【MH】モンスターハンターでエロパロ 22匹目【モンハン】
明りが落とされた室内には、葉巻の絡みつくような煙とともに、重苦しい空気が漂っていた。
「アンダースンが、ポッケ村のハンターに接触したというのは間違いない」
その室内にいる、初老の男性が重々しく口を開いた。その声色は焦りといら立ちを隠せないでいる。
「偽の情報と言う可能性は?アンダースンはああ見えてなかなかのキレ者です」
もう一人、壮年の男性が問いかけた。
「フン、奴はコッホフェルトの小娘を、俺からの間者と疑っているようだからな…」
初老の男が、声とともに盛大に紫煙を吐きだす。あの小娘は逆に使いにくいのだがなと小声で
呟いてから続けた。
「俺の都合で動かせる人間が、本部内にも居るからな。そこからさ」
「なるほど……で、奴は何かを掴むことができたのですか?」
壮年の男は、感情を殺した無表情で問う。
「いや、わからん。上手くかわされてしまったよ。確かに奴は厄介だ」
忌々しそうに、初老の男が吸っていた葉巻を乱暴にねじ消した。
「恐らく、近いうちにこちらの尻尾を掴みに来るな」
「では手はず通り、連中を処分するとしましょう」
壮年の男が、物騒な単語が含まれるその言葉を、まるで掃除でも請け負ったかのように発音した。
「頼む、この件は露見させるわけにはいかんからな」
少し神経質そうにもみつぶした葉巻を弄びつつ、初老の男は告げる。
「心得ております。御家再興の御為なれば」
忠実な部下以上の態度で、壮年の男は応じた。
「できる事なら、事故で決着させたかったが…」
初老の男は呟きながら新たな葉巻を取り出し、吸い口を整え咥える。その葉巻は、彼の身なり
からすれば、ありえぬほどの安物であった。
「そう何もかも、上手くは行きますまい。御家の苦境と同様に…」
同情するように、というより、言って聞かせる様に壮年の男は話す。
「フン、たまたま飛竜がやってきて……か?たしかに、時々、竜にすべてを破壊されてしまえと
思う時はあるが……まあいい、すぐに現地へ飛べ。後の始末は任せる」
「はッ」
壮年の男は、令則通りの敬礼を行い、すぐさま踵を返した。
「くそッ、ようやくここまで来たのだ。邪魔などさせるものかよ」
その後ろ姿を眺めつつ、初老の男は吐き捨てる様に呟いた。
「それで、犯人たちはギルドナイトが抹殺した、というわけですか」
マヤとの会食から数日後、アンダースンは自分の執務室で、エルザからの報告を聞き、呟くよう
に言った。
「ええ、ポッケ村の集会所で聞きこみをしていた、ギルフォーデス隊の手柄だそうですわ。
なんでも、数人掛かりで女を凌辱し、その場に放置していたことを白状したとか」
エルザは、送られてきた報告書を執務机の上に置くと、両手を腰にあて、上目づかいで
アンダースンをからかう様に見やる。
「あの女と会う口実が無くなってしまいましたわね」
あの会食の日、マヤを泊っている宿まで送った後、なぜかエルザが本部の前で待っていたのだ。
そして「監理官ともあろう方が、機密漏洩ですの?」と、問いかけられた。「事情徴収ですよ」と
返したのだが、その直後、エルザのしてやったりという表情を見て、アンダースンはカマを
掛けられたことに気がついたのだった。それ以来、エルザはこの件に関してやたらと関わりたがる
ようになっている。
しかし、アンダースンには彼女の軽口を気にしている余裕はすでに無かった。
「変ですねぇ、ギルフォーデス隊ならば、殺さずにとらえることも不可能ではないと思いますが」
厭味を流されたことより、彼が疑っている内容に興味を引かれ、エルザは口を出した。
「ハンター3人が全力で抵抗した場合、捕縛は難しいのではなくて?」
「ギルフォーデス卿は、ギルドナイツでもトップクラスの実力者だと伺っておりますが」
それを聞いて、エルザは苦笑いをした。ギルフォーデスは確かに、訓練試合でも負けなし、
任務の達成率も高く優秀と評判のギルドナイトであるが、尊大なその態度と捕縛よりも
抹殺を好むその性格によりギルド内でも敵の多い人物であるからだ。犯人の抹殺よりも、
事件解決と法による処罰を重視するアンダースンとは不仲を通り越して、敵視しているに近い。
とは言え、アンダースンも犯人を死刑にすることに反対なわけではない、あくまで法の下に
平等に罰を与えるべきだとの考えに基づいての事だ。
「確か、彼の隊の派遣は、マンシュタイン閣下直々のご命令でしたね」
マンシュタインというのは現在この本部に駐留するギルドナイツ第三旅団長である。若かりし
頃は巌のような強面の屈強な騎士だったのだが、最近ではもっぱら金の亡者とか、肥え太った
豚とか陰口を叩かれるほど、見事に俗物化してしまったと言われている。年齢を重ねるごとに
駄目になっていく人間の見本ともっぱらの噂だ。
「あのお二人を疑っていますの?」
興味津々という顔でエルザが問いかけて来る。
「いえ、疑うというほどの事はありませんが、まあ、事実確認程度のことです。しかし、興味が
お有りのようですね?」
あっさりと否定しながら、彼女の態度に話を切り返した。
「監理官とあのお二人とは、仲がよろしくなかったですわね」
少し、意地の悪い笑みを浮かべ、エルザは答える。
「確かに、良くはないですねぇ。しかし、仕事に私情は持ちこんではいませんよ」
「どうかしら」
アンダースンの否定を、一言で切り捨てた。だが、その表情には笑みが浮かんでいる。
「わたくし、今回の監理官の行動、マンシュタインにもギルフォーデスにも伝えていませんのよ」
エルザは、本来上司に当たる二人を呼び捨てた。もっとも、彼女の本来の身分からすれば、
その二人よりも彼女のほうが上位ではある。
それを聞き、一瞬、アンダースンの表情が変わった。
「なるほど、貴女もそう思ってみえた訳ですか」
だが、アンダースンの表情の変化は、それだけが理由ではなかった。確かに、万が一の可能性
として彼はエルザがマンシュタインの送り込んできたスパイではないかと疑っていた。社会的な
立場から考えれば、まずあり得ない事ではあったが、アンダースンは警戒していた。実際に
マンシュタインへ連絡したのは違う人物であると確認はできていたが、エルザがこちらの味方
であると立場を表明してくれたことは、アンダースンにとって大きな収穫である。それが確認
できただけでもマヤとの会食には充分意味があったと喜べる。
「ええ、最近マンシュタインは、妙に金廻りが良くなっていましたわ。それに実行犯だけでは、薬品
を用意できませんもの。ご覧になったかしら、殺された女には媚薬すら使われていますのよ」
そう言って、報告書の一部を指さす。
「ある程度の地位のある人間が協力をしないと、手に入れることは困難なものではなくって?」
そこに記入された薬品の名称を見て、アンダースンの眉が微かに動いた。
「媚薬の方は確かに。しかし、証拠がありませんね」
彼の呟きを受け、エルザも続ける。
「動機もよく判りませんわね」
「そうでもないですよ」
アンダースンはエルザを責める様子もなく、いつもどおりの声で告げる。
「マンシュタイン卿というか、あの家は十年ほど前に領地の運営に失敗していますからねぇ」
お金が要るんでしょうと、アンダースンは続けた。
「領地の運営に失敗?」
「おや、ご存じなかったですか?簡単に言えば、日照りが続いたので灌漑設備を整備しよう
として、大量に財産を注ぎ込んだところ、完成寸前に飛竜に襲来されて全部壊されてしまい、
借金と荒れた土地だけが残ってしまったということですが。まあ、マンシュタイン卿が動く時は、
必ずどこかにお金になる話が絡んでいるはずです」
アンダースンはそう締めくくった。
「しかし、ハンターを数人殺したところで、なにかお金になりますの?」
エルザのもっともな疑問に、そうですねぇと呟いてアンダースンは答えた。
「それが掴めれば、あるいは糸口になるかも知れませんねぇ」
その場を沈黙が支配した。二人は、先ほどから名前の挙がっている、マンシュタインと
ギルフォーデスが実行犯に指示し事件を起こしたのではないか、と疑っている、だがそれ以上
の手掛かりがまったく無い。
トカゲの尻尾のように実行犯だけが切り捨てられた。それが可能だったのが、マンシュタインと
ギルフォーデスしかいないということしか、その二人を疑う根拠がなかった。
その時、執務室の扉かノックされた。即座にエルザが動き、室外の職員に何事かと尋ねる。
ずいぶんと秘書が板について来ましたねぇ、とアンダースンは妙な感心の仕方をした。
「監理官。お客様だそうですけれど、こちらにお通ししてもよろしいかしら」
こちらを振り向いた彼女の表情を見て、アンダースンはだれが訪ねてきたのか分かったような
気がした。
「例のハンター殿がお見えだそうですわよ」
お通ししてください、と答えつつ彼は自分の予想が的中したことを密かに喜んだ。
マヤは先日とは打って変わって、なんとも地味な服を着用していた。しかも、ハンターが好んで
普段着に使ういくつかの種類の服とも違う。強いて似た服を探すなら、食材屋のおばちゃんが
着ている服に近い。
「あら、今日はずいぶんと地味ですわね」
地味を強調して言うエルザに、マヤは笑顔を向け答える。
「アンダースンさんに、なるべく迷惑をかけないように考えたんですけど」
しかし、マヤの眼は笑ってはいなかった。
「取次の人が、ハンターが来ましたぁ、なんて言ったら台無しですけどね」
火花散る視線の応酬、アンダースンは飛び散る火花が見えたような気がした。
「しかし、よくそんな服を用意できましたね」
とりあえず、話題を変える努力をしてみるアンダースン。
「ああ、下町の古着屋で、いくつか見つくろいました」
そんなに高い物じゃないですし、とマヤは続ける。
「先立つものの方は大丈夫ですか?」
それでも心配そうに、アンダースンは続けて尋ねる。マヤの街への滞在はほんの数日の予定
だったはずだからだ。そんなに余裕があるとは思えない。
「あ、それなら大丈夫です」
だが、余裕めかしてマヤは笑う。
「これを、持って来てますから」
そう言って取りだしたのは、何やらほのかに光を放つ、赤い鱗。
「そ、それは」「火竜の逆鱗」
二人が息を飲む。それも当然であろう、彼女が持っているのは、火竜リオレウスからごく稀に剥ぎ
取ることができる希少な鱗だ。加工素材としても利用価値が高く、ハンターでもなければ、鱗の
状態で目にすることなどめったにない。いや、ハンターですら手に入れる前に、引退をしてしまう
