キモ姉&キモウト小説を書こう!part29

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1名無しさん@ピンキー
ここは、キモ姉&キモウトの小説を書いて投稿するためのスレッドです。

○キモ姉&キモウトの小説やネタやプロットは大歓迎です。
愛しいお兄ちゃん又は弟くんに欲情してしまったキモ姉又はキモウトによる
尋常ではない独占欲から・・ライバルの泥棒猫を抹殺するまでの

お兄ちゃん、どいてそいつ殺せない!! とハードなネタまで・・。

主にキモ姉&キモウトの常識外の行動を扱うSSスレです。

■関連サイト

キモ姉&キモウトの小説を書こう第二保管庫@ ウィキ
http://www7.atwiki.jp/kimo-sisters/pages/1.html

キモ姉&キモウト小説まとめサイト
http://matomeya.web.fc2.com/

■前スレ
キモ姉&キモウト小説を書こう!part28
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1267632141/

■お約束
 ・sage進行でお願いします。
 ・荒らしはスルーしましょう。
  削除対象ですが、もし反応した場合削除人に「荒らしにかまっている」と判断され、
  削除されない場合があります。必ずスルーでお願いします。
 ・趣味嗜好に合わない作品は読み飛ばすようにしてください。
 ・作者さんへの意見は実になるものを。罵倒、バッシングはお門違いです。議論にならないよう、控えめに。

■投稿のお約束
 ・名前欄にはなるべく作品タイトルを。
 ・長編になる場合は見分けやすくするためトリップ使用推奨。
 ・投稿の前後には、「投稿します」「投稿終わりです」の一言をお願いします。(投稿への割り込み防止のため)
 ・苦手な人がいるかな、と思うような表現がある場合は、投稿のはじめに宣言してください。お願いします。
 ・作品はできるだけ完結させるようにしてください。

SSスレのお約束
・指摘するなら誤字脱字
・展開に口出しするな
・嫌いな作品なら見るな。飛ばせ
・荒らしはスルー!荒らしに構う人も荒らしです!!
・職人さんが投下しづらい空気はやめよう
・指摘してほしい職人さんは事前に書いてね
・過剰なクレクレは考え物
・スレは作品を評価する場ではありません
2名無しさん@ピンキー:2010/05/04(火) 07:51:59 ID:HsI5k8B/
          _人人人人人人人人人人人人人人人_
         >      ごらんの有様だよ!!!  <
           ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^
_______  _____  _______    ___  _____  _______
ヽ、     _,, '-´ ̄ ̄`-ゝ 、   ノ    | _,, '-´ ̄ ̄`-ゝ  、  |
  ヽ  r ´           ヽ、ノ     'r ´           ヽ、ノ
   ´/==─-      -─==ヽ   /==─-      -─==ヽ
   /   /   /! i、 iヽ、 ヽ  ヽ / / /,人|  iヽヽ、   ヽ,  、i
  ノ / /   /__,.!/ ヽ|、!__ヽ ヽヽ i ( ! / i ゝ、ヽ、! /_ルヽ、  、 ヽ
/ / /| /(ヒ_]     ヒ_ン i、 Vヽ! ヽ\i (ヒ_]     ヒ_ン ) イヽ、ヽ、_` 、
 ̄/ /iヽ,! '"   ,___,  "' i ヽ|     /ii""  ,___,   "" レ\ ヽ ヽ、
  '´i | |  !    ヽ _ン    ,' |     / 人.   ヽ _ン    | |´/ヽ! ̄
   |/| | ||ヽ、       ,イ|| |    // レヽ、       ,イ| |'V` '
    '"  ''  `ー--一 ´'"  ''   ´    ル` ー--─ ´ レ" |
3名無しさん@ピンキー:2010/05/04(火) 11:51:06 ID:kVI0Rc/g
>>1 くん
そんなにお姉ちゃんが好きのね
だからお姉ちゃんのために新スレ立ててくれたんでしょ
ご褒美にお姉ちゃんの
乙 パイ吸わせて
あ・げ・る♪
4名無しさん@ピンキー:2010/05/04(火) 15:16:27 ID:Xh9dxn4b
>>3
虚乳が粋がるなよwww


























ワタシハナニカサレタヨウダ……キョウダイヨ…ニゲロ……
5短編『微笑女生徒 聖羅亜美』:2010/05/04(火) 18:23:04 ID:krKmh12n
>>1
よし、俺がトップ投下行くぜ!!
内容は無い。ただ、サドキモ姉に足コキされるだけの話し
6名無しさん@ピンキー:2010/05/04(火) 18:25:57 ID:krKmh12n
と思ったらカットペーストが上手く行かなくて消えちまったぜ……orz
このクソ携帯が!!!あああああ、ゴメンよ、次の人にトップ投下パスするわ
7名無しさん@ピンキー:2010/05/04(火) 22:31:52 ID:2dNQ6bhc
>>6
ドンマイ……
8名無しさん@ピンキー:2010/05/05(水) 00:28:05 ID:7S1NURyo
>>4
ムチャシヤガッテ…

>>6
ドンマイ、リトライ待ってるから!
9悪質長男 第三話:2010/05/05(水) 16:30:44 ID:YPcRBtZw
悪質長男 第三話目、投下させていただきます。
10悪質長男 第三話:2010/05/05(水) 16:31:29 ID:YPcRBtZw
第三話
夜も更けた頃、それは穏やかな眠りの時間。玲二もただ息するだけの様に眠っている。
そんな時まで玲は起きていた。無表情ゆえ眠たそうな顔であるが、心はしっかり覚めている。否、興奮している。
玲にとって男と言う人種は怜二だけだった。父親は生まれた瞬間にはもういなかったし、学校の男子も姉の名と一緒に騒ぐ様に呼ばれていた。
怜二だけだった。自分を妹のように思い、優しく接してくれた。そして本当に兄になって、存在がより短くなった事でますます彼が欲しくなった。
彼女の中では兄妹の倫理観など、もう知った事では無くなっていた。

「・・・・・兄さん」

まず、そっと唇を合わせた。
ファーストキス。
触れるだけの接吻。
かつて味わった事のない幸福感が、衝撃が彼女の全身に駆け巡る。

その余波まで味わった後で、おもむろに兄の股間へ手を伸ばす。パジャマのゴムをずらしていく。
彼女の目的は夜這いだったのだ。

下着にも手を懸け、頭をゆっくりそこへ近づけると・・・

「むにゃ・・・べん・・と」

いきなり怜二が寝返り、膝が玲の頭を叩いた。
頭を抱えた玲が怜二に振り向くと、彼は丸くなっていて、さっきの続きは出来そうになかった。
仕方ないので背後に回ってしゃがみ込む。目の前には尻。おもむろに手を伸ばすと、意外と引き締まった感触がした。
そこへ、顔を埋めた。


ぷっ

っと音がした瞬間に玲は顔を離して鼻を摘んだ。
このタイミングが悪い時にこの男は屁をこいたのだ。
「・・・・・・・」
さすがに屁の匂いはショックだった玲は諦めて敗退する事にした。
11悪質長男 第三話:2010/05/05(水) 16:31:56 ID:YPcRBtZw



翌朝、怜二が自室からリビングへ行くと、良い匂いが鼻に掠めた。
かつて料理は専ら怜二のする事だった為に一瞬訝しげな表情をするが、キッチンにいたのは玲だった事から女家族が増えた事を思い出す。そんな事を忘れてた怜二は相当寝ぼけていようだ。
キッチンから顔を出した玲と目が合う。
「おっは玲。・・・ん?ちょっと目元隈っぽいぞ?」
「・・・・・・・」
まさか夜這いしてキスしてその興奮で一夜眠れなかったとは告白できるわけがなかった。

足音がして振り返ると麗華がやってきた。寝惚け眼が玲を見、キツイ目が怜二を睨む。
「おは」
「・・ふん」
そっぽを向く仕草さえ麗しく、だがシスコンの怜二は心泣くばかり。
ふと玲に振り向くと、彼女は大口を開けて欠伸をかいていた。
「ありゃありゃ玲。そんなに眠そうならもっと眠ればいいものを。寝不足は乙女の天敵だぞ?」
「・・・・・・・せっかく弁当を用意したのに」
「はえ?」
言われてようやく気付いた、学生三人分の弁当箱。色取り取りの野菜料理、男には嬉しい肉料理、白い御飯の上には・・・・・。
12悪質長男 第三話:2010/05/05(水) 16:35:54 ID:YPcRBtZw



・・・これは女家族が引っ越す直前の話。
母から怜二にまず伝えられた言葉は、謝罪だった。
「ごめんな、怜二」
「うん?」
その後に伝えられたのは、離婚した経緯だった。
曰く、最初は娘にも恵まれた普通の家庭だったらしい。
だが怜二が生まれた頃に父の会社は倒産、仕事にも再起しようともせず、生活は日々苦しくなっていく。
そしてまた一人赤ん坊を身籠った時に、縁を切る事を決心した。
麗華を連れて。玲二を見捨てて。
「二人を育てるのに、あたしが働いても限界を超えてるくらいだった。
それでも、おまえを捨てた事には変わりない。
・・・・・本当に、悪かった」
対して怜二の顔はあまり興味がなさそうなものだった。
「僕はもう17だぞ?まだ乳離れしない赤ん坊じゃないんだから、今更喚いたりしないさ」
「へぇ・・・優しいな?」
「僕は完璧で不死身でシスコンで、紳士なのさ」
「そうかい。・・・そうだ、おまえと出会ったからだったな。
なんとなく旦那に似てるなと思ったら、本当に息子で・・・。健やかに育ったおまえを見て、あいつを見直した。
きちんと仕事して、子供を無事に育てて・・・・。だから思ったんだよね・・・もう一度、やり直せるって・・・・・・うぅ・・・」

その後に出てきたのは涙だった。
目の前の息子の前で。かつて経済的余裕が無い理由で見捨てざるを得なかった赤ん坊が、無事に生きていたから。

母は泣いていた・・・・・・・。
13悪質長男 第三話:2010/05/05(水) 16:36:32 ID:YPcRBtZw




「・・・君。・・・・おーい・・・・怜二―?」
体が揺さぶられる感覚で玲二は目を開けた。
起こしてくれた女子を見、周りを見て今が昼休みだと気づく。
「・・・眠ってたわけか」
「なんか夢みてたの?」
「うむ。僕が連続で大吉のおみくじを引く夢だった」
「へーえ。良い事ありそうね」
「そしてよく見たら全部犬吉だった」
「犬!?」
しょーもない漢字ミスの夢だそうだ。
その時前触れもなく教室が騒ぎ出した。出入り口に振り返ると、なんと玲がそこにいた。
怜二が問いかける前に玲が口を開く。
「兄さん・・・一緒に食べよ?」
騒然の次は惨然。哀れ自分の所に来ると願った男子一同は膝から崩れ落ちた。対照的に怜二の行動は早く、普段から共に食う女子グループの所に、玲の分の椅子を追加して手招いた。
「・・・・こんにちは」
挨拶だけで黄色い声が返ってくる。
それでも逃げも隠れもしない玲は黙々と怜二の隣に座り、弁当箱を開ける。
梅干しが顔を出す日の丸弁当に、前に記述した通りのおかず。
「これ玲ちゃんが作ったの?」
「初めて見たぁ。上手だね」
それを聞いた男子が興味を持って振り向いた時、
「ふふん。おかげで弁当が豪華になったよ」
怜二の飯も玲のお手製であると悟り、むさ苦しい集団が怜二に押し掛けた。
「その弁当を寄越せぇ〜〜〜!」
「玲たんのお手製!玲たんのお手製!」
「させん!シスコンたる者、妹の飯は麦の一粒も奪われてたまるか!」

集団の鬼気にも一切臆せず怜二が弁当を開ける。料理漫画でよくある光が教室を包み込み、向い校舎にいる校長が「UFOか!?」と叫んだ。
14悪質長男 第三話:2010/05/05(水) 16:37:08 ID:YPcRBtZw


光が収まると弁当を覗いた集団は凍りついた。
おかずは隣のものと一緒だ。しかし問題は米の方。
桜澱粉で描かれた、ハートマークだった。

「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」

鎮まる教室の中。動く影は、何事も無かった様に食す玲と、より響いて聞こえる怜二の笑い声だった。
「あっはっは!開いた口が塞がらないとはこの事だねぇ!昼飯だからって口開けてても飯はやらんぞ?」
我に返った様に男達が質問攻めに掛かる。
「れ、怜二!これは一体・・・?」
「玲たん、嘘だよね!?」
「おいおまえ、玲たん玲たんキメェぞ」
「こ、こ、こ、これ、ほ、本当に玲様が?」
しかし返ってくるのは怜二の意地悪な笑み。

「あはは、これは今朝僕が玲に頼んだものなんだ」

「「「何頼んどんじゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」」」


取り敢えず玲自身が作ったものでないとわかると、集まっていた女子も冷静さを取り戻した。
「シスコンもここまで来ると変態の領域よ?」
「何を言う。夢があるだろう?・・・まあ、我儘言って急遽作ってもらったから、さすがに悪いと思ったさ。だから今日だけにしてもらった」

そういえば今朝、そのように玲に伝えたら食い下がってきたのを思い出した。
怜二が澱粉が好物だと思ったのだろう。が、手間掛けさせたくないのでそのまま説き伏せたら、寂しそうな顔をされた。
あれは気のせいか?
ちらっと隣の玲を横目で見る。無表情。
やっぱり気のせいか。


15悪質長男 第三話:2010/05/05(水) 16:37:35 ID:YPcRBtZw
三年教室。
「・・・なんか光らなかったかしら?」
麗華が窓の外を見て呟く。女子の友人が受け答えた。
「あたし見えたよ。二年生の教室が光ったような?あそこは・・・あ、怜二君の所じゃない?」
(・・・・怜二の仕業ね)
「それよりまだ喧嘩してるの?あたしはてっきり姉弟仲良く登校すると思ってたのに」
「・・・・皆して怜二怜二・・・。はっきり言いますが、喧嘩しているわけではありません」
「でも怜二君に冷たいよ?」
「家庭の事情と言う事で、首を突っ込まないでください」
「ちぇー」

麗華は窓から怜二がいる教室を眺めた。

少し前までは、異性だと思っていた少年。
麗華は下唇を噛んだ。


(怜二・・・・・・。どうして貴方は、私の弟なの・・・?)



16悪質長男 第三話:2010/05/05(水) 16:38:37 ID:YPcRBtZw
投稿終わります。
GWだったので、執筆も休んでいました。
もしかしたらペースが落ちるかもしれません。
17名無しさん@ピンキー:2010/05/05(水) 16:48:21 ID:eWKjmH76
今回も堪能させていただきました
姉妹の鞘当があるのかどうか判りませんが
この先も楽しみです
ドロッドロになりますようにw

GJです
18名無しさん@ピンキー:2010/05/05(水) 18:37:52 ID:U+Hav7Yt
姉の参戦フラグですかな。
19名無しさん@ピンキー:2010/05/05(水) 18:46:01 ID:6vN3SULE
結構なお点前でございます。

野暮は承知で一つだけ。「でんぶ」は「澱粉」じゃなくて「田麩」です。
澱粉だと片栗粉で書いたハートマークに……それはそれでキモ姉妹らしいかな?

20名無しさん@ピンキー:2010/05/05(水) 23:50:38 ID:7S1NURyo
ちょっと白濁した粘液質の塊がハートマークを形作るのか
なんて恐ろしい…
21 ◆7d8WMfyWTA :2010/05/06(木) 00:33:43 ID:uS/qJs7j
投下します。
エロ無し注意です。
22ノスタルジア 第5話 ◆7d8WMfyWTA :2010/05/06(木) 00:36:27 ID:uS/qJs7j

『連続殺人事件に発展か 行方不明の小学生女児、遺体で発見』

秋日市に配達される朝刊の地方欄に、そんな見出しが大きく載った日のこと。
文雄と千鶴子はだいぶの余裕を持って、朝の通学路を歩いていた。
文雄たちと同様、秋日高校に徒歩で向かう生徒も道の先に見えるが、あくまでまばらである。
五月の終わりの空は清々しく晴れ渡り、柔らかな日差しが生徒たちの黒の制服を照らしていた。
「ほらね、全然大丈夫だったでしょう」
「……まあ、お前の色々な手際の良さは本当大したものだと思うがな」
「まあね、実力よ」
そんな会話を交わしながら、千鶴子は彼女には珍しく鼻歌など歌っている。
一方で、文雄はいかにも疲れた様子で肩を落としていた。
「時間が無いなんて、時間を作れない人間の言い訳よね。したいことがあるなら、実力でどうにかしないと」
「それだけ聞くと、すごくいいことを言っているみたいだな……」
「あら、まるで本当はいいことを言っていないみたいな言い方ね」
心外だという風に首をひねる千鶴子に、文雄はため息をついた。
「朝からあんなことをするために頑張るのは、あまり褒められたことじゃないと思うぞ……」
「仕方ないじゃない。放課後は文雄さんに帰る時間をずらされてしまったら、父さんと母さんの在宅時間と重なってしまって『あんなこと』ができないんだもの」
あくまで静かな物言いの千鶴子に、文雄は背筋を冷やした。
責める口調ではなかったが、千鶴子が文雄を責めていることは十分に分かった。
美山叶絵を解放した日から、あの千鶴子との契約を交わした日から、一週間。
千鶴子はその言葉通り毎日文雄との行為を求めてきた。
学校から帰ってから、自宅のどちらかの部屋で、一線は越えないまでも性行為を兄妹で行ってきたのだ。
文雄は何とかそれに応えてきたものの、どうしても思い悩む気持ちが拭えず、昨日意図的に帰宅時間を遅くした。
結果、千鶴子は文雄に求めるタイミングを計れず、昨日は実に一週間ぶりに文雄と千鶴子の間の行為は無しで終わった。
「今朝の分は、昨日の分よ、文雄さん」
「……」
「あまりああいったことがあると、学校でもことに及ぶ方法を考えなければならなくなるから、そのあたり慮っていただけると嬉しいのだけれど」
「ああ……」
やはり自分の浅はかな企みなど簡単に破られてしまう。
文雄は心中で深くため息をついた。
自分の周囲の人間を守るために、一日に一回千鶴子の想いを満たすという契約。
自分で考え、自分で決断したことはわかっている。
しかしそれでも、心の奥底に抱く、妹への反発心は消えなかった。
自らの欲望を満たすために、知人を盾にする妹への怖れと怒りの炎は、静かに燻っていた。
「何を考えているのか、大体わかるわ」
思いに沈む文雄に、千鶴子が声をかけてきた。
「どうして、て顔をしているわね」
「……ああ。思わない日はないよ」
「本当、文雄さんは損な性格よね。さっさと割り切って楽しんでしまえばいいのに。私これでも、結構勉強しているつもりなんだけど、気持ち良くなかったかしら?」
「……」
文雄は無言で歩を進めた。
文雄にも肉体的な快感はあった。
妹の蠢く舌の感触は、文雄の神経を否が応にも刺激し、性的な興奮の高みに導いていた。
行為の時は必ず、文雄は千鶴子の手で、口で、射精をしていた。
「……前にも聞いたけど、どうして俺なんだ?」
「興味があるからよ。興味があるものを、深く知りたいと思うのは当然よね」
「どうして俺に興味を持つんだよ」
「私と考え方が全然違うからよ。私と同じ風に考える人だったら、さして興味を持たずに済むのだけれど……文雄さんはそうなれるのかしら」
「お前と同じ考え方になることはないな」
「それじゃあ今のところどうしようもないわね。困ったものだわ」
千鶴子の小馬鹿にしたような口調に、文雄は思わずむっとしてしまう。
何か言ってやろうと大きく口を開いたその上唇に、千鶴子の人差し指があてられた。
23ノスタルジア 第5話 ◆7d8WMfyWTA :2010/05/06(木) 00:37:30 ID:uS/qJs7j
「はい、そこまでよ。もう校門だから」
「あ……」
「私との関係を周囲の生徒たちに喧伝したいなら、それはそれでかまわないけれど?」
「……」
文雄は口を閉じた。
いい様に扱われている風ではあったが、実際千鶴子との関係を他人に知られるわけにはいかなかった。
「そうね。傍から見たら、あくまで仲の良い兄妹でいましょうね」
千鶴子は笑って、
「今日のお弁当も自信作だから、きちんと食べてちょうだいね」
さらりと話題を変えた。
「ちなみに文雄さん、中間テストはうまくいきそうなのかしら?」
「……どうだろうな。統治郎と勉強していく予定だけど」
「ふうん。相変わらずの仲の良さね」
そんな当たり障りのない会話をしつつ、昇降口へと向かって歩く。
と、文雄の耳に、同じように登校する女子生徒の話し声が入ってきた。
「なんかさ、あの事件の容疑者の娘が、うちの学校にいるんだって」
「え? ちょっと、それ本当なの?」
「本当本当。二年生だって聞いたよ。もう有名だって……」
思わず立ち止まって聞き入ってしまった。
「文雄さん、どうしたの?」
「いや……叶絵ちゃんの話かと思ったんだけど……」
事件、娘――その単語を聞くと、つい先日の美山叶絵の件を思い起こしてしまう。
噂になっているとはどういうことなのか。
不安の表情を見せる文雄に、千鶴子は小さく笑った。
「文雄さん、先ほどの方々は別の人のことを言っているんだと思うわよ。叶絵さんは私と同じ、一年生だもの」
「む……そうか」
「あの事件というからには、例の事件じゃないかしら。新聞にも載っていた……」
「ああ、あの……」
秋日市連続少女殺害事件――
この一週間で立て続けに起きた事件に、街はこれまでにない緊張感を伴っていた。
被害者はいずれも十歳以下の少女で、報道はされていないが、性的な暴行を受けた末に殺害されたと噂が流れていた。
「その容疑者の娘が、この学校に……?」
「どうなのかしらね。容疑者が浮かんだという話は聞いていないけれど。根も葉も無い……かどうかはわからないけれど、あくまで噂なんじゃないかしら」
「だとしたら、気の毒だな。そんな噂が流れたら、普通には過ごせないぞ。二年てことは……」
同級生か。
呟く文雄に、千鶴子は鋭い眼を向けた。
「文雄さん、わかっているとは思うけれど、余計なことに首は突っ込まないように」
「え……?」
「他人は他人。可哀想だと思っても、それはその人の選んだ人生なのだから」
「相変わらずだな、お前は」
文雄はため息をついた。
「俺は俺の思ったようにやるよ。助けたい時には助ける」
「またそうやって……!」
「俺が助けたいと思ったら、お前はそのために動いてくれるんだろう?」
「う……」
それまでの冷たい物言いが一転、千鶴子は文雄の一言に黙り込んでしまった。
「あの約束はその意味合いもあったと思うが、どうなんだ?」
「まあ、できる限りのことはさせてもらうわよ……」
「何だかいきなりおとなしくなったな」
「もともとこんなものよ。あなたに対しては」
生意気で、優秀で、冷酷な妹。
その妹を、性の鎖によって、この一瞬は支配しているという感覚。
「……とにかく、俺が約束を守っている以上は、お前にも守ってもらうぞ」
「ええ。でも、無茶はしないで。私だって万能じゃないのよ」
力なくため息をつき、千鶴子は手を振った。
「それじゃあ、文雄さん、これで。また放課後にね。今日は一緒に帰りましょう」
24ノスタルジア 第5話 ◆7d8WMfyWTA :2010/05/06(木) 00:40:16 ID:uS/qJs7j
夕刻、第二図書室の貸出席に、千鶴子は一人座っていた。
古い紙の香りが漂う広い空間に、その日も千鶴子以外に人はいない。
橙赤色に染まる静寂の世界に、千鶴子が本の頁をめくる音が時折響くのみである。
「……ふぅ」
読書に一区切りついたのか、千鶴子は小さく息をついて顔を上げる。
慣れ親しんだ図書室を見廻し、相変わらずねと口にした。
「誰かが来たところを見たことがないわ」
特にそのことに不満があるわけではなかった。
大好きな本に囲まれて、気ままに過ごせる空間を、千鶴子は大いに気に入っていた。
それこそ、他の人の当番日を進んで代わるほどに。
もはや昼であろうと放課後であろうと、この図書室の貸出席は、千鶴子の指定席となりつつあった。
「この静けさ……落ち着くわね」
目を閉じて、深く息を吸う。
瞬間、重く閉じていた図書室の扉が勢いよく開かれた。
「えーと、こんにちわ。お久しぶりー」
「……」
扉を開き、入ってきた一人の少女に、静寂はあっさりと破られた。
「あら? 澄川さん寝てる? おおい」
肩までの髪を揺らしながら、少女は千鶴子の前で手を振って声をかける。
千鶴子はゆっくりと目を開けた。
「いえ、起きているわよ」
「ああ、良かった。無理に起こすと澄川さん怒りそうだもんね。どうしようかと思っちゃった」
「……わかってて言っているのかしら」
「え? 何が?」
千鶴子は首を振って膝の上の本をぱたりと閉じた。
「まあいいわ。で、何の御用かしら、叶絵さん。私としては、あなたとはあまりお近づきになりたくないのだけれど」
「いえね。お礼にと思って……この前の」
少女は千鶴子の言を気にした様子も無く、あははと笑う。
美山叶絵。
今朝がた文雄との会話の中でもその名は話題に上った。
一週間前、千鶴子の提案により養父を殺害し、望みを叶えた少女。
「あれから色々あったけど……相続の手続きも、警察の方も、どうにかなりそうだから、改めて。ここに来ればみんなに会えると思ったんだけど」
叶絵は先ほど千鶴子がしたように周囲を見廻した。
「居ない、ね」
「文雄さんだったら、夏江さんと教室で勉強会の最中だと思うわよ」
「そっか。じゃあ、澄川さんに改めて」
「私に?」
千鶴子は眉をひそめた。
「私にお礼なんて言う必要はないわ。文雄さんに言いなさい」
「お兄さんにも当然言うけどさ。澄川さんにも言わないと、おかしいでしょう」
「前にも言ったけれど、私はあなたを助けるつもりなんて全くなかったのよ。結果的にそうなったのは、文雄さんが望んだからなの。それ以上でもそれ以下でもないわ」
「うん、覚えてるよ。でも私は結果が全てだって考える人間だから。結果として助けてもらったあなたにお礼を言いたいの。本当にありがとう、澄川さん」
叶絵はそれまでの笑顔から一転、表情を引き締め、深々と礼をした。
「あなたのお陰で、生きてるっていいなと思えるようになりました」
「ああ、そう……」
千鶴子はあくまで淡々とした様子で言う。
「あれはあなたが自分でやったことだから、自分を誇ればいいと思うわよ」
「千鶴子ちゃんが背中を押してくれたのは間違いないから。恩人だよ」
「そうまで言うならありがたく受け取ってはおくけれどね。もし恩を感じてくれるなら、いつかその恩を文雄さんに返すようにしてちょうだい」
「ん……千鶴子ちゃんがそう言うなら、そうするよ」
一週間前には想像もつかなかった、晴れ晴れとした笑顔を見せる叶絵。
対照的に、千鶴子は右手を頭にあて、眉間にしわを寄せている。
25ノスタルジア 第5話 ◆7d8WMfyWTA :2010/05/06(木) 00:41:10 ID:uS/qJs7j
「あのね、叶絵さん。あなたは私の親か兄弟だったかしら」
「ううん、違うと思うけど……」
「ならその、私に対する呼び名は何なのかしらね?」
「いやあ、どさくさにまぎれて既成事実にしちゃおうかなと思ってたんだけど、やっぱり無理だったか」
あははと叶絵は笑う。
「まぎれられるわけがないでしょう」
「千鶴子ちゃんも私のこと叶絵さんって呼んでいるし、いいじゃない」
「美山さん、やめてもらえるかしら」
「あらら……厳しいね、本当」
がくりと肩を落とす叶絵。
だがその表情はあくまで笑顔で、本当に落ち込んでいるわけではないことはわかった。
「……美山さん、ずいぶんと変わったわね」
「そう?」
「美山作蔵に対してあんな長期戦を敷いていたくらいだから、忍耐力のある人なのだろうとは思っていたけれどね」
「ひょっとして、褒めてくれてる?」
「ええ。強くなったわね。あの晩の、怯えた姿とは大違いだわ」
「一線を越えちゃったからね。強くならざるを得ないよ」
「良い心掛けね。私はあなたみたいな人は苦手だけれど」
また叶絵はがくりと肩を落とした。
「落ちをつけるのを忘れない人だよね、千鶴子ちゃんて……」
「美山さん、今後その呼び方をしたら、私は一切受け答えはしないので、そのつもりで。というかお礼が済んだなら帰ったらいかが? 文雄さんや夏江さんのところにも行かなければならないのでしょう?」
「それは明日でもできるし、澄川さんとこうやって二人きりでお話しできる機会はそうはないもん」
「結構露骨に出て行ってほしいと言っているつもりなのだけれどね」
「うん……今のは露骨というか、そのままだったね。でもまあ、澄川さんもあれ以降の処理のこととか、色々聞いておきたいことがあるでしょ?」
確かに千鶴子にしてみれば、自分が関わった犯罪の顛末は聞いておきたいところではあった。
叶絵が何らかの間違いを犯していないか、千鶴子自身に何らかの不利は起こっていないか。
そろそろ叶絵に確認しておかねばならないと、この数日うっすらと考えてもいた。
千鶴子は無言で立ち上がると、図書室の鍵を閉めた。
「手短にね」
「うん」
26ノスタルジア 第5話 ◆7d8WMfyWTA :2010/05/06(木) 00:41:37 ID:uS/qJs7j
叶絵は近くの椅子に座り、美山家の相続の手続きは順調に進んでいること、今後は夏江家の援助を得つつ一人暮らしをするつもりであることを伝えた。
「警察についてはどうなの?」
「それがね、担当についた刑事さんが統にいのお父さんの知り合いの人でね。すごく優しくしてもらってる」
「ふむ。夏江さんが手を回したのかしら」
「それは私も聞いたんだけどね、統にいは違うって言ってたよ」
「特に疑いは抱いていない様子なのかしら」
「……わからない。ちょっと考えの読みにくい人なんだ。でもそろそろ終わりだって言っていたから……」
「夏江さんが手を回したにせよそうでないにせよ、順調に行っているということね」
千鶴子は少し考え込む仕草をして、
「……夏江さんは、美山作蔵の死の真相に、気づいているのかしらね」
叶絵に問いかけた。
「私からは言ってないけど……澄川さんは?」
「言ってないし、これから言うつもりもないわ。夏江さんは文雄さんの大切なお友達のようだから、任せることにしているの」
「ふぅ……ん」
叶絵は椅子に座ったまま姿勢を低くし、覗き込むように千鶴子の表情を見た。
「……何よ?」
「澄川さんて、お兄さんにはすごく気を遣うよね」
「私は常に気遣い万全の女よ」
「そういう冗談とは別にして」
「……」
千鶴子の様子は全く気にすることなく、叶絵は言葉を続けた。
「あの晩も、お兄さんのことですごく怒っていたし。何ていうか、お兄さんに関わっていたから、澄川さんはあんなに必死になっていたのかなって」
「何が言いたいの?」
「……好きなの? お兄さんのこと」
叶絵の問いに、千鶴子は答えなかった。
しばらく、二人の間に沈黙が流れる。
千鶴子はうつむいて――
「家族のことだもの。真剣になるのが当然でしょう」
「うん……そうだよね」
ただ、千鶴子のそれは家族の情などというもので量れるものではないと、叶絵は思っていた。
常軌を逸した感情だと。
「千鶴子ちゃんは……お兄さん想いなんだね」
「どうかしら。このところは嫌がらせばかりしているようだけど」
軽く笑いながら、千鶴子は呟いた。
誰にも見せたことのない、自嘲の表情だった。
27ノスタルジア 第5話 ◆7d8WMfyWTA :2010/05/06(木) 00:42:00 ID:uS/qJs7j
「そろそろ行くか」
「ああ」
文雄の呟きに、統治郎は頷き、机に広げていた勉強道具を片し始めた。
閉じられた教科書の上側にはみ出した二枚の付箋に示された、中間テストの試験範囲。
その大半が、今日の放課後の勉強会で終わってしまった。
それもそのはず、いつもなら適当に会話を織り交ぜて進んでいく二人の勉強会は、今日に限っては終始無言で、何かに触れないようにと二人とも一心不乱に勉強をしたのだ。
その何かとは、やはり叶絵の件だった。
統治郎には聞きたい気持ちもあったし、聞くのが怖いという気持ちもあった。
叶絵はあれ以来少しずつ元気を取り戻し、統治郎にも頻繁に話しかけてくるようになった。
虐待の過去を振り払うように、今では本当によく笑顔を見せる。
あの一晩で何があったのかはわからない。
ただ、あの夜を越えて、全てが良い方向に進んでいた。
それならば、そのままでいいじゃないか。
統治郎はこの数日、何度も自分に言い聞かせてきた。
が――
「文雄、千鶴子ちゃんは元気か?」
廊下を歩きながら、そんな問いを発する。
「ん? ああ、相変わらずだよ。どうしたんだ、いきなり」
「このところ弁当を届けに来ないからな。具合でも悪いのかと思って」
「いや、うちの妹は弁当の配達が本職というわけじゃないからな。俺が普通に弁当を持って行くようになれば、わざわざ来る理由もないだろう」
「相変わらず、兄を兄とも思わず、か」
「ああ、日々兄の威厳を見せてやろうとしているんだが、なかなかな……」
笑いながらそんな会話を交わす。
当然文雄も統治郎の心中は察していた。
彼が本当に知りたいことは何なのか。
この親友に全てを打ち明けるべきなのか、それともあくまで隠し通すべきなのか、文雄にはわからなかった。
自分も、千鶴子も、叶絵も知っている。
統治郎だけが知らない。
仲間外れにしているような、罪悪感はあった。
しかし何より、親友には日常の中に居てほしいという思いが強くあった。
「統治郎」
「何だ?」
「数学は俺に任せろ。だから英語をみっちり教えてくれ」
「……ああ。支え合いの精神だな」
「支え合いだ」
二人は拳を合わせ、階段を下りた。
28ノスタルジア 第5話 ◆7d8WMfyWTA :2010/05/06(木) 00:42:54 ID:uS/qJs7j
「しっかりお勉強はできたのかしら」
校門の門壁に寄りかかるようにして、千鶴子が待ち構えていた。
「統にい! 一緒に帰ろう」
そしてそのすぐ傍らには元気に笑う叶絵の姿があった。
珍しい組み合わせだなと、文雄は思った。
「どうしたんだ、一体」
「放課後一緒に帰りましょうと、言っておいたでしょう」
「いや、そうではなくて……」
ちらりと、文雄は叶絵を見る。
ああ、と千鶴子は頷いた。
「さっきそこで会ったのよ。何だか付いてきてしまって」
「犬猫みたいな言い方しないでよ、千鶴子ちゃん……」
「その呼び方をしたら今後一切受け答えはしないと言ったわよね」
「いやあ、図書室での込み入ったお話の終わりに、きちんと返事をしてくれたから、いいのかと思って……」
「それは意識せず言ってしまっただけだから、勘違いしないでちょうだい」
二人のやり取りに、文雄が何の気なしに聞いた。
「図書室で? そこで会ったんじゃなかったのか?」
「いやあ、それがですね、お兄さん。千鶴子ちゃんもこれで複雑な悩みがあるようでして」
腕を組み、わざとらしく首を振る叶絵の肩に、千鶴子が静かに手を置いた。
「叶絵さん。それ以上言ったら、私はある決心をしなければならなくなるわ」
「……すみません」
千鶴子の尋常ならざる雰囲気にあっさりと謝る叶絵。
怯えながらも、どこか楽しそうなその様子に、文雄は純粋に驚いていた。
叶絵が変わったこと。
そして、千鶴子と対等な関係を築いていることに。
「あ、お兄さん」
叶絵が文雄の方を向き、背筋を伸ばして呼びかけた。
「え……俺のこと?」
「はい。千鶴子ちゃんのお兄さんなので、お兄さんです。やっぱり違和感ありますか?」
「いや、そういうわけでもないけど……」
実の妹にすら「お兄さん」と呼ばれたことのない文雄には、何ともこそばゆい言葉だった。
「では澄川さんと呼ばせていただきますね」
言って、叶絵は千鶴子の方を流し見た。
「ね、私だって、ただ千鶴子ちゃんって呼びたいから呼んでたわけじゃないんだよ。お兄さんと区別をつけるためにね」
「あなた、今それを考えついたでしょう」
ごまかすように笑って、叶絵はまた姿勢をただした。
「ともかく、お礼を言っておこうと思いまして」
「ああ。そんなのいいよ。俺は何をしたわけでもなし」
「いえ。澄川さんには色々とお気遣いいただいて……ありがとうございました」
丁寧にお辞儀する叶絵に、文雄はまいったなと、照れるように後ずさった。
「お礼なら統治郎に言ってくれよ。何しろ、君を助けたいからって、土下座までしたんだから……」
「ええ。統にいには現在進行形でお世話になっているので、全部が終わってからお礼を言おうかと思って」
「現在進行形?」
「はい。先ほど千鶴子ちゃんにもお話ししたんですが、色々な手続きやらがまだ途中で。それと……」
はっと叶絵の表情が変わった。
文雄の肩越しに先を見つめるのがわかる。
千鶴子はその視線を追った。
そこには、一人の女性がいた。
黒のスーツに身を包み、髪を後ろでまとめた、社会人と思しき人物。
女性は、千鶴子と目が合うと、にこりと笑って手を振った。
29ノスタルジア 第5話 ◆7d8WMfyWTA :2010/05/06(木) 00:43:18 ID:uS/qJs7j
「やー、どうも! 角間切子と申します! 警部補やってます!」
女性は、落ち着いた外見とは裏腹に、やたらと勢いづいて挨拶をした。
この人が例の、と千鶴子は叶絵に目で問いかける。
叶絵は小さく頷いた。
「角間さん、今日は……?」
統治郎が問いかけた。
「うん。叶絵ちゃんに最後の聞き取りと、お元気かなって様子見に」
「はあ……」
「統治郎君、元気そうで何よりだわね! うん、良かった!」
「え、え? 様子見って俺のですか?」
「ううん! あなたたち全員よ! 後輩たちよ! だってここは我が青春時代を過ごした母校なんですもの!」
角間切子は拳を握り、校舎に向かって突き出す。
「元気そうで何より! グッドよ!」
元気一杯にそう言いながら、切子はまず統治郎の肩を叩き、次いで文雄の肩を叩き、更に叶絵と千鶴子の頭を撫で回した。
「あらー、何だか賢そうな子ね! 先輩として誇らしいわ」
千鶴子の頭を執拗に撫でる切子を、冷や冷やした面持ちで眺めつつ、文雄は統治郎に小声で問いかけた。
「何か元気すぎる人だけど、知り合いなのか?」
「ああ。父の知人で……叶絵の養父が亡くなった件の担当をしているそうだ」
「じゃあ、警部補っていうのは本当なのか?」
「本当だ」
「見えないな……」
「ああ……」
二人しみじみと頷く。
切子は何かに満足しのか、千鶴子の頭を撫でるのを止めると、よしと頷いた。
「ということで叶絵ちゃん。お話し、いいかな?」
「はあ……」
勢いに圧倒された様子で、呆けたように叶絵は頷く。
いつもこうだったのだろうか、と千鶴子は思った。
「待ってください。最後の聞き取りということでしたが、手短に終わらせていただけるのでしょうね?」
あくまで静かに切子に問う。
頭を撫でられたのは気に食わなかったが、感情をぶつけるべき相手でないことは承知していた。
「叶絵さんはこれから私たちと予定があります。それに、こんな学校の前で聞き取りとなると、叶絵さんの評判にも影響しますので。お心遣いをお願いします」
「ん。確かにそうだね。もともと学校から離れたところで声をかけようかと思っていたんだけど、母校が懐かしくてついふらふらとね。確かに、配慮が足りなかったね。ごめん」
切子は頭を下げた。
「ほんの数分で終わらせるから、いいかな?」
「かまいませんよ」
叶絵はなんでもないという風に頷いた。
「ああ、では俺たちはあちらに少し離れて待ってます」
統治郎が文雄と千鶴子を促す。
千鶴子は後ろ髪を引かれる思いで、その場を離れた。
30ノスタルジア 第5話 ◆7d8WMfyWTA :2010/05/06(木) 00:44:49 ID:uS/qJs7j
校門を出てすぐの路地の傍らで、叶絵への聞き取りは行われた。
そこから十メートルほど離れたところで、三人はその様子を見ることになった。
特に千鶴子は、注意深く叶絵と切子の表情の変化を見ていた。
(最後の聞き取りというからには、疑わしいところは無しとして処理をされているのだろうけど……)
千鶴子の心に引っ掛かっていたのは、あの角間切子という刑事が、わざわざ学校にまでやってきたという点だった。
先ほど本人が言ったとおり、母校を懐かしむゆえなのかも知れない。
しかし、ただそれだけの理由で、学校の前で本人以外に警察の聴取であることを明かすのは、あまりに常識外れなのではと思えた。
(どうもおかしなところのある人のようだし、気にするほどのことでもないのかもしれないけど……)
叶絵以外の誰かを見に来たということもありうるのではないか。
自分はあの晩、叶絵と接触した。
誰にも見られないよう注意を払ったつもりではあったが、果たしてどうなのか。
いくつかの可能性が千鶴子の脳裏を駆け巡った。
千鶴子の全神経は叶絵と切子の様子に、そして彼女自身の思考に投入された。
そして数分後――
叶絵と切子は、特に何事も無かったかのように千鶴子たちの方へと歩いてきた。
「終わったの?」
「うん」
千鶴子の問いに叶絵は頷く。
「本当ごめんね! お待たせしちゃって」
「いえ、そちらもお仕事でしょうから」
杞憂であったかと、千鶴子は内心ほっとする。
相変わらず元気な切子に丁寧に返して、後ろを振り向いた。
「それじゃあ、文雄さん、行きましょう……か?」
振り向いた先に文雄の姿は無かった。
統治郎が一人で立ち、あっちだと指で示す。
その先には、女子生徒と話す文雄の姿があった。
女子生徒は文雄と言葉を交わしながら、時折涙を流していた。
「……なんでしょう、あれは」
「いやな。文雄が上履きで帰ろうとしてる女子を見つけてな。一体どうしたのかと……」
「声をかけにいったわけですか」
「ああ」
「まったく、少し目を離すとこれだから……」
「お、おい、千鶴子ちゃん」
留めようとした統治郎の手をさらりとかわし、千鶴子は文雄に小走りに近づいた。
「文雄さん、行くわよ。皆が待っているから早くしてちょうだい」
ハンカチを出そうとしていた文雄の腕を掴み、きつい口調で言う。
「あ、ああ、千鶴子、この人は……」
「いじめられたのね? そういうものは、他人が関わると余計こじれていじめが悪化するから、本人が先生や教育委員会に密かに訴えるのが一番よ。
あなた、ボイスレコーダーで音声をとるか、いじめられる特定の場所があるなら、そこにカメラを仕掛けておきなさい。相手が特定できないなら、クラスの何人か分の靴をあなた自身が盗って問題を大きくするといいわ。
いずれ放っておけなくなって学校が調べ始めるから。そうなったら相手も動けなくなります。当然盗るときには見つからないように。わかったわね」
早口でまくし立て、「解決よ」と文雄を連れて行こうとする。
しかし、文雄は足を踏みとどまった。
「待ってくれ、千鶴子。この子は……」
「文雄さん、皆が待っているから。迷惑をかけないようにしましょうよ」
冷たく言い放つ千鶴子。
その制服の裾を、泣いていた女子生徒が掴んだ。
「……何かしら?」
千鶴子が怒りを押し殺しているのが、文雄には充分すぎるほどにわかった。
が、当の女子生徒は怖気づくことなく、千鶴子の目をしっかりと見つめて言った。
「私は、そんなことで泣いていたのではありません」
「そう。興味は無いから、離してくれる?」
「私は……父を信じられない自分が嫌で……だから……」
また女子生徒は涙ぐんだ。
文雄が千鶴子の耳元で、そっと囁いた。
「この子の父親、例の連続少女殺害事件の容疑者らしい」
千鶴子は表情を変えなかった。
だが、心の中では頭を抱える思いだった。
ああ、またこの愛しき兄は――
「どうしても、こういうことに関わってしまうのね」
呟いて、諦めたように文雄の腕を離した。
31ノスタルジア 第5話 ◆7d8WMfyWTA :2010/05/06(木) 00:45:42 ID:uS/qJs7j
海辺の公園――といっても、ベンチと外灯が防波堤沿いに延々並んでいるだけのものではあるが――で、一同は女子生徒の話を聞くことになった。
女子生徒の名は、三条優といった。
不動産業をおおもとに、国道沿いに複数の飲食店を経営する会社のオーナーの娘で、住んでいる場所を聞いた文雄も千鶴子も、なるほどあのお屋敷かとすぐにわかった。
三条家の長女として育てられ、言葉遣いも振舞いもごく丁寧なお嬢様である彼女の悩みは、連続少女殺害事件の容疑者と世間に思われてしまった父のことだった。
「そんなわけはないと、わかってはいるんです。でも……」
ひょっとしたら――
世間をそう思わせ、娘である優をすら不安にさせる奇行が、父、三条英一にはあった。
「私は長女で、妹が三人いるのですが……全員血は繋がっていないのです」
血の繋がらない、四人姉妹。
優の語り出しはそれだった。
「私を含め、三条家の娘は全員が養子なのです。私が小学校四年生に上がる頃、最初の妹ができました。それ以降、中学校にあがるとき、高校にあがるとき、新たに妹ができて……今は四人姉妹となっています」
三条英一は、どこからともなく小さな女の子を養子にもらい、溺愛とも言える可愛がりぶりを見せた。
どこに行くにも一緒に連れて行く。
時には学校を休ませてでも、自分の仕事に同行させる。
その子煩悩ぶりは有名で、それだけなら微笑ましい話だったのだが、彼の行動はそれで終わりではなかった。
「新しい養子をもらうと、父はそれまでの可愛がりぶりが嘘のように、それまでの娘たちに無関心になりました。それで、私も妹たちも、昔は随分寂しい思いをしたのです」
いつの間にか近隣の者たちは、三条英一を小児愛好者だと噂するようになった。
小さな少女にしか興味を持てず、金に物を言わせて買い、育ってしまったらまた新しく取り替えるのだと。
その噂が、今回の連続殺人事件で少しでも手掛かりを得ようとする警察の耳に入り、ついに刑事が話を聞きに来るに至った。
ただ、あくまで話を聞きに来ただけで、何らかの確証があったわけではなかった。
実際、簡単な聞き取りをしただけで帰って行き、以降警察は三条家を訪れていない。
しかし、その訪問だけで、近隣の住民たちには充分だった。
小児愛好の男がついに一線を越えてしまったようだ。
そんな噂があっという間に広がり、ついに秋日高校の中で囁かれるまでになってしまった。
「父は……気にしていません。毎日、末の妹を傍において、可愛がっています。私も、他人から何を言われようが、されようが、気にはしません。でも……私自身が父のことを疑問に思ってしまって……」
ベンチに腰掛けた優は、目尻に涙を滲ませた。
「私も父には本当に可愛がってもらいました。父は家の仕事のことにも懸命で、今も私たちを養ってくれています。なのに私は……何故父があんなに次々と養子をとるのか……やはり何かおかしいのではと……」
海風が優の髪をなびかせる。
西の海に太陽が沈んでどれくらいになるだろう。
空は赤色から薄い紫に変わりつつあった。
「なるほどね……」
小さく灯った外灯に寄りかかりながら、千鶴子は呟いた。
三条優の座ったベンチの周囲に文雄と千鶴子は立ち、統治郎と叶絵の二人はすぐ隣のベンチに並んで腰掛けていた。
それぞれ手に、角間切子の奢りのジュースを持っている。
当の切子も、キリンレモンの大缶を手に、他の面々より一歩はなれたところで話を聞いていた。
千鶴子は彼女にそれとなく帰ることを勧めたのだが、優自身の希望で同席することになった。
32ノスタルジア 第5話 ◆7d8WMfyWTA :2010/05/06(木) 00:46:07 ID:uS/qJs7j
話を終えた優は、切子に問いかけた。
「どうなんでしょう。警察は、父のことを疑っているんですか? 父は……本当に……」
「いやー、そんなことはないと思うよ」
深刻な様子の優に対して、切子はあくまで軽い。
笑顔で手を振って応じた。
「証拠が無いみたいで、何でもいいから当たれるところは当たろうって方針だから。ごめんね。うちが無能なばかりにお父さんに迷惑かけちゃって」
「はあ……」
「かくいう私も連続殺害事件については情報募集中です! しばらくしたらそっちの捜査班に回されるんで! 皆さんよろしくね」
こんなにあっさり警察内の情報を出していて、大丈夫なのだろうか。
他人事ながら心配だと、その場の全員が思った。
「えーと、どうだ千鶴子。何かわかったか?」
気を取り直して、文雄が問う。
千鶴子は残念ながらと首を振った。
「今の話だけではどうにも」
「そうか……」
「というかね、文雄さん」
「ん?」
「何か、この人のことを助ける前提で話を進めようとしているみたいなんだけど、どうして?」
「どうしてって……縁というか、気の毒だろ」
千鶴子は人差し指をこめかみに当て、うめき声をあげた。
「あのね、文雄さん。全ては、この人の心持ちの問題でしょう。他人にどうされようと気にしないなら、今抱えているのは全て本人の思考に起因する、本人にしか解決できない事柄ということでしょう。気の毒に思うことなんてないわ。心ゆくまで悩んでもらえばいいじゃない」
「千鶴子、そんなことを言ったらこの世にある問題は全部当人の心持ちの問題で、悩みさえすればいいってことになっちゃうだろ。たとえばお前が何か問題を抱えているとして、それは心の整理をつければ解決することなのか?」
「む……」
千鶴子は押し黙る。
その様子を見ていた叶絵は、千鶴子が何を考えたのか想像に難くなく、くすりと笑ってしまった。
「……まあ、言い過ぎたかも知れないけれど、今回については何をどうしろというのよ」
「うーん……三条さんは、お父さんのその、奇行というか、養子を次々にとって君たちには無関心になる原因がわかれば、安心できるのか?」
文雄の言葉に、優ははっきりと頷いた。
「はい。それさえわかれば、心穏やかに過ごせます」
「ということらしいんだが……」
文雄は千鶴子を見た。
「それを、私にやれと」
「いや、当然俺もやるけどさ。でも千鶴子、お前は一応……」
文雄が口にしようとしたことを察して、千鶴子は手で制した。
「大丈夫。私は、文雄さんがどうしてもというなら、全力を尽くすわよ。でもね、私の心配もわかってくれないものかしらね」
「すまんな……」
また海風が吹き、千鶴子はスカートを押さえた。
全員が、千鶴子の方を見ていた。
千鶴子はその視線を振り払うように優の方を向いた。
「三条さん、あなた、自分でお父様には聞いてみたのかしら」
「はい、それとなく」
「結果は?」
「曖昧にされてしまいました……」
優は申し訳なさそうに頭を下げた。
千鶴子はうなだれつつ、仕方ないわねと言った。
「……三条さん、明日あなたのお宅に伺ってよろしいかしら?」
「あ……はい。それはもちろん」
「では明日の午前中に訪問するわ。今のところ解決する保障はまったくないので、そのつもりで。兄が気にして中間テストで酷い成績をとってはたまりませんので、一応は全力を尽くさせてもらいます」
33ノスタルジア 第5話 ◆7d8WMfyWTA :2010/05/06(木) 00:46:35 ID:uS/qJs7j
優が公園から去ると、千鶴子は大きくため息をついた。
「最近ため息が増えている気がするわね」
「すまん」
「いいわよ、謝らなくて。謝って欲しいわけではないから」
空はほとんど宵闇に染まり、かろうじて西の空だけが赤みを残している。
絶え間なく波の打ちつける海を眺めながら、千鶴子は言った。
「私は文雄さんに、もう少し自分自身のことを考えて欲しいのよ。テストは一つの例だけど、他の人の厄介ごとに首を突っ込んでいたら、自分のことが立ち行かなくなる時もあるでしょう」
「ああ。まあ、どうにかするよ」
「本当にね。文雄さんの素敵なところではあるけれど、もう少し時と場合を選んで欲しいものね」
「性分だからな」
「その一言で済まそうとするのは許されないわね」
千鶴子は肩越しに振り返り、文雄を見た。
厳しい口調ではあったが、その目はどこか優しく、文雄は胸を撫で下ろした。
が、その直後。
千鶴子の目は鋭くつり上がることになった。
「何て……! 何て優しいの! 素晴らしい! さすがは私の後輩! 正義感と人情味に溢れた、最高にかっこいい男の子だわっ!」
これまで以上の勢いで、もはや叫び声といえる大きさの声で言いながら、切子が文雄の手を握ったのだ。
「え、え? 角間さん?」
「いいわ! あなた間違いなく素質がある! 警察官になりなさい! ううん、警察官にしてあげる! よーし、この街の未来は明るいわね! 燃えてきたわ!!」
文雄の手をぶんぶんと振り回し、一人盛り上がる切子。
二人を引き離すようにして、千鶴子は間に割って入った。
「兄の将来を勝手に決めないでください」
「ごめん! でも嬉しくて……!」
「ジュースをありがとうございました。そろそろ遅くなりましたし、お仕事に戻られてはいかがですか?」
淡々と伝える千鶴子に、切子は腕時計を見た。
「おや、確かにそろそろまずいね。ところで、千鶴子ちゃんは、文雄君からアドバイスを求められていたけれど、こういう相談はよくのるの?」
「いえ、別に」
「そっか」
うん、と頷いて、切子はまた千鶴子の頭を撫でた。
「あなたも、ありがとう。今日は本当、いいものを見せてもらったわ」
結局全員の頭を撫でて、切子はその場を後にした。
「気にせず受け取りなさい」
と最後に言って、五百円玉を一枚、統治郎の手に握らせて行った。
「嵐のような人だね……」
誰ともなく呟いて、四人はもらった五百円玉でジュースをもう一本ずつ買い、家路についた。
34ノスタルジア 第5話 ◆7d8WMfyWTA :2010/05/06(木) 00:48:07 ID:uS/qJs7j
翌日土曜日、文雄と千鶴子は三条家を訪問した。
美山家とはまた別の地区の、山際にある広い屋敷が、三条優の住む家だった。
「最近どうもお金持ちと縁があるわね」
そんなことを言いながら、門脇に付けられた呼び鈴を押す。
応じたのは優で、すぐに邸内に案内された。
三条家は昔ながらの和風の家と、増改築による洋風建築の部分とから成っており、優の部屋は洋風建築の方にあった。
「大きなお屋敷ね」
「ええ。私はよくわからないけれど、父のお仕事は上手くいっているみたいです」
「これだけ広い家なら、家族がたくさん居ても特に問題はなさそうね」
「ええ。それに今は、下の妹二人は学校の関係で隣街の親戚の家に居るので、この家に普段居るのは父と私、母、末の妹……それと叔父の、五人だけなんですよ」
「そう」
「妹たちはなかなか帰って来なくて……寂しいものです」
廊下を歩きながらの会話に文雄は、どちらが上級生かわからんなと内心苦笑した。
「こちらが私の部屋です。散らかっておりますが……」
そう言って二人の通された部屋は、充分に整頓の行き届いた部屋だった。
部屋の中央に置かれた座卓には、すでにお菓子と飲み物が用意されていた。
「準備万端ね」
「お口に合うかはわかりませんが」
少し不安げな笑みを浮かべつつ、優は席を勧める。
三人はそれぞれ座卓の周囲に座った。
「さて、昨日聞けなかったことをいくつかお聞きしたいのだけど、いいかしら?」
「はい」
「まず、四人姉妹全員が養子だとあなたは言っていたけれど、お父様に実子はいないのね?」
「はい。居ないはずです。私たちが引き取られる以前は実の娘が居たようなのですが……事故で亡くなったそうです」
「そう、事故で」
「はい。小学校にあがる直前だったと思います」
千鶴子はなるほど、と頷いた。
「では、それから今まで、お母様に子供ができたことは無いのね」
「はい」
「一度はできているのに、できていない。何故かしら。一度目の出産の時何か問題があったとか、あるいは夫婦生活がどうなっているかとか、わかるかしら」
「そこまでは……私には残念ながら。あの、でも……」
「なに? 少しでも思い当たることがあるなら、言ってもらえると助かるわね」
「はい。あの、その亡くなった子供の母親もやはり事故で亡くなっていまして……今の母、三条望は後妻なんです」
「それは娘と同じ事故なのかしら」
「そう聞いています」
「……いずれにせよ、今のお母様は子供を産んだことが無い。ということは、体質的な問題の可能性も大いにあるというわけね」
千鶴子は考え込み、部屋に沈黙が訪れる。
事前に何も知らされていなかったので、文雄は千鶴子がどのような論理で質問を重ねているのかわからなかった。
ただ、千鶴子の考えがまとまるまでの中継ぎにと、文雄は口を開いた。
「あれかな、ご家族の写真とかあるかな。いや、もし良かったら見せてもらいたいなあと」
「はい。アルバムならこちらに」
優は背後の本棚からアルバムを取り出した。
それを見た千鶴子は、
「さすがは文雄さん。良い調べ方ね」
と文雄の膝を叩いた。
「え?」
「確かに、写真を見ればすぐにわかるわね」
「すまん。お前たちが話している間時間を潰せればと思って出してもらったんだ。特にそれ以上の理由があるわけでは……」
「あら、そう。でも助かったわ」
35ノスタルジア 第5話 ◆7d8WMfyWTA :2010/05/06(木) 00:49:01 ID:uS/qJs7j
千鶴子はアルバムを手元に引き寄せ、ぱらぱらとめくった。
やはり文雄には、千鶴子の考えはわからなかった。
ただ、邪魔をせずにおこうと思った。
「こちら、妹さんたちね?」
「あ、はい。下の二人の妹です」
「似てるわけではないのね」
「そうですね。何しろ養子ですから」
ふむ、と千鶴子は小さく応じた。
「あなたを含め、姉妹がお父様から性的ないたずらをされたということは?」
「ありません」
「お風呂などは一緒ではなかった?」
「お風呂は確かに、妹が来るまで一緒でしたけれど……特に何かされるということはありませんでした」
「そう」
千鶴子は用意されていた茶を口にした。
「今のところ、お父様は一定の年齢以下の子供に価値を見出している、と考えざるを得ないわね」
「そ、そうなんですか?」
「普通に考えれば、いわゆるロリコンの線が強いのでしょうね。あからさまな性行為はしなくても、見るだけ、触るだけで満足する方もいるでしょうし」
千鶴子の言葉に優はあからさまな落ち込みを見せたが、千鶴子は構わず続けた。
「養子を取るのは、単純に子供が欲しいからと考えれば納得いくわ。どうやらお母様との間に子供はできていないようだし。お父様の件で問題なのは、養子を取ることそのものではない。
新たに養子を取った後、それまで可愛がっていた子供に無関心となることよ。話を聞いて、亡き娘の面影を追っているのかとも思ったけれど……」
「亡き娘の?」
今度は文雄が聞き返した。
「ええ。娘の代わりになりそうな子を養子に引き取り、ある程度育てたところでやはり娘に似ていないと思い、次の娘に鞍替えする……という理屈なら、ありえなくもないと思ったのよ」
「確かに、それなら納得いくな」
「でも、先ほどアルバムで見た三条さんの姉妹は、皆似ていないのよね。実の娘の面影を追っているのなら、容姿に何か共通項があっても良いと思うのよ」
「お父上なりの共通項はあるけれど、俺たちにはわからないというだけなんじゃないのか?」
「それはその通り。大いに可能性はあるわ。でも……」
「まだ何かあるのか?」
「……これ以上は何とも。三条さん、お父様の様子を見せてもらいたいのだけど、かまわないかしら?」
尋ねながら千鶴子は立ち上がり、既に階下に降りていく気を見せている。
それに対して優は渋い顔をした。
「それが……母が……父の部屋の方にはお友達を近づけないようにと……」
「あら、そうなの」
「すみません。母は、駄目な人なんです。あの人は、父を恥ずかしく思っているんです」
「どうかしらね。お父様のことを考えての言葉なのかもしれないわよ。本人が気にしていなくとも、悪評はいつどんな形で実害になるかわからないものだし」
千鶴子の言葉に、優は俯いて答えなかった。
千鶴子はため息をつき、部屋を出て行く。
「おい、千鶴子、どこに……」
「お父様の様子を見てくるわ。古い方の家の、奥の部屋でいいのよね」
「お前な、今の三条さんの話を聞いてなかったのか?」
「聞いていたわよ。だから、こっそり見に行くのよ」
「……そういう奴だよな、お前は」
文雄は立ち上がった。
「俺も行くよ。何か無茶されたらたまらんからな」
あら、と千鶴子は微笑んだ。
「見つかったら、お手洗いを探していて迷ってしまったと言い訳しようと思っていたのだけれど。そうね、兄妹で連れ立ってお手洗いを探していたというのも、いいかもしれないわね」
36ノスタルジア 第5話 ◆7d8WMfyWTA :2010/05/06(木) 00:50:10 ID:uS/qJs7j
結局優からの助言で、千鶴子と文雄は一旦外に出て、屋敷の裏から回って三条英一の様子を見ることとなった。
簡単な見取り図を書いてもらっていたおかげで、英一の部屋はすぐにわかり、文雄と千鶴子は身をかがめてガラス戸越しに部屋の中を覗きこんだ。
広い畳の部屋の中には、児童向けの絵本やおもちゃが散乱している。
その中に中年の男が一人、胡坐をかいた脚の間に少女を抱え、座っていた。
「あれが……」
「ええ。優さんのお父様ね」
そして、抱えている娘が、優の末の妹。
あの話の通りなら、現在小学二年生というところか。
文雄と千鶴子が息を潜めて見守る中、父娘は仲睦まじく会話し、遊んでいた。
時折英一は娘の頭を撫でたり、体に触れたりするが、特に性的な部分に触れているわけではないと見て取れた。
「溺愛といえば溺愛なのだろうけど……」
仲の良い親子なら自然なコミュニケーションであろうとも思えた。
しばらくすると、部屋に入ってくる者があった。
「あなた、お昼ご飯はどうしますか?」
小豆色の着物を普段着として纏ったその女性が、襖を開けて静々と室内に歩み入る。
英一に対する呼び方から、英一の妻であり、優の養母である、三条望その人だとわかった。
「うん、何でもいいぞ。手のかからないもので」
「あら、普段お昼は外食ばかりなんですから、休日くらいは好きなものを言っていただいてかまいませんのに」
「ううむ、そう言われてもな。……咲は何が食べたい?」
英一は笑顔で、抱きかかえた娘に問いかける。
「あたし……? あたし、チョコレート食べたいよ」
「まあ、咲ちゃん。チョコレートはご飯にはなりませんよ」
言って、望はくすりと笑った。
英一も釣られるように笑った。
優から聞いていた話が無ければ、ごく暖かな家庭の風景のように、それは思えた。
37ノスタルジア 第5話 ◆7d8WMfyWTA :2010/05/06(木) 00:54:04 ID:uS/qJs7j
二人は昼を少し過ぎた頃には三条家を出た。
優は笑顔で見送っていたが、その笑顔はやはり不安な気持ちを含んだものだった。
昨日皆でジュースを飲みながら優の話を聞いた海浜公園を、文雄と千鶴子は二人きりで歩いた。
「誰も居ないな」
「まあ、公園とは名ばかりだものね」
千鶴子は防波堤の上を歩きながら、水平線の向こうを眺めている。
時折強く吹き付ける海風が、長いスカートをはためかせていた。
「千鶴子、危ないぞ」
「大丈夫よ。この幅なら、目をつぶって歩いても落ちることはないわ」
「目をつぶって歩いたら、さすがに落ちるだろう。……いや、そうじゃなくて、そんなところを歩いてたら、スカートがめくれた時に、その……見えちゃうだろう」
「あら、気にしてくれるなんて、嬉しいわね。でも大丈夫よ。誰も居ないのだし」
「いや、俺が居るだろ」
「ふふ……そんなことを気にする間柄じゃないでしょう」
スカートを摘みあげ、千鶴子は下着を露にする。
周囲を見回しながら慌てて制する文雄を、くすくすと笑って見ていた。
「ごめんなさい。少し調子に乗ってしまったわね」
「お前は本当に……何を考えているかわからんな」
「休日にこうして二人で歩くなんて、何だかデートみたいだったから」
「それは下着を見せていい理由になるのか……?」
「ならないわね」
また千鶴子は小さく笑った。
その笑顔のまま、呟いた。
「三条優さん、か……」
「解決できそうか?」
「まだ絞りきれていないけれど、解答の候補は揃ったと思うわよ」
「相変わらず大した奴だな、お前は」
「けど、もう少し調べなければいけないことがあるのよね」
千鶴子は声色を沈ませる。
「ちょうどそのあたりだったわね」
と、昨日優が座っていたベンチを見下ろした。
「ん? 昨日みんなで話を聞いたところだな」
「ええ、角間切子さんの奢りでね」
千鶴子は堤防の上で三角座りになり、うなだれた。
「……その調べなければいけないことというのが、どうもあの人の協力無しには調べられなさそうなのよね」
「角間さんの?」
「ええ。だからもう、解決できなくてもいいような気もしているのよね」
「何故そうなる」
「私、あの人苦手なんだもの」
ああ、と文雄は苦笑いした。
「わかるよ。何だかこう……エネルギーに溢れすぎた人だったよな」
「ええ。あの人とまた接するくらいなら、もういいかなって……」
「まあまて。そんなに負担なら、俺から連絡してやるから。何を聞きたいんだ?」
言って、文雄は携帯電話を取り出す。
堤防の上から千鶴子がその頭を叩いた。
「痛いな、こら」
「ちょっと、なぜあなたが角間さんのメールアドレスを知っているのよ」
「え? 昨晩直接メールが送られてきたんだよ。統治郎から聞いたんだって」
「私には送られてきていないわ」
千鶴子はひらりと堤防から降りて、文雄の携帯電話を奪った。
「まあ、文雄さんは随分とあの人に気に入られていたみたいだものね」
「どうなんだろうな。色々言ってはいたけれど」
「優さんといい、角間さんといい、文雄さんは最近素敵な女性と知り合いになる機会が多いわね。ひょっとしたらそのために色々と首を突っ込んでいるのかと、疑ってしまうわ」
やれやれと千鶴子は首を振り、俯いた。
軽口のようだったが、何故か文雄には、その時の千鶴子がいつになく落ち込んでいるように見えた。
「……あのな、千鶴子。もしも本当に嫌だったら、今回のことは、これまででお前がわかったことを三条さんに伝えて終わりにしていいぞ」
「文雄さんは、あの人の問題を解決してあげたいんでしょう?」
「できたら、な」
「……私は文雄さんの願いを叶えるって言ったでしょう?」
そうじゃないと、私の意味が無いもの。
微かな呟きは波の音に紛れて、消えてしまう。
38ノスタルジア 第5話 ◆7d8WMfyWTA :2010/05/06(木) 00:55:04 ID:uS/qJs7j
千鶴子は顔を上げると、文雄の携帯電話から角間切子へメールを出した。
「何を聞いたんだ?」
「優さんが言っていた、元の奥様と実の娘さんが亡くなった事故についてよ」
「それを聞くことで、三条英一氏の奇行について、何かわかるのか?」
千鶴子は首を傾げた。
「わかるというか、毒物が関わる事故でなければいいなと思って」
「……? 何でまた」
「小さい子供の使い道というものを考えるとね」
使い道とは嫌な表現だと文雄は思った。
しかし千鶴子は気にする様子も無い。
「文雄さん、子供と聞いて思いつく言葉を三つ挙げてみて」
「またいきなりだな。ええと、小さい、手がかかる、可愛い」
「最後のは不正解ね。うるさい、よ」
「そういう問題だったのか、今の……?」
冗談は置いておいて、と千鶴子は物をどかす仕草をした。
「小さい、と言ったわね」
「ああ」
「そう、子供は小さいわ。そこに愛情を感じる人もいれば、性欲を感じる人もいる。他に『小さい人間』が……『小さい人間』しか果たせない役割は何かと考えると、体積の制限か体重の制限が関わってくると思うのよ」
文雄は黙って聞いていた。
千鶴子の凛とした、知性の煌きを感じさせる表情で、宙の一点を見つめていた。
「日常の生活の中で、体積や体重の制限を考える時って、どんな時かしら?」
「それで毒物、なのか……」
「ええ。体重と致死量は比例するからね。自分と同じ日常生活を子供に送らせることで、毒見役にできるんじゃないか、なんて考えたんだけど……」
深刻な表情を見せる文雄に、千鶴子は微笑みかけた。
「心配しないで。英一氏がロリコンである可能性も同等にあるし、他の可能性もある。あくまで私の考えの一つに過ぎないんだから」
「もしお前の想像通りだったら、どうなるんだろうな」
「解決はかなり難しくなるでしょうね。だから、ただの交通事故とか、そういうものを期待しているわ」
千鶴子は携帯電話を返しながら、文雄の手を両の手で包み込んだ。
「ねえ、文雄さん。この件が解決して、中間テストが終わったら、二人でデートに行きましょう」
「え……?」
「色々思うところはあるけれど、私なりに頑張るので、ご褒美に遊びに連れて行って欲しい……んだけど、駄目かしら?」
「それはかまわないけど」
「……良かった」
文雄の手を包む千鶴子の両手には、しっとりと汗が滲んでいた。
39 ◆7d8WMfyWTA :2010/05/06(木) 00:55:34 ID:uS/qJs7j
今回の投下は以上です。
40名無しさん@ピンキー:2010/05/06(木) 01:01:02 ID:VNvEniX3

リアルタイム更新GJ!
41名無しさん@ピンキー:2010/05/06(木) 01:48:37 ID:w426u3I5
GJ 相変わらずこの妹はカッコいいな
42名無しさん@ピンキー:2010/05/06(木) 02:17:35 ID:WKm7FjPo
ふぅ…堪能したGJ!
43名無しさん@ピンキー:2010/05/06(木) 08:31:20 ID:blcMwt97
ノスタルジアは毎度レベル高いから困る。何を企んで俺の股間を膨らませようとしているのやら……
44名無しさん@ピンキー:2010/05/06(木) 21:29:40 ID:tAPzDNRm
初めてノスタルジアを読んだが・・・なんだこのクオリティの高さは!?
これは保管庫に直行して1話から熟読しなければ!
45名無しさん@ピンキー:2010/05/06(木) 21:40:03 ID:Yk6o40Hy
こういう健気な妹には
幸せを祈らずにはいられない
46名無しさん@ピンキー:2010/05/06(木) 22:40:56 ID:Nvo1FKuG
兄を自分に引き留めるためだから欲望ゆえなんだろうけど
なぜか健気に見えてしまうな
47名無しさん@ピンキー:2010/05/07(金) 01:16:46 ID:M0rqJnki


マジで神。次を待ってます
48名無しさん@ピンキー:2010/05/07(金) 01:27:34 ID:gLQ+jzRe
・・・・・・・・・・え?
え、ええ!?
ノスタルジアがもうきてるううううううううううううううう!!
GJJJJJJJJJJJJJJ!!!
相も変わらずの文章力で面白い!
そして、千鶴子かわいいよ千鶴子
49名無しさん@ピンキー:2010/05/07(金) 20:17:56 ID:cMYtsiAI
三つの鎖はどうなったの?
50名無しさん@ピンキー:2010/05/07(金) 20:52:36 ID:2heJOPqU
作者が忙しいのかは分からんけど区切りのいい所で一旦中断
…が、しかし。
51名無しさん@ピンキー:2010/05/08(土) 02:51:45 ID:7Tjqdtvc
ノ、ノスタルジア!?
GJ!
やっぱり
久しく更新がなかった作品が再開するのはありがたいな
52名無しさん@ピンキー:2010/05/08(土) 06:54:42 ID:5DVac1Jl
GJ!
続きがめっちゃ気になる
待ってます!
53名無しさん@ピンキー:2010/05/08(土) 15:33:11 ID:t6cj4xqf
ノスタルジアは面白いけど、何ヵ月も続きが来ないのが弱点
54 ◆6AvI.Mne7c :2010/05/08(土) 15:37:06 ID:XVg4awA7
今更だけど、改めて>>1乙。
既に投下されていた、>>16>>39のお二方にも、まとめてで悪いけれどGJを。
 
せっかくなので、昨日ようやく完成した小ネタを投下します。
タイトルは『Golden Tuning』。兄妹もので大体9.7KBくらい。
銀週の時と同じ形式にしようとして、大失敗した。誤字脱字注意。平仮名(ロリ)喋り注意。
 
次レスより投下。3レス借ります。投下終了宣言あり。
55Golden Tuning (1/3) ◆6AvI.Mne7c :2010/05/08(土) 15:39:09 ID:XVg4awA7
 
 『ゴールデンウィーク』――言わずと知れた、5月頭に存在する大型連休。
 今年は金曜(と土曜)をどうにかできれば、7日間の連休となる。
 残念なことに、僕はバイトのせいで半分さえも休めなかったけど――
 それでも、残った後半の2連休を使って、久しぶりに妹と一緒に遊ぼうと思っていた。
 そう、思っていたはずなのに――
 どうして僕はいま現在、全裸でベッドの上――布団の中にいるんだろう。
 どうして妹は、薄着で僕の身体に擦りついて、深いキスをしてきているんだろう。
 
「むぅ……! ぐ……!? ふむむぅ〜〜……!?」
「んくっ、んじゅぅ……、んはぁ………♪」
 妹からの、舌を絡めた深い深いキスが途切れ、僕の呼吸が自由になる。
 ずっと妹に息を吸われていたからか、少し頭がぼぅっとしている。
 多分僕の顔は、汗と唾液に塗れながら、真っ赤になっているんだろう。
 いま僕の目の前で、唾液を垂らしながら恍惚の笑みを浮かべている、妹のように。
 
「……ぅふふ、……ぁは♪ おにぃちゃん、あたしのおとなキスきもちよかった?
 えっちなほんとかですごくおべんきょうして、がんばったんだからね♪」
「………………なんで、キスするのさ?」
 とても嬉しそうにそう言ってくる妹に、僕はそれだけしか返答できなかった。
 やや酸欠気味なのもあるけれど、目の前の出来事に頭が対応できていなかった。
 それに、何か重大で致命的な出来事を、忘れているような気さえする。
 
 そんな僕の心情を感じ取ったらしく、妹が自分から答えてくれた。
「さいきんいつも、おにぃちゃんおそくまでおしごと、がんばってるでしょ?
 だからあたしがこうやって、おにぃちゃんをいやしてあげてるんだよ」
 いや、僕を労わってくれるのは、それはそれで嬉しいんだけどさ……。
 この状況で癒される人間がいるなら、ぜひ僕は会ってみたいもんだよ。
 ちなみに妹の言う『おしごと』とは、僕のやっているバイトのことだ。
 
 でも確かに、最近僕は頑張り過ぎていたと、自分でも思う。
 僕は昔から共働きの両親に代わって、まだ幼い妹の面倒を見てきた。
 妹も僕にとてもよく懐いてくれて、とてもいい子に育ってくれた。
 妹が小学校に入学してからは、僕もバイトを始めて、家計の足しにしていった。
 最初の頃はそれこそ週2回程度で、学業とも家事とも妹の遊び相手とも全てこなせていた。
 けど最近はバイト先が忙しくて、僕の出勤日が前より多くなってきている。
 当然そのぶん僕の休みは減り、妹や家のことがおざなりになってしまっていた。
 だからこそ、今回のゴールデンウィークの休みには、期待していたんだけど――
 
 いや、今はそんなことはどうでもいいんだった。
 それよりも、目の前の現実に向き合わないといけないんだ。
「まあ、キスはご褒美だってことで、嬉しく受け取らせてもらうけどさ……
 なんで僕は――というか2人して、こんな格好なんだい?」
「あはは♪ やっぱりおぼえてないみたいだねおにぃちゃん♪
 きのうは『つかれた』っていいながら、じぶんからそのかっこでねたんだよ?」
 
「そうか……って、いったいいまは何時くらいなんだ?」
 今日は連休の初日で、昼からバイトのシフトが入っている。遅刻するわけにはいかない。
 慌てて時計を探す僕に、妹は笑顔で携帯電話を渡してくれた。
「あ、ありがとな……って、もう朝の10時じゃないか……!?
 まずいなあんまり時間がない……。悪いんだけど、どいてくれないか?」
「? なんで?」
 妹が何故か、きょとんとした顔で尋ねてくる。
 そう言えば今日まで、連休もバイトがあることを、教えていなかったっけ。
 
「ごめん。今日は僕、これからバイトに行かなきゃ行けないんだ。
 だからさ、もうそろそろ僕から離れてくれn」
「なにいってるの、おにぃちゃん?」
 今まで聞いたこともない、妹の深く昏(くら)い声が、僕の鼓膜に響いた。
 直後僕が見た妹の表情は、これまで見たことのない、感情のないものだった。
56Golden Tuning (2/3) ◆6AvI.Mne7c :2010/05/08(土) 15:41:48 ID:XVg4awA7
 
「おしごと……? またそんなうそつくんだね、おにぃちゃん?」
 妹が僕を抱きしめる力が、徐々に――だけど確実に強くなる。
 まだ幼い――小学生女子の力のはずなのに、僕のあばら骨が悲鳴を上げ始める。
「……いや、本当なんだよ。嘘をついてるわけじゃないんだ。
 ごめんな? 最後の2日間しかお休みがとれなかったんだ。
 だからさ、今日はこれからバイトにいかな――――っだ!?」
 僕の謝罪は、妹に背中をつねられることで、無理やり途中で遮られた。
 確かに今回は僕が悪かった。連休前半は休めないと、伝えなかったのは僕だ。
 けれど、そのことで妹に言い訳する余裕は、僕にはなかった。
 妹が纏う空気が、僕に拒絶することを許してくれそうにない。
 
「ねえおにぃちゃん? どうしていつもあたしをおいて、どっかいっちゃうの?
 おやすみのひはおにぃちゃん、あたしとあそんでくれるって、ゆったよね?
 あたしずっと、きょうからのおやすみを、たのしみにしてたんだよ?
 なのになんでやくそくやぶって、あたしをまたひとりで、おるすばんさせちゃうの?」
「いや、そのゴメン……? 別に僕はおまえを、蔑ろになんか――」
 妹の静かな口調の糾弾に、僕は圧倒されてしまっている。
 この10歳離れた幼い少女の何処に、こんな迫力が秘められているのだろう?
 
「ああそっか〜! おにぃちゃんはあたしとなんか、いっしょにいたくないんだねっ!?
 あたしとじゃなくて、よそのめすぶたどもとあそびたいから、うそつくんだよねっ!?」
「な……っ? め、めす……ぶた……?」
 妹から今まで聞いたことのない単語が飛び出して、唖然としてしまった。
 その間に妹は僕の首元に顔を近づけ、上目遣い気味にこちらを見つめてくる。
 
「よそのめすぶたになんて、おにぃちゃんをわたしたりはしないもん。
 おにぃちゃんのこいびとは、このあたしだけだもんっ。
 だからあたしが、おにぃちゃんをやすませてあげるのっ!」
「な、こ、恋人って、僕たちは血の繋がった、兄妹じゃないか……!?
 実の兄と妹じゃあ、結婚もできないし、エッチだって……んぐっ!?」
 再び妹からの『おとなキス』で唇を塞がれる。同時に口の中に、謎の苦味が広がる。
 異常に気付いた時には、妹から流し込まれた大量の唾液に押され、嚥下してしまっていた。
 喉の鳴る音を聞いた妹は、満足するように笑顔になり、僕の唇から頭を遠ざけた。
 
「おにぃちゃんがそうゆうたいどにでるんなら……きめたよ。
 あたしやっぱり、おにぃちゃんをきっちり『ちょうきょう』してあげる♪」
「ち、調教って……」
「えへへ、おにぃちゃんがあたしのことを、も〜っともっとスキになるようにするの♪
 あたしだけいっぽうてきに、おにぃちゃんがすきすぎるって、ふこーへーだもんね?」
 
 そう言いながら、妹は僕に対して、とても可愛らしい照れ笑いを浮かべてみせる。
 その表情は見たことがある。クラスメイトの女子や、バイト先の先輩がたまに浮かべている。
 誰か特定の異性を、思い想う過程で至る――恋する少女の笑顔だ。
 一体何をどうしたら、実の兄に向かって、こんな相貌(かお)ができるんだよ……!?
 
 くっ、だめだ駄目だ飲まれるなっ!? 僕はこの子の兄なんだ。
 だからこそ、僕が妹のことをちゃんと、説得しなければ――!!
 
「――なあ、すまない。いや、ごめん。なんでもするから許してくれ。
 僕は実の妹を女としてなんて見れないし、ましてや抱くことなんて――」 
「でも、そんなこといったって――もうおそいんだよ?」
 説得はほんの数秒で遮られ、否定された。
 それでもなお続けようとする僕に、妹は人差し指で僕の唇を制した。
 
「だっておにぃちゃんとあたしは、きのうのよるにむすばれたんだもの♪」
57Golden Tuning (3/3) ◆6AvI.Mne7c :2010/05/08(土) 15:43:41 ID:XVg4awA7
 
 そう言いながら、妹は僕の身体を離れ、掛け布団を押しのけながら上体を起こした。
 さっきまでは見えなかったけど、妹はワンピース状のパジャマを着ていた――だけだった。
 それ以外には何も――いつもお気に入りのくまさんパンツさえ、穿いていなかった。
 そして僕は妹のある一点を直視して――ゾッとした。
  
 妹の未成熟な性器から、何か薄く白い、匂いの強い液体が漏れだしていたからだ。
 
 いや、でもしかし、僕がそんなことを、万が一にでも――
「ほらおにぃちゃん、あたしのこどもすじから、おちんぽみるくがたれてるでしょ?
 これぜ〜んぶ、きのうのよるにおにぃちゃんに、だしてもらったものなんだよ?
 ほんとはもっといっぱい、い〜っぱいあったんだけど、もれだしちゃったみたい♪」
 間違いであってほしいという僕の祈りは、妹の言葉に粉砕されてしまった。
 
 同時に、あやふやだった昨夜の記憶の一部が、次々と繋ぎ紡ぎ直されてくる。
 止まらない勃起。湧き続ける衝動。締め付ける感覚。射精の快感。
 妹の未成熟な肢体。まだ幼い嬌声。あふれ出る愛液。処女の鮮血。
 未だ完全に繋がらない断片集――けれどそこまでで充分に理解できた。
 自分がとんでもない罪を犯し、その被害者が妹であったと理解できた。
 どうしようもないほど事実であったことを、力づくで理解させられた。
 
「う、うそだ……ろ……? 僕は……妹を……おかし……?」
「ほんとうだよ? おくすりがきいたおにぃちゃん、すごかったなぁ〜♪
 いたがったあたしのからだに、むりやりおちんぽぶちこんで、よろこんでたもん♪
 ふるえるあたしのおなかに、しろくてなまぐさいみるく、たくさんそそいだもん♪
 ちょっとこわくて、ドキドキして――でも、すっごくぞくぞくってしちゃった♪」
 言いながら、妹はまた僕に顔を近づけてくる。瞳を覗き込むように接近してくる。
 僕は咄嗟に妹から顔を背けて――ほぼ同時に、妹の手で無理やり目線を合わせられた。
 向かい合った妹の顔は――僕にでもわかるくらいに、発情していた。
 
「あたししってるよ。これって『きせいじじつ』ってゆぅんだよね?
 こうゆうことしちゃったら、もうおにぃちゃんはあたしから、にげられないよね?
 だってこんなことがバレたら、おにぃちゃんはもう、オシマイなんだからね?
 もちろんあたしだって、おにぃちゃんをにがすつもりなんて、ないんだけど、ね?」
 
 発情した妹の科白を聞き終えると同時に、僕の中で再び衝動が湧きあがる。
 目の前の妹を――少女を――オンナを凌辱し喰い荒らせと、精神が暴走する。
 それに気付いた妹が、僕の身体に再び縋りつき、自らの『すじ』を擦りつける。
 もはやどうしようもない。僕の性欲は完全に、まだ小学生の妹に掌握されている。
 
「やっぱり、きのうはちょっと、おくすりつかいすぎちゃったのかなぁ〜?
 どうぶつみたいなおにぃちゃんはすごかったけど、おぼえてないといみないもん。
 だからきょうのおくすりは、りょうをはんぶんだけにしてあげたからね?
 それでもじゅーぶんにきくとおもうから、あんしんしてくるってくれていいよ?」
 
 あはは、そうイってくれて、ウレしいよ。 ――そんなのダメだよ、ボクはアニなんだ。
 いくらでも、マんぞクするまでヤろうか。 ――いモうトには、そんなマねできないよ。
 ぼくも、おまえのことが、だいすきだよ。 ――だれでも、いいから、とめてください。
 もういもうとのこといがい、あいさない。 ――しこうが、かたっぱしからくわれてく。
 
「あ……ああ、あ、いして、るよ……、ぼくの……いもう、と♪」
「もうぜぇ〜ったいに、にがさないんだからね、おにぃちゃん♪」
 
 
――ぼくのじんせいさいあくの『ちょうきょうしゅうかん』は、まだまだおわりそうにない……
 
 
                       ― I follow for the worst golden week... ―
58 ◆6AvI.Mne7c :2010/05/08(土) 15:46:17 ID:XVg4awA7
以上、投下終了。
 
単純に前回と同じ形式にまとめようとしたのに、やたらバラけてしまった。
小学生低学年だから平仮名喋り、なつもりだけど、やっぱり読みにくいかなと反省。
そして最大の問題は、ゴールデンウィークはもうとっくに終わって(ry
 
やはり自分、ゴー(ryの日中はほとんど、仕事でしたから……残念っ!
今月半ばの休み使って、またなんか短編を書いてみます。
59名無しさん@ピンキー:2010/05/08(土) 20:44:32 ID:UC+siJg9
GJ
ロリヤンデレ恐ろしいな。出来ることが限られている分こう思い切りがいいというかなんというか
普通のヤンデレに比べて何をしでかすか分からない怖さがある
60名無しさん@ピンキー:2010/05/08(土) 21:36:54 ID:bQ3tDQKm
自分の8歳の妹で想像してしまったじゃないか…
ちょっといたずらされてくるか
61名無しさん@ピンキー:2010/05/08(土) 22:26:21 ID:u94HDddW
乾かす為に風呂場に放置してたオナホを妹に見つかった/(^q^)\ナンテコッタイ
62名無しさん@ピンキー:2010/05/08(土) 23:22:56 ID:wCsD7HFf
>>悪質長男
軽妙な文体と話運び、それに玲二のキャラがいい(・∀・)

>>ノスタルジア
第一話から一気に読みました
登場人物全てキャラ立ちが凄い
先が気になります

>>Golden Tuning
シンプル、王道、エロ三拍子揃ってるW
いつも短編〜中編楽しませてもらっています
63名無しさん@ピンキー:2010/05/09(日) 00:36:54 ID:PULbrKx7
おまえこっちにも来たのかよ…
ヤンデレスレで叩かれたのに懲りてないのか
64名無しさん@ピンキー:2010/05/09(日) 01:17:33 ID:uKVksRyp
65名無しさん@ピンキー:2010/05/09(日) 12:50:23 ID:xT8s8Kx9
>>63
俺もヤンデレスレ見てたけど、今回は他人に強要してないし問題ないじゃん
書き手には長文感想書いてくれるのって、やっぱり嬉しいと思うし

むしろ問題ない行為に難癖付けてるあんたのほうが、端からすれば嵐に見えるよ
66名無しさん@ピンキー:2010/05/09(日) 13:23:30 ID:v7Rw54hS
嵐で停電になって気づいたられいぽぅされてたとか
67名無しさん@ピンキー:2010/05/09(日) 14:19:18 ID:xS8bK+o8
ヤンデレスレとここの両方の住人、俺も含めてかなりいるだろうな

たまに作品のスレ間違えそうになるW
68名無しさん@ピンキー:2010/05/09(日) 14:40:44 ID:uKVksRyp
>>66
停電前に怖がってくっついてくるのと停電中に不意に襲われるのとで何パターンかありそう

あと停電後に別の姉妹が飛び込んできたり
69名無しさん@ピンキー:2010/05/09(日) 19:30:55 ID:7R6QyKoT
>>67
逆に片方にしか住んでない奴なんて居ないぜ
70名無しさん@ピンキー:2010/05/09(日) 19:43:16 ID:QWL4AbB8
>>69
実はヤンデレスレの存在すら知らなかった愚か者がここにいる。
71名無しさん@ピンキー:2010/05/09(日) 19:46:18 ID:tkGpJwQc
久々に覗いてみたらSSに母と同じ名前があったでござるの巻
72名無しさん@ピンキー:2010/05/09(日) 19:47:07 ID:uKVksRyp
>>69
すまない…こっちだけなんだ
73名無しさん@ピンキー:2010/05/09(日) 19:50:08 ID:qCrfoJFC
ヤンデレ ここ 依存 大人しい女(ry はしごしてる
74名無しさん@ピンキー:2010/05/09(日) 19:56:35 ID:cJ2WN22Y
>>71
俺はエスパーだからわかる
お前の母ちゃんの名前はこの中のどれかだろう

怜二

麗華
文雄
千鶴子
叶絵
統治郎
切子



英一
75名無しさん@ピンキー:2010/05/09(日) 20:15:00 ID:yNNQ8HgG
>>73
あれ、俺書き込んだっけ
本当は嫉妬・修羅場スレも巡回したいが何年居座るつもりなんだろうなあの荒らし

>>74
男の名前混ぜんなwww
76名無しさん@ピンキー:2010/05/09(日) 20:19:40 ID:NuIJbX8A
俺も巡回スレかぶってるな

好みのスレがたくさんで、昨今のエロパロ板はパラダイスだわ
77名無しさん@ピンキー:2010/05/09(日) 22:33:48 ID:xS8bK+o8
>>70
>>72

気が向いたらあっちの保管庫覗いてみな
こっちでの投下が少ない時に重宝するぜ
78名無しさん@ピンキー:2010/05/09(日) 23:13:22 ID:qCrfoJFC
>>75
嫉妬・修羅場は保管庫しか見てないや・・・
79名無しさん@ピンキー:2010/05/09(日) 23:42:45 ID:pczBiDy0
主役 メイン
80名無しさん@ピンキー:2010/05/10(月) 00:13:10 ID:2LwL5ANp
弟に対する一人称が「お姉ちゃん」な姉ってなんかいいと思わないか?
81名無しさん@ピンキー:2010/05/10(月) 01:46:18 ID:l2Y8Gb8N
>>68
停電前に一緒に居たのは幼馴染だったのに電気がついてからよく見ると
停電中に怖がってくっついてきたのは隣の部屋に居たはずの妹。さて幼馴染はどこへ?
82名無しさん@ピンキー:2010/05/10(月) 02:38:38 ID:2eQrCJH/
>>81
1.素早く気絶させて或いは息の根を止めてベッドの下に蹴落とされた
2.素早く(ryとりあえずドアの外に叩き出された
3.素早く(ryやたら複雑なギミックで天井に吊されてる
4.素早く(ry迷わず窓から屋外へ廃棄
5.幼なじみは実は妹の一人二役だったんだナンダッテー

こうですか?わかりません
83名無しさん@ピンキー:2010/05/10(月) 07:28:18 ID:vK6mwkzI
妹の接吻は不吉の香りが死神の接吻は別離の味(エロゲ)のシナリオ
まんまコピペなんで
まとめwikiのページ削除お願いします
84悪質長男 第四話:2010/05/10(月) 09:50:07 ID:5Dn2FXHe
四話目が出来ました。投下します。
85悪質長男 第四話:2010/05/10(月) 09:50:48 ID:5Dn2FXHe
第四話

怜二。それが私の愛した少年の名前。
自称は完璧で不死身で紳士らしい。
でも私は貴方の事、意地悪でタチが悪い、生意気な後輩だと思います。
「横暴」だなんて言って私を怒らせるけど、本音で貴方と言い合えるのは嫌いじゃない。

好きです。

怜二、貴方が好き。

でもね・・・・・

・・・・・・・・・・・・どうして貴方は『弟』なの?
86悪質長男 第四話:2010/05/10(月) 09:51:36 ID:5Dn2FXHe



私は男が嫌いでした。
小さい頃は皆が意地悪してくる。だから殴ってお返ししました。
成長すると今度はイヤラシイ目で見てきます。ですから私は露出の高い服を着れなくなりました。
妹も私と似たような境遇だったようです。
そうして出来上がった、「姉妹姫」と呼ばれる私達。
どうしてか皆告白をしてきます。変な「ファンクラブ」というものを知った時はとにかく不気味でした。しつこい人は、すっかり逞しくなった玲が追い払ってくれたこともありました。やっぱり私は男が嫌いでした。

もうそんなものに慣れた頃、私の世代が高二に進学した時でした。
周りでは「怜二」という一年生が噂で持ち切りとなっていました。聞いて拾った内容によると、何でも同世代の女子と仲良くなるのも飽き足らず、二年生、三年生の女子と仲良くなっているそうです。
予感はしていました。彼は私の前にも現れました。その時はこの人も今までのナンパと同じ、とでしか思いませんでした。
しかし、その時の怜二は終始、不敵、というより挑発的な笑顔だったのが印象でした。
それと一緒に、ナンパを諦めて去る際に残した言葉も、今も覚えています。

「肩の力を抜きましょうよ。ずっと猫被りのままっすか?」

猫被り、と彼は言いました。
人の本心を見透かす、不思議で不気味な人。
私の中で彼に関する観念が変わりました。
87悪質長男 第四話:2010/05/10(月) 09:52:17 ID:5Dn2FXHe

その後も怜二はめげずに関わろうとしてきます。どれだけあしらっても、あの不敵な笑みを嘘に思わせるあどけない笑顔で。

そんなある時、ある公園で怜二と二人きりで話し込んでいました。どうしてそんな状況になったのか、何を話したのかはもう覚えていません。後輩の怜二が挑発して、先輩の私が怒っていて。
しかも怜二は、何故か木の枝に脚を掛けてぶら下っていた。
とうとう私が手を上げました。久し振りに人を殴りますが、効果は高かったようで、怜二は木の枝から落ちました。
それはもう、グチャっと。情けないポーズと苦笑いで恨めしげに言い返されました。

「・・・・横暴」

そう言われ私の中で、何かが吹っ切れました。歯を見せて、笑いました。年甲斐もなく、童心に帰った様に。

それから怜二は良い友人となりました。
後ろ向きかもしれませんけど、私が心を許す最初で最後の男性でしょう。
そう思うと後から気付いた恋心を、自然と受け入れられるようになりました。でも怜二は女好きなので、しっかりと捕まえておかなければ嫉妬心が溢れてしまいます。

ずっと、

ずっと一緒にいられると願って

もしかしたら、夫婦として仲良くいられる事を信じて



・・・・・信じて・・・・・

・・・・・信じて・・・・・いたのに・・・・・・・・。
88悪質長男 第四話:2010/05/10(月) 09:53:01 ID:5Dn2FXHe



寝る前の勉強の合間に喉を潤そうと、麗華はキッチンへ向かい、水を飲み干す。
部屋に戻ろうと回れ右。視界に怜二が入った。
「!?」
「?」
怯んだのは麗華だけだった。
驚いたと思ったのも束の間、怜二は風呂上がりの半裸状態である事に気づくと、麗華の顔は真っ赤になった。
「あっ、貴方ねぇ!何裸でうろついているのですか!?」
「怒られた・・・しくしく。・・・まぁ、何を今更な気も。皆で海に遊んだ時も僕は半日上半身裸だったでしょうに」
「水着とバスタオルとでは違います!」
しかも結んでもいないし、ギリギリの位置までずり落ちているし。

「ああ。クラスで、ビキニとバスタオルの格好ではどちらがエロイかの議論があったねぇ」

「私はそんな話をしたわけではありません!!!」

怒られてしゅんとなる怜二。
89悪質長男 第四話:2010/05/10(月) 09:53:37 ID:5Dn2FXHe
が、すぐに立ち直った。
「ま、何にしても半裸程度で怒らないでよ。男の裸なんてつまらないだろう?」
恋した相手の裸には興味があるとは言えない麗華だった。
「それは前までほとんど一人暮らしだったから許された格好です。今は女性もいるのですから慎みなさい」
「そう言う君は免疫が無さ過ぎるんじゃない?あ、でも初(ウブ)でよかったかも。そう言う人ってからかうと真っ赤になるから可愛いんだよね」
やっぱりこいつはタチが悪い。
悪戯っ子の顔で、バスタオルをスカートの様にチラチラ摘み上げているのは、さすがに鬱陶しかった。麗華は他の家族の迷惑にならない程度に怒鳴り付ける。
「いいですか!貴方が弟だなんて認めていません!私達はちょっと前までは赤の他人だったのですから。私から見れば、見ず知らずの男が家族の一員になるのと同じ事なんです」

そんなのは表向き。本当は、恋した相手が実弟だなんて認めたくなかっただけ。

「学園のアイドルがそんな狭量でどうするのさ。玲はすぐ受け入れてくれたし、僕は君達家族を歓迎したよ。母ちゃんは良い人そうだし、玲は可愛いし、君は美人だ」
この人は人の気持ちも知らないで。
「貴方はそれでもいいんでしょうけど、女の子はそうはいきません」
「あちゃー。そう言われると弱いねぇ。難しい年頃、複雑な乙女心だもんね」
怜二は両手を挙げて、降参のポーズ。だがすぐ下ろすと忠告する様に人差し指を突き付け、諭す様な声で続けた。
「だけど君には嫌でも慣れてもらうよ。たかが弟相手にいつまでもそんな剣呑じゃあ、迷惑なだけだ」

うるさい。何も知らないくせに。

「僕は完璧で不死身で紳士で、シスコンだ。でも姉や妹に手を出す兄弟はいないよ。それは安心していい」
手を出して欲しかったなんて言えない。
「あは。君と仲良くなりたかったのも本能なのかもね、僕がシスコンだから。玲にだって、こういう妹欲しいなーってよく思ってたくらいだ」
なんでそうヘラヘラと。・・・・・本当に貴方は私を姉としか見てくれないの?
90悪質長男 第四話:2010/05/10(月) 09:54:13 ID:5Dn2FXHe

「ま、偉そうに言ったけど後は君次第だよ。がんばってね、大好きな『姉ちゃん』」


・・・・・「大好き」って言ってくれた。
でもそれはシスコンだから言っているだけで。


・・・・・「姉ちゃん」と言われた。
聞きたくなかった。
怜二が私を「姉」としか思ってくれないと言う事他にならない。

嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌。

それが悔しくて、私は叫ぶ。
ずっと育ててきた、片思いの気持ちを。

「怜二、私は貴方の事・・・・!」

「ぶえくしょ―――――――――――――――――――――――――いっ!!!!!!!」

怜二が風邪を引いた。
そういえばずっと風呂上がりのままだった。それも当然か。

そして、一世一代の想いで告白した言葉は、完全に行き場を無くしてしまった。

「ああ、さむっ」
「・・・・・・・・馬鹿」
「ん?」


「馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿アホマヌケ!大っ嫌い大っ嫌い大っ嫌い大っ嫌い大っ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――嫌い!!!!!!!!!!!!!!」


涙を湛えて家出する麗華。
打ちひしがれた怜二に追い掛ける気力も無く、その場に倒れて滝の様に泣いた。

キッチンに出来た池の中で、最後に間抜けたくしゃみをした。

「へ――――――――――――っくしょん!!」
91悪質長男 第四話:2010/05/10(月) 09:55:20 ID:5Dn2FXHe
投下終了です。
今現在、六話までプロットがありますが、それ以降はネタ切れの状態です。
お恥ずかしい。
92名無しさん@ピンキー:2010/05/10(月) 10:15:37 ID:1YHHqTzU
>>91
GJ!
ニヨニヨしながら読ませてもらってます

>>83
これは酷いw
二次創作と言うより一部は完全にコピペだし、盗作と言ったほうが適切だな
明らかに同一性保持権を犯している

というかこんなのがあったなんて全く気がつかなかった……
93名無しさん@ピンキー:2010/05/10(月) 13:44:43 ID:nviRsgc5
このスレ初心者の俺にヤンデレとキモ姉妹の違いをplz
94名無しさん@ピンキー:2010/05/10(月) 14:09:36 ID:TLV/bpRB
共通点
・相手に一途です。
・思い込みが激しいです。
・泥棒猫や群がる害虫共の駆除能力に長けます。
・キモいです。

@ヤンデレの場合
・好意の方向性は、女さん → 男くん。
・血筋は(基本的に)関係ないし、重要な要素にもなりません。
・女さんは、場合によっては男くんも殺します。

Aキモ姉妹の場合
・好意の方向性は、姉or妹 → 兄or弟。
・血筋は(もちろん)重要な要素となります。
・姉妹は、(基本的には)兄弟を殺しません。
95名無しさん@ピンキー:2010/05/10(月) 14:12:19 ID:YKCfptXf
ヤンデレ=赤の他人
キモ姉キモウト=家族

というか家族が愛し合うのは至極当然で自然なことなので
キモ姉キモウトなんてのは2ちゃんねらーの捏造にすぎない
だって最愛のお姉ちゃんをキモいなんて思う筈がないもの弟くんが
さ、理解できたらブラウザを閉じて
お姉ちゃんとお風呂で洗いっこしよっか?
96名無しさん@ピンキー:2010/05/10(月) 14:35:11 ID:wGWWc2m/
>>91

うわあ〜
続きが読みたいような読むのが怖いような
GJです
97名無しさん@ピンキー:2010/05/10(月) 16:50:05 ID:1mdPDujA
>>93
ヤンデレとキモ姉妹の違いなんて家族かそじゃないかくらいだぜ

ああキモウトとちゅっちゅしたい
98名無しさん@ピンキー:2010/05/10(月) 17:01:17 ID:wo6pYkBN
>>91
gj
99名無しさん@ピンキー:2010/05/10(月) 17:42:28 ID:NX44YNOK
キモ姉妹の基本形は、ヤンデレとブラコンを併発した重症ってことですか。
100名無しさん@ピンキー:2010/05/10(月) 17:48:13 ID:9kEL8Zj5
>>91
GJ
101名無しさん@ピンキー:2010/05/10(月) 18:22:05 ID:bkcGeM+0
>>99
キモさの要因が病みにある場合はヤンデレと重複することもあるが、
違う要因もあり得るから共通項があるというだけで、
ヤンデレの限定的なカテゴリーとは限らない。
102名無しさん@ピンキー:2010/05/10(月) 18:49:13 ID:UicKBKbl
>>91
GJ! 続きに期待

>>80
わかる気がする
103名無しさん@ピンキー:2010/05/10(月) 20:24:39 ID:zA3R1Uxh
>>83
祖父で2千円だったから買ってみたがまんま同じ内容でワロタ

http://www.h-comb.biz/product/02/index.html
104名無しさん@ピンキー:2010/05/10(月) 20:43:01 ID:GzWu+NTj
105名無しさん@ピンキー:2010/05/10(月) 23:15:40 ID:GzWu+NTj
主役
106名無しさん@ピンキー:2010/05/10(月) 23:17:40 ID:GzWu+NTj
107名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 00:02:11 ID:UicKBKbl
>>83>>103
なんか「二次創作」とか断りを入れてたけど
二次創作どころじゃなかったのか
そのゲーム知らんからどの程度のレベルなのか分からないけど
108名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 00:36:58 ID:c3E82bMU
>>107
キャラクターの名前や配置が完全に一致していて、台詞や展開もほぼ同じ

親告罪ではあるけれど告訴されれば、刑事罰も存在する歴とした違法行為なんだけどね
ただのコピペじゃなくて、改変までしてるし

書いた人がもしまだいるのなら削除依頼をしてきたほうがいいよ
管理人さんが消してくれるかもしれないけど
109名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 01:16:46 ID:Zkbdmosx
すみません、それを書いた者です
不快感を与えてしまって申し訳有りません
削除して頂けると嬉しいです
110名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 01:27:01 ID:GML9d2vQ
スルーしとけばいいものを・・・
バカがもっと変なことをしたらもっと大騒ぎされて逮捕されるんだからほっとけよ

ていうか頼むからいちいち蒸し返してスレの雰囲気を悪くするのはやめてくれ
ノスタルジアが来なくなったらマジで困る
111名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 02:17:48 ID:4NBBhowH
>バカがもっと変なことをしたらもっと大騒ぎされて逮捕されるんだからほっとけよ

意味不
話題にされたら困る奴なんて限られてるだろうに
しかもSS批評で雰囲気悪くなるなら分るが
丸コピペというあきらかーな話題で投稿が減るとかw

結論 ID:GML9d2vQが雰囲気を一番悪くした
112名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 02:45:00 ID:JP8wQnXj
その作品を削除してそれで終了だろ。何を言い争っているんだ落ち着け

それより流れをきってしまうんだが
ここって義理の姉妹しか登場しない作品ってアリ?いつかは血のつながった姉妹を登場させないとNGなのかな?
113名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 02:53:40 ID:VHKSNWBq
長いことスレを見てきたけど人によって意見が違うなぁ
血が繋がってないと絶対にダメという人もいれば義理どころか従姉妹でもおkって人もいる
俺は後者
114名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 03:12:10 ID:9ISN6kmz
スルーしとけばいいものをと言ってる本人がスルーできてないっていう簡単なお話
115名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 04:11:10 ID:pgQWXOUM
改変だろうがパクリだろうがどんどんやればいい
一部を抜き取って改変してるくらいでビービー喚くな
116名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 04:26:06 ID:s7cZW/BW
>>115
わかったからお前は修羅場スレに帰れ。盗人を容認する発言とかビービー喚くな
117名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 04:33:15 ID:7Rzd1DpJ
なんでそんなケンカ腰なの
とりあえず落ち着きなさいな
118名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 04:45:53 ID:hhaCOeBd
こういうのって2次創作を免罪符にやりたい放題だからな、言いたいことは分かるわ
119名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 05:19:01 ID:Fx3rgPdq
キモ姉妹は基本最初から極度の依存症→元からある意味病み状態だからそもそもヤンデレとは違うと思う
つか近頃?のただのキチキャラ=ヤンデレの風潮はどうにかならんもんか 
120名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 05:55:04 ID:JP8wQnXj
ヤンデレの定義って有名になるにつれておかしくなったよな
あとこういったら怒る人もいるかも試練がひぐらしの存在はでかいと思うぞ特にレナは
俺は主人公を攻撃するヤンデレはメンヘラだと思ってるが、皆はどうよ
121名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 06:40:40 ID:01y9ddKP
すごくどうでもいい
122名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 06:43:22 ID:houHwCpG
別に無理して書き込まなくていいんだぞ
123名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 06:50:18 ID:JP8wQnXj
俺みじめすぎワロタw





ワロタ・・・・
124名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 07:04:23 ID:SJHEU4WY
二年ほど前のあの空気はどこに行ったんだ…
125名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 07:19:13 ID:5a2tE1Nv
二年前に戻りたい
126名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 11:03:33 ID:MJ8VQhuF
以上。
監禁されている弟の心の声でした。
127名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 11:40:13 ID:DmSs6zC3
その後、妹に監禁されるとは思いもしなかった>>126であった
128名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 11:50:29 ID:g9UB9URy
2年間姉に監禁される事で溜まった毒を抜くという名目で今度は妹に監禁されるのか
129名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 12:35:15 ID:Evu6RGLl
>>112
血縁必須というルールはないはず…というか、血縁ない小ネタを2〜3回書いたが
文句を言われたことはない。
130名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 17:18:18 ID:7Rzd1DpJ
まあ書き方次第だと思う

義理姉妹や従姉妹にすることで他人っぽさが強調されたら
読み手によってはコレジャナイ感が出てくるかもしれんし

上手く絆とかに絡めて深い関係性が描けたら実姉妹じゃなくても何も問題ないかもね
131名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 17:48:13 ID:KP+xQg3P
姉妹から見れば「結婚だってできるんから、良いじゃない」なのに、兄弟の側は
家族としか見ていないというのは、義理なればこそのギャップか。
132名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 17:55:25 ID:HEVcdmz0
海外の赴任先で親父が浮気して孕ませた女性が他界し
やむなく、その女性の二人の娘を引き取ることで、金髪ハーフの姉妹
に「「お兄ちゃん(おとうと)ができてうれしい!」と盛大に懐かれた主人公とか
133名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 18:57:18 ID:z6autQc/
>>132
て、ことは主人公は姉が生まれた後に種付けされたのかよ(笑)オヤジ極悪だな
134名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 19:54:02 ID:4v4mwbMv
解 
135名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 20:49:48 ID:+J0MJ2De
兄に授乳する妹
136名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 21:04:39 ID:Yf9bER/W
幼なじみがキモウトのかませと思わせて最後に血縁発覚大逆転ENDな話が読みたい
137 ◆busttRe346 :2010/05/12(水) 01:59:07 ID:v9idzcxX
投下いきます
138:2010/05/12(水) 02:01:47 ID:v9idzcxX
時計が、けたたましい悲鳴をあげた。
手探りに時計を探し当て、一叩きしてやる。習慣ゆえの行動だ。
悲鳴はすぐに止んだ。
日の光が瞼の暗幕を透かして、ぼんやりと意識の輪郭を浮かび上がらせる。
改めて時計のアラームを切り、縮こまった体と意識をベッドの上でほぐしていく。
そうして、ようやく私は目を覚ます。
時刻は、午前七時半。
代わり映えのしない、月末の朝だった。
だからこの日の朝も、私は常の行動に出たのだ。
南側の壁には、カラーボックスが幾つか積み上げられている。
その壁の向こうには、私の弟の部屋があるのだ。
私は、音を立てぬように、カラーボックスを一つずつ除けていく。
まず、何の変哲もない白い壁が現れ、さらに障害物を除けていけば、
無造作に貼り付けられたガムテープが現れる。
椅子を引き寄せ、腰を下ろす。
ガムテープを慎重にはがしていくと、直径2cmほどの穴が
あんぐりと口を開いて、私を待ちかまえていた。
体は穴に自然と吸い寄せられる。
準備は整った。
観察を始めることにする。

穴の向こうは、薄暗かった。
カーテンの隙間から射す二本の斜光のおかげで、なんとか部屋の内容物が判別できる。
視界の左端を埋めるのは、本棚だ。
この薄暗い空間の中、ましてや本棚の影に塗りつぶされていれば、
向こうからこの穴が見つかる心配は、あまりない。
多少の見づらさも、我慢できるというものだ。
視界の中心に据わるのは、学習机とキャスター付きの椅子だ。
そして、私の観察対象は、いつもと変わらずそこにあった。
弟だ。
弟は、椅子にもたれかかったまま、微動だにしない。
机に向かってこそいるものの、本を読んでいるわけでも、
お得意のネットサーフィンをしているわけでもない。
ましてや、学生らしく勉強をしているはずもなかった。
現在の彼の状況を鑑みれば、それは明らかだ。
もう3ヶ月以上―――明日でちょうど4ヶ月、私は、弟の顔を見ていない。
私だけでなく、家族の誰とも、顔を合わせていないはずだ。
簡単に言ってしまえば、弟は引きこもりになってしまったのだ。
王様の背中は自分の城にいながら、随分と寂しそうだった。
その猫背気味の後ろ姿を見つめ、私は自然と唇を噛み締める。
このままではいけない。
ちょうどあの姿勢についても、一言注意してやらねばならない、
と思っていたところだ。
139:2010/05/12(水) 02:05:00 ID:v9idzcxX
かねてより思案していた行動を、今夜、実行することにしよう。

観察を始めて、もう30分以上が経過していた。
私は慌てて制服に着替え、鞄を手に、部屋を出る。
弟の部屋の前で立ち止まり、控えめにノックをするも、返事は無かった。
ちょうどその場に出くわした父が、深く溜め息をつき、首を振る。
諦めろ、ということらしい。
―――お前達がそんな調子だから、私がやらなければならないんだ!
そう叫びだしたくなる衝動をぐっとこらえ、私も溜め息を漏らす。
父と挨拶を交わすこともなく、私は居間へと向かった。
そこにはもう一人、私を苛立たせる人間がいる。
もちろん、そちらにも挨拶の一言すらかけてやるつもりはない。
今や、父も母も、弟に関わろうという気はこれっぽっちもないのだ。


※ ※ ※ ※ ※


味のしない朝食を詰め込むと、私はさっさと家を出て、
通学路をひたすら歩いていた。
いかにして弟を部屋から引きずり出すか、そればかりが頭の中で渦巻いている。
この通学路も本来ならば、弟と二人で歩くはずだったのだ。
だが、高校生活が始まってすぐに、彼は部屋に閉じこもってしまった。
何が原因で、私達はこうなってしまったのだろうか。
どうやって歩いてきたのかも定かではない。
とにかく、私は学校にたどり着いていた。
そして、校門の脇に一人の少女の姿を見つける。
先ほどまでの疑問の、その答えらしきものに思い当たる。
向こうも私の姿に気づいたようだった。
少女は、酷く傷ついた笑顔を浮かべて、「おはようございます」
と私に挨拶をした。
何故、彼女はそんな顔ができるのだろう。
考えうる限り、弟が閉じこもってしまったのは、彼女のせいだというのに。
弟と彼女が“そういう関係”になったのは、半年以上前のことだ。
近所同士で、小さい頃からの知り合いだっただけに、
二人が目に見える交際を始めた時の周囲の反応は、ようやくか、という
なんともあっさりしたものだった。
ただ、私は知っていた。
この少女の内に秘めた貪欲な性根を、私だけは知っていた。
姉である私すらも敵視して、弟をどうにか手に入れようとする
彼女の心を、出会った当初から私は見抜いていた。
だから私は、弟にそれとなく、しかし幾度となく、忠告したのだ。
幼なじみだからといって、あまり彼女を信用してはいけない、と。
140:2010/05/12(水) 02:07:20 ID:v9idzcxX
元々、おとなしい気性の持ち主である弟に、これ以上の我慢を
強いるのは、酷なことだと思ったのだ。
弟はいつでも笑いながら「大丈夫」と答える。
けれど、確かにあいつは以前よりワガママになったかもしれないね、
と苦笑する。
二人の関係は長続きしないだろう、という私の予想は、
それから少し経って現実のものとなった。
何が原因だったのかは、私にも分からない。
恐らく、彼女にも日々積もりゆく鬱憤があって、それが爆発した瞬間に、
偶然、私が居合わせた。
私につかみかかる少女と、負けじと言い返す私の間で、
迷子のように惑う弟。
この言い争いが行われたのは、私と目の前の少女が立っている場所だ。
私からの返事を待っているのか、彼女は、今も校門前に立ちすくんでいる。
弟だけがいない。
あなたのせいなのに。
最後に見た弟の怯えた顔が、瞼の裏に浮かび上がる。
本来なら、無言で立ち去るつもりだったけれど、嫌がらせに
一言くらい言っても、責められる謂われはないだろう。
―――あの子、もうすぐ学校に来ると思うから。
あなたは気にしないでいいからね、と告げて、私は校門をくぐり抜けた。
彼女の顔がサッと青ざめるのを、横目で確認する。
いい気味だ、と胸の内で笑い、同時に「やはり、今日しかない」
と考える。
今夜、弟を部屋から出す。
どんなに抵抗され、恨まれようとも、それが弟のためなのだ。
背後で、彼女が何かを言いかけ、口を噤む。
もうこの娘には、何の感情も湧かなかった。


※ ※ ※ ※ ※


その日の夕食の席も、酷く重苦しい雰囲気だった。
かつては、笑い声の絶えなかった団欒の席は、今や見る影もない。
父は不味そうに酒を煽り、時折、思い出したようにおかずをつつく。
母は、自分と皿の間で機械的に箸を往復させる。
私は二人を眺めて、機を窺う。
そろそろだろうか。
ねえ、と私が言葉を発すると、居間の空気が強張った。
―――あの子のこと、そろそろ考えなくちゃいけないと思うの。
父の顔を見つめる。
母は隣でがっくりと頭を垂れ、肩を震わせ始めた。
―――お母さん、泣いていたって仕方ないじゃない。
口調を和らげて、私は母に向き直る。
あの子の為に、やらなくちゃいけないと思うの、
と辛抱強く語りかける。
母は答えない。顔を上げることもしない。
もう止しなさい、と父が言い放つ。
141:2010/05/12(水) 02:09:16 ID:v9idzcxX
―――いつまでこうしているつもりなの。
自然、私の語気は荒くなる。
―――あの子を閉じこめて、どうするつもりなの。
父は首を振るばかりで、何も答えない。
「もうやめてあげて」
母が嗚咽混じりに、言葉を吐き出した。
「もう、そっとしてあげて」
違う、と私は叫ぶ。
あの子は、あの部屋の中にいても、癒されてなんかいない。
夜も寝ずに、何かに怯え、朝を待ち続けている。
―――あなたたちには頼らない。
その言葉だけを残して、私は階段を駆け上がる。
弟の部屋の前に立ち、出てきてちょうだい、と懇願する。
返事は無かった。
ドアを叩いても、部屋の中からは、物音一つ返ってこなかった。
ドアノブを回し、部屋に入る。
弟は居なかった。
机もベッドも、以前と寸分変わりなくそこにあるというのに、
一番大事な要素が欠けていた。
「もう、眠らせてあげよう」
いつの間に追いついたのか、父の手が肩に添えられる。
弟がいない。
どうしていないのだろう。
―――いつから、いないの。
4ヶ月前だよ、と耳元で囁かれる。
疲れ果てた母の声だった。
私の記憶が4ヶ月前に遡る。
私と彼女が言い争った日だ。
校門前で二人を見つけた私が、彼女に詰め寄る。
私は、弟にも詰め寄った。
―――あれだけ、言って聞かせたじゃない。
―――どうして私の言うことが聞けないの。
―――私に従っていればいいの。
弟は苦しそうな表情で、私の罵声を浴びていた。
そして、弟は駆け出した。遅れて、私も駆け出す。
そして、目の前を車が通過した。
弟は瞬く間に私の前から消え去り、次に私の目に映った時には、
ぴくりとも動かなかった。
―――死んだの。
父は答えなかった。
肩の上で握り込まれた拳の震えは、私の頭をざわつかせた。
今朝、彼女は校門前で何をしていたのだろう。
じっと立ち尽くし、彼女は何を思っていたのだろう。
私はこんな大事なことを、どうして忘れてしまっていたのだろう。
記憶は、弟の死から1ヶ月後に飛ぶ。
やはり、私はこうやって弟の部屋で呆然としていた。
その1ヶ月後も、今も。
私が何よりも欲しかったものは、とうに消えてなくなっていた。
―――弟は閉じ込められてなんかいなかった。
閉じ込められていたのは、私自身だった。
唇を割って、言葉にならない何かが飛び出した。
142:2010/05/12(水) 02:11:13 ID:v9idzcxX
父と母に縋り、床に向かって力尽きるまでわめきちらし、
体から、あらゆる悲鳴が抜け落ちたころ、私の体は揺れだした。
伝わる振動は、誰の震えなのかも分からない。
私自身なのだろうか。
それとも父か。
母だろうか。
整然とした床の線は、少しずつぼやけていき、私の意識もそれに従う。
これは何かの冗談なのだ。夢なのだ。
意識が途切れるまで、ひたすらそれを反芻していた。


※ ※ ※ ※ ※


目覚まし時計が、起床時刻を告げていた。
意識は未だ霧の中をさ迷っていて、目も瞑ったままだというのに、
私の手は、喚き続ける時計を正確に一叩きしていた。
改めて時計のアラームを切り、縮こまった体と意識をベッドの上でほぐしていく。
そうして、ようやく私は目を覚ます。
時刻は、午前七時半。
代わり映えのしない、月初の朝だった。
この日の朝も、私は常の行動に出たのだ。
積み上がったカラーボックスを静かに除け、露わになった
ガムテープを剥がす。
私は、小さな穴を覗き込む。

視界の左端を遮る本棚。
中央に鎮座する机と椅子。
それを覆い隠す人影。
―――なんだ、やっぱりいるじゃない。
意図せずして、口の端がせり上がるのが分かった。
あと20分程は彼の姿を眺めていられそうだ。
弟が部屋に閉じこもって、今日で丁度4ヶ月になる。
そろそろ、彼を外に出してあげなければならない。
それがあの子の為なのだ。

私はそう決意して、部屋を出る。
そして、弟の部屋のドアをノックした。
「おはよう」
元より期待はしていなかったけれど、やはり彼からの返事はなかった。
私のその姿を見て、父が深く溜め息をついた。
いい加減にしてくれ、とでも言う風に。




143 ◆busttRe346 :2010/05/12(水) 02:12:26 ID:v9idzcxX
投下終了です。それではノシ
144名無しさん@ピンキー:2010/05/12(水) 02:14:57 ID:XF7yn1P9
リアルタイムgj!
145名無しさん@ピンキー:2010/05/12(水) 03:25:07 ID:YiKHS7Ce
切ない
146名無しさん@ピンキー:2010/05/12(水) 04:36:20 ID:/KQx3C1P
切ないねえGJ
147名無しさん@ピンキー:2010/05/12(水) 05:09:41 ID:PNnH+i4v
壊れちゃった姉か、キュンってしたgj
148名無しさん@ピンキー:2010/05/12(水) 07:15:39 ID:NXirKIpf
重さがいいねえ
GJ
149名無しさん@ピンキー:2010/05/12(水) 08:05:29 ID:nh9zOojj
姉ちゃん…
150名無しさん@ピンキー:2010/05/12(水) 16:39:04 ID:6M7beBvQ
「お姉ちゃん…」チュパ、チュパ、ジュル、ジュル、ピチャ、ピチャ ジュプ、ジュプ
151名無しさん@ピンキー:2010/05/12(水) 20:33:59 ID:xCmeJ2OW
盛大な鼻水ですね
152名無しさん@ピンキー:2010/05/12(水) 22:22:45 ID:p4r8lxOp
「お姉ちゃん…また部屋のティッシュがなくなってたんだけど…(ズルズル)」
「ごめんね…昨日弟君の部屋でオナニーしてたらね…全部使い切っちゃったの…」
「人の部屋でするな!ゴミ箱を片付けに使ったティッシュで山盛りにしやがって!」
153チョ・ゲバラ:2010/05/12(水) 23:24:41 ID:8lbHnZIT
連載なう。
「起きろー、寝坊助!」
 朝食を終え登校の準備を済ませた俺――乃木涼介は、いつもの虚しい日課を済ませるべ
く妹の部屋に突入した。
「おーい、朝だぞー。遅刻するぞー」
 勢いよくカーテンを開けると、眩しい春の日差しが一瞬にして部屋一面を覆い隠した。
 その部屋は、思春期真っ只中の女の子の部屋らしく、可愛らしい小物やぬいぐるみで溢
れ返っていた。少々というか、かなり溢れ返りすぎかもしれない。オマケに服まで脱ぎっ
ぱなし。片隅には、この空間には似合わない無骨な自作パソコンが鎮座していた。
 ちゃんと洗濯物は洗濯籠に入れるように言ってるのに……。
「おーい、真帆奈。早く起きろ」
 ベットの上の団子虫に声を掛けた。
「……」
 団子虫は返事をしない。
「真帆奈、いいかげんにしろ。さっさと起きなさいっ!」
 ガバっと布団を剥ぎ取ると、お気に入りのテディベアーを愛しそうに抱きしめながら夢
の世界を彷徨う妹が、
「うにゃー……むにゃむにゃ……あと五分だけ……」
 と、寝ぼけながらお約束の台詞を吐いた。
「駄目だ。お前はよくても俺が電車に間に合わないんだよ」
 一本遅れると電車が異常に混むので、できるだけ早く家を出たいのにこの不肖の妹とき
たら……。
 こいつがこんな時間まで暢気に惰眠を貪っていられるのも、ここから歩いて十五分の中
学校に通っているからである。実に羨ましい。まぁ俺も二年前まではそうだったんだがな。
でも、こんなに時間までは流石に寝てなかったぞ。
「ふにゃ……じゃぁお兄ちゃんがおはようのキスしてくれた起きる……」
「朝からアホなことばっかり言ってるんじゃない」
 よしっ、こうなれば実力行使だ。
 お気に入りのテディーベアーを取り上げた。
「あ〜ん、だめだよー。リョーちゃん返してー」
「駄目です。だいたいなんでぬいぐるみに俺の名前を付けてんだよ!」
 この愛らしいクマさんの名前は、リョースケ。
 命名真帆奈。
 先日買い物に付き合ってやった時にあまりにもしつこくこいつがせがむので、仕方なく
買ってやったぬいぐるみ(結構高かった……)なのだが、なぜに自分の兄と同じ名前を付
けるのか?
「えー、べつにいいじゃない……可愛いんだし。それよりもリョーちゃん返してー」
 とりあえず起きたのでぬいぐるみを返してやると、真帆奈はそれを自分の控え目な胸に
押し付け、ギューッと愛しそうに抱きしめるのであった。
 うーん、なんだかムズ痒いな。
「お兄ちゃん、リョーちゃんをいじめちゃだめだよ。ね〜、リョーちゃん。酷いパパでち
ゅねー」
「誰がパパだ!」
「お兄ちゃんがパパに決まってるよ。それで、真帆奈がママだよ」
 クスクスと楽しそうにリョースケとじゃれ合う無邪気な妹の姿を見ていると、なんだか
無性にいたたまれない気持ちになってしまう兄であった。
 俺の妹――乃木真帆奈は、美少女である。
 実の兄である俺がこんなことをいうのも大変に気持ち悪い話なのだが、実際にそうなの
だから仕方あるまい。
 まだ幼さが残るが端整で愛嬌のある顔立ち。腰まで伸びた黒絹のようになめらかでサラ
サラな髪。透き通るような優しい白い柔肌。ほにゃほにゃとえくぼを出してよく笑うので、
小柄で華奢な体格と相まって、まるで子猫を眺めているような保護欲を、老若男女を問わ
ず周囲に与える。
 妹自慢をしていると思われるのも不本意なのでこの辺りでやめておくが、だいたいはう
ちの妹のことを理解して貰えたと思う。
 だがしかし、一見するとどこぞの深窓の令嬢のようにも見える我が妹ではあるが、これ
が結構いい加減でかなり天然だったりするので、兄としては色々と危なっかしく放ってお
けない存在なのであった。
「はいはい、俺はもう行くからな……」
 本格的に時間がやばくなってきたので、妹の部屋を出て玄関に向かうことにした。
「勝手に行ったらだめだよー。真帆奈が下りるまで絶対に待ってなきゃだめなんだから
ねー」
 そもそも朝の忙しい時間に、なぜ俺が妹をわざわざ起こさなければならないのかという
と、
「お兄ちゃんをお見送りするのは妹の勤めなんだから、お兄ちゃんは真帆奈になにも言わ
ないで勝手に家を出たりしたらだめなんだよ」
 と、妹様が勝手に決めたルールを守るためなのだ。
 理不尽だろ? だったらちゃんと自分で起きて欲しい。常識的に考えて。全然納得いか
ないのだが、もしこれで真帆奈を起こさないで登校したりしたら、
「もー! なんで一人で勝手に行っちゃうの! お兄ちゃんは真帆奈のことを愛してない
の!」 
 と、鬼の首を獲ったかのようにもの凄い勢いで拗ねるので手に負えないのだ。
「真帆奈、もう本当に行っちゃうぞー!」
 玄関から二階に向けて声を放つ。
 低血圧の我が愛しい妹は、パジャマのままナマケモノのようにのそのそと二階から下り
てきた。
「なぁ、これから十分でいいから、もう少しだけ早く起きてくれないかな?」 
 本当にお願いします。マジデ。
「うー、考えとく……」
 炭酸が抜けたコーラーのような気のない返事だった。結局こいつは、いつもどおりギリ
ギリの時間まで惰眠を貪るに違いない、と俺は確信した。伊達に十三年間もこいつの兄を
やっているわけではないのだ。
 フーと諦念が篭った溜息が、自然に肺から零れ落ちた。
 さて、ここで真帆奈チェック。
「身だしなみよしっと、髪型もオッケー、あっ、ネクタイ曲がってるよー」
 新婚さんのように真帆奈がネクタイを丁寧に整える。
 こいつはなにかと俺の世話を焼きたがるのだ。でも、家のことはまったくしないんだけ
どな。掃除も洗濯もご飯の用意も、やるのは全部俺。せめて自分の部屋の掃除くらいは…
…。
「うん、今日もカッコいいよ、お兄ちゃん。んっ!」
 そして、いきなり目を瞑って唇を尖らせるマイシスター。
 いつものことだが確認せずにはいられない。
「……なに?」
「いってらっしゃいのキス」
 ビシッ!
 隙だらけのおでこにダイレクトアタック。
「いたっ! なんでそんなことするの!」
「それは俺の台詞だよ」
「うー、いつもはいっぱいキスしてくれるのに……」
「そんなことしたことないよ!」
 人聞きの悪いことをいうのはやめて欲しい。実の妹にそんなセクハラ行為をした覚えは
一度もないぞ。
「じゃあもう行くからな。お前も遅刻するなよ。弁当はテーブルの上に置いてるから忘れ
ないように」
「は〜い。ところでお兄ちゃん、今日は早く帰ってこれるの?」
「ん? 帰りに買い物してこなきゃいけないけど、だいたいいつもどおりじゃないかな」
「そっかー。できるだけ早く帰ってきてね、わかった?」
「いいけど……なにかあるのか?」
「べつになにもないよ。ただ早く帰ってきて欲しいだけだよ」
 さも当たり前のようにおっしゃる真帆奈さん。
「そ、そうか……善処するよ」
「そ〜れ〜と〜、知らない女の子に声を掛けられてもついて行ったらだめだよ」
 俺は子供か。だいだいなんで女の子限定なんだよ。
「女の子はみんな怖いんだよ。お兄ちゃんのことを誑かせようとビルの屋上から狙ってる
んだから」
 どこのゴルゴ13だよ。まったく意味がわからん。これ以上妹の御託に付き合ってられ
ないので、学校に行くことにする。
「じゃあ行ってきます」
「行ってらっしゃ〜い。本当に早く帰ってこないとだめなんだからねー」
 手をヒラヒラとさせている真帆奈を後にして、俺は玄関から外へ出た。
 空を見上げると、真っ白なキャンパスにウォーターブルーをぶちまけたかのような雲ひ
とつない一面の蒼。
 頬を撫でる外気は桜が散る季節にしてはやや肌寒く、太陽は異常に眩しかった。


『俺の妹がこんなにとびっきりに変態なわけがない』


 三十分ほど電車に揺られてそこから十分ほど歩けば、俺の通う私立高千穂学園に辿り着
く。 
 一応、中の上くらいの進学校だ。
 創立十年未満のまだ新しい学校で、校風はかなり緩い。
 あまり派手でなければ私服での登校も許されているのだが、俺はいちいち服を選ぶのが
めんどくさいので制服を着用している。入学当初真帆奈は、「真帆奈がお兄ちゃんのコー
ディネイトをしてあげる!」とえらい気合を入れていたのだが、もちろん丁重にお断りし
た。
 二年B組が俺のクラス。教室に入り自分の席に座ると、例によって一人の男子生徒が
飄々と近寄ってきた。
「よー兄弟。今朝もラブラブマイシスターのお見送りで登校してきたのか?」
「……」
 この男の名前は、黒木貴志。
 一度俺の家に遊びに来て真帆奈に出会って以来、勝手に真帆奈ファンクラブの会長を自
称するようになった変態野郎だ。即効で俺の家は出入り禁止にした。
「いいよなー、お前は。あんな二次元にしか存在しない天使のような妹と一つ屋根の下で
暮らすことができるんだから」
「あのなー、黒木よ。お前だって妹はいるだろ?」
「はぁぁぁっ!? なに言ってんだよてめぇーっ! 俺の妹とあの愛らしい真帆奈ちゃん
を比べるんじゃねーよ! 月とミジンコくらいヒエラルキーに差があるだろうが! しか
も俺んちの妹はミジンコの分際で、俺のことを地面を這いずる脂ぎったカサカサ以下扱い
してくるんだぞ! なんで俺がそんな屈辱を受けねばならんのだ!」
「そんなこと俺に言われても知らんよ。日頃の行いの悪さじゃないのか?」
 お前は一体今まで、妹になにをしてきたんだ?
「なぁ、親友を哀れと思うんだったら、そろそろお前の家の出入り禁止を解除してくれよ。
べつに真帆奈ちゃんを取って食ったりしないからさー。俺はただ見ているだけで満足でき
るタイプなんだよ」
 心の底から拒否する。ただ見ているだけでも、頭の中で世にもおぞましい妄想に更ける
に決まっているからな。可愛い妹のそばにお前のような害虫を近づけるほど兄は愚かでは
ないのだ。
「ほらっ、これを納めてくれよ」
 机の上にドンと置かれたDVDの束。
 中身はもちろん大っぴらには公表できない代物ばかりだ。
 俺だってこんなものを使って溜まりに溜まった若気の至りを解消したくはないのだが、
彼女いない暦=年齢なのだから仕方あるまい。
「いつも悪いな」
「いいってことよ兄弟。それよりも例の件頼んだから」
 真帆奈に会わせろっていうんだろ? それは絶対に許しませんから。いくら袖の下を貰
ったとしても、それとこれとは話がまったくべつなのである。まぁ流石に悪い気もするの
で、今度飯でも奢ってやることにしよう。
「またそんな物を学校に持ってきて、いやらしい!」  
 すると突然にジャージ姿の女子生徒――児玉雫が、汚物を見るような目付きでそう吐き
捨てた。
 どうやら今の裏取引を目撃ドキュンされたようだ。
「出たな、リアル幼馴染キャラ!」
「はぁ!? 誰がリアル幼馴染キャラよ!」
 軽口を叩く黒木に食って掛る雫。
 実はこのジャージの彼女は俺の幼馴染で、丁度俺の家の真向かいに住んでいるのだ。
 肩まで伸びた茶色がかった髪は、別に染めているわけではなく地毛だ。いつもやや勝気
そうな表情をしているが、顔立ちは充分に整っており、幼馴染の俺から見ても健康的な美
少女と思える。こいつは子供の頃からスポーツ万能で、現在では女子バスケ部の期待の星
だそうだ。スポーツウーマンらしく、贅肉の欠片もないすらりと引き締まったスタイルを
してはいるのだが、胸の方も必要以上に引き締まっているのはいかがなものだろうか?
「今、ものすごーく我慢できない殺意が湧いてきたんだけど……いったいなんなのかしら
ね?」
 オマケに勘まで鋭い。
「おはよう、雫……。今朝も朝錬だったのか?」
「おはよう。うちも今年こそはインターハイ狙ってるんだから大変よ……って、話を逸ら
すなバカ涼介!」
 いや、べつにそんなつもりはなかったんだが……。
「アンタね、こんなバカと付き合ってたら本当にバカになるっていつも言ってんでしょ!
 だいたいそんないやらしい物ばっかり見て、幼馴染としてホントに情けないわっ!」
「なにを言うか児玉! 貴様は俺が乃木に託したお宝の中身を知った上で、そんな愚かな
ことを言っているのか!」 
「知りたくもないわよそんなこと! どうせいやらしいゲームとか、いやらしい動画とか
に決まってるんだから! そういうのって海外の人達からもの凄く批判されてるの知って
んの? 日本の恥よ、恥!」
 ビンゴだった。DVDをチラ見しただけで中身を正確に当てやがった。ニュータイプの
素質有りだな。
「貴様にエロゲーのなにがわかる! エロゲーは人生だ! どれだけの神ゲーが存在する
と思っているのだ! そこら辺の小説や映画などでは、到底到達することができない感動
とカタルシスが待っているのだぞ!」
 黒木よ……。そんなに真剣にエロゲー談義をしたところで、雫は絶対に納得してはくれ
ないぞ。こいつは昔からかなり潔癖なところがあるからな。
「はぁぁっ!? アンタ本気でそんなこと言ってんの? ねぇ、バカなの? 死ぬの?」
 すでに皆さんもおわかりだろうが、この二人はトコトン相性が悪い。そりゃー、お互い
両極端に位置する存在同士なのだ。方角でいうなら北と南、磁石ならN極とS極。わかり合
えるわけがないだろう。喧嘩するほど仲がいいとはよくいうが、この二人だけには永遠に
当て嵌らない方程式なのだ。
「まぁまぁ、二人とも少し落ち着けよ――」
「乃木! 貴様は同志としてこの愚かな三次元の女になにか言うことはないのか! 我ら
のパーソナルリアリティーを脅かそうとしているのだぞ!」
 俺も多少なりともオタクの自覚はあるが、お前ほどアクセル全開で二次元の世界に突っ
込んでるわけではないからな。
「涼介、アンタも同罪なんだからね! 昔はそんなんじゃなかったのに、不潔よ不潔!」
 こいつらはなんでこんなに朝から元気なんだ? 俺はちょっとついていけないわ。
 そんなありふれた朝の喧騒の教室も、ある人物の登場で波打つように静まり返った。
艶やかに輝いた長い黒髪と、オシャレメガネをした学園一の美女の誉れの高いその人物
の名前は、東郷綾香。
 世の中には色んな才能を持ち合わせ、あらゆることを常人以上にやりこなしてしまう人
種が存在する。たった今登校してきた彼女も、そういう選ばれた人間の一人だ。
「お姫様のご登場か……」
 黒木が呟いた。
 お姫様、というニックネームは実に的を得ている。
 容姿端麗、文武両道、抜群のプロポーション。
 我が家のインスタントお嬢様とは違い、彼女からは内面からも高貴なオーラが醸し出さ
れている。
 学園で彼女に恋をする男は腐るほど存在するが、あまりにも高値の花すぎて、告白をす
るような無謀な男もまた少ない。そして、そんな限られた特攻野郎どもは、ことごとく玉
砕しているのであった。
 かくいう俺も、そんな彼女を少なからず意識する分をわきまえない最下級兵士の一人だ
ったりする。もちろん己を痛いほどに理解している俺は、バンザイ突撃をするような気概
など毛頭ないのではあるが。
「おはよう、乃木くん」
 惚れ惚れとする凛とした声で、高値の花が挨拶をしてくれた。
「おおお、おはよう!」
 それだけで狼狽しながら挨拶を返すだけが精一杯の一般庶民の俺。
 どんな生徒に対しても分け隔てなく接する東郷さんは、俺のようなモブキャラにでも毎
日きちんと挨拶をしてくれるのだ。そんなお高くとまらない親しみやすさが、更に彼女の
人気を不動の物にするのであった。
 東郷さんが通り過ぎた後の甘い香に当惑しながら、俺は彼女が窓際の自分の席に着くま
で視線を逸らすことができなかった。
 すると、何者かによって頬をギューッと抓られてしまった。
「いたたたたっ! な、なにするの!」
 雫だった。
「そんな痴漢みたいないやらしい目付きで東郷さんを見ないの、バカッ!」
「なっ! べ、べつにそんな目で見てないだろ!」
「見てたわよ! ビローンってこんなに鼻の下伸ばして! あー、いやらしいいやらし
い!」
「うっ……か、仮にそうだったとしても、お前にはまったく関係ないことじゃないか!」
「な、なんですって! きぃぃぃーーッ!!」 
 狂犬ように八重歯剥き出しで睨んでくる雫さん。
 はっきり言ってかなり怖い。
「もう知らない! バカ涼介!!」
 雫はズンズンと地響きを立てながら、自分の席へと戻っていた。
 ふー、怖かった……。ほんのちょっとだけ東郷さんに見蕩れてただけなのに、なんで雫
があんなに怒るのかさっぱりわからんよ。もしかしてあの日か……?
「気持ちはわからんでもないがやめておけよ、乃木……」
 黒木は俺の肩に手を置いて、しみじみと言った。
 いやいや、俺なんかがどうこうなるような相手じゃないことくらいは、十二分に理解し
てますから。
「だいたい俺達に三次元の女など必要ないだろ。二次元がこの世の全てだ。世界中の男が
二次元の彼女を愛せば、この薄汚れた世界からだって戦争はなくなるさ」
「お前の歪んだ常識を俺にまで当て嵌めるのはやめろっ!」
 俺だって本当は三次元の彼女が欲しいよ。まぁ、だからといって積極的になにか行動を
起こすわけでもないんだけどな。めんどくさいから。
 そんな益体もない二次元三次元論争を俺と黒木がしていたところで、先生が来て朝の
ホームルームが始まった。
 どうでもいい教師の話を右耳から左耳へと聞き流しながら、俺は鼻腔に微かに残された
東郷さんの甘い香りのことを思い出していた。
 いい匂いだったな。化粧品とかの匂いじゃなかったけど、シャンプーかリンスの匂いな
のかな? まぁなんでもいいけど東郷さんってどこまでも完璧超人なんだよな……。
 と、まったりと電脳ダイブしていたところで、ポケットの中の携帯電話が元気よく振動
した。
 メール着信。雫からだった。
『今日、帰り付き合って!』
 実に雫らしい絵文字もなにもない簡潔な内容の文章。
 教室をチラリと振り返り、雫に視線を向けた。
 俺の視線に気付いた雫は、アッカンベーをしてからフンッとそっぽを向く。
 意味がわからん……。
 これといった用事があるわけでもないので、べつに付き合ってもいいんだけどな。断る
と後が怖いし……。夕飯の買出しはその後にでもするか。
『了解』
 そんな短いメールを、俺は雫の携帯電話に送信した。


 続く。
160チョ・ゲバラ:2010/05/12(水) 23:32:55 ID:8lbHnZIT
次回に続くなう。

ん? 妹の出番少ない?
次回も少ないかも・・・
161名無しさん@ピンキー:2010/05/12(水) 23:41:08 ID:NXirKIpf
GJ! だが…

>>磁石ならN極とS極

逆にくっついてしまうのでわW
162名無しさん@ピンキー:2010/05/12(水) 23:49:56 ID:fZbDjlbt
GJ!
妹がどんな変態になるか楽しみ
163チョ・ゲバラ:2010/05/12(水) 23:52:12 ID:8lbHnZIT
>>161
ご指摘ありがとうございます。
後日訂正します。
164名無しさん@ピンキー:2010/05/13(木) 00:33:43 ID:9WQTz3/0
GJ!妹かわいいなあ
こっからどうキモくなるのか期待
あと黒木さんの清々しさが目に痛いっすw

一つだけ
鬼の首を穫るのは勝ち誇る時ですな
続き楽しみにしてますです〜
165名無しさん@ピンキー:2010/05/13(木) 01:11:18 ID:d2JwgL+V
期待できる新作きたな
ゆったりと続き待ってるぜ
166名無しさん@ピンキー:2010/05/13(木) 01:29:53 ID:EbmU3WTN
なんというかすごく……エロゲです……
167名無しさん@ピンキー:2010/05/13(木) 02:00:31 ID:sfk5+voM
>>160GJ所でノスタルジアの作者様ってブログ持って無いのかな?tgTIsAaCTij7様の所は、結構チエックしているのだが…
168名無しさん@ピンキー:2010/05/13(木) 03:10:22 ID:TO1WRAYO
GJだが改行が気になる
169名無しさん@ピンキー:2010/05/13(木) 05:28:11 ID:wp5pzmV1
GJ
文章がものすごく軽妙で好きですよ。
続きを楽しみにしています。
あと、名字がもろに坂の上の雲ですねw
170名無しさん@ピンキー:2010/05/13(木) 06:38:35 ID:kT0mvnSr
>>167
お前どれだけノスタルジア好きなんだよ
待ってろカス
171名無しさん@ピンキー:2010/05/13(木) 15:10:58 ID:G3n/QGgj
GJ!
文がとても読みやすくて素敵です
172名無しさん@ピンキー:2010/05/13(木) 22:17:29 ID:PgZEWIIz
メイン 主役 当たる
173名無しさん@ピンキー:2010/05/13(木) 23:55:08 ID:tpRFGK8j
さっき精液を誤って布団カバーにこぼしてしまい洗濯したのだが
そこで、もしキモ姉妹が俺が洗濯機から離れたのを見計らって
洗濯機から即座に布団カバーを取り出したらとかいう妄想をした
174名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 00:47:55 ID:3a8umJKH
まず布団カバーに精液をこぼした事をどうやって知ったのかを考える必要があるな
175名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 01:21:32 ID:wYTLSTrw
部屋に隠しカメラや盗聴機が大量に仕掛けられてそう
そして布団カバーの精液が付着してる箇所を
匂い嗅いだりしゃぶったりしてオナニーはもう定番
176名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 01:54:01 ID:L6MXLc0m
@お兄ちゃんA兄さんB兄貴CおにーたんDお兄様
どの呼び方が一番好み?僕はヤッパリお兄ちゃんカナ〜
キモ姉の方はズバリお姉ちゃん!コレしかない。
しかし保管庫見たら未完の名作が多いな〜作者さん達も忙しいんだろうけど。
177名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 02:09:22 ID:iGvv/rpn
2と5にツボるやつは多いはず
178名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 03:13:43 ID:hVd8GZzt
名前で呼び捨ても捨てがたい
179名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 03:38:27 ID:TwSvW68W
とまた
180名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 11:20:35 ID:iYvGKEgU
本当はお兄ちゃんて呼びたいのに兄さんとか兄貴って言っちゃう素直になれない妹が兄に恋人ができたことによりキモウト化、兄を監禁して幸せになるという毒電波が来た
181名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 12:06:41 ID:f9iqRfSF
俺の妹はあだ名で呼ぶんだが
182名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 12:32:02 ID:kWma8m5E
>>181
キョンくん乙。

あ、でも「あだ名呼び」って、キモウト的にありかもしんない。
敢えて「兄」と呼ばないことで、少しでも「兄妹関係」の感覚を薄めようとする、健気な妹とか。

と、ここまで書いたところで、先駆者が何人かいたのを思い出した。
183名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 13:00:00 ID:ug5r7KXN
あだ名はいいが問題は気持ちをどうやって動かすかだよな。
このスレの兄弟は大人しい性格でさほど秀でた才能を持つわけでもないキャラクターが多いけど、
これが姉妹たちばりに優秀で我が強い性格の持ち主だったらどうすんだろね。
かなり落としにくくなると思うけど。
184名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 14:50:01 ID:QkT2X+Kv
何事においても完全無欠なんてないものさ
どっかしらに穴を見つけて、そこを重点的に攻めるんじゃない
185名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 15:37:20 ID:L6MXLc0m
今の所@捨て身A心理戦B猟奇、位しかパターンが無い。 最後にキモ姉、キモウト
が悲劇的結末を向かえるのは作品的にはGJだが個人的感情では後でpcや携帯をぶち壊したくなる。
186名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 15:38:56 ID:0QowVz4I
濃い
187名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 17:28:04 ID:hVd8GZzt
恋か

キモ姉妹の場合家族愛が先に来るから恋か愛かどっちつかずの状態ってあんまりないよな
188名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 18:19:51 ID:/2iT48oO
>>184
「どっかしらに穴を見つけて、そこを重点的に攻める」

妹にペニバンで掘られる話が保管庫にあったな
189名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 18:36:41 ID:DWGpwSjy
むしろふたなり巨根で何に対しても優秀な姉にコンプレックスを持ったショタ弟がやられまくってとか
190名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 20:06:38 ID:3a8umJKH
一緒にいるとドキドキするのが恋
一緒にいると心が安らぐのが愛らしい
191名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 20:52:26 ID:0QowVz4I
越した
192名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 21:55:23 ID:Fqd3M0L0
>>185
新しいパターンよろ
193名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 22:05:36 ID:untKurh6
義姉妹フラグをたてて騙すしかないな
194名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 23:56:55 ID:2vm2bER3
それキモ姉も難しいだろうけどキモウトなんて騙すの至難の業じゃないか?
195名無しさん@ピンキー:2010/05/15(土) 00:35:35 ID:+MpUc/xv
キモ姉キモウトの策略を華麗に斜め上にスルーする天然兄or弟が重い浮かんだ
196名無しさん@ピンキー:2010/05/15(土) 03:05:19 ID:+EK50/Nm
天然朴念仁兄or弟vsヤンデレ猟奇キモ姉orキモウトとか面白そうだ。
キャラは濃い方が良い。
197名無しさん@ピンキー:2010/05/15(土) 15:12:53 ID:FllB1NUp
派手 濃い
198名無しさん@ピンキー:2010/05/15(土) 15:58:39 ID:+1JOdveU
>>196
その兄弟、自分の近くで死体の山ができてても気付かなさそうだな
199名無しさん@ピンキー:2010/05/15(土) 20:18:50 ID:FllB1NUp
派手 ハンサム 特殊 勝 
200名無しさん@ピンキー:2010/05/15(土) 20:41:12 ID:3E6tptIR
和解エンドというか
結ばれなかったけど報われたぐらいのさじ加減の話を読んでみたい
201名無しさん@ピンキー:2010/05/15(土) 21:04:04 ID:bx1QiA40
>>200
これは難しいお題ですな。キモ化する程思い詰めた姉妹にも落ちず
しかも仲直りし得るような兄弟……聖者だ。
202名無しさん@ピンキー:2010/05/15(土) 22:29:52 ID:4COwIO7O
>>200
嫉妬SSに似たようなやつならあるけどな
203名無しさん@ピンキー:2010/05/16(日) 00:05:35 ID:afKZlY0O
心の中に火種がくすぶっているぐらいの和解がちょうどよい
204名無しさん@ピンキー:2010/05/16(日) 01:08:37 ID:T117XRf+
結ばれず和解だろ?よくあるパターンとしては、キモ姉妹を泥棒猫が助ける
そして「あなたなら兄さんを託せる」
しかしこれは少年誌レベルだ…
後、死亡、再起不能end「一生かけてつぐないます。」パターン
保管庫にもあるが鬱endだ…

後前レスにも在ったがとりあえず修羅場は回避しかしキモ姉妹は永遠に…
結局兄or弟とキモ姉妹の追いかけっこは、その後も続くみたいなパターンもある。
後別スレに在ったが実は幼い頃の記憶違いでキモ姉妹が愛していたのは、
別の男だったって言うのもあって
これは、綺麗な終わり方だった。

205名無しさん@ピンキー:2010/05/16(日) 01:43:28 ID:REDOWdrJ
無理やりポタラを着けさせる
206名無しさん@ピンキー:2010/05/16(日) 01:50:49 ID:j70ROh0j
いっそのこと兄弟を出家させようぜ
207名無しさん@ピンキー:2010/05/16(日) 02:34:36 ID:koTFLu/r
うーん、個人的には姉妹でいて欲しいという兄弟の意志が通るのが見てみたいんだよなあ
208名無しさん@ピンキー:2010/05/16(日) 05:10:16 ID:T117XRf+
それだったら、もう泣き落とししかあるまい。
兄弟が姉妹との関係を苦に自殺未遂→姉妹が後悔和解→最後は兄弟を忘れる為海外留学
続編を匂わせてend。
209名無しさん@ピンキー:2010/05/16(日) 09:21:42 ID:GR0IBLjs
>>204
>後別スレに在ったが実は幼い頃の記憶違いでキモ姉妹が愛していたのは、
>別の男だったって言うのもあって
>これは、綺麗な終わり方だった。

でもそれは、このスレには合わな過ぎるな
あくまで兄弟を愛してこそのキモ姉妹スレだし
210名無しさん@ピンキー:2010/05/16(日) 11:02:57 ID:4OWmuQID
ニュアンス的には、三つの鎖のまとめ方が近いと言へば近いか?
211名無しさん@ピンキー:2010/05/16(日) 11:31:07 ID:L0wVTO57
駄目だ、今やってる星矢がキモ姉と非キモウトな妹の弟(兄)争奪戦にしか見えない
実態は弟じゃない人格を求めてるからかなり違うのに
212名無しさん@ピンキー:2010/05/16(日) 12:14:39 ID:ilyUhjNC
>>211
パンドラ様は激しくエロい御方だが、アローンがそもそも弟じゃないのでキモ姉としては資格無し。
ああ、でも激しくエロい御方だ。
213名無しさん@ピンキー:2010/05/16(日) 12:18:23 ID:L0wVTO57
一応、弟(として生まれるはずだった子)ではあるけど、弟じゃないんだよなあ
何よりパンドラ本人の意識が神>>>弟なのが
214名無しさん@ピンキー:2010/05/16(日) 20:42:48 ID:dmRtZeBl
神=弟で、彼女が執着してるのは神の魂だからブラコンと言えるのではないか
今はアローンではなく神のためだけに戦ってるし
215名無しさん@ピンキー:2010/05/16(日) 22:34:25 ID:N1utjshE
キモウト&キモ姉が出てきた作品で Happy End だとなんか印象薄い気がする
強烈な Bad End の方が印象に残っている
216名無しさん@ピンキー:2010/05/16(日) 23:10:15 ID:D86PwHZf
Bitch Endにみえた
217名無しさん@ピンキー:2010/05/16(日) 23:33:36 ID:j70ROh0j
新機軸 ビッチなキモ姉妹 なんちゃってでも可
218名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 00:59:43 ID:UJdiqf6J
兄弟の嫉妬を煽って既成事実を作ろうとするキモ姉妹かぁ
219名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 01:22:15 ID:ZKP2yfUm
まあ、たまには他の男とヤってる姉妹がいてもおかしくはない。
女とヤってる姉妹は保管庫にいるんだから。
220名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 01:26:42 ID:ee6T7+TG
ビッチなキモウトならいなかったっけな。
ちなみにこのスレの処女厨率ってどのくらい?
221名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 01:38:50 ID:zCU/FV1o
今日は職人さんも一休みかな?
実は最近体験手記にこっていて、良くサイトに訪問したりする。
まあほとんど、ライターによる疑似体験ssだが…
しかし近親相姦の内在人口は、結構多いらしい。
昔の神話や王族は、殆ど近親相姦だが…
所でリアルで世間体を憚る物なので
実在は隠れているが俺の友達で妹と素股まで逝ったと言う猛者もいたが…
(実際は小さい頃風呂場でじゃれて性器同士が接触した程度らしいのだが)
自分にも妹がいるが顔は朝青龍‥朝のトイレの奪い合いで体当たりを食らった
日には2bは吹っ飛ぶ
プロレスマニアで良く鯖折りを掛けられるがぶよぶよの脂肪だとチンコも立たんorz
まあオカルトスレでは無いので…
誰かリアルキモ姉妹体験談とかある人いたら投下してみてくれ
たまには毛色が違った物も読みたいので
222名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 03:32:23 ID:yIgwKw2l
>>221 死んで
223名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 04:19:17 ID:r9G4K0bk
別な意味でキモイな
224名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 07:12:43 ID:aru3+XBf
>>221
それはいちいち(しかも十行以上で)報告しなくてもいいです。
225名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 09:00:22 ID:d9WesPsA
お前ら、落ち着くんだ。
これはキモ姉妹が焦れて放り込んだ釣り針なんだよ。
反応したらフラグが立っちまうぞ!
226悪質長男 第五話:2010/05/17(月) 09:53:35 ID:VDiGRLPh
第五話目を掲載させてください。
227悪質長男 第五話:2010/05/17(月) 09:54:23 ID:VDiGRLPh
夜中の公園にて、麗華はベンチに腰を掛けていた。
頭が冷えて冷静になり、先程の喧嘩を思い返している。
確かに事実を受け入れるしかないのだろう。玲も怜二も今の環境をすんなり受け入れている。長女である自分にできないはずが無い。
(でも・・・・諦めたくない)
結局のところ、その想いに着地する。ずっと引きずっていたままなのだ。

肩を掴まれたのは突然だった。

振り返ると見知らぬ男が三人。一人は禿、その隣はリーゼント、そして肩を掴んでいるのが金髪オールバックの髪型だった。
肩を掴んだまま金髪が馴れ馴れしそうに話しかける。
「どーした姉ぇーちゃん?家出?話し相手になろうか?慰めてやるよ」
最後の言葉にアクセントが入っている。後ろに控える二人も上玉だの良い体だのニタつきながら呟いているのが聞こえた。
生理的嫌悪感。身の危険。
麗華は逃げようとして飛び出すが、肩から離れた手は手首を掴んだ。もはや逃がしてくれなさそうだ。
「逃げんなー。慰めてやるって言ってんだろ?」
「放して下さい」
「いやだー」
腕を引っ張り合う内に麗華は三人に囲まれていた。後はただただ湧き上がる嫌悪感に身を震わせる。これから何されるのかも予想が付く。男らの笑みはいよいよ下品に気持ち悪くなっていく。
228悪質長男 第五話:2010/05/17(月) 09:56:54 ID:VDiGRLPh
(怜二・・・・!)
こんな時でも考えるのは、弟になった男だった。
都合良く助けてくれるヒーローの様に現れるのを願った。

怜二・・・ヤラレル・・・助けて・・・襲われる・・・・
お願い怜二・・・・侵される・・・・
触れないで・・・・怜二だけが私の・・・・
ヤラレル・・・・怜二・・・・怜二・・・・怜二・・・・怜二・・・・怜二・・・・犯される・・・怜二助けて・・・怜二・・・

思考がグチャグチャ。

・・・怜二にならどれ程良かったか・・・・怜二になら私は・・・・・私は?

・・・・・・・怜二とナニヲ?

・・・・・・私が・・・怜二と?



・・・・それならいいな・・・・



「うふ。うふあははははははははははは
はっははははははははははははははははははははは
はははははははははははははははははははははははははは
はははははははははははははははははははははははははははははは
はははははははははははははははははははははははははははははははは
ははははははははははははははははははははははははははははははははは
はははは」

怜二と同じ笑い方。チンピラ共が若干引き攣る。麗華の頭はもう、そんなものお構いなしだった。

(そうよどうしていままで考え付かなかったのでしょう
怜二と私は姉弟よでも男と女よできます
私達は一つになれますわ一つに一つにあはは私達は男と女結ばれます
愛し合えますずっと一緒にこれからはああ謝らなくちゃ
笑って許して謝らなくちゃ許してそしてベッドに
どうしていままで考え付かなかったのでしょう
ベッドにベッドで一つに一つに一つに私達は一つに
私達が一つに一つに私達で一つに一つに一つに一つに
私達なら一つに一つに一つに一つに一つに一つに一つに
一つに一つに一つに一つに一つに一つに一つに一つに一つに
一つに一つに一つに一つに一つに一つに一つに一つに一つに一つに
一つに一つに一つに一つに)

「な、なあ・・大丈夫かな?なんか目が虚ろだし、ブツブツ呟いてるし・・・」
「ヤラせてくれるって事だろ?じゃ、早速・・・」

金髪が手を伸ばす・・・・
229悪質長男 第五話:2010/05/17(月) 09:57:36 ID:VDiGRLPh










その公園には池がある。
今は三匹の生物が住んでいる。
一匹は禿、その隣はリーゼント、そしてオールバックだった金髪は天辺まで毟り取られた髪型だった。

三人共満身創痍で、
夜の公園には助けてくれる人など影すら無かった・・・・・。




そんな夜が過ぎた翌朝。
麗華が家族の朝御飯を作っていた。ほとんど毎日担う玲はもちろん、寝惚けていた怜二も呆気に取られて眺めていた。
一通り皿を並べると、麗華は二人に席に着くように促した。
「さあ二人とも、出来たのですから早く食べちゃってください。片づけられませんから。・・・・・あ、そうだ、怜二」
着席した怜二と目線を合わせて麗華は言った。
「昨日は御免なさい。私は頭を冷やしたし、もう大丈夫。これからも仲良くして下さいね」

それから、額に触れるだけのキス。笑顔で麗華がキッチンに戻る。
唇同士は玲の前では出来ないからお預け、との麗華の真意。弟妹の二人がそれを知る由もない。

玲が不可思議に首を傾げながら、玲二に問いかける。
「兄さん・・・いつ謝った?」
「いや、昨日は喧嘩別れしてそのままだったけれど」
「・・・・・なら・・・何故?」
怜二の口の端が歪む。
「ふ・・。まだ、気が付かないのかね?」
「?」
何か自信満々な兄に妹は疑問の矛先を変えて、また首を傾げた。怜二はわざわざ起立すると、片足を椅子に乗せて朝日に指を突き立て、漢前な顔で断言した。

「あれこそ伝説の、ツンデレだ!!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」

高等学部一年15歳。そのテの知識には、疎かった。
230名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 11:19:04 ID:dpB2zPne

ニヨニヨした
231名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 20:26:49 ID:afXpfir4
キモ姉、開眼?
232名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 20:54:30 ID:kXaAYxh/
ある 強い 1
233名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 21:34:09 ID:q1lRl581
GJ
234名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 22:05:37 ID:4OifG2SQ
麗華お姉ちゃんの覚醒レベルが上がりました
235名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 22:45:24 ID:kXaAYxh/
236名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 23:31:38 ID:3IXmHFDp
GJ

もう退路はないなこの主人公…
237名無しさん@ピンキー:2010/05/18(火) 01:52:23 ID:w1Z95yZH
GJ救いようが無いけど救われて欲しいキモ姉
238名無しさん@ピンキー:2010/05/18(火) 23:55:26 ID:lEaE3Q8/
239名無しさん@ピンキー:2010/05/18(火) 23:57:34 ID:fGbAsf7o
両親を自分のストーカーに惨殺され、高校から妹と二人で生きてきた男。
男は刑事になり、トラウマを抱えながら犯人を追い続けている。
妹は大学に行かず、バイトをしながら家事を手伝っていた。
ある日、男の同僚(♀)が両親と同様の方法で惨殺される。
男が捜査するなか、一人の女が捜査線上に浮かび上がる。
女は高校時代、男に言い寄っていた知人だった。
ストーカーに似た背格好で、両親の事件でも女は容疑者だった。
同僚と両親の死に責任を感じて苦しむ男は女を犯人と決めてかかる。
そして、妹はトラウマに囚われた男をひたすら支えた。
そんな時、女が男を尋ねる。妹を見て突然暴れだしたため、男が女を殺害。
しかし、直後に女の無実に気づいた男は自殺を考える。
結局、妹が男を助けて証拠隠滅。犯人は女に決定し事件は解決とされる。
こうして二つの事件の真相を示す証拠も一緒に隠滅されてしまった。
事件の解決を諦め、病んだまま辞職した男の隣に妹が寄り添う。
男は辛い思い出を忘れようと、妹にのめりこんでゆく・・・。
みたいなこてこての火サスキモウトを個人的には読みたかったり。
240名無しさん@ピンキー:2010/05/19(水) 00:07:40 ID:UEvp1Uy9
妹にのめりこんでゆくとこ
を重点的に読みたい
241名無しさん@ピンキー:2010/05/19(水) 00:20:37 ID:32E45jjG
☆キモ姉妹のルーツは日本神話!?
イザナミ
この人は有名。ヤンデレ、近親相姦、ゾンビ化最強のキモウト
太陽神・天照大神
一説によると姉弟姦だったらしい。
但しスサノオがシスコンDQNで彼女はツンデレぽいが…
しかし二千年を超えるジャンルだったとは…
242名無しさん@ピンキー:2010/05/19(水) 01:08:05 ID:yIQcQyhT
うぜえ
*ね
243白愛:2010/05/19(水) 01:31:49 ID:Vj00u64X
前スレで書かせてもらった話の続きです。
初めてエロを書きました。
上手く書けたのか微妙です。
244白愛:2010/05/19(水) 01:32:52 ID:Vj00u64X
 駅前の公園にて、四季野 舞夏はベンチに座ってクレープを食べていた。
 ここが放課後に黒真と一緒に来ようと思っていた、新装のクレープ屋である。
 公園の敷地内に作られた巨大な屋台型の店で、その場でクレープを味わえるように周辺にテーブルとベンチを広げている。
 開店初日というのもあってか、人の数はそこそこ。
 周りの人達は友人や恋人と談笑しながら、楽しげにクレープを頬張っている。
 そんな中、舞夏はムスッとした顔でクレープを食べている。
(な〜によ、黒真の奴)
 もぐもぐとクレープを咀嚼する。
 味は十分に上手かった。
 だが、しっかりと味わう気持ちにはなれなかった。
 本来なら黒真と一緒にここに来て、周りの人達のように楽しく味わっていた筈なのだ。
(本当に、真白ちゃんのことになるとそれしか見えなくなるんだから!)
 心に響く怒りと共に、勢い良く握り拳をテーブルに叩きつける。
 周囲の人達はその音に驚き、一気に舞夏の方を凝視する。
 それに対して舞夏は「なんだやンのかコラ」とでも言うような眼光を突き付けた。
 獰猛な眼光に、人々はすぐさま目を逸らして流した。
 フン!と踏ん反り返った舞夏は、肉食獣のようにクレープを噛み千切る。
「ど〜したど〜した〜? そ〜んな呪いで人を殺せそ〜な雰囲気醸し出してさ〜」
 舞夏がクレープを飲み込んだ直後、非常にのんびりとした声が響いた。
 顔を上げると、そこには一人の女性が佇んでいた。
 肩まで掛かるセミロングの髪はふわりとウェーブしており、爽やかなスカイブルーのシャツに紺のジーンズを穿いている。
 シャツを押し広げる位の大きな胸のせいで、シャツの丈が合わずにへそが露出している。
 一目で男性を虜にしてしまいそうな色気を放つその女性を、舞夏はジト目で見た。
「何でここにいんの? 春香姉さん」
 春香と呼ばれた女性はにっこりと微笑み、舞夏のテーブルの向かい側に腰を下ろした。
 彼女が舞夏の姉の四季野 春香。
 四季野四姉妹の長女で、真白の家庭教師をしている天然おっとり系の二十一歳である。
「ん〜? そりゃ〜真白ちゃんの授業終わらせてからヒマになったもんだからね〜。
 帰り道ついでに新装オ〜プンのクレ〜プ屋にでも顔を出そ〜かと思ってね〜。
 そ〜すれば愚妹が邪のオ〜ラを漂わせているから、声を掛けただけさ〜」
 にっこりと微笑みながら話す春香は、舞夏に指を差して話す。
「な〜んでそんなにご機嫌が斜め四十五度なんだ〜?」
「別に。ただ何処ぞのシスコン野郎にムカついているだけ」
 頬杖をついた舞夏は、目を閉じて忌々しげに最後のクレープを口に放り込む。
 その様子に春香はニヤリと笑い、笑みを見えないようにするかのように口元を手で隠す。
「はっは〜ん。さては愛しの黒真くんが愚妹と真白ちゃんを天秤にかけたのが気に入らなかったんだな〜?」
「なっ!? 何が愛しのよ!!」
 春香の言葉に舞夏は両手をテーブルに叩きつけ、春香に掴み掛かろうとした。
 舞夏の両手の脅威に、春香も素早く両手を突き出す。
 両者の手が激突しようとした瞬間、春香が手首をクルリと捻らせ、舞夏の手を下方に弾いた。
 重心が下へと向かった舞夏は、そのまま上体ごとテーブルに顔をぶつけた。
 彼女は顔とテーブルが当たると、ふぎゃっ!?と猫のような悲鳴を上げた。
「愚妹よ〜。そんなんではいつまで経と〜とお姉さまには勝てないぞ〜」
 はっはっはと笑う彼女に、舞夏は涙目で鼻を押さえて顔を上げる。
「この性悪! 武術やってる奴にそこらの体育と部活しかやったことない奴じゃ勝てるわけないでしょ!」
 春香からしたら負け惜しみのような舞夏の台詞に、彼女はやれやれと溜息を吐く。
「それだったら教えを請お〜と思わない〜? ま〜、そ〜ゆ〜部分では真白ちゃんの方が優秀だね〜」
「は? どういうこと?」
「昔あの子に頼まれてね〜。自分も強くなりたいです、ってさ〜。
 そんで授業の時間が余ったりしたら鍛えてあげてるんだよね〜。
 あの子も髪が極端に弱いことを除けば普通に健全な女子だからね〜」
 今じゃあの子は立派な私の弟子だぞ〜と、春香はその大きな胸を張って言った。

245白愛:2010/05/19(水) 01:34:00 ID:Vj00u64X
「…………真白ちゃんが姉さんの弟子?」
 胡散臭そうな表情を浮かべ、舞夏は眼前の姉を見る。
「そ〜そ〜。あの子箱入りってゆ〜か〜、よく外に出歩かないだろ〜?
 だから鍛えてるだけじゃなくて〜、色んな知識も教えてあげてるんだよね〜。
 あ〜、最近じゃ〜インタ〜ネットの通販とか教えたかな〜。他にも違法サイトとか〜」
「こらこら! 真白ちゃんに何教えてんのよ!」
 春香の問題発言に舞夏は即座にツッコミを入れる。
「大丈夫大丈夫〜。あの子も良〜事と悪い事の判断くらい出来るから〜」
 にっこりと話している春香は、けど、と一言区切り、細めていた瞳を僅かに開く。
 その瞳の鋭さに、舞夏の肩が一瞬だけ震えた。
 目の前の姉は、いつもは超が付く程のマイペースで呑気過ぎる性格をしている。
 だがその反動か、一度怒りに達するとその凄まじさは壮絶の一言。
 かつて春香は夜道に強姦魔に襲われたことがあり、それを容易く一蹴した過去を持つ。
 相手はナイフを所持していたと言うのに、警察が駆けつけた頃には強姦魔は右腕・肋骨・鼻が見事に折れていたと言う。
 地面でのたうち回る強姦魔を見下ろしながら、春香は「あ〜あ〜、恐かった〜」と冷たい声で言い放ったとか。
 その恐ろしい姉を垣間見る瞳を見て、舞夏は「けど……何?」と声のトーンを小さくさせて訊く。

「あの子〜、たまに何考えてるのか分かんない時があるんだよね〜」



 才堂家にて。
 黒真と真白は、現在は浴室を出て脱衣所に居た。
 流し終えた真白の髪を、黒真は厚手のタオルで拭いていた。
 彼女の白銀に輝く髪は紫外線に弱く、痛みやすい。
 故に濡れた状態で安易にドライヤーの熱風を当てて乾かそうとすると、悲惨なことになる。
 例えるならば、高温で焼いた石を冷たい水で一気に冷やすと、急激な温度変化に熱疲労を起こして石そのものにヒビが入るといった具合に。
 丹念かつ丁寧に拭き乾かすしかない作業だが、黒真は慣れたと言わんばかりの手つきで拭いている。
 兄のタオル越しの手の感触を、真白は目を閉じて堪能していた。
「はい、終わったよ。お待たせ」
 十分に拭き終え、黒真はタオルを畳んで籠に入れた。
 とは言え、タオルで幾ら丁寧に拭こうとも、完全に髪を乾かすことは出来ない。
 だから後は自然と乾くのを待つだけ。
「そうですか。もう終わりですか……」
「……何でいつも拭き終わると残念そうな顔するの?」
 真白の小さな溜息を聞いた黒真は、やや困惑な表情になる。
 彼の問いに、真白は兄の手を取り愛おしそうに頬擦りする。
「いえ、兄様の感触と温もりをもっと感じていたいので」
 彼女の言動に、黒真は仕方ないなぁと言葉を漏らした。
 黒真は真白のこのような様子を、ただ普通の人とは違って少しだけ甘えたがりの女の子としか思っていない。
 元より体質のせいで極僅かな人間としか関係を築けていないのである。
 狭い世界しか知らず、友達も少ない者としては、親しい人と長い時間を共にして寂しさを消したいのだろう。
 世界でたった一人の妹が、いつも独りで居続けたことを黒真は誰よりも知っている。
(だから、僕が真白の傍に居て、守ってあげないといけない)
 愛しい妹が涙を流す姿を、黒真はもう二度と見たくないと思った。

 そして、妹にはもう二度と涙を流させないと、誓った。

『ごめんね、ましろ。ほんとうにごめんね……』
『いいえ……にいさま。にいさまは、なにもわるくありません』
『これからはずっとぼくがいっしょにいるから……そばにいるから。だから、もうなかないで』
 幼い頃の記憶を過ぎらせ、黒真は愛しい妹の頭を撫でる。
 艶やかに濡れているその銀髪の感触は、とても心地良かった。
246白愛:2010/05/19(水) 01:36:13 ID:Vj00u64X
 現在、才堂家は夕食の時間を迎えていた。
 夕食を作っているのは、真白。
 白銀の着物に白のエプロンを着用し、鼻歌交じりに台所で手を動かしている。
 両親が外に出て以降、いつも夕食を作る係は真白になっていた。
 とはいえ、料理なら黒真も十分出来る技量を持っている。
 両親が不在となった初日、その日の夕食を黒真が作ろうとすると、真白が止めに入った。
「これからは私が一日中兄様の御世話になるのです。だからせめてもの御返しとして、夕食は私に作らせて下さい」
 そう言われて、現在に至る。
 黒真としても、真白の誠意が籠もった願いなのだ。
 断れる筈が無い。
 何より自分も料理が出来るとはいえ、腕ならば母親と四季野 春香仕込みの真白の方が数段上なのである。
 故に、せっかくなら美味しい物を食べたいと言う思いが強かった。
「兄様、御待たせ致しました」
「今日も美味しそうだね。それじゃいただきます」
 居間で向かい合うように座った二人は、夕食を食べ始めた。
 笑顔で手料理を頬張る黒真の姿を、真白はただただ母親のような笑みを浮かべて眺めていた。

 刹那、黒真の姿を見るその瞳が妖しく細まり、艶やかな唇のラインを扇情的な仕草で舌がなぞっていたのを、彼は気付いていなかった。



 深夜十二時。
 近所も寝静まる時間の頃、才堂家の明かりも全て消えていた。
 窓から射す月の明かりに照らされた廊下に、ひたひたと静かな足音が響く。
 耳を澄まさないと消えてしまいそうな儚い足音。
 その足音の主は――真白であった。
 月の光に反射して、美しい銀髪が煌めいている。
 彼女の頬は薄く紅潮し、瞳も何処か遠くを眺めているように上の空。
 まるで心此処に在らずと言った様子。
 静かに廊下を歩き、彼女が辿り着いた場所は、黒真の部屋の前であった。
 兄の部屋を、彼女は声も掛けず、ノックもせず、侵入した。
 黒真の部屋も、窓から月の光により完全な暗闇にはなってはいなかった。
 だが、真白はその窓に近付き、力任せにカーテンを閉め切る。
 部屋が完全な暗闇と化した。
 それでも真白の瞳は正確に物を見ることが出来る。
 視線の先には、安らかに眠る黒真の姿。
 真白は黒真に近付き、その寝顔を覗き込んだ。
 本当に無防備な表情。
 一見女の子にも見間違えてしまいそうな柔らかな顔の作り。
「まるで私に妹が出来たみたいですね」
 ポツリと、真白は妖艶な声を耳元で囁かせるが、黒真は一向に起きる気配が無い。
「睡眠薬がよく効いていますね」
 クスクスとさも可笑しそうに真白は笑い、

「それもそうですね。あんなに美味しそうに召し上がっていたのですから」

 と呟いた。

247白愛:2010/05/19(水) 01:37:01 ID:Vj00u64X
 真白が黒真に振る舞った夕食。
 あの夕食に、彼女は睡眠薬を混ぜて調理していたのだ。
 そもそも滅多に外へ出歩くことも無い彼女が、どうして睡眠薬を手に入れることが出来たのか。

 その入手元は、インターネットであった。

 家庭教師の四季野 春香に授業の合間を縫っては教えてもらった、ネットの使用方法。
 遊び半分で見せてくれた違法サイトでは、容易に睡眠薬を入手することが出来た。
「兄様、今の兄様は、例え地震が起ころうと火事が起ころうと、起きることはありません」
 黒真の頬を撫でながら、真白は楽しそうに喋る。
 そしてその手を彼の首の後ろに回すと、自らの胸元まで引き寄せ、その唇を強引に奪った。
「んっ……ふぅ……んぅっ……はっ」
 唇の間から舌をヌルリと侵入させ、黒真のそれと絡ませる。
 口腔内でたっぷりと溜めた唾液を流し込む。
 酸欠なのか、眠りに就いたまま黒真は眉を顰め、その唾液を嚥下した。
 兄の喉がごくりと動くのを確認した真白は興奮が増したのか、肩を震わせた。
 数分間黒真の唇を貪り尽くした真白は、名残惜しげに唇を離す。
 ツゥっと、二人の舌に唾液の橋が掛かった。
 荒い息を吐き続ける真白は、両手で黒真の頬を挟む。
 年の割には幼さが残るあどけない寝顔に、彼女の腰の奥深くに疼きが走る。
「本当に……食べてしまいたいっ」
 たまらなくなった真白は、舌をだらしなく唇から垂らし、それを兄の顔全体に這わした。
 普段の清楚な彼女からは想像もつかないような下品で淫らな舌遣いは、まるで飢餓に苦しむ浮浪者が御馳走にあり付いたかのよう。
 まるで強姦魔のように、真白は兄に跨り、兄と言う御馳走を味わっている。
 腰の疼きに我慢出来なくなったのか、自分の腰を兄のそれと擦り合わせ、欲望のままに躍動させる。
 自らの敏感な部分と兄のとが接触すると、彼女は悦楽の単音を吐いた。
 まだまだ夜は長い。
 彼女は時間が許す限り、一日の最大のイベントである快楽の世界に溺れ続けた。

248白愛:2010/05/19(水) 01:38:39 ID:Vj00u64X
終了です。
何だか自分で書いたエロを見直すと恥ずかしい気持ちになりますね。
249名無しさん@ピンキー:2010/05/19(水) 06:42:22 ID:3oz4+z/y
GJ
全てがツボだw
250名無しさん@ピンキー:2010/05/19(水) 07:17:46 ID:j2IurQPe
GJ
真白かわいいよ真白
251名無しさん@ピンキー:2010/05/19(水) 09:32:56 ID:WaMBQVkh
>>248
エロスでもイインダヨーGJ!
睡眠薬使っといて、挿入までには至らない真白が、なんだか可愛らしかった。
次回の投下も、楽しみにしています。


>>241
何スレか前にそれとなくかいたけど……
確か日本神話で表記される「妹」って、「妻」の意味じゃなかったっけ?
つーか、ヤンデレスレでもほぼ同時に神話ネタだけ書くのは、まあどうかと思う。
252名無しさん@ピンキー:2010/05/19(水) 10:19:11 ID:/lqOlGyC
>>221とか>>241みたいなキチガイはでてけよ
253名無しさん@ピンキー:2010/05/19(水) 12:40:15 ID:Tgn1/aFx
基地外というか未成年ぽいけどな。どっちにしてもケンカ腰で絡む相手じゃないよ
まあそらそうと

>>248
本番無しでもしっとりエロかったし真白可愛いよGJ!
254名無しさん@ピンキー:2010/05/19(水) 15:02:09 ID:xR5t54OK
古代の兄、妹は単純に男子親族、女子親族の意であるケースが多いです。
ただ、それとは別にイザナギイザナミが兄妹であると唱える文献も…
255名無しさん@ピンキー:2010/05/19(水) 16:10:44 ID:T8m2MbVL
初潮きた当日のキモウトバージン奪ったらどうなるの、と
256名無しさん@ピンキー:2010/05/19(水) 17:59:55 ID:gseQZtoa
初潮の前に排卵があったはずだからもう少し前から可能
257名無しさん@ピンキー:2010/05/19(水) 23:14:16 ID:LuI0mqL1
使用済みのティッシュをキモウトの前にさり気無く落としたらどうなるの、と
258名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 00:07:43 ID:47+bkiVs
>>257
瞬きしたら無くなってる
259名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 00:35:41 ID:puybxKod
双子のキモウトの片方だけを可愛がったらどうなるの、と
260名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 00:55:32 ID:fb+6Ifdz
実はちょくちょく入れ替わっててまんべんなく可愛がってました
261名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 01:20:06 ID:JV0USMDb
双子の片方だけキモウトだったら正常な方はいつの間にか消されてるわな
262名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 01:26:19 ID:RKsjzyzS
それか正常な方は早々に家を出るだろうな
ヒロインは無理でもモブとしてはなかなか魅力的かもしれない
263名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 01:46:54 ID:q0V4RRRt
>>260
二人一緒にお腹が膨らんで発覚ですね
264 ◆ltPhPWT046 :2010/05/20(木) 02:46:09 ID:xbEYaDip
投下します。初投下なのでお手柔らかにお願いします。
2653月だったある日:2010/05/20(木) 02:46:41 ID:xbEYaDip
3月中頃両親が鬼籍に入った。

 俺は家で両親が納骨された仏壇に手を合わせていた。
涙もとっくに枯れ果ててもう何の感慨もわかなかった。
両親は先日、買い物に出かけその帰りに正面衝突、帰らぬ人となった。
年間数千人はいるであろう自動車事故死亡者に両親が入るとは思っていなかった。
家にいていきなりご両親が交通事故に遭いましたと警察から電話があった時は驚いたというよりも手の込んだ悪戯かと思った。

 「ここにいたの」背後から声がかかる。
振り向くと今年クリスマスイブの日付と同じ年齢になろうという姉がいた。
「お父さんたちもおしどり夫婦だからって一緒に死んじゃわなくてもよかったのにね」
そうおどけて言った。口調とは別に表情は複雑そうだった。
姉は大学卒業と同時に一人暮らしを始めた。
実家から車で30分ほどの所だったがまったく家には帰ってこなかった。
俺はよく呼び出されていたので会うのはそこまで久しぶりではなかった。
けれども、両親と姉が最後に会ったのは2年前までさかのぼらないと思いだせない。
いつも母が「お姉ちゃんも近所なんだから帰ってくればいいのに」と愚痴をこぼしていた。
久しぶりの連絡が訃報で、帰れば両親の葬儀が待っていたというのはどんな気持ちなのか俺には測りかねた。

居間へ戻りソファに座る。
姉は俺の横に座った。
ここ数日の疲れが溜まったのか虚空を見つめ呆けていた。
姉には両親が亡くなってから今まで世話になり続けている。
遺体の確認からずっと取り乱していた俺をなだめ、慰めてくれ。
右も左もわからない俺の代わりに葬儀の手配をし、喪主を務めてくれた。
本来、喪主は長男である俺が務めなくてはいけないのだが両親の突然死のショックで何も手に付かなかった。
駆け落ち同然で地元から出てきたという両親には親戚がほとんどいなかったが、両親の友人や職場の同僚への対応をすべてしてくれたのは姉である。
その間、俺はひたすら頭を下げて阿呆のように同じセリフを参列者らに言っていただけだ。
そんな姉の疲労を推し量るべきであろう。
俺がねぎらいの言葉をつぶやこうとすると姉がつぶやくように言った。

「あんたのスーツっていうか、礼服?よく似合っていたわね」

一瞬、何のことかわからなかった。
確かに中高一貫して制服が詰襟だった俺の礼服姿は初めてのものだったに違いない。
母も俺のスーツ姿を見ることを楽しみにしていたようだが結局叶わなかったわけだが。
こんな訳のわからないことを言い出す程度には姉が疲れているのは分かった。
2663月だったある日:2010/05/20(木) 02:47:10 ID:xbEYaDip
「それよりも、あんたはこれからどうするつもり?」
 どうするつもりとは当然進路のことであろう。
俺は先日高校を卒業し、4月から県内の国立大学への進学を決めていたが、
「親父たちがもういないんだから進学はやめて働こうと思ってるよ」
国立とはいえ4年間学費や、生活費など諸々の費用のことを考えるとそれが一番だとも思う。
実家から通えるとはいえ厳しい問題である。

 それ以上に俺にはやらねばならないことがある。
「それにこの家を管理していかなくちゃいけないだろう」
両親が残したこの家を俺は残したいと願っている。
先ほども述べたように両親は駆け落ち同然で地元から出てきた。
頼りになる親戚、友人が周囲に居ない中この家を苦労して建てた。
そこにはきっと少なくない苦労があったと思う。
そこまで大きくもない一軒家。
母が仕事の合間を縫って手入れした庭。
父が集めた本がたくさんある書斎。
幼いころに背比べをした跡の残る柱。
そのすべてを俺は残したい。
奨学金や両親の遺産で大学に通うこと自体はできるだろう。
けれども、俺にはこの家を、両親の生きた証であるこの家を残すことのほうが大切だ。
そう姉に説明をした。

 姉は黙って聞いていくれた。
途中で口を挟まずにただただ耳を傾けてくれた。
すべて説明し終えると姉はしばらく沈黙した後、頭を押さえて首を振った。
「あんたね、自分がどんだけずれたこと言ってるのかわかってる?」
そう言われても全くわからない。
困惑の表情を浮かべていると姉は大きくため息をついた。
「あんたのその話、それだけ聞くと美談ね。美談だし、立派な考えだとも思うわよ」
大きく息を吸って続きの言葉を紡ぐ。
「けどね、その話には私がいない」
そう言った姉の顔はまるで置いて行かれた迷子のようだった。
2673月だったある日:2010/05/20(木) 02:47:43 ID:xbEYaDip
 「なんですかあんたは、二人っきりの家族であるお姉さまなんか頼りにならないから全部自分でやらないといけないとこの家がなくなるとでも思ってるの

?それとも私はこの家が、生まれ育った家がなくなっても全く平気な性格をしているとでも、そう思ってるっての?」
激しい姉の『口激』にグゥの音も出ない。
当然、最初に姉に相談すればとも思った。
「けど、もう家を出てるし一方的に迷惑をかける訳にはいかないだろ」
この家を維持していこうとしたらまず間違いなく姉に頼ることになるだろう。
それだけは避けたい。
「バカ!」
そう怒鳴る姉の瞳の端に涙が溜まっていた。
幼いころから思い出しても姉のなく姿など数えるほどしか見たことのない俺は動揺した。
まさか、泣かれるとは想像もしていなかった。
「あんたはもっと私を頼ってもいいんだよ。大事な弟なんだから、あんたがこの家をどれだけ大事に思っているかは分かったよ。それにあんたが少なくない

時間を勉強に費やしてきたことも知ってる。あの大学に入るために頑張ったんでしょ。だから私が、お姉ちゃんがどうにかしてあげるからあんたが全部背負

う必要はないんだよ」
姉は俺に、まるで幼子に言い聞かせるように言う。
 しかし、姉ももう24である。
結婚していてもおかしくないし、耳にしたことはないが彼氏がいてもおかしくない。
それなのにここで重荷を背負わせて婚期を逃がしたら天国の両親に申し訳ない。
とはいえ、姉の結婚について心配しているとは言いづらい。
言うべきかどうか迷っていると姉が目を細めてこちらを観察するように見てきた。
ああ、この目はやばいと、弟としての直感が告げる。
「もしかして、あんた私の結婚の心配をしているとか言うんじゃないでしょうね」
口角を釣り上げて拳を震わせている。
ああ、やばいな。
「いや、俺はただ行き遅れにならないかと心配を…」
「そんなこと、あんたに心配される筋合いはない」
その言葉とともに振り上げられた拳は正確に俺の頬を穿った。


 縁側でずいぶん昔、父が何処からか買ってきた植えた白梅の木を見ながら頬を冷やし、座っていた。
姉に頬を殴られて話が中断した。
少しばかり気に入らないことを言われたからといってすぐに手をあげる性格を直さないと本当に行き遅れるんじゃないかと思う。
氷嚢を押し付けすぎて感覚の無くなった頬に風を感じる。
例年になく寒いがそれでも花をつける白梅を感動の心持ちで眺めていると。
背中にそっと温かな重みを感じる。
俺のではない手が俺の体の前で交差する。
姉が俺を背後から抱えるように抱きついてきた。
人の身体とはこんなにも温かいものなのだということを知る。
それとともに両親の冷たくなった身体を思い出す。
こうして家族と共に居られることに感謝をする。
「あんたは私が養ってあげる。今住んでいる所引き払ってこの家に帰ってくるだから大丈夫、あんたを一人ぼっちになんかしない。ずっと私が一緒にいてあ

げる。だからそんなに悲しそうな顔しないで」
俺の顔をよく見てないのにそんなことを言わないでほしい。

 俺は姉が言ってくれた言葉がうれしくて泣きそうなのだから。
2683月だったある日:2010/05/20(木) 02:48:28 ID:xbEYaDip
 私は自分のアパートに一時的に戻るために車を発進させた。
家からアパートまではおおよそ30分本当は誰もいないアパートなどには帰りたくない。
いや、弟の居ないアパートになど帰りたいと思うわけがない。
しかし、家には着替えも仕事の資料も置いてない。
それを取りに帰るためだけにアパートに帰り、また戻ってくるつもりだ。
私は弟のそばを離れたくない。
特に今は両親の死によって精神的に弱っている。
そんなあいつを無防備なままほっとけない。
もし万が一泥棒猫があいつの周りに湧いて出たら大事だ。

 2年前家を出た時は断腸の思いだった。
しかし、あれ以上家にいたらきっと私は思いを隠しきれなかっただろう。

そう、弟に対する異常なまでのこの愛情を。

 弟に対して好意をもったのは最初は弟が中学生の時、あいつは女子から陰湿な嫌がらせを受けていた。
理由は告白されたのにそれを受けなかったからというくだらない、本当にくだらない理由。
その日は雨が降っていて傘を持って行ったはずの弟が濡れて帰ってきた。
おかしいと思い、弟に問い質すと弟は最初は渋っていたが次第に口を開いた。
理由も、されてきた嫌がらせも―傘を壊されたことも―ふつうは憤って当然だと思う。
実際、その理由のくだらなさに私は怒りをあらわにした。
しかし、弟がしたのはただ苦笑いをしただけだ。
ただ告白を断ったというだけで与えられた苦痛に対して苦笑いを返しただけなのである。
それでも憤る私に弟は肩をすくめるばかりだった。
「あの人たちも気がつくと思うよ。今していることがどうしようもなくくだらないことだって。ただ僕はわざわざ教えてあげるほどやさしくないから」
そう言うと弟は話はそれだけだとでも言うように席を立った。
「まあ、将来あの人たちの今の行動についての客観的見地を教えてあげるつもりだけどね」
そんなセリフを残して部屋へと戻って行った。
この時の私は6歳も年下の男の子言った言葉とは思えなかった。
そう思った瞬間、私はあいつのことを弟として見れなくなった。
ただただ気になる『男』としてあいつを見るようになった。
 しばらくして弟に対する嫌がらせは無くなったそうだ。
けれど私の問題はそんなことではなかった。
気になる男が四六時中ひとつ屋根の下で一緒に居るのだ。
はっきり言ってもう気が狂うかと思った。
弟は当然そんな気が全くない。
当然だが自分がこんなに恋しい気持ちになっているのにと八つ当たりめいた気持ちを持つこともあった。
いっそ襲ってしまおうかと捨て鉢な思いにもなった。
そんなことをすればきっと弟はもう自分のものになることはないだろう。
葛藤を抱えたまま就職と同時に家を出た。
家から遠くもなく近くもない場所にアパートを借り暮らし始めた。
離れれば少しはましになるだろうと思ったがこの思いは自分で思っていた以上に強く激しいものだった。
1日過ぎる毎に恋しくなり、弟の居ないアパートに帰ることが苦痛になる。
私を口説こうとする男と話すと弟と比較してしまし、さらに弟に遭いたくなる。
狂おしい情愛が私の中で育っていくのを自身で感じ、弟を呼び出し食事をとることでそれを発散する。
そんなことをしていてもすぐに決壊することは目に見えていた。
そのくらい私の暗い、背徳的な愛は育っていた。
そのうちどうすれば問題なく弟と愛し合う関係に至れるかと考え始めた。
2693月だったある日:2010/05/20(木) 02:48:54 ID:xbEYaDip
 後ろから、クラクションの音がけたたましく鳴る。
どうやら信号待ちで考え事をしていたらいつの間にか信号が赤になっていたようだ。慌てて車を発進させる。
ここで両親と同じ末路を逝く気はない。
それにしてもと思いため息を少しこぼした。
「私が手を出さなくても勝手に死んじゃうんだから」

私は両親を自分の手で亡き者にしようと思っていたし、その覚悟も決めていた。
計画も立て、準備もしてきたがすべて必要なくなった。
両親の訃報を聞いたときは自分の手を汚す必要になって喜ぶべきなのか、両親の不幸な事故を悲しむべきか一瞬困惑した。
しかし、今になって思うと本当に私に両親を殺すことができたのかとも思う。
弟ほどではないが両親のことは敬愛していた。
そんな両親を私は……いや、こんなことを考えてもしょうがない。
今は、早く帰って弟と愛を育む準備をしなくては。
重要なのはむしろこれからだ。
弟を養いながらさらに姉としてではなく女として意識してもらわなくてはいけないのだから。

 それにしても、弟を養う。
この言葉をつぶやくと思わず身体が熱くなる。
私がいなければ弟は食べていけない、私がいなければ弟は生活できない。
そんなことを考えるだけで今までになく身体が熱くなり、身体を弄りたくなる。
しかし、今日から家に泊るつもりだ。
本当に久しぶりに弟と夜を過ごす。
こんなことで私は自分を抑えられるのだろうか?
「………取り合えずチョット休憩してから帰ろう」
アパートに到着し、急いで部屋へと向かう。
明日からの生活に、弟との生活に淫蕩な望みを抱きながら私は自慰行為をした。

270名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 02:49:33 ID:xbEYaDip
投下終了です。
半端な感じですがこれで終わりです。
271名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 03:03:15 ID:e32q+HHW
大人のムードの作品でGJです。 弟サイドと姉サイドに分けて書いてるのも
自分好みですね、続きを楽しみにしてます。
272名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 04:23:51 ID:ZZ18yR0B
好みにドストライクな作品が来た!
GJです
273名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 11:35:46 ID:LS/fkMf/
両親が死んだと聞くと条件反射で殺されたんだと考えてしまう俺は病気
274名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 11:53:56 ID:RsEwYYS/
これはよいショートショート。うまくまとまってるな
275名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 13:44:14 ID:fb+6Ifdz
いい意味で、続きを書いてほしくないSS。
初とは思えないほど完成度高かったです。
いつか別作品も投下してください。GJです。
276名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 14:55:39 ID:4//KS5NW
>>273このスレでは普通ですよ。ふふ。
277名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 19:35:34 ID:EQUjvtQy
ある意味ハッピーエンドだな
罪を負わずにパラダイスを得たわけだし
278名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 21:00:35 ID:RKsjzyzS
強運(凶運)姉とか。弟の運が吸われていってたりして

で、そのまま色んな人間の人生を蹂躙して姉が天寿を全うした後に
孫の世代で一気に反動が来たりして
279チョ・ゲバラ:2010/05/20(木) 22:43:02 ID:vsgv7KBf
ようやく規制が解けたから、さっそく前回の続きでつ。
「おばさんがいなくなってもう半年だっけ? アンタも最近、主婦が板についてきたわ
ね」
「うちは育ち盛りの妹がいるからな。色々と栄養のバランスを考えて食事を作らないとい
けないんだよ」
「ふーん。アンタって昔からそういう細かいことだけは得意よね。あっ、挽肉あったわ
よ」
「それはいいんだよ。肉類は商店街の方で買うから」
「なんでよ?」
「安いし、いい肉を使ってるんだよ」
「へー、そうなんだ……」
「お前も少しは料理とか覚えたらどうなの? おばさんが雫はバスケばっかりで女の子ら
しいことはなんにもしないって嘆いてたぞ」
「う、うっさいわねー! 私のことはどうだっていいのよ!」
 俺と雫は、自宅近くのスーパーで買い物の最中だ。正確に言うと、俺の夕飯の買い物に
雫が付き合ってくれているのだ。べつに頼んだわけじゃないんだけどなぜかこうなった。
 ここで一つ説明しておこう。
 先ほど雫が、「おばさんがいなくなった」と言っていたが、俺の母親はべつに死んだわ
けでも失踪したわけでもない。今から一年ほど前に単身赴任した父が心配で心配で居ても
立ってもいられなくなった母は、半年ほど前に俺と真帆奈を置いて父の元へと駆けつけた
のだ。うちの善人が取り柄だけの父は、れっきとした生活無能力者なのだ。半年間だけで
も一人で生活できたのは奇跡に近い。
 で、母がいなくなった我が家を切り盛りするのが俺というわけだ。ちなみに妹はなにも
しません。つーかできない。父親の遺伝子を引き継いだせいなのか、先天的に料理や掃除
の才能が欠如しているのだ。料理を作らせれば未知の殺人兵器ができあがり、掃除をすれ
ば逆に散らかるだけ。二度手間なので、もうなにもやらせないようにしている。
「つーか、雫と一緒に買い物するのも久しぶりだよな」
「お互い色々と忙しいもんね。そういえば真帆奈ちゃんとも最近会ってないなー。真帆奈
ちゃん、元気にしてる?」
「あいつはいつでも元気だよ。それだけが取り柄みたいな奴だからな」
「まーたそんなこと言って、真帆奈ちゃんに怒られるわよ」
「事実だから仕方ないよ。もう少しぐらいは女の子らしくなって欲しいんだけどな」
 見かけだけは母親に似ていいんだけど、中身はいつまでたってもパッパラパーだからな。
「でも真帆奈ちゃん、学校で何人かの男の子から告白されてるらしいわよ」
「えっ、真帆奈が……!? ま、まさか??」
「アンタ知らなかったの? 真帆奈ちゃん、あんなに可愛いんだからモテて当たり前でし
ょ」
 いや、そんな噂はちらほら聞いたことがあるのだが、告白までされていたとは正直知ら
なかったぞ。
「だって真帆奈だぞ! めちゃくちゃいい加減だぞ! 家事も料理もなんにもできないし、
朝だって一人で起きたことなんか一度もないんだからね!」
「そんなもん一緒に暮らさないとわからないでしょーが。だいたいアンタ、なんでそんな
に取り乱してんのよ?」
「べ、べつに取り乱してはないだろ……」
「はっはーん。アンタねー、いい加減にシスコン卒業したらどうなのよ。真帆奈ちゃんだ
って、いつまでもアンタにベッタリじゃないわよ」
「俺はシスコンじゃねーよ!」
 とんでもない言いがかりだ! 真帆奈はまだまだ子供なんだから、恋人とか彼氏とかそ
んな生々しい話は早すぎるって思ってるだけなんだから!
「アンタは頭の天辺から足の爪先まで正真正銘のシスコンよ。シスコンでインターハイ狙
えるくらいだわ」
 そんなもん狙わねーよ! いったいどんな競技するんだ!
「そ、それで……真帆奈はなんて答えたんだよ?」
「さぁー、そこまでは知らないけど。ホントに真帆奈ちゃんからはなにも聞いてないわ
け?」
「……」
 真帆奈は、毎日俺に学校であったことなど必要外のことまでペラペラと話すのだが、告
白のことに関しては一度も聞いたことがなかった。仮にもしそんなことがあったのなら、
真っ先に俺に相談してくれると思ってたんだが……。
「妹の方に先に恋人ができちゃったりしたら、兄の威厳丸潰れよねー」
 なにがそんなに楽しいのか理解に苦しむが、雫はシシシとにやけ顔で言ってきた。
 実に気分が悪い。
「う、うるさい! お前だって恋人いないだろ!」
 俺と同じで、恋人いない歴=年齢の癖に!
「なっ! だ、だから私のことはいいのよ、バカ涼介! だいたいアンタはねー、あんな
高嶺の花ばっかり狙ってるから、いつまでたっても彼女の一人もできないのよ!」
「はぁ? なんの話してるのかさっぱりわからんわ」
「またまた惚けちゃってさっ、フンッだ!」
「全然惚けてないっつーの。冗談抜きでなんのこっちゃわからんよ?」
「東郷さんのことよ、東郷さん! あんないやらしい目付きで毎日毎日東郷さん見てたら、
アンタいい加減に訴えられるわよ!」
 告訴よ告訴! と顔を真っ赤に茹でらせ興奮する雫。
 またその話かよ……。
「だから俺がいつそんないやらしい目付きで東郷さんを見たんだよ!」
 東郷さんはアレだけ美人なんだから、少しぐらいは目で追ったりするようなこともある
だろうけど、そんな雫が大袈裟に言うように、上から下へと舐め回すようないやらしい目
付きで見たことなんか一度もないぞ。だいたいそんなことしたら、同じクラスの同級生に
対して失礼じゃないか。
「アンタ、昔っからああいう髪が長くて清楚な感じの女の子が好きだもんねー。はんっ、
バカじゃないの! ちょっとは自分の分をわきまえなさいよ!」
 確かに俺は自他共に認める黒髪ロンガーだが、なんで雫にそこまで言われなきゃいけな
いんだ? だいたい場所を考えて欲しい場所を。ここは近所のスーパーの惣菜売り場なん
だぞ。どこに知り合いが潜んでいるのかわかったもんじゃない。
「とりあえずだな……こんなところでこんな言い争いするのはやめにしないか……?」
「あっ!?」
 雫も漸くそのことに気付いたらしく、素直に押し黙った。
 ほらっ、あっちの方でどこかで見たようなおばさん達がヒソヒソやってるじゃん。変な
噂でも流されたらどうすんだよ。
 かなり気まずい思いをしたので、俺と雫はさっさと買い物を済ませてこの場所から立ち
去ることにした。
 で、商店街に向かう道すがら、俺は幼馴染の八つ当たり攻撃を受けることになった。
「アンタのせいで恥かいちゃったじゃないの! どうしてくれんのよ、もーっ!!」
 本当に無茶苦茶言うな、この人は……。
「あのさー、お前がなにを勘違いしてるのか知らないけど、俺は東郷さんとどうにかなり
たいとか、そんな大それたことなんかこれっぽっちも考えてないぞ」
 まぁ、東郷さんの方から告白してきたら即効で付き合うけどな。しかし、そんな非現実
的なことが起こりうる可能性は、0.000000001%。どこぞの人型決戦兵器の起動確立並なの
だ。俺はそんなにロマンチストじゃないですから。
「……嘘ね」
「嘘じゃないっつーの。お前が言うように俺だって自分の分くらいわきまえてるよ。だい
たい俺なんかじゃ東郷さんとは釣り合いが取れないだろ」
「……クラスの女の子の中で、結構可愛いって人気があるの知らない癖に」
 雫が小声でゴニョゴニョと言っているが、よく聞き取れない。
「えっ、なに? なんて言ったの?」
「な、なにも言ってないわよ、バカッ!」
 怒られた。なんでなの?
「そ、それじゃぁ……本当に東郷さんのことは……す、好きじゃないのね?」
「まぁ、好きか嫌いかで言えば好きだけど、恋愛対象かどうかと言われるとちょっと違う
と思うな」
 簡単に言ってしまうと、テレビの向こうのアイドルかなんかへの憧れの気持ちに近いの
かもしれない。あまりにも住んでる世界が違いすぎて実感が湧かないのだ。
「ふーん、そうなんだ……わ、わかったわよ。アンタがそこまで言うんだったら信じてあ
げるわよ。もう、ホントにバカなんだから」
「そうか、わかってくれたか。いやー、よかったよかった……」
 あれっ、なんで俺は雫に説教されてたんだ? もの凄い理不尽さを感じるんだが……。
まぁ、折角雫の機嫌も直ったことだし、蒸し返すとまためんどくさいことになるだろうか
らこれでよしとしとくか。世の中上手に生きていくには、諦念と妥協が肝心なのだ。
「ところで涼介……」
「ん? なに?」
「そ、その……も、もし涼介が恋人が欲しいって思うんだったら……もっと、み、み、身
近なところから探してみたらいいんじゃないかしら……?」
 モジモジと頬を朱色に染めて雫が言った。
 なんだ……熱でもあるのか? そういえば朝からちょっと変だったからな。
「はて、身近にそんな女の子いたかな……?」
 自慢じゃないが俺の女の子との交友関係は、猫の額よりも狭くて浅いんだぞ。
「うーん、もしかして麗ちゃんのことか……?」
「なんで麗ちゃんなのよ! アンタ変態じゃないの!!」
 また怒られた……。
 ちなみに麗ちゃんとは、真帆奈の親友の秋山麗ちゃんのことだ。近所に住んでいるので、
俺や雫とも昔からの顔馴染みだったりする。
「……駄目だ。まったく想像すらできないよ? 俺の身近にそんな恋人になれるような女
の子が本当にいるのか?」
「ガルルル……」
 うわっ、な、なんだ!? なんで雫の顔が、そんな実写阪デビルマンのようなデーモン
みたいになってるんだ?
「と、とりあえず恋人はまだいいよ。俺は真帆奈の世話もしないといけないし、今はそん
な余裕はどこにもないからさ……」
「きぃぃぃぃーっ! もういいわよ! バカ涼介!!」
 ドスンドスンとアスファルトの地面に悲鳴を上げさせながら、雫は先に行ってしまった。
 うーん、なんでまた怒らせてしまったのだろうか? 女心はさっぱり理解できないな。
「おやっ、涼ちゃんと雫ちゃんじゃないか。あいかわらず仲がいいなー」
 そんなタイミングで商店街の肉屋のおじさんが、やたらと大きな地声で話しかけてきた。
モブキャラなので名前はない。
「べ、べつにバカ涼介なんかと仲なんかよくありません!」
 怒りが収まらないのか、雫は熊のような肉屋のおじさんに食って掛かる。
「すいません、おじさん……」
「なんだなんだ? もしかして喧嘩してるのか?」
「さぁ……? それがよくわからないんですよ……」
「そうか、まぁ男と女なんかそんなもんさ! 俺も女房とは毎日のように喧嘩してるが、
一発やっちまえば仲なんか元通りだぜ! 心配すんな、ガハハハ!」
 戦国武将のように豪快に笑う名なしのおじさん。
「ななな、なに言ってんですか! 私がこんな、バ、バカと、そそそ、そんなことするわ
けないじゃないですかーっ!!」
 肩まで伸びた茶髪を振り回して、猛然と抗議するジャージの幼馴染。
 冗談で言ってるんだから真に受けるなよ。完璧に現行犯のセクハラだけどな。
「あんた! 馬鹿なことばっかり言ってんじゃないわよ!!」
 で、こっぴどく奥さんに叱られる肉屋のセクハラ亭主。
 他の趣味探せよ。
「なんだよ……ちょっとしたジョークじゃねーか……」
「いいから! あんたはもう奥に行ってな!!」
 レッドカードで一発退場になった。
「ごめんね、涼ちゃんに雫ちゃん。うちの人、馬鹿だから……」
「いえいえ、いいんですよ。全然気にしてませんから」
 男の俺にはあんまり被害はないしな。ターゲットになるのは、いつも若い女の子だけだ。
真帆奈にセクハラするのだけは、やめて欲しいんだがな……。
「いいい、いっぱ……って、そ、そんな……涼介と私が……はうぅぅ……」
 雫は、まだメダパニ状態から回復していない。
「お詫びにサービスしとくからね」
 今日の夕飯は、真帆奈の好きなふわふわハンバーグにするつもりなので、牛と豚の挽肉
を買った。真帆奈ちゃんにいっぱい食べさせてあげてね、とちょっと申しわけないくらい
サービスして貰った。
 で、帰り道。
「ところで雫さー」
「い、いっぱ……いっぱ……つ……ううぅぅ……」
 まだ回復してなかったのかよ!
「おーい、雫さーん?」
「はうっ! ななな、なによ! あ、あんなこと言われたからって、かか、勘違いしない
でよね! 私と涼介は、た、ただの幼馴染なんだから!」
「しねーよ! ところでなんだけど、今日俺になんか用事あったんじゃないの? いつも
は部活あるのに珍しいじゃん」
「えっ! あ、あの……その……よ、用事は、もう済んだからいいのよ」
 済んだのか? いったいなんの用事だったんだ?
「あっ、そ、そうだっ! 今年の五月会はどうすんのよ?」
「ああ、それか……つーか今年もどっかに行くの?」
 五月会とは、ようするにゴールデンウィークにみんなで集まって遊びにいく会のことだ。
偶然にもこの近所には五月が誕生日の子供が多かったので、自然にそんなことをやり始め
るようになった。
「ちょっと、アンタ行かない気だったの!」  
「いやいや、雫も光も忙しいかなー、と思ってさ」
「一日くらいどうにでもなるわよ。それにこれがないと、光の奴、真帆奈ちゃんとまとも
に会話もできないんだから」
 光とは雫の弟のことで、現在十三歳だ。
 真帆奈とはクラスが違うが同級生の幼馴染で、姉と同じくスポーツ万能。現在はサッ
カー部に所属しており、すでに将来を嘱望されているらしい。体育会系らしく、なかなか
の好少年だったりする。
「光ったら、いったいいつまでウジウジ悩んでるつもりなのかしらねー」
「なるほど、真帆奈の周りに他の男が寄ってくるから気が気じゃないわけだ」
 どこの馬の骨ともわからん馬鹿ガキが真帆奈にちょっかいを出しているのかと思うと、
俺だって多少は気に入らない。
「そうよ。好きだったらさっさと告白すればいいのに、ずーっと片思いしてるんだから」
 純情少年光君は、物心がついた頃からずっと真帆奈に片想いをしているのだ。本人はま
ったくばれてないと思っているようだが、関係者は一人を除いて全員その事実を知ってい
る。その一人とは、実に残念なことに当の真帆奈だったりするから気の毒な話だ。
「あいつも色々考えることがあるんだろ。もし告白して断られたりしたら、幼馴染の関係
まで終わってしまうとかさ」
「あっ……!!」
 なにかに気付いたような顔で立ち止まる雫。
「なに?」
「な、なんでもないわよ、バカッ!」
 なんで怒られるんだ?
「と、とにかくどこに行くかアンタも考えといてよ! もうそんなに日にちないんだから
ね!」
 しかもなぜそんなにキレた口調なのだろうか? どうもこいつは情緒不安定だよな。意
味なく不機嫌になる時がよくあるのだ。
「うん、わかったけど……」
「……りょ、涼介!」
「えっ、な、なに?」
 なにかを思い詰めたような雫の真剣な顔を見て、思わずドキッとしてしまった。
「……な、なんでもないわよ!」
 なんだそりゃ!?
 刹那、馥郁たる桜の匂いを含んだ風が、横薙ぎに俺と雫の間を通過した。
 彼女の茶色の髪がそれに乗ってふわりとなびき、紅い太陽に照らされながらキラキラと
輝いて虚空を舞った。
 綺麗だ。
 俺は純粋にそう思った。
 雫はクラスの人気者だ。竹を割ったようなすっぱっとした性格をしているのと、友達思
いで面倒見もいいので、周囲からはリーダー的な存在として頼られ人望も厚い。また、時
折見せる笑顔が可愛いと、男子の間でも結構評判だったりするのだ。
「ちょっ、な、なにジロジロ見てんのよ!?」
 なぜか頬を夕日よりも火照らせた雫が言った。
「い、いや、な、なんでもない!」
 不必要に鼓動が加速していく。
 えっ?? な、なんなのこのこそばゆい空気は? ちょっと待ってよ。相手は雫だぞ。
 なんでこんなに緊張してんのよ!?
 そんな幼馴染とのこっぱずかしい瞬間を見計らったかのように、俺の携帯電話がブルル
と振動した。
 メール着信。
 真帆菜からだった。
『おっそーい! なにやってるのお兄ちゃん!! もういつもの時間とっくに過ぎてる
よ! 早く帰ってきて!』
 やれやれ……。
「だ、誰からよ?」
「真帆奈だよ。早く帰ってこいって」
「ふーん……」
 なんでそんなジト目で見られるの?
「はいはい。じゃぁ真帆奈ちゃんも待ってることだし帰りましょ」
「うん……そ、そうだ。よかったらうちに寄ってくか?」
「ああ、今日は無理なのよ。これからちょっとお母さんと出かけなきゃいけないのよね」
「そっか……、じゃぁまた今度遊びに来いよ。真帆奈も歓ぶしな」
「真帆奈ちゃんがねー……それはどうかしらね」
「えっ、なんで?」
「……なんでもないわよ、鈍感。ほらっ、帰るわよ」
 鈍感? こう見えても俺は結構鋭い方だと思うんだけどな。いったいなにが鈍感なのだ
ろうか?
「おーい、待ってよ」
 先にすたすたと歩いていく雫を、俺は早足で追いかけた。
 
 
 ドアを開けると、充満した少女特有の甘ったるい芳香に襲われた。
 そりゃそうだろう。なぜなら俺の部屋には、二人のお年頃の少女達がたむろっていたの
だから。
「おっそーいっっ!! なんでこんなに帰ってくるのが遅くなったの、お兄ちゃん!」
「おにーさん、おじゃましてます」
「……いらっしゃい、麗ちゃん」
 片方はもちろん俺の不肖の妹だが、もう片方は真帆奈の親友の秋山麗ちゃんだった。彼
女は、真帆奈と同じ三笠市第三中学校に通う中学二年生。しかし、その容姿は、とても妹
と同じ年齢とは思えないほど大人びていた。
 毛先がナチュラルにくるんとカールしたブラウンが混じったセミロングの黒髪と、可愛
いと言うよりも綺麗と表現したい顔立ちをしており、チャームポイントの泣きぼくろがと
てもよく似合う。時折妙に色っぽい仕草をするので、最近俺の心臓に変な圧力が掛かるこ
とがあったりするのは内緒だ。
 ちょっと前までは二人ともちんちくりんだったのに、最近の子供の成長は早いものだ。
特に麗ちゃんの胸は、真帆奈とは比べ物にならない発育ぶりだった。毎日牛乳でも飲んで
るのかな?
「あー、しかもお兄ちゃん! 全然反省しないで、またいやらしい目つきで麗ちゃんのお
っぱい見てるー!」
「み、見てないだろ! ななな、なに言ってんだよ!」
 またってなんだよ、またって! 自分の兄をおっぱい星人扱いするんじゃない!
「そうだったんですか、おにーさん? それならそうともっと早くに言ってくれればよか
ったのに。おにーさんにだったらべつに構いませんよ。はい、どうぞ……」
 とんでもないことに、麗ちゃんはずいっと俺の目の前にその豊満な双子の果実を差し出
してきた。
 実はこの真帆奈の親友は、もの凄くノリがいいのだ。そしてこの場合は、俺をからかう
というよりも真帆奈をからかって楽しんだりする。
「わー、だめだよ麗ちゃん! お兄ちゃんにそんなエッチことさせたらだめなんだか
らー!」
「あらっ、どうしてなの真帆奈? おにーさんにはいつもお世話になってるんだから、こ
れくらい私はどうってことないわよ?」
 むしろ当然の権利と付け加えた麗ちゃんは、俺にチラチラとアイコンタクトを送りなが
ら笑いを堪えている。
「だめなのー! それだったら真帆奈の方がお兄ちゃんにいーっぱいお世話して貰ってる
んだから、真帆奈のおっぱいを触って貰うんだもん!」
「お前、触るような胸ないじゃないか」
 間髪入れずに俺がツッコむ。
「な、な、なんて失礼なこと言うのお兄ちゃん! これでも真帆奈のおっぱいは、去年よ
りも六ミリもおっきくなってるんだから!」
 誤差の範囲じゃねーか。
「嘘付け、小学校の頃から全然変わってないじゃないか」
「うー! な、なんてひどいことを!? だったら触って確かめればいいよ! ほんとに
おっきくなってるんんだもん! 真帆奈だってちゃんと立派に成長してるんだから!」
「真帆奈、もう諦めなさい。おにーさんは、私の胸の方がいいって言ってるんだから。
ふふっ、これでおにーさんは私の物ね。これからは涼介さんって呼ぼうかしら」
 頬に手を当て身体を艶めかしくくねらせる麗ちゃん。
 本当にエロイ身体してるな、この娘は……。
「俺も麗ちゃんのことを、これからは麗って呼ぶよ」
 できるだけ平静を装ってはいるが、内心はドキドキの俺。
「涼介さん……」
「麗……」
 俺と麗ちゃんがふざけて見詰め合っていると、真帆奈は、
「だめだめだめーっ!!」
 と、叫びながら俺と麗ちゃんの間に割って入り、麗ちゃんに向かって言い放った。
「いくら麗ちゃんでもお兄ちゃんだけはだめなんだよ! お兄ちゃんは真帆奈だけのお兄
ちゃんなんだからー!」
「真帆奈……それは涼介さんが決めることよ」
「う、麗ちゃんの裏切り者ー! お兄ちゃん! 真帆奈と麗ちゃん、どっちを選ぶのか今
すぐ決めて! 真帆奈はお兄ちゃんのことを信じてるんだよ!」
 なんか調子に乗って麗ちゃんと話を合わせてたら、とんでもない方向に話が進んでしま
ったな。このあたりでお開きにしとくか。
「はいはい、冗談はもう終わりな」
「……えっ!? ええっ??」
 狐に抓まれたような顔をしている単純なマイシスター。
「じょ、冗談だったの!?」
「ふふっ、ごめんね真帆奈」
 クスクスと楽しそうに麗ちゃんが謝罪する。
「うー、二人ともいじわるだよ! なんでそんなことばっかりするのー!」
「そもそもお前が馬鹿なことを言うのが悪いんだろ」
 俺が麗ちゃんの胸をチラ見していたのは紛れもない事実なのだが、真実はいつも闇の中
に隠されるものなのだ。
「だいたいなんでお前は、帰ったらいつも俺の部屋にいるんだよ」
「ごめんなさい、おにーさん。勝手におじゃましちゃって……」
「いや、麗ちゃんはべつにいいんだけどね」
「なんで真帆奈はだめで麗ちゃんはいいの!」
「自分の胸に聞いてみなさい」
 真帆奈は以前に大掃除と称して(自分の部屋はめったに掃除しない癖に!)、俺がいな
い間にマル秘コレクションを全部粗大ゴミに出したことがあるのだ。以来、お宝は全てパ
ソコンの中に保存することにしている。
「うー、そ、そんなことよりも、なんでこんなに帰ってくるのが遅くなったのか説明し
て!」
 なんでいちいち妹のお前にそんな説明をしなくてはいけないのだ?
「まぁまぁ、おにーさん。真帆奈はおにーさんの帰りが遅くて、ずーっと寂しかったんで
すよ」
 いつまでもたっても子供だな、うちの妹は。
「帰りは雫と一緒だったんだよ。買い物しながら色々と話してたから、ちょっと遅くなっ
たんだよ」
「えええっ、し、雫ちゃんと!? な、なんの話したの……?」
「いや、べつにたいした話はしてないよ。学校のこととかだけど……」
「うー、あれほど女の人についていったらだめだって真帆奈は言ったのに……」
 雫は知らない女の人じゃないだろ。だいたいなんで妹にそんな恨みがましい目で見られ
なきゃいけないんだよ。
「おにーさんおにーさん」
 チョイチョイと手招きしてくる麗ちゃん。
「真帆奈は、大好きなおにーさんが雫さんに取られないか心配してるんですよ」
 耳元でゴニョゴニョと説明してくれた。
 まったく馬鹿らしい話だ。雫はたんなる幼馴染なんだから、取るとか取らないとかの関
係ではまったくないのに……。
「あー、お兄ちゃんの顔が赤くなった! なになになに!? 雫ちゃんとなにかあった
の!? お兄ちゃんには真帆奈という将来を誓い合った妹がいるというのにーっ!」
 初耳だぞ! いったいどんな将来を誓い合ったんだ??
「あ、赤くなんかなってない! だいたいお前はもうすぐ十四歳になるんだから、そろそ
ろ少しは兄離れしたらどうなんだ」
 雫が言うように、いつまでも俺にべったりでは少々困るのだ。
 ……べ、べつに真帆奈が兄離れしても寂しくなんかないんだからね!
「なんて罰当たりなことをいうのお兄ちゃん! 真帆奈がお兄ちゃんから離れるなんて、
核戦争が起きて機械との戦争が始まっても、ぜーったいにありえないんだからね! 真帆
奈とお兄ちゃんは、ずーっとずーっと未来永劫死ぬまで一緒なんだから!」
 そんなにずっとお前の面倒を見させられるのは御免だよ。
「ふふっ、それなら私もおにーさんとずっと一緒ですよ」
 そんなに面白がらないでよ麗ちゃん。真帆奈が調子に乗っちゃうからさー。
「兄妹なんだからいつまでも一緒にいられるわけないだろ」
「そんなの愛の力があればだいじょーぶだよ!」
 ビシッと人差し指を俺に突きつけてくる真帆奈。
「心配しなくても、お兄ちゃんの老後のお世話は真帆奈がちゃーんとするんだから安心だ
ね」
「老人になるまで俺は独身貴族を貫くのかよ! いやだよ。平凡でいいから温かい家庭を
築きたいよ」
「真帆奈と結婚して温かい家庭を築けばいいよ。その頃には、兄妹でも結婚できる法律が
できてるに決まってるんだから」
 そんなぶっとんだ法律は、お隣の独裁国家でもできるわけねーよ。
「あらっ、それなら真帆奈は、おにーさんの赤ちゃんを産んじゃうの?」
 ああ……また麗ちゃんが余計なことを……。
「ええっ!? ……う、うん。お兄ちゃんが望むんだったら、真帆奈、お兄ちゃんの元気
な赤ちゃんをいっぱい産んであげるよ……」
 ポッと頬を桜色に染めて、瞳をうるうるさせながらこちらを見詰めてくる真帆奈。なに
やらよからぬ妄想をしているのか、鼻息が牛のように荒い。
 そんな女の目で実の兄を見るんじゃありません!
「はいはい、もう馬鹿な話は終了ね。麗ちゃんも、あんまり真帆奈をけしかけたら駄目だ
よ」
「ふふっ、ごめんなさい、おにーさん」
 麗ちゃんは、口元に小悪魔の微笑を湛えていた。
 火のない所で火を起こし、せっせ、せっせと薪をくべて燃料を補充する。それが真帆奈
の悪巧みの参謀長、秋山麗の華麗なる仕事だ。
「全然馬鹿なことじゃないよー! お兄ちゃんと真帆奈の幸せな未来設計の話なんだから
ねー! 赤ちゃんはちゃんと計画的に作らないと後で困るんだよ!」
 そんな穴だらけの未来設計なんて必要ないですから。
「じゃぁ俺はそろそろ夕飯の支度するから。あっ、そうだ。よかったら麗ちゃんも、うち
でご飯食べていかない?」
「あらっ、およばれしてもいいんですか?」
「なんで真帆奈のこと無視するのー!」
 ギャーギャーと妄想妹がうるさいが、もうきりがないので放っておく。
「もちろん大歓迎だよ。二人分作るのも三人分作るのも手間は同じだし、みんなで食べた
方が美味しいしね」
「そうですか……。ではお言葉に甘えることにします。ふふっ、おにーさんの手料理ゲッ
トです。あっ、それなら私もなにかお手伝いしますね」 
 麗ちゃんは、手先が器用なので即戦力なのだ。
「ありがとう。じゃぁキッチンに行こうか」
「真帆奈も一緒にお手伝いするー」
「えー、お前はいいよ」
 邪魔されるだけがオチなのだ。
「なんで真帆奈だけ仲間はずれにするのー! はっ、ま、まさか! 麗ちゃんと二人でエ
ッチなことしながら晩御飯を作るつもりなんだね! な、なんてことを!! いったいキ
ッチンでどんなエッチなことするつもりなの、お兄ちゃん!」
 なんでお前は兄をいつも変態扱いするんだ?
「するかアホ! だいたいお前はなんにもできないじゃないか」
「真帆奈だってやろうと思えばできるもん! 野菜の皮剥きとか、炊飯ジャーにお水を入
れたりとか、お皿並べたりとか、いーっぱいできるもん!」
 お前は、野菜の皮剥きだって皮剥き器使わないとできないし、炊飯ジャーの水の量は間
違えるし、皿は割るだろ。でも、このままだとうるさいしな。諦めるしかないか……。
「わかったわかった。じゃあ三人で作ることにしよう」
「うー、いじわるしないで最初からそう言えばいいんだよ。でも、それがお兄ちゃんの真
帆奈に対する愛情表現なんだよね。そんな素直になれない初心なお兄ちゃん心を、真帆奈
はちゃーんと理解してるんだからね」
 えっへん、と慎ましい胸を張る真帆奈さん。
 もうめんどくさいから好きに妄想してくれていいよ。
「ふふふっ、本当におにーさんと真帆奈は面白いですね」
 麗ちゃんは、本当に楽しそうに笑うのであった。
289チョ・ゲバラ:2010/05/20(木) 22:50:13 ID:vsgv7KBf
次回に続きまする〜
290名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 22:56:21 ID:4b6Pp0GQ
GJ
健気なキモウトはいいですね
291名無しさん@ピンキー:2010/05/21(金) 00:31:48 ID:UOgv1vEJ
妹かわいいなあ
雫も好きだけど
292名無しさん@ピンキー:2010/05/21(金) 00:41:56 ID:JBQhwMKl
勿論真帆奈も良いけど幼馴染みの雫が可愛いですねGJ
主人公の朴念仁ぶりもGOODです。
モブキャラまで立っているのは相変わらずお見事!

293名無しさん@ピンキー:2010/05/21(金) 07:47:57 ID:agehbTrR
GJ

鈍感にもほどがあるぞ、よくそれで
鋭い方だと言えたもんだw

麗はトラブルのモモ的キャラかな
294チョ・ゲバラ:2010/05/21(金) 21:19:07 ID:38TWQsbR
続きです〜
 三人で作った特製ふわふわハンバーグ(真帆奈はお皿を並べただけ)を歓談しながら完
食し、俺達は食後にアールグレイを楽しんでいた。
「おにーさんって、本当にお料理上手ですよね。毎日こんなに美味しいご飯が食べられる
真帆奈が羨ましいです」
「エヘヘ、いいでしょー。しかも隠し味には、真帆奈へのお兄ちゃんの愛情がたーっぷり
と入ってるんだよ」
 そんな得たいの知れない物を入れたつもりはない。
「べつにたいしたことないよ。麗ちゃんの方が、俺なんかより料理は上手いと思うよ」
 玉葱を素早く微塵切りにして手際よく炒めていく手捌きや、熟練した技術が必要な肉の
焼き方など、麗ちゃんの腕前はいつもながら見事なものだった。
 つーか麗ちゃん、また腕を上げたな。
「そんなことないですよ。あんな美味しいハンバーグ、私一人では絶対に作れませんよ」
「いやいや、ちょっとしたレシピの問題だから。麗ちゃんの料理の腕だったら、もっと美
味しいハンバーグが作れるよ。もういつでもお嫁にいけるレベルだと思うよ」
「あらっ、本当ですか。ふふっ、だったらおにーさんがお嫁に貰ってくれますか?」
 中学生とは思えない艶っぽい声色で、麗ちゃんが爆弾発言。
 ブブーと紅茶を吹き出す真帆奈。
「いいよ。麗ちゃんがお嫁に来てくれるんだったら大歓迎だよ。うちには一人だけうるさ
いのがいるけど気にしないでね」
「ふふっ、これで真帆奈は私の妹になるのね」
「ならないもんならないもん! 真帆奈はお兄ちゃんだけの妹なんだからー! お兄ちゃ
ん、大切な妹の目の前で麗ちゃんを誘惑するのはいい加減にやめて!」
 お約束どおり、ガーと真帆奈が噛み付いてくる。
 そんなんだからいいようにからかわれるんだよ。
「ごめんね、真帆奈。私とおにーさんは、もう将来を誓い合っちゃったから……」
「しょ、将来を誓い合った!? 真帆奈という可愛い妹がありながら、な、なんてこと
を!? そんな犯罪的なことは、お天道様許しても真帆奈はぜーったいに許さないんだ
よ!」
「お前は今までなに聞いてたんだよ。そんなもんしてるわけないだろ」
「えっ!? そ、そうなの?」
「ふふっ、ごめんね真帆奈」
「うー、なんでそんなにいじわるなことばっかりするの!」
「なんでもかんでも信じるお前が悪い」
 砂糖をたっぷりと入れたアールグレイを啜った。
 心地よい爽やかな香りと、気品溢れる芳醇な甘さが口内で拡がった。
「あっ、そういえば五月会のことなんだけど、二人はどこか行きたいところある?」
「もう五月なんですね。今年もみんなで行くんですか?」
「雫と光は大丈夫って言ってたよ。麗ちゃんも行けるんだろ?」
「もちろん大丈夫ですよ。おにーさんの行くところだったら、私はどこへでもお供します
よ」
 時々この娘がどこまで本気なのかわからなくなるよな。
「真帆奈はどこか行きたいところないのか?」
「うー……」
 真帆奈はプクーっと頬を膨らませ、拗ねてる真っ最中だった。
「おーい、真帆奈さーん、聞いてるー?」
 膨らんだホッペをつんつんと突つきながら聞いてみる。
「うー……」
 子猫が唸る。
 アレをやってくれないと絶対に機嫌を直さないぞ、という固い意思表示だった。
 しょうがない奴だな……。
 真帆奈の頭をナデナデしてやった。柔らかい黒髪は、本物の絹のようにすべすべで優し
い手触りだった。
「エヘヘ……」
 途端に真帆奈の顔が破顔した。
 もう機嫌が直った。山の天気のような奴だな。
 麗ちゃんは、そんな光景を母性溢れる眼差しで見詰めていた。
「真帆奈はねー。うーん、お兄ちゃんと一緒ならどこでもいいや」
 もっと自主性を持って貰いたいんだけどな。最近の子供は、まったく……。
「去年はどこに行ったんだったかな? えーっと、確か……」
「遊園地に行ったんじゃなかったんですか?」
「そうだよー。お兄ちゃんと一緒にお化け屋敷に入ったの真帆奈覚えてるもん」
「ああ、そうだったな。それだったら今年は……いっそのこと温泉にでも行ってみよう
か? なんだったら一泊してもいいし」
「温泉いいですね。私、みんなと一緒に行ってみたいです」
「真帆奈も温泉行きた〜い。それでねー、お兄ちゃんと一緒に温泉入って身体の洗いっこ
するの。お兄ちゃんったら、最近ぜんぜん真帆奈と一緒にお風呂に入ってくれないんだも
ん。昔は毎日一緒に入ってたのにー」
「私も一緒に入ってましたよね、オ、フ、ロ」
「それって子供の頃の話でしょ!」
 まだ真帆奈と麗ちゃんが小学生だった頃の話だ。麗ちゃんは、その頃からすでに今の真
帆奈くらいの胸の大きさだったんだけどな……。流石にこれはマズイと思ったよ。
「でもでも、恥ずかしがるお兄ちゃんも可愛いよ。温泉行ったら真帆奈がお兄ちゃんの身
体を隅々まで洗ってあげるね。エヘヘ……」
「……」
 あんまり深く考えずに適当に言ってみただけだったんだが、二人の食い付きはかなりい
いようだ。
「じゃあ雫に話しとくよ。でも、あの二人は一泊するの大丈夫かな?」
「雫さんも光君も部活頑張ってますからね」
「雫ちゃんと光ちゃんが泊まるのだめだったら、私達三人だけで泊まればいいよ」
 児玉姉弟は日帰りか……、それはちょっと可愛そうな話だな。よしっ、後で雫にメール
でもしとくかな。
「あらっ、もうこんな時間。私そろそろ帰りますね」
 ストレートのアールグレイを飲みきった麗ちゃんは、悠然と立ち上がった。
「えー、麗ちゃんもう帰っちゃうの」
「うん。また遊びに来るからね」
 なんだかんだでこの二人、本物の姉妹みたいに仲いいよな。いいコンビだ。麗ちゃんみ
たいなしっかりした娘が、見かけ意外はパッパラパーの妹のそばにいてくれるのは、正直
兄としては大変にありがたい。
「家まで送ろうか?」
「ふふっ、すぐそこなんですから大丈夫ですよ」
 麗ちゃんの家は、ここから歩いて三分もかからない。
「そっか、じゃあ気を付けて帰ってね」
「はい。今日は本当にご馳走様でした」
「麗ちゃん、またねー」
 俺と真帆奈は、玄関まで麗ちゃんをお見送りする。
 で、また一悶着が……。 
「こんなに素敵な夕飯をご馳走になったんだから、おにーさんにはなにかお礼をしないと
いけませんね」
「えっ、そんなのべつにいいよ」
「いーえ、それでは私の気が済みません」
 人差し指を唇に当て、なにかよからぬ悪巧みの麗ちゃん。
 もの凄く嫌な予感がするな。
「そうだ」
 麗ちゃんが、ちょいちょいと手招きしてくる
 はっきり言って聞きたくないな。
「今度、真帆奈に内緒で私の胸を触り放題にしますね。おにーさんなら特別に直でもしい
いですよ。ふふっ」
 やっぱりな……。
「麗ちゃん、だめだよー! 真帆奈に内緒でお兄ちゃんにそんなことさせたら、ぜーった
いにだめなんだからね!」
「あらっ、それなら内緒じゃなければいいのかしら?」
「内緒じゃなくてもだめなの! お兄ちゃんは、真帆奈のおっぱいだけで滾った欲望を満
足させてるんだからー!」
「あらっ、そうだったんですかおにーさん。それは残念です。ふふっ」
 もうどうにでもして頂戴。
「はいはい。麗ちゃん、早く帰らないと遅くなるよ」
「それではおじゃましました。真帆奈も、またね」
 ペコリと頭を下げた麗ちゃんは、先が尖った尻尾をフリフリしながらご機嫌に帰った。
「うー!」 
 で、うちの妹様は大変にご機嫌ナナメの様子だ。
「なに?」
「前々からずーっと思ってたんだけど、お兄ちゃんと麗ちゃんって、仲がよすぎるって真
帆奈は思うの……」
 ぶーたれながら真帆奈が言った。
 仲がいいというか、あれは遊ばれてるって感じだけどな。高校生を簡単に手玉に取ると
は、末恐ろしい娘だ。
「そうかなー、普通じゃないの?」
「普通じゃないよー! 真帆奈よりも麗ちゃんの方がホントの妹みたいだったもん!」
 麗ちゃんみたいな妹がいたら、お前とはべつの意味で大変だな。
「なにが言いたいのかよくわからんけど、妹はお前だけで十分だよ」
「ええっ!! そ、それは本気で言ってるの、お兄ちゃん!?」
「嘘ついても仕方ないだろ」
「ホントに妹は真帆奈だけでいんだよね! ぜーったいに他所で真帆奈以外の妹を作った
りしないよね!」
 どうやって俺が他所で妹を作るんだよ! そんなことは親父とお袋に言ってくれよ!
「作らねーよ! つーか、なんでお前はそんなに妹にこだわるんだよ」 
「そ〜れ〜は〜、お兄ちゃんと妹の関係は、絶対不可侵の神聖な関係だからなんだよ」
 さっぱり意味がわからん。もう付き合いきれんよ。さて、風呂でも沸かそうかな。
「あー! せっかく真帆奈がいいこと言ってるのに、なんで無視して行っちゃうの!」
「馬鹿なことばっかり言ってないで、風呂沸いたら先に入れよ」
「うー!」
 真帆奈の子猫のような唸り声を後にして、俺はバスルームへと向かった。

 
 風呂を沸かして夕飯の後片付けをしたら、俺のささやかなプライベートタイムが始まる。
いちいち学校であったことを報告してくる真帆奈は風呂に入ったので、暫くの間は静かだ
ろう。この時間を有意義に使うことにしよう。
 自分の部屋に行きパソコンを起動。鞄の中から今朝入手したDVDを取り出した。
 別に疚しいことをするつもりなんかないんだからね! ただ折角黒木にコピーして貰っ
たんだから、中身ぐらいはちゃんと確認しとかないと悪いしな。おっと、ちなみにゲーム
やアニメを勝手にコピーして人に渡したりするのはいけないことだから、よい子のみんな
は絶対に真似しちゃ駄目だぜ。キリッ。
 全部エロゲーだったので、とりあえず全部インストールしといた。
 エロゲーといっても雫みたいに馬鹿にするなよ。一般のゲームと比較しても遜色ない作
品だってかなり沢山あるのだ。まだまだ世間からは偏見が強かったりするので、市民権を
得るのは難しいだろうがな。それに、アグ○スから目の敵にされても文句が言えないよう
な作品があったりするもまた事実。エロゲーとは、横に狭くて果てしなく奥が深いものな
のである。
 ちなみに黒木の守備範囲はことの他広い。つーか広すぎる。一人で内野と外野を守り、
投手と捕手とバッターまで兼任しているようなもんだ。萌え、泣き、笑い、陵辱、触手、
ロリ、妹、姉、熟女、寝取られ……、とあらゆるジャンルの属性を装備している。
 俺なんか黒木と比べたら、まだまだファームで素振りをやってるひよっ子みたいなもの
だろう。特に妹物だけは、どうしても身体が受け付けないしな。つーか、実際に妹がいた
ら普通はNGだろ。更なる高みを目指し、自ら己の変態を日夜練磨する黒木には本当に頭
が下がるよ。
 とりあえずゲームを起動させてみた。
「ジブリール4か……」
 最近発売されたばっかりの新作ゲームだった。
 これって絵は随分とおしゃれだったりするんだけど、中身は陵辱とか触手がメインなん
だよね。俺はあんまりその手のジャンルが好きではないのだ。妹物ほど受け付けないわけ
ではないのだが、好んでやりたいとも思えない。が、ゲームを親切でコピーしてくれた友
人は決まって次の日に、
「どうだった、おもしろかったか?」
 と、子供のように純真な顔で感想を聞いてくるお約束があるので、そこでわざわざコ
ピーして貰っておいて、
「いや、まだ全然やってないんだよ」
 と、答えるのも大変に心苦しかったりする。
 であるからして、ある程度は感想が言えるくらいゲームを進めておく必要があるのだ。
するのが嫌でもな。小市民とは、細かい気を使う哀れな生き物なのだ。
 で、暫くゲームを進めてみる。
「しかし、なんだかんだ言っても、やっぱり絵は綺麗だよな……」
 ゲームの内容に関しては、ググればいいのでいちいち説明はしないが、これは食後のデ
ザートとして十分に使えそうだぞ……、というのが率直な感想だった。どっかのベースを
弾いてそうな黒髪ロングもいるし、普通のエッチシーンもいくつかあるようだ。俺の下半
身のもう一つの人格が、ムクムクと鎌首を擡げようとしていたその時であった。
 そんな切ない事情を見透かしているかのように、携帯電話がニャーと鳴いた。
 メール着信。
 麗ちゃんからだった。
『今日は本当にありがとうございました。これは私からのささやかな感謝の印です。もし
もこれで満足できなかった場合は、メールください?』
 送付されていた画像を開けたら吃驚仰天。
「ぶーーっ!! 麗ちゃん、な、なんのつもりなのこれは!!」
 おそらく脱衣所の鏡に向かって写真を撮ったのであろう。上半身がスッポンポンの麗ち
ゃんが、その巨大で完熟した双子の果実を片腕だけで覆い隠し、ぱっちりと妖艶にウイン
クをしている犯罪スレスレ画像だったのだ。いや、これは場合によっては完全に児童ポル
ノ法違反だろう。
 お風呂上がりなのだろうか、麗ちゃんのピチピチとした柔肌はほんのりと桜色に染まっ
ており、髪はしっとりと濡れて色っぽく、ボヨ〜ンと華奢な片腕からはみ出た下乳横乳は
まさに圧巻。ムンムンのお色気が、携帯のディスプレイの向こうからでも漂ってきそうだ
った。
「けしからん! まったく、けしからん!」
『麗ちゃん、女の子がこんなけしからん写真を男なんかに送ったら駄目だよ!』
 と、ドギマギしながら説教メールを送信した。
 すぐに返信が来る。
『ふふっ、おにーさんに歓んで貰えて光栄です。真帆奈には内緒ですよ?』 
 なんて怖い娘なの! まったく、女の子がこんなはしたないことしたら駄目なのに……
で、でも、こ、これは……エロイな。中学生がこんなにいやらしい身体をしてて本当にい
いのか? つーか、もう下半身の第二人格がパオーンと大変なことになってしまったんだ
けど……。
 もはや、ことは一刻を争う状態。俺は黒髪ロングキャラの手ごろなシーン回想を選択す
ると、自家発電に勤しむためおもむろにズボンをずり下げようとした。
 その刹那、
「お兄ちゃーん、ブラッシングしてー」
 と、バスタオルを頭に巻いた風呂上りの招かれざる妹が、俺のプライベートルームを急
襲してきた。
 慌てて俺は脱ぎかけていたズボンを履き、エロゲーを終了させた。まさに間一髪だった。
「ま、真帆奈!! 部屋に入るときはノックしなさいって言ってるだろ!」
「あっ、ごめんなさい。エヘヘ……」
 まったく反省の色なし。
 危うく修行中の俺とニアミスするところだったんだぞ……。まったく、想像しただけで
も身の毛がよだつじゃねーか。
「で、なんなの?」
「ブラッシングだよ、ブラッシングー」 
 真帆奈は、ドライヤーと愛用のブラシを手に持っている。
 これで俺に髪を乾かせというのだ、うちの妹様は。
「そんなこともう自分でやりなよ。俺は忙しいんだから」
 お兄ちゃんは、これからアリストテレスの形而上学についての論文を纏めないといけな
いから、お前に構っている暇などないのだ。
「えー、なんでなんで。いつもしてくれてるのにー。急にそんなこと言われても真帆奈困
るよー」
 そうなのだ。妹の髪を乾かすことまでもが、なぜか俺の仕事のようになってしまってい
るのだ。
「お前ももう中学生なんだから、自分でできることは自分でしような」
「だめだよー。ブラッシングの時間は、真帆奈とお兄ちゃんがマリアナ海溝よりも深い兄
妹の絆を確かめ合うとっても大切な時間なんだよー」
「俺にとっては全然大切な時間じゃないよ」
 むしろかなりめんどくさい。
「なんでそんなこと言うのー! お兄ちゃんは、真帆奈のことを愛してないのー!」
 ワーワーと地団太を踏む真帆奈。
 しかし、うるさい奴だな……。
「わかったわかった……もうやるよ。ほらっ、そこに座りな」
 あんまり甘やかすのもこいつのためにならないんだろうが、俺がやらないとちゃんとド
ライヤーを使って乾かさない可能性もあるしな。
 女の子の髪の毛は、非常にデリケートなのだ。濡れたまま状態ので放っておくと、キ
ューテクルが破損してすぐに痛んでしまう。特に真帆奈のように柔らかな髪質は、毎日の
ケアが肝心なのである。
「やったー。だからお兄ちゃん好きー」
 真帆奈は頭に巻いたタオルをはずし、クッションの上にペタンと女の子座りした。華奢
な背中が濡れた黒髪に覆い隠された。濡れた髪をブラシで梳くと髪が痛むので、まずはド
ライヤーで乾かすことにする。真帆奈は鼻歌交じりにご機嫌なご様子。ドライヤーのスイ
ッチオン。手早くやってしまいますかね。
 まぁなんだかんだ言っても、それほど真帆奈の髪を乾かすのは嫌ってわけでもないんだ
けどね。これでこいつの髪が綺麗になるんだったら、なにも文句は言わないよ。よく訓練
された黒髪ロンガーとしては、痛んだ黒髪を見るほど心が痛むことはないのだ。
「お前、髪伸びたよな」
「これはね〜、お兄ちゃんのために伸ばしてるんだよ」
「えっ、そうなのか……」
「そうだよ〜。お兄ちゃんが髪が長い女の子が好きって言ったから、真帆奈はそれから
ずーっと髪を伸ばしてるんだよ」
 そんなこと真帆奈に言ったかな……。
「まぁ、伸ばすのはべつにいいんだけど、毎日きちんと手入れしないと綺麗な髪にはなら
ないんだぞ」
「それはお兄ちゃんがちゃんとやってくれるから、真帆奈は安心だね」
「あのなー、俺だっていつまでもお前の面倒は見れないんだから、お前がお嫁に行ったら
自分でなんでもしないといけないんだぞ」
「真帆奈はずっとお兄ちゃんのそばにいるから平気だよー」
 当たり前のようにおっしゃりやがる真帆奈。
 つーか、こいつ本当に告白とかされてんのかな? まぁ確かに兄の目から見ても、見た
目はいいと思うよ。ちょっと子供っぽいけどな。でも、後二、三年もすれば、あの東郷さ
んと正面から張り合えるくらいになるかもしれないな。中身の方はいつまでたっても成長
しそうにないけど……。
「お前さー、学校で告白されてるんだってな?」
「えええぇぇーっ!! ななな、なんでお兄ちゃんがそんなこと知ってるの!?」
 予想外の驚き方だった。
「なんでって……聞いたから……」
「ま、まさか、麗ちゃんから!? うー、お兄ちゃんには絶対に言わないでって口止めし
といたのにー!」
「いや、麗ちゃんから聞いたんじゃないよ。風邪の噂でちょっと耳にしたんだよ」
 べつに深い意味はないが、あえて雫から聞いたとは言わないことにした。
「べ、べつにお兄ちゃんに隠しごとしてたわけじゃないんだよ! みんな断ってるんだし、
いちいちお兄ちゃんに報告する必要ないって思ってただけなんだよ! 本当だよ!」
「なんだ、断ってるのか?」
 ちょっとだけ、ほっとした俺がいた。ほんのちょっとだけなんだからね! だいたいみ
んなって……いったい何人から告白されてんだよ。
「当たり前だよー! 真帆奈がお兄ちゃん以外の男の人と付き合うわけないもん!」
「いやいや、兄妹は付き合えませんから」
「うー、またそんないじわるなこと言うし……」
 まったくの正論だと思うんだけどな。
「……お兄ちゃんは、真帆奈がお兄ちゃん意外の男の人と付き合ってもいいって思ってる
の……?」
「そりゃー、いずれはお前にも好きな人ができるだろうし、そうなれば付き合うことにだ
ってなるだろ」
「いずれのことなんか聞いてないの! 今お兄ちゃんがどう思ってるのか真帆奈は知りた
いんだよー!」
 俺がどう思ってるかね……。まぁぶっちゃけ、こいつが恋人を作るのはまだまだ早いと
思うよ。べつに俺が寂しいとかそんなレベルの話じゃなくてだな。もう少し落ち着いてか
らにして貰いたいってのが俺の本音だな。でないと心配で胃に穴が開いちゃうよ。
「そういうことに興味がある年頃だとは思うけど、べつに無理して付き合う必要はないん
じゃないかな。まぁ、お前もそう思って断ってるんだろうけどな」
「……お、お兄ちゃん……真帆奈は感激してるよ!!」
 えっ? そんな興奮するようなこと言ったかな? 
「な、なにが?」
「『お前は俺の女なんだから、他の男と付き合うなんて絶対に許さねーぞ!!』ってお兄
ちゃんは言いたいんだよね!」
「そんなこと言ってないよ! だいたいなんなのそのキャラ設定は! 俺ってそんなこと
いうキャラじゃないじゃん!」
 真帆奈は俺の言葉を自分に都合よく解釈する癖があるので時々困る。
「安心してお兄ちゃん、真帆奈はお兄ちゃん一筋なんだからね! 真帆奈の身体を自由に
していいのはお兄ちゃんだけなんだよ!」
 しかも全然聞いてないし!
「はいはい、もう馬鹿なことはいいから」 
「バカなことじゃないのにー」
 そんな一銭の得にもならない話をしながらも、俺は真帆奈の髪にドライヤーを当て続け
ていた。これだけ長いと乾かすだけでも結構な労力なのだ。
「だいたい乾いたんじゃないかなー?」
 照明に照らされた真帆奈の黒髪は、まるで鮮やかに光り輝く黒曜石のようだ。その黒曜
にブラシを入れて優しく梳いていくと、シャランと硝子のような音色が耳朶を掠めるよう
な錯覚を覚えた。
「うにゃ〜、これ気持ちいい〜。し〜あ〜わ〜せ〜」
 ほにゃー、といった感じで、真帆奈は全身を弛緩させた。
 妹様に歓んで貰えて兄も幸せだよ。決して皮肉ではないよ。達観しているだけだから。
「ね〜、お兄ちゃん〜」
「んー?」
「お兄ちゃんは、おかしな女の子から言い寄られたりしてないよね?」
 おかしな女の子がどんな女の子なのか、皆目見当がつかないよ。
「生憎そんな幸運に巡り合ったことは、生まれてから一度もないな」
 いったいこの兄妹格差はなに? まさに格差社会の縮図がここに存在するな。
「ほんと〜?」
「嘘なんか言っても仕方ないだろ」
「ふふっ、よかったー。女の子にはくれぐれ気を付けないとだめだよ。お兄ちゃんに言い
寄ってくる女の子は、後で必ず壺とかお墓とか買わせたりするんだからね」
「俺には詐欺師しか言い寄ってこないのかよ!」
「それから睡眠薬を無理矢理に飲まされて、その後、練炭で……うー、これ以上は真帆奈
は怖くて言えないよ!」
「殺されちゃうのかよ!」
「だ〜か〜ら〜、真帆奈意外の女の子はみんな敵だって思わないとだめなんだよ。わかっ
た、お兄ちゃん」
「なんでお前は俺がブルーになることばっかり言うんだよ!」
「真帆奈はお兄ちゃんのためを思って忠告してあげてるだけなんだよ」
 どう考えてもいやがらせにしか思えん。
「もういいよ……。つーか終わったぞ」
 こんな酷い仕打ちを受けながらも、妹の髪を綺麗にブラッシングし終えた。
 偉い兄だろ。
「えー、もう終わり?」
「そうだよ」
「うー」
「そんな物欲しそうな目をしたって、もうやんないからね」
「わかった……。お兄ちゃんのブラッシングが気持ちよすぎて、真帆奈なんだか眠たくな
っちゃったよ……」 
「そっか、じゃぁ部屋に戻ってさっさと寝なさい」
 お兄ちゃんには、これから荒修行が待ってるんだからな。
「うん、そうする……」
 これで漸く先程のプライベートタイムの続きかと思いきや、なんとこのお嬢様は、俺の
ベットの中に潜り込みやがった。
「……」
「うにゃ〜、お兄ちゃんの匂いだ〜……いい匂い〜……。お兄ちゃ〜ん……早く来て…
…」
 俺は、猫のように真帆奈の首根っこを捕まえると、ポイッと部屋の外へ放り出した。そ
して素早くドアを閉め、不審者が中に入ってこれないようにドアを押さえた。
「うー、なんでこんなひどいことするのー! 真帆奈をこんなにも甘い言葉でその気にさ
せておいて、こんなのやるやる詐欺だよー! おにー! あくまー! ひとでなしー!」
 意味不明なことをワーワーと喚きながら、ガチャガチャとドアノブを回す真帆奈。
 去れ!!
 暫くの間真帆奈は、一人虚しくドアと格闘していたが、漸く俺の気迫が通じたのか、
「うー!!」
 と、いつもの捨て呻き声を残して自分の部屋へとすごすごと帰った。
 はぁ……、なんかやることやる前に疲れちゃったな。俺も風呂に入って寝ることにしよ
う……。
 そんなこんなで本日も平和な一日が終わりを告げた。
 おおむね乃木家の日常は、いつもこんな感じだったりする。
 日常にスリルとサスペンスなんていらないよね。
 やっぱり平凡が一番。
 どうか明日も平和で平凡な一日になりますように。
 

 主婦の朝は早い。
 学校が休みだからといっても、兄は妹様のように暢気にいつまでも寝ていられるわけで
はないのだ。
 溜まった洗濯物を洗わないといけないし、家の掃除や日常用品の買出しもしなければな
らない。散らかすだけ散らかして後片付けをしない人間が約一名いるので、俺が働かなけ
ればこの家はあっという間に廃墟になってしまうだろう。
 さいわい昨日に続いて本日も快晴なので、洗濯物がよく乾いて大変に気持ちいい。トイ
レ掃除をしながらそんなささやかな小市民の幸せに浸っていると、ぐーと腹時計が鳴った。
携帯電話で時間を確かめてみると、そろそろ正午になりそうな頃合。働いていると時間が
たつのが早く感じる。そろそろ真帆奈が冬眠から目覚める頃なので、昼食の準備に取り掛
ろうとしたところで、
 ピンポーン。
 と、インターホンが鳴った。
 玄関に出ると佐川急便だった。青と白の縞々佐川ルックのやたらと元気な若い運転手か
ら宅配物を受け取った。アマゾンからだった。真帆奈宛になっている。最近よく真帆奈宛
に荷物が届くのだ。いったいなにを買っているのか気にはなるのだが、兄妹とはいえプラ
イバシーがあるので中身を確かめるわけにもいかず、真帆奈が起きて来たら渡そうと宅配
物をキッチンのテーブルの上に放置した。
 この真帆奈宛の一つの宅配物が、後に俺達兄妹の運命を変えてしまうような重大な事件
の発端となるなんて、この時の俺は、まったく想像すらしていなかった――。
303チョ・ゲバラ:2010/05/21(金) 21:25:04 ID:38TWQsbR
長くて申し訳ないんだけど、まだ続くんだな・・・
304名無しさん@ピンキー:2010/05/21(金) 21:39:52 ID:xinc0zFa
>>303 期待して待ってるんだなだな
305名無しさん@ピンキー:2010/05/21(金) 21:45:56 ID:ZYmBI1Kd
GJ
麗ちゃんかわいいんだないいぞもっとやれ
306名無しさん@ピンキー:2010/05/21(金) 22:19:12 ID:Gx3IBYTy
いいねえいいねえ!今後の麗の行動に期待
307名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 00:02:03 ID:C1i51NM/
面白いなーこのスレ
でも妹スレとの違いが分からない
病み成分?
308名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 00:30:08 ID:dxYMcj7a
>>307
まあ、そんな感じ
保管庫読んでくるのをオススメする
309名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 01:30:22 ID:Ki5frS4k
こういうドロドロとした愛憎や殺傷要素の無いライトなキモ成分の妹も悪くはないな…
とは思ってたが郵便物のせいでどうなる事やら
310名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 02:10:26 ID:tyfMhlA0
あと職人とか投下も多いのがとても良い
311名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 02:26:18 ID:6Uf++G9v
>>307
姉もいるし
姉妹に萌えるというよりは姉妹の兄弟への愛情表現に色んな意味でゾクゾクするスレです
312名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 06:53:05 ID:uDBOfyxb
ちがうよ
313名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 08:43:45 ID:rtPnux08
>>307
ようこそヤンデレの世界へ
ここに来てしまったからには他スレへの浮気は許されないよ、フヒヒ
314名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 10:47:36 ID:JfqYNTIw
姉が自分に劣情を抱いているとは夢にも思わず
無邪気に姉に懐いており無防備に姉に抱き付いたり甘えたりするショタ弟
315名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 11:45:21 ID:Mj9YR3Pw
>>314
つ 秋冬to玉恵シリーズ
316名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 13:46:19 ID:QNOrkYfg
GJです!

麗がツボった
317名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 19:47:05 ID:JeBT/TR6
318チョ・ゲバラ:2010/05/22(土) 22:58:29 ID:8caCP4BU
チョリースッ。
続きです〜。
 昼食は、涼介特製ラーメンに決定なう。
 『サッポロ一番 みそラーメン』を使用する。
 なんだインスタンとかよ、と侮るなかれ。ほんの少し手間を加えるだけで、普通に店で
注文するようなラーメンと引けを取らない美味しさになるのだ。実に簡単だから、ぜひ皆
さんにもやって貰いたい。
 昨日の挽肉が残っているので、これをもやしとキャベツと一緒に炒める。で、塩と胡椒
で味付けしたら、はい完成。この肉もやしキャベツ炒めを卵を溶かして作ったラサッポロ
一番の上に乗せ、最後に決め手となるネギ油をかけるとあら不思議。激うまラーメンの出
来上がりなのだ。
 ねっ、簡単でしょ。
「おはよ〜……うにゃ〜いい匂い〜」 
 どうやら腹を空かせた妹クマが、匂いに釣られて巣から這い出てきたようだ。
「おはよう。こんな時間までよく寝むれるな?」
「寝る子は育つんだよ」
 真帆奈は、寝起きのだらしないパジャマ姿のままテーブルの自分の席に着き、できたて
の涼介特製ラーメンをジーッと見詰める。今にも涎を垂らしそうな勢いだった。
「……食べる?」
「えっ、いいのー?」
「いいよ。俺のはまた作るから」
「わ〜い、食べるー。だからお兄ちゃん好きー」
 寝たいだけ寝て、食べたい時に食べる。まさに野生児だな。
「いただきま〜す」  
 フーフーと麺を冷ましながら、真帆奈はラーメンをがっつき始めた。
「あっ、そういえばお前に荷物届いてるぞ」
「ぶーーっ!!」
 吹き出しやがった! 
「なにやってんのよ……?」
「ま、真帆奈の荷物、お兄ちゃんが受け取ったの!?」
「そうだよ。そこに置いてるだろ?」
 俺が指差す先のアマゾンの箱を見て、明らかにほっとした表情になる真帆奈。
 あからさまに態度が怪しい。
「なに買ったの?」
「えっ!? ……べ、べつにお兄ちゃんが興味のある物じゃないよ」
「だから、なに買ったのさ?」
「……さ、参考書だよ」
 キョロキョロと真帆奈の目は熱帯魚のように泳いでいる。そんな目をして秋葉原を歩い
ていたら、お巡りさんに一発職質並の挙動不審さだった。
 増々怪しいな。
 こうなってくると荷物の中身がもの凄く気になってくるのだが、あえてそれ以上追求す
るのはやめにした。告白の件でもそうなのだが、なんでもかんでも真帆奈が自分のことを
俺に話す必要はないのだ。兄妹でも秘密があって当然。まぁ、こいつも少しづつ大人に成
長してるってことだな。
「そうか、参考書か。まぁ、あんまり無駄遣いはしないようにな」
「うん、わかってるよ〜。ごちそうさまー」
 早っ!
「もう食べたの!?」
「お兄ちゃんのラーメンすっごく美味しかったよ。じゃぁ真帆奈は部屋に戻るね〜」
 怪しげな宅配物を持って、真帆奈はそそくさと自分の部屋へと戻った。
 うーん、なんだかんだ言ったけど、やっぱり気になるな……。
 ズズーと麺を啜りながらそんなことを考えていると、携帯電話がニャーと鳴いた。
 メール着信。
 麗ちゃんからだった。
『お忙しいところすいません。実は真帆奈の携帯に電話が繋がらないので、おにーさんか
ら真帆奈に、こちらに連絡するように言って貰えませんか? お礼に今度、おにーさんが
リクエストするボヨヨ〜ンな写真を送っちゃいます。メイドにしますか? 白衣にします
か? それとも、ハ、ダ、カ?』
 こんなことでそんなお礼なんかしないでいいですから! もっと自分を大切にしないと
駄目なんだからね! まったく。俺があの児童ポルノ法違反画像を悪用したら、いったい
君はどうするつもりなのさ。まぁそんなことは絶対にしないけど、これは一回ちゃんと説
教しとかないといけないな。
 俺は二階へと上がり、真帆奈の部屋のドアをノックした。
「おーい、真帆奈。入るぞー」
「えっ、お、お兄ちゃん!?」
 ドアを開け部屋の中に入ると、真帆奈は丁度アマゾンの箱の封を切って、中身のブツを
取り出している最中だった。
「だ、だめーーっっ!!」
 劈くような悲鳴を上げて、その取り出したブツを素早く背中に隠す真帆奈。
 だがしかし、ほんの少しだけ隠すのが遅かった。
 兄は、決して見てはいけない現場を目撃してしまっていたのだ。
「み、見た……??」
「……!?」
 咄嗟にはなにも言葉が出てこなかった。 
 それほどの強烈な衝撃。
 どこぞの霊能力者に無理やりエクトプラズムを引っこ抜かれたかのように、俺はその場
に立ち竦んで呆然としていた。
「はわわわわわ……!?」
 そんな俺の素の反応で事実を突き付けられた真帆奈は、頭から湯気を出さんばかりに頬
を真っ赤に染めていく。
「あ、あの……そ、その、真帆奈……」
「ででで、出て行ってーっ!!」
「えっ!? ちょ、ちょっと待って、話せばわかるから――」
「いいから早く出て行ってーっ!!」
 ぴょんぴょんとぬいぐるみ爆弾が飛んでくる。
「こ、こらっ、あぶないからやめなさいって、わぁぁっ!」
 リョースケの特攻をもろに顔面で受け止めた俺は、そのまま後ろに倒れ込んで尻餅をつ
いた。で、ぬいぐるみの向こうで、バタンと激しくドアが閉まる音が聞こえた。
「あたたた……」
 お尻を摩りながら立ち上がった。 
 見事な豪速球だったな。あんたドラフト狙えちゃうぜ。いやいや、そんなことよりも…
…。
「ま、真帆奈、その……ごめんな……変なタイミングで部屋に入っちゃって……。あ、あ
のさー。麗ちゃんからメールあったんだけど、お前に連絡して欲しいって言ってたぞ。お
前の携帯、電源入ってないんじゃないか?」
 無言。
 どうやら完全に拗ねてしまったようだ。
「真帆奈ー、聞こえてるかー?」
 応答なし。
 まいったな……。
「と、とにかくちゃんと伝えたからな。麗ちゃんに連絡するんだぞ」
 そう言うと俺は、逃げるように自分の部屋に入ってパソコンを起動した。で、ググる。
暫くの間、静寂の部屋にカチャカチャとマウスが動かされる音だけが木霊した。そして、
ついに網膜に焼き付いた記憶を元に目的のサイトを見つけ出し、
「間違いない……こ、これだ……」
 と、呻くように呟いた。
 俺が現在見ているサイトは、陵辱系美少女ゲームで有名な某メーカーのサイト。
 商品情報には、あられもない姿の美少女たちが白濁に塗れた画像と共に、こう宣伝文句
が書かれてあった。

『犯りまくれ! 嵌めまくれ! 射精しまくれ! 
 レイプの伝道師、あのザビエール正岡が驚天動地のグランドスラムレイプ!
 世界中の女は、神が俺に与えたもうた玩具!!
 猛々しい特大マグナムを肉悦の本能のままに雌穴にぶち込めっ! 無垢なる処女を犯し
尽くすのだっ!!

 「レイプ!&レイプ!&レイプ!」 大好評発売中!!』

 記憶と完全に一致。
 真帆奈がアマゾンで購入した物とは、間違いなくこの『レイプ!&レイプ!&レイ
プ!』だった。
 オーケ、わかった。とりあえず落ち着いて考えてみよう。真帆奈がなぜこんなエロゲー
を買っていたのか? しかも完全に陵辱系の抜きゲーだぞ。理解に苦しむな……。だいた
いグランドスラムレイプってなんなんだよ! お、おっと、いかんいかん、冷静になれ…
…。
 まぁ、真帆奈もそういうお年頃なんだし、女の子でもこの手のゲームに興味を持ったり
するのかもしれない。……しかしだ。なんでよりにもよってこんな鬼畜エロゲーなんだ
よ! いくらなんでもザビエール正岡はないだろ! こいつはやっぱり教育上問題がある
だろ? 今は両親がいないんだし、唯一の保護者である俺が窘めてあげるべきなのだろう
か? 俺も黒木に焼いて貰ってエロゲーしてる身分だから、あんまり偉そうなことは言い
にくいんだけどな。
 うーん……。あっ、そうだ! そういえば黒木にも妹がいたよな? もしあいつの妹が
この手のゲームを購入してたらどうするのか、それとなく聞いてみるか? うん、なにご
とも情報収集が肝心だな。
 で、さっそく黒木の携帯にメールを送信。
『突然こんなこと聞いて悪いんだけどさ。もしお前の妹が内緒でエロゲーを買ってて、そ
れをたまたまお前が見つけたとしたらどうするよ?』
 暫く待つ。
 携帯電話がニャーと鳴いた。
 さっそくメールを確認。
『断固脅迫する!!』
 お前に聞いた俺が、三国一の大馬鹿だったよ。まったく。糞の役にも立たない悪友を持
ったもんだぜ。
 さて、次の手はどうしたものか? 他にこんなことを相談できる相手といえば、やっぱ
り麗ちゃんくらいかな? 
 ……いやいや、それだと勘の鋭い麗ちゃんに真帆奈の秘密がばれてしまうかもしれない
な。こんなことであの二人の友情が壊れてしまっては元も子もない。そうなると、もちろ
ん雫に相談するのもアウトだ。そもそもあいつは、この手のゲームを毛虫のように毛嫌い
してるしな。今更かもしれないが、俺の交友関係の狭さがハッキリと露呈してしまったな。
 そこで、ぐーと腹の中の人が悲鳴を上げた。
 そういえば昼食の途中だったのだ。腹が減っては戦はできぬ。俺は再びキッチンへと戻
り、伸びたラーメンで腹ごしらえをすることにした。


「真帆奈さーん。ケーキ買ってきたんだけど一緒に食べないかー。お前の大好きなストレ
イキャッツのチーズケーキだぞー」
 ……反応なし。
 あの卑しん坊のことだから、ケーキにころっと釣られるだろうと思って買ってきのだが、
俺の見通しが甘かったようだ。どうやらケーキ程度では惑わされないほどに、真帆奈の心
の傷は大きかったみたいだ。
「そんな部屋に閉じこもってないで、顔を見せてくれよ。俺はあんなこと全然気にしてな
いんだぞ」
 できるだけ優しい声でドアの向こうに声を掛けてみたが、やはり返事はない。
「なぁ真帆奈ー、開けるぞー」
 意を決して部屋の中に入ろうとドアノブを握って回してみた。が、押しても引いてもド
アは開かない。
「あれっ?」
 ガチャガチャやってみたが全然無理だった。
 鍵は付いてないから開かないわけはないんだけど、あっ、まさか!? つっかえ棒かな
んかで中に入れないようにしてんのか?
「真帆奈、開けてよ。ちょっと話があるんだけどさー」
 ドンドンとドアを叩いていると、携帯電話がニャーと鳴いた。
 メール着信。
 真帆奈からだった。
『暫くの間、一人にしておいて……』
 そんなそっけないメールだった。
 それを見て俺はなんだかもの凄く心配になってき、間髪入れず真帆奈の携帯に電話をか
けた。
 実際に顔を見て話せないことでも、電話越しなら大丈夫かもしれない。
 プルル……ガチャ。
『おかけになった電話番号は、現在利用されていないか電波が届かない――」
 電源切りやがった! どうやら真帆菜は、完全に篭城するつもりのようだ。これはべつ
の手を考えるしかないようだな……。
 俺は自分の部屋へと戻り、一人作戦会議を行うのであった。


 あっ、という間に日は陰り夜が更けた。
 真帆菜はまだ部屋に閉じこもったままだった。せっかく作った夕飯の鳥の唐揚げも冷め
てしまった。結局一人で考えてみたところで名案など思いつくはずもなく、ただ悪戯に時
を浪費するだけだった。
 だってそうだろう? 妹が鬼畜エロゲーを購入していた事実を知ってしまった兄の対処
方法など、どこのインターネッツを探して書いていなかったのだから。
 藁にもすがる思いで某巨大掲示板にスレッドをそれとなく立ててみたのだが、
【ニュー速VIP+】 ちょっwww妹がエロゲー買ってやがったwww  

 1名前:名も無き地球外生命体
 妹が内緒でエロゲー買ってやがって、それを俺が偶然見つけたら部屋に閉じこもりやが
った。めちゃくちゃ気まずい……。俺はこの先どうしたらいいのかお前らも考えろ。

 2名前:名も無き地球外生命体

 こんなクソスレでもオレ様が2ゲット!!
  
 3名前:名も無き地球外生命体
 それってなんてエロゲーよ?

 4名前:名も無き地球外生命体
 引きこもってるからそんな妄想するんだ。社会へ出ろ!!

 5名前:名も無き地球外生命体
 糞スレ立てんな! さっさと削除依頼出しとけよ!

 6名前:名も無き地球外生命体
 マジレスすると、肛門に指を突っ込んでその匂いを嗅いでみろ。それですべて解決だ。


 こんな感じでまったく話にならなかった。
 これ以上真帆奈を待っても部屋から出てこないので、仕方なく一人で夕飯を食べること
にした。
 静かだった。普段はうるさいほど真帆菜がペラペラとしゃべるので、余計に静かに感じ
た。思えば一人で夕飯を食べるのなんて、生まれて初めての経験かもしれない。冷めた唐
揚げもあまり美味しくなかった。
 あんなうるさい奴でも、いなかったらいないで寂しいもんだな……。今まで真帆奈が理
不尽に怒って拗ねたこと(俺が珍しくバレンタインで義理チョコを貰った時とか)は何度
もあったけど、部屋に閉じこもって出てこないのなんて初めてなんだよな。原因が原因だ
けに顔を合わせづらいのはわかるけど。これで真帆奈が、本当の引きこもりにでもなった
りしたらどうしよう……?
 本日何度目かの溜息を吐いたところで、携帯電話からG線上のアリアが奏でられた。
 電話の着信だ。
 真帆奈からかと思い、俺はマッハで携帯に出る。
「もしもし、真帆奈か!?」
『はぁ? ちがうわよ、私よ』
 電話の主は雫だった。
「なんだ雫か……」
『な、なんだとはなによ。人がせっかく電話してあげたのに!』
「悪い……。で、なによ?」
『温泉の件なんだけどさー。部活の休みもありそうだし、私は大丈夫よ』
「温泉……ってなんの話?」
『はぁ!? アンタ昨日言ってたでしょ! もう忘れたの!』
 あー、五月会のことか。昨晩、雫にメールしといたんだった。  
「そうだったそうだった。思い出したよ」
『ったく。ボケてんじゃないのアンタ?』
 悪いけど今はそれどころじゃないんだよ。
「それで、光の方はなんて言ってるんだ?」
『真帆菜ちゃんと一泊できるんだから、あの子、殺されても来るわよ。今から興奮で寝れ
ないんじゃないかしら』
「そうか……」
 健気な話だ。ただ今のこの現状では、果たして真帆奈は俺と一緒に温泉へ行くと言うだ
ろうか? もしも行かないと言った場合は、真帆奈を一人で家に残していくのは論外なの
で、俺も温泉へは行けなくなる。うーん、困ったな……。
『なによアンタ、元気ないわね。なんかあったの?』
「えっ、いや、べつになにもないけど……」
 待てよ。雫には光という弟がいるんだし、姉弟喧嘩をした場合の仲直り方法とかに詳し
いかもしれんな。兄妹とは微妙に立場が違うけど、なにかの参考になるかもしれない。
「いや、その……実はなんだけどさ……。真帆奈とちょっと喧嘩みたいなことしちゃって
さ。それで、あつい部屋から出てこないんだよ……」
『あ〜、そういうことね』
「うん。それでなんだけど、なんか上手く仲直りする方法とかないかな?」
『いったいなにが原因なのよ?』
「えっ!? そ、それは、ちょっと言えないんだけどな……」
『原因もわからないのにアドバイスしようがないでしょうが』
 まったくの正論だった。
「いや……、一般論でいいんだよ。雫と光が喧嘩した時は、どんな感じで仲直りしてたん
だ?」
『私と光? まぁ昔はよく喧嘩したけど、最近はあんまりしないわよ。お互い忙しいし
ね」
「昔はどうっだったのよ?」
「えーっと、どうだったかなー? うーん……次の日になったら普通に話してたと思うけ
ど』
「……そんなに簡単なもんなの?」
『うちはそんなもんよ』
 なるほど。頭の中がプロテインでできているような姉弟に聞いても、なんの参考にもな
らないわけだ。
『だいたい私は前々から言ってんでしょ! いい加減にアンタはシスコン卒業しなさいっ
て!』
「だから俺はシスコンじゃねーよっ!」
『シスコンよシスコン。そうじゃなかったらちょっと妹と喧嘩したくらいで、そんな死に
そうな声出さないわよ』
 えっ、マジで!? 今の俺はそんな声してるのか?
『だいたいアンタ達兄妹って仲がよすぎるのよね。普通はそんなにベタベタしたりしない
もんだんだから。まぁ、べつに仲がいいのは悪いわけじゃないけどさー。でも、アンタ達
の場合はちょっと異常に仲がよすぎなのっ。ものには限度ってもんがあんでしょうがー
っ』
 なぜだか知らないが、また説教が始まってしまった。
「お前はどこでなにを見たのかしらんけど、俺は真帆奈とそんなベタベタしてるような覚
えはないぞ」
『嘘ばっかり。私は麗ちゃんから色々と聞いて知ってるんだからね!』
 情報源は麗ちゃんだったか。きっとあること面白おかしく吹き込んでるに違いないな。
 そんな時であった。
「お兄ちゃん……」
 と、俺が携帯電話に集中していたところで、背後から思わぬ人物の声が聞こえた。
325チョ・ゲバラ:2010/05/22(土) 23:05:39 ID:8caCP4BU
次回、クライマックス! と思う・・・・
326名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 23:10:01 ID:2tWgx0kt
GJ
続きが気になるぜ
327名無しさん@ピンキー:2010/05/23(日) 02:38:49 ID:emkjHdxJ
流石に仕事が早いGJ次回真帆奈が勝負に出るか!?
328名無しさん@ピンキー:2010/05/23(日) 04:44:31 ID:XuDT+IM0
ああううん
329名無しさん@ピンキー:2010/05/23(日) 14:01:40 ID:b4DqTpPb
凄く麗ルートが見たい…
330名無しさん@ピンキー:2010/05/23(日) 14:32:50 ID:CTCYtH8k
GJです

ザビエール正岡ワロタw
331名無しさん@ピンキー:2010/05/23(日) 17:29:22 ID:pyspLi73
雫ちゃんは応援せざるを得ない
332名無しさん@ピンキー:2010/05/23(日) 17:42:45 ID:mSq1NoDP
ストーリーで分からんことがあるから質問させろ

もやしとキャベツで肉野菜炒めを作るとこは分かった

溶き卵はどのタイミングでどう入れるのだ?
333名無しさん@ピンキー:2010/05/23(日) 17:50:47 ID:NNRsugyJ
>>332
出汁で煮込んでからとじるんだよ
334名無しさん@ピンキー:2010/05/23(日) 19:28:52 ID:FsC1upXt
>>332
感想ラーメンだけかよW
335チョ・ゲバラ:2010/05/23(日) 21:08:04 ID:GMqcCs1+
チョリーッス。
続きです〜。
「うわっ! ま、真帆奈か!?」
 どうやら妹様が天岩戸から顕現なされたようだ。
「……えっと、雫悪い、用事ができたんで切るわ」
『えっ! ちょっ、待ちなさ――』
 即座に切った。
「誰と電話してたの?」
「……し、雫だよ」
「ふーん、そうなんだ……」
 昼ぶりに見た真帆奈の瞳は据わっていて妙に迫力があった。  
 えっ、なにがあったのいったい?
 奇妙な沈黙がキッチンを支配する。 
「……そ、そうだ。御飯食べるか? 温めるよ」
「真帆奈……その前にお兄ちゃんにお話があるの。真帆奈の部屋に一緒に来て欲しいの」
 当然、例のエロゲーの話だろう。
「わかった……」
 俺は静かに首肯した。
 で、真帆奈と一緒に二階へと上がり、部屋に入ってクッションに腰を下ろした。
 これから先の展開がまったく想像すらできない。もはや行き当たりばったりでいくしか
ないようだな。
 心臓をフルに活動させながらそんなことを考え少しの時間待っていると、真帆奈は例の
アレ、『レイプ!&レイプ!&レイプ!』を俺の前に差し出してきた。
『ハハハーッ、越後屋、そちもワルよの〜』
『イヤイヤイヤッ、お代官様には敵いませぬ〜』
 丁度、こんな感じの図だ。
 さて、俺はなんと真帆奈に言ってあげればいいのだろうか? 女の子がこんな物をかっ
たら駄目だろ!、とでも叱るのか? いやいや、今にも泣き出しそうな顔をしてる真帆奈
に、そんなことはどう考えても言えないだろ。うん、たかがエロゲーだ。べつに人に迷惑
をかけたわけじゃないだし、兄である俺が妹を理解してあげないでどうするのだ。
「……ごめんなさい」
 蚊の羽音のようなか細い声で真帆奈が言った。
「いや、べつにあやまることはないんだけど……そ、その、なんでこんなゲーム買ったん
だ?」
「ちょっと前に……お兄ちゃんの部屋でこういうゲームを見つけて……、それで真帆奈は、
お兄ちゃんが好きなことをどうしても知りたかったら試しにやってみたの……」
 ちょっ! 黒木にコピーして貰ったエロゲーを勝手にやってたのかよ!
「本当はこんなことしたらだめだって思ってたんだよ……。でも、やってみたら真帆奈、
すっごくドキドキして、そ、それで……」
 どうしても我慢ができなくなって自分で買っちゃったわけか……。
「お兄ちゃんに隠しごとしててごめんなさい……。でも、本当のこと言ったらお兄ちゃん
に嫌われるって思ったから……。それだけは真帆奈は耐えられないから……ご、ごめんな
さい、ごめんなさい……ううっ……」  
 とうとう真帆奈は俯いて、グスグスと鼻を啜りながら泣き出してしまった。
 胸が痛い。昔から真帆奈の泣き顔を見るのは苦手なのだ。
「お、おい、泣くなよ! 俺がこんなことで真帆奈のことを嫌いになるわけないだろ!」
「ほ、ほんと……?」
「本当だよ! だいたい趣味なんか人それぞれなんだから、こんなことべつに気にする必
要なんかないんだぞ」
 まぁ、俺にも責任の一端がないとは言えないしな。人間は間違いを犯す生き物なのだ。
ついつい魔が差してしまうことだって、誰にだってある話しじゃないか。 
「お兄ちゃん……実はこんなゲームはこれだけじゃないの……」 
「えっ!? ま、まだあるの……??」 
「うん……」
 真帆奈はすくっと立ち上がると、部屋の隅のカーペットを捲り上げた。なんとフローリ
ングの床に、床下収納庫の扉が現れた。
「お兄ちゃん……真帆奈の秘密を知っても……真帆奈のことを好きでいてくれる……?」
「あ、当たり前だろ……お前は俺のたった一人の、い、妹なんだから……」
 そんな妹を思いやる言葉とは裏腹に、俺の声は明らかに不自然に裏返っていた。オマケ
に脇の下から嫌な汗が……。床下から漂ってくる負のオーラがもの凄いのだ。こいつは藪
の中からとんでもない大蛇が飛び出してくるに違いないぜ! と俺のゴーストがそう囁い
ていた。
「お兄ちゃん、真帆奈の全てを受け止めて!!」
 真帆奈は収納庫の扉を勢いよく開けた。
 そこから世界へと解き放たれた真実とは――。
「こ、これはっ!!」
 鬼畜・陵辱ゲームのオンパレードだった。
 最新から旧作までずらりと揃えられたそのさまは、まさにハードコアユーザーそのもの
のコレクションと言えた。
 なんてこったい! ついつい魔が差したとか、ほんの気の迷いとかってレベルじゃねー
ぞっ! もう完全にドランカー状態の鬼畜エロゲーマーじゃんか!
「これでも……真帆奈のことを嫌いになったりしない……?」
 双眸に光を湛えながら真帆奈が言った。
 いや、いくらなんでもこれはちょっと……。なにもこんなに収納庫が溢れそうになるほ
どコレクションしなくても……。
「お、お兄ちゃん……やっぱり真帆奈のこと、いやらしい妹だって思ってるんだ……うう
っ……」
「うわっ、待て待て! そんなこと全然思ってないぞ。俺は絶対に真帆奈のことを嫌いに
なんかならない。たとえ世界中の人間がお前を非難したとしても、俺だけはずっとお前の
味方だ!」
「それじゃぁ、お兄ちゃんは真帆奈のことを受け入れてくれるんだね?」
 受け入れるっていうのはなんか引っかかるニュアンスだが、こんなことで可愛い妹を突
き放すような酷薄な兄ではないぞ。まぁ、このぶっとんだコレクションは少々問題は有り
だろうがな。もし親父がこれを見つけてたら、卒倒して病院送りだったかもしれないな。
真実を知ったのが俺で本当によかったよ。
「もちろん受け入れるぞ。さっきも言ったけど、俺はなにがあっても真帆奈の味方だから
な」
「お、お兄ちゃん、ありがとう!!」
 真帆奈は歓びを身体全体で表現し、俺の胸に飛び込んできた。
「うわっ! おいおい……。まったくもう、お前はいつまでたっても甘えん坊だな」
「ううっ! ありがとう……ありがとう……お兄ちゃん」
「ほらっ、もう泣きやみな。可愛い顔が台無しだぞ」
 胸の中の大切な存在を優しく抱きしめ、泣きやむように黒髪をナデナデしてあげた。
「もしお兄ちゃんに拒絶されたら、真帆奈もう死んじゃおうって思ってたから、ほっとし
ちゃって……ううっ、ご、ごめんね……」
 そんなに思い詰めてたのかよ! 拒絶しないで本当によかったよ……。
「つーか、こんなことで死ぬとか言うなよ」
「うん、もう大丈夫だよ。……それでね、真帆奈、お兄ちゃんにお願いがあるんだけど言
ってもいい……」
「なんだ? この際だから遠慮しないで言ってみな?」
「あのね……、お兄ちゃんに真帆奈のご主人様になって貰いたいの」
 …………えっ? よく聞き取れなかったけど、ご主人様になって欲しいって言ったのか
な? ……いやいや、流石にこれは聞き間違いだろ? 兄が妹のご主人様になるとか全然
理解できないしな。うん、これは聞き間違いに違いない。つーか、頼むから聞き間違いで
あってくれ!
「えっと……ごめん。よく聞こえなかったからもう一回言ってくれるか?」
「お兄ちゃんに真帆奈のご主人様になって欲しいの」 
 聞き間違いじゃなかったか……。
「うーん……そのご主人様ってのは、具体的になにするの?」
 そもそもなぜに兄妹間で主従関係を結ばなければならないのか? そのあたりはハッキ
リして貰わないといけないな。
「お兄ちゃん、そんなに深く物事を考えなくていいんだよ。具体的になにかをするわけじ
ゃなくて、真帆奈はお兄ちゃんとの精神的な繋がりが欲しいだけなんだよ」
「それだったらそんな怪しげな関係を結ばなくても、兄妹のままでいいじゃないか。家族
ほど強い繋がりなんか他にないんぞ」
「真帆奈がお兄ちゃんの妹なのはあたりまえなの! それ以外にも真帆奈は、お兄ちゃん
ともっとふかーい絆が欲しいの!」
 真帆奈の瞳の奥には、強い意志の光が込められていた。
 どうやら冗談でこんなことを言っているわけではないようだ。
「絆と言われてもなー。なんでそれがご主人様になってしまうのさ?」
「それだったらお兄ちゃん、真帆奈の恋人になってくれる?」
 こ、恋人!? いったいなにを言ってるんだこの娘は? これがゆとり教育の弊害なの
だろか。
「俺達は兄妹なんだから、恋人になんかなれるわけないだろ」
「ほらねっ、そういうこと言うでしょ? だ〜か〜ら〜、お兄ちゃんには真帆奈のご主人
様になってもらうんだよ。それで全てが解決するでしょ?」
 ……いや、その発想はおかしい。なぜ俺が真帆菜のご主人様になるのか、説明している
ようでまったく説明になってないし、なにも解決していない現実がそこにある。
「そんなこと言われても意味わかんないよ……」
「うー! なんでだめなの! お兄ちゃんは真帆奈を受け入れてくれたんじゃなかった
の!」
「いやいや、それとこれとは話が全然違うだろ?」
「お兄ちゃんはやっぱり真帆奈のことをふしだらな妹だって、この世界からいなくなっち
ゃえって思ってるんだね!」
「そんなことはこれっぽっちも思ってないよ!」
「じゃぁなんで真帆奈のご主人様になってくれないの!」
「意味がわかんないからだよ! 恋人のなれないからご主人様になるとか、はっきり言っ
て理解不能だよ!」
 ガーンとショックを受けた表情で石化した真帆奈は、再び眉根に涙を溜めていく。
「信じてたのに……お兄ちゃんのこと信じてたのに……。お兄ちゃんに拒絶されたら、真
帆奈はもう生きていけないよーっ!!」
 床に突っ伏してワーンと大声で泣き始める真帆奈。
「おい、泣くなって、ご近所にも迷惑じゃないか……」
 更に泣き声のボリュームが上がる。
 いったい俺はどうすればいいんだろうな? このままでは真帆奈は納得しそうもないし、
かといって本当に真帆奈のご主人様とやらになってしまって大丈夫なのだろうか? 下手
に約束なんかしてしまうと、後々とんでもないことが起こりそうで怖い。つーか、これが
エロゲーだったら間違いなく選択肢が出てきてるよな? 

『真帆奈のご主人様になる』
『真帆奈のご主人様になる』
 
 ちょっ!? 全然、選択肢になってないじゃん! どうなってんのこれ??
「わ、わかったよ真帆奈……ご主人様になるよ。それでいいんだろ。だからもう泣きやん
でくれよ……」
「ほんと!?」
 不自然なくらいピタッと泣きやみやがったぞ。
「本当だけど……。で、でもアレだぞ。べつに俺達の関係は今までどおり兄妹で、おかし
なことはなにもしないんだからな!」
「やったーっ!! お兄ちゃんがほんとに真帆奈のご主人様になってくれたーっ! 全部、
麗ちゃんの言ったとおりになったよ! 麗ちゃんすごーいっ!!」
「えっ?」
「あっ!」
 なんか今、聞き捨てならないようなことを真帆奈が口走ったような気がしたんだが? 
たしか麗ちゃんがどうとか……?
「おい、真帆奈。今なんて言ったんだ?」
「な、なにかな? 真帆奈はなんにもおかしなことは言ってないよ??」
 真帆奈は唇を尖らし口笛のようなものを吹いているが、ヒューヒューと二酸化炭素が出
るだけで音はまったく鳴っていない。
 つーか、お前さっきまで泣いてたんじゃなかったのか? 全然泣いてたような顔に見え
ないんだけどな。なんなの、このもの凄い違和感は……。
「そ、そんなことよりもお兄ちゃん! 気が変わらないうちにこれにサインして欲しい
の!」
「サイン? いったいなんにサインするのさ?」
 真帆奈は、机の引き出しから一枚の紙を持ち出してきた。
「ここがお兄ちゃんがサインするところだから。それと拇印も一緒に押して。早くしてし
て」
 真帆奈は、名前を書く欄を指差してくる。その欄の下にはすでに真帆奈のサインが記入
されており、拇印までもがきっちりと押されてあった。
「この紙はいったいなんなの? ちゃんと読ませて――」
「読むのは後でいいの! まずはサインしてから、はーやーくー!!」
「なんで読ませてくれないんだよ!」
「うー! ご主人様になってくれるって約束したのに、舌の根も乾かないうちにもう真帆
奈を裏切る気なの!!」
「なんで怒るのさ! 全然意味わかんないよ!」
 どう見てもご主人様に対する接し方とは思えないぞ!
「いいから、早くサインしてー!」
「わ、わかったよ……もう、しょうがない奴だな……」
 あまりにも真帆奈がしつこかったので、渋々サインをして拇印を押してしまった。
 まぁどうせたいした内容ではないだろうし、後で適当に確認しとけはいいかな、とこの
時の俺はそんな感じで致命的に楽観視していたのだ。もちろんすぐに後悔することになる。
「こ、これでお兄ちゃんは、正真正銘に真帆奈のご主人様になったんだね……。ま、真帆
奈は感激してるよ!!」
 一枚の紙を大切に愛しそうに抱きしめる真帆奈。
「それで、その紙はいったいなんだったの?」
 向日葵のような満面の笑顔で、真帆奈が紙を渡してくれた。
 その紙に書かれていたあまりにもぶっとんだ内容を読み、俺は文字通り戦慄した。

『奴隷誓約書』
 
 私こと奴隷、乙(乃木真帆奈)は、ご主人様である、丙(お兄ちゃん)の忠実なる下僕
として、健やかなる時も病める時も永久的に御奉仕することをここに誓うんだよ。

 1、乙は丙の命令に対して絶対服従なので、いつでもどこでもどんなにエッチな命令だ
ってしてもいいんだよ。
 2、乙の肉体の所有権は丙に譲渡しているので、いつでもどこでもどんなにエッチなこ
とだってしてもいいんだよ。
 3、乙が誓約に反するような行為を行った場合は、丙は乙に対してすっごいエッチな罰
を与えてもいいんだよ。
 4、丙は好きなように誓約の内容を追加することができるので、乙にやらせたいエッチ
ことを色々と考えて付け足していいんだよ。
 5、仮にこの誓約書が物理的に破棄されたとしても、誓約の効力は関係なく永久に持続
するので、乙に無断で破いて捨てたりとかしても無意味なんだからね。
 ナンデスカコレハ??
 ちょ、ちょっと待ってよ! ご主人様って言うから、てっきり、『真帆奈はお兄ちゃん
のメイドになる!』とか、そういう類の話かと思ってたのに、なんなの奴隷って!? 国
連で採択された世界人権宣言で、奴隷制度は禁止になってるんだからね!
「これは真帆奈が大切に保管しておくからね」
 手元にあったはずの奴隷誓約書が、いつの間にか真帆奈の手元へ。
「あ、あの……なにかの冗談だよね……」
 そうだよな。これはちょっと遅いエイプリルフールかなんかだよな。昔から少々思い込
みが激しい子だとは思ってたけど、まさかこれは本気なわけがないだろ……ハハハ……。
「冗談でもなんでもないよ。たった今からお兄ちゃんは、真帆奈の正式なご主人様になっ
たんだからね。ちゃんとその自覚を持って、真帆奈をお兄ちゃん色の奴隷に調教しないと
だめなんだよ」
「……」
 ああぁぁ……今日はいい天気でしたね……。
「お兄ちゃん、真帆奈はまだまだ不束者ですが、これからもずーっとよろしくお願いしま
す」
 真帆奈はビシッと正座をして、三つ指を立ててお辞儀しながら言った。見栄えだけはい
いので、その姿は実にさまになっていた。言うこととやることは、限りなく無茶苦茶なん
だけどな。
 で、猫科の動物のように真帆奈の瞳の奥がギランと光ると、しなやかに身体を躍動させ
て俺の胸にダイビング。
「これで真帆奈とお兄ちゃんは、死ぬまでずーっと一緒だよ! お兄ちゃん、だぁーい好
きぃぃ! はう〜、真帆奈のご主人様〜!!」
『彼女が背負っている物は重いぞ。共に行くにはこの世界の重みを受ける覚悟がいる。そ
の自信がお前にはあるか?  ……だが行け。恐れるな。自分の中の可能性を信じて力を
尽くせば道はおのずと開ける』
 ※BGM UNICORN スタート。
 私のたった一つの望み。可能性の獣。希望の象徴。父さん、母さん、ごめん……俺は…
…つーか、いきなり誰のナレーションなのよ!? 「出て行けー!」とか言わないと駄目
なのか!?
 無邪気に俺の胸の中で歓ぶ真帆奈を見ていると、なんかもうどうでもよくなってきた。
少なくとも泣いているよりはまだましだな。世の中上手に生きて行くには、諦念と妥協に
楽観も必要なのかもしれない。後で俺の辞書に書き足しておこう。
 そして俺は、呆れるほど大きな溜息をゆっくりと肺から吐き出した。

 
 episode 1 「ご主人様ができた日」
次回予告
 
 ひょんなことから実の妹と主従関係を結ぶことになってしまった乃木涼介は、とんでも
なく深い泥沼の底に急降下しつつある己の人生に苦悩する。一方この事態を最大の好機と
判断した妹の乃木真帆奈は、兄との既成事実化を虎視眈々ともくろみ迅速に行動を開始す
る。キックの反動を利用した真帆奈の通常時の三倍以上の暴走は、平和だった乃木家を一
転してルール無用の修羅の屋敷へと変化させるのであった。果たして涼介は、妹の魔の手
から生き延びることができるか!? 
 
 次回 episode 2 「ものすっごく赤い彗星」
343チョ・ゲバラ:2010/05/23(日) 21:19:11 ID:GMqcCs1+
長々とスレを占領してしまって申し訳ありませんでした。
皆さんの感想は大変に作者の励みとなります。
ありがとうございます。
後日、自サイトに修正阪をアップする予定なので、よかったら覗いてやってください。
それではまたお会いできる日を楽しみにしております。
344名無しさん@ピンキー:2010/05/23(日) 21:36:05 ID:emkjHdxJ
是非また投下して頂きたい。GJ
真帆奈は奴隷契約ですか…裏で仕組んだのは麗ちゃん…
普通のキモウト作品と違って雫や麗ちゃんといった様な他のヒロインも生き生き
としているのは良かった。
個人的には、雫を応援してる‥次回も楽しみにしてます。
345名無しさん@ピンキー:2010/05/23(日) 21:39:49 ID:9dmMycTH
楽しく拝見いたしました。こういうタイプのキモウトは珍しいかも。
本筋とは全然関係ないけど。甲乙ではなく乙丙な契約書ってのも初めてみました。
346名無しさん@ピンキー:2010/05/23(日) 22:48:50 ID:6UtPJraK
GJ、ようやくタイトルの意味が出てきたな
エピソード2に期待してるぜ
個人的には雫が携帯で聞いてるそばで兄を逆レイプして音声を聞かせる展開だと予想してたが外れたぽ
あと…光、頑張れ。
347名無しさん@ピンキー:2010/05/23(日) 23:37:49 ID:rAJGxYLl
>>345
「契約書」自身が「甲」の場合もあるんだよ。
だから兄妹が「乙」と「丙」になる。


なにはともあれGJでした!タイトルの意味がようやくわかったwww
348名無しさん@ピンキー:2010/05/24(月) 00:04:28 ID:9FIxXkbK
麗が後で主人公を取っちゃう展開に期待
349名無しさん@ピンキー:2010/05/24(月) 00:05:23 ID:o7vUASTG
GJおもしろかった
真帆菜かわいいよ真帆菜
個人的には麗ちゃんも凄くよかった
350名無しさん@ピンキー:2010/05/24(月) 02:21:34 ID:NmMGg/a2
サブキャラの麗ちゃんが凄くいい
麗ちゃんルートきぼん
351名無しさん@ピンキー:2010/05/24(月) 02:21:41 ID:4u7ArYds
この契約だとスワッピングもOKなのかな
光、姉を差し出せばまだイケるか?
352名無しさん@ピンキー:2010/05/24(月) 07:34:39 ID:gmn7Se0H
>>343
おはようございます。良い朝だね。
ちょびっツかDearSのアニメの「飼ってるつもりでも 繋がれてるのはどっち?」
みたいな歌を思い出した。知ってる人いる?
353悪質長男 第六話:2010/05/24(月) 09:58:43 ID:eshkWFKK
盛り上がっている所で失礼します。
完成したので、アップします。
354悪質長男 第六話:2010/05/24(月) 10:00:08 ID:eshkWFKK
「皆さん、こんにちは。主人公の怜二です。突然ですが、僕は風邪を引いてしまいました」

ばたんきゅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


第六話


朝はなんともなかったはず。憧れの3きょうだい登校を果たし、
妬まれ、笑い、昼食も3きょうだいで食した。
最後の授業を終えた瞬間に、怜二は机に突っ伏して動かなくなった。
その周りをクラスの女子らが珍しそうに囲んだ。
「こんにちはって言ってももう夕方だよ?」
「ほらほら、いつもの元気はどうした?」
「麗華様と仲直りして興奮し過ぎた?」
からかわれるように言われてばかりで心配する声が少な過ぎる
その時王子が好機とばかりに怜二の前に進み出た。
「ふふっ、怜二。おまえは保健室にでも休んで親の迎えを待っていたまえ。麗華様と玲君は俺が一緒に帰り・・・」
言い終わる前に数人の男子が王子を連行し、全員の男子がリンチに掛かる。
果てには送りするのは自分だとか、一緒に帰りたいが為に醜い争いへと発展していった。

「兄さん・・・」
その声と共に玲がやってきたのはその時だった。
心配して来たのだろうが、怜二が明るく振る舞おうと振り向いた時には男子共が玲の前に割り込んでいた。
「玲ちゃん、兄貴は心配いらないってさ。だから部活に専念しなよ」
「玲たん、帰りは僕が送ってってあげるからね」
「死ねこの豚!後輩相手に下心丸出してんじゃねぇ!!」
彼らは、怜二が体調不良の今こそ姉妹姫とコミュニケーションを取れると必死だった。
そこで怜二が妹を守る為に立ち上がる。
「君達!玲があからさまに困っているだろうが!

・・・でも玲の心配をしてくれるなんて優しいねぃ・・」
「おいまずいぞ!あれは重傷だ!」
「怜二が男子を褒めるなんて気味が悪い!」

怜二は基本、男子の敵で嫌われ者であった。
だからちょっと態度が変わっただけで本気で心配された。
その間に玲は怜二に寄ると、あっという間に御姫様抱っこで抱えた。
シュールな光景に噴き出す女子数名に、スキンシップを羨ましがる男子一同。もの言わさず玲はさっさと教室から出て行った。
355悪質長男 第六話:2010/05/24(月) 10:01:59 ID:eshkWFKK
廊下で姉の麗華と出会った。
「あら、玲、どうかしましたか?なんだか怜二が風邪を引いているように見えますが」
「・・・・そう。私が看ておく」
兄を抱えながら頷く玲を、麗華が制した。
「いえ、私が面倒を看ておきましょう。貴女は部活があるのですから」
「でも・・・・」
玲は渋った。怜二が弱っているこの隙に既成事実の一つや二つを作ってしまいたいのが狙いだったからだ。
そしてそれは・・・・・姉も全く同じだった。
ただし、猫かぶりの麗華も無表情の玲もその野心がちっとも、例え姉妹でもわからない程、表に漏れていない。
「玲。・・・いいですね?」
あくまで良い姉を演じる麗華の前に、玲は心の中だけで溜息と舌打ちをして、姉に兄を託した。
麗華は玲の様に持ち上げたりはせず、彼の腕を自分の肩に回して運ぼうとする。
そこへ、麗華と同学年の男子が密集する。
「麗華様!ここは俺が運びましょうぞ!」
「てめぇは部活があんだろ!姫、義弟さんは自分に任せて・・」
「なにが義弟だオンドレはあ!」
「我ニ握り飯ヲ与エタマエ」

関係無い人も混じっていた。
対応する麗華は、関係無い人にも平等に笑顔を振りまく。
口から出る言葉ははっきりとした拒絶。
「皆さん、お気遣い有り難う御座います。しかし平気です。怜二の扱いには慣れていますので」
本当はもうしばらく密着状態でいたかった。だがこれだけ借りを作ってしまいそうな状況では仕方ない。
心の中だけで悪態をついて、怜二の耳元で一言二言囁いた。
すると怜二は輝く表情で顔を上げた。
「何、麗華姉ちゃんが看病してくれるだと!?シスコンたるもの真っ向から看てもらわねばなるまい!
敵は本能寺に在り、じゃなかった、天使は我が家に在りぃ!」
と、奇声を上げて上級生の男子を掻い潜りながら彼は飛び出した。
だがやはり熱で朦朧としているのか、2階の窓から飛び降り、
全開の校門を飛び越える無駄な奇行をした後、ダッシュで去っていった。

(さ、て、帰ったら何をしてあげましょう?)

「・・・・姉さん・・・家と・・・・・・方向が逆」

「え!?あ!?れ、怜二―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!?」
356悪質長男 第六話:2010/05/24(月) 10:03:28 ID:eshkWFKK



帰宅後。
麗華は早速看病に取りかかった。腹ごしらえのお粥を食べさせ、適量の薬を用意する。
この間までそう時間は掛かっていないので、ベッドで寝る怜二の熱はまだ変動していない。
「さて、これからどうしましょう?」
「・・・の〜〜〜ん」
怜二は呆けている。この時を待っていたとばかりに、麗華は目を光らせた。

「・・・ねぇ、怜二。汗をかいていますね。私が拭いて差し上げます。・・・さあ、脱いで」

怜二は黙って頷くと、自ら服に手を掛け、半裸になった。
その体は麗華が以前海水浴で見た時とあまり変わっていないようだ。
猿みたいに飛び跳ねるものだからか、筋肉が中途半端に付いた体格。
「じっとしていてくださいね?」
麗華はタオルで拭き取っていく。もう片方の手は汗ばむ体にペタペタと張り付ける。
触っているだけなのに、心の底が沸騰する感覚が湧きあがっていく。
(あ、は・・・私、興奮しているんですね・・・)
拭きながら、姉は弟の首に顔を近づけると、舌を出して舐め取った。
一舐めする毎に至高の味に巡り合えたかのごとく恍惚とした表情。
なんだか頭がぼうっとしてきた。
その間も怜二は何の反応も示さない。
ちなみに、唇同士重ねる事はしない。症状が風邪なだけに、時たま咳をするからであり、仕方のない事だからだ。
気が付けば、麗華は自身が彼の鎖骨に吸いついていた事に気が付いた。
(はあ・・・・怜二ぃ・・・)
やはり怜二の反応は無い。このまま次のステップに進んでもいいだろう。
麗華はベッドに乗り出すと、弟の体を跨いで座り込んだ。
「怜二・・・?」
「・・・んー?」
眠そうな顔で生返事。構わず麗華は続けた。
「これから私達、性行為をします」
「・・・んー?」

先日悟った事。
姉弟であろうが、しょせんは女と男。そこから導き出した、負の答え。
「ふふふ・・・怜二・・・・」

興奮のせいか高まり続ける熱をそのままに、

麗華は頭を下げて

頭を下げて

下げて

下げて・・・・・


「・・・・・あれ?」

そのまま怜二の胸に突っ伏した。なんだか頭が痛いし、ぼんやりするし・・・

「姉ちゃん・・・?うつったかな?」
いつの間にか意識を取り戻したのだろう。怜二が姉の額に手を当て、そうぼやいた。
「ええ?私は二次感染の対策もきちんと・・・・」
「説明しよう。怜二ウィルスは、不死身で女好きなのだ」

「は・・・・、ハタ迷惑〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
357悪質長男 第六話:2010/05/24(月) 10:04:10 ID:eshkWFKK




玲が帰って来た。
姉も風邪を引いたと知ると、余ったお粥を食べさせて薬を与えて、部屋で寝付かせた。
リビングに戻ろうと兄の部屋を通り過ぎるところで、ふと立ち止まる。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
薬箱からあるものを取り出すと、無表情ながら喜々と玲は部屋の中に入った。
呼びかけた時の怜二はまたも意識が虚ろだった。
「兄さん・・・座薬だよ。さ・・・・脱いで」
脱いだら最後、その隙に・・・

その時返って来た返事は、咳が一つだった。




さらに夜が更けた頃。
「はあ、全く。全員に風邪がうつる展開はベタ過ぎるだろうが」
三人の実母が面倒を見て、彼らは事なきを得た。

後日、回復はしたものの逃がした魚は大きいと悔しがる姉妹がいた。
そんな彼女らに、同じく心身共に全快の長男が、元気良く礼を言う姿がそこに在った。
358名無しさん@ピンキー:2010/05/24(月) 13:08:28 ID:qIlgi3oe
GJ!

もしこのレスが投下に割り込んでしまったなら、それは熱のせい
359悪質長男 第六話:2010/05/24(月) 13:59:19 ID:eshkWFKK
すみません、終了を宣言してませんでしたね。
360名無しさん@ピンキー:2010/05/24(月) 18:33:15 ID:+loVepVE
GJ
玲二ウラヤマシス
361転生恋生  ◆.mKflUwGZk :2010/05/24(月) 22:00:48 ID:qIL5B4lf
かなり間隔が開いてしまいましたが、続きを投下します。5レス消費します。
362転生恋生 第二十幕(1/5) ◆.mKflUwGZk :2010/05/24(月) 22:01:42 ID:qIL5B4lf
 家へ帰るまでの道筋の光景は全く記憶に残っていない。ひたすら俺のをしゃぶる司の顔を反芻していたから、先っぽが濡れちまった。
 気がつくと自宅の玄関が目の前にあった。一回深呼吸してから、家に入る。
「ただいまー」
 返事はなかったが、台所から漂ってくる匂いで、お袋が夕食の支度をしている最中だとわかる。
「おかえり」
 洗面所でうがいをしてから台所へ行くと、予想通りお袋が忙しく立ち回っていた。俺は自分でお茶を淹れて飲む。
「太郎、学校でいいことでもあったのかい?」
「んあ? なんで?」
「大人の階段を中途半端に上がったような顔をしてるよ」
 思わず茶を噴き出してしまった。親の眼力ってのは怖いな。
「そんなんじゃねーよ!」
 慌てて否定して、逃げるように台所を出た。落ち着いて受け流せない時点でダメだと後から気づく。
 風呂が沸いていたから、俺は入浴することにした。いきり立っているモノを収めないといけない。
 鼻歌交じりに体を洗い終え、いよいよヌこうと臨戦状態のエモノを握った俺は、明らかに油断していて無防備状態だった。
 まさにそのとき、悪魔が降臨した。否、乱入してきた。
「たろーちゃんっ!」
 いきなりガラス戸が開いて、全裸の姉貴が姿を現した。俺は完全な奇襲に意表を突かれたが、本能的に股間を隠す。
「勝手に入ってくるんじゃねぇっ!」
 怒鳴りつけて追い返そうとしたが、いつもどおり姉貴は全く意に介さない。
「風邪はどうしたんだよっ!」
「もう治ったもん。これ以上お風呂に入らないなんて我慢できないわ」
 そう言いつつも、姉貴はギラギラした目つきで俺の裸を舐めまわす。目で犯されるってのはこのことだな。エロオヤジの視線に不快感を抱く女の気持ちがよくわかる。
「だったら、俺が出るまで待ってろ」
「イヤ! 一緒に入る」
 もう、こうなってしまうと止めようがないな。耐えるしかないか。せめて時間を稼いで、ナニが鎮まるのを待つしかない。
 が、今日の姉貴はいつにもまして強引だった。俺の意思とは無関係にガラス戸を後ろ手に閉め、俺に接近してくる。
「近づくんじゃねぇ!」
「たろーちゃん、私ね、今回病気して反省したことがあるの」
 ああ、そりゃ反省すべきことだらけだろうよ。あれだけぶり返しまくって、連休全部棒に振っちまえばな。
「私、これまでずっと、体には自信があったの。……あ、プロポーションって意味じゃないわよ。もちろん、そっちも自信あるけど」
 要点を言え、要点を。
363転生恋生 第二十幕(2/5) ◆.mKflUwGZk :2010/05/24(月) 22:02:35 ID:qIL5B4lf
「ほら、私って、健康そのもので、風邪もほとんどひいたことがないじゃない? 自分が病気で臥せっちゃうなんて、考えもしなかったの」
 確かに、姉貴は頑健という単語の見本みたいな健康優良児だ。今回、俺が姉貴の看病をしたのは、稀有な体験といえるな。
「でもね、今回ばかりは死ぬかもしれないって思ったわ。それくらい、しんどかったの」
 なんとかは風邪ひかないっていうけど、姉貴みたいな優等生でも風邪をひくんだから、やっぱり迷信だな。
 ……いや、違うか。ある意味、姉貴がこの上ない馬鹿だということを実証したと見るべきだ。
「人間の命って儚いものよね。どんなに元気にしていても、いつコロッと死んでしまうかわからないんだわ」
 たかが風邪ごときで大げさな。
「だからね、人間は、生きているうちにやりたいことは全てやっておくべきなの。死ぬときにやり残しがあって後悔するなんて、馬鹿げているわ」
 なんとなく、言いたいことはわかってきたけど、だんだん話がヤバイ方向に向かってくる気がする。
「というわけで、私は今すぐたろーちゃんと結ばれることに決めたわ」
「ふざけんなぁぁぁーっ!」
 俺は姉貴の脇をすり抜けて風呂場から脱出しようとしたが、あっさりと姉貴に捕まってしまった。
「暴れるんじゃないの」
 姉貴は持ち前の怪力で俺を抱え上げると、タイル張りの床に無理矢理寝かせた。じたばたしても、姉貴の力にはかなわない。
「おふくろーっ!」
 俺は懸命に大声をあげて助けを求めたが、姉貴は不気味な笑いを浮かべた。
「無駄よ。風呂場で叫んだって、湯船に浸かって歌を歌っているように聴こえるだけよ」
 いや、明らかな悲鳴なんだから、反応してくれよ。
「それじゃあ、早速始めるわね。人生は短いんだし」
 俺たちはまだまだ短くねーだろ! まだ70年くらいはあるはずだぞ。
 だが抵抗空しく、俺は姉貴に力ずくで股を開かせられた。股間を隠していたタオルも剥ぎ取られる。
「あ! たろーちゃんカウパー液が出てる!」
 嬉しそうに姉貴が叫んで、俺は恥ずかしさで死にたくなった。鏡を見なくても、今の自分が全身真っ赤になっているとわかる。
「ひとりエッチしようとしてたんだ。私を呼んでくれればいいのに、もったいないことしないでよ」
「やめろっ! 触るなっ!」
 当然のことながら姉貴は聞く耳持たず、俺のモノをつかんで、頬ずりする。
「うふふ、たろーちゃんのオチンチン…やわらかくて、固くて、熱くて、だーい好き」
 俺は天井を見ながら歯を食いしばって恥ずかしさに耐えた。どうせ俺の体は姉貴には反応しない。すぐに萎えるはずだ。いつもそうなるじゃないか。
 しかし、今日の姉貴はいつもと一味も二味も違っていた。
364転生恋生 第二十幕(3/5) ◆.mKflUwGZk :2010/05/24(月) 22:03:34 ID:qIL5B4lf
「今日はとっておきのことしてあげる」
 天井を見上げている俺は姉貴が何をしているのかわからなかったが、すぐに体で知ることになった。
「んがっ!」
 尻の穴に何かが突っ込まれてくる感触がして、俺は思わず悲鳴をあげた。
「何……しやがるっ!?」
 姉貴は人差し指だか中指だかを俺の肛門に無理矢理挿入してきた。
「んふふ……、男の人って、お尻の奥に感じる部分があるのよね」
 前立腺。知識としては知っているが、まだ体験したことはない。
「やめろっ! 痛い痛い痛い!」
 俺は本気で痛かった。本来中から外へ出すための器官なのに、外から中へ突っ込むんだから痛いに決まっている。先日の葱の感覚がよみがえった。
「んー、この辺かな?」
 姉貴は俺の直腸に突っ込んだ指を中で蠢かせた。中の粘膜を引っかかれるような感覚がして、しゃれにならない。
「やめ……っっ!?」
 そのとき、奥の何かに姉貴の指の腹がひっかかった。まるで俺の脊髄の中を芋虫が這いまわっているような感覚が広がる。
 俺の変化はすぐに姉貴に察知された。
「発見! ここなんだ……」
 姉貴はそのポイントを見つけると、重点的に指でこすり始める。直接脳髄を刺激されるような快感が俺の中で広がっていく。
「や……やめ……」
 声がかすれているのが自分でもわかる。
「こっちもかわいがってあげる」
 姉貴はもう一方の手で、俺のモノをしごき、舌を玉袋に這わせた。
「あ……あ……」
 俺の口から女みたいに弱々しい声が出る。俺の意思とは無関係に両足が広がっていく。
 姉貴の両手は塞がっているから、今なら足をばたばたさせて逃げられるはずなのに、俺はめくるめく快感に抵抗できなかった。
 自分が完全に勃起しているのを感じる。姉貴の舌のざらざらした感触が裏筋の一番敏感な部分を舐め上げて、体育倉庫で司がしてくれたときの感触がフラッシュバックした。
「うぁぁぁっっっっ!!」
 背筋を反り返らせて、腰を二度三度とばたつかせて、俺は射精した。姉貴はその瞬間先端部を頬張って、俺が出したものを全て口の中で受け止めてくれた。
「あ……が……ひぃ……」
 俺の視界がホワイトアウトして、暫く何も見えなくなった。
 ようやく全身の感覚が落ち着いたとき、尻に痛みが走った。姉貴が指を抜いたからだ。
365転生恋生 第二十幕(4/5) ◆.mKflUwGZk :2010/05/24(月) 22:04:11 ID:qIL5B4lf
「ん……おいしいわ……たろーちゃんのが一杯……」
 姉貴はうっとりした表情で体を起こした。
「たろーちゃんも気持ちよかったんでしょ? イイ顔見せてくれてうれしいわ」
 俺は言葉が出なかった。
 姉貴にイカされた。寝ている間ならまだしも、ちゃんと目を覚ましている状態でだ。
 これまで、俺は姉貴の体には一切反応しなかったのに、今日はどうしようもなく気持ちよかった。
 俺はどうしてしまったんだ?
「違う……こんなの……」
 必死に否定する声は、俺自身が聞いても弱々しい。
「じゃあ、今度はいよいよ……くしゅん!」
 不意に姉貴が大きなくしゃみをした。
「いけない……体が冷えちゃうわね。温まりましょ」
 姉貴は軽々と俺の体を抱えると、自分もろとも湯船に浸かった。俺は姉貴に後ろから抱きかかえられる体勢になる。
 背中には姉貴の豊満な乳房が押しつけられている感触がある。普通の男なら興奮するんだろうが、俺にはおぞましい脂肪の塊ってだけだ。
「嘘だ……こんなの……」
「何が?」
 姉貴が俺の呟きを聞きとがめる。
「こんなのダメだ……血のつながった姉弟だぞ……」
「愛し合っている者同士にタブーなんて関係ないわ」
「俺は愛してなんかいない……」
 司の顔が脳裏に浮かんだ。そうだ、俺は司と付き合うことにしたんだ。
 今までは姉貴と性的な接触をするのは単なる変態行為だったけど、これからは浮気になるんだ。裏切りだ。
「もう、絶対にやめてくれ。俺は姉貴とこんなことするのはイヤなんだ」
「なに言ってるのよ。気持ちよかったくせに」
 いつになく、姉貴の話し方がサディスティックな気がする。
「尻なんか攻められたせいだ。俺の意思とは関係ない。体が脊髄反射しただけだ。俺は姉貴の体を見ても、何とも思わない。今だって、胸を押しつけられても、ちっとも興奮しないぞ」
 姉貴が笑い声をあげた。それもあざ笑うような感じだ。
「最近はずっと強情だったけど、一度箍が外れたら、あとは素直になるわよ。だいたいね……」
 耳たぶを姉貴に噛まれた。ぞくりとする感触が俺の全身を貫く。
366転生恋生 第二十幕(5/5) ◆.mKflUwGZk :2010/05/24(月) 22:08:02 ID:qIL5B4lf
「たろーちゃんの初めての射精は私が手伝ってあげたのよ」
 なんだと? それは聞き捨てならない。
「嘘つくんじゃねぇ。俺が初めて夢精したのは中二のときだぞ。はっきり覚えてる……」
「あははははは!」
 姉貴の笑い声が俺の抗議をかき消す。
「違うわよ。私はね、初潮が来てからずっと、たろーちゃんの体が大人になるのを待っていたの。だから、ずっと観察していたのよ」
 気色悪い。
「たろーちゃんがはっきりと朝立ちするようになって、そのときが近づいたのがわかったわ。それで、毎朝こっそりたろーちゃんのベッドに潜り込んで、オチンチンを調べたわ」
 やめろ。その先を言うな。
「そのうちに待ちきれなくなって、しゃぶりながら、少しずつ皮を剥いていったの。そして忘れもしない、200X年10月31日」
 やめてくれ、聞きたくない。
「たろーちゃんのオチンチンをしゃぶっていると、突然オチンチンが膨らんで、物凄い勢いで精液が噴き出したの。もちろん全部飲んだわ」
 嘘だ……。
「たろーちゃんが目を覚ましたら、『おめでとう』って言ってあげるつもりだったけど、全然目を覚まさないから、パジャマを元に戻して私も部屋に帰ったわ。まさか今まで気がつかなかったなんてね」
 俺は……姉貴に大人の体にされたのか……。
 どうしようもない変態だ、俺は……。
「だからね、たろーちゃんはもっと自分に正直になるべきなの。血縁関係なんて偶々そうなったってだけの話。私たちは千年前にあれだけ愛し合っているんだから、今更ためらうことなんかないわ」
 そう言って、湯船の中で姉貴は俺の股間をまさぐる。幸いにもお湯の熱さのせいか、まるで固くならない。
「せっかく千年ぶりに逢えたんだもの。後悔しないように、一杯気持ちよくなろうね。赤ちゃんもたくさん欲しいし」
 姉貴の言葉がだんだん遠ざかっていく。
 イヤだ。俺はこのまま姉貴のいいようにされたくない。誰か……誰か助けてくれ。
 またしても司の顔が浮かんだ。そうだ、司が俺を助けてくれるはずだ。
 俺は司と付き合うことに決めた。はっきり言ってやる!
 ……いや、ダメだ。そんなことしたら、姉貴は司にひどいことをする。
 ……でも、既成事実を作って、どんどん司との仲が進展すれば、姉貴も諦めるかもしれない。それまでは隠さないと……。
 ……早く司とセックスしよう。そして、俺が変態じゃないって証明するんだ……。
 朦朧とする中でそこまで決意したことは覚えている。そこで意識が途絶えた。

 次に目を覚ましたときはベッドに寝かされていた。俺は湯当たりをしたらしかった。そのおかげで姉貴がそれ以上の行為を断念してくれたらしい。
 今の俺にとって頼みになるのは司だ。司と本当に恋人同士になって、姉貴にその事実を突きつけてやろう。
 そんなことを考えるうちに目が冴えてきたが、俺はベッドの外に出る気がしなかった。姉貴に捕まるのが怖かった。ベッドの中で丸まっている方が安全なように思えた。
 悶々としながらも、丑三つ時を過ぎてようやく俺は眠りに落ちた。
 
367転生恋生  ◆.mKflUwGZk :2010/05/24(月) 22:11:38 ID:qIL5B4lf
投下終了です。
春になってから生活が激変して、やたらと忙しくなってしまいました。
投下を続ける意思はあるんですが、とにかく書く時間がないです。
なんとか月イチくらいで続けたいと思っています。
でも、忙しいときほど、ネタだけはやたらと思いついてしまうんですよね。
368名無しさん@ピンキー:2010/05/24(月) 22:16:41 ID:bDJ7V8w6
GJ!
久しぶりの一番乗りだ
この姉貴はやっぱりレベルが違えwww
369名無しさん@ピンキー:2010/05/24(月) 22:39:32 ID:M7f4x41A
370名無しさん@ピンキー:2010/05/24(月) 22:39:47 ID:/08Kk0P0
………。すんません。皆さんもうすっかり忘れてると思いますが……ちょうど半年前くらいに投下した、現在まとめWikiの短
編一覧にあります
「選択肢を選ぶ時は慎重に。そんなの誰でも知ってる。」
の続き書いてたんですが生活の困窮から投下できませんすた。マジすんません。話忘れててまた読み直すのめんどい方は華麗にスルーしてくりゃれ。以下粗筋↓

昔はべったりだった超絶美少女の妹

兄に彼女ができてからぱったり

しかし夜、自分の事をネタに自慰をする妹を発見

気まずくなり翌日の朝は早めに大学へ向かう兄←今ここ
『はぁ、やっぱ大学行くか……』

早く起きてしまったし、家にも居づらいのでもう大学に向かう事にした。


〜昼休み〜


美佳「ねぇってばぁ!どしたのさっきからぼーっとしちゃって?」

『ん?え?なんか言った?』

美佳「朝からおかしいよ?ぼけーっとしちゃって。何か心配事?……私でよければ相談してね……その……あんたの彼女なん
だし……」

『いや、ただ眠いだけだよ。バイトやり過ぎかも。』

妹が俺をネタに自慰をしていたんだ、どうしたらいいかな?なんて口が裂けても言えない。一応美月の極めてプライベートな事
だし、それに意外にも美佳は嫉妬深いので、そんな事を言えば俺と妹の仲を疑い、疑心暗鬼になってしまうだろう。大学でも他の女子
に俺が少し話掛けられるだけでやれ、あの女は誰だとか、私以外とはあんまり話して欲しくないだの、言われるし。
まだ美
佳と友達同士だった頃はこんな事を言われるなんて想像もしてなかった。付き合う様になったばかりもそんな事はなかった
けど、大学に進学し俺にも新たな人間関係ができていく中で美佳のまだ知らなかった一面がかいま見えてきた。美佳もそんなに
事あるごとに嫉妬なんてする必要なんて無いのに。彼女は何に焦ってるんだろ。仕切に、早く結婚したいね、子供産み
たいなぁ、なんて言う事もある。そんな事、大学生の身分でまだ無理に決まっているのに。……そういえばまだ美佳とセッ
クスとかした事なかったなあ。キスまではしたけど。俺も美佳も経験が無いからやりにくいのかも。それについ最近ま
で友達同士に過ぎなかった相手だしな。……ほんと言うと美佳の事は魅力的だと思うし、人間的にも信頼できるとは認識し
ている。でも異性として愛しているかと言われると、正直分からない。俺は異性を好きになるというのが良く分か
らない、というか好きになった経験がない。

美佳「そう?なら良いけど。……ねぇ、今日あんたの家行ってもいい……かな?」

『え?なんで?どうした急に。』

美佳「いや、その、ほっ、ほら!試験近いしさ、勉強会でもしようかなぁって!」

『あぁなるほど。そうか。分かった、じゃあ帰りにうち寄ってけよ。』

美佳「うーん……一度家帰ってから行くよ。近いし?」

『オッケー。はぁ〜試験かぁ〜。単位落としたくねぇ。』

美佳「うっ、うん!そうだね〜。」
〜数時間後〜


美佳「おじゃましまぁす。」

『おお、来た来た。飲み物持ってくから、先に行っててくれ。あぁ、俺の部屋は二階の廊下の一番奥だから。』

美佳「うん。……あのさ……美月ちゃんは?」

『まだ帰ってきてないよ。多分学校から塾行くだろうから夜まで帰ってこないんじゃないかと。』

美佳「そうなんだ……。じゃあ早く来てね〜?」

『おお。』

妹がいるのに美佳を連れて来る訳がない。あれだけ美佳の事を毛嫌いしていた妹のことだから、家に連れて来るなんて行ったら何
しでかすか分からない。今日美佳を家にあげるのだって妹の塾の日だと分かっていたからこそできる事だ。……とは思いつつ美月のやつに彼女を家に連
れて来た所を万が一見られたとしても今度こそ兄離れの決定打になるだろうしそれでも良いやと、この時はそんな恐ろしい事
を思っていた。……つか美佳のやつなんか良い匂いしたな、風呂でも入ってきたんだろうか?



美佳「へぇ、ここが彩人の部屋かぁ。意外にきれいね。」

『意外ってなんだよ。こう見えてもきれい好きなんだぜ。ほらココア。』

美佳「ありがと。ふ〜ん、でも整い過ぎてて怪しいなぁ〜。……えっちな本とか隠してたり〜?」

『ぶわッ!!そんなことねえよ。ほら勉強しような。』

美佳「はぁい。うふふ、怪しいけど今回は勘弁してあげる。」


××××××××××××××


『くぅ〜!終わったあ。3時間近くやってたよな?』

美佳「そうだね。お疲れ様。」

『どうする?もう帰る?』

美佳「うーん……ご両親はまだ帰ってこないの?」

『え?うん。共働きだし。夜になんないと帰ってこないと思う。』

美佳「そっか……もう少しいようかな?ねぇ?中学の頃の話でもしよ?」

『あぁいいけど』
375名無しさん@ピンキー:2010/05/24(月) 22:48:12 ID:/08Kk0P0
とりあえず今日はこの辺にしときます。あ、ちなみに妹の台詞は「」で兄の台詞は『』になってます。なんかやだって人は許してたも。また近いうちに次投下します。マジすんません。

あと>>367さんGJっす
376名無しさん@ピンキー:2010/05/24(月) 23:40:15 ID:NgKRQhyv
なんだこの投下ラッシュは
乙だけど困るじゃないか
377名無しさん@ピンキー:2010/05/25(火) 00:46:03 ID:LcNn6aXL
SS投下のグランドスラムや!!
なんかもうみなさんGJ、待ってました色んな意味で
378名無しさん@ピンキー:2010/05/25(火) 04:08:39 ID:At7ofpmq
纏めてGJコレこそキモ姉キモウトの底力!?
特に転生恋生は姉ターンが来て超嬉しい。
職人様方には感謝の言葉を捧げます。
379名無しさん@ピンキー:2010/05/25(火) 12:21:18 ID:4iOtEUmP
台本書いてるのかな
380名無しさん@ピンキー:2010/05/25(火) 13:41:18 ID:gQljmW4S
「ほらほら、お兄ちゃんしっかりしてよ」
体育座りをしている三つ下の妹・りなは、オレから1.7mほど離れた所から、ニヤニヤしながら声をかける
「はあ…はあ…」
一方オレは立った姿勢で下半身を露出し、汗だくになりながら必死にナニをしごいている
「がんばって〜、オナニー奴隷のお兄ちゃんっ」

親父が再婚したのは去年の事だ。新しい母さんの連れ子がりなだったわけだが、かわいいりなにオレは一目惚れしてしまった
しかし妹に告白する度胸はなく、こっそり写したりなの写メで欲求不満をごまかすのが日課になっていた
だが一ヶ月程前、行為にふけっている所をりなに見られてしまう
激怒され、軽蔑される事を覚悟したオレだったが、りなの反応は意外にも冷静だった
「お兄ちゃん、あたしの事好きなの?そうだよね、いっつもあたしの胸とか脚とか見てたもんね」
バレてた…。もう恥ずかしさと情けなさと罪悪感で消えてしまいたかった。
だが、りなはそんなオレに珍妙な条件をつきつけた
「ねえお兄ちゃん、あたしの言う事聞いたら、誰にも内緒にしてあげるけど」
「す、する。なんでもする」
「うん。それじゃあね、これからはお兄ちゃん、あたしの目の前でだけオナニーしてほしいの。もちろん、あたしの知らない所でオナニーしちゃダメだよ。それから、エッチな本とかオカズを使うのも禁止ね。あたしだけを見てオナニーしてね」
メチャクチャな事を…!異議を申し立てたが、りなの返事は悪魔の笑みだった
「お兄ちゃん、これからはりなのオナニー奴隷になってね」


続くかどうかわかんね
381名無しさん@ピンキー:2010/05/25(火) 15:41:56 ID:ibOq4cbQ
是非続けてくれ
いや、続けてください
382名無しさん@ピンキー:2010/05/25(火) 18:31:12 ID:jcJYl31X
すまん携帯は特定の板が規制されてるからあえてここにカキコするわ

小窪マジ使えん
2軍落とせ
383名無しさん@ピンキー:2010/05/25(火) 19:52:25 ID:OZznAfKi
ふふ…ここは私とお兄さんの楽園ですよ? そんなことが許されると思っているのですか?

その罪を…償いなさい、>>382
384名無しさん@ピンキー:2010/05/25(火) 22:52:36 ID:epH6svLG
種有り シタ した ある 有る
385名無しさん@ピンキー:2010/05/25(火) 23:26:45 ID:gQljmW4S
「う〜ん、じゃあどうしよっか」
りなは腰に手を当てる
「ただお兄ちゃんのオナニー見るだけじゃつまんないしね〜。へへっ」
楽しそうに笑いながら、無慈悲な計画を練る妹。本当に勘弁してほしいのだが、いつの間にか、りなには逆らえない空気が、できていた
「えーと……あっ、そうだ!」
りなの頭の中に、悪魔の閃きが浮かんだようだ
「お兄ちゃん、向こうの壁の方に立って」
りなに命令され、しぶしぶ壁を背にして立つ。この壁の向こうはりなの部屋だ
「で、あたしは…この辺かな?」
妹はオレから離れた所に立つ。一体何をしようというのか?しかもりなはオレの机にあるペン立てからマジックを取り出し、自分の立ち位置にキュッキュッと印をつける。オレはあっと声を出したが、りなは全く意に介さない
「お兄ちゃーん、これからオナニーする時はねー、そっちからぁ、あたしがいる所までぇ、精子飛ばしてちょうだーい!」
「はあっ!?」
ニコニコ顔でとんでもない事を要求するりな。大体向こうまで飛ばすって言われても…オレとりなの位置までは1.7m程離れている。つまりオレの身長とほぼ一緒という事になる。無理だ…できっこない
「む、無理だよ!絶対できないってそんなの!」
「なんでだよー。お兄ちゃん、オナニー奴隷なんだからさ、がんばってやってよ!」
「無理だって!絶対無理!」
「じゃあさ、ここまで届いたら、オナニー奴隷卒業させてあげるから。ねっ、決ーまり!じゃあ早速始めて」
「なっ…で、でも…」
「…何してんの。早く始めてみせてよ」
「……」
「……もう!じれったいなあ!」
りなは膨れっ面でずかずかと近寄って来ると、オレの前にしゃがみこんでベルとをカチャカチャとやり始めた
「わっ、バカ!やめろよ…」
オレはりなを払いのけようとしたが、
「さわんないで!!」
激しい口調、強い目線
「お兄ちゃんスケベだから、何されるかわかんないからね。これから先あたしにちょっとでも触ったら、お兄ちゃんの事みんなに言うよ。それにお兄ちゃんはもうドレーなんだから、勝手な事しないでよね」
「う……」
りなの迫力に押され、オレはどうする事も出来なかった。ベルトはいつの間にか外されている
りなはすっと立ち上がり、
「さっ、じゃあ後は自分でどうすればいいか、わかるよね?」
「……」
落ち込むオレを一顧だにせず、りなは定位置に戻る。そしてくるりと振り向くとかわいい笑顔でこう言い放った
「はいっ、それではスタート!!」

オレはすっかり観念してしまった。ズボンとパンツを一緒にずるずると引き下ろすと、りなは面白そうにオレの股間を見つめた
386名無しさん@ピンキー:2010/05/25(火) 23:35:28 ID:a21sfCCL
ちょっと>>384がガチで気持ち悪い。かゆ うま みたいな薄気味悪さがこうも続くともう…
387名無しさん@ピンキー:2010/05/25(火) 23:36:07 ID:gQljmW4S
そして冒頭の場面に戻るわけだ
オレがりなの言いなりになってから一ヶ月くらいになる。初めの内は固くさせる事もままならなかったが、今ではすっかりこの異常な自慰に馴れてしまった。と言うより…りなの視線が無いと勃起する事が困難になっていた…

「ねえお兄ちゃん、今日はどこまで飛びそう?」
体育座りのりなが口を開く。記録は日々更新している。昨日は1.3mくらいだった。自分でも大したものだと思うが…目標であるりながいる位置までは、まだまだだ
「お兄ちゃん、本物のりなを見てオナニーできるからうれしいでしょう」
「あ、ああ…うれしいよ…」
本当は屈辱半分なのだが…馴れてくるとそれもまた気持ち良さの一つになってくる。…オレは本格的にマゾに目覚めたのだろうか?
「あははっ、すっごい必死でちんちん擦ってるね。汗ダラダラだよ?」
オレのオナニーを見ている時のりなは本当に楽しそうだ。アニメを見ている子供のように、一生懸命に見ている、という形容がふさわしい
「お兄ちゃん、そんなにオナニー気持ちいいの?」
「き、気持ちいい…」
本当はりなに襲い掛かってもっと気持ちよくなりたい。だが、どうしてもそれができない…
「他人に見られてるのに、なんでそんなに気持ちいいの?お兄ちゃんがヘンタイでエッチだからかな?」
388名無しさん@ピンキー:2010/05/25(火) 23:37:26 ID:zFgpNgNF
>>386
荒らしに安価つけると削除されにくくなるっていう
389名無しさん@ピンキー:2010/05/25(火) 23:38:29 ID:gQljmW4S
「そ、それは…」
「ん〜?」
「り、りながかわいいからだよ…うっ!?」
危うくイキそうになったが寸前でセーフ。しかしこれは正直な気持ちだ
「ふ〜ん……そんなにあたしかわいいんだ?」
「りなが…い、一番かわいい女の子だよ…」
「そうかぁ、お兄ちゃん、りなの事そんなにかわいいんだぁ…へへっ」
りなは体育座りのままニヤニヤしている
「うん。じゃあね、お兄ちゃんにいい事教えてあげる」
「…?」
りなは体育座りをぎゅっと縮こませ、オレの事を上目使いで見上げる
「うん。実はね…あたし今下着はいてないの。つまりノーパンなの」
「!?」
まさかの爆弾発言。目の前の愛するりながパンツハイテナイ?まさかそんな。だがこれは本当だろうか?りながオレの反応を見て楽しむためについた嘘かも知れない。
現にオレは今りなの股間をガン見している。ホットパンツをはいていてノーパンか否かを確認できるはずもないのに、股間を凝視する様は明らかに滑稽だと言える。りなのニヤニヤ顔もますます強まっている
390名無しさん@ピンキー:2010/05/25(火) 23:40:34 ID:gQljmW4S
(ノーパン…ノーパンのりな…!)
ペニスを擦る右手がかつてない程動く。オレはもう極限まで興奮していた。歯を食いしばり、汗と我慢汁を撒き散らしながらペニスをしごいた。もう恥も外聞もない
「うわぁ、お兄ちゃんの右手すっごい速いよ!もう出ちゃう?もうイキそうなの!?」
「ぐっ…ううっ…!」
「お兄ちゃんがイッちゃう!あたしのノーパン話でお兄ちゃん精子が記録更新しちゃう!出して!あたしの所までお精子飛ばして!!」
りなはもう立ち上がっている
「〜〜〜っ!!」
「イッて!りな好きだー!って言いながらイッて!!!」
「うぅぅ〜〜〜!り、りな、好きだあぁぁぁーー!!」
快感が爆発し、凄まじい射精感がペニスを支配した。鈴口から猛スピードで精液が発射され、放物線を描きながら、りなに向かって宙を駆けていった
「あ、あはは、お兄ちゃん、すこいイッちゃったね…。はあ、はあ…。あ〜、でも、残念…はぁ…」
精液はりなの爪先、マッチ棒一本分ほどの間隔で届いていなかった
体力を使い果たしたオレは、がくりと膝を折り、その場で四つん這いになった。
部屋の中は、オレと、りなの息切れの声、そして精液のにおいが満ちていた
391名無しさん@ピンキー:2010/05/25(火) 23:41:58 ID:gQljmW4S
今日はこれで勘弁
392名無しさん@ピンキー:2010/05/26(水) 01:02:11 ID:jvCg9Xs4
>>391
乙、GJ!
妹もキモイが兄も大概キモイなw

とりあえず>>386>>388は3時間程正座して>384を音読し続ければいいと思う
393名無しさん@ピンキー:2010/05/26(水) 05:21:01 ID:BHn+7VrC
>>391
おお、続いてくれて嬉しいよGJ!
なんという調教済兄。妹も完全にイっちまってキモいし。
次回の投下ゆ楽しみにしています
394三つの鎖 18 後編  ◆tgTIsAaCTij7 :2010/05/26(水) 18:32:36 ID:hbwZRgYX
久しぶりの投下になります。
HPのは私の編集ミスです。申し訳ありませんでした。

これからの展開は多少の鬱展開を含みます。
中途半端な終わり方でもHappy Endを希望する方は、18話の中編で読むのを終えるようにお願いします。

※以下注意
血のつながらない自称姉あり
エロ無し

投下します
395三つの鎖 18 後編  ◆tgTIsAaCTij7 :2010/05/26(水) 18:33:01 ID:hbwZRgYX
 二人で買い物袋を手に夏美ちゃんのマンションの階段を上る。
 夏美ちゃんは鍵を取り出して玄関に入ると、僕の方を振り向いた。
 「おかえりなさいです!」
 笑顔でそう言う夏美ちゃん。
 えっと、どう反応すればいいのだろう。
 戸惑っている僕を目の前に夏美ちゃんはニコニコしている。
 「今日、お父さんとお母さんが帰ってきた時に、おかえりなさいって言います」
 夏美ちゃんは僕の手を握った。
 「お兄さんのおかげです。本当にありがとうございます」
 僕を見上げる夏美ちゃん。澄んだ綺麗な瞳。
 顔に血が上るのが分かる。僕は思わず目を逸らした。
 「その、とりあえずお邪魔してもいいかな。食材を冷蔵庫に入れないと」
 恥ずかしくて言いたいことが言えない。
 「そうですね」
 夏美ちゃんは笑った。僕の手を握ったまま器用に靴を脱ぐ。僕も靴を脱いだ。
 そのまま上機嫌に僕をキッチンまで引っ張る夏美ちゃん。
 僕たちは手を洗い、冷蔵庫に食材を入れた。
 二人でおそろいのエプロンをまとい、下ごしらえをする。
 昨日教えた通りに夏美ちゃんは鳥の照り焼きの下ごしらえをする。
 嬉しそうに、楽しそうに。本当に幸せそうな夏美ちゃん。
 夏美ちゃんが動くたびに、ショートの髪が揺れる。
 「お父さんとお母さん気に入ってくれるでしょうか」
 「きっと気に入るよ」
 ささやかな会話。それなのに心が温まる。
 下ごしらえはすぐに終わった。すき焼きだし、準備はさほどかからない。
 少し残念そうな夏美ちゃん。夏美ちゃんの気持ちは僕も分かる。
 祭りより、祭りの準備の方が楽しい。
 準備が終わって、僕と夏美ちゃんはリビングのソファーに並んで座っていた。
 寄り添う僕と夏美ちゃん。はしゃぎすぎたのか、うとうととしている。
 やがて夏美ちゃんは僕の肩にもたれかかって静かな寝息を立てながら眠り始めた。
 安らかな寝顔。安心しきったように僕に身を預ける姿に胸が痛む。
 はしゃいで疲れただけではない。ずっと心配をかけていた。
 僕と梓の事を。
 こうしていると、僕にとって夏美ちゃんがどれだけ大きな存在か良く分かる。
 どうしようもないぐらい夏美ちゃんに惹かれている自分。
 夏美ちゃんは僕にもたれかかった。そのまま僕の膝の上に上半身を預ける。起きないで眠り続けている。
 ちょっと恥ずかしい。夏美ちゃんに膝枕。スカートから覗く白い太もも。
 僕は脱いだ学生服を夏美ちゃんにかけた。目のやり場に困る。
 のんきな表情で眠り続ける夏美ちゃん。なんかちょっと腹が立つ。
 僕は眠り続ける夏美ちゃんのほっぺたをつついた。柔らかい。
 微かに身じろぎする夏美ちゃん。
 なんだか面白くなってきた。僕は調子に乗って何度もほっぺたをつついた。
 「ん、んふぇ、しゅぴー」
 夏美ちゃんが変な声を上げる。おもしろすぎる。
 「しゅぴ、しゅぴです」
 僕はさらに調子に乗って夏美ちゃんのほっぺたをつつこうとした。
 「しゅぴです、おにいしゃん」
 思わず手が止まる。
 今何て言った?
 「すきです、おにいさん」
 夏美ちゃんの寝言。
 頭に血が上る。恥ずかしすぎる。
 今すぐに立ち上がって思い切り叫びたくなるほどの恥ずかしさ。
 僕は何度も深呼吸した。落ち着け。夏美ちゃんが起きちゃう。
 なんとか落ち着いた僕は夏美ちゃんの寝顔を見た。
 安心しきったような無防備な姿。
 本当は女の子の寝顔を見るなんて良くないと思う。それなのに目を離せない。
 夏美ちゃんと知り合ってから、色々な事があった。本当に色々な事があった。
 僕にとって悲しい出来事も、望まない出来事もあった。
 それも、もう終わった。
396三つの鎖 18 後編  ◆tgTIsAaCTij7 :2010/05/26(水) 18:33:43 ID:hbwZRgYX
 梓も春子も分かってくれた。
 もう、傷つける事も、裏切ることも、しなくていい。
 いつの日か、夏美ちゃんと梓と春子と僕の四人で鍋をしたい。
 いつになるのか分からないし、出来るかも分からない。梓と春子は嫌がりそうだ。無神経な事かもしれない。
 でも、希望を持つぐらいは許されると思う。梓も春子も僕の大切な妹と姉さんなのだから。

 気がつくと部屋は暗くなっていた。窓の外はすでに暗くなっている。消した覚えもないのに明かりが消えている。
 僕の肩に毛布が掛けられていた。膝の上の夏美ちゃんは相変わらず静かな寝息を立てている。
 いつの間にか寝ていた。そして誰かが毛布をかけてくれた。
 自分でもびっくりするぐらい無防備に寝ていた。
 僕も疲れているのかもしれない。
 しばらくぼんやりしていると、リビングに誰かが入ってきた。
 「おや、目が覚めたのかい」
 夏美ちゃんのお母さんの洋子さんがにやにやと僕を見た。
 「すいません。寝てしまったみたいで。毛布ありがとうございます」
 「なに。夏美が君の学生服を一人占めしている様だしね。気にしないで。いい絵もとれたしね」
 そう言って洋子さんは僕にデジカメを向けてシャッターを切った。ピロピロリンと言う間の抜けた電子音が響く。
 背中に冷や汗が流れる。ものすごく嫌な予感がする。
 「ああ、安心して。もちろん二人の可愛い寝顔はしっかりと記録したから」
 嬉しそうに洋子さんは言った。
 脳裏に雄太さんの姿が浮かぶ。怒り狂う雄太さんの姿が。
 「きっと雄太も喜ぶよ」
 洋子さんはにやりと笑った。
 「勘弁してください」
 「勘弁?何の事かな?」
 まずい。このままだと雄太さんに何をされるかわからない。
 そんな事を考えていると、夏美ちゃんがむくりと起き上った。
 寝ぼけた眼で僕を見つめる夏美ちゃん。
 「おにいさん、だいすき」
 夏美ちゃんはそのまま僕に抱きついてきた。柔らかい。寝起きなのか、少し高めの体温が温かい。
 ピロピロリンと間の抜けた電子音が響く。終末を告げる天使のラッパのように。
 「だいすきです」
 夏美ちゃんは僕の胸に頬ずりしてくる。すごくうれしくて恥ずかしいけど、今はそれどころじゃないような気がする。
 「あの、夏美ちゃん」
 僕の呼び声に夏美ちゃんは顔を上げた。白くて滑らかな頬。綺麗な瞳。柔らかそうな小さな唇。
 夏美ちゃんの顔がさらに近くなる。夏美ちゃんの唇が僕に触れる。
 「んっ、ちゅっ」
 柔らかい唇の感触に頭がくらくらする。
 ピロピロリンという間の抜けた電子音が響く。僕ははっとなって夏美ちゃんを引きはがした。
 「夏美ちゃん。目を覚まして」
 「おにいさん、なつみのこときらいですか」
 妙に舌足らずな声で僕にもたれかかる夏美ちゃん。まだ寝ぼけている。
 再びピロピロリンという間の抜けた電子音が響く。
 「夏美ちゃん。落ち着いてね」
 僕は夏美ちゃんの脇の下に手を差し入れ、180度回転させた。洋子さんのいる方に。
 夏美ちゃんと洋子さんの視線が合う。
 洋子さんの構えたデジカメから再び間の抜けた電子音が響く。
 「おはよう夏美。幸一君の膝の上はそんなに寝心地が良かったのかな」
 意地悪そうに洋子さんは言った。
 夏美ちゃんは立ち上がり、僕を見て、再び洋子さんを見た。
 「み」
 み?
 「みゃぎぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」
 夏美ちゃんは頭を抱えて絶叫した。

 「お母さん!デジカメを貸して!」
 「だめだ。これは一生の宝物だ」
 「むむむ!お兄さん!お母さんを押さえつけてください!」
 「ほほう。私は別にかまわないよ。さあ幸一君、お義母さんの胸に飛び込んでおいで」
 「やっぱり駄目です!」
397三つの鎖 18 後編  ◆tgTIsAaCTij7 :2010/05/26(水) 18:34:20 ID:hbwZRgYX
 じゃれあう娘と母。
 僕はため息をついてソファーに座った。
 洋子さんには一生逆らえない気がする。
 「しかしまあ、見ていてかゆくなる光景だったね。まさか恥ずかしがり屋の夏美が男の膝の上で無防備に眠っているのだから。もう叫びだしたくなるほどの恥ずかしい光景だったよ」
 さらにとどめをさしてくる洋子さん。もう許してください。
 夏美ちゃんも顔を真っ赤にしている。
 「特に夏美はすごかった。幸一君の学生服を離さないんだよ。寝ているのに。しわになるから代わりに毛布をかけようとしたのに、しっかり握って離さないんだ」
 夏美ちゃんが震える。
 「寝言もすごかった。聞いているこっちが恥ずかしくなるような寝言だったよ」
 洋子さんは楽しそうに、実に楽しそうに話す。
 「お母さん」
 「何?」
 「もう勘弁して」
 両手を上げる夏美ちゃん。降伏のポーズ。
 「僕からもお願いします」
 僕も両手を上げた。
 洋子さんはおかしそうに笑う。
 その時、電話が鳴った。洋子さんは受話器に手を伸ばす。
 「もしもし、中村です」
 洋子さんはにやりと笑った。
 「ちょっと待ってね」
 そう言って洋子さんは夏美ちゃんに受話器を渡した。
 「雄太だ」
 夏美ちゃんの目が輝く。
 「もしもし?お父さん?」
 夏美ちゃんの声が弾んでいるのが良く分かる。
 嬉しそうに、楽しそうに話す。
 「いるよ。うん。え?いいけど…。変な事話さないでね」
 夏美ちゃんは僕に受話器を差し出した。
 「お父さんが代わってほしいらしいです」
 僕は受話器を受け取った。
 「もしもし。加原です」
 『幸一君かい?娘がお世話になっている』
 雄太さんの声。落ち着いた大人の声だけど、わずかに声が弾んでいるのは隠しきれない。
 『あと30分ぐらいで着くと思う。遅くなってすまない』
 「いえ、そんな事ないです」
 『さっき洋子さんが後で面白いものを見せると言ってたけど、何か分かるかい?』
 背筋に寒いものが走る。
 「分かりかねます」
 『まあいいや。幸一君の作るすき焼きを楽しみにしているよ。それじゃあ』
 「お電話代わりましょうか」
 『それには及ばない。またあとでと伝えといて。娘をよろしく頼むよ。それじゃあ』
 それきり電話は切れた。
 「お父さんなんて言ってましたか?」
 受話器を受け取りながら夏美ちゃんは僕に尋ねた。
 「あと30分ぐらいでつくのと、すき焼きを楽しみにしているって」
 「じゃあ準備しましょう!」
 元気よく言う夏美ちゃん。
 僕と洋子さんは苦笑して立ち上がった。

 準備はすぐに終わった。
 もともと下ごしらえはすんでいる。食器やコンロを並べるだけで終わった。
 それから三人でのんびりしていた。
 「お父さん遅いですね」
 ため息をつく夏美ちゃん。その言葉を何回聞いただろう。
 洋子さんも苦笑している。
 「よし。暇つぶしにこんなものがある」
 洋子さんは大きな本を持ってきた。いや、アルバムだ。
 夏美ちゃんの顔が真っ赤になる。
 「お母さん!なんで見つけたの!?隠してたのに!」
398三つの鎖 18 後編  ◆tgTIsAaCTij7 :2010/05/26(水) 18:34:54 ID:hbwZRgYX
 「ふふふ。あれぐらい私の手にかかればどうってことない。幸一君。夏美の小さい時の写真に興味はないかい」
 「あります」
 「お兄さん!?」
 夏美ちゃんの悲鳴を無視して僕と洋子さんはアルバムを開いた。
 三人家族の写真。夏美ちゃんの写真がこれでもかというぐらいにある。
 雄太さんも洋子さんも映っている。
 「可愛いだろ?」
 洋子さんの言うとおり、夏美ちゃんは小さい時から可愛い。
 雄太さんが夏美ちゃんに甘くなるのも仕方がないと思う。
 でも、洋子さんも夏美ちゃんが可愛いんだろうと思った。
 アルバムには夏美ちゃんと雄太さんが一緒に写真がたくさんある。
 つまり写真を撮ったのは洋子さん。
 「ん?」
 僕の視線に気がついたのか、洋子さんは怪訝な顔をした。
 僕は笑ってごまかした。
 「いつまで見ているのですか!」
 顔を真っ赤にして夏美ちゃんは僕の手からアルバムをひったくった。
 「ごめん。夏美ちゃんがあまりに可愛くて」
 さらに顔を赤くする夏美ちゃん。湯気が出そう。
 そんな夏美ちゃんを見るのがめっちゃ楽しい。
 いつから僕はこんなに意地悪な性格になったのだろう。
 「…今度、お兄さんのアルバムも見せてもらいます」
 そう言って夏美ちゃんはそっぽ向いた。その仕草も可愛い。
 その時、家のチャイムが鳴った。
 夏美ちゃんははじかれたように立ち上がった。
 「お父さんだ!」
 駆け出す夏美ちゃん。それに続く僕と洋子さん。
 三人で玄関に並ぶ。
 夏美ちゃんがドアを開けた。
 そこに立っていたのは雄太さんではなかった。
 スーツを着た僕の父に数名の警察官。
 異様で物々しい雰囲気。後ろの警察官は腰の拳銃や警棒に手をかけている者すらいる。
 「中村雄太さんのお宅ですね」
 僕の父が口を開いた。無表情に僕たちを見回す。
 父は僕を見ても眉一つ動かさない。冷静で冷徹な警察官の顔。
 「はい、そうですが」
 洋子さんは呆然と応じた。
 「中村雄太さんと思われる男性が遺体で発見されました。確認のためご同行ください」
 何の感情も込められていない冷静な父の声。誤解のしようの無い簡潔な言葉。
 それなのに、父の言っている意味が理解できなかった。
 「ご同行、お願いします」
 父はもう一度繰り返した
399三つの鎖 19  ◆tgTIsAaCTij7 :2010/05/26(水) 18:36:30 ID:hbwZRgYX
続けて19話投下します。
400三つの鎖 19  ◆tgTIsAaCTij7 :2010/05/26(水) 18:37:15 ID:hbwZRgYX
三つの鎖 19

 公民館での葬式にはびっくりするぐらいの人が集まった。
 国籍も様々だ。明らかに英語でない言葉まで飛び交う。
 その中で明らかに一般人とは違う空気を醸し出す者も混じっていた。
 警察官だ。柔道の稽古で見知った顔も混ざっている。
 昨日、病院で雄太さんの遺体を確認した。
 そこで洋子さんは普段の様子からは想像できないほど取り乱した。
 今も喪服を着て呆然としている。
 葬式の段取り等は雄太さんの勤めている会社が行ってくれているけど、洋子さんが悲しみに打ちひしがれているため、実質的な喪主は夏美ちゃんだった。
 雄太さんは知り合いが多いのか、会社の通訳の人と一緒に夏美ちゃんは今も挨拶に走り回っている。
 そばにいても何か手助けできるわけでもない。それでもそばにいたかった。
 夏美ちゃんを捜していると、人だかりができていた。
 近づくと怒声が聞こえてくる。
 「あんたが中村さんを殺したんだろ!?」
 穏やかではない内容。
 一人の若い男が年かさの男につかみかかっている。
 「あれだけ功績をあげた中村さんを世界中に飛ばして、それでも業績を上げる中村さんを疎んじていただろ!?」
 怒声が公民館に響く。明らかに冷静でない状態だ。
 掴みかかられた年かさの男は蒼白になって突っ立っている。
 止めようと近づくと、知っている声が響く。
 「やめてください」
 夏美ちゃんの声。
 静かな声なのにざわめきを制する不思議な声。
 夏美ちゃんはゆっくりと歩いてくる。
 背の低い、どこにでもいそうな普通の女の子。
 それなのに参列者は気圧されたように道を開けた。
 「父は海外への転勤を誇りに思っていました。多くの方と知り合う機会を得たと生前に申していました」
 夏美ちゃんの静かな声が公民館に響く。
 「父は会社を誇りに思っていました」
 年輩の男に掴みかかっていた男は恥じたように手を離した。
 不謹慎かもしれないけど、僕は夏美ちゃんに見惚れていた。
 普段は元気で少し子供っぽいところのある夏美ちゃんとは違う姿。
 大人びて落ち着いた振る舞い。凛とした声。
 夏美ちゃんと目が合う。
 お互いに微かに会釈して夏美ちゃんは会社の人と一緒に去って行った。
 そばにいたいと思ったけど、いても邪魔になるだけだと分かってしまった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 葬式は社葬という形で行われた。
 本来なら家族で弔ってから行うのが一般的だけど、雄太さんと洋子さんのご両親はすでに他界し、親戚も少ないために雄太さんの勤めていた会社が手伝う形になった。
 また、雄太さんの海外の知り合いが大勢来るため、日本式のお葬式とは少し違う手順で行われた。
 僕は会社の人とお供え物の整理をしていた。
 海外の人、特に欧米とは違う国の人がそれぞれの風習で贈り物を持ってきたおかげですごい事になっている。しかし、いちばん多いのが現金や宝石類、小切手だった。娘さんのこれからの生活に使ってほしいとのことらしい。
 雄太さんは海外にいる時でも娘の事をよく話したのだろう。
 「あの、お兄さん」
 会社の人とお供え物の整理をしていた僕に夏美ちゃんが声をかけてきた。
 微かに青ざめた顔色以外は全くいつも通りだった。それが逆に不安を感じさせる。
 「出棺の際にお兄さんも棺を担いで欲しいのですが、お願いしてもいいですか?」
 「…僕でよければ喜んで」
 一度しか会った事がない僕が引き受けていいのか一瞬迷ったけど、夏美ちゃんが望むなら引き受けようと思った。
 「ありがとうございます。お父さんもきっと喜びます」
 凛とした夏美ちゃんの声。
 何を言えばいいのか分からない。
 「お願いします。それでは失礼します」
 そう言って夏美ちゃんは背を向けた。
 気丈だけど、どこか儚く感じる背中。
 「夏美ちゃん」
 その後ろ姿に思わず僕は声をかけていた。
401三つの鎖 19  ◆tgTIsAaCTij7 :2010/05/26(水) 18:37:52 ID:hbwZRgYX
 夏美ちゃんは振り向いた。
 「何かあったらいつでも言って。僕にできる事なら何でもする」
 夏美ちゃんは微かにほほ笑んだ。
 「ありがとうございます」
 そう言って夏美ちゃんは去って行った。
 凛々しい後ろ姿。小さな背中なのに、不思議な頼もしさを感じる。
 突然の父の死にも気丈に振る舞い、僕の気遣いに対しても笑顔で対応する夏美ちゃん。僕よりも年下の女の子なのに、芯は僕とは比べ物にならないほど強い。
 微かに感じてしまう身勝手な寂しさ。
 夏美ちゃんの立派な姿に安心する気持ちと、頼って欲しいという相反する身勝手な気持ち。
 僕は雑念を振り払って目の前の作業に集中した。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 お葬式は滞りなく進んだ。
 火葬場に棺が運ばれる。
 洋子さんは呆然と棺に寄り添っていた。
 夏美ちゃんが洋子さんの手をとり棺から離した。
 棺が火葬炉にゆっくりと運ばれていく。
 それを見つめていた洋子さんが突然棺に走りだした。
 「やめろ!雄太を焼かないで!」
 棺を運ぶ係の人に掴みかかる洋子さん。
 洋子さんは棺にしがみついた。血走った眼で周りを睨みつける。
 尋常でない様子の洋子さんに誰も動かない。僕は意を決して洋子さんに近づいた。
 「洋子さん。落ち着いてください」
 「何が落ち着いてだ!」
 洋子さんの叫びが響き渡る。
 「もしかしたら、もしかしたら雄太は動くかもしれないじゃないか!息を吹き返すかもしれないじゃないか!それなのに焼いたらどうなる!本当に終わってしまう!」
 洋子さんは棺にしがみついてまくしたてた。
 明らかに普通でない。洋子さんの瞳には熱に浮かされたような奇妙な光を放つ。
 「ちょっと前まであれだけ元気だった!昨日電話した時の声もいつも通りだった!死んだなんて嘘だ!疲れて眠っているだけだ!」
 「落ち着いてください」
 洋子さんは僕の胸ぐらをつかんだ。
 こんな小さな手なのに、驚くほどの力で締め付ける。
 「幸一君だって電話の声を聞いただろ!?雄太が私を置いて死ぬはずない!死ぬはずがないんだ!」
 洋子さんは僕の方を向いているけど、僕を見ていない。
 焦点の合っていない瞳に背筋が寒くなる。
 僕には洋子さんの気持ちは分からない。ここまで深く人を愛した経験も、失った経験もない。
 でも、もし夏美ちゃんが亡くなったら、僕も洋子さんのように取り乱すかもしれない。
 「お母さん!」
 夏美ちゃんの凛とした声が火葬場に響く。
 「お母さん。お父さんは死んだんだよ」
 洋子さんは呆然と夏美ちゃんを見た。
 夏美ちゃんはゆっくりと近づき、洋子さんの手を握り僕の胸ぐらから離した。
 「私達がしっかりしていないと、お父さんも安心できないよ」
 しっかりとした声で洋子さんを励ます夏美ちゃん。
 洋子さんは夏美ちゃんにしがみついて泣いた。夏美ちゃんはそっと洋子さんの背中に腕をまわして抱きしめた。
 火葬場に洋子さんの泣き声が響く。
 参列者も涙ぐんでその光景を見守った。
 夏美ちゃんは火葬場の係の人を見た。その毅然とした姿に係の人は気圧されたように一歩下がる。
 「続けてください」
 その声は凛としていて、微塵も震えていなかった。
 「あの、いいのですか」
 係の人は恐る恐る尋ねた。
 「続けてください」
 夏美ちゃんは繰り返した。
 棺が火葬炉にゆっくりと入って行った。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 最後は夏美ちゃんの挨拶でお葬式は終了した。
402三つの鎖 19  ◆tgTIsAaCTij7 :2010/05/26(水) 18:38:39 ID:hbwZRgYX
 本来なら喪主の洋子さんがするはずだが、洋子さんは火葬場から戻っても呆然としていた。
 夏美ちゃんは日本語と流暢な英語で挨拶をした。
 その凛とした姿に他の参列者は胸をうたれた様子だった。
 夏美ちゃんが英語を得意な事を僕は知らなかったけど、得意な理由は察しがついた。
 海外に住む事の多いご両親に会いに行くときに困らないようにだろう。
 お葬式が終わって後片付けを手伝っていると、会社の方が僕に声をかけてきた。
 その人から雄太さんからの遺書を渡された。
 雄太さんはもともと海外勤務が多く、中には政情が安定していなくて治安の悪い国に行くことも多かったらしい。それで多くの人にあてた遺書を残していた。
 一度しか会ったことのない僕に遺書を当てる理由は一つしか思い浮かばなかった。
 僕は礼を言って遺書を受け取り懐に入れた。
 会社の人に夏美ちゃんと洋子さんを家に送るように言われた。後は会社の方でやってくれるらしい。
 僕は礼を言って夏美ちゃんと洋子さんを探した。
 二人はすぐに見つかった。呆然とする洋子さんに寄り添う夏美ちゃん。
 「夏美ちゃん」
 声をかけると夏美ちゃんは振り返った。少し疲れた様子。
 「会社の人が後は任せてだって。家まで送るよ」
 その後、タクシーを呼んだ。
 タクシーの中で、誰もが無言だった。洋子さんは疲れ果てたように眠った。
 マンションの郵便受けには多くの手紙が入っていた。エアメールもたくさん入っていた。
 僕は洋子さんをベッドまで運んで横にして布団をかぶせた。
 部屋を出てリビングに行くと夏美ちゃんが飲み物を入れてくれた。
 「今日は本当にありがとうございました」
 夏美ちゃんはそう言ってコップを渡してくれた。
 微かに青白い顔以外はいつも通りの夏美ちゃん。それが危なっかしく感じる。
 「夏美ちゃん。台所を借りていいかな。何か作り置きしていくから」
 夏美ちゃんは遠慮したけど、僕は押し切って台所に入った。
 冷蔵庫を確認する。すき焼きのための材料が入っている。
 雄太さんの遺品となった牛肉もある。神戸牛に松坂牛などの高級な牛肉。
 冷蔵庫を確認してカレーにする事にした。ねぎなどを入れて煮込む
 料理の途中で雄太さんの手紙を読んだ。
 『幸一君がこの手紙を読んでいるという事は、残念ながら僕は死んでいるということだろう。万が一なにかの手違いで受け取った場合は以降の文章は無視しても構わない。
 夏美はまだまだ脆い所がある子だ。僕の死に嘆き悲しむだろう。幸一君がこの手紙を手にした時、夏美との関係がどうなっているかは分からない。もしかしたらすでに別れているかもしれない。
 それでも夏美の事を気にかけてあげて欲しい。支えてあげて欲しい。勝手な頼みで申し訳ないが、娘を頼む』
 短い内容。それで一度しか会ったことのない僕に出した内容は夏美ちゃんを頼むと。
 雄太さんは夏美ちゃんの事を分かっていなかった。夏美ちゃんと雄太さんは離れて暮らしていたから娘の成長に気が付いていなかったのだろう。今日の夏美ちゃんの姿は誰がどう見ても立派だった。僕の支えなど必要ないぐらいに。
 料理を続けながらぼんやりとそんなことを考えた。霜降りのお肉を煮込むとただでさえ柔らかいお肉がさらに柔らかくなってしまうので、フライパンで炒めてから鍋に入れて短時間煮込んだ。
 僕にできる事はこれぐらいしかなかった。
 料理を終えて台所を出ると、夏美ちゃんはソファーの上でぼんやりとしていた。
 「カレーを作ったから、お腹がすいたときにでも食べてね」
 夏美ちゃんはぼんやりと僕を見た。
 「今いただいてもいいですか。カレーの匂いを嗅いでいると、なんだかお腹が減ってきました」
 僕はすぐに用意した。ご飯は冷凍したものを解凍した。
 用意しながら僕はほっとした。食欲があるうちは大丈夫だ。
 「お待たせ」
 作ったばかりのカレーを夏美ちゃんはゆっくりと食べる。
 「おいしいですね」
 わずかに頬を緩ませる夏美ちゃん。
 「三大和牛が全部入っているから」
 「すごい豪華ですね」
 夏美ちゃんの表情が曇る。
 「お父さん、本当に馬鹿です。はしゃぎすぎですよ。会社の人が言っていました。お肉を手に入れるために会社の知り合いの方に頼んだらしいです。完全に公私混同ですよ」
 力なく笑う夏美ちゃん。
 僕は戸惑った。どう対応すればいいのだろう。
 「昔からそうです。お父さんは親バカでした。すごく恥ずかしかったです。お兄さん、私にも反抗期があったんですよ。小学生の時、お父さんなんか大嫌いって言った事があります」
 夏美ちゃんは懐かしそうに笑った。
403三つの鎖 19  ◆tgTIsAaCTij7 :2010/05/26(水) 18:39:51 ID:hbwZRgYX
 「お父さん、ショックで部屋から出て来なくなっちゃいました。体調不良って言って会社もお休みしちゃいました。本当に体調不良になっちゃったみたいでした。そんな日が三日続いて、なんだか可哀そうになっちゃいました。それで私の反抗期はおしまいでした」
 夏美ちゃんはうつむいた。スプーンを握る手が微かに震える。
 「お父さんは家にいる事の方が少なかったです。お仕事で世界中を飛び回っていました。私、すごく寂しかったです。でも、お父さんは外国からいっぱいお手紙出してくれました。メールしてくれました。電話してくれました」
 僕は黙って耳を傾けた。
 夏美ちゃんは淡々と語った。
 「それにですね、家にいるとお手紙がたくさん来るんです。お父さん当てです。英語のお手紙もたくさんありました。内容はお父さんに感謝するってお手紙ばかりでした。お父さんは商社マンでしたけど、お金儲けよりも取引相手の利益を考える人でした」
 雄太さんの姿が脳裏に浮かぶ。一度しか会ったことのない人だけど、優しい人だとは感じた。
 夏美ちゃんはそんな雄太さんを見て育ったから、優しい子に育ったのかもしれない。
 「私、そんなお父さんは誇らしかったです。だから寂しいのも我慢しました。お父さんは世界中で色々な人のために頑張っているんだって。時々帰ってきてくれて一緒にカレーを食べるだけで我慢しようって思っていました。それなのに死んじゃいました」
 夏美ちゃんの目尻に光るものがたまる。
 「ひどいです。お母さんとお兄さんと四人ですき焼きしようって言ってたのに。寂しかったのも我慢してたのに」
 夏美ちゃんの目から涙がぽろぽろあふれる。
 「お父さんの嘘つき!」
 夏美ちゃんは立ち上がって叫んだ。リビングに悲痛な叫びが響く。
 「一緒にすき焼きしようって言ってたのに!帰ってくるって言ってたのに!」
 雄太さんの手紙の内容が脳裏に浮かぶ。
 分かっていないのは僕の方だ。
 「お父さんなんか大嫌いです!昔からそうです!いて欲しい時にそばにいなくて!授業参観の時も運動会の時も誕生日の時もです!寂しかったのに!」
 僕は夏美ちゃんのそばに近づいた。夏美ちゃんは僕の胸を叩いた。
 小さな手。叩かれても痛くもかゆくもないのに、胸に響く。
 「お父さんの馬鹿!なんで死んじゃったの!お父さんなんか大嫌い!」
 夏美ちゃんは小さな手で僕の胸を何度もたたいた。悲しくなるぐらい非力な力で。
 「電話もメールも手紙もいらなかった!誕生日のプレゼントもいらなかった!生きてそばにいてさえくれたらよかったのに!なんで!なんで死んじゃうの!ひどいよ!お父さんの馬鹿!」
 涙で顔を濡らしながら夏美ちゃんは小さな手で僕の胸をたたいた。
 僕は黙って夏美ちゃんのなすがままにまかせた。
 夏美ちゃんは僕の背中の腕をまわして思い切り抱きついてきた。
 僕もそっと夏美ちゃんを抱きしめた。
 体を震わせて夏美ちゃんは泣きじゃくった。お葬式の時涙を見せずに毅然としていたのに、僕の胸の中でわんわん泣いた。
 雄太さんは正しかった。僕は何も分かっていなかった。
 夏美ちゃんは泣くのを我慢していただけだった。雄太さんのお葬式でみっともない姿を見せる事が出来なかっただけ。
 雄太さんの手紙が脳裏に浮かぶ。短い文面。娘を頼む、と。
 その言葉が胸にのしかかる。僕に何ができるか分からない。
 今の僕にできるのは、そばにいる事だけ。
 僕は泣き続ける夏美ちゃんをそっと抱きしめた。夏美ちゃんは泣き続けた。

 夏美ちゃんは泣き疲れたのか僕の胸の中で眠ってしまった。
 僕は夏美ちゃんをベッドまで運んで布団をかけた。
 どうしようか。あの二人をそのままにするのは不安を感じる。
 残ろう。少なくとも明日の朝までは。
 携帯を取り出し父の電話にかけた。ワンコールでつながる。
 『幸一か。どうした』
 感情を感じさせない父の声。
 「今中村さんの家にいる。明日の朝までいていいかな」
 『迷惑をかけないようにしなさい』
 「うん」
 『もし何かあれば外の覆面パトカーに警官がいるから、遠慮なく頼りなさい』
 「分かった」
 『おやすみ』
 それで電話は切れた。
 僕はテレビをつけた。ちょうどニュースが始まっていた。ディスプレイ上にアナウンサーが無表情にニュースを読み上げていた。
 『警察官三人を含む四人が殺傷された事件は未だ解決の糸口はつかめていないようです。入院している生存者の警察官は今も意識不明です。警察はこの件に関して広く情報を求めています』
 僕はテレビを消した。
404三つの鎖 19  ◆tgTIsAaCTij7 :2010/05/26(水) 18:40:37 ID:hbwZRgYX
 雄太さんは殺害された。
 巡回中の警察官二人も殺害された。それに加えランニングしていた非番の警察官一名も意識不明の重傷を負った。
 未だに犯人は捕まっていない。
 警察の発表によれば、事件の発覚は次のようになっていた。
 巡回中の警察官二名が不振な物音を聞き、現場に向かうと連絡があり、それ以降連絡が途絶えた。
 他の警察官が捜索したところ、人気の少ない道で雄太さんと警察官二名の遺体、そしてジャージ姿で意識不明の重傷を負った男が発見された。
 三人は首の骨を折られて死亡していた。病院に運ばれた一名も首の骨を折って重傷。
 全員が素手で殺傷されたと断定された。全員頭から投げ落とされた。
 重傷を負った男は現役の警察官で、僕も知っている人物だった。柔道の稽古で何度も見た事がある。
 この警察官は非番の夜はいつもランニングしている事は知られていて、殺人の現場もランニングコースだった。恐らく通りがかったところを犯人に殺されたのだろう。
 僕にはあの警察官が素手でたおされた事が信じられなかった。オリンピック候補選手にも挙げられた事がある強豪だ。何度か練習した事があるけど、僕とは比べ物にならないほど強い。
 その人物が素手でたおされるなんて、信じがたい事だった。

 テレビでは雄太さんの事が詳しく説明されていた。
 雄太さんは商社の世界では有名な人物だったらしい。南アフリカや中東など、一般的に治安が悪いと言われている国を駆け回っていた。仕事の関係で逮捕、誘拐されたことも何度もあるらしい。
 また、かなりの業績を上げていたらしい。取引相手だけでなく、会社にも大きな利益をもたらしたようだ。雄太さんの勤め先の成長につながる結果を出していた。
 テレビでは犯行の動機として仕事関係が挙げられていた。
 犯人像についてはまとまった見解は出ていない。
 雄太さんは大柄だ。身長は190cmを超え、体重も体格相応。殺害された警察官もそれなりの体格だったらしい。特に重傷を負わされた警察官は僕よりも大きく、重い。
 大柄な男四人を投げ飛ばし首の骨をへし折る。そのうち一人はオリンピック候補選手にも挙げられた男。そんな事が出来る人物は限られている。
 それなのに未だに犯人は捕まっていない。

 僕は心の底で恐れていた。
 この凶行を行うことのできる人物を一人だけ知っている。
 彼女なら実行できる。
 重傷を負った警察官とは何度か練習した事がある。桁違いの強さ。それでも彼女には遠く及ばない。
 動機もある。直接雄太さんに殺意を持っているわけではないけど、動機には違いない。
 梓にとって夏美ちゃんの父親というのは動機に含まれるに違いない。

 気がつけば随分と時間が立っていた。
 額を手の甲で拭うと、汗がべっとり付いていた。
 僕はため息をついた。まだ梓が犯人とは決まったわけではない。
 というよりも僕の考えすぎだろう。梓がそこまでする理由は無い。本当に夏美ちゃんが憎いなら、直接夏美ちゃんに手を出すに違いない。
 梓は冷静に見えて沸点はかなり低い。良くも悪くもすぐに怒る。それでも今回のように関係の無い人物まで殺す事はしないはず。
 それでも僕は不安をぬぐえなかった。
 ため息をついて僕は窓の外を見た。外は微かに明るくなっていた。
 娘を頼む。雄太さんの手紙が肩に重くのしかかった気がした。
405名無しさん@ピンキー:2010/05/26(水) 18:43:24 ID:AYmO1ZTw
支援
406三つの鎖 19  ◆tgTIsAaCTij7 :2010/05/26(水) 18:47:54 ID:hbwZRgYX
以上です。
読んでくださった方、ありがとうございました。
HPで登場人物の人気投票を行っています。
執筆の参考にしますので、よろしければご協力お願いします。

私の好きな作品の転生恋生が投下されてとてもテンションが上がっていますので、
続きを頑張って書きたいと思います。。
読み手として、続きを楽しみにしております。

それでは、失礼します。
ttp://vote.rentalcgi.com/html/threecha.html
407三つの鎖 19  ◆tgTIsAaCTij7 :2010/05/26(水) 18:48:37 ID:hbwZRgYX
HPのアドレス間違いました。

ttp://threechain.x.fc2.com/index.html
408名無しさん@ピンキー:2010/05/26(水) 19:42:32 ID:jIBj4w2u
帰ってきた!!!!!!〜夏美ちゃんは本当に健気で良い娘だが…(良い娘過ぎる)
やはりキモウトNo.1の私としては、梓に是非巻き返して欲しい。
しかし梓は最強ダナ……(あらゆる意味で)
409名無しさん@ピンキー:2010/05/26(水) 19:59:14 ID:yteyp01J
つか、なんでHPあるのにここに投下?
410名無しさん@ピンキー:2010/05/26(水) 20:04:24 ID:GPya8gYP
強い 当たる
411名無しさん@ピンキー:2010/05/26(水) 20:23:37 ID:GPya8gYP
当たる
412名無しさん@ピンキー:2010/05/26(水) 21:52:12 ID:p4XCMnrR
より多くの人にマンセ…ゲフンゲフン感想貰いたいからだと思う
HPあるつってもキモ姉、キモウト作品をグーグルから網羅するのは難しいしね
こうやって一点集中で投稿してもらった方が読む側としてもありがたい
413名無しさん@ピンキー:2010/05/26(水) 22:15:47 ID:GPya8gYP
414名無しさん@ピンキー:2010/05/26(水) 22:32:01 ID:XoUuEFGs
GJ!
相変わらずの展開にゾクゾクしました。

続き待ってます
415名無しさん@ピンキー:2010/05/26(水) 23:37:44 ID:gVE+8Vzv
>>406
GJですよ

そうなんだよなぁ…火葬炉に入れられていく時が一番クるんだよな
もう二度と、触れることすら適わなくなると思うとなぁ…
架空の話の出来事だが、ちとしんみりさせられてしまった
ともかく夏美ちゃんとお母さんが不憫の一言

そして梓、何かもう強さのレベルが餓狼伝の世界でも充分通用しそうな域にいるなw
416名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 00:17:49 ID:YmqnmtHl
GJ!
多少の鬱展開の結果が気になる
てか既に十分鬱展開だろww
417名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 00:19:06 ID:V9dBE0S/
梓ェ……
418名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 01:02:03 ID:djKBqXp1
あの娘は、陸奥や龍の子にも勝てそうな気が…。
419名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 04:18:46 ID:mnLMCW+L
このスレ的に狂想のシミュラクラはあり?
420白愛:2010/05/27(木) 06:13:04 ID:qyM5qRco
投下させていただきます。
前回はエロ有りでしたが、今回はありません。
期待してた方はすいません。
421白愛:2010/05/27(木) 06:14:40 ID:qyM5qRco
 眩しい程の春の木漏れ日。
 家の庭に沿っている縁側で、黒真は母親に膝枕されながら眠っていた。
 安らかな寝息を立てる黒真を見つめて、彼女は微笑ましい表情で彼の頭を撫でる。
 彼女が不意に独り言のように言葉を呟く。
 しかし眠っていた黒真には、その言葉を聞き取れることは出来なかった。


 目覚ましのアラーム音が耳に響き、黒真は目を覚ました。
「ん……」
 まだ意識もはっきりしない状態で、アラーム音が響く時計に手を伸ばそうとする。
 だが、彼の手が時計に触れる前に、音が止んだ。
「…………あれ?」
 不審に思ったところで、黒真は自分の後頭部の柔らかい感触に気が付く。
 女性に膝枕されていたと分かるのに、数秒は掛かった。
「――母さん?」
 寝ぼけながら黒真が呟くと、女性はクスクスと笑った。
「お早う御座います。兄様」
 可笑しそうに喋るその声を聞き、ようやく視界が定まり始めた。
「え? あっ……真白だったの」
 よくよく考えると、両親は出掛けているので、この家に居るはずが無い。
 そう納得した黒真は、何かを思い出したようにハッとなった。
「真白っ……ひょっとして、寝てないの?」
 黒真が彼女の様子に気になり、不安に思ったことを話す。
 少し震えた声で話す黒真に、真白は優しく微笑んだ。
 そして彼を落ち着かせるように、その頭をゆっくりと撫でる。
「大丈夫ですよ。私も先程兄様の部屋に来たのですから」
 だからご心配なさらずに、と語りかける。
「本当に?」
「本当ですよ」
 黒真が再度問い詰めるも、真白は笑みを絶やさずに答えた。
 そっか、と黒真が安堵の息を吐くと、彼女は愛しい兄の頭を撫で続けた。


 午前七時。
 現在の才堂家の朝は、真白の髪洗いから始まる。
 夕方と全く同じ要領で、黒真は妹の銀髪を洗う。
「兄様、今朝はどのような夢を見ていたのですか?」
「?」
 髪を洗っていると、真白が不意に訊ねてきた。
 黒真が怪訝に首を傾げる。
「寝言で母様のことを何度も仰っていましたから」
「え……そうなの……」
 真白の言葉に、黒真は少し戸惑ったように声が弱くなった。
「はい、私の膝の上でよく甘えていましたよ。私を母様だと勘違いをしていらして」
「…………小さい頃の夢を見てただけだよ。決してマザコンじゃないからね……」
「分かっていますよ」
 悪戯が見つかってしまった子供のようになる黒真に、真白はクスリと笑った。

422白愛:2010/05/27(木) 06:15:43 ID:qyM5qRco
 同時刻、四季野家にて。
「ほれほれ〜、早く起きろよ愚妹よ〜」
 四姉妹の長女・春香に揺さぶられ、舞夏は目を覚ました。
「うー……もうちょっとだけ」
 目覚めた舞夏は春香に背を向け、布団に包まる。
 そんな彼女に春香は溜息を吐き、両手を合わせて骨をポキポキと鳴らした。
「しょ〜がね〜な〜。こ〜なりゃ春香お姉さまの身体張った目覚ましを使わせてもらお〜かな〜」
 その言葉を言い放った瞬間、布団の中の舞夏がビクッと震え、春香は次に首を左右に捻って骨を鳴らす。
「本日のメニュ〜はコブラツイスト、ブレ〜ンバスタ〜、バックドロップ、スコ〜ピオン・デスロックでございま〜す」
「分かった分かった! 起きるから!!」
 春香が掴み掛かろうとした瞬間、舞夏はすぐに布団を捲って飛び起きた。
 白のシャツに黒のスパッツを穿いている舞夏は、冷や汗を垂らして姉から遠ざかる。
 春香はニッコリと笑い、目覚まし(戦闘)態勢を解いた。
「全く〜、起きれるなら早く起きろ愚妹よ〜。もう秋穂(あきほ)や冬奈(ふゆな)はとっくに起きて飯食ってるぞ〜」
 そう言い残すと、春香は手をひらひらと振って舞夏の部屋を出て行った。


 学校の制服に着替えた舞夏が居間に下りると、そこには一人の少女が朝食を終えたところであった。
 物静かで凛とした雰囲気の空気を纏った、舞夏と同い年くらいの少女。
 髪留めを使いその長い髪を後ろで束ね、舞夏とは違う高校の制服を着ている。
「随分、遅延な起床だな」
 少女は舞夏を見るなり、無表情ながらも嘲笑うような言葉を漏らした。
「うるさい。そういうアンタこそどうせジジババみたいにバカ早い起床だったんでしょ」
 言われるなり、舞夏も負けず劣らずの罵声で返した。
 少女の名前は、四季野 秋穂(しきの あきほ)。
 四季野四姉妹の三女で、二女の舞夏とは二卵性双生児の双子の妹であり、とある事情で仲が悪い。
「ほいほ〜い、二人とも初っ端なら火花鳴らしてんじゃね〜ぞ〜」
 二人が言い合っていると、奥からエプロン姿の春香が出てきた。
 彼女の両手はお盆を握っており、それには茶碗に盛った白米に味噌汁、焼き魚等が乗っている。
 春香の言葉に、舞夏と秋穂は互いに顔を背けて火花を止めた。
「ほれ〜、愚妹の分の飯だぞ〜。早く食べて学校に行った行った〜」
 春香がお盆をテーブルに置くと、舞夏が席に着いた。
 それと同時に、秋穂が自分の食べ終えた食器を持ち、席を立つ。
 あからさまな態度に舞夏はフン!と鼻を鳴らす。
 その様子に秋穂は彼女に背を向けながらハッと鼻で笑う。
 二人の妹のやりとりに、春香は眉毛をハの字にして溜息を吐いた。
「本当に仕方ない愚妹達だな〜、全く〜」
「ほっといてよ。どうせすぐに決着なんてつけてやるから」
 不機嫌なまま、舞夏は朝食を摂り始めた。
「あ、そういえば冬奈は?」
 食べている最中、ふと四女の姿が見当たらないのに気付く。
 舞夏の問いに春香は頭を掻きながら、
「飯食ったら早々に学校に出て行ったね〜。まだ時間に余裕あるって言うのにね〜。
 ま〜、あの子も変わり者だから特に気にもしないけどさ〜」

423白愛:2010/05/27(木) 06:17:34 ID:qyM5qRco
 午前十時。
 才堂家には真白一人だけが居た。
 黒真は舞夏と共に学校へ行き、家庭教師の春香が来るのも昼からである。
 真白は現在自室に籠もり、読書をしていた。
 安定した速度でページを捲っていく真白は、突然クスリと笑った。
 その笑みは、何も読んでいる本に面白い部分があったからではない。
 彼女の背後数メートル先に立っている、一人の人間に向けられたものであった。
「家に上がるのなら、ベルくらい鳴らして下さいよ」
 声を掛けられた人物はニヤリと笑い、パチパチと拍手を鳴らした。
「お見事です。出来る限り足音を殺して近付いたんですけど、やっぱり無理でしたか」
「足音を消しても、衣擦れや呼吸の音で分かりますよ」
「そんな人間離れした感知が出来るのは、真白と春香姉だけですよ」
 あっぱれと言わんばかりの拍手と声を放つ人物は、少女であった。
 腰まで伸びている漆黒の髪。
 口を三日月状に歪ませたその表情は、何処か不気味さを感じさせる。
 何処かの学校の制服を着ている少女は、拍手を止めると腕を組み、壁に背を預けた。
 真白と同じく敬語で話しているが、偉そうな態度が漂う。
「学校にも行かないで、一体何の用でしょうか? 冬奈」
「いえ、最近の経過について訊きたいと思って今日は来たのですよ」
 彼女は四季野 冬奈。
 四季野四姉妹の四女で、年は真白と同じ十六であり、親友でもある少女。
 人の家に無断で侵入することを何にも思っていない辺りから分かるように、少々常識が破綻した性格をしている。
 その彼女の破綻ぶりは、家族の姉妹よりも、腹を割って話す真白の方がよく知っている。
「経過――とは?」
 彼女が訊いたことに、真白は背を向けたまま訊き返す。
 冬奈は真白の問いに人差し指を立て、何気ない顔で、

「いえ、だってご両親が発って一週間も経つんですよね?
 邪魔も入らないですし、その間にとっくに黒真君とセックスして、既成事実を作ったのかな〜、っと思いまして」

 さも当たり前かのように、淀みない口調で言い放った。
 言い放たれた言葉に、真白の本のページを捲る指が止まる。
 真白の様子に、冬奈は呆れたような溜息を吐いた後、ニヤリと笑った。
「あらら、その様子じゃまだ黒真君と最後までヤってないみたいですね」
「それが……どうしたのですか?」
「精々寝かせた黒真君にキスしたり、身体くっ付け合う位しかシてないんでしょう?」
 冬奈に見事に見透かされ、真白は言葉を失い黙り込んだ。

「いつまでもそんな風にモタモタしてると、黒真君が何処ぞの女狐に奪われちゃいますよ?」

 沈黙している真白の耳元で、さも楽しげな冬奈の声が響いた。
 真白が目を見開いて息を呑み、上半身を瞬時に後ろに動かし、その勢いを利用して右手を水平に薙ぎ払った。
 激情に駆られ、背後に忍び寄った冬奈と言う名の羽虫を弾き飛ばすために行った動作。
 しかし薙ぎ払った右手は空を切り、空振りに終わった。
 同時にストンとした軽やかな着地音が響き、真後ろに佇んでいた冬奈は、数メートル先に飛び退いていた。
「恐いですね。黒真君のことになると本当に感情剥き出しになりやすいんですから」
 ヘラヘラと、まるで挑発するような言葉を放つ冬奈に、真白は目を鋭く細めて睨む。
 彼女――四季野 冬奈は唯一、真白が黒真に寄せる想いを知っている人物であり、時には助言をし、時には唆し、
 真白にとっては親友になれば敵にもなる存在の人物なのであった。

424白愛:2010/05/27(木) 06:18:43 ID:qyM5qRco
「悪ふざけは大概にして下さい。これ以上言葉を続ければ、幾ら冬奈でも許しませんよ」
 冬奈を睨む真白の瞳は、とても鋭く、そして何処か寂しそうな色を出していた。
 その瞳を見た冬奈は頭を押さえて深く溜息を吐く。

「本当に…………真白、君は優し過ぎますね。いや本当に」

 彼女の予想外の言葉に、真白は怪訝な表情になる。
 だが、冬奈は何処までも見透かしたような口調で続ける。
「黒真君と最後まで――セックスまでしないのは、彼を傷付けたくないからでしょう?」
「なっ……」
「君は兄である黒真君を狂おしい程に愛しています。けど、それに比例するように彼を大切に想っています」
 言っている意味が分かりますか?と冬奈が首を傾げて訊くが、真白は返事を返さない。
 彼女の様子に、冬奈は結論を言い放つ。
「君は世間と言う常識に縛られています。兄妹同士で愛し合う近親相姦が、許されざることだと無意識に自覚しています」
 真白は黙したまま、冬奈の言葉を聞き続ける。
「とはいえ、君は黒真君を心の底から愛している、禁忌でありながらも兄妹で結ばれることを望んでいます。
 でも、そんなことをしてしまえば世間から指を差されて非難されるのは確実。
 君はそれでも良いかもしれませんが、そこで一番傷付くのは黒真君です」
 一番傷付くのは黒真――この言葉に、真白は視線を冬奈から反らした。
 それでも冬奈は止めない。
「例え君が黒真君を犯す形になったとしても、それでも黒真君は自分を責めるでしょう。
 自分が腑甲斐無かった、真白がこんなことになってたことに気付けなかった、助けてやれなかった、と言った具合に。
 そして黒真君は自分に罪と罰と言う十字架を背負わせ、辛い人生を生きて行く選択をするでしょう。
 真白、君はそんな黒真君の姿を見たくないのでしょう?
 兄には、愛する人には、ずっと笑顔で居て欲しいと思っているのでしょう?」
 今まで自分支えてきてくれた兄。
 その兄が存在していたからこそ、今の自分が存在する。
 そんな兄に、悲しい思いをして欲しくない。
 涙なんて流さないでいて欲しい。
「皮肉なものですよね。黒真君を大切に想っているからこそ、自らの一方的な愛を押し付けられずにいる。
 真白、君は今この葛藤に苦しんでいるんでしょう? 自分では自覚してませんが」
「兄様はいつでも私を見てくれてます。今この場に居なくても、兄様は私を想ってくれています」
 冬奈から目を反らしたまま、真白は言い返した。
 だがその声色は、普段のような落ち着きが感じられず、とても弱々しい。
「その想いは、あくまで一人の男が一人の女に送る想いではないことくらい分かっているでしょう」
 弱々しい反撃に、力強い攻撃が圧し掛かる。
「不幸な体質を持っている妹の身を心配している――という想いなんですよ」
 そう。
 黒真が真白を第一に想い、真白と共に居続けるその根本は、彼女の体質によるモノ。
 この世に生を受けた時から授かった――授けられたこの白銀の髪。
 白銀の髪が及ぼす影響から、黒真は真白を守ろうと誓った。
 果たして自分が身体に異常が起こらず、普通に髪が黒い女の子に生まれていたら、黒真はどう接していただろう。
 真白はその見えない可能性と、その可能性が及ぼす環境に、胸が締め付けられるような錯覚に、陥った。

425白愛:2010/05/27(木) 06:25:53 ID:qyM5qRco
以上です。
この次もよろしくお願いします。
426名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 11:01:53 ID:b+WbMrsV
GJ
427名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 14:50:48 ID:YEqaQBQk
>>390の続き

ティッシュ箱を傍らに、四つん這いの格好で、自分の出したモノの後始末をする。当然下半身は裸。一仕事終えた息子は、出す物を出し切ったのでぐんにゃりと垂れ下がっている
それにしてもこのオナニーショーが始まってからというもの、ティッシュの消費量が異常に増えた。そのうち怪しまれやしないだろうかと危惧している

りなは乱れた息を整えながら、オレの清掃活動を見やりつつ床にぺたんと女の子座りしている。顔中汗びっしょりだ。まあ、窓もドアも閉め切った部屋の中でこんな事してたら仕方ないけど
汗をかいてるりなもかわいい…と思っていると、
「お兄ちゃん」
「ん…」
「今日は惜しかったね」
「ああ…」
「あたしもうびっくりしちゃった。あたしが下着はいてないと、そんなに興奮する?」
「む……」
言葉に詰まる
「やだなあ、あたしのお兄ちゃん、ヘンタイのオナニー奴隷だぁ…。へへ」
「……」
「妹の目の前でオナニーするお兄ちゃんって他にいないよね。しかもあんなに離れた所まで精子飛ばして妹にかけようとする犯罪者お兄ちゃんだよ」
「〜〜〜っ」
オレはりなの言葉を無視して床を拭く手を早めた。顔は赤くなっていたに違いない

そのうち息が整ったのかオレをからかうのに飽きたのか、りなはよいしょと立ち上がった
「あたし、お風呂にはいるね」
「あ、うん」
そう言ってのそのそとドアの方へ歩くりな。しかしそこでエラいのを見てしまった
「あ……」
りなが履いているホットパンツの、股間と尻の下部分…が、濡れているかのように変色していた
…!?これはまさか、まさか…?と胸をドキつかせていると、
「お兄ちゃん、明日もがんばろうね」
そう言ってバタンとドアを閉めた
部屋の中には情けない兄だけが残された
りなが座っていた場所は湿っていた。何か、粘り気があるような気がした
428名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 14:52:38 ID:YEqaQBQk
(やっぱりあれは濡れていたのかなぁ)
深夜、ベッドの中で今日の事を思い出す。今夜はなかなか寝付けない。りなの事が色々と衝撃的だったからだ
女性は興奮したり気持ち良くなったりするとアソコが濡れると言うが…女性経験ゼロのオレにはよくわからない
仮にそれが事実だとすると、りなはオレのオナニーを見て興奮したのだろうか?…まてまて、あれは汗だったかも知れないぞ。あんなに汗かいてたし…
…しかし、汗だったらもうちょっと全体的に濡れるんじゃないか?股間と尻だけが濡れるって事はあるのか?
(あ、そうだ)
もし汗にしろ、感じていたにしろ…下着をはいてなかったから、あんなダイレクトにホットパンツが濡れていたんじゃないだろうか。となるとりなのノーパン発言は本当……?

はあ、とため息をついて右側臥位になる
(あ〜、わかんねぇ…)
わからない事、知ってもどうしようもない事が頭の中を巡る
りなは彼氏はいるのだろうか?
……やっぱいるよなあ。あんなにかわいいし…。いるとしたらどんな男だろうか。いないとしても言い寄ってくる男はたくさんいるだろうし、そしてその中の誰かと付き合うのだろうか
りなに直接聞いてみたいが、そんな勇気はない。もし怒らせてしまったら何もかも終わりなのだ

…考えれば考えるほど悲しくなった。戯れに一物をぐにぐにといじってみる。気持ちはいいのだが、勃起はしない。やはりりながいないと勃起もままならないのだ
ははは、と自分の情けなさを自嘲して目をつむると、いつの間にかにか眠りに落ちていた
429名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 14:55:56 ID:YEqaQBQk
外はそろそろ夕方。オレは自分の部屋のベッドに寝転んでりなを待っていた。いつも、この時間帯に例のアレを始めるのだ
学校が終わると友人との会話もそこそこに家へ直行。ちょっとでも遅れるとりなが怒るのだ
まあ最近は結構楽しみになってると言うか…これをやらないと溜まったモノが出せないのだ
…しかし完全に妹のいいようにされてる兄貴だなぁ…。情けないけどどうにもできない

「お兄ちゃん!」
りなが元気よくドアを開けて入ってきた。ノックをしないのは毎度の事だ
「お兄ちゃん、準備はできた?」
「ああ…いいよ」
何の準備だよ、と思いつつ部屋中のカーテンを閉める

「お兄ちゃん、あたし今日新しいブラなんだよ」
「へえ…」
「とってもかわいいんだ。それでね、あたしちょっと胸が大きくなったみたいなんだよ」
「そ、そう…」
「お兄ちゃん、いつもあたしの胸ばっかり見てたからうれしいでしょう」
「う、うん…」
「でもお兄ちゃんはドレーだから、絶対見ちゃダメだからね。想像してオナニーするだけだからね」
「……」
釘を刺されてしまう。だがオレの下半身は若干の興奮状態になってきた

「それじゃあそろそろ始めよ…」
突然旧ドラえもんのテーマ曲が鳴り響く。りなの着信音だ
「ちょっと待ってね…もしもし?」
ベルトに手を掛けたまま、取り残されるオレ
「あ……北野くん?」

男……!?
オレの心臓はグッとなった。
りなは電話の向こうの北野くんとやらと何やら話しているが、正直、内容は頭に残っていない
「…でも……じゃあわかった…それじゃ明日ね…」
りなはピッと電話を切ると、眉を八の字にしてはあ〜っ、と大きくため息をついた

昨夜考えていた事が本当になってしまったのか。オレは何か暗い場所に取り残されたような気がした
聞かない方がいい。でも、どうしても我慢できなかった
「…友達?」
「う〜ん…」
「男の人?」
「…そうだけど」
「違ったらゴメンだけど、ひょっとして…彼氏とか?」
とうとう言ってしまった
「!!!」
「やっぱり、ほら、りなってかわいいし…」
「〜〜〜っ!!はああぁぁぁっっ!?お兄ちゃん何言ってんの!!!」
絶叫に近い怒声
「あたしの事、そんな風に見てたんだ!?信じらんない!!」
激しい怒りの顔に詰め寄られ、無抵抗に壁際(オレがいつも発射してる位置)まで追い詰められた。オレは、だれかにここまで怒りの感情をぶつけられた事はない
「ホンっトバカみたい!お兄ちゃんって情けない!!」
そう言うとりなはずかずかとドアまで歩いて行き、
「もうおしまいだからね!バカっ!!」
ドアが割れんばかりの勢いで部屋を出ていった

もうおしまい、か……
オレは天井を力無く見上げると、壁にもたれ掛かり、ずるずると床に尻餅をついた
430名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 14:59:12 ID:YEqaQBQk
その日、りなは自分の部屋から出て来なかった。ノックをしても返事はなかった。無言を決め込むりな
翌朝に話をしようと思ったが、りなは徹底的にオレを無視した。終始無言、一切目を合わせようともせず、普段より二十分も早く登校して行った

外はそろそろ夕方。オレは自室のベッドに寝転がっていた。りなはもう来ないかも知れないが…
あんな事を言いふらされたら、オレにはどこにも居場所はない。親父には殴られるかも知れないし、それどころか家庭崩壊になりかねない。町にも居られなくなるだろうな…
考えただけでうんざりする。それにしても…
オレはりなを怒らせてしまった…いや、もしかするとりなを傷つけてしまったかも知れない
あの時、オレはりなが本気で憎くて怒ったのだと思った。でも、本当はそうじゃないかも知れない
りなが思っている大事な何かを全くわからないまま、あんな会話をした。だからあんなに怒ったのではないか。
オレにその、大事な何かをわかってほしくて怒ったのではないか
だが、その 何かというのが、オレにはどうしてもわからない。大切な妹なのに、一番好きな子の事なのに、全く見当がつかない
情けなくって男の癖に涙が出そうだ。天井を見つめ、唇を噛む

その時、階段をバタバタと駆け上がる音が響いて、オレの部屋のドアが勢いよく開いた
「遅れちゃったー。お兄ちゃん、お待たせ。…あ、何やってんの」
りなだ。急いでやってきたらしく、顔が上気している。しかも学校の制服のままだ

「り、りな…」
来てくれるとは思わなかった。信じられない。でも、嬉しい
「何、お兄ちゃん。早くちんちん出してオナニーしてよ。それとも今日は気が乗らない?でもそんなのカンケーないからね。ちゃんとやってもらうからね」
「どうして…」
「どうしてって、お兄ちゃんはオナニー奴隷じゃないの」
「もう、怒ってない?」
「…何の事?」
りなは口を尖らせる
「………ゴメン!」
立ち上がって、腰の辺りまで頭を下げた
「…何が?」
「オレ、昨日お前の事傷つけちゃっただろ。だから…ゴメン!」
「……」
「でも、お前の何を傷つけたか、どうしてもわからないんだ。オレ、お前が一番大事なのに…。だから…ホントにゴメン!」

変な謝罪。そんなオレの姿を見て、りなはやれやれといった感じでふぅ、と溜息をつく
「ねえ、お兄ちゃん。確かに昨日の電話、あたしとお付き合いしたいって男の子からだったけど、ちゃんと断ったからね」
「え…」
「今日の放課後に会って、きちんと断ってきたから。だから今日遅れちゃったんだ」
「はは…そうか…」
「それにあたし、告白されても誰とも付き合う気ないから」
「え、なんで…」
素朴な疑問を返したつもりだったが、りなはムッとしていた
「お前くらいかわいかったらさ、いい男が…」
「あ〜〜!もう!お兄ちゃんホントにわかってないなぁ!!」
りなは顔を赤くして、綺麗な目を吊り上げながら睨みつける
「お兄ちゃん、あたしね、好きな人がいるの。だから誰とも付き合わないの」
「す、好きな人!?」
「そうだよ。ヒントあげよっか」
「ヒント?」
「うん。ヒントはね、さっきあたしの事、大事だって言ってくれた人」
「……」
「わかった?」
「…オ、オレ……」
「当たり。あたしの好きな人はお兄ちゃんだよ」
「……」
「うん。あたしもお兄ちゃんが一番大事な人だよ。お兄ちゃんの事、好きだよ」
431名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 15:02:19 ID:YEqaQBQk
続きは後で
432名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 15:31:40 ID:VD7fUThG
GJそろそろ近〇相○か超期待www
433名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 17:03:09 ID:NnklFRAo
好かれてる である
434名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 17:35:54 ID:YEqaQBQk
思いもよらない告白。だが、オレの口から出たのは極めて正直な感想
「う、嘘ぉ…」
「な、なんで嘘なんだよぉ!」
りなはまた目を吊り上げる
「りなはオレの事、おもちゃ扱いにしかしてないと思ってたぞ」
オナニー奴隷に任命してオナニーショーをさせるとか、その様子をニヤニヤしながら面白おかしく実況するとか、その割に自分に指一本でも触れてはいけないとか、どう考えても好きな男にやっていい事ではない
「そ、それは…。で、でもでもっ、ちゃんと理由…あるし…」
珍しくりなが口ごもる
「理由って…?」
「う、うん…。あのね、あの…あたし、お兄ちゃんの事ずーっと前から好きだったんだよ。でもお兄ちゃん、なかなか言ってこないから、自分から言うしかないかな〜って」
「……」
「そしたらお兄ちゃん、あたしの写メ見ながらあんな事してたでしょ。だから何か頭きちゃって」
「あ、ああ…ゴメン…」
「…最初は、無茶な事やらせて、困らせるだけのつもりだったんだよ。適当な所で切り上げて、許してあげよって
そしたらお兄ちゃん、あんなに必死になって毎回記録更新しちゃうし、だからあたしも、なんかノっちゃって…」
…ノっちゃうだけであんだけオレをイジり倒したのか。大した妹だ
「それで、ひょっとしたらその内、あんな無茶な条件を乗り越えてくれるんじゃないかな、って思い始めたの。この間だってもうちょっとだったし」
りなは手をもじもじさせている。頬が赤い
「あたしのためにがんばってるお兄ちゃん…感動っていうか……とってもカッコいいよ」
りなは、うはぁ、という感じで破顔した。…妹よ、あれは努力というより欲望に走ってる姿だと思うぞ
まあ、善意に解釈してくれているんで黙っておこう
それに、りなが喜んでくれているなら、オレにとっても幸せな事だ
435名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 17:38:41 ID:YEqaQBQk
「そうかぁ…そんなにオレの事が…」
「お兄ちゃん、あたし、いじわるばっかりしてきたから、イヤ?」
「ううん、オレだって、お前の事わかってあげられなくて、ゴメン」
「お兄ちゃん…」
「りな…」
見つめ合う兄妹

「……うん。じゃあお兄ちゃん、今日もがんばってね」
「へっ?」
「だってお兄ちゃん、オナニー奴隷を卒業できたワケじゃないんだよ?今日も、がんばらなきゃ」
悪魔の笑みのりな
「そ、そんな…」
体中からへなへなと力が抜ける。今までの会話は何だったんだ…
「……じゃあお兄ちゃん、もし卒業できたら、ご褒美もあげよっか?」
「ご褒美〜?」
半泣きのオレ。今日はもう萎えちゃって無理だ…と思っていたが、
「うん。…ご褒美にあたしがキスしてあげる」
オレはカッと目を見開いてりなの方を見る
「キス!?」
「…うん。おでことかほっぺにチュッ、じゃないよ。…あたしのファーストキス…」
りなのファーストキスだって…!?だがオレの口から出たのは、またしても正直な感想

「う、嘘ぉ」
「なっ!なんで嘘なんだよぉ!ホントにキスした事ないよ!?」
「う〜ん…」
「そ、それに、あたし、まだ、バ、バ、バージンだし…」
興奮しているのか、聞いてもない事を言い出した
「えーっ!嘘ぉ!?」
「バ、バカぁ!なんであたしの言う事信じてくんないの!あたしの事どんな子だと思ってるの!?」
「だって、オレにあそこまでしておいて…」
あれで処女だと思う方が無理だ。どうしたって男を知った上でのプレイだろう
「そ、そうだけど…。あれはただ、お兄ちゃんにいじわるするにはそれが一番面白いと思って…」
つまり天然の思いつきであんな事を閃いたのか。恐ろしい子だ…
436名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 17:42:23 ID:YEqaQBQk
「…お兄ちゃん、あたし、確かに何人かとお付き合いした事あるよ。でもみんなすぐ別れちゃったし、誰にも何にもさせてないよ。
あたしと付き合った人ってみんな、すぐ体を触ろうとしたり、キスしようとしたり、抱き着いてきたりするんだもん。あたし乱暴な人って大っ嫌い
でもお兄ちゃんは優しいよね。あんなに興奮してもあたしに乱暴な事しないし。あたしの事、大事にしてくれてるんだよね…」
りな…オレだってお前に抱き着いて乱暴な事がしたいよ…。でもそれをしないのは、優しさからじゃなくて調教の結果だぞ…
しかしまたも善意に解釈してくれてるので、黙っている事にする
「…じゃあお兄ちゃん、そろそろ始めよっか」
「え〜、やっぱやるのかよ…」
正直、今日は勘弁してほしい
「しっかりしてよ。あたしのファーストキスとバージン欲しくないの?」
「!?お、お前…」
さっきと言ってる事違うぞ、と言い終わる前にりなはいつもの場位置へと移動すると、くるりとこちらへ振り返り、
「お兄ちゃん、がんばってあたしに精子かけてね」
悪魔の笑みはどこへやら、天使の微笑みでオレを見つめるりな
「そしたら、あたしの初めて、全部あげるからね、お兄ちゃん」

…オレは妹の愛に全力で応えなくてはならない…!
437名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 17:45:45 ID:YEqaQBQk
キリのいい所でおしまい
「オレ達の愛はこれからだ!」ENDということでw

唐突に続きを思いつくかもしれません
438名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 18:07:15 ID:b15KQ/kQ
なんという寸止め!

439名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 18:10:23 ID:NnklFRAo
当たる
440名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 20:18:41 ID:NnklFRAo
強い ある 有
441名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 22:17:07 ID:b15KQ/kQ
↑このキチガイみたいな文字列ってなんなの?
流行っるの?あと「解」だけかくのとか
442名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 22:29:01 ID:qpNBtzpr
>>441
ただの荒らしだろ放っておこうぜ
443名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 22:38:26 ID:T+3blxzL
別に誰か貶す訳でもしつこく連投してる訳でもないしな。
SSを楽しんでる同士、寛容にしてあげたら良いじゃない。
444名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 22:43:16 ID:NnklFRAo
当たる
445名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 22:47:37 ID:jeOzGFl5
>>441
「保守」とか「乙」みたいなものだと思ってスルーすれば良いさ
446名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 23:18:51 ID:NQzgNWtY
まあsageろとは思うが言っても通じないし
他に害が無いうちはよくわからない妖精さんとでも思うことにした方が精神的にいい
447名無しさん@ピンキー:2010/05/28(金) 00:05:04 ID:N9Xcs2eJ
GJ的な感じで

hit→当たる

といってると思うことにします
448名無しさん@ピンキー:2010/05/28(金) 00:31:51 ID:mBaYNR3q
思い付いた短編投下。
真面目にアホ話を書いた
449『オナホマイスター刹那』:2010/05/28(金) 00:34:35 ID:mBaYNR3q
 死ぬ事は不幸ではない。
 死ぬ事は産まれた時から決まっているのだから。
 不幸なのは目標達成前に力尽きる事だ。
 いつまで経っても幸せになれないのだから。


 両親が死んだ。スピード超過による新幹線の脱線事故。父は母を抱き締めたまま即死し、守られた母も1ヶ月の入院生活の末、後を追うように息を引き取った。
 残されたのは二人の姉弟。外国で暮らしていた時期に産まれた姉、如月 マリーダ(きさらぎ まりーだ)と、それから八年後に日本で産まれた弟、如月 刹那(きさらぎ せつな)。

 刹那は父が、母が、姉が、優しい家族が大好きだった。いつもニコニコ笑う元気一杯の男の子だった。
 しかしそれはもう昔。今の刹那は笑わない。
 父の無念を晴らす為、母の悲しみを晴らす為、小学三年生九歳の如月刹那は、世界最強のオナホマイスターになる事を誓ったのだ。

 オナホールとはコストパフォーマンスに優れる画期的な精処理器具であり、如月家の先祖、如月 藤十郎幻影斎(きさらぎ とうじゅうろうげんえいさい)により造られた物。
 だが三世代後、オナホールを使い捨て品とし、もっと利益を上げるべきだと説く女性が現れた。勿論それが受け入れられる筈など無く、社員だった女性は、反乱分子として追放されてしまう。
 その女性こそ、オナホールの機密ノウハウを盗み出し、オナホールと世界を二分するテンガの創始者、天我 挿入・ラングレー(てんが そうにゅうらんぐれー)であった。
 オナホールとテンガ……似て非なる玩具。長く激しい戦いが、こうして始まったのである。




   『オナホマイスター刹那 オレがオナホマイスターだ!!』
450『オナホマイスター刹那』:2010/05/28(金) 00:35:30 ID:mBaYNR3q
 蝉が鳴き、暑くて暑くて泣き崩れ、アスファルトさえ喘いで湯気立ち、歪んだ蜃気楼を焚き上げる。
 太陽サンサンサンシャイン。気温も今年最高の昇龍拳で、どこもかしこも天然サウナ。そんな、夏の昼間。

 ぢゅぷっ、ちゅくちゅく、ぐちゅり……
 にちゅにぢゅ、にぢゅぅっ、ヌチュヌチュぬぢゅにぢゅ……
 まだ陰毛すら生えない幼い生殖器は、卑猥な肉擦りで弄ばれ続ける。
 カーテンを締め切り、クーラーの効いたリビングで、それでも小学生男子児童、如月刹那の頬からは水滴のような汗が流れ、口からは途切れ途切れに、あ、あっ、と声が漏れていた。
「もうヤメよう刹那? これ以上がんばってもチンチン痛くするだけだよ?」
「やっ! もっ、ちょっと……んっ、もぅちょっとで、はぁっ、わかっ、るんだっ!!」
 リビングの中央には分厚いガラステーブルが存在し、その上には無数のオナホールとローションが置かれ、辺りには使用後の物が散乱している。
 一見すれば異様、そこに居る二人は異常、している行為は異端も異端。
 刹那は裸ん坊でテーブル横の椅子に座り、アイマスクをされ、両手は背もたれの後ろで、両手は椅子の脚と、それぞれにビニールテープで結ばれていた。僅かに身体をゆするしかできない状態。
 マリーダはその前で四つん這いになり、右手にオナホールを逆手で持って、目の前のペニスをイカせないようにゆっくりと扱く。
 これは別にレイプしているわけではない。訓練なのだ。ペニスの感覚だけで素材や質感、イボやヒダの配置、締め付けやバキュームの強さからオナホールを見抜く訓練。
 訓練なのだから、快楽よりも苦痛が上回る。一度でもイッてしまえば集中力が切れ、ベストコンディションに復活するまで時間が掛かってしまう。
 それでは来週行われるオナホマイスター全日本代表決定戦までに間に合わないと刹那は考え、姉に頼んでスン止めを繰り返して貰っていたのだ。
「やっぱりダメよ刹那っ!! おチンポ壊れちゃうよ? けーれんしてピクピク震えちゃってるんだよ!? だからっ……ねっ? シコシコしてヌいてあげるねっ?」
 そして正解数が二桁を迎え、限界をも迎え出す。徐々に正解するまでの時間が増え、イキたいと言う自覚の無い衝動が集中力を削り取る。
451『オナホマイスター刹那』:2010/05/28(金) 00:36:12 ID:mBaYNR3q
 本末転倒になる前にマリーダは決断し、一定感覚で行っていた手淫を、射精させる動きにシフトさせてゆく。
 手首を捻り、時おり回転を加えながら、カリは意識的に締め付けて内ヒダを絡ませ、引き抜けば幼いペニスに皮が被り、押し込めばズルリと剥けてピンク色の粘膜が、亀頭が隙間無く包まれた偽肉の中で完全に姿を表す。そんな手淫。
 覆っているはローションとカウパーでドロドロになったゴムの膣肉で、粘着質な水音は激しい上下ストロークによって家中に響き渡る。
「ふぁ、ぁ、ああっ!? まって、イカせないでっ!! わかっ、たんだよぉっ!! これはボクオナXXで、使ってるローションはフルーツ牛乳ローションだ!!!」
「うん、正解よ刹那。だけど今日はもう無理。このままイカせ……ううん。後一つだけ、試してみようか?」
 マリーダの瞳は潤む。マリーダの口は微笑む。マリーダの夢は、これから叶う。
 マリーダは手の動きを完全に止め、吸い付くオナホールを力任せに引き離し、痛々しく赤らむペニスにフーッと息を吹き掛ける。
「ふんんっ!? えっ、おねえちゃん?」
 刹那の夢は父親の敵討ち。それは誰から頼まれたのでも無く、刹那が決めた事。
 しかしマリーダの夢は、弟と幸せに暮らす事。母親が死ぬ間際に託した願い。オナホールの道は修羅の道、刹那は関わって欲しくない。それがマリーダへと託した母親の願い。
 マリーダの夢と母親の願い。だが、刹那を修羅の道へと踏み込ませてしまった。考えが甘かったのだ。
452『オナホマイスター刹那』:2010/05/28(金) 00:37:00 ID:mBaYNR3q
 刹那のペニスはスポンジが水を吸収するように、一度味わった感触を覚えて行った。
 オナホマイスタージュニア大会優勝。そして百戦錬磨の猛者が集う、対テンガ選抜オナホマイスター全国大会すらも、代表決定戦まで上り詰めた。来週の三回戦に勝てば、補欠を含めた代表に決まってしまう。
「刹那、最後の……イク、ねっ?」
 マリーダは弟が好きだった。いつも側に居て、いつも見守って来て、いつも頑張る姿を見て。いつしかそれが愛に変わった。家族の愛から男女の愛へ。


 夜が来る。暗くて、冷たくて、熱い、たった二人の夜が来る。俺と姉……
「ちっ、さっさと開けろグズがっ」
 たった二人の熱い夜。




    『わが家のハマーン様』




「しょうがないじゃん、初めてだったんだし」
 やっとこさコルクが抜け、二つ並んだグラスに赤ワインを注ぐ。
 自分の家、リビング、テーブルの上で、その全てが初体験。
 だけど理屈じゃないんだ。どんな言い分も姉を、高坂 覇真杏(こうさか ハマーン)をイラつかせるだけ。
 だけどだけど、俺は更に姉をイラつかせる。
「ところでハマーン様? この映像……綺麗に撮れてると思わない?」
 


「コロシテやるっ!! ころひてやりゅぞゾクブチュっ!!」
「舌、まわってないっすよハマーン様?  だいたいそんな恐いこと言ったって、イク時の凄い雄叫びとアクメ顔、何枚もカメラで撮っちゃったしなぁ」
453名無しさん@ピンキー:2010/05/28(金) 00:42:14 ID:mBaYNR3q
あああああああああミスったあああああああああ!!!!コピペミスって最後のオチがわけわかめになっとる…orz

刹那が童貞を奪われてオナホマイスターの資格が無くなるってオチでした。
これは流石に酷いんで保管しないでください。
荒らしみたいな真似してスマンです。しばらく消えます
454名無しさん@ピンキー:2010/05/28(金) 00:57:07 ID:G1dhmxMc
でもオレは>>453氏の努力を受け入れる。乙かれ
455名無しさん@ピンキー:2010/05/28(金) 02:39:41 ID:cUUYDPve
一生懸命さは伝わっているので乙だと思う。次回に期待
456名無しさん@ピンキー:2010/05/28(金) 09:14:00 ID:typnpzix


何というかソウカンジャーの系譜だなw
こういう真面目な馬鹿話は大好きだ
457名無しさん@ピンキー:2010/05/28(金) 15:43:00 ID:wTZ8nxfX
>>453

間違い過ぎだろ!腹筋崩壊したわwww
でも面白かったから許すw
458名無しさん@ピンキー:2010/05/28(金) 16:05:16 ID:G1dhmxMc
思いつきを少し


「はぁ…はぁ…ただいま…」
苦しそうな声で、妹が帰ってきた
「お兄ちゃん…、お兄ちゃん」
学校から帰ると、すぐオレの所にやってくる
「痛いの…お願い…」
妹は小さな体に不釣り合いな大きな胸を揺らしながら、オレを見つめる

妹は〇学四年生だが、バストは100cm近い超巨乳だ。医者の見立てではホルモンのバランスがどうとかという事らしいが…
胸以外の体は実年齢のままなので、体型のバランスが非常に悪く、疲れやすかったりしょっちゅう転んだりと、かなり苦労している

オレは妹を風呂場に連れてくると、上着を脱がせ、特注のブラを外す。妹を苦しめている巨大な乳房があらわになった

実は巨乳化がすすむにつれ、妹の胸からは母乳が出るようになった。これもホルモンバランスがどうのこうのらしいが…最近では母乳の量が多くなり、学校が終わるころにはもう痛くてたまらないようだ

そんな妹の母乳を搾ってあげるのがオレの日課だ。
最初はおっかなびっくりだったが、今ではなかなか上手くなったと思う
459名無しさん@ピンキー:2010/05/28(金) 16:07:44 ID:G1dhmxMc
ちゅーっ…、ちゅーっ…
オレは妹の背後に回り、乳を搾る。先端から白い液体が勢いのいい筋となって、洗面器にたまっていく
「はぁ…ふぅ…」
痛みがおさまってきたようだ。呼吸がリラックスした物になっている
ちゅーっ…、ちゅーっ…
まだだいぶ残っている。今日はいつもより多いようだ

「あぁ…んんっ…んふぅっ…」
妹の声に、解放感以外の感覚がまざる。この病気、体中の性感まで高めてしまうのだという。まだ子供の妹にはつらすぎる話だ。しかし、もし欲求に負けて、自分を慰める行為をしてしまった場合は…

「く…あああ…」
そんな事を考えていた間に、妹の手は自らの股間に伸びようとしていた。見ると、まるで小便をもらしたかのようにぐしょぐしょに濡れていた

「ダメだ!」
オレは妹の腕を掴む
「そんな事したら、また胸が大きくなっちゃうぞ!」
そう、妹の体はオナニーやセックス等の刺激を受けると、さらに症状が悪化してしまうのだ。性感は高まっているのに、それを処理してはいけない。考えただけで地獄だ

「あぁ…で、でも…」
「ガマンしなきゃ」
「ダ、ダメ…お兄ちゃん……わたし、もうダメだよ…」
妹は体をぐねぐねと動かしながらオレの顔を見上げた。かわいい瞳からは涙が流れている
「も、もうがまんできない…げんかいなの…」
妹は息を荒げてオレに助けを求める
「だ、駄目だ…」
オレは目を逸らした。股間の物がもう固くなっていたからだ
「お、おにいちゃん…おっぱいだけじゃなくて…おなかのなかもなぐさめてぇ……」
さっきまで乳搾りをしていた手をぎゅっと握ってきた。妹の手は、熱かった
「たすけて……おねがい……」

オレの理性は音を立てて切れた。そのまま病気の妹を押し倒し…


「ねえお兄ちゃん、あれからもうおっぱいは大きくならなくなったけど…」
「……」
「わたしのお腹、こんなに大きくなっちゃったねぇ」

一応、妹の病気は改善に向かっている…
460名無しさん@ピンキー:2010/05/28(金) 16:08:35 ID:G1dhmxMc
おそまつ
461名無しさん@ピンキー:2010/05/28(金) 16:39:22 ID:n53qYJvl
何うまいこと落としてんだよW
俺的にGJ
462名無しさん@ピンキー:2010/05/28(金) 16:58:40 ID:ibzMbHtG
GJ
この設定で長編書いてくれw
463名無しさん@ピンキー:2010/05/28(金) 18:24:48 ID:7KdYAYCj
このシチュエーション大好きなんだが。長編にしてみないか
464名無しさん@ピンキー:2010/05/28(金) 21:59:15 ID:MKdjP8l6
性的快感で胸が成長するなら搾るのもアウトなんじゃなかろうか
465名無しさん@ピンキー:2010/05/28(金) 23:47:47 ID:G1dhmxMc
>>464
ゴメン、細かい事は考えてなかったですww
466名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 17:20:31 ID:KFwY1XXK
エロは良い……(遠い目)
所で兄妹、姉弟の年齢差って何歳位が乙何だろう?
467名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 17:46:57 ID:nxUa87yl
3,5,7歳くらいがストライクゾーン
生息域が違うほうが話が広がる
近すぎるとべったりで息が詰まる
468名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 18:19:36 ID:vMh7usWq
義妹物の往年の名作「みゆき」みたいに、クラスメイトから「あの兄妹、ちょっと異常よ」と言われるくらいなのも良い
469名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 21:25:46 ID:HKaHbSxa
適う
470名無しさん@ピンキー:2010/05/30(日) 01:14:21 ID:mSwiVi1C
双子の姉妹(0歳差)もなかなか
471名無しさん@ピンキー:2010/05/30(日) 12:14:46 ID:i+N0hj7/
>>466
人によるだろうから絶対にコレっていうのは話し合っても出ないんじゃね?
俺は年齢差が大きいのも小さいのも同じくらい好きだけど
472名無しさん@ピンキー:2010/05/30(日) 16:57:00 ID:gdH3POOK
親子ほど年の離れた姉弟もなくはないかな
ブラッドベリのびっくり箱みたいな話を母親をキモ姉に置き換えてできないものか…
473名無しさん@ピンキー:2010/05/30(日) 18:00:20 ID:2NfOmt3k
ある 派手 並外れた
474名無しさん@ピンキー:2010/05/30(日) 18:05:11 ID:c2fy4aDQ
年齢差が小さくても環境を引き離せばOKなの?
大学1年と高校3年みたいに、違う学校になる年齢差にするとかの
方法があるのでは。双子の片方だけがものすごく勉強が出来て
有名な進学校、もう一人は普通の学校で、一緒にいられないストレスから家では…
なんてのもありでしょうか?
475名無しさん@ピンキー:2010/05/30(日) 18:09:33 ID:2NfOmt3k
派手
476『きっと、壊れてる』第1話:2010/05/30(日) 21:59:10 ID:G0u9RHTI
初めて書いたので、投下します。
感想等頂けると嬉しいです。
タイトルは『きっと、壊れてる』 簡単なエロあり。
477『きっと、壊れてる』第1話(1/4):2010/05/30(日) 22:00:59 ID:G0u9RHTI
「ただいま」
「おかえりなさい」
同僚達が1週間のストレスを解消するために、街に繰り出す金曜日。
村上浩介はまっすぐ帰宅した。
「疲れたでしょ?もう少しでご飯できるから。」
「あぁ、悪いな」
会話だけ聞いてみれば、新婚の夫婦のようだが、二人は兄妹だった。

駅から徒歩12分の賃貸マンション。
ここに住む以前は風呂・トイレ別ならどこでも良いと思っていた浩介にとって、
静かで日当たりの良いこの部屋は予想以上に心の拠り所になっていた。
率先して不動産屋と交渉しこの部屋を見つけてきた妹に、浩介は心の中で感謝していた。

「茜」
「何?兄さん」
台所で後ろ姿のまま返事をする妹。
「今日の新聞は?」
「あら、ごめんなさい。ポストに入ったままだわ。」
「なら、いいよ。おれが取ってくる。」
そう言い残し浩介は玄関まで歩きながら、茜との関係が本当に夫婦のようだと思い苦笑いした。

昔から物静かで、本を読むのが好きだった茜はフリーのライターとして働いている。
IT関連の企業に勤め、帰宅が遅くなる事が多い浩介にとって、比較的時間の融通が効く茜に家事を任せてしまっているのが現状だった。
近所にも兄妹ではなく、恋人か若夫婦と思われているようだ。

小さい頃から仲が良い。
それが村上兄妹への周囲の認識だった。
高校生にもなれば終日ベッタリというわけではなかったが、一緒に歩く時は茜の手が伸びてきて必ず腕を組んで歩いた。
周りに冷やかされ、恥ずかしくて、一度人前ではくっつかないよう注意したこともあったが、
怒るでもないし、拗ねるわけでもなく、悲しそうに「そう」とだけ言い手を離す茜を見た浩介は酷い罪悪感に襲われ、
翌日には撤回した。
あの時の悲しそうな顔を思い出すたびに、浩介は茜を大切にしようと思う事ができた。

夕食を食べ終わると、二人は共通の趣味である読書を開始した。
「ねぇ、兄さん」
「ん?どうした?」
「江戸川乱歩の『人間椅子』って初めて読んだのだけど、とても気持ち悪いわね。
もし今私が座っているこの椅子に知らない男の人が入っていると思うと、鳥肌が立つわ。」
茜は不安そうな顔を見せながら、立ち上がると浩介の隣に擦り寄り自分が座っていた椅子を睨みつけた。

「いや、そもそも人が入るスペースないだろ、その椅子。」
冷静になだめた後、浩介は自分が読んでいた小説に目を向けたが、茜の声がそれを中断させた。

「そろそろ、今日の分」
478『きっと、壊れてる』第1話(2/4):2010/05/30(日) 22:02:11 ID:G0u9RHTI
午後2時になり、昼休みに食べた唐揚げ定食の量の多さに後悔しながら、浩介は顧客である都内の私立病院に向かっていた。
浩介が所属する運用チームは、契約している顧客システムの運用改善の提案や、現場で働く者の意見を聞いて設計に反映させるが仕事だ。
今日は某病院の錠剤管理システムに関しての打ち合わせだった。

「お世話になっております。キモウト・ソリューションズの村上です。」
受付を済ませ、担当の薬剤師が来るまで会議室で待っていると、見慣れない若い男性がノックをして入ってきた。
「申し訳ありません。本日担当の者が急に早退してしまいまして、別の人間でも構わないでしょうか?」
男性は入ってくるなり困った事を言い出した。言った本人の申し訳なさそうな顔を見たら、浩介は文句も言えなかった。
「わかりました。では本日は現場の方の意見だけ聞く形にします。」
浩介がそう言うと男性は心底安心したような顔になり、すぐ呼んできますと部屋を出て行った。
やれやれ困ったな、と思いながら懸案管理フォーマットを用意していると、ノックの後女性が入って来た。
「すいません。本日参加させて頂く玉置と申し・・・ま」
目が合った瞬間、浩介は無意識に「美佐」と口に出していた。

その日の定時後、浩介と美佐は学生時代二人でよく来ていたバーに来ていた。
ハットを被ったオシャレな男性店員が、ボトルやシェーカーを変幻自在に操る見事なパフォーマンスを見せてくれるところが二人とも気に入っていた。
「いつあの病院に?」
「今期から」
お気に入りのカクテル、ディスカバリーを飲みながら、美佐は答えた。
「ちゃんと薬剤師になったんだな」
「ちゃんとって何よ!もう」
「だって、美佐は平日も休日もおれと会ってばかりだっただろ?」
「勉強のできる人は効率が良いんです。でも浩介もしすてむえんじにあ?って言うの?それになったんだね!
てっきり小説家にでもなってるのかと思った。ていうかあれ理系の人がやるもんじゃないの?」
「あの業種は意外に文系も多いんだよ。」
「そっかー、でも浩介のスーツ姿萌えた!」

笑いながら美佐は浩介の肩を叩き、学生時代から何一つ変わらない笑顔を見せた。
二人は昔付き合っていた。
大学・学部も全く違い、接点のない二人が出会った場所は、区立の図書館だった。
休みの日に資料を集めていた美佐が上の方の段に手が届かず、近くで本を読んでいた長身の浩介に声を掛けたのがきっかけだった。
浩介は今でも「わざわざ人を呼ばなくても脚立を使えば良かったのに」と思っているが本人には言っていなかった。

「でも驚いちゃった。急に『玉置さんパソコン詳しい?SEさんが来てるからちょっと話してきて!』って言われてさ。行ってみたら浩介がいるし」
「おれもびっくりしたよ。」
「4年振りかな?」
「もうそんなに経つのか。」
「そう、4年振り。・・・・茜ちゃんは元気?」
「・・・・・あぁ、元気にしてる。」
一人の女性の名前が出た時点で、学生時代に戻っていた二人は現実に帰ってきた。
「あのね、浩介が勘違いしてるかわからないけど。」
「ん?」
「私は浩介の事、嫌いになったわけじゃなかったんだからね?」
「・・・知ってるよ。」
「・・・」
その後、世間話を小1時間した二人は店を出て別れた。
別れ際美佐が放った言葉は「またね」だった。
479『きっと、壊れてる』第1話(3/4):2010/05/30(日) 22:03:21 ID:G0u9RHTI

「兄さん、今日は香水の良い匂いがするわね」
帰宅して浩介が茜から掛けられた第一声がこれだった。
茜が無表情に似合わず選んできたウサギのキャラがついた靴ベラを所定の位置に戻すと、歩きながら浩介は言った。
「あぁ、美佐に偶然会ったんだ。それで今日は飲んできた。多分その時匂いがついたんだろ。」
「美佐さん?」
茜は「そう」とだけ呟き、浩介の着替えを手伝った。
浩介は美佐と別れた時の事は茜には言っていない。
これからも言うつもりはないし、茜には言えなかった。
「ご飯は食べてきたんでしょ?ならすぐお風呂に入っちゃって。」
「今日は面倒だな」
「ダメ。入ってきて。」
「・・・」

有無を言わせない茜の命令に「逆らえない」と悟った浩介は、湯船に浸かりながら美佐との交際時代を思い出していた。
長身で男前だがおとなしく団体行動が苦手な浩介は、高校時代に思春期特有の性欲ゆえに好きでもない女の子と試しに何人かと付き合った以外は
男女の付き合いというものをした事がなかった。逆に美佐は明るく性格も良いため、モテていたようだ。(自称)
そんな二人の付き合いは、美佐が浩介を引っ張るという形が定例化していた。
どこへ行く、何を食べる、何がしたい、すべて美佐が決めてきた。
浩介は優しく美佐の意見を受け入れるだけだったが、美佐は物足りない等の感情もまったくなく、二人はうまく回っていた。
明るく知的な美佐に浩介は惹かれていたし、美佐もまた周りに流されず芯が強い浩介に心底惚れていた。
「あいつ変わってなかったな」
そう思い、思い出の続きを辿ろうとした時、脱衣所の方に人影が現れた。
「兄さん」
「ん〜?」
「着替えここに置いておくから。」
「あぁ、ありがとう」
「・・・美佐さんと何話したの?」
不意な質問に浩介は困惑した。内容にではなく茜の声のトーンが怒っている時の物だったからだ。
「昔の事だよ。」
「昔って?付き合っていた時の話?」
「うん、付き合っていた頃の話」
「そう」
言いながら茜は脱衣所を出て行った。

声のトーンは最後に戻っていたから大丈夫だ、と考えながらも浩介は美佐の事は考えるのをやめた。
480『きっと、壊れてる』第1話(4/4):2010/05/30(日) 22:05:06 ID:G0u9RHTI
翌朝、揺すられて目が覚めるとそこには茜の姿がった。
新調したのだろうか、昨日まで付けていたエプロンの柄が白からピンクへ変わっていた。
「おはよう、兄さん」
「ん、おはよう」
そう言うと浩介は起き上がりアクビをした。
「大きなアクビ」
そう言うと茜はめずらしく微笑みながら兄の手を引っ張り、テーブルのある部屋へと連れて行ってくれた。
昨日の事はもう怒ってないみたいだな、と浩介は安心しながら茜の作ってくれたベーコンエッグを食べていた時、茜がお茶を出しながら言った。
「兄さん今日は早く帰ってきてね」
「ん、わかってる。」
当然と言わんばかりの発言に信用したのか、茜は頷きながら台所に帰って行った。
今日は浩介の誕生日だった。
会社を定時で上がり、まっすぐ帰宅すると茜がご馳走を作って待っていてくれた。
浩介の好物であるチーズ入りハンバーグ、カツオの刺身、栄養も考えてくれてサラダもちゃんと用意してある。
極めつけはショートケーキだ。浩介は茜の作るショートケーキが大好きだった。
「お誕生日おめでとう。兄さん」
「ありがとう」
二人だけでの誕生日会。「毎年妹と二人っきりで誕生日会を行っている」など同僚には恥ずかしくて言えないが、
このいつもと違う家の中の雰囲気、茜の料理、いつもよりもう少しだけ優しい茜の態度が浩介には最高のプレゼントだった。
「兄さんももう四捨五入で30ね」
「お前だって来年だろ」
「フフ、そうだったわね。」
お酒が入っているからか、少しお茶目な顔をしながら茜は浩介の足に手を置いて体を密着させる。
「今日はお誕生日だから、私が尽くしてあげる。」
「今日もするのか」
「あら、今日の分は今日の分よ」「わかった」
いつからだろうか、俺と茜は体を重ねていた。きっかけは茜の告白だった気がする。
悪びれもなく「兄さん、愛してるわ」と親の前で言い放った茜の顔はとても凛として美しかった。
成績も良いし、家事もできる、美人、欠点は他人と最低限のコミュニケーションしか取れない所か。
いや『取れない』のではなく『取らない』だけなのかもしれない。
とにかく家に居られなくなった俺らは俺の大学進学と同時に家を出た。
学費だけは親が出してくれる事になり、とても安心したのを覚えている。
父さん、母さん元気でやっているだろうか。
別に親が憎くて、家を出たわけではない。親も俺らが憎くて家を追い出したのではない。
茜もたまに母さんと連絡を取り合っているようだ。
兄と妹が体を重ねる事がそんなに悪い事なのかどうかは、おれには判断できない。
美佐と付き合っていた頃も当然ように茜と身体を重ねていた。
ただ、美佐とシた日の夜は茜の攻めも激しかった。
昔は正常な観念を持っていたような気もするが、今はただ茜の体に溺れるだけだった。
きっと俺は壊れてる。

「ジュブ、ジュブ、ハァハァ兄さん気持ち良い?」
「あぁ、気持ち良いよ」
「私も・・アンッ、腰動かさないで」
「でも・・・」
「今日は私が尽くすの、兄さんは何もしなくて良いわ」
浩介の上に跨り茜は必死に腰を動かす。
贅肉のない茜のスレンダーな身体が上下に動く。
「ンッンッンッ、ハァ兄さん今日はいつもより興奮しているのね」
「そうかな」
「うん、ンッいつもより・・ンッ大きい」
「茜、もうそろそろ」
「うん私ももう少しでイきそう、兄さんイく時は中に出して」
ンッンッと茜は腰の回転を速めて浩介の身体に抱きつく。
茜はお尻を思い切り鷲掴みにされるのと、耳たぶを甘噛みされるのが好きだった。
「茜!本当にイく!」
「うん、きて〜! アンッ アンッ アンッ ンッ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」

二人が並んで息を切らし、余韻に浸っている頃浩介の携帯に新着メールが届いた。
件名:またあの頃に戻りたい
481『きっと、壊れてる』第1話:2010/05/30(日) 22:06:48 ID:G0u9RHTI
以上です。ありがとうございました。
続きは近いうちに。では。
482名無しさん@ピンキー:2010/05/30(日) 22:34:42 ID:5bspe4fa
ヤバい、ツボった
千の期待を込めてGJ
483名無しさん@ピンキー:2010/05/30(日) 22:44:48 ID:wDuDeKxM
文章に違和感は感じなかったな
ただしヤリティンてめーはだめだ。誠死ね。っというのが感想
主人公は好きになれんが今までにないタイプの主人公で面白いと思う。期待
484名無しさん@ピンキー:2010/05/30(日) 22:52:34 ID:Rgj59qdB
成人兄妹ってのが新しいね。勉強させていただきます
485名無しさん@ピンキー:2010/05/30(日) 23:47:39 ID:VRESDfBG
>>481
GJです

>>474
キモ姉妹(できる方)はランクを下げてでも主人公(できない方)と同じ所に行くと思うのですが。
486名無しさん@ピンキー:2010/05/30(日) 23:51:51 ID:f3RWMHbU
>>485
そこは主人公の方が出来る方で…
487名無しさん@ピンキー:2010/05/31(月) 00:27:17 ID:Zyb+qoXb
それだと話の展開がすげー難しくなりそうだな
というか逆パターンであっても、離れ離れになる前に籠絡しそうだ
488名無しさん@ピンキー:2010/05/31(月) 02:13:08 ID:N2FST6x9
これはまた楽しみなのが出てきたな。
次回も待ってます。
489名無しさん@ピンキー:2010/05/31(月) 22:54:42 ID:qPUoH4w+
490名無しさん@ピンキー:2010/05/31(月) 23:48:09 ID:HA2lN2ta
キモ姉妹が超天才だったら兄弟のために歴史に残る偉業を成し遂げそうだな
491名無しさん@ピンキー:2010/05/31(月) 23:51:38 ID:8leOwdVn
姉「ん〜?間違ったかな?」
492名無しさん@ピンキー:2010/06/01(火) 01:19:12 ID:+ye9u3jy
弟「他の男は騙せても俺の目はごまかされんぞ」
493名無しさん@ピンキー:2010/06/01(火) 02:30:00 ID:TOPQBUCd
>>490
姉妹だけ天才だったら何も問題ないだろうけどね。
そういう場合って兄弟も同じ血を引いているだけに頭はかなりよさそうな気がするんだよ。
あまつさえ姉妹と兄弟が文系と理系で分かれていたりしたら余計対立しそうじゃない?

兄議員(法律家)「ES細胞は人体実験だ。政府として補助金を拠出するのは絶対に認めてはならない」
妹博士(科学者)「ES細胞は難病の研究にも大いに役立つ。なぜストップをかけるのか理解できない」

なんて。
494名無しさん@ピンキー:2010/06/01(火) 02:32:25 ID:jYyan7+P
ES細胞て何?
SがSisterのSなのは想像つくが
495名無しさん@ピンキー:2010/06/01(火) 02:40:31 ID:t2WlZk+T
ES細胞は研究の捏造があったり、受精卵を必要としたり問題が多い

万能細胞としては京大・山中教授のiPS細胞の方が有力視されてる
ちなみにiPS細胞とは
itsumo
Penisを
Sisterに

の意
496名無しさん@ピンキー:2010/06/01(火) 02:57:42 ID:trczu52s
エロ姉妹細胞
497名無しさん@ピンキー:2010/06/01(火) 10:05:04 ID:F4903vE8
>>495
嘘を教えるなw
498名無しさん@ピンキー:2010/06/01(火) 12:24:20 ID:trczu52s
「iPS細胞というので同性でも子供が作れるらしいです」

まあキモ姉妹には関係のない話か?
499名無しさん@ピンキー:2010/06/01(火) 12:24:38 ID:3KrvE/XU
>>490
自分の理想と目的を持って強く生きているはずなのに、
宇宙の敵だといわれると身震いするほど腹をたてるキモ姉妹燃え。
500悪質長男 第七話:2010/06/01(火) 14:20:31 ID:MJ2cg+FT
皆さんお久しぶりです。
では投下します。今回はネタ切れバレバレなのです。
501悪質長男 第七話:2010/06/01(火) 14:21:13 ID:MJ2cg+FT
その学校には姉妹姫と呼ばれ、持てはやされる姉妹がいる。
姉の名前は麗華。異国の王女を思わせる、美しい長女。
彼女の妹は玲と言う。凛とした気迫を持ちながら、感情表現が希薄であるせいか、上級生に赤ん坊の様だと可愛がられる事もあった。
そんな彼女が見た目に相応しい、カッコイイ姿を見る機会はある。
それは・・・



ズバンッ!
と、切れの良い、打撃音が一瞬だけ響いた。
場所は校内の道場で、竹刀を振り切ったのは玲、受けたのは剣道経験のある女性教師である。
教師はちょっとずれた面を直すと、今の動きを見本にして女子生徒らに解説を始めた。が、生徒の半分は聞いていない。教師の背後に控える玲を見惚れていた。

玲は校内で有名な運動家だ。実質、所属する柔道部と剣道部では期待のエースとして歓迎されたが、あくまで護身の為に鍛えた玲に大会への参加意欲が無かった事に、顧問も部員も歯がゆい思いだった。しかし、何かと物騒な世の中を考えると我慢出来た。

解説が終わり、後は練習あるのみ、と教師の声に、生徒は打ち合いを始めた。



着替える時間もある為、体育の授業は早めに終わった。
黙々と一番に着替え終わった玲は窓に寄ると、十分に見渡せるグラウンドを覗いた。
先日から先輩から兄になった長兄のスケジュールは逐一把握している。同じ時間に体育をやっているはずだ。
「玲ちゃーん。何してるの?あ、サッカーやっているんだー。怜二先輩探してるの?」
人懐っこい性格のクラスメイトが隣に並ぶ。玲は一瞥するだけで目先を外に戻した。
彼女の言う通り、二年生がサッカーをして盛り上がっていた。今は授業が終わりそうな頃なので、皆汗がびっしょりだ。
502悪質長男 第七話:2010/06/01(火) 14:21:55 ID:MJ2cg+FT



「へいパス!」
「おい11番!もっと前に行け!」

両チームの実力は互角なようだ。一点を争って必死だ。
ボールがゴールポストに近づいたその時、玲のお目当てである兄が飛び上がった。
「おおおおお!危険が為に封印した蹴術!二度とさらすまいと思ったが、止むを得ん!
いくぞ、消える魔球ううううう!」

消える魔球?

一斉に皆の頭上に疑問符が浮かび上がる中、頭の悪い王子が突っ込んできた。
「この瞬間(とき)を待っていた!俺はおまえに打ち勝つ!麗華様と御友達になる為に!」
彼女のハードルが高い故に『御友達から』にハードルを下げた弱気な心を叫んだ。

ともあれライバルがぶつかり合うワンシーンが完成した。
「おおおお!」
怜二が体を捻り、頭が下、蹴る脚が上になる姿勢を取る。俗に言う、オーバーヘッドキック。
「おら!」


一蹴。


皆がボールの行く先に振り返った―――が、ゴールポストにはボールが届いていないし、どこかにボールが落ちる気配も無い。

「・・・・消えた?」

誰かの呟きに皆が冷や汗をかいて怜二に振り向く。その怜二はと言うと首を傾げながら、硬直する王子を見ていた。その王子の顔には、ボールがめり込んでいた。
「うーん。消える魔球失敗か」
王子がばたりと倒れるのを見届けると、怜二は転がるボールを器用にゴールまで蹴り上げた。
試合は呆気に取られた中で、呆気ない程に終わった。


剣道場では着替え終わった女子生徒全員が窓に密集していた。
「あーあ。あの蹴りで決めていれば盛り上がったのになー」
「十分すごいじゃない。あんな逆さの格好で転ばずに着地したんだもん」
はやし立てる声に、他の女の視線が兄に集中する事に、玲は不快感を覚えた。
怜二のナンパな性格や、自分と知り合う前からクラスメイトの何人かは仲良くなっている事は知っていたが、やはり独占欲と言うものは平静を許さないらしい。
ちなみに玲は無表情なので、不快感など誰にも悟られていない。
503悪質長男 第七話:2010/06/01(火) 14:24:20 ID:MJ2cg+FT



「怜二、今度は卓球で勝負だ!」
卓球台を挟んで王子が相手に向かってそう吠えた。
昼休み時、サッカーの勝負で借りを返そうと王子が宣戦布告したのだ。
しかも偶々怜二を見に来た姉妹姫が揃っているのも重なって、極限まで張り切っているご様子。
あと、その周りは姉妹姫を見に来た生徒で一杯だった。
「この勝負でおまえを負かし、俺は麗華様にアピールするのだ!」
言い切って男子に引きずり込まれ、リンチを受けた。
果ては自分こそアピールしようとラケットを奪い合う、醜い争いまで発展した。
怜二は目の前の惨劇を無視して、芝居がかった台詞を吐く。
「ふっふっふ。王子、君は覚えているか?
姉ちゃんの好みは卓球できる人と仮定して告白したあの日を」
それを聞いた麗華は、
(何でそんな限定的なの・・・?)
と、ツッコんだ。
怜二は続ける。
「卓球のラケットの、着ぐるみを着て告白してふられた事を、
よもや忘れたわけではあるまい?」

麗華にはそんな告白を受けた記憶が無かった。

「それでも尚卓球で愛を掴もうとするのか!」
びしっ、とラケットを突き出した先には、王子と全然違う三年生の男子だった。
「・・・おや?」
504悪質長男 第七話:2010/06/01(火) 14:24:46 ID:MJ2cg+FT



「いくぞ麗華様の弟!おまえに打ち勝ち、れ、麗華様と玲様の御友達になるのだー!」
こいつもさっきの王子みたいな、なんとも憶病な奴だった。
「ふ、誰であろうと悪い虫は寄り付かせん!」
怜二は怜二でノリノリな姑発言。
「僕の魔球シリーズを見せてあげましょう!『卓球界のサタン』の名にかけて!」
なんともかっこ悪い二つ名だった。

「必殺サーブ、サンダートルネード!」

「卓球で竜巻が起こっただと!?」

「秘儀、生命の輝き!」

「ピンポン玉からスライムが生まれた!?」

「カウンター技、フェアリーフライ!」

「馬鹿な・・!俺のスマッシュボールが(羽みたいので飛んで)二倍の速度で返されただと!?」

「最大奥義!プリンアターーック!」
「変態技はもうええっっっちゅ――――ね―――――――ん!!!!!!!」

ちなみにこの技は、
バウンドしなかったピンポン球の内部からグシャッ、と不吉な音と立てる、不気味なものだった。


「究極奥義!」
「まだあんの!?」
「シャドーボール!」
「ポ○モン!?」
黒いだけのピンポン玉は卓球台を穿つと、先輩のマタに炸裂した。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」

急所に当たった!
効果は抜群だ!

「ご・・・・ごめんなさい・・・・」
割と本気で謝る怜二だった。
505悪質長男 第七話:2010/06/01(火) 14:25:26 ID:MJ2cg+FT



帰宅後
「ふん〜〜〜ふんーふふん〜〜」
まず一番風呂に入ったのが怜二だった。洗濯するものは全て籠に貯めて置く。その中には今日の運動で汗を吸収した体操服も含んでいる。

次に入ったのは麗華だ。
彼女は脱衣の途中、籠に入っている体操服に目を止めた。周囲を見回してから上着を取り出す。

嗅いだ。

興奮した。

脳味噌をやられた。

そのまま麗華は

盗んだ。

その次に入浴したのが玲だ。
やはり適当に服を籠に放り込む。最後に籠の中が目に入って、一瞬動きが止まる。
どこかで見た男物のズボンがちらりと見えた。今日の記憶を掘り返す。兄は、サッカーで汗をびっしょりかいていた。

ズボンは、正式の持ち主ではない細い指に引っ張られた。

そのまま盗まれた。


その後上、下とも盗られた体操服はきちんと洗われ本来の持ち主の許へ帰って来た。

しかし洗濯機に入る前に何をされていたのか。

今日も汗を流す、兄であり弟でもある彼には、それを知る由も無い。
506悪質長男 第七話:2010/06/01(火) 14:27:10 ID:MJ2cg+FT
投稿終わります。
エロを書かないので、オチが弱い事否めません。
逆に九話目は長くなりそうです。
507名無しさん@ピンキー:2010/06/01(火) 17:22:52 ID:tj6AWgll
超えられる 超えている
508名無しさん@ピンキー:2010/06/01(火) 18:11:28 ID:/Q/EwnUz
>>499
兄弟を必ず支配しようとするんですね。わかります。

悪質さんGJでした! やっぱキモ姉妹は兄弟の洗濯物を活用してナンボですよねー。
509名無しさん@ピンキー:2010/06/01(火) 19:56:33 ID:zsSSj6Di
リアルの話はあれだが、アイルランドで異母兄妹が結婚しちゃったそうな
510名無しさん@ピンキー:2010/06/01(火) 20:33:52 ID:dQidlzdm
>>509
生き別れの?
511名無しさん@ピンキー:2010/06/01(火) 21:55:52 ID:ZMNS+038
俺愛蔵のクラシックのCDやLPがことごとく妹に捨てられた…orz
512名無しさん@ピンキー:2010/06/02(水) 00:15:42 ID:BkyTdgzZ
そこからどうやって
このスレ向けの話に発展するのかwktk

「やっぱり妹は脳内に限るな、現実の妹なんて……云々」
なんて愚痴で終わったりしないよね? ね?
513名無しさん@ピンキー:2010/06/02(水) 00:20:01 ID:qSM6AMGO
>>512
もう>>511は妹に幽閉されたよ
514名無しさん@ピンキー:2010/06/02(水) 00:35:58 ID:XigJM3Y+
無理矢理ヘッドホンをつけさせられ、大音響で自作のラブソングを聞かされ続ける毎日か…。ご愁傷様です
515名無しさん@ピンキー:2010/06/02(水) 00:43:59 ID:i8gq8Iuc
たぶん511は音楽にかなり傾倒していたんだよ、それはクラシックを好んで聞いている事からも想像できる
それで自分に構ってくれなくて拗ねた妹は、それらを捨てる事で自分に意識を向けさせる作戦に出たんだ
無関心よりは敵意だろうとなんらかの感情があったほうが良かったんだろう

ここから妹による兄改造計画が始まると俺は予想する
516名無しさん@ピンキー:2010/06/02(水) 02:53:18 ID:9pA7xxpm
>>511
妹「膝をついて落胆するだけよりも、ろくでもないことしでかした張本人を、
  オーケストラの情熱的な指揮者みたいに大袈裟な
身振りのお仕置きしたほうがいいんじゃね、
  全裸同士で(;´Д`)ハァハァ」
517名無しさん@ピンキー:2010/06/02(水) 03:02:16 ID:eRcSyOXv
私が作詞作曲したラブソングのCDがことごとくお兄ちゃんに捨てられた…
518名無しさん@ピンキー:2010/06/02(水) 03:20:54 ID:ODCnsRXQ
ちょこっと投下します

みんな、自分の部屋に入る時って特に気兼ねなんかしねえよな。
「それ」が普通……なんだよな?
「クンクン、ッハァー! あは、リン君ったら。昨日、シコシコしたなー! クンクン」
――ドンッ。
これは閉めるしかないよな!?
さあてこの部屋は……
やっぱり、俺の部屋だよな。
気を取り直してもう一度開こう。
――ギィッ。
「ハアハア、リン君の精子沢山ついてる♪ クンクン。やっぱり、リン君の特濃ミルクはいい匂い♪ ハアハア♪」
おいおい、マジかよ……
誰も流石に人の部屋に入り込んでわざわざゴミ箱掘り返すとは思わないよな……
「何やってんの? そんなに楽しそうに」
「何って、リン君の残り香でオナニーしようと忍びこんで…… ってリン君!」
驚いた紗代姉は、必死にくしゃくしゃのテッシュと俺が洗濯しようとしていたシーツを背中に隠す。
「この馬鹿姉は……」
――ゴゴゴゴゴゴゴゴッ。
「リン君待ってこれは…… その…… リン君の部屋を綺麗にしてあげようと思って」
「だったら、この部屋に散らかった、ゴミはなんだああああああああああああああ!!」
「ひいいっ」
このキモ姉……
どうすればいい……
519名無しさん@ピンキー:2010/06/02(水) 03:22:47 ID:ODCnsRXQ
俺は、その場を退避し、居間でコタツの中に潜り込む。
「リンちゃん何やってるの、そんな芋虫みたいにコタツに入り込んで」
母は、俺の父の再婚相手。これまた、既に40超えのおばはんのハズなのだが、まだ20代後半の若さと美しさを保っているべっぴんだ。
その母の連れ子が紗代姉だが、学園の3年生で、でらべっぴん。黒髪長髪に、少し垂れ下がった落ち着いた印象の女性。
ちなみに、Fカップ。身長は155cm。もちろん、この変態さを知らぬ学園の野郎どもは毎日告白する始末。
この母は、父にどのようなアプローチをしたのかが、ひたすら気になる所だ。
「また、紗代姉が……」
驚く様子も無い。
「あらあら、リンちゃんも男なんだからしっかりしなさい」
この発言…… この母あって娘ありなのだろう。
「俺にプライバシーは無いのか! 母さんからもにちゃんと言ってくれよ」
「そう、別に構わないわ。それじゃ母さん、今、言ってきてあげるよ」
母さんは勇み足で二階に上がっていく。
ちゃんと言ってくれるのだろうか。
「こら! 紗〜代〜!!」
ポカーンと紗代姉は俺のパンツを顔に当てている。
というか、まだ続けるか…… 異常だろ…… 
「な、何!? 母さん!?」
とりあえず、パンツは後ろに隠すようだ。
「良〜い、紗代!? 母さん、恋の成就には相手をひたすら思い続けなさいと言ったけど……」
そんな事言ってたのか。
「残り香なんて嗅いだりするより……」
掻いだりするより……
「直接嗅いじゃいなさい!!」
「うん! 分かったよ、母さん!」
「おいおいおいおいおいおいおおおおい」
何それ、俺の生活が……
おまけに何でそうも簡単に返事してんの……
「そんな事されたら、俺の生活はどうなる!?」
「あら、別に兄弟だし構わないじゃない」
「俺が嫌なんだ!! 外とかでもそんな事されたら、女が寄り付かなくなる!! 其処か、男の友達ですら逃げて行く!!」
こう言ってるのは、もう既にそういった事情があるからだ。
とある、女友達は……
「リン君ってさ、シスコン?」
と聞かれたりしたが、違うと答えても。
「リン君って、シスコンなんだって」
とこのアマが次の日には、噂を垂れ流したりしていた。
紗代姉は、そのアマにある事ない事吹きこんだであろう。
他にも友達との帰宅途中……
「リーン君♪ 一緒に帰ろ!」
そう言って狙いすましたかの用に現れると。
「すまん、リン! 俺、用事があるんで先帰るわ」
「おい、待てよ! 桜木!」
とこの有様だ。
「あらま、紗代良くやってるじゃない。けど、まだ一線超えないのは関心しないわ」
へ!?
「良い、リンちゃん物にしたいならもっと大胆にやりなさい」
へ、既にこれは常軌を逸して……
「じゃあ、邪魔者母さんは、出て行くわ。蘭さん早く帰ってきてくれないかしら♪」
本当邪魔だよ、母さん。止まらない列車に石炭追加してんじゃねえよ。
――ドンっ。
「クンクン、リン君の匂い、リン君の匂い」
俺は貞操の危機を感じた。




とりあえずここまでだお
続きはまだ書いてない
520名無しさん@ピンキー:2010/06/02(水) 03:25:45 ID:ODCnsRXQ
修正前の投下してしまった.
垂れ下がった→垂れ下がった目で○
母さんからもに→母さんからも○
521名無しさん@ピンキー:2010/06/02(水) 07:25:48 ID:xfVN8EvH
匂いフェチのキモ姉妹って最高だよな
GJ
522名無しさん@ピンキー:2010/06/02(水) 13:04:06 ID:crZ2nW7F
GJ
紗代姉のnonstopっぷりが怖えェ…
523名無しさん@ピンキー:2010/06/03(木) 21:50:04 ID:0tAyD3PV
当たる あたる
524名無しさん@ピンキー:2010/06/03(木) 22:06:41 ID:0tAyD3PV
可能
525『きっと、壊れてる』第2話:2010/06/04(金) 00:15:10 ID:euytco2j
こんばんは。
『きっと、壊れてる』第2話投下します。
簡単なエロあり。
526『きっと、壊れてる』第2話(1/5):2010/06/04(金) 00:16:38 ID:euytco2j
白石巧はパチンコ屋から出てくると、チッと舌打ちをして恨めしそうに振り返った。
「クソッ釘は良いのにあたりゃしねぇ」
時計を見ると、もうすぐ太陽が夕日になろうかという時間だった。
大学の講義をサボるのはこれが初めてではなかった。
入学する前はコンパだ、サークルだと期待に夢を膨らませていた巧も、
いざ入学してみれば、仮面をしているかのように真意を見せない周りとの感覚のずれにとまどい、
自身の協調性のなさもあり、孤立するのにそう時間はかからなかった。
今日もゼミの授業に出席するのが面倒になり、教科書を抱えたまま朝からパチンコ屋に入り浸っていたのだった。

行きつけのパチンコ屋から自宅近くにある本屋に向かうと、毎月楽しみにしている音楽関連の雑誌を手に取りレジに並んだ。
レジでは中年の女性が気だるそうに本を読み、巧が雑誌を置いてから4秒ほどして会計の準備をした。
「800円ね」
「えっそんな高かったっけ?」
不景気かインターネットの普及に伴う弊害か、巧のお気に入りの雑誌は今月号から100円値上がりしたようだった。
「ふざけんなよ。ちょうどしか持ってねぇよ。」
普段なら100円程度余分に持っているのが当たり前だが、今日の巧は最後の千円までパチンコに使ってしまい、
財布には雑誌代の700円しか入っていなかった。
ギャンブルで負けた上に、たかが800円の雑誌も買えなかった巧は、自分が情けなくなり、この世のすべてが嫌になるほど落ち込んでいた。

自宅に戻る途中、少しでも気分転換になればと考え、隅田川沿いのテラスを歩いていた。
隅田川は東京都北区の新岩淵水門から荒川と分岐し、東京湾へと流れている一級河川だ。
夏には大きな花火大会も開催され、昔から周辺住民に愛されていた。
巧もやはり川沿いの風景を気に入っていて、嫌な事があるとたびたびこの川沿いを歩き、慰められていた。
追いかけっこをしている無邪気な子供達や犬の散歩をしている老人を見て、巧はため息を一つついた。
「オレは何をしているんだ。」
元々頭は悪くない巧は小学校、中学、高校とそれなりの勉強でそれなりの成績を納めてきた。
「人生なんて簡単だ」「オレは頭がいい」そう思って生きてきた巧に大学での挫折は屈辱以外の何物でもなかった。
おそらく今の巧の悩みを他人に相談しても、ほぼ100%の人間が大学へ真面目に通うよう諭してくるのは明確だったが、
巧本人も理解している事だけに周りにそう言われるのが我慢できなかった。

少し薄汚れた長椅子に腰掛け、川の威風堂々とした流れを見ていた巧はふと横を見た時、時間を止める魔法を掛けられたように、目線を外せなくなった。
50mほど先の方から、一人の女性がこちらの方へ向って歩いてきていた。
袖つきの黒いワンピースを着たその女性は人形のような顔立ちをしていて、目線を外さない巧に目もくれず目の前を通り過ぎた。
「モロ好みだ」と巧は思った。
長くて透き通るような黒髪、細い手足、高すぎず低すぎない身長、長いまつ毛、見る者を飲み込むような綺麗な瞳。
すべてが寸分狂わず、巧の好みだった。
「あ、あの」
思わず後ろから声をかけると、女性は歩くスピードを落とさず、返事もせず顔だけ巧の方向を向けた。
「もしかして、モデルさんか何かかな?」
普段ナンパをよくしていた巧は自然に女性を褒める言葉を発していた。
最初友達に誘われナンパを始めた頃は、恥ずかしくて何を喋ってよいのかわからず空振り続けていた巧だったが、
行動した者勝ち、という考え方から恥も忍んで声を掛け続けた結果、数か月も経った頃にはそれなりの成功率を達成していた。
しかし、今回のような大人びた雰囲気を持つ女性に声を掛けるのは初めてだった。
「今ヒマなの?」
「・・・」
黒髪の美女は確実に聞こえている距離だが、反応を見せなかった。顔を前へ戻し、巧など存在しなかったようにそのまま歩き続けた。
無視される事も予想していた巧はそこまで驚きもせず、声を掛け続けた。
「オレさ、T大に通ってるんだけど今度サークルで映画を撮ることになってさぁ、君みたいな子探してたんだ。よかったら撮らせてくないか?」
もちろん嘘だった。自分の大学に映画サークルがあるかのかもわからなかったが、こんな美人から連絡先を聞き出すには普通に声を掛けただけではダメだと思い、
もっともらしい事を咄嗟に思いついたに過ぎなかった。後先を考えられないほど巧は一瞬にしてこの女性の虜になっていた。
527『きっと、壊れてる』第2話(2/5):2010/06/04(金) 00:18:22 ID:euytco2j
「映画?」
しかし、幸か不幸か、何か興味があるのか歩きながら黒髪の美女はやっと口を開き、想像通りの透き通った声を聞かせてくれた。
「そ、映画。メインヒロインだぜ。本当はサークル内か学内から選ぶのが普通なんだけど、君がオレの書いた脚本通りのイメージなんだ。」
「やめて」
「えっ?」
「"君"はやめて」
「あなたと私は他人でしょ?立場をわきまえて。」
黒髪の美女は多分相手がヤクザものでも同じ言い方をしたであろう、強い意思が込められた言い方で巧の方に向き直り、続けざまに口を開いた。
「あぁごめん、じゃあ名前教えてもらっ・・・」
「その映画って、どんなお話なの?」
巧の言葉に被せるように、黒髪の美女は口を開いた。
「あぁ、いや・・・恋愛物だよ!今ケータイ小説とかで流行っているだろ?」
おそらく女性なら恋愛物が好きだろうと思い、ついた嘘だったが、黒髪の美女はかけらの興味もなさそうに言葉を続けた。
「ヒロインの相手役は決まっているの?」
「えぇっと・・まだ決まってないけど」
「なら、その相手役を私が決めていいのなら協力するわ」
「えっ!マジで!?やった!」
たかが学生の自主制作映画にそんなに出したい人間がいるのか、黒髪の美女は意外にもOKを出した。
「あなた、なんていうの?」
「巧、白石巧」
黒髪の美女は「そう」と呟き、続けて巧に質問を投げかけた。
「あなた、世の中に不必要な物って存在すると思う?」
「えっ!?不必要な物?」
「そう、存在自体が邪魔な物」
黒髪の美女はさも当たり間の質問かのように言葉を紡いだ。
「さぁ?あるんじゃないかな?ゴミくずとか、犯罪者とか」
巧は心の中で『パチンコも大学も無くなってくれれば良いのに』とも思ったが、世間一般論では巧の存在の方が不必要な事を自覚していたため黙っていた。
「そう」
どんな答えが聞きたかったのか、黒髪の美女は無表情のまま川の方へ数秒顔を向けて、何かを考えているようだった。
その横顔には夕日の天然ライトアップが加わり、まるで有名な絵画や銅像のような崇高な美しさがあった。
「そろそろ行くわ」
黒髪の美女は巧の方へ顔を戻すと、声を掛けたばかりの時より少しだけ柔らかな表情を見せた。
「じゃ、じゃあ連絡先教えてもらってもいいかな?」
「あなたの番号を教えて。用がある時は私から連絡するわ。」
黒髪の美女は巧の魂胆など見抜いていたのか、予め準備していたかのように、猫のキャラがプリントされたメモ帳を取り出し、
巧が携帯電話を取り出すのを待った。
「あっああ、じゃあこれ、オレの番号」
巧は連絡先を聞けるものだとばかり思っていたため虚を突かれたが、一方的だとしても次回に繋がるラインができた事が飛び上がるほど嬉しかった。
いつの間に黒髪の美女は巧の携帯番号をメモしたのか、気づけば10mほど先に後ろ姿を見せていた。
結局名前を聞くのを忘れた事すら気づいていない巧は、まるで秘め事が終わった後の余韻のようにボーっと黒髪の美女の後ろ姿を見つめていた。
空は夕暮れから夜になりかけの中途半端な明るさで、テラスには既に巧しかいなかった。

巧が黒髪の美女と出会った日の夜、村上浩介と玉置美佐は品川にあるダイニングバーで飲んでいた。
たまには違う場所もいいだろうと、美佐が探してきた店だ。
関係は変わっても、二人の付き合い方は何一つ変わっていなかった。
席に着いてしばらくはたわいもない話をしていた二人だったが、フッと一呼吸すると美佐が照れくさそうな顔で話題を切り出した。
「いや〜ごめんね?この間は酔っちゃっててさぁ。」
「何が?」
「メールだよ!メール!まぁ気にしてなさそうだからいっか。」
美佐は浩介に送ったメールの内容に関して、謝罪しているようだった。
しかし、浩介はそれほど気にしていなかった。
そもそも件名こそ意味深だったものの、ごく普通のメールだった。

件名:またあの頃に戻りたい
本文:久しぶりに会えて楽しかったよ。また飲みに行こうね( ´ ▽ ` )ノ

というような当たり障りのない内容で、謝れる筋合い等ないと浩介は思った。

528『きっと、壊れてる』第2話(3/5):2010/06/04(金) 00:19:51 ID:euytco2j
「でも浩介って4年も経つのにまだアドレス変えてなかったんだね。」
「そういえば、そうだな。面倒だし、携帯の使い方がよくわからないんだ。」
「そっか」
そう言った美佐の顔が一瞬寂しそうな顔を見せたのは気のせいだろうか。
「でもいいの?しすてむえんじにあが携帯の使い方わからなくて。というか返信ぐらいしなさい!」
「あぁ悪いな。風呂に入ってそのまま寝てしまった。」
「もう!変わってないんだから。」
美佐は少しも怒っていなさそうな顔で文句を言うと、黒糖梅酒を店員に注文した。
一度手洗いに行き、戻ってくると美佐はまた新しい話題を切り出してきた。
「よくそんなに喋る事があるな」と浩介は感心したが、その辺も頭の良さと関係してくるのだろうと勝手に納得する事にした。
「最近ね、病院内での体制が一新してすごく忙しくなったの。人減らしてもお給料は上げないんだから嫌になっちゃう。」
「めずらしいな、美佐が愚痴なんて。」
付き合っていた当時はまだお互い学生だったためか、浩介は美佐の負の感情を本人から聞く事はほとんどなかった。
自分とは違い、そういう感情が生まれる生き方ではないのだと勝手に解釈していたからか、
浩介は美佐の本音を聞けたような気がして妙に嬉しかった。
「ちょっと!何嬉しそうにしてるの?」
「えっ、わかるのか?」
本心を突かれるとは思っていなかった浩介は、驚いた。
「わかるよ!浩介、嬉しい時は目が優しくなる。」
「・・・」
自分でも恥ずかしい事を言ったという自覚があるのか、美佐は少し恥ずかしそうに言葉を続けた。
「あ、あはは、何言ってんだろ私。また酔っぱらっちゃったみたい」
「そうみたいだな。そろそろ行くか?」
「・・・もうちょっと」
飲み足りないのか美佐は黒糖梅酒をいつの間にか飲み干し、メジャーな焼酎の水割りを頼んで、いつもの美佐の表情に戻った。
「浩介、七夕のお話って知ってる?」
ようやく昔付き合っていた頃の感覚を取り戻した浩介は、美佐の不意の質問にも驚かずにいられた。
「七夕の話?」
「そう、七夕」
「織姫と彦星が年に1度会う話だろ?」
それ以外に何かあるんだ、と思いながらも浩介は答えた。
「そうだけど〜。もうちょっとロマンティックに言ってよ〜!」
「1文で済むのをどうやってロマンティックに言うんだよ。」
「まぁいいやぁ。それでね、地球に住んでいる私達って、七夕の日に雨が降ると『あ〜あ、年に一度なのに織姫と彦星かわいそう!』とか言うでしょ?」
「まぁ聞いた事はあるな」
「そう。でもそれっておかしいよね?私達の住んでいる所からだと、確かに空が雲で覆われてしまっていて、織姫と彦星が密会する場面は見れないけど、
実際はちゃんと天の川で二人は愛し合ってるんだよね?しかも、雲で地上は遮られていて、誰にも邪魔される事もなく。」
「・・・密会って」
浩介は予想以上に変テコな話題を振られたからか、苦笑いしながら美佐の相手をした。
「確かに美佐の言う事にも一理あるけど、別の観点で考えてみないか?彦星は年に1回必ず織姫に会いに行かなきゃいけないんだよな?
それって窮屈じゃないか?織姫の方だって、とっくに他の男ができて楽しく暮らしてるかもしれないのに。」
少し意地が悪かったかな?と思い、浩介は言い放った後でおそるおそる美佐の方を向いた。
「・・・い」
「ん?」
途中から俯いていた美佐に浩介が耳を近付けると、美佐の細い指が浩介の左耳に伸びてきて、掴んだまま反対方向へと引っ張られた。
「ほんっと夢がないわねっ!浩介は!」
「いてててっ!やめろ、おいっ!」
日常生活では滅多に感じる事のできない痛みに浩介は驚き、本気で注意したつもりだったが、
笑いながら耳を引っ張るのをやめない美佐を見て、いつのまにか浩介も楽しい気分になった。
二人は完全に恋人時代に帰っていた。
「じゃあいくか」
「うん」
少しじゃれあった後、気付けば他の客から白い目で見られている事に気付いた二人は、颯爽と店を出た。
恥ずかしさのためか、美佐はすっかりおとなしくなっていた。
駅まで一緒に歩いていた時、大学生の飲み会だろうか、若い人たちの群れに巻き込まれた。
一応酔っぱらいを連れだっているため後ろを振り返って姿を確認すると、美佐は意外にもしっかり浩介の真後ろにおり、
浩介は安心して前をみて歩き続ける事が出来た。
ふと、気付けば美佐の手が浩介の服を掴んでいたが、「離せばはぐれそうになるからだろう」と思い、気にする事はなかった。
しかし、その手は人混みを抜けても駅の改札に着くまで、離れる事はなかった。
529『きっと、壊れてる』第2話(4/5):2010/06/04(金) 00:20:54 ID:euytco2j
浩介が品川の駅で美佐と別れ、東海道線、東西線と乗り継ぎ最寄駅から徒歩12分の家に帰ると、
いつものように茜が出迎えてくれた。
「おかえりなさい」
「ただいま」
茜の顔見た時、美佐と会っていた事がバレてしまうか、と思った浩介だったが、
今日の茜は何も言う事はなく「お疲れ様」と声を掛けただけだった。
茜が湯船を入れてくれ、風呂に入った後、寝るまで少し時間が空いたため、浩介は居間のソファーで読書をする事にした。
いつの間にか家事を終えた茜もお気に入りのブックカバーで包んだ本を読んでおり、もう少しで夏になる季節の心地よい風が
少し窓を開けてあるベランダから部屋へと入ってきて、ほろ酔いの浩介にはとても心地がよかった。
「ねぇ、兄さん」
「ん?どうした?」
「もうすぐ夏ね」
「そうだな」
「風鈴買ってこなくちゃいけないわね」
そんな風流な事をなんで無表情で言うんだろう、と思った浩介だったが今に始まった事ではないのであまり気にしていなかった。
「家にはなかったかな。あれいくらするんだ?」
「安い物なら1000円程度よ」
「そのぐらいなら、明日俺が買ってこようか?」
「ダメよ。兄さんは適当に選ぶから。私が買ってくるわ」
「そうか。なら任せた」
正直風鈴の違いにあまり興味がなかった浩介は、茜の予想通り適当に買ってこようと思っていた。
見破られたのは、長年一緒に暮らしている家族としての経験か、それとも男と女の関係からの推察なのかは浩介にはわからない。
「じゃあそろそろ今日の分」
「なぁ茜」
「何?」
「その"今日の分"って言い方やめないか?なんか義務のような気がしてくる。」

「・・・???義務よ?」

背筋が凍るような気がした。
発言にではなかった。
体が茜の言葉に反応するかのように共鳴し、男性器に血が集まっていたからだった。
俺はいつの間にか茜に支配されていた。
だが、悪い気はせず"一生このままでも良い"という気分にもなってくる。
どこで俺達は間違えたのだろうか。
年齢的な事もある。茜は将来どうする気なのだろうか。
いや、愚問かな。茜はもう腹を括っている。
俺は常識的な世界と非常識な世界で揺れ動いている。
・・・どっちも捨てれない。
非常識な世界も捨てれない・・。
きっと俺は壊れてる。

今日は茜の部屋で息を荒げる。
基本的には殺風景な部屋だが、ブサイクなカエルのぬいぐるみが本棚の上に飾ってあった。
「ンッンッ兄さん、気持ちいいわ」
背後から突いて、茜の背中の真ん中の筋を舐める。
「ン〜!!」
敏感な妹の背中をそのまま舐めながら、恥部を指でなぞる。
「ンッ兄さん今日はいつもより積・・アンッ!アンッ!」
日常生活より喋っているであろう茜の口を封じるため、俺は腰の回転をより速くした。
「イくっ!ン〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!」
「茜!ウッ・・・」
浩介は茜の中に情欲を注ぎ込み、グッタリとして茜を潰すように倒れこんだ。
530『きっと、壊れてる』第2話(5/5):2010/06/04(金) 00:22:10 ID:euytco2j
全裸のまま、茜のベッドで二人寄り添っていた。
浩介の腕枕で包まれ、茜は浩介だけに判る幸せそうな顔をして上目遣いで浩介の方を見上げた。
「そういえば、兄さん」
「ん?」
今日はよく喋るな、と思い茜の方へ顔を向けると、恋仲の顔から妹の話に耳を傾ける兄の顔で茜の眼を優しく見つめた。
「東野圭吾の『新参者』っておもしろいのかしら?舞台がここからそう遠くないでしょ?とても興味があるわ。」
茜は小説によくわからない理由で興味を持つものだな、と思いながらも、浩介は答える。
「今、テレビかなんかでドラマもやっているやつだよな。今度俺が買うよ。東野圭吾はよく読むし。」
「本当?じゃあ兄さんが読み終わったら貸してもらえる?」
「あぁ」
ちょうど新しい小説を買おうと思っていた浩介は妹と新たに約束をして、自分が読んでいた小説に目を向けたが、茜の声がそれを中断させた。

「・・・何か私に言う事はないの?」

・・・やはり気付いていた。
浩介は動揺を悟られぬよう、頭の中で「特にやましい事はなかったな」と整理してから茜の方に顔を向けた。
「今日、美佐と会ったよ。」
心を落ち着けて発言したにも関わらず、少し震えた声だった事に浩介は自分でも驚きを隠せなかった。
「品川のバーで飲んだ。その後はまっすぐ帰ってきた。」
仕事の時のように事細かに今日の行動を伝えると、茜は「そう」とだけ言い残し、明日浩介が会社に着ていくスーツのアイロンをかけ始めた。

昔から茜はそうだ。俺が美佐等と会ったり、付き合っていた頃セックスをして帰っても、茜は何も言わなかった。
ただし、会った事を隠していたり、嘘をついて旅行などに出掛けると、何を考えているのか、
幼稚園の先生が子供を優しく叱るように、微笑みながら事情を聞いてきた。
いつもの無表情からは想像できないようなその微笑みに、俺はいつも洗いざらい喋らざるを得なかった。
俺には茜が何を考えているのかはわからない。
いつ俺と男女の関係を望むようになったのかも知らない。
普通の恋をした事があるのかも知らない。

ただ一つ言える事は、きっと茜も壊れてる。

浩介は自分でもよくわからない気持ちになり、「そろそろ寝るわ」と言いながら、逃げるように寝室へと向かった。
ベッドへ潜る間際に見た月はとても美しく輝いていて、この街に暮らす浩介以外の人間をすべて照らしているように浩介には映った。

第3話へ続く
531『きっと、壊れてる』第2話:2010/06/04(金) 00:23:08 ID:euytco2j
以上です。ありがとうございました。
532名無しさん@ピンキー:2010/06/04(金) 02:57:59 ID:gec2IgTP
>>531
どういたしまして。こちらこそありがとう。
533名無しさん@ピンキー:2010/06/04(金) 07:49:33 ID:gIJZ04r/
独特な雰囲気あるな
GJで
534名無しさん@ピンキー:2010/06/04(金) 08:10:54 ID:RW0l5tTq
いい文章だなあ。勉強になります
535三つの鎖 20 ◆tgTIsAaCTij7 :2010/06/04(金) 21:26:18 ID:NH/5rjcn
三つの鎖 20です。
※以下注意
血のつながらない自称姉あり
エロ無し

投下します
536三つの鎖 20 ◆tgTIsAaCTij7 :2010/06/04(金) 21:28:00 ID:NH/5rjcn
三つの鎖 20

 味噌汁を一口味見する。悪くない出来だ。
 気がつけばこの家のキッチンも随分慣れたと感じる。最初は使い慣れた調味料が無くて四苦八苦したけど、今は自宅のキッチン並みに調味料はそろっている。
 火を止めて蓋をする。もう朝食はできている。
 僕は夏美ちゃんの家に泊まった。夏美ちゃんと洋子さんの二人が心配だった。
 一泊したところで何かできるわけではない。僕にできる事は、精々朝ごはんを作るぐらい。
 手を洗っている最中にリビングのドアが開く音がした。
 「お兄さん?」
 夏美ちゃんは驚いたように僕を見た。
 「おはよう」
 「おはようございます」
 僕の挨拶に夏美ちゃんはぼんやりと返してくれた。
 「昨日のこと覚えている?」
 夏美ちゃんは考えるようにうつむいた。やああって顔を上げる。
 「思い出しました。私、寝ちゃったんですね」
 昨日、夏美ちゃんは泣き疲れたように寝てしまった。
 「お兄さんはどこで寝たのですか?」
 「ソファーを借りたよ」
 夏美ちゃんが申し訳なさそうな顔をした。
 「いいよ。僕こそ勝手に泊まってごめん」
 「いえ。うれしいです」
 そう言ってほほ笑む夏美ちゃん。微かに腫れぼったい瞼が痛々しい。
 「朝食を作っておいたから、洋子さんと食べてね」
 「ありがとうございます」
 夏美ちゃんがそういった時、奥から物音がした。
 ついさっき夏美ちゃんが入ってきたリビングのドアの奥から。扉を乱暴に開け閉めしたような音。
 「お母さん?」
 夏美ちゃんはリビングを出た。僕も後を追う。
 洋子さんの部屋は少し荒れていた。洋服入れの扉が開けっぱなしになっている。
 ベッドの上には誰もいない。
 物音が後ろからした。ドアが乱暴に開けられる音。
 「お母さん?私の部屋にいるの?」
 夏美ちゃんの部屋から物音がする。
 部屋に入ると、洋子さんがいた。何かに憑かれたように洋服入れや物入れのドアを開け、中を確認している。
 「お母さん?」
 洋子さんは返事をせず、僕たちを押しのけて部屋から出て行った。
 追うと、洋子さんはリビングに入ってベランダに出た。周りを確認してすぐに戻る。次に洋子さんはキッチンに入って周りを見回した。そして力尽きたようにへたり込んだ。
 僕と夏美ちゃんは顔を見合わせ、洋子さんに駆け寄った。
 「お母さん?どうしたの?」
 洋子さんは虚ろな瞳で夏美ちゃんを見上げた。
 「雄太は…どこ」
 呆然とつぶやく洋子さん。焦点の合っていない虚ろな瞳。
 「どこなの…雄太がいないよ」
 洋子さんの瞳から涙が溢れる。頬をつたい、キッチンのフローリングの上に涙が落ちる。
 「…どこ?…どこなの…?」
 夏美ちゃんは何かに耐えるように唇をかみしめ、膝をついて洋子さんを抱きしめた。
 震える小さな背中。僕は立ち尽くすしかなかった。
 「お兄さん」
 僕に背を向けたまま夏美ちゃんは言った。
 「今日は学校をお休みします。申し訳ないですけど、私のクラスの先生に伝えておいてくれませんか」
 夏美ちゃんの声は震えていた。
 僕は夏美ちゃんの傍にいたかった。でも今はこの場を去らないといけない。夏美ちゃんがそれを望んでいるから。今の洋子さんの姿を、誰にも見られたくないのだろう。
 「分かった。僕はいったん帰るよ。何かあったら遠慮なく連絡してね」
 「ありがとうございます」
 僕は夏美ちゃんに背を向けリビングを出た。
 微かに夏美ちゃんの嗚咽が聞こえた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
537三つの鎖 20 ◆tgTIsAaCTij7 :2010/06/04(金) 21:28:33 ID:NH/5rjcn
 まだ朝もはやい。誰もいない。そんな中、僕はゆっくりと歩いた。
 家に帰るのが億劫だった。頭のどこかで梓の事を疑っている自分がいる。
 そんな事は無いと分かっている。梓が雄太さんを殺す必要などどこにもない。もし夏美ちゃんに害意を持つなら、真っ先に夏美ちゃんを狙うはずだ。そもそも梓と雄太さんに面識はない。
 その一方で、僕が知る限り素手で四人も殺傷できる人物の筆頭に梓が上がるのも確かだ。特にオリンピック候補にもなった警察官を素手でたおすことの出来る者など、梓以外に思いつかなかった。
 考え事をしているうちに家に着く。長年住んだ家の扉。ドアノブを握りゆっくりと回す。鍵は開いていない。僕は鍵を開けて家に入った。
 リビングに入ると、京子さんと梓がリビングでお茶を飲んでいた。
 「おかえり」
 僕に気がついた京子さんが立ちあがった。微かに青白い顔。どうしたのだろう。
 「夏美ちゃんの様子はどうだった?」
 洋子さんの様子が脳裏に浮かぶ。京子さんの質問に僕は何も言えなかった。
 「朝ごはんは食べたの?」
 京子さんはそれだけで察してくれたようだ。他の事を聞いてくれた。
 「まだです」
 「そう。私はもう出るから、悪いけど適用に作って食べてね。お父さんはしばらく帰ってこられないって連絡があったから、戸締りだけは気をつけてね」
 これだけの事件だ。父さんが帰ってこられないのは仕方がない。昔から何か事件が起こるたびになかなか帰ってこられなくなった。
 「兄さん」
 梓が僕を見た。
 京子さんが微かに震えるのを、僕は気がついた。
 「私が朝ごはんを作るわ。兄さんは着替えて。昨日からずっと同じ服でしょ」
 梓の言葉に咄嗟に返せなかった。
 「ありがとう。そうするよ」
 僕の声が震えていないか気にかかった。
 「私もう出るから、二人とも気をつけてね」
 そう言って京子さんは鞄に手を伸ばした。
 「玄関まで送ります」
 僕は京子さんの鞄を手にした。
 玄関で靴をはいた京子さんに鞄を渡した。
 「あちがとう」
 京子さんは微笑んだ。
 違和感を感じる。何といえばいいのか、京子さんがいつもらしくない。お仕事で疲れているのだろうか。
 「京子さん。どうしたのですか」
 京子さんは不思議そうに僕を見た。いつも通りの京子さん。
 僕の気のせいだろうか。
 「私は大丈夫よ。行ってくるわ」
 「はい。お気をつけて」
 そう言って京子さんは家を出た。
 僕は部屋に戻って着替えてからリビングに入った。
 お魚を焼くいい匂いがする。
 「もうちょっと待ってね。すぐ出来るから」
 梓の声がキッチンから聞こえる。
 その声に胸がざわつく。脳裏に浮かぶ夏美ちゃんとご両親の姿を必死に追いだした。
 やがて梓は温かそうな料理をお盆に載せやってきた。
 「お待たせ」
 梓はそう言って食器を食卓に並べた。味噌汁にご飯、魚の塩焼きにほうれん草の煮つけ。簡単だけど丁寧に作られた料理。
 「いただきます」
 料理に箸をつける。梓の料理は相変わらず僕よりはるかにおいしい。丁寧に調理されている。それなのに食欲はわかなかった。
 僕は無言で食べた。梓も何も言わない。いつも通りの静かな食卓。それなのに、何かが違う。
 食べ終えた僕を梓は無言で見つめ続けた。
 「兄さん」
 僕を呼ぶ梓の声。いつも通りの梓の声なのに、胸がざわつく。
 「夏美はどうしているの」
 「分かっているだろ」
 声が荒れているのが自分でも分かる。
 「お父さんが亡くなったんだよ。元気なはずがない」
 梓は気まずそうに視線を逸らした。
 「ごめん」
 素直な梓に調子が狂う。
 そこで僕は気がついた。無意識のうちに梓を犯人だと決めかかっている。
 「僕こそごめん。梓に八つ当たりしても仕方ないのに」
 梓が犯人のはず無いのに。僕も疲れているのかもしれない。
538三つの鎖 20 ◆tgTIsAaCTij7 :2010/06/04(金) 21:29:18 ID:NH/5rjcn
 「夏美ちゃんが今日は休むって。先生に伝えてもらっていいかな」
 「分かったわ。伝えておく」
 梓はほっとしたように顔を上げた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 梓と二人で朝の道路を歩く。
 微妙な距離。他人ほど遠くなく、兄妹ほど近くない。
 触れるか触れない。そんな距離。
 梓との距離の取り方が分からない。ずっと一緒にいた妹なのに。
 何か言おうとしても、何を言えばいいか分からない。
 結局何も話せないまま靴箱で別れた。
 教室に入ると耕平が僕を見た。
 「おはよ」
 耕平の挨拶に手を挙げて答えた。
 聞きたい事があるのだと思うけど、耕平は何も聞いてこない。今の僕にはそれがありがたい。
 チャイムが直前に春子が入ってきた。少し眠たそうな表情。今日は生徒会でもあったのだろうか。
 春子を目が合う。頬を微かに染めて、春子は眼を逸らした。
 僕はため息をついた。色々ありすぎて頭が爆発しそうだった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 お昼休みのチャイムが鳴る。
 僕はお弁当取り出して耕平に近づいた。
 「今日は学食やけど、ええか?」
 「いいよ」
 そんな事を話していると、春子の視線に気がついた。
 憂いを含んだ切なそうな視線。目が合うと恥ずかしそうに春子は視線を逸らした。
 「ん?村田も一緒に来るん?」
 「いいよ。私、用事があるから」
 耕平の誘いを春子はそっけなく断った。
 背を向けて教室を出ていく春子。その背中が小さく感じた。
 「幸一。村田と何かあったんか?なんか普段通りやないで」
 あったと言えばあった。脅迫をもうやめると言ってくれた春子。その意味では僕達の関係は良くなったはず。
 さっきの春子の視線が脳裏に浮かぶ。憂いを含んだ切なそうな瞳。
 その視線の持つ意味を僕は知っていた。梓や夏美ちゃんが僕を見る時と同じ視線だった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 放課後、僕はいったん家に帰って父さんの着替えを紙袋に詰めて警察署に向かった。結局、学校で春子と話す事は無かった。
 大勢の人が慌ただしく動き回っている。受付で父を呼んでもらった僕はそんな光景をぼんやりと見ていた。
 警察に来ると嫌でも雄太さんの事を思い出してしまう。ニュースや新聞で見る限り、捜査に進展は無かった。
 この事が意味する事は一つ。犯人は何の証拠もなく四人を殺傷した。
 信じられないことだ。素手での喧嘩でも双方に傷が残る事が多い。引っかき傷や血痕や毛髪。これらは捜査の際に重要な手掛かりになる。
 これらの痕跡が無いという事は、一方的に殺傷したということだ。オリンピック候補を含む大の男四人を。
 そんな事を普通の人間はできない。
 「幸一」
 考え事をしている僕に聞いたことのある声がかかる。父さんだ。
 「父さん。着替えを持って来たよ」
 「ありがとう。すまないがこっちも頼む」
 父は紙袋を受け取った。僕も父が差し出した紙袋を受け取った。
 「晩ご飯はどうする?」
 「外で食べるから今日はいい」
 つまり帰って来ないということだろうか。
 僕は躊躇しつつも口を開いた。
 「父さん。捜査の進展はどう」
 「捜査内容を話す事は禁じられている」
 父さんの答えは警察官として当然だった。それでも聞かずにはいられなかった。
 誰が雄太さんを殺したのか。本当に梓は殺していないのか。
 「幸一。間違っても自分で調べたりするな。犯人は必ず捕まる」
539三つの鎖 20 ◆tgTIsAaCTij7 :2010/06/04(金) 21:30:12 ID:NH/5rjcn
 僕はその言葉を信じるしかなかった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 警察署に寄った後、買い物を済ませた僕は夏美ちゃんのマンションに向かった。
 買い物袋を片手にぼんやりと考える。夏美ちゃんのこと、梓のこと、春子のこと。
 そして洋子さんのこと。今日の朝の洋子さんの様子。明らかに精神の均衡を失いつつある姿。
 僕にできる事は何もない。
 それでも買い物袋を片手に夏美ちゃんのマンションに向かう。
 マンションの階段を上り夏美ちゃんの部屋のドアを目にした僕は眉をひそめた。
 ドアが微かに開いている。
 口の中がからからになる感触。
 ドアを開け乱暴に靴を脱ぎ夏美ちゃんの部屋のドアを開ける。
 夏美ちゃんはそこにいた。布団をかぶり、疲れ切ったように寝ている。
 僕はその場にへたり込んだ。自分でもびっくりするぐらい安心していた。
 部屋をそっと出てキッチンに向かった。
 その途中、玄関で乱暴に脱いだ僕の靴が目に入る。靴を整えた時、背筋に冷たいものが走った。
 玄関には二足の靴があった。学校指定の靴が二足。僕の靴と夏美ちゃんの靴。
 洋子さんの靴が無い。
 リビングと洋子さんの部屋を探しても、洋子さんはいなかった。
 僕は夏美ちゃんを揺さぶって起こした。
 「洋子さんは?」
 「え?」
 夏美ちゃんは蒼白になった。
 「いないのですか」
 夏美ちゃんは両手で口元を覆い震えた。目尻に涙が浮かぶ。
 突然夏美ちゃんは背を向けて走り出した。僕は夏美ちゃんの手をつかんだ。
 「離してください!お母さんが!お母さんが!」
 「夏美ちゃん!落ち着いて!」
 僕は夏美ちゃんの両肩に手を載せた。華奢な肩は震えていた。
 「洋子さんが行きそうなところ分かる?」
 「わ、分からないです」
 泣きそうな顔で夏美ちゃんは言った。
 どうする。僕にも洋子さんが行きそうなところなんて分からない。
 そうだ。マンションの外では警察官が覆面パトカーにいるはず。もしかしたら目撃しているかもしれない。
 「ここにいて。すぐに戻ってくる」
 夏美ちゃんの部屋を出て玄関に向かう。
 靴を履いたところで玄関のドアが勝手に開いた。
 洋子さんがいた。少し驚いたように僕を見る。
 「幸一君?」
 パタパタという足音。夏美ちゃんが駆け足でやってくる。
 「お母さん!」
 夏美ちゃんは洋子さんに抱きついた。そのまま体を震わせ嗚咽を漏らす。
 「ひっく、ぐすっ」
 洋子さんは困ったように微笑んで夏美ちゃんの背中を撫でた。
 「ごめんね夏美。お母さん、もう大丈夫だから」
 落ち着いた洋子さんの声。今朝の様な様子は見られない。
 よかった。僕は安堵のため息を漏らした。
 「お母さんどこに行ってたの」
 夏美ちゃんは鼻を鳴らしながら洋子さんを見上げた。
 「雄太のお墓」
 洋子さんは寂しそうに微笑んだ。そして僕を見た。
 「そうそう。幸一君のご家族に助けてもらった。墓苑まで私を連れて行ってくれた」
 そう言って洋子さんはドアの外を見た。
 「恥ずかしがらないで入ってきて」
 洋子さんはドアを大きく開けた。そこには梓が立っていた。
 梓は少し気まずそうにしていた。
 僕は意味が分からなかった。
 「外をふらふらしていた私を彼女が墓苑まで連れて行ってくれた。聞けば幸一君の妹だと。世の中狭いものだ」
 洋子さんはそう言って微かに笑った。
540三つの鎖 20 ◆tgTIsAaCTij7 :2010/06/04(金) 21:30:59 ID:NH/5rjcn
 僕は笑えなかった。
 「あ、あの、梓」
 夏美ちゃんが恐る恐る梓に声をかけた。
 「お母さんのこと、ありがとう」
 梓はそっぽを向いた。
 「別に。そんなに気にしないで」
 そう言って梓は夏美ちゃんの手をそっと握った。
 夏美ちゃんは驚いたように梓を見た。
 「困ったことがあったら遠慮しないで言って。出来る事ならするから」
 夏美ちゃんは呆然と梓を見つめ、突然梓に抱きついた。
 「あ、あずさぁ。わたし、わたし」
 泣きじゃくりながら梓に抱きつく夏美ちゃん。梓はそんな夏美ちゃんをそっと抱きしめた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 僕達は夏美ちゃんの家で夕食をしてから家を出た。夕食は梓が作った。夏美ちゃんと洋子さんはおいしいと言っていた。確かにおいしかったけど、味わえなかった。
 暗くなった夜の道を僕と梓はゆっくりと歩く。
 「梓」
 梓は僕を見た。相変わらずの無表情。
 「洋子さんのこと知ってたの」
 「うんうん。でも夏美の家で写真を見たから」
 嘘だ。夏美ちゃんの家の分かるところに写真は無い。アルバムはあるけど、分からないところに隠されているらしい。僕は何度も掃除したけど、見つけられなかった。
 梓はなんでそんな嘘を。
 そしてどこで洋子さんの顔を知ったのか。
 夏美ちゃんが入院していた時しかない。あの時、夏美ちゃんの家を出た僕と梓はすぐに会った。恐らく僕をつけていたのだろう。
 もしそうだとすれば、梓は雄太さんの事も知っていることになる。
 嫌な想像をしてしまう。そんな事は無いはずなのに。
 「兄さん?」
 梓の声。気がつけば家の玄関の前に立っていた。
 慌てて鍵を取り出す。腕が震えて鍵がうまく鍵穴に入らない。カチカチという音が微かに響く。
 何とか鍵を開けて家に入る。
 梓は何も言わずに二階に上がった。
 僕はリビングの電気をつけた。まだ父さんも京子さんも帰ってきていない。
 明日はゴミの日だ。今のうちにキッチンのゴミをまとめておこう。
 キッチンに入り生ごみの入った袋を取り出す。僕は眉をひそめた。やけに多い。
 中身を確認すると、大きなビニール袋に何かが入っている。微かにクリームの甘い匂いがする。
 開けると、ケーキの箱らしい白い紙の箱が入っている。中にはぐちゃぐちゃになったケーキが入っている。いくつあったのかは分からないけど、一つや二つではない。
 ラベルが貼られている。京子さんがたまに買ってくる駅前のケーキ屋。
 日付は雄太さんが死んだ日。
 調べると、レシートがあった。
 購入した時間は啓太さんが電話をかけてきた時間の少し前。
 「兄さん」
 突然声をかけられる。
 振り向くと梓が僕を見下ろしていた。
 「何をしているの」
 梓の瞳が僕を貫く。
 背中に冷たいものが走る。
 「そっか。明日はゴミの日だよね」
 そう言って梓はゴミ袋を取り出し、中に生ごみを入れた。
 「どうしたの兄さん?怖い顔をして」
 梓は不思議そうに僕を見た。
 僕は何も言えなかった。
 「変な兄さん」
 そう言って梓は僕にもたれかかった。僕の背中に梓の腕が回される。
 「兄さんが何を考えているか当ててあげようか」
 囁く梓の声。その声に背筋が寒くなる。
 「やめろ」
 僕の口から出た言葉は自分でもびっくりするぐらい硬かった。
 この先を聞きたくない。聞いてはいけない。
 「疑っているんでしょ。私を」
541三つの鎖 20 ◆tgTIsAaCTij7 :2010/06/04(金) 21:33:35 ID:NH/5rjcn
 それなのに梓はやめない。
 「私が夏美のお父さんを殺したと思っているんでしょ」
 僕は歯を食いしばった。
 「梓、なのか」
 梓は僕を見上げた。無表情な瞳。無言の肯定。
 それが何よりも雄弁に語る。
 梓が、殺したと。
 「なん、で」
 なんで殺した。
 雄太さんは何の関係もないのに。
 娘との食事を楽しみにしていたのに。
 「…兄さんが悪いのよ」
 震える声。梓はそう言って僕の胸に顔をうずめた。
 僕に抱きつく梓。震えているのは僕なのか梓なのか分からなかった。
 梓の腕をつかみ引きはがす。
 「何で殺した!?」
 梓は悲しそうに僕を見上げた。
 「雄太さんは何の関係もない!!何で殺したんだ!?」
 「うるさい!!」
 梓は叫びがこだまする。
 「兄さんに何が分かるの!?兄さんに私の気持ちなんて絶対に分からないわ!!」
 梓は泣きながら叫んだ。
 静寂がキッチンを支配する。梓は涙を流しながら僕を見つめた。
 僕は唇を噛みしめた。
 「梓。自首しよう」
 梓は唇をかみしめて僕を見上げた。頬は涙でぬれている。
 「馬鹿じゃないの」
 吐き捨てるように梓は言った。
 「もういいよ。もう遠慮しない。もう躊躇わない」
 それだけ言って梓は背を向けた。
 「兄さんの馬鹿」
 梓はそう言って去って行った。
 僕は立ち尽くすしかなかった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 市民体育館までの道のりを僕は歩いく。市民体育館で行われる柔道の稽古に参加するため。
 まだ梓に外された肩は完治していない。それなのに練習に参加するのには理由がある。
 警察がどれだけの情報をつかんでいるかを知るためだ。
 ニュースを見る限り、犯人の逮捕につながる情報を警察は掴んでいない。しかし、実際はどうなのかは分からない。
 知り合いの警察官からそれとなく聞き出すつもりだ。
 本当は梓に自首してほしい。でも、梓の様子を見るに自首してくれるようには見えない。
 それに自首したところで梓が犯人という確たる証拠がないと警察は信じない。小柄な少女が大の男4人を殺傷したなど、証拠がない限り自首しても無駄だ。
 警察の捜査はどれだけ進んでいるのか。もう梓が犯人と分かるまで進んでいるのか。
 本来の柔道の稽古とは全く違う目的で行う事に抵抗を感じた。
 久しぶりの柔道なのに、自分でも信じられないぐらい体が動いた。練習していないのにもかかわらず技は向上している。
 理由は分からない。
 練習の後、僕は知り合いの警察官に話しかけた。
 「お疲れ様です」
 「お疲れさん」
 知り合いの警察官は疲れたように答えた。
 「加原君すごかったな。久しぶりの練習なのに。怪我したって聞いたけど、全然そんな風に見えないよ」
 僕は曖昧に頷いた。
 「ところで、なんだか少しピリピリしているように感じますけど、あの事件の影響ですか」
 知り合いの警察官は渋い顔でうなずいた。
 「まあね。何せ2名も殉職している。犯人も捕まっていないし。重傷を負った警察官の奥さん、今回の件で倒れたらしいよ。可哀そうに」
 「4人も殺傷しているのに、犯人の痕跡は無いのですか」
 「僕は捜査に関わっていないから詳しくは知らないけど、関わっている連中は走り回っているよ。余所からも応援が大勢来ている。ただ、すぐに犯人が捕まる事は無いと思うよ」
 知り合いの警察官はため息をついた。
 「知り合いの捜査官が言っていたけど、手掛かりが全然ないらしい。目撃も遺留品も無い。普通これだけ派手な事をしたら証拠だらけですぐに捕まるはずなのにだって。多分、そのうちに情報提供に対して高額の報奨金を出すって発表が出ると思うよ」
542三つの鎖 20 ◆tgTIsAaCTij7 :2010/06/04(金) 21:34:33 ID:NH/5rjcn
 「報奨金…ですか?」
 「うん。本来は指名手配の犯人逮捕につながった場合に出したりすることが多いんだけど。上層部も相当切羽詰まっているみたい。ま、報奨金があっても犯人逮捕につながるとは限らないけどね」
 警察は梓につながる証拠は手に入れていないようだ。
 僕は礼を言ってその場を後にした。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 「春子ねーちゃん!おつかれさまー!」
 「おつかれさま。気をつけて帰ってね」
 元気に手を振る子供達に私も手を振った。
 合気道の稽古に参加した子供達と親御さんが帰っていく。
 小さな女の子が男の子の手を引いて帰っていく。恥ずかしがる男の子を笑いながら手を引く女の子。
 私はその光景を立ち尽くして見つめた。
 今日は合気道の稽古だった。ずっと昔から参加している。今は子供達に教えたりもしている。
 正直、稽古に参加したいとは全く思わなかった。とてもそんな気分じゃなかった。それでも体を動かすと多少はすっきりした。
 ふと昔の事を思い出す。梓ちゃんがふさぎこんでいた頃。梓ちゃんの手を引いてこの市民体育館に通った日々。
 私はため息をついた。無性に幸一君に会いたいと思った。
 幸一君の事を考えるだけで胸が締め付けられる。幸一君の事を諦めるって決めたのに、その決意が揺らぐ。諦めたくない。離したくない。そう思う私がいる。
 盗撮した映像のデータは未だに破棄していない。捨てないといけないと思っても、削除できなかった。仕掛けた盗聴器もそのままだ。
 私は頭を振った。帰ろう。こんな事を考えていると気が滅入るだけだ。
 市民体育館の入り口に向かっていると、見知った背中が見えた。
 細身だけど広い背中。
 気が付いたら走っていた。
 「幸一君!」
 幸一君は驚いたように振り向いた。私は幸一君に思い切り抱きついた。
 逞しい胸板。運動した後なのか、普段より体温が高い。
 練習直後の幸一君の汗の匂い。頭がくらくらする。
 「は、春子!?」
 慌てた様子の幸一君の声。
 「ちょ、ちょっと春子?聞いている?」
 幸一君の手が私の肩をそっと押す。私はようやく我に返った。
 いけない。もうこんな事をしてはいけない。幸一君に嫌われる。
 「ご、ごめん。お、お姉ちゃん、その、えっと」
 私は顔を上げた。幸一君の顔が近い。
 顔が熱くなるのが分かる。
 「びっくりしたよ」
 苦笑する幸一君。どうしたのかな。顔に陰が差している気がする。何か悩み事でもあるみたい。
 無理もない。夏美ちゃんのお父さんが殺されたのだから。楽しい気分でいる方が難しい。
 幸一くんは鞄を手にしている。柔道の稽古に行く時に幸一君が使う鞄。中には汗だくの道着と帯があるはずだ。
 そういえば、なんで幸一くんは練習に参加しているのだろう。脱臼の怪我は完治していないはずなのに。
 そんな疑問も幸一くんと視線が合うと吹き飛ぶ。頬が熱い。
 「あの、幸一君は今から帰るところ?」
 頷く幸一君。
 「だったらお姉ちゃんと帰ろう。お姉ちゃんも帰るところだから」
 幸一君とこの体育館で会うのは久しぶりな気がする。
 私達は夜の帰り道をゆっくりと歩いた。
 微妙な距離。以前はもっと近かった。手をつないで帰った。
 幸一君の手。大きくて温かそうな手。
 私達は無言で歩いた。何か話したと思うのに、何も思い浮かばない。昔は何でもお話できたのに。
 このままだとすぐに家に着いちゃう。焦って周りを見ると、小さな公園。自販機の頼りない明りが目に入る。
 「こ、幸一君!」
 どうしようもなく声が上ずっているのが嫌でも分かる。
 「あ、あの、喉が渇いたし、ちょっと休憩しない?」
 幸一君は不思議そうに私を見る。その眼差しに顔が熱くなる。
 「い、いこ。お姉ちゃんがおごってあげるから」
 私は返事を聞かずに公園に足を向けた。後ろから幸一君がついてくる気配がする。
 自販機の前で私は財布を取り出した。
 「こ、幸一君はお茶でいいよね」
 聞かなくてもいい事を聞いてしまう。幸一君は昔から緑茶が好きだった。
 小銭を取り出そうとして財布を落としてしまった。チャンリンチャリンという音とともに小銭が散らばる。
543三つの鎖 20 ◆tgTIsAaCTij7 :2010/06/04(金) 21:35:19 ID:NH/5rjcn
 「春子?大丈夫?」
 幸一君はかがんだ。
 「ご、ごめんね」
 私もしゃがんで小銭を拾う。
 硬貨を拾おうとしたら、幸一君の指と私の指が触れる。
 「ひゃひっ!?」
 変な声をあげて思わず指を引っ込めてしまった。
 幸一君と触れたところが熱い。
 「どうしたの」
 幸一君が心配そうに私を見る。
 顔が近い。頬が熱くなる。
 「さっきからおかしいよ」
 労わりと優しさに満ちた声。幸一君に対してあれだけの事をしたのに、それでも私に優しくしてくれる。
 それが泣きたくなるほどうれしい。
 「な、何でもないよ」
 私は硬貨を自販機に入れて飲み物を購入した。
 幸一君に渡す時、幸一君の指が触れる。
 温かい。ずっと触れていたいぐらい。
 でも幸一君の指はすぐに離れる。温もりが消える。
 思わず幸一君の手を握っていた。
 大きくて温かい幸一君の手。ずっと握っていたい。
 「春子?」
 幸一君の声に我に返る。すぐに手を離した。
 「ご、ごめん。い、いこ」
 私は幸一君に背を向けて歩き出した。私の馬鹿。すぐそばにベンチがあるのに。何で歩いちゃうの。
 二人で並んで歩く。飲み物を口にしながら。
 幸一君がお茶を飲む音がはっきりと聞こえる。
 何も話さないまま歩く。
 私はすごく気まずく感じているのに、幸一君は平然としている。
 そういえば昔幸一君に女の子を紹介した時も、緊張して何も話せない女の子に対して幸一君は何も話さないで平然としていた。
 梓ちゃんに何度も無視されたせいか、幸一君は沈黙を気まずく思わなくなっているみたいだった。
 そんな事を考えていると、家が見えてきた。私と幸一君の家。
 「シロ」
 幸一君がシロを呼ぶけど、来ない。
 「あれ?」
 「あの、シロは多分、一人でお散歩していると思う。最近夜のお散歩できてないから」
 「そうなんだ」
 幸一君はちょっと残念そうに言った。
 そこで私達の会話が途切れる。
 「春子」
 幸一君の声に思わず体が震える。
 名前を呼ばれるだけでこんなにも切ない気持になるなんて。
 「おやすみ」
 そう言って去っていく幸一君の袖を思わずつかんでしまった。
 「春子?」
 振り向く幸一君。不思議そうに私を見る幸一君。
 いけない。手を離さないと。
 私と幸一君は姉と弟なのだから。
 もう、普通の姉と弟に戻るって決めたのだから。
 それなのに。手を離せない。
 「春子?」
 不思議そうに私を見る幸一君。
 私は幸一君の胸に飛び込んだ。
 幸一君の背中に腕をまわし抱きつく。
 大きな背中。たくましい胸板。幸一君の匂い。
 顔が熱い。頭が爆発しそう。
 「春子?」
 戸惑ったように私を見る幸一君。
 だめ。諦めたくない。幸一君を誰にも渡したくない。
 好き。幸一君が好き。
544三つの鎖 20 ◆tgTIsAaCTij7 :2010/06/04(金) 21:36:43 ID:NH/5rjcn
 嫌われてもいい。憎まれてもいい。軽蔑されてもいい。
 それでも幸一君を離したくない。
 顔を上げる。戸惑ったように私を見下ろす幸一君。
 その背後に梓ちゃんがいた。
 無表情だけど、瞳には激情を湛えていた。
 鳥肌が立つような視線を私に向けていた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 僕に抱きつく春子の表情が凍る。
 今日の春子は訳が分からない。学校では僕から距離をとっていたのに、今は僕に抱きつく。
 そして今は脅えたような視線を僕に向けている。
 その事に悲しみを感じている自分がいる。
 春子は腕をほどいて脅えたように後ずさる。
 それが悲しい。春子に脅えられるのが。
 震えながら僕を見る春子。
 ここでようやく僕は気がついた。
 春子が見ているのは僕じゃなくて、僕の背後。
 「兄さん」
 底冷えするような声。
 振り向くと梓が立っていた。
 一見無表情に見えるけど、僕には分かる。
 梓が怒り狂っている事が。
 「どいて」
 僕を細い腕で押しのける梓。
 脅えた表情で後ずさる春子に近づき、手を挙げた。
 夜の冷えた空気に、頬をはる音が響いた。
 何が起きたのか分からなかった。
 梓が手を振り上げて、春子の頬をはった目の前の光景が理解できなかった。
 春子は頬を押さえて呆然としている。
 「私の兄さんに触れるな」
 梓は春子を突き飛ばした。受け身も取れずに地面に転がる春子。
 春子は脅えたように梓を見上げた。
 「ご、ごめん。ゆ、許して」
 梓の踵が春子のお腹に食い込む。
 苦しそうな悲鳴を上げる春子。
 僕はようやく我に返った。
 「梓!やめろ!」
 後ろから梓を羽交い絞めにする。梓は無言で春子の下腹部を執拗に蹴る。
 涙を湛えて春子は梓を見上げた。
 「げほっ、やめっ、お、お姉ちゃんは」
 次の瞬間、視界が反転して僕は地面にたたきつけられた。
 かろうじて受け身をとるけど、衝撃に息が詰まる。
 ついさっきまで梓を羽交い絞めしていたのに、何が起きたか分からなかった。
 「何がお姉ちゃんよ!」
 頬を張る音。春子の悲鳴。
 「私を!!騙してっ!!裏切ったくせにっ!!」
 梓の踵が春子の下腹部にめり込む。
 「げほっ、やめっ、いたいっ」
 泣きながら悲鳴を上げる春子。
 「兄さんにっ!!抱いてもらったんでしょっ!?私の兄さんにっ!!」
 ぎりっという歯軋りの音がここでも聞こえた。
 「言ったよね!?兄さんに近づくなって!!」
 「やめろ!」
 僕は梓の腕をつかんだ。
 瞼の裏に火花が散る。
 梓の掌底が僕の顎を打ち抜いた事に気がついたのは地面にたたきつけられた後だった。
 受け身をとる暇すらない。強烈な衝撃に意識が霞む。
 霞む視界の端に梓と春子が映る。
 梓は春子の襟をつかみ立ち上がらせた。細い腕のどこにあんな力があるのか。
545三つの鎖 20 ◆tgTIsAaCTij7 :2010/06/04(金) 21:38:16 ID:NH/5rjcn
 泣きじゃくる春子。可哀そうなほどに脅えている。
 止めたいのに、体が動かない。
 「二度と私の兄さんに触らないで!!」
 砂と涙に汚れた春子の頬を梓は思い切り張り飛ばした。春子の悲鳴が耳に響く。
 僕の意識はそこで途絶えた。




投下終わりです。読んでくださった方に感謝申し上げます。
HPで登場人物の人気投票を行っていますので、ご協力お願いします。

ttp://threechain.x.fc2.com/index.html
546名無しさん@ピンキー:2010/06/04(金) 21:43:36 ID:aZse9jDq
リアルタイムGJ

毎回楽しみにしています
547名無しさん@ピンキー:2010/06/04(金) 23:07:46 ID:ITnbMohe
GJ
梓恐すぎる
548名無しさん@ピンキー:2010/06/05(土) 00:35:59 ID:KgcrzECl
ラオウ様でも梓に勝てんな…
梓とノ〇〇〇〇アの千鶴子を合体させると世界征服も出来る!!
梓は是非ヘタレ幸一を落として欲しい。
夏美ちゃんは良い娘だが“キモ姉、キモウト”スレなのだから。
549名無しさん@ピンキー:2010/06/05(土) 01:14:41 ID:5TTTS65u
GJ
梓様つよすぎる
しかし羽交い絞めからどうやって掌底をきめたんだろう
550名無しさん@ピンキー:2010/06/05(土) 01:53:39 ID:Of+TtlTI
梓マジかわいいなあ
GJ
551名無しさん@ピンキー:2010/06/05(土) 02:02:41 ID:dkiFb1l/
流石に聖闘士なら、彼女に勝てるんだろうか…。
552名無しさん@ピンキー:2010/06/05(土) 07:43:37 ID:KpqFENDH
GJでした!
でも京子さんのセリフ一箇所が「あちがとう」になってるよーな?
553名無しさん@ピンキー:2010/06/05(土) 08:08:09 ID:BzXHHtBR

「…お前ら、こいつの本当の名を知りたいか?」
「ならば教えてやろう、このキモ女の名はジャギ。かつて、義姉(あね)と呼んだ女だっ!」
554名無しさん@ピンキー:2010/06/05(土) 14:28:35 ID:WJrLU4Lr
シロに7票も…
555名無しさん@ピンキー:2010/06/05(土) 17:11:14 ID:qRvM9yhZ
GJ

個人的にはキモ姉・キモウトをメインテーマに据えたストーリーであれば
最終的にそれ以外のキャラとくっついても展開として楽しめるかな
556名無しさん@ピンキー:2010/06/05(土) 18:25:12 ID:+i9iWm7V
GJ

ところで、キモ姉とキモウトがポタラでフュージョンしたらどうなるの、っと
557名無しさん@ピンキー:2010/06/05(土) 18:31:54 ID:1ni7h1W4
より愛が深い方がベースになるんじゃないか
二人の愛が全く同じなら双子の姉にも妹にも見えるキャラに
558名無しさん@ピンキー:2010/06/05(土) 18:56:23 ID:qhwSE7Y2
>>545
GJですよ
やっぱり殺人を犯しちゃってたか…>梓
もう完全に後戻りできないところまで行ってしまったなぁ
そして夜間に単独で散歩しているシロが何気にキードッグとなりそう
559名無しさん@ピンキー:2010/06/05(土) 20:52:28 ID:8ArqJl7O
・義理の姉or妹と結婚
・実の姉or妹と事実婚

どっちが燃えるんだお前らぁー!!
560名無しさん@ピンキー:2010/06/05(土) 20:58:15 ID:xjxZ8z/B
キモくないなら前者
キモいなら後者
どうせキモいなら姉より妹
561名無しさん@ピンキー:2010/06/05(土) 23:03:21 ID:1ni7h1W4
敬語キモウトなら実妹でも義妹でも
いややっぱり実妹は正統派か、兄をまるで恥ずかしいものかのように扱う方が向いてるか
562名無しさん@ピンキー:2010/06/05(土) 23:23:48 ID:dkiFb1l/
姉派の俺は…。
563名無しさん@ピンキー:2010/06/05(土) 23:41:30 ID:RSyFpBm/
無理やり力技で戸籍を義理にでっち上げて結婚するキモ姉妹
564名無しさん@ピンキー:2010/06/06(日) 01:35:23 ID:5ZPyGQKN
むしろ義妹と入れ替わるキモウトだな
顔が潰された死体が出てくるわけですよ
565名無しさん@ピンキー:2010/06/06(日) 14:34:42 ID:DdwYOoOa
>564
逆転裁判2で
交通事故にあった姉妹の姉のほうが
妹の免許証で、大火傷を負った顔を整形して妹になりかわったのを思い出した
566名無しさん@ピンキー:2010/06/06(日) 19:27:44 ID:TH85S2Bj
ハデ 巨大 派手
567名無しさん@ピンキー:2010/06/07(月) 16:09:40 ID:bRdnN0nK
昨日の仮面ライダーは惜しかった。
親父と電話が来るのがもっと遅ければ、
姉弟と知らずに逃避行→セクロス→姉弟発覚の
CloverPoint的な流れになったのにな。
568名無しさん@ピンキー:2010/06/07(月) 20:26:26 ID:aDgsCdTr
仮面ライダーシリーズで一番キモいのは劇場版ディケイドの門矢司の妹…
569名無しさん@ピンキー:2010/06/07(月) 23:26:09 ID:IHzt1XjZ
13人のキモウトが兄を巡ってのバトルロイヤル、
最終回は時が巻き戻り兄が死産した世界で全員キモウトにならないEND。
570名無しさん@ピンキー:2010/06/07(月) 23:58:51 ID:qaMVgmM8
チャンピオン星矢のパンドラも…。
571名無しさん@ピンキー:2010/06/08(火) 00:27:03 ID:OosJ0p+r
くっ、ついにキモ姉妹大戦の世界が生まれてしまったのか…
572名無しさん@ピンキー:2010/06/08(火) 07:51:05 ID:S6shvJTT
>>570
いや車田漫画に出てくる姉妹は基本的に全員…
573名無しさん@ピンキー:2010/06/08(火) 19:50:45 ID:UIBj2zjx
ところでさ、キモ姉妹が友人や協力者と互いの兄弟交換して
擬装結婚する話ってあったっけ?
574名無しさん@ピンキー:2010/06/08(火) 23:37:10 ID:ByfCxATV
あった気がする
メイドとキモ姉が入れ替わって偽装結婚する話が
575名無しさん@ピンキー:2010/06/08(火) 23:44:54 ID:2FlNTDLG
詳細kwsk
576名無しさん@ピンキー:2010/06/08(火) 23:45:07 ID:ByfCxATV
メイドとキモ姉の精神を入れ替えて結婚する話もあった
577名無しさん@ピンキー:2010/06/08(火) 23:48:52 ID:ByfCxATV
>>575
ヤンデレスレと入れ替わりスレの保管庫にあったはずだよ
578名無しさん@ピンキー:2010/06/09(水) 01:37:49 ID:UcCZR6Pl
>>573
このスレの保管庫のとあるシリーズの最後がそれだけど
ネタバレになるからタイトル書くのは控えておく
579名無しさん@ピンキー:2010/06/09(水) 02:54:28 ID:2X1vAv62
誰か狂想のシミュラクラ買ったやついる?
580名無しさん@ピンキー:2010/06/09(水) 16:08:31 ID:h2gERe7+
581名無しさん@ピンキー:2010/06/09(水) 17:17:12 ID:TOfO0PZT
菊姉 貴子姉さん 双葉


高嶺…バターロール
582名無しさん@ピンキー:2010/06/09(水) 23:21:11 ID:h2gERe7+
583名無しさん@ピンキー:2010/06/10(木) 00:59:32 ID:BKAJ+V7b
妹が撫でられてふやけいる間に脱出
584名無しさん@ピンキー:2010/06/10(木) 01:47:29 ID:Hzi0n3dw
しかし手はガッチリとホールドされている!
585名無しさん@ピンキー:2010/06/10(木) 02:38:50 ID:Di/52niB
解放されるにはキモウトをイカせるしかない!!
586名無しさん@ピンキー:2010/06/10(木) 03:09:44 ID:LCoZQQwi
姉妹で対照的なスペックを持っていると逃れようにも困るよな。

「お兄ちゃん、私とセックスして!」
「ごめん、俺、お前とはできない」
「何でですか!? 私が、私が妹だからですか!?」
「(当たり前だろうが。まあそういっても納得してもらえるわけはないし……)
 そうじゃないんだ。俺は巨乳が好きなんだ。だから」
「呼んだか弟よ」
「ね、姉さん!!??」
「お前の好きな巨乳女が来たぞ」
587名無しさん@ピンキー:2010/06/10(木) 03:17:18 ID:wztC6Pq7
キモウトをイカせるのは簡単だ
あいつは兄である俺が相手だと性感帯を撫でただけで気が狂ったようにイッてしまう

問題なのは、兄である俺が相手だとどれだけイカせても満足してくれない所だ
               〜あるキモウトの兄〜
588名無しさん@ピンキー:2010/06/10(木) 11:09:06 ID:x6YsJYB8
今までは妹とヤる事ばかりを考えていたのに…今度はヤらずにすむ方法を考えなければいけない…
589名無しさん@ピンキー:2010/06/11(金) 01:01:02 ID:nR7lEnWO
兄A「愛してると一言いえばいいのさ…」
兄B「つぇぇ…界王拳を20倍にして逃げるきゃネェ!」
兄C「アナザディメイションで異次元に吹き飛ばす!!」

590名無しさん@ピンキー:2010/06/11(金) 01:11:54 ID:h719ABz0
兄を機械生命体に
591三つの鎖 21 ◆tgTIsAaCTij7 :2010/06/11(金) 02:16:24 ID:7WdzBCDU
三つの鎖 21 です

※以下注意
血のつながらない自称姉あり
エロなし

投下します
592三つの鎖 21 ◆tgTIsAaCTij7 :2010/06/11(金) 02:17:12 ID:7WdzBCDU
三つの鎖 21

 仕事に疲れた体を引きずり、私は自宅に向かった。夜の涼しい空気が気持ちいい。
 もう若くないと実感する。昔はこの程度平気だったのに。
 家に入るとリビングの電気がついていた。珍しい。誠一さんは今日も帰ってきてないと思うし、この時間だと梓ちゃんも幸一君も寝ているはずなのに。
 リビングに入ると、梓ちゃんと幸一君がいた。
 幸一君はソファーの上でタオルケットをかぶせられ寝ていた。梓ちゃんはそんな幸一君の傍に座り、寝顔を見つめていた。
 梓ちゃんは幸せそうに幸一君を見つめている。嬉しそうにくすくす笑って幸一君のほっぺたをつついている。
 ほほえましい光景のはずなのに、寒気を感じた。
 「梓ちゃん」
 私の声に梓ちゃんは振り向いた。
 「お母さん。おかえり」
 梓ちゃんはキッチンまで駆け足で歩き、飲み物を入れて差し出してくれた。
 私はさんは礼を言って受け取り、口にした。私の好きなアイスティー。
 「幸一君はどうしたの?」
 「疲れてソファーで寝ちゃった。起こすのも可哀そうだからこのまま寝させてあげようと思って」
 珍しい事もあるものだ。幸一君は自己管理がしっかりしているからソファーで寝てしまうなんて事は滅多にない。
 「今日、久しぶりに市民体育館の練習に参加したんだって。ものすごく疲れたって言ってたわ」
 幸一君は退院して以来、市民体育館の柔道の練習は休んでいた。その後も肩を怪我したらしく、しばらく休むって言っていたのに。自己管理をしっかりする幸一君らしくない。
 いえ、珍しいというより不審だ。
 「梓ちゃんもそろそろ寝なさいよ」
 はーい、という梓ちゃんの返事を背に私はリビングを出た。
 シャワーを浴びて階段を上る前にリビングを見ると、梓ちゃんはまだいた。幸せそうに幸一君の寝顔を見つめていた。
 私はベッドに横になった。誠一さんがいないせいで広く感じるベッド。
 誠一さんがかかりきりの事件。幸一君の恋人のお父さんが殺された。
 そのニュースを私は梓ちゃんと一緒に見た。
 その時の梓ちゃんの表情。底冷えする光を放つ梓ちゃんの瞳。
 思い出したくもない。吐き気がするほどの恐怖を感じた。
 私はため息をついて布団をかぶった。
 仕事に疲れているせいか、私の意識はすぐに眠りに落ちた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 気を失った兄さんをここまで運ぶのは大変だった。
 兄さんは細身だけど大きい。体重もそれなりにある。かなりの重労働だった。
 でも兄さんの寝顔を見ると、疲れも一気に吹き飛ぶ。
 可愛い寝顔。少し寝苦しそうにしているけど、見ているだけで幸せになれる。
 タオルケットからはみ出た兄さんの手をつかむ。微かに汗ばんだひんやりとした冷たい手。
 大きくて男らしい手。握っているだけで頬が熱くなる。
 少しだけ悩んで私は兄さんの指を口に含んだ。
 兄さんの汗の味。頭がくらくらする。
 寝苦しそうに身じろぎする兄さん。
 私は夢中になって兄さんの指を舐めた。兄さんの指先はすでに私の唾液でべとべとになっている。
 兄さんが薄らと目を開ける。その表情が一変する。驚いたように私を見た。
 「あ、梓!?」
 慌てて指を抜く兄さん。
 「な、何をしているんだ?」
 兄さんは脅えたように私を見た。その表情がとても可愛い。
 私は兄さんの頬に触れた。微かに震える兄さん。私が噛みちぎった傷跡を指でなぞる。
 兄さんは私の手を掴んでゆっくりと頬から離させた。
 「梓。一体何が?」
 「気を失った兄さんを私がここまで運んだの。本当は部屋まで運びたかったけど、階段を運ぶのは無理だから」
 「気絶…?」
 兄さんははっとしたように起き上った。
 「春子は!?」
 その言葉を聞いたとたん、さっきまで幸せだった気持ちは吹き飛んだ。
 「あの女の話をしないで!!」
 兄さんは呆然と私を見た。
 「何であの女の話をするの!?そんなにあの女の事が気になるの!?」
 「梓。落ち着いて」
593三つの鎖 21 ◆tgTIsAaCTij7 :2010/06/11(金) 02:18:45 ID:7WdzBCDU
 兄さんは私の両肩にそっと手を載せた。私は兄さんの手を振り払った。
 「あの女は兄さんを脅していたんでしょ!?何でそんな女の心配をするの!?」
 何で兄さんは春子の心配をするの。兄さんを脅迫していた最低な女を。
 怒りと憎しみに頭がくらくらする。
 「何なら二度と心配する必要が無いようにしてあげようか!?」
 私は兄さんを睨みつけた。兄さんの表情は変わらないけど、微かに瞳の色が揺れた。動揺している証拠。
 それが腹立たしい。兄さんはあの女の事を心配しているんだ。あの女に脅されているのに。目の前に私がいるのに。
 「そんなにあの女の事が心配なんだ」
 私は兄さんの頬を両手で包んだ。ひんやりとした兄さんの頬。
 「許せない。許せないよ。本当に許せない」
 あの女が兄さんに心配されるなんて。兄さんの心を占めるなんて。
 許せない。絶対に。
 私は兄さんを睨みつけた。兄さんは目線を逸らさなかった。
 「春子を、いつか許してあげて欲しい」
 兄さんの言葉に私は唇をかみしめた。
 「あの女の話はしないでって言っているでしょ!?」
 兄さんは悲しそうな表情をした。それが堪らなく苛立たしい。
 そんなにあの女が大事なんだ。
 私は兄さんに背を向けた。あの女をもっと痛みつけてやらないと気が済まない。
 「梓」
 兄さんの声と同時に肩に何かが引っ掛かる感触。
 振り向くと、兄さんが私の肩を掴んでいた。
 「お願いだ。暴力だけはやめて」
 兄さんは真剣な表情で私を見た。
 「離して!!」
 私は兄さんの手を振りほどいた。
 それなのに、兄さんは私の袖を掴む。
 必死な表情で私を見下ろす兄さん。
 「お願い」
 兄さんの懇願が腹立たしい。そんなにあの女が大事なの。兄さんを脅して汚したあの女が。
 「兄さんが私にキスしてくれたら考えてもいいわ」
 微かに眉をひそめる兄さん。
 どうせ兄さんはこの案を飲む事なんてできない。
 「できないでしょ?だったら離して」
 兄さんは私を見た。何かを決意したかのような真剣な瞳。
 私の顎に兄さんの手が触れる。
 顎を持ち上げられ、兄さんの顔が近付く。
 頬に熱い感触。
 兄さんの顔が離れる。
 「これでいい?」
 兄さんはそっぽを向いた。
 頬に口づけされたことに、やっと気がついた。
 頭に血が上る。口づけされた頬が熱い。
 「そ、そんなのダメよ。夏美にしているみたいにしてくれないと、キスじゃないわ」
 混乱して変な事を言っているのが自分でも分かった。
 歯を食いしばる兄さん。そして意を決したように私を見つめた。
 再び兄さんの手が私の顎に添えられる。
 「目を閉じて」
 兄さんの顔が近い。恥ずかしさも手伝って、私は言われたとおりに目を閉じた。
 唇に柔らかい感触。
 「んっ、ちゅっ」
 啄ばむように口づけされる。
 口づけされたところが熱い。
 「んっ!?」
 ぬるっとした熱い何かが口腔に入り込む。
 兄さんの味がした。
 「んっ!?んんっ!?」
 熱い何かが私の口腔をゆっくりとはいずる。歯を、舌を、唇を、ゆっくりと舐めまわす。
 頭に血が上る。兄さんの舌が私の舌を舐めまわすたびに、電気が走るように体が震える。
 兄さんの手が背中に回される。その手が私を強く抱きしめた。
594三つの鎖 21 ◆tgTIsAaCTij7 :2010/06/11(金) 02:19:49 ID:7WdzBCDU
 「んっ、ちゅっ、じゅるっ」
 逃げる事も身をよじることもできない。兄さんの舌はゆっくりと、少しずつ激しく私の口腔を舐めまわす。
 気がつくと私も兄さんの舌を必死で舐めまわしていた。舌と舌が絡み合う感触が堪らなく心地よい。
 あまりの快感に息をするのも忘れる。
 「ぷはっ!」
 私は息苦しさを覚えて唇を離した。
 下半身ががくがくする。腰が抜けそうなほどの快感。
 再び顎に添えられた兄さんの手が私の顔を上に向ける。すぐ目の前に兄さんの顔がある。
 顔から火が出そうなほど恥ずかしい。
 「に、兄さん、わたし」
 私の言葉は兄さんの唇に封じられた。兄さんの柔らかい唇の感触に頭がぼうっとする。
 再び舌が入り込む。兄さんの熱い舌が私の口腔を蹂躙する。
 「んっ!?んんっ!?」
 兄さんの舌が私の舌に激しくからみつく。
 その度に電気が走るような快感が背中を走る。
 体が震える。そんな私を兄さんのもう片方の腕が強く抱きしめる。
 密着した兄さんの体の感触。鍛え上げられた逞しい体。
 「んっ!!んーっ!!」
 兄さんの舌が私の口腔を激しく動く。口の中を滅茶苦茶にされる感触。
 目の前が真っ白になる。初めて経験するすさまじい快感。
 兄さんの舌がゆっくりと私の口から出ていく。唇と唇が離れる。唾液が糸のように引く。
 「これでいい?」
 私はその場にへたり込んだ。あまりの快感に、足に力が入らない。
 思えば私から兄さんにキスをした事はあっても、兄さんからしてくれた事は無い。
 知らなかった。好きな人にキスされるのがこんなに気持ちいいなんて。
 同時に強い悲しみを感じた。兄さんが私にキスをしてくれたのは春子のため。私のためじゃない。
 それでも嬉しい。
 「梓」
 兄さんが私の名前を呼ぶ。体が震えるほどの悦びを感じる。名前を呼ばれただけなのに。
 「わ、分かったわ」
 私はぼんやりと頷いた。
 「でもあの女が兄さんにちょっかいをかけた時は別よ」
 これだけは譲れない。もう、指をくわえて兄さんを穢されるのは我慢できない。
 兄さんは黙ってうなずいた。憎たらしいほど落ち着いている。
 あんなにすごいキスをしたのに、なんでこんなに落ち着いているの。
 そんなに慣れているの。それとも私とキスしても何とも思わないの。
 色々な事で頭がぐちゃぐちゃになる。
 「梓。立てる?」
 兄さんの声に立ち上がろうとして失敗した。信じられない。キスされただけなのに。
 私の背中とひざの裏に兄さんの腕が回される。何も言わずに兄さんは私を抱きかかえた。お姫様だっこで。
 兄さんは何も言わずにリビングを出て、ゆっくりと階段を上った。
 たくましい兄さんの腕の感触に何も考えられない。
 私の部屋のベッドに兄さんはゆっくりとおろしてくれた。
 「おやすみ」
 「…うん」
 何とか私は言葉を返した。
 兄さんは部屋を出て行った。
 私は枕を抱きしめた。唇を指でなぞる。
 兄さんの唇の感触が蘇った。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 僕は部屋に戻ってベッドに座った。
 肩が微かに痛む。今日は柔道の稽古に参加し、梓に路上で投げられた。完治していないのに無理をしすぎたのかもしれない。
 僕は唇をなぞった。梓に口づけした感触がかすかに残っている。
 快感に震える梓。経験した事ない悦びに戸惑う表情。
 梓にキスされた時は嫌悪と恐怖しか感じなかったのに、さっきのキスでは奇妙な罪悪感を感じた。
 夏美ちゃんを裏切っているという罪悪感とは違う。血のつながった妹に口づけする背徳の行為。
 僕は頭を振った。思い出すだけで頭がおかしくなりそうだった。
 窓から春子の家を見る。春子の部屋の電気はついていた。
595三つの鎖 21 ◆tgTIsAaCTij7 :2010/06/11(金) 02:21:23 ID:7WdzBCDU
 携帯電話を取り出し電話帳から春子のそれを選択する。
 呼び出し音はしばらく続いた。
 「春子?」
 『…幸一君?』
 春子の声は震えていた。
 「大丈夫?」
 『…うん』
 元気のない春子の声。
 「あの後大丈夫だった?」
 『うん。あの後、梓ちゃんは気絶した幸一君を運んだだけでお姉ちゃんの事は見向きもしなかったから』
 お姉ちゃんには触らせもしなかったと春子は悲しそうに言った。
 僕は春子に手短に話した。春子が僕にちょっかいをかけなければ、春子には何もしないと約束したと。しばらく梓のいる前では僕と話さない方がいいと。
 梓にキスした事は話さなかった。
 春子はしばらく無言だったけど、消え入りそうな声で承諾した。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 通話が切れても私は携帯電話を耳に押し当てた状態で固まっていた。
 もちろん、幸一君の声はもう聞こえない。
 私は頭をふりかぶって携帯電話を机の上に置いた。
 梓ちゃんとしばらく話さない方がいいと幸一君は言った。私に何もしないと梓ちゃんが約束したと。
 どうやって約束したかは幸一君は言わなかったけど、私は知っている。盗聴器で二人の会話を聞いていたから。
 梓ちゃんの快楽に酔いしれる息遣い。唾液を呑み込む音。
 胸に醜い感情が荒れ狂う。頭がおかしくなりそうな嫉妬。
 私はのろのろと鞄に手を伸ばした。
 この鞄は幸一君の物。中には道着が入っている。手にすると、まだしけっているのが分かる。
 あの後、梓ちゃんは幸一君を引きずって家に入った。この鞄は放置された。
 私は道着を抱きしめ顔をうずめた。幸一君の匂いが鼻につく。
 大きく息を吸う。幸一君の匂いで胸がいっぱいになる。
 頭がくらくらする。息が荒くなる。
 幸一君に会いたい。話したい。触りたい。抱きしめたい。キスしたい。犯したい。犯されたい。
 好き。幸一君が大好き。誰にも渡したくない。
 抱きつかれて恥ずかしがる幸一君。私の料理を食べておいしいと言ってくれるその声。梓ちゃんに冷たくされて泣く表情。真剣にお料理する幸一君の横顔。
 ケダモノのように私を犯す幸一君。優しく抱いてくれる幸一君。
 好き。何もかもが好き。
 頬に傷跡の残る幸一君。梓ちゃんがつけた傷。
 「…幸一君にはお姉ちゃんの助けが必要だよね」
 梓ちゃんと幸一君の関係がおかしかったころ、私は幸一君の傍にいた。落ち込んでいたり悲しんでいる幸一君の傍にずっといた。
 今もそう。幸一君は梓ちゃんとの関係に苦しんでいる。昔と同じように。
 可哀そうな幸一君。なんて報われないのだろう。
 それにしても何でお姉ちゃんに助けを求めてくれないのかな。お姉ちゃん、幸一君のためなら何だってしてあげるのに。今までだって何度も助けてあげたのに。
 恥ずかしいのかな。気兼ねしているのかな。遠慮しなくていいのに。
 幸一君は恥ずかしがり屋さんだからね。自分からは言いづらいのかな。
 しょうがないなあ。待っていてね幸一君。
 お姉ちゃんが助けてあげるから。
596三つの鎖 21 ◆tgTIsAaCTij7 :2010/06/11(金) 02:23:11 ID:7WdzBCDU
投下終わりです。
読んでくださった方に感謝いたします。
ありがとうございました。
HPで登場人物の人気投票を行っていますので、よろしければご協力お願いします。

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597名無しさん@ピンキー:2010/06/11(金) 02:37:00 ID:EF4ftEFo
お疲れさまです&グッジョブ

なんか悪いけど春子が梓にどうあがこうが勝てるようには思えない不思議
598名無しさん@ピンキー:2010/06/11(金) 03:42:39 ID:pJeRtXyZ
GJ!!!
確かにこうなってくると春子が勝てそうになく思ってくる…
とにかくがんばれ夏美!!
599名無しさん@ピンキー:2010/06/11(金) 04:39:17 ID:nR7lEnWO
いやぁ〜いよいよ大詰めですねGJ…春子の働きで間接的に梓が追い詰められる気もする…確かに腕力では梓に勝てないだろうが女の執念では負けてない春子。

梓フェチとしては、今日のキスが梓の頂点で無いことを祈っております。


600名無しさん@ピンキー:2010/06/11(金) 15:38:32 ID:sPLLUSE4
GJです
春子もついにキレてしまったか…
梓も3度目は容赦しないだろうし、今度という今度は本気でデンジャーな展開になりそうだ
しかし二人の壊れっぷりを見るにつけ夏美の良心っぷりが際だつw
601名無しさん@ピンキー:2010/06/11(金) 16:25:34 ID:dZIV+eP+
某ホクロの経歴を見てて、もしキモ姉妹を持つ首相が誕生してしまったらどうなるかを想像してしまった。
たぶん何かのドサクサに紛れて「近親婚容認法」とか通されそう。
602名無しさん@ピンキー:2010/06/11(金) 18:26:03 ID:wkuMpe9Y
従姉妹幼なじみ義理姉妹近所のお姉さん達の方がキモ姉妹より数多いからなあ…

過半数採れそうにないしよっぽど強権な首相じゃないと難しそうだ
603名無しさん@ピンキー:2010/06/11(金) 19:07:40 ID:iAqnvwwL
派手 はで 強い
604名無しさん@ピンキー:2010/06/11(金) 19:35:16 ID:hskuTfWJ
ますます夏美を応援したくなった
605名無しさん@ピンキー:2010/06/11(金) 22:29:23 ID:QlDrDz7H
夏美の立場が
夏目漱石の「こころ」に出てくるお嬢さんを思い出した
606名無しさん@ピンキー:2010/06/11(金) 22:57:48 ID:TPKcETW0
GJ!
最後の一文が恐すぎる
春子の逆襲に期待

>>605
確かに
夏美だけ何も知らないもんな
これは Bad end フラグか
607名無しさん@ピンキー:2010/06/12(土) 00:10:06 ID:LeffcaD8
 夏美チャンは掃き溜めに鶴とゆうか、一人異色作品にロマンス小説の正当ヒロインが居るとゆう感じだねww
 最後は夏美チャンだけしか残らないとか、梓と春子が共倒れで車椅子の幸一を介護する夏美チャンとか…そうゆう場面が浮かんでしまう。
 夏美チャンは“良心”の部分なので最後まで生き残ると思うけど、自分はひねくれ者なので是非強いけど儚い梓の願いがかなって欲しいものだと思う…
608名無しさん@ピンキー:2010/06/12(土) 00:24:57 ID:S4QLNrvD
腕力無双な梓には、腕力ではどうにもならない方法で破滅してもらいたい。
609名無しさん@ピンキー:2010/06/12(土) 00:33:12 ID:AKpnVv8y
もう全員幸一くんの子供産んじゃえYO!!
610『きっと、壊れてる』第3話:2010/06/12(土) 01:12:56 ID:PRdamgs/
>>596
GJです。

流れを切ってしまい申し訳ありませんが、『きっと、壊れてる』第3話を投下します。
簡単なエロあり
611『きっと、壊れてる』第3話(1/5):2010/06/12(土) 01:14:57 ID:PRdamgs/
夢を見ていた。

あれはまだ俺達が10歳頃の事だったか。
両親の提案で、家族全員で人気テーマパークへ行く事になった。
海外生まれで近年日本に上陸してきた遊園地だ。
休日だった事もあり、園内は人で溢れ、乗り物も1、2時間待ちだったのを覚えている。
滝を模した急斜面のコースを落下するのが売りの人気アトラクションが観える。
「父さんはここで待っているから、みんなで乗ってきなさい」
これから行列に並ぼうとしたその時、父親が言い出した事だ。
「え〜!お父さん乗らないの?」
家族のひんしゅくを買いながらも父親は少し疲れたから、と言って断固拒否した。
後にわかる話だが、父親はどうやら高い所が苦手らしかった。
あまり納得もしていなかったが、時間ももったいないので家族で相談の結果、俺と茜が二人で乗って来る事になった。
残りの家族はジャングルに似せた川を船で冒険するアトラクションに乗る事にしたらしく、
2時間後にこのテーマパークのシンボルでもある、お城の正門の前で待ち合わせをする事になった。
「浩介、茜をよろしくね」
母親にそう言われるまでもなかった。
普段からあまり言葉を発さず表情も豊かでない茜を、俺はこの頃から何かと気に掛けていた。
茜は学校でまったく友達がいないわけでもなさそうだったが、基本的には学校からまっすぐ家に帰り、
一人でジグゾーパズルや本を読んでいる事が多かったからだ。
「茜は本当にこれ乗りたかったのか?恐かったら父さん達と行ってもいいんだぞ?」
「ううん、これ乗りたい」
意外にもハッキリと意思表示をした茜を見て、俺は少し驚いたが、
正直一人で乗るのも心細かったので、助かったと思いながら行列へと駆けた。

行列の中110分間も待ち、心身共に疲れ果てた頃ようやく順番が回ってきた。
一応兄として妹を気遣う。
「茜、疲れたな」
「ううん、茜は大丈夫。お兄ちゃんがいるから」
別に退屈させないほど喋り続けた覚えはないが、茜には心地よい時間だったようだ。
茜は、並んでいる最中、少しの疲れも見せずに順路に設置されている人形達を何も言わずジッと眺めていた。
俺はすぐに飽きてしまった気がするが、茜は気に入ったようだった。

イカダをモチーフとした乗り物に乗り込む。
このアトラクションのコース全体は人口の山のようになっていて、最後の大滝が目玉となっている。
途中小さいドロップはあるものの絶叫というほどでもなく、子供でも楽しめる仕様なのだ。
ちょうど先頭の座席に座る事ができ、俺は浮かれていた。
「見ろよ!先頭だぜ!やったな」
「うん、良かったね。お兄ちゃん」
幼い二人の冒険者を先頭にイカダは進む。
途中、主人公のウサギが意地悪なキツネとクマを翻弄している様がレールのサイドにある、動く人形達で表現されていた。
ストーリーがわかりやすく、これもこのアトラクションの人気の一つなのだろう。俺達は夢中になっていた。
そして、物語はクライマックスへ。
主人公のウサギが、キツネとクマに捕まってイカダに括り付けられ川に流されてしまう。
この先には、国外にも名を轟かす巨大な滝しかない。
狭いトンネルの中をイカダは徐々に上へ上へと昇っていく。
俺はいつの間にか茜の手をしっかり握っていた。
まるで自分が本当の冒険者になったようで、この先に待ち構えている巨大な滝をどう乗り越えるか、
どう茜を守るか、という事を必死で考えた。
考えた末で当時の俺が出した答えは、茜が怖がらないように、安心できるように、という事だった。
今思えば、茜は兄に手を握られるのを嫌がってもおかしくない年頃だったが、
俺の手はしっかりと握り返され、二人は滝壺へと堕ちていった。
612『きっと、壊れてる』第3話(2/5):2010/06/12(土) 01:16:31 ID:PRdamgs/
「高かったな!落ちた時、水がちょっとかかっちゃったよ」
アトラクションの出口から外に出ると、辺りはすでに暗くなっていた。
今思うと、テーマパーク内とはいえ、子供だけでこんな暗い所を歩かせるなんて我が親ながら適当だ(苦笑)
茜と手を繋いだまま、待ち合わせ場所であるライトアップされたお城へ向かった。
しかし、約束の時間を過ぎても、正門の前にいるのは俺と茜だけだった。
茜はこの状況でも不安はないのか、近くを通りかかった犬のキャラクターの着ぐるみに興味津々で、
俺の手をシッカリと握ったまま立ち止り、着ぐるみの方をジッと見つめていた。
長い鼻に垂れ下がった耳、半開きな目。どこに魅力を感じるのかよくわからなかったが、茜は気に入ったようだ。
「あの犬が好きなのか?」
コクッと頷ずいた茜を見た俺は、『じゃあぬいぐるみを買ってやる』と言った。
両親から念のためにお金を預かっていたし、約束の時間に遅れてくる方が悪い!、と思った俺はお土産屋さんに茜を連れて行き、ぬいぐるみを選ばせた。
この時は、女子はなんでこんなに人形の類が好きなのだろうと思ったが、今思えば男子がヒーロー物を好きなのと同じ理由だろう。
「ありがとう!お兄ちゃん!」
買った人形を受け取った茜は、今まで聞いたこともないような大きく明るい声で俺に礼を言った。
この笑顔は、この夢を観る前からずっと憶えていた。
純情無垢で、心の底からの感謝の意。

俺はこの時、生まれて初めて女の子を可愛いと思った。

「お父さん達どこだろう?」
「お兄ちゃん、あっちの方に似た人がいたよ」
「ほんとか!?じゃあ行ってみよう」
お土産屋を出て、迷子の家族探しを再開した俺らは、1時間後やっと合流する事ができた。
どうやらアトラクションが俺らの乗った物よりさらに混んでいて、ここに来るまでの道も何回か間違えてしまったらしい。
無断で人形を買ってしまった事を叱られるかも、と思ったが待たせてしまった引け目を感じているのか御咎めなしだった。
こうして、俺達の遠足は幕を閉じた。

余談だが、この日茜に買ってあげた人形は、数年後散々な目に合う。
その時茜は、深くて黒い、すべてを飲み込むような瞳で、ただジッと対象を見つめ一言「壊さないで」と呟くだけだった。

・・・茜の足音で目が覚める。

「兄さん朝よ、起きて」
懐かしい夢を見ていたからか、茜の声がいつもより大人っぽく聞こえた。
「ん〜。」
「起きなさい。今日は朝から打ち合わせだって言ってたでしょ?」
「面倒だなぁ」
本当は後3時間ぐらい寝ていたいが、『眠いからサボってしまおう』では通用しないところが社会人のツラい所だった。
しかし、浩介は茜には家族的な意味で頭が上がらなかった。
毎朝、浩介より1時間以上も早く起床し、朝食と浩介の弁当を作って、洗濯をする合間に浩介を起こす。
仕事をしながら簡単にできる事ではないな、と浩介は思っていた。
お嫁にもらうにはこんな女性が良い、と思うのは事実だったが、それを茜に伝える勇気は浩介にはなかった。

居間のテーブルで朝食を取る。
村上家の朝食は基本的にはパンだ。
和食等も茜に言えばおそらく作ってくれるが手間がかかるため、浩介はこれ以上茜に負担を掛けるのを嫌い懇願した事はなかった。
「うまいな、このパン」
いつもとは何かが違う味に思わず口を開いた。茜もそう感じたのか、コクと頷いた。
「近くにね、『ゾウのパン屋』っていうパン屋さんができたのよ。そこのベーグル」
「なんで『ゾウ』?」
「さぁ?優しそうだからじゃないかしら?」
「あいつら、キレると恐いゾウ・・・」
自分でも寒いと思った浩介だったが、たまには普段頑張ってくれている茜にサービスをしたつもりだった。
おそるおそる茜の顔を見る。
「馬鹿なこと言ってないで、早く食べて支度して。私も今日は早く出るから」
「・・・」
滅多に言わない冗談をバッサリ斬られた浩介は、二度と言うまい、と心に誓いパンを口に押し込んだ。

そのベーグルは夢の中の遊園地で食べたチュロスより、優しく甘く浩介には感じたのだった。
613『きっと、壊れてる』第3話(3/5):2010/06/12(土) 01:17:26 ID:PRdamgs/
「兄さん、明日デートしない?」
「デート?」
夕食を食べ終わり、居間でパソコンをいじっていると、妹からの提案があった。
「そう、久しぶりに湘南辺りに行って、のんびり散歩でもしたいの」
「湘南かぁ・・朝早く出るのか?」
「そう、午前中は海辺を散策して、午後はショッピングでもしたいわ」
別に今回が初めてではない。
茜は前からたびたび浩介を誘っては少し遠出の散歩や買い物を楽しんでいた。
浩介もまた、時間がゆっくり流れるようなその趣味に付き合う事で、仕事の疲れを癒す事が出来た。
明日は特に予定もないな、と頭の中でスケジュールを確認すると、浩介は同意した。
「あぁ、別に構わないよ。もうすぐ本格的に暑くなってしまうからな。行くならこの時期だ」
そう告げると、茜は少し目を細めて頷いた。最近見せる事が多くなってきた嬉しい時の表情だ。

「なんで今回は湘南なんだ?」
「兄さんは小動神社って知っている?鎌倉に近い所にある小さい神社なんだけど、雰囲気が良さそうで一度行ってみたかったの。」
「"こゆるぎ"神社っと、へぇ展望台もあるみたいだぞ。」
浩介はインターネットで茜の言った神社を調べ、茜にホームページが見えるようにパソコンを回転させた。
「もう、すぐインターネットで調べるのは良くないわ。そういうのは歩いて見つけたりする方が楽しいのよ?」
最近何かといえばパソコンで調べるクセが付いている浩介に茜は注意する。
「言われてみればそうだな、じゃあ周辺を明日適当に歩いてみよう。」
「そうね、ランチは海辺の店がいいわ。」
「それぐらい調べてもいいだろう?」
「だ〜め。明日兄さんがおいしい店を足で探すのよ?フフッ」
久しぶりのお出掛けに機嫌が良いのか、茜と浩介の周りにはとても良い雰囲気が流れていた。
美佐と再会して以来、割と放っておいてしまったからな、と浩介は茜の顔を見ながら考える。
男と女の関係を抜きにしても、茜は浩介にとって今、たった一人の家族だった。
「トゥルルル〜・・・トゥルルル〜」
少しして、まだソファーでPCをいじっていた浩介のズボンから電子音が鳴り響いた。
浩介の携帯電話だった。
携帯のディスプレイを見る。『玉置美佐』と表示されている。
「はい」
「もしもし、浩介?今大丈夫?」
「あぁ大丈夫だ」
「え〜っと・・突然なんだけど!明日どこかへ一緒に出掛けない?」
申し訳なさそうな美佐の声を聞いて、浩介は付き合っていた頃の有無を言わせない美佐の強引な誘い方が懐かしくなった。
だが、明日は茜と出掛ける約束をしているので当然浩介は断る。
「明日か?ちょっと予定が入っているな」
「あ〜・・そっか!わかった!ごめんね急に」
「いや、かまわないよ」
そう言って電話を切ろうとした時、テーブルの方からいつの間にか近づいていた茜は、浩介の頬を愛しそうにゆっくりと撫でながら耳元で囁いた。
「行ってきたら?私とはいつでもデートできるわ」
意外な発言に驚いた浩介は思わず「えっ?」と声を発していた。
「ん?どうしたの〜?浩介〜?」
反対の耳で美佐の声が響き、浩介は我に返って茜に囁き返した。
「どういうつもりだよ?」
「別に。言った通りよ。兄さんにはいつも私の相手をしてもらっているから。久しぶりに違う女の子とも出掛けたいでしょ?
といっても、美佐さんじゃあまり新鮮味もないでしょうけど」
嫌味か、本心か、美佐をコケにされた気がして浩介は少しムッとした。
そして反抗期の少年のように茜の目から目線をわかりやすく外し、電話越しの美佐へと喋りかけた。
「美佐」
「ん〜?どうしたの〜?」
「やっぱり予定が空いたんだ。どこかへ出掛けよう。」
「えっ!ホント!?いいの?」
一瞬で花が咲いたように美佐の声が明るくなった。
「あぁ、ちょうど俺もどこかへ行きたいと思っていたんだ」
浩介は本心でもないが、まったくの嘘でもない決まり文句を言い放ち、待ち合わせ場所は後でメールすると言葉を残して電話を切ると、茜の顔を見た。
「あら?どうしたの?怒った顔をして。そんなに私と出掛けたかった?」
挑発するように言葉を放つ茜を見て、浩介は何か今日は違うと感じた。
まるで俺と美佐をデートさせたがっているみたいだ、とも思ったが、確証がない分、茜を問い詰めるのは難しかった。
614『きっと、壊れてる』第3話(4/5):2010/06/12(土) 01:18:20 ID:PRdamgs/

「じゃあ、そろそろ今日の分」
浩介のズボンに手をかけ、脱がし始める。
こんな空気でよくそんな事する気分になるな、と思った浩介だったが、茜が浩介の男性器を優しく撫で始めると、
いつの間にか深い深い森の中で迷子になった子供が、やっと探し出してくれた母親に甘えるような気持ちになった。
「兄さん」
手でむき出しの浩介のモノを愛でながら、茜は言う。
「ん?」
「他の女の子と遊びたかったら、遊んでもいいのよ?でもね、私といる間だけは私の事だけ考えてね?この世界で二人だけなのよ、
こうしている間は。誰にも邪魔できない二人だけの世界。」
茜はそう言うと、浩介の物に『チュ』っとキスをしてから口に含み、わざとなのか、『ジュポジュポ』と激しい音を立てながら奉仕を始めた。
「ウゥ・・」
浩介は茜の髪を撫でながら、奉仕の感触に全神経を集中させる。
「ジュポ・・ジュポ・・ピチャ・感じているのね、かわいい」
兄を馬鹿にするな、と思った浩介だったが、普通の兄妹はこんな行為をしない事を思い出し、無言のまま茜の服を脱がし始めた。
着衣のまま絡むのが好きな浩介を知ってか、茜は家の中でも常にワンピースかスカートだった。
今日は白い長袖のブラウスに黒い膝上丈のスカートを穿いていて、浩介はブラウスのボタンを一つずつ解放して行く。
新しく買ったのだろうか、今日の茜は薄いピンク色の下着を身に付けており、爽やかで可愛らしい妖艶さがそこにはあった。
ブラジャーを少しずらして、乳首を外に出すと着衣のまま淫らな事をしているという実感が沸き、浩介はより興奮する。
手を伸ばしてスカートを捲った。小振りで赤ん坊のように綺麗で、マシュマロのように柔らかい尻を下着の上から鷲掴みにし、
揉みしだきながら、浩介は尻をこちらへ向けるように、と夢中になって口で奉仕している茜に言った。
血の繋がった兄妹が、お互いの恥部を懸命に嗅ぎ、舐める、味わう。
この世界ではそれが常識で、二人の愛だった。

興奮が抑えられなくなってきた浩介は、狭いソファーの上で強引に二人の体勢を正常位に変えて、ショーツを左足だけ脱がし右足に括りつけると、
無我夢中で茜の膣に自分の物を押し込んだ。
「アンッあせらないで?」
強引な行動を窘めつつも、少し嬉しそうな表情をしている茜に浩介は疑問を投げかける。
「茜、一つ質問してもいいか?」
そう言いつつも浩介は腰を最初から激しく、丁寧に、確実に動かす。
「ンッンッ・・・・ンッ・なに?・・ンッ」
「俺は・・なんでこんなにもお前の身体で発情する?」
本気で疑問に感じた事だった。美佐に出さえ、こんなに欲情を抱いた事はない。
「フフッ」
滅多に見せない笑顔をみせると、茜は掴んでいたベットのシーツを離し、浩介の体を手繰り寄せて、耳元でこう囁いた。
「おもしろい事を聞くのね、兄さんは。いい?愛する人間に一番発情するのは、人間として正常な機能だわ。」
「愛する人間?」
「余計な事は考えなくてもいいの、私が導いてあげるから。さぁ、今日も膣内に出して?」
そう言うと、茜は背中をベットに戻して微笑んだ。
「・・・」
乱れたブラウスから覗く綺麗な色をした乳首と、既にシワになっているであろうスカートから覗く太ももを見た浩介は、
茜の手首を握り、固定した体勢で、何も考えられなくなるように腰だけを懸命に動かし、すべてを茜の膣内に解き放った。

茜の言った『愛する人間』という言葉は、『家族』を指しているのか『男女』を指しているのか、という事と、
自分は茜に対してどっちの感情を抱いているのか、という事が、最後まで浩介にはよくわからなかった。
615『きっと、壊れてる』第3話(5/5):2010/06/12(土) 01:19:38 ID:PRdamgs/
茜はいつもの通り、浩介の腕枕で余韻に浸る。
「兄さん、『死体検死医』って読んだことある?」
「いや、ない。医療物か?」
「そう、医学博士で変死体解剖34年の経験を持つ著者が、死亡推定時刻の割り出し方とかを書いているらしいわ。」
「死亡推定時刻の割り出し方ねぇ・・そんな物知ってどうするんだ?」
「解答者の解答法を知っていれば、問題を出す方も問題を難しくする事は可能よね?」
少し悪寒がしたのは気のせいだろうか、確認するように浩介は軽口を叩く。
「まるで誰か殺してしまおうって言い草だな」

「さぁね・・・美佐さんにでも試してみようかしら。私だって嫉妬ぐらいするのよ?」

茜の表情はいつもと変わらなかったが、声のトーンが微妙に違うのを察知した浩介は、すぐさま本気で妹を叱った。
「おい茜!」
茜は真剣になった兄を見て満足したのか、一瞬で元の声のトーンに戻すと、浩介の髪を撫でながら囁く。
「フフッ安心して?兄さん。私は暴力が嫌い。それに漫画やドラマじゃあるまいし、素人がプロの監視医の目を誤魔化すなんて不可能だわ」
「それに」
「それに?」

「私にはそんな事をする理由がないもの」

嫉妬は理由にならないのか、と浩介は言いたかったが、話を蒸し返すのを嫌い、違う話題を振ろうと茜に語りかけた。
「茜」
「何?またシたくなったの?」
「・・違う。お前七夕の話って知っているか?」
「七夕?」
「そう、七夕」
「織姫と彦星が年に1度会う話じゃなくて?」
やはり普通そう答えるよなぁ、と思いながらも浩介は続けた。
「茜は七夕の日に雨が降ると『年に一度なのに織姫と彦星がかわいそうだ!』と言うのはおかしいと思うか?」
「よくわからない質問ね。でもおかしいのではないかしら? だって私達から見えないだけで、実際は愛し合ってるわけでしょう?」
「やっぱり、そう思うか。じゃあ誰にも覗かれる事なく二人っきりでいられる織姫と彦星は逆に雨が降っていた方が良いと?」
「それも違うと思うわ。」
「じゃあ、どっちが良いんだ?」、
「そもそも、実は雨が降ると、天の川の水かさが増して織女は向こう岸に渡ることができなくなるって聞いたことがあるわ。
それに例え私達の場所から見えなくても、海外や晴れている国内に移動すれば天の川が見えるじゃない」
なるほど、と思った浩介を見つめながら茜は続ける。
「・・・それに・・・二人はね、きっと祝福してほしいのよ」
「祝福?誰に?」
「存在する物すべてに。愛し合っている自分たちを観てほしいの」
「いや、そもそも天の川で会うのは親が決・・」
「自分達だけの世界を壊されたら、きっと生きていけないと思うから」
「・・・」
茜が彦星と織姫を、おそらく浩介と茜に当てはめて考えているのを感じて、浩介は何も言えなかった。
周囲に明かす事はできない兄妹という事実。
その血と言葉の鎖は浩介と茜に一生絡みついて離れない。

浩介は茜の七夕に対する回答が今一つ何を言いたかったのか読み取れなかったが、
・・・二人が永遠に天の川で会わなければいけない事だけは、理解できた。

第4話へ続く
616『きっと、壊れてる』第3話:2010/06/12(土) 01:21:03 ID:PRdamgs/
以上です。
毎度稚拙な文章にお付き合い頂きありがとうございます。
では、また近いうちに
617名無しさん@ピンキー:2010/06/12(土) 02:00:35 ID:1xDcxI5v
GJ!!
618名無しさん@ピンキー:2010/06/12(土) 02:56:17 ID:ZWN3gKen
そういやまだ未来のあなたへは休憩期間なんかな
619名無しさん@ピンキー:2010/06/12(土) 05:56:24 ID:9sSXpqij
GJ
「きっと壊れてる」のジワリとした雰囲気好きだ

未来のあなたへ…か…
できれば残りの2人のエピソードも読みたいところだが
620名無しさん@ピンキー:2010/06/12(土) 06:40:25 ID:/g6tNP08
乙です。毎度いいものを読ませてもらって感謝
621名無しさん@ピンキー:2010/06/12(土) 17:41:58 ID:XgzGCcXI
>>616
GJ!
しっとりとした雰囲気を醸し出している文章がいいね。
続きを楽しみに待っています。
622名無しさん@ピンキー:2010/06/12(土) 19:35:45 ID:chvlnDOr
623名無しさん@ピンキー:2010/06/12(土) 21:19:04 ID:qisQxgnP
とまってるものは信じてまつしかないと思うんだぜ
624名無しさん@ピンキー:2010/06/12(土) 21:36:59 ID:IIDY/uWA
待っている人がいる者は幸いである。
625名無しさん@ピンキー:2010/06/12(土) 23:59:16 ID:28cWqCxt
待っている作品だらけなんだが
ウィリアム・テル
弓張月
未来のあなたへ
626名無しさん@ピンキー:2010/06/13(日) 03:15:47 ID:kQVb/eqY
職人さんも都合があるからな…最近ヤン〇〇スレで復古作品のラッシュが有って祭りに成ったけど気長に待ってますしかないんでネ。
627名無しさん@ピンキー:2010/06/13(日) 15:18:36 ID:a/XYPi6N
ttp://livedoor.blogimg.jp/insidears/imgs/a/8/a88bc066.png

  (^ω^;)⊃ アウアウ!!
 ⊂ミ⊃ )
  /   ヽ
628名無しさん@ピンキー:2010/06/13(日) 15:35:36 ID:5Z3Y31bQ
>>627
キモいですねぇ
629名無しさん@ピンキー:2010/06/13(日) 15:55:19 ID:npo6gTPm
平面世界なら最高なんだが
630名無しさん@ピンキー:2010/06/13(日) 16:01:06 ID:IKSvm97G
>>627
あきそらのおまけコメントで弟とこんなことするとか絶対ありえないキモイって言ってたよ
631名無しさん@ピンキー:2010/06/13(日) 17:26:44 ID:fqDfY4Du
やっぱただの家族愛なんだな…いき過ぎだが
632名無しさん@ピンキー:2010/06/13(日) 17:58:41 ID:d76JBXNO
>>630
弟に彼女ができてから考え方が一変するんですね分かります
633名無しさん@ピンキー:2010/06/13(日) 20:46:28 ID:mBPNgD95
した
634名無しさん@ピンキー:2010/06/14(月) 00:42:37 ID:EbFZB9CG
今このスレを見つけたんだが、保管庫に作品あり過ぎてワロタ
全部読みたいが、時間がかかる
何かお勧めある?
635名無しさん@ピンキー:2010/06/14(月) 00:45:54 ID:UeGD2CMu
全部
636名無しさん@ピンキー:2010/06/14(月) 00:48:09 ID:luYutLQy
>>634
具体名はスレ荒れのもとになるから勘弁な
とりあえず完結長編は読んでおくといいよ
637名無しさん@ピンキー:2010/06/14(月) 00:54:37 ID:ifylGFEJ
とりあえず全部読むのは基本
638名無しさん@ピンキー:2010/06/14(月) 07:18:52 ID:t5FhDUyS
俺のオススメは『いもうとの考え』。
ギャグ調だし長くないからサクっと読める
639名無しさん@ピンキー:2010/06/14(月) 09:14:38 ID:WbNKs2a+
オレのおぬぬめは全部
640名無しさん@ピンキー:2010/06/14(月) 09:33:52 ID:YfrhKqAQ
突然すみません。このスレに弟をいじめていて弟から煙たかがれていた姉が東大に入るとき弟から「姉さんのことすきじゃなかった」と言われて大ショック半年ぶりにかえると態度を180度変え両親をころし弟に迫る。こんなストーリーを探しています。心当たりありませんか?
641名無しさん@ピンキー:2010/06/14(月) 09:42:27 ID:Dnmmy7e2
短編作品の蝶変態超変態だろう
642名無しさん@ピンキー:2010/06/14(月) 12:36:19 ID:YfrhKqAQ
ありがとうございます。
643名無しさん@ピンキー:2010/06/14(月) 21:19:13 ID:YfrhKqAQ
探していたものが見つかり読むことができました。ありがとうございます。
644名無しさん@ピンキー:2010/06/15(火) 00:06:57 ID:gJGJ8A4K
うんうん。ありがとうというのはいい心がけだね
でも>>1とこの板のローカルルールくらいは読んどこうか
645名無しさん@ピンキー:2010/06/15(火) 02:13:56 ID:hsGitMQ8
>>644 偉そうですねwww死ねwww
646名無しさん@ピンキー:2010/06/15(火) 03:23:26 ID:mFBuczz6
無駄に草生やすなvip臭い
647名無しさん@ピンキー:2010/06/15(火) 03:50:21 ID:bu2BOfQm
暗黙の了解も一向に解さずにオススメを聞きたがるやつは時々でるな
ずっと思っていたんだけどテンプレに

オススメの作品を訊ねる前に……
作品の好みには個人差があります
更にオススメの作品を訊くことで、スレッドの空気が悪くなることもあります
そのため出来る限り作品は自分で探すようにしましょう
それでも訊ねる場合は具体的な条件(例えば【流血沙汰無し】【ハッピーエンド】等)
を指定するようにしてください

のような中学生でも分かる一文を追加しないか?
そうすれば「>>1読め」ってレスで事足りるし、スレも荒れないで済むと思う
648名無しさん@ピンキー:2010/06/15(火) 04:27:00 ID:UwotjzhW
まあまあ…未成年相手に熱くなるな‥書き手さんが来づらく成ると困る。
誰か他の話題振って!!
649名無しさん@ピンキー:2010/06/15(火) 06:27:09 ID:a+pfBzjh
wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
650名無しさん@ピンキー:2010/06/15(火) 07:34:56 ID:GrimkF7p
なるほどこれがゆとりか
草の生やし方なんぞより、sageと改行の方法を覚えてから
書き込むようにしたほうがいいんじゃないか、坊ちゃん
651名無しさん@ピンキー:2010/06/15(火) 08:10:59 ID:yeLbikk/
全身に草を生やしたキモウトか
冬目景の漫画で最近そんなビジュアルの見た気がするな
あれ妹じゃないけど

容姿からして人外のキモ姉妹の話ってあったっけ?
改造人間とか
652名無しさん@ピンキー:2010/06/15(火) 10:15:11 ID:cMNV9w1P
>>650
うはwwwwwwwwwwwwwwおkwwwwwwwwwww
653名無しさん@ピンキー:2010/06/15(火) 10:33:45 ID:ROWPABEz
草民がまだ居たのか
スキルのある人は居なくなって
くをりてぃ低い輩しかいなくなったと聞いたが
654名無しさん@ピンキー:2010/06/15(火) 10:42:39 ID:yeLbikk/
>>468
駄目だったorz
655名無しさん@ピンキー:2010/06/15(火) 11:05:03 ID:yeLbikk/
安価間違えたしorz

ちょっとお姉ちゃんに慰めてもらってくる
656名無しさん@ピンキー:2010/06/15(火) 15:39:56 ID:CjTgw7i1
>>650
相手にする時点で負け組だよお前
657名無しさん@ピンキー:2010/06/15(火) 17:01:01 ID:OOOWO0gY
「アニキー、またバカにされたー」
妹がノックもなしに部屋に飛び込んでくる。
「今度はなんだよ」
しょうがなく相手をしてやる。
「にちゃんねるとかいうので草生やしたらバカにされたwww」
「またネットか。というか俺にはやめろ」
「ねー、なんとかしてよ。あたしのアニキはスーパーハッカーって言っちゃったんだよ」
「そんな嘘書くな。というか足にまとわり付くな」
足を振って剥ぎ取ろうとするが、意外に力が強く動かない。
「ねーねー、今晩何でも言うこと聞くからー」
「そんなのはいらんからさっさと離れろ」
というか頬ずりするな。
「カラダスキにしていいからー」
「いらんと言っている」
そんな目で見つめても何もしないぞ。もう慣れっこだしな。
「中に出していいからー」
「そんなことする気ないから!」
「えー、飲ませるのー。でも、アニキのなら……いいよ?」

このやかましいのが俺の妹だがwwwwwwww
誰かどうにかしてくれwwwwwww

「勝手に人の頭の中に草生やすんじゃありません」
「えーww」
658名無しさん@ピンキー:2010/06/15(火) 17:38:54 ID:bu2BOfQm
>>656
その負け組を相手してるお前が言うなw

相手にする時点で負け組だよお前キリッ
659名無しさん@ピンキー:2010/06/15(火) 17:43:36 ID:UH4EI1Wx
ギリースーツのキモウトという電波を受信した
660名無しさん@ピンキー:2010/06/15(火) 18:25:24 ID:a+pfBzjh
>>650
なるほどこれがゆとりか
荒らしにレス返すより、荒らしに反応するのは荒らしだという事を覚えてから
書き込むようにしたほうがいいんじゃないか、坊ちゃん
661名無しさん@ピンキー:2010/06/15(火) 18:31:57 ID:+8hhdPfX
失せろ
662名無しさん@ピンキー:2010/06/15(火) 18:35:24 ID:yeLbikk/
おいおい…戻ってきたらまだやってるとかいい加減にしなされよ

とりあえずそろそろ500KBなので次スレの準備をお願いします
663名無しさん@ピンキー:2010/06/15(火) 18:57:16 ID:GrimkF7p
丸わかりのID変更してまでそんなに反応するなんて
俺の>>650がよほど心にぐさっときたのか
悪かったな、最近の厨房がここまで子供だとはおもわなかったよ
謝るから次スレには来ないで、ここで完結しておいてくれよ。迷惑だからさ
664名無しさん@ピンキー:2010/06/15(火) 19:35:11 ID:/6ySz+hI
テスト
665名無しさん@ピンキー:2010/06/15(火) 19:38:42 ID:/6ySz+hI
sage忘れ…すいませんorz

帰宅したら長編(予定/新作)投下します
666名無しさん@ピンキー:2010/06/15(火) 19:59:43 ID:a+pfBzjh
>>663
なるほどこれがゆとりか
荒らしにレス返すより、荒らしに反応するのは荒らしだという事を覚えてから
書き込むようにしたほうがいいんじゃないか、坊ちゃん
667名無しさん@ピンキー:2010/06/15(火) 20:23:56 ID:Zzq1U1KS
>>665
期待wktk
668『プロローグ』第0話:2010/06/16(水) 00:25:56 ID:WG/Hk1jS
>>664です
投下します
669『プロローグ』第0話:2010/06/16(水) 00:27:20 ID:WG/Hk1jS
prologue #00

「高校を辞める? 上京?」
 大学進学のために上京して一カ月が過ぎ、ようやく東京の生活にも慣れてきた矢先のこと
だ。電話越しの母経由で聞いた妹の決意とは、僕の想像の斜め上を行くものだった。僕の母
は並大抵の出来事では全く動じない。けれども、今回の妹の告白はどうやら並大抵のもので
はなかったらしい。
 一カ月と少し前、妹は東京へ旅立つ僕に――すこし、恥ずかしそうに――来年東京の大学
を受験して、上京したい、という思いを伝えてくれた。彼女の頭脳をもってすれば、僕が浪
人してなんとか合格した都内のそこそこの大学よりも、もっと偏差値の高い大学に受かるよ
うなことも不可能でないだろう。もちろん、現役で。
 動揺している母をなだめながら考える。妹はそれこそ容姿端麗頭脳明晰。どちらかと言わ
ずとも優等生だし、校内一までにはならないとしてもかなり上位に入るだろう美人である。
僕は人の顔を順位付けするという行為があまり好きではないけれど、妹の顔立ちが整ってい
るという意見に異論のある生徒は少ないと思う。それだけ美人で賢い妹である。そんな妹に
何があったのか。
「ねえねえ、何のお話?」
670『プロローグ』第0話:2010/06/16(水) 00:28:29 ID:WG/Hk1jS
 従妹が口をはさんでくる。彼女は一つ年下ながら僕が浪人してしまったために同学年とな
ってしまった。大学は違えど僕と同級生になったことがよほど面白いらしい。呼び捨てで僕
の名を呼んでみたり、そうかと思ったらわざとらしく僕を年長者扱いするなど、事あるごと
に僕と同学年であることをダシにして遊んでいる。彼女の家は僕の借りている下宿の隣の部
屋であるはずなのだが、寝る時以外はほとんど僕の部屋に入り浸っていると言っていい。就
寝時に追い出さなければ恐らく寝床も僕の部屋になるのではないだろうか。いくら親戚とは
いえ年頃の女の子が男性の部屋に入り浸っているのはどうなんだろう。
「亜紀が高校辞めて東京行きたいんだとさ」
「ダメ!」
 亜紀とは妹の名。ちなみに今血相変えて叫んでいる従妹の名は咲月。一つ年下の従妹のこ
とがそんなに心配なのか、高校を中退して上京することの短所をつらつら述べている。もち
ろん僕も咲月に説得されるまでもなく亜紀の高校中退に反対なのだけれど。
 壁に貼り付けられている可愛い動物たちの写真が載っている――咲月の趣味だ――カレン
ダに目をやる。春の大型連休、ゴールデンウィークは明日から。夏まで帰省の予定は無かっ
671『プロローグ』第0話:2010/06/16(水) 00:29:09 ID:WG/Hk1jS
たけど仕方ない、とりあえず実家に帰ることにしよう。どうせ中退騒動は亜紀の気まぐれだ
ろうけど、僕が実家に着くころにはケロッとした顔で「兄さん、どうしたの」なんて言うの
だろうけど、久しぶりに妹の顔でも見に行くか、と思って行くことにした、と言っても僕が
上京してまだ一カ月と少ししか経ってないのだけど。
 いつもは落ち着き払ったドライな性格の妹なのだが、時たまこういった風によくわからな
いことを言い出して取り乱すことがある。やはり日頃は自分を押さえつけているからその反
動が来るのだろうか。僕がいなくなって家の環境が変わったからかもしれないな、まだ一カ
月だけど、などと自惚れたことを思ったりしてみた。
 明日家に帰るよ、と言うと夜行バスを提案された。確かに今から乗るとちょうど明日の朝
には地元に着く計算になるし、飛行機や新幹線なんかよりもずっと安い。でも、この時期は
予約でもしておかない限り席を取るのは不可能だろう。
「あら? チケット、届いてないの?」
「何のさ」
「今話してるじゃない、夜行バスよ。亜紀があんまり淋しそうだったから、あんたが連休に
 ちゃんと帰ってこれるように私が手配して送っといたのよ」
 初耳
672『プロローグ』第0話:2010/06/16(水) 00:30:04 ID:WG/Hk1jS
「ないの? 送ったのは先週かもっと前よ?」
「おかしいな。ちょっと待って、咲月に聞いてみる」
 最近僕の部屋のことは僕よりも咲月の方が詳しい時が往々にしてあるのだ。寝巻を着て
(僕の使い古しのシャツ)ベッドに寝転びながら(僕のベッドだ)、漫画を読んでいる(そ
れも僕のだ)、咲月に尋ねてみると、彼女はやたらすっとんきょうな声をだして、隣の自分
の部屋へ戻った。そしてすぐに封筒と中に入っていただろう夜行バスのチケットを持ってく
る。
「なんで、咲月が持ってるの? しかも封開いてるし」
「あ、雨で濡れていたから乾かそうと思って、乾かしているうちにそのまま忘れちゃったの!
 ごめんなさい!」
 そっか……、咲月、自分の部屋にほとんど居ないもんな……、そりゃ忘れるな……。母に
はチケットが届いていたことを伝え、その夜行便に乗ることも加えて電話を切った。まだご
めんなさい、だの呟いている咲月に向き直る。結果的に僕はバスに乗れるのだし正直そこま
で気にすることでもないと思うのだけど。
「咲月、僕は別に怒ってないよ」
「ほんと?」
 いつもの覇気が無い分咲月がとても可愛く見える。失礼、咲月は普段から可愛い。ただい
673『プロローグ』第0話:2010/06/16(水) 00:30:59 ID:WG/Hk1jS
つもは少し元気がありすぎて、こちら側に彼女の顔まで気を回す余裕がないからそう思わな
いだけだろう。うん、咲月は可愛い。
「まぁ、もう少し気をつけてほしかったな、ってのはあるけどね」
 ごめんなさい、ごめんなさい。また謝る咲月。もういいよ、と可能な限りやさしい声色で
話しかける僕。そういえばコイツ、昔はよく泣いたな、などと思っているとつい頭も撫でて
しまっていた。

× × × × ×

――本日は西急高速バスをご利用いただき、誠にありがとうございます。
 疲れた。
 大急ぎで荷物を詰め、何故かやたら帰省の阻止を試みる咲紀をなだめてバスに乗った。い
くら住み慣れてない自分の部屋で寝起きしなければならないからといえどもあんなにゴネる
のはちょっとおかしい。咲紀も口には出せない何かを抱え込んでいるのではないだろうか。
考えれば考えるほど心配になってきた。東京に戻ったら真面目な話もしてみようか、咲紀と
真面目な話なんかした記憶が無い気がするのだけど。
「まぁ、皆成長しているんだよな……」
 人間、悩むことで成長するしな。きっと亜紀も表向きああいう風に断言調で宣言してしま
674『プロローグ』第0話:2010/06/16(水) 00:31:38 ID:WG/Hk1jS
って正直引っ込みがつかないとかそんなんだろう。帰ってから亜紀と適当に話をしてどこか
適当に遊びに出かけて適当に気を晴らして……――。

 眠りに就く直前まで亜紀のことを考えていたからだろう。
 僕は妹の夢をみていた。


675『プロローグ』第0話:2010/06/16(水) 00:34:40 ID:WG/Hk1jS
投下終了です。
『プロローグ』という題のお話のプロローグです
ややこしくてごめんなさい
あとキモくなるの大分先の予定です
ごめんなさい

内容、文章についてお気づきのところあれば
指摘していただけると励みになりますので
よろしくお願いします
では
676『プロローグ』第0話:2010/06/16(水) 00:37:41 ID:WG/Hk1jS
誤植

>>671
× 初耳
○ 初耳だし、届いてない。
677名無しさん@ピンキー:2010/06/16(水) 01:19:21 ID:83L++bug
>>659
田舎では兄弟を外で監視したり泥棒猫をこっそりと(ピー)す時に便利そうだ

>>669
GJ&乙!

レス毎に文章が途切れないようにした方がいいと思うよ
678名無しさん@ピンキー:2010/06/16(水) 02:12:37 ID:OjYzwCI+
>>675
GJ!
>>677も言っているようにレスをまたいでの文章は止めた方がいいと思う(>>670‐671とか)
679名無しさん@ピンキー:2010/06/16(水) 03:48:30 ID:B1DH7j9O
>>676

誤植なんかより、改行とか、レス毎の区切りに気を付けた方が良いかと。
ともあれ面白くなりそうなので、続き期待してます。
680名無しさん@ピンキー:2010/06/16(水) 04:07:35 ID:LbHkAsiS
もう容量が少ないから新スレ立ててくる
681名無しさん@ピンキー:2010/06/16(水) 04:11:09 ID:LbHkAsiS
立ててきた

キモ姉&キモウト小説を書こう!part30
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1276628997/
682名無しさん@ピンキー:2010/06/16(水) 08:48:03 ID:d7ESDE2H
>>675
GJ
気になったのは上にでてるレスの終わりを切れさせないようにってとこかな
あと咲月・咲紀?と名前が統一されてなかったのも気になった
683名無しさん@ピンキー:2010/06/17(木) 19:56:31 ID:0KOTMXBG
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684名無しさん@ピンキー:2010/06/17(木) 19:57:03 ID:0KOTMXBG
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685名無しさん@ピンキー:2010/06/17(木) 19:58:02 ID:0KOTMXBG
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686名無しさん@ピンキー:2010/06/17(木) 19:58:49 ID:0KOTMXBG
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687名無しさん@ピンキー
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