。

608ロック×レヴィ 比翼・第一部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/21(日) 21:31:22 ID:2Uj4fvu5


少年たちがようやく満足した頃には、日はもう完全に暮れていた。
体の拘束が解けてもレヴェッカは起き上がることができず、ただ横向きになって体を丸めた。
体中がひどく痛んだ。
性器だけではない。
腕も、脚も、背中も、体中が打撲と擦り傷や切り傷でずきずきと痛んだ。
しかし、こいつらの前でいつまでも無様に転がっていたくはない。
レヴェッカは無理矢理起き上がって、
口の上に貼られたダクトテープを剥がし、口内に詰められていた布を引きずり出した。
どうしよう、これをまた穿くべきだろうか。
考えながら、とりあえず胸の上でぐしゃぐしゃになっていたトレーナーを引き下ろした。

「おい」
座り込むレヴェッカを、少年が見下ろしていた。
「分かってんだろうな、このこと誰かに言ったら承知しねェぞ」
「誰かにチクってみろ、そんときゃ、この写真学校中にバラ撒くぞ」
レヴェッカは、腫れた唇を歪めて短く笑った。
「……なに笑ってんだよ」
レヴェッカは、腹の底からかすれた声をしぼり出した。
「……それで脅してるつもりか? チキンボーイ」
好きなだけ嬲っておいて、誰かに告げ口されるのが怖くなったのだろうか?
──そんなことで、このあたしがビビるとでも?
淫売と蔑みながら、なんとも甘く見られたものだとレヴェッカは思う。
「ずいぶんとタマが小せェなぁ? てめぇのタマはチェリー並だぜ、かわいい坊や。
てめぇはお家で優しいママのおっぱいしゃぶってミルクでも飲んでな、この童貞野郎が」
少年の顔にみるみる血がのぼり、赤くなった。
その顔を見上げながら、レヴェッカは目を細めて笑った。
途端、側頭部に衝撃がきて、地面に倒れ込んだ。
頭をサッカーボールのように蹴られたのだということは、倒れ込んでから理解した。

その倒れたレヴェッカの目と鼻の先に、ぽい、と紙切れが二枚、放り投げられた。
両手を使ってのろのろ身を起こすと、
しわしわになったアレクサンダー・ハミルトンが二人、レヴェッカを見上げていた。
10ドル紙幣だった。

「拾えよ」
少年のスニーカーが、紙幣の上に乗る。
靴底がアレクサンダー・ハミルトンを踏みつける。
「金が欲しいんだろ?」
じり、とスニーカーがにじる。
紙幣がぐしゃりとよじれる。
にじって、そして離された後の紙幣は、土で汚れていた。
レヴェッカは凍りついてしまったかのように、指一本動かせなかった。
609ロック×レヴィ 比翼・第一部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/21(日) 21:32:43 ID:2Uj4fvu5

──ふざけんな、金なんかなくったって、あたしは言わない。

こいつらにされたことなんか、誰にも言いたくない。誰にも知られたくない。
ふざけんじゃねぇと、レヴェッカは今すぐこの紙幣を真っ二つに破り捨ててやりたかった。

「ほら、拾えよ」

くつくつと、笑いの波が広がった。
見上げなくたって分かる。
蔑みの目がレヴェッカを見下ろしている。

──破れ。

今すぐこの金を掴み上げ、破り捨てて、唾を吐いてやれ。

──破れ。破れ。破れ。

けれど、レヴェッカの指は依然としてぴくりとも動かなかった。

この金さえあれば、食事ができる。
駄目になってしまった下着も買える。
レヴェッカは朝から何も食べていなかったし、下着を買いたいなどと言おうものなら、また体に痣が増える。

そして何より、この金があれば、今夜、街角に立たなくていい──。

──行きたくない。
610ロック×レヴィ 比翼・第一部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/21(日) 21:33:56 ID:2Uj4fvu5

レヴェッカは、見知らぬ男に体中をべたべたと触られるのも、舐めまわされるのも、
しゃぶらされるのも、性器をいじくりまわされるのも、突っ込まれるのも、
もう、すべてが嫌だった。
この金があれば、これを父親に渡せる。
一回、苦難から逃れられる。
一晩、平和に夜をやり過ごせる。
それに、もしかしたら、ちょっとぐらいは温かいものを食べられるかもしれない。

──行きたくない。

その時、風が吹いた。
かさりと、軽い紙幣が吹き飛ばされそうになる。
レヴェッカは、反射的にその紙幣を手で押さえていた。
頭で考えるより前に、手が伸びていた。
レヴェッカのまわりで哄笑がはじけた。
ぎりぎりまで空気を入れた風船が破裂したかのように、一気に、はじけた。

「雌犬が」

ぺっ、と。
うなだれたレヴェッカの頭に唾を吐きかけると、少年たちは踵を返した。
スニーカーの足音が遠ざかってゆく。
その足音を聞きながら、レヴェッカは手の下にある紙幣を握り締めた。
本当は、破り捨ててやりたかった。
破り捨てて、舐めるなと唾を吐きかけてやるのは自分のはずだった。
でも、できなかった。

レヴェッカは、足音が完全に消え去ってしまっても、顔を上げられなかった。
手の中の金を、ぎり、と握り締めて、うずくまった。
固い土に額をこすりつけ、レヴェッカは思った。
ああ、金が欲しい、と。
喉から手が出るくらい、その手で喉が裂けてしまうくらい、金が欲しい。
そう思った。

"IN GOD WE TRUST"──『我ら神を信ず』

この10ドル紙幣の裏側に書いてある通り、神はこの中にいるのだろう。
神は金。金は神。
金はすべてを救う。
金さえあれば、こんな暮らしも、こんな惨めな思いもしなくていい。

金さえあれば。
金さえあれば。
金さえあれば──。

レヴェッカは、ひとり取り残された暗い校舎の裏側で背中を丸め、静かにすすり泣いた。

611ロック×レヴィ 比翼・第一部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/21(日) 21:35:08 ID:2Uj4fvu5

 * * *

レヴィは、暗い自分の部屋でひとり思う。
あの頃は、金さえあれば、と思った。
金さえあれば惨めな暮らしから抜け出せると、そう思っていた。

──けれど、今は。

金など虚しい。
ロックから金を渡されたあの瞬間、レヴィの内で沸騰したのは、怒りに似た何かだった。
自分の価値からすれば、釣りが出るくらいの金だった。
でも、あれを見た瞬間、頭の中が焼き切れるほど腹立たしくなった。
その怒りは、時間が経つごとに虚しさに変わっていった。

レヴィは、もう昔のように空腹で眩暈を覚えることも、冷たい風に凍えて歯を鳴らすことも、
悪夢のような夜に怯えることもない。
自分を切り売りしなくたって、腹はふくれ、屋根のあるところで眠ることができる。

けれど、それだけ。
結局、一番ほしいものは金では買えない。
神は金の中にもいない。
それが再確認されただけだった。


レヴィは、信じたかったのだ。
ロックとの間には、金では片づけられない何かが存在していると。
それがレヴィの本当に望むような形ではなくとも、
ロックが生きるために自分を必要としているなら、それも良いと思った。

あの男は、「お前がもし銃だとすれば、俺は弾丸だ」と言った。
その言葉が意味するところは何なのか、レヴィには正確には分からない。
けれど、必要とされている、と思った。
その一瞬、滅びてもいいと思った。

どうせ行き着く先は泥の中。
だったら、一度くらい他の誰かのために行動するのも悪くない。
そう思った。
たった一人、自分を必要とした誰かのために行動して、それで終わったとしても、悪くない。
この男なら良いかと思った。
だから、体全部を明け渡した。

──でも、あんたはあたしじゃなかったな。
612ロック×レヴィ 比翼・第一部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/21(日) 21:35:57 ID:2Uj4fvu5

ロックは、一度もレヴィを乱暴に抱いたことがなかった。
体温を伝えるように触れ、輪郭を確かめるように体をなぞった。
そんな風には、誰もしなかったやり方で。
初めて他人の体温を心地良いと思った。
レヴィは自分の首筋に触れてみた。
掌を押しあて、そのまま肩の方にすべらせる。
ロックの手の感触が思い出された。

けれど、もう、おしまい。
ロックは面倒なお役目から解放され、レヴィのプライドは回復される。
歪んだ関係は、もう、おしまい。
お互い、ハッピー。

──これで良い。

レヴィは思う。
ずっと、終わらせたかった。
終わらせねばならなかった。
それがついに、かなった。
喜ばしい日だ。
大変に、喜ばしい日だ。

──これで良い。

レヴィは暗闇の中、頭を落として、繰り返した。

──これで良い。

爪が肌に食い込むほどに強く自分の腕を握り締め、繰り返した。

これで良い。
これで良い。
これで、良い──。

何度も何度も、繰り返した。





第一部・了
613名無しさん@ピンキー:2010/11/21(日) 21:39:08 ID:XV2qxO8t
>>612
うわあああああ
GJJJJJJ
だけどレヴィが可哀想すぎて第二部に超期待!
614名無しさん@ピンキー:2010/11/21(日) 21:43:20 ID:1rwAifoZ
GJだがこれはキツイ…
次回でロックによる救済があって欲しい

続きが気になって眠れぬ夜を過ごす事になりそうだ
615名無しさん@ピンキー:2010/11/21(日) 21:58:54 ID:dZg/PVNS
この臨場感ときたらハンパないな・・神の才能にただ感服
非凡な構成力と表現力、いやーこのスレにきて良かった
616名無しさん@ピンキー:2010/11/21(日) 23:41:56 ID:xt6zEwef
うぎゃあ…暗いな…こりゃ抜けんわ

だがGJ
すげえ臨場感で、悔しさ、辛さがダイレクトに伝わってきた
ハミルトンとか小道具も流石だと思う
617名無しさん@ピンキー:2010/11/23(火) 10:21:16 ID:/l+hVWEk
GJ

だが暗いのに耐えられないオツムなのでレヴィたんのうなじをくんかくんかぺろぺろしてくる
618名無しさん@ピンキー:2010/11/23(火) 14:38:58 ID:pwUZH0e+
こういう暗いのもすげぇ好きなんで嬉しい
超GJ!

読んでると辛いんだが、読むのやめられない文章力に脱帽
最後の方読んでからまた読み返すと切なさ倍増だな
619名無しさん@ピンキー:2010/11/23(火) 22:53:54 ID:CqIHl1jX
レヴィの学校行ってる描写はじめて見た!
でもスラムの学校こええよお
620名無しさん@ピンキー:2010/11/24(水) 20:44:54 ID:hESjFWFS
読むの遅いから乗り遅れたがこれは・・・・・GOD JOBすぎる。
さすが神、、胸が抉られるようだぜ。
レヴィたんの不器用さ、脆さが愛おしすぎて生きるのが辛い!

第一部乙でしたぜ。第二部も裸の大将で待ってるぜ。
621ロック×レヴィ 比翼・第二部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/24(水) 21:33:00 ID:JGru3wun

>>612の続き


622ロック×レヴィ 比翼・第二部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/24(水) 21:33:59 ID:JGru3wun



ベッドに、レヴィの髪の毛を見つけた。
細く長いそれは、ベッドの片隅でゆるい曲線を描いてシーツに張りついていた。
ロックは手を伸ばし、指先でつまみ上げた。
ふわりと毛先が泳ぐ。
明かりにかざすと、光に溶けるような栗色をしていた。
ロックの黒くてしっかりとした硬さをもつ髪とは、まったく違った。
やわらかくて軽い、女の髪だった。

ロックはその髪を見つめ、しばし逡巡した後、枕元のサイドチェストに着地させた。
ゴミ箱に捨ててしまうことはできなかった。

レヴィは数日前、この部屋を訪れた。
このベッドに横たわり、体をしならせ、透明なため息をこぼした。
シーツは広がる彼女の髪を受けとめ、汗を吸い込んだ。

ロックはこれまで幾度となくレヴィと体を重ねた。
言葉の隙間を埋めるように口づけ、抱きしめ、つながった。
触れるたびにとらわれた。
きめ細かな肌を、一瞬だけもれるかすれた声を、熱いなかを、
知れば知るほどに、レヴィは女なのだと、どうしようもないくらいに女なのだと思った。
それは、ほとんど苦しいと言ってもいいほどだった。
やめられないと思った。
もう、離れられないと思った。

でも、もう彼女は来ない。
このベッドに横たわることはない。
たぶん、これから先も、ずっと。

『嫌だった』

レヴィのその一言で、二人の情事は終わりを告げた。
唐突に、あっさりと。

ロックは、自分のベッドにゆっくりと仰向けに横たわった。
ワイシャツとスラックスが皺になると思ったが、どうせもう今夜は他に出かけることもない。
次の日の分のストックはあると、ロックはそのままネクタイをゆるめた。

『嫌だった』

彼女の言葉が蘇る。
苦い顔をして、吐き捨てた。
623ロック×レヴィ 比翼・第二部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/24(水) 21:35:03 ID:JGru3wun

彼女がセックスに対して嫌悪感を抱いているのには、なんとなく気づいていた。
最初のうちは、ただ触れただけで身構えるように体がこわばった。
戸惑ったように目線が泳ぎ、
どこに留めたらいいのか分からない、そう言うかのように手はあてどなく空中をさまよった。

喉もとを掌で包み込むと、鋭く息を吸って、ぎゅっと強く目をつぶった。
瞬間的に引いた頭が枕に沈み、首には筋が浮き上がった。
慌てて手を離すと、ゆっくりと瞼が開いた。
少し目尻の吊った大きな目が見上げる。
レヴィの目は、暗い湖のように平面だった。

──どうして今、息吸った?

その問いは、暗闇の奥から見つめるレヴィの瞳の前に、口から出ることなくしぼんでいった。
レヴィの目には、なんの表情もなかった。
期待も、戸惑いも、怯えさえも。

──今、何されると思った?

ロックは指先でそっとレヴィの首筋に触れた。
人差し指の腹に、大動脈の脈動を感じた。

──首なんか絞めない。

何も言わずにただ見上げるレヴィの前では、どんな言葉も、小石のように固く喉の中で詰まった。
ロックは指先でレヴィの首筋をなぞった。
そして唇を近づける。
わずかにそむけられた彼女の首のつけ根に口づけると、小さく息を飲む気配がした。
唇の下で、規則的に血管が脈打つ。

──俺は、首なんか絞めないよ、レヴィ。

レヴィの反応は、それがもう条件反射になってしまっていることを伝えていた。
梅干しを見れば唾がわく、それと同じように。
レヴィに触れるのは、全身に火傷を負った怪我人に目隠しで触れることと同じだった。


それでも、回数を重ねるごとに、こわばる体は段々とやわらかくなっていった。
腕は自然に背中へまわるようになり、首筋へ手を寄せると、その手を巻き込むように頭が揺れた。
肌をなぞると、レヴィの手もつられたようにロックの肌の上をすべり出す。
小さくもらす声の中には、甘いものが混ざっているように感じた。
相変わらず、レヴィは何も語らなかった。
彼女がひとり抱えるものは、今も変わらずそこにあるのだろう。

──けど、俺とはこの行為も平気なのでは、と──。

自惚れた。
彼女のセックスへの抵抗感がそう簡単に払拭できるとは思わない。
けれど、自分との行為は受け入れてくれているのではないかと、
ロックはそんな楽観に似た期待を持っていた。
それが呆れるほど脳天気な認識であったことを、ロックは思い知らされた。

彼女の古傷をほじくり返していることはよく分かっていた。
レヴィは何度体を重ねても、眉を歪め、眉間に苦痛をためていた。
熱くうるんだ体を探ると、声をこらえ、喉の奥に痛みを詰め込んだような音で鳴いた。
そして、そむけた顔を枕にうずめ、手で覆い隠した。
山の中で偶然出会った野生動物が、さっと物陰に逃げ込むように。
624ロック×レヴィ 比翼・第二部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/24(水) 21:36:10 ID:JGru3wun

ロックは、彼女のいないベッドでうつぶせになり、枕に顔をうずめた。
枕からは、シャンプーと煙草の香りに混じって、レヴィの匂いがした。
数日前のレヴィの匂いを、枕はまだしっかりそれと分かるほどに留めていた。
ロックは呼吸を深くした。
レヴィの匂いが鼻腔に満ちる。
やわらかいような、甘いような、温めたミルクを思わせる女の肌の匂いだった。

ずくん、と──。

体が疼いた。
急に血液の流れが速くなる。

数日前のレヴィの姿が蘇る。
レヴィは、首筋を舌で舐めあげると体を震わせ、
なかに指を沈めると湿った息をもらし、とろとろとした体液をあふれさせ、
やわらかく往復させると抵抗するかのように膝を締めた。
指を深く挿しこんだまま乳頭を吸いたてると吐息混じりの声をあげ、体をしならせた。
熱い粘膜に包まれた指がきゅうっと温かく締めつけられる。
呼吸の色が深くなる。
頭の奥に、レヴィの声が蘇った。

体の芯が騒ぐ。
心臓が速い。

ロックは枕にうずめていた顔を上げると、仰向けに体を回転させ、ベルトのバックルを外した。
内側からスラックスが持ち上げられていることは分かっていた。
くつろげたスラックスの中に手を入れると、レヴィを思い出した陰茎が血液を集中させていた。
トランクスの布を突き破るほどに昂ぶっている。
触れただけで、腰が揺らいだ。

ロックは、レヴィの姿を思い出す。
日に焼けた首筋から白い胸もとにかかって黒々と踊るトライバル模様、
つんと上を向いて、片手に余るほどのやわらかな乳房、
つぶしたアルミ缶のようにへこんだ腹、
腰の曲線、掌に吸いつくような尻、締まった脚、ほそい足首。
彼女が白いシーツの上で震え、揺らぎ、のけぞる様を思い出す。

