ヤンデレの小説を書こう!part30

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1名無しさん@ピンキー
ここは、ヤンデレの小説を書いて投稿するためのスレッドです。

○小説以外にも、ヤンデレ系のネタなら大歓迎。(プロット投下、ニュースネタなど)
○ぶつ切りでの作品投下もアリ。

■ヤンデレとは?
 ・主人公が好きだが(デレ)、愛するあまりに心を病んでしまった(ヤン)状態、またその状態のヒロインの事をさします。
  →(別名:黒化、黒姫化など)
 ・転じて、病ん(ヤン)だ愛情表現(デレ)、またそれを行うヒロイン全般も含みます。

■関連サイト
ヤンデレの小説を書こう!SS保管庫 @ ウィキ
http://www42.atwiki.jp/i_am_a_yandere/

■前スレ
ヤンデレの小説を書こう!Part29
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1270336603/

■お約束
 ・sage進行でお願いします。
 ・荒らしはスルーしましょう。
  削除対象ですが、もし反応した場合削除人に「荒らしにかまっている」と判断され、
  削除されない場合があります。必ずスルーでお願いします。
 ・趣味嗜好に合わない作品は読み飛ばすようにしてください。
 ・作者さんへの意見は実になるものを。罵倒、バッシングはお門違いです。議論にならないよう、控えめに。

■投稿のお約束
 ・名前欄にはなるべく作品タイトルを。
 ・長編になる場合は見分けやすくするためトリップ使用推奨。
 ・投稿の前後には、「投稿します」「投稿終わりです」の一言をお願いします。(投稿への割り込み防止のため)
 ・苦手な人がいるかな、と思うような表現がある場合は、投稿のはじめに宣言してください。お願いします。
 ・作品はできるだけ完結させるようにしてください。
 ・版権モノは専用スレでお願いします。
 ・男のヤンデレは基本的にNGです。
2名無しさん@ピンキー:2010/05/07(金) 22:39:50 ID:sWA4UA6M
スレタイ全角かよww
3名無しさん@ピンキー:2010/05/07(金) 22:45:12 ID:sWA4UA6M
おっと人集まるまでsageない方がいいのかな
4名無しさん@ピンキー:2010/05/07(金) 23:13:53 ID:PHFW/hRZ
スレ立てお疲れ様です
前スレ>>732 >>738 GJです
5名無しさん@ピンキー:2010/05/07(金) 23:37:07 ID:h7KpWxMN
>>1
前スレ二作品投下されてたのGJしようとしたら容量オーバーしてたでござる
6サトリビト:2010/05/08(土) 08:05:04 ID:mXfirx1d
サトリビト第9話投下します
よろしくお願いします。
7サトリビト:2010/05/08(土) 08:05:42 ID:mXfirx1d
「今夜は雷を伴った強い雨が・・・」
ザザッーーー
今日は朝から雨が降っていた。それはもうザーザーと。
学校から帰っても雨がやむ気配はなく、ニュースでは今夜は雷まで鳴るとか言っている。
こんなとき考えるのは陽菜と恭子ちゃんのことだ。
恭子ちゃんは今日は両親がいると言っていたから心配事は何もないが、問題は陽菜だ。
陽菜は現在隣の家に一人で住んでいる。17歳だからたかが雨や雷くらいでどうって事はないと思うが、それでも心配してしまう。
でもそれくらいでメールや電話をするのは・・・なんとなく気が引けるんだよな。
う〜ん、でもどうしようか?
「・・・なにさっきからう〜う〜うなってんだよ」
やっぱ一応メールくらい送ろうかな?
「シカトすんなや、コラァ!!」
「うおぉ!?」
目の前に閻魔だ・・・ウホン・・・ちょっと不機嫌そうなお姉さんがいた。
「なにさっきからう〜う〜うなってんだよ。ウザイんだけど」
姉ちゃんはソファで寝ころびながら雑誌を読んでいた。なになに・・・これであなたも恋愛上手!?
「て、てめー、今笑っただろっ!?」
笑ってませんよ!口を押さえているのは自分の口臭を確認しているだけだから!
「し、祥子!お前まさか彼氏でもいるのか!?」
あ、父さん帰ってたんだ。おかえり。
「なんだ、いたのか?」
姉ちゃん言いすぎ。さすがの僕でさえ口にはしなかったのに。
「あらやだ祥子ったら。たった今帰ってきたのよね?」
さすが母さん、ちゃんと見てたんだ。
「・・・すでにご飯も食べて、お風呂にも入って、今風呂上がりのビールを飲んでいたところなんですが?」
「あら、そうなの?全然気付かなかったわ」
さすが母さん、やっぱり姉ちゃんの親だ・・・
そんなこんなで家族の時間を過ごしていたとき、事件が起こった。

・・・パチッ・・・

突然目の前が真っ暗になった。
「あら?停電かしら」
このときは電子レンジやドライヤーを使っていなかったのでブレイカーが落ちたのではない。
つまりは十中十停電だ。
「みんな落ち着け。ひとまず懐中電灯を探してくる」
そう言い残して父さんはどっかに行った。その瞬間三人が携帯を取り出し、ライトをつける。
「そういえば懐中電灯ってこの家にあったかしら?」
「別にどうでもいいだろ」
「それもそうね」
なんて奴らだ!今頃父さんが暗闇の中、家族のために必死になって懐中電灯を探しているのに!
そうは思いながらも手は全く違う動きをしていた。
[今停電になったんだけどそっちは大丈夫?]
まぁ大丈夫だろうけどさ。
しかし予想に反して意外なメールが返ってきた。
[恐いよ慶太 早く来て]
多分僕だけじゃないだろうか?上下で柄の違うジャージを着て大好きな人の家に向かったのは。
8サトリビト:2010/05/08(土) 08:06:17 ID:mXfirx1d
「今夜は雷を伴った強い雨が・・・」
ザザッーーー
今日は朝から雨が降っていた。まぁだからと言って何も感じないけど。
今家には一人。いや、この表現は少し違う。いつも一人だ。
この家に戻ってから慶太は一度も来てくれたことがなかった。
一緒に帰るとき何度か私の家に来たがったことを『言っていた』くせに。
そのたびに家に帰ってから何度掃除をしたか分かる?そして来ないと分かったときにどれだけ自分が滑稽に思えたか分かる?
慶太は絶対に分からない。昔から私に対してだけは鈍感なんだから。
・・・今頃なにしてるのかな?
きっと慶太のお母さんや祥姉と楽しくおしゃべりでもしてるんだろう。
それとも部屋で私のこと考えてくれているのかな?だったら嬉しいな。
こんなときこそサトリの能力を使えばいいのだが、最近少しだけ調子が悪いのだ。普段生活している分には問題ないのだが、たまに感度が悪くなったりする。
きっと距離がこれだけあって、尚且つ雨の日となると何も聴こえないだろう。
そう思い先ほどからテレビを見ているがちっともおもしろくない。
慶太の声が聴きたい・・・
毎日の私の楽しみ。慶太が部屋で漏らす心の声が何よりの楽しみだったのに。
チャンネルを変える。最近人気の子役が出ていた。
そういえば私の楽しみを邪魔する害虫が最近よく現れる。
害虫の声が聴こえるのは2、3日に一度。しかも事もあろうか慶太のことをお兄ちゃんと呼んでいる。
本当にムカつく。
慶太の姉妹はろくでもない奴ばかりだ。まぁ姉妹だけじゃないんだけど。
岡田結衣。
コイツは私がこの世で一番ムカつく女だ。
私とは違い、見た目に優れているだけでも憤りを感じるが、何より慶太の彼女を名乗っているのが一番気に食わない。
そもそも慶太は私だけの物だ。慶太だってそれを望んでいるに違いない。
机の上に置いてある結衣の写真を左手で持つ。右手にはハサミ。
そのまま顔を真っ二つに切る。
少しだけ気分が優れたがまだまだ足りない。
いっその事、本物で試してみたい。
どこかの国では物を盗んだだけで死刑になるらしい。この国もそうなればいいのにな。
そうなったら結衣ちゃんは・・・ううん、あの姉妹だって盗もうとしている。3人とも死刑だ。

・・・パチッ・・・

そんなことを考えていたら突然停電が起きた。
停電ごときで別に何も思わないが、やることがさらになくなってしまった。
そうなると寝るしかなくなるのは自然なことで、私は自室に向かおうとした時―――
[今停電になったんだけどそっちは大丈夫?]
慶太からのメールが届いた。
停電ぐらいでいちいちメールしてくるなんて。でも素直にうれしい。
そこで私はちょっとしたいたずらを思いついた。
[恐いよ慶太 早く来て]
さて、王子様は何分後に現れるかな?
9サトリビト:2010/05/08(土) 08:06:44 ID:mXfirx1d
ピンポーーン!
陽菜の家のインターホンを押す。そう言えば陽菜の家に来るのも何年振りだろう?
しばらくして陽菜が出てきた。寝る寸前だったのかパジャマを着ている。
「大丈夫か!?」
僕が声をかけると陽菜が吹き出した。
「ぷっ、・・・け、慶太ったら・・・何その格好・・・ア、アハハハハハっ〜!!」
陽菜がお腹を抱えて笑っている。
う、うるさいな!家にいたんだからどんな格好しててもいいだろう!
「あ、ごめんごめん〜!駆けつけてくれたんだもんね・・・ってやっぱ無理!アハハハハ!!」
最悪だ。よりにもよって好きな人から笑われるなんて・・・
「ところで・・・何か問題でもあったのか?」
あんなメールを送るくらいだ。ま、まさか変質者か!?
「ど、何処だ!!変質者は何処にいるんだ!!」
よくも陽菜の家に・・・もしかして今は陽菜の部屋!?なら狙いは下着か!!くそっ!!
「・・・何考えてるの慶太君?」
陽菜がものすごいジトっとした目を向けてくる。調子に乗りました。ごめんなさい。
「そうね、変質者がいるわ・・・目の前に」
あんまりだ。確かに陽菜の下着はどんなのかな〜とか想像したけど、さすがにこれはあんまりだ。
「・・・選択肢を与えてあげる。警察か結衣ちゃんか恭子ちゃん・・・どれに電話をかけたらいいかな?」
・・・できれば警察でお願いします。
「あ、もしもし恭子ちゃん?実はこの近所に変質―――」
「うわぁぁぁぁーーーー!!!ごめんなさい陽菜様!!なんでも言う事聞きますから勘弁して下さいっっ!!」
「ほんとぉ!?やったー!!」
もういいよ。僕はもう人生をあきらめるよ。
「じゃあ・・・とりあえず今夜は私の奴隷ね♪」
さすが陽菜様だぜ。とりあえずでかなりハードなとこをついてくるなんて。
「じゃあ、あなたの奴隷ですって宣言して?私の言う事だけを聞きますって」
あれ、本当にやるんですか?てっきり軽いジョークだとばかり・・・
「せ・ん・げ・ん・し・て?」
「・・・私は陽菜様の奴隷です・・・陽菜様の言う事のみに従います」
「んふぅ♪・・・はまりそうだなぁ〜、これ」
好きな人の奴隷になるんだ。これは幸せなことなんだ。
そう思う事に決めた。
「とにかく家に入ったら?こんなとこにいたら寒いでしょ?」
確かに。それに今の僕はずぶ濡れを通り越して水を着ているみたいだ。
「お、おじゃましま〜す・・・」
招かれるままに家に入ると、そこは暗かった。この暗さは停電だけが原因ではない。
「陽菜って本当に一人で住んでんだな」
玄関には陽菜の靴だけ。家の中も物音一つしない。
なんかさびしいな。
「一人暮らしって・・・その・・・さびしくなったりしないのか?」
「ん〜・・・時々さびしくなるかな・・・でも隣に慶太がいるし平気だよ?」
「そっか」
今までは何となく家に行きづらかったけど、今度からは陽菜の家に行くようにしよう。
10サトリビト:2010/05/08(土) 08:07:10 ID:mXfirx1d
ピンポーーン!
どうやら目的の王子様が来てくれたみたいだ。
時間にして数十秒。やっぱり私は愛されてるんだな〜。
フワフワした気持ちになって玄関のドアを開けた。
「大丈夫か!?」
ドアを開けると同時に慶太が叫んだ。しかし、私にはそれよりもっと気を取られたことがあった。
「ぷっ、・・・け、慶太ったら・・・何その格好・・・ア、アハハハハハっ〜!!」
慶太が上下で違うジャージを着ていた。これは慶太があわてて家から出てきた証拠。
ますます胸がポカポカする。
(う、うるさいな!家にいたんだからどんな格好しててもいいだろう!)
照れてる慶太って本当にかわいいな〜。
「あ、ごめんごめん〜!駆けつけてくれたんだもんね・・・ってやっぱ無理!アハハハハ!!」
(最悪だ。よりにもよって好きな人から笑われるなんて・・・)
大丈夫だよ。確かに笑ってるけど、慶太のこと何があっても大好きだからね?
「ところで・・・何か問題でもあったの?」
(ま、まさか変質者か!?)
・・・その格好だと慶太が変質者に見えるよ。
「ど、何処だ!!変質者は何処にいるんだ!!」
(よくも陽菜の家に・・・もしかして今は陽菜の部屋!?なら狙いは下着か!!くそっ!!)
「・・・何考えてるの慶太君?」
慶太をジト目で見る。まぁ演技だけど。
「そうね、変質者がいるわ・・・目の前に」
でも慶太が変質者で私を狙ってくるなら大歓迎♪それに下着が見たいならお願いしてくればいいのに。
慶太をいじめるのが面白くなってきた私は冗談で恭子ちゃんに電話をかけたフリをした。
「うわぁぁぁぁーーーー!!!ごめんなさい陽菜様!!なんでも言う事聞きますから勘弁して下さいっっ!!」
「ほんとぉ!?やったー!!」
慶太はすぐに大げさなことを言う癖がある。そんなこと簡単に口にすると後悔するよ?
「じゃあ・・・とりあえず今夜は私の奴隷ね♪」
(さすが陽菜様だぜ。とりあえずでかなりハードなとこついてくるなんて)
全然ハードなんかじゃない。ハードなのはむしろこれからだよ。
「じゃあ宣言して。私は陽菜様の奴隷ですって。私の言う事だけを聞きますって」
「・・・私は陽菜様の奴隷です・・・陽菜様の言う事のみに従います」
・・・これはマズイ。あまりの喜悦さに意識を手放しそうになった。
(好きな人の奴隷になるんだ。これは幸せなことなんだ)
本当に慶太はすごい。ここまで私を気持ち良くするなんて。
「とにかく家に入ったら?こんなとこにいたら寒いでしょ?」
私の奴隷になった記念として色々いいことしてあげるからね?
「お、おじゃましま〜す・・・」
慶太が家の中に入る。ここが墓場だとも知らずに・・・
ううん、違う。慶太は私の奴隷であることが幸せなんだ。だからここは慶太にとって天国なんだ。
「一人暮らしって・・・その・・・さびしくなったりしないのか?」
突然慶太が訊ねてきた。さびしくなんかないよ?だって―――
「ん〜・・・時々さびしくなるかな・・・でも隣に慶太がいるし平気だよ?」
そう、これからは『隣』に慶太がいるからね?
11サトリビト:2010/05/08(土) 08:07:39 ID:mXfirx1d
「とりあえずシャワーでも浴びたら?」
そんな陽菜の言葉に僕は頷いた。
僕だって男の子。っていうか陽菜は男に自分の家のシャワーを使われて平気なのか?
「じゃあ私の服しかないけど、ここに置いとくね」
しかも陽菜の服つき。こ、これは何かの罠なのか!?
しかし僕の服は洗濯機の中。かろうじてシャツとパンツだけを着ている状態。
よってこれが罠だとしても僕は突き進むしかなかった。
陽菜の家のシャワーを堪能した後(け、決していかがわしい意味はないよ・・・?)、パンツとシャツを着る。
少し湿っぽいが、ドライヤーで乾かしたにしては上出来だ。
そして・・・罠にかかる瞬間がやって来た。いや、罠と決まったわけではないが・・・
とりあえず畳んであった服を手に取る。うん、いい匂いだ!例えこれが罠だとしても十分いい思いをした!
そして意気揚々と服を広げる。
・・・絶句、あまりに絶句。
なんと陽菜が用意した服はワンピースだった。これは思春期の男の子にとって会心の一撃だ。
しかも女の子用。つまり僕が着ると上はピチピチで下はミニスカートみたいになっている。すね毛が生々しい。
ひどいよ!いくら幼馴染だからといってもこれはあんまりだよ!
しかしパンツとシャツではこの時期寒い。幸い今は停電中で部屋は真っ暗。
わかったよ、これが奴隷の服だって言うのなら着てやるよ!
僕はワンピースを着た。ちょっとドキドキする。ってかワンピースを着ても寒いんですけど・・・
「慶太〜まだ〜?」
陽菜様がお呼びだ。
「今行くよ」
覚えてろよ陽菜!僕を家に入れたことを後悔させてやるぞ!ウェヘッヘッ・・・
僕がリビングに行くと蝋燭が数本立っていて、部屋にほのかな明かりを灯していた。
「あ、以外に似合うじゃない!女の子みたい!」
なんだろう?大事なものをいくつか失った気分だ。
「・・・これはあんまりじゃないですか?」
僕は着ていたワンピースを指さす。
「あんまり?私が着た服は・・・汚いってこと?」
えぇー!?普通そんな解釈します!?もしかして天然系ですか!?
「ち、違うよ!陽菜の服はとてもいい匂いがして最高だよ!」
「・・・」
あ〜あ、ドン引きだ。こうなったらヤケクソだな。
「あ〜、こうして自分を抱きしめるとまるで陽菜を抱きしめているみたいだ!」
・・・最後に陽菜の服を着れたんだ。悔いはない。
「私を抱きしめてる気分はどう?」
お、新しい反応だな!でもその反応をされるくらいなら、軽蔑の眼差しを向けられた方がずっと楽かな?
「・・・幸せいっぱいです・・・」
「本物でも試してみたい?」
本物?
「本物?」
あ、つい考えたことが口に出てしまった!
「そ、本物。つまり私を抱きしめてみたい?」
そう言って陽菜はクスクス笑い出した。
薄暗い部屋に若い男女二人。しかも男は女にべたぼれ。あまつさえ女が男を誘惑。
=僕の理性は消える。
ウヘヘヘヘヘヘ!!
「そう言えば・・・さっき恭子ちゃんから電話があったよ。今日はもう遅いから明日にでも掛けなおしたら?」
恭子ちゃんから電話?なんだろう、明日泊りに来るって連絡かな?
12サトリビト:2010/05/08(土) 08:08:16 ID:mXfirx1d
「とりあえずシャワーでも浴びたら?」
さすがにこの格好のままでは風邪をひいてしまう。それに・・・慶太も何かと嬉しいでしょ?
「じゃあ私の服しかないけど、ここに置いとくね」
そう言って私は浴室を出る。この服を着てきた慶太が楽しみだ。
そのままリビングに戻ると、慶太のポケットから取り出したあるものを開く。
さてと、恒例のメールチェックでもしますか・・・
慶太の受信ボックスは主に二人の女で占められていた。
まず片方の女は慶太に大好きとかフザけたメールを送っていた。今まではガキだからと見過ごしてきたが、そろそろ本気で潰しにかかろうか?
そしてもう一人の方はメールでも彼女気取りだった。本当に・・・今すぐ消したいくらいムカつく。
そうやってメールを見ていくと、ふと気になる一通があった。
[あ〜早く12月が来ないかな♪そこでようやく私にも春が来るんだな〜]
12月?コイツは12月に慶太と本物のカップルになれるとでも思っているのか?一体何を根拠に。
この後の慶太の送信メールを見る。
[まぁほどほどに頑張れ]
なんだこのやりとりは。まるで慶太もそのことを知っているみたいな―――
その時急に電話が鳴った。発信者は・・・恭子ちゃんだ。
どうするか悩んだ挙句電話に出た。
「あ、慶太さんですか!?実は今停電になってしまって、それで・・・こ、こわいんで家に来てくれませんか!!」
ふ〜ん、ガキだと思っていたけど男心をくすぐるテクは持ってるんだ。なら一人の女として扱ってあげるね?
「ごめん恭子ちゃん、今慶太シャワー浴びててここにはいないんだ」
「・・・え?そ、その声は陽菜さん!?なんで慶太さんの携帯に!?それに、え?シャワー?」
「そ、今『うちの』シャワー浴びてるからここにはいないんだ。なんなら伝言しとこうか?」
「あ・・・いえ・・・それほどのことではないので・・・し、失礼しました・・・」
その言葉を最後に電話が切れた。
いい気味だ。それより結衣とのメールの真相を問いたださないと。
「慶太〜まだ〜?」
「今行くよ」
返事を返して戻ってきた慶太の格好を見た瞬間、私は慶太と結衣のやり取りを忘れてしまった。それくらい私の慶太はかわいかった。
「あ、以外に似合うじゃない!女の子みたい!」
やはり好きな人にはフィルターが掛かるのか、その辺の女の子よりもかわいく見える。
「・・・これはあんまりじゃないですか?」
「あんまり?私が着た服は・・・汚いってこと?」
「ち、違うよ!陽菜の服はとてもいい匂いがして最高だよ!」
慶太をからかうのは本当に楽しい。素直な子は大好きだよ。
「あ〜、こうして自分を抱きしめるとまるで陽菜を抱きしめているみたいだ!」
慶太が私の服を抱きしめている。決まり。あの服は明日から私のパジャマだ。
「私を抱きしめてる気分はどう?」
イジめてばっかりでごめんね?でもこの答えはどうしても聞きたいの。
「・・・幸せいっぱいです・・・」
合格だよ。
「私を抱きしめてみたい?」
今までは彼女になるまで慶太とはそういう事はするつもりなかったけど、最近ウザイのが増えてきたからね。その予防策も兼ねて少しくらいなら体を許してあげるね♪
13サトリビト:2010/05/08(土) 08:09:04 ID:mXfirx1d
「ところで・・・自分はいつまでこの家にいればよろしいですか?」
服は乾いていないとはいえ、家を飛び出てきたんだ。多分今頃姉ちゃんが荒れているはずだ。
「何言ってるの?今夜は私の奴隷なんだからここにいるのよ?」
陽菜がものすごく楽しそうだ。どうやら空白の3年の間にSッ気に目覚めたらしい。何処で道を間違えたのかな?
「でも、せめて家に連絡させてはもらえないでしょうか?」
早くしないとあの姉ちゃんの事だ。取り返しがつかなくなる。
ブブブブブブブブーーーーーー!!!
「あ、慶太の携帯が鳴ってるよ?」
慶太の携帯・・・今のは陽菜さんのダジャレかな?かわいいなー。
「・・・あ、もしもし祥姉ぇ?」
うぼぁあああぁぁぁぁぁあああぁぁ!!陽菜様が出たらまずいよ!!もしかしてダジャレとか考えたのがいけなかったんですか!?
「な、なんで慶太の携帯にテメーがでんだよ!!」
うっわー・・・僕にまで姉ちゃんの声が聞こえるよ・・・。それに慶太の携帯って最近はやってんの?
「え?慶太?慶太なら今日私の家に泊ってくんだって〜、え?なら代わろうか?」
ハイ、とかわいらしく携帯を渡された。で、できればでたくないかなー?
「・・・でないの?」
そんな恐い笑顔を向けないで!僕の知っている陽菜はかわいい笑顔しかしないはずだよ!
「・・・も、もしもし姉ちゃん?」
「け、慶太!テメーマジで陽菜んちに泊るってのか!?」
「お、お母様にかわってもらえないでしょうか?」
姉ちゃんはその後も文句を言っていたが、僕の一辺倒のセリフにあきらめ、ついに母さんに電話を代わった。
だが多分向こうは受話器に顔を近づけ会話を聞くつもりだろう。
かくゆうこちら側も一つの電話に二人が顔を近づけている。よ、陽菜様の顔がこんな近くに///
「それで私に何の用なの?」
「・・・今日は陽菜のお家に泊めていただく所存であります」
あまりの緊張に変な言葉を使ってしまった。
「あら、そうなの?陽菜ちゃんに失礼のないようにね」
そう言って電話が切られた。なんてあっさりと。それに切れる寸前、姉ちゃんの断末魔の叫びが聞こえたような・・・
「さすが、慶太のお母さん!認めてくれるなんて、本当にいい人だな〜」
その言い方だと認めなかった姉ちゃんが悪い人に聞こえますよ?陽菜様は姉ちゃんのことが大好きでしたよね?
「ところで陽菜様、今から一体何をしましょう?」
「う〜んとね・・・なりきりゲームは?」
僕の様付けの呼び方に何の反応も示さない陽菜。完全に女王様の気分なんだろうな。
「なりきりゲーム?」
「お互いがある人物になりきって性格やしぐさを真似るの。もちろん真似るのは性格やしぐさだけでお互いの名前はいつもどうりね」
なんだか難しそうだな。
「じゃあ最初は・・・慶太が恭子ちゃんね?」
え?僕が恭子ちゃんになりきるの?確かに今は女の子の格好をしてるけどさ!
「それで私は私ね」
ちょっ!それってズルくない!?自分だけ何もしないってこと!?
「何か文句でもあるのかな?奴隷さん♪」
ないです。ないですから奴隷さんと呼ばないで、慶太って呼んでください。
「それじゃあスタート!」
僕にとって地獄の時間が始まった。
14サトリビト:2010/05/08(土) 08:17:22 ID:mXfirx1d
「ところで・・・自分はいつまでこの家にいればよろしいですか?」
「何言ってるの?今夜は私の奴隷なんだからここにいるのよ?」
せっかく慶太が来てくれたのに、私が何もしないまま返すわけないじゃない。それに慶太だってここにいたいんでしょ?
「でも、せめて家に連絡させてはもらえないでしょうか?」
まぁ慶太の言うことも一理ある。
祥姉のことだ。電話をしなかったらここに乗り込んでくるかもしれない。
ブブブブブブブブーーーーーー!!!
「あ、慶太の携帯が鳴ってるよ?」
言ってるそばから電話が鳴った。でちゃおっかな〜♪
(慶太の携帯・・・今のは陽菜さんのダジャレかな?)
・・・私はくだらないことが大嫌い。例えそれが慶太の発言だとしても。
「・・・あ、もしもし祥姉ぇ?」
(うぼぁあああぁぁぁぁぁあああぁぁ!!)
「な、なんで慶太の携帯にテメーがでんだよ!!」
やっぱり私が出て正解だった。祥姉の驚きと怒りに満ちた声がたまらない。
本当はもっとおしゃべりをしていたしけど、祥姉は慶太と話したいはず。
心優しい私は慶太に代わってあげる事にした。
電話を受け取った慶太は祥姉が恐いのか、ひたすらお母さんと代わってくれるように頼んでいた。
怯えきった慶太の表情もかわいい。慶太の理性よりもこっちの理性の方が先に崩壊してしまいそうだ。
どうやら向こうが折れてお母さんに代わったようなので、こちらも会話を聞くために慶太に顔を近づける。そのときの慶太の艶めかしい表情に私は電話を忘れて飛びつきたくなってしまった。がまんがまん。
「それで私に何の用なの?」
「・・・今日は陽菜のお家に泊めていただく所存であります」
「あら、そうなの?陽菜ちゃんに失礼のないようにね」
さすが慶太のお母さん。どっかのバカと違って物わかりがいい。やっぱりいい人だ。
「さすが、慶太のお母さん!認めてくれるなんて、本当にいい人だな〜」
(その言い方だと認めなかった姉ちゃんが悪い人に聞こえますよ?陽菜様は姉ちゃんのことが大好きでしたよね?)
演技をしている私が悪いんだろうけど、慶太は全然気づいてない。私がこの世で好きなのは慶太と慶太のお母さんだけだ。
「ところで陽菜様、今から一体何をしましょう?」
「う〜んとね・・・なりきりゲームは?」
(完全に女王様の気分なんだろうな)
私は別に女王様が好きなわけではない。ただ私が女王様なら慶太は名実共に私の奴隷だ。奴隷は女王様の私物。
その面では女王様も満更ではないけどね。
「じゃあ最初は・・・慶太が恭子ちゃんね?」
慶太があのクソガキを演じるのは癪に障るが、それを踏まえてもあの絡みつくような求愛行動を慶太にしてほしいと思ってしまう。
「それで私は私ね」
(ちょっ!それってズルくない!?自分だけ何もしないってこと!?)
大丈夫、慶太の行動次第ではいいこともしてあげるから。それに慶太だって大手を振って私にべったりできるんだから文句なんてないでしょ?
「それじゃあスタート!」
私にとって天国の時間が始まった。
15サトリビト:2010/05/08(土) 08:17:56 ID:mXfirx1d
「お、お兄ちゃん・・・」
「あれ?おっかし〜な〜。慶太ちゃんは私の事お兄ちゃんて呼ぶの?」
「っっ!!・・・ご、ごめんね・・・お、お姉ちゃん・・・」
「いいよ、かわいいから許してあげるね」
何て屈辱だろう。恭子ちゃんを否定してるわけではないが、これは男としてのプライドをズタズタにする。
「慶太ちゃんは陽菜お姉ちゃんの事好き?」
あ、あれ?なんだかデジャブ感がするぞ?
「・・・だ、大好きです!」
「ふ〜ん・・・恭子ちゃんにそんなこと言われてたんだ・・・」
しまった!これは巧妙な罠だったのか!?
「な、何言ってるの、陽菜お姉ちゃん!?私は陽菜お姉ちゃんにしか言ったことないよ!?」
「本当?じゃあ恭子ちゃんの事は好き?」
もちろん好きだ。だがはたしてこの状況で言ってもいいものか?
「えっと・・・妹としてなら好きだよ〜!?」
「それなら・・・結衣ちゃんの事は?」
うっ!なんてとこついてくるんだ!まさかこれが本命だったのか!?
「どうなの〜慶太ちゃん?」
岡田か・・・確かに友達としては好きだ。でもあくまで友達として。岡田には悪いが異性としてと聞かれたら、答えはNoだ。
「答えにくい?なら質問を変えてあげる。今は仮の関係だけど、本気になる可能性はあるの?」
可能性。たしか占いでは12月に僕が岡田を好きになるって言われたっけ。
「・・・分からないです」
「ふ〜ん・・・」
そのまま沈黙が訪れた。
何となく手持無沙汰になったので携帯をいじくった。その電池パックの裏には岡田とのプリクラがある。
あの時の嬉しそうな岡田の様子を思い出すと、あながち占いが当たってもおかしくない気がした。
このプリクラ、二人とも緊張してひどい顔になっているのにな・・・
「・・・慶太は一応結衣ちゃんと付き合ってるんだよね?ならプリクラとかも撮ったの?」
突然陽菜の雰囲気が変わった。
「もしあるなら私にも見せてくれないかな〜?」
いつもなら躊躇するが、この時ばかりはなぜか素直に従った。そうしないといけない気がした。
「ふ〜ん・・・なんか二人とも緊張してて・・・付き合いたての本物のカップルみた〜い」
陽菜はしばらくプリクラを見つめていたが、やがて携帯を僕に返してきた。

・・・パチッ・・・

それと同時に部屋が明るくなった。電気が復旧したのだ。
だが一瞬、電気がついた一瞬だけ見えた陽菜の顔が・・・歪んでいたように見えた。
「ねぇ慶太ちゃん・・・そろそろ寝よっか?」
つ、ついに来たか!陽菜は私の事抱きしめてもいいと言ってたんだ!き、今日こそ大人の階段を上がるぞ!
「お、俺は陽菜お姉ちゃんと一緒に寝たいな〜・・・ダメ?」
さっきまでの雰囲気からOKしてくれると信じていた僕は調子に乗っていた。
だが陽菜の返答は一般的には普通だが、今の僕の予想を大きく外れるものだった。
「慶太、調子乗りすぎ。いっておくけど抱きしめていいとは言ってないよ」
えぇ!?あれだけ僕の理性をくすぐっておいて今さらこの仕打ち!?そんなの僕耐えられないよ!
「気が変わったの。慶太はおとなしくここで寝て」
嘘だろ・・・僕の性欲は今MAXなのに何もしないでここで寝ろと?ワンピース姿で?
そのまま陽菜はリビングを出ていき、ドアを閉めた。ものすごい音を立てて。
16サトリビト:2010/05/08(土) 08:18:23 ID:mXfirx1d
「お、お兄ちゃん・・・」
「あれ?おっかし〜な〜。慶太ちゃんは私の事お兄ちゃんて呼ぶの?」
「っっ!!・・・ご、ごめんね・・・お、お姉ちゃん・・・」
「いいよ、かわいいから許してあげるね」
本当にかわいい。あのガキがやっているのを見るとただイラつくだけだったが、慶太がやるとここまでかわいく見えるものなのか。
「慶太ちゃんは陽菜お姉ちゃんの事好き?」
これは慶太の送信メールにあったものだ。
「・・・だ、大好きです!」
「ふ〜ん・・・恭子ちゃんにそんなこと言われてたんだ・・・」
確か受信メールもこんな返事が返っていた。
内気な子がここまで大胆になってきている。もしかして・・・異性として意識し始めているの?
「な、何言ってるの、陽菜お姉ちゃん!?私は陽菜お姉ちゃんにしか言ったことないよ!?」
慶太の返事が少しだけ気に障った。
慶太は恭子ちゃんのしぐさを真似しているだけでしょ?なんで恭子ちゃんの気持ちを代弁するようなこと言っているの?
「本当?じゃあ恭子ちゃんの事は好き?」
「えっと・・・妹としてなら好きだよ〜!?」
そんなに軽々しく好きなんて言葉使わないで。私に対する好きも軽く聴こえるじゃない。
「それなら・・・結衣ちゃんの事は?」
(・・・答えはNoだ)
それならなんで仮の彼氏役なんか引き受けたの!?私の事が好きならなんですぐに告白してくれないの!?
・・・ダメだ、落ち着け私。イライラしてら肝心なことを聞きそびれてしまう。
「答えにくい?なら質問を変えてあげる。今は仮の関係だけど、本気になる可能性はあるの?」
(たしか占いでは12月に僕が岡田を好きになるって言われたっけ)
ビンゴ。私の質問に慶太が素直に答えてくれた。
12月って・・・占いでそう言われたの?いつの間に違う占い屋に行ったのかは知らないけど、占いごときを信じるなんて結衣ちゃんは本当にバカだな。
慶太の一言で少しだけ落ち着いた・・・はずだったのに・・・
(このプリクラ、二人とも緊張してひどい顔になっているのにな・・・)
プリクラ!?・・・ふ〜ん、本物のカップルみたいなことしてたんだ。
「・・・慶太は一応結衣ちゃんと付き合ってるんだよね?ならプリクラとかも撮ったの?もしあるなら私にも見せてくれないかな〜?」
そう言って手を差し出す。
慶太は私の雰囲気を感じ取り、素直に携帯を渡してきた。
プリクラを見ると、確かに慶太の言った通り二人ともひどい顔をしている。
でもそれがなぜか・・・二人が本物のカップルのように見えてしかたがなかった。
「ふ〜ん・・・なんか二人とも緊張してて・・・付き合いたての本物のカップルみた〜い」
自分でも驚くほど冷静になっていくのが分かる。
いいよ。今までは余裕を感じていたから本気を出していなかったけど・・・もう許さない。
本気でいくよ。

・・・パチッ・・・

電気が突然戻った。一瞬慶太に私の本性を見られたが、時間が時間だっただけに気のせいだと思うだろう。
「ねぇ慶太ちゃん・・・そろそろ寝よっか?」
「お、俺は陽菜お姉ちゃんと一緒に寝たいな〜・・・ダメ?」
結衣ちゃんはもちろんだが、慶太にだって腹は立っている。好きな人がいるのに他の子と二人でプリクラなんて何考えてんの?
「慶太、調子乗りすぎ。いっとくけど抱きしめていいとは言ってないよ」
「気が変わったの。慶太はおとなしくここで寝て」
私は慶太をリビングにおいて部屋に戻った。
17サトリビト:2010/05/08(土) 08:21:35 ID:mXfirx1d
以上投下終了です。
以前の感想で陽菜視点〜とあったので、今回は陽菜視点も入れてみました。
読みにくいと思った方は申し訳ありません。第10話も同じ形式なので・・・

最後に、読んでくださった方、ありがとうございました。
18名無しさん@ピンキー:2010/05/08(土) 08:57:19 ID:fiWJITib
Gj
サトリビト毎回楽しみにしています
19名無しさん@ピンキー:2010/05/08(土) 10:09:06 ID:syBMX5iA
GJ!
陽菜さんの本気とは一体どんななのか
20名無しさん@ピンキー:2010/05/08(土) 12:50:15 ID:yPdO6Zmi
GJ!!
一話あたりも長くていいね
21悪意と好意と敵意 ◆f7vqmWFAqQ :2010/05/08(土) 14:29:01 ID:o2jVD3Gz
昨日は書いてる途中にパソコンの前で寝た僕です。
3レス消費で7話投下。
22悪意と好意と敵意 ◆f7vqmWFAqQ :2010/05/08(土) 14:29:54 ID:o2jVD3Gz
俺は今混乱していた。理由は寂に告白され、貞操を奪われ、寂の膣内に射精して、今その寂が裸体で俺の上にのし掛かってるからだ。
あぁ、なんか恋愛の相性は抜群だとか魔法使いになれる資格剥奪されるわ、高校生で女性を妊娠させるかも知れないわで頭がこんがらがる。とりあえず寂退かすか。
くすぐり地獄のダメージが完全に回復していないが寂を退かす事くらいは出来た。しかしこいつ軽いな。ちゃんと飯食ってるか?
時間は6時を回ったところだ。このまま寂を放置して一旦家に帰るか、寂を起こして許可を得て帰るか、それともここに残るか。あーどうしよ。
寂を見るとさっきはサキュバスだったのに寝顔は天使だな。という感想を抱くほど可愛かった。
けれどこの天使は起きるとサキュバスなのだ。多分起こしたらまた犯されるだろう。それか「行かないで!」とか仰いやがるのかもなぁ。
とりあえず脱走を試みる。ばれないようにゆっくりベットから離れ…ガシッ!!右手を掴まれる。後ろを振り返ると天使からサキュバスの顔になっている寂がいた。
「おはよう」無難に御挨拶。
「どこ行くの?ゆーちゃん」
「どうした?なんか用か?」質問を質問で返してみた。て言うか用が無いなら引き留めたりしないよな。
「答えになって無い。0点」助けてドラえもーん!0点取っちゃった!
「俺は自分を襲った人間の近くに居たがる特殊な性癖の持ち主でも無ければ、どんな罪でも許せる聖人君主でも無いんだ。」
「ゆーちゃん、保健の授業教えて欲しいって言ったじゃない。」顔を赤らめて発言する。くそ、可愛い。そして正論だ。
「性教育だけが保健じゃないぜ!」喫煙や飲酒の有害性とか
「そうだね。人工呼吸とか?」なんでやねん!!!と突っ込みそうになった。
そういや俺キスより先に童貞奪われた…なんかショック。
「とりあえずさ、家に帰りたいん…」と台詞の途中で寂が俺の目を覗き込んでるような気がした。
「ゆーちゃん、ダメ。外に出たら良くない事が起きる。」
「なんでだよ……」
「眼球占いで出た」なんだその占い!
「信用出来るか!根拠はなんだ!」
「乙女のインスピレーション!」藤林涼かお前は!
「あー、いや明日の時間割鞄に入れたらすぐ戻る。」正直あんな家に居たく無いしな。それにここには俺を好きだと言ってくれる人が居る。
「ホント?」
「ホント。」
「ホントにホント?」
「ホントにホント。マジです。」
そう聞くと寂は小指を突き出した。
「指きり!」ガキかよ!お前幼児退行してないか?
とりあえず俺も自分の小指をだして寂の小指と絡ませる。そして交互に発言する。
「ゆーびきーりげんまん」
「うそついたら」
「はーりせーんぼーん」
「って女芸人不細工だよな。ゆびきった!」ドゴッ!鳩尾を蹴られた。
「やりなおし!」
「はい…」
「ゆーびきーりげんまん」
「うそついたら」
「はーりせーんぼーん」
「呑ますなんて思いやりがないから俺は認めない。指切った。」言い終わると寂が立ち上がり勉強机の引き出しを開けて
「今針千本もないから一日一本にしよっか?」目がマジだ。覚醒レヴェル2!
「ごめん冗談。もう一回指きりげんまんさせてください。お願いします。」土下座して謝る。どうやら土下座披露会は中止にならなっかたようだ。
その後はちゃんと指きりげんまんを遂行した。語弊があるかもしれないが指の切断はしてない。ドアをくぐろうとしたら声がした。
「帰ってきたら、告白の返事聞かせて。ノーだったら針飲ますけど」
それ「帰ってきたら好きって言って」の方が正しくね?まあ、答えは最初から決まってるからいいんだけど。
「あぁ…」と言ってドアをくぐった。
23悪意と好意と敵意 ◆f7vqmWFAqQ :2010/05/08(土) 14:31:51 ID:o2jVD3Gz
町は少し肌寒かった。学ランも出して持っていくか。
すぐに俺の家は見えた。が、いつもと違う風景がそこには有った。黒い高級車が止まっている。
今日はいろんな事が有りすぎたのかこんなことでビビる上じょ…篠原さんじゃないぜ!気にせずに玄関に向かう。そこには「ごきげんよう」と声を発した人間が居た。
「綾小路…ちゃん…?どうしてここに?」病院どうした。
「えぇ…驚きますわよね。でももっと驚く事を今から言って差しあげますわ」
「はい?」
「あなたは御両親に売られました。500万円で。」は?
「     」くすぐり地獄ですり減らした体力が戻ったのに口から声が出ない。
「さていきましょうか。」腕を掴まれる
「いや、意味わかんねぇ。ぷりーず言いやがれ説明を」
「私が貴方の御両親の借金の肩代わりをしたんです。代わりに貴方を貰って。貴方の御両親の会社に電話して交渉して最初は断られたげと、クビにすると言ったら交渉に応じてくれましたわ。お2人とも綾小路グループ傘下の会社に勤めて居られてスムーズに交渉が成立しました。」
それを聞いて逃げるつもりだった。が、黒沢さんが後ろに立ちふさがっていた。
構うもんかと逃げようとした。けど服の襟を掴まれて地面に叩きつけられて容易に捕まった。
「そうそう、知りたくありません?京華院涼香を殺し、橋本加奈を殺し、倉田楓を殺し、上原千草を殺し、三國香織を殺し、植田美樹を殺した犯人。」
「はっ、それより離しやがれ。」解放を求めるが綾小路ちゃんの発言に疑問を持った。上原はホームから転落、三國は練炭自殺、植田はマンションから転落で死んだ。
「あら、どうして?」
「俺は復讐とかそんなのには興味は無い。墓より今ある人間を大事にするのが俺の信条なんだよ。」死人に口無し。
「それに上原と植田は事故で、三國は自殺だ。」
「いいえ、他殺よ。そこの黒沢に犯人、天野寂を監視させて見たと言ってるもの。」は?今何て
「あと貴方の幼馴染の天野寂が橋本加奈と倉田楓を殺した現場を見ましたわ。」いや、嘘だ。耳を貸すな。
「多分、お姉さ…京華院涼香を殺したのも天野寂」いい加減な事言うな。
「嘘だ…」
「嘘じゃ有りませんわ。彼女は貴方の事が好きで、貴方に近づく人間を排除する為に暗躍していた。因みにこの傷も天野寂に負わされた物。」そう言って彼女は左腕を見せつける。
「大体、少し考えれば分かるでしょうに。間抜けね。」あぁ、そうかもな。そう考えればなんか色々辻褄が合う。間抜けなんて評価すら生温いほど愚かだった。
「あ、ああ…あああああああああああああああああ!!!!!あああああああああああ!!!ああああああああああああああああああああ!!!!」
「うるさいですわね…。黒沢。黙らせて。」
「御意」
俺は後頭部を殴られて意識を奪われた。
「お嬢様。参りましょう。長居は無用です。」黒沢が篠原を担いで言う
「そうね…」特に理由も無かったので賛同した。


2人は気絶した1人を車に乗せて車に乗り車を走らせる。その様子を見ていた人間の存在に気付かずに。
24悪意と好意と敵意 ◆f7vqmWFAqQ :2010/05/08(土) 14:32:30 ID:o2jVD3Gz
「ゆーちゃん…」ゆーちゃんが帰ってきたらおなかを空かしているだろうと考えた私はテーブルに料理を並べていた。けれど肝心のゆーちゃんは帰って来ない。
無言でテーブルに座る。寂しいよゆーちゃん。約束守ってよ。ねぇ!
TRUUUU!TRUUU!電話が鳴った。ゆーちゃんかも知れない!電話に歩み寄って右手で受話器を取る。
「ゆーちゃ「ごきげんよう殺人犯さん。」電話の向こう側に居たのは意外な人物だった。人類(私)の天敵のゴキブリ(綾小路美月)だった。
「なんでアンタが…」
「うふふ…。貴方には苦しんで貰うって言いましたよね。」手が震える。
「どういう意味よ」声も震えていた。
「私は大切な人を奪われた。だから、貴方の大切な人を奪ってやった。」考えたくない!
「篠原勇輝は今私の部屋で寝ているわ。」ゆー…ちゃん…
「     」
「あら、声が出ないわね。因みに貴方が殺人犯というのをばらしたら本人が発狂したから殴って眠らせたわ。」
「     」ガタンッ!!受話器が手から滑り落ちる。ゆーちゃんに知られたくない事実をゆーちゃんが知った。
「もーしもーし!どうしましたー!」黙ってよ。
「まあいいわ。今から貴方の大事な人を嬲るから来たかったら来て下さいね。」そんな事させない。私は受話器を持ち上げる。
「じゃあ、ま」ガチャッ!受話器を乱暴に定位置に戻した。
今私どんな顔してるかしら。怒ってる?泣いてる?笑ってる?いいえ多分無表情。あのゴキブリを今度こそ完璧に始末しなきゃ。待っててねゆーちゃん。助けるから。許して貰わなくて良いから。最悪死んで侘びるから。
パーカーに身を包み鞄に包丁を入れてそれを背負った。
「今行くね」罠と分かってても私は歩みださずには居られなかった。


綾小路宅のカギは開いていた。遠慮なく侵入する。
外から明かりの点いてた部屋が見えたの慎重に歩いてそこに向かう。
ドアを開けると大きな寝台にはゆーちゃんが居て隣に害虫が居た。
私は無表情を崩して必死になっった。長い髪を揺らして走った。手を伸ばした。ゆーちゃん!!って叫びながら。
けどこの部屋にはもう1人居るのが見えなくて、そのもう1人に襲撃されて、そして抵抗空しく捕まった。
私は両手両足をきつく縛られて無力化された。私の体は絶望と縄で包まれた。
離してよ!!っと意味の無い要求を口走った。
私の大きな声でゆーちゃんが目を覚ました。私の心は絶望に包まれた。


ゆーちゃんが目を覚ますと「なんで居るんだよ」と目を見開いて私に言った。
「助けに来た。」と言いたかったけど、私はゆーちゃんに殺人犯と知られたから言えなかった。
知られたく無かった。このまま幸せになりたかった。人を不幸のどん底に落とした殺人犯が幸せになろうなんて無理な話かもしれないけど。
このまま私達はこの2人に殺されるのかな。死んでも一緒にはなれないかな。ゆーちゃんは天国に行って私は地獄行き。そんなのは明白だった。
でも生まれ変わったらまた一緒になりたいな。こんなワガママくらいは許して欲しかった。
25悪意と好意と敵意 ◆f7vqmWFAqQ :2010/05/08(土) 14:33:59 ID:o2jVD3Gz
終了。
この作品が終わったら、いのちゃん先生で短編SS作る予定です。
26名無しさん@ピンキー:2010/05/08(土) 15:04:25 ID:/YhfBkYa
何だか予想を裏切らず、何だか予想を裏切る展開だな。何言ってるのかわかるでしょうか。とりあえずGJ!!
27名無しさん@ピンキー:2010/05/08(土) 15:29:19 ID:XVg4awA7
>>25
投下乙&GJ!
なんか寂さん、意外に弱い部分が多いなぁ……
そしてここにきて、なぞの人物登場とかもう、この先まったく予想できないし。
なんだか次回かその次で最終回っぽいけど、楽しみにしています。

結構ちょこちょこと、電撃○庫系のネタがまじってるなぁ…… 嫌いじゃないっすよ。
28名無しさん@ピンキー:2010/05/08(土) 15:34:37 ID:7kkAG7Hr
忘れ去られ始めた頃と思いますが、題名の無い長編十五の続きです。
未熟な部分が克明に出ちゃってますが容赦ください。
29名無しさん@ピンキー:2010/05/08(土) 15:35:11 ID:7kkAG7Hr
 命惜しさとは酷いものである。
 あの時は生命的危険を感じ、承諾してしまったが
 後悔せずにいれようか。
 もはや俺の人間としての評価はどうでもいい。
 生きていれば何とかなる・・と信じたい。
 問題は二人との「約束」だ。
 二人の現時点での俺の脳内評価から
 二人が鉢合わせしようものなら(特に俺が)ただで済む筈がない。
 具体的には刃傷沙汰ってことも起こり得る。
 当然、現代日本(H22現在)では銃の取り締まり・刑罰は重いので銃ってことはない・・筈だ。
 で、一番手ごろな凶器として、刃物だ。
 ・・・さっきから刺し殺されるとこしか想像できない。
 銃で撃たれるならともかく、刺し殺されては「死を受け入れた覇者のポーズ」がきまらない。
 やはり俺には覇王の真似事は早すぎるか。
 しかし、できれば死にたくない。
 ならばここは篭城戦。
 日本史の戦国武将だって、ピンチになれば篭城だってしてた筈だ。
 織田信長のような魔王の覇気なんて俺には無いからな。
 そうと決まれば早速行動。
 「さぁやるぜ・・善は急げってな。」
 「急いては事を仕損じるって事はないの?」
 「あっっ!!?」
 突然横合いから声がかかり、驚いて思わず声が出た。
 いつからいたの!?そして誰だ?
 ぎこちなく首を右向け・・右!
 視界に映ったのは口調とは違って上半身を前に傾け、鬱屈としたような姿勢の少女。
 整った白い服装と裏腹に乱れた髪が顔を隠してホラー映画の死装束女みたいになってる。
 「修二ぃ・・・遅いから来ちゃったよ?」
 ・・・綾だった。
 雰囲気っていうかオーラがいつもと何か違う。
 怒ってるでもなく・・苛立ってるでもなく・・・闇?
 そう!闇のオーラってかんじだ。
 グラヴィティよりキツい。
 「遅かったってなぁ・・・・まだ10時だぞ?」
 来いと言われていた時間は10時半。あと30分ある。
 「10分前行動を知らないの?」
 「30分前行動なんて聞いたことがないぞ・・・」
 ♪ ♪ ♪ ♪ ♪・・・・・・
 突然の着信。
 ポケットに入れていた携帯が海賊BGMを奏でる。
 メール発信源は・・・まぁ、咲良だったりする。
 『早く来て♪』
 こっちはこっちで予定は11時。あと1時間半はあるよ?
 「・・・行こ?修二。」
 と、俺の空いてるほうの手を掴む綾。
 どうせ行き先は綾の家。咲良の家に向かえることはなさそうだ。
 ・・・・オマエ絶対メールの用件わかってて言ってるだろ。
 
30名無しさん@ピンキー:2010/05/08(土) 15:35:51 ID:7kkAG7Hr
手を繋いだ状態で歩くこと約20秒。
 当然、いくらお隣だからって20秒で行き来できるワケがない。立地条件にもよるが。
 相変わらず家の中・・・・に居たはずだ。
 居たはずである・・と思えなくなってきた。
 場所は父親の部屋。去年から無人状態の父親の部屋。
 入るな・・と言い含められていたので立ち入らなかった。
 埃まみれである筈の部屋だ。
 ・・・前置きで察せるように室内が綺麗になってた。
 っていうか生活感が溢れている。
 父親の置いていった荷物はそのまま。
 家具の配置も記憶にあるとおり。
 ただ、明らかに父親の品以外の物があちらこちらに見受けられる。
 ハッキリ言って女物。可愛らしいデザインの写真たてやら時計やら。
 クマのぬいぐるみまである。
 ・・・親父、アンタの部屋占領されてますよ。
 呆然と立ち尽くす(しかない)俺の手を、早く早くとばかりに引く綾。
 「綾・・・この部屋はなんだ?」
 「お義父さんの部屋でしょ?」
 ・・・コイツお義父さんとか言いやがったか? 
 「だから綾、言葉遊びのつもりか知れんが、俺には彼女が・・・
 声が続かない。
 綾の表情が激変していた。
 負の感情を純度100%で表情に出している。
 人の成せるものじゃない・・と思えてきた。綾は人だが。
 「修二。今は他の女のことなんか考えちゃだめだよ。今は私だけを見て。
私は修二のこと愛してるから。なんでもしてあげるよ?エッチなことだって、恥ずかしいことだって
・・・人を殺す事だって!
 アハハハハハハ!愛してるよ、愛してるよ修二!だから一緒に居よ?他には何も要らないよ・・・
 
 ・・・そこからイマイチ覚えていない。
 部屋に引き込まれて、不覚にも嫌なカタチで大人の階段を昇ってしまった。
 自己嫌悪が心に渦巻いている。
 既に昼過ぎ。明るい日差しが小窓から差し込む。
 小休憩・・・らしい。俺としては永遠に休憩していたいが。
 責任とらなきゃな。咲良になんて言おうか。
 「だめだよ修二・・・他の女のこと考えちゃダメだよ。」
 だめだ。思考回路はとっくに掌握されている。
 綾が胴体に手を回して抱きついてくる。行為の後ってことで(俺もだが)全裸だ。
 デッドゾーンがしっかりと視界に映る。
 綾の下半身が若干痙攣しているように見えた。
 ・・・・本当にどうしようもなく堕ちたな、俺。人間失格だ。
 「休憩終わりっ!」
 言うが早いか綾は俺の両肩を突き飛ばし、ベッドに押し倒す。
 突発的な行動力は昔からだが、それが見れるだけでも安心できた。
 根底は昔からの綾だな。
 しかしさっきからそうだが、このままだと俺って永遠に受身なんじゃなかろうか。
 既に洪水状態の女性器が俺の男性器を飲み込む。
 「あっ・・ひあぁ・・はいったよ・・んぅっ・・・」
 根元まで飲まれ、快感の波が強くなる。
 「・・・もう濡れてるのか」
 「だ・・だってぇ・・あぅっ・・・修・・二のこと・・考えてたら・・あぁっ・・ん・・」
 男として嬉しいことに違いないが、今は罪悪感が勝っている。
 「んちゅ・・ぺろ・・むぐ・・んむぅ・・・・」
 綾が唇を重ね、さらに舌を差し込んできた。
 舌の感触に快楽が増し、いよいよ堤防が危なくなってきた。
 理性を保て。快楽に流されるな。鉄壁の理性。動かざること山の如し!
 「あ・・あぁ・・んっ・・しゅうじの・・あったかいよ・・」
 ちょっと待て我が息子よ!!・・・君には心底ガッカリさせられるぜ。クソ、欝だ。死のう
31名無しさん@ピンキー:2010/05/08(土) 15:36:22 ID:7kkAG7Hr
事実にして真実。どうしようもない現実として、既成事実が出来上がった。
 責任追及は逃れられない。
 「逆レイプされました。」って誰も信じない。
 こういう時、男は圧倒的に不利だ。
 諦めるか、受け入れるか、全てを捨てて抗うか。
 ・・・諦めよう。
 できれば受け入れよう。綾のこと嫌いじゃないし。
 しかし俺が納得しても意味は無い。
 非常に、非情に大きな問題点が残っている。
 ・・・ゴメン、咲良。
 死んで詫びる気はサラサラ無い。
 四肢の一本くらいは・・・まぁ、それで許されるなら。
 明後日、謝罪も含めて別れるか。
 俺のモットーは「責任は果たせ」だ。親父にあの事件以来、血反吐を吐く程叩き込まれた。
 
 ようやく体が落ち着き、脱力感から眠気が来る。
 足腰不全の綾に服を着せ、自分も服を着る。
 二人して、親父のベッドに倒れて睡魔に身を任せた。
 沈みかけた意識に聴覚を通してインターホンの電子音が鳴り響く。
 『修二君、遅いから来ちゃったよ?』
 ・・・・1日に2回も聞くとはな・・そのセリフ。
 まぁ、遅刻じゃなくて行けなくなったんだが。 
32名無しさん@ピンキー:2010/05/08(土) 15:38:13 ID:7kkAG7Hr
投下終わります。
間が空いたのは単純に忙しかったからです。
まだ続ける気は有りますので記憶の片隅にでも留めておいてください。
33名無しさん@ピンキー:2010/05/08(土) 17:11:34 ID:DPQG8zsS
GJ!
更新待ったよ
続きが楽しみだ
34悪意と好意と敵意 ◆f7vqmWFAqQ :2010/05/08(土) 20:22:54 ID:o2jVD3Gz
失礼ながら一日で2話分投下します。8話投下。荒削りですがご容赦下さい。あと最早ヤンデレとかけ離れた作品になった気がします。最初はこんなつもりじゃなかったんです。はい。
35悪意と好意と敵意 ◆f7vqmWFAqQ :2010/05/08(土) 20:23:29 ID:o2jVD3Gz
目が覚めると手足を縛られている寂がいた。
「何しに来た?」目を見開いて聞いたけど返事は無かった。
沈黙が流れる。それを破ったのは綾小路ちゃん。いや、もう「ちゃん」付けはしたくない。しなくてもいいか。
「役者は揃いましたわね。」
綾小路主役の復讐劇の役者にはなりたくない。
「出演料なしじゃやらんよ」
「貴方には500万投資したわ。ちゃんと働きなさい」この手を縛られた状態でどう働けと?ふざけんな。
「それに貴方は今道具なの。道具は道具らしくしてなさい。」足蹴にされる。抵抗したかったが何されるか分かんなかったから甘んじて受ける。
「まあ、それはそうと」綾小路が俯いていた寂に歩み寄る。そして足で寂の腹を蹴った。
「ゲホッ!!!」寂が席と同時に涎を吐き散らす。
「やめ…!!んぐ!」いつの間にか俺の横にいた黒沢の右手で口を塞がれる。
綾小路は足で寂の腹を蹴り続けた。そのたびに寂の呻き声が鼓膜を穿つ。
俺は目を瞑るしかなかった。聞こえたのは肉を蹴る音と寂の呻き声と綾小路の恨みの言葉。
「よくも!!私の涼香お姉様を!!よくも!!!よくも!!!!!ああああああああああああああ!!!」
声と比例して激しくなる音に反応して目を開ける。そこには本人自慢の綺麗な髪を足で踏まれ涎の代わりに血を吐いて衰弱している寂と可愛らしい顔を般若の如く歪ませている綾小路がいた。
俺はどうしたらいいか分からなくなった。頭が真っ白になる。
綾小路が近くに有った寂のリュックサックを漁って中身を取り出して乱暴に投げ捨てる。綾小路が手にしていたのは、包丁。
「随分と切れ味の良さそうな包丁ね。」何する気だよ。
「すぐに終わらせてあげる。」やめろよ。
「終わりよ。さようなら。」やめろって!!
俺は墓より生きてる人間の方が大事なんだ。だから目の前で親しい人間が殺されるのを黙って見てる訳にはいかなっかた。
俺は後頭部を黒沢の顔面目掛けてぶつけてみた。黒沢は予想外のトラブルに対応出来ず口から手を離して壁に後頭部を打ちつけて悶絶した。
その物音に反応して綾小路がこちらを向く。もう遅い。反応するころには俺と綾小路との距離は埋まっていた。
綾小路の右手を蹴ると包丁が手から落ちる。俺は自身の頭のてっぺんを力一杯に使って綾小路の顎に打ちつける。寂ほどでは無いが華奢な体で軽そうな綾小路はふっ飛んだ。
包丁の柄を口で挟む。そのまま綾小路に接近する。馬乗りの体勢になって、綾小路が抵抗しようと行動する前に彼女の両腕を膝で押さえつけて、そして背中を曲げて包丁を左胸に刺した。
綾小路の口から血が漏れる。殺した。殺しちゃった。意識が朦朧とした。
「お嬢様!!」後ろで声が聞こえてすぐに俺は黒沢の手で跳ね飛ばされた。そして死体を抱き寄せて揺すって叫ぶ
「お嬢様!お嬢様!!うああああああああああああああああ!!!!」部屋に悲鳴が鳴り響く。
「くそが!!よくも!!!お嬢様を!!この殺人犯どもが!!死ね!!!」黒沢が胸倉を掴み拳で俺の頬や鼻を殴る。
「殺す!!!殺す殺す殺す!!」俺は抵抗出来ずにいた。胸倉を掴んでいた手が離れて床に叩きつけられた。黒沢は綾小路の胸から包丁を引き抜いてハンカチで刀身と柄を拭く。綺麗好きなんかな。
「もう死ねよ…お前」このまま死ぬのかと思った。けど、予想は外れた。
ギィ…と扉が開く。そこには頭にヘルメットを被って手には金属バットを持った黒ずくめの男が居た。
「楽しそうだね。俺も混ぜてくれよ。」
36悪意と好意と敵意 ◆f7vqmWFAqQ :2010/05/08(土) 20:23:55 ID:o2jVD3Gz
この状況を楽しいと高い声で言っちゃう侵入者(危ない奴)が現れた。招かねざる客人に黒沢が敵意を隠さずに発言する。
「お前は誰だ…」
「通りすがりの空き巣かな。玄関のカギはちゃんとしろよお金持ち。」
「いつから居た?」
「あー、君と貧乳娘が愉快にそこの少年を誘拐してたところからかな。因みにあの貧乳娘がそこの巨乳娘を嬲ってたのは巨乳への嫉妬?何?おっぱい戦争かい?」
「ふざけるな…」見れば黒沢の包丁を握る手が震えていた。
「あっちょんぶりけー」おどける侵入者。
「うあああああああああ!!」咆哮と共に黒沢が侵入者に突撃する。が、決着はすぐに着いた。
侵入者のフルスイングした金属バットが黒沢のこめかみにジャストミートして黒沢は数メートル飛ばされて倒れた。床に赤い池を作ってるのを見ると…即死。綺麗好きの人間が血で床を汚して死んで成仏出来るのかな。
「よう、少年。」
「お前マジで誰だよ。声高いな。聞いてて癇に障る」
「これ裏声だ。そして俺の名前は…裏声 ゴエ。空き巣さ…!」いかにもやってやったっていうオーラ出すな。
「今の空き巣界は自己紹介を盗むのが流行ってんのか?ていうかコナンくんより偽名作りが下手だな。」
「まぁとりあえずだ。残るは少年とその巨乳女だけだ。口封じのために死んでくれない?首を横に振っても遂行するけどな。」
滅茶苦茶だな。だが首を横に振ってみた。そして口から紡ぐ。
「俺は良い。寂は殺すな。」死にたくはないが、大事な人と天秤にかければ自分の命の方が軽いと思う俺は寂を守ろうとした。
「ふーん。まあ、巨乳娘の方は気絶してるみたいだしなー。男なら女を守って死ねれば幸せだろうし、いいよ。巨乳娘にはなんの危害も加えない。」
「そりゃどうも。」
「じゃあ、あれだ。行くぞ。なに、怖がらなくて良い。エスカリボルグじゃなくてただの金属バットだから、粉々にはならんよ。」
それを聞いて苦笑いを浮かべる。まあ、今さっき目の前で殴られてたしな。実証済み。
「じゃあな、2年目新人保健委員。」は?おま!まさか!お前何やってんだ!!右きょ…


死にはしないだろ。まあ、力加減考えたし。
「さて、お2人様病院にごあんなーい。っと」篠原のポケットから携帯を取り出してぴぽぱ…TRUUUU…TRUUUUU…ガチャ!
「あ、いきなりなんですけど救急車出して貰えます?綾小路って人の家…そうそう2丁目の無駄にデカイ家。で、2人死亡2人重症。早く来ないと4人死亡になるんでよろしく。」ピッ!ツーツー
「さて、逃げますかね。」玄関に向かいドアを開けて道路を闊歩する。近くに止めてあったマイバイクに跨ってエンジンを掛けて走り出す。じゃあな、篠原。
37悪意と好意と敵意 ◆f7vqmWFAqQ :2010/05/08(土) 20:29:23 ID:o2jVD3Gz
「よう篠原。調子はどうだい?」
「ようじゃねーよパパラッチ兼殺人犯。」
「それお前もじゃん。」
「俺は世間的に認知されなかったからな。ついでに寂も。」
「あ、そう。で、調子は?」
「誰かのおかげで頭に18針縫ったわ」
「あら意外と軽いのな。て言う事は今病院か。携帯使っていいの?」
「あー、それが今の病院進んでるんだぜ。携帯を使える病棟があるんだ。」
「そんなのも知らなかったのかお前。ダセェ…。」
「うるせー馬鹿。」
「馬鹿って言った方が馬鹿。」
「お前馬鹿って言われたて自分が馬鹿なのを否定しないのな。」
「まあ、馬鹿じゃ無いならもう少し賢く生きる。」
「ああ、確かに。でさ聞きたいんだけど」
「なんだよ?」
「なんで俺を助けた?」
「離すと長くなるんだよなー。まあ良いや。理由その1。まずお前ん家の借金の原因は俺の親父なんだよ。」
「…」
「あのクソ親父、母さんを亡くしてから呑んだ暮れて、パチンコばっかして借金増やして、その借金をお前ん家に押し付けて自分は逃亡。まあ、お前への罪滅ぼしみたいなの。」
「だから俺の両親は知らなくて良いとか言ったのか。」
「だろうな。まさか保健委員で仲良くなった人間の父親に押し付けたとは夢にも思わなかった。あ、理由その2。俺は天野が好きだったから。」
「お前に寂はやらん。寂は俺の嫁。」
「分かった分かった。まあ、まさかストーキングしてたら京華院先生を殺すとは思わなかった。またストーキングしてたらうちの高校の生徒を立て続けに殺して行って」
「…」
「その度に証拠隠滅を俺がしてたから捕まらなかったんだろうね。そういやあの貧乳娘とその付き人も見掛けたなぁ」
「お前なんかいろんな意味で凄いな」
「誉めるな。」
「誉めたつもりはない!」
「まあ、他の理由は井上先生の尾行に失敗して帰ってたらお前が誘拐されてたとか親父が逃げてロクな生活が出来なくなったからとかこのくらいかね。」
「なるほどな。なんか納得。でさ、お前これからどうすんの?」
「親父を殺して俺も死ぬ。」
「無茶だろ。」
「あーあいつの行く場所は見当着いてるから大丈夫。じゃ、電池勿体ないから、またな!」
「おい、待っ「あ、後お前の担任の井上先生によろしく。」ガチャ!


