専用スレに投下できないSS 2

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1名無しさん@ピンキー
専用スレはあるけれど
・荒れていたり雑談や議論で盛り上がっていてSS投下の雰囲気ではない。
・グロ、陵辱、801、2次でオリ要素が強い、等、
 火種になりそうな要素を孕んでいてスレへの投下を躊躇してしまう。

そんなSSをとりあえず上げてしまいましょう。

前スレ
専用スレに投下できないSS http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1242226863/
2名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 05:57:04 ID:z7qc1Fsy
立っちゃった……。

まだ書き手さん達の意見とかちゃんと聞いてなかったし、立ててよかったのかわからないので、もしも問題があるようなら、このまま落としちゃってください。

申し訳ない。
3名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 11:00:35 ID:8tPVLmCN
>>1
乙げんよう、お姉さま
4名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 11:05:50 ID:SN2GXYgi
>>1
乙。
まさか今朝立つとは思わなかった。
5名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 11:21:41 ID:Yjp1ZeV2
>>1
朝勃乙!
6 ◆5xcwYYpqtk :2010/05/29(土) 15:57:37 ID:SN2GXYgi
即死回避として投下します。

祐巳×乃梨子+全般

「Another Parasol 2話」

――――

 下校しようとする複数の生徒の足音が近づいてくるのを耳にした時、乃梨子は我に返った。
 このままの状態で放置しておくわけにはいかない。

「祐巳さま」
 ゆっくりと歩み寄り、四つん這いの姿勢のままで全身を雨に打たれている上級生に声をかける。
「……」
 乃梨子の言葉に、身体だけは反応した祐巳さまはのろのろと立ち上がるが、既に流した涙と、
降りしきる雨ですっかりと濡れてしまっている。

「祐巳さま。これを」
 それでも乃梨子は、ポケットに入ったハンカチを差し出した。
「……」
 祐巳さまは微かに頷いて受け取り、目元にあてて涙を拭った。

 乃梨子は入学して日が浅いこともあり、さほど祐巳さまと親しい訳ではない。
 しかしそれでも、おそらく紅薔薇さまによって深く傷つけられた祐巳さまは、
あまりにも辛そうであり、痛々しくて見ていられなかった。

「もしよければ、家に来ませんか?」
 後輩の癖に生意気だと思われるかもしれないが、ぼろぼろになった祐巳さまを
見捨てることは、基本的にはお人好しの乃梨子にできることではない。

「でも…… 」
 祐巳さまは、乃梨子の顔を初めてまともにみてから、弱々しく頭を振る。
「その格好で帰られたら、お家の方が心配なさると思いますが」

 痛いところを突かれたのだろう。
「それは…… ダメ」
 顔を青ざめさせて、怯えたように声を震わせ、両腕で自分で抱きしめる。
 もしかしたら、両親に問い詰められて口を割らされると思ったのかもしれない。

「あのですね、祐巳さま。私の下宿先の…… 大叔母である董子さんの家なんですが、
そこで濡れた制服を乾かせましょうよ。そうすればご家族の方に悟られることもないでしょうし」

 乃梨子の説得に、しばらく黙っていた祐巳さまだったけれど、
他に取るべき道が無いと悟ったのだろう。

「ごめんなさい…… 乃梨子ちゃん」

 ほとんど可聴域に届くかどうかという小さな声で、紅薔薇のつぼみは頷いた。
7名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 15:58:47 ID:SN2GXYgi
 まさか、祐巳さまだとは。

 乃梨子は、バスルームの入り口の扉を見ながらため息まじりに呟いた。
 董子さんのマンションに最初に招待するのは、姉である志摩子さんだと思っていたのだけれど、
毎日のように顔を合わせているとはいえ、お姉さまの親友という関係に過ぎない
祐巳さまだったというのは、意外な結果である。

 乃梨子は、まず熱めのお湯をバスタブに注ぎ込んでから、逡巡する祐巳さまを半ば無理やり
バスルームに押し込んだ。
 次に居間に戻って、祐巳さまの濡れた制服をドライヤーで乾かし始める。
 しかし、激しい雨と水たまりによって濡れた服は、ぐっしょりと水分を含んでおり、
再び着ることができるようになるには、かなりの時間が必要だ。
 とりあえず、生乾きの状態まで何とか乾かしてから、小休止のためにスイッチをOFFにすると、
ドアの向こうから、微かにシャワーが壁面を叩く音が聞こえてきた。

 祐巳さまは今、裸なんだ。

 唐突に思い浮かんでしまったはしたない想像に、乃梨子は顔を赤らめてしまう。

「何を考えているんだか。私は」

 乃梨子は中学までは共学であり、女の子同士の恋愛、ましてはそれ以上のことなんて
想像することすらできなかった。
 女子高であるリリアンに入ってから暫くして、志摩子さんの妹になったけれど、
 志摩子さんはお姉さまであっても、どちらかといえば親友のような間柄であり、いわゆる百合的な
恋愛感情は抱いていない。

 それなのに、どうして祐巳様の……

 乃梨子は長めのおかっぱ頭を激しく数度横にぶんぶんと振り、祐巳さまの裸身を脳裏から
追い払おうとする。
 しかし、妄想の全てを捨てることはできずに、結局、モヤモヤした気持ちを残してしまった。
8名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 15:59:18 ID:SN2GXYgi
 再びドライヤーのスイッチを入れてから十分程が経つと、祐巳さまがお風呂から出てきた。

「お湯を頂き、ありがとうございました。乃梨子ちゃん」
 貸した私服を纏った祐巳さまの表情は、未だに憂いに包まれているけれど、
血色は戻ってきており、柔らかそうな肌はほんのりと赤みをおびている。
「温まれましたか?」
「うん。本当に迷惑かけてごめんね」
「いえ。こちらが好きでやっていることですから。あまり気にしないでください」

 祐巳さまのお世話をすると決めたのは乃梨子だったが、一年違いとはいえ上級生に
申し訳なさそうな態度を取られると、却って居心地が悪くなってしまう。

「でも、私の制服までは……」
 近付こうとする祐巳さまを、手で押しとどめて乃梨子は言った。
「駄目です」
「え?」
 祐巳さまに向き直り、きっちりと告げる。

「祐巳さまを家に招待したのは私です。ですから私のもてなしを受けて頂きます」
「う…… ごめん」
 しゅんとうなだれて謝る祐巳さまは可愛くて罪悪感に駆られるが、ここは心を鬼にして付け加える。
「『ごめん』も禁止です。制服のことも好きでやっているのですから」
「わ、分かったよ。乃梨子ちゃん」
 ちょっと驚いたようだったけれど、祐巳さまは納得してくれた。
9名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 16:00:19 ID:SN2GXYgi
「お姉さまとすれ違い始めたのは、1か月程前だったの」

 服を乾かす作業を再開して間もなく、ソファーに座っていた祐巳さまが話し始めた。
 乃梨子の世話になったことから、事情を話す義務があると判断したのだろう。
 祐巳さまの話によれば、紅薔薇さまには何度かに渡ってデートの約束を破られた上、
好きな人ができたらしいということだった。

 ひととおり話を聞き終えた後、乃梨子は尋ねる。
「好きな相手と言うのは、瞳子なんですか?」
 無神経だとは分かっていたけれど、聞かずにはおられない。
「分からない。私がそう思っているだけれで、実際は違うかもしれないし、そうかもしれない」
 意外と冷静な答えが返ってくる。
「これから…… どうされるおつもりですか?」
「たぶん、祥子さまにロザリオをお返しすることになると思う」

 最初は戸惑ったリリアンの特殊な制度も、今ではきちんと理解している。
 紅薔薇さまにロザリオを返すということは妹でなくなり、同時に山百合会のメンバーからも
除外されることになる。

「あのですね。祐巳さま」
 乃梨子は、祐巳さまの瞳を見据えてから口を開いた。
「私は祐巳さまには、薔薇の館から去ってほしいとは思いません」

 祐巳さまは、山百合会のメンバーに好かれている。
 乃梨子のお姉さまである志摩子さんも、元気のない祐巳さまのことをとても心配していたし、
祐巳さまが薔薇の館を休んだ日の由乃さまは、とてもつまらなさそうだった。
 由乃さまのお姉さまである黄薔薇さまも、その日は物憂げな様子だった。

 つまるところ、壊れかけた姉妹の絆を修復できずに、祐巳さまが薔薇の館を去ってしまうことは、
山百合会のメンバーを結ぶ役割を果たしていた、『かすがい』が消えてしまうのではないか?
 一年生ながら白薔薇のつぼみとなった乃梨子としても、これは懸念せざるを得ない。

「でもね。祥子さまの妹でなくなるということは、そういうことだから」
 祐巳さまは、とても寂しそうな笑みを浮かべて答えたが、乃梨子はこの時、
既に反論の糸口を見つけていた。
10名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 16:01:17 ID:SN2GXYgi
「しかしですね。紅薔薇さまが瞳子の事を好きになったとは限らないではないですか」

「そんなこと」
 祐巳さまは、ありえないと云わんばかりに首を横に振る。

「でも、紅薔薇さま本人の口から、瞳子のことが好きだと聞いたわけではないんですよね」
 乃梨子は、語気を強めて付け加える。
「すれ違いの理由は、全く別のことかもしれませんよ」

 確かに、祐巳さまの言うように、紅薔薇さまが約束を何度か違えたことは事実だと思うし、
今日は紅薔薇さまと瞳子は同じ車で学校を出たところは、乃梨子も目撃したのだけれど、
それをもって、二人が恋人関係になったと決めつけるのは、いささか早合点ではないだろうか。

 しかし、乃梨子の見解に対する祐巳さまの反応は、予想を大きく外すものだった。

「ありがとう。乃梨子ちゃん」

「えっ?」
 いきなり背後から抱きつかれて、乃梨子は頓狂な声をあげてしまう。

「乃梨子ちゃんは、とっても良い子だね」
 祐巳さまの両腕が、乃梨子の胸のあたりまでまわされる。
 トレードマークとなっているリボンを解いた髪と、至近距離からの吐息がかかって、鼓動が速まる。
「私を励ましてくれて、本当にありがとう」
「い、いえ」
 ぎゅっと包まれるように抱きしめられて、自分の意思とは関わらずに身体が震える。
 お風呂上がりということもあって、乃梨子よりも高めの体温が伝わり、柑橘系の匂いが鼻をくすぐる。
 親以外の人からこれほど強い抱擁を受けるのは初めてだったから、どうしていいか分からない。

「私、もう少ししたら立ち直るから」
「祐巳…… さま!?」
 喉がひりひりと乾いて声が擦れてしまい、言葉が上手く出ない。
「乃梨子ちゃんが思うほどに弱い子じゃないよ。でもね」
 一つだけ呼吸をしてから、祐巳さまは続ける。
「今はまだ駄目なんだ。乃梨子ちゃんの力が要るの」
 乃梨子はひどく動揺してしまい、頷くことすらできない。
 とても弱い存在であるはずの祐巳さまに、いつの間にか圧倒されている。

「だからお願い。志摩子さんには本当に悪いけれど、今日だけは私を…… 受け入れて」
 祐巳さまははっきりした声で告げる。
 そして、混乱した乃梨子に覆いかぶさるようにして、ゆっくりと身体を倒していった。
11名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 16:04:32 ID:SN2GXYgi
続きます。
スレが立ってから書いたから、ぎこちないところがあるかも。
12名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 18:33:45 ID:Yjp1ZeV2
GJ
やっばり祐巳攻めなのかw

フラれたばかりやのに、この頃からすでに古狸の本性があらわだなw
13名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 19:03:51 ID:z7qc1Fsy
うああああぐっじょぶぶぶ……!

続き急かしてしまったみたいになってごめんね。
そしてまた続きを楽しみに待ってます。
14名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 22:18:56 ID:u0JMgbeE
なに馬鹿なことしてんの
重複だと知りながら、勝手にまた重複立てるとかアホなことすんなよ・・・
単独スレを立てるならまだしも、マリみては厨ジャンルだと宣伝でもしたいんか
15名無しさん@ピンキー:2010/05/30(日) 01:31:50 ID:3lOEoG4f
いちおつ。

>>11
祐巳攻めktkrGJ!

さて、前スレ埋めんとな…
16トライアングル交錯、暗転 ◆7VwruS0Rhg :2010/06/01(火) 00:51:12 ID:0IsYHIwh
おいらも投下です。前スレのトライアングルイフネタ続きです。
今回はちょっと鬼畜入ってるので、黄薔薇好きな方、原作の雰囲気を大事にされてる方は気をつけてください。


3、
由乃と令はK円寺にある、リーダー格の実家へ連行された。
この小汚い家の二階はチーマー集団の溜まり場になっており、建設業勤務で五十代の父、専業主婦母も、極道息子の兇暴を懼れてうかつに登れないでいた。
もし勝手に上がりこもうものなら、激昂したリーダー格に、棒きれで滅茶苦茶に折檻されるのがおちなのである。
だから、その日も、二人は上でどんな事が行われているか大概把握していたが、知らぬ顔を決め込んだ。
後に、警察には「上で息子たちが何をやってるかはまったく知らなかった」と、ぬけぬけ証言している。
「さて、姉ちゃんたち、これから自分たちが『ナニ』されるか、分かってるよな?」
リーダー各の男は、元々腐った性根のよく顕れた顔つきを、もっと下卑た形(なり)に歪めた。
まわりには部屋に入りきれぬほどの、ボンクラ連中が自分たちを取り巻いている。
中には、早速、ナイロン袋でアンパン(シンナー)を吸い始めている者までいた。

「あ、あ……」
後ろ手に縛られ、転がされている由乃は、恐怖に蒼ざめ、わなないている。
17トライアングル交錯、暗転 ◆7VwruS0Rhg :2010/06/01(火) 00:52:26 ID:0IsYHIwh
さすがの強気の由乃とて、女の子だ。それも穢れを知らない、家族と親友たちとの優しい愛情にだけ包まれて今まで生きて来た。
純粋な愛情と友情の温室の中で培養された穢れを知らない一輪の黄薔薇のつぼみなのだ。
この種の下賤の者どもの性根の腐れ具合、微賤ぶり、下卑たあさましい欲望、肉欲というもの、何の思いやりもない剥き出しの暴力、嗜虐の反吐とには、会した事がなかった。
そして、令ちゃんとさえ想像もした事がないような、「その先」の事を、自分は自分の体にこんな連中に最も下品な形で今加えられるのだ。
涙が滲んで来るのを抑えられなかった。
フリルのスカートから覗く皎い太腿を、下郎共があさましい視線で眺めるのに気付き、羞恥に唇を噛んだ。

「止めろ、よせ、お前ら!!」
令が叫ぶ。令は、令はやはり縛り上げられ、転がされていた。
例のチンピラに一発かました「御礼」に、たっぷり木刀を背負(しょ)わされ、無残なありさまになって。
令は全身打撲で酷い様子で、いくらか骨折もしており、次第に高熱を出して悪寒に震えていたのだが、それでも頭から血を流しながら、由乃を庇うようにもがいて、必死に声を絞った。
18トライアングル交錯、暗転 ◆7VwruS0Rhg :2010/06/01(火) 00:53:34 ID:0IsYHIwh
「私は、私はどうなってもいい……だから、由乃は、由乃には手を出さないでくれ……っ!!」
「れ、令ちゃん!!」
由乃は令の言葉に、田沼ちさとの事に悋気を見せ、我がままに八つ当たりしていたこの従姉妹であり最愛の姉(グラン・スール)である彼女の愛を感じて、自らのあさましさを恥じて震えだす。
リーダー格の男はその様子を見て、
「へへ、何だ、随分麗しき女の友情じゃねえか。どういう浪花節か?」
「裁田(えた)さん、こいつら、ひょっとしてリリアン女学園の”すうる”とかいう奴じゃないですか?」
その時、チーマーの一人が男に耳打ちした。

「なにぃ、テメエ、それはマジかっ!?」
「ええ、こいつら、うんたらかんたら教のジュウジカとかいう奴を持ってるじゃないですか、間違いないすよ」
まだ工房くらいの茶髪の小僧が得意げに説明する。
「俺のセフレのサセ子が一人、昔リリアンの初等部を受験したらしいんですよ。ま、家庭審査で落ちちまって、あんなお嬢ガッコーやってらんねーつー話らしいんすけど」
19トライアングル交錯、暗転 ◆7VwruS0Rhg :2010/06/01(火) 00:54:35 ID:0IsYHIwh
「俺のセフレのサセ子が一人、昔リリアンの初等部を受験したらしいんですよ。ま、家庭審査で落ちちまって、あんなお嬢ガッコーやってらんねーつー話らしいんすけど」
由来、男共典型的DQNとは凡そ何の縁のも無さそうな乙女の園、リリアン女学園だが、
彼らチーマー集団もM市近辺に居住する以上、陋たる貧民窟(slum)からでもいと貴き王城(おうき)を眺望できるように、
普段深い色の制服の女学生を道端には見掛け、その学校の噂については耳にはさんでいた。
「あの、女同士で『姉妹盃』を酌み交わすとかいうレズ女子校か!?」
「『お姉さま』と『妹』に分かれて、女同士でマ○ズリやりまくってんだとよ!」
「あそこの女はどいつもこいつもホリ○モンみてえな金持ちのオジョー、マ○コの色形までお上品と聞くぜ!!」
途端にチーマーどもの間に黄色い歓声が上がる。これから犯す女の「タカメ」ぶりを知って、興奮を抑えられぬのだ。
――結果から言えば、この評判が二人の姉妹の運命を決定する事になった。

「ほう、こいつぁ驚いた……――おい、そうだ。『B喰い』さんに連絡しろ」

リーダー格、裁田も興奮していたが、ふと思い出したように口走った。
「え……!!」
途端、男共の興奮が一気に醒め、冷される。いや、蒼ざめていた。
「ちょっ、本気(マジ)っすか?」
「あの人はヤバ過ぎっしょ……本職だし、それに……あれは……ちょっと……」
しかし、リーダー格は少しも躊躇わず、
「こんなウマイ獲物をあの人に知らせねえ手はあるかよ。俺ぁもうあのイケイケ、天下の○KEN組からは、将来のお声がかかってんだ。あの人にこれだけの上物差し出しゃ、部屋住みのチンピラ・スタートから格上げで、一気にごっつい盃下ろして貰えるぜ♪」
クククと笑う男の目には獲物に止めを刺さんとす猛禽のような残忍な光が宿っている。
「あのお人なら、きっとスゲエ『ビデオ』を撮って下さるぜ……!」
それでも猶躊躇うが、「オイ、とっととしやがれ!!」と怒鳴られて、蒼ざめていた男共の一人は、恐る恐る携帯に手をかけた。
「さて……」
リーダー格は、再び舐めまわす様に黄薔薇の姉妹を見やる。
「S区(ジュク)のシマから『B喰い』さんが来るまで時間はある。まずは、俺達で姦っちまおうぜ」
20トライアングル交錯、暗転 ◆7VwruS0Rhg :2010/06/01(火) 00:56:32 ID:0IsYHIwh
「い、いやああああああああああああああああああああああああああっ!!」

男共が一斉に由乃の服を脱がしていく。剥ぐというより破くという方が相応しいやり方だった。
由乃は嫌悪と恐怖で暴れるので、男共は拳骨や足刀で由乃を容赦なく鎮圧する。
「やめろ、私は、私はどうなってもいい、だから由乃には乱暴をするな、やめてくれえ!!」
令が自身の怪我も忘れて悲痛な呻きを上げるが、その腹をリーダー格がどがあとけっ飛ばした。
「かはぁ!!」
「てめえはよ、テメエのスールとやらがマ○コ犯されるのを指咥えて見てりゃいいんだよ、このゴリラ女が!!」
男は令に見事な武術で一撃に倒された屈辱が蘇って来たのか、由乃を穢すより令を痛めつける事に夢中になる。
「オラァ!!」
「ぐはあ、があああああああああっ!!」
何度も何度も、狂ったように令の腹部を蹴り上げる。加減というものを知らない。
相手が女性だという事や、こんなに酷く女性の下腹部を蹴って撲っては子供の産めない体になるのではないか、などと言った良識は彼には無縁である。
「ぐうう……うっ……ぐうぅぎぃ」

令が胃液を吐き、自分の吐いた黄色い水たまりで溺れてくのじに曲がりもがくのを満足げに見下ろすと、男はバッドで砕いた令の右上腕を捻り上げた。
「ぎ!? ぐ、ぐぎゃああああああああああああああああああああああっ!!」
「さっきはよくも俺に平手を見舞って呉れたよなあ。この俺様に手ぇ出しやがったのはどの腕だ? あん?」
そう言いつつ令の砕けた腕をぷらんぷらんと殊更にじわり、じわりと揺する。
「ひ、ひぎゃあああああああああああああああああああっ!!」
令はこらえ切れず、泪水を流して呻いた。
その一方で、もう一人の少女も苦痛と絶望のはざまにいた。

「いやあああああああああああああああああああああああああ、止めて、離して!!」
由乃の少女らしい可憐なツーピースははぎ取られ、下着だけの姿にされる。
その清楚な純白のブラやショーツもすぐにむしり取られる。
由乃は眩いばかりの裸体を曝し、秘めるべき乙女の乳房や茂みの下に隠れる「女の子」の部分を曝け出されていた。
「ひょお、ピンクだぜこの乳首!」
「おい、股開かせろや!!」
21トライアングル交錯、暗転 ◆7VwruS0Rhg :2010/06/01(火) 00:57:55 ID:0IsYHIwh
「いやあああああああああああああああああああああああ、やだやだやだあああああああああああああああっ!!」
由乃は首をいやいや振って、赤子のように泣きじゃくっていた。
顔を手で抑えようにも、両手は拘束されている。
由乃は、中等部に入って以来は、令ちゃんにしか見せたこともない恥部を、クズ以下の男連中にまざまざと視姦されているのだ。
顔からは火を噴きそうな程恥辱で紅潮し、涙に震えるが、「絶望」の表情が男共をよけい煽る事までは気が回らない。
「へえ、ガキみたいだな、毛も薄いしよ」
「別にふつうのマ○コじゃねえか。どこがオジョウサマの、お上品な、おふらんす製のマ○コなんだ?」
「毛ぇ剃ってパイパンにしちまったら、『ロリもの』で売れるんじゃね?」
「いや、オラァ、ハード★ロリ入ってからよお。こいつは堪んねえぜ♪」
口々に勝手な事を吐くと、男共は遠慮なく由乃の女性に手を突っ込んだ。
「!」
由乃がビクンとのけ反る。指先は割れ目を掻きわけ、乱暴に奥へ侵入している。
別の指は由乃の陰毛を引っ張ったり、包皮に隠れたちっちゃなクリトリスを目一杯の力でつまみあげたりしていた。

「げえ痛い、いやあああああ、令ちゃん、令ちゃん!」
「うっせんだよ、静かにしてろ!!」
狂ったように喚く由乃の顔面に拳を見舞い、数人がかりで抑えつけて、指は由乃の膣内にまで入り込んだ。
「! ひぐ」
由乃がかたかた震える。
「見ろよ、こいつやっぱ処女だぜ!!」
指から滴る真っ赤な乙女の証を見て、男共は下品に笑い合う。
由乃は裸を令に見せたことはあっても、令にさえ性器を触らせた事はなかったのだ。
それなのに、こんな下衆どもに、一番恥ずかしい部分を玩具にされて……。
由乃は涙で視界がくもっていたが、すぐその目を大きく見開く事になる。
――まだ、本当の絶望はこれからなのだ。

「へへ、もう勃っちまったよ。早くぶちこみてえ」
「俺が先だ、てめえらはマスでもかいてろ」
「そんなのねえっすよ」
「じゃ、ケツマ○コと口はいいっすよね?」

由乃は男の性器――ペニスを見たのはこれが初めてだ。
子供のころ父親にお風呂に入れてもらった事くらいあるが、幼女の時で、もう記憶にない。
それからはずっとお嬢様学校の、文字通り「乙女の園」に在って、男性については保健体育で習った以上の事は知らない。
22トライアングル交錯、暗転 ◆7VwruS0Rhg :2010/06/01(火) 00:58:45 ID:0IsYHIwh
そこら辺の底辺公立の、男とサカるのに夢中の女子高生連中とは違うのだ。

(あ、あんな気持ち悪いのが、あたしのお腹の中に来るの……? 厭だよ、令ちゃん、お父さん、お母さん……)

恐怖にわななき、涙を滔々流すも、男共はそれで容赦して呉れるはずもなく、むしろ暴力で犯される女の取る態度には慣れ切っていた。
「よーし、入れるよーん♪」
男の一人、チーマー仲間では「アンパン(シンナー)マン」の渾名で有名な男が、仮性でチ○カスの溜まった、カリだけはやけにでかい逸物を由乃の割れ目に押し当てた。
今さらながら泣き叫ぶ暴れる由乃は仲間がぶん殴って、抵抗を奪う。
男は腰を突き込んだ。
「ぐぎっ!!」
由乃は細い喉をならして、声ならざる声を漏らした。
男の陰茎が由乃の膣を貫いた瞬間だった。
「へへ、こいつ、マジでガキみたいなマ○コだな。幼稚園児か? 具合はまあまあだ」
男は猛然とピストン運動を開始する。鮮血に塗れた陰茎の先端が何度も何度も由乃の子宮口を突っついた。

(――ああ、あたし、犯されてるんだ……)

由乃はやけに、妙に冷静に自分の体に加えられる衝撃をやり過ごしていた。

破瓜の痛みが酷いはずなのに、徐々に熱を持ち出した全身から鈍痛がするくらいで、だるいとしか感じない。
まるでレイプされている一箇の少女を別人になって傍(はた)から眺めているような、そんな現実と乖離した離人感に包まれていた。
少女がもう抵抗するなく性器の孔から男根を出し入れされるのにじっと身を固くし、ただ悲しげな瞳で声もあげず動かないでいるのに、男共は征服欲を満たされていた。
と、同時に「詰まらねえ」という感覚も生じる。
あの「リリアン」と聞けばどんなものかと期待していれば、何のことはない、普通のマ○コで、普通のマ○コ具合、普通にマ○コをチ○ポで犯されている、いつもの強姦されている女の反応なのだ。

(あたし、令ちゃんに甘えて、いつも我がままばっか言って、生意気言って、今回だって、ちさとさんとデートするの、わざわざつけ回しにいって……あたしがそんな馬鹿な女だったから、きっと天罰がおちたんだ)

由乃はうつろな瞳で、益のない思考を巡らす。
23トライアングル交錯、暗転 ◆7VwruS0Rhg :2010/06/01(火) 01:00:50 ID:0IsYHIwh
単に自分の心身に加えられるあまりの酷い傷害・衝撃に精神が壊れないよう、「理不尽」を合理化する自動思考を無意識にしている心理に過ぎなかったが、それは由乃にはすごく説得力を持って聞こえた。

(令ちゃん、ごめん……ごめんね……)

(マリアさま……お願い、令ちゃんだけは助けて……お守りください)

(もう、あたしはどうなってもいいですから、お願いです……令ちゃんだけは)

由乃の裸の胸に下げられたロザリオは無慈悲に金色に輝いている。
休む間もなく、由乃の口腔には男の臭気に塗れた陰茎が突き込まれた。

「けけ、見てみろや、テメエの『スール』とかいうのが、輪姦されてるぞ。どんな気分だ?」
虐待、というより拷問の末、苦痛のあまり気絶した令に水をぶっかけ平手打ちで正気に戻して、髪を引っ掴んで無理やりそちらを向ける。
意識を取り戻した令の目にはしっかりと、由乃があの可憐な口に穢いチ○ポを咥えさせられ、
排泄のみに使用されるべき肛門にチ○ポをぶち込まれ、そしてあの清楚な女性器に黒々しいチ○ポが差しては抜き差しては抜き、粘膜を擦り合わせてSEXしている光景がはっきり映じた。

由乃がクズ以下の男によってたかって輪姦され、SEXしているのが見えていた。
由乃がマ○コから、ケツの孔から、口腔からチ○ポを突き込まれ、下品極まりなくSEXしているのが見えていた。
死ぬよりももっとずっと辛い光景が、令の脳裏にはBlu-Rayなどよりよっぽど高画質に再生されていたのだ。

「――殺して……」
令は血反吐とともに漏らした。嗚咽交じりに。
「私を殺して……殺していいから、それで、もう許して……だからもう、由乃は、由乃にもうこれいじょ、酷い事……わ……」
裁田がニタリと笑う。今度はさてこの女にうちで飼ってる犬(シノギ一號くん♂七歳、命名裁田)のウ○コでも食わすか。そう思いつつ。
その時、家の外、街路に車の停まる音がした。
裁田がカーテンから覗くと、果たして、家の前に黒塗り黒窓ガラスの黒ずくめベンツが停まっている。ナンバープレートには「T京 893-4649」と銘打ってある。

こんなアホな番号をわざわざ陸運局に申請するものが堅気でないのは当然であるが、裁田は来訪者の正体を知って驚喜した。
「狂宴」の始まりに。――令の望みは図らずしもかなえられる事となる。裁田の期待とも、多少し違った形で。


(つづきます…携帯投下メンドクサイorz)
24名無しさん@ピンキー:2010/06/01(火) 14:40:25 ID:Q0zvDWQ3
GJ
うわあ…いやな予感しかしねえw


ところで、質問というかお願いなのですけれど…
貴方がロダにあげて下さった2本のSS、前スレの埋めがてら、転載させて頂いても構わないでしょうか?
前スレで、携帯オンリーの人が「読めない」と言っていたのが気になっていたもので…

ロダによるうpの際、転載OKとの但し書きがあったことは承知しておりますが、
せっかくの玉稿を「埋め」に利用するとか失礼千万な申し出な気もしますし、
他の人達の反応もあまり芳しくなかったこともありますので(http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1242226863/410-414)、改めてお伺いを立てさせて頂くことにいたしました。

もしも、この申し出自体が貴方に取って不快なものであったなら、このレスはスルーして下さっても構いません。
その場合、失礼な申し出をしたことを、深くお詫びいたします…本当に申し訳ございません。

また、最後になりますが、規制の中での携帯投下、本当にお疲れ様です!
一読み手としまして、貴方のSSのつづきを心よりお待ちしております。
25名無しさん@ピンキー:2010/06/01(火) 18:41:44 ID:0IsYHIwh
>>24
あんな駄文で埋めのたしになるのでしたら、御随意になさって下さい。
別に転載自体は構わないのですが、

ただ、この際正直に言いますが、何本か随分昔他に落したネタに加筆したもので、一本は本家(2ch)に落したネタを大幅改定したものなんですが、ちょっと一悶着ありまして、
そういう関係でウンカーあたりの検索に引っ掛かって、ここに粘着が来ないかだけが心配です。(エロパロのわりに直接描写少ないのはそのためです)

その際は黙って去るのみですので、御判断はお任せします。
ですので、そこら辺はあまり追求しないで下さい。
(某外部投稿サイトに投稿したところ「盗作」疑惑をかけられ、ヲチ板の変なオジサンたちに散々粘着されたことがあったので)

それ以外特に申上げることはありません。
26名無しさん@ピンキー:2010/06/01(火) 19:33:26 ID:Q0zvDWQ3
>>25
了解いたしました。転載は差し控えることにいたします。

そういった事情があることも察せずに、不躾な申し出をして本当にすみませんでした。
前スレには、自分で何か書いて投下するなりして埋めていこうかと思っております。
貴方に取って言いづらいであろうことを、無理に引き出させてしまったことにつきましても、心よりお詫び申しあげます。
27名無しさん@ピンキー:2010/06/02(水) 01:38:55 ID:8/WbD0no
>>23乙。獣姦フラグか?w
28名無しさん@ピンキー:2010/06/04(金) 01:16:36 ID:8U+nahXA
ちょ、埋め立て良い所で終わりすぎいいいいいいいいいい
続きはあああああああ続きはあああああああああっふるわっふるううううううううう!
29埋め立てネタ・前スレの続き:2010/06/04(金) 01:23:35 ID:gKGQjZWh
>>28
計算が甘かったようだ。変な処でスレか終わってしまってすんまそん。

まあ、埋め立てだし読む人もおらんだろうからいいかと思っていたけれど、読んでくれる人がいるなら続けますね。



 ぼくが言うと、郁子の呻き声は大きくなる。
 尻穴をひくひくと収縮させるのは、そこを窄めて侵入物を阻もうという、せめてもの防御反応なのだろうか?

 けれどもそれは、早くこちらも姦して欲しいとおねだりしているようにしか、ぼくの眼には映らなかった。

「大丈夫だよ郁子……さっきだってできただろう? だから……」
 うわ言みたいにぼくは言い、蝋燭の先を菊状模様の中心に宛がって、
ぶすりと挿し込んだ。
 郁子の喉から、きんと高い叫び声があがるのを、夢のように聞きながら、きつい窄まりをゆっくりと貫いてゆく。
 膣穴も。
 していることは先ほどと代わり映えがしないけど、体勢が異なっている分、
見た目の印象はさっきよりもかなり扇情的だ。

「いいな……郁子、いいよ。凄く……興奮する」
 尻をあげ、下半身の二つ穴から赤い蝋燭を生やしてうずくまっている郁子の姿は、
本当に素晴しいものだった。
 このまま飾っておきたい。時を止めて、永遠に見ていたい。そんな欲求をも、起こさせるほどに。
 せめて映像だけでも残しておきたいと思い、ぼくはデジタルカメラを手に取った。
 恨みがましい眼でレンズを睨む郁子の姿を、動画モードで心ゆくまで撮影した後、
ケータイでもいくつかの写メや動画を撮って置いた。
 これで、会社での仕事の合間や移動中など、好きな時に郁子の痴態を愉しむことができる。

「ほら、お前も観てみろ。綺麗に撮れたぞ」
 赤い縄と、赤い蝋と、二本の赤い蝋燭で真っ赤っ赤になった郁子の、
白い雲のように盛りあがったお尻の有様や、その至近にまで近寄り、咥え込んだ穴の表皮が震えわななく様子などを当の本人に見せびらかせば、
玉を咥えて涎まみれの顔が、逆上せあがった赤銅色になって物凄い。
 怒りと、悔しさと……恥じらいと、肉の快楽に咽んだその顔も、やはりカメラに収めてやった。

 満足のいくコレクションを所蔵し終えたら、またプレイの続行だ。
 さて、これからどうすべきか――差し当たり、この状態で、お尻を可愛がってみよう。
「郁子、穴、二つとも締めとけよ」
 ぼくはへら鞭を構え、郁子の尻ぺたを、ぴしりと打った。郁子は呻き、突き出た二本の蝋燭が、上下に蠢く。
続けてもう一打。さらに一打。
さっきまでのように、お尻の山のてっぺんばかりではなく、尻肉の割れ目に近い辺りまでも、隈なく打ち据える。

「おぉ……ごおぉ」
 尻や陰部の肉をわななかせ、折り曲げられた脚の先の、足の裏や爪先をぐねぐねと蠢かせ、
憐れな肉人形と化した郁子は、呻きながら、故なき仕打ちに絶え続けている。
 痛々しげなその姿は、この世の苦しみを一身に背負ったような悲壮ささえも漂わせて
いたが、彼女が漏らす呻き声は、少し鼻にかかった、甘えるような音色を帯びていた。
 その響きは、ぼくに勇気と自信を与える。
郁子が感じているのは、決して苦痛ばかりではないのだ、という。

 そして、ぼくの鞭が、尻の谷間の、肛門の皺すれすれの辺りを叩いた時、それは起こった。

「ぶぉ……おぉ……ほおぉ」
 ずっとシーツに伏せていた郁子の顔が上を向き、ふうふう漏らす息の中から、絶え入るような切ない叫び声が、細く長くたなびいた。
30埋め立てネタ・前スレの続き:2010/06/04(金) 01:26:59 ID:gKGQjZWh
 縛められた二の腕が、背筋が、ふくらはぎの肉が、がくがく揺れた後に硬直し、
割れた尻肉の間で、赤い縄に締めつけられた陰部が、波打つように、どくん、どくんと蠢いた。

 次いで、尻の穴から、赤い蝋燭が勢いよく飛び出し、皺襞からぴゅっと弾かれシーツに落ちる。
膣の穴からは、粘液まみれの蝋燭がずるりと抜け落ち、糸を引きつつシーツに転がった。
 あとに残されたのは、僅かに緩んで黒い隙間を覗かせている、赤黒い肛門と、
したたるように濡れそぼち、ぽっかり空いた黒い洞穴から、充血して火のように赤い縁肉をはみ出させた、凄艶な膣口ばかり――。

「よし。今度は、おれので姦ってやる」
 鞭を捨て、ぼくは、郁子の赤い尻を腹に抱え込んだ。
 股間をくぐる邪魔な縄を、もどかしい思いで押し広げ、ついでに、大陰唇と小陰唇もぱっくり開く。
ぬめるその場所の、窪んだ部分に当たりをつけて、強く腰を押し出せば、
ほぐれきった膣口はあっさりとペニスを受け入れ、温かくぬかるんだ襞で包み込んだ。

「ああ、熱いな……それに、すごい濡れてる。いいよ、すごく。郁子は……どうだ?」
 何度かの抜き挿しを繰り返した後、ぼくはいったんペニスを引き抜き、郁子の躰をひっくり返した。
 ごろん、と仰向けになった郁子の、ざんばらに乱れまくって顔面を覆っている髪の毛を、指先で払う。
 現れた郁子の顔は、のぼせていて、鎖骨の辺りまで真っ赤に染まっていた。
「熱そうだな」
 額に張りつく髪の毛を、そっと掻きあげる。髪の毛は汗で湿っている。
 汗だけではなかった。
こめかみに流れ落ちた涙や鼻水、そして、ボールギャグを咬まされた口元からは、おびただしい量の涎。

「あぼ……ふ」
 躰の自由に加え、言葉も封じられている郁子は、涙を残すその瞳だけで、ぼくに何かを訴えかける。
 何を望んでいるのだろう?
 この陵辱からの開放なのか? それとも……。

 ぼくは郁子に何も答えず、がに股に固定された躰に圧しかかって、再度ペニスを挿入した。
 煮え立って蕩けている膣は、ぼくのものをがっちりと、嬉しそうに飲み込んで咀嚼をするが、
郁子自身は痛ましげに顔を歪め、左右に首を振って、苦しみを露わにする。
 この姿勢が、つらいのかも知れない。
 躰を無理に縮込めた形に縛られた、その上にぼくが乗っかっているものだから、背中で拘束された腕に、縄目が食い込んでいるのだろう。

 そうは思ったが、ぼくは行為をやめなかった。
 苦しむ郁子を見据えながら、そう大きくはないセミダブルのベッドを揺るがし、
熱い胎内にペニスをえぐり込む。
 素早く、激しく、執拗に。
 挿れたり出したりする度ごとに、郁子の入口はぐぼぐぼと音を鳴らし、粘ったしぶきをまき散らして、打ちつけ合う互いの股間をぐしょ濡れにした。
「うう……本当にいい。なあ郁子、お前も、いいだろ?」

 膣の上部の、ざらざらとした部分に亀頭を擦りつけながら、ぼくは郁子の、縄に挟まれ、ひねられた乳房を、両手で掴む。
 郁子は硬く閉ざしていた眼を細く開いてぼくを見た後、またその眼を閉じ、首を真横にそむける。
ボールギャグを咥えた唇の端から、泡ぶく立った唾液が溢れ、顎の方へとろりと流れた。

 その顔つきに、言い知れぬ衝動を覚えたぼくは、乳房を揉みしだく手を胸の上に滑らせ、細い首筋に触れた。
「う……?」
31埋め立てネタ・前スレの続き:2010/06/04(金) 01:29:27 ID:gKGQjZWh
 郁子の膣が、怯えたように強張る。顎の先から流れ伝った唾液が、おとがいを通って、ぼくの指を生温かく濡らす。
 濡れた指先――ぼくは、静かにそれを、郁子の首に廻した。

 頚動脈が、指の間でどくどく脈打つのを確かめつつ、ぼくは、郁子の首をじわりじわりと絞めあげる。
 郁子の肩が、胸が、ぼくの下で狂おしく揺れ動いている。
 その儚い抵抗を封じるように、ぼくは、絞める力を強くした。
 鼻からひゅうひゅう息を漏らす郁子の顔は、見る見る赤く、そして黒っぽく染まっていった。
 恐怖のためか、乳房越しに響く心臓の音も高まり、膣の強張りもますます激しい。
 温い肉襞でぎちぎちと締めつけられて、もう、ペニスがひしゃげてしまいそうだ。

「あぁ……郁……子!」
 ペニスの先からじんじん伝わる快美感に耐え切れなくなったぼくは、最後の一押しとばかりに、絞める親指の力を入れた。
 ぼくの指の下、唾液に濡れた喉から潰れたような声が漏れ、膣口が、ぼくを扼殺しかえそうとするかのごとき、凄まじい締めつけをする。
 その、狂暴なまでの圧迫感に、ぼくのペニスはあっさりと陥落し、
精巣からありったけの精液を、密着する子宮頚管に向かって、どばどばと射出した。

 気が遠くなるほどの快感に、視界が白くなり、全ての音が消え去った。

 一瞬とも悠久とも感じられる絶頂の刻を終えて郁子を見ると、彼女は、白目をむいて気絶していた。
股座がやけに生温かいので躰を離して見おろすと、どうやらまた、失禁もしているようだ。
「大丈夫か、郁子……?」
 慌ててボールギャグを外し、躰を縛る赤い縄を外しにかかる。
 拘束を解いてゆくさなか、足首を掴んだ拍子に、開きっぱなしの膣口から、ごぽっと音を立ててぼくの精液が垂れ流れ、
シーツに染みたおしっことともに、生々しい、動物じみた臭気を発散する。


 おしっこ漏らして気絶をした郁子は、なかなか眼を覚まさなかった。
 そろそろ陽も傾き、風も冷たくなり始めているというのに、まだ眼を覚まさない。
 蒼ざめた肢体を、ぐんにゃりとベッドに投げ出し、窓の方に顔を向けたまま、
静かな寝姿を夕風に晒しているだけだった。

 ――ごめんな、郁子……。
 無理なプレイを強いられ、困憊しきった郁子の寝姿に、少しだけ胸が傷む。
 初心で、一途で、ぼくのことだけ見ていてくれる郁子。
 そんな、いたいけな彼女をこんな風に汚してしまうなんて――本当にぼくは、酷い奴だ。

 そうだ。いつだって彼女は、ぼくに対する真摯な態度を崩さなかった。
 ぼくの会社が休日の日には、こうして欠かさず部屋を訪れ、ぼくの身の周りの世話や、
溜まった家事などをまめまめしく片づけてくれる。
 今日のように、ぼくが――女王様にいつもされているような、つらくて苦しい、
恥ずかしいプレイなど、純粋な彼女には耐え難い恥辱であるはずなのに、彼女はそれにも耐えてしまった。

「よし……決めた」
 ベッドの上、キッチン側の窓から射し込む西日を躰に受けながら、小さな決意を口にした。
 今日、ぼくは、女王様との約束をキャンセルしてしまおう。
 数年前、自主映画の撮影で知り合った気高い女王様。
 見目麗しい大人の女性で、童貞だったぼくに一から性の手ほどきをして下さった、
かけがえのない女性。
32埋め立てネタ・前スレの続き:2010/06/04(金) 01:31:40 ID:gKGQjZWh

 郁子とのセックスに関しても、女王様は様々の助言をして下さった。
「そろそろマンネリに陥る頃だから、ちょっと変わったことをしてみるといいわ」
 ぼくにそう促したのも、女王様だった。

 だからぼくは、今日、郁子の眼につきそうな場所に小道具を詰め込んだ段ボール箱をわざと置き、こういった流れを作るように仕向けた訳だったが――
事態が上手く行き過ぎたことで、ぼくは、少なからぬ罪悪感の如きものに、心を苛まれる結果となった。

 罪悪感は、郁子に対する同情心に発展し、それは切ない愛情へとすり替わる。
 無論、こんなことぐらいで、女王様に捧げた忠誠が揺るいだりはしないものの――
今夜だけ、少なくとも、今日という日が終わりを告げるその時まで、ぼくは、郁子と一緒に居てやろうと思った。
 狭いユニットバスで一緒にシャワーを浴び、一緒に食事に出かけて――
ぼくらぐらいの年代の、普通のカップルがするようなことを、郁子と一緒にしてやるんだ。
 今夜ばかりは、郁子との交際が、女王様の命によるものであることを、忘れることにしよう。

 あるいは、今日の郁子の様子を、女王様に報告したっていい。
 今日のプレイで判ったが、どうやら郁子にも、マゾヒストの素質がある。
 ぼくと一緒に、女王様の奴隷にして頂くって手もあるよな。
 そうすれば郁子だって、近い将来、ぼくに手酷く振られて傷つけられるという、最悪のエンディングを迎えずに済むのだから。
 そうだ。女王様がどういった理由で郁子を憎んでいるのか知らないけれど、郁子が自分の奴隷になるのであれば、溜飲も下がるのではないか?
 それならいいことずくめじゃないか。

 うん、それがいい。そうするべきだ。
 己の考えがまとまったぼくは、眠る郁子の裸の肢体に手を置いた。
 涼しい風に嬲られ続けた郁子の肌は、ひんやりと冷たくなっていた。
 躰のあちこちに残った縄の痕――
とりわけ、首の周りを青黒く汚染している絞め痕が痛々しく、こうしてじっと寝ている姿は、あたかも、死んだ女のようだった。

「郁子、早く眼を覚まさないかな……」
 夕闇が迫り、狂ったようなオレンジ色が部屋を侵蝕してゆく中、現実離れのした美しさでもって輝く郁子の躰の起伏を撫であげ、ぼくは独り、呟いた。

【了】
33埋め立てネタ・前スレの続き:2010/06/04(金) 01:35:34 ID:gKGQjZWh
以上です。

うーん、こうなるんだったら、後半の蛇足プレイを付け足す必要はなかったか。

とまれ、前スレもめでたく終了致しましたゆえ、連載中の作品の続きを待って裸正座する作業に入ります。

しかし…携帯投下は本当にキツいすね…
34名無しさん@ピンキー:2010/06/05(土) 04:41:38 ID:LNf0Qvm2
>>33
埋め立ての続き超GJでした!
エロいなそして怖い、あと良い意味で男が酷くてたまらんかった。GJ
マリみて書き手さん軒並み凄いな…
35名無しさん@ピンキー:2010/06/06(日) 00:13:10 ID:MY0oFGLR
GJ!
36トライアングル交錯、暗転、散華 ◆7VwruS0Rhg :2010/06/06(日) 21:30:11 ID:MY0oFGLR
続き、完結です。
ちょっとハードなのでご注意ください。つかなる○るネタw



4、(死)

あれから、田沼ちさとは一人で逃げ出して、K駅前まで駆け込むと、ロータリーでタクシーを拾って自宅に特急で逃げ帰っていた。
そのまま自室に篭り布団をこうぶり震える。
頭の中は混乱し、恐怖と、憎悪と、嫉妬と、そして罪悪が綯い交ぜになって、ちさとを一晩悪夢にうなさせた。
翌朝にはようやく自身の恥ずべき行為(おこない)と令と由乃への危惧の気持から、警察に通報するに至るのだが、通報が一晩遅れた事が、結果から言えば全ての結末に繋がった。


――K円寺、裁田宅

「ちわっす、N村さん!!」
「こんちゃーっす!!」

チーマー連中が直立不動の姿勢を取ってから、一斉に上半身を九十度曲げ、気合の篭った声を大音声をば張り上げる。
誰も「彼」と直接目を合わせようとする者はいない。
さっきまでの処女を輪姦する浮かれた気分は全体吹き飛んでいた。
それは緊張した面持ちの裁田とて同じである。
そんなナチス式軍隊のような厳粛極まりない空気の中、当の男はチーマーのクズ連中の挨拶など文字通り眼中にもなかった。

「…………」

――異相と言って良かった。
年のころは三十か、背丈は百七十くらい。派手なガラシャツに身をくるみ、特に上背でもないが、その腹は突き出て、体はメタボと言っても可い。
顔にも顎にも肉がたっぷり付き、膨れっ面で、眉毛は濃い三日月眉に秀で、口だけが奇形のように横広に大きく、拳の入るほどで、たらこのように唇肉がつき、その唇をおもしろくなさそうにへの字に曲げている。
三角眼に垂れ下がった目つきは特別鋭いように見えなかったが、そののっぺりとした視線、ぬらりと煌めく瞳の奥には、明らかに正常(まとも)でない人間の精神が宿っていた。

「――誰や?」

「へ?」
「こいつらに手ぇだしたのは誰や?」

チーマー連中ががくがく震え始める。
しかし、通名N・H――通称「B喰い」の詰問を受けて、黙って済むはずがないのだ。
恐る恐る、裁田が進み出た。
「あの、そこの短髪の野郎みてえな女に木刀背負(しょ)わせたのは俺で、そっちのお下げを輪姦したのはこいつらっす」

瞬間、裁田の顔に拳がめり込んだ。
「ぐぼ!!」
「誰が勝手にわいの『獲物』に手ぇだしてええいうたんや? コラ?」
そのまま、B喰いは裁田の髪を掴んで引っ下げると、膝頭を何度も顔面にぶつけた。
37トライアングル交錯、暗転、散華 ◆7VwruS0Rhg :2010/06/06(日) 21:34:04 ID:MY0oFGLR
ぐちゃと嫌な音が部屋に響く。
「ぐぎぃ、げええええええ、や、やめ……やめへぇ……」
そのまま数十回膝蹴りを喰らわすと、すっかり鼻骨の砕けた裁田をポイ捨て、顧みもせず、連れてきた「本職」の手下に、撮影機材の準備をさせる。

「――こいつらを『壊して』ええんは、わいだけや……♪」

その様子を眺めていた令は今まで感じたことのない悪寒が背中に走るのをはっきり知覚していた。
これは、こいつらチーマーボンクラ連中とは「質」が違う。
武道をやっている自分には、見た目で相手の人間としての「本性」を見抜く眼力が多少はある。
その令の生存本能が告げていた。

(――こいつは、ヤバい……)

やがて、カメラの配置が完了したのを知ると、B喰いは微笑んだ。令に向かって。
観音様のような微笑だった。そして、――手には外科手術用のメスを取って。
「さあ、姐ちゃん、はじめよか♪」
「あ……ひ……」
メスが血まみれになった令の、デート服を縦に裁断していく。
切れ味の鋭いメスである。布など訳もない。
すぐに令の腹部が露わになった。
「ほう、腹筋が綺麗に割れとるやないけ。これは鍛えとるのお」
「ひっ」
令の背筋には相変わらず悪寒が走り続けている。
メスの輝きと、自分の腹部を食い入るように見るB喰いの目つきが尋常でないのを見て。メスの刃が蛍光灯を照り返して新品らしい金属光を照り返している。
――重傷を負っているとはいえ、まだ令に「痛覚」が残っていたのは不幸だったと言える、あまりの。

「やめて、令ちゃんに……令ちゃんは助けてぇ……っ!!」
その様子を、正気をかすかに取り戻した由乃が眺めていた。堪らず、絶叫を上げる。
38トライアングル交錯、暗転、散華 ◆7VwruS0Rhg :2010/06/06(日) 21:38:32 ID:MY0oFGLR
「犯すなら、傷つけるなら……ううん、どんな酷い事でもいいから、あたしに、あたしにして、あたしを殺して、令ちゃんにはやめてぇっ!!」
「こおまいお嬢ちゃんは黙っとき。後でよおけえ可愛がったるさかい」
B喰いは由乃を一瞥すると、すぐに異常な光芒に輝く目を令に向け直す。

「おい、おどれら、もうカメラは回しょんか?」
「へい」
手下のガラシャツのチンピラ数名が無感動に答える。彼らはもう撮影には「慣れっこ」なのである。
満足げに笑むと、B喰いは宣言した。
「ほな、スタートや♪」

――メスが令の腹に食い込んだ。
「ぐぎゃあああああああああああああああああああああああああああっ!!」
令が、今までの拷問とは比べ物にもならない惨虐なる悲鳴を上げた。メスの刃先は、令の上腹部に数センチめり込んでいる。
二センチ程度の腹膜を裂くには十分な深さである。
「無理すなや、痛かったら、いっぱい泣こうな。遠慮せんでええんで、いっぱい綺麗な泣き声を、えっとわいに聞かせてくれや。のお?」
そのまま、かちゃかちゃメスを動かす。令はビクンビクン痙攣して人間のものとも思えぬ呻きを漏らす。
すぐに鮮血B喰いの手は鮮血に塗れた。
「ぐがああぐげええええええええがあああああああああああああああぐううううううううううううううっ!!」
「ああ、ええ声やぁ♪ もっとぎょうさん泣いてや♪」
「ぎぐげええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええっ!!」
メスはそのまま、令の鍛え抜かれた腹筋に沿って切り裂き降りると、下腹部まで達した。
糸の筋のような切れ目から、血が少しずつ溢れて来る。ドス黒い鮮血が。
「腹筋割られるだけやったらな、腹膜ショックは起こしても、すぐには死なへんのや。昔の武士の切腹が見本やねん」
39トライアングル交錯、暗転、散華 ◆7VwruS0Rhg :2010/06/06(日) 21:41:50 ID:MY0oFGLR
そう言って、B喰いは傷口に手を突っ込むと、一気に押し広げた。腹筋が縦に開き、腹がぱっくり開いた。深紅の臓物が外気に露出する。
そこに手を突っ込むと、絶叫を続ける令の内臓を、造作もなく掴み引っ張りだした。
「げええええええええ!? ぐぎぃがああぎゃあああああああああああああああああっ!!」
「ええ声や。ええで。その調子で泣いててな♪ 萌え萌えや、わいめっちゃ萌えるねんで♪」
B喰いは大腸を掴むと、ぐんぐん引っ張って、それで令の体を巻くように抽き出していく。
ヒトの大腸の長さは、小腸と併せて数十メートルに近い。
令の体は腸で緊縛される形となった。
首や胸、腰が、まるでSMプレイのように亀甲に縛られていく。臓物で。
今までの「壊し」の経験から、また為にするだけに医学書すらも普段目を通すB喰いは、ちゃんと心得ていて、腹部大動脈やその他動脈叢は傷つけていない。
要するに失血で令がすぐ死ぬことはないのだ。
令の大腸は鮮血に塗れて、ぴちゃぴちゃと新鮮に跳ねまわっていた。

「ぐぅぶぼげえええええええええええええええええええええええええええええええっ!!」
令は白目を剥いてガクンガクン震えるが、内臓を腹から露出していても意識は鮮明で、普段滅多に感じる事のできない臓器の感覚器官を「生に」刺激され、殆ど気が狂いそうだった。
いや、狂ってしまえれば全て楽に終われるのに、それもできない。
死にたい、早く死にたい。
何より愛するはずの由乃の事すらも一時忘れてそれだけを願う。
あまりの苦痛は、地獄そのものと言っても、直接な「感覚」のそれは、まだとても陳腐な言語表現に過ぎなかった。
実際、令がもしこの先生きながらえたとしたところで、回想してよく述懐できなかっただろう。
その様子を裏AV撮影にも使われる本格式のビデオカメラが淡々と撮影している。
周りのチーマーは色を失い、中には正視できず、その場にげえげえ嘔吐しているものもいた。

「ほな、次は姐ちゃんのオ○コ、たっぷり弄(いろ)うたるさかいにな♪」
B喰いは令の下半身を剥くと、鮮血に塗れたメスを近づけた。

「あ、あわわ……わああああああ」
「ひ、ひいいいいいいいいいいっ」
「ぐげえ、げええええええええええええええっ!!」
40トライアングル交錯、暗転、散華 ◆7VwruS0Rhg :2010/06/06(日) 21:46:29 ID:MY0oFGLR
周囲のチーマー連中は殆ど腰を抜かし、或いは蒼白になって震え、或いは腰が立たずへたり込み、直視できず目を背けて突っ伏し、「げえげえ、うげえ」と胃の中身を吐く者も多い。
この場から逃げる根性も無論だが、裁田が顔面を砕かれてすっかりお寝んね、気絶している以上、ましてこの男の「愉しみ」に干渉できるくらいの根性のあるものはいなかった。
メスが令の女性を抉った。

「げえええええええええええええええええええええええええ、痛いいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!」
令が、拘束された全身を、気でも狂ったかのように揺らし、転がりまわる。
性器の奥をメスで抉られ、膾切りに損壊されているのだから、「痛い」というのは当然ではあるが。
もう令は涙で顔がくしゃくしゃになっていた。
ぱっくり開いた腹部の裂け目から抽き出された内臓がからまり、肉の塊を纏ってダンスしているように見えた。
「その調子や、その調子♪」
「ぎええええええええええええ、止めて、やめてえええええええええええええええええええええ!!」
膣を十余創切り刻まれ、襞をもがれ、クリトリスを抉られて、ようやく令は泣きごとを言った。

「お願い、もうやめて……殺してぇ、もうやだ、わたし、やめてよ、やだやだ、もういやよおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
それを診てB喰いは舌なめずりすると、「ほな」と持ちかけた。
「なら、代わりにあのこんまい嬢ちゃんを壊すで? どないすんねん?」
「!!」
由乃が、あまりの残虐な光景に真っ青になって震えて見ていた由乃が、びくっとわなないた。
恐怖と絶望に顔が歪んでいく。

「れ、令ちゃん……」

令ちゃん、もう無理しないで。あたしが代わるから、もう我慢しないで……!

――そう、喉まで出かかっているのに、どうしても声に成らなかった。
何度も何度も、叫ぼうとしてどうしても音声に成らなかった。いつも強気に振る舞い姉を叱咤するくせに、その自分の臆病に、由乃は恥ずかしさと情けなさで目の前が真っ暗になった。

私、なんて、なんて卑怯なの、なにがつぼみよ、令ちゃんの妹よ、なんでこんな情けないの、いっしょに生きて行く、ずっと手をつないでって言ったのに、なのに、あたしは、なんて……

「…………」
令は由乃をかすかにみやり、そのまま無言で瞼を閉じようとする。
「なんや、ショック死したらおもろないやんけ。まっとれ」
B喰いが注射器でアドレナリンを動脈注射する。
循環器系は「壊され」ていない令が数分で意識を取り戻すのを確認すると、B喰いは子宮近くまで突っ込んだメスを小刻みに動かす。腕は血塗れになっている。
41トライアングル交錯、暗転、散華 ◆7VwruS0Rhg :2010/06/06(日) 21:53:14 ID:MY0oFGLR
(由乃……)
令は光が戻った視界に由乃の血涙を流し続ける、愛らしいその顔を眺めていた。
(良かった、このブタ野郎が、正気にさせてくれて……)
(最後に、由乃の顔を見れたから……)
(もう怒ってない、ちさとさんの事、怒ってないよね? いつもの、私の、……私を……愛してくれる、私の大好きな、由乃の顔を……見れた……から……)
子宮から卵巣を摘出したB喰いは令が已に医学的に死亡している事を確認すると、次の玩具を壊しにかかった。
――だが、すぐに失望したのだ。
「なんや、この嬢ちゃん、心臓が停まっとるやんけ」
由乃は血涙を流したまま悲愴極まりない顔で絶命していた。うつろな眼には令の無残な骸のみが映っていた。

5、Epilogue, 大団円

「リリアン女子高生猟奇殺人犯逮捕!!」

S宿アルタ前やI袋駅頭などでは、号外が配られ、大モニターのテレヴィジョンではそのニュースで持ちっきりだった。
逮捕された裁田与太郎少年は、異例にも実名顔写真で報じられ、ネットでは住所番地や実家の写真とともに事件の話題では盛り上がり、あちらこちらでしきりにコピペされ曝されていた。

「――さて、ええビデオが撮れたわ。アメちゃん辺りに売れば、大儲けやろ。こりゃええシノギじゃーやーわ」
満足げにカメラで撮影した映像を確認すると、B喰いはようやく意識を取り戻したばかりの裁田に言った。こともなげに。
「われ、自首せい」
「……へ?」
「へ、やないやろ。われカタギの女子高生二人も輪姦してバラしたんやで? 薔薇をバラバラや(本人は面白いつもりらしい)。ただで済むわけないやろ?」
裁田はB喰いの意図を理解できないとばかりに震える声で問いただす。
「な、何言ってんすか、Nさん、こいつを……こいつらを殺ったの、あ、あなたじゃ?」
「われ、殺しなんかしたらあかんやないか。殺生は業が深いで。あの世で鬼さんにしばいてもらって、ようけえ反省するんやで?」
B喰いがにっこり微笑んだ。
観音様の笑みとしか言いようがない顔つきだった。観音といっても恐ろしげな馬頭観音ではない、慈愛に満ちたあの観音菩薩様だ。
裁田はそこに神仏も何もないこの世の魔羅(悪魔)そのものを視て、それ以上は一言も発する事能わなかった。

事件は、少年犯ではあるが、あまりの凶悪性ゆえ、成人の刑法犯と同様の捜査体制で取り調べられた。
警察も無論馬鹿ではなく、初めから実行犯については疑わしく思っていたが、
メスの指紋などの物的証拠、真犯人と思しきN村が飛ばし携帯を使っており、車も組の若頭補佐名義のため、目撃証言初め証拠が成り立たず、
なにより裁田が必死に自分がやったと自分がやったと言い張って、非常に詳細に供述するので、多少取り調べの度に供述が矛盾しても、起訴せざるを得なかった。
裁判は、犯人少年が成人に達する法定年齢にギリギリ達していなかったため、散々紛糾したものの、結局この後二十年、最高裁で死刑が確定する。
四年後、執行された。

その頃にはB喰いことN氏はK部の本家に呼び戻され、直若にまで出世するのだが、これは余談である。
余談ついでに云えば、令の「初出演作品」となったsnuffは、某国では"The yellow rose"として嗜好家の間で大評判となり、
「洛陽の紙価を高からしむ」ならぬ「紐育のBDを高からしめた」のだが、その、その手の「マニア」にとって、余りものクオリティの高さゆえに、今でも盛んに取引され、動画交換やUG投稿サイトでは繰り返し繰り返し愛観されている。

結局、これは数多い逸話の有るリリアン最大の「伝説」となったのだが、由乃の手術で完治したはずの心臓が、医学的にはあり得ない形で停止していたのについても、一種の「七不思議」となった。
さらに余談を加えると、田沼ちさとの発狂と自殺があるが、これはまあどうでもいい話である。

――もし、あの時由乃が、令を追いかけまわさず、祐己たちと出会っていたら。
これはそんな物語。

(おしまい)
42名無しさん@ピンキー:2010/06/06(日) 22:08:21 ID:MMIEExM2
解体ショーとは……相変わらず容赦がねえな
そら病気でなくとも心臓止まるわ
GJ

なるたるはJCのまんこに試験管突っ込むイジメのシーンがエロかった
43名無しさん@ピンキー:2010/06/07(月) 01:51:42 ID:35Lhprjb
のり夫ktkr GJ
そういえば鬼頭スレもいつの間にかなくなってたな・・・
44名無しさん@ピンキー:2010/06/07(月) 22:14:59 ID:2Bt6P+aD
>>41
GJ!
あまりにも凄過ぎて…… なんというか、どうやったらこれほどまでに既存の価値観から
自由になって書けるのかしらんと思ったw
45名無しさん@ピンキー:2010/06/08(火) 13:00:34 ID:2Ppu8Lv2
>>44
チラ裏、某所に書いてます。お答えです。
御興味があれば探してみて下さい。

あなたの素晴らしい祐巳乃梨楽しみにしてます。
46名無しさん@ピンキー:2010/06/13(日) 04:52:39 ID:k6tguUyz
パラレルイフまだあ〜?
47名無しさん@ピンキー:2010/06/13(日) 12:12:25 ID:mGZpqad8
>>10の続き

祐巳×乃梨子+全般

「Another Parasol 3話」

――――

 床に背中をつける格好になった乃梨子に、祐巳さまの顔が迫ってくる。
「ゆ、祐巳さま」
 乃梨子の声は動揺を隠せない。
 これまで15年あまりの人生を歩んできたが、付き合った相手は女子はもちろん男子もいない。
 それに、降りしきる雨の中、志摩子さんからロザリオを受け取った時だって、ここまで顔を近付けていない。
 指呼の間というべき間合いにまで接近を許したのは、千葉にいる両親と妹以外では祐巳さまが初めてだった。

「乃梨子ちゃん…… キスしていい?」
 鼻先が振れそうな距離から、鈴が鳴るような声でお願いしてくる。

「その、あの、ちょっと待ってください」
 乃梨子はしどろもどろになりながらも、理性を総動員して押しとどめる。
「お願い。乃梨子ちゃん。今日だけでいいから」
 祐巳さまの声とともに髪の毛が数本ふりかかり、乃梨子の頬を緩やかになでる。
 キスをねだる彼女の声は、蕩けるように甘くて危険すぎる。

「し、しかしですね」
 背中から冷汗を流しながらも、それでも乃梨子としては断るしかない。
「いくらなんでも、キスはまずいんではないでしょうか」
「乃梨子ちゃん……」
 祐巳さまの表情に悲しげな色が浮かび上がり、物凄い罪悪感にかられる。

「あのですね。キスっていうのはお互いに好きな人同士がするものですから」
 なんて馬鹿なことを私は言っているのだろうか?

「乃梨子ちゃんは、私のことが嫌いなの?」
「き、嫌いじゃないですよ。嫌いだったら、お誘いなんかしません」
「それなら、どうして駄目なの?」
 お願いだから顔をこくんと傾けながら、おねだりをしないで欲しい。
 本人は自覚していないだろうけれど、その仕草は反則的な破壊力があるのだ。

「ですから、私と祐巳さまはまだあんまり接点がないんですよ。私だって山百合会の一員になってから
日が浅いですし、大体、祐巳さまと私的な会話をほとんどしていないじゃないですか」
48 ◆5xcwYYpqtk :2010/06/13(日) 12:13:13 ID:mGZpqad8
 私は暗い人間という訳ではないが、誰にも彼にも愛想を振りまくタイプでもない。
 一方の祐巳さまだって、乃梨子が見た限りにおいては、紅薔薇さまとのすれ違いの為に沈みっぱなしで、
新参者である乃梨子に対し、親しげに振る舞うということはなかった。

「ですから、私と祐巳さまがもっと親しくならないと…… そう、恋人にでもない限り、
キスなんてありえないのですよ」
 あれ? 本当に、私は何を喋っているのだ?
「うー 分かったよ」
 しかし、祐巳さまは納得してくれたようで、乃梨子からゆっくりと離れ、
ファーストキスを奪われる危機からはとりあえずは解放される。

「まったく、乃梨子ちゃんはとても身持ちが固いねえ」
「祐巳さまこそ、意外と積極的なんですね」
 身体を起こした祐巳さまにむけて、ちょっと大げさに両肩をすくめてみせる。
 可愛くない後輩だとは自覚しているけれど、こればかりは性格だから仕方がない。

「ううん。乃梨子ちゃんは本当に、とっても良い子だよ」
 しかし祐巳さまは気分を害した様子は無く、それどころか生意気な後輩の頭に手を置いて
優しく撫で始める。

「子供扱いしないでくださいよ」
 ふくれっ面をしながら、祐巳さまを睨みつけるものの、頬が赤くなるのはどうしようもない。

「あーあ、乃梨子ちゃんとキスしたかったな」
 座布団の上に座りなおした祐巳さまは足を伸ばしながら、とっても未練がましい声をあげる。
「駄目ですよ。そんなことしたら浮気になっちゃいますから」
 残念ながら、私と祐巳さまは姉妹ではない。
 少なくとも今日の夕方までは、志摩子さんを挟んだごく淡い関係でしかなかった…… のだが。

 そこで会話が途切れて、二人の間に沈黙がおりた。

 乃梨子は、祐巳さまの制服を乾かす作業を再開する。
 一方、祐巳さまは手持ち無沙汰な様子で、私の部屋のあちこちを眺めていたが、やがて、
机の上に置いてあったあった雑誌に目を付けて、乃梨子の許可を得てから読み始めた。 
 そして、セーラー服がほぼ乾ききった頃、祐巳さまが再び口を開いた。

「あのね。乃梨子ちゃんお願いがあるんだ」
「先に言っておきますが、キスは駄目ですよ」
 プリーツの折り目を確認しながら、一応にしても釘を刺しておく。
「ううん。違うよ」
 しかし、祐巳さまは笑みをみせて首を振ってから、少しだけ悪戯っぽそうな顔を向けた。

「あのね。一緒に寝て欲しいんだ」
49名無しさん@ピンキー:2010/06/13(日) 12:13:34 ID:mGZpqad8
「はい?」
 乃梨子は文字通り固まった後、錆付いたロボットのようにぎこちなく首を動かして、
突拍子もない事をのたまわった先輩をまじまじと凝視する。
「だから、一緒に寝て欲しいの」
「まさか、寝るって」
 くんずほずれつなアレを想像して、首の後ろまで真っ赤になる。

「お布団で寝るだけだよ。変な乃梨子ちゃん」
 祐巳さまは不審そうな声を出して首をかしげる。 

「そ、そ、そうですよね。あはは。私、何考えているんだか」
 乃梨子は焦りまくった声をあげながら熱を帯びた頬を両手で抑えた。
 ものすごくはしたない想像をしてしまった自分が、恥ずかしすぎる。
 深い穴に入って潜りたい気分だ。

「駄目かな?」
「まあ、構いませんが」
「わあい」
 祐巳さまの無邪気な喜びように、乃梨子としても苦笑するしかない。

「布団を敷きますから、ちょっと場所を変えてくださいね」
「うん」
 祐巳さまの返事を聞いてから立ち上がり、押し入れから布団を取り出して床に敷く。

「私も着替えますから、ちょっと待ってくださいね」
 乃梨子は制服の裾に手をかける。
 リリアンの制服はワンピースだから、すぽっと頭から脱いでしまうと、
着替え中の乃梨子を見上げていた祐巳さまが口を開いた。
50名無しさん@ピンキー:2010/06/13(日) 12:14:18 ID:mGZpqad8
「乃梨子ちゃんの肌って綺麗だね」
「あんまりじろじろ見ないで下さいよ」
 文句を言いながらも手を動かして、水色のスウェットを着ることにする。

 着替えを終えてから布団にもぐりこむと、すぐに祐巳さまが隣にはいってくる。
 当然ながら、祐巳さまとは密着する形になる。
 お互いが動くたびに太腿とか腕とかが触れてしまい、その都度、乃梨子の心臓は跳ねあがる。

「あのね。乃梨子ちゃん」
「なんですか?」
 動揺を抑えながら横を向くと、ちょうど同じく顔を傾けた祐巳さまとまともに目が合った。
「手を繋いで良い?」
「それはOKですが。先程のお願いと比べたら随分控え目ですね」

 いくらか皮肉の成分を混ぜた言葉を返す。
 しかし、祐巳さまは淡い微笑みを浮かべただけで、掌の位置を探り当ててゆっくりと握りしめた。

「乃梨子ちゃんの手ってひんやりしているね」
 祐巳さまの素直な感想に、反射的に答える。

「祐巳さまの手は温かいですね」
 どうやら平熱は祐巳さまの方が幾分か高いようだ。

「手が冷たい人は心が温かいって言うよ」
 どこかで聞いた、というより思いっきりベタな台詞である。
「私は別に温かくなんかないですよ」
 乃梨子は首を横に振った。
 むしろ、冷めているんじゃないかなと常々思うのだけど。

「そんなことないよ。確かに乃梨子ちゃんはクールだけど、ホットでもあるよ。ほら、マリア祭の時だって」
「うっ」
 数珠を瞳子に奪われて晒された挙句、紅薔薇さまに責められて必死に反論するも、最後には志摩子さんと
寄り添いながら涙を流した恥ずかしい記憶が、脳裏に鮮明に浮かび上がる。
 この黒歴史については、タンスの上から二段目あたりの奥にそっと仕舞っておきたいものである。

「ごめん。でも、乃梨子ちゃんは志摩子さんだと熱くなれるんだと思ったら……」
 祐巳さまは途中で一旦、話を切ってから、
「ちょっと悔しくなっちゃった」
と言って舌先を出した。

「えっ?」

 乃梨子は、祐巳さまの顔をまじまじと見つめる。しかし――

「あのね。私、今でも祥子さまのことが大好きだよ」
 祐巳さまは少しだけ寂しそうな顔つきになってから語りだした。

「祐巳さま!?」
「ごめんね。話が飛んじゃったかな。でもね。乃梨子ちゃんに聞いてほしいんだ」
 祐巳さまの表情は、ほんの少し前までと違ってとても真剣なものに変わっている。

「乃梨子ちゃんも知っての通り、私はどこにでもいるような平凡な生徒だから、
本来だったら、つぼみとして薔薇の館にいるはずはなかったんだ」
 どこか遠くを見つめるような目をしながら、祐巳さまは話を続ける。
51名無しさん@ピンキー:2010/06/13(日) 12:14:51 ID:mGZpqad8
「特にお姉さまのような雲の上の方とは、全然釣り合わないと思っていた。
でも、お姉さまにタイを直されてからいろいろな事があって、ロザリオを頂くことになった時は
本当に嬉しかった。本当に天にも昇る気持ちだったよ。
その時はね。平凡な私でも一生懸命努力すれば、お姉さまにふさわしい妹になれるとおもったの。
だから妹になってからはずっと、私はお姉さまをずっと見つめていた。
お姉さまの後ろ姿を追い、お姉さまの表情の僅かな変化にも一喜一憂して、お姉さまがかけて
くれる言葉を待った。私は妹になってからずっとお姉さましか見ていなかった」

 堰を切ったように祐巳さまは、紅薔薇さまへの想いを吐き出していく。

「私は、お姉さまの愛情が失われるのが怖かった。失望されて、いつ見捨てられるか不安で不安で
仕方がなかった」

「祐巳さま…… 」

「だからね。お姉さまがデートの約束を何度もキャンセルしたり、瞳子ちゃんと一緒に出かけているのを
偶然知ったり、そういう小さな変化が積み重なった挙句、思い知らされたんだ。
お姉さまはもう私を見捨てたんだって。出来の悪い妹は飽きられちゃったんだって」

 乃梨子は、祐巳さまの話を聞きながらも、思わずにはいられない。

 祐巳さまはとても優しい。
 お人好しといわれるくらい他人に気を遣うし、悪口も言わない。
 そんな祐巳さまでも、いや、祐巳さまだからこそ、心の内に抱えたドロドロとした部分は誰にも吐き出すことが
できなくて、耐えきれなくなるまで苦しんだ挙句――

「だから私。もうお姉さまを見るのをやめる」

 全てを捨ててしまったんだ。
52名無しさん@ピンキー:2010/06/13(日) 12:15:24 ID:mGZpqad8
 しかし、乃梨子は祐巳さまに薔薇の館から去ってほしくはなかった。
「本当にロザリオを紅薔薇さまをお返しするつもりなんですか?
前にも言いましたが、紅薔薇さまが瞳子に思いを寄せている決定的な証拠は何も無いんですよ」

 動揺しながらも、必死に説得する乃梨子だったが、祐巳さまはとても悲しそうな顔つきのまま、
首を横に振って告げる。

「本当は今でも祥子さまが大好き。お姉さまの妹は私なんだと瞳子ちゃんにいってやりたい。
お姉さまを奪わないでと喉をからして叫びたい。でもね。もう、駄目。限界なの。
ずっとお姉さまをみていたら、私が壊れちゃう。本当に駄目になっちゃう。
だから…… お姉さまから離れないといけない」

 祐巳さまは、どこか霞んだような表情に変わっている。

「ごめんね。乃梨子ちゃんには迷惑をかけることになっちゃうね。いろいろと教えたいことや伝えたいことは
あったのだけど」

「そんな事は、どうでもいいんです!」
 しかし、乃梨子は祐巳さまの言葉を遮り、あらん限りの声で叫ぶ。

「私はですね。確かに祐巳さまが薔薇の館にいて欲しいと言いました。でも祐巳さまがこんなに
ひどい状態に陥っているのに、無理に紅薔薇さまの妹でいてほしいなんて言えません。それにっ」
 乃梨子は、悪い癖がでていることは頭の隅の冷静な部分で自覚するものの、溢れだす言葉はとまらない。

「私は祐巳さまと疎遠になんかなりたくありません。私は祐巳さまに好感をもっています。
ですから、祐巳さまが山百合会を辞めても、私までまとめてダストシュートに放り込まないでください!」

53名無しさん@ピンキー:2010/06/13(日) 12:17:22 ID:mGZpqad8
 あっけにとられた祐巳さまが、なんとか言葉を返したのは、マンションの前の道を
10台ほど車が通った後だった。
「乃梨子ちゃん…… ごめん」
「謝らないでください」
「でもごめん。私が山百合会を辞めたら、やっぱり接点はなくなっちゃうよ」

 祐巳さまの言葉はとても正しくて、この上もなく残酷だ。
 祐巳さまが薔薇の館から去れば、学年も違うことも重なり、乃梨子と会う機会はほとんどなくなる。
 そればかりか、ごく稀に廊下で通りすがったとしても、同じ部活を辞めた子と会った時のように、
気まずくて目を背けてしまうだろう。

 でも…… そんなのはお断りだ。絶対に嫌だ!