レヴィの鍛えられた太ももを押し開き、
濡れた襞の間に舌先を割り込ませると、彼女は息を飲んだ。
途中でとぎれた制止の声は無視した。
温かい襞の隙間を何度も往復すると、ロックの体を挟み込むレヴィの脚が震えた。
なめらかな肌に挟み込まれる感触を心地良いと思いながら、レヴィの体を開く。
濡れた小さな突起を露出させる。
唇で包み込み、舌先で転がす。
やわらかく、押しあげる。
レヴィは、手の甲を自分の口に押しあてた。
噛みつくように強く。
止まった呼吸に、体の内側もきつく締まった。

スラックスの中から硬くたち上がった陰茎を取り出した手は、既に上下に動いていた。
彼女の姿を思い浮かべるごとに、手の動きは速まっていった。
体が彼女の感触を思い出す。
舌先に、レヴィの熱さが蘇った。
625ロック×レヴィ 比翼・第二部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/24(水) 21:37:19 ID:JGru3wun

ロックは、レヴィのきつく締まった体をほぐすように指をすべらせながら、
今すぐにでも、口もとを押さえるあの手を引き剥がし、シーツの上に縫いとめて、
強く押さえつけてしまいたい衝動に駆られた。

抵抗するレヴィの手首を掴んで、体重をかけて拘束し、たっぷりと濡れているところに指を埋める。
二本ではきついレヴィのなかに無理矢理押し込んで、閉め出そうとする体に突きたてる。
根本までは入らない指を押しすすめ、ぬめりを利用してひと挿しごとに深く沈める。
とろけた体液を絡ませた二本の指を奥まで挿し込み、内側の圧力に逆らうように押しひろげ、ぬるりと抜いて、また奥へ。
激しく往復させて、粘る水音を聞く。
そして肘から深くねじこめば、レヴィの体は震えるだろう。

指を引き抜いたら、脚を大きく開かせ、一気に体を沈める。
苦痛に歪む顔を見ながら、腰を前後させる。
締まった脚を抱え上げて、何度も奥を突く。
ロックにも絡みついたレヴィの体液が二人の肌の間でとろけた水音をはねさせるほど、激しく。
レヴィが苦しげに声をあげる。
ロックの下から逃げるように体をうねらせても、構わず続ける。
締まった細い腰を握りつぶすようにつかまえて、自らの腰を打ちつける。
荒々しく突きたて、彼女の一番敏感な突起もこね上げるように揺する。
激しく侵入を繰り返す陰茎から体を守るように、レヴィの体からは透明な体液が染み出すだろう。
ぬるりと絡みついて、快楽が増す。
いっそうとろけた体内を突きまわす。
何度も奥に沈む陰茎に、体液があふれ出て周囲を濡らす。
ロックの根本、陰毛、レヴィの太もものつけ根に至るまで。
外側までもがぬるぬるとすべる。
しなる彼女の体に自分の体をこすりつける。
腰はいよいよなめらかで、とどまるところを知らない。
レヴィが耳元で悲鳴に似た声をもらす。
呼吸が止まる。
レヴィの体が強く締まる。
締めつけられて、快楽が一気に高まる。
何度も締めつけられる。
まるで脈動するように。
レヴィの体もしなやかにうねる。
痙攣する彼女の体の中を思うさま突く。
強い締めつけに、達しそうになる。

けれど、まだだ。

ぬるりと引き抜く。
達して、くたりとなった彼女を裏返し、腰を引き上げて四つん這いにさせる。
形よくきゅっと丸い尻を割って、露出した鮮やかな粘膜に先端をこすりつける。
ぬめる輝きを放つ陰茎を、そのまま沈める。
すでにたっぷりと濡れた陰茎は、簡単に彼女の体を割って、するりとはいっていくだろう。
彼女がシーツを握りしめる。
背中を震わせる。
肩胛骨が浮く。
それを見ながら、くびれた腰を掴んで、彼女をシーツに埋め込む勢いで腰をぶつける。
肉の音がするくらいに激しく。
彼女のまろやかな尻の間を激しく陰茎が行き来するのを、眼下に見る。
丸くやわらかい尻を両手で掴んで、更に割る。
彼女の粘膜に、自分の陰茎が沈んでいく様を見る。
透明に濡れて、隙間から体液があふれ出す。
奥まで挿れてかきまわす。

あぁ──、と。

レヴィは、体そのものがあげた悲鳴のような声をシーツにこぼすだろう。
626ロック×レヴィ 比翼・第二部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/24(水) 21:38:41 ID:JGru3wun

ロックの手は、激しく上下していた。
彼女の体のなかの熱さを、締めつける強さを、とろける内側を知る体が、今も彼女を求めていた。
つながって、貫いて、責めたてて──。

レヴィは痛みをこらえる姿すら美しく、
そんな彼女を見ていると、ロックは時々めちゃくちゃに抱いてしまいたくなった。
けれど、ロックの首筋で息を震わせる彼女と肌を合わせていると、そんなことは到底できそうもなかった。

ロックは、今にも達しそうになっていたところで手を止めた。
数日前の彼女の様子が蘇る。

レヴィはすがりつくように腕をまわしてきて、泣き声のような吐息をもらした。
彼女の息が浸食するように肌の奥へ染み込んでくると、
こらえる声にすら欲情していることに、ひどく疚しい気分になった。
レヴィの苦しげな声が脳に突き刺さる。
彼女を抱いていると、まるで、痛みそのものを抱いているような気がした。

──レヴィ、抱え込むな。

ひとりで抱え込むな。
彼女は、顔をうずめた首筋で歯を食いしばった。
胸が大きく上下して、喉まで出かかった声が胸の奥に戻っていったのが分かった。
同時に体もこわばる。
体全体がきつく締まる。
細く吐き出す息が震える。

密着させていた体を離すと、レヴィはロックの体の下で苦痛の色をのせていた。
眉を歪め、瞼はきつく閉じられていた。
「……痛い?」
訊くと、
「痛くねェ」
レヴィはますます額の皺を深くした。
ロックを見る目は、ほとんど睨むようだった。

──そんな顔して、「痛くない」?

「──ここ、皺寄ってる」
眉間に指をあてると、乱暴に振り払われた。
「うるせぇ」
そして、心底腹立たしげに、ざらついた声でささやいた。
「下らねぇこと言ってないで、さっさと動きな」
意図的に体を締めて腰を動かし、彼女は強制的に話を終わらせた。

──どうしてそうなんだよ、レヴィ。

苛立ちに似たささくれが、胸の中でちくりと引っかかった。
何か言うと露悪的な態度を取る彼女が、ひどくもどかしかった。
痛いなら痛いと、苦しいなら苦しいと、言えばいい。

──その顔の、どこが「痛くない」んだ。
627ロック×レヴィ 比翼・第二部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/24(水) 21:40:01 ID:JGru3wun

けれど、彼女に何と言えばいいのか、それを考えるたびに言葉は喉の奥で固まった。
「俺は分かってるよ」?
「なんでも聞くよ」?
「つらかっただろ」?
「泣いてもいいよ」?
思いつく言葉はいかにも軽薄で、彼女の痛みには到底届かないように思えた。
分からない。
日本のぬるま湯の中で育った自分には、彼女の痛みは分からない。

ロックにできることは、ただ彼女を抱きしめることだけだった。
俺はちがう、俺はお前を痛めた男とはちがう、俺はお前を傷つけない、傷つけたくない。
そう心の中で繰り返しながら。

言葉を発しない彼女は、ひどく脆く感じた。
やわらかい内側に腰を沈めるたびに、レヴィの体は波うった。
胸の奥から空気を押し出すようにして息を吐き、そしてつめた。
呼吸を止めるごとに体はきつく絞まり、
否応なく高まる快楽に腰を速めると、限界まで止めた息を鋭く吐き出した。
背中にまわった腕はきつく絡みつき、抱きつかれているというよりはむしろ、しがみつかれているように感じた。
締まった体を抱き寄せ、温かくなめらかにうるおう内部をかき混ぜると、耳元で小さく声がもれる。
吐息の隙間に挟まった、少しかすれた高い声が鼓膜を揺らす。
熱い息が肌を湿らせる。
腕に力がこもる。
理性が焼き切れそうになった。
毀してはいけない。
無理矢理抱いたら、この女はきっと毀れる。
思い切り突きたててしまいたいのをぐっとこらえ、それでも我慢できずに何度も深く体を沈めた。
それは、熟れた果実の皮を剥いて、ずぶりと指を突きたてるような、背徳感に似た快楽だった。

記憶の中のレヴィは、今ここにいるかのように鮮明だ。
一旦止まったロックの手は、もうとっくに動き始めていた。
意識はレヴィの体の感触をありありと再生させる。

ぬめる内側、絡みつく熱、強い締めつけ、ぬるま湯があふれる。
湿った吐息、噴き出す汗、しなる背中、薄く開いた唇から声がもれる。
抱きしめて、引き寄せて、突きたてて。
彼女が苦しげな声をもらそうとも、もう止まらない。
脳が、純粋な快楽一色に染まる。

──レヴィ。

絶頂は一瞬。
どくん、と体が脈打った。
彼女の内部が強く締まると同時に体も硬直する、あの瞬間の感触までもが蘇った。
レヴィの体は何度も波うち、それとともに止まっていた息をとぎれとぎれに吐き出す。
震える息が熱く耳をくすぐる。
何度も、収縮を繰り返す。
その後ようやく体のこわばりが解けて、ゆっくりと腕の力がゆるむ。
やわらかい胸の間には汗がたまっていて、こめかみには髪の毛が張りついている。
指の腹でこめかみをなぞると、レヴィの睫が上がる。
目が合う。
彼女の目の縁が、ほんの少しだけ、ゆるんだ気がした。
628ロック×レヴィ 比翼・第二部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/24(水) 21:41:21 ID:JGru3wun

目を開けると一人だった。
ロックは一人自分のベッドに横たわり、重ねたティッシュを手にしているだけだった。
ほんの数秒前には彼女の息づかいまでをもすぐそこに感じられたというのに、今ではその名残すらない。
腕の中に肌を熱くさせて荒い呼吸を繰り返すレヴィはいなく、体は急速に冷えていった。
ロックは間抜けな自分の格好に今更ながらきまりが悪くなり、
ティッシュを丸めてゴミ箱に捨て、スラックスのジッパーを上げた。

レヴィはことが終わった後、抱き寄せると素直にすり寄ってきた。
たぶん半分以上眠っていて、外面を取り繕うだけの余力がなくなっていたのだろう、
目が覚めている時には考えられない仕草で寝場所を探った。
その仕草は、何か寒がりな動物が温かいところを求めて身を寄せてきているようで、おかしくなった。
電池が切れたようにことんと眠りに落ちるレヴィを見ていると、いとしさがつのった。

けれど、すべてがもう終わった。
「嫌だった」とレヴィは言った。

──痛ませていたのは、俺か。

痛みを与え続けていたのは、自分だった。
彼女の苦しみに気づいていながら、ずべて自分に都合の良いように解釈していた。
彼女の過去に理由を求めて。

──俺は、お前に何て言ったらいい?

「ごめん」?
「悪かった」?
申し訳なさは本当だった。
しかし、その舌の根も乾かぬうちに彼女の姿で自?に耽ったのも事実だった。

──洗濯、しなきゃ……。

枕にも、シーツにも、上掛けにも、そこここにレヴィのかけらが残っていた。
彼女の残り香がロックを苛んだ。

けれど、いつか、これも忘れるのだろうか?
彼女の匂いも体の感触もすべて忘れて、何の痛みも覚えずに、ただの同僚として?
口づけを交わしたことも肌を重ねたことも、すべてをなかったことにして、平然と乾いた関係を?

苦しいのと忘れてしまうの、一体どちらがつらいのだろう──。

ロックは再度うつぶせになってため息をついた。
枕からは、相変わらず、レヴィの匂いがした。




629名無しさん@ピンキー:2010/11/24(水) 22:39:36 ID:Q4H/6Kfm
神またキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
GJ!
心が痛くなる…流石だぜ
630名無しさん@ピンキー:2010/11/24(水) 23:05:57 ID:R6y0t4Lu
神すげえよ神・・
男と女で育った環境がこうも強烈に真逆だと解りあうのが難しいったらないね
ロックあと一押しが足りねえぜ
631名無しさん@ピンキー:2010/11/24(水) 23:21:49 ID:SDftvjr7
神すぎてやばいな......
GJJJJJJ!
ああ、この二人は幸せになって欲しいわ......マジで
632訂正  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/25(木) 00:16:54 ID:fMaiOZTP
すみません、文字化けしてました。

>>628 下から10行目
「自?」は「じとく」。
「?」は、さんずいに賣、の文字でした。
633名無しさん@ピンキー:2010/11/26(金) 00:43:49 ID:1JPR7qkW
物凄く切ないのに、レヴィの残り香付きベッドを所持する
ロックが憎くて羨ましいと思ってしまった俺

…ちょっと姉御に冷えたブリヌイ渡してくる
634名無しさん@ピンキー:2010/11/26(金) 03:16:17 ID:G8Ma51II
なんて確実な自殺方法なんだw
635ロック×レヴィ 比翼・第二部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/27(土) 21:39:14 ID:hjjQJ+XW

>>628の続き

*本投下分にエロなし


636ロック×レヴィ 比翼・第二部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/27(土) 21:39:48 ID:hjjQJ+XW


 * * *

日々は、こともなく過ぎていった。
レヴィと言葉を交わす回数はめっきり減り、業務後に呑みに行ったり食事をしたりすることもなくなった。
目が合うこともほとんどない。
だが、それだけだった。
仕事は相変わらず不定期ながらも次々と舞い込み、ラグーン商会の面々は黙々と依頼を片づけた。
ラグーン商会のボス、ダッチの指名で、ロックはレヴィと行動をともにすることもあったが、
会話は必要最小限、事務的なやりとりをするだけで終わった。
レヴィが遠くなった。
変わったことはそれだけ。
他は何も変わらず、朝がきて、夜になった。
一日一日と日々は規則的に時を刻み、そのカウントが七回たまれば一週間が経つ。
それをもう一度繰り返すと、二週間。
静かに、時だけが過ぎていった。

637ロック×レヴィ 比翼・第二部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/27(土) 21:40:59 ID:hjjQJ+XW


そんな折、依頼が入った。
依頼主は張。
香港に本部を置くチャイニーズ・マフィア、『三合会』からの依頼だった。

「やぁ、諸君。お使いを頼まれてほしい」
張はまるで茶飲み話をするかのような気軽さで、アポイントメントもなくラグーン商会の事務所に突然現れた。
聞けば、ミャンマーまで武器を輸送して欲しいと言う。

いざなわれるままにその武器を保管しているという倉庫まで繰り出したラグーン商会の四人は、
腹の底からため息をついた。
「……これ、全部か」
倉庫の中を覗いたダッチが低くうなった。
「ああ、そうだ」
張がジタンに火をつけた。
彼のかけた黒いサングラスに、ライターの火が反射した。
「………………まったく、簡単に言ってくれるぜ、張さん。
M16、AK47、RPG、RPD……おまけにSA-7ときた。
──たまげたな。こいつは赤ずきんちゃんのお使いとは訳が違うぞ」
ダッチは倉庫の中に山と積まれた銃器を検分し、宙を見上げて嘆息した。

「おや、これぐらい朝飯前だと思ったんだがなぁ。俺は過大評価していたかな、ダッチ?」
飄々と煙を吐く張に、ダッチはやれやれとばかりに首を横に振った。
「で、行き先は」
ジタンをくわえた張の唇がにやりと笑いの形に変わった。
「シャン州第二特区」
「──ワ州か」
「その通り」
こともなげに言う張に、ダッチが大きな掌で額を覆った。
黙って聞いていたレヴィの眉も、ぴくりとほんの少し跳ねた。
ベニーだけが、透明なレンズの奥から品定めをするようにじっと腕を組んで、話の行方を見守っていた。

ワ州──ワ州連合軍。ミャンマーのシャン州に拠点を置く少数民族の自治区。
彼らがミャンマー政府の管轄下にない山の上でケシ栽培に精を出していることは、
ロックも聞いたことがあった。
少数民族と言うよりは少数武装勢力、もっと言えば反政府ゲリラと表現しても差し支えないだろう。
アヘン天国『黄金の三角地帯』の情勢は今、
麻薬王クン・サがミャンマー政府と停戦合意を結んで投降して以来、流動化していた。
クン・サ率いるムアン・タイ軍の残党は存在していたが、
『麻薬王』の地位はもはやクン・サのものではなかった。
彼に代わって麻薬王国のトップに躍り出たのが、ワ州連合軍だった。
彼らはムアン・タイ軍に対し、麻薬生産地の割譲を求めていた。
それに反発したのは、ムアン・タイ軍とそのシンパだけではない。
一番それを面白くなく思ったのは、クン・サと地下で繋がっていたミャンマー政府だった。
クン・サとムアン・タイ軍、ミャンマー政府、ワ州連合軍、その他の少数民族。
ミャンマー国内は、これらすべてをぶちこんで火にかけた鍋のようだった。
クン・サの一派は三合会のお得意様だったようだが──。
638ロック×レヴィ 比翼・第二部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/27(土) 21:41:59 ID:hjjQJ+XW