者もいるほどの貴重な素材である。
「雌火竜のもあったんですけど、そっちは、ドレスに化けました」
なるほど、とアンダースンは納得する。道理であんな上等なドレスを身につけていたわけだ。
しかし、逆鱗一枚分のドレス、ずいぶん奢ったものだ。
「これなら、捨て値で売り払ってもしばらくは街で遊んでいられる程度のお金になりますから」
事もなげにそう言うマヤ。たしかに現金で持ち歩くより、かさ張らないし目立たない。多少相場
に左右されるとはいえ、利点の方が多い。アンダースンは思わず感心した。
「あ、貴女、ずいぶん豪気ですのね」
エルザの毒気を抜かれた声を聞きながら、アンダースンは、彼女は村に駐在するハンター
としては、すでに相当の腕前であると認められていることを思い出していた。
「せっかくのお誘いなんで、思い切って奢ってみました。…っと、今日はそんなこと話に来たんじゃ
ないんです」
マヤは、少しだけ自慢げな態度を見せたが、すぐに態度を改め真剣な眼差しでアンダースンを
見つめる。
「街で妙な噂を聞きましたので、差し出がましいとは思いましたがお知らせに参りました」
「なるほど、それで、噂とは一体どのようなものでしょうか?」
アンダースンが感情の読めぬ表情になり尋ねる。
「…貴族の間で、ヤバい食材の裏の取引ルートがあるとかで、その中で、人肉を食わせて育てた
養殖フルフルベビーがある、とか」
「まさか」「いくらなんでもそれは…」
声をひそめたマヤの話の内容に、思わず言葉を失う二人。
「どっかの貴族のお墨付きとかで、とんでもない値段が付いているそうです」
「どこでそんな話を?」
にわかには信じがたい、そんな表情でアンダースンがさらに問う。
「宿に出入りしていた食材屋のおばちゃんが、問屋で聞いた話だそうです」
アンダースンは黙り込んだ、もし、マヤの話が本当だとしたら…いや、重要なのはマヤの話の
真偽ではない、人肉で育てた事を付加価値としたフルフルベビーが高額で売れる可能性がある、
その事の方が重要だ。
「そのお話が本当だとしたら……許せません。断じて許せませんわ。貴族にありながら、その
ような悪徳に手を染めるなどと、王国貴族として、いえ、人としてあってはならない事」
エルザが珍しく怒気を露わに呟く。
「直接、問い質してまいりますわ!」
そのまま、退出しようとする。マンシュタインのところに殴り込みかねない勢いだ。
「待ちなさい!今はまだいけません」
こちらも珍しく、語気荒くアンダースンは彼女を制する。
「どうしてですの!」
「今はまだ証拠がありません。今、問い質したところでとぼけられるのがオチでしょう。下手をする
と貴女が、マンシュタインを謂れもないことで侮辱したと看做されてしまいます。まずは証拠です」
「あの、そのことなんですが」
おずおずとマヤが声をかける。
「あたしに一つアイディアがあるんですけど」
「囮捜査、だと?」
ドンドルマの街の某所にある、薄暗い部屋に男の軋むような声が響いた。
「アンダースンめ、厄介な真似を……」
そこで、部下からの報告を受け取っているのは、現在、ドンドルマに駐留するギルドナイツ
第三旅団の旅団長、マンシュタインである。彼は、部下により届けられた書類を睨みつけて
いた。そこにはアンダースンがポッケ村にて捜査を行うため協力を要請する旨、記載されて
いる。アンダースンの下に配置しておいた間者からも、囮捜査の情報を入手していた。
ポッケ村と雪山でアンダースンが捜査を行うことは確実だ。
「どうする、ここは無視をするのが妥当か…いやまて、今回動かなければ、いずれギルド
内の人物が怪しまれるか…」
マンシュタインは一人呟く。ここで、手を誤れば自身の破滅となる。慎重にならざるを得ない。
「ならば、アンダースンの裏をかいて、囮のハンターを始末することができれば……」
確かに、協力者を殺されたとなれば、アンダースンは今後、苦境に立たされることになる。
捜査もまともに行えなくなるだろう。
「ギルフォーデスは動かせんか……誰にやらせるか……」
囮ハンターを殺すのであれば、自分に忠誠心の高く腕の立つ人物が必要だ。今、ポッケ村に
いるギルフォーデスはその条件に合致しているが、アンダースンの監視が必ず付く、下手に
動かすことはできそうにない。
しばし、沈思黙考するマンシュタイン。と、不意に彼の脳裏に閃くものがあった。
「ふっ、ふふっ、そうか、その手があるか」
思わず笑みすらこぼれる。自ら思いついた妙案に彼は酔っていた。
「アンダースンめ、自らの策で自分の首を絞めるがいい」
暗闇にマンシュタインの低い笑い声が響いていた。
〜つづく〜
以上でやんす。
後編は近日中に投下予定です。
良ければまた読んでやってください。
それでは
GJ!!
むぅ、これは期待…楽しみにしてます
GJ!
先が予想できないから楽しみだ!
続き。結構長くなるかも
今作はベルキュロス視点も入れてみた。
ちなみに、一部自己解釈があるのでご了承を。
そう、結局私はベルキュロスの採精をする事にした。
その方法とは・・・?
聞くな。
他にも方法があるだろ!?と、突っ込みたくなる方法だが、博士によると、
「リオレウスのような飛竜には、電気を使って射精へ至らせることが出来るのじゃが、ベルキュロスのような雷属性への耐性が飛び切り強い輩には、その方法だと通用せんかもしれん。」
確かにそれは頷ける。
ていうか、あんたやった事あんのか・・・?
経験豊富的な発言・・・
そもそも専門の者って・・・?
夜。
日は完全に落ち、私は未知の領域に踏み入れる準備をしていた。
射精の際に精を入れるガラス製の容器等だ。
初めは、わざわざガラス製の物にしなくても良いと思っていたのだが、今は心臓が止まりそうな位緊張していてそんな事は大して気にならなかった。
・・・正直、恐ろしい。
幾ら身動きが取れないとは言え、相手はあの舞雷竜だし、俗に言うキングサイズの個体だ。
しかも剛種。
手慣れのハンターを何度も返り討ちにしてきた、とんでも無い奴なのだ。
私は気を落ち着けるために、一度大きく深呼吸をした。
一端大きな恐れの感情を露わにしてしまうと、余計に相手に付け込まれてしまう。
しかし、護衛のハンターとギルドの役人達を晩餐に引き留めておく間にやらなければならない。
それまでまだ時間はある。
よって、心の準備を整える時間も十分にあるのだが、心の準備などと言っていると一生出来そうになかった。
“やる”のだったら、さっさと済ませたい。
私は一通り必要な物を脇に抱えると、”あいつ”がいる地下研究室へ歩みを進めた。
・・・・・・・
ここは・・・?
身体が怠い。
いや、確か私はハンター・・・に・・・
罠に掛かって・・・
はっとして起き上がろうとするが身体が全く動かない。
(クッ・・・)
脚を動かそうとするが、それを上回る力で引っ張られる。
今度は翼を動かしてみるが、結果は同じ。
自分の翼を、首を廻して見ようとするが同じように殆ど動かすことが出来ない。
それでも何とか見てみると、脚と翼に無骨な何かが巻き付いている。
しかも、狭い中に閉じ込められているようだった。
捕まったのだろうか・・・?
(・・・・?)
そう思ったその時、何者かの気配を一瞬感じた。
・・・・間違いない、何か来る・・・
反射的に身構えようとするが、当然出来ない。
威嚇の咆哮を上げようとするも、口が殆ど開かず、情け無い声が辺りに虚しく響くだけである。
足音は徐々に大きくなり、淡い光の点が闇の中に揺らめくのも見える。
その光を睨み付けるように凝視していると、その主の姿が闇の中に怪しく浮かび上がった。
当然ながら、人間だ。
しかし、見た目からしてハンターでは無いようだ。
それでも私は警戒を緩めない。
低く唸りながら、精一杯の怒りを込めた眼でその人間を睨み付ける。
微かにその人間の顔が恐怖に引き攣ったが、歩みを止める気配はない。
その人間は、私の右脚の所まで来ると、私を閉じ込めている囲いの隙間にその細い腕を入れる。
威嚇するのも忘れて怪訝そうに見ていると、いきなりその人間が私の脚をその小さな手で掴む。
振り払おうとするが、勿論動かせない。
結局私は、目を瞑って人間に身体をまさぐられる屈辱に耐える他なかった。
何故、こんな事を引き受けてしまったのだろう・・・?
左手でベルキュロスの右脚を掴みながら、今更思う。
だが、私が妥協で決めてしまったことだ。
同じように妥協するしかない。
予期していたよりベルキュロスが大人しくしてくれているので、
さっきよりは恐怖を感じない。
ふと、ベルキュロスの顔を見てみると、深い諦めにも似た表情が張り付いていた。
私は、深く深呼吸して一本の注射器をポケットから取り出す。
これは、マヒダケの濃縮エキスとその他の薬品を混ぜた物だ。
さっきまでベルキュロスを眠らせていた麻酔薬とは違う特殊な麻酔薬で、首から下の神経が麻痺するように作られている。
神経が麻痺すると言っても、感覚神経はそのまま残るので”この様な事”に持って来い・・・らしい。
私は左手で脚を押さえながら、鱗の隙間に注射器の針を突き立てた。
かなり太めの針だが、身体の大きい飛竜にとっては蚊に刺された程にも感じない筈だ。
それから少し時間が経つと、麻酔の効果が見え始めた。
酷く怯えたような、そんな感じでベルキュロスが懸命に身動ぎをしようとしている。
だが出来るわけ無い。
私は再び深呼吸をする。
ここからが、少々エグい作業になる。
雌雄の判別・・・
飛竜は、基本的には爬虫類と同様の身体のつくりをしている。
多くの種で雌雄の判別方法は一つしかない。
それは、腕を直接、排泄腔に突っ込んでペニスの存在を確認すると言うトンデモ法だ。
レウス・レイアのように外見で雌雄を判別できる方が稀な例なのだ。
私は、ベルキュロスの股間のソレに視線を向けた。
これは・・・一体・・・?
翼を動かしている感覚はあるのに、それが別の物であるように全く動いていない。
ああ・・・遂に殺されるのか・・・
咄嗟にそう思った。
私は今まで、私を狩ろうとしたハンターを何人も返り討ちにしてきた。
だが、それは己の身を守るためだ。
私は人間に対して何もしていない・・・していないのに、毎日のように命を狙われる。
こんな理不尽な事はない。
その時。
「グオォッ・・・!?」
突然下半身に走った猛烈な快感に、私は思わずそんな声を上げて(相変わらず声量は無いが)しまった。
まだ動く首を廻して見てみると、なんと人間が私の股間の排泄腔に腕を突っ込んでいるではないか!?