掛けなおそうにも非通知設定だったから返し様が無かった。
38悪意と好意と敵意 ◆f7vqmWFAqQ :2010/05/08(土) 20:30:27 ID:o2jVD3Gz
終わります。次を最終回にしたいところです。はい。
39名無しさん@ピンキー:2010/05/08(土) 21:01:26 ID:exGyoP/i
40名無しさん@ピンキー:2010/05/08(土) 21:20:03 ID:t0f2LeeR
41名無しさん@ピンキー:2010/05/08(土) 22:12:31 ID:cEvGuIdd
ヤンデレアウト
非実在青少年>規制も審議が5月中盤に延びただけだしまだ終わってない

条例の転載な

一 青少年に対し、性的感情を刺激し、残虐性を助長し、又は自殺若しくは犯罪を誘発し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの

とりあえず2ch,コピペブログ、ツイッター、ミクシィに拡散コピペはれ
民主、生活ネット、自民都議議員石原都知事にメールだせにメールや手紙などでこの条例の不味い所を伝え反対に回るよう呼びかけよう
42名無しさん@ピンキー:2010/05/08(土) 23:12:06 ID:wf/oqcWK
>>83 GJ
うわぁ
後味わりぃ
逮捕されねえかな
43名無しさん@ピンキー:2010/05/08(土) 23:38:07 ID:e3Ppri6E
GJ
なんかクロスチャンネルの主人公みたいだな
44名無しさん@ピンキー:2010/05/09(日) 00:48:03 ID:Ci2vtFYR
>>41
今更足掻きはじめたのか、それでも実行力のある41が好きだ。

仲間が増えるのは嬉しいぜ俺は。このブログを使え
http://otakurevolution.blog17.fc2.com/
児童ポルノ規制法に関して書かれてる。特に反対派が集まってる場所でもある
このコピペにこのブログもつけておくといいかもしれない。
45名無しさん@ピンキー:2010/05/09(日) 01:05:54 ID:pczBiDy0
46悪意と好意と敵意 ◆f7vqmWFAqQ :2010/05/09(日) 13:13:24 ID:lt0f9Q3V
9話投下。と言ってもエピローグ的な物なんでかなり短いです。1レスしか消費しないです。
47悪意と好意と敵意 ◆f7vqmWFAqQ :2010/05/09(日) 13:13:54 ID:lt0f9Q3V
携帯電話をベットに投げ捨てる。病院に搬送されて5日経った日の出来事だった。
どうしてこうなったのか…世間では今回の犯人は長谷川で通り魔も長谷川だろうと断定された。綾小路家は必死になって彼を探している。
そして俺と寂は世間的には犯人ではなく被害者となった。
だが、俺が綾小路を殺した事や寂の連続殺人は一生自分たちに付き纏うだろう。
しかし寂の占いは本当に当たっている。俺と親しくなった女性みんな死んでやんの、寂と親以外。
意識不明の重態に陥ったその寂の病室に向かう。俺はと言うと昨日意識不明の重態から目覚めた寂に比べたら軽いという形容詞すら生温い程の軽傷だった。
寂の居る1106号室に到着する。ノックをしても返事が無い。昨日目覚めたからただのしかばねのようではないはずだ。
返事を貰わないまま病室に入ると寂が居た。俯いて日本人形みたいな髪で顔が隠れていた。
「よう」パイプ椅子を広げて座る。
「ごめんなさい!私なんでもするから!だから」寂の口に右手を添えて黙らせる。
「俺だって人殺しだから…許すとかそんな権利はないし義務もない。」
墓より生きている人間の方を大事にするのが信条。まぁばあちゃんの受け売りだけどね。と心の中で付け足してから手を離す。
「怒ってない?嫌ってない?」
「嫌いな奴の見舞いになんか来ないって。だからその…」言え!俺言え!好きって言え!
「あー…んー…」言えない自分が不甲斐無い。
寂が俺を疑問の目で見る。「早く言いなさいよ!」という感情が込められてる気がしないでもない。覚悟を決める。
「好きだ…付き合ってくれ」言った。言ったぞ!!そして寂を見る。
「…………はい。」返事はyesだった。
「でもその代わり浮気したら目玉くりぬくから。」ヤバい。目がマジだ。
「浮気なんて出来るかよ。まだ死にたく無い。」
寂が俺の手を引っ張る。ベッドに着地。
「ねぇ…しよ…」顔を赤らめて言う。可愛いけどさ、
「病人は大人しく寝てろ。」
「じゃあ…キスだけでも!」寂の最大限の譲歩に応じて唇を重ねる。
「んっ…!」色っぽい声が漏れる。襲いたいが我慢して唇を離す。
「ねぇ…一緒の大学受験しよっか。」
「そうだな…」寂の提案に頷いてまた唇を重ねた
                                fin.
48悪意と好意と敵意 ◆f7vqmWFAqQ :2010/05/09(日) 13:15:57 ID:lt0f9Q3V
終了。
寂の目の前で美月が勇輝を逆レイプするシーンとか考えてたのに…どうしてこうなった。
49名無しさん@ピンキー:2010/05/09(日) 13:20:23 ID:AkAh6LVu
GJ!
お疲れ様です
50名無しさん@ピンキー:2010/05/09(日) 13:47:09 ID:m7Gk+iLp
え?おわり?
51名無しさん@ピンキー:2010/05/09(日) 14:14:37 ID:xS8bK+o8
完結乙&GJです!
52名無しさん@ピンキー:2010/05/09(日) 16:35:24 ID:FnsgQQjL
GJ


次回作に期待
53名無しさん@ピンキー:2010/05/09(日) 16:41:38 ID:en26ILSD
GJ! ただ
>寂の目の前で美月が勇輝を逆レイプするシーン
何故書いて下さらなかった!(泣)
54名無しさん@ピンキー:2010/05/09(日) 16:43:27 ID:yNNQ8HgG
次の作品を書きたくなって今のをさっさと終わらせたくなったとか
55K,A  ◆wycmxKO9B. :2010/05/09(日) 18:20:49 ID:CR7T7slx
短編投下します。
NGワードは「奥様は戦略家」でお願いします。 
56奥様は戦略家  ◆wycmxKO9B. :2010/05/09(日) 18:23:19 ID:CR7T7slx
〜宏貴視点〜

俺の名前は有森宏貴。何処にでもいる若手の陸士長だ。
今、俺は演習を終え、73式小型トラック(パジェロ)に乗って隊舎に帰っている。
俺は自宅で待っているであろう嫁の事ばかり考えていた。
俺の嫁は優しい。昔から俺のことを支えてくれた優しい人だ。
今回のも笑顔で送り出してくれた。仕事柄、機密事項があるので詳しく話せないのに怒らない。
機密事項とは、演習・作戦等の内容・編成などに始まり、レーダーシステムの性能・操作盤のデザインま
で幅広く存在する。当然守秘義務がある。そのせいで娑婆の女性とはいろいろ難しい。
例を挙げるなら、俺の隣に座っている朝倉三曹はこの間の飲み会の後、浮気疑惑を掛けられたらしい。
酔っ払って道でぶっ倒れてた女性を交番に運んだのが悪かったみたいだな……
俺もその時一緒に運んだから、服に女物の香水臭や髪とか付いてたけど何も言われなかったな。
「理解がある嫁さんじゃないか」と言われそうだが、そんな次元じゃない。
家族サービスができなくても許してくれるし、突然不機嫌になることもない。
さらに俺が冗談で「もし、演習と嘘ついて浮気してたらどうする?」と訊いたら、いつもの笑顔で
「良いよ。でもそれはゲ−ムみたいなものでしょ?私の事を忘れない程度にね。」と言われすごく申し訳
ない気分になった…やっぱり恵美はいい女かもしれない。

高校時代、俺は恵美以外に六人と付き合ったがみんな上手く行かなかったな。
一人は疑心暗鬼の塊で、クラスの女子と喋るだけで嫉妬して喚き散らす人だった。
俺は振られた時、恵美に励まされて立ち直った。まだその時はよく話すクラスメイトだった。
二人目は、真剣に好きになったが、失踪した。不覚にも恵美の胸で泣いてしまった。
文句一つ言わずに俺を抱きしめてくれた……この時から好きになってしまったんじゃないかと思う。
三人目は、失踪したあとの空席狙いで告白してきた。
しかし、恵美の家に行った事がばれて、激しくケンカした後にふられた。
恵美との友人関係も終わると思いながら、告白しようと恵美の家に行ったときに先に告白された。
そして恋人関係になって少しした頃、また他の娘から告白された。付きまとわれた末、交際する羽目に。
恵美に相談したら許可がもらえたが、四人目の女の子とはケンカして別れた。
五人目は恵美の友達だったな。こいつとも確かケンカしたような気がするぞ……
結局、横取りに失敗して引っ越したんだっけか。独占欲さえ出さなかったら友達で居る事ができたのに。
六人目はすっごく物騒な奴だったな。話聞かないし、キレたら暴れだす独占欲の塊みたいな奴で、常に
連絡入れないと騒ぐ。
交際を断った瞬間カッター出した時は焦った。「泥棒猫は始末する。」と言う感じの人だったから、
恵美との事がバレたら危険なのでしばらく接触しないという提案も受け入れてくれた。
10日後、消息を絶った。三人目のこともあり、何か変だと思ったがあの人だから警察にでも捕まっている

のだろうと結論付けた。
こうして高校を卒業し、同じ大学の社会学部に進んだ。
恵美の親父さんに影響された俺はそのまま大卒自衛官となった。恵美は軍事評論家となった。
それからまもなく結婚したんだが、相変わらず優しすぎる。
同期の一人なんてこの間、「結婚してから急にきつくなった。」とか何とか愚痴っていた。

回想しているうちに、身体は官舎の前の駐車場にいた。
俺は官舎の階段を登り、部屋の扉を開けた。
「ただいま。今度の奴はきつかった……やっと恵美の手料理が食べられる。いつも、ありがとう。」
「お疲れ様。ご飯ならもう用意してるわよ。」
感謝の言葉を搾り出し、椅子に座った時にはもう夕食が並んでいた。
しばらく話していたが、睡魔に負け崩れ落ちるように布団へ……

こうして、俺の一日は終わった。
57奥様は戦略家  ◆wycmxKO9B. :2010/05/09(日) 18:25:04 ID:CR7T7slx
〜恵美視点〜

私は、軍事評論家として雑誌のコラムの原稿を書き上げながら夫の帰りを待っていた。
ノートパソコンの画面には米軍との対テロ合同演習のデータが映っている。
作業を始めて数十分。テレビ番組では普天間基地移設問題が取り上げられていた。
そして、台所に炊飯器とお鍋の確認をしに行き、戻ってきた時にはもう、次の番組が始まっていた。

「今月に入ってから、夫がなかなか帰ってこない、これってどうなんですか?」
テレビでは、不安を煽るような番組が垂れ流されている。夫の自由を縛るなんて妻失格だ。
身動きできなくなるまで縛ることでしか維持できない関係なんて、捨ててしまったほうがいい。
他の家はどうか知らないが、ひろ君なら大丈夫だよね。
だって、私だけを見てくれるって約束したから。遊んでも、本気にならないわ。
浮気だってさせてあげるくらい信頼してくれる妻がいるもの。そんな女がそう何人も居るわけない。
あの人は高校時代はかなりもてていたのに、私を選んでくれた。
決して、ひろ君が浮気者で女の子をとっかえひっかえしていた訳じゃない。
どの娘も勝手に言い寄ってきて、勝手に恋人を気取って、勝手に怒り出す。その繰り返しだった。
毎回それを慰めてたっけ。まあ、その女に本気になったら消してあげるけど。
大体、疲れて帰ってきたのにいきなり不機嫌になられて、怒り出すような女を本当に愛せるだろうか。
少しでも香水の香りがすると尋問され、メールを調べられ、女の名前が見つかったら激しく怒られる。
そんな公安の捜査員のような女と過ごさないといけない旦那さんがかわいそうだ。
浮気なんてゲームの一種でしょ。適度な緊張を保ち、ストレスを解消するための。
それにメリットだってある。一種の均衡状態を保つことによって、よりひろ君の周りが安定するもの。
これは理に適った方法だと思う。一人の女が居るうちは未知の脅威に対する牽制となるし、その状況も受
け入れてあげる私の株も上がる。まさに一石二鳥だ。国際情勢からこの方法を編み出した。
ある独裁国家があったとする。その独裁者・政権を倒しても、また別の勢力や第二の独裁者が現れる。
つまり、敵勢力を一定以上弱くしすぎてはならないのだ。
大体、帰ってこない回数で夫婦仲が……とか馬鹿馬鹿しい。一々心配して、問い詰めても仕方ない。
毎回騒いで体力と精神力をすり減らし、夫に嫌われるくらいなら閾値を越えた時のみ動いた方が得策だ。
対テロ戦争のように長期的な目で見るべきだ。
「ただいま。今度の奴はきつかった……やっと恵美の手料理が食べられる。いつも、ありがとう。」
「お疲れ様。ご飯ならもう用意してるわよ。」
私はひろ君の制服をハンガーに掛け、部屋着を手渡しながらキスをした。

ひろ君はご飯を食べた後、しばらくして眠ってしまった。お仕事ご苦労様。
58奥様は戦略家  ◆wycmxKO9B. :2010/05/09(日) 18:27:16 ID:CR7T7slx
投下終わり。 

知り合い……の夫婦に影響されて書いた。後悔はしていない。
59名無しさん@ピンキー:2010/05/09(日) 19:32:11 ID:7R6QyKoT
60名無しさん@ピンキー:2010/05/09(日) 19:51:49 ID:2e9+vppo
ヤン…デレ…?
61名無しさん@ピンキー:2010/05/09(日) 21:57:32 ID:5zi306Ln
泥棒猫が出てないから病む展開がなかっただけで、兆候は見て取れたと思う。ともあれ乙。ぜひ続きを…
62名無しさん@ピンキー:2010/05/09(日) 22:53:50 ID:xS8bK+o8
>>58
素質と実力があり自己コントロールに長けたヤンデレか
面白い、GJです

またこの設定で短編書いてくれたら嬉しい
63名無しさん@ピンキー:2010/05/09(日) 22:56:29 ID:7CQ0bAy5
これはとても訓練されたヤンデレだな。
64名無しさん@ピンキー:2010/05/09(日) 23:42:47 ID:FnsgQQjL
気のせいか?………今まで見て来たヤンデレの中で一番怖いんだが………知り合いに似ているのがいるせいか?
65名無しさん@ピンキー:2010/05/10(月) 03:02:08 ID:IkG0wW1l
恋人と相思相愛になってる幸せ絶頂ヤンデレ娘の目の前で、彼氏の口に俺のチンポをぶち込みたい
66名無しさん@ピンキー:2010/05/10(月) 11:35:20 ID:Mwt68num
オナホで抜いてる所をヤンデレに発見されたい
67名無しさん@ピンキー:2010/05/10(月) 12:31:54 ID:O/rcMOoa
オナホが嫌いになるように
針とか辛子とか仕込む訳ですか?
68名無しさん@ピンキー:2010/05/10(月) 12:40:49 ID:GR/e8nFI
じゃあヤンデレに扱かれてる所をヤンデレにはっけされたらどうなるのっと
69名無しさん@ピンキー:2010/05/10(月) 12:41:41 ID:GR/e8nFI
はっけじゃなくて発見だった、誤字スマン
70名無しさん@ピンキー:2010/05/10(月) 14:11:44 ID:Mwt68num
ヤンデレ「八卦128掌」
71名無しさん@ピンキー:2010/05/10(月) 16:11:47 ID:+jRS6dL/
いえーい
72名無しさん@ピンキー:2010/05/10(月) 16:58:19 ID:PchTglto
>>70  

それヒナタじゃね?w
ヒナタはいいヤンデレになれそうだ
73名無しさん@ピンキー:2010/05/10(月) 19:36:04 ID:tQjpbcNJ
>>72
目だけだろ
74名無しさん@ピンキー:2010/05/10(月) 20:44:59 ID:PchTglto
>>73
そうかな?
よく物陰からナルトを見てるところなんて
「気に病む透歌さん」っぽいんだが
75名無しさん@ピンキー:2010/05/10(月) 21:52:08 ID:Tw8JVYaS
いよいよ今年の秋「ぽけもん黒」が発売されるな・・・
香草さん出るなら10本買う
http://www.pokemon.co.jp/bw/index.html
76名無しさん@ピンキー:2010/05/10(月) 22:11:35 ID:mwEkznYc
>>75
正直それ自体は関係ないから貼り付けんなよ、うざいから
77名無しさん@ピンキー:2010/05/10(月) 23:17:11 ID:GzWu+NTj
78名無しさん@ピンキー:2010/05/10(月) 23:18:24 ID:GzWu+NTj
メイン
79名無しさん@ピンキー:2010/05/10(月) 23:18:48 ID:GzWu+NTj
強 ある
80 ◆f7vqmWFAqQ :2010/05/11(火) 00:10:57 ID:IM8wuOZh
>>25で言ってたいのちゃん先生の短編SS投下します
僕の名前は相田洋介。双葉宮(ふたばのみや)商事に勤める26歳のサラリーマン。周囲からは出世株として期待されている…らしい。
そんな僕は今日人生最高の瞬間を迎えようとしていた。最愛の人「井上彩子」と結婚する。
控室で見たウェディングドレス姿の彩子はいつもに増して可愛かった。そんな彼女と結婚できるなんて僕はなんて幸せ者なんだろうか。
思い返せば彼女と出会ってからは本当にいろんな事があった。


初めて出会ったのは大学2回生で20歳の時に初めて行った合コン。記憶が正しいなら同じ学部の時田に誘われたはずだ。
「お前流石に20年女居ないのはマズイって」とか「頼む!数合わせでいいんだ!」とか言われたんだっけかな。
受ける理由がないから適当な返事で断り続けた。彼女が居ない事が罪でも無ければ行きたくも無いイベントに足を運び時間を潰す程暇じゃ無い。
大体女は苦手なんだ。俺が人類の半分の人間が苦手と言うのには理由が有る。
普段は男女平等を唱っているがひょんな事からレディーファーストを主張する厚かましさ。
すぐに流行に流される意思の弱さや、暴力反対と言う割には口の暴力が凄まじい事。
なにより胸元を大きく開いた服やパンツが見えるんじゃ?と疑いたくなる程短いスカートを着て街を闊歩して恥ずかしくは無いのか。
厚顔無恥で傍若無人にも程がある。古き良き時代の大和撫子が絶滅した現代の日本人女性はそんな生物なのだ。だから俺は苦手だ。
しかし「飯奢るから!」の一言が耳に入って詳しい話だけでも聞いてみようと思って耳を傾けた。
詳細を聞くと場所はなんと都内の焼き肉屋。タダで焼き肉食えるとはラッキーだし、今月は財布がピンチだったのだ。
人数は男4人と女4人。両陣営友に大学生。男性陣は右から時田、真田、俺、松野と座っていた。
まあ最初は自己紹介をする事になった。時田と真田の自己紹介はやけに気合いが入っていた。
で、俺はと言うと「相田洋介です。よろしく」と趣味すらも省略した。「シラケさすなよ」という念の籠った男性陣の視線を無視して着席。
俺の自己紹介の次に自己紹介をした松野も気合い入っていたなぁ。合コンってこんなに真剣になるもんなのか?と疑問を抱くほどに。
続いて女性陣の自己紹介が始まった。トップバッターはいかにもギャルな女性だった。
「藤井洋子です。趣味は〜レゲエかな!よろしくネ!」
藤井って人…胸元を曝け出して髪色は金髪で夏でも無いのに焦げ茶色の肌。ピアスをしたヘソを出していて総評すると下品と思えた。

「河野由美です☆メイド喫茶でバイトしてます☆よろしくお願いします☆」
河野って名乗った人は化粧が濃く髪型はツインテールでぶりっこ全開だった。コリン星出身だったりする?
なにより特徴的なのはアニメ声。俺の耳にとっては鬱陶しい声だった。うぎー!
なんかバイト先のメイド喫茶のスタッフルームで客の悪口言ってそう。根拠は無いがなんとなくそう思った。

「雪野…由紀…。よろしく」
3番バッターの雪野って人ははこう…X系の格好をした女性だった。
俺と同じであんま自己の紹介はしなかった。「口下手なんだろうな」と勝手な解釈をしてみた。
ラストの人間もクセの強い奴なんだろうなと左に目を見やる。だが、現実は俺の予想の斜め上を行った。

「い…井上彩子です!!数合わせで来ました!!よ…よろしくお願いします!!」
声の主は茶髪の女性。その色は上品さを撒き散らしている感じの髪。洋服の形を崩さない貧乳。
日焼けという言葉に無縁そうな白い肌。知的美人を連想させる顔の造りとその顔を際立たせる薄いメイク。
合コンの自己紹介で「数合わせで来ました」って慌てながら言うくらいの人だから中身は知的美人ってより天真爛漫な子供っぽい。
まあ、悪く言えば空気が読めない人。現に自分の発言で空気が盛り下がったのに気が付いて無いようだし。
そして僕はそんな彩子に少し興味を持った。彩子は女性に興味の欠片も無かった僕の20年に終止符を打っってくれた。
彼女と会話したい。彼女と仲良くなりたい。彼女をもっと知りたい。
しかーし!女が苦手な俺はどうすればいいか分からなかった。
彩子の空気の読めない自己紹介から5分が経った。
簡単な自己紹介の後に席替えをする事になって紙で作られた即席のクジを引いたら僕と彩子は廊下側の席で向かい合わせになった。
この時ほど無神論者の僕は神様って奴に感謝した事は無い。神様ありがとう!
楽しく会話する男女6人。雪野さん以外に饒舌じゃねーか!と心の中で突っ込んでから6人の横で店員の持ってきた肉を焼く俺と彩子。
「「………」」
隣は喧騒に包まれていたが廊下側の縦二席は肉の焼ける音だけがしていた。
そうだ、僕は浅はかだった!小中高と女子と会話を最低限しかせずにホモの噂を流されていた様な無力な俺に何が出来る!
クッ…女子を内心「厚顔無恥で傍若無人」と見下していた過去のツケがこんな所で回ってくるとは…。自分の行いを悔やむ。
けれど、神様は救いの手を差し伸べた。いや、女神の声が鼓膜に届いたという方が正しいか。
「あの…具合でも悪いんですか?」
いつの間にか俺の横に立っていた彩子が心配そうに俺に声を掛けてきた。
「あ…ああ。大丈夫…です…」
「そうですか。あの…お肉焼けましたので…よかったらどうぞ」彩子の箸にはよく焼けた塩タン。
「…どうも」そう言って僕はタレの入った受け皿を差し出した。
彩子はタレの中でその塩タンを丁寧に泳がせる。そして…
「はい、どうぞ召し上がれ!」その塩タンを箸で僕の口元まで運んで来た!
最初は戸惑ったが徐々に近づいて来るタン塩と天真爛漫な彩子の笑顔を見て覚悟を決める。
口を開いてタン塩を受け入れて咀嚼して飲み込む。幸せの味がした。
「おいしいですか?」こんな美女に「あーん」して貰えて不味い筈がない。
「うん。おいしいです…ありがと」
ふと隣が静かになっている事に気付く。6人がにやにやしていた。目が合うと6人とも目を逸らして再び喧騒ムードを作り始めた。
それを見ても気にせずに笑顔のまま席に戻る彩子。子供っぽい性格なのか空気を読めないのか…。
「全く…女って本当に厚顔無恥で傍若無人な奴だな」と改めて実感した。けれど不思議と不快感は無く違う何かが込み上げてきた。


その後、僕たちは焼き肉屋を後にした。「カラオケ行こうぜ」なんて提案が出たが僕は音痴なんで適当な理由を並べて離脱。
彩子は大学の講義が1時間目からあるらしく同じく離脱となった。
夜道は危ないので「駅まで送るよ。」と勇気を振り絞って言うと「お願いします。」という返答が笑顔と共に帰って来たので送る事になった。
駅までの帰りで色々な事を聞いた。中高と女子校に通っていて男性との交際経験は無いとか数学好きな所とかそんな他愛も無い会話だった。
彩子の夢が高校教師になる事と聞いた時は「正直幼稚園の先生の方が向いてる」と思ったのは内緒だ。
楽しい時間はすぐに過ぎて駅に着く。
「では私こっちなので…」
「あの…」僕と反対側のホームに向かおうとする彩子を呼び止める
「?」
「れ…連絡しゃきを…!」噛んだ…。ダッサ…と自己評価して彩子を見ると携帯電話を持っていた。
「喜んで」その言葉を聞いてポケットから携帯電話を出そうとして落っことす。「ドジですね〜」なんて彩子に言われて恥ずかしかった。
「えーっと僕から送信で!」僕は送信を選択する。
「あ、はい。」互いの赤外線の部分を近づけ合う。が、いつまで経っても送信が完了しない。何故だろうと首を傾げていると彩子が口を開く。
「あ、私も送信してました…ごめんなさい…私もドジでした!」僕は萌え死にそうになった。
連絡先を交換して最初の土曜日。僕は彩子を「もしよろしければ公園の桜を見て歩きませんか?」とメールでデートに誘った。
断られるかと思ったが快く「喜んで!」のメールが帰って来た。しかも猫の顔文字付き。
彩子のアルバイトが午後2時に終わるので3時に噴水で待ち合わせという事になった。
噴水に座ってしばらくすると彩子が登場。
「お待たせしてすみません」という彩子の謝罪の台詞に「いや、今着たとこだよ」なんていうありがちな台詞で返した。
自然を満喫しながら公園内を歩く。春なので桜が満開で鮮やかだった。
ふとその桜の木の下で一人の少年が泣いていた。しかし周りはスルーを決め込んでいたのでそのつもりで僕もスルーしようとした。
けれど、彩子は女神のような優しさを持つ女性なので少年を見捨てなかった。
「僕、どうしたの?」しゃがみながら聞く彩子。それに釣られて僕も少年の元に歩み寄る。
「おかーさんと…はぐれた…」
「あらあら、どうしましょ…」
「少年…探してやるから泣くな。」カッコつけて見た。効果は有った様で少年の目に希望の光が見えた。
「立てるか?」少年は僕の質問に頷く。
「よく頷いた。後でジュースを奢ってやろう」某謙虚なナイトの真似をしてみた。少年はジュースという言葉で笑顔を取り戻した。


少年の母親を見つける頃には夕焼けが地面を茜色に染めていた。
少年の母親に感謝されて、少年は母親と手を繋いでこちらに顔を向けてもう片方の手をぶんぶんと振りながら親子は帰って行った。
「良かったなぁ。でも、誘っておいてごめんな。井上さん。」
「いえ、私もあの子が無事に母親と再開できて良かったと思います。それに相田さんの優しいさが分かって今日はいい日でした。」
屈託のない笑顔で僕を誉める。どきっとした。この人の笑顔をもっと見たい、独占したいと思った。
だから僕は告白の台詞を彩子に告げた。
台詞の内容は緊張し過ぎて覚えてないが恥ずかしくて思いだしたら顔から火が出そうになる台詞だったような気がする。
夕陽の所為か告白の所為か彩子の顔は赤くなっていた。そして口を開く。
「私…相田さんの事を初めて見た時から良いなって思ったんです。それに今日の優しさも見て…なんていうか…こんな私で良ければよろしくお願いします!」
返事はOK。僕の初恋は実った。
「でも3つだけ条件が…」
「何?」どんなのが来るかと身構える。
「一つ目は下の名前で呼び合う事」
「分かったよ。彩子」ちょっとこそばゆかった。
「二つ目は結婚を前提にしたお付き合いにする事。」
「大歓迎!」彩子となら今すぐにでも結婚したい。
「三つ目は…えっちなのは結婚してから!交際中はキスまで!」赤い顔を赤らめて言った。
また萌え死にそうになりながら「了解した」と答えた。獣のように交わる事に嫌悪感を持つ俺にとっては好都合だった。
それからは順調に愛を育み俺は大企業である双葉宮商事から内定を貰い、彩子は晴れて教員免許を習得した。
大学を卒業するころには互いの両親に紹介して家族公認の仲になった。このまま上手く行くと思ってた。
悲劇は25歳のときに起きた。
彩子から「いますぐきて」とだけ書かれたメールが来た。嫌な予感がして彩子の住むマンションに行く。
インターホンを押しても反応が無いのでドアノブを握るとドアは空いていた。中は真っ暗で何も見えなかった。
部屋に入っても真っ暗だが変な音が鼓膜を刺す。電気を点けると彩子が布団で泣いていた。
「洋介さん!洋介さん!!あ、ああああああああああああ!!!!」俺に飛びかかり泣きじゃくる。
理由を聞くと仲の良い京華院涼香という同僚の女教師が殺されて悲しみにくれていたらしい。
職場では強がってる分、家でこうして泣いているようだった。
俺はどうしたらいいか分からなかった。ただ自分の腕で彼女を包んでいた。


赴任している高校の生徒が死ぬ度に塞ぎこんでは泣きじゃくってった。
それを僕が子供をあやすように優しく包んでいった。5回ほどだったかな。
けれど、犯人が自分の高校の教え子だった時はそれまで以上に泣きじゃくった。
その時確信した「こいつは俺が居ないと駄目だ」と。
そして紡いだ「彩子。結婚しよう。必ず幸せにするから。だからもう泣くな」


そして今僕はここに居る。前には神父、横には彩子。後ろには親族や友人達が居るこの教会に。
神父が僕に「誓いますか?」と問いかける。
「誓います。」僕が躊躇いなく言うと神父は僕に微笑んだ。
神父が続いて彩子に「誓いますか?」と問いかける。
「はい。どんな苦難もお道も2人で乗り越えて見せます。一生と言わずに来世もその次も愛し合います。
洋介さん?浮気なんてしたら許さないわよ。主に浮気相手を。完膚無きまでに叩きのめすわ。
後、先に死なないでね。私の周りはどんどん居なくなって辛かったの。洋介さんまで居なくなるときっと私壊れちゃうわ。
それより洋介さん。子供は何人欲しい?それよりしばらくは2人だけの時間を満喫する?ええ、任せて。
洋介さんがどんな変態プレイを要求してきても私ちゃんと応えるわ!でも優しくしてね…。
そして中年になっても老人になっても未来永劫愛し続ける事を誓います。」
僕と神父さんは唖然とした。会場はドン引き。彩子は満足顔。
「そ…それでは誓いのキ…」神父が台詞を言い終わる前に押し倒されて口付けを交わす。
こ…こいつ…狂ってやがる…。これが噂のヤンデレ…って奴なのか…。



そんな彼女を益々愛おしいと思える俺も狂っていると自分で思った。彩子、愛してる。
85 ◆f7vqmWFAqQ :2010/05/11(火) 00:18:56 ID:IM8wuOZh
終了。
ご愛読ありがとうございました!次回作品をお楽しみ!(ジャンプ風)


次はもっとヤンデレっぽくします…。
色んな意味で無敵な女生徒会長×女顔いじめられっ子少年で
86名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 07:43:34 ID:tlNnri8E
通勤電車の中からGJを送ります
87名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 11:40:56 ID:DmSs6zC3
じいじぇい
88名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 17:46:16 ID:Xr1VaJd6
>>85
GJを送らざる得ない
89名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 18:19:58 ID:CF2xh/pb
>>85
なにこのかわいい夫婦GJ!
まさかのデレヤン彩子さん、サイコーっす。

次回のシリーズも楽しみにしています。
90名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 19:54:43 ID:4v4mwbMv
当たる
91名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 19:55:46 ID:UBKpWgV1
ヤンデレ家族こないかなあ
92名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 20:45:12 ID:pyrgsklF
キモオタが早く読みたい
93山姫と海姫:2010/05/11(火) 21:35:03 ID:9ITSh+D9
投下します。
94山姫と海姫:2010/05/11(火) 21:36:24 ID:9ITSh+D9
昔々のことです。
ある国に木こりが住んでいました。
心優しく真面目な働き者でしたが、生まれつき顔が醜く、体も熊を見下げるほどの大きさでした。
人々はそのことで疎まれて、山の中で一人木を切って暮らしていました。

ある日のことです。
木こりはいつものように、山に木を切りにでかけました。
えっちらおっちらと山道を登っていると、絹を裂くような悲鳴が聞こえてきました。
急いで声のした方に走っていくと、女の人が狼に襲われようとしているではありませんか。
娘は木にもたれかかり、震えるだけでなす術がなさそうです。
「あぶない」
木こりはそう叫ぶと、狼に向かって飛びかりました。
狼はびっくりして暴れましたが、体の大きな木こりはとうとう狼を捕まえて、放り投げます。
切り株にぶつかって体をしたたかに打った狼は、きゃんきゃんといいながら逃げていきました。
木こりは狼が遠くに行ったのを見てとると、娘に向かって話しかけました。
「もう大丈夫。けがは無いかね」
でも、女は答えずにぽーっと木こりを見つめたままです。
「おうい娘さん、大丈夫かい」
「ええ、ええ。もう平気です。助けてくれてありがとうございます」
木こりがもう一度問いかけると、娘はやっと気づいてお辞儀をしました。
ああ、こりゃおらを見て怖がっちまったかな、と木こりは思いました。
身の丈七尺、山のような体つきの木こりは、今まで何度もこのような目で見られてきていたので気にしません。
「おお、それはよかった」
木こりは頭を上げた女の顔を見ると、どきっとしました。
娘の顔がたいそう美人だったからです。
くりっとした瞳に小ぶりな鼻、艶かしく紅の塗られた唇。
ほっそりとした輪郭は、まるで出来のよい人形のようです。
背中にかかる長い黒髪もつやつやとした、こんな山には似つかわしくないぐらいのべっぴんさんでした。
「何だってあんたみたいな美人が、こんな山の中にいるんだね」
木こりは不思議に思って聞きますと、娘は口元に袖を当ててさめざめと語ります。
「私は隣の国の者です。この国に物見遊山に来たのですが、お供とはぐれてさまよっていたのです」
形のいい眉をゆがめて悲しげに話す姿は、正に傾国の美女といった趣です。
そして、木こりの岩のような手を握って、上目づかいにこう言いました。
「あなた様が通らねば、私は今頃狼にはらわたを食われていたでしょう。
あなた様は命の恩人でございます。どうかお礼をさせて下さい」
木こりはたじろぎました。
何しろ木こりはこのとおりの化け物じみた見た目をしていたので、女という女は木こりを見ると逃げ出していました。
こんな風に手を握ることはおろか、まともにしゃべった事すらないのです。
はしめて握った女の手はやわらかく、何やら良いにおいもします。
「れれれ、礼を言われることなんぞねえ。ききききき、気にせ、せんでくれ」
木こりは舞い上がりながら言います。
すると、それを聞いた娘は珠のような顔をずいと木こりの岩のような面に近づけ、こうまくしたてました。
「そんなわけには参りません。
命を助けられて何もせぬとあっては、我が名折れというもの。
ぜひともあなた様へ恩返しをさせてください」
娘のようすは、それはそれは必死でした。、
瑠璃のような瞳を見開いて、まるで木こりを逃がさぬとばかりに言いつのります。
その剣幕に気おされて、木こりはうんうんとうなずきました。
「おう、おう。そこまで言うのならしてもらうとしよう」
木こりがそういうと、娘は先ほどまでつり上げていた目を戻し、まるで花が咲いたような笑みを作りました。
それを見て、木こりはまたもやどきっとしてしまいます。
「はい。では、あなた様の身の回りのお世話をさせてください。
飯炊きから風呂掃除、夜伽のお相手まで何なりとお申し付けください」
学のない木こりには、夜伽というのが何かわかりませんでしたが、この娘があまりに熱心なので思うようにさせることにしました。
それに、こんなきれいな娘が自分の世話をしてくれるというのを断るほど、木こりも馬鹿ではありません。
「おお、それはありがたい。んだら、おいらの家に案内しよう」
「はい。わたくしは海姫といいます。不束者ですが宜しくお願い致しまする、お前様」
不束者という言葉も、木こりにはよくわかりませんでしたが、気にしないことにして木こりは娘と家に向かいました。
こうして醜い木こりは、ひょんなことから美人の娘と一緒に暮らすことになったのでした。
95山姫と海姫:2010/05/11(火) 21:36:59 ID:9ITSh+D9
さて、醜い木こりと海姫と名乗る美しい娘が共に暮らし始めて、一月が経ちました。
海姫は木こりに負けず働き者でした。
朝は早くから起きて木こりの飯を作り、夜は遅くまで木こりの着物をつくろって、かいがいしく尽くすのでした。
木こりはそんな海姫を見てありがたく思う一方で、自分のような男にこんなに尽くしてくれる海姫に悪いような気もしました。
そんなある日の事です。
仕事を終えて帰った木こりは、海姫の作ったご飯を食べながらこう言いました。
「海姫や。明日は薪を売りに町に行ってくる」
「左様ですか。頑張ってくださいまし、お前様」
「そこでじゃ。あんたは隣の国から来て、連れとはぐれたんじゃろう。
向こうもあんたの事を探しとるはずじゃ。
どうじゃ。おいらと一緒に町でおまえの連れを探してみぬか」
木こりが言うと、海姫は興味がなさそうにこう言いました。
「いえいえ。もはや連れも諦めている頃でしょうし、お気づかいは無用です」
「それならば、尚更お主の連れを探したほうが良いじゃろう。
あんたにはずいぶんと助けてもらったし、おらも恩を返さにゃあならぬ」
木こりは海姫を心配して言ったのですが、海姫は血相を変えて言い返します。
「そんなことはありませぬ。
わたくしがお前様に受けたご恩は、たった一月では到底返せぬものにございます。
どうかそのような事をおっしゃらないで下さい」
海姫は木こりの右腕を胸に抱き、目に涙をためて訴えます。
その姿はあまりにも健気で、木こりは自分の言葉を悔やみました。
「ああ、これは悪いことを言った。すまなかった。
二度と言わぬから許してくれ。このとおりだ」
木こりは座ってもなお大きな体を折り曲げ、海姫に頭を下げました。
「いえ。わかって下さればよいのです。
これからもお世話をさせて下さいな、お前様」
機嫌を直した海姫は、再び木こりの腕をとって嬉しそうにささやきました。
それを見て、木こりの鬼瓦のような顔を朱に染めてうつむきます。
「そそ、そういうわけじゃから、明日は留守を頼むぞ」
「かしこまりました。お前様のお帰りを、海はお待ちしております」
海姫は、まるで熱に浮かされたように語りかけます。
頬を朱に染めて、目元をとろかしたその顔は、何ともいえぬ色香に満ちています。
木こりはこれ以上この顔を見ていると、海姫と間違いを犯しかねような心地になりました。
そして、あたふたしつつも海姫をやんわりと引きはがし、いつもより早く床に着きました。

木こりが寝入ってからしばらくした頃、海姫はふすまを開けて寝ている木こりの下へ来ました。
地鳴りのようないびきをかいている木こりの顔を、海姫は愛しそうになでます。
すると、海姫は木こりの顔を撫でていた左手を、自分のまたぐらに差し込みました。
内股からくちゅくちゅと水音がひびき、海姫はうっとりとした顔になります。
「ああ、お前様。お前様。
私の国には、お前様のような偉丈夫はおりませんでした。
海はお前様が、愛しくてなりませぬ。」
更に激しく指を動かし、海姫は身をくねらせてあえぎます。
「あ、ああ、お前様っ。気をっ、気をやってしまいますうっ」
海姫の左手はとどめとばかりに、上に下にと激しく動かしました。
「ああっ。おっ、まえっ、さまっ。ああああっ」
木こりを呼びながら、海姫は達しました。
そしてぐったりと木こりの体にもたれながら、幸せそうに呟きました。
「お前様。国許の従者など、探すには及びませぬ。
海はお前様とこうして暮らすことが幸せでございます。
他には何もいりませぬ」
海姫はそういうと、後始末をして自分の部屋に戻っていきました。
96山姫と海姫:2010/05/11(火) 21:38:50 ID:9ITSh+D9
第一話投下終了です。
昔話っぽいものを書きたかった。
続きは書いたら投下します。
以上失礼しました。
97名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 21:47:53 ID:IVHxdEBt
最初に投げた狼が擬人化して逆レイプする超展開に来たい
98名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 21:49:39 ID:z6autQc/
>>96
めちゃくちやエレクトした。
続きが待ち遠しい

>>97お前には帰るべきところがあるだろう。
99名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 23:13:18 ID:1VOEnFrZ
>>97
専用スレあるからそっち池
100名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 23:51:03 ID:r7fw85jd
>>96
GJ!
続きに期待
101名無しさん@ピンキー:2010/05/12(水) 02:00:00 ID:dAtpYCUZ
>>96
ナイス!続きを楽しみにしてる。

>>97
豚の餌をくれてやるからその薄汚いケツをひっぱたかれないうちにさっさと森に消えな!
102名無しさん@ピンキー:2010/05/12(水) 04:10:45 ID:76/vI2nt
GJ。
何だか好みの雰囲気だ。
次も楽しみに待ってます。
103名無しさん@ピンキー:2010/05/12(水) 09:08:14 ID:+bM6RYQL
狼投げんなよ。
子供が見たら真似するだろ。
104 ◆lSx6T.AFVo :2010/05/12(水) 14:44:10 ID:+7NZkhJf
第三話投下します。
105私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/05/12(水) 14:44:47 ID:+7NZkhJf

 カタンカタンと、電車は一定のリズムを刻んで進んで行く。
 夕方時の静かな車内は、凍てついた外界とは対照的に暖かい。
 ふくらはぎを撫でる温風が、私の冷えた足を温めようと躍起になっていた。
 車内の席は全て埋まっていた。
 帰宅途中の学生、うたた寝している老人、くたびれたスーツを着た中年サラリーマン。みんな、どこか疲れた顔をしていた。窓から差し込む夕日が、顔に影をつくっているからかもしれない。
 私は、心地良く振動する座席に身を預けて、ぼんやりとそれらを眺めていた。
 一瞬、自分が何をしているのかわからなくなる。
 いきなり違う世界に放り込まれたような、そんな感覚。
 けれど、まだ咥内に残る鉄の味と右側頭部の疼痛が、そんな私を叱咤した。忘れるな、と。
 そこで思い出す。
 そうだ。私は今田中キリエの所に向かっているのだった。
 水面に浮かび上がっていく気泡のように、じんわりと思い出されていく記憶。
 まず思い浮かんだのは、昼休みに見た、マエダカンコの穿いていた下着だった。意外と子供っぽいデザインだったのをよく覚えている。
 次に思い出したのは、彼女から喰らった回し蹴りだ。あれは痛かった。気絶するかと思った。
 そんなことを回想しながら、私はハーっと息を吐いて、さらに深く座席にもたれかかった。
 油断するとそのまま眠りに落ちてしまいそうだった。私は昔から乗り物に乗ると眠くなる癖がある。そして、未だにその癖は治っていない。
 私は靄がかかった思考で、ゆっくりと今日の放課後のことを回顧した。
 マエダカンコとのちょっとしたやりとりを。
106私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/05/12(水) 14:45:22 ID:+7NZkhJf

 今日の放課後のことだ。
「鳥島タロウ居るか?」
 突如、教室内に響き渡ったハスキーボイスはクラスの和やかムードを一瞬で瓦解させた。
 同時に、教室の時間をも止まらせた。
 時間を止まらせた、というのは決して比喩などではない。文字通り本当に止まったのだ。
 机に座って談笑していた生徒も、教科書やノートを鞄の中に詰め込んでいた生徒も、今から部活に行こうと意気込んでいた生徒も、みんなピタリと、まるで蝋人形のように固まってしまった。凍り付いたと換言してもいいだろう。
 教室の温度も一気に下がった気がした。もしかしたら暖房も止まってしまったのかもしれない。
 そんな、一気に大氷河期にへとタイムリープしてしまった教室の中。当の私は机の下に隠れていた。
 咄嗟の判断である。彼女の声を聞いた瞬間に身体が自然に動いていた。これは手を抜かずに真面目にやってきた防災訓練の賜物だと思う。
 私は机の脚を両手で握りしめ、少しだけ顔を上げてみた。
 ハスキーボイスの発生源、マエダカンコはギラついた目で教室を一周させた。しかし、私に気付いた風ではない。
 どうやら、この瞬時の機転により彼女の位置からでは私が見えないようだった。
 これは千載一遇のチャンスだ。
 私は机の下から、こっそりと机上の鞄を持ち込むと、彼女のいない方のドアまで、腰を屈めて歩いて行こうとした。
「おい、そこのお前。鳥島タロウの席はどこだ」
 疑問形なのか命令形なのかイマイチわからない口調で、マエダカンコは近くの女子に尋ねていた。
 女子生徒はヒッと軽い悲鳴を上げてから、震える声で言った。
「あ……あそこに……」
 と、指を指すその先には当然の如く私が居た。
 隠れているものもピンポイントで見られては見つかってしまうものだ。
「鳥島タロウ、来い」
 今度は間違いなく命令形だった。
「……はい」
 私は立ち上がって、のろのろと彼女のもとへと歩いていく。
 クラスメイト達は固まりながらも視線だけは私に向けていた。
 尋問されていた女子が申し訳なさそうに私を見ている。彼女を責める気は毛頭ない、あんな風に聞かれては誰だって答えてしまうだろう。
 なので、私は安心させるように、にこりと微笑んでやった。
 こうして私は、赤紙を出された次男坊のような心持ちで、マエダカンコに再び拉致されていったのだった。
107私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/05/12(水) 14:46:32 ID:+7NZkhJf

 彼女に連れて来られたのは、私が昨日、田中キリエの恋文を読んだ場所でもある非常階段であった。
 また自販機前だろうと思っていた私は少々拍子抜けをした。
「言い忘れたことがあった」
 と、マエダカンコは切り出す。
「昼休みのこと、キリエには黙っていろ」
 簡潔に出された彼女の勅令に、私は「はあ」と曖昧な返事をした。そして、一応助言してやる。
「それは構いませんが、仮に私が黙っていたとしても、結局は田中さんに伝わっちゃうと思いますよ。私とマエダさんが昼休みに会っていたことは、それなりに広まってるみたいですし」
 さっきの教室での級友達の態度を見ればわかるだろう。
 しかし彼女はあっけらかんな態度で続けた。
「違う。私が言ってるのは昼休みにお前と会ったことじゃない。昼休みにお前と話した会話の内容だ」
「会話の内容?」
 私は問い直す。
「ああ。キリエに関する会話全てだ。後それとお前、私のことをマエダさんとか馴れ馴れしく呼ぶんじゃない」
「わかりました。それじゃあ、カンコさ――ごぐぁっ」
 無言で腹パンされた。
「次、その名で呼んだら殺すからな。と、話を戻すが、要は私がお前にキリエと付き合えと指示したことをキリエには言うなってことだ」
 あれは指示じゃなくて脅迫ではなかろうか。なんてことは言えない。
「あくまでキリエに告白し直すのはお前が自分で考え、自分で判断した、全くの独断ということにしろ。私のことを聞かれても一切合切話すな。わかったな」
 マエダカンコはそう念を押したが、私には彼女の言いたいことがイマイチわからなかった。
「どうして話しちゃいけないんですか?」
「はあ?」
 彼女は呆れた目で私を見た。出来の悪い生徒を見るような目だった。
「何言い出すかと思ったら……。あのなぁ、今日いまからお前がしに行く告白がお前の意思じゃなく、私の指示によるものだってことをキリエが知ったら、私が無理矢理お前に告白させたみたいでキリエも素直に喜べないだろうが。そんなこともわかんないのか?」
「なるほど」
 私はポンと手を打った。実を言うと、よくわかっていない。
108私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/05/12(水) 14:47:10 ID:+7NZkhJf

「わかりました。つまり、昼休みのことを田中さんには話すなということですね。ですが、それでは昼休みの逢い引きはどう説明――ぐごぁっ」
「逢い引きじゃねえだろーが。さっきから思ってんだが、わざと言ってんのかテメェ。そうだとしたらマジで殺すぞ。
「昼休みのことは、もしキリエがそのことを知ったら、私から適当に話しておく。お前のことがムカついたから殴った、とでも言うさ」
「……わかりました」
 ムカつくから殴った、で彼女は納得するのだろうか。
「話はこれで終わりだ。わかったんならさっさとキリエのとこ行ってこいよ。それじゃあな」
 そう言い残して、彼女は台風のように去っていったという訳だ。

 とまあこんな感じのことがあって、私は今のように、いつも利用する路線とは別のものに乗り込んで、殊勝にも田中キリエのもとへと向かっているのだった。

 電車の速度が徐々に落ちていき、噴出音と共に扉が開いた。
 ご老齢の方が乗り込んできたので、私は席を譲った。
 ありがとうございます、と礼をされ、それに笑顔で返した。
 そのまま扉近くまで移動し、高速で変化していく光景を眺める。
 今まで告白云々と色々語ってきたが、正直、田中キリエが告白を受け入れてくれるかどうかも、私にはまだわからなかった。
 なにせ、私は昨日一度彼女の告白にノーと言っている。
 そんな男が昨日の今日で、やっぱ付き合ってください、なんて言っても彼女からしたら、今更なんだと思わざるを得ないだろう。断られる可能性だって決して低くはない。
 まあ、自分としては今後のことを考えると、断ってもらったほうがいいのだけれど。正直、マエダカンコのことを考えるとこの先気が重い。
 でも、仕方がない。
 私は思う。
 これが青天の霹靂であるにしろ、ともかく、私はもう約束してしまったのだ。こうなれば、もう乗りかかった船だ。与えられた任務は最後まで遂行しようと思う。
 そう私が決意した時、ちょうど電車は踏み切りの前を過ぎった。
 カーンカーンと情けなくなっていく電子音が、しばらく耳の中で反響していた。
109私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/05/12(水) 14:47:44 ID:+7NZkhJf

 目的の駅に着き、私は駅を出た。
 あまりの寒さに思わず身が震える。
 初めて来る街だった。私の住んでいる街より、幾らかグレードが高いように感じた。高級とまではいかない、中級住宅街といったところか。
 マエダカンコから聞いた住所はまだ覚えている。田中キリエは何処かのマンションかアパートの三○一号室に住んでいるらしい。
 見馴れない街並みではあるが、適当に電柱に印された住所でも見ながら歩いてれば、じきに辿り着けるだろう。
 そんな楽観的な考えを持って、私はのんびりと街の中へと歩き始めた。

 結果から言おう。どうにもならなかった。
 理由は三つある。
 一つ、土地勘が全くないこと。
 二つ、郊外のベッドタウンだけあってマンションもアパートも異様に数が多いこと。
 三つ、彼女の苗字の“田中”だ。
 全国でも多数存在するその姓名は思ったより私を悩ませた。
 田中と書かれた表札を見る度に、田中キリエとは違う田中さんだと理解しているのに、身体が一々反応してしまうため、頭が疲れるのだ。
 そんなこんなで十二軒目の田中さんを発見した頃、私は駅前まで帰還してしまうという摩訶不思議な現象に陥ってしまった。

「迷いの森か何かなのか此処は……」
 今現在、私は駅前の精悍な顔つきをした男性の石像の前に座り、疲れた足を休めていた。
 気分はまるで青い鳥を求める少年だ。まだ青い鳥すら見ていないけれど。
 おもむろに空を見上げる。
 太陽はもうすっかり傾いてしまって、水平線の向こうからゆっくりと黒が侵食し始めていた。
 夜間に人の家を訪ねるのが失礼なことくらい、さすがの私でも心得ている。
「これじゃあ今日は無理かな……」
 そんな弱音を吐いていると、不意に金髪が脳裏を過ぎった。
 私はがっくりと肩を下ろした。
 やっぱり今日中にやんなくちゃダメだよなあ。殺されるんだもんなあ。
 けれど、このまま闇雲に歩いてても徒労に終わるのは目にみえている。果たしてどうするべきか。
 幾らかの逡巡の後、私は疲れた足をバンと叩き、いきなり立ち上がってみた。
 こんなとこで座ってたって何も始まらない。闇雲でもいいからとにかく歩こう。
 と、珍しくやる気を出したところで私は、あっと悲鳴を漏らす。
 なぜ今まで気づかなかったのだろうか。
 私の目の前には駅前交番があった。
110私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/05/12(水) 14:48:17 ID:+7NZkhJf

 目の前には、建てられて間もないだろうマンションがあった。
 その建造物は、全体的に四角い形をしていて、備えられている窓や扉も全て真四角だった。階数もきっかり四つだ。今風の小洒落たデザインで、白の漆食で塗られた壁には汚れひとつない。
 私はまじまじとそのマンションを見上げた。
 サイコロみたいな形をしているな、と思った。
 エントランスに足を踏み入れる。
 外の壁の真っ白さとは対照的に、中の壁は全て黒めの剥き出しのコンクリートブロックで埋められていた。
 世間ではこういうのがお洒落なのだと言うのだろうけど、季節が季節なのだけに、今の私にはただ寒々しいだけだった。夏にはちょうどいいかもしれない。
 最新のマンションにも関わらず、オートロックは常備されていなかった。そういえば監視カメラも見当たらない。意外とセキュリティ関係には手を抜いているみたいだった。
 エレベーターを使わずに、横に備え付けられた階段を使って三階まで上る。
 三階の角部屋に田中キリエの家はあった。
 私は、その真四角の扉の前に立ち表札を見る。
 表札の“三○一”の番号の下には“田中”とポップ体で書かれた名前があった。
 やっと辿り着いたんだなあと、感慨深いものが込み上げてきた。気分はまるで母を求めて三千里、だ。
 夕日は既に落ちてしまっている。
 腕時計を見ると、時刻はもう既に七時を越す頃だった。思っていたよりも時間が経っている。
 善は急げだ、と私は表札の下に設置されていた呼び鈴を押した。
 ピンポーン、と間のぬけた音が扉越しに聞こえる。
 確かに、聞こえたのだけれど
「…………?」
 誰も出ない。
 気づかなかったのだろうかと思い、念のためもう一度だけ鳴らしてみる。
 ピンポーン。
 再び呼び鈴が鳴るが、やはり何の反応も返ってこなかった。
 呼び鈴はちゃんと鳴っているし、室内に居て気づかないということはさすがにないだろう。ということは、何処かに出かけてしまっているのだろうか。
111私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/05/12(水) 14:49:04 ID:+7NZkhJf

 うーん、と唸りながら私は頬をかいた。
 どうやら、家内が留守なのは間違いないようだった。
 このまま此処で待機していてもいいのだが、近隣住民に変質者と思われる可能性もある。果たしてどうするべきか。
 私は扉の前でうーん、うーんと唸りながらくるくると回った。
 後で思えば、その姿は言うまでもなく変質者だったのだろう。
「仕方ないか……」
 私はピタリと立ち止まった。
 出直そう、と心に決めた。
 二、三十分も経てば帰ってくるだろうと思い、私は出直そうと、その場を去ろうとした。
 すると、ぱたぱたと廊下を駆ける音が、扉越しに微かに聞こえてきた。
 どうやらやっと来訪者に気付いたらしい。
 ガチャリ、と鍵の開く音がして扉が開く。
「すいません、遅くなっちゃって。どなたでしょうか?」
 そう言って出てきた田中キリエは、寝巻姿であった。子供っぽい水色のパジャマの上には桃色のカーディガンを羽織っている。あの大きな黒縁眼鏡をかけていなかった。
「……んー?」
 彼女は目を細めながら私に顔を寄せていく。眼鏡をかけていないため、よく見えないのだろう。彼女の赤く腫れぼった目が眼前に迫ってきた。
 ちょっと手を伸ばしてみれば、彼女の細い首に手をかけれそうだ、なんて想像をしていると、田中キリエが突然大きく目を剥いた。
 心中を悟られた気がして、私はハッと息を呑む。
「…………」
 しかし、彼女はそのまま無言で、パタリと扉を閉めた。
「……えっ?」
 拒絶された、とまず思った。やはり今更私の顔など見たくないのだろうかと。
 そう思った時だった。
「きゃあああああああっ!」
 扉の向こうから、もの凄い叫び声が上がった。
「えっえっ、なんで、なぜ、どうしてっ。どうして鳥島くんが居るのッ!?なんでなんでなんでーっ!ハッ、ていうか私まだパジャマだし、顔も洗ってないし、髪もボサボサだしぃ、きゃあーっ!ああ、どうしようどうしようどうしよう見られた見られたー!」
「あのー、田中さん」
「ちょっ、ちょっとだけ待っててっ!」
 そう言い残して、彼女はバタバタと駆け出し始めたようだった。
 扉の向こう側からは何やら騒がしい音が聞こえてくる。おそらく、私を出迎えるの準備をしているのだろう。
 元気な人だなあ、と思わず頬が緩んだ。
 私は元気な人は好きだった。
112私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/05/12(水) 14:49:44 ID:+7NZkhJf

 それから約二十分後。
「おっ、お待たせ」
 田中キリエは、黒のネックセーターに白の長いフレアスカートという落ち着いた服装で出て来た。その小さな顔には、いつもの黒縁眼鏡が掛けられている。
「さっきはゴメンね……なんか取り乱しちゃって」
 先程の失態が余程恥ずかしかったのか、彼女の顔は真っ赤になっていた。
 いえいえ大丈夫ですよ、と私はフォローをいれる。
「でも、少しびっくりしました。田中さんってあんなに大きな声出せるんですね」
「うー。……もう忘れて」
 そんなやりとりの後、彼女は私を玄関へと迎い入れた。
「それじゃ、とりあえず中に入ってください」
 勧められるがままに、私は綺麗に整頓された玄関に足を踏み入れた。
 ガチャリ。ジャラジャラ。
 と、施錠音がして後ろを振り向くと、当然のことながら田中キリエが鍵を閉めているところだった。ご丁寧にチェーンロックまでつけている。
 私なんかは普段、自宅に居る時は鍵を閉めないタチなので、そこのところはやはり女の子なんだな、と感心した。
「こっちです」
 と、案内された彼女の自室は、私の想像と違わない、いかにも女の子らしい部屋だった。
 なんか、全体的にピンクっぽい。
 カーテンも絨毯もベッドも全部ピンク色だ。彼女には悪いが、長時間居ると目が疲れそうだな、と思った。
 部屋の中央に丸テーブルとクッションが置いてあったので、とりあえずそこに腰を下ろす。
「適当にくつろいでてください。私、お茶持ってくるんで」
 田中キリエはそう言って、部屋を出て行こうとする。
「そんな。そこまでお気遣いしなくてもいいですよ」
 と、一応遠慮してみるが、やはり田中キリエはお茶を用意しに出て行ってしまった。
 急に所在無げになってしまったので、とりあえずキョロキョロと部屋を見渡してみることにした。
 そういえば、女の子の部屋に入るのは初めてだ。
 妹を女性としてカウントするならば話は別だが、彼女の部屋に入ったのだってもう十数年も前だし、初めてと言っても過言ではないだろう。
113名無しさん@ピンキー:2010/05/12(水) 14:50:05 ID:y12L6qPk
                      
114私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/05/12(水) 14:50:13 ID:+7NZkhJf

 やはり少し緊張するな、と急にそわそわし始めてしまった。
 家内の様子からして、どうやら田中キリエの親は不在なようだ。
 ということは、ひとつ屋根の下に男女がふたりきりということになる。
 そういうシチュエーションにいかがわしい妄想を抱いてしまうのが男の性なのだが、生憎私はまだ彼女の恋人ではない。今日はそういう事には至らないだろう。
 ガチャリ。
 と、再び施錠音がして、私は反射的にドアを見た。
「お待たせしました」
 そう言いながら、田中キリエがお茶をお盆の上に乗せて持ってきた。
 いや、それよりも。
 私は思った。
 なぜ、彼女は部屋の鍵を閉めたのだろうか。
 この家には私と彼女しか居ないのだから、部屋の鍵まで閉める必要性はあまり感じられない。それなのに、何故わざわざ施錠をしたのか。
 しかし私は、多少不思議には感じたものの、いつもの癖なのかな、と大して気にとめなかった。
 田中キリエはお盆を丸テーブルの上に乗せて、カップにお茶を注いだ。
 匂いと色からして、それが紅茶であることがわかった。
「お砂糖はどうします」
「じゃあ、少し」
 シュガーポットから砂糖をひとさじ掬い、カップの中へ入れた。
 そして、私と向かい合うようにして彼女もクッションの上に腰を下ろす。
「それにしても、びっくりしちゃったよ」
 田中キリエが言った。
「いきなり鳥島くんが訪ねてくるんだもん。前もって言ってくれれば、もっと準備とか出来たのに」
「すいません。事前に連絡もなく突然訪ねてしまって。なるべく早く帰るようにするんで」
「そんな、いいよいいよ気にしなくて」
 田中キリエはバタバタと手を振る。
「私の両親、共働きだからいつも帰ってくるの遅いし、時間のこととかは全然気にしなくて大丈夫だから」
「そうなんですか。それじゃあお言葉に甘えさせてもらおうかな」
「うん」
 彼女がニコニコ顔で頷いた。
 そこで会話が途切れてしまったので、今度は私から切り出してみることにする。
 ひとつ気になることがあった。
「ところで、田中さん。ひとつ聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」
「ん?何かな?」
「さっきから後ろ手隠している物は、何ですか?」
115私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/05/12(水) 14:50:53 ID:+7NZkhJf

「後ろ手に?」
 彼女は首をかしげる。
「別に、何も隠してないけど……」
「あれ?でも今確かに――」
「それよりもっ!」
 田中キリエは強引に話題を変えた。
「鳥島くんは今日なんで私の家に来たのかな?何か、用があって来たんでしょう?」
「あっ」
 そこで私は、自分が肝心の本題を話していなかったことに気付いた。本題を先に話さないなんて、話しの順序としては最悪だろう。
「すいません。言われてみれば言ってませんでしたね」
 私は苦笑し、頭をかいた。
「今日は、田中さんに告白しにきたんですよ」
「へっ?」
「あっ」
 やべっ。つい、話しの流れで言ってしまった。もっとそれらしい雰囲気を出してから言い出そうと思っていたのに。
 まあ、仕方がないか。
 せっかくなので、私はそのまま続けることにした。
「あれから――ずっと考えていたんですよ」
 私は紅茶を飲んで、舌を湿らせた。
「私が田中さんの告白を断ったのは正しかったのかってことを。ずっとずっと悩んでいました。そして、わかったんです。結局は私のエゴに過ぎなかったと」
 田中キリエは黙って聞いている。
「要は、私は田中さんを傷つけるのが恐かったんです。田中さんは知らないでしょうが、私は結構、不完全な人間なんですよ。もし付き合えば、絶対にあなたを傷つけることが私にはわかっていた」
 即興にしては中々の滑り出しだな、と私は思った。意外と演説上手な自分に驚く。
「けれど、結局それはただの逃避でしかない。私には田中さんと付き合っていけるわけがないと、自分勝手な理論を振りかざして、あなたを拒絶した。でも私は、田中さんの気持ちをこれっぽっちも考えていなかったことに気付いたんです
「告白というのはそれなりに勇気のいる行動だと思います。田中さんだって、何日も何日も想い続けて、漸くそれに至った筈です。私は、仮に断るにしても、そういう相手の想いを考慮してから答えを出すのが誠実だと思いました。
「それから、今度は田中さんの気持ちを考慮に入れてから、考えてみたんです。そして、答えが出ました。だから今、私はあなたにあの時の告白の返事をします。
「田中さん――よかったら私とお付き合いしていただけませんか?」
 そうして、私は口を閉ざした。
116私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/05/12(水) 14:51:26 ID:+7NZkhJf

 完璧だ。まずそう思った。
 脳内では、私の演説を聞いた観客が総立ちになって喝采をおくっている。
 多少キザっぽくなってしまったが、そこはご愛敬ということでいいだろう。
 そんな充足感に包まれながら、私はしたり顔で彼女を見た。
「ひっく……えぐ……っえぐ」
 泣いていた。
 ええー。そこで、泣いちゃう?
 想定外の出来事に混乱してしまう。
 結構それらしく言えたはずなのだけれど……。
「あのー。もしかして不快でした?」
 耐え切れなくなった私は、直接聞いてみることにした。
 すると、田中キリエはぶんぶんとかぶりを振った。
「ちっ、が……ひっく……違うの、ただ……私嬉しくて」
 彼女は嗚咽混じりでそう言った。
 なんだよ、紛らしいな。
 私はイラついた目で彼女を見た。
 田中キリエは零れ落ちる涙を手で拭いながら、静かに泣いている。
 彼女の物言いからして、どうやら私の告白は成功したみたいだし、これで晴れて私は田中キリエの恋人になったというわけか。
 こういう時は彼氏らしく宥めてやるのが正解なのだろうか?無言で抱きしめてやったりしたらカッコイイかもしれない。
 なんて考えていると、いつの間にか田中キリエは泣き止んでいた。
「あの……それじゃあ、これからよろしくお願いします」
 と、彼女は深々とお辞儀した。
「いえいえ、こちらこそ」
 なんとなく、こちらもお辞儀で返す。
 こうして、私の告白は見事成功し、ここに一組のカップルが成立したのであった。

 それから他愛の無い世間話を少しして、私は彼女の家を出た。
 田中キリエはわざわざマンションの前まで付き添ってくれて、私の姿が見えなくなるまで手を振っていた。

 駅のホーム。
 私は電車を待つ列の最後尾に立って、ぼんやりと今日のことを思い返していた。
 妙な達成感が胸の中にあった。
 これで私は、めでたいことに、彼女いない歴イコール年齢じゃなくなったのだ。思うものもあるだろう。なんだか、男の階段をひとつ登った気がした。
 電車が到着し、人々は車内に乗り込んでいく。私も同じように乗り込んだ。
 その時になって思いだした。
 ――そういえば。
 私は部屋での田中キリエの姿を思い浮かべる。
 どうして彼女は、私が帰るまでの間ずっと、金づちなんかを隠し持っていたのだろう?
117私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/05/12(水) 14:51:57 ID:+7NZkhJf

 住んでいる街の最寄り駅に着いた時には、時刻はもう既に九時を通り越していた。
 帰宅部の私は普段、こんなに遅くまで出歩かない。
 斎藤ヨシヱと会った日だって、せいぜい七時前には帰宅していた。
 なので、こんな遅くに道を歩くのは滅多にない。ちょっと新鮮な感じがする。
 私は自宅を目指して歩き始めた。
 寒さから守るようにポケットに手を入れ、空気中に残留する白い息を顔で受け止めながら、冷たい路地を歩いた。
 いつの間にか、ひとりになっている事に気づく。
 さっきまでは、何人かがぽつぽつと周りで一緒に歩いていたのだが、目的地に着いたのか、道中で道を曲がってしまったのか、とにかく今はもう消えてしまっていた。
 コツコツ、と自身の歩く靴音しか、周囲には聞こえない。街灯の少ない路地なので、辺りはまるで暗幕を張ったかのように暗かった。
 そんな闇の中だ。
 二個先の街灯の下。まるでスポットライトのように照らし出されている人物を、私の目が捉えた。
 目を細めてみる。
 その人物は、大きい青のスポーツバックを肩に背負い、背筋をしゃんと伸ばし、毅然とした態度で前へ前へと歩を進めていた。
 髪型は短めのポニーテールで、身長はやや高め。後ろ姿でもわかる、その凛とした態度には、どこか惹かれるものがあった。
 その背中には見覚えがある。
 私はたまらず駆け出していた。
「リンちゃんっ」
 その人物の名前を呼びながら、小走りで彼女の横に並んだ。
 暗闇でもしっかりとわかる、その整った顔立ちの少女は、間違いなく私の実の妹である鳥島リンだった。
「奇遇だね、帰り道が一緒になるなんて。リンちゃんは部活の帰り?」
 気さくな感じで談話を始めてみるが、妹は刹那でも私を見ようとはしなかった。それもいつものことなので、気にしないようにする。
「部活は、確かバレーボールだったよね?母さんから聞いたよ。大変だね、こんな遅くまで練習だなんて。帰宅部の僕からしたら考えられないな」
 妹は何も言わない。私のことなど見ない。
118私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/05/12(水) 14:52:29 ID:+7NZkhJf

「でも、気をつけなくちゃダメだよ。この辺はそんなに物騒でもないけど、リンちゃんは可愛いからね、変な人に目をつけられるかもしれないし。そうだ。なんなら僕が送り迎えしようか?」
 妹は何も言わない。
「あー……」
 会話のキャッチボールは全く成立しなかった。
 これじゃあ、まるで壁に向かってボールを投げているようなものだ。しかも、壁は壁でもゼリーの壁だ。ボールを投げても、それが私の元に返ってくることは無い。
 妹はまるで私が居ないかのように、黙々と自宅を目指した。
 彼女のその態度に、突然怖くなる。
 妹と接していると、本当に私はこの世に居るのだろうかと奇妙な不安に陥るのだ。
 無論、そんなのは馬鹿げた幻想だ。そうわかっているのに、なぜかそれを一笑することが出来ない。
 額には、ぽつぽつと脂汗が浮かび始めていた。
 何か、何か話をしないと。
 私は何かに急かされるように、とにかく口を開いてみる。
「あっ、あのさ」
 けれど、何か話のネタを考えていた訳ではない。焦った私の口は、取り繕うように今日のことを喋りだしていた。
「そっ、そういえば今日、遂に僕に彼女が出来たんだよっ。その人は、田中さんっていうちっちゃい眼鏡の人なんだけど――」
 しどろもどろになりながら、そうまくし立てていると、ドサッと何かが落ちた音がした。
 ふと隣を見ると、妹がいつの間にか消えていたことに気付いた。
 視線をさらに後ろにずらす。
 妹は私の数歩後ろで、呆けたように私を見ていた。目の焦点が合っておらず、持っていたスポーツバックは地面に転がっている。
「今……なんて……」
 妹は譫言のように呟いた。
「なんて言ったの……兄さん?」
 兄さん。
 久しぶりに呼ばれた古称に、胸が震えた。
 妹から話し掛けてもらうのは、もう十数年ぶりくらいだった。それに加え、再び兄さんと呼んでもらえるなんて。
 歓喜を隠しきれずに、思わずわなわなと身体が震えてしまう。
「なんて言ったの、兄さん?」
 今度は幾分かはっきりした声。
 冷静さを取り戻したのか、彼女の目はしっかりと私を見据えていた。
 このまま、ずっと兄さんと呼ばれていたい衝動に駆られる。妹の問に答えるのを躊躇ってしまう。けれど、それを無視するわけにもいかない。
119私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/05/12(水) 14:53:03 ID:+7NZkhJf

 私は、緩む頬を引き締めてから言った。
「だから、今日、僕に田中キリエさんっていう恋人が出来たんだよ」
 言い終わったのと、妹が口を開くのはほぼ同時だった。
「別れてっ!」
 唐突に叫んだ彼女のその迫力に、思わずたじろいだ。
 妹は私の近くまで歩み寄ってくると、再び言う。
「今の話が本当なら、すぐに別れてっ!」
 訳がわからなかった。
 どうして、妹は私に別れろと言うのだろう。別に祝福されるとも思っていなかったが、いきなりそういう事を言われるとも思っていなかった。
 ――もしや。
 私の頭の中に、愚鈍な考えが浮かぶ。
 もしかして、田中キリエに嫉妬してるのかしら。と、そんなふざけた幻想を抱いた。
 しかし、そのくだらない幻想は、次に発せられた妹の言葉によって、一瞬で砕かれた。
「兄さんみたいな人間が、誰かと付き合えるはずがないじゃない」
 その言葉を聞いた途端、ニヤついていた顔は一瞬で凍り付き、さっきまでの幸福感が急速に萎んでいった。
 そんな私に構わず、妹は続ける。
「兄さんだって薄々気づいているんでしょう?自分が所謂“普通”じゃないって、他の人からは一線を画した場所に居るってことを」
 私は何も言えない。
「彼女さんのことを想うのなら、今すぐに別れて。兄さんはきっと、いえ絶対、彼女のことを不幸にするわ」
 私は何も言えない。
「だって、兄さんは――」
「そんな」
 妹の言葉を遮って、私は言う。
「そんな――まるで僕のことを、化け物みたいに言わないでくれよ」
「――ッ」
 妹は何かを言いかけたが、やがてその口を閉ざした。
 二人の間に気まずい沈黙が流れる。
 妹は、私のことを哀れむような、恐れるような、何とも形容しがたい複雑な表情をしていた。
「兄さんには、無理よ」
 そう言い残して、妹は走り出した。
 私は小さくなっていく彼女の姿を見つめていた。
 そして、見えなくなった。
 私はしばらくの間、動く気になれず、その場に立ち尽くしていた。
 それから、どのくらいたったのかはわからない。腕時計を見る気にもなれなかった。
「帰ろう」
 ひとり呟いてから、地面に落ちたままのスポーツバックを拾い上げ、私はゆっくりと、家に着くのを躊躇うように、ゆっくりと歩いて行った。
120 ◆lSx6T.AFVo :2010/05/12(水) 15:06:01 ID:+7NZkhJf
投下終わります
121名無しさん@ピンキー:2010/05/12(水) 15:23:21 ID:6M7beBvQ
GJキリエさん乙
122名無しさん@ピンキー:2010/05/12(水) 16:20:29 ID:vFsddsft
>>120
続編投下GJ。
欠陥持ちの男と、既に病んでる少女2(3?)名か……
この先の展開を楽しみにしています。
123名無しさん@ピンキー:2010/05/12(水) 17:58:17 ID:I7tUCARN
GJ!
隠し持ってた金づちは何に使うつもりだったんだw
124名無しさん@ピンキー:2010/05/12(水) 22:08:21 ID:ydmoYmx+
GJ 続きに期待

>>123
そりゃあ殴って気絶させて監禁して
その後は言わなくても分かるよな?
125名無しさん@ピンキー:2010/05/12(水) 23:05:54 ID:DLkmkOEm
今後の展開が気になるな
126名無しさん@ピンキー:2010/05/12(水) 23:42:51 ID:VJYSWUF6
最近職人の投下が多くて嬉しい
127名無しさん@ピンキー:2010/05/13(木) 00:56:30 ID:sfk5+voM
但しヤンデレ家族が投下されれば直良し。
所でヤンデレとキモ姉、キモウトの違いって何かな?ssのパターンは、ほぼ一緒なのだが…
128名無しさん@ピンキー:2010/05/13(木) 01:01:00 ID:bY0siARE
>>127
きんしんそーかんってことじゃないかな
隣のやんでれ子ちゃんとえっちするよりもこーふんするでしょ!