「……なるほど。手堅いな、張さん」
「まあな。ビジネスだからな」
「ビジネス、ね。
──ワ州連合軍が、SA-7。随分と豪勢な買い物だ。
……俺としちゃあ、『政治』と言われた方がよっぽどしっくりくるぜ」
ダッチは、鼻筋一点で支えているサングラスのブリッジ部分を、中指で押さえた。
張はダッチを一顧だにせず、くわえたジタンに手をやった。
「『麻薬王』にはいてもらわなきゃ困る。そう考える奴はごまんと存在する」
「餌場の匂いには恐ろしく敏感な──いや、餌場すら自ら作り出さないといけないご時世か?
まったく世知辛いぜ。
……二枚舌は、どこのお偉いさんも得意とするところ、というわけか」
中国語で書かれた弾薬のケースを、ダッチはコンバットブーツのつま先で軽く小突いた。
「その通り。この世は持ちつ持たれつ、さ。
……しかし、あまり知り過ぎない方が幸せでいられることだってあるぞ、ダッチ。
ウェイターがそこのまかない飯を旨く食うコツはな、厨房を覗かないことだ」
「……ああ、心得てるさ、張さん。今のはただの独り言だ」
「──そうか。そいつは野暮な突っ込みを入れて悪かったな」
ぴ、と張は吸っていたジタンを指ではじいた。
地面に落ちたそれを、顔が映り込みそうなまでに磨き上げられた革靴でにじり消す。

ダッチはくるりと張の正面に向き直った。
「──さて。俺としちゃあ早急に張さんの信頼に応えたいところだが、
あいにくうちにはラグーン号と、そろそろくたびれてきたプリムス・ロードランナーしかなくてね。
陸路を輸送する足がすぐには用意できねえ。悪いが、今日の明日のって訳には──」
「ああ、それか。それは心配ない」
張は、なんだそんなことか、とばかりに肩をすくめた。
「足ならあるぞ。こちらで用意させてもらった」


こっちだ、と先陣をきって颯爽と歩いていく張の後ろを、ぞろぞろと四人揃ってついて行ってみれば、
倉庫と同じ並びにあった屋根付きの大型車庫の中に、ピックアップ・トラックが二台、鎮座していた。
「──シボレーのC/Kか……」
ベニーがピックアップ・トラックの鼻先についたボウタイを見てつぶやいた。
「そう、ラグーン商会の皆さんには、快適なドライブをお約束しよう」
腕を広げて請け合ってみせる張を見ていると、
何かやり手のセールスマンにうまいこと丸め込まれているような気がしてくるが、
それでもラグーン商会にとってはありがたい話だ。

「準備がいいな、張さん。真っ白いナプキン掛けてフルコースでも食ってる気分だぜ」
ダッチが腰に手をやった。
「──で、リミットは」
「目的地に五日以内」
「……五日か」
「いつ出られる?」
「……そうだな、明日には」
「よし、分かった。──それでは諸君、よろしく頼んだぞ」
そう言って張は、来た時と同じように飄々と、黒いロングコートの裾をはためかせて帰っていった。

639ロック×レヴィ 比翼・第二部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/27(土) 21:43:14 ID:hjjQJ+XW


張が帰った後は、積み荷をピックアップ・トラックに搭載する作業で一日が終わった。

翌朝ロックが集合場所に行ってみると、そこには壁にもたれかかって悠々と煙草をふかす張の姿があった。
「──お、これから出発か?」
「ええ、そうですけど、……どうしたんです? 一人ですか?」
周りを見まわしてみても、一人の黒服の姿も見えないばかりか、
いつも張のそばに陰のようにつき添っている彪の姿もない。
「ああ、そうだ」
頷いて、張は旨そうにジタンを吸い込んだ。

「──張さん」
背後からダッチの面食らったような声がした。
「……今度は何の用だ」
ロックが振り返ってみると、そこにはダッチが仁王立ちしていた。
防弾ベストから伸びた太い両腕を腰にあてて立っている。
そのダッチの後ろには、通りの向こうから歩いてくるベニーの姿も小さく見えた。
派手なアロハは遠くからでもよく目立つ。
「何の用とはご挨拶だな、ダッチ。俺がこうして自ら会いに来たってのに」
張はダッチに向き直ると、薄く笑いを浮かべた。
ダッチの眉が寄せられる。
「俺は、その会いに来てくれた理由が気になってたまらないんだよ、張さん」
「なぁに、そんな身構えるほどの理由はない」
張は唇の端にジタンを引っかけたまま、両方の掌を上に向けて広げてみせた。

「俺も、一緒にドライブがしたくなったのさ」



最後に現れたレヴィは、張の姿を認めると「おや」と意外そうな顔をしたが、すぐに駆け寄っていった。
「どうしたんだよ、張の旦那!」
「おお、レヴィか。俺も乗せてってもらうことになった」
「へぇ? この車に? どういう風の吹きまわしだい?」
「吹きまわしも何も、ただの商談さ。
それに、ワ州の連中にはワ語か中国語しか通じんぞ。お前たちだけじゃどうにもならんだろう。
お前は中国系のくせに中国語はからっきしだからなぁ」
「ふん、中国語なんざ喋ったら舌が絡まっちまう。んなもん喋れなくたって地球はまわるぜ。
──にしても、他のは? 
いつもチキンナゲットのケチャップみてェにくっついてくる奴らが見えねえな」
レヴィはきょろきょろとあたりを見まわした。
張は吸っていた煙草を二本の指で挟んで口から外すと、肩をすくめてみせた。
「俺だってたまには羽伸ばしたいのさ。それに、奴らは奴らで忙しいんだよ」
「……へぇ? 随分とのんきなもんだな、『三合会』の奴らは。
ボスが一人でふらふら物見遊山してるのを放し飼いとはな」
「なんだ、勝手に『一人』にしないでくれよ、レヴィ。
頼りになるボディガードがいるじゃないか、今ここに」
──は、と笑ったレヴィの肩を、張はぽんと叩いた。
「頼りにしてるぞ、トゥーハンド」
レヴィは首を傾けて張を見上げた。
「ふん、まだケツから卵の殻が取れたぐらいにしか思ってねェくせに」
「おや、取れてたのか? そいつは知らなかった」
「──言ったな!」
640ロック×レヴィ 比翼・第二部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/27(土) 21:44:29 ID:hjjQJ+XW

和気藹々と談笑する二人を尻目に、ロックはダッチとベニーの方へ歩み寄った。
ダッチは近寄るロックに気づくと、指でピックアップ・トラックを指し示した。
「ロック、先頭はベニーと俺。お前はレヴィと張さんと一緒に後ろだ」
──レヴィと張さんと、か。
ちくりと胸の奥に引っかかるものを感じたが、ロックは頷いた。
「ああ、分かった」
ダッチはレヴィと張の方を向くと、話に花を咲かせている二人に向かって声を張り上げた。
「レヴィー! お前はロックと一緒に後ろの車両だ! 張さんもそっちに乗ってくれ!」
レヴィと張は二人同時に頷いた。
頷いて、また何事かを話し始める。
ロックはただぼんやりと、その様子を眺めていた。

「……ック、ロック」
突然肩を揺すられて、ロックはダッチに声をかけられていたのに気づいた。
「……あぁ、ごめん。なんだい?」
「──大丈夫か」
「……何が?」
ロックは笑った。
「大丈夫だよ」
頭ひとつ分は背の高いダッチを見上げると、ダッチは沈黙した。
黒いサングラスの向こうから、じっとロックを見下ろす。
太くがっしりした首はぴくりとも動かない。
「………………ならいい。出発するぞ」
ダッチはそれだけ言って、ベニーとともにピックアップ・トラックに乗り込んだ。

ロックがもう一台の運転席に腰を下ろすと、張が後ろのドアを開けて後部座席に乗り込んできた。
ロックは、レヴィのために助手席の鍵を開けた。
しかし、彼女は当たり前のように後部座席のドアを開け、張の隣に落ち着いた。
ドアが勢いよく閉まる。
ロックは静かにひとつ息を吐いてから、また施錠し直した。
なんだか無性に胸が奥がざらついた。
みぞおちの底に砂が堆積していくような心地がした。

──仕事に私情を持ち込むな。

分かってはいたが、最近とんとお目にかかっていなかった笑顔で張と会話を交わすレヴィを見ていると、
じわじわと胸苦しさは増していった。
ロックは二人を映すバックミラーから、そっと目を外した。
641ロック×レヴィ 比翼・第二部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/27(土) 21:45:38 ID:hjjQJ+XW

タイの南部に位置するロアナプラからミャンマーまでの道のりは長い。
途中何度か休憩を挟みつつ、やっと北部の山岳地帯にたどりついた時には、もう周囲は夜の闇に包まれていた。
「あー、長ぇなぁー。座りっぱなしで尻が痛くなってきちまった」
「そうぼやくな、レヴィ。のどかなドライブ、願ったりじゃないか」
「退屈なんだよ、旦那」
「お? 俺が隣にいながら『退屈』とは、言ってくれるじゃないか、レヴィ」
レヴィは、はは、と笑った。
張の旦那にはかなわねェなぁ、そう言いながら笑うレヴィの気配を、ロックは頭の後ろで感じていた。
ロックもずっと運転し通しで、疲労が全身にたまってきていた。
首や肩がだるく、目の周辺はもやもやと重い。
適度に会話でもしていた方が疲れが紛れるのだが、なんとなく二人の会話に入っていく気になれず、
ロックは前方に意識を集中させた。
張は気を利かせてか何度かロックにも話を振ってきたが、そうすると今度はレヴィが沈黙する。
道行きは至って平和であるのに、どこか張り詰めた車内の空気に、神経がじわじわとすり減っていくのを感じた。

だが、間もなく、疲労だの神経の摩耗だのと言っている場合ではなくなった。
突然、闇の中で破裂音がした。
ビシ、と樹木の中で葉が飛び散る。

──銃声!

認識した時にはもう、一斉に銃弾がピックアップ・トラックへと降り注いできていた。
弾丸が車体をかすめ、舗装されていない道の上ではぜる。
以前なら確実に驚いてブレーキを踏んでいたところだが、もう銃声くらいで頭が真っ白になることもない。
ロックはアクセルを踏み込んだ。
車体に弾が当たった金属音が響く。

「ついにお客さんのお出ましってわけか」
レヴィは瞬時にスイッチを切り替えたようだった。
唇の端を歪めて笑い、胸元のホルスターから抜いたカトラスのマガジンを確認すると、再度装填した。
そして、スライドを慣れた仕草で後ろに引く。
「そのようだな」
張も即座に二挺の愛銃の準備を整えたようだった。
藪の中に潜んでいたのだろう、暗闇から現れた何台ものジープがヘッドライトを投げかけてきていた。
その強い光の中で、張のグリップに踊る龍がちらりと輝いた。

「飛ばすぞ!」
無線機から、前を行くダッチの声が飛んだ。
フロントガラスの向こうに見えるピックアップ・トラックが加速する。
言われるまでもなく、ロックもアクセルを踏み込んだ。
後方のジープの群れはぴったりとついてきた。

レヴィは窓ガラスを大きく開けると、身を乗り出した。
思い切りよく上半身を窓の外に出し、引き金を引く。
二挺のカトラスが火を噴いた。
間を置かず、次々と銃声が響いた。
レヴィは二挺の銃に入った弾丸をひとつ残らず後方のジープに叩き込んだ。
先頭の車両がスリップして、それに巻き込まれた車両が二、三台、藪の中に消えた。
反対側の窓からは、張が同じように弾丸を撃ち込んでいた。
前方の車両からはダッチがS&Wで応戦している。
642ロック×レヴィ 比翼・第二部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/27(土) 21:47:27 ID:hjjQJ+XW

レヴィは手早くマガジンを交換すると、弾丸飛び交う中、また窓から身を乗り出した。
後ろから飛んできた弾丸が車体に当たって、ビシ、と嫌な音をたてた。
ロックはアクセルをべったり踏み込んでステアリングに集中しながらも、思わず首をすくめた。
「ビビるな、ロック! この車は防弾加工済みだ!」
どこか楽しそうとも聞こえる張の声が飛んできた。
サブマシンガンの連射が襲いかかってきて、張は一旦車内に身を戻した。
そして、レヴィのタンクトップの背中を引っ張る。
「おいレヴィ、無茶するな!」
カトラスを打ち尽くしたレヴィも、体を座席に戻した。
「──待ち伏せか。ご苦労なこった」
言いながら、流れるような手つきでマガジンを交換する。

山岳地帯では盗賊が出没することがあるとはいえ、
まだゲリラ地帯でもなんでもないばかりか、国境すら通過していない。
武装した後ろのジープの数からすると、明らかにこの車両を狙って待ち伏せしていたと考えて良さそうだった。
「──狙いは積み荷か?」
ロックが言うと、レヴィは小馬鹿にしたように「ハッ」と短く笑った。
「それにしちゃあ、さっきからお構いなく大事な獲物に鉛弾ご馳走してやってるようだが?」
「ワ州連合軍に武器が渡るのが気に食わない奴らがいるんだろ?」
「さあ、な」
レヴィが手榴弾のピンを抜いて、窓から後ろに放った。
腹の底に爆発音が響く。
爆風に、火薬の匂い。
ミラーを覗いてみると、黒煙が巻き上がっていた。
しかし、そのもうもうと沸き上がる黒煙の中から、ぬっとジープの鼻先が現れる。
一体何台いるのか、ジープは依然として食らいついてきた。

「……あたしの個人的な意見としては、後ろのでっかい積み荷よりも、
今ここで、ちっとも似合わねぇシェビーのシートなんざに尻を落ち着けている御仁の方が、
よっぽどジューシーだと思うんだがねぇ?」
レヴィは横目でちらりと張を見やった。
「フェデックスのロゴ入りトラックじゃ気に食わねェと、パッケージが輸送車持参でやってきた、ってわけさ。
防弾加工にランフラットタイヤ──。
お陰で、さっきからいくつも銃弾くらってんのに、ギターの弦みてェにピンピンしてやがる」
「──ランフラットタイヤ?」
耳慣れない言葉にロックが口を挟むと、レヴィは面倒臭そうに答えた。
「防弾タイヤさ。まったく用意周到。まるでこうなることが分かってたみてぇにな」
レヴィがちらりと視線をやると、張は鷹揚に腕を広げてみせた。
「──おいおい、レヴィ、備えあれば憂いなし、だ。勘ぐらないでほしいな」

レヴィはそんな張を一瞥すると、腰を浮かせ、運転席と助手席の間から身を乗り出してきた。
そして、ダッシュボードに設置されていた無線機のマイクを引きちぎるように掴んだ。
「ダッチ!」
「レヴィか」
無線機の向こうから、ノイズ混じりのダッチの声が応えた。
「蝿が多すぎる。このままじゃ、着く頃にはこっちの車体は半分になってるぜ」
「──ちげえねぇ。分散させるか。この先、道が二つに分かれてる。お前たちは左、俺たちは右だ」
「オーケー、ダッチ。それじゃ、ケシ畑で逢いましょう、だ」

レヴィは無線を戻すと、後部座席に戻っていった。
そして、サブマシンガンのシャワーがやんだ瞬間を狙って応戦する。
ロックはステアリングが汗ですべるのを感じながら、前方に集中した。
土地勘のない地域、暗い夜道、このスピード、それに、後ろから襲いかかってくる弾丸。
ひとつ間違っただけで、奈落に真っ逆さまだ。

──二叉路で、左。

ロックはそれだけを頭に叩き込んで、暗闇に目をこらした。
643ロック×レヴィ 比翼・第二部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/27(土) 21:49:06 ID:hjjQJ+XW

前を行く車両のテールランプが右に振れた。
──二叉路だ。
「曲がるぞ!」
ロックはスピードを落とさず左にステアリングをきった。
右に逸れたダッチとベニーの車両は、樹木に紛れてもう見えない。
細い山道の両脇では、黒い葉がざわめくだけだ。
この先の道など分からないが、とにかく走り続けるしかない。
ロックはアクセルを踏み込んだ。

レヴィは窓から後方を振り返った。
「ヤー、ビンゴだ」
バックミラーに目をやると、そこにはヘッドライトの束がミラーいっぱいにあふれていた。
その数は、先ほどまでとまったく変わらないように見えた。
「壊れたピンボールマシンみてェに元気いっぱいだ。どうやらこっちの餌箱がいたくお気に召したらしいぜ?」
レヴィは足下から弾丸の詰まった箱を取り出した。
「最近の蝿は鼻も利くらしい。奴らのお好みはジタンの香りだ」
弾丸を掴み出し、すいすいとマガジンに装弾していく。
レヴィの言葉に、ロックはため息をつきたくなった。
ビンゴって、それが分かっていたならわざわざダッチとベニーの車両と分かれることはなかったのに。
おかげでこっちは追っ手を一手に引き受けるはめになった。

「……やれやれ、彪たちはしくじったな。
──良い男はつらいよ。どこにいてもサインをねだって追いまわされる」
「言ってくれるぜ」
「おいおい、ここは同意するところだろ、レヴィ。
……まぁいい。ここのところ、うるさい小蝿にはちょいと辟易していてね。移動するのも一苦労だ」
「それにしても水くさいぜ、旦那。信用もなにもあったもんじゃねぇ」
「そいつは違うぞ、レヴィ。お前らを信用していなかったわけじゃない。
ユダの候補者リストにお前らを載せたくなかっただけだ。
それに、もしこうなるとが分かってりゃ、装甲車で来たさ。防弾加工なんぞ、女の化粧みたいなもんだ」
張もマガジンの装填を終えると、後ろの様子を窺った。
一旦距離が開いたかと思ったが、みるみるうちにヘッドライトの光は大きくなり、弾丸が飛んできた。

「……それにしても、この数はちょいとやっかいだな」
「──やっかい?」
レヴィが冷たくがさついた声を発した。
「願ったりだぜ」
全部、片づけてやるさ。
冷えた鉄の中を風が吹き抜けていくような声だった。
ひやりと、車内の温度が下がった気がした。
644ロック×レヴィ 比翼・第二部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/27(土) 21:50:06 ID:hjjQJ+XW