「グウゥ・・・」
抵抗しようとするが、身体は地味に動かない。
(やめ・・・あっ・・・)
その時、人間の手があるモノに触れた。
そう、雄の象徴に・・・
私は檻の中に入って、心の迷いを振り払うかのように、勢い良く腕をソレに突っ込んだ。
ソコの中はしっとりと湿っていて、まるでマグマのように熱かった。
流石に素手でする勇気はなかったので、博士に渡されていた肘まで覆うタイプの手袋を付けている。
・・・どうやらこれも専用品・・・らしかった。
こんなの狂っている。
確かに学者は、雌雄判別くらいは出来なくてはいけないのだろう。
しかし、飛竜にとってはたまった物ではないだろう。
ましては知能の高いベルキュロスだ。
恐らく、これを途轍もない屈辱に感じるはずだ。
こんな事をした後が怖かった。
勿論、明後日にはこのベルキュロスは古龍観測所へと送られるのだが。
その後どうなるかは知らないが、復讐なんて出来るはずがない。
そう無理矢理自分を納得させると、目の前のことに意識を戻す。
全てはこの作業の結果に掛かっているようなものだ。
もう、こいつが雌と言う事に賭けるしかなかった。
しかし同時に、雄だったときの覚悟も決めていた。
雄の飛竜を絶頂へといざなう事への抵抗を半ば強引に封じ込め、私は円を描くように排泄腔の中を探る。
その円はもう終わりそうだが、ソレらしき物は無い・・・・
そう思ったとき、私の手にナニかが触れた。
柔らかくもなく、固くもないソレにもう一度触れてみる。
(確かに・・・・コレは・・・・)
いや、違う。
「ははは、まさかね・・・・」
確認のために軽く握ってみたその時、
「グルァッ・・・!!」
小さいながらも、ベルキュロスが普段は絶対上げないであろう嬌声のような声を上げた。
「えっ・・・なんでそんな声上げんの・・・?」
思わず、ベルキュロスにそんな間抜けな質問をした。
答えは返ってくる訳がない。
(違うよね・・・コレ・・・)
しかし、未だ現実を受け入れられていない私の頭に、事実を突き付けるが如くその“固くも柔らかくもないモノ”が私の手の平を押しのけて、太く、そして長くなっていくのを感じた。
気付いた時には、ソレの先端が私の柔らかい胸に押しつけられるように当たっていた・・・・
眠い中書いたんで、いい加減な部分があるかも知れませんが、
見逃してくれたら幸いです。
次で終わり・・・になると思います。
二作ともGJなのだ
ギルドのお仕事はダークな感じがして面白い
GJ、次の投下楽しみにしてるよ!
「ギルドのお仕事」後編投下します。
14レス消費予定。
女ギルドナイト×女ハンター 異物挿入あり
(誰と誰だかバレバレですな)
NGワードは同じく「ギルドのお仕事」でNGってください
そして、今、マヤは雪山に居た。身に纏っているのは耐寒性の欠片もないハンター用の防具、
それも街の駈け出しハンターに支給されるビギナーシリーズと呼ばれる白色の防具だった。
要するに、マヤのアイディアとは、自分が囮となって証拠をつかむというものだった。マヤが
新人ハンターの振りをして街から雪山に出発し、同時期にポッケ村にアンダースンとエルザが
赴き、不審人物を捕縛しようというものだった。真犯人がこの手口に味をしめて、同様の方法を
使うものと想定し、罠を仕掛けたというわけである。
当初、マヤのアイディアに二人は反対した。アンダースンは純粋にマヤの身を案じて、エルザは
ハンターへの不信感によりマヤを信用していないため、という差はあったが。
特にエルザは強く反対した、余計な手出しをするなと言わんばかりにマヤに詰め寄ったのだ。
「貴女は関係ありませんわ。ハンターならハンターらしく、トカゲの相手でもしていなさい!」
彼女自身の無自覚な傲慢さが言わせた言葉だったが、下手をすればギルドでの地位を失い
かねないほどの放言である。
「関係なくないです、あたしだって、ひょっとすると殺されてたかも知れないんです。それに欲の
ために人の命を奪うなんてこと、許しておけません!」
マヤもつられて怒鳴り返す。両手が堅く握りしめられ、怒りのためか小刻みに震えている。その
怒りは犯人と、恐らくエルザにも向けられたものだろう。
「そうは言っても、貴女だって、自分の欲のために飛竜を殺しているのでしょう!」
エルザの言葉は、彼女がなぜハンターを嫌っているか、その理由を表わしている。子供じみた
感傷と言ってしまえばそれまでだが、エルザは、ハンターを無為に命を奪って喜ぶ輩だと認識
している。
「そうですよ、ハンターですもん、否定はしません。生きていくためにやってることです」
しかし、マヤが彼女の暴言をあっさりと肯定したため、エルザは驚いた。マヤの反応は、彼女が
予想していたものとはずいぶんと違っていたからだ。
「では、殺された人たちも、犯人が生きていくために殺されたのだとしたら?」
明らかに詭弁である。それを意識しつつエルザは問うた。マヤがこれにどうこたえるか、マヤの
考え方に、マヤ自身に興味が湧きつつあった。
「あたしは法は犯してません。犯人たちは法を犯しました。それがあたしと犯人たちとの違いです」
マヤはあっさりと答えた。その真意をはぐらかすような至極まっとうな内容に、エルザは少し
落胆する。
「結局他人の考えた法に従う…貴女には自分の考えはないのかしら」
それでも、マヤから本音を引き出そうと、エルザは問い詰めてみる。
「あたしの考えなんか、この際関係ありませんよ。何の学も権力もないあたしの考えで、誰が
味方してくれるもんですか。そこまで周りが見えないほど、あたしは子供じゃありません」
マヤはゆっくりと語りだした。その口調は自分に言い聞かせているようにも聞こえる。
「結局、あたしが生きていくために、頼り利用すべきなのは、あなた達が作り上げた法と、それを
動かすギルドしかないんです」
そっけなく、吐き捨てるような態度でマヤは言う。エルザは、しばし無言で彼女を見つめた。
「ふふっ、貴女、ハンターよりもギルドの役人の方が向いているのではなくて」
しばらくして、エルザが肩の力を抜き、笑みを浮かべて軽口を投げかける。マヤの言葉で、彼女
を信用する気になっていた。その意思表示のつもりの軽口だった。
「勘弁して下さい、こんな書類だらけのところにいたら、三日で窒息しちゃいます」
マヤも緊張を解き、軽口を返す。公爵家令嬢であるエルザが、平民であるマヤに軽口を叩いて
いること自体が、彼女を信頼している事の表明となる。マヤにも、エルザの軽口の意味は理解
できていた。
二人はややあって、どちらからともなく笑いだした。
「っえくし!っと、そろそろね……」
マヤは寒さに耐えながら、雪山頂上付近より、双眼鏡で麓の村の方を観察していた。
聞き咎める人がいないためか、無遠慮なくしゃみをしている。
そろそろ、というのは犯人捕縛成功にしろ失敗にしろ、ポッケ村近郊から合図の狼煙が上がる
はずだからだ。狼煙を確認したら彼女はクエストを終了して帰還すればいい。
「あった!っと、ふむん、失敗ね…」
雪山の鉛色の空に薄墨を流したような煙が一筋、合図の狼煙に間違いなかった。
「さて、じゃ帰りますか」
さして気落ちした様子無く呟くと、マヤは雪山を下山し始めた。まずはベースキャンプまで戻らねば。
と、ベースキャンプ近くへ続く洞窟の入り口まで来た時、
「誰ッ!」
唐突にマヤは叫び、腰のハンターナイフを抜刀し身構える。
微かに人の気配がしたような気がした。
と、数度、乾いた破裂音がし、マヤの周囲に緑色の霧のようなものが一瞬湧き上がる。
「回復弾?」
その正体にマヤは気付いた。ボウガンにより運用される弾丸で、狙った対象に回復薬を飲ませる
ために利用される弾丸である。
「一体何を……っ!」
だが、すぐにマヤの眼は焦点を失った。四肢からも力が抜け、崩れる様に雪面にしゃがみ込む。
「な…によ…こ…れはっ」
両手を雪面に付き上半身を支えるが、手足が震えて力が入らない様子である。
どうやら、回復弾に、何か別の薬品が混入されていたようだ。
「ほう…まだ抵抗できるとは…並みの人間なら正体を失うほどの強さなのだが。さすがベテラン、
と言ったところか」
何者かが物陰から歩み寄ってきた。
「…だ…れ」
マヤは、動かない体に苦労して居る様子で相手を見やる。
「お前の蛮勇に敬意を表し、名乗ってやろう」
その男は、横柄に名乗りを上げた。
「わが名はゲオルク・マンシュタイン。ギルドナイツ第三旅団長である」
そう言うと、その男、マンシュタインはライトボウガンと思しきものを構える。恐らく
入手の簡単なクロスボウガンだろうとマヤは当たりをつけた。
再度ボウガンを発砲する軽い音がして、回復弾が数発、撃ち出される。
「……っひ!」
またも謎の薬品を撃ち込まれ、一度痙攣するようにのけ反った後、マヤは雪面に力なく倒れ
伏した。
「飛竜が交尾の際に分泌する毒から抽出した媚薬だ。人の身ではしばらく言葉も発せまい」
そう言いながら、念のため再度ボウガンへ媚薬入り回復弾を装填する。
「貴様自身には恨みはないが、アンダースンへの警告だ。ここで死んでもらう」
念のため、マヤの落としたハンターナイフを遠くへ蹴飛ばし、マヤの近くへしゃがみ込む。
「他の女ども同様、貴様もフルフルに…」
そう言いながら、マヤの体に手を伸ばしたその時、
「そこまでにしておきなさい」
背後から落ち着いた声が掛けられる。慌てて振り向くマンシュタイン。
「貴様ッ!アンダースン!何故ここいる!?」
背後を振り返ったマンシュタインの視界に、アンダースンとエルザの姿が飛び込んできた。
「やはり貴方だったのね。王国貴族として恥を知りなさい!」
エルザが怒りを込めた表情で叫ぶ。
「申し訳ありませんが、貴方を捕えさせていただきます。マンシュタイン閣下」
アンダースンはいつも通りの平然とした表情で告げる。だがその目は、怒った飛竜にも似た
鋭い眼差しでマンシュタインを睨み付けていた。
「クッ!囮捜査その物が罠だったとでも言うのか?」
「おっしゃるとおりですよ」
ここにいたり、ようやく事態を把握するマンシュタイン。アンダースンとエルザはポッケ村で
待機する振りをして雪山に来ており、ずっとマヤを監視していたのだ。その結果、
マンシュタインは犯行の一部始終を目撃される破目になった。さらには自分より身分の高い
エルザまでいては、王国内での自身の地位を利用して事態を揉み消すことも難しい。
マンシュタインはこの窮地を脱するべく、その頭脳を全力で回転させていた。そのことを示す
汗が、大粒となって彼の額に浮かんでいる。
そして、傍らに倒れ伏している女ハンターに思い至った。
「フッフフフハハハハ!だが貴様は、この女を見捨てる事は出来まい!」
咄嗟に倒れ伏したマヤに向かい、クロスボウガンを突き付けた。
「さあ、下がれ。さもなくば、この女を殺す!」
「しかたありませんねぇ、マヤさん」
しかし、特に慌てる様子もなく、アンダースンが溜息とともにマヤに呼びかけた。
直後、唐突にクロスボウガンがひったくられ、マンシュタインは腹部に強い衝撃を受ける。
「がはっ!」
思わず苦痛の呻きをもらし、膝をつく。
「な、馬鹿な?」
慌てて顔を上げると、そこには蹴りを放った後、素早く立ち上がり彼のクロスボウガンを
構えたマヤの姿があった。
「なぜだ、媚薬でろくに力も入らんはずだ。なぜ貴様が動ける?」
半ば茫然と呟く。
「この媚薬。ティガレックスの雄の生殖器にある分泌腺からとれたものですってねぇ?」
マヤがいつもの大人しめの雰囲気をかなぐり捨てたような、凄みのある声で告げる。
「あたし、この毒にはちょっと耐性があるんですよ」
「ま、まさか貴様があの…」
マンシュタインはある事実を思い出していた。この媚薬は、あるハンターがティガレックスに