と、電波が入った
129名無しさん@ピンキー:2010/05/13(木) 01:19:20 ID:sfk5+voM
>>128 なるほど、ヤンデレ内の中の一ジャンルってことですね。
130名無しさん@ピンキー:2010/05/13(木) 07:47:08 ID:2a1VZbqu
>>128
荒らしはスルーしとけよ
131名無しさん@ピンキー:2010/05/13(木) 07:56:42 ID:2a1VZbqu
>>120
あれ、文が入ってなかった GJ!!
132名無しさん@ピンキー:2010/05/13(木) 14:00:40 ID:5tt3RM51
擬人化した金槌に逆レイプされる超展開に期待
133名無しさん@ピンキー:2010/05/13(木) 15:20:59 ID:sfk5+voM
>>132ウケ狙いは、良いからちゃんとsageろってば〜ww
134サトリビト:2010/05/13(木) 19:06:46 ID:WfUne3eB
サトリビト第10話投下します。
よろしくお願いします。
135サトリビト:2010/05/13(木) 19:08:04 ID:WfUne3eB
午前0時。今僕はリビングのソファで身を丸めている。なぜかワンピースを着て。
今日の陽菜はどこかおかしかった。いつもならこんな仕打ちは絶対しないのに。
プリクラ云々の辺りから突然雰囲気が変わったんだっけ?いや、よく思い起こせば僕の大好き発言から空気がおかしくなっていった気がしたな。
それの何が陽菜の機嫌を損ねたのかは分からないが、怒っているのは一目瞭然だ。それもかなり。
どうすればいいか考えていたところで、あることに気がついた。
もしかして照れてしまったんじゃ?
自分から誘ってしまったことに対して羞恥心が沸き起こり、いざその場面を迎えると恥ずかしさから拒否をしてしまった。怒っているのではなく、照れからそう見えてしまっ
たのでは?
そうだ!そうに決まっている!・・・フフ・・・ツンデレ陽菜もやっぱりかわいいな・・・
そう考えると、再び性欲が高まってきた。
きっと陽菜だって僕から来てくれるのを待っているんだ!ここで行かないと逆に失礼だよな!
僕はリビングを出て、静かに階段を昇っていく。
だが陽菜の部屋の前まで来ると、気持ちは大きく揺らいでしまった。
もし陽菜が望んでいなかったら・・・僕はただの性犯罪者だよな・・・でも・・・うあぁぁぁ!!
そんな自問自答を繰り返すこと10分、ついにドアを開けてしまった。・・・ごめんなさい。
部屋に一歩足を踏み入れると、そこには思春期を迎えた高校生には刺激の強すぎる光景が広がっていた。
僕はその主な要因に音を殺しながら近づく。
「・・・スー・・・スー・・・」
陽菜は穏やかな顔で眠っていた。そんな彼女を僕は襲うとしたのか?
・・・僕は死に値するな・・・
そう思ったが実際死ぬとなると恐いので、結局自分の顔面を殴っただけにした。
「・・・んっ・・・け・・・いた・・・」
っ!!今寝言で僕の名前を呼んだ!?く、くそっ、寝言で名前を呼ばれるだけでこれほどのダメージを受けるとは・・・!!
今さっき自分を愚弄したばっかりなのに、欲望に負けそうになる。
そうやって陽菜の寝顔をしみじみ眺めていると、思い知らされる事があった。
やっぱり僕は陽菜のことが大好きなんだ。
陽菜の寝顔を見ているだけで何もかもがどうでもよく思える。ここに来た目的さえも。
しばらくそのままでいるとベッドの上に写真立てが置いてあることに気がついた。
その中には小さい男の子と女の子が仲よさそうに手をつないでる写真が入っている。
それは正真正銘、10歳の頃の僕と陽菜。なぜこの頃の写真がこうして飾ってあるのかは分からないが、陽菜にとってはこのときが一番幸せだったのかもしれない。
もう一度陽菜の寝顔を見る。そういえば近頃考えてしまう事があるっけ。
陽菜はいつも楽しそうに過ごしているが、心の中ではどう思っているんだろう?
岡田や姉ちゃん、恭子ちゃんはもし悩みがあればすぐに聴いてあげる事が出来るし、解決だってできるかもしれない。
だが陽菜に関しては、もし何かに悩んでいたとしても理解することはできない。
くそっ!!なぜサトリの能力は大好きな人の悩みを聴いてあげる事が出来ないんだ!!
多分顔には出さないが陽菜にだって悩みはある。それを聴いてあげたい。誰よりも分かってあげたい。
けど僕には何もできなくて―――
「・・・ごめんな・・・俺、役に立たなくて・・・陽菜の悩みを聴いてあげられなくて・・・」
そう言って僕は俯いた。そうでもしないとあまりの悔しさで涙が出そうになるから。
幼馴染なのに、サトリなのに、陽菜は僕を救ってくれたのに・・・
「・・・俺、鈍感だからさ・・・もし悩みがあるなら直接口で言ってよ・・・」
もし陽菜が僕を頼ってくれるなら、悩みを打ち明けてくれたなら、
「俺、何でもするよ。だって・・・」
僕にとって陽菜が一番大事な人だから。
頭の中で言い終えた後、ふと顔を上げると・・・陽菜と目があった。
136サトリビト:2010/05/13(木) 19:09:10 ID:WfUne3eB
自室に戻った私は反省した。
今日は楽しい日になるはずだったのに、よりにもよって私が台無しにしてしまった。
でも許せなかった。慶太が。
なんで私はこんなにも慶太が大好きなのに、慶太は私の事をもっと愛してくれないのだろう?私は慶太以外の男なんて少しも意識したことないのに、慶太は結衣ちゃんや恭子
ちゃん達と仲良くしようとするのだろう?
完全に私のエゴ。普通の人は好意を寄せてくれる人を邪険には扱わない。もちろん慶太も。
分かっている。それは分かっているが・・・それでも譲れないものがある。
冷たく接しろとは言わない。慶太にだって私以外の人間関係も必要だ。
ただ、彼女たちとは距離をもっと置いてほしい。
最近の彼女たちの好きは、世間一般のそれと大きくかけ離れているように思える。
祥姉は慶太の事を一生面倒をみると言っていた。
恭子ちゃんは慶太の家に泊まるたびにベッドに忍び込んでいる。
結衣ちゃんは私に対して殺意に近い感情を抱いている。
このまま放置すればこれらの感情は収まるのか?否、収まるどころか加速するに違いない。
理由は三人の好きな人が慶太だから。
慶太の良さは単に心が読めるだけではない。もちろんそれも理由の一つに入るが、一番はその包容力だ。
恭子ちゃんは当てはまらないかもしれないが、祥姉や結衣ちゃんは何度も醜い面を慶太に見せている。普通あれだけ見せられると自然に距離をおくものだが、慶太は違う。醜
い面を魅せても決して離れていかない。
アイツは心から人を憎んだり、嫌ったりしたことがないのだ。
それに良く悩んだりもするが・・・決めるときは決める男だ。
おそらくあの三人も慶太の本当の良さを本能的に察知している。だから絶対にあきらめたりなんかしない。
じゃあどうすればいいの?
一番の解決法は私が慶太と本物のカップルになること。
でも付き合ってから私が先天性のサトリだと気付かれたら?慶太はそれでも離れていかない・・・と本当に言い切れる?
もしそうなったら今の状態でも生きていけないと思う。それが恋人という幸せな状態の時に起きたら・・・考えただけで身の毛がよだつ。
でもそれ以外に三人を慶太から遠ざけるすべを思いつかない。
ふとベッドの上に置かれていた写真立てが目に入る。
私にとって一番の思い出。一番幸せだった時間。
あの頃に戻れないのかな?私が慶太の心を、慶太が私の心をそれぞれ独占していた頃に。
やっぱり転校したのがいけなかったのかな?そのせいで慶太の心が私から離れていったのかな?
慶太は私のことが好き。でもそれだけじゃ足りない。
いっそ私なしでは生きていけないようになってほしい。今の私のように・・・
悶々とした思いを抱えながら眠りに就いた。


「・・・俺、鈍感だからさ・・・もし悩みがあるなら直接口で言ってよ・・・」
突然、私の耳に慶太の切実な声が聞こえてきた。何?夢?
(もし陽菜が俺を頼ってくれるなら、悩みを打ち明けてくれたなら)
「俺、何でもするよ」
いや夢じゃない。頭に直接響いてくるこの感覚は夢なんかじゃない、現実だ。
私はそっと目を開ける。目の前にはなぜか俯いている慶太がいた。
「だって・・・」
(俺にとって陽菜が一番大事な人だから)
驚いた。目が覚めて早々、慶太に告白されてしまった。
そのまま慶太を眺めていると、頭をあげた慶太と目があった。
137サトリビト:2010/05/13(木) 19:09:43 ID:WfUne3eB
「う、うわぁあああああああああぁあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
寝ているとばかり思っていた僕は純粋に驚いてしまった。今が深夜だという事も忘れて。
「い、一体いつから・・・」
起きていたの!?と言おうとして、それよりももっと大事なことに気がついた。
僕は無断で陽菜の部屋に侵入している。それも顔をこんなに近づけて。
完全に陽菜は僕が襲いに来たと思うだろう。いや、間違ってはいないんだけど・・・
「ち、違うんだ陽菜!ぼ、僕は何もしていないよ!」
最悪だ。自業自得だが絶対に嫌われる。大好きな人から強姦魔と思われたに違いない。
「・・・クスッ、僕?慶太って自分の事、僕って言ってたっけ?」
だが陽菜は僕がここにいる事には一切触れず、僕と言ったことに対してだけを訊ねてきた。
「あ、・・・いや、言ってません・・・俺って言ってました・・・」
なんでこんな会話をしているんだろう?陽菜は僕がここにいる事をなんとも思わないのか?
陽菜はこの話はおしまいとばかりに僕から視線をそらし、ベッドの上にあった写真を手に取った。
「・・・ねえ慶太・・・この写真覚えている?」
なぜかは分からないが今の陽菜は怒っていないように思えた。それどころか嬉しそうに見える。
「・・・10歳のころの写真だな。確か僕の引きこもりが治ってすぐのときだっけ・・・」
この写真を撮るとき陽菜に記念だと言われた覚えがある。
「そう、あの頃に撮った記念写真・・・何の記念だか分かる?」
まるで子供になぞなぞをだしている母親みたいだ。
「・・・僕の引きこもりが治った記念?」
「ブブー!それも少しはあるかもしれないけど、私の考えていたこととは違いますー!」
じゃあ何だろう?僕からしてみれば初めて好きな人ができた記念なんだけどな・・・
「・・・ごめん、ギブ。答えは何?」
「秘密〜!」
ここまで引っ張っておいて秘密!?逆にものすごく気になるんですけど!
「・・・やっと慶太が元気になってくれた〜!そんなに落ち込むくらいならなんで私の部屋に来たのよ〜」
突然陽菜はそう言って笑いだした。
・・・やっぱり陽菜は僕が部屋に入ってきたことに疑問を抱いていたんだ。でも、それよりも、僕が落ち込んでいたことの方が陽菜にとっては重要だったんだ。
「ごめん、陽菜!実は陽菜のベッドに忍び込もうと考えてこの部屋に入りました!煮るなり焼くなり好きにして下さいっっ!!」
僕は地面に土下座をして洗いざらい告白した。
陽菜は自分よりも僕の事を一番に考えてくれたのに、僕は陽菜よりも自分の事を一番に考えてしまった。
そのことを思うと自分が陽菜と一緒にいてはいけない気がする。
「もう顔も見たくないと思ってるなら・・・消えます。今すぐ消えますから」
「・・・ワンピースを着て?」
「え?」
「そんな格好でこんな時間にうろついたら警察に捕まっちゃうよ?」
警察に捕まるか・・・そうだよな、僕は未遂とはいえ犯罪を犯そうとしたんだもんな。
「陽菜が望むなら俺は―――」
「・・・もし、本当に私の元から姿を消したら・・・怒るから」
驚いて頭をあげると、そこには静かに怒っている陽菜の顔があった。
「怒って絶対慶太を見つける。そしてもう私の元からいなくならないように手足を切断してやる」
陽菜の言った冗談が僕の心に深く刺さる。
「でも・・・俺は陽菜の事を傷つけてしまって・・・」
「私は傷ついてなんかないよ。だって・・・」
陽菜が大きく息を吸った。
「私、慶太のこと好きだから」
138サトリビト:2010/05/13(木) 19:10:32 ID:WfUne3eB
「う、うわぁあああああああああぁあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
慶太が私が起きていたことに驚いて大声を出した。
「い、一体いつから・・・」
その言葉を最後に慶太が焦り始めた。どうやら私の部屋に無断で入ってきたことで罪悪感を感じたらしい。
「ち、違うんだ陽菜!ぼ、僕は何もしていないよ!」
目が覚めてから慶太が目の前にいたことと、突然の告白によってぼーっとしていた私はようやく我に返った。
慶太が本気で怯えている。私に嫌われることを。
それなら私はゆっくりと慶太の恐怖心を取り除いてあげるだけ。
「・・・クスッ、僕?慶太って自分の事僕って言ってたっけ?」
「あ、・・・いや、言ってません・・・俺って言ってました・・・」
まずは関係のない話をして、慶太がこの部屋に入ってきたことを気にしていないと暗に伝える。
「・・・ねえ慶太・・・この写真覚えている?」
そして次は思い出話。思い出を語り合う事で自然と気持ちが落ち着いていくはずだ。
「10歳のころの写真だな。確か僕の引きこもりが治ってすぐのときだっけ・・・」
懐かしそうな目を向ける慶太に対して少し意地悪な質問をする。
「そう、あの頃に撮った記念写真・・・何の記念だか分かる?」
鈍感な慶太の事だ、分かるわけがない。いや、この場合敏感な人でも分からないか。
「・・・僕の引きこもりが治った記念?」
「ブブー!それも少しはあるかもしれないけど、私の考えていたこととは違いますー!」
(僕からしてみれば初めて好きな人ができた記念なんだけどな・・・)
50点かな。正解は私と慶太が両想いになった記念。
「・・・ごめん、ギブ。答えは何?」
「秘密〜!」
(ここまで引っ張っておいて秘密!?逆にものすごく気になるんですけど!)
慶太がいつもらしさを取り戻した。
やっぱり私達の相性は完璧だ。こうやってすぐにお互いを元気づける事が出来るんだから。さっきの慶太の告白だって、私の今日感じた嫌な気分を全部消し飛ばしてくれたか
らね。
「・・・やっと慶太が元気になってくれた〜!そんなに落ち込むくらいならなんで私の部屋に来たのよ〜」
「ごめん、陽菜!実は陽菜のベッドに忍び込もうと考えてこの部屋に入りました!煮るなり焼くなり好きにして下さいっっ!!」
今日は何という日だろう。私の些細な冗談メールからここまで幸せな気分を味わえるなんて。
だが私の気持ちとは裏腹に慶太が衝撃的な発言をした。
「もう顔も見たくないと思ってるなら・・・消えます。今すぐ消えますから」
・・・は〜・・・いいかげんにしてよね。慶太が消える?冗談じゃない。
「そんな格好でこんな時間にうろついたら警察に捕まっちゃうよ?」
「陽菜が望むなら僕は―――」
この一言で私の中の何かが切れた。
「・・・もし、本当に私の元から姿を消したら・・・怒るから」
慶太に対してここまでの怒りを感じたのは初めてだ。
「怒って絶対慶太を見つける。そしてもう私の元からいなくならないように手足を切断してやる」
冗談なんかじゃない。もし慶太が私の前から姿を消したら確実にそうする。だって今でもそうしたいくらいなんだから・・・
「でも・・・俺は陽菜の事を傷つけてしまって・・・」
「私は傷ついてなんかないよ。だって・・・」
私は怒りで思考回路が鈍っていたのだろう。
「私、慶太のこと好きだから」
絶対に言わないはずだった言葉を口にしてしまったのだから。
139サトリビト:2010/05/13(木) 19:11:27 ID:WfUne3eB
「私、慶太のこと好きだから」
陽菜はそう告げた。はっきりとそう告げた。
・・・え?
「・・・幼馴染として。慶太と友達になれて私は本当に幸せだよ」
幼馴染として・・・友達になれて・・・。そうだよな、陽菜が僕の事を異性として好きになるはずなんかないか。
それでも、今はショックより嬉しい気持ちの方が大きかった。
「本当に?俺と幼馴染になれて本当に良かったと思っている?」
「まぁロリコンでシスコンで変態さんだけど・・・」
うっ!なんでそんなにしつこいんですか!?
「本当に良かったって思ってるよ」
そう言って陽菜が微笑んだ。ビックリするほどかわいらしく。
以前恭子ちゃんが僕の事をズルイと言っていたが陽菜に比べたらかわいいものだ。
今の陽菜は本当にズルイ。
そんな顔をされるとまた理性に歯止めが利かなくなるじゃないか。
「ありがと。・・・俺、もうリビングに戻るよ」
ここに少しでもいたら僕はどうなってしまうかわからない。一刻も早く退散しないと。
そう思い腰を上げ部屋から出ていこうとした僕に対して、陽菜が驚くべき発言をした。
「たまにはさ・・・昔みたいに一緒に寝よっか?」
「な、なんですとー!?」
「ただし、一緒に寝るだけね〜」
小悪魔的に笑う陽菜。陽菜は一体何を考えているんだ?
「久しぶりに慶太と二人っきりで話をしても罰は当たらないでしょ?」
は〜、どうやら僕は陽菜には逆らえない運命なんだろうな。
「・・・どうなっても知らないからな」
「大丈夫だよ!何て言ったって慶太君は紳士だからね〜♪」
僕は踵を返し陽菜の布団に入った。
入ったはいいが・・・緊張のあまり何を話せばいいのかわからない。
「わ、わ〜・・・あの頃と違ってなんだかき、緊張するね〜?」
頼む!そんなかわいらしく僕に話しかけないでくれ!
「け、慶太?さっきから黙って・・・な、何とか言ってよ〜!」
陽菜が僕を揺すってくる。本当にこれ以上はマズい。緊張が欲望に変わりそうだ。
「せめてこっちを向いて―――」
「うわぁぁぁああああぁぁ!!!」
僕は叫ぶと同時に陽菜の方を振り返り、そのまま彼女を抱きしめてしまった。
「け、慶太っっ!?」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」
けど言葉とは裏腹に陽菜を抱きしめる手は強くなる一方。
やっぱり僕には無理だ!好きな子と同じベッドに入って何もしないなんて僕にはできない!
「・・・苦しいよ、慶太」
「うわぁぁぁああぁ!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」
陽菜の言葉で我に帰った僕は抱きしめていた手を離した。が、今度は逆の立場になってしまった。
「あんまり強く抱きしめられると痛いよ・・・これくらいの強さで抱きしめて・・・」
陽菜が僕に抱きついてきた。顔を胸にうずめながら。
僕はその要望に言葉ではなく行動で返答した。

・・・ギュッ・・・

そうして僕たちは無言のまま一晩中抱きしめあった。
140サトリビト:2010/05/13(木) 19:12:07 ID:WfUne3eB
「私、慶太のこと好きだから」
声に出してから自分の発言の迂闊さに気付いた。
私は何を言っているんだ?早く訂正しないと。
「・・・幼馴染として。慶太と友達になれて私は本当に幸せだよ」
訂正はしたがこれはこれで本音だ。
「本当に?俺と幼馴染になれて本当に良かったと思っている?」
最初は思っていなかった。なんでコイツがって・・・でもね?今なら言える。都合がいかもしれないけど、今ならはっきりとこう言える、
「本当に良かったって思ってるよ」
そう告げると自分が心から笑えた気がした。
告白するつもりはないけど、少しは慶太にも知っておいてほしかった。私も慶太の事が好きだってことを。
「ありがと。・・・俺、もうリビング戻るよ」
慶太は私に嫌われないため・・・ううん、私の気持ちを考えて部屋から出ていこうとしている。
でもそんなのは嫌だ。
「たまにはさ・・・昔みたいに一緒に寝よっか?」
「な、なんですとー!?」
「ただし、一緒に寝るだけね〜」
私は大丈夫だよ。それにこうやってお互いが近づいた方が全ていい方向に向かう気がする。
「久しぶりに慶太と二人っきりで話をしても罰は当たらないでしょ?」
「・・・どうなっても知らないからな」
そういって慶太が私の布団に入ってきた。
・・・覚悟はしていた。この家に慶太が来たときから。でも・・・いざ同じ布団に入ると緊張してしまう。
「わ、わ〜・・・あの頃と違ってなんだかき、緊張するね〜?」
何を言ってるんだ私は!いつものように冷静にならないとだめじゃない!
どうやら慶太も緊張しているらしく、反対の方向を向いたまま一言もしゃべってくれない。
そのことが緊張よりも不安を加速させる。
「け、慶太?さっきから黙って・・・な、何とか言ってよ〜!」
今の私は集中力が皆無のためか、慶太の心の声がまったく聴こえない。
どうしよう・・・私の事浅ましい女って思ったのかな・・・?
あまりの不安におもわず慶太の肩を揺する。
「せめてこっちを向いて―――」
「うわぁぁぁああああぁぁ!!!」
私がこっちを向いてと言った矢先、急に慶太がこちらに振り返り、そのまま私を抱きしめた。
「け、慶太っっ!?」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」
何があったのか私は理解できなかった。ただ目の前に慶太の胸があることを除いて。
「・・・苦しいよ、慶太」
「うわぁぁぁああぁ!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」
慶太が離れる。その時はっきりと気付いた。今慶太が私を抱きしめていたという事を。
初めて受けた慶太の抱擁は悪い意味で私の想像していたものと違っていた。だけど・・・
「あんまり強く抱きしめられると痛いよ・・・これくらいの強さで抱きしめて・・・」
慶太のぬくもりが消えたことはもっと嫌だった。
そんな私の要望に慶太は行動で示してくれた。

・・・ギュッ・・・

さっきとは違いとても優しくて、けれど絶対に離れないという気持ちが伝わってきて・・・
今は慶太との抱擁が想像していたものよりもいいものだと感じられた。
141サトリビト:2010/05/13(木) 19:15:20 ID:WfUne3eB
次の日、目が覚めると陽菜はすでにベッドにはいなかった。
そうすると今までの出来事が全部夢だったように思えるが、ここが陽菜の部屋で今僕がいるのは陽菜のベッドに間違いない。
となると昨晩の出来事はやっぱり本物なのだろう。
「・・・陽菜は下かな?」
ベッドから抜け出した僕は部屋を出てリビングに向かった。
そこでは目的の人物が朝ごはんを作っている最中だった。
「あ、起きたの?ちょっと待ってて、もうすぐできるから♪」
楽しそうに朝ごはんの準備をしている姿も、昨日の抱き合って眠ったことも、きっと一人暮らしのさびしさ故の行動なのだろう。
陽菜にさびしい思いはさせたくないな。
そう思うと僕の口が勝手に動いた。
「これからなんだけど・・・時々、陽菜の家に遊びに行ってもいい?」
僕が純粋に行きたいってのもあるけど、僕がこの家にいる事で少しでも陽菜が楽しいと感じてくれるならそうしたい。
陽菜は僕の意見に一瞬驚いた顔をしてから、
「・・・たまには私の気持ちにも気付いてくれるんだ♪」
嬉しそうにそう言った。
「・・・たまにはってひどいな。僕はこれでも鋭い方なんだぞ?」
陽菜以外に対しては、だけど。
「ふ〜ん・・・そうなんだ?」
陽菜が何やらニヤニヤしている。こんな顔の時は大抵いたずらを考えているときだ。
「それなら・・・私の好きな人が誰だかわかる?」
な、何ーーーーーーーっっ!!よ、陽菜は好きな人がいたのかっっっっ!!!!!
「マ、マジで・・・?マジで好きな人がいるの・・・か・・・?」
よ、よく考えるんだ早川慶太!陽菜のそばにいる人で、かつイケメンと言えば・・・
「ま、まさか大和か!?」
く、くっそー!!殺してやる!!親友でいい奴だけど殺してやる〜!!
「ブブー!違います〜。ほらーやっぱりたまにしか私の気持ちなんて分からないじゃない」
じゃあ誰だ!?山田!?太郎君!?それとも・・・
「ま、まさか俺!?」
「・・・慶太ってたまに自信過剰の時があるよね?」
・・・え?今の発言って・・・え?まさか僕ってばフラれちゃったとか・・・?
「なにその顔〜、本当に自分だと思っていたの?」
・・・えっと、どうしよっか?とりあえずどこかの屋上に行こうかな?あ、そうだ!今すぐ姉ちゃんにブスって10回言おう!
「ヒントは最近よく遊ぶ人かな〜?」
訂正、太郎君と山田君をピーした後に屋上に行こう・・・ってまさか女の子達―――
「・・・一応言っとくけど私が好きな人は男の人だからね?」
わ〜!!そんなに何度も好きな人がいるって言わないでよー!!僕の心臓が止まっちゃったらどうすんの!?
「ハイ、この話はおしまいね!」
そう言って陽菜が強引に話を打ち切った。まだ肝心の誰かを聞いてないのに。
でも陽菜が楽しそうで良かった・・・んだよ・・・そう思えよ、僕・・・
「ほら、早く座ってよ!朝ごはんができたんだから」
「あ・・・うん・・・」
陽菜の作った朝ごはんを食べる二人。まるで僕たちは新婚みたいだ。いっその事このまま一気に―――
「あ〜・・・今頃太郎君は何を食べてるのかな〜・・・(クスッ)」
うおおおおおおおおおおおおおぉっぉぉぉぉぉぉぉ!!太郎のくそ野郎、ぶっ殺してやるぅぅぅぅぅうううぅぅぅ!!!!!
僕はせっかくの陽菜の手料理を味あわずに食べてしまった。
142サトリビト:2010/05/13(木) 19:16:04 ID:WfUne3eB
目が覚めると隣で慶太が寝ていた。
「・・・そっか、昨日慶太と抱き合ったまま寝たんだっけ・・・」
慶太の寝顔を見る。ぐっすりと気持ち良さそうに眠っている。
いつもこんな風に眠っているのかな?それとも私と一緒に寝たからこんな顔をしているのかな?
後者だったら嬉しいな、と思いながらベッドからでる。
そのまま部屋から出ようとしたところで、あることを思いついた。
・・・慶太と結衣ちゃんは見せかけだけのカップルなんだし別にいいよね?
そう思い、もう一度慶太に近づく。
ファーストキスが私で嬉しいでしょ?ちなみに私は慶太が初めてでうれしいよ。
ゆっくりと顔を近づけていき―――

・・・チュッ・・・

「・・・えへへ〜♪初彼女はとられちゃったけど、初チューは私だもんね〜!」
そう言って私は部屋からでた。


「あ、起きたの?ちょっと待ってて、もうすぐできるから♪」
慶太が起きてきた。う〜ん、やっぱり寝起きの慶太もかわいいな〜。ワンピース姿がシュールだけど・・・
朝からいいものが見れた私は料理を作る腕に力が入る。
・・・でも今日だけなんだよね・・・慶太がこの家に居てくれる日は・・・
私が一人で落ち込み始めたとき、思わぬ言葉が慶太の口から発せられた。
「これからなんだけど・・・時々、陽菜の家に遊びに行ってもいい?」
驚きのあまり思わず手を止めて慶太の方を見る。
慶太が私の気持ちを理解してくれた。私がずっと願っていたことを慶太が叶えてあげると言った。
「・・・たまには私の気持ちにも気付いてくれるんだ♪」
たった一言で人間はこんなにも気分が高揚するものなのか。
「・・・たまにはってひどいな。僕はこれでも鋭い方なんだぞ?」
「ふ〜ん・・・そうなんだ?」
嬉しいな・・・楽しいな・・・やっぱり慶太の事を好きになって正解だったな・・・
「それなら・・・私の好きな人が誰だか分かる?」
結衣ちゃんに対して本気になろうと思ったけどやめよう・・・
「マ、マジで・・・?マジで好きな人がいるの・・・か・・・?」
それよりももっと慶太と仲良くなろう・・・もっと慶太と一緒にいるようにしよう・・・
「ま、まさか大和か!?」
「ブブー!違います〜。ほらーやっぱりたまにしか私の気持ちなんて分からないじゃない」
恭子ちゃんや祥姉に対しても攻撃はやめよう・・・もっと仲良くするようにしよう・・・
「ほら、早く座ってよ!朝ごはんができたんだから」
「あ〜・・・今頃太郎君は何を食べてるのかな〜・・・(クスッ)」
(うおおおおおおおおおおおおおぉっぉぉぉぉぉぉぉ!!太郎のくそ野郎、ぶっ殺してやるぅぅぅぅぅうううぅぅぅ!!!!!)
そうすればもっと楽しくなるよね?もっと好きになってくれるよね?もっと幸せだって思えるよね?
私は自分の将来が明るくなっていく気がした。
143サトリビト:2010/05/13(木) 19:20:10 ID:WfUne3eB
この日、学校が終わって(太郎君に嫌がらせをして)から例の教授のところに向かった。
その道中、今日一日何か忘れている気がしたが、それが何なのかは結局思い出せなかった。
病院に着き教授の部屋に入ると、いきなり誰かが僕に飛びついてきた。
「も〜慶太君ったら困ったときにしか来てくれないんだから!」
「すいません・・・ってか抱きつかないでください。誰かに見られたらどうするんですか」
「その時は・・・結婚?」
ちなみに抱きついてきた人物こそが今日会いに来た野村奈緒教授だ。20代で教授になった天才で、今年で30になる女性。独身。
「・・・ねぇ慶太君、今ものすごく失礼なこと考えなかった?」
「いえ、何も。それより本題に入ってもよろしいですか?」
「その前に結婚について答えてよ〜!」
先生の発言を完璧に無視した僕は強引に話を聞いてもらった。
「・・・というわけなんですが。何が原因なんですかね?」
真剣な表情で悩む先生。
「サトリ能力が不安定・・・か・・・う〜ん、難しいな〜」
(ちぇっー!!私に愛の告白でもしに来たのかと思ったのにつまんな〜い!!)
全然真剣に考えてくれなかった。
「・・・先生は僕がサトリだってことをお忘れではないですよね?」
「え?・・・っっ!?オ、オホホホホホ///」
ゴホン、と咳払いを一つした後先生が語り始めた。
「正直言って分からないわ。サトリに関してはあなた以外で実験をしたことがないからね」
「そうですか。お時間を取らせてしまいすいませんでした。ではこれで」
「いや〜ん、冷たいな〜!まだ話は終わってないのよ〜!」
先生はもうすぐ三十路ですよね?言葉使い、直した方がいいですよ?
でも恐ろしくてそんなことは口が裂けても言えなかった。
「実は12月5日に世界規模の学会があるんだけど、そこである教授がサトリについて何か重大な発表をするって噂があるのよね〜」
「っ!ぼ、僕もそれに連れて行っていただけませんか!?」
「でもそれって一般の人は立ち入り禁止なんだけどな〜。それにせいぜい私とその助手一名くらいしか行けないんだよな〜」
「・・・」
「あと他の教授や知人、私のところの准教授とかにもぜひ私を連れて行って下さいって言われてるのよね〜」
「・・・僕は一体何をすればよろしいんでしょうか?」
多分ものすごい要求を突きつけるんだろうな・・・
「別に何もしなくてもいいよ?慶太君が行きたいっていうのなら慶太君を連れて行ってあげる。もちろん、旅費も私持ちで♪」
すごい。破格の条件だ。でも何か裏が・・・ってあれ?旅費?
「あ、あの・・・会場は遠いのですか?」
「場所はニューヨークだよ?それにこの学会は3日あって全部の教授の発表を聞きたいから、少なくとも5日以上の旅行だね♪」
5日!?5日も先生と二人っきり!?
「どうするの?行くの?行かないの?」
先生は僕が絶対に断れないと自信に満ちた顔をしている。悔しいけど・・・その通りです・・・
「ぜひお伴させてもらえないでしょうか?」
「いやったー!!慶太君と二人っきりで海外旅行だ!!」
・・・みんなには黙っといた方がいいよな、うん。
「それでは失礼しました」
どこか妄想の世界に入り込んだ先生を置いて僕は部屋を出た。
しかしこの後、僕はなぜこんなにも大事なことを忘れていたのかと後悔する羽目になる。
病院を出てから一本の電話が鳴った。相手は・・・恭子ちゃんだ。
電話に出た僕は衝撃を受けた。一つはそれが恭子ちゃんのお父さんからだったこと。そして、
「恭子が・・・また例の病気を再発させてしまった・・・」
この瞬間から僕の人生の歯車が大きく狂い始めた。
144サトリビト:2010/05/13(木) 19:21:13 ID:WfUne3eB
この日、学校が終わってからお金を下ろすため、私は銀行に向かった。
その途中、私は両親の事を考えていた。
私の事を思ってお金を入れてくれるのか、はたまた私を怒らせたくない一心でお金を入れているのかは知らないが、遠く離れたところにいても私の事を考えてくれているんだ
な・・・
そう思うと今まで嫌いと思っていた両親が少しだけ好きになれた気がした。
そうだ、今度私から電話をかけてみよう!お父さんもお母さんも喜んでくれるかな?
だが期待は銀行に着いた途端に裏切られることとなった。
預金残高・・・・・・・・960,000。
あれ?なにこの数字?
私は一ヶ月の生活費代として4万円を下ろした。そしてこの口座は私が一人暮らしを始めたときに作ったものだ。
それなのに・・・なんで口座に96万も残っているの?
私の家はこんな馬鹿げたお金を送ってくるほど裕福ではない。
分かっている。なんで急にこんな大金を手に入れる事が出来たのか。でも・・・絶対に認めたくなんかない。
私はそれを確かめるために自宅に急いだ。

自宅に着いた私は家中をひっくり返した。
机やタンスはもちろん、お風呂やトイレまで。
しかし何も出てこなかった。
やっぱり私の思い過ごしだ・・・きっと宝くじでも当たったとか、そんなところなんだ・・・
少し落ち着いてベッドに座り込むと、一つだけ、まだ探していなかったものが目に入った。
いや・・・まさかね・・・?
だがこれ以上条件に当てはまるものはない。普通より少し大きめの写真立て。しかもこれは何処に行くにしても私が肌身離さず持ち歩いていたものだ。多分この先どんなこと
があろうと失くしたり捨てたりしない物。
そしてなにより・・・このことを両親は知っている。
私はおそるおそる写真立てに手を伸ばす。
お願い!何も出てこないで!
写真立ての裏側についている簡易なロックを外す。そして下敷き板を取り出してよく見ると―――
「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」
そのまま『それ』が埋め込まれていた下敷き板を地面にたたきつけて、思いっきり踏みつける。何度も何度も。
「くそっ、くそっ、くそっっ!!」
何度も踏みつける内に『それ』は小さな音を立てて壊れた。
「・・・はぁ・・・はぁ・・・」
壊れた『それ』を見ていると、私の気持ちが無意識に口からこぼれ始めた。
「・・・何でよ・・・何で私ばっかりがこんな目にあわないといけないのよぉぉ!!」
ひどい・・・確かに私だってお父さんやお母さんにひどいことを言ったと思う・・・だけど・・・
「・・・これってあんまりじゃないの?・・・なんで自分の娘を売ったのよぉぉぉおおおおぉぉぉぉぉ!!!!!!」
私はその場で泣き崩れた。
少しだけ両親の事を好きになった矢先にこれだ。
この時・・・私の心は完全に壊れてしまった。
「・・・ヒック・・・きっと罰が当たったんだ・・・私が浮気をしたから・・・」
結衣ちゃん達を好きになろうと思ったこと。両親を少しでも好きになってしまったこと。慶太以外の人を好きに・・・
「・・・慶太だけ・・・慶太だけを好きにならないと・・・そうだ、慶太のお母さんも諦めないと・・・」
慶太以外は好きになってはいけない。それどころか・・・敵だ。所詮は普通の人間なのだから。
「・・・ごめんね慶太・・・きっと慶太に『も』迷惑がかかると思うけど・・・許してくれるよね・・・」
慶太なら私の気持ちを分かってくれる。だって・・・

慶太も私と同じサトリなんだから
145サトリビト:2010/05/13(木) 19:23:26 ID:WfUne3eB
以上投下終了です。
最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。
146名無しさん@ピンキー:2010/05/13(木) 19:57:55 ID:2a1VZbqu
>>145
GJですよ!!
147名無しさん@ピンキー:2010/05/13(木) 21:18:52 ID:Zm1krbtf
>>145
GJ!待ち遠しかったよ

なにやらサスペンスチックになってきたね
ハッピーエンドにはならないのか…?

12月というとあの占いの伏線回収かな

続き楽しみに待ってます!
148名無しさん@ピンキー:2010/05/13(木) 22:37:25 ID:VpVGkk9p
写真立ての裏に何が入ってたんだ?
見ただけで売られたってわかるもの…
149名無しさん@ピンキー:2010/05/13(木) 22:43:41 ID:FuJi/0Iy
盗聴器か監視カメラかなんかじゃないのか
直接言及するのを避けているから分からないけど
150名無しさん@ピンキー:2010/05/13(木) 23:13:26 ID:My3Z9ezh
ちょっと展開が読めてきた
151名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 01:14:39 ID:fhg+aAh+
逆に読めなくなった俺
152名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 01:57:19 ID:PtAtoDcM
ここってヤンデレズにはヤンデレズ用のスレがあるのかな?
注意書きを書かなきゃ駄目レベルなら、このままファイルに埋もれてお亡くなりに。
153名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 02:03:14 ID:L6MXLc0m
ヤンデレズ!?イイじゃない、只でさえヤンデレのジャンルは細分化されてるのに
これ以上他にスレ立てされても鬱陶しい!!
154名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 02:09:23 ID:3R414Lg8
乙なんだがこの書き方(1レス毎に同じ内容を視点移動で二度書くやり方)は少しどうかと思う
正直一度ならわかる。でも今回はまた同じだからもうダレて1レス毎に飛ばして流し読みで読んでた
ある意味人気漫画の引き延ばし(無駄に字数増やすだけ)に似ているし、それより酷い手法だと思う
結局全然話進んでないしね。半分の文章量で済む話だったわけだし、それなら片方のキャラを掘り下げるなり話進めるなりできただろうし
もっと別の書き方や進め方があったと思う。正直期待していた反面残念だった

この手の書き方は二度とやらない方が良いと思います
155名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 02:11:05 ID:PtAtoDcM
>>153
じゃあ明日あたりに投下するよ
がんばってかきました、おたのしみに
156名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 02:42:23 ID:BpBQ10Fn
別にいいだろ
何様だよ
157名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 03:05:32 ID:L6MXLc0m
>>154お前嫉妬スレのウナギイヌだろww荒らしは、巣に帰れ!!このクズ
158名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 06:29:04 ID:YxygTXwW
>>157
まだその名前だす奴いたんだな。
159名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 06:44:46 ID:X6w/+Vy/
>>154
>>17を読め。

ていうか前スレで陽菜視点が見たいって言ったの俺なんだよ。
そのリクエスト聞いてくれただけなのにそこまで言われるのを見るとムカつく
160名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 07:57:09 ID:nQiy8Cag
>>154
黙って飛ばして読んでろよ。
俺みたいにヒロイン視点があった方が楽しめるやつが居るんだよ
161名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 08:36:24 ID:Mlk0OchD
>>152
レズは嫌いな人はとことん嫌いだからここで投下するなら注意書きは必要
百合板にもヤンデレスレあるからそっちに投下すれば波風立たないと思う
162名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 11:24:33 ID:X6w/+Vy/
あぁヤンデレズってヤンデレの複数形じゃないのか
163名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 11:30:17 ID:3a8umJKH
ただでさえ作者潰しが湧くんだし荒れる種は避けるべきじゃね
俺としても読みたい事は読みたいが百合は百合を扱ってる場所に投下した方がいいと思う
164名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 12:59:25 ID:/2iT48oO
>>154
正直文章が無駄に長くて飛ばして流し読みで読んでた
ある意味引き延ばし(無駄に字数増やすだけ)に似ているし、それより酷い手法だと思う
結局煽りにすらなってないしね。半分以下の文章量で済むわけだし、もっと別の書き方やレスのやり方があったと思う。
最初から内容には期待していたなかったけど二度とレスしない方がいいと思う。
165名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 13:11:20 ID:wYTLSTrw
>>161>>163
確かに百合板にもスレあるみたいだし、そっちの方が良いかも
俺の知り合いにも男と女の組み合わせじゃないと無理って奴がいて
こっちの板に同性物が投下されてるの見ると
「頼むから801(百合)板に投下してくれー」とか言い出す
166名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 13:14:56 ID:pVmNdt6r
>>154>>164
どう見ても自演
167名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 13:46:55 ID:X6w/+Vy/
>>164
こんなわかりやすい自演初めて見たわ
あと途中のレス位読んでおけ
168名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 14:27:08 ID:YxygTXwW
>>164
これは酷いなw
もうちょっとなんとかならんかったんかw
169名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 14:43:04 ID:QkT2X+Kv
>>164>>154のレスに対しての文章じゃないのか
もともとの文章が分かりにくいせいで、作品への批判みたいにも読めるけど
170名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 16:25:02 ID:0QowVz4I
抜いた
171名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 17:30:59 ID:0QowVz4I
派手
172名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 17:44:38 ID:w05ZwESB
ニコ動で面白いヤンデレソング見つけたので投下
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm3838774
173名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 18:25:58 ID:PtAtoDcM
とりあえずこっちじゃなくて、百合板のほうに置いてくる
色々レスくれてさんきゅ
174名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 18:27:26 ID:5nisBfcA
>>172

プレミアムじゃん…
175名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 21:49:08 ID:lV5wBfaI
ニコ動はないだろ……
176名無しさん@ピンキー:2010/05/15(土) 00:47:13 ID:Z+ujzrmK
>>172
ヤンデレスレじゃなくてヤンデレSSスレなんだけど頭おかしいの?
177名無しさん@ピンキー:2010/05/15(土) 01:14:05 ID:CoD7bP+v
動画の内容・質を問わずニコニコのURLを貼った奴は迫害されて然るべき
178名無しさん@ピンキー:2010/05/15(土) 02:26:04 ID:P8jGCz3b
議論たのしー!
179名無しさん@ピンキー:2010/05/15(土) 02:40:29 ID:+EK50/Nm
>>178
sageメール欄に「sage」と入力して書き込みを行ってください。
するとそのスレッドは上に浮上せず、ゆったりと話ができるようになります。
これは上の方にスレッドをあげないで目に付きにくくして、荒らされたり、
アンチがよって来るのを防いだりしています。
180名無しさん@ピンキー:2010/05/15(土) 09:29:52 ID:s+PXt1LP
>>176
○小説以外にも、ヤンデレ系のネタなら大歓迎。(プロット投下、ニュースネタなど)
お前は何を勘違いしてるんだ
181名無しさん@ピンキー:2010/05/15(土) 11:46:40 ID:qcjRnQQV
>>180
ダメ。
182名無しさん@ピンキー:2010/05/15(土) 12:51:33 ID:c5aQWiee
そんなこと言われてもね…
183名無しさん@ピンキー:2010/05/15(土) 12:54:28 ID:ZHfeZTU6
ニコ厨は死ね
184名無しさん@ピンキー:2010/05/15(土) 13:20:00 ID:k8s6oB/x
>>180
おまえこそなにを勘違いしてるんだ
ここはヤンデレの「小説」スレだぞ
勘違い乙
185名無しさん@ピンキー:2010/05/15(土) 13:37:43 ID:QVx7CCdD
さあ、テンプレを確認する作業に戻るんだ
186名無しさん@ピンキー:2010/05/15(土) 14:25:20 ID:FezNE/Xu
ヤンデレを自分の手のひらの上で踊らせていると思いきや実は踊らされているみたいなシチュエーションに遭遇したい
187名無しさん@ピンキー:2010/05/15(土) 14:30:44 ID:Fq9JL0k1
まとめの「飼い慣らす、飼い慣らされる」だかってのがそんなんじゃなかったか
188名無しさん@ピンキー:2010/05/15(土) 19:30:27 ID:HKavIT8X
やっぱりヤンデレって奥が深いなぁ
189名無しさん@ピンキー:2010/05/15(土) 19:58:47 ID:FllB1NUp
派手
190名無しさん@ピンキー:2010/05/15(土) 20:34:05 ID:8HAxJ62K
思わず読み返してしまった
191名無しさん@ピンキー:2010/05/15(土) 22:47:44 ID:FezNE/Xu
>>187
実はそれを読んでレスしてみたんだ
ほんとヤンデレっていいよなあ
192名無しさん@ピンキー:2010/05/16(日) 03:54:57 ID:T117XRf+
最近暖かくなってスレにも変な虫が沸いてきているが……www
たまには、毛色の違った実体験を元にした体験手記風ssとかも
読んで見たいが…
え!俺、あいにく周りは、ツンツンクールしか居ませんorz
193名無しさん@ピンキー:2010/05/16(日) 08:14:29 ID:Tm8l15ee
そのツンツンクールな対応が実はヤンでる故のものとして考えれば?
既に君の頭の中にSSが浮かんでいるはずさ!
194名無しさん@ピンキー:2010/05/16(日) 09:39:21 ID:WqqJHGBR
>>192
安心してくれ。
我々はいつでも、いつまでも新しい才能を待っている。
195名無しさん@ピンキー:2010/05/16(日) 10:04:47 ID:NGywB7rm
高校の最後の思い出に学年の中でも可愛い奴に告ってみたらこっぴどく振られるが、何故かアドレス訊かれて、今でもメールのやり取りし、たまに、出かけるんだけど………



ヤンデレじゃないよね?これ
196名無しさん@ピンキー:2010/05/16(日) 10:19:30 ID:5udjcrCs
そのやり取りのどこにヤンデレか疑う要素があるか全く解らんが
ヤンデレだろうがヤンデレじゃなかろうがお前のリアル話が心底どうでもいいのは確か
197名無しさん@ピンキー:2010/05/16(日) 11:34:03 ID:+TfLECM1
ネタになるからいいじゃないか
198名無しさん@ピンキー:2010/05/16(日) 12:53:51 ID:ShIjkALZ
多分クラスの中で孤立していたところを好きと言われて嬉しかったんじゃないか。
その状態で別の子から告白されたら面白かったのに。

あーあ、なんで告白されなかったのさ。
199名無しさん@ピンキー:2010/05/16(日) 13:11:56 ID:FQeHAfjl
派手
200名無しさん@ピンキー:2010/05/16(日) 17:19:57 ID:Sg10PCTf
日本語覚えたてのキチガイが居るな
201名無しさん@ピンキー:2010/05/16(日) 17:31:44 ID:bmpDrEFA
最近ヤンデレ分が足りないと思ってたらこのスレがなかった。次スレを探す前に前スレを消してたみたいだ。

もう離さないよヤンデレ愛してるちゅちゅ
202名無しさん@ピンキー:2010/05/16(日) 18:03:24 ID:T117XRf+
>>189>>199こいつ何者?最近此処と厨近親スレに現れるが…運営側からの刺客か?
203名無しさん@ピンキー:2010/05/16(日) 19:07:10 ID:gVfSo+e7
恋人にラブラブメールを送ろうとして間違えてヤンデレ幼馴染みに送ってしまいたい。
そしてそのまま逆レイプされて引きずられるようにヤンデレ幼馴染みに落ちていきたい
204名無しさん@ピンキー:2010/05/16(日) 19:15:17 ID:9buakBwa
恋人が出来た時点で(または出来る前に)矯正されるだろjk
205名無しさん@ピンキー:2010/05/16(日) 20:18:20 ID:rPp8Gw7C
>>202
保守の類かと思ってたんだが、やっぱ違うん?
206名無しさん@ピンキー:2010/05/16(日) 20:45:33 ID:gVfSo+e7
>>204付き合ったばかりor秘密にしてたorヤンデレがてぐすねひいていた

「やっと誘ってくれたんだね」
「体は正直じゃないか…」
「本当はわざと送ったんだろう…私にはわかるとも…」

と言われたい
207名無しさん@ピンキー:2010/05/16(日) 21:06:58 ID:NGywB7rm
>>206の今後が心配www
208名無しさん@ピンキー:2010/05/16(日) 22:31:14 ID:HW4q5ROT
一見、まともに見えてもじつは…とか、寛大な嫁に見えても策の内とか…
そんな感じの“水面下型ヤンデレ”が好きでたまらない。

209名無しさん@ピンキー:2010/05/16(日) 22:35:08 ID:E2EDDna4
>>205
だいぶ前からいるし投下中にも割り込むような奴だから無視しとけ
210サトリビト:2010/05/16(日) 22:58:28 ID:tL81nTxM
サトリビト第11話できたので投下します。
よろしくお願いします。

あと1レスごとに視点を変えるのはやめた方がいいという指摘があったのですが、自分もそう思いました。
ただなにぶんもう書きあげていたので・・・すいませんでした。
個人的には指摘は嬉しいです。
211サトリビト:2010/05/16(日) 22:59:46 ID:tL81nTxM
僕は電話を受けた後、一目散に恭子ちゃんの家に向かった。
どうしてあの時すぐにでも電話を掛けなかったんだ!?どうして今の今までそのことを忘れていたんだ!?
悔やんでも仕方がないことは分かっていたが、それでも自分の軽率な行動に対して怒りを感じる。
やっとの思いで恭子ちゃんの家に着いた僕は、すぐにチャイムを押した。
「どちら様でしょうか?」
「僕です!早川慶太です!」
訪問者が僕だと分かると、恭子ちゃんのお父さんが慌てて出てきた。
「すまないね、呼びだした形になってしまって」
「いえ、お構いなく。それより恭子ちゃんの容態は?」
「・・・まぁ、上がって話そうか」
廊下を経てリビングに行くと、そこには深刻そうな顔をして座っている恭子ちゃんのお母さんがいた。
「どうぞ楽にしてくれ」
そのまま案内された椅子に座る。ちょうどお母さんの目の前の席だ。
「お茶を入れてくるから少し待っていてくれないか?」
お父さんはそう言って台所に消えて行った。
今この場所には僕とお母さんしかいない。そうすると恭子ちゃんは自分の部屋にいるのかな?
「・・・わざわざ来ていただいて、申し訳ありません」
最初に口を開いたのはお母さんだった。
「本当は私たちでどうにかしなければいけないのに・・・でも、私たちではどうにもならなくて・・・」
恭子ちゃんの鬱は両親のいないさみしさから来るものだったはず。それなのにお父さんやお母さんがお手上げ?
いや、そもそも昨日は二人ともいたはずなのに何で急に・・・
「あの、失礼かもしれませんが昨晩はお二人ともこの家におられたんですよね?」
「ええ・・・二人ともちょうど非番だったので・・・」
なら尚更おかしい。他に恭子ちゃんが不安になる理由なんてあるのか?
「・・・『お兄ちゃんがいない』そうだ」
その時三人分のお茶を入れたお父さんが戻ってきた。
「え?」
「お兄ちゃん・・・つまり慶太君がいないと昨日から泣き叫んでいたんだ・・・」
自分の耳を疑った。お父さんは冗談を言っているのか・・・?
「信じられないかもしれないが本当の事なんだ。どうやら君にあの子の事を任せているうちに重度の依存症にかかってしまったらしい」
そんな・・・確かに恭子ちゃんは今までも僕に懐いてはいたが、これほどまでに依存していたなんて・・・
「・・・でも今まではこんな風になったことは一度もなかったんですよね?どうして急に・・・」
「私もそこのところが分からないんだが・・・なにやら昨日君に電話した後からおかしくなってしまって」
その電話に出たのは陽菜だ。まさか陽菜が何か言ったのか?
「そして朝になってもう一度様子を見に行くと・・・携帯を投げつけられてしまって・・・」
そう言ってお父さんは僕に恭子ちゃんの携帯を渡してきた。
恭子ちゃんがお父さんに対してそこまでするなんて・・・
「あの・・・恭子ちゃんと少しお話をしてもよろしいですか?」
「情けない話だが君だけが頼りなんだ・・・恭子をお願いします」
「お願い慶太君・・・あの子の事、もう一度救ってあげて下さい」
二人はそのまま頭を下げた。
お願いされなくても僕の意思はすでに決まっている。
「お願いなんて言わないでください。僕にとって恭子ちゃんは大事な妹なんですから」
212サトリビト:2010/05/16(日) 23:00:39 ID:tL81nTxM
今、僕は恭子ちゃんの部屋の目の前にいる。
ちなみにお父さんとお母さんは刺激しないようにとリビングで固唾を呑んで待っている。
二人のためにも、そしてもちろん恭子ちゃん本人のためにも僕がしっかりしなければ!
気合いを入れ直して部屋のドアをたたいた。
「恭子ちゃん、俺だけど・・・入ってもいい?」
僕がそう言った途端、部屋の中からものすごい音が聞こえてきた。そしてゆっくりとドアが開けられて、
「・・・お、お兄ちゃん・・・?」
部屋から出てきた恭子ちゃんは目が充血していた。
それだけでも驚きなのだが、部屋の中にはさらなる驚きが待っていた。
「な・・・」
あまりの光景に言葉が出ない。
ぐちゃぐちゃに散らかっている服。しかもそれらのうち、いくつかは何かによって引き裂かれていた。
これを恭子ちゃんがやったというのか?
「お兄ちゃんだ〜!やっぱり私のところに来てくれたんだ〜!」
恭子ちゃんはこの部屋の惨状を、まるで意に介さないという様子で僕に抱きついてきた。
「お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん・・・」
鬱病が再発したと聞いていたが、はたしてこれは鬱病なのか?まるで別の人格になっているみたいだ。
「き、恭子ちゃん・・・?一体何があったの・・・?」
とりあえず本人に直接聞いてみる。何が原因でここまで精神に影響をきたしたのか。
僕の質問に恭子ちゃんは一瞬体をブルッ震わせてから、声を絞り出すように答えた。
「・・・嘘ですよね?・・・お兄ちゃんと陽菜さんはただの友達ですよね?」
陽菜?やっぱり昨日何かあったんだ。
「お兄ちゃんは陽菜さんに無理矢理家に連れて行かれたんですよね?無理矢理お風呂に入れられたんですよね?」
そう言って恭子ちゃんは見上げてきた。その目は・・・まるで感情が欠落しているようだ。
「ち、違うよ!無理矢理じゃなくて僕が勝手に―――」
「いやーーーーっっ!!!嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘っっっっ!!!!!」
恭子ちゃんが錯乱した。
「嫌だ嫌だ嫌だっ!!お兄ちゃんは私だけを見てよぉ!私だけのそばにいてよぉ!」
「恭子ちゃん!?」
「お兄ちゃんの言う事何でも聞くし、何でもするからぁ!!だからずっと私のそばにいてよぉぉぉおおぉぉ!!!」
今の恭子ちゃんに話は通じない。
咄嗟にそう思った僕は恭子ちゃんを抱きしめた。
「・・・そばにいるよ。恭子ちゃんが安心するまで」
陽菜と何があったのかは分からないが、こんな恭子ちゃんを放っておくわけにはいかない。
恭子ちゃんは僕の腕の中でしばらくの間暴れていたが、やがて落ち着きを取り戻していった。
「あ・・・ご、ごめんなさい・・・私ったら・・・」
「いいよ。たまにはこうやって妹のお願いを聞いてあげないとね」
「・・・お兄ちゃん・・・」
「それじゃあ・・・中に入ってもいい?さすがにこの状況を親御さんに見られるとマズいからね・・・」
主に僕が。
「はい・・・あ、でも散らかってて・・・」
「それじゃあ一緒に片づけよっか?」
「ハイっ!!」
そう言って僕は抱きしめていた手を離した。その瞬間悲しそうな顔をされるかな?と思ったが、恭子ちゃんは何事もなかったように部屋に入っていった。
よかった・・・いつもどうりの恭子ちゃんに戻ったんだ。
この時僕はそう考えていた。
213サトリビト:2010/05/16(日) 23:01:54 ID:tL81nTxM
「うわ〜・・・これはもう捨てるしかないね・・・」
「・・・ご、ごめんなさい」
今僕たちは恭子ちゃんの部屋に散乱していた服を片づけていた。とはいうものの、ほとんどの服が無残にも破られており、どちらかというとゴミ袋に入れていると言った方が正しいだろう。
本当は何でこんなことをしたのか、そもそも陽菜と何を話したのかを聞きたいのだが、やっと落ち着きを取り戻した恭子ちゃんがまた錯乱するかと思うと恐くて聞けなかった。
(お兄ちゃんとお掃除〜♪お掃除もお兄ちゃんと一緒だと楽しいな〜)
心の声も今回ばかりは役に立ちそうにない。
「どうしたのお兄ちゃん?何か考え事?」
僕がどうするか悩んでいると恭子ちゃんが話しかけてきた。
「!そうそう、ちょっと考え事してたんだ、アハハ〜・・・」
ごめんねと言いながら、どりあえず手近にあったものを手に取った。
「お、お兄ちゃん!?それって・・・///」
なぜか言い淀んだ恭子ちゃんの反応を不審に思った僕は、手に取ったそれを見る。
そこにあったのはブラジャー。
「うわぁぁぁああああぁぁぁぁぁ!!!」
僕はとっさにそれを投げ捨てる。
ここに僕と恭子ちゃん以外いなくて本当に良かった・・・ってあれ?本人がいたら一番マズいんじゃないの?
おそるおそる恭子ちゃんの顔をのぞき見ると、そこには数分前の恭子ちゃんがいた。
「お兄ちゃんは私の事が嫌いなの?私の下着はそんなにも汚いの?やだやだやだやだやだやだやだやだやだやだ・・・」
しまった、なんだか恭子ちゃんの様子が元に戻りはじめた!
「いや、違うよ!恭子ちゃんの下着は全然汚くないよ!むしろ山田なんかはお金を出してまで欲しがると思うよ!」
陽菜の家でも似たような場面があったな。それと、すまん山田。多分この時をもって恭子ちゃんはお前を軽蔑しただろう・・・
「・・・お兄ちゃんは?お兄ちゃんは・・・その・・・ど、どう思いますか///・・・?」
何が?何がどうなの?
(お兄ちゃんは私の下着とかに興味ないのかな・・・?)
恭子ちゃんのあまりの過激な質問に僕の思考回路がオーバーヒートした。
「わ、私の・・・その・・・ブ、ブラジャーとかを・・・見て・・・」
多分僕の本心を言ったら恭子ちゃんはまた例の状態になる気がする。だからといって興味があるとは言えない。
「・・・やっぱり私じゃ何も感じませんか?・・・やっぱり陽菜さんじゃないとダメなんですか?」
突然恭子ちゃんの様子が一変した。
「え?陽菜?なんで陽菜が?」
「・・・昨日の夜、陽菜さんの家に行ったんですよね?シャワーも借りて。・・・一体何をしていたんですか?」
恭子ちゃんの様子は先ほどとは比較にならないほど暗くなっている。
なるほど・・・僕が陽菜と付き合う事で自分が捨てられるんじゃないか?と思ったのか・・・
「あの後電話を待っていたのに・・・結局かけてきてくれませんでしたね・・・そんなに陽菜さんとは楽しいことをしていたんですか?」
恭子ちゃんが僕に手を伸ばしてくる。それがなぜか・・・とても恐ろしく感じる。
「答えて下さい。昨日の夜、陽菜さんの家で何をしていたんですか?」
恭子ちゃんの手が僕の首筋に添えられる。その感触は恐ろしいほど冷たかった。
「な、何もしていないよ!昨日は陽菜が心配で家に行っただけで・・・シャワーだって僕がずぶ濡れで風邪をひくからって陽菜が・・・」
なんで僕は浮気が見つかった亭主みたいな言い訳をしているんだ?それになんでこんなに怯えているんだ?
「・・・本当ですか?嘘じゃないって・・・誓ってくれますか?」
「ち、誓うよ!俺は何もやましいことはしてないよ!」
僕の返答に満足したのか、ようやく恭子ちゃんが笑ってくれた。
本当は抱き合って眠ったけど・・・それにはやましいことは何もなかった・・・はず・・・
「そうですよね・・・私ったら勘違いをしてしまって・・・お兄ちゃんが私を裏切るなんてするはずないのに・・・」
なぜか恭子ちゃんの使った裏切るという言葉が頭の中でエコーして鳴りやまなかった。
214サトリビト:2010/05/16(日) 23:05:13 ID:tL81nTxM
あらかた部屋を片づけた時には時計の針が七時を指していた。
さすがにこの時間になると僕も家に帰りたいのだが、はたして恭子ちゃんはすんなり帰してくれるだろうか?
「お兄ちゃんは晩御飯、下で食べます?それともこ、この部屋でふ、二人っきりで・・・///」
(お兄ちゃんにもう一度あ〜んしてもらいたいな・・・そのためにはこの部屋で・・・)
どうやら恭子ちゃんは帰してくれそうにもない。
帰ることをあきらめた僕は家に電話を掛けた。
「あ、母さん?今日は恭子ちゃんの家に泊ろうと・・・え?違うよ、僕には特殊な性癖はないから安心してよ。それで一つお願いがあるんだけど、姉ちゃんの事お願いするよ。
・・・え?姉ちゃんに言ってもいいか?ダメに決まってるじゃないですか。何を考えてるんですか?・・・修羅場が楽しみ?姉ちゃんはあなたの娘なんですよ?その姉ちゃんが
修羅場をしている姿が楽しいのですか?それに被害を被るのもあなたの実の子なのですよ?・・・そっちの方はどうでもいい?うすうす気づいていましたけどはっきりと言うんですね。
というかこんな無駄話はどうでもいいので、僕の言ったことお願いしますね。それでは」
そう言って電話を切った。
なぜ僕は母親相手に敬語を使ったのだろう?それにやっぱり僕はだんだん父さんに似てきてるんだな・・・
「・・・特殊な性癖?」
「あ、聞いてたの?ダメだよ、恭子ちゃんがそんな言葉を使ったら」
「なんで?」
「俺の中にある恭子ちゃんのイメージが崩れるからね」
「私のイメージって?」
「そりゃあもちろん女神だよ」
「私が女神ならお兄ちゃんは?神様?」
「ハハ、それなら僕と恭子ちゃんがまるで夫婦みたいじゃないか」
「///!!・・・私とお兄ちゃんが夫婦・・・♡」
僕の負けです。だからもう僕の失言を誘わないで・・・
「夫婦なら・・・私の事恭子って呼んでください・・・あなた♡」
恭子ちゃんは僕の妹だよね!?僕のことはお兄ちゃんみたいで好きなんだよね!?
「やっぱり子供は二人ほしいですよね・・・女の子だと嫌だから、男の子二人がいいな〜♡」
完全に恭子ちゃんは別の世界に行ってしまった。お願いだから帰ってきて。
その時、天の助けが僕の耳に届いた。
「恭子、ご飯食べれる?それに、慶太君も一緒にどうかしら?」
お母さんは恭子ちゃんがまだ鬱になっているかと、おそるおそる訊ねてきた。
「あ、今日はこの部屋で―――」
「自分も誘っていただいてありがとうございます!今すぐ下に行きますんで!」
なんとか恭子ちゃんの爆弾発言を未然に防ぐことができた。
「なら下で待ってるわね」
そのままお母さんは階段を下りて行った。
「・・・なんでこの部屋で食べないんですか?」
恭子ちゃんが拗ねたような目を向けてくる。
「それに・・・お母さんとあんまり仲良く話さないでください」
(お母さんもお母さんよ!私の目の前でお兄ちゃんと仲良くおしゃべりするなんて!自分の年を考えなさいよ!)
・・・僕は何も聴いていない。何も聴こえない。
「・・・それじゃ、下に行こうか」
「ハイ!あ・な・た♡」
(キャ〜キャ〜キャ〜!!)
僕はがっくりと肩を落として階段を下りていった。
215サトリビト:2010/05/16(日) 23:06:44 ID:tL81nTxM
夕食の時間、僕の恐れていたことが起きてしまった。
目の前には口を開けたままポカンとしている恭子ちゃんの両親。
それもそのはずだ。なぜなら自分の娘がおかしくなっているのだから。
「ハイ、あなた・・・あ〜ん♡」
「・・・あ、あ〜ん・・・」
先ほどから僕は自分の意思でごはんを食べていない。全部こうやって奥さんが食べさせてくれている。
「ありがとう、恭子ちゃん。でも自分で食べれるから・・・」
「フフ、もう〜照れちゃったんですか〜?それに奥さんにちゃん付けなんておかしいですよ?恭子って呼んでください♡」
「・・・」
謝るから!謝るからこの新しい拷問はもうやめて!それに語尾にハートもつけないで!
こうやって仮想夫婦の営みを無理強いさせられていたとき、ついにお父さんの我慢が限界に来てしまった。
「・・・慶太君と恭子は・・・その・・・付き合っているのかね?」
(慶太君は何を考えているんだ!?ウチの子はまだ13歳だぞ!!)
や、やばい!お父さんがお怒りだ!
「い、いえ!!付き合っているなんてまさか―――」
「私たちは夫婦になったんです!そうですよね、あ・な・た♡」
欲しいものがあるなら何でも買ってあげるから、今は何もしゃべらないで!!
「・・・夫婦になった・・・?ま、まさか!?」
(慶太君の家に泊りに行ったとき、まさか・・・子供ができたんじゃ!?)
お父さんの眉間にしわが寄る。このままだと僕は殺されてしまうかもしれない。
「・・・慶太君には悪いが今すぐ帰ってくれないか?」
お父さんの言葉はオブラートには包んでいるが、怒りを隠し切れていない。どうやら本格的に僕は嫌われてしまったらしい。
そんな僕に対して天どころかさらなる地獄に突き落とす声がした。
「なんで?お兄ちゃんが帰るのはこの家でしょ?何言っているのお父さん?」
恭子ちゃんが僕の呼称をあなたからお兄ちゃんに戻してくれたのはありがたかったが、こんな抑揚の全くない声で言われたら恐怖の方が残ってしまう。
「お兄ちゃんは私とずっと一緒にいるのよ?もしお父さんがそれが嫌だって言うなら・・・お父さんが出ていけば?」
・・・今なんて言った?お父さんが出ていけ?
おおよそ恭子ちゃんが言いそうにない言葉が恭子ちゃんの声で聞こえた気がした。
そのまま僕の腕にしがみつき、恭子ちゃんはこの場にいる全員に宣言する。
「私はお兄ちゃんと死ぬまで一緒にいる。ずっと・・・」
「え?あの・・・」
「もしお兄ちゃんが嫌だって言ったら・・・私の事が嫌いになったら・・・私、死ぬから」
恐ろしいことを淡々と話す恭子ちゃん。その目はこれが冗談ではないという事を物語っていた。
「死ぬって・・・冗談だろ・・・?」
「大丈夫!お兄ちゃんが私を裏切るはずないもん!!だから安心してね!!」
いつからだ・・・?一体いつから恭子ちゃんはこんなにも精神が不安定になってしまったんだ?
この場にいる恭子ちゃん以外の人間が全員そう思ったことだろう。
「やっぱり私のお部屋で食べよ〜?いいでしょ、お兄ちゃん?」
(そうだよ、やっぱり二人っきりで食べたほうが絶対にいいよ!)
今の恭子ちゃんに対して僕は否定の言葉を使えない。使ったらどうなるか・・・
「・・・分かったよ・・・」
「わぁ〜い!!」
僕は先ほどから唖然としている両親を残して、もう一度恭子ちゃんの部屋に戻った。
216サトリビト:2010/05/16(日) 23:08:07 ID:tL81nTxM
部屋に戻ってからは本当の地獄が待っていた。いや、ある種の人間にとっては極楽か?
「私が食べさせてあげたごはんはおいしい?」
「・・・おいしいよ・・・」
相も変わらずごはんを食べさせてくる恭子ちゃん。もう今の僕はただ言う通りに動くマリオネットと化していた。
「じゃあ次は・・・口移ししてあげるね!」
もう何も驚かない。たとえそれが恭子ちゃんが絶対に言わないセリフだったとしても。
「ふぁい、ふぁなふぁ!(はい、あなた!)」
また僕に対する呼称があなたに戻っていた。一体どのタイミングで変わるんだ?
「ふも〜、ふぁやふふぃふぇよ!(んも〜、早くしてよ!)」
お願いだからやめてよ・・・僕は恭子ちゃんとそんなことはしたくないよ・・・
でもここで拒否をしたらまた例の状態に戻ってしまうかもしれない。いや、さっきは裏切ったら死ぬと言っていた。
恭子ちゃんが死ぬよりはマシだ。
そう思い口を開ける。
それを見た恭子ちゃんはゆっくりと僕に近付いて食べ物を供給してきた。ほのかに生温かい刺身。
「お兄ちゃんが私の口に入っていたものを・・・///」
(好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き、お兄ちゃん♡)
どうやら興奮がある一定を超えると呼称がお兄ちゃんになるらしい。漠然とそんなことが頭をよぎった。
「次は・・・ご飯だね!」
言うと同時にご飯を口に入れる恭子ちゃん。いや、それはさすがに・・・!!
「もうお腹いっぱいだからもういいよ!」
「・・・」
恭子ちゃんは僕の言葉に返事を返さず、あたりをきょろきょろし始めた。
そして目的のものがその目に映ったのか、ある一点をみつめて動き出す。
その視線をたどると・・・多分この部屋の服を切り裂いたときに使ったであろうカッターナイフがあった。
その瞬間、恭子ちゃんのセリフがフラッシュバックする。
『裏切ったら死ぬから』
僕はとっさに恭子ちゃんの肩を捕まえてこっちを向かせた。
「何やってるの恭子ちゃん!!」
だが恭子ちゃんの顔はカッターナイフを見たまま動かない。
なんで・・・何でこんなことに・・・
僕は唇を思いっきり噛んだ。口の中に血があふれる。
これは僕への罰だ・・・恭子ちゃんをこんな風にしてしまったことと・・・これからする行為への・・・
肩を掴んでいた手を離し、今度は顔を掴みこっちを向かせた。恭子ちゃんと目が合う。そして・・・

・・・チュッ・・・クチュッ・・・

恭子ちゃんの唇を無理矢理奪ってしまった。その時受け取ったごはんの味は一生忘れないだろう。
「・・・お兄ちゃんとキスしちゃったお兄ちゃんとキスしちゃったお兄ちゃんとキスしちゃったお兄ちゃんとキスしちゃったお兄ちゃんとキスしちゃった!!」
恭子ちゃんの口はお兄ちゃんと一回言うたびに吊り上がっていった。
だが僕はお兄ちゃんと一回言われるたびに心が壊れていく気がした。
「しかもお兄ちゃんからしてくれるなんて!!どうしよう〜、嬉しすぎて死んでしまいそう!!」
「お願いだから!!死ぬなんて言わないで・・・」
「・・・冗談だよ。お兄ちゃんが私を好きでいてくれる限り死ぬわけにはいかないよ!!」
もういい・・・恭子ちゃんが無事なら・・・僕は・・・
217サトリビト:2010/05/16(日) 23:10:04 ID:tL81nTxM
「もう一回キスして?」
もう何回目だろう?恭子ちゃんがそう言うたびに僕は唇を重ね続けた。
「・・・ん・・・ちゅっ・・・」
しかも回数を重ねるごとにその時間も長くなっていく。一体いつになったら終わりが来るのだろうか想像がつかない。
「あ〜・・・ずーーーーーーっっとこうしていたな・・・お兄ちゃんは?」
「・・・お願いだから・・・いつもの恭子ちゃんに戻ってよ!」
もうこんな恭子ちゃんは見たくない。
「一生の・・・お願い・・・」
だが僕の願望は聞き入れてもらえなかった。
「何言ってるの?私はいつもの私だよ?それより・・・」
出して?とばかりに、こちらに向かって手を差し出してくる。一体何を?
「さっきから携帯がずっと鳴りっぱなしでお兄ちゃんも迷惑でしょ?私が代わりにでてあげる!」
恭子ちゃんの様子に意識が集中していたせいか、携帯が震えていたことにまったく気がつかなかった。
「いや、これくらい自分で出る―――」
「ふ〜ん・・・私が出たらまずいんだ相手は女の人なんだ浮気してるんだ私を・・・」
言いながら瞳をだんだん濁らせていく。そして僕が今最も聞きたくなかった言葉を告げた。

「うらぎるんだ」

恭子ちゃんの被害妄想は常軌を逸している。
だがそんなことを考える余裕が僕にはなかった。その時感じたことはただ一つ。
早く謝らないと。
「ごめん!勘違いさせるような態度を取ってしまってすいませんでした!いいから、僕の携帯にでてもいいから!」
叫びながら携帯を恭子ちゃんに手渡す。せめてこの電話が親か男友達でありますようにと願いながら。
「はい、もしもし早川ですけど?」
僕の名字を名乗る恭子ちゃんはまるでいつも電話ではそう言っているといった様子だ。なんの躊躇も感じられない。
「あれ〜、もしかして陽菜さん?」
え?陽菜?陽菜がこんな時間に僕に何の用だろう?いや、それより・・・
「お兄ちゃんなら私の目の前にいるけど・・・何でって、私たちは夫婦になったから♪」
(アハハハハハハハハハ!!昨日のお返しだ!!)
恭子ちゃんの心がものすごく荒み始めている。もう元には戻れないくらいに。
「・・・冗談じゃないよ?だって私たちはもう何度も唇を重ねた仲だもん!ね、お兄ちゃん♡」
そう言って携帯を渡してきた。
これから僕がやらなければいけないことは分かる。そうしないと今度こそ恭子ちゃんは何をするか分からない。
だけど・・・このままでいいのか?このまま何も抵抗しなくていいのか?
「・・・」
「どうしたの?早く電話にでてよ〜」
そうだ、このままでは何も解決しない。恭子ちゃんのためにもここではっきりと言わないと・・・
「・・・陽菜、そのままで聞いてくれ」
「それよりどういう事!?本当に恭子ちゃんとキスしたの!?」
「・・・ああ、今の今までキスをしていた。それは紛れもない事実だ」
電話の向こうで息を飲んだのが分かった。
ごめん、陽菜。でもここからの事をどうしても聞いてほしかったんだ。
恭子ちゃんの目をじっと見つめる。そして、
「だけど・・・俺には恭子ちゃんに対して恋愛感情は持っていない。俺は他の子が好きなんだ。だから・・・恭子ちゃんのお願いは聞けない」
僕は禁断の扉を開けた。
218サトリビト:2010/05/16(日) 23:12:50 ID:tL81nTxM
以上投下終了です。
次回は12話の前に本編のパラレル物を投下する予定です。
12話がなかなか書けなくて・・・

最後に、読んでくださった方、ありがとうございました。
219名無しさん@ピンキー:2010/05/16(日) 23:16:01 ID:9gHYj8dH
GJ
220名無しさん@ピンキー:2010/05/16(日) 23:30:09 ID:SBuUAhPN
某誠を思い出してしまった
GJ
221名無しさん@ピンキー:2010/05/16(日) 23:40:51 ID:koMBpnrJ
いや〜寝る前にいいもん見れた
GJ
222名無しさん@ピンキー:2010/05/16(日) 23:47:13 ID:E2EDDna4

これはいい依存
223名無しさん@ピンキー:2010/05/16(日) 23:48:40 ID:rLZuOmyS
いやいや!面白いよ! 個人的には視点変更もよかったとか思ってたり、ともあれgj
224名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 00:10:39 ID:QQEdeFjj
なんて難しい局面だ
もはや詰んでる気もする
225名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 00:42:20 ID:Cg48BDDS
山田が恭子ちゃんを助けてくれるはず!


そして俺も助けに行く!
226名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 00:57:32 ID:jinWXT9Q
文章についてつっこむ人いなくなったよな
評論家気取りがいなくなった、ってことで良いことなのかな
227名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 01:10:37 ID:XRYJtCBg
怖い、けど面白い
228名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 01:18:56 ID:YCX9bTrN
GJ
慶太×陽菜の時は各視点ごとに同じ場面を書いた方がいいと思うけどね
229名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 01:33:21 ID:ekejBwaC
GJ!
サトリビトは投下間隔短いのにクオリティは高いな
230名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 02:19:11 ID:zCU/FV1o
陽菜も良いけどキモウト恭子最高!逆レイプ展開を妄想してしまった。
231名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 03:35:20 ID:ZDQQpQSG
>>218
GJ!
もうみんなでわけあっちまえよ…
232名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 06:39:48 ID:xyTUUTk6
>>226
文章じゃなくて書き方じゃね?