瞬間、レヴィは立ち上がり、天井についていたサンルーフに手をかけ、全開にした。
「──おい、レヴィ、何をするつもりだ」
「いいもんつけてんじゃねェか、張の旦那」
レヴィは運転席の背もたれに足を乗せると、
開いた屋根の部分に指を引っかけ、一気に体を持ち上げた。
「おい、レヴィ!」
「なんだよ、旦那、サンルーフってのは屋根の上でパーティーするためにあるもんだろ?」
レヴィの声が屋根の外側から降ってきた。
「レヴィ!」
張の声は銃声に遮られた。
空薬莢がいくつもピックアップ・トラックの屋根を転がる金属音が響く。
後方で、ブレーキ音、タイヤがきしむ音、そして衝突音。

張は窓から身を乗り出して、自らも後ろの集団に打ち込みながらレヴィを見上げた。
「やめとけ、レヴィ! カトラスだけじゃ無理だ。狙い撃ちだぞ」
「構いやしないさ、旦那。窓からじゃ視野が狭すぎる。──めんどくせェ!」
屋根から上半身を出したままマガジンを取り替えたらしいレヴィは、引き金を引き続けた。

二挺の銃に入った銃弾を撃ち尽くした張は、窓から体を引っ込めた。
「──やれやれ」
後部座席の背もたれに寄りかかって、マガジンを交換する。

「──きりがねェ」
サンルーフからレヴィの声が聞こえた。
と同時に、運転席と助手席の背もたれに乗っていた足が外され、するりとレヴィが車内に戻ってきた。
「旦那、後ろの積み荷をちょっくら拝借してもいいか?」
「──何をする気だ、レヴィ」
「この調子じゃ夜が明けちまうぜ。
こんなお楽しみのイベントがあると知ってりゃ、もっとゴキゲンな花火を積んできたのによ」
「駄目だ、レヴィ」
屋根を乗り越えて後ろの荷台に行くつもりだ──。
張もそれに気づいたのだろう、声のトーンが落ちた。
「危険すぎる。格好の標的だぞ、レヴィ」
「なぁに、心配ないさ、旦那」
レヴィは張の制止を無視して、またもや座席の背もたれに足をかけた。
ロックの顔のすぐ横に、レヴィのコンバットブーツが乗せられた。
脚に力が入って、ぎ、と背もたれがきしんだかと思うと、
あっという間にレヴィの上半身はサンルーフの外に消えた。

「駄目だ、レヴィ。レヴィ! ──ロック、お前も黙ってないで止めろ」
突然話の矛先が向いて、ロックは慌てた。
しかし、止めろと言われても、なんと言えばいいのか分からない。
ちらりと見上げると、一瞬、レヴィと目が合った。
「──レヴィ、」
「うるせえ!」
言葉を発した途端、怒声が降ってきた。
絡んだ視線を引き剥がすように顔をそらすと、レヴィは勢いよく屋根の外に出ようとした。

その瞬間だった。
645ロック×レヴィ 比翼・第二部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/27(土) 21:51:08 ID:hjjQJ+XW

銃声の中で、レヴィの鋭い悲鳴が上がった。
ダン、とピックアップ・トラックの屋根にレヴィの肘あたりがぶつかった音がした。
レヴィは屋根の上についた肘で体を支えようとしていたが、すぐに足が崩れて、ずるずるとすべり落ちてきた。
「レヴィ!」
ロックの口から飛び出た叫びは、張の声と重なった。
床に落下する──。
すんでのところで、後部座席にいた張が彼女の体を抱きとめた。

「レヴィ! 大丈夫か! レヴィ!」
ロックはステアリングを握りつつも、肩越しに後ろの様子を窺った。
レヴィは、抱きとめた張の腕の中で背中を丸め、呻き声を上げた。
生きてはいることに幾分ほっとしたが、一体彼女が今どういう状態なのかが気にかかる。
「レヴィ──」
なおも様子を窺おうとすると、張の声が低く応えた。
「撃たれた」
「どこを──」
「左肩──、いや、胸の上部、鎖骨付近だ」
バックミラーで探っても、暗くてよく見えない。
しかし、レヴィの左胸部のあたりがべったりとどす黒いのが分かった。
後ろから投げかけられるヘッドライドの光で、一瞬、それが濡れたように赤黒く反射した。
バックミラーの中で張と目が合った。
「──運転に集中しろ、ロック。こっちは俺に任せろ。追いつかれるぞ」
ロックは慌ててバックミラーから前方に視線を戻し、アクセルを踏み込んだ。
そして、ステアリングを握り直す。
暗い山道だ。
運転を誤ったら怪我どころの騒ぎではない。

張はレヴィを後部座席に横たえると、まいったな、とつぶやいた。
後ろから追ってくる車は最初と比べれば大分減ってはいたものの、
最後の一台になっても諦めないとばかりにしつこく食いついてくる。
646ロック×レヴィ 比翼・第二部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/27(土) 21:52:05 ID:hjjQJ+XW

と、その時、運転席の真横の窓ガラスが、ビシ、と音をたてた。
車両の側面でも弾の跳ねる音がいくつも上がる。
いくら防弾加工がしてあるとはいえ、これではこのピックアップ・トラックがおろし金になるのも時間の問題だ。
ロックがちらりと横の窓ガラスを見ると、そこには一発の銃弾が食い込んでいた。
「先回りされたか」
張が、弾が飛んできたあたりの藪に見当をつけて打ち込んだ。
しかし、それは当たったのか当たらなかったのか、
木立の中からぞろりと這い出てきたジープは、後ろの集団の中に加わった。

張は窓から応戦してはいるが、ハンドガンだけでは焼け石に水だ。
「……こんなジャックポットが出ると知ってりゃ、
座席の下にグレネードランチャーのひとつでも積んどいたんだがなぁ」
張がぼやいた。
「……俺たちにも知らせてくれていれば、それなりの用意はできたのに」
ロックもつい、恨みがましい口調になった。
「そういうこったな。──しかし、今更そんな話をしても仕方がない」

張は運転席と助手席の間から身を乗り出してきた。
「ロック、地図は」
「ドアポケットに」
取り出して渡すと、張は地図を広げた。
内ポケットからペンライトを取り出し、照らす。
「……まずいな」
現在位置を確認したらしい張がつぶやいた。
「こっちの道は外れ籤だ」
「──え?」
「一本道なんだよ、ロック。しかもこの感じじゃあ、散々トレッキングをさせられた末に行き止まりだ」
「そんな!」
しかし、車のスピードをゆるめるわけにもいかない。
ロックはアクセルを踏み続けた。
終点が墓場なのは勘弁願いたいが、至近距離で蜂の巣も御免だ。
647ロック×レヴィ 比翼・第二部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/27(土) 21:53:04 ID:hjjQJ+XW

「──いや、待てよ……」
何を思いついたのか、張が地図に顔を寄せた。
「ロック!」
張が運転席の斜め後ろから顔を出してきた。
「この先、少し行くと線路にぶつかる」
「ええ」
「地割れでも起きてなきゃ、踏切があるはずだ」
「ええ」
「そこを曲がれ」
「──ええ!?」
こともなげに言う張に、ロックの声は裏返った。
「曲がれって、線路内に入れっていうことですか?」
「そうだ」
「──『そうだ』って、線路の上を走れ、と?」
「その通り」
「無茶だ!」
「無茶は承知だ。しかし、この道はローマにすら通じていない。早晩、デッドエンドだ。
それに、……いつまでも鬼ごっこをしている場合でもないだろ?」
張は後部座席に横たわるレヴィに、ちらりと目をやった。
レヴィは体を丸め、苦しそうに張のコートの端を掴んでいた。
唇から吐き出される息が荒い。
「…………分かりましたよ。──どうなっても知りませんからね!」
ロックは腹を決め、ほとんど捨て鉢で叫んだ。
ステアリングに掌を押しつける。
「おう。よろしく、頼む」
後部座席に戻って悠然とシートにもたれかかる張が、無性に憎らしかった。

後ろのジープは依然として追いかけてきているが、踏切はもうすぐそこだ。
「右!? 左!?」
線路のどちら側に侵入するのか。
ロックが声を張り上げると、
「どっちでもいいぞ。お前の運に任せる」
緊迫感に欠ける張の声が返ってきた。
「じゃ、右にしますからね!」
「おう、分かった」
相変わらず悠々と、張は頷いた。
648ロック×レヴィ 比翼・第二部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/27(土) 21:53:47 ID:hjjQJ+XW

走っている今の地点からは見えないが、おそらく線路は単線だろう。
曲がりきれるかどうか──。
ロックがスピードを落とそうとすると、張が「まだ落とすな!」と鋭く言った。
「気取られるな。うまくすれば距離を稼げる」
「そんな! このスピードで直角に曲がれと!? 俺はアイルトン・セナじゃないんですよ!」
「そんなことは分かってる。ごちゃごちゃ言わないでやってみろ。やってみないことには何事も始まらんぞ」
「できもしないことをやろうとするのは蛮勇だ!」
「──来るぞ」
道の向こうに踏切が見えた。遮断機は上がっている。
「行け!」
ロックは踏切の手前で道路の左側いっぱいにふくらみ、軽くブレーキングを繰り返した。
そして、遮断機の直前でステアリングを右に切った。
外側に強い遠心力がかかる。
車体が左に流れかかり、慌てて軽くカウンターを入れる。
すぐにステアリングを右に戻し、そのまま、またじわりとアクセルを踏み込む。

──抜けられるか。

ふくらみ過ぎた。
ピックアップ・トラックは線路を越え、バラストを蹴散らし、線路脇の草むらに突っ込みそうになった。
タイヤが線路を踏み越えて大きく揺れ、座席の上で尻が弾んだ。
しかし、バラストがブレーキ代わりとなったのか、スピンするまでには至らなかった。
ロックは何とかステアリングを切って、ピックアップ・トラックの進行方向を線路のラインに合わせた。

「──おお、できたじゃないか」
張が顔を上げた。
張は、運転席の背に片腕をついて突っ張り、
もう片方の腕と上半身で、座席に横たわるレヴィをかばうように抱き込んでいた。
「そのようですね!」
ロックは半ばやけくそで叫んだ。
バラストの衝撃を車体が吸収しきれず、尻への衝撃が凄い。
気をつけないと舌を噛みそうだった。

アクセルをべったりと床まで踏みながらバックミラーを確認すると、
背後に迫っていたヘッドライトは随分と後ろの方で小さく光っていた。
狙い通り、追っ手は踏切のところで往生しているらしかった。
しかし、スピードを維持したまま再びバックミラーの中を覗くと、
ぽつんと、しかし確実に、ヘッドライトの光が張りついていた。
「やはり撒くことはできないか……」
張も後ろを窺った。
張の手が、上下の激しい揺れからかばうようにレヴィの腕の上に添えられていた。
レヴィは額に脂汗を浮かべながら、時折低く呻いた。
張のロングコートの端を握る手が、ぎゅっときつく握りしめられた。
シートにはレヴィの血がこぼれてきていた。
649ロック×レヴィ 比翼・第二部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/27(土) 21:55:10 ID:hjjQJ+XW

「──張さん」
「なんだ、ロック?」
「まだ最終列車が通りすぎるような時刻じゃない」
ロックは考え考え続けた。
「このまま行くと、いつかは列車に遭遇するかも」
ちらりとバックミラーを覗いて、加える。
「──上手くすれば」
ミラーの中で、張が興味をそそられた風に頬を歪めて笑った。
「この線路は単線だ。どちらから列車が来るかは分からない。けれど、正面から来れば──」
「俺たちとご対面、てことになるな」
「そう。でも、対面するのは奴らもだ」
「それで?」
「この車には発煙筒が積んである。──三本。出発する前に確認した。液化炭酸ガスのやつだ」
「──煙幕か」
「ええ。今は風がない。後ろとの距離も充分だ。
俺たちが列車を確認したと同時に発煙筒を焚いて、後方に放ってやる。
煙が立ちこめ、奴らの視界は奪われる。俺たちは線路から離脱する」
「──で、後ろの奴らは列車とランデブー、ってわけか」
「……運が良ければ」
張は、考え込むように腕を組んだ。
「……まさに運まかせだな。かち合う前に列車が緊急停止するかもしれん」
「ああ。その前に、上手く対向列車が来るかどうかも──」
「しかし、やってみるだけの価値はある。
なに、失敗したって構わんさ。線路の外でまた第三ラウンドが始まるだけのことだ。
──ロック、発煙筒はどこにある?」
張は不適に笑った。
まるでこの状況を楽しんでいるかのように。

「張さん、あれ!」
ロックはカーブした曲線の向こう、木立の合間に小さな光を見つけた。
「列車か」
「おそらく」
「よし、やるか」
張は発煙筒を手に取った。
「時間差で三本放る。線路から離脱するのはその後だ。いいな、ロック?」
「オーケー、張さん」
ロックはステアリングを握りながら頷いた。

「いくぞ」
張は発煙筒に点火し、窓から後方に放った。
煙がもうもうと立ちこめる。
すぐにバックミラーの中の視界は煙でいっぱいになった。
煙には追っ手も気づいただろう。
気づいて、停車したか、それとも変わらず追ってきているか──。
確認はできないまま、張が二本目を放った。
そして、三本目。
列車の姿が目視できた。
列車は急ブレーキをかけたようだったが、すぐにはスピードはゆるまない。
ロックたちの乗ったピックアップ・トラックもスピードを出しているため、ぐんぐんと距離が縮まる。
列車の正面が大きく迫る。
列車のたてるブレーキ音が甲高く響く。
「離脱する!」
おう、という返事を聞く前に、ロックはステアリングを切って、線路を外れた。
脇の草むらに突っ込む。
その横を、線路から激しく火花を上げて列車が通過していった。
車体は斜面を転げ落ちるように横すべりした。
バサバサと藪の中で揉まれる。
草と葉、枝が、フロントガラスにもボンネットにも滅茶苦茶に叩きつけられる。
650ロック×レヴィ 比翼・第二部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/27(土) 21:56:34 ID:hjjQJ+XW

直後、重たいもの同士が激しくぶつかり合う破壊音が空気を切り裂いた。
続いて、何かを引きずるような甲高い金属音が後を引く。

──やった。

思ったが、車体は完全に舵を失っている。
藪の中をガサガサとめくらめっぽうに回転していた。
どちらに進んでいるのかも分からない揺れと回転の中、木に激突するのだけは勘弁してくれと、
ロックは思うようにならないステアリングにしがみつきながら祈った。

ピックアップ・トラックは、いくつものスピンといくつものジャンプを重ねた後、ようやく止まった。
木に激突しなかったのが奇跡のようだった。
「──おお、凄かったなァ。レールのないジェットコースターに乗ったのは初めてだ」
レヴィを抱きかかえたまま横倒しになっていた張が起き上がり、手で守っていたレヴィの頭を座席に戻した。
「……怪我は?」
ロックはのろのろと後ろを振り返った。
「ない」
「追っ手は……」
「……ない、ようだな」
耳を澄ませてみても、周囲からは葉のざわめき以外は何の音もしなかった。
線路がどちらの方角なのかも道はどこなのかも分からないが、
とにかく、追っ手からは逃れられたようだった。
ロックはひとまずほっと息をついた。

だが、安心するのはまだ早かった。

「レヴィ、大丈夫か」
張が室内灯をつけ、レヴィの顔を覗き込んだ。
座席の上に上半身を横たえたレヴィの顔は、蒼白だった。
ぼんやりとした室内灯の中でもそれと分かるほどに血の気を失っていた。
左胸周辺が一面に赤黒く染まり、鎖骨の下あたりには黒い穴がぽっかりと開いていた。
そこから、今も止まることなく血があふれてきている。
レヴィの黒いタンクトップは、血を吸ってぐしゅぐしゅに濡れていた。
「──レヴィ」
ロックが声をかけても、レヴィは眉間の皺を深くするだけだ。
額には脂汗がびっしり玉となっており、張りついた髪の毛が乱れていた。
食いしばった歯の奥から苦しげな声がもれた。

「──まずいな」
レヴィの傷を検分していた張が、サングラスの上の眉をしかめた。
この日聞いた中で一番深刻な声に、ロックの緊張は高まった。
「骨は大丈夫だ。たぶん動脈も大丈夫だろう。だが……」
レヴィの背中側を確認していた張は、その背中をそっと座席の上に戻すと、首を横に振った。

「弾が抜けてない」




651名無しさん@ピンキー:2010/11/27(土) 22:15:07 ID:LejYjEgS
本格アクションキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
どうなっちゃうの!?