 頭に血が昇った乃梨子は、隣にいる祐巳さまの首の根っこあたりを抑えて、唇を近付ける。

「ん!」
 小さく途切れたような悲鳴が一瞬だけあがった直後、一度は乃梨子から拒否したはずの唇が
あっさりと触れる。
「んっ」
 祐巳さまは一瞬、乃梨子を押し返そうとするけれど、すぐに抵抗をやめてなすがままになる。
「んっ…… くぅん」
 電灯は消していないから、瞼を開けると祐巳さまの顔がはっきりと見える。
 祐巳さまの吐き出す息が顔にかかる。喘ぎ声が乃梨子の耳朶をくすぐる。
 ほんの少しずつ動く唇の感触が、乃梨子を痺れさせる。

「んっ」
 おそらく実際の時間は分針が一周するほどしか掛からなかったと思う。しかし、乃梨子にとっては
永遠とも思える長さだった。

 初めての口づけを終えた後、ほんの数センチの距離で祐巳さまの瞳を見つめる。
 祐巳さまも同じく乃梨子から視線を離さない。

 そして――
 布団の中で視線だけを交わし続ける二人の間の沈黙を破ったのは、
董子さんの帰還を告げるひどく軽快なチャイムの音だった。
54名無しさん@ピンキー:2010/06/13(日) 12:20:39 ID:mGZpqad8
続きます。

うーん、とことんエロくないなあ。
それになんだか昼ドラっぽい感じに。
トライアングルを書かれた方も次作を楽しみにしています。
55名無しさん@ピンキー:2010/06/13(日) 15:02:49 ID:zFX9hy/+
おお、続きの気になるいい引きです GJ
56名無しさん@ピンキー:2010/06/13(日) 16:25:49 ID:k6tguUyz
GJGJ!
相変わらず、しっとりした情感を描くのがお巧い。

しかもこの先の祥子や志摩子の存在と展開を思うと…
57名無しさん@ピンキー:2010/06/19(土) 15:30:34 ID:l/B33fSI
祐乃続きまだあ??
58名無しさん@ピンキー:2010/06/19(土) 16:22:48 ID:o4yTcpTC
>>57
ぶっちゃけると、1〜2週間程度空いた程度で続きをせかされると、本人が十二分に分かっていることを
わざわざ言わなくてもいいのに、という気分になる。
59名無しさん@ピンキー:2010/06/19(土) 18:42:53 ID:l/B33fSI
>>58
いや、せかすというか、保守兼、続きwktkですよ、て意思表明なんだが。
せかすよう作者さんが受けとるならマジすまんかった。
60名無しさん@ピンキー:2010/06/19(土) 18:52:10 ID:o4yTcpTC
>>59
了解です。
こっちも言い過ぎた感があったので、あまり気になさらず。
61名無しさん@ピンキー:2010/06/19(土) 20:52:41 ID:l/B33fSI
いや、作者さんもこの御時世私生活でなにかと大変だろうに、職人業に急き立てるのでは確かに良くないから、
「まだあ?」は、ほ代わりの意味も込めて解釈して貰えば嬉しい。

適度な燃料になればいいけど。
62名無しさん@ピンキー:2010/06/27(日) 19:12:30 ID:21KuKGOO
書きたいけど、相変わらずの規制で、携帯投下マンドクセ…
もう四か月だぜ

と愚痴りながら保守
マリみて実写化らしいが、どうせAV版以下のでき(ry
63名無しさん@ピンキー:2010/06/28(月) 00:36:17 ID:pqfhzRFX
>>62
規制だけはどうにもならんねえ。
昨年から今年にかけて散々な目にあわされたので全く、他人事ではない。
あと、実写版対応の文庫本が出たようだが、内容はまあ…… 現実だったらそんなものなんだろうなあ、という感じ。
64名無しさん@ピンキー:2010/06/28(月) 15:55:57 ID:R2y4PjdR
>>63
kwsk>実写文庫本
65名無しさん@ピンキー:2010/07/07(水) 22:55:07 ID:I/eNO0Xc
期待保守
66名無しさん@ピンキー:2010/07/16(金) 18:52:05 ID:5yLxMHfA
髪がドリル
67名無しさん@ピンキー:2010/08/09(月) 14:37:23 ID:jEawn0U1
68名無しさん@ピンキー:2010/08/21(土) 07:07:59 ID:Oi4gg75B
話題の実写版キャストをみた(´Д`;) ヒィィィィィ
演技はどうか知らんが、女優は見た目でせめて往年の美少女Hくらいのレベル選抜しろよ。

祥子とか志摩子だとか絶世の美少女というのが原作だろ?
これで演技も芋なら原作を凌辱するための実写版か?凌辱は二次でたくさん。。
69名無しさん@ピンキー:2010/08/26(木) 01:29:26 ID:bx2iNuqO
※ジャンルは東方project
※咲マリ風味
※百合
※オチが丸投げ
※微妙なエロ

以上の点でも大丈夫という方は先にお進み下さい。



恋人との初めての性行為から二三回までは非常においしい体験だと感じる
それが初心な相手なら尚更で、少し触れた程度でも敏感に感じ取り興奮を覚える
押し倒すまできゃんきゃん騒いでいたのに、今は大人しいただの子猫でしかない
金の髪を指で梳かしながら、唇に二度目の大人しくなる魔法を掛ければ、この黒猫は甘い声で鳴いてくれる。

―咲夜
私の名前
私を求める心細い響き
熱を纏って凄く厭らしい
本人に自覚がないから尚更厭らしく聞こえる

奪った唇から口を離した
舌越しに感じる温かな感触を離すのは口惜しいが、
大人しくなる魔法が成功したのでそろそろ次のステップにも進みたい
プチプチと彼女のシャッツのボタンを外す
ボタンを外す音、息を呑む音、唾を飲み下す音
その微かな響きが耳に届き、終始私の手先に黒猫の視線が向けられている
ゆっくりと期待させて
快感が体に馴染むように
それが病みつきになるように
私は手を加える

黒いドレスに隠されているいっそ傷を付けてしまいたくなる様な白に心を奪われた
触れて触れてと真っ白な素肌は私に訴えてくる
柔らかく細い彼女の体に触れる度に私は虜になっていく

胸元の小振りの膨らみにある紅に食指がそそられる
肌蹴たシャッツに顔を寄せて胸に口付けた
薄紅の実を焦らす様に舐めあげてから強く吸い付く
堪らずにあげる甲高い嬌声に、普段は意識させない女の子らしさを髣髴とさせた
空いた乳房を撫でてゆっくりと揉み込んだ
小さいといっても全く無い訳ではないし、撫で心地もいいし
何より
−…んっ!やだっ!…あん
感度が良い
そんな声を聞いてると意地悪をしてしまいたくなる
指先で軽くひねりながらチロチロと舐めあげる
焦れた愛撫に声がくぐもり目を細め乳首が
少ししこりを帯びてきたところで一旦手を止め、
愛撫を行っていた手を彼女の下半身に移動させる
放心している黒猫のスカートを捲り上げ、
太腿を摩り十二分に感触を楽しむと耐えるように両足を擦り合わせた
快感に疼いた腰が浮いてきて、丁度私のお腹に擦れる。
70名無しさん@ピンキー:2010/08/26(木) 01:31:04 ID:bx2iNuqO
体が小刻みに震えて先を欲しがっているようだ。
物欲しそうに黒猫が見るから

―欲しい?

と尋ねた。
こくこくと小さく頷く
蕩けた視線が意地の悪い私に向けられる
とろんとした瞳で私を見ることが
どれだけ無防備なのか本人は知る由もない
もっと焦らせてみたいと欲求がじわじわとせり上がってくるが、
機嫌を損ねてしまっては後々面倒になるので先を進める事にした。
顔を見合わせもう一度唇を重ねる
ゆっくりと深く
まだ黒猫はこの先に慣れていないから安心させるために
時間が経ち唇が離れる
そろそろ期待に応えなければならない
体を下半身へとずらしスカートの中へ手を潜らせて下着を剥ぎ取る
愛撫で少し濡れてしまった下着を
シーツの脇に捨て置いてスカートを再度捲り上げた。
彼女の下半身は足の付け根まで愛液に濡れて
ぴっちりと足で閉じてしまっている
両足に力が込められ開く事ができない。

―力を抜いて…続きが出来ないでしょう?

迷ったような仕草を見せた後におずおずと両脚が開き始めた。
太股はとろとろの糸を引きながら離れる。
その先にあるひくついた秘処の輪郭を指先で撫で上げ突起をくりくりとこする。
声が一段と甘く鳴いた事に気を良くして続きに移る事にした。

ー入れるわね

つぷと膣に指を沈める。
柔らかくも指を締め付けじわっとした熱が包んだ。
異物を入れた反動で膣が萎縮してキツくなりすぎて奥まで入らない。
このまま押し入れては流石にかわいそうなので、
一度指を引き抜いて愛撫を始めた。
舐めた方がいいかと思い顔を引き付ける。
舌先で秘肉をなぞり緊張が解け始めたら愛液を絡めとり
口に含んで唾液と絡め、それを舌先で中に送り戻す。
指よりかは遥かに柔らかい舌の責めが黒猫を追い詰めていく。
なんとか太股で圧迫して舌の侵入を防いではいるがなんとも頼りない力だ。
きっと、いやいやといったかぶりを振りながら耐えているに違いない。
ああ、顔が見えないのが非常に残念だ

―…さ…くやぁ …や…ぁ…

名前を呼ぶ声が切なくなる。
そろそろ限界だと知り更に舌先を奥に突き入れる。
すると今まで我慢していた黒猫の身体が大きく震え猫の様に鳴いた。

―…も…ぅ…だ…めっ!…さく…やっ!さ…くや……ゃぁ…あああぁぁっ

71名無しさん@ピンキー:2010/08/26(木) 01:32:10 ID:bx2iNuqO
ここまで読んで頂いてくれた方。
有難うございます。

中途半端な上に非常に短いですが
これで終わりです。
72名無しさん@ピンキー:2010/08/26(木) 14:24:57 ID:tBzkVmd0
えろいお(´・ω・`)
73名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 13:21:11 ID:dYhBeoqi
ほしゅ
74名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 21:22:48 ID:vGGMVLh8
保守
75名無しさん@ピンキー:2010/09/18(土) 04:13:16 ID:qF1Yhua9
76慶東帝國衰亡史演義 ◆M3LyAAqDyU :2010/09/19(日) 12:39:07 ID:ZO6AQf8f
まりみてではないですが、一昔前に流行った少女小説の害吉小説です。まえに投下したのに手を加えました。
全三回です。
※性器破壊ネタ


男たちはまず、逃げられないように蘭玉の両脚の膝蓋骨を砕くと、かわるがわるに蘭玉を犯した。
蘭玉が暴れ、泣き叫び、半狂乱で抵抗すると、男たちは蘭玉の顔を拳で殴りはじめた。血飛沫が散って、艶やかな黒髪に赤黒く染みを作った。
殴り続け、犯し続け、切り刻み続け、それで漸く蘭玉は大人しくなった。

「ひゅ……ひゅ……」
蘭玉の口からはもう声は出ない。ほんの少し前まで「桂桂を返してえっ!!」だとか「陽子、陽子、助けて!」などと仕切りに泣き喚いていたのだが、今は膨れ上がった顔から虫の息を漏らすのみである。
拳で砕かれた蘭玉の顔は原型を留めず、お多福のように膨れ上がっていた。
「呀、来了!」 (あー、来るぜえ)
蘭玉の上に圧し掛かっていた男がくぐもった呻きを発した。蘭玉の膣内に精を放ったのである。 これで十五、六回目の神気注入である。
「しゃあ! もう一度 俺じゃ」
男がぺっと唾を吐くと、隆々と反り返った陰茎に手で塗りつけた。陰茎には血が乾いてこびり付いていた。
破瓜のとき蘭玉は苦痛に白目をむいて絶叫したものだった。失神した蘭玉を、男達は交々に殴りつけて現に引き戻したのだった。――蘭玉はまだ処女だった。

「喝!」
男が蘭玉の玉門に肉茎の先端を宛がった。蘭玉の女性は桃色にぴったりと閉じて、 桜の蕾みのように楚楚としていたものだった。今は鮮血に塗れてざっくり裂けていた。
穴からは白っぽい濁液がどろりと漏れている。無理やり広げられ、強すぎる力で引っ張られた為、陰唇の右の襞は千切れてもげかかっていた。

「嗚呼、締め付けるぅ!」

男は少し前まで処女だった膣圧を悦んでいる。男は散乱した襤褸の上で蘭玉を犯している。 床に散乱しているのは襤褸ばかりではなく、血痕や骨片、挫かれた歯、 そして千切れた乳首などの肉体のかけらも散らばっていた 。
蘭玉の右の乳房からは、乳首が噛み千切られて無くなっていた。まだ熟しきっていない膨らみは、その未来と共に永久に潰されていた。

「aiya,真歴害!!」 (ああ、マジすげえ)
男は嬌声を上げて腰を激しく突きこんでいるが、蘭玉は男のセックスにまったく無反応のまま横たわっていた。
77慶東帝國衰亡史演義 ◆M3LyAAqDyU :2010/09/19(日) 12:40:25 ID:ZO6AQf8f
1、前篇、

第一回、蘭花無情地凋謝了、于是災禍都従這個地方這個時候開始出生了。
(蘭の花は無残に枯れ落ち、かくて全ての禍はこのときここより生まれ出でたこと)


 止水郷長・昇鉱は和州候・牙鋒の走狗だった。そして和州候・牙鋒は暁天と密かに通じていた。彼らは以って相い朋党比周し、上は天子を欺きて万乗を擅(ほしいまま)にし、下は黔首を屠戮して競って虐を嗜んだ。
昇鉱には数百人からなる食客があった。食客とは云っても要するに私剣の徒だった。死肉を貪る主人に似て頗る残忍だった。今、彼らは身に兵戟を帯び、黒衣に装して瑛州は黒亥県のとある里家に結集していた。
里家の閭胥(ちょうろう)を遠甫と云う。その遠甫を戮(ころ)すことが任務である。

「蘭玉、逃げなさい! 早くっ!!」
(嘘よ……こんなの嘘……)
背中越しに遠甫の悲痛な叫びを浴びて、蘭玉は走った。
後ろから人の肉の斬られる音、血飛沫の壁に掛かる音、が聞こえた。里家は中庭を囲んで成る。(所謂四合院だ。)逃げ道はない。
蘭玉には一室に駆け込み、ささやかな障碍を戸口に設けるほかなかった。
信じたくなかった。自分の目を、耳を。耳目を通じて流入してくる感覚刺激を、それを現実として受けいれることを、 蘭玉の心は拒否した。
蘭玉は房間の隅でうずくまり、顔を手で覆っていた。

(桂桂……桂桂……死なないで……お願い、死なないでえ……っ!)


ドガァ ガッシャン!!


けたたましい騒音が狭い房間に響いた。それが蘭玉を現実に引き戻した。一分の慈悲もない現実世界に。
五、六人許りの男たちが室内に踏み込んでいた。手に持つ白刃は人の血と脂でぬめっていた。

「ほう……」
男の一人が感嘆したような声を漏らす。涙を流し、震えている少女の姿態に見惚れているのだった。
立殺之、非也――「これは、ただ殺すには惜しいな」
それだけ、蘭玉は美しい娘であった。しかも、皮肉な事に悲痛と恐怖とがその儚げな美を青白く彩っている。
男なら誰しも加虐心を掻きたてられただろう。――こうして、蘭玉の末路は決まった。

男たちはまず、逃げられないように蘭玉の両脚の膝蓋骨を砕くと、かわるがわるに蘭玉を犯した。
蘭玉が暴れ、泣き叫び、半狂乱で抵抗すると、男たちは蘭玉の顔を拳で殴りはじめた。血飛沫が散って、艶やかな黒髪に赤黒く染みを作った。
78慶東帝國衰亡史演義 ◆M3LyAAqDyU :2010/09/19(日) 12:42:13 ID:ZO6AQf8f
男たちはまず、逃げられないように蘭玉の両脚の膝蓋骨を砕くと、かわるがわるに蘭玉を犯した。
蘭玉が暴れ、泣き叫び、半狂乱で抵抗すると、男たちは蘭玉の顔を拳で殴りはじめた。血飛沫が散って、艶やかな黒髪に赤黒く染みを作った。
殴り続け、犯し続け、切り刻み続け、それで漸く蘭玉は大人しくなった。

「ひゅ……ひゅ……」
蘭玉の口からはもう声は出ない。ほんの少し前まで「桂桂を返してえっ!!」だとか「陽子、陽子、助けて!」などと仕切りに泣き喚いていたのだが、今は膨れ上がった顔から虫の息を漏らすのみである。
拳で砕かれた蘭玉の顔は原型を留めず、お多福のように膨れ上がっていた。
「呀、来了!」 (あー、来るぜえ)
蘭玉の上に圧し掛かっていた男がくぐもった呻きを発した。蘭玉の膣内に精を放ったのである。 これで十五、六回目の神気注入である。
「しゃあ! もう一度 俺じゃ」
男がぺっと唾を吐くと、隆々と反り返った陰茎に手で塗りつけた。陰茎には血が乾いてこびり付いていた。
破瓜のとき蘭玉は苦痛に白目をむいて絶叫したものだった。失神した蘭玉を、男達は交々に殴りつけて現に引き戻したのだった。――蘭玉はまだ処女だった。

「喝!」
男が蘭玉の玉門に肉茎の先端を宛がった。蘭玉の女性は桃色にぴったりと閉じて、 桜の蕾みのように楚楚としていたものだった。今は鮮血に塗れてざっくり裂けていた。
穴からは白っぽい濁液がどろりと漏れている。無理やり広げられ、強すぎる力で引っ張られた為、陰唇の右の襞は千切れてもげかかっていた。

「嗚呼、締め付けるぅ!」

男は少し前まで処女だった膣圧を悦んでいる。男は散乱した襤褸の上で蘭玉を犯している。 床に散乱しているのは襤褸ばかりではなく、血痕や骨片、挫かれた歯、 そして千切れた乳首などの肉体のかけらも散らばっていた 。
蘭玉の右の乳房からは、乳首が噛み千切られて無くなっていた。まだ熟しきっていない膨らみは、その未来と共に永久に潰されていた。

「aiya,真歴害!!」 (ああ、マジすげえ)
男は嬌声を上げて腰を激しく突きこんでいるが、蘭玉は男のセックスにまったく無反応のまま横たわっていた。
黙々と、陰茎を挿入され、犯されている。光を失った瞳から不意に涙がこぼれた。思い浮かべていたのだ。あの人の、面影を。
79慶東帝國衰亡史演義 ◆M3LyAAqDyU :2010/09/19(日) 12:49:30 ID:ZO6AQf8f
(お願い……陽子……この国を……みんなを……救って……)

蘭玉はもっと楽な死を遂げることができたのかもしれない。だが、敢えて男達を自分の身体に引き付けた。だから、苦痛に充ちた最期を遂げることになった。
だけど、それでも彼女は満足だった。たった一つの希望を守り通すことができたのだから。

この後、蘭玉は男達に豚が屠殺されるように解体されていった。まず手の指を一本ずつ切り取られ、次に手足を付け根から切り取られ、乳腺からリンパ液を散らしながら乳房を根元から抉り取られた。
最後は手足を切断されて達磨にされたまま、男達に抱き抱えられて犯された。そうして男達は気が済むと、すっかり小さくなった蘭玉に、代わる代わる尿を引っ掛けて引き上げていった。
それでも蘭玉はもうしばらく息があったが、間もなく失血多量のため死亡した。

その無残な死体を発見した陽子が悲しんだことは言うまでも無い。景麒などは血の穢れに中てられて、大分しばらくの間、体調を崩していたという。

不在話下(このはなしはこれでおしまひ)


2、中篇、

第二回、賢主為了陥入情網発起瘋来的、而且把天下生民亡掉下去了。
(明主は色情に陥って狂いを出だし、天下生民をして滅亡に追い込むこと)


「蘭玉、蘭玉っ!!」
 陽子は取り縋った。かの無残な遺体に。 衣服が血の穢れにまみれるのにも構わない。
「これは、なんと……」
 景麒があまりの死臭にふらつくいた。陽子は、叫んだ。
「なぜだ、なぜ蘭玉が……こんな……っ」
 そのまま肩を震わせ続ける。 頬には止め処もなく涙が流れていた。嗚咽が止むことなく続いた。
「こんな……こんな死に方をしていい娘じゃなかったんだ……この娘は、幸せにならなくちゃならなかったんだ……」
 もう冷たくなった遺体を抱きしめながらずっとそうして、気づいた。衣に隠されたものに。
「なんで玉璽が……蘭玉、あなた……」
 改めて泣く。 今度は、自責と懊悩。そして、この時初めて自分の感情を自覚した。


 やがて、陽子は蘭玉を虐殺した下手人達を捕縛することになる。


 昇鉱の手下に蘭玉を殺された陽子であったが、この時彼女の心裡にある感情が芽生える。
それは親友を殺された女子の抱くものとは、些か異質なものであった。歯車は狂い始める。

話休絮煩(さて、ほんだいにはひります)
80慶東帝國衰亡史演義 ◆M3LyAAqDyU :2010/09/19(日) 12:50:18 ID:ZO6AQf8f
1.

「――やあ、御機嫌いかがかなあ♪」
ギギっと音がして、暗い部屋の中に人影が入ってきた。三人。陽子と、鈴と祥瓊だった。
「しゅ、主上……」
 下手人たちは蒼褪めた顔で呻いた。已に大政は誅(けっ)した。大逆の謀叛人である靖共や昇鉱らには、特別に「別れ」を誂えてやった。
だが、この下手人どもは無傷なのである。いや、敢えて無傷で捕えた。――簡単に殺しては面白くない。
 金波宮の奥深く、岩肌の剥き出しな牢獄に、灯篭の淡い光がはためいている。淀んだ空気がゆっくり巡り、腐臭が鼻腔をかすかにくすぐる。
 ここは遥か昔、かの達王――慶東国の伝説の明主、が設けた地下牢獄だった。晩年に至って乱心し、百姓を苦しめたかつての明主は、性的趣向にも異常をきたし、大勢の下吏や庶民の娘をここに投獄して淫虐の限りをつくしたのだった。
その牢獄に蘭玉を殺めた下手人五名は、投獄され、木製の磔台に縛り付けられていた。全員恐怖のあまり血の気が薄らいでいる。
 素は無頼漢で、暴力を買われて悪官の手下になり下がっていたのだが、自分で弱いものに危害を加えることは知っていても、自分がされることにはとんと無知だった。
「へえ、私が主上? お前たちの頭領は別の奴だろう?」
 陽子は意地の悪い笑みを浮かべる。
「私どもは命令されていただけなのです。どうか、どうか、御慈悲を……」
 勝手な言い訳を陽子は聞き流すと、一人の目の前に立った。この男が五人の首領であった。
「楽しかった?」
「へ?」
「蘭玉を殺したのは、楽しかったか? なあ、きみ、ん?」
「…………」
 陽子はぬらっとした視線で硬直しきった男の表情をみてちいさく笑うと、後ろの二人に合図した。鈴と祥瓊が進み出て、男の衣を脱がす。

「漫画読んだことある?」

陽子は、言った。
「ま、まんが……?」
81慶東帝國衰亡史演義 ◆M3LyAAqDyU :2010/09/19(日) 12:53:26 ID:ZO6AQf8f

陽子は、言った。
「ま、まんが……?」
「『殺し屋1』って漫画知ってる?(知ってるわけないか。蓬莱のなんだもん。つか、この単語ちゃんと常世で訳されてるのかな?)
ネットとか、一部の趣味の人たちに人気の、ハードコアなSM漫画でさ。その中で、チ○ポを鋏で切って改造したりするんだよね※。さぶいんしじょんつーんだって。すごいでしょー」
(※ http://www.google.com.sg/search?hl=ja&rlz=1T4SKPB_jaJP335JP336&q=%E3%82%B5%E3%83%96%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3&aq=f&aqi=&aql=&oq=&gs_rfai=) 
 そう言うと、陽子は祥瓊から金属製ものを受け取った。精肉用の鋏である。男は何が何だか分からないうちにも、陽子の意図を察した。そして絶望のあまりガタガタ震えだした。
「や、やめ……」
「フフフ」
 男の一物が股から垂れ下っている。大きさはやや大きめで、包皮がむけて黒光りしている。今まで大勢の乙女たちを凌辱してきた凶器だった。
破壊の対象に、陽子の倒錯した彼女への「想い」が隠されていたのかもしれない。
 肉の凶器に金属の凶器が触れて、狙いをつける。鋏み込まれていた。
「やだ、助けて……やだ、やだ……」
男は哀願するが、陽子は一顧だにしない。冷たく笑うとひと思いに手に力を籠めた。


――シャキン――


「ぎ、ぎゃああああああああああああああああああああっ!!」
 絶叫が暗い室内に響き渡る。
「あー、あー」
 男は泣きじゃくっていた。
「うわ……」
「陽子、これはちょっと」
 傷口の凄惨さを見て唸る鈴と祥瓊に、陽子は命じる。
「止血と化膿止めして、くっつかないよう別々に包帯を巻いといて」
「畜生、畜生……っ」
陽子は部屋をぐるりと見渡す。
「あと四人」
「ひ、ひいっ!?」
 下手人たちが悲鳴をあげた。陽子は鋏を提げて近寄る。
「こうなったら、お前らをみんな化け物にかえてやるよ♪」
「ぎゃああああああああああああああああああ!!」
82慶東帝國衰亡史演義 ◆M3LyAAqDyU :2010/09/19(日) 12:56:16 ID:ZO6AQf8f
「痛いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!」
 絶叫が暗い室内に響き通った陽子が鈴と祥瓊に引っ張られて、体ごと綱引きしている。綱の対手は男の目玉であった。
「ぎゃあああああああああああああっ!!」
 さっきから三十分以上目玉を掴んで引きずり出そうとしているが、中々どうして人間の目玉を抉り出すのは始末に負えない。
が、ついに陽子の指先から、男の目玉が抉り取られた。
 目玉を摘まんだ陽子の指先からずるずると視神経が糸を引く。三人の娘は風筝(たこ)の糸みたいねと思った。
「その眼で、蘭玉を犯し、嬲り殺しにしたのだろう?」
 陽子は紅潮した顔でせせら笑った。男は激痛のあまりえぐえぐ泣きじゃくっている。

 拷問は一か月以上続いた。

 男たちは特別に慶東国の「司空」や「司寇」に官位を進めている。仙(前漢の許慎『説文解字』には『仙者不死也』とある)に封じて、すぐ死なない体にするためだった。
あまりの厚遇に、まったく男たちは感涙の海に溺れ死にそうであった。
「ううっ……」
 眼窩がからっぽな、別の男が呻いた。先に陽子に一物を真っ二つにされた男である。
男の男根は、付け根まで真っ二つにされて、傷口は塞がっており、そこから尿道を覗かせている。その尿道も陽子の残忍な拷問の格好のターゲットであった。
仙にした上、化膿止めに六太が蓬莱からパクってきた抗生物質まで飲ませて、死んでしまわないよう手厚い看護を受けたのだった。
 その男は今や手足が無く、鼻や耳も削ぎ落とされている。皮膚も粗方剥がれていた。それでも死ぬに死ねなく、今日も陽子の責苦が待っている。

「今日は金○叩き潰そうか♪」

陽子が合図すると、鈴と祥瓊が台座の上に男の股を据え、前をめくった。
83慶東帝國衰亡史演義 ◆M3LyAAqDyU :2010/09/19(日) 12:58:23 ID:ZO6AQf8f
「準備できたわよ」
「おーけーよ」
「OK♪」
 鈴も祥瓊もわくわくした顔つきである。陽子の狂気に感化され、今や二人もすっかりこの凄惨劇を楽しんでいた。
「陽子、○玉叩き潰されたら衝撃で心の臓が潰れるんじゃない?」
「大丈夫。壁先生のところで勉強した医者を用意してあるから救急看護の準備はある」
「○玉叩き潰されると、白い液体が飛び出してくるのかなぁ♪」
男が、呻いた。
「おねが、もう……殺して……ぇ」
「だめだめ!」
 チッチッと陽子は指を振る。
「蘭玉に約束したんだ。もう誰も悲しまない、立派な国をつくるって。だから国造りが完成するまでは、お前たちにも生きててもらうよ。――達者(だるま)にして転がして、あと百年はね♪」
 陽子が二十斤(十キロ)ある金槌(ハンマー)を振り上げる。
「そおれぇ!!」
 ぐちゃっ
「ぐぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」

2.

「主上」
 景麒が、陽子に詰め寄った。いつにもまして険しい表情だ。開口一番、切り出したのはこの麒麟らしい率直な言葉だった。
「――あまりにも惨すぎます」
「んぅ、なにがだ?」
 陽子はとぼけた表情(かお)で、薄ら笑いすら浮かべる。
「あの下手人たちへの処遇です!」
 陽子は黙ってにこやかな笑みを崩さず聞いている。
「いくら悪人への処置とはいえ、あまりにも度を越しています」
 景麒はいつも以上に主上を諌める厳しい調子で陽子ににじり寄った。
「あの娘を殺されてやるせない思いをなされているのは分かります。ですが、それも何年前のことですか? それでは昇鉱らのやった非道とどこが違うのか……」
84慶東帝國衰亡史演義 ◆M3LyAAqDyU :2010/09/19(日) 12:59:48 ID:ZO6AQf8f
「景麒」
「は」
景麒が陽子に応えて顔を寄せた。
「ぶぐっ」
 拳骨が景麒の鼻骨を粉砕する。その顔を陽子の拳が殴りぬいていた。
「知った風な口きくんじゃねえよ、ダボが」
 鼻血を出して蹲る景麒にぺと唾を吐きかけると、陽子は言い捨てて去った。
「あいつらは、あと五百年かけてイジメ殺してやるんだ、赤王朝が続くまではなァ♪」

「あれ以来、大輔は熱を出しておられる、お前はどう思う?」
 白髯の老人が苦々しく吐き捨てる。冢宰の礼装の精悍な壮年が頷いた。
「はい、太師。麒麟は固(もと)此れ仁獣。主上のやりようを受け、病んでしまわれたたのでしょうな」
 園甫と浩瀚は、陽子の「御乱交」に対する定例会議を開いていた。
 陽子の治世に問題があるのではない。
 即位後二十年をけみした、慶東国の国政は軌道に乗り、社稷の礎石はしっかりと築かれていた。
腐敗官僚の粛清や禁軍の綱紀粛正、常世で云えば社会制度改革やインフラストラクチャー構築など、この短期間で信じられぬ成果を上げた。
このまま行けば、少なくとも後百年は赤王朝は揺るぎない。それが十二国中衆目の一致する所だった。
 だが――

「このままでは大輔は失道される」
 園甫が絞り出すように呟いた。
 蘭玉を殺めた下手人を捉えてから十七年、陽子は以来下手人たちを仙に叙してひっきりなしに拷問を加えている。
元々、各国の王が殊にどうしようもない罪人を、できるだけ苦痛を長引かせるため仙に叙したうえで、陵遅にかけて切り刻むということはある。
しかし、このような人道を無視した拷問は開闢以来、未聞だった。
本来、この様な無道を止めるべきはずの女史や女御も嬉々としてこれに加担している。
浩瀚たちはそれとなく諌めるのだが、陽子は聞く耳をもとうとしなかった。
……いや、この件に関しては、下手に諌めると陽子の狂気の逆鱗に触れずにおれないのだ。
「儂かて可愛い蘭玉を殺めた悪漢どもじゃ。憎くないと言えば嘘になるが……」
「主上は慶にとって百年、いえ千年に一度の逸材と思っておりまする。このような事で、失道するのではあまりにも……」
 二人は顔を見合せ息をつく。こうなれば、方法は一つしかない。
「殺るか――」


 ギギと音がして、その房間の扉が開かれた。その何重にも施錠された分厚い鉄扉は、常世と地獄との境目であった。その軋む音がする度に、中の囚人たちは絶望にむせび泣くのだ。
85慶東帝國衰亡史演義 ◆M3LyAAqDyU :2010/09/19(日) 13:00:13 ID:ZO6AQf8f
「あひぃ……もう殺して」
「殺してやろう――」
 男たちは、入ってきた者がいつもの嗜虐者ではない事に気づいた。
「主上の勅命である。貴様ら五名、昇鉱に加担して罪なき生民を殺めた罪により、斬首いたす」
 その瞬間、男たちは涙を流した。歓喜の涙を。
「ほんと? ほんとに殺してくれるの?」
 浩瀚は黙って頷く。数名の兵士が剣を抜き、鎖に繋がれた男たちの前に立った。
「嬉しい! 早く、早く俺をひとおもいに殺してええええええええええっ!!」
 歓喜にむせび、号泣しながら叫ぶ男たちは、皆目玉を抉られ眼窩がからっぽで、手足もなく、体中至る所が損壊されて刃創(はものきず)と骨皮をさらし、陰部には陰湿な責めの痕があった。
目玉がない以上涙線もなく涙を流せる道理はないのだが、これは文字通りの血涙である。
「早く、早く俺を……俺を殺してええええッ、殺してくれッ!!」
「慌てるな、主上の御勅命だからな……」

「――へえ、そんな勅命、初耳だ♪」

 慌てて、振り向く。そこには禁兵を率いた陽子の姿があった。冬器の白刃が浩瀚たちに向けられる。
「浩瀚、貴様は私の寵を良い事に専横の振る舞いに出た。許せん。この男どもと同じ刑に処す」
「しゅ、主上……!」
「引ったてい!!」

3.

 ――自分があの子にこんなに執着してしまったのはいつからだろう。
 初めて会った時から気にはなっていた。其の境遇と為人を知る裡に愛着が生まれたようだった。 
そして、――失って、自分の愛着の本当の意味を知った。

「蘭玉……」

 金波宮の燕朝、奥深く、陽子の寝室。陽子は一人寝台に横たわっている。
人目を気にする必要のない休息時、半裸で寝そべり、その肌理の細かい柔肌を灯火が橙色に照らしている。
いつしか、こうして蘭玉の笑顔を胸に浮かべる事だけが、陽子の秘やかなそして唯一の慰めとなっていた。

 今の自分だったら、たぶん迷わない。
 蘭玉に想いを打ち明ける。
 この胸の狂おしい時めきを。
 彼女への強い衝動を。
 たぶん女の子として「まとも」な彼女は拒絶するだろうが、それで構わない。そうして心の靄を取り除きたかった。
……でも、それも永遠には果たせない。彼女は奪われたから。

「ごめん、助けられなかった……守れなかった……」
86慶東帝國衰亡史演義 ◆M3LyAAqDyU :2010/09/19(日) 13:04:47 ID:ZO6AQf8f
 陽子は、その雄々しい王業を肇める嚆矢となった内乱に参戦した后(あと)、靖共・呀峰・昇鉱ら大逆の一味を、暁天で衆人環視の下陵遅刑にかけた。
無論、仙籍にある者は身分を解かず、無冠の者は改めて仙に叙して。
処刑は三十日間に及び、三万刀を超す切り刻みの末、激痛のため自死し、すっかり脳が委縮してしまった呀峰らが息絶えたとき、陽子は今のように、改めて涙を流した。
寸刻みの肉はその場で(火考)肉(やきにく)にして、民衆に配り、怨嗟極まる両州の生民が争って其の血肉を食らい憂さを晴らして、残骸は人糞に混ぜて狗の餌にして、それでも陽子の悲しみは尽きなかった。
 その晩陽子は初めて蘭玉で自分の躰を慰めた。

(陽子)

(陽子、今晩は帰らないんでしょ?)

(良い人によろしくね!)

 涙が、溢れてくる。偶に気まぐれで桓(鬼進)カンタイや夕(日軍)セッキに伽をさせ、身を任せる事もあったが、そんな事で飢えは飽かされなかった。
あの、楽俊とは――雁に留学以来もうずっと会ってないが、もっとプラトニックで精神的な繋がりだったのに。
 未熟な蓬莱時代には未だ持てなかった恋情。この世界に来て初めて少しだけ成長できて、最初に抱いた想い。
ちょっとずれてはいるかも知れない。でも、たとい同性であろうと、自分は本気だった。そして、その想いは、永遠に行先を見失ってしまった。

「はあ……ぁ……」

 手で自分の乳房と陰部を揉む。乳房は赤々と火照り、陰部は已に濡れそぼっていた。きゅっと指先で、乳首と陰核を摘まむ。陽子は体をビクッと仰け反らせた。
「はう……っ」
 内奥からどんどん熱い液体が溢れてくる。紅い髪が乳房で震える。陽子はせつなさに喘いだ。
「ん、んんっ……」
 傍らの水寓刀を手に取る。ふと、その刃紋を見やるが、ただ茫洋たる幻がうつろうだけだ。自分が望むあの子の姿はいつも映してくれない。
あの子はうつし郁(くに)にいないからだろうか?
 いや、仮令千里を見通すこの宝重と雖も、自分の疼きはいやして呉れない。こうしなければ。

「ああっ!!」
 水寓刀の柄が根元まで沈み込んでいく。やがて、奥まで達すると、抜き差しを始める。湿っぽい音が陽子と灯火のつくる陽子の影の二者だけの部屋に響く。
そうやってしばらくして。陽子は無意識に腰を浮かせ、しだいに引き攣るようになっていった。
「ああ、蘭玉、あたし、あたし……っ!!」
87名無しさん@ピンキー:2010/09/19(日) 13:07:06 ID:b2QBfaBy
支援
88慶東帝國衰亡史演義 ◆M3LyAAqDyU :2010/09/19(日) 13:09:09 ID:ZO6AQf8f
 そうやって抜き差しを何十回となく繰り返す。全身が汗にまみれて、淫靡な湿り気が房間を支配し続けた。
 やがて陽子の声が震える。ビクンビクンと痙攣して、陽子は果てた。

 余韻に浸りながら荒く息をつく。自らをけがした後はいつも虚しい。其の時自分の乎気だけのはずの房間に、ふと声が響いた。
「――主上」
「なんだ、いつからいた班渠」
陽子はまだ熱さの残る体を身づくろいもせず云った。
「御自分を慰められている間からずっと。それよりお耳に入れたき事が」
「何だ?」((なんだ待ってやがったのかコイツ、私の一人H盗み聞きしくさって、金請求したろか??))
「太史令が松伯と謀り浩瀚さまたちを釈放させようとしています」
「――桂桂が?」
 太史令とは、蘭玉の弟桂桂の事である。彼女亡き後、生き残った桂桂を陽子は自分の子供のように育てたが、彼には書算詩文に才があり、国学を卒業して今は其の官にあった。太史令とは天文や文書記録を司る官吏である。
「如何なされますか」
「…………」
 奪回も恐れ、蘭玉を殺めた下手人に使令を張り付かせるよう命じたのは陽子である。その故、浩瀚たちの独断を察知する事が出来た。浩瀚らは今は拘束して刑を待っているが――
「禁兵に知らせろ。卒(兵士約百人からなる部曲)を一個動かす」
 陽子は上着を着ながら、号令した。

「――鏖(みなごろし)だ♪」

4.

 金波宮の一角は、深夜にもかかわらず騒然としていた。百人ばかりの兵士が、辺りを警戒し、燕朝に詰め込んでいる朝臣の殆どは野次馬に駆けつけていた。
その人垣の列がやにわに割れる。陽子が先触れも伴わず、水寓刀を引っさげて来着したのだ。
「――陽子……」
 兵士に冬器の白刃を向けられ、蒼ざめていた遠圃がうめいた。
「おやおや、これは。やあ、遠圃。太師のお前が謀反を企てるようでは、慶東国の社稷も危ういな♪」
「陽子、お前、好い加減に正気に……!」
 遠圃の言葉が途切れた。水寓刀の鞘で頭を強打された遠圃が、鼻血を出して地べたに顔を摺りむいた。
「ううっ」
「この老いぼれが、待ってろ、すぐにぶった斬って……」
「――陽子、もう止めようよ……」
 其の時、少年の声が起こった。同じく押さえつけられているその相貌を見て、陽子の胸がちくりと痛む。桂桂だった。
89慶東帝國衰亡史演義 ◆M3LyAAqDyU :2010/09/19(日) 13:10:05 ID:ZO6AQf8f
 言われるまま、士卒が無造作に桂桂の衣を脱がす。(この状態の陽子に逆らうとどんな目にあうか分かっているのだ)その陰部が露わになる。陽子は水寓刀を抜いた。
「や、やめ……」

 ざぐっ。
 剣の切っ先は、桂桂の陰茎を付け根から切断していた。

「ぐがああぎゃあああああああああああああああああああああああああっ!!」

 あまりの激痛に桂桂は転がりまわり泣き叫ぶ。切断面からは血が噴水のように吹き出ている。
「こいつも仙だ。簡単にはくたばらねえだろうから、止血と化膿止めだけして、まとめて牢獄ぶちこんどけ」
 陽子は妙な高揚感が湧きあがってくるのを抑えられなかった。女として、蘭玉を手に入れられなかった、自分に欠けているもの。それを仇敵から奪ってやったような倒錯した感覚に陶酔していた。
其の晩陽子は興奮して寝れず、十数回の自慰を繰り返した。
 翌朝、さすがに見かねて、鈴と祥瓊が寛恕を乞いに来た。彼女らも陽子に教わった蓬莱の「えすえむぷれい」の醍醐味に酔いしれ、加虐を愉しんでいたのだが、事情が事情だ。
陽子は説得され、失道しては元も子もないと判断し、浩瀚らの罪を特赦し、下手人たちへの拷問も以後二十年取りやめた。そのため、赤王朝の命脈は伸び、拷問が再開され、下手人たちは百年に渡って苦しむ事となる。

 百年後には主犯格を除いた下手人四人のうち三人は衰弱死した。あまりの激痛に脳が委縮し自死したといった方が正しかった。
現に、死後司法解剖を行ったところ、下手人たちの脳髄は通常の二十分の一に委縮していた。
だが、それでも生き残りの下手人には景麒が病まない程度の頻度で拷問が加え続けられた。浩瀚も遠圃ももはや諫言のしようがなかった。

 だが、嗜虐の裡に確実に陽子の精神は蝕まれていったのである。もう、楽俊や尚隆の忠言すら彼女には届かなかった。

 去勢された桂桂であるが、奇跡的に一命を取り留め、引き続き太史令を任される事となる。
男たちの最後の一人の死亡が確認されたのはそれから百年後、つまり治世二百載の時候であったが、それは赤王朝の寿命が尽きたのと同時だった。
男――蘭玉を殺めた主犯格の肉体は殆ど「人間」としての形状を留めていなかったが、荒廃した陽子の精神もまた同様だった。
90慶東帝國衰亡史演義 ◆M3LyAAqDyU :2010/09/19(日) 13:13:26 ID:ZO6AQf8f
>>89手前

「陽子、正気に戻って!」
 窓あどけなさの残る少年は主人を思って心から涙していた。
「姉ちゃんは……こんな事をしたって姉ちゃんは帰って来ない……」
「…………」
「ううん、姉ちゃんはこんな事望んでないよ。姉ちゃんなら、きっと陽子にもうむごい事はやめてくれって、優しい陽子に戻ってくれって」
 陽子が苦々しく顔を背けた。
「桂桂、お前は……」
桂桂は思春期に入ったばかりで仙に封じてある。其の面影は線が細く、蘭玉を思わせるものがあった。その桂桂が目に涙を浮かべて主人の無道を諫めていた。
「蘭玉は……ただ、殺されただけじゃなかった。面白半分に、それでもお前は」
「だからって、こんな事をしても姉ちゃんは戻って来ないんだよ、それなのに陽子は、これ以上なんのために無道を働くの!!」
「…………」
「姉ちゃんだったら、こんな事は望まないどころか、きっと陽子を嫌いになる!!」
 分かっている。そんな事は。だからそれだけ、無性に腹が立った。

 な ぜ だ ?

 なぜ、生きている?この弟は。そもそも、この弟が男たちの注意を惹きつけていれば蘭玉だけは逃げられたんじゃなかったか?
 同じくドスで刺されたのに、蘭玉は死んでなぜこの弟だけが生きてる?
 弟なら姉を身を挺して守るべきではなかったか?
 蘭玉を犠牲に、自分だけ生きて、その上で、私のやる事に身分も考えず差し出口を?
 弟のくせに、蘭玉の死を弔う事も、仇を討つ事もせず、挙句の果てに謀反?
 陽子の頭の中で「ぶちん」と何かが切れた音が響いた。

「 漢 文 」

 突然の言葉に辺りが鎮まる。皆その不可解な意味を計りかねているのだ。
「えへへ、私ね、高校の頃は漢文わりかし得意だったんだ。『睚眥の怨みも……』って♪ 授業でならったけど『史記』の著者は武帝を諫めて腐刑※に処されるんだよねぇ」
(※ http://www.google.com.sg/search?sourceid=navclient&hl=ja&ie=UTF-8&rlz=1T4SKPB_jaJP335JP336&q=%e8%85%90%e5%88%91
 目にぬらっとした光を浮かべた。いつもの狂気である。
「お前も官は奇しくもかの太史公司馬遷と同じだ。山客に倣って崑崙(ちゅうごく)の歴史を慶国に再現するのも面白くないか?」
「よ、陽子……」
 陽子は左右の兵士に命令した。
「おい、こいつのポコ○ン出せ」
91慶東帝國衰亡史演義 ◆M3LyAAqDyU :2010/09/19(日) 13:15:25 ID:ZO6AQf8f
 常世の精神科医なら統合失調症と反社会性人格障害の合併症と判断したであろう、治世最晩年の陽子は、虐政の限りを敷き、
雁王朝無き後、「乾坤の小天堂」と謳われた慶東国は、陽子が失道に依り崩御するまで、殆ど「折山」というより「サラ地」というべきに変わり果てたのだが、
その即位端緒から赤子失道までの歴史を丹念に筆を曲げず史実をだけ記して後世に残したのは、陽子に宮刑に処された桂桂だった。
(ちなみに彼の著した『平準書』によれば、慶東国の人口は最盛期八千万戸から陽子崩御時にはわずか二千戸までに減じていたとある。慶国は赤子以降、政府の人口動静の把握力は驚くほど高いので、ほぼ実人口の変位を表すと考えられる。これは『屠慶』として常世史上名高い)

 そこで慶東国の正史だけは「太史公書」「腐書」などと呼ばれるが、その資料の取捨、鋭い筆致、史実を明らかにする事を念頭に置いた史魂は常世の正史の中でも最高峰と評されるのだが、
「赤子本紀」の太史公論賛は、「読む者をして嘆慨せしめずんばあらず」と言われる。


「太史公曰く、夫れ景王赤子、本姓中嶋、名は陽子、胎果の生なり、性英邁にして大志あり、惜かな其末(すゑ)、狂疾を病むに至れるは。夫れ聖治初年、惡官汚吏、九州に瀰漫し、朋黨比周して、皇天を欺瞞し、黔首を略取し、相ひ和して嗜虐す、之を能く止める無し。
上(しゃう)、当に刧殺擁蔽の主なり。則ち布衣に裝(さう)して、三尺を持し、陰そかに幸(みゆき)し、以つて兩州の情を親察せんと欲す、竊かに瑛州黒亥の里家にあり、一處女に逢ふ、姓蘇、名は蘭玉……」

不在話下(このはなしはこれでおしまひ)
92慶東帝國衰亡史演義 ◆M3LyAAqDyU :2010/09/19(日) 13:19:11 ID:ZO6AQf8f
すいません、携帯投下で不細工な始末になりました。
>>77-86.>>88>>90>>89>>91の順です。
その他重複ミスしてます。

お目汚しでした。
93名無しさん@ピンキー:2010/09/19(日) 13:57:10 ID:b2QBfaBy
十二●記で来ましたか…
相変わらず凄いですね。
グロくて鬼畜なのに、ほんのり切ない。
お疲れ様でした。
94名無しさん@ピンキー:2010/09/20(月) 16:04:39 ID:8vo0saAO
そろそろ、まりみての続きほしぃ…
95名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 03:24:18 ID:s9+JC1QQ
>>92GJ

>>94同意
96 ◆MjihPRcZRI :2010/09/24(金) 15:33:34 ID:Cm6LLMLQ
1、

あの梅雨の日に、梅雨の日に。

祐巳が紅薔薇の蕾に選ばれて幾ばくか。
当然、校内にはこれを快く思わぬものたちが居た。 当然であろう。
差して美人と言うわけでもなく、成績も並。 性格とて弱弱しい。
言わば目立たない凡人に過ぎない少女が、 全校生の憧れの的である薔薇さま方の候補に加わったのである。

「ああ……」

 今日も上履きが隠されていて、スリッパを履いて歩く。 教室で待っているのは押し殺した沈黙。冷笑。悪意。
かつては親しげに話した蔦子や桂さんまでもがもはや祐巳を無視する様になっていた。

 決定的なことはあの梅雨に起きた。 祐巳を捨て、松平瞳子を連れて去っていく祥子。
祐巳は呆然と、雨の中、しゃがんで嗚咽するしかなかった。 そして、救いの手は差し伸べられなかった。
――佐藤聖、リリアン女子大学に所属するかの元白薔薇は、その日、ささいなことから大学に姿を見せなかった。
或いは、そのとき、その瞬間、彼女さえ居れば破局は訪れなかったのかもしれない。

「ちょっと、いいかしら」

 休業時間、祐巳は数人の女子に囲まれた。 連れて行かれる先は女子トイレ。(もっとも、女子高ゆえ女子トイレで当たり前なのだが)
もしくは、放課後の人気のない公衆トイレである。
身動きも取れないほど、体を密着させられ、便所に入ると途端タイルの上に突き飛ばされた。

「あ痛っ!」
「あらあら、痛いですって」

 上を向く、瞬間、縦ロールの、目から殺気を感じ取った。
「と、瞳子ちゃん……」
 見上げる目の前には松平瞳子が立っている。自分からお姉さまを奪った相手。
「ねえ、みんな、瞳子ちゃん、何でこんなことするのよお。もうやめて」
 祐巳の言葉は最後まで言葉として発せられなかった。
瞬間回し蹴りの足刀が祐巳の顔面にクリーンヒットした。
「ぶううっ!!」
97 ◆MjihPRcZRI :2010/09/24(金) 15:34:37 ID:Cm6LLMLQ
祐巳へのイジメはエスカレートしていった。靴を隠す、画鋲を入れる、
指定鞄をゴミ箱に捨てる、シカト、嘲弄、そしてついに暴力。

「ぐうう」
「何が『なんで』ですって、このメス豚がっ!!」
 祐巳が鼻を押さえて苦悶する。 益々興奮する瞳子に合わせて、
周りの女生徒たちが祐巳に暴行を加え始めた。踵を、狂気に、祐巳の顔を潰していく。
「調子に乗ってるんじゃないわよ!」
「この反吐薔薇」
「ぎゃあああっ!! ぐえええっ!!」
 血飛沫が舞って二つ別けの髪を塗らした。顔面は実際固い骨で出来ている。其処に少女の未熟とはいえ立派な暴力が炸裂して、
硬質同士が砕ける音が響いた。鼻骨のひしゃげる音がその嚆矢である。踵やつま先の骨が祐巳の顔や時に目玉などの柔らかい部分にめり込んで行く。
「ぐぼお、ぐうう」
「オラオラ!」
「ぐぎゃああ、げえぼ!」

 そして――
 二十分は続いた暴行で、祐巳はもはや立てなくなっていた。
少女ら曰く「ゴキブリのように」便所タイルに這いつくばっていた。
血と涎と涙と反吐と血反吐を吐いて床を嘗めていた。
「ほら、立ちなさいよ」
「ぶぼ……っ」
 腹を何度も蹴っても身を捩ることもできない。そんな祐巳に満足しているのは、
ただ嫉妬だけをぶつけて来た女達であった。 だが、違うものもあった。
「な……ぜ……」
 縦ロールが瞬間律動を持って揺れ動く。
「なぜですって……」
98 ◆MjihPRcZRI :2010/09/24(金) 15:35:42 ID:Cm6LLMLQ
 途端、瞳子の顔に宿る憎悪の業火。その狂気に押されて他の少女たちは後ずさりして消えていった。
「まだ分からないんですか?あなたの――お前のせいで、祥子お姉さまは」
「もう、そこら辺で止めておくんだ」
 声は背後から聞こえた。
「優お兄様……」
振り返った目の前に立っていたのは、あの柏木優だった。
「…………」
 もはや立つ事もできず、口から吐いた血に塗れて優を見上げる祐巳。
そんな祐巳を柏木は哀れむような目で見下ろしていた。
「君のせいじゃない、君のせいじゃないさ……」

 それから、祐巳は知った。
 佐藤聖は同学年の女性と歩行中、交通事故に遭って亡くなったのだと。
本来ならリリアン正門前を通る予定が、ほんの少しの寄り道が、不運を招いた。
そのとき、迎えに友人女性の下宿まで出向いたのが運の尽きだった。 そ
の日はちょうど祐巳がずぶ濡れになって地に伏していたときだった。

 それから――お姉さま、祥子のことを……。
実際、祐巳にこれらを知る手立てはなかった。 学校を休みがちになり、クラスで浮いて来ていた祐巳に、情報源は無かった。
志摩子は聖の死後、行方をくらませた。由乃だけは何も知らない祐巳をかばい続けたが、その気性の激しさも相俟って、次第に反感を買い、
ついにイジメのターゲットにされて潰されてしまった。
99 ◆MjihPRcZRI :2010/09/24(金) 15:36:56 ID:Cm6LLMLQ
「私は、最低だ、最低だ……」

 頭を抱え、ふらふらと歩く。お姉さまが死んだのはあの梅雨の日から二週間後のことだった。
執拗に部屋に閉じこもり、誰の誘いも受けようとしなかった祐巳は、何が起きていたか知る事は出来なかった。

 祐巳を失い、蓉子の必死の励ましの甲斐も無く、祥子はどんどん痩せ細っていき、最期はまるで別人のようにやつれていた。
そして、手首を……
祐巳は温室に入った。あの、お姉さまとの思いでの温室に。
ロサ・キネンシスの四季咲きは目に鮮やかだった。 祐巳は素直にそれを美しいと思った。
そして、そうありたいと、清らかでいたいと思った。既に全身打撲で倒れ掛かっている体を棚に寄せ掛けると、
右手にカッターナイフを取り出した。そして真一文字に手首を切り裂いた。

(案外、血ってふきださないもんなんだな。お姉さまの、いえ祥子さまのときもこんなだったのかな……)

 ぼんやり思う。動脈まで切断され、血は止まる事無くあふれ反って来る。
それでも、お姉さまの気持ちを考えると何となく思う。 意識はだが薄らいできて。

 ――ふと気が付くと、ベッドの上にいた。 白いシーツ、白い掛け布団。
「ごきげんよう、ですか」
100 ◆MjihPRcZRI :2010/09/24(金) 15:38:06 ID:Cm6LLMLQ
 目の前にまず映ったのは、皮肉く口元を歪めたおかっぱ頭だった。
「乃梨子ちゃ……なぜ……」
「なぜ、ですか……面白く無いんですよ」
 乃梨子の目が暗く輝く。
「祥子さまも志摩子さんも、そして佐藤聖という人もいなくなった。知ってますか? あの聖って人、祐巳さまを探してうろついてたんですって。志摩子さんのことを聞くのが目的だったらしいけど、間接的にはあなたのせいなんですよ」
 哄笑がついに口から漏れた。乃梨子は歌うように言った。
「勝手に死んでもらっちゃ困ります。これからイジメられて、イジメ抜かれて、イジメテイジメテイジメラレヌイテ、死ぬよりよっぽど酷い目にあって頂かねば」
「あ……あ……」
 震える祐巳の前に何人もの少女が集ってくる。
「あんたのせいで、由乃は……」
「山百合会は滅茶苦茶だわ。どうしてくれるの?」
「祥子さん、せっかく私に口をきいてくださるようになったのに、許さない……」

 祐巳の本当の地獄はこれからだった。


(ツヅク)
101名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 15:59:13 ID:Cm6LLMLQ
>「あんたのせいで、由乃は……」
これ令ちゃん

>「祥子さん、せっかく私に口をきいてくださるようになったのに、許さない……」
うざわみふゆ(祐巳すけのアナグラム)
です

では、保守代わりをして、祐巳乃梨さんの続き(もしあるなら)をお待ちします・・
102名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 19:42:04 ID:oD86Qbz6

女学園のいじめこわい
103名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 15:20:21 ID:DL1f+giG
これ、すでに他のスレに投下されたことのある話だよね?
鳥とか分かんないけど、本人が再度投下してんの?
104名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 20:21:04 ID:PrSmYk6O
パクリ容認重複荒らしスレ晒しあげ
105名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 20:26:09 ID:3Qtf0kXi
無断転載?
106名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 20:34:01 ID:PrSmYk6O
元々荒らしがたてた重複スレだからパクリも当然のようにやる最低だな

ちなみに正規のスレはこちら
スレに投下し辛い/迷うSS【元・追い出され3】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1242308022/
107名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 20:59:01 ID:Nm4TKjEp
旧稿に手を加えました。
保守代わりなら重複でもいいかと気軽に考えていましたが、荒らしてしまって申し訳ない。

以後自重します。
108名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 21:55:50 ID:jUu8a8tv
>>107=ID:Nm4TKjEpが◆MjihPRcZRIだと言うなら、
そのIDで鳥だしてくれないか。
でないとあんたが◆MjihPRcZRIと同一だと信用できん
109名無しさん@ピンキー:2010/09/26(日) 10:09:46 ID:j2LEdxlo
マダー?
110名無しさん@ピンキー:2010/09/26(日) 10:32:26 ID:bcqD+szQ
>>106
思わず下種な本性が露わになってしまったね♪
111名無しさん@ピンキー:2010/09/28(火) 11:16:06 ID:IGnuuZfK
保守
112名無しさん@ピンキー:2010/10/02(土) 12:06:05 ID:gDLLrkZZ
ゆみのり神待ち
113名無しさん@ピンキー:2010/10/07(木) 23:33:06 ID:wodXU98G
ほっしゅ
神様なんていないよ
114名無しさん@ピンキー:2010/10/08(金) 08:49:50 ID:gbf4Nzpg
否、祈れば神は必ず奇跡をお示しくださる。
ってモズクス師が言ってた
115 ◆68JFrtxJrc :2010/10/10(日) 17:08:29 ID:uTKbK8wN
「ごきげんよう、お姉さま」
(鬼畜凌辱、死にネタ、なんちゃって極道小説)

ttp://u3.getuploader.com/eroparo/download/68/gokigennyou.txt

今もう小説とか書けない。書くエネルギーがない。
昔投稿した奴の改稿です。
粘着されないよう、うpろだに挙げておきます。
PWは前の志摩子が日本刀振り回す話のものと同じです。

あの時は本当精神を病んでいたからなあ・・。今書けなくて正解かも。
保守代わりに使って下さい。

GJ十個もらうより、あの技量も物語も綺麗な祐己×リコSS書ける人に、感想もらいたいな。
116名無しさん@ピンキー:2010/10/12(火) 00:45:35 ID:LcPQtWBK
>>115
読もうと思ったけれどPWが不明では仕方がない。
117名無しさん@ピンキー:2010/10/12(火) 15:31:11 ID:mGM0ACmK
前スレdat当たってくださいです。。
118名無しさん@ピンキー:2010/10/19(火) 10:22:01 ID:g6wa+79Z
ヒント、志摩(子)+キルビル
119 ◆5xcwYYpqtk :2010/10/20(水) 06:38:27 ID:Pc5v2zfZ
>>53の続き

 翌日の朝。
 乃梨子は歩きながら空を見上げた。
 雨は落ちていないものの、暗灰色の雲が低く垂れこめている。
 リリアン女学園の校門をくぐり抜けて少し歩くと、マリア像が佇んでいる姿が
視界に入ってくる。

 この聖母像は、熱心に手を合わせている多数の生徒と同じ様に、乃梨子のように
信仰心の乏しい少数の生徒も、分け隔てなく見守っているのだろうか。
 ぼんやりと考えながら、祈りを捧げている子羊達の脇を通り過ぎたところで、
乃梨子は声をかけられた。

「ごきげんよう。乃梨子」

 志摩子さんだ。
 相変わらず、地上に降りた天使としかいいようのない程、美しい顔だちをしている。

「ご、ごきげんよう。志摩子さん」

「どうしたの? 乃梨子」
 乃梨子の様子に不審を感じたのだろうか。
 志摩子さんはゆっくりと近付いてきて、心配そうな顔つきで見つめてくる。
「な、なんでもないよ。志摩子さん」
 慌てて首を左右に振るけれど、視線は、志摩子さんから逃れるように下を向いてしまう。
 
「乃梨子……」
「し、志摩子さん。そろそろ行かなくちゃ」
 気まずさに耐えられなくなって、乃梨子は足早に歩き出そうとする。しかし。

「乃梨子、昨日はどうしてこなかったの?」

 しまった!
 乃梨子は、自分の迂闊さを呪いたくなった。
 昨日、泣きじゃくった祐巳さまを放っておくことができなくて、
家に連れ込んでしまう形になったので、薔薇の館へ行けなかったのは仕方がない。
 しかし、昨日の夜のうちに、志摩子さんに電話をして謝っておけば良かったのだ。

「ごめん。昨日は、ちょっと用事があったから……」
「そう。でも連絡してくれると嬉しかったわ」

「うん。ごめん」

 それっきり口を閉ざした志摩子さんは、この件については追及しなかったけれど、
昇降口で別れるまで、気まずい沈黙が続いてしまった。
120名無しさん@ピンキー:2010/10/20(水) 06:39:18 ID:Pc5v2zfZ
「ふぅ」
 今一つ気分が乗らないまま午前の授業が過ぎて、4時間目の終わりを告げるベルが鳴った。

 さて、お昼をどうするか。
 いつもは、志摩子さんと一緒に薔薇の館で弁当を食べるけれど、朝方の気まずさもあって
薔薇の館に行く気分にはなれない。
 別に友達と一緒に食べなくても寂しくない人間だから教室で食べても構わないのだが、
なんとなく、身体を動かしたい気分ではある。
「食堂で食べるか」
 窓越しに曇り空を見ながら、乃梨子は立ち上がった。

 喧騒に包まれた食堂で弁当を食べ終わった後、廊下にでると、特徴的な縦ロール
が視界に飛び込んでくる。

 瞳子だ。

 瞳子は10メートルくらい前を歩いているが、両脇にいるクラスメイトと
雑談していることもあって、後ろから声をかけにくい。
 不本意ながら追跡する形になって少しだけ歩いた時、前から4人の上級生が
歩いてくるのが見えた。
 そのうちの一人は、祐巳さまだ。

 祐巳さまは、他の3人のクラスメイトと談笑しながら接近し、逆方向からくる
瞳子達とすれ違う瞬間――

「最低」

 紅薔薇のつぼみに向かって放った瞳子の罵声は、妙にはっきりと聞こえてきた。
121名無しさん@ピンキー:2010/10/20(水) 06:42:08 ID:Pc5v2zfZ
 喧嘩を売られたというより、ほとんど、狂犬に吠えられる形となった祐巳さまは、
ゆっくりと立ちどまった。

「何をヘラヘラ笑っているんです!」

 大きく息を吸い込んだ後、瞳子は明らかにイラついた表情を見せながら叫ぶ。
「昨日だって、ウジウジしていないで、言いたいことがあればはっきり言えばいいんです!」
 瞳子は何を怒っているのだろう?

