スクールデイズの分岐ルートを考えるスレ part8

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1名無しさん@ピンキー
スクールデイズの分岐ルートを考えるスレ

もしかしたらあり得たかもしれない物語。
ひょっとしたら辿り着けたかもしれない結末。
そうした幾つもの可能性が重なり合ってるのがSchool Daysです。
そこで、スクイズで可能だったと思われる展開を自由な発想でSSにしてみませんか。
もちろん、Over flow関連作全てが「あり得た可能性」に含まれるので他作もアリです。

刹那
「次スレは980レス、480KB超えたら立てて。
 荒らしはスルー。
 ここは基本的にsage推奨だから。メール欄にsageって入力して。
 これらは、このスレの約束事だから。ちゃんと守って」
2名無しさん@ピンキー:2010/03/14(日) 23:25:40 ID:vSMwElKW
3名無しさん@ピンキー:2010/03/15(月) 00:35:16 ID:ciZAzId7
スレ立て乙

前スレ>>642
多分後者
4名無しさん@ピンキー:2010/03/15(月) 12:24:22 ID:VrN3OaAk
前スレ642 http://orz.2ch.io/p/-/yomi.bbspink.com/eroparo/1221993335/642
乙。勇気かわいい。
長編の場合、スタート〜ラスト間に矛盾点を発生させない自信が御ありなら出来次第投下ですね。
私の場合は、ラストを構築してから矛盾点を修正してスタートを投下します。
投下した後だと修正したくてもできませんから。

前スレ634 http://orz.2ch.io/p/-/yomi.bbspink.com/eroparo/1221993335/?r=634
応援してます。
私なんか需要の無い題材ばかり選んで書いてますから。

5前スレ642:2010/03/16(火) 04:26:27 ID:AVxc+vd5
>>1
スレ立て乙

>>3-4
ご意見の方ありがとうございます。
確かに勇気らクロイズのキャラは発売次第で大分キャラの変わる可能性も
あるのに危険ですね、完結させてからの投下にさせていただきます。
既に構想の穴があちらこちらに見つかっているので。

あと、別に非エロでも問題ないですよね、
エロパロ板来てるのにうまくエロが書けないorz






6名無しさん@ピンキー:2010/03/17(水) 09:30:32 ID:OnXyCzsw
>1

専ブラで読む人の為にも前スレは普通に貼って欲しかったが
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1221993335/
7名無しさん@ピンキー:2010/03/18(木) 08:14:48 ID:txXBgN0x
ここの作者の先生方ーっ!!

クロイズが余りにもあんまりだから
グッとくる路夏レイポ物(後半、勇気も強制加入型)を、どうかーっ!!
8名無しさん@ピンキー:2010/03/18(木) 14:47:47 ID:rM2QwPVo
本編すごく斜め上らしく大騒ぎなってんな、いい方に考えればIFは書きやすくなったともいえるけど
しかし、本編は誠×勇気おkなら、一つでも勇気×言葉ルートがあったほうがまだマシだったろうにw
9名無しさん@ピンキー:2010/03/18(木) 21:44:39 ID:d0xw86ya
俺もそろそろSS書きに復帰しようかな……
DaysのSSはまだ書いたことが無いが、アレを見ると書かずにはいられん

>>8
勇気×言葉ルートは無い方がいいだろ
10名無しさん@ピンキー:2010/03/18(木) 23:32:55 ID:txXBgN0x
もうクロイズ終わった・・・

かくなる上は、不足分はやはりオリジナルエロSSで補うしかないんだな

作家先生方、どうか知恵先輩×勇気、路夏茶巾レイプシーン、(オリジナル設定でその
報復レイポで乙女、)言葉レイポ物・・・をどうか…。
乙女
11名無しさん@ピンキー:2010/03/18(木) 23:57:30 ID:IewUf5TK
誠、勇気、言葉でぐっちょぐちょの愛のある3P。
で、世界に見つかって「あんたたち変態よ!頭オカシイわ!!」と言われるも、
「愛は人それぞれさ…」と女装勇気と言葉のふたりとくちづけを交わす誠。
「わたし、誠くんと勇気くんふたりの子供を産むんです」とうっとりする言葉。

全てに絶望して自殺しようとする世界。でも自殺しようとした建物の屋上で
知り合った親切なバイセク殺し屋からもらった銃で、誠たちを皆殺しにする
ことを心に誓ったのだった。
12名無しさん@ピンキー:2010/03/19(金) 00:15:06 ID:bgv+UNv2
誠とは4Pのようで4Pじゃなかった光・路夏・七海か、
エロ有りに見えて実は無かった三馬鹿か…悩む
13名無しさん@ピンキー:2010/03/19(金) 00:16:02 ID:1heTXWGO
>>11
いや、そこは無理矢理世界も強制加入で
世界を二穴(対面騎乗位【マンコ・誠、アナル・勇気】、言葉は誠に顔面騎乗して世界とベロチュー)、
そして世界は一緒に堕ちていった…。がイイのでは?W
14名無しさん@ピンキー:2010/03/19(金) 07:17:37 ID:9xow1yOL
>>9
ホモよかいいわw
15名無しさん@ピンキー:2010/03/19(金) 09:34:18 ID:5nWIbQFX
誠×七海エンドが欲しいな
16名無しさん@ピンキー:2010/03/19(金) 12:12:51 ID:fUfxI5yo
ホモ×8
山県×5
ゴリラ×4
言葉×2
路夏×2
アフロ×1
ゴエモンインパクト×1
世界×1
七海×1
光×1
刹那×0
乙女×0
心×0
可憐×0
知恵×0
二喜×0
17名無しさん@ピンキー:2010/03/19(金) 18:06:46 ID:MM8uZwH+
クロイズ山県かわいいねぇ
ホモシナリオには頷けないが
数年ぶりに創作意欲がでてきたが・・

ブログのIDパス忘れて入れんwwww
18名無しさん@ピンキー:2010/03/19(金) 19:27:33 ID:MLSqoN5t

ガバッッ

「あれ?ここは……夢だったの」
「あっ、二喜やっと起きた、夜の間ずっとうなされてたけどなんか悪い夢でも見てたの?」

そういわれて二喜はここまでの顛末を振り返る
そうだ、折角の休みだからって世界に遊びに来ないかって誘われて
それで夜中まで世界の家で1年発売が延期して今度やっと発売するゲームのシリーズ第2作を世界といっしょに
やって、気づいたら朝……スズメがチュンチュン鳴いているのだ

「ははは、なんか怖い夢を見てたみたい……」
「へーどんな夢だったの?」

そういって世界は二喜にコーヒーを渡す
二喜は受け取ったコーヒーを一口飲んで見ていた夢の内容を話し始める


「ずっと発売を待っていたゲームが期待を裏切ったの、ただでさえ11Gも容量がいるのに
昨日の夜にやっていたゲームの新作、美少女ゲームの18禁ものなんだけど
誤解や嫉妬とかで幾重にも重ねられる話として期待させておいて
実際は三分の一が男同士のアァーーな関係になって
同姓の絡み合いなんてこっちも見たくないわよ……まぁ相手がその分お金くれたら考えるけど……
とにかくもっと歴代のヒロインや新たに登場した“美少女”との絡みを期待してたのに
事前の宣伝ではHシーンのあったキャラも何事もなかったかのようにカットされてるし
一体全体どういうことなの……って所で目が覚めたの」

「ふぅん、本当に夢ならよかったのにね」



「…………………え?」


おしまい
なんか新しい書き手来そうでwktkしてます期待しています。
19名無しさん@ピンキー:2010/03/19(金) 20:16:07 ID:ebmL1X06
二次創作を活発にさせる為に、ああいう展開にしたと
邪推したくなるw
20名無しさん@ピンキー:2010/03/19(金) 23:37:12 ID:YPiV2DP9
暗闇の中、ゴリラに前をボブに後ろを犯されるレイパー。
しかもその映像が赤外線カメラで撮影されてて、その上全校放送されて人生ヲワタな奴。
21名無しさん@ピンキー:2010/03/20(土) 22:38:26 ID:tcHht1jD
ガッツボブゴエモンの三人のエロが豊富でホモも豊富とかふざけんな!
22名無しさん@ピンキー:2010/03/20(土) 23:30:17 ID:iWz3JlM3
乙女の取り巻きエロの方がナンボかマシだったな
23名無しさん@ピンキー:2010/03/21(日) 01:15:33 ID:Vf1lCJdW
クロイズってなんで、あるルート入ると、こんなにBL要素が強くなるわけ?
誠の性格もサマイズから考えられないほど止化してるし。
24名無しさん@ピンキー:2010/03/21(日) 01:26:09 ID:SAYK66lf
>>23
ぬまきちの単なる嫌がらせだろう
それ以外に考えられん

つか今回は攻略難易度高すぎだろ
ルート開拓が困難なのに加えて、一部ルートがアレ過ぎるからな
25名無しさん@ピンキー:2010/03/22(月) 16:26:39 ID:B+jn3wx1
勇気×知恵が無いなんてひどいとしか思えなかったので書いてみようかね。
26名無しさん@ピンキー:2010/03/22(月) 22:12:30 ID:nvw/ts8k
誰かこんなプロットでエロいの書いて…(多少は違っても、かまへんから…)

◎乙女、路夏を不良達(遠山、松平、ほかモブ数名)にレイプを依頼(可能なら行為の撮映も…)、
 不良達、路夏の後ろから気絶させ拉致成功。人気のない処(物置? 空き教室? 体育倉庫?)へ…
 
◎勇気、人気のない処に入る不良達とグッタリした女子を抱えた不良を目撃、一瞬だけ路夏の顔を確認、
 暫くして乙女も入って行った(不良達に路夏の拉致の連絡受けて…)。
 (この場所の中で路夏、不良達に茶巾&愛撫、乙女にビンタ、ピンで乳首やクリをチクチク…
 そしてモブの一人が「丁度、前、街で手に入れたコレ(媚薬)使ってみようぜ」と路夏の秘所に塗りたくった…)

◎(乙女が入って5分位経って…)勇気の前に姉の知恵が現れ「こんな処で如何したの?」と勇気に聞き、
 勇気は事情を説明、二人は助けに中に入ったが…路夏の露れも無い姿を見て(手すり着きのイスに、『茶巾+М字開脚』で固定されている)、
 茫然としている処を後ろからスタンガンを当てられ二人共捕われてしまう…。

◎知恵が意識回復、周りを見ると勇気はイスに縛られて固定され猿轡、自身はニーソを除いて全裸……
 不良達はニヤニヤしながら眺めている…そして何故か身体に力が入らない…(すでに媚薬を塗られてて、その副効果で)
 不良は知恵が気絶してる間に知恵の痴態を取り巻くってて、其れを二人に見せた…
 
 乙女が「ちょっと、本来の目的忘れてない?」と言い、勇気達の前で路夏輪姦……
 
 
27名無しさん@ピンキー:2010/03/22(月) 22:46:23 ID:nvw/ts8k
26の続き…

◎路夏の輪姦、知恵の痴態等を見てすっかり勃起してしまった勇気…
 それを目聡く見つけた不良は、「ワリィワリィオメぇをホッタラカシだったなw」とワザとらしく言い
 (知恵は他の不良数人に愛撫で嬲られてるが必死に堕ちない様に耐えてるが…)
 勇気のズボンから一物を剥きださせ亀頭、鈴口に媚薬を塗り擦った…、

◎そして不良達は知恵を後ろから膝を抱え起こし…勇気の前まで抱え運び…
 知恵「な、何をするの?、まさか…や、やめてぇ!!お願いぃーっ…?!、ああぁぁーーっ!」
 …そそり立つ勇気の一物の上に挿入するように降ろしたのだった…。

◎(乙女視点)
 足利姉弟は媚薬の効果でタガが外れたかのように腰を振りまくってる…その知恵のアナルを
 不良か突き捲ってる…、その隣では憎たらしい路夏が不良達に全ての穴を凌辱されている、媚薬のせいで普段と違い淫靡になっているが…
 
 …まぁ予定外の事態(足利姉弟の乱入)もあったが目的は達成した…と、思った瞬間、後ろから羽凱締めにされたっ?!
乙女「なっ?!、何なのっ?、何の真似っ?」不良「この状態で判んないのかなぁ?w」
  「いっいやゃぁーーーっ!!」…乙女も媚薬づけにされ輪姦…でEND


・・・な、感じでのSSをどうか宜しくお願いします。

                正直文才ないのがくやしぃ……。
28名無しさん@ピンキー:2010/03/22(月) 22:54:40 ID:ai9ZLccE
なんてひどい内容なんだwww
てかここまで細かい設定があるなら脳内再生で充分だろw
29名無しさん@ピンキー:2010/03/22(月) 23:09:14 ID:eEl8ZzhT
>>26
そこまでプロットを練れる才能があるんだったら
下手でも何でも君がチャレンジしてみればいいよ
話を書いていくうちに思わぬ文才に目覚めるかもしれないし
こんな風にプロット練れるんだったら数をこなして書いていけば
相当面白い話を作る書き手になってくれると思うけど
30名無しさん@ピンキー:2010/03/22(月) 23:13:21 ID:nvw/ts8k
>>29
いや、それが出来てたらこんな事頼めませんて…(汗
プロットはすぐに浮かぶんだけど…いざやろうとしたら…
どうすれば良いんだか…(泣
31名無しさん@ピンキー:2010/03/22(月) 23:20:30 ID:B1NeEjNy
>>30
勢いのままに書け
俺が昔SSを書いたときもそうだったさ

まあその時書いたやつを今見ると、色々と黒歴史級なんだがなorz
それでも割と好評だったりしたから、一度書いてみるといいよ、マジで
32名無しさん@ピンキー:2010/03/22(月) 23:38:17 ID:eEl8ZzhT
>>30
面白いかどうかとか文章力はどうかとかそういうのは抜きにして
チャレンジしてみればいい

極端な話小学生の作文レベルでもスレ的には歓迎したいくらいだし
下手が下手なりに書いた作品でも感想とかもらえたら嬉しいもんだよ
33名無しさん@ピンキー:2010/03/22(月) 23:41:57 ID:uqjR5a1V
叔母風呂の社員来たか!?
34名無しさん@ピンキー:2010/03/22(月) 23:55:56 ID:eEl8ZzhT
>>33
どこどこ?
35名無しさん@ピンキー:2010/03/23(火) 09:08:25 ID:zJ2oDUXG
ちょww
36名無しさん@ピンキー:2010/03/23(火) 14:15:41 ID:3JA92mKM
遠山・松平(場合によっては泰介もか)を上手く路夏が手なづけるのと、乙女と路夏が同じ中学の
同級生である事から、最低限乙女の住所はわかりそうかな?
そこから、加藤家そのものに打撃を与えると
路夏は何と言うか、陵辱されて完全に屈するタイプには思えないので
乙女を遥かに凌ぐ魔王になる要素はあると勝手に思ってるw
37名無しさん@ピンキー:2010/03/23(火) 16:28:42 ID:UcydatLg
オッパイが残念な乙女さん…

加藤乙女 164cm 78-63-85
甘露寺七海 173cm 98-68-91
38名無しさん@ピンキー:2010/03/23(火) 20:57:23 ID:rv4FaEh9
これはプレイヤーが学習する必要がある気が。

最初に到達するのは闇に落ちるとかみなみの恋人が圧倒的に多いんじゃなかろうか?
そこで出てくるたわいもないネタから真相が徐々にユーザに提示されていっているような気がする。

女バゲータウンの話だと、
荒らされている→荒らしているのは部長→部長がどうやって携帯を手に入れたか→七海と先輩がナニをしていたか
というふうにプレイするたびに明らかになるようにフラグ管理されていた気がする。
巻き戻したり、ロードすると選択肢が出てきたり、見たはずなのに未読になったり、違うルートへ分岐するのは
特定のシーンの既読を分岐条件にしていて、巻き戻すと一見同じで本当は別ルートへつながるんだと思う。

達成度が上がらなくなったら、はじめからやり直してみるのも良いかもね。

路夏の真ルートへ行くには全ての障害を把握するように達成度を上げていき、その障害を回避する選択を考えて選ぶ必要がある。
真ルートは100%近くにならないと選択肢自体が出てこないと思う。
39名無しさん@ピンキー:2010/03/23(火) 22:47:44 ID:gULz3/W6
>>38
ひょっとして誤爆…かな
40名無しさん@ピンキー:2010/03/24(水) 09:53:45 ID:Aibd6O1w
社員のSSマダー?
41名無しさん@ピンキー:2010/03/24(水) 13:34:29 ID:yL60r1eQ
>>27
望む通りには無理だが、路夏が乙女に逆襲して徹底的に追い詰める
妄想はある程度なら浮かぶんだが
原作スレ見てもいかんせんクロイズの全容がまだ明らかでないしなあ……
立ち消えになるかもしれん

他にSS書きたいと思ってる人向けに、参考までに幾つかプロットを

・乙女の意向で遠山・松平が路夏をレイプするが、彼らは必ずしも
乙女シンパではなく内心面倒くさい奴だと思っている 行為後、
あまり追い詰めすぎるのはまずいんじゃないかと忠告するが、乙女は
聞く耳持たない(携帯写メールで情事を撮影して完全に反撃を封じたと思っている)

・暴行された路夏は失意の一方、乙女に激しい憎悪を抱き
何とかして彼女に逆襲しようと決意し、どんな手でも使おうとする
中学の卒業アルバムから住所を調べ、また乙女の父が以前路夏の母親の
客だった事を思い出し、乙女の父に接近しようとする

・遠山達をうまく抱き込み、自分の計画の為に利用しようとする
乙女の父を脅し、金を吸い上げる(路夏ママの店に再度貢がせる)

・加藤家は父の浮気疑惑が再発し、険悪な雰囲気になり
乙女は頭を抱えるが、それが路夏の狙いだとは気付けない

・しかし乙女に家に放火したあたりから計画が狂い始めていく
偶々家にいた可憐と母親が火災に巻き込まれ焼死する
この事を知った遠山達は怖くなり自首しようとするが、路夏はそれを許さない

・勇気とのラブシーンはあり、心が満たされるが、同時に勇気とは
幸せになれない事を悟り、しばらく忘れていた涙を流す

・最終的に娘の不祥事を知った乙女の父はショックのあまり自殺
家族を失い乙女は完全に独りぼっちに
自分の軽はずみな行いが不幸を招いた事にようやく至るが……

他にも浮かぶかもしれんが今のところはこんな感じ
42名無しさん@ピンキー:2010/03/24(水) 16:52:17 ID:hGDg/ID3
26です
エロシーンで二穴・三穴描写があれば、後はどうでも宜しいので
お好きなようにして下さい。

それとマジで俺社員じゃ無いしw

それに…長文の投下の仕方がマジで知らんし…
(メモとかに一通り書いてから、何行かづつをコピーして貼り付け…でいいの?)
43名無しさん@ピンキー:2010/03/24(水) 17:11:14 ID:yL60r1eQ
>>42
メモ帳→コピー貼り付けが一番手軽かと 1回につき50行分くらいまで
なら

エロ描写は正直苦手なんだよなあ…… まあなるべく善処したいが
どちらかといえば、人を追い詰めすぎて自分も不幸になる乙女と路夏を
描きたいかな 最初は乙女ざまーみろで済むが、段々路夏の方が
洒落にならなくなり、同情の余地がなくなってくると でも最後はやっぱり
むなしさを感じさせると
44名無しさん@ピンキー:2010/03/24(水) 23:59:38 ID:YBJjyjXx
 泰介って本当はガチホモなんじゃね。で、本命は誠。

泰介がレイポしうる人物、言葉、路夏、勇気の共通点は、
誠に関係しているということ。三人は、何らかのルートで誠とくっつく。
それがレイパーにとってはおもしろくないんじゃないかと。

穴さえあれば男女関係ないんじゃないかっていう線も考えたけど、
それだったら、自分にアタックしてくる光に何の行動も起こさないことの
説明がつかないんだよな。別に、取り立てて男を掘らなくても、
光のケツの穴に入れれば十分なわけだし。

加えて、Valentine DaysやSekai Daysでは、誠へ求愛する姿が
(ネタとはいえ)描写されている。それらを整合性が取れるように
考えると、誠命のガチホモでヤンデレという線が浮かんでくる。

 つまり、「誠に近づく悪い虫は、俺が全部潰してやる!」という
精神構造で男女構わず誠に好意を寄せる人間を犯して回ってるというわけ。

じゃ、なんで誠を襲ったりしないかというと、本質的には、
幼少期に掘られた経験が忘れられない受け専で、
誠を掘りたいんじゃなくて、誠に掘られたいから。

ただ、誠に告白したら振られると思っているから、
誠が狙う、ないし誠を狙う人間を暴行することで、
再起不能に追い込むという屈折した形でしか
愛情を表現できないんじゃないかと。

男女見境無く襲うにもかかわらず、光と誠には手を出さない
理由を合理的に考えると、これ以外は説明がつかない。
というか、どうせ、Cross Daysでホモシーンを入れるぐらいなら
前作や前々作で泰介ルートでも作ってればよかったのに
4541:2010/03/25(木) 02:18:39 ID:3qaqh2eA
ちょっとだけ試しに逆襲モノ書いてたら、路夏が乙女を遥かに凌ぐ極悪に
なってしまった…… 路夏はこんな頭の回る子だったっけ?
46名無しさん@ピンキー:2010/03/25(木) 06:30:56 ID:GqcQ3atI
>>45
問題ない、うpだ
47名無しさん@ピンキー:2010/03/25(木) 08:37:51 ID:j4tRd348
26っす

すげぇ…もう書き上がったなんて…
こっちは出だしが全然思いつかず…なのに…

早く見たいっすーっ!!
4841:2010/03/25(木) 10:37:03 ID:3qaqh2eA
いやいや 寝て起きて冷静に考えてたら、「ぼくのかんがえたさいきょうきゃら」
になってるし(苦笑)
まだ本当に書きかけ 完成するにしてもずっと先だと思う
それに、正確には異なるが、路夏が死神化して救いがない……
(プロットの通り、乙女の家族が全滅してしまう)
49名無しさん@ピンキー:2010/03/25(木) 16:47:28 ID:3qaqh2eA
別のシーン書いてたら、ベタでありきたりだけど
勇気の気持ちが切ないかな…… 書いてる私こそド悪魔だ(苦笑)
勇気×路夏は辛うじて保たれているけど……
でもこうしないと、因果応報にはならないんだよなあ
50名無しさん@ピンキー:2010/03/26(金) 12:27:34 ID:tcKtMl3o
クロイズ初回生産版のバグ
知ってるぶんだけ張っとくわ

・特定の選択肢があるシーンの前で》スキップすると、確実にフリーズする。
・倍速モードでもフリーズする可能性あり?

・システム内の好感度計算方式にバグあり。
・前回プレイの好感度が、そのまま次回プレイや《バックスキップ後に持ち越される可能性あり?
・パソコンを終了もしくはゲームを終了させると、全データ内の好感度がリセットされる。
51名無しさん@ピンキー:2010/03/26(金) 21:45:19 ID:9NsFwu4+
一番のバグは、シーンのカットでしょ。

補完されないのかな。

52名無しさん@ピンキー:2010/03/26(金) 21:56:35 ID:9agF7ann
そこを皆の想像で補完するのがこのスレのあるべき形
…なのか
53名無しさん@ピンキー:2010/03/27(土) 09:19:21 ID:Krvx3wnd
↑のバグに加えて『和解』の時に見れるHシーンのリプレイがテロップだけで
真っ暗という完全な不具合。
54名無しさん@ピンキー:2010/03/27(土) 20:47:29 ID:I7ze5JVB
言葉の元にオランダから絵ハガキが届く。
そこには幸せそうに抱き合う誠と勇気、そして「結婚しました!」と書かれたメッセージ。

…そして旅行鞄に新愛刀・七丁念仏を収め、真・コトノハ様が世界に羽ばたく。
55名無しさん@ピンキー:2010/03/27(土) 23:30:23 ID:qDaqZ5FH
「ねえ刹那、あそこに飛んでるのなに?」
「光、今忙しいんだから余所見しない」
「あーそうだった、ははは」

…真・コトノハ様は空を飛ぶ、奪われた誠君を取り返すために。


勝手に便乗してみた。
56SINGO:2010/03/28(日) 03:06:03 ID:ucXlJxFA
どうも。
クロスデイズを、私の【破局】シリーズに加えてみました。
ので投稿します。
主人公は清浦刹那です。

【破局の妖精】〜Fata Morgana〜

※鬱注意
※18歳未満はご遠慮下さい
57SINGO:2010/03/28(日) 03:07:19 ID:ucXlJxFA
【破局の妖精】〜Fata Morgana〜

頭の中が真っ白。何が何だか解らない。
桂さんが何らかの理由で委員会を途中で抜け出し、それを私が追いかけただけ。
階段を上がりきり最上階に辿り着くと、そこに桂さんがいた。目の前には屋上に出るドア。
なのに桂さんは屋上に出ず、ドアの内側で声を殺して泣いていた。
私は桂さんの視線を追った。ドア窓の向こう…屋上を。
「!!」
驚いた事に、そこで西園寺世界と伊藤誠がセックスしていた。

「いい、誠!もっと!」
世界は上体をフェンスに預け、伊藤にお尻を向けている。
伊藤は世界をさらにフェンスに押し付ける様に、自らの欲棒を世界の中に突き入れる。
「世界ぃ、はあっ、す、好きだ!」
「んっ…ああっ…か、桂さんよりも?…うっ!」
どうしてそこで桂さんの名前が出るのか、覗き見てるだけの私には解らない。
とにかく世界と伊藤は、ドア一枚隔ててコチラ側にいる桂さん(と私)の存在に気付いていない。
「ああ。好きなのはっ…世界だけだッ…」
伊藤の腰の前後運動が、さらに早さを増す。
「私だけ…私だけを見て、誠!」
「はあっ、はあっ…世界…もう、イクっ!」
「うん。きて!誠」
伊藤は上体を大きくのけ反らせると、世界の中で果てた。

ああ、そっか。そういう事…。
『刹那。頼みがあるの。委員会が終わったら、すぐに私の携帯に連絡して』
↑この世界の言葉の意味を、ようやく私は理解した。つまり、
委員会が終わると、桂さんは校舎屋上へと向かう。
だけど、そこでは世界と伊藤はセックス中。そこを桂さんに見られる訳にはいかない。
だから世界は、桂さんが屋上へ向かうタイミングを知りたかった。
そこで私の出番。私も桂さんと同じく委員会に出席してるから『桂さん接近警報器』としては申し分ない。
だけど、
私はそんなこと知らないし、聞いていない。世界に説明されていない。
ただ『委員会が終わったら連絡して』と頼まれただけ。
この私の立ち位置。他の人なら、どう思うだろう?
親友に利用された、とは思わないだろうか。
58SINGO:2010/03/28(日) 03:08:17 ID:ucXlJxFA
《後日》
私は桂さんに詳しい事情を聞いた。その内容は、私には信じがたいものだった。
桂さんと世界が親友になったいきさつ。
世界に伊藤を紹介してもらった事。
伊藤に告白され、付き合うようになった事。
伊藤と親密になるために、世界に色々アドバイスしてもらった事。
努力の甲斐あって、伊藤とキスできた事。
だけど、
私はそんなこと知らないし、聞いていない。世界に説明されていない。
伊藤と付き合っているのは世界だと私は思っていたし、世界自身もそう言っていた。
今の桂さんの立ち位置。どう思っているだろう?
親友に裏切られた、とは思わないだろうか。

あれ以来、桂さんは屋上に近づかなくなった。
そして私は委員会を抜け出し、屋上を覗き見するようになった。世界と伊藤のセックスを。

今回は、伊藤がベンチに座り、そこに世界が跨がる形で結合している。
だけど、
私はそんなこと知らないし、聞いてない。世界と伊藤が肉体関係にまで至っているとは、聞かされていない。
この私の立ち位置。他の人なら、どう思うだろう?
親友に隠し事をされた、とは思わないだろうか。

私の目の前で行われている、世界と伊藤のセックス。
見るに耐えなかった。私にとっては拷問だった。
私は、伊藤の事が好きだった。それを、あえて世界に譲った。
二人が交際すれば、いずれ肉体関係にまで至る。容易に予想できた事。
それが、これ程までに私の心を引き裂くなんて。
だけど、これは私が望んだ事。そうなるよう世界を応援したのは、他ならぬ私自身。
目を背けてはいけない。現実を認めるためにも。
私の目から、何か熱いものが零れ落ちた。

「清浦さん?」
背後からの呼び掛けに振り向くと、そこには身長2m近くの巨人がいた。
「田中…」私と同じく、我が3組のクラス委員長。
どうやら田中は私の様子が変なのに気付いて、委員会を抜け出し、私を追ってきたみたい。
田中はドア窓から屋上を覗き込んだ。
そういう事か、と悟った表情の田中。おそらく私の心中も悟られた。
「田中。今見た事は忘れて。今の私の気持ちも」
59SINGO:2010/03/28(日) 03:09:17 ID:ucXlJxFA
《11月某日》
「ねえ刹那。帰りにピュアバーガー寄ってく?」
放課後、世界が私を誘ってきた。
「ごめん、パス」
「なんか刹那、最近よそよそしい」
「世界には伊藤がいるでしょ。あと…屋上の鍵、開いてる?」

廊下では、田中と澤永と小柄な眼鏡少年が、何やら話し込んでいた。
「アレと田中はダメだろ。身長差どんだけあると思ってんだ。犯罪…いや、種族違うだろ」
「んな事ねーよ。愛は種族を越えるのさ。なあ田中」
「ん」
そこに私が割って入る。
「田中、ちょっと付き合って」
「うおっと。何だ?田中に愛の告白かぁ?」
「や、職員室まで。澤永も来る?」
「何だ、そっちかよ。田中、行ってこい」

私と田中は職員室…じゃなくて校舎屋上に出た。
「清浦さん。こんな所に呼び出して、何の用?」
冷たい風が、私と田中の肌をちくちくと刺す。
「くしゅんッ☆」
「ん。話なら中でしよう。こう寒いと風邪をひくぞ」
「なら田中が温めて」
私は田中のタイを引っ張った。前屈みになる田中。
「ちょ、清浦さん?まさか、そのつもりで…?」
「心配無用。こんな寒い所、誰も来ない」
いえ、すでにドアの向こうに人の気配。こんな所に来る人間は限られている。
私は田中の唇を塞いだ。
「ほら田中も。私を満足させて」
わざと大声で言った。ドアの向こうの世界に聞こえるように。
私は田中の手を掴むと、それを私の胸に導いた。わざと世界に見えるように。残酷な笑みを向けながら。
ドア窓の向こうで、世界は表情を引きつらせた。
あの世界の立ち位置。どう思っているだろう?
親友が自分よりも男を選んだ、とは思わないだろうか。
…だけど世界。それは、お互い様なの。
永い時間が、あれからずいぶん過ぎた気がする。あの日の、陽だまりの様な暖かさが懐かしい。
学園祭が終わったあの日、幾人もの恋が破れた。そこには何の暖かさも無かった。
私は全てに失望していた。この学園には、救いようの無い人間であふれている。
自分に好意を持つ女性を片っ端からセフレにしている伊藤。
その浮気者を、原形をとどめない程に美化して盲信し、現実から目を背けている桂さん。
かつて桂さんに伊藤を譲っておきながら、のちに伊藤を寝取った世界。
世界の気持ちを知りながら、モテる伊藤を利用しセフレ斡旋して金儲けをしている光。
失恋しただけで自暴自棄になり、好きでもない伊藤のセフレに成り下がった七海。
同じく伊藤のセフレに甘んじている山県さん。
そして、それら全てに見切りを付けた私。

…ねえ世界。私達は一体、どこで道を間違えたんだろう?
60SINGO:2010/03/28(日) 03:10:16 ID:ucXlJxFA
《12月某日》
私は田中の家に入り浸っていた。
「清浦さん。今日もウチに泊まるのか?家の人とか心配するだろう」
「明日、学校休みだし。世界の家にお泊まりって事になってる」
すでに世界にアリバイ工作を頼んである。なかば世界に対する当て付けだけど。
「清浦さん、やっぱり変だ。だって、泣いているじゃないか」
言われて気付く。私の目から、何か熱いものが零れ落ちていた。
「あの時、何で二人を祝福してあげなかったんだろ」
「清浦さん…?」
そう。私が壊した。もう後戻り出来ない所まで来ているのかもしれない。なら、いっその事…。
「清浦さん!?ちょ、何を…」
気が付けば、私は田中に襲い掛かかっていた。

私の下で、田中が仰向けに倒れていて、その両手はタイで拘束されている。当然、私の仕業だけど。
「清浦さん。どうして…?」
「田中が私を拒まないように」
「俺がそんな事……いや、そっちじゃなくて!やめ…」
私は田中のズボンから欲棒を引き出すと、ソレを口に含んだ。
そのまま舌を絡めながら上下運動を繰り返す。
「ん、ちゅ」
田中の欲棒は、どんどん膨張していく。やがて、
「んあっ!」
どくん。呆気なく田中は私の口の中で果てた。
「ぷはっ。…ん、これだけ濡れてれば、入るかも」
私はショーツを脱ぐと、田中の欲棒の上に自分の秘裂をあてがった。騎乗位の体制。
「じゃ、入れるから」
「待て!せめてゴムを…」
私は一気に腰を落とした。引き裂く様な痛みが私を襲う。
「痛…。全部入らない…」
痛い。すごく痛い。
「清浦、さん?もしかして、初め…て?」
かまわず私は上下運動を始めた。
何度か繰り返すうちに、痛みが快感になってきた。感覚が麻痺しているだけかもしれないけど。
「や、あん。イイ。ほら田中も動いて!」
何度も何度も往復する。
「あっ!あん、凄い…奥に当たって、る」
「清浦さん…俺、もう…」
やがて、私の中で田中の欲棒が膨らんだ気がした。イクのだろう。
「ヤバイ出るッ。清浦、早く、どいて…」
田中は必死で私の中から逃れようとする。
「私を拒むの?」
「う…」
どくん。田中は私の中で果てた。
同時に私も果て、力尽きて田中の胸に倒れ込んだ。
61SINGO:2010/03/28(日) 03:11:20 ID:ucXlJxFA
《聖夜》
永い時間が、あれからずいぶん過ぎた気がする。
私は相変わらず田中の家に入り浸っていた。
「清浦さん。いつも、心ここにあらず、だよな。俺といる時も」
田中が哀しそうに言った。全てを見通したような瞳で。
「な何?いきなり」
「本当は還りたいんだろう?西園寺さんのもとに」
「別に、そんな…」
「清浦さんが俺なんかを選んでくれたのは、俺が逃げ場所だから」
「…!」
「その程度の事で、俺は喜んで舞い上がって。この関係を壊したくなくて。清浦さんの心に気付かない
フリをしてきた」
田中は自虐的な表情で言う。
「だが、もう限界だ。清浦さんの心は俺に向いていない」
「田中…」
「俺が欲しいのは、清浦さんの心だから。本気で好きだから」
「ごめん」
私は田中宅を出た。
…私、最低だ…。
田中が私を拒めないのをいい事に、田中の優しさに付け込んで。負の感情を田中にぶつけて。
結果、田中の心を傷付けた。

模手原坂下。
「あ、刹那」
「世界…」
世界と鉢合わせした。今、一番会いたかった人。
「こんな時間に…。あ、また田中の家に…?」
「ん。軽蔑した?」親友を放置して男と交わっていた私を。
すでに世界は孤立していた。その原因のひとつが私にもあった。
この世界の立ち位置。どう思っているだろう?
親友に棄てられた、とは思わないだろうか。
「そんな事ない。刹那、田中のこと好きなんでしょ?私だって、好きな人とは一緒にいたいもん」
「ごめん世界。私を許してくれる?」
「許すも何も。刹那は私の一番の親友だし」
世界は私を抱き締めた。
世界は何も変わっていなかった。相変わらず私を信頼してくれている。
なら、私はその信頼に応えよう。世界を支え続けよう。世界を守り続けよう。
たとえ私にその資格が無いとしても。もう後戻り出来ない所まで来ているとしても。

「そういえば私、まだ田中に自分の気持ち伝えてなかった」
「ええェー!?何それ!?信じらんない!!」
「ちょっと待ってて」
私は携帯電話を取り出して田中にかけた。
プルルルル……カチャ。
『もしもし。清浦さん、どうかした?』
やり直したい。許されるのなら。

「私、田中の事が……」

The End
62SINGO:2010/03/28(日) 03:12:42 ID:ucXlJxFA
終わりです。
またしても刹那田中のSSです。

クロイズの、例の救い様の無いBad Endがベースです。
また、勇気と路夏がどうなったのか、作中では語られていません(刹那視点なので)。
読者様の想像にお任せします。
63名無しさん@ピンキー:2010/03/29(月) 13:32:44 ID:hzz4tBiy
田中のデカイちんこでひぃひぃ言う刹那たんを
どなたかよろおね。
64名無しさん@ピンキー:2010/03/29(月) 13:33:24 ID:hzz4tBiy
すまん、更新し忘れてた。
65名無しさん@ピンキー:2010/03/29(月) 16:03:18 ID:vr4qzWVT
>>62
乙、せっちゃんが(´;ω;`)ブワッ
でもエロかったから、よかったお

ところで
叔母風呂には、どうせなら、欲望に流される受動的なヘタレじゃなくて
能動的に相手を調教する鬼畜が主人公のゲームも作ってほしいと思ったりする。

ヘタレだけでは、平k…もとい平井達矢さんの能力を十分に発揮できないと思うんだ。
なので、男女問わず外道に相手を嬲る鬼畜誠のゲームをキボンヌ


泰介「や、やめろお、誠何をするんだ!」
誠 「今からお前を強姦する」

止「誠、い、一体何のつもりだ!」
誠「セックスだよ、親父だって自分の子供に散々してきたじゃないか」

勇気「やあああ、ん、はあああっ!」
誠 「もっと泣け、俺に悲鳴を聞かせろ」

言葉「ま、誠君…乱暴にしないで」
誠  「牛が人間に口答えするな!」

世界「酷いよ、誠!自分だけ幸せになろうだなんて」
誠  「精液を啜るしか能のない豚が!お前に家畜としての立場を刻み込んでやる」

乙女「やめてよお!誠、もとの優しい誠に戻って!」
誠  「なら、奴隷らしく懇願しろ、俺の足を舐めろ」


 書いてて、誠がホモなほうが筆が乗ってげんなりしてしまったwww
66名無しさん@ピンキー:2010/03/29(月) 16:36:01 ID:cWOnaaaV
何ですかそのいかにも魔王な誠さんはw まあ
誠の本質は性による対象の支配なので、あながち間違いではないが
ただしかなり無自覚なだけに非常に性質が悪いと
67名無しさん@ピンキー:2010/03/29(月) 16:51:10 ID:tLeKutyf
大根シリーズやればいいだろw
止さんが大活躍だ
68名無しさん@ピンキー:2010/03/29(月) 17:10:20 ID:vr4qzWVT
止さんはノンケだからなwww
69名無しさん@ピンキー:2010/03/29(月) 21:11:58 ID:hzz4tBiy
>>62
田中って「ん」しか言わないから善人だとは限らない。
黙って犯し続けるレイプマンな展開キボン。
70名無しさん@ピンキー:2010/03/29(月) 21:38:43 ID:xjWZv1Wt
レイパーは間に合っている件について
71名無しさん@ピンキー:2010/03/30(火) 02:09:38 ID:1/IQf8QG
あれw
72名無しさん@ピンキー:2010/03/30(火) 10:11:55 ID:1/IQf8QG
ニコで嘘と真実を重ねてを見てきた。 

なんという幸せENDwww
やっぱりこうでなくっちゃ・・・ 
誰かこんな幸せいっぱいのSS書いてほしい
73名無しさん@ピンキー:2010/03/30(火) 13:49:39 ID:qC8aF8rt
ここの人が作ったという二次創作サイトを見て、すごく引き込まれた。
数作読むのに半日以上かかったよ。
鮮血の結末後の長編、最後が物足りないが感動した。
74名無しさん@ピンキー:2010/03/30(火) 16:18:00 ID:xMpepVq8
>>73
くわしく
75名無しさん@ピンキー:2010/03/30(火) 16:19:59 ID:lKSk70P+
>>73
思い当たるサイトはあるが、あそこの鮮血後日談って打ち切りになってないか?
76名無しさん@ピンキー:2010/03/30(火) 17:36:34 ID:qC8aF8rt
>>74
個人サイトを挙げていいのかな?
勝手にSchool Days
http://woodchuck.blog27.fc2.com/
の Raincarnation

>>75
打ち切りなのか…あそこまで書いて何故だろう
77名無しさん@ピンキー:2010/03/30(火) 18:15:16 ID:KAwhcIeB
>>73
その作者さんなら、過去スレで色々な作品投下してたよ。
興味がおありなら、以下のサイトで探してみてはいかがっすか。
http://jig132.mobile.ogk.yahoo.co.jp/fweb/0314BPHJ7W60NZhD/3j?_jig_=http%3A%2F%2F0ch.squares.net%2F0verflow%2Fetc.html&_jig_keyword_=%BD%B8%B0%D9%C3%DE%B2%BD%DE%82%CC%95%AA%8A%F2%D9%B0%C4%82%F0%8Dl%82%A6%82%E9%BD%DA%20part&guid=on&_jig_xargs_=R
78名無しさん@ピンキー:2010/03/30(火) 20:00:55 ID:xMpepVq8
>>76>>77
情報サンクス
今ちょっと見て来たけど凄い量ですね…

休みのときにでも熟読してみよう
79名無しさん@ピンキー:2010/03/31(水) 00:24:22 ID:OWEA/7N2
勝手に School Days、凄いなあ
この人は言葉より世界が好きなようだが、それでも作中の言葉の姿に心を打たれる
いくつか納得いかない展開もあるけど
80SINGO:2010/03/31(水) 18:08:40 ID:Hr2I4tK9
>>69
やっぱ不評でしたか。
残念ながら私はレイプ系は苦手なんで、書くのは無理っぽいです。
技量不足なうえに、刹那ファンを敵に回したくないという思いもありますから。
81名無しさん@ピンキー:2010/03/31(水) 21:48:20 ID:Mq4+DOFx
敵に回すとかつまんない事気にして書くなよ
82名無しさん@ピンキー:2010/04/01(木) 01:27:51 ID:omSuZTc2
>>80
いやいや面白かったッスよ、規制で感想書けなかったけど……。
刹那の葛藤とかぎくしゃくしても崩れない世界との絆など面白かったので次回作も期待したいです。
83SINGO:2010/04/02(金) 18:44:37 ID:1J6RK3rc
ありがとうございます。
これからも精進します。
84名無しさん@ピンキー:2010/04/03(土) 07:24:33 ID:L/41mRd2
書き手は酉を付けないの?
85名無しさん@ピンキー:2010/04/03(土) 14:52:27 ID:bXgZpmFw
三馬鹿スレでちょっと書いたものを
ここに写し(コピー)て、いいですか?
86名無しさん@ピンキー:2010/04/03(土) 14:53:46 ID:XAaL4u/S
>>85
何も問題ないではないか……
87名無しさん@ピンキー:2010/04/04(日) 13:36:20 ID:+V75TBHh
>>85
別に何も問題ないと思うけど
88名無しさん@ピンキー:2010/04/04(日) 16:55:39 ID:ktdQ1uE2
誠と三馬鹿が伊藤家で4Pしてた事実を知った乙女が、
帰りにヤクザによって輪姦されてしまうSSか
89名無しさん@ピンキー:2010/04/04(日) 18:53:34 ID:pSeQpAlR
>>85
では、ここに写しときます

205 :名無しさん@初回限定:2010/04/01(木) 14:06:19 ID:zRK3crPE0
どうしても捕まらない誠を求めて伊藤家へやってきた乙女が、
玄関先でチャイムを押そうとした際に中から漏れ聞こえてきた
誠と三馬鹿の激しい4P中や小休止中の会話にショックを受け、
茫然自失となって帰っていく姿が見てみたかった

そんなことを考えたのは俺だけ?

206 :名無しさん@初回限定:2010/04/01(木) 16:06:37 ID:KKDd2Gmu0
>>205
…そして、茫然と夜の街をフラついて歩いていたら
裏通りみたいな処を歩いて仕舞い…ハッと気が付いたら
街のヤンキーの集団に絡まれ捕まり…

乙女「イ、イヤァっ! はっ、放してっ!誰かーっ、誰か助けっ…むぐぅっ」
ヤa「へへへ…叫ぶんじゃねーよっ…と(グイッ!、ビリィーッ!!←後から羽凱締めにして
   ベストを捲り上げ、シャツを引き裂き胸を露わにした)…、オイ抑えつけて口塞げゃ」
ヤb「ヒヒッ、リョーカーイ…(スカートを捲り上げ…)、オヒョっコイツ紐パン履いてらー…
   (紐パンの両紐を手に掛け解き毟り取ると丸めて乙女の口に詰め込む!)
乙女「むぐーっ!!」
ヤa「オラ、下に抑えつけて、脚おッピろげッぞっ…そーれっご開帳〜っ」
乙女「むーっ!!むぅぅう〜っ!!」

 …続くw
209 :名無しさん@初回限定:2010/04/02(金) 11:27:36 ID:oZzQHoxC0
206の続き

ヤa「オホーッ まっさらピンクだな…ジュルルッ ジュプッ レルレル…」
乙女「んんっ! ンぅうっ! うぅ〜っっ!!…!!…!…」

ヤa「…プハッ! タマンねぇぜ…オイ、デジカメ回ってっか?、ブチコミシーン撮っぞw」
ヤc「オーラーイ、(落ちた生徒手帳見て)さぁ乙女ちゃん貫通シーン行きまーすっwヒャハハ…」
乙女「むーっ!、むむ〜っ!!んふーーっ!!…」
ヤd「うぉっ?!、コラッ、このっ!暴れんなっ…オイそこ押さえろっ!」
ヤc「(乙女の秘所の前にデシカメを近づけて…)ハーイ貫通前の乙女ちゃんのおマンコでーすw、
   今にもチンコを今か今かと待ちわびてビチョビチョでーす、クパァクパァ(指で大陰唇を広げたり閉じたり)w
   オッ?クリちゃんもピンピンに勃起してまーす ヤーラシーw…、
   チュプチュプ(クリを唇で咥えて舌で舐め回してる…)」
乙女「んふ――――――ッ!!」(腰を浮かせて潮を盛大に噴き出し絶頂した…)
90名無しさん@ピンキー:2010/04/04(日) 19:02:46 ID:PBrqRcnM
91名無しさん@ピンキー:2010/04/05(月) 00:17:40 ID:rD27IPPo
本スレで投下されてるジョーク改変ネタ、こっちに落としてもらえると助かるんだよな
向こうは流れが早いから、少し目を離すと、すぐに過去ログに埋もれるし
92名無しさん@ピンキー:2010/04/05(月) 01:09:31 ID:Ip8p9UHB
アニメスレね
93名無しさん@ピンキー:2010/04/05(月) 09:42:34 ID:7s5nBkQe
それならこっちで言うより本スレで言った方が良いんじゃ
当人がこっちを見てるとは限らないし
94名無しさん@ピンキー:2010/04/05(月) 14:27:40 ID:LaFHKHmM
ゲームじゃなくてアニメの方が本スレっておかしくないか?w
95名無しさん@ピンキー:2010/04/05(月) 15:48:47 ID:W8lNfxQ2
花山院×心
花山院×止
花山院×刹那
花山院×ゆう

ロリひんぬーパラダイスで先輩歓喜!
96名無しさん@ピンキー:2010/04/05(月) 18:25:42 ID:Ip8p9UHB
>>94
アニメスレとは言っても三作全部話すし、ニート数人が貼りついて気持ち悪いことしてるよ

>>95
勇気×心 は見たくないよな
97名無しさん@ピンキー:2010/04/05(月) 23:17:16 ID:mv36YWMG
誠・花山院×心 で、二穴サンドイッチ(対面騎乗位→駅弁みたいに抱え抱き風)が
見たい
98名無しさん@ピンキー:2010/04/06(火) 06:16:20 ID:1VG6HbBl
スクイズはエロより純愛が読みたい
Reincarnationはもう二年も止まったままか
99名無しさん@ピンキー:2010/04/07(水) 20:04:27 ID:bMviAv/f
自分も三馬鹿スレからの作品…とは言えるほどのモノでもありませんが…
ここに移させて下さい

196 :名無しさん@初回限定:2010/03/26(金) 09:44:34 ID:2VlDCb2L0
夏美, もう、あたしたちも混ぜなさいよ
来実, みなみちゃんだけずるいー
誠, お、おい……
夏美, 何よ、伊藤だってもうこんなに……
誠, うあ……
みなみ, ちょ、ちょっと……夏美ったら
来実, きゃは。じゃあ、あたしも……んんっ
みなみ, い、伊藤っ。あたしが先だったでしょ

◎ここからの続きを自分で書いたのをここに移します

遠山・松平・レイパー「チ―すっ、邪魔するよー」
遠山「オッ、もう始まってるミテーだな」
三馬鹿「?!、キャッ!!(慌てて前を隠す)……」
誠 「…遅かったね、もう始めてるよ…」
松平「へへへ…選り取りみとりだぜ…、オイ伊藤『あの薬』飲ませてあるよな?」
誠「…さっき飲ませたジュースにしっかり入れてあるよ…そろそろ効いてくるかな?…」
夏美「ま、誠…さっきのジュースって…一体…?!(ドクン!)はうっ!」
来実・みなみ「ふ、ふあぁぁ…身体が…アソコが…あ、熱いよぅ…」
レイパー「フヒヒ…効いてキタ効いてキタ、ホラしゃぶれよ、コレが欲しいダロ?w」

夏美「んむぅーっ!(最早、目は虚ろで泰介の屹立を喉奥まで飲み込んでる…)」じゅぷっ!、じゅぼっ、ちゅるっ!
レイパー「むひょ〜っ!、こ、コイツはタマンね〜ぜっ…オラ出すぞッ、飲めっ…うぁぅっ!」ビュグぅウゥッ!!
夏美「?!、んんぅんうぅぅ…ゴクッ…ぶぁっ!、カハッ!…んはぁあぁぁ…」
みなみ「ハァ…ハァ…な、夏美ぃ…イ、イヤァ…(遠山に後ろから羽凱締めな感じで嬲られている…)」
遠山「ヒャハハ、澤永ァ、オメー早過ぎw…うぉ、柔らけぇ、…へへへ、ビショビショだな?こっちも」
(みなみに愛液で、びしょ濡れの指を見せ付けた…)
みなみ「い、いやぁ…」
松平「おい澤永、ちょっと代れ…ククク、胸でけぇなぁ小泉ィ?…ま、桂程じゃないが」
(夏美の胸を鷲掴みにして捏ね回している)
100名無しさん@ピンキー:2010/04/09(金) 09:45:29 ID:NoyRDVvk
SSというより脚本っぽいなw
101名無しさん@ピンキー:2010/04/09(金) 17:01:08 ID:0gzuWR4N
カットされたシーンをベースに誰か書かないかな
乙女が路夏にいじめられるというのを
102名無しさん@ピンキー:2010/04/09(金) 18:12:09 ID:pmSuLzP0
誠×七海の補完でも良いな
10348:2010/04/09(金) 18:18:41 ID:kqFWstLK
一応路夏の乙女への復讐物書き続けてるが、二次とは言え普通に出していいのか
ちょっと怖くなってきたな……
6〜7割は出来てるとは自分でも思うが、まだまだどうなるか(結末はほぼ決定)
何度も言うが、本当に救いがない 
104名無しさん@ピンキー:2010/04/09(金) 23:26:40 ID:0gzuWR4N
>>103
俺は乙女好きだからあまり酷いと凹むかもしれないし、
作者が好きなものを書けばいいんじゃない?
人の好みを気にしてたら何も書けないよ
逆にその救いのなさで書く人が増えて盛り上がるかもしれないしw
105名無しさん@ピンキー:2010/04/09(金) 23:29:54 ID:0gzuWR4N
>>104
誤 凹むかもしれないし

正 凹むかもしれないが
10648:2010/04/10(土) 00:25:59 ID:p73PofwJ
まあ、ある意味自己中でないと書けないのはその通りなんだが、
モノには限度ってのがあるだろうからなあ
でも頑張って書くよ 気長に待っててつかぁさい(さすがにクロイズ発売
みたく1年以上延期にはならないがw)
107名無しさん@ピンキー:2010/04/10(土) 08:57:48 ID:qK4cOAKn
タイトルとか先に決めといて、イヤならNGワードにぶち込めって言ってやればいいだろ。
108名無しさん@ピンキー:2010/04/10(土) 18:56:17 ID:AcxU4A1z
「う、う〜んここは?マジカルハートどうしてここに?」
目を覚ました花山院はどこかの地下室のようなところで縛られていた
「あっ、やっと起きたね花山院先生、いまからオシオキが始まるところだよ
覚悟はいい?」
「おいおい、俺がいつマジカルハートにオシオキされなきゃいけないことをしたんだよ」
「うるさい、卯月ちゃんという彼女がいながら八江ちゃんにも手を出した先生には二穴サンドイッチの刑
が待ってるよ。そのためにほらマジカルペ○スバン○これさえあれば>>97のリクエストにも応えられる優れもの」
「いやいや、絶対にそんなリクエストじゃないし第一俺じゃ男のおれだったら二穴サンドイッチなんてできっこないぜ」
「甘い、マジカルハートの魔法の力を甘く見ないで、既にマジカル肉体改造で処置は完璧だよ、
あ、ちなみに後ろにいるのは誠君、もうマジカル脳洗浄で先生とHすることしか考えられなくなってるよ
じゃあ早速はじめようかそれっ」
そういってステッキを振り回すすと花山院の服が消え去ったと同時に体が不思議な力で動かなくなっていた
これもマジカルハートの魔力の生み出した技なのか……と考えているうちに目の前には洗脳された誠が
後ろには用意周到なマジカルハートがいて二人に挟まれた状態にになっていた。
逃げ場などない、助かる見込みなどない花山院に絶望が浮かび上がる、
花山院恭一の淫獄が今まさに始まろうとしていた。
「アァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」



>>97さん本当に申し訳ありません今の自分にはこれが精一杯です。
謝りはするけど反省はするつもりは無い

>>106
楽しみにしながら気長に待ってます
109名無しさん@ピンキー:2010/04/11(日) 02:28:46 ID:MUc89riE
マジカル脳洗浄だよ★ミ
110名無しさん@ピンキー:2010/04/11(日) 18:38:06 ID:cUfhpJzZ
>>108
いいぞ
もっとやれ
111名無しさん@ピンキー:2010/04/19(月) 22:37:13 ID:rNFTsPqS
知恵「まったく!女装が趣味だったなんて、姉として恥ずかしいわね!」
勇気「はひ…すみません…」
知恵「あ、ある程度可愛いのは認めるけど…もうしない事!わかった?」
勇気「わかりました…」
知恵「返事は!」
勇気「うぅ……わんっ」
知恵「一回で良いって言ったっけ?」
勇気「うぐっ…………わん、わん、わんっ」
知恵「よし。」
勇気(何がよしだ、くそっ…)

知恵「じゃあ、全裸になりなさい」

勇気「…!!??」

知恵「最近の犬は服着るのかしら?早くしなさいよ!」
勇気「ぬ、脱げば許してくれる?」
知恵「いいから早くしなさいよ!」
勇気「…わかりました(ぬぎぬぎ…)」
知恵「早くしなさいよ!」
勇気「(最後にズボン脱いで…っと)…全部脱ぎました」
知恵「…な、なかなか綺麗な肌してるわね、うん、さすが姉ちゃんの弟ね…ゴクリ」
112新たなる仲間1/3:2010/04/22(木) 16:52:12 ID:0dszmYqS
アホな悪ノリ一発。確かにネタとしては使いやすい(苦笑)。(マジころ+クロイズ)

例の部屋にて

「どうしたんですか、店ちょ、もといキャプテン・ヨーコ」
「みんなに集まってもらったのは他でもないわ。あなた達の活躍に
よって、ここ榊野商店街の平和は保たれている」
「みんなって、心ちゃん、じゃなくて桂隊員がいませんが」
「桂隊員は今日は塾のテストがあるから来れないのよ。彼女には私から
後で伝えるから心配要らないわ」
いいのか、こんなんで。

「しかし、敵も手をこまねいているわけではないわ。以前の
ゾンビ事件より困難な事が起こらないとも限らない」
Dr.Sの忠実なる僕、TANAKAにあのエロガスを撒かれて町の住民達がゾンビ化した際は
貞操の危機だった(汗)。

「この前の危機はマジカルハート・ワードの活躍によって辛くも乗り越える事が
出来た。しかし、奇跡は何度も起こるわけではないわ。
私達は偉大なヒロインに頼りきってはいけない。自分の町は自分で守らないと」
珍しく正論を述べるヨーコ。
マジカルハートだけでなく、確かにあのわがままボディの少女にだけ良い格好はさせられない。

「しかしあくまで防衛隊の任務は『防衛』が目的であって、戦闘に必ずしも
秀でているわけではない。そこであなた達には黙っていたけど、対敵戦闘特化要員として
より強力な人材をラディッシュ防衛隊にスカウトしたの」
「それは心強いな。私達の仲間ってわけか」
新たに採用する余裕あるなら私達に払う自給アップしてもいいのに、ケチ店長め。
世界は心の中で毒づく。

「西園寺隊員。今何か思わなかったァ〜?」
「いえ、全ッ然思ってません思ってません!」
本能的危機を感じた世界はブンブンブンと首を振り、全力で否定する。
以前の騒動で減らされた自給がやっと元の760円に戻ったのにまた減給は困るフガー。
NO〜、戦力外通告で解雇はいややめてお代官さまぁ〜!
恐怖のあまり自分のワールドに入る世界。

「まあいいわ。オホン、とにかくこの戦力が加わる事で、チームは以前の100倍は強くなるわ」
「いったい誰なのお母さ、じゃなくて、キャプテン」
すると、ヨーコは意味深な笑顔を浮かべた。

「甘露寺隊員がよく知ってる人達よ」
「え、私の知ってる人?誰なんですかその人は」
「それは見てのお楽しみ、うふふふ」
モニター画面が消える。
113新たなる仲間2/3:2010/04/22(木) 16:53:31 ID:0dszmYqS
「まさか花山院先輩かな…」
「防衛隊は男子禁制のはずじゃなかった?それに『たち』って事は
複数いるって事じゃないの?」
「男でも先輩ならOKだけどさ。妹の八重はまだ小さいし乙女は私が防衛隊員だって事は知らないはずだし」
「苦手なあの先輩だったりして」
「いや、足利と一緒にやるのはちょっと……確かに心強いかもしれないけどさ」
そうこうしているうちに部屋にヨーコが入ってきた。

「紹介するわ。入ってちょうだい」
ヨーコの呼びかけに、新たな隊員が入ってくる。
そして、良く知るその姿に七海は口をあんぐりとした。
「石橋伊穏です。筋肉には自信あります」
「吉良洋佳です。邪眼で敵を打ち滅ぼします」
「渋川津々美です。えーと、アフロと情報攪乱が得意かな」

「部長たち……どうしてこんなスチャラカ隊なんかに」
「せっかくの才能を無駄にしてはいけないと、この人に説得されちゃってさ」
「まあ自給もはずんでくれるっていうし、暇潰しにいいかなって」
「そうそう」
確かに頼りにはなりそうだけど…… コスチューム、似合わねえ。
つうか、断れよ。そう心の中でツッコむ隊員たち。

「ゆうちゃんの純潔も私達が守ってみせるわ!」
「あの子は神が与えたもうた……天使よ」
「彼を脅かすヤツは全て敵よ!悪魔にだって負けないわ」
「勇気君は私達のものよ。おー!」
アブない目つきになる伊穏・洋佳・津々美。
あのー、それってまるっきり防衛と関係ない事じゃ……

こうして、隊員たちに新たな仲間が加わった。
しかし、敵の野望が費えるその時まで、彼女達の戦いは終わらない。
負けるな、ラディッシュ防衛機動部隊!平和を掴むその日まで!

(つづかない)
114新たなる仲間3/3:2010/04/22(木) 16:54:01 ID:0dszmYqS
おまけ

「最近七海姉ちゃん、元気ないんだ」
「八重ちゃんのお姉ちゃんって確かうちのお姉ちゃんと同じ高校だったっけ?」
「うん。退部しようかってブツブツ…… あんなにバスケ好きだったのに」

(おしまい)
115114:2010/04/22(木) 17:06:37 ID:0dszmYqS
しまった、八重じゃなくて「八江」だったな……イージーミス
ギャグなら笑えるが、本編は笑えないらしい……
116名無しさん@ピンキー:2010/04/23(金) 00:10:35 ID:KmqPkrRR
絶望先生ネタをスクイズに組み合わせたら何かあってたw

言葉「誠くんが西園寺さんを選んだというなら仕方ありません・・・」
誠「・・・ゴメン。でも言葉なら…きっとほかに良い彼氏が見つかるよ・・・」
言葉「…ええ、いつか私も他の人と結婚すると思います…誠くんに一つお願いしてもいいですか?」
誠「な・・・何?!」
言葉「私、自分が産んだ最初の子に『誠』って名前つけたいんです!!・・・それでその誠に…うふふ・・・」

…誠は何か背筋に寒いものが走る気がした、適当に相槌を打った後足早にその場から立ち去る。
…それ以後、言葉は彼や世界に構わなくなった・・・そして十年ぐらい後の同窓会にて・・・

誠と世界が久しぶりに会った乙女たちと挨拶をしていると、子供を連れた言葉がやってきた。
言葉「西園寺さん、うちの息子の誠です。よろしく。」
乙女「え?!うちの息子も誠っていうんだけど・・・」
光「乙女も?!うちも誠って名前にしたんだけど・・・」
七海「・・・うちの娘も誠・・・」
刹那「・・・ねぇ、世界“だけ”子供の名前が誠じゃないんだよね。」

世界「・・・誠、なんでみんなあんたと同じ名前を子供につけたのよ!!」
誠「知らないよ!!名付け親になったわけじゃないし・・・」
117名無しさん@ピンキー:2010/04/23(金) 09:34:05 ID:qxDAUEXr
種つけただけだよな

118SINGO:2010/04/24(土) 03:12:30 ID:6RnCSlfL
どうも。
>>57-61の続きが書けたんで投稿します。
舞台はクロイズの闇堕ちEndがベースです。
前回よりさらに救いようが無いです。

【破局の妖精】第二部
 〜Falling Down〜

※ネタバレ注意
※鬱注意
119SINGO:2010/04/24(土) 03:14:06 ID:6RnCSlfL
【破局の妖精】第二部
 〜Falling Down〜

僕は、ケーキ屋『スイーツおおはら』に入った。
レジには看板娘の黒田光がいた。中学時代からの友人だ。
「いらっしゃいま……あ、足利…」
来店してきた客が僕だと知ると、とたんに黒田は表情を曇らせた。
「レモンカスタード3つ」
「えと、こちらで御召し上がりデスカ?」
黒田は、ぎこちない笑顔で対応してきた。お世辞にも営業スマイルとは呼べない作り笑いで。
それもそのはず。黒田は僕に負い目がある。かつてのフレンドリーな雰囲気は、今は見る影も無い。
「テイクアウトで」
早々に用件を済ませて帰りたかった。そもそも姉ちゃんの命令じゃなければ、こんな所には来ない。
「……繁盛してるらしいな」
「…そう見える?」
きっと今の僕は、汚物を見るような目で黒田を見ている事だろう。
「いや、夜の仕事が、だよ。路夏から聞いた」聞き出した。
「!!」
黒田は、伊藤に好意を持つ女に、片っ端からセフレ権を売り付けているらしい。さらに、
「伊藤ん家でセフレを集めて、毎晩セックスパーティしてるらしいじゃないか」
それ自体は、どうでもいい事だ。僕には関係ない。好きにすればいい。
けど、そこに路夏を巻き込んだのは許せない。
黒田は伊藤とグルになっていた。僕の知らないところで。
「いつだったかな、路夏がウチに来たよ。夜の仕事で」
久しぶりに唐突に僕の家を訪れた路夏は、見るも無惨な姿に変わり果てていた。
路夏は、どこに出しても恥ずかしくないデリバリヘルス…いわゆる売春婦に成り下がっていた。
路夏を僕のもとに派遣したのは、おそらく黒田の提案だろう。
黒田にしてみれば罪滅ぼしのつもりだろうが、結果、僕と路夏との亀裂はさらに深まった。
「黒田の事、本当の友達だと思ってたのに。僕と路夏の仲を応援してくれてるって思ってたのに」
大体、本当の友達なら水商売から手を引かせるべきなのだ。それを黒田はしなかった。
黒田は、友情よりも自分の利益を優先した。
「聞いて足利。喜連川さんは自分から…その…」
「そんな言い訳、本気で信じてもらえるとでも?」
120SINGO:2010/04/24(土) 03:15:44 ID:6RnCSlfL
永い時間が、あれからずいぶん過ぎた気がする。みんな幸せになれ、と願っていたあの頃が懐かしい。
学園祭が終わったあの日、幾人もの恋が破れた。そこには偽りの幸せしか無かった。
僕は全てに失望していた。榊野学園の人間は、どいつもこいつも救いようが無い。
自分に好意を持つ女性を片っ端からセフレにしている伊藤。
その浮気者を、原形をとどめない程に美化して盲信し、現実から目を背けている桂。
伊藤に騙され、今なお伊藤の彼女面している西園寺。
モテる伊藤を利用しセフレ斡旋して金儲けをしている黒田。
僕の全てを疑い、当て付けるかの様に伊藤のセフレに成り下がった路夏。
何より、路夏を繋ぎ止めておく事ができず、路夏を伊藤に寝取られた僕自身。

…路夏。いつだって僕は本当の気持ちを君にぶつけていた。一体、何が足りなかったんだ?