しかしこのスレで「ワ語」なんて単語を目にするとはw
すげえ…あんた広江か?(褒め言葉
652名無しさん@ピンキー:2010/11/27(土) 22:19:04 ID:iQ5yCstW
これは大作すぎてヤバイ…
続きが気になって眠れそうにない
653名無しさん@ピンキー:2010/11/27(土) 22:50:47 ID:bZlhJx6b
張さーーん!!あんたかっこよすぎるぜ
レヴィと兄妹みたいな関係がイイ
654名無しさん@ピンキー:2010/11/27(土) 23:11:31 ID:Xoegr5GZ
あれ、やばい面白すぐる!
なんだこの筆力!?
GJ!!!!
続きが楽しみすぎる!
655名無しさん@ピンキー:2010/11/27(土) 23:20:24 ID:ng/18bGs
うおお…まだ前回投下分読み終えてないのに早くも続きが!
このクオリティでこの仕事の速さはなんなんだ!?神だからか??そうかこれが本物の神業ってやつか。

最近の週末の楽しみは神のロクレヴィだw
辛い展開でも最後までついてくぜ!
656名無しさん@ピンキー:2010/11/27(土) 23:53:45 ID:s4anMq+C
原作よりも、おもしr……おや、こんな時間に宅配便が、

657名無しさん@ピンキー:2010/11/29(月) 02:02:44 ID:0/bYF3Km
旦那に嫉妬するロンリーロックせつない!
後部座席で浮気するレヴィ不器用すぎる!
658ロック×レヴィ 比翼・第二部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/30(火) 22:04:04 ID:Lp6oH9Uz

>>650の続き


*流血描写あり
*本番なし


659ロック×レヴィ 比翼・第二部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/30(火) 22:04:48 ID:Lp6oH9Uz


 * * *

レヴィの傷は、このまま放っておけるような状態ではなかった。
鎖骨の下に命中した弾丸は未だ体の中に留まっており、レヴィに脂汗を流させ続けていた。
「レヴィ」
停車したピックアップ・トラックの室内灯の下でロックが声をかけても、
レヴィは聞こえているのかいないのか、返事ともつかない呻き声を上げるだけだった。
「レヴィ、しっかりしろ」
張が声をかけても同じだった。
ぎゅっとつぶった瞼の縁で、睫が震えた。
意識はあるようだったが、かけた声に反応しているのかどうかすら分からなかった。

「弾が鎖骨周辺の神経を圧迫してるんだろう」
張が難しい顔をしてレヴィの傷を見下ろしながら、言った。
「抜かないと」
「でも、このあたりに病院なんて──」
「だから、病院に連れてく前に抜かないと、と言ったんだ」
「……今、ここで?」
「そうだ」
「でも……」
「この状態のまま三時間も四時間も連れまわすのか?」
「それは……。──でも、誰が?」
レヴィの傷に目を落としたまま、張は静かに言った。
「俺がやる」
「……できるんですか?」
「やるしかないだろう。それとも、お前がやるか?」
「いえ……」
できない。
ロックにはできなかった。
人間の体内に留まった弾丸を抜くなど、どうすればいいのか想像もつかなかった。

ロックが黙ると、張は軽くレヴィの頬を叩いた。
「レヴィ。──レヴィ、聞こえるか。弾が抜けてない。けど、安心しろ。今から俺が抜いてやる」
レヴィが身じろぎをし、色を失った唇がわずかに開いた。
「…………ぃ……」
かすれた、声らしきものがもれた。
「どうした」
張が問い返すと、もう一度唇が動いた。
「……い、い…………。だい……じょうぶ、だ……」
「嘘つくな。今のお前が大丈夫だったら、入院患者でトライアスロン大会ができるぜ」
「……オー、ライ、だ……、旦那。…………オーライ、だよ。……はやく、…………積み荷、を」
喉から声をしぼり出すレヴィを、張は一蹴した。
「雇い主がいいと言ってるんだ。おとなしく従え」
そして、ピックアップ・トラックのドアを開けて外に出た。
660ロック×レヴィ 比翼・第二部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/30(火) 22:05:52 ID:Lp6oH9Uz

「ロック、何かシートはあるか」
「ビニールシートなら」
「それでいい。出せ」
ロックも外に出てシートを渡すと、張はロングコートを脱いで、
ピックアップ・トラックから少し離れた地面の上に二メートル四方ほどのシートを広げた。
めくれ上がりそうになる四隅は石で押さえる。
「ケースの弾丸はまだ残ってたな」
「ああ、山ほど」
張は懐からアーミーナイフを取り出し、ロックに差し出した。
「これのヤスリ鋸で薬莢を削って、中から火薬を抜き取れ」
「火薬……一発分ですか?」
「そうだ」

ロックは車内に戻ると、ケースから弾丸をひとつ取り出した。
そして運転席に座り、手帳のページを一枚破って助手席のシートの上に広げた。
ヤスリ鋸で薬莢を削る、と張は簡単そうに言っていたが、
金属でできた薬莢を削るのは、なかなか骨の折れる作業だった。
やっと中の火薬を取り出せるまでに削ると、飛び散らないように注意しながら広げた紙の上に開けた。
紙で火薬を包み、こぼれないように折りたたんでから、ロックはピックアップ・トラックの外に出た。

張は荷台で何やら物色していたようだったが、壜を片手に戻ってきた。
「やれやれ、手土産が台なしだよ」
張は手に持った、洋梨を少し平べったくしたような形の壜をちょっと掲げてみせた。
「せっかくのリシャール・ヘネシーが、一ダースもあったのに半分以上は荷台が呑んじまった」
まったくもったいない、と言いながら、張はその壜を広げたビニールシートの上に置いた。
「火薬の用意はできたか」
「ああ、できたよ」
ロックは、たたんだアーミーナイフと火薬の包みを張へ渡した。
「よし」
張は頷いてナイフを受け取ると、刃を出した。
そして、先ほど脱ぎ捨てたロングコートを手に取り、
ナイフを突き刺したかと思うと、一気に縦に引き裂いた。
「な──」
豪快に引き裂けたコートにロックは言葉を失ったが、張は構わずナイフを振るった。
「布が必要になる」
高級そうなコートを、張は惜しげもなく引き裂いた。
「レヴィを運んできてくれ」
「分かった」
ロックは頷いて、ピックアップ・トラックに戻った。
661ロック×レヴィ 比翼・第二部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/30(火) 22:07:12 ID:Lp6oH9Uz

後部座席を覗くと、シートの上ではレヴィが苦しそうに背中を丸め、荒い呼吸を繰り返していた。
「レヴィ、準備ができた。移動するよ」
ロックは手を伸ばしたが、その手はレヴィに振り払われた。
ぞんざいに振られたレヴィの血に濡れた指先が、ロックの指先にぶつかった。
思わずロックが手を引っ込めると、レヴィはシートの上でゆるゆると体を回転させた。
右腕を下に半身になって、その右腕に力を込める。
わずかに体が持ち上がり、ぎゅ、と血で汚れたシートが音を上げた。
だが、完全には体は持ち上がらず、シートについた右肘が覚束なく震えた。
ぐ、とレヴィの喉の奥が鳴る。

「レヴィ、無茶するな」
ロックは車内に入り込み、レヴィの背中に手を添えた。
横抱きに抱え上げようと、脇から背中を支えてレヴィの右腕を自分の首にまわさせる。
しかし、レヴィはその腕をほどくと、拒絶するようにロックの体を遠ざけた。
「……いい、…………ひとりで、……平気、だ……」
血だらけのシートに手をついて、よろよろと体を支えようとする。
「レヴィ、平気じゃないだろ」
ロックは無理矢理抱え上げてしまおうと、背中を支えながら膝うらに手を差し込もうとしたが、
その手もレヴィの手に押し留められた。
「…………いい、っつってんだ、ろ……。触ん、な…………」
レヴィは頑としてロックを拒む。

そうやって押し問答を繰り返していると、張がやってきた。
「なにやってんだ」
覗き込んできた張を、ロックは困り顔で振り返った。
「レヴィが……」
「あん?」
「自分で動ける、って……」
「なに言ってんだ。そんなわけないだろう。さっさと運んでやれ」
張は呆れたように掌を翻した。
しかし、さっきからそうしようとしているのをレヴィに拒まれているのだ。
ロックは曖昧に頷いてからまたレヴィに手をかけようとしたが、やはり力なく振り払われた。
「……いらねぇ、って…………」
レヴィはロックの手を弱々しく押し返してくる。
張が短くため息をついた。
「レヴィ、なに駄々こねてんだ。──ロック、構うこたない、抱き上げちまえ」
多少力ずくになってもやむなしか、と半ば強引にレヴィを抱え上げようとしたが、思いの外強い抵抗にあった。
「……やめ、ろ」
腕の中でレヴィがもがく。
「……ちょっ、レヴィ……!」
そんなに動かれると更に血が流れる。
ロックは慌てて手を離した。

「──っとに、何やってんだ。どけ」
張のわずかに苛立った声がすぐ後ろからして、ぐいと肩を掴まれたかと思うと、
ロックはあっという間に車外にどかされていた。

張は自分が車内に入ると、いとも簡単にレヴィを抱き上げた。
窮屈な体勢から、レヴィを抱いたまま軽々と地面に着地する。
「行くぞ」
張はロックに顎で合図すると、さっさと広げたビニールシートの方へ歩いていった。
レヴィはおとなしく張に横抱きにされていた。
力を失った脚はぶらぶらと揺れ、ぐったりとした頭は張の胸もとに収まっていた。
とても、たった今ロックに抵抗したのと同じ人間とは思えなかった。
662ロック×レヴィ 比翼・第二部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/30(火) 22:08:09 ID:Lp6oH9Uz

張はビニールシートの上にレヴィを下ろした。
「モルヒネは──、ないよな」
「ああ、ないな……」
「……だよなぁ。何か代わりになるようなものは?」
「いや……」
「ポットか何かでもいいんだが……」
それもない。
ロックは首を横に振った。
「やれやれ、俺たちはなんて品行方正な悪党なんだろうなァ」
張は皮肉めいた調子で嘆いた。
『三合会』が取引している粉を全部集めれば雪景色だってお手の物だろうし、
『ラグーン商会』もその手の荷物なら何度も運んでいる。
なのに、こんな時に麻酔代わりに使う分すらままならないとは、まさに皮肉だった。

「レヴィ」
横たわるレヴィに、張が声をかけた。
「鎖骨の下に弾が残ってる。そいつが神経叢に触ってるから痛むんだ。
今からそれを取り出すが、麻酔がない。…………耐えられるか」
レヴィはぼんやりとした目で見上げていたが、小さく、しかしはっきりと頷いた。
「大丈夫か」
「……オー、ライ…………さ、……旦那」
「よし、よく言った。──ロック!」
呼ばれて、ロックは張のかたわらにしゃがみ込んだ。
張は細長く切ったコートの切れ端を一本、引き寄せた。
「ハンカチ持ってるか?」
「ああ、持ってる」
「出せ」
ロックはポケットからハンカチを出して張に渡した。
張はそのハンカチを振り広げると、くしゃくしゃに丸めた。
「レヴィ、口開けろ。舌噛まないようにこれを詰める」
丸めたハンカチをレヴィの口の中に押し込めると、
先ほど引き寄せたコートの細長い切れ端を手に取り、
口の上から猿ぐつわを噛ませる要領でぐるりと彼女の顔の周囲に巻きつけた。
そして、首と頭を支えるように持ち上げると、ロックの方を見た。
「後ろで結んでやれ」
ロックはレヴィの頭の方にまわり、口の周りにめぐらせた布を後頭部できゅっと結んだ。
しっかりと、だが、きつすぎないように締めて結び目を作る。
「できたよ」
「よし」
663ロック×レヴィ 比翼・第二部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/30(火) 22:09:46 ID:Lp6oH9Uz

張はコートの切れ端で、レヴィの両脚を膝上と足首の二箇所で縛った。
二本の脚を揃えさせて、膝と膝が離れないように膝より少し上の部分で布をぐるりと巻き、ほどけないようにきつく縛る。
足首も同じように、コンバットブーツの上から固く結んだ。
それが終わると、張はいささか緊張した面持ちで、アーミーナイフ、ペンライト、
コニャックのボトル、火薬、ライター、長い布きれとなった元コートの数々を確認した。

「ロック」
ロックは手招きされるままに、レヴィの体を挟んで張と向かい合うようにしゃがんだ。
「俺が取り出す。お前は押さえてろ」
頷くと、張はロックの側にやってきた。
「手は肩と腰を抑えろ。脚は太ももの上だ」
言いながら、張は実際にやってみせる。
膝立ちになって、左手をレヴィの右肩に、右手をレヴィの左腰にあてる。
そして、右膝をレヴィの太もものつけ根に乗せて、体全体で上から押さえつけるように体重をかけた。
「──こうだ。全体重をかけろ。絶対にゆるめるなよ」
「……分かった」
「左腕は俺が押さえながらやる」
ロックはおそるおそる頷いた。

麻酔なしの弾丸摘出。
考えただけで、脳が縮み上がるような眩暈を感じた。

──本当に、やるのか。

肺が押しつぶされたように小さくなり、呼吸が苦しくなった。
664ロック×レヴィ 比翼・第二部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/30(火) 22:12:43 ID:Lp6oH9Uz

「──じゃあ、始めるぞ」
張はレヴィの左側に戻って、言った。
レヴィの左腕を伸ばさせてその上に座り、サングラスを外す。
ロックは張に教えられた通り、左手を黒いタトゥーが踊るレヴィの右肩にやった。
そして、右手もレヴィの左腰に伸ばす。
尖った腰骨に掌を引っかけ、ぐっと固定する。
レヴィの太ももは、自分の膝の下あたり、脛の上部で押さえた。
太ももに脛の骨が食い込んで痛いだろう。
思ったが、こうするより他にない。
これから、どれだけの痛みが彼女を襲うのか。
弾丸を体内に留めた今ですら、こんなに苦しそうなのに。
想像しただけで胃が縮まり、手が震えてきた。

──落ち着け。

ロックはゆっくりと深呼吸をした。


張はペンライトをつけ、アーミーナイフの刃を出した。
すっとレヴィのタンクトップに近づけられた銀色の刃は、ペンライトの光を小さく反射させた。
張は、タンクトップのストラップ部分と肌の隙間にナイフをすべり込ませると、刃でストラップを持ち上げた。
「切るぞ」
レヴィが頷いた。
ナイフは血を吸ったタンクトップの繊維を切り裂き、ストラップを二つに切り離した。
ちぎれたストラップ部分が、レヴィの左肩からはらりと落ちる。
タンクトップの襟ぐりだったところを張の指が押し下げると、真っ赤に染まった胸もとが露わになった。
やわらかく盛り上がった乳房のふもとまでもが、べったりと血にまみれていた。

張は一旦ナイフとペンライトをそばに置き、自分のハンカチを取り出すと、
ビニールシートの上に置いてあったコニャックの壜を手に取った。
そして、壜の胴体を掴んで大きく横薙ぎに腕を払った。
壜は張の手とともに一瞬弧を描き、近くにあった大きな石に勢いよくぶつかった。
ガラスが砕け、栓とともに壜の首が一気に吹っ飛ぶ。
だらだらとこぼれてきた液体を、張は逆の手に持っていたハンカチで受け止めた。
高価なコニャックを、張はたっぷりとハンカチに染み込ませた。

「消毒するぞ。……一等豪華なスペシャル消毒液だ」
レヴィが目だけでわずかに笑った。
張はまたペンライトを手に取ると、ロックを見た。
「……いいか、しっかり押さえてろよ。全力で、だ。」
射貫くような目に、ロックは腹を決めて頷き、手に力を込めた。

張は、コニャックのたっぷり染み込んだハンカチを、レヴィの傷口にあてた。
途端、押さえつけていたレヴィの体が跳ねた。
強烈に染みるのだろう。
顔が歪んで、全身の筋肉が硬くなった。
ロックの手を、レヴィの肩が押し返した。
「ロック、動揺するなよ」
心中を見透かしたかのように張が言った。

張は丁寧に傷口をぬぐうと、血の染みたハンカチを脇に置き、ナイフを手に取った。
ライターの火をつけ、ナイフに近づける。
じりじりと、ナイフの刃を熱する。
充分にナイフを熱するとライターの火を消し、張はひとつ深呼吸をした。
「いくぞ、レヴィ。頑張れよ」
掌で軽くレヴィの頬をはたく。
レヴィが頷く。
ロックに目配せを寄越してから、張はペンライトをくわえた。
665ロック×レヴィ 比翼・第二部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/30(火) 22:14:00 ID:Lp6oH9Uz

ロックは全身の体重をかけてレヴィを押さえつけた。
掌からはじっとりと汗がにじみ出てきて、その汗で手がすべりそうだった。
手が外れないように、ロックはぐっと腰を入れた。

ナイフの刃が、弾丸の埋まっている傷口に近づいていく。
ペンライトの明かりの下で、傷は赤黒く口を開けていた。
ナイフの切っ先が血だまりに触れ、そして、傷口の中に入っていった。

「──────!」

レヴィの体が雷に打たれたかのように硬直した。
全身が激しくよじれる。
腕がねじ曲がって、脚が突っ張る。
喉の奥でくぐもった悲鳴が上がる。
ナイフの切っ先は、五ミリ、十ミリと黒い血だまりの中へと沈んでいく。
レヴィの体が鋭く跳ね上がった。
押さえつけているロックの体ごと跳ね飛ばさんとする勢いで浮き上がる。

張は切っ先で弾丸を探っているようだった。
傷口にもぐったナイフが、微妙に揺れる。
赤い鮮血があふれ出る。
レヴィは切れ切れに、悲鳴とも呻き声ともつかぬ音をもらした。
その声は、口に詰まったハンカチの中でくぐもった。

ナイフは弾丸の位置は探り当てたものの、なかなか取り出すことができないでいるようだった。
傷口の中を、掻き出すようにナイフが泳ぐ。
ナイフが少し引き抜かれると、刃は血の色に染まっていた。
どくり、と血があふれ出る。
その血があふれる傷口に、ナイフはまたもぐっていった。
きつく目をつぶったレヴィの顔が揺れた。

い、た、い。

そう言うかのように、ぐっしょりと汗に濡れた額が左右に揺れた。
ペンライトをくわえた張の額にも汗がにじんでいた。
「レヴィ、頑張れ、もう少しだ」
もう少しかどうかなど、ロックには分からない。
けれど、ペンライトをくわえているせいで話すことができない張の代わりに、ロックは呼びかけた。
「レヴィ、しっかり」

途端、レヴィの右腕が、ロックの左脚に絡みついてきた。
レヴィの右脇で膝立ちになっていた脚に、レヴィの腕が鞭のように巻きつく。
膝の少し上あたりに、ぎゅっと引きちぎるかのような力でしがみついてくる。
スラックスの布を、その下の皮膚も一緒に握り込む。
布地を、そして皮膚をも突き破るほどの強さで握られる。
レヴィの爪がぎりぎりと脚の肉に食い込んだ。