犯された事故により発見されたものだということを。そして、その事故の被害者は、まだ
若い女のハンターであったということを。
「そう、あたしのおかげで、見つかったんですよねぇ、この毒」
これこそが、アンダースンがマヤを囮にすることを承諾した一番の理由だった。世界中を探しても
この耐性を持つ若い女性ハンターなど、彼女以外に居はしない。
マンシュタインに、殺気の籠った壮絶な笑顔を向けるマヤ。
「それをよくもこんな事に使ってくれましたね」
一歩、マヤはマンシュタインの方へ踏み出す。威嚇するように、クロスボウガンの狙いをぴたりと
つける。
「アンダースンさん!」
急かす様に叫んだマヤの声に答え、アンダースンはマンシュタインに近付いた。
と、その時
「閣下!」
叫び声とともに、何者かが麓へ通じる洞窟から飛び出してきた。
「ギルフォーデス!どうしてここに?」
エルザが、その人物の正体に驚いて声を上げる。
「ック!やはり貴様らをつけて正解だったようだな!」
そう叫びつつ、ギルドナイトセーバーを抜刀し、マヤへと斬りかかる。
その鋭い斬撃に、マヤはマンシュタインの身柄を諦め、大きく飛び退かなければならなかった。
追撃を恐れ、さらに横に走り距離をとるマヤ。
しかし、ギルフォーデスは追撃を行わなかった。マンシュタインの前に立ち、その場の全員を
威嚇するように睨む。
「閣下、ここは引いてください。村には私の隊がおります」
そのまま振り向かずに、マンシュタインに語り掛ける。
「しかし、奴らには証拠を握られているんだぞ!」
マヤを忌々しげに睨みながら、マンシュタインが叫び返す。
「そんなもの、ここでならどうにでもできます。まずは隊へ!」
よほど自分の腕と部下に自信がある様子のギルフォーデスに、マンシュタインの顔にかすかに
余裕が戻る。
「わかった。すまん、ここを頼む」
それだけ言うと、恥も外聞も無く脱兎のごとく駆け出すマンシュタイン。
「お二人は、マンシュタインを追ってください」
マヤは、ギルフォーデスから視線を外さずに言った。
「しかし、それでは…」
「あなた一人で相手をなさるつもり?」
それは、ギルフォーデスの実力を知る二人には自殺宣言としか聞こえない。いかなベテランの
域に達しつつあるマヤであっても、ギルドナイトの中でもトップクラスの実力を持つギルフォーデス
に、敵うとは思えなかった。
「大丈夫、あなた達の邪魔は絶対にさせません」
「死ぬ気ですの?」
マヤの決意に満ちた言葉は、かえってエルザを不安にさせる。
エルザの態度からは、いつの間にか、マヤへの反感が消え去ってしまっていた。
「早く行ってください。ここでマンシュタインを逃すわけには行きません。それに、あたしには余り
時間は残ってないんです」
悲痛に聞こえる声でマヤは二人に訴える。
「分かりました。ここはお任せしましょう」
「監理官!」
アンダースンが了承の意思を告げる。叱責の様なエルザの呼びかけを無視し駆け出した。
「あぁ!まったく!」
慌ててエルザも後を追う。アンダースンは肉体的には一般人と大差ない。ギルドナイトである
マンシュタインを捕らえるには、エルザの力が絶対に必要だ。
「いいこと!必ず追いつきなさい!」
エルザの捨て台詞を聞いてマヤは少し笑った。なんのかんの言いつつ、エルザが心配してくれて
いることが、可笑しくもあり嬉しくもあった。
「監理官。ギルフォーデス相手にマヤ一人では無理です。せめて私と一緒に当たるべきでは?」
アンダースンの後から駆けつつ、エルザは尋ねた。
「マンシュタインがギルフォーデスの隊に合流したら、まず捕らえることができません。
今は彼が村に着く前に、身柄を押さえることが先決です。それに…」
アンダースンは何かに耐えているような口調だった。
「マヤさんに耐性があるとは言え、完全に効果を無効化できるわけではありません。徐々に
効果が出てくるはずです」
「それなら、なおさら…」
「ギルフォーデスに気付かれてしまった時点で、私達の負けだったのです」
エルザの言葉を遮り、血を吐くようにアンダースンは続けた。
「そこから逆転しようとするなら、この程度の無茶は覚悟しないといけないでしょう」
彼は一度ならず二度までも、マヤの命を盾にしてしまった自分の無能を呪っていた。厳密には
部下ですらない彼女の、好意から来る信頼を自分のミスを取り戻すために利用した。
「今は、彼女を信じるしかありません」
アンダースンは自分への怒りをぶつける様に、懸命に雪面を駆けた。
駆け去っていく二人を見ても、ギルフォーデスは動こうとはしなかった
「あれ、いいんですか。止めなくて」
マヤがからかう様な口調で挑発する。
「ふん、貴様がさせんだろうに。それに、貴様を殺してからでも、充分間に合う」
「なるほど、あたし一人殺すのに、さして時間は掛からない、と」
「そうだ、だが、貴様の態度次第では命は助けてやってもいいぞ」
ギルフォーデスは好色なスケベ爺いそのものの態度で、マヤの均整の取れた肢体を舐める様に
視線を這わせながら言い放つ。
「…それって、こういうことですか?」
軽くため息をつきつつ、マヤは防具側面の止め具を外した。胸と腹部を覆っていた鎧が音を
立てて雪面に落ちる。マヤの白い肌と、並より少し大きい胸があらわになった。
アンダーウェアはまだ身に着けているものの、それは極端に布地の少ないゴルトクチュール
呼ばれるものだ。
「ほう、物分りがいいじゃないか。それともただの淫乱か?」
「さあ?試してみます?」
嘲りを含んだ声で言うギルフォーデスに、マヤは媚びる様な上目遣いで応じた。
「武器を置け、剥ぎ取りナイフもだ」
その声に従うマヤ。マンシュタインから奪ったボウガンとナイフを地面に置く。
「これで、いいですか?」
他の武器が無いことを示すように、両手を広げた。
ギルフォーデスはマヤに無言で歩み寄ると、いきなり彼女の乳房を鷲掴みにする。
「っあうぅ」
「なかなかいい声を出すじゃないか。ん?」
その愛撫とも呼べない無遠慮な感触に、マヤはわずかに身をよじり、甘い悲鳴を上げた。
「おっと、逃げるなよ。このまま心臓を一突きしてやってもいいんだぞ」
その言葉にマヤは頭を振り、体を硬直させる。
「そうだ、それでいい。ちゃんとしないと時間稼ぎにならんぞ?」
その言葉に、マヤはギクリとした表情でギルフォーデスを見た。男の顔面には勝ち誇った
笑みが浮かんでいる。
「どうした、図星か?その程度のことに、気付かれずに済むと思ったか?」
「あっ、ああっ!イヤァ!やめて!放して!」
マヤはかすれた声で悲鳴を上げると、遮二無二に暴れ始めた。
「おっと」
ギルフォーデスが、暴れるマヤを組み伏せようと両手で彼女の肩を掴む。
「いい加減に諦め……」
だがその時、マヤは一瞬自由になった右手を、まだ腰の後についていたアイテムポーチに
突っ込んだ。そして引っ張り出した物を足元に叩きつける。猛烈な勢いで吹き上がる毒々しい
色をした煙。
「何?…ゲホッ…これは…ゲホッ…毒けむり球だと?…ガホッ」
毒けむり球とは、毒テング茸の粉末を利用した道具で、通常は昆虫を退治するために使われる
もので、人体にはそれほど影響はない。とはいえ、まともに吸い込めばしばらく呼吸を乱し、行動
を妨害する程度の効果はある。
この隙を突き、マヤは必死に逃れ、ギルフォーデスとの距離をとる。
「貴様ぁ、生意気な真似を」
「いやぁ!く、来るなぁ!」
ゆっくりとマヤに向けて歩を進めるギルフォーデス。怒りが込められたその言葉に、マヤは取り
乱した様子で、手当たりしだいに石ころを投げつける。たかが石ころと侮るなかれ、飛竜相手には
牽制にもならないが、こぶしほどの大きさがあるそれを人間がまともに喰らえばタダでは済まない。
「ふん、こんなものでどうにかなると…」
ギルドナイトセーバーを抜刀し、余裕を持って飛来する石ころを次々と切り捨てていく。と、三つ
ほど切ったところで、飛んできた石ころがパシャッと湿った音を立てた。同時にギルフォーデスの
体に液体が掛かり、特徴的な匂いが立ち込める。
「ペイントボールだと?」
「んふっふー、引っかかりましたね」
先ほどまでの狂態はどこへやら、計算通りと言わんばかりの態度で、マヤは薄く笑う。
「どこまでも生意気な真似を……いいだろう、貴様に女の有り様を教育してやる」
こみ上げてくる怒りを戦意に置き換えるように、ギルフォーデスは低く唸る。
「あたしも、いけ好かないギルドナイトをボコれるチャンスは滅多に無いですからね。楽しませて
もらいますよ」
嫌味のある薄い笑いを顔面に貼り付けたまま、マヤはギルフォーデスを挑発した。
「よく吠えたぁ!その言葉後悔させてやる!」
効果てき面、顔どころか耳まで真っ赤にして絶叫するギルフォーデス。
「そう簡単にいくかしらッ!」
マヤは叫ぶと、自分の足元に何かを叩きつけた。もうもうと発生する白い煙。
「今度はけむり玉だと?」
何のつもりだ、と言いかけてギルフォーデスは自分が罠に嵌められたことに気が付いた。そう、
けむり玉からの白い煙と雪山の白い景色により、視界はほぼゼロ。しかし、自分の居場所は
ペイントボールの匂いとかすかに立ち上るピンクのけむりで、マヤに把握されてしまう。
「ようこそ、あたしのテリトリーへ。あたしにとってここは庭のようなもの、目をつぶっても歩ける
んですよ。でも、あなたはどうかしら?」
いきなり、石ころが飛んできた。かわし切れず頭を掠める。
「くそっ、汚いぞ。卑怯者!堂々と勝負しろ!」
自分のことはまるっきり棚に上げてギルフォーデスは叫ぶ。
ギルフォーデスにとって、ハンターと一対一で戦うのはこれが初めてだった。確かに
訓練では負け知らずだったが、実際の任務では常に相手より多い人数で挑むか、一人の
任務でも標的が酒場や自宅に居る時などに不意を打っていただけだったのだ。そして
その時は一対多数の不利な状況になっても、必ずギルドからバックアップを受けていた。
ギルフォーデスは意識していなかったが、本当の意味での一対一、しかも相手が襲撃を受ける
ことを想定している状況下での戦いというのは、これが初めてなのである。
「卑怯?汚い?敗者のたわ言は気持ちいいですねぇ」
おほほほほ、と癇に障る作ったような甲高い笑い声を上げて挑発を繰り返すマヤ。
ギルフォーデスは滅多矢鱈と剣を振り回すが、驚異的な殺傷力を持つはずのその刀身も、
今は空を切るばかりだった。
そうしているうちに、石ころの直撃を受けてしまう。
「街中ならともかく、狩場でハンターにケンカを売ったらどうなるか、教育してあげます」
わざわざ相手を見下した態度で、マヤはさらに相手を挑発する。
「お、おのれぇぇ!」
だが、徐々に煙が晴れつつある。一瞬でいい、姿が確認できれば、とギルフォーデスは目を
凝らす。
再度石ころが飛んでくる。その先にかすかに人影が見えた。
「そこだ!」
石ころに当たるのも構わず、がむしゃらに突っ込む。また石ころが飛んできたが、慌てたのか、
自分の手前に落ちそうだ。そう判断したギルフォーデスはさらにスピードを上げる。
とたん、キンッと、澄んだ炸裂音が響いた。
石ころと思ったものは、彼の眼前で炸裂し、強烈な光を放ったのだ。
「がぁっ!め、目が!目がぁ!」
最後に投げつけられたのは、閃光玉だった。通常、狩に使うときは仲間同士で合図をし直視
しないようにするものだ。なにせ、飛竜の視力すら奪うことができるほどの閃光である。人間
がまともに見てしまったら、しばらく視界が白く焼け、すぐには戻らない。それどころか、あまり
の眩しさに目に激痛を感じてしまうほどだ。現にギルフォーデスもとっさに動きを止め両目を
手で覆ってしまっていた。
「じゃ、そろそろ止め刺してあげます」