そういや自演だって言うやつもいなくなったな
233名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 07:11:19 ID:aru3+XBf
>>218
いい感じに狂ってきたなぁGJ!
サトリの力って、ヤンデレの病み思考を直で食らう、相性最悪の力だったか……
次回のパラレル話も、楽しみに待っています
234名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 08:04:55 ID:6i1iAxwY
>>218
GJ!
堕天使恭子も怖いけど、今後の陽菜さんと
二日もお泊りして不満が溜まっているであろう
姉ちゃんも絡んでくると思うと恐すぎる…

続き楽しみに待ってます
235名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 08:22:35 ID:b+kG950h
GJ!
ついに恭子ちゃんも壊れちゃった
もう重婚可能な国に移住するしか無いな
236名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 19:24:29 ID:I72ReG+z
>>218
GJ!
面白くて話に凄くひきこまれたよ。
恭子ちゃん怖すぎるな。
237名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 19:37:00 ID:lWnW2z/U
恭子ちゃんの壊れっぷりに惚れた

GJ!
238名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 20:55:14 ID:kXaAYxh/
239名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 22:46:26 ID:kXaAYxh/
攻めている 超守る 超守った

TMR ある
240名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 22:57:23 ID:gqFXBpYW
大変、間を空ける事となってしまいましたが、題名の無い長編十四
第六話 を投下します。
241名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 22:58:51 ID:gqFXBpYW
俺は今までの人生で一番焦っていた。
 警告 警告 非常に危険な状況である。 
 このままでは咲良にこの惨状を見られてしまう。
 脳内では赤いランプとワーニングコール。システム・オールレッドだ。
 幸い、と言うべきか。綾は力尽きて眠っている。
 意を決して玄関先へ急ぐ。
 死ぬ覚悟は・・・できていない。
 歴戦の戦士ならまだしも人生経験の浅すぎる一介の高校生に死を覚悟するなどできるものか。
 しかしよく考えるまでもなく、これらは自分の責任である。
 ・・・俺のモットーは「責任は果たせ」だ。
 言い聞かせるように呟いた。
 「あ、やっと出てきた。」
 咲良の笑顔が恐い。
 「何してたの?」
 直球ストレート。そう来ましたか。
 「あぁ、親父が折角の休みだから家中の掃除やっとけとか言い出してさ。」
 嘘ではない。実際にメールが来た。・・・半月前に。
 「お義父さんって、海外に赴任してるんでしょ?」
 親父・・・・お義父さんだってさ。再来年くらいには孫ができるかもよ?
 「来月あたりに帰ってくるらしくてさ、掃除しとけっていわれたんだ。」
 「でも明日でもよかったでしょ?なんで今日掃除してたの?約束してたでしょ?」
 「・・・・金だよ・・・。」
 「え?」
 「うぅ・・・オマエは忘れっぽいから今日やっておけ。さもなくば仕送りを絶つ。・・とか言われて。」
 これも嘘ではない。ただし期限は今月中だったが。
 「でも、やって無くてもバレないでしょ?」
 ごまかしも限界かな・・・・
 言い訳を諦めようと思ったその時、どこからかペタペタとぎこちない足音が聞こえてきた。
 綾だ・・・。
 言い訳できなくなった緊迫感が一気に怖気へと変わる。
242名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 22:58:53 ID:LWzXozfZ
四円
243名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 22:59:28 ID:gqFXBpYW
脳内シュミレート・・・
 綾が来てしまう→咲良に問い詰められる→修羅場
 綾を止めに行く→咲良も付いてくる→修羅場
 咲良を気絶させる→返り討ち→(ある意味)修羅場
 
 ダメか。俺のコマンドはどれもこれも修羅場ルートだ・・・。
 「修二ぃだれか来たの?」
 ・・・・・来ちゃったよ。咲良もそうだけどお前が来るともっとマズい状況だよ。
 「修二君、なんで三国さんが居るの?」
 なんか予想通りすぎて清々しいね。
 「掃除を手伝ってもらっていたんだ。」
 「私は呼ばれてないのに?彼女なんだから頼ってよ。」
 どこか白々しさを感じる言葉。
 ヤベェ・・何かあったと勘づいてる
 「何言ってるの。修二は私の彼氏だよ?」
 「なっ!?」
 事の後ではどうしようもないとはいえ、ココでそんな発言しちゃいますか!?
 「・・・修二君?」
 名前を呼ばれた。それだけだ。
 それだけで冷や汗が滲む。
 足が痙攣したように微細振動を始め(要するに足ガクガク)、体中が思うように動かない。
 ギギギ・・と軋む音を立てるような錯覚とともに頭だけ咲良のほうを向く。
 「その・・ふざけた女と何かあったの?」
 笑っている。笑っているのに表情が暗い。
 「いや・・・えっと・・」
 「修二の(検閲により削除)・・・暖かかったよ♪」
 言いやがった。人がいかにできるだけ平和な解決法を取れるか思案していたのに。
 お前俺を殺したいのか?
 「・・・修二君・・嘘ですよね・・?」
 言うしか・・ないな。
244名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 23:00:14 ID:gqFXBpYW
「スマン・・咲良、別れよう。」
 逆レイプされ、責任を取らざるを得なくなり、恋人と別れることになる。
 少なくとも日本では有り得ないとされてきた話。当たり前に司法はそんなことにまで対応していない。
 有り得ない筈の事だから。
 相手にもよるが、男としては諦めれば済む話だ。もしくは逃げ出せばいい。
 当然、高校生ごときに逃げ切る手段は無く、抵抗は法に勝てない。
 だが女にとって、遊びでもない限り別れる理由としては残酷極まりないものである。
 だからこそ『俺にフラれた』という形にするべきだと思った。
 責任は可能な限り果たさないといけない。
 「フフッ・・アハハハハハハッなんでそんなこと言うの?・・修二君がそんなことするわけないじゃない。
 その女が修二君を襲ったんでしょ?・・・アハハ・・判ってるよ修二君。
 だから責任とらなきゃって思ってるんでしょ?
 平気だよ、そんな事どうでもいいよ。邪魔なのはその女でしょ?
 だから私が消してあげるよ!
 アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
 どこかで見ていたんじゃないかと思いたくなる程に図星を衝かれた。
 事実、俺は綾に襲われた。だが抵抗できなかった俺の責任だ。
 何をするのかは予想できた。
 咲良が恐らく凶器であろう何かを取り出す物音。
 止めに入ろうと咲良に向き直る。
 3メートル弱の距離で俺は動けなかった。
 そして頭の中で何かが壊れていった。
245名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 23:01:00 ID:gqFXBpYW
敗因を知るのは良いことである。
 敗因を知って次に活かす。スポーツの指導員は必ず言うだろう。
 俺が敗因を知るのに、3秒も要らなかった。
 咲良への理解が浅かったことと、物の行方を知らなかったことだ。
 銀色の兜金。白木に藍染めのひもで拵えた柄。鈍色の楕円を描く鍔と鍔止め。
 日差しを返す銀色の短い刀身。
 記憶に刻まれた『武器』の姿。
 過去の記憶が高速で流れてゆく。アレ?走馬灯?
 頭に靄のかかった痛みが走り、おもわず頭を抱える。
 しっかり者で時々大雑把な父親。
 優しくてよく泣きつく度に励ましてくれた母親。
 仲の良かった幼き日の少年たち。
 切っ先が触れて手に血のしずくが滲んだ少年。
 少年が池に落ちる。
 水面でもがく少年に必死で手を伸ばす。
 届かない。少年のパニックは増す一方で、差し伸べた枝も掴めずにいた。
 少年が動かなくなった頃に親が来た。
 人工呼吸、心肺蘇生法。その他諸々試したが、少年が息を吹き返すことはなかった。
 救急車も間に合わなかった。
 周りを囲んだ親たちの顔 顔 顔 顔 顔 顔 顔 顔 顔 顔 顔 顔 顔 顔 顔 顔 顔 顔。
 皺を増やし、笑うことの無くなった父親。
 日増しにやつれていき、微笑むこともできなくなった母親。
 そして頭の中で何かが壊れていった。
 「うっ・・うあっ・・・うあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁあああ
 あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁああ
 ぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!」 
 既に目の前は何も見えない。
 目が情報を拒絶していた。
 足がもつれてバランスを崩し、体が傾く。
 平静を失った意識に鋭い痛みと熱感が叩きつけられ、
 誰のとも判別つかない叫び声を聞きながら、意識が途切れた。
246名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 23:01:46 ID:gqFXBpYW
しまった。
 少し調子に乗ってふざけすぎた。
 修二が恨みがましい目でこっちを見てる。
 何を言いたいかは解ってるけどあえて反応しない。わざと挑発してるから。
 「フフッ・・アハハハハハハッなんでそんなこと言うの?・・修二君がそんなことするわけないじゃない。
 その女が修二君を襲ったんでしょ?・・・アハハ・・判ってるよ修二君。
 だから責任とらなきゃって思ってるんでしょ?
 平気だよ、そんな事どうでもいいよ。邪魔なのはその女でしょ?
 だから私が消してあげるよ!
 アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
 
 事実正論だけに理論的な反論が浮かばない。
 でも修二は受け入れてくれたから平気だ。
 若干、修二の顔が引きつっている。少し前までの私に向けていたのとそっくりな表情。
 もしかして私ってあんな感じだったの!?
 そんなに狂った顔してなかったよね!?
 向こうで雌ネコが何かを取り出しているが、修二の陰でよく見えない。
 修二が振り返るのに合わせて向こうを覗く。
 取り出されたものが見えると同時に突然固まった修二にぶつかった。
 修二の体硬いなぁ・・
 そんな暢気な事を考えられたのもつかの間。
 修二がうめき声を漏らし、頭を抱える。
 顔を見ると脂汗が玉しずくのように浮かび、目の焦点が定まっていない。
247名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 23:02:23 ID:gqFXBpYW
「ッ・・・・・修二!大丈夫!?落ち着いてっ!」
 小さい頃から修二が抱えていた悩み。
 過去のトラウマからくる刃物恐怖症。
 「うあっ・・・うあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁあああ
 あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!」
 ぐらり・・と修二の体が倒れかかり・・・
 私の脇腹から数ミリのところに銀の刃が通った。修二の胴を貫いて。
 途端にあふれ出す赤。紅。朱。
 熱を持った鮮血が飛沫のように散り、勢いを増す。
 「い・・いやぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 ワンテンポ遅れて雌ネコが悲鳴を上げた。
 ここでは救急車を呼ぶのが正解。そして事情聴取で雌ネコは捕まるだろう。
 だけど許せない。いや、許さない。
 修二に重症を負わせた雌ネコには考えられる限りの屈辱と苦痛を味わってもらう。
 アテはある。
 そろそろ貸しを返してもらうことにした。

 悪いネコにはお仕置k・・・躾が必要だよね。
 待ってて修二。絶対助けてあげるからね。
   
248名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 23:05:01 ID:gqFXBpYW
投下終了。
以前に「主人公視点のみにします」とか言いましたが、撤回します。
今更に他の視点が必要になってきました。いい加減ですみません。
まだ続ける気はあるので、伸びの悪い後輩を見るような気持ちで見届けてください。
249名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 23:18:44 ID:gqFXBpYW
「題名の無い長編十四」の作者です。
「他の人(スレッド閲覧者)に題名考えてもらう」・・・っていうのはナシですか?
変なこと言ってすみませんでした。忘れ去ってください。
もし、良いタイトルを考えていただけるなら、有り難いです。
250名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 23:41:23 ID:8dHL36Z2
ぽけ黒こないかなあ
251名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 23:44:16 ID:6i1iAxwY
GJ!
続き楽しみにしてますよ〜♪
題名を考えてもらっても別にいいと思うよ
謝ることじゃない
俺はセンスがないので他の人お願い
252名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 23:54:49 ID:QQEdeFjj
今から皆が素晴らしい題名考えてくれるから好きなのを選ぶと良いよ
253 ◆f7vqmWFAqQ :2010/05/18(火) 00:04:39 ID:oWu+uDr+
新作出来ました。長編予定。
稚拙な文章と構想ですがですがお付き合いしていただけると幸いです。
では投下します。
254風雪 1話 ◆f7vqmWFAqQ :2010/05/18(火) 00:05:27 ID:oWu+uDr+
は自分の顔が嫌いだった。男なのに女みたいな顔が原因でいつもからかわれたから。
僕は自分の手先の器用さを呪った。家庭科の授業の裁縫が上手く出来て女みたいと言われたから。かといってに乱雑にすると先生に怒られた。
僕は自分の父親を呪った。母親と僕を捨てて他に女を作って蒸発したから。
僕は自分の母親が嫌いだった。スナックで働いていた母親が原因でイジメられたから。
僕は自分の存在が嫌いになった。母親が中学の卒業式の前夜に自殺した。僕の中傷が母親を自殺に追いやったんだと思った。残ったのは結構な金額の遺産。
僕は自分が持つ母の遺産が嫌いになった。そんなの要らないから親孝行したいと思ったから。
僕は自分の親戚が嫌いになった。僕を引き取ると言った人間は皆、母が体を売って築いた遺産目当てだった。
僕は自分の運命を呪った。どうして…どうして…!
僕は自分の甘さと弱さを呪った。


目が覚める。僕の一日は午前3時から始まる。独り暮らしを始めて5ヶ月目に突入するが未だにこの時間に起きる事に馴れない。
布団の心地よさを惜しみながらもベットから起きてパジャマからジャージに着替えた。
僕一人だけが住み続けているワンルームマンションのドアを開けて鍵を閉める。
マンションの階段を降りて「YD新聞」と書かれた看板を掲げる新聞屋に入り「おはようございます。」と挨拶をする。
店長や同僚からの大きな「おはよう!」が鼓膜に刺さり眠気が覚める。目が覚めたら新聞を自転車に積む作業に入る。
チラッと見えた見出しには「菊池公太郎が出馬を表明!」と書かれていた。どうでもいいが縦書きなので公太郎がハム太郎に見えた。
自転車に跨ってペダルを漕ぐと車輪は力を加えられて悲鳴をあげながらも前に進み出す。
いつものコースを運転していつもの調子で新聞をポストに入れていく。
配達の途中で日が昇る。この瞬間が僕は好きだ。この景色を目に焼き付けるのが最近の僕の一番の楽しみなのだ。
この朝焼けを見て新聞配達にラストスパートを掛けた。
新聞を配り終える頃には太陽は完全に露出していた。時間はもうすぐ6時になるところ。
僕は自転車を駐輪してから「お疲れ様です」と声を掛けてその場を去った。
階段を上がって4階にある自宅へ戻る。歯を磨き顔を洗ってからテレビを点けてトーストを焼く。
テレビの占いによると今日の僕には素敵な出会いが有るそうだ。まぁ当たらないだろうが。
焼けたトーストにイチゴジャムを塗って齧り付く。噛む行為と齧る行為を繰り返して最後の一口を牛乳で流し込む。
食器を台所に置いて寝室に足を運び学校行きの服に着替えヌイグルミの頭を撫でてドアを開ける。
外に出たるとお隣に住んでいる超ラブラブ夫婦の相田洋介さんと彩子さんがつっ立っていた。
因みにどのくらいラブラブかと言うと夜の営みが激しすぎて隣の僕の部屋にまで2人の声が届くくらいだ。
このマンションの壁が薄いという訳じゃないが特に効果的な防音対策をしていないのも一つの原因だが。
だが近所迷惑(特に彩子さんの喘ぎ声による睡眠妨害。興奮してなかなか寝付けない時が有る)だからやめて欲しいのが本音だ。
このままだと小さな近所迷惑から町内の一部の住民が朝刊を見れないと騒ぐ事になりそうだし。しかし恥ずかしくて意見が出来無いのが現状だ。
今も「いってらっしゃいのキス」をしている最中だ。唇を離して洋介さんが出発しようとすると彩子さんが引き留める。
「もう一回!」
「あーいや、なんだ。彩子…その…最近胸がちょっと大きくなったな」
キスをせがまれて仕事場に行けなくなりそうな時に付く洋介さんのいつもの嘘だ。彩子さんが着ているエプロンには突起が一切ない。
「きゃー!ホントにー!?昨日おっぱい揉まれ過ぎて大きくなったのかな?洋介さんったらあんなに激しくして…もう!」
「ああ、ホントだ。0.002ミリくらいは大きくなったぞ。んじゃ行ってきます。雪斗君も行こうか。」雪斗と言うのは僕だ。名字は白井で白井雪斗。
「はい、いってらっしゃい!洋介さん!雪斗君も。」
「あ、行ってきます。」心から笑う方法なんてとっくの昔に忘れたから愛想笑いを添えて言葉を返す。
お隣の相田夫婦とはお裾分けを一方的に頂いたりしてる関係だ。というか僕の事情を知って気を遣っているようだ。
「大変ですね。」エレベーターの中で話を振る。
「まあね。」洋介さんは苦笑いをしながら返答する。が、満更でも無さそうな苦笑いだった。
255風雪 1話 ◆f7vqmWFAqQ :2010/05/18(火) 00:06:05 ID:oWu+uDr+
マンションを洋介さんと共に出る。と、次の瞬間洋介さんがこけた。ドジだよなぁ、この人。
鞄はチャックを締めていなかったらしく携帯電話やら書類やらが散乱した。
風に誘拐される前に落ちた書類を拾い上げる。双葉宮商事と書かれていた。
双葉宮…何処かで聞いた覚えがあって胸に突っかかりを覚える。
因みに双葉宮商事とは我が国でも5本の指に入るほどの大企業だ。この人凄いんだなぁと感心した。ドジだけど。
書類を手渡すと「ありがとう。じゃあ、僕はこっちだから。」と洋介さんが笑顔を振り撒きながら言う。
「ああ、はい。お仕事頑張って下さいね。」そう言って僕は踵を返して学校に向かった。


教室に着くと瓶にささった菊の花が置いてある席が目に映る。普通は死んだクラスメートの机かいじめられっ子に贈られるものだ。
クラスに名探偵が在籍してないから殺人事件は起きないし、盗んだバイクで走り出して事故って死んだ不良少年も居ない。
この学校の人間が1年間程で7人死んだ騒動が有ったがそれは4年前の話。死人の同級生は居ないからこの菊に追悼の効果はない。
つまりこれはいじめだ。と、名探偵ごっこをしてみた。
邪魔なので瓶を窓際の棚の上に移動させ机には自分の鞄を置く。
「おはよう、白井君。」右耳から侵入した声を左耳から出した。要するに無視。
声の主は加藤レラ。クラスの中心人物的女子だ。容姿は綺麗だし頭もいいから中心人物になるのは当然と言える。
まぁ、容姿と中身が比例するとは限らないし、頭とは使い様によっては他人に嫌がらせを提供する事が可能になるのだが。
加藤がこっちに歩み寄るが僕は気にせず座るために椅子を引く。
けれど僕のお尻は椅子に着地せず床に着地した。椅子は加藤の手の中に有った。要するに加藤に椅子を引かれて僕は尻もちを着いた。
クラスメートは笑う者も居れば目を逸らす者も居る。因みに加藤はと言うと不気味な笑顔を浮かべている。
そして尻もちを着いた僕に手を差し伸べる人間が居た。
「大丈夫〜?」明らかに僕を軽蔑の眼で見て手を差し伸べているのは広瀬浩二。男子の中心人物って奴だ。
「大丈夫。一人で立てる」
「遠慮すんなよ」広瀬は僕の発言ををパーフェクトに無視して手を握る。ただし必要以上の力を加えて。
苦痛で顔が歪みそうになりながら我慢して立ち上がった。と同時に広瀬の握力が緩んで手が外れる。
「ありがとうは?」嫌みを含んだ感謝の催促が聞こえた。
「ありがと…」嫌みも無いが感謝の気持ちも無い感謝の言葉で対抗する。
とりあえず反撃すればいいじゃないかと思われるだろうが憎悪の感情なんてとっくの昔に無くした。
反撃しても勝てないし、抵抗しなければ早く終わるからというのも理由だ。
加藤の手から解放された椅子に座ってから僕が虐められている原因を考えてみた。
思えば僕が加藤にテストの成績1位を譲らないからいじめが始まったらしい。そして広瀬やその他の男女達にもいじめの輪が広がった。
後は男のくせに女顔だから。身長が152cmしか無いチビだから。声が高いから。親が居ないから。
感情が抜け落ちて気持ち悪いから。反撃しないから。抵抗しないから。怖くないから。なにより人間だから。
…こんくらいかな。


チャイムが鳴り教室に教師が入って来たところで思考中断。
陰鬱な一日が今日も始まろうとしていた。けれど、耐えてみせるさ。
シャーペンを持ってノートを開く。さて、頑張りますか。
256名無しさん@ピンキー:2010/05/18(火) 00:06:14 ID:7Can8pcc
>>249
GJ!

だが、題名は自分自身で決めるものだと思う。
257風雪 1話 ◆f7vqmWFAqQ :2010/05/18(火) 00:07:04 ID:oWu+uDr+
地獄の様な学校が終わり自宅のベッドにダイブする。
「あー冷蔵庫何も無かった気がする。」一人暮らしになってから独り言が増えた気もする。
冷蔵庫にはやはり何も無かった。と言う訳で近くのスーパーに買い物に出かけようと思った。
Tシャツとジーパンに着替えて部屋を後にする。自転車は学校で何者かによりパンクさせられてから修理してないので徒歩で向かう。


徒歩10分でスーパー「エルヒガンテ村山」に到着。何を買おうかねー。と迷っているとカレールーの特売の文字が目に入る。
カレーはいいねぇ。リリンの生み出した文化の極みだよ。日持ちするし。
カレーで思い出したが米も切らしてた事を思い出す。10キロの米袋を持って帰らなきゃならなくなり気落ちする。
冷凍うどんも買って行くか考えたが重さを考慮した結果諦めた。
会計を済ませ米袋を両手に持ち右腕にカレールーを入れた袋をぶら下げる。
腕力の無い僕にとっては重い…。帰ったら自転車修理に出さないとな…。
そんな事を考えてると「そこの君。」と言う女の人の声が後ろから聞こえた。僕には関係ないだろうからスルー。
「いや、そこの米袋を苦しそうに運んでる君だよ。」いや、訂正。僕だった。
振り向いて見ると我が校の制服を着た女性が居た。
黒というより藍色の長い髪。顔はやや釣り目だが大きな瞳が2つ。薄いが色の良い唇。
首から下は胸部の自己主張が激しい。そしてなにより身長が高くて180cm程は有りそうだった。羨ましい。
全体的にクールビューティーを体で表した感じだった。
どこかで見た事あるな…この人。いや、うちの高校の制服着てるからそう思うのは当たり前なんだろうけど…。
いや、それだけじゃ無い。なんか違う。何か大事な事を思い出しそ……
「どうした?ぼーっとして?」いつの間にか目の前に居た彼女は屈んで僕の顔を覗きこんでいた。
「いや、なんでも。」目の前には彼女の顔があったのでドキッとした。
「それよりか弱そうな女の子なのにそんな米袋を持って…偉いな。親の手伝いか?」
「あの…一応男です」ついでに親も居ません。と心の中で付け足した。
「こんなに可愛いのが男な訳無いだろう。」その台詞…何回言われただろうか。
「あの…失礼します。」体を元の方向に回転させる。
「まぁ待て。その米袋、私が持ってあげよう。」彼女が僕の横に走って来て協力を申し出た。
「いや、悪いですよ。」善意での申し出を跳ね除ける。
「まぁ遠慮するな。」米袋をあっけなく強奪された。取り返そうと思ったが米泥棒さんとの身長の差は歴然で無理だから中止した。
しかも自分は両手でなんとか持ち上げられた米袋を彼女は片手で持ち上げているのを見て少しショックだった。
「それにしても君は愛らしいな。羨ましい。」歩きながら話掛けられる。
「勘弁して下さい。僕は男っぽくなりたいんです。」
「私と同じだな。私もよく男っぽいと言われている。そう思っているのに君にこんな事を言って…すまない。」頭を下げられた。
「いえ、別に良いんです。」10キロの米袋を片手で言われても空しさを覚えるだけだった。
「ところで、それ楊獄(やんごく)高校の制服ですよね?」因みに楊獄高校とは僕の通う学校だ。
「ほう、君も楊高生なのか?なら私の事は知ってるはずだが…君は逃げないんだな。私の姿を見た男はすぐに逃げだすぞ?」
「そうなんですか。もしかしていじめっ子ですか?」
「違う。私は風紀委員長で2年の双葉宮風子(ふたばのみやふうこ)だ。」あぁ、何か洋介さんの書類を見た時のモヤモヤ感と何処かで見た女性の謎は解けた気がする。
多分彼女を朝礼で見たんだ。その後「鬼の風紀委員長 双葉宮」とか噂されてた気がする。
けれど、それよりも重要な事を忘れている気がした。なんだ…思い出せ…。
「どうした?またぼーっとして。考え事か?」
隣の風子さんからの声で現実に引き戻される。
「ところで君はなんて名前だ?あと何処のクラスに居る?」
「白井雪斗。一年二組です。」簡単な自己紹介をする。
「なるほど。」僕の名前を聞くと彼女は心なしか嬉しそうに見えた。気の所為だろうけど。
258風雪 1話 ◆f7vqmWFAqQ :2010/05/18(火) 00:08:19 ID:oWu+uDr+
残る予定は就寝のみだ。時間は夜9時前。
ベッドに入って小さな猫のヌイグルミを抱きしめて小さく呟く。
「母さん…」決してヌイグルミを母親と錯覚した訳じゃない。してたら精神病院行けと言われかねんだろうが。
このヌイグルミは生前の母が「捨て猫を飼いたい」なんて駄々をこねた僕に買い与えた物だ。

懐かしき昔を回顧する。小学4年生の10月に段ボールに住む子猫を見つけた。
母さんに飼いたいと言ったが聞いて貰えなかった。
猫を飼えなかった理由は住んでいるマンションはペット禁止だし、なにより家計が圧迫されるからからだ。
その話題の猫はまだ小さくて白い色をした猫で目が愛くるしかった。
家では飼えないから猫に給食の残ったパンとかをあげて養っていた。そうやって人間じゃ無い物に縋っていた。
けれど、それすらも僕には許されなかった。
12月のある日、近所の子供…当時の僕より上級生に前足を掴まれて、もう一人に木の枝で叩かれて虐められていた。
その光景を見て僕は声を荒げて言った。
「やめろよ!」
「なにお前。」「なんで指図されなきゃいけねーんだよ。」叩く音と鳴き声が肥大化する。
「あーお前、4年の白井だろ?弟がいつもお前が女みたいでキモイって言ってんぜ!」
「なにこいつ!虐められっ子!?」
僕は目頭が熱くなった。足を踏み出して猫を束縛してる方の人間の顔を殴る。猫は地面に着地して逃げ去る。
「てめー!」殴られる。抵抗したが上級生2人には無意味だった。

傷と一緒に家に帰ると夜9時。いつもは僕が寝ている時間に帰ってくる母さんが居た。
怒られて抱きしめられて泣かれた。痛いほど抱きしめられた。横を見ると傷だらけの僕が鏡に映っていた。
何があったのか聞かれたけど何も言わなかった。虐められている事実を知られたく無かったから。
で、しばらくしてまた怒られた。
「今日はお前の誕生日なのに…全く。まあ、まず手を洗ってリビングに来なさい。」
指示通りに動いた。リビングに行くとケーキと猫のヌイグルミがテーブルにあった。
「誕生日プレゼント。猫は飼えないから代わりに猫のヌイグルミ。どう?」
「ありがとう…」ヌイグルミなんて欲しく無いが母さんの気持ちを酌んだ。
「明日になったらこのヌイグルミを白猫に見せて自慢してやる」とか考えながらケーキを食べた記憶がある。
なんだかんだで気に入ってたのだろう。けれどその子猫と会う事は二度と無かった。
そして僕のいじめもエスカレートしていった。理由は喧嘩だろう。

回顧終了。さて、寝よう。僕は意識の電源を落とした。
259風雪 1話 ◆f7vqmWFAqQ :2010/05/18(火) 00:09:43 ID:oWu+uDr+
結局風子さんは自宅まで着いてきた。実にありがたいのだがこのまま帰すと非常に悪い気分になるので
「お礼と言っちゃなんですがお茶でも飲んで行きます?」と言ってみたところ
「良いのか?その…なんだ…喉も乾いたしお言葉の甘えるとしよう。」という台詞が帰って来た。
ドアを開けて靴を脱いで並べてリビングに行く。
カレールーをテーブルに置いてコンロに鎮座するやかんを持ちあげて食器からコップを2つ出す。
「米はここに置いておくぞ。えっと…」そう言うなりいきなり難しい顔になる。
「どうしました?」
「君の事、なんて呼べば良いのか分からないんだ。」あぁなるほど。
「何でも良いですよ。」これから親しくなるつもりも無いしご自由に。
「じゃあ、あれだ。雪斗と呼んでも良いか?」…!
両親以外から雪斗と呼ばれるのは生まれて初めてだったので眩暈を伴った動揺をしてしまう。
コップを両方手放して重力に逆らうことも無く落下して砕け散る。ガラスの割れた音が鼓膜に響く。
視界が揺れる。「どうした?大丈夫か?」の声が聞こえて意識を律した。
「その…下の名前を呼び捨てにして呼ぶのは駄目か?」心配そうな感情を含んだ双眸で僕を見据えて彼女は言う。
「いえ…初めてでびっくりして…もう大丈夫です」荷物を床に置いて素手でガラスの破片を掻き集める。
「いつ…」安全よりスピードを優先したためか指から血が滲む。
紙で切った時よりも鋭い痛みが脳に伝わり全身が震える。
それを見た彼女は僕の元に駆け寄る。そして血の滲む僕の人差し指を…舐めた…。指に暖かい感覚が走る。
彼女は僕の人差し指から口から離して自身のポケットをまさぐる。絆創膏が握られていた。
「これで大丈夫。」大丈夫じゃねーよ。主に俺の心臓が
無言になる僕。彼女はその様子に見向きもせずやかんとコップを持ち上げる。
「どうした?まだ痛いか?」
「いえ…大丈夫っす。」
「そうか。無理はするなよ。雪斗」二度目はなんとも無かった。
テーブルの上に置かれた、再度食器棚から出したコップを置いて麦茶を注ぐ。注ぎ終わって片方のコップを客人に差し出す。
「ありがとう。」声の源泉を見ると微笑んでいた。
「いえ、こちらこそ米袋を運んでいただいて助かりました。」微笑み返そうとしたが上手く笑えないので断念。
向かい合うと彼女は眼をキョロキョロと見渡した。だがその視線はすぐに固定された。彼女の視線の先を追う。
ベッドの上にある小さくて可愛らしい猫のヌイグルミが視界に入った。主観的に見れば思い出の品だが彼女から見ればどうだろう。
男の部屋のベッドにあるから気持ち悪いと思ってるかも知れない。
「どうかしましたか?あのヌイグルミが気になりますか?あげませんよ。」何せ形見なのだから。
「そうか、残念だ。質問するがベッドの上に置いてあるという事は抱いて寝ているのか?」ギクッ。
「     」
「黙秘してるという事は…その通りという事でokという解釈でいいな?」正解者に10P。集めても特にメリットは無いが。
「…まぁそうですね。男のくせに気持ち悪いでしょ?」少し間を置いて正直に答えて自虐的な台詞を口にする。
彼女は僕の台詞を聞くと小さく笑っていた。僕はしかめ面になる。
「失敬。いや、君がパジャマを着てあのヌイグルミを抱いて寝てると想像すると可愛らしくてな。」
「今すぐ部分的な記憶喪失になって下さい。」
「嫌だ。」彼女はからかうように微笑んだ。
僕は頭をガリガリ掻いた。「この人苦手だなぁ。」なんて考えて。
260風雪 1話 ◆f7vqmWFAqQ :2010/05/18(火) 00:10:11 ID:oWu+uDr+
「じゃあ、また」
「あ、はい。」30分程で彼女は僕の部屋を後にした。
その後は簡潔に言うとカレーを作って食べて風呂に入り歯を磨き予習と復習をした。
残る予定は就寝のみだ。時間は夜9時前。
ベッドに入って小さな猫のヌイグルミを抱きしめて小さく呟く。
「母さん…」決してヌイグルミを母親と錯覚した訳じゃない。してたら精神病院行けと言われかねんだろうが。
このヌイグルミは生前の母が「捨て猫を飼いたい」なんて駄々をこねた僕に買い与えた物だ。

懐かしき昔を回顧する。小学4年生の10月に段ボールに住む子猫を見つけた。
母さんに飼いたいと言ったが聞いて貰えなかった。
猫を飼えなかった理由は住んでいるマンションはペット禁止だし、なにより家計が圧迫されるからからだ。
その話題の猫はまだ小さくて白い色をした猫で目が愛くるしかった。
家では飼えないから猫に給食の残ったパンとかをあげて養っていた。そうやって人間じゃ無い物に縋っていた。
けれど、それすらも僕には許されなかった。
12月のある日、近所の子供…当時の僕より上級生に前足を掴まれて、もう一人に木の枝で叩かれて虐められていた。
その光景を見て僕は声を荒げて言った。
「やめろよ!」
「なにお前。」「なんで指図されなきゃいけねーんだよ。」叩く音と鳴き声が肥大化する。
「あーお前、4年の白井だろ?弟がいつもお前が女みたいでキモイって言ってんぜ!」
「なにこいつ!虐められっ子!?」
僕は目頭が熱くなった。足を踏み出して猫を束縛してる方の人間の顔を殴る。猫は地面に着地して逃げ去る。
「てめー!」殴られる。抵抗したが上級生2人には無意味だった。

傷と一緒に家に帰ると夜9時。いつもは僕が寝ている時間に帰ってくる母さんが居た。
怒られて抱きしめられて泣かれた。痛いほど抱きしめられた。横を見ると傷だらけの僕が鏡に映っていた。
何があったのか聞かれたけど何も言わなかった。虐められている事実を知られたく無かったから。
で、しばらくしてまた怒られた。
「今日はお前の誕生日なのに…全く。まあ、まず手を洗ってリビングに来なさい。」
指示通りに動いた。リビングに行くとケーキと猫のヌイグルミがテーブルにあった。
「誕生日プレゼント。猫は飼えないから代わりに猫のヌイグルミ。どう?」
「ありがとう…」ヌイグルミなんて欲しく無いが母さんの気持ちを酌んだ。
「明日になったらこのヌイグルミを白猫に見せて自慢してやる」とか考えながらケーキを食べた記憶がある。
なんだかんだで気に入ってたのだろう。けれどその子猫と会う事は二度と無かった。
そして僕のいじめもエスカレートしていった。理由は喧嘩だろう。

回顧終了。さて、寝よう。僕は意識の電源を落とした。
261風雪 1話 ◆f7vqmWFAqQ :2010/05/18(火) 00:10:34 ID:oWu+uDr+
新しい朝が来た。僕からしたら希望もクソも無い。
新聞配達を完遂して朝食を掻き込む。身支度を整えて自宅を出る。
今朝も相田夫婦のイチャラブ劇場が開演してたが気分でスルーした。

学校の席に着くなり加藤と広瀬と不愉快な仲間達(取り巻きでも表現可)が僕の眼前に来た。
「お前さ、これわたしてくんね?」青い便箋を差し出される。
「何これ。」手に取り見ると裏に『2−3組 双葉宮風子様へ』と書いてる。
「ラブレターか。」そう言うと机を蹴られた。
「いいから渡してこいよ!!」顔を赤らめていた。分かりやすい奴…。
触らぬ神に祟り無し。早々に教室を後にした。
階段をあがり2−3に到着。ドアを開けようとすると
「何をしてるんだ。雪斗」後ろから聞きなれた声がした。風子先輩だ。
「あぁ、どうも。」後は他人が書いたラブレターを渡すだけ。緊張も一切なしで押し付ける。
「なんだこれは?果たし状か?言っておくが私は強いぞ?」
「まぁ…似たようなもんッすよ。」
「そうか。後で読んでおく。」屈託のない笑顔で言う。
「どうも。んじゃまた。」手を振ってその場を後にした。

そして時間は止まることなく放課後。いやー今日もいろいろ疲れた。
何がってそりゃ加藤と広瀬のサンドバックになってましたからねぇ、えぇ。
帰宅しようと荷物を詰めているといきなり大きな声が鼓膜を揺すった。
「白井雪斗はいるか!!」風子先輩だった。
「はい…。」正直に手を挙げる。つーか、ラブレターを渡した広瀬を呼ばない?普通
…はっ!まさかあの手紙には鬼の風紀委員長を怒らせる誹謗中傷と俺の名前が…。やられた。
なんて考えてると目の前に風子先輩が来た。声が出ない。
身長差約30cmの出す威圧感と彼女の決意を決めたような顔が僕を黙らせる。
「お前の想い…受け取った。」はい?あれは広瀬の手紙じゃ…!!…は?
思考が停止した。口が塞がれた。つまり皆の目の前でキスされたのだ。…えええええええええ!?
口が離れる。教室が沈黙に包まれる。沈黙を破ったのは広瀬。
「な!!!風子さん!!なにしてんすっか!?!?」怒りと当惑が混じった声で叫ぶ。
「そっちこそなんだ?恋人同士が口付けをして何が悪い。指導室常連の広瀬。」場所が悪い。てか今恋人同士って…
「な、今日こいつが出したラブレターは…」
「あぁ、差出人の名前が無いから雪斗と判断したが何か問題あるか?」差出人を書いて無かった様だ。あほだな。
「え、ああ、その…」どもる広瀬。風子先輩はそれをスルーして僕と再び向かい合う。
「じゃ、帰ろうか」ニコっと眩しい笑顔を浮かべて下校を誘う先輩。
「え、いや、あの…」当惑する俺。
「嫌か…?」涙目になる先輩。
周りの視線が痛いので「行きますか」と言って先輩の手を引いて教室を出た。

私は一部始終を見た。彼の横で彼が奪われる様を…。
私はそう思って悔しくなり下唇を噛んだ。血の味がした。
私からすれば後から割り込んで堂々と美味しい所をかっさらう奴は正義の味方なんかじゃ無くて邪魔ものでしかない。
いつだってそう。
後から生まれた妹は私よりも両親に可愛がられている。
小学時代は転校生に人気を奪われた。
中学時代は部活のレギュラーの椅子を取られた。
そして今は好きな人を取られた。あっさりと。だけど3度目は守りきって見せる。
そう決意した加藤レラは席を立って教室を後にした。
262風雪 1話 ◆f7vqmWFAqQ :2010/05/18(火) 00:13:20 ID:oWu+uDr+
>>258はミスです。ごめんなさい。投下終了

>>249
トラウマトライアングル…トラトラ!
すいません。吊ってきます
263名無しさん@ピンキー:2010/05/18(火) 00:15:39 ID:7Can8pcc
>>262
割り込みすんません。

GJ!
続きを楽しみにしています。
264名無しさん@ピンキー:2010/05/18(火) 00:25:12 ID:12sZzwn7
GJ



隣の夫婦の過去が気になるのは俺だけwww?
265名無しさん@ピンキー:2010/05/18(火) 00:44:38 ID:kI290mTH
加藤死ね。今のうちに死ね。

GJ
266名無しさん@ピンキー:2010/05/18(火) 01:47:46 ID:X+D6y42w
>>249 >>262
GJ!!
次回を楽しみに待ってます


>>264
まとめにあるよ

せんせいェ…
267名無しさん@ピンキー:2010/05/18(火) 02:31:55 ID:ImSV1PCT
>>262
GJだが…せめて「、」はしっかりと入れたほうがいいと思うよ
268名無しさん@ピンキー:2010/05/18(火) 02:35:23 ID:rUFFgF5v
GJ、続きに期待

>>264
>>81
269名無しさん@ピンキー:2010/05/18(火) 02:59:20 ID:w1Z95yZH
GJ!!雰囲気があってこれからの展開に期待>>267まあ初々しくていいじゃないか…
書き込むと自然と上手くなるし…
270名無しさん@ピンキー:2010/05/18(火) 05:31:43 ID:5JR/CsDb
いえーい
271名無しさん@ピンキー:2010/05/18(火) 07:09:38 ID:gqYlgaP1
3度目じゃなくて4度目じゃないの?
272名無しさん@ピンキー:2010/05/18(火) 10:31:46 ID:X7X/vCVN
続き期待!

最近はデカ女×ショタっぽい男が流行ってんだな?
色んなスレで見る。
273名無しさん@ピンキー:2010/05/18(火) 13:18:28 ID:RPrPWTZn
GJ
加藤さんは好きな相手に意地悪しちゃう小学生みたいな子?
274名無しさん@ピンキー:2010/05/18(火) 13:21:41 ID:12sZzwn7
デカ男の俺は負け組?
275名無しさん@ピンキー:2010/05/18(火) 14:22:58 ID:mr3jxjPP
>>274
チビな俺に謝れ
276名無しさん@ピンキー:2010/05/18(火) 14:49:30 ID:7fx5XWXw
GJ!
あ、なるほど。だから加藤さんの名前はレラなのか。
277名無しさん@ピンキー:2010/05/18(火) 15:36:30 ID:xrVSjX+n
カブレラ?
278名無しさん@ピンキー:2010/05/18(火) 16:47:11 ID:nYJvU4gP
>>266
何て題名なんだ?
279名無しさん@ピンキー:2010/05/18(火) 17:53:56 ID:RPqWulRx
>>278

確か敵意とか殺意とか尿意とか、そんな言葉が3つ並んだタイトル
280名無しさん@ピンキー:2010/05/18(火) 18:02:35 ID:EsL0ky1C
ヤンデレ幼馴染みとキスをするときに
大丈夫、恥ずかしかったけど(鏡で)練習たくさんしてきたから!
って言った夢を見た
281名無しさん@ピンキー:2010/05/18(火) 22:08:14 ID:RPrPWTZn
エロゲで主人公のキスが妙に上手くてその事を指摘してきた女キャラがいたな
282名無しさん@ピンキー:2010/05/18(火) 23:41:13 ID:nYJvU4gP
>>266
なんて題名???
283名無しさん@ピンキー:2010/05/18(火) 23:42:46 ID:nYJvU4gP
↑は俺だ…
同じ書き込み二回しちまった…すまん
284名無しさん@ピンキー:2010/05/18(火) 23:43:12 ID:kI290mTH
>>282
お前……
285名無しさん@ピンキー:2010/05/18(火) 23:57:12 ID:lEaE3Q8/
せめている 大 さいこう
286名無しさん@ピンキー:2010/05/18(火) 23:57:39 ID:lEaE3Q8/
最高 上
287名無しさん@ピンキー:2010/05/19(水) 01:09:48 ID:32E45jjG
ギリシャ神話のヤンデレ
「アルゴ探検隊の冒険」よりコルキスの巫女王女メディア
実父の前で弟を肉片のバラバラにする、泥棒猫は焼殺。極上のヤンデレ
神話の世界はヤンデレだらけ!?
288名無しさん@ピンキー:2010/05/19(水) 01:14:44 ID:HVWoDb7p
ギリシャ神話のヤンデレといえばやはりヘラ様だろう
289名無しさん@ピンキー:2010/05/19(水) 04:05:22 ID:3oz4+z/y
ヘラ様は良いキモ姉
290名無しさん@ピンキー:2010/05/19(水) 04:56:00 ID:8eZ50Ne5
てかゼウスが誠だからなぁ…
291名無しさん@ピンキー:2010/05/19(水) 05:14:44 ID:L6G+rAGr
うーむ
292名無しさん@ピンキー:2010/05/19(水) 06:40:47 ID:rSX1igO4
ギリシャ神話はビッチだらけだからなぁ…

俺はハデス好きだ
293名無しさん@ピンキー:2010/05/19(水) 12:48:07 ID:3oz4+z/y
>>292
> ギリシャ神話はビッチだらけだからなぁ…

一部除いて女神は割と潔癖だろう
294名無しさん@ピンキー:2010/05/19(水) 17:21:51 ID:sBAZREwI
北欧神話にもそういうのが、あったな。
295名無しさん@ピンキー:2010/05/19(水) 17:24:43 ID:rSX1igO4
結構な女神がゼウスとギシアンして子供作ってる
そして女神は近親相姦も結構してる。

もちろん孕んだ女神の中には夫がいるやつだっている。


というかやめそうぜ、ヤンデレと神話はあまり関係ないと思う
296名無しさん@ピンキー:2010/05/19(水) 17:37:10 ID:W7cwvFs9
神達の話ってあり?



もちろんヤンデレの
297名無しさん@ピンキー:2010/05/19(水) 20:49:16 ID:N2jhJ4cv
メディアと聞いて



キャスター、大好物です
298名無しさん@ピンキー:2010/05/19(水) 21:02:23 ID:P6/JPIka
ヤンデレこええ

けど羨まし
299名無しさん@ピンキー:2010/05/19(水) 22:28:22 ID:CCZm/mXe
ヤンデレェ……
男ェ……
泥棒猫ェ……
親友ェ……
300名無しさん@ピンキー:2010/05/19(水) 23:18:17 ID:crpUh3r7
探偵の人もう来ないのかな…
301サトリビト・パラレル:2010/05/19(水) 23:45:49 ID:ncgnUSHx
サトリビトを書いているものです。
以前話したパラレル物を投下するので、よろしくお願いします。
ちなみにドラクエの某作品を参考にしました。

注意
ヤンデレ成分低め
302サトリビト・パラレル:2010/05/19(水) 23:46:53 ID:ncgnUSHx
・・・え〜っと・・・あれ?
目が覚めるとそこは不思議の国・・・ではなく誰かの家だった。
そう、僕は今まで誰かの家の誰かのベッドで眠っていたらしい。そんなバカな。
「あ、お兄ちゃん起きたの!」
「ん?恭子ちゃん?」
そっか、ここは恭子ちゃんの家だったのか。でもなんで恭子ちゃんの家に泊ったんだろう?
「もうすぐ朝ごはんができるから!」
恭子ちゃんは意気揚々と朝ごはんの支度をしている。
「いつもありがとうね」
「ど、どういたしまして///」
僕の言葉が余程嬉しかったのか、顔を朱に染める恭子ちゃん。
やっぱりかわいいな〜・・・ん?『いつも』?
「あれ?恭子ちゃんはいつも僕に朝ごはんを作ってくれてたっけ?」
「何言ってるのお兄ちゃん?いつも私のごはんをおいし〜って言って食べてくれてるじゃない///」
こうやってかわいくもじもじしている姿を見せられると、この疑問が些細なことに思えてくる。
そうだ、恭子ちゃんが毎朝ごはんを作ってくれる。これに何の不満があるっていうんだ。
僕は考えるのをやめた。
「そうだ、今日は天気がいいから二人でピクニックにでも行こうか?」
「いいの!?やたーーーーーー!!!!」
本当にかわいいな〜・・・もはや何もかもどうでもいいな。
ベッドとキッチンが同じ部屋にあることも、そもそもこの家が1Kであることにも違和感を感じない。
「じゃあ今からお弁当も作るね!」
フフ・・・今日は楽しい一日になりそうだ。
だがそんな楽しいひと時も、悪魔の一言によって無に帰された。
「・・・何言ってるの慶太?これから魔物を倒しに行くんでしょ?」
陽菜が現れた。って、え?魔物?
「魔物って何?」
「・・・寝ぼけてるの?昨日『俺は魔王を倒す!!』って言ってたじゃない」
魔王?陽菜は何を言ってるんだ?もしかして頭でも打ったのか?
「・・・私ね、昨日新しい呪文を覚えたんだ〜!慶太に試してもいい?」
陽菜がこんなことを言うときは、決まって僕がひどい目に合う。しかも想像以上に。
「・・・今思い出しました。昨日確かにそう言いました」
しかたがない。ここは陽菜の遊びに付き合ってあげるか。
「え〜!?・・・ピクニックは?」
そんな悲しい目をしないで!ちゃんとその辺も考えてあるから!
「それじゃあ三人でその魔王とやらを倒しに行きますか!」
「恭子ちゃんも!?・・・危なくないかな?」
危ない?ま、まさか魔王ってギャングのボス的な人なのですか・・・?
「まかせて!私、これでもMPには自信があるから!」
MP?何の略だろう?MPMPMP・・・Murder Person!?殺人鬼!?殺人鬼には自信がある!?
「・・・MPがマジックポイントの事だって知ってるよね?」
「お兄ちゃんはMPの代わりにHPが高いからなるべく前線で頑張ってね!」
恭子ちゃんが恐ろしいことを堂々と言った。殺人鬼のヤンキー相手に前線で戦えと?
それにHPって・・・な、なんだか卑猥に聞こえ―――
「・・・いい加減にしなさいよ、慶太・・・本気で呪文を使うよ?」
なぜか魔王とか言う奴より陽菜さんの方が強そうな気がした。
303サトリビト・パラレル:2010/05/19(水) 23:47:23 ID:ncgnUSHx
三人で村を出て、ただっ広い草原(ってかここどこ!?こんな草原、見たことないよ!)を歩いていると何かが目の前に飛び出してきた。
青くてとんがっている生き物。なんだコイツ、気持ち悪いな・・・
「スライムだ!」
「早くやっつけてよ慶太!」
えっ!?僕がこんな得体も知れない生き物を倒せと!?動物保護団体から何か言われません!?
だが僕の心配は無用だった。
なぜならその生き物が突然体当たりをしてきたのだ。しかも半端ない威力で。
「うぼぉあっ!?いってーーーー!!」
あまりの痛さにのたうち回る。格好悪いのは分かっているけど、痛いものは痛い。
「・・・慶太に・・・何すんのよ・・・」
僕の情けない姿に腹が立ったのか、陽菜は黒いオーラを漂わせ始めた。
「・・・(ブツブツ)・・・死ね」
陽菜が意味不明の詠唱を唱え終わると、さっきまで暴れ回っていた生き物がピタリと動きを止めた。
一応男の僕がまだ痛みのするお腹をさすりながらそいつに近づいて行くと・・・なんと目を開けたまま絶命していた。
え?でもさっきまで元気に暴れていたはずじゃ・・・?
「どうだった?私の呪文の威力は?」
どうやら陽菜が呪文とやらを使い、一瞬でコイツの息の根を止めたらしい。ま・・・まさかこれをさっき僕に・・・?
「どうしたの?なんだか顔が青ざめてるよ?」
当然だ。むしろなぜ陽菜や恭子ちゃんが驚かないのか不思議だ。
「お兄ちゃん、お腹大丈夫?」
恭子ちゃんはスライム(?)の事よりも僕の事を心配してくれた。いや・・・僕よりあの生き物の方が大丈夫じゃないんだけど・・・
「あぁ、俺は大丈夫だけどアイツが・・・」
「スライムの分際でお兄ちゃんに攻撃したんだから、これくらいは当然の報いだよ!!」
まだ物足りないと言いたげだ。僕に対しての危害はそんなに重罪なのか?
その時、またもやあの生き物が飛び出してきた。
だがよく見るとさっきの奴よりは少し小さい。もしかしたらアイツの子供なのか?
そう思うと僕がやってないにしろ、親を殺してしまったという罪悪感が沸いてきた。
「君はさっきの奴の子供なのか?」
「キキー!!」
言っている事はまるでわからないが、怒っていることだけははっきりと感じ取れた。
やっぱりそうだったのか・・・
「ごめんな?謝って許してもらえるとは思わないけど、本当にごめん・・・」
そいつが僕を殺したいなら、そうさせるべきかもしれない。
だから今こうして僕に飛びかかってきているが、僕はあえてそれを受けることにした。
しかし、そいつの怒りの攻撃は僕に届くことはなかった。
「またお兄ちゃんに攻撃するつもり!?もう許さない!!・・・遺悪!!」
恭子ちゃんが叫ぶと同時に・・・そいつの体は木っ端みじんに砕け散った。
そいつの体液だろうか、辺り一面が青色に染まる。
その光景を見た僕は、体の震えを抑えるのに必死になった。これは怒りで震えているのではない。
・・・陽菜だけじゃなく・・・恭子ちゃんまでも・・・
それはこれまでに感じたことのない恐怖心から来るものだった。
「さっきから何突っ立ってるの?早く次の町に行こうよ♪」
「次はお兄ちゃんの戦闘がみたいな〜」
一言だけ。たった一言だけでいいから叫びたくなった。
お金を払うから僕をお家に帰してください、と。
304サトリビト・パラレル:2010/05/19(水) 23:48:15 ID:ncgnUSHx
僕たち三人は一日中歩きとおして、ある城下町にたどり着いた。
時間にして10時間以上も歩いたはずなのに、陽菜と恭子ちゃんが平気なのはなぜ?それに比べて僕の足がパンパンになってるのはなぜ?
「も〜慶太ったら・・・運動不足?」
10時間も歩くことができた僕に対してかける言葉がそれ?昼ごはんすら食べずに歩いたんだよ?
「私に任せて!回復呪文で癒してあげるから!」
あ、それは遠慮しときます。間違って僕の足が吹き飛んだら痛かったじゃ済まないからね。
「それより・・・何か食わないか?僕がお金を出すから」
そう言って財布から1000円札を出すと、二人は怪訝な顔をしてきた。
「・・・何それ?」
野口英夫さんに対して指を指す陽菜。
1000円じゃ足りないってのか!100円○ックでハンバーガーを9個買って、一人三個づつ食べればいいじゃないか!
「これお兄ちゃんが描いたの!?上手だね!」
・・・恭子ちゃん?天然キャラを作ってるんならそれはちょっとやりすぎだよ?
「とにかくご飯を食べるにしても、今私たちは50Gしかないから・・・宿代を除くと5Gしか残らないんだよね」
どこから出したのか、陽菜の手には金貨が乗っていた。
「ちょ、それどうしたの!?」
「どうしたのって・・・ここに来るまでに倒したスライムから奪ったに決まってるでしょ?」
恐ろしいことをさらりと言いのけた。つまりは殺して強奪したって事?
「どうします?もう一度草原でスライム狩りをしてお金を稼ぎます?」
限界だった。
「陽菜も恭子ちゃんもなんてこと言うのさ!生き物を殺してお金を奪う?そんなの許さないよ!」
「・・・何言ってるのお兄ちゃん?じゃあどうやってお金と経験値を得るの?」
「お金はちゃんと働いて稼ぐの!経験値は・・・って経験値?」
「だからこうして働いてるんじゃない。魔物を殺して」
「こ、殺すことはいけません!それ以外の方法で!」
「・・・それならカジノにでも行く?」
カジノだと!?なんで普通に働こうと思わないんだ!?
「あとは拾ったアイテムを売るとか?」
なんでそうよりリスクの高い方へと走るんだ!?売れる物がその辺に落ちているわけないだろ!それならみんなが持って行くぞ!
「でも結局経験値が入らないから魔物を倒さないと」
もういい。この二人を説得させるのは無理だ。
「・・・分かった。100歩譲って魔物(?)と戦う事には賛成する。でも殺すのはダメだ!」
「でも殺さないとお金も経験値も手に入らないよ?」
なんで殺すことにこだわるんだ?戦うだけでも訓練としては十分経験を積めるし、お金だって・・・不本意だが・・・脅して盗ればいいじゃないか。
「それに・・・ごく一部を除いてアイツらは絶対に逃げない。例え瀕死の傷を負ったとしても私たちを殺すまで逃げないんだよ?」
道端でたまたま出会ったら、どっちかが死ぬまで戦い続けるのが常識なのか?
しかし、よく考えてみると戦った奴らは絶対にあきらめたりしなかった。まるで最初から死を覚悟していたかのように。
食うか食われるか。どうやら眠っていた数時間の間に世界はめまぐるしく歪んでしまったようだ。
「・・・一つだけ僕のお願いを聞いて?・・・今度からは・・・あいつらを苦しまないように天国に行かせてあげて」
「お兄ちゃんがそう言うなら・・・」
「しょうがないな〜、それくらいなら聞いてあげるよ」
二人はしぶしぶ僕の意見に賛同してくれた。
305サトリビト・パラレル:2010/05/19(水) 23:48:49 ID:ncgnUSHx
晩飯代を稼ぐために魔物狩りをした僕たちが再び城下町に戻った時は、すでに真夜中になっていた。
そのころには全てのレストランが閉まっており、僕たちは仕方なくバニーガールのいる居酒屋で食事を取ることにした。
始めは陽菜と恭子ちゃんがこの店はいかがわしい、ぼったくられそう、などと言った理由で猛反対したが、このまま何も食べないわけにはいかなかったので、僕が強引に二人を引っ張って店の中に入った。その際ものすごく軽蔑された目で見られたことは言うまでもない。
店の中は想像通りの場所で、席に着くとすぐにきわどい格好をしたお姉さんが近寄ってきた。
「あら、ここは坊やたちが来る場所じゃないわよ?」
「すみません。でも今日一日何も食べてなくて・・・お金はこれだけ持ってきているんで、今回だけは見逃してくれませんか?」
僕がテーブルに金貨を出すと、お姉さんはうっとりとした目を向けてきた。
「いや〜ん・・・坊やを見てるとなんだか母性本能をくすぐられるわ〜♡」
お金を持っていると分かっただけでこの変わりよう。さすがプロだな。
「・・・注文いいですか?オバサン」
「恭子ちゃん、オバサンはひどいでしょ?どう見てもまだ30代の人に向かって」
なぜか突然、陽菜と恭子ちゃんのコラボ攻撃が始まった。案の定、お姉さんのこめかみがピクピクしている。
「・・・私が30代?」
「いや、お姉さんは20代前半に見えるよ!角度によっては10代にも!」
僕はなにを言っているんだろう。最近こんなことばっかり言ってる気がする。
「・・・慶太はここに何しに来たの?」
陽菜がものすごい笑顔でそう訊ねてきた。
・・・ぶっちゃけ、ご飯が7割、楽しむためが3割です・・・ハイ・・・
「恭子ちゃんはまだMP残ってる?」
「遺悪一回分なら残ってます。陽菜さんの方は?」
「私も挫鬼一回分かな」
「ならお互いちょうどいいですね♪」
なにがちょうどいいんだろう?
生き物を一瞬で絶命させる呪文と木っ端みじんにする呪文がそれぞれ一回ずつ。ま、まさか・・・ね・・・
「ところで・・・慶太は何をする目的でこの店に来たんだっけ?」
まさかではなかった。
「お、お姉さーーーん!!お寿司盛り合わせ3人前お願いしまーーースっっ!!!!内、二つは特上で!!」
あ〜お腹すいた!早くごはんが食べたいな!!
「ちょっと、何で特上のお寿司なんか注文したの!?今日の宿代がなくなるじゃない!!」
・・・やっと理解したよ。僕は何をしても怒られる運命にあったんだな。納得納得。
そのとき、奥で何人もの女性をはべらせていたムチムチ男がこっちに近付いてきた。うっわ!汗くさ!
「御困りかな?セニョリ〜タ」
おおよそセニョリータの意味を正確に理解してそうもない口調で男はそう言った。
「・・・全然困ってませんから」
「・・・お、お兄ちゃん、お寿司半分っこしようね///」
話しかけてきた男に対して陽菜はものすごく冷たく、恭子ちゃんに至っては空気扱いをしている。
ってか、よく見ると太郎君だった。
「太郎君じゃないか!太郎君もごはんを食べに?」
「・・・誰だね君は?こんなみすぼらしい奴なんて俺様は知らないな」
は?いきなり喧嘩売ってるんですか?それに俺様?
「それよりも・・・そこのお二人さん、こんなスライム野郎と一緒にいないで俺と旅に出ないかい?」
306サトリビト・パラレル:2010/05/19(水) 23:49:36 ID:ncgnUSHx
「「いや」」
最近の二人は息がぴったり合っている気がする。なんかいろんな意味で。
二人のあまりの拒絶の早さに太郎君が一瞬たじろいたが、さすが男性ホルモンの塊、男らしくキッパリと言い放った。
「ならそこのスライム野郎、二人の女性を賭けて俺と勝負しろ!!」
「女の子を勝負の景品にするなんて、俺がスライム野郎ならテメェは最低野郎だな!」
・・・どうだった陽菜?今の僕ってばものすごく決まってたよね?
「こっちが勝ったら何をくれるの?」
え?まさかのスルー?それにこの勝負受ける気なんですか?僕には勝つ自信がこれっぽちもないんですけど?
「1000Gくれてやる。俺の全財産だ」
すげぇ・・・スライム1000匹分だ・・・っは!?今僕は何を考えた!?
「それにもうひとつ。対決はチーム戦でもいい?」
「フフ・・・しょうがないな〜」
そんなこんなで勝負をすることになった。
「勝負はここから南に10km行ったところにある塔の最上階に眠るお宝を先に見つけたほうの勝ち、ってことでいいかな?」
最近はウォーキングブームなのか?なぜそんな遠いところまで?
「出発は明日の明朝6時ね」
「了解。それじゃあまた明日・・・チュ!」
投げキッスをして太郎君は帰って行った。
それに対して陽菜は口を手で拭った。ま、普通の反応だな。
それに対して恭子ちゃんは僕にお願いしてきた。「私、穢されちゃった・・・だからお兄ちゃんの・・・で清めて///?」。意外な反応だな。
「き、清めてって―――」
「・・・ねぇ、恭子ちゃん、私とちょっとお出かけしようか?」
陽菜が恭子ちゃんの肩をつかんだ。爪が食い込んでいるように見えるのは気のせいですか?
「お兄ちゃ〜ん、陽菜さんが怖いよ〜!!」
そう言って僕の背後にまわり抱きついてきた。
陽菜さんを見ると・・・確かに怖い。笑顔なのに怖い。ホワイ?
「ご注文のお寿司ですけ・・・ど・・・?」
「ほ、ほら〜二人ともお寿司が来たよ!うっわ〜おいしそうだな!早く食べようよ!」
ギスギスしたまま食べたお寿司の味は生涯忘れることはないだろう。

次の日の朝(AM6:00)僕たちは町の入り口にいた。
ちなみに昨日の晩は、なぜか24時間開放の教会があったのでそこで眠った。神様ごめんなさい。
「おや?レディたちの顔色が優れないようだね?昨日は眠れなかったのかな?」
馬車に乗った太郎君とその手下5人が現れた。・・・え?馬車?
「なんでお前馬車に乗ってるんだよ!?」
「誰も歩いて行くなんて言ってないだろ?まさか君たちは・・・あそこまで歩いていくつもりかね?」
ムカつく。なにより『かね?』の言い方がムカつく。
「ハーハッハッハ!もう勝負の行方が見えたね!」
そう言って太郎君ズは行ってしまった。ど、どうしよう・・・このままでは負けてしまう・・・
「大丈夫!私に任せて!」
私に任せてって・・・所詮徒歩と馬の足では勝ち目が・・・
「留雨裸!」
突然、僕の体が浮き上がった。
307サトリビト・パラレル:2010/05/19(水) 23:50:33 ID:ncgnUSHx
気がつくと禍々しい建物の目の前にいた。おや?ここは一体?
「気がついた?」
恭子ちゃんが心配そうにこちらを見ている。どうやら無事の様だ。
「あれ?陽菜は?」
ここにいるのは僕と恭子ちゃんだけ。陽菜は何処にも見当たらない。
そのことに対して恭子ちゃんが説明をしてくれた。まずここが目的の塔だという事。それとここには恭子ちゃんの瞬間移動呪文で来たこと。そしてその呪文は自分ともう一人しか連れてこれないという事。
「それならもう一度あの町に戻って、陽菜を連れてきてくれる?」
「・・・ごめんなさい。もうMPが足りなくて・・・」
どうやらあの呪文を使うとMPが大量に消費するらしい。
「そ、それじゃあ・・・僕たち二人でこの塔に?」
「えへへ・・・二人っきりだね///」
ギュッ、と僕の腕に抱きついてくる恭子ちゃん。その表情はまるで『作戦通り!』とでも言いたげだった。
だが恭子ちゃんの笑顔とは反対に、僕は恐怖で体が動かなくなってしまった。
恭子ちゃんは今MPがないので呪文は使えない。となると、もし魔物が現れても僕が何とかしなければいけない。
それに・・・もし大魔王様が瞬間移動呪文を使えなかったら・・・一人であの町に置いてけぼりを喰らったことになる。
「ちょっと聞きたいんだけど・・・陽菜はさっきの呪文使えるの?」
「使えないと思う。基本的には私が回復・補助系に対して陽菜さんは攻撃系だから」
大魔王様はさっきの呪文が使えない。しかも得意なのは攻撃系の呪文・・・僕は死んだかもな・・・
「それより、早く入ろう♪」
恭子ちゃんには怖くないのだろうか?この塔も、大魔王様も。
「はやくはやく〜♪」
そして引かれるがままに塔に入ってしまった。
中は想像通り薄暗く、そこらへんに人骨が落ちていた。
「や、やっぱり引き返えさない?なんかここ危ない雰囲気がするんだけど・・・」
「大丈夫だよ!薬草もいっぱい持ってきたから!」
そんな草が何の役に立つの!!
その言葉を寸前で飲み込むことができた。
「う、うわ〜、準備がいいね!」
「えらい!?私えらい!?」
「う、うん!偉いよ!恭子ちゃんはものすごく偉いよ!」
「お兄ちゃん、だ〜い好き!!」
もう腕が引きちぎれそうなくらいの力を感じるが、どうせ僕はここか、もしくは・・・あの城下町で殺されるんだ。。
そんな事を考えていると新たな魔物が現れた。
「気をつけて、お兄ちゃん!アイツは強敵だよ!」
石の体を持ち、身長も2〜3mはありそうな巨人。こ、こいつと戦えと・・・?
「ち、ちくしょ〜!!」
せめて恭子ちゃんを守るんだ!たとえ木の棒しかなくても、たとえ相手がめっちゃ強そうでも!
結果は火を見るより明らか。僕は相手のパンチ一発で体が宙を舞った。
「お兄ちゃん!?」
「よ・・・陽菜に・・・愛していたと・・・」
「保井美!」
恭子ちゃんの掛け声とともに傷が治っていく。
「・・・ん?あれ?なんで傷が―――」
「許さない・・・よくもお兄ちゃんを・・・遺悪!遺悪遺悪遺悪遺悪遺悪!!」
恭子ちゃんの連続木っ端みじん呪文で巨人はあとかたもなく吹き飛んだ。
MP・・・無くなったんじゃなかったっけ?
308サトリビト・パラレル:2010/05/19(水) 23:51:22 ID:ncgnUSHx
その後も巨人は沢山出てきたが、全部恭子ちゃんの呪文で片付いていった。その間僕はただ見ているだけだった。
「・・・申し訳ないです・・・」
「ううん、お兄ちゃんがいてくれるだけで私は十分だよ!」
そのまま順調(?)に進んでいき、ついにお宝のある最上階に着いた。
「やっと着いた・・・じゃあさっそくお宝を手に入れますか」
「待って!多分この先にはボスがいるから作戦を立てないと!」
あの巨人達のリーダーか・・・しっかりした作戦を立てないと危ないな。
でも僕には大したことはできないので、結局僕が囮になってその間に恭子ちゃんの呪文で攻撃するしかない。
作戦が決まったところでドアを開ける。
「すいませ〜ん・・・リーダーさんはおられますか?」
おそるおそる声を掛けると確かに誰かいた。
「二人とも遅かったじゃない♪」
なんとそこには瀕死の巨人と・・・満面の笑みを浮かべた陽菜がいた。
「ど、どうして陽菜さんがここに!?留雨裸は使えないはず・・・」
「甘いよ〜恭子ちゃん。この世にはキメラの翼っていう便利な道具があることを忘れていたのかな?」
キメラの翼?なんだそれは?
「そんなことより・・・ふたりとも楽しかったかな?私を置いてのデートは?」
陽菜が一歩一歩静かに近寄ってくる。そのたびにさっきまで元気だった恭子ちゃんの顔が青ざめていく。
「私の方が後に着いたのに先に最上階に来てしまうなんて・・・余程いちゃいちゃしながら上ってきたんでしょうね〜?」
陽菜の手に炎が現れた。しかもだんだんと大きくなっていく。
「お、落ち着け陽菜!!」
「落ち着いているよ?それより慶太が落ち着くべきじゃない?そんなに興奮して」
まさか味方によってやられるのか?と思った時、瀕死の巨人が最後の抵抗を見せた。
「ウゴアアァァァl!!」
立ち上がり、その大きな拳を陽菜に向けて振り下ろす。
「危ない陽菜っっーーー!!!」
「・・・うるさいな〜、眼羅巳」
陽菜の手を離れた炎はそのまま巨人を包み込んだ。
巨人は少しの間熱さでもがいていたが、やがて真黒になってこと切れた。石を焼くなんて・・・
「フフ・・・それじゃあさっきの続きをしよっか?」
僕が17年の人生にピリオドを打つ覚悟を決めたとき、奇跡が起こった。

トゥルルトゥル〜♪早川慶太と恭子ちゃんのレベルが上がった!

なんと僕と恭子ちゃんのレベルが上がった!・・・なんで?それにレベルって何?

早川慶太のHPが上がった!力が上がった!サトリ能力が上がった!

今まで忘れていたけど、今日は心の声を一度も聴いてなかったな・・・こうやって敵を倒せば聴こえるようになるのか?

恭子ちゃんのMPが上がった!賢さが上がった!かわいらしさが上がった!依存度が上がった!ヤンデレ度が上がった!

なぜか後半は上がってはいけないものが上がった気がする。
「やたー!!お兄ちゃんと一緒にレベルアップだー!!やっぱり私たちは相性がいいね!!」
そう言って僕の胸にすりすりしてくる恭子ちゃん。
かわいいな・・・あと何秒この笑顔を見れるかわからないけど、それまではこうして眺めていたい・・・
3秒後、激痛が走って意識を失った。
309サトリビト・パラレル:2010/05/19(水) 23:52:25 ID:ncgnUSHx
次に目が覚めたときは宿屋にいた。
「体の具合はどう?」
まぶしい笑顔の陽菜が目の前にいた。どうやら僕が起きるまで付き添っていてくれたらしい。
「もう大丈夫だよ。心配かけてごめんな?」
「ううん、慶太が無事でよかったよ!」
「・・・陽菜・・・」
「・・・慶太・・・」
なんだかいい雰囲気だ。まるで二人は恋人のような・・・
「騙されちゃダメ!しっかりしてよ、お兄ちゃん!」
部屋のドアを勢いよく開けて恭子ちゃんが入ってきた。
「お兄ちゃんをこんな目にあわせたのは陽菜さんなんだよ!」
「こんな目?」
「私が一日中保井美をかけ続けてようやく回復したんだから!」
衝撃の事実を告げられた。あの一瞬で傷が治った呪文を一日中かけられたらしい。
「・・・陽菜・・・本当なのか?」
「ごめんね?罵犠をかけようとしたら間違えて罵犠魔をかけちゃった〜」
・・・ま、まぁ、人間だから間違えはある。だからゆるしてあげるけど・・・今度からは呪文を使うのはやめてね?
「もっと真剣に謝って下さい!陽菜さんのせいでお兄ちゃんの体がぐちゃぐちゃになったんですから!」
ふざけんなよ、陽菜!僕が何したって言うのさ!ってか僕はよく生きてたな!
「な〜にその目は?もしかして慶太君は私に何か言いたいことでもあるのかな?」
「・・・次は間違えないでね?」
「慶太が『間違え』なければね?」
もう間違えないよ。大魔王・陽菜様はこの世で最強。これでいいんですよね?
「・・・それにしても恭子ちゃんはかわいいね?慶太もそう思うでしょ?」
いきなり何を言い出すんだ?そんなのもちろん、
「あぁ、俺の天使だからな!」
「け、慶太さん///」
「慶太は勇者って感じだね!」
陽菜が僕の事を勇者って・・・もしかして僕に気があるのかな?
「そ、そうかな〜///」
「絶対そうだよ!」
やっべ・・・陽菜さんは俺にマジぼれしてるな?もしかして呪文を使ったのも恭子ちゃんとのことを嫉妬したのかな?
「陽菜がそう言ってくれるなんて嬉しいな!」
「どういたしまして〜・・・ちなみに私は?」
ん?陽菜?陽菜はもちろん、
「大魔王様さ!!」
言ってから気付いた。今までの会話の真の目的を。
「ふ〜ん・・・恭子ちゃんは天使で、私は大魔王っか・・・ふ〜ん・・・よ〜く分かったよ・・・」
あ〜あ、せっかく回復したばっかりだってのに。
「ごめんね恭子ちゃん。疲れてるのに悪いんだけど、また例の呪文お願いしてもいいかな?」
これが僕の辞世の句となった。
310サトリビト・パラレル:2010/05/19(水) 23:53:10 ID:ncgnUSHx
「よ・・・よし・・・次の町へ・・・行こうか・・・」
あれから二日間生死の狭間を彷徨った僕は、立ってるのがやっとの状態だった。
にもかかわらず僕たちは次の町へと向かう羽目になっている。
実はあの塔に眠っていた財宝を陽菜が城へ持っていき(僕が眠っている間に)、王様に献上したのが発端だった。

「よくやったぞ!褒美に我が城に纏わる伝説の剣を授けよう!・・・それと頼みがあるんじゃが、ここから西に50km行ったところに大きな港町があるんじゃが、そこが魔物に襲われているそうなのじゃ。そこでこれからその町に向かって、そいつらを倒してきては来れんかの?」
「仰せのままに」

・・・なんでそんな大事なこと勝手に決めるかな?
「せめて家に電話させてくれ」
家を出てもう丸3日。さすがに親が心配しているころだろう。そして・・・姉ちゃんが暴れ回っているころだろう。
「電話って何?」
言われてみれば3日前から電線やアンテナを見たことがない。どうやらこの世界は相当文明が退化しているらしい。
「・・・それじゃあ恭子ちゃん、瞬間移動呪文を使って僕を家まで送ってくれないかな?」
「何か取りに行くの?」
「だってもう三日も帰ってないんだよ?二人の家族も心配しているころじゃないの?」
二人は僕の言葉に顔をしかめる。
「・・・私の両親はもうこの世にいないの知ってるでしょ?」
「私の家族もお兄ちゃんだけだよ?お父さんもお母さんもいないでしょ?」
あ・・・嫌なこと聞いてごめん・・・って何!?いつのまに家族が消えてしまったんだ!?
「そんなことより早く行くよ」
僕にとっては次の町よりも大事なことなんですけど!
「次の町まで50kmですか・・・歩いて12時間ってところですね」
・・・それにしても本当にみんな歩くの大好きだな。しかも12時間で50kmってことはまた休憩なしですか・・・
「お困りかな、諸君?」
「そうだ!恭子ちゃんの瞬間移動呪文で行けばすぐなんじゃないの?」
「ごめんなさい・・・留雨裸は私の行ったことのある場所にしか行くことができなくて・・・」
そうするとあの禍々しい塔には以前行ったことがあるってことなのか!?
「俺様の馬車を使えば2時間で行けるんだけどな〜」
「慶太!あんたは男でしょ!それくらいの距離歩きなさいよ!」
あなたが言いますか!?一体誰のせいでこんなフラフラになったと思―――いえ、僕のせいですよね。ごめんなさい。だから火の玉を出すのはやめてください。
「無視すんなや!!」
そこで僕たち一行はようやく太郎君の存在に気がついた。まだなんか用があるの?
「俺様が仲間になってやってもいいぜ?ま、条件があるけどな!」
陽菜はチラッと馬車を一瞥して、
「本当?それならあっちの人気のないところでお話しよっか?」
そう言って二人は建物の奥へと消えていった。
だ、大丈夫かな・・・・もし襲われたりしたら・・・いや、その時は太郎君が死ぬだけだな。
しばらくして二人は戻ってきた。
ニコニコ顔の陽菜に、青ざめている太郎君。
「今日から太郎君が仲間になったよ!」
「み、皆様・・・僕みたいなクズを仲間にしていただきありがとうございました」
一体何があったのだろうか、太郎君の態度がさっきまでと180°変わっていた。
「ま、いっか」
なにはともあれ、僕たちは次の町まで馬車に乗ることができた。
311サトリビト・パラレル:2010/05/19(水) 23:59:18 ID:ncgnUSHx
以上投下終了です。
この話は勢いだけで書いたものなので、今後いろいろな意味でどうなるのか分かりません。あしからず。
あとひとつ伺いたいのですが、作者名ってIDのことですか?なにぶん素人なもので。。。

最後に、読んでくださった方、ありがとうございました。
312名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 00:17:53 ID:7s8evZuf
Gjです。
作者名については、
名前欄に半角で#を入れ、好きな文字列を入力することで『作品名◆yandere』こんな感じになります。
◆yandereこれが作者名になります。
ちなみに好きな文字列がそのまま反映されるわけではないです。
試しにテストスレで書きこむといいですよ。
説明下手なんでわかりにくかったらごめんなさい。
313名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 00:18:25 ID:e32q+HHW
投下ご苦労様です。
ター○アとバー○ラねwww相変わらず文章のクオリティ高いですナァ〜GJでした。
…文章を投下する時の個別記号だけど…
…別個に自分の作者名付けている
職人さんもいるが、そこはお好きなように…

314名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 00:20:28 ID:IAacLzwP
GJ!