たぶん彼女には、今しがみついているのがロックの脚だなどという意識はないだろう。
そこらへんにある丸太と同じ。
だが、それでも構わなかった。
ロックは自分も痛みたかった。
彼女の爪が食い込む痛みなど、今彼女が味わっている痛みの洪水に比べれば、雨だれ程度のものでしかない。
それでも、彼女と同じように痛みを感じていたかった。
666ロック×レヴィ 比翼・第二部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/30(火) 22:14:43 ID:Lp6oH9Uz

──もっと握れよ。

もっと握れ。
引きちぎるほど強く。
脚の痛みは、彼女の痛みを一緒に感じているような、
彼女の痛みの一部を引き受けているような気分にさせた。
そんなのは完全な自己満足だ。
ロックが痛かろうがなんだろうが、レヴィの苦痛にはいささかの影響もない。
分かってはいたが、彼女が苦痛に身をよじらせているのを黙って見ているだけの方が耐え難かった。

「レヴィ──」
何と言ったら良いのか分からず、ロックはただ彼女の名前を呼んだ。
レヴィの体は痙攣していた。
体重をかけた手の下で、肩が激しく震えていた。
多分この声も届いていないだろう。
額にはびっしりと汗が浮き、顔には苦痛が張りついていた。
それでもロックは彼女の名を呼んだ。

ナイフは彼女の傷口を抉り、傷口からは後から後から血が沸き出した。
レヴィの肌の上には、血の川ができていた。
ロックの脚にしがみつくレヴィの腕の力はますます強い。
ロックは全身の体重をかけてレヴィを押さえ込んだ。
手の下で骨がきしみ、砕けてしまいそうなほど強く。
ロックは、歯を食いしばってレヴィを押さえ続けた。
彼女に対して、今まで決してしたことのない強さで。
まるで、自分がレヴィを痛めつけているように錯覚する強さで。



ふいに、レヴィの体がくたりと力を失った。
脚にしがみつく腕はほどけ、硬く固まっていた全身も、ふわりと抵抗感をなくす。
頭が力なく、ことりと転がった。
気を失ったのだ──。

その直後、張の声がした。
「──取れたぞ」
張の血まみれの左手が、赤でコーティングされた銃弾をつまんでいた。
ワイシャツの袖で、張は額の汗をぬぐった。
そして、大きくひとつ息をついて、レヴィの顔を覗き込んだ。
「……落ちたか」
667ロック×レヴィ 比翼・第二部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/30(火) 22:17:16 ID:Lp6oH9Uz

ロックは未だにレヴィの体を押さえつけていたことに気づき、ゆっくりと手を離した。
渾身の力で押さえつけていたため、両腕がぶるぶると震えていた。
ゆっくりと腕を曲げると、ぎし、と肘の関節がきしんだ。
手は痺れ、指先の感覚がなかった。
「……よく耐えた。大の男だって悲鳴を上げて暴れまわる」
張は最初に消毒用に使ったハンカチを取り、もう一度、コニャックを充分に染み込ませた。
そのハンカチで、レヴィの傷をぬぐう。
最後に血まみれの自分の左手もざっと拭うと、張は火薬の包みに手を伸ばした。
紙を開いて、弾丸を摘出した傷口に火薬を振りかける。
次にライターを取り、火薬に火を近づけた。
音を上げて火薬が小さく爆発する。
「……針と糸がないからな。縫合代わりだ」
ちらりと見られて、ロックはぎこちなく頷いた。

目の前で起こったことに、まだ頭がついていっていなかった。
ロックは何も分からず、何もできなかった。

「体を拭いてやれ。水を持ってくる」
張は立ち上がって、ピックアップ・トラックへ向かった。
ペットボトルの水を持って戻ってくると、張はまず血の残った自分の左手に振りかけてから、
ボトルをロックに差し出した。
「そこにまだ汚れてない布があるだろ。適当に使え」
濡らした左手をコートの切れ端で拭きながら、張は続けた。
「俺はシートをなんとかしてくる」
ロックが頷くと、張はきびすを返した。

ロックは張の後ろ姿を見送って、まずレヴィの脚を縛る布をほどいた。
膝の上で二本の脚ををぎゅっとまとめて結んでいた布をゆるめ、
コンバットブーツの上から足首を束ねていた布をとく。
それからレヴィの頭を持ち上げて自分の膝の上に置き、後頭部の結び目を探って、これもほどいた。
口の中に詰められていたハンカチを引っ張り出す。
力を失っている頭を両手で支えてビニールシートの上に戻すと、ロックは新しい布きれを取った。
乾いた布に、ペットボトルの水をたっぷりと染み込ませる。
そして、レヴィのタンクトップの胸もとを少し開いた。

ロックは張の置いて行ったペンライトをつけて、傷口に触らないように濡れた布をすべらせた。
血はすでに乾きかけた箇所もあり、なかなかきれいには拭き取れなかった。
コートに使われる綿素材の布では吸水も悪く、血は肌の表面でかすれるように伸びるばかりだ。
レヴィの血は、はだけた胸もとの更に下にまで広がっているようだった。
しかし、そこまで踏み込んでしまうことはできなかった。
露わになっているのは、ぎりぎり肩と言えなくもなかったが、
それでもやわらかなふくらみを見せる胸もとは、そこがすでに乳房のふもとだということを如実に表していた。
これ以上は駄目だ。
彼女はもう、ただの同僚だ。
もし意識があったら、こうして血を拭うために肌に触れることすら嫌がっただろう。
手を振り払って、押しのけて。
ロックの腕に、先ほどのレヴィの拒絶が蘇った。
668ロック×レヴィ 比翼・第二部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/30(火) 22:18:28 ID:Lp6oH9Uz

今、レヴィはぐったりと横たわっている。
もう、この先彼女の肌に触れることはないのだろう。

ロックの指はレヴィの肌に伸びていった。
指先で、血の痕に触れる。
拭いきれずにかすれている血の痕に。
血の痕をなぞって、ゆっくりと、下にすべらせる。
ふわりとやわらかい肌の感触。
指の腹でわずかにへこむ。
ロックの指を温かく受け止める。
ペンライトの丸い光の中で、レヴィの白い胸もとには赤い筋が何本も伸びていた。
ロックはその赤い筋をそっとたどった。
指で触れたところが小さくくぼんで、影を作る。
やわらかくへこんだかと思うと、指がそこを通り過ぎた時にはもう、なめらかな一続きの曲線の一部になっている。
指は心地良く、やわらかな肌に沈み込む。
更にすべらせて──

──と、そこでロックは我に返った。

今、何を考えていた。
意識のない彼女に、何をしようとしていた。

ロックは振り払うように指を離し、めくられていたタンクトップを戻した。
血を吸ったタンクトップはまた肌を汚してしまうが、仕方がない。
ここで着替えさせるわけにもいかない。
ただ、このままだと左のストラップが切れていて、肩が剥き出しになってしまう。
胸もとだってめくれてしまう。
ロックはネクタイを引き抜いた。
ワイシャツのボタンを外して、脱ぐ。
そして、気を失って重たくなったレヴィの上半身をなんとか起こして、ワイシャツを肩からはおらせた。
体を冷やさない方が良いし、何より、胸もとをはだけさせたまま連れ歩くのが、
──もっと言えば、胸もとをはだけさせたまま張の隣に寝かせるのが嫌だった。

ロックは、抱き起こしたレヴィの額を向かい合った自分の肩に乗せて、背中からワイシャツで包み込んだ。
意識のない人間に服を着させるのは難しいし、傷に響くといけないので腕は通さない方が良いだろう。
レヴィの腕は袖に通さず、上半身をもとに戻して寝かせた。
襟元を整え、第三ボタンを留めてやる。
そうしたところで、張が戻ってきた。
669ロック×レヴィ 比翼・第二部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/30(火) 22:19:06 ID:Lp6oH9Uz

「できたか」
「……なんとか」
張はレヴィの様子を見ると、いいだろう、と言うように頷いた。
「じゃ、行くぞ。車に運んでやれ」
言われて、ロックはレヴィの首のうしろと膝うらに手を差し込んだ。
そして、持ち上げようとした。
──が、持ち上がらなかった。

「どうした」
「……いえ」
もう一度持ち上げようとするが、今度も無理だった。
腕にも脚にもうまく力が入らなかった。
運転していた時には出ていたアドレナリンが切れたのか、
それとも弾丸摘出を目の前にして神経が限界まで磨り減ってしまったのか、
体にまったく力が入らなかった。
ロックは震える息を吐きながら、持ち上げようとしたレヴィの体を元に戻した。
「俺が運ぶか」
張が隣にしゃがみ込んだ。
ロックは力なく頷いた。
それは頷くというよりも、うなだれるに近かった。

張はレヴィの体の下に腕を入れると、ひょいと抱き上げた。
ロックが見上げると、レヴィは張の胸もとにすっぽりと収まっていた。
「行くぞ」
ロックはビニールシートを畳みながら、レヴィを抱く張の後ろ姿を見上げた。
意識を失った人間は重たいだろうに、張はその重さをまったく感じさせず、悠々と歩いた。
ロックはその後ろ姿をぼんやりと追いかけた。
670ロック×レヴィ 比翼・第二部  ◆JU6DOSMJRE :2010/11/30(火) 22:20:49 ID:Lp6oH9Uz

張とレヴィ。
同じ二挺拳銃使いのこの二人。
彼女に銃を仕込んだのは張か。
聞いたことはなかったが、しかしどちらにせよ、張はレヴィをかわいがっており、レヴィは張になついていた。
ロックは、いつか見た二人のタッグを思い出す。
乱れ飛ぶ銃弾の中で、二人は舞を踊っているようだった。
言葉などなくても、すべて呼吸で分かり合える。
張の無駄のない動きの隙間にすべり込むようにレヴィはしなやかに動き、
大胆に躍るレヴィの死角を張は揺るぎなく固めた。
二人は安心して背中を預け合っていた。
いくつもの細い糸でつながり合ったかのように、二人はつかず離れず、
相手の動きに導かれるように体を動かし、フォローし、それでいて自由奔放に躍動していた。
もうずっと長いこと寄り添ってきた相棒のように。

それに、今日だって。
張がいなければ、どうなっていただろう。
銃弾を受けたレヴィを目の前に、ロックは何ができただろう。
あたふたと慌て、彼女の苦しむ様をただ見るだけで、何もできず?

──張なら。

レヴィを抱きかかえる張を見ながら、思う。
張なら、きっとレヴィと同じ場所で、手を取り合って生きることができるのだろう。
最後の最後まで。
同じ場所で、血にまみれながらも、ずっと。
張なら、レヴィの盾となり、その広い懐に包み込むことができるだろう。
レヴィを護り、支え、たすけることができるだろう。
彼女が傷つけば、銃弾を取り出してやり、傷を癒し。
そう、彼女の胸の奥に未だ埋まっている沢山の銃弾だって、取り出してやることができるかもしれない。
ひとつずつ、丁寧に取り出して、痛みを取り除いて、そして──。

──俺は、何もできなかった……。

ロックは、レヴィを抱える張の後ろ姿をただ見ていた。
その背中はひどく大きく、そして、ひどく遠いように思われた。
                                       




第二部・了(第三部へ続く)
671名無しさん@ピンキー:2010/11/30(火) 22:21:49 ID:jbtSva5N
GJ!!

面白すぎる。原作より!!

672名無しさん@ピンキー:2010/11/30(火) 22:25:36 ID:bnv2WO9r
キタキタ、来ましたよ!
切ない、切なすぎる
超サイコーな張兄貴にこのままレヴィは奪われてしまうのか!?
あと、タマを抜くシーンと、ガンパウダーで縫合の代わりってのが、"The Killer"を思わせるね

さすが神様だ
いつもありがとう
673名無しさん@ピンキー:2010/12/01(水) 03:19:43 ID:s7YqZLtc
ロック切なーい!!切なすぎるわ!
張がかっこいいほどロックは自己嫌悪のスパイラルに陥るか・・
まあ良いコンビだもんな。気持ちわかるぜロック
しかし入院患者でトライアスロンは雰囲気無視して吹いてしまったw
674名無しさん@ピンキー:2010/12/03(金) 02:22:45 ID:AQa0Xmtg
張の旦那に甘えるレヴィかわいすぎるぜ神GJw足プラプラとか
でも意識しまくってんのはロックなんだよな
あんな怪我してまで抵抗するすげえ根性
675名無しさん@ピンキー:2010/12/03(金) 21:17:17 ID:8BDBjMaZ
スレタイ考えませんか
676名無しさん@ピンキー:2010/12/03(金) 22:37:17 ID:mRsR+Gm5
エロシーンマダー?
677名無しさん@ピンキー:2010/12/03(金) 22:41:22 ID:XVSF5kxZ
原作が止まってるから新たなスレタイ難しいな…未だドライブ中だし
OVAで良いオリジナルのセリフあったっけ
678名無しさん@ピンキー:2010/12/03(金) 22:45:16 ID:3wxHO+V2
【未だに】 【ドライブ中】
679名無しさん@ピンキー:2010/12/04(土) 05:48:05 ID:NwE1jNjr
【だが】【幸せ】w
【両方】【経験済み】とか
680名無しさん@ピンキー:2010/12/04(土) 10:37:47 ID:lIyno7Bh
【永遠に】【ドライブ中】
【いつまで】【ドライブ】
【本スレは】【啖壷】
681名無しさん@ピンキー:2010/12/04(土) 13:54:16 ID:d2TUfxrJ
>>679
【だが】【幸せ】って何?
682名無しさん@ピンキー:2010/12/04(土) 14:27:16 ID:VOqPyCYH
未だにドライブ中だが(それはそれでレヴィは)幸せ
683名無しさん@ピンキー:2010/12/04(土) 18:11:16 ID:bGZfuokW
【生れる前から】【好きだった】
684名無しさん@ピンキー:2010/12/04(土) 18:48:55 ID:rIZPmYG/
本スレで「レヴィたんの口内に白いモノなら吐いてるよ」とか言う奴がいたから
唾吐きAA見るたびに萌えるようになってきてしまったお
いいよね、口内射精
685名無しさん@ピンキー:2010/12/04(土) 21:58:05 ID:VOUIZbSj
ドライブネタが多かったので。

【未だに】ブラックラグーンVOL.14【ドライブ中】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1291467433/
686名無しさん@ピンキー:2010/12/04(土) 22:26:07 ID:wGgSLNkc
>>685
687名無しさん@ピンキー:2011/01/13(木) 22:26:27 ID:qVlrAcxF
2NN ニュースナビゲーター
http://www.kusanone-net.com/news_2nn.php

掲示板の書き込みを読みながら難解なニュースも一発理解!
688名無しさん@ピンキー:2011/03/23(水) 01:52:23.50 ID:VU0wOy4q
あげ
689名無しさん@ピンキー:2011/05/15(日) 21:34:09.22 ID:qC8MCXh1
埋まらないね。

ロックとレヴィはもう言うまでもないので、ロットンでもいじるか。

いや、あいつももげろ。
690名無しさん@ピンキー:2011/05/20(金) 22:54:40.71 ID:8Eae/wWG
ぼっちゃまのフィギュアがブラクラの男で最初に出たりして。
691名無しさん@ピンキー:2011/05/21(土) 02:59:24.61 ID:RkQFKpb7
そんなオッサンフィギュア出したって売れないだろww

だが原作者が原作者だからな。。。
692名無しさん@ピンキー:2011/05/21(土) 10:55:30.86 ID:3uCmYxt6
でも、買うだろ?みんな喜んで。
693名無しさん@ピンキー:2011/05/29(日) 13:19:59.97 ID:J6VjmEW7
埋まらないなあ。


※※※「おはよう、ロック。
    朝ですよ」

※※※「今日はお前の16歳の誕生日。
    お前がはじめてお城に行く日でしょう」

※※※「さあ、早く起きて……

    起きろってんだろがゴラァ!」

ぱんぱんぱんっ!


「頼むから、普通の目覚ましをかけてくれ」
「ん〜〜、やっぱり王子様のキスじゃだめ……なんだよその目はっ!?」
694名無しさん@ピンキー:2011/05/29(日) 21:36:13.35 ID:2b4AtZUI
>>691
>>692
ダッチとロックのフィギュアなら買うぞ。ニューラインのレヴィフィギュアに並べたい
というか出してくれ
695名無しさん@ピンキー:2011/05/30(月) 00:15:33.37 ID:Bsp4mLL4
>>694
第一弾、影山部長
第二弾、タケナカ
第三弾、バオ

という誰得ラインナップで
696名無しさん@ピンキー:2011/05/30(月) 10:16:26.61 ID:3t5OgztN
>695
おまいさん、よくそんな誰得ラインナップ思いつくな。

基本は裸に剥けるロックと坊ちゃまだと思うんだが。
697名無しさん@ピンキー:2011/05/30(月) 12:32:37.79 ID:d2zVg4EW
第五弾、レガーチ
第六弾、ブリッツさん
第八弾、銀さん
という俺得ラインナップ

マジな話、ロックは出して欲しいけどな
ネクタイ外してるポーズとか出来そうだろ
698名無しさん@ピンキー:2011/05/30(月) 12:34:33.61 ID:d2zVg4EW
書き込んでから数字が色々とおかしかった事に気付いた
699名無しさん@ピンキー:2011/05/30(月) 22:37:16.43 ID:3t5OgztN
>697
バカヤロウ、銀さんはダッチを差し置いて第二段だろうが。

第一段がレヴィとイチャイチャ出来るロックなのは固定っぽいが。
700名無しさん@ピンキー:2011/05/30(月) 23:49:05.24 ID:F66InCDL
いや第二弾は張兄貴だろjk
701名無しさん@ピンキー:2011/05/31(火) 12:32:41.15 ID:/RzD5LlI
トーチを忘れるな
702名無しさん@ピンキー:2011/06/01(水) 23:00:03.36 ID:rKBZvjYi
じゃああれだ、出て欲しいキャラのAAでも貼るんだね。
703名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/14(火) 10:22:01.92 ID:cIymOL4r

       /|
       |/__
       ヽ| l l│<ハーイ
       ┷┷┷
704名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/16(木) 01:24:05.55 ID:Ya7TDZl0
ラグーンってCRになってんのな
705名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/16(木) 09:43:42.36 ID:BjNj4GRM
なんか凄く殺伐としていそう、もしくは脈絡のないギャグが不意に飛び出してきそう。


……殺伐かつ戦闘シーンが多すぎて、一般のパチンコ屋の客には敬遠される、でも、あの人なら……


そう、“殺意の女王”大竹みゆなら或いは……

或いは何だというのだ。
706名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/19(日) 09:44:34.23 ID:IDy1+RYE
さくせん → いのち を だいじ に


  ※※  それ を えらぶなんて とんでもない !  ※※
707名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/19(日) 13:02:17.41 ID:EKx6P3uf
さくせん → ガンガンいこうぜ
みんなガンガンいこうぜ!
ガンガンいこうぜ!をだいじに!
ガンガンやろうぜ!
あたしにガンガンいかせろ!