「あなたは、祥子さまの妹にはふさわしくありません!」

 続いて瞳子が放った一言が、周囲の空気が完全に凍りつかせた。
 リリアンは、上下関係がかなり厳しい。
 下級生が上級生に向かって、それも姉妹のことで、このような暴言を吐くことは
ありえない。
「な、なんとか言ったらどうです!」
 何も言わない祐巳さまと向かい合うことに耐えられなくなった瞳子は、
畳みかけるような口調で迫る。

「そうだね」
 笑顔が消え去り、百面相と言われるのが嘘のような無表情になった祐巳さまは
ようやく口を開いた。

「私は、祥子さまの妹にふさわしくない」

 周囲にいる誰もが呆然としている間に、祐巳さまはポケットから十字架がついた
ネックレス、即ち、ロザリオを取り出した。

「このロザリオはね。ふさわしい人が首をかけているべきだよ」

 唾を飲み込む音を出すことすら躊躇われる、張りつめた沈黙が続く中、祐巳さまは
ロザリオを持ったまま腕を伸ばして、完全に固まっている瞳子の首にかける。

「な、なにを!」
 呆然としていた瞳子が我に返り、奇声としか思えない声を張りあげるが、
虚ろとしか言えない祐巳さまの表情をまともに見た瞬間、押し黙ってしまう。

「じゃあね。瞳子ちゃん」
 祐巳さまは静かに言うと、瞳子の脇を通り過ぎて、乃梨子の目の前で再び立ちどまる。

「見てたんだ。乃梨子ちゃん」
 祐巳さまは、ここでようやく苦笑めいた表情を閃かしてから、乃梨子の肩口で囁いた。
「私もね。祥子さまの妹にふさわしくないとずっと思っていたんだ」
「ゆ、祐巳さま……」

 辛うじて声を絞り出した乃梨子の肩に軽く触れると、祐巳さまは背中をみせて、
ゆっくりと歩いて行った。

(続く)
122名無しさん@ピンキー:2010/10/20(水) 09:12:14 ID:Pc5v2zfZ
>>118
読んだよ。
かなり辛口なので、そういうのが駄目ならこの先を読まないことをお勧めする。


――――

・構成としてはまずくないし、話の途中で柏木氏がでてくるあたりも意外性があって面白いけれど、
最終的な結末が分かってしまっている点は残念。
無理に全員が殺すor殺される必要はなかったと思われる。

・残酷描写を追及しすぎて、原作の雰囲気が壊れちゃってるのも二次ものとしてはまずい。
(残酷描写そのものが駄目というわけではないので注意)

・陵辱シーンも展開されたけれど、あっさりしていてエロを感じなかった。
こちらは、もう少しねちっこい描写がほしい。

・全般的に台詞回しというか、叫び声に頼り過ぎな感じがする。
あまりにも叫んでいる場所が多いと、ギャグっぽくなってしまう。


とりあえずこんな感じです。ありがとうございました。



123名無しさん@ピンキー:2010/10/20(水) 11:27:42 ID:93pEFtnu
お疲れ様です。

続きを期待してお待ちいたします。
124名無しさん@ピンキー:2010/10/21(木) 09:28:29 ID:o0MQwPuT
GJです
続きも気が向いたらおながいします

辛口なんてとんでもないです
そですね、もはや猟奇ギャグですよね・・
二次でリョナやるなら、いかに原作のふんいきそのまま地獄に落とすかですね

勉強になりました。ありがとうございました。
125 ◆5xcwYYpqtk :2010/10/24(日) 19:12:08 ID:2khSyPmR
>>121

 祐巳さまと瞳子が、廊下で大喧嘩をしたというニュースは
翌日の午前中までには、高等部中に広まっていた。
 しかしながら、正確な『事実』を把握しているのは、現場にいた者など
ごく少数であり、中には紅薔薇のつぼみが松平瞳子にロザリオを渡して妹にした、
といった盛大な勘違いをした生徒までいた。

 乃梨子は、大半の女生徒とは違って噂話をするのは好きではない。
それが自分と関係の深い人間であれば尚更である。
 しかし、クラスメイトのほとんどがこの話題にかかりっきりとあっては、
否応なしに耳に入ってこざるをえない。

 更に面倒なのは――

「乃梨子さん、少々よろしいかしら」
「はい?」
 ホームルームが終わった直後、教科書を片づける手をとめて見上げると、
すぐ近くに、あまり親しくないクラスメイトが立っている。

(さて、だれだったかな)
 名前すら思い出せない、どちらかというと地味な生徒は、乃梨子の顔を
見ながら尋ねてくる。
「乃梨子さんに紅薔薇のつぼみと瞳子さんのことについて聞きたいのだけれど」

 またか。
 乃梨子は、ため息をつかざるを得ない。
 なにしろ今日だけでもう5組目である。
 相手をするのも疲れるうっとうしい集団ではなくて、一人で聞きに来るのは
評価しないでもないが、いずれにせよ、祐巳さまと瞳子のいざこざを、
興味本位の第三者に話す訳にはいかない。

 乃梨子は意図的に冷めた目つきと、興味のない口調をつくり
「悪いけれど、何もいうことはないから」
と言ったきり、その生徒を見ることなく教科書を仕舞う作業を再開する。

「……」

 すげなくあしらわれて戸惑う生徒に対して、追い打ちをかけるように、
片手で追い払う仕草をしてやると、乃梨子から聞きたすことの無駄を悟ったようで、
不満げな顔つきのまま、その生徒は自席へと戻っていった。

「さてと、帰るわけにはいかないか」
 その生徒の姿が見えなくなった後、鞄にノートを差し入れながら乃梨子はひとりごちた。
 今日は流石に、薔薇の館にいかないといけない。
 二日連続でさぼっては、姉である志摩子さんの面目を潰してしまう。

「よっこらしょ」
 乃梨子は、いささかおばさんぽい掛け声をかけて、ゆっくりと立ち上がった。
126名無しさん@ピンキー:2010/10/24(日) 19:13:35 ID:2khSyPmR
「ごきげんよう」
 薔薇の館に到着すると志摩子さんはまだ来ておらず、黄薔薇のつぼみである
島津由乃さまがひとりで紅茶を飲んでいる。
 由乃さまは、乃梨子の到着に気が付くと唇からカップを離した。

「ごきげんよう乃梨子ちゃん。ちょうど良かったわ。少し話があるの」
「祐巳さまと瞳子のことですか」
 先回りをしてみるが、由乃さまは首を横に振った。

「違うわよ。あなたと祐巳さんのことよ」
「何でしょうか」
 乃梨子は、心持ち緊張して身構えた。
 まだ付き合いは浅いが、どうも由乃さまは勘が鋭いようだ。
 警戒することに越したことはないだろう。

「乃梨子ちゃん。昨日、泣きじゃくった祐巳さんを連れて行ったよね」
「どうしてそれを御存じなのですか?」
 雨中とはいえ、下校中の生徒もいたから誰かに聞いたのだろうが、
一応、話の出所を聞いてみる。

「そんなことはどうでもいいの。私の聞きたいのわね」
 由乃さまは、乃梨子の質問を遮って言った。

「祐巳さんがロザリオを松平瞳子に渡した理由を、あなたは知っているの?」

「いいえ。知りません」
 予め、答えを準備しておいて良かったというべきだろう。
 いきなり尋ねられたら、しどろもどろになっていたはずだ。

「本当に?」
 半ば立ち上がった由乃様の顔が乃梨子に迫り、輝くような双眸から放たれる
視線がまともに突き刺さる。

「由乃さまに嘘をいっても仕方がありませんよ」
 乃梨子は、細心の注意を払って気の無い様子を装いながら答える。

 昨日、祐巳さまから直接、瞳子にロザリオを返す理由を聞いているが、
たとえ、祐巳さまのクラスメイトかつ友人で、同じつぼみの由乃さまであっても
事実を話す訳にはいかない。
127名無しさん@ピンキー:2010/10/24(日) 19:14:14 ID:2khSyPmR
「じゃあ、祐巳さんはどうして泣いていたの?」
「さあ…… 何か嫌な事でもあったのでしょうか」
 すっとぼけるのも中々、骨の折れることである。
「楽しいことがあったら泣かないわよ」
「そういわれましてもね…… 私にはさっぱり分からないものですから」

「嘘」

 由乃さまが短く叫んだ。

「乃梨子ちゃんは嘘を言っているわ」

「どうして、決めつけるんですか」
 嘘というのは正しいが、根拠も無しに断定されては気分の良いモノではない。

「ふん。乃梨子ちゃんも案外、抜けているわね」
 由乃さまの口の端が上がる。

「泣いている女の子を連れて行った時点で、事情を聞かないことなんてあるわけないわよ!」

 さすが、黄薔薇のつぼみというべきか。
 安易な嘘で騙し切れるほど甘い相手ではない。
 しかしながら、この件に関しては絶対に口を割るわけにはいかない。

「例え私が事情を伺っていたとしても、お話することはありませんよ」

「なっ!」
 乃梨子の冷たい拒絶を聞いた由乃さまが絶句し、直後に噴火した。
128名無しさん@ピンキー:2010/10/24(日) 19:15:11 ID:2khSyPmR
「何、暢気なこといっているのよ!
このままじゃ、祐巳さんが山百合会をやめるってことになるわ! 
それがどういうことなのか分かっているの!」

 さして広くない部屋に、ほとんど絶叫に近い声が響き渡る。

「私はまだ新参者ですので」
 売り言葉に買い言葉ではないが、どうにも反抗的になってしまうのは何故だろう。
 こんな調子では、生意気な後輩と思われても仕方がない。

「いい。祐巳さんはね。紅薔薇のつぼみなの。来年は必ず紅薔薇さまになる。
つぼみが薔薇さまにならないなんてことは、絶対にあってはいけないことなの!
高校からリリアンに入ったあなたには、ピンとこないかもしれないけれどね!」

「薔薇さまの重みくらい知ってますよ」
 姉妹制度と山百合会という、リリアン特有のシステムのおかげで、
マリア祭ではとんでもない目に合わされたのだ。

「でも、あの祐巳さまをここまで追い込む方が悪いんですよ」
「どういうことなの?」

 まずい。勢いで口が滑ってしまった。
 焦った乃梨子は慌てて取り繕うように言葉を続ける。

「とにかく、祐巳さまを傷つける人は許しませんからね」

「乃梨子ちゃん。もしかして」
「あっ」
 我に返ると、直前まで叫んでいた由乃さまが、目をまるくしている。

「あなた、祐巳さんが好きなの?」
 どこか放心したような口調で黄薔薇のつぼみが呟いた時――
入口の扉が2回ノックされた。

(続く)
129名無しさん@ピンキー:2010/10/24(日) 22:31:12 ID:2khSyPmR
今更ながら、ものすごく好き勝手にやらせてもらっていますが、
不定期に続きます。
130名無しさん@ピンキー:2010/10/25(月) 14:32:31 ID:DvmWcSUD
お疲れ様です。

気長にお待ちします。
131名無しさん@ピンキー:2010/10/26(火) 16:28:34 ID:sydZsa6t
気になる引きですな。
132名無しさん@ピンキー:2010/10/27(水) 00:55:39 ID:8rYhmco1
グッジョ
キャラの人格と魅力がよく掴めていて面白かった。

乃梨子こすっからくないだけで、MachWとかやらせると高得点だろうな〜。だから聖女の志摩子と合うんだけど、その点祐巳も同じだよな。
祐巳は測定したらSDはるかに振り切るほど低いだろけど、こいつ歳を経るほど古狸になるからな。
マリみて自体が祐巳成長を描く教養小説(言い過ぎか)だし。

だから乃梨子イフは面白いけど、ただ祥子さまが壊れそうで心配w
133名無しさん@ピンキー:2010/10/27(水) 21:49:11 ID:d74go1SC
>>132
自分がいうのもあれだが、レイニーifものは祥子と瞳子の扱いが難しい。
特に祥子は精神的に弱いからねえ。
134片恋艶歌 ◆EzLBwx18Rq4N :2010/11/03(水) 13:31:55 ID:KwSDsFSV
昔投下したものの改稿です。本スレが荒れてぎみのうえ投下すると荒れそうなのでこっち落とさせてください。
某日昇萌え燃えアニメネタ、一応二部構成でまだ続きます。

……………………

1、

「へー、お前がこいつの代わりにオ×××するって?」
黒背広にワイシャツという堅気でない風体の男がふーとシケモクを吹く中女性が一人佇む麗しいと云っても良いその端正な顔に表情はまるで無い。
目だけは蒼い焔か紫の水晶のように、陰鬱たる光を湛えていた。
彼女――藤乃静留は、ずっと毅然とした面持ちだった。
「他人の代わりに犯されるとは、ねえちゃんお前も変わってやがるな。ヒャハハッ!!」


「なつき、どないしたんどす!?」
「静留……」
夕立ちの中、K府で大学生をしていた静留のもとに、びしょぬれの玖我なつきが現れたのは風華学園卒業から一年後のことである。
卒業以来、敢えて連絡もせず、ただ心の中で彼女の笑顔と幸せを想って胸を温めていた。
それが「想い人」として、あの出来事のけじめだと思っていたら。
が、突然の来訪に驚きながら、兎に角なつきを下宿のアパートにあげ、シャワーを浴びさせる。
初めはずぶぬれで死んだような目で震えていたなつきだったが、静留の服に身をくるむと、やがてぽつぽつ語り始めた。有り触れた浪花節である。

「あいつ、初めは良い男だったんだ。それが……」

祭りが終わって。
なつきは一番地との戦いなど忘れて幸せな日常を暮らせる、はずであった。
しかし、ある日、風華町の隣の繁華街、月杜に今は友達の奈緒と遊びにでてきたなつきは、ホスト風の若い男にナンパされる。
一番地との決戦に身を捧げていたのはもう過去だ。
まずイケメンと言ってよい甘い顔とオシャレな身なり巧みな話術に、関心を持たないでもなかった。
なつきはその場のノリで携帯アドレスを交換し、やりとりを続けてそして、いつの間にか男と付き合うようになっていた。
身体を許す間柄までそうは必要なかった。彼女もごくごくふつうの女の子だったのだ。

「お前こいつ打ってみろよ、サイコーにイイ気分になれるんだぜ?」

なつきは何度目かのホテルで男に言われるまま、「合法ドラッグ」というふれこみの覚醒剤をキメてしまう。
裏社会と渡り合ったクールビューティーが、実はあまりに世間知らずの小娘だった。
無論、そのまま地獄へ真っ逆さまがすぐなのは言うまでもなかった。
「私は、薬なしじゃやってけない体になって、あの男が言うままに闇金でシャブの金を……ひ、ひぐぅっ」
そこから先は声にならない。
135片恋艶歌 ◆EzLBwx18Rq4N :2010/11/03(水) 13:32:52 ID:KwSDsFSV
「なつき!」
静留はこらえきれずきゅっとなつきの体を抱いた。なつきのかくかく震える肩を胸に。
「かかか母さんの残してくれた財産はみんな押えられた。彼は姿を消し、本職が私に迫って来る。金もない私は迫水や山田に相手にされないんだ、友達だったはずの舞衣や奈緒も嘘のように冷たく私を突き放すんだ。もう、私には、お前しか……」
「大丈夫どす、何があってもうちだけは、そやうちだけはなつきを見捨てまへんえ?」
「でも、借金は、まともじゃないくらい。もうどうしたらいいか」
なつきは頭を抱え涙に濡れたまなこで静留を見上げる。
「必死でバイトしたけど、もう一日の利息分にもならないこのままだと、組の系列の本番デリヘルで体を売るしか……」
静留はなつきを胸に、あやすように云う。
「安心しぃ……そんなんうちが話をつけますさかい。簡単どす。だってなつきは、かならずうちが守りますから。せやから安心するんや」
「しずる……ううっ、うわあああああああああああああああああああああっ」

こうして、静留は「月杜興業」のビルの中にいた風華町からJRで一駅、繁華街月杜。かつて奈緒が出会い系の援助交際で男たちを手玉に取ってきたネオンの輝くその一角にそれは聳えていた。
136片恋艶歌 ◆EzLBwx18Rq4N :2010/11/03(水) 13:33:59 ID:KwSDsFSV
「ねーちゃん、悪いんやけど、その嬢ちゃんのつくった借金は五本(五千万円を指す)や。こりゃ内臓売るしかあらへん」

ニタニタ笑いながら、見るからにヤクザとしか言いようがない男たちが、数人で二人を取り囲んでいる。
小娘一人のシャブ代がマンションが代える程の額に膨らんだ錬金術については、当たり前で口にするのも馬鹿らしいという風体だった。
「ヤミ金の追い込みナメとるわけやないやろ?」
パンチパーマが鞘から抜き取り出した日本刀をわざとなつきの肩に触れるようぶんと振ってみせる。
「手足切り落として南米にでもうるのもええ!!」
「――何とか、猶予してもらえんやろうか?」
腰からがくがく震えるなつきを背中にかばって、静留が動じた色をまるで見せず口を開く。
「任侠道」の額の下でふんぞり返った、目つきのイカれた男がにたぁと笑った。
「なんや、ねーちゃん。いきなり乗り込んできて随分やがワレが借金の肩代わりでもするいうんか?」
「いや、それは……」
「せやな。他人のためにそんなことするアホなんぞおるわけあらへん、なら黙っとけ」
静留は、硬直した。


「 他 人 」

「他人」?なつきが「他人」やって?違う。嘘や。嘘どす。だって、うちはなつきのため、なつきも、うちはなつきのためやったらなんでも……
137片恋艶歌 ◆EzLBwx18Rq4N :2010/11/03(水) 13:35:39 ID:KwSDsFSV
「うっ……」
突然、なつきが体を折る。そのまま嘔吐する。
「うおげええええええええええええええええええええうげえええええええええええっ!!」
「なつき!!」
「ああ、こら禁断症状やな〜」
「うう、しず……」
「しっかりし!」
なつきは白目を剥いてびくびくと痙攣するのみだ。
「こりゃ、どーしようもないポン中やな! よぉしなんならシャブ打ったろか? そん代わり嬢ちゃんにお×××してもらうけどな」
男たちが下卑た笑いを起こす。
嘲笑の中静留は真っ直ぐな眼差しでそんななつきを強く見つめていたが、やがて我に返り目の前の男に言い放った。
「わかりおした。よろしおす。なつきの借金を肩代わりします」
「ほう!」
男が興味深げに答える。
「ねえちゃん、簡単にゆうが、テメエ、それがなに意味すっか、分かってんのかコラ? あ?」
「あんた男を売る商売やのに、やたらおしゃべりやな。オカマはんどすか?」
「なんやと……」
静留はひるむどころか不敵に笑んで。
「小娘相手にせこいシノギどすな。うちがおなごはんを扱う手本みせたる。人身売買やら臓器売買やらなんかしらへんが、バラすならなつきやない、うちやで!
うちの内臓を売ったらええ、うちをダルマにでもなんでもしたらええ、やるならなつきやない、うちや!うちはもう腹ぁ据わってますえ!!」
「おもしれえっ!!」
一瞬たじろいでいた男はにいと口の端を歪めると、
「よっしゃ!わりゃAVでんかい!!」
「AV?」
「そや。裏ビデオや。あんたには一肌脱いでもらう」
その言葉が静留の脳裏を突き抜けた。

(AVやって……それは、つまりうちが男はんに、それもどうしようもない下司どもに、
カメラの前で何度も何度もあられものう犯されるいうことどすね……)
その光景を想像し、一瞬、戦慄にも似た憎悪と羞恥がこみ上げてくるが、静留はすぐにかぶりを振ってそのイメージを消した。
138片恋艶歌 ◆EzLBwx18Rq4N :2010/11/03(水) 13:36:58 ID:KwSDsFSV
「おい、さっきの勢いはどしたんや?ほんまならAVくらいでどうにかなる額ちゃうが、あんたの女気に惚れてこうするんや……どないする、姐御?」
にやつくヤクザに、チンピラが一人男に耳打ちした。
「若頭、いいんすか? そんなもんで許しちまって」
「アホ、この女はシャブ中や。この先これから幾らでも絞れるでえ」
「へえなるほど」

「わかりおした。それでなつきの借金帳消しにしたれや」
ずっと震えるだけだったなつきが、静留の腰にしがみついた。
「だ駄目だ、静留! お前にそんなことさせるなんて、できるわけ……」
「ええんよ、なつき、あんたのためなら、うちは……」
振り向き、慈母のような瞳でなつきをみつめて頬を撫でると、再び男を睨む。
「さあ、あんたこれでもまだなんか文句あるんどすか!?」
「ええ度胸やないか。よっしゃ、わりゃ気に入ったで! よしワレまずは身分証と契約書やな……」
「静留、静留ぅ!!」
「うちの体なんかで……体なんかで済むなら、好きにすればええ……」
言葉には迷いがなかった。

「それじゃ、脱いでもらおうか」
「監督」が言う。
「ああ、分かってると思うけどこれね『裏』だから顔はもち、アソコもモザイク入んないから」
「はい」
厚化粧をした静留は言われた通り、水色のツーピースを脱いでいった。
雑居ビル地下、三脚に立てられたビデオカメラや照明がどぎつく美しい静留を照らす。
撮影が始まった。
カメラは体のラインを強調するキツメのスーツに身を包んだ静留をじっくり見据え、やがて服が脱がれていく。
静留は元来の美貌に塗りたくったいかにもお水な化粧が意外によく似合い、妖艶な色艶をだしていた。
顔の硬直が余計に見る者の嗜虐精神を煽った。
一枚一枚脱いでいく。
上は下着だけになる。「監督」からは艶めかしい顔を要求されているが、静留はあくまで無表情だ。
だが、それでかえって美貌に何とも言えぬ陰翳を与える。
139片恋艶歌 ◆EzLBwx18Rq4N :2010/11/03(水) 13:38:17 ID:KwSDsFSV
「つぎはおっぱい出しな」
「…………」
レースのブラを取り、トップレスになると、豊満な乳房がたぷんと揺れた。
おわん形の美乳で、乳輪もやや大きく、二十歳を迎え女として成熟し切っていた躰だった。
撮影の男たちが生唾を飲み込む。
「次」
言われるままスカートを脱ぎ、現れた紫色のショーツも、何の躊躇もなく、思い切りよく脱ぎ捨てた。
スポットライトを全身に浴びて、静留は生まれたままの姿で立っていた。
「へー、そそる体してるねえ♪それであんた何で処女なの?」
「監督」が涎をたらさんばかりに称賛する。周りでは男たちがストロボをたく。
「はやくやってくれへんか?」
「……へいよ、おい」
金髪のガングロ男優が静留にまとわりつく。
「んっ……」
そのまま静留のうなじに吸いつく。
「はい、本番スタート!!」
カメラが回される。
「へへ」
男はぺろぺろと静留のくびや胸を舐める。乳首に吸いつき、手で胸を揉む。カメラの前で静留はなすがままにされていた。
140片恋艶歌 ◆EzLBwx18Rq4N :2010/11/03(水) 13:38:47 ID:KwSDsFSV
「どう、気持ちいい?」
「…………」
豊かな乳房を弄ぶと、男優は静留の股間を触り始めた。静留の、決して他人に見せるべきでない襞が衆人の目にありありさらされる。
穢れを知らない静留の女性はピンク色ではきゅっと肉襞を閉じている。
そのお×××を指でなでまわし、びらびらを弄り、クリトリスを揉みくちゃにする。
男優はそのままキスを迫るが、静留は顔をそむけて拒んだ。
「恥ずかしがり屋なんだね〜、それじゃ御開帳しようか♪」
「監督」の合図で、カメラがズームアップして股間を捉える。
両足が、大きく開かれた。静留は、曝け出していた。静留のお×××が、ドアップで丸出しだった。
「ほーら、びらびら〜」
男優は静留のラビアの襞を掴むとおっぴろげにした。膣口が見える。
やや濃い目の茂み、大きめで包皮からはみ出したクリトリス、肉厚だが清楚な香りを湛えるくちびる、かたく結んだ菊門。
静留は膣から肛門まで文字通り丸見えで、何もかもさらけていた。
「えへへヴィオーラちゃん(女優名、本人希望)のお×××、すごくエロいよね? これ見てるみんなもう先走り汁があふれてるんじぇねーの?」
「…………」
「それでヴィオーラちゃんは処女なんだってね」
そう男優は金歯を剥いて笑うと、指を静留の膣に挿入した。
「んん!」
指が二本、静留の中に入っていく。
「うわ、この娘マジで処女だよ。アホくさ、つかキモ……」
抜いた指からは、果たして純潔の証が滴っていた。涙。
のように。

「んん、ん……」
ぴちゃぴちゃと男優の愛撫が続く、静留は声を漏らすが、むろん感じているためではない。
むしろカス野郎に躰を弄られ触られる嫌悪に吐き気を催していたのだ。だが、男優の目には静留が感じて喘いでいるように見える。
準備よしとみた男は、
「それじゃ、入れるよ」
男が静留を寝かせ、×××を静留の膣口に宛がう。カメラの焦点がお×××にうつる。
突き入れた。
その瞬間、静留の脳裏に「女の子」が破れる音が響いた。「糸みたいどす」とだけ思った。
亀頭が膣口を穿り、ねじりこまれていく。ゆっくりと、奥まで捩じり込まれていく。
そうして静留の処女膜は裂け、男優の太い×××が根元まで入った。
「くわ、きっつ〜」
静留はされるまま、横たわっていた。無表情で、涙すらでない。
やがて男が腰をピストンさせまくっても、身動き一つしなかった。
「あちゃー、マグロだよ。もうちょっと絶望的な貌の方が売れるんすけどね」
「なあに、それはこれからだ。6Pやスカトロが待っているんだからな」
「監督」がにやぁと笑った。
141片恋艶歌 ◆EzLBwx18Rq4N :2010/11/03(水) 13:39:49 ID:KwSDsFSV
「んぶう、ぶううう!!」
息苦しそうな、くぐもった声が漏れる。静留のふっくらした口は男の野太い真っ黒けな×××を咥えさせられていた。
計五人の男たちが静留の体に群がって、犯している。その様子をカメラが切れ目なく撮影している。
6Pの撮影だった。
「ああ、はぁ」
×××、×××、×××。
一糸まとわぬ静留は、妖艶なばかりの体に男根を押しつけられ、喉の奥でしゃぶらされていた。
体中男根を突き込まれ。
静留が短く悲鳴を上げた。菊門を突いていた×××が、根元まで差し込まれたのだ。
「オラ、しっかり握れよ」
「こっちもだ」
静留の両側には二人の男が差し挟んで×××を突き出している。静留はそれを握らりしごかされている。
静留の女性器には根元まで激しく付きこむ男根。
静留はお×××を犯され、アヌスも犯され、口腔も犯され、手淫も強制させられていた。
まさに×××ポづくしだった。
「うぶう、ぐっ」
静留は苦しそうに喘ぐ。
もともと同性愛者である静留には、×××など男性の排泄器でしかない。
それで自分の排泄器を含めた体中を犯されることは、まさしく凌辱だった。
静留は今見るも無残に凌辱の真っさ中にあった。
「うぶう、ぶううぶぶぶぶ!!」
「おら、もっと舌絡ませろよ」
「ほら、ちゃんとしごけ」
142片恋艶歌 ◆EzLBwx18Rq4N :2010/11/03(水) 13:40:28 ID:KwSDsFSV
少し離れた所でスタッフが雑談していた。
「こりゃ高く売れそうっすね監督」
「監督」が発泡酒を口に含みながらいらえる。
「おうよ、これだけ上物でハードコアな裏なんだから、日本だけじゃなく海外でも馬鹿売れよ!」
「これで実際に引くのは一本分以下なんでしょ?安過ぎっしょ」
「馬鹿な女だぜ。裏で流れりゃ二度と戻ってこねえ、ネットに上げられたら回収しようがねえってのによお。ヤクザがマジで借金チャラにする思ってんのか?」
クククと笑う。そして腐りきった目つきを濁らせた。
「おい、てめえ、注射器用意しとけ」
「え、なんすか?」
「若頭に言われたんだよ、この女も型にハメて一発カマせつーててな」
「監督」はニタァと笑った。

「いくぞ、イクイクっ!!」
「うぶっ」
静留の口につき込んでいた男が発射した。静留の頭を押さえ、腰を突き込んで静留の喉に出す。
口中一杯にザーメンがあふれ返り、男根が口腔で波打つ。
静留はあまりの苦しさにむせた。
「飲めよ、残すんじゃねえぞ」
「ぶうう」
屈辱的だが従うしかない。静留がAVに出ることによって、本来バラされるなつきのガラが解放されるのだから、彼女に拒否する権限はないのだ。
ごくんごくんと喉を鳴らしてザーメンを飲み干す。
初めての、しょっぱく苦い味わい。男の体液の味わい。
だが、静留は無表情で涙ひとつ浮かべない。浮かべては負けだと思っていた。
「こっちもいくぜ」
両側の×××の男が射精する。
静留の両手から勢いよく撃たれて、端正な顔や豊満な胸をザーメンだらけにする。
「俺もイクぅ!!」
静留の膣と肛門に突き込んでいた男が嬌声を挙げた。
そのまま、夢中になって腰を振る静留には中だしして良いよう予めピルが飲まされている無修正で中だし。あの藤乃静留に。確かにこれは売れそうな裏DVDである。
「ハァ……ハァ」
男が静留の中と肛門に同時に出した。膣口から×××を抜くと、お×××からどろりと白いザーメンが垂れてくる。
「ふー、気持ち良かった」
カメラが下がり、男たちが立ち上がる。
静留は顔も胸もお×××もケツの穴もザーメン塗れで、まさしくザーメンに塗れた日本人形のようなさまであらく息を突いていた。
そこに風華学園生徒会長としてすべての女子生徒の憧れの的だった、嬌焉のHiMEの輝きはみる影もなかった。
男共が下卑た歓声をあげる。
143片恋艶歌 ◆EzLBwx18Rq4N :2010/11/03(水) 13:41:25 ID:KwSDsFSV
「こいつの×××スゲエよ!ミミズ天井ってやつ? 襞が絡みついてきてよ!」
「こいつ男とヤルたびに熟れてくる肉体してるぜ!」
「なんで今までヤッたことなかったんだろこの女?キモいな」

静留は黙然と天井の蛍光灯の光を見詰めていた。

(なつき……うちは……なつきが、なつきんことが、す、き……)

「さて、ヴィオーラちゃんおクスリ打とうか♪」
監督が静留の腕に注射針を宛がう。
「いったい、何を……するんどすか!?」
「なに、ピルの副作用止めだよ。あれ、中田氏できるけど、あとで頭痛吐気が酷くてさあ〜これからも撮影で使うんだあ〜」
抵抗しようにも身体は抑えつけられている。有無を言わさない裡に、薬が静留の血管に押し込まれていく。
間もなく、静留は強烈な眩暈と幻覚に襲われ、意識を喪失した。

「ヴィオーラちゃん、出そう?」
「…………」
静留は無言で答えない。顔は酷く歪んでいる。真っ裸だった。肛門をカメラにつきだして。
「下剤も効いてきてるし、もう限界みたいだね、合図したら出して」
カメラが静留の尻を、肛門を捉えている。
静留は便所の和式便器に模したサラの前にうずくまって、踏ん張っていた。
「はい、スタート!!」
合図とともに、限界に達した便意が解放され、静留はう○こした。静留の肛門から奔流のようにう○こが溢れ出し、ぶりぶりと小山を作る。
う○こがほかほか湯気を立てた。普段いもぼうを食うだけあって、腰の強い量感あるう○こだった。
静留の肛門からはう○こが噴きだすように溢れ返る。そのさまを、しっかり撮影している。
ビニ本に使われるため、カメラのフラッシュもたかれる。静留は衆人の面前でう○こし、それを撮影されまでしていたのだ。
本当にう○こしていたのだ。
あの静留が衆人環視の下、ぶりぶりと排泄、すなわちう○こをしていたのだう○こをしているのだ。
……彼女にとって、本来なら死んでしまいたいくらいの羞恥であった。静留のような女性に、このような辱めは、あまりに残酷だった。
しかし、少しもつらそうな顔はなかった。
相変わらずその美貌は冷たいくらい無表情だった。
こんなこと、自分にとって何でもない。何度も犯され、輪姦され、公開オナニーまでさせられて。
けど、どれだけ辱められても、静留のこころは動じなかった。ただ、一念になつきの事だけを想っていたから。
たったひとりの、自分の、「想い人」を。
なつきが救われるんやったらこんなことくらいどうでもええ。――そう思っていた。
144片恋艶歌 ◆EzLBwx18Rq4N :2010/11/03(水) 13:42:40 ID:KwSDsFSV
「監督、こっちも出ました!」
「おーう♪どうだ」
「ばっちりっす。バリバリ夜露死苦!」
「さすが昨日焼き肉食いにいっただけあったよな!あ、あれうまかったでしょヴィオーラちゃんいや君はイモしか食わなかったつか食わさなかったんだっけw」
「監督」が合図し、皿を提げた男が寄ってくる。
皿の上には、ほかほかと、男が今だしたばかりのう○こが載っていた。
「じゃ、静留ちゃん。こんどはコレ食べよか」
「監督」がニタァと笑った。

カメラが再び回される。皿いっぱいのう○こを静留は食わされていた。
よつんばいになり、う○この山に顔を突っ込む。
すぐ静留の端正な顔の色白な膚や艶のある茶毛にう○こがべっとり付着した。
静留の鼻腔にう○こを間近に凄まじい臭いが突いた。
だが、静留は顔一つ歪めず、黙々とう○こを貪り食っていた。う○こ食っていたのだ。
「おえ、この女マジで食ってるよ……臭っ」
「何考えてんだろ。頭おかしんじゃね?マジでキモいぜ!」

静留はたっぷり二十分かけてう○こを平らげた。
つぎに自分が出した山盛りのう○こを、同じように食わされた。そうしてタオルを渡され、顔についたう○こを拭う。
「シャワー浴びてきて、それからまた撮影だから♪」
145片恋艶歌 ◆EzLBwx18Rq4N :2010/11/03(水) 13:45:03 ID:JWp3Pvp1
「ぶぃおーらちゃん(再記女優名、本人希望)は、京○大学の現役生だってね」
男優が裸の静留を後ろから抱き、乳房を弄りながら問いただす。
「そう……どす」
静留は吐き気を催して、男を殴り殺して撮影スタッフも皆殺しにしてそうしてその場を去りたい思いであったが、必死で抑えて答えた。
「じゃ、男性経験はどうだったの?」
「今回が初めてどす」
男がオーヴァーに驚いて見せる。
「マジで!? こんなに綺麗なのに今時珍しいね!!」
「…………」
「じゃさ、どう、お××(関西弁)されるのって好き?」
「大好きどす」
静留は機械的に台本通りの矛盾したセリフを口にしていく。
「じゃ、自分で指でお××こ広げて、『ぶぃおーら(ryのお××見ておくれやす』って言ってごらん」
静留は指を襞に宛がった。
「……ヴィオーラのお××見ておくれやす」
静留は言われたとおり自分でラビア襞を拡げた。カメラが静留のお×××を余さず撮る。
これは当然、無修正で裏ビデオショップ、ネットのエロサイトを通じ、日本全国、いや世界中に流されるのだ。

「静留、じゃなかったヴィオーラちゃんがんばってね。今回は三本出演で特別に借金とめるんだから、まだまだこれからだよおおーん♪」
監督がはやし立てる。

こうして、約一カ月間に渡っての凌辱地獄の最中にあった。


「――どういうことどすか!?」
「どうもこうもねえ、またその嬢ちゃんがシャブ食っちまったんだよ」
すっかりヤツレテ元のビルに戻った静留は目の焦点が合わないなつきに取りすがった。
「なつき、うちのことわかりますか!?」
「…………」
なつきは涎を垂らしている。
「アフ○ニスタンと北○○直輸入の上物やねん。この二週間で嬢ちゃんは販売価格で三本分ほど食ったんや」
若頭が、相変わらずのイカれた目つきをして、ぷはーとシケモクを吐いた。
「せっかくAVでてもらってわりいんやけど、これで嬢ちゃんはガラ捌くしかないさかい!」
「うちらをハメたんやな」
ようやくヤクザどもの汚さを悟った静留は、すっくと立ち上がると、持参した短刀を手に取った。
「てめえ!」
ヤクザが一人突っ込むが、かるく避けられ、一撃を受ける。男たちが一斉にドスやヤッパ、ハジキを握る。
静留は血走った目で「殺したる!殺したる!殺したる!ころころころころころころ、頃コロ殺す!!」

「ほーやるじゃん。でもよお」と若頭は、余裕の笑みを浮かべ。
146片恋艶歌 ◆EzLBwx18Rq4N :2010/11/03(水) 13:46:01 ID:JWp3Pvp1
「ねーちゃんも、もうシャブ中になっちまたんだろぉ?」

短刀を持つ静留の手が震えていた。歪みきった顔には脂汗が。
「禁断症状がでてるんだろ? 心配すんな。あんたにもお××のツケでシャブ打ってやっからの」
「……ふざけっ」
「いくら暴れたところで、ポン中二人じゃどうやっても先がねえぞ。もっかいAVでるか、内臓売るんだな」

「――済まない、静留」
なつきがぽつりと言う。
「ええんよ、なつき」
静留は優しく微笑んだ。聖処女のような笑みだった。最期は綺麗でいたいから。二人はなつきの部屋で、一緒にシャワーを浴び、洗いたての服に身を包んだ。
二人よりそって触れ合う。そして何時間も語り合っていた。
はじめてであったときの事。
学園での日々。今迄の二人の思い出。
「うちは、なつきと会えてほんまによかった。何度生まれ変わっても、おんなじことをすると思う。
だから気にしなや。うちはずっと、ずっとなつきといっしょやさかい」
「静留……」
なつきはうつむいて少し震えると、
「最後は、静留がいい、たのむ」
静留がドスを抜く。そして、一思いになつきの胸を刺し貫いた。鮮血が二人のHiMEを染めた。思い出のあの花が散るように。

(ふふ、綺麗な花は……愛でるもんどす、ね?)

「なつき……すぐうちも行きますさかい。うちらはいつまでもいっしょや……」
倒れ伏すなつきを見、そう言い残して、静留は胸にドスを突き立てた。

(第一話、終わり)
147名無しさん@ピンキー:2010/11/07(日) 23:37:25 ID:FBlPgr0E
>>146
別に巧拙はどうでもいいから新作を読みたいというか、改稿をおとしても(本人にとって)何の意味もない。
148名無しさん@ピンキー:2010/11/15(月) 18:46:53 ID:aBPbZbNU
書きたいけど、もう言霊が下りて来ない。言語的センスは変わらないから改稿はできるが。
急性期になったら書けるかもしれない。
149名無しさん@ピンキー:2010/11/16(火) 01:16:43 ID:GdEOogMu
下地となる世界観はあるが、それらの本来もつ持ち味から
遠くかけ離れたイメージなオリジナルSSで、しかも、かなりな長編が浮かんで…
とても携帯からは書き上げ切れるか、不安もあるし。
って事でずっと保留にしているのが何本かある…
150名無しさん@ピンキー:2010/11/18(木) 21:11:22 ID:Zwn4iGTK
マリみてゆみのりの人、
書き溜めたのpixvとかどうだろう
151 ◆5xcwYYpqtk :2010/11/28(日) 22:40:31 ID:AM4vpm2A
>>128の続き

 由乃さまは口をつぐむと同時に扉が開き、黄薔薇さまこと支倉令さまが入ってきた。
「ごきげんよう。黄薔薇さま」
「ごきげんよう。由乃。乃梨子ちゃん」
 黄薔薇さまの登場で、張り詰めていた空気は一時的にしろ弛緩する。

 乃梨子は立ち上がってから、黄薔薇さまの目の前にカップを置き、少し温くなった
紅茶を注ぐ。

「ありがとう。乃梨子ちゃん」
 黄薔薇さまは、下級生の半数近くを虜にさせるであろう笑顔をみせた後、
乃梨子に尋ねてきた。

「志摩子はまだみたいだね」
「はい」
 乃梨子が頷くと、黄薔薇さまベリーショートの先端を撫でながら質問を重ねる。

「委員会かな?」
 志摩子さんは、環境整備委員会に所属しているから、時々薔薇の館に来ることが
遅れることがあるのだが。

「いいえ。今日は委員会は無いはずですが」
「そっか」

 乃梨子の答えに頷いた黄薔薇さまを見つめていた、由乃さまが口を挟む。
「令ちゃんは知っているの?」
「何を?」
「祐巳さまと松平瞳子のことよ」
「ああ…… 学校中の話題になっているからね」

 黄薔薇さまは頷いたが、あまり乗り気でない口調だ。
 しかし、由乃さまはこの話題を打ち切る気持ちはないようで。
152名無しさん@ピンキー:2010/11/28(日) 22:41:40 ID:AM4vpm2A
「祐巳さんが、あの子にロザリオを渡した理由が分からないわ。
祐巳さんにとって松平瞳子は、大切なお姉さまを奪った敵なのよ」
「そうと決まったわけじゃない」
「でも、少なくとも祐巳さんはそう思っているわ」
 由乃さまの言葉に、黄薔薇さまは唇に指の先を当てて考え込んだ。

「令ちゃん?」
 暫く黙っていた黄薔薇さまは、少し苦みを帯びた表情をみせながら口を開いた。

「意趣返しみたいなものかな」

「意趣返し?」
 由乃さまは言葉の意味を測りかねて首を傾げる。

「ああ。祐巳ちゃんは、松平瞳子ちゃんに酷く傷つけられて、つまり、切れてしまった」

「祐巳さまが切れる…… ですか?」
 乃梨子がひとりごちるように呟いた言葉は、黄薔薇さまに届いてしまっていた。。

「祐巳ちゃんは、貴方が祥子の妹をやってみればと、ロザリオをあげることによって、
松平瞳子ちゃんを突き離した」

「祐巳さんが、そんな」
 震える身体を抑えようと、華奢な身体を両腕で抱きしめる。

「由乃?」
 黄薔薇さまが心配げに、妹の青ざめた顔を覗きこみながら言った。

「あ、ごめん。令ちゃん。」
「無理に話せとはいわないけれど……」
「ううん。いいわ」
 由乃さまは大きく頷いてから、説明を始めた。

「私ね。今日、祐巳さんに言ったの」
 逡巡する心を振り払うようにして、言葉を続ける。
「山百合会を捨てても、私を捨てないでって」

「捨てるって……」
 かなりきつい表現に、黄薔薇さまの声が擦れる。

「祐巳さんが、紅薔薇さまと上手くいっていないことは、祐巳さん自身から
相談を受けていたから前から知っていた」
153名無しさん@ピンキー:2010/11/28(日) 22:46:03 ID:AM4vpm2A
「でも、祐巳さんは我慢していた。紅薔薇さまに何度デートをドタキャンされても、
怒らなかった。祐巳さんはね。祐巳さん自身と、祥子さまが不釣り合いな姉妹だと
思っていたから、どんな理不尽な目にあっても祥子さまに捨てられないようにって
耐えていたの」

「由乃……」

 瞳に涙をためながら、由乃さまは言葉を絞り出す。

「祐巳さんだって聖人じゃない。いたって普通の人間よ。
相手がいくら好きなお姉さまだって、怒りもすれば、呆れもする。
だけど、紅薔薇さまはそのことを全く分かっていない」

「でも、祥子にだって事情が」
 黄薔薇さまは紅薔薇さまの親友でもあるから、声と表情に戸惑いの色がある。
しかし、由乃さまの、紅薔薇さまに対する弾劾はヒートアップばかりだ。

「紅薔薇さまは、祐巳さんに何も話していない。
自分がどうして、デートをキャンセルしたかを言っていない。
何も言わずに理解しろって言われても、エスパーでもないのに、分かるはずは無いわ」

「祐巳ちゃんは温厚で優しいけれど、無限に寛容であるはずはない……か」
 由乃さまの主張は正しい。
 黄薔薇さまも、深い重いため息をつきながら嘆くしかない。

 
 精神的な疲労による重苦しい沈黙に部屋中が包まれた時、かなり古くなった階段を
踏みしめる音が聞こえてきた。
 それも、おそらく複数だ。

「志摩子かな」
 黄薔薇さまが呟いた。

 志摩子さんと、あと誰だろう。
 乃梨子がごくりと喉を鳴らした時、踏みしめる音がやんだ。
 そして、ドアの外側から声が届く。

 黄薔薇様が『どうぞ』と声をかけると、ゆっくりと扉が開き、志摩子さんが
ゆっくりと部屋に入ってくる。
 続いて、志摩子さんから紹介されるような形でもう一人の生徒が姿をあらわす。

「!」

 由乃さまが文字通り絶句し、乃梨子も闖入者から視線を離すことができない。

 志摩子さんが薔薇の館に連れてきた女生徒は、特徴的な髪形を持つクラスメイト――

 つまり、松平瞳子だった。

(続く)
154名無しさん@ピンキー:2010/11/28(日) 22:50:38 ID:AM4vpm2A
誤記訂正

>>151の下から4行目

祐巳さま → 祐巳さん
155名無しさん@ピンキー:2010/11/29(月) 08:13:30 ID:SVi137/R
GJ
156名無しさん@ピンキー:2010/11/29(月) 23:50:23 ID:Yw+9gXsM
ゆみのりの人きてた!
相変わらずGJですわ
続きがめちゃくちゃ気になるよ
157ネタ、かえってきた真美のリリアン地獄変:2010/12/09(木) 06:38:59 ID:QefMOdeH
※おもくそナンセンスです。ドン引き注意

「これをばらされたらどうなるかしらね」
「くっ」
リリアン女学園新聞部部長山口真美の手に握られているのは数枚の写真。
それは由乃――リリアン女学園二年黄薔薇の蕾島津由乃にとっては処刑宣告にも等しいものであった。
「どこでこんなものを……」
由乃は奥歯をぎりっと噛み鳴らした。 真美の手にあるのは先程筆者が書いたとおり写真である。 だが、ただの写真ではない。
公開されれば由乃にとっても、そのグラン・スール黄薔薇支倉令にとっても、 致命傷となるものであった。
「目的は何なの!?」
由乃はきっと真美を見据えた。
「目的ですって」
真美は突然破顔した。
「ははは、おほほ、ひひひひひ」
ひとしきり笑うと真美は由乃を睨み返した。
「私はねえ、あんたたちに復讐が出来ればそれでいいのよ」
「復讐ですって……」
段々と由乃の体から力が抜けていく。
「私たち友達だったじゃない。修学旅行だって一緒にローマを歩いて……」
「友達、はん!」
真美は鼻で笑う。友達の「ふり」をしていただけなのだと。
「私の姉・三奈子はあんたたちを追い回すだけのパパラッチ野郎だった。私のことなんかちっとも見てはいなかった」
「!」
由乃は息を呑んだ。筆者がここで説明を加えよう。 リリアン女学園新聞部元部長築山三奈子はこの日から三日ばかり前に校舎の屋上から転落して死んだのである。
従って由乃の胸にある疑念が生じたのである。
「あなた、まさか三奈子さまを……」
「だったらどうなの」
真美が嫣然と笑う。その顔には狂気が張り付いている。
「とにかく、お前は私の奴隷になるのだ。このあんたと支倉令が真っ裸でセックスをしている写真をばらされたくなければねえ!!」
由乃はがくんと跪いた。その写真とは――令と由乃の艶事を映したものなのである。
さて、そこへ一人の少年が現れる。
ここで筆者が補足すると、ここは新聞部の部室である。 そして現れた少年は花寺学園生徒会長二年福沢祐麒だった。
「祐麒さんなんで!?」
「こいつもねえ、私の奴隷なのよ」
真美は補足した。
「こいつは実の姉の福沢祐巳とセックスしていたのさあ。変態黄薔薇姉妹のようにな。そしてその写真を私が手に入れたということさ」
「何ですって!?」
158ネタ、かえってきた真美のリリアン地獄変:2010/12/09(木) 06:40:08 ID:QefMOdeH
これにはさすがの由乃も驚いた。祐麒は暗に俯いている。
筆者がここで補足しておく。
読者諸氏はなぜ真美がここまで見事に写真を手に入れたのか疑問に思うむきもあるかも知れない。
真美はリリアン女学園写真部武嶋蔦子と笙子の関係を利用して盗撮を強いていたのである。
「さあ、祐麒。そこの女をレイプしな!」
真美は命じた。
「!!」
由乃の全身に戦慄が走る。命じたのである。真美は。自分をレイプすることを。
「――分かりました。真美様」
祐麒はどんと由乃を突き飛ばした。
由乃は新聞部の床に転ぶ。その上に祐麒がのし掛かった。


「やめてぇ、祐麒さん止めてぇ!!」
由乃はいやいやしながら泣き叫んだ。 ここで筆者が補足しておくが、二人はリリアン女学園学園祭の出し物で一緒に演劇を演じた仲なのである。
従ってまったくの顔見知りではないということはない。それなのに祐麒の行動は暴力だった。
「うおおおお、大人しくしろおおお!!」
ばきばき
祐麒はメリケンサックで由乃の顔面を殴った。殴った。殴った。
「ぎゃああああ!ぎえ、ぐおっ!!」
忽ち血飛沫と悲鳴が上がる。由乃は鼻骨を砕かれ、血まみれとなった。
「はあ、はあ」
「どう痛い?私の心はね、もっと痛いのよ!あんたたちを追い回して私を振り向かなかったあの女が憎いのよ。
私が殺してやったあの女のことが憎いのよ。それ以上にあんたたち黄薔薇姉妹が憎いのよおおおお!」
真美は三奈子殺人をそっけなく自白すると祐麒にさらに由乃を殴るように命じた。
「オラオラオラ!!」
「ぶぎゃ!ぐぎゃ!ぐぎゃああああああっ!!」
再び血飛沫が舞い上がった。
「由乃さん、すまない!だが、こうしなければ!俺と祐巳の秘密がばらされてしまうんだ!許してくれええええ!!」
やがって由乃の顔はパンパンに膨れあがっていった。
「はぁはぁ……」
すっかり瀕死の由乃を真美はさも楽しそうに見下ろす。
「それじゃ祐麒、その女を犯しな」
「はい、真美様」
祐麒がズボンを脱ぐ。そして×××が露わになった。 なんと!その×××は縦に切られてスパナのようになっていた。
159ネタ、かえってきた真美のリリアン地獄変:2010/12/09(木) 06:41:03 ID:QefMOdeH
※こんなふうになってます(十八禁!)


/|  |\
| |_| |


「『殺し屋1」って漫画知ってるか?肉体改造だよ。私がこいつの×××切ってやった」
真美はにこにこしながら言う。ちなみにこうするとかえって感度がよくなるという。
「それじゃ、そのメス豚の×××を犯してやりな」
祐麒は既に動けない由乃のスカートとパンティを脱がすと由乃の女性が露わになった。
そこは清楚ないでたちだが既に処女ではない。 黄薔薇支倉令とのセックスで既に開通している。 そこに祐麒は奇形の×××を近づけた。
「あ、あ……」
祐麒の×××が由乃の×××に挿入される。
そのまま祐麒はすぱんすぱんと腰を打ち付け始めた。 ぱんぱんと淫靡な音が響く。――やがて精子が中だしされた。

由乃の地獄はこれで終わらなかった。

真美は祐麒に命じてその後も由乃を犯させ続けた。 当然コンドーム無しの中だしである。
やがて由乃のお腹は大きくなった。生理はとっくに止まっている。 妊娠したのだ。
由乃とリリアン女学園二年紅薔薇の蕾福沢祐巳が同じく膨らんだ腹を伴ってリリアンの校舎から飛び降り自殺したのはこのしばらく後のことである。

だが、それはまた別のお話。

オシマヒ
160名無しさん@ピンキー:2010/12/10(金) 21:30:59 ID:0zEGv3Yb
tesu
161名無しさん@ピンキー:2010/12/11(土) 01:37:20 ID:6qyT/WVx
>>159

(゚д゚ )乙 これは乙じゃなくてポニーテールなんたらかんたら
162リリアン地獄変:2010/12/11(土) 23:13:33 ID:B6LS6ASp
もっとグッジョブください
自分でもこれはネ申SSや思いますた
神にあんたがた失礼やで!
163名無しさん@ピンキー:2010/12/12(日) 04:32:16 ID:/PwVc/hg
>>162 焦るな焦るな。

ジャンル知らずや、通りすがりが見てる場合もあるんだから…
或いは、原作のタイトルに失礼かもよ?
果報は寝て待て、とも言うし。




まあ、いつかのTVでやった年輩者アンケートで、
「これは実際の世の中には当てはまらない格言だったな、と思う格言」
第1位だったがな…

ともあれ、俺は一番初めからレイニーブルー辺りまでと、そこから少し読んで知ってるんで…

神様GJ!!!!!!!!
164続!ネタ、リリアン地獄変:2010/12/12(日) 23:36:56 ID:/+CPSWAB
祥子「た、種ぇ!!」
突然、瞳子の前に放り投げられる祐己。
「? お姉さま、どうせよと」
「紅薔薇さまは瞳子と祐己さまに、この場で女女(ゆり)の契を結べと申しておりまする」
ゆみ「女×女(ゆり)……」
ゆみ「おいたわしゅうございます!!」
リリアンの蕾にとって純潔とは胸に下げるロザリオのようなもの。それを実の姉が土足で踏みにじろうというのだ。
「……可南子ちゃん、みんな、どうしてとーせんぼするの、と、通しなさい!!」
可南子&雑魚薔薇「ロサキネンシスのお言いつけにござる」
「舌を噛んで死のう……」
薔薇の館のテーブルによってたかって抑えつけられ、公開セックスを迫られた祐己に逃れる術はない。
曖昧な状態の祥子には何人たりとて逆らえぬのだ。犯されそうになる、だが……。
「お待ちください、祥子様」
祥子「……」よだれを垂らして、刀に手をかける。
「今ここで事に及べば祐己さまは命を絶たれましょう。この儀、スールの契ののち改めて……」
祥子「う、生まれたぁ」
「うわあああああああああああああああああああああん!!」
赤子のように泣く祐己。妹候補は泥沼化に見えた。
祥子「優さん、祐己のスールにはどちらが相応しいかしら?」
柏木「可南子かと。可南子は祐己さまは敬っておりますれば」
祥子は突然日本刀で柏木のお口をスパッ!
祥子「祐己と申したか……あ奴さえまともにスールを作っておれば……」
柏木「…………」口を裂かれて口がきけない。血がだらだら。
祥子「互角と申すか……」
祥子「そうじゃ。凸には従姉妹同士のスールがおったな。細川可南子と松平瞳子、黄薔薇姉妹を討ち取った方を妹にする!!」

「「ぬふぅ!!」」
其の日も支倉令と島津由乃は同時に達した。相手をした剣道部員の体は青痣だらけであり、骨を折られたものもいる。
だが誰がそれをとがめられよう。
この二人こそリリアン最強の剣士黄薔薇姉妹なのだ。
由乃「令ちゃん、そろそろ妹でもつくって、凸を安心させてやろうかしら」
令「俺とお前の相手をする妹じゃからのう」
「「わっはっはっは」」
「! む」
「何奴!!」
穢れを清めるためマリア像前に立ち寄った二人に立ちはだかる人影。
瞳子「われらもののふに非ず」
可南子「いばらの森の鎌鼬なり」
165続!ネタ、リリアン地獄変:2010/12/12(日) 23:37:47 ID:/+CPSWAB
令と由乃が背中を合わせて抜刀する。其の間合いに入る事は死を意味する。
令「どうした日が暮れようぞ」
由乃「紅薔薇姉妹?」

可南子がすっと刀を担いだ。
凸「紅薔薇が担いだら用心せい」
由乃「遠い、遠すぎるわ!」
紅薔薇には「流れ」という特殊な握りがある!!
可南子は刀を振りながらつかさきに握りを移動していたのだ。
由乃が討ち取られた時令にも異変が見えた。
柏木「両名とも仕遂げましてござる」
祥子「よ、蓉子ぉ」
この後後継スールは瞳子に決定したかに見えたが、祥子の姉水野蓉子と密通していた瞳子は、
秘剣「流れロザリオ」により流目を潰される。
百合道はシグルイなり。
166名無しさん@ピンキー:2010/12/22(水) 23:15:45 ID:Ahazccl+
コメントに困るわw
167 ◆5xcwYYpqtk :2010/12/25(土) 20:47:10 ID:PAnp/vfr
>>153の続き

「ごきげんよう。みなさん」
 瞳子の一歩前で挨拶をする志摩子さんの声色と表情はいつもと全く変わらない。
 しかし、『普段と変わらない』という不自然さに、乃梨子は怖気とまではいかないまでも、
違和感を覚えざるを得なかった。

「し、志摩子…… どうして」
 志摩子さんと斜め後ろに控える瞳子を交互に見ていた黄薔薇さまが、
最初に絞り出すようにして声を出した。
 動揺が隠せないようで、あからさまに顔が青ざめている。

「何がでしょう? 黄薔薇さま」
 しかし志摩子さんは、表情をかえないまま小さく首を傾けてみせるだけだ。

「志摩子さん! どうしてこの子を連れてくるのよ!」
 案の定といって良いだろう。
 志摩子さんのあまりにも平然としている態度に苛ついて、刺々しい声で会話に割り込んだのは
普段から血の気の多すぎる由乃さまだ。

「何故と言われても」
 鈍感なのか、それとも平静を装っているのかは分からないが、噛みつかんばかりの
勢いの由乃さまに向けて、志摩子さんは微笑みすら浮かべて言った。

「まずは、彼女を紹介させていただけませんか」
「知っているわよ…… 全員ね」
 頬づえを付くという、いささかリリアンの生徒らしからぬ態度で、由乃さまは毒づいた。

 確かに、瞳子はこれまで何度となく薔薇の館に足を運んでいるので、
今更紹介をする必要はないと思うのだけど。
168名無しさん@ピンキー:2010/12/25(土) 20:47:53 ID:PAnp/vfr
「でもね、今日は正式に紹介させていただく必要があるの」
 志摩子さんは由乃さまの憤りを軽く無視して言うと、後ろに佇んでいる縦巻きロールの
少女を一度だけ振りかえってから話しだした。

「松平瞳子ちゃんです。暫くの間、薔薇の館の仕事を手伝ってもらうつもりです」

「志摩子…… 何故?」
 かなり険しい顔をした黄薔薇さまが、志摩子さんの顔を睨みつけるようにして再び尋ねる。

「黄薔薇さま。ご存知のように、今、山百合会はかなりの人手不足であり、
どうしても仕事が滞ってしまいます。この状況を打開するため、
瞳子ちゃんには助っ人として山百合会の仕事を手伝ってもらうようお願いしました」

「……」
「期限についてですが、とりあえずは祥子さまが復帰されるまでと思っています」

 志摩子さんは、上級生である黄薔薇さまに憶することなく堂々と言った。
 つい先日、乃梨子を初めて薔薇の館に招いた時にみせた、ガラス細工のような壊れやすさや、
不安定さなんてカケラもない。
 志摩子さんの変化は、本来なら乃梨子にとっても嬉しいはずだ。
 しかし、今日の志摩子さんのあまりにも平然とした振る舞いを見ると、どうしても
不安に苛まれてしまう。

 それでも確かに志摩子さんが言うとおり、現状の山百合会の人手不足は深刻だ。

 もともと薔薇さまとつぼみあわせて6人全員が出席していても、仕事量からみて
人員は不足気味なのに、現状は悲惨の一言に尽きる。
 紅薔薇さまは、薔薇の館どころか学校すら早退することが多い。
 祐巳さまは、大雨の中で泣いた日以来、薔薇の館に足を運んでいない。
 黄薔薇姉妹にしたって、姉妹ともども剣道部の活動があるため、薔薇の館に毎日来れる訳ではない。

 残された白薔薇姉妹だけでは、膨大な仕事量をこなせるはずはない。
 本来なら、メンバーの誰かが臨時に助っ人をスカウトしてくるのは、問題はないどころか
大歓迎なはずなのだが――
169名無しさん@ピンキー:2010/12/25(土) 20:48:59 ID:PAnp/vfr
「志摩子さん。どうして、この子なの!」

 由乃さまのヒステリックな叫びに、今回は乃梨子としても同意せざるを得ない。

 なぜ、よりによって瞳子なのか?

 しかし、志摩子さんは美しい顔を崩すことは無く、微笑みすら浮かべて言葉を返す。
「由乃さん。瞳子ちゃんと祐巳さんとのことは私も知っているわ。だからこそ……
彼女に来てもらったのよ」
「どういう意味よ?」
 由乃さまは訝しげな表情を浮かべて、志摩子さんを睨みつける。

「確かに祐巳さんと瞳子ちゃんはすれ違いが起きたけれど、一方的に瞳子ちゃんが悪いわけではないわ」

「何よ。志摩子さんはこの子の味方をするってわけ?」
「味方とか敵とかそういう問題ではないわ」

「志摩子。そんなことを急に言われても困るよ」
 険悪な空気を少しでも和らげようと、黄薔薇さまが努めて穏やかな声をだして志摩子さんに言った。

「私の独断で、瞳子ちゃんをお手伝いに呼んではいけないのでしょうか?」
「それは当然でしょ」

 しかし、志摩子さんは黄薔薇さまに即座に反論する。

「私が初めて薔薇の館に伺った時のことをご存知ですか?」
「それは、お姉さまから聞いたけれど……」
 黄薔薇さまはどことなく不安げな表情で質問に答えた。

「当時の白薔薇さまであるお姉さまは、私を薔薇の館に呼んで、お手伝いを依頼することを
蓉子様や、江利子様から知らされていませんでした。
 それでしたら、今の白薔薇である私が、黄薔薇さまに
事前の通知なく、お手伝いの方を頼んでも何ら差し支えがないのではないのでしょうか?」
170名無しさん@ピンキー:2010/12/25(土) 20:50:04 ID:PAnp/vfr
「それは……」
 志摩子さんの容赦のない正論にねじ伏せられて、黄薔薇さまは押し黙る。

 そんなことがあったのか――

 過去のいきさつを唐突に知ることになった乃梨子は、小さなため息をついた。
 もしかして、志摩子さんが妙に強気になっているのは、過去の自分と、
今の瞳子を重ね合わせているのだろうか。

「分かった。志摩子。瞳子ちゃんにお手伝いをお願いしよう」

 結局――
 黄薔薇さまはどこか諦めにも似た表情で、瞳子の件を承認することになった。

「令ちゃん!」
 由乃さまは立ち上がって叫んだが、黄薔薇さまが認めたからには、これ以上反対しても
意味がなく、わき上がる怒りを無理やり抑え込んで腰を下ろすしかない。

「それでは、瞳子ちゃん」
 全員の承認を貰ったと判断した志摩子さんは、一歩後ろに佇む瞳子に振りかえって
皆に挨拶するように促した。

「松平瞳子です。白薔薇さまのご依頼により、本日より薔薇の館のお手伝いをさせて
頂くことになりました。皆さまのご指導の方、よろしくお願い致します」


 瞳子のかしこまった挨拶を聞きながら、乃梨子は暗澹たる気持ちに陥らざるを得ない。

 祐巳さまは、例えお手伝いといえども瞳子が薔薇の館に常駐するようになったら、
益々戻ってこれなくなるに違いないのだから。


(続く)
171名無しさん@ピンキー:2010/12/25(土) 23:37:13 ID:WUkE6jo9
女の園にしかあり得ないどろどろ感ですね。

GJ&メリークリスマス。
172名無しさん@ピンキー:2010/12/27(月) 01:50:05 ID:OMrMyOdk
gj
173名無しさん@ピンキー:2010/12/28(火) 00:45:13 ID:Gl36e0Cx
GJ超GJ
続き待ってるよ
174名無しさん@ピンキー:2010/12/28(火) 22:35:55 ID:Ybp/MIDJ
gj
でも今年も喪の俺がむなしい(つ_^)
175代紋 TAKE2 外伝 ◆hS9ZjLM/uE :2010/12/31(金) 00:13:26 ID:uiffsDzY
今まで痛いから避けてきたマリみてクロスオーバーもんです
相手はちょっと古いタイムスリップヤクザ漫画、続きます


その年、東京で大規模な、そして未曾有の国家テロが引き起こされた。

外国人傭兵からなるテロリストのグループは、警視庁本部アンテナ、及び東京タワー電波塔を次々とTNT火薬で爆砕していった。
これにより、都内の通信網は寸断され、警察無線から百十番通報に至るまで、すべての通信業務が麻痺、警視庁は警察力の半分を喪失した。
その際第三機動隊・約百名が殉職した。

次に首都高速道路・吾妻高架が爆砕された。死者重軽傷者、八百余人。

続いて府中刑務所、及び東京拘置所が襲撃を受けた。看守・警備員は皆殺しにされ、多数の囚人たちが武器支給の上解き放たれた。
平和呆けした政府がことの深刻さに気づいたときには已に何もかもが遅かった。テロリストの戦闘力は政府側の予想を遥かに上回っていたのである。
解放された囚人たちは、廃品同様ながらも本物の拳銃と実弾を手渡され、意気軒昂、怒髪天を衝く勢いで都内に雪崩れ込んでいった。
東京都の治安は急激に、そして最悪のものへと悪化・転落していった。

中央線・M駅近郊。東京都下、武蔵野の面影を色濃く残すこの地。――ここもその例外ではなかった。

「一体、どうしてしまったの――?」
淡い色の髪をロングに垂らした少女。少女は今、呆然とその狂乱を眺めている。
「オラァ! 死ねやあああっ!!」
「そいつ寄越せええっ!!」
都内は全くの乱脈のさ中にあった。それはここ、リリアン女学園に程近いM駅周囲でも同様だった。
籐堂志摩子は、絶望した面持ちでそれを眺めている。

府中刑務所を脱獄した囚人たちは、目下、近郊の国分寺、三鷹、武蔵野市方面へとなだれ込んでいった。
この辺りはリリアン女学生の多く通う地域である。
付近は強盗、強姦、殺人などようの凶悪犯の坩堝となった。
已にリリアン生徒で本人や家族が殺され、あるいは犯されたものは、相当数に上る。

「ああ、お姉さま――」
しなしなと、志摩子はヘたりこんだ。M駅近郊、街の片隅。彼女の側にいた人は、もういない。リリアン女子大からも火の手が挙がっている。
政府の対応が出遅れたように、一般人もまた太平の眠りに寝ぼけていた。政府の発令は遅れ、テロは次々と惹起され、事態が最悪まで悪化して、それでようやく人々は気づいた。
176代紋 TAKE2 ◆hS9ZjLM/uE :2010/12/31(金) 00:20:04 ID:uiffsDzY
志摩子はH王子からここへ来るその日までこんな事態を夢にも知らなかったのだ。

志摩子はM駅に取り残されていた。一緒に来ていたはずのお姉さまの姿もない。
付近は暴徒・凶漢で満ち溢れ、とても身動きなどできるはずもない。特に彼女のような美少女はむろん――。
へたり込み、顔をうつぶせて震える志摩子。その背に声が掛かった。――劣情を含んだ声である。

「なにしてるのーん、お嬢ちゃん?」

志摩子はそのままの姿勢でビクンと震えた。「ゲヘへ」という下卑た笑いが背中に降りかかる。果たして、三人ほど男が佇んでいた。
卑しい顔に下劣な欲望を張り付かせるチンピラ風、手には兇器。
「ああっ!!」
咄嗟に、逃げようと駆け出す志摩子の足首に、金属バッドの鋭い一撃が叩き込まれた。転倒し、胸から、薄汚れた地べたに転がる。
「ううっ……」
呻いた。足首は酷く腫れ上がり、赤く、爛れている。激痛に眩暈がした。
骨までひびが入ったかもしれない。歩くことは、できない。
「オラァ、逃げてんじゃねえぞおっ!!」
男が志摩子を荒々しく引きずり、抱え起こす。
ついさっきまで、府中刑務所で長期服役していた受刑者だ。そして、また「ゲヘへ」と下卑た笑みを口に含んだ。
「こいつは上玉だぜ!」
「ああ、こいつぁ良い××××してそうだぜ!」
黄色い声を上げ悦ぶ男、男。そのさまに、志摩子の顔はみるみると血の気の抜け、体は細くカタカタと震えていく。
彼女にだって分かっている。これから自分が何をされるのか。
「暴れやがったら、こいつでいくぜ。今なら人殺しだってへいっちゃらなんだからな♪」
「あ……ぁ……」
男たちは拳銃を振りかざすと、歯をむき出して凄惨に笑った。
「長いことアッチは無縁だったんだ。とりあえず、三人で十発ずつは犯ってやるぜ!」
「いやぁぁっ、お姉さま、お姉さま――――っ!!」

そのとき。

「コラ、お前ら、何やっとんや」
男たちの動きがピタリと止まる。
「なんだ、てめえ……」
別の、男が一人路地裏に立っていた。黒いレザージャケットを着込み、髪を短く刈り込んでいる。
鋭い顔立ちは一目で堅気ではないと証している。男たちが、兇器を手に立ち上がった。
177代紋 TAKE2 ◆hS9ZjLM/uE :2010/12/31(金) 00:22:21 ID:uiffsDzY
「コラ、てめえ、邪魔しやがるとぶっ殺すぞ!」
「俺を殺すやと……ハッ、おもろいやんけ」
「うっ……」
男は、鼻で笑ってみせると、軽く肩を竦めた。
男たちは一瞬、あとしざった。その眼には凄まじく荒んだ光が宿っていたのだ。
「ふ、ふざけやがって、やっちまえっ!!」
興奮した男どもが突っかかる。男はゆっくりと懐から手を抜く。
「がべがっ!!」
「がばっ!!」
放たれた弾丸に頭を撃ち抜かれ、すぐ志摩子の横に砕けた頭が転倒・散乱した。
「野郎っ!!」
最後の、も一人が拳銃を腰から抜き取った。
「ぐぼっ!!」
男の額には丸く穴があいて、そこから脳漿が飛び散った。
仕損じた弾はあらぬ方へと逸れ、壁面に当たって兆弾となる。レザージャケットの男はふうっと硝煙を吹き散らした。
「オラ……ワレ、しっかりせんかい」
男が志摩子に向き直る。うつ伏せに倒れた志摩子に。
「ち、なりゆきでこんななったが、言うとくど、別にワレを助けたとちゃうんで……」
男の目の前で。志摩子がゆっくりと振り向いた。
「――は、春香……?」
男がわなわなと震える。
「お前、春香なんか。春香なんか……?」
志摩子は声を発した。
「人殺し」
「―――」
「あなたは人殺しだわ!」
涙に濡れた瞳で。志摩子は男を見上げ、もう一度言った。
「何も殺さなくても良かったはずよ。あなたはどうしてあんな酷いことをなさったの――?」

「‥‥なんやと?」
「何度でも言うわ。あなたは人殺しよ」
 男はしばらく信じがたいものを見た様に志摩子を眺めていた。ふいに手をかざす。
「人を殺した手で触らないで!」
肩に触れられ、志摩子は泣き叫ぶ。
「わたしに、触ら……お姉さまああああっ!!」
「ワレの言うとおりや」
その言葉に志摩子ははっと顔をあげた。
「わしは、わしは、薄汚い人殺しや。おどれのいうとおりや」
「…………」
今度は志摩子が言葉に詰まる番だった。じっと自分を凝視する男の顔は苦悶したように歪んでいる。
見れば、まだ二十底々、猛禽のような鋭さがなければ、志摩子とも大して変わらない幼さが有った。
そこに志摩子はなにか悲しさを見出して息を呑んでいた。
「おい、わしは内田潮、見ての通りチンピラや。お前は?」
「…………」
「黙ってちゃ分からへんやろ。名前くらい名乗らんかい」
「……志摩子。藤堂志摩子よ」
「ほいなら、志摩子、ここは見ての通りや。女子高生をこんなとこに放っとけへん。ついてき」
178代紋 TAKE2 ◆hS9ZjLM/uE :2010/12/31(金) 00:24:29 ID:uiffsDzY
志摩子としては、どう考えても堅気でもない潮なる男について行くのは躊躇われた。
何より、M駅ではぐれた聖の事が気にかかってしょうがなかった。
しかし強引に腕を取る潮に引きずられるように連れ立たっていった。
「お前、東京モンか。学校がここらなんか?」
「…………」
「わしはこの通り、こっちのことは右も左も分からへん。せやけど、今何が起きとるんか、お前もニュースか何かで聞いたやろ?」
「……お巡りさんが言ってたわ、府中刑務所が襲撃されたって。すぐにその後、そのお巡りさんは暴漢にピストルで撃たれた」
「さ、入れ」
奥に通された志摩子にすぐ、鋭い制止の声がかかった。
「なんや潮、その餓鬼は誰じゃい?」
 一見して、全身の毛がすべて逆立った。三十過ぎ、これも堅気でないのが一目で分かる見た目だが、志摩子が悪寒を感じたのはそんな事にではない。

あの目、刺すような鋭い、何とも言えない禍々しさを放っている。
志摩子は直感した、この男はたぶん「人間じゃない。」そうじゃない「なにか」だ。
冷静に考えれば随分奇妙な感想だが、今の志摩子にそれは絶対の事実としてとらえられた。

(こ、この人、どんなふうにすれば、あんな恐ろしい目になれるの――?)

「へい、江原の兄貴。M駅前で犯されそうになっとんで、拾って来ましたわ」
 潮が志摩子を背中に庇う様進み出る。
「兄貴、こいつ、ここに置いてかまへんやろか」
「阿保か、おどれは! あれだけあってまだ遠足気分が抜けでとらんのかワレは」
男は顔を顰めて志摩子を睨みつける。
「おどれはそんな餓鬼こさえて、東京ぉ火の海にしたるゆうんか、コラ?
今東京タワーぁ襲撃したカルロス達から無線が来とる。これから阿久津と田神の中山イワすゆうときや。その餓鬼サッサと始末せんかい」
 志摩子は眼を見張った。
「今、あなた、なんて言ったの」
 震えるまま言葉を紡ぐ。
179代紋 TAKE2 ◆hS9ZjLM/uE :2010/12/31(金) 00:26:08 ID:uiffsDzY
「じゃあ、今回のテロは、あ、あなたが……」
 江原と呼ばれた男は面倒くさそうに潮を見やって、顎で指図した。
子供に遣いをさせるような事もない仕草だった。
「ワレ、この雌餓鬼さっさと始末せえ。おどれの手で殺すんや」
「!」
 志摩子が今さらながらに震える。自分の命は今この男達の掌の上にある。
「せやけど兄貴、わしら極道でっせ。こんな女子高生殺すなんて外道ですわ、仁義も糸瓜もあらへん」
江原はすっと目を細めた。ぞっとする凄みがある。
「ほう、ワレいつからワシにそないな口聞くようなったんや?」
「阿久ぅ津トるのとこいつとじゃ別の話やろ。都内をこんなんしたのはわしらや。わしはコイツ、安全になるまで面倒みたるつもりですワ」
「なんや柄にもないオモたら、そうゆうことかい。せやな。くく、ワレ、『二度目』はさすがに堪えるか」
 江原が引き攣るよう笑うと、潮の顔が見る見る蒼ざめて行った。眉間がねじれ上がっている。
「い、いくら兄貴でもその言葉はあらへん、あらへんで……!」
「待て、カルロスから無線や」
 レシーバーを取る。日本語ではない、英語?志摩子が事態を見守る。何やら話していた江原が振り返った。
「おう、阿久津のガラさらったらしいで」
 江原は今さらのように志摩子を仔細に眺めると、
「ふん、どこぞのお嬢かい。人質なりなんなり、まだなんぼかシノギかけられそやな、
ええやろ、その餓鬼連れていけ。そん代わり邪魔になったらすぐ殺すんやで」
「へい」
 さまざまな事が胸に湧きおこって眩暈がする志摩子は、茫然と自分の行く末を想ってそのまま意識を失っていた。
180名無しさん@ピンキー:2011/01/02(日) 23:26:12 ID:Ictqc8n0
極道系の組織名人名が色々出てくる割に説明がないから
その辺りをどういう読めばいいのかわからない

この後詳しく説明するからその時わかればいいのか、
雰囲気づけでしかないから流し読みにしていいのか
それもわからない
181179:2011/01/19(水) 21:57:31 ID:UEAWzJ3u
そういえばそうれしたね。徐々に注釈しますが(投下する機会があれば)
めっちゃ長編なんで、詳しくはクロス先の原作読んでくださいとしかいえないす。

つか、原作かなりおもろいんでおすすめです。
(途中のgdgdとラストの糞がなけりゃ間違いなく神)
二十巻あたりまででもヤクザな雰囲気分かりますけど、そのころには満喫で徹夜うけあいです。
182名無しさん@ピンキー:2011/01/24(月) 22:39:28 ID:Tuey1MPu
>>170祐乃の続きはまだか風邪ひいてしまう
183名無しさん@ピンキー:2011/01/29(土) 13:18:17 ID:JPjc0qrY
おいらもまってる
184名無しさん@ピンキー:2011/01/29(土) 16:42:02 ID:6Aa87pXF
>>179

185名無しさん@ピンキー:2011/02/06(日) 23:41:07 ID:ef9PNzL6
マリみてまだー?
186名無しさん@ピンキー:2011/02/12(土) 12:36:30 ID:t7b1kPfE
hosyu
187名無しさん@ピンキー:2011/02/16(水) 23:38:25 ID:MS8ad3g5
外園凜

・高校時代、才女として名を馳せる。性には疎い青春。
・18歳のとき痴漢に遭う。
 最初は恐怖で何もできず、ただ恐怖に震えて痴漢のなすがまま。
 二度目、運悪くこの痴漢と再会してしまう。
 今までまったく性に関する知識がなく、目覚め始めた性的欲求に抗えずに
 三度目はこの痴漢を求めて電車に乗ってしまう。
・やがて痴漢に遭っているところを善意の他人(いい迷惑)に見つかって、
 痴漢は逮捕されるが、この痴漢が狡猾だった。
 「欲しい……もっとして……」などと囁いた凜の声を証拠として提出。
 凜は裁判で負けてしまい、両親にも「こんなふしだらな娘に育てたつもりはない!」
 などと罵倒されて心に深い傷を負う。
・この時、男になりたいというよりも「性的弱者ではなくなって、自分のような性を知らない
 若い女に同じことをやりかえして、自分が特別淫らでないと証明したい」という欲求が生まれる。
 なお、当時の凜は未成年だったので、特に大きなニュースとしては扱われなかった。
・自分の肉体を嫌悪しつつ成長。
 大学院に入る頃からTSの研究に着手。たぶん量子力学とかなんかそんなヤツ。
 しかし、一度芽生えた性的な欲求はなかなか消せず。
 男性とまったく恋愛できずレズに走るも、精神的な歪みのせいできちんと他者を愛せず
 破局を繰り返す。この頃にテクが磨かれる。
・28歳。痴漢が多発して社会問題化しているというニュースを見る。
 TS専用車両のアイデアを持ち込んで研究費用を得る。
・数年後に実用化したが、TSを定着させるための決定的な要因が自己認識(自分は女ではなく
 男である、男ではなく女である、という深層真理への刷り込み)にあり、それを得るのにおそらく
 かなり明確な性的絶頂が必要だろうとわかる。
・つまり、女になっている誰かを巻き添えにしないと、自分は女=性的弱者から脱出できない。
 他人を犠牲にしてもいいのか、という葛藤が生まれる。
 TS専用車両にブラックボックスは実装し、自分が男になった場合の戸籍などの用意を
 少しずつ進めてはいたが、本当にやるのか、と自問自答する日々が続く。
・この頃、TS車輌のおかげで、凜の人生をねじ曲げたプロ痴漢(前科数百犯とか)がついに逮捕。
 凜の無意識で「性的弱者を克服したい」という意欲が急激に萎える。
 ある意味で自分の半生を捧げてきた研究と、自分の人生そのものに初めて疑問を抱く。
・そんな中、自分の高校時代と同じ制服を着た主人公が電車でTS電車で苦しんでいるのを見る。
 いけないと思いつつ、憂さ晴らしに手を出す。
・やめよう、やめようと思いつつも、主人公があまりに可愛くて行為がだんだんエスカレート。
 「女が欲しい」という男性の心理をはからずも学習してしまい、それを嫌悪して
 遠ざけようとしていた両親や、人生を歪めた痴漢を初めて許す気になる。
・主人公がたまたま発した「凜さんは悪くないよ」の一言が彼女のトラウマを消し去る。
 けれどその頃には「男」として「この娘が欲しい」という気持ちが止められなくなっていた。

・人生をやりなおすつもりでTSに踏み切る。
 嫁にしちゃった美衣ちゃんとエロエロラブラブな人生をスタートさせましたとさ。ちゃんちゃん。
188名無しさん@ピンキー:2011/02/17(木) 22:56:50 ID:YBhj7t2s
なんだこりゃw
189名無しさん@ピンキー:2011/02/18(金) 08:07:38 ID:VzhlUnOA
別スレに投下された作品の裏設定かな
190名無しさん@ピンキー:2011/02/18(金) 09:59:58 ID:ZxV9FVMG
TSってなんだ??
191名無しさん@ピンキー:2011/02/18(金) 21:36:55 ID:nMTE3pdT
トランスセクシュアル?
192名無しさん@ピンキー:2011/02/20(日) 19:54:52.04 ID:802ocKUS
設定としては悪くないと思う
193 ◆5xcwYYpqtk :2011/02/20(日) 21:14:09.26 ID:zqJOgL1j
>>170の続き

 瞳子が薔薇の館でお手伝いをするようになってから、一週間が過ぎた。

 瞳子は、乃梨子にとっても印象は芳しいものではなかったし、由乃さまが敵意を
むき出しにしていたので、最初はどうなることかと思っていたのだが、薔薇の館の
お手伝いさんとしては極めて有能であることはすぐに分かった。

 乃梨子のように以前に生徒会の経験があるのかは知らないが、黄薔薇さまや、
志摩子さんから言われたことはきちんとこなすし、手際だって悪くない。
 結果、短期間で瞳子は山百合会メンバーの不可欠な戦力になっており、
 最初は嫌悪していた由乃さまも、内心はともかく表面上は今の状態を受け入れている。

 少なくとも表向きは、薔薇の館は平常を取り戻したと言っても良いだろう。

 しかし、乃梨子にとっては憂鬱な日々が続いていた。
 理由は単純で、志摩子さんと上手くいっていないから――

 志摩子さんと姉妹になってから、瞳子が来る前まで、正確にいうと、祐巳さまが雨の日に乃梨子に
しがみついてくる雨の日までの短い期間は、用事がなければ一緒に下校していたのだが、
今は、まるで別居中の夫婦のように、別々に帰るようになってしまっている。

 今日だって、乃梨子は自分の仕事を片付けると、「お先に失礼します」と言って、
薔薇の館から逃げるように出てしまっていた。

 最近、志摩子さんと事務的な会話以外は話していないし、顔すら真正面からは見ようとしていない。
まともに目を合わせると、大きな瞳が乃梨子を責めているようで、とても辛い。
 志摩子さんが乃梨子を責めてくれれば、まだ反発のしようもあるのだけれど、時折、
悲しそうな顔をするだけで何も言ってくれない。

 乃梨子のもどかしい思いは膨らむばかりで、やり切れなくなる。

 少し前までは志摩子さんを意地悪な上級生から守れるのは私だけなんだ、と意気込んでいたのに、
どうしてこんな救いようのない状況にになってしまったのだろう?