まて、と呻くように言うギルフォーデスを無視し、冷徹にそう宣告するとマヤは拳を構えた。
手に何かの牙のようなものを握りこんでいる。
「くらえ!ひっさつゲネポスの牙ぁ!」
やる気の無い掛け声とともに、ギルフォーデスの顔面にマヤの拳が叩き込まれる。同時に
握りこんだゲネポスの麻痺牙が浅く刺さり、牙に蓄えられていた麻痺毒が注入される。
ゲネポスの麻痺牙にはその名のとおり、麻痺毒を分泌する毒腺が備わっている。
この麻痺毒は、ゲネポスが死んでも一定量は牙の中に蓄えられており、牙に衝撃が加わると
外部に噴出するようになっている。飛竜にすら有効なこの麻痺毒を人間が喰らえば、ただでは
済まない。
「がっ!」
たちまち体が麻痺し、うつぶせで地面に倒れこむギルフォーデス。しかし、このような不利な
状況下に在っても、不屈の闘志で逆襲の機会をうかがう。いかに不利な状況とはいえ、彼の
剣が当たれば満足な防具をつけていない小娘など、一撃で殺せるからだ。一撃、一撃でいい、
一瞬でも隙があればそれを叩き込む。だが今は周囲の音を聞き逃さないようにすることしか
できない。
彼の周囲では、何か重いものを引きずるような音が聞こえてきた。それ以外マヤは手出しを
していない。
どちらにせよこれはチャンスだ、とギルフォーデスは考えた。今のうちに視力を回復し、麻痺を
解かねばならない。だが、彼の地獄はまだ終わっていなかった。
やがて、周りの音が聞こえなくなると、替わりにマヤの声が聞こえてきた。
「こいつで止めです。ちょーひっさつマヤちゃんダイナマイッ!」
「ちょ、やめ…」
マヤの言葉の意味をとっさに理解し、制止しようとするものの、マヤが石ころを投げつける方が
早かった。石ころが飛び行く先は、ギルフォーデスのそばに無造作に置かれた大タル爆弾G。
ちゅぼぉぉぉぉぉぉん、と轟音とともにそれは炸裂し、ギルフォーデスの自由にならぬ体を大空へ
と舞い上げる。
「こ、この女、容赦ねぇ…」
その言葉を最後に、ギルフォーデスは意識を失った。
「やれやれ、ぎりぎりですね」
ギルフォーデスが倒れたことを確認したマヤは、安堵のため息をついた。
実際、まともに勝負したらギルフォーデスの圧勝だっただろう。マヤには彼の太刀筋がまったく
見えなかった。散々挑発した後、闇雲に振り回していた時ですら手が出せなかったのである。
正面きって斬りあったら、一合の下に首を飛ばされていただろう。
マヤは今更ながらに、首筋にゾクリと怖気が走るのを感じた。と、同時に体のあちこちが、ゾクゾク
しだしていることにも気が付いた。媚薬が効果を発揮してきているのだ。
「本当に、ぎりぎりね」
マヤはそう呟くと、アイテムポーチからロープを取り出した。すでに、手がかすかに震えている。
そのロープは、蔦と蜘蛛の巣の軸糸をより合わせて作られたもので、ハンターが仕留めた獲物を
拘束する時に使われるものだ。適切に扱えば飛竜すらも拘束ができるほどの、強度の高いロープ
である。人間が簡単に引きちぎれるような代物では無い。
「念のため、拘束させてもらいますよ」
そう言って、手際良くギルフォーデスを拘束してゆく。
「……ッはぁ」
マヤの呼吸が乱れつつあった、本当に危ないところだったのだ。最初から罠にかけ短期決戦を
挑むつもりでいたのだが、それでも危なかった。本来、マヤのこの準備はマンシュタインが
アンダースン達が到着する前に手を出してきたら使うつもりだったものである。一片の容赦も
する気のなかったマヤだったが、そのことが逆に、ギルフォーデスを相手にして圧勝という結果を
もたらした。
「これで良し……って、何やってんだあたしは」
念を入れて拘束していたはずが、気がつけば、亀甲縛りにしたうえで、後ろ手拘束、足首と
背中が結ばれて逆エビ反りになっているという、大変お恥ずかしい有様になっていた。
「ま、いっか。もともと罪人を逃がさないための縛り方だって言うし」
媚薬が効き始め、集中力が落ちたのだろう、結局自分の縛られ慣れているやり方になって
しまったようだ。
ふと、マヤの耳を、何か大きな音が刺激した。意識して音に注意を向ける。あえてそうしないと、
音が判別できなくなりつつあった。
「そろそろ、本格的にやばいな。っと、この音は……っ!」
上空から響いていたその音は、やがてゆっくりと山のふもとの方へと移動してゆく。
「あの二人じゃ…危ない」
音の正体に気がついたマヤは、慌てて駈け出した。
一方、マンシュタインを追った二人は、山の麓の湖のほとりで、どうにか追いついていた。
「…ッそろそろ……ッ観念なさい!」
山から全力で駆け下りてきた三人の内、一番若いエルザが息を切らせつつ声を上げる。
残りの二人、マンシュタインとアンダースンはそれどころではない、二人とも完全に息が上がり
まともに喋ることなどできそうにない。本来、書類相手の仕事しかしていないアンダースンに
いたっては、へたり込む寸前の有様だった。
「はッ……だれッ…がッ」
マンシュタインは、それだけ毒づくと、ポーチから角笛を取り出した。口にあて、思いっきり吹き
鳴らす。
「ッ!させない!」
突っ込んで止めようとするエルザを、ぎりぎりでかわす。
笛から放たれた乱れた呼吸による切れ切れの音波が、雪山の鉛色の空へと響き渡る。
そもそもこの角笛は、飛竜などの大型モンスターを呼び寄せるために使われるものだ。
そして、今この雪山に飛来している大型モンスターと言えば、
「フルフルを呼び寄せるつもりですの……?」
フルフルがここに来てしまえば、エルザはアンダースンを、フルフルから守らなくてはいけなくなる。
そうなってしまえば、マンシュタインの逃走を阻止することは不可能だろう。
「どこまでも……悪あがきをッ!」
焦るエルザと、ぎりぎりを見計らって彼女の手を逃れるマンシュタイン。
「ハッ……老いたりと言えどッ……まだ、貴様のようなッ……小娘には…後れは取らんッ」
もみ合うことしばらく、一進一退の攻防が続く。
状況を変化させたのは、息を整えたアンダースンだった。隙を見て、マンシュタインの腰に、
飛び掛かるように組みつき、そのまま体重をかけ、動きを封じる。
「貴様っ!」
マンシュタインが叫ぶが、一瞬早くエルザが彼の両腕を捕え、組み敷く。
「ここまでですわ!」
だがその時、大きな羽音が三人の耳朶を打った。
「どうやら、諦めるのは貴様らのようだな」
組み敷かれながらも、余裕を取り戻したマンシュタインが薄く笑う。
「早く逃げたほうがいいぞ」
「クッ…」
エルザは唇を噛みしめた。アンダースンを見やって叫ぶ。
「監理官は、ベースキャンプへ避難していただきますわ!」
「しかし…」
「口答えは許しませんことよ!早く!」
何かを言いかけるアンダースンを遮ってまくしたてる。
「ふ、もう遅い」
ゆっくりと羽音が大きくなってくる。フルフルが鉛色の空から、その白い巨体を降下させていた。
「もう、ここまで来ましたの?……きゃっ!」
思わず振り仰いでしまったエルザを蹴飛ばし、アンダースンを振り払うマンシュタイン。
「俺の勝ちだな」
勝ち誇った顔で笑う。
と、その時、着地寸前だったフルフルの頭部に何かが投げつけられた。
ぱっと薄茶色の煙が上がり、猛烈な臭気が鼻を突く。
「何ッ、何だこれは」
そのあまりにあんまりな臭いに、マンシュタインは咄嗟に鼻を押さえ、動きを止めてしまった。
アンダースンなどはまともに臭気を吸い込んでしまったようで、猛烈に咳き込んでしまっている。
直接鼻先にぶつけられたフルフルはもっと悲惨だったらしく、思わず同情したくなるような
悲痛な声で咆えると、着地せずにその場で上昇に転じた。そのまま追われる小鳥のように
ジタバタと無様に羽ばたき、一目散に逃げだす。
「……エルザ…ッさん……今ですッ!」
こちらも、鼻を押さえていたエルザであったが、その弱々しい声に咄嗟に体が反応した。
突然の事に未だ事態を把握できていないマンシュタインに駆け寄ると、渾身の力を込めた拳を
彼の顎にたたきこむ。
エルザの一撃を受けたマンシュタインの頭がガクンと揺れ、空気が抜けるような悲鳴と
ともにその場に崩れ落ちた。エルザの狙い通り、脳震盪を起こしたようだ。
「なんてものを使いますの!貴女は!」
だが、エルザは勝利の余韻に浸ることなく、声の主に叫んだ。
「……こやし玉……マズかった…ですか?」
山腹に口をあけた洞窟から、息もきれぎれのマヤが顔を出す。
マヤは山頂近くでフルフルの羽音を聞いてから、洞窟内を全力で駆け下り、かろうじて
この場に間に合わせたのだった。
ちなみに、こやし玉というのは、モンスターの糞を利用した道具で、強烈な臭気でモンスターを
追い払う事が出来るという、便利なものだ。ただ、追い払った人間の方も、その場に居たく無く
なるという、重大な欠点を持つ。
「マズいとかそういう問題でなく…」
「……いえ、大変助かりました」
なおも文句を続けようとするエルザを遮って、息を整え、なんとか話せるまでに回復した
アンダースンが声をかけた。
「よ、かった…」
とさり、と小さな音を立てて、マヤが倒れた。
「ちょ、大丈夫ですの!?」
「私がマンシュタインを拘束しておきます。貴女はマヤさんを!とりあえずベースキャンプへ!」
慌てて二人は行動に移る。マヤを担ぎ上げたエルザは、その体の軽さに驚いた。
「こんな体で、よく頑張りましたわね…」
思わず優しげな呟きが漏れる。
が、その時、エルザの耳をマヤの乱れた吐息が不規則にくすぐった。
「…ッひ!」
不意に背筋に走った衝撃に、一瞬体が硬直する。
下腹部から熱い欲望が背筋を通り、耳を熱く赤くさせている。そのことを自覚したエルザは、
欲望を振り払おうと即座に頭を振った。
(わたくしも、マヤも女ですのよ。何をしているの)
心の中で自分を叱り飛ばし、マヤを担ぎなおす。
しかし、ベースキャンプまでのわずかな距離の間、エルザは数回、同じ理由で立ち止まること
となった。
どうにかベースキャンプに辿り着いたエルザは、そこにある簡易寝台にマヤをそっと横たえた。
「んっ…あ、エルザ…さん」
マヤがうつろな目を開き、呼びかける。
「どうしましたの?」
今までのエルザからすれば、にわかに信じがたいほどの優しげな、だが、微かに熱を持った
声でエルザが答える。
「…ギルフォーデスと…マンシュタインは…」
「大丈夫ですわ。監理官が手配しておりますから」
マヤの疑問に、エルザが答える。アンダースンは待機させていたネコタクを使って、拘束した
二人を街まで護送する準備をしていた。
「…そう…ですか…よかった」
マヤは喘ぐように溜息をつく。
「それもこれも、貴女のおかげですわ」
エルザが素直にマヤを褒めた。マヤにとってエルザからの初めての称賛だった。
「ふふっ…何か…くすぐったい…ですね」
そう、弱々しく笑うマヤの手を、エルザが優しく握る。
「いいえ、貴女は素晴らしい人ですわ。ハンターにしておくのが勿体ないくらいに」
エルザはそのまま熱っぽく語りかける。
「貴女をギルドナイトに推薦したいくらいですわ」
「やめてください…そんなガラじゃ…無いです…」
エルザを見つめ返しながら、マヤが微笑む。
「あたしは…貴族でも…無いんですよ」
「そんなことは関係ありませんわ。もし必要なら、貴女をわたくしの従騎士としてしまえば
いい事ですわ」
ただの思い付きだったが、エルザはこのアイディアをいたく気に入った。
「そうですわ、貴女、わたくしの従騎士におなりなさい。そうすれば…」
そこから先を言葉にしようとして、エルザは愕然とした。彼女は、「そうすれば、いつもそばに
居られる」そう言おうとしていた。いつの間にかエルザは、マヤを自分のものにしたがっていた。
(わ、わたくしは、一体何を、女同士ですのよ?)