ロック「…最近のドラクエは過激だな」
708名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/19(日) 17:29:06.18 ID:Zi17rkvl
仕事中岡島さん
・いのちをだいじに(自分だけ)
・みんながんばれ(自分以外)

夜間岡島さん
・ガンガンいこうぜ
・いろいろやろうぜ

こういうことか
709名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/19(日) 18:15:33.26 ID:9qvn59yu
岡島さんの予測不能なパルプンテに戸惑いつつもやはりかわせないレヴィ
710名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/23(木) 01:01:54.65 ID:WKBI/MJg
ロックは昼も後衛、夜も後衛
711名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/23(木) 09:42:12.61 ID:H5YmubVk
つまり基本はバックということですねわかります^^
712名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/23(木) 21:32:30.27 ID:gpX12ye+
夜は自分にバイキルト、レヴィにルカニ(言葉攻め)かける岡島さん
713名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/24(金) 17:39:21.29 ID:XTjD5Xzg
夜島さん「レヴィの声は最高のベホマだよ」
レヴィ「? アホなこといってないでもっと腰振りやがれ」

って、向こうのが先に落ちるんじゃねーの、ここw
714名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/25(土) 17:19:24.58 ID:6sHZSs6c
ガルシア「では、イニシアチブプロセスで《鎧袖一触(味方の与えるダメージが強くなる)》使います」
ロベルタ「私はマイナーで《フラッシュショット(射撃武器にリアクションさせない)》してメジャーでグレネードスカート(自分の周囲の敵に対してスカートの中から大量の爆弾をばらまくアレ。射撃武器にして投擲武器)を《法礫(投擲武器を15m先まで繰り返し飛ばせる)》します」

ロック「……《完全偽装(ほぼあらゆる事をごまかしたり騙したり出来る)》、俺は何も見なかったしここにはいない……」
バラライカ「《オーディン(特殊な能力を打ち消す)》するぞコラ」
715名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/26(日) 21:10:13.80 ID:IFE7PGCU
で、ロックのフィギュアはまだか
716名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/26(日) 23:11:47.40 ID:wQPSeDOR
単行本9巻ラストのそれでは10巻でまたお会いしましょーが腹立つぜ
さっさとでてこい糞野朗
717名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/30(木) 23:36:58.22 ID:GXBdLSxA
ヘイヘイろっく〜
書き込みがすくないぜ〜
718名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 17:07:41.17 ID:agSL7BLj
>714に出てくる用語が全部別々のゲームから来ている点について。
719名無しさん@ピンキー:2011/07/07(木) 00:14:31.90 ID:x34bwj0M
あいつら新すれ立てやがった
720名無しさん@ピンキー:2011/07/08(金) 08:17:52.33 ID:xUYcF2lD
>>715
自作した方が早いかと。

埋め立て
721名無しさん@ピンキー:2011/07/08(金) 20:46:26.43 ID:/ggnTKlf
ロックのフィギュアをニューラインのレヴィたんの横に立たせたい
出来が悪いと何の変哲もない意味不明なリーマンフィギュアになりそうだな
722名無しさん@ピンキー:2011/07/08(金) 22:18:54.43 ID:MkNHiqKB
>721
とりあえず、だいたいサイズが合えば何でもいいから髪の毛が黒いスーツの男を用意する。
レヴィのフィギュアに踏ませりゃもうそれだけでロックの気分になれるんじゃないかと。


……姐御やエダがうらやましそうに見ている気が。
723名無しさん@ピンキー:2011/07/09(土) 19:05:27.89 ID:OEtCyyTK
エダ姐さんのやむにやまれぬ夜のお相手はやっぱリコなんだろうか
724銀次×雪緒 永遠  ◆JU6DOSMJRE :2011/07/09(土) 22:26:48.38 ID:9uNBlXed

埋めます


*本番なし


725銀次×雪緒 永遠  ◆JU6DOSMJRE :2011/07/09(土) 22:27:59.94 ID:9uNBlXed



   然るべき時に死ね、このようにツァラトゥストラは教える。
                  ──ニーチェ『このようにツァラトゥストラは語った』



あるいは私は、攫われたかったのかもしれない。


目の前で、私の大切なひとの後頭部がはじけ飛んだ。
「──しくじった」、それが彼の最後の言葉。
ぐらりと傾いだ体は、ゆっくりと神社の石畳に崩れ落ちていった。
破裂した頭からどろりとした血がとめどなく流れ出し、石畳を赤黒く染めた。
ひたひたと広がる血の池の中で、虚ろに開いたままの目は、もうどんな光も映していなかった。

レヴィ、と彼の命を絶ちきった女の名前を呼ぶ声を耳にしながら、私は呆けたようにその場にたたずんでいた。
私と相対していた男が、脚に刀を突きたてられた女の元に走り寄る。
オーライ……、……ロック、と切れ切れに返す彼女の声が、冷たい風にのって私のところまで届いた。
彼女の脚から突き出た刀に男が手をかけるのが、目の端に映る。
境内の空気をびりびりと震わせる女の悲鳴と、そして、ガランと石畳が硬く鳴る音。
女の脚から引っこ抜かれ、乱暴に投げ捨てられた刀が、くるくると回転しながら私の足元までやってきた。
荒い息をあげる彼女に、男は止血を施そうとする。
そんなふたりを尻目に、私は足元に転がった刀を拾い上げた。
ずしりと右手が重くなる。
もしや、私の大切なひと──今ここに倒れ伏している銀さん──の手のぬくもりが
残っていはしないかと思って握った柄はしかし、ただの冷えた木の感触しか伝えてこなかった。

私は鷲峰組の十四代総代を襲名していた。
高校も卒業していない小娘の分際で「総代」など、聞く人は皆笑うに違いない。
けれど、父も母もすでにいない私しか、継承権のある者は残っていなかったのだ。
組を存続させるためには、私しかもういない。
私が総代となり、そして狂ったロシア人の牙に引き裂かれた同輩に報いるべく、首魁を註する。
これこそが私の進むべき道。
鷲峰の家に生まれ、鷲峰の家に育った者の宿命。
狂ったロシアの狼、バラライカ。
見誤ったのは私たちだ。
狼は決して犬にはならない。
狼に食い荒らされ、もはや死に体となった私たちであっても、それでも今一度対峙し、そして──。

「──どうして、こんなことになっちゃったんでしょうね」
気が付くとつぶやいていた。

これしかないと、そう思って進んだ道だった。
最後まであの女に食らいついてみせることこそが、私たちの矜持。
背中は見せない。逃げたりなどしない。
それがたとえ負け戦であっても。
なのに、私たちの刃はあのロシアの狼の鼻先をかすめることすらできないまま、あっけなく道は閉ざされた。

目の前には、最後まで私に忠義を立ててくれたひとが躯となって横たわっていた。
覚悟していた結末だった。
私は死ぬことも、そして大切なひとを死なせてしまうであろうことも、覚悟していた。

──でも、決してそれはこんな形ではなかった。
726銀次×雪緒 永遠  ◆JU6DOSMJRE :2011/07/09(土) 22:28:48.51 ID:9uNBlXed

「……俺も、そして君も、歪だったからだ」
脚から血を流す女に肩を貸した男の声が応えた。
「君の歪さは欺瞞にあった。逃げてもよかったんだ、
そうやって嘘をつきとおすくらいなら、いっそ走って逃げた方がましだってことに──
最後まで、気付けなかった」
「嘘をつきとおす」。そう男は言った。

『私たちは、生きるために、──戦っているつもりです!』

先刻私の口から飛び出したその言葉に一番驚いたのは、おそらく私だ。
仁義を通して美しく散ること。
それが私の選ぶべき道であり、また私自身の願いでもあるはずだった。
なのにどうして、あの場で「生きるため」などという言葉がこぼれ出てしまったのだろう。

男は言った。
『君は、銀さんと共に逃げるべきだった』と。

──「逃げる」?

男の言葉の残響が、空っぽの胸に響く。
ぼんやりと開いた目の先で、銀さんから流れ出る血が石畳の細い隙間をじわじわと伝っていた。
広がる血が、倒れ伏した銀さんの着物にまで染みている。

──「逃げる」……。

血溜まりに沈んだままぴくりとも動かない銀さんの背中をぼんやりと眺めながら、私は昨夜のことを思い出していた。

727銀次×雪緒 永遠  ◆JU6DOSMJRE :2011/07/09(土) 22:29:52.00 ID:9uNBlXed

 * * *

昨日の夜半過ぎ、私は銀さんの私室を訪った。
しんと静まり返った冷たい廊下を裸足で歩く。
両親が他界してから、この古びた日本家屋は殊更に広く感じられた。
先が闇に飲み込まれたように暗くなっている長い廊下を奥へ奥へと進み、ひとつの部屋の前で立ち止まる。
小さく息を吐いてからぴたりと閉じ合わされているふすまをぽすぽすと叩くと、中から声が返ってきた。
「──はい」
「銀さん、私です。雪緒です。……まだ起きてますか?」
ふすま越しに声をかけると、畳から腰を浮かせた気配がし、足音が近づいてきた。
一呼吸置いてから、すっ、と目の前のふすまが開く。
「──お嬢」
ふすまの向こうでは、鴨居に頭がぶつかりそうな高さから銀さんが見下ろしていた。
「どうしたんです、お嬢。こんな時間に──」
「眠れないの」
戸惑ったように眉を寄せる銀さんに、私はパジャマの上にはおったカーディガンの前をかき合わせて小さく笑いかけた。
「入っても、いいかしら」
部屋の中はうす暗く、天井の明かりは落として手元を照らす小さなランプだけをつけているようだった。
銀さんの背後に視線を伸ばすと、銀さんは一瞬迷ってから体を引いた。
「……どうぞ」

畳の上には抜き身の日本刀が転がっていた。
ランプの明かりをはね返し、鈍い光を放っている。
そのそばに、拭い紙や油の壜の載った四角い木の盆が置いてあった。
日本刀の手入れをしている最中だったのだろう、細長い柄の先に白い球体のついた打粉が、
盆の隅で使いかけになっていた。
「お邪魔だったかしら」
「……いいえ、そんなことは」
言いながらも、銀さんは戸惑いを隠しきれない様子で座布団を勧めてきた。
「どうぞ」
「ありがとう」
差し出された座布団に、私は膝を折って座った。
銀さんの私室に入ったことはほとんどない。
六畳ほどの和室をぐるりと見渡すと、古びた木の箪笥や座卓が目に入った。
先代である私の亡き父が設えたものを、銀さんは使い続けているようだった。

「……どうなすったンです、お嬢。こんな夜更けに」
銀さんは畳の上でじかに正座をし、遠慮がちに尋ねてきた。
いつもかけている黒いサングラスを外した彼の目には、気遣わしげな色が浮かんでいた。
「眠れないの」
先ほどと同じ言葉を繰り返すと、向かい合わせに座った銀さんの眉間に深く皺が寄った。
「……どこか、お悪いンですかい。──その……」
そこまで言って、銀さんは言いづらそうに言葉を濁した。
「その、お体とか」
決まり悪そうに視線を外した彼に、私は笑って首を横に振った。
「いいえ」
数日前にボウリング場であったことを、彼が今も気にかけているのは知っていた。
「いいえ、そうじゃないわ」

728銀次×雪緒 永遠  ◆JU6DOSMJRE :2011/07/09(土) 22:31:34.22 ID:9uNBlXed

たちの悪い三下どもにボウリング場へ連れ去られてボロボロになった私を、銀さんは助けにきてくれた。
銀さんはすぐに彼ら全員を死体に変えた。
けれど彼は、制服のスカートをなくし、引きちぎられた上着だけを引っかけた無様な姿の私を
どう扱っていいのか分からない様子だった。
自分が来る前になにがあったのか聞いていいのか、悪いのか──。
ただ、こんなことにさせてしまった自分が許せない、そんな様子で繰り返した。
面目ねェ、お嬢。面目ねェ。遅くなっちまって申し訳ねェ、俺が、俺がもっと、──と。
喉の奥から絞り出すような声で呻いた。
私もまた繰り返した。
大丈夫、大丈夫よ、銀さん。私なら大丈夫。助けにきてくれてありがとう。ありがとう、銀さん、と。

「──本当ですか」
「ええ」
頷くと、銀さんはぐいと顔を上げた。
顔の半分がランプに照らされて、陰影が濃くなる。
「本当なンですか」
真実を見据えようとする目に、私は再度頷いた。
「ええ、本当よ」
銀さんは私から目を逸らさない。
その目を見て、私はきっぱりと告げた。
「銀さん、なんでもなかったの」
「お嬢……」
「なんでも、なかったのよ」
銀さんは眉間の皺を更に深くしてうつむいた。
「だから……」
「お嬢」
言いかけた私を、銀さんは遮った。
「『なにもなかった』とは、言ってくれねェんですか……」
両膝に置かれた銀さんの手は、ぎゅっと強く握りしめられていた。

「……銀さん」
私はほほえむことしかできなかった。
「大丈夫よ、銀さん。そんな顔をしないで」

大丈夫。
それは半分が本当で、半分が嘘だった。
あの日の後、体は数日間痛みを訴え続け、胸に巣くう不安は次の生理が無事に訪れるまで消えないだろう。
けれど、
「銀さん、本当になんでもないの」
実際に虐げられた私よりも深い傷を負ったかのような彼を、私は見ていられなかった。
私自身の痛みによるものよりもっと激しく、彼の痛みが私を苦しくさせた。

貴方がそんなに苦しむ必要はないのに。
貴方は私のヒーロー。
あの狂ったボウリング場の入り口に貴方の姿が見えた時、私の胸に広がった安堵が貴方に分かるだろうか。
その、言葉では言い尽くせないほどの安堵を、貴方に伝えるすべがあればいいのに。
729銀次×雪緒 永遠  ◆JU6DOSMJRE :2011/07/09(土) 22:32:30.24 ID:9uNBlXed

畳のへりを睨みつける銀さんを目の前に、私は傍らに置き去りにされていた刀を取り上げた。
通常は取りつけられている木の柄を外された刀は、ひやりと冷たい金属の感触を伝えてきた。
目の前に掲げると、刀身がランプの光を受けて静かに輝いた。
すらりと伸びた刀は、何人もの血を吸ってきたとは思えないほど白く、なめらかだった。
握った手をそっとひねると、白い光が刃の上を渡る。
「……きれいね」
輝きに魅せられて思わずつぶやくと、銀さんが顔を上げた。
「──お嬢、危ないです」
銀さんの言葉を無視して、私は刃の上に指を寄せた。
縦にした刃に指をのせ、そしての尖った縁をすべらせる。
「──っ」
氷のようだと思った刃の感触が、急に熱に変わった。
「お嬢!」
熱ではなく痛みだ、と気付くよりも先に銀さんが動いた。
「お嬢、なにをするんです!」
私の手から刀を奪い取り、懐紙に手を伸ばす。
熱さが痛みに変わった指先には赤い線が走り、見る間にそこから真っ赤な血があふれ出してきた。
銀さんはぐいと私の手首を取ると、指先に懐紙を押しつけた。
白い紙にじわりと赤い血が染みる。
「なにをなさるンです、お嬢」
銀さんの指が、懐紙の上から私の指をぎゅっと押さえつけた。
「しばらく、押さえてねェと」

どれくらい、そうしていただろうか。
銀さんは私の指先をとらえ、私は向かい合って座ったまま銀さんに指先を預ける。
互いの視線は、触れ合った指先に落ちていた。
銀さんの大きな爪が私の傷口を押さえる。
長く節の目立つ指で、私の指先を挟みつける。
銀さんに取られた手首が熱い。
コチコチと、先ほどまで気にならなかった時計の秒針の音が大きくなる。
ひそめている呼吸の音までもが、彼に聞こえてしまいそうだった。
730銀次×雪緒 永遠  ◆JU6DOSMJRE :2011/07/09(土) 22:33:06.07 ID:9uNBlXed