僕はケーキを受け取り、足早にスイーツおおはらを出た。
そこへ、
「あ。もしかして、ゆう君じゃない?久しぶり〜」
綿女学園の制服を着た少女が、僕に話し掛けて来た。
「誰?」
「二喜で〜す。って!私のこと忘れたの!?」
「今、思い出した」
数カ月前だったか、初対面で僕をラブホテルに誘った援助交際女。しかも、
「学祭で、僕と路夏を破局に追い込んだ元凶な」
「非っ道〜」
当時、僕と路夏の仲はぎくしゃくしていた。路夏は、僕が黒田や桂と浮気していると誤解したからだ。
そこへコイツが来て、僕とラブホに入った事を暴露したのだ。
それがトドメとなり、僕と路夏は破局した。そして現在に至る。
「もしかして、あの時の事、まだ怒ってる?」
「別に。アンタに悪気は無かっただろうし」
むしろ、二喜の誘いに乗って、のこのこラブホについて行った僕が悪い。
結局、その時は二喜を拒んで性交しなかったけど、それでも路夏は僕を許してくれなかった。

二喜はスイーツおおはらには入らず、僕について来た。
「…?ケーキ買いに来たんじゃないのか?てか僕に何か用?」
「久しぶりに会ったんだし、ホテルでゆっくり話しよっ」
いきなり援交かよ。こんな奴のカモにされるなんて、まっぴら御免だ。
「カネ目当てなら、おおはらの黒田に頼めよ。あいつ、デリヘル養成してるからさ」
「いらない。もう援交は止めたの」
「セックスが目当てか?なら、なおさら黒田に頼んだ方が良い。いい男を紹介してくれる」
「んもう!私は、ゆう君とがいいの!!とゆ〜訳で、ゆう君ん家にお邪魔してもいい?」
「だが断る」
121SINGO:2010/04/24(土) 03:17:06 ID:6RnCSlfL
《路夏 Turn》

夜の伊藤宅では、目を覆いたくなるような宴が繰り広げられていた。
もし、この光景を足利勇気が見たなら、参加者の神経を疑うだろう。
セックスパーティ。四人とも裸で楽しんでいる。
一人は男。伊藤誠。
三人は女。喜連川路夏、黒田光、そして甘露寺七海。
伊藤は早くも新しいセックスフレンドに甘露寺を加えていた。
「ああっ…駄目っ、伊藤ッ…」
「綺麗だよ、七海」
伊藤は、女性を虜にしてしまう自慢の欲棒で甘露寺を攻めたてる。
「アレをやられると、たいていの子は落ちちゃうよね」
「誠の奴、本気で七海を落とす気かぁ…」
路夏と黒田は、伊藤と甘露寺の性交を観戦していた。
「喜連川さんはいいの?このままで」
突如、黒田が真顔になって路夏に尋ねた。
「何が?」
「私が言うのも何だけどさ。喜連川さんだけでも止めた方がいいんじゃない?こんな事」
知る者が聞けば、何と薄っぺらい言葉だと思うだろう。
伊藤と組んでセフレ斡旋しておいて、今さら体だけの関係は良くないとか宣う。
「今からでも足利とやり直せるんじゃない?」
「私は…無理かなあ。手遅れかも」
諦めたように答える路夏。
だが実のところ、心のどこかで楽観していた。路夏とて本気で手遅れだとは思っていない。
問題を先送りにしているだけだった。
この時、もし黒田の助言に従って行動を起こしていたなら、路夏は勇気とやり直せたかも知れない。
だが、路夏は惰性的な快楽に流され、幸せになる為の努力を怠っていた。
今日できる事は明日にでもできる。幸せになる為の手段ならいくらでもある、と。
この時、路夏は気付いていなかった。
そこにはにタイムリミットがあるという事を。

後日。
路夏の携帯電話にメールが届いた。送り主を確認する路夏。
『from 足利勇気』
路夏はメールを読み始めた。その目が大きく見開かれる。

 ごめん。まず、こんな形で別れを告げなければいけない事を謝っておく。
 でも路夏は伊藤を選んだから、その時点で僕達の関係は切れたと思ってる。
 ただ、これだけは報告しておきたかった。
 路夏は伊藤とよろしくやってるだろうし、そろそろ僕自身も楽になっても良いと思うんだ。
 だから僕の初めてを路夏以外の女の子にあげる。
 路夏は何とも思わないよね?僕が路夏を必要としなくなっても。

『添付ファイルあり』
写真メール。路夏は急いでファイルを開いて見た。
「…!!」
写真には、勇気と自分以外の女が、裸で抱き合っていた。
122SINGO:2010/04/24(土) 03:18:36 ID:6RnCSlfL
《勇気 2nd Turn》

「ロカって、ゆう君を振ったあの子?そんな写メール送って、イシュガエシってやつ?」
「別に。もう、どうでもよくなった」
僕は二喜とのベッドインを写真メールで送信した。宛て先は路夏。
かつて僕は学園祭で、コレと同じ事を路夏と伊藤にされた。
あの日、路夏は僕を信じず、当て付けるように伊藤とのベッドインを写真メールで送りつけてきた。
そして今、僕と二喜は同じ事を路夏にしている。
こうする事で何かが変わるとは思えない。路夏に当て付けるつもりは無い。
路夏の気を引けるとも思えない。まして路夏が嫉妬してくれるかも…なんて自惚れにも程がある。
ただ、あの時の僕の気持ちを、多少なりとも理解して欲しかった。路夏を僕と同じ状況に立たせる事で。
…いや、これも自惚れか。
「そろそろ一緒に気持ち良くなろっ」
二喜がねだってきた。
…もう路夏の声を思い出せない。
なんでだろう?あんなに好きだったはずの、絶対忘れるはずのない路夏の顔も、思い出せない。
覚えているのは、去っていく路夏の後ろ姿だけ。
かわりに、二喜と初めて出会った日の事を思い出す。初対面で二喜は僕をラブホに誘ってきた。
あの時は路夏に執着してたから二喜との性交を拒んだけど、今の僕なら平気で路夏以外の子を抱ける。
僕は二喜の両足を広げると、互いの性器を密着させた。
「うぷ」
突如、体に異変。
僕は二喜から離れると、急いでトイレに駆け込んだ。
「う、おオええェェ…」
胃の中のものを全て便器にぶちまける。
「どうしたの!?ゆう君」
二喜が駆け寄ってくる。
「ごめん。女の子に恥をかかせて…」
どんな理由であれ、性交を前に嘔吐するなど、最大の侮辱行為だ。二喜は心底、頭にきただろう。
終わったな…。路夏の件といい、肝心な時に相手を怒らせて。そして破局。また今回も…。
と、背中に温かい感触。二喜が僕の背中を撫でさすっていた。
「んもう。体調が悪いなら、最初から言ってよね」
意外にも二喜は優しく、僕を介抱してくれた。
「怒ってないのか?」
「別に。ゆう君、悪気無いんでしょ?私こそ気が付かなくて。無理に誘ってゴメン」
そうじゃない。そうじゃないんだ。
二喜を抱こうとした時、土壇場で路夏の笑顔が脳裏に浮かんだ。結果、体が二喜を拒絶した。
ぶざまだな…。この期に及んで、まだ僕は路夏に未練があるみたいだ。
ごめん、二喜。僕は情けない、最低の男なんだよ…。
二喜はバスタオルで僕の口元を拭ってくれた。
「二喜は優しいな」
一方、路夏との想い出に優しくされた記憶は一切無い。全て誤解と擦れ違いで占められていた。
二喜が僕を抱きしめる。
「ごめん。もう少し、このままで…」
二喜の腕の中、僕の意識は深い眠りに落ちていった。

The End
123SINGO:2010/04/24(土) 03:25:12 ID:6RnCSlfL
終わりです。

勇気のパートナーは言葉にしたかったのですが、それだとBad Endにならないので、二喜にしました。


【おまけ】

「もしもし葉音?ちょっとアレどういう事!?何がって?葉音がくれたアレよ!そう媚薬!
副作用無いってゆうから試したのに!ゲロゲロ吐いちゃったじゃない!私じゃなくて、ゆう君が!
そんなはずも何も、実際、吐いちゃったの!!量? 2〜3滴、紅茶に混ぜただけよ!
もう少しだったのに…何でも無い。とにかく、この埋め合わせはキッチリしてもらうからね!」
124名無しさん@ピンキー:2010/04/24(土) 03:54:40 ID:u5p/SP3V
「クロスデイズ」の「贄と成就」ED(勇気女装の末に勇気は路夏と結ばれるが言葉は澤永にレイプ)
の後、「鮮血の結末」手前の言葉いじめに事態が展開、それを知った勇気が路夏とともに、
言葉を助けるために奮闘するっていう話を考えているんだけど…上手くまとまるかなあ。
125名無しさん@ピンキー:2010/04/24(土) 07:30:36 ID:XdVNmBGU
>>124
路夏主導でならなんとかなるんじゃね
126名無しさん@ピンキー:2010/04/28(水) 11:52:05 ID:IvCcNJZb
>>118-123

誠とセフレ達の日々や、路夏・光・七海との4Pを、
もっと濃密に読んでみたくなったw
127名無しさん@ピンキー:2010/04/28(水) 20:18:06 ID:7dIfhMFZ
最近クロスデイズをやり始めたら、スクールデイズ熱が前回以上に完全に再燃してしまいましたw
そしてこのスレに流れ着いてログとかでSS色々読みまくっているうちに自分でも書きたくなり……
そんなわけで初めてのジャンルですが投下してみようと思います。

乙女×言葉

視点は基本的に【 】のキャラ

何度かに分けて投下予定で後半にエロ描写あり?

クロスデイズで判明した、みなみ(いじめっ子3人組のうちの一人)は百合好きで
そういう漫画持ってるという設定拝借

128名無しさん@ピンキー:2010/04/28(水) 20:18:56 ID:7dIfhMFZ
【小渕 みなみ】

「う、うわ……この漫画の子達、女の子同士でキスしちゃってるじゃないのよ……」
「そんなのまだ序の口だって。ほらっこっちの本なんてもっと凄いんだから」
「うぅ…… みなみ〜 もうおなか一杯だよぉ」

学園祭を1週間後に控えた土日休みの1日目。
学園祭の準備を桂に押し付けて暇してた私は、同じく部活が休みで暇そうにしてた乙女を家に
呼んで時間を潰してた。

……だけど乙女ったら止める間もなく私の百合漫画本を読み始めだして
初めてみる世界に目を白黒させているんだもん。

「いやぁ〜 乙女がいきなり私の本読み出した時はどうなるかと思ったけど
 意外とそういうの好きみたいで良かったぁ」
「べ、別に好きなんかじゃないわよ! ……まぁ、意外と面白いと思わなくもないけど」
「良かったらアニメのDVDとかおすすめのをいくつか見繕って貸してあげるから
 これを機会に百合の世界にどっぷりハマっちゃいなよ」
「もうっ みなみったら私を仲間に引き込もうっていう魂胆丸見えじゃないのよっ」
「だってぇ〜 一人じゃ寂しいんだもん。そういうの苦手な子とかにバレたら最悪だしさ」

正直これがきっかけで乙女に嫌われないか冷汗物だったけどそんなに抵抗を感じてないみたいで本当に良かった。
しかも布教するチャンスまで来るなんて。

「はぁ……まさかみなみにこんな一面があったなんて……」
「え、えへへ……それで乙女、こういうの嫌な子とかもいそうだし、この事は秘密にしてほしいんだけど……」
「はいはい、誰にも言わないわよ」
桂とかには冷たい乙女だけど、何だかんだで私達友達には露骨に立場が悪くなるような事はしない
気遣いをしてくれている。
そんな一面を見せてくれながら漫画に没頭して頬を染めている乙女を見ているとなんだか愛おしくなってきちゃうな〜

「ねぇ乙女、こういうのって実際にやったりするのは興味ある?」
あぁ……ダメだと分かってても欲求がぁ〜
「はぁ? みなみ、あんた何言ってるの?」
「私の方は大歓迎かも〜」
「え? キャッ」
思わず乙女に詰寄って体に腕を回すとギュッと抱きしめてしまう。

「ちょ、ちょっとみなみ!? 顔近いってっ」
「乙女の髪っていい香りだね」
「ど、どうしちゃったのよっ」
女子同士でふざけて抱きついたりする事はよくある事だけど、今の乙女は
そっち系の漫画を読んでいるせいでかなり意識しているみたいだ。
うぅ……やっぱり乙女って可愛いよぉ〜

「もうっ いい加減にし……」
しばらくしてさすがに色々と危機感を感じた乙女は本気で振り解こうとしたから
その直前にあえてこっちから解放してあげる。
「なんてね、どう? 迫真の演技だったでしょ?」
「も、もぉっ みなみぃ〜」
「えへへ、ごめんごめん」
さすがにあれ以上やると乙女に嫌われてクラスで気まずくなっちゃうかもしれないしここは我慢しないと。
それにしてもやっぱり乙女って可愛いしカッコいいしあこがれだなぁ……

「そういえば乙女の使ってるシャンプーだけど……」
「あぁ、これは妹の可憐が……」
すかさず話題を変えたら乙女は上手く流されてくれて、なんとか百合の話題はうやもやになって
後は他愛もないおしゃべりに明け暮れたんだけど、その間も乙女はずっと漫画を読んで赤くなっていた。
129名無しさん@ピンキー:2010/04/28(水) 20:19:31 ID:7dIfhMFZ
【加藤 可憐】



「お姉〜 そろそろ晩御飯だよ〜」
「分かった今行く〜」

「まったくもー お姉ったらせっかくの部活も無い日曜日だっていうのに一日中部屋にひきこもってアニメ見ているだなんて。
 もしかして今話題のオタクって奴ですかい?」
「う、うっさいわねっ 借り物のDVDだからとっとと見終わる必要があったのよっ」

そうは言っても大量に借りている時点でアニメに興味あるっていう事なんだし
ひょっとしてお姉、昨日遊びにいった友達に大分染められてたりして〜

「今のおねえの姿を先輩が見たらどう思うやら〜」
「か、可憐っ もし伊藤に変な事吹き込んだりしたらぶん殴るわよ」
「もぉっ おねえったら本当に先輩絡みの事になると人が変わるんだから」
「あんたも人の事いえないでしょ」
うしし、これは私が一歩リード出来るかもしれないね。

……いや、まてよ。
もしかしたら先輩っていたるちゃんに付き合って意外とアニメ見てるかもしれないし
こういうの知っておいた方がいいのかも。
ま、まさかお姉それに気づいて慌てて見てるんじゃ!?

「ねえ可憐、ちょっとこっちに来て」
その時お姉に呼ばれて、ひとまずその考えはおいといてお姉のそばに歩み寄る。
「あ、うん、なに? うわわっ お姉!?」
するとお姉はいきなり私をギュッて抱きしめてきた。
「ちょっ お姉どうしちゃったの? 恥ずかしいってば」
「う〜ん、やっぱり妹相手なせいかそんなに変な感じにはならないわね……それにしても相変わらず大した胸だこと」
「離せ〜 この貧乳オヤジお姉〜」

お姉にギュッてされるのって何年ぶりだろう……?
……じゃないっ! いきなりアニメ見まくってたと思ったらこんな事するなんてお姉に一体何が起こったの?
それに私の胸の話する時は、いつもはもっと嫉妬の炎ギラギラなのに……

「やっぱりあの時は気が動転してただけに決まってるわよね。そうに決まってるわ。ありがと可憐」
しばらくお姉の腕の中でジタバタしていたけど30秒位してやっと開放してくれた。

「もぉっ 何だか今日のお姉おかしすぎ〜」
「あはは、ごめんごめん」
こんなんでお姉ちゃんなのをアピールしても先輩の件は絶対最後まで諦めないんだからね。
130名無しさん@ピンキー:2010/04/28(水) 20:20:20 ID:7dIfhMFZ
【小泉 夏美】



「おっはよ〜乙女」
「あ、おはよ〜」

連休明けのダルい月曜日。
登校中にみなみ、来実、乙女と合流した私はいつもどおり4人仲良く他愛もない話で盛り上がってた。
「それで来実ったら昨日彼氏にデートをドタキャンされてね。その腹いせに
 1日中ショッピングに付き合わされて最悪だったのよ」
「もぉ〜 そんな事言っても夏美ちゃんの方がショッピングに夢中だったよぉ?」
まぁ、口では愚痴ってるけど正直そろそろ冬物を見てみたいと思ってた所だし
来実の誘いは願ったりかなったりだったんだけどね。

「誘ってくれれば私と乙女も付き合ってあげたのに」
「そういえば乙女ちゃんは昨日みなみちゃんの家に遊びに行ったんだよね」
「うんうん、色々と面白い漫画読ませてもらったかな」
乙女の奴、そう言いながらやけにうっとりした顔してるじゃないのよ。

「へぇ〜 どんなの?」
「え、えっと……」
「わわわ、乙女、ストーップ」
慌てて来実の質問に答えようとした乙女の口を塞ぐみなみ。

「はいはい分かってるわよみなみ」
乙女はしょうがないなといった様子で来実の質問をはぐらかす。
「えぇ〜 そんな風にごまかされるとすっごく気になるよみなみちゃ〜ん」

はは〜ん。
そういえば前に来実が、みなみの家に遊びに行った時に女の子同士のそういう本があったって
言ってた様な気がするわ。

「みなみ〜 あんた乙女に何か変な事までしちゃわなかったでしょうね〜?」
「え? う、うん。漫画読んだりしてただけだし」
あ、みなみったら少しだけ動揺してる。
「あぁ〜 夏美ちゃんも何か知ってるの〜? 教えて教えて〜」
「来実にはまだ早いの。彼氏で満足しときなさいよ」
「えぇ〜 夏美ちゃんまでズルいよ〜」
やれやれ、まぁ、ここはみなみに貸しを作ってやるとしますか。
131名無しさん@ピンキー:2010/04/28(水) 20:20:39 ID:7dIfhMFZ
そう思っていると……不意に乙女が私に詰め寄ってきた。
そして……
「ほら、夏美 リボンタイが曲がってる」
そう言いながら私の胸元に手を伸ばすと赤いリボンタイを丁寧に整えてくれた。

私はいきなりの好意に少し照れ臭くなってしまって、乙女もどうやら無意識にやってしまったみたいで
整えた直後に素に戻って顔を真っ赤にしている。
「あ、う、うん ありがとう乙女」
「あ、いや、ごめん。 教えてあげるだけのつもりだったんだけどつい手を出しちゃって」
その様子をかたや興味津々に、かたや瞳をキラキラとさせて見つめている二人。
「うわぁ〜 乙女ちゃんと夏美ちゃんラブラブだぁ〜」
「そ、それ位でいちいち突っ込むんじゃないわよっ」
「………………」
「み、みなみもそんなニヤけきった顔で見ないっ」
はぁ……乙女ったらバッチリ影響受けてしまってるじゃないのよ……大した事なければいいんだけど……

「えへへ、乙女って意外と優しい所あるでしょ?」
「ちょっとみなみっ その言い方だと普段の私が冷徹女みたいじゃないのよ」
「だって桂へのいじめっぷりは凄いものがあるしー」
「夏美ちゃんだって乙女ちゃんの次に凄いと思うなー」
ともあれ口直しに桂の話題で盛り上がりながら、乙女に整えてもらったリボンタイをなびかせて
みんなと校舎に入る私だった。
132名無しさん@ピンキー:2010/04/28(水) 20:21:25 ID:7dIfhMFZ
【喜連川 路過】


「加藤、学園祭の準備なんだけどそっちの準備は進んでるの?」
「今日うちのクラス委員休みなせいでまとまらなくてさ……」
「もうっ 言い訳しないでしっかりしてよねっ」
「ご、ごめん……」
最近勇気と上手くいってないイライラもあってつい声を荒げてしまう。

本当は私が素直になれてないだけだと分かってはいるんだけど……
はぁ……どうしてこうなっちゃうんだろう。
「そういえばさー 喜連川って足利の弟と今どうなってるのよ」

自己嫌悪に陥ってるそばから今最も触れられたくない話題をよりによって加藤に
出されて更にイライラは募る。
「か、加藤には関係ないでしょっ っていうか何で勇気の事知ってるのよっ」
「んー 先週の話なんだけど、さっき言ったクラス委員に仕事させるために
 図書室まで追いかけていった時、2年の図書委員の先輩が色々話してくれたのよ」
うわ……最悪だ……
「ねぇ知ってる? その先輩って七海の彼氏なのよ〜。見た感じすっごいラブラブだったんだけど
 喜連川の方はもしかして上手く言ってないんだ?」
加藤は嫌味をたっぷり含んだ笑みを向けてくる。
私、やっぱりこいつの事嫌いだ。

そう思っていると事もあろうに加藤の奴、私の頭に手を置いてきた。
「……喜連川って小さくて可愛いんだし、もうちょっと素直になったら向こうも
 絶対放っておかないと思うんだけど……」
か、加藤の奴っ 私が気にしてる身長の事をっ……

私は思わず加藤の顔を睨みあげた……けど次の瞬間……私は多分困惑の表情を浮かべてたと思う。

加藤の私を見下ろす目はさっきまでの嫌味さは全然なくて
……なんていうか、愛情を込めた目……? っていうのかな?
そういう目で静かに見下ろしていたからだ。
そういえば今加藤が言った「小さくて可愛い……」のセリフは全然皮肉っぽくはなくて
純粋に長所を褒めるような感じに言ってた様に聞こえたけど……

……うわっ な、なに!? 加藤の奴 私の頭を撫で始めてるしっ

え? なに? これ絶対皮肉でしょ? じゃなきゃ加藤がそんな事するなんてありえないもんっ
で、でも 加藤の雰囲気見るとそうじゃない気がする…… で、でもさっきまで
嫌味全開だったのに…… え? え?

「……加藤?」
「…っ……」
どう反応していいのか分からないでとりあえず名前を呼んでみると加藤は正気に戻ったみたいで
慌てた様子で手を引っ込めた。
「や、やばっ 私またっ………と、とにかく明日クラス委員の子が来たら巻き返すから
 余計なお世話なのよっ」
そして捨て台詞と共に逃げる様に部室を後にしていく。
「う、うん あんまりその子ばっかに押し付けすぎないようにね……」

こうして部室には私一人が残された。

……? …?? …えっと、今の何だったんだろ? 千恵先輩にされるのなら分からなくもないんだけど……

……もうちょっと素直になる……が……頑張ってみようかな……
133名無しさん@ピンキー:2010/04/28(水) 20:21:54 ID:7dIfhMFZ
【森 来実】


「全く……昨日は桂が休んだせいで学園祭の準備全然出来なかったじゃないのよ。
 私なんてそのせいで女バスで怒られたし」
「うわ〜 乙女ちゃん可愛そ〜」
「本当、使えない奴だよね〜」
「その分今日はガツンと言ってやらなきゃ」
「今日も休んだらシメてやろうか」

乙女ちゃんと夏美ちゃんのラブラブ事件があった次の日。
ホームルーム前の朝の教室で私達はいつもどおり恋人の話や桂の話で盛り上がってた。
ふっふ〜ん 土曜日にデートドタキャンされた恨み、存分に桂にぶつけてやるもんね〜
覚悟しなさいよ。

その時、教室のドアが開いて私達のクラス委員が3日ぶりに姿を現す。

「あ、あの……おはようございます」

「あーっ 桂ーっ」
「昨日は学校サボってどこほっつき歩いていたのよ」
「すいません、ちょっと体調悪くて……」
「うそおっしゃい、どうせ学園祭の準備めんどくてサボってたんでしょ」
萎縮してる桂を私とみなみちゃんとと夏美ちゃんで存分に攻め立ててやる。

あれ? 乙女ちゃんは随分大人しいけどどうしちゃったんだろう?

「ボソッ(うそ……今まで意識した事なかったけど桂って凄く…………他の子も可愛いけど桂は段違い……)」
あれれ? 乙女ちゃん何つぶやいてるんだろう? よく聞こえないや。

「ほら、乙女も何か言ってやりなさいよ」
「あ、うん …昨日休んだ分、今日からこき使ってやるから覚悟しなさいよっ」
「乙女ちゃん、何だか顔が赤いけど大丈夫?」
夏美ちゃんにせがまれて攻め立てる乙女ちゃんだけど、体調悪いのか気になって何となく聞いてみる。

「え? だ、大丈夫 何でもないわよ」
「こいつっ 乙女にまで病気うつしているんじゃないでしょうね!?」
「こっちは大迷惑だっつーの」
「そ、そんな……」

ともあれ、みんなで更に桂を攻め立ててやろうとにじりよると……
「と、とにかくっ 放課後はみっちり働いて貰うからね!」
乙女ちゃんがそう話を切り上げるとそそくさと離れていってしまった。
とりあえずこの場はここまでみたいな流れになって私達も退散する。
「ま、いっか もう先生来るし」
「ねぇ乙女、本当に大丈夫?」
「う、うん……」

そのすぐ後に先生が来てホームルームが始まったんだけど
その後の授業でも乙女ちゃんは時々桂の後姿をチラチラと見ていた。
桂をどうお料理しちゃうか考えているのかな〜?
乙女ちゃんったらやるぅ〜。
134Otome days:2010/04/28(水) 20:25:15 ID:7dIfhMFZ
【甘露寺 七海】


「よし、必要な調理器具関連も大体光のお店のお古を借りる方向でまとまったね」
「いやぁ〜 接客指導とかスイーツのレシピばかりか道具まで用意して貰って助かるぅ〜」
「おほほほほ 世界や七海達にはその分ユニホームの裁縫頑張ってもらわないとね」

学園祭を今週末に控えて準備に大忙しの放課後。
私達のクラスは喫茶店をやる事になっているんだけど、頼れる委員長の刹那と
家が洋菓子店の光の活躍もあって準備は順調だ。
あえていうなら喫茶店のユニホーム作成がいっぱいいっぱいかな。

「私、ちょっと隣の4組の様子見てくるよ」
「こらー 七海サボる気〜っ?」
「いやいや、女バス関連の出し物の進み具合が気になってさ。 すぐ戻るから」
まぁ、正直針仕事が苦手だっていうのもあるんだけどね。

「部活入ってる人はそっちもやらなきゃで大変よねぇ。いってらっしゃーい」
「うぅ〜 七海の裏切りもの〜っ」

ごめん世界、私の分まで頑張ってくれ。
あえて世界の愚痴を無視して私は4組前に行って中の様子を見る。

「桂ーっ ベニア板なんだけど本番で使うだけの枚数、今日中に全部運び込みなさいよー」
「ぜ、全部ですか……?」

乙女の奴、相変わらず桂をこき使ってるなー。
まぁ、桂は中学の頃から相当な数の男を手玉に取ってたって話だしいい薬かもね。
そう思っていると……

「ほらっ 私も一緒に運ぶからとっとと行くわよ」
「あ、はい。 それならなんとか……」
何だか乙女にしては予想外の行動を起こしていてなんだか凄く意外だった。
クラスの出し物の準備をする事自体は不思議じゃないんだけど
天敵なはずの桂にわざわざ手を貸すなんて普段の乙女らしくないかな……

「それじゃみなみ達はお化け屋敷の壁にかける幕の準備、出来る所まででいいからお願いね」
「ぇー 面倒くさいよ乙女ちゃ〜ん」
「そんなの桂に全部まかせればいいじゃん」

「そ、その桂がモタモタしてるからしょうがないのよっ うちのクラスの出し物は女バスとも連携してるんだから
 間に合わないと私も色々マズいのっ」
「はぁ……ま、乙女も女バス関連で切羽詰ってるみたいだししょうがないか」

教室の残った子達はしぶしぶ了解して、乙女はベニア板を取りに桂とっしょに教室を出てくた所で初めて私に気づく。
「あれ? 七海、どうしたの?」
「あー、うん。うちのクラスの準備が一段落したから様子見に着たんだけどさ。 
 良かったら私も手伝おうか? そっちの出し物は女バスの『あれ』関連だし」
「うわぁ〜 助かる七海〜 男前〜 桂も感謝しなさいよねっ」
「は、はい 甘露寺さん ありがとうございます」
「べ、別に私は乙女と女バスの為にやってるだけで、あんたはついでだから」

桂の手伝いをする様な形になってしまうのは何だかシャクだけど……まぁ、しょうがないか。
135Otome days:2010/04/28(水) 20:25:39 ID:7dIfhMFZ
それから私達は3人でベニア板の運搬を始めた。
「桂、そこから階段だから気をつけなさいよね」
「はい、分かりました」
3人で運ぶからって、ついつい1回あたりの運ぶ板の枚数多くしてしまったけど
さすがに男子ほどスムーズにはいかないな……
女子の中では体格のある私はともかく乙女や桂には相当しんどいかもしれない。

「やれやれ……女子にこんな仕事やらせるなんて、4組の男子ってやる気なさすぎじゃない?」
「全くよ。なんであいつらのために私や桂が苦労しなくちゃいけないのよ」
「え?」
今 乙女にしては少し違和感あるセリフを聞いた様な……

「じ、じゃないっ と、とにかく男子はサボるし桂は使えないしで私も七海も迷惑してるのっ。
 今回の4組の出し物は私らにとってはかなり責任重大なものなんだから
 桂も真面目にやりなさいよねっ」
「は、はい」

……何だか今日の乙女は変だ。
桂を気遣う様な態度を取ったかと思えばそれを慌ててかき消すかの様に
冷たくするのを何度も繰り返している。
そしてそれは最後まで続いた。

「お、終ったぁ〜」
「はぁ、はぁ……」
なんとか今日の分は全て運び込み終わり一息つく私達。
なんだかんだで女バスで鍛えてる加藤はそれほど疲れてないけど
桂は床にペタンと座り込んで肩で息をしている。

「乙女ちゃん お疲れ様〜」
「うっわー 桂とか凄いしんどそうじゃん」
「私達こっち側でよかったよ〜」

戻ってきた私達に乙女のクラスメイト達が声をかける。
……そういえばこっちの作業も女子がメインか……
男子は一体どこでサボってるんだか。

「ほら、桂 汗かきまくりじゃないのよ」
その時、乙女はハンカチを取り出すと桂の頬にそっと当てた。
……まぁ、今日は下手な男子より頑張ったみたいだしいっか。

「乙女〜 桂の心配までしなくていいって」
「そうそう、昨日休んだ罰なんだし」
「ハンカチがもったいないよ」
「べ、別にこれで倒れられたらこっちが迷惑するからしょうがなくよっ」

「加藤さん……ありがとうございます」
「う、うん……」

はやしたてるクラスメイトをよそに顔を赤らめながら桂の顔を慣れない手つきで
そっとぬぐってあげている乙女。
一緒に一仕事やり遂げた一体感みたいなのを感じているんだろうか。

「甘露寺さんも 助かりました」
「あ、うん……」
まぁ、それなら私も多少感じているんだけどさ……
136Otome days:2010/04/28(水) 20:26:08 ID:7dIfhMFZ

………


「ねぇ乙女。最近桂と何かあった?」
「え? ど、どうしたの急に」
その後桂と分かれてた私と乙女は女バスの集りに向かってたんだけど、
どうしてもさっきの乙女の様子が気になって思い切って聞いてみた。

「私の気のせいかもしれないけど、何だか今日の乙女って随分桂の事を気にかけている
 みたいだったからさ……」
「わ、私だっていつも桂をいじめてるわけじゃないわよ」
「そっか…」


「ねぇ七海、桂ってさ……中学の頃本当に男食いまくってたの? そういう所とか見たりした?」
「ああ、前に話したとおり相当噂にはなっていたね」
「実際に見たりは?」
「う〜ん……それはないかな。でも男子から告白されまくってたのは事実だよ」
「ふ〜ん 確かにあいつ、もの凄く可愛いからね」
そう言い、気のせいか顔を少し赤くしながら何か考え込んでいる乙女。
「ボソッ(本当、あいつは可愛すぎよ……)」
最後のセリフはよく聞こえなかったけど、恐らく乙女は中学時代の桂の悪行が
真実か否かを考えているんだろう。
確かに今になって冷静に考えて見ると根も葉もない噂だったのかもしれないし
よく告白されていただけなら悪者という訳でもないかな……

だけど……
「あ、あのさ、もし乙女が桂と仲良くやっていこうとか思ってるのなら私は無理に止めないけど本当にいいの? 
 乙女の好きな人ってあいつと同じなんでしょ?」
「べ、別に私は桂と仲良くなんて……」
「……私のクラスの西園寺世界っていう友達も伊藤の事が好きでさ。その立場上私はあいつとは友達になりずらいかな……」

「あははっ、それを言うならその3組の子と私だってライバルになるのに七海は両方と仲いいじゃん〜」
「んー、まぁ その組み合わせなら二人ともあんまり面識ないし上手く両方とやっていけるからね。
 ……って、ああああ!!」
「ど、どうしたの? いきなり大声出して」
「4組に付きっ切りだったせいで、3組の準備丸投げしてしまった……」
最初は様子見たらすぐ戻るつもりだったけど桂があまりに頼りなさそうだったから
ついつい最後まで手を貸してしまってそのまま忘れてしまってたか……
「あちゃ〜 こりゃ明日世界たちに絞られるなー」
「あはは、いっそ七海も4組になっちゃえばー?」

こちゃ明日は覚悟しないといけないかなー。
そう思いながらもとりあえず今は女バスの部室へと急ぐ私達だった。
137名無しさん@ピンキー:2010/04/28(水) 20:28:44 ID:7dIfhMFZ
とりあえず今回は以上です。
本文投下する時名前欄に何か入れた方が区別しやすいっての途中で気づいたorz
とりあえず急遽考えたタイトル「Otome days」でw
138名無しさん@ピンキー:2010/04/28(水) 21:27:24 ID:J4RfitzN
>>137

百合でツンデレで綺麗な乙女か……ワロスw
139名無しさん@ピンキー:2010/04/28(水) 22:06:16 ID:iR8IY0tl
ホモよりもこういうの作って欲しかったわ
140名無しさん@ピンキー:2010/04/28(水) 22:25:49 ID:pk/3CQ9m
>>137
乙ですー、ええのう
141名無しさん@ピンキー:2010/04/28(水) 22:27:55 ID:TF1CZQcF
>>137

         ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
百合な乙女…いいんじゃあないか……
142127:2010/04/30(金) 19:54:16 ID:KvBQO8io
ゴールデンウィークは予定無し〜
>128-136の続き投稿します。

【Otome days】

※乙女×言葉
※視点は基本的に【 】のキャラ
143【Otome days】:2010/04/30(金) 19:55:53 ID:KvBQO8io
【西園寺 世界】



「刹那ー 委員会終った?」
「うん、今終った所」
「それじゃレッツゴー!」
学園祭前までの最後の1週間も後半に入った放課後。
クラスの出し物の準備も一通り終ったから今日は息抜きにみんなでスイーツおおはらに寄る事になってた。

「世界、こういう時だけは凄く元気。わざわざ会議室まで迎えに来るとは」
「いいんですぅ〜 これは喫茶店の制服作り頑張った自分へのご褒美なんだから」

ここ最近放課後は学祭準備につきっきりだった分今日は張り切って食べるぞー
奮発してケーキ2つ食べちゃおうかな〜

「世界、太るよ」
「もぉ、人の考えてる事にまでつっこまないでよっ」
「フッ 世界の考えている事はお見通し」
誠や桂さんの事とか色々悩みはあるけどその分今日は楽しまなくちゃ。
そう思いながら七海を迎えに刹那と一旦教室に戻ろうとしてたら……

「桂ー 委員会終った?」
「はい、今終った所です」
「それじゃ行くわよ」

何だか凄く身に覚えのある声がして振り向いたら、桂さんがポニーテールの子と一緒にいた。

「あ……西園寺さん」
「か、桂さん……」

うわ……そういえば桂さんもクラス委員だからここに来ると遭遇する可能性あるのすっかり忘れてたよ。
誠の件で何だがちょっと気まずいなー。

「あ、あはは〜 桂さん しばらく振りだね〜」
「はい、西園寺さんは今帰りですか?」
あれ? 向こうは思ったほど身構えてないみたいみたいだけど。

「う、うん、今からクラスメイトの喫茶店行くの。ほら、うちの出し物も喫茶店だし色々と勉強になるかなって」
「世界、さっきまで食べる事しか考えていなかったのに調子よすぎ……」
「うっさいな〜」
もぉ、桂さんとそのお友達の前で変な事言わないでよっ
ほらっ 桂さんったらクスクス笑ってるしっ
144【Otome days】:2010/04/30(金) 19:56:39 ID:KvBQO8io
「そうなんですか、私も今から友達とピュアバーガーに行くんですよ」
「ク クラスでいつも一緒にいる子達がみんな予定入ってたからたまたまよっ」
桂さんのセリフに一緒にいた子がかなり敏感に反応する。
「あ、ごめんなさい」
「で、でも今日は特別よ。何だかんだでここ数日あんたが頑張ってくれたおかげでうちのクラスの出し物も
 余裕持って準備出来てるんだし」

あははっ 桂さんの友達、口ではああ言ってるけど顔を真っ赤にしちゃってるよ。
……桂さんって女友達作るの苦手そうなイメージあるけどああいう感じの子とも仲良く出来るんだ。
そういえば今日はピュアバーガーで新しいメニューが販売開始される日だっけ?
結構うちのクラスでも期待してる子がいて、もともとファーストフードショップが好きな子とか
ミーハーな子だったら今日から早速行きたいんだろうなぁ〜

「い、いいっ? みなみ達がみんな放課後予定入ってて一人で行くのも寂しいから誘っただけだからねっ」
「はいっ 私も加藤さんには学園祭準備でお世話になってるんで、予定が開いてれば喜んでお付き合いしますね」
「う……あ、ありがとう………」
ぷっ、ぷくく、寂しいから桂さんに来てくれだってぇ〜

「フッ ツンデレめ」
刹那もその様子がおかしいみたいで思わず笑っている。
「こ、こらっ そこの可愛いちびっ子も笑わないっ」
「むぅ……気にしているのに、失礼だ……」
「わ、悪かったわよ。 それよりえっと……西園寺世界さん……だよね」
「はい、そうですけど……?」
「ふ〜ん」
桂さんの連れの子、何で私の名前知ってるんだろう?
しかも何だか複雑そうな顔で見てくるし。

「えっと、それが何か……?」
「あ、ごめん、私は4組の加藤乙女。そっちのクラスの七海とは女バス仲間で
 前に西園寺さんの事聞いた事あってたから」
「は、はぁ……」
「私の名前はちびっ子じゃなくて清浦刹那。 覚えておくがいい」
「……分かったわよ。ほら、行くわよ桂」
「は、はい、それでは西園寺さん、刹那さん、失礼します」
加藤さんはそう言うと桂さんの手を取って逃げる様に立ち去って行って、桂さんは気恥ずかしそうに
繋いだ手を見おろしていた。
「……何だったんだろ?」
「さぁ……」


145【Otome days】:2010/04/30(金) 19:56:57 ID:KvBQO8io

「世界ー」
そこに遅れて七海がやってくる。
「教室にいなかったと思ったらここにいたのか」
「あー 七海おそーい」
「いや……むしろ世界が教室で待たないで私の所にやってきたのが原因じゃ……」
うぅ、刹那ったらさっき加藤さんにチビっことか言われたせいか機嫌損ねててちょっと怖〜い。

「それより今世界が話してたのって桂と乙女だよね? 世界と刹那ってあの二人と仲いいの?」
「え、えっと、桂さんとは普通に友達だよ。加藤さんとは今初めて話したけど」
「私も加藤さんと話したのは初めてだけど、桂さんとは委員会で隣だから時々話をする」
「そっか……世界も刹那も桂と仲よかったのか……」
そう言って何か考え込んでる様子の七海。
「どうしたの?」
「い、いや こっちの話。それじゃ光の店にいこうか」
「ふふふ この前仕事をサボった罰としてケーキを1つ奢るがいい」
「うへぇ〜 勘弁してよぉ」
今の質問って、加藤さんと私達が知り合いなのかと思ってしたのかな?
まぁ、細かい事はいいや。
その数秒後には頭の中はケーキの事で一杯になって学校を後にする私たちだった。
146【Otome days】:2010/04/30(金) 19:57:42 ID:KvBQO8io

【清浦 刹那】



「こら澤永キリキリ働く」
「ヒィ〜 助けてくれーっ」

いよいよ学園祭本番前日。
教室の内装を完全に学園祭バージョンに改装するのは授業がない学園祭の直前にしか出来ないからみんな大忙し。
女バス関連の件でどうしても午後から抜けるしかなかった七海の分まで頑張らないと。

そんな中、道具を運ぶために4組の前を通った時にちょっと向こうの様子が気になって中を覗いたら
桂さんが3人の女子に指示されて奮闘していた。

「桂〜 今度はこっちの壁にも布全部かけてちょうだ〜い」
「あ、はい 分かりました」

どうやら加藤さんはいないみたいだけど……確か七海と同じ女バスの子って言ってたから
今頃そっちに呼ばれてるのかな?

「それじゃ私らもそれなりに働きますか」
「今は乙女ちゃんがいないから、いつもより桂に任せられるしね〜」
「でも私達も少し前だったら、こういう状況ならもっと桂に押し付けてたのを考えると丸くなったものだわ」
「あはは〜 私達いい人〜」

うわ……桂さん大変そう。

「あ、刹那いたいたー これどうするー?」
「あ、うん」
ちょっと桂さんが気になったけど、光に呼ばれた私はひとまずその場を後にした。


……その後もあたふたする時間が続いて、すっかり日が暮れた頃になってやっと全ての準備は完了した。
「いやぁ〜 なんとか間に合ってよかったね。さすが我が3組のクラス委員」
「これもみんなのおかげ」
「またまた謙遜しちゃって〜 」
「うぅ〜」
光に褒められて思わず控えめになると世界が悪乗りしてほっぺたをつんつんしてくる。
うぅ〜 恥ずかしい。

「ただいま…っと ありゃ、さすがに準備全部終っちゃった?」
「あぁ、七海おそーい」
「たった今全部終わりましたぁーっ」
「ご、ごめん、結局今日も午前中しか手伝えないで」
「いや、七海は女バスの方が本当に忙しいみたいだったから今回は大目に見てあげる」
何だか今年の女バスはかなり大掛かりな出し物があるとかで1年のリーダー各の七海も大変そうだから
この前に続いてまたお小言言うのも気が引ける。

「女バスの方も準備全部終ったの?」
「何とかね。あとは各々のクラスに戻ってそっちも大丈夫そうなら帰るだけかな」
「それじゃ私達も明日に備えて帰るとしますか」
「……ごめん世界、私もうちょっと用事があるから先に帰ってて」
みんなもうクタクタで、もう今日はさっさと帰って休もうみたいな感じになっている中
私は何となく4組の様子が気になって一応覗いてから帰ろうと思って世界達に先に帰るように促した。

「あ、うん分かった」
「もう遅いから刹那もとっとと用事終らせて帰りなよ−」
こうして七海たちを見送った私は一人4組へと足を運んだ。
147【Otome days】:2010/04/30(金) 19:58:24 ID:KvBQO8io



「うぅ……しまった……4組の出し物はお化け屋敷の迷路だった」
4組の明かりはついたままだったから誰かがいるだろうと思ってとりあえず中に入ってみたんだけど中々先に進めない。
すっかり日が暮れた学校でこれはちょっと怖いかも。
これって本番では電気消すんだよね……?
窓にも垂れ幕が厳重に掛かってて日の光があんまり入らない様にしてるみたいだから
多分今よりもっと暗いんだろうなぁ。
「うぅ……」

少し怖いのを我慢して歩を進めると一番奥から人の声がした。
「うぐ……よいしょっと」
この声って確か加藤さんだよね?
何となく忍び足でそちらの方に向かうとそこには垂れ幕があって、それを少し捲って中を覗くと
加藤さんが桂さんを抱えてベッドに横たわらせていた。
「全く、こんなになるまで働いて……まぁ、散々こき使ったのは私らだけどね」
桂さん、疲れて眠っちゃってるみたい。
そんな桂さんの上から布団をかけてあげてる加藤さん。
……っていうか何でこんな所にベッドがあるの?
「全く、休憩室のベッドを一番乗りで独占するなんていいご身分だこと」
休憩室? そんなの何でここに作ってるんだろう?

「私もちょっと休憩ー」
そう思ってると、加藤さんは桂さんの隣にドサっと倒れこんだ。
そして桂さんの方に寝返るとその髪を優しく撫でる。
「……桂ぁ、あんた本当に可愛いよ。胸もあるし、そんなんで迫ったら伊藤も放っておけないんだろうなぁ」
桂さんはその間も安らかに寝息を立てている。
「あんたとほんの少しだけ仲良くなれた切欠はただ単にみなみの漫画の影響だけど
 実際一緒に行動してみるとあんた意外と良い奴じゃないのよ……でも私とあんたはライバル……か」

……もしかして、加藤さんも伊藤の事を?
私は思わず少し身を乗り出してしまった。
「桂って凄くいい香り……ん?」
それが向こうから見たら垂れ幕が不自然に盛り上がったように見えたみたいで
こっちを向いた加藤さんと目が合ってしまう。

「あ……あ、あんたこの前のちびっ子っ。……え〜と、清浦っ」
「正解。そしておじゃまします」
「覗き見なんてサイテー」
「いえいえ、お昼に大変そうな桂さんを見たから心配になって様子を見に気たんだけど
 何だかラブラブみたいで邪魔しちゃ悪いかと」
「な、何が『ラブラブみたいで』よ」
そう言う加藤さんの顔は真っ赤だ。
「ふふふ あやしい」
「べ、別に桂とはそ、そんなんじゃないんだからっ」
148【Otome days】:2010/04/30(金) 19:59:06 ID:KvBQO8io
「う、う〜ん……」
その時、加藤さんの大声に反応した桂さんが目を覚ました。
「あ……か、桂っ」
「桂さん、おはよう」
しばらく焦点の定まってない目で私達を見つめていた桂さんだったけど
しばらくすると慌てた様子で姿勢を正す。
「あ、お、おはようございますっ」
「っといってももう夜だけどね」

「す、すいませんっ 寝ちゃってたんですね。 学園祭のためベッド勝手に使ってしまって申し訳ありませんっ」
「それは大丈夫。違う所で寝ていたのを加藤さんがベッドまで運んだわけだし」
「え? そうなんですか?」
桂さんはキョトンとした顔で加藤さんを見る。
「あんたベッドの目の前で座り込んで無防備に眠っていたわよ。もし見つけたのが私じゃなくて
 男子だったら絶対ヤバかったわよっ」
「すいません……」
少しキツい口調で加藤さんに怒られシュンとする桂さん。

「でも、加藤さんが風邪ひかない様にベッドに運んでくれて、お布団もかけて、
 それからもずっとついてくれていたから安心」
「そ、そうなんですか? 加藤さん、ありがとうございます」
「た、たまたまよっ」
フッ 加藤さん……分かり安すぎ
「『桂ぁ、あんた本当に可愛いよ〜』」
「え? 清浦さん?」
「こら清浦っ     ……そ、それより眠ってしまうほど疲れてるって事は昼に相当こき使われた?」
慌てた加藤さんが無理矢理話題を変えてくるけど、それは私もちょっと気になってたから話に乗る。


「え、えっと……」
「お昼に3人位の子に色々とさせられている所を見た」
それを聞いて少し複雑そうな顔をする加藤さん。
「あ、でも小渕さんも森さんも小泉さんも、ちゃんと一緒に手伝ってくれましたよ」
「大した量やってないと思うけど……まぁ、私も普段似た様な事してるからあんま人の事いえないか」
「それを言うなら私だってクラス委員権限でみんなをこき使って鬼委員長なんて言ってる人もいる」

とっさにフォローの意図も含めてそんな実情を話したんだけど、どうやら加藤さんにはそれが
かなりツボだったみたいだ。
「ぷっ あははっ マジで!? その自分より大きい子達をじゃんじゃん動かす様子見てみたいわ。
 桂も見習いなさいよね」
「はいっ、是非参考にしたいですっ」
うわっ 桂さんまで変な事言って来るし。むぅ〜

「と、とにかくもう遅いから速く帰ろ?」
「あ、そうですね」
そんな感じでいつの間にか軽く話し込んでしまったけど、のんびりとおしゃべりしてる様な時間じゃない事に
気づいた我々3人はひとまず区切りをつけて教室からの脱出を図る事にした。
149【Otome days】:2010/04/30(金) 19:59:27 ID:KvBQO8io
「あれ? ここ行き止まり」
「ちょっと清浦〜」
「いやいや、申し訳ない」
「で、でもさっきの分かれ道までの道順は間違いじゃないはずなので
 とりあえず戻ってから今度は逆側行ってみましょう」
「清浦〜 お腹すいた〜 ぅぅぅ」
「あ、加藤さんっ その手を着いている所、教室の壁で電気のスイッ……」
パチンッ
「うわわっ、真っ暗で何も見えないじゃないのよっ あ、あれっ? スイッチどこ!?」
「加藤さん……なんて愚かな……」
「う、うっさい」
「加藤さんっ!、清浦さんっ!」
ギュッ
「ここ、こら桂っ だだだ抱きつくな。照れるじゃないのよっ」
「か、桂さんの胸が顔面に……苦しい」

……4組のお化け屋敷迷路、学園祭の出し物レベルとしては十分なのを身をもって知った私達が
各々の家に帰宅できたのは21時からのドラマに間に合うかどうかの時間だった。
150127:2010/04/30(金) 20:05:47 ID:KvBQO8io
今回は以上です。
実際書いてみると、段々一人あたりの文章量が多くなっていく……w
GWはSS作成に没頭して、出切るだけこれ位の投下間隔維持できたらと思います。
151103:2010/04/30(金) 21:59:42 ID:uAxW4Cw1
なかなか面白いな 自分より会話文と心理描写うまいかも…>Otome days
平和だねぇみんな

相変わらずメモ帳使って路夏の復讐物書き続けてるが、60Kb超えてしまった(汗)
5月中になんとか出来るかな?
仮タイトルは『鏡』 当初は出す予定なかったけど言葉を加えた
路夏と後半で関わりあり(覚醒はしないので大丈夫です)
152名無しさん@ピンキー:2010/05/01(土) 19:30:16 ID:KXGDneyt
>>151
おお、遂に完成ですか…
二穴なシーン期待しとります、今は幻となった(FDに微かな期待はしてますが…w)
濾過レイポシーンを…。
153103:2010/05/01(土) 20:28:11 ID:Tv0o4bFn
>>152
…そう思ってると裏切られるですよ(苦笑)
ただ仄めかす描写はしてある
乙女は悪役だけど、物語後半は彼女も切ないかな
あとは勇気と路夏のラブシーンを エロゲー的よりは精神的な繋がり感を
表現できたらいいんだが…
154124=丁字屋:2010/05/01(土) 21:16:56 ID:cDd1N22T
124では名前を書きませんでしたがご無沙汰の丁字屋です。

上手くまとめきらないまま「贄と成就」のアフターを書き始めてみました。
多少強引なところはお目こぼしを(汗
155丁字屋:2010/05/01(土) 21:19:17 ID:cDd1N22T
「贄と成就」アフター

 その日の放課後、僕、足利勇気は図書館に残って路夏からの連絡を待っていた。
午後の授業中に路夏から「部活が終わる迄待っていてほしい」とメールをもらったからだ。
昼休みにも路夏と昼食を一緒にする約束をしていたのだが、
急に女バスの1年生の召集に駆り出されたためにそれが果たせなかったので、
多少帰るのが遅くなっても路夏と一緒に過ごすことは望むところだった。
そしてそろそろ部活も終わる頃だろうかと勇気が思った時、携帯に路夏からのメールが届いた。
しかし、「一年4組の教室に来て」…その一文に、僕は「?」となった。
いつもならこのような場合は、玄関で待ち合わせをしていたし、
それより2組の路夏にも1組の自分にも関わりのない4組の教室に行く理由がわからなかった。
それでも図書館を施錠すると4組の教室に向かった。
4組の教室の前迄行くと、扉の前で路夏が待っていた。
「ごめんね勇気、待たせて…」
そう言って謝る路夏だが、その表情は何かひどくつらそうに見えた。
「路夏、一体…?」
「入って」
言いかけた疑問を遮るように路夏は、僕を教室の中にいざなうと、誰かの席の前迄先導した。
その間路夏はずっと無言であり、その様子にただならぬ雰囲気を感じたけど
、言葉を発せなかいまま僕は彼女についていった。そ
して案内された席の机を見て、僕は愕然とした。
机の上にはマジックによる殴り書きで、
「バカ」
「死ね」
「学校やめろ」
といった、稚拙な、しかしこの机の主を傷つけることのみを目的としている落書きが
びっしりと為されており、更に机の中には目いっぱいゴミが詰め込まれていた。
それはこの机の主が酷いイジメに遭っていることを明確に意味していた。
そしてその落書き一つ一つには吐き気のするほどの悪意が感じられた。
156丁字屋:2010/05/01(土) 21:20:09 ID:cDd1N22T
「ここ、桂さんの席よ」
「!?……か…桂って…」
呆然としていた僕に向けられた路夏の言葉に一瞬混乱するが、
「桂」という単語から一人の女子に思いあたった。
「桂……言葉か?」
僕の問いに、路夏が無言で頷く。
「で…でも、何で桂が…?それに、誰がこんなことを?!」
僕の疑問に路夏がこたえる。
「理由は、伊藤に手を出そうとしているから…。
 そして、桂さんの机をこんなふうにしたのは4組の女子の何人かだろうけど、
 中心になってやっているのは間違いなく加藤…」
「か、加藤って路夏と仲の悪い女バスのヤツか?!」
「うん」
「で、でも何で加藤ってヤツが桂を?それに伊藤って伊藤誠か?
 でも…桂はもう伊藤とは……。もう、何が何だか全然わかんないよ!」
僕は頭が混乱してややヒステリックになっていた。
だか路夏はその疑問には答えず、言葉を続けた。
「ただ、実際に手を出しているのは加藤たちでも、
 一年の運動部女子全体にこの件に協力するよう話が回ってる。
 うちの学校運動部女子の力が強いからそれに逆らって桂さんの味方をしようなんて人はまずいない筈だし、
 桂さんってもともと女子の間で結構嫌われてるみたいだから、
 一年の女子はむしろみんな桂さんの敵だと言ってもいいと思う」
「一年の女子みんなで、こんなひどいことに協力を?」
「そして……これを仕切っているのは甘露寺さん…」
「か、甘露寺って、女バスの甘露寺七海…?」
そう問う僕に路夏は無言で頷く。
しばらく僕は言葉を失った。今路夏が語ったのは、自分と少なからず面識のある人間が、
ひどく残酷なやり方で、やはり自分と面識のある人間を傷つけようとしているということだ。
そのことを、僕は理解できなかった。…いや、そんなことを現実として理解したくはなかったのだ。
しかし、それでも僕気は口を開いた。
「路夏、もっときちんと教えてくれ。今の話だけじゃあさっぱりわからない」
そう、理解できないからといって、これはこのままにしていい問題じゃない…いや、
自分はこれをきちんと理解しなくてはならないと思った。
そして―
「うん。じゃあきちんと説明する…」
157丁字屋:2010/05/01(土) 21:21:49 ID:cDd1N22T
そして路夏が語ったのは―
もともと同じクラスの西園寺という彼女がいる伊藤に桂がちょっかいをかけていることに、
やはり伊藤らと同じクラスで、世界の友人である甘露寺が怒った。
もともと桂のことを嫌っていた甘露寺は、これを機に桂を徹底的に制裁するべく
女バスを中心に一年生の運動部女子全体に声をかけた。
今日の昼休みに急に女バス一年が召集をかけられたのもこのことのためであり、
その際に、桂と同じ4組でやはり桂を嫌っていたらしい加藤が
喜んで桂制裁の実動の先頭に立つことを引き受けた。
ーということだった。

「今日の昼休みに話が決まって…半日もしないうちにこれかよ…」
再度桂の机の惨状を一瞥しながら僕はそう呟いた。
しかし、やはり僕は納得がいかないことがあった。
「それにしても、こんなひどいことに本当に
 一年女子のみんながみんなで協力しているっていう載ってのかよ?」
「うん。さっきも言ったように桂さんを嫌ってる女子ってもともと結構いたらしいの。
 もちろん桂さんを知らなかったりどっちでもない子もいるんだけど…、
 でも甘露寺さんって桂さんと中学も一緒なんだけど、
 桂さんは昔から男に媚びを売ってたらしこんでいたって
 …それで好きな男子をもて遊ばれて泣いていた女の子もたくさんいるって…」
「甘露寺がそう言ったのか?」
「うん。それでみんなそんな子だったら少しぐらいひどい目にあったって仕方ないって…」
「仕方…ない、か…」
僕は路夏の言葉を反復するようにそう言った。
158丁字屋:2010/05/01(土) 21:22:20 ID:cDd1N22T
たしかに僕の知ってる桂は、いつも一人で図書館で本を読んでいたし、
あまり友達がいるようには思えなかったけど、そんなに女子の間で嫌われてたんだ。
だが、それだけでは納得したわけではない。
いや、納得できないことばかりだ。
とりわけ僕の心に引っかかったのは、甘露寺が言ったという、
桂が男に媚びてもて遊んでいたという言葉だ。
僕は桂と関わりを持ったのは、学園祭の頃のほんのわずかな間だけど、
それでもあいつがそんな人間とは思えない。
僕の知ってる桂は、むしろ潔癖と言っていいほどそんなふしだらさとはほど遠い印象があり、
より好きな相手に純粋に思いを向けていた。
そう、裏切られていても一途に信じて…。
だが僕にはそれ以上に目の前の路夏に対し大きな疑問があった。
それは路夏に質問することですぐに確認できることだったし、
確認しなければと強く思いっていたのだが、
しかしそれに対し強いためらいがあった。
そう、もしこの質問に対し路夏が「うん」と言ったら…
僕はどう言葉を返せばいいのだろうか?
その答えの見つからないまま、それでも僕はその質問を口にする。

「じゃあ、路夏も仕方がないって思ってるの?」
「え…」
「仕方ないから、このことに進んで協力しているの?」
159丁字屋:2010/05/01(土) 21:25:17 ID:cDd1N22T
今回はここまでです。
本作ではエロも一応入れるつもりですのでヨロシクです。
160名無しさん@ピンキー:2010/05/01(土) 23:45:08 ID:KXGDneyt
>>159
152です
プロローグ超乙ですっ!!

161名無しさん@ピンキー:2010/05/01(土) 23:47:46 ID:oagTO/cj
丁字屋さん、
濡れ場期待してますよ。

書き込みが徐々に増えてきて
喜ばしい限り。

自分も、
止の血が目覚めた鬼畜な誠を軸に据えた話を考えています。
GWがおわるまでには具体的な形で示せたらいいなあと思います
162名無しさん@ピンキー:2010/05/02(日) 10:45:46 ID:5kndCDeD
ウィキ見て来たけど
不良達って誠と幼馴染なんだな…

この設定を上手く活用して黒誠がヒロイン達をダークに暴れ食いな
ssが見たい…
163127:2010/05/03(月) 13:05:14 ID:ekZdJ4x/
>>159
こういう、本編で結ばれたカップルの陰で悲惨な目にあってる人物に救いがある話っていいですね。
結ばれなかったキャラが失恋どころか更に露骨に不幸な目にあってるとやっぱり気になってしまうので。


それでは>143-149の続き投下したいと思います。
164【Otome days】:2010/05/03(月) 13:09:29 ID:ekZdJ4x/
【澤永 泰介】



ハァ〜
待ちに待った学際本番だけど、実際迎えて見ると
周りはそこらじゅうでカップルがイチャイチャしてて独り身にはしんどいぜ〜
クラスの喫茶店の仕事してても誠と西園寺が目の前で見せつけあがるし。


…居心地が悪い俺は一人抜け出して中庭で寂しく時間を潰していた。
「チクショー 桂さんでも誘う事が出来れば最高なんだけどあの子も誠一筋みたいだもんな〜」
思わず声に出して叫ぶと、タイミング悪く向こうから女子が2人歩いて来る。
隣のクラスの奴だったかな?

「なにあれー? みっともな〜」
「もてない男の叫びって奴?」
「うっさーい!」
「うわっ 八つ当たりサイテー」
うぅ……ここにも俺の居場所はいないのかぁ〜

更にそいつらは俺に丸聞こえなのにかまわず自分達の話を再開しだした。
「はぁ……来実は今頃彼氏とヨロシクやってるのか〜 乙女は隣のクラスの男子を探しにいっちゃうし」
「夏美〜 寂しいから慰めて〜」
「バ、バカ みなみったら顔近いって」
「いいじゃん、女の子同士だし」
女子同士とはいえここでも俺は見せ付けられる運命なのかよー
負け犬オーラを出しながらそそくさと立ち去ろうとすると……

「所であんた、さっき桂がどうとか言ってなかった?」
「桂の事が好きなの? 場合によっては協力してやれなくも無いけど」

その二人は凄く気になる事を提案してきた。


……

「へー 休憩室なんてものがあったのか」
「うん、だからそこに桂を誘っちゃいなさいよ。都合よくうちのクラスにも休憩室あって
 午後からは桂が受付してるから」
「でも俺なんかが誘ってOKしてくれるかなー?」
「大丈夫よ。とりあえず休憩室に行く様に私らからも言うから、そこまでいけば
 流れでOKされる可能性は十分あるって」
「そっかー それならお願いしちゃおっかなー」
「あはは、調子良すぎ〜」

これは願っても無いチャンスだ。
うぅ、俺にもやっとツキが回ってきたぞぉー
俺は二人に言われるがまま、一緒に桂さんのいる4組へと向かった。
165【Otome days】:2010/05/03(月) 13:10:46 ID:ekZdJ4x/
「あれ? みなみに夏美じゃない。 伊藤の友達なんか連れてどうしたの?」
その途中で二人の友達らしい女子と遭遇する。
この子もたしか4組の子だったっけー?

「ああ乙女、実はこいつ桂に気があるみたいだから告白のお手伝いしてやろうと思ってね」
「ええっ!?」
それを聞いて予想外に驚く、乙女と言われた子。
なんだよー そんなに俺とじゃ役不足かー?

「あんた、桂の事好きなの!?」
「いやぁ〜 ははは」
「何よ、ハッキリしない奴ね」

「まぁまぁ乙女。桂に彼氏が出来ら伊藤の競争率グンと下がるんだし、乙女にも悪い話じゃないでしょ?」
「そ、それはそうだけどさ……」
その子は口ごもると怪訝な顔でこっちをチラチラ見てくる。
失礼な奴だなー ちょっと態度が露骨すぎないか?

「そう思ってこいつ誘ったんだけど……そういえば伊藤は誘えた?」
「うぅ…… 入れ違いで休憩入ったみたいで3組にはいなかったぁ……探しても全然見つからないし」
「あちゃー それならせめてこっちだけでも上手くやらなくちゃね」
「なんだー? お前も誠の事好きなのか? どいつもこいつも誠誠って羨まし過ぎる〜」
チクショー本当になんであいつだけあんなにモテるんだ〜!

「で、でも……桂に彼氏だなんて……」
それでもその子は踏ん切りがつかないようだった。
「乙女〜 最近桂と仲がいい気がするけど私の気のせい? もしかして愛してたりしてー」
「…っ……」
「乙女……もしかして……」
夏美とかいう子のセリフに、乙女っていう子は過敏に反応して、みなみっていう子は何か事情を知っているのか
複雑な目で見ている。
「うっそー もしかしてマジ!? もしかしてみなみにすっかり染められ……」
「そ、そんなわけないじゃない!」
「だったらいいんじゃない? 上手くいったらラッキーで、ダメでも乙女には損は無いんだし」

「…っ………ねぇあんた!」
「はい?」
乙女と呼ばれた子は少し考え込んだ後、急に俺に話をふって来る。
「本当に桂の事好きなのねっ?」
「ああ、付き合えたら最高だよなー」
「だったらそんな弱気でウジウジしないでもっと男らしく強気でいきなさい!
 ……私、もうちょっと伊藤を探すからっ」
その子はそう言うとすれ違いうざまに立ち去っていった。

「せっかくだし乙女も見ていきなよ〜」
「いい……ボソッ(万が一OKして、桂に恋人が出来る所なんて見たくない……)」
すれ違う時なにか小言言ってたけどよく聞こえなかった。

それにしても……うーん、そうだよなー 確かにあの乙女って奴の言う通りだよなー。
男なら強気が一番か……。
やっぱ少し強引な位のアプローチをして流れに乗せるのが成功の秘訣ってことかな。

そう思っているうちに俺たち3人は4組の前に到着した。
受付に桂さんがいるけど、相変わらずかわいいなぁ〜

「桂〜 ちょっと奥で用事があるんだけど来てくれない?」
「え? なんでしょう……?」
「いいからいいから、ほら、受付変わってあげるからさ」

ふっふっふ、男 泰助 一世一代の大チャンス!
166【Otome days】:2010/05/03(月) 13:11:22 ID:ekZdJ4x/
【黒田 光】


「ふぃ〜 お客さんの足も大分落ち着いてきたね」
「もうすぐ展示時間も終わりだしもう大丈夫だと思う」
うちのクラスの喫茶店は思いのほか好評で大賑わいだった。
私はスイーツおおはらの開店セールとかで鍛えてるからもそこそこ余裕があったけど
みんなは大分疲れちゃってるみたいだ。
世界も七海も刹那もよく頑張った! えらいえらい。

…だけど………
「ううぅ、結局澤永を誘う暇なかったぁ〜!」
「光……よしよし」
「うわ〜ん世界〜!」
あいつったらやっとお客さんのピーク過ぎて誘おうかと思った瞬間出て行ってそれっきりまだ戻ってこないし。
澤永のバカー!

「あの〜 伊藤帰ってきてますか?」
その時、隣のクラスの加藤さん……だっけ?
その子が伊藤を探しにやってきた。
さっきも探しに来たみたいだったけど入れ違いになって伊藤はそれっきりまだ戻らないのよね……
「残念、伊藤はまだ帰ってきてないかな……」
「そっか……」
全く……この子も伊藤か。
本当、あいつのどこがそんなにいいんだか。
まぁ、私だって人の事言えないんだけどね。

「私も誘おうと思ってた男子がどこかに消えちゃって一緒に回れなかったのよー。 
 なんだかやりきれないよね〜」
「あちゃ〜 そうなんだ お互い大変だね〜」
何だか色々境遇が似ていて親近感が沸いちゃうな〜
出来ればこういう事で沸きたくないんだけどね。

「乙女〜」
「加藤さん、いらっしゃい」
「あ、七海に清浦」
加藤さんに気づいた刹那と七海が声をかける。
「加藤さん、昨日はお疲れ様」
「電車通学の割には家がそんなに遠くなくて良かったわよ。 心配のメールありがとね」
「いえいえ、桂さんもちゃんと家についたみたいで、加藤さんもメールで心配してたって言ってた ……ラブラブ」
「お、お互い様じゃないのよっ」
「『桂ってすごくいい香り』……フッフッフ」
「もぉっ」

あれれ? 加藤さんって女バス仲間の七海はともかく刹那ともこんなに仲がいいんだ。
へぇ〜 いつのまに……
「あんたらって 数日前に初めて話したばっかなのにいつの間にそこまで仲良くなったんだ? 
 それに桂ってあの桂だよね」
七海も気になったようで聞いてくる。
「ま……まぁ、最近色々あってね……」
「ふ〜ん、そっかそっか……」
確かに桂ってあの、伊藤がらみの桂言葉さんだよね……?
私も一応、世界の恋のライバルとしてだけどお互い面識はあるけど……
刹那は普通に友達だったんだ……
167【Otome days】:2010/05/03(月) 13:11:57 ID:ekZdJ4x/
「あれ? 加藤さん、誠ならまだ戻ってませんけど〜?」
「…うん、今聞いた」
「そうですかー」
世界も気がついて声をかけたはいいけど……二人の間に物凄い火花が散ってるのが見ていて分かる。
そういえばさっき七海が『乙女は伊藤と同じ中学で、本人曰く中学校時代はよく遊んでたって聞いた』
っていうのを世界に教えてたっけ。
はぁ……お察しします。

……それにしても何だか私の知らない所でみんな4組の子達と大分交流してるじゃないのよ〜
せっかくだし今度桂さんや加藤さんもスイーツおおはらに誘ってみようかな……?


そう思っていたら加藤さんの携帯からバイブ音がなる。
「あ、桂からメールだ」
早速メールの内容の確認する加藤さんだったけど……その顔色はみるみるうちに変わっていった。




「桂……!? もしかしてさっきのって休憩室……? う、うそ……
 もしかしてさっき会った伊藤といつも一緒にいる友達が……!?」

え? 伊藤といつも一緒にいる友達って澤永の事……?
「ど、どうかしたの? 澤永が何か関係あるの?」
「加藤さん、桂さんに何かあったの?」
「ご、ごめん!」
気になった私と刹那は同時に質問を投げかけたけど、加藤さんは何も答えずに慌てた様子で教室を後にした。


「ごめん、ちょっと気になるから行って来る」
「光、私もいく」
何だか嫌な予感がした私は刹那と一緒に加藤さんを追いかける事にする。
「あ、ああ。 こっちの事は心配しなくていいから」
「なんだかよく分からないけど気をつけてね」
世界と七海も気になって仕方がない様子だったけど、終了時間間近とはいえまだ展示時間内の喫茶店を
開けるわけにもいかない。
ごめん、二人とも。
168【Otome days】:2010/05/03(月) 13:12:54 ID:ekZdJ4x/
……教室を出て隣の4組の方にいくと入り口で加藤さんと他の女子二人が口論していた。

「ちょ、ちょっとっ あいつまさかガチで襲っちゃってるわけ!?」
「私らは休憩室を用意してあげたまでだけど、そう指示したの乙女じゃん」
「澤永……だっけ?あいつに『強気でいけ』って言ったの乙女だもんね」
「あ、あれは桂の事守れるようにもっとしっかりしろって意味なのっ  私、告白が休憩室でだなんて聞いてないっ
 あいつまさか、私が言ったセリフの意味を勘違いして……」
「まっさか〜 いくらなんでも本当に一方的に犯ってしまうなんてありえないって」
襲う? 犯す? ちょっと……なんかヤバイんじゃない……?

「こ、これ見てよっ」
加藤さんはそう言う二人に自分の携帯の文面を見せて、追いついた私と刹那も覗き込み背筋が凍った。
【たすけて よんくみ おくのへ】
多分最後のは【おくのへや】って打ちたかったんだと思う。


女子の一部でささやかれる休憩室の話 
今の加藤さん達の会話
そしてこの文面

それらの事を考えるとさすがに私でも今この中で何が起こってるのか大体察してしまう。

「そ、そんな……私らはあそこの方がくっつきやすいって思っただけで……」
「雰囲気に流されてしまうかもっては思ったけど、こんな事を期待したわけじゃ……」
二人の女子も事の重大さに気がついた様子だ。

「とにかく二人は部外者が入らないようにここで見張っててっ あ、この二人はOKだからっ」
そう言い教室の中に入る加藤さんに私と刹那も続く。

「こっち」
初めて入る迷路に私は戸惑ったけど、自分のクラスの出し物である加藤さんと
あと何故か刹那も大体のルートを知ってる様子で真っ直ぐ一番奥を目指す。

169【Otome days】:2010/05/03(月) 13:14:01 ID:ekZdJ4x/




「や、やめてくださいっ!」
「いいじゃないかよ〜 俺も学祭でいい思い出作りたいんだよ〜」
「た、助けて……加藤さんっ……誠君っ」

「こるぁあああああ!! 澤永ーーーー!!」
そこでは澤永は既に裸になっていた。
桂さんも上着を脱がされた上にシャツのボタンを全て外されて、下着が露になり今まさに襲われんとしてる所だ。

「桂っ!」
加藤さんが真っ先に澤永を思いっきり突き飛ばす。

「とぉーーーー!」
「でりゃあああああ!」
「ぐへぇ!」
そこに刹那の踵落としと私のボディーフックをお見舞いしてやって、澤永はあえなくダウンした。
「桂っ 大丈夫!?」
「加藤さん…っ それに清浦さんと黒田さんも…っ」
桂さんはまだ恐怖に震えながらも心底嬉しそうに私達を見る。



「いつつつ……お前らいきなり何するんだよ〜」
「それはこっちのセリフじゃああああい!!」
「サイッテー!」
「な、なんだよ お前がそうしろって言ったからやってるんじゃないか〜」
「あれはもっとしっかりしろっていう意味よっ どう解釈したらこんな事になるのよっ
 これじゃまんま強姦じゃないのよっ」
「澤永のアホオオオ! ちゃんとあんたの事好きな女の子はいるのに
 こんなバカみたいな事したら愛想尽いちゃうじゃないのよぉっ!」
「え? 誰だよそれ?」
「知るかぁあああ!」
「ぐはぁっ」
思わず2度目のボディーフックをお見舞いしてしまう。

「ほら、桂が怖がるでしょっ とりあえずあんたはここから離れなさいよっ」
「何だよ みんなして」
ブツブツ言いながらも服を着終わった所でその襟を刹那に掴まれる澤永。
「澤永……連行……そして直ちに制裁」
「うぎゃあああ!」
「刹那……」
「大丈夫。みんなには上手くごまかしておく。 警察に突き出すかどうかは桂さん次第。じゃあ後はよろしく」
刹那はそう言うと、どこにそんなパワーがあるのか澤永を引きずってこの場を去っていった。
170【Otome days】:2010/05/03(月) 13:14:31 ID:ekZdJ4x/

「ぐすっ…… ひっく……」
「か、桂……」
まだ恐怖感を引きずっているのか、逆に緊張の糸が切れたせいなのか小刻みに震えている桂さん。
加藤さんがそのシャツのボタンを1つ1つ丁寧に留め直した後にリボンタイを付けて上着を着せるあげる。
「ほら……桂、着せ終わったよ」
「(コクン)」
すると桂さんは加藤さんにギュッと抱きついて、加藤さんはかなり動揺してたけど
顔を真っ赤にしながらも抱きしめ返した。

何だか澤永のした事なのに凄く申し訳ない気持ちになってしまう。

「桂さん……うちのクラスの澤永が本当にごめん。 ……謝って済む事じゃないけど……」
「わ、悪いのは私だよ。あいつから桂に告白するって聞いた時に強気で攻めろって言った
 のが原因だし……。桂が伊藤の事好きなの知ってたのに……ごめん」


まだ震えが止まらない様子で私達の言葉を聞いていた桂さんだったけど、しばらくするとゆっくりと顔を上げた。
「謝る事なんて無いですよ……加藤さんと黒田さんと清浦さんは私を助けてくれました……本当に感謝しています……」
「か、桂……」「桂さん……」
うぅ……そう言われると逆に何だか辛くなっちゃうよぉ〜

「と、とにかく あのバカはもう絶対こんな事しない用にキッチリ絞っとくから。
 ……か、桂さんがその気なら警察に突き出してもいいし……」
「……確かにそうしたい気持ちもありますけど、それだと悪気は無かったとはいえ加藤さんにも
 迷惑がかかりますし、それにさっきの黒田さんの様子を見てもしかしてと思ったんですが
 黒田さんはあの人の事……」
だからこの状況でこっちが気遣われると余計申し訳ない気持ちになっちゃうんだってばぁ〜

「私も助けてくれたお二人の学園生活を乱す様な形になるのは
何だか申し訳ないですし、澤永さんがもう二度とこの様な事しないなら……」
「はぁ……あんた人良すぎ……」
加藤さんはちょっと呆れているけど、私は何だかんだで澤永が警察のご厄介にならない方向に進んでいる事に
心のどこかでホッとしていて、それに凄く自己嫌悪を感じてしまう。

「まぁ、そうするにしてもとりあえず澤永にはたっぷりお灸をすえてやらないとね」
「うんうん、それいいっ」
「あの……加藤さん、もしご迷惑でなければもうしばらくこのままでいいですか……?
 なんだかまだ少し怖くて……」
「う、うん……」
桂さんにお願いされて、更に顔を真っ赤にしながらも、より一層桂さんを優しくかつしっかりと抱きしめる加藤さん。
うわっ 女の子同士なのに結構絵になってるじゃないのよ〜
何だか見ているこっちが恥ずかしくなっちゃう。

「それじゃ私はお邪魔みたいだから退散して、刹那と一緒に澤永をシメて来るとしますか」
「もぉっ、黒田ぁ、そんなニヤニヤしないでよっ」
「おほほほほ それじゃ加藤さんは桂さんをよろしく〜」

さ〜て、あのバカどう料理してやりますか……
171【Otome days】:2010/05/03(月) 13:16:15 ID:ekZdJ4x/
【桂 心】


「それでね、卯月ちゃんや誠君と一緒にたこ焼きとかわたあめとかいっぱい食べたんだよ。
 でもお姉ちゃんとは結局会えなかったなー」
「あらあら、それは残念だったわね」
お姉ちゃんのクラスがどこにあるかよく分からなくてとりあえず卯月ちゃんと色々回ってたせいで
お姉ちゃんの所に行ったのは最後の最後になっちゃったせいだけどね。
しかも受付のお姉さんが「ちょっと中が壊れて、今日はもうおしまいになった」て中に入れてくれなかったしー

でもお昼には誠君にも合えて一緒にたくさん遊べたしまぁいっか。
やっぱり誠君はかっこいいなー

ガチャ
「ただいまー」
しばらくすると玄関の方からお姉ちゃんの声がする。
あ、お姉ちゃん帰ってきたんだー。
今日心が来た時どこにいたのか問い詰めなくちゃ。
そう思いながら玄関にいくと……
「うへぇ……桂の家って大きい……本当に上がっていいの?」
「助けてくれた上に送ってまでもらったお礼です。是非上がっていってください」
「そ、それじゃ おじゃまします…」
どうやらお姉ちゃん、女の子の友達をつれて来たみたい。
「あーっ うわっ〜 お姉ちゃんがお友達を家に呼ぶなんて珍し〜い お母さ〜ん」
「こ、こら心っ」
「あ、あはは……元気な妹さんだね」

「あら本当、言葉が友達を連れてくるなんて珍しい」
「お、おじゃましてます えっと、加藤乙女っていいます…」
「乙女ちゃん。大したおもてなしは出来ないけどゆっくりしていってね」
「も、もうお母さんまでっ 加藤さん、速く部屋にいきましょう」
そう言うとお姉ちゃんは友達と一緒に逃げる様に部屋に入っていった。
う〜ん、これはちょっと興味があるかも。

「お母さん、お飲み物私が持っていくよ」
「そう? それじゃお願いね」
お母さんが紅茶を用意していたからこれはチャンスだと思って心が運ぶ。
お姉ちゃんの友達ってどんな人だろ〜
そう思いながら部屋の前まで来ら中から話し声がした。




「それにしても桂、なんであの時清浦や伊藤とかじゃなくて私だけに連絡したのよ?」
「えっと……無我夢中だったんですけど何となく加藤さんの顔が思い浮かんで……
 複数の人に送る余裕なかったですから」
「そ、そっか……」
「でも加藤さんにメールして本当に良かったです。すぐに助けに来てくれて本当に感謝してます」
「べ、別に原因作ったの私なんだし感謝する事無いって。それ言うなら清浦と黒田も
 心配して追いかけて来たんだし」
「はい、そうですね」

助ける? 無我夢中?
一体なんのお話してるんだろう?
172【Otome days】:2010/05/03(月) 13:17:44 ID:ekZdJ4x/

「お姉ちゃーん。紅茶持ってきたから開けてー」
「あ、心? ちょっと待ってね」
なんだか慌てた様子でドアを開けるお姉ちゃん。

「心、ありがとね」
「いいよー それより今話してた話ってなんなのー?」
「え……」
「……あちゃぁ………」
お姉ちゃんもその友達もなんだが凄く気まずそうにしてる。
「今日の学園祭、最後の方にお姉ちゃんのクラスにいったんだけど
 『中が壊れてるからおしまい』って入れてくれなかったの。 それと何か関係あるの?」
「夏美とみなみか……ナイスッ」

お姉ちゃんは何だか凄い落ち込んだ顔をしている。
え? 何…? どうしたの……?

「えっと、心ちゃんだっけ…? 実はね……」
お姉ちゃんの友達も少し困った顔をしていたけど、しょうがないなという様子で
私に何があったのか教えてくれた。



  …………



「なーんだっ そういう事だったのか。 だからお姉ちゃんは押し潰れされそうで助けてって
 メールしたんだ。それにしてもその男子はおバカさんだね」
「本当、バカだよね」

乙女さんっていうお姉ちゃんのお友達の話によると、隣のクラスの男子がうっかり迷路の壁を壊してしまって
クラス委員だったお姉ちゃんは完全に壊れないように支えるのに必死だったらしい。
何とか支えながらメールで加藤さんに助けを求めて無事解決出来たみたい。

「それでその壁の部分作ったのが私だったから、原因は私ってわけ」
「それってお姉ちゃん全然悪くないんだし落ち込む事ないと思うけどなー」

「うん……確かにお姉ちゃんは悪くないけどそういう事って実際体験して見ると
 物凄く怖いものなのよ。お姉ちゃんそれでちょっとショック受けてるから慰めてあげてね」
セリフの所々を強調して話す乙女さん。

「桂……さっき清浦からメールがあって『そういう事』になったから……」
「あ、そうなんですか……」
今度はお姉ちゃんの方を向いて何か話す乙女さんだったけど心にはよく分からなかった。
173【Otome days】:2010/05/03(月) 13:18:13 ID:ekZdJ4x/
「でもさぁ〜 なんで電話かけないでメールしたの? そっちの方が絶対早いじゃん」
心にはそれがちょっと不思議に思えて、軽い気持ちで聞いてみる。
「あ、そういえば……」
乙女さんもそれを聞いて一瞬不思議そうにしたけど、何故かすぐ心の方を見て気まずそうにしてる。
するとお姉ちゃんが乙女さんの耳に顔を近づけてヒソヒソ話をした。

「ヒソヒソ(助けを求めてる声を聞かれてたら刺激してしまいそうで……向こうは
 私に背中を向けて服を脱いでたんで少し余裕はあったんです)」
「なるほど、そうだったんだ……」
「あーっ 二人だけで内緒話なんでズルいよーっ 心にも教えてよーっ」

お姉ちゃんは時々、心にはまだ早いのっ とか言ってのけ者にするんだもん。
心もう大人なのにお姉ちゃん達ばかりズル〜い

「そ、それにしてもあんたって中々可愛い妹がいるじゃん」
「え? うん、えへへ〜 乙女さん分かってる〜」
今何だかちょっとごまかされた気がするけど、私の事ちゃんと分かってるなんて乙女さんやるぅ〜

「そんな事ないですよ。ちょっとやんちゃすぎますし……ほら、心も調子にのらないの」
「私にも妹いて抜け目なくて油断できない奴だけど、ちょっとは可愛い所もあるのよねー」
「そうなんですか?」
「意外に繊細な所があって、これはこの前の話なんだけど〜…」

……それからしばらく心はお姉ちゃん達と3人で、色々と楽しいお喋りをした。


「さて、それじゃ桂も元気出たみたいだし、晩御飯の邪魔しちゃ悪いし私帰るわ」
「ぇー せっかくだしお泊りしていこうよー」
「こら心、我侭いわないのっ ……でも加藤さんさえよろしければ遠慮する事ないんですよ?」
「そうしたいけどもう私の家でも晩御飯の準備出来てる頃だし。無駄にするのもたいないじゃん」
「そうですか……それならしょうがないですね」

こうして乙女さんは私達に見送られ帰っていった。
「中々いい子みたいね。 お母さん安心したわ」
「心また乙女さんとお話したーい」

お姉ちゃんが友達連れてくるのは本当に珍しいから晩御飯の話題は乙女さんの事でもちきりだった。
また会てるといいな。
174127:2010/05/03(月) 13:25:58 ID:ekZdJ4x/
とりあえず今回は以上です。
終わりまであと2,3回位…かな?
175名無しさん@ピンキー:2010/05/03(月) 22:12:00 ID:PAJ0X9RH
なんか感想書けなかったけどすごい面白い作品が沢山きてて
しかもこれからも楽しみな作品が多くてwktkっす
自分も>>5で長編書いてるなんて言っちゃったけど
いつになったら終わることやらな状態っすからねえ……
しかもみなさんの書いてる作品どれも面白いから不安っす

とりあえずのんびり書いているんで気長に待っててください

あと折角なので短い1〜2レスのを投下します
176名無しさん@ピンキー:2010/05/03(月) 22:12:58 ID:PAJ0X9RH
「ふぅ」
家出してきたいたると風呂に入った誠は大きくため息をついた、
いろんな人に告白されて、答えを求められて何がなんだか分らずに逃げ出してしまった
自分が情けない、一体どうしたらいいのかが分らない
世界と言葉と加藤、別に3人とも嫌いというわけではない、しかし俺の気持ちは
はっきりしないといけないみんなを選ぶという考えはありえない、俺の好きなのは一体誰なのかと……
そう考えていると気持ちは必然的に重くなってくる、
せめて一緒に風呂に入っている妹のいたるには気づかれたくないと思いながら……

「おにーちゃ」
「ん?」
「ごめんね、おにーちゃ、げんきないのに……いたるきちゃって」
「バーカ、元気いっぱいだよ」
「ううん、おにーちゃ、げんきないのわかるよいたるだから」
「そっか……いたるだもんな。  うん」
「なやみごと、ある? いたるなやみごと相談してあげる」

やはり兄弟といえばいいのか、悩んでいる事はすぐにばれてしまった
いや見透かされて、いたるなりに気遣ってくれているのかもしれない
「そうだな……話すだけでも気が楽になる事もあるか……」
「ほえ」
「いたる、深く考えなくていいからな聞いてくれるだけで気が楽になる事もある
だから、聞くだけ聞いてくれよ」
「うん、きく」
本当はこんな話いたるにするべきではないと思う、が心配して気を使ってくれる妹に
話してみることにした。
言葉のこと、世界のこと、加藤のこと、3人に対して俺はどう思っているのか、
相手は一体どう思っていたのか、本当に好きな人は誰なのかなどをいたるに聞いてもらった。
誰かに聞いてもらえるだけで気持ちは少しは楽になる、いたるは聞いてくれるだけでいい
それ以上は、求めていないのだが……いたるの回答は誠の予想外のものであった……
「いたるきおうらがいい」
「はっ?清浦?」
「うん、いたるきおうらだ〜いすき」
「清浦……か、さてとなんかのぼせて来ちゃったみたいだな、20数えたら
お風呂出てモモジュース飲もう」
177名無しさん@ピンキー:2010/05/03(月) 22:13:45 ID:PAJ0X9RH
翌日、世界の家の前
家の階段の前で一人座る西園寺世界の姿があった
もし誠が私のことを好きならば来てくれるはず……なのに
姿はどこにもない……様子を見に来た刹那は落ち込んでる世界にゆっくりと話しかけている……
「そっか……桂さんも約束してるのならこれるわけないよね……」
「澤永、教室で一人残って何か悩んでる伊藤を見かけたからって、桂さんに言ったらしいよ」
「…何て?」
「他の人を選んでも、伊藤の想いを尊重してやってくれって」
「……そう」
「世界もだよ」
「うん……そうだよね」
「もし、来たら、本当に伊藤が世界のこと好きだって信じてあげなくちゃいけないよ」
「う、うん……だけど……」
「だけどは言っちゃダメ」
「もし誠が来てくれたら信じるよ、誠は私のこと好きだって!……でも、来ないもん」
「来なくても」
「来ない時は、諦めるってこと……?」
「そうなるけど」
「やだよ……諦めたくない……よ…」
「あのね…世界」
「判ってるよ……こんな時間まで来ないって意味くらい……」
「うん、その理由なんだけど」
「うぅ……誠〜」
「…はい」
「えっ?」
突然聞こえたいないはずの誠の声に世界は驚く、約束をした桂さんと一緒にいるはずの誠が
こんなところにいるはずないのだからしかし顔を上げて刹那の方を見てみるとそこには間違いなく
伊藤誠の姿があった、その横で不敵に笑いながらVサインをしている刹那の姿も見える。
誠は桂さんでも加藤さんでもなく私を選んでくれたんだろうか
いや、誠が約束を守ってここに来てくれたということが全てを語っている。
「……ごめんな俺、世界のこといっぱい傷つけてきたのに
でも俺、いざ本当に好きなのは清浦だって判ったんだ」
えっ、それは世界を疑ったなぜ刹那の名前がここで出てくるのか
私を選んでくれたのではないのだろうか……
「嘘だよ……私……信じられない、誠と刹那が結ばれるなんて……」
よく見ると二人の手はガッチリと握られてどことなく頬を赤らめている
「信じろ、俺が本当に好きなのは、清浦だ」
そういって誠は刹那を抱きしめる
「世界言ってたよね、こんな時間までこない理由がどういうことかって……」
そういって刹那と誠は去っていった、果たして二人は何のために世界の家の前まできたのであろうか……」


おしまい
178したいこと:2010/05/04(火) 02:24:42 ID:anAV3R1c
今までROM専でしたが色々妄想してたら一つ完結まで思いついたので形にしました。
クロスデイズの嘘と真実を重ねて後日談です。勇気と路夏は取り立てて気になることもないのでスルーします。
登場人物 言葉、誠  舞台 誠の家
『したいこと』

「これからは……絶対に言葉を悲しませるようなことはしない」
誠君がそう言ってくれてから数ヶ月が過ぎた。学祭以降の誠君は凄く優しいし、尽くしてくれる。
今日だって私に手料理を食べてほしいと言って料理してくれている。
西園寺さんと別れてくれた。他の誠君に好意を寄せていた人の気持ちもきっぱり断ってくれた。
誠君はいつだって紳士的で、自分から触ってきたりもしない。キスだって私からせびるぐらいだ。
私だけを見て、何をする時も私の事を一番に考えてくれた。そのことは凄くうれしいし、何の不満のない。
ただ、幸せ過ぎてたまにどうしようもなく不安になる。もしかしたら私は誠君に無理させてるんじゃないか?
誠君が私に優しくしてくれるのは贖罪のつもりでー「おまたせ」
「は、はい!」
「そんなに驚かなくても……どうぞ、召し上がれ」

誠君の料理は、相変わらず美味しかった。それに比べて私は……せめて洗い物ぐらいはやらせてほしい
と言ったけれど、少しでも長く私と居たいから後で自分でやりたいと断られた。

「言葉、何か俺にしてほしいことある?」
「え?なんでですか?」
「だって今日の言葉はなんだか……思いつめてるみたいだからさ」

肯定することも否定することもできなくて、なにも言えない。ダメだなぁ私誠君に心配かけて。
「何を悩んでるのかわからないけど、多分俺のことだろ?言葉ってあんまり自己主張しないし
俺も察しがいい方じゃないから……もっと何してほしいか言ってくれると嬉しい」
「違うんです!誠君は何も悪くないんです。私は今のままで十分満足してます。こんなに大切にしてもらって
これ以上何かしてもらうなんてずうずうしいことできないです」
「言葉は誤解してる。俺は言葉みたいに心の綺麗な人間じゃないし、人格者でもない。むしろ自分勝手だ
俺が言葉を大切にしてるのだって自分の為だ。言葉に優しくする度に、ああ俺は言葉を幸せにしてるんだ
満足させてるんだ、こんなに言葉を愛してる俺はなんていい奴なんだって思いたいだけなんだ。つまり、
“してあげたい”んじゃなくて“したい”んだ。だから、遠慮なんてすんなって」

ああ、やっぱり誠君は優しいです。でもなんだろう?違和感があります。

「……なんでもいいんですか?」
「うん、俺にできることなら」
「じゃあ、私……誠君に抱かれたいです」
「なっ!?どうしてそんな……」
「だって私たち学祭の時以来一度もしてないじゃないですか。誠君からは私に気を遣って求めてくれませんし」
「俺は……もう二度と言葉のこと傷つけないって、一生大切にするって決めたから。だから、そういうことは
じ、自立した大人になるまでがっ……しないから」

今我慢するって言いかけて言い直しましたね。

「ごめん、俺が言葉のこと焦らせちゃったんだよな。大丈夫だから……こういうことしなくても俺はもう言葉
しか見えないから。だから、俺の為に無理しなくていい」

今、やっとわかった。私が誠君を追い詰めて、傷つけてたんだ。
私が勝手に誠君を特別視して、こういう人だって決め付けて、期待して、本当の誠君を見ようともしないで
自分の都合のいいように解釈してた。

誠君は優しいから、傲慢な私に合わせて、無理してくれた。自分の言いたいことも言わないで、したいことも
我慢してくれていた。

私はその優しさに甘えていた。誠君ならそうしてくれて当然だって盲目的に信じていた。
一方的に大事にしてもらいながら、思い描いていたことと違うことをされたら勝手に落ち込んでいた。
そんなことされたら、疲れるに決まってます。だから西園寺さんに目移りしちゃったんですよね。
179したいこと:2010/05/04(火) 02:26:28 ID:anAV3R1c
「ごめんなさい……私、誠君に酷いこと……」

涙が出てきた。こんなに尽くしてくれる誠君の目の前なのに。
泣いちゃダメ。泣いたら誠君が困っちゃう。わかっているのに止まらない。
なんでうまくいかないんだろう……せっかく誠君が私だけを見てくれてるのに……

「どうしたの?」

最低だ私、また誠君に心配かけて。とにかく謝らなくちゃ。

「ごめんなさい、ごめんなさい。困らせてばかりで本当にごめんなさい……誠君は何も悪くないんです
全部傲慢な私が悪いんです。なんでもしますから、誠君に相応しい彼女になりますから……だから、私
のこと嫌いにならないでください」
「俺は言葉を嫌いになったりしない!」

怒鳴られた。謝ろうとしたら口を塞がれる。重ねた唇から熱っぽい吐息が響いて、満たされていくのがわかる。
誠君は何度も何度も愛してるとか大丈夫だよって言いながらキスしてくれた。
泣き止んだ私の頭を優しく撫でてくれた。

「落ち着いた?」
「はい、ありがとうございます」

また甘えてしまった自分に嫌気がさいつつも、誠君に今思ってることを全部素直に伝えた。
面倒くさい女だと思われたかな?軽蔑されたかな?それとも後ろめたい気持ちにさせちゃったかな?

「言葉ってさ、こんな俺のこと見限らないんだなぁ……あんなに酷いことしたのに、いっぱい傷ついた筈なのに
許してくれるどころか自分を責めてるんだから。それって凄いことだと思う。もしも俺が同じ立場だったら言葉
と同じことは出来ないし、早々に見限るか恨んでるかも。言葉のそういう清らかなところ凄い尊敬できる」

まさか褒められるとは思わなかった。多分今私の頬は紅潮してる。なんだか恥ずかしくて口ごもってしまう。

「とにかく言葉の気持ちがわかって良かった。俺は今凄い幸せな気持ちになった。自信を持って言うけど言葉は
誰がなんと言おうと綺麗だよ」
「嬉しい……」

感極まって泣いてしまった。今度は嬉し涙だ。

「言葉……愛してる」
「私もです……」

盛り上がった私たちは抱き合って今日何度目かの激しいキスをした。

「その、言いにくいんですけど……そろそろしませんか?」
「えっでも……」
「誠君だってしたいですよね?したくなかったらこんなに硬くなりませんよね?」
「うぐっそれは……ってどこ触ってんだよ!」
「誠君は勘違いしてます。私も“してあげたい”じゃなくて“したい”んです」
「それって……!」

ああ、顔が綻ぶ。その後二人で声を上げて笑った。こんなに笑ったのは生まれて初めてかもしれない。
ひとしきり笑ってから、タイムングを見計らっておどけてみた。

「……もしかして誠君は自分からおねだりするようなエッチな女の子は嫌いですか?」
「いや……大好きだよ」

180名無しさん@ピンキー:2010/05/04(火) 08:34:23 ID:yFRrDVbf
>>179
GJ! ありがとうございます。 
こういう話大好きっす 誠×言葉のSSをもっと読みたいおー
181名無しさん@ピンキー:2010/05/04(火) 12:00:39 ID:anAV3R1c
>>180
妄想と言うかこんな感じだったらいいなという願望だったんですが、満足してもらえたようでよかったです。
ちなみに他に思いついた後日談は、肉欲→妻ですエンドとそれぞれの道へエンドと君だけをエンドだったりします。
後日談以外はもう誰も愛せない→そして言葉とのイフとか永遠にルートの言葉が死なない状況考えたりしてます。
誠と言葉が好きなので次に投稿するとしたらどちらかがメインになると思います。
182名無しさん@ピンキー:2010/05/04(火) 23:47:18 ID:P9cr2L3C
素晴らしい。
こういう話を待ってたんだよ!!

ゴロゴロころがってしまった。GJ!!!
183名無しさん@ピンキー:2010/05/06(木) 21:35:48 ID:lg7vqmio
ちょっと前までの過疎っぷりが嘘のような豊作だ
職人さんたちマジでGJ
184127:2010/05/06(木) 22:33:28 ID:LXXR0DN9
>>177
アニメ版とかでは世界の為に尽くしていたけど
もしそんな中自身に告白が来たら……
何だかせつなさが印象的な話でした。

>>179
やっぱり言葉が幸せだと和むな〜
ニヤニヤさせてもらいましたw


それでは>164-173の続き【Otome days】投下したいと思います。
今更ちょっと補足ですが
この小説開始時(みなみ視点)の時間軸は浮気発覚直後
(クロスデイズでいうと1話・アニメでいうと6話が終わった所)
あたりを設定しています。

あと、クロスデイズキャラはそこまで絡まない予定で
視点キャラの裏で三角関係のドタバタはそこそこ繰り広げられてる感じです。
185【Otome days】:2010/05/06(木) 22:34:24 ID:LXXR0DN9
【桂 言葉】




「桂さんっ 本当にごめんっ」
学園祭の代休が開けた登校初日の昼休み。

普段使われていない教室で、清浦さんと黒田さんに付き添われた澤永さんが改めて私に土下座して謝る。
顔が相当はれ上がって包帯だらけだけど、一体何があったのかな……?
「ど、土下座なんて……顔を上げてくださいっ」
「甘い、甘すぎるよ桂さん」
「簡単に許すとまた図にのるかもしれない……ここは他の女子生徒や澤永自身の為にもキッチリしたほうがいい」
「えっと……だったらどうすれば……?」
それをずっと見ているだけでいるのも何だか逆にこっちが気まずい。

どうすればいいか分からないでオロオロしていると黒田さんがアドバイスをしてくれた。
「ビンタでも浴びせてやれば? 桂さんも憤りを感じているんでしょう?」
「でも……暴力は……」
「こいつが二度とこんな事しない為だって」
それが本人の為になるのなら……ありなのかな……?

「えっと……でも本当にいいんでしょうか……?」
「桂さん、気の済むようにやってくれーっ」
踏ん切りがつかないでいると澤永さん本人からもお願いされて、さすがにこれで断るのも
ある意味失礼だと思った私は承諾する事にした。
「分かりました……それでは澤永さん、こちらを向いてもらっていいですか?」
「は…はひ……」

 バァーーン!!

数秒後、学園祭の件の思いを全てを込めさせてもらった平手打ちをさせてもらって
大きな音が教室内の木魂して澤永さんは横なぎに倒れ込んだ。
「が、がはぁ……」
「か、桂さんのビンタ……凄い威力だね」
「下手に手加減してもかえって失礼かと思ったのですが……」
「いや、桂さん、それでいい……GJ!」
「それじゃもうすぐ昼休みも終る事だし退散するとしますか」

澤永さんに対しては色々と思う所はあったけど、これで一区切りつけれる様に努力しよう……
清浦さん、黒田さんと別れ4組の教室に戻りながら私はそう心に決めた。

「あ、桂ぁ 終った?」
4組の教室前で部活のミーティングに言ってた加藤さんとバッタリ出会う。
「はい、あの時の事を思い出すとまだ少し恐い気持ちになってしまう事はあると思いますが
 本人も反省してるみたいですし何とか頑張って水に流せるよう頑張って見ようと思います」
「そっか……まぁ、一区切りついたみたいで良かったわよ。とりあえず教室はいろ」
「はい」

そういえば次の時間は急遽自習になって特に課題も出てないんだけど
本でも読んで時間を潰そうかな……?
そんな事を思いながら私は加藤さんと教室の中に入っていった。
186【Otome days】:2010/05/06(木) 22:35:08 ID:LXXR0DN9

「あ、乙女 おっそーい」
「来実の彼氏がらみでチョー面白い話あるのに全然戻って来ないんだもん」
「えぇ? 来実ったら彼氏と何があったの? 聞かせなさいよ〜」
待ちわびたという感じで、加藤さんに声をかける小渕さん、小泉さん、森さん。
加藤さんも結構興味津々みたいだ。

「もぉ〜 恥ずかしいからあんまりいいふらすなぁ〜」
「次の5限目は自習だからみっちり聞かせてもらうわよ」
加藤さんはそのままおしゃべりに没頭する気満々だったから、とりあえず邪魔にならない様に
私は自分席に戻ろうとすると……

「ねぇ、桂が聞いても大丈夫そうな話?」
「ふぇ?」
加藤さんが予想外の事を言って私は思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。

「え〜 桂もー?」
「何だか伊藤と色々大変みたいだし何か助言もらえるかもよ?」
いきなりの加藤さんの提案に3人も少し戸惑った様子みたいだ。


「思ったんだけど乙女と桂ってやっぱり最近仲がいいよねー?」
「ほんの少し前まで険悪だった気がするんだけど何かあったのぉ〜?」
小泉さんは何か心当たりがある様な様子で、森さんは普通に興味本位で聞いてきて
小渕さんは何故かちょっと顔を赤くしている。

「う、うん。私自身よく分かんないけど、学祭の準備を一緒にしてるうちにいつのまにか……かな?
 あと学祭の時も最後に色々あって桂の家に行ったら話盛り上がったりしたし……」
「あ……」
それを聞いて小泉さんと小渕さんは少し気まずそうにして顔を俯かせた。

「じゃあもう乙女ちゃんと桂ってお友達なんだー」
「あ……うん……友達……かな」
事情を知らない森さんの質問に少し焦りながらもそう答える加藤さん。
「あ……」
私も、知らない内に加藤さんと大分仲良くなっている気がして心の中でそうなのかもとは思っていたけど
いつも否定している加藤さんの口からハッキリと『それ』を告げられて何だか胸がキュンとなった。
なんだろう……すごく嬉しい……

「わ、私も加藤さんの事大好きですよ。 大切な友達です!」
思わず加藤さんの手を両手でしっかりと握りそう告げると、加藤さんは顔はみるみるうちに真っ赤になった。
「あー 乙女ちゃん照れてる〜 かわいい〜」
「う、うっさいっ」

「乙女〜 最初の切欠ってやっぱり土曜日の……」
「た、確かにそれも無い事も無いかもだけど、付き合ってみたら悪い奴じゃなかったし
 中学の噂もデタラメみたいだったし、今はそういうの抜きで嫌いじゃないわよ……」
「ふ〜ん、でも切欠はやっぱりかー」
小渕さんの質問をやんわり肯定する加藤さんを見て一人納得する小泉さん。

土曜日って……どういう意味かな? 
少し気になって聞いてみる。
「あの……土曜日って……?」
「ま、桂は可愛いから乙女やみなみとは二人っきりの時に無防備にならない方がいいって事よ」
「は、はぁ…」
「え〜 何が合ったの〜? ねぇ、教えてよ〜」
森さんも追求してくれるけど、加藤さん達は後は恥ずかしそうにするだけだった。
187【Otome days】:2010/05/06(木) 22:36:59 ID:LXXR0DN9

「でもあんたら同じ男子好きなんでしょ? そこんとこどうするのよ?」
そう言われて少し顔をしかめる加藤さんと私。
確かに誠君の事はいくら加藤さんでもおいそれとは譲りたくない。
だけど……だからといって無条件で敵対関係となって仲良く出来ないのも何だか嫌だった。
「えっと……多分これから、その事で喧嘩する事も何度かあるかもしれませんが……
 それでも仲良く出来る所はしていけたらいいかなって思っているのですけど……」
「そう……ね」
私の返答にやんわりと同意してくれる加藤さん。

「うわ、二人とも甘々〜」
「実際どうなる事やら」
「まぁでも乙女の方は男は伊藤だけだけど、それ以外ならもう一人恋愛対象もういるみたいだし
 私達は生暖かく見守らさせて頂くとしますか」
「うぅ、夏美うるさ〜い」

最後の小泉さんの言った事の意味が分からなかったけど、顔を真っ赤にする加藤さんが
なんだか面白くて特に気にはとめなかった。




………




「……それで、男の子ならどうしてもエッチな事考えてしまうのが普通で
 それは仕方ない事らしいので、こちらも頭ごなしに嫌がらないで
 それを理解してあげようと頑張ってみるのも1つの道だと思います。
 でも私達はまだ学生なので、本格的な事まではまだするべきではないかと……
 ……そ、その……キス以上の事は、服の上から少し胸を触らせるとか程度で
 止めといた方が……」
「ふぇーっ そうなんだーっ」
「あんまり拒否しすぎてもダメだけど、簡単にヤらせてもダメ……焦らしが大事か……」
「言葉ちゃん凄〜いっ!」
森さんから『彼氏がエッチすぎてそれを怒ったら拗ねられた』という話を聞いた私は
前に誠君の事で西園寺さんに教えて貰ったアドバイスに自分の考えを織り交ぜながら
男子に聞こえない様に小声で話してみる。

「……でも実際は怖くて中々出来ないですけどね。今言ったのはほとんど
 友達の請け売りだったんですが、そんな風に思い切る勇気は私には……」
「そんな事ないっ、凄く参考になったよ言葉ちゃん!」
森さんはそう言うと凄く嬉しそうに私に抱きついて来た。
「んん〜 スリスリ〜」
完全に予想外の森さんの行動に、自分でも頬がみるみるうちに赤くなっていってるのが分かってしまう。
「も、森さん、は恥ずかしいですっ」
「こ、こらっ あんまり目立つ事するんじゃないわよっ ただでさえ男子に聞かれたらヤバい話してるんだから」
「あれれ? 乙女ったら来実にやきもち〜?」
「私が代わりに抱きしめてあげようか乙女」
「もぉっ 夏美もみなみも茶化すな〜」
そう言う加藤さんの声が一番大きくて、男子に聞こえてしまわないかちょっとヒヤヒヤしてしまう。

188【Otome days】:2010/05/06(木) 22:40:31 ID:LXXR0DN9
「それにしても……うちらの中で唯一の彼氏持ちの来実さえ参考にさせてもらってるなんて……
 やっぱり男絡みで色々あったりすると違うわね……」
「夏美、言っとくけど中学時代の桂の噂は全部デタラメだからね」
「分かってるって」
乙女さん達が何か話しているみたいだけど、抱きついている森さんが何だかくすぐったくって上手く聞き取れなかった。



「言葉ちゃんありがとー また何かあったら相談するね」
「は、はい 大したお役に立てないかもしれませんが私でよければ」
「私の事は来実でいいよ〜」

「あらら、来実ったらすっかり桂になついちゃったよ……」
「まぁ、乙女の言う通り普通に接したら別に嫌な奴じゃないみたいだしいいんじゃない?
 元々乙女が対抗してたから私ら辛くあたってただけだしね」
「うぅ…何だか罪悪感を感じる……」
「加藤さん……」
そう言いちょっと落ち込む加藤さんを何とか慰めようとする私だけど……
……こんな光景、先々週の時点じゃ想像もしていなかった。

……この1週間、誠君と西園寺さんの件意外にも、本当に色々な事があった気がする。
澤永さんの件とかは本当に怖くて悲しい出来事もでしたけれど
色々な子と仲良くなれたりいい出来事もたくさんあった。

こういうのって何だかいいな……
……もちろん澤永さんの件は抜きですけど。
189【Otome days】:2010/05/06(木) 22:44:57 ID:LXXR0DN9

【加藤 乙女】



「いやああーーっ!」
「ぁ……ぁぁ……」
「な、何よこれ……」
呆然とする私の両隣で七海は泣き崩れて桂は目の前を凝視したまま固まっている。

「七海、もう帰ろう? ね?」
「か…桂……はやく出よう?」
私と西園寺で何とか桂と七海を気遣うけど二人ともすぐにこの場から離れれそうにない様子だった。
こんな事に私が誘ったばっかりに……


…………

〜先日〜

「え? 明日の放課後にですか?」
「そ。女バスの打ち上げ会があるんだけど、女子なら誰でもフリー参加で先輩が人集めろってうるさいのよ。
 みんなでジュースとか飲んでワイワイやる予定なんだけどよかったら桂も一緒にどう?」
「で、でも……」

はは〜ん、さては桂ったら他のクラスの子や先輩達と会うのが怖くて二の足踏んでるな〜?
もう少し積極的になった方が絶対人生楽しいぞ?

「そんな警戒しなくても大丈夫だって。男子とかは全く来ないし私も一緒だしさ」
「……そ、それなら……」
「よっしゃ。じゃあ決まりだね〜」
……その時は軽い気持ちで桂を誘ったけれど、まさかそれが原因で桂の心の傷をえぐるような事になるなんて
思いもしなかった。


190【Otome days】:2010/05/06(木) 22:46:37 ID:LXXR0DN9

〜10分前〜

「あ、乙女おそーい」
「あれ? 桂さん……?」

そして当日の放課後。
少し遅れて桂と一緒に視聴覚室に入ったらもう既に人が集ってるみたいで
その中には七海と一緒に西園寺もいた。

「あれ? 桂も来たんだ?」
「うん、私が誘ったの」
「お、お邪魔させて頂きます」
「へぇ〜 少し前のあんた達からは予想できないね〜」
「む、昔のことはもういいでしょっ」
まったくもうっ 七海ったら何ニヤけてるのよ。


「あ、あの……知らない人たちばかりかと思ったけど西園寺さんと甘露寺さんも一緒みたいでホッとしました」
「やだぁ、そんなぁ〜」
「いいっていいって 桂もそんな硬くならないで、せっかくなんだし楽しんでいきなよ」
七海も思う所があるのか、大分桂に対する態度が大分柔らかくなっていてそれは微笑ましいんだけど……
……ふーん、やっぱ桂と西園寺って結構仲いいんだ……
……別にいいんだけどね〜

「乙女は世界とは体育以外でも何度か顔を合わせてるんだっけ?」
「うん、学祭の時とかにね」
「確か加藤さんって言ったよね」
何だか伊藤件ではライバルだと思うとお互いどうしても身構えてしまう。
……これじゃ少し前の桂への態度と同じだって分かってはいるけどさ〜
……でもセミロングの髪の似合う、明るそうで可愛い子だなぁ……
って……何考えてるのよ私はっ
そ、そうっ 今のは伊藤を取られるかもしれないっていう危機感的な意味で思っただけで
私には伊藤と桂が……
……じゃないっ 伊藤一筋なのっ

「えと、じゃあ改めて、こっちは西園寺世界。人集めるために私が誘ったんだ」
「誠と桂さんとは深い付き合いの西園寺世界です。あたらめてよろしくね」
むぅっ やけに「深い付き合い」の所を強調するじゃないのよっ

「私は加藤乙女。伊藤とは中学からの付き合いで桂とも最近仲いいんだ」
「へー そうなんだ〜」
西園寺は顔は笑ってるけど目が笑ってない。
……多分私も今同じ様な顔してるかも。

191【Otome days】:2010/05/06(木) 22:49:00 ID:LXXR0DN9
「あの……西園寺さん? 加藤さん?」
「あんた達 相変わらずだね〜 そういえば私以外は3人とも好きな男子は……」
「い、言わないでよっ」
「へぇ〜 加藤さんって気が強そうだけど意外と純情なんだぁ〜」
もぉっ 西園寺の奴ニヤニヤしちゃってっ

「か、簡単にはゆずらないわよっ」
「ふふっ 私も譲りませんよ?」
「か、桂さん!?」
へ、へぇ〜 桂も随分言う用になったじゃない。


「はーい、始めるわよ〜」
その時、2年の先輩が音頭を取りだして、私達も注目する。
「皆様お待たせしました〜 ではではこれよりお待ちかねの特別上映会を始めま〜す」

「打上げじゃなかったの?」
「そう聞いてたけど……」
「上映というと……映画か何かでしょうか……?」

前もって聞いてた話とは随分違っていて私達は困惑していたけど
そうしてるうちに室内の明かりが消えて上映が始まってしまった。


……………

……そして今現在……


「桂っ しっかりしなってっ 桂っ」
「ぁ……ぁぁ……」
さっきまで七海と先輩の情事が映っていたスクリーンは
澤永が桂を襲っている生々しい映像が克明に映し出されていて
桂はそれを焦点の定まってない目でジッと見つめている。

七海には悪いけど視聴覚室内に奔る衝撃は七海の時の比じゃなくて、そっちはとっくに忘れ去られていた。
上映開始時にはノリノリだった先輩達も予想外の内容に動揺していて
さっきまで泣き崩れていた七海でさえもいつの間にか唖然とした様子で見ている。

「桂っ 見るなっ!」
「こ、これって何……!? 澤永が何で……?」
桂は私の問いかけに反応は無く、事情を知らない西園寺は訳が分からないといった様子だった。

そして遂には服を脱ぎ捨てた澤永が桂に掴みかかり、上着を無理矢理脱がせるとブラウスのボタンを外して
下着が露になる様子が映し出されて、視聴覚室内の所々から悲鳴が上がる。

音声こそ流れていないものの物々しい雰囲気は十分過ぎるほど伝わるこの映像……
何だかんだでここにいる全員は10代の女の子で、何の前触れも無く同じ学校の女の子が
無理矢理強姦されようとしている映像を見せられたら、程度の差はあるだろうけどショックを受けないはずはなかった。


192【Otome days】:2010/05/06(木) 22:50:33 ID:LXXR0DN9

「こ、こっから先はマジでやばいんじゃない……?」
「か、桂さんっ とにかくここを出ようっ?」
「ねぇっ 桂っ 返事してよっ  先輩っ 当事者がいるので中止してくださいっ」
思わず焦って叫んだけど、それがあやとなって室内の子達が桂の存在に気づいてしまい
好奇心と同情の入り混じった視線が一斉に桂に集中してしまう。
……しまったぁ……っ

今の桂は誰が見ても今にも壊れそうな状態だ。
七海が少し気を取り直せていたから、一緒に協力して桂を連れ出そうと思っていた矢先……
以外な所から天の助けがあった。



……それは予想外にも、凄惨な現場を無常に映し出していたスクリーンそのものだった。


呆然としてた先輩が慌てて停止ボタンを押そうとした時、スクリーンには私と清浦と黒田が一斉に
桂の救出に乗り込むシーンが映し出される。
私の全力の体当たりで桂から引き離される澤永。
そこへ清浦の蹴りと黒田のパンチが入り澤永はあえなくダウンした。

「せ、刹那!? それに光も!?」
西園寺は唐突な親友達の登場に目を白黒させている。

視聴覚室内からも歓声の声が上がるとともに安堵感がも漂い、スクリーンには
凄い剣幕で澤永を怒鳴りつける黒田、冷やかな目で見下ろす清浦、桂を背中に隠しながら澤永を睨みつける私が
映し出されて「もっとやれー!」「女の子にこんな事した罰だー!」とかいう声が視聴覚室内に木魂する。

やがて澤永は清浦に連行されていき、今度は私が桂に服を丁寧に着せ直した後にしっかりと抱きしめてあげて
頭を撫でたりしてるシーンが映される。

……ちょっ ちょっと!? 今更だけどこれ物凄く恥ずかしいじゃないのよっ
そりゃあ七海や桂に比べたら全然マシだけどさ……
うわっ 何だかニヤついた顔で見てくる子達がいるし。
桂がこんな状態だってのに不謹慎じゃないのよ……

そう思いながら桂の方を向くと……桂はいつの間にか瞳に光を取り戻していて
ショックで涙は止まらない様子だけど同時にしっかりとした暖かい笑みを浮かべていた。

スクリーンでは、黒田が少しニヤけながら立ち去って行って
後は二人っきりでしっかりと抱きしめ合ってる私達の様子が静かに流れている。
……結局映像は最後の仲良く手を繋いで出て行った所までご丁寧に映し出されからやっと終った。

193【Otome days】:2010/05/06(木) 22:51:17 ID:LXXR0DN9
「姉ちゃん、何やってるんだよっ!」
その直後、ここに入ってはいけないはずの男子生徒がいきなり乱入してきて
先輩は慌てて停止ボタンを押して室内に照明がつく。

「路過からメールもらって見てみたら……こんな……」
「ゆ、勇気。私達のは映るま……ゴホンッ そ、それより……」

喜連川を含めた室内みんなの注目が改めて桂に集中する。
だけどその視線に悪意ははあんまり感じられなくて、多少の好奇心はあるかもしれないけど
同情や「助けが来てよかったね」という安堵を込めたものばかりだった。

「桂……」
「桂さん……」
「…………」
桂はじっと顔を伏せてていて、私と西園寺と七海はどう声を掛けるべきなのか分からずにいた。

「桂……っ」
私は何かしなきゃと思っているうちに頭が真っ白になって気がついたら桂を強く抱きしめていた。
桂っ これだけが今私が桂にしてやれるせめてもの事だっ

そしたら室内からは何故か歓声が沸き起こって遠巻きに見ていた子達が
次々に私たちを取り囲んで続々と声をかけてくる。

「えっと……災難だったね……」
「あ、あの、元気だしてね? 私達は味方だからさ」
「不謹慎かもしれないけど、すぐに助けが来て未遂で済んでよかったね……」
「桂さん……だっけ? その……こんな事してごめん」
「加藤でかした! よく桂さんも守ったっ」
「同じ女バス1年として鼻が高いよー」




「加藤さん………」
意外にもそのみんなの慰めの言葉は桂にとっては大きな励ましになったみたいで
桂は私の胸の中でゆっくりと顔を上げた。

「……加藤さん達に助けてもらっている様子を見ていると少し心が楽になりました……
 ありがとう……ございます……グスッ」
そう言う桂の顔はトラウマを呼び覚まされた悲しさと、安堵感と感謝の気持ち湧き出た笑みで
クシャクシャになっていた。
酷い顔だけどさっきまでの絶望感に打ちのめされた無表情な顔に比べたら大分救いはある。


「ほらっ 姉ちゃんも謝りなよっ」
「桂さん、本当に申し訳ない事をしたわ……お詫びにあの男子には仕返しするなら手伝うわよ?」
「い、いえ、そっちの方はちゃんと後日謝って頂きましたし、……その……あんまり騒ぎを大きくしたくないんで……」
「あいつはあの後助けに来てた他の子達に相当ボコられて、桂も思いっきりビンタ喰らわせていて
 それで一応済んだ事になってるんですよ先輩」
「そっか……蒸し返しちゃって悪い事をしたわね……」




桂の顔をハンカチで拭き終り一段落した所で、これ以上注目されるのもアレかなと思って
西園寺、七海との4人で視聴覚室を後にする私達だった。
194127:2010/05/06(木) 22:55:32 ID:LXXR0DN9
今回は以上です。
う〜ん、自分の場合心理描写の腕は、キャラによって大分開きがある(´・ω・)
195丁字屋:2010/05/07(金) 20:13:11 ID:k84ba97Y
いやー、【Otome days】はいいっすね。通勤電車の中で携帯で読みながらニヤニヤしてますよ♪

それはそれとして、158からの続きです。
さすがにこちらの乙女は敵役になりそうですけど…。

あと前回の投下で読みにくかった点を考慮して、今回から、行間を適時開けていきます。
196丁字屋:2010/05/07(金) 20:13:44 ID:k84ba97Y
僕の質問に対して、路夏はしばらくうつむいて黙っていた。
しかしやがて…

「そんなわけ…ない…」
そう言う、小さく、かすかに震えた声が聞こえた。
そうか。そうだよな。こんなひどいことに路夏が進んで協力するはずなんかないんだ!
それがわかって僕は心底ホッとした。
だが路夏は、まだうつむいたままだった。

「路夏?」
よく見ると路夏の肩はかすかに震えている。
「勇気は…」
「え?」
「勇気は私がこんなひどいことに進んで手を貸してるかもって疑ってたんだ…」
その声はさっき以上にはっきり震えていた。
そしてようやく僕は、さっきの質問があまりにも大きな失言だったと気づいた。

「ろ、路夏!ぼ、僕は…」
あわてて取り繕おうと思うものの言葉が続かない。
例え路夏を傷つけるつもりがなかったとしても、もしかしたらと彼女を疑ったのは事実なんだ。
だが…

「ううん、仕方ないよね…」
「え?」
仕方ないって…何が?
「ねぇ勇気。…勇気は桂さんとは学園祭の後はずっと疎遠にしているよね?」
「あ、うん」
たしかに僕は桂とは、学園祭の前には結構話をしていたにもかかわらず、
学園祭の後から今日に至るまでほとんど話をすることもなかった。

「それって…私のせいだよね?」
「え?」
「私が、勇気が私以外の女の子に近づくのを嫌がったから、だから…」
「路夏、それは…」
「でも、勇気が前みたいに桂さんと友達づきあいを続けていて、悩みとかも聞いてあげられていたら、
 きっとこんなことにはなっていなかったんじゃないかな?」
「そ、そんなことは…」
「だから、桂さんがこんなひどい目にあうのも、きっと私のせいなんだ…」
「い、いや…そんな…」

そんなことはないだろう。第一、僕と桂が疎遠になったのだって…。
僕はそう言いかけたが、それを遮るように
「勇気、私、桂さんを助けたい!」
路夏は顔を上げ、さっきまでの震えた声でなく、はっきりした声でそう言った。
そして、僕の方をまっすぐ見て更に言葉を続ける。
197丁字屋:2010/05/07(金) 20:14:19 ID:k84ba97Y
「私、こんなこと嫌なの。でも、例え私一人反対してももうどうにもならない…」
たしかに路夏の言うとおりだ。そこまでみんなが一つの意思をもって行動している以上、
例え路夏一人で反対したところで黙殺されるにちがいない。
いや、下手をすれば路夏までが裏切り者としてひどい目にあわされるかも知れない。
「勇気…、加藤ってね、いじめるって決めた相手にはとことん容赦がないの。
だから、今勇気が見ている桂さんの机の様子なんてまだほんの序の口。
これから多分…いや、絶対にもっともっとひどいことになるよ」
「そ、そうなのか?」
「うん、私も中学時代にずっと加藤に嫌がらせされていたからわかるの」
「ろ、路夏が!?」
「うん。お母さんの仕事のことでしつこくからかわれたりとかね。
まあ色々あって…、今は露骨にそういうことはされてないから安心して」
知らなかった。路夏が中学の頃にいじめにあってたなんて…。

「ただ、あの頃の私には少しは味方してくれる人もいたし、だから我慢も出来たんだけどね…」
「うん」
「でも、桂さんには、周りに誰も味方してくれる人はいないはず。
 その上いじめる加藤にはみんなが協力してあと押しするんだから、
 調子に乗って嫌がらせはどんどんひどくエスカレートするはず…」
たしかにそうかも知れない。そして僕は桂のことを考える。

周りに誰も味方してくれる人がいない中で、毎日、ひどい嫌がらせを受けたら、
しかも嫌がらせは日々エスカレートしていき、いつ終わるとも知れないとしたら…。
「きっと最後には何か嫌なことになっちゃう」
路夏が、まるで僕の心を読みとつたかのように言葉を続けた。

「嫌なこと…」
「中学の頃にもね、加藤にいじめられていた子の中には転校しちゃった子もいたの」
「転校…か…」
たしかに、こんないじめが続けられたなら、それは十分に考えられることだ。
「もし桂さんが、そんなことになったら…、ううん、もっと嫌なことになるかも…」
もっと嫌なこと……それを聞いて僕の頭に浮かんだのは、
時折新聞やテレビで報道される、いじめの末に訪れる悲惨な結末。
きっと路夏も、言葉には出さないけどそれを考えているのだろう。
198丁字屋:2010/05/07(金) 20:15:07 ID:k84ba97Y
「勇気…私、桂さんを助けたい。私一人じゃ無理だけど、勇気と二人ならできると思う。
 ううん、絶対できるから!」
「路夏…」
「さっきも言ったように、きっと私が勇気を信じなかったから今、こんなことになってしまっているの。
 だから私、今度こそ勇気を信じる!だからお願い!一緒に桂さんを助けよう!」
路夏はそう言って、今にも泣き出しそうな顔で僕をまっすぐ見つめる。
僕も路夏をまっすぐ見つめ返して、強くうなずいた。
「わかったよ。路夏。一緒に桂を助けよう」

その僕の言葉と共に路夏の顔は嬉しさで見る見るほころんでいき、
「勇気っ!」
そう叫びながら僕の胸に飛び込んで、ギュッと抱きついてきた。
僕はその肩を優しく抱き、見上げてくる路夏にはっきりうなずいた。

だが、実はさっき路夏が言っていたことは少し違っていた。
たしかに僕は、学園祭の後、桂とは疎遠になったが、それは路夏が望んだからというわけではなかった。

199丁字屋:2010/05/07(金) 20:15:55 ID:k84ba97Y
そしてあの…学園祭の明くる日の、澤永の嬉しそうな報告を思い出す。


「足利〜、俺にもついに彼女ができたぜ〜い!」
「マジか?人間か?!」
「おい〜っ、人間に決まってるだろ!」
「いや、澤永のことだから女の子にモテないことにやけになって、
〃もう犬でもダンゴムシでもかまわない〃とかさ」
「あのな〜!……ふっ、まあ好きに言うがいい。
 俺の彼女を見たらその可愛さに、そんな減らず口も叩けなくなるんだからな」
「な、何だ?その澤永らしからぬ自信は…」
「それでは紹介しよう。俺様の彼女の…」
そう言って澤永が手招きすると共に物影から出てきた女子が…
「桂…言葉です」
「あ、いや、知ってるけど…」
そう、桂だったのだ。

「けど、なんで?」
「なんでって、そりゃあ桂さんが俺様の魅力にメロメロってことだ」
だが僕はそんな澤永の言葉には…
「納得…できない…」
「納得しろ〜ぉ!」
いくら澤永が叫ぼうと納得できるわけはなかった。だが…
「か、桂、お前本当に澤永の彼女になったのか?」
僕の問いかけに、桂は
「は…はい…」
そう小さく答えて目を伏せた。
その様子が、まるでこれ以上言葉をかけられるのを拒んでいるかのように感じられ、
なぜだかいたたまれなくなった僕は
「そうか。よかったな、澤永。待望の彼女ができて…」
それだけ言うと踵を返し、足早にその場を去った。

だが僕はやはり納得できなかった。
それは僕が、桂の、伊藤へのあまりにも一途な思いを知っていたからだ。

そう、桂は付き合っていた伊藤が自分を裏切っているとも知らず、
いや、半ば気づいていても尚、伊藤を一途に思い、信じ続けていた。
その一途さがあまりにいじらしく、
だからこそ僕は―今思えばあまりに浅はかな行為ではあったけど―西園寺を闇討ちまでしようとし、
その結果―自業自得ではあるが―女装までさせられる羽目になったのだ。

だが、僕がそうまでして応援したその一途な思いを桂はあっさりと捨て、澤永の彼女になったという。
いや、無論桂は桂なりに悩んだのかも知れない。
後日、後夜祭のフォークダンスで、伊藤と西園寺が仲良く踊っていたと…
その後は公認カップルさながらに一目をはばからずイチャイチャしているいう話も聞いた。
また、僕は学園祭の時、複数のクラスメートに何やら一方的に責められていた桂を見かけ、
(女装していて自分で行けなかったので)そばにいた澤永を助けに行かせている。
…つまり学園祭で伊藤に裏切られているとはっきり思い知らされた桂が、
自分の窮地を助けてくれた澤永に魅かれたとも十分考えられた。

だが、それでも僕は、やはり納得できなかった。
自分が過ちを犯しかけたり、女装する羽目になってまで応援してきた桂に、
何か裏切られたような気がしたのだ。
だから僕は桂に関わるのをやめた。桂は学園祭の後、図書館にも顔を見せないようになり、
そのこともちょうどよいと思っていた。
その後、澤永が、結局桂に振られたと泣きついてきたが、僕にとってはもうどうでもいいことであり、
そしてそのまま今日を迎えていた。


200丁字屋:2010/05/07(金) 20:16:34 ID:k84ba97Y
だから、僕が桂と疎遠になったのは決して路夏のせいではない。

だが、僕はそれを路夏には言わなかった。
勘違いとは言え、路夏があまり親しくもない…いや、僕との事でむしろいい感情を
抱いてないであろう桂を助けようとしている、その気持ちこそが尊いと思ったからだ。

しかし同時に僕は思う。
…さっき路夏が言っていたように、一年の女子に好かれていないという桂は、
いつも誰にも相談できずにたったー人で苦しんでいたんじゃないだろうか。
学園祭の前、僕はよく桂と話をしたけど、もしかして僕だけが桂の相談にのってあげられる…
悩みを聞いてあげられる人間だったんじゃないだろうか。

それなのに僕は裏切られたなどと一方的に思いこみ、桂と関わることをやめた。
でも、もし今でも僕が桂の相談にのってあげられたり、悩みを聞いてあげられたりしていたなら、
桂が現在のような目にあうことはなかったのではないだろうか。

だとしたら、これは僕のせいだ。

だからこそ、僕は路夏をやさしく抱きしめながら決意した。

路夏の願いに応えるために…、そして、僕自身の過ちを正すために、桂を助けよう!!



          ※          ※



―そして、再び桂言葉に関わると決めた時から、勇気の大変な日々もまた、再び始まる―

201丁字屋:2010/05/07(金) 20:22:24 ID:k84ba97Y
今回はここまで,
とりあえずここまでがプロローグとなります。

また続き書きあがったら投下します。
ヨロシクです。
202名無しさん@ピンキー:2010/05/09(日) 02:13:08 ID:bSknBCZB
>>193
そういえば原作のビデオテープ発覚は永遠にルートのときでしたが、レイプされた場合も映ってるんですよね。
その時Otome daysみたいな雰囲気ならまだ救いありますが、嬉々として観賞されてたら嫌だなぁ。
レイプってどれだけエロくても鬱になるので救われてるとカタルシスがあります。

>>200
鮮血の手前ってことは言葉が誠の家の合鍵作ってる頃ですよね。この状態の言葉を誠以外が救えるか気になります。
でも誠が絡んだら普通に彼女だけの彼になって勇気必要ないし……続き楽しみにしてます。
203SINGO:2010/05/09(日) 02:57:26 ID:PFrNFtkY
どうも。
>>119-122の続きが書けたんで投稿します。
舞台はクロイズ闇堕ちEndおよび全て諦めEndがベースの後日談です。
今回の主人公は、勇気の姉ちゃん足利知恵です。
弟Loveで桂Loveな知恵をご覧下さい。


【破局の妖精】第三部
〜知恵と勇気だけが〜

204SINGO:2010/05/09(日) 02:58:26 ID:PFrNFtkY
【破局の妖精】第三部
〜知恵と勇気だけが〜

 街の中にはクリスマスソングが流れています。
 行き交う人達も皆さんどこか楽しそうで、いいですね。
 私まで何だか楽しくなってきます。
 私達も夜は一緒にお食事しましょう。
 そして次の日はヨットです。
「私、色々調べていたんです。そうしたら、実はうちのお父さんが、榊野ヒルズにコネがあって、
 簡単に予約できたんですよ」
 本当に簡単でした。
 携帯からアクセスするだけで手続きできるんですから、便利ですよね。
 夜景を眺めながら、ゆっくりとディナーを楽しんで…。
 それから――。
「――ええ。駅前のツリーで待ち合わせしましょう。そして…私達、本当の恋人になるんです」


「僕、知恵ちゃんのこと好きだ」
桂のオジサマが私を抱きしめていた。
「桂さん…」
私は全身で幸せを感じながら、愛しい人の名を呼んだ。
「おい、姉ちゃん」
…ん?
「姉ちゃんてば」
何よ、バカ弟。今、いいとこなんだから、邪魔すんな。
「起きろって、姉ちゃん!」
「んあっ?」
私は目を見開いた。
目の前には、いつもの見慣れた弟の眼鏡ヅラ。
愛しの桂オジサマの姿は、どこにも見当たらない。
辺りは真っ暗闇。
正面のスクリーンには、エンドロールが流されていた。
どうやら私は、さっきまで夢を見てたみたい。

「まったく…何が悲しくて実の姉と恋愛映画見なきゃなんないんだよ…」
弟の勇気がぼやいた。
「アンタが家でヒキコモってるからよ。せっかくのイヴを独り寂しく過ごす気?」
「姉ちゃんこそ。誘ってくれる彼氏とか、いないのかよ?」
私の想い人…桂のオジサマはスイーツおおはらの店長遠野さんと喧嘩されたらしく、最近めっきり
店にお立ち寄りにならなくなった。
そのため、私も桂オジサマとお会いできる機会が極端に減った。
「ふん。私の事は、いいのよ」
そう。どうでもいい。
勇気が幸せになりさえすれば、他はどうでも。
205SINGO:2010/05/09(日) 02:59:32 ID:PFrNFtkY
私と勇気は外に出た。
空は真っ暗だった。時間は午後7時を過ぎている。
寒い。
数日間降り続いた雪は今なお降り続いていて、止む気配が無い。
「で、勇気。桂って子とは、どうなったの?進展した?」
ここでいう桂ってのは、桂のオジサマの事じゃなくて、その息女…桂言葉の事。
「だから、桂とはそんなんじゃないって。てか、何でそんなに桂とくっつけたがるのさ?」
「あの子は、私のお気に入りなの。あんないい子、今時いないわ」
桂は大人しくて素直だし、それでいて芯が強いし。勇気とお似合いのカップルになれると思う。
以前、後輩の喜連川路夏を勇気とくっつけようと画策した事があった。けど、今はもうその気は無い。
路夏は、勇気以外の男と一緒に学祭を回ると宣言してたし、実際、学祭で勇気は路夏に振られた。
学祭以後、二人はお互いに避け合っている。
二人の間に何があったのか、私は知らない。
路夏については良からぬ噂を聞いた。路夏は男遊びが好きで勇気をたぶらかしていたとか何とか。
(真相は、どうだか解らない。もし本当なら、私は路夏を許さない)
「まさか、まだ路夏のこと引きずってんの?いいかげん諦めて、新しい恋に目覚めたら?」
「だからって、何でその相手が桂限定なんだよ?こないだも姉ちゃん、二喜に睨みきかせてたし」
あの綿女の子?あんな軽薄なのと付き合ったらアンタが不幸になるわよ。
勇気に近寄る悪い虫は、全て私が排除する。
その点、桂なら安心して勇気を任せられる。私の目に狂いは無いんだから。
「桂さん読書好きで、勇気は図書委員だし、気は合ってるみたいだし」
「合ってるっていうか、あいつ鈍くさいから、手を貸しただけで。それとこれとは…」
「アンタは黙って姉様の言う通りにしてればいいの」
姉様。うん、いい響き。早く桂にそう呼ばれてみたいもんだわ。
206SINGO:2010/05/09(日) 03:01:10 ID:PFrNFtkY
帰り道。
レストランで夕食を済ませた私と勇気は、榊野駅に向けて歩いていた。
雪は止まず、今なお降り続いている。
「あれ?桂…」
「え?どこに?」
勇気の視線を追うと、駅前の巨大クリスマスツリーの近くに、見覚えのある少女が立っていた。
腰まで伸びた黒髪、大きな胸。間違いない。桂言葉だった。
しかも独り。今日はイヴだし、勇気とくっつける絶好のチャンス。
私は桂に声をかけた。
「あら桂さん、独り?奇遇ね。………え?」
何これ?
すぐに私は桂の異常に気付いた。
桂の頭や肩には、不自然にも雪が積もっていた。傘をさした形跡が無い。
桂の目は虚ろだった。携帯電話をいじってはいるけど、とりとめが無い。
明らかに尋常じゃなかった。
「ちょ、桂さん?一体、どうしたのよ!?」
今はクリスマスイヴの夜。真っ先に思い付くのが、おそらく恋人とのデート。
「誰かと待ち合わせしてるの?」
なら、その相手は?
「勇気。アンタ、まさか…」
「違う、僕じゃない。大体、桂は伊と…他に好きな男が…」
私は桂を凝視した。まるで病人の様に白く冷えた肌。しかも頭や肩に積もった雪の量からして…
間違いない。この降りしきる雪の中、桂は長時間この場で立ち尽くしていた。1〜2時間なんて
チャチなもんじゃない。
「勇気、なにボサッとしてんの!?」
私はコートを脱ぐと、それを桂に着せた。桂の手を引き、手近な喫茶店に連れ込む。
「ホットコーヒー、3つ。急いで」
私は桂を椅子に座らせ、その体に積もった雪を掃う。私のマフラーを桂の襟首に巻いた。
「まことくん…」
桂が呟いた。虚ろな目で。
「マコト?誰それ?どっかで聞いたような…」
「ああ、姉ちゃんは知らないんだっけ。伊藤誠。桂の彼氏だよ。表向きは」
「表向き?」
「伊藤って最低の奴なんだぜ。彼女がいるのに、路…あっちこっちで女の子に手を出してるんだ」
思い出した。伊藤誠。いつだったか、路夏は言っていた。学祭は伊藤誠と一緒に回る、と。
「…誠君は…そんな人じゃありません。凄く優しくて…紳士で…」
桂は伊藤を弁護した。虚ろな目で。
私はイマイチ合点がいかない。
桂が伊藤を優しくて良い人だと評価している一方、勇気は伊藤を浮気者で最低の男だと評価した。
桂の言う伊藤と、勇気の言う伊藤のイメージが合致しない。
「とにかく、何であんな所で独り突っ立ってたの?詳しく聞かせて」


207SINGO:2010/05/09(日) 03:03:05 ID:PFrNFtkY
桂のコトバを整理してみると、
桂は伊藤の恋人で、その関係は今も続いているらしい。
このイヴの日にデートの約束をしていて、待ち合わせ場所は、先ほどの巨大クリスマスツリーの下。
私は時計を見た。時間はすでに午後8時を過ぎている。
「待ち合わせ時間を間違えたって事はないわよね?」
「……」
桂は答えない。虚ろな目のまま。
桂が嘘をついてるとは思えないけど、現に伊藤は来ず、桂はあの寒空の下で長時間待たされてた。
勇気が伊藤を嫌悪してる事を差し引いても、伊藤という男が誠実な人間とは思えない。
「桂、携帯かせよ。伊藤に文句言ってやる」
勇気は桂の手から携帯電話を取ると、リストから 伊藤の番号を呼び出した。
桂は拒否どころか微動だにしなかった。相変わらず虚ろな目。
そして、
「…?テレホンサービス?まさか伊藤の奴、着信拒否してやがるのか?」
着信拒否?デートの約束をすっぽかした事といい、一体どういう事?
勇気は自分の携帯電話を取り出すと、桂の携帯に表示されている番号を入力した。
「もしもし、伊藤か?僕は足利…んな事、どうでもいい!!」
今度はちゃんと繋がったみたい。
「お前、桂をほったらかして何やってんだよ!!」
勇気が電話の向こうの伊藤に怒鳴る。
「何がって?お前、今日、桂とデートだろ!?え、何…?何だって?…!?ふざけんな!!」
勇気はちらりと桂に視線を向けた。哀れみの目で。
…何それ?勇気、心の底から桂を哀れんでる?
「どうしたの?伊藤は何て?」
「伊藤の奴、しらばっくれてやがる。デートなんて知らない、約束もしてないって。くそっ!」
何それ!?信じらんない!!
今まで伊藤を信じて待っていた桂が、あまりにも可哀相よ。
「待てよ伊藤。それじゃ、桂が嘘ついてるって言うのかよ!お前、いい加減にし…」
ガターン!!!
けたたましい音。
見ると、桂が椅子から転げ落ちていた。
「桂さん!?」「桂!!」
私は桂の上体を抱え込んだ。桂の意識は朦朧としていた。桂の額に手をあててみる。
「すごい熱…」
あの寒空の下に長時間いたんだから、風邪をひいても不思議じゃない。てか風邪よりもヤバイ。
「桂さん、しっかりして!勇気、救急車を!!」
私の指示で、すぐに勇気は伊藤との通話を切り、119番にダイヤルした。
「大丈夫よ、桂さん。私が貴方を守るから」
それは、かつて私が桂に宣言した約束事だった。

208SINGO:2010/05/09(日) 03:04:26 ID:PFrNFtkY
やがて数分後。
救急車が到着した。救急隊員が駆け付けてくる。
「この子よ。早くして!」
救急隊員が桂をタンカで運び出す。そこへ、
「ことのはー!」
一人の少年が野次馬の群れを掻き分けて来た。
「伊藤?アイツ…!」
勇気が怒気を込めて少年を睨みつけた。
ふうん。あの冴えないガキが例の伊藤誠か。
さんざん桂を放置しておいて、今更どのツラ下げてココに来てんだか。
私は伊藤の前に立ちはだかった。一発、伊藤をブン殴ろうとして、
ごすっ。
いきなり伊藤の体が吹っ飛んだ。勇気が私よりも早く伊藤を蹴り飛ばしていた。
グッジョブ。
「勇気。そんな奴、放っときな。それより桂さんに付き添うわよ!」
すでに桂は救急車に担ぎ込まれていた。
勇気も慌てて救急車に乗り込む。
「早く出して!」
「え?ちょ、姉ちゃ…」
救急車のドアが閉まり、最寄りの病院に向けて走り出す。
勇気が何か言ってるみたいだけど、私には聞き取れない。
それもそのはず。私は救急車には乗らなかった。桂と勇気を乗せた救急車を見送っただけ。
これでいい。これで桂を守るという約束は果たした。私が桂に付き添う必要は無い。
むしろ勇気を付き添わせて勇気一人の功績にすれば、ドラマチックな展開になる。
これで桂の気持ちが勇気に傾けば全てOK。
やっぱり勇気には桂がお似合いだと思う。桂にしても、伊藤なんかには任せておけない。
だから勇気、上手くやりなさいよ。せっかくアンタに華を持たせてあげたんだから。
上手くいけば、桂のお父様にも認めてもらえて…
…あれ?よく考えたら、さっきのって桂のお父様とお会いできるチャンスだったんじゃ…?
あああ、私ってば間抜け。このやるせない想い、どうしてくれよう。
私は、地面にヘタっている伊藤を睨みつけた。
見れば見るほど冴えないツラ。桂のお父様の足元にも及ばないわね。
私は伊藤の胸ぐらを掴むと、ムリヤリ伊藤を立ち上がらせた。
「桂は私のお気に入りなの。女心を弄んでおいてタダで済むと思うかい?」
「ひいいィィー」
イヴの夜空に、情けない男の悲鳴が響いた。

?Happy End?
209SINGO:2010/05/09(日) 03:05:46 ID:PFrNFtkY
終わりです。

闇堕ちEndや全て諦めEndには、何らかの救済処置をして欲しい
と思って知恵を動かしました。

ちなみに作中の言葉はアニメスクイズ仕様で、壊れています。
ので、デートの約束というのは言葉の狂言です。
本人に自覚はありませんが。
210名無しさん@ピンキー:2010/05/09(日) 16:49:23 ID:oQZP/33f
GJ!風邪ひいてもおかしくないですね、あの状態だと
>>私の目に狂いは無い
確かにないな……よく分かってらっしゃる

アニメ仕様ということは、妊娠騒ぎの辺り?
211もう誰も選べない:2010/05/09(日) 23:59:34 ID:bSknBCZB
どーも、前回したいことを投稿した者です。
もう誰も愛せないのルートから、もしも誠が誰も選ばないという選択をしたらどうなるか考えてみました。
昼食をどちらと食べるか揉めるシーンからスタートします。

『もう誰も選べない』

目の前で言葉と世界が修羅場ってる。決め付けてるだの、俺が嫌がってるだの言っているが、そうやって争われるのが
一番困るという考えは浮かばないのだろうか。
「どっちと……食べます?お昼」
「どっちって……」
もしもここでどちらかを選んだとしたら、選んだ方に気があるって解釈されるよな。

「悪い、俺学食行くから」
「「えっ!?」」
どちらとも食べな言われるとはと思ってなかったのか、二人とも驚いてる。これは説明しなきゃいけない雰囲気だな。
「勘違いしないで欲しいんだけど、俺は言葉のことも、世界のことも嫌いになったわけじゃないし、冷たくしたいわけ
でもない。でも今は誰かと付き合うとか、そういうことは考えられないから……気を持たせるようなことはできない」

呆気にとられて何も言えないでいる二人を置いて、逃げるように学食に行った。
加藤が空気読まずに告白してきた場所だし当然といえば当然だが、俺を見てヒソヒソ何か言ってる奴がいる。
まああの修羅場よりは幾分かマシだが。

「誠君、隣……いいですか?」
「好きにすれば」
「好きにします」
言葉が追ってきた。選べないと言っただけで一緒に食べるのを拒否したわけじゃないと思ったんだろうか。

「誠君」
「ああ」
「放課後、空いてますか?今日は、誠君の家に遊びに行きたいです」
「俺、でも……」
「私、一度着替えてから行きますね。週末だし、良かったら土日も誠君と過ごしたいです」
いや承諾してないから。でも断ろうにも今日は妹が来るわけでもないし、もしも理由を言わずに断っても
理由がないならいいですよねとか言われそうだ。なんと返事しようか迷ってるうちに食べ終わってしまった。

「誠……お願い、桂さんのところには行かないで」
教室にもどって世界の第一声がこれだ。
誰だよ教えたの。絶対こじれるから黙ってるつもりだったのに。
「いや、でも家に帰らないわけには……」
「じゃあ私の家に来て、今日誰もいないから」
なんでそうなるんだよ。俺に選択肢はないのかよ……そうこうしてるうちに放課後になった。

「誠、待ってるから!」
そういい残して世界は帰った。なんでどちらか選ばなくちゃいけないみたいな雰囲気なんだろうか。
掃除当番中も憂鬱だったが泰介が心配してくれて幾分か楽になった。
いい奴だよな。学祭の時は言葉と仲直りする手助けをしてくれたし、世界に告白した時だって自分の彼女が
とられたのを恨んだりしないで祝福してくれた。そういう奴だから黒田が惚れたんだろうか。
212もう誰も選べない:2010/05/10(月) 00:34:57 ID:+J8ns99p
とにかく、状況を整理してみよう。
まず加藤、コイツには気持ちは嬉しいけど困るってはっきり伝えたから大丈夫だろう。
妹が嫌ってるのが若干不安だけど、少なくとも俺が見る限りは付きまとったりするタイプでもないし。

次に世界、教室で浮気してると大声で叫んで、みんな見てるのにキスしろとか無茶振りするのは正直引いた。
誤解されるようなことした俺も悪いんだけど、あんなにヒステリックで聞く耳持たない奴だとは思わなかった。
勿論俺のことを好きで、世界なりに必死になってやってしまったことなのはわかってる。でも気まずい。
世界のことはまだ好きだけど、また付き合ったとしてうまくやっていく自信がない。

最後に言葉、愛が重いと感じることはあるけれど、俺のことを責めたりしないし一緒に居て楽な存在ではある。
もともと嫌いになって別れたわけじゃないしむしろ好きだけど、言葉よりも世界のほうが好きだってことで別れた
のに、世界とうまくいかないからって今更ヨリを戻すというのは違う気がする。

……状況を整理してみてわかったが、世界の家に行くという選択肢はないな。帰ろう。

「言葉」
「誠君……」
凄くいい顔で笑ってる。普通に家に帰っただけなんだけどな。
「とりあえず、家で話そうか」
「はい!」

いきなり今後のことを話すのは気が引けたから先に夕食を済ませた。
食事中も世界にメールか電話で伝えたほうがいいかとか話していた。核心に触れないと。

「あのさ、俺は言葉のこと選んだわけじゃないんだ……」
「えっ……」
「おれはもう世界と付き合うつもりはないし、言葉のことは好きだけど……でもまだ世界のことも好きだから
そういう気持ちで付き合うのは言葉に失礼だと思うから、だから……ごめん」
「謝らないでください。誠君は私のこと好きなんですよね?じゃあそれでいいじゃないですか!」
「でも……」
「私が、西園寺さんのこと忘れさせてあげますから」

そう言って服を脱いだ。明るいところで言葉の裸を見るのは初めてだ。

「大丈夫です。誠君はもう何も心配しなくていいんですよ」
胸を顔に押し付けてきた。
「ちょっと待って!する前にどうしても言いたいことあるから服着てくれないか」
ありったけの理性を振り絞って言った。
「もう……」
言葉はしぶしぶ服を着てくれた。

「言葉、俺ともう一度付き合ってくれ……こういう状況で言っても説得力ないかもしれないけど」
服を着せて告白したのはせめともの良心だ。好きな女の子が裸で迫ってきて拒む自信なんてないし。
「はい、喜んで」
当初はもう誰とも付き合うつもりはなかったけど……ま、いっか。



213名無しさん@ピンキー:2010/05/10(月) 07:19:32 ID:/jjagnVg
>>212
乙です 
あれ? 結局言葉を選んでいるwww
214名無しさん@ピンキー:2010/05/10(月) 12:53:39 ID:KM4R0OJW
>>212
確かに誰も選ばないとなると、消去法で言葉が残るわな。
世界は自宅、加藤は浜辺で待ちに入ってるなか、言葉だけは誠の家まで突撃してるし。
215名無しさん@ピンキー:2010/05/10(月) 16:00:46 ID:eYA+YDN2
1番いいのは、昼食で2人とも断った時点で一切拒絶する事だったと思うが、
結局非情になりきれず中途半端に気をもたしちゃうんだな誠という男は
ここでは言葉に流されそうだけど、火種を残す終わりかただ
216名無しさん@ピンキー:2010/05/10(月) 23:53:21 ID:+J8ns99p
火種といえば確かに世界あたりがリアクション起こしそうですね。原作でも諦められないみたいな発言してますし。
まあこのルートの誠は純情な方なので浮気はする確率は低いと思いますが。

今永遠にルートで言葉が死なない状況2パターン考えてますが、言葉が黒いです。純愛系が好きなのに思いつくネタは言葉が黒いのが多いです。
というかスクイズって言葉が一度も黒くならないルートってクリスマスイブぐらいしかないような……
217鏡(仮):2010/05/11(火) 01:55:16 ID:so6X2GPG
路夏の復讐物書いてる者だが、相変わらず苦戦中……
まあ大枠は全て決めてるので、後は細かいセリフや文章を肉付け
しては削り…の繰り返し中(笑) 加えるより削る方が難しい… 80Kb以上
いくんじゃないだろうか あとはキャラ救済のSSや別ゲームとのコラボ&パクリSS
も書いてる 長編投下後に出す予定です

後半のキモはやっぱし勇気(と言葉)かな? セリフのある
登場人物は路夏・乙女・勇気・言葉以外だと数人か 名前だけだともっといるが
投下前にもう1回お知らせするつもり
218127:2010/05/11(火) 17:40:05 ID:W71Dk4kq
やっぱり実際書いてみると予想以上に文章量多くなったりとか普通にありますね……
Otome days ラスト投下したいと思います。
>185-193の続き
219【Otome days】:2010/05/11(火) 17:41:12 ID:W71Dk4kq
「私……学園祭の時あんな事があったなんて全然知らなかった……」
「『お化け屋敷の壁が壊れただけ』って世界達に嘘ついたのは謝る。
 だけど不必要に言う様な事でもなかった」

隠し撮り騒動の翌日の放課後。
少し居心地の悪い部活を終えて帰ろうとしてた私と七海の所に西園寺と清浦がたずねて来て
とりあえず私達4人は黒田の喫茶店にお邪魔していた。
……昨日の今日だし用件は大体想像ついてたけど、あえて丸1日学園生活して
お互いの近辺の状況を把握して、学校から離れた所での情報交換っていう訳か。
清浦って本当に頭の回転がいい子だよね。


「加藤さん、今日桂さん見かけなかったけど学校お休みだった?」
「うん。さすがに昨日の今日だし休んでる。私が1日位は休む様に言ったせいもあるかもしれないけど……
 ……でも昼にメールしたらすぐに『今日は休ませてもらったけど月曜日からはちゃんと来る』
 って返事来たから今の所大丈夫だとは思う……」
「そっか……桂さんあの時は気丈に振舞ってたけど、さすがにあんな事があったばかりだもんね……」
同じ女の子としていたたまれない様子で顔を伏せる西園寺。
この子は今回の件では一番外側にいたけど、それだけに何も知らずに過ごしていた無力感
みたいなのを感じているのかもしれない……
私だってもし自分の知らない所で友達が辛い目にあってて、みんなで励まし合ってるのに
一人だけ知らないでのん気に過ごしてたなんて分かったら正直ヘコむもん。


「七海から3組の様子は大体聞いてるけどそっちは思ったほど大した事ないんだって?」
「うん 七海の件は桂さんの件で結構うやもやになってるみたいだよ。
 七海も結果的に桂さんに救われたんだからもう変な噂とか真に受けて冷たくしちゃダメよー?」
「世界……それちょっと不謹慎」
「うぅ、すいません」
気を持ち直して少しおどけてみせる西園寺だったけどすぐに清浦に叱られてしまってた。
清浦って本当にしっかりした奴だよね……
西園寺のお目付け役って所かな?


「べ、別に元々私はもう桂の事嫌ってなかったし……
 でもその切欠は桂とはライバルだと思ってた西園寺や乙女が意外と仲が良かったからだから
 実際ちょっと調子良すぎかもしれないけどね……」
そう言うと少し気まずそうにコーヒーを飲む七海。

うぅ……それ言うなら私だって桂と仲良くなった切欠を考えると最高に人の事言えないんだけどぉ……
最初の切欠はみなみの百合本で、素直になれた原因はあの事件での同情心や罪悪感とかもあるだろうし……


「でも仲良くなる切欠なんて実際はそういうものだと思う……最初の切欠が少し不純でも
 実際付き合いだしてちゃんと絆が生まれるのならそこまで気にする事ではないかも」
「ちょっと〜 それさっき私に叱った事と矛盾してないか〜?」
「ふふふ」
西園寺のツッコミに不適に笑ってVサインをする清浦。
……何だかちょっと可愛いじゃないのよ。

220【Otome days】:2010/05/11(火) 17:42:10 ID:W71Dk4kq
そこへウエイトレス姿の黒田がみんなのケーキを運ぶがてら会話に参加する。
「でもその分澤永が女子から大分シカトされてるみたいなのよね〜 
 いい薬だと思うけど、あいつ自身はあんまり気づいてないみたいだけどね」
そう言う黒田の心境はかなり複雑そうだ。
好きな男子がいきなりあんな事しでかしてしまった心境ってどんなものなんだろう……

「えっと……光もご愁傷様です」
「でも、刹那と光は名誉ある救出者って事で事情を知ってる人達の評判うなぎ上りだし
 光なら澤永と色々親しくなっても問題ないと思うよ。
 いざとなったら『こいつの首に輪をつけとく為』とか理由つければいいんじゃない?」
「う〜ん……私自身さすがに今回は幻滅したし付き合う付き合わないっていうのはしばらくは無しかな……
 これから時間をかけて、あいつのいい所を沢山見れたらその時考える事にしようかなって」
黒田はそう言うと「それじゃゆっくりしていってね」と言い残して仕事に戻って行った。

うぅ〜 黒田が何だか可哀想〜
何だが4人揃ってしんみりしてしまう。
七海も昨日散々だっただけにテンション低いし……
桂とは違って自業自得といえばそれまでなのかもしれないけど、私だってもし学園祭の時
伊藤に会えて向こうがOKしてくれたら同じ事してただろうから人の事言える立場じゃない。


「そ、そういえば加藤さんの近辺はどうだった? 刹那と光も随分祭り上げられていたから
 そっちも凄かったんでしょう?」
「そういえば乙女は女バスでの評判はうなぎ上りだったよね〜」
何とかこの空気を打破しようと西園寺が話題を変えてくれるけど……よりにもよってその話題?
しかもそんなのに限って七海も乗ってくるしっ
「へ〜 やっぱりそうなんだ〜」
「フッフッフ」
清浦までニヤニヤしないでよ!

「そ、そうよ……っ あのビデオの最後の方のせいなのか、何だかクラスでも部活でも艶っぽい顔で見てくる女子が多いし
 同学年なのにいきなり『乙女お姉さま』と呼ばせてなんて言ってくる子までいるし……っ」
今日1日中女の子達に構われたり好意の目線を送られたりで散々だった。
みなみのコレクションを堪能した直後の私だったら最高のシチュエーションだったかもしれないけど
桂という本命を見つけた今となってはそんなに……じ、じゃない!
……やっぱ私はともかく桂にとっては早く過去の事にしたいだろうし、たとえ悪意がなくてもその件で注目させるのは
いい事ではないと思う。
それを考えるとやっぱり早いとこ風化して欲しいんだけど……

でもそのおかげで女バスでも七海の件は多少話題にはなったけど大した事なかったのは幸いかな。
「桂の話題に隠れた」「いつも一緒にいる私がそんな状態」……っていうのもあるけど
元々七海自身1年のエースで人望もあるしね。


……ちなみに教室では、夏美とみなみは自分達にも一因あるからちょっと桂に申し訳なさそうにしながらも
「女の子にモテモテになっちゃってね」ってニヤけ顔で言ってきて
3人の中では一番桂と仲が良くなってるけど、今回の件は唯一昨日になって初めて知った来実は
意外にも「私のを映しとけばよかったのに。女の子だけならそんなにショックじゃないし」
って桂に同情して泣きそうになってた。
……あと、3人とも何故か私の評判の件で鼻を高くしてたっけ……やれやれ。

221【Otome days】:2010/05/11(火) 17:42:32 ID:W71Dk4kq
「でも何だかんだで加藤さんが一番桂さんの事気にかけてて桂さんも頼りにしてると思う」
「刹那の言う通りだよ。 本当あんたらここ半月で急接近したよね。殺伐してたのが遠い昔の事みたいだよ」
「うっわ〜 じゃあ今女子に大人気の加藤さんの本命は桂さんなんだぁ〜」
「あ……あんたらね……」
はぁ、そしてこっちでもそういうので冷かされるわけか……
本当、七海の言う通りで私が言うのもなんだけど半月前までの事が1年前位に感じちゃうよ。
「加藤さん、桂さんって可愛いよね」
清浦が結構珍しい満面の笑みでそう尋ねてくる
「そ、そりゃまぁ……って! 何言わせるのよっ」
「へっへ〜 それじゃ加藤さんと桂さんがくっついてる間に私は誠と……」
「させるかぁっ」
「ありゃ残念、やっぱ乙女はノーマルみたいだな世界」
「いや、これはむしろ両刀使い……
「?? それどういう意味?」
「おほほほほ 世界にはまだ早いの」
「く、黒田は仕事してなさいよぉっ」

何だか知らないうちに話がおかしな方向に盛り上がっていって、結局後はみんなでケーキを食べながら
みなみが喜びそうな話をするだけだった。
……でも最後まで沈んだままでいるよりは断然いっか。



「加藤さん、明日桂さんによろしく」
「ど、どういう意味よ清浦?」
「いえいえ、フッフッフ」

き……清浦……
気づいてやがる


222【Otome days】:2010/05/11(火) 17:43:03 ID:W71Dk4kq
…………

翌日の休日

「あぁ〜 乙女さんだぁ〜 いらっしゃーい」
「心ちゃんお邪魔するね」
うひゃ〜 桂の家に来るのは3度目だけどやっぱ何度見ても桂の家の大きさには圧倒されるわ〜
うちの家もそこそこ大きい方だけど比べ物にならない。

「あーあ 今日乙女さんが来る事知ってたらデートの予定入れなかったのにな〜」
うぅ……私は未だに伊藤に告る事も出来ないでいるのにこの子は……
その思いっきりのよさを少し分けて欲しい。

「加藤さん」
「あ……桂、2日ぶり……」
心ちゃんに家の中まで案内されてそこで桂が出迎えてくれたけど見た目には思ってたより元気そうで内心安心する。

「それじゃ乙女さん、お姉ちゃんをよろしくね。 何だか一昨日からずっと元気ないから」
「あ、うん」
「心、今日はお父さんもお母さんも帰りは遅いからってハメを外しすぎないで夕ご飯の前には帰ってくるのよ」
「分かってるって〜」
心ちゃんは姉の言う事を上手く聞き流しながらまわれ右をすると、そのままデートに出かけてしまった。
っていう事は……今私と桂はこの家に二人っきり〜!?

「加藤さん、ひとまず私の部屋に行きましょうか」
「う、うん」

一度意識しだすとなかなかドキドキが収まらない。
私は知らず知らずのうちに顔を赤くしながら前を歩いている桂の後姿を見つめていた。



……最初の切欠はみなみの漫画に染められた目で見ると凄く可愛くて意識したっていう単純なものだ。
それが切欠で学園祭の手伝いをしているうちに意外と頑張り屋で健気な奴だという事に気づいて
更に好きになると同時に普通の友情みたいなのも感じ始めた。
だけどそれをはっきり認める事が中々出来ないで、桂や他の子に意地を張り続けていた矢先に
学園祭の事件が起こる。

澤永が桂の彼氏になるのはなんだが凄く嫌だった。
ほら、澤永って少し頼りなくて、結構リードしそうな黒田となら悪くないかもしれないけど
桂をちゃんと守っていけるか心配じゃない?
その事を澤永に忠告したつもりが勘違いされて、結果桂を物凄く傷つけてしまったのは
本当に申し訳なくて憂鬱だった。

だけど皮肉にもその罪悪感と同情心が切欠で素直になる事が出来て、あの後初めて身構える事なく話した心ちゃんとの
3人のおしゃべりは本当に面白くて、その時に桂はもう私の友達なんだとはっきり認めることが出来た。

……我ながらお世辞にもいいとは言えない切欠だけど……清浦が言った様に物事なんて実際そういう物なのかな……?
それにしてももしその切欠がなかったら、私は桂に対してかなり酷い事をしていた可能性も十分考えられて
パラレルな事とはいえちょっと自己嫌悪を感じてしまう……。


……何はともあれ実際私はこういう道を歩んだいて、桂に対しては最初は恋心の様な感情を抱いていたけど
今ではそれが強くなるばかりか同時にそれに負けないくらいの友情も感じていて
……一体どちらが本当の気持ちなのか答えは出せないでいる。

……だけどどちら側にせよ、これから桂と仲良くやっていこうとはっきりと決めた矢先……
私が安易に誘ったばっかりにまた桂を傷つけてしまった。

223【Otome days】:2010/05/11(火) 17:44:05 ID:W71Dk4kq
「桂ぁ……私ってば相変わらず桂を傷つけていてばっかりだね……昔と全然変わってないや……」
部屋に通されてとりあえず一緒にベッドに腰かけてるまでの間にここ半月の事を思い返してたんだけど
なんだか無性に自分に腹が立って、そんなセリフが口からこぼれ落ちてしまう。

「か、加藤さん!? 何を言ってるんですか!?」
はぁ……なんであんたはそこでそんなに意外そうな顔をするかな……
「だって実際私が余計なアドバイスしなかったら学園祭の事件は起こらなかったかもしれないし
 ビデオの件も私が誘ったばっかりに目の当りにしちゃって……」
や、やばっ 何だか今まで私のしてきた事を思うと自己嫌悪で泣けてきちゃったじゃないのよ……

その時、不意に目の前が真っ暗になって顔にやわらかい感触を感じる。
……私は桂に抱きしめられていた。
「それはたまたまめぐり合わせが悪かっただけです。
 ……加藤さんは大きな仕事をみんなで協力してやり遂げる達成感を教えてくれました……
 ……放課後に一緒にハンバーガーショップでおしゃべりする楽しさを教えてくれました……
 そして学園祭前日に無防備に寝てしまってた私を介抱してくれて、澤永さんの時も
 みんなとすぐに助けに来てくれました……感謝の気持ちで一杯です……」

そう言いながら抱きしめる力を少し強める桂。
そ、そんな事言うなら私だって桂と関わってるうちに清浦や黒田、あと西園寺とも
それなりに仲良くなれたんだし感謝してるわよ……

「桂ぁ〜 今まで辛く当たって本当にごめんっ……グスッ」
散々な事してきて泣くなんでずるいとは思っててももう私には涙は止まらなかった。



……………

「加藤さん、落ち着きました?」
「うぅ………何かすっごい恥ずかしい……」
桂を元気付けに来たつもりが逆に元気付けられてしまったじゃないのよ……
何やってるんだろ私。
「ふふっ 何だか今までと立場は逆ですね。今の加藤さん、凄く可愛いです」
「バ、バカァ!」
いきなりそんな事を言われて思わず声を荒げてしまう私だったけど
桂はそんなのお構いなしにハンカチで私の顔を丁寧に拭いてくる。
「……あの時はこうやって加藤さんに拭いてもらったんですっけ……」
どうやら桂は一昨日の事を思い出している様子だけど、お世辞にもいい思い出とはいえないのに大丈夫かな……?

「実を言うとあんな事があったせいで、こうやって誰かと直接触れ合ったりするのに
 苦手意識を持ってしまうんじゃないかと心配だったのですが……とりあえず大丈夫みたいで安心しました」
「そっか……でも今のは桂からリードして抱きついたおかげもあるかもしれないね。もし私からだったら……」
「そ、そんな事ありませんよっ 信頼できる子とならきっと平気に決まってますっ」
ほんの今まで泣いてたせいか、つい少しネガティブな事を口にしてしまう私だったけど
桂はそれを強く否定して、何を思ったのか突然ベッドに横になった。

「加藤さん、もしご迷惑じゃなかったら男の人になったつもりで洋服の上から私の体を触ってみてくれませんか?」

224【Otome days】:2010/05/11(火) 17:44:36 ID:W71Dk4kq

………………はい?

「か、桂……? どうしたの? 急に?」
桂のあまりにも唐突で思い切った、そして私にとっては恐ろしく魅力的な提案に
思わず夢じゃないかと頬っぺたをつねりそうになる。

「加藤さんにだったら多少のスキンシップならされても平気だって証明したいんですっ」
う、うわ、桂ったら何だか物凄く決意に満ち溢れた目をしてるし。
「ほ……本当にそんな事していいの……? 気持ちは凄く嬉しいけど、出来れば桂を怖がらせる様な
 事したくないんだけど……」
「はい、私自身あの時の事が女の子同士でふざけ合うことも出来ないほどのトラウマにまではなっていないと
 いうのをちゃんと知りたいんです。あ、でも洋服は脱がせないで下さいね。普段の女の子同士のふざけ合いでそんな
 事しませんから」
普段の女の子のふざけ合いでも服の上から○○とか××する事はあんまりないと思う
……なんていうツッコミはあえて口に出さない私。
正直、少なからず友達以上の感情を抱いてる女の子がそんな風に言ってきたら
断る理性はとてもじゃないけど私にはないもん……

そりゃあ友達ろしてちょっと後ろめたい気持ちもあるけど……
カツラガシテホシイッテイッテルノナラ シテアゲルベキナノカナ……?

「じ、じゃあ、桂が嫌って言った事はしないから、そういうのは言ってね」
「……はい」

「………桂ぁっ!」
桂のその返事を合図に我慢の限界を超えた私は思わず桂の上に覆いかぶさるように倒れこんで
その首に腕を回してしっかりと体を密着させた。

シャンプーのくすぶったい香りや服越しにも伝わる豊満な胸の感触が私を刺激する。
ハァ、ハァ 私今ベッドの上で桂と体を重ね合わせてる……
「やっぱり桂ってすごく女の子なんだね……」
「そ、そんな……恥ずかしいです……」
「髪なんてすっごくサラサラ……指先も細くて綺麗……」

事件絡みやハプニング以外で桂と深く触れ合ったのは、学園祭前夜の休憩室で少しだけだった。
あの時は桂は眠っていて、後ろめたさから大した事は出来なかったし邪魔も入った。
だけど今は邪魔が入る心配もないし、桂自身も受け入れてくれている。
そう思うと何だか夢中になって気持ちの赴くままに桂の長い髪を軽く撫でたり綺麗な指先をツンツンしたりする。
……それにしてもやっぱり一番意識するのはその規格外の胸だよね……。
「うぅ……桂の胸、やっぱり同じ女の子として憧れるよぉ〜」
「そ、そうでもないですよ。肩はこるし汗疹も出来やすいし、男子からも変な目で……あんっ」
焦る気持ちを抑えて出来るだけ優しく揉んみほぐすと桂は色っぽい声を出してビクンッと体を震わせる。
その反応が私をより一層燻らせた。

「桂……あんた可愛すぎ」
何だか桂が凄く愛しくて、赤みを帯びた頬にチュッとキスをすると桂は更に火照り顔になり
口元を両手で隠すと照れ臭そうな表情で私を見つめて来る。

「か…加藤さんにキスされちゃった……」
「えへへ、しちゃった」
こいつなんでこんなに可愛いの!?

改めて片手でしっかりと桂を抱き込みながら、もう片方の手をめいいっぱい下に伸ばして
桂の長いロングスカートを捲り上げていく。
桂は真っ赤な顔でイヤイヤするけど本気で嫌がってる感じじゃなくて学園祭のトラウマが蘇ってる様子もない。
225【Otome days】:2010/05/11(火) 17:45:32 ID:W71Dk4kq
「お待ちかね、桂の下着チェ〜ック」
「はぁ……はぁ……ふふ、残念……見えませんよ……」
もうすぐ桂のスベスベな太ももも撫でまわせる上に下着も堪能できると思うと
何だかテンションが上がってしまう私だったけど桂は息を切らしながらも不適に笑う。

それがちょっと気になりながらも桂を抱きしめながらの不自由な体勢でふくらはぎ、膝、太ももと
たぐり寄せるような感じで段階的に捲くりあげていく。
そして最後まで捲り上げたんだけど……桂はロングスカートの下にしっかりとタイツを履いてて
それが予想以上に厚手で下着は全く見えなかった。

「うぅ、何よこれぇ〜 随分しっかりしたのを履いてるじゃないのよぉ」
「ふふ、セーター等の生地に使われるウールが少し入ったタイツです。ここ数日寒くなってきたんで
 愛用してるのですけど暖かいですよ」
そう言い軽く微笑みながら太ももを擦り合わせる桂だったけど、私はふと桂の服装全体を改めて見渡してみる。

上半身は首まで保護したトータルニットの上にカーディガンを着用しててそのボタンもしっかり留めている。
下半身も膝下までのロングスカートと厚手のタイツでしっかりと肌を隠している。
うぅ……何だかいかにも清楚なお嬢様って感じの服装で、パーカーにハーフパンツの私とは正反対だよ……


「ちょ、ちょっとだけ脱ぎなさいよぉ」
「ダメですよ。 最初に洋服は脱がないいって約束したじゃないですか」
あまりにも隙のない桂の服装に思わずお願いしてしまうけど、やんわりと断られてしまった。
確かにそういう服装で、それを脱がない前提だったら大分安心感はあるかな……。
でも、警戒すべき相手とだったらたとえ服の上からでも触られるのは嫌だろうし
私の事信用してくれてるのは確かかな。
だけど、それだけに無理を押し付ける気にはなれなかった。
そもそも服の上からなのは最初に桂と約束したし、ここはとりあえずタイツ越しとはいえ露になった
桂の太ももを撫でようと少し興奮しながら手を伸ばすと……

「えいっ」
「え? キャッ」
桂はいきなり私にしっかりと抱きついてくるとそのまま寝返りをうって体を半回転し
今までとは逆の体勢……つまり仰向けに横になった私の上に桂が乗りかかった様な体勢にされてしまう。

「な!? か、桂!?」
「何だかさっきからの加藤さん、凄く可愛くて……折角ですので交代してみませんか?」
ちょ、ちょっと!? 桂が途中で怖くなって中止になるかもしれないっていう予想はしてたけど
逆にここまでその気になってしまうなんて完全に予想外よっ!?

呆気に取られているうちに私の両手首は、桂の綺麗な両手に掴まれてしまい
そのまま頭の両隣に押し付けられて身動きが取れなくなる。
「ふぁっ…」
上から覗き込んでいる桂の髪が私の顔を撫でて、そのくすぐったさに思わず
普段上げないような声を上げてしまう。

「加藤さん、今の声……すっごく可愛かったです……」
「は、恥ずかしいからっ」

照れ臭くて思わずもがいてしまう私だったけど桂の両手の拘束はまったく外れそうにない。
……桂ってこんなに力あったの?
そうしてるうちに今度は顔を下げてきて、おでこ同士をピタッとくっ付けて来る桂。
「はぁ……はぁ……」
う、うわっ、桂の顔が目の前に……しかも息ずかいも聞こえてきてそれが私の顔にかかってくるうっ
「加藤さん……今とっても可愛い顔してますよ……」
「そ、それはあんたもよ……」
226【Otome days】:2010/05/11(火) 17:46:00 ID:W71Dk4kq

その体勢のまましばらく見詰め合う私達だったけど、しばらくすると桂は私の両腕を解放して
代わりに私の体に手を回すとしっかり抱きしめてきた。
更に今度は自らロングスカートを捲りタイツに包まれた自身の足をハーフパンツから伸びている私のナマ足に
絡ませた上に頬っぺた同士もくっつけてスリスリとしてくる。
「ひゃっ あんっ!」
洋服越しとはいえ桂の柔らかい感触を全身に感じて、更に頬には直接桂のスベスベで暖かい素肌を
感じてしまってるせいで更に変な声をあげてしまう。


「普段の加藤さんって凄く凛々しくて私の憧れなんです ……でもバスケ部で鍛えてるイメージがありますけど
 こうして触れあってみると意外と華奢なんですね……」
うぐっ まさか桂からそんな指摘うけるなんて……
「今の加藤さん、とってもか弱い女の子ですよ。 何だか悪戯しちゃいたくなります」
「か、桂のいじわる〜っ ひぅっ!」
物理的な気持ちよさもさることながら、今桂に弄られているという事実が私の体を更に敏感にする。

「さっき私にやろうとした事のお返しです」
更に今度は私のハーフパンツの足の穴に軽く手を入れてきて、そのまま太ももの内側をスリスリと撫で回しだす。
「ひゃぅうっ!」
直に撫で回される衝撃に私は思わず声を上げると共に体を「ビクンッ!」と大きく仰け反らせてしまったけど
桂はやめる気配はなくて、悔しいからこっちも捲れたスカートから出てる桂の太ももの内側に
何とか手を伸ばして撫で回しだした。
「あっ…んっ……」
桂もそれが気持ち良さそうにしているみたいだけどタイツに守られて直に触れないせいで
私の方が押されてしまっている……

「はぁ……はぁ……か、桂ぁ〜 ハーフパンツの中に手を入れるのは反則だって……ひゃっ!」
「ダ……ダメなのは脱がせる事だけですよ……? 私は加藤さんの服を脱がせてはなくて 
 隙間から手を少し入れてるだけですから……はぁ……はぁ……」

……か……桂ってば実はこんなにエッチだったなんて……

……ごめん、もう私耐え垂れない。
「お願い桂っ」
我慢出来なくなった私はもっと直に桂にしてもらおうと思わず服を脱ごうとしたけど、その手を桂に掴まれる。
「ダ……ダメですよ。 あくまで服の上からなんで……はぁ……はぁ」
「だ……だって……」
うぅ〜 一体どこまで焦らす気よ〜

「ひぅっ!!」
その時、いつの間にかハーフパンツの大分奥まで入ってた桂の手が、私の女の子の部分に下着越しに触れてしまう。
「か、桂ぁーー!」
その瞬間私の頭の中は真っ白になって、桂に抱きしめられているのを感じながら意識が遠のいていってしまった。
227【Otome days】:2010/05/11(火) 17:46:41 ID:W71Dk4kq
…………

「う〜……ん………あれ?」
「加藤さん、目が覚めましたか?」
どうやら私はあのまま眠ってしまっていたみたいで、目が覚めると桂のベッドの上で布団を掛けられていた。

「加藤さんの寝顔、とっても可愛かったですよ」
「もぉっ、からかわないでよっ」
うぅ……真っ先にさっきの事を思い出してしまって早速顔が赤くなってしまう。
……それにしても……洋服越しだったにせよ私ってばとうとう桂としちゃったんだ……
そう思うと今度はどうしても顔がニヤけてしまう。

「まさか桂があんなに積極的だったなんてビックリよ〜 これだけの事やれるのなら心配する事なかったわね」
「あ、あの時は加藤さんがあまりにも可愛かったんでつい……」
うわっ 桂ったら、ちょっと仕返しにからかってやろうかと思ったらそんな嬉しい事言ってくるし。

……でも、桂に作らせてしまったトラウマはそれほど深刻じゃなかったみたいで安心した……

その時、桂はどうしても譲れない話題を口に出した。
「誠君相手にもこれだけ積極的になれたらいいのですが……」
……か、勘弁してよ〜
あんたみたいに可愛くてスタイルもよくて清楚なお嬢様で性格もいい子が今みたいに積極的になったら
女の子には結構だらしがない所のある伊藤なんていちころじゃないのよ〜
その……女の子の私でさえ好きになる位なんだから……

それはそれ、これはこれで伊藤の事はいくら桂だからって身を引くわけにもいかない。
「言っとくけど桂でもそうやすやすと身を引かないわよ」
「ふふっ 勝負ですね」

……何だかんだで同じ男子を好きになってる以上、スポーツみたいにさわやかに勝負という訳にはいかないで
色々と嫌な事もこれからあるかもしれない。
だけど、今の桂の事だって大好きだと言う感情を大事に持ち続けて、卑怯な方法は使わないようにして
万が一負けた時は素直に認めれる様に努力しよう。

桂と微笑み合いながらそう思う私だった。

「あの、これを……」
そう気持ちに一区切り付けた時、桂がバスタオルと小さいポーチを手渡してくる。
「ん? 何よこれ」
「えっと……その……まだ使ってない……私の下着です」

……はい?

「加藤さんの下着、あれで少し汚れちゃったみたいなので……その……はやく履き替えた方がいいんですけど
 せっかくなんでお風呂沸かしてあるので一緒に入りませんか?」

……当然私の答えはYESで、数分後には浴室内でイチャつく私と桂がいた。



ちなみに桂は、私はともかく他の女子ともちゃんともスキンシップ出来る位に
トラウマは癒えているのか心配だったけど、月曜日に一緒に教室に入ったら来実が
「言葉ちゃーん よかったぁー」
って言いながら抱きついてきて桂もビックリしながらも
「来実さん……心配してくれてありがとうございます」
と抱きしめ返しているのを見て杞憂におわった。

来実ったら「えへへ、 言葉ちゃんが抱きしめ返してくれたー」って嬉しそうだったけど……
うぅ、妬ましい!
228【Otome days】:2010/05/11(火) 17:47:23 ID:W71Dk4kq
【伊藤 誠】

はぁ、ラストになってやっと俺の登場か。

俺はここの所ずっとのほほんとしてたと思われてるだろうけど
言葉と世界との関係がややこしくなってる中、学園祭では様子を見に来た世界のお母さんと
遊びに来た心ちゃんにまで迫られたりして裏で色々大変だったんだぞ。

……そういえばあの時澤永、黒田、清浦あたりがなんか物々しかったけど何かあったのかなぁ〜?
澤永の奴何故か顔がかなりハレてたし。
あと学園祭が終ってしばらくしたあたりから、女子の間だけで何かの話題で持ちきりだったみたいだな。
ちょっと気になったけど世界に聞いても何も教えてくれなかった上に
「桂の前では絶対その話は出すな」ってクギを刺されてしまったけどなんなんだ?……まぁいっか。


「はぁ〜 それにしても言葉と乙女遅いよな〜」
ショッピングモールのブティック近くのベンチに座り込んで何となくここ最近の事を思い返してた俺だけど
それもネタが尽きてため息混じりに呟く。

言葉と乙女に「今度の休みに買い物に付き合ってくれ」って頼まれてOKしたのはいいけど
いざ行ってみると荷物持ちばっかりだもんな……
っていうかあの二人っていつの間にあんなに仲良くなったんだ?

まぁ、あの二人は同じクラスだから不思議じゃないのかもしれないけど、そればかりか二人ともうちのクラスの
黒田や清浦、甘露寺や西園寺とも仲がいいみたいだし。
言葉と世界、乙女と甘露寺の組み合わせなら分かるんだけど……う〜ん、本当に一体何があったんだ……?



「い、伊藤 おまたせ……」
「ま、誠君 お待たせしました……」

その時、ようやく買い物が一区切りついたんであろう二人に声をかけられる。

「ふぁ〜 やっぱり女の子の買い物って時間かか………」
さすがに待ちすぎて少し眠たくなっていた俺だったけど、二人の服装を見てそれが一気に冷めてしまった。

「ほらっ 伊藤の奴やっぱりビックリしてる。 試着したまま買って着替え直さなくて正解だったでしょ?」
「そうですね。 あの……誠君、私達似合ってますか?」

そう聞いてくる二人の服装は、いつものイメージとはかなり違うものだった。

言葉はゆったりしたパーカーの下からチェックのYシャツが見えてて、上のボタンは留めずにスソも出したラフな格好。
下半身は言葉にしてはかなり珍しい、丈のかなり短いデニム地のショートパンツで下手なミニスカより太ももを露出する物だ。
さすがにそのままだと恥ずかしいみたいで、残念ながら厚手のタイツをしっかり履いて肌は見えないようにしているけど
足物のスニーカーの効果もあり健全さを感じさせる。
更に髪は後ろで一つにまとめポニーテールにしていて活発なイメージに拍車をかけた。

……普段の奥手なお嬢様みたいなイメージとはかけ離れた動きやすいカジュアルな格好で
高嶺の花みたいなイメージを感じさせなくて親近感が沸いてくる。


乙女は肌にフィットしたハイネックのシャツの上に薄手のカーディガンを着ていてその一番上のボタンだけ留めた上品な格好。
下半身のスカートは、活発な乙女にしては珍しくふくらはぎ位まである長めの物で
これが短いスカート等とは違った独特の奥ゆかしい女の子らしさを感じさせる。
普段スニーカーの足元は服装に合わせてショートブーツにしていて
いつもポニーテールにしている髪は今は下ろして、普段は中々見る事のない背中の真ん中まである長い髪が印象的だ。

ちょっとガサツなイメージがあって、付き合いが長いのも仇となって中々異性として見る機会はなかったけど
こういう姿を見てるとちゃんと女の子なんだなっていう実感がする。
229【Otome days】:2010/05/11(火) 17:48:02 ID:W71Dk4kq
「二人とも……すごい似合ってる……」
二人の以外な一面を垣間見せてもらった気がして俺の口は自然に動いた。

「そぉ? やった〜」
「ふふっ、ありがとうございます」
それを聞いて手を取り合って喜ぶ二人。
本当、この二人は世界と清浦並に仲がいいよなぁ……

「それにしても二人とも随分思い切った服を選んだんだな」
「誠君、気づきませんか? この服は普段私と加藤さんが着ている感じの服を意識して選んだんですよ?」
「あぁっ な、なるほど、言われてみれば……」
確かに頭の中で今の二人の服を交換してみたらその通りだ。

「私も桂も一着ずつ位こういう服を持っててもいいかなって思ってね。
 ……それにしても桂が選んでくれたこの服……何だか私が変わっちゃったみたいで凄くはずい……」
そう言いながら恥ずかしそうに俯いてスカートの裾を両手で軽くキュッと掴む乙女。
お、おいおい、今の乙女見てると何かこっちまでドキドキしてしまうぞ。
「恥ずかしくなんてないですよ。今の加藤さん、抱きしめたくなる位可愛いです」
「こ、こら桂っ 本当に抱きつこうとするなってばっ」
桂が俺の思いを見事に代弁してくれたけど……うぅ、女の子同士だと気軽に抱きつけていいよなぁ……

「私だって加藤さんが選んでくれたこの服……動きやすくて便利なんですがショートパンツの丈が短すぎて恥ずかしいです。
 もし加藤さんとかと一緒じゃなくて一人っきりだったらと思うと凄く不安で……」
「桂は初心者だからタイツ合わさせたんだけど、中にはナマ足の人もいるし挑戦してみる?」
恥ずかしそうにショートパンツの裾をなぞっている言葉に、乙女は仕返しとばかりに悪戯っぽく笑いながらそう語りかけると
言葉はそれを想像しただけで真っ赤になって即倒しそうになっている。
「もぉっ からかわないで下さいっ。 加藤さんも普段こういうの履いてるなら何かを
 一緒に合わせないとはしたないですよっ」
「大丈夫だって、私だってそこまで丈が短い奴でナマ足になる度胸ないから〜」
「も、もぉ〜っ 加藤さん〜っ それなのに私に履かせたんですか〜!?」
「あははっ ごめんごめん 実際はちゃんと下にタイツ履いてもらったんだしいいじゃん」

さっきからこの二人は本当にイチャイチャしてて、何だか時折友情を超えた感情が篭っている様にも感じるけど
……まぁ、多分気のせいか。



「それでは黒田さんのスイーツおおはらに行きましょうか」
「伊藤、こんな可愛い女の子二人が一緒なんだし、いい所見せて奢りなさいよね」
「お、おいおい 今月厳しいんだって、勘弁してくれよ〜」


言葉と世界の件はまだ答えが出せないまま小康状態に入ってる中、乙女の事も異性として見出してしまったとある休日の午後。
自分の気持ちが更に分からなくなってしまったけど、いずれ答えは出さないといけないのだろう。

それを思うと今現在の、みんなとわいわいしながらゆったりと流れるこの時間は
ほんの束の間の、一時の安らぎに過ぎないのかもしれないけど……
……とりあえず今だけはこういうのもいいのかもしれない……

……そういえば来週は言葉の招待で、この3人と西園寺、清浦、黒田、甘露寺、心ちゃん、澤永の9人で温泉だな……
何故か澤永が変な行動起こさない様によく見張って、特に言葉には近づけない様にしてくれって
女子一同から厳重に言われているんだけどなんでだろうなぁ……
まぁ、いっか。

ケーキは何を注文しようとか
この服装の女の子側の感想聞きたいからスイーツおおはらにみんな呼んでみようとか
…そんな話している言葉と乙女を見ながらそう思う俺だった。

 
 おわり 〜そしてValentine Daysに〜
230名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 18:09:14 ID:QCFITkuu
乙!
久し振りにスレ更新してびびった
231127:2010/05/11(火) 18:11:13 ID:W71Dk4kq
以上で完結です。
文章が荒削りで読みにくい所もあったと思いますがスレの活性化になってくれれば幸いです
(最も他の職人さんが続々投下されてるみたいでそっちの心配はないかもしれませんがw)

PS2版スクイズ特典「Valentine Days」では言葉は乙女・七海等とも仲が良くなっているのを始め
乙女自身も黒田・世界とも仲良くなっており、それを見たのが切欠でこのSSを書いた次第です。
ラストがそれに繋がるのを目指して書いたのですが、さすがにこのSSでレイプ未遂した
澤永とValentine Days寝泊りしたりはしないんじゃないか等、細かい矛盾はいくつかありますがw
(ちなみにValentine Daysでは、2月14日時点では世界or刹那の転校はないもようです)

クロスデイズも発表された当初は扉絵(パッケージ候補?)では路過・言葉と一緒に乙女も出てたり
こんな→ttp://www2.moeyo.com/img/10/05/04/1/142.html  イラストがあったりで……
……やっぱり初期段階では乙女はもっといい活躍出来て、言葉もサマイズの刹那とみたいに
他の女の子と仲良くなれたりする話あったのだろうか……

最後までお付き合いいただきありがとうございました。
232名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 19:23:24 ID:so6X2GPG
誠さえいなければとは世界役の声優の談だけど、ホントそうだわ
百合本ひとつでこうも変わるのかと(笑)

以前原作スレ見た限りでは、没セリフ解析で路夏が乙女に逆襲する
展開があったぽいが……(勇気に協力頼んだ?)
なんていうか、路夏はやられっぱなしで泣き寝入りするタイプには見えない
んだよね 
233名無しさん@ピンキー:2010/05/12(水) 15:59:06 ID:gfZDDTBO
まあ、納期に間に合わせるために
仕上がってないルートを無理やり排除したからしょーがない
234丁字屋:2010/05/14(金) 21:14:19 ID:N6gkKW9L
>>212
取り敢えず目の前の女をなし崩しに選ぶあたり、非常に誠らしいですw

【Otome days】は
乙女があちこちの女子に手を出しまくる「みんなの乙女」的な続編が
読みたいとか思ったり…。


それでは「贄と成就」アフター、
>>200 からの続きです。
235丁字屋:2010/05/14(金) 21:15:16 ID:N6gkKW9L
僕と路夏は、桂を助けようと決意したあと、共に僕の家に向かった。

道中で、僕らはお互いにそれぞれの知っている情報を交換し合った。
路夏は主に、中学時代の伊藤がかなりもてていたことや、
加藤も伊藤のことが好きで伊藤に好きになった女子を容赦なくいじめていたこと、
女バスにおける甘露寺は特待生であることを鼻にかけず面倒見のいい実にいいやつで、
路夏の僕への恋も応援してくれていたこと、
それ故に桂に対する毛嫌いの仕方の尋常のなさに、
路夏も面食らったということなどを話してくれた。

僕は、桂が甘露寺の言うような、男をもて遊ぶような性格ではないと思えることや、
学園祭以前、伊藤は元々は桂と付き合っており、
その桂と別れないまま西園寺にも手を出していたこと、
桂はそのせいでひどく傷ついていながら、
それでも伊藤を信じようとしていたことといった、
僕の知っている桂と伊藤、西園寺の関係を話した。
電車を降り、うちに向かって歩きながら、話は続いていた。

「そっか。桂さんて…じゃあみんなに誤解されているんだ…」
「うん、桂は僕と話すようになった頃は「初恋はなんたら」って
 いかにも内容が甘ったるそうな本を何冊も借りていったり、
 伊藤の手を握ったってだけのことを本当に嬉しそうに話していた。
 だから桂はむしろ奥手すぎるくらい奥手っていうか、純粋っていうかさ…。
 でも、そんな桂を伊藤は裏切っていたんだ」

「伊藤が…、そんなこと…」
伊藤は最初から西園寺と付き合っていたと思っていた路夏は、
僕の言ったことにかなり驚いたようだ。
236丁字屋:2010/05/14(金) 21:16:00 ID:N6gkKW9L
「うん。
 学園祭間近の昼休みにもさ、桂は伊藤と一緒に屋上でお昼を食べるんだって僕に言って、
 でも僕はその時、伊藤が桂を裏切ってるって知っていたから様子を見に行ったんだ。
 そしたら、やっぱり伊藤は来てなんかなくて、桂は一人でずっと寂しく待ちぼうけてた。
 それなのに、桂は僕に、伊藤は優しくしてくれたなんて言ってさ…
 その様子がなんだかすごくいじらしくてさ…」
言いながら僕は、その時のことを思い出していた。
そう、あの時の桂は本当にかわいそうだった。
だからこそ僕は、桂をそんなふうに傷つけていた西園寺や伊藤が許せなくて、
西園寺を闇討ちにしようとさえしたのだ。

「ひどいね」
「うん。路夏は、伊藤とは同じ中学出身だし、信じられないかもしれないけど…」
「ううん…」
「え?」
「勇気がそう言うならきっとそう。
桂さんは甘露寺さんが言うような子じゃあ全然ない、勇気の言うような一途で純粋な子なんだろうし、
伊藤はそんな桂さんを平気で傷ついていたひどいヤツなんだよ…」
「ろ、路夏?」
「私は勇気を信じる」
そう言った路夏は、僕をまっすぐ見つめて微笑んでいた。

「私、以前勇気の言うことを全然信じなくて、
そのせいで勇気の彼女になるのにすっごい遠回りしちゃったでしょ?」
「あ、ああ」
「でも勇気は、そんな私のことをずっと思って、信じてくれていて、
だから今、私と勇気はこうして恋人同士になれた。
だから私は勇気の彼女になったあの学園祭の日、
これからはちゃんと勇気を信じようって、そう決めた筈だったのに、
結局勇気を信じ切れなくて、それでまたこんなことになってしまって…」
そう言う路夏の声はやや沈んでいったが…
「だからね…」
「え?」
「だから私は今度こそちゃんと勇気を信じる。
何があっても必ず勇気を信じるの!」
再び明るい声でそう言った路夏は、僕に満面の笑みを向けていた。

その笑顔が眩しくて、僕は
「うん」
ただそう言って微笑みを返しながら頷いた。
237丁字屋:2010/05/14(金) 21:16:35 ID:N6gkKW9L
「でも、だったら私、あの時勇気にすごく心配かけたよね?」
「え?」
「伊藤がそんなヤツとは知らなかったとは言え、
 そんな伊藤と付き合ってるふりなんかしちゃって、
 勇気はずっと私のこと心配してくれてたんだよね?」
「あ…うん。すごく心配した」
「そうだよね。あの時、勇気ったら、伊藤の前歯全部折るなんて言ってたもんね」
「あ、ああ…そんなことも言ったなあ…」
「あの時私、勇気ったらいくらなんでもエキサイトしすぎって思ったけど、
 私のためだからこそあんなに真剣に怒ってくれたんだよね?」
「う…うん」
僕はだんだん照れくさくなってきたけど、
路夏はずっとそんな僕をまっすぐ見つめ、
「嬉しい…」
そう言って、はにかむように微笑んだ。
うわっ、路夏、その笑顔は反則だ!
路上じゃなかったら思わず抱きしめてるとこだぞ!(汗

――とかなんとかしているうちに、家に着いた。
238丁字屋:2010/05/14(金) 21:17:14 ID:N6gkKW9L

僕の部屋に落ち着いたあとも、僕と路夏は桂のことについて話し合ったが、
その際に路夏が、そんなに伊藤のことが好きだった桂が、
何故澤永とつきあったりしたのかという疑問を口にした。
それは僕も当時疑問に思ったことだったが、
とりあえず僕は、伊藤に裏切られた桂が、
クラスメートらに責められていたところを僕に言われて助けた澤永に
魅かれたんじゃないかという推測を話した。。
だが、路夏はやはり、
そんなに強かった伊藤への思いを吹っ切れるほどに澤永に魅かれたにしては、
その後すぐ澤永をふってることに納得できない様子だった。

確かにその通りだ。そして他にもわからないことはあった。
例えば甘露寺が言ったという、桂が現在伊藤に手を出そうとしているということだ。
それは、一度はあきらめた筈の思いが再燃したからなのだろうか?
ならばそのきっかけは何?
いや、あるいは桂の人となりを誤解している甘露寺のことだ。
そのこともまた誤解なのかも知れないが…。
239丁字屋:2010/05/14(金) 21:17:43 ID:N6gkKW9L
そんなことを話し合っている時に
「私、明日桂さん会って話をしてみる」
そう路夏が言った。

「え?澤永のことや伊藤への気持ちを確かめたいってこと?」
「うん、それもあるけど、何より桂さんに私たちが味方になっていることを教えてあげたいの」
その路夏の言葉…いや、気持ちに僕は喜んで同意した。
そう、桂は今周囲が皆自分を傷つけようとしている現実にひどく不安で心細くなっているに違いない。
僕らはまだ桂に何がしてやれるかわからないけど、
それでもここに味方がいるということだけでも教えてやれば、
それは桂にとって心強いことだと思うのだ。

かくして僕たちは、明日桂と話そうと決めた。
ただ、桂と僕たちが話しているところを誰かに見られることで、女バスや体育会一年の女子に警戒され、
今後桂の味方として行動することに支障が出ることは避けたかった。
特に路夏は、それにより女バスでの立場も悪くなりかねない。

そこで図書室の奥にある司書室を使おうということになった。
あそこならまず誰かが来たり見られたりする心配はない。
時間は…善は急げで明日の朝一でとと言いたいところだったけど、
桂の登校のタイミングがわからないし、ある程度まとまった時間をとりたかったので
昼休みにしようということになった。
240丁字屋:2010/05/14(金) 21:18:14 ID:N6gkKW9L
だが、それでもまだ問題はあった。
どうやって司書室に桂を呼び出すかだ。
桂の携帯番号かメアドがわかっていれば都合がいいのだが、路夏はもちろん僕も知らなかった。
直接桂を四組の教室に向かえに行けばいいのかも知れないけど、
桂をいじめている連中の目があるだろうから、
路夏が行けばやはり奇異と警戒の目で見られるだろうし、
僕が行けば…いや、僕に限らず誰か男子が桂に近づくことは、
また新しい男と関係を持っていると、桂いじめの新しい口実を与える恐れがあった。
その意味で誰かに伝言を頼むにしても、男子は避けるべきだったし、
しかし女子の一年は皆桂の敵になっていて誰にも頼めない。
だからといって別の学年の女子に頼むというのも変な話だ。

さて、ここに至って打つ手に詰まってしまい僕と路夏はじっと考え込んでいた。
更に僕は考える。
誰かが桂を向かえに行くとして、男子はダメ。女子でも桂に近づくことに抵抗のない、
また、そのことを周囲も何とも思わないような女子でなくてはならない。

…って、そんな都合のいい女子いねーよっ!

そう叫びかけた僕の頭に、その時一つのアイデアが閃いた。
241丁字屋:2010/05/14(金) 21:18:58 ID:N6gkKW9L
「これだぁっ!!」

僕は思わず声をあげていた。
「ええっ?!」
僕の叫びにびっくりして路夏も声をあげるが、僕はその肩をつかんで
「路夏、僕、すごくいい考えが浮かんだよ!これで桂を向かえに行ける!」
「え?あ…うん……。で、勇気、それってどんな考えなの?」
僕のテンションに呆気に取られていた路夏だったが、
やがてそう僕のアイデアの中身を尋ねてきた。
「あ、うん。ちょっと待っててよ」
僕はそう言って立ち上がると、クローゼットを開いて〃あるもの〃を探す。
そうあれは確かこの奥の方にしまっておいた筈……

「あった!」
僕は探していたものを見つけると、クローゼットの奥から一つの紙袋を出した。
「勇気?それって…何?」
そう訊いてくる路夏に
「フフ、いいものだよ。すぐ教えてあげるから、路夏はちょっとここで待っててくれる?」
とだけ言うと、僕は紙袋を持って一旦部屋の外に出た。
242丁字屋:2010/05/14(金) 21:19:42 ID:N6gkKW9L

そして僕は、紙袋を開くと支度を開始した。
ちなみにこの紙袋は、学園祭が終わってすぐに転校していった一人の女子からもらったものだ。
いや、本当はもらいたくなかったけど半ば無理やり受けとらされたと言った方がいいか。
実際これをもらった時は、この先絶対使うことはないだろうと思っていたけど、
まさか役に立つ日がくるとは……。

そんなことを考えつつ支度を終えた僕は、
「路夏、お待たせ!」
そう言って部屋の戸を開いた。

「え……あ……」
僕の姿を見た路夏は、上手く言葉を出せないようだった。
どうやら目の前にいるのが僕かどうか判じかねているみたいだ。
それでもやがて
「勇気…なの?」
そう、おそるおそる問いかけてきた路夏に、僕は力強くうなずいた。

路夏が僕がどうか迷うのも無理はない。
今の僕の姿は、榊野学園の〃女子〃の制服を着て、
頭には赤毛のふわりとしたロングヘアのウィッグを着けていた。
学園祭の時はメイドの格好だったが、あの時も誰にも男だと気づかれなかったように、
路夏の目にも今の僕の姿は、まるで女子そのものに見えている筈だ。

「そうだよ、路夏。桂を向かえに行こうにも男子はダメで女子にもあてがないなら、
僕がこの姿で行けばいいんだよ!」
そう、まさにこれ以上ない素晴らしいアイデアだ。
路夏も感激して同意してくれるはずだ!
そして路夏が口を開く。

「ゆ…勇気って……」
うん…
「私に内緒でこんな趣味が…」

……え?

「勇気って女装趣味の変態だったんだ…」

ええっ?!

見ると、路夏の、僕を見る目が何か汚いものを見るような目つきになっている。


あれぇ? 僕、何か地雷踏んだ??

243丁字屋:2010/05/14(金) 21:26:39 ID:N6gkKW9L

今回はここまでです。

二人が言葉救済に向けて動き始めたと思いきや、
早くも迷走させてしまいましたが……さて、どーしましょ?


244名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 22:34:44 ID:SNvf5PE6

勇気、自分から核地雷踏むなw
245名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 23:39:23 ID:Hjk7A1Rd
すっかり女装に慣れてしまった勇気君w
246名無しさん@ピンキー:2010/05/18(火) 19:20:53 ID:hbz4hYjd
続きが待ち遠しいぜ
247名無しさん@ピンキー:2010/05/19(水) 19:27:21 ID:YZ8ssAK5
「あれ?図書室に張り紙があるよ」
「しばらく戻りません、御用の方は花山院まで」
「恭君、ここにいればあえるって事」
「あ〜そうだったここはまずいんだった」
花山院の浮気の情報を聞き出すために駆り出された路夏は
学園祭の案内役兼葉音の見張り役として葉音と一緒に来た二喜、
偶然出会った中学の同級生の誠と4人で図書室の前に来ていた。
七海の恋人にちょっかいを出している葉音の情報を聞き出そうとしているがどうもうまくはいかない
いっそ今日の学園祭で二条さんに他の彼氏でも作ってくれればいいのだが……。
知り合いでそんな男なんて……
「どうした喜連川?なんか深刻そうな顔して?」
「伊藤……そうだちょっと相談なんだけど?たしかさっき山県さんと休憩室に入っていたわよね?」
何かを企んだ表情をした路夏が誠の方を向いている、これは何かある
また何か無茶振りが飛んでくるのではないかと思った誠ではあったが逃げられそうにない……


248名無しさん@ピンキー:2010/05/19(水) 19:27:51 ID:YZ8ssAK5
「桂、伊藤がこないじゃない本当は伊藤と付き合ってないっていい加減言ったらどうなの?」
「そんなこと……きっと誠君は来るはずです。」
「どうだか」

言葉に尋問を続ける加藤、伊藤を桂に取られたくない、一方言葉も誠とは恋人同士だと考えているからどっちの

意見も通るはずがない、そんなお化け屋敷の前に世界と山県を連れた七海がやってきた。
「あっ、世界ちょっと待ってて山県さんも」
「どうしたの七海、私も付いていくから山県さんも来る?」
「う、うん」
こうして今お化け屋敷の前には言葉、世界、乙女、山県、七海があつまっている
そして七海が乙女に話をしようと来た時……5人の前に路夏が現れた
隣には足利勇気の姿も見える、手をつないでる様子を見るとこの
学園祭で結ばれたのだろうか?
「甘露寺さん、二条さんのことは何とかなったから」
「喜連川……何とかなったって?」
「うん、他の男子と二条さんくっつけちゃった、二条さんも納得してくれて助かったよ」
「へー誰と?」
喜連川が答えようとした時、二条が廊下から飛び出てきて
「甘露寺さん、恭君のことで心配掛けさせちゃってごめんね、私は伊藤と付き合うことにしたからね伊藤」
「あ、ああ」
周りは目を疑った、そこには伊藤誠と二条葉音がべったりくっついて現れたのだから
「じゃあ甘露寺さん、花山院先輩のことはなんとかなったからじゃあ行こうか勇気」
「うんまったく二喜とあったときはどうなるかと思ったけどまさか路夏との
仲介役になってくれるとは思わなかったよ」
「へへーん、二喜におまかせ、ゆーくんのことは勿体無い事したかもしれないけど

喜連川さんとゆーくんだったらきっと幸せになれるよ」



5人がお化け屋敷を去ったのと入れ違いに1組のカップルがお化け屋敷に向かっていった
この学園祭で結ばれた二人はの目的地はお化け屋敷内の秘密の休憩室である。

「なあ留夏、一体どこに行くつもりなんだ?」
「石丸先輩、この先の1年4組のお化け屋敷の中に、・・・秘密の休憩室があるんです
…………ひっ」

石丸と留夏が見た光景それはカップルである2人にはおおよそ縁のないものであった
お化け屋敷の前にいる言葉、世界、乙女、愛、の亡骸と化した様な力ない4人の姿があった
それこそ本物のお化けのような迫力と恐怖を仰ぐ何者も寄せ付けない負のオーラがお化け屋敷の前に漂っているのだ・・・
これが後の榊野の伝説となる恐怖のお化け屋敷の事になるとはまだ誰も知らない

おしまい
249名無しさん@ピンキー:2010/05/24(月) 17:14:05 ID:5v6hGLDB
某剛田で世界が「片足抱えられバック、少し前屈みでフェラ…」のCGがあった…
このまま二穴・三穴…のシチュになって欲しいものだ…。

おっといけねぇ、誰かこのネタで世界二穴・三穴物のSSを…。
250丁字屋:2010/05/27(木) 19:01:04 ID:bG6HiWpN
>>248
ラストが「みなみの恋人」のパワーアップバージョンみたいですねw

こちらはなかなか執筆が進みませんが、取り敢えず少しだけ投下。
「贄と成就」アフター
242からの続きです

251丁字屋:2010/05/27(木) 19:01:35 ID:bG6HiWpN
「…って言うか、勇気、学園祭の時もその格好していたよね?」
ようやく地雷を踏んだことを自覚した僕に、路夏がそう訊いてきた。
あ…そう言えば、あの時僕は路夏と顔を合わせていたんだった。
「そっか。あの頃から勇気はそんな趣味があって…私だけが知らなかったんだ…」
「ち、違っ…!」

僕は路夏の誤解を解こうと、学園祭の時は無理やりメイド服を着せられて
3組の喫茶店を手伝わされたんだと弁解するが…
「だいたいどうして1組の勇気が3組を手伝わされなきゃならないのよ?」
「う…、そ、それは…」
い、言えない。西園寺を闇討ちしようとしたことで

3組のクラス委員だった清浦に弱味を握られていたなんて…。

「そ、それはちょっとした罰ゲームでやらされて…
と僕は苦しい言い訳をするが、路夏は
「もし罰ゲームだったとしても、何でその時の女装の道具を大事に持っているの?
それに、勇気があの時に着ていたのは喫茶店の制服だった筈よ。
でもそれウチの学校の制服じゃない?」
と、僕を容赦なく問い詰めてくる。
「そ、それは……そう、あの時僕に女装させるのにすごく強引だったのが
3組のクラス委員の清浦ってやつでさ……」

そして僕は、あの学園祭の数日後のことを思い出す。

252丁字屋:2010/05/27(木) 19:02:12 ID:bG6HiWpN

「これ、あげる」
あの日、僕を呼び出した清浦は一つの紙袋を差し出してきた。
中身は僕が学園祭で無理やり着せられた3組のメイド喫茶のコスチュームと赤毛のウィッグ、
更に榊野学園の制服一式まで入っていた。
「好きに使っていいから」
清浦は更にそう言ったが、僕はそんなものは使う気なんて全くなく、はっきり遠慮する旨を告げた。
って言うか
「だいたい、僕が一度使ったカツラやメイド服はともかく、その制服は何だよ?」
「それは私の制服。一度も使ってないから、好きに使っていい」
「いや、だから使わない…って、清浦の制服?」
「うん。もういらないから…」
「え?」
「私、パリに転校するの」
「そ…そうなのか!?」
「うん。だからこの前の学園祭は私にとっては最後の思い出…」
「そう…だったんだ…」
「うん。でも足利のおかげですごく楽しかった」
「僕は散々だったけどな」
「ふ…」
「笑うなよ」
そう言いつつ、僕も苦笑していた。
「ねえ、足利」
「ん?」
「私は、足利が世界を傷つけようとしたことは許せない…」
「あ、そのことは…本当に悪かったと思ってる。
あの時の僕は本当にどうかしてたんだ。……ごめん」
「うん。今の足利がそのことを本当に反省していることはわかる。
それに、足利は私に楽しい思い出をくれた…」
「うん…」
「だから、許してあげる」
「ほ、本当に?」
「うん」
「あ、ありがとう」
「それに足利もあの時は楽しそうだった」
「いや、楽しくなかったから…」
「ふ…」
僕の否定の言葉に清浦は何故か不適な笑みを返してきた。
「でも、何だかんだ言って足利は、あの時困ってる私たちのために、
一生懸命喫茶店をあんな格好で手伝ってくれた…。
あの時私思った。
ああ、この人は困っている人に対して一生懸命になれる人なんだって…」
「……」
「だから……私、足利のこと嫌いじゃない…て言うか、むしろ好きかも…」

?!…ええっ、それって愛の告白?
253丁字屋:2010/05/27(木) 19:02:43 ID:bG6HiWpN
そう思った次の瞬間
「ちがうっ」
という否定の言葉と共に、清浦のチョップが僕の脳天に決まった。
って言うか、心を読まれた?!

「友達という意味でだ」
「ははっ、そうだよな……え?友達?」
「うん。……足利は私と友達なのは嫌?」
「ん……いや…」
正直その時僕も、あんなことをした僕を許してくれ、
あまつさえ好意を素直に表してくる清浦に非常に好感を感じていた。
だから…

「わかった。じゃあ、僕と清浦は友達だ」
「うんっ!」
僕の言葉にそう答えてうなずいた清浦は、本当に嬉しそうに笑っていて、
何だか僕まで嬉しくなった。
だがその清浦の笑顔はすぐに翳った。
「でも、せっかく友達になれたけど、すぐにお別れ…」
「あ…」
転校…か…。

そして感傷的な一瞬の間の後、清浦は
「だから、友達として、あの学園祭で、共に楽しかった時間を過ごした証に、
これをもらってほしい」
そう言って、さっきの紙袋を再び差しだしてきた。
だが、今度は僕はそれを拒否しなかった。

「わかった。僕のしたことで、友達の清浦が楽しい思いができたって言うなら、
その思い出の証としてもらっておくよ」
「うん。制服の方は予備として持っていたやつで、まだ新品だから遠慮なく使っていい」
「いや、絶対使わないから…」
「残念…」
「残念でも使わないっ」
「足利…かわいいのに…」
「かわいくつも、つ・か・わ・な・い!」
「ふっ…」
「……ふふっ」
僕の否定の言葉に、相変わらず何故か不適な笑みを向ける清浦だが、
何故かそんな彼女に僕も微笑みを返していた。
254丁字屋:2010/05/27(木) 19:03:10 ID:bG6HiWpN



とまあそのような、現在僕が着ている制服を入手した経緯を思い出しつつ、それを路夏に説明する。

「……ね、だから決して僕は女装趣味なんかじゃないんだって」
「ふうん…」
ふう、これで路夏も誤解を解いて納得してくれるだろう…。
「まあ、勇気がどうして女装道具一式を持っているのかは一応わかった」
「わ、わかってくれた?」
「今即興で考えたってわけではなさそうだしね…」

よかった。やっぱり路夏はわかってくれた。
「でも…」
え?

「でも、勇気…あの時、伊藤とキスした…」

「え…ああっ!?」

255丁字屋:2010/05/27(木) 19:06:45 ID:bG6HiWpN

今回はここまでです。
とにかく「贄と成就」は通ってるルートがルートなのでいろいろと泥沼ですw

256名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 19:57:33 ID:6jUY3Jiz
超乙です

まぁ確かに勇気泥沼ズブズブですねW

>>249
TGは俺も見ました、世界のエロシーン超期待ですね
二穴三穴は俺も見たい・・・雑誌で出たエロシーンを中止しなければね…(遠い目…
257名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 23:33:53 ID:FZjeXe6U
>>254
そういえばキスしてたw
258名無しさん@ピンキー:2010/05/30(日) 08:41:33 ID:dMoLmsL/
本スレでネタになってた
「屋上でヤってる誠×言葉を見て、自暴自棄になった世界が屋上で(別の棟か?)
男子二人(三人?)に二穴・三穴輪姦…」なSSを超希望。
(逆のパターンで言葉でも、又は「勇気×言葉」を見た路夏でも…)
259SINGO:2010/05/31(月) 03:24:42 ID:TRL7ZC0D
どうも。
今回のSSは松平と遠山が主人公です。
舞台は、榊野学園の入学式。二人が刹那と出会う場面です。

【榊野学園 入学式】

260SINGO:2010/05/31(月) 03:25:54 ID:TRL7ZC0D
【榊野学園 入学式】

「よお、松平」
茶髪を逆立てた男が声をかけてきた。
男の名は遠山。俺の小学生時代からのダチだ。
クラス表に名前があったから、まさかとは思ったが、
「お前も合格してたのか。そのツラでよく門前払いされなかったな」
「へへ。お前こそ、言えるツラかよ。そういや伊藤の名前もあったぜ。おんなじクラスだ」

榊野学園の受験にめでたく合格した俺達は、その入学式に来ていた。
「三組か。どう行けば…」
自分のクラスを探してたところ、なぜか中学生の少女と出くわした。
少女は困ったような表情でキョロキョロしていた。
「おい、見ろよ。あの子、もしかして迷子か?」
どこの学校も入学式シーズンだから無理もないか。何とかしてやろう。
「お嬢ちゃん、どこの中学だい?ここは榊野校だ。来る学校、間違えてるぞう」
「……!?」
チビっ娘は俺達を見るなり、いきなり涙目になった。
「馬鹿、よく見ろ。その制服、ココの学校のだろーが」
「げ、ホントだ。あんまり小っこいから、てっきり中学生かと…」
「馬鹿。小っこいって言うな。女は胸のこと指摘されんのが一番傷付くんだよ」
「馬鹿野郎。俺が言ったのは身長だ。それにリボンなんか付けてるし、余計に中学生に見えたんだよ」
するとチビっ娘は泣き出した。
「見ろ。泣いちまったじゃねーか。お前が貧乳とか言うから」
「俺のせいかよ!」
「どーすんだよ。これじゃ、まるで俺達がイジメてるみたいじゃねーか」
261SINGO:2010/05/31(月) 03:27:28 ID:TRL7ZC0D
そこへ、
「やめとけよ、お前等。大の男が女の子を相手にイジメとか」
正義の味方が助けに来た。
「いや、違ぇーって。誤解だ。これはイジメてたんじゃなくてよ…」
「ん?そうなのか?」
正義の味方は中肉中背で、俺には及ばないものの、遠山と同じくらいのガタイをしてた。
けど、なんかイマイチ緊張感に欠ける締まりの無いツラ。いわゆる三枚目、お調子者キャラだ。
…ん?
チビっ娘は眉間にシワを寄せると、正義の味方に歩み寄り、
ごすっ。
なんとチビっ娘は正義の味方のキンタ○に蹴りをブチ込んだ。
ブッ倒れる正義の味方。
唖然とする遠山。
「おい、何してんだ。せっかくの人の厚意を…」
「や。この男は近い将来、レイパーになる…そんな予感がしたから」
「何その言い掛かり!」
目茶苦茶な女だな。
「おい、ヤベーって。このレイパー、白目むいて口から泡吹いてっぞ。早く保健室に…」
「待ちなさい、そこの不良二人。やり直しを要求する」
「はあ?やり直し?」
「正義の味方の配役に不満があるの。だから今のイジメシーン、最初からやり直し」
「いや、イジメてねーし」
てか、このチビっ娘、イケメンが助けに来てくれるのを期待してたのか?
そんな恋愛モノにありがちで、よく見かける月並みでヤッパリなお約束展開、ある訳ねーだろ。
「やり直し」
チビっ娘がダメ押ししてきた。目がすわってる。
ヤバイ。俺達の身が。
ここで拒否したらレイパーの二の舞になる可能性(危険性)大だ。
「わかった。わかった。わかったから、キン蹴りだけは勘弁な」

262SINGO:2010/05/31(月) 03:28:52 ID:TRL7ZC0D
俺と遠山は、チビっ娘をイジメる演技をした。
そこへ、
「やめとけよ、お前等。大の男が女の子を相手にイジメとか」
来た。今度こそ真の主人公の登場か。
「だから違ぇーって。……うをわッ!?」
エントリーNo.2は、春なのに色黒でロン毛でグラサンでアロハシャツで海パンでサンダルで、
何てゆーか、海辺のファミレスでたむろしてるような、えせサーファーだった。
てかテメー、どこから見てもココの生徒じゃねーし、高校生じゃねーし、ゲームが違うだろーが。
チビっ娘は眉間にシワを寄せると、サーファーに歩み寄り、
ごすっ。
サーファーのキンタ○に蹴りをブチ込んだ。
白目をむき、口から泡を吹いて倒れるサーファー。
また、やりやがった!
「や。この男は夏休み、私のバイト先に現れて私にセクハラする…そんな予感がしたから」
また言い掛かりつけたよ、この暴力女!
「なあ松平。もしかしてこのチビ、ヤバくねーか?」
「もしかしなくてもヤべーって。もう関わらねー方がいい」
「そーだな。もう行くか」
「待ちなさい、そこのチンピラ二人。やり直しを要求する」
またかよ。

俺と遠山は、再びチビっ娘をイジメる演技をした。
何なんだ、この茶番は。マジ勘弁してくれ。
そこへ、
「やめとけよ、お前等。大の男が女の子を相手にイジメとか」
次の主人公候補生の登場。
「だから違ぇーって。……あれ?伊藤じゃねーか」
エントリーNo.3は、俺達の小学生時代の昔なじみ、伊藤誠だった。
「ふ。台本どおり。ようやく真打ちの登場ね」
チビっ娘は満足したのか、伊藤に歩み寄り、
ごすっ。
伊藤のキンタ○に蹴りをブチ込みやがった。
白目をむき、口から泡を吹いて倒れる伊藤。
「伊藤ォー!!!」
こらDQN女、そこは伊藤でOKだろーが!?KOしてどーすんだァ!?
「や。この男は近い将来、恋人を裏切って私の親友をセックスの練習台にして、
中学時代の友人をセフレにして、私を押し倒して、ひとクラスぶんの女子達と浮気して、
私の親友を孕ませたあげくポイして、恋人とヨリを戻す…そんな予感がしたから」
何その根も葉も無い無茶苦茶な言い掛かりはァ!?
伊藤がそんな人間のクズみたいな事する訳ねーだろ!!
エロゲーならともかく、そんな超展開、今時の全年齢対象アニメでもやらねーよ!!
「なあ松平。このチビ、マジでヤベーぜ」
「ああ。俺達の身もな。早く逃げ…」
「待ちなさい、そこのヤクザ二人。やり直しを要求する」
なんか俺達の呼称がレベルアップしてるぞ(正確にはレベルダウンだが)。
とにかく、もう付き合いきれねー。
263SINGO:2010/05/31(月) 03:30:15 ID:TRL7ZC0D
そこへ、
ズシーン、ズシーン
という足音(が聞こえそう雰囲気)で身長2m近くある大男がやって来た。
げえっ!テメー、ナニ人だよ!?デカ過ぎて顔が画面の外に出てるー!!
てか、何でココの制服着てんだ!?テメー、ホントに高校生か!?
「ん。やめないか。その子、怖がっているだろう」
馬鹿野郎。怖がってるのは俺の方だ。
…ん?
チビっ娘は、怯えることなく巨人に歩み寄り、
「ちょっと後ろ向いて」と言った。
「ん、俺?」
巨人はチビっ娘に言われるまま背中を向けた。馬鹿正直にも。
ぐさ。
「くぁwせdrftgyふじこlp!!」
チビっ娘はエマネシリンジを巨人の尻に突き刺していた。(常時携帯してるのかよソレ?)
「この男の巨乳が気に入らない。私に対する当て付け?」
ソイツは悪くねーだろ!
「それはともかく。その巨体、威圧感、従順さ。我が右腕としては申し分ないわね」
なんか変なこと言い出したよ、このチビっ娘!
「天下を統一するには、まずは学園の頂点に立たねば。手始めに我がクラスを支配下に…」
とか何とか言ってチビっ娘は巨人を引きずって行き、校舎の中に消え去った。
てか、当初の目的はどうした!?

現場には、伊藤とレイパーとサーファーが地面に転がっていた。
(俺と遠山が無傷なのが不思議なくらいだ)
喧嘩の弱ぇ奴がイジメを止めに入って逆にボコられるって話はよく聞くが、コレ何か違わねーか?
そこへ、
「あれ?澤永、何でそんな所で寝てんだよ?」
小柄な眼鏡少年がやって来た。レイパーの知り合いか?
「あー誤解すんなよ。言っとくけど、コイツらをボコったの俺達じゃねーから」
「あそ。そんな事より、こっちに田中…大男が来なかった?デビルリバース並のガタイで…」
スルーかよ。てか知り合いが意識不明の重体なのに『そんな事』呼ばわりって非道くねーか?
「大男って、さっきの奴か?そいつなら中学生くらいのドS女にケツ犯されて、拉致られてったぜ」
「???」
「一応、忠告しとくけどよー。リボンのチビっ娘にだけは近寄らねー方がいい。タダじゃ済まねー」
とは言ったものの、いつかこの眼鏡チビもあの鬼女にボコられる…そんな予感がしてならなかった。
まあ、俺には関係ないか。
とにかく災禍は去った。これから退屈な入学式が始まる。平凡な学園生活も。

その後、
流石の俺もビビった。まさか俺達とあのチビっ娘が同じクラスになるとはな。
ましてチビっ娘がクラス委員長になり、あの巨人を下僕にしてクラスを牛耳る事になるとは、
誰が予想できただろうか?

264SINGO:2010/05/31(月) 03:31:24 ID:TRL7ZC0D
終わりです。
いえ終わりません。
物語はOVA『マジカルハート心ちゃん』に続きます。
265名無し@ピンキー:2010/05/31(月) 11:04:16 ID:86g1ywFl
乙です!!

俺の麦茶かえせw

次回待ってます
266丁字屋:2010/06/04(金) 20:29:23 ID:Y1MeNObh
「贄と成就」アフター

254からの続きいきます。
267丁字屋:2010/06/04(金) 20:29:55 ID:Y1MeNObh

そ、そうだった。
あの学園祭の時、僕は伊藤と路夏を引き離すために、路夏の目の前で…って言うか、
路夏に見せつけるように伊藤にキスしたんだったぁ!
で、でもあれは、路夏を伊藤に奪われないため…路夏に伊藤を見限らせるために…その一心でしたことだった。



ということを僕はまたも、路夏に必死で説明する。
はあ、これで今度も路夏は納得してくれる筈……だったんだけど、
路夏は未だに僕のことをじと〜っとした目で睨んでいた。

「ろ、路夏?」
「…勇気の言ってることはわかるよ。
確かにあの時は、私が伊藤とのことを誤解させるようなことしてたし…」
「そ、そうだよ。それに僕だって今言ったように、
別に伊藤に変な気持ちがあったとかじゃないんだから…」
「でも、勇気はあの頃はまだ私とだって一度もキスしてなかったのに…」
「そ、それはだから…」
…言いかけて、僕は再び口をつぐむ。

路夏は僕の言ってることはきっとわかってるんだ。
でも感情が納得出来ないんだろう。
だとしたら、路夏が気持ちを整理できるまで待つしかない。

そしてわずかな気まずい沈黙の後、路夏が口を開いた。
「勇気…ごめん」
「え?」
「私、さっき何があっても勇気を信じるって言ったばかりなのに、
 また、こんなふうに勇気のこと疑っちゃって…私ってホント駄目だよね……」
「路夏…」
「それに、とにかく今は桂さんのことを第一に考えなきゃね」
「そ、そうだよ、路夏。それに、とにかく僕が好きなのは、ずっと路夏なんだから…。
 だから、安心して。そして二人で桂のことを何とかしてあげよう」
僕がそう言うと、路夏は
「うん!」
と、にっこり笑ってうなずいた。

268丁字屋:2010/06/04(金) 20:30:22 ID:Y1MeNObh

ふう、なんだか色々と脱線したようだけど、とにかくようやく話が元に戻ったようだ。
と、その時…
「ねえ、勇気…キスしよ」
そう路夏が言った。
「ど、どうしたの?突然…」
「やっぱり私、勇気が私より先に伊藤と…って言うか男子とキスしてたなんて
 すっごく悔しいんだもん」
「だ、だからそれは…」
「うん。だからね私、今からでも勇気といっぱいキスして、
 伊藤なんかに先を越された分を取り返したいの」
そんなふうに何処か拗ねたように…そして甘えたように言う路夏は、
なんだかすごく可愛かった。

それに、路夏とキスすることだって、僕の方からも望みこそすれ、
拒否する理由なんて全くなかったから…
「わかった…。じゃ、しよっか」
僕がそう言うと、
「うん…」
路夏が少しだけ頬を染めながら、そう言ってうなずいた。
うう、かわいい!

……そして僕は、路夏の唇に自分の唇を近づける。
路夏が静かに目をつぶる。
そして二人の唇が触れ……

269丁字屋:2010/06/04(金) 20:30:59 ID:Y1MeNObh

とその時、部屋の戸がいきなり開き、
「勇気〜、スイーツおおはらのケーキ買ってきたけど食べるでしょ?
 路夏も来てるのよね? 玄関に靴あったし……って……!?」
そう言って入ってきた、いつの間にか帰っていた姉ちゃんが、
僕たちの方を見るなり絶句し、硬直した。

が、それは僕らも同様だった。
何しろ、まさにキスしようとしているところを見られたのだ。
路夏とは公認の仲とは言え、うう、これは気まずい。

やがて、
「あ、あんたら一体ななな何して……って言うか、あんた、い…一体誰よ?」
姉ちゃんが上ずった声で僕を指差しながらそう言うが―

はあ?いきなり弟のキスシーン(未遂だが)を見てショックなのはまあわかるけど…
「何言ってるんだよ姉ちゃん?実の弟が誰かわからないほどボケるか、普通?」
僕はそう思ったことを口にするが、
「じ、実の弟って……それにその声…ああああんた、勇気…なの!?」
姉ちゃんは更に大きなショックを受けたように声を上げ、手に持っていた箱をポトッと床に落とした。
「ちょっと姉ちゃん、いい加減にしろよ。
 この僕の姿が姉ちゃんの弟の勇気以外の何だって……って…………あ…」
その時僕は、ようやく自分が今どういう姿をしているのかを思い出した。

270丁字屋:2010/06/04(金) 20:31:37 ID:Y1MeNObh

あああっ!
そ、そうだった!
ちらりと路夏の方を見ると、どうにも困ったような半笑いの顔で、
今にも「うわぁ…」とでも言い出しそうだった。

「ね、姉ちゃん、こ…これは…」
とりあえず言い訳しようとする僕をさえぎるように姉ちゃんが、
「あはははははは、だだだ大丈夫よ、勇気。姉さん、そういう趣味に偏見持ったりしてないから…」
と相変わらず上ずりながら、棒読み気味に言う。

「ち、違っ…!」
「だだだ大丈夫だってば勇気。
 姉さん、ど、動揺なんかぜぜ全然然してないんだからら…」
「だ、だからっ…」
「た、ただね、姉さんは理解あ…あるからいいけど、
そういうプレイは他の人には知られないように気をつけて…ほ、ほどほどにしておきなさいねぇ…」
「いや、プレイとかじゃなくて…」
「ま、まあ姉さんも、じゃ…じゃまはしないから、ろろ路夏もゆっくりしていってね〜」
結局姉さんは、僕に何も言わせぬまま、当人曰く全然していないという動揺を
全く隠せないまま、出ていってしまった。
路夏を見ると、僕の方を見て「はあっ」と大きなため息をついていた。
 
結局さっきの、キスしようという気分もお互いにそがれてしまった。
仕方なく二人で、さっき姉さんが箱を落としたためにすっかり形が崩れてしまったケーキを食べながら、
改めて明日の昼休みに桂と図書館で話をすること、その時は女装した僕が桂を迎えに行くことなどを再確認した。

271丁字屋:2010/06/04(金) 20:32:22 ID:Y1MeNObh

そして路夏が帰った後、僕はベッドに横になりながら、夕方路夏に見せられた桂の席の、
胸くそが悪くなるような惨状を思い出していた。
そして思う。
とりあえずさっき、路夏と二人で明日桂と話すことは決めたけど、
桂をどうしたら助けられるかについてはまだ何の方策も立っていない。

そして考える。
今、桂の味方は僕と路夏だけだ。でも、誰か他に味方になってくれるやつはいないだろうか?
そして、僕と同じ中学出身のやつの中から考えてみる。

桂と同じ四組には確か……そうだ、森がいた。
…いや、あいつは性格悪いから駄目だ。むしろいじめに加担するタイプだからな。

なら澤永…は…いや、そう言えばあいつは桂にふられているんだった。
まあ澤永はそれで逆恨みするようなヤツじゃないけど、
それでも自分をふった相手に積極的に味方になってくれるかどうか…。
いや、仮に味方になってくれたとしても、澤永はバカだから、
むしろ事態を余計に引っかき回して悪化させそうだ。

うーん、あと他には……
そして僕は一人の女子に思い当たった。

そうだ、黒田だ!黒田だったら陰湿ないじめなんかに加担しているはずはない。
むしろあいつはそういうことは大嫌いなはずだ。
それにあいつは甘露寺と同じ三組で、しかも転校した清浦を引き継いでクラス委員をやっているんだった。
甘露寺がいじめを扇動していることを知れば、クラス委員としてたしなめてくれるかもだ。
よし、何だか希望が見えてきたぞ!
272丁字屋:2010/06/04(金) 20:34:45 ID:Y1MeNObh




翌朝、僕は黒田と話をするためにいつもより早めに登校した。
黒田には昨夜電話で、大事な話があるから早めに学校にきてほしいと電話で頼んであり、了解を得ていた。

そして、
「なによー足利、こんな朝早くに話があるなんて…」
そんな不機嫌そうな言葉と共に黒田がやってきた。
「悪いな黒田」
「ま、別にいーけどね。ここんとこずっと私を避けてたあんたが話があるなんて言うんだから、
 よっぽどのことなんでしょ?」
「避けてたって、そ…そんなことは……」
「あるでしょ」
「う…」
黒田にギロリと睨まれ、僕は否定の言葉を呑み込んだ。
て言うか否定できなかった。

だが
「ふふっ、いいわよ。そんなに申し訳なさそうな顔しなくても…」
「え?」
「やきもきやきな彼女を心配させたくないからでしょ?わかってるって。
 あの子……喜連川さんだっけ? 前から私と足利のこと誤解してたもんねぇ」
そう言って黒田はにっこり笑った。

そう、確かに僕は学園祭のあと、黒田とはあまり接触しないようにしていた。
黒田の言う通り、路夏のやきもきをおそれたからだ。
無論以前路夏が抱いていた、黒田と僕がつき合っているなどという誤解はとっくに解けていた。
だが路夏は口に出さないまでも、僕が他の女の子と仲良くすることは快く思っていなかった

特に中学時代から気心の知れた黒田と話す時はお互いに意識しないまま、
周りにはかなり仲良さそうに映ってしまうようなので、僕は黒田を意識的に避けるようになっていたのだ。
以前はいつも僕をスイーツおおはらにケーキを買いに行かせていた姉ちゃんも、
事情を察してくれて自分でスイーツおおはらに行ってくれるうになっていた
(その分家の中での僕の仕事の分担がやたら増えたのだが…)。

けど…
「ただ友達として忠告させてもらえば、あんまり今のうちから彼女に気を使ってばっかりだと、
 将来尻に敷かれることになっちゃうわよん」
「よ、余計なお世話だ。だいたい路夏は黒田みたいに腹黒くないから、そんなことにはならねーよ」
「誰が腹黒いですって〜!? 
 むぅ、本当ならここで関節技でもかけてやるとこだけど、
 また変な誤解受けたらたまらないから勘弁してあげるわ」
「へえ、腹黒い黒田も少しは大人になったか…。まさに男子三日会わざれば…ってやつだな」
「誰が男子じゃ〜!!
 って言うか足利、私たった今、正拳突きを喰らわすって選択肢があったのを思い出したわ」
「うわっ、それは勘弁してくれ」

そんなふうに黒田は、僕が自分を避けていたことなど全く根に持った様子もなく、
以前と同じように軽口を叩き合ってくれる。
そう、黒田はこういう気のいいやつなんだ。
僕はそれを改めて嬉しく思い、きっと黒田なら桂の力になってくれると確信する。

273丁字屋:2010/06/04(金) 20:35:42 ID:Y1MeNObh

だから…
「で、一体何の用なの?避けていた私をわざわざ自分から呼び出すからには、大事な話なんでしょ?」
「あ、ああ。実は…」
黒田の問いに応えるように事情を説明し…
「な、だから黒田にも桂の力になってほしいんだ」
と頼んだ。

その僕の言葉に、黒田は険しい顔で
「なんてことなの…」
そう呟いた。
やはり黒田にとっても、身近で陰惨ないじめが行われているなんてショックだったに違いない。

「黒田、信じられないかも知れないけど本当に……」
しかしその僕の言葉を遮るように黒田が再び口を開いた。

「全くなんてことなの…!? 足利まで、桂さんにたぶらかされていたなんて…!」





えええっ!?

274丁字屋:2010/06/04(金) 20:36:28 ID:Y1MeNObh

今回はここまでです。

しかし、なんかこの話、毎回勇気が自身の言動に対する相手のリアクションに
驚くところで引きになってますな(汗
275名無しさん@ピンキー:2010/06/05(土) 01:39:25 ID:BGK36/TN
桂救済は至難の道だなww
276名無しさん@ピンキー:2010/06/06(日) 23:43:05 ID:MxAAG7+B
言葉から密かに事情聞くのはいいが、苛め意外に泰介の暴行まで
知ったらどうなるかねえ…… 穏便な解決を模索してる勇気と路夏が
危険な考えに傾かないか心配 
277丁字屋:2010/06/11(金) 20:21:12 ID:xji9sQka
「贄と成就」アフター

273からの続きいきます。
278丁字屋:2010/06/11(金) 20:22:30 ID:xji9sQka

「全く桂さんたら、あんたみたいな人のいいヤツまでたぶらかすなんて、許せないわ」
「お、おい、黒田…?」

…なんてことだ。
僕の期待に反し、黒田もまた桂のことを
「次々に男をもて遊んでは捨てていい気になっているようなやつ」と思いこみ、
友達である西園寺のためにと、甘露寺とつるんで
桂が伊藤に近づこうとするのを率先して妨害する一人だったとは…。

愕然としながらも、僕は桂がそんなやつじゃないと黒田に解こうとするが、
黒田はそれを全く信じようとはしなかった。
それどころか…
「あんたねぇ、少しぐらい桂さんが可愛いからって、そんな簡単にたぶらかされてると彼女が悲しむわよ」
などと逆に説教してくる始末だ。

まあ心配してもらわなくても、これはむしろ元々路夏に頼まれたことなんだか…、
しかし黒田が甘露寺とつるんでいる以上、それを口にするのははばかられた。
ともあれ、とりつく島のない黒田に、僕は桂の味方になってもらうことは諦めるが、
それでも…

「なあ黒田、お前が桂のことをそんなふうに思いこんでいて、
友達の西園寺のためにあいつが伊藤に近づくのを邪魔するってならそれは仕方ない。
けどな、女子全員で桂へのいじめを後押しして追い詰めるような…
んな卑劣なことだけは、せめてやめてくれないか?」
それだけは頼んでみる。
279丁字屋:2010/06/11(金) 20:23:08 ID:xji9sQka

しかし…
「いじめ?追い詰める?それ…何のこと?」
そう不思議そうに答えた黒田は、別にとぼけているわけではなかった。
黒田は、通学電車で桂が伊藤に近づくのを阻んだり、教室に伊藤を訪ねてきた桂を追い返しはしても、
甘露寺の指示で四組で行われているいじめについては全く知らなかったのだ。

ははは…そりゃそうだよな。いくら何でも黒田があんな卑劣ないじめに加担なんかするわけないんだ。
そして、僕が事情を説明すると、
「そう…だったんだ…。七海ったらそんなことを……」
そう呟いて神妙な顔で考えこんだ。
「な。だからそんな卑劣な真似はやめるように、お前から甘露寺に……」
だが、僕がそう頼もうとするのを遮るように、黒田は
「いい気味じゃない…」
そう言って暗い笑みを浮かべた。
280丁字屋:2010/06/11(金) 20:23:49 ID:xji9sQka

「な!?お前…何言って…!?だいたいお前はいじめなんて…」
「わかってるわよ。私だって、集団で無抵抗な一人をいじめるなんて胸くそ悪いことだって…」
「だ、だったら何で…?」
「でもそれも相手によるわよ」
「え?」
「あんな女、少しぐらいひどい目にあった方がいいのよ」
「黒田……お前…何で……桂のこと…?」
「よく知ってるわよ。あの女は、澤永のこと誘惑して……」
「あ…」

そうだった。黒田は澤永のことを好きで、
出来れば学園祭をきっかけに仲良くなりたいと思っていたんだった。
でもその澤永は、学園祭から桂と付き合うようになって…言うなれば、
黒田にとって桂はにっくき恋仇だったんだ。

でも……
「なあ、黒田の気持ちはわかるけどな、
だからといって集団でいじめをしていいってことにはならないだろ?」
だが、黒田はそんな僕の言葉が耳に入らないかのように
「それなのに、伊藤に目をつけたら、ぽいって澤永を捨てて…澤永をもて遊んで……」
と恨みごとのように呟き続けていた。

黒田の気持ちはわからないことはない。
だが、僕は自身の体験で知っている。
ひどい目にあえばいいとか死んだ方がいいとか、そういう感情が人を間違った行動に駆り立て、
それが後で後悔しかもたらさないことを……。
だからこそ僕は友達として、
黒田がそんな暗い思いに囚われていることは放って置けなかった。
281丁字屋:2010/06/11(金) 20:24:30 ID:xji9sQka

だから…
「黒田!目を覚ませよ!お前はそんなヤツじゃないだろ!!」
そう思いをぶつけるように言った。
だが、
「うるさい!足利なんて何も知らないくせに!!」
黒田はそう言い返して僕を睨み付けてきた。
だが僕もここで引くわけにはいかない。
結局お互いに睨み合うことになる。

やがて黒田がため息を一つつき、口を開いた。
「はあ…、あんたといがみ合ってもしょうがないわ」
「黒田?」
「足利。私はくだらないいじめに加わるつもりはないけど、
 それでも七海たちを止める気もないわよ。
 桂さんなんかのためにそんなことしてやる義理もないしね」
「……」
「でも、あんたが桂さんを助けようと思うんなら、それを邪魔するつもりもないし、
 七海に余計なこと言ったりもしないわよ」
「黒田……」
「じゃ、私教室に行くわ。あんたはせいぜい桂さんのために頑張ってみることね。
 応援はしないけど」
そう、憎まれ口のように言って黒田は去って行った。

結局、黒田は桂の味方になってはくれなかった。
だが、それでも、僕が桂の力になることを邪魔しないと言ってくれたことは、
黒田の僕への友情であり、桂への情けであったのかも知れない。
僕はそう信じたい。
282丁字屋:2010/06/11(金) 20:25:54 ID:xji9sQka


それでも、黒田が味方になってくれなかったことは僕をへこませていた。

そしてへこんだまま力なく教室に入った僕に
「おはよ足利」
「おはよーん」
「オッス」
と、畠山麦、今川留夏、細川那津希の三人が挨拶してきた。

今は相手をするのもたるかったが、それでも
「おはよ」
とだけ挨拶を返しておく。

そんな僕に
「あれえ?足利、なんか元気ないねぇ」
と言ってきたのは
畠山だったが、その時僕はこの三人も元気がないことに気づき、
会話するのもたるかったにもかかわらず、
「まあ色々あってな。お前らこそなんだかテンション低いぞ」
と言葉を返していた。

「まあ、こっちも色々あってねぇ…」
そう答えたのは今川。そして細川が
「ま、足利も元気出しなよ」
と言ってきた。
「ああ、サンキュ。お前も元気出せよな」
「うん、ありがとね」
そんな言葉と力ない笑顔を互いに交わしあって、
僕はそれぞれの席に向かう三人を見送った。

実際黒田とのことで僕はかなりテンションが下がり気味だったので、
こんなふうに誰かと互いを気遣え合えたことで少し気が晴れた気がした。
が、僕はあることに気づく。
283丁字屋:2010/06/11(金) 20:26:51 ID:xji9sQka

畠山たち三人は姉さんや路夏と同じ女子バスケ部であることから、
他のクラスメートの女子に比べ多少は僕と距離は近い。
だからと言って特に仲がいいというわけでもなく、
一日中特に会話を交わさない日も珍しくないし、時にはいがみ合うこともある。
しかしそれでも僕は彼女らのことを悪いヤツとは思っていないし、
どちらかと言えば好感を抱いていた。

だが…
そうだ、この三人も女バスってことは、桂へのいじめに協力しているってことなんだ。
そう思いあたって、再び僕の気は重くなった。


そして気が重いまま授業は進んでいき、やがて昼休みになった。


よし、とにかく桂と話をしないと…。

そして僕は教室を後にした。
284丁字屋:2010/06/11(金) 20:28:25 ID:xji9sQka

今回はここまでです。
次回はやっと言葉登場です。
285名無しさん@ピンキー:2010/06/15(火) 18:12:50 ID:ViDhuStw
遅くなりましたが乙ですっ

エロシーンまでまだ遠き・・・
286SINGO:2010/06/18(金) 03:40:52 ID:TKBQVMja
どうも。
【破局の妖精】シリーズの終章が書けたんで投稿します。

舞台はクロイズ闇堕ちEndおよび全て諦めEndがベースの後日談で
>>119-122の続きです。

BadEndで想い人に選ばれなかった勇気と言葉。
二人のリベンジ物語が始まります。

※ダーク勇気に注意。路夏を寝取られて心が病んでます。

【破局の妖精】第四部
 〜REVENGE〜
287SINGO:2010/06/18(金) 03:41:55 ID:TKBQVMja
【破局の妖精】第四部
 〜REVENGE〜

榊野学園 図書室。
僕は桂言葉の相談に乗っていた。
桂は恋人の伊藤誠に避けられ続けている。
「それにしても桂。何でそこまで伊藤に執着するわけ?」
桂ほどの女なら、もっとイイ男と付き合えるのに。何で、よりによって伊藤なんかと…。
「伊藤って最低の奴なんだぜ。桂がいるのに、路…あっちこっちで女の子に手を出してるんだ」
しかも自宅にセックスフレンドを集めて、毎晩セックスパーティしてるのに。
「誠君は、そんなイヤラシイ人じゃありません!凄く優しくて紳士で…!」
優しくて紳士な男なら、伊藤以外にいくらでもいるだろ?
「抽象的だな。僕には理解が及ばないから、詳しく教えてくれよ。どんな所が優しくて紳士なのか」
「………とにかく!誠君を悪く言わないで下さい!」
桂は怒り出した。
…重症だな。
桂が伊藤に惚れてるのは、桂がナース気質だからだと、僕は睨んでいた。
ナース気質とは、母性本能的だ。ナースが患者に献身的に尽くすがごとく、ダメ男に執着してしまう。
…と僕は思ってたが、桂の話からすると、どうも違うようだ。
僕が知る伊藤と、桂の言う伊藤のイメージが合致しない。
どうやら桂はインプリンティング的に伊藤に惚れたようだ。
インプリンティングとは、卵からかえった雛が最初に見たモノを親だと思い込んでしまう現象。
桂は初めての交際相手が伊藤だったから、コロッと落ちてしまったんだろう。
(そこに、どんな劇的イベントがあったのか、桂は言わなかったけど)
おおかた伊藤が気まぐれに見せた一回限りの優しさに、桂は縋り付いてるんだと思う。
…これはタチが悪いな。
伊藤がどんな男であれ、桂は自分の見たい様にしか物事を見ない。信じたいものしか信じない。
浮気の非が伊藤には無く浮気相手に非があると桂が思ったなら、それが桂にとっての真実だ。
「うまく寄りを戻せたとしても、桂が幸せになれるとは思えないけどね」
相手があの伊藤だからな。
「幸せかどうかは当人が決める事です。他人が評価するものじゃありません」
桂、ずいぶん野蛮なコトバを使うんだな。これほど自己中心的な女だとは思わなかったよ。
桂を大切に想う者…例えば桂の父や母がこの現状を知ったら、きっと悲しむ。
『なぜ、そんな男を選んだのか』『もっとマシな男はいなかったのか』と。
それを、他人が評価するな、と返すのか?
288SINGO:2010/06/18(金) 03:43:15 ID:TKBQVMja
けど、それを今の桂に言っても聞き入れてはくれないだろう。むしろ逆効果だ。
こういった手合いの対処方法を、僕は過去の失敗を経て学んでいる。
「ごめん。言い過ぎた。ただ、あんまり伊藤がカッコヨクテ、イケメンデ、モテモテダカラ…」
桂みたいな意固地な相手には、あえてこちらが折れるのがベターな対応だ。
「いえ、私の方こそ。つい、きつく言ってしまって…」
僕の計算どおり、桂は機嫌をなおした。
「ただ、多くの女が伊藤にアタック中なのは事実だ。そこに桂が割り込んでも伊藤の特別にはなれない。
大多数の女の内の一人としか認識されないだろうね」
あえてセフレという単語を使わず、女という単語でごまかした。桂を刺激しないために。
「どうすれば…」
「慌てる事は無いよ。しばらくすれば伊藤はフリーになる。そこが狙い目だ」
流行り物好きなコウモリ女は、いずれ飽きて次の獲物に乗り換えるさ。
「僕の計算だと、勝率7割ってとこかな」
「恋愛は計算でするものじゃありませんよ」
「でも必要不可欠だ。どうしたら女を幸せにできるか、男はちゃんと計算するべきだと思う」
自分で言ってて虚しくなってきた。とても恋愛敗北者の台詞とは思えない。
かつての僕は、結果を急ぐあまり先走って自滅した。本来、伊藤に対する路夏の想いは小さいものだから、
路夏を手に入れたいなら、落ち着いて計算して行動すれば良かったのだと、今にして思う。
永い時間が、あれからずいぶん過ぎた気がする。みんな幸せになれ、と願っていたあの頃が懐かしい。
学園祭が終わったあの日、幾人もの恋が破れた。そこには偽りの幸せしか無かった。
僕は全てに失望していた。榊野学園の人間は、どいつもこいつも救いようが無い。
自分に好意を持つ女性を片っ端からセフレにしている伊藤。
伊藤に騙され、今なお伊藤の彼女面している西園寺。
モテる伊藤を利用しセフレ斡旋して金儲けをしている黒田。
僕の全てを疑い、当て付けるかの様に伊藤のセフレに成り下がった路夏。
路夏を繋ぎ止めておく事ができず、路夏を伊藤に寝取られた僕自身。
浮気者の伊藤を、原形をとどめない程に美化して盲信し、現実から目を背けている桂。
それでも僕は、桂を見捨てられないでいた。
今もこうして桂の相談に乗り、桂と伊藤をくっつけようと画策している。
最初こそ伊藤に路夏を奪われない為の利己的な行動だった。
すでに路夏を奪われて、今さら続ける意味は無いのに、何の因果か今の今まで続けてしまった。
…僕もヤキがまわったな…。

289SINGO:2010/06/18(金) 03:44:53 ID:TKBQVMja
《12月某日》
3組に伊藤とアノ女の姿は無かった。
それを確認した僕は、澤永に話し掛けた。
「澤永。なんだか慌ただしいな。噂に聞いたんだけど、伊藤が女をアレしたって?」
「そーなんだよ。誠の奴、西園寺…自分の彼女を妊娠させちまってよー」
西園寺。伊藤の浮気相手の一人。
いつだったか、僕は西園寺に伊藤を諦めろと忠告した事があった。それを無視した結果がコレだ。
僕は別に驚かなかった。伊藤はセフレに溺れてるから、いずれ誰かを孕ませるだろうと予測していた。
「それでよー。西園寺がキレて…」
澤永は、こちらが尋ねていない事までペラペラと喋ってきた。
(流石は他人のプライバシーを無視する無神経、無配慮、無節操、無器用、無能、無駄、無用な男だ)
その話の中で気になった点が二つ。
・西園寺が伊藤に対し『マジメに考えて!』と怒鳴った事。
・直後。西園寺が吐き気で倒れた際、伊藤は西園寺を抱きとめずに、避けるように後ずさった事。
もし伊藤が西園寺を大切にしてるなら、そんな冷たい態度は取らないはずだ。
西園寺も数あるセフレの内の一人という事か。気の毒にな。
「なあ黒田。伊藤はどうした?早退か?」
「伊藤?誰それ?」と黒田は他人呼ばわり。

学園内は伊藤と西園寺の噂一色で塗れていた。
女子達の間では、伊藤には近寄らないでおこうという意思統一がなされていた。
…誰だって孕まされたくないもんな。
伊藤と組んでセフレ斡旋してた黒田でさえ、伊藤に利用価値が無くなったとたん切り棄てたくらいだ。
「勝率は8割強かな」


《クリスマスイヴ》
桂が救急車で病院に運ばれるというアクシデントが起きた。
原因は、伊藤とのデートの待ち合わせで、桂は雪降る夜の中、伊藤を長時間も待ち続けていた事だ。
伊藤は来なかった。それでも桂は待ち続けた。何時間も何時間も。
とうとう桂は寒さで意識を失って倒れ、結局、伊藤が到着した時には、すでに桂は救急車の中にいた。
…しかし妙だな。伊藤は全女生徒に避けられて、人恋しいはずなのに。
なぜ、すぐに桂に飛び付かなかったのか?
もしかして、西園寺に邪魔されたか?
あるいは、デートの約束自体が桂の妄想だったとか?…いや、流石にそれは無いか。

290SINGO:2010/06/18(金) 03:46:00 ID:TKBQVMja
《後日》
桂は今日も図書室に来ていた。
桂の目は虚ろだった。生気が感じられない。余程ショックだったのだろう。
「やあ桂。もう聞いてると思うけど、伊藤の奴、クラスメイトの女を妊娠させたってさ」
「……」
「伊藤、学園中の全女生徒から避けられてる。これで邪魔者は消えた。めでたく伊藤はフリーだ」
僕の計算どおり。
「伊藤は今、孤立状態にある。そこに桂が手を差し延べたら、流石の伊藤もコロッと落ちるよ」
「…孤立でもフリーでもありません……西園寺さんの、一人勝ちじゃないですか…?」
桂は怨みがましく言った。
「西園寺ね。あいつには伊藤を諦めろって忠告しといたんだけどな。まあ、いいクスリになったか」
「…何を呑気に…。もとはと言えば…足利君が、慌てるななんて言うから…私は…」
待ちに入ったから、西園寺に先を越された、と?
まあ、妊娠自体が西園寺のハッタリの可能性もある。
どちらにしろ、効果は絶大だった。西園寺は伊藤に群がる女どもを一掃し、伊藤との絆を強めた。
計算づくだとしたら…西園寺も、なかなかの策士だな。
「確かに、西園寺に出し抜かれた感は否めないね」
伊藤は、孕ませた西園寺を切り棄てはしないだろう。その責任を取り、交際を西園寺一人に絞る。
そこに桂が付け入るスキは無い。勝率はゼロだ。
ただし、
それは、あくまで桂の言う様に、伊藤という男が本当に優しくて紳士だったら、の話。
だけど、
もし、そうじゃなかったら?
伊藤という男が、僕の想像通りの男だとしたら?
「だから、今から巻き返す。攻めに転じる。行くぞ、桂」
「…?行くって…どこにですか?」
雪辱戦だ。
僕の計算では、勝率は9割にまで跳ね上がっていた。

291SINGO:2010/06/18(金) 03:47:19 ID:TKBQVMja
《伊藤宅 玄関前》
「何の用だよ?」
伊藤は不機嫌な顔で言った。学園中の全女子から避けられて、ナーバスになってるようだ。
「桂を連れて来た。桂、お前とやり直したいんだってさ」
「そうなのか、言葉!」と伊藤は満面の笑顔。
「その前に、だ。西園寺はどうした?妊娠の件で聞きたいんだけど」
「世界の事なら、俺のせいじゃない!」
怒声。伊藤は責任を放棄した。
チェックメイト。
伊藤は西園寺を切り棄てた。伊藤は完全にフリー。もう桂の邪魔をする者はいない。
この勝負、桂の勝ちだ。良かったな。おめでとう。
「言葉。そんな所で突っ立ってないで、さあ中に入って」
伊藤は笑顔に戻り、桂を中に招き入れようとした。
このまま西園寺の妊娠をスルーして桂をベッドに誘う気だろう。コイツ、まるで成長してないな。
(胸糞悪いけど、ここは我慢だ。ここまで僕の計算どおりなんだから)
「…オコトワリシマス」
「…え?言葉…今なんて?」
「お断りします。誠君、変わりましたね。以前の誠君は、そんな事を言う人じゃありませんでした」
明らかな拒絶。
驚いた。桂が伊藤を否定するところを、僕は初めて見た気がする。
「ち…違うんだ、言葉…」
「あの頃の優しかった誠君は…もう、どこにも居ないんですね」
桂は失望していた。
伊藤は女を孕ませ、それを責任転換し、自己正当化した。自分の赤子よりも自分のエゴを優先した。
その上で、まだ自分を慕ってくれる女が居ると自惚れてる様なら、伊藤は世の中の女をナメきってる
としか言いようがない。
「…さよならです」
桂は伊藤に背を向け、歩き出した。
「まさか桂の方から振るとはね…」計算外だった。
伊藤は桂を引き止め…ようとして諦め、憎悪の目で僕を睨んできた。
「…足利。これが…これが、お前の復讐なのか!?」
かつて僕は伊藤に路夏を奪われた。だから復讐心がゼロだったとは言わないさ。けど、
「伊藤、何か誤解してないか?僕は学祭の時から、桂とお前をくっつけようとしてたんだぜ」
「何を見え透いた嘘を……」
嘘じゃない。最初こそ、お前に路夏を奪われない為の利己的な行動だった。
すでに路夏を奪われて、今さら続ける意味は無いのに、何の因果か今の今まで続けてしまった。
桂は去って行く。振り向きもせず、立ち止まりもせず。
「伊藤。まるで僕が二人の仲をブチ壊したみたいに思ってる様だけど…」
そもそも僕がそんな事する必要が無いんだ。よく考えてもみろ。
「そんな事、僕には不可能なんだよ。すでにブチ壊されてんだから。お前の手で」
「…!!」伊藤は絶句した。
お前、桂に何をした?桂を蔑ろにして、何をしてきた?
それを桂に詫びたか?償ったか?懺悔したか?反省したか?改心したか?
「被害者を気取るなよ。お前が桂を裏切っただけなんだから」
だから、この結末に至るのは必然なんだよ!!
292SINGO:2010/06/18(金) 03:48:34 ID:TKBQVMja
まあ、最後に桂を正気に戻してくれた事には感謝するよ。僕のコトバは桂に届かなかったからな。
「僕が手助け出来るのは、ここまでだ。後は自分で何とかしろ。じゃあな」
桂と伊藤をくっつけるという、僕の役目は終わった。

マンションを出ると、桂が待っていた。
「忘れ物?」
「はい。お礼を言い忘れてました」
「僕は何もしてないよ」
心には虚無感だけが残った。
結果として、伊藤に報復した形になったけど、何の満足感も無い。
当然だ。結局、僕は誰ひとり幸せにできなかったんだから。
かつて僕は、みんな幸せになれと願っていた。なのに、
…どうして、こんな事になったのかな。
桂と伊藤は破局した。たった1割の確率で。
僕は一体、どこで計算を間違えたんだろう?
ゲームオーバー。もう僕には、これ以上この狂った関係を正す事はできない。
やり直すには、もう後戻りできない所にまで来ていた。
「いいえ、勇気をもらえました。私、強くなれそうな気がします。これも足利君のおかげです」
そうか。僕は役目を果たせなかったけど、桂の役に立てたのか。
「そう。良かったな」
桂には、失うかわりに得るものがあった。それは失ったものと同等じゃなかったけど。
もう桂は大丈夫だ。この先、独りでもやっていける。
「はい。次は足利君の番ですね」
「…は?」
桂、何言ってんだ?

「足利君、まだ喜連川さんと仲直りできてないんでしょう?私で良ければ、お手伝いしますよ」

END
293SINGO:2010/06/18(金) 03:51:24 ID:TKBQVMja
終わりです。
またしても、このオチです。

勇気ガンバレ。
294217:2010/06/19(土) 17:19:26 ID:XeYyBEdH
光が名字以上に黒い感情出してるねえ… 泰介の本性知っても
そうでいられるか 女バス内部も一枚岩というわけではない?>丁字屋氏

来週から路夏の長編投下します ただ容量が多いので(87KB)、
分割して投下するつもり
路夏・乙女たちが酷い目に遭うのを見たくない人はスレッド退避かNGを推奨
エロシーンが売りではないので、それのみに期待してる人も同じく

今日はこれで失礼します
295名無しさん@ピンキー:2010/06/19(土) 19:53:45 ID:CdY858yC
>>294
遂に完成しましたんですね!!、投下の時が本当に楽しみです…


…エロシーンに二穴・三穴シチュあります?
296名無しさん@ピンキー:2010/06/20(日) 11:05:47 ID:G7FI+fZr
>>292
言葉から誠を振るって珍しいですね。僕が知る限り言葉が誠を嫌いになるのはサマイズで待ち合わせの約束破った時ぐらいですから。

普通はこういう展開が幸せなんでしょうが、言葉がこの程度(あくまでも言葉的には)で誠を振るのはなんか違和感ありますね。この段階で見限るならもっと早く冷めてるだろうと。
イメージ的には誠が自分は悪くないと主張したら、やっぱり誠くんは悪くないんだと素直に信じるのが言葉なので。
297名無しさん@ピンキー:2010/06/20(日) 16:38:20 ID:pHb8EzGs
まあこんな男とまともに付き合おうとする奴なんてそれこそいないでしょう
少なくとも言葉の中の誠像が崩れただろうし、言葉にとって一番目を覚まさせる発言だしね
>>「誠君、変わりましたね」
この台詞を入れたのは絶妙だと思います

11話の時に誠が言葉に会わなかったら惨劇回避できたんだろうか……
298SINGO:2010/06/20(日) 16:43:05 ID:wgxvIWfC
>>296
まあ言葉が信じたのは正しくて冷たい誠じゃなく、優しくて紳士な誠ですから。
誠を信じるからこそ、なおさら
優しい誠なら世界に責任転嫁せずに、悩んだあげく、あえて自分が悪者になるだろう
くらいの優しさを期待してたら
実際には
どうしたら良いのか悩む事すらせずに、開き直ってる誠がいて、桂は失望した
というのがこの物語です。
299名無しさん@ピンキー:2010/06/20(日) 16:47:42 ID:JyLMpTVj
まあ、まだ崩し方が無難だし、許容範囲かな
二次創作で厳密に云々言い出したら切りないし
300名無しさん@ピンキー:2010/06/20(日) 23:07:46 ID:G7FI+fZr
言葉の幸せを考えた場合、誠と言葉をくっつけようとするか言葉に誠を見限らせようとするかにわかれますね。

前者の場合は誠が、後者の場合言葉をどう描写するかが難しいですね。

僕の場合は言葉が誠を嫌いになる展開がイメージできないのでくっつける方が比較的簡単だなと思います。誠はルート次第で良い奴ですし。
301294:2010/06/21(月) 19:20:08 ID:xDX3nnzL
予定通り投下 5部構成で各部にはいかにもな副題を
プロローグのみ異なりますが、基本的に順番で時間経過してます
シナリオありきで整合性の乱れやご都合主義や反則・原作設定無視も多いと
思うかもしれませんが、それでもよければどうぞ
感想・意見・異論・批判等待ってます

今日はプロローグと1部まで投下
302鏡 :2010/06/21(月) 19:20:57 ID:xDX3nnzL
プロローグ

(ルーズだな…この学校)

4組は体育の時間でこの近くには誰もいない。
財布とか金品に関係するものは、さすがに教師が直接預かっているようだけど、
貴重品袋に入れっぱなしで、誰も近くで管理してないなんて。

でも、そのおかげでこういう事も出来るんだ。
機種まではわからないが、色と形は覚えている。
そんなにアクセサリーやストラップもついてなかった。

あった。
写真のメモリーを開く。
どうやらあの画像を他の人間に送った形跡はないようだ。
この場でデータを全て消してやりたいが、あいつに気取られてはいけない。
これを私の携帯に送ると。あとはこの携帯からの履歴を消して、袋の中に戻す、と。
よし。保健室で休んでくるかな。

カーテンで仕切り、薄い布団を頭まで被って、携帯をこっそり眺める。
画像を見ると、あの時のみじめさや無力さが簡単によみがえってくる。
でも、今となってはあの時受けた仕打ちですら、自分の強力な武器だ。
あの時は本当にどうすればいいのか不安でいっぱいだったけど、
命を取られたわけでもないのに、びくびくしていた自分がいかに小さかったか。

問題はこの持ち駒をどう使おう。
パソコンが自宅にあってうんと詳しかったら、画像を取り込んで改変して、あの姿をあいつに変えるんだけど。
それを上手く流せば、学校にいられなくなるのはあいつに決定なのにな。

追い詰める立場が楽しいや。
303鏡 :2010/06/21(月) 19:21:40 ID:xDX3nnzL
T 捨身

「ざまあないわね。あいつに手出そうとするからよ」

あれだけ抵抗していた癖に、男の手に掛かれば、所詮こんなものだ。
噂を流した甲斐があった。澤永が都合よく食いついてくれ、おまけにうってつけの
人間を紹介してくれた。個人的には関わりたくないけど、澤永にやらせるより
かえって良かったかもしれない。
「二度と私に逆らおうなんて思わないことね。淫売女」

加藤乙女は服が乱れ、胸や局部を露出し呆然としたままの喜連川路夏を見下ろし、吐き捨てる。
路夏の局部からは血と精液が混じり出て、口からも白いものが涎のように垂れていた。
そんな彼女を放置し、そのまま遠山・松平と共に部屋を出て行った。

「協力してくれてありがと」
「ああ。だけど本当にあれでよかったのか?」
「何よ。2人がかりで犯しといて今更怖気づいたの?」
「そうじゃねえよ。ただ、あいつの目、普通じゃなかったぞ」
「俺達よりもむしろお前に随分反抗してたしな。後で刺されたって知らねえからな」
「平気よ。そうならない為の、コレじゃない」

携帯の画面には、茶巾にされた状態で縛られたり、遠山達の顔が見えない形で
輪姦された路夏の姿が露にされていた。
彼らか澤永に頼んでいっそビデオカメラで撮影してやってもよかったが、
勝手に画像を流されて大事になったら困るし、主導権は自分にあった方がいい。

「こんな姿がもし出回ったら、さすがに表歩けないでしょ」
「確かに。マジでやるつもりなのか」
「それはあんた達に関係ないでしょ。お互いの行動には干渉しない」

互いの領域に干渉しないと決める事で、実行後の安全も確保したつもりだった。
もし破ったら、運動部の人間と面倒な事になるかもしれないと。
澤永と違い、不良相手には用心に越した事はない。
乙女にしても、後で付けこまれるのは避けたかった。
304鏡 :2010/06/21(月) 19:22:34 ID:xDX3nnzL
実際、乙女には甘露寺七海という部活仲間兼友人がおり、彼女は女バスの1年部員に強い影響力を持っている
だけでなく、スポーツ特待生として他の運動部にも顔が利き、
乙女の『忠告』も決してはったりではなかった。
(ただ、七海は元々路夏を嫌ってるわけではなく、そこまで頼むのは難しいだろうと
思っていた。事実上はったりとして女バスの影響力を利用した)

不良を使うリスクはそれでも考えなくはなかったが、路夏を徹底的に痛めつけるには
この方法が一番手っ取り早かった。中学の時に恥をかかされた屈辱が晴らせ、自分の憧れている伊藤誠から
切り離す事もでき、何よりあの生意気な女をどん底に叩き落せる――
乙女は黒い誘惑に自ら堕ちていった……

「あの喜連川って娘はどうすればいい?」
「あんた達の好きにしていいわよ。澤永でも混ぜて仲良くしたら?」
「それはパスだ。あいつは調子こきで単純すぎるからな。加減知らずにAVそのままな事やりかねない」
「澤永には勿体無いぜ」
「あははは、そうね。あのバカ、いかにもそんな感じだし」
下卑た笑いと軽薄な笑いが響く。
そして、歩みを止め、乙女は遠山達に向き直った。

「今日以降、一切私達関係ないから。あんた達が喜連川扱いそこねても
私は知らないからそのつもりでね」
口調は軽かったが、乙女の目は笑っていなかった。
乙女が去るのを後ろから眺めながら、遠山達はつぶやく。

「加藤って、面倒くさい奴だな。俺達の事もちょろいと勘違いしてそうだ」
「顔は可愛いけど、冷血で悪趣味か。毛が生えてるのはアソコだけじゃないってか?」
「いんや、ああいう奴ほど中身は脆いと思うぞ。いい気になって痛い目見なけりゃいいけどな」
「ま、干渉しないって約束だったし。どうなろうが知ったこっちゃねえけど」
305:2010/06/21(月) 19:23:25 ID:xDX3nnzL
2
今日は学校を休んだ。
お母さんには体調が悪いと嘘をついた。病気じゃないけど、動きたくない。
昨日の今日で加藤なんかに会いたくない。
こうしてベッドで休んでいると、あれは意地悪な夢だったんだって思えてくる。
そうだったらどんなにいいか。
……でも、夢じゃない。

伊藤とは何もしてないと訴えたが、まったく聞き入れてくれなかった。
誤解されるような事をした自分にも落ち度はあったかもしれないけど、
そもそも、それだけで不良使ってあそこまでやってくるなんて、人間のする事じゃない。
あいつは人を苛めて貶めるのが心底楽しい、悪魔なんだ。

このまま不登校しようか。
家に直接押しかけてくる程あいつらも暇じゃないと思う。
でも、休んでる間にいつ、あの時の事が画像で出回るかと思うと……
それにいつ呼び出されるかも。

かといって、よその学校に転校する余裕も家にはない。
水商売は楽にお金を稼げるなんてイメージがあるけど、家でぐったりしてるお母さんを見ると、
とてもそんな風には思えない。ましてやこの不景気だ。

だめ。あんな奴に泣き寝入りなんかしたくないよ。絶対に。
何もしなければ何にも変わらず、あいつらはのうのうと過ごす。
だけどどうすればいいのか……

まず私の頭に浮かんだのは、勇気のお姉さんで、バスケ部を事実上仕切っている足利知恵先輩だ。
知恵先輩ならきっと、あのくそ加藤をどうにかしてくれる。
あいつは陰で先輩の事も嫌って呼び捨てにしてる。
そんなにも自分が中心で優位でないと気がすまないんだろうか。
私の事も先輩に媚びて守ってもらってると見下してる。
そんなつもりじゃないのに。

付き合いの浅い部員からは、怖くて横暴な先輩だと敬遠されているけど、
私みたいな鈍臭い落ちこぼれ部員にも優しくしてくれる。
プレイヤーとしてだけでなく、先輩のそんな姿に憧れて、バスケを続けてきた。
煙草吸って不真面目なトコもあるけど、他人の理不尽を黙って見過ごす人じゃない。
本当に困ってると打ち明ければ、きっと力になってくれる。
306:2010/06/21(月) 19:24:06 ID:xDX3nnzL
……でも、だからこそ先輩には頼れない。
これは、私とあいつの問題だ。それも中学時代からの。
知恵先輩を巻き込んで迷惑は掛けたくない………

それに学祭が終わってから、私が男漁りする淫乱だなんて根も葉もない噂もたった。
(証拠はないけど、あれもきっと加藤の仕業だ。あいつならそういう陰湿な事してもおかしくない)
麦や那津希、留夏達にしたって、疑うわけじゃないけど、絶対に信頼できるかというと……
女バスの部員に打ち明けるのはかえってまずいかも。
知恵先輩はともかく、いざとなれば誰だって自分が可愛いだろうしね。

勇気ともぎくしゃくしてて頼りづらいし…… 彼に打ち明ければ
恐らく先輩の知る所になるだろうから、やっぱりダメだ。それに、これじゃあ
あいつが不良使ったのと同じじゃない。こんな時だけ彼女面して頼る方がよほど卑怯だ。
そんな意地張ってる場合じゃないだろうけど、……やっぱり、今は……

警察に正直に話す?
色々聞かれるだろうけど、それさえ我慢すれば、
どんなに最低でも、あいつは女バスにいられなくなると思う。
場合によっては退学もありえる。
考えられる限りでは一番確実かな。

……それだけじゃあ、納得できない。
どうにかして、自分の手であいつをぎゃふんと言わせたい。
やり返せば、やった人と同じになるなんて、そんなのは苛めや犯罪にあった事のない幸せな人か、
安全で無責任な立場でいられる人が言う奇麗事だ。

何気なしに原巳中の卒業アルバムを開いていた。
こいつのすました顔の裏にどれだけの悪意が秘められているかと思うと……

……そういえば、加藤の父親が、以前お母さんのお店のお客さんだった。
(お母さん曰く、最近はまったく来ていないらしいが)
その事をあいつに暴露したら、真っ青な顔になってたっけ。
散々私の事バカにしてたくせに、自分の親の事、何も知らなかったあいつが可笑しくて。

もっとも、この事で表立った苛めは収まったけど、私と加藤との確執は決定的になってしまった。
まあ当時は受験を控えていた事もあり、以前のように絡んでこなくなったが。
落っこちればよかったのに。そうすれば、もう関わらなくて済んだのにな。
私も榊野に受かるとは思ってなかったけど、神様はつくづく意地悪だ。
307:2010/06/21(月) 19:24:42 ID:xDX3nnzL

昼間に出歩いても、何も言われない今の時代がありがたい。
今日も学校を休んだけど、ずっと家の中で過ごすのも気分が滅入る。
気の向くままに外をぶらぶらしていた。
一通り散歩して家に帰ろうと思ったけど、私はある場所へ足を向けていた。

閑静な住宅街。そんな趣きだった。
アルバムに住所が載っており、私の家からは結構遠いけど、来れない距離ではなかった。
表札に『加藤』とあり、ご丁寧にあいつを含む家族の名前も書いてある。
ここが加藤の家か。
さすがにこの時間では誰もいないだろう。あいつは今頃授業を受けてる最中だ。
大嫌いな奴の家までわざわざ来て、何がしたいんだろ。

加藤の親に事実を直接話すのはどうだろう。
不幸を願って、暗い想像で自分を慰めてごまかすよりは現実的だ。
少なくとも、あいつの親としての責任はあるはず。
親がまともなら、これはとんでもない一大事だ。

ただ、それはあくまで『まとも』な場合だ。
あそこまで問題児だと、親も見離してるか、娘可愛さで裏の顔に気付いていないか、
あるいは家族がすでにバラバラで無関心なのかもしれない。
あの時、父親のお店通いを何も知らなかったし、充分ありえる。
いずれにしても、真相を訴えても適切な態度をとってくれる保障はないかも。

本当に、何しに来たんだろ。
ここにいても怪しまれるだけだ。さっさと帰ろう。
そう思い、来た道を戻ろうとした。
308:2010/06/21(月) 19:25:21 ID:xDX3nnzL
(ん?向こうから人が…)
駅の方角から、スーツ姿の中年の男が歩いてきた。
散歩してるふりだ。目を合わせず通り過ぎるんだ。
とっさにそう思い、私は歩いてきた男とすれ違う。
私には大して気を留めず、その人は加藤の家の中に入っていった。

(あれは…… 加藤の父親?)
その人の事が気になり、私はその場を離れずに留まった。
数分ほど経って、彼は再び家から出て駅の方角に去り、
それを私は少し離れて見ていた。

失礼だが、あまり冴えない感じの男性に思えた。
夜のお店で遊ぶ風には見えないけど…… 
忘れ物でも取りに来たのかな?

…はあ。本当に何しに来たんだろ。
309名無しさん@ピンキー:2010/06/21(月) 19:29:52 ID:xDX3nnzL
今日はここまでにします。状況にもよりますが、大体この位の分量前後で
投下していこうかと。まあ、まだまだ序盤です。
かなり上の方でプロットを書いたので、基本その通りに進むと思って頂ければ
不良コンビは本編では男色以外では意外と大人しかったけど、ここでは
ある意味乙女より汚い悪役
310名無しさん@ピンキー:2010/06/21(月) 21:21:53 ID:qmOsEmmJ
文章構成もしっかりしてるし基本もきっちり押さえてる。
読み手を引き込む力もある。たいしたもんだ。

差し出がましいけど
>>303の文章
> 加藤乙女は服が乱れ、胸や局部を露出し呆然としたままの喜連川路夏を見下ろし、吐き捨てる。

※ 服が乱れ胸や局部を露出し呆然としたままの喜連川路夏を、加藤乙女は見下ろし吐き捨てる。

に修正したほうがグッと読みやすい。
上の文だと加藤乙女は服が乱れてるみたいだから。

あとは文句無しにGJ
311名無しさん@ピンキー:2010/06/22(火) 00:52:04 ID:ZD9rbYgb
>>300
確かに、後者より前者の展開のほうが容易ですね。
>>287-292の場合だと、「実は、入学式時の刹那絡みのエピソードを見ていた」と言う事にする等
かなりの裏工作が必要になりますが、辻褄合わせは不可能ではなさそうですね。
まぁ、自分がオリジナル展開をやるとしたら…楽な前者パターンを選びますが…。
312名無しさん@ピンキー:2010/06/22(火) 07:26:30 ID:yVatbWtz
言葉が見限りパターンは、あまり誠を悪役にせずに退場させるのがキモな気はする
313名無しさん@ピンキー:2010/06/22(火) 10:56:19 ID:EauTliUP
>>309
おお、投下されてた…GJ!

路夏シーン、既に事後…w
これからのシーンが楽しみっす

314309:2010/06/22(火) 20:14:37 ID:hNu3W2q3
引き続き投下。1部の途中まで。
この辺りから物語が急速に動き出します。
(後で読んでみて判り辛かったので、これからは名前欄に副題書いときます)
315鏡T 捨身:2010/06/22(火) 20:15:10 ID:hNu3W2q3
3

3日ぶりに登校し、クラスの子に具合は大丈夫なのかと心配された。
どうやら、いない間に画像が出回った様子はないか。少しだけホッとする。
幸い2組には、加藤や遠山達と関わりの深い人間はいないのが救いだ。
クラスメートとの関係も悪くない。
いつも通りの日常だ。

でも、それがいつ、無神経な好奇心や嘲笑の目に変わるのかと思うと……
実はもう知っていて、陰で私をそういう目で見ていたらと思うと……
…考えすぎよ。みんながみんな、加藤みたいな奴じゃない。
だけど、それだけ。仲が良いだけでは、私の抱える問題をどうする事もできないんだ。

もし私が加藤なら、まずは自分に近い人間にこっそり見せるか。
そうなると、4組の誰かか、女バスだと甘露寺さんか。
甘露寺さんとはそれほど悪い関係じゃないけど、友達といえる程ではない。
加藤と以前衝突した時も私をかばってくれたけど、基本的にはあいつ寄りだろう。
私には大勢の他人を惹きつけたり、従わせられる力もない。

それに、他のクラスの人間関係までどうこうするなんて、無理だ。
あいつの気分ひとつで、撮られた画像が出回らない事を祈るしかないんだろうか。
結局いくら考えても、自分ではどうする事もできないのかと憂鬱になった。

授業も終わり、部活の時間だったけど、加藤のいる女バスには行きたくなかったので、このまま
まっすぐ帰ろう。そう思い、下駄箱に急いだ。

私の心情を見透かしたかのように、携帯が鳴った。
開いて見ると、……………遠山達か。
アドレスをあの時彼らに知られたのも痛い。
はっきり言って行きたくないけど、行かないとどうなるか……
仕方なく、私は遠山達の溜まり場へ重い足取りを向けた。
316鏡T 捨身:2010/06/22(火) 20:16:01 ID:hNu3W2q3
私にとって拷問に等しい時間が、ようやく終わってくれた。
服を直し、遠山と松平はくつろいだ様子で、あらかじめ持ち込んだペットボトルの飲み物で
一息つく。彼らはさらに携帯でゲームや音楽を楽しんだり、ギャンブルの情報誌を読み始めた。
もう帰っていいという事らしい。

行為が終われば私は用済みか。
咥えてる間、噛み千切ってやると何度思っただろう。
でも、この2人に対し、私という女の子では、あまりに差がありすぎる。
下手に抵抗すれば火を見るより明らかなのは経験済みだ。……思い出したくない。

それでも、遠山達に聞かずにはいられなかった。

「…いつまで私とこうしてるつもりなの」
「さあな。あいつからは好きにしていいって言われたし」
「俺らが飽きるまでってトコか。別に暴れたりしなきゃ、んなハードな事はしねえって」
「加藤なんかの言いなりになって、あんた達恥ずかしくないの?」
「別にあいつに従ってるつもりなんかないぞ。ギブアンドテイクってやつでさ」
「私からみたら、加藤の犬よ2人とも」

トゲのある私のことばに、遠山が鋭い目付きをさらに鋭くしてきた。
まずい。怒らせちゃったか……

「おい、あんまし調子こいんてんじゃねえぞ。自分の立場わかってんのか」
「待て遠山。んな事でキレても疲れるだけだぞ」
長髪を後ろで結んでいる松平が、遠山をなだめ、私に話し掛けてきた。
強面そのものだけど、遠山よりは冷静な感じだ。

「やけに加藤に絡むな。そんなにあいつの事嫌いなのか」
「当たり前でしょ。あいつとは中学から犬猿だった」
「お前加藤とオナ中だったのか。道理であいつも妙にお前に絡むわけだ」
「ま、いくら喜連川が気にいらないにしても、やりすぎだったかもな」
他人事みたいに、ぬけぬけと。
しかし遠山達の口ぶりから、加藤にはそれほど良い印象を持っていない気がした。
こいつらからも人望がないとは、つくづくあいつの身勝手さが想像できる。

………まてよ。
ひょっとしたら、使えるかもしれない。
頼るのがダメなら、利用すればいい。
ダメもとでも上手く興味を惹かせられれば……
私は加藤との因縁について、少し尾ひれも加えてねっちりと遠山達に話し出していた。
317鏡T 捨身:2010/06/22(火) 20:17:00 ID:hNu3W2q3
「なるほど、そりゃ加藤が悪いな」
「でしょ?あいつに迷惑してたのは私だけじゃないし、親の事でも馬鹿にされてムカついたもん」
「そういう奴は陰で嫌われるさ。そのうち誰からも相手にされなくなる」
外見はもろに不良だけど、意外にも人の話は聞ける奴らだった。

「だったら何であいつの言う事聞いたのよ?力だって圧倒的に遠山達の方が上じゃない」
「あの時は誰とでも寝る女だって、噂聞いたからさ。伊藤も誑かしたって」
「小学校同じだったけど、あいつ女にもてんのか?」
「前にちっこいのが3組に来て、西園寺とデキてるってカミングアウトしてたろ」
「ああ、そういやそうだった」
遠山達が脱線し、伊藤の話題をし始めた。
伊藤とは一度休憩室で話したけど、他の女の子と付き合ってたのか?
それにちっこいのって……
っと、今はそんなの関係ないか。

「ちょっと、人の話聞いてる?」
「ああ聞いてるよ。いくら気に入らない相手でも、女殴るのはリスク高いんだぜ?
あいつも女バスだろ?運動部の連中を敵に回して揉め事はゴメンだ」
私の事をレイプしておいて、妙な所で保身的な奴らね。
ていうか、私もその女バスだけど、こいつらにとって私は例外らしい。
腸が煮えくり返るけど、ここはガマンだ。
どうしたって、力では絶対こいつらや加藤にはかなわないのだから。

「ま、馬鹿にされて悔しいのはわからんでもないぜ」
「そう思うんなら協力してよ。2人ともタダでいい思いしてるんだし、少しくらい
私の言う事聞いてくれたっていいんじゃない?」
「どうせ俺達使って、加藤を同じ目に遭わせてくれって言うんだろ?ダメダメ、
そういう事ならお断りだ。それに機嫌損ねて画像ばら撒かれたら、お前学校にいられなくなるぜ」
「誰があいつをレイプしてくれなんて頼むのよ。あいつに分からないように、仕返しするの」

遠山達どころか、学園全ての男に犯させたって、足りないくらいだ。
そんな事より、もっと巧妙にあいつに打撃を与えられる。
どうしてもっと早く気づかなかったんだろう。
私には、恐らく自分の立場でしか使えない手を持っているじゃないか。
318鏡T 捨身:2010/06/22(火) 20:17:52 ID:hNu3W2q3
「はあ?どういう事だよ」
「要はあいつさえ気付かなきゃいいのよ。それにはまず遠山達の協力が必要なの」
「おい、どうする?」
「やめとけよ。こいつの個人的な事情に付き合うのは面倒だぜ?」
やっぱり簡単には乗ってこないか……
そりゃそうだ。私の頼みを聞くメリットなんか、こいつらには無いもんね。
そう思いうな垂れた。

そして、再び重い気分で部屋を出ようとしたところ、
遠山が意外な事を持ちかけてきた。

「おい、待てよ」
「なに?」
「お前の頼み、聞いてやってもいいぞ」
「ホント?」
「ただし、条件がある。失敗したりバレそうになっても、お前1人で
責任とってもらう。一応、俺達学生だからな」
「リスク高い事するなら、それくらい当然だろ?」
ちぇっ…… こういう所はやっぱり不良だ。
少しは話のわかる奴らだと思ったけど、無条件で協力してくれるわけないか。

「ま、無理にとは言わねえ。イヤならこの話はこれっきりだ」
「……わかったわ。もし上手くいかなくても、遠山達に迷惑はかけない」
「口先だけで、あとで知らん顔なんてのは困るからな。ちゃんと誠意ってのも
見せてもらうぞ」

本命はそっちか。話がうまいと思った。
こいつら、私が本当に成功するなんて思ってないんだろう。
失敗したら、黙ってやるかわりに、自分達に都合のいいサービスしろって事か。
汚いヤツ。

だけど、うまくいけば、あいつは女バスどころか、榊野からサヨナラなんて事も
夢じゃないかもしれない。
それにはまず遠山達の協力が欠かせない。
あとは…… 私がどれだけ本気でやれるか。
319鏡T 捨身:2010/06/22(火) 20:18:23 ID:hNu3W2q3
覚悟をきめろ。これ以上失うものなんかない。
ここで諦めたら、本当にみじめだよ。それでもいいの、路夏?

「わかったわ。期待に沿えるようにする」
「よし。決まりだな」
「デジカメか使い捨てカメラ持ってない?」
「ああ、それなら家にあるけど」

こうして、私と遠山、松平の互いに利用しあう関係が始まった……
320320:2010/06/22(火) 20:19:12 ID:hNu3W2q3
今日はここまで。次回以降展開がかなり早くなります。ご都合主義の
手抜きともいいますが(苦笑) 詳細にやりすぎるとKBがいくらあっても
足らないし、ヘンな話、どこで妥協するか悩みどころね
321320:2010/06/22(火) 20:48:03 ID:hNu3W2q3
>>310
さっそく意見どうもです。
状況的には誰が何したかわかるでしょうけど、確かに修正後の方が読みやすい
ですね。過去スレ見てると、GJかスルーだけではなんとも味気ない
(最初期の頃は批判できる人もいたんですが……)
322名無しさん@ピンキー:2010/06/24(木) 01:28:48 ID:9mllgLO2
やばい、話に引き込まれる…!
投下乙です。


変に批評レス付けると、それを元に無駄に荒らす人が居るんですよ。
自分で荒らして自分で削除・規制依頼して、うp側まで巻き添えで規制される…みたいな流れで。

いくつかのスレでそれ見てきたんで、どーしても中身の批評はためらいが。
323名無しさん@ピンキー:2010/06/24(木) 18:29:44 ID:9TXMq67k
>>322
逆に、書き手を褒めて伸ばしたら、
荒らしが「馴れ合いウゼェ」と言って荒らしてきたからな。
みんな感想を控え目にせざるをえない。
324320:2010/06/24(木) 19:48:00 ID:flHD0GaF
引き続き投下します 今日で1部は終了
325鏡T 捨身:2010/06/24(木) 19:48:36 ID:flHD0GaF
4

東原巳駅のそばで待ち合わせを装い、路夏は人を監視していた。
時計は夜の9時45分になっている。
(今日もダメなのかな…… またあいつらに無駄金払うのか)

もし10時過ぎても現れなければ今回もお開きだ。(それ以降も電車は停まるけど、
補導されるリスクが高くなる。お巡りさんが関わるのは一番まずい)
その場合は迷惑料を、自分の貯金から後日遠山達に払う事になる。

あの時徒歩だったという事は、普段通勤に電車を使っていると推測できる。
(加藤の家から一番近いのがこの駅だ)
ただ、絶対とは言い切れない。車も使ってる可能性もある。
そして、加藤の父親のスケジュールに関しても完全に運頼みだ。
電車を利用していても、時間が合わなければそこでアウトだ。
あの時は名案だと思ったけど、考えれば考えるほど、穴だらけだ。
やっぱり、無理なのかな……

お金が尽きれば、もう遠山達は私の言う事を聞かない。
できれば今日で決めたいけど、もう時間が……

あの時は最悪だったけど、大人しくしてる分にはあいつらも無茶な要求はしてこないし、
このまま飽きるのを待ってた方が安全なんじゃないかな……?
誰かが異変に気付いて助けてくれるかもしれないし……
そんな弱気という名の誘惑に負けそうな自分を何度も抑え付ける。

遠山達は、駅から少し離れたところで、友達同士でしゃべっているふりをしていた。
「あと少しで、バイト代が手に入るぜ」
「ああ。最初はどういう風の吹き回しかと思ったけど、お前もワルだねえ」
「小遣い代わりになるんだ。約束したのは喜連川だしさ」
「ま、そうだな。だけど財布にするのも限界あるだろ?」
「その時は好きなだけ可愛がってやるよ。弱みが増えて何も出来ねえさ」
326鏡T 捨身:2010/06/24(木) 19:49:15 ID:flHD0GaF
そして、10時前最後の電車が停まる時間。
これで降りてこなければ… よーく見るんだ。くそ、人が多いな。
(ん?あれは……)

いた!
あの時見たっきりだが、顔は覚えてる。
加藤の父親だ。
神様は私を見放さなかった。よし、いける!
素早く携帯を操作し、指示を送る。

そして、はやる気持ちを抑え、路夏は加藤の父親にぶつかった。
「あっ、ごめんなさい」
「いやこっちこそすまない。私も手伝おうか」
「いいですよそんな事してくれなくたって」

一方、遠山達も本来の目的をクリアーしていた。
「どうだ、上手く撮れたか?」
「バッチリだぜ。我ながら傑作だ」
「あいつの親父もご愁傷様だな。それじゃ、行くか」

遠山達は後ろから乙女の父の肩を叩いて、声を掛けた。
そして、酔っ払いに肩を貸すかのように、
路夏と共に、人気のない場所に連れて行った。
327鏡T 捨身:2010/06/24(木) 19:49:52 ID:flHD0GaF


「これはどう見てもヤバイでしょ」
「私は何もやましい事はしてない!落し物を拾うのを手伝っただけだ」
「それはあんた個人の考えだろ。他の奴が見たらどう思うのかな?」
見る人によっては若い女子と密会してる風にもとれる写り方だった。

「とにかく、彼女は何も関係ない!よ、用があるなら私だろ?!
彼女だけでも帰してやってくれないか」
乙女の父は、彼らに対する恐怖を抑え、自分の横に居る路夏を庇った。
その様子を見た遠山と松平はニヤニヤと笑う。

「な、何がおかしいんだ」
遠山がウインクし、松平がやれやれといった表情で首を振る。
路夏は乙女の父のそばを離れ、彼ら2人の中心に立った。

「ごめんね、こういうコトなの」
「貴様たち、私を最初から陥れるつもりで……!」
「騙すなんて人聞きが悪い。俺はいけない事はいけないとあんたに言ってるだけだぞ」
3人相手で、下手に拒絶したら何されるかわからない――
乙女の父は抵抗する気力を失っていく。

「黙って言う事聞いて下されば、何もしません。このデータも処分します」
「………くっ」
後は路夏達の言いなりになるしかなかった。

「まずはこの場で私達に。…くらいでどうですか?」
この男が小心者で助かるが、遠山と松平を引き入れたのは
やっぱり正解だった。はったりを利かすには充分すぎる。
これでも実際に恐喝した事はないらしいけど、才能あるんじゃないの?
328鏡T 捨身:2010/06/24(木) 19:50:32 ID:flHD0GaF
「それともう一つお願い聞いて下さいますか」
「まだ何かあるのか?!」
ここからが本題だ。
さっきのはあくまで遠山達への報酬としての行動だ。
私にとってはこっちがメイン。

「……というお店にしばらく通って下さい。そこで適当に遊んだりしてくれればいいです。
できればお金もたくさん使ってくれるとありがたいんですけど」
「その店と君達は何か関係あるのか」
「こいつの言う事黙って聞いたろ。口約束でも約束破りはよくないぜ」
ナイスアシスト。

矛盾を突かれる前に携帯を取り上げ、自宅や勤務先、携帯の電話番号・アドレスを書き写す。
市内用の電話帳で確認した番号と一致する。卒業アルバムに書かれていた住所から調べた甲斐があった。
名前も家で見た表札や、電話帳に書かれていたのと同じだ。
間違いなくあいつの父親だ。ついでにあいつの番号とアドレスも控えておく。
(あいつの番号まで使う事はないと思うけど、使える手は多いほうがいい)

これで、この男を縛る事が出来る。
しがらみの多い、家族を養う立場だと身動きし辛いだろう。
不祥事が発覚して困るのはこの男のほうだ。
番号やアドレスの変更や契約解除されても、こっちは住所も知っている。
そして向こうは元々私との面識がない。どこに住んでいるかなど知らない。
その優位は大きい。

私達から解放され、すごすごと去ろうとする加藤の父親に、釘を刺す意味で
駄目押しに言ってやる。

「信じてますから。その場だけ従うフリをする人じゃないって」
329鏡T 捨身:2010/06/24(木) 19:51:19 ID:flHD0GaF
成功した場合、あらかじめ決めていた解散場所で手を叩き合う。
目の粗い計画だったけど、どうにか上手くいった。

「遠山達も結構、役者ね」
「想像以上にビビリだったな、あのオッサン」
「パチンコやるよりよっぽどスリルあったんじゃない?」
「大声出されないか、こっちはちびりそうだったぞ。お前も可愛い顔して
やる事えげつないな」
「あいつには良い薬よ。はいコレ」
そう言い、加藤の父親からせしめたお金を2人に手渡した。

「このデータはもう用無し、と」
脅しの道具に使った画像が、一瞬で消去された。
役目を果たしたデータなんか、ただのゴミだ。

「学校では今まで通り、普通にしてて。加藤に何か聞かれたら
適当に答えてくれればいいから」
「オーケー。最近は自分から腰振るようになったんだぜ〜とかか」
「下品ね。あいつが興味持ってまた溜まり場に来たらどうするのよ」
「その心配は多分ないぞ。加藤は俺達が何しようが関係ないってスタンスだからな。
万一の事考えて、俺達とは一切関わらないつもりだろ」
「なるほど。あいつの考えそうな事ね」

もしあの事が何らかの形でバレそうになったとしても、適当に言い逃れして
悪行をこいつらに丸投げするつもりか。
遠山達が嫌うのももっともだ。

ともかく、加藤は私があれだけ酷い目に遭って、完全に参ったと思い込んでるだろう。
遠山や松平の慰みモノにされていい気味だと高笑いでもしているに違いない。
だからこそ、だ。
中学の時から何も、変わってない。

どんな手でも使って、とことん追い詰めてやる。
私を貶めて勝ち誇っていたあの顔を忘れるな。
それが、大きな落とし穴だって事を、思い知らせてやる。
その為なら、悪魔に魂を売って、いや、悪魔だって利用してやる。
もうこの前までの弱虫な私は死んだんだ。

(第1部 捨身 完)
330329:2010/06/24(木) 19:52:40 ID:flHD0GaF
これで1部は終わりです。いよいよ魔道に足を踏み入れてしまった
路夏ですが、2部以降はどんどん洒落にならなくなります。また、
乙女の家族状況についても明らかになりますが……
(まあ掘り下げてもありきたりだし、乙女に同情する理由にはなりませんが)
331329:2010/06/24(木) 20:06:45 ID:flHD0GaF
>>322>>323
そうですか。スレッドが機能しなくなるのはまずいですね確かに……
まあ最終的には各人の自由意志と良心に任せるしかないんですが、
遠慮しあって返って内輪だけになるのもやっぱりまずいですし。

私個人は、書いたものを喜んでくれるのは勿論嬉しいんですが、自分に甘くなって
自分自身を見失うのはイヤなんですよね。二次創作だで、どうしたって陶酔は
入るでしょうけど、だからこそ、辛口のレスもやっぱり必要なのかなと。
332名無しさん@ピンキー:2010/06/25(金) 08:34:42 ID:2HDll35a
まあ住人に煽り耐性がないのも問題なんだが。
333丁字屋:2010/06/25(金) 22:52:01 ID:iAJRRKDs
待望の新作「鏡」は黒対黒のヒロイン対決が実に興味深いですね。

では「贄と成就」アフター

>>283からの続きいきます。
334丁字屋:2010/06/25(金) 22:53:07 ID:iAJRRKDs




僕は朝のうちに図書館に隠しておいた女子の制服とウィッグを速攻で身に付けると、
4組の教室に向かった。

扉のところから中を覗くと、周りが談笑しながら昼食をとったりしている中、
桂は自分の席で、食事もとろうとせず、ただ俯いてじっとしていた。
そう、あの席には悪意に溢れた落書きで埋め尽くされている。
誰がそんなところで食事をとりたいと思うものか。
いや、桂は理不尽にも周囲の全てから悪意を向けられているんだ。
おそらくその、周囲は全て敵だという現実に打ちのめされて、
桂は何をする気力もおきず、だからただじっと座っているんだ。

だからこそ一刻も早く桂に、僕や路夏という味方がいることを教えてあげないと…そう思い、
僕は4組の教室に入り、桂の席に向かう。
途中周囲から僕のことを指して「あの娘誰?」とか、
男子の「うおっ、可愛い!」とかいった声が聞こえてくる。
て言うか可愛いとか…特に男に言われても、全くうれしくない。

ともあれ桂のそばに立つと、桂もそれに気づいて僕の方を見上げる。
目の前にいるのが誰だかわからずにきょんとしている桂に、
僕はポケットから〃用事があるので一緒にきてくれませんか〃と書いたメモを出して見せた。
声を出せば桂はいいとして、周囲に男だとわかってしまうからだ。
いきなり見も知らない女子(本当は男子だが)に筆談で用事があるなどと示され、桂は少々戸惑ったが、
それでもこの悪意溢れる教室にいるよりましだと思ったのだろう、無言で小さく頷くと立ち上がった。

僕は更に、メモで昼食を持ってきているなら持ってくるよう支持すると、
桂は紙袋を持って僕についてきた。
その紙袋は、学園祭の少し前、桂が伊藤と一緒に食べるために持ってきて、
それがかなわなかった傷心と共に僕にくれたものと同じ…そして、
僕が西園寺を闇討ちしようとした時に被った…苦い記憶と共にある紙袋だった。
335丁字屋:2010/06/25(金) 22:53:44 ID:iAJRRKDs

ともあれ僕は桂を伴い図書館に入る。
中では先に来ていた路夏が待っていた。

「こんにちは、桂さん」
路夏が愛想よく挨拶すると、桂も
「は、はい。こんにちは…」
と、戸惑いながら挨拶を返す。
「えっとまず自己紹介からするね。
 私は喜連川路夏。一年4組でバスケ部所属…」
「バスケ部…?」
その言葉に桂は警戒の色を示すが、
「あ、大丈夫。私は桂さんの味方だから」
路夏は桂を安心させるように、そう優しく微笑んで言った。

桂はそれでもいぶかしんでいるようだったが、それでも
「は、はあ…。あの、私は…桂言葉です」
と自分も自己紹介した。そして
「それであの…こちらの方は?」
と、僕を指して質問してきた。

すかさず路夏が、
「ちょ、ちょっと勇気!あんた自分のこと言ってないの!?」
と驚いたように言う。
「あ…忘れてた」
僕は頭をかくと
「はあ…まったく…」

路夏があきれたようにため息をつく。
桂はそんな僕らのやり取りを見ながら、
「あの、ゆうきさんとおっしゃるんですか?と訊いてきた。
ちなみにその言い方…発音からどうも「ゆうき」を名字(結城とか)と思っているようで、
僕だとは全く気づいてないようだ。
336丁字屋:2010/06/25(金) 22:54:27 ID:iAJRRKDs

「桂、僕だよ。足利勇気、1組で図書委員の…」
「はあ?足利君なら知ってますが…。
 あ、そういえば足利君には確かお姉さんがいらっしゃるって…、じゃああなたが…」
「いや、そうじゃなくて、僕!本人!」
そう自分を指差して言っても、桂は頭の上に?マークをうかべて、首を傾げていて、
路夏はそれが可笑しいらしく、口元に手をやり笑いをこらえていた。

そして僕は
「ほら、これでわかるだろ」
そう言ってポケットから取り出した眼鏡をかけながら、ウィッグを持ち上げた。
同時に桂が
「あ…あ…、足利くぅん?!」
とすっとんきょうに驚きの声を上げた。

数分後、図書館の司書室に、一緒に昼食をとる、僕と路夏、そして桂の姿があった。
取り敢えず桂には、僕らが桂の現在おかれている状況に対して、何か力になりたいと、
そのためにここに一緒に来てもらった旨は話しておいた。
桂も最初は路夏のことを、女バスということで警戒していたようだったが、
食事をしながら雑談する中で(二人が話をするのは初めてだったが)次第に打ち解け、
路夏が桂の味方だと信用した様子だった。

そして路夏も、桂の
「でも大丈夫ですか?私なんかの味方をしているってわかったら、
 喜連川さん、バスケ部での立場が悪くなってしまうのでは…」
という言葉に対し
「あは、やっぱり桂さんって、甘露寺さんの言うような嫌な人なんかじゃないね。 
 ううん、自分があんなにひどい目にあってるのに、 
 まず私のことを気づかってくれるなんて、むしろすごくいい人!」
と微笑み、二人はお互いに好感を持ったようだった。

まあそれはいいのだが、気になるのは桂がずっと珍しいものでも見るように
チラチラと僕の方を見てくることだ。

いや、まあ珍しいものなのだろう。
何せ桂を向かえに行くために女装したのはいいものの、
食事をする前に着替え直そうとしたところを、
「そんなことより食事と話し合いが先!」
と路夏に強引に阻まれ、おかげで僕はいまだに女装したままなのだ。
337丁字屋:2010/06/25(金) 22:54:57 ID:iAJRRKDs

…と、またも僕の方を見た桂と、僕の目が合い、ばつが悪いと思ってか、桂が
「あ、ごめんなさい…」
と謝る。が、そんな桂に
「謝らなくたっていいわよ。桂さんもびっくりしてるんでしょ?」
そう言ったのは路夏だった。

「あ…えっと、その…」
「そりゃそうよね。まさか勇気にこんな趣味があったなんてね。
 でも桂さんより、昨日いきなりカミングアウトされた彼女の私はもっとびっくりよ」
なっ!?
「そ、そうだったんですか?そ、それは…えっと、御愁傷様です」

ええっ?

「あの…足利君。私、趣味に貴賤はないと思いますが、いくらそういうのが好きでも、
せめて学校内でやることは控えた方がいいと思いますけど…」

昨夜路夏も納得してくれたはずの僕の女装趣味疑惑を桂にまで抱かれている成りゆきに、僕は
「別に僕はこんなの好きでもなければ趣味でもない!」
思わず叫び出していた。

そしてそれに対して
「え?趣味じゃないなら何故そんな格好を?」
と問いかけてくる桂に、僕は昨日の、桂や路夏の立場を慮っての試行錯誤を説明すると共に、
その末の最善の結論がこれなのだと説いた。

「つ…つまり、私を向かえにくるのに、男子や喜連川さんだと具合が悪いと…。
 でも、他に頼める女子に心当たりがなくて、だから足利君が女装したということですか?」
そ、そうだよ。桂、わかってくれたか…。

それにここまで話せば桂だってわかるだろ?
確かに恥ずかしいけど、この僕の女装することが、今回の場合の唯一かつ最善の案だってことが…。

しかし、桂が次に発した一言は、僕の予想外のものだった。

「でも、それでしたら、別に足利君が女装しなくても、
 今足利君のつけてるウィッグで喜連川さんが変装すればよかったのでは?」
338丁字屋:2010/06/25(金) 22:55:31 ID:iAJRRKDs
「でも、それでしたら、別に足利君が女装しなくても、
 今足利君のつけてるウィッグで喜連川さんが変装すればよかったのでは?」



え?



桂を見ると、今言ったことを純粋に疑問に思っているように、不思議そうな表情を浮かべている。



え?



路夏を見るとなんとも複雑な笑いを浮かべながら、何かかわいそうなものを見るような目で僕を見つめている。



え?




あれぇ?

339丁字屋:2010/06/25(金) 23:01:06 ID:iAJRRKDs

今回はここまでです。
ちょっと執筆ペースが落ちてますが、
とにかく地道に書き続けていきます。
340名無しさん@ピンキー:2010/06/26(土) 08:01:09 ID:AKzwVAiH
>>339
GJ
>足利君のつけてるウィッグで喜連川さんが変装すれば
言われてみればそうだよな
勇気、アホスw
341名無しさん@ピンキー:2010/06/26(土) 14:48:29 ID:Ej6oy0bA
>>339
題材がシリアスなのに、ネタがあったとはいえ所々自然と笑えるのが凄いですね。鬱にならないので読みやすいです。
僕が似たような題材で書くとしたら殆どシリアスになると思います。
342名無しさん@ピンキー:2010/06/26(土) 15:48:29 ID:AhEeB3fN
うっかり八兵衛だな、勇気(笑)>丁字屋氏
ただ、路夏が行くと何らかの形で乙女に感づかれるリスクがあるし
同性の視線をごまかすのは難しいかと 勇気個人はそれほどマークされてない
のも大きい(来実はどうも勇気と知り合いっぽいが、3馬鹿は良くも悪くも
4組外とのつながりが薄いし)
343名無しさん@ピンキー:2010/06/27(日) 10:41:31 ID:ey1LwVdJ
>>342
禿同。
確かに、女装勇気の方がバレた時に言葉に掛かるリスクは少ないですね。
まぁ、その分勇気が変態と言うリスクを背負う羽目になりますが、
姉を恐れている乙女の事を鑑みれば何とかなるレベルでしょう。
344330:2010/06/28(月) 19:18:01 ID:DTBYWf63
2部を投下。(本来なら1部と2部の間を書けるといいんだが、力量不足)
345鏡U 侵食:2010/06/28(月) 19:18:40 ID:DTBYWf63
ラブホテルの一室で喘ぎ声が響く。
中年の男が、まだ少女の面影を残す若い女を攻めていた。
「私もイキそうだよ……!」

男が低い呻き声とともに放出し、退廃の時間が終わる――


「男の親なんて、哀しいもんだよ。妻にも子供にも煙たがられて、
こっちは家族の為に一生懸命やってるのに……」
「おじさまも大変なんですね。……私の家も似たようなものだけど」
「君みたいな子が娘だったらなあと思うんだけどね」
「それは夢見すぎだよ。こういう関係だからお互いに後腐れないんです」
路夏と乙女の父親は、援助交際どころか、他人が見たら愛人と錯覚しそうな関係になっていた。

「こんな事はしてくれた事ないんじゃない?ほら」
「何度もするのは無理だよ。年だから」
「あはは、冗談」
最初は嫌がっていたのに、お店だけでなく、あろう事かこの私も逃げ場所にしてきた。
子供が子供なら親も親だ。
さすがに遠山達みたいにどうこうはしてこないけど、私にとっては退屈な時間だ。

あいつらに脅されて仕方なくやった。
許してくれるとは思わないけど、せめてお金だけは返したかった。
そういう演出をして、加藤の父親により深く接近する……
こんな子供だましな手で簡単に落ちるなんて、よっぽど加藤の父親は家では肩身狭いのかな。

連絡は向こうに自分の携帯の履歴が残らないよう、公衆電話を使ってる。
もちろん会うときは私服だ。わざわざ制服姿で密会するなんて事はしない。
本名や年齢を明かす必要もない。
これでも最初は連絡してる時や、してる最中に踏み込まれないか、この男に
変態趣味がないかヒヤヒヤしてたけど、そういう意味では律儀で人が良いというか……

恋愛はあんなに上手くいかず、すれ違ってばかりなのに、
加藤への嫌がらせは、自分でも驚くほど上手くいく。
勉強もバスケの腕もイマイチなのに、目的を決めると人間こうも力を発揮できるのか。
346鏡U 侵食:2010/06/28(月) 19:19:12 ID:DTBYWf63
私はお母さんの仕事の事もあってか、男性という存在をどこかで諦めていたけど、
今は目的の為に『女』の部分を使い、利用してる。
結局、私もやってる事はお母さんと大して変わらないのか。

最近はお母さんのお店に行くよりも、むしろ私に会いたがっているようだ。
まさか親子そろって妙な形で加藤の父親と関係するなんて。
(ただし、私の場合は文字通り身体を使ってだが)
そして、この男の愚痴も多くなった。夫婦仲は最悪。
再びお店に行った事が発覚しかけ、子供にも一層距離を置かれているようだ。

遠目で学校での加藤を見ると、以前とは明らかに違う様子を見せている。
沈んだ表情をしたり、些細な事で苛立ったり、
あいつといつも一緒にいるグループも、扱いに困っている感じだ。

自業自得だよ。
あの様子では、そのうち取り巻きからも愛想尽かされるだろう。
だけどこのくらいで許してなんかあげない。

中学時代、あいつに苛められて、ひっそり転校した子もいた。
一番は自分のためだけど、加藤を追い詰める事で、
私以外にも、あいつのせいで苦しんだり嫌な思いをした人達が、
したくても出来なかった事を果たす事にもなるのだ。

そう思えば、私のしてる事にもちゃんと意味がある。
それどころか、人の役に立ってるじゃない。
だから……

オマエはもっと苦しむ義務がある。
347鏡U 侵食:2010/06/28(月) 19:19:45 ID:DTBYWf63
2

暗いところはそれほど好きじゃないけど、
夜の静けさは気持ちを静めてくれる。
自分の部屋だけが、今の私が唯一安らげる場所だ。

ここの所、自分以外の人間全てが私を見下してバカにしてる気になってしまう。
ただの気にしすぎだとわかっていても、抑えられない。
部活でも練習に打ち込もうとするほどイライラが募ってくる。
今日もつい部員に当たってしまい、七海に咎められた。
どうしてこうも、うまくいかないんだ……

「お姉起きてる?」
「なに…?」
二段ベッドの上で寝てるはずの可憐が私を呼んだ。
夜に2人だけでしゃべる事は珍しくないけど、
多分あの事だろうと思いながら、私は可憐に応えた。

「なーんか、ここん所家の空気悪いと思うんだ」
「………」
「お父さん最近帰り遅いし、仕事が忙しいからって言ってるけど、どう思う?」
「……本当に忙しいんでしょ」
「前はいくら遅くなっても必ず連絡入れてきたじゃない。……なんかおかしいと思う」
「………」
「仕事忙しいのはウソで、どこかで愛人作ったりとかしてるんじゃないかって……」
「考えすぎよ。…そんな事思ってたら、本当に帰ってこなくなっちゃうよ」

自分でも白々しい事言ってると思う。可憐もそれをわかってる。
父さんが私達に嘘をついている。それは私達以上に母さんも感じているようだ。
怒るのを通り越し、すごく冷たい空気。
去年よりもキツい感じだ。
348鏡U 侵食:2010/06/28(月) 19:20:14 ID:DTBYWf63
「前もお店に通って、お母さん怒ってたし、殆ど口聞かなくなったよね…」
「…そうだね」
「離婚、しちゃうのかな……?」
「…わかんない。父さん達が決める事だし……」
そう濁したが、私達が見ても感じるくらい、父さんと母さんの仲は
冷えきっていた。

もし可憐の心配する通りになれば、私達はどうなるんだろう。
どう取り繕っても、今後の生活への影響は避けられないだろう。
最悪、私が今通ってる榊野を離れる事にでもなったら……

「お姉とは離れたくないな。一緒にいたい」
「可憐……」
「だって、お姉いびってからかうのが二番目に楽しいもんねぇ」
「はい?私はセカンド?」
「一番はもちろん……」
「ストップ。それ以上は言うな。言ったらぶつよ」

「ほら元気でた。お姉はすぐムキになるからわかりやすいんだ」
「もう、アホな事言ってないで、さっさと寝なって」
「へ〜い」
まったく、この子ってば……
自分よりスタイルも要領もいい妹に引け目を感じて、イラつく事も多いけど、
それでも、やっぱり可憐は私の妹なんだ。
こんな時だからこそ、せめて可憐とはこのままでいたい……
349鏡U 侵食:2010/06/28(月) 19:21:21 ID:DTBYWf63


溜まり場では、路夏と遠山・松平が交わっていた。

「もう1回だけお願いできない?」
「またカツアゲさせる気か?あれは1回きりだったはずだぞ」
「大丈夫。今度はそういうのじゃないから。……あん」
初めは都合の良い存在として路夏を見ていた遠山達にも、徐々に馴れあいの
意識が出始め、場の空気はたるみ出していた。

「しばらくの間、私がいない時でも遠山達と『いた』事にしてほしいの」
「つまり、アリバイ作りって事か。何をする気だよ?」
路夏を下から攻めながら、遠山が質問する。

「色々準備が必要なの。ここにいるだけでお金もらえるんだから、いいじゃない」
「加藤もこんなに思われて、ある意味幸せな奴ってか」
松平が路夏の前に立ち、咥えさせる。
大柄な体格に見合ったソレは、先程出したばっかりだが、ご立派に主張していた。
部屋には丸まったティッシュと、使用済みのコンドームが散乱し、
空気に触れた特有の匂いが漂っていた。

「これで最後だぞ。これ以上は聞かねえからな」
「わかってるわよ」
350349:2010/06/28(月) 19:23:43 ID:DTBYWf63
今日はここまで。私のせいですが、路夏のやり口は嫌らしいですね(苦笑)
でも乙女の手の内を一番知っていて、かつ追い詰められる立ち位置なのが
彼女なんだなあ… 
351349:2010/06/28(月) 19:30:23 ID:DTBYWf63
>>333
どうにか言葉を助けられるといいですね。
そっちの勇気・路夏は誤った道に行く心配は今のところなさそうですが…

黒対黒。 普通の黒(乙女)と、闇そのもの(路夏)でしょうか。
352名無しさん@ピンキー:2010/06/29(火) 07:01:00 ID:1egQXR8G
>>350
さぁ、復讐が形になって来た。
これから更にどう追い込んでいくか楽しみにしています
353SINGO:2010/06/30(水) 01:55:10 ID:yRrLVWKS
どうも。
なんか加藤が需要あるみたいですね。
今回のSS、ようやく加藤の出番です。

舞台はクロイズ闇堕ちEndおよび全て諦めEndがベースの後日談で
>>287-292の続きです。

【破局の妖精】第五部
〜逆襲の乙女〜

354SINGO:2010/06/30(水) 01:56:15 ID:yRrLVWKS
【破局の妖精】第五部
〜逆襲の乙女〜

《榊野学園 女子トイレ》
桂言葉は、立ち尽くしたまま動けなかった。
目の前には、女子バスケ部のユニホームを着たポニーテールの少女。
名は加藤乙女。つり上がった目は、不機嫌さを隠そうともしない。
加藤は三人の少女を従えていた。こちらは制服姿でバスケ部ではないが、加藤のクラスメイトだ。
四対一。これを喧嘩と呼べるだろうか?
加藤達四人を一言で表すなら、弱い立場の人間一人を多勢で攻撃する、典型的な
『イジメっ子グループ』
暴力こそ振るわないものの、精神攻撃が主体の陰湿なイジメを好む人間達だった。
桂は、過去に何度も加藤達の嫌がらせを受け、気の弱い桂は逆らえず、ずっと我慢してきた。
ただ、今回のイジメは、いつもと主旨が違っていた。
そもそも、加藤の今回のターゲットは桂ではない。
トイレの奥に追いやられた、小柄な少女。
名は喜連川路夏。加藤とは中学時代から犬猿の仲で、互いに互いを嫌っていた。
そう。加藤達四人は路夏をイジメていたのだ。
桂は、偶然その場に居合わせただけだった。
だから桂には、見て見ぬフリして立ち去る、という選択肢もあった。
だが、桂は路夏を見捨てられないでいた。見捨てられない理由もある。
とはいえ、桂には加藤に盾突く度胸も力も無い。
桂に出来る事は、加藤達に気付かれない様に、携帯電話メールで助けを呼ぶ事だけだった。

 助けて
 喜連川さんが加藤さんに虐められてます
 △棟一階女子トイレ


「アンタ、援助交際してるんだって?やっぱり、親が売女なら娘も売女よね」
加藤は嫌味たっぷりに路夏を口撃した。
なんて酷い、と桂は思った。親が夜の仕事をしてるからといって、彼女まで同等と見なすなんて。
だが、実際には加藤のコトバは的を射ていた。
桂は知らない。路夏が、ある男に調教されてデリバリヘルス…いわゆる売春婦にされた事など。
まして、その『ある男』が桂の想い人…伊藤誠であるなど、桂には想像もつかない。
「ふんだ。なら、加藤の親父もエンコーしてたし、その理屈じゃ加藤も売女よ」
路夏は加藤に反撃した。路夏は気弱な桂とは違い、泣き寝入りなどしない。
加藤の目が鋭さを増した。
「アンタが売女ってトコは否定しないのね。それ、開き直り?」
加藤は身長差にものをいわせて路夏を見下す。
「教えて欲しい物ね。そのチビな体で、どうやって男どもを満足させてるのか」

桂は、とんでもなく嫌な予感がした。よくわからないけど、早く止めないと大変な事になる、と。
だが、桂に出来る事は祈る事だけ。
…早く助けに来て!足利君!

355SINGO:2010/06/30(水) 01:57:16 ID:yRrLVWKS
やがて、
「そんなの…そんなの伊藤に聞けばいい!私の客なんだから!!」
とうとう路夏はキレた。
「な…!?」
路夏のヤケクソ気味の反撃に、そして伊藤の名が出た事に、加藤はコトバを失った。
「伊藤、私の身体、すごくいいって言ってくれた!私の胸、最高だって!!」
「…あ、アンタ…まさか…伊藤と…?」
「伊藤の●●●は私が美味しく頂いたわよ!学祭の時にね!ざまあみろ!!」
その路夏のコトバは加藤の心を深く傷付けた。
「…そんな…伊藤…何でこんな奴なんかと…」
加藤は中学時代から伊藤誠に想いを寄せ、だが臆病ゆえに告白できずにいた。
加藤に出来たのは、ただ伊藤と同じ榊野学園に入学し、少しでも一緒にいる事だけ。
だが、これは少女漫画でも恋愛小説でもない。ゆえにチキンな加藤はヒロインになれなかった。
選ばれたのは、西園寺世界。そして喜連川路夏。
「う、うああああああああああァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!」
加藤は絶叫した。
相手が西園寺なら、まだ諦めがついた。伊藤が自分で選んだ相手だし、加藤にも落ち度があったから。
だが、売女が体を使って伊藤を篭絡したとなれば、しかも目的が加藤に対する当て付けとなれば、
それは加藤に対する最大級の侮辱行為だった。
路夏は残酷な笑みを加藤に向けた。心の底から加藤を嘲笑っていた。
路夏は勝ち誇っていた。加藤に一泡ふかせてやった、と。
その路夏の表情が苦悶に歪む。
加藤が路夏の腹に蹴りを入れていた。容赦無しに。
「がふ!?」
路夏は息が詰まり脱力。床に崩れ落ち、腹を庇うように体を丸めた。
加藤は怒り狂っていた。路夏が子供を産めない体になったらとか、そんな配慮もできない程に。
加藤は止まらない。用具倉庫からモップを引き出し、その柄先で路夏の胸を鋭く突く。
「いぎゃっ…!」
腹、胸と、加藤は路夏の、女性にとって大切な部分を攻撃した。そして加藤が次に標的にしたのは…
「え?嘘!?やめて!!」
加藤は路夏の股をこじ開け、その秘裂にモップの柄先を押し当てた。
あまりの加藤の発狂ぶりに、加藤の取り巻き三人は恐怖で凍り付いた。
「ちょ、乙女。やめなよ」「いくら何でも、それ、やり過ぎ…」
「うるさい!うるさい!!うるさい!!!」
加藤の剣幕に、三人は加藤を制止できない。下手に路夏を庇えば、怒りの矛先が自分達に向くからだ。
加藤にしても、こんな事をしたかった訳ではない。だが、売りコトバに買いコトバを重ねるうち、
怒りが狂気に変わってしまった。
ここにきて路夏は、ようやく自分が最悪の選択ミスを犯した事に気付いた。
気付いたところで、もう止められない。路夏を痛め付けなければ、加藤は自己を保てなかった。
誰も止める者がいない、危険な状況。
そこへ、
何者かの手がモップを掴み、加藤を制止した。
「何よアンタ?邪魔する気?」

356SINGO:2010/06/30(水) 01:59:16 ID:yRrLVWKS
《勇気 Turn》
僕は中に踏み込めないでいた。
本当は助けるつもりだった。たとえ路夏が伊藤に助けを求めたとしても、僕が助ける気でいた。
ところが、
『伊藤、私の身体、すごくいいって言ってくれた!』
路夏が伊藤とのセックスを誇らしげに主張した事で、僕の心は急激に冷めてしまった。
かつて僕は、何度も路夏に失望してきた。
学祭で僕の全てを疑い、当て付けで伊藤のセフレに成り下がった路夏。
伊藤に調教され、今ではデリバリヘルスにまで落ちぶれた路夏。
そして今。
…路夏。何でそんな事を言うんだよ?よりによって桂の前で…。
路夏に自覚は無いだろうが、今の路夏のコトバで桂は深く傷付いた。
加藤相手ならまだしも、何も悪くない無関係な桂まで傷付けるなど、そんな権利、路夏にあるのか?
…くそっ。今度こそ本当に愛想が尽きた。
そもそも学祭で、路夏が伊藤を選んだ時点で、僕と路夏の関係は切れている。
もう路夏がどうなろうと構うもんか。僕の知った事じゃない。
すると、
「何よアンタ?邪魔する気?そこ、どきなさいよ」
…何だ?
中で変化が起きていた。
桂が加藤の前に立ち塞がり、路夏を庇っていた。
「いいえ、どきません」
桂は、加藤(と取り巻き三人)相手に一歩も引かない。
「へえ、桂。アンタ、喜連川の仲間だったの?」
「違います」
そう、ありえない。桂にとっては他人事だ。
それどころか、路夏に伊藤を寝取られたという解釈なら、桂は加藤と同じ立場のはずだ。なのに、
「なら、何でソイツを庇うわけ?」
加藤は苛立った。桂の自己満足ともとれる行動に。
一方、僕は嫉妬していた。羨望していた。桂の掛け値なしの正義感に。

「この人は…喜連川さんは、足利君の大切な人だからです!」
…!!
心臓を撃たれたようなショックを受けた。
何の事はない。桂は、正義感でもなく自己満足でもなく、ただ僕の為に勇気を振り絞っていたのだ。
路夏が傷付けば僕が悲しむと、そう桂は思って。
くそっ!桂、それ反則だ!
ここで見捨てるようじゃ、男として…人間として駄目だろ。
357SINGO:2010/06/30(水) 02:00:15 ID:yRrLVWKS
僕は意を決して中に踏み込んだ。
問答無用で加藤の膝裏にローキックを入れる。
バシっ。
「キャ…!」「乙女!?」
加藤はバランスを崩し、ぶざまに床に倒れる。
「なァ…!?何よアンタ!?」
「ああ?その子の知り合いだけど。足利知恵の弟って言った方が解りやすいか?」
「…え?足利?」
「そ。バスケ部の足利知恵。お前もバスケ部なら知ってるだろ」
あの鬼女を敵に回すと、ろくな目に合わない事もな。
「ちなみに、そこの二人は姉ちゃんのお気に入りだから。二人に手出しする奴がいたら…」
僕は携帯電話のカメラで加藤のザマを撮影した。。
「そいつを犯してビデオに撮って上映会でも開け、って姉ちゃんに命令されてんだ」
(大嘘だけどな。ここは姉ちゃんの名を使わせてもらおう。脅しとしては効果的だし)
「まあ僕的には、そんな回りくどい方法より、前歯でも折った方が手っ取り早いんだけどな」
加藤の顔面めがけてキック…と見せかけて、その鼻先寸前で止める。
「ひッ…!」
僕は加藤を睨み付け、次いで加藤の取り巻き三人を睨んだ。
「ちょ、何コイツ?」「目がヤバイよ〜」「マジ勘弁」
取り巻き三人は我先にとダッシュで逃げ出した。加藤を見捨てて。
「ちょ、待ってよー!」
加藤も三人を追う形で逃げ出した。

あとには路夏と桂が残った。
さてと。いつまでも男の僕が女子トイレにいる訳にはいかない。早々にこの場を去ろう
…としたら、桂に襟首を掴まれ、引き止められた。
「駄目ですよ、足利君。喜連川さんを放って行く気ですか?」
見れば、路夏は腰が抜けてるのか、身動きできないでいた。
「桂が介抱しろよ。首突っ込んだの桂なんだし」
今の路夏を介抱するなら、男の僕よりも、同性の桂の方が適任だ。
「あら。助けたのは足利君でしょう。最後まで付き添わないといけませんよ」
言うなり桂は路夏(と僕)を置きざりにして出て行く。
桂の後ろ姿に薄情さは感じられない。僕が路夏を見捨てるはずが無いと、桂は信じきっている。
「待ってくれ、桂……って無視かよ」
察してくれよ。路夏のアノ発言で、僕と路夏との亀裂はさらに深まった。
正直、今の僕は路夏とマトモに顔を会わせられない。路夏だって同じだろう。
やるべき事はやった。もう僕には、これ以上この狂った関係に介入する理由は無いはずだ。
だけど、
「うう…グス……ゆうきぃ……」
路夏は痛々しい姿で泣いていた。
「わかったよ、わかりましたよ!」
僕はブレザーを脱ぐと、それを路夏に着せた。
結局、僕は路夏を見捨てられなかった。

358SINGO:2010/06/30(水) 02:02:24 ID:yRrLVWKS
《足利宅 自室》
僕は路夏を自宅に招いた。榊野学園の保健室は閉まっていたし、他に良い場所が無かったからだ。
路夏をベッドに座らせ、まず思い付く限りの優しいコトバを並べる事にした。
「えと、路夏。今から路夏の体に触るけど、決してイヤラシイ気持ちでやる訳じゃないから。
や、別に路夏に魅力が無いとか、そうゆう意味じゃなくて。うん、路夏は充分に魅力的だよ。
ただ、これは路夏のケアに必要な事で。だから路夏も我慢して欲し…」
「早くヤりなさいよ!!」路夏に急かされた。
「ご、ごめん。じゃあ、服脱いで」
路夏はリボンを解き、シャツのボタンを外していく。制服を全部脱ぐと、路夏は下着姿になった。
ブラをずり上げる。白い胸にポツリと朱い斑点が。
加藤にやられた痕だ。アザ…いや、すり剥けてるな。これは、ちょっと酷い。
「ちょっと待ってて」
「?」
僕は棚から救急箱を取り出した。
オキシドーノレを脱脂綿に染み込ませ、それを路夏の患部に当てた。
「んっ…」路夏は小さいうめき声を漏らした。
さてと。
僕は次に路夏のショーツに手をかけた。脱がそうとして……
「うーむ。なんか成り行きでココまでやったけど、流石にココから先は……」
「今さら、なに怖じ気づいてんのよ!?」
「え、いいの?じゃあ…」
路夏のショーツをずり下げる。路夏の秘裂があらわになった。
ココに加藤はモップを突き入れたんだよな。でも、コレばかりは見ても傷の度合いはわからない。
デリケートな部分だし、ここはやっぱり…。
僕は舌で路夏の秘裂を舐めた。
「あ、ああっ…勇気、ゆうきぃ…」
路夏は色っぽいうめき声をあげる。けど、かまわず僕は舐め続けた。何度も何度も。
…こんなものかな。
「これで良し、と。もういいよ、服着ても」
「へ?……ええ!?もしかして、これで終わり!?」
「うん?月並みな台詞だけど、お大事に」
「うう…。勇気の馬鹿」
応急手当ては終わったのに、なぜか路夏は不満顔だった。
…?女の子の気持ちは、よくわからないな。

「ねえ勇気。桂さんの事、どう思ってるの?」
「桂?んん。鈍くさい奴かと思ってたけど。ここ一番でキメるようになったかな」
「そうじゃなくて!異性として、どう思ってるの?」
そっちか。そういえば、桂に振り回されっぱなしで、考えた事が無かったな。
どうなんだろ?桂を嫌いで欝陶しいと思ってるなら、これほど桂に関わろうとはしないよな。
考えて、考えて、たどり着いた答えが、
…ああ、そうか。ようやく自覚。
なんてこった。僕は頭をかかえた。

僕は、桂の事が好きだった。

END
359SINGO:2010/06/30(水) 02:03:41 ID:yRrLVWKS
終わりです。
今回もまた原作では有り得ない破局フラグを立ててみました。
360名無しさん@ピンキー:2010/06/30(水) 08:28:49 ID:JzvchBnn
>>359
GJ
まあ、勇気が言葉を好きだったオチはありな気はするw
361350:2010/06/30(水) 17:25:43 ID:WGufyupG
短いですが投下。
362鏡U 侵食:2010/06/30(水) 17:26:35 ID:WGufyupG
3

「うぅ…… だる〜」
「まったく、可憐まで風邪で寝込むなんて珍しいわね」
「しょうがないでしょ。引いちゃったもんは」
明日はシーツの洗濯かな。はぁ。
今年の風邪はかなり強力で、可憐の学校でも欠席する子が
続出してるらしい。可憐もそのとばっちりを受けたわけだ。

母さんも最近は体調を崩し仕事を休みがちで、やっぱり父さんの事と無関係でないんだろう。
朝食もあまり食べず、寝室に引っ込んでしまった。父さんも朝早く家を出て、
私達とは会いたくないようだ。

「ここに薬と、水、スポーツドリンク、タオルとか置いとくから。
1階に降りるより楽でしょ」
「ありがとお姉」
いつもなら、『私はお姉みたいにバカじゃないもん』とか言って、
私を怒らせてからかうんだろうけど、今回はそんな減らず口を叩く余裕もないようだ。
いつもこれくらい素直だとこっちも楽なんだけど、まあ騒がしくない可憐は
可憐らしくないしね。

「冷蔵庫にもお茶やゼリーとか入ってるから、食欲なくても水分は取っときなよ。
部活も抜けれたら早めに帰るから」
「あ〜い。先輩にもこれくらい甲斐甲斐しくアタックしてみたら?」
前言撤回。風邪が治ったら殺す。

「じゃあ、行ってくるね。大人しく寝てるのよ」
「わぁったって。愛してるよオネエ」
「ったく、調子いいんだから」
そう言い、私は階段を降り、自宅を出て駅へ向かった。
363鏡U 侵食:2010/06/30(水) 17:27:27 ID:WGufyupG
「あ、ヤバ… 庭の窓閉めたっけ」
駅まで来て戸締りの不備について思い出した。
親の代わりに普段やり慣れてない事すると、どうしても色々抜けやすくなる。
念のため、確認に戻った方がいいかな?
でも往復込みで学校に行くには微妙な時間だ。どうしよっか……

まあ、風邪とはいえ可憐も何も出来ない赤ちゃんじゃないし、母さんもいるし。
わざわざ連絡しなくても大丈夫でしょ。
そう思い、いつものように改札口を通った。

これが、私と母さん、そして可憐との永遠の別れになるとは、その時の私には
想像もつかなかった……
364鏡U 侵食:2010/06/30(水) 17:28:33 ID:WGufyupG

この時間帯なら周りの家も人はいない。
昼前に早退して来た甲斐があった。
車もないし、直接触れずにインターフォンを鳴らしても反応がなかった。
誰もいないのは間違いない。
さて、どこに撒こうか…… 

周りを見渡したが、すぐに燃えそうなのは草や木の葉っぱくらいで、それでは
あまり意味がない。廃品回収に出す新聞紙でも積まれていればよかったが……
家のものを燃やして心理的にプレッシャーを与えるのは、やっぱり無理があったかな……
庭にまわってみるか。ムダだと思うけど、念のためだ。 
これでダメそうなら帰ろう。

「ん…?」
ベランダの窓に鍵が掛かっていない。
閉め忘れか。周りにうるさいくせに足元がお留守なのは、家でも同じのようだ。
でも今回だけは、加藤に感謝しないとね。

あとはカチっと。そしてポイっ。
バスケのボールを軽くパスするつもりで、火のついたボロ布を放り投げた。
ナイスシュートだ。

(よし、誰もいない。私ってばツイてるじゃない)
通行人や車が通らないのを確認し、一目散に加藤の家から離れた。
あいつの驚く顔が見れないのが残念だけど、さすがにこれは堪えるだろう。

公衆トイレの中で別の私服に着替える。
トイレで着替えた痕跡も、清掃の人がきれいにしてくれる。
後は何食わぬ顔で、堂々と電車に乗るだけだ。
ヒルズ辺りで時間潰して、暗くなったら帰ればいい。

今日使った私物も処分する方法は決めてある。
元々自宅にあったものしか使ってない。店のカメラに道具を買う姿なんか残さない。
足跡は残るだろうが、靴も随分前の物だから特定されても
そう簡単に私には行き着かないだろう。

またまた成功だ。きっと運も味方してくれているんだ。
今の私は何をやってもうまくいく。
これまでが悪すぎたんだ。
思わず笑いそうになるのをこらえながら、電車に乗った。
365364:2010/06/30(水) 17:31:37 ID:WGufyupG
今日はここまで。次で2部終了です。
なんて残酷な事するんだ(苦笑) 
366名無しさん@ピンキー:2010/06/30(水) 17:41:10 ID:JzvchBnn
うわ、さすがに怖すぎて、これ以上は読めない;
367名無しさん@ピンキー:2010/06/30(水) 18:08:04 ID:h7c0lGA4
加藤家壊滅で第2部終了……だと……!?
368名無しさん@ピンキー:2010/06/30(水) 18:11:50 ID:/XK+3dRh
なんという百倍返しw
369名無しさん@ピンキー:2010/07/01(木) 21:56:51 ID:9Mm6ZNsl
ちょっと見ない間に面白い作品がたくさん来てる!!

どれもワクテカする内容でこれからも期待しています。
370365:2010/07/02(金) 20:56:13 ID:oNJXPQgV
投下します。
371鏡U 侵食:2010/07/02(金) 20:56:58 ID:oNJXPQgV
4

…日午後X時頃、模手原市東原巳…会社員加藤……さんの自宅から出火し、
約…mが全焼した。この火事で妻の…さんと、次女の可憐さん(15)が遺体で発見され…
さん達は体調を崩して自宅で休んでおり…………出火原因を調べている。

「なによこれ……」
携帯で模手原市の地域情報を見た路夏は、呆然としていた。

ちぇ…… 人がいたのか。てっきり誰もいないと思ってたのに、
ミスしたなあ……
あんな日に休まないでよ。別に殺すつもりなんかなかったのに。

パニクりそうになる私に、冷静な『私』が囁いた。
だいじょうぶ。あの時間帯は人通りもほとんどなかったし、なるべく目立たない格好をしてた。
普段と変わらない生活してれば、意外と注目されないって。
とりあえずはいつも通り登校しよう、ね?

いつも通りおはようと声を掛けられ、私もいつも通り応える。
火事の話題が出るかと少し身構えていたが、自分のクラスと無関係な事には
興味の薄いクラスメート達の集まりで、ホッとした。
HRでも火事の件が取り上げられる事はなく、授業もいつも通り終わった。

まずは家に帰って今後の事を考えよう。
あの時使った物は、引き続き部屋のクローゼットの奥に隠しておく。今捨てるのは駄目。
ここが我慢のしどころだよ、私。
焦ったら負けだ。

校門を出ようとした所で携帯が鳴った。
また遠山達か。さすがに今日は遠慮させてほしい。
そういえば、あいつらにアリバイ頼んでいたんだった。
報酬の催促かな?手持ちのお金だけ渡して今日は早く帰らせてもらおう。
372鏡U 侵食:2010/07/02(金) 20:58:00 ID:oNJXPQgV
「何の用なの?今日はあの日だからナシにして」
「お前、加藤の家に行って何してたんだ」
「はい?ちょっと何言ってるのよ」
場にたるんだ雰囲気はなく、まるであの時のようなきな臭さを感じた。
松平が無言で新聞を突き出してくる。
地方欄で扱いは小さいけど、内容は今日私が携帯で見たのと同じだ。
まさか…

「遠山達でも新聞読むんだ。遊ぶ事とエッチする事しか興味なさそうなのに」
「とぼけんなよ。昨日の火事、お前の仕業なんだろ?おい」
こいつら、火事をネタに脅すつもりなの!?
まずい、とにかく誤魔化さないと、でもどうやって……

「……知らないわよそんなの」
「人が2人も死んでんだぞ?!」
遠山が声を荒らげた。松平もなんか嫌なものを見るような顔つきだ。
彼らの様子に、観念しかけた私は別の違和感を感じた。
こいつら、どうして私をすぐ追い込んでこないの?

「言いたい事はそれだけ?」
「それだけって、お前自分が何やったかわかってんのか?あのオッサンのカツアゲとは
全然次元違うんだぞ?!」
そうか、こいつら私にビビッてるのか。
強面で図体もでかいくせして、私をレイプしたくせして気の小さい奴らだ。
それなら何も怖れる事なんかない。
自分の方が有利だとわかれば、こっちのものだ。
373鏡U 侵食:2010/07/02(金) 20:58:50 ID:oNJXPQgV
「あんた達が何言ってるのか、さっぱりわかんない。でも、家が焼けちゃうなんて、
あいつも気の毒ね」
少なくとも引越しは決定かな。できればこのまま転校か退学でもしてほしいけど。
戸締りをきちんとしなかったあんたが悪いのよ。
人を見下して貶めるだけで、自分で何もできないウジムシが。

「俺達もう、お前と関わるのはゴメンだ」
「最初はお前の気持ちもわかると思ってたけど、これ以上付き合いきれねえよ」
まだぎゃあぎゃあ喚いてるのか。うるさいな。

「……そう。わかったわよ。もう遠山達には何も頼まない。
その代わり、私に今後一切関わらないで」
「頼まれなくたってするかよそんな事」
「私との履歴とアドレスも全て消して。私も消すから。お互いに都合いいでしょ」
遠山が私を殴ろうとしたが、松平が押し留めた。
少しでも痕跡を消したいのは向こうも同じだ。
しばらく携帯のプッシュ音だけが響く。

「今日は手持ちのお金少ないから、今度渡すね」
「もういらねえよそんなモン!」
「あっそ。でも、別に遠山達を売ったりなんかしないよ。私、優しいから」
所詮、身体とお金だけではこの程度か。
まあいい。逆上されてあの時みたいに犯されるよりはましだ。
ここから先は私一人でも出来る。
もうこいつらに用はない。
374鏡U 侵食:2010/07/02(金) 21:00:01 ID:oNJXPQgV
「あいつ、加藤なんかよりよっぽど性悪だな。ホント人は見かけによらないぜ」
「ああ。女の恨みは怖えな」
「澤永もとんだ噂俺達によこしてくれたもんだ。ボコらないと腹の虫が収まらねえ」
「やめとけ。それこそ喜連川や加藤が得するだけだぞ」
路夏と別れ、忌々しげに遠山達はつぶやく。

「だけど、このままだといつ俺達もチクられるかわかんないぞ?
喜連川は俺達を売らないって言ってたけど、信用できねえよなぁ」
「いっそ、こっそり通報するか?放火の犯人だって」
「バカ、警察甘く見んなよ。んな事したら俺達だって捕まるぞ。間違いなく退学だ」
「それだけじゃ済まない、よな。あいつがやったに違いねえけど、俺達が目撃した
わけじゃないし…… クソッ!」
この時きちんと通報していれば、路夏のこれ以上の暴走を止められたのだろう。
しかし、暴かれると不利なものを多く抱えていた彼らは、自分の保身を優先してしまった。
結局、彼らも目先の優位におごり、復讐に囚われた人間の怖さを甘く見ていた。
今までの行い全てが足枷に変わってしまった。

「あんな噂信じるんじゃなかったぜ。せいぜい大人しくしてるか」
「あの溜まり場とも、今日限りサヨナラだな」


(第2部 侵食 完)
375374:2010/07/02(金) 21:00:45 ID:oNJXPQgV
2部終了。ま、思う通りには中々いかないもの。みんな悲惨(苦笑)
3部で誠も登場。彼の本性に反し(笑)エロ的活躍はしませんが…
376丁字屋:2010/07/03(土) 19:37:07 ID:8FUHNub5

暗黒路夏こえー

「贄と成就」アフター
前回の勇気女装に関しては、いろいろ意見を出していただいたようですが、まあぶっちゃけ
作者が勇気に女装をさせたかっただけであまり深く考えてませんw

では>>338からの続きいきます。
377丁字屋:2010/07/03(土) 19:37:43 ID:8FUHNub5

…………orz

↑これが今の僕の気持ちである。
確かに桂の言う通り、僕が女装する必要など全くなかったのだ。
それなのに、僕はこれこれ以上はない最善のアイデアだなんて舞い上がって…、
うう…僕ってバカ?

こちらを見ている路夏の冷ややかな視線も、まるで
〃今頃気づいたの?バカ勇気〃
とでも言っているかのようだ。
と、その路夏の口が開いた。

「今頃気づいたの?バカ勇気」
……そのままだった。
378丁字屋:2010/07/03(土) 19:38:13 ID:8FUHNub5

「路…路夏は気づいてたのか?」
「当たり前でしょ」
「だ…だったらなんで言ってくれなかったんだよ?」
「だって勇気ったら、あんまりすごいアイデアだなんて舞い上がっていて、
即座に否定するのもかわいそうだったし…」
うう…彼女にバカとか言われた挙げ句に実は憐れまれてましたよ、僕…。
「それにすごくやる気満々みたいだったからやっぱりこういうのが趣味なのかなぁって…」
「し、趣味なんかじゃないって言ってるだろ!」
「そうは言ってもねぇ…」
「うう…路夏は昨日、何があっても僕を信じるって言ってくれたのに…」
「あーそーだったワネー。私はナニがあっても勇気を信じてマスよー」
うわぁ、言い方に全く気持ちが入ってないって言うか、棒読みだよ。

と、その時、
「ぷっ…クスクス」
見ると桂が口元に手をあて、肩を震わせて笑っていた。
僕らの視線に気づいた桂は、
「あっ、ごめんなさい」と謝りながら、まだ顔は笑っていた。
「だって、二人共なんだが夫婦漫才みたいで…」

夫婦漫才?どうやら僕と路夏の今のやりとりが桂にはそう見えたらしい。
て言うか、桂みたいなお嬢様の口から「夫婦漫才」なんて単語が出てきたことが驚きだ。
そして路夏を見るとなんだか赤くなっている。

「路夏、どうしたんだ?顔が赤いぞ」
そう問うと
「だ、だって桂さんたら私たちのこと夫婦だなんて…」
路夏はそう照れくさそうに言った。
うわぁ、そんなことに反応してたのか。
散々僕のことをいじっていたけどここ一番ではやっぱり可愛いなぁ♪
379丁字屋:2010/07/03(土) 19:38:41 ID:8FUHNub5

「でも、やっと笑ってくれたね。桂さん」
「え?」
「路夏…?」
「桂さん、私たちのことは味方ってわかってくれたみたいだけど、
 それでもここに来てからずっとどこか固い様子だったから…。
 でもやっと笑ってくれたね」
路夏は微笑みながらそう続けた。

「じゃ、じゃあさっきから路夏が僕を挑発していたのは、桂の気持ちを和ませるため?」
「わ、私のために…?あ…あの、ありがとうございます」
僕の問いと、桂の戸惑いながらの、しかし嬉しげに口にした礼に対し、路夏はただ
「さあね?」
とイタズラっぽく笑いながらとぼけるように答えたが、その真意は明らかだった。

路夏、GJ!
路夏の挑発に上手く乗せられたのは悔しかったけど、それよりも路夏の気遣いと手際に心の中で感嘆し、
同時に恋人として誇らしく感じた。
「でも…」
え?
「勇気がバカだってことはさすがにフォローできないけどね」
あうう…路夏、ひどいよ。

しかし、この無駄な女装の件を考えると反論のしようがなかった。落ち込む僕に
「あの、足利君、落ち込まないで元気出してください」
そう桂が気遣ってきたが、
あうう…桂を元気づけるためのこの場なのに、逆に気遣われている僕って一体…。
380丁字屋:2010/07/03(土) 19:39:48 ID:8FUHNub5

更に桂は僕に気を遣ってか
「あの…えっと、そう、足利君のその姿、すごくかわいいですから!」
うう、桂、それは全くフォローになってないよ。
更に落ち込みそうな僕だったが、その時
「かわいい?勇気が?」
そう路夏が桂に疑問をぶつけた。
「はい。足利君の今の姿、すごくかわいいじゃないですか」
桂のその言葉に
「ふうむ…」
と首を傾げながら、僕の顔をじっと見て
「うわぁ、本当だ!昨日から女装自体にショックを受けちゃって、
 ちゃんと勇気の姿見てなかったけど、よく見ると本当にかわいい!!」
そう叫んだ。

更に同意を得た桂と、「ね、本当にかわいいですよね!」
「うんうん!」
と女二人で盛り上がる。

そして僕は…
「いい加減にしてくれ!」
と叫び、驚く桂たちに
「あのなあ、女の子にかわいいとか言われたって僕は全然嬉しくない!
 大体僕はかわいいとか言われるのが嫌で、ずっと格闘技とか習ってきたのに…!」
とはっきり言った。

すると桂は
「そうなんですか…。ごめんなさい、足利君」
と素直に謝ったが、路夏はそんな桂に、嬉々として新たな話題を振った。
「ねえねえ桂さん、聞いての通り、勇気って格闘技やっているんだけどさ…」
「は、はい?」
「こんなふうに見た目可愛い女の子で、実は格闘技の達人って、なんか小説とかにありそうじゃない?」
「あ、そう言えば中学の時に読んだジュニア向けの文庫にそんなのがあったような…」
「あ、やっぱり?ねぇ、それってどんな内容なの?」
な、なんか僕ラノベの主人公にされてますよ?
381丁字屋:2010/07/03(土) 19:40:17 ID:8FUHNub5

そして桂が読んだという本の内容の説明が始まる。
「えっとですね……暗黒教団の秘術で蘇った恐怖の魔王を、
 普通の女子高生として育てられた…実は光の天使と伝説の勇者のハーフである美少女格闘家の足利君……
 あ、いえ、主人公が、静かなる怒りによって覚醒した魔法と聖剣で命と引き換えに封印、
 しかし愛の奇跡で復活するとか…たしかそんな内容だったような…」
うわぁ、しかもなんかすごくイタい設定だよ。
ていうか格闘家なのに魔法と剣で闘うのかよ!?

などと僕が心の中で呆れたりツッコミを入れている間も、
路夏と桂はこちらをちらちら見ながらそのイタいラノベの話題で盛り上がっていて……

はあ…

もう、どうでもいい…。

382丁字屋:2010/07/03(土) 19:40:46 ID:8FUHNub5

今回は以上です。
ぜんぜん話が進みませんが、次回から少しシリアスになる予定です。
383愛欲:2010/07/05(月) 01:05:44 ID:1Cx4a/mn
え〜前回永遠にルートで言葉が死なない状況考えてると言った者ですが、思いのほか苦戦して全然進まないので、他の書きました。すいません。
ちなみに内容は誠が例の電車で「なんでもするから許して」→言葉が誠を調教→アブノーマルな誠を見て世界ドン引きというてんかいだったりします。

今回は肉欲エンドの後日談です。舞台は誠の家で事後からスタートです。
※この肉欲ルートは背徳のキス経由で妻ですエンドには繫がりません。

『愛欲』
欲望だけじゃない……だけど、俺は……俺たちは……こうやって、体を重ねて……気持ちを積み上げていくんだろうと思う
それが、恋愛なんだろう……そんなことを考えながら……何度も、何度も、何度も、何度も言葉を抱いた。

抱いている間だけは満たされているが、事後は決まって虚しくなる。そしていつも疑問が浮かぶ。

……俺は本当に世界が好きだったのか?
世界を説得したという言葉の様子は明らかにおかしかった。多分あの写真をネタにあることないこと吹き込んだんだろう。
あの時、世界の家に誤解を解きに行けばそれで済んだ筈だ。
なのに俺は世界に確認すらしないで言葉を抱いた。それは何故か?性欲を満たしたいだけなら世界を抱けばいいのに。

もしかしたら俺は、性欲と愛情を履き違えていただけなのかもしれない。
俺は初め、世界を恋愛の対象として考えてなかった。
それが世界にキスされてからなんとなく意識して、言葉のこと相談しているうちに一緒に居て居心地が良いと思った。
言葉がさせてくれなくて悶々としていた俺に、練習台になってやるって世界が言って……
練習してるつもりが、世界の匂いを嗅いでるうちに歯止めがきかなくなってなし崩しにえっちしてしまった。
その後も世界の好意に甘えて、性欲の捌け口にしてしまった。

自分を正当化する為に……性欲を満たす為だけじゃなく、好きだから世界を抱いてる。そう思いたかった。
そんな中途半端な愛だったから、積極的になった言葉に流されたのかもしれない。

言葉の処女を奪って、満足したら急激に我に返った。俺は言葉とえっちしたいが為に世界を裏切ったんだと。
良心の呵責に苛まれてメールで世界に謝った。気まずいからっててこんな謝り方しかできない自分が情けなくなった。

その後は当然だが世界に嫌われた。隣の席だから避けることもできない。
学校を休むにしても言い訳が面倒だし、世界に避けてると思われるのも嫌だった。

言葉は世界について話題にしないし、俺もはなしたくなかった。
自己嫌悪に陥る度に言葉に慰めてもらって、ズルズルズルズルこんな関係が続いている。俺って本当に意思弱いな……

ああ、流されてる。言葉のことも世界のことも傷つけたいわけじゃないのに……
どうしてこうなってしまったんだろう?どうするべきだったんだろう?これからどうするべきなんだろう?

俺は、俺は……言葉に言わなきゃいけないことがあるんじゃないか?
384愛欲:2010/07/05(月) 01:10:28 ID:1Cx4a/mn
「よくない感情じゃなかったのよ」

「えっ?」

「あんなに嫌がってたじゃないか!それなのに今はこんなことしてる」

「それは……」

「説得とか……約束とか……そんなんで付き合って言葉は幸せなのかよ!」

最低だ俺。言葉に八つ当たりしてる

「どうして……そんなこと言うんですか?」

「ごめん、言葉を責めたいわけじゃないんだ。ちょっと自分に嫌気が差して……言葉だって不満だろ?
俺なんかとこんな関係が続くのは」
ちょっとといってしまうあたりまだまだ自分に甘いんだなと痛感する。
俺は何を言ってるんだろう?謝りながら喧嘩腰になってしまう自分にますます嫌気が差した。

「不満なんてないですよ。誠君と一緒に居られればそれで……私に気に食わない所があるならー」
「だからそうじゃなくて!」
「えっと……ごめんなさい」
いつだってそうだ。言葉は俺を責めないし、嫌いにならない。求めれば何でもしてくれる。
それがたまらなく怖くなることがある。あまりにも真剣過ぎて、もしも俺が死ねと言えば本当に死んでしまいそうで。

「怒鳴ったりしてごめん。言葉に不満があるとかそういう問題じゃないんだ。むしろ悪いのは俺で、なんていうか……
今の俺は言葉に好きでいてもらえる俺じゃないんじゃないかって思うんだ」
「そんなことないです!ずっと好きです」
「言葉の好意に甘えて、世界の気持ちを裏切って……そのくせ自分が傷つくのは怖くて、楽な方に逃げてばっかりで
今だって言葉があんなに嫌がってたことを毎日してる。俺、言葉のこと待ってあげなきゃいけなかったのに……」

「私、幸せですよ。嘘じゃないです。誠君が私を求めてくれて、私がそれを恋人として満足させてあげられるんです
誠君が私だけを見てくれるって信じてから……他に何もいりません。」

「でも俺は、そんな信じてくれてる言葉の向き合えてなくて……流されてこんなことになっちゃったけど……
だからもう、流されるのは今日までにしようって決めたんだ」

「どういう意味ですか?」
不安なんだろう。言葉の声は掠れていた。 

385愛欲:2010/07/05(月) 01:12:04 ID:1Cx4a/mn
「誰からも嫌われたくなかったんだ。取り繕って、面倒事から逃げてばかりで……本当に何やってるんだろうな。
言葉とギクシャクしてた時俺を受け入れてくれた世界を大切にしてあげたくて、でも言葉に嫌われるのも嫌で……
今にして思えば、俺は甘えてたんだ。何かある度に世界を逃げ道にして、俺を責めないで、嫌わないでいてくれる
言葉に対してはその分ないがしろにしてた。そんな自分を認めるが嫌で、目を背けて、後回しにして、逃げて……
そしたら何もかも面倒になって、わけわかんなくなっちゃって……」

どうしよう。なんか涙出てきた。俺凄いカッコ悪い……

「誠君?」
言葉は俺の心理状態を悟ったのか、辛そうに少し口を歪めた。泣きたいのは言葉の方だろうに、心配してくれている。

「考えて、思ったんだ。俺の意思はどこにあるのかなって……今まで自分で決めたように見えて、本当は流されてる
だけで、何一つ選んだわけじゃないんじゃないかって……言葉に言わなきゃいけない事があるんじゃないかって……」


ああ、何だか言いにくい。沈黙の中、時だけが過ぎ去っていく。



「好きだ」
「えっ?」
「だから……言葉のことが好きだって言ってるの!」
「私に言いたいことって、別れ話じゃ……」
困ったような笑顔で言葉が照れる。

「だって、こういう関係になってから一度も好きだって言えなかったから……そんなこと言ったら言葉は絶対信じちゃう
から……言いにくくて、軽々しく言っちゃいけないと思って。でも俺だって言葉を恋人として満足させてあげたいからー」
ダメだ、もう限界!
照れくさくってベッドに顔を埋める。

「続き、言ってくれないんですか?」
「あの……ですね。自分の意思で言葉を愛そうって決めたと言いますか……」
アレ?何故か敬語になった。
「誠君、人と話すときはちゃんと目を見て話さなきゃいけませんよ」
「なっ!そういうイジワルするなら今日はもう言わない。寝る!」
ああ、俺の頬が熱を帯びるのが感じられる。
不思議だな。さっきまでもっと恥ずかしいことしてた筈なのに、好きだって言うだけでこんなに緊張するなんて。

「まーこーとーくん♪もう一回言ってくださいよ〜」
「……」
「も〜何を今更恥ずかしがってるんですか?さっきまでえっちしてたのに……」
「う、うるさい!」
「うふふ、誠君可愛いです」
そう言うとキスしてきた。しかも舌を絡めてくる。

「ちょっと待って!なんかえっちする雰囲気になってるけど、言葉とはいつだってしたいけど……なんていうか
照れるから……今だけは許して!」

「嫌です。誠君が満足させてくれるって言ったんじゃないですか。だから、私はもう遠慮しないって決めました」

結局、なんだかんだ言ってえっちすることになってしまった。だけど、これは“欲望だけじゃない”
俺は……俺たちは……こうやって、体を重ねて……気持ちを積み上げていくんだろうと思う
それが、恋愛なんだろう……そんなことを考えながら……


386375:2010/07/05(月) 20:01:25 ID:2yR3ZeCX
3部投下。
387鏡V 孤独:2010/07/05(月) 20:02:38 ID:2yR3ZeCX
V 孤独

現場検証が進み、放火の疑いが強い事が明らかになったが、
誰がそんな事をしたのか乙女や父には検討がつかなかった。
犯人に関する有力な目撃情報もなく、それ以上に突然家族を失ったショックで、
心当たりを聞かれても、考える余裕などなかった。

あの時ちゃんと連絡してれば、多少遅刻してでも家に戻っていたら……
2人とも死なずにすんだかもしれなかったのに―――

家が全焼し、乙女と父親は東原巳から10駅近く離れた仁布のアパートに移り住んでいた。

「私も働いて、家計を助けよっかな?」
「アルバイトは校則で禁止じゃなかったか?まあ、事情話せば特例で認めてくれるか」
「夏休みとかに隠れてバイトしてる子も結構いるよ。…って、そうじゃなくて
高校辞めて働こうかなって」
「何を言ってるんだ。あんなに頑張って榊野に入ったんじゃないか」
洗い物をしながら乙女と父は話す。

「だって、家が焼けちゃって、色々あったし…… 夢のない話だけど、
先立つものはやっぱり必要でしょ?元々勉強はあんまり得意じゃないし、
成績も下から数えた方が早いしさ」
「高校はちゃんと卒業しないと、大変だぞ。学歴だけあればいいわけじゃないけど、
早く社会に出過ぎるとそれだけ選べる選択が少なくなる」
「進路指導の先生みたい。父さん」

まじめな父さんらしい意見だ。さすがに本当に辞めて働くとなると、
バイトでも厳しいのはわかっている。
バイトは本当に考えてるけど、高校生ができるものは限られており、まだ吟味中だ。
どっちかといえば、会話がかみ合って話せている事の方が、なんか嬉しかった。

父さんと打ち解けて話すのは随分久しぶりな気がする。
もっと小さい頃は、よくいろんな所に連れて行ってくれたり、
なんでもない事が楽しくて。
あの頃が、私を含めた家族全員がもっとも幸せだったのかもしれない。
388鏡V 孤独:2010/07/05(月) 20:03:38 ID:2yR3ZeCX
それがいつからか、会話する事も少なくなっていき、父さんは母さんと喧嘩するようになり、
母さんはストレスを私や可憐にぶつけるようになった。
可憐は持ち前の要領のよさで上手く切り抜けていたが、私はつい反発し、余計に不快な思いもしたものだ。
去年は夜のお店に通ってた事が、あの喜連川の口から明らかになり、父さんは家の事を
省みなくなったのかと一時冷え切った状態になった。

そして、もうダメなのかなって思いかけていた……

「乙女…」
「なに、どしたの改まって」
洗い物を終えて、風呂の準備に行くのかと思いきや、
乙女の父は真面目な表情で乙女に向き直った。
そして、頭を下げた。

「母さんや、乙女、可憐に嫌な思いさせてすまなかった」
「父さん…」
「今まで家に居場所がないと思ってたんだけど、勘違いしてた。
自分も母さん達の居場所を奪っていた…… 2人も失ってからそれに気付くなんて……」
寂しそうに笑う父。
それを間近で見て、乙女は居たたまれなくなる。

「本当は母さんとやり直したかった…… でも、言い出せないまま結局
あんな事になって…… 大馬鹿だよ、俺は」
「そんな事ないよ… 私も今まで父さんの事、なんとも思ってなかった。
お店通ってたのはショックだったけど、それでただ嫌うだけで、
かえって父さんを孤立させちゃっていた」
皮肉にも、家の火災が、バラバラだった親子が再び向き合うきっかけになってしまった。

「でも、こういう言い方はヘンかもしれないけどさ、まだ人生捨てたもんじゃないと思ってるんだ。
父さんにはまだ、乙女がいる」
「なによそれ。親バカのつもり?」
そう言いながらも、乙女と父親は笑顔を浮かべていた。

「お前は余計な心配しないで、高校生活頑張りなさい。父さんも頑張るから。
バスケのレギュラー目指してるんだろ?可憐が言ってたけど」
「うん…」
389鏡V 孤独:2010/07/05(月) 20:04:38 ID:2yR3ZeCX
2

仕事を終え、乙女の父は勤務先を出る。
最近はまっすぐ家に帰るようになった。あれ以来、店に通うのもやめた。
……本当はもっと前にやめる事もできたのに、
目先の楽しみに逃げては虚しさを募らせ、家での孤立をより深めていった。
そして、取り返しのつかない事態を招いてしまった……

携帯が鳴り、それに出る。
話を終えた彼は何かを決意したような顔になった。


「丁度君に会いたかったんだ」
「私も。今日はどうするの?またこの前の所でする?」
腕を組み、路夏は上目遣いで乙女の父を見る。
しかし、彼はゆっくりと彼女の腕をほどき、かぶりを振った。

「今日限りで終わりにしよう。だから君も普通の生活に戻ってくれないか」
「……どうしてですか。私の事がイヤになったの?」
「こんな事を言える立場じゃないのはわかってるけど、これ以上自分や大切な人に嘘をつきたくないんだ。
それに、もう君に出せるお金も残っていないんだ。お願いだよ」
嘘の関係だと、最初から承知のつもりだった。
しかし、それは『つもり』でしかなかった。

「別に、私はお金だけ欲しかったわけじゃないの。信じられないかもしれないけど」
「それなら尚更お願いだよ。君自身のためにも、もうこんな事は二度としないと約束してくれ」
「………」
これ以上彼女と関係を続けるのは、誰も幸せにしないと、はっきり実感していた。
気付けないだけで、彼女にだって本当に大切にしてくれる人間がいるかもしれない。
虫の良いお願いなのはわかってるけど、わかってほしい……
390鏡V 孤独:2010/07/05(月) 20:05:30 ID:2yR3ZeCX
「……約束します。今日で最後にします」
「本当か」
「はい」
「ありがとう。そう言ってもらえて救われたよ」
自分の想いが通じたと、乙女の父は安堵した。
そして、もう二度と互いに会う事もないだろうと。

「大切な人って、おじさまの家族でしょ?」
「ああ、そうだよ」
「以前は家族の事を良くは思ってなかったんじゃないですか?」
「あるきっかけがあってね、色んなものを置き去りにしていた事に気付かされたんだ。
それなのに、相手の不満ばかり見て、自分だけは正しいと、これくらいの事はしてもいいんだと……
今思えばなんて傲慢だったんだろうって…」
「そう…ですか」
「もう私は逃げずに生きていきたいんだ。君にもそうだけど、家族にも迷惑掛けっぱなしで
一人の男としても親としても失格だった」

「立派な考えですね。とてもあいつの父親とは思えない」
「あいつ…… 君、もしかして子供と知り合いなのか」
「ええ。私、よおく知っています。おじさまの娘さんの事は」
「? どういう事なんだ」
「私の事をとても可愛がってくれましたから。運命感じちゃうくらい」
乙女の父は、冷たい声と目つきの路夏に見据えられた。

「私やお母さんがどんな思いで生きているかも知らないくせに、家の事、
面白半分にバラしやがって……
そのうえ、私を不良を使ってレイプまでさせて嘲笑っていた!
そんな奴が、おじさまの『大切な人』、なんですね」
「何を言うんだ。子供が、娘がそんな事するはずないだろ!」
「おじさまは私の言う事を信じず、娘さんの事を信じるんですか?」
「当たり前だろ!子供を信じない親がどこにいるんだ」
それは乙女の父の本心だった。
391鏡V 孤独:2010/07/05(月) 20:06:02 ID:2yR3ZeCX
しかし、路夏は彼のことばには応えず、自分の携帯を取り出し操作する。
『馬鹿にしてるのか』と言いそうになるのを彼はこらえたが、
それが死刑を宣告される前の間だと、気付く事ができなかった。

「これでもまだ、信じますか?」
「こ、これは…」
路夏は自分の携帯を乙女の父親の眼前に突き出した。
あの時乙女や遠山達にされた仕打ちの数々。
どう見ても、路夏が愉しんでいるようには見えない、
その証が携帯の画面に映し出されていた。

それでも狼狽しながらも、彼は最後の抵抗を試みた。
自分の中の『娘』を守るために。
「き、君は、わざとそんな画像見せて、お、俺をまた騙す気なんだろ?!」
「騙す?あんたなんか騙す価値もない、ただの道具」
そして、続けざまに心の奥まで抉る一言。

「これは本当に私がされた事です。信じないのは勝手ですけど」
私を訴えますか?それでも家族の幸せを気取ってみせますか?加藤さん。
別に私を訴えたからってあなたを恨んだりしません。その時は正直に話すだけですから。
乙女さんの事も、全部――

乙女の父が縋ろうとしていた自分の娘への幻想は、
路夏という現実に打ち砕かれた。

「約束ですから。もう会う事もないですね」
路夏は冷たく吐き捨て、去っていく。乙女の父は
それをただ呆然と見つめる事しか出来なかった。
392380:2010/07/05(月) 20:06:52 ID:2yR3ZeCX
今日はここまで。乙女の父親は性的カリスマのない誠が行き着く
可能性のひとつかと。実際問題、親さえしっかりすればそれで済む問題でもなし
孤立してるのは誠たちだけじゃなく、彼らの親たちもそうかと。
(裏設定は抜きにしても)
393391:2010/07/05(月) 20:13:32 ID:2yR3ZeCX
失礼 番号打ち間違えた(汗)

路夏と言葉が比較的気が合うようで一安心>丁字屋氏
勇気はすっかり弄られ役だな(笑)
作者はこういうギャグやドタバタテイストが好きなのかな?

自分のダメさを自覚し、言葉にきちんと気持ち伝えたのはいいが、
なにせ誠だしね 彼の本質は自己愛と支配だけに安心できねえ>愛欲
394名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 17:10:34 ID:PL1K91fN
>>380
超乙っす
ここからさらにどうなるのやら…

なんかエロゲー本スレで
乙女・姉ルートのパッチが出るとか出ないとか言ってるけど
釣り?、それともマジ?

路夏便所レイプパッチを…
395名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 17:31:17 ID:0x+X1zW7
>>394
おいおい、FD出すのすらメンドウ臭くなったのかよw?
396名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 18:07:40 ID:kVjYYm2C
十中八九ガセだな
今月に入ってHQを知った奴の戯れ言らしい
397名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 19:10:53 ID:YOHdCfTA
>>393
koeeeeeeeeeee乙
398名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 19:14:21 ID:YOHdCfTA
sage忘れたスマン
399名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 21:32:12 ID:PL1K91fN
やはりガセかな…orz

誰か夏コミで
「路夏便所レイポ(出来れば二穴、【茶巾対面騎乗位→駅弁】で、
 後半、路夏反撃、誠・レイパー・勇気・他を嗾け、乙女を三穴肉便所…」な同人誌を…
400名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 23:59:33 ID:V3q+M/Bl
>>393
誠の本質は自己愛と支配ですか。言われてみれば当てはまるなと思いますが、そんな風に考えたことなかったので新鮮です。支配ってサマイズの熟れた果実みたいな感じですかね。
ちなみに僕にとって誠とは白い紙です。どんな色にだって染まるし、いい意味でも悪い意味でもやる時はやる奴なんだと。本人の意志とはあまり関係なく環境に強く影響されてしまう弱さが紙です。

愛欲はある意味言葉にとって理想的な幸せ(客観的に見てどうかはともかく言葉視点で考えた場合)をイメージしました。肉欲エンドって珍しく誠より言葉の方が強いんですよね。
言葉グラフティーのインタビューでもそんな記述がありましたが、誠がヘタレで言葉が尻に敷く感じが安定するかなと。なんというか、誠は言葉に負い目を感じてる程度がちょうどいいというか。

勿論誠が出来る男になって言葉が甘えるという形でもいいんですが、上手くやらないとお前誰だよってなっちゃいそうなのが難しいと思います。
401名無しさん@ピンキー:2010/07/07(水) 01:48:33 ID:PK3RH0d2
>>400
白紙っていうか、むしろ誠は吊り橋の真ん中にいる危うい状態かな。
地に足がついてないみたいにフラフラしてる。
誰かが誠を向こう岸に突き放すか、もしくはこちら側に引っぱりこむしかない。
誠を待つという選択もあるが、下手をすると誠は堕ちるとこまで堕ちてしまう。
402391:2010/07/07(水) 22:48:02 ID:naOOlN5x
引き続き投下。
403鏡V 孤独:2010/07/07(水) 22:48:43 ID:naOOlN5x
3

「それでね……だったわけなの」
「え、マジ〜!それ超ウケるじゃん」
昼休み、4組の生徒達は教室で昼食を食べるもの、学食や屋外にいくものに別れ、
思い思いに過ごしていた。
そんな中、乙女が教室に戻ってきた。

父親の浮気疑惑が再発し、さらに可憐と母親が火災に巻き込まれて焼死した不幸で、
学校での乙女は、以前とはうって変わって塞ぎこんでいた。
言葉に絡むわけでなく、友人の夏美達と過ごすわけでもなく、昼食の時間も独りで過ごしていた。
パンを買ってきたようだが、多分自分の席で食べるんだろう。
言葉をはじめ、最近の乙女を知るクラスメート達もそう思う。
しかし、彼らの漠然とした予想を裏切り、乙女はおしゃべりに花を咲かす夏美達のところに近づいた。

「……なに?」
「私もいいかな、ここ」
「……どうする?」
夏美が居心地悪そうな表情になる。
せっかく3人でしゃべっていたのにと思ったのだろうか。
とりあえずみなみと来実に入れていいか聞き出した。

その間が、乙女に一瞬嫌な想像をさせる。
つい最近まで彼女達にも苛立ちをぶつけていた。
ハブられても仕方ないか……
「いーよ。うちらだけで盛り上がってるのも何だかなあって思ってたし」
「やっぱり乙女はこうでなくっちゃ。いいよ」
「だってさ。ま、しゃーないか」
404鏡V 孤独:2010/07/07(水) 22:49:40 ID:naOOlN5x
久々に自分が以前居た場所に戻ってこれた。
仲の良い人間との関わりが、いつも以上に心地よく感じ、
乙女も自然と笑顔を浮かべていた。

「なーんか、いい事あったみたいじゃん。ん?」
「うん、ちょっとね」
「なになに、教えてよ〜」
「内緒。それより、心配かけてごめんね」
「乙女ちゃんらしくないよ。私ら仲間じゃん」
「また仲良くやろ。乙女がいないとやっぱりつまんないもん」
「出た、みなみの熱愛宣言。ホントは乙女にラブなんでしょ」
「ちょっと!そういうのじゃないってばぁ」
「隠してもムダだぜ。あんたリリーな本いっぱいもって」
「わああ!それは言っちゃダメ〜!」

夏美が調子に乗ってみなみをからかい出し、好奇心旺盛な来実が首を突っ込む。
乙女はそんな3人に相槌を打ったり、逆に話題をふったりして、場は以前のような明るさを取り戻していった。
そう、これが今まで普通にやってた事なんだ。今はただ、自分の居場所に戻れて嬉しい。
乙女はそう感じていた。

「加藤、ちょっと」
「どうしたんですか先生?」
談笑しながら昼食をとる乙女達の所に、担任の教師が小走りでやって来た。
手招きをする担任に少しだけいぶかしむが、『気にしないで食べてて』と
場を離れ、担任と廊下に出る。

小声ですぐ職員室に来てくれという声が聞こえたような気がした。
帰る支度もしてほしいと。
それだけで、乙女の顔色が蒼白になっていった。

「どうしたの乙女、鞄持って」
早足で自分の席に戻り、荷物を整理する乙女に夏美が呼びかける。
しかし乙女は彼女の問いに応えず、食べかけの菓子パンを片付けた。
その様子は機械的で、声を掛けるのもためらわれた。
そのまま無言で、入口近くで待つ担任と共に再び教室を出て行った。

「乙女ちゃん、どうしたんだろ?青ざめてたけど……」
「またお家で何かあったとかじゃないの?」
「みなみ、不謹慎だよ」
405鏡V 孤独:2010/07/07(水) 22:50:09 ID:naOOlN5x

公衆トイレの個室内で首を吊って自殺。
それが病院で医者と一緒にいた警官に聞かされた事実だった。
昨日までささやかながら、幸せを感じていた。
これからやり直していけると信じかけていた。
なのに……
霊安室で見せられたのは、もう目を明ける事のない、父の遺体。

「嘘でしょ…… ねえ、何とか言ってよ……」

父さんの事、近くに感じていたのに。
私は一人ぼっちになってしまった。
これから、どうすればいいの……?

406鏡V 孤独:2010/07/07(水) 22:50:50 ID:naOOlN5x
部室で着がえながら、部員たちが口々に噂をする。

「加藤、退部したみたいよ。顧問に届け出したって部長達が言ってた」
「やっぱり、そうだよね」
「妹に親もでしょ?不幸って重なる時は重なるんだね」
「このまま転校するんじゃない?独りだけで暮らすの無理でしょ」

父親の自殺で、乙女は強いショックを受け、またこれからについての事で
あちこちと飛び回り、学校に通える状態ではなくなった。部活にも出れなくなり、
一身上の都合で退部との情報がバスケ部に出回ったのは少し経っての事だった。
(『不幸があった』と部内ではぼかされたが、路夏は彼が自殺したと直感していた)

噂を続ける部員から距離を置き、一人で着替えていた路夏に、先に着替え終わった
七海がそっと声を掛けた。

「喜連川、アンタ乙女がこういう状況になって喜んでるとか、ないよね?」
「えっ… どうしてそう思うの?」
「しばらく部活に来てなかっただろ。乙女はアンタに随分辛辣だったから、ひょっとして、
根に持って恨んでるんじゃないかって」
「…………」
「それに前にアンタが男漁りしてるって噂たった事もあるし、その事も気にして
たんじゃないかって思ってさ」
「まさか。そりゃ加藤とは仲悪かったけど、さすがにお気の毒だよ。
辛いだろうし、軽々しい事言えない」
「いや、それならいいんだ。つまんない事聞いて悪かった」
「ううん。あ、これ私が言ってた事加藤には内緒だからね?」
「わかってる。今はそっとしといた方がいいもんな」

私のことばで安心したのか、甘露寺さんは先に部室を出た。
407鏡V 孤独:2010/07/07(水) 22:51:33 ID:naOOlN5x
こんな白々しい嘘に騙される甘露寺さんも、案外単純だな。
それだけ、本心を偽るのがうまくなっちゃったのか。
お母さんが生活の為に、好きでも何でもない男に親しく接する事ができるように。
私も、変わってしまった。

ともかく、加藤が榊野からいなくなる事が決まりそうで、ようやく一安心だ。
想定外の事もあったけど、結果オーライでうまくいった。
遠山達もやましい所があるし、自分の立場を危うくするような真似はしないだろう。
…こっそり検査薬使ったけど、幸いそっちも大丈夫だった。
(月のものも遅れてないし、個人的に一番ほっとした)

これでようやく、高校生らしい生活に戻れる。
さすがにずっと綱渡りな事をし続けるのはゴメンだ。

思いきり部活で汗を流そ。
408407:2010/07/07(水) 22:52:30 ID:naOOlN5x
次で3部終了。乙女は精神的にも現実的な意味でも失いっぱなし。
ですが、路夏も失ってる事に気付くんだな…… そう遠くないうちにね。
ここでの七海はただのチョイ役。ま、修羅場潜った路夏の相手ではない(笑)
409名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 01:09:40 ID:2yLU2CA7
>>408
てっきり乙女の父親は乙女とギクシャクしていくドロドロした展開になると思ってたら案外あっさり自殺しましたね。
絶望するの早すぎないか、父親なら乙女を問い詰めるなりすればいいのにとも思いますが、現実と向き合う勇気がないのが彼の弱さだったということなんですかね。

そしてこんな状況なのに路夏の幸せを願ってしまう不思議。デスノートでキラを応援したくなる心境です。
410名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 17:47:41 ID:Yx/JBTvT
「伊藤、今度の日曜日って暇?」
「えっ、どうしたんだよ加藤何かあるのか」
「い、いやたたた大した事じゃないんだけど」
「ん?何だよ」
誠の質問に対して加藤は2枚のチケットをポケットから取り出した。
「原巳浜から全国を目指すってチームがあって頑張ってるみたいなんだけど
サポーターを増やしてほしいから知り合いをどんどん連れてきてほしいんだって。
それでうちの父さん、地元原巳に全国区のスポーツチームを造るんだってはりきっちゃって」
チケットの正体は地元原巳浜をホームタウンにしているサッカーチームSC.原巳浜の
練習試合のチケットだった、まだトップリーグには程遠いがいずれは日本を代表する強豪へと
目指しているチームである。
誠も地元にそんなチームがあることは知っていたが実際に試合を見に行った事は一度も無かった。

「はは加藤の親父さんらしいや」
「それで原巳の人間って事って伊藤を誘ったんだけどさ
まあ、この試合は公式戦じゃなくて練習試合なんだけどね、」
「へぇ、じゃあ行こうかな、今度の日曜日だったら俺も丁度暇だったし」
「うん、じゃ、じゃあ日曜日、約束だからね」
サッカー……か


そして日曜日
「ゴメン加藤、少し遅くなっちゃって」
「ううん、大丈夫私も少し待ち合わせに遅れちゃったから」
「ならよかった、じゃあ行こうぜ」
二人はスタジアムへとむかって行った。
411名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 17:49:50 ID:Yx/JBTvT
「あっと、席はここかな」
「結構試合が見えそうだな、俺こんな風にサッカー見に来たこと無いから
結構楽しみだったり」
「へーそうなんだ、…私も楽しみかな」
「へぇ、加藤は何回か来てるんだろ」
「ま、まあねででも、楽しみなものは楽しみなの」
「そういうもんか」
「そういうもんなの」
加藤の想いに気づかない誠、まあ今に始まったことではないが
「それにしてもまさか原巳浜をホームタウンにプロのサッカーチームを作ろう
なんて、無茶というかなんと言うか……」
「伊藤……」
「でもだからこそ応援してみたいってのもあるかな、
SC原巳浜、かこう言うのって無名時代から応援してると有名になってから
俺は昔から応援してたんだって自慢できるよな」
「うん、出来ると思う、何より幹部には元日本代表の選手の人も
いるみたいだし本当に強くなったりして」
「ははは、だったらいいけどなでも今日の相手って相当強いんだろ?サッカー部の奴に聞いたんだけどな」
「まあね隣の市をホームタウンにしてるセルピアってチームなんだけど、スポンサーに大田急が付いてたりしてるんだって」
「うわ、すごいな。でもそれなら尚更負けられないな、おっ、選手が出てきた加藤、注目する選手って誰がいる?」
グラウンドでは選手たちがボールを使った簡単な練習を練習を始めている。
「えっとね、まずダブルボランチを組む森と柴のコンビかな、あとはCBの鉄壁のディフェンダーの異名を持つベテラン間とか
でも一番の注目はチームの不動のエースで封印を解かれた土地神と呼ばれるコト」
ドスッ

「か…加藤!!大丈夫か」
誠の隣で仲よさそうに話していると話題になっていたコトノハサマのミスキックしたボールが加藤の顔面を直撃した。
「いや、ミスキックでこんなとこまで来ないし」
何とか起き上がる加藤
「次ボールが来たら俺が止めて…って運動神経は加藤の方がいいよな」
「ううん、守って……ほしいかな、私トロイから」
「分かった」
そういって誠は足元にあったボールをコトノハサマに返した。
トドメを刺すつもりが逆効果になってしまったことにちょっとショックなコトノハサマに
「気をつけてくださいね、あと、試合応援してるんで頑張ってください」
と誠は声を掛ける、無論狙って打ったボールだということは知らない
誠君が応援してくれる、誠君が応援してくれる、誠君が応援してくれる、誠君が応援してくれる、
誠君が応援してくれる、誠君が応援してくれる、誠君が応援してくれる、誠君が応援してくれる、
それはコトノハサマにとって何よりものエネルギー、力になる今コトノハサマにはかつて無いほどの
オーラが溢れ出ていた。誠君が応援している以上は絶対に負けられない戦いがそこにはあると。


そして試合が始まる……
412名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 17:50:41 ID:Yx/JBTvT
「さあキックオフ試合が始まりました実況は私ぬまきち、解説はメイサーズで進行させていただきます」
「いやぁ始まりましたね」
「今日はあくまで練習試合ですがご覧くださいこの熱気」
「お互いにライバル意識のあるチーム同士の戦いですからねこれ、テンションはもう本番さながらといったところでしょうか?」
「はい、今日はそういった所も楽しみにしていきたいですね」
「おっとロングボールでチャンスでしたがここは会いませんSC原巳浜のゴールキックになります。」
「あそこでうまく繋がっていればチャンスだったかもしれませんね」
「さあゴールキックから試合は再開しました。……ボールは中盤からおっとスルーパスうまくサイドに流れましたね」
「さあ、センタリングあげることが出来るのか」
「中に誰かいますからね、これチャンスですよ」
「おっと上がった、しかしこれは高すぎます選手の頭上を通り越して……」
「そりゃ」
「き、決まったーーーゴーーーーーーーーール、やってくれますコトノハサマのスーパーボレーがゴール中央にグサリッと刺さりました。
ゴールキーパー唖然としていましたね」
「すごいですね、まずあの高さまで届く跳躍力、とても人間業とは思えません、ただでさえ子ども位の身長しかありませんからね
これキーパーに責任ありませんよいやーーすごい」
「画面にはリプレイが映し出されています。ごらんの様に原巳浜に待望の先制点が入りました。」


「誠君見てくれたかな」
そういってコトノハサマは観客席の誠に目を向ける。
「よっしゃ決まった流石コトノハサマ」
「やったぁ、このまま原巳の力を見せ付けちゃって」
パチィン
加藤と伊藤コトノハサマのゴールに喜んだ二人の手と手がハイタッチを交わしている
「い、伊藤こうやってハイタッチするのって小学校のとき以来だよね」
「え、ああ」
不意を撃つ質問にどことなく伊藤も顔を赤くしている。
ずっと友達として接していたがもう高校生、加藤のことを心のどこかで異性として
見ているのかもしれない、伊藤はそんなことを考えていた。

「うにゅぅ」
悲しみにも取れるコトノハサマの溜息がスタジアムに響いている。
その後試合はコトノハサマの落ち込んだ影響でチームは攻撃力が大きく落ち込んでしまい
結局逆転負けをしてしまった。
413名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 17:56:44 ID:Yx/JBTvT
以上です。

路夏の復讐劇(いいぞもっとやれ)
で乙女が堕ちていったので逆に乙女の簡単なデート風味で書いてみました。
(といってもW杯ネタで出そうとしてそのままになってただけなんですけどね)
414408:2010/07/09(金) 19:59:49 ID:QN2QZ0V+
いつも通り投下。
415鏡V 孤独:2010/07/09(金) 20:00:33 ID:QN2QZ0V+
4

乙女は元自宅があった焼け跡を訪れていた。
周囲にはロープが張られ、立入禁止の立て札が立ち、そばに
花束が置かれていたが、花の幾つかはしおれていた。

放火の捜査もあまり進展がなく、少ない痕跡などから、
女性による犯行の可能性があるとわかったくらいだった。
それを聞き、一瞬だけある可能性を浮かべたが、乙女の頭の中からはすぐに打ち消された。
いくらなんでも、あいつがそこまでやるとは思えない―――
捜査している人間には悪いけど、あの時の騒ぎなんか思い出したくないのが本音だ。

焼け跡を離れ、私は東原巳の駅に向かう。
何しに来たんだろうな、私……

駅のそばまで来て、またあの日の事を思い出してしまった。
嘆いてもどうにもならない事だってわかってるけど、
もし過去に戻れたら、嫌な記憶なんか忘れたい、でもそれだと……

「…とう。おい、聞こえないのか?」
「え?」
「加藤、こんな所で何してるんだよ」
「伊藤……」
思わずもの想いにふけっていた私は、帰宅途中の伊藤に声を掛けられていた。
416鏡V 孤独:2010/07/09(金) 20:01:15 ID:QN2QZ0V+
「こうして伊藤とおしゃべりするの、久しぶりだね」
「ああ。そうだな」
私と伊藤は原巳浜の海辺に来ていた。
歩いてる間も、お互い殆どしゃべらないままだった。
……結局、伊藤とも何の進展もないまま今日まで過ぎてしまった。

「どうしたの?黙っちゃってさ」
「…………」
「伊藤らしくないじゃん。気を遣ってるつもりなの?」
「……その、何言っていいのか、わからないんだ」
「なによ。こんな時に限って優しいんだから。……ありがと」
硬い表情の伊藤に、むしろ私が気を遣ってしまう。
中学の時は、お互い遠慮しないでしゃべっていたのに。
榊野に入ってからだって、話す機会が少ないだけで、こんなよそよそしい間柄じゃなかった。

「もう、榊野には通えないのか?」
「……うん。親戚の家は市内から遠く離れているから無理。
それに、ここにいても家族の事思い出して何も出来なくなっちゃいそうで」
「そうか……」
また、伊藤の表情が硬くなる。
学校から帰る途中で制服姿だった彼に対し、私は私服。
それを見て、もう同じ立ち位置でなくなったような錯覚に襲われそうになる。
そして、それが現実になる時も近い。

「一つだけ聞きたい事あるの。いい?」
「ああ、何だい?」
「喜連川とは本当にしちゃったの?」
「したって、何がだよ」
「その、抱いたという意味で」
「何だよ急に。変な事聞くなあ」
「答えて。学祭で誘われたんでしょ」

今更そんな事聞いて、どうしたいのよ……
答えは決まりきってるでしょうに。
未練たらたらな自分が、情けなくなる。
417鏡V 孤独:2010/07/09(金) 20:01:54 ID:QN2QZ0V+
「……誘われたのは本当さ。休憩室にも入った」
「じゃあやっぱり……」
「でも、抱いてはいない」
「嘘…」
「何だかよくわかんないけど、付き合ってるふりをしてくれって頼まれたんだ。
だから、適当にしゃべって、出ただけ」
「それだけ…… 本当に?」
「本当だよ。中学は同じだったけど、それだけで別に興味ないし、
ほとんど話した事もなかったしさ。あれから一度も会ってない」
「本当に本当?」
「本当に本当。喜連川とは何もない」
「…………」
「疑うなら、携帯も見るか?喜連川の番号もアドレスも履歴もないぞ」
「いいよ、そこまでしてくれなくても」

伊藤がここまではっきり否定するのもめずらしい。
確かに、中学時代あいつと親しく話してた姿は私も記憶にない。
だからこそ、桂や山県じゃなく、喜連川が伊藤に手を出したのは意外であり、許せなかったが……

番号がなくても会うくらいは出来るんじゃないかと思ったが、
伊藤が嘘をついてるとも思えなかった。
てことは、本当に関係ないのか……

「そこまで言うなら、信じる。でも、なんであんたにわざわざそんな事……」
私へのあてつけのつもりだったのか?
当時はあいつを潰せればそれでいいと思ってたが、よくよく考えたら、
私の怒りを直接買ってまで嫌がらせしたかったというのも変な話だ……

「さあ。あっでも、これであいつが危機感もってくれたらとか言ってたな」
「それって、他に誰か好きなやつがいたって事じゃないの?」
「そうなるのかな」
「…………」
「俺、同じ事他のやつにも何度も問い詰められて参ってたんだ」
「誰そいつ?」
「足利って背の低い男で、加藤とは何も関係ないと思うけど」
「ふぅん」
418鏡V 孤独:2010/07/09(金) 20:02:36 ID:QN2QZ0V+
足利。あの足利と同じ名前だけど… 確かあいつには弟がいるって聞いた覚えあるが…
そういえば、以前学祭の件で桂を追いかけて図書室に行って、七海の彼氏の図書委員が、
自分の後輩と喜連川がどうのこうの言ってたっけ……
あの時はいい気味程度で、あいつの個人的な事情にはそれ程関心なかったが……

ひょっとして、喜連川はその足利の気をひくために、
伊藤に手を出したふりをした……?
じゃあ、私は勘違いであいつを吊るし上げてしまったのか?
ある事無い事噂流して、遠山達まで使ったのは、ただの無駄だった?

「あんたって…… はぁ」
「なんだよ。そんなにおかしい事したか?」
「おかしいよ。伊藤って変なトコでお人よしすぎ」
「何もしてないんだし、ただ頼み聞いたのがそんなに変なのか?」
「あのねー、それは誤解させるもとなの!あんたの事好きなやついたら呆れるよきっと」

その後は世間話に終始して、私達は原巳浜の駅まで歩いた。
419鏡V 孤独:2010/07/09(金) 20:03:14 ID:QN2QZ0V+
「もう、アパートに戻んないと。じゃ」
「その…… 頑張れよ」
「大丈夫だって。いつまでも落ち込んでたら可憐に笑われるもん」
「……加藤とはずっと友達だから。忘れないよ」
どうしてあんたはこういう時に限って、クサい事真顔で言えるかなあ……

「伊藤。…今まで、ありがと」
「ああ」
「じゃね」
軽く手を振り、私は改札口のそばに居る伊藤から遠ざかっていく――


馬鹿だなあ。結局最後まで言えなかった。いくじなし。
こんな事になるんなら、可憐の言うとおり、さっさと告白でも何でもすればよかったのに。
その可憐も、もう私のそばにいない。

座席に座り、1枚の写真をじっと見つめる。
原巳中の卒業式の後、私と伊藤、可憐で撮った写真だ。
そこに写っている私達は、本当に楽しそうに、輝いていて。
あれから随分時間が経ったように思えるけど、まだ1年も経っていないんだよね……
こんなカタチで、自分がひとりぼっちになるなんて、考えもしなかった。
喜連川を痛めつけた罰が、当たったのかもしれない。

そうでなくても、桂や山県など気に入らない人間に冷たく当たってきた。
それでちっぽけな優越感に浸っていたのだから、
自分だけは安全だと勝手に思っていたのだからお笑いだ。

どうあがいても、もう私は伊藤のそばにいる事はできない。
キスのひとつでもされたら、それだけで今の私はどうにかなってしまう。
……だから、これでよかったんだ。

大好きだったよ。


(第3部 孤独 完)
420419:2010/07/09(金) 20:03:57 ID:QN2QZ0V+
今日はここまで。誠は結局最後まで気付かないままでしたね。
そして路夏を最初に陥れた張本人が実は一番踊らされていたのは何とも
皮肉です。

4部でやっと勇気と言葉が登場。
421419:2010/07/09(金) 20:13:49 ID:QN2QZ0V+
>>409
まあ冷静に考えれば不自然なのは承知ですけどね(笑)。
誠と似た部分を持ち、しかし彼と決定的に違う点として、自殺という
選択をしてしまうと。乙女の孤立さを際立たせる為に初めから退場させる
方針だったという身も蓋もない理由もありますが(爆)

某ドラマを参考にして(というか構図をパクって)今回の物語作ったですが、
誰がどの役に当てはまるかわかる人にはわかるかも。

>>413
すけこましの石丸がW杯目指す外伝が作れそうな……
何気に榊野の運動系はレベルが高いし(笑)
スクイズの原形も元はスポ根青春ものだったらしいですが。
422丁字屋:2010/07/09(金) 22:11:59 ID:/oU76slP
>>408
自分も乙女の父には生きて乙女に冷たく当たらせて
(ようやく気持ちが通じ合えた父親ぬ何故そうされるのかわからない)乙女の心を
じわじわと疲弊させてほしかった気もします。

>>413
コトノハサマが試合中もミスキックを繰り返して乙女にボールを直撃させまくって
半殺しにするかと思いましたw


ともあれ「贄と成就」アフター
ちなみに前回のラスト、女装勇気の「もう、どうでもいい…」は
クロスデイズ某エンドのパロディです。

では>>381からの続きいきます。
423丁字屋:2010/07/09(金) 22:12:29 ID:/oU76slP

「ごちそうさまでした」
三人の声が揃う。
なんだかんだあったが、ともあれ僕たちは食事を終えた。

「ありがとうございます。足利君、喜連川さん」
と、いきなり桂が礼を言ってきた。
「え?」
何故礼を言われるのかもわからずきょとんとする僕と路夏に、桂は言葉を続ける。
「なんだか、こんなふうに誰かと学校で食事をするなんて、すごく久しぶりで…」
「あ…」
「そっか、以前は伊藤と…」
「はい。誠君と…それに西園寺さんも一緒だったこともありました」
!?

「な…西園寺さんって!?」
「西園寺…世界か…!?」
路夏と僕は同時に声を上げていた。
「はい…」
「だって、西園寺さんって…桂さんから伊藤を……」
そう、路夏が口にしたのは僕の疑問でもあった。
西園寺は、桂と付き合ってた筈の伊藤を奪ったヤツの筈。
それが、桂と一緒に食事をするような仲だったなんて…。

そして路夏が桂に尋ねる。
「ねえ桂さん、良かったら聞かせてくれない?
 一体、あなたと伊藤と、それに西園寺さんって一体どういう関係なの?
 私たち桂さんの味方をしたいけど、
 そのためには桂さんの抱えている事情を知っておきたいの」
そう、それは僕の気持ちでもあった。

桂はその問いに、最初は話すことを躊躇していたが、
それでも少しずつ話してくれた。

424丁字屋:2010/07/09(金) 22:13:02 ID:/oU76slP



「何よ…それ…?」
桂の話が終わるなり、路夏がそううめくように言った。
その言葉の響きには驚きと怒りがあった。
僕も同じ気持ちだった。
確かに僕も、元々は桂と伊藤が付き合っていたこと、
それなのに…西園寺が横から誘惑したのか伊藤の浮気なのかはともかく…二人が関係を持ち、
桂の気持ちを裏切り傷つけていたことは既にわかっていた。
だが、西園寺と桂が友達―それも元々は西園寺の方から友達になろうと申し出た―だったなんて…、
更に桂に伊藤を紹介したのも西園寺で、
桂と伊藤が付き合うようになったあとも二人の恋を応援するだなんて言っておいて、
いつの間にか自分が伊藤と関係を持っていたなんて…。

この学校で友達のいなかった桂は、ようやく出来た筈の友達に、
そんなひどい裏切りを受けていたんだ。
それなのに、周りはそんな西園寺にみんなで味方して桂を虐げている……何故、桂だけが
ここまで理不尽に傷つけられるのか!?
その桂の受けてきた仕打ちと、それにより桂が抱いてきた絶望を思うと、
どう言葉を発していいのかもわからなかった。

路夏もしばらく感情を圧し殺したような顔をして押し黙っていたが、
それでもやがて真剣な表情で口を開いた。
「桂さん、少し質問するけどいい?
「え……は、はい…」
「これは桂さんの言うことを信用しないってわけじゃないから気を悪くしないで欲しいんだけど、
 桂さんが今言ったように、桂さんと伊藤が付き合ってたっていう…、
 或いは桂さんと西園寺さんが友達だったっていうことを証明するものって何かある?」
「証明…ですか?」
「うん。例えば一緒に撮った写真とか…」
「あ…写真なら…」
桂は自分の携帯を取り出すと、アルバムを開いていくつかの写真を見せてくれた。

そこには、桂と伊藤、或いは桂と西園寺のツーショット、
そして桂、伊藤、西園寺のスリーショットもあった。
どこか戸惑ったような桂に西園寺が人懐こい笑顔ですり寄っているような印象のツーショットと、
伊藤を加えたスリーショットはいずれも西園寺が自分で携帯を持ちながらシャッターを切ったものであり、
二人揃って緊張したような様子がいかにも初々しいカップルを思わせる桂と伊藤のツーショットは
西園寺が撮ってくれたのだと桂は言った。
ともあれこれらの写真は、桂が先ほど語った、
桂、西園寺、伊藤の三人が最初はどういう関係だったのかを裏付けるのに十分だった。
425丁字屋:2010/07/09(金) 22:13:39 ID:/oU76slP

路夏は更に、桂にそれらの写真を自分らの携帯にも送って欲しいと頼み、
路夏と僕の携帯にこれらの写真が送られてきた。
路夏はそれを一度確認すると、更に質問を続けた。

「桂さん、さっきの話だと、伊藤は桂さんと友達からやり直そうって言ってくれたのよね?」
「は、はい…」
そう、さっきの桂の話だと、
伊藤と西園寺が関係を持った学園祭の前後から桂と伊藤の距離は遠ざかりギクシャクしていたが、
つい先日、伊藤は桂に友達からやり直そうと言ってくれたのだという。
そして路夏が質問を続ける。

「だったら、何故伊藤に、桂さんの今の現状のことを相談しないの?」
「でも、通学の電車でも、学校でも、誠くんに話しかけようとしても、
 三組の人たちにじゃまされてしまって…」
桂は目を伏せながらそう答えた。
「甘露寺さんたち?」
「はい…」
「でも、だったら電話で相談することだって…」
それは僕の言葉だった。
「それが、誠くんの携帯、何故かいつかけても通じなくて…」

いつも通じない? そんな…。
「ねぇ、ちょっと桂さんの携帯貸して」
路夏はそう言って、半ば強引に桂の携帯を借り受けると、伊藤の番号にかけた。
そしてしばらく耳に当てていると、それを僕に渡す。
僕も渡されたそれを耳に当てるが、聞こえてくるのは
「おかけになった電話番号への通話はおつなぎできません」
と繰り返す自動メッセージだった。

「なぁ桂、これって……」
言いかける僕を、しかし路夏が制する。
路夏は僕を制しながら、桂の方をじっと見ていた。
僕も桂の方を見ると、桂はうつむいてじっと押し黙っていて、
その顔はひどくつらそうに見えた。

そうか。桂も本当はわかっているんだ。
これが、電話がつながらないとかそういうことじゃなく、
伊藤に着信拒否されているってことなのを。
それでもそれを認めたくなくて……。
路夏も僕と同じことを思っていたのか、僕の方を見て小さくうなずいた。
僕はまだ繰り返していた自動メッセージを切ると黙って桂に携帯を返した。
桂も黙って受け取ったが、その顔はまだつらそうなままだった。

だから、
「桂さん、もう1つだけ質問するね」
そう路夏が言った時、「も、もう質問はっ…」
と路夏を止めようとした。
これ以上質問するのは桂を一層辛くさせると思ったからだ。
だが、路夏は
「これが最後…。きちんと聞いておきたいから…」
そう、どこかこわい顔で続けた。
426丁字屋:2010/07/09(金) 22:14:16 ID:/oU76slP

「桂さん、学園祭の時からこの前まで、澤永と付き合ってたよね?」
その問いに、桂ははっとしたように路夏を見て、再びうつむきながら
「はい…」
と小さな声で答えた。
「でも、桂さんはずっと伊藤のことが…伊藤が西園寺さんと関係を持つようになっても
 ずっと好きだったんでしょ?」
「はい…」
「だったらなんで澤永と…?」

だがその最後の質問には、桂は答えずにうつむいたままだった。
そしてその顔はさっき以上につらそうで、まるで桂が壊れてしまいそうに感じられた。
路夏も同じように感じたのだろうか、
「ごめん、桂さん。今の質問は答えなくていいわ」
そう言った。

「ただ、その代わりに…ううん、この質問については何も言わなくていい。
 ただ、首を縦に振るか横に振るかでいいから…」
「は…はい…」
桂がそれを小さな声で承諾すると、路夏は本当に最後の質問を口にした。

「桂さんは本当は澤永と付き合うのは、最初から嫌だった?」

桂が、一瞬の間の後、コクリと小さくうなずいた。

427丁字屋:2010/07/09(金) 22:14:49 ID:/oU76slP

今回はここまでです。
それなりにシリアスになってきましたが、勇気はいまだ女装したままですw
428名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 16:02:45 ID:NfGLifcF
>>415
相変わらず文章上手くて引き込まれる
前々スレで投下されていた乙女と言葉の友情話書いてた人?違ったらごめん

こんな形で乙女が自分のしてきた事の酷さに気づくのは悲しいね
路夏こええwwでも勇気と言葉に激しく期待してる
429名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 16:15:05 ID:ToEyu8s2
>>421
投下乙です

乙女はこれで榊野から退場……このまますんなりとフェードアウトさせてもらえるとは思ってないですがね
後、ごとうさんも間違えてましたけど、石丸先輩はバスケ部ですぜw

>>427
こちらも乙です

このまま行けば、後夜祭の核心を突くことになりそうかな
……オチ付けんなw
430名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 17:44:01 ID:rx1phRiL
>>421>>427
おふた方、超乙でありますっ!!
431SINGO:2010/07/12(月) 02:58:40 ID:DCVaMVp8
どうも。
【破局の妖精】の続きを投稿します

といっても、今回はベクトルが斜め上に行ってますが
432SINGO:2010/07/12(月) 02:59:59 ID:DCVaMVp8
【破局の妖精】番外編
〜Day After School〜

《榊野学園 一年三組》
清浦刹那、黒田光、澤永泰介、田中の四名は、仲良く駄弁っていた。
話の内容は、もっぱらゴシップ。クラスメイトの噂。

西園寺世界と伊藤誠の交際は、意外な形で破局を迎えた。
世界は母親の都合でパリに転校。孤立。
誠は世界を妊娠させた噂で、榊野学園内全女生徒からガン無視されて孤立。

刹那「まあ世界のお母さんは実力No.1だから、パリに誘われるのは必然。出世にも繋がるし」
黒田「でもデイズ本編だと、世界が日本に残って刹那がパリに転校するルートが大半よね」
刹那「あれ全部、舞台裏で世界がパリに行きたくないって駄々こねた結果だから」
澤永「んで、ママさんがパリ行きを辞退。No.2の清浦ママがパリ行きに選抜されてた訳か」
黒田「ちょい待ち!まさか、今回の世界の妊娠告白って……」
刹那「日本に残りたいが為のハッタリ。ブラフ。口から出任せ。嘘妊娠」
田中(む。清浦さんを犠牲にする気、満々だな…)
澤永「西園寺、母親の出世まで犠牲にする気だったのかよ…」
黒田「てか、そんなハッタリかましたら、ムリヤリ産婦人科にブチ込まれて、検査でバレるわよね?」
刹那「ん。世界のお母さん激怒してた。伊藤に股間蹴りの刑。世界はパイルドライバー食らった
  あげくに偽証罪でパリに島流しの刑。おかげで私は無事に日本に残れた、と」
澤永「次に会えるのは、いつなんだ?」
刹那「七月。一年に一回だけ里帰りが許されるみたい」
黒田「伊藤ならエアメール読む気も失せるでしょーね」
田中(一歩間違えば清浦さんがパリに…と思うと、安心して良いのか悪いのか)
433SINGO:2010/07/12(月) 03:00:54 ID:DCVaMVp8
刹那「田中。なんか世界の妊娠が嘘で安心してるみたいだけど、明日は我が身じゃないの?」
田中「そうだった!清浦さん、大丈夫なの!?」
澤永「何だ?田中、何があった?」
田中「や、なんて言うか…ホラ、X'masにありがちで月並みでヤッパリなお約束イベントというか…」
澤永「あん?X'masっていったら、世界中の男女が、あれこれ口実つけてセックスする日だろ」
田中「ん。それだ」
黒田「アンタら、全国のキリシタンに謝れ。てか田中、何が言いたいのよ?」
刹那「や。ぶっちゃけた話、私、田中を犯したの」
黒田「ぶっフォ!!」
澤永「…鼻から牛乳吹いちまったじゃねーか……てか、どーゆー事だよ!?」
刹那「田中を縛って自由を奪って、逆レイプ。ムシャクシャしてたから犯った。後悔はしてない」
澤永「…田中、柔道部エースのくせに何されてんだ」
田中「だから避妊してって、中はダメって言ったのに!もしデキたら、どうすりゃいいのさ!?」
刹那「俺のせいじゃないとか言って、堕胎してくれる病院を紹介するとか」
田中「自覚持ってよ!俺達の子なんだよ!マジメに考えて!!」
澤永「やめろ田中。変な想像しちまうじゃねーか。デカイ図体で女々しく喋るな」


黒田「それにしても。年に一回しか会えないとか、それが七月とか、まるで織姫と彦星よね」
刹那「世界が織姫で伊藤が彦星…。美男美女だし、なんかドラマチック」
黒田「昼ドラのね。美男役はコレ幸いと不倫する気、満々だったし」
澤永「美男か〜。なあ、お前らにとって理想の彦星って、誰なんだ?」
黒田「うーん。澤永かな?」
刹那「澤永」
田中「ん。俺も澤永」
澤永「うはっ。俺ってモテモテ」
刹那「顔を会わすのが年一回だけで済むなら、澤永が一番理想的」
澤永「そっちかよ!」
田中「当日の七月七日は梅雨シーズンだから、ゆっくり自宅療養しても良いぞ」
澤永「それだと、一度も会えねーだろ!そんなに俺が邪魔か!?」
黒田「冗談よ。世界がいない今、ムードメーカーは澤永しかいないって」
田中「ん。澤永は必要だ。決してピエロ役とか笑われ者とかサンドバックとかいう理由じゃないぞ」
澤永「お前、黙ってれば嘘が上手いのにな」
刹那「という訳で、澤永。ジュース買ってきて。パリまで」
田中「ん。ゆっくりで良いぞ。むしろ帰ってくるなよ」
澤永「思いっきり邪魔者扱いじゃねーか!」

434SINGO:2010/07/12(月) 03:02:26 ID:DCVaMVp8
《学食堂 自動販売機コーナー》
結局、パシリにされた澤永。
澤永(お!あそこに居るのは桂さん!俺の心の恋人!)「正確にはオナニーのオカズだけどな」
澤永、建前を隠して本音を喋っとるぞ。逆だろ。
言葉「ううう…どうしてファソタ・オレンジがホットで出てくるの?」
澤永「やあ桂さん。どうしたの?」
言葉「あ、澤永さん。よろしければコレ飲んで頂けませんか?私、押すボタン間違えたみたいで。」
紙コップ。湯気。気泡。しかも色がアレだから…。
澤永「ゴメン桂さん。君の気持ちは嬉しいけど、俺、飲尿法はもう興味無いから」
言葉「ぶっフォ!違います!これ御小水じゃありません!」(てか今『もう』って言った?)
澤永「桂さんも止めた方がいいよ。体の中の不要物をもう一度体内に戻すだけだから、意味無いし」
言葉「問題点、そっち!?てか大声で名指しでレクチャーしないで下さい!これ炭酸飲料です!」
澤永介「まあ、出したての小便は綺麗で雑菌が無いから、イイんだけど」
言葉「心底、どうでもイイ知識なんですけど!てか人の話、聞いて下さい!!」
澤永「逆に体で一番雑菌が多い所は口の中なんだよね。つまり誠のキスより俺の小便の方が綺麗」


勇気「あれ?澤永、何でこんな所で寝てんだよ?」
言葉「あら足利君。こんにちわ」
勇気「やあ桂。モップなんか持って、何してんだ?」
言葉「居合い…剣術の素振りです」
勇気「周りに気を付けろよ。人に当たったら大変だ」
言葉「相変わらず優しいんですね。大丈夫です。器物破損でしたから」
泰介「ふっふっふ。ラッキースケベ。このアングルだと、桂さんのスカートの中が丸見えに…」
だから澤永、心の声が駄々漏れしとるぞ。


黒田「…あの馬鹿、ドコほっつき歩いてんのよ…。あら、足利。澤永こっちに来なかった?」
勇気「今ごろ保健室か病院か火葬場じゃね?そんな事よりジュース飲むか?桂がおごってくれるって」
言葉「どうぞ。お好きなのを選んで下さい」
黒田「いいの?ありがと桂さん。…あら?桂さんの財布、澤永が使ってるのと同じヤツ?」
勇気「同じヤツというか、そのものだけどな」

激終
435SINGO:2010/07/12(月) 03:05:46 ID:DCVaMVp8
劇終。


【オマケ】

言葉「…?私の理想の彦星ですか?」
黒田「うん。ぜひ教えて、後学の為に」
勇気(ただの興味本位のくせに)
言葉「イヤラシくなくて。優しくて、お人よしで。いざという時には私を守ってくれる男性がいいです」
黒田「…あれ?何このデジャブは?……じゃあ、足利の理想の織姫は?」
勇気「決して僕を疑わない、僕に浮気疑惑がかけられても僕を信じてくれる女性かな」
黒田「またデジャブが……。てか、そんなアンタら二人は、なぜに付き合わないのデスカ?」
勇気「どうせ理想と現実は違うしな」
言葉「はい。裏切られるのは一回で充分ですから」
勇気「そうそう♪相手に自分の理想を押し付けても、あとで泣きを見るだけだし」
言葉「こういうのは、第一印象よりも、お互いの相性ですよね♪」
黒田「アンタら、めっちゃ相性いいじゃん」
勇気・言葉「無い無い、それは無いデス」

End
436419:2010/07/12(月) 20:38:58 ID:zXOJcwHK
4部投下。
437鏡W 奈落(貫く剣):2010/07/12(月) 20:39:46 ID:zXOJcwHK
珍しく今日は部活がなく、暇を持て余していた。
久しぶりに本でも借りようと思い、私は図書室へ向かう。
勇気は相変わらずひとりで受付してるのかな。
漠然と色んな事を考えてしまう。

あいさつくらいはしよう、うん。
少し悩みつつも、私は図書室のドアを開けた。

あれ、勇気はいないんだ。
先輩の花山院さんが受付にいた。ほっとしたような、がっかりしたような……
軽く会釈だけして、適当な本棚に向かう。

ここは宗教・哲学のコーナーか。全然興味ないけど、ためしに一冊流し読みしてみた。
うーん、難しい内容でよくわかんないよ。
他のコーナーに移るが、いざ借りようとするとなかなか読みたい本に出会わない。
本を借りるのは後回しにし、私は新聞コーナーに足を向けていた。

火事の件と、加藤の父親の死。どちらも私が想像するほど新聞でも
騒がれておらず、扱いは小さかった。
(父親の死は自殺だろうけど、この新聞には載っていなかった)
4組でどう説明されたのか知らないけど、無関係な人間は例えどれだけ
気の毒に思っても、どうする事もできないだろう。

やがてあいつのいない生活が当たり前になり、みんなそれに慣れる。
私も、これまでの事は忘れていく。
ただの喜連川路夏として平凡に過ごす。それでいいんだ。

「喜連川さんですね?」
背後から声を掛けられ、ちょっとドキッとした。
慌てないで。ここは学校の中、尋問してきたお巡りさんじゃないよ。
振り向くと、ストレートロングの黒髪の女の子が立っていた。
この人は… 勇気が関わっている桂言葉さんか。

「そうだけど… 何か用なの?」
「あの… ちょっとだけよろしいでしょうか」
私は桂さんと隣り合う形で、奥の隅っこの本棚に移動した。
438鏡W 奈落(貫く剣):2010/07/12(月) 20:40:21 ID:zXOJcwHK
「用があるなら、直接2組か体育館に来ればよかったのに」
「ええ。本当はそうしたかったのですが、…体育館にはちょっと苦手な人がいますので。
ここの方が教室よりも落ち着いて話せますし」
確かに大人しそうな子だし、女バスの雰囲気には圧倒されてしまうかもね。
込み入った話なら、人気の少ない場所がいい。

「それで、聞きたい事って何なの?」
「喜連川さんが誠君とお付き合いしてるというのは本当なんですか?」
「…えっ」
「答えて下さい」
大人しそうに見えたが、真剣な目だ。
この人に嘘をつく必要などないが、変にごまかさない方がいいだろう。

「伊藤とは何もないし、桂さんが心配してそうな事はしてないよ」
「そうですか…… 失礼な事を聞いてすみませんでした」
ほっとした様子だ。やっぱり正直に応えてよかった。

「いいよ、別に。私からも質問していいかな?どうして私が伊藤とつきあってるって思ったの?」
「その、噂で聞いたものですから。…以前私のクラスの人がそういう噂をしているのを小耳に挟んだんです」
「誰なの?誰にも言わないから教えてくれないかな?」
「…最近は学校に来てないですけど、多分もう…… いえ、やっぱり言えません」
「…そう。ごめんね、今のは忘れて」
「え?ええ、すみません……」
あいつの仕業か。ま、今となってはどうでもいいけど。
それより、私に伊藤との関係を聞いてくるって事は、ひょっとして……
439鏡W 奈落(貫く剣):2010/07/12(月) 20:41:00 ID:zXOJcwHK
「桂さんは伊藤の事が好きなんだね」
「…はい。大好きです」
「もう一つ質問、いいかな? 勇気と桂さんとはどういう関係なの?」
「足利君とは誠君の事で何度か相談に乗ってもらっていたんです。…誠君、優しい人ですから
他の女の子にも結構人気あるんですよ」
淀みなく桂さんは応えた。

確かに休憩室で一度話した印象では、雰囲気は柔らかく、話上手だと思った。
私も自然に話せて、悪い気はしなかったのは否定できない。
もしあの場の雰囲気でしてたら、ずるずる流されて、桂さんと恋のさや当てなんて事態が
起きちゃったのかな……
でも、桂さんには悪いけど、今となってはそれほど印象に残らない男性だ。
伊藤が彼女の事をどう思っているかは知らないけど、桂さんには伊藤が必要なんだろう。

勇気の事は嫌いじゃないけど、優先順位は完全に伊藤ってことかな…?
天性の嘘つきでもない限り、勇気に関して桂さんの言ってる事に間違いはなさそうだ。
やっぱり私は疑いすぎてたのかな……

「それでは、私はこれで失礼します。…喜連川さんの事、疑ってごめんなさい」
「いいって謝らなくても。桂さんに誤解させちゃったのは私なんだし」
「もやもやしていたのがこれで晴れました。ありがとうございます」
再びお礼を言い、桂さんは図書室を出て行った。

桂さんか…
私とは全く違うタイプの人間に思えたが、話してみるとそれほど悪い印象は感じなかった。
綺麗でスタイルも良いけど、何だかまっすぐで……
ちょっと融通のきかない所はありそうだけど、それだけ純粋な人なのかも。
もっと違う形で知り合えていたら、友達になれたかもしれないな。


私もそろそろ図書室を出ようと思い、受付に向かった。
周りはもう誰もおらず、私だけになっていた。

(あれ、花山院さんがいない。トイレに行ったのかな?)
これでは本を借りれない。利用する人の中には、無断で本を拝借する心無い人も
いると勇気がぼやいてたっけ…… そんな1人になるつもりはないけど。

戻るのを少し待っていたら、司書室のドアが開く音がした。
なんだ、あの中にいたのか。中は倉庫も兼ねているそうだから、
きっと整理でもしてたんだろう。

そして、出てきたのは私のよく知る、すれ違ってばかりの……
440鏡W 奈落(貫く剣):2010/07/12(月) 20:41:42 ID:zXOJcwHK
「あれ、路夏……」
「……勇気。今日は休みじゃなかったんだ」
「違うよ。ちょっと遅れるからって、先輩にお願いしてもらってたんだ」
まさかこんな形で今日会うとは思っていなかった。
とりあえず、本を借りる手続きだけ済ます。

「その、久しぶりだね」
「あ、うん。そうだね…」
なんだか、ぎこちなくなってしまう。
勇気と2人だけで話すのも、随分と久しぶりだ。
最初、黒田さんと勇気が付き合ってると誤解して、そこからしっちゃかめっちゃかになって、
ろくに話も聞いてこなかったっけ……

「路夏」
「どうしたの勇気?真面目な顔して」
「僕では力になれなかったの?」
「え、なにが?」
「何も言わないけど、路夏が部活に来なくなって、姉ちゃんも心配してたんだよ。
ひょっとして、誰かに苛められたんじゃないかって」
やっぱり知恵先輩はよく見ているんだな……
久々に部活に出た時も、部長に長欠を注意されただけで、先輩には何も聞かれなかった。
信じて待っててくれたのかな。

「ううん。そういうわけじゃないの。やっぱり私が女バスに居たって
足手まといなんじゃないかって、悩んでた」
「……本当にそうならいいさ。バスケ部は辞めないんだね?」
「もうそんなつもりはないよ。これからは部活にもちゃんと出る」
「そう。よかった」

勇気は表情を緩めてくれた。
まあ実際に部活どころじゃなかったし、まるっとウソでもないか……
ちょっぴり良心が痛むけど、胸の奥にしまう事で、日常が取り戻せるなら。
すれ違ってケンカばかりしてた、少し前までの事が懐かしくなる。

「ねえ、勇気」
「なに?」
「今日、家に来ない?」
441440:2010/07/12(月) 20:42:36 ID:zXOJcwHK
今日はここまで。言葉の出番はこれだけですが、路夏と勇気が
互いに向き合うきっかけとして出したつもり。

石丸はバスケ部か。こりゃ失敬(笑)
まあ、万人に受け入れられるとは思ってないけど、やはり
違う人の視点は耳が痛くても貴重だわね。
442440:2010/07/12(月) 20:50:29 ID:zXOJcwHK
路夏、気付いたな…多分。>丁字屋氏
目的を超えた行動に走らないよう、冷静に。
女装してても、かなり緊迫はしとるぜよ

>>428
言葉を助けようと奮闘中の物語書いてる人が作者ですよ
443441:2010/07/14(水) 19:30:28 ID:6Sd+dp+3
続きを投下。
444鏡W 奈落(貫く剣):2010/07/14(水) 19:31:17 ID:6Sd+dp+3
2

「お邪魔します。ここが路夏の家なんだ」
「そうよ。勇気の家よりは狭いかもしれないけど、あがって」
私は勇気を自宅に招いていた。
家族以外の人間が家の中にいるのって、何年ぶりだろう。

「お茶淹れるね」
「うん、どうも」
「…………」
やっぱり、面と向かって話すのが緊張する。
別に考えがあって、勇気を家に入れたわけじゃない。
何から話そうか。呼んだのは私だし、私から話すほうが…
そう思ってるうちに、勇気が切り出してきた。

「図書室では言えなかったけど、路夏に言いたかった事があるんだ。
だから、丁度いい機会だと思った」
「え、なんなの?」
「ごめん」
「ちょ、ちょっとどうしたのよ急に」
「僕も路夏の事、疑ってしまって申し訳ない」
勇気が頭を下げて、私に謝ってきた。
なんでそんな事するのか、どう反応したらいいのかわからなかった。

「僕も噂、聞いたんだ。路夏がそういう事に盛んで、伊藤も誑かしたって。
それを聞いて、ちょっと真に受けちゃって……」
あの噂か。勇気も知ってたんだ……

「あの時はぎくしゃくしてたから、もういい、勝手にしろって思ったけど、
少し経って、やっぱり事情をちゃんと確かめようって思って…… だから、
路夏と本当につきあってるのかって、伊藤に問い詰めたんだ」
「…それで?」
「だけどあいつ、自分の事はっきり応えないし、お前には関係ないって態度だったから、
いまいち信用できなくて。路夏は知らないかもしれないけど、
伊藤は女癖が悪い奴なんだ」

掻い摘んで勇気が話しだす。
伊藤は最初、桂さんとつきあっていたが、同じクラスの西園寺さんという人と浮気し、
しかも桂さんときちんと別れないまま、二股まがいな事をしていたのだと。
それを知って桂さんが不憫に感じ、頭にきてクラスの前で彼らの浮気を暴露したのだと。
それで伊藤と西園寺さんの関係が悪化し、破局してしまったのだと。
以前遠山達が言ってた3組に来た生徒って、勇気の事だったんだ……
445鏡W 奈落(貫く剣):2010/07/14(水) 19:32:02 ID:6Sd+dp+3
「自覚なしで、下手な遊び人よりタチが悪い。そういう所を知ってたから、
余計に伊藤がしらばっくれてると思って、信用できなかった」
「じゃあ、今は……」
「うん。路夏とは話しただけで何もしてない。何度聞いても同じ答えしか返ってこなかった。
それでも信じられなくて殴ったけど、『俺は言葉とやり直したいと思ってる。
確かに前は色々あったけど、これからは言葉を大事にしたい』って。
だから信じてくれって」

「それで、伊藤を信じたの?」
「ああ。そのことばだけは本当にあいつの本心が出てる気がしたんだ。それで
路夏の事に関しても、本当に無関係なのかなって思うようになった。
口からでまかせ言ったんじゃないかって、後でまた疑いたくなったけど、
伊藤を信じ続ける桂の気持ちを汲んで、もう一度だけ僕も信じる事にした。
まあ、そう思えるようになったのは、本当に最近だけどね」

もちろん、今度桂を裏切るような真似したら絶対許さないけどと、オチを付け加えた。
図書室で桂さんが言った事はやっぱり本当だった。
殴るのはちょっとエキサイトしすぎだけど、
勇気は他人の為に一生懸命になれる男の人なんだ。

桂さんも相当我慢していたんだろう。私にとっては事実を話したに過ぎないけど、
彼女にとっては、真実を知りたい一心だったんだろう。
根拠のない事で私を追及するのは、とても勇気がいる事だったと思う。
どう考えても、桂さんは人を平気で裏切ったりする女の子じゃない。
…流されなくて、本当によかった。

「私の知らないところで大変だったのね」
「大変どころじゃなかったよ。疲れた、の一言さ」
「…でも、どうして私に聞こうとしなかったの?」
勇気が他人の為に頑張れる男性なのは、改めてわかったけど、
真相を知るにはすごく遠回りな方法だ。
伊藤に聞くより、私に聞いた方がずっと早かったのに。
446鏡W 奈落(貫く剣):2010/07/14(水) 19:33:00 ID:6Sd+dp+3
「まあ、今までが今までだったし、また路夏が怒るんじゃないかってのもあったけど……」
「けど?」
「路夏に聞くのが、怖かったんだ。なんだか、全てが終わっちゃいそうな気がしてさ。
伊藤に抱かれて、本当に僕に興味なくなったのかなって」
「そんな…そこまで」
「真実を知るのが、怖かった」
「考えすぎだって。何も終わらないよ私たち」
私がした事は、想像以上に勇気を深刻に悩ませちゃったんだ…
確かにぎくしゃくはしてたけど、決して勇気に何の興味もなくなったとか
そこまでは思っていなかった。

「だから、本当に申し訳ない。路夏に向き合わないで、それどころか、ありもしない敵を作って
自分をごまかしてた」
「謝るのは私のほうだよ。…学祭で軽率な事しなきゃ、勇気にそこまで心配させなくてすんだのに」
「でも、結果はどうあれ、原因を作ったのは僕だよ。女性と関わるという事に関して、
考えが甘かった」
「え…それってどういう」
「桂と伊藤の問題に関わってるうちに、ひとつ考えるようになったんだ。
あいつと同じにされたくないけど、僕も伊藤と大して変わらない男だった」
そんな事ない。そう言いそうになるのを抑えた。
勇気はとても大事なことを言おうとしてる……

「僕なりに考えてたつもりだけど、路夏の事、考えてるようで考えてなかった。
黒田とは中学からの友達なだけだし、桂とも相談に乗ってるだけなのに、
どうして僕の事信じてくれないんだって、自分の気持ちばかりで、
路夏がどうして僕を避けたり、怒ったりするのか、そういう気持ちに
目が行ってなかった……」
「…………」
「路夏が不安になるの当たり前だよね。他の女の子と関わっていたら、僕が浮気者に見えて」
「勇気……」
「僕が伊藤を疑って信用できなかったように、路夏も僕の事信じたくても
信じられず辛かったんじゃないかって、そう感じるようになったんだ」

やっと私の気持ちをわかってくれた。以前の私なら単純に喜んだだろう。
だけど、そうは思えなかった。
勇気は寂しそうな表情だったから。彼はもっと重い気持ちを秘めている……
447鏡W 奈落(貫く剣):2010/07/14(水) 19:34:08 ID:6Sd+dp+3
「これで僕の言いたかった事は全て話したつもり。……だから」
この先を聞いちゃいけない。とっさに私は口を挟んでいた。

「勇気、もういいよ。勇気の気持ちはよくわかったから」
でも、勇気のことばが止まらない。
「だから……これでも僕の事許せないと思うなら……
もう路夏の事は、潔く諦める。誰か別の男を好きになっても、邪魔しないし、
路夏が幸せでいるのを願うだけ」
「そんな…」
ちがう。ちがうよ。私はそんな事望んでいない…

「きっと、気付くのが遅すぎたんだ。……僕は路夏にとって必要のない男だって」
「そんな事…」
「え…?」
「そんな事勝手に言わないでよ!」
思わず私は叫んでいた。

「勇気っていつもそうじゃない。私の気持ち考えないで、突っ走ってさあ……
私はもう、勇気が他の子と浮気してるとか、そんな事思ってないよ。
ううん、本当はもっと前からわかってた。…でも、素直になれなくて、自分の素直になれない、
弱い気持ちを、わかってほしくて…… なのに、このままサヨナラなんて、イヤだ。絶対に嫌だ」

……また、お構いなしで言ってしまった。
勇気の気持ちを考えずに、感情を出してしまった。
ずるい女の子だって思われただろうか。
怒った次は今度は泣き落としかって。

沈黙がその場を支配する。
無言が続き、空気のラップで全身を包まれたような錯覚さえした。
何かを言ったら、全て終わる。
息をする事さえ許されないような、緊張。不安。そして、罰。
448鏡W 奈落(貫く剣):2010/07/14(水) 19:34:51 ID:6Sd+dp+3
10分ほど経って、勇気が口を開いた。
耳を塞ぎたいけど、手が動かない……

「……僕の気持ちは変わらない」
「…勇気。そんな… イヤだよ…嫌だ」
「僕は路夏が好きだ」
「…え?」
「僕も嫌だ。…誰にも渡したくない。路夏ともっと仲良くなりたいし、望むならどんな事だって……
さっきは潔い事言ったつもりだけど、自分に酔ってカッコつけてた。僕はとんだ嘘つきだ」
「勇気…」
「僕は未練たらしで、人の幸せを素直に喜べない、心の狭いチビメガネだ。
路夏が他の誰かと幸せに過ごすなんて、想像するだけで吐き気がする。
顔で笑って心で泣くなんて事、やっぱりできるかよ…
なに言ってんだろう、僕は」

手を握り締め、勇気は微かに震えていた。
勇気も自分にウソはつけなかったんだ……
そこまで私のことを……

「勇気のバカ。今だって、充分酔ってるよ。でも… うれしいな」
「許してくれるの?…あんなに誤解させて、傷つけたのに」
「許すとかそんなんじゃないって。最初から私は勇気の事が大好きだよ」

好きという気持ちがあっても、それが伝わるかは別。
それがわかっているようでわかっていなかった。
疑いやわだかまりがあったままでは、伝わらなかった。
今がまさに、本当の意味で私の気持ちを勇気に伝えられた瞬間だった。

「路夏…… 本当にごめん」
「もう、謝るのはなし。……今度は勇気の番。
もう一度、さっきのことば、言って」
「うん…」
今度は照れ臭そうに、でも柔らかい笑顔で。
私が一番言ってほしかった―――

「路夏のこと、好きだ。初めて知り合った時から」
「私も。勇気のこと、だいすき」
見つめ合い、私たちは無言になった。
目をゆっくりと閉じる。
勇気の顔が近づき、私のくちびるに、そっとふれた。

「ちょっとぶきっちょだったかな…」
「ううん。キスしてくれて、うれしいよ」
…今なら、受け入れられそうな気がした。

「私の部屋に、きて」
449448:2010/07/14(水) 19:35:37 ID:6Sd+dp+3
今日はここまで。勇気・路夏のやりとり考えるのは苦労する…
ダークなのを書く方が楽なのね(苦笑)
450名無しさん@ピンキー:2010/07/14(水) 20:09:19 ID:uJscACOb
超乙!!


…しかし、この後の事はどうすんだろ?…
前も後も、お口も「中古」の事…w
451449:2010/07/16(金) 20:00:58 ID:INoYzjWd
粛々と投下。
452鏡W 奈落(貫く剣):2010/07/16(金) 20:01:44 ID:INoYzjWd
3

ベッドに並んで腰掛けるふたり。

「……ん…」
そっと、勇気のくちびるに、キスをした。
ここでは、打算も変なごまかしも、必要ない。
もう無理な背伸びなんか、しなくていいんだ。

抱きしめあい、静かに熱くなる。

「やわらかいね。路夏のからだ」
「もう、エッチね。勇気ったら」
今ならわかる。勇気は最初から私のことを私として見てくれていた。

また抱き合いながらキスをしたり、髪を撫であったりして、
気持ちが高まっていく。
服を脱がしあい、私たちは、生まれた時とほとんど同じ姿になっていった。

暖房の音だけが静かに響く。
抱き合っていたからだを少しだけ離し、
裸を見つめあい、ちょっとはずかしくなった。

「んもう。ジロジロ見ないの」
「ずるいなあ。お互いもう隠すものはないじゃないか」
「気持ちの問題よ。気持ちの」
やっぱりまだ照れが出てしまう。
つい胸を手で隠しちゃった。
お返しだ。こっちも勇気のからだをじーーっと見つめる。

「こうなってるんだね。勇気のって」
「…ぬう。何かはずかしいな。てっきり嫌がられると思ってたけど」
「勇気もはずかしいって思ったりするんだ」
「まあね。こういう形で裸見られるのは、路夏が初めてだよ」
私と同じくらい小柄だけど、薄いながらも筋肉はあり、
ソレはちゃんと男性そのものだ。
それを見て、勇気も男の人なんだなと思う。
453鏡W 奈落(貫く剣):2010/07/16(金) 20:02:09 ID:INoYzjWd
「きたないよ。無理しなくていいってば」
「ううん。勇気のだから、平気よ」
口からはそんなことばがでるけど、少し緊張していた。
割り切ってた時は何とも思わなかったのに、今はどきどきする。
手を添えて、勇気のソレを口に含んだ。

「いたっ」
「あっゴメン… 痛かった?」
「大丈夫だよ。これくらい」
歯が少しぶつかったみたい。
先の方を含めるだけでいいのかな?
舌でそっとふれてみた。

「顔真っ赤。こういうのは知ってるんじゃないの?」
「そりゃ知ってるけどさ、…あん」
感じているんだ……

初めて、してあげたいと思った。
手段としてのそれじゃなくて。
少しだけしゃべるのを止め、彼のを愛撫するのを楽しむ。
勇気の息遣いと湿った音が微かに聞こえ、私も顔が熱くなった。
454鏡W 奈落(貫く剣):2010/07/16(金) 20:02:47 ID:INoYzjWd
愛撫を休めて口を離すと、勇気がキスをしてきた。ちょっと強引。
舌を絡めあい、不慣れなダンスをしばし踊り続ける。
「きたないんじゃなかったの?」
「お相子」
「うふふ、勇気ってば」
「なんだよ笑うなんて」
「変なトコでやっぱりまじめなんだね」

そんなささやかな事でも共有しようとする勇気が
なんか嬉しくて。こういう気持ちをいとおしいとか言うのかな?
でも、つい彼に売りことばを言いたくなっちゃう。

「む。なら、僕だってやってみる」
そう返しながらも、勇気の目はやさしかった。
さっきのように仰向けになり、今度は勇気に任せる。
再びキスをして、細身の手で私のからだをさわりだした。
ぎこちないんだけど、心地いい。

「くすぐったいよ。もう少し強くしてもいいかな…」
「そう?加減しないと、何か壊しちゃいそうでさ」
「それは大げさ…でもないかな。やっぱりやさしくさわられたいよ」
「僕、結構思い込んじゃうから、路夏がはっきり言ってくれて
変に勘違いしなくてすむ。…でも、はずかしいとか思ったりしないの?」

「…はずかしいよ。察してくれるのが一番いいけど、それだけだと
やっぱり無責任だと思うの。自分のことなんだから」
「しっかりしてるんだね…… 思ってることがそのまま伝わればいいのにな」
「他の女の子だって、きっとそう思ってるよ…… うん、こんな感じ」
話しながらのおかげか、勇気も少し落ち着いてきたみたい。
なんだか私が勇気に教えてるみたいだけど、いっか。
普通は逆なんだろうけどね。
455鏡W 奈落(貫く剣):2010/07/16(金) 20:03:35 ID:INoYzjWd
「そろそろ…いいのかな?」
「ん… もうちょっと……」
からだの緊張がだいぶほぐれてきた。
もうすこし。私のからだがそう言ってるような気がする。
あとは………。

「いいよ。やさしくして」
「わかったよ」
だいじょうぶ。勇気は私を大事にしてくれる人。
短気で、思い込みが激しくて、無神経で毒舌で。
でも、誰よりも相手の為に一生懸命になれる男性。
あとは私自身。心を開いて、受け入れるんだ。

「すべって、その…ああもう」
「落ち着いて。あせらなくても私は逃げないよ」
「路夏が落ち着きすぎなの。その、初めてだし」
「人のせいにしない。最初からうまくやろうなんて思わなくたっていいよ」
深呼吸して、うん。
気持ちにうまくシンクロできれば……

「……きて」
「いくよ…」
ゆっくりと、勇気のソレが私のなかに入ってくる。
一瞬だけ、これまでの事が頭の中によみがえってきた。
勇気は今まで私を通り過ぎた男とは違うよ。
疑わないで、路夏……
456鏡W 奈落(貫く剣):2010/07/16(金) 20:04:16 ID:INoYzjWd
「痛くない?」
「聞かないで、そんなこと」
「ごめん…」
「違うの。しばらく、こうしていたいの」
涙が出る。
こうして、つながっているだけなのに、
欠けていたパズルのピースがぴったりと当てはまったような、
そんな充足感。

「じっとしてるだけで、うれしいんだ」
「うん。勇気は動きたい?」
「……ちょっと。でも、路夏が喜んでくれるなら、がまんする」
また、深いキス。
首に手をまわし、肌と肌がふれあいながら。
間近で見つめあい、静かに語り合う。

「激しく動かさなきゃいけないって思ってたけど、違うのかな」
「……わかんない。でも……今はこれがいいの」
「…………」
「とっても落ち着けるの。勇気に愛されてるんだなって」
「路夏って、とても繊細なんだね…… 情報なんかあてにならないや」
「もう、ムード壊すような事言わないで」
勇気が苦笑いし出す。一言多いんだから。

でも、しょうがないのかも。
だって、こういう事は誰も教えてくれないし、
頼れるものがメディアの受け売りとか、人づての話くらいしかないもの。
何も考えないで、鵜呑みにした方が楽なんじゃないかとさえ思う。

だけど、それでは多分、幸せになれないんだ。私も。勇気も。
自分の心に正直になる事が、私たちを幸せにしてくれるんだと。

そう感じていた。
それは簡単でとても難しい事なのかもしれない。

……いまなら、よさそう。
「動いていいよ」
「うん…」
457鏡W 奈落(貫く剣):2010/07/16(金) 20:04:45 ID:INoYzjWd
「はあ…あん…」
息遣いが徐々に熱を帯びる。
それが私と勇気の興奮を高めて、快感に変わっていく。
波が静かに打つような…… なんともいえない。
そして、それ以上に満たされていた。

「何か、路夏の表情、いいよ…」
「そうなの?自分の顔は見えないから、わかんないよ」
「目がとってもキレイなんだ」

ぎこちない営みだと、慣れた人が見れば、笑うのかもしれない。
でも、そんなのは関係ない。
何かに踊らされて、傷ついたり傷つけてしまうようなセックスはいらない。
私と勇気がいま望んでしているコト、それが答え。

「出そうだよ、路夏…」
勇気がそう言ってすぐ、私のなかから引き抜かれ、
私のお腹に熱いものが迸った。

勇気がティッシュで私のあそことお腹のあたりを拭き出し、
ちょっと照れ臭い顔になる。
そしてまた、何も言わず、私たちはキスをした。
余韻に少しでも浸っていたい。
458457:2010/07/16(金) 20:05:25 ID:INoYzjWd
今日はここまで。エロというよりはラブシーンのつもり。
色んな意味でバランスをとって書くのが難しかった(苦笑)
459458:2010/07/19(月) 13:21:49 ID:NsIy7tjZ
昼から投下。今回で4部終了。
460鏡W 奈落(貫く剣):2010/07/19(月) 13:22:21 ID:NsIy7tjZ
4

私のすぐ隣に私と異なる香り。
勇気のにおい。
「その… しちゃったね」
「…そうだね」
お互いに手を握ったまま、私たちはベッドで寝てお話していた。

「眼鏡外すと、女の子みたい。勇気って」
「あー、そういう事言うんだ。人の気にしてるコトを」
「ごめーん。ついいじめたくなっちゃった」
「性格わるい。路夏って」
照れ隠しに、ついこういうコトを言ってしまう。
初めてじゃないのに、何だかやっと自分が本当に望んでいたコトを
叶えられた気がする。

甘えたくなって、勇気の頭に自分のそれをくっつけた。
より間近に彼の顔が映って、独り占めしてるみたい。
私のことを目がきれいだって言ってくれたけど、こうして見ると勇気も
目鼻立ちが整って、女の子と間違えそうなくらい、可愛い顔だ。
(なーんて言ったら、また怒りんぼになっちゃうね)

「もっと早く、勇気とこうなりたかったな」
「僕もだよ路夏。……色々あったけど」
「カンタンな事だったんだね、本当は」
今までの事が嘘みたいに、私はやすらぎを感じていた。
やっぱり、好きな人と一緒に過ごせる事が、
こんなに心地いいなんて。

どうして、あんなにも疑ったんだろう。
素直になれずに、傷つけあったりしたんだろう。
私たちは、お互いに惹かれあっていたのに……
461鏡W 奈落(貫く剣):2010/07/19(月) 13:22:53 ID:NsIy7tjZ
……そうだ。まだ明かしていない秘密があった。
今の今まで、自分のした事なのに、忘れていた。
私って、本当にバカだなあ……

「ねえ、勇気」
「うん?」
「もう一つ、正直に言いたい事があるの」
「なに?」
「私も、素直になるのが怖かったの。…だから、誰に興味あるのかって最初先輩に聞かれて、
思わず嘘ついちゃった。中学が同じだった伊藤の名前を出しちゃったの」

そう。元をたどれば、迷走の始まりは私がついた小さな嘘からだった。
そこからタイミングが悪かったり、信じきれずに疑ったりして、
惹かれあってるはずの私たちは、本来の道からどんどん外れてしまい、
ようやく、もとの道に戻ってこれたんだ。

「じゃあ、伊藤に興味あるらしいってのは……」
「うん。私のせいなの。最初から正直に、勇気が好きだって言えばよかった」
「そうだったんだ… 何かお互いに無駄に遠回りしてばっかりだったね」
「ホントそうだね」
でも、すんなり勇気とくっついてたら、何か問題が起きた時に、
何も考えずにあっさり別れちゃってたかも。
そう思うと、今までの遠回りも、自分自身を見つめなおす機会となり、
私たちを成長させてくれたのかもしれない。

今までだったら、誰のせいでこんな苦労したと思ってるのよ〜とか言って、
また勇気とケンカしてたんだろうな。
でも、今なら……
462鏡W 奈落(貫く剣):2010/07/19(月) 13:23:34 ID:NsIy7tjZ
「ごめんね。今まで勇気の事疑ったり、意地張って困らせて」
「いいよ、もう。僕のほうこそ、ごめん」
「これからは勇気しか見ない。もうあんな事する必要、ないもん」

このまま、時間が止まってくれたら―――
私と勇気、2人だけの世界に閉じ込められたい。
幸せが逃げないように。

「そうだ、まだ携帯の電池入ってる?」
「うん。それがどうかしたの?」
「撮ろっ 記念に」
「え、だって裸じゃないか」
「バカ。隠すに決まってるでしょ」
463鏡W 奈落(貫く剣):2010/07/19(月) 13:25:11 ID:NsIy7tjZ
「今度姉ちゃんが居ない時、おいでよ」
「うん、そうするね」
「じゃ、また」
「バイバイ」
家の外に出て、勇気を見送る。
彼の姿が見えなくなった後、家の中に入り、玄関のドアを閉めた。

いつもより遅い夕食を取る。
ひとりで食べるのはとっくに慣れてるけど、今日はちょっと寂しいな。
勇気にもなにか出してあげればよかったかな?
でも、あんまり遅いと先輩に怒られちゃうし、しょうがないか。
(勇気は迷惑そうだけど、仲のいいお姉さんがいるのはやっぱりうらやましい)
あ。今日のコト、知恵先輩に聞かれるかも… ますます先輩には頭が上がらなくなっちゃうなあ。
今度はちゃんと正直に言おう。

後は歯ブラシして、お風呂入って、おやすみしよ。
今日はすてきな夢が見れそうだ。

湯船に浸かりながら、楽しい想像に胸をふくらませる。
まずは普通のデートをゆっくり楽しみたいな。
2人でいろんなトコ行きたいし、そもそも
あまりにも2人だけで過ごす時間が少なすぎた。
でも、もう焦らなくていいんだ。

浴室から出て、いつものようにバスタオルで髪や体を拭く。
さてと。ドライヤーで髪を乾かして。
私は洗面所の鏡を見た。
464鏡W 奈落(貫く剣):2010/07/19(月) 13:26:21 ID:NsIy7tjZ
ずきん。

……あれ。
胸が痛い。ずきずきする。どうしちゃったの、私?
身体の震えがとまらない。
歯がカチカチして、あれ、涙もとまらないよ。
本当に風邪でもひいちゃったのかな…?

とりあえず、居間に行こう。確か市販の風邪薬がまだ残ってたはず……
自分が映る鏡から背を向け、ドアノブに手をかけようとした。
しかし、ドアが開き、見慣れた廊下が見える事はない。
開けるより先に、ドアの横の棚に置いてあったモノが視界に入っていた。
お風呂に入る時は解いている、勇気がくれたリボン。

……そっか。
私もう、勇気とは幸せになれないんだ……
勇気の温かさが、痛いよ。苦しいよ。

それは、罪悪感という名の、痛み。
偽りのない優しさが、静かに責め続けていた。
それは治まる事なく大きくなり、私を呑み込んでいく。

確実に、大事なものを失った。自分で、自分の身体も、そして心も汚してしまった。
いや、それに気づかないふりして、ただ加藤を苦しめたいあまりに、
私、とんでもない恐ろしい事しちゃったんだ……
それはもう二度と、取り戻せない。

勇気と結ばれて、はっきりとわかってしまった。
こんな私はいなくなった方がいい。生きてるだけで、きっと勇気を苦しめる。

だったら………… 


(第4部 奈落(貫く剣) 完)
465464:2010/07/19(月) 13:29:00 ID:NsIy7tjZ
今日はここまで。理不尽に耐えれても、自分の犯した事には結局
耐えられなかったな……
5部は短いので次の投下でエピローグまで行くかもしれません。
466465:2010/07/22(木) 20:26:18 ID:bDp3vZvJ
最終部投下。今日で長編も最後。
467鏡X 最後の日:2010/07/22(木) 20:26:55 ID:bDp3vZvJ
最後の事務手続きはあっさりと終わった。

これで榊野学園とは今日でさよならだ。叔母さんが
辛いだろうから代理で行こうかと言ってくれたけど、
最後くらいは自分がこれまで居た学校にお礼したいと思い、
こうして門をくぐった。

明後日からは叔母さんの家でお世話になる。
本籍が変わるのはもう少し先だが、引越しだけ先に済ませる事で話が進んでいる。
思い出の多い、今まで住んでいた町を離れるのは、やっぱり寂しいけど、
自分を取り戻すためには、必要な事なんだ。きっと。

私が編入する予定の学校も、部活動が盛んらしく、
バスケもそれなりに強いそうだ。
今はまだ身体を動したい気分じゃないけど、
落ち着いたら、また始めてもいいかも。

失ってわかる、平凡な日常の大切さ。
今の自分にはそれがよくわかる。…なんてね。
私らしくないかな。

そんな感傷に浸っていたところ、携帯が鳴った。
叔母さんかな?明後日の引越しの事についてだろうか。
そう思い、私は携帯を開いた。
468鏡X 最後の日:2010/07/22(木) 20:27:31 ID:bDp3vZvJ

FLOM 喜連川 路夏

会って話したい事があるの。
来たくないならそれでもいいけど後悔するかもね。
あの場所で待ってる。


「何であいつが、私のアドレス知ってるのよ……」
七海か夏美達が教えたのか?
いや、七海は勝手に人のアドレス教えるようなヤツじゃないし、夏美達もあいつとは
何の接点もないはず。じゃあ一体誰が……

それより、何で喜連川が私にわざわざメールを送ってきた?
まさか、今になって仕返しでもしようと企んでるのか?
あれ以来私を避け、部活にも出ず、遠山達のオモチャになって屈したと思ってたが……
家の事でそれどころじゃなく、気にする余裕などなかったけど……
気味が悪い。

もしあの事をバラすつもりなら……
新しい場所でやり直そうって時に、これ以上のトラブルはもうたくさんだ。
とにかく、話とやらを聞く以外なさそうだ。
あいつの思い通り動くのが気に障るが、仕方ない。
469鏡X 最後の日:2010/07/22(木) 20:28:23 ID:bDp3vZvJ
2

はたして、路夏は1人で、そこにいた。

「…久しぶり。ちょっとやつれたんじゃない」
「相変わらず汚い部屋ね。…こんな所でよろしくヤッてるつもり?」
遠山達の溜まり場は、以前乙女が路夏に暴挙を働いた時よりも、埃まみれで薄汚れていた。
窓に打ち付けてあった板の一部が外れ、釘がむき出しになったまま床に転がり、
いろんな物が無造作に捨てられ、ゴミ置き場のようだった。

「それで、話ってのは何なのよ?」
「…………」
「私をからかいに呼び出したんなら帰るよ」
「……ご愁傷様ね、加藤」
静かに路夏は話し出す。
感情を顔に出していた以前と異なり無表情で、
また、髪を結ばずそのまま下ろした姿も、乙女にはより不気味に見えた。

「何よ…… 私が家族失ってざまあみろとでも言いたいの?」
「私は根に持つ方だから。……いい気味だよ」
皮肉を言う路夏。
乙女は一瞬睨むが、口をつぐんだ。

「前みたいに突っ掛からないんだ?散々私をいたぶってたのに」
「もういい…… どうせもう会う事もないし、私は静かに暮らしたいの。
ほっといて」
「…………」
「心配しなくても、あの時撮った画像をばら撒くつもりはないわよ。遠山と松平も、
変に逆らわなきゃそのうちあんたに飽きるでしょ」
「……信用できない。私の知らない所で画像流すに決まってる」
「疑り深いわね。……わかったわよ。消せばいいんでしょ消せば」

路夏の目の前に乙女の携帯が突き出された。
無言で操作し、携帯写真のメモリーを開く。
そして、あの時の痴態が小さな画面に映し出された。
470鏡X 最後の日:2010/07/22(木) 20:29:50 ID:bDp3vZvJ

削除しますか? YES/NO?
画像は削除されました。


「ほら、これであんたの心配の種もなくなった。……もういいでしょ、私まだ
他にも手続きしなくちゃいけないの」
これ以上この場にいたくない。乙女の顔からは嫌悪感が滲み出していた。
あの時のことを思い出させる以外にも、何か今までと違う――

「加藤…… あんたには全てを知る権利と義務がある。このまま転校するのは許さない」
「……どういう意味よ」
「あれ、私が全て仕組んだと言ったら?」
「あれって、何よ」
思わず乙女は聞き返したが、それが既に路夏を通して
真実という毒針に刺された事に、気づくのが遅かった。

「あんたの家族が死んだ事」
「はあ?何言ってるのよ。こんな時に冗談やめてよ」
しかし乙女の言う事に構わず、路夏は話し続ける。

「中学の時、あんたのお父さん、お母さんのお店のお客さんだったじゃない。
その事しゃべったら、青ざめた顔してたよね」
「今更そんな話聞きたくないよ… 私にあの時の事謝れっての?
ならゴメンなさい、私が悪かったです。これでいいでしょ?」
「あんたのお父さん、良い人だよね。お金をたくさん貢いでくれたんだから。お母さんに」
「やめてよ…」
「男の人って結構繊細なんだから、お家でもうちょっと労わってあげればよかったのにね」
「だからやめろってば!」
「その気になれば、私の事殺すくらい出来たのに、自分独りで勝手に人生終わらせちゃった」
「やめ……え?」
え…… 今、なんて……?
ねちねちと責める路夏を毛嫌いしながらも、彼女の今の言い回しに乙女は違和感を感じた。
まるで、父親が死ぬのを知っていたかのように思える口ぶりに。
471鏡X 最後の日:2010/07/22(木) 20:30:26 ID:bDp3vZvJ
「あんたの苛めの事とか、私をレイプさせた事とかしゃべったら、ね。
無理もないかな。冴えないけど気の優しい人だったし。多分最初にお店に来たのもほんの
気晴らしだったんじゃない?」
「父さんが、あんたに……」
「きっと全てが信じられなくなっちゃって、魔が差したんだと思うよ。私と寝ても、
やっぱり本心では奥さんやあんたの事を想ってたんだろうね」
「……!? 嘘だ… 父さんがあんたなんかと関係するわけ…」
「同じような事、あの人も言ってたよ。信じるだけじゃどうにもならない事ってあるのに。
お母さんの事、身体使って客取ってるって、中学の時あんたバカにしてたけど、
私はその通り実行しただけだよ」
淡々と事実を話す路夏に、乙女は初めて恐怖を感じた。

わからない。こいつの思考回路がわからない。
私に嫌がらせする為だけに、自分の身体まで使ったって言うの?!
それで父さんが……
こいつ…… 人間じゃない…… 人の姿をした悪魔だ!!

「最初はただ加藤が苦しんでくれればって思ってたけど、ここまで酷い結果になるなんて、
私も思わなかった」
「じゃあ… あの放火の犯人って……」
「そ。私」
「あんた…… まさか最初からそのつもりで私の家を狙ったの!?」
「そーよ。今頃気がついたの?あの日、あんたの妹やお母さんがいたのは
誤算だったけど、まあ、運が悪かったとしか言いようがないね」

悪びれた様子のない路夏に、乙女は猛烈な不快感を覚えだした。
心は怯えから、憎しみに染まっていく。
元々は自分が蒔いた種である事も忘れ、目の前のこの女を殺してやる――
ただその一点に絞られていく。

「私、嬉しいの。あんたが変わらず私を見下してくれて」
「ふざけんなッ!この人でなし!!」
「それは加藤もでしょ?元々あんたがあいつら使って私を犯して愉しんでたくせに」
「だからって、可憐や父さん、母さんは何も関係ないじゃない!?私が憎いんなら
何で私だけ狙わなかったのよ?!」
472鏡X 最後の日:2010/07/22(木) 20:31:46 ID:bDp3vZvJ
「大切なものを奪われ、壊される苦しみをたっぷり味わってほしかったの。
子供の不始末は親にも責任あるんじゃない?半分はあんたの自業自得だけど」
「ぐっ……!」
黙れ……! 悪魔の分際で私に話しかけるな!しゃべるな!!

「それに、最初から襲っても自分の事棚に上げて、私を恨んだでしょ?
加藤の事は、私、よおくわかってるから」
激昂した乙女は路夏の胸倉を掴み、殴りつけた。

「何すんのよっ!」
「あんたのせいで……うちの家族がめちゃくちゃになったんだ!……お前さえいなけりゃ……!」
あの時だってそうだ。学校で父さんの事暴露されて、どれだけ傷ついたと思ってるんだ……!
自分の部屋でどれだけ泣いたと思ってるんだ………!!

乙女は近くに落ちていた短い角材を拾い上げ、
路夏の頭に振り下ろそうとした。路夏はとっさに身体を横に開き直撃をかわしたものの、
彼女の膝にそれが当たってしまった。
「ぐわっ…… うぅ…」
痺れるような痛みに思わず路夏は硬直した。

彼女の呻き声に構わず、乙女は執拗に路夏の足を打ちつける。
バランスを崩し、路夏は仰向けに転んだ。
路夏は後ずさりしながら携帯を取り出し、連絡をとろうとしたが、
すぐさま腕を叩かれ、それを落としてしまった。
乙女はそれを蹴りつけ、携帯が路夏のそばから遠ざかった。

仰向けになった路夏の腹や胸を思いきり蹴り、踏みつけた。
角材で彼女の膝を再び打ち、それが折れると、その切っ先を向け、左の太ももに突き刺した。
「えあ…っ…う…あああッ!!」

数回ほど刺すと、今度は石灰入りの粉袋を投げつけた。
しかし、重みでその袋が破れて粉がもうもうと舞い、それがさらに乙女を怒り狂わせる。
次々とぶちまけ、投げつけた。
粉まみれになっても怒りは収まらず、力任せに路夏の首に手を掛け、絞めあげた。
その姿は以前のように見下す余裕などなく、悪鬼に支配されたかのようだった。
473鏡X 最後の日:2010/07/22(木) 20:32:45 ID:bDp3vZvJ
(……加藤とはずっと友達だから。忘れないよ)
「………!」
あの時誠に言われたコトバが何故か浮かんだ。

(伊藤……)
路夏の首から両手を離し、乙女はその場から立ち上がった。
ぜいぜいと荒い息を吐きながら、ぐったりとした彼女を見下ろす。

(喜連川路夏は、私の家族を皆殺しにした犯人ですって、訴えてやる)
とにかく、この部屋を出たい。
この忌わしい白い空間から、早く抜け出したい。
そう思い、出口に向かおうとした。

「…どこに……行くつもりよ」
咳き込む音に掠れた声。
それは無機質を通り越し、呪いのようだった。

「決まってるでしょ。警察に電話するのよ」
「そんな事したら……加藤だって、きっと捕まるよ」
「……構うもんか。あんたみたいな危ない奴を野放しにするほうがどうかしてる。
……もうこんな思いしたくないから、これからはせいぜい大人しく過ごすわ」

あははははは……
掠れた路夏の笑い声が響くが、もうどうでもよかった。
ただ部屋から出たかった。
「加藤って、本当に単純だよね…… 救いようがない……馬鹿」
「まだそんな減らず口叩くつもり?警察が来るまで大人しくしてろっての」

両足を負傷し、肋骨にも何本かひびが入り起き上がれない路夏に乙女は背を向けた。
今度こそ、二度と会う事もないかのように。

「なんで………レイプされた部屋にわざわざ……呼び出したと思ってんの……
ここは……あんたと、……罪を犯した私の……」
スカートのポケットから取り出されたモノ。
粉が舞って酷い視界の中、厳かな儀式のフィナーレの如く、
ソレを自由が利く指で弄り出す。

「死に場所」

そして火のついたソレを、天井に向かって放り投げた。


(第5部 最後の日 完)
474鏡 エピローグ:2010/07/22(木) 20:33:29 ID:bDp3vZvJ
エピローグ

「路夏、気分はどう?相変わらず夢の中は楽しいのかな」
椅子に座り、足利勇気は穏やかに語りかける。
いつものように。
呼びかけにも何も反応しない、眠り姫。

今日も路夏は眠ったままだ。
まるで君の時間だけ止まったみたいに。
夢の中で、裏切りや憎しみあいのない、理想的な学校生活でも送っているのだろうか。
とてもあんな事件を起こしたとは思えない、少女のままの顔だ。

……どうして、路夏の哀しみに気付けなかったんだろう。
僕はどこで選択を間違えてしまったのだろう。

もっと最初から素直になれていたら、きっとこんな事にはならなかった。

あれから4年経って、僕も大学生になった。
当時の事件の事も、世間からとっくの昔に忘れ去られてしまった。
姉ちゃんからは、事件の事も路夏の事も忘れなさいと忠告された。
絶対に辛くなるだけだから。自分のためにも。そして路夏のためにも。
僕も最初は、自分には背負えないと思い、忘れようとした。
475鏡 エピローグ:2010/07/22(木) 20:34:06 ID:bDp3vZvJ
路夏と対立した加藤は一家揃って、この世からいなくなってしまった。
爆風の衝撃で全身を強打し、救急隊に保護された時には手遅れの状態だったそうだ。
亡くなった両親の親族が訴訟を求めているが、路夏がこの調子で未定のままだ。
加藤と路夏は、互いの影を映しあい、でも決して交わらない鏡のような関係だったのかもしれない。
そしてその鏡は、粉々に割れたまま。

路夏のお母さんは責任を感じて、働いていたお店を辞めた。

あの爆発にも関わらず、路夏は奇跡的に一命を取りとめた。
しかし、衝撃の際に頭を強く打ち付けたらしく、未だに意識不明のままだ。
今後意識を取り戻す可能性は絶望的だと言われている。
目覚めてほしい気持ちと、でも目覚めないままの方が幸せかもしれないという気持ちが
せめぎ合って、僕は今日も過ごしてる。

「本当に、卑怯だよ……路夏……」
なにもこんな形で、僕を繋ぎ止める事、ないじゃないか。
愛されるのが、怖かったのかな。
僕の勝手な思い込みかもしれないし、今となっては、何もわからないけど。

やがて面会の時間が過ぎ、僕は『また来るね』と言い、病室を出る。


空だけが、青い。
携帯を取り出し、写真ファイルを開く。
機種は当時と違うけど、あの記憶の証は残したままだ。
あの時は恥ずかしかったけど、路夏と結ばれた後、僕の携帯で撮った2人の記念写真が
今のところ最後のメモリーになっている。
あの時の路夏は、本当に輝いていた。

僕は決して、忘れないよ。
好きとか嫌いとか愛してるとか、もうどうでもいいのかもしれない。
路夏という存在を忘れられない。


鏡  FIN
476あとがき:2010/07/22(木) 20:38:42 ID:bDp3vZvJ
ようやく終わりました。まあ、爆発ネタは完全にマンガです(苦笑)
原作やバレイズにもありましたが、あれはあくまでギャグだしなあ……
少し経ったら、また別のSSを投下しようかと思います。
それでは。
                  
                      mark
477名無しさん@ピンキー:2010/07/22(木) 21:21:33 ID:1H9lewx4
乙でしたー
路過の暴走と加藤家の災難にどんどんひきこまれていったぜ・・・

ふと気になったんだけど路過が放火した件ももう表沙汰になってるのかな?
真実を知った乙女は死んでしまったし。
まぁ、警察が路過の事を調べ上げれば色々分かりそうか。
478名無しさん@ピンキー:2010/07/23(金) 11:53:05 ID:eciCxq+p
乙。本当に乙!
最初から最後まで引き込まれる良作をありがとう

>好きとか嫌いとか愛してるとか、もうどうでもいいのかもしれない。
>路夏という存在を忘れられない。

ここにマジで泣いた
何をもって幸せとするかは分からないが、このまま眠り続けているのが路夏にとっては一番なのかもな

新作も楽しみにしてるよ
479名無しさん@ピンキー:2010/07/23(金) 15:44:06 ID:s8pXtW4I
大作乙でした
チキンハートな俺にはガクブルな展開だったけど、読み応えはあったよ!
でも、>>468の一行目でずっこけたことは、ひっそり呟かせて頂こう・・・。
(笑ったせいで、そんなに怖くなくなったんでw)
480名無しさん@ピンキー:2010/07/23(金) 17:19:44 ID:Ji7ghWYk
>>479
今気付いた
FROMだよな?
481名無しさん@ピンキー:2010/07/23(金) 17:52:16 ID:t54ninli
サスペンスみたいで面白かった。GJ!

>>477
遠山あたりが言ってるんじゃないかなぁ・・・。
前にこのスレにURLが貼られてたその他もろもろ氏の
12話アフターのSSで言葉がほぼ死亡の行方不明扱いになってたことをいいことに
言葉についてあることないこと言った乙女やレイパーみたく、路夏の意識が
戻りそうにないのをいいことに・・・・・・って可能性はあるかもしれない。


とくにこの鏡の場合、強姦の被害者は意識不明、依頼者は家族揃って死亡・・・だからあのSSの
場合よりその可能性は高いはず。

482丁字屋:2010/07/23(金) 22:09:04 ID:QXYdnUxl
>>476
乙&GJ!
なんというか、非常に激しい物語でした。

それでは「贄と成就」アフター
>>426からの続きいきます
483丁字屋:2010/07/23(金) 22:09:47 ID:QXYdnUxl

「桂さんは本当は澤永と付き合うのは、最初から嫌だった?」
桂が、一瞬の間の後、コクリと小さくうなずいた。

「ありがとう、わかったわ。
ごめんね桂さん、いろいろ質問したりして…」
「い…いえ…」
「それでね桂さん、今度はお願いなんだけど…」
「は…はあ…」

「私たちは今桂さんが受けてる現状は絶対よくないって思ってるし、何とかしてあげたいって思ってる
 ……ううん、必ず何とかする!
 ね、勇気」
「え?ああ、もちろんだ」
路夏にいきなりふられて一瞬戸惑うが、それでも僕はその言葉に力強くうなずく。
「は…はい、ありがとうございます」
桂は戸惑いながら、そうお礼を返してきた。

「だから桂さんはそれまでは、伊藤に近づかないで欲しいの」
「え?」
その言葉に桂が怪訝な表情になるが、路夏は更に続ける。
「桂さんは伊藤とずっと話をしてないんだから、すごく寂しいだろうし、伊藤と話をしたいってのは私にもわかる。
 だけど今の状況で桂さんが伊藤に近づこうとしても、結局邪魔されたり、ますます嫌な目に合わされるだけ…」
「……」
「でも今言ったように、そんな状況は私たちが必ず何とかする。
 そうしたら桂さんが伊藤ときちんと話し合える場も設けたっていい。
 だから…今は具体的にどうするって方法は見つかってないけど、それでも私たちを信じて、
 あとしばらくだけ伊藤に近づくのは我慢して」
路夏の言葉をじっと黙って聞いていた桂は、話が終えると、路夏と僕の方をはっきり見て
「わかりました」
そう言った。
484丁字屋:2010/07/23(金) 22:10:56 ID:QXYdnUxl

「い、いいのか?」
僕は思わず問い返すが、桂はそれに対しても
「はい」
とはっきり答えた。
「私、今ほんの少しだけ話しただけですけど、お二人が本当に真剣に私のことを心配してくれていることはわかります。
 だから私もお二人のことを信じて、言うとおりにします」
桂がそう言ってくれたことで話は決まった。

そしてこれからの連絡のためにお互いの携帯番号やメアドを教え合ったりしていると、昼休み終了の鐘がなった。
先に図書室を出ることにした桂に、僕は
「なあ桂、僕らのこと簡単に信じちゃって本当にいいのか?」
と尋ねた。

無論僕らには桂を騙すつもりなどはない。
だがこれまで桂は、友達と思っていた西園寺にも、恋人だったはずの伊藤にも
(伊藤のことについては桂は認めないであろうが)ひどい形で裏切られているんだ。
だから僕は、そんな桂がどうしてまだ親しいとまで言えない僕や、
今初めて話したばかりの路夏のことを信じると言えるのか、不思議といえば不思議だった。
だが桂は
「はい。さっきも言ったように、お二人が私のことを真剣に考えてくださっていることはわかりますから。
それに……」
「え?」
桂はその時僕を見て、いたずらっぽく笑った。

「それに…足利君が私のためにそんな格好までしてくれたんですから、信じないわけにはいかないじゃないですか」
「なっ?!」
路夏はそんな僕らの様に吹き出しながら桂に「私たちも桂さんの信頼に応えられるように頑張るからね」
と改めて言った。
桂も
「はい。よろしくお願いします」
と素直に答え、そして部屋を出て……出ていく前にもう一度振り返り、
「足利君、本当にかわいいですよ」
「なっ!?言うな!」
「うふふっ♪」
そんな楽しそうな笑い声と共に、本当に出ていった。
485丁字屋:2010/07/23(金) 22:11:31 ID:QXYdnUxl

桂の出ていったあと、僕らはしばらく黙っていたが、やがて路夏が口を開いた。
「勇気、桂さん、勇気のことかわいいだって」
「うん…」
「よかったね、勇気」
「うん…」
「うわっ、勇気ったらやっぱり女装した自分をかわいいと言われることの喜びに目覚めてたのね!?」
「え?ばっ…違う!」

そうじゃなくて、僕は4組の教室に桂を迎えに行った時にそのひどく暗く沈んだ顔を見ているからこそ、
さっきこの部屋を出ていく時に僕をかわいいと言いながら桂の見せた笑顔を見て思ったんだ。
えらく恥をさらした気もするし、路夏にさんざんからかわれたりもしたけど、
あんなに沈んでいた桂にあの笑顔を浮かべさせられたんなら、
それだけでこんな格好をした甲斐はあったって。

そんな僕の思いに応えるように、路夏が言う。
「わかってるって。勇気の気持ちは…」
「え?」
「桂さん…笑ってたもんね」
「ん…ああ…」
見ると路夏の顔はどこか悪戯っぽく、しかし優しく微笑んでいた。
その顔を見ると、からかわれたことも、気持ちを見透かされていることも気にならなかった。
ああ、今目の前で微笑んでいる女の子の子が僕の彼女なんだ。
それがとても嬉しく、そして誇らしかった。

だがその路夏の表情はすぐに陰った。
「でも、またあの教室に戻ったら桂さん、笑ってなんかられないだろうね…」
「ああ…」

そうだ。だからこそ、一刻も早く桂を苦しめている現状を何とかしてあげないと…。

486丁字屋:2010/07/23(金) 22:12:38 ID:QXYdnUxl

また短いですが、今回はここまでです。
次回は意外な展開が待っているかも?

487続あとがき(mark):2010/07/23(金) 23:03:54 ID:DB2xd4kD
言われてみれば、指摘どおり完全にイージーミス…
LじゃなくてRだった(汗)

以前感想出してた別の人も事言ってたけど、
やっぱしハード一辺倒だけでなく適度に緩急つけてるので、シリアスなんだけど
比較的読みやすいかと>丁字屋氏
そっちの路夏と勇気は道を誤らない事を願いたいものです。

>>477>>479
粉塵爆発の事件以外だと、放火は多分路夏の仕業だとわかるかと。
ただ遠山たちは黙して語らずでしょうね…
余計な事して「真相」が発覚されるのを嫌うでしょうから。

まあ参考にした元ネタの『魔王』自体突っ込み所満載ですが、
惹きつけるものがあったのは確かです。
見た事ある人には誰がどのキャラに当たるかわかるかと。

次の短編は平和路線なのでご心配なく(笑)。 
488丁字屋:2010/07/31(土) 20:34:13 ID:KX+SyjAO
「贄と成就」アフター
>>485からの続きいきます

いきなり○○シーンに突入?



489丁字屋:2010/07/31(土) 20:35:11 ID:KX+SyjAO

「でも、話してて思ったんだけど…
桂さんって本当に伊藤が好きなのね」
「ん、ああ…」
そう、桂の話を聞く中で、僕は…そしておそらくは路夏も、
恋人としても友人としても誠意があるとはとても思えない伊藤に対しての、
桂の揺らぎのない思いには、驚嘆さえ感じた。
そしてだからこそ僕は、伊藤に対しては強い怒りを感じていた。
きっと路夏も同じように怒りを感じているにちがいない。

だが路夏が次に口にしたのは…

「フフ、その伊藤が勇気とキスしてるって知ったら、桂さんどんな顔するかしら?」
「ぶっ!?」
な、何を言い出すかな!?路夏は?
「そしたら桂さん、勇気のこと、かわいいなんて言ってられないね」
「あ…あのね…」
「愛する男性の唇が、女の子ならまだしも男性に奪われていたなんて、
桂さん、そんなこと知ったらその辺に落ちてるバールか何かで勇気の頭をかち割っちゃうかもよ」
「あう…こ、こわいこと言うな!」

全く…そんなこと聞いたら、なんだか妙にリアルに、
女装した僕に桂がバールを振り下ろすビジョンが頭に浮かんだぞ。
これはまさか違う世界の僕の記憶?!
……なんて、まさかね。ははは…。
490丁字屋:2010/07/31(土) 20:35:46 ID:KX+SyjAO

「何よ勇気、本気にしちゃったの?冗談よ」
「あ…うん…」
つい、怖い気持ちになってしまった僕の様子に、路夏は
「本当に勇気ったらかわいいんだから」
そう言って微笑む。
「か、かわいいって言うな!」

僕はついむきになり、「
もう授業始まるし、着替える…」
と言いかけるが、路夏が正面から僕の顔をじっと見つめているのに気づき、言葉を止める。

「ろ、路夏?」
「勇気…本当にかわいい…」
その声も視線も、妙に艶を帯びているような気がして、
僕は路夏から目が反らせないままに息をのみ硬直してしまう。

と、不意に路夏が僕の唇に自分の唇を重ねた。
わずかな間のあと、唇を離した路夏は、再び僕をまっすぐ見つめてにっこり笑った。
「えへへ、勇気があんまりかわいいからキスしちゃった」
「あ…」

「ねえ、勇気はここで着替えちゃったら、もう女の子の格好はしないの?」
「そ…そりゃそうだよ」
当たり前だ。もうこんな格好なんかする必要はないんだから。
「もったいないなぁ」
「も…もったいないって言われても…」
「もったいないからもう一回キスしちゃお!」

路夏はそう言うと、さっきよりも勢いよく、僕の唇に自分の唇を重ねてきた。
だが、あまりに勢いよかったために…
あ、あ…
ドッスーン!!
という派手な音と共に僕らは重なって倒れた。
491丁字屋:2010/07/31(土) 20:36:19 ID:KX+SyjAO

僕の上に覆い被さるようになった路夏は、全くどいてくれる様子もなく、
やはりどこか艶っぽい眼差しで僕の顔をじっと見つめている。
「あの…路夏?」
「ん…何?」
「えっと、そろそろどいてほしいんだけど…」
「ふうん…どうして?」
「どうしてって……」
と、その時に午後の授業開始の鐘が鳴った。

「ほら、授業始まっちゃったし…」
「そっか。勇気は、私とこうしているよりも授業の方が大事なんだ?」
その拗ねたような甘えたような言い方が、なんとも可愛くて、
「そんなことない」
とつい僕は即答する。
路夏はその答えに満足したように微笑む。

「ふふっ、よかった。じゃあずっとこうしていよっ」
「い、いや…でもやっぱりずっとこのままってわけには…」
「うーん、そうよねえ。このまま何もしないってのも退屈よね」
「い、いや、退屈とかそういうことじゃなくて…」
しかし路夏はその僕の言葉をスルーして…
「じゃあエッチしよっか?」
「ええっ!?」

…とんでもないことを言い出した。

492丁字屋:2010/07/31(土) 20:36:55 ID:KX+SyjAO

「どうしたの?驚いたりして。
 あ、勇気は私とエッチするの嫌なんだ?」
と、路夏の声がまた拗ねたようになる。
「い、嫌じゃあないよ。嫌じゃあないけど…」
「けど…?」
「いくら何でも授業中に学校の図書館でってのは…。それに僕、こんな格好だし…」

そう、路夏とエッチすること自体はむしろ望むところだ。
だが、何もこんな時と場所と、そして僕自身の状況で…。
一体どんなプレイだよ?

だが路夏は
「ふふっ、こんな時と場所だからスリリングでいいじゃない?
それに私はそんな格好の…かわいい勇気とエッチしたいの」
と、相変わらず艶っぽい笑みを浮かべ、やる気満々な言葉を口にする。

「ちょ、ちょっと…なんか変だよ、路夏…」
「何よぉ、変なのは勇気でしょ。女の子の格好なんかして…」
「あうう…だから着替えるって…」
「だから着替えなくていいんだってば。私はかわいい女の子の勇気としたいの!」
「お…女の子って……」
「もう、勇気は私とエッチしたくないの?」
またもや拗ねたような甘えたような声を出す路夏の、魅惑的な誘いに、結局僕は抗いきれなかった。

「し…したい」
「素直でよろしい」
路夏はそう言ってにっこり笑うと手を僕のスカートの中に入れ、下着越しにお尻に触れてきた。
「うわっ、勇気ったら、下着まで女ものなんだ。本当に変態だね?」
「ち、違っ…。
 これは風でスカートがめくれたりした時に男ものだったらまずいから…!」
「ふうん…」

路夏は納得したのかしないのか曖昧な返事をすると、
今度は下着の中に手を入れて、じかにお尻をさわってきた。
「ふふっ、勇気のお尻、すべすべしてる。
 勇気がもしそんな格好で満員電車に乗ったら、
 すぐ痴漢さんに目をつけられて、こんなことされちゃうよ」
そう言いながら路夏は、僕のお尻を執拗に撫でたり揉んだりする。
493丁字屋:2010/07/31(土) 20:37:54 ID:KX+SyjAO

「あ…や…」
路夏の言葉と、さっきから上から抑えつけられてるような状態で、お尻をいじられていることで、
むずがゆいような気持ちいいような感触と、恥ずかしいような気持ちがない交ぜになって、
僕はなんだか本当に痴漢に悪戯される女の子みたいな気持ちになってくる。
…って、これはすごくまずい感情では?

すると路夏はそんな僕の気持ちを見透かしたように、
「ふふっ、勇気ったら自分が女の子みたいな気持ちになってきた?」
「そ、そんなこと…」
「そんなことない?」
「う…うん…」
「ふうん…」
路夏は曖昧にうなずくと、今度は僕のブラウスの胸のボタンを外す。

「ふふっ、勇気ったらブラジャーまでちゃんと着けて、やっぱり変態さんだ」
「だ、だって着けなかったら…」
「着けなかったら恥ずかしい?」
「は、恥ずかしいって言うか…」
そう、うちの学校の制服は、結構胸を強調するデザインなので、
ノーブラだったりしたら見るやつが見たらすぐわかってしまうし、
そんなことで変な目で見られることは避けたかったから…。

だが路夏は
「何が恥ずかしいのかしら!?」
と言うや、いきなり僕のブラジャーを剥ぎ取った。
そして胸がヒンヤリとした外気を感じ、自分の胸があらわになったことが実感されると、
何故か顔が熱くなり、ついきゅっと目をつぶってしまう。

「あれ?勇気ったら胸を見られて赤くなってるの?」
「え?」
そ、そんなこと…僕は男なんだからそんなことあるわけない。
「勇気ったら胸を見られて恥ずかしがるなんて、やっぱりもう心まで女の子なんだね?」
「ち…違う…」
「違うの?じゃあ何が恥ずかしいのかな?」
そう言いながら、路夏は今度は僕の胸にそっと触れてきた。
494丁字屋:2010/07/31(土) 20:38:37 ID:KX+SyjAO

「ふふっ、ぺったんこだ。
そっか、勇気は胸がちっちゃいことが恥ずかしいんだね?」
「そんなことない…。
 僕男なんだから胸がないのは当たり前……ひあっ!?」
路夏がいきなり僕の乳首を舐め、つい声を上げてしまう。
「あはっ。勇気の胸、ちっちゃいけど敏感なんだね?」
「い、今のは路夏がいきなり舐めるからびっくりしただけで……あ…あ…」
路夏は僕の言葉が聞こえないかのように、僕の乳首を左右交互に舐め、舌先で転がし、
軽く歯を立てたりする。
そうされていく内に、僕は痺れるような感覚に支配されていく。

「ふふっ、やっぱり感じてるんだ」
感じてる?そっか、この感覚って感じてるってことなのか?
胸で感じるなんて、勇気はやっぱり女の子なんだね?」
「そ、そんなこと…」
「でも…」
「ふぁっ!?」
路夏は再び僕のスカートの中に手を入れてきて、今度は下着越しに股間を撫でてきた。

「あれ?勇気ったら女の子なのにオチンチンがあるよ?変なのぉ」
「変じゃない。僕、男なんだから…」
「ふうん…こんなにかわいいのに、やっぱり勇気は男の子なんだ…」
「うん…」
495丁字屋:2010/07/31(土) 20:38:57 ID:KX+SyjAO

ふう、さっきから路夏が僕のことを女の子だなんて繰り返すせいで僕自身まで変な気持ちになりかけたけど、

やっと路夏もわかってくれたか……
…って言うか最初からわかってるだろ!?
と僕が心の中でツッコミを入れていると、再び路夏が口を開いた。

「まあ、でもよく言うもんね?」
「え?」

「こんなかわいい子が女の子のわけがないって…」

あうう…、もう路夏が何を言ってるのかさっぱりわからない……。

496丁字屋:2010/07/31(土) 20:46:03 ID:KX+SyjAO

今回はここまでです。

>>487
>そっちの路夏と勇気は道を誤らない事を願いたいものです。
何か別の意味で道を誤りそうですw

あとこれまでも速いペースの投下とはいえませんでしたが、
8月から仕事の都合上、更に投下ペースが落ちそうです(汗

497mark:2010/08/01(日) 19:36:55 ID:rLpLaBLc
短編コントを投下。(アニメ5話if) 一応泰介がメイン。
刹那が元ネタ知ってるのはご愛嬌(笑)。
クロイズキャラの救済も含めて。
498mark:2010/08/01(日) 19:37:45 ID:rLpLaBLc
BAD TOWN in SAKAKINO

泰介は自分の部屋でいつになく難しい顔をして分厚い本を読んでいた。

「ん〜。このマニュアルさえ読めば俺もモテモテになれると
思ったんだがなあ」
彼が読んでいたのは『恋愛必勝マニュアル』。
誠が全然役に立たないからと譲ってくれ、喜び勇んで読んだはいいが、
この本に書かれている事を幾つか試しても全く効果はなく、
少し気落ちしていた。

「いかんいかん。ここで諦めるから可愛い娘ちゃんが俺に
振り向いてくれないんだ」
努力の方向が間違ってる事など、一向に気付く気配のない
哀れなるロンリーチェリー、澤永泰介、16歳。

「せっかく誠たちが今度プールに誘ってくれたんだ、
なんとかして挽回せにゃあかんぜよ!」
鼻息荒く決心し、居間に降りる。

「お、姉ちゃん帰ってたのか。ん?何見てるんだよ」
「ああこれ?友達から借りたDVDよ。あんたも見る?」
「俺は今そういう場合じゃないの」
「かたい事言わない。あんた仮にも映研の同好会でしょ?
少しくらい見なって」
そういや、そんな同好会に在籍してたっけ……
だーれも顔出さない幽霊だけど。

結局断りきれず姉の美紀と一緒に、DVDを見る羽目になった。
内容は30年ほど前にやっていた派手なスーツを着た探偵物のドラマだ。
初めは古臭く感じそれほど興味を持てなかったが、段々とあるキャラクターに惹かれていた。
(お、なんだよこれ…… すげぇカッコいいじゃねえか……
飄々として、それでいて男の生き様をビンビンに感じるぜ……)

「…ん?そうか!この手があった!」
499mark:2010/08/01(日) 19:38:44 ID:rLpLaBLc
プール当日

(むっふふふー