チャッチャッラララ〜ン
>>312のレベルが上がった。

攻撃力が500上がった。

守備力が500上がった。

素早さが500上がった。

魔力が500上がった。

運が終わった。

死亡フラグが建った。





よし、大魔王(陽奈)に挑戦するか

315名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 00:22:05 ID:IAacLzwP
>>314
316名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 00:22:14 ID:PFsVPaKG
GJGJ〜

>>うぼぉあっ!?
なんとなく把握
317名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 01:09:11 ID:2wEEcBdP
>>311
もう説明されてるんでアレだが「2ch トリップ」あたりでググればもっと幸せになれるんじゃないかな多分
318名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 02:03:20 ID:aME1rJLy
>>296
ssを書くって意味ならアリじゃないかな
319名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 08:10:42 ID:g/hRTRyT
なし
320名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 12:32:47 ID:OaGol92Y
メイン
321名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 18:24:16 ID:puybxKod
ハードボイルドなおっさんがヤンデレ少女またはヤンデレ幼女になんとかされる話が読みたい
322名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 19:29:27 ID:XJ/aH5+N
投下します。

323名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 19:35:04 ID:OWtMfew4
じゃあ私も投下します。
324キモオタと彼女 3話:2010/05/20(木) 19:35:17 ID:XJ/aH5+N
今日は、日曜日・・・。
会社からの束縛もない自由な日・・・。
テンション上がってきたでござる。
ウヒフフフウッフ。
オゥフ、拙者としたことが取り乱してしまったでござる。

さぁてと、出掛けるでござるか。


ふぅ、秋葉に着いたでござる。
とりあえず、1週間分の秀吉の新作同人誌(保存用、鑑賞用、実用、消費用)を買いに行くでござる。
秀吉はめんこいでござるからなぁ。
・・・拙者もう辛抱たまらんでござる!!
早く、店に行かなければ!
ヌゥフ。

ふぅ、良かった。
ちょうど、四冊残っていたでござる。
拙者と同じく戦利品を手に入れた紳士の方々は、ご満悦の様子…。
ンフ、近くのメイド喫茶で拝見するでござる。 紳士御用達の書店を出たいでござるが…。
何故か、入り口に人が集まっているでござるな。
一体、何でござろう?
しかし、拙者が店の入り口に行くと走って行く音が聞こえ、外に出た時は誰もいなく人だかりも消えていった。
…? 一体何でござったのか。
詳細は存じ挙げぬが、今の拙者には関係ないでござるな!
早く、ひっでっよしーにメイドっさんーでござるー。




うぅ、何回来ても慣れないなぁ。
この秋葉原って所…。
私の何が珍しいのか、 通行人の人達が、驚いたような顔で私を見てくる。
この視線には毎回耐えれなかった。
そのおかげで、彼を尾行するたびに途中で見失っちゃうんだよなぁ。
でも、その日彼を一目見たらその日はとても満たされたような気持ちになる。
でも、今日の目標は彼と仲良くなること!
それが、第一目標だ。
なので、今日はいつもより100メートルの距離を保ち、彼の様子を見てみよう。
あ、やっぱりいつもの本屋さんに入っていった。
彼の好きなジャンルはいわゆる萌系っていうのかな。
可愛い女の子達が出てくるジャンルが多かった。
私は、彼の家に入った事が無く(当たり前だが)彼の趣味を知る事が出来たのは、この尾行の賜物といってもいいだろう。
一度、買って自宅で見て見たが…。
破り捨ててしまった。

彼を誘惑するな彼に色目を使うな私の彼を奪うな私の大切な人を汚すな……



気付いた時には、その本は燃やしていた。
彼は、こういった女の子が好きなのだろうか…。
325キモオタと彼女 3話:2010/05/20(木) 19:39:02 ID:XJ/aH5+N
なら、わ、私なんて彼に無理な仕事を押し付けたり、残業をさせ毎日彼の事を怒っている…。
私なんて嫌われて当然なのかな?

そんなの、嫌…。
彼にだけは、嫌われたくない。

絶対嫌絶対嫌絶対嫌絶対嫌絶対嫌絶対嫌絶対嫌絶対嫌絶対嫌絶対嫌絶対嫌絶対嫌絶対嫌絶対嫌絶対嫌絶対嫌絶対嫌絶対嫌……。

頭が痛い…。
やはり、彼が私以外の女を好きになっているのは、辛いし苦しい。
どうすれば、彼は私に振り向いてくれるのだろうか。
とにかく、今は尾行あるのみ!


彼はいつも同じ店に入って現実には、いない女の子を求めている…。
そんな奴らより私を見てよ…。
私だけを見つめて欲しい…。
はぁ…。
…ボソボソ。
? 男の人達が私の方を見て囁いている。
一体何だろう?
そう思っているうちに男の集団が私の所にやってきた。
ちょ、ちょっと入り口にこんな大勢で集まらないでよ。
彼に気付かれちゃうでしょ。
「あ、あ、あのですね…。」
「何でしょうか?」
彼以外の男の人に話掛けられるのは、あいかわず気分が悪くなる。
「しゃ、し、写真をと、とらせ…、とらせて貰ってもよろしいでしょうか?」
「嫌です。」

さてと、彼にどうやって声をかけようか…。
「ま、ま待ってくださぃ。 貴女ほど寧々さん似て…ブッホッ!!」
あんまり、五月蝿いもんだからハイキックをかましてやった。
周りにいた男達が騒ぎ立てると、店内にいた彼も外の異変に気付いたのか、出口にやってくるじゃないの。
あぁ、もう!
彼の姿を3時間23分42秒しか見つめていないじゃないの!
はぁ、後で彼を見つけるしかなぁ。
…また、後で会いましょうね…。



数十分後…。
「お待たせ致しました、ご主人様。 お紅茶でございます。」
「オッフ、あああありがとうございますで御座る。」
拙者が今来ているメイドカフェ「クロスウェア」は、拙者の行き着けでござる。
特に、拙者のお勧めのメイドさん、藍那(あいな)ちゃんは拙者の理想とも言える方でござる。
身長は、小柄で目はパッチリしていて鼻筋は綺麗で唇は少し厚く、なかなかそそられるものがあるでござる。
声も、拙者の大好きな声優の方に似ていて声を聞くだけで癒やされでござる。 グゥフフ
326キモオタと彼女 3話:2010/05/20(木) 19:42:58 ID:XJ/aH5+N
それに、彼女の良いところは顔だけではなく、性格がとてもいいという事でござる。
最近のメイドさん達は、イケメンなオタクが増えてきた事によって、そちらの方を優先するようになってきたでござる。 拙者みたいなのは蔑ろにされがちになってきているでござる。
しかし、彼女は分け隔てなく拙者みたいな者にも、他のメイドさんみたくいい加減な接客ではなく、丁寧で上品な接客をしてくれるでござる。
正に、メイドさんの鏡とも言えるような方でござる。
「? どうかされました?」
オゥフ、如何でござるな。
目線がずっと彼女の方に向いていてしまったでござる。
彼女も、表面には出さないだけで内心は嫌がっているかもしれないでござるな。
よし、女の人と二言も話せて満足でござる。
さて、秀吉の同人誌の続きでも読むでござる。
「…あ、あの、お客様がご迷惑でなければ、お話しませんか?」
「い、いや、そんな毎回毎回自分の所にい、いつもらのも、わ、悪いです。」
ちなみにこの会話は、拙者がお店に来る度に話す内容でござる。
メイドカフェに来ておきながら、メイドさんと話さないというのは矛盾していると思うでござるが、拙者は可愛い子を見れれば充分でござるからなぁ。
「せ、…じ、自分にわ、わざわざ気を使わなくてもいいですよ?
ま、漫画もありますから…。」
上手く、言葉に出来ないでござるなぁ。
やはり、女の人とは恥ずかしいでござる。
「そ、そうですか…。」
先ほどの元気は無くなり、一気に彼女は落ち込んでしまったでござる。 や、やはり彼女の悲しんでいる顔をみるのは辛いでござる。
彼女には、悲しんでは欲しくないので結局会話をする。
これも、いつも通りでござる。
「じ、じゃあ迷惑でなければ、今季のアニメについてでも話しませんか?」
それを聞いた彼女は、また打って変わって元気になったでござる。
「ほ、本当ですか。
私、ご主人様とお話出来て嬉しいです。」
…すごく、恥ずかしいでござるが、彼女の喜ぶ顔をみていると拙者も嬉しくなってくるでござる。
そして、彼女と3時間近く、アニメの事について話していたでござる。
帰り際にも、彼女は悲しそうな顔をしていたでござる。
327キモオタと彼女 3話:2010/05/20(木) 19:44:03 ID:XJ/aH5+N
本当にメイドの鏡みたいだなと思いつつ、帰ろうとしたら、これもいつも通りの彼女の言葉。
「…写真、一緒に撮りませんか?」
帰り際には、拙者も開き直ってすぐにOKを出し、千円を払って写真を撮ったでござる。
ち、ち、近いでござる!!
彼女の匂いやら、右腕に伝わる彼女の感触…。 これだけは、耐えられないでござる。
写真を撮り終わると、挨拶もそこそこに急いで出口に早歩きで帰った。 後ろからは、藍那ちゃんの「また、来て下さいね〜。……。」と聞こえたでござる。
後の言葉は、聞こえなかったでござるが、まぁ気にしても仕方ないでござるな。
さてと、まだ時間あるでござるし、どうするでござるか…。



A まだ、秋葉に残る。
B 家に残る。
328名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 19:47:34 ID:XJ/aH5+N
投下終わります

選択肢は、Aが朝比奈さん、Bが藍那です。

お好きなようにお選びなさって下さいね。

後、山姫と海姫の続きを期待しております

見て下さった方は、お疲れ様です。
329名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 20:30:29 ID:UPf6oZFp
新キャラキター!!
Bで




やっぱ両方でお願いします
330名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 20:31:55 ID:49dyN/t/
GJ
秀吉・・・バカテスのは確かに反則物ですね。

選択肢はA、いや、両方に決まっているじゃないですか。
331名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 20:32:28 ID:IAacLzwP
GJ



ここはもっと焦らしてほしい!!!


Aで!
332名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 20:35:06 ID:6mWvpL2B
投下乙、されどBは「家に帰る」ではござらんか?

どちらを先にするかって話ならBでしょうか
まさか、どっちかしか投下しないとかそんなことは……
333名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 20:45:27 ID:XJ/aH5+N
指摘有り難いでござる。

だが、しかし だが!!しかし!!


ここは、あえて選択肢は一つでお願い致す


334名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 21:12:28 ID:PSUlsT2Z
>>328

GJっす!

やはり初志貫徹でAをお願いしたいでござる
335名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 21:24:11 ID:dcsZcKCY
GJ!
新キャラ待っていたでござる
もちろんBで
336名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 21:44:41 ID:pYbtcsuU
あえて二人とも出てこないCで
337名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 23:00:28 ID:HbTA4MOL
>>336
そういうのいいから、つまんない
338名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 23:25:57 ID:rOgwpEai
GJ

教育実習始まる前に続き見たいです
339名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 23:32:51 ID:aME1rJLy
割れてるなぁ…Aで。

340名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 23:41:21 ID:PFsVPaKG
最終的には両方書いてほしいけれどとりあえずAで。
341名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 23:43:11 ID:CEkcRk7q
GJ。新キャラktkr

俺はAB関係なしで、藍那さんが彼を好きになった経緯がしりたいです。
342名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 23:48:45 ID:CEkcRk7q
>>341
すいません。さげるの忘れていました。
343名無しさん@ピンキー:2010/05/21(金) 00:26:13 ID:rqth5HDC
GJキモオタきたこれで生きていける
俺はAで
344名無しさん@ピンキー:2010/05/21(金) 02:19:56 ID:iZtXIAJO
山姫と海姫続き気になるのぅ
345名無しさん@ピンキー:2010/05/21(金) 02:53:45 ID:hKg0zPai
Aかな…、初期ヒロインとくっつくのが見てみたいかも。
346名無しさん@ピンキー:2010/05/21(金) 06:28:27 ID:3xGATdtv
GJ
Bで
347名無しさん@ピンキー:2010/05/21(金) 07:15:02 ID:1WRgr0nE
やった!キモオタ来た!

>>341と同じく経緯は知りたいです
348名無しさん@ピンキー:2010/05/21(金) 08:05:56 ID:qppnYcpt
Bの話が読みたいです
349名無しさん@ピンキー:2010/05/21(金) 09:54:07 ID:wtoUa49/
他人任せに選択肢なんて作るなよw
350名無しさん@ピンキー:2010/05/21(金) 10:12:36 ID:JBQhwMKl
>>349多分次話へのリサーチのつもりなんだろ…どちらを書くのか反響次第みたいな…
351名無しさん@ピンキー:2010/05/21(金) 10:25:40 ID:XQjsfY2U
初志は貫徹してほしいな。
352名無しさん@ピンキー:2010/05/21(金) 11:13:41 ID:3wqYQPRK
GJ! 両方読みたいけどその意見は却下なんだよな…

>秀吉
具体的なキャラクター名を出すなw
353名無しさん@ピンキー:2010/05/21(金) 15:57:10 ID:9ex1V2ir
バッドエンドは嫌われる?
354名無しさん@ピンキー:2010/05/21(金) 17:10:23 ID:Z9ZXLBdN
そろそろ、次の新作のプロットでも考えるか
355名無しさん@ピンキー:2010/05/21(金) 20:58:18 ID:u+bwhZ4W
GJ!Aでお願いします!!
356雪田:2010/05/21(金) 22:02:04 ID:rlnY5FKx
やばい!キモオタの主人公が脳内だとかわいい男の娘なんだがwww
357名無しさん@ピンキー:2010/05/21(金) 22:49:11 ID:zi6L6inN
>>256
日本とは美意識が違う平行世界に脳内変換だ
358名無しさん@ピンキー:2010/05/21(金) 23:31:58 ID:FE69NEWx
オゥフww随分と暴力的な寧々さんでござるな
そのような方に足蹴にされるとは拙者の中に潜むダークマターを隠しきれませんぞブヒヒ


AでもBでもいい。続きが読みたいです
359名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 00:47:53 ID:ikHIuU+F
>>356
仮にそうだとしても脳内で「拙者」とか「グッフゥ」
とか言ってるやつはちょっと嫌だw
360名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 01:28:33 ID:25FaEdzJ
ヤンデレ家族かぽけ黒こないかなあ
361名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 01:53:01 ID:+fexMVKg
362名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 06:20:46 ID:JWWF5iVp
ヤンデレ家族まだ?
363名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 06:52:26 ID:uDBOfyxb
まだ
364 ◆ltPhPWT046 :2010/05/22(土) 07:51:37 ID:2TgNZZji
投下します。
稚拙ですがよろしくお願いします。
365不審物がやってきて:2010/05/22(土) 07:52:12 ID:2TgNZZji
ピンポーン

特別な用事もなくいつものようにひたすら惰眠をむさぼっていた土曜日の朝。
チャイムの音がその尊く、貴重な行為を遮った。
しかし、ここで敗れるわけにはいかない。
Time is money 昔の人はいいこと言った。
まさにこの瞬間は値千金、宗教の勧誘や怪しい訪問販売などにかまっている暇はない。

ピンポーン

しかし、楽園の侵略者は一向に帰ろうとしない。
そういえば今日は両親が朝早くから歌舞伎を見に行くとか何とかで出かけていたのだ。
つまり、あまりにしつこかった場合は自分で対処しなくてはいけないというとてつもなく面倒な事態になるのだ。

ドンドン

今度は直接ドアを叩いてきた。
ええい、己は借金取りか何かなのかと問い詰めたい。
すると表からやけに凛とした女性の声が聞こえてきた。

「平賀さーん、お届けものです」

……そうか、宅配便か。
どうしてこんなにもしつこいのかやっと納得がいった。
さすがに善良な配達業者の人にこれ以上迷惑をかけるわけにはいかない。
俺はもぞもぞと布団から這い出た。さらば布団という名の楽園。

ピンポーン

俺が楽園との決別を惜しんでいるときに早く来いと催促するようにチャイムが鳴る。
いやね、実際催促してるんでしょうけどね。
今、行きますと答えて急いで玄関を開ける。
とそこには緑色の作業着を着て、同じく緑の帽子をかぶった女性が立っていた。
身長は俺よりも少し下なぐらい。
顔と髪は帽子で見えないが素晴らしきは作業着に押し込まれているのにそれでも自己主張を続ける胸である。
うん、でかい。
しかし、残念なことにナイチチ好きーな俺には邪魔な脂肪のかたまりでしかない。
そう、貧乳はステータス。貧乳は世界を救う。
そんなことを考えていたら女性の目つきが剣呑なものになっている。
いくら興味がないからと言っても女性の乳に目線を向けていてはいけないな。

「すいません、ここにフルネームでサインと判子お願いします。実印で」
差し出された用紙は一部が切り取られて下に色の違う紙が用意されているように見える。
きっと俺が寝ぼけてるせいだな。
「はいはい」
366不審物がやってきて:2010/05/22(土) 07:53:08 ID:2TgNZZji
待たせていたことだし、さっさとサインと判子を押す。
けど母よ、実印を玄関そばの引き出しに入れておくのはどうかと思うぞ。

「どうもありがとうございました〜」

なぜかやけに機嫌がよさそうな声を出して帰っていた。
仕事が順調に進むとうれしいのだろうと適当に納得した。

 しかし、この荷物は一体何だろう?
母が何か通販で買ったのか?
いや、宛名は俺宛になっている。おまけに差出人は書いていない。
今のご時世に差出人の名前なしに配達ができたのか。
まあ、俺に危険物が送られてくるとは思えないし、大丈夫であろう。

 とりあえず自分の部屋に荷物を持っていき机の上に置いた。
「とりあえず開けてみるか」
机からカッターナイフを取り出し。
段ボールを切り、開ける。
そこには時計の周りにいろいろと配線がごちゃごちゃしたものが入っていた。
閉める。
なんだろうね、昔映画で見たことがあるような気がするよ。
あれはなんていう映画だったけなバスが一定速度以下になったら爆発するとかっていう映画。
それに出てきたものにそっくりな気がする。

 心を落ち着けてもう一度開ける。
タイマーが進んでいた。
「えええええええええ!」
いやいやいや、どう見ても爆弾なんですけど。
時間がきたらアウトにしか見えないんですけど。
頭を抱えて絶叫する。
優雅な土曜の朝は一瞬で崩壊した。

 ひとまず落ち着け俺Koolになるんだ。
こんな時は貧乳な女の子のことを考えるんだ。
ああ、この間法事のときに会った玲子さんはスレンダーでよかったな。
お辞儀をした時の胸元の布地が妙にすかすかしていたのがとっても良かった。
あれこそ俺の憧れ、世界に名だたる貧乳だ。
あれほどまでに素晴らしい貧乳を俺は見たことがない。
あの貧乳を思い出すだけで俺は悟りをも開けそうだ。

 OK。落ち着いたところでこの不審物が何なのかよく調べる必要がある。
よく見ると爆発物(仮)の脇に手紙が入っていた。
表には『Dear My Lover』と書かれていた。
「愛し我が君へ…ね」
続きはこうだ。
『親愛なる泰知くんへ
 これは私からのプレゼントだよ。
 いつまでも私の気持ちに気がつかない君にはこれくらいやらないと分かってもらえないしね。
 制限時間は30分。段ボールを開けたらスタート。
 解体しないと大変なことになるよ。
 それと警察には知らせないほうが君のためだよ。
 私は君のこといつも見ているしね
 とはいえ、さすがにいきなり解体作業をしろなんて言えないから解体方法を書いた紙を同封しておくよ。
 君だったらそれを見て解体できると信じているから。
 早く私に会いに来てね。
 Your Sweet Lover』

367不審物がやってきて:2010/05/22(土) 07:54:02 ID:2TgNZZji

「………は?」
いやいやいやいや、訳がわからんですよこの手紙。
『いつまでも気持に気がつかない』って何のことですか?
そんなアプローチ受けたこともない。
は!!
もしや男はみんな胸が好きという勘違いをしている貧乳娘が思い余ってこんなことをしてしまったとか?
うん、いい。
じゃなくて、誰がこんなことをしたかはともかくとして。
これを解体しないと『大変なことになる』らしいしこんな怪しげなものはさっさと処分してしまいたい。
俺は工具箱を用意し、手紙に同封してあったもう一枚の紙。
解体作業の手順が書いてある紙を広げて読む。

「俺は元SASの隊員でも小学生探偵でもないんだがな…」
そんなことをぼやいていてもむなしいだけだった。

『中のタイマーは罠。どのコードを切っても爆発する』
いきなりですか。
『肝心なのは小箱。左上から反時計回りにはずしていく。
 ねじを外すには通常左に回す。しかし動かない。
 だが、右へ回すとドカンだ!』
いや、無茶な。
『答えは強引に左へ回す。
 二番目のネジはやはり左には回らない。答えは……右回しだ』
このネタわかる人居るのか?

 そんなこんなでこの解説書のおかげで何とかほとんどの解体が終わった。
最後にお約束のように赤と青の2本の配線が残った。
さあ、どちらを切ればいいんだ?
『最後に2本のうちどちらかを切ればそれで終わり。
 お疲れ様、どちらを切るかは君に任せるよ。
 私への愛を証明してね』
…………。
ふざけんな!!!
最後の最後で見捨てやがって。
つーかなんですか、2本をあからさまに残しやがって。
ドラマや映画の見すぎじゃないですか?
俺だったらどちらを切っても爆発するようにするね。
じゃなくて、どうしろってんだこの俺に。
俺は元SAS隊員の保険屋のオプでもなければ薬で小さくなった探偵でもないんだぞ。
どうする、どうする?
あきらめるか?いや、命かかってんですよこっちは。
そんなことを考えているとふとアゴ下がプニプニのおっさんが天啓を下してきた。
『あきらめたら、そこで…』「ごめん、俺その漫画読んだことない」
おっさんは光の中に消え去った。

 ふう、今ので落ち着いた。
けれども、事態は好転しないな。
とりあえずもう一度犯人の手紙と解説書を読んでみよう。
そうして解説書を見ていると隅っこにこんなことが書いてあった。
『ヒント 私との赤い糸を切らないでねハート』

「まんま答えだこれ!!」
思わず絶叫したね。

368不審物がやってきて:2010/05/22(土) 07:54:31 ID:2TgNZZji
 よし、と気合いを入れなおして青い銅線を切ろうとする。
しかし、本当に青いほうでいいのか俺?
実は赤が正解とかじゃないのか?そんな考えが頭をよぎった。
が、今更そんなことを考えても意味ないなと思いなおし青い銅線を切った。

 するといきなり音楽が鳴り出した。
「これは………カノン?」
碌にクラッシクを聞いたことのない俺でも知っている曲だ。
その曲がオルゴールの音色で聞こえてくる。
それは爆発物(仮)の中から聞こえてくる。
周りのごちゃごちゃした部品らをどけるとそこにはオルゴールの箱が1つ置かれていた。
恐る恐る手に取り、開けてみるとそこには指輪が2つ入っていた。

「ペアリングか…」

 驚いたけど、こんな風に演出をしてくれる貧乳娘を愛しいとおしく思った。
そんな風にチョットばかし感動しているとまたチャイムが鳴った。
先ほど怪しい宅配物が来たばかりなので少し警戒して玄関を開ける。
するとそこには意外な人物がいた。

「おはよう」

 そこにはまぶしい笑顔を携えた金髪美女が立っていた。
「き、君は…」
彼女はクラスメイトでハーフな帰国子女のヘレンさん(巨乳)。
しかし、日本に完全に馴染んでいるのに時々無理に帰国子女っぽい言動やハーフらしさなどを出す彼女にはもっと似合いのあだ名がある。
「ケレン(外連)さん、おはよ…」
言いきる前にケレンさんの足が俺の左太ももに突き刺さる。
「目標の向こう側を蹴るローキック!?」
大変痛かったです。

 とりあえずケレンさんを家の中に招きお茶を出す。
いきなりローキックをされたからと言って追い出すほど俺の心は狭くない。
それにしても彼女がここに来た理由がさっぱり分からない。
彼女は外連味のある性格ではっきり言って猫かぶりである。
そして、外見はハーフの宿命というか、当然の美少女である。
目立ちがはっきりしていて、青い目がその美しさを強調している。
かといって外人っぽくなさすぎないのが美人だと思えるポイント何だと思う。
しかし、彼女の一番の特徴はそこではない。
西欧人の特徴を一身に受けている胸にある。
彼女の胸に宿っているものはもはやエベレストといっても間違いではない程の夢に満ちているそうだ(友人談)
されど、悲しいかなナイチチスキーな俺にはただの脂肪の塊だ。
巨乳は夢を抱えている。しかし、貧乳はみんなに夢を与えているのだ。
そんなわけで俺は彼女とはそこまで親しくない。
369不審物がやってきて:2010/05/22(土) 07:55:04 ID:2TgNZZji
「ねえ、平賀君。さっきのプレゼント、受けっとてもらえた?」
「っな!!!?」

 さっきの爆弾もどきはケレンさんが送りつけてきたってことか?
一体何のために?
「なんであんなもの送ってきたんだ?」
その質問にケレンさんは答えずお茶をすすった。
「そういえば、今日はご両親は居ないの?」
こちらを見ずに尋ねてくる。
「ああ、歌舞伎を見に行ったそうだ」
虚を突かれつい正直に答えてしまう。
「何処に?」
「駅前の市民ホールだが…」
なんでこんな質問をしてくるんだ?
ケレンさんは両手を合わせて笑顔で言ってくる。
「偶然だね、今日ね私そこに爆弾を仕掛けてきたの」
思わず目を見張る。
「平賀君に送ったやつとおんなじ仕組みでオルゴールじゃなくて爆薬がたっぷり詰まってるの」
なんでまた…
「それを起爆させるには携帯で電話しなきゃいけないんだけど……」
こいつはこんなにも喜々としてこんなことを話すんだ?
「それでね、平賀君にお願いがあるんだけど聞いてもらえるかな?」
「聞かなきゃ爆破させるって言うんだろ」
「ううん、そんなこと言わないよ。でもね聞いてくれないと私悲しくて思わず花火が見たくなっちゃうかもね」
おいおいおい、どう考えても脅しじゃないか。
「まずはね〜」
そう言って携帯電話をちらつかせて、首をかしげながら言う。
くそ、その無駄な乳さえなければ完璧なのに。

「私と付き合って」

「はあ!?!?」

訳がわからん?
今朝からずっと訳のわからないことが続いているが今の発言が一番訳がわからん。
「なんでまた……?」
「そりゃあ、平賀君のことが好きだからに決まってるじゃない」
それは何とも嬉しいことだ、こんな状況じゃなければ小躍りのしていたかもしれん。
「なら、普通に言ってくれればいいじゃないか」
「けど、平賀君って貧乳な子が好きじゃない」
「なぜそのことを知っている!!!」
「いつも胸のないはずの飯本さんの胸ばっかり見てるし、私の胸には興味ないみたいだし……」
そう言って自分の胸を見てショボーンとする。
いやね、確かに飯本さんも玲子さんには劣るけどいい貧乳だよ。
飯本さんが今のケレンさんみたいに自分の胸を見てショボーンとしているところで慰めたこともあるよ。
「だから、絶対に断れない状況にして告白すれば受け入れてもらえると思ってこの状況を作ったの。
 確かに私は平賀君、いや、泰知の好みじゃないかもしれないけど。
 心から貴方のことが好き。どうか、受け入れて…」
370不審物がやってきて:2010/05/22(土) 07:55:30 ID:2TgNZZji
「な、なんで俺のことが好きなんだ?」
「それは……。一か月前の雨の日私の傘が無くなったことがあるの。
 その時は持ってきたはずの傘が消えてて途方に暮れていた。」
ああ、なんかそんなことがあった気がする。
「誰も助けてくれなかった。けどね、一人の男の子が傘を貸してくれたの。
 そのせいで自分は濡れてしまってたのに。
 まるで、少女マンガみたいだよね。ほんと。
 その傘を貸してくれた男の子が平賀泰知君貴方です。」
いやいや、その時は隠したのが巨乳愛好会の面々でケレンさんの傘を奪いスケスケの状態を作ろうという計画を邪魔しようと考えていただけなのだ。
っく、もしやこれが乙女回路なのか?
異様なまでに美化されている。
「男の子が傘を隠したのは知ってるの。
 でも、私が困っている時に助けてくれた平賀君がまるでヒーローみたいで…すっごくかっこよかった。
 その時からずっと貴方のことが好きです」

い、いかん。俺としたことがグッラっときてしまった。
けど、爆弾を使って脅してくるようなやつだぞ。しかも巨乳。
そんなことで俺の心を手にいられると思っているのかこの巨乳は。

「今は私のことが好きじゃなくても必ず私のことを好きにさせて見せるから。」
くそう、なんだこの健気さは。俺の貧乳への誓いが薄っぺらいものに思えてきてしまう。
「ちゃんと巨乳好きにしてあげるから」
うん?
「そうよ、おかしいよ。胸のない子が好きだなんて母性がない証拠なんだから。
 貧乳は所詮持たざる者。巨乳に憧れをもってしかるべきだわ」
「やっぱり。巨乳は悪魔の子だああああああああ」
こんな恐ろしいことを考えるなんて……やはり巨乳は世界を滅ぼす。

「そう言えば、なんで爆弾なんて作れるんだケレンさんは?」
巨乳だからか?
「それはねお母さんが元IRAのメンバーだからよ」
これまた、分かりにくいネタを…。

 しかし、どうしたものか…。
断れば爆発、受け入れたら悪魔と交際。
前門の虎、後門の狼。
「さあ、どっちにする?」
笑顔で聞いてくるこいつが怖い。
俺は、俺は…。

371不審物がやってきて:2010/05/22(土) 07:55:59 ID:2TgNZZji
ケレン……いや、ヘレンが帰った後、自室のベッドに寝転がった。
今日は本当に慌しい1日だった。
土曜日の優雅な1日は綺麗さっぱり消えていった。

「ただいま〜」

玄関から母と父の帰って来た音が聞こえる。

「よかったわよ。歌舞伎、あんたも来ればよかったのに」

そんなように声をかけてきたが起き上がる気力もなく適当に返事をしておいた。
そう、俺はヘレンと付き合うことにしたのだ。
さすがに両親を人質に取られたら首を縦に振るしかない。
ヘレンは喜んでいたが…まあ、長くは続かないだろう。
返事をするとヘレンは爆弾を回収に行き、俺はようやく解放されたのだ。
貧乳好きな俺が巨乳な女の子と付き合うとは…本当に人生とはままならない。
そう思い大きくため息をひとつついた。
すると携帯が急に鳴りだした。

相手は飯本さんだった。
「はい、もしもし」
飯本さんが電話をかけてくるなんて初めてのことだったので驚きつつも慎重に対応する。
「平賀君!ヘレンさんと付き合いだしたって本当ですか?」
誰から聞いたんだそんなこと?まあ、一人しかいないけど。
「さっきヘレンさんからメールがあったんです。彼氏が出来たって」
やっぱり。
「それが平賀君だなんて嘘ですよね…」
そりゃあ今まで親しくもなかった二人が付き合いだしたら気になるわな。
「いや、まあ、それにはいろいろと事情がありまして……」
「ヘレンさんと付き合ってることは本当なんですか?」
「そうですけど」
そう答えると電話の向こうから何か割れる音がした。
「飯本さん!大丈夫なんかすごい音がしたけど」
「はい、大丈夫ですよ。チョット力が入りすぎちゃっただけですから」
何にとは聞けなかった。
「そのことは何かいろいろ事情があったんですよね。
 ヘレンさんに脅されたりとか、弱みを握られたりとか」
すげぇ、大正解。飯本さんってエスパー?
「大丈夫、すぐに私が助けてあげますから」
そう言って電話は切れた。
「なんだったんだ飯本さん?」
なんかかなり暴走しているみたいだったぞ。
372名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 08:25:07 ID:n/jttCfH
>>364
投下終了だよな?
DJ。この調子だと玲子さんも病んでるふいんき(←なぜかry
次からは『投下終了のお知らせ』まで書いてくれ。
373名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 08:57:10 ID:2/49hSk1
巨乳好きにされたいです
374名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 09:41:32 ID:lQthdZJx
これはいいキートン
375名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 09:58:52 ID:2TgNZZji
すいません規制されました。
少しですが続きあります。
376不審物がやってきて:2010/05/22(土) 09:59:53 ID:2TgNZZji
ああ、玲子さんに会いたいな…。

そう思っていると玄関からチャイムの音が聞こえてきた。
「あら、玲子ちゃん。お久しぶり、元気だったかしら」
と、そんな声が聞こえてきた。
思わず布ベッドから飛び起きて玄関へ向かう。
「久しぶり、泰知くん」
そう言って俺の女神の玲子さんは微笑んだ。
玲子さんは今は敏腕OLとして東京で活躍しているはずだ。
なのになんでまた?
「仕事の都合でこっちで暮らすことになったからあいさつに伺ったの」
そう言って俺に微笑んでくれる。
ああ、俺は今死んでもいいかもしれない。
母は玲子さんを居間に上がってもらい、今はお茶の用意をしている。
当然のごとく俺も同席させてもらう。
「ねえ、泰知君にはもう彼女とかってできたの?」
そんなことを聞いてきた。いや、その話題は今出さないで欲しかった。
「いや、まあ、一応、できましたよ。彼女」
玲子さんの笑顔が一瞬固まった気がする。
「へー、それってどんな子?」
なんか玲子さんの声が冷たい気がする。
「ハーフで帰国子女の子です」
「ふーん、その子って胸は大きいの?」
「え、いや、まあ、大きいと思いますよ」玲子さんよりは。
「へー」
なんか玲子さんの視線がとんでもなく冷たいです。凍えそうです。
「泰知君がおっぱい星人になっちゃって悲しいな〜」
いや、俺はおっぱい星人なんかじゃありません、むしろ敵対種族です。
「けど大丈夫、すぐに戻してあげるから」
そう言ってまた微笑んだ。
それから母がお茶を持ってきて3人で他愛もない話をした。
その時、俺は玲子さんの浮かべた笑顔の時の目が気になっていた。
とんでもなく暗く濁って見えたから。

夜も更け、とんでもなく慌しい土曜の1日が終わった。
風呂にも入りベッドへと潜る寝る直前、今日話した3人のことが頭をよぎる。
ヘレンさん、飯本さん、玲子さん。
何かこの3人がらみでとてつもなく面倒なことになりそうな気がしてきた。
けど、それは、べつのはなし。…だといいな。
377 ◆ltPhPWT046 :2010/05/22(土) 10:00:58 ID:2TgNZZji
これで投下終了です。
やっちまいました。

次回からは気をつけます。
ギャグって難しいですね。
センスのない俺にはこれが限界。
378名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 10:43:44 ID:hK/z4gvS
GJっ!
もちろん続くよね?
あとギャグセンスとか言ってるけど
貧乳好き主人公とかその辺は俺のかなりツボwww
379名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 11:03:32 ID:vYYnin8f
GJ




これを読んでまず思ったこと



作者は貧乳好きでしょ?
380名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 11:10:32 ID:N269F51t
>>377

素直にGJだ!!
続き期待してるぜ!!
381名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 13:56:01 ID:mplidZeb
投下するタイミングがわからないぜぇ
382名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 14:02:10 ID:uE8J/0EM
いいのよいいのよ
383名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 17:48:41 ID:rGL7aDjg
みなに聞きたいんだが
ヤンデレの良さってなんなんだろうか
俺はヤンデレ好きなんだが、この前友達に「ヤンデレのどこがいいんだよwww」なんて言われて何も言い返せなかった
そこで感じたんだが俺のヤンデレ好きは漠然としてるみたいで・・・なんで好きなんだろうか?
おまいらのヤンデレの良さを語ってくれ
384名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 17:54:31 ID:8S7IMIP5
「好きな物は好きだからしょうがない
好きで悪いか」
で返せよ

お前の心の中なんて誰もわからんし
385名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 18:12:26 ID:0GgC7Y9w
>>383
ここそういう自分語りのスレじゃないから
386名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 18:30:22 ID:cuzOXPlf
てゆうかツレとヤンデレの話になるってあたりがすでにおかしい。
387名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 18:38:59 ID:Ys8RmX8q
>>383
誰かを好きになるのに理由が必要かい?
388名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 18:42:52 ID:Ys8RmX8q
>>387
誤爆
389名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 19:48:32 ID:/Y/UE6tv
cool
390名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 20:06:14 ID:JeBT/TR6
391名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 20:08:59 ID:pMY02n9i
ヤンデレのいい所
・相手がいれば周りがどうなろうと構わない
・好きすぎて相手が自分を好きじゃないと壊れる
・相手が望むなら自分を壊してもいいとか思ってる

一歩間違えばバッドエンドまっしぐらなヤンデレを、上手くハッピーエンドまで持ち込み、尚且つ愛せる主人公に燃える。
392名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 20:14:30 ID:n/jttCfH
>>375
372だが。俺も早とちりしてすまんかった。
続きもwktkして待ってるぜ。

>>383
まぁ誰にだって好き嫌いはあるからしょうがないだろう。
393名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 22:09:52 ID:TwMVuwuM
ヤンデレのいいとこは
一途なとこだと思う
NTRとは無縁だし、他の男になびくことはない
独占欲を満たしてくれる
394名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 22:17:26 ID:kwhIkc2U
愛が極まり過ぎて殺したくなってる状態だもの
395名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 22:18:27 ID:/pYmJYAs
一途……NTR無縁……他になびかない……独占欲……

間がさしたり……裏切ったりしたら……
396名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 22:27:46 ID:kwhIkc2U
――――ぐサり。

「/pYmJYAs君、だぁーいすき……」
397名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 22:54:41 ID:Ys8RmX8q
単純にヤンデレの良さは、愛しすぎて病むほどの愛の深さだよ。

しいて挙げるとしたら、ヤンデレは、ツンデレやクーデレや無口などあらゆる要素を取り込める柔軟さが魅力的じゃまいか。
398名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 23:42:50 ID:5za/3SVv
正直言って自分にとってヤンデレは、愛を補給する
というか、愛を与えてくれるものな気がするんです。

ひたすら純粋な好意を与えられるのを見ると、自分の
疲れて乾いた感情に、雨が降ったような気がします。
399名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 23:47:33 ID:/pYmJYAs
寂しがりや達へ

死神の愛とキスを
400名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 23:55:19 ID:Ki5frS4k
>>398
そうやってその子を受け入れちゃったらその子病まねえだろ
401名無しさん@ピンキー:2010/05/23(日) 00:48:11 ID:yzzNQhpG
>>396
これをいい歳したオッサンが書いてると思うと鳥肌立つな。
402名無しさん@ピンキー:2010/05/23(日) 01:36:08 ID:VCX3W5Sv
ナイフでぐさりとかいってる時点でにわかだよな
403名無しさん@ピンキー:2010/05/23(日) 02:00:16 ID:gB8XjobU
>>400
いくらでも病ませる方法はあるだろ。
年齢や身分に差をつけて、禁断の愛にしたりもできる。
ようは職人の腕次第
404名無しさん@ピンキー:2010/05/23(日) 02:21:50 ID:emkjHdxJ
単純に病むだけならメンヘラや電波も一緒。病む程“愛する”からヤンデレなのだ!!
405名無しさん@ピンキー:2010/05/23(日) 03:15:42 ID:IFmj26ur
一番煎じ
406名無しさん@ピンキー:2010/05/23(日) 04:44:00 ID:XuDT+IM0
まじで?
407名無しさん@ピンキー:2010/05/23(日) 06:11:28 ID:MjCD4dh3
ウホッ
408名無しさん@ピンキー:2010/05/23(日) 06:49:05 ID:wcuNEtrp
そろそろヤンデレ家族に来て欲しいな。
これが投下されると何故か彼女が戻ってくるんだよなあ…作者って俺の彼女?
409名無しさん@ピンキー:2010/05/23(日) 07:50:06 ID:HRg2wFGa
朝見て投下がなかったときの哀しさ
410名無しさん@ピンキー:2010/05/23(日) 13:34:34 ID:ETPfu8hR
主人公がヤンデレさんの凶行を止めるため世界をループするみたいなSS書いてよ!
411名無しさん@ピンキー:2010/05/23(日) 13:56:26 ID:uByRGjFf
>>410
俺もそれ考えてた


誰か書いてほしい……
412名無しさん@ピンキー:2010/05/23(日) 14:05:02 ID:ETPfu8hR
>>411
よし君書きたまえ
413名無しさん@ピンキー:2010/05/23(日) 14:24:42 ID:oZgS/zwC
実は最初のループでは人畜無害を装っていた姉とかが
ヤンデレの凶行を止めるためにヤンデレを受け止めたら
姉がそのキモ姉な本性を現すという

そういうかんじでどんなにがんばっても主人公が監禁されたり
周りの女の子や両親が廃人になったりというループする世界
414名無しさん@ピンキー:2010/05/23(日) 16:11:59 ID:kaG+Sa1T
ぽけ黒まだー
415名無しさん@ピンキー:2010/05/23(日) 16:44:38 ID:g1dCnvvV
age
416名無しさん@ピンキー:2010/05/23(日) 17:47:09 ID:vwD2tZMm
(´∀`∩)↑age↑
417名無しさん@ピンキー:2010/05/23(日) 18:20:36 ID:Nif1gwbV
ほトトギすの作者さんもういないのかなぁ…
418名無しさん@ピンキー:2010/05/23(日) 18:41:37 ID:3ThG8EBI
>>414
クレクレやめろよカス
お前みたいな奴邪魔だから消えろ
419名無しさん@ピンキー:2010/05/23(日) 20:18:29 ID:vwD2tZMm
ww
420名無しさん@ピンキー:2010/05/23(日) 20:55:56 ID:yWeh7t2b
両方消えてくれるとありがたい
421名無しさん@ピンキー:2010/05/23(日) 21:02:43 ID:emkjHdxJ
過剰なクレクレは他の書き手さんに迷惑を掛ける、後バカとかカスとか罵倒系の言葉が並ぶと書き手さんが投下しづらくなるしスレが荒れる。
422名無しさん@ピンキー:2010/05/23(日) 21:13:59 ID:HL2aBEUc
ヤンデレは病むまでの過程が可愛い
423名無しさん@ピンキー:2010/05/23(日) 21:15:42 ID:Gpaoiqog
ツンデレが病む過程が見たい
424名無しさん@ピンキー:2010/05/23(日) 21:26:33 ID:ETPfu8hR
じゃあ僕はクーデレが病むのが見たい!
425名無しさん@ピンキー:2010/05/23(日) 22:07:59 ID:NTzq5gLp
クーデレとか素直クール、ツンデレみたいなのは病み展開があっても自然かもね
426名無しさん@ピンキー:2010/05/23(日) 22:31:56 ID:mSq1NoDP
そういや「いない君と〜」、最近更新止まってるなあ
427 ◆AW8HpW0FVA :2010/05/23(日) 22:39:50 ID:Z9+/ToUj
test
428 ◆AW8HpW0FVA :2010/05/23(日) 22:40:29 ID:Z9+/ToUj
投稿します。変歴伝ではないほうです。
第十話『西方へ』

ニプルヘイムに向かうための難所は、越える時も難所である。
シグナムにとって、半月も山越えに時間を費やす暇はなかった。
正直な所、別なルートを模索したかったが、ニプルヘイムの周辺は、
アムリタ、ソーマ、ネクタル、アンブロシアの四山以外は未開と言ってよく、
下手に踏み込めば二度と出てこれないという有様であり、
ならば川を下るならばどうかというと、切り立った渓谷の間を流れる凄まじい激流が、
いかなる船も沈めてしまうので、これもまた行うのは至難である。
結局は、北方三山を越えなければ、外に出れないというなんとも不便なものだった。
復路の最初のネクタル山を、シグナムとブリュンヒルドは無言のまま歩いていた。
シグナムの表情は暗い。
守ると決めたイリスを、事故死させてしまったのだ。
その事実は、シグナムの心を抉り、シグナムに沈黙を選ばせた。
その沈黙が居た堪れなかったのか、ブリュンヒルドがなにかと話しかけてきたが、
シグナムはそれらを全て無視した。
最初の内は、無視されても話し掛けていたブリュンヒルドだったが、
ついに黙ってしまった。どうやら無駄だと悟ったらしい。
しばらく沈黙の旅が続いたが、
再びブリュンヒルドが声を掛けてきた。
最初の内は無視していたシグナムだったが、
ブリュンヒルドが肩を掴んで強引に顔を合わせてきた。
「どうした?」
「いい考えが浮かびました。上を見てください」
ブリュンヒルドはそう言って、空を指差した。
ブリュンヒルドの指先を見つめるシグナムの目に、太陽の光は眩しかった。
そんな太陽を切り裂く様に、一つの黒い影が横切った。
「あれは……、ガルダか……」
見てみて、そう呟いたシグナムは、ブリュンヒルドに目を向けた。
ガルダは、ファーヴニルに生息する全長二十メートルを越す獰猛な巨鳥である。
その巨鳥が、あれほど小さく見えるという事は、それだけ高く飛んでいるという事である。
あれをどうするというのだ、という意味の視線を向けるシグナムに、ブリュンヒルドは、
「見ていてください」
と、言って、弓矢を取り出した。
ブリュンヒルドが着ている漆黒の鎧と同じ様に、弓矢も漆黒である。
矢をつがえ、遥か高くを飛ぶガルダに照準を合わせる。
一瞬の間の後、ブリュンヒルドは矢を放った。
放たれた矢は異様な唸りを上げて上昇し、ガルダに命中した。
力なく、ゆっくりと落下し、しばらくすると、凄まじい地響きと揺れが二人を襲った。
落下地点に向かうと、そこにはやはりガルダが倒れていた。
しかし、どういう訳か、中ったはずの矢がどこにも見当たらなかった。驚愕しているシグナムに、
「ガルダには矢は中ててませんよ。ただ、頭のスレスレを射ただけです。
ガルダは梟並みの聴力がありますから、
矢の衝撃波で三半規管を狂わせる事が出来ると思ったのでやってみました」
と、ブリュンヒルドはまるでちょっと買い物に行ってきたとでもいう様な口振りで説明した。
シグナムはこれ以上もないほどの空恐ろしさを感じた。
シグナム達は空を飛んでいた。
ブリュンヒルドの言っていたいい考えとはこの事だったのだ。
ガルダは誇り高い動物であり、自分の認めた者以外は乗せないという意思を持っているのだが、
ブリュンヒルドは、その巨鳥を御してみせた。
「ほら、そっちじゃないわよ。まっすぐ飛びなさいよ、この馬鹿鳥が!」
ガルダの首辺りを短刀で突き刺しながら。
ブリュンヒルドが短刀を突き刺す度に、ガルダの首筋から血が滲み出、悲痛な泣き声が上がった。
ガルダの首の皮が厚いのと、刺しているのが短刀であるため、致命傷にはなっていない。
それでも空を飛べれば、曲がりくねり、岩盤の露出した道を通る必要がなく、
これならば、明日の昼には三山を越える事が出来る。
それを思うと、シグナムはガルダには同情するが、助ける気にはなれなかった。
右へ左へふらつきながらも、シグナム達はソーマ山の辺りを通過し、その辺りで日が暮れた。
着陸した辺りで野宿する事を決めると、
ブリュンヒルドはガルダの両足に杭を打ち付け、逃げられないようにしていた。
幼い頃の酷虐な性質は、大人になっても変わらないものだと、シグナムはそれを見て思った。
夕食の準備をするのは、ブリュンヒルドである。
妙に楽しそうに調理をしているブリュンヒルドの手付きを、シグナムは注意深く眺めていた。
まだ完全に疑いが晴れた訳ではないからである。
しばらくそれを見つめていたシグナムは、問題はないと判断し、
「ブリュン、お前は山を越えたら、ファーヴニルに向かってくれ」
と、おもむろに言った。ブリュンヒルドは怪訝な表情になった。
「ファーヴニル……ですか?なぜわざわざ」
「お前には伝えておくが、私がリヴェント大陸に向かう目的は、
国内の擾乱を鎮める事だ。お前もリヴェント大陸の有様は知っているだろう」
「はい。八ヶ国連合の後方援助をしていたために魔王軍に攻められ、
多くの諸国が滅んだため、現在は無政府状態にあると……」
「そうだ。私はその無秩序の国に秩序を取り戻してやりたい。
そのためには、どうしても金が要る。私もいくらかは持ってはいるが、所詮、それは端金だ。
だから、お前にはリヴェント大陸鎮静のための援助金及び食料を借りてきてもらいたいのだ。
これが出来るのは、お前しかいないのだ。頼む、ブリュン」
シグナムの言っている事は、全て本当である。
だが、本当の目的は、ファーヴニル国に出資させ、国を疲弊させる事である。
ガロンヌがそれに気付く可能性もあるが、なんて事はない。
ガロンヌ以外の者達を納得させればいいのである。
周りの者の殆どが賛成すれば、ガロンヌも首を横には振れまい。
後はブリュンヒルドがこの命令に首を縦に振るだけだが、それはあまり心配なかった。
ブリュンヒルドは目を輝かせ、
「分かりました。このブリュンヒルド、身命をとして、この任を全うしてみせます」
と、声高々にのたまったからだ。
これで後に残る難題は、ファーヴニルの重臣達を説得する事だけである。
料理を食べ終えたシグナムは、説得の内容をブリュンヒルドに告げた。
万全に万全を期しても、シグナムには足りないと思えた。
なにせ、この最初の対決が重要だったからだ。
天はシグナムを滅ぼすか、ガロンヌを滅ぼすか、全てはこの一事に掛かっていた。
念入りな打ち合わせは、深夜まで続いた。
多少疑惑が薄れたとはいえ、ガロンヌの刺客という可能性を捨てていないシグナムは、
ブリュンヒルドと二人だけで眠るという事に、少なからぬ不安を抱いた。
もう、交代で見張る事も出来ず、扉に鍵を掛ける事も出来ない。
あと一日で三山を越えられるのだから、今回は徹夜をしてもいいか、とシグナムが考え始めた頃、
「シグナム様、一緒に寝ましょう」
と、ブリュンヒルドが手招きしながら言ってきた。
あまりにも自然に言ってきたので、シグナムは一瞬なにがなんだか分からなかった。
「…………はぁ…………?ブリュン、冗談だったら笑えないぞ、それ……」
「冗談なんかじゃありませんよ。シグナム様、以前言ったじゃないですか。
私達は仲間なのだから親交を深めるのは当然だ、と。これもその一つではないですか」
にやけ面のブリュンヒルドがそう宣う。あの時の意趣返しか、とシグナムは思った。
「ほら、鎧を脱ぎましたよ。早く来てください」
鎧の下から現れたのは、宿にいたときに幾度となく見た、
服を押し上げるブリュンヒルドの巨乳だった。
十分余裕のある服であるはずなのに、ブリュンヒルドの大きな胸は酷く強調され、
さらにスカートから覗く太ももは、雪の様に白く肉付きがよく、
危うく巨乳フェチから太ももフェチに乗り換えてしまいそうになるほど素晴らしいものだった。
何度も見ているはずなのに、思わずどきりときたのは、
ここが外だからか、それとも焚き火のせいだからか、はたまた降り注ぐ月光のせいだろうか。
「シグナム様が来ないのなら、私がそっちに行きますね」
散々迷っていると、痺れを切らしたブリュンヒルドがこちらにやってきて、
なんの躊躇もなくシグナムに抱き着き、押し倒してきた。
シグナムの顔がブリュンヒルドの胸の谷間に埋まった。
ブリュンヒルドの柔らかくハリのある乳肉がシグナムの顔をぐにぐにと圧迫し、
ミルクの様な甘い香りが、鼻腔いっぱいに満たした。
「ふぁ……、シグナム様ぁ、もっと近くに……」
しばらくして、おもむろにブリュンヒルドが左手を掴み、太ももに導いた。
程よく鍛えられたブリュンヒルドの太ももは、ムチムチとしており、触れると手の形にたわんだ。
これほどの至福の中にいるというのに、シグナムの表情は血の気が引いた様に白かった。
未だに刺客であるという疑念を払えず、さらには過去の呪縛に取り付かれているシグナムは、
ブリュンヒルドのこの行動が、いったいなんの前触れなのか、という事が気になり、
目の前の快感よりも、後の恐怖が先立って、まったく喜べなかった。
そんな事などお構いなしに、ブリュンヒルドはシグナムを強く抱き締め、
艶やかな嬌声を闇の中に響かせていた。
結局、ブリュンヒルドが完全に寝付くまで、シグナムは安心して眠る事が出来なかった。
夜明の太陽は、薄っすらと青白かった。
日が中天から傾く頃、シグナム達は三山を越え、大地に降り立った。
シグナム達を乗せていたガルダは、大地に足を着けたと同時に地響きを立てて倒れてしまった。
首筋の出血と、限界を超えた飛行のせいで、ガルダは死に掛けていた。
そんなガルダを、ブリュンヒルドは値踏みする様な目付きで見つめていた。
「シグナム様、これ、バラしちゃいましょう」
言うなり、ブリュンヒルドは剣を手に持った。
刹那、ガルダの首が胴体から切り離され、血の雨が降った。
シグナムには、ブリュンヒルドの太刀筋が見えなかった。
化け物だ、とシグナムは恐れ戦いた。
「さてと……、ガルダの肉はAランクの品質だから高く売れるし、眼球はポーションの原料、
骨は武器、性器は精力剤になるんだったわね……」
ブリュンヒルドがそう呟くと、再びガルダの身体が裂け、血が飛び散った。
飛び散ったのは血だけではなく、不必要な部分の肉や部位なども飛び散り、
道具屋で売れる部位のみが、その場に残った。
「さぁ、シグナム様、拾いましょう」
振り向いたブリュンヒルドは、返り血一つ浴びておらず、白い肌のままだった。
呆然としていたシグナムは、その声で我に返り、ガルダだったものを拾い始めた。
それ等のアイテムを村の道具屋に売りつけた後、シグナムとブリュンヒルドは分かれた。
シグナムは西の港町のサヴァンへ、ブリュンヒルドは首都のファーヴニルに向かった。
ブリュンヒルドは別れを惜しむように何度も振り向いたが、
シグナムは一度も振り向く事なく、黙々と西に進んだ。
久し振りに一人旅をする事になったシグナムは、
襲い掛かってくる魔物の群れに怯む事なく戦った。
二又の化け猫を右の手刀で切り裂き、九本の尾を持つ狐を仕込み矢で射殺し、
鎧を着た虎人を聖剣シグルドで鎧ごと斬り捨てた。当に獅子奮迅と言ってもよかった。
こうして難なく港町サヴァンに着いたシグナムは、
道具屋でアイテムの整理を行なった後、酒場に向かい、西大陸の情報を収集した。
それらを終えると、もうここには用はないと断じ、船をチャーターした。
ブリュンヒルドはまだ来ていなかったが、本人には目的地を伝えてあるし、
いつまでもここに滞在している余裕がなかった事もあり、シグナムは素早く船を出発させた。
波は穏やかで、風は追い風。これ以上もない最高の船出だった。
この先の西大陸になにが待ち受けているのか、それは天を除いて誰も知らなかった。
433 ◆AW8HpW0FVA :2010/05/23(日) 22:49:02 ID:Z9+/ToUj
投稿終了です。
少し短いですが、申し訳ありません。
434名無しさん@ピンキー:2010/05/23(日) 22:59:00 ID:9mT4FR9h
>>433
GJ。リアルタイム投下に立ち会えるとは…
ブリュンヒルドが信用される日は果たして来るのだろうか…
435名無しさん@ピンキー:2010/05/24(月) 00:03:56 ID:7CWAhdlo
>>433
GJ!

今現在一番期待している作品だから久しぶりの投下はマジ嬉しい!


性器は精力剤って既成事実でも作る気かブリュンはwww
436名無しさん@ピンキー:2010/05/24(月) 01:02:36 ID:NgKRQhyv
さすが北欧神話におけるヤンデレの代名詞ブリュンさんやでぇ
437名無しさん@ピンキー:2010/05/24(月) 11:14:35 ID:r7sXUb/Z
GJ!よく鍛えられたヤンデレだ。ベトコンに行っても十分通用するな
438 ◆ci6GRnf0Mo :2010/05/24(月) 19:14:15 ID:mClJUOWU
それでは、「群青が染まる」の第九話を投稿します
439群青が染まる 09 ◆ci6GRnf0Mo :2010/05/24(月) 19:14:48 ID:mClJUOWU

 社の裏手に抜けると真っ先に気付いたのは、
 この町の命なのだろう熱心に整備されているとわかる道と、それに沿って細い
川のように続く水の道。
 町からの明りも乏しい夜陰を掻き分けて奥へと、湖へと踏み出した。揚げ水用
のための民家についていた水車をふと思い出しながら。
 そんな町から僅かながら聞こえる祭囃子が壁を隔てているように感じられても、
三メートルほど背後に逃げないようとついてきた町人を半ば憂鬱に感じても、
 前方を、行末を見つめたままのマリンから視線を外すことはできなかった。
「ご、ごめんなさい、ご迷惑をおかけして……」
 逡巡に埋もれていた最中に届いた申し訳なさそうな声に、転ばないように握る
擦り傷だらけの小さな手をした少女に、反射的に「大丈夫だよ」と答える。
 それでも、隣にいるどこか疲れたようにも思えるマリンに目を凝らしてままの
自分がそこにはいた。
 いつも人形のように無表情で何を考えているかわからないというのに、こんな
に暗い中では到底わかるはずもない。
 ……だというのに、目が固定されたまま動いてくれない。
「ほら、私、目が見えないですし、いつも邪魔しちゃって……だから、いつも迷
惑がられて……だから、あの、助けてもらったときは嬉しくて、その……トモヤ
さんの手、大きくて暖かいですね……」
 返事の代わりに少女の手を少しだけ強く握ると、捨てられた子犬のように懐い
てくる少女に若干の居心地のよさを感じても、腐心するのは話すための理由。

「マリン」
 そして、思い立った時には疾うに喉から零れていた。
「……なんだ?」
 疲れているためか不機嫌そうにぼやいた、彼女の口調にも負けずに、
「これが終わったら、さ……この子も一緒に連れていけないかな?」
 少女の手を軽く持ち上げた。
「わ、私ですか?!」
 きっともうすぐこの旅は終わりだから? 少女の考えも考慮せずに? それは
本当は自分のため?
 色んな雑念が何度も過ぎっていく。
「悪い冗談だ」
 穏やかな風にすらもざわめく木々の中を、ついさっきまであれほど特異だった
彼女の影が、思考を見透かしたように両手を肩先まで上げた。
「理由をいくつかある、一つは“それ”は足手まといだ、今この時でさえ」
 そう言って顔をこちらに向けた彼女の言は、
「だけど……!」
「二つは、それは平穏の中でしか生きられん……だが、」
 言葉を覆うように紡いだ彼女の葉は、常闇にでさえ識別できるその青は、どこ
か迷いを孕んでいるようにも感じられた。
「そう案ずるな、既に里親を探しに行かせている」
 “誰に”とは言わなかったからこそ、気付いても気付かないふりをしていた。
ハルがいないことに、そしてハルの言った事が本当だったと言う事について。
 と、同時にマリンがそこまで気を使うことに隔たりを持った。
 それでも、いつもと違った彼を思い出さないために、拭いきれない違和感も諸
共、言われるがままに受け入れて思考を覆う。
440群青が染まる 09 ◆ci6GRnf0Mo :2010/05/24(月) 19:15:10 ID:mClJUOWU

「あ、あの! わ、私はどうなるん、ですか……?」
 それまで口をつぐんでいた少女が思い出したかのように吐いた、その自信のな
さのためか尻切れトンボのように語尾に行くほど沈んでいく言葉に、
「もう、何も心配しなくていいよ」
 あやすように呟いていた。
「ほ、本当ですか?! ありがとうございます!! トモヤさんありがとうござ
います!!」
 何を勘違いしたのか小さな身体全体で喜びを表す少女に、転ばないよう視線を
移しながら、
 良い事の、本当に良い事のはずなのに、痛いほど高鳴っている鼓動に不和感を
覚えずにはいられなかった。
 それでも、失敗という言葉から最も縁遠い彼女への安心さは確かにあった。
「……ありがとう」
「なぜ主が礼を言う?」
「俺も、……孤児だったから……」
 その語彙に反応して漏れた、虚をつかれたような少女の声は、
「着いたぞ」
 マリンの声に、丁度開けた視界に打った感嘆の念に、霧散してかき消された。

 その大きな湖は、まるで底なしの沼のように僅かばかりの月明かりでは補えな
いほどに色濃く陰に支配され、悠然と佇んでいる。
 異世界に紛れ込んだのではないかという現実離れして漂う異物感に息を呑む人
間を、一匹の蛙があざけわらうかのように鳴き声を上げた。
「な、なに……これ……」
 それに連なってまた一匹、また一匹と次第には何十、何百、どれぐらいいるか
わからないほどの蛙の大合唱が、蛙の輪唱が、辺りをこれでもかと満たしていく。
「か、蛙様だ!! 蛙様が怒っておられる!!」
 一人が叫ぶと、次々とその手の武器と身体を地面に投げ出して後ずさる彼らを
他所に、暢気にも社に祭られていた三十センチ程度の蛙を想像していた。
「っ!!」
 そんな甘い考えを吹き飛ばすほど大きな一つの鳴き声が、曲の終楽章を締める
何百の、いや千はいるかもしれない蛙の合唱に負けない声が、水面にさざなみを
立て、木々を揺らし響き渡った。
 その耳を塞いでも身体を震えさせる音に、思わず少女に振り返って気付いた、
既に呆けたようにへたり込んでいることに。
 だというのに、その小さな手はしっかりと握られていて離れる気配すらない少
女を、胸に抱いて同じように必死に後ずさっていく……荒野を歩くが如く優雅に
歩を進めるマリンとは正反対に。
「お、おおおら達は無関係だ!! か、かえる様、そこのやつらが生贄です!!
どうか、どうか!!」
 人の言葉が判るのだろうか、その言葉に頷くかのように地を揺らして出でたの
は、それこそむしのいい幻想を粉々に壊すほどに巨大な蛙だった。
 その足で跳べば街ですら超えれるのではないかというほどの太い足、巨大な目
は獲物を逃さまいと忙しくなく動き回り、
 その舌に捉えられれば全身が砕けるのではというほど長く太い舌を震わせなが
ら、全長五メートルはありそうな大蛙が嬉しそうに、人など丸呑みできる口を開
いて、身の毛のよだつ声で鳴いた。
 もはや人知の外である大蛙の耳をつんざく鳴き声に、今か今かと合図と待って
いたかのように蛙達が一斉に鳴き始める。
441群青が染まる 09 ◆ci6GRnf0Mo :2010/05/24(月) 19:15:37 ID:mClJUOWU

 なんだ……これは……?
 それが何なのかを頭が認識する前に、あらんばかりの振動が、絶え間なく続く
輪唱が脳を揺らしていく。

 意思とは無関係に膝をついた身体で、視界がかすむ中で、見えたのは真っ白に
黄色い斑が混じらせた腹を膨らまして、長い舌を間近のマリンへと、逃げること
ができないだろう獲物へと巻きつけようとした大蛙と、
 それを鬱陶しそうにそれを右手を払った彼女。
 彼女の半ば裏打ちのような拳が、その幅一メートルはありそうな肉厚の舌を意
図も容易く引きちぎった。
 それは、まさに。
 続けざま、予期せぬ出来事に仰け反った大蛙との間を、月夜に反射して輝く髪
をなびかせながら削り、その象をも丸呑みできそうなほどに膨らました横腹に蹴
り入れた瞬間、
 その瞬間地響きにも似た破裂音と共に、あれほど巨大だった蛙が木端微塵に弾
け飛んだ。
 衝撃に大蛙の黒い斑点と水かきがついた手が、その体を支える肉足が、
 おびただしいほどの体液が、心の臓、内臓の臓物が、脳髄が、そしてそれらの
飛沫を一斉にぶちまけ、常闇を埋め尽くさんと天高く舞い上がった。
 ……化物だった。
 そうして、肉片が液体が降りしきる豪雨のように轟音で地を撃ちながら、その
中に独りだけ混じった異物である彼女を彩っていく。 
 その光景を眼前にしながら、呼吸すらも忘れて、耳が痛むほどに無音だったの
は、あらゆる生物がいなくなったかのように静寂だったのは、
 まさに彼女こそが“化物”だったからなのだろう。

 だというのに、揺れる視界に呆けていた俺を一度確かに見た彼女は、哀調を帯
びた瞳の彼女は、これまでの人生の中で群を抜いて、紛れもなく一番綺麗だった。

 未だに衰えず降り続ける黒は、次第に口々から漏れ始めた終焉の恐怖の音色に
染まっていく。
 蒸し暑いはずなのに、一滴の汗すらも出てこない。
「……願いは、」
 恐怖に塗りつぶされた世界で、体液に臓物に塗れながら星空を仰ぎ、ささやい
た彼女は、確かに異様で、例えようがないほどに壮麗で、
「……聞き、……届けた……」
 なのに、黒く淀んだ湖に溶けてしまいそうなほどに脆くて、
「トモヤさんっ!!」
 気付けば力の入りきらない足の事も、ふらつく身体のことも忘れて、
 目も見えない少女のか弱い手も、力強く制止する声も、時間をも置き去りに、
独りきりで今にも壊れそうな彼女へと、短くて長い距離を駆け出していた。
「とど、けぇっ!」
 はちきれんばかりに威勢を上げ、あの夜も、いつかの夜もこの夜も、いつも届
くことなく空を切った手の平を大きく広げ、腕を身体ごと遮二無二伸ばす。
 それは誰の声だったのだろうか、それはどう映ったのだろうか。
 眉をひそめた彼女へと手を腕を、自分の身体をぶつけるがままに湖へと、舞踏
会の終わりを飾る主役のように、重なりながら倒れこんでいく。

 より緩やかに流れていく時間。
442群青が染まる 09 ◆ci6GRnf0Mo :2010/05/24(月) 19:16:03 ID:mClJUOWU

 投げ出した身体が水につくと、感じたのは凍えそうなほどの冷たさだった。
 遅れて届いた、水の感触。
 そこはおかしいと思えるほどに尽きる事のなく、寸先すら見えぬほど深く孤独
に埋もれた世界で、まるで空から落ちたように沈んでいく。
 ……だけど、黒をかき消す、動揺すらもない青が全てを忘れさせてくれた。
 そんな何かに身を委ねたように動こうという気配すら見せない彼女に、わずか
ばかりの不安を感じた時だった、不意に手が背中に回ってくる感触が、
 息吹のような声が耳を撫でた途端に、身体が自分のではないかのように水圧に
逆らって一気に上昇していく。
 その抱き寄せる力強さに怒られると、マリンは怒っていると、

「くっ、はは、あはっ、あはははあはははははははははははははは!!」
 そう思っていたのに、水面から顔を出した途端に笑う彼女は、泣いたようにも
思えるほど水を滴らせて笑う彼女は、
 人形のように整っていた顔をどこまでもどこまでも崩して、目の覚めるような
紺碧の双眸をさらに燦爛と輝かせながら、見たことのないほどに大きく、聞いた
事のないほどつややかな声で笑うマリンは、
 ……狂ったように笑い続けている君は、だれ?
 この世界に二人だけしかいないような錯覚の中、
 張り付いた髪もそのままに笑っていたはずの彼女が、名を、水中でその胸を、
あでやかな足をからませて、そのしなやかな腕で尚きつく抱き寄せ、肩へと顔を
うずめた。
「“私”の探しもの、……ミツケタ」
「っ!?」
 そのなまめかしい吐息が背筋まで這っていく。
 それらに気を取られていたせいか、呟きは意識の外へと水のように零れた。
「や、やめ……!!」
 必死に彼女の腕を押さえようとする自分の事などお構いなしに、身体の隅々を
撫で回されていく。
「マリっ、! 「もう少し、このままいさせてくれ……」 」
 未だに顔を肩に埋めたままのマリンに、気を使っているのだろうほどよい彼女
の手の力に、言葉に、何も言えなくなったまま天を仰いだ。
 ……すっかりと静まった周辺に、そして、華麗に浮かぶ二つの月と浮遊感。
 満月には足りず、かといって半月よりかは大きい中途半端な月だというのに、
あの日より美しく感じられたのはきっと……。
「月が、月が綺麗だね」
 自然と漏れた言葉に、
「っ……、」
 何に驚いたのか、うずめていた顔を上げ、目を見開いたまま息を飲んだ彼女。
 明らかにわかるほどに、その表情を露にしていた。
 それでも、釈然としなくても、時間が流れていないかのように呆然と、そして
水面に映った月を見遣る彼女に、聞くことは無粋だとさえ思えてくる。
 だから、代わりに祈った。その瞳で何を見て、何を考えているのか知りたいと。
 そんな彼女の口が何かを紡いだと、
「トモヤさんっ、トモヤさんっ! ご無事ですか?! 返事を、返事をしてくだ
さいっ!」
 そう思った矢先に聞こえた、半ば涙を混じらせた声。
 そこでやっと、少女をそのままにしていることを思い出した。
「早く上が、っ……!?」
 ほんのわずかな一瞬だけ覗かせていた彼女のその表情に、冷たいと思える水よ
りもさらに禍々しく、全身が竦んでこわばる。
 それは見間違えだと、何度も、闇夜の中での見間違えだと、首を振り続けた……。
443群青が染まる 09 ◆ci6GRnf0Mo :2010/05/24(月) 19:16:41 ID:mClJUOWU

「待て」
 まるで悪事を咎めるかのような口調でマリンに手を引かれたのは、水で濡れた
服もそのままに、座り込んだままの少女に近づこうとした時だった。
「な、何……?」
「私が送っていこう。トモヤは身体を休めているといい」
 そう言って代わりに、泣きべそをかいている少女に近づこうとするマリン。
「トモヤさんっ!」
「だ、大丈夫だよ! マリンは信頼できるから」
 そうだ……マリンは信頼出来るんだ……。
 必死に宥めるその言葉に、満足そうに彼女が頷いて、少女を棒切れのように軽
々と持ち上げた。
「わ、私もいっしょっ……!」
 軽快に跳ねた音は、少女の言葉も共に踊るように空へと連れて消え行った。
 ……誰もいなくなると聞こえ始めた静けさに、先刻までの出来事が嘘だったの
ではないかとさえ思えてくる。
 一つ、二つと深呼吸のようにも思えるほどの溜息をついた。
 そうして、意図せず疲れた身体を手近な木に預けると、もはや意識を繋ぎ止め
て置く事はできなかった。
444 ◆ci6GRnf0Mo :2010/05/24(月) 19:17:15 ID:mClJUOWU
以上で、投稿を終了します。
445名無しさん@ピンキー:2010/05/24(月) 19:19:26 ID:CKh/cUf8
GJ!
ブリュンヒルドいいなぁ
でもやっぱりイリスがいいです・・・・・(´;ω;`)
446名無しさん@ピンキー:2010/05/24(月) 19:30:22 ID:GnIpAZ2f
ブリュンヒルドの昔の凶行の理由はなんなのか
447名無しさん@ピンキー:2010/05/24(月) 20:00:42 ID:SkJX7mA1
>>444
GJ!
448名無しさん@ピンキー:2010/05/24(月) 20:43:05 ID:6vMCJmCX
GJです!
マリンやっと病んできたなぁ、続きが楽しみです
449名無しさん@ピンキー:2010/05/24(月) 20:56:02 ID:1VqAdFUX
不審物がやってきての作者さんに質問。

ネジの元ネタはカドゥケウスで合ってる?
450名無しさん@ピンキー:2010/05/24(月) 21:20:00 ID:CKh/cUf8
>>444
GJ!
投下に気付かずにレスしたもんだから何か無視したみたいになっててごめんなさい
451名無しさん@ピンキー:2010/05/24(月) 21:28:24 ID:rVjhjK+j
>>450
>>444が許しても俺以外の住人が許さない。

まぁ、俺は許すけど。
452名無しさん@ピンキー:2010/05/24(月) 21:47:55 ID:cZ9qNo/r
GJ!

今回は鬱陶しい変な関西弁男出てこなくてよかったわ。
このままフェードアウトしてくれるとうれしい
453名無しさん@ピンキー:2010/05/24(月) 22:04:52 ID:NgKRQhyv
>>449
どう考えてもマスターキートンだろ……
454名無しさん@ピンキー:2010/05/24(月) 22:40:26 ID:M7f4x41A
とくい 主 イン
455名無しさん@ピンキー:2010/05/24(月) 22:48:52 ID:mFOm6gVF
投下乙でした

病んできたマリンかーあーいーよ かあーいー
456名無しさん@ピンキー:2010/05/24(月) 23:58:41 ID:1VqAdFUX
>>453
そうだったか…
ゲームのやり過ぎかもしれん…
ちょいと適当なSS考えてくる。
457名無しさん@ピンキー:2010/05/25(火) 00:30:10 ID:FjLuTi/o
>>456
楽しみにしてるよ
458名無しさん@ピンキー:2010/05/25(火) 01:21:53 ID:QElPBcRU
ちょっとした話w

ある秋の季節に同窓会やったんだな。中学のね。

みんなもう酒の飲める歳だから、酒をガバガバ飲むわけよ。
で、ある奴が中学の頃から好きな奴がいて、酒の勢いで告ろうとしたわけよ

ちなみにある奴…仮に田中としよう。ルックスはまあ、中下で、女の方は佐藤として、ルックスはかなり良かったな。

いざ告ろうとした時、俺含め数人の野郎により佐藤の隣だった女性を押して田中の告白をその女にさせる形にしちゃったんですよ。

女性は…柳(仮)として、こっちはぶっちゃけ学年で一番可愛かった。

田中は何故か頭をめちゃめちゃ下げて告白したから柳に告ったとわからない。

これ見た時、どこのラブコメwwって思ったね。

田中の奴かなりの音量で言ったから周りがしらけて皆の注目の的になってたから、体がぷるぷるしていた。

柳はめちゃくちゃ美人で田中は………だから少し酷い事したなと思ったね。

まあ佐藤に告る時点でオチがわかっていたけど、柳になった時点で終わったなと思ってたわけよ。俺含めその場にいた奴らが。

…けど、結果は予想外なことになった…。

「やっと…言ってくれたね……」

びっくりしたね。柳が田中の告白をOKしたから。

後日田中から聴いた話なんだが、柳と田中は小学校が同じでよく二人で遊んでいたらしい。

更に驚くべきことは小6の最後に柳が田中に告白したらしい。まあ、田中は性格が聖母並に良い奴だからな。

けど、田中がうやむやにしてしまい結局なかったことに。馬鹿かこいつは?

そして月日が経つにつれ、田中は佐藤のことが好きになって、その想いを今日この場で打ち明けて、俺達のノリで柳に告って、OKもらって今にいたる。

柳に告ったことに気付いた田中はかなり焦っていて誤解を解こうとした時

柳が田中に抱きつき、キスを…ディープやったなあれは

そしたら第2のハプニングが起きた。

「どけよ!!柳!!」

佐藤がキレました。佐藤も田中のことが好きだったらしいよね?この展開みたら。

「私が告られる筈だったんだから早くどけ!!」

相当悔しかったんだろうね。目が据わってたもん。

佐藤は無理やり柳を田中から引き剥がし、柳と殴り合いに。
まあ、その後いろいろあり、既成事実もどきを柳に作られ、交際中の田中。

羨ましいやらそうでないやら…


以上ほら話でした。
459名無しさん@ピンキー:2010/05/25(火) 01:25:56 ID:QElPBcRU
駄文ですいません。

誤字脱字があるかもしれません。


これから精進していきたいです。
460名無しさん@ピンキー:2010/05/25(火) 01:49:54 ID:BH+HiSxr
ちょっと面白かったw
GJ!
461名無しさん@ピンキー:2010/05/25(火) 01:53:13 ID:iNfrr24f
普通にSSにしてほしいわ、続き(佐藤の逆襲)読みたいかも
462名無しさん@ピンキー:2010/05/25(火) 09:05:36 ID:6bxgql1k
>>458
おもしろかったw てか一回目読んだとき最後のオチに気づかなかったw
463名無しさん@ピンキー:2010/05/25(火) 17:52:04 ID:At7ofpmq
三角関係 バトルはツボ…結局ヤンデレは修羅場や病んでる時が一番面白い。
だって他の属性と違ってパートナーと順調な時は普通のバカップル&やきもち女
でしょう。
464名無しさん@ピンキー:2010/05/25(火) 20:13:56 ID:A+exsfYF
ヤンデレバトルロワイヤルとな
465名無しさん@ピンキー:2010/05/25(火) 20:36:21 ID:QElPBcRU
誰も覚えていないと思うけど、中途半端で終わらせるのは嫌なので投下します。


ヤンデレ世紀です
466名無しさん@ピンキー:2010/05/25(火) 21:12:17 ID:QElPBcRU
ふう…今日も朝からいい天気だな。

「ねえ、しー君。昨日公園のベンチでしー君と一緒にいた女誰?」
こんないい天気の日には「待て!!しおり!!あれは違うはばばばばっ!!!?」して1日を過ごしたいな。

…そして僕の目の前でまた1組のカップルが誕生した。……確かあれは隣のクラスの石田君と木根さんだったけ。仕方ない先生に二人は欠席です。と伝えてあげるか。

これで今月の登下校中、5組のカップルが誕生した。

の内僕の学校から2組。

「本当にすご「よっ、瀧斗〜。」

……僕の数少ない友達(ほとんどの友達が不登校?になってしまったから)の中林 拓海(なかばやし たくみ)が声をかけた。
「おはよう。」
「おはよう!おい、見たか!?またヤンデレが動いたぜ!」

「見たよ。僕らの学校からだったね。」

「最近多いよな。」

うん。後さk「お〜い!」

…二回目だよ言葉遮られたの。トホホ…
「wwwよっ土田ww」 シュビッ

「おはようっ!佐藤君!偶然だね♪」

手を挙げて挨拶した中林を無視し、僕だけに挨拶をする土田 祥子(つちだ よしこ)さん。

大きな目を爛々と輝かせながら、肩よりも少し長い茶毛を揺らし、僕(中林もいるが)の方へ走って来た。

「アタック〜♪」

「!!!」

…訂正、僕(もちろん中林もいます)の方へ飛び付いてきた。

「い‥痛いよ、土田さん……。」

「もうっ!佐藤君そこは『おはよう』でしょう。」

「そのコメントだと、昨日『違うでしょ!そこはもっと親しみのある言葉……』って言っていたよね?」
「昨日は昨日、今日は今日だよっ」

相変わらずのテンションのおかしさだ。
「W「俺の存在がwww」
…中林、次僕の言葉遮ったら、
「ただじゃすまないよ?」

「「何が?」」

中林と土田さんがハモってそう言った。面白い。

「………おい、しげみっ、何ハモってんだよっ」?

「す・すいません…」
土田さんが中林とハモったことが大層気に入らなかったのか、かなりドスの効いた声で中林を圧倒していた。………仕方ない。数少ない生き残りの友だ。助けるか。
467名無しさん@ピンキー:2010/05/25(火) 21:44:52 ID:QElPBcRU
「それよりも土田さん。いつもいつも偶然って感じだけど、いや偶然じゃないよね?」
えっ?偶然だよ〜♪」 ダキッ

「うんわかった。とりあえず、抱きつかないで」
「偶然だよ〜」
どんな偶然!?

こんなやり取りをしていたらいつの間にか酒屋さんの前にまで来ていた。僕の中ではこのやり取りは楽しいのかな?
と、そこで

「おはよう」
「おはよう」「オッス!」「それでね〜昨日は…

数少ない友達パート2の井上 聡(いのうえ さとし)が僕達と合流した。三者三様の挨拶……一人違うか…今なお僕の隣にいる土田さんだけが井上を無視して、僕に話しかけている。挨拶ぐらいしようよ…。
「相変わらずだな」
「そっちもね」
「〜♪」
井上の後ろから抱きついている一人の女性に挨拶をした。
「おはよう、都塚さん」
「おはよう、佐藤」
「おい、玲お前いつからいた?」
「今さっき♪」

都塚 玲(とづか あきら)さん。容姿端麗、文武両道、クールキャラの人だ。
とても長い黒髪をなびかせながら歩く姿は本当に華麗で現代の大和撫子みたいな人だ。常にクールだが井上の前だと、メチャクチャデレるのがギャップ萌というのか、本当に可愛いらしい方だ。

「おい、都塚さん。私の佐藤君に媚びいれないでよ…」

土田さん、僕はあなたの物じゃありません。

もうおわかりだと思うけど、土田さんはヤンデレです。僕に対する。過去の出来事で危うく童貞が奪われる時もあった。

都塚さんも今は過激な動きを見せていないが、多分井上loveのヤンデレだろうと予想している。

「何を言うの?佐藤はあなたの裸体でも妄想していたんだろう」
してません。

「えっ!?マジ…!?」
違うよ。

「キャ♪佐藤君たら〜…見たい?」

「全然」
「恥ずかしがっちゃって〜♪」

ダメだ。聞く耳持ってくれない。

「玲離れてくれ」
「なんでだ?」
「邪魔」
「またまたそんなこと言って、本当は嬉しいのだろう?」

「俺空気?」

向こうも向こうで大変そうだな。てか中林、泣きそうになんないでよ。毎度。

468名無しさん@ピンキー:2010/05/25(火) 22:23:43 ID:QElPBcRU
「早く離れろ」
「いやだ」
「いいから早く、この貞子」
「ぷっwww」
「!!!!!!」
ぶんっ
「コペルニクス!?」
井上の発言に笑った中林が突如地面にへばりついた。
「何がおかしいんだ?しげみ?」
ちなみに中林が何故女子から“しげみ”と呼ばれているかというと
「“中”途半端な“林”だからっ」と、この前土田さんから聴いた。
「何もおかしくありません…」
地面にへばりつきながら喋るなんて器用だな。
「なら何故笑った?……しげみ覚悟しろ。今日こそお前を……」なんか展開ヤバくない?
「イケイケ〜玲ちゃん!」
応援やめて!くそ、また助けなけなきゃ。
「そ・そういえば、井上はポニーテールが好きだよね!メチャクチャ?」
「ああ、大好きだ」
「いえ〜い!!ポニーテール最高!愛してる!」
「可愛いもんね!」
「「!! 」」
よし、なんとか食いついた。都塚さんが中林への攻撃を中断し、ポニーテールにしていた。…ついでに何故か土田さんも食いついた。
「…うん!どうだ似合うか?」
「ああ////」
なんかいい感じになったな。
「 」いそいそ
…土田さん、それはちょんまげだよ…。
「…ああ、もう別にいいもん!素の自分で頑張るし」
まあ、今のままでも可愛いと思うけど。「助かった…サンキュー瀧斗」
「どういたしまして」「いつつ…俺先に学校行って保健室寄るわ」
「ああ、うん」
小走りで先を急ぐ中林。
「おい、しげみ」
しかし、都塚さんが中林の前に立ちはだかった。
「ひっ…なんでしょう?」
「…私になんか言うことあるだろう」
「!!す・すいませんでした−」
おお!見事に90度だ。上手いな中林。「……ちっ、まあいいよ」
都塚さんはまだ納得のいかなそうな顔でしぶしぶ井上の隣に戻っていった。
「ねえ、佐藤君はこのままでも大丈夫だよね?」
土田さんが自分の髪の毛を触りながら尋ねてきた。
「うん」
「へへへ♪」
「どうした玲?浮かない顔して」
「………」
パサッ
「やっぱり私も素で頑張る」
都塚さんは変に土田さんに対抗意識があるのか、ポニーテールをやめていつも通りになった。
そして中林は先に学校に向かったので、その後、中林を除いた4人で登校しました。

以上登校中の出来事でした。
469名無しさん@ピンキー:2010/05/25(火) 22:26:03 ID:QElPBcRU
投下終了です。


すいません。トラブルが起き、投下が変に時間がかかってしまいました。駄文なのにさらに迷惑をかけてすいませんでした。
470名無しさん@ピンキー:2010/05/25(火) 22:54:19 ID:epH6svLG
471名無しさん@ピンキー:2010/05/25(火) 23:21:47 ID:p9MuT77m
なにがなんだかわかりにくい
乙でした
472名無しさん@ピンキー:2010/05/25(火) 23:24:48 ID:ISRc+mMv
>>469

もう少し地の文がほしかったかなと贅沢を言ってみる。



ヤンデレの愛情表現による行動が失敗する話とかはないかな?

彼が浮気(ヤンデレ目線)していると思い込み、ナイフとかで男や浮気相手に迫るんだが、運悪く通りがかった警官に確保されたり

男が学校でラブレターを貰い、それを目撃したヤンデレが、こっそり盗んで処分しようと彼のカバンを探っていると、赤の他人に現場を見られて学校中に広まり、泥棒扱いされて学校を停学(退学)になったり

深夜、ピッキングなどで不法侵入したヤンデレが男の部屋に忍び込み、熟睡した男に迫ろうとしてベッドに入るんだが、男の寝相が悪く、隣りに潜んでいたせいで、体を蹴られたり殴られたり、最終的には押しつぶされて、日が昇るまで男の下敷きになっていたとか
ヤン行動をしようとしたら邪魔が入ったり、ドジを踏んだりして失敗する話が読みたいです。
473名無しさん@ピンキー:2010/05/25(火) 23:38:31 ID:8Uh8+x5k
>>472
そこまで書くなら自分で書いたらいいんじゃないかと……。

そういえばエロゲで大根で刺し殺そうとして失敗したのを思い出した。
474名無しさん@ピンキー:2010/05/25(火) 23:45:09 ID:ISRc+mMv
>>473
投下しようかなとは考えてるんだけど、序盤の設定からつまづいてる。
どうしても序盤の展開が思い浮かばない。
ありきたりな展開から始めようとしても、どう繋げようか迷っちゃう。
簡潔的に言うと、文才がない。
475名無しさん@ピンキー:2010/05/25(火) 23:49:16 ID:QElPBcRU
>>471
本当に申し訳ない


頭の中では出来上がっているんだけど、いざ、言葉にしてみると表現の仕方が上手くいかなくて……

出直してきます。
476名無しさん@ピンキー:2010/05/26(水) 00:22:41 ID:yMwhjqQ8
>>474
書き出したら次々と頭に浮かんでくるものだから書いてみたら?
477名無しさん@ピンキー:2010/05/26(水) 12:39:13 ID:I7d5Xe2F
つーか書きながらの投下はやめろと何度言えば
478名無しさん@ピンキー:2010/05/26(水) 14:14:56 ID:a98ZC8N5
>>473
kwsk
479名無しさん@ピンキー:2010/05/26(水) 19:56:07 ID:ozY5I9Qw
>>473
大根ww
480名無しさん@ピンキー:2010/05/26(水) 20:04:47 ID:esgjvstK
ヤンドジとか言って前に無かったかそれ
481名無しさん@ピンキー:2010/05/26(水) 20:20:39 ID:GPya8gYP
好かれてる 有る
482名無しさん@ピンキー:2010/05/26(水) 20:30:13 ID:GPya8gYP
当たる
483名無しさん@ピンキー:2010/05/26(水) 20:31:57 ID:1Iwq+vts
>>481

いい加減にしろよ
484 ◆8jnT/g1A3Q :2010/05/26(水) 20:59:25 ID:uBfwq/qX
サトリビトを書いているものです。
12話ができたので投下します。
よろしくお願いします。
485サトリビト ◆8jnT/g1A3Q :2010/05/26(水) 21:00:28 ID:uBfwq/qX
「・・・え?」
「こんなことをしておいて言うセリフではないけど・・・もう恭子ちゃんとはキスできない。いや、したくない」
あの占い師が言っていた4回の選択のうちの一つが今だったのかもしれない。
そうだとしても・・・自分の選択に後悔はしていない。
「ごめん、陽菜・・・俺に何か用があったんだろうけど、それは明日でもいいかな?これから恭子ちゃんと話し合いたいから」
少しの間を経た後、陽菜が返答を返した。
「・・・慶太が言ったこと全部本当なの?それに嘘偽りは絶対ないの?」
「あぁ。キスしたことも、恭子ちゃんに恋愛感情がないことも」
「・・・他に好きな人がいることも?」
陽菜が好きなことも、
「本当だ」
「・・・分かった。私、慶太を信じるから」
その言葉を最後に電話が切れた。
陽菜には申し訳なかったが、僕にはこれからしなければいけないことがある。
目の前には放心状態の恭子ちゃん。先ほどからピクリとも動いていない。
キスをしていた相手から突然に拒絶されたんだ。そうなって当然だろう。
「恭子ちゃん、俺の言う事を聞いてくれないか?俺は―――」
「い、いやぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!」
僕の言葉にようやく意識を取り戻した恭子ちゃんは、頭を振り乱して錯乱し始めた。
「嫌っ!!嫌だよ、聞きたくない!!どうして!?私の何がダメなの!?直すから!!お兄ちゃんが嫌いなところ全部直すから!!だから好きになってよ!!私だけを好きに
なってよぉぉぉぉ!!!!」
恭子ちゃんは全力で抱き、いやいやと懇願してきた。その目には沢山の涙が見える。
「ごめん・・・直すとか直さないとかの問題じゃないんだ・・・ただ純粋にその人の事が好きなんだ。その人以上に他の女の人は好きになれないだけなんだ」
「誰!?お兄ちゃんの好きな人って誰!?陽菜さん!?結衣さん!?」
「・・・陽菜だよ。昔から、7年前から俺は陽菜一筋だ」
「あ・・・ぁ・・・」
僕にしがみついていた恭子ちゃんの手が離れた。その足はまるで泥酔してるかのごとくおぼついていない。
「どうした恭子!!」
先ほどの叫び声を聞きつけたのだろう、恭子ちゃんのお父さんとお母さんが部屋にやってきた。
だが二人はこの部屋の惨状と漂っている不穏な空気に言葉を失った。
この沈黙はしばらく続いたが、最初に恭子ちゃんがそれを打破した。
「アハ・・・アハハハ・・・そっか・・・そう言う事か・・・」
(きっとお兄ちゃんは私を試しているんだ・・・私がどれだけお兄ちゃんの事を愛しているか・・・何処まで信じていられるか・・・)
恭子ちゃんの藁にでもすがりつくような考えに心が痛くなる。でも・・・
「恭子ちゃんを試しているんじゃない。これは紛れもない事実だ」
「え?」
僕の言葉に恭子ちゃんは目を丸くして驚いた。
もう心の声に反応した事は問題ではない。それよりも恭子ちゃんに真実を伝えるんだ。
「恭子ちゃんはかわいいし、頭もいい。ちょっと甘えん坊のところがあるけど、心だって優しい・・・」
そう、恭子ちゃんはものすごくいい子なんだ。そんな子が・・・
「だから・・・俺なんかを好きだなんて言っちゃダメだ!俺は恭子ちゃんの思っているような男じゃない!」
この場面には恭子ちゃんの両親だっている。本当はそんなところで言いたくないんだけど、今言わないときっと恭子ちゃんは僕という人間を勘違いしたままになる。
それだけは避けなければいけない。
「だってそうだろ!?口では陽菜が好きだって言ってる割に、岡田と付き合っている!それに・・・恭子ちゃんにもキスをしたんだぞ!」
僕の言葉に恭子ちゃんの両親が驚こうが今は関係ない。大事なのは恭子ちゃん本人なんだ。
「誰にでも手を出すような最低男なんかを好きになっちゃダメだ!絶対に後で後悔する羽目になるよ!」
486サトリビト ◆8jnT/g1A3Q :2010/05/26(水) 21:01:03 ID:uBfwq/qX
つらいかもしれないが、これが現実だ。
僕はいつも誰かに嫌われることを恐れて、誰にでもいい顔を作ろうとしてきた。例えそれが恭子ちゃんや岡田、姉ちゃんたちを苦しめる結果になったとしても。
恭子ちゃんにとっては優しくていいお兄ちゃんに見えたかもしれないが、優柔不断で八方美人、おまけに無節操なのが本当の僕なんだ。
「俺の事殴りたいなら殴ってもいい、カッターで切りつけたいならそうしてもいいよ。だから・・・もう俺の事なんか好きだって言わないで!」
言ったからにはもう後戻りはできない。
例え恭子ちゃんに嫌われようとも・・・例えお兄ちゃんともう思ってくれなくても・・・すべては自分のまいた種が原因なのだから。
再び沈黙が訪れる。
その後、しばらくして恭子ちゃんのお母さんが口を開いた。
「・・・今言ったことは全部本当なの?好きな子がいることも・・・その子とは別に付き合ってる子がいることも・・・そして・・・恭子とキスしたことも・・・」
きっと恭子ちゃんのお母さんも僕の事を信頼していたんだろう。その目には隠しきれてないほどの戸惑いが浮かんでいた。
「全部本当です」
次の瞬間、恭子ちゃんのお父さんが僕に向かってきた。そして、

バチーーーーン!!

「何て奴なんだ君は!黙って聞いてれば・・・よくもぬけぬけと・・・!!」
(よくも恭子の心を踏みにじったな!あの子は君を本当の兄と慕っていたのに・・・!)
思いっきりぶたれたのに痛みを感じない。いや、感じないというよりは足りないと言った方が正確だ。
恭子ちゃんの負った痛みに比べたらこれくらい・・・
「帰ってくれ・・・今すぐ帰ってくれ!!」
容赦のない言葉を突きつけられる。だがそれに反して僕の足は動かなかった。
当たり前だ。この世の中に好きな人から嫌われることを簡単に容認できる人などいるのだろうか?
さっきまでは嫌ってくれと言っていたのに、心の底ではやっぱり嫌われたくないと思っている。元の関係に戻りたいと願っている。
「ごめんね恭子ちゃん・・・本当にごめん・・・もう二度と恭子ちゃんの前に現れないよ・・・」
でも消えなければいけない。納得しなくても、本当はもっと一緒にいたいと思っても・・・恭子ちゃんのために消えないといけない。
僕は俯いたまま部屋を出ていこうとした。そのとき―――
「嫌っっ!!」
ものすごい力を背中に感じた。
視線を下ろすと小さな手が僕のお腹に回されていた。振り返ると小さな頭も見える。
「どこにも行かないで!何しててもいいから!陽菜さんが好きでも構わないからっっ!!」
恭子ちゃんは泣きじゃくりながらも、僕の歩みを止めようと必死だった。
「だから私の前からいなくならないでよぉぉ!!ずっとそばにいてよぉぉ!!」
「・・・ごめん・・・」
「そんなのズルイよっっ!!私をこんなに好きにさせておいて、後でいなくなるなんて・・・そんなのズルいよっっ!!」
僕もそう思う。サトリの癖に恭子ちゃんの事をまるで理解していなかった。挙句、土壇場で期待を裏切ってしまうなんて・・・
「・・・死んでやるから・・・お兄ちゃんがいなくなるなら死んでやるからぁぁぁぁ!!!」
そう言って恭子ちゃんはカッターのあるところまで走り出した。一瞬の出来事に両親たちは対応が遅れる。
だが僕はこうなるかもとひそかに予感していた。
「・・・絶対に死なせないよ」
恭子ちゃんはカッターを拾い上げると、一気に自分の手首めがけて引いた。

ブシュッ!!

「!」
辺りに血が飛び散る。だが刃物がカッターだったこと、そして切ったのが掌だったことで血はそれほど吹き出ることはなかった。
「あ・・・あぁ・・・」
「言ったでしょ?絶対に恭子ちゃんは死なせないって」
487サトリビト ◆8jnT/g1A3Q :2010/05/26(水) 21:01:41 ID:uBfwq/qX
「ご・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」
「恭子ちゃんが謝ることは何もないよ。俺が勝手にやったことなんだから」
僕は激痛の走る手でカッターナイフをひったくる。
「でもこれは危ないから没収ね」
刃を元に戻しポケットに入れる。これでこの部屋にはもう恭子ちゃんを傷つけるものはない。・・・唯一人を除いては。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい・・・」
(お兄ちゃんを傷つけたお兄ちゃんを傷つけたお兄ちゃんを傷つけたお兄ちゃんを傷つけたお兄ちゃんを傷つけたお兄ちゃんを傷つけた・・・)
恭子ちゃんが謝る必要は何処にもないよ。だって恭子ちゃんは何も悪くないんだから。
「・・・最後に少しだけいいかな?」
恭子ちゃんは僕を切りつけたことに動揺していた。腰が抜けて、うつろな目を地面に向けながらずっと謝り続けている。
・・・多分これから話すことも聞いてくれないだろう。
でも逆に都合がいいかもしれない。
「・・・本当はね?初めて恭子ちゃんと逢ったのって、病院の先生に頼まれたからなんだ。恭子ちゃんの悩みを聴いてあげてって」
そういえば恭子ちゃんと出会ってから、もう3年が経ったのか。
「それで最初、俺はなんて考えたと思う?無理です、俺にはできませんって」
僕はあの時から少しも変わっていないんだな。
「でもね?恭子ちゃんと会って、たくさん話をするうちに、やっぱり引きうけて正解だったと思ったよ」
恭子ちゃんは本当に素直でかわいくて、なによりこんな僕に懐いてくれて・・・
「俺の事をお兄ちゃんと呼んでくれたときなんか、あまりの愛くるしさに意識が吹っ飛ぶかと思ったよ」
確か何でもお願いを聞いてあげるって言ったらそう呼んだんだっけ。本当に欲のない子だよね。
「この前作ってくれたカレー、次の日もおいしく食べたよ。二日連続だったのにおかわりまでしちゃっで・・・ざ・・・」
僕は何をやっているんだ・・・泣きたいのは恭子ちゃんのはずなのに・・・
「最近は夢にまで出でぎでざ・・・実はざ・・・俺の方が重症だっだり・・・ずるん・・・だよね・・・」
これが最後なんだ・・・今日でお別れなんだ・・・もう恭子ちゃんには会えないんだ・・・!!
「今までありがどう!!ぼんどうにだのじがっだよ!!」
僕の悲痛な叫びにも恭子ちゃんは全く反応を示さなかった。やはり聞こえていなかったのだろう。
そのまま部屋の外に向かって歩いていく。
ドアの近くには恭子ちゃんの両親がいたが、さっきまでの怒りは完全に消沈しており、なんと声をかけていいのかわからないという表情をしていた。
そんな彼らに僕はゆっくりと近づいていき、あるものを手渡す。
「これ・・・お返ししますね」
僕の汚い血で汚れたカッターナイフ。
「本当にご迷惑をおかけしました。謝っても済まないことは重々承知していますが・・・」
「そ、そんなことより早く病院に電話―――」
「いえ、それは絶対にしたくありません。もし病院に行くと傷の事を聞かれてしまいます。もう、これ以上恭子ちゃんに迷惑はかけたくないのです」
それでもお父さんは渋ったが、僕の熱意に負け、ついに折れた。
「・・・一つ聞いてもいいかね?君は恭子の事をどう思っているんだ?正直に答えてくれ」
「大好きですよ。命をかけれるくらいに」
僕にとってこの世で唯一のかわいい妹なのだから。
「・・・こんな奴のお願いなんて虫唾が走ると思いますが、それを承知でお願いがあります。今日は恭子ちゃんのそばにずっといてあげて下さい」
「君に言われなくともそのつもりだ」
「ありがとうございます」
部屋を出ていく前にもう一度だけ恭子ちゃんを見る。
僕とは似ても似つかないかわいい女の子。それでも・・・確かに僕の妹なんだ。
「バイバイ、恭子ちゃん」
その言葉を最後に僕は恭子ちゃんの家を出た。
488サトリビト ◆8jnT/g1A3Q :2010/05/26(水) 21:03:41 ID:uBfwq/qX
「ただいま・・・」
返事はない。理由は明かりの消えている家が物語っていた。
・・・誰もいなくてよかったよ・・・
今は誰にも会いたくない。誰とも話したくない。
たった一人の人間との別れに、僕は今までで一番の絶望を感じさせられた。
そのまま暗い廊下を電気もつけずにとぼとぼと歩く。

『絶対においしいカレーを作るから・・・待っててね///』

リビングに入ると、そんな声が聴こえた気がした。
でも、もうその声は聞くことはない。もう二度と。
僕はここでの思い出を振り払うかのように頭を大きく振り、部屋へと向かった。
だが、その間も色々な事が走馬灯のように思い出される。
この玄関では恭子ちゃんに抱きつかれて、それが原因で次の日から姉ちゃんが冷たくなったこと。
この廊下では恭子ちゃんが一生懸命に雑巾がけをしていたこと。
この階段では恭子ちゃんが滑り落ちて、僕がその下敷きになったこと。
普段は気にも留めないはずなのに、今日はどの場所を見ても涙が出そうになる。
やっとのことで部屋にたどり着く。そしてドアを開けると、

「ん〜・・・どうしたのぉ〜、お兄ちゃん?」

僕のベッドに今一番会いたい人が横たわっていた。
「!な、なんでここ―――」
だがその人は一瞬で僕の目の前から姿を消した。いや、最初っからこの部屋にはいなかったのだ。
・・・ついに幻覚まで見てしまうなんて・・・っ!
こらえていたはずの涙が堰を切ったようにあふれだす。
誰か教えてくれ!僕は一体どうすればいい!?どうすれば恭子ちゃんの事をあきらめきれる!?
僕は布団にしがみついて泣き続けた。
今からでも間に合うんじゃないか?今からでも必死に謝れば、また一緒に遊んだりできるんじゃないか?
そんなことを何度も考えてしまう。
そのたびに携帯を握ってしまうが・・・あと一歩が踏み出せない。
「・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」
恭子ちゃんは今頃どうしているのだろうか?
信じていた人に裏切られて、泣いているんじゃないだろうか?苦しんでいるんじゃないだろうか?
そう思うと申し訳ない気持ちよりも、恭子ちゃんにしてしまったことに対する怒りの方が溢れていった。
「くそっ!くそっっ!!くそぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおぉぉぉぉ!!」
何度も壁を殴る。そのたびに右手は悲鳴をあげ、掌の傷からはこれでもかというくらいの血が流れ出てきた。
でも僕はこの行為をやめなかった。
この痛みはこれまでに恭子ちゃんを傷つけた分、そしてそれに対しての戒めとして。
この晩、僕は意識を失うまで壁を殴り続けた。
これが夢だったらいいのにと思いながら・・・
489サトリビト ◆8jnT/g1A3Q :2010/05/26(水) 21:04:23 ID:uBfwq/qX
次の日の朝、僕の儚い夢はかなう事はなかった。
学校の制服を来ている僕、鏡を見なくても分かる腫れぼったい目、そして真っ赤な右手。
これらの事から昨日の事が現実だと突きつけられる。
時計を見ると午前5時。起きるにはまだ早い時間だったが、右手に残る痛みのせいでこれ以上寝られそうにもなかった。
「・・・起きるか」
昨日の事で重くなっていた足を無理に動かせて部屋をでる。
この時間なら母さんがいるはずのリビングには誰一人いなかった。あるのは机の上に置かれた手紙が一通だけ。

『お母さんとお父さんは急に親戚のお手伝いに行かなければいけなくなったので、しばらくは家に帰りません。だから後の事は祥子と慶太にまかせるね』

昨日までの僕だったらこの手紙を見た瞬間、姉ちゃんとの生活を想像して、恐怖から鳥肌が浮き出ていたかもしれない。
だが今は何も感じない。ただ父さんたちはしばらくいないのか、くらいにしか思わなかった。
そのとき背後に人の気配を感じた。
「け、慶太!?」
姉ちゃんの目の下にはクマができていた。
「な、何でこんな朝っぱらから!?」
それはこちらのセリフでもあったが、クマができていることから、多分今の今まで眠っていないのだろう。
「それに昨日は恭子の家に泊ってくるんじゃなかったのか?」
その一言が僕を再び奈落の底へとつき堕とす。
「・・・そのつもりだったんだけどね」
「?まさか喧嘩でもしたのか?」
喧嘩なんて生易しいものじゃない。だってこれは・・・
「・・・恭子ちゃんに別れを告げてきた。ただそれだけの事だよ」
「・・・は?今なんて―――」
「ごめん、今日は一人にして」
今は誰にも慰められたくないし、こんな自分を見てほしくもない。
そう言い残して僕は再び部屋へと向かおうとした。
姉ちゃんは一瞬あっけにとられていたが、数秒後には僕を追いかけてきた。
「待てって!!」
むりやりに僕の肩を掴んで振り向かせてくる。
「恭子に別れを告げたってどういう事だよ!」
・・・なんで姉ちゃんはしつこいんだ?一人にしてと言っただろ?
「・・・そのままの意味だよ。もう金輪際、恭子ちゃんと会うのをやめたんだ」
「な・・・っ!」
(あれだけ仲が良かったのにもう会わない!?一体何があったっていうんだよ!)
言いたくない。これ以上思い出したくもない。だからもうほっておいてくれ。
だが姉ちゃんは諦めるどころか、さらに追及してきた。
「何があったのか言えよ!お前がそんな風に考えるなんておかしいだろ!?」
・・・姉ちゃんに僕の何が分かるって言うの?実は私もサトリです、とでも言いたいのか?
「・・・」
「黙ってちゃ分かんねえだろ!」
これは僕の問題だ。それなのに何でかまってくるんだ?
姉ちゃんに対して怒りをぶつけるのはお門違いだと分かってはいたが、口は止められなかった。

「うるさいな・・・姉ちゃんには関係ないだろ」

「っ!・・・」
(ウチが関係ない・・・慶太が悩んでいるのに・・・関係ない・・・関係ない関係ない関係ない関係ない関係ない関係ない・・・)
それっきり姉ちゃんは追及の手をやめた。その様子に強烈な後悔を感じたが、言葉は素直には出なかった。
「もう俺にかまわないでくれ・・・」
姉ちゃんとの会話を終わらせて、もう一度部屋へと向かう。その際、姉ちゃんがどんな顔をしていたか見向きもしないで。
部屋に戻った僕は痛みに耐えながらも無理矢理に眠った。
490サトリビト ◆8jnT/g1A3Q :2010/05/26(水) 21:05:22 ID:uBfwq/qX
目が覚めると夜になっていた。
一体昨日の夜から僕はどれだけの時間を睡眠に費やしたのだろうか?
しかし睡眠時間に反比例するように、心労の方は回復する兆しが見えなかった。
「こんな状態でも・・・腹は減るんだな・・・」
ずっと眠っていたからと言って、丸一日何も食べていないとさすがにお腹は減る。
何か食べようと思い、起き上がると、机の上に今朝はなかったものが置かれていた。
不格好で大きさがそれぞれ違うおにぎり。その横にはメモも残されていた。
[もし迷惑じゃなければ食べて下さい]
それには普段は傲慢で決して人に弱いところを見せない姉が、たった一人の男に対して不安を感じ、けれども心配してやまない気持ちが込められていた。
メモを読みながら痛みのないほうの手でおにぎりを掴む。それだけでもご飯がぽろぽろ崩れた。
「・・・全然握ってないだろ」
なんとか口に運ぶことができた僕は、一口一口ゆっくりと噛む。
「・・・中身、何も入ってないのかよ」
塩加減も悪く、食べ続けると腎臓でも痛めそうな味だ。
けれど・・・初めて姉ちゃんの料理がおいしいと思えた。
きっと僕の事をこの世で一番心配してくれる人。普段は口にしないけど、心の中では僕の事を一番に考えてくれる人。
そんな人に対して僕はまた裏切るような行為をとってしまった。
「何処まで堕ちれば気が済むつもりだよ・・・」
今からでも遅くはない。恭子ちゃんのときと同じ過ちは繰り返したくない。
思い立ったが吉日、僕はすぐに姉ちゃんに電話をかけた。電話なのはさすがに面と向かって話すのには心の準備が足りなかったからだ。
「・・・なんか用か?」
電話をかけたはいいが、いざ謝ろうと思うとなかなか言葉が出てこない。
「・・・」
「・・・ウチの作ったおにぎりは・・・その・・・食べたのか?」
僕の沈黙に何かを感じ取ったのか、姉ちゃんの方から話を振ってきた。
「あ・・・うん・・・おいしかったよ」
「ほ、ほんとか!?」
その声に活気が戻ったのが分かる。それだけなのに、なぜか気持ちを素直に言える気がした。
「本当だよ。今まで食べたおにぎりの中でも最高だったよ・・・それと・・・さっきはごめん。俺ときたら、姉ちゃんにあたるような真似をしてしまって・・・」
やっぱり姉ちゃんには僕の事がよくわかるのだろう。いつもとは違う、まるで母親のような雰囲気で話し始めた。
「・・・慶太と恭子の間に何があったのかはもう聞かない。だけど・・・ちゃんと話はつけたのか?」
その言葉に一瞬思考が止まる。
「もしそうなら別にいい・・・だけど、もしそうじゃないなら今からでもちゃんと話をつけてこい。今すぐにだ」
・・・僕だってそうしたい・・・でもできない・・・だって僕は最低な人間なのだから・・・
「でも・・・」
「でももクソもあるか!話をつけもしないままで二度と会わないなんて恭子がかわいそうだろ!」
「恭子ちゃんがかわいそう・・・?」
「当たり前だ!!恭子の気持ちをもっと考えてやれよ!!」
僕が別れを告げた時、恭子ちゃんは泣いてすがった。別れたくない、そばにいてほしいと。
その後どうした?恭子ちゃんが納得するまできちんと話し合ったのか?僕は自分の意見ばかりを押し付けて、肝心の恭子ちゃんの気持ちを無視して帰ってきたんじゃないのか
?本当にそれが・・・良かったと言えるのか?
違う。いくら僕が最低な人間だったとしても、それが恭子ちゃんから勝手に身を引いていい理由にはならない。
「・・・ありがとう、姉ちゃん・・・俺、もう一度恭子ちゃんと話をつけてくるよ!」
「がんばれよ」
最後にそう言われて電話を切られた。
時計を見ると8時。まだ伺っても許される時間だ。
僕は着替えもせずに恭子ちゃんの家に直行した。
491サトリビト ◆8jnT/g1A3Q :2010/05/26(水) 21:06:17 ID:uBfwq/qX
「・・・まだなにか用があるのか?」
恭子ちゃんの家についてそうそう、お父さんから容赦のない言葉を浴びせられた。
「確か昨晩はもう二度と姿を現さないと聞いたが?」
「えぇ、確かにそう言いました」
けど不思議と、心の中は落ち着いていた。
「・・・」
僕の表情を見てお父さんは諦めたのか、もう一度家に入れてくれた。
「その・・・右手の方は大丈夫なのか?やっぱり病院に―――」
「いえ、もう痛みもだいぶ収まりましたし、血だってもうでません」
右手をひらひらと振りながら大丈夫たと言う事を示す。
「それより・・・もう一度恭子ちゃんと話をさせて下さい」
僕の言葉にお父さんのこめかみがピクッ!と反応する。
「・・・あの子はやっと落ち着いたんだ」
(君は自分のしたことが分かっているのかね!?)
「自分のしたことは分かっているつもりです。それでも・・・もう一度会って話をしたいんです!」
お父さんが驚いた表情をこちらに向けた。
「え・・・今・・・私の考えていることを・・・」
あんなことをしたにもかかわらず、図々しいお願いをするんだ。こちらも誠意というものを見せないといけない。
「僕はサトリといって人の思考が心の声となって聴こえてくるんです。まぁ全部が全部聴こえるわけではないんですが」
「・・・冗談を言ってるのか?」
「これは真剣に言ってるんです。この能力のおかげで3年前に原因を突き止めることができたんです」
お父さんに三年前の事を思い出させるのは酷だったが、そうでもしないと信じてもらえる気がしなかった。
「もし、このことが世間にばれたら僕は終わりです。どこかの国が僕を利用しようと捕まえに来るかもしれませんし、生体実験と称して生きたまま解剖させられるかもしれま
せん。それで・・・もし恭子ちゃんに何かあったら、このことを誰かに話してもらってもかまいません。だから・・・」
一端言葉を区切り、これでもかというくらい真剣な目を向ける。
「もう一度だけ恭子ちゃんと話をする機会をもらえませんか!?お願いします!」
そう言って頭を下げる。これが僕にできる精一杯のお願いだった。
「・・・恭子は自分の部屋で妻と一緒にいる。くれぐれも昨日みたいなことはせんでくれよ」
「っ!あ、ありがとうございますっ!!」
心の声は聴こえなかったが、きっと僕を恭子ちゃんに会わせるのは嫌なはずに違いない。
それでもこうして認めてくれたお父さんに、少しだけ恭子ちゃんの面影を感じた。
自分の意見よりも他人の事を考える性分、そして他人を信じる性格。
(きっと恭子ちゃんもこの人の様に、世界を股に掛ける立派な人になるんだろうな)
そんなことを考えながら、恭子ちゃんの部屋に向かった。
492サトリビト ◆8jnT/g1A3Q :2010/05/26(水) 21:07:05 ID:uBfwq/qX
このドアの向こう側に恭子ちゃんがいる。
むこうもさっきのチャイムや、お父さんと会話をした声からも僕がここにいることは気付いているだろう。
もしかしたら部屋に入った瞬間に泣き付かれるかもしれない。泣いて、叫ばれて、また死んでやると言われるかもしれない。
それでも僕はノブを握った。恭子ちゃんと話をしたい、その一心で。
ノブを回してドアを開ける。

やっぱり僕が入ってくるのが分かっていたのだろう。中にいた二人は僕の入室にさして驚きは見せなかった。
「じゃあお母さんは下に戻ってるね」
そう言ってお母さんは部屋を出て行った。
恭子ちゃんを見ると、昨日の状態が嘘のように落ち着いている。
「・・・ごめんね?もう会わないって言ったばかりなのに」
「・・・なんで謝るの?慶太さんに迷惑をかけて、怪我までさせて・・・謝るのは私の方なのに・・・」
昨日聞いたはずなのに、恭子ちゃんの声がとても懐かしく感じられた。
「いや、やっぱり謝るのは俺の方だよ。恭子ちゃんをこんなに苦しめて・・・気付いていたはずなのに・・・」
今朝までの僕だったら泣いていただろう。でも今はそんなことはない。
「恭子ちゃんをこれ以上苦しめたくない。だから・・・もう一度はっきり言うよ。恭子ちゃんにはもう会えない。今日はそれをきちんと伝えに来た」
その結果後悔したとしても、今日で本当にお別れだ。
恭子ちゃんは視線を一度も外すことなく、昨日とは違い真剣に聞いてくれた。
「・・・実は私も昨日からそのことを考えていたんです」
ポツリと小さな声で恭子ちゃんが語り始めた。
「慶太さんに昨日言われたこと・・・もう私のそばにはいられないってこと・・・確かにその方がお互いのためになると思います・・・」
(慶太さんに迷惑ばかりをかけて・・・好きだという事も無理やり押し付けて・・・傷まで負わせて・・・)
恭子ちゃんはやっぱり勘違いをしていた。僕は迷惑をかけられた記憶などない。むしろ僕の存在が迷惑をかけていたのに。
でもここでは何も言い返さなかった。恭子ちゃんの話を最後まで聞いていたかったからだ。
「それで、今日そのことをお父さんとお母さんに相談したんです。そして・・・」
(やっぱりそうするしか他にないよね?そうするのが一番慶太さんをあきらめられるよね?)

「私・・・引越しすることにしました」

「・・・え?」
口を挟まないつもりが無意識に出してしまった。それほど恭子ちゃんの言葉は衝撃的だった。
「どこに引っ越すかはまだ決まっていないんですけど、とりあえず最初はおじいちゃんのところに行くことになりました」
恭子ちゃんのおじいちゃんの家がどこにあるかなんて僕は知らない。ただここから簡単にはいけない距離なんだと雰囲気で分かる。
「・・・いつおじいちゃんのところに行くの?」
「明日の朝です」
明日の朝・・・そうすると数時間後には恭子ちゃんはいなくなるということか。
「・・・その前にもう一度慶太さんに会えて嬉しかったです」
その言葉をかわきりに、恭子ちゃんが僕に歩み寄ってきた。
「・・・一つお願いをしてもいいですか?」
「何?」
「・・・もし気持ちの整理がついたら・・・その時は・・・もう一度会ってもらえますか?」
恭子ちゃんは期待と恐怖が入り混じったような表情を浮かべていた。それほど僕に断れるのが恐いのだろうか?
これほどまでに恭子ちゃんに慕われている僕は・・・世界一幸せかもしれないな。
多分そのときが来たら恭子ちゃんは僕の事を軽蔑しているだろう。恭子ちゃんは賢い子だ。大人になるにつれて僕と言う人間が、いかに最低だったか気付くに違いない。
「もちろん!その時までには少しくらいマシな人間になるよう努力するよ!」
でも、この先もずっと慕っていてほしい。
そう思う僕はやっぱり最低なんだろうな。
493サトリビト ◆8jnT/g1A3Q :2010/05/26(水) 21:09:16 ID:uBfwq/qX
「・・・右手・・・まだ痛いですよね・・・」
本題を話し終えた恭子ちゃんが、そっと僕の右手をその小さな両手で包みこんだ。
「当たり前ですよね・・・あれだけ深く切りつけたんだから・・・」
「もう大丈夫だよ。痛みだってだいぶ―――」

・・・ペロッ・・・

「っ!?」
突然、掌に生温かい感触がした。反射的に手を引こうとしたが、恭子ちゃんによって止められる。
「・・・お願いします・・・最後に、慶太さんの傷を少しでも癒してあげたいんです・・・」
そのセリフに僕は悩んたが、恭子ちゃんの最後という言葉に容認してしまった。
・・・ペロッ・・・ペロッ・・・
(・・・お兄ちゃんとは今日でお別れなんだ・・・次はずっと先まで会えないんだ・・・)
・・・ペロッ・・・ペロッ・・・
(・・・さびしいな・・・納得したはずなのに・・・さびしいな・・・)
・・・ペロッ・・・ペロッ・・・
(・・・そろそろ離れないといけない・・・もうやめないと・・・でも・・・)
・・・ペロッ・・・ペロッ・・・
(・・・できない・・・やめられない・・・やっぱり好きなんだ・・・どうしようもないくらい・・・諦められないくらい・・・大好きなんだ・・・)
・・・ペロッ・・・ペロッ・・・
(・・・こんなに好きなのに・・・なんでもう会えないんだろう?なんで会っちゃいけないんだろう?)
その速度が徐々に上がる。
ペロッ、ペロッ、ペロッ・・・
(・・・別れたくないよぉ・・・ずっと一緒にいたいよぉ・・・)
恭子ちゃんの舌が掌を伝って、段々上の方に上がってきた。
「ちょ、ちょっと!?」
ペロッ、ペロッ、ペロッ、ペロッ、ペロッ、ペロッ、ペロッ、ペロッ、ペロッ、ペロッ、・・・
(嫌だ・・・嫌だ・・・嫌だ・・・!)
それが限界だったのだろう。恭子ちゃんは僕の手を舐めるのをやめてしがみついてきた。
「恭子ちゃん!?」
「〜っ!!」
(やっぱり嫌だ!なんで兄妹なのに離れなければいけないの!?そんなのおかしいよ!)
やっぱり恭子ちゃんは納得していなかった。
そうだよな、僕ですら納得していないんだ。それよりも小さい恭子ちゃんだって・・・
「恭子ちゃん・・・」
もう一度声をかけると、恭子ちゃんはビクッと体を震わせて僕から離れた。
「ご、ごめんなさい!私ったらまた・・・」
恭子ちゃんの気持ちが痛いほどわかる。離れたくないのに離れなければいけないジレンマ。
・・・せめて最後くらいはお兄ちゃんらしいことをしないとな。
そっと恭子ちゃんに近付き、その頭に優しく手を置く。
「明日からは会えなくなるけど・・・でも俺たちが兄妹なのは変わらないからな!だから、またいつか絶対に会おうな!」
笑顔を浮かべて、そっと頭をなでる。ゆっくりと・・・恭子ちゃんの不安を取り除くように、ゆっくりと・・・
恭子ちゃんはよほど気持ち良かったのか、しばらくその感触に浸った後、涙をこぼしながらもとびっきりの笑顔で返事を返してくれた。

「はいっっ!!」

こうして僕たちは別れた。
494サトリビト ◆8jnT/g1A3Q :2010/05/26(水) 21:15:21 ID:uBfwq/qX
以上投下終了です。
ここまで読んでくださった方、申し訳ありませんでした。
495名無しさん@ピンキー:2010/05/26(水) 21:15:44 ID:GPya8gYP
当たる
496名無しさん@ピンキー:2010/05/26(水) 21:21:38 ID:tBe0hKCV
乙!

>>495
当たらねえよカス
497名無しさん@ピンキー:2010/05/26(水) 22:05:37 ID:4mNHDYKY
久々に投下が来たと思ったら、随分と重い展開だな
読んでて精神削れたじゃねえか


GJだぜえ
498名無しさん@ピンキー:2010/05/26(水) 22:21:24 ID:GPya8gYP
強い 当たる カミ
499名無しさん@ピンキー:2010/05/26(水) 23:24:16 ID:C6aA/kXk
>>494
待ってました!けど、せつねぇ…
こんな選択が後3回もあるのか…

いつも楽しみにしてます。
続き待ってます。
500名無しさん@ピンキー:2010/05/26(水) 23:34:11 ID:dB6sKPJl
GJ!
依存はいいな〜。

あと3回か……。
501劣等感 ◆vha3FDwXe6 :2010/05/27(木) 00:09:19 ID:EEDmV8oT
俺はお前のことが嫌いだ。
何でもできるお前が嫌いだ。
お前が一位で俺が二位。
毎日毎日みんな口では言わないが心中ではそう思っているだろう。
「……」
だから、こうやって狭い部屋の中一人でパソコンとにらめっこしている方が気楽でいい。
それでも、お前は
「おい。いつまで引き篭もってんだよ!!しまいにゃキノコが頭に生えてくんぞ!!さっさと出てこいよ!!」
俺を引っ張り出そうとしてくる。
「いやだ」
「いやだじゃねえ!!一緒に学校行こうぜ!」
ドンドン、と乱暴に部屋のドアを叩いてくる。
「ドアが壊れる。やめろよ」
「やめない。なあ、光(ひかる)出てこいよ……」
「うるさい」
「……そうか。わかった……」
そういって去っていく足音が微かに聞こえた。
ざまあみろ。さて、ネットサーフィンの続きでもs……

ドガァァァァアァァアアン!!!!

「!?」
何事かと思った。
「不条 光(ふじょう ひかる)。お前、いつからそうなった?いつからこの真玄院 桜土(しんげんいん おうど)に楯突けるようになった?」
答えは簡単。幼馴染であり、桜土が部屋のドアを蹴破っていた。
「この狭い空間で何が視える?何をしたいんだ?」
「………」
呆然とする俺を無視するように話を続ける。
「もっと大きな視野をお前には持ってもらいたい。こんなところじゃなくてな。そうすれば……」

−この私がどれだけお前に相応しいか判ってくれるだろう−

差し出す手、歪む妖艶な唇。
その様はまさに小悪魔……だな。

天井を見上げながら引き篭もり生活は一日目でめでたく幕を閉じた。 つづく、と思う
502名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 00:19:38 ID:EqzFnyWR
>>これは・・・個人的にwktkすぎるwwwっうぇうぇww
503名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 01:51:08 ID:QPumRVHJ
何がしたいんだよ
半年ROMれ
504名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 06:00:04 ID:vWRbtG9e
最近は名前だけじゃ男か女かわからなくて・・・
505名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 06:23:06 ID:bbgEBNSu
口調と名前見ると男同士にしか見えないんだが
506名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 12:37:49 ID:Ffh4YcU+
>>501
ホモネタはお呼びじゃないぜ
507名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 14:31:45 ID:CIMKmhAR
ヤンデレの目の前で他の女の子を褒めちぎりたい
508名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 15:54:51 ID:gmnHpmeb
しかし病む対象が自分ではない罠
509名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 17:01:40 ID:NnklFRAo
好かれてる
510名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 17:02:42 ID:NnklFRAo
511名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 19:04:42 ID:aIMgLA8h
ヤンデレの目の前で他の娘とやるときゃ「あんな女どうでもいいよ。大事なのはお前だけだ」ってせりふを入れたいわなあ。
512名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 19:16:29 ID:V9dBE0S/
元人間のヤンデレAI
513名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 20:27:23 ID:2yvg1D2e
おお!サトリビトきてたのか乙

岡田と陽菜と姉はこれ以上の修羅場になるのか・・・
514名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 21:04:56 ID:f3SeXXPH
ヤンデレの目の前でホモセックスを敢行したらどうなるか
515名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 21:10:42 ID:EYiZfr0F
>>514
お帰り下さない
516名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 21:43:01 ID:8ETylgmO
>>514
IDは狙ってるの?
517名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 22:41:36 ID:EeLzDzuv
>>514
おまえ(・∀・)カエレ!!
518名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 22:42:25 ID:NnklFRAo
519名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 22:54:35 ID:oGQiM9sO
520名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 23:03:49 ID:TqjDakJ/
ヤンデレの気が他人に伝播しておかしくなるとか
あたりのものが動くとかない?
521名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 23:51:57 ID:2XlBt66G
>>507
その褒めてる女の子がその場に居ても居なくても即抹殺の為に行動に移しそうだw
522名無しさん@ピンキー:2010/05/28(金) 01:05:53 ID:JMVntJ2m
新ジャンル「ヤンデレフェチ」
523名無しさん@ピンキー:2010/05/28(金) 01:38:11 ID:xQdi30ko
ヤンデレに対抗するための軍隊に入隊する夢を見た
俺は何故か終盤に死ぬ陽気黒人のポジションだった
524名無しさん@ピンキー:2010/05/28(金) 07:56:34 ID:WAvDXb4E
Cinderella & Cendrillonまだかな
ひめねぇとさきねぇのからみが早く見たいでござる
525名無しさん@ピンキー:2010/05/28(金) 10:07:26 ID:UlSr+Kt+
>>521
ヤンデレはなんでも殺しに走ると思うなよ。
526名無しさん@ピンキー:2010/05/28(金) 11:10:56 ID:qXmRdhKR
しらねーよ
527名無しさん@ピンキー:2010/05/28(金) 13:40:54 ID:yjFHUYX2
>>526
お前はただの狂気好き
528名無しさん@ピンキー:2010/05/28(金) 16:18:15 ID:qXmRdhKR
ふーん
529名無しさん@ピンキー:2010/05/28(金) 16:20:47 ID:/Sp9dEWk
■「あらあら可愛い赤ちゃんねぇ、抱かせてくださるかしら?」→「オラァッッ」ボキッッッ!!
1 タニノボリ(宮城県):2010/05/28(金) 13:33:47.34 ID:cuakhS1H

「抱かせて」と乳児かかえ暴行、28歳女逮捕

栃木県警足利署は28日、同県足利市若草町、
無職 五月女(そうとめ)裕子容疑者(28)を傷害の疑いで逮捕した。

調べによると、五月女容疑者は26日午前11時過ぎ、
同市内の子ども用品店で、生後3か月の女児を連れていた足利市内の女性(26)に、
「かわいいので少し抱かせてください」と話しかけ、女児を抱きかかえて暴行を加え、
両太ももの骨を折る重傷を負わせた疑い。

女性が支払いで目を離した直後に女児が激しく泣き出したため、暴行がわかった。
五月女容疑者は容疑を否認している。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100528-OYT1T00650.htm

こんな事件どうよ?
530名無しさん@ピンキー:2010/05/28(金) 16:28:05 ID:JnpkJY9t
病んでるというか、ただのキチガイ
531名無しさん@ピンキー:2010/05/28(金) 16:44:27 ID:jkOrXHR/
>>529
そういうヤンデレとは関係のないニュース拾ってきて
ドヤ顔で貼ってそうなお前がキモイ
532名無しさん@ピンキー:2010/05/28(金) 17:41:03 ID:cUUYDPve
アノネェ〜流血、殺人がヤンデレと思わない事。
相手の事が“好きで好きで”たまらくなって精神がおかしくなるのが“ヤンデレ”
物の本質を見極めないと単なるスプラッターマニア!!
533名無しさん@ピンキー:2010/05/28(金) 19:32:01 ID:7t6azxHk
534名無しさん@ピンキー:2010/05/28(金) 19:32:23 ID:7t6azxHk
した
535名無しさん@ピンキー:2010/05/28(金) 19:56:22 ID:RwfF049m
おいおい、嫉妬スレの二の舞にする気か お前ら
536名無しさん@ピンキー:2010/05/28(金) 20:48:01 ID:/XAJg892
537521:2010/05/28(金) 23:43:46 ID:4Fiqjhbq
>>525
別にヤンデレ=猟奇だなんて勘違いしてる訳じゃないよ
ただ例えばギャグ物とかだったらこういう展開もアリかなぁと思って書いただけ
それで不快に思ったんなら申し訳なかった
538名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 01:32:37 ID:+/QaBGkS
>>537
子供の足をいきなり折るギャグなんてつまんねーよ
539名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 02:06:32 ID:E6KrDEpb
>>537
 君の体をはったギャグに期待してるよ?
四肢全部折るんだろ?
540名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 02:18:36 ID:01/vXM8p
>>538-539
お前ら何言ってんだ? >>537>>529は関係無いだろよく見ろ
541名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 02:33:59 ID:4Xn7RXu2
本当に成人なのかと思うほどのファビョり方だな
542名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 03:16:09 ID:3fRN94Cw
なんかもうこのスレ臭い
昔からの書き手がいなくなったのも分かるわ
543名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 03:17:05 ID:zslu3jwq
昔からの書き手がいなくなったのも分かるわ(キリッ
544名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 06:44:39 ID:cOavB2sn
昔からの書き手がいなくなったのも分かるわ(キリッ (キリッ
545名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 07:34:54 ID:oQeC7QeV
キリリッ
546名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 09:22:39 ID:vMh7usWq
オレの幼なじみがクーヤンすぎて困る
547名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 10:08:30 ID:1NosMQol
惨事にヤンデレなどいらんのだよ
虹が至高なのだよ
548名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 13:04:53 ID:Ms6dfbXg
>>542
飽きただけなんじゃね?
ところで昔のこと知ってるって事は古参なのか、古参であるあなたのSSを是非とも見てみたいです。
549名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 13:24:20 ID:BQ/Lpg4Q
ヤンデレ幼馴染みに『恋愛と結婚は別だよな』って言ってみたい
550名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 13:39:31 ID:q6LfHNhq
パソコンを覗き込む時、ヤンデレもまたパソコンからこちらを覗いてるのだ
551名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 16:58:05 ID:nmJW/vje
今月は香草さんこないか
552名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 17:58:44 ID:bAKv8y6S
( ´,_ゝ`)クックック・・・( ´∀`)フハハハハ・・・(  ゚∀゚)ハァーハッハッハッハ!!
サーセンww
553名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 21:41:54 ID:aspGiO74
設問・ 切羽詰り、思慮深さとか余裕の無い精神状態のヤンデレと
筋金入りのツンデレ男の組み合わせの場合、どういう展開が望めるか?

554名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 22:00:11 ID:Yqa+LNQi
攻めと受けが入れ替わる
555名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 22:19:41 ID:wBn4rRCP
「他の女のアドレスを消して!」と要求するヤンデレの前で、逆にヤンデレのメアドのみを消去してみたい
556ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/05/30(日) 00:00:28 ID:jiY4UFBL
>>555、命は投げ捨てるものではない。

10レスほど使用します。これで30話目です。
557ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/05/30(日) 00:01:35 ID:2fnoiIIV
***

 目の前が真っ黒になってから、どれぐらい経ったっけ。
 いつから?
 お父さんが死んじゃって――ううん、私に殺されちゃってから?
 それとも、弟と妹が家を飛び出して行ってから?
 いいえ、きっと、その前。
 弟と妹が二人きりでセックスしてるのを、私が目撃してからだわ。

 見なければ良かった。
 あの二人に対して過保護に接していたから、あんな光景を見てしまった。
 それから狂ってしまったんだわ。
 お父さんはお墓に。お母さんは机の上で顔を覆って。弟と妹は居なくなって。
 私は、どこか、地面からとっても遠くにあるところに来てしまった。

 私が悪いのよ。
 隠していた二人の秘密を知ってしまった。
 家族に秘密にしていることなんて、私だっていくつもあるでしょう。
 だから、これは私が受けなければならない罰。
 お父さんを殺してしまった私を、お母さんも弟も妹も、許しはしない。
 私も、自分が許せない。
 お父さんが居てくれさえすれば、きっと、今だって――――

558ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/05/30(日) 00:03:08 ID:jiY4UFBL

 喉が締まり、涙が浮かぶ。
 右の頬に涙が伝う。遅れて左から。

 お父さん。
 お父さん。お父さん。お父さん。お父さん。
 ごめんなさい。
 恩知らずで、良い子じゃなくて、人殺しで、お父さんの気持ちを何も分かってなくて、ごめんなさい。
 お父さんだって辛かったって、分かってあげられなかった。

 どうして、今頃になって泣いているのよ。
 泣けば良かったじゃない。あの日に、お父さんが雨の中で泣いていた日に!
 一緒に泣いてあげれば、大好きなお父さんなら家族を元通りにしてくれた。
 お父さんは強くない。ううん、強いけどいつも強いわけじゃない。
 お酒を飲んで愚痴をこぼすことだって何回もあった。
 でも、次の日には辛いことなんか何もないみたいに、おはようって言ってくれた。
 あの日も、言ってくれるはず、だったのに…………なのに!

 もう、駄目。
 お父さんがいないなら全部おしまい。
 意識が沈んでいく。
 悲しい曲に引かれるように。
 そして二度と浮き上がることはない。
 行き着く先はどこかしら。
 地の底、海の底、意識の底、それとも――コンクリートの地面かしら?

 潰れて、消えてなくなるのならどこでもいい。
 最後にそれを望み、私は屋上から空へと、身を躍らせた。
559ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/05/30(日) 00:04:24 ID:jiY4UFBL
***

 人は卑怯な手を使い、他人を罠にはめる。
 そんな出来事は、人が知恵を身につけた時から世界に現れ始めた。
 いや、もしかしたら人は知恵を持っていなくとも他人を罠にはめられるのかもしれない。
 例えば、赤ん坊の鳴き声。
 赤ん坊は泣くのが仕事とはよく聞く。
 それ以外に自分の意志を伝える術が無いとも言えるだろう。
 だから卑怯とするのは間違いかもしれない。
 だが、赤ん坊の泣き声はその威力と効果が卑怯だ。
 自分の親を無条件に動かさざるを得ない状態にしてしまう。
 まあ、子供を持ったことがないどころか、自分で赤ん坊の世話をしたこともない俺が考えたことだ。
 赤ん坊がやることを卑怯だと断じるなど馬鹿げている、と突っ込みをいれられてもおかしくない。

 しかし、あえて言わせて貰おう。
 弱々しい存在は卑怯なのだと。
 俺のように、強くも弱々しくもない人間にとって、赤ん坊みたいな存在は卑怯な手段をとる生き物に見えるのだと。
 そんな弱々しい存在に対して、俺のようなどこにでもいる人間がとる行動パターンとして、どんなものがあるか。
 何も考えず、反射的に大人しく従う。
 仕方ないなとぼやきつつも相手をする。
 完璧に無視を決めてだんまりになる。
 腹を立てて無力な存在をいたぶる。
 かく言う俺がどんな反応をとるかというと、不明だ。
 さっきも言ったとおり、俺は赤ん坊の世話をしたことがない。
 さらに、触れれば壊れてしまうほど弱々しい存在と接する機会も皆無だった。
 自分がどんな反応をするか想像できても、いざというときに身体がどんな動きをするかなんてわからない。
 そう、たとえ俺が海のようにおおらかな対応をしようとも、糾弾されるような真似をしようとも、その時にならないとわからないのである。
560ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/05/30(日) 00:06:16 ID:jiY4UFBL

「あのさ、そろそろ服、脱いだ方がいいよ」

 俺の性的嗜好はいたってノーマルである。
 そう声高に叫んでも、果たして俺の言葉を信じてくれる人間がどれだけいるだろう。
 今現在のシチュエーション解説。
 俺、右腕を三角巾で吊していて、服装は高校の制服。
 目の前にいる女の子は玲子ちゃん。小学校三年生。さっきまで一心不乱に泣いておりました。
 場所、腕の治療でお世話になった病院の個室。
 そんな場所で俺は、ようやく泣き止んだ玲子ちゃんに向かって先ほどの台詞を言ったわけである。
 ――頭の中に住む友人が、「この犯罪者め、二度と僕に近寄るな」と言っていた。
 まあ待て。
 違うんだ年上好きの高橋くん、いやTAKAHASHI、じゃなくて友人Tよ。
 これには理由がもちろんある。
 玲子ちゃんが泣いたのだって、俺が何かしたからじゃない。
 あれは不幸な、不運な出来事だったのだ。

「ひど、いよっ……ジミ……ぐす」
「……でもね、玲子ちゃん。あれが俺の正直な気持ちなんだ」
「わかんないよ、なんで嫌いなんて……いうんだよ。
 ボクは、好きなのに……なんで嫌いなの」
「嘘を吐いたって、しょうがないだろう?
 玲子ちゃんは俺の嘘の言葉を聞きたかったのか」
「なんで嫌いなのって、聞いてるじゃん! 答えてよ!」

 以上、知り合いの男子高校生に自分の母親が嫌われていると分かって怒る9歳児との会話でした。
 しかし不思議なものだ。
 登場人物が一人欠けただけで一気に犯罪臭くなる。
 俺と玲子ちゃんが別れ話しているみたいだったな。
 本当、どうして小学三年生と痴情のもつれ的な会話が成立するのか、理解不能である。
 演じるのは可能であろう。ただし台本があれば、という条件付きで。
 アドリブでここまで再現できるなんて、玲子ちゃんはませているなあ。
 さっきまで泣いていたせいで感情が高ぶっていたからか?
561ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/05/30(日) 00:08:02 ID:jiY4UFBL

 玲子ちゃんが泣き出したのは、待合室からだ。
 自分のパンツの色を自白してしまい、羞恥心から泣き出した訳ではない。
 きっかけと言えるようなものは、あえていうなら、玲子ちゃんの母親の話だ。
 玲子ちゃんは俺と母親を会わせたいらしく、真剣にお願いしてきた。
 それに対する俺の返答は、ノーだ。
 会いたくないのだから仕方ない。いくら俺が年下に甘いとはいえ、こればかりは譲れない。
 そんな態度を取っていると、お母さんが嫌いだから会いたくないの、と質問をしてきた。
 そこでどうして頷いてしまったんだろうね、俺は。
 なあなあで話を終わらせて帰ってしまうか、否定するか、どちらかにすればよかったのに。
 そうすれば、少なくとも玲子ちゃんが馬鹿な行動をとることもなかったのだ。

「その服、早く水に浸けた方がいいって。
 ここ、お母さんの病室だったろ。着替えぐらいあるだろ?」
「……ジミーが悪いんだもん。シミになっちゃっても全部責任とってもらうもん」
 それが嫌だから早く着替えて服を水洗いしてほしいんだがね。
「言っておくけど、あれは玲子ちゃんの自業自得だからね。
 腹を立てて、お兄さんのコップを奪い取って、お兄さんに投げようとした君がいけない。
 バチが当たったんだよ」
「ジミーが悪い。なんかぬるぬるしてたもん、あのコップ」
「エイリアンじゃあるまいし。なんなら手、握ってみる?」
「お前みたいな歩くぱんつ観測所の手なんか握るもんか」
 パンツ観測所とはまた、視点の低いことで。
 そもそもそう呼ばれるほど観測の実績をあげているわけではない。
 妹は家族だから除外。葉月さんのは見たことない。
 澄子ちゃんのも、藍川のも、花火のも記憶にない。
 記憶にあるのは玲子ちゃんのぐらいのものだ。
 ――あれ?
 ってことは、玲子ちゃんにとっては俺は観測所なのか?
 違う。断じて、否。
 あんな白かったり色つきだったりストライプだったりアクセントが付いたりしているものが好きな訳がない。
 パンツを見られたり、うっかりパンツの色を自白してしまった玲子ちゃんの反応を見るのが面白いだけだ。
562ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/05/30(日) 00:09:16 ID:jiY4UFBL

「まったく運がなかったね。まさか底に溜まっていたコーヒーが首筋にかかるなんて。
 驚いて椅子からずり落ちて顎で机を打ったのも災難だった。
 ひっくりかえった机から玲子ちゃんのジュースが落っこちたけど、背中で受けられたのは幸いかな。
 そこでしっかりキャッチできていれば良かったのにねえ」
「背中でコップをつかめるもんか!」
 ごもっとも。背中でコップをキャッチできるはずがない。
 できなかったから、玲子ちゃんは背中からジュースをモロに浴びることになった。
 顎の痛みと背中の気持ち悪さで玲子ちゃんは泣き出してしまった。
 さらに、俺が伯母を嫌っていることまで思い出して泣くのだから始末が悪い。
 待合室から玲子ちゃんの母親の病室まで連れて行くのは、かなり難儀した。
 人の目が気になる。
 場所が場所だけに通報されたり捕えられるようなことはなかったものの、泣いた女の子の手を握りながら歩くのは、かなり神経をすり減らす。
 これは、もう拷問と言ってしまっていい。
 ずるいよな、女で、しかも小さい子供って。
 俺に過失がなくても、全部俺が責任とることになるんじゃないか?
563ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/05/30(日) 00:11:09 ID:jiY4UFBL
 
 ぶつぶつ言いながら玲子ちゃんが着替えだしたので、俺は病室の外で待つことになった。
 まあ、別に待つ義理はないんだが、今度玲子ちゃんに会ってしまった時、より面倒なことになるのは確実。
「……って、待ってても、面倒なことになるんだけどな」
 このままここにいれば、伯母がやってくるだろう。
 入院患者は基本的に夕食前には病室に戻ってくる。
 この病院の夕食時間はもうすぐ。伯母が病室に戻るまでもうすぐ。

「覚悟決めてかかるしかないか、もう」
 今から伯母と会話するにあたっての注意。
 一つ、伯母に怒りをぶつけない。
 二つ、俺と伯母の間に起こった事件について話さない。
 三つ、今後二度と会わない約束をする。
 俺と伯母と玲子ちゃんの関係については――話さなければいいだけか。
 伯母が話すかもしれないが、それならそれでいいだろう。
 玲子ちゃんの保護者は伯母なんだ。
 事実を教えるのも隠すのも、伯母の好きにすればいい。
 隠しておいた方がいいという思いもある。
 けれど、今の玲子ちゃんはともかく、成長した玲子ちゃんなら事実にいつか気付く。
 自分の父親がどんな人間で、今どこにいるのか疑い始める。
 そうなるのは、所詮時間の問題だ。早いか、遅いか。
 そして、早い段階で父親の正体を探り当てるだろう。
 そう、俺の父親を。

「……けど、ん、あれ? この情報って」
 事実として確認したんだっけ。
 いや、してないよな。玲子ちゃんが持っていた写真からの推測だ。
 玲子ちゃんの母と、その夫が写っている写真。
 そいつと、俺の弟がそっくりだったから、俺の父親が玲子ちゃんの父親でもあると考えた。
 若い頃の父と弟はうり二つだ、と母も証言している。
 だけどこれ、穴だらけの証拠だ。他人のそら似で片づけることもできるじゃないか。
 もしかして、俺の父親は妹に手を出した鬼畜であっても、しまいどんまんじゃないのか……?
 わからんぞ。妹に手を出したんだから、姉にも手を出しているのかもしれん。
 いや、自分の父親を信じてやらないでどうする。
 疑わしい。いや、信じられる。
 あいつは黒だ。いや、白だ。
 あいつはやった。いや、やってない。
564ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/05/30(日) 00:12:37 ID:jiY4UFBL

 壁に背中を預ける。
 左手のアイアンクローで頭部を圧迫する。
 だがそんなことをしても答えが出るはずがない。
「う、うおお……お、俺はどうすれば……」
「とりあえず中に入ってくれないかな」
「そうだな、とりあえず落ち着いて、中でゆっくり考えて……」
 顔を上げると着替えを終えた玲子ちゃんが病室の戸を開けて待っていた。
 玲子ちゃんは、上から下まで全て着替えていた。
 さっきまでは膝下まで延びるスカートを穿いていたが、今は丈の短いジーンズだった。
 警戒されているのかもしれない。
 俺はそんなに信用されていないのだろうか。
 いついかなる時でも玲子ちゃんのパンツを狙っていると?
 違う。そんなことはありえない。
 たまに悪ノリすることもあるが、基本的に楽しく話をしたいだけだ。

「ジミー、そんながっかりしないで」
「え、がっかりしてるように見えた? あの、別にがっかりしてないよ、俺」
「置きっぱなしにしてた着がえがこれしかなかっただけだから。
 ジミーがボクのパンツ見たさにスカートを希望してたのは知ってるけど、
 あんまり正直すぎると思うな」
「どうして俺が君みたいなちみっ子に失望されなきゃならん」
「え……ちょっとだけでもボクから信じられてるとでも思ってたの……」
「なにこの子! 着替えたらいきなり口が悪くなったよ!?
 そ、そうか。その服は呪いの装備か。効果は毒舌か!
 ならば脱がしてやる! それとも脱がされたいか!」
「両方一緒だよ! ジミーって、やっぱり変態さんだったんだ……」
「玲子ちゃんはそんなこと言わない!」
「言うよ! もとからこんな感じだよ!」
 もはや一刻の猶予もならん。
 早くこの子から呪いの装備を引きはがさなくては。
 次世代を担う子供がまた一人、その無垢な心を傷つけられてしまう。
「大人しくしててくれ、玲子ちゃん」
「ぜぇったいにノー! 近寄るなバカ!」
「すぐに君を元の純粋な子供に戻してあげるから。
 だから服を――」
565ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/05/30(日) 00:14:11 ID:jiY4UFBL

 続きを言おうとしたところで、唐突になにかが俺の動きに割り込んだ。
 まず、首筋に。
 何か尖ったものが突き立てられた。
 ナイフか針かと思ったが、そうではない。
 この親しみのある痛覚は――ペン。
「動かないでください。指一本動かさないでください。声を出さないでください。
 呼吸は鼻以外でしないでください。さもなくばこのまま脈を穿ちます」
 次に、若い女の子の声。
 その声で、俺が周囲からどう見られていたかわかった。
 小学生の女の子に襲いかかる男子高校生。
 釈明を待たず、ペンどころか、警棒で即行打ち倒されても文句は言えまい。
 だがしかし。男にはやらねばならないこともある!
「違う。これには理由があって、呪いが」
「ぷすり」
 ぷすっと、ペンの先端が首の皮膚を破った。
 声も上げずにひっくり返る。
 右の首筋を刺されたから、左側に。
 右腕が動かないから、左に転倒することになったのは不幸中の幸いだ。
 首筋に手を当てる。よかった。出血は少ない。
 一瞬の安堵。すぐに危険から逃れるべく、反転する。
 先ほどの声の主と対峙する。
「ちっ、浅かったか。やっぱり久しぶりにやると加減を誤るわね」
「いきなり何するんだ!」
「それはこっちの台詞ですよ。いえ、何してるんだ、ですかね。
 男子三日会わざれば刮目して見よと言いますけど、マイナスの意味で使うこともあるとは。
 見損ないましたよ――先輩」
「は……?」
 先輩だって?
 それにこの声、この容姿。
 ――まさか。
 なんでこの子がこんなところに居るんだ。
 学校には顔を出していなかった。弟の前にも現れなかった。
 それが、なぜ病院にいる?
566ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/05/30(日) 00:15:24 ID:jiY4UFBL

「澄子ちゃん……?」
「はぁい、そうですよ。先輩の義妹の、木之内澄子ちゃんです」
 軽い口調で澄子ちゃんはそう言った。
 弟を慕っていることを隠そうともしない。あけっぴろげ。
 この子は、何も変わっていないのか? 弟に執心したままだと?
 それなら、どうして――監禁状態の弟を解放したんだ?
「なにか私に聞きたいことがありそうですね。
 だ・け・ど。その前に先輩にはおしおきが必要ですよね。
 ねえ、二人とも。そう思わない?」 
 
 澄子ちゃんの後ろから現れたのは、見覚えのある人物だった。
 俺の交友関係の中で、唯一趣味の合うであろう女。
「そうだな。できることならかばってやりたいが、ここまで酷いとかばいようもない。
 ジミー君。まさか君がそういうタイプの人間で、玲子に対して劣情を抱いていたなんて、な」
 藍川の明らかに失望した視線はかなり堪えた。
 が、澄子ちゃんのでも藍川のでもない第三の視線を感じた時はそれ以上の衝撃だった。
「あの、とりあえず部屋に入りましょう。
 こんなところで立ち話をしていたら、病院にいるみなさんのご迷惑ですから」
 俺が人生で最も出会いたくない相手が居た。
 玲子ちゃんの母、伯母の冴子がそこに居た。

 藍川と澄子ちゃんにさっきの光景を見られたのは不幸ではあったけど、幸いでもあった。
 むしろ二人に感謝すべきだ。
 母親を慕う子供の前で、明らかな憎しみの視線を向けることを我慢できたから。
567ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/05/30(日) 00:17:50 ID:jiY4UFBL
今回はここまでです。ではまた次回で。
568名無しさん@ピンキー:2010/05/30(日) 00:18:22 ID:IKGuM/oo
ヤンデレ家族生きてた‥だと‥!?

キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
569名無しさん@ピンキー:2010/05/30(日) 00:19:46 ID:vK9hKsM3
GJ! 初めて投下を生で見た。
そしてヤンデレ家族と傍観者の兄キター!応援してますから頑張ってください
570名無しさん@ピンキー:2010/05/30(日) 00:21:31 ID:v/XEB3Yt
きたああああああああああああああああああああ
GJです!!
571名無しさん@ピンキー:2010/05/30(日) 00:25:09 ID:WMFmbURD
乙でした
次も楽しみにしてます
572名無しさん@ピンキー:2010/05/30(日) 00:29:31 ID:zjKdOebE
GJ!!!!!!!!!!!



次回の修羅場?に楽しみ!
573名無しさん@ピンキー:2010/05/30(日) 00:34:12 ID:Y5fAoMSX
ヤンデレ家族キタキタキタキタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━!!
gj!!
次も楽しみに待ってる!!
574名無しさん@ピンキー:2010/05/30(日) 00:46:04 ID:f/rAzpFP
再開したんすね。とりあえず過去ログよみなおすわ
575名無しさん@ピンキー:2010/05/30(日) 01:16:36 ID:xJoqB7/C
ヤンデレ家族…ありがとう神よ!!
諦めかけてただけあって嬉しい♪
おまけに澄子ちゃんまで再登場とは…
玲子と妹、花火と澄子、葉月がどう絡むか…
実は個人的には葉月さんが好きだったりする。
後過去の両親姉弟妹の話と現在がどうシンクロするか?これも楽しみだ…
作者様に感謝
576名無しさん@ピンキー:2010/05/30(日) 02:18:56 ID:7tnG8u9i
>>567
GJ!
ヤンデレ家族が来る夢見たから、ヤンデレスレ見たが本当に来てた
577名無しさん@ピンキー:2010/05/30(日) 02:48:54 ID:oXzBsPYk
ヤンデレに「早く恋人をつくれよ。最近お前とずっといるから、俺の彼女だと思われるじゃん」と言ってみたい。
578名無しさん@ピンキー:2010/05/30(日) 02:51:42 ID:oXzBsPYk
>>567
GJ!久しぶりの投下だから、話の内容忘れてるけど、面白かった。
579名無しさん@ピンキー:2010/05/30(日) 03:15:02 ID:JHGW2mFs
>>567
生存報告に投下があってジミーと玲子のセクハラ会話の応酬に生きていた澄子に次回修羅場でGJ!
とにかくGJッ! 投下してくれてありがとう!
580名無しさん@ピンキー:2010/05/30(日) 03:32:50 ID:sDQrMZ2S
よし、また半年から1年ほど全裸待機だ
581名無しさん@ピンキー:2010/05/30(日) 04:20:33 ID:Mi+LQSeF
ヤンデレから逃げ切りたい
582名無しさん@ピンキー:2010/05/30(日) 05:37:00 ID:3e12m8Bs
>>581
あれ?おれがいる…
ヤンデレに付きまとわれている人を見てニヨニヨしていたかった…
どうしてこうなった´・ω・`
583名無しさん@ピンキー:2010/05/30(日) 07:17:39 ID:Yy+Waequ
>>567
ヤンデレ家族ありがとう。澄子ちゃんの復活も嬉しいな(o^∀^o)

…これで彼女も帰ってくるかもしれない。前回もそうだったしo(^-^)o
584名無しさん@ピンキー:2010/05/30(日) 09:48:11 ID:ntDCJSBg
ヤンデレ家族来てるー!
今日は祭だな
585名無しさん@ピンキー:2010/05/30(日) 10:09:03 ID:GsyKtacl
また、次回って…。
586名無しさん@ピンキー:2010/05/30(日) 14:41:39 ID:jO3ezahc
>>567
MGジ・O発売おめでとう。俺も嬉しいよ。
587名無しさん@ピンキー:2010/05/30(日) 17:48:42 ID:zjKdOebE
空気読まず投下
588谷口の憂鬱?:2010/05/30(日) 17:49:57 ID:zjKdOebE
これはあくまでも噂話だ。本気にすんなよ。

とある県にとある市があり、その市内にとある高校にとある生徒がいたんだよ。
そいつはたにぐち、谷に口って書いて谷口って言うんだよ。名前はシークレットで。
そいつは某涼宮何ちゃらの出てくるキャラの谷口って奴がいるらしいんだが、どうやら名字だけでなく、髪型(オールバック!!)、背丈、顔と似ているらしい。
そいつ…谷口が入学して、三日後ぐらいに同じクラスのオタクどもが谷口が谷口にそっくりと騒ぎ始め、一週間経つと学校のオタクどもに知れ渡り、何故かオタク連中にいじられるようになった。
それでも、そのおかげか友達はたくさんできた。……半分はオタクだったが。
女子とも少しずつ分かち合っていき、ゴールデンウイーク前にはクラス全体が一つになった。
まあ、谷口の見た感じだが。

ゴールデンウイークが終わり、学校が再開すると谷口の一番最初に仲良くなった国木川の友達の遠藤に彼女が出来たらしい。
相手は一つ上の学年アイドルの朝日先輩だ!
朝日先輩といえば、今年の入学式の日に50人切りを達成させた超美人だ。ちなみに一年もチャラい男共が独断で学年アイドルを決めている。
今のところ………誰だったけ忘れたw
遠藤とは国木川繋がりで仲良くなったが、あいつはなんて暗い顔しているんだ?せっかく朝日先輩と付き合ったのに。
一歩間違えたら廃人になるぞ。
まるで操り人形のような歩き方で登校中、朝日先輩に出くわし連れて行かれた遠藤。
連れていかれる時、遠藤はこちらを向きチワワのような顔をした。可愛くなかったが。
後、国木川。お前そんな顔出来るんだな。絶対腹黒いだろ。
国木川に弱みを見せないと心の中で誓い、その時は国木川と二人で登校した。
誰かの視線を感じながら。

589谷口の憂鬱?:2010/05/30(日) 17:51:02 ID:zjKdOebE
 それから1カ月が経ち、お…谷口の人生が揺れはじめた。
中間試験が終わり、まあまあの結果とそれに対してオタク共が『なんで馬鹿じゃないんだよっ!?』と分けわからんことを言われた谷口は赤点を取らなかった嬉しさと謎のブーイングの不満さに浸っていた。
そのせいか谷口は教室に忘れ物をしてしまったんだよ。
教室に戻り、扉を開けようとした時、谷口はたまたまオタクどもから強制的に見せられた涼宮ハルヒの谷口のセリフが頭によぎり
「うぃ〜す、WAWAWA忘れ物〜♪」
と痛々しいことを言いながら教室に入った。
ところが、思いもよらない光景が教室にあっちまった。
「谷口く〜ん…あっあっあっ!」
クラスメイトの笹ノ原が俺の机の角に自分の下半身のを押し付けながら“谷口”と連呼してた。
呆然としている時、笹ノ原が谷口の存在に気付きやがった。
笹ノ原は甘く気味が悪くなる声を出しながら近づいて来た。…涎の垂れが凄かったなあれは。
我に返り、近づいて来る笹ノ原から逃げる谷口。
しかし陸上部の期待の星である笹ノ原は少しずつ距離を縮め追ってきた。
そしてついに階段の踊場で捕まる谷口。
あいつは化け物か?階段10段もジャンプするなんて!?
足掻き程度にパンツを見てやろうと思ったが、………パンツではなく生を見た。こいつ今日一日中履いてなかったの!?
そんな変態に押し倒されてしまった谷口。
「谷口君。もう私我慢出来ないや。」
火事場の馬鹿力って凄いな!まさか、今まで隠されていた力あそこまで発揮するなんて。
谷口は笹ノ原を突き放して、上履きのまま学校を後にした。
笹ノ原は見た感じおとなしそうで実際そうだったので可愛い!と思っていたのにチクショー。
帰って携帯を見ると笹ノ原から50件以上のメールが来ていたのは小便ものだった。


そして翌日から谷口の狂気的な生活が始まったとさ。


と、ここで終い。これはあくまでも噂だからな。
えっ!?最終的にはどうなったか?
それはr「仲良くラブラブになりましたよ♪」



終わり
590名無しさん@ピンキー:2010/05/30(日) 17:51:52 ID:zjKdOebE
投下終了


間違いあったらすいません。
591名無しさん@ピンキー:2010/05/30(日) 18:01:01 ID:2NfOmt3k
モテてる 得た
592名無しさん@ピンキー:2010/05/30(日) 18:07:35 ID:2NfOmt3k
並外れた あたる 当たる
593名無しさん@ピンキー:2010/05/30(日) 20:00:10 ID:vQZjXWm4
>>590

GJ!
羨ましいじゃねいかい
594名無しさん@ピンキー:2010/05/30(日) 20:52:26 ID:pUfe9Ht+
ヤンデレ家族キター(゜▽゜)
GJ!
595名無しさん@ピンキー:2010/05/30(日) 23:48:30 ID:FOwdzNmT
         ,. -‐'''''""¨¨¨ヽ
         (.___,,,... -ァァフ|          あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
          |i i|    }! }} //|
         |l、{   j} /,,ィ//|       ヤンデレがメインのゲームと思っていたら、
        i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ      ヒロインは全然病んでいなかったんだ。
        |リ u' }  ,ノ _,!V,ハ |     ただの一途で健気な少女が主人公にアタックしていた。
       /´fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人       
     /'   ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ       
    ,゙  / )ヽ iLレ  u' | | ヾlトハ〉     な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
     |/_/  ハ !ニ⊇ '/:}  V:::::ヽ        頭がどうにかなりそうだった…
    // 二二二7'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ
   /'´r -―一ァ‐゙T´ '"´ /::::/-‐  \    ヤンデレだとかヤンデレだとか
   / //   广¨´  /'   /:::::/´ ̄`ヽ ⌒ヽ    そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
  ノ ' /  ノ:::::`ー-、___/::::://       ヽ  }
_/`丶 /:::::::::::::::::::::::::: ̄`ー-{:::...       イ  もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…
596名無しさん@ピンキー:2010/05/30(日) 23:55:29 ID:JaOP7iwR
それはヤンデレにヤンデレするという意味でのメインだったのさ
597名無しさん@ピンキー:2010/05/31(月) 00:06:15 ID:1KG/kDC5
>>595
てかkwsk
598 ◆f7vqmWFAqQ :2010/05/31(月) 00:38:01 ID:uY27/qX8
風雪2話投下。
599風雪 2話 ◆f7vqmWFAqQ :2010/05/31(月) 00:38:41 ID:uY27/qX8
いつだって何かを守りたかった。けれど、無力な自分は何一つ守れなかった。
私は双葉宮家に生まれた人間。名前は風子。二つ合わせて、双葉宮風子。
私は、自分の生まれた双葉宮家が嫌いだった。
父母は金儲けに必死、メイド達も幼い私より父母を優先していた。
そして何より、家が余計に裕福で、それが原因で学校ではいじめにあった。
家庭環境が原因で内向的だった私を「お高く止まっている人間」と見て同級生は虐めてきた。
「お前の家、金持ちだからって調子乗んなよ!」とか「家が凄くてもアンタは駄目ね!」とかそんな台詞と共に暴力や水が私に降りかかってきた。

ある日、虐められていた私を心配して担任教師が私の相談に乗ってくれた。けれど、それは優しさなんかじゃ無かった。
それが分かったのは家庭訪問の時だった。
教師は、私の母に私が虐められているという話をした。
私に構ってくれない母の代わりに言ってくれた。そう思った。けれど、その幻想は砕け散った。
「先生のお名前、憶えておきますわ。」
「あ、ありがとうございます!」教師は口元を綻ばせて言ったのを見て私は悟った。『先生はコネを作りたかっただけなんだ』と。
事実、翌日から先生は私の事を避けていた。相談を持ちかけても「先生、忙しいから後でね」と冷たくあしらうようになった。
私は絶望した。

死のう。こんな事を小学二年の時に思った。
当時の私の頭には自殺の手段は飛び降りしか無かった。辺りを見回して高い場所を探すとマンションが目に映った。
いつの間にか私はそのマンションの5階に来ていた。通路から地面を見渡すと高かった。私はそれを見て震えていた。死ぬのが怖かった。
けど、私が死んだら両親は、メイド達は、教師は、クラスメート達はどう思うかというのにも興味があった。
私は意を決して柵の手すりを鉄棒の掴んで力を入れて地に足を離す。
浮遊感を全身に感じたその時、がっ!!と脇腹を誰かに掴まれた。私は驚いてビクッと体が震えた。
「おい幼女。人様の家の前で飛び降り自殺なんかすんじゃないよ。」声の主は30代と思われる女性だった。
「え…あ…」怖くて声が出ない。
「なんか悩んでんの?」
「は…はい。」
「じゃあ誰かに話せばいい。そうすればちょっとは楽になるさ。」
「……」話せる相手が居ない私は無言になる。そして沈黙が流れる。
「なんなら私が聞いてやる。お前さんと同じ年の子供も居るしね。」
「え…ちょ…いいです!!」私はジタバタと抵抗するが、無意味だった。
「じゃ、れんこーう!」人の話を聞かずに、私を掴んだまま私を連れ去ろうとする。
そして、私は扉の向こうに連行された。
600風雪 2話 ◆f7vqmWFAqQ :2010/05/31(月) 00:39:16 ID:uY27/qX8
私は、未だかつて経験した事のない緊張に怯えていた。
私の自殺を強制中断させた女性が、頬杖ついてこちらを睨んでいる。
彼女は、私とテーブルを挟まずに、隣に座っている。
なので私は俯いて、彼女を極力見ない事にした。
しかし、目の前の女性はそんな私の様子を軽くスルーして、話掛けてきた。
「で、悩みがあるって言ってたけど、なんで自殺しようと考えてた?」
「…」黙秘権行使。
「黙ってちゃ分かんないだろ?」
「…」黙秘権の行使を続行。
「あー、イライラする。なんか言え、コンチクショウ。」
「あなたに相談する様な事はありません。」口から淡々と、拒絶の言葉を紡ぐ。
言い終えて口を閉じたら、右から平手打ちが飛んできた。私は突然の鈍痛に驚いた。
「その目、あの時の私の目と似てて嫌になるね。」女性は頭を掻いて言う。
「そのままだと、あんた、また死にたくなる衝動に駆られて死ぬよ?」
「…」私は黙秘権とは関係なく黙っていた。
「さっきも言ったが、悩みがあるなら誰かに言え。言うだけで気分は楽になる。
 相手が居ないなら、その、なんだ。私がなってやる。」
私の冷たい心が溶けた。その氷が解けて出来た水が、私の双眸から溢れた。
「え、えぐっ…いぐっ…びえええええええええええ!!!!」
泣きじゃくる私を、女性の腕が包み込む。
そんな事をされたら余計泣いてしまうからやめて欲しかったけど、暖かさが心地よかったから「やめて」とは言えなかった。
この慈愛を甘んじて享受していたら、「なにしてるの、おかーさん。」廊下から、男の子の声がした。
廊下のドアを見やるとその姿が見えた。
声は男の子だが、見た目は女っぽい。というか、女の子にしか見えないってくらい中性的だった。
「んー、哀れな幼女に魂の救済?いや、私エクソシストじゃないや。」ナハハ、と女性は笑ってた。
「おかーさんが女の子泣かしてるの。おかーさん、いじめっ子?」少年は母親に無垢な瞳と声色で、そう尋ねた。
「なんでやねん。お前は一ノ瀬こ○みか。全く、シリアスが台無しね。」
女性が「はぁ」と、ため息をついて苦笑い。
「まぁ、ちょうどいいや。ほら、お互い自己紹介。」
「僕、白井雪斗。」少年はそう名乗った。
「双葉宮…風子…」
私と彼は、ここで出会った。
601風雪 2話 ◆f7vqmWFAqQ :2010/05/31(月) 00:39:38 ID:uY27/qX8
「かわいそうに…ふーこちゃん。ビスケットたべる?」
「あ、ありがと。」私は動物の形をしたビスケットを受け取って、口に含む。
「おいしい?」と、感想を求められた。
咀嚼と嚥下を終えて「おいしい。ありがと。」と、小さな声で呟く。
私の記憶が正しければ、彼はこんな感じに慰めてくれた。とても癒された気がする。
それから、色々な話をした。主に、お互いの家庭事情や学校生活について。彼も辛い家庭環境に有る事、彼と私は同じ小学校だという事が分かった。
そして、気持ちが一層楽になった。会話してるだけで楽しかった。

「あー、5時になったけど、家、大丈夫かい?送ってくけど。」
男の子のお母さんが私に帰宅を勧めてきたので、素直に従うことにした。
「あ、あのね…」
「なに?」男の子が首を傾げる。
「また、一緒にお話ししてくれる…?」拒絶されたらどうしようと思った。
「いいよー!」男の子はニコっと笑った
そして、男の子のお母さんに手を繋がれながら、さよならの挨拶をした。
「友達出来て良かったな。」男の子のお母さんが歩きながら、私に話しかけてきた。
『これが友達なのか。』と私は認識した。私は友達の意味と、友達を手に入れた。

しかし、それは日付が消える前に壊された。

リビングで座っていたら、父が話しかけてきた。
「風子…」
「なんですか?お父様?」
「なんだ、その、悪かった。構ってやれなくて…。学校で虐められてると、母さんから聞いてだな。」
「ううん。いいの。それより今日ね、友だ…」
「お前を私立の女子校に転校させようって、母さんと話し合って決めたんだ。」
父は私の話を遮って、残酷な一言を私に突き刺した。
「いま…なんて?」
「転校だよ。あそこなら悪い虫も居な…」
「嫌だ!!」私は声を荒げて拒絶する。それを聞いた父は困惑する。
「なんでだ…?」
「今日、友達が出来たの!離れるの嫌なの!」
「なんだ、友達ならあっちで作ればいいじゃないか。転校先の『聖准羽女子小学校』はな、
 私達の様なブルジョア階級ばかりだから気の合う友人も出来…」
「そう言う問題じゃない!雪斗君は1人しかいないの!」
「男…だと…?」父の眉がピクピクと蠢く。
「いかん!!男なんてまだ早いわ!!と、とにかくだ!!もう色々と準備は済ませた!!
 明日からは聖准羽に通うように!!」父が怒鳴る。
「嫌だ!!」私は拒絶する。
「いい加減にしろ!!」平手打ちが、私の頬に直撃して、鈍痛が走る。
「お前は私に従えばいいんだ!!」痛い。昼に食らったのとは比べ物に成らない位に。
「あと、護衛兼監視として、お前にメイドを1人付ける。いいな!」そう言い終えて、父は乱暴にドアを閉めて視界から消えた。
私は泣いた。これまでにないくらいに。リビングには、私の嗚咽だけが響いていた。
602風雪 2話 ◆f7vqmWFAqQ :2010/05/31(月) 00:40:02 ID:uY27/qX8
「はじめまして、風子お嬢様。今日から、貴方のお目付け役を務めさせて頂く、柏木と申します。よろしくお願いします。」
転校当日の朝食時に、私のお目付け役が発表された。
柏木と名乗った女性は、確か15歳からここで働いていて、この時は18歳だと言っていた。
朝食を終えて、したくも無い支度をする。気が重い。
「送りますよ」外に出ると、リムジンの運転席に座っている柏木さんが、そんな事を言った。
後ろの席に乗る。車内には、柏木さんと私だけだった。
父と母の見送りも無く、リムジンがアクセルで勢いを得て走り出す。
沈黙に包まれながら、走り出して5分。柏木さんが沈黙を破った。
「今まで、申し訳ありません…。風子お嬢様。」
「…何が…?」突然謝られた私はキョトンとする。
「今まで貴方に満足に御奉仕出来なかった事についてです。あの育児放棄しまくってる糞豚…あ、ヤベ。本音出た。
 あ、今のはお気になさらずに。貴方の御両親に仕事の手伝いばかり押し付けられて、ロクに貴方に付いていられなかった。
 これが言い訳にしか聞こえないのは、百も承知です。『許して下さい』とは言いませんし、言えません。
 どうか、尽くさせてください。お願いします。他のメイド達も、皆そう思っています。あんな『仕事馬鹿』よりも風子様に尽くしたいと。」
ミラーに映る柏木さんの目は、嘘や言い訳を言ってるとは思えない位に鋭かった。
「そんなの、いいよ。柏木さんは悪くないもん。悪いのはお父様とお母様。」
「ありがとうございます。それと私の事は、柏木と呼び捨てでお呼び下さい。」
「…柏木。」年上の事を呼び捨てにするのは、当時小2の私にとって違和感が凄まじかった。
「それと、私にはなんなりと御命令を仰って下さい。善処致します。いえ、お嬢様の満足の行くまで尽力します」
「じゃー、柏木。私ね、自分の身を守れるくらいになりたい!」
「なるほど。確かに、私が目を離した隙に、お嬢様を狙って身代金目的の人間や、お嬢様の美貌に当てられた強姦魔が来る可能性がありますしね。
 まぁ、目を離すつもりはありませんが。」
「ねー。ごーかんまってなに?」
「…!忘れて下さい。まだ、知るには早すぎます。」顔を赤らめてそう言った。
「変な柏木。」
そんな会話をしていたら、学校に着いた。既に気が軽くなった私は、元気よく校舎に向かった。


それからは柏木に合気道を習った。私はメキメキと頭角を現して、それなりの強さを手に入れた。
友達も出来て、順風満帆で楽しかった。あと、雪斗君が居れば最高だけど、ワガママは言わない。
そして5年生の冬に、ある事件で、私の心境が大きく変わった。
603風雪 2話 ◆f7vqmWFAqQ :2010/05/31(月) 00:41:06 ID:uY27/qX8
私は柏木の為にマフラーを編んでいた。毛糸が足りなくなったので柏木や他のメイドにも内緒で毛糸を買いに行った。
その帰りに、私は『彼』を肉眼で捉えた。雪斗君が歩いていたので、跡を付けることにした。
よく見ると、手にはロールパンが握りしめられている事が分かった。
「なんで?」と思ったがすぐに疑問は晴れた。段ボールに居る捨て猫に、そのロールパンをあげている。
私は歩み寄る。後ろで眺めていると、彼が後ろを向いた。そして、彼は喋る。
「はじめまして。猫、好き?」はじめまして?はじめまして?はじめまして?
覚えてない?覚えてない?私の事、忘れた?
「どうしたの?具合悪いの?」ハッと我に返って、背を向けて走り去る。
「ちょっとー!?」彼が呼び止める声を発したが、無視して走る。
家に帰ってから、自己嫌悪に苛まれてメイドさん達に心配されたのは、ちょっとした黒歴史だ。


それからは『図書館に行く』とか理由を付けて、一人で例の場所で彼を待ち伏せて、彼を見るのが日課になった。
そんな時に事件は起きた。いつものように彼を待っていた。しかし、先客がいた。
猫を虐めている人間が2人。その人間は、私を虐めていたグループのリーダー格の2人だった。
「助けなきゃ」と思うけど、体が動かない。怖い。力を身につけたと思ったのに、怖い。
そんな思考に脳をハイジャックされて震えていたら「やめろよ!」と、聞き覚えのある声が、私の耳を穿つ。
彼だ、白井雪斗君だ。彼はしばらく口論してから、1人に体当たりして猫を逃がす。
猫が私の方へ逃げて来たので、両腕で捕まえる。猫は弱っていたのか、抵抗しなかった。
猫の代わりに彼が殴られる。私は目を伏せる。
耳から侵入する雪斗君の呻き声に耐えれずに、私はその場を逃げた。私は弱いと実感した。最低だ。


「おかえりなさいませ…。なんですか?その白猫。」柏木が尋ねる。
「拾ったの。今日から飼う。」せめてこの子は守ると決めた。
「そうですか。では、私はキャットフードでも買ってきますね。」
「それとね、私ね、もっと強くなりたい。」他の人や大切な物を守れるくらいに。
「なるほど。では、明日からいろいろ稽古付けますよ。」
「あとね、―――――――――――。」
「かしこまりました。」私の最後の頼みを聞いて柏木はニヤニヤした。

待っててね、雪斗君。今より強くなったら、私が守ってあげるから。
604 ◆f7vqmWFAqQ :2010/05/31(月) 00:43:48 ID:uY27/qX8
終了。
「間を開けたのに物語進んでねーじゃねーか、この野郎」とかは無しでお願いします。(土下座)
605名無しさん@ピンキー:2010/05/31(月) 01:19:03 ID:2vBubd3R
>>604
間を開けたのに物語進んでねーじゃねーか、この野郎GJ。
606名無しさん@ピンキー:2010/05/31(月) 02:06:01 ID:F/Ux2dKe
>>604
間を開けたのに物語進んでねーじゃねーか、この野郎ナイスファイト
607名無しさん@ピンキー:2010/05/31(月) 02:14:18 ID:LC9iFGM8
>>604
間を開けたのに物語進んでねーじゃねーか、この野郎乙。
608名無しさん@ピンキー:2010/05/31(月) 02:27:42 ID:6eBP+ZDx
>>604
間を開けたのに物語進んでねーじゃねーか、この野郎次回も首を長くして待ってます。
609名無しさん@ピンキー:2010/05/31(月) 06:18:30 ID:Xn07B8Cj
>>604
間を開けたのに物語進んでねーじゃねーか、この野郎続き楽しみにしてます。
610名無しさん@ピンキー:2010/05/31(月) 12:15:10 ID:zCv8cxut
>>604
間を開けたのに物語進んでねーじゃねーか、この野郎続きはまだなんですか待っています
611名無しさん@ピンキー:2010/05/31(月) 14:20:20 ID:gpHqL4fr
間が空いてるのにGJだぞ糞豚…あ、ヤベ。本音出た
612名無しさん@ピンキー:2010/05/31(月) 15:26:00 ID:2vBubd3R
なにこのツンデレスレ。正直ひくわ。
613無形 ◆UHh3YBA8aM :2010/05/31(月) 15:33:53 ID:rteUYnWY
投下します
614ほトトギす ◆UHh3YBA8aM :2010/05/31(月) 15:36:28 ID:rteUYnWY
源逆灯が去ってすぐ。
入れ替わるようにして『恋人』はやって来た。
否、やって来ていた、と云うべきだろうか。
微睡みの洞窟を抜け、現実と云う今に視線が合うと、織倉由良は風景の中にいたのだ。
所作や格好から判断するに、夕食の支度をしているらしい。
澱んだ瞳でその姿を見ていると、織倉先輩は笑顔で僕に近付いてきた。
「あ、日ノ本くん、目が覚めたのね? 上がらせて貰っているわよ?」
夜にまた来る――予告通り、と云う訳か。
「具合が良くないって云ってたけど、本当に顔色が悪いわね。待ってて、精のつくものを沢山作ってあ
げるから」
そう云って支度を続行する姿を見て僕はちいさく首を振った。
食欲などない。
それが偽らざる心境であり、状態だ。
織倉由良が日ノ本創の家にいる――
それだけで、心が安まらない。
僕と云う内部の都合と、綾緒と云う外部の都合と両面で。
綾緒は何故か織倉由良が僕の家に来るとその事を知ってしまう。
まるで見ているかのように、だ。
余程に勘が良いのか、それとも僕が顔にでも出しているのか。
いずれにせよ、今現在の景色を知られるわけには往かないのだ。
源逆灯は従妹の機嫌は良いと云った。
それは事実なのだろう。
僕と云う想い人と結ばれたのだから。
そして、だからこそ、『裏切られた』と思い込んだ時の怒りはより凄まじいものになるのではないか。
たとえば、『夫』に自分以外の女が料理を振る舞っていると云う事象を容認するとは思えない。
織倉由良にしても、『恋人』に『妻』がいると云う状況を許しはしないだろう。
それにもうひとつ。
僕はまだ、織倉由良に説明をしていない。
一ツ橋朝歌が彼女に殴られた時の釈明と、昨日の夜から今日の昼過ぎまで行方不明であった理由。
彼女は当然、それを聞きたがるだろう。
黙秘することは出来ない。
十中八九、織倉由良は狂乱するであろうから。
僕が怒鳴られ引っぱたかれるくらいならまだ良いが、茶道部室で起きた現象の再現などされたらたまっ
たものではない。
たまったものではないが、そうなる可能性があるのも事実だ。
では、云い繕うべきか。
彼女が得心往く説明が出来るならそれでも良いだろう。
けれど、どうすればそんな都合の良い云い訳が出来ると云うのか。
無理に決まっている。
結局僕に出来ることは時間稼ぎだけだ。
何も悟られずに帰って貰う。
それしかない。
問題はどういう手段で帰って貰うか。
源逆灯のように恐怖する対象でも持っていてくれれば話は簡単だが、普通の人間は怪談など聞いたとこ
ろで帰るとは思えない。まして、織倉由良では。
「・・・・ねえ、日ノ本くん」
鼻歌を中断し、彼女は口を開く。
織倉由良は背を向けたままだ。
背を向けたままの言葉なのに、じっとこちらを見つめているように思えた。
温度が違う――
先程までの明るさが身を潜めているように感じられた。
だから。
「聞きたいことが幾つかあるんだけど、良いかな?」
その物云いに、不安を感じたのだ。
「・・・・何でしょうか」
その返答に意味なんて無い。
彼女が何を聞きたがっているかなんて僕自身がよく判っているはずではないか。
今の今までそれを考えていたのだから。
僕の受け答えに意味があるとすれば、それは僅かな時間稼ぎだ。益体もないことではあるが。
「そうね、どれから聞かせて貰おうかしら」
615ほトトギす ◆UHh3YBA8aM :2010/05/31(月) 15:39:04 ID:rteUYnWY
「・・・・僕の好物でも話しましょうか?」
ぎこちない笑顔でそう云った。
勿論彼女を目的地から遠ざけようと云う下心あってのことだ。
だが。
「そんなことは知ってるわよ。私は日ノ本くんのことなら何でも知ってるし、知ってなければいけない
の。身長だって体重だって好きな食べ物だって私は何でも知っているのよ? だって私は貴方の彼女だ
もの」
だからね、と織倉由良は振り返る。
彼女の表情は笑顔と呼ぶには威圧的すぎた。
「私の彼氏である日ノ本くんは、何ひとつ隠し事をしてはいけないのよ? 貴方は私に総てを任せてお
けば良いの。思考すらも必要無い。全部私が決めてあげるし、取り計らってあげる。その為には情報が
必要なの。私は貴方を信じているし、信じたい。疑うことすらしたくない。貴方が私以外の誰かとどう
こうなるなんて思っていないけれど、そう思う材料すら排除したいの。だから、ね。私が尋ねることに
は有りの儘を答えて? 私の目が届いていないところで何があったか、誰が近付いてきたのか。ふたり
のより良い未来の為に全部を報告するのよ?」
駄目だ、と僕は思った。
質問に答えることも。
答えた後も。
明るい未来がそこにはない。
だが、抗う術がない。どう誤魔化せばよいのか思いつきもしない。
他の女と口をきくなと云われた。それを撤回させる為に他の女と口をきいていた。
そしてその後は従妹と契っていた。
そんなことを聞かされて、織倉由良は正気でいるはずがない。
彼女は綾緒を憎むだろう。
そして、一ツ橋も憎悪の対象になるはずだ。
あの後輩は先輩に殴られた後、自分の脚で釈明に往ったはずだ。
彼女がどう説明したのかは知らない。けれど前後の状況からして、自分が誘ったと僕を庇ったのは間違
いない。織倉由良がそれで本当に納得したのかどうかは疑問だが、炎は沈静化した訳でなく燻っている
と見るべきだ。
僕の説明はどうであっても種火に油を注ぐ結果になるのは目に見えている。今の彼女は極めて外罰的な
のだから。それでは一ツ橋を結局巻き込むことになる。そして、綾緒と織倉由良の対立も――
(云えない。云えるわけがない)
悲惨と凄惨と云う二択だけが僕の眼前にぶら下がっていた。
そんな僕を織倉由良は笑顔のような表情で見下ろしている。
その時、ブゥーン、ブゥーン、と何かが振動する。
(ケータイ? 僕のじゃないから、先輩のか)
何でも良い。一分でも一秒でも時が稼げるのならば。
「・・・・出なくて良いんですか?」
「日ノ本くんとお話しする方が大事に決まっているでしょう?」
「ぼ、僕は目の前にいていつでも話せるじゃないですか。何か重要な事かも知れませんし」
「日ノ本くんより重要な事なんて無いんだけど・・・・」
渋渋と云った様子で織倉由良は携帯を耳に当てた。それでも美麗な双眸は僕に固定されてはいたのだけ
れど。
「何? お母さん?」
どうやら相手は彼女の母であるようだった。
(どうしたのかな・・・・?)
見つめていると、彼女はやや荒い口調になった。受話器の向こう側の人物も声を荒げているようだ。
「違うってば! 私は自分が正しいと思ったことをやっただけ! お母さんは関係ない!!」
「――!! ――! ――!?」
云い争っている・・・・のだろうか。少なくとも穏当な会話には思えない。
「わ、判ったわよ、じゃあ」
織倉由良は少し乱暴に通話を終える。何があったのかと目で問う僕に、無念そうな瞳を向けた。
「・・・・お母さんが帰って来いって」
「え」
僕の声は少し弾んでいたのかも知れない。詳細の判らない親子の諍いが自分に有利に働くのでは、と期
待したのだ。卑しい発想だが、背に腹は替えられない。
「私、昨日は日ノ本くんが心配で一晩中ここにいたでしょう? それがお母さんに知られたみたい。私
は日ノ本くんの帰りを待っていただけなのに、何があったか説明しろ、なんて云い出すの」
「あ・・・・」
と僕は間の抜けた声を上げた。
616ほトトギす ◆UHh3YBA8aM :2010/05/31(月) 15:41:43 ID:rteUYnWY
確かに僕が一ツ橋家に泊まった夜の間は、彼女はずっとここにいたはずだ。その後は当然学校へも往っ
ていない。
それは年頃の娘を持つ母親からすればとんでもない事態と云える。
「私、帰らないわよ。日ノ本くんの傍にいてあげなきゃいけないし、晩ご飯だって作ってる途中だなん
だもの」
勿怪の幸いだ。
源逆灯の時もそうだが、タイミングが良い。
嘘は吐きたくないけれど、卑怯者になることが一番良い選択だろう。
「先輩、一回帰ったほうが良いですよ」
「いや!」
「でも、お母さんを困らせるわけにはいかないでしょう?」
「勝手に困っていれば良いのよ! 私と日ノ本くんの間に割り込む人は全部排除すべき障害だもの!」
「だから。お母さんと揉めたままじゃ、より障害が大きくなると云ってるんです」
「う・・・・」
僕の発言に理があると思ったのか、織倉由良は押し黙った。我ながらよくもまあペラペラと心にもない
御託を並べられると感心するが、今はこれで押し切るしかない。
「僕らはいつだって逢えるじゃないですか。今は先輩のお母さんに説明する方が先ですって」
「・・・・うん」
織倉由良はガックリと肩を落とし、それから台所をに目を転じた。
「ごめんね、日ノ本くん、ご飯作ってあげられなくて」
「・・・・気にしないで下さい」
状況を利用して追い払うということに心が痛む。
気の利いたことは云えず、そう呟くのが精一杯だった。
申し訳なさと自己嫌悪で顔を曇らせた後輩がどう見えたのか。
「日ノ本くんも落ち込んでくれるんだね」
彼女はそう呟いた。
「また明日、逢いに来るから」
織倉由良は寂しそうに立ち去った。
ホッとはするが、気分が悪い。
「最低だな、僕は」
爆弾を抱えた嵐が退去し、無人の居間で独語する。
ソファに身を沈めると、再び疲労が襲って来た。
心身共に摩耗している。
ゆっくり考える時間が欲しかった。
目を閉じて、開く。
たったそれだけ。
それだけの間に、よく知る風景。
居間の様子に違いがあった。
小柄な女の子が、じっと僕を見つめていたのだ。
「ひ、一ツ橋ッ!?」
「朝歌です」
いつの間に入り込んだのか。
表情のない後輩がそっと佇んでいた。
「おまえ、いつからそこに・・・・」
「初めからいましたが。お兄ちゃんが私の家から出た後を、そのままついて来ていましたから」
「なっ・・・・!?」
ずっと?
あの後からずっといたのか!?
今の今まで?
(確かに源逆灯が『幽霊』を見たから、いたのではないかと思っていたけど・・・・)
ずっといたとまでは、考えなかった。
「じゃあ待てよ!? 織倉先輩の電話はもしかして――!」
「部長の家に電話したのは私です」
「・・・・タイミングが良すぎると思った」
いや、そうじゃなく。
「どうして、ついて来たんだ?」
「何故ついて来てはいけませんか?」
「いや、だって、それは・・・・」
お前を巻き込むわけにはいかなくて。
そう云おうとして口を噤んだ。
617ほトトギす ◆UHh3YBA8aM :2010/05/31(月) 15:44:27 ID:rteUYnWY
後輩の頬は腫れたまま。
「お兄ちゃんは勝手です」
「・・・・それは判っているよ」
「だから私も勝手にします」
「え?」
表情に変化のない後輩は、そのままキッチンに入ってしまった。呆然として見つめていると、湯気の立
つカップをこちらに運んできた。
「こ、これは?」
「紅茶です。見たことがありませんか?」
「そうじゃなくて、どうして」
「飲みたがっているのではないかと思いましたが」
「――――」
確かに喉は渇いていた。
温かい飲み物が欲しかった。
無言で紅茶を嚥下すると、安寧が胸中に広がるように感じられる。
暖かさも茶の濃さも。
総てが僕の欲していた通りであったのだ。
「なんで」
僕は呟く。
「なんでお前はここまでしてくれる?」
「お兄ちゃんがそうしたように、私も勝手にしているだけです」
「・・・・・・」
真意なんて判るはずもない。
けれど、矢張り気を遣わせていることだけは判る。
情けなさと有り難さで泣きそうになった。
「疲れた顔をしていますね。お兄ちゃんは寝て下さい。私も帰ります。私がいると眠れないでしょうか
ら」
「ひと・・・・朝歌・・・・」
「今日一日は部長ももう来ないと思います。来るなら来るで足止めしておきます。お兄ちゃんは好きな
だけ惰眠を貪ってくれて構いません」
「・・・・・・」
後輩は先輩が広げた食材をかたして往く。僕が食べる気力のないことを知っているのだ。
情けない兄貴分は、その光景を木偶の坊のように見つめているしかなかった。
「油点草」
「え?」
「私のお見舞い、飾っていてくれているんですね」
「あ、ああ。僕がこんな調子だから、十全とは云い難いけれど」
「そうですか」
一ツ橋は抑揚なく呟く。
刹那に笑ったように見えたのは、僕の気のせいだったのだろうか――?


618ほトトギす ◆UHh3YBA8aM :2010/05/31(月) 15:47:08 ID:rteUYnWY
安寧の時間は、結局は一晩だけだった。
一ツ橋のおかげて睡眠を取れた、その一瞬だけ。
翌朝、陽が昇るとすぐ、僕の家の前に黒塗りの車が停まっていたのだ。
安息をチャイムによって打ち破った人物は昨日見たばかりの『善人』――源逆灯その人だった。
「創様、朝早くから申し訳ございません」
屈託のない表情で深深と腰を折る。
何故彼女がここに来るのか。理解を絶していた。
だが、彼女の背後にある車には見覚えがある。
源逆家のそれではなく、楢柴家の所有物だから。
「どうしたんですか、急に」
僕は警戒しながら聞く。
源逆灯はニコニコと邪気のない笑顔。
「昨日創様に私がお願い申し上げたことを憶えておいででしょうか?」
(お願い?)
そんなことあっただろうか。
「綾緒お嬢様を訪ねて頂きたいと申し上げたのですが」
「あ、ああ、はい」
暇があったら、等と政治家の「善処する」に似た言葉で取り繕ったはずだ。
「あの後早速お嬢様にお伝えしました。創様もお嬢様に逢いたがっていると」
「ええっ!?」
「綾緒お嬢様は大層感激されまして、お二人が逢うこと出来るよう、私が迎え役を買って出た次第でご
ざいます」
善人は。
この善人は、物事を表層しか見ない。
無邪気だ、と綾緒も云っていたはずだ。
だから。
だからこそ。
この少女は僕の発言をポジティブに受け取ったのだ。
(なんと莫迦なことを云ったのだろう)
僕は自分の迂闊さを呪った。
これでは僕が綾緒を積極的に望んでいる構図になるではないか。
後悔しても後の祭り。
高級車に押し込まれた僕は、そのまま鶯の城へと輸送された。


619ほトトギす ◆UHh3YBA8aM :2010/05/31(月) 15:52:29 ID:rteUYnWY
「にいさま、お逢いしとうございました」
従妹の私室に通されるとすぐ、楢柴綾緒は僕に抱きついた。
控えめだが、強烈な意志を感じさせる抱擁。
僕一瞬身を竦める。
ここはついこの間、綾緒に“された”場所だからだ。
背筋の寒さと吐き気を感じる。
他方綾緒は極めて上機嫌で、そこに『夜叉』の姿はない。
比較的騒動以前の綾緒に近い雰囲気であったと云える。
(安定している――のだろうか)
僕と結ばれ。
僕が逢いたがっていると誤解した綾緒には、心をささくれ立たせる要因がないからなのだろう。
皮肉にもあの夜の出来事が彼女を安寧たらしめていると云うことなのだろう。
腕の中をそっと見る。
一日しか挟んでいないはずなのに、綾緒には艶が出たように思う。
女になったからか、明らかに美しくなっている。
それが僕には余計に辛い。
従妹との関係は文人氏に清算して貰うとしても、契った事実は消えることがない。その責任は何らかの
形で取らねばならぬだろう。
問題はあの夜のことを伯父にいつ、どうやって話すか、だ。
(それにしても・・・・)
僕は自分が比較的落ち着いていることに驚いた。
もっと怯え。
もっと震え。
もっと沈むものかと思っていたのだ。
無論、今でも怖い。
帰りたいかと問われれば迷わずイエスと答えるだろう。
しかし、この間のような心神喪失状態ではないのだ。
どうしてこんなにも凪いでいられるのか。
時間を置いたからというのもあろう。綾緒が落ち着いているというのも一因には違いない。
だが、それらは根本的な理由ではない気がする。
では何故過剰に取り乱さずに済むのか。
いや、抑も壊れた『僕』がここまで『復旧』出来たのはどうしてだったか。
その原因を考えたが、そこへ到達するより早く、従妹の言葉が意識を奪った。
「にいさま」
鶯の鳴き声は、容易に心に突き刺さる。
平静を装いながら「なんだ?」と尋ねても、返事はなかった。
自ら呼び掛けてきたにもかかわらず、綾緒は無言で僕の胸元に頬を這わせている。
声を掛けたのではなく、心が零れただけとでも云うように。
『妻』の表情は蕩けそうなくらいに緩んでいて、上気した肌がやけに目に付いた。
「にいさま・・・・」
従妹の顔には女としての性質が浮かんでいる。情欲を抱いていると推定するには充分な表情であった。
だから僕は身を竦める。もう二度と、あんなことをしたくはないから。
「にいさまァ・・・・にいさまぁ・・・・」
媚びるような、甘えるような声。
普段の綾緒ならば決して出さぬ、声。
ある種の感情の発露。
まるで酔っぱらうかのように従妹はとろんとした赤ら顔になって往く。
自分の行動と言動で更に身体を疼かせているようだった。
まずいな、と僕は心で呟いた。
このままでは、あの日の繰り返しになる――
危機感を抱いた僕は、和装の少女を引き離した。
「あん、にいさまぁ」
僕の行動を焦らしと取ったのか、眉をハの字にしてやや不服そうに口を尖らせる。
その瞬間、和装の胸元で銀色の何かが揺れ動いた。
何かを首から提げている。僕が一ツ橋に貰った安産祈願のように。
「・・・・綾緒、それは一体何だ?」
指さすと、綾緒はキョトンとした後、得心したように微笑んだ。
「これですか? これは御守りでございます」
「お、御守り?」
620ほトトギす ◆UHh3YBA8aM :2010/05/31(月) 15:55:16 ID:rteUYnWY
「はい。にいさまが・・・・そのぅ、にいさまが、綾緒との間を考えて、“それ”を所持して下さって
いるではありませんか」
真っ赤な顔で身を捩らせながら、一ツ橋の御守りを指し示す。
従兄妹が一線を越えた切っ掛けを。
「ですから、綾緒も何か御守りになるものを、と思いまして・・・・」
従妹の持つ『御守り』は一般的なそれではなくて、奇妙な金属である。
匙ような篦のような、奇妙な形をした、『器具』――
「何か霊験あらたかなものなのか?」
それにしては、どこか禍禍しい。
「いいえ。霊威の類は微塵も。抑も信仰に属する器物ではありませんから」
「つまり、実用的なものってことか?」
「実用・・・・? そう、ですね。でも、どうでしょうか。使用するような事態にはならない方が良い
ものではありますね」
つまり、事前に何かを防ぐべきもの、ではなく、事後に使用すべきもの、と云うことなのだろうか。
「・・・・何に使うんだ、それ?」
「罰を与えるものですよ――」
涼やかな笑顔で綾緒は云った。
それで僕は理解する。
爪や、耳を失った過去が判らせる。
つまりは、そういうもの――
夜叉に属する器物なのだと。
「所有、と云う概念は洋の東西を問わずに存在します。当然、それを犯す者には罰が下る・・・・その
ための準備ですよ」
「・・・・だから、使わない方が良いものだと?」
「ええ、左様でございます。悪しき者は現れないに勝るはありませんから。綾緒だけが、この景色を持
って良いのです」
「け、景色・・・・?」
「日ノ本――いいえ、楢柴創と云う景色。それを見て良いのは妻たる綾緒だけ。分を越えてそれを望む
者がいるならば、その力を奪ってしまえば良いのです」
その力。
つまりは、視力。
その銀色は。
目玉を抉り、掻き出すための、鶯の爪牙――
(人間の眼球を刳り貫く?)
そんな発想がナチュラルに出てくる従妹に、僕は恐怖と目眩を憶える。
621ほトトギす ◆UHh3YBA8aM :2010/05/31(月) 15:58:05 ID:rteUYnWY
「綾緒は女です。ですから、他の女がにいさまに向ける視線の質が判ります。にいさまは綾緒を愛して
下さっておりますから、にいさま御自身を心配する必要はありません。ですから、逆に、にいさまに近
付こうとする盗人を罰するものを持つべきであると考えました」
それは一方的な宣戦布告と云うべきか。
従妹の発言をそのままの意味で取るならば、仮に僕が綾緒を好いていたとしても、僕の廻りで流血の宴
は開かれると云うことだ。
なんという歪んだ発想なのだろうか。
叛意させねばならぬ。
間違いであると気付かせねばならぬ。
でなければ、でなければ。
「綾緒、伯父さんはどうしてる?」
応援がいる。独力でこの少女を御すことは不可能だ。
「とうさま、ですか」
従妹の表情から笑みが消えていた。
一ツ橋の無表情とは違う。凍てついた感情であった。
「あの人は、綾緒とにいさまの敵です」
「て、敵?」
「にいさまと綾緒の仲を裂こうとする、それは敵であり悪でありましょう? ですが御安心下さい、に
いさま。にいさまの御両親が万難を排して結ばれたように、綾緒とにいさまもまた、不滅の関係を営む
ことが出来るでしょうから。愛しておりますにいさま、この世界の誰よりも、何よりも。綾緒はにいさ
まだけを、お慕いしております」
楢柴綾緒はそう云って笑う。
僕の質問は哄笑の渦へと飲み込まれ。
立ち尽くすだけの従兄を形作るだけだった。
飛び立たせてはならない。
今はまだ、出すべきではない。
この鶯を、鳥籠の外側へは。


622ほトトギす ◆UHh3YBA8aM :2010/05/31(月) 16:00:55 ID:rteUYnWY
「朝歌・・・・」
楢柴邸から戻ると、自宅の前には痩身矮躯の少女が立っていた。
制服姿、手には鞄。
一応は登校を前提としたスタイルのようだ。
「どうしたんだ、一体」
「それは私の科白です。夜明けと共に姿を消したのはお兄ちゃんのほうでしょう」
返す言葉もない。
源逆灯の『善意』によって、僕は妻の実家へいたのだから。
学校がある。
そう告げると綾緒は拍子抜けするくらい簡単に僕を解放した。
感情が自分に向いている。そう勘違いするが故の寛容さなのだろう。
最早僕が帰るべき場所、帰るべき世界は己の傍らなのだと確信すらしているようであった。
他方、僕の心情や境遇を知悉する傍観者にとってみれば、昨日の今日で何かあると思い至るのは寧ろ当
然で、それが先輩の家へ足を運ぶ動機となったようだった。
「従妹よりも部長がリアクションすると思っていましたが。不完全燃焼で帰宅したのは彼女の方ですか
ら」
その通りだ、と思う。
彼女なら朝一番で日ノ本家へやって来ても不思議はない。
けれど、織倉由良の姿はどこにもなかった。
「来ました」
心を読んだかのように、一ツ橋は呟く。主語が抜けているが、誰を指しているかは当然判る。
「来たのか、織倉先輩は」
「買い物袋を持っていましたから、朝食を作るつもりだったのでしょうが、蛻の殻だと判ると学校へ向
かいました。お兄ちゃんが登校したと判断したようです」
「・・・・でも、お前はここにいるんだな」
「制服が残っていましたから。自発的に出かけているか第三者の意志が介在しているのかは知りません
が、戻ってくる公算が大であると思っただけです」
「・・・・・・」
一ツ橋はじっと僕を見上げている。
大きくて、綺麗な瞳だった。
感情は読めないが、僕を抱きしめた時と同じ目だ。矢張り心配されているのだろうか。
だからこそ、あの金属を思い出す。
景色を奪う者に罰を。
鶯はそう囀った。
先輩は。
織倉由良は、多分綾緒に侵犯者だと認識されている。
何度か名前も出たのだし、手加減されたとは云え投げ飛ばされたこともあるのだから。
けれど多分、一ツ橋は違う。
今はまだ、嵐の外だ。
巻き込みたくない。
そう思ったからこそ、突き放したのに。
それでも一ツ橋は、僕の傍にいる。
彼女は織倉由良に殴られた。人や場所を変え、それが再現されるとは思っていないのだろうか。
それとも、承知の上だとでも云うのだろうか。
623ほトトギす ◆UHh3YBA8aM :2010/05/31(月) 16:03:47 ID:rteUYnWY
「一ツ橋」
「朝歌です」
「昨日はサボらせて悪かったよ。今日はこの通り無事だから、学校へ往ってくれ」
僕はそう云うと家から離れた。
学校へ往く気はなかった。
家に戻るのも億劫になった。
どこかで時間を潰そうと考えた。
幸い、財布は持ってきている。家の鍵は織倉由良が開けたままにしているかもしれないけれど、施錠を
確認するのも面倒だ。
このまま消えて往けたらどんなに楽だろう、と現実から目を背けた。
けれど、ちいさな足音がついてくる。
僕の後ろを、歩いているのだ。
「何でついてくる?」
「・・・・・・」
一ツ橋は答えずに、じっと僕を見上げている。
「気を遣う必要なんて無いんだ」
「・・・・・・」
彼女は矢張り答えない。
諦めて歩き出すと、背後の靴音も静かに再開されていた。
朝歌はじっと僕を見る。
きっと今もそうなのだろう。
それがどの様なものであるかは判らないけど、『真っ直ぐ』であることだけは確実だ。
廻りには、それがどんな景色に見えるのだろうか。
例えば、あの鶯には。
「・・・・・・」
立ち止まって振り返る。
子猫のような綺麗な瞳が変わらずにあった。
だから僕は不安なのだ。
(そんな目で見るなよ、一ツ橋)
でないと。
――にいさま
でないと。
――にいさま
でないと。
――にいさま


お前のその目が、なくなるぞ。
624無形 ◆UHh3YBA8aM :2010/05/31(月) 16:06:39 ID:rteUYnWY
投下ここまでです
では、また
625名無しさん@ピンキー:2010/05/31(月) 16:27:17 ID:ZG3JP49k
キター
ほトトギすキター(゜▽゜)
GJ
ヤンデレ家族とほトトギすずっと待ってたのがキター
626名無しさん@ピンキー:2010/05/31(月) 16:57:22 ID:yCP2P7dy
GJ!!
なんだこの名作達の帰還は
627名無しさん@ピンキー:2010/05/31(月) 17:56:45 ID:WYalJJ9B
Gj!
キモ姉妹スレでもお待ちしております
628名無しさん@ピンキー:2010/05/31(月) 18:12:43 ID:J1dvkuTv
無形氏まで復活となこりゃめでたいGJ
629名無しさん@ピンキー:2010/05/31(月) 18:53:13 ID:2vBubd3R
>>624
GJ。
まさか無形さんまで投下してくださるなんて。
630名無しさん@ピンキー:2010/05/31(月) 19:34:33 ID:8leOwdVn
この流れ…一体何が始まるんです?
631名無しさん@ピンキー:2010/05/31(月) 19:40:10 ID:nHe16/z9
支援
632名無しさん@ピンキー:2010/05/31(月) 20:06:13 ID:7emWYGZz
次はことのはぐるまら辺が復活かな
633名無しさん@ピンキー:2010/05/31(月) 20:54:06 ID:UtYSmU5m
名作来たな
感動
634名無しさん@ピンキー:2010/05/31(月) 21:14:43 ID:oJbpAVCH
>>624
お久しぶりです、GJ!
朝歌だけが救いだよ、癒しだよ。
すっげー腹黒の匂いがするけど一番かわいい。
次回投下がいつになるかはわからないけど楽しみにしてます。
635名無しさん@ピンキー:2010/05/31(月) 21:17:36 ID:wKYCtmvW
このスレの全てに感謝を、GJ
636名無しさん@ピンキー:2010/05/31(月) 22:55:33 ID:qPUoH4w+
幸運
637名無しさん@ピンキー:2010/05/31(月) 23:40:36 ID:qPUoH4w+
>>630
大惨事ヤンデレ大戦だ
638名無しさん@ピンキー:2010/06/01(火) 00:20:37 ID:5tYKgj9P
>>624
一ツ橋可愛いよ一ツ橋。ねこ大好き
最後に立っているのは一ツ橋かも、と思う反面、
その行動が行き過ぎてバレて○○○な目に遭うんじゃないかとも…


>>632
同士よ。俺も懐かしい作品が来ると期待してしまう。
密かに、このスレの昔の作者が、トリを変えて別の作品を投下してるんじゃないか、とか疑っちゃうんDA。
あんまり古い作品だと覚えてる人も少ないし、同時連載を遠慮してる、って理由で。
俺は同時連載でも一向に構わん!のだけど。
639名無しさん@ピンキー:2010/06/01(火) 02:39:22 ID:HMj8Obz3
GJ!
朝歌が最後どの程度の傷を受けるか
わかっているだけにこの後何が起きるかを想像すると
なんとも言えない気持ちになるな
640名無しさん@ピンキー:2010/06/01(火) 04:19:06 ID:ovqokYle
>>632
違う作者が投下しづらい書き込みだな。
641名無しさん@ピンキー:2010/06/01(火) 11:46:24 ID:OU1eVNZy
>>640
それを言ったら持ち上げられてない作者はいつも投下しにくい空気だろ
642名無しさん@ピンキー:2010/06/01(火) 12:29:50 ID:jSqVw9jt
このスレを潰すには良い手段だな
643名無しさん@ピンキー:2010/06/01(火) 14:06:33 ID:rE3M1c0q
朝歌たんおかえり…
久々で本当に嬉しいよ…
644名無しさん@ピンキー:2010/06/01(火) 17:22:19 ID:tj6AWgll
645名無しさん@ピンキー:2010/06/01(火) 18:25:32 ID:D0Hj+qEc
毎度思う。○○マダー?とか次は○○が来る予感とか、そういう書き込みしてる奴あほじゃねえのかと
646名無しさん@ピンキー:2010/06/01(火) 19:10:02 ID:3eqHg3wK
そう思っても書き込むのは喧嘩の火種を作るだけだから止めようね!
647名無しさん@ピンキー:2010/06/01(火) 19:26:44 ID:k5vlWYdP
>>644
648名無しさん@ピンキー:2010/06/01(火) 20:06:13 ID:eol/C/3h
せっかく良い流れに成って来ているので阿呆レスは全てスルーと言うことで…
所でラブラブ状態のヤンデレが被害妄想で浮気もしてない朴念仁主人公を拉致るのは良くある事だが…ヤンデレは病む前に何かサインを出すのだろうか!?
649名無しさん@ピンキー:2010/06/01(火) 20:17:00 ID:y/IH3GXq
あー、テストテスト
書き込みができるようだったらなんかSS書いてみる
650名無しさん@ピンキー:2010/06/01(火) 20:26:10 ID:3eqHg3wK
>>648
料理の味が濃くなり異物が混入され精がつく料理ばかりになる
651 ◆8jnT/g1A3Q :2010/06/01(火) 20:53:14 ID:Q4AmEywj
投下していいのか分からない雰囲気ですが、続きができたので投下します。
サトリビトのドラクエ風のほうです。
652サトリビト・パラレル ◆8jnT/g1A3Q :2010/06/01(火) 20:54:50 ID:Q4AmEywj
僕たち一行は目的地に到着した。
道中様々な敵と出会い、数多の死闘を繰り広げて(主に僕と太郎君が)ようやくここまでやってこれたのだ。
「どうする?とりあえず先に宿でも取ってくるか?」
太郎君がまるでリーダー気取りに提案してきた。なんとなくムカつく。なんとなく反抗したい。
「まずはごはんだろ?レストランを探そうぜ!」
だが真のリーダーはどちらの意見も突っぱねた。
「まずは教会に行くのが先決でしょ?何かあったらどうするのよ」
あれ?陽菜ってキリスト教徒だっけ?
でも僕なんかの疑問は所詮、ハエのようなものなのだ。叩き潰されるのが運命。
なので口にはしなかった。

教会に行くと神父さんから驚きの態度を取られた。
「あ、あの〜・・・」
「今日は迷える子羊たちが来ませんね」
「・・・」
先ほどから話しかけているのに、完全にシカトされるのだ。僕たちが何かしたって言うのか?
「・・・どきなさい慶太・・・そいつはきっと魔物が化けているのよ・・・」
陽菜の手に炎の塊ができている。
「だから・・・消す」
「や、やめろーーーーーーーーー!!」
なんとか陽菜に抱きついて止めることができた。・・・ちょっとラッキ♪
「ちょ、慶太、何やってんのよ///!?」
照れてる顔もかわいいな〜・・・しばらくこうしてよっかな?
「・・・陽菜さんがやらないなら私が遺悪で消します」
「だ、だからダメだってばーーーーー!!」
今度は恭子ちゃんに抱きついた。
「あぅ・・・慶太さん・・・♡」
僕は一体何をしてるんだ・・・
その時、恭子ちゃんと陽菜の目があった。なぜかは分からないが、目があった瞬間にお互いが微笑んだ事が・・・怖かった。
「・・・やっぱり私が消すわね?」
「うわーーーー!!」
「・・・いいですよ。私がやりますんで」
「ダメーーーー!!」
このコントが数時間続いた。

「と、とにかく適当に声をかけよう!」
そういうわけで、先ほどから町人、武器屋、防具屋などに声をかけるが、やはり誰もが僕たちを無視した。
なぜか宿屋だけは練習と称して僕たちから金を巻き上げようとしたが・・・
途方にくれた僕たちは、一番人の出入りが激しい船着き場でずっと座り込んでいた。
「・・・どうしよう・・・」
このまま一生無視され続けるのか、その前に陽菜の怒りが爆発するかは分からないけど、どっちにしろ早く解決しないと大変なことになるのは分かる。
そんな時、救いの手が僕たちに差し伸べられた。

「やっと見つけました。魔王を倒す勇者たちよ」

そこには金髪でグラマーな美人・・・というか姉ちゃんがいた。
653サトリビト・パラレル ◆8jnT/g1A3Q :2010/06/01(火) 20:55:44 ID:Q4AmEywj
「あ!名乗りもしないでいきなり話しかけて驚かれましたよね?」
・・・姉ちゃんだろ?話の内容といい、口調といい・・・笑いを取ろうとしているのか?
「私の名前は祥子と申します」
あ〜分かったよ、付き合えばいいんだろ?それで祥子さんは僕達に一体何の用ですかね?
「・・・何の用なの?」
陽菜も僕と同じことを思ったらしい。ただ、質問の真剣さは大きく違ったが。
「あなた達は魔王を倒すべき勇者とその仲間ですよね?それで分かっていただけましたか?」
まったくもって意味不明である。これで分かる奴がいたら何でも言う事を聞いてやるよ。
「つまり、あなたは魔王を一緒に倒す勇者を探していて、それが私たちだから声をかけた、と?」
「さすが勇者様一行。賢さにも秀でていますね」
なんと陽菜が正解してしまった。それにしても自分から勇者達と名乗るなんて、陽菜は恥ずかしくないのか?
「とりあえず・・・あなた達の姿を取り戻すのが先決ですね」
姉ちゃんががビックリ発言をした。姿を取り戻す?
「姿を取り戻すって何?」
「今あなた達の姿はごく一部を除いてこの世界の住人には見えません。きっと魔物の呪いのせいでしょう」
「え!?・・・でもそんな呪い受けた覚えがないけど・・・」
「いいえそんなはずありません。きっと魔物の呪いです」
「でも本当に―――」
「・・・魔物の呪いのせいだっつってんだろ?」
「あ、そうでした!今思い出しました!」
なんとか三度目の命は守ることができた。やっぱり体は大事にしないとね?
「それであなたに元に戻せるんですか?」
恭子ちゃんがまるでお前ごときにできんのか?という目をしている。いや、僕の天使に限ってそんなはずはない。きっと疲れから幻覚を見ているのだろう。
「まずは材料を取りに行かなくてはいけません。ここから少し南下したところにある洞くつにそれはあるのですが・・・」
言い淀む姉ちゃん。嫌な予感がする。ってか嫌な予感しかしない。
「その洞くつには最近魔物がはびこりだしているんです」
やっぱりね。ならこのままでもいいや。
「ならとっととその洞くつに向かおっか」
「そうですね」
「さすが勇者様一行。頼もしい限りです」
やる気満々の女性陣。対して・・・
「うぅ!?・・・急にお腹が痛く・・・!」
「大丈夫太郎君!?しかたないな、俺が残って看病するか・・・」
やる気の全くない男性陣。だって僕たちは弱いんだもん。
「何言ってんのよ慶太。あんたも行くのよ」
そう言って僕の手を引く陽菜。嬉しいやら止めてほしいやら複雑な心境になる僕。
「お兄ちゃんは私が心配じゃないの?私が魔物に殺されてもいいの?」
はっ!そうだ、恭子ちゃんを守るのが僕の使命なんだ!・・・ま、僕より数倍も強いんだけどね。
「では四人で向かいましょう」
「え・・・あ・・・あの・・・やっぱり僕も行こっかな?」
「お腹痛いんでしょ?太郎君は休んでていいよ?」
「そうですよ。しっかりと休んでて下さい。いつまでも休んでて結構なんで」
「では行ってきますね」
なぜだろう。戦場に向かう僕より、安全な町で待機する羽目になった太郎君の方が気の毒に思えてしまった。
654サトリビト・パラレル ◆8jnT/g1A3Q :2010/06/01(火) 20:56:28 ID:Q4AmEywj
よく心霊スポットとかにトンネルが出てくる。
狭くて暗くて風の音が聞こえるトンネル。
それだけでも怖くて、入るのを躊躇ってしまうだろう。
それを何十倍も怖くした場所に今僕たちは来ていた。
「お兄ちゃん、怖〜い♡」
そう言って僕の腰にしがみついてくる恭子ちゃん。しがみ付く場所が腕から腰に変わったのはレベルアップした影響だろう。
「・・・ふ〜ん・・・今から魔物と戦うってのに・・・ずいぶんと余裕だね、慶太・・・」
先ほどから恐怖で目を閉じている僕が余裕?怖さのあまり姉ちゃんの服をつまんでいる僕が余裕?
「あ、あの・・・どうかされましたか?」
ごめん姉ちゃん。町に帰るまでこうしていてもいいですか?
「・・・選びなさい慶太・・・魔物たちと戦うか・・・私と戦うか・・・」
僕は咄嗟につまんでいた手を離す。そして恭子ちゃんにも言った。
「確かに怖いよね?でもさすがに抱きつかれると二人とも危ないから・・・手をつなぐのでもいいかな?」
「えー!・・・分かりました」
恭子ちゃんはしぶしぶ僕の腰にまわしていた手を離し、手を握ってきた。恋人繋ぎなのはきっと怖いからだろな。それ以外に他意はないよな。
「・・・私も怖いんだけどな・・・」
「ほら・・・陽菜も手をつなごう?」
右手を差し出すと、顔を赤く染めながらも陽菜が手を握ってきた。
この瞬間、僕は最強になった。右手には超攻撃呪文、左手には回復呪文。まさしく最強の装備だ。
ただこの装備には難点が一つだけ存在した。
「・・・なんで陽菜さんまで?陽菜さんは大人なのに洞くつが怖いんですか?」
「大人でも洞くつは怖いよ。でもそれ以上に・・・害虫によって私の宝物が穢されるのが一番怖いかな?」
「あ、奇遇ですね!私も同じ事考えてました!」
なぜか考えることは同じらしいのに、相性は最悪の気がする。
「フフ、仲がよろしいのですね。羨ましいですわ」
姉ちゃんの言葉に僕の両手を握る力が倍増した。かなり痛いんですけど・・・
「・・・羨ましい?・・・どういう意味?」
「まさかお兄ちゃんと手をつなぎたいんですか?」
さらに力を込める二人。いだだだだだだだだだだだだだーーーーーーー!!!
「そういう事ではありません。ただ・・・弟の事を考えてしまって・・・」
ん?僕の事?
「実は私には弟がいまして・・・とは言ってもあなた達のように仲が良かったわけではありませんでしたが・・・」
そりゃそうだろうね。なんせ僕の中での姉ちゃんの記憶と言ったら、殴られ、蹴られ、罵倒を浴びせられた事が8割以上を占めているんだから。
「小さい頃に生き別れたっきりで・・・もうかれこれ10年近く会っていないんです・・・」
え?僕の記憶が正しければ一週間くらい前には会ったような・・・?
「名前は輝(テル)と言って、とてもかわいい弟でした・・・」
ここまで来たらさすがの僕でもショックを受けた。弟の名前を間違えるなんて・・・あんまりじゃない?
「そうなんだ・・・もう一度、弟さんに会えるといね」
「はい・・・実は旅をしていたのも弟を探すという目的が含まれていたんです」
「私もできるだけ協力します!やっぱり姉弟(兄妹)は一緒にいなきゃだめですよ!」
「恭子さん・・・有難うございます!」
なにやら女性陣に奇妙な関係が生まれた。それよりも僕はどうすればいいのだろう?今さら僕が弟ですと名乗れるような雰囲気ではない。
「そうと決まれば一刻も早く元の姿を取り戻さないとね!」
意気揚々と三人+一人は洞くつに入っていった。
655サトリビト・パラレル ◆8jnT/g1A3Q :2010/06/01(火) 20:57:08 ID:Q4AmEywj
洞くつに入って早々、僕は目が点になった。
「百怒!」
なぜなら姉ちゃんも呪文が使えたからだ。しかも一瞬で敵を凍らせてしまうほどの。
「・・・本当にごめんなさい。役に立たなくてごめんなさい」
もう消えたい。
「大丈夫だよ!慶太だってレベルが上がれば強くなるよ!」
そう言われればこの洞くつに来る途中、初めて一人でスライムを倒したのだ。・・・薬草三枚を使って。
「それにこの前も言ったけど、私はお兄ちゃんがいるだけで十分だから!」
恭子ちゃんのセリフは嬉しいが、この場では言ってほしくなかった。なぜならその瞬間から右腕が再び悲鳴を上げだしたからだ。
そうやって右手を失ったらごはんはどうやって食べようかな?と考えていたとき、大きな鏡が目の前に現れた。
「悪魔の鏡!?」
どうやら敵だったようだ。名前的に。
「まさかこんな所で出てくるなんて・・・っ!」
姉ちゃんが苦虫を噛んだように顔をしかめる。そんなに強い敵なのか?
もう一度敵を見るが、とても強そうには見えない。ってかただの鏡にしか見えない。
「皆さん、アイツの鏡を見てはダメよ!」
だが姉ちゃんの警告は一歩遅かった。すでに僕とその両側にいる人物が鏡を見てしまったのだから。
次の瞬間、鏡が急に光りだし姿を変えた。
「くっ・・・遅かった・・・!」
鏡はそのままぐにょぐにょと動き、やがて収束した。その姿は・・・