胸が何時になく高鳴っているのを自覚する。体がかすかに火照っていた。
(マヤの体に着いていた媚薬を吸ってしまったのですわ。そうでなければこんな…)
体の火照りが疼きとなり、エルザの理性を少しずつ削り取ってゆく。
「……ッはあ…エルザさん…後は……一人で…大丈夫…ですから……」
「とても大丈夫には、見えませんわね。それに…」
苦しそうに切なそうに訴えるマヤに、優しく妖しく語りかける。
「一人になって何をなさるつもりでしたの」
「……何って…」
思わず黙り込んでしまうマヤ。そのもじもじと身もだえしている肢体と、いやらしく
すり合わされている太ももが、彼女が何を望んでいるか、明確に示していた。
そのマヤの痴態が、危うくなったエルザの理性をさらに侵食する。
「…あの……ッはあ…エルザさん…どうかしま…」
言いかけたマヤの口をエルザの口が塞いだ。震えるマヤの唇をエルザの舌が優しくなぞる。
抵抗することもできず、力なく緩められたマヤの唇を、思う存分蹂躙してゆく。
エルザは、マヤの唇をたっぷり味わうと、彼女の口内にぬるりと舌を侵入させた。
マヤの舌を絡め取り、ゆっくりと舐めあげ、音を立てて啜る。すでにマヤは抵抗するそぶりも
見せず、エルザのなすがままとなっている。
散々にマヤの唇を味わい、ようやくエルザは彼女の口を開放した。二人の口を結ぶ光る糸が
切れて落ちる。
「…貴女がいけないんですのよ」
エルザは少しの後ろめたさを、その上気し色欲に満ちた表情ににじませながら、呟くように
告げる。
「そんないやらしい声で喘ぐから」
「…エルザさん……駄目ですぅ…っん……あたしみたいなの…相手にしちゃ……あなたが」
涙目になって必死に首を振るマヤ。この期に及んで、エルザの社会的地位を気遣うあたり、
下手をすれば、エルザより正気が残っているかもしれない。
「構いませんわ。わたくしは貴女が欲しい。欲しくてたまりませんわ」
また、強引なキスをする。横たわっているマヤの体の下に腕を回し、ぎゅっと抱きしめた。
「…っんん!」
マヤの体が微かに痙攣する。抱きしめられたことで、快楽に耐えていた理性が崩壊しつつあった。
「んはぁっ、あぁ、だめぇ」
マヤの口を開放したエルザの舌は、そのまま首をなぞり、胸元まで滑ってくる。そして、その
舌先で器用にマヤの胸を覆うゴルトクチュールを押しのけた。
「ああぁ、や、やめてぇ、くださいぃ」
ぷるんとまろび出た胸の先端が、外気に触れる。その感触がマヤに新たな快楽への期待を
抱かせた。それを必死に押し殺し、エルザに制止を求める。
「ふふ、こんなに堅くとがらせて、説得力がありませんわよ」
エルザが笑いを含んだ声で指摘する。
「声もいい感じに蕩けてきましたわね」
「い、言わないでぇ…んはぁっ!」
胸の先端の淡い色の果実を、エルザが舐めた。見せつける様に大きく舌を出し、ゆっくりと味わう。
「んっ…くふぅ」
「んふふ、美味しい。女の子のおっぱいが、こんなに美味しいとは思いませんでしたわ」
また、マヤの胸にむしゃぶりつくように、乳首を責める。もう一方の乳首も、手で弄り始めた。
「…あっ…ああ……んっ」
マヤはすでに抵抗できなくなっていた。体を焼き焦がさんばかりに燃え上がった淫欲の炎が、
残っていた微かな理性をあぶり、快楽に身を任せる以外の選択肢を焼き捨てていた。
「…だ、だめぇ」
それでも、かろうじて残った最後の理性が、断末魔の悲鳴のごとくに声を出させた。
「え、駄目ですの?」
エルザが残念そうに口を離した。
「では、貴女の恥ずかしいところが、濡れていなかったらやめてあげますわ」
にやりと意地の悪い笑みを浮かべると、エルザはマヤの下半身の防具を外し始めた。
「…え……いや、駄目、見ちゃ駄目ぇ!」
わずかに戻った理性により、自由にならぬ体で抵抗しようとするマヤだが、出来た事といえば
かすかに体を揺らした事だけだった。
「ほうら、やっぱりもうヌレヌレですわね。そんなにわたくしの舌が気持ちよかったのかしら?」
下着の上からでも、くっきりわかるほどの染みを作ったマヤの股間を眺めながら、エルザは
楽しそうに笑う。
マヤは顔を羞恥で赤く染め、横を向いていた。恥ずかしくてエルザを直視できない。
「どうですの?」
「んひゃぁ!」
言葉とともに、下着越しに敏感な部分を撫でられた。思わず声が上がり、背筋が引きつる。
「ちゃんとおっしゃい。わたくしの舌はいかがだったかしら?」
「き、気持ち、良かったです…」
ついに認めてしまう。耐えねばと思っていた理性が崩壊していく快感に、マヤは翻弄されていた。
「もっとしてほしい?」
顔を寄せ、マヤの耳元で、熱い吐息とともに尋ねるエルザ。
「して、ほしい、です」
マヤにその誘惑を断ち切る理性は、もう残ってはいなかった。
「ふふっ、そう?」
艶然と微笑み、ゆっくりと上体を起こすエルザ。自ら纏った防具を外し、結い上げた髪をほどく。
豊かな金髪が、流れるように彼女の均整の取れた肢体を縁取った。
その様子をマヤは眩しそうに眺める。
「……きれい」
逆光により、まるで燐光を纏うように薄暗がりの中から浮かび上がるエルザの肢体は、同性の
マヤをして、そう思わざるを得ない神々しさがあった。
「さあ、行きますわよ」
ゆっくりとマヤに覆いかぶさる。
お互いの体温と体臭が、より強く官能を刺激する。
素肌同士が触れ合い、エルザの引きしまった乳房が、マヤの少し大きめのそれに埋没していく。
「ひっ……くぅん」
「いいですわ!まるで貴女のおっぱいを犯しているような気分ですわ!」
知らず知らずのうちにマヤは自分から胸を突き出し、より深くエルザを迎えようとしていた。
胸の先端の堅くしこった蕾同士が、お互いを弾き、二人に閃光の様な快楽を送り込む。
「ああん!」
何度目かの閃光に、エルザの腰がかくっと落ちた。その下には無防備に投げ出されたマヤの
股間がある。
「ひぃぃっん!」
敏感な三つ目の突起に新たな刺激を受け、マヤが甘えた悲鳴を上げた。
反射的に腰を突きあげる。敏感な突起同士がぶつかり合い、特大の火花をお互いの脳裏に
はじけさせた。
「はあぁぁん!」「くぅ…ふぁあ!」
二人同時に背筋を震えさせ、閃光の様な快楽の余韻を味わう。
やがて、マヤの陶酔した顔を慈しむように、エルザが両手で抱き、そのまま自分の唇をマヤの
それに重ねる。エルザの豊かな金髪が両肩から流れる様に滑り落ち、マヤの顔を両側から
柔らかに包み込む。もう、お互いの顔以外、余計なものは何も見えない、見る必要もない。
心と視界が同調し、二人を甘く切なく狂わせる。お互いを抱きしめ、秘所を擦りつけ、
乳首を弾く、貪るように求め合う二人は、いつ果てるともない淫らな舞踏を劣情の
赴くままに踊り続けていた。
やがて、マヤの手が何かを求める様に動き出し、寝台の上をまさぐる。自分のアイテムポーチを
見つけると、それを引き寄せた。中のものを取り出そうとしている。
「何を、していますの?」
エルザが上気した顔に僅かな不信感をにじませて問う。
「こ…これを…」
そう言ってマヤが取り出したのは、
「ヌメリンギ?」
そう、通常は防具の素材に使われるキノコであるヌメリンギだった。弾力性に富み、軽く滑らかな
繊維は利用価値が高い。樹海で稀にしか取れないキノコである。
だが、マヤは全く別の目的でこのキノコを持ちこんでいた。まだ傘が開いておらず、先細りに
なっているそのキノコを、しばし、不思議そうに眺めていたエルザは、その目的にようやく思い
当った。
「これをどうするつもりでしたの?」
意地悪くマヤに問うてみる。
「どうって…その…」
言葉に詰まるマヤをしり目に、さらに責めてみる。
「お答えできないのかしら」
「その…多分…媚薬を打たれちゃう…と思って、一人で慰めようと…」
「それでわざわざ持ってきたんですの」
真っ赤になって切れ切れに説明するマヤを、淫蕩な笑みを浮かべて見つめエルザ。
「わたくしが、代わりに慰めて差し上げますわ」
キノコを奪い取ると、エルザはマヤの秘所にそれをあてがった。
「覚悟はよろしくて」
「あ、あの、自分で…」
「駄目、ですわよ」
慌てて止めようとするマヤを遮り、エルザはキノコを小刻みに揺らす。
「あっ…ああぁ!」
秘所に与えられた新たな刺激に、マヤは背筋を硬直させ、ただ喘ぐことしかできなかった。
「ふふ、こんなに感じてくれると、まるで貴女を犯しているみたいな気分ですわ」
マヤの痴態がエルザの官能を刺激する。もっと喘がせたい。もっと乱れさせたい。そんな欲望
が心の奥より湧き上がってくる。それはエルザがこれまで感じたことのない快感だった。
「さあ、もっと感じて壊れちゃいなさい!」
「ひっ…あっ……ああっ」
マヤの思考はもうすでに真っ白になっていた。本来こんな事をしていい相手ではない、などと言う
常識は跡形もなく溶け崩れ、快楽に押し流されてしまう。ただ、股間からこみあげてくる狂おしい
ほどの快感に翻弄されていた。
「そろそろ、イかせてあげますわ!」
エルザが淫らな笑みを浮かべ、キノコへ力を加える。
「んっ!ひあぁ!だ、だめっ!っくぅ!」
マヤが必死に頭を振り、快楽に耐える。が、充分以上に潤み、すでに数々の快楽を教え込まれて
しまっているマヤの秘所は、さしたる抵抗もなくキノコを受け入れた。
「んんっ!」
「あら、簡単に入ってしまいましたわ」
呆れたような声を出すエルザ。しかしマヤに彼女を気にする余裕などありはしない。
「だ、だめぇ」
「貴女に駄目と言われると、もっとしたくなるのはどうしてかしら」
マヤに覆いかぶさり、キスをしながら意地悪く囁くと、エルザは彼女の胎内をかき回す様にキノコ
を激しく躍動させる。
「あっ、っく、いっくぅ!」
「イってしまいなさい。さあ!」
「うあああぁぁぁ!」
マヤは全身を硬直させ絶叫する。快楽が限界値を超え、意識が真っ白に塗りつぶされる。
しばし絶頂をさまよい、硬直していたマヤ体からゆっくりと力が抜けていく。やがて、ぐったりと
寝台に身を横たえた。
「ふふふ、まだ、わたくしは満足していませんわよ」
そうエルザが怪しく微笑み、ゆっくりとマヤにキスをする。マヤは陶然とエルザを受け入れた。
この日、二人は疲れ切り動けなくなるまで、お互いを求め合った。
雪山での事件のあった数日後、マヤはポッケ村に帰ってきていた。
「よっ、街はどうだった?」
この日、久しぶりに顔を出した村の集会所で、マヤは早速声をかけられた。
「楽しかったですよ。姉さんも今度一緒に行きませんか?」
声をかけてきたのは、村の皆から「姐さん」とか「姉御」とか呼ばれている人物で、
マヤのハンターとしてのライバルであり、人生の先輩であり、夜のご主人様だったりする。