 いや、違う。

 乃梨子は、薔薇の館に背を向けて歩きながら無意識に首を横に振った。

 何故、上手くいかないのか、と自分に問いかける行為自体、偽善的で卑怯なことなのだ。
 志摩子さんを忌諱する理由は、乃梨子自身でもはっきり分かっている。
 志摩子さんは何も悪くなく、全て乃梨子のせいなのに、何も言ってくれないから
悪いんだというのは、タチの悪い責任転嫁でしかない。
 全ての責めは乃梨子自身が負うべきものなのだ。

 薔薇の館を出た乃梨子は、ともすればぐちゃぐちゃになりそうな思考を巡らせながら、それでも
表面には表すことなく、下校を急ぐ生徒達の背中を見ながら歩いていく。

 しかし、校門が見えそうになるところで、乃梨子は道を外れた。
 陽が落ちて薄暗くなってしまった道なき道を暫く進むと、こじんまりとした温室が見えてくる。
 温室の入口の扉をあけると、やや暖かすぎる湿気を含んだ空気が、肌にまとわりつくとともに、
植物たちが発する特有の匂いが、乃梨子の鼻腔をくすぐる。
 中に向かって数歩進むと、二つのテールを結んだ生徒が佇んでいる姿が視界に入ってくる。
 薔薇を見つめていた生徒は、乃梨子の姿を認めると微笑みを浮かべながら口を開いた。
194名無しさん@ピンキー:2011/02/20(日) 21:14:58.90 ID:zqJOgL1j
「ごきげんよう。乃梨子ちゃん」

「…… ごきげんよう。祐巳さま」
 乃梨子は、緊張を悟られないように軽く呼吸をしてから、挨拶を返した。
 祐巳さまはゆっくりと近付いてきて、乃梨子の手前で立ちどまると指先を伸ばして、袖口より
やや上のあたりを摘みながら尋ねてきた。


「もう、お仕事終わったの?」
「ええ。先程」
「ごめんね。私がこんなになってしまったばかりに、乃梨子ちゃんに負担をかけちゃって」

 申し訳なさそうな表情を浮かべて謝る祐巳さまだが、乃梨子の気持ちはやや複雑である。

 確かに、紅薔薇さまと祐巳さまがいなくなってから、乃梨子の負担は一旦は増えた。
 しかし、瞳子が仕事を覚えるにつれ、乃梨子の仕事は減り始め、一時期は休むことが
多かった黄薔薇姉妹も、さすがに不味いと思ったのか、最近は薔薇の館にきちんと来るように
なった為、乃梨子個人の仕事量は、以前より却って減っているからだ。


「最近はあまり忙しくないので」

 だから、志摩子さん達より先に帰っても、何も言われないのですよ――
と、言おうとして流石に思いとどまる。

「そっか。でも、乃梨子ちゃんが来てくれて嬉しいよ」
 袖をいじくっていた祐巳さまが、タンポポのような笑みを浮かべて更に近付き、乃梨子の瞳を
覗き込んでくる。

「ゆみ…… さま?」
 やはり祐巳さまの笑顔は魅力的で、乃梨子は喉が枯れるだけでなく、金縛りにあったように
動けなくなってしまうのだ。
195名無しさん@ピンキー:2011/02/20(日) 21:16:16.06 ID:zqJOgL1j
「本当なら、乃梨子ちゃんと会ってはいけないんだろうけれど」
「そんなことっ」

 確かに祐巳さまとは『姉妹』ではないし、乃梨子には志摩子さんという姉がいる。
 リリアンで、姉妹でない相手と逢瀬を重ねるなんて、絶対にしてはいけないことだということは、
高校からの編入生である乃梨子だって、痛いほど分かってる。でも。

「どうしても、乃梨子ちゃんのこと、忘れられないよ」
 祐巳さまの手が伸びて、乃梨子のセーラーを絡め取る。

「ゆ、み、さま!?」
「私、乃梨子ちゃんが好きなの」
 少しだけ俯いた祐巳さまが、意外と強い力で乃梨子を抱きしめてくる。
 祐巳さまの可聴域に届くかどうかという囁きは、とても切なくて…… この上もなく甘すぎる。

「ねえ。乃梨子ちゃん。私、乃梨子ちゃんの恋人になっていい?」
 祐巳さまの唇が素早く動き、冷静さを失ったままの乃梨子の耳元で決定的な一言を、容易く送り込む。

 乃梨子はつい最近まで、まさか自分が、浮気や不倫をするなんてカケラ程も思っていたなったのだが、
いかんせん、相手が悪すぎた。
 紅薔薇のつぼみは非力そうに見えて、いとも簡単に相手を虜にしてしまうような人なのだ。

 だから、乃梨子が祐巳さまの魅力に惑わされるのも仕方がないんだ……

「祐巳さま、わたし……」

 思考を放棄してしまった乃梨子は、ほぼ自動的に祐巳さまの首の後ろに手を回してしまう。

「乃梨子ちゃん。ありがとう」
 祐巳さまは、安心したといった顔を浮かべてから微笑むと、瞼を閉じて、心持ち顔を上向かせた。

 ごめん。志摩子さん。ほんとうにごめん。

 おそらく薔薇の館でまだ仕事をしているであろう、お姉さまの姿を無理やりかき消すと、
乃梨子は目の前にいる上級生の唇を絡め取った。

(続く)
196名無しさん@ピンキー:2011/02/20(日) 21:19:12.82 ID:zqJOgL1j
誤字訂正 

>>193の12行目、「雨の日に」を削除
197名無しさん@ピンキー:2011/02/21(月) 10:29:42.70 ID:i9W8Z0Uv
グッジョ
198名無しさん@ピンキー:2011/02/22(火) 01:29:06.22 ID:jwK8rgwv
ゆみのりの人待ってた!
gj超gj
背徳感がたまらんです
199名無しさん@ピンキー:2011/02/28(月) 07:25:51.43 ID:UTzX8eZ3
>>195

otu
200名無しさん@ピンキー:2011/03/19(土) 00:57:19.64 ID:MWHVgROM
保守
201カレル×ジーナ(副作用):2011/03/19(土) 09:11:34.62 ID:wy8cBvMu
ホワイトデーネタ。お焚き上げスレかこっちか悩んだけど、保守がてら投下します。


ゴッドイーター極東支部アナグラのとある一室にて
「これ、バレンタインのお返しです」
部屋に入るなり、小ぶりな箱を渡すカレル。どことなくぎこちない手つきで渡すのは、緊張しているらしい。
「わざわざ気を遣わなくても良かったのに、ありがとう。……開けていいかしら?」
「いいですよ。気に入ってくれればいいんですけど、嫌なら捨ててください」

箱を開けると、スカーフが入っていた。手触りも良く、上質な布だとすぐにわかる。
無地で淡い紫色、服に合わせて選んでくれたようだ。
「……素敵、大切に使うわ。でも、素材集めは大変だったでしょう?」
まるで見ていたかのように、ジーナは問いかける。
「なっ!な、何を言ってるのか……」
明らかに動揺している姿に笑いがこみ上げる。まったく、嘘のつけない男だ。
「仕事もそこそこに、お金にならない任務をしてたらわかるわ。でも、私の為にそんなにしなくても良かったのに」
カレルが何か言おうと口を開いたが、言葉が出てこない。思わず苦笑して、ジーナを抱き寄せた。
細い身体がカレルの中にすっぽり収まる。顎を指で持ち上げ、優しくキスをした。
んっと甘い吐息が零れ、潤んだ瞳が目の前にある。
「好きな人の為なら、なんだってしますよ」
髪を撫で、上目遣いのジーナの頬にキスをする。猫が甘えるように、うっとりと目を細め胸に顔を擦り付けた。

「んっ、ちゅぅ……はぁ、ぁ」
抱き合い貪る様に激しくキスをする。ぴちゃぴちゃと音をたて、舌が絡み合う。
口元からは一筋の唾液が零れ、ジーナの首筋を伝っていく。それが惜しくて、舌を這わせて辿り、強く吸い付いた。
「ぁ……だめ、痕になるから……んっ」
身を捩って抵抗するが、しっかり抱きしめられてしまい動く事が出来ない。ぞくぞくと痺れる快感に身を震わせて、切ない声を上げる。
「可愛いです。俺、もっと気持ち良くさせます」
くすりと笑い、蠱惑的な表情でジーナは囁いた。
「それもバレンタインのお返しかしら?……たくさん気持ち良くしてね」

ベッドに寝かされたジーナは服も脱がされ、大胆な格好をさせられている。自身の太ももを両手で抱え、脚を折り曲げた状態で秘所を晒す。
大きく開かれたそこは、誘うようにひくつき、じわりと蜜が零れていく。肌も赤く染まり、次の行為を期待していた。
202カレル×ジーナ(副作用):2011/03/19(土) 09:14:20.99 ID:wy8cBvMu
「ぁ……カレル……お願い。焦らさないでぇ……」
思わず喉を鳴らし、食い入るように視姦する。普段は沈着冷静なジーナも、今は物欲しそうな顔をしてお願いしている。
カレルは誰も知らない顔を自分だけに見せている事に興奮していた。
「……いい眺めです。下の口も欲しがってるんだ……」
上擦った声で囁き、ぬかるんだ場所に指を挿入すると、くちゅりと音をたてて飲み込まれていく。
「あっ!やだ、それだけじゃ、足りないの……」
指を深く胎内に突き入れ、襞をなぞるように動かす。大きく身体を震わせて、蜜が溢れ出した。
「こうですよね?中がぞわぞわ動いてきますよ」
ぐちゅぐちゅと音をたててこね回す。太ももを抱えている手には力が込められ、きつく締め上げる。
ジーナの乱れる姿をもっと見たくて、指の本数を増やす。二本、三本と突き入れ、乱暴に掻き回した。
「ひぃ、カレル……やぁ、何かが、漏れちゃう」
びくびく身体を跳ねらせ、必死に堪えようしている。膣内に膨らんだ部分を見つけ、擦ってみると嬌声が大きく上がった。
「ここですね。我慢しないでいいですよ……」
「あぁ!だめ! そこをぐりぐりしないでっ。来ちゃう!漏れちゃうの」
髪を振り乱し、いやいやと拒絶するが、胎内は離すまいと指を締めつける。徐々に膨らみは大きくなると、ジーナは堪えきれずに悲鳴を上げた。
「漏れちゃう!あぁぁああ!!」
大量の体液が溢れ、カレルの指を濡らす。あまりのいきっぷりに意識朦朧となり、秘所からは断続的に噴出する。

ぐったりしたジーナをうつ伏せにして、お尻を持ち上げ狙いをつける。先端部を飲み込もうと粘膜がひくひくと収縮した。
「ぁ……カレル……頂戴。奥まで、来て……んぅぅ!」
一気に貫かれ、弓なりに背中を反らす。支えている両腕はシーツを握りしめ、溺れているようにもがく。
ゆっくり引き抜こうと腰を後ろに動かすと、膣は離すまいと絡みつく。ぞくぞくと快感が溜まり、理性が吹き飛びそうになる。
「くぅ、いつもよりきつくて、熱いです。すぐにでも……うあ、出そう」
ぎりぎりと奥歯を噛み締め、腰を打ちつける。最奥部の子宮口がごりごりとぶつかり、火花が視界に飛び散った。
「いい……カレル、お願い……もっと、突いて……あぁ、またいきそうなの……」
もはや支えきれずに、顔をベッドに突っ伏して腰をくねらす。くわえ込んだ結合部からはだらだらと蜜が零れ落ち、太ももを大きく濡らしている。
203カレル×ジーナ(副作用):2011/03/19(土) 09:16:40.77 ID:wy8cBvMu
ジーナの宣言通り絶頂が近い、筋肉が強張り、痙攣が小刻みだ。
「俺も……いきます。中で、出していいですか」
激しくピストン運動を繰り返し、ジーナに問いかけた。胎内のあちこちを蹂躙し、射精まで導こうとする。
「あっ、だめぇ。今日は、だめなの……外に、あ、いいっ、いっちゃうぅぅ!」
一足先に達してしまい、ぎゅうぎゅうと締めつける。あまりのきつさに膣内から押し返されるように引き抜き、そのまま吐き出す。
勢いのある白濁液はジーナの背中まで汚れてしまう。ぐったりと突っ伏したお尻はひくつき、誘うように震えていた。

「ジーナさん、あの……まだしたいです」
慎ましやかな窄まりにあてがい、ぬるぬると擦り付ける。お互いの体液が混じり合い、卑猥な水音を奏でていた。
「!カレル……そこは、無理っ。裂けちゃうからぁ。いゃぁ、入れないでぇ……ひぃぃっ!は、入って来ちゃう!ああああっ!」
抗議を無視し、ゆっくりと押し込んでいく。柔らかくなった孔は大きく広がり、先端部分をくわえ込むと、スムーズに腸内に入っていく。
膣内とは違う締めつけにカレルは目が眩みそうになり、みちみちと音をたて奥まで広げていく。
ジーナは言葉を発せずに、荒い呼吸を繰り返して堪えていた。寒気のような快感が駆け巡り、前の孔が収縮する。

「ぜ、全部入りました。やらしいですね、前も欲しそうにしてますよ」
仰向けにして脚を曲げさせ、つぷりと指を沈ませる。指を折り曲げて、浅い場所を引っ掻くようにすると、ぎちぎち締めつけた。
「ひぅ、いやぁ……気持ち良くて、おかしくなっちゃう……あ!だめぇ、またいっちゃう!もう、無理だからっ」
涙を零し、許しを乞う。ジーナの涙を舐め拭い、舌で腔内を掻き回す。膣内も同じように指で掻き回し、溢れ出した蜜が挿入を滑らかにする。
カレルが低く唸り、最奥に欲望を放出する。直腸で温度をまともに感じたジーナはくぐもった嬌声を上げて遅れて絶頂に達した。

「すみません。身体、あちこち痛いですよね……」
シャワールームに無理やり二人が入り、暖かいお湯を全身に浴びる。動けないジーナを抱えて連れてきたのだが、いまだに意識が朦朧としている。
「……ええ……酷いわ。カレルが、そんな乱暴するなんて……」
「本当にすみません……」
204カレル×ジーナ(副作用):2011/03/19(土) 09:17:54.23 ID:wy8cBvMu
すっかり意気消沈し、行為の残滓を洗い流した身体を優しく撫でる。細い身体はいつもよりも、儚く消え入りそうに感じた。
「……今度からは、優しくしてね?まだ慣れてないのに、あんな事されたら壊れちゃうから」
「……え……?」
驚き、抱きかかえたジーナの後頭部を見る。首を捻らせ、余韻が残る紅潮した顔が近づき唇が重なって離れた。
「気持ち良かった……またしてくれる?」
少し照れたような声に、鼓動が早まる。このおねだりは反則だ……。
「たくさんします。気持ち良くなってください」
そっと抱きしめて肩に顔をうずめた。今は顔を見られたくない、きっと赤くなっているだろう。
「ふふっ、楽しみだわ……」
ジーナはカレルの髪を優しく撫でた。


おしまい。スレ汚し、失礼しました。
205名無しさん@ピンキー:2011/03/19(土) 10:54:17.48 ID:7eEtjHuN
GJ エロいす!

ホワイトデーはやっぱ白濁液だよね(^ω^)
206名無しさん@ピンキー:2011/03/22(火) 10:13:24.36 ID:oD6gMnw4
いいねえ、GJ
こういんのは自重せずにやるべきや
207名無しさん@ピンキー:2011/03/26(土) 18:32:57.37 ID:TLzgmrHO
乙。でも元ネタなんだ?
208名無しさん@ピンキー:2011/03/26(土) 19:07:21.63 ID:QmL9MEIj
ゴッドイーターじゃね?
209名無しさん@ピンキー:2011/04/03(日) 05:48:25.17 ID:+9cQNJcN
供養とどっちにするか散々悩んだが、半生二次なのに801ヨウ素が強すぎるのでこちらへ投下します。
ホモ、バイセクシャル、凌辱、監禁、ヤンデレ、NTR。
以上の単語がアウトな人は、さくっとスルーしてください。
210ILLUMINATI 1/9:2011/04/03(日) 05:49:08.17 ID:+9cQNJcN
「……ってぇ………」
 毛足の長い上等の絨毯の上に、低く唸るような声が吸いこまれる。間接照明に照らし出さ
れた室内に置かれた、どっしりとしたつくりのアンティークチェアの上で、一人の青年が痛
みを堪えるように眉を寄せ頭を振った。
「あ……?なんだ、ここは」
 ビクトリア調のテーブルセットと、キングサイズの天蓋つきベッドが置かれた広い部屋を
見まわし、青年 ──── 門矢士は訝しげに目を細めた。体を起こそうと足に力を込めるが、
意に反し士の体は僅かも動かなかった。
「……っ!?畜生、何だってんだ!」
 自分の体を見下ろし、驚愕と苛立ちを込めた声で士が叫ぶ。その手は背もたれの後ろで両
手首を纏めてくくられている上に、足首はそれぞれ左右の椅子の脚にロープでくくりつけら
れていた。
 士は満身の力を込めて手や足を動かしたが、きっちりと結ばれたロープは全く緩まなかっ
た。
「なんだ、もう目が覚めたのかい?士」
 士がギシギシと椅子を鳴らして脱出を試みていると、両開きの扉を開け何故か海東が入っ
てきた。その姿を認めた瞬間、気を失う直前の出来事を思い出したのか、士の顔は紛れもな
い怒りで染まった。
「海東……てめぇ、いきなり殴りつけやがて、何の真似だ!」
 ギリギリと音がしそうな視線で睨みつける士に、海東はいつもと全く変わらない表情のま
ま軽く肩をすくめた。
「心外だなぁ。僕はただ、君がいつまでも本当の自分を思い出せないみたいだから、ちょっ
と手伝ってあげようと思っただけだよ」
「意味がわかんねぇ。とにかくこいつを解け!」
「それはできない相談だね。今君の手を自由にしたら、直後に顎の骨が砕かれそうだ」
「当たり前だ!!」
 不自由なまま身を乗り出して激怒する士に、海東は何故か呆れを含んだ冷やかな眼差しを
向けた。
211ILLUMINATI 2/9:2011/04/03(日) 05:50:04.24 ID:+9cQNJcN
「せっかく自分の部屋へ戻ったんだ、少しは寛いだらどうだい?」
「訳わかんねぇこと言ってんじゃねぇ。俺はこんな部屋」


「知らないとは言わせないよ、士」


 妙にはっきりと断言する海東に、士の顔が不信感で歪んだ。海東はどこか暗い光を浮かべ
た瞳で、士の顔をじっと見つめていた。そこに浮かぶ憐れみとも侮蔑ともつかない不思議な
感情は、見方によってはある種の愛憎のようにも取れる。
 なんとも複雑な表情を見せる海東に、士の顔に初めて戸惑いが浮かんだ。
「おい、海…」
「最初に僕を力づくでここへ連れ込んだのは、君の方じゃないか」
「何だと?」
 かたん、と音を立ててサイドボードの扉を開けると、海東は慣れた手つきでそこからボト
ルとグラスを一つずつ取りだすと、音を立てて注いだ。
 小さなガラス瓶に入った琥珀色の液体は、一見するとただの酒のようにも見える。だが、
光の反射の仕方があきらかに酒とは違っていることに気付いたのか、士は警戒するようにじ
っと海東の手元を睨み続けていた。
「何だよ、それ」
「ただの飲み薬だよ。君はそんなことも忘れてしまったのかい?」
「だからさっきから何だってんだ!俺はこんな場所、来たことねぇっつってんだろ!!」
 士の怒号が響くのと同時に、海東の顔が僅かな怒りに引きつった。しかし相変わらずその
表情は不可解なままで、感情をそこから読み取ることを難しくさせていた。
 海東は無言でジャケットを脱ぐと、士を拘束する椅子の肘かけに両手をつき、その顔を覗
きこんだ。
「………ここまでしても、本当に何も思い出せないのか?」
「しつこいな、てめぇも。知らねぇもんは知らねぇんだよ」
 うんざりしながらそう断言する士の言葉に、海東の顔に僅かな変化が生じる。しかし一瞬
だけ垣間見えたそれは、間違いなく絶望の色をしていた。
212ILLUMINATI 3/9:2011/04/03(日) 05:50:58.35 ID:+9cQNJcN
 ぎり、と音がするほど強く肘かけを握り締めた海東は、歪んだ笑みを口元に浮かべると、
ぞっとするほど凄絶な笑みを浮かべた。
「なら、体で思い出させてあげるよ」
「………は?」
 あまりにも予想外の言葉だったのか、士が一瞬だけ言葉を失った。そんな士の反応を鼻先
で笑い、海東はその指を突然士の脚の付け根へとあてがった。
 驚きのあまり目を見開く士の顔を見つめ、海東は妙に慣れた手つきでそこを撫で始めた。
「海東、てめ……っ!やめろ、気色悪ぃ!!!」
「今更何を言ってるんだい、士?今までさんざんやってきたことじゃないか」
「ざけんなっ……俺はお前と違って、そっちの気はねぇんだよ!」
 布の上から形をなぞるように動く海東の指の感触に、士が全身で嫌悪感をあらわにする。
それを見た海東の顔に、ますます強い苛立ちと怒りが浮かんだ。
「その台詞、そっくりそのまま君に返してあげるよ。僕だって、自分が男に犯されるなんて
思ってもいなかった」
「だから訳わかんねぇこと言ってんじゃねぇよ!それじゃまるで、俺がお前をレイプしたみ
てぇじゃねぇか!!」
「そうだよ、士。あの時君は、ここで力づくで僕を組み敷いたんだ」
 静かな声でそう告げた海東は、迷いのない動きで士のベルトを外すと、瞬く間にそこを寛
げた。全く覚えのない、だけど何よりも衝撃的な告白と指の動きに、士は大きく息を飲み体
を固くした。
「んなわけあるか……っ!冗談でも、笑えねぇぞ!!」
「僕は冗談は嫌いだ」
 その間にも、海東の指は士自身を弄んでいた。しかし、同性の指に触れられていることへ
の嫌悪感からか、士のそれは反応を示すことはなかった。それでも海東は、そんなことは無
関係だとばかりに指を動かし続けていた。
「兄さんを助ける力が欲しかった僕は、結城丈二の部下として組織に潜入していたんだ。一
方君は、大首領として大ショッカーに君臨していただけでなく、気に入った相手は問答無用
でここへ連れて来させた。年齢も性別も関係ない。抵抗すれば力づくで犯し、飽きたら捨て
る。その中には幼さを残す少年もいたし、恋人がいる女もいた」
213ILLUMINATI 4/9:2011/04/03(日) 05:51:47.20 ID:+9cQNJcN
「ざけん、な……人を色情狂みてぇに……」
「大抵は一度抱けばそれで終わりだった。君は全てに対し無関心で、小夜くん以外の人間に
情をむけることなんてなかったからね。けど、何を気に行ったのか君は何度も僕を呼び出し
た揚句、玩具でも手元に置く様に側近と称して囲った。それでも、目にとまった相手はひっ
きりなしに抱いてたけどね」
 冷や汗とも脂汗ともつかないものを滲ませ睨む士の顔を熱っぽい瞳で見つめた海東は、次
に何の前触れもなく突然膝をつくと、未だに反応を示さない士自身を口に含んだ。
 全てが受け入れ難い士は、自由にならない体を必死に動かし、なんとか逃げようともがい
ていた。
「はな、せ……もち悪、ぃ………っっ」
 顔を真っ青にした士の呻き声を頭上に聞きながら、海東は黙々と口と指を動かしていた。
しかし、士のそこは相変わらず海東を拒絶したままだった。
 しばらくの間そうして奉仕をしていた海東は、やれやれとでもいうように口を離した。
「今日は随分と大人しいじゃないか。いつもだったら、咽喉の奥まで突いてくるくせに」
「野郎に咥えられて勃つわけねぇだろ……いい加減にしやがれ」
 ぐったりとしながらも毒づく士の顔には、本気で嫌悪感しか浮かんでいない。海東は仕方
がなさそうに立ちあがると、くるりと体の向きを変えた。
「なら、今日はもう次に移ろう」
 そう言うと、海東はベッドの上にかけてあった高そうな上掛けを一気に引きはがし、絨毯
の上へと落した。息も絶え絶えのまま視線を上げた士は、そこにある光景を認めた瞬間一気
に顔色を変えた。
「夏海……っっ!!」
 キングサイズのベッドの中央には、下着姿の夏海が寝かされている。しかもその両手は頑
丈な手錠で戒められているうえに、細い首には鎖のついた首輪が嵌められており、その先は
壁に打ち込まれたアンカーに固定されていた。
 あまりの扱いに激怒したのか、ぎし、とロープが軋む音を響かせ、士が椅子を揺らす。し
かしがっちりと脚を床に固定されている椅子は、さしもの士の力をもってしても微動だにし
なかった。
「海東、てめぇ!」
「何をそんなに怒ってるんだい?僕はいつも通り、ちゃんと用意したじゃないか」
 ほら、と海東は涼しい顔のままベッドの上に乗ると、首に繋いだ鎖をぐいと引っ張った。
その衝撃で咽喉を逸らせた夏海が、小さく呻く。
 まるで犬を躾けるように夏海を扱う海東に、士の全身から怒りのオーラが立ち上った。

214ILLUMINATI 5/9:2011/04/03(日) 05:52:41.86 ID:+9cQNJcN
「やめろ!お前、本気で頭イカれてんぞ!?」
「いつものことじゃないか。君が気に入った相手を指名して、僕が連れてくる。面倒だから
ちゃんと服も脱がせておけって、さんざん言ってたのは君だろ?」
「いいからとにかく夏海を離せ!」
 二人の言い争いが聞こえたのか、海東の膝の側で夏海が小さく身じろぎをした。うっすら
と目を開け、幾度か瞬きを落す。その顔を覗きこんだ海東は、まるで朝の挨拶でもするよう
に酷く爽やかな笑みを浮かべた。
「おはよう、夏メロン。気分はどうだい?」
「大樹さ…ん……?」
「ああ、無理はしないほうがいい。まだ痺れが残ってるから、上手く体が動かないはずだ」
「え……っっっ!!?」
 何を言われているのか理解できなかったのか、夏海は両手をついて体を起こそうとした。
しかし、その手首に硬く冷たい金属がかけられることに気づき、大きく息をのむ。そしてさ
らに、自分のあられもない姿に気付き両手で自分を抱きしめた。
「きゃあああ!!」
「さあ、士。今日はどうする?いつもみたいに、力づくで押さえようか?それとも、もう薬
を飲ませようか?」
「海東!!!」
 自身も随分と酷い姿を晒しているが、それよりも夏海のほうが気にかかるのか、士がいま
にも食いつかんばかりの勢いで吠えた。事情が分からないままに、それでも海東が口にした
内容と、下着しか身につけていない自分の姿と、そして目の前で拘束されている士の姿とを
見た夏海は、いかに抜き差しならない状況にあるのか理解したらしく、みるみるうちに顔色
を失った。
「や……やめ…」
「怯えた顔もいいけど、それはいつでも見られるからなぁ。やっぱり、初めて見る姿のほう
が士もいいだろう?」
「やめろっつってんだろ!?夏海を離せ!!」
 あまりにも非常識な状況に、士も夏海も半ばパニックを起こしかけていた。ただ一人、ど
こまでも落ち着いた海東はさき程中身を注いだグラスを手にベッドに戻ると、にっこりと笑
って夏海へと差し出した。
「ほら、夏メロン」
 もちろん、素直に夏海が受け取るはずもない。何かは分からないまでも、異様な事態に本
能で危機感を察したのか、夏海は唇を固く結び何度も首を横に振った。まるで駄々をこねる
子供のような姿に、海東は小さな溜息を一つ落すと、手にしたグラスを一気にあおった。
「ぃや………っっっ!!!」
「夏海!!」
215ILLUMINATI 6/9:2011/04/03(日) 05:53:47.09 ID:+9cQNJcN
 全身で拒絶する夏海の頭をがっしりと押さえ、海東はその口を強引に開かせると、唇を重
ね無理やり口移しで液体を咽喉の奥へと流し込んだ。夏海も必死に海東の胸を叩いて逃げよ
うとするが、男の力で抑え込まれてはどうしようもなかった。
 飲み込みきれなかった液体が唇の端からこぼれ、白い咽喉へと滴り落ちる。
「全部飲んだね?」
 気管に入ったのか、シーツの上で苦しげに咳込む夏海の髪を優しく撫でながら、海東が確
認するように尋ねる。答えなど最初から期待してないのか、海東はグラスと床の上に放り投
げ手早く自分の服を脱ぎ捨てると、ぐったりと力を失った夏海の体を抱きかかえ士へと向き
直らせた。
「さあ、夏海。士に全部見せてやるんだ」
「あ……やぁっ……!!」
 夏海の頭を肩にもたれさせると、海東は可愛らしいブラジャーの肩ひもに指をかけ、一気
に左右に引き下ろした。豊かな膨らみが零れおち、ふるりと男を誘う様に大きく揺れる。咄
嗟に胸を隠そうとした手首を押さえた海東は、士によく見えるように夏海の背を大きく逸ら
させた。
「やめろっっ!!」
 血を吐くような声で士が叫ぶのを見て、海東は小気味がよいとでも言わんばかりに笑みを
深くした。
「大丈夫だよ、士。君は忘れてるみたいだけど、あの薬の効果は絶大だ。ちゃんと気持ちよ
くさせてあげるから、安心したまえ」
「やっ……やめて下さい!お願いです、大樹さんっっ!!」
「ほら、もう硬くなってきた」
 ゆっくりと胸を揉みしだく海東の指が、きゅ、と色づく蕾を押しつぶす。その僅かな刺激
で、夏海は鋭く息を飲み肌を震わせた。
「あ、あ、あ……」
 羞恥心と恐怖に支配された夏海の瞳から、いくつもの涙が零れおちる。力なく首を振りせ
めてもの拒絶を示す夏海を、海東は惨酷なまでに優しい指づかいで責めあげていた。
「夏海……っ!!やめろ海東!!!」
「心配しなくても、ちゃんと君が挿れやすいように濡らしておくよ。ああ、もうイったのか
い?」
「………めて…お願い…」
 海東の手に弄ばれ、びくびくと全身を震わせながら、夏海は声もなく泣いていた。うっす
らと上気した肌には、艶めかしい色香が漂っている。苦痛に顔をしかめる士へと見せつける
ように、海東は夏海の細く白い足を無造作に広げると、閉じられないように自分の脚で押さ
えつけた。
「何だ、もう我慢できないの?」
216ILLUMINATI 7/9:2011/04/03(日) 05:54:56.41 ID:+9cQNJcN
「ああっっ!!」
 夏海の懇願をわざと別の意味に捉えた海東は、溢れる蜜で濡れた下着の中へ手をすべり込
ませ、その中心をぬるりと指でなぞった。僅かな刺激に激しく反応した夏海が、涙を散らせ

ながら激しく首を振った。
「やっ………いや、やめて……っっ」
「初めてだから量を少なくしておいたんだけど、君はどうもあれが効きやすい体質みたいだ
ね。こんなに濡らしてるなんて、案外やらしいんじゃないのかな?」
「ひ…………っっ!」
 ぐい、と海東の指が夏海の中へと押し込まれるのが、ショーツの上からでも分かった。目
の前で夏海が犯されようとしているのに、自分は身動き一つ取れない悔しさから、士の噛み
しめた唇に血が滲んでいた。
「やめろ……」
「君が作らせた媚薬は大した効き目だね、士。さすが、大ショッカーの技術は素晴らしいよ」
「やめろ海東!!!」
 ぎし、とロープが大きく軋む。くいしばった唇だけでなく、縄の食い込んだ手首にも血が
滲んでいるが、士は悲しみと怒りに染まった目でじっと二人の姿を見つめていた。
「さて、そろそろいいかな?」
「っっ!」
 何度も絶頂へと追いやられぐったりと力を失っていた夏海は、海東の手が下着をはぎ取っ
たことで次に自分の身に降りかかる災いを理解した。必死になって体をよじり、海東の腕か
ら逃げ出す。
 シーツの上に体を投げ出した夏海の背後から圧し掛かった海東は、宥めるようにその耳朶
に唇を寄せた。
「さあ、士にちゃんとイイ顔を見せて」
「いや!やめて!!!お願いですから………いやぁああ!!」
 ぐぐ、と濡れた秘部をかき分け侵入してくる圧倒的な力に、半狂乱となった夏海が髪を振
り乱して絶叫する。肩と腰を押さえ内部へと侵入しようとした海東は、そこで何かを感じ取
ったのか動きを止めると、訝しむ様に眉を寄せた。
「………もしかして、初めてなのかい?」
「!?」
 確かめるような海東の言葉に、士が全身を硬直させた。次の瞬間、狂ったように抵抗を示
したが、よほど上手に縛ってあるのか手足を戒めるロープは緩むことすらしなかった。
 シーツに頬をすりよせ、幾筋もの涙で頬を濡らした夏海の姿に、海東が嘆息の吐息を零し
た。
217名無しさん@ピンキー:2011/04/03(日) 06:08:36.86 ID:cWnax++l
携帯から失礼します
連投規制にひっかかりましたので、また後で投下しにきます
218ILLUMINATI 8/9:2011/04/03(日) 08:23:58.48 ID:+9cQNJcN
「全く、本当に君らしくもないな士。こんなお宝を目の前に、一体何をしていたんだい?」
「やめろ!!!」
「悪いが、君のお宝は僕が貰うよ」
「士くん!士く……ぃやあああああ!!」
 助けを求めるように手を伸ばす夏海の腰を両手で掴み、海東は背後から一気に腰を進めた。
他者の侵入を許したことのない場所を力づくでこじ開けられ、その痛みと精神的苦痛から夏
海は絶望の悲鳴を迸らせた。
「夏海、夏海!!!」
「く……っ、きっつ……」
 ぐん、と一度体を戻した海東は、深く呼吸を吸うと再び腰を打ちつけた。たった今破瓜し
たばかりのその場所を、遠慮もなにもない力で何度も蹂躙する。大きな瞳でぼんやりと目の
前のシーツを見つめた夏海は、涙に震える声で小さく囁いた。
「や……見ないで…お願いです、士くん………」
「夏海……」
 虚ろな声でそう懇願する夏海に、士の瞳が泣きそうなぐらい大きく歪む。その間も、海東
は夏海の無垢な肌を凌辱することをやめようとしなかった。
「あ……あ、あ……」
「すご……っ、気持ちいいよ、夏海」
「海東、てめぇ…」
 暗い怒りを浮かべる士の姿に、海東は冷やかな笑みで応えた。
「悔しいのかい、士?大事な夏メロンが、目の前で僕に食べられてるのが」
「……ぶっ殺す」
 本心からの呪詛で士が低く呟くと、何故か海東は歓喜の笑みを浮かべた。
「それでいい。君は僕へあらゆるものを与えておきながら、全て奪い去った。だから、今度
は僕が君の全てを奪う。さあ夏海、ちゃんと受け止めるんだ!」
「や……っ!やめて、それだけはいや!!大樹さんお願い!」
「やめろぉぉぉおおお!!!」
 士と夏海の叫びを聞きながら、海東はより一層激しく腰を打ちつけると、その体を大きく
震わせた。
「イく………っっっ!!!」
「海東ぉぉおおおお!!」
 がくがくと全身を大きく揺さぶられながら、白濁した欲望を奥深い場所へと注ぎ込まれた
衝撃からか、夏海の顔から全ての感情が抜け落ちる。まるで人形のような瞳で、涙を流しな
がらされるがままに海東に体を投げ出す夏海の姿に、士は強く瞳を閉ざすと悔しさを噛みし
めながら俯いた。



 ぽたり、と士の唇から落ちた血が一滴、絨毯の上へと落ちた。


219ILLUMINATI 9/9:2011/04/03(日) 08:26:30.02 ID:+9cQNJcN
 狂乱の宴が終わり、一人身支度を整えた海東は夏海の首輪と手錠を外すと、次に士の手足を
拘束していたロープを切った。そのまま、傍らのテーブルの上にナイフを放置し、俯いたまま
の士を見下ろす。
 次に来る行動を待ち焦がれるかのように、海東がじっと士を見つめていると、のろのろとし
た動きでようやく自由になった腕を持ち上げた士が、無言のままたちあがった。
 しかし、すぐ目の前にあるナイフにも、側に立つ海東にも、士は一切反応を示さない。苦痛
に満ちたその瞳が映すのは、無残に蹂躙され打ち捨てられた夏海の姿だけだった。
 よろよろとした足取りで、それでも真っ直ぐに夏海の元へと向かう士の背を見つめた海東の
顔が、これ以上ない苦悶に染まる。
「夏海………夏海、聞こえるか?夏海」
 自らのジャケットを脱ぎ、虚空を見つめ放心する夏海の体へと掛けてやりながら、士は壊れ
ものを扱う様な丁寧さでその頬を包み込んだ。絶望と苦痛と恐怖に染まったその瞳を悲しげに
見つめ、士はそっと夏海の体を抱き起こすと、その腕の中に深く抱きしめた。
「すまない……夏海…」
「……さ、くん」
「夏海」
 弱々しい声で名を呼ぶ夏海の頭を何度も何度も撫でながら、士は繰り返し謝罪の言葉を告げ
た。互いに想いを寄せあいながら、未だに結ばれてはいなかった二人の心は、皮肉なことに酷
く傷つけられたことで強く結ばれようとしていた。
 たとえ体は奪えたとしても、心は奪えない。それを見せつけるかのような二人に背を向けた
海東は、静かに部屋を出た。そのまま廊下を進み、階段を登りきったところでついにその膝が
砕ける。
 もう誰もいない大ショッカーの隠しアジトの中に、乾いた笑い声が虚しく響き渡る。
「士は本当に、何もかも忘れたんだな……僕にあれだけのことをしておいて、一人だけ全部忘
れるなんてずるいよ……」
 そう言って、海東は手にしたディエンドライバーを頭にあてがった。苦痛に歪む瞳を眇め、
遠くを見つめたままトリガーにかけた指に力を込める。


 しかし、どうしても最後まで引くことはできなかった。


「……ふっ……はっ…ははは………僕はまた、一人になるのか……」
 カラン、と力を失った腕から落ちたディエンドライバーが硬い音を響かせる。その場に座り
込んだ海東は、両膝に顔を押し付け頭を抱え込むと、泣くような声で笑いながら肩をふるわせ
続けていた。

220209:2011/04/03(日) 08:28:20.56 ID:+9cQNJcN
以上です
なんかもう、色々な意味でホントすまない orz
221名無しさん@ピンキー:2011/04/03(日) 09:35:14.87 ID:dTcAdZKZ
連投規制にめげずに乙。
222名無しさん@ピンキー:2011/04/05(火) 23:53:19.35 ID:S2n2tx7s
>>209うわあぁぁぁ整合性がありすぎて怖い
変身しなくても強いのも
大ショッカー基地に潜入できたのも
泣き落としが妙に色っぽいのも
大ショッカー時代に仕込まれたと考えれば全部つじつまが合う

投下おつでした
223名無しさん@ピンキー:2011/04/08(金) 20:08:05.72 ID:dSZPRMrJ
>>209
おつ&GJ
224名無しさん@ピンキー:2011/04/22(金) 21:14:48.60 ID:w+cXM63P
保守あげ
225名無しさん@ピンキー:2011/05/10(火) 12:31:41.04 ID:hcuog1u6
ほしゅあげ
226神機さんと一緒:2011/05/13(金) 02:45:51.44 ID:G+6AIqWO
スレがオリキャラに手厳しい風潮なのと直前投下あったからこっちに投下





「ご主人ご主人!どこに行くのだ?連れていってくださいなのだ!」
ひょこひょこと黒い物体が、視界の隅に出たり入ったりを繰り返している。
「ええい、鬱陶しい!」
「それはひどいのだ!あんまりなのだ!いつもご主人をおもりしている神機に対して失礼なのだ!」
「お前みたいなガキに『おもり』された記憶はない!」
妙な喋り方をする腰までの身長しかないその人型の物体は、怒りの感情を全身で表現していた。

見た目は人間の子どものようなそれは、実を言うと人間ではない。
黒い頭に長いアホ毛、妙ちきりんな服。腕の長さの倍はあるんじゃないかという袖は、今使っている神機の刀身の色をしている。
これがそうだと信じたくないが、このちんちくりんこそが俺の使っている神機の精神体なのだそうだ。

ちなみに保身のため言っておくが、俺の願望は微塵も入っていない。
神機が作られてから日が浅いから、神機の精神体自体も幼いのだという。これはペイラーが言った事だから、多分真実なんだろう。
散々強力なコアを喰わせて強化したというのに、ひでぇ話だ。
こいつが出てきた時はロリ疑惑の視線が非常に痛かったが、今では潔白の身だ。
アリサにまで「ドン引きです…」といわれた時はかなりダメージがデカかったが。
お前なら信じてくれていると思っていたのに…。と壁に手をついても、冷たい視線が変わらなかったのが特に。
だが、どうせなら巨乳美女がよかったんだけどな。
227神機さんと一緒:2011/05/13(金) 02:46:41.24 ID:G+6AIqWO
そんな事より、問題はこいつのロリペド好みな見た目じゃない。
こいつは神機の精神体というだけあって、どんな時にも俺に引っ付いてこようとする。
登場するのも神出鬼没。所かわまず時間も選ばず、空気も読まずにいつの間にか居やがる。
それもトイレや風呂だけじゃない。一番参るのがヤってる時だ。
いざ挿入!という時に出てきやがった時は血の気が引いた。
「ご主人ご主人、アリサと何してるのだ?」
「うぉわ!」
「キャァッ!」
アリサは驚いて素に戻るし、脳天気なこいつの声に俺は怒り心頭。今なら強制解放錠無しでバーストできる。
「おぉぉぉぉまぁぁぁぁえぇぇぇぇはぁぁあああああ!!!!」
「リ、リーダー!抑えてください!」
胸元を隠しながら、神機の精神体をつまみ出そうとした俺をアリサが止める。
「ご主人、どうしたのだ?なんで怒ってるのだ?」
きょとんと見上げるこいつがあまりにも憎らしくて、アリサに押さえられた拳がワナワナと震えた。
こいつマジでぶっ飛ばす…!
疑問の答えを求め、黄色い目がじっと俺とアリサを交互に見つめる。
小動物的なその目にほだされたらしい。アリサが俺を押しのけて神機の前に屈む。
「あのね、リーダーと私は…その……えっと…そう、秘密のお話を…」
「お話じゃないだろ。それ言うなら運動だろ?夜の運動」
「そう、運動…って何言ってるんですか!この子の前で!」
「運動なのか?そうなのか!」
シオに話し掛けていたみたいな口調で話すアリサをからかう。

お子様相手に言ったってどうせ分かりやしないんだから、わざわざぼかして言う必要もないと思うんだが。
大体そんなのいちいち答えずに、さっさとつまみ出しときゃいいものを。
「アラガミを倒すためなのか?見てみたいのだ!」
「いや、それはちょっと…」
ほら。まともに取り合うから調子に乗ったじゃないか。
見たい見たいと駄々をこねる神機に、さすがのアリサも困り果てたようだ。
「ちょっとがなんなのだ?見てみたいのだ!……ん?ご主人が変なのだ!大変なのだ!」
落ち着きのないこいつの興味はころころ変わる。
またかとうんざりしながら、騒ぎはじめた神機の見ている先を目で追うと…。
「大変?………あ」
「なんだ?……げっ」
さらに最悪な事に――萎えた。
うなだれてしまった俺の息子を見つめたアリサも思わず沈黙する。
「ご主人、大丈夫なのか?元気なくなったのか?」
「お前のせいだろ!」
俺に怒鳴られ、神機がしゅんと肩を落とした。
突き刺さるアリサの視線が痛い。

「アリサぁ…」
神機が助けを求めるように情けない声を出す。
「何も怒鳴ることないじゃないですか!」
はいはい、こうなると思ってましたよ。
「怒鳴るも何も、実際こいつが悪いんじゃないか」
「それでもです!悪気があったわけじゃないのに、かわいそうだと思わないんですか?……大丈夫だよ、すぐに元に戻せるから」
なんだこの扱いの差は。
羨ましい事にアリサの膝ですんすんと鼻をすすっていた神機は、その言葉にぱっと顔を輝かせた。
「戻せるのか?」
「ええ、簡単に」
「なら、ご主人にやってあげるのだ!やりたいのだ!」
「おいおい、マジかよ…。知らないからな」
また跳びはねはじめた神機に頭が痛くなる。しかしそれにはアリサも面食らったらしい。
やり方を教えろとせがむ神機は、幼児並のしつこさとウザさだ。それを言いくるめるのはほぼ不可能。付き纏われてる俺が保証する。
「じゃあアリサが手本見せてやればいいんじゃないか?」
困り果てたアリサを見ているうちに悪戯心が芽生えてきて、そうけしかける。
何の気無しに言ったその一言がまさか取り返しのつかない事態を引き起こすとは、その時の俺には全く予想できなかった。
228名無しさん@ピンキー:2011/05/13(金) 02:47:11.62 ID:G+6AIqWO
一応ここまで。
229名無しさん@ピンキー:2011/05/13(金) 08:51:55.03 ID:CMm9srDS
うむ!この子になら捕喰されてもいいや!
こんなところで好きなゲームのパロに出会えて嬉しいぜ。

リーダーとリンドウとの戦歴の間をとって、タツミ兄貴の
ショートの精神体は、ちょうどいいロリ年齢か。

よし兄貴その幼女をこっちに渡すんだ。

230名無しさん@ピンキー:2011/05/14(土) 19:12:59.52 ID:ZtCe8+kf
あらいいですね。
231名無しさん@ピンキー:2011/06/03(金) 20:57:17.00 ID:NhA06bku
久しぶりに来たらスレがなくなっていたので
獣姦が地雷の方はご遠慮ください

女侍と狼。プラス奥様  三つ目

===============================================================


「それではくれぐれも家内をよろしく」
 初老の主人はこちらに頭を下げ、従者に守られて慌ただしく旅立った。
残された夫人は心細げにそれを見送った。

 山懐に抱かれた村だった。そしてこの豪壮な屋敷はその外れの山裾にあった。
 主人はもともとは都に居を構える大店の主らしい。
楽隠居のつもりでた年下妻とこの地に来たらしいが、
才覚の足りない息子にたびたび呼び出されて頻繁に屋敷を離れる。
今もそうだ。私は夫人の警護を頼まれてここにいる。
「お手間をおかけします」
 淡く香の匂いの残る部屋で、名家に伝わる雛人形のような美貌の彼女がつぶやいた。
実際の年の頃は知らないが、三十路を過ぎたようには見えない。
だが、その落ち着いた気品は人の侮りを許さない。
「怖くてたまりませんの。主人が家を空けるたびに何者かが私を……」
 うつむく夫人は白い牡丹のように美しい。風にあてず大事に育てた大輪の花だ。
「戸締りは完全でその上どんなに部屋を守らせても気がつくと何者かが通った痕があるのです」
「その時の記憶はないのですか」
「ありません。まるで気を失ったように眠り、目覚めると私の身体に痕跡が…」
 白い肌がほんのりと染まっていく。
「そうですか。他に変わったことは」
 こんな時はあっさりと流した方がいい。相手も気が楽なはずだ。
その見込みは当たって、彼女は応えた。
「毛が……散っているのです」
「?」
「布団に、犬なのかしら、獣の毛が」
 思わず夫人の目を見つめると、困ったように反らされた。

 他の用心棒たちは屋敷の周りを守っている。腕も確かで気のいいやつらだ。
だが彼らは口を揃えて言う。いつの間にか眠っていると。
それは他の使用人たちも同じだ。
 夫人の部屋を徹底的に調べたが、不審な箇所はない。抜け穴なども見つからなかった。
与えられた隣室に下がり、考える。

 眠らせるという不思議さえなければ、人の多い屋敷に誰にも見られずに忍び込み、
事を行えるやつを一人……いや一匹だけ知っている。
 並みより大きな体を持つ青い目の銀狼。言葉を解し知能が高い。
認めたくはないが、私の情夫であるといえる。
 以前、命を救われた。それを盾に求められて拒みきれず従って今に至る。
が、ここしばらくやつは現れない。とある山村近くの林で人にあってからだ。


232名無しさん@ピンキー:2011/06/03(金) 20:59:47.86 ID:NhA06bku

「はがね、おめえは鋼じゃねえけ?」
 木こりの風体のその男は恐れるでもなく近づいてきた。
 狼はちら、とその男を見ると不意に駆け出して姿を消した。
「あちゃー、てっきりはがねと思うたけんどなあ」
 首を傾げる男に理由を聞いた。
「人に慣れた銀狼なんてあいつぐらいのもんじゃろ」
 男はそこからかなり離れた村の木こりだった。その村で、銀狼は育った。
「小さな村じゃが格のある神社があってな、そこの巫女さんが拾ってきたんじゃ」
 優しい彼女は母を亡くした仔狼を見殺しにすることが出来なかった。
飼い犬の乳で育てた狼はすくすくと成長した。
「けだものとはいえ、異様に賢かった。巫女さんにしか懐かなかったけんどな」
 少し考え、それから尋ねてみた。
「その巫女さんは私に似ているかな」
 木こりは驚いて目を丸くした。
「いんや。あんたもえらく綺麗だと思うが、巫女さんは春のおひさまみたいな人で
見ていると胸が温かくなるっつうか守ってやらんといかんって気になる人じゃった」
 なんだか女として負けた気がする。
「いや、凍りついた湖が好きって人もいるからがんばるべ」
 妙な励ましを受けた。
「ありがとよ。それにしてもしろがねじゃなくて鋼なのか」
「しろがねって狼は別におった。山でたまに見るだけで人には近寄らんかったが」
「巫女さんはお元気なのか」
「いいや」
 木こりは顔を曇らせた。
「一年ぐらい前にいなくなった。家は荒らされて銀の毛が散ってて血も流れとった。
はがねに食われたっていうやつもおったけど、おらは盗賊にさらわれるのを
はがねが守ろうとしてだめだったんっだろと思っとる」
 今のあいつからは考えられない。素早くて強くて人にも他の狼にも負けたことはない。
 その時は深くも考えずに木こりと別れた。
それから一月ほどたつのに現れない。

 辞退する私に夫人は酒肴を整えた膳を勧める。
「あら、あなただけではなく他の皆様にも用意してますのよ」
 白い花びらのような微笑み。
「それでは遠慮なく頂かせてもらいます」
 彼女は朱唇をほころばせると隣の座敷に戻っていった。
私はその隙に酒を火鉢の灰に捨てた。
 酒は大好きだ。だから断腸の思いだ。しかし以前仕事中に呑んで困ったことがある。
終わるまで我慢だ。食事だけを食べる。
――――いや、竹筒の中身を空けてそこに入れておけばよかった
 思いついて少し後悔した。
233名無しさん@ピンキー:2011/06/03(金) 21:03:26.29 ID:NhA06bku
夜は更けた。
 夫人も寝たのか隣室からは音一つしない。
いや、隣室だけではない。周りからも人の声はまるで聞こえない。
ただ、風の音と梢の葉鳴りが響くだけだ。
 おかしい。まだ他のやつらも軽口でも叩きながら見張っている頃合だ。
そっと襖に近寄って聞き耳を立てていると夫人が立ち上がる気配がある。
 静かに座敷の障子を開き、雨戸をそっと動かす音がする。
 少し襖を開いて隣を覗く。むせるような香の匂い。昼間よりもずっと強い。
明かりがひとつだけ小さく灯されている。夫人は何者かを自室に招きいれていた。
 再び、雨戸と障子が閉ざされた。
 するすると帯を解く音がした。衣擦れの音も響く。
「………焦らないで。すぐにあげるわ」
 闇に浮かび上がるような白い裸体が晒される。大の男が両手で抱えても
まだ余りそうな胸乳がふるり、と揺れた。
 しばらく動けなかったのは驚きすぎたからだ。
夫人の部屋を訪れた客は、巨大な銀狼だった。
私は全身の血が逆に流れるのを感じた。
 夫人は布団の上で四つん這いになると脚を大きく開いた。
「食べる前によく見て。あなたたちの雌とは違うの?」
 しっとりと美しい声が淫靡な囁きを漏らし、白魚のような指先が女性の部分を大きく開く。
「ほら、どう?こんなに濡れるの」
 銀の細い糸が滴る。狼は長い舌を延ばしてそれを味わう。
「あ、ああぁ………」
 女の声が嫋々と響く。狼の舌が触手の様に中に入り込み、うねる。
夫人はのけ反ると片手でその胸を自ら揉みしだいた。

 耐えかねて飛び込んだ。夫人の瞳が見開かれる。
 獣はゆっくりと舌を離し私を見つめる。青白い焔の色合いの目。
――――ちがう
 あのなじみの銀狼、はがねではない。
あいつはかなり大きいが、この銀狼はそれ以上だ。
 ほっとした瞬間、体中に痺れが走り、膝をついてしまった。手足が自由に動かない。
「お酒を呑まなかったのね。でも食事にも入れておいたのよ。
眠っていたほうが辛くなかったのに」
 甘い声が私に囁く。それから銀狼にまるで情人に向けるような目配せをした。
「この娘も可愛がってあげて。私の後でね」
 胸乳に見合うだけの大きさの尻がくねる。動きだけで獣を誘う。
早く、蜜の滴る中に入れてとせきたてる。
 銀狼の瞳に情はない。私の様子をしばらく眺めた後、興味をなくしたように視線を外した。
夫人に目を向けるがそれはひどく冷たい。まさに獣の目だ。
 がぶり、と肩を浅く噛む。彼女は濡れた声で小さな悲鳴を上げた。
 白い膚に赤い血が滲む。夫人は喜悦の表情で身をよじらせる。
自らの手でたわわな胸を、その先の乳首をもてあそび、もう片方で柔らかな部分の肉芯を撫で上げる。
「…来て……お願い………」
 白牡丹のようだった夫人の膚は紅を含み、緋色の花と変わっている。
少し厚みのある唇はぬらぬらと光り、狼の体を待ち受けている。
少し厚みのある唇はぬらぬらと光り、狼の体を待ち受けている。
――――浅ましい
 しかし目を反らすことは出来なかった。情欲にかられて獣を受け入れる女。
それは私自身と変わらない。私の浅ましさが目の前にそのまま繰り広げられている。
「ひあっ……あ、あ、あああぁぅっ」
 獣が自らの猛った物を女にあてがい、ずぶずぶとぬめった部分に沈めて行く。
夫人は自らも遠吠えする獣のように身を反らし、叫びを上げた。
234名無しさん@ピンキー:2011/06/03(金) 21:04:31.30 ID:NhA06bku
「ああっ、凄いわ。汚らわしい獣が私の中にっ」
 銀狼は何の表情もなく、前脚で彼女を押さえつけ、巨大な雄芯を深々と突きたてる。
息さえ乱さずに女の体を貪っている。
「いいっ……あ、ああん、もう、おかしくなるぅ………」
 いや、既におかしいだろ、との突っ込みさえ出来ぬまま、床に横たわって眺めている。
女の体が蝦のようにはねた。全身がぴくぴくと痙攣したかのように震える。
 この狼は人の女の体に慣れているようだった。夫人が言葉にならぬ声で叫びだした頃合に、
呆れるほど大量の精を注ぎ込んだ。彼女の蜜壷が受けきれずに、太ももを伝う。
 狼は冷たい瞳のままそれを抜いた。

「まだよっ、まだ私に頂戴」
 夫人は尻を揺らして雄をねだる。狼は何の感情もなく再び近寄ると、いきなり別の穴に
自分を差し込んだ。さすがに彼女が驚いて逃げようとするが、
鋭い爪のある前脚で抑えたまま動くことを許さない。
 今までの退屈そうな動きが嘘のように激しく腰を振りたてる。
「あ、いや、あ、ああ……ううっ……」
 既に夫人に余裕はない。乱れるだけ乱れ、口元からは涎をたらし、人を捨てて快楽を貪っている。
そう、いつもの私のように。
 嫌悪感が満ちる。もう見ていたくない。だが目を閉じた私は荒い息遣いを感じた。
「…ひっ」
 目の前に狼の顔があった。
 ぞっとして振り払おうとするが体が動かない。
「行け!充分満足しただろう。私に触れるなっ」
 蒼い瞳には何も浮かばない。言葉はわからないのだろうか。
そういえばあいつは、こんな目をしたことがなかった。
馬鹿にしたり見下したりけっこう失礼な情を浮かべるが、
あの、初めての時から何らかの色を見せた。
それと比べると形だけは似ているがこの狼は得体が知れない。
こちらの方が普通なのだろうがぞっとする。
 狼は無表情に爪で私の衣を剥いだ。
「よせっ。やめてくれ!」
 身動きが取れない。狼は私の胸に舌を這わせた。
「いやだっ!」
 気持ちが悪い。死ぬほどの不快感。快楽など微塵もない。
 狼の不潔な舌が私の膚に触れる。乳首や脇の敏感なところにも伸びるが吐き気がする。
なのにその舌は徐々に下がっていく。
「いやああっ」
 とうの昔に忘れた小娘のような悲鳴が口から漏れる。
ぬめったところを刺激されて、おぞましさに気が狂いそうになった。
 狼は少しもためらわずに復活した雄芯をその場所にあてがった。
「はがねっ!助けろ馬鹿やろーっ!!」
 無我夢中な私は絶叫した。
235名無しさん@ピンキー:2011/06/03(金) 21:06:19.77 ID:NhA06bku

 突然、雨戸と障子が倒れた。
 稲妻のように駆け込んでくる白い影。
 それは私にのしかかる狼に鋭い牙をつき立てた。
 夫人と交わった銀狼は私から飛びのき、飛び込んできたそれに牙を剥いた。
 二匹の獣が睨みあう。
「………おまえ」
 私の獣は先の銀狼より小さい。けれど全身が怒りに震えていてなみなかな闘いで修まりそうではなかった。
夫人の相手は初めて感情を見せた。嘲った薄ら笑い。確かにそう見える。
遊びに使うだけの異種の雌のことで本気で怒っている同種の若い雄を馬鹿にしている。
 はがねは矢のような勢いでもう一匹に飛びついた。
が、そいつはひらりとかわすと、ひょいと外に飛び出た。
そして付き合いきれない、といった顔をしてそのままさっさとその場を去った。
「待て!」
 追って行こうとした銀狼を止めた。いまだ怒りを見せる彼はそれでも私に近づいた。
 腕が、どうにかゆるゆると動く。私は横たわったまま顔を寄せた銀狼の首を抱えた。
 固い毛の手触り。そして温もり。私の狼。
 礼は言わなかった。ただ抱きしめた。

 しばらくそうしていると、なんだか相手の一部が盛り上がってきた。
「おい」むっとして文句をつける。
「けっこう怖い思いをしたんだ。自嘲しろ」
 はがねは少し困った顔で私を見ると不意ににやりと笑った。そう見えた。
「ちょ、ちょっと。障子も雨戸も倒れてるんだぞ!」
 夫人を探すと畳の上で気持ちよさそうに気を失っている。
 銀狼は舌を伸ばして私の胸を舐める。先ほどと同じ行為。だがなぜかそこまでの不快感はない。
「よせって。まだあまり動けないんだって。あ、こら」
 乳首を舐められてつい目を閉じてしまった。
「あ、あああっ、この……バカ狼っ!」
 熱い舌が押し付けられる。自分の体が解けていくのを感じる。
――――なんてえこったい
 私は奥様の薬がものすごく強力である事を、ひたすら願った。

おしまい
236 忍法帖【Lv=4,xxxP】 :2011/06/03(金) 21:56:42.68 ID:EMI6cdS4
GJ はがねとヒロインの馴れ初め話も気になるね。
獣姦スレがなくなってたのは意外だった。今は人が獣を犯すスレしかないのか。
237名無しさん@ピンキー:2011/06/03(金) 23:56:24.76 ID:BvZZu7dv
冒頭の注意書きがないと女侍が女侍と分からないのがあれな気もした
でもGJ

獣姦属性持ってないけどすんなり読めたよ
238名無しさん@ピンキー:2011/06/05(日) 09:48:38.81 ID:AqQdeYYS
>>231‐235
乙です。
獣×人♀スレの需要はありそうなものだがなぁ。

239名無しさん@ピンキー:2011/06/07(火) 22:10:25.53 ID:lZ3jPEzs
職人がいないんすわ
あと居場所も定まってない
240名無しさん@ピンキー:2011/06/15(水) 09:21:05.82 ID:NMC2SMWe
>231
乙 
オチたスレでの作品も その設定虹もおいしく読んだ
また何処かのスレで読ませて欲しい

241名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/20(月) 20:43:08.88 ID:twQnTZxW
女侍来てたー!虹書いた身としては嬉しい限りです。
今回もエロくていい!銀狼は「鋼」という名前なのですね。
女侍さんの名前もしりたいです。
242名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/20(月) 22:35:39.17 ID:Mq4dMfEh
>>231
女侍ってM気質だな。
蒼い瞳の狼にヤられてもイっちゃいそう
243名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/25(土) 23:55:55.50 ID:3pTTJy0z
うお、女侍さんだ!GJ!久々に読めて嬉しかったっす
244名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/26(日) 02:28:05.09 ID:aoGNrR0z
鋼が来なくて蒼い瞳にめちゃくちゃにレイプされる女侍がみてみたい
245名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 09:13:42.08 ID:a2wTX04I
ホシュ
246祭りの夜を:2011/07/03(日) 01:53:25.42 ID:S7JiOv2m
強姦・輪姦・処女喪失・ささやかなグロ描写有ります。


 暗闇の中を、私は独りきりで走っていた。
 走らなくちゃ。逃げなくちゃ。
 息が切れて苦しい。
 心臓も破裂して、躰が、ばらばらに砕け散ってしまいそう。
 苦しさに足がもつれて転んでしまいそうになるけど、それを堪えて私は走る。
 だって走らなきゃ捕まっちゃう。
 あいつらが――村の奴らが、私を狙って追ってきてるんだもの。
 こうして走っていると、胸の上に浮いたブラジャーがかぱかぱと揺れて、乳首に当たる。
 こそばゆいような刺激。でも耐えるしかない。
 ホックを止めたくても、あいつらに引きちぎられたせいで壊れてしまい、どうしようもないのだ。
 脱がされかけた衣服。おかげで、こんな壊れたブラジャーを前に引っかけた状態で、全力疾走しなきゃならないはめになった。
 だけど、こんなのはまだまし。お母さんみたいに、丸裸に剥かれてひどい目に遭ってしまった訳でもないし。こうして下のデニムは無事だったのだから、せめてもの幸運に感謝しなくっちゃ……。
(全く。何でこんなことになっちゃったの……)
 情けない思いに涙が滲む。眼元を拭いながら私は、今日の出来事を思い返す――。



247祭りの夜を:2011/07/03(日) 01:55:43.94 ID:S7JiOv2m
「子追江(こおえ)村」という名前のこの村は、最初から様子がおかしかった。
 路線バスの終着点となっている山の中の停留所から、お父さんの実家へと続く数キロにも及ぶ道のりを歩いている途中。通りすがる村人達がみんな、じろじろ私の方を見てくるのだ。
 主に、チビTの胸元や、デニムパンツの腰の辺りを中心に。
 不躾な視線を浴びせ、意味深な笑いを浮かべてひそひそ話をし合うその姿は、とても不快で薄気味悪いものだった。
 しかも、そうして私に対する好奇心を隠そうともしない癖に、彼らの誰一人として挨拶はおろか、近付いて声をかけようとすらしない。みんなただ、遠巻きに眺めてにやにやするだけ。
 私は、いい加減腹を立てていた。
「咲(さき)ちゃんが可愛いからみんな照れてるのさ」
 お父さんの実家から私を迎に来た従兄弟の孝雄(たかお)ちゃんはそう言って笑ったが、私はそんな好意的な印象を持つことができなかった。
「それにしたって。私、見世物じゃないんだよ」
 口を尖らせ孝雄ちゃんを見上げる。
 孝雄ちゃんはお父さんの兄の子、つまり私の伯父さんの一人息子だ。
 歳は、私より六つ上の二十四歳。中学までは村の分校に通っていたけど、高校以降は都心の一流校に通うため、村を出て独り暮らしをしていた。
 今は、大学院で民俗学を専攻している。
「まあそうむくれんなって。仕方ないんだよ。この村、女が少ないから。みんな意識せずにはいられないんだけど、どうやって声かけたらいいのか判らないんだ」
 確かに。そう言われてから改めて村人達を見廻すと、老若の違いはあるけれど、みんな男ばかりだ。
「なんだったら、咲ちゃんの方から声かけてやれば?」
 からかうように孝雄ちゃんは言う。けれど私はそんな気になれない。気持ち悪くて。
 この、子供の頃から付き合いのある、昔馴染みの孝雄ちゃんがついていてくれなければ、とうの昔に私は逃げ出していたかもしれない。
「この村の女の人達って、外に出ないの?」
 ふと思い立って訊いた私の質問に、孝雄ちゃんはかぶりを振る。
「いやまあ、全く出ない訳じゃないんだけどさ。山の苛酷な環境に耐え切れないのか、みんなあまり丈夫じゃなくてね。たいがい家で座り仕事ばかりしてるよ。病気で臥せってる人も多いな」
「そんな。そんなにここって、辛い環境なの?」
「まあ、東京に比べればなあ……実際俺も、それで嫌んなって出ちまったようなもんだし」
 孝雄ちゃんの話に、私は愕然(がくぜん)とする。
(そんな大変な村で……お母さん、今頃どうしてるんだろう)
 一週間以上も顔を合わせていないお母さんのことを考え、私は小さくため息をついた。
 見上げた空は能天気に晴れ渡り、きらめく陽射しが、暗雲垂れ込める私の心と対照的な明るさで、長く続く農道を照らし出していた――。
248祭りの夜を:2011/07/03(日) 01:57:28.78 ID:S7JiOv2m
 真っ暗な山道を走りつめた私は、ぼろぼろの掘っ立て小屋みたいな処にたどり着いていた。
 倒壊寸前のその小屋の脇には、もう永いこと使われていない様子の窯(かま)らしきものがある。そういえばこの村では昔、炭焼きもやっていたと聞いた。その跡なのだろうか?
 手に持っていた懐中電灯を点け、小屋の中を照らす。
 ――大丈夫。あいつらは居ない。
 私は、中に入って少し休むことにした。一刻も早くこの村を離れたいのは山々だけど、もうこれ以上走れない。
 それに――まだ、お母さんを助けられてない。
 あの気持ちの悪いやつらに捕まってしまったお母さん。できれば、すぐにでも助けてあげたい。
 でも……私一人の力じゃどうにも……。
 とにかく、ここで朝になるのを待とう。
 朝一番のバスで街の警察まで連れて行ってもらい、お母さんのことを知らせるんだ。
 村の駐在じゃあ駄目。この村の連中は、みんな狂ってるんだもの――。