そっと銀さんが押さえていた懐紙をはずした時、その下の傷は細く赤い糸になっていた。
もう血があふれてくることはない。
「……止まりましたね」
銀さんは血が止まったのを確認すると立ち上がり、救急箱を取って戻ってきた。
「消毒しやしょう」
「ええ」
私の指の下に懐紙をあてがい、銀さんは消毒液をたらした。
「……染みますか?」
「いいえ、大丈夫」
無色透明な消毒液は私の指先を塗らし、懐紙へと落ちてゆく。
「……お嬢は」
銀さんがぽつりと言った。
「痛いって、言いなさらねェんですね」
それだけ言って、消毒液の蓋をぱちんと閉める。
「──ええ。だって、言ったって痛いのがなくなるわけじゃないもの」
指先に残った水分をそっと押さえる銀さんの指を見ながら、私は続けた。
「……それに、自分でやったことだわ」
銀さんは絆創膏を手にしながら小さく首を横に振った。
「お嬢、言って下せえ。……言っていいンです、お嬢」
「銀さん」
私は、私の手を取っている銀さんの手に、もう片方の手で触れた。
少しかさついた、大きな手だった。
「銀さんが握っていてくれるから、平気」
視線を上げた銀さんと、正面から目が合う。
私はその切れ長の目にほほえみかけた。
「銀さんがいてくれれば、私はなんだって平気なのよ」
731銀次×雪緒 永遠  ◆JU6DOSMJRE :2011/07/09(土) 22:33:39.98 ID:9uNBlXed

先に手をほどいたのは私だった。
ぴくりとも動かない銀さんの手に添えた掌をそっと離し、もう一方の手もするりと抜く。
それでようやく、銀さんの手は思い出したようにゆっくりと下がっていった。
「──あ」
縁側の方へ顔を巡らせた私は、思わず小さく声をあげた。
その声で銀さんも私の視線を追う。
「雪だわ」
開け放たれた障子の向こう、床まであるガラスのサッシを隔てた外では、雪がちらついていた。
広い庭に面しているこの部屋からは、他の家の明かりも街燈も見えない。
墨で塗り込めたように暗い夜の中に、白い粒が舞っていた。
小さなかけらがちらちらと降り注ぐ。
「……きれいね。桜吹雪みたい」
私はぽそりとつぶやいた。
「私ね、雪は嫌いだったの」
銀さんも、私と同じように外へ目を向けていた。
「寒くて、寂しくて、嫌いだったわ」
白く降る雪は細かく、積もっている様子はない。
ただ白い欠片だけがどこからともなく降り注いでは消えていった。
「だから、『雪』ってつくこの名前も、あんまり好きじゃなかった」
でも、と続ける。
「──今は好きよ。雪も、この名前も、今は好き」

外から銀さんへと目を戻すと、銀さんはまだ外の雪を見ていた。
「俺ァ、……好きでしたよ」
静かに言って、それからゆっくりとこちらへ首を向けた。
「お嬢の産まれた日も、そりゃア見事な雪の日だったと聞きます。オヤジさんがつけなすった名だと──」
「ええ」
私は銀さんの目を見て頷いた。
銀さんは、ふ、と短く笑って目を細めた。
「俺ァ、好きでした。……昔ッからずっと、好きでしたよ」
732銀次×雪緒 永遠  ◆JU6DOSMJRE :2011/07/09(土) 22:34:29.96 ID:9uNBlXed

その後に落ちた沈黙を、私はどうすればよかったのだろう。
しんと静まり返った部屋の中、私も銀さんも、ただ向かい合って座っていた。
時だけが、ふたりの間をさらさらと流れていった。

息苦しさを覚え始めたとき、銀さんがつと立ち上がった。
縁側の方へ足を進め、開け放たれていた障子をぱたんと閉じる。
私のそばまで戻ってくると、銀さんは片手を差し伸べた。
「さ、お嬢。……冷えてきました」
「……ええ」
その手を取って立ち上がると、銀さんは優しげな目で見下ろしていた。
「もう、お休みにならねェと」
「ええ、そうね」
「……駄目ですよ、お嬢。こんな夜更けに男の部屋なンざに来ちゃァ」
ぽん、と私の肩に手が置かれる。
私はその手の大きさを感じながら、小さく笑った。
「でも、銀さんだもの」

その言葉を彼がどうとったかは分からない。
私はふすまを開き、廊下へ出た。
「ねぇ、銀さん」
敷居越しに向かい合った彼に、私は言った。
「銀さんは、これからもずっと、私と一緒にいてくれるかしら?」
見上げた彼は、すぐに頷いた。
「もちろんです」
そして優しい目で笑った。
「ずっと、おそばにおりやすよ、お嬢」
自分の顔に、やわらかく笑みが広がるのが分かった。
「お邪魔してごめんなさい」
「いいえ、とんでもありやせん」
「お休みなさい、銀さん」
「ゆっくりお休み下せえ、お嬢」
私は静かにふすまを閉じた。
733銀次×雪緒 永遠  ◆JU6DOSMJRE :2011/07/09(土) 22:35:30.59 ID:9uNBlXed

 * * *

あの時、銀さんとの間になにも期待していなかったと言ったら嘘になる。
私はただの「総代」と「組員」以上の絆を、彼との間に望んでいた。
けれど私は、どうすればよかったのだろう。
つらかったと彼にすがりつけばよかったのだろうか。
すがりついて体を寄せ、貴方の手で忘れさせてほしい、と。
しかし、そんな直情に流されるような子供じみた人間になど私はなりたくはなかったし、
どうすれば直情に流されることができるのかももう、私には分からなくなっていた。
そして彼もまた、役割を心得ている人間だった。
私は、そんな彼の頑ななまでの忠義心と不器用さこそを、好いていたのだ。

   一切の《そうあった》は、一つの断片であり、一つの謎であり、一つの恐ろしい偶然である
   ──創造者としての意思が、それに付け加えて、《しかし、そうあることをわたしは欲したのだ!》と言うまでは

昔の偉い哲学者が書いた本の中の一節だ。
うす暗い放課後の図書室で、私は本の中に救いを求めた。
私は「こうでしかない」自分の境遇を、「こうであった」と自ら欲することを望んだ。
「こうなるべきであった」、「これがよかったのだ」、と。
私は自由なる意思を持つ人間になりたかった。
自らの意思によって生きれば、すべての事々は肯定に変わり、そして自由な死を選び取れる。
そう、「然るべき時に死ぬ」ことができる。

──でも、私は間違っていたのかしら。

いま私の目の前に立つ男は、
『君は、賽子を投げてなんかいなかった、投げたつもりになってただけだ』
と言った。
『私たちは、生きるために、──戦っているつもりです!』
私のその言葉は、確かにこの男の言葉によって引き出されたものだった。

私は、選び取れていなかったのかしら?
自由なる意思をもつ人間には、なれていなかったのかしら?
自分で仕立て上げた虚像にしがみつく、ただの滑稽な小娘でしかなかったのかしら。

君の歪さは欺瞞にあった、そう言う彼の言葉を、私はぼんやりと聞いていた。

欺瞞。
そう、確かにそれは当たっているかもしれない。
けれど。

──だとすれば岡島さん、貴方は傲慢だわ。
734銀次×雪緒 永遠  ◆JU6DOSMJRE :2011/07/09(土) 22:36:24.11 ID:9uNBlXed

貴方は私が自由な意思で選び取ってなどいなかったと、銀さんと逃げるべきだったと言う。
でも、それを今更言われたところで、私はどうすればいいの?
貴方がそう言った時、銀さんはすでに引き返せない戦いの中に身を置いており、
そして今は物言わぬ屍となってこうして横たわっている。

──貴方はそれでも、私につきつけるのね。私の大切なひとは、もういないのに。

私の視界の端に、彼の姿が映っていた。
ひとりでは立っていられない彼女に肩を貸した彼の姿が。

貴方は依然として大切なものを持ったままだし、大切なものを失う覚悟なんてなにもなかった。
そもそも「失うかもしれない」という可能性すら、貴方の頭の中にはなかったのではないの?

彼は彼女の腕と腰をしっかりとらえて立っていた。
ぴったりと体を寄せ合って立つふたりは、まるで一心同体のひとつの生き物のように見えた。

貴方は彼女と銀さんの決着がついたとき、真っ先に彼女の元へと走り寄ったわね。
走り寄って、抱き起こして。
私がその場を動けずにいることなんか、視界に入ってもいなかったでしょう。
もしかすると、私が喋り出すまで私の存在すら忘れていたかもしれないわね。
どうして貴方は彼女の元に駆け寄ったの?
──それは、彼女を失う覚悟なんか、これっぽっちもできていなかったから。
そうでしょう?

私は違うわ。
私は、覚悟していた。
私は死ぬつもりで、そして大切なひとを死なせるつもりで、ここに来た。
貴方とは違う。

きっと貴方は分かっていないのね。
貴方は依然として、「持っている」側の人間なのよ。
その大切さ、そして自分が「持っている」ことにすら、気付いていないのね。

『邪魔立てをなさるおつもりならば、残念ながら道は斬り拓くことに』
そう宣言した私に、貴方はこう言った。
『断る。君を犬死にさせる訳にはいかない』

なんて勇ましい言葉。
素敵な台詞ね。
でも、貴方は分かっていたのかしら、自分の言葉の意味を。
私を犬死にさせないということはつまり、貴方の大切なひとが死ぬということ。
そうでしょう?
私たちが一旦刃を交わらせれば、どちらか一方が地に倒れ伏すまで終わりがくることはない。

貴方は本当に、私をそこまでして救いたかったのかしら?
私のことなどすっかり忘れた風で彼女の元に走り寄る貴方が。

貴方は自分が「持っている」ことにも、持っているものの大切さにも気づいていない。
貴方の大切なひとは生きていて、私の大切なひとはもういない。
そうでありながら、私のなけなしの欺瞞を暴くのね。
それが「傲慢」でなくて、なにかしら。

──だから私は、貴方が嫌いよ、岡島さん。
735銀次×雪緒 永遠  ◆JU6DOSMJRE :2011/07/09(土) 22:37:19.81 ID:9uNBlXed

私はハンカチを取り出し、手に持った刀にあてがった。
そして切っ先を自分の喉元に向ける。

「苦労をおかけいたしました。これにて一切の騒動、落着と相成りましょう」

彼は私を凝視していた。
ひどく痛ましいものを見る目で、私を見つめていた。

──そんな目で見ないで。私はそんなに「悲劇」かしら。

私は「あるべき」人間にはなれなかった。
借り物の思想に逃げ込んだだけの、未熟な人間だった。
それでも今こそが、私の「然るべき時」なのだ。

私は夜の中に生まれ落ち、そして闇の中へと消え去る。
そんな私の一生は、きっと悲劇に見えるのだろう。
けれど、輝かしいものもまた、闇の中にあったのだ。
闇の中にこそ、光があった。
私は何度やり直しても、この生を選び取るだろう。

──私の生は私のもの。決して貴方のものではないわ、岡島さん。

「──バラライカへ伝文を。
『何時か来る所にて、一足先にお待ち申しております』と」

私は切っ先を喉元に突きたてた。
鋭い刃がぷつりと皮膚を破り、急激に喉が熱く重たくなる。

「ロック! 見るな!」
最後に聞いたのは、傷を負った彼女の咆哮だった。

──ああ、岡島さん、貴方の大切なひとは、とても貴方に優しいひとなのね。

頭はがんがんと熱く、目の前は血の色に染まっていた。
口の中に温かく血が逆流してくる。
けれど、まだ浅い。
全身の体重を刀へのせると、刃先が勢いよく喉の奥まで刺し通った。


いつ倒れ伏したのかも、自分が今どうなっているのかも分からなかった。
ただ意識の切れ端で、銀さんの体温を感じた。
私の体を受け止めたのは冷たい地面などではなく、銀さんの体だったのだろう。
銀さんの体にはまだ温かさが残っていた。
初めて、胸の下で銀さんの体を感じた。
とても慕わしい体だった。
ぼやけた真っ赤な視界の中、銀さんの血に私の血が混ざっていった。
静まりかけていた銀さんの血は、私の血を呼び込んで、勢いを取り戻す。
赤く溜まった血の表面が、ぷつりと嬉しそうにふくらんだ。

『私はここから先も、一緒ですよ』

約束は守るわ、銀さん。
私はこれでよかったの。
「一緒に」、多分これだけが私の純粋な願いだった。
だから、これで、いいのよ。

──銀さん、ここから先も、ずっと、一緒に──

736銀次×雪緒 永遠  ◆JU6DOSMJRE :2011/07/09(土) 22:39:19.72 ID:9uNBlXed

 * * *

桜吹雪が舞っていた。
季節は春、満開の桜が花びらをこぼす樹の下に、ひとりの少女が立っている。
水色の絵の具をうすく刷毛でのばしたような空のもと、桜色の花びらが彼女の髪に耳に、舞い落ちる。
古い日本家屋の庭に人の気配はない。
少女の制服のスカートが風にはためき、長い黒髪がなびいた。

──あの少女は、……私?

少女の顔は、今の私よりも幼さを残していた。
少女は桜の下で、根が生えたように動かない。
ぼんやりと虚ろな目は、どこも見ていないようだった。

と、その時、声がした。
「お嬢」
はっ、と少女の目に生気が戻る。
少女が振り返ると、そこには長身の男が立っていた。
随分と探し回ったのだろう、男は体全体に焦りを滲ませて呼吸を乱していた。
その焦りを安堵の表情に変えて歩み寄る男に、少女はうっすらとほほえみかけた。
「銀さん」
「──お嬢」
男は少女のそばで立ち止まった。
言葉をつくろうのが下手な男を、少女は見上げた。
見上げて、笑った。
「──ひとりに、なっちゃった」
更に笑みを作ろうとする少女を見て、男は眉を寄せた。
男の眉間に、ぐっと苦悩が刻まれる。

「……そんなこたァないです、お嬢。学校には、沢山友達がいなさるじゃないですか。
これから先だって、お嬢はもっともっと沢山の人に会いなさるンです。
誰もお嬢をひとりになんかしやァしませんよ。
それから、もっとさきには誰かいい人と会って、所帯を持っ──」
「銀さん」
訥々と、それでも真剣に言いつのる男を、少女は笑顔で遮った。

「ねぇ、銀さん。銀さんは、ずっと一緒にいてくれる?」
「──お嬢」
桜の花びらに縁取られてほほえむ少女を、男は困ったように見下ろしていた。
「ねぇ、私、銀さんがいてくれれば平気よ。銀さん、ずっと、ずっと一緒にいてくれる?」
風にまかれて、ざぁっと花びらが逆巻く。

桜吹雪の中、男の顔がふっとゆるんだ。
「──ええ、お嬢がそう望むなら」
男はぎこちなく、しかし穏やかな顔でほほえんだ。

「お嬢がもういいと言いなさるまで、ずっと、一緒におりやすよ」







*作中引用部分:ニーチェ作・吉沢伝三郎訳『このようにツァラトゥストラは語った』(講談社文庫)

737名無しさん@ピンキー:2011/07/09(土) 23:16:39.92 ID:bD4JyLuL
>>724-736
GJ!
いつもながら結構なお手前で
ゆっきーには銀さんと致して戴きたかったが、致さなかった部分も含めてこういう解釈なんだなと納得行く、素晴らしい作品でした
次回ご光臨も楽しみにお待ち申し上げます
738名無しさん@ピンキー:2011/07/09(土) 23:24:11.95 ID:D2MqnC4P
>>724-736
ゆきおあんまり好きじゃなかったけど
こうしてSS読ませてもらうと切なくて好きになった
情景が想像できてきれいだ
神に感謝と敬礼
739名無しさん@ピンキー:2011/07/09(土) 23:39:36.32 ID:+OoLYGj5
すげえ、読んでて原作の風景が自然と浮かんできた…
切ないけど感動した。こういう話大好きです
740名無しさん@ピンキー:2011/07/10(日) 17:38:10.46 ID:0yCYjNwO
以前投下された日本編(特に岡島がレヴィを失っていたかも〜と考える下り)
とリンクしてるのがまた良い
2編を続けて読み直してさらに感動した。GJでした。
741名無しさん@ピンキー:2011/07/11(月) 02:40:57.32 ID:DfqtwY11
真夏に雪緒ちゃんとはまた粋な
ありきたりな言い方だけど銀さんもまた雪緒ちゃんに守られての銀さんだったわけで
そういう点でもロクレヴィと何から何まで似てて違うな
742名無しさん@ピンキー:2011/07/11(月) 22:45:33.23 ID:96My7u/w
エロがない(涙
743SS見習い ◆B6YqIdhOFA :2011/07/11(月) 23:10:05.34 ID:JDJ1Pmp2
すごいの一言です。
本当に原作の風景が頭に思い浮かびました。
エロなどなくとも、普通の小説として楽しめるのはいいものです。
次の作品に期待します。ありがとうございました。
744名無しさん@ピンキー:2011/07/12(火) 22:26:47.25 ID:Lc1oECw3
>>741ロクレヴィと何から何まで似てて違うって、うまいこと言うな
そういう意味で、雪緒と銀さんが致さなかったところもロクレヴィときれいに対になってるのか
神の作品は細部まで考え抜かれてて、ほんとすげーわ
どのキャラクターにも愛情感じるから大好きだ
745名無しさん@ピンキー:2011/07/13(水) 11:44:13.50 ID:HZqpDN2M
あの二人は、どこまでもプラトニックなんだなぁ。
746名無しさん@ピンキー:2011/07/13(水) 14:17:30.80 ID:ryDciAkz
>>743
投下しないならコテ外せよ
747名無しさん@ピンキー
>>746
つNG設定

件のあの人にいちいち老婆心で何か言っても聞く耳持たないしスレの空気悪くなるだけなんだから、これですっきりだよ
設定すればイラっとしないし、精神衛生上もまじおすすめ

って書いてる自分が空気悪くしてる自覚あるからもう書かないけど、NGすればホントにイラつかないよ。