「あたいはパス、なんかせわしないんだもん」
ぱたぱたと手を振り、あっさりと拒否をする。
「お主は他人のペースに合わせるのが苦手だからな」
わかる、わかるぞと、その傍で頷いているのは、一見すると絶世の美女。
しかし、その正体はマヤの「彼氏」であり、名をアルという。
複雑な経緯により、今はマヤの家に同棲している。
「余計なお世話だ」
姉御がふくれっ面でアルを睨む。マヤはそのわざとらしさに思わず噴き出した。
「マヤまで笑うことはないだろ!」
そういいつつも、姉御も噴き出す。暖かな笑い声が集会場に満ちた。
「見つけましたわ!」
突然、集会場の扉が開け放たれ、女性の高く澄んだ声が響く。
「わたくしに黙って帰ってしまうなんて…」
唐突に現れたエルザは、何事かと硬直するその場の人間すべてを無視し、マヤに歩み寄る。
「愛人であるわたくしを置いていくなんて、あんまりですわ!」
そういってマヤに抱き付く。
「えっ?」
思わず硬直するマヤ、だが、とてつもなく不穏な空気を感じ、そちらにゆっくりと視線を向ける。
「ほう、なにやら面白い話をしているな」とアル。
「きっちり話してもらいましょうか、たっぷりと啼いた後で」と姉御。
「ちょっと、わたくしのマヤに何をなさるおつもり?」
がっしとばかりにマヤの肩を押さえつけた二人に、エルザが不満を露わにする。
「勘違いしないで。マヤはあたいのおもちゃで…」
姉御が負けじと言い張り、
「我が生涯の伴侶だ」
アルが重々しく続ける。
「では、わたくしの愛人でも問題ありませんわね」
二人を向こうに回し、エルザはしゃあしゃあと言ってのける。
「そう言われれば……」
「問題ないような気もするな」
あまりの強引な言い分に、思わず納得してしまう二人。
「…あの……大有りのような気がするんですけど…」
マヤがおずおずと口を挟む。
「気のせいじゃない」
「気のせいだな」
「気のせいですわ」
三者三様の口調で同じ中身の返事が返ってきた。
「なんで、会ったばかりでそんなに息がぴったり…」
「じゃ、詳しく話してもらおうか、あたいの部屋で」
「そうだな」
「それがいいですわ」
「え…ちょ……そんな、ご無体な!」
かくして、マヤは仲良く三人に引きずられていくのであった。
〜END〜
以上でやんす。
うん、オジさまとのイケナイエッチを書くつもりがなぜかこうなった。
ゲームでももう少し角笛やこやし玉の効果が強いと面白いと思うんだけどな。
NGシーン
「こ…これを…」
そう言ってマヤが取り出したのは、
「ゲキレツ毒テング?」
いや、そんなもん突っ込んだら死にます。
ちゃんちゃん
PS.次スレ立ててきます
434 :
きょーかん:2010/08/08(日) 22:39:10 ID:mc0BsH3O
じ、GJ…
面白す、面白す
GJでした〜
てっきりアンダースンと、だとおもってt(
こっちのスレは埋めずに終わらせちゃうのかな・・・?
あと18KBあるから、一作くらい投下されるかも?
ギリギリの容量だと投下しにくい。
だから普通に雑談か、このまま落としていいと思う。
次スレ
>>23 長くなっちまったんで、埋めがてらこっちに書く。
まず最初に、これは一個人の主観であり、特定の作品を貶めるつもりなど毛頭ないことを
断っておく。
どの程度まで世界観の変更が許容されるかってことについては、
たとえば、メカクックの場合、あの世界観って「プレイヤーから見たゲームのモンハンの世界」って
考えるとそれほどムチャな改変をしていないんだよな。
基本的に読み手が「開発の身勝手な言動に振り回されるユーザー」に共感するような構造になってる。
それに対して、そのほかの作品は、
読み手が「書き手の表現したモンハンの世界を、その世界の住人の視点で追体験する」って構造になってる。
だから、書き手が提供する物語世界が、読み手の思っているモンハン世界とあまりにズレていると
世界観崩壊とか言われちまうんだと思う。
だけど、実際メディアなんかで発表されていない要素(要するにエロ)をモンハン世界に入れ込もう
とした場合、どうしても書き手が改変する必要が出てくる。
そこで、多分大事なのは、もともとのモンハンに無い要素をいかに有るように見せるか、ってことだと思う。
取るに足らないような物なら、初めっからあったことにしてもいいけど(例えば、服を全部脱ぐと
裸になる、とかね。ゲームじゃ裸になれないけど、だからって世界観崩壊とは言う奴はいない)
世界規模で影響のありそうな物については、
なんで今まで知られてなかったのか、
なんで今まで世界に影響がなかったのか、
みたいなことを読み手が納得できる(騙されてもいいかと思う)レベルで説明できないと
共感は得られないと思う。
結局、世界観改変はどこまで許されるか、じゃなくて、改変した世界を、どれだけモンハンらしく
説明できるか、ってことが重要なんじゃないかなって思う。
長文失礼
今さらだがテンプレの無限湧きはランポスより大雷光虫のほうが多いのではなかろうか
あるとき、私は一人のハンターと出会った。
そのハンターは手にある武器をしまって、近づいてきた。
変なハンターだと思った。普通なら武器を構えて襲い掛かるか、逃げ出すか。
躊躇うことなく私の胸に触れるその変なハンターは優しげに笑った。
「紅き龍よ、もうここは人の集落に近い。さらに近づけば戦いは避けられない。双方が傷つく戦いだ。」
帰るべき所に帰るといい。お前を待つものもいるだろう?
番いを持たない私に待つものはいなかったが、その変なハンターの言に尾を振り答える。
いい子だ。永く生きろよ。
その人はゆっくりとその長い髪を躍らせて帰っていった。
――――
マグマの噴出す熱い開けたところで、パーティーを組んだハンターと出会った。
こちらが何かする前から撃ち、切りかかってくるハンターたち。
抗戦した。しかし狡猾で執拗なハンターたちに追い詰められ、撤退を余儀なくされる。
傷ついた体を引きずって帰る途中、あの人に出会った。
あの人は驚いたようにこちらを見て近づき、腰辺りにある変な袋から緑色の何かを取り出す。
塗りたくられるそれは少し沁みるが、すぐに治まる。少しばかり体が楽になった気がした。
「人はお前たち龍族と違い個体では弱いが、狡猾だ。そして集まることで強くなる。避けられる争いならば、避けた方がいい。」
そう言って傷口に緑のどろどろしたものを塗りたくりながら言った。
そして袋から取り出した全てのどろどろを使い果たしたところで、笑いながら言う。
「さて、これでおしまいだ、人と違って大きな効果は得られないかもしれないが、やらないよりマシだろう。家に帰って休むといい。」
彼女が私の顔を一撫でしてその場を去ろうとする。なんとなく、寂しい。気がつけば首を伸ばして口で捕まえていた。
「あ、こらっ!」
傷つけないように細心の注意を払って口で掴み、そのまま飛び上がる。空中で体が安定したところで口にくわえていた彼女を背中に乗せる。
「はは。噛み殺されるのかと思ったよ。」
苦笑しながら彼女は背中を軽く掴んだ。
私はゆっくりと空を舞う。彼女を背中に乗せて。
――――
彼女に巣の位置を教えて以来、毎日緑のどろどろを持って彼女は巣に現れるようになった。
優しく緑のどろどろを塗っては帰っていく彼女。いつしか私はその時間を楽しみにするようになっていた。
時々、帰ろうとする彼女を口で捕まえて、また大空を舞う。
毎回毎回、心臓に悪いからやめて欲しいと頬を膨らませて言う彼女。
そんな彼女を見たくてつい、口で捕まえる。
時には砂漠を、時には密林を。
自由に空を飛べる翼を持つ私と翼を持たない彼女の静かな旅路。
二人だけの、静かな時間。
――――
ある時、背中の彼女は言った。
世界は美しいな、と。
生きとし生けるものが共生し、そして時には存在を賭けて戦う。生の輝きがそこにはあった。
いつか、どうせ死ぬなら・・・自分の魂を燃やし尽くすような戦いの中で死にたい。彼女が大空の中でたゆたいながら呟いた。
強きものと最後まで戦い抜く、それはハンターとしての誇り。
あぁ、すまん、別に死にたいわけじゃないよ。
反論するように唸る私を宥めるように笑い、彼女は髪を掻きあげた。
その日、もう少しばかり世界を見て回りたくて強く羽ばたいた。
そして無茶をしすぎて傷が開き、彼女に怒られた。まぁそれはそれで楽しいからよしとした。
――――
傷がほぼ完治した。彼女も緑のどろどろを持ってこなくなった。
あまり頼りすぎると自分で治ろうとする力が弱まるかららしい。
優しく彼女に撫でてもらう時間が好きだった私は少し残念。
なにやら私は悲しげな眼をしていたらしい、彼女は優しく顔を撫でてくれた。
きゅるるるるぅ、自分でも信じがたい甘えたような声。
彼女はふっと微笑むと、そのまま優しく撫でていてくれた。
毎日ではないが頻繁に彼女はここを訪れ、そして帰っていく。
甘い時間。
いつまでも続けばいいと思っていた。
――――
ここ4〜5日、彼女が来なかった。珍しいこともあるもんだ。
寂しい。
彼女を乗せることなく大空を舞う。
背中が寒かった。世界がいつもより遠く見えた。
優しく背中を、胸を、頭を撫でてくれる優しい彼女は、元気にしているのだろうか。
――――
彼女が来なくなってから2週間。
近隣の村で一人の若い女ハンターが死んだ、正確には殺された、という噂を聞いた。
強いハンターだったが、近隣のモンスターも強く一人では厳しい状況だったらしい。
村が決めた結論は新しいハンターの誘致。
そして男数人の強いハンターたちが村の駐在ハンターとしてつくことになったらしい。
条件付で。
――――
若き女ハンター・・・彼女の死にまつわる真実の全てを知った。
彼女はどんな気持ちで死んでいったのか。
守ってきた者たちに裏切られ、ハンターとしての誇りを奪われ、女としての尊厳を奪われた。
それを知る術は龍である自分にはなかった。
彼女は・・・いったいどんな気持ちで死んでいったのか。
望む物も手に入れらず、望む生も手に入れらず、望む死も手に入れられず。
それは龍族の私でも知っている、今痛感していた。
私は望んだ、彼女との静かな生を。
私は望んだ、たとえいつか相対することになってもその日まで共に生きることを。
私は望んだ、彼女が、私が、彼女の愛した世界に負けない生の輝きを放ち、そして世界に還ることを。
許せなかった、彼女を裏切ったものたち。
許せなかった、彼女の、ハンターとしての誇りを奪ったハンターたち。
許せなかった、彼女の、ささやかな・・・そう、ささやかな。
望みすら叶えれないこの世界・・・
ゴアアアアアアアアアアアアッ!