「「「え?」」」

なんと恭子ちゃんだった。
「これがアイツの能力です。自分を見た者の姿や記憶、さらには能力までもコピーしてしまうという恐ろしいヤツなのです」
なんだって!?それなら最強じゃないか!僕はいくら敵だからと言って偽恭子ちゃんを攻撃なんて―――
「眼羅巳ぃいぃぃぃぃぃ!!!」
そんな中陽菜は迷いや躊躇といったものを全く感じさせず、いやむしろ親の仇を討つかの如く特大の火の球を放った。
「ウハハハハハハハハハハ!!!死ね、死ね、死ねぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
相手は最初の一撃で黒こげになったにもかかわらず、陽菜は攻撃の手をやめない。
その光景に誰もが息を飲んだ。恭子ちゃんに至っては顔面蒼白で震えている。
「よ・・・陽菜・・・?」
「!」
僕が声をかけると、ようやく陽菜は我に帰った。
「ア、アハハハ・・・あまりにも呪文の調子が良かったから・・・つい・・・」
ついだと・・・?ついであそこまで・・・相手が灰になるまで火の球を放ったとでも言うのか?
「そ、それじゃあ先に進もうね!」
陽菜は攻撃時に離した手を握り戻してきた。
先ほどまでは嬉しかったはずのその行為が・・・止めてほしいと思えた。
656サトリビト・パラレル ◆8jnT/g1A3Q :2010/06/01(火) 20:57:54 ID:Q4AmEywj
洞くつの先へと進んで行った僕達に、再び奇怪な光景が現れた。
「・・・ヒック・・・ここに来れば姿が戻るって聞いたのに・・・ヒック・・・道に迷っちゃったよ〜・・・」
なんと女の子が泣いていたのだ。
こんなところに女の子一人なんて罠以外に考えられなかったが、その子が可愛らしかったのでまんまと引っ掛かってしまった。
「あの・・・大丈夫ですか?」
声をかけるとその子は驚いて顔をあげた。
・・・はぁ・・・何となく想像できたけど・・・やっぱりね・・・
「わ、私が見えるの!?」
「・・・見えるし、多分君の名前も言えるよ。・・・結衣でしょ?」
「!」
その子・・・岡田はこれでもかというくらいに目を見開いて僕を見つめた。
「も・・・もしかしてあなたが・・・///」
何やら急に頬を染めだした。その様子といい、真横から感じるプレッシャーといい、なぜかこの先は言わせてはいけない気がする。
「ま、まって―――」

「私の将来の旦那なの!?」
「「「「!」」」」

場が凍った。
「おばあちゃんに言われたとおりだ・・・私が困っているときに助けてくれて、尚且つ名前を言い当てた人と私は結婚するって・・・!」
ずいぶん具体的だな。そんなの僕で確定みたいじゃないか。
「しかもお互い姿を失くした状態なんて・・・運命で結ばれてるんだ!」
岡田は僕の両手が見えてないのか、弾丸のように抱きついてきた。姉ちゃんといい岡田といい、最近は性格を変える遊びでもはやっているのか?
「う〜ん・・・初めて会ったのにもうドキドキしてる・・・♡」
頼むからやめてくれ。頼むから顔をすりすりするのはやめてくれ。僕の両サイドの御方の顔が見えないのか?
ついに我慢の限界が来たのだろう。僕の左手が先制口撃をしかけた。
「・・・3秒以内に離れて下さい。さもないとあなたの両足を吹き飛ばしますよ?」
恭子ちゃんに変なスイッチが入った。
「・・・今日はやっぱり呪文の調子が良さそうだな♪」
陽菜の顔が悪い意味で輝きだした。
「んふ〜大好き♡」
それでも岡田は二人に気がつかなかった。かわいそうな岡田・・・恨むなら優柔不断な僕を恨んでくれ・・・
しかし彼女の身には危害が及ぶことはなかった。なぜなら―――

・・・グチャッ!!・・・
「ウギャァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!」

「け、慶太!?一体どうした・・・の・・・」
「お、お兄ちゃ・・・ん・・・」
「どうしたの!?何かあった・・・の・・・」
「何やってるの二人とも!恭子ちゃんは早く保井美を!陽菜さんと結衣さんは早く薬草を!」
「ウギャァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!」
「くっ!・・・だめだわ・・・血が止まらない・・・!」
「い、嫌だよぉ!しっかりしてよお兄ちゃん!」
「大丈夫!?ねぇ大丈夫!?」
「ウギャァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!」
二人の握力がどれだけあったのかは分からないが・・・とりあえず僕の想像していた数値の軽く100倍はあったんじゃなかろうか?
僕の両手がグチャッといった。
657サトリビト・パラレル ◆8jnT/g1A3Q :2010/06/01(火) 20:58:44 ID:Q4AmEywj
「た、大変な目に会った・・・」
なんとか回復呪文と薬草のおかげで僕の腕は元どうりになった。だが心の方までは元どうりになるはずもない。
「ねぇ慶―――」
「ダメ!さっきこの人には近付かないって約束したでしょ!また手を潰す気なの!?」
さっきから僕のそばから岡田が離れない。対照的に陽菜と恭子ちゃんは僕のはるか後ろをとぼとぼとついてくる。
なぜなら僕が土下座までして懇願したからだ。しばらくそっとしといて下さいと。
「信じられない・・・この人の手を握り潰すなんて・・・それでも仲間なの!?」
突っ込みどころはそこだけではない。人の手を潰すって・・・二人はいったい何者なの?
「まぁまぁ二人とも反省してるんだし・・・そのくらいで止めとこうよ」
そんなのんきなこと言わないでよ姉ちゃん!僕は手を潰されたんだよ!グチャッてされたんだよ!
「まぁまぁ」
「血や骨が飛び出たんだよ!目茶目茶痛かったんだよ!」
「・・・・・・・・・・・・・あ?」
「・・・なんかとてもすっきりした気分になったよ。それに僕も筋トレをしないとね」
「それはいい心がけね」
もう嫌だ・・・早くここから出たい・・・
「あ〜!あれじゃない!」
その時岡田が叫んだ。
岡田の指さした方には、僕の願いが通じたのか、姉ちゃんの言っていた材料のキノコが生えていた。
「そうね、色や形からしてあれで間違いないわね」
「いよっしゃぁぁぁぁあああ!!」
今日一番嬉しい瞬間だった。これでやっと帰ることができる!
だがキノコを抜く前に鏡が再び現れた。
「それは俺の食糧なんだ。勝手に持っていかれたら困るな〜?」
なんと魔物が日本語で話しかけてきた。意外に頭がいいんだな。
「コイツは・・・悪魔の鏡じゃない!?」
姉ちゃんが言った通り、よく見るとソイツはさっきの奴とは微妙に色や大きさが違った。きっと突然変異なのだろう。だから頭がいいのかも。
「どうしても欲しいってんなら俺を倒してからにしな!」
いかにも悪者っぽいセリフの後に、鏡は岡田に変身した。しまった!岡田に教えるのを忘れていた!
「ハハハ!なるほど・・・コイツは魔力が高くて使える人間だぜ!残念だったな!」
ちなみに僕が心配なのは味方の心配ではない。どちらかと言うと相手の心配だ。
「お前!今すぐ僕に変身しろ!後悔するぞ!」
「ハァ?テメーみたいなクズに変身したらやられちまうだろが」
コイツは分かっていない。その姿が今一番危険だという事を。
「フフ・・・フフフ・・・アハハハハハハ!!!!!!」
「アイツは魔物ですよね、お兄ちゃん?だから殺しても何の問題もないですよね、お兄ちゃん?」
遅かったか・・・
「眼羅巳ぃ!罵犠魔ぁ!」
「遺悪!遺悪!遺悪羅ぁ!」
「な、何ーっ!?」
二人は笑いながら持てる最高の呪文を放ち続けた。そのせいで今にも洞くつが崩れそうだ。
「アハハハハハハハハハハ!!醜い顔しちゃって何様のつもりなの!この害虫がぁぁぁぁああああ!!!」
「ゴキブリの分際でよくもお兄ちゃんと・・・死ねよぉぉぉぉおおおおお!!!」
なぜか二人は魔物というより・・・まるでその姿に対して攻撃しているようだった。
658サトリビト・パラレル ◆8jnT/g1A3Q :2010/06/01(火) 20:59:38 ID:Q4AmEywj
「く・・・くそ・・・なんて魔力なんだ!?」
さすが突然変異の魔物。なんとか生き延びているようだ。
「こうなったら・・・」
偽岡田がこっちを見た。
「一か八か別の奴に変身するしかない!」
偽岡田は再び光りだして僕に姿を変えた。・・・陽菜に変わればよかったものを。
「くっ!?何だこの体は!筋肉や魔力をまるで感じないぞ!これではスライム以下じゃないか!」
失礼な奴だな。スライムは僕でも倒せるんだぞ。その前に50連敗したけど。
だが敵にとって奇跡が起こった。
「あ・・・う・・・慶太・・・」
「なんて卑怯なの!お兄ちゃんに変身するなんて!」
二人が攻撃をやめたからだ。
「?・・・成程・・・そう言う事か」
くっ!恭子ちゃんはともかく、陽菜が偽僕を攻撃しない理由が分からないのに、アイツは分かるとでも言うのか!なんか悔しい!
「まずいわね・・・こうなったら私が・・・百怒!」
氷の刃が偽僕を襲う。
・・・自分ではないんだけど、自分の姿をしたものが攻撃されるのって嫌な気分だな。
「ぐわっ!」
偽僕は直で喰らったにもかかわらず、まだ生きていた。なんとなくだけど嬉しい。
「頼む恭子・・・お、俺に保井美をかけてくれ・・・」
僕の声と姿を利用して、敵は恭子ちゃんに救いを求めた。
は!恭子ちゃんがそんなのに騙されるか!
「で、でも・・・」
え?
「愛してる・・・お前が好きだ・・・恭子・・・」
「!」
あ、あの野郎!僕の姿と声でなんてこと言いやがる!
「頼む・・・恭子・・・」
「・・・保井美!」
なんと恭子ちゃんがアイツを回復させてしまった。いや、それより・・・
「それで・・・さっき言ったことは本当なの?私の事・・・あ・・・愛してるって///?」
「本当だよ。それに・・・陽菜、お前の事も愛してるよ」
「!?・・・け、慶太・・・」
「だから・・・俺達の幸せを邪魔するあいつらを・・・片づけてくれないか?そうしたらご褒美のキスをあげるよ」
さっきから何なんだ!僕に対する嫌がらせか!拒否られたら僕は一生のトラウマになるぞ!
「お兄ちゃんのキス・・・分かりました」
「その約束・・・守ってよね」
二人は交渉の末・・・敵に寝返った。そんなバカな!
「お、おい二人とも正気か!?僕たちを殺したら僕とキスするはめになるんだぞ!」
言っていることは滅茶苦茶だったが、意味は通じるだろう。
「・・・わ、分かってます///」
「お願い慶太・・・死んで」
「死ねるかーーーーーーー!!」
僕は逃げた。多分自己最速タイムを更新するスピードで逃げ出した。でも捕まった。
「嫌だーーーー誰か助けてくれーーーー!!!」
その時リアルシスターが僕を助けるつもりで叫んだ。
「二人ともよく聞いて!慶太君はさっき偽物を倒したらキスに加えて添い寝までするって言ってたわよ!」
だが内容は絶望的なものだった。
659サトリビト・パラレル ◆8jnT/g1A3Q :2010/06/01(火) 21:00:54 ID:Q4AmEywj
「お兄ちゃんのキスに加えて・・・」
「添い寝・・・?」
二人が動きを止める。ぎりぎり、若干僕の鼻がやけどを負ったが、ぎりぎりで命が助かった。
「そうよ!なんなら本人に直接聞いてみれば!」
二人が僕を見下ろす。もしここで肯定しなければ・・・確実に焼かれる気がする。
「するよ!なんでもする!だから偽物をやっつけて!」
「ちょっ!将来の奥さんがいるのになんてこと言うの!」
すまん岡田。でもここでしんだら旦那もクソもなくなるだろ?だからこらえてくれ。
「「絶対?なんでもする?」」
「します!します!何でもします!!」
僕の返答に二人は満足したのかニコッと笑った。これまでの経過がなかったらきっと一目ぼれしそうなくらい綺麗に。
「お兄ちゃんがそう言うなら・・・私はアイツをやっつけるね♡」
「慶太が何でもするか〜・・・楽しみだな〜♪」
そのまま彼女達は偽僕に掌を向け、アイツにとって最後であろう言葉をかけた。

「挫羅鬼」「遺悪羅」

「うっ!」
偽僕は絶命した後、体が粉々にはじけ飛んだ。そ、そこまでしなくても・・・一応僕の姿をしてるんだから・・・
「と、とりあえずキノコを採って早く帰ろう!」
やっと平和な町へ帰れる!
確かにこの時はそう思った。

だが町に帰った僕達にはさななる悲劇が待ち構えていた。いや、僕だけに。
「そ、それで・・・その・・・お兄ちゃん・・・キ、キスは///?」
せめて誰もいない場所で言ってほしかったな。怖くて岡田さんの方に振り返れないでしょ?
「なんでもか〜・・・まずは・・・私の事を世界で一番愛してるって言って?」
そ、それくらいなら平気かな―――
「慶太・・・だっけ?妻がいるのに・・・もしそんなこと言ったら・・・どうなるか分かるよね?」
「み、みんな冷静になろうよ!キスとか愛してるとかは冗談だよね!?僕をからかって楽しんでるだけだよね!?」
よく何でもするってセリフを聞くけど、実際は何でもはしないよね?それと同じだよね?
だが恭子ちゃんはすでに何度かレベルアップしていたのを忘れていた。
「・・・嘘・・・ついたんですか?嘘だったんですか?嘘?嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘・・・」
何!?恭子ちゃんが何だかとてつもなく怖いんですけど!?
「・・・フフ・・・アハッ・・・アハハハハハハハハハハハハ!!」
陽菜はレベルが上がっていないはずなのに、なんでこんな黒い笑い方をするの!?もしかして最初っからクライマックスレベル!?
「分かったよ!僕は陽菜を世界で一番愛しています!恭子ちゃんはキスするから早くこっちに来て!」
その後、この町は一人の少女によって半壊した。ちなみに僕の体も。
660 ◆8jnT/g1A3Q :2010/06/01(火) 21:03:42 ID:Q4AmEywj
以上投下終了です。
読んでくださった方、ありがとうございました。
661名無しさん@ピンキー:2010/06/01(火) 21:06:07 ID:GjpU6vnm
>>660
待ってたぜ、今回もなかなか盛り上げるねえ。読みながら酒が美味くって。
662名無しさん@ピンキー:2010/06/01(火) 21:36:18 ID:qGlKdl0T
>>660
GJ


田中の生死が心配www
663名無しさん@ピンキー:2010/06/01(火) 21:39:15 ID:qGlKdl0T
名前ミスったww


太郎君ごめんw
664名無しさん@ピンキー:2010/06/01(火) 21:45:02 ID:tfuCbS/f
パラレルは単発だと思ってたぜGJ
665名無しさん@ピンキー:2010/06/01(火) 21:51:40 ID:CQOXLWwB
みれーーーゆwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
666囚われし者:2010/06/01(火) 22:15:40 ID:hV5ZaQez
初投稿です。
稚拙ですがよろしくお願いします。
667囚われし者:2010/06/01(火) 22:16:04 ID:hV5ZaQez
「はい、これが今日の分ですよ。兄さん。」
ちょうど、朝食を食べ終えた僕の前に、水といつものカプセルを置いた。
「ありがとう、優。」
僕はそう自分の妹、柏城優(かしわぎゆう)に礼を言った。
黒い長髪の、僕と同じ遺伝子を継いでいるとは思えないほどの美少女であり、この年ににして医学の権威であり、数々の学会で論文を発表するほどの才女でもある。
それが僕の妹である。
「ちゃんと飲んでくださいね。じゃないと兄さんまた・・・」
「わかってるよ。」
優に渡されたこの薬、これは僕の病気を抑えるための薬である。
僕は5年前、突如意識不明となり病院で生死をさまよったことがある。
そんな僕の命を助けたのが、当時すでに医学を学んでいた優だった。
優が作ってくれた薬のおかげで僕は今でも生活することができている。
だけど、それは根本的に治療されているわけではなく、病気の進行と発作を抑えるのみ、ゆえに、僕は今もこうして薬を飲み続けなければならない。
薬の飲み終えた僕を満足そうに見つめる優
「それじゃあ、学校に行きましょうか。」
668囚われし者:2010/06/01(火) 22:16:28 ID:hV5ZaQez
「おはよう。奨悟」
学校につくと、いつものように綾華が声をかけてきた。
周防綾華(すおう あやか)は僕の幼馴染のようなものだ。
綾華の家はあの大手薬品メーカー周防製薬である。
僕の両親が周防製薬のメイン研究グループのリーダーをしていることもあり、周防家の人とは個人的に会食することがあった。
そこで出会ったのが綾華である。
それ以来、綾華とは良き友人として長年やってきた仲だ。
といっても、地味で目立たない僕と違って、綾華の快活な性格と上品な顔立ちのおかげで男女ともに人気が高く、そのため僕と絡むことは少なくなってきたように感じる。
「それにしても、またあの子と一緒に来たの?」
「あの子って優のこと?」
「そうよ。」
「そりゃだって兄妹だし・・・」
「兄妹ならなおさらよ!高校生にもなって妹とあんなにベタベタして登校なんて恥ずかしくないの?」
「いや、まぁ少しは・・・」
正直に言うと僕も恥ずかしいのだが、以前それとなく別々に登校しようと言ったときには
『どうしてそんなこと言うんですか?』と濁った目で延々と詰め寄られたことがある。
それからというもの僕は別々に登校しようなどとは口にできくなった。
「まぁ、それはいいわ。それより明日はちゃんと私の家に来るのよ。」
「え、何で?」
「何でって・・・あんた、明日は私の誕生日でしょ。」
そういえばそうだった。毎年、綾華の誕生日には親しい知人や周防家や周防製薬の関係者を招いたパーティーがあるのだ。
本人はあまりこういうことは好きじゃないらしいが、毎年のことと割り切っているらしい。
「あぁ、必ず行くよ。」
「もちろんよ、絶対着なさいよ。」
そこで彼女の顔から一瞬表情がなくなるのがわかった。
「もし来なかったら・・・・お仕置きだから・・・」
669囚われし者:2010/06/01(火) 22:16:52 ID:hV5ZaQez
授業を終え帰宅すると優はもう帰宅していた。
「おかえりなさい兄さん。」
「ただいま。」
簡単に挨拶をすませ普段着に着替える。
「そういえば、明日は晩御飯はいらないよ。」
「?」
そこで、今日の出来事を報告する。
「ほら綾華が明日誕生日だろ?そのパーティーに行くからさ。」
二人そろって行ければいいのだが、今日の反応を見たように、綾華はなぜか優のことをあまり良く思ってないらしい。
そのため、毎年出席するのは僕だけだ。
「またあの女ですか・・・」
「あの女って、そういう言い方はないだろう?」
「気分を害されたのならすいません。ですが、今年はそれは行かないでいいですよ。」
「へ?」
突然ことに思わず声をあげる。
「どういうこと?」
「だって、明日は第2土曜日じゃないですか。」
「そういえば・・・」
第2土曜日というのは僕と優暗黙のルールというかなんというか・・・
つまるところ、この日は兄妹二人で遊びに行ったり外食にでかけたりする日なのである。
ちょうど両親が研究が忙しくなり二人で留守番することが多くなった頃くらいから優が提案したものである。
優曰く、親がいなくても寂しくないように兄妹の絆を深める・・・ことが目的らしい。
「あ〜、じゃあ今週の土曜日は『いやですよ。』」
優が僕の言葉を遮る。
「えっと・・・」
「嫌ですよ。あの女の誕生日会に行くから今月はなしだなんて・・・」
僕の言葉を先読みして優が言った。
心なしか優の顔が暗く険しく見える。
「えっと・・・、じゃあ延期っていうのはどうかな?」
「それも嫌です。」
そう濁った瞳で僕を食い入るように見つめながら言う。
あまりの迫力に僕は一歩引いた。
「そもそもおかしいでしょう。なんであんな女のために私の一ヶ月の楽しみを取り上げられないといけないんですか?」
「取り上げるって・・・、一日ずれるだけじゃ・・・」
「だから嫌なんですよ、あの女の誕生日会なんてどうでもいいじゃないですか!」
そう言うと優は僕の肩を掴んだ。
優の整った顔と鋭い瞳が僕を貫く、直視できず顔を背ける。
「明日は、私と過ごしてください。」
そう言うと、優は僕を抱きしめた、女の子とは思えないほど強い力で。
そして、僕の耳元で囁いた。
「じゃないと・・・お薬、あげませんよ?」
僕は背筋が凍った。
薬をもらえない、それは遠回しに・・・
「じゃあ、兄さん明日はエスコート宜しくお願いしますね。」
さっきまでの迫力が嘘のように明るい笑顔をむけると、優は僕を離して台所へ向かって行った。
だけど、僕は未だに動けずにいた。
そして、改めて実感させられる。
僕は、僕の命は・・・・  優に握られているんだと。
670囚われし者:2010/06/01(火) 22:17:39 ID:hV5ZaQez
以上です。
スレ汚し失礼しました。
671名無しさん@ピンキー:2010/06/01(火) 22:34:33 ID:5Tf+Xj2L
>>624
待ってました!!!
ほんとにGJです
672名無しさん@ピンキー:2010/06/01(火) 22:40:17 ID:8flzxkS5
>>666
乙、大人しそうに見えるヤンデレはたまらん
673名無しさん@ピンキー:2010/06/01(火) 22:43:26 ID:220vxD/4
GJ
続きよろしくお願いしますね
674名無しさん@ピンキー:2010/06/01(火) 22:48:28 ID:MqmUebPY
いいよいいよー
乙でした
675名無しさん@ピンキー:2010/06/01(火) 23:49:47 ID:POg82MVb
ヤンデレ巫女
676名無しさん@ピンキー:2010/06/02(水) 00:00:02 ID:tfuCbS/f
兄さんって言葉本当に良いよな……
677名無しさん@ピンキー:2010/06/02(水) 00:52:37 ID:PFFR1Fo2
同意せざるを得ない
678名無しさん@ピンキー:2010/06/02(水) 01:03:46 ID:P5NMuhNu
やっぱお兄ちゃんよか兄さんだよな
679名無しさん@ピンキー:2010/06/02(水) 07:18:35 ID:4S+Roe0w
あんちゃん!
680名無しさん@ピンキー:2010/06/02(水) 13:27:07 ID:stOAOzTt
にぃにが至高
681名無しさん@ピンキー:2010/06/02(水) 16:10:04 ID:LXuRSZ0/
ヤンデレに対抗しようとしている時点で相手の術中
相手にとって本当の恐怖は無視されることである

――――ヨーゼフ・ヤンデレ博士
682名無しさん@ピンキー:2010/06/02(水) 16:46:03 ID:KpnmUpiO
683名無しさん@ピンキー:2010/06/02(水) 16:46:24 ID:KpnmUpiO
684名無しさん@ピンキー:2010/06/02(水) 16:46:50 ID:KpnmUpiO
685名無しさん@ピンキー:2010/06/02(水) 16:47:17 ID:KpnmUpiO
686名無しさん@ピンキー:2010/06/02(水) 22:08:20 ID:4S+Roe0w
気持ち悪い
687名無しさん@ピンキー:2010/06/02(水) 22:11:15 ID:GX8CAp3b
そろそろ新スレかな?
688名無しさん@ピンキー:2010/06/02(水) 22:38:47 ID:PFXrokBw
転校生ヤンデレ美少女と幼なじみヤンデレ美少女



どっちと結ばれたい?
689名無しさん@ピンキー:2010/06/02(水) 22:40:16 ID:4O4+OR8M
ヤンデレをなでなでしたい
690名無しさん@ピンキー:2010/06/02(水) 23:22:37 ID:P5NMuhNu
>>688
そりゃあお前
昔一緒に遊んでたけど何らかの事情で離ればなれになった幼馴染ヤンデレ美少女が突如同じクラスに転校してきた
に決まっておろう
691名無しさん@ピンキー:2010/06/02(水) 23:29:55 ID:7ZBKFKk4
生でヤるならヤンデレが一番
病気の心配はゼロ
多少下手でも愛の力でイカせまくり
中に出しても抵抗は一切無し
気が済むまで求められる

ただし責任は必ず取りましょう
692名無しさん@ピンキー:2010/06/02(水) 23:31:42 ID:Kox9f1xy
>>691
そんな君はピルを平気で飲ませるんですね
693名無しさん@ピンキー:2010/06/03(木) 00:44:01 ID:pMHz+wek
ところが用意したピルが他の何かに入れ替わっている不具合
694名無しさん@ピンキー:2010/06/03(木) 00:51:59 ID:4YCV4kc7
妊娠促進剤ですねわかります
695名無しさん@ピンキー:2010/06/03(木) 01:01:53 ID:ZOizzexW
そこで「二人の時間を大切にしたい」の台詞ですよ
696名無しさん@ピンキー:2010/06/03(木) 01:02:33 ID:3TsFYoDR
そして、薬がすり替えられたとは知らず
君はヤンデレの胎内に精液を注ぎ込んでしまい・・・
697名無しさん@ピンキー:2010/06/03(木) 06:32:49 ID:PQjU3gc0
産まれてくる子は女の子で第二の悲劇へ
698名無しさん@ピンキー:2010/06/03(木) 07:59:50 ID:R+igsl1c
おいおい、子供には嫉妬しねーよ
699名無しさん@ピンキー:2010/06/03(木) 08:51:36 ID:pMHz+wek
娘のお友達が泥棒猫でした。
700名無しさん@ピンキー:2010/06/03(木) 09:37:06 ID:7Yg4WEdM
容量的にソロソロnextスレか?
701名無しさん@ピンキー:2010/06/03(木) 09:56:04 ID:I2AWHHgm
スレ立てよろしくね
702名無しさん@ピンキー:2010/06/03(木) 15:28:19 ID:vyOASM6d
>>701
イヤ。
703名無しさん@ピンキー:2010/06/03(木) 16:40:16 ID:Kx9OD65K
次スレ

ヤンデレの小説を書こう!part31
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1275550710/

「part」が全角になってしまった。
気に入らなければ誰か立て直してくれ
704名無しさん@ピンキー:2010/06/03(木) 20:39:35 ID:MgL21MVq
もう次スレか、早いな〜


投稿作家さん方とつかれさんです。続き、楽しみに待ってますよ。
705名無しさん@ピンキー:2010/06/03(木) 22:03:57 ID:0tAyD3PV
勝てる
706名無しさん@ピンキー:2010/06/03(木) 23:51:42 ID:YLlRmkPa
ヤンデレの目を盗んで浮気したい
707名無しさん@ピンキー:2010/06/04(金) 15:55:00 ID:zT/Ytged
一句…ヤンデレ家族に…中出汁すれば…ハッピーエンド
708名無しさん@ピンキー:2010/06/04(金) 23:37:02 ID:1HfwKmM4
はで 有る
709名無しさん@ピンキー:2010/06/06(日) 00:52:44 ID:FsET+nP1
うめ
710名無しさん@ピンキー:2010/06/06(日) 02:04:19 ID:th9Byq+j
711名無しさん@ピンキー:2010/06/06(日) 16:40:30 ID:Y0C5vL66
うめぇぇぇ!(悲鳴)
712名無しさん@ピンキー:2010/06/06(日) 18:59:37 ID:SVwRBPIv
埋め
713名無しさん@ピンキー:2010/06/08(火) 16:00:37 ID:IfBfTjl2
埋め
714名無しさん@ピンキー:2010/06/08(火) 21:11:26 ID:s7OaPyia
ヤンデレにウメられる
715名無しさん@ピンキー:2010/06/08(火) 23:26:35 ID:9lnCFDMo
といっても作品が来ないと埋まらないなうめ
716撲殺天使ドクロちゃん:2010/06/09(水) 09:08:49 ID:kSApkC9i
男女ともヤンデレだったら…
すまん…埋めネタ考えようと思ったけど…ヤンデレカップル同士だと閉鎖空間から一歩も出てこないので
ストーリーが進まん…
「……今日も二人っきりね……」
「明日も明後日も永遠に二人っきりさ…」
「ここってどこだったかしら……」
「そんな事どうでもいいじゃないか…おいで…○○…」
「そうね…分かったは…愛してるわ…△△」
生きてるのか…死んでるのか…地獄か天国かはたまた…現世空間か…私達しか登場しない物語
717名無しさん@ピンキー:2010/06/09(水) 21:00:06 ID:A8cjme4z
ヤンデレ
718 ◆JnMlDjJRAE :2010/06/09(水) 22:58:25 ID:x3E/LD/i
「駆け落ちして同棲する計画は分かった。だが何処に拠点おくんだ。」
「君と二人っきりになれれば何処でも良いわ、そんなこともあろうかと!この三つから選んで。」
1.県内……メリットは学校に近いこと。デメリットは両親×2、義妹の襲撃の危険性が高い。
2.県外……しばらくの間の時間稼ぎ拠点。山奥の永住拠点の二箇所確保。
3.腹案

「県内。ちょっと待て!顔が怖い、妹であってそんな感情は微塵も有りませんって!」
「やっぱり県外だよね。もう拠点は決まってるんだよ。『湖割荘』203号室!」

<次のニュースです。昨夜S県のアパート湖割荘が全焼しました。原因は一階住民の……>
「マジか?燃えてんじゃねーか。つーことで県内だな。」
「こうなったら腹案その一……考えてなかった。」
「なんじゃそりゃ。あーじゃあ俺帰るわ。またあしたな……ちょ…なに親指立ててんの!」
「あの娘には渡さない。絶対に。腹案その二、心中したら永遠に一緒だね。」
「ちょっと待てーぃ!」
719撲殺天使ドクロちゃん:2010/06/10(木) 00:24:53 ID:Di/52niB
ヤンデレ妻と変態夫
「さあ‥あなた……」
「ゲヘ、ゲヘ、ゲヘ孕む、結合、快楽」
「ああ…愛してるは…あなた…」
「放精、女陰、絶倫」
〜〜〜☆
10数年後
夫は精子タンクのごとく未だ毎晩妻とまぐわう…子供の数13人その内女子の生存率わずか1%生き残った女子は全て養子に出される。
「フフフ…禍根の種は全て取り除かねば…あの人の傍にいる女は私だけでいいのよ…ホホホホホ!!!!!」
720名無しさん@ピンキー:2010/06/10(木) 08:01:43 ID:nZGMnifY
書いてくれるのは嬉しいが文章が成り立ってないきがする
721名無しさん@ピンキー:2010/06/10(木) 13:54:37 ID:2oSzU8CM
脳無しの未成年に細かいこと言うなよ
722埋めネタ  ◆wycmxKO9B. :2010/06/10(木) 16:44:12 ID:Gx84vjE6
埋めネタ…アレな娘に好かれて死んだ男達。あの世?の座談会。

2番「第一回、俺達はなぜ死んじまったのか……アレげな人に好かれてしまったのが運の尽き!」
1番「1番、二股がばれて彼女に刺されました。2番の方どうぞ。」
2番「2番、心中させられました。次の方どうぞ。」
3番「3番、オタク趣味がばれて口論の末刺されました(笑)。どうぞ。」
4番「4番、彼女の愛に耐えられず、自殺してしまいました。どうぞ。」
5番「5番、彼女には死ぬまで連れ添ってもらいました。最愛の妻なんですよ。」
1番「それでは始めましょう。」

Q、それぞれの死に方について何か一言。

1番「多少、無責任だった。とでも申しましょうか。大変申し訳ない。」
2番「自殺願望に巻き込まれるほうの身にもなれよな!」
3番「べつに二次元なんだからいいじゃないか。二次の嫁と三次の彼女は別。」
4番「愛が、重いんです。血入りの料理に大量の恋文……嫌がらせの一種なんですか?」
5番「とても幸せな最期でした。願わくば息子に後を継いで欲しい。」

Q、他の方に言いたいことは有りますか。
1234「寿命を全うした5番が羨ましい。」
2番「1番さん、あなたは資料によると女性Aと付き合っているにもかかわらず女性Bとの肉体関係を捨てておらずA嬢に刺されたとありますが。」
1番「B嬢からの誘いは魅力的でした。男性恐怖の気があるA嬢とは上手く行かなかった。この行為は十分浮気行為でした。」
2番「本当にそう認識してたんですか?」
1番「私は自分を客観的に見ることが出来るんです。あなたとは違うんです。ところで、3番の方は何をおっしゃっているのか分かりづらいのですが。」
3番「彼女が部屋に来て、グッズとゲーム類を捨てたうえに結婚を迫ってきたので『君はじつにさもしい女だな』といったら刺された。」
124(アホだこいつ。)
5番「そのような時は、『君だけを見ている』とかいって交渉すればいいものを……」
124(さすが、アレげな女と連れ添っただけのことはある。何かズレてる。調教されたのか?)
3番「ところで2番君、君は同棲住居選定で迷ってた彼女に県内案を提案し、その後に心中とあるが……」
2番「あいつは妹を敵視しているから県外に同棲拠点予定地を作ってた。それが燃えたんで、腹案でグサッと一発。」
3番「4番君が喋らないんだが……どうした。」
4番「……生臭いスープ……好きなんて言葉見るのも嫌だ……人肉ハンバーグ……うわぁぁぁ!」
2番「おい、大丈夫か!こいつトラウマ発動してるぞ!」
1番「よほどひどい目にあったのでしょう。ご愁傷様です。5番の方、奥様と円満に過ごせる秘訣を教えてください。」
5番「まず相手の文化に合わせて痛みを伴った意識改革をし彼女に馴染めるよう努力しました。」
123(痛みを伴った改革て……何したんだ?資料によると苛烈な奥さんだよな……)

それでは、後輩たちに一言お願いします。

1番「自分を客観的に見て退路を探しなさい。」
2番「彼女が出来たと手放しで喜んでいたらやばいぞ。」
3番「コレクションはしっかり隠せよ。水○○は俺の嫁。」
4番「…………ガクガクブルブル」
5番「たぶん、運命なのでしょう。でも良い奥さんになるかどうかは新婚当初のあなた次第です。」

次スレの男性諸君頑張って下さいね〜 被害者?の会一同
723名無しさん@ピンキー:2010/06/10(木) 23:14:43 ID:lp1n1NbA
福田と鳩山と小泉しか分からんw
724名無しさん@ピンキー:2010/06/11(金) 00:13:18 ID:nR7lEnWO
ネェ(*´∀`)(´∀`*)ウン
(´∀`*)ポッ(* ・*)
(*゜∀゜)=3 ハァハァアン(~O~*=*~Q~)アン
725名無しさん@ピンキー:2010/06/11(金) 00:19:36 ID:nR7lEnWO
熟め
726名無しさん@ピンキー:2010/06/11(金) 00:52:21 ID:PzA/z8vQ
3番は麻生さん?4番は特に元ネタはないと思うけど
727名無しさん@ピンキー:2010/06/11(金) 02:44:02 ID:Fow8MrRz
ああそうか水○○が何なのか今気づいた、だから麻生なのか
728 ◆/JZvv6pDUV8b :2010/06/11(金) 13:03:50 ID:XfAuM+yJ
ぽけもん黒22話投下します
729ぽけもん 黒  22話 ◆/JZvv6pDUV8b :2010/06/11(金) 13:04:38 ID:XfAuM+yJ
 ランの爪が僕の頭部目掛けて振り下ろされ、響く悲鳴。
 その悲鳴の主は、あろうことかランだった。
 僕の頭部目掛けて振り下ろされた一撃は、僕の頭のすぐわきを穿っていた。
 僕は無傷だった。
 ランは絶叫しながら、頭を抱えてその場に蹲る。
「ラン?」
 シルバーが怪訝そうな声をあげ、ランに駆け寄る。
 すぐに、いくつかの悲鳴が続いた。
 倒れていたポポややどりさんも、頭を抱えてうめいている。
 まだ生き残っていたロケット団員の内の何人かも同様だ。
 ただでさえ意識が朦朧としている上にこの急展開。
 僕はさっぱり事態についていけていなかった。
 僕は頭に特に何も感じるところはない。
 それはランに声をかけているシルバーも、数人のロケット団員も同様のようだった。
 特定の人間だけが苦しんでいる?
 苦しんでいる人達の共通点はなんだ?
 女性ということ?
 いや、違う。ロケット団員に、僕らと同じように困惑している女性がいた。
 じゃあ、なんだ?
 苦しんでいるロケット団員を眺める。
 そこで気づいた。
 今苦しそうにしているのは、みんなポケモンじゃないか?
 そう思ってみてみると、苦しんでいるのは皆一様にポケモンのように見える。
「ラン、引くぞ」
 シルバーも未だ何が起こっているかよく分かっていないようだったけど、苦痛に呻くランを背負うと、林の中に走っていった。
 この判断の早さはさすがというべきだろうか。
 彼が林に逃げ込む直前、彼と目が合った。
 僕は彼の目から何も読み取ることは出来なかった。
 僕は数瞬呆然としていたが、辺りに満ち溢れる苦悶の声で正気を取り戻す。
 立ち上がり、フラフラとポポとやどりさんの下へ歩く。
 遠くからでもよくない状態だということは分かっていたけど、近付くとよりはっきりと容態が伝わってくる。
 二人とも、息も絶え絶えだ。
 頭のほうの原因は分からないけど、二人とも、重度の火傷を負っていることは明らかだ。
 特にポポは酷い。ランと直接ぶつかった右の翼は酷く焼け爛れ、まさしく、焼き鳥と呼んでも差し支えの無い状態になっている。
 焼き鳥だ。ははは、焼き鳥か。
 こんな悲惨な状況なのに、何故だか、急に可笑しくなってきた。
「ご、ゴールド?」
 リュックから取り出した火傷治しを患部に吹きかけていると、ポポが苦しそうに僕の名前を呼んだ。
「なんだい?」
 僕は震える声で何とか答える。
 笑えて笑えて、こんなことをいうのも一苦労だ。
 僕の尋常ならざる様子に怯んだのか、それとも、傷が痛むのか、震える声でポポが言う。
「ゴールドは……早く二人を追うです……。ポポは、いいですから……」
「ふ、ふふっ、二人? 二人って誰のこと?」
 ポポは青ざめた顔で続ける。
「さっきの、二人組みです。……ゴールド? 大丈夫、です?」
 どうやらポポはこんな状況にも関わらず、僕の心配をしてくれていたらしい。
 ポポの真剣な顔がまた可笑しい。
「ああ、いいんだよ。くっく……だって毒が塗ってあったんだ」
「……毒……です?」
「そう! 毒! 僕のあのナイフにはねえ、猛毒が塗ってあったんだよ! 掠っただけでも死ぬようにってね!」
 僕はもう堪えきれず、お腹を抱えて笑い出した。
 この日のために用意した、特別なポケモンの毒。
 旅の準備をしているとき、何気なくリュックの底に入れた毒ナイフは、僕の最も望んだ形で使われた。
「毒、毒、毒だよ! はっはっはっは! 毒って! はははははは! だからほっといても死ぬんだよ! うふふ、あはははは!」
「ごー……るど?」
「そうだよ! 死ぬんだよ! ひーっひっひ!」
 不意に暖かいものに包まれた。
 気づかないうちに、やどりさんが這ってここまできていたらしい。
 火傷はポポに比べれば大したことないけど、謎の頭痛は感じているのだろう、鎮痛な面持ちだった。
730ぽけもん 黒  22話 ◆/JZvv6pDUV8b :2010/06/11(金) 13:05:15 ID:XfAuM+yJ
「ゴールド、もう……」
「やどりさんも笑おうよ! こんなにおかしなことはないよ! だってシルバーは死ぬんだよ!」
 子供の頃からの、一度は諦め、忘れた宿願がようやく叶うんだ。
 嬉しくないわけが無い。
 ……いや、本当は分かっている。
 シルバーは何も悪くなかった。
 僕は無実の親友を、愚かな勘違いで十年間ずっとうらみ続けて生きてきて、そして間抜けにも全てが手遅れになってから、ようやく真実を知った。
 勘違いしただけならまだしも、勘違いから愚行を成し遂げてしまった。
 稀代の馬鹿だ。当代きっての大馬鹿者だ。
 こんな滑稽な話はない。
 こんなにも笑えるのは、それは僕がとんでもなく滑稽だからだ!

 僕はやどりさんに背中から抱きつかれたまま一通り笑い、そしてそのまま気を失った。


 女の子の呻き声で目が覚めた。
 僕は焦げた地面に倒れていて、隣にはやどりさんが、前にはポポが倒れて呻いていた。
 起き上がって周りを見てみると、ロケット団は死体以外はもうどこにもいなくなっていた。
 でもまだ日は高い。そんなに時間がたったわけではなさそうだ。
 仲間に生じた異変に、僕達に構っている余裕なんか無かったのかな。
 もしかしたら二人が撃退してくれたのかもしれない。
 僕はといえば、あんなに愉快だったのが嘘のように、最悪な気分だった。
 脳みそが鉛になったみたいだ。
 きっと、それは焦げ臭い地面で寝たせいだけじゃないだろう。
 僕は、気絶する前のことをできるだけ考えないようにした。
 途中だったポポの翼の治療を機械的に行い、呻く二人を起き上がらせると、二人に肩をかして何とか歩き出した。
 僕の手持ちの道具で出来る治療なんかたかが知れてる。あくまでも応急処置だ。
 ちゃんとした治療を行うために、そして二人の頭痛の原因を確かめるためにも、急いで病院にいく必要があった。
 ポケギアを取り出し、救急車を呼ぼうとする。
「……あれ? 圏外!?」
 しかしこともあろうに画面には圏外の文字。
 おかしい。旅のルートはすべて電波状態が良好なように整備されているはずなのに。
 ロケット団に電波塔が倒されたりしたのだろうか。
 しかし、これで俄然まずいことになった。
 まさかこの一刻を争うって時に、救急車が呼べないなんて。歩いてポケモンセンターまで行けというのか。
 ……立ち止まっている余裕は無い。
 ここからだと桔梗市に戻るより、丁子町に行ったほうが近い。
 だから僕は丁子町に向かうことにした。
 しかしポポの火傷のダメージは、思ったよりもずっと酷いらしい。
 通行所を越え、数百メートル歩いた頃には、ポポはもう歩くどころか自分の力で立つことすらできなくなった。
 ポポは青い顔をして苦しげに息を吐いている。
 飛行用の器具でポポを僕の背中にしっかりと固定すると、ポポを背負って僕達は再び歩き出した。
 さらに、大きな誤算があった。
 丁子町へと続く道を進んでいた僕達の前に現れたのは、湖。
 そういえば、ここを通る以外に丁子町へと行く方法は無かったんだ。
 意識が錯乱していたとはいえ、僕はなんて馬鹿な判断をしたんだ。
 頭を抱えてその場に蹲り、そのままじっとしていたい欲求に駆られたけど、そんなことをしている場合じゃない。
 背中のポポから、どんどんと命が失われていっているようで、怖かった。
 その恐怖が、この状況から逃げだしたくて今にも消えてしまいそうな僕の正気を、かろうじて繋ぎとめていた。
 しかしポポは飛ぶことなんてとてもじゃないけど出来ないだろうし、やどりさんも頭痛のせいで念力は使えそうになさそうだ。
 なす術がないじゃないか。
 湖を前にして途方に暮れる僕に、やどりさんが言った。
731ぽけもん 黒  22話 ◆/JZvv6pDUV8b :2010/06/11(金) 13:06:13 ID:XfAuM+yJ
「……私が……泳ぐ……だから……捕まっていて」
 息も絶え絶えだ。
 言葉を話すのも辛そうなのに、泳げるわけが無い。
 しかしポポの容態を考えると、とてもそんなことを行っている余裕は無かった。
 僕はポポにチラと目をやると、意を決して水に飛び込む。
 ポポが悲鳴を上げた。僕も呻き声を漏らす。
 全身の火傷に水がしみる。
 一刻も早く病院に行ったほうがいいのは僕も同じようだった。
 やどりさんに捕まると、やどりさんはすいすいと進みだした。
 さすが水ポケモン。その名前は伊達じゃないらしい。
 しかしさすがに消耗しているようで、進むごとにペースはドンドン落ちていく。
 僕が呼びかけるも、次第に答えてくれなくなった。
 向こう岸が見えてくる頃には、もはや泳いでいるのか漂っているのか分からない速さになっていた。
 首を後ろに回すと、真っ青な顔をして目を閉じているポポが目に入る。
 唇は紫に変色しており、息は荒く、か細く、震えている。
 今にも消えてしまいそうだ。
 体温が大分下がっているみたいだ。体の半分も水に浸かってはいないのに。
 仕方が無かったとはいえ、ポポを水に入れたのは失敗だったかもしれない。
 しかし、この状態では湖を前にして留まり、体力の回復を待つわけにはいかなかった。
 一刻も早い治療が必要だった。
 焦燥が苛立ちに変わる。
 僕は判断を誤ってはいないはずだ。
 ……もう向こう岸は見えている。
 僕も寒さでかじかんで、手足の感覚があまりないけれど、それでも泳いで向こう岸にたどり着くことは出来ないだろうか。
 自分一人ならまだしも、ポポを背負ったこの状況で。
 いや、リュックが浮き袋の役割を果たしているから沈むことは無い。
 ならば行けるはずだ。
「やどりさん、やどりさんは一人なら向こう岸にたどり着けそう?」
「……いや、だ」
「え?」
「ゴールドを置いていくくらいなら、私も一緒に死ぬ」
 一瞬の間が空き、気がついた。
 やどりさんには僕達を見捨てて一人で助かってと言っているように聞こえたのか。
 言葉が足りなかったな。この状況では誤解するのも無理は無い。
「違うよ、そうじゃなくて、僕はポポを背負ってこのまま自力で向こう岸を目指す。やどりさんは自分一人ならもっと速く進めるんじゃないかないかと思って」
 言葉にして気づいた。これ、結局僕達を見殺しにして一人で進むってのと変わらなくないか?
 やどりさんにもやはりそのように聞こえたようで、厳しい声で答える。
「……ポポを置いていこう」
「……え?」
「ゴールド、冷静に考えて。湖を渡っても、町まではまだ何キロもある。ポポはもうもたない。どうせダメなら……」
「そんなことはない!」
「ゴールド!」
 水面が声で波立った。
 シンと静かになった空気を切り裂くように、冷たい声で続ける。
「ここで、ポポと一緒に死ぬ気?」
「……う……し、死なない」
「なら……」
「でも! ポポも死なせない!」
「ゴールド! お願い! 聞き分けて!」
「嫌だ! 絶対に嫌だ!」
 頭では分かっている。もう駄目だ。
 でも、諦めることなんてできない。
 ここでポポを見捨てるくらいなら、いっそこのままポポと心中したほうがマシだ。
 やどりさんの背を離れ、リュックを下にして泳ぎだす。
 向こう岸が見えるとはいえ、僕の今の体力から言って、その距離は絶望的なほど遠い。
 それでも、懸命に手足を動かすしかなかった。
732ぽけもん 黒  22話 ◆/JZvv6pDUV8b :2010/06/11(金) 13:06:41 ID:XfAuM+yJ
「どうしたー? 大丈夫かー?」
 遠くから唐突に、男の声が聞こえてきた。
 半ばうかされたように振り向くと、遠くにボートが見えた。
 釣り人みたいだ。助かった!
「助けてくださいー! 怪我人がいるんですー!」
 渾身の力で声をはりあげた。寒さでみっともなく震えていたけど、今はそんなこと気にしている場合ではない。
 僕に呼びかけたのでなくても構わない。僕に気づいてもらわないと。
「待ってろー! すぐ行くぞー!」
 聞こえたか不安だったけど、しっかりとした声が返ってきた。
 エンジン音とともに、水しぶきを上げてボートがこちらに近付いてくる。
 三人で浮かんで待っていると、ボートはあっという間に僕達のところにたどり着いた。
 釣り人のおじさんはすぐに僕達をボートの上まで引き上げてくれた。
「たまげたなあ。お前らどうしてこんなところに。それにこのひでえ怪我」
「あの、僕達、旅の参加者で、それで、ロケット団に襲われて」
「ロケット団! 奴らもうこんなところまで……しっかし、ロケット団に襲われてよく助かったなあ」
「運がよかったんです。でも、この通りパートナーは重症で、それに、ポケモンの様子が変なんです。皆頭を押さえて苦しがって……だから早く病院に連れて行かないと」
「そういや、今日は一人もポケモンを見なかったなあ。いつもは必ず餌をくすねてくんだが……っておめえ、これ酷い怪我じゃねえか! なんでこんな状態で水になんか入れた!」
「で、電話が通じなくて、どうしようもなかったんです。僕じゃ治せないし、すぐに病院に連れて行かなくちゃと思って」
 いつの間にか僕は涙声になっていた。
 説明をしているうちに岸にたどり着いた。
 おじさんと協力して二人をボートから降ろす。
「電話が通じねえって……あれ、ほんとだ。おかしいなあ」
 おじさんも自分の携帯電話を取り出し、不思議そうに画面を眺めている。
「いつもならこんなことねえんだが……。しょうがねえ、俺の車に乗れ! ポケモンセンターまで連れて行ってやる」
「あ、ありがとうございます!」
「礼は後だ。いいから早く乗せろ!」
 急いで二人を車に乗せ(車の中が水浸しになって申し訳なかった)、町に向かうが、町のが近付くにつれ、様子がおかしいのに気づいた。
「……なんだ……煙?」
 おじさんの声で視線を前方に移すと、確かに進路上から煙が上がっていた。
 まさかここもロケット団に?
 町を襲うなんて全盛期のロケット団でも滅多にやらなかったことだ。
 多分違うと思いつつも、唾を飲む。
 そういえば、復活後のロケット団は以前にまして過激になっていると聞いたような気がする。
 市街地に近付くにつれ、事故が目に入るようになってきた。
 それも一件や二件ではない、いたるところで事故が起きている。
「こりゃあ一体……」
 おじさんも言葉を失っている。
「多分、原因不明の頭痛と関係あると思います。運転中に急に頭痛に襲われて……」
「朝、町を出るときはなんともなかったのに……」
 そのまま車を走らせていく。
 幸運なことにというべきか、警察の整理のお陰というべきか、道路を通ることが出来たのはありがたかった。
 ようやく見えてきたポケモンセンターの前にはすさまじい人だかりがあった。
 人がポケモンセンターに納まりきらず、道路に毛布がしかれ、寝かされている。
 皆、一様に苦しそうな表情を浮かべていた。
 人だかりの奥から、拡声器によって拡大された声が聞こえてくる。
「頭痛の原因は現在調査中です! 通常の怪我を負った患者を優先して治療していますので、ご協力ください!」
 やはり、皆一様に頭痛に襲われているらしかった。
 ただでさえ多発した事故のせいでパンク状態の病院に、治療のめどが立たない頭痛患者が山ほど押し寄せてきたんだ、病院は大混乱に陥っていた。
「助けてください! 大怪我なんです!」
 人だかりの前まで来た僕は、ざわめきにかき消されないように、精一杯の声をはりあげた。
 僕の声は届いたようで、すぐにタンカを持った人達が人ごみを掻き分け、病院の中から躍り出る。
 僕が少し離れたところで止まっている車を指差すと、すぐに二人は車から運び出され、タンカに乗せられて病院の中に入っていった。
「ありがとうございます」
 僕はおじさんに深々と頭を下げた。本当に、感謝してもしきれない。
733ぽけもん 黒  22話 ◆/JZvv6pDUV8b :2010/06/11(金) 13:07:14 ID:XfAuM+yJ
「おじさんがいなければ、今頃、僕達は……」
「気にすんな。怒鳴って悪かった。てっきりお前がパートナーよりも自分の功名心を大事にする屑トレーナーかと勘違いしちまってな」
「いえ、そんな、本当に、なんとお礼を言ったらいいか……」
「お礼なんていい、いい。その代わり、困ってる奴を見たら、今度お前が助けてやればいい。俺も、昔旅に参加したとき、人に助けてもらったことがあってな。
それより今はパートナーの傍にいてやれ。ポケモンセンターに来たからもう安心だとは思うが、どうも様子がおかしいしな……」
 おじさんも随分と困惑した様子だ。
 確かに、この光景はどう見ても異様だ。誰もが言い知れぬ恐怖を覚えているだろう。
「はい、本当にありがとうございました」
 もう一度おじさんに頭を下げると、僕は病院に入っていった。
 病院の中は外より酷い状態だった。
 頭痛にも個人差があるらしく、外に寝かされているのは比較的経度の人だったらしい。
 多くの人は頭を抱えてのた打ち回り、いたるところから呻き声や叫び声が聞こえてくる。
 人ごみを掻き分け、治療室の前までくると、僕はそこのベンチに腰を降ろした。
 酷く疲労していたせいか、それとも安堵のせいか、こんな酷い喧騒の中にも関わらず僕はすぐに意識を失った。

 誰かの呼びかけで目が覚めた。
 目を開けると、目の前にはやどりさんが立っていた。
 しばらく頭が回らず、ぼんやりとやどりさんを見ていたが、彼女は何も言わず僕の前に立っている。
 そういえば、あんなに騒がしかったポケモンセンターがすっかり静かになっている。
「やどりさん?」
「なに」
「大丈夫なの?」
「うん」
 そう答えるやどりさんにはまったく苦しそうな様子はない。本当みたいだ。
 よく頭が回らず、ぼんやりとしていると、ちょうど職員の方が通りかかった。
 彼女の説明によると、始まった時と同様に、唐突にポケモンの原因不明の頭痛は治まったという。
 原因は相変わらずわからないが、ポケモンセンターの収容能力を超えているし、とりあえず症状は治まったので帰宅してもらった、と。
 それで静かになっているのか。
 尤も、多発した事故の治療のため、平時に比べて忙しいのは変わらないらしい。
 ポポは見た目どおり重症だけど、治療すればちゃんと元に戻るらしい。
 ポケモンセンターについた以上、命の危険はないと思ったけど、それでも一安心だ。
 やどりさんの治療はもう終了したそうだ。
 僕のほうも、順路を外れてこんなところにいる理由の説明を、郊外でジム戦に向け戦闘訓練をしていたらロケット団と偶然遭遇し、そして今に至るということにしてごまかして説明した。
 ポポの治療が終わるまでここに泊まっていってもいいということになり、いつものように一室を割り当てられた。
 割り当てられた部屋に入り、ベッドの端に腰を下ろす。
 今は乾いてはいるものの、先ほどまで水浸しの服を着て、その上椅子に座りながら寝ていたので、体の節々が痛い。
 それも加わって、ますます気分は重い。
 やどりさんは僕の隣に座り、心配そうに僕の顔を覗き込んでくる。
「ゴールド、大丈夫?」
 もちろん大丈夫じゃない。でも、彼女に心配をかけたくない。
 だけど、彼女に気を使うのも億劫だった。
「うん、大丈夫だよ。服を洗いに行くついでにお風呂にいってくるから」
 そういって、会話を終わらせる。
 リュックは防水のため、中に水は入っておらず、幸い、換えの服がないということはなかった。
 僕についてきたやどりさんと脱衣所の前で別れると、のろのろと服を脱ぎ、洗濯機の中に放り込んだ。
 浴室には当然なんだけど、ほとんど誰もいない。
 いつもなら広い浴槽を独り占めできることに少しは高揚感を覚えそうなものだけど、今の僕はまったく心躍ることもなく、ただ作業的に入浴を終えた。
734ぽけもん 黒  22話 ◆/JZvv6pDUV8b :2010/06/11(金) 13:07:46 ID:XfAuM+yJ
 脱衣所から出ると、すぐ前に相変わらず心配そうな顔をしたやどりさんが立っていた。
「遅かったから、おぼれてるかと思った」
「ははは、まさかそんな……」
 あながちありえないとも言えなかった。
 部屋に戻ると、すぐに床に就いた。
 なかなか寝付けないが、何もする気になれず、布団に包まって丸くなっていた。
 浅い眠りを何度か繰り返していると、いつの間にか外から日が差していた。
 しかし起きる気になれず、壁のほうに向き直ると、またそのままぼんやりとし、眠るともなく、起きるともなく時間を潰す。
「ゴールド、ゴールド、朝ごはん、食べに行こう」
 やどりさんが僕を呼ぶ声も、寝たふりをしてやり過ごした。
 布団にこもっていても、一向に疲れが取れる様子は無い。
 それどころか、ずっと横になっているせいでむしろ体は凝ってだるくなり、頭もますます曇っていく。
 それでも、僕に動き出そうという気は起きない。
 昨日から、僕は暗雲の中にいた。
 今まで思い続けたことがすべて嘘だった。
 そして僕は十年近い間、ずっと無実の罪を負い、苦しんで生きてきた親友を殺してしまった。
 僕の今までの思いはいったいなんだったのだろう。
 正義も何もない。僕はただの人殺しとなってしまった。
 警察にすべてを告白すべきだ。
 それはわかっている。
 でも、僕はどうしようもない屑だった。
 捕まりたくない。
 まさか、こんなことになるなんて、思ってもいなかった。
 僕は、罪の意識に、そして自分がしでかしたことの恐ろしさに責めさいなまれていた。
 様子のおかしい僕を心配してくれているとはわかっていても、後ろにいるやどりさんの気配がうっとおしかった。
 一人にしてほしかった。
 昼食の誘いも、寝たふりでやりすごした。
 日が暮れてきた頃だろうか、ちょっと前からいなくなっていたやどりさんが、人を連れて帰ってきた。
 まさか警察?
 寝たふりを続けていたけど、脈拍が俄かに速くなるのが分かった。
「ゴールドさん? 若葉ゴールドさーん?」
 やどりさんではない、女性の声で呼びかけられる。
 僕は目を強く瞑り、耳を閉ざした。
「昨日からこんな調子なんですよね?」
「はい」
 女性の問いにやどりさんが答える。
「ゴールドさーん、起きてくださーい」
 今度はそう呼びかけながら、僕の体を揺すってきた。
「どうしたんですかー?」
 きっと僕が答えるまでこの調子で僕に構ってくるのだろう。
 そう判断した僕は、意を決して目を開けた。
 薄暗い室内に、白い服があった。
 看護婦さんか。
 僕は人知れず胸をなでおろした。
「……ほっといて下さい。具合が悪いんです」
 相手が看護婦さんだと分かれば、僕がもう関わる理由はない。
 ぞんざいにそう返答する。
「どこが悪いんですかー」
 しかし相手は猫なで声で聞いてくる。
 そりゃあ相手は看護婦。具合が悪いと言ったら原因を求めるのが当然だ。
「いいからほっといて下さいよ……寝てれば治りますから」
 僕はそう言って、頭まで布団をたくし上げた。
 ふう、とため息をついたのが聞こえてくる。
735ぽけもん 黒  22話 ◆/JZvv6pDUV8b :2010/06/11(金) 13:08:18 ID:XfAuM+yJ
「困りましたねー。これじゃどうしようもないですよ」
「だからほっといて下さいって言ってるじゃないですか」
「そういわれましても、昨日からずっとこんな調子なんでしょう? お体を悪くしますよ?」
 いっそ、悪くしたかった。
 そのまま体調を崩して死にたかった
 そうして、一切の責任から逃げたかった。
「……ポポちゃんも心配してますよ」
 そこで予期せぬ名が挙がった。そういえばポポはどうなったのだろう。
 僕の疑問は言葉にする前に回答が返ってきた。
「目を覚ますなり、ゴールドさんを探して大変だったんですよ。一度見に行かれたら、安心されると思いますよ」
 大変な騒ぎになったのは想像に難くない。
 が、僕はそれでも行く気は起きなかった。
「しょうがないですね、それじゃ点滴しましょうか」
 どうやら、ここにいる限り僕が体調を崩すすべはないらしい。
 どんな抵抗を試みても、外部からの措置により治されてしまう。
「大丈夫ですよ、ちゃんと自分で食べれますから」
「それじゃあこれをどうぞ」
 布団をはぐって顔だけ出した僕の眼前に、プラスチックの白いボトルが差し出される。
 表面にはなにやら英字が印刷されていた。
「これは?」
「総合栄養ドリンクです」
 昔食べた怪我治療用の食事が思い出された。
 どうしてポケモンセンターという施設はこう怪しいものを開発(採用?)するスキルに長けているのだろうか。
 こんな得体の知れないものを飲みたがる半病人がいるもんか。
「他にはないんですか?」
「他といいますと……これですとか」
 そう言って看護婦さんが取り出したものはパッケージを水色にした以外は先ほどのものと同じように見えるものだった。
「これは?」
「総合栄養ドリンク、朝専用です」
「……朝専用?」
「はい。朝に相応しいすっきりとしたのど越しとキレにひたすらこだわった意欲作です」
 栄養ドリンクに何を求めているのだろうか。
 いったいどこに需要があるのだろう。市販されているわけでもなさそうだし。
「……さっきのでいいです」
「そうですよね。今は夕方ですものね」
 そういう問題じゃない。
「ではどうぞ、ぐいっと」
 看護婦さんに押し付けられ、僕はしぶしぶボトルのチューブを加える。
 一口吸い込んだ瞬間、僕の口腔内に濃厚なフレーバーが充満する。
 何これ、甘っ! 苦っ! あ、生臭っ! 何これ生臭っ! あ、でも酸っぱっ!
 五つの味覚と複雑な香りが瞬時に僕の口内から脳天へ突き抜ける。
 どう考えても人が飲むものではなかった。
「そーれいっきっ! いっきっ!」
 看護婦さんは手拍子をしながら僕を囃し立ててくる。
 いや何考えてるんですかあなたは!
「……いっき、いっき」
 やどりさんまで、控えめではあるもののそれに唱和した。
 何を考えてるんだこの人たちは。
 というかこれを一口でも口に入れたことがあるのかあなたたちは!
 特に病院関係者! 採用した人!
 抗議しようと口を離しかけたその瞬間。
「……ちゃんと飲まなきゃ、だめ」
 やどりさんの念力によって無理やり内容物が押し込まれる。
 ちょ、ま、ま、あぁっ!
 一瞬間のうちに、僕は今までの人生でおおよそ摂取したことのないようなおぞましいものに蹂躙され尽くした。
736ぽけもん 黒  22話 ◆/JZvv6pDUV8b :2010/06/11(金) 13:08:53 ID:XfAuM+yJ
「これで、ゴールドも、元気に、なる」
 荒い呼吸をして伏している僕を前に、やどりさんは安心げにそう言った。
 僕が元気になったように見えますか、やどりさん。
「明日も調子が悪いようでしたらお申し付けくださいね。今度は朝専用をお届けします」
 看護婦さんはそういって上機嫌で出て行った。
 キレとかのど越しとか、そういう領域の飲料ではない気がするんですけど……
 明日はちゃんと食事を取ろう。
 僕は固く決意した。

 翌朝……の前に。
 前日寝すぎたせいか、夜中の二時という中途半端な時間に目が覚めてしまった。
 そのまま寝なおそうかと思ったけど、そこで僕は、僕の寝ているベッドの前に椅子を持ってきて、そこに座っているやどりさんに気がついた。
 そーっと顔を見たら、目をつぶっている。
 座ったまま寝ているらしい。
 思えば、やどりさんはずっとこうして僕のことを見守ってくれていたのか。
 申し訳ない気分になった。
 なんだか寝付けなくなってしまった僕は、そっとベッドを抜け出し、身支度をしてポケモンセンターの前に来た。
 誰もいない道路を、街灯がむなしく照らしている。
 そこには、僕が来たときのような喧騒はまったくなかった。
 あの時の記憶は鮮明に思い出されるが、あまり現実感がない。
 現在の情景もあいまって、全部夢だったようにすら思える。
「……ゴールド」
 いつのまにか、僕の後ろに来ていたやどりさんに声をかけられた。
「ごめん、起こしちゃったかな」
「……大丈夫、なの?」
 そういえば、昨日に比べて気分は大分よかった。
 考えたくないが、もしかしたらあの栄養ドリンクが効いたのかもしれない。
「う、ん。結構よくなったとは思うよ」
「……そう」
 そこからしばらく沈黙が続く。
 僕は黙って空を見上げていた。
 町がすっかり寝静まっているおかげで、星々が綺麗に見える。
 不思議なほど、心の中から澱みが消えていた。
「やどりさん」
「……何」
「僕、警察に全部話そうと思う」
「…………そう」
「ごめん、結局こんなことになってしまって」
「いい」
「え?」
「あなたが決めたなら、それで、いい」
 彼女はそう言って、柔らかく微笑んだ。
 それだけで、僕は少し救われた心地がした。
「……ありがとう」
737 ◆/JZvv6pDUV8b :2010/06/11(金) 13:09:50 ID:XfAuM+yJ
22話投下終了。容量がもう無いので23話は次スレに投下します
738名無しさん@ピンキー:2010/06/11(金) 13:13:11 ID:K/sZSr7X
GJ!!
739埋めネタ…艦と共に… ◆wycmxKO9B. :2010/06/12(土) 00:28:20 ID:dSoHpyjV
ある日の感想
ワレ、艦ヲ妻ト思エリ、良ク働ケバ褒メ、大事ニ労ル。

最後の航海記録

1442時、左舷二魚雷一本命中。機関停止シ被害ハ甚大。総員退艦命令下達。
ワレ、部下ヲ脱出サセタ後、最後ニ退艦スベク艦橋ヨリ出ヤウトスルガ隔壁開カズ。背後ニ女性現ル。
ソノ女、船魂ト名乗リ、私ヲ愛シ心中スル積リダトイフ。

1515時、船体大イニ傾キ、前甲板ハ海中ニ没ス。船魂、ワレヲ抱擁シ囁ク。
「ワレ、共ニ戦ッタ貴官ヲ愛セリ。貴方ト私ハ夫婦ヨリモ深イ絆デ結バレテイル」ト。

1528時、イヨイヨ海面近付キ、最期ガ近ヅイテイルコトヲ実感ス。
海防艦30号真ニ良ク戦エリ。祖国ノ弥栄ヲ願ウ。

15時30分。海防艦30号は沈没。艦長は船と運命を共にした。
740埋めネタ…艦と共に… ◆wycmxKO9B. :2010/06/12(土) 00:33:20 ID:dSoHpyjV
良く大戦中の軍艦の艦長が運命を共にしてしまうのは船の精霊が艦長を引きずりこんでるからではないのか?
という妄想より。
741名無しさん@ピンキー:2010/06/12(土) 00:42:54 ID:2lStU7Ss
いいよいいよー
そういう話大好きだ
742名無しさん@ピンキー:2010/06/12(土) 18:16:41 ID:LifKK/yH
743名無しさん@ピンキー:2010/06/12(土) 23:30:09 ID:hd54uI+y
埋め
744名無しさん@ピンキー:2010/06/13(日) 00:06:38 ID:dSoHpyjV
匠の道具@
シャベル

土木作業・塹壕掘り・接近戦に使える万能の兵器?
撲殺、刺殺し埋めて証拠隠滅と言う作業に向いている。
ツワモノになると園芸用移植ゴテで泥棒猫を始末することができる。

リーチが包丁よりも長くて攻撃力もあるが、あまり体の小さい女子には向かない武器。
745名無しさん@ピンキー:2010/06/13(日) 00:19:18 ID:jSsEgavI
匠の道具A
ノコギリ

主な用途は木工作業。金ノコは金属切断用。頚動脈切断や解体作業に用いられることもある。
しかし、匠の手にかかると包丁と同等の武器となる。
刀とは異なった破断面を見せるが、達人の腕にかかれば刀剣の如き切れ味を見せる。

この武器を使う際は相当なグロ耐性が要求される。
746名無しさん@ピンキー:2010/06/13(日) 00:27:46 ID:jSsEgavI
匠の武器B
包丁のようなもの

もっともメジャーな武器。入手も容易で日本において万人が扱える武器。
それゆえに登場回数も段違いに多く、最も血塗られた調理器具かもしれない。
なお、“〜のようなもの”が付く場合は武器・凶器としての扱いである。
→バールのようなもの


747名無しさん@ピンキー:2010/06/13(日) 05:05:31 ID:8aVGrKxU
お梅
748名無しさん@ピンキー:2010/06/13(日) 06:43:26 ID:8aVGrKxU
めんめ
749名無しさん@ピンキー:2010/06/13(日) 10:36:30 ID:jSsEgavI
産め
750名無しさん@ピンキー:2010/06/13(日) 10:56:01 ID:QQb5CZPn
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           _, イ´,.. -┬‐フ   ̄゛' r'、 ´}''     ~
      ,. ‐ .、 (ソ一´   ゛´ゝ,、    { i `(
.      { 〆. } ))),,  '' ,..、  ヽ,ヽ、  .ヘ `  ´'.>、  ___..r,ヽ,_
     ,, ヾ- "''     F_ ~8ー'  } ̄ ̄~゛ー .._(  `ヾ_.., --' 、)
,,  ''                ̄ ̄           ̄ ´
751名無しさん@ピンキー:2010/06/13(日) 13:18:28 ID:3ss6qVkm
あははははは! ……そう、そうだったんだね!
貴方(Part30)を埋めちゃえば、○○は私(Part31)だけ見てくれる!

私と○○の幸せのために、埋まって、沈めェ! Part30ゥゥゥゥゥ!!
752名無しさん@ピンキー:2010/06/13(日) 15:13:40 ID:OhnAF21B
埋め埋め〜
753名無しさん@ピンキー:2010/06/13(日) 19:18:06 ID:8aVGrKxU
俺の子を産め
754名無しさん@ピンキー
埋めネタ 帰ってきた最愛の人

おらは死んじまっただ おらは死んじまっただ
おらは死んじまっただ 天国に行っただ

長い階段を 雲の階段を おらは登っただ ふらふらと
おらはヨタヨタと 登り続けただ やっと天国の門についただ

天国よいとこ一度はおいで 酒はうまいし ねえちゃんはまともだ

おらが死んだのは 愛され過ぎちゃって (アアーッ)

おらは死んじまっただ おらは死んじまっただ
おらは死んじまっただ 天国に行っただ

だけど天国にゃ こわい神様が酒を取り上げて いつもどなるんだ

「なーおまえ 天国ちゅうとこはそんな甘いもんやおまへんやん もっとまじめにやれ」

天国よいとこ一度はおいで 酒はうまいし ねえちゃんはまともだ

毎日酒を おらは飲みつづけ あの娘の事を おらはわすれただ

「なーおまえ さっき来たのツレでっか 堪忍してください だから出てゆけ」

そんなわけで おらは追い出され 雲の階段を 降りて行っただ
長い階段を おらは降りただ ちょっとふみはずして (ヒューン、ドン)

おらの目がさめた あの娘の腕の中
おらは生きかえっただ おらは生きかえっただ 

「これでまた一緒だね…ふふふ。」