 炭焼き小屋の奥には、小さな囲炉裏の間があった。
 鍋を吊るための鉤が天井から垂れ下がっているのを避け、奥の壁に寄りかかって座る。
(疲れたあ……)
 足がだるくて、自分のものじゃないみたいだ。思えば、高校出てからこんなに歩いたり走ったりしたことなかったんだ。しかも、あんな山道を。
 私は、懐中電灯を消した。
 汚れてふやけきった畳の上に構わず横たわり、眼を閉じる。
 眠りはすぐにやってきそうだった。
(眼が覚めたら……みんなただの夢だったらいいのに)
 激しい疲労の中。私の意識は、泥の中に沈むみたいに途絶えてゆく――。
 ――意識の片隅で、何かが疼いた。
 躰は眠ってしまったのに、頭だけが起きている。そう。まるで、金縛りに遭ったような感覚。
 生臭い息が頬をくすぐっている。二の腕が、湿り気を帯びた硬い指先につうっとなぞられる。
「……いやっ」
 私は跳ね起き、握り締めていた懐中電灯をぱっと点けた。
 本能が察知したとおり。そこには――奴が居た。
「えぇへえへぇ……さ、咲ちゃあん」
 奴は私と眼を合わせると、痩せこけた顔の中、隙間だらけの歯を剥いて、にっと笑った。
 こいつの名前を、私は知らない。
 神社に連れて行かれた時、最初に襲ってきたのがこいつだったから、村の中では偉い存在なのかも。
 でも私から見れば、ただの薄汚い中年のおっさんだ。
 しかも変態。
 だってこいつ、私の眼の前に勃起したおちんちん突き出して、へらへら笑ってるんだもん。
 私は慌てて立ち上がり、このキモい変態じじいから逃れようとする。
 なのに奴は、立ち上がった私の足首を掴み、勢いよく引き倒してしまった。
「やだあっ! やめてぇ……やめろ馬鹿っ!」
 奴の躰が、私の躰を押さえ込む。貧相な躰つきからは想像もできないほどの、ものすごい力。
 手足をばたつかせて懸命に抵抗するけど無駄だった。外れかけのブラジャーが汚い畳に放り出され、次いで、分厚いデニムのボトムも、引きちぎるように脱がされてしまう。
 曝け出された太ももに、ごりごりと硬く、湿り気を帯びたものが押し付けられた。
 おっぱいの膨らみが、いやらしい指先に鷲掴まれる――。
「や……いや!」
 絶体絶命の危機に陥った私は、最後の抵抗を試みた。
 奴の気がそれた一瞬の隙をついて、膝で、濡れて脈打つ不気味な物体を蹴り上げたのだ。
 耳元に、くぐもった呻き声。
 奴の動きが、ぴたりと止まった――。
249祭りの夜を:2011/07/03(日) 02:00:54.07 ID:S7JiOv2m
 お父さんの実家に到着した時、すでに陽は傾きかけていた。
〈三崎(みさき)〉という表札のかかった木造の門の向こう。お屋敷、といっていいほどに大きな日本家屋の内部は、ひんやりと暗く静まり返っている。
「咲ちゃん連れてきたぞお」
 玄関先で孝雄ちゃんが声を上げると、五十過ぎぐらいの小柄なおばさんが、廊下の奥からぱたぱたと現れた。私の知らない顔。
 もっとも、知らないのは当たり前。私は生まれてこの方、孝雄ちゃん以外の親戚に逢ったことがないのだから。
「あの、はじめまして。私――」
「信二(しんじ)さんの娘さんかい?」
 挨拶も何もなく。そのおばさんは、睨(ね)め上げるような眼で私を見て言った。
 信二というのは、私のお父さんの名前。だから私は、おずおずと頷き、頭を下げた。
「あ、はい、三崎咲です。あの、お母さ……母は」
「早く上がって、お風呂に入って!」
「え……」
 理由を訊く間もなかった。やたらに急かすおばさんに促されるまま、私はお風呂場に連れて行かれてしまう。
「早くしないと、本祭に間に合わないからね!」
 結局おばさんは、自分が何者なのかも名乗らないまま、謎の言葉を残して去って行ってしまった。
(田舎の人って、皆あんな風なのかなあ)
 仕方がないので、脱衣所で服を脱ぐ。肩に掛けたトートバッグの中から、換えの下着と洋服、それにタオルを引っ張り出した。
 お父さんの実家なんだし、タオルぐらいは貸してくれるだろうからと、持ってくるべきかどうか迷ったタオルだったけど、やっぱり持ってきて正解だったみたい。
 あれだけお風呂に入れと急かしておきながら、ここにはそんな用意もないみたいだから。
(こんな家でお母さん、一週間も)
 可哀想だな。心底そう思った。
 お母さんがこの家に来たのは、具合が悪くなったというお父さんのお父さん、つまり、私のお祖父(じい)ちゃんの看病のためだった。
 結婚式以来、一度も会ったことのないお祖父ちゃんの看病に一人で遣らされることに、当然のごとくお母さんは反発した。
「何で今さら私が」
「お前の歳ならもう心配は」
「あんな怖ろしい処」
「親父にも村での立場が」
 深夜。お父さんとお母さんの言い合う声はきりもなく続いていたが、結局お母さんが折れたらしい。
 翌朝に私が起きた時はもう、お母さんは村に出かけた後だった。
 そしてそれきり。一週間が過ぎたけど、お母さんは帰らないし、何の音沙汰もなかった。
 仕事の忙しいお父さんとは全然話もできないし、何も訊けない。判らない。
 思い余ってお祖父ちゃんの家に電話してみると、夏休みで帰省中だった孝雄ちゃんが出た。
「心配だったら、咲ちゃんも村に来れば?」
 孝雄ちゃんは私を誘った。
「ぶっちゃけ、祖父ちゃん少し認知症入ってるみたいなんだよ。花枝(はなえ)叔母さんも帰るに帰れないんだと思うんだ。
毎日忙しくて、家に電話する暇もないって嘆いてたよ」
 そんな大変な状態の時に、私が行っても邪魔になるだけじゃないか?
 そうも考えたけど、やっぱりお母さんのことは気がかりだった。
 だから、列車とバスを乗り継ぎ、四時間以上もかけてこの村へやって来たのだけれど――。
250祭りの夜を:2011/07/03(日) 02:02:13.68 ID:S7JiOv2m
(お母さん、実はもう死んでたりして)
 湯船に浸かっていると、ふっとそんな妄想が湧いた。
 馬鹿だな。
 いくらなんでも、そんなはずない。だって、お母さんがこの村で殺されなきゃいけない、どんな理由があるって言うの?
 第一、この家には孝雄ちゃんが居るんだ。お母さんと仲が良かった孝雄ちゃんが、そんなの許す訳ないじゃん――。
 檜(ひのき)の浴槽に躰を埋め、取り留めもなく考えを巡らせていると、お風呂場の引き戸が開いた。
 さっきのおばさんかな? そう思って顔を上げた。
 でも、そこに居たのはおばさんではなかった。
 湯気の向こうから。私の方に手を差し伸べて、よたよた歩いてくる人影。
 それは見知らぬおじいさんだった。
「あぁ……あぁ」
 おじいさんは、変な呻き声を漏らしながらゆっくりと近付いてくる。
 帯を落したのか、浴衣の前はだらしなくはだけ、躰の中心部の――勃起して赤黒く反り返っている――おちんちんを丸出しにして。
 湯船の中、驚きに声も出せずに身を硬くしていると、背後からもう一つの人影が現れた。
 今度はおばあさんだった。
 真っ白な髪の毛をひっつめ、おじいさんに負けず劣らず覚束ない足取りで歩いてくる。
「あなた」
 おばあさんはおじいさんにそう呼びかけると、手に持った帯をおじいさんの腰に巻きつけた。
 おじいさんはなおも私に寄ってこようとしていたが、おばあさんに引きずられるようにお風呂場から出て行った。
 しばらくして、なんとかショックから立ち直った私は、お風呂を出て脱衣所に戻った。
(また戻ってこないでしょうね)
 出口の方を伺いながら足拭き用のマットレスを踏むと、足の指先にぬるっとしたものを感じた。
 ぎょっとして足を上げる。
 青臭い、痰のように濁った液体が、足の指に絡みついていた。
 一瞬、血管を浮かせて勃ち上がっていたおじいさんのおちんちんが、脳裏をよぎった。
(まさか……まさか)
 私はお風呂場に戻り、洗い場の蛇口をいっぱいに捻った。
 溢れ出す熱湯で、じゃばじゃばと足を洗う。何度も何度も。そうせずにはいられなかった。
 病的なまでに足を洗い続ける私の躰に、窓の桟の形に陽光が落ちてくる。
 日が暮れるの早いんだな。この村は。
 虚ろな頭で私は、そんな、どうでもいいようなことを考えていた――。
251祭りの夜を:2011/07/03(日) 02:04:29.40 ID:S7JiOv2m
 暗い炭焼き小屋の中。
 私の膝は、やつの薄汚いものをしっかりと捉えていた。
 確かな、そしてなんとも忌まわしい感触。聞いた処によれば、これで大抵の男性は、悶絶するほどの苦しみにのたうつはずだ。
 実際、奴は私の膝蹴りを受け、凍りついたように硬直している。
 続いて奴は、悲鳴を上げて転げまわるに違いない。その隙に逃げ出してやろうと、私は身構える。
 けれど。その後起こったできごとは、思いがけないものだった。
「ぐう……おぉ」
 低く漏れ出る声と共に。私の膝頭が、じわりと濡れた。
 生ぬるく。途切れ途切れの液体が、震えながら私の膝に、腿に、止(と)め処(ど)なく降りかけられる。
 ぞっとした。奴は、私に膝蹴りされて射精したのだ。
 しかも。
(こいつ、まだ勃ってる)
 奴の汚らしいものは、大量の精液を私の躰にまき散らしたにも関わらず、未だに脈打ち大きく膨れたままだった。
「いや……」
 本気で怖くなった私は、異臭を放つ粘液にまみれながら、畳の上を這いずり逃げようとした。
 そんな私を嘲笑うように。
 奴は私の腰を両手で挟み、一番いけない、私の股の間にある部分に、とうとう手を伸ばした。
「うああっ」
 触れられた場所に、恥ずかしい感覚が染み渡って思わず声を上げる。
 気持ちいい。下着越しだというのに。自分で触るのとは桁違いの快感に、腰が抜けそうになる。
 ああ、奴の指が下着の上から裂け目をなぞってる。上下に素早く。
 私のはみ出たびらびらが摩擦されてる。
 だめ。頂点に埋もれている敏感な部分が擦られたら……こんな、パンツ越しなのに!
「いぃひぃひぃ、咲ちゃん、おまんこが湿ってきたねえ……お豆もこりこりしてきたよおぉ」
 奴は喘ぐようにいやらしい笑い声を漏らしながら、私の恥ずかしい場所を弄くり、そして、ごりごりしたものをぐりぐりぬるぬる、私の躰のありとあらゆる場所に擦りつけた。
 頭がぼおっとしてくる。
 私の意思に反し、躰がさらなる快楽を欲しがって疼く。
「やだ……放して、放せ!」
 躰が負けそうになるのを圧して、私は抵抗を続けた。こんな気持ちの悪い奴に犯されるのは、絶対いやだ。
 でも、どんなにがんばっても力では敵わない。
 いつしか私は、私の躰は、畳の上にうつ伏せに押さえ込まれ、お尻の谷間に勃起したちんちんを押しつけられていた。
「ああやだ、お願い……」
 おぞましい快感に、私はお尻を振って、よじる。
 するとまた、奴の動きが止まった。
 お尻に伝わる震え。背中の窪みに、ぬるい液体がぴたぴた飛んでくる。
(こいつ、また)
 精液を浴びせられる不快感に顔をしかめる。こんな短時間で二度も。この村の奴は、やっぱりおかしい。恐怖を通り越し、私は呆れる。
 その時、突然背中に奴が倒れ込んできた。
 今度は何を。そう思って身構えたが、それ以上何も起きない。
 重たい躰を跳ね除け、懐中電灯で照らしてみた。
 奴のちんちんは――しおしおと萎んで、小さく縮込まっていた。顔を見ると、白眼を剥いてぐったりしている。
(死んだの?)
 顔の前に手をかざす。一応、息はあるみたい。
 深いため息をついて、畳にへたり込む。疲労と、ささやかな安堵が全身を覆った。
 とりあえずこれで、当面の危機からは逃れられたのだ。
 おちんちん同様、力を使い切って縮んでしまったように見えるおっさんの躰の隣で。
 精液まみれの私の躰はただ重く、憂鬱な臭いを発していた――。
252祭りの夜を:2011/07/03(日) 02:07:21.88 ID:S7JiOv2m
「……孝雄ちゃん!」
 夕暮れ時のオレンジに染まった三崎のお屋敷。
 お風呂から出た私は、すぐに孝雄ちゃんを捜した。
 古い造りの家の中はひたすら静かで、人の気配や暖か味が全く感じられない。
 薄暗くてやたらに長い板貼りの廊下を、私は勝手にうろつき廻る。
 不安と、ぼんやりとした恐怖に、私の胸は高鳴っていた。
 あの無愛想なおばさんや、変なじいさんばあさんはともかく。孝雄ちゃんまで姿を見せないのは、どういう訳なんだろう?
(まさか、孝雄ちゃんの身にも、何か)
 不安が、嫌な想像を増幅させる。
 私はいつの間にか、半泣きで孝雄ちゃんの名前を連呼していた。
 孝雄ちゃんを呼びながら、眼につく部屋の戸や襖(ふすま)を片っ端から開けてゆく。
 なのに、孝雄ちゃんはどこにも居ない。
 それどころか、どの部屋にも本当に、全く人が居なかった。
「孝雄ちゃん……孝雄ちゃん!」
 私の、ひときわ大きな声に応えるように。傍らの障子が、すっと開いた。
「あ……」
 私は一瞬、言葉を失い息を飲んだ。
 障子を開けたのは、さっきお風呂場で見かけたおじいさんだったのだ。
 おじいさんはさっきの浴衣ではなかった。もっと立派な着物の上に、羽織をきちんと重ねている。髪も綺麗に撫でつけていて、お風呂場で見た時とは別人のよう。
「孝雄はもう出かけたよ」
 落ち着いた声で、おじいさんは言った。
「出かけた、って……どこに」
「ハツコに聞いとらんかったかね。今日は、村の神社で祭りをやるのだよ」
 おじいさんは、薄く笑った。
「花枝さんはもう行っとる。わしらも行こう」
 おじいさんは私の手を取ると、玄関に向かって歩き出した。
 おじいさんが部屋を出る時、中に居る人影がちらりと見えた。
 それはあの無愛想なおばさんと、お風呂場に帯を持ってきたおばあさんだった。
 二人は部屋の片隅で小さくうずくまるように座り、歩いて行くおじいさんと私を無言で見ていた。
 恨みがましいような冷たい目線。
 それでいて、全てを諦めてしまったような投げやりさも漂わせている。
「さあ。早く行かないと」
 おじいさんは見た目に反した強い力で、戸惑いまごつく私の手を引いた。
 さっきのおばさんと同じく、このおじいさんも私に対して強引で、ぶっきらぼうだ。
 玄関ではスニーカーの紐を結び直すことさえ許されず、手を掴んだままぐいぐい引き廻される私は、まるで警察に連行される犯罪者のようだと思った。
「あの! あなたは、私のお祖父さんなんですか?」
 私を引っ張るおじいさんに、やっとの思いで私は尋ねる。
 おじいさんは振り返りもせずに、
「ああ、そうだよ」
 とだけ答えた。
 玄関を出たお祖父さんは正門ではなく、建物をぐるっと廻って裏庭の方へ進む。
 裏庭の片隅には、鬱蒼と繁った森の中へと続く小道が伸びていて、どうやら、そこから神社に向かうらしい。
 何となく不安を覚えた私は、もう一度お祖父さんに話しかけた。
「あの! 家のお母さん、お祖父さんが病気だからこの家に呼ばれたって聞いてるんですけど。
あなた本当に病気なんですか? お母さん……この家で、どんな風に過ごしてるんですか?」
「花枝さんは、ようやってくれとる」
 小道の入口でようやくおじいさんは立ち止まり、振り返った。
「倅は――信二は、ほんに良い嫁を見つけたもんじゃて。
全く、あの出来損ないには勿体無いよ。ちいと薹は立っちまってるが、それでも充分いい嫁だよ」
 そう言って、私に笑顔を見せる。
 葉陰の下で見るその笑顔は、なんだかいやらしくて不潔な感じがした。
253祭りの夜を:2011/07/03(日) 02:10:07.32 ID:S7JiOv2m
 我慢の限界だった。
 大きく息を吸い込んだ私は、お祖父さんの手を振り払い、小道の反対側に向かって駆け出した。
 背後で呻くような叫び声が上がったが、それを無視して私は走る。
 とにかくこの家から――村から出て行こう。
 お母さんは、後でお父さんと一緒に迎えに来よう。
 何なら警察に行ったっていい。ひとまずここは、逃げるが勝ち。
 そう思ってひたすら走り、玄関前の正門を飛び出す。
 途端、誰かと正面衝突してしまった。
「こんなことだろうと思ったぜ……来てみて正解だったよ」
 初めて聞く男の声。痛い。両手首が、きつく捻り上げられている。
「だから言ったろう? いつまでもあんなじいさんに任せてちゃ駄目だ。近頃じゃあ、頭の螺子(ねじ)も少々緩んできてるようだしな」
「そのようだなあ。まあ、しょうがあんめ。三崎の親父も歳だから」
 背後からは別の声がいくつか。どうやら、私を捕まえにきた男は複数いるようだ。
「や……ちょっと、放して下さい!」
「まあ落ち着きなさい、咲ちゃん」
 手首を掴んでいる男が、私の名を呼ぶ。私は顔を上げた。
 夕暮れから夜に変わろうとしている空の下で。暗く翳った男の顔が、私に笑いかける。
「会うのはこれが初めてだよね。ようこそ子追江へ。わしは君の叔父の孝久(たかひさ)だ」
 私の叔父さん――つまりこの人がお父さんのお兄さんであり、孝雄ちゃんのお父さんってこと?
「さて、咲ちゃんはこんな時分に一人でどこ行く気だったのかな? 祭があるから神社に行かなきゃならんのは、知っているはずだろう?」
「ま、祭って、何なんですか?」
「この村に古くから伝わる伝統的な儀式だよ。まあおいで。何も怖いことはない。それに、神社に行かなきゃお母さんにも逢えないよ?」
 叔父さんは、私の腕を引っ張った。逃げ出したかったけれど、大の男数人が相手では無理なこと。私は、大人しく連れて行かれるしかない。
 森の奥にある神社まで、そう遠くはなかった。
 お屋敷の裏手。歩いて十分もしない内に、神社の赤い鳥居が見えてくる。
 境内の周りは、しんと静まり返っていた。
 お祭とか言うわりには、静か過ぎる。人の気配もないみたい。
「みんな本殿に居るんだよ」
 私の心中を見透かしたように、叔父さんは言った。
「さあ、咲ちゃんも早く。みんな待ちくたびれているよ」
 鳥居をくぐり、本殿を指さす。本殿の扉は、堅く閉ざされていた。
「開けてくれ。シュサイが届いた」
 シュサイ? 疑問に思う間もなく、重厚な観音扉がゆっくり開き始める。
 本殿の中は、ぼんやりとした明かりに包まれていた。
 電灯ではなく、沢山並んだ蝋燭による明かりのようだ。
 蝋燭に囲まれた本殿の中央に、何やら人だかりができている。入り口の階段を上がり、私は中を覗き込む――。
 その時。突然、私は後ろから突き飛ばされた。
 何? 躰がつんのめり、本殿の板の間に倒れ込んでしまう。背後で、扉の閉まる音がした。
「おうおう、やっとシュサイのお出ましか」
 人だかりの中の何人かが、私の方に近寄ってきた。私はぎょっとする。その人達は全員、裸だったのだ。
「な……!」
 正確に言えば、みんながみんな全裸という訳ではない。
 ある人はランニングシャツの上だけ。またある人は着物の裾だけ絡げて。
 でも、全ての人達に共通している事実があった。全員、鎌首もたげる蛇みたいに勃起したおちんちんを丸出しにしていることだった。
254祭りの夜を:2011/07/03(日) 02:11:26.87 ID:S7JiOv2m
「この子かあ……」
「へえ、近くで見ると結構可愛いじゃん」
「都会っ子ってえ処がまたそそるよなあ」
「やっぱ若いってのが一番のポイントだな。まだ十代だって?」
「十八だと聞いたぞ?」
「しょ、処女かなあ……?」
 いつしか私は、おちんちん丸出しの男達に包囲されていた。
 こいつらが何をしようと考えているか――そんなのは、小学生の女の子にだって判るようなことだ。
(どうしよう……)
 退路を求め、私は周囲を見廻した。
 さっきの観音扉の前には、通せんぼをするように見張りの男が立っている。
 奥は? 人だかりのある方に眼を凝らす。
 人と人の隙間から、何やら白っぽいものが見えた。
「咲……」
 懐かしい声がする。恐怖も忘れて立ち上がり、私は叫んだ。
「お母さん!」
 私の声に反応するかのように、お母さんの周りの人垣がさっと別れる。
 お母さんは、本殿の床に裸で転がっていた。
 ただ転がっているだけじゃない。裸のお母さんは、同じく裸の男に腰を抱えられている。
 男はお母さんと――躰を繋いでいた。
「咲……どうしてここに」
 お母さんは男に犯されながら、顔を傾け呆然と私を見た。
 乱れた髪を頬や額に張りつかせ、全身が、油を塗りたくったようにてらてらと輝いている。蝋燭の不安定な明かりが、肌の起伏をまだらに浮き上がらせていた。
「あんたが、ここに来たら……私が、ここに、来、来た意味、ないじゃない……あんたが来ないで、済むように……私は、私は、ここに、来たって、いうのに」
 男にちんちんを挿し込まれ、腰を激しく揺さぶられているお母さんの言葉は切れ切れだ。
「おおー、娘の前で母親のまんこにするのは、堪らんのおぉー……おうっ」
 お母さんを犯す男がぐっと腰を突き出して動きを止め、お尻をぴくぴく痙攣させる。
 お母さんは「くうっ」と呻き、硬く目を閉じて足先をぴんと伸ばした。
「へっへえ。このあま、娘の眼の前で気をやりゃあがった」
「みんなでさんざっぱら嵌めてやった後だというのになあ。見ろ、この気持ちのよさそうな顔。涎まで垂らしてやがる」
「まんこの方も凄いぜ。泡立った汁でべとべとになってらあ……おいタツ、とっとと退かねえか」
 タツと呼ばれたその男は、みんなに急かされるままに、お母さんの中からちんちんを引き抜いた。
 男が離れた刹那、白い腿の間、真っ赤に腫れ上がったお母さんのあそこが見えた。
 血のように赤く染まった中心で、ぽっかり黒く開いた穴から、白っぽい液体がたらたら流れて――。
 でも、それが見えたのはほんの一瞬だけだった。次の男が、お母さんの股の間に割って這入ったからだ。
「あああ、やめてもう……」
 拒む言葉を言いかけたお母さんの口は、別の男にねじ挿れられたおちんちんに塞がれる。
 他の男達は待ちきれないのか、お母さんのおっぱいやら脇腹やらに、おちんちんを擦りつけて荒い息を吐いている。浅ましく。盛りのついた犬みたいに。
(最低……気持ち悪い)
 やめて! と、叫びたかった。お母さんから薄汚い男達を引き剥がし、助けてあげたかった。でもそれは不可能だった。
 だって私も、すでに男達に取り押さえられていたから。
 何本もの手に絡みつかれて。激しい鼓動に跳ねる胸や、デニムが食い込むお尻を、摩られ、揉まれ、くすぐられて。
 口の中にさえ指を挿れられてしまい、声も上げられない。
 お母さんも、私がされていることに気づいて何やら言おうとしているようだけど、口に出し挿れされているちんちんに邪魔され、呻き声しか出せないでいる。
255祭りの夜を:2011/07/03(日) 02:13:12.40 ID:S7JiOv2m
「う……ぐぅ」
「おご……ぐおぐ」
 私とお母さんは、動物じみた惨めな声を漏らして本堂の床を蠢く、哀れな生贄(いけにえ)だった。
(やだ、やだ、やだ!)
 触手のように絡みつく無数の手や指先が、私の衣服を剥ぎ取ろうとしていた。そう。脱がせるのではなく、剥ぎ取っている。
 ぴっちりとしたTシャツの袖口から。裾から。割り込む手が布地を破り、びりびりに引き裂いてゆく。
 デニムの腰に巻いたベルトさえも、とんでもない力によって壊されてしまう。
 露出し始めた私の肌を見て、男達がどよめく。気の早い誰かが、私の躰にちんちんを擦りつけていた。
(ああいやこんなの……誰か……誰か!)
 涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら、心の中で私は祈った。犯されたくない。こんな、こんな奴らに、処女を奪われたくない――。
 神社の床で捧げる祈りは、やはり神様に届きやすかったのだろうか?
 心の叫びに呼応するように、本殿の扉が外から激しく叩かれた。
 扉が壊れるんじゃないかというくらいに凄い音。いや、多分これは、実際に扉を壊そうとしてる。
「咲ちゃん! 咲ちゃん!」
 若い男の声。次いで、大音声と共に木の扉から何かが突き出る。
 木っ端をまき散らしながら。大きな刃が、扉の表面に裂け目を入れた。
「咲ちゃん、まだ無事か!」
「孝雄ちゃん……」
 男達の手の隙間から、私は声を上げた。
 扉の向こう側には、大きな斧を携えた孝雄ちゃんが立っていた。
256祭りの夜を:2011/07/03(日) 02:15:17.71 ID:S7JiOv2m
 その後は、大変な騒ぎになった。
 突如本殿に乱入した孝雄ちゃんと、村人達との争い。
 倒れる蝋燭。舞い上がる粉塵。怒声と、床を踏み鳴らす音。壁に何かがぶつかる音。
 沢山いる村人達相手に孝雄ちゃん独りでは……と思ったけれど、孝雄ちゃんは案外がんばった。
 斧で武装している孝雄ちゃんに対し、村人がみんな裸で、しかも、おちんちん丸出しの心許ない格好であるのも幸いだった。
 孝雄ちゃんは私を捕らえていた村人達を撃退し、私を助け出すことに成功したのだ。
「行くぞ咲ちゃん!」
「あ、お、お母さんも」
「今は無理だ! 叔母さんは、本殿の奥でみんなに囲まれてるから……とりあえず今は、君を」
 孝雄ちゃんは、私の腕を強く引いた。境内を走りぬけ、赤い鳥居をくぐって森に出る。
 神社からは、すぐに村人が追ってきた。みんな服を着て、手にそれぞれ得物をもっているようだ。
「孝雄ーっ!」
 背後から、ひときわ大きな声と共に、身の竦(すく)むような破裂音が轟いた。
 私は凍りつく。多分これ、破裂音とは違う。きっとこれは――発砲音だ。
「親父の奴……猟銃持ってきていやがったのか」
 孝雄ちゃんが、忌々しげに舌打ちをする。胸ポケットに挿してあった懐中電灯を消して、震える私を傍(そば)の茂みの中に押し込んだ。
「咲ちゃん、しっかりしろ。大丈夫。こんな夜の森ん中で、鉄砲の弾がそうそう当たるもんじゃねえ」
「で、でも……」
「俺を信じろ! だいたい、奴らはみんな咲ちゃんに怪我を負わせるようなことはしないはずだ。その……躰に、傷をつけると都合悪いからな。
さっきの発砲だって多分威嚇だ。本気で狙った訳じゃねえと思う」
 傷をつけると都合が悪いというのは、その後の儀式に差し障るから、ということなのだろう。私に取っては、銃で撃たれるのと同じくらいに嫌なお祭の儀式。
「さあ咲ちゃん、先に進もう。森の出口に車を用意してあるから、いったん村の外へ――」
 と、言いかけた孝雄ちゃんの言葉が、ぐっと詰まる。どさっ、と音を立てて、その躰がくずおれる。驚いて顔を上げると、そこには黒い人影が。
「ひひひ。見つけたぞお」
 それは、お祖父さんだった。
 何やら長い棒のようなもので、孝雄ちゃんを後ろから殴りつけたらしい。
「さあ咲ちゃんや。お祖父ちゃんのちんぽを、気持ちよくさせておくれ」
「いやああっ」
 着物の裾を捲り上げて迫ってくるお祖父さんから、私は懸命に後ずさる。私の足を掴もうとするお祖父さん――でも、そのお祖父さんの躰に、立ち直った孝雄ちゃんが組みついた。
「ぐう、孝雄……放せ貴様あ」
「咲ちゃん! 早く逃げるんだ! それを拾って」
 私の足元には、お祖父さんの持っていた懐中電灯が落ちていた。
「何とかして村から逃げろ! 俺のことは心配するな……咲ちゃんを追って、必ず行くから!」
 お祖父さんと揉み合いながら、孝雄ちゃんは怒鳴った。
257祭りの夜を:2011/07/03(日) 02:25:47.53 ID:S7JiOv2m
 孝雄ちゃんの言いつけに従い、私は独りで逃げた。
(大丈夫よね。孝雄ちゃんなら、絶対……)
 途中何度か、追っ手の村人と出くわした。
 土地勘のある村人達は、私の行く先を予想し、先廻りをして待ち構えていたのかもしれない。
 そんな村人達から逃げ廻るうちに、私はどんどん山奥へと追いつめられて行った。
 明かり一つ無い山道を独りきりで逃げるのは、胸の底が冷え冷えとするほどに心細かった。おまけに、暗いから方向感覚も掴めない。
 自分が現在、どこにいるのかも判らぬままに。私はひたすら逃げ惑った。
 そして、ようやく見つけた安息の場所、炭焼き小屋も、今こうして失われてしまった。
 炭焼き小屋から出た私は、少しがに股気味に歩き始めた。
 奴に汚された下着は脱いで捨ててしまった。ノーパンでデニムパンツを穿いている状態なので、下半身に何とも言えない違和感がある。
 壊れたブラジャーは相変わらずだし、動き難いことこの上ない。
(こんなんで私、逃げ切れるのかなあ)
 極限まできた心身の疲労に、なんだか投げやりな気持ちになる。もうどうなってもいいから、どこかでゆっくり休みたい。
 そのためだったら、ちょっとぐらい、いやらしいことされたって――。
(ううん。やっぱり、そんなの駄目)
 神社の森で、私を逃がしてくれた孝雄ちゃんの眼を思い出す。
 あの真剣な眼差(まなざ)し。
 おそらくはたった一人で村に背き、たった一人で私を助けに現れてくれた孝雄ちゃん。
 孝雄ちゃんのあの優しさを、裏切ることはできない。
(そうだよ。孝雄ちゃんのためにも、私は)
 そう決意して顔を上げた途端、足元から地面が消えた。
「きゃあっ?」
 視界が反転する。草や土くれの中をごろごろと転がり落ちてゆく感覚。最後、強い衝撃に全身を打たれた。息がつまり、意識が遠くなりかける。
 それを堪え、頭を振って起き上がった。落ちた時に打った肩の辺りがじんじんするし、皮膚のあちこちに草や小枝で切られた傷がついてはいたけど、大怪我はしていない様子。
 ただ、胸に引っ掛けていたブラジャーはなくなっていた。崖から落っこちる途中に、どこかにいっちゃったみたい。
 裸になってしまった胸を覆い隠しながら、辺りを見廻した。ここは――どこ?
「咲ちゃん」
 暗闇の中から声をかけられ、私は飛び上がった。
「こんな処で何やってんだよ」
「た、孝雄ちゃん?」
 なんと、そこにいたのは孝雄ちゃんだった。
「孝雄ちゃん、私を迎えにこんな遠くまで来てくれたの?」
「何言ってんだよ、ここは、三崎の屋敷の裏庭だぞ」
 えっ、と驚き、もう一度周囲に眼を凝らす。
 孝雄ちゃんの言ったとおりだった。
 ほんとに馬鹿みたいな話。
 私がずっと、深い山奥だとばかり思ってさまよい続けていたのは、この屋敷の小さな裏山だったのだ。
 暗い上に、初めての土地だからそれが判らなかったんだ。
「なんにせよ、ここに来られたのは運が良かった。村の連中も、まさか咲ちゃんが屋敷に戻ってるとは思わないだろうからな。逆に安心だよ」
 孝雄ちゃんは私の肩に、脱いだ自分のカッターシャツを着せかけてくれる。そして、お屋敷の方に私を促した。
「お袋と祖母ちゃんに見つからないようにしないとな。二人とも、村の味方だから」
 私達はそっと裏口の戸を開け、中に入った。
258祭りの夜を:2011/07/03(日) 02:27:49.51 ID:S7JiOv2m
 数分後。私と孝雄ちゃんは、お屋敷の一室でペットボトルのお茶を飲んでいた。
 孝雄ちゃんが中学生の時まで使っていたというその部屋は、二階の奥まった場所にあった。
 八畳ほどの広さはあると思うのだけど、物が多いせいかひどく手狭に見える。
 ベッドや机などの家具以外にも、雑誌やらビデオテープやらが散乱していて、足の踏み場もないほどなのだ。
「汚い部屋でごめんな」
 用心のため、電気は消したままの暗い部屋で。勉強机の椅子に座り、孝雄ちゃんは苦笑いをした。
「村を出た時そのままの状態でさ。あれから、ほとんど帰ってきてもいなかったし」
 言い訳するような台詞の後、机上の地球儀を廻す。
 机の並びにあるベッドに腰かけ、私は曖昧に笑い返す。でもすぐにその笑顔を打ち消して、口を開いた。
「それで……お母さんは?」
「まだ神社に居る」
 硬い表情で、孝雄ちゃんは答える。
「助けようにも、神社の周りは猟銃持った連中で固められてて、どうにも……本当にすまない」
「孝雄ちゃんが悪いんじゃないよ」
 慰めに言ってみたが、声に落胆が滲み出てしまった。私と孝雄ちゃんは、二人してしゅんと俯いてしまう。
「だ、だけどさ、もうその……おおかた終わってると思うんだ、叔母さんの方は。今はみんな、咲ちゃんを捕まえることに熱中してるはずだから……」
 あの、お母さんを犯していた連中が、私にも同じことをしようとしてるということか。そう考えると、薄ら寒さに肌が粟立ってしまう。
 私は、自分の躰をそっと抱き締めた。狂ってる。本当に。
 挫(くじ)けそうになる気持ちを奮い立たせ、私は、もう一つの質問をした。
「ねえ孝雄ちゃん。この村では今、何が起こってるの?」
 それは一番大きな、そして、重要な疑問だった。
 この村の異常な状態。異常な人々。お祭と称して女性を捕らえ、みんなで襲う。
 文明人のすることとは思えないこんな蛮行が、いくら田舎の山奥とはいえ、この日本で行われているなんて。
 この疑問の答え、孝雄ちゃんなら知っているはず。昔、あいつらと同じこの村の住人だった、孝雄ちゃんならば――。
 私がじっと見つめると、孝雄ちゃんは、小さくため息をついて語り始めた。
「昔から……この村では、定期的にああいう祭が行われていたようなんだ――」
259祭りの夜を:2011/07/03(日) 02:32:43.30 ID:S7JiOv2m
 子追江村は、平安末期から続いているという、歴史のある村だった。
 こんな山深い不便な場所にあり、しかも土が痩せていて、作物もろくすっぽ育たなかったそうなのだが、村は絶えることなく、ひっそりと存続しつづけた。
 それには、この村の成り立ちが深く関わっていたという。
「俺さ。大学で民俗学の研究始めてから、色々調べてみたんだよ。子追江のこと。俺も不思議に思ったからな。
こんな山奥の外界から隔絶されたような土地に、なぜ村が興されたのか、ってさ。
最初は、平家の落ち武者辺りの隠れ里だったんじゃないかと予想してたんだけど……この村の始まりは、そんなもんじゃなかった」
「なんだったの」
「子追江の村は元来……里で悪事を働いて逃げ出した罪人が、住み着いた場所だったんだ」
 その悪事とは、主に女性絡みのことだったという。
「女を大量に犯した奴。犯すだけでなく、殺してしまった奴。さらに、殺すだけでは飽き足らず、もっと変質的な……口に出すのも憚られるような行いにまで及んだ奴。
そればかりじゃない。中には、今でいう知的障害を持った者も大勢居たらしい。まあ要は、里の厄介者達が捨てられる場所でもあったってえ訳だ」
 女性を襲う犯罪者や、知的な障害を持った人達の寄り集まったこの土地は、やがて一つの共同体として機能するようになっていった。
「共同体、つってもなあ。元が罪人や障害者の寄せ集めだから、いざこざが絶えなかったようなんだよ。里の連中とさ。
獣のような子追江の人間をなだめるために、ひところは、定期的に里から娘が寄越されたりもしてたらしい。まあ、一種の生贄みてえなもんだな」
「生贄だなんて……なんだか魔物扱いだね」
「そうだな。でも実際、人間とは呼べないような奴ばかりだったんだろうと思うよ。昔の記録を紐解くと、子追江イコール鬼の住む場所、みたいな書き方しかされてなかったからな。
古い伝承だから、大仰に誇張されてる部分があるにしてもだ。子追江の住人が狂暴な上、膂力と精力が異様に強かったのは間違いないみたいだ」
 里の人々は、子追江に対する策に頭を悩ませた。
 何人かの娘達を生贄として捧げたおかげで、最低限欲望を処理できるようになった子追江の者達は、里に下りて暴れ廻ったり、女を大量にさらっていったりすることは少なくなっていたものの、それもいつまで続くか判らない。
 かといって、これ以上娘の生贄を用意することも難しい。
 考えたあげく――里の出した結論は、びっくりするようなものだった。
「里の連中はな、この村に神社を建てたんだよ」
 私とお母さんが連れて行かれたあの神社。あそこには、女性を守る神様が祀られているのだという。生贄として子追江に遣られた娘達のため――というのがその理由だったけど、あくまでそれは、建前に過ぎなかった。
「里の連中はあそこに市比売(いちひめ)様という、京都の有名な神様を祀ったんだ。するとどうなるか?……女性の参拝客が訪れるようになるんだよ。遠くから、何日もかけて。子追江の怖ろしい住人のことなど、何も知らずにな。
そういった女性達を、村人がどうしたかは……想像に難くない。判るだろう、咲ちゃんにも」
 私は深く頷いた。
 でも、いくら霊験(れいげん)あらたかな神社の分社とはいえ、この山深い場所にそうそう人が訪れるものではない。せいぜい年に数人、それも、春から夏にかけての気候のいい時にしか参拝客はなかったようだが、それで充分だった。
 やがて、神社にお参りに来た獲物達や、過去に里から連れてこられた娘達は、村人の子を次々に宿し、出産していった。
 こうして、子追江は里から完全に独立し、切り離された隠れ里のような村となった。
 痩せた土地を耕して、芋や豆などをほそぼそと作り、山の獣を狩る。
 神社にお参りに来た女を襲い、子を孕ませる――そう。女だけは、外界からの来訪を待ち、頼るしかなかった。
 なぜなら、子追江村では、女児が一切生まれなかったからだ。
「こればかりは、どうしてなのか理由が全く判らないんだ。遺伝的な問題なのか……あるいは、市比売様の下した罰なのかもな。とにかく村を存続させるためにも、参拝客の女を襲うことだけは、やめる訳にいかなかった」
260祭りの夜を:2011/07/03(日) 02:35:45.90 ID:S7JiOv2m
「そうなんだ……それで?」
 ……ちょっと疑問に思ったけれど、私は続きを促した。
「それで……数十年、数百年という年月を重ねるうちに、神社を訪れた女を襲うという事柄が、儀式化していったんだな。
盂蘭盆会の頃に村へ来た女を神様からの贈り物とし、長者の屋敷で歓待した後、神社の本殿に連れ込んで犯す。
通常、村で犯された女は村の女となり、村人達の子を産み続けて一生を終えていったものだったが、祭の日、本殿で犯された女は別だった。
神から送られたありがたい拝領物は、村人の性欲だけでなく、食欲を満たす対象にもなったんだ」
 私は、思わず立ち上がっていた。
 食欲をも満たす――それじゃあ、それじゃあお母さんは?
「大丈夫だよ。さすがに今は、そんなことまでしやしない。その時の名残りで、生贄の女のことを前菜とか主斎とか呼ぶのは、変わっていなかったようだけどな。
あくまでそれは、食料の乏しかった時代だけの、忌まわしい過去の歴史に過ぎない。
祭自体も現代では廃れて、十数年から二十年おきにしか行われないようになっていた」
 そう言って孝雄ちゃんは、私の取り落としたペットボトルを拾い上げた。
 空のペットボトルを机に置き、椅子から立って窓の方を見やった。
 私に背を向けて。下ろしたブラインドの隙間から、表を伺っている。
「それにしても――全く、信じられない話だよな。この現代社会に、こんな時代錯誤な風習の残った村があるだなんてよ」
「うん……」
 私は立ったまま、うなだれるように返事をした。
「いくら風習だからって……何でみんな、あんなことができるの? あんな、ひどいこと」
「血なんだろうな」
 窓の方を向いたまま、孝雄ちゃんは言った。
「ここは元々、血と肉欲に餓えた野獣どもが興した村なんだ。先祖伝来の……狂った血のせいで躰が疼いて、そうせざるを得ないんだ。きっと」
「そういえば、襲ってきた村人達……みんな、子供の痴漢みたいだった」
「子供の痴漢?」
 孝雄ちゃんが、ちらりと私を見返る。
「うん。あのね、電車とかに出る痴漢にも、種類があるの。おっさんの痴漢は相手の躰を触って悪戯するのが目的だけど、もっと若い――中学生とかの場合だと違うんだよ。
自分のあそこを、こっちの躰に擦りつけてくんの。
多分、そこが疼くからなんだろうね。むずむずしてどうしようもないから、発情した犬みたいに擦りつけちゃうんだ」
 そうなのだ。炭焼き小屋のおっさんを思い出す。あいつからは、中年特有のいやらしさよりも、股間の疼きに苛まれ、苦しみもがく思春期の子供みたいな切実さを感じた。
あれは孝雄ちゃん言う処の、狂った血にそそのかされてのことだったんだ。
「痴漢の種類か。変わったことを考えるんだなあ、咲ちゃんは」
 孝雄ちゃんは背中を向けたまま、ズボンのポッケに手を突っ込んで、くっくっと笑う。
「そういやあ咲ちゃんって、そういう子だったよな。ちっちゃい頃からさ。普段はぼんやりしてるくせに、時々、おっかねえくらいに鋭いこと言って大人を驚かしたりして」
「そうかな?」
「そうさ」
 孝雄ちゃんは、また、肩越しに私を見た。
「覚えてるか? 咲ちゃんがまだ十歳かそこらの時にさ、叔母さんと俺が仲良く喋ってんのを見て、『まるで二人は夫婦みたい』なんつったんだぜ。あん時の叔母さんの顔ったらさあ……」
 ポケットに手を入れたまま。孝雄ちゃんは、身を屈めて低く笑い続ける。本当に、おかしくて仕方がない、という感じで。
「ねえ咲ちゃん。一つ教えてくれないか?」
「なあに、孝雄ちゃん」
「そんな鋭い咲ちゃんなのに――どうして俺のことを、他の村人と違うだなんて、思い込んだんだ?」
 孝雄ちゃんは、こちらにゆっくりと躰を向けた。
 いつの間にか孝雄ちゃんは、ズボンの前を開けていた。
 ファスナーを下ろし、中から、今夜見た中でも一番大きなおちんちんを、突き出させて。
261祭りの夜を:2011/07/03(日) 02:37:00.12 ID:S7JiOv2m
 私は、物も言わずに部屋の扉に飛びついた。木の引き戸を開けようとするが――開かない。
(鍵が……!)
 戸の鍵は、なんだか螺子(ねじ)を入れ込むような形の、普段あまり見かけないタイプのものだった。開け方が判らなくて一瞬戸惑う。
「今時ねじり錠なんて使ってる家はないもんなあ。ほんとこの家古いから……」
 孝雄ちゃんが近づいてくる。早く鍵を開けないと。なのに手が震えてしまい、私は上手く鍵を開けることができない。
 そうしてもたついている合間に。孝雄ちゃんは、背後から私を抱きすくめた。
「いやっ! 放して孝雄ちゃん!」
 孝雄ちゃんのシャツを羽織った私の躰が、孝雄ちゃんの、Tシャツ一枚の胸に押しつけられる。荒く乱れる息遣いと、激しい動悸が重なり合う。
「ああ……いい匂いだなあ、咲ちゃん。おっぱいも、こんなに膨らんで」
 孝雄ちゃんは、私の首筋に顔を埋めた。万力のような手が私の胸を掴んで、捻り上げる。
「ぎいっ……痛い!」
 乳房の芯が潰れそうなほどの激痛に、顔をしかめて悲鳴を上げる。孝雄ちゃんは嬉しそうな笑い声を漏らすと、私の躰をベッドに放った。
 派手に軋むスプリングの音。追いすがってきた孝雄ちゃんの腕が、デニムパンツに伸びる。
「孝雄ちゃん……どうして」
 信じられないことだった。そう。こうなってもまだ信じられない。
「ねえ、嘘でしょう? だって……だって孝雄ちゃんは、助けてくれたのに。神社から。なのに」
「そりゃあ、咲ちゃんの初物(はつもの)を他の奴に取られたくなかったからさ」
 ホックが飛ぶ。デニムパンツのファスナーが、べりべりと音を立てて引き裂かれる。
「なんだよ咲ちゃん。ノーパンじゃん」
 ファスナーの中から現れた黒い毛を見て、孝雄ちゃんが言う。
「まさかもう、誰かに姦(や)られちまったのか?……まあ、それでも構わねえか。もう……そろそろ俺も、限界だからな。何でもいいや」
 孝雄ちゃんは、デニムの分厚い布地を信じられない力で破き、ただのぼろ屑にしてしまった。
 剥き出しにされる下半身――私はぴったり膝を合わせ、腿の間の恥ずかしい場所を隠す。
 電気も点けない暗闇の中とはいえ、私達の眼はもう闇に慣れているから、暗い中でも互いの姿が結構はっきり見えている。足を開いたら、その、見られてしまう。
 そんな私を、どこかしら蔑むような眼で見ながら。孝雄ちゃんは、自分が着ている服を脱ぎ出した。
 思ったとおり。暗い中でも孝雄ちゃんの裸がどうなっているのか、私の眼にはよく判った。
 スポーツの類をやらないわりには、厚くて逞しい胸板。おへその下から一直線に生え揃った腹の毛。腹の毛と繋がって股間をぼさぼさ覆っている陰毛。そして――その陰毛の塊の中から飛び出し、上向きに反り返っているおちんちん。
 私はつい、おちんちんを凝視してしまう。
 おちんちんの先の突出した丸みは金属のようにぎらぎら輝き、その中心にある縦の割れ目からは、透明な液体が湧き出し、細い糸状になって、つうっと垂れ落ちていた。
 衣服を全て脱ぎ去ってしまうと、孝雄ちゃんはベッドに両手をつき、蜥蜴(とかげ)のような格好で私にいざり寄る。びくりと身を硬くする私の躰の上に乗り、頭を押さえて、キスをした。
「ん……っ」
 生々しい唇。べたりと張りつき、強く吸い上げられる。ぢゅーっと音を立てて。唇の隙間からは、舌まで入ってきた。軟体動物みたいに。私の口の中、暴れまわって。絡め取られる舌の付け根から溢れた唾液が、頬を伝って耳の穴までべとべとに濡らす。
 髪を引っ掴みながらの暴力的なキスの一方で、孝雄ちゃんの空いた手は、私の着ているシャツを脱がしにかかっていた。掛けたボタンを、ひとつひとつ外してゆく。抵抗する力も残っていない私を嬲るように、丁寧に。
262祭りの夜を:2011/07/03(日) 02:37:51.11 ID:S7JiOv2m
「咲ちゃん……本当に、大きくなったなあ……もうすっかり女の躰だ」
 私を丸裸にした後。すぽんと唇を外した孝雄ちゃんは、私の上に覆い被さり、私の全身を隈なく眺め廻した。顔を至近に近づけられて、鼻息にくすぐられる肌がこそばゆい。
「もう逃げないんかい?」
 身を投げ出し、されるがままになっている私に孝雄ちゃんは訊いた。
 私は孝雄ちゃんを見ないし、返事もしない。
 孝雄ちゃんは「ふふん」と鼻で笑い、私の股間に、手を挿し込んだ。
「あぁあ」
 力を失った腿の間。孝雄ちゃんの手は、指先は、私の敏感な場所を的確に捉えた。その衝撃に、喉から裏返った変な声が漏れ、内腿の筋がきゅっと緊張してしまった。
 孝雄ちゃんは、すぐにそこをまさぐり始めたが――すぐに指を抜き出して、眼の前にかざした。
「咲、お前……こんなに濡らして」
 言われるまでもなかった。
 それは、とうに判りきっていたこと。炭焼き小屋で下着を脱いだ時――ううん、違う。
 本当はもっと前――そう、村人達に犯されているお母さんを見た時からすでに私は、私の躰は、熱くなって、濡れちゃってたんだ。
 水飴みたいに粘って糸引く私の汁を指先に絡め、孝雄ちゃんは黙りこくっている。とろりと濡れた指先を暫し見つめてから――唐突に私の脚を掴むと、外側に向かって大きく広げた。
 股の間を、ぬるい夜気が撫でて通る。
 篭っていた熱と共に、そこから、名状し難い匂いが立ち上った。
 臓物じみた生臭さに、微量の甘酸っぱさの入り混じったそれは、言い訳しようもない、私の、欲情した性器の匂いだった。
「堪んねえな」
 孝雄ちゃんの喉から、小さく生唾を飲み込む音が聞こえる。
 こっちの方も堪らない。こんな、発情しきってぬらついていると思われる性器の割れ目を、未だ誰にも見せたことのなかった恥ずかしい裂け目を、こんな風に見られてしまうなんて。
(ああ……)
 居たたまれなさにどうしようもなくなり、私は両手で顔を隠す。
 すると、孝雄ちゃんはさっと屈み込んだ。そしてなんと、私のぬめりきった部分に、がっぷりと口をつけてしまった。
「あっ、ああっ?」
 驚きのあまり、膣口と肛門がひくりと収縮する。
 私の股間に顔を埋めて舐りついた孝雄ちゃんは、ぱっくり割れて中身を曝け出している私の性器に、べろべろと舌を這わせた。
「ああ、ああ……ああ!」
 少しざらついた舌が、私の粘膜を掻き分ける。強く、弱く。柔らかい部分を、掘り起こすみたいに。
 ぬとぬとした穴が、快感にわなないて開いたり窄んだりしているのが、はっきりと自覚できる。いい。ああ、いい。とろん、と意識が乖離(かいり)して、どこかへ飛んで行ってしまいそう――。
 這いずり廻っていた舌が、ぬるりと縦筋を舐め上げ、クリトリスに絡みついた。
 それまでの、じんわり沁みこんでくるような快感とは一転した、稲妻のように鋭い快感。腰がくっと跳ね上がり、私は、「あー」と情けない声を発して、いってしまった。
「やったのか、咲」
 私が、火照った肌に汗を浮かせて呼吸を乱しているのを見て、孝雄ちゃんは尋ねた。
 ぼおっとしたまま私は頷く。孝雄ちゃんは、顔を上げてにやっと笑う。
「へへっ……お前も相当にすけべなまんこだなあ。花枝叔母さんにそっくりだ。あの人も、日頃は大人しそうにしてるけど、一度股を開けば何遍でも気をやっていたっけ」
 そんなことを言いながら孝雄ちゃんは躰を起こし、真っ赤なおちんちんをぶるんぶるん振るわせた。
「さあ、俺も姦(や)るぞ……ああ、この時をどれほど待ち侘びたことか」
 孝雄ちゃんは私の腿の間に腰を割り入れ、重量感のある大きなおちんちんの尖端を、達したばかりの女性器の口にぐりぐりと押し当てた。
「本当に……どうして」
 かすれる声で私は訊いた。やっぱりまだ、信じられない。
「ねえ、本当なの? 孝雄ちゃんは私を……最初から、こうするつもりで?」
263祭りの夜を:2011/07/03(日) 02:40:01.61 ID:S7JiOv2m
「そうだよ」
 事もなげに、孝雄ちゃんは言う。
「当たり前じゃないか。考えてもみろよ。お前を村へ呼んだのは俺だぜ? もっと言おうか? 祖父ちゃんが病気だから叔母さんを看病に寄越せと連絡させたのも、実は俺なんだ」
「え……?」
「ああもう辛抱ならねえ。咲、まんこに挿れるぞ」
 性器に、強烈な圧迫感が生じた。
 膣口からお腹の底まで。熱い衝撃がずんと突き上がり、脳天に火花が散る。
 痛みはあまり感じなかった。
 自分でも意外なほどに。私の膣は、初めてのおちんちんを割かしスムーズに受け入れた。
 それでもやっぱり、初めては初めて。これ以上ないくらい、いっぱいいっぱいに広げられた膣の入口は引き攣れて苦しいし、膣の内部もぎっちり埋め込まれた感覚が重く、とてもじゃないけど、快感とはほど遠い世界。
「おおー、温(あった)けえなあ……どくどくいってらあ」
 一方の孝雄ちゃんは、感極まった声音で快楽を訴え、うっとりと瞼(まぶた)を閉ざしている。
「おお、すげえよお、咲、咲、俺はもう、このまんまでもいきそうだあ……うぅ」
 孝雄ちゃんは躰を折り曲げ、私のお尻に両手を廻して掴み上げながら、がくがくと全身を揺すった。
 その震動で一緒に揺れる私の中が、何か、じわりと熱いもので満たされている感じがした。
「あっ……」
 お腹の奥底を満たされるその感覚は、そう悪いものではなかった。
 膣が勝手に収縮し、全身が、恍惚の波に飲まれてしまいそうになる。私は足先をぴんと伸ばし、足の親指を、曲げたり伸ばしたりと繰り返してみた。神社で、お母さんがやっていたみたいに。
「うう、咲……お前のは具合がいいな。特にこの、入口の締まりが……最高だ。これだったら、何遍でも姦れる」
 孝雄ちゃんは大きく息を吐いた後、私の胸に顔を乗せた。おっぱいの膨らみに頬を擦りつけながら――膣に挿したおちんちんを少し引き抜き、また押し挿れ、抜いて、挿れて、抜いて、挿れて、と、小刻みな動作で繰り返す。
「あっ、あっ、あっ、あっ」
 勝手に声が漏れ出でる。
 孝雄ちゃんの動きにつれて腰が、躰が、揺れて震えて、ベッドのスプリングにぎしぎし響く。
 炙(あぶ)られたようにぼおっと熱い結合部は、粘りのある液体で溢れ返り、くちゃんくちゃんと卑猥な音色で伴奏をつけた。
 私は孝雄ちゃんの重みを全身で受け止めながら、躰と一緒に意識までも揺らぐような感覚にただ身を任せる。
 孝雄ちゃんは時おり動きを止め、唸り声を上げて腰をわななかせたり、繋がり合った部分から大量に湧き出したものを、ティッシュで拭き取ったりしている。多分、何度も射精を繰り返し、その度に漏れた精液を拭っているのだと思う。
 すごい……孝雄ちゃん、何回いってるんだろう?
「これぐらい普通だよ……子追江の人間ならな」
 丸めたティッシュを床に捨て、肩で息をしながら孝雄ちゃんは言った。
「歳を食った奴ならともかく、俺ぐらいなら十回や二十回、余裕でできるさ。
だけど、これでも大人しくなった方なんだぜ。十代の頃にゃあ、付き合う女はみんな半死半生にしてたもんだ」
 そう言ってから膝立ちになり、上から私のおっぱいを揉む。
「だから、子追江に嫁に来た女は長持ちしねえんだ。みんな連日連夜亭主に嵌められて、亭主以外の男にも嵌められて、四十にもならねえうちに躰を壊して死んじまう。
家のお袋や祖母さんなんかは特殊な例なんだ。それもそのはず。あの二人は世にも珍しい――子追江生まれの女だから」
 孝雄ちゃんの指先が、私の乳首を摘まんで引っ張り上げた。
 ――子追江生まれの女……。
 私は、「あうんっ」と声を跳ねさせ、乳首の疼痛と、そこに隠された快味を感じ取るその一方で、孝雄ちゃんの言葉を反芻する。
 孝雄ちゃんは最初、子追江に女は生まれないと言った。
 だからこそ。子追江は長年の間、神社にお参りに来た女性達を襲って、無理やり子供を産ませてきたはず。
 孝雄ちゃんは「ふふん」と鼻で笑い、私の股間に、手を挿し込んだ。
264祭りの夜を:2011/07/03(日) 02:41:38.85 ID:S7JiOv2m
「あぁあ」
 力を失った腿の間。孝雄ちゃんの手は、指先は、私の敏感な場所を的確に捉えた。その衝撃に、喉から裏返った変な声が漏れ、内腿の筋がきゅっと緊張してしまった。
 孝雄ちゃんは、すぐにそこをまさぐり始めたが――すぐに指を抜き出して、眼の前にかざした。
「咲、お前……こんなに濡らして」
 言われるまでもなかった。
 それは、とうに判りきっていたこと。炭焼き小屋で下着を脱いだ時――ううん、違う。本当はもっと前――そう、村人達に犯されているお母さんを見た時からすでに私は、私の躰は、熱くなって、濡れちゃってたんだ。
 水飴みたいに粘って糸引く私の汁を指先に絡め、孝雄ちゃんは黙りこくっている。とろりと濡れた指先を暫し見つめてから――唐突に私の脚を掴むと、外側に向かって大きく広げた。
 股の間を、ぬるい夜気が撫でて通る。
 篭っていた熱と共に、そこから、名状し難い匂いが立ち上った。
 臓物じみた生臭さに、微量の甘酸っぱさの入り混じったそれは、言い訳しようもない、私の、欲情した性器の匂いだった。
「堪んねえな」
 孝雄ちゃんの喉から、小さく生唾を飲み込む音が聞こえる。
 こっちの方も堪らない。こんな、発情しきってぬらついていると思われる性器の割れ目を、未だ誰にも見せたことのなかった恥ずかしい裂け目を、こんな風に見られてしまうなんて。
(ああ……)
 居たたまれなさにどうしようもなくなり、私は両手で顔を隠す。
 すると、孝雄ちゃんはさっと屈み込んだ。そしてなんと、私のぬめりきった部分に、がっぷりと口をつけてしまった。
「あっ、ああっ?」
 驚きのあまり、膣口と肛門がひくりと収縮する。
 私の股間に顔を埋めて舐りついた孝雄ちゃんは、ぱっくり割れて中身を曝け出している私の性器に、べろべろと舌を這わせた。
「ああ、ああ……ああ!」
 少しざらついた舌が、私の粘膜を掻き分ける。強く、弱く。柔らかい部分を、掘り起こすみたいに。
 ぬとぬとした穴が、快感にわなないて開いたり窄んだりしているのが、はっきりと自覚できる。いい。ああ、いい。とろん、と意識が乖離(かいり)して、どこかへ飛んで行ってしまいそう――。
 這いずり廻っていた舌が、ぬるりと縦筋を舐め上げ、クリトリスに絡みついた。
 それまでの、じんわり沁みこんでくるような快感とは一転した、稲妻のように鋭い快感。腰がくっと跳ね上がり、私は、「あー」と情けない声を発して、いってしまった。
「やったのか、咲」
 私が、火照った肌に汗を浮かせて呼吸を乱しているのを見て、孝雄ちゃんは尋ねた。
 ぼおっとしたまま私は頷く。孝雄ちゃんは、顔を上げてにやっと笑う。
「へへっ……お前も相当にすけべなまんこだなあ。花枝叔母さんにそっくりだ。あの人も、日頃は大人しそうにしてるけど、一度股を開けば何遍でも気をやっていたっけ」
 そんなことを言いながら孝雄ちゃんは躰を起こし、真っ赤なおちんちんをぶるんぶるん振るわせた。
「さあ、俺も姦(や)るぞ……ああ、この時をどれほど待ち侘びたことか」
 孝雄ちゃんは私の腿の間に腰を割り入れ、重量感のある大きなおちんちんの尖端を、達したばかりの女性器の口にぐりぐりと押し当てた。
「本当に……どうして」
 かすれる声で私は訊いた。やっぱりまだ、信じられない。
 この話に、私は疑問を感じた。
 だって、私のお父さんはこの孝雄ちゃんの父親の兄弟で、つまり、子追江の人間なんだ。子追江の人間であるお父さんから、女の私が生まれるのはおかしい。
(そうか。絶対に女が生まれないって訳でもないんだな)
 一応、私は納得する。でも、すぐにそんなの、どうでもよくなった。
 孝雄ちゃんがおっぱいを弄くる手を離し、両脚を、肩の上に抱え上げたのだ。
「うああっ、あうっ」
 長く続く行為に疲れ、痺れきっていた下肢が、乱暴に扱われて軋むようだ。
「どうだ、こんな格好で姦るのは? へへ、もう咲も、すっかり慣れたみたいだからなあ」
265祭りの夜を:2011/07/03(日) 02:44:42.10 ID:S7JiOv2m
 私の眼に、おちんちんを飲み込んだ私自身の性器が丸見えになるほどに。私の胴は折れ曲がり、お尻も、高く掲げられている。
 私は呻き、腰をわずかによじりながら、ふくらはぎの筋肉を痙攣させた。
「子追江の女は、子追江の男でなきゃ駄目なんだ」
 小さく折り畳んだ私の躰の両脇に腕をつき、覆い被さるように胸板を寄せた孝雄ちゃんは、妙に真剣な声音でそう呟いた。
「子追江の女も、鬼の性を持っているからな。並の男じゃ満足しきれねえのよ。咲だってそうなんだぜ。
だから俺に姦りまくられても耐えきれてんだ。普通なら、処女だった娘が抜かずで何十発も嵌められて、正気でいられるはずもねえ」
 ぐりぐりと押し込められるおちんちんの先が、私の、一番深い部分を打っている。すごい衝撃。お腹の中が突き破られて、内臓もどろどろに溶かされ、掻き混ぜられてしまいそう……。
「あああっ、たっ、孝雄ちゃん、駄目、壊れる。私、壊れちゃう……!」
 強烈に突き廻される衝撃に耐え、首を左右に振りたてながら、私は叫ぶ。でも本当は、壊して欲しいとも思っていた。
 この灼熱の感覚の中で。孝雄ちゃんのおちんちんをに挿し貫かれて死ねるなら、どんなにいいだろう?
 すでに私は、狂っていたのかもしれない。
 ずっと長い間孝雄ちゃんに姦され続け、孝雄ちゃんの精液を注入され続けていた私は、孝雄ちゃんの――この、呪われた子追江の毒に侵蝕され、汚されて、変えられてしまったんだ。
 子追江の血を引く女にふさわしい――淫乱な牝の鬼に、私は――。
「咲、咲、いきそうか?……ふふ、構うこたあねえ。遠慮なく気をやりな!」
 孝雄ちゃんは、おちんちんの出し挿れをより激しく、素早いものにした。
 ずんずんと突かれるごとに、膣口が、膣の中が、膣の中のもっとも深い場所までが、甘く擦られ、ぐちゅぐちゅと恥ずかしい汁にまみれて蕩けてゆく。
 わさわさ触れ合う陰毛の中、微妙に刺激されるクリトリスが堪らない。
 こんなのもう……私……私……。
「う……ぐ……あぐ」
 堪えきらない大きな波が、腰の奥から押し寄せて、全身を丸呑みにした。
 躰が強張る。眼も開けられず、身動き取れない私の中心で、おちんちんを埋め込まれた膣だけが勝手にひくつき、収縮する。
「おおっ、その顔……花枝叔母さんがやる時と、全く一緒だぜ」
 孝雄ちゃんの声が、遠く聞こえる。
 押し潰された躰をぴんと伸ばして反り返らせ、私は、生まれてこの方出したことのない、振り絞るような絶叫と共に、快感の頂点を迎えた。
 それは、長く続いた。
 果てのない快楽が、痙攣を伴って断続的に続き、私は、私の意識は、蒼味がかった閃光の中に、ゆったりと沈んでゆく。
「おおー……お前の震えがびんびん響きやがる……俺もまた、いくぞ」
 お腹の底で、孝雄ちゃんの先っぽが膨れ上がり、弾けるのを感じた。くしゃっと。熱いものをまき散らしながら。
「あああああ」
 鎮まりかけた快楽の波が、再びぶり返す。断末魔の躰を鞭打つように。苦痛の域にまで達した快楽。喘ぎ声が、涙が、溢れ出して止まらない。
「まだだ。まだまだいかせてやるよ。百回でも二百回でも……それぐらいできるはずだ、お前なら」
「おああ……こん、こんなの……お母さんにも、お母さんにも、うあ、し、したのお?」
 喘ぎ混じりに、私は問う。
「ああ、した」
 私の首筋に、孝雄ちゃんは答えた。
「俺の童貞切った相手は、花枝叔母さんだったからな……あの時、俺はまだ五歳だった」
 孝雄ちゃんは身を起こし、いったん中からふやけきったものを抜いて、私の躰を裏返した。
 そして、背後から私のお尻を抱え込み、また元通りに嵌め直す。
「この姿勢で姦ったんだ。咲は知らないだろうけど、花枝叔母さん、一度だけこの屋敷に来たことあったんだぜ。結婚したばかりの時に。
あん時の俺はまだガキで、力が弱かったから、家のみんなに手伝ってもらって姦ったよ。
俺が手間取ったせいで、あん時はみんなに姦らせて上げられなかったんだっけな。そのせいで、みんなには後で散々文句を言われたもんだよ」
266祭りの夜を:2011/07/03(日) 02:46:19.65 ID:S7JiOv2m
 姿勢を変えて嵌められるのは、また違う趣がある。私はベッドに上半身を突っ伏し、お尻を高く上げて、捏ね廻しながら孝雄ちゃんを迎え入れた。
「気の毒な人だよなあ、叔母さんも。信二叔父さんは出来損ないの種無しだ。子追江の男に有るまじき、女もまともに抱けないような男だったから……俺が姦った時、叔母さんは処女同然だったんだぜ」
「お、お父さん……種、無し?」
 後ろを向いたら、さっきまでとは違う場所が刺激される。お尻側が、ごりごりと――あん、お尻の穴が、ひくひくしちゃう。また……いっちゃいそう……。
「そうさ。たまに生まれんだよな、三崎の家には。血が濃すぎるせいかな。だから、咲は信二叔父さんの子じゃあない」
「ま……さ……か」
「そう。お前の父親は――俺さ」
 笑い混じりの声。思い切り深く突き上げられて――私はまた、いった。
267祭りの夜を:2011/07/03(日) 02:50:00.49 ID:S7JiOv2m
 その後も、孝雄ちゃんは私に嵌めたまま、いろいろな話をした。
 お父さんが無精子症であることは、本人もお母さんも知らないのだということ。
 村に馴染めず早くに村を出てしまったお父さんは、神社で行われる祭に関しても何も知らないということ。
 お父さんは、十九年前にお母さんがこの屋敷で、村の男に犯されたことは知っているけれど、その相手が孝雄ちゃんだとは知らないこと。
 お父さんは、孝雄ちゃんも自分と同じように精力の乏しい、村で言う処の出来損ない≠セと思い込んでいること。
 それをいいことに、孝雄ちゃんは上京して以来、油断しているお父さんの眼を盗んで、お母さんと何度も関係を持っていたということ。
「お母さんは……十九年前にも、お祭の生贄になったの?」
 孝雄ちゃんと二人、それぞれのいった回数が三桁に届こうという辺りで。
 さすがに少しくたびれ、小休止を取っている合間に、私は孝雄ちゃんに尋ねた。
「いいや、それは違う。祭はその前の年に、別の女で済ましていたよ。
みんな惜しがっていたけどな。翌年こんなに若い器量良しが来ると判っていたら、祭は一年引き伸ばしたのになあ、ってさ」
 私の躰を胸に抱き、孝雄ちゃんは答えた。
「だから今回の祭は、そのリベンジも兼ねてるってこった。
当時二十歳そこそこだった花枝叔母さんは、まだなんとか祭に使える感じだったし。
おまけにその娘も――今や、母親以上の上玉に育っていたからな」
 孝雄ちゃんの手が、わたしのお尻をつるんと撫ぜた。
「でも……お母さんや私が呼ばれた理由は判ったけど、どうして孝雄ちゃん……あの神社で私やお母さんに、しなかったの?」
「言ったろ? 俺は、どうしてもお前の処女が欲しかったのさ。だけんど、祭にはいろいろと細かいしきたりがあってなあ。
俺のような若輩者を、我先にと姦らせることはできねえんだと。
親父や祖父ちゃん相手に食い下がってみたんだけど、結局、交渉は決裂しちまってよ。屋敷に閉じ込められてた処を、抜け出して乱入してやったってえ訳さ」
「でも」
 なおも私は言い募った。
「ただ私の処女が欲しいだけなら、何もこの村でなくたって……東京にいる時、チャンスはいくらでもあったんじゃない?」
「うーん……」
 孝雄ちゃんは、少し困ったような笑顔を見せた。
「そりゃあれだな。ちょっとした、景気付けってえやつさ」
「景気付け?」
「ああ。確かに、東京でも姦ろうと思えば、姦れたのかもしんねえけどよ。
やっぱなあ……なかなか勇気を出せないもんだよ。
自分と血の繋がった……実の娘と、姦るというのは」
 私は言葉をなくし、黙り込んだ。
 そうだった。私は、孝雄ちゃんとお母さんの……。
 セックスの絶頂間近に聞いた言葉だったせいか、まだ、全然実感が湧かない。何だか、夢の中の台詞みたいで。
「花枝叔母さんが俺のことを信じきってたのも、躊躇の一因だったな。まさか俺が、実の娘までも狙ってるとは、思いもしなかったみたいでさ。
ついでにいえば、俺が村に叔母さんを売り渡したことも、多分知らないと思うよ。むしろ神社では、自分のことも助けに来たとか思ったんじゃないか?」
 孝雄ちゃんの胸の中で私は、お母さんのことを考えた。
 私と違い、普通の女性であるお母さんは、躰の作りもやわなはず。
(あんな大勢の男に犯されて……お母さん、死ななきゃいいけど)
 少しだけ正気に戻った頭の中で。少しだけ、お母さんへの心配がぶり返す。
 けどそれは、本当に少しの間だけだった。
268祭りの夜を:2011/07/03(日) 02:51:55.30 ID:S7JiOv2m
 孝雄ちゃんが、お尻のほうから手を廻して、私のあそこを悪戯していた。私の手も、孝雄ちゃんのおちんちんを握って、すりすり摩り廻している。
 休憩時間は、そろそろ終わりみたい。
 ぶり返す躰の熱と欲望に、他のことはどうでもよくなっていた。私は孝雄ちゃんの唇に吸いつき、口の中から舌で舌を吸い上げて、ねっとりと絡ませた。
 ぬめりを残す私のあそこに、すでに回復してどくどく脈打っているおちんちんを宛がい、擦りつけて、その感触を暫し楽しむ。
「遊んでないで早く嵌めろ」
 孝雄ちゃんが、私のお尻をぺちんと叩く。
 嬌声を上げて躰を起こす。それから私は、孝雄ちゃんの躰を跨ぎ、茸のように突き勃ったおちんちんを、上から納めようとした。
 その時。私達の背後で、部屋の戸が、轟音と共に吹き飛んだ。
 私達二人は、何事かと驚き戸の方を見る。
 破壊された戸の向こうに立っていたのは――私達のお祖父さんだった。
「祖父さん、あんた」
 孝雄ちゃんが、私をかばうように前に出る。
 お祖父さんは、裸に足袋だけを履いて部屋の入口に仁王立ちしていた。
 灰色の髪を振り乱し、額に青筋立てて興奮しきっている様子だけど、半ば白くなっている陰毛の中のちんちんは、小さく縮んでうなだれていた。
 夕方にお風呂場で見たそれと、同じものとは思えないほどに、小さく。
「ふざけおって……」
 お祖父さんは、はあはあと荒い息を吐きながら言った。
「孝久の奴め、儂(わし)がもう歳じゃから不首尾に終わるのだなどと笑いおった。村の奴らもみんな……どいつもこいつも儂を馬鹿にしおってから……」
 ふらふらと頼りなく揺れる年老いた躰。皮の弛(たる)んだ貧弱な両腕が、何か長いものを持っている。
「おい、祖父さん落ち着け! そんな物騒なもん――」
「孝雄……お前もだ!」
 耳をつんざくほどの凄まじい音が、全身を貫いた。
 お祖父さんの手元から。真っ直ぐに伸びた黒い――猟銃が、正面を向いて――。
 一瞬のことだった。
 孝雄ちゃんが、孝雄ちゃんの首から上が、ぼこぼこと銃弾を受けて破裂した。
 熟れたトマトみたいに。真っ赤に弾けた。
 飛び散った血しぶきが、私の全身を赤く染める。
 頭の中で、何かが焼き切れた。
 どこかで、やかんのお湯が沸いてるみたいな、けたたましい音が鳴り響いている。
 それは私の悲鳴だった。
 止むことのない、甲高い悲鳴の中で。
 私の理性も、思考も、意識も、視界も。赤い闇の中にゆっくりと閉ざされ、消えていった――。
269祭りの夜を:2011/07/03(日) 02:53:33.62 ID:S7JiOv2m
「思い知ったか、生意気な孫め! この儂を謀り、貴重な生娘の躰を無断で食い荒らしおって……」
 遠い処から、動物じみた嗄れ声が聞こえる。
 お祖父さんは狩猟用の散弾銃で孝雄ちゃんを撃った後、叫び続ける私の顔を、銃床で殴りつけた。
 眼の奥に火花が飛び散り、私はベッドにひっくり返る。
 頬骨が、焼けるように痛い。処女を破られた時を遥かに凌駕する痛みに驚き、私の悲鳴は止んでいた。
 乖離(かいり)していた意識も戻った。私は、おそるおそるお祖父さんを見た。
 お祖父さんは、赤鬼のように全身を紅潮させ、長い舌を垂らしてぜいぜいと肩で呼吸をしながら、私に銃口を向けていた。
 私は、「ひいっ」と引き攣れた悲鳴を漏らし、手をゆらゆらと顔の前にかざす。
 ――殺される……。
 パニックを起こした私は、再び悲鳴を上げていた。
 涙で滲んだ視界の隅に、鮮血にまみれた孝雄ちゃんの躰が見える。
 頭部をほぼ完全に失い、肉片だか脳漿だか判らないどろどろしたものをまき散らしている、無残なその姿……。
 ――これから私も、こんな姿に……。
 躰が勝手に震えだす。まるで感電でもしたように、がくがくと。全く力を失った股の間からは、おしっこがしょろしょろと音を立てて漏れ出ていた。
「ひひい。咲ちゃん、いいねえ……」
 お祖父さんが、くぐもった声で笑う。そして、銃口で私のあそこをくじった。
「いぃ?……やあぁ」
 硬いぞっとする感触に、私は怯えて身を強張らせる。この人まさか、この銃口を、私の中に?
「おほほぉ……いい顔しよるわい。うーむ、こりゃええぞ。ええ塩梅(あんばい)に……マラが……」
 お祖父さんの萎んでいたものが、見る見るうちに、膨らんで起き上がる。
 お祖父さんは、銃を捨てた。
 銃を捨て、私の躰にしがみつくと、血と精液とおしっこに汚れた私のあそこに、口をつけ、べちゃべちゃと舐め廻す。
「ぶはあ、はあ、ええのう……美味いのおぉ……やはりさっきは、年増相手だから駄目だったんじゃ。若い娘が相手なら……これこの通り」
 お祖父さんは、私のあそこに浅ましくむしゃぶりつく一方で、硬くなった自分のちんちんを愛しげに扱いているようだった。
 本当に気持ちの悪い――しかし今、私の関心はそこにはなかった。
270祭りの夜を:2011/07/03(日) 02:54:54.35 ID:S7JiOv2m
ベッドに座り、M字に脚を開く私は、お祖父さんの背中の向こうに――もう一つの人影を、確認していた。
 闇の中、密やかに近付く小さな影。手に、長い紐状のものを持って。
 それは、夕方お風呂場で見たあのおばあさんだった。
 おばあさんは、何も気づかず私のあそこに夢中になってるお祖父さんの首に、手にした紐をさっと廻した。
「ぐううっ?」
 私の股間で。眼を剥いたお祖父さんの顔は赤くなり、やがて、紫へと変色してゆく。
 おばあさんは、何やら口の中でお経(きょう)のようなものを唱えながら、顔を伏せてお祖父さんの首を絞め続けていた。
 そんな二人の姿をよそに。私は、力の入らない躰に鞭打って、この場を逃げ出すべく動き始めていた。
 床に落ちた孝雄ちゃんのシャツを拾い、よろめきながら廊下に出る。
 廊下の向こうから、奇妙な声が聞こえた。変な節のついた歌声――ううん、これは笑い声?
 声の主は、お屋敷で最初に会ったあのおばさんだ。
 楽しそうに、踊るような足取りで廊下を歩きながら、廊下の床やら壁やらに、四角い缶に入った何かをまいている。
 胸がむかつくほど強い臭いのその液体は、多分灯油かガソリンだ。
 おばさんは私の眼の前まで来ると、全裸で血まみれの私をじっと見つめ、やがて、にこやかに微笑んだ。
 それは晴れやかな笑顔だった。
 きらきらと輝く瞳も、どこか陶然と小首を傾げるその仕草も、夕方見た時とは別人のように若々しく、また、人を惹き込まずにいられないほどの色香まで漂わせていた。
 くすくすと忍び笑いの声と共に、おばさんは私の耳元に顔を寄せ、内緒話でもするように囁いた。
「よろしかったら、ご相伴しませんこと?」
271祭りの夜を:2011/07/03(日) 02:55:56.24 ID:S7JiOv2m
 高く澄んだ青空に、ひこうき雲が走ってゆく。
 東京の自宅。窓辺に座り、私はぼんやり空を眺めていた。
 カーテンを舞い上げる風が、ひんやりと爽やかだ。
(夏ももう終わりだなあ)
 遠く聞こえる竿竹屋の声。昼下がりの穏やかな陽射しが微睡みを誘う。窓枠に頭を乗せ、私はそっと眼を閉じた。
 うつらうつらと解け崩れてゆく意識の中に、あの、狂おしい夏の夜の記憶が蘇る――。
272祭りの夜を:2011/07/03(日) 02:57:18.22 ID:S7JiOv2m
 あの後起こった出来事を、私は明確には記憶していない。
 目まぐるしい極彩色の中で乱舞し、歪んでねじれた夢の中の出来事のようで。
 あの晩。子追江村のあちこちで、三崎のお屋敷と同様の火災が発生していた。神社も焼けた。いずれも、子追江に住む女達の兇行だった。
 夜の間に、どの家もほぼ全焼していた。そしてどの家でも、自宅を焼いた主婦達はみんな、子供達と一緒に焼死体となって発見された。
 死体だらけの家屋群――特にひどかったのは神社の本殿で、外から密封された状態の建物の中に、大勢の男が閉じ込められ、蒸し焼きにされていたのだ。
 この奇妙な放火事件に、地元の警察も消防団も首をひねった。
 女達はなぜ、自分の家に火を放ったのか? なぜ、村の男達を神社の本殿で焼き殺したのか?
 僅かに生き残った男達は何も語らず、みんな散り散りに別の土地へ移ってしまった。
 マスコミやインターネットが事件を取り沙汰していたのも、一週間がせいぜいの処で、多くの謎を残したまま、子追江村の事件は、人々の記憶からひっそりと忘れ去られていった。
 けれど――私だけは、あの村で過ごした夜を、一生涯忘れはしないだろう。
 事件の翌朝。私は、燻(くすぶ)り続けるお屋敷の前でうずくまっていた処を救出された。
 警察の事情聴取では、一部の真実だけを告げた。
 村へ行くことになった経緯と、その日神社でお祭が行われる予定だったということの二つだけを。要するに、ほとんど何も喋らなかったのだ。
 神社の本殿に連れ込まれて襲われかけたことや、その後狩りのように村人から追い廻されたこと。お屋敷で孝雄ちゃんやお祖父さんにされたことなどは、言わなかった。子追江村の因縁についても。
 言って信じてもらえるとも思えなかったし、もうみんないなくなった今となっては、言っても仕方ないと思ったから。
 それに。子追江の女達が、今さらになって男共に復讐しようと思い立った理由だって、私の知る処ではないし。はっきりいって、どうでもよかった。
 警察には、お屋敷に着いてすぐ疲れて寝てしまったので、お祭の様子などは何も知らないと答えた。
 救出された時の私は伯母(おば)さんに借りたパジャマを着ていたし、血糊もお風呂で洗い流していたから、疑われることはなかった。
 誰もが私を、事件の憐れな被害者なのだと信じ込んだ。全てが片付いた後、私もお屋敷に火を放つのを手伝ったなどと、夢にも知らないで。
(それに)
 小さくあくびをし、ごろんとソファーに寝そべって、私は心に呟く。
(きっと考えもよらないだろうなあ……伯母さんやお祖母さんが、子追江の男に対してした、あの復讐)
 それは、かつて祭の生贄に供された女達が受けた仕打ちを、そのまま返すことだった。
 お祖父さんと、孝雄ちゃんを。
 少しずつ切って、みんなで分けた。
273祭りの夜を:2011/07/03(日) 02:59:44.52 ID:S7JiOv2m
 未だによく判らなかった。
 どうして私は――あの時、伯母さん達と一緒にそれをしたのだろう?
 今同じことをしろと言われても、絶対無理。絶対、戻してしまう。
 でもあの時は平気だった。色んなことがありすぎて、感覚が麻痺していたのかもしれない。
 みんなで包丁やらナイフやらを選んでいる時なんて、むしろ楽しいとさえ思っていた。
 でも、あれはあれでよかったのだろうという気もする。
 だって、あの事件でお母さんは死んでしまったのだもの。
 結局、お母さんは神社で、男達と一緒に焼き殺されてしまったのだった。その復讐だと思えばきっと、あれぐらいのことをしても構わないはず。
 ――こんな考え方ができるというのは、私がすでに狂っている証拠なのだろうか?
 あの夜を経た私は、確かに以前とは変わっていた。
 それまで私を構築していた全てが崩れ去り、子追江という土地で採った血や肉や精液を練り固め、外見だけ同じの違う私に作り直した。なんというか、そんな感じ。
 あの事件の余波から開放され、自由を取り戻した私がまず真っ先に直面したのは、肉の疼きだった。
 男が欲しい。セックスがしたい。
 オナニーなんかじゃ到底満たしきれるものではない。それまで感じたことがないほどの強烈な欲求に、私は煩悶した。
 とりあえず私は、一番身近にいた男――お父さんを、誘ってみた。
 でも駄目だった。
 一応行為に持ち込むことは成功したものの、てんで話にならないくらい、弱いのだ。
 総合的に孝雄ちゃんの十分の一、ううん、百分の一にも満たない。
 なるほど。あの村で出来損ないと呼ばれたのはこういうことかと、妙に納得してしまった。
 あんなんじゃあ、お母さんが孝雄ちゃんと離れられなかったのも無理はない。
 お父さんが役立たずと判ったので、私は、外で男を調達することにした。
 外見とか性格なんてどうでもいい。とにかく、強いおちんちんさえあれば充分なんだから、そう難しいことじゃない。
 ところが。この認識もどうやら甘かったらしい。
 出会い系でも逆ナンパでも、男はすぐに、捕まえたいだけ捕まりはした。
 でもいざベッドに入ってみると、どいつもこいつも使えない奴ばかりだった。みんな口ばっかり。肝心のセックスは、お父さんと大差ないぐらいに弱い。
 あの事件から二ヶ月ほどの間に、二百人以上の男を試したけれど、一番がんばった奴でも一晩で十三回が限度という有様で、一人で私を満足させてくれる男は、ついに現れなかった。
 ――こんなことなら……あの時、伯母さんやお祖母ちゃんと一緒に、お屋敷で死んだ方がましだったかも。
 街で出会った大学のラグビー部員だという五人組を、ホテルで足腰立たない状態にしてしまった帰り。私は、ため息混じりに嘆いたものだ。
 薄汚い行きずりの男達と、来る日も来る日もその場限りの関係を繰り返す日々に、私は疲れ果てていた。
 ――孝雄ちゃん、どうして死んじゃったの……。
 夜明けの繁華街を、とぼとぼ歩いて涙に暮れる。ごみを漁る鴉(からす)の姿が、私の人生を暗示しているみたいで悲しかった。
 けれど神様は、私を見捨ててはいなかった。
 私には、救いの道が残されていた。
 こんな私を救ってくれた人は、やはり、子追江で死んだ孝雄ちゃんだった。
 私が処女を捧げた相手であり、本当の父親でもある孝雄ちゃん。
 彼は私に、貴重な宝を遺していたのだ。
274祭りの夜を:2011/07/03(日) 03:02:31.83 ID:S7JiOv2m
「……さてと。そろそろ行かなくちゃ」
 私はソファーから立ち上がり、ぐっと伸びをした。隣の部屋へ行く。
 明るい壁紙の部屋。柵に覆われたちっちゃなベッドの中に、私の宝物は居る。
「考(こう)ちゃん」
 三ヶ月ほど前に産んだばかりの赤ちゃんに呼びかけ、そっと抱き上げた。
「あー、おしめ濡れてるねえ。待ってねー、すぐ換えてあげるから」
 ぷくぷくした頬っぺを指で突付くと、息子の考樹(こうき)は怪訝そうに私を見た。
 ああ、なんて可愛い表情。つい私はにやけてしまう。
 あの夜、孝雄ちゃんが私にくれた一粒種。彼や私と同じく、呪われし子追江の血を受け継いだ、愛しい愛しい男の子。
 ――孝雄ちゃん、五歳の時に私を作ったって言ってた……。
 考樹のおしめを開けながら、私は考える。
 あと五年。五年だけ待てばいいんだ。
 先に望みがあると判れば、凄烈な肉欲を堪えることもできた。
 この子のこれが――この可愛いおちんちんが、飢えて女を求めるようになるまで。私はひたすらに、その時を待ち続けよう。
 祭の夜を待ち焦がれていた、子追江の男達のように。
「考ちゃん。早く大きくなってね――」
 顔を伏せ、今はまだ蕾のおちんちんに頬擦りしながら。
 花開いたものを受け入れる瞬間に想いを馳せ、うっとりと私は呟いた。



 【了】
275名無しさん@ピンキー:2011/07/03(日) 18:08:11.58 ID:DrX6AVET
大作乙です。
276名無しさん@ピンキー:2011/07/03(日) 23:46:40.22 ID:WNVKkeU6
エロスとストーリーが両立してて怖くて面白かった……!GJ
277名無しさん@ピンキー:2011/07/04(月) 22:42:52.09 ID:SKPq+F+A
おおーすごい大作だ
確かにこれはスレ選びに迷うなw
278名無しさん@ピンキー:2011/07/10(日) 01:28:44.10 ID:yUR240N3
乙ですw
読みごたえありました
279名無しさん@ピンキー:2011/07/14(木) 13:50:56.04 ID:0ibbFoaF
以前、地雷ネタが多すぎて投下しなかったもの

地雷一覧
 獣姦。ただし獣×♀とすべきか♀×獣とすべきか表記不明
 NTR
 一見百合とみなされそうな関係性(違います)。実は男だというオチでもありません
 女性同士のキスシーンがあります
 何かとカオス

女侍と狼。プラス忍者   四つ目

=================================

 非常に珍しいことだが、連れは整った顔立ちの若い男だ。なりもなかなか洒落ている。
充分に金のある商家の放蕩息子の装いだ。
 割のいい仕事だったので受けたが、少し後悔している。この男はなんだか胡散臭い。
 女の侍に対する興味で雇う色好みの男ならたまにいるし、かわし方も心得ている。
が、そんなありがちの人物とは違う異質な雰囲気が感じられた。
 悪意ではない。敵意でもない。かといって好意でも色めいた気でもない。
しかし私の立場ではなく、私自身に向ける独特の視線を持っている。
――――気色悪ぃ
 なんだか寒気を覚えて足を速めた。さっさと仕事を終えてしまうに限る。
 だから、昼過ぎには山道にたどり着いた。
 木の枝や葉を踏む音がやけに響く。いつもならあいつが出てくる頃合だ。
 が、やつの姿はなく変わりに古びた切り株に座り込む老婆を見つけた。
「娘さん、すみませんが水を持っていたら…」
 話しかけてきた途端に切った。が、老婆は飛鳥の如く飛び退った。
「年寄りに何をするのじゃ」
「誰が年寄りだ。いい加減にしろ、美月」
「いやあん。何故わかっちゃうの」
 急に若々しくなった声に、吐き捨てるように答えた。
「そんな胸のでかいババアがいるか」
 老婆が自分の胸もとに手をやると、一瞬のうちに衣が翻り、
そこにはまあ、美女だと認めざるを得ない若い女の姿がある。
「さすが柊(ひいらぎ)、その程度でわかるなんてやっぱ私に惚れてるわねぇ」
「ないっ!」
 柊は私の実名ではない。たまたまある仕事で使った名だ。もっとも美月も似たようなものだろう。
「紹介していただけますか、この美しい方を」
 ぬけぬけと後ろの男が言う。
「くの一だから関わりにならないほうがいい」
「まあ、妬いているのね。大丈夫よ、愛してるのはあなただけだから」
「いらんっ」
「照れると可愛いのよね。いやん。大好き」
「うぜえっ」
 この頭のイかれた女は、その筋ではそこそこ知られている。死蝶の美月。今はそう呼ばれている。
 腕が立つ。武具の類はほとんど使いこなすし、私の前では手を抜くが、変化の技も優れている。
 しかし性格は最悪だ。
280名無しさん@ピンキー:2011/07/14(木) 13:52:37.85 ID:0ibbFoaF
 
 知り合ったのは二年ほど前だ。とある大藩が女武芸者を集めていた。
競わせて、優勝者にはけっこうな金子と女ながらに師範の地位をもらえるとのふれこみだった。
 脱落者にもかなりの金をくれるとの噂で、こりゃいい、ひと稼ぎして程ほどのところで抜けよう、
とのこのこ行ったのが間違いだった。
 藩主は血塗られた趣味を持つ男だった。
おのれの快楽のために女を殺したが、並の女に飽きての遊びだった。
 得物を全て奪われた女は一人ずつ野に放たれ、抵抗むなしく死んでいく。
あたりまえだ。たった一人の丸腰の女に恐ろしいまでの数の兵が使われる。
 しかしそれにも飽きてふたりずつ野に放ったのが災いした。
美月と私は最悪の組み合わせだった。
 定められた野から逃げ、山の中に無数の罠を仕掛けて反撃した。
私なぞその程度だが、この凶悪な女は兵の耳に邪悪に囁きかけた。
「この噂はいつか上に伝わって藩はお取りつぶし。あんたたちは路頭に迷うわ」
「そのうちあいつが手を出すのはあんたたちの妻や娘よ」
 動揺は広がったが、われわれはやがて追い詰められ、背中合わせに闘った。
 数知れぬ男を切り捨てた後、急に兵が引いた。
こいつのたくらみは当たり、謀反が起こったのだ。
 ほっとして息をつくといきなり唇を奪われた。
わけがわからず驚く私に「惚れた」と告げ、それ以来、時たま不意に現れ追い回される。
 それがここ半年以上鳴りを潜めていた。
 こっちも少々事情があってこいつのことなど忘れていた。

「少しは離れろ、気持ち悪い」
「ああ、この口の悪いとこが素敵なんだからあ」
 野宿の最中こいつはすりより、連れの男はニコニコと微笑んでいる。
先に感じた奇妙な感覚が、錯覚だと思えるほど穏やかな笑顔だ。
 美月を蹴り飛ばし、少し火から離れて目を閉じた。
 深夜、やはりあいつは来た。
「今夜は帰れ」
 私は告げた。相手は人の都合などかまわずにのしかかってこようとする。
 並みより大きな青い目の銀狼。困ったことに私の情夫だ。
「仕事中だ。今後に差しさわりがある」
 ぴしゃり、というと珍しく少し怯んだ。私に人としての暮らしがあることは判っているらしい。
 横になったまま固い毛並みを撫でてやると、銀狼はうっとりと目を閉じる。
奥深い山の深い闇の中で、すっかり気を許して身を伸ばしている。
 なんだか、ひどく眠い。私と狼は丸くもならず互いに寄り添って眠った。
狼の温もりが気持ちよかった。
 が、それから間もなく目覚めたのは勝ち誇った笑い声のせいだ。
何事かと身を起こそうとしたが動けない。
「お静かに」
 顧客のはずの若い男が、私の身体を後ろから抱きかかえている。
「おまえら……グルか。忍者だな、おまえも」
「天城(あまぎ)と申します。日頃美月がお世話になっております」
「大した礼だな」
「あなたの身体を傷つけるつもりは微塵もありません。
彼女はあなたを正気に戻すべく尽力したいと思っているようです」
 顔が赤くなるのを感じた。
「大きなお世話だ」
「いえいえ、どうぞお気になさらずに」
 こいつは私に手を出すつもりだろうか。睨みつけても平然としている。
「汚い。さすが忍者汚い」
「いやあ、それ誉め言葉ですよ」
 男は照れたように頭をかき、それから私を促した。
「せっかく美月が高笑いをしているので、あちらのほうを見てやってくれませんか」
 ふり返ると、口もとを縛られ四つ肢をそれぞれ別の木に縛り付けられた仰向けの銀狼が
凄まじい形相で身をよじっている。その前に美月の姿がある。
「ただのケダモノよ。雌がほしいだけの」
 彼女は指先からぱらぱらと何かの粉を狼の鼻先にこぼした。
避けようもなく銀狼の体が跳ねた。
281名無しさん@ピンキー:2011/07/14(木) 13:53:39.88 ID:0ibbFoaF
 美月がはらり、と着物を落とした。
私より大きな胸やくびれた腰、勢いのある尻が露わになる。
隠すどころか誇るように胸をそびやかす。
「でもこのままってのもつまんないわね。いいわ、私は可憐な武家娘。
故あって許婚の前でこんな目にあう、って設定で」
「誰が可憐だっ」
 美月は私の抗議に耳も貸さずにうつむいた。全身がほんのりと桜色に染まっていく。
「…………いや」
 ふてぶてしいくの一は一瞬のうちに、恥じらいに震える憐れな娘と化した。
「…こんなこと、できない」
 両手で胸を隠して泣きそうな顔でこちらを見る。目元は潤んでいる。
「わかったわ……お願い、その人を殺さないで。言うことを聞くから」
 おずおずと手を外すと心なしか先刻より慎ましやかに見える胸がこぼれる。
 銀狼は妙な薬のせいで妙な状態だ。
興奮しきって闇雲に動こうとするが、拘束されているため果たせない。
が、雄芯だけは天を突くばかりに怒張している。
 美月は狼の横にそっと膝をつき、そこを眺めて顔をいっそう赤らめた。
しばらくためらい、それから震える指先でそれに触れた。
「きゃっ」
「なにがきゃっ、だ」
 繊細な指先が恐る恐るそこをなぞっていく。そそり立つものは優しくしごかれ、
その先から大きな雫を溢れさせている。美月は雫をすくい取り、全体にこすり付けた。
狼が口もとを噛み締めた。
「凄く……大きい。怖いわ」
 そういいながらも立ち上がると狼の体を跨ぎ、ゆっくりと腰を下ろしていく。
「ああっ、あ、ああああ、あ……ん、んんっ」
 白い肢体の影のような茂みの奥が開き、薄紅い肉襞がそれを飲み込んでいく。
「いやあああああああっ」
 貫かれながら悲痛な声で彼女は叫んだ。目元には涙が浮かんでいる。
「見ないで!お願い、こんな私を見ないで!」
 がくがくと震える身体を支えるため、狼の胸もとあたりに腕をつく。
うなだれた顔が時たま激しく振られる。
282名無しさん@ピンキー:2011/07/14(木) 13:55:19.98 ID:0ibbFoaF

「おい」
 私を抱える男に声をかける。
「あんたは美月の相手じゃないのか。目の前でこんなことされて怒らないのか」
 男は頷いた。
「仕事柄たまにありますからね。ああ、でもっ、私の美月がケダモノにあんなことを!」

「あ、あああああっ」
 腰が上下にも左右にも揺れ、恥らったままの美月が声を上げる。
「やああっ、あっ、いや、あああ、凄いっ、あ、あ、変になっちゃう!」
 ふいに彼女の体が反り返った。
「ああっ、いいっ!怖いぐらいいいっ!」
 声が武家娘から素に戻りつつある。途端に後ろの男が反応した。私は憤慨した。
「おっ勃てたもんを押し付けるなっ」
「これは失礼。大丈夫です、美月に反応してるだけであなたにはまったく欲情してませんから」
 欲情されても困るが、断言されると微妙に不愉快だ。
「んんんんっ、あんっ、ああああんっ、いくっ、もういっちゃうううう――――っ!」
 人の気も知らずに美月は恍惚と身を震わせ、急に力を失ったように狼の上に倒れた。
 胸の奥がひどく痛い。いや、全身に針のような疼痛が響く。
「ああっ、また……ううん、あ、ああっいいっ………」
「あああああっ、美月がまたっ!だめっ、本気になっちゃらめええええええっ」
「……………うるさい」
 天城とかいう男は既におのれの興奮を隠していない。
「わあああああああん、ケダモノのたくましいものが、美月の、
濡れそぼった食べちゃいたいほど可愛い朝まだきの空のように美しい色合いの穴に、
すごい勢いで出たり入ったりする――――っ!!」
「実況すんなっ!」
「いやだあああああっ、美月――――っ、あ、ああああっ、そんなに感じて、だめっ、
おれの目の前でそんな本気にっ、あ、ああああっ、んんんっ、ああっ……いいっ!!」
「おまえ、なんか心の病気だからいい医者にかかれ」
「うおおおおおおっ、あっ、あっ、あああっ、またイくぅ!美月がイっちゃうううっ!
やめてくれええええええっ、うああああああああああああああっ!!……ふぅ……………」
283名無しさん@ピンキー:2011/07/14(木) 13:56:21.61 ID:0ibbFoaF

 天城はがくり、とうなだれるとすぐに冷静さを取り戻した。
「おや、すみませんねえ。衣のお代は別にお支払いしますね」
 私はにっこりと笑って見せた。天城も微笑み返す。その瞬間、手を抜いてぶん殴った。
そのまま自分でも呆れるほどの速さで近くにあった刀を掴み、銀狼のもとへ駆けつけると、
四つ肢を拘束する縄をたたっ切った。
 狼はほんの少しよろめくとすぐに地を蹴り、傍らで座り込んでいる美月に飛び掛ろうとした。
口はいまだ縛られたままだが、鋭いつめが突き出されている。
「よせっ!」
 予想はしていたが野性の勢いのあまりの凄まじさに遅れ、割って入った私は胸もとに少し傷を負った。
 狼は驚いて怒りも忘れ、眼を見開いて私を見上げている。
「後ろの馬鹿がなんか得物を構えているはずだ。おまえは一瞬で殺される」
 ちらと目を向けると天城は吹き矢を唇に当てていた。
「こいつは私がこらしめる」
 天城の吹き矢が私のほうに向くのを感じたが、かまわずに美月の傍に寄る。
「な、な、何よっ。あんたが妙なことしてるからいかに変かと身を持って……」
 まだ、腰が抜けたように立ち上がれない美月の隣に座って彼女の肩に手をかける。
「美月」
「え、ええええええええっ………ん、んんんんんんっ!」
 唇を重ねると身を引こうとするから、強引に抱きしめると無理に舌を絡める。
「んんんんんっ!んんっ!んんっ!」
 じたばたする美月を抑えて充分に時間をかけた。
後ろで天城がうっとりとしたため息をつくのが聞こえた。
 唇を離すと美月が、ずるずると尻をついたまま後ずさった。
「お返しだ、バカ」
「な、な、なんて事を……」
 引きつった声を漏らす彼女ににやりと笑いかけた。
「惚れたんじゃなかったのか」
 赤くなった美月が腕を振り回す。私は彼女の着物を取り上げると自分のを脱いでそれを着た。
自分の衣の中から必要なものを取り出し胸もとに押し込む。
「ちょ、ちょっと」
「文句は後ろのバカに言え」
 私は狼の口を縛る紐を切った。途端に牙を見せて美月を威嚇する。
「そんなのほっとけ、行くぞ」
 銀狼は一声高く吼えると、すぐに私の後を追ってきた。
284名無しさん@ピンキー:2011/07/14(木) 13:57:27.92 ID:0ibbFoaF

 女武芸者だって多少はいる。だが、やはり女はあまりこんな仕事には向かない。
組織のため、親のため、男のため。兄のため、弟のため、子のため。
大抵の女は自分を縛る何かを必要とする。
 そんな中あいつはあの頃、自分のためだけに闘っていた。
自分の罪は自分で背負い、何の言い訳もしなかった。
地元の里は別の忍びに滅ぼされたが、復讐の心など欠片もない、と笑った。
最後まで生きぬけりゃ、それが勝ちだと言い切った。
 生き死にのかかったあの場で、私たちはわりに爽快だった。
あんなに安心して背中を任せたことはない。美月もたぶん同じだったはずだ。
 それを上手く呑みこめなくて、面倒だからわかりやすい関係性に変えてみる。
いかにもあいつのやりそうなことだ。
「まったく、バカな友を持ったもんだ」
 歩きながら愚痴をこぼすと横の狼が呆れたような顔で私を見上げた。
「おまえはいいよなあ、悩みがなくて」
 怒るかと思ったが、ふん、と言うように鼻を鳴らした。
それから不意に私の着物の裾を咥えて引っ張った。
「絶対にいやだ。あいつの後なんぞ」
 狼は不服そうになんどか引っ張ったがかまわず歩き続けた。
銀狼はまだあきらめずに足元に絡みつく。山はまだ深い。

おしまい。
285名無しさん@ピンキー:2011/07/14(木) 18:21:47.86 ID:4FncFc7d
強いけれどどっか不器用な女二人の、素直じゃない友情がなんだか微笑ましくてGJ。
「お前のようなババアがいるか」と、天城の馬鹿丸出しぶりにわろすw
286名無しさん@ピンキー:2011/07/15(金) 14:28:13.03 ID:CSNRH/9H
投下おつ!実況あえぎワロタ
287名無しさん@ピンキー:2011/07/15(金) 23:29:34.22 ID:CMLTkUgj
なにこの銀狼かわいい
288名無しさん@ピンキー:2011/07/16(土) 11:19:28.98 ID:wWlkglFu
待っていた。待っていたよ。
仮の名だけど女侍さんの名前が出たー!
こういったのも面白いです。
289名無しさん@ピンキー:2011/07/17(日) 23:45:11.44 ID:FbLlxWnJ
>>234で鋼が来なかったバージョンを二次で創作してみました。
作者さん勝手に文章を使ってごめんなさい。




「いやだっ!」
気持ちが悪い。死ぬほどの不快感。快楽など微塵もない。
狼の不潔な舌が私の膚に触れる。乳首や脇の敏感なところにも伸びるが吐き気がする。
なのにその舌は徐々に下がっていく。
「いやああっ」
とうの昔に忘れた小娘のような悲鳴が口から漏れる。
ぬめったところを刺激されて、おぞましさに気が狂いそうになった。
狼は少しもためらわずに復活した雄芯をその場所にあてがった。

「や、やめ…あぐ…は…ああ!」
激痛に涙を浮かべながら私は苦悶の声をあげ、 解けた黒髪を振り乱しながら藻掻き続けた。
狼の雄芯は鋼のモノよりも太く、大きく、そして凶悪だった。
私の上にのし掛かり、密着するような体位で一気に押し入ってきた。
何の遠慮もない突き上げ、そしてこれ以上押しは入らないことを悟ると
腰を引き、乱暴に前後し始めた。
獣の交尾だ。相手を思いやる気遣いなど微塵もあるはずがない。
これが正常なのだろう、嬲りながらの交尾。
290名無しさん@ピンキー:2011/07/17(日) 23:47:06.46 ID:FbLlxWnJ
奥方の身体で人間の雌を知りつくした狼は私の身体の上にしかかり、
ぐにゅと乳の形が変わるほど力強く腹を擦りつけてくる。
「や…やめっ…ろ!!」
私は何とか痺れて感覚のない両腕を使い、狼の身体を押しのけようとした。
狼の口が動いた、鈍い音と共に遅れて右腕に激痛が走った。
「あっあ…あああああああっ!」
狼の牙が右腕に食い込んだ。この狼は噛みついたのだ。
「やっあぐううっ!はっはぁ…!」
私が左腕を下げると、ようやく噛みついた口を離し、突き上げる動作に戻った。
もうなすがままだ。右腕からは出血していたが、それほどでもない。
加減して噛みついたのだ、抵抗する雌を蹂躙するために…
「あっ…あ…こ、この野郎」
その言葉に反応したのか狼がぶるぶると小刻みに震え始めた。
「………っ…んっ…んんっ」
どぶっ…と中で熱い体液が吐き出されたのを感じた。別の狼に無理矢理犯された。
同じ狼なのに…私の瞳から一筋の涙がこぼれ落ちた。
汚らわしい雄芯がぬぷっと抜けたような気がした。
291名無しさん@ピンキー:2011/07/17(日) 23:48:06.84 ID:FbLlxWnJ
「うっ……」
狼は再び私の乳をべろっと舐めた。その眼はまだ満足していない。
こいつはまだする気だ…奥方より若い私の身体が気に入ったらしい。
「いやだっいやだ!いやだっ!だ、誰か――――――」
ぞわっと全身が総毛立った。這いつくばって、逃げだそうとした。しかし、狼が逃がすハズはない。
ぶちゅうううっ……
「あっ…はぐうう!」
這いつくばって逃げ出そうとする私の背中に抱きつき、尻肉をかき分けて後ろから押し込んできた。
逃げ出さないように背中に密着し、尻に叩きつけるようにして動き出した。
本能的に雌の尻に欲情しているのか、その勢いは先の交尾ではない動きだ。
「あっ…ぐ…ん…あン」
狼に嬲られているのに、鋼との交尾で尻で感じるようになってしまった身体は
狼の雄芯を締めつけ、射精を促そうとする。最悪だ。
こんな狼にも感じ始めている私は、自分自身を嫌悪した。
狼の吐息が荒くなり、ボタボタと背に落ちる涎、猛烈な獣臭の中、そいつは
私の背に前足を乗せ、雄芯を最奥まで突き上げた。
どぶっぶちゅと言う感覚と共に大量の精を私の中でぶちまけた
「あ…あ……ま、また…に、二回も…」
ぐいぐいと雄芯を押しつけ、長々と精を放出し続ける狼。
「あっ…はあ…あああ…な、中に…出され…」
狼の雄芯からぶりゅ…びゅると射精する度にビクン、ビクンと震える身体。
ボコッと脹らむ狼の雄芯…ああ、鋼と同じだ。これからこいつの汚らわしい特濃の
獣精をイヤと言うほど味合わなければならない。
それでも私の尻と女陰は感じ、獣の精を待ちわびているのだ。

「んっ…うっん…ん…んんっ…あは…はぁ…はひ…はぁん」
狼はようやく出尽くしたのか萎えた雄芯を名残惜しく、ずゅるるという音と共に引き抜いた。
どろりと逆流してきた黄ばんだ獣精が股から流れ出してくる。
見れば酷いなりだ。髪と着物は乱れ、背中は涎にまみれ、股と尻には黄ばんだ精がこびりついている。
おまけに右腕は血まみれだ。幸いにも出血は止まっているようだが…
「はぁ…は…ンン」
狼は前にくると無様な私を嘲笑うかのように舌を舐めた。
「……私の尻は気持ちよかったか?このクソ野郎」
精一杯の虚勢。狼はハッと笑うと、あろう事か私の顔に小便をかけ始めた。
「なッ…や、やめッ…このッ…」
こいつ、私にマーキングしてやがる。それは即ち、自分の所有物だという証。
ニオイをつけているのだ。こんな狼の影に毎夜、毎夜、怯えなければならないのか
こいつのニオイを感じた鋼は私をどう思うのだろう。そんな事を思うとだんだんと意識が薄れていった。
292名無しさん@ピンキー:2011/07/17(日) 23:48:32.82 ID:FbLlxWnJ

「――――――いやああああッ!」
ガバッと私は起き上がった。薄暗い、側には獲物。
ここは――――――私の山小屋だ。ぼろくなって新調した蚊帳が揺れている。
「はぁはぁ…はぁ…ゆ、夢か……くッ…」
私は頭をふって、忌々しい夢残像をふり払った。
側に丸くなっていた毛むくじゃらが心配そうな顔でこちらを見上げた。
「………なんでもない…いやな夢を見ただけだ」
ひと撫でしてやると気持ちよさそうに眼を細めた。
「………んッ」
ああ…夢のアレのせいだろうか、下帯が濡れている。乳が張り、乳首が衣擦れにさえ感じ、硬くなっていく。
尻が…火照ってきた。自分でするのも空しい…と私は横の毛むくじゃらをみた。
ふわああ…と欠伸をして再び眠りの体制に入った鋼の顔を掴み、私は股を広げて見せた。
「………来て……お願い」
自分からねだるなど屈辱的だが、コレだけ火照ってしまうと、どうせするのだ。
たまには自分から誘うのもいいだろう。鋼はのっそりと起きあがると、私の股に顔を埋めた。

END
293 ◆lUqXUzkwiGUH :2011/07/24(日) 02:28:13.26 ID:Jy/tw9Iw
別のスレで書いたSSの続編なのですが、長いので。
続き物になりますが、投下頻度は限りなく不定期になると思います。
保守代わりということで、ひとつ。



 人間というものは、一晩で何回セックスをすることができるものなのか?

 その可能性を検証すべく、一日の勤務を終えて意気揚々と帰宅した二十一歳の雑誌編集者ことぼく、一樹守を出迎えるのは、
二ヶ月前、ぼくと劇的な初体験を果たし、今現在はぼくのアパートで目下同棲中である十九歳の喫茶店ウエイトレス、木船郁子嬢なのである。

 郁子は、ワンルームの部屋へ入るなり物も言わず唇にむしゃぶりつくという、ぼくの攻勢をものともせずに、
挿し入れた舌を巧みにいなしつつ、ぼくの腰に腕を絡みつかせ、あまつさえ、空いた方の手は、ぼくの眼鏡をスムーズに取り払い、
シャツのボタンも素早く外して脱がせてしまうという手際の良さ。
 だが、当然ぼくの方だってなされるがまま、やられっぱなしでいる訳もなく、奴の肩から襟ぐりの深いチュニックを抜き取り、
慣れた手つきでブラジャーの後ろホックも外して、おっぱいを軽く揉んだ後、柔らかな生地のスカートを、下に穿いてたレギンスごとずりおろし、
半分脱げかけのパンティーのお尻に手を突っ込んで、郁子最大の武器である、ボリュームに満ちたぷりぷりのヒップをこれでもかと鷲掴みにし、
思う存分揉みしだいてやるのだった。
 そんなことをしている間に、ぼくの方のズボンと下着は郁子の手によって足元まで落とされており、すでに臨戦態勢を整えて待機している陰茎も、
しなやかなる指先で根っこから激しくしごかれ、玉袋までもがやわやわと可愛がられているのである。

 ぼくは、もどかしい思いで足首からズボンを抜き去り、ついでに靴下も足の指だけで器用に脱いでしまうと、
パンティー一枚だけをお尻にまといつかせた郁子の躰をベッドの方へと押してゆき、二人揃って、シーツの上に転がり込んだ。
ちなみにここまでの工程の間、重ね合わせた唇同士は一切外していない。
「……んはっ、はあ、はあ」
 ベッドの上で、唾液と舌の執拗なやり取りに、先に根をあげ唇を離したのは、郁子の方だった。
 今夜のところは、おれの勝ちだな。
 そう考え、心の中でそっとほくそ笑んでいると、ぼくの下敷きになった郁子は、自分の濡れた唇を舌で舐めあげながら、
ぼくの亀頭の裏側部分を、指先で思い切り激しく震わせた。
「うっ」
 予想外の刺激に、うっかり呻き声を漏らしてしまう。
 今度は、郁子の眼が微かに笑った。
 やろう……このおれを本気にさせるとは、愚かなやつめ。
294月下奇人〜epilogue その1 2/9  ◆SHiBIToCCU :2011/07/24(日) 02:29:50.77 ID:Jy/tw9Iw
 準備運動はここまでだ、とばかりに、ぼくは郁子の隣に転がり、ぴったりと身を寄せた上で、脱げかけパンティーの中に手を滑り込ませ、
繊細な恥毛に埋もれたちっちゃなクリトリスを、中指でぐっと押した。
 ここまで余裕ぶっていた郁子も、最大の弱点であるクリトリスを押さえられては、さすがに何も反応しない訳にはいかない。
 押さえながら強い力で揉み込んでいけば、瞼はとろんと重たげに落ちて、半開きの唇から漏れる吐息は熱くなり、
恥ずかしげに、あるいは、もっと深い快楽を乞うように、くねくねと腰をくねらせ、悩ましく身悶えて見せるのだった。

「はあ……ん……うぅん」
 やがて、じわじわと開き始めた太腿の奥で、ぼくの指が、さっき郁子にされたみたいに陰核亀頭の裏側を震わせ、
クリトリスが完全に勃起する頃合になると、郁子はもう喘ぐ声を抑えることができなくなり、ぼくの胸元に顔を埋めるようにしながら、
しきりに頭を擦りつけてくるようになった。
 これは、本格的に感じてきた時の、郁子の癖だった。
 大きく漏れてしまいそうになるよがり声を抑えようとする、彼女なりの努力の証なのだ。
 だがそんな努力は虚しいもので、ぼくがさらなる攻撃――たとえば、こうしてクリトリスを指先で苛めつつ、丸い乳房の頂点、
赤黒い痣に取り囲まれた小粒の乳首を、空いた方の手でくりくりっと摘まんでやると、簡単に崩れ去ってしまう程度のものだった。

「うっ、くうぅっ、あう……だめぇ」
 切なく甘い囁き声が、ぼくの胸の谷間をくすぐる。
 ぼくの分身を掴む手の忙しない動きも止まり、それでも、汗ばんだ指先は、亀頭の弾力を愛しんで離さず、
やがて、性器の触りっこに我慢のならなくなったぼくは、さっと身を起こすと郁子の正面に位置を移し、
中途半端に腰に絡んでいたパンティーを、ようやっと脱がせにかかるのだった。
 ちなみに、パンティーを最初の段階で脱がせなかったのは、ちゃんと考えがあってのことで、
すなわち、パンティーを穿かせたままで性器を愛撫すれば、漏れ出た愛液がパンティーに染みを作ることになるから、
後でそれをネタにして、郁子を苛めてやれるという利点があるのだ。
 現に今、こうして脱がせたパンティーを手に取って広げてみれば、狙い通り、クロッチの部分が恥ずかしい液体をたっぷり吸い取り、
見るもいやらしい濡れ染みをかたどっている訳である。

「ほら見ろよ、お前のパンツ、こんなになってるぜ」
「んもう……馬鹿ぁ」
 両手でパンティーを広げて見せたぼくの前で、郁子はきまり悪げに首を傾け、目線を反らす。
 ぼくの大好きな、恥じらいの表情。
295月下奇人〜epilogue その1 3/9  ◆SHiBIToCCU :2011/07/24(日) 02:31:10.50 ID:Jy/tw9Iw
 テンションのあがったぼくは、郁子のおっぱいに唇を寄せて乳首をれろれろしながら、股間の空割れをぱっくりと指で押し広げ、
もうずるずるに溢れている膣口の淫液をすくいあげて、クリトリスにまぶしてから、陰裂全体を激しく擦り立てた。
「あああっ、あっ、あぁ……」
 おっぱいの弾力を手の平で玩び、乳首を舌先で転がしつつ、割れ目をくちゅくちゅと掻き鳴らす。
 初めての頃なら、こんな愛撫だけでも郁子はあっさりと果ててしまっていたものだったが、
さすがに最近は慣れたのか、これだけじゃあそう簡単にはいかなくなっていた。
 いかせるためには、このまま指を奥まで挿入して中の襞も一緒にずぼずぼ掻き廻すか、はたまた、股間に顔を持って行き、
クリトリスを重点的に舐めたり弾いたり、しゃぶったりしてやりながら、両の乳首を、両手を使って玩弄し、
最終的には舌を膣口に埋め込めるだけ埋め込んでしまい、指やペニスの出し挿れと同じ要領で、舌で思い切り激しく膣穴の抜き挿しを繰り返すか、
それぐらいのことをしなければ、絶頂の呻きと共に悶絶することはなくなっていた。

 だがぼくは、今回そのどちらの手段も選ばなかった。
 名残惜しく、完全勃起しつつあるクリトリスを弄くりつつも、郁子に向かって膝をつき、絡みつく血管も荒々しい我がペニスを片手に掴み、
もはや自分の躰の一部でもあるように馴染みである、郁子の深い部分の入口に、傘の開ききった亀頭の先端をめり込ませるのだった。
「あ……もう?」
 郁子は、薄眼を開けてぼくを見あげた。
 いつもの段取りと比べると、挿入にかかるのが早かったのが、郁子には意外だったようだ。
「もっと色々した方が良かった?」
「ううん。いいよ、来て。私も今夜は……早く欲しいって思ってたから」
 そんな一丁前の口を利きつつ、大きく股を広げてペニス受け入れ態勢を作る。
 先っぽの丸みが半ばめり込んだ膣口は、物欲しそうにぴくぴくとわなないていて、彼女の台詞に嘘はないということを、身を持って示しているのだった。

 今夜は早く欲しかった……か。
 なるほど、この二ヵ月間というもの、ぼくらはほぼ毎日セックスを続けていた訳だけれど、
ここ数日ばかりは、ぼくの仕事が忙しくて十分な時間が取れなかったこともあって、ちょっとなおざりになっていた感は否めなかった。
 だからこそ今夜のぼくは、暫くの間おろそかにしてしまった分を取り戻す意味合いも含めて、
一晩における性交回数の限界への挑戦を、心のうちで厳かに決意したのだから。
 幸い今夜は週末、昔風に言うなら、「花の金曜」略して「ハナキン」だ。
 しかも、週明けの月曜が祝日の三連休。
 休日が続くのだから、翌日の朝を気にすることもなく、夜を徹して卑猥な行為に耽ることも許されるという案配だ。
296月下奇人〜epilogue その1 4/9  ◆SHiBIToCCU :2011/07/24(日) 02:31:55.13 ID:Jy/tw9Iw
 ぼくは、郁子のうっとりと瞼を落とした美しい顔を見おろして、今夜これから、どんな風にして郁子の躰をいたぶろうかと愉しい思案に暮れながら、
とりあえずは正上位で普通にペニスを挿入させた。
 紅く火照った陰唇の、しとどに溢れ返っている発情液のぬめりのままに、ぐっと勢いよく、奥まで膣穴を貫けば、
郁子の瑞々しい肉襞は、温かく濡れながらこりこりと蠢き、弾けるような若々しさでもってぼくの亀頭や茎を締めあげ、
穴そのものが独立した意思を持っているかのごとくねっとりと、甘美な粘膜をまとわりつかせて、
脈動する肉塊を咀嚼し、子宮内に飲み込んでしまおうとしているみたいなのだった。

 しばし、勝手に蠢く郁子の胎内の、熱気と感触に酔い痴れた後、ぼくは早速、腰のあげさげを開始する。
 しっくりとよく馴れ合った、お互いの粘膜を擦り合わせるのだ。
 膣の入口近くのぶつぶつした処、上の方のざらついた処などに亀頭の張り出し部分をすりつけるうちに、
だんだんと膨らみを増して、形を成してきたクリトリス真裏の突起を、ぐいっと激しく突きあげた。
「あはぁんっ」
 郁子の腰が大仰なくらいに反り返り、悩ましい叫びが唇から漏れ出た。
 この部分も、郁子の数多い弱点の一つだ。
 この膣内の突起をちんちんの先でごりごりされると堪らなくなると、郁子自身が、かつて語っていたものだった。

「あああ……だめえぇ……ごりごりするの……だめええぇ」
 ぼくの的確な攻撃に、郁子は早くも陥落寸前で、下腹部や、自らの力でめいっぱいに広げた太腿がわなわなと震え、
足の爪先までもが、真っ直ぐにぴんと伸ばされている。
 膨れあがった丸い乳房も、しっとり汗ばんでなんとも言えない芳香を発している。
「ふふ……もうかよ。おれはまだまだ平気だぞ」
 呼吸を弾ませながらも、ぼくは余裕の台詞をかまし、絶頂の迫った郁子の膝を両脇に抱え込んで、そのまま腰をあげた。
 郁子は、腰を高くした状態で、躰を二つ折りにされる形となる。
 いわゆる、まんぐり返しの姿勢になった訳だ。

「郁子……ほら、見てごらん」
 ぼくは中腰で立ちあがり、真上から、郁子の眼に挿入した部分を見せつけた。
「こうするとさ、よく見えるだろう? お前のあそこに、おれのが根元まで嵌まってるのがさ。ほら、こんなに」
 ぼくは、郁子の膝を抱えるのをやめ、お尻の山を上から押さえ込むような姿勢を取って、郁子からさらによく見えやすいようにしてやる。
297月下奇人〜epilogue その1 5/9  ◆SHiBIToCCU :2011/07/24(日) 02:32:45.45 ID:Jy/tw9Iw
 こんな無茶な体位でできるのは、ぼくの図体が人よりでかくて、郁子との身長差も二十センチを越えているということで、
かなりの体格差がある、というのが一つの理由ではあるが、やはりなんと言っても、郁子自身の躰の柔軟性、
身体能力の高さによるところが大きいだろう。
 愛情が肝心とは言えど、セックスは肉体を使うものだから、体力が充実していた方が、より多角的に愉しめるものなのだ。

 郁子は、躰を真っ二つに折り曲げられて、お尻の間から顔を覗かせているような体勢にされながら、
ペニスをくわえ込んだ己の性器に、眉根を寄せて見入っていた。
 ぼくは、下腹部で郁子の尻を固定させつつ、彼女の腹側に手を廻し、互いの汗と淫液に濡れた彼女の陰毛を掻き分けて、
陰裂からぴょっこり飛び出ているであろうクリトリスや、ぼくの陰毛に、白濁した汁にまみれてへばりついているびらびらなんかも、丸出しにさせてやった。
「ああん……いやぁ」
 郁子は、喘ぐ声と共に眼を細くして、膣の奥深く潜り込んだぼくのものを、きゅっと甘噛みするように締めた。
 かなり快感が高まっているのか、眼を開けているのも難しい状態のようだが、それでも、性器同士の結合した部分を、
見ていることをやめようとはしない。

 ぼくは、そんな郁子の、異様に赤らんで苦しげに見える顔を、白い尻の狭間から見おろしながら、ペニスの出し挿れをゆっくりと再開し始めた。
 小さく折り畳んだ郁子の肢体を、ずん、と上から押し潰すように突き挿れれば、郁子の喉は、くぐもったような低い呻き声を漏らす。
 膣がひしゃげて浅くなり、一番奥にある、子宮の入口を強く圧するようになったせいだろう。
 ぼくはこの、郁子の深い場所にある、こりっとした弾力に富んだエロチックな器官に、亀頭の先を押し当てては弾ませて、
その心地好さに、陶然となって酔い痴れた。

「ああっ、うああっ、あっ、あっ、あっ……」
 奥の子宮口、子宮頚管をぼくが亀頭で押すたびに、郁子の喘ぎは甲高く、切羽詰まって、空腹の子猫のような啼き声に変わっていった。
 縮込まった膣は、繋がり合った部分から白濁した愛液を飛び散らせて、擦れ合う下半身同士をしとどに濡らし、
ぐっちゃぐっちゃ、にちゃりにちゃりと、聞くだに赤面してしまいそうな、淫らな音声を鳴り響かせる。
 子宮口の弾力はいっそう小気味よく、しかも、突付き廻しているうちに、だんだんと中央の窪みが柔らかくなって、
ぼくのものを子宮の内部にまで飲み込んでしまいそうな、いっそ危うい感覚が、また堪えられない快感を呼び起こすので、
ぼくもまた我を忘れてしまい、夢中になって、奥へ、もっと奥へとペニスを押し進めてしまうのだった。
298月下奇人〜epilogue その1 6/9  ◆SHiBIToCCU :2011/07/24(日) 02:33:20.48 ID:Jy/tw9Iw
 そうして、無理な姿勢をものともせずに、快楽の頂点に向かって邁進してゆくぼくと郁子は、二人揃って淫らがましい快楽の声で叫び続け、
早く達してしまいたい、けれどもその一方で、もっともっとこの快楽を長引かせたいという、相反する思いの中を揺れ動きながら、
みっともないほどに忙しなく下半身を擦り合わせているので、もう全身汗まみれ、二人分の体重を乗せたセミダブルのベッドも激しく揺らいで、
部屋のタンスからテーブルからパソコンから、とにかくそこいらじゅうのものにまで、細かい振動を与え続けてやまないのだった。

「いっ、ぎっ……ひいいぃっ」
 ついにと言おうかやっとと言おうか、ぼくに先駆けてオルガスムスに到達しつつある郁子は、喘ぎというより、悲鳴に近いような狂気じみた声をあげ、
興奮しきった顔をもはや赤黒いほどに紅潮させて、苦痛とも快楽ともつかない感じに顔を歪めて涙を流しながら、尻の肉を硬直させた。
 膣の内部もきゅうっと窄まり、ぼくのものを喰い締めて喰い締めて、子宮口も吸盤のようにぼくの尿道口に張りついて、
やがて、張りついたその場所から、信じられないくらいに大きな蠕動運動が起こって、膣全体が、のったりと収縮を開始する。
 その収縮は、郁子をして、正気を保つことができないほどの快楽をもたらすもののはずだった。

 つまり、郁子は今まさに、性の絶頂にのぼりつめたのだ。

「あ……ああああーっ……」
 郁子はひときわ大きな快楽の悲鳴の後、すすり泣くような声を高く響かせながら、膣口を中心として股間全体の肉をひくつかせ、
ぼくの腹の下にある尻の山まで揺さ振って、断末魔のような快楽の発作に全身を痙攣させた。
 ぼくは、郁子の豊饒な尻の肉に身を預け、彼女の絶頂をこの身に味わう。
 絶頂を極めた膣の最深部からは、ペニスをどろりと蕩かすような熱い迸りが溢れ、ぼくの全身をも戦慄させた。
「うぅ……くそっ」
 興奮と快楽をむやみに煽り立てられたぼくは、ほとんどやけくそのようになって、凄まじい腰使いで郁子の尻を振り廻した。
 ぼくももう――堪らない。出したい。
 自らの快楽を解放すべく、最後の摩擦にかかったぼくの下、郁子の弱まりかけていた悲鳴も蠕動運動も再びぶり返し、
ぼくの動きに呼応して、尻の肉を締めたり緩めたり、凄い振動で、ベッドが、カーペットの上を滑り出さんばかりに……。
299月下奇人〜epilogue その1 7/9  ◆SHiBIToCCU :2011/07/24(日) 02:34:19.12 ID:Jy/tw9Iw
 と、その時、ベッドの横の壁の向こうから、強い意思を持った別の振動が伝わってきた。
 二度、三度。断続的に続くそれは、明らかに、隣の住人が、壁を蹴飛ばすか殴るかしている音に他ならなかった。
 一気に理性を取り戻したぼくの躰から、欲情の波が引いてゆく。
 郁子は、もう後戻りできない領域にまで到達していたものの、壁から伝わる怒りの波動をぼくより敏感に察知したと見えて、
遠慮なくあげ続けていた悲鳴を、ぐっと飲み込んだ。
 それでも、膣を震わす絶頂感のわななきはなかなか引かず、静止した尻肉の狭間を、未練がましく蠢動させて、
まだ勃起したままのぼくの肉塊を、静かに静かに貪り続けているのだった。



「やっちゃったねえ……」
 暗いベッドに、郁子の密やかな声が響いた。
明かりを消した部屋で、寝間着姿のぼくと郁子は、ぴったりと躰を寄せて横たわっている。
 こうして密着し、ぼくが郁子を抱き枕のようにして眠るのは、いつものこと。
 愛情がそうさせるというよりは、必要に迫られていうか……
要するに、ベッドが狭いので、しっかりくっついていないと落っこちてしまうのだ。

 あの後――さすがに気がそがれてしまったぼくは、郁子を二回連続でいかせたことに、とりあえずは満足したことにして、躰を離した。
 中途半端に昂ぶったままのペニスの処理は、オルガスムスの余韻に微睡む郁子の口でしてもらい、
そのままバスルームに向かって、シャワーを浴びた。
 戻ると郁子はもうパジャマを着ていて、
「ご飯はどうする?」
 と訊いてきたので、
「軽めに」
 とぼくは答え、ほぐしたアジと野沢菜のお茶漬けに茄子の煮びたしという、本当に軽い食事を取って、
今度は純粋な睡眠のために、早々とベッドに潜り込んだ訳であった。

「だけどさあ……確かに私達も悪かったけどさ、何も壁蹴ることはないと思わない? お互い様じゃないのかなあ、ああいうのって」
 郁子は、声を潜めて隣人に対して悪態をつくが、ぼくは、それに乗っかる気にはなれなかった。
 ぼくの記憶が確かなら、隣に住んでいる男性は、大学浪人生活、今年で三年目だったはずだ。
 禁欲状態を永いこと強いられてるところにもってきて、隣からあんなに派手なセックスの音を聞かされた日には、
色んな意味で堪ったもんじゃないだろう。
300月下奇人〜epilogue その1 8/9  ◆SHiBIToCCU :2011/07/24(日) 02:35:55.66 ID:Jy/tw9Iw
 気持ちはわかる。
 ぼくだって、彼女居ない歴は長かったのだから。

「ベッド……壁際に移したのが、失敗だったかな」
 郁子の向こうの壁を眺めつつ、ぼくは微妙に論点を逸らした。
 でも、そうなのだ。
 郁子と本格的に付き合うようになってから間もなく、郁子に元居たアパートを引き払わせて、
ぼくのアパートで一緒に暮らし始めたまでは良かったのだが、ただでさえ狭かったワンルームのアパートに、
郁子と、大した量はないとはいえ、郁子自身の身の廻りのものを受け入れる都合上、こちらも多少の荷物の整理と、
それに伴う模様替えが必要となった。
 それまで窓際に置いていたベッドも、隣室と接した壁際に寄せる以外になくなって、
それでもまあ、隣人との生活時間帯が微妙にずれていたこともあり、これまで大した不都合は起こらずにいたのだけれど……。

「なあ郁子」
 ぼくは、前々から心の内に秘めていたある考えを、郁子に言ってみることにした。
「明日さあ……一緒に不動産屋、行かないか?」
 ぼくの腕の中、郁子は、微かに顔をあげてぼくを見た。
「不動産屋? 新しい部屋を、探しに行くの?」
「そう」
 ぼくは頷いた。
「このアパート、会社に近いし気に入ってはいたんだけどさ。
さすがに……二人で暮らすには、手狭だと思うんだ」
「セックスも満足にできないんだもんね」
 悪戯っぽい口調で郁子は言う。
「まあねえ、ワタシ的に、部屋が狭いことはあんまり気にならないんだけど、お風呂はもうちょっと広いのを希望したいかなあ……。
だって今のユニットバスじゃあ、実質シャワーしか浴びれないでしょ?
しかも一人ずつじゃないと無理だし。
せっかく一緒に暮らしてるんだからさあ、二人でお風呂に入って、洗いっことかしたいじゃん」
「そ、そうだな」
 お風呂で洗いっこ、か。考えたこともなかったけど……そういうプレイも確かにいいよな……。

「あれ? ちょっと勃起してきた?」
 不埒な妄想が心をよぎったせいで、素直なぼくの下半身が反応したことを、密着して寝ている郁子は見逃さなかったようだ。
 忍び笑いを漏らしつつ、郁子はぼくのパジャマの上から、ペニスを摩り始めた。
301月下奇人〜epilogue その1 9/9  ◆SHiBIToCCU :2011/07/24(日) 02:36:46.10 ID:Jy/tw9Iw
「やめなさい」
 ぼくは、郁子の手をそっと押し退けた。
 全く。
 さっき怒られたばかりだというのに、そんな節操のない……。
「いいじゃん別に、そっとやれば気づかれないわよ。
仮に気づかれたってさあ……すぐに引っ越すんだから、問題ないでしょ」
 郁子は、案外ふてぶてしかった。
 ふてぶてしくぼくのものを扱きあげ、ぼくのパジャマの胸元に手を差し入れて、乳首までをも刺激してくる。
 ぼくは諦めと共に眼を閉じ、ため息をついた。
 ぼくの抵抗がなくなったのをいいことに、郁子は、腰をよじって穿いていたパジャマのズボンをおろし、
剥き出しの太腿で、ぼくの腰を挟み込んだ。
 恥毛のしゃりしゃりとした感触。奥の粘膜に、すでに濡れている気配がある。

「さ、守も早く下脱いで。このまま向かい合って、しよ?」
 言われるがまま、ぼくも下半身を露出させ、郁子と脚を交叉させて抱き合った。
 声を押し殺し、動きを最小限にセーブしながら、ぼくと郁子は、二回ばかりした。
 二度目の射精の後、うつらうつらと微睡むぼくの横から、郁子が起きあがってバスルームに向かって行く気配がしたのを覚えている。
 壁にかけた夜光時計は、午前二時少し前を指していたようだった。

【続く】
302名無しさん@ピンキー:2011/07/25(月) 21:29:48.80 ID:z/kX7Mqn
投下乙です!
マイペースに続けてください^^
303名無しさん@ピンキー:2011/08/09(火) 17:17:21.37 ID:7SP6Rjuq
>279、289

鋼も好きだが 不器用な女さむらいと忍びもイイ!
304名無しさん@ピンキー:2011/08/09(火) 17:38:11.54 ID:7SP6Rjuq
>◆SHiBIToCCU
〜epilogueなら その前を読もうと探し出したが完読には程遠い。
章の数なら四分の一。忘れないうちに。大作 乙!
305 ◆aAOzBlbyJOP3 :2011/08/22(月) 10:08:36.87 ID:QYbjEVSX
 バスルームの鏡の前に、私は立っていた。
 上半身だけ裸になって、乳房を鏡に映して。

 守にバージンをあげてから、今夜で二ヶ月と四日目になる。
 ここに映っている私は、もう二ヶ月前までの私じゃない。処女ではなくなった私。
守に何もかもを許し、躰の、自分自身でも見たことのないような場所まで彼に見せて、触らせて、舐めさせた私。
 この躰のどこを取っても、守からの洗礼を受けていない場所なんてない。
この顔だって、髪の毛だって、もちろんこの――二つ並んだ乳房だって。

 真ん丸い、お椀を伏せたような二つの膨らみを、私は両手で持ちあげてみた。
以前、バイト先の喫茶店の、ウエイトレス仲間の子に冗談で揉まれて、
「まだ硬いっす」
なんて言われた私の乳房は、今でもやっぱり、ちょっと硬めだ。
守から、毎日散々揉まれ続けてきたというのに。二ヶ月程度じゃ、変わらないものなんだろうか? 
一年とか、二年とか、もっと長い年月揉まれ続けたら、少しは変わる?

 男ができると女は変わるって、昔誰かから聞いたけど、私に限って言えば、それほど変わってないみたいだ。
別に、お肌のコンディションが格別良くなったりもしないし、乳房の硬さや大きさも、処女だった頃のまんま。
生理不順だって、全然直ってない。

 でも、たった一つだけ――以前とは確実に変わっていることがあった。
 それは、私の乳房に刻み込まれている、この、人間の眼の形をした痣だ。

 生まれた時から人とは違う、変なちから――
守に言わせれば、それは人知を越えた超能力ってやつらしいけど――
とにかく、そんなけったいなものを持って生まれた私は、そのちからに加え、生まれた時から、
こんな奇妙な醜い痣まで持っていた。
 昔は、こんな痣がある私には、一生彼氏なんてできないって悲観し、諦めてもいた。
だから、守を好きになった時には本当につらい思いをしたもんだったけど、この痣にも関わらず、
守は私を受け入れてくれたんだ。
 全く奇跡のような話だと思う。
 私の変なちから――人の心を読む、精神感応能力なんてなもの一つ取ったって、
自分の彼女には持っていて欲しくないもの、ナンバーワンと言って過言ではないものだろうに、
それに加え、男の子の欲望の最たる対象の一つであるはずのおっぱいに、こんな醜い痣まである、こんな私を……。

 こんな言い方をしたら、大げさだって人は笑うかも知れないけれど、私は、私に取っての男性は、
この世に守一人しか居ないのだと、本気で考えている。
守以外に、私と付き合ってくれる男の子が現れるとは思えない。
本当の意味で、私には守だけなんだ。
 他にかけがえのない、何よりも大切な存在である守。
だから私は、守のためになんだってしてあげたい。
守のために家のことしてあげたり、守の好みに合わせてメイクやファッション変えたりするのはもちろんのこと。
セックスだって――いや、セックスは、私自身もかなり愉しんでるか。

 とにかく、そんな感じに、守に喜んでもらえることならなんでもしたい私だから、この胸の痣だって、
できれば消し去ってしまいたいって、ずっと考えていた。
 守が、女の子の乳首は小さめな方が好きだってこと、この二ヶ月余りの親密な交際の間に、私は察していた。
306月下奇人〜epilogue その2 2/3:2011/08/22(月) 10:09:34.24 ID:QYbjEVSX
もっと言えば、本来の守の好きなタイプって、髪が長くて、色が白くて、清楚で、控え目で、おっぱいがでかい。
彼の本心は、そういう、べったべたなフェミニンさを求めていたようだった。

 それに引き換えワタクシめはというと……。
髪の毛は今伸ばし中だから置いとくとして、肌は別に、黒くはないけど色白ってほどでもないし、
清楚も控え目も、何それおいしいの? って世界だし、おっぱいも大して巨乳じゃないし……。
考えれば考えるほど鬱になるけど、でもでも、たった一つ!
痣に取り囲まれてるから一見わからないんだけど、これでも、乳首だけは、かなり小さい方なのだ。
 乳首はもちろん、乳輪だって――測ったことはないけれど、直径にして、多分、
一センチちょっとぐらいしかないんじゃないかな?

 私にだって、守の好みに叶うところがちゃんとあるのに……痣のせいで生かし切れないなんて、やっぱ悔しい!
 そんなこんなで、守との暮らしの中で私は、中学ぐらいの時にちょっとやったものの、
さっぱり効き目がないのでやめてしまった、痣撲滅作戦を、密かに再開していたのだった。
 あの当時と比べると、今は美白関係の化粧品も相当進化しているはずだから、
一応試す価値はあるんじゃないかと思ったのだ。
 前の部屋を引き払った直後から始めたことだから、もう一ヶ月くらいにはなるのか。
その成果はといえば――これが、我ながら意外なことに、ほんのちょっぴりながらも、
現れているようなのだった。

 鏡の後ろに備えつけてある棚の中から、私は、このバスルームで毎晩痣に塗り続けてきた、
美白美容液と美白クリームを取り出した。
これはアメリカ製の、国内では販売していないもので、元々はそのものずばり、痣の治療薬だったものを、
化粧品に高濃度で配合したとかで、とにかく効果が高いというのをインターネットで調べて知り、
インターネットの通信販売で購入したのだ。
送料やなんかも含めると、二つ合わせて私の月収の半分以上という、べらぼうなお値段だったけれど、
私はこれに賭けた。
 そして、私はどうやら、この賭けに勝ちつつある。
鏡に向かい、私は微かに口の端をあげた。

 二ヵ月前まで、この胸の痣は、かなりはっきりとした人間の眼の形を取っていて、
こうやって鏡に向かって体面すると、自分のおっぱいに見つめられているような、
嫌な圧迫感に襲われたものだった。
 けど今は、その眼の印象が、だいぶ薄れていることがわかる。
なんというか、各痣の両端、つまり両眼の目頭と目尻の輪郭が、曖昧になってきているのだ。
痣全体の色味も、以前の黒味を帯びた赤色から、もっと明るい赤色へと、微妙な変化を遂げていた。
激高な外国産の薬は、やっぱり効果絶大だったということか。

 でもその一方で、私はまた別なことも考えてしまうのだ。
 ひょっとすると、こうして痣が薄くなってるのって、薬とは関係ないんじゃないかって。
薬じゃなくて――守のせいだったりとか。
 だって、私のこの痣は、毎日のように守に触れられたり、舐められたりしてるんだもん。
それに、時々はその……精子かけられちゃったりとかもするし。
307月下奇人〜epilogue その2 3/3:2011/08/22(月) 10:10:48.26 ID:QYbjEVSX
 別に、守の唾とか精子やなんかに、特別な力があるなんてことは思ってないけど、そうじゃなくてこう……
そんなのをされることで、ホルモンのバランスが変わって、痣に変化が現れたとか、
そういうことなら、あるかも知れないじゃない。

 というか、それは、私自身の本心が、そうであって欲しいって願っていることだった。
 だって、守の力で私の痣が消えるとか、凄い……愛の力って感じで、ロマンチックな気がするし! 
私を、先の見えない孤独の暗闇からだけではなく、醜い痣からも救ってくれる守――
やだもう、ますます惚れちゃうじゃん!

 そんな物思いに耽るかたわら、ふと鏡を見れば、おっぱい丸出しで頬を赤らめ、眼を潤ませつつにやけている、
危なさ大爆発の私の姿が映っている。
いくら夜中のテンションだからって、これはない。
私は、咳払いをして気を静めた。
 そして、おもむろに美容液のキャップを外す。
毎晩の恒例行事を、さっさと済ませなきゃ。

 痣の快方が、守の力によるものであって欲しいと願う反面、私はこうやって、痣のケアをすることも怠らなかった。
リアルに考えて、効果があったのは薬の方なのだと、私の理性はちゃんとわかっていたから。
 でも、痣に薬を塗り込めながら、やっぱり私は考えてしまうのだ。
守が。
きっと守が私を変えたんだ。
毎日毎晩、あんなにも愛し合っている私達だもの。
お互いに、全く影響がないことの方がおかしいんだ。
私の躰はもう守のもの。守の躰も、私のもの。
私達は、躰も意識も、お互い強く結び合って生きている……。

 部屋で寝ている守の存在を強く意識しながら、深い幸福感にじわじわと胸を焼かれる。
痣ケアの時間は、私に取って至福のひと時だった。
痣に塗った薬が乾いて、服が着られるようになるまでの間、私は鏡に自分を映し、また守のことを考える。
 守は、私の痣の変化にまだ気づいていなかった。
 まあ、毎日ちょっとずつの変化だから、気がつかないのも無理はない。
元々、男の子はこういう些細な変化には疎いものだし、ただでさえあいつは近眼だ。
 でも、痣がもっともっと薄くなれば、さすがに気がつくだろうと思う。
そうなったら、守は何て言うだろう? 
痣の消えた私の乳房を見て、どんな顔をするだろう? 
今からそれが、楽しみでならない。
 指を二本、乳輪の上下に宛がって、痣を隠してみる。
眼を閉じて、痣のなくなった乳房をイメージする。
痣のない綺麗な乳房を、守の手に委ねている、自分の姿も。

「守……好きよ」
 幸せなイメージに浸りきった私は、自分の胸を抱き締めた。
 まだ乾ききっていない痣の薬が、腕の中で、少しだけべとついた。

【続く】
308月下奇人〜epilogue その3 1/2:2011/08/23(火) 10:52:38.33 ID:MyISG4Aa
――駅から徒歩十分以内で、2DK以上の間取りの角部屋、バストイレ別、ということになりますと……
そうですね、やはり、このくらいのお家賃になってしまいますが」

 その小綺麗な不動産屋は、連休初日の昼下がりということもあって、ぼくと郁子の他にも数組の客が来ていて、
混んでいると言うほどでもないものの、割と賑わっていた。
 ぼくと郁子の対応をしてくれている、細身でショートカットの、三十歳前後の綺麗な女性は、
少し困ったような笑顔と共に、いくつかの物件のパンフレットをカウンターテーブルに広げた。
 ぼくは、「駅至近! 買い物便利な好環境!」「新婚さんに最適! 陽当たり抜群の南向き、閑静な住宅街です」
などの煽り文句が印刷されたパンフレット群に眼を通し、かぶりを振った。
「駄目ですね。やっぱり、家賃は管理費等も含めて、さっき言った範囲内以内に抑えたいんで」
 提示された物件は皆、ぼくが希望する家賃を一万円ほど超えるものばかりだったのだ。

「管理費雑費込み、ですか。でしたら……」
 不動産屋の女性は、手元のファイルを繰って、別の物件を探しにかかっている。
「あ、ねえ守、これ良くない? ほら、いつも買い物に行くスーパーの上だよ」
 郁子が、女性の手を止め指さした。そこは、今ぼくらの住んで居るアパートにほど近いマンションだった。
 家賃は、共益費も含めてぎりぎり許容範囲内。しかし、ぼくはそれにも頷かなかった。
「駄目だよ。ここ、角部屋じゃないじゃないか。両隣に別の世帯があるんだ。それじゃあ意味ないだろ」
「あ、そうか」と言って、郁子は乗り出した躰を引っ込めた。

「あらでも、こちらはとてもいいマンションですよ。
築年数も比較的新しいですし、鉄筋で壁やサッシの防音もしっかりしていますから、
窓を閉めれば外から物音が入ることもないと思います」
「入る物音より、こっちから漏れる物音が気になるんですよ……」
 そう呟いたぼくの足を、郁子のブーツの踵が踏んづけた。
「痛っ……」
 涙を浮かべて隣の郁子に眼を向けると、物凄い眼で睨まれた。
 声はなく、唇の動きだけで、「馬鹿っ」と悪態をつかれる。な、何なんだよいったい……。
「……それも大丈夫かと思いますよ。
このクラスのマンションになりますと、普通に生活なさる分には、生活音が漏れる心配はまずないですから」
 ぼくと郁子のやり取りには関せず、女性は鷹揚な笑みを浮かべる。
 普通に生活すれば、か。
 生活はともかく、夜の「性活」の方は、普通に済ます自信がないから、やっぱり駄目だ。
 ぼくは、首を横に振った。

 その後も、ぼくら三人は色んな物件を検討したが、「これはいい!」というものに巡り合うことは叶わなかった。
 女性と郁子から、「これならいいんじゃないか?」というものをいくつか提示されたりもしたが、
ぼくがどうしても気に入らなかったのだ。
「守さあ……もうちょっと、どっかで妥協できないの?
これじゃあいつまで経ったって、引っ越しなんてできないよ」
 一時間ばかり居座ったあげく、結局諦めて不動産屋を退出した後、ぼくと手を繋いで歩きながら、
呆れたように郁子は言った。
「あくまで、理想は理想なんだからさ。全部満たそうなんて、贅沢すぎるよ。所詮は賃貸なんだし、ある程度は割り切らないと」
309月下奇人〜epilogue その3 2/2:2011/08/23(火) 10:53:45.99 ID:MyISG4Aa
「いいや。おれは妥協なんてしないぞ。完璧に理想を満たす物件は、きっとどこかにあるはずなんだ。
諦めずに、絶対探し出してやる」
「もう……こだわり出すと、とことんなんだから」
 やれやれ、といった表情で、郁子はため息をついた。

「あの、お客様」
 ふと、大通りをそぞろ歩くぼくらの背後から、呼びかける声が聞こえた。
 振り返れば、今の不動産屋の女性だった。
 パンプスの踵を打ち鳴らし、短い髪をふわりとなびかせ、軽やかに駆け寄ってくる。
 何か、忘れ物でもしたっけか?
 怪訝に思いつつ立ちどまったぼくらの前で、女性は軽く息を弾ませ立ち止まった。
「あの……何か?」
 女性が呼吸を整えたところで尋ねると、彼女は、手に持っていた名刺を差し出した。

〈有限会社○○ホーム・宅地建物取引主任 高橋由里子〉

「名刺をお渡しするの、忘れていたことに気がつきまして。遅ればせながら、よろしくお願いいたします」
 ぼくだけでなく、ご丁寧に郁子にまで名刺をくれた女性――高橋由里子は、優しげな笑顔と共に、頭をさげた。
 ぼくは微かな戸惑いを胸に、郁子と顔を見合わせた。
 ぼくらはもう、あの不動産屋では埒が明かないと判断し、別の不動産屋を見に行く心づもりでいたのだ。
 それでも、こうしてわざわざ走って来て名刺を渡してくれた相手を、無下に扱う訳にもいくまい。
 ぼくは、外出時には常に装着しているウエストポーチから名刺を取り出し、由里子さんに手渡した。

「まあ……一樹さんは、サイエンス誌の記者さんなんですか。お若いのに、ご立派なんですねえ」
 「超科学研究社」と銘打たれたぼくの名刺を眺めて、由里子さんは真面目に感心しているようだった。
 「アトランティス」なんていうオカルト雑誌を知らなくて、単純に会社名から、
普通の科学系雑誌と勘違いしたのだろう。
 よくあるリアクションなので、ぼくは特に気に留めず、訂正もしなかった。
「お部屋の方、じっくり腰を据えて充分納得のいくものを、とお考えなのでしたら、是非とも協力させて下さい。
私、他の会社にも当たって、色々と探してみますから……店頭に出さない物件なんかも含めて」
「そこまでして下さるんですか? なんだか悪いみたい」
 郁子が言うと、由里子さんは、「いいえ」と笑った。
「実を言うとね、私、あの不動産屋さんに就職したばかりなんですよ。
あなた方は私の、記念すべき初めてのお客様なの。
だから、できるだけいい物件見つけていただいて、満足のいく新生活を送って欲しいんです」
 由里子さんは、主に郁子の方を見ながら、そう話した。
 郁子は、少し面食らったような、でも、どことなくまんざらでもないような笑顔を、由里子さんに返していた。

 大通りを爽やかな秋の風が吹き抜け、由里子さんの脂粉の匂いをさっと運んで、消えていった。

【続く】
310名無しさん@ピンキー:2011/08/23(火) 12:37:11.21 ID:b+Jfa7hQ
GJ!
投下楽しみにしています
311名無しさん@ピンキー:2011/09/08(木) 00:52:58.61 ID:8bbqPJed
投下GJ

続きが楽しみだ
312名無しさん@ピンキー:2011/09/08(木) 15:32:45.05 ID:JU+Cwzsm
女侍の人来ないかな
313名無しさん@ピンキー:2011/09/08(木) 23:59:18.97 ID:50NUke/4
女侍の話って、オリジナルなの?
作者さんどこかのサイト持ちの人?
元ネタというか、元の話があるの?

くのいちスレもなかなか良いです。 
314名無しさん@ピンキー:2011/09/09(金) 17:03:31.16 ID:4T28PPF4
>>312
もともと別スレの人。
オリジナルの女侍の作者さんと
その女侍の二次書いてる人と二人いる。
どっちもエロいけどな。二次の人は尻好きみたいだけど
315名無しさん@ピンキー:2011/09/20(火) 00:26:15.25 ID:leLDyX1E
 ゆるゆりSS 

 いわゆる百合二次SS 駄目なひとは飛ばしてくださいね


――――

「結衣ちゃん」
 結衣が放課後に部室の入り口の扉を開けると、机の向こう側に座っていたあかりが顔をあげた。
「あかり、ちなつちゃんは?」
「今日は、用事があって先に帰るっていってたよ」
 あかりは柔らかい笑顔を見せながら答えてから、訊き返してきた。

「京子ちゃんは?」
「ミラクるんの発売日だからね。HRが終わった途端飛び出していったよ」

「あはは」
 両肩を竦めてみせてから、あかりは腰をあげる。
「結衣ちゃん。お茶入れるから少し待っていてね」

「ありがと。あかり」
「どういたしまして」
 あかりが丁寧に入れてくれたお茶に口をつける。
 元々茶道の心得があって、茶道部志望だったちなつちゃんには流石に及ばないが、十分に美味しい。

 お茶を飲んでからは、ふたりともくつろぎ、思い思いの時間を過ごすことにする。
 何もせず、だらだらと過ごすというのは、ある意味では『ごらく部』のメインの活動だ。

 しばらく…… おそらく30分近く経ってから、あかりは思い出したように口を開いた。

「今日は、あかりと結衣ちゃんの二人だけなんだよね」

 あかりの声は、どこか艶めいているような…… 気がした。
316名無しさん@ピンキー:2011/09/20(火) 00:28:18.56 ID:leLDyX1E
「そうだ。今日は、私とあかりのふたりだけだ」
 にわかに鼓動が速まっているのを押し隠しながら、確認のために同じ言葉を繰り返す。

 それから、立ち上がって机をまわりこむように歩き、あかりのすぐ隣に座る。

「結衣ちゃん……」
「あかり」
 至近にせまった、ひとつだけ年下の少女の大きな瞳を覗き込むが、すぐに手を出すことはしない。

「あかり。我慢できないよぉ」
 しかし、ほどなくしてお預けの状態に耐えきれなくなったあかりが、腰をよじって
すがりつくように抱きついてくる。
 ほの甘い、この世代の少女特有の香りが、結衣の鼻腔を漂ってくる。

「すごく積極的だな」
「あかり、最近結衣ちゃんの家にいってないもん」
 あかりは、少し寂しそうな声をあげた。
「こればいいのに」
「うー だって、京子ちゃんが泊まりにくるから」

「それは……」
 結衣はあかりの髪を撫でていたが、言葉に詰まってしまう。
317名無しさん@ピンキー:2011/09/20(火) 00:29:05.76 ID:leLDyX1E
「京子ちゃんがいるのに、こんなことできないよう」
「ま、確かに」
 しがみつくように抱きつくあかりの背中をなでながら、結衣は耳元で囁く。

「それなら、今ならいいんだよね」
「う…… うん」
 恥ずかしそうに頬を赤らめながら俯くあかりは、やはり可愛い。
 天使のようなといっても過言ではない愛くるしさだ。

「結衣ちゃん。お願い……」

 すがりつくような瞳でねだられると、嫌なんて言えるはずが無い。
 結衣は小さく頷くと、頭ひとつ分だけ小柄な少女をゆっくりと押し倒していった。

「あかり…… エロいな」
 床に背をつけているあかりの肢体を眺めながら、結衣はごくりと喉を鳴らす。
 スカートの裾が倒れた拍子にめくれあがって、白く健康的なふとももが、かなり際どいところまで
露わになっている。

「ゆ、結衣ちゃん!」
 顔を紅潮させてぷんすかするあかりも…… うん。かわいい。
「怒った顔も可愛いよ」
「も、もう!」

(さて、からかうのはこのくらいにしようか。)
 結衣はひとりごちると、あかりの薄い桜色をした唇を優しく塞いでいった。
318名無しさん@ピンキー:2011/09/20(火) 00:30:21.92 ID:leLDyX1E
「はあっ はあっ」
 あかりが喘ぎながら小さく身体を震わせている。
「今日は激しかったな」
「結衣ちゃん。すごすぎっ」
 あかりは恍惚とした表情で、汗まみれの身体をだらりと床に横たえている。

「あかりがあんまり可愛かったからつい…… ね」
 結衣は苦笑すると、畳の上に散乱している、あかりのショーツやらブラを眺めて、大きくため息をついた。

「茶道部の部室でこんなことしているのがばれたら、私たち退学だな」
「そ、そうだね…… 」
 義務教育である中学に『退学』はあるのかは知らないけれど。
 少なくとも、ニ度と茶道部室に足を踏み入れることはできないに違いない。

「でも…… 」
 あかりは、額の汗をぬぐいながら言った。
「もうやめられないよう」

 いわゆる同性との『セックス』は、麻薬のようなものだというのを、どこかの本で読んだ気がするが、
確かに一度はまると、アリ地獄のように外に抜け出せないようなものかもしれない。

 靴下だけという全裸よりある意味でマニアックな格好であるあかりが、
のそのそと立ち上がろうとしたところで、回収を終えた下着をわたしてやる。

「ほら、あかり。ちゃんと着て」
「う…… ん。ありがとう。結衣ちゃん」

 あかりはお礼を言うと、濡れたショーツの穴に片足をもぐりこませた。
319名無しさん@ピンキー:2011/09/20(火) 05:37:22.73 ID:2itrtsuO
\アッカリ〜ン/
320名無しさん@ピンキー:2011/09/20(火) 09:25:37.18 ID:0weM4dYt
>>315
元ネタ読んだことないけどかわいかった。GJ。
321月下奇人〜epilogue その3 1/5 ◆SHiBIToCCU :2011/10/02(日) 22:37:14.29 ID:wZpJ2PRo
 私と守はその日の午後、結局、他の不動産屋は廻らずに、外でちょっとだけウインドウショッピングをして、
ご飯を食べて、帰って来てしまった。
「ねえ守」
 帰るとすぐに、壁際のパソコンに向かってインターネットを始めた守の後ろで、
お茶の準備をしながら、私は言った。
「あの不動産屋の女の人……由里子さん? 綺麗な人だったねえ。親切だし」
「ああ……」
 守は生返事を返す。住宅情報サイトを検索中らしい。
 紅茶の葉が蒸れるのを待つ間、私は守の背中によりかかり、由里子さんに貰った名刺を眺めた。
「あんなに綺麗な人だったら、やっぱ結婚とかしてるのかな? それにこの……取引主任?
主任とかつくっていうのは、それなりに偉い人なんだよね?」
「宅建主任だろ? 不動産取引の資格だよ。
それを持った人じゃないと、土地や住宅の売買取引や、賃貸の契約なんかもできない」
「ふうん」
 よくわからないので、今度は私が生返事をした。

 初めて顔を合わせた時から、私は高橋由里子に対して、好印象を抱いていた。

 大人になってから、私は不用意に他人の心を読まないように、いつも“意識のアンテナ”は畳んでいたけれど、
それでも、やっぱり人間の持っている雰囲気――善人か悪人か、どんな心を持って生きている人なのか、
なんてことは、アンテナを広げなくてもよく伝わった。
 だから私って、大勢の人間を見てきた熟練の占い師とか、ベテランの鬼刑事ぐらい、
「人を見る眼」だけはあるんじゃないかと自負している。

 そんな私が、出逢っていきなり好印象を持てる相手なんて、なかなか居ない、本当に貴重な存在なのだ。
 今までの人生において、私が初めから強い好意を抱けた相手といえば、
その馬鹿正直さと、呆れるくらいの真っ直ぐさを丸出しにして私と接した、守だけだ。
 今までにも、由里子さんと似たような、「優しげで落ち着いた大人の女性」というものに、
いく度か遭遇したことはあるけど、みんなまがい物だった。
 大体は、優しそうな態度の裏に強烈な底意地の悪さを隠し持ち、大人の分別を装って心を武装しているか、
でなければ、世間体や男受けといったものを意識して、優しい女性を上辺だけ演じているに過ぎなかった。

 でも、由里子さんのあの穏やかな優しさは、本物であるように思えた。
 由里子さんの中には、何か確固としたものがあり、心の支えとなっている。
 その支えが彼女を強くし、結果的に、人に対する優しさにも繋がっている。
 彼女の雰囲気から、私はそんなものを感じ取った。
 その、「確固としたもの」の内容まではわからなかった。
 それが思想なのか、宗教なのか、あるいはもっと単純に、心から愛する誰かなのか。
 もしも、その対象が人であるのなら、それは彼女の子供なんじゃないかと、私は踏んでいた。
 彼女の意識からは、強い義務感、責任感を秘めている様子も伺えたからだ。
 それは、初めての仕事に対する意欲といったものなんかより、もっと、ずっと根深い、
彼女の本質に近い場所にあるものだ。

 私の意識の深い部分で、私を支えているのは守の存在だったけど、私は由里子さんのように強くはない。
 それは、私が守に頼ってしまっている部分が多いからだと思う。
322月下奇人〜epilogue その3 2/5 ◆SHiBIToCCU :2011/10/02(日) 22:37:54.58 ID:wZpJ2PRo
 立派な会社に勤め、好きな仕事に就いてばりばり働いている守は、社会的にも経済的にも、私より立場が上だったし、
セックスだって、未経験者だった私は、どうしたって受動的になりがちから、
結果二人の間では、何事においても守がイニシアチブを取るのが自然で、当たり前の成り行きになっていた。
 私はそのことに全く不満はないし、不都合や不自由を感じることもない。
 私が見る限り、守も、万事において私をリードするということが負担になっている様子はないから、これはこれでいいのだとは思う。

 でもやっぱり、自分の存在が、他の誰かの存在に寄りかかって、頼りきりになってしまうということに、
ささやかながらも不安がない訳ではなかった。
 今までの人生を、誰にも頼らず、完全に自立して生きてきただけに、
余計に不安を感じてしまうのかも知れなかった。
 もしも明日、急に守が居なくなっちゃったりしたら、私はどうなってしまうのかって、
意味もなく考えて怖ろしくなったりもするし。

 そんな、まあ悩みというほどでもないけれど、ちょっとした贅沢な不安を近頃意識し出していた私に取って、
私と違い、何ものかの支えによって、安定した強さと優しさを獲得している由里子さんの自我の有様は、
強い憧憬を引き起こすのに、充分なものだった。

「私も……何か資格を取ってちゃんとした仕事に就けば、由里子さんみたいになれるのかなあ?」
 寄りかかった守の背中に体重をかけると、守はちょっとだけ振り向いた。
「資格なら、お前もう持ってるじゃないか。ほら例の、船舶無線通信士ってやつ」
「あれねえ……でも船に乗る仕事なんか始めたら、私、守とずっと一緒に居られなくなっちゃう。
困るでしょ? それは」
「うん、困る」
 守は大きく頷いて見せる。
 人との接触を極力持たないで生きていくためにと思い、高校卒業と同時に取った資格だったけど、
守と一緒に暮らしている今、守と過ごす時間が皆無になるような仕事に就くのは無意味だ。
 守のそばに居ながらにしてできる仕事って、何があるだろう? 私にできる範囲内で……。

「なんだよ、キャリアウーマンにでもなりたいって言うのか? おれを見捨てるつもりなのかよ」
 突然守は身を翻し、私の躰を押し倒した。
 カーペットのクッションを枕に、私は守の下敷きになって寝転がった。
「なによお。そんなこと言ってないじゃん。ただ、ああいう綺麗な格好いい女の人って、
羨ましいなって思っただけよ」
「お前も充分、綺麗で格好いいよ」
 守は眼鏡をテーブルに置き、私の唇に、唇を被せた。
 私の舌に絡みつく守の舌は、さっきレストランで食べた、ハンバーグドリアの味と匂いが、微かにした。
 なら私の舌は、カルボナーラの味がしてるってことか。

 お互いが食べたものの味を交換しているかのようなキスを交わしながら、
 私達は、服の上からお互いの躰をまさぐり合った。
 そろそろ夕方とはいえ、まだまだ明るい時間だから、いきなり服を脱いで裸になるのは気恥ずかしいからだ。
 でも、そんなためらいみたいなもんは、興奮が高まってしまえばなくなってしまうのが常で、
現に今、肉っぽいキスに頭がぼおっとなった私は、すでにもう、恥ずかしさなんてなくなってしまっていた。
 カットソーをまくられ、ブラジャーごと上にずりあげられても……
デニムの前を開けられて、パンティーに手を突っ込まれても、抵抗感はないし、抵抗もできない。
323月下奇人〜epilogue その3 3/5 ◆SHiBIToCCU :2011/10/02(日) 22:38:33.98 ID:wZpJ2PRo
「今は……大丈夫なのかなあ……?」
 ゆうべのことがあるから、ちょっと気にしてそんなことを言うけど、
仮に、お隣さんが部屋に居るのだとしても、今さらやめる気なんてない。
 守だって、私とおんなじ気持ちになっていた。
 そりゃあそうだ。
 ゆうべ、守は私との週末、一晩中セックスをして過ごすつもりで、
一晩に何回セックスできるか挑戦しようなんて考えていて、
そんな守の思考を、私は彼が帰って来るかなり前から読んでいて、
それで私もその気になって、あそこを熱く火照らせていて、
それで、いきなりあんな物凄い格好でされちゃって、
始まりからこれじゃあ、私おかしくなっちゃうよ、なんて困りながらも、
あそこのお肉をぴくぴくさせて、濡らして期待してたところを邪魔されちゃって、
中途半端なまま、もうどうにかなりそうだったから、それが今、一気に爆発しちゃって、
私、私もう、だめ、だめになっちゃう、やだ、クリトリスと膣の入口弄くられるだけで、
もう気持ち良過ぎて来ちゃいそう。いく、もういく、ああだめ、いく、いく、いく……。

「うっ……うぅうんっ!」
 着ているものを上下にずらし、胴体の部分だけを露出させた格好で、私はいっちゃってた。
 明るい時間に、中途半端に服着たまんまでされるのって、逆に卑猥で妙に興奮してしまった。
「いくの早いな。ちょっと触っただけなのに」
 私が、いった時にあそこから垂れ流したお汁を二本の指に絡みつかせ、守は笑った。
 その指先をまとめて伸ばし、私の口に捻じ込んだ。
「むっ? んんん……」
 酸っぱいような、しょっぱいような、なんともいえない味に、私は思わず顔をしかめた。
 やだなあもう。
 自分のなんて舐めたくないってのに、守ってば、すぐこんなことしたがるんだから。
 むかついて、指の先をちょこっとだけ噛んでやる。
 きりきりと歯を立てながら、口の端でにっと笑うと、守は私の口から指を引き抜いて、
自分のジーンズを脱ぎ出した。
「郁子、こっちに尻向けろよ」
 私は、守に習って下のデニムとパンツだけを脱ぎ、躰を伏せて、お尻を高くあげた。

 守は、私の大きなお尻に対し、結構な執着心を抱いていた。
 でっかいばかりで、何の役にも立たないと思っていたこのお尻だけど、
守がそれなりにセックスアピールを感じてくれているなら、それはそれでいいものなんだろう。
 おかげで私も、いまいち好きではなかった自分のお尻のことを、少しはいいと思えるようになっていた。
「守、早くぅ……」
 四つん這いのこの姿勢で、肩越しに振り返ってお尻を振ると、守の眼の色が変わる。
 意識の色が、ショッキングピンクに染まる。
 それを視て、感じ取るのが私は好きだ。
 床の上、下半身だけ裸になって、犬ころみたいな格好で躰を繋ぎ合わせることに、
根が生真面目で潔癖な守が、軽い罪悪感に襲われているというのにも、なんだかぞくぞくさせられた。

 こんな風に、彼の意識を躰で読み取りながら、彼と快楽を共有できるっていうのは、
心を読む能力を持った女の特権なのかもって思う。
 行為を始めて、充血して潤んだ粘膜を擦り合わせている間にも、自分の感じている快感とは違う、守の快感――
温かくてやたらにぐにゃぐにゃ蠢く私の中で、扱かれて締められている感覚とか、
わたしがどんどん濡れてきて、出し挿れのたんびに掻き出される体液が、下にぶらさがってる袋に垂れて、
ぬるぬるしてくる感じとか。
324月下奇人〜epilogue その3 4/5 ◆SHiBIToCCU :2011/10/02(日) 22:39:12.67 ID:wZpJ2PRo
 意識のアンテナをちょっと広げれば、そんなのまで一緒に捉えて味わうことができるのだから、
こんなに凄いことはない。

 だから私、守がいきそうに気持ちよくなると、決まって一緒に気持ち良さが増しちゃって、
自分のあそこまでがつられていきそうになって、そして結局は、いってしまうんだ。
 私がたいていの場合、守のいく直前か直後、ほとんど前後するようにいってしまうのは、そういった訳だった。
守の快感に、躰ごと感情移入してしまうと、どうしてもそうなってしまうのだ。

 かなり調子のいい時には、守の快感と自分の快感をシンクロさせて、
絶頂のタイミングを完全に一致させてしまえることすらあった。
 ただしその場合、守の絶頂感をこの身で味わうことはできない。
 私自身絶頂を迎えている時に、守の絶頂の快感までも受け入れるのは、無理だった。
 やってやれないことはないんだろうけど、二つの種類の異なった絶頂感を同時に感じてしまうと、
脳の許容量を越えてしまうというか……
実際、それが起こりそうになると、私はほとんど脊髄反射で、守の方の感覚を、
意識から追いやってしまうものだった。
 一種の自衛本能なんだと思う。
 二人分の絶頂を同時に感じたら、きっと私の脳みそは壊れて、狂うか廃人になるか、
最悪の場合、死んじゃうか。
 まあ、きっとそんなところなんだと、自分なりに分析していた。

 死に至るほどの快楽。
 なんとも甘美で誘惑的な響きだけれど、せっかく守と幸せに暮らし始めたばかりである今、
まだ死にたくはない。

 でも、幸いに、というか、今回のところは、そんな心配はなさそうだった。
 さっきから守は、私の腰をがちっと両手でホールドしつつ、お尻のお肉に股間をぱんぱん、深くしたり浅くしたり、たまに、下からすくうように突きあげたり。
 ゆうべの、逆さに引っくり返された時ほどではないけど、
この後ろからの体勢って、あそこの奥の弱い部分によく当たるから、
堪らなくなってお尻の穴までひくひくしちゃうものの、
結構慣れた体位でもあるから、どうしようもなく、快感を強制的に高められちゃうってこともなくて、
わりと自分でコントロールできちゃう。
 ゆとりがあるのをいいことに、私の意識は、突きまくられる自分の中の快感と、
突きまくってる守の快感を、行ったり来たり。
 お馴染のプレイを愉しむ時には、こうした方が面白い。

 やがて、守の快感は、おちんちんがあそこに出挿りするたびごとに、
私の開いたり窄まったりする、お尻の穴のいやらしい蠢きを前に昂ぶり、
もうそろそろ、いつ出しても構わないって段階にまでたどり着いてしまった。
 私は――気持ちいいけど、まだいくには間がある感じ。
 でもいいんだ。私、別にいくことにはこだわらないし。
 今回は、守に愉しませてあげられれば、それで……。
 そんな風に、広い心で守の快楽に意識を集中させていた私の耳元に、
躰を折って唇を寄せてきた守は、とんでもないことを囁いた。
「なあ、さっきの由里子さん、さ。おれ達が家に帰るなり、こんなことやってるって知ったら、何て思うのかな?」

 由里子さんの、清楚で落ち着いた佇まいが脳裏を過ぎる。
 それと同時に、破廉恥な私達の姿が。
 イメージの中の私と守は、あの不動産屋のカウンターに乗っかって「交尾」をしている。
325月下奇人〜epilogue その3 5/5 ◆SHiBIToCCU :2011/10/02(日) 22:40:08.94 ID:wZpJ2PRo
 他の従業員や客、それに、由里子さんの眼の前で。
 お尻を振ってよがっている私の眼の前、由里子さんの涼やかな眼が、驚きに見開かれ――。

「あ、あ……ううぅんっ」
 淫猥なイメージは、私の劣情に火をつけて煽り立て、自分でも思いもよらない場所に、
スイッチを入れてしまった。
 嫌だ。
 恥ずかしい。
 そんな気持ちが、異様な快感を私の奥に生じさせ、私は、私の穴ぼこは、
抗う間もなく、守の幹を噛み締めて、噛み締めたところから、甘く蕩けて達してしまった。
 膣の穴の震えに合わせ、もごもご蠢くお尻の穴の濡れ光る様を見ながら、守の快楽も破裂して、
私の奥を、熱くて濁ったものでいっぱいにした。

 こんなに酷い不意打ちって、あるだろうか?
 しつこく引き続く、気持ちのいい引き攣れに耐え切れず、背中に乗っかった守ごと、
ぺしゃんとカーペットの床に潰れ、私は狂おしく肩で息をした。
 どろりとあそこからから溢れ出す余韻の中で、今のイメージを思い返した。
 あれは多分、私自身のイメージじゃない。
 きっと守が想起したものだ。
 物凄く強く想起したから、守の快感を意識でたどっていた私は、避ける間もなく、
そのイメージを捉えてしまった……。

「守……あんたねえ」
 ゆるゆると快感の渦が治まったところで、私は守を振り返って、じろりと睨んだ。
「何? おれ、何か変なこと言ったっけ?」
 守は、しれっと言い放つと、さっさと私の上から降り、ティッシュの箱を引き寄せて、おちんちんを拭いた。
 にやけた顔しちゃって。なんだか無性に腹が立ち、私は彼から眼を逸らした。

 これはそもそも、私が悪かったことなのかも知れない。
 由里子さんのことをいやに気にして、由里子さんのことばかり喋っていたから、
守も、いっちょからかってやろうって気になったんだと思う。
 それでも私は、由里子さんの崇高な意識のあり方を理解すらしていない守に、
あんな風に由里子さんを穢されたことが、どうにも許しがたい気がした。
 たまたま出逢って、ちょっと会話をしただけの不動産屋の人に、こうも肩入れしてしまう、
自分の気持ちの不条理さはわかってた。
 行きずりの人をセックスのスパイスに使われたくらいのことで、世界で一番大好きな守に、
こうも敵意を抱いてしまうだなんて。
 だけど、私がこうして、本気でむかついていることは事実なんだからしょうがない。

 何も気づかず、自分のあそこのぬめりを始末し終えた守が、私の方にティッシュの箱を放って寄越したけれど、
わたしはそれを、守に投げ返した。
 力任せにティッシュの箱を投げつけられた守は、きょとんとした顔で私を見つめた。
「……いい。私はシャワーで洗ってくるから」
 不貞腐れてそう言うと、私はその場で、胸の上までまくりあげてたカットソーとブラジャーを脱ぎ捨て、
脇目も振らずにバスルームに向かって行った。

【続く】
326名無しさん@ピンキー:2011/10/03(月) 18:04:46.66 ID:lH4V7JY8
GJ!
327名無しさん@ピンキー:2011/10/03(月) 22:12:41.52 ID:zLJ5A/Wh
続きが気になる
328名無しさん@ピンキー:2011/10/04(火) 10:23:44.78 ID:2vI+sPlT
その能力を効率的に生かす職業について真面目に考えてしまった
やっぱ接客業かなあ。GJ。
329月下奇人〜epilogue その4 1/8  ◆SHiBIToCCU :2011/11/03(木) 21:35:58.85 ID:p10eu2tN
 女心は難解だ。
 郁子が、理由もないのに突然むくれて、つんけんした態度を取ったりした時に、いつでもぼくはそう思う。

 後背位で一発姦り終えた後、何が気に入らなかったのか、郁子は急に不機嫌になって黙り込んでしまった。
 郁子がシャワーからあがり、続けざまにぼくもシャワーを浴びて、いい加減暗くなった部屋に明かりを灯した後になっても、彼女のご機嫌は直らなかった。

 淹れたまんまで放置したため、冷めた上に、抽出が過ぎてどす黒くなった紅茶を無理やり飲まされそうになって、
飲めないと文句を言ったら、自分でお湯足して飲めばいいでしょと怒鳴りつけられ、
さすがにこちらもかちんときて、お前ふざけんなと始まって、一触即発の険悪なムードになったのだけど、
なんだかんだで気づいた時にはいつものごとく、ベッドの中で絶頂の余韻と共に、汗ばんだ肌をぴったり押しつけ合っていて、
キスしたり、髪を撫でたりしている合間に、なんとなくまた、湿り気を残したまんまの場所に埋没させて、
のんべんだらりと腰を揺すっているうちに、次第次第にお互い本気になってきて、
最終的には、物音を気にしつつも、結構な力で恥骨同士を擦り合わせ、堪らない快楽の中で息せき切って絶頂を迎え、
ぐったりとまた余韻に揺蕩う、といったような具合で、なし崩しのまま、ぼくらは仲直りをしてしまうのだった。

 その翌日は、ぼくがネットで当たりをつけた物件を、一緒に見に行ってみないかと誘ってみたのだが、
なぜか郁子はあまり乗り気ではなく、今日はなんだかかったるいと言ってベッドからさえ出ようとしないで、
まあ、かくいうぼくも、働きづめで疲れが溜まっていたこともあり、二人揃って裸でごろごろ、怠惰な休日を貪り続けて日が暮れて、
その次の休日も同じような流れで、結局何も実のあることはしないまま、気だるい連休明けを迎えることとなってしまった。

 雑誌編集部の朝は遅い。
 だから夜も遅い、と言いたいところではあるが、校了の迫った忙しい時期でなければ、それほど会社に居残っている必要はなく、
この日も、昼ちょっと前に出社して雑務を片づけた後、掲載写真の撮影の立会いで外のスタジオに出向いてから直帰と決め込み、
夕焼け色に暮れなずむ住宅街を、郁子の待つ我が家へと急いでいるわけだった。
 それにしても、こんなに早い時間に帰るのは、随分と久しぶりのことだ。
 今日は確か、郁子もバイトを入れていなかったはずだ。
 家に帰って、二人でゆっくりと晩飯を食べよう。
 一緒に買い物に出かけて――ちょっといい酒を買って飲むのもいいな。
 差しつ差されつ、誰にも遠慮することなく、寄り添い合って……。

 そんな愉しい予定を脳内で構築しつつ、夕日に照らされたアパートの鉄階段をあがって、
自分の部屋にたどり着き、ドアを開けた。
 玄関に入ったとたん、嗅ぎ慣れない匂いが鼻を衝いた。
 脂粉の香り。甘ったるい香料と入り混じったようなそれは、郁子とは違う、もっと、大人の女性の発する香りだった。

「あれ、守?」
 驚いたような郁子の声。部屋のローテーブル越しにこちらを見る郁子の手前、玄関に背中を向けて座っていた人物が、
こちらを振り向いた。
「あ、どうもお邪魔してます」
 物静かな声と共に会釈をしたその人物は、高橋由里子だった。
「えっ……あ、い、いらっしゃい」
 部屋の仕切りの前に立ち、ぼくもおずおずと頭をさげ返した。
 頭の中はクエスチョンマークだらけだ。
 一昨日不動産屋で会ったばかりの彼女が、なぜこの部屋に?
330月下奇人〜epilogue その4 1/8  ◆SHiBIToCCU :2011/11/03(木) 21:36:38.87 ID:p10eu2tN
「守、どうしたってのよ? 今日はやけに早いじゃん」
「あ、ああ、出先から直帰してきたんだけど……」
 ぼくは、その場に突っ立ったままで郁子に返事を返し、彼女と、高橋由里子の顔を、交互に見遣った。
 ローテーブルに眼を移せば、高橋由里子の手土産と思しき焼き菓子の皿と、もう空になった紅茶のカップが二つ。
 揃ってぼくを見あげている彼女達二人の空気は親密で、
あたかも、旧来の親友同士か、姉妹でもあるかのような印象だった。

「あら、もうこんな時間なのね。すっかり長居しちゃった」
 高橋由里子は、手首を返して腕時計を見ると、慌てた様子で腰をあげた。
「ああ由里子さん。晩御飯、良かったら一緒にどうですか?」
 そそくさと部屋を辞そうとしている高橋由里子に向かい、郁子は名残惜しげに声をかける。
 高橋由里子は、控えめに微笑んで首を左右に振った。
「子供を保育園に迎えに行かなきゃなのよ」
「あー、そっか。残念だなあ」
 郁子は、本当に残念そうな顔をしている。
 郁子と高橋由里子は、ぼくの横をすり抜けて玄関に向かった。
 高橋由里子は優雅な仕草でパンプスを履くと、ぼくと郁子に向き直った。
「それじゃあ、今日お渡しした物件の方、よろしくご検討下さい。一樹さんもご一緒に、ね」
 台詞の後半部分はぼくの顔を見ながら言った。
 郁子は、ぼくに代わって「わかりました」と勝手に返事をした。
「また、絶対遊びに来て下さいね。今度はミクちゃんも一緒に」
 郁子は、アパートを後にする由里子さんの後を追って表に出て、高橋由里子の姿が見えなくなるまで手を振った。

「いったい、何だってんだ?」
 高橋由里子が去った後、ようやく部屋に落ち着いたぼくは、郁子に問うた。
「あの不動産屋さんが、何だってここに?」
「由里子さん? さっき言ってたでしょ。新しい物件持って来てくれたのよ。ほら、どーお?」
 郁子は、テーブルの隅に折り畳んであった何枚かのパンフレットを広げて見せた。
 それら全ては、ぼくが希望しているこの町のものではなかった。
「守の希望通りだとさ、この界隈はやっぱ厳しいらしくて。で、いっそ同じ沿線内にまで範囲を広げたらどうかって……
会社までの距離は、ちょっとだけ遠くなっちゃうけどさ。それさえ我慢できれば、そっちの方がいい部屋多いらしいよ」
 なるほど、高橋由里子の持って来た部屋はどれも、この町内ではない、という点だけを除けば、
ぼくの希望に全くどんぴしゃりではあった。
 けど、今問題にしているのはそこじゃあない。
「このパンフを見せるために、あの人はわざわざここまで出向いて来たってのか?」
「由里子さんの住んでるアパートってね、ここのすぐ近くなんだって。それで、会社の帰りに寄ってくれたんだよ。
ほら。こんなお土産まで貰っちゃった」
 郁子は、近所の洋菓子屋の箱の中から、ぼくのために残しておいたのであろう、
でかいクッキーとカップケーキをテーブルに出した。
「ご飯、今から作るから、繋ぎにそれでも食べておいて」
「郁子」
 キッチンで米を研ぎ始めた郁子の後姿にそう呼びかけては見たものの、その先の言葉は続かなかった。
 別に大したことじゃないのだ。
 郁子が、たまたま出逢った親切な大人の女性と仲良くなった。
 ただそれだけのことなんだから。
331月下奇人〜epilogue その4 1/8  ◆SHiBIToCCU :2011/11/03(木) 21:37:13.00 ID:p10eu2tN
 だけど……だとすれば、この胸騒ぎは何なのだろう?
 生まれ持った特殊能力ゆえに、子供の頃から他者と打ち解けることができずにいたのだという郁子。
 これまで、友達らしい友達も作らず、ぼくと出逢うまでは、男性と交際することなど考えもしなかったという郁子。
 そんな郁子が、出逢って間もない、あんなに年の離れた相手に、ああもあっさりと親しみの情を示すだなんて。

(馬鹿だな。何考えてんだよ、おれ)
 ぼくは口の端を軽く動かし、意味もない不安に苛まれているぼく自身を笑った。
 相手が男というんならまだしも、高橋由里子は女性だ。それも、結構な歳の。
 しかも、さっき帰り際の郁子との会話から察するに、結婚して子供までいるんじゃないか。
 そうは考えても、郁子がちゃっちゃとこしらえた麻婆豆腐と中華風の野菜炒めに箸をつけながら、
ぼくの胸には、言い知れぬ違和感というか、わだかまりのようなものが留まって消えなかった。
 それは食事の最中に、いつものように横に寄り添って座っている郁子の話す内容が、
高橋由里子のことに終始していたというのも、その一因になっていた。

「――でね、その由里子さんの娘さんっていうのがさ、また可愛いのよ。
携帯のムービーとか写メとか見せて貰っただけなんだけどね、
ほんとマジヤバイってくらい。
あんまし可愛かったから、私、写メ一つ分けて貰っちゃった。ほら」
 食事が一段落すると、郁子は携帯を取り出してぼくに見せた。
 幼稚園児くらいの、フリルのついた黄色い水着を着た女の子が、
アパートのベランダらしき場所に置いたビニールプールの中から、弾けるような笑顔でこちらを見あげている画像だった。
 まあ、確かに可愛いことは可愛い。
「ミクちゃんっていうのよ。漢字で『未来』って書いてミク。名前も可愛いよねー」
 郁子は、まるで自分の親戚の子でも自慢するかのように、でれでれと相好を崩しながら写メを見せびらかす。
332月下奇人〜epilogue その4 4/8  ◆SHiBIToCCU :2011/11/03(木) 21:39:19.00 ID:p10eu2tN
 ぼくは半ば呆れた気持ちになりながら、郁子の頭に手を置き、柔らかな髪の毛をぐしゃぐしゃと掻き廻した。
「こんなちびっ子なんかより、おれにはお前の方が可愛いよ」
「やあん、ちょっ、髪の毛めちゃくちゃになっちゃうでしょっ」
 郁子が肩をぶつけてきたので、ぼくはその肩を捕まえて、そのまま胸に引き寄せた。
 郁子の顔を仰向かせ、数時間ぶりのキスを交わす。
「だめ……先に、食器の後片づけをしないと」
 舌を挿し入れたり、挿し入れられたりをしばらく繰り返した後、すっかり濡れてしまった声音で郁子は言った。
「そうだな。おれも、シャワー浴びて来たいし」
 未練がましく郁子の胸の膨らみを服の上から撫でてから、ぼくは立ちあがって服を脱ぎ、バスルームに向かった。
 最大限に出したシャワーを頭から浴びながら、甘勃ちしたペニスをボディーシャンプーでしゃかしゃか洗っていると、
バスルームの戸が開いて郁子が入って来た。
 郁子は、服を脱いで全裸になっていた。

「……後片づけ、もう済んだのか?」
「漬けておくからいい。だから……ね?」
 郁子は、狭苦しい浴槽の縁をまたいで中に入った。
 お湯がじゃんじゃん出ている下で、火照ったぼくの肌に、郁子の柔らかな肌は、いささかひんやりとした感触を与えた。
 郁子は、窮屈な浴槽の中で無理に身を屈めると、ぼくのペニスに手を滑らせて泡を丁寧に洗い流し、
赤く充血したそれを、口に含んだ。
「あっ、ここでか? でも……」
 ぼくは湯気の中、浴槽の中に、ぎゅうぎゅうに詰まった大きな白いお尻を見おろしつつ、言い淀んだ。
 この狭い浴槽の中では、二人で横になることもできないし、浴槽の縁に腰かけることも難しいから、座位もできない。
 そんなことは、とうの昔に検証済みだったはずだ。
 でも、さすがにそこは、ぼくの彼女である郁子のことで、抜かりはないようだった。
「へへ、大丈夫だよ。ほら、こうして立ったままですればさ」
 郁子は壁際に立ち、片足を浴槽の縁に乗せて、ぼくに両腕を差し出した。
 開かれた腿の間、黒い恥毛の中から現れた紅色の粘膜は、お湯に濡れてぱっくりと開き、
割れ目の頂点から顔を覗かせているクリトリスが、桃色の輝きを放っていてどこか挑発的だった。
「立ったままでか。足を滑らせやしないかな?」
「転ばないように、しっかりと抱いて」
 ご要望通りに、ぼくは郁子の腰のくびれをしっかりと両手で支え、膝を曲げて足を踏ん張り、
郁子の下腹部に下腹部を押しつけて、割れ目の中に勃起したものを押し挿れようと、腰を上下に揺り動かした。
 ぼくとしては、強張りきったペニスの力のみで挿入しようとがんばったのだけど、その手間取る様子に焦れたのか、
郁子はぼくのを指先で摘み、もう一方の指でもって、寛げた陰唇の内部に導いた。
 膣口に亀頭を押し当てた感じからは、熱してはいてもそれほど濡れた様子がなく、
ぼくはいったん躰を放して、そこを弄くってから仕切りなおそうかと考えたほどだったが、
しきりに腰を突き出して、ペニスをせがむ郁子の勢いに負ける形でずぶずぶとめり込ませてゆくと、
胎内はとんでもなく熱く、体液で溢れ返っていたので驚いた。

「はあ、気持ちいい」
 全てを完全に嵌めてしまうと、郁子は深々とため息をついて、ぼくの根っこを喰い締めた。
333月下奇人〜epilogue その4 5/8  ◆SHiBIToCCU :2011/11/03(木) 21:40:14.35 ID:p10eu2tN
 背中にシャワーのお湯を引っ被りながら、おっかなびっくり腰を使い始めたぼくも、暫く経つとこの体勢と動作に慣れ、
郁子の内部のぬめるおうとつや、ざらついた無数の襞、それに、くいくいと良く締まる入り口付近の感触に、耽溺するゆとりも生まれた。
 郁子はといえば、もう始めからフルスロットル状態。
 湯気とシャワーのしぶきの中、しきりに喘ぎ、身悶えながら不自由な肢体を巧みにくねらせ、
ぼくのペニスを思うさま味わい尽くさんと、貪欲に膣の穴を蠢かせた。
 ぼくらは、繋がり合った姿勢を安定させるため、それぞれに足を踏ん張り、両手で互いの躰を抱き締め合っていたから、
手を使って相手の気持ちのいい場所をまさぐり合うことは叶わなかったけれど、
その代わりに、これでもかと躰を密着させて、濡れて温もった肌と肌とで互いを愛撫し合った。
 お湯の流れ伝う首筋と首筋を交差させて擦りつけ、水気を含んだ髪の先に唇をつける。
 郁子の乳房は、ふっくらと充実した感触でぼくのみぞおちを刺激しているし、
彼女の方の開いた内腿だって、腰を突き寄せ合うたびごとに打ち当たるぼくの腰骨に、
そう悪くはない感覚を受けているはずだった。

 そして、したたるほどに淫らな汁を漏らし出した、互いの粘膜の擦れ合いが快調になり、
さらに、その摩擦の快感が最高潮に達してしまうまでに、そう時間はかからなかった。
「ああっ、守、私、もう……もう!」
「お、おれもだ郁子……もっと、もっとまんこ締めつけて……!」
 ぼくに先駆けて達した郁子の、がくがくと震えている躰にしがみつくようにして、
ぼくも、欲情の迸りを、郁子の深い場所に思い切りよくぶちまけた。
 全身を駆け巡った血潮が躰を熱くさせ、汗も噴き出たはずだけど、それは、出しっ放しにしたシャワーですぐに洗い流された。
 無論、ぼくと郁子が性器の奥から射出した、どろどろに撹拌されて濁りきった液体も、全部。

 こうやって、短い時間で欲望に片をつけはしたものの、窮屈な上に足元が悪い場所でのセックスは、結構堪えた。
 ぼくはひとまず、シャワーを郁子に譲ることにして、浴槽の脇にある便器に腰をおろした。
「あー、ちょっと股関節がぎくしゃくするかも」
 ずっと片足を浴槽の縁に乗っけた状態をキープし続けていた郁子も、脚の付け根の内側をぐりぐりと揉んで、
苦笑いをしている。
 ぼくは、浴槽と便器の間に挟まれた洗面台に頬杖をつき、そんな郁子の入浴姿をぼんやり眺めた。
「やっぱり、もうちょっとお風呂場の広い部屋に住みたいねえ」
「ああ」
 郁子の肩から、腰のくびれを通って腰の膨らみを伝い落ちてゆくシャンプーの泡を眼で追いつつ、
ぼくは気の抜けた返事をした。
 郁子の言うように、適度な広さのある風呂場でならもっと楽な姿勢で事に及べるし、
こんなにくたびれないで済むことだろうとは思う。
 けれど、こんな風に精根尽き果てた気持ちになりながら、シャワーを浴びてる郁子を、
至近距離から眺めているのも悪くはない。
 ぼくは今、そんな心境でもあった。

 湯気と熱気が篭ったバスルームの浴槽で、郁子の若い肌はシャワーの飛沫を弾き飛ばし、
魅力的なプロポーションと共に、瑞々しい健康美をこれでもかとぼくに見せつけてくる。
 まあもっとも、真っ白な湯気が視界を遮っている上に、眼鏡を装着していないので、
ぼくの眼に映る郁子の艶姿は、非常に薄らぼやけた、ダビングを重ねた昔のエロビデオのような、
天然修正処理状態に陥ってしまってはいたが。
334月下奇人〜epilogue その4 6/8  ◆SHiBIToCCU :2011/11/03(木) 21:40:56.85 ID:p10eu2tN
 やがて、髪と躰を洗い終えた郁子は、ぼくに向き直った。シャワーは出したままだ。
「お待たせ。守もすぐに入るんでしょう?」
 濡れた恥毛の先からお湯のしずくをしたたらせながら、郁子は浴槽の外に出た。
 一瞬、温かく濡れた二つのおっぱいが、ボディシャンプーのいい匂いのする湯気をまとって、鼻先に突きつけられた。
 もはやお馴染みとなっている胸の痣を、間近に見た。
 その痣は、いつもより鮮やかな赤色をしているように見えた。

「なあ郁子、お前、ちょっとこれ、薄くなったんじゃないのか?」
 ぼくは、郁子の胸の痣を指先でちょんちょんと突付いて言った。
 この胸の痣は、形状も特殊でかなり眼につくこともあり、郁子最大のコンプレックスの源でもあったので、
ぼくはいつも、痣については言及しないよう注意していた。
 言及しないのみならず、念頭にも置かないようにしていた。
 なにしろ郁子には、精神感応能力があるのだ。
 下手に痣のことを考えたりして、それが郁子に読まれてしまった場合、彼女の心を、
無為に傷つけることになってしまう。
 今、この痣のことを口にしてしまったのは、とっさに見えたそれが、
明らかに以前とは変わっているように思えたからだった。

 とはいうものの、不確かな印象だけで不用意なことを言ってしまった気もして、
心の中でいささかばかりの後悔も覚えたのだが、そんなぼくの心配に相違して、郁子はぱっと表情を輝かせた。
「ほんと!? 守にもそう見える?」
 郁子は、便器に腰かけたぼくの両肩に腕を廻し、乳房で顔面を挟むようにしながら、声を弾ませている。
 ぼくは、ちょっと面食らいながらも、彼女に微笑み返した。
「ああ。なんか、前見た時より色が明るくなってるっていうかさ。
眼鏡してないから、はっきりしたことは言えないけど……
お前、もしかして、これに何かしてたの?」
 痣に目線を落としつつそう問いかけるが、郁子は、「んふふ〜」と変な笑い方をして答えない。
「なんなんだよぉ」
 狭い空間の中で、腕をちぢこめておっぱいの先っちょを摘んでやると、
郁子は派手な嬌声をバスルームいっぱいに響かせてから、後ろ手にドアを開いて出て行ってしまった。

 ぼくは、やれやれと肩をすくめて立ちあがると、もうもうと湯気を立て続けているシャワーの下に戻った。
 あの様子だと郁子のやつ、ぼくに内緒で痣の治療を続けていたに違いない。
 薬でも買ったんだろうか?
 あの痣を、郁子自身が病院に診せに行くとは考えづらいし。
 はっきり言って、ぼくの方はもう、痣のことなんて本当に気にしていないのだから、
郁子も気にしないようになってくれればいいのに、というのが正直な気持ちだった。
 変にこだわって思い悩んだあげくに、胡散臭い薬やら美容法やらに大枚はたいたりしないかと、そっちの方が心配だ。

 シャワーを終えてバスルームから出ると、郁子はパンツ一丁に胸まであるエプロンという、
新妻コスプレじみた出で立ちで、洗い終えた食器を戸棚に片づけている最中だった。
 ぼくは、傍らの椅子の背に引っかけておいたバスタオルを頭に乗せて、
郁子のパンティーのお尻に手を突っ込んだ。
「やだあ。もう、先に躰拭きなよぉ。びしょびしょじゃないの」
「よく言うよ。そんなエロい格好しちゃって……あからさまに誘ってんじゃん」
 まあ実際問題、郁子もぼくを誘うためにこんな格好をしていた訳ではあるまい。
 ただ、服を着込んでも、どうせこの後またすぐ脱ぐことになるのがわかりきっていて、
でもキッチンに立たなければならないというので、間に合わせ的にエプロンを引っかけただけなのだろう。
335名無しさん@ピンキー:2011/11/03(木) 21:41:20.80 ID:bWOPaXlR
1. 初恋ばれんたいん スペシャル
2. エーベルージュ
3. センチメンタルグラフティ2
4. ONE 〜輝く季節へ〜 茜 小説版、ドラマCDに登場する茜と詩子の幼馴染 城島司のSS
茜 小説版、ドラマCDに登場する茜と詩子の幼馴染 城島司を主人公にして、
中学生時代の里村茜、柚木詩子、南条先生を攻略する OR 城島司ルート、城島司 帰還END(茜以外の
他のヒロインEND後なら大丈夫なのに。)
5. Canvas 百合奈・瑠璃子先輩のSS
6. ファーランド サーガ1、ファーランド サーガ2
ファーランド シリーズ 歴代最高名作 RPG
7. MinDeaD BlooD 〜支配者の為の狂死曲〜
8. Phantom of Inferno
END.11 終わりなき悪夢(帰国end)後 玲二×美緒
9. 銀色-完全版-、朱
『銀色』『朱』に連なる 現代を 背景で 輪廻転生した久世がが通ってる学園に
ラッテが転校生,石切が先生である 石切×久世

SS予定は無いのでしょうか?
336月下奇人〜epilogue その4 7/8  ◆SHiBIToCCU :2011/11/03(木) 21:41:32.67 ID:p10eu2tN
 郁子のやつ、案外ずぼらなところがあるから。
 しかし、そういった経緯はともかくとして、結果的にエロくなってしまっているのは、紛れもない事実だった。
 ぼくは、エロい郁子の、ゴム毬みたいなお尻の肉を鷲掴みにし、撫であげてから、
みっしり詰まったその谷間に指を這わせた。
 尻の毛のざらりとした感触を超えて、最深部にある最もきつい窄まりの、
皺襞の寄り集まった小さな膨らみを、ちょんちょんと突ついた。
「うぅん! 馬鹿ぁ」
 郁子は、お尻を大きく一振りしてぼくの手を引き離そうとした。
 ぼくは、笑いながら逃げる尻を捕まえ、パンティーをお尻の山からずりさげた。

「あん、もう……ほんとにさ、躰だけは拭いて。
風邪でも引いたら困るじゃないの。
それでなくても、ここんところ随分寒くなってんだから」
「ああ。もう、十月なんだもんな」
 そう答えつつも、ぼくは濡れた胸元に郁子を抱き寄せ、彼女のまだ、湿り気を多分に残した洗い髪に顔を寄せた。
 郁子はもう諦めたのか、ぼくの頭からバスタオルを取ると、それでぼくの躰を拭い始めた。
 抱き合うような形でまずは上半身を拭き、それから、床にひざまずいて下半身を拭く。
 そうやって低い姿勢を取られると、ぼくの眼の位置からは、エプロンに詰め込まれた乳房の膨らみがよく見えた。
「守……ベッドに行く?」
 郁子は、自分の眼の前で、むくむく膨らんで天を衝く形となったペニスを見て、
少し頬を赤らめながら、ぼくを見あげた。
ぼくはちょっと迷ったけれど、キッチンに裸エプロンという、
せっかくのお膳立てを無駄にするのももったいないとの考えから、このままここで続けることにした。
「なあ、久しぶりに……飲んでくれる?」
 シンクに尻を乗せるようにして寄りかかって腰を突き出し、ぼくは郁子に頼んでみた。
 郁子は、返事の代わりとばかりにぼくのものにしゃぶりついた。

 郁子は、フェラチオをするのが結構好きなたちのようだった。
 ぼくと初体験を迎えた次の日にはもう、頼みもしないのに、ぼくのものに唇を寄せたのだ。
 珍しいおもちゃのようにぼくのものを玩び、精液を飲むことすらも厭わなかった。
 ぼくは、そんな郁子の態度にいたく感激させられたものだった。
 出したものを飲まれるなんてことは、はっきり言って、生まれて初めての経験だったから。
 今も郁子は、主人にかしずく召使いのごとく、床に両膝をついた姿勢でぼくのものに指を添え、
大きく突き出した舌を、竿から亀頭までいく度も往復させたり、
亀頭の裏側をちろちろと舌先で突っつき、舐り、小刻みに跳ねさせるなどして、
ペニスに対する奉仕に夢中のご様子だった。

 ぼくは、ぼくの反応を確かめる風に、時おり見あげてくる郁子の眼や、いやらしい唇や舌の動きに暫く見入っていたが、
やがて、尻でもたれたシンクの縁を後ろ手に掴んで、顎を反らして大きく喘いだ。
 我ながら少し大げさ過ぎる反応だったが、これぐらい感じて見せた方が、郁子も悦ぶのだ。
 案の定、ぼくの喘ぐ姿に気を良くした郁子は、ぼくのものを口の中にずっぽりとくわえ込み、
睾丸の膨らみを摩りながら、頭を前後に激しく振り動かして、本格的にぼくを射精に至らしめようと、
総力を挙げてフェラチオの動作に熱を入れ出した。
337月下奇人〜epilogue その4 8/8  ◆SHiBIToCCU :2011/11/03(木) 21:42:32.69 ID:p10eu2tN
 窄まった郁子の頬の中、唇の動きで包皮が剥かれ、そこに生温かく濡れた舌が押し当てられる。
 口内の粘膜でぬるぬると擦りあげられる。
 根元の毛際が、鼻息にくすぐられる。
 小さく尖ったむき出しの肩が揺れていた。
 赤らんで、眉間に皺を寄せた真剣な面持ち。
 熱を持ったように濡れた瞳が、ぼくの股間と、顔とを忙しなく行き来している。
 口の粘膜でぎゅっと締めあげられる中、舌先が尖り、裏筋の部分を、素早い動きで舐め擦った。ああ――。
「い、いくっ」
 ぼくは鋭く一声叫ぶと、郁子の濡れた頭を掴んで、股間にぎゅっと押しつけた。
 快楽が怒涛のように腰の内部から溢れ、狭い尿道を駆け抜け、尿道口を押し開いて噴きあがる。
 断続的に射出されるぼくの快楽のしずくを、郁子は喉を鳴らして飲み干した。
「今日のは、ちょっとからい」
 舌舐めずりをした後、郁子はぼくを見あげ、高潮した頬を綻ばせた。

 郁子の淫蕩な表情を一瞥してから、ぼくは壁の時計を見た。
 時刻は、まだ十時になったばかり。物憂い週明けをやり過ごし、まだまだ夜を愉しめるのだと思うと、心は躍った。
 由里子さんに関する曖昧な気がかりなんかは、他の些末事と一緒に、もうすっかりどこかへ追いやられてしまっていた。


【続く】
338 ◆SHiBIToCCU :2011/11/03(木) 21:44:38.08 ID:p10eu2tN
2/8と3/8の通し番号間違えました。すみません。
339名無しさん@ピンキー:2011/11/03(木) 22:49:05.62 ID:06Z+M0M7
投下乙であります! ざっと流し読みするつもりが
なかなか面白くて読み返しちゃったぞ
340女侍と狼 五つ目:2011/12/11(日) 20:54:30.64 ID:4NOi60Kx
女侍と狼。プラス昔の男 五つ目   獣姦注意


 劣勢だった。今回私は一人ではない。味方はかなりの人数で敵は少なかった。
が、相手の中に凄まじい手練れがいた。
 私の担当した場所ではなかったのでちら、と視界の端に見ただけで
自分の仕事に専念していたが、あっという間に味方が減って凄腕は私の目の前にいた。
 笠を深く被っている。通常なら目線を妨げられて不利なはずだが、
男は気配だけでも相手を見るらしい。真向かいに対峙して冷や汗が出た。
 だが、男は打ちかかってこない。不審に思いながら身構えていると、笠の内から声が漏れた。
「………未冬(みふゆ)」
 忘れたはずの名が呼ばれる。刀を握る手が熱くなった。
 そのまま打ち込むが案の定かわされる。
「おい、どうした。もうそいつだけじゃねえのか」
 仲間らしい男が声をかけると、対峙した相手は何のためらいもなくその男を切った。
「な、なんだっ」
「野郎、裏切る気かっ」
 咄嗟に切りかかってくる男たちを瞬時に切り捨て、逃げようとした幾人かもあっさりと始末した。
 相変わらず鬼神の様な剣捌きだ。相手は刀を鞘に納めると私に一歩近づいた。
「近寄るな!」
 叫ぶと少し躊躇して笠を脱いだ。やつれてはいるが昔どおりの整った造作だが、瞳の色は暗い。
「未冬、聞いてくれ、おれは」
「聞かぬ!」
 元よりかなう相手ではない。闇雲に撃ちかかっていってもかすりもしない。
「どうした!無事か!」
 私の側の援軍が一塊になって後方から駆けてくる。彼は傘を拾うと、
暗い一瞥を私に投げてその場を去った。


 かつて兄だった男だ。ただし血のつながりはない。
 私の母は産後の肥立ちが悪く早くに世を去った。赤子を抱えて途方にくれていた父は、
ほぼ同時期に旧友の死を知らされる。幼子を連れ生活に困る彼の妻に、父は相互扶助を申し入れた。
それは上手くいき、二人は次第に相手に情を抱くこととなった。
 地元を離れて都に居を移し開いた道場は繁盛した。父は達人の域に達する剣客だったが、
性格は温和で教え方も上手かった。
 家族仲はよかった。父母は互いの子をも実子として扱い、昔の事情を語ることを先延ばしにした。
一つは兄の剣の才が凄まじかったため、遠慮などさせずに道場を継がせるためだった。
 優れた才や幸福は妬みを呼ぶ。兄は謀られ、実父を殺し母を奪ったものとして私の父を切り、
私を犯した。
 ことを知った母は全ての事情を私たちに打ち明け自害した。
 兄は出奔した。私は道場や屋敷を人に売り、親の菩提を弔ったあとに旅に出た。
341女侍と狼 五つ目:2011/12/11(日) 20:58:01.60 ID:4NOi60Kx


 仕事は終わったがまっすぐ戻る気にはなれず、わざと遠回りして山道に入った。
途端に草むらがもぞもぞと動き、銀狼の姿が現れた。
「目立つ場所は嫌だ。人気のないところならいい」
 つぶやくと狼は驚いたような顔をしたが、すぐに勇んで尻尾を振るとわずかに跡の残る獣道を案内した。
 こんこんと泉のわく山の奥地。木々が重なり合って昼なお暗い。
私は腰を下ろし、やたらと顔をなめる狼の背を撫でてやった。
 横になろうとするとふいに狼が身構えた。低い声で唸っている。
 かさり、と枯葉を踏む音がして彼が現れた。
「聞きたくないといったはずですが………兄上」
 彼は私を見つめた。私も彼を見つめた。狼ーはがねは低く唸り続けている。
「謝りたい、などと言ったら切りますよ」
 兄はほんの少し口の端を緩めた。
「切れるのか?」
「私一人では無理でしょうね。でも、こいつがいます」
 私ははがねの背に手をかけたままだ。
「さすがのあなたも彼にはかなわない」
「狼か。夜道でたまに切ることがあるよ」
「こいつはその辺の普通の狼とは違います。人にたとえたら……そう、あなたのような特別の俊才でしょうね」
「試してみるか」
 兄が鯉口を切った。瞬時に彼らは宙を舞った。
 狼は刃を潜り抜け、相手の足を強く噛んだ。そのため着地が揺らいだ兄を反転した銀狼が強く突き飛ばし、
刀が飛んだ。
 すかさずはがねは腕にも噛み付く。が………加減している。いつもの、敵に対しての容赦ない噛み方とは違う。
今は刀を持てないが二日もすればどうにか扱える、その程度の傷。
――――気を遣わせたな
 はがねは人より賢いのかもしれない。
 私は倒れた兄に近寄り、無事な方の腕の関節を抜いた。
「用心させてもらいます」
 うめき声さえ漏らさずに兄は私を見た。
「いい助っ人を得たな」
「助っ人というより情夫ですね」
 私の心に宿ったものがなんだったのかは自分でもわからない。
憎悪か、悪意か、…………あるいは腐りきった情の欠片だったのかもしれない。

 昔、私が慕っていたのは兄だった。それこそ兄妹の域を越えた情だ。
もちろんそれを外に出したつもりはない。胸の奥に秘めた想いだった。
 たぶん兄も同じだった。優しい瞳に時たま男の翳りが過ぎることに気づいていた。
 互いの心のうちに宿った昏いものがあの惨劇を呼んだのかもしれない。
そうでなければ聡明な彼がそんなつまらぬ謀に乗せられるなどありえぬことだ。
 だとすれば私も共犯者だ。
342女侍と狼 五つ目:2011/12/11(日) 21:00:44.28 ID:4NOi60Kx

 身に付けるものを全て脱いだ。兄の目が全身に当てられる。
「あの頃の小娘じゃありませんよ。充分に雌です」
 はがねに笑いかけると、いくらか途惑ったように傍に寄った。
私は膝と両腕を地に着き、四つん這いになった。
 声も出せない彼の前で脚を開き、貫かれた。
獣の動きに合わせて腰を振り、声を張り上げた。
 いつもより私は乱れた。その体勢に飽くといったん抜いて身を横たえ、指で自らの秘所を開いて誘った。
はがねがそこに舌を当てて蜜を舐めると、身を震わせて悦んだ。
入り口の珠めいた箇所をなぞられたときなど、抑えることもできずに全身で達した。
 無理に奪われた気の毒な生娘の記憶など吹っ飛んだと思う。
私はもはやそんな存在ではなく、自ら選んで快楽を貪ることができる。
 はがねの下で、あるいは上で声を上げ続け、その様を兄は眺め続けた。

 ようやく果てたはがねから下り、泉の水で身を清めると衣服を身に付け、兄の傷の手当をした。
 貝殻の中の軟膏を塗ったとき、彼の瞳が和らいだ。
幼い頃、兄にも私にも何度も母が塗ってくれた薬のにおいだ。
最後に、外した関節を戻してやった。
「ここには水もありますから二、三日休んでいってください。もうお会いすることもないとは思いますがお元気で。
無茶なことをして自分を傷つけないでください。あなたが幸せでいてくれるほうが私は気楽です。
そのことを忘れないでください」
「未冬…………」
「その名はもう、捨てました」

 兄の視線を感じながら泉を離れた。頬が濡れていくことを知ったが気にしなかった。
彼の前で泣かなかっただけで充分に満足だ。
 はがねは黙って私に寄り添って歩いていたが、大分立ってから恨めしそうな目を向けた。
「なんだよ」
 私は毒づいた。
「たった一人しかいない身内に紹介したんだぞ。有り難がるべきだろ」
 狼は釈然としない顔で私を見つめる。
「確かに利用して悪かったよ。だけどさ、これ以上ないくらいにおまえを男として扱ったんだからそのくらい許せ」
 がう、と彼は軽く吼える。なんだか問いただされているような気がした。
「昔のことは聞くなよ。こっちも聞かないから。可愛い雌狼と付き合ってたって不問にしてやる」
 がうがう、と彼は不満げに吼えた。私はかまわず歩き続けた。

おしまい。
343名無しさん@ピンキー:2011/12/11(日) 21:29:17.18 ID:RecVBDgB
お待ちしてました
なにもいうことはございません
ただただ GJ!!!!111  をおくるのみです

344名無しさん@ピンキー:2011/12/11(日) 22:34:18.26 ID:izDsBeFR
GJ!
345sage:2011/12/17(土) 17:54:19.91 ID:MIL5N0Y3
>340-
ちょいと「ドキドキ」させて ラストは潔い漢っぷりってスタイルがスキ。
早めのクリスマスプレゼントもらった気分。
GJ!
346名無しさん@ピンキー:2011/12/18(日) 23:57:10.15 ID:d5cNhQnn
狼と女侍シリーズ来てたー!
いや、女侍さんの名前も出てきて、しかもしっかり雌になって
ものすごく満足です。女侍さん、バック好きが定着してるし
これからも是非、このシリーズは読みたいです
347第30話 ◆4esfMXj44o :2011/12/29(木) 13:55:17.06 ID:x6SOo3Gq
特捜戦隊デカレンジャーEpisode.21?

1 救出

十字架に拘束され、囚われているデカピンク。マスクを剥がされ素顔を晒されている。
鈍く光る濃紺のラバーリボンが縦横に駆け巡って、ピンクのスーツの上から清純な胸
を潰すように圧迫し、股間に緊く食い込んでいる。スーツに残る痕跡が、既に加えら
れた拷問の惨さを無言のうちに物語る。
「今、助けてあげる!」
果て無き激闘の末、凶悪なアリエナイザーの襲撃を辛うじて退けたデカイエロー。
連戦で酷使した肉体、薄らと汗ばんで、いつになくぎこちない身ごなし。

「ああっ! うあっ!」
エスパー用に発動するトラップ。怪光線の連発に胸を撃ち抜かれ、踊るように縺れ、
敢え無く崩れ落ちるイエロー。下肢が痙攣の波動に弱弱しく打ち震え、背中が寂しく
波打っている。光線が容赦なく降り注ぐ。両肩を震わせてなんとか起き上がろうと藻
掻くジャスミン。しかし、光線が矢となって痩身を打ち据える。苦悶に満ちた顔を何
とか上げようとしても、次第に力が弱まり、肘を付いて蹲ってしまう。

懸命に立ち上がる足許も覚束ない。憔悴し、傷ついた我が身を省みず、結界を破って
磔の戒めを解く。その場に崩れ落ちるウメコ。愛しく抱きとめ、扶助するジャスミン。
「もう大丈夫」

纏ったピンクのスーツが、見る影もない程、泥土に塗れて穢されている。至る所に焦
痕、噛痕。呼びかけても反応がなく、意識がない。心肺が停止している。とても心配
……などと言っている場合ではない。一刻も早く脳に新鮮な酸素を送らなければ。硬
い地面に仰向けに寝かせ、顎を持ち上げて気道を確保する。両乳頭の中間に手の付け
根を置いて圧迫し、救命のため痩身に残された力の限りをエネルギーに変え、意識の
ないウメコに注ぎ込む。瞳が輝き、放たれた柔らかい光が優しくウメコを包む。

「ぁぁぁぁっ……」
躰から力が搾り取られる。およそ耐え難い程の過酷な消尽がジャスミンの肉体と精神
とを蝕んでいく。益々全身が萎えてくる。使命感が、今の儚げなジャスミンを支えて
いる。肩で息をつき、蹲りそうになる。極度の痺れと回転性の眩暈に、地が揺れてい
るようにさえ感ずる。心臓が急激に早鐘のように打ち始め、削られるように気力が無
くなっていく。尽きる寸前、ウメコに呻き声があがり、幸いに息が戻る。安堵に双眸
が虚ろに漂い、崩れ落ちるように両手を地につく。押し潰されるような疲弊に意識が
途絶えそうになる。
それでも、今にも頽れそうな脆い躰で、健気にウメコを気遣う。
私のエネルギーを……

壮絶に精も魂も尽きて、がっくりと崩れ落ちるジャスミン。ウメコを庇うように、う
つ伏せに覆い被さり、もたれかかるように顔を寄せ、素早くマスクを外し、唇に自分
の唇を合わせる。
……早く、わたしのを…… ぁ、あげる…… ぅ……
身を重ね、股間を密着させると、心の底からの敬愛を籠め、擦り付けるように腰を動
かし始める。イエローのスーツ越し、クリトリスが、ピンクのスーツに擦れている。
抱き締め返してくるのが分かる。これまで無理を重ね、耐えに耐え、堪えに堪えてき
た解れが紡がれようとしている。面輪が仄めき、心の中、控えめな淫声が流れる。
 
ああ…… い、いい…… 
そこは……そこっ、いい…… 気持ちいい…… 
もっと…… もっと、緊く…… 抱いて……
いきそう……
348第30話 ◆4esfMXj44o :2011/12/29(木) 13:55:57.77 ID:x6SOo3Gq
2 淫魔

その刹那、太腿に、長く鋭い魔針が深々と突き刺さる!
凄惨な劇痛に顔を歪め、腿を押さえて、へたりこむジャスミン。
「ぃ、痛い…… ぅぅ……」
「デカレンジャーの交尾とは…… くくく……」
「はっ! サキュバス!」

回転性の眩暈と極度の痺れを伴い、超高度に濃縮された麻酔薬が即効する。
「か、躰が…… あっ、あああ……」
「暫く身動きできないよ、ジャスミン!」
「くぅっ……」
「いいことを教えてやろう。この薬は媚毒で、お前を淫乱にする作用がある」
「剣呑な……」

四つん這いの脚の間から股を思いっ切り蹴り上げられる。
「あうっ!」
息も出来ない激痛! 緩く盛り上がった股間をスーツの上から抑えながら、がくり
と這い蹲ったジャスミンの華奢な背に、サキュバスの放つ棘が次々突き刺さる。振
り絞るような呻き声。俯せに倒れ伏し、ブーツごと、細く締まった両足首を踏み躙
られ、身も心も強靭な鞭で容赦なく幾度も打ち据えられて、意識が徐々に薄れてい
く。ウメコの眼前で、為す術なく踏み躙じられ、鞭撃たれるジャスミンの悲痛な姿!

負けない……サキュバスなんかに……
形振り構わず両脚を投げ出して、蜿き、のたうち回る。最後の力を振り絞って身を躱
し、唆る腰を重く振り、気丈に起き上がろうとするも、足許が覚束ず、蹌踉めいて崩
れ落ち、無様に尻餅をついてしまう。

「驚いたか。この棘は血を吸う。
 しかも、代わりに、たっぷり利尿剤を注いでいるのさ」
349第30話 ◆4esfMXj44o :2011/12/29(木) 13:56:50.50 ID:x6SOo3Gq
2−2 淫魔(承前)

魔眼の輝きが鋭く突き刺さり、ジャスミンを圧倒的な暴力の瀬戸際に曝す。どろどろ、
ぬめぬめした得体の知れない妖気そのものが、心身に渦をなして傾れ込んでくる。
ぐげっ……
色蒼ざめた端正な顔立ちを歪めて、怠く喘いでいる。傷つき消耗し、無残に力尽きて
仰向けに倒れ、伸びやかな肢体を無防備に晒すジャスミン。もはや身動ぎすら、まま
ならない。

か、躰が、いうことをきかない……
サキュバスの淫毒が回っている…… ああっ……限界近し……

不覚にも、密やかな疼きに耐えかねて、白い頬がやや紅潮している。霰もなく開かれ
た太腿に弾かれて、恥丘の柔らかい膨らみが浮かび上がっている。伸縮性に秀れ、極
薄でタイトなスーツに切れ目の皺が寄り、影となり光沢となって、あらぬ妄想を掻き
立てる。

サキュバスの瘴気が、辺りを枯らす。不浄な燐粉が毀れ、降り注いでいる。嫌な呼
気がかかる。顔が近づいている。匂いを嗅いでいるようだ。鋭敏な嗅覚が、蒸れて
饐えた匂いのなかから、淡く、かぐわしい香気を嗅ぎ分ける。
淫魔が視姦する。股間に貼り付くスーツ越しの光沢に陰唇が覗いているかのように
錯覚してしまう程に。
構うものか…… 見たければ好きなだけ見るがいい……

うら若く、美しい容貌だが、宛らの邪悪を漂わせ、能面のように動かない表情のまま、
傍らに躙り寄るサキュバス。体の線も露なパープルのボディースーツ。ジャスミンに
顔を寄せ、柔らかく結ばれた赤い唇に、唇を合わせる。咄嗟に顔を齟齬そうとするが、
逃れられない。
不埒者…… 
紫の軟らかな舌が静かに滑り込む。注ぎ込まれた唾液を、思わず嚥下してしまう。
まさか……
何を……するの……
手を回して抱き寄せて身を重ね、股間を密着させると、押しつけるように腰を動かし
始める。胸や股間を擦り付けながら、幾度と無く執拗に絡む。俄には信じ難い事態に、
瞳を閉じたままのジャスミンが、思わず息を呑む。創痍の痩身に、粟立ちを怺える。
忽ちのうちに、項から頬までが朱に染まる。傍目にも如何わしい淫らな行為を感じさ
せるものがある。
然るに……何故…… 
やがて唇が離れ、二人の間に透明な糸が引いて、そっと切れる。
350第30話 ◆4esfMXj44o :2011/12/29(木) 13:57:35.42 ID:x6SOo3Gq
3 感覚

――上品な口元、長い睫毛の輝瞳、緑の黒髪、端正な容貌、清純な素顔……
  基目細やかな肌、長い腕脚、均整のとれた痩身、柔軟で強靭な筋肉……
  初めて目にした時から、唆られていた。その夜、サキュバスはジャスミンを想い
激しく自慰した。羨望による未曾有の興奮を投影し、その美貌を限りなく陵辱す
ることだけを願って――

茫然とするジャスミンの左手に、ドロリとした粘度の高い透明な液体が、塗りたくら
れる。咽かえるような甘酸っぱい香りが辺りに充満する。瓶から直接流し落とされ、
グローブから染み込んで、妖しく侵していく。
っく…… うあぁ……あぁっ!

「ジャスミン、私のものになれ」

サキュバスが柔らかな下腹部に触れている。掌や指が緩急に這い、じっくりと弄ぶ粘
着した刺激を感じる。嫋やかに張った腰から臀部へと手が降り、躰の感度を増してゆ
く。丸やかな尻の線を嬲られ、弾性に沿ってスーツが沈み込む。イエローのスーツに
包まれた胸の膨らみに、サキュバスがそっと掌を添える。敏感な部分に触れるのを感
じる。生地越しの絶妙な刺激、直接触れられるのとは違った感覚。形の良い乳房が胸
の膨らみの下で揺れ、薄紅色の乳首が立つ。当惑が、素心を掻き乱している。

くっ…… 動けないのを、いい事に……
卑劣なり……

満足に動けないジャスミンの内股を、サキュバスの手がそっと撫でる。それだけで、
背を抜けて秘部に至る甘い疼きが走る。細い指先が瑞々しい肌に触れる度、声を抑え
て躰を捩らせる。研ぎ澄まされて鋭敏になっている性感に、唖然とする。

……っ んぅ……

サキュバスの指が、最も秘められた場所にフィットした薄いスーツの股間を触る。微
かに染み始めているイエローのスーツ越し、柔らかな恥丘の盛り上がり、控えめな裂
け目が薄らと覗え、艶かしい。
触、触らないで……
わたしの……大切な……
高濃度の媚薬が怖ろしいまでに効いている。淫毒に犯された躰が、抑えようがないく
らい貪婪になっている。快感と羞恥で淫らに悶えるジャスミンを、指が妖しく苛め続
ける。繊細に秘裂の形をなぞって薄地のスーツに浮き出させ、指で淫靡に嬲られる。
最早、誰の目にも、緊張と萎縮、躊躇いと恥じらいを隠せない。

あうっ…… か、感じる…… 凄い…… 何て気持ちいいの……蕩けそう……
あああっ…… 少しでも気を抜いたら、変になってしまう…… 微妙に頑張るのよ……
うっ、うぅ……こ、声が……声、出ちゃう…… だめっ……ウメコが見てるのに……
351第30話 ◆4esfMXj44o :2011/12/29(木) 13:59:06.81 ID:x6SOo3Gq
4 失禁

「ならば、先に漏らしてもらおうか」
「変身姿のままの放尿を眺めるも、一興だわ」

いきなり牽き上げられ、股間に食い込むスーツの蔓りとした靭やかな感触に、束の間、
意識が遠のく程、峻烈な快感がジャスミンを蹂躙する。
あうっ!
反り返った喉が慄える。美脚が痺れ、太腿が細動する。理性を掻き集め、辛うじて決
壊を食い止める。不意を衝かれ、思わず僅かに漏らした尿が微かに滴り滲んでいる。
スーツが更に上へと揺ら揺ら牽き上げられる。擦れた音を立てながら、深い切れ目の
奥へと滑り込み、不慣れな躰を責めあげる。滑らかな生地越し、クリトリスを弄られ
た感触に耐えかねて、赤く濡れた唇の先から、あえかな吐息が洩れる。
ぁぅ…… ぁ……
身を守るはずのスーツに犯され辱められて、漣波のような愉悦に溢れ、甘美な騒めき
が下肢いっぱいに広がる。股間には恥ずかしい染みが夥しく広がっていく。身動ぐと、
食い込む特殊繊維の感触に、恥ずかしい濡れがはっきりと感じられる。しかも、きゅ
うっ、と高まり、腰が崩れ落ちそうになるほどの猛烈な尿意が巡る。息が荒い。内腿
が小刻みに震える。今にも迸りそう。

い……いけない…… 堪えなければ……

閉じ込められ、行き場をなくした液体が下腹部で渦を巻く。激しい蠕動が膀胱を駆け
抜け、震える股間を直撃する。サキュバスが無表情に見つめている。するのを待って
いる。これ以上堪えられないところまで来ている。脂汗が滴り落ち、下肢が痙攣して
いる。膨れ上がる灼熱の気配に、気力が殆ど尽きかけている。誘惑を断ち切ることが
できそうにない。崩壊のときが近づくのを感じる。諦めの表情が浮かび、絶望に粟立
ちを怺え、震えてしまう。
そんなに、失禁を……
ほの甘い感触が腰全体に伝わり、予兆が滲み出す。
くっ…… も、もっ…… ぁ……
352第30話 ◆4esfMXj44o :2011/12/29(木) 13:59:49.10 ID:x6SOo3Gq
4−2 失禁(承前)

何事かウメコの耳元でサキュバスが囁く。
明らかに動揺するウメコ、相当取り乱している。だが、遂に意を決し……

まさか…… 何を……させるの……

跪くウメコ。暖かい呼気がかかる。仰向けのジャスミンの腰を抱え、だらしなく開い
た両腿に顔を埋ずめる。濡れて艶艶光る股間に貼りついた薄布が浮き上がり、秘裂が
露になったところに唇をつけ、縦溝に沿って、丁寧に舌を這わせる。

そんな…… ぁ……
だめ……それだけは…… ああ……やめて…… ゆ、許して……
ぁ…… そこは、そこは…… だめ! 
……ん んっ! あ、あっ、あっ! あうっ! はあぁうっ!
あっ、そ、そこは、あああああっ……

さらさらした感触の遣りきれない程の切なさに、白い美貌が儚げに身悶える。
潤んだ瞳から涙が一筋溢れ、煌めいて頬に零れている。
だ……だめ…… もう……我慢できない……

張りつめていた理性の糸が途切れる。込み上げてくるものを止めることができない。
腰の力が緩み…… そして、太腿の内側に温もりが溢れ出る。被虐の快美に陰湿な
歓びが吹き零れ、恍惚に泡立ちながら悲嘆のヒロインを優しく包む。二度、三度、
波に襲われる度、痺れるほどの解放感が、領元から込み上げる喜悦に充ち満ちて、
胸が張り裂けてしまいそう。

ウメコにも見つめられたまま、音を立てての排泄。
「ぁ… うぅぅ……」
「あ、ああっ…… ぃ…… あああ……」
漏らしてしまった…… 穿いたままなのに…… こんなところで……
漸く解放された雫が溢れ続けて、纏ったスーツを台無しにしながら、内腿を、包ま
れた尻を傳い、夥しく濡らす。華奢な背筋が、哀しく震えている。淡い臭気が周り
に立ち籠める。滴り落ちた雫が、地に溜りを作る。

サキュバスの哂いとウメコの嗚咽。見せてしまった。気丈なヒロインが耐えかねて
情けなく失禁するところを。我慢できずに、正義を象徴するイエローのスーツを
ぐしゃぐしゃに汚してしまうところを。憎むべき敵の前で、囚われのウメコの前で、
貶められ、辱められ、惨めに晒してしまった酷い姿を想起するだけで、嘗て無い
物凄まじい羞恥に、この身が切り刻まれ、屈辱に涙が滲む。
353第30話 ◆4esfMXj44o :2011/12/29(木) 14:00:37.20 ID:x6SOo3Gq
5 エピローグ

「助けに来たぞ! ジャスミン!」

どうして…… もっと早く来てくれなかったの……
仲間の前、端ない痴態を晒し続けているにもかかわらず、余韻が堪らなかった。
熱く滾った膣にはまだ舌の感触が……
羞恥や屈辱に苛まれながらも、媚毒に犯され切った躰は求めていた。技巧の限りを
尽くして更なる昂みへ導いて欲しいと悲鳴をあげていた。洩れる嬌声を、何度も堪
えなければならなかった。

思わず、ぐしょ濡れのスーツを押さえる。全身に、きゅんっ、と快感が走る。左手
のひとさし指をスーツ越し、ゆっくり沈めていく。

ああっ、だめ…… こ、こんな、ああ…… いけないっ……
いや やめて ぉぉぉ…… うう……
もう、だめ…… はうっ…… い、いいっ…… ぐうっ…… あううぅぅぅっっ……
んあっ! …ああっ! ああーっ! 
おお…… おおおおああああああっ!
あああ゛!! うああ、ああああ!!!

to be continued
354名無しさん@ピンキー:2011/12/29(木) 17:28:18.38 ID:+17If2/R
投下おつ!
355名無しさん@ピンキー:2011/12/29(木) 22:35:43.23 ID:c8SBHlZa
正義のヒロインがお漏らしとは……許せる!!
356無題:2012/02/03(金) 18:14:29.83 ID:laUp7Km5
投下。百合あり



 アリシアの滑らかな白い肌が薄紅に変わっていく様はどんな男だってその気にさせる。
ましてや俺などひとたまりもなくたちまち限界に追い詰められた。
 重みのある乳房に貪りつくと耳元に囁かれた。
「もう少しお客様によく見える位置に動いていただけません?」
 今は彼女の言葉は崩れない。気品のある美しい声が冷静に指示を出す。
俺は素直に従った。
 寝室の壁一面を占める鏡はマジックミラーだ。向こう側には見物人がひしめいているはずだ。
 彼女の脚を開き、その奥に隠された場所を指で触れる。
花びらを開いて小さな珠を刺激すると、彼女は甘い声と共にわずかに蜜を滴らせた。
「代われ。下手くそ」
 突然、低めの声が響き、起こされていたアリシアの上体が横たえられた。
俺は空気を読んで位置を変え、メグミの役を引き受けた。
「あ……いや!」
 アリシアは身をよじって逃げようとしたがメグミはそれを許さない。
長く器用な指先が蜜壷をかき回して洪水を起こさせる。
「だめ!メグミ、いや!また本気になっちゃう!」
「なればいい。いつも通りに」
 白く豊かなアリシアの体に、小麦色でスレンダーなメグミの肢体が絡まる。
二人は抱き合って互いの貝を合わせる。見ているだけの俺は勃ちすぎて痛い。
 またフォンが鳴るが、夢中になっている彼女たちは気づかないので
後ろ手にとって耳にあてるとクレームだ。
「今日は男との絡みを見に来た。仕事をしろ」
 二人に告げるとメグミが噛み付きそうな顔でにらんだが、仕方なく俺と代わる。
「メグミ………メグミ!」
 うわごとのように彼女がつぶやく。俺はできるだけ優しくアリシアを開き、
固くなったそれを深く押し込んだ。
 悲鳴のような声が上がった。
357無題:2012/02/03(金) 18:19:33.09 ID:laUp7Km5

 所持金が全て尽き、まだ止まってない水ばかり飲んでいるとノックの音がした。
電気が切れててインターフォンが鳴らない。
ドアを開くと隣の部屋に住む18くらいの美少女がいた。
「失礼ですがお金にお困りではありませんか」
 唐突な問いに呆気にとられて口をパクパクさせていると美少女は礼儀正しく続けた。
「もしよろしかったら私と寝ていただけませんか。心ばかりの謝礼もお支払いいたします」
 彼女はアリシアと名乗った。
 詳しく聞こうと部屋に誘うと丁寧に断られ、隣室に招かれた。
 部屋にいたもう一人は二十代の半ばほどだ。でも美女というより美少年めいた容姿を持つ。
こちらはひどく不機嫌そうだ。しかし俺が盛大に腹を鳴らすと、むっとした顔のまま
缶詰を開けパンを切ってくれた。
「私たちは性行為を見せることを生業としておりますが、
最近男性も加えて欲しいとの要望が多いものですから」
 極めて直截的に説明された。
「なぜ、俺なんです。確かボディガードの人がいたでしょう」
 グラサンかけたガタイのデカい男が出入りするのを見たことがある。
「彼らとは警護の契約しか結んでいませんし他の依頼をするつもりはありません」
 少し冷たい色合いの自分の金髪に触れながら彼女は続ける。
「しかし俺、ほとんど経験ありませんよ」
 ゼロとは言わない。
「むしろありがたいです」
 病気のリスクが低いからか。
「あの……早すぎるかも………知れません」
「差し障りはありません」
「もっと上手な人を選んだほうが………」
「いえ。あなたがいいのです」
 彼女はまっすぐに俺を見つめた。とても綺麗なアイスブルーの瞳だった。

 病院での検査のあと隣室で訓練の運びとなった。彼女たちも再検査して結果を見せてくれた。
どちらも問題なかった。
「本来ならおまえごときが近寄れないほど雲の上の方だ。心してコトに励むように」
メグミが重々しく宣言するとアリシアが笑った。
「今はただの淫売ですわ」
「そんなこと言うのはやめてくれ」
 色を変えたメグミにアリシアは頭を下げた。
「ごめんなさい。私のことはともかくあなたをそう思っているわけではありません」
「いや、私はいいんだ。だがあんたは微塵も汚れちゃいない。そのことをわかってくれ」
 アリシアはさっきより苦く笑った。
「………ごめんなさい」
 そして俺のほうを向いた。
「よろしくお願いします」
358無題:2012/02/03(金) 18:24:08.35 ID:laUp7Km5
 背は高すぎず低すぎず、胸は充分に大きいが形よく、腰は蜂のようにくびれ、
ヒップはスレトップに躍り出るほど勢いがあるが可愛らしく、
顔は超人的技術を誇るフィギュア職人が自分の全人生を賭けて作ったかのように美しく、
かてて加えて天性の気品が満ち溢れるお嬢様がこともあろうに俺なんかと
情交を営まれるわけだ。どういうことになるかわかるだろう。
 ………貧血を起こした。
「だらしのない」
 メグミが舌打ちをした。
 すんなりとした長身を惜しげもなく晒した彼女も凹凸はあまりないが実に魅力的だ。
鍛えているらしくしっかりと筋肉もついている。でもしなやかでバレリーナのようだ。
その長い脚で蹴とばされるとき淡い茂みのその奥が覗いてこれはこれで絶妙にいい、
というか、その…
「少し休憩しましょうか」
 アリシアが微笑みガウンをまとった。芸術的曲線が隠される。
「本当に明日使えるのかこいつ…」
 メグミが言葉を切りかけてちょっと考え込んだ。
「名前はなんだっけ」
 まだ聞かれてなかった。
「ショウイチです」
 仮の名を名乗った。
 ふん、と彼女は鼻を鳴らし、興味のなさを示すためか茶をいれに別室に消えた。
「無理なお願いを聞いてくださってありがとうございます」
「かまいませんよ、あの……」
「ところで私たちはどうも殺し屋に狙われているようなのですが銃はお持ちですか?」
 飛び上がりかけ、首をぶんぶんと横に振る。
「いったい……」
「説明は致しませんが過去に多少のしがらみがあるもので。
私もデリンジャー程度は身近に置いています。
ショウイチ様の分も明日には用意しておきますね」
 今の時代銃の所持自体が合法だ。それどころか登録義務もない。
人々は気軽に銃を持ちあっさりと死ぬ。
「ガードの人は?」
「基本外出時だけお願いしています」
「部屋にいるとき襲われたら危ないんじゃないですか」
 巻き添えで本物の天国には行きたくない。
「ここは意外にセキュリティの厳しい分譲マンションなんですよ」
 彼女は俺を見た。
「ご存じなかったのですか」
 多少は知っている。もちろんオートロック。一階につき一部屋か二部屋しかない。
エレヴェータは共有だが自室か1階以外の階に降りると了承を得て手続きをしていない場合
その階の住人の部屋にアラームが鳴る。
「譲られたものだから詳しくは知りません」
 条件付の遺贈で売買することは出来ない。おかげで食うに困っても住む場所には困らない。
俺が借金を重ねたとしてもそのカタに取り上げることも出来ない。
「だけど相手がプロの殺し屋ならそれでも危ない気がするけど」
「きりがありませんの。疑い始めると」
 ちょっと寂しそうに笑った。
359無題:2012/02/03(金) 18:29:11.23 ID:laUp7Km5
 へたばっているとメグミが俺を担ぎ上げて隣室まで運んでくれた。
抵抗したかったがもう体力の限界で、しかも恥を晒しすぎていたので甘んじて受けた。
指紋認証のキーロックを外した他は指一つ動かさずベッドに横たえてもらった。
「まったく鍛えてないな、おまえ」
「あなたから見たら誰でもそうですよ」
「口ばかり達者だな」
 彼女は俺といっしょに担いできた袋を開けると中から缶詰が転がり出た。
その中からコンソメスープを選んで開けてくれた。
「レンジは?」
「ありません」
 化石を見るような目を向けられた。
「じゃあ冷めたまま飲め。固形物を食べるのは落ち着いてからにしろ」
 見かけよりは親切だ。
「それと慣れてきたら体を鍛えろ。将来、惚れた相手を守れんぞ」
「あなたは、アリシアさんのために?」
「もちろんだ。あ、彼女には惚れるなよ。私のだ」
 頷いた。この人が彼女を溺愛しているのはよくわかる。
「しかし、どうして出合ったんですか」
「見るからに育ちが違うってわかるよな。確かに私はここより南の町のスラム出身だ。
語らないが彼女は大分北の方の街の名家の出だと思う」
 確かにそんな気がする。
「ある日ここから離れた町で彼女がよろよろと歩いていたんだ。
ああ、こりゃ町の端まで行くまでに売られるかやられるな、と思って声をかけた」
 その時彼女は「うかつに私に話しかけると撃ちます」といって銃を見せたそうだ。
「思わず噴きだしたね。コルトパイソンだったよ。
嬢ちゃんにはその銃は無理だって説明しても納得してくれないから、
どうにかなだめて試射できる銃器店に連れて行き手ごろなものを買わせた」
 それからしばらく彼女のアパートに二人で住み、そんな関係になり、
例の仕事を始めてこのマンションに引っ越した。
「そんなに儲かるものなんですか?」
「いや。スポンサーがいる。ここはまだ私たちのものではない」
「見込みはあるんですか」
「ランキングが上がったらな」
 ネットはテキストファイル以外制限されている。動画も画像も見ることができない。
人々は歴史を遡ったかのように値段の跳ね上がったその手のコンテンツ、
つまり本や写真を求め、さらには合法なショウを見に行く。
しかし大手、中小その手の店やイベントは無数にあるため評判だけはネットで調べる。 
ランキングサイトのうちメジャーなものの上位層に躍り出ると
お偉いさんが個人的に呼んだりまあ何かと派手な存在になるらしい。
「人の手を借りてやっと登録できたばかりだ。まあ、私は地味に働ければいいのだがな」
「殺し屋に狙われているって聞きましたが大丈夫なんですか」
「大丈夫じゃないよ。だけど本当かどうかわからないしな」
 そのために鍛えているのかもしれない。
360無題:2012/02/03(金) 18:34:26.22 ID:laUp7Km5

 ショウのための部屋はスタジオと呼ばれる。かえるに似た初老の男が貸していた。
「この特殊ガラスはカメラ撮影すら出来ない特別なものですよ。割引は考えていません」
「だけど電気は安いのですませていますよね。この間一番の盛り上がりで切れて困りましたわ」
 アリシアがにっこりと笑って対峙する。
「それさえなければランキングはもっと上がったと思うのですけれど」
「因果関係は証明できないでしょう?」
「ええ。でもこちらは町一番の老舗とはいえ最近新しいお店に押されていますよね。
で、私たちは登録以来うなぎ上がりの期待の新人。
スタジオを変える事はそちらにとって損だと思いますが」
 かえるは考え込んだ。電卓を取り出す。
「期待の新人は毎月出るのでね。ですが随時契約の賃貸を1年契約にしていただければ
多少は考えましょう」
「そんな先のことはお約束できませんわ」
「なら半年。割引率はこの程度」
 電卓を見せる。アリシアは首を振った。
「同じ割引で三ヶ月ならば考えてもいいですわ」
「それは殺生な。その場合ならこの程度」
「帰ります」
「まあまあ。じゃ、このくらいで」
 大分たってからやっと交渉は成立し契約はまとまった。
「アリシアさんにはかないませんな。久しぶりにエキサイトしましたわ」
 かえるの言葉に素が滲んでいる。
「こちらこそ」
 彼女が可愛らしく顔を傾けて返す。かえるは表情を緩めていたが不意に引き締めた。
「殺し屋に狙われているんだって?」
 彼女の顔色は変わらない。
「わしは情報屋じゃないし、噂でしかないけどしばらく前に聞いたことがあったよ。
黒龍って殺し屋が町に入ってるって」
「何か情報をお持ちですか。男か女か、年の頃はどのくらいか、見かけはどうか」
「いや」
 首を横に振る。
「最初にそういった男は死んだ。詳しいことは知らんな」
361無題:2012/02/03(金) 18:39:06.71 ID:laUp7Km5


 その日のガードはリロイという名の黒人系の男だった。ひどく無口だが信頼できる感じだった。
彼の運転でスタジオまで行く最中、俺は吐きそうなほど緊張していた。
 前日に散々レクチャーされたが、ただの一度も挿入に到らなかった。全て事前に果てた。
「大丈夫ですわ」アリシアは優しく慰めてくれたがメグミに「能無し」といわれた。
 楽屋から入るスタジオはそれほど豪華でもなくベッドが大きいだけの寝室に過ぎない。
だがシャワーを浴びた後のアリシアが横になると途端に天国に変わる。
 白いシーツに流れる金髪に今日はピンク色のリボンをつけているためいくらか幼く見える。
肌の透ける、妖精の羽みたいなローブの下は同じ色のランジェリーだ。
その姿を眺めるだけで充分に満足しそうになるほど愛らしい。
 メグミの趣向はミニスカポリスだ。クールな顔立ちに制帽が抜群に似合う。
長く形のいい脚がすらりと伸びている。
 ちなみに俺は翻弄される童貞男子高生、っという設定らしい。制服を着せられた。
さすがにそんな年じゃないと思うが。
 まずは女性二人が愛し合う。さすがプライヴェートでもパートナーなので息が合っている。
メグミは服を着たまま彼女のローブに指を差し入れて優しく撫で上げる。
「はうぅ………」
 アリシアが目を閉じ、唇を開いて吐息をこぼす。
 メグミは少し微笑んで「気持ちいい?」と尋ねた。アリシアが素直に頷く。
 指先がブラジャーの中に入り彼女は「あ」と一声上げた。メグミの動きは止まらず
アリシアの声が濡れていく。観客は焦れ始めているはずだ。
 メグミはゆっくりと指を抜き、アリシアのローブを剥いだ。
白い膚に映えるピンクの下着。彼女自身が甘いお菓子みたいだ。
 二人はくちづけを交わす。俺も客も存在しないみたいに。
時が止まって、この世には二人しかいないように。
 濡れた唇が離された。二人はまだ見つめ合っている。
 俺はアホ面でそれを見ているだけだ。
 やがてアリシアは視線を外し、目を伏せる。
メグミは彼女を引き寄せてうなじの辺りに顔を埋める。指先はピンクのブラを外す。
 白い胸がこぼれる。だがそれはメグミの背に邪魔されてまだ客の人目に触れていない。
 うなじに舌を這わされているアリシアは小さく吐息を漏らしている。
「背もたれと彼女の間に入れ」
 命じられて従う。アリシアの上体を引き起こし人間クッションとして密着する。
絹のような手触り。温かな躯。俺の股間はいきなりハイテンションだ。
 しばらくメグミは彼女から離れて、マジックミラー越しの客にアリシアを鑑賞させる。
どんな工芸品もかなわない芸術作品だ。
こちらの音は外に流されるが、外の音は入り込まないのに賞賛の声が聞こえた気がした。
 豊かな形のいい胸に、あどけなくさえ見える淡いピンクの乳首。
メグミが再び寄り添ってその部分をくわえ込む。
「あ、ああんっ……」
 間近に顔のある俺は時たまメグミのの舌遣いさえ見える。
彼女は緩急自在にそれを動かし同時に片手で胸を揉み、もう片手をショーツの中に伸ばす。
くちゅくちゅ、と濡れた音が響く。
362無題:2012/02/03(金) 18:44:58.80 ID:laUp7Km5
「お育ちの割には淫乱だよな」
 胸から口を離したメグミが言葉でアリシアを嬲る。
「いつだってここは欲しがっている」
「そんなこと……ないです…………」
「そうか」
 メグミは彼女のショーツを剥いだ。アリシアの秘部はびしょびしょになっている。
「じゃあ、これはおもらしかな」
 アリシアがほほを赤く染めてそっぽを向く。メグミは笑って指先を深く差し込む。
「……あ、ああああっ!」
「欲しがってるじゃないか」
 メグミの指がぬらぬらと光りながら出し入れされる。
「あ、ああああんっ、あ、ああっ!」
 不意にアリシアの両腕がメグミの首に掛かり引き寄せる。
胸や腰の割りに細い少女めいた脚がメグミの体に絡みつく。
「いいっ、あ、あ、メグミっ!」
 悲鳴のような声が上がる。演技ではない。近くの俺はその息の熱さがわかる。
「いつもより燃え上がるのが早いな。見られているからか」
 客じゃなくて俺のことか。
「ほんと、好き者だよなアリシア。見られるのもやられるのも大好きなんだな」
「ち、違っ……んっ」
「腰が揺れてるよ。ほら、男に見られて、これからこっちにもやられるから興奮している」
「違うの………メグミっ、愛してる……」
 ひどく優しく彼女は開いた片手でアリシアの頬を撫でる。
「愛してるよ、アリシア」
 そのままもう片方の手の指が深く体の奥に潜る。
「んあああああああっ!」
 アリシアの腰が魚のように跳ね、綺麗な足が寄りいっそう深くメグミを縛り付け、
そしてがくり、と力を失った。
「綺麗だよ」
 メグミは囁くと体を下に落としアリシアの脚の間に顔を近づけた。
意識を飛ばしかけていた彼女はそのことに気づくと身を捩じらせて逃げようとした。
「だめっ!まだ、だめ………」
「嘘つき」
 そういうとメグミはそのまま顔を埋めた。
「ひゃううううううっ!」
 美少女が獣じみた声を上げる。アリシアは快楽に捕まり呑まれた。
「うううっ、あっ、ああああああっ、凄いっ、あううっ」
 いったん顔を上げたメグミが命じる。
363無題:2012/02/03(金) 18:49:55.16 ID:laUp7Km5
「脚を立てろ。お客様におまえの恥ずかしい蜜壷を見てもらうために」
 さすがに彼女は躊躇した。が、メグミが乳首を摘むと体を震わせて従った。
「ほら、自分で花びらを開いて見てもらえ。中に隠した小さな粒まで」
「許して……メグミ、出来ない……」
「いいや、できるさ。やるまでご褒美はなしだ」
 美少女は羞恥で消え入りそうに目を伏せ、自分の腕で胸を抱いている。
けれどその恋人は許さなかった。
「出来ないなら間が持たないから私はそこのガキとやる」
 俺か。俺のことか。
 アリシアは決然と叫んだ。
「させません!」
 彼女は鋭い視線でメグミを睨み、それから指で自分の中を開いた。
 ミラーの奥から熱気が押し寄せてくるようだ。
 アリシアは自ら真珠を探りそれを白く小さな指先でそっと触れていく。
「はうんっ!」
 突然メグミが横から脚を高く掲げた。彼女が更に晒される。
「やあっ!いやあああっ!お願い、もうやめて!」
 悲痛な叫びも気にかけない。
「お仕置きだよ、アリシア。男なんて加えたことの」
「ごめんなさい。許して……」
「許さない。尻の穴まで見てもらえ」
 彼女の細い啜り泣きが部屋に満ちる。それはどうしようもなく他者を刺激する。
 フォンが鳴った。
 必死に般若心経を心の中で唱えていた俺が取って耳にあてると押し殺したような男の声だ。
「なかなかの趣向だがそろそろ相手を変われ」
 それだけ言って切れた。
364無題:2012/02/03(金) 18:56:03.93 ID:laUp7Km5



 で、冒頭に至る。相手が変わると途端にアリシアは落ち着いた。
充分に人をそそる営業用のあえぎを聞かせてくれた。
俺はどうにか挿入に到った。到ったがその瞬間限界に達した。
後が呆然としている間にメグミとアリシアが何とかしてくれショウは終わった。
 今俺は自室で布団を頭までかぶっている。
 だから早いって言ったじゃないか。
 いや、俺はむしろよくやった。訓練の時はそこまで行かずに大暴発だったじゃないか。
そもそも最初はアリシアの胸を見ただけでイってしまい、
「これが本物の銃ならおまえは早撃ちのギネス記録だ」とメグミに言われたじゃないか。
それなのにあんなセクシーなショウの中盤まで持ったんだ。俺はけして悪くない!
 必死に自分を慰めているとインターフォンが鳴った。
半分前払いしてもらったおかげで電気が通っている。
「ショウイチさん。私です」 
 今最も会いたくない人だ。
「ごめんなさい、ごめんなさい。ランキング下げてごめんなさい」
 うわごとのようにつぶやくと相手の明るい声が流れた。
「下がってませんよ。むしろ上がってます」
「へ?」
「とにかくドアを開けてください」
 玄関を開けるとアリシアはプリントアウトした紙を見せた。
「ほら、ランキングも上がってるし見てください、お客様の声」
『最初の百合パートも素晴らしかったが、いかにも情けない初体験のにーちゃんの
初々しさもよかった』『童貞だった頃を思い出した。頑張れ、青少年!』
『男の人のダメっぷりでメグミ姉さんのかっこよさとアリシアさんのかわいさが引き立ちました』
『この手の男優さんは大きさを振りかざす嫌味なやつだと思ってたら違って
間抜けな感じがよかったです』『おれより小さくて嬉しい』『今後の成長に期待!』
「ほら、大好評ですよ」
 この人は天然の鬼畜なのか。
「は、はあ……」
「とにかくちょっとこっちの部屋に来て頂けませんか。メグミまで引きこもっちゃって」
 彼女は有無を言わさず俺を連れ出した。
365無題:2012/02/03(金) 19:02:28.39 ID:laUp7Km5

「メグミ、そろそろ話をして」
 アリシアが声を掛けたが彼女は部屋から出てこない。困っていると電話が鳴った。
「少し待っててください」
 彼女の姿が消える。困ったまま部屋の前にいたら不意にドアが開いた。
 メグミが暗い顔で俺の前に立っている。ふいに中に引き入れられた。
「な、何……?」
 いきなり、思い切り殴られる。部屋の隅に吹っ飛んだ。
「ちょ……」
「やはり我慢できないな」
 胸もとを掴んで立ち上がらされ、もう二発。意識が朦朧とした。
 物音を聞きつけてアリシアが駆け込んできた。
「どうしたの、メグミ?」
「愛しているよ、アリシア」
 更に一発俺を殴ると、彼女はアリシアをの手を取りベッドに引き倒した。
「やめて!」
「いや。やめない」
 彼女の瞳は沼の底のように沈んでいる。
「どうしても許せないんだ」
「ショウイチさんのこと?それはあなたも納得して…」
「しようとしたが出来なかった」
 彼女はベッドの上のアリシアにのしかかる。
「過去なら許せる。だが今他のやつを受け入れるあんたを許すことは出来ない」
「よ…せ………」
 必死に立ち上がろうとするがめまいがして果たせない。
それでも俺はベッドの脚にすがって起き上がろうとした。
 タン………
 乾いた音がした。足を撃たれた俺はそこに転がった。
デザート・イーグルを片手で打った彼女は薄く笑った。
「おまえを殺したりしないから安心しな。あの世で彼女に近づかれたら嫌だ」
「…………」
「私の銃の腕は確かだ。なにせ黒龍と呼ばれているほどだからな」
「!」
 下に押し付けられていたアリシアが強張った。片手が必死に何かを探している。
「探し物はこれかい?」
 メグミがにやにやと、もう片手を自分の服の隠しに突っ込んだ。
手は離れたが体で彼女を押さえつけているので動けない。
 隠しから取り出されたものは小ぶりな銃だった。
「懐かしいな。グロック26。初めて会った時にあんたのために選んだな。
ポリマー製だから軽いし、その割には反動もそれほどじゃないし
実用的だって勧めたよな」
 ちゅっ、と銃にくちづけてそれでアリシアの顔をなぞる。
「大事にしてくれてありがとう」
 胸もともそれで撫でる。
「………いっしょに埋めてやるよ」
 アリシアは息を呑んだ。だが悲痛な眼差しでメグミを見返し声を出す。
「………あなたはいっしょに来てはくれないの?」
 黒龍と呼ばれる殺し屋は甘い笑顔で微笑む。
「いつかね、行くよ。それまで大人しく待っていて欲しい」
 アイスブルーの瞳は水底のような深さに悲しみをたたえていた。
「あんたを殺すのに銃は使わない。愛し合うのに使ったこの手を使うよ」
 メグミは銃を斜め脇に置くと両手を彼女のうなじにあてた。
「愛していたよ、アリシア。ずっといっしょにいたかった」
 アリシアの瞳から涙が溢れた。
「…………私もよ、メグミ」
366無題:2012/02/03(金) 19:07:17.97 ID:laUp7Km5
 俺は必死に足を引きずりながら移動していた。壁際の本棚まであと少し……
「無駄だよ、ショウイチ。ほんとに殺さないから大人しくしときな」
 気配を感じたらしいメグミが、ちょっと振り返って俺を見た。
 タン………
 鈍い音がした。
 アリシアがデリンジャーをメグミの胸に押し当てていた。
 メグミは目を見開いたままアリシアのほうを見つめ、そのまま倒れた。
「……………」
「一緒になら、死んであげてもいいと思ったのに」
 小さな、グロック26よりずっと小さな銃は今は震えている。
が、その銃弾は確実にメグミの心臓を貫いた。
 まだ温もりのある美しい体を払いのけると彼女は俺に近寄った。
「利用しました。すみません」
「お、おう」
 彼女は死体をそのままにしてメディカルボックスを取ってきた。
「弾は抜けてますし彼女、気を遣って撃っているからそれほど長くはかかりませんよ。
特別手当もお支払いします」
「いったい……」
「私にはしなければならないことがあるんです。
そのためにはランキングの上位に食い込むことが必要なんです。
だけど愛し合う二人のちょっとした百合程度でそこにたどり着くことは出来ないんです」
 彼女の睫毛は涙を宿したままだった。
「だけど私はメグミが好きだったから彼女といっしょに行こうとしたのだけれど…」
 一度は了承したメグミは結局は耐えられなかった。
「黒龍は先ほど仲介人に承諾の電話をかけたそうです」
「どうしてそれを……!」
 俺は気づいた。彼女が暗い顔でうなずいた。
「依頼人は私自身です」
――――疑い始めるときりがない
 彼女の言葉の重みが今更ながらに突き刺さった。
「じゃあ、俺のことも疑っているんですか」
「いいえ」
 彼女は静かに首を振った。
「………私はあなたを知っていますから」
 驚いて問い質したが答えてくれなかった。
「ルームクリーニングを頼まなくては」
 視線はひどく切ないが言葉はとても冷たい。
「それと別の女性を探す必要がありますね。スタジオは三ヶ月の予約ですから」
 何か言おうとして、彼女の体が震えているのに気づいた。
俺はそれを止めてやりたかった。けれど彼女は誰の手も借りない。
「全て私が手配します」
 頷いた。それしか出来なかった。ただ震える彼女を見つめていた。

終わり
367名無しさん@ピンキー:2012/02/04(土) 14:29:10.47 ID:tG8nGk+E
GJ かっこええ
368関係その後 ◆G.tRihaqM. :2012/02/10(金) 22:45:48.95 ID:N2kuqQRR
以前書きながら投下かつ投げっぱなしにしてしまったので、今更本スレに落とすこともできず
お借りしますー

――遠くで、鐘の音が聞こえる。

どうやら、眠っていたらしい。
普段なら授業中の居眠りは起こされるはずだが、もう卒業間近だからと放っておかれたのだろうか。
まぁ今さら気にすることでもないか。

それにしても、鐘が鳴ったあとなのにやけに静かだ。
クラスメイトのざわめきも、運動場の掛け声も、生徒が廊下を走る音も、何も聞こえない。
何かおかしい。
体を起こそうとして、ふと、自分の体制がおかしいことに気づく。
(何で俺は横になってるんだ?)
ここは教室だ。
机に突っ伏しての居眠りならまだしも、授業中に床に寝ていたらさすがに叩き起こされるだろう。
(寝る前、俺何やってたっけ)
やけに重くだるい頭を働かせて、今朝から寝る前までの記憶を手繰り寄せる。
久々の学校、代わりの制服、消化不良なあの出来事のことを考えながら校門を潜って――殺気に満ち溢れた校内、
人のいない廊下、ただひたすらの静寂、血と肉の教室。
そして中央にたたずむ長い髪と腕を持つ血と肉塗れの女。
(――出夢!)
霞みがかった意識が一気に覚醒し、勢いよく身体を起こそうとする、が。
記憶と共に全身の感覚も甦ってきた。
あの時は頭に血が上っていたから気がつかなかったものの、
どうやらかなり身体を痛めているようで思うように動かない。身体が重い。
閉じたままの瞼を開けるのも億劫だが、周りの様子がどうなっているのか見たくなかったが、
人識はゆっくりと瞼を開けた。

「……ようやくお目覚めかい?」
気だるそうな口調で、気だるそうな表情で、そこにいた。
殺戮奇術集団匂宮雑技団次期エース、匂宮出夢。
長すぎる髪、長すぎる腕、厚みのない身体、普段の躁状態とは違う狂気を孕んだ暗い瞳。
人識の通う中学校の制服を身に纏い、乾きかけの血と肉に塗れた体に気を払うでもなく、
人識の体に跨り、人識を見下ろしていた。
満身創痍の自分とは違い、出夢の身体には小さい傷や打ち身はあるものの、それ以外に目立った外傷はなさそうだ。
先ほどまでお互いに明確な想いを持って殺し合っていたはずだったのに、未だにここまで実力に差があるとは。
(……今まではよっぽど手加減されてたんだな)
マウントポジションを取られているのにも拘らず、人識は他人事のように冷めた思いを抱く。
「何だよ、殺すんじゃなかったのかよ」
自分の口から出てきた声は、思っていたよりもはるかに力ないものだった。
「そのつもりだったんだけどさ」
「あぁ?」
「最期にきちんと喰らってやろうかと思って」
「喰らってって――」
今まで見たことのない、静かな出夢。
殺し合いをする前に会話を交わしたときの激しい狂気は鳴りを潜めていた。
ただ――ぞっとする殺気は相変わらずだ。
(……今回こそ本当に殺されるかもな)
369関係その後 ◆G.tRihaqM. :2012/02/10(金) 22:46:51.14 ID:N2kuqQRR
出夢の指が人識の頬を――刺青をなぜる。
暗い瞳が切なげに細められる。
その指は殺し屋とは思えないほど、細くて、長くて、きれいな指だった。
しばらく刺青を愛しむようになぜていたが、その手をそっと人識の頬に添えて。
出夢の顔が近づいてきた。
顔にかかる出夢の髪がやけにくすぐったくて払いたかったが、力を入れても痛むだけで腕は上がらない。
唇が重なる。
されるがままに舌で口内を弄られる。
(――以前にもこんなことあったな)
抵抗するにも人識の体はまったく言うことを聞かない。
それでも何とか身を捩ろうとした瞬間――唇が激しく痛んで思わず顔をしかめる。
痛みのすぐ後に、血の味が口内に広がっていった。
出夢の顔が離れる。
出夢の唇からは一筋の血が流れた。それを舌で舐めとって妖艶な笑みを浮かべる。
「――まず『一喰い』」

出夢は人識を跨いだまま腹の上から腰の辺りにまで移動する。
制服のスカートがきわどい長さのため、太腿の感触が服越しとは言えダイレクトに伝わる。
這うように腰を動かして、据わりのいい位置で止まる。
「……何だよ、人識。僕に喰われてもう感じちゃってるわけ?」
出夢は潤んだ瞳を細めて、嘲るように、蔑むように呟きながら、軽く腰を動かして人識のそれを軽く刺激する。
「――っ」
人識は真っ赤になって顔を背けた。
出夢の言う通り、人識自身は反応していた。
体が勝手にと言うか、完全に決裂したとは言え、
つい先ほどまで憎からず想っていた相手に迫られれば仕方のないことなのだが。
それでも人識にも自尊心はある訳で。
「……匂宮出夢、ぜってー殺す」
「これから僕に完膚なきまでに喰われるのに?」
出夢は言いながら人識の制服に手をかけた。
特に力を込めた様子もなく引き裂く。
中のTシャツに顔を近づけて――喰いちぎった。
370関係その後 ◆G.tRihaqM. :2012/02/10(金) 22:47:22.94 ID:N2kuqQRR
人識の身体が露になる。
春が近いとは言えまだ肌寒い。軽く身震いしたその胸に、出夢は手を滑らせた。
なぜるように、弄るように。
出夢の手が通る箇所が痛むのは骨が折れているからだろうか。
手の動きに合わせて激痛が走るが、それを悟られるのは癪だったから、
痛みに反応しないように唇を噛んで必死に堪える。
出夢は鍛えられた腹の筋を指でなぞり、わき腹を通って、
丹念に余すところなく手のひらで人識の身体を味わい、最後に両肩を掴んだ。
ゆっくりと人識の首筋に顔を埋める。
「……痛むんだろ、我慢しなくていーんだぜ」
人識の耳元で囁く声は熱を帯びていた。
ねっとりとした物が首筋を這う――出夢の舌だろう。
「かわいく鳴いてくれや」
強く吸う。
頚動脈の位置を強く吸う。
その後に来る痛みに備えて人識は反射的に身を硬くするが、
出夢はからかうように舌をちろちろと這わせて顔を上げた。
「ここを喰っちまったらそれで終わりだからな……安心しろよ、そう簡単には終わらせない」
そう嘯く出夢の瞳の奥には暗い炎がちらついていた。




出夢は再び首筋に顔を埋め、舌で丹念に首筋を弄る。
その舌をじっとりと這わせて腕の付け根まで移動し、歯を立てた。
八重歯がじわりじわりと肉に喰い込んでいく。
動きが止まり、一瞬間をおいて――一気に肉を噛み千切る。
「――っ」
鋭い痛みに人識は声を上げそうになるが、固く瞼を閉じ唇を噛んで押し黙る。
(……『鳴け』と言われちゃあ、死んでも声を出すわけにゃーいかねえわな)
焼けるような痛みが身体に馴染むまで、歯を食いしばりただ耐え続ける。
噛み千切った肉を吐き捨て、出夢は身体を起こして面白くなさそうな顔で呟いた。
「……頑張っちゃうのかよ、つまんねーな」
「……へっ、こんなん小さい女の子にかわいく噛まれたようなもんだ。
どうせならもっときっちり『喰らって』みやがれってんだ」
「言うじゃねーか」
あからさまに強がる人識の言葉に出夢は鼻で笑う。
荒々しく手の甲で自分の唇の血を拭い、冷ややかな瞳で人識を見下ろしていたが、
やがてその瞳が細められた。
「そーか、痛みにゃ『負け』ねーか。そっちがその気なら――」
出夢は人識の身体にしなだれかかる。
ねっとりと、じっとりと。
倒れこむようにお互いの身体を密着させると、人識の顔を抱え、再び唇を重ねる。
歯を食いしばって、瞼を閉ざして、体を固くして責め苦に耐える人識を優しくほぐすように。
舌で先ほど噛み切った傷跡を丁寧に舐めあげて。
手のひらで痛みの余り感じないであろう箇所を選んで愛撫する。
唐突な出夢の様子の変化に、人識は今までのものとは別の緊張を走らせた。
出夢は両の手を人識の頬に沿え、互いの唇が触れるか触れないかの位置で、囁く。
「……気持ちイイことには――『耐え』られるかねぇ」

「最期にやらしく気持ちよく溺れさせてやるよ――僕の事だけを考えて死ね」
371関係その後 ◆G.tRihaqM. :2012/02/10(金) 22:47:40.54 ID:N2kuqQRR
『うえー、濡れたー。びっちょりちょり。ありゃ、中までぐちょぐちょだ。髪が重いー。だから雨は嫌いだよ』
『仕方ねーだろ、こればっかりは。――あー、寒ぃ。早く風呂風呂』
『零っちー、早くこっち来てよー』
『……ちょっと待て、ずぶ濡れだから風呂入りにお前の部屋に来ただけだろーが。
ベッドの端に腰掛けてかわいらしい声を作って俺を呼ぶな!』
『何だよー、濡れてたって脱いじゃえば一緒だっての。……据え膳喰わぬは男の恥って……知ってる?』
『しなるな殺すぞ! さっさと風呂入って来いよ!』
『零っちも一緒に入る?』
『入るか! ここで脱ぐな!』
『おうおう、顔を赤くしちゃってー。僕の体見て欲情しちゃう感じ?』
『するか! お前の貧弱な体形で欲情する奴がいたら感動もんだ! いいから早く行けって!』
『……なぁ、零っち。さっきからやたら風呂入れって急かすけど、それってもしかして、誘ってるの?』
『小首傾げんな! 天地がひっくり返ってもそれだけはぜってーにねえ!』
『ちっ、乗ってこねぇな。……そんなんだから未だに童貞なんだよ』
『……』
『……冗談だよ、何真っ赤になって睨んでんだよ、かわいーな。もしかして図星か?』
『うるせえ、俺の事はどうだっていいんだよ――そういうお前はどうなんだ?』
『僕? 一応どちらもそれなりに経験済みだけど』
『……? どちらも? それってどういう』
『そーかー。じゃあ、先輩として今晩僕が筆おろししてやるよー』
『人の話を聞け! つかここ来るときに「今日は欲情すんな」って約束したぞ!』
『僕が約束を守るような女に見えるかい?』
『お前は男だろーが! 何悪女気取ってんだ、殺すぞ! つーか殺す!』
『ぎゃはははははっ!』
372関係その後 ◆G.tRihaqM. :2012/02/10(金) 22:48:06.41 ID:N2kuqQRR
(……傑作だよな。結局、あの時と変わんねー)

かけてくるアプローチの違いはあれど、その行為自体は同じことだった。
あれはつい数ヶ月前の事なのに、いつボタンを掛け違えてしまったのか。
どうしてこうなってしまったのか。
人識には分からなかった――出夢にもよく分かっていないのかもしれない。
つい先程、決定的な決別を迎えたはずなのに――今は真逆の行為に及んでいる。

人識の下腹部に出夢の頭が見えた。
身体の横で膝をつき、背を丸めるようにしてそこに顔を埋めていた。
長い髪に隠れて何をどうしようとしているのかは見えないが、布越しに熱い吐息を感じる。
見えないところで何をされるのか、何をしてもらえるのか、その期待に股間が疼くのを感じた。
自分の意思とは裏腹に、身体は出夢に与えられるであろう刺激を求めている。
どんなに自制しようとも、身体が一度覚えた快楽は忘れられない。
「こいつは素直でかわいいねぇ」
笑みを含む声で出夢は呟き、指でくりくりとズボン越しに立ち上がった先端を弄る。
「……っ」
指で優しく摘むように刺激する。
指の動きは止めずに、出夢は顔を人識に向けた。
その頬は上気し、見上げる瞳は情欲に濡れている。
「物足りないって顔だね」
「……うるせえ」
「ふうん」
にやり、と笑う。肉食獣の笑み。
そのまま、視線を股間に戻す。
「素直になっちゃえよ」
唇を起立した先端に近づける。
触れるか触れないか。
焦らすようにゆっくりと近づく唇に。
ぞくり、と人識の身体が期待に打ち震える。

――再び、鐘の音が聞こえた。
373関係その後 ◆G.tRihaqM. :2012/02/10(金) 22:48:36.75 ID:N2kuqQRR
ちゅ、と布越しの先端に軽く口づけて、出夢の唇は少し上に移動する。
舌でズボンのチャックのつまみを持ち上げて咥え、じわじわと下ろしていく。
完全に下りきると押さえつけられていた物が更に持ち上がる。
下着の先はじっとりと湿っていた。
出夢はそこを唾液のたっぷりと乗った舌でべろんと舐め上げ、
「待ちきれなくてお漏らしかよ、本当にこいつは素直でかわいいねぇ」
ニヤニヤと、羞恥で真っ赤になった人識の顔を見やる。
その怒ったような表情の中に何かを待つ切実な表情も僅かに見て取れた。
「素直じゃないお前もかわいいけどな。ま、頑張って『耐え』てみろや」
出夢は離していた指をしゃぶり、唾液まみれにしてから湿った下着に近づけていく。
やわやわと刺激にならないような刺激を手のひらで与えながら、
トランクスの切れ目に指を差し込んでいく。
「……くぅっ」
ひんやりとした指が、一物に当てられた。
今まで散々焦らされてきただけに、ただ直接触られる、それだけで敏感に反応してしまう。
ぬるぬると、指で軽く擦られるだけで達してしまいそうになる。
「先っぽ、何か出てるぜえ」
指で亀頭の割れ目を擦られる。静かな教室ににちゃにちゃと湿った音が響いた。
与えられる快楽に下着の中で爆ぜそうになる。
(溜まりまくって我慢できねー餓鬼じゃねえんだ、こんなんでイかされてたまるかよ!)
人識は必死になって快楽に流されないように耐える。
陥落してしまえば楽だと頭のどこかで分かってはいるが、
動けない状況で一方的に、陵辱的にやられてしまうことに耐えられない。
しかし唐突に。
「頑張るねぇ」
ペロッと隙間から差し込まれた舌に、亀頭を弄られた。
(やばい――)
いきなり与えられた今までとは違う感覚に、持って行かれそうになる。
どくん、と脈打つ。
「――っ」

「ありゃー、せっかく頑張ったのになぁ、残念」
出夢は一旦体を起こしてニヤニヤと人識を見下ろした。
トランクスから取り出した出夢の手のひらにはべったりと精液が張り付いていた。
それを見せ付けるように長い舌で丁寧に舐め取る。
人識は虚ろな目で一瞥した。呼吸が荒い。
トランクスの中で果ててしまったため、股間がべったりとして気持ち悪かった。
「……くそっ……たれ……」
死にたい気持ちだ。
出夢には今までさんざんいいようにいじられてきたが、ここまで屈辱的なのは初めてだった。
「いいねぇ、僕は人識のそーいう顔が見たかったんだよ」
歪んだ笑顔の中には鬱な狂気。
「普通に殺し合って、僕が当たり前のように勝ってお前を殺したとしても、そういう顔はしねーもんな」
一通り精液を舐め取り終わった右手を軽く振って、側に落ちていた人識のナイフを拾い上げる。
「べたついて気持ち悪いよな、開放してやるよ」
ベルトをナイフで切り、その切っ先をトランクスの切れ目に入れた。
ひやりとした感覚が人識の全身に走る。
出夢は無造作にピッとトランクスを切り上げて切れ端を左右に広げると、
精液でべっとりとした茂みと、再び勃ちかけた一物が現れた。
それを見て軽く目を見張ったものの、すぐに口の端を吊り上げる。
「……いやまぁ、元気だねぇ」
人識は更に死にたい気持ちになっていた。
374関係その後 ◆G.tRihaqM. :2012/02/10(金) 22:48:59.43 ID:N2kuqQRR
身体を重ね、再び唇を合わせる。
人識は果てたばかりで抵抗する気力もなく、咥内で蠢く舌にされるがままだった。
口の中に自分の精の味が広がっていく。
(……苦い)
他人事のように、遠くで思う。
苦い味わい。
苦い思い。
出夢は丹念に人識の舌、歯、歯茎、頬の内側と味わいつくし、ようやく唇を離した。
どちらのものか分からない唾液が一筋、糸を引く。
名残惜しむように、その糸を掬うように舌で追い、自分の唇を舐める。
「――そいじゃま、再びお楽しみの時間だ」
もう一度、唇同士を軽く触れ合わせ、這うように身体の上に舌をずらす。
頬、顎、喉、肩、胸、腹、臍、と上から順に唇を付け、時には強く吸い上げ痕を残していく。
「くっ……」
痛みとは別の熱が人識の身体の奥で燻る。
と。
「――?」
出夢の動きが止まった。僅かに身体を起こしたのが気配で分かる。
「これ、この間の傷か?」
右の脇腹に微かに残る傷跡に合わせて、小さく、丸く、指でなぞる。
「……あぁ」
「――銃創だな」
出夢は目を細めて傷ついた子猫を母猫がそうするように、舌で舐めた。
治りかけとは言え、直接刺激を与えられればさすがに痛む。
ざらりとした感触に眉をしかめて下を見やると、じっと傷跡を見つめている出夢が見えた。
顔を伏せていて、表情はよく見えない。
「――あの時は気がつかなかった」
傷跡に、そっと口づけた。
375関係その後 ◆G.tRihaqM. :2012/02/10(金) 22:49:20.67 ID:N2kuqQRR
湿っぽい音が小さく周囲に響く。
出夢は人識の膝の辺りに腰を下ろし、背を丸めて茂みに顔を埋めていた。
時折、長い髪を鬱陶しそうに耳に掛け直しながら、その舌で汚れた箇所を丁寧に舐め取っていく。
一通り済ませた後、唇を完全に起立しているそれには触れるか触れないかの位置で止める。
微かに当たる熱い吐息に人識は身を震わせた。
「……どーも、ご無沙汰」
(……どこに声かけてんだ)
出夢はひくつくそれに小さく声をかけ、自身を主張する陰茎に軽く唇を当てる。
先の割れ目に舌を這わせて滲む液を掬う。
舌が動くたびに人識の背筋にぞくりと快感が走る。
強張る身体からどうにか力を抜こうとするが、うまくいかない。
出夢はその反応を楽しむように舌先で鈴口を弄っていたが、
やがて唇をぺろりと舐めて震える先端をゆっくりと咥え込んだ。
「……くっ」
暖かい咥内に包まれる感覚に思わず声が漏れる。自分の声に我に返り、人識は慌てて唇を噛んだ。
そんな人識の反応を、出夢は咥えたまま上目遣いで見やり、目を細めた。
奥まで咥え込んでから、先端まで、そして再び奥までとゆっくりとストロークをつけて動く。
人識の羞恥を煽るようにわざと音を立てて舐め上げ、吸い付き、徐々に動きを早めていく。
ぬめる咥内で刺激を与えられた陰茎が更に硬度を増していくのを感じる。
人識はとめどない快楽の波に襲われ身を硬くする。波に飲まれてしまえば先ほどの二の舞だ。それだけは避けたい。
出夢は目でニヤニヤと笑みを浮かべつつ、強く吸い上げながら引き上げる。陰茎が脈打つのを感じる。
堕ちるのは時間の問題だろう、しかし。
出夢はあっさりと激しく攻め立てていた口を唐突に離す。
そして、限界まで張り詰めた先端に軽く口づけた。が、それ以上は何もしない。
出夢は身体を上げ、人識の顔を見やった。
人識の頬は上気し、目尻にはうっすら涙が滲んでいる。呼吸が荒い。
その顔に浮かぶのは羞恥と――明らかな落胆と戸惑いだった。
人識のその表情を見、出夢は満足げに口の端を歪める。
「何だか物足りなさそーじゃねーか。僕のかわいいお口でイかせて欲しかったか?」
「……へっ、この程度じゃあ、イけねーな」
息も絶え絶えな人識の強がりを無視して、続ける。
「お前のよがってる姿はかなりそそるものがあるけどな。一人だけ満足しちまうってのはねーよなぁ」
そう言い放つと、出夢は人識から身体を離しゆっくりと立ち上がった。
376関係その後 ◆G.tRihaqM. :2012/02/10(金) 22:49:38.81 ID:N2kuqQRR
出夢は制服を脱ぎ捨て一糸纏わぬ姿となっていた。
汗の滲む白い肌、薄く肉のついた胸、骨の浮き出たあばら、まばらに生えた茂み。
背中に刻まれた数箇所の痕はあの時のものだろうか、薄く残る痣が肌に映える。
長く綺麗な黒髪に包まれた小さな顔は整っているが幼さが残る。
頭の眼鏡も外していた。
人識の腹の辺りで跨り、膝立ちで見下ろしている。表情はなく、ただ静かに見つめている。
対する人識は破れた制服もそのままに、血と肉片で汚れた床に転がっていた。
目が覚めてから多少時間が経ったものの、まだ体は動かせそうにない。
「こんなことならもうちょい手加減しとけばよかったかな」
冷めた口調で出夢。
「自分でするのは、あんま好きじゃねーんだよ」
言いながら、人識に見せ付けるようにゆっくりと自分の右手を足の付け根へ持っていく。
出夢自身は何もされていないのだが、今までの行為で高ぶっていたのだろう。そこは充分に潤っていた。
焦らすように秘裂の周りを愛撫し、愛液で濡らした指を二本、そっと秘裂の中に埋めていく。
「ん……」
小さく湿った音を立てて指は裂け目に入っていく。特に抵抗はないようだが、出夢は軽く眉をひそめる。
そのまま、指を抜き差しし、時折奥まで挿入し中をかき混ぜるように動かす。
静寂の教室の中、水音と押し殺した荒い息遣いが響く。
行為を続けるにつれ身体が反応し、湿った音が大きくなっていく。快楽に上気した頬に汗が一筋流れる。
少女の身体を持つ少年の無言の自慰行為から、人識は目が離せなかった。
(――そういやこいつ、こういうときはあんま声を出さないんだよな)
その扇情的な光景に一度は落ち着いた下半身が再びたぎるのを感じつつも、
一方冷めた頭の片隅でそんなとりとめのないことを考える。
今まで出夢とは幾度となく身体を合わせてきたが、人識が一方的に弄られることが多く、
出夢が快楽に溺れて嬌声を上げるところなど、そう滅多に見ることはなかった。
それは匂宮出夢にとって零崎人識に対する決定的なアドバンテージからくるものだったのだろう。
戦闘技術においても、その他のことにおいても、人識は常に遥かなる高みから見下ろされていると感じていた。
卑屈になることはなかったとしても、それでも。
対等なようでいて、僅かな引け目。小さくて大きい、僅かな裂け目。

お互い対等な関係だと思っていたのだが。
家族のような関係だと思っていたのだが。

本当は、つつけば崩れる砂上の楼閣のような、そんな脆い関係だったのかもしれない。
377関係その後 ◆G.tRihaqM. :2012/02/10(金) 22:50:24.40 ID:N2kuqQRR
自分の身体のことはよく分かっているらしい。
出夢は的確に効率的に快感を引き出し、高ぶってきているようだった。息遣いがかなり荒い。
指の動きが早まっているのが見て取れる。
それでもほとんど身体を捩じらすこともなく、声を殺してひたすら自慰行為に没頭する。
「――っ」
唐突に瞼を固く閉じ、声もなく背を逸らし、身体を震わせた――どうやら達したようだ。
どろり、と人識の腹の上に生暖かい液体が零れてきた。そのまま脇腹を伝って、床に落ちる。
しばらくその姿勢のまま硬直させていたが、やがて顔を下ろし、こちらを見やる。
その瞳は快楽に溺れたことを指し示すように潤んでいたが、冷ややかな光はそのままだった。
「……何だよ人識、結構冷静じゃねーか、つまんねー」
「いや、一人でイかれてもこっちは置いてきぼりだからな。そもそも反応らしい反応がねーじゃねーか。
興奮して欲しけりゃ声上げてよがってみろって」
出夢の息は早々に落ち着いてきた。鼻で笑う。
「言ったろ? 自分でするのは好きじゃねーんだよ。お決まりのルーティンじゃ身体反応はともかく、
僕は興奮しない。イっても頭は冷えてるよ、お前とは違う」
そう言って秘裂から指を引き抜いた。とろとろと零れ落ちる液体が人識の腹に広がっていく。
その愛液にまみれた指でそっと人識の陰茎を摘み、腰の位置を合わせ、
「最期だからな、せいぜい楽しもうや」
聞こえるか聞こえないかの声で呟きながら、じわじわと腰を落とす。
ちゅく、と音を立てて陰茎が徐々に飲み込まれていくのが見える。
「……くっ」
濡れた膣内は熱かった。奥まで飲み込まれると、その熱さに腰が蕩けそうになる。
包まれている感覚だけで昇り詰めてしまいそうになるのを、固く瞼を閉ざし、唇を噛み、どうにか堪えた。
出夢は人識の上に跨り、しばらくの間動かなかった。
378関係その後 ◆G.tRihaqM. :2012/02/10(金) 22:50:45.90 ID:N2kuqQRR

「人識、リクエストがあるんなら言ってみろよ」
「――あぁ?」
ようやく挿入した状態に慣れ落ち着いてきた頃、唐突に掛けられた言葉に人識は怪訝な顔になる。
何を言いたいのか分からない――いや、意味は分かる。が、真意が掴めない。
出夢のそういった唐突できまぐれな態度はいつものことだったが、
それでも、先程までの扱いを考えれば人識が警戒するのも無理はなかった。
期待はせずに、問いかける。
「――何でも聞いてくれんのか?」
「あぁ、僕にできる範囲ならな」
指で結合部をなぜてから人識の胸に両手を添え、緩やかなストロークで動き始める。
「……そしたらな」
そこで言葉を切り、息を呑んだ。
「こんなんさっさとやめて、俺の目の前から消えちまえ。二度と俺にその姿見せんな。
――できないとは、言わせねーぞ」
「――ふん、そんな物欲しそうな顔で格好付けられても説得力ねーっての」
予想していた答えだったのだろう。
出夢はつまらなさそうな表情を浮かべつつ、深い箇所で味わうようにグラインドさせる。
「それに、ここはそうは思ってなさそーだけどな。何で頑張っちゃうかね」
徐々にストロークの速度を速めていく。
「そこまで頑なにならなくてもなぁ」
「そりゃ頑なにもなるだろ。原因作ったのは誰だっての。逆に俺は、何でお前がそんなに俺に執着するのか
聞きてーよ。殺すんじゃなかったのかよ」
「さっきも言ったろう? 殺すのはいつでもできる。僕はお前のその意地――プライドが欲しいんだよ」
「――?」
「奪い取るんじゃあ意味がない。お前の意志で、僕に屈してもらわないと」
「……全然、意味が、分かんねー」
「要するに、お前から僕を求める程度には溺れて欲しいってことさ」
薄く、笑う。それは冷えた笑みだったが、先ほどまでの殺意が揺らいだように思えた。
「どうせするんだ。お互い気持ちイイ方がいいだろう?」
そこで言葉を切り、本格的に腰を打ちつけ始める。

「――あぁぁっ」
何度目かの寸止めをされた瞬間、切なげな声が上がった――少し遅れて、人識はそれが自身の声だと気づく。
出夢に執拗に攻め立てられ、しかし昇り詰めることは許されず、ただひたすらに寄せては返す波に耐え続けていた。
どんなに快楽に追い詰められたとしても、決して明け渡すつもりのない最後のプライドだったのだが。

それが、あっさりと崩れた。

たがが、外れた。
どうにか抑えようと足掻くものの、一度出してしまえばもうどうにもならない。
人識はそれまで堪えていたものを取り戻すかのように、出夢の腰の動きに合わせて声を上げる。
そんな人識を見やり、出夢は動きを止め、満足気に唇の端を歪めて笑った。
「――こりゃーまた、随分と好い声で鳴くじゃねーか」
ギリギリまで腰を浮かし、落とす。その衝撃に再び人識の口から声が漏れる。
「人間素直が一番ってこった」
379関係その後 ◆G.tRihaqM. :2012/02/10(金) 22:51:12.50 ID:N2kuqQRR
「――なあ、人識」
それまでの激しさとは打って変わって、ゆるゆると人識をいたわるように優しく動く、優しく囁く。
「お前をイかすも殺すも僕次第だ」
身体を合わせ、耳朶に唇を寄せ、くすぐるように囁く。
緩やかな動きは、今まで与えられていた刺激には程遠い。物足りない。
快楽に溺れてしまいたいのに、そこまでたどり着けない。もどかしい。
「もういいだろう」
囁きが、脳髄に響く。
耳元と、陰茎のみがやけに熱い。
「僕の物になっちまえよ」
包まれていたそれが、きゅっと締められる。
それは甘い誘い。
いっその事、堕ちてしまえばいいのかもしれない。
しかし。

(――どうして、今さら?)

僅かに残る冷静な部分で、人識は動揺していた。
確かに出夢の精神はかなり不安定だ。感情のぶれ幅はかなり大きい。
しかしそれでも、一度決別し、標的にした人間に対して搾取することは在り得ても譲歩することはない、はずだ。
ましてや、懐柔などありえない。
あそこまで徹底的に虐殺し切って、壊し切って、捨て切って、断ち切ったものを。
それが、どうして。

(――これじゃあ、まるで)

教室で、出会う前の。
何事も、なかったような。
そんな錯覚さえ抱いてしまうような。
そんな幻想さえ抱いてしまうような。

思わず手を取ってしまいそうな、甘い、誘い――だが。

(――本当にそれでいいのか?)

ともすればそちら側に傾いてしまいそうな自分に、どうにか抗おうと力を振り絞り出夢の顔とは逆の方向に顔を背ける。

――ふと。

恨めしげにこちらを向くクラスメイトと目があった。
上半身は肉塊と化しており、冷め切った赤黒い塊がかろうじて原型を止めている首と下半身を繋ぎとめている。
生命を感じさせない、鈍く濁る虚ろな瞳。そこに、だらしなく快楽に緩んだ自分の顔が映る。

瞬時に頭が冷えた。

彼等とは生きているときにはほとんど関わりがなかったが、
それでも――こんな不条理な出来事に巻き込んでしまって、みっともないところを晒して、
許せるわけがない、許されるわけがない、だろう。
(俺は何を血迷ってたんだ。そうだよな、お前らが巻き添えでこんな目に遭わされたのに
――俺だけがそんなん、駄目だよな)
堅く瞼を閉ざし、顔を天井に向ける。
荒い息を飲み込んで、理性と自尊心とを持って、誘惑に抗う。
「ふざけんな……ここまでしておいて、今さら何言ってんだ」
快楽によって忘れさせられていた怒りを、呼び戻す。
「俺は、お前の物になんか、ならねーよ」
強い意志で持って、想いを振り払う。未練を、断ち切る。
380関係その後 ◆G.tRihaqM. :2012/02/10(金) 22:51:33.53 ID:N2kuqQRR
「――そっか」
間髪入れず返ってくる出夢の声。冷ややかな、声だった。
動きを止め、重ねていた身体を離し、無表情で人識を見つめる。
「そうかよ」
緩やかな動きが一転、今までにない激しさで腰を打ちつける。
唐突に与えられた激しい刺激によって、背筋に快感が走る。
一気に上り詰めさせられる。
絞り上げられる。
意識まで絞り取られるように、霞がかったように持っていかれる。
「……ない……なら」
出夢が何か呟くが、よく聞き取れない。
「…………やる」
言葉は途切れ、更に激しく打ちつけられる。リズムに合わせて長い髪が乱れるのが妙に艶めかしかった。
その刺激で出夢も達しそうなのだろう。それまでにない程にきつく、きつく、締めあげられる。
「――っ」
肌を打つ音を立て、出夢の腰が突き落とされた瞬間、限界まで膨れ上がった陰茎の先から白濁がほとばしった。
それが最奥を叩きつけるのと同時に、痙攣するように何度も何度も締めあげられる。
顎を上げ、声にならない叫びを上げる出夢。
人識から最後の一滴まで絞り取ろうと、脈打つ陰茎を何度も執拗に締め付ける。

(……やっぱ、俺は、出夢には、勝てねーや)

射精による倦怠感と蓄積した疲労に身体が耐えられなくなったのか、やけに重い瞼が徐々に降りていく。
もう、考えるのも億劫だ。
このまま、闇に身をゆだねてしまおう。

薄れゆく意識の中で人識は思う。
あのときの、出夢の呟きは。

『僕の物にならないのなら』

霞む視界の中、紅い唇の動きが、やけにはっきりと見えた。

『お前なんか壊してやる』

冷ややかなはずのその声が。
表情のないはずのその顔が。

泣き出しそうに感じたのは、はたして気のせいだったのだろうか。
381関係その後 ◆G.tRihaqM. :2012/02/10(金) 22:52:00.41 ID:N2kuqQRR
『――なぁ、出夢。起きてるか?』
『……ん、あぁ?』
『悪ぃ、起こしちゃったな』
『……んー、だいじょぶ』
『あのさ』
『……なんだよ』
『――どうして、俺なんだ?』
『……なにが?』
『いや、こういうの』
『……』
『俺とお前じゃ、何にしたって差がありすぎる。相手をしてても暇つぶしにもならないだろうが』
『……へ? 何、人識、お前そんなことで悩んじゃってるの?』
『……いや、悩むってより、単純に疑問に思ったと言うか、何てーか……』
『そういうのを悩むって言うんだろう?』
『……』
『……そうだなぁ――僕がお前を愛しちゃってるから、じゃあ駄目なのか?』
『――何だよその真顔で真っ向からの愛の告白』
『せっかく手に入れた玩具だからな、そうそう飽きはしないさ』
『って、俺は玩具かよ!』
『そうさ。人識、お前は僕の物だ』
『てめぇ……』
『へん、悔しかったら僕を本気にさせてみろってんだ』
『畜生……』
『いつか本気で殺りあって、お前が僕に勝ったら対等だって認めてやるよ。それまでは僕の玩具だ』
『……くそったれ……いつか絶対に、殺して、解して、並べて、揃えて、晒してやる……』
『ぎゃは、せいぜいその決め台詞が生きる日が来ることを楽しみにしてるよ』
『……』

『――だから』
382関係その後 ◆G.tRihaqM. :2012/02/10(金) 22:52:22.42 ID:N2kuqQRR
出夢は繋がったまま人識に自分の身体を預けていたが、やがて上体をゆっくりと持ち上げる。
人識は眠っているのだろう、離れても身じろぎもしなかった。
名残惜しげに相手の身体に纏わり付いていた黒髪を、腕でかき上げて後ろに流す。
人識の顔を見つめるその表情は、まだ昂揚から覚めやらぬ様子と――戸惑い、苛立ち。

(――どうして、こいつはここまで僕の心を引っ掻き回す――)

決別した、はずだった。
躊躇ない、はずだった。
心の赴くままに徹底的に壊してしまえる、はずだった。
揺らぎない殺意を思いのままにぶつける、はずだった。
決して忘れることのない痕を刻み込める、はずだった。

途中まではできていた、のだろう。
戦いの最中、人識が意識を失ったときに、全てを終わらせることはできた。
しかし、力なく横たわるその姿を見て――戯れで、最期にもう一度、と思ってしまった。
匂宮出夢という存在を身体の奥深くにまで刻み込んで。
苦痛を与えて、恥辱を味あわせて、快楽に溺れさせて。
その存在がどういうものだったのかをきっちり思い知らせてやろう、と思ってしまった。
――それは決して未練ではない、はずだ。

しかし――確定していたはずの気持ちが、揺らいでしまった。
取るに足らない、小さな傷跡を見た瞬間、揺らいでしまった。

あの館で再会したとき、そんな傷を負っている素振りはまったく見られなかった。
それどころか、普段の人識からしたら滑稽なくらい、自分のことを心配していた。
滅多に崩すことのない笑顔を崩して、曇った顔で自分のことを見ていた。
確かに自分も決して軽くはない傷を負っていたが、明らかにおかしな様子だったが。
そして、人識のそれは取るに足らない小さな傷だったが。
そんな素振りを見せずに済むほどには軽くなかっただろう。

それでも――それを省みずに庇うことすらせず。
ただひたむきに自分のことを見てくれた。
傷を負った自分の心配をしてくれた。
様子のおかしい自分を気遣ってくれた。
あのときには気づけなかった、そんなことをふと思い出して。

切り捨てたはずの想いが、疼いてしまった。

抑えられなかった。
足掻いてしまった。
あまつさえ、断ち切ったそれを繋ぎなおそうとすらしてしまった。

拒絶されて、胸が痛んだ。
自分から手放した物だったが、答えは分かりきっていたが、それでも。
改めて言葉で、態度で、徹底的に拒絶されて。

ものすごく、胸が痛んだ――いや、今も痛む。

それは『弱さ』の現れ。
383関係その後 ◆G.tRihaqM. :2012/02/10(金) 22:52:40.70 ID:N2kuqQRR
『気に入った相手がいるなら――そいつの大事にしているもの壊せ。
そいつが日常だと信じている世界を突き崩せ。自らの存在を相手の魂に刻み込め。
友情よりも愛情よりも深い憎悪を、根深い憎悪を、すべてこちらに向けさせろ』

あの男の低い声が、今も耳に憑いて離れない。
そして、その言葉を受けここまで行動に起こしてしまった以上、後戻りはできない――分かっては、いるのだが。
取るに足らない小さな傷跡を見てしまった瞬間、ふと、あの心地よさを思い出してしまった。
快楽と同じだ。一度身体が覚えてしまった味は、忘れることができない。

人識を見下ろす出夢の中では、様々な感情が渦巻いていた。
焦り、苛立ち、戸惑い、怒り、そして――
(――この状態はまずい。このままじゃあ、また『ずれ』ちまう――)
せっかく元の状態に強制的に戻したというのに、この不快な感情に引きずられてしまうのはまずい。
今度こそ戻れなくなる。
匂宮兄妹の存在の意味が消滅してしまう。
例え憎悪で繋ぎとめたものだとしても、絆があるだけで、駄目だ。
会えば思い出す。思い出せば揺らぐ。弱さが現れる。
それでは行ってきたことの意味がない――断ち切ってしまわなければ。

「……殺して、しまおうか」

零れた呟きはまるで他人のそれだった。

指が、無意識に頬の刺青をなぞっていた。
僅かに癖のある髪を、梳いていく。
軽く開いた唇に紅を引くように線を引く。
閉ざした瞼に、長いまつげに触れる。

最期にもう一度、軽く口づけをする。

決断してしまえば、体は動く。
決断に追いついていけない心を置き去りにして、出夢は淡々と行動に移す。

果てた後も繋がったままだった身体を、ようやく離した。
こぷり、と音を立てて、足の間から白濁した液体が流れ落ちていく。
それが足を伝うのにも構わず人識の身体から立ち上がり、脇に放ってあった制服を拾い上げる。
塗れていた血はすでに乾いていた。
血で赤く染められているために多少目立つが、まさか裸で出て行くわけにもいくまい。
まぁ、そう目撃されることもないだろう、と気にすることなく袖を通した。
下着は、ない。
どこかその辺の死体から剥がすこともできたが、もうどちらでもよかった。
セーラーのタイを留めて、靴を履いて、眼鏡で髪をかき上げて。
服装を整えた出夢は足元を見下ろした。視線の先の人識は――ひどい有様だった。
上着は引き裂かれ、シャツは食いちぎられ、スラックスと下着はナイフで切られて広げられたまま。
丸出しの局部は体液やら何やらでぐちゃぐちゃだ。
(……まぁ『一喰い』で全てをぐちゃぐちゃにしちまえば分からねーか)
人識に対する最期の情けか。
やけに冷めた頭でそんなことを考えつつ、出夢は腕を頭上に振り上げた。
384関係その後 ◆G.tRihaqM. :2012/02/10(金) 22:52:58.52 ID:N2kuqQRR
「――やれやれ、我が家では義務教育中の不純異性交遊は禁止なんだけどねえ」
「――!?」
おどけた声と同時に出夢の首筋にひやりとした感触が与えられた。左右にそれぞれ刃物が添えられているようだ。
完全に背後を取られている――まったく警戒していなかった訳ではないが、迂闊だった。
(……ここ数日で二度も背後を取られるたぁ、僕もやきが回ったもんだ)
下手に動けば首を落とされるだろう。出夢は振り上げたままの手をゆっくりと顔の位置まで下ろす。
「君のようなかわいらしい子にこういうことをするのはあまり気が進まないんだけど、
これ以上黙って見ている訳にはいかなくてね」
背後の声は飄々としてつかみどころのないものだったが、そこには若干の苦味が混じっていた。
声の質からすると男性、年の頃は二十代半ばと言ったところか。
「……あんた、誰だ」
問いかけつつも、先ほどの男の言葉を反芻する。
『我が家』という単語が出てくるということは、人識の『家族』――零崎一族の誰かだろう。
しかし、背後の男は出夢の問いかけを無視する形で続ける。
「ここまでなら単なる『お友達同士の喧嘩』で済ませてもいいんだけどねえ。いやぁ、いじましい。
何ともかわいいものじゃないか、うふふ。だけどねぇ」
そこで声の質がそれまでのおどけたものから一変する。
「――これ以上の事をするのならば、君を我ら一族に対して仇を成すものとして捉えることになる」
一呼吸置いて。

「――零崎を始めることになる」

その言葉と同時に、出夢に向けて身を切らんばかりの凄まじい殺気を放つ。
並みのプレイヤーならばそれだけで戦意を挫くほどの凄まじい殺気を放つ。
――しかし。
背後を取り、相手の動きを封じた、そこに生じる男の一瞬の隙にもならない小さな隙をつき、
出夢は人識を挟んで向こう側に飛びのいた。
ほんの僅か動きの遅れた相手の凶器は、出夢の首の皮一枚と髪の毛一房を捕らえただけだった。
続く動作で振り返り、男と真っ向から対峙する。
年の頃は二十代前半だろうか、背が高く、手足が妙に長く、細身の男だった。
ぱっと見、針金細工を思い起こさせる体格だ。整った顔に銀縁眼鏡。後ろに撫でつけた長髪。
三つ揃いのスーツ姿にネクタイを締め、手には大振りの奇妙な形の鋏を持っている。
(……家族……大鋏)
その姿を見て出夢は忌々しげに舌打ちした。一度だけ、遠目に見た。その恐ろしさは噂には聞いていた、が。
(――マインドレンデルか!)
零崎人識の兄、零崎双識。二十人目の地獄。《自殺願望》を持つ殺人鬼マインドレンデル。
――正直、今の出夢の状態でマインドレンデルを相手取るには厳しいものがあった。
人識が思っていたほど、出夢は余裕があったわけではない――残っているのはせいぜい普段の六、七割程度の力だ。
今やりあえば、確実に負けて殺されるだろう。
385関係その後 ◆G.tRihaqM. :2012/02/10(金) 22:53:39.25 ID:N2kuqQRR
しかし。
「ぎゃはははははは!」
目をぎらつかせ、凶悪に、高らかに笑う。それまでの様子とは打って変わって、
普段通りの匂宮出夢がそこにはあった。
「そうだよ、そうこなくっちゃあなぁ。まったく、僕ともあろーものがらしくもなく浸っちまった。
キャラじゃねーんだよな、こういうの」
床に転がる人識を一瞥した後、目の前に立ちはだかる双識に全神経を集中させる。
その瞳には迷いはない。狂乱の光をたたえて双識の姿を映す。
両腕を上げ、構える。
「おにーさんがその気なら、殺戮の時間はもう欠片も残っちゃいないが、今日は特別に奮発しちまうか。
何せ不完全燃焼で身体の奥が熱く疼いちまってってよぉ――ぎゃは、僕と遊んでくれや、おにーさん」
「いやいや、待ってくれ。私は君が素直に人識くんから手を引いてくれるのならば、
無為な殺傷を行うつもりはないんだが」
「いやいやいや、僕をその気にさせといて何言ってんだよ。こうなったら、選択肢は一つだろーよ。
こんなかわいい女の子にここまで熱烈に誘われてもおにーさん、引いちゃう訳?
まさかそんな萎えるこたー言わねーよなぁ」
「うーん、女の子をどうこうするのはあまり趣味じゃなくってね」
「はん、零崎のくせに紳士ぶるなよ――あぁ、僕にその気にして欲しいってかぁ? マゾかよあんた」
出夢は言葉を切り、厭らしく唇の端を歪める。
「――あんたの弟は好い声で鳴いてくれたぜえ」
「そうか――そこまで言うのならば」
出夢の挑発に双識の殺気が膨れ上がる。自殺願望を持ち直し、構える。

「――零崎を、始めよう」

「ぎゃははは! 兄弟揃っていい顔するじゃねーか! せいぜいおにーさんのテクで僕を満足させてくれや!」
殺気と殺気がぶつかり合い、張り詰めた空気が教室内を包む。

ふと、片方の殺気が緩んだ――双識が自殺願望をゆっくりと下ろしていく。
張り詰めた意識はそのままに、出夢は僅かに面白くなさそうな顔になる。
「おいおい、おにーさん。こっちがせっかくその気になってるのにどうしちゃったよ」
「一つ提案がある――お互い、ここはなかったことにしないかい?」
「あぁん? さっきまでの殺る気はどこへ消えちゃったよ? ……まさか、おにーさん怖気づいちゃった?」
「君をここで殺すのは簡単なことだ――いや、簡単には済まないかも知れないが、私は必ず勝つよ」
「ぎゃはははは! 言ってくれるじゃねーか。僕なんかじゃ相手にならねーってか」
「確かに君は強いだろう。しかしね、家族を守るためになら、たとえこの身が朽ちようとも私が勝つよ」
「――へぇ。かっくいぃねぇ、おにーさん。その覚悟、さっそく試してみよーかぁ」
「いやいや、人の話を最後まで聞いてくれよ、お嬢さん」
双識はそこで一旦言葉を切り、自殺願望を背に戻し、両手を広げ、戦意がないことを示す。
「――君はやりすぎたんたよ。人識くんを狙うなら、こんな派手なことをするべきじゃあなかった」
「……僕が何を考えて行動しようと、それは僕の勝手だ」
「そりゃ、そうだがね――君も気づいているだろう? 表には、一般人が集まってきている。
今はまだ遠巻きに様子を見ているだけだが、勇敢な国家権力がこの場に踏み込んでくるのも時間の問題だ」
双識に言われるまでもなく、出夢も先程から表の気配は感じていた。
静か過ぎる学校に不信を抱いたのだろう。遠巻きに、校内の様子を伺っているのが分かる。
戦意で高ぶっていたときにはどうにかしてしまえばいいと高をくくっていたが、さすがに時間がかかりすぎた。
下にはかなりの人数が集まっている。目撃者を残すことなくどうこうするのは、もう不可能だと思われた。

――確かに、迂闊だった。

冷静さを欠いているのは分かりきっていたが、それにしても行動が稚拙すぎた。
全てが終わった今になればそれは理解できるが――あの精神状態では、そこまで考えられなかった。
衝動の赴くままに、彼に関係するものたちを虐殺してしまった。
「私たち一族は、彼らの世界に晒されたくはない。黙っていた人識くんに免じて敢えて訊かないが、
君も似たような立場なんだろう?」
出夢は黙ったまま双識を睨みつける。
その沈黙を肯定と受け取り、双識は続けた。
「もう時間がない――だから先程の提案だ。私は一族に仇をなした君を追わない。この先もだ。約束しよう。
その代わり、君もここは素直に引いて欲しい。……どうだい?」
386関係その後 ◆G.tRihaqM. :2012/02/10(金) 22:54:02.45 ID:N2kuqQRR
出夢は僅かの間考え、表情を緩め、構えを解く。戦意は引いていた。
「おーけーおーけー、おにーさんの条件を呑もう。確かに僕もやりすぎた。せっかく処分を免れたのに、
これがばれて更に明るみに出たら、また僕らの処分を再考されちまう」
双識を見据えたまま、じりじりと窓に近づく。
「それに」
後ろ手で窓の鍵を開け、一気に開く。血の臭いが充満している室内に、冷えた外気が流れ込んできた。
窓の桟に手をかけ、倒れたままの人識に顔を向け、笑顔を見せた。
それは匂宮出夢にはおよそ似つかわしくない、晴れやかな笑顔だった。
「お互い生きてりゃ、チャンスはいくらでもあるからな」
じゃ、と桟に足を掛けようとして、ふと振り返り口を開く。
「――それにしてもおにーさん、犬も喰わねぇ喧嘩に口を挟むたー野暮だねぇ」
まぁ、僕は男だけどよ、と出夢は喉で笑う。
「こいつはただの痴話喧嘩――違うな、別れ話だ。あんたのかわいい弟は僕が振ってやった。
おにーさんが心配するよーなこたぁ、もう起こらねーから安心しろよ」
そして、思い出したかのように、付け加えた。
「あぁ、そうだ。僕は出来損ないの失敗作だからな、生殖機能なんつーもんはそもそも持ち合わせちゃいねぇ。
その辺も安心してくれや」
にやり、と口の端を歪めてスカートの裾を軽く摘まみ、挑発するように足の間から零れ落ちる液体を見せ付ける。
絶句する双識を見て高らかに笑い、満足げな表情で窓枠に足を掛け、桟を蹴り宙に跳んだ。

双識はしばしその場に立ち尽くしたまま出夢が飛び出した窓を見つめていたが、額に指を当て、
首を振って人識の元に向かう。
派手に飛び出してくれたものの、外が騒ぎにならなかったところを見ると不用意に下りたわけではなさそうだ。
まぁ、彼女(彼?)はもうそんなヘマはするまい、とそちらからは意識を外す。
倒れたまま動かない弟の状態を見て軽く眉をひそめたものの、近くの学生から上着を借りてその身体を包み、
肩に担ぐ。
窓に背を向け身体をかがめて扉をくぐろうとして背後を振り返り、双識は苦笑混じりに呟いた。

「――君は不合格だよ、お嬢さん」

遠くで、哄笑が聞こえたような気がした。
疲れた表情で再び首を振り、双識は振り返ることなく教室を後にする。

残るのは、肉塊と、乾き始めた血と、ただひたすらの静寂。
そして。

――もう、聞く者のいない鐘の音。
387関係その後 ◆G.tRihaqM. :2012/02/10(金) 22:54:45.94 ID:N2kuqQRR
『――だから』
『だから?』

『誰にも殺されるんじゃねーぞ、人識。お前の命は僕の物だ』
388関係その後 ◆G.tRihaqM. :2012/02/10(金) 22:55:11.88 ID:N2kuqQRR
「――ふざけんな、俺は物じゃねっつーの……」

人識が瞼を開けると、そこは見慣れた病院の天井だった。
(……夢か……ちくしょー……やな夢見たなー……)

現在、教室での出来事から数日後。
彼は発見された後、双識の知人の庇護の下、その傘下の病院に入院していた。
怪我自体は大したことはなく、自己診断ではあと数日もあれば退院できるほどには回復したが、
診察に来る医師の表情を見る限り、まだ退院の許可は下りそうになかった。

「人識くん、入るよ」
声と共に病室の扉が開き、彼の兄である零崎双識が中に入ってきた。
「おー、兄貴ー」
手をひらひらさせて、挨拶。
「少しは食べたかい? 眠れたかい?」
足で引き戸を閉めつつ手に持っていた荷物をベッド脇の棚に置き、棚の横に立てかけてある椅子を出して座った。
荷物から林檎を一つ出して、軽く拭き、持参したぺティナイフで皮を剥き始める。
人識は横になったまま、それを何ともなしに見ていた。
静寂の中、双識は黙々と皮を剥き続けていたが、半分剥き終えたあたりで声をかける。
「――なぁ、兄貴」
それは独り言のような、小さな声だった。
「ん? 何だい?」
「俺、いつ退院できるのかな」
「先生はあと二週間ほど様子を見ればいいって言ってたよ」
それは彼の体の様子ではなく世間の様子だったが、そこは敢えて告げなかった。
「かはは、二週間もかよ。入学式に間に合わねーじゃん」
乾いた笑いを浮かべ、黙って皮を剥き続ける兄に向かって続ける。
「ネクタイの締め方だって練習してねーし、新しい制服もまだ袖通してねーし。
俺、全然入学準備できてねーんだけど、退院をもうちょい早めてもらうことできねーかな」
「……」
「入学初っ端から欠席してたらクラスで浮いちまうし。……まぁ、それは出てよーがどっちでも一緒だろーけど。
でも、クラスにかわいい女の子とかいるかもしれねーし」
「人識くん」
兄の硬い声に只ならぬものを感じ、人識は思わず口を噤む。
「すまない。一つ、黙っていたことがある」
「……何だよ」
「――汀目俊希は、死んだよ」
「……あぁ? 何だよそれ。俺生きてるじゃん」
双識はその言葉には取り合わず、続ける。
「今回の『事故』は内々で処理し切れなくて表沙汰になってしまった」
「……」
「現場で実際に何が起こったのか、私には窺い知ることはできないが」
そこでちらりと人識の顔を見やるが、その顔から彼の感情を読み取ることはできなかった。
「学校の中は凄まじいことになっていたよ。全ての教室から職員室、果ては飼育小屋の中にいた鶏や兎まで、
敷地内にいた全ての生物が――皆殺しだ。いたるところが血の海、肉の海だったよ」
関係者を根絶やしだなんて零崎一族でもあるまいし、と双識はおどけるが、人識の表情は動かない。
「表向きには『何者かが持ち込んだ謎の危険物が偶然爆発してしまった不幸な事故』として処理された。
――あぁ、白々しいのは百も承知だ。こんなもの、何でもいいから理由がつけばいいんだよ。
彼らは自分たちの常識で測れない物事は、さっさと処理を済ませて終わったものとしてしまいたいんだ。
――おっと、ごめん。話が逸れたね。そう、だからこの件は報道もされていない。ただ」
皮を剥き終えた林檎をナイフで四等分に割り、種を除く。
「人識くん、君はそんな中でただ一人生き残ってしまったんだよ。
一般人しかいないはずの中学校という場で、あのような特殊な状況下で生き残ることができてしまった、
君のような『生存者』は表でも裏でも目立ちすぎる。
ただでさえ一族の中で君が学校に通うのをよしとする者は少ない。その上、君の存在は零崎の秘中の秘だ。
今回の件をそのままにしてしまえば、その存在を嗅ぎ付けられるとも限らない。 
そのため、一族総意でこれを期に『汀目俊希』という存在を抹消してしまおう、となってしまった」
そこで双識は手を止め、人識に視線を向ける。見つめる瞳に僅かに苦悩の色を見せ、頭を下げた。
「――ここまでの事態になってしまうと、私にも庇いきれなかった、すまない。だから――」
389関係その後 ◆G.tRihaqM. :2012/02/10(金) 22:55:45.70 ID:N2kuqQRR
「だから何だよ!」
勢いよく体を起こし、こちらを向いて人識は声を荒げた。
「だから『汀目俊希は死にました』ってか、ふざけんな! 俺は生きてるじゃねーか!」
横に腕を振り、何度もベッドのパイプを殴りつける。加減なく、遠慮なく、何度も打ち付ける。
その勢いに双識は思わず目を見張った。ここまで感情を爆発させた人識を見ることは滅多になかった。
「一族総意? 勝手なこと言ってんじゃねーよ! 俺の人生何だと思ってんだよ! 俺は高校通って青春すんだよ!
幸せ高校生ライフをエンジョイすんだよ! かわいい彼女作ったり何だりで楽しくなっちゃったりすんだよ!
それがこんなくだらねーことでおしまいかよ! なんなんだよ、何でだよ!
これから何かが起こりそうな感じだったのに、そんな誰かに出会えるはずだったのによ!
いつもこうだ! ようやくそれに届きそうになると邪魔が入ってかっさわられるんだよ! 畜生!」
堰を切ったように怒鳴り散らしていたが、やがてその勢いも弱まり、人識は双識から顔を背けた。
「――それに」
窓の外を見やる。
「――それに、やっと鬱陶しい奴ともおさらばできたってのに」
それは双識の耳に僅かに届くくらいの、小さい力ない呟きだった。
人識の言葉が途切れたのを見て、双識は静かに告げる。
「――高校生活を楽しみにしていた人識くんにとっては残念だが、
ここで無理を通してもきっとまた同じことが起こるだろう。これは――」

「決定事項だ、諦めなさい」

切った林檎を皿に盛ってフォークを添えて人識に渡し、切り屑の後始末をし、部屋を出ようとする双識。
人識は窓の外を見たまま兄の背に問いかけた。
「そういや、俺を最初に見つけたのは兄貴だったんだよな」
「そうだよ」
「……教室に、俺の他には誰かいたか?」
「――いや」
「そっか――俺、どんな状態だった?」
「完膚なきまでにズタボロだったな。人識くんともあろう者が、どんな相手と対峙したら
あそこまでになるんだろうね」
「……」
「じゃ、退院まで大人しくしてるんだぞ。私はしばらく顔を見せることができないが、
退院のときは困らないようにしておくから」
林檎をちゃんと食べなさい、と言い残し、双識は部屋から出て行った。

兄を見送ることもなく、人識は窓の外に顔を向けたまま、動かなかった。
いつの間にか春はそこまで来ていたらしい、窓から見える中庭の桜が淡く咲き始めていた。
桜をぼんやりと見つめながら、受け取った林檎を一口齧る。心に沁みる優しい甘味が口の中に広がる。
機械的に口を動かしているうちに、目に映る桜が滲んでいく。

あの時の、出夢の言葉が脳裏によぎる。

『僕の物にならないのなら』

視界がぼやける。

『お前なんか壊してやる』

「何でだよ……お前がしたかったのはこんなことだったのかよ、出夢」
膝を立て、顔を埋める。
「こんなくだらねーこと……意味分かんねーよ……」
鼻の奥が痛い。目の奥が熱い。喉に何かがつかえる。歯を食いしばってないと何かが決壊しそうだった。

「……本当、傑作すぎるっての」

口の中でごちる、と――雫が一粒布団に落ちた。
人識は後から続く雫を抑えることができず、抑えようともせず、ただ落ちていくそれを見つめていた。
悲しい、のだろうか。でも、何が悲しいのか、分からない。
静か過ぎる病室で、涙はただ零れていく。
390関係その後 ◆G.tRihaqM. :2012/02/10(金) 22:57:23.05 ID:N2kuqQRR
汀目俊希――零崎人識。
彼にはもう。

――もう、鐘の音は、聞こえない。


以上です、お邪魔しました
391名無しさん@ピンキー:2012/02/12(日) 01:21:15.27 ID:WIpwHi8/
gj
392あざなえるもの01/15 ◆vpePLp7Z/o
クトゥルフスレが落ちちゃったので・・・・・・
アザトース×ニャルラトホテプ擬人化リョナ、ややスカありです。

彼女は自分の居る場所を見渡した。

古く、埃の溜まった屋根裏部屋だ。
頭上には黒ずんだ梁が伸び、傾いだ壁がこちらを押しつぶすかのように迫ってくる。
曇った硝子窓から昇ったばかりの月が赤い光を投げかけていた。
部屋に残された家具は、姿見だけだ。

彼女は部屋を出る前に姿見を見るのも悪くないと考えた。
何の問題もないはずだが、点検するに越した事はない。
もしかしたらとんでもなく時代遅れなものを身にまとっていたり、
何かが多かったり足りなかったりする可能性もあるではないか。

姿見の中には、黒い髪と黒い肌を持つ女が映っている。
年の頃は二十代半ば辺りだろうか。
彫りの深い、整った顔立ち。
つややかに、腰まで流れる髪。
長く細い手足と、各所にバランスよく、たっぷりと盛られた肉。
身にまとうのは漆黒のパーティドレス。
鎖骨から下を完全に覆い隠しているのに、かえって豊かな曲線を強調するデザインだ。

彼女は鏡を見て、ちょっと通俗的過ぎるかなと眉をひそめる。
しかしこれから会う人間たちは、芸術性など期待するのも愚かな者たちであるし、
これで丁度良いか、と妥協することにした。
さて、出るかと考えたときのこと。

大きなきしみと共に、埃が舞い落ちる。
生ぬるい臭気と、遠方より響く太鼓。
その向こうから膨れ上がる、気配。

彼女は溜息をついて振り返る。
「我があるじ」
口を開いてから、今の姿に引きずられた言葉を使ってしまった事に、
彼女は舌打ちしたい気分になる。
おそらく主は彼女の言葉を理解出来なかっただろう。
いや、いつも、自分の常態であっても主は理解した試しなどないが。