空に吼える。
彼女を殺していったものたちを。彼女を裏切ったものたちを。人々を・・・この世界を。
全てを無に還そう。
始めよう。これは、宿命の戦い。
龍刀の話を書かせていただいてるものです、長いことお待たせして申し訳ありません・・・
本編の方を書いてはいるのですが、話と話をつなげるジョイント部分の執筆にかなり苦戦している状況です。
次で終わらせる、などと言っていたのですがジョイント部分の大幅の加筆修正、話の追加などもあり2〜4回程度の投稿に分かれそうです。
楽しみにしてる方、大変申し訳ありません。
えちぃシーンを完全に書き終わった時点で次回の投稿をするつもりです。
もうしばし時間をいただけたら、と思います。
↑の話は、本編では完全に悪役になってる紅龍の過去を書いたものです。
楽しんでいただければ、そしてご意見などいただければ幸いです。
GJなのである
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□■□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□■□□□□■■■■■■■■■□□□□□□□□□□□□□□■□□□□□□□□□
□□□□□■□□□□■□□□■□□□■□□□□□□■□□□□□□□■□□□□□□□□□
□□□□□■□□□□■□□□■□□□■□□□□□□■□□□□□□□■□□□□□□□□□
□□□□□■□□□□■□□□■□□□■□□□□□□■□□□□□■■■■■□□□□□□□
□□■■■■■■■□■■■■■■■■■□□□□□□□■□□■■□□■□□■■□□□□□
□□□□□■□□□□■□□□■□□□■□□□□□□□■□■□□□□■□□□□■□□□□
□□□□□■□□□□■□□□■□□□■□□□□□□□□■□□□□■□□□□□□■□□□
□□□□□■□□□□■□□□■□□□■□□□□□□□■□■□□□■□□□□□□■□□□
□□□□□■□□□□■■■■■■■■■□□□□□□■□□■□□□■□□□□□□□■□□
□□□□□■□□□□□□□□■□□□□□□□□□□■□□□■□■□□□□□□□□■□□
□□□□□■□□□□□□□□■□□□□□□□□□■□□□□■□■□□□□□□□□■□□
□□□□□■■■■□□□□□■□□□□□□□□□■□□□□□■□□□□□□□□□■□□
□□■■■■□□□□■■■■■■■■■□□□□□■□□□□■□■□□□□□□□■□□□
□□□□□□□□□□□□□□■□□□□□□□□□■□□□■□□□□□□□□□□■□□□
□□□□□□□□□□□□□□■□□□□□□□□□□■■■□□□□□□□□□□■□□□□
□□□□□□□□□□□□□□■□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□■■□□□□□
□□□□□□□□□■■■■■■■■■■■□□□□□□□□□□□□□■■■□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□■□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□■□□□□■■■■■■■■■□□□□□□□□□□□□□□■□□□□□□□□□
□□□□□■□□□□■□□□■□□□■□□□□□□■□□□□□□□■□□□□□□□□□
□□□□□■□□□□■□□□■□□□■□□□□□□■□□□□□□□■□□□□□□□□□
□□□□□■□□□□■□□□■□□□■□□□□□□■□□□□□■■■■■□□□□□□□
□□■■■■■■■□■■■■■■■■■□□□□□□□■□□■■□□■□□■■□□□□□
□□□□□■□□□□■□□□■□□□■□□□□□□□■□■□□□□■□□□□■□□□□
□□□□□■□□□□■□□□■□□□■□□□□□□□□■□□□□■□□□□□□■□□□
□□□□□■□□□□■□□□■□□□■□□□□□□□■□■□□□■□□□□□□■□□□
□□□□□■□□□□■■■■■■■■■□□□□□□■□□■□□□■□□□□□□□■□□
□□□□□■□□□□□□□□■□□□□□□□□□□■□□□■□■□□□□□□□□■□□
□□□□□■□□□□□□□□■□□□□□□□□□■□□□□■□■□□□□□□□□■□□
□□□□□■■■■□□□□□■□□□□□□□□□■□□□□□■□□□□□□□□□■□□
□□■■■■□□□□■■■■■■■■■□□□□□■□□□□■□■□□□□□□□■□□□
□□□□□□□□□□□□□□■□□□□□□□□□■□□□■□□□□□□□□□□■□□□
□□□□□□□□□□□□□□■□□□□□□□□□□■■■□□□□□□□□□□■□□□□
□□□□□□□□□□□□□□■□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□■■□□□□□
□□□□□□□□□■■■■■■■■■■■□□□□□□□□□□□□□■■■□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□■□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□■□□□□■■■■■■■■■□□□□□□□□□□□□□□■□□□□□□□□□
□□□□□■□□□□■□□□■□□□■□□□□□□■□□□□□□□■□□□□□□□□□
□□□□□■□□□□■□□□■□□□■□□□□□□■□□□□□□□■□□□□□□□□□
□□□□□■□□□□■□□□■□□□■□□□□□□■□□□□□■■■■■□□□□□□□
□□■■■■■■■□■■■■■■■■■□□□□□□□■□□■■□□■□□■■□□□□□
□□□□□■□□□□■□□□■□□□■□□□□□□□■□■□□□□■□□□□■□□□□
□□□□□■□□□□■□□□■□□□■□□□□□□□□■□□□□■□□□□□□■□□□
□□□□□■□□□□■□□□■□□□■□□□□□□□■□■□□□■□□□□□□■□□□
□□□□□■□□□□■■■■■■■■■□□□□□□■□□■□□□■□□□□□□□■□□
□□□□□■□□□□□□□□■□□□□□□□□□□■□□□■□■□□□□□□□□■□□
□□□□□■□□□□□□□□■□□□□□□□□□■□□□□■□■□□□□□□□□■□□
□□□□□■■■■□□□□□■□□□□□□□□□■□□□□□■□□□□□□□□□■□□
□□■■■■□□□□■■■■■■■■■□□□□□■□□□□■□■□□□□□□□■□□□
□□□□□□□□□□□□□□■□□□□□□□□□■□□□■□□□□□□□□□□■□□□
□□□□□□□□□□□□□□■□□□□□□□□□□■■■□□□□□□□□□□■□□□□
□□□□□□□□□□□□□□■□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□■■□□□□□
□□□□□□□□□■■■■■■■■■■■□□□□□□□□□□□□□■■■□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□■□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□■□□□□■■■■■■■■■□□□□□□□□□□□□□□■□□□□□□□□□
□□□□□■□□□□■□□□■□□□■□□□□□□■□□□□□□□■□□□□□□□□□
□□□□□■□□□□■□□□■□□□■□□□□□□■□□□□□□□■□□□□□□□□□
□□□□□■□□□□■□□□■□□□■□□□□□□■□□□□□■■■■■□□□□□□□
□□■■■■■■■□■■■■■■■■■□□□□□□□■□□■■□□■□□■■□□□□□
□□□□□■□□□□■□□□■□□□■□□□□□□□■□■□□□□■□□□□■□□□□
□□□□□■□□□□■□□□■□□□■□□□□□□□□■□□□□■□□□□□□■□□□
□□□□□■□□□□■□□□■□□□■□□□□□□□■□■□□□■□□□□□□■□□□
□□□□□■□□□□■■■■■■■■■□□□□□□■□□■□□□■□□□□□□□■□□
□□□□□■□□□□□□□□■□□□□□□□□□□■□□□■□■□□□□□□□□■□□
□□□□□■□□□□□□□□■□□□□□□□□□■□□□□■□■□□□□□□□□■□□
□□□□□■■■■□□□□□■□□□□□□□□□■□□□□□■□□□□□□□□□■□□
□□■■■■□□□□■■■■■■■■■□□□□□■□□□□■□■□□□□□□□■□□□
□□□□□□□□□□□□□□■□□□□□□□□□■□□□■□□□□□□□□□□■□□□
□□□□□□□□□□□□□□■□□□□□□□□□□■■■□□□□□□□□□□■□□□□
□□□□□□□□□□□□□□■□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□■■□□□□□
□□□□□□□□□■■■■■■■■■■■□□□□□□□□□□□□□■■■□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□■□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□■□□□□■■■■■■■■■□□□□□□□□□□□□□□■□□□□□□□□□
□□□□□■□□□□■□□□■□□□■□□□□□□■□□□□□□□■□□□□□□□□□
□□□□□■□□□□■□□□■□□□■□□□□□□■□□□□□□□■□□□□□□□□□
□□□□□■□□□□■□□□■□□□■□□□□□□■□□□□□■■■■■□□□□□□□
□□■■■■■■■□■■■■■■■■■□□□□□□□■□□■■□□■□□■■□□□□□
□□□□□■□□□□■□□□■□□□■□□□□□□□■□■□□□□■□□□□■□□□□
□□□□□■□□□□■□□□■□□□■□□□□□□□□■□□□□■□□□□□□■□□□
□□□□□■□□□□■□□□■□□□■□□□□□□□■□■□□□■□□□□□□■□□□
□□□□□■□□□□■■■■■■■■■□□□□□□■□□■□□□■□□□□□□□■□□
□□□□□■□□□□□□□□■□□□□□□□□□□■□□□■□■□□□□□□□□■□□
□□□□□■□□□□□□□□■□□□□□□□□□■□□□□■□■□□□□□□□□■□□
□□□□□■■■■□□□□□■□□□□□□□□□■□□□□□■□□□□□□□□□■□□
□□■■■■□□□□■■■■■■■■■□□□□□■□□□□■□■□□□□□□□■□□□
□□□□□□□□□□□□□□■□□□□□□□□□■□□□■□□□□□□□□□□■□□□
□□□□□□□□□□□□□□■□□□□□□□□□□■■■□□□□□□□□□□■□□□□
□□□□□□□□□□□□□□■□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□■■□□□□□
□□□□□□□□□■■■■■■■■■■■□□□□□□□□□□□□□■■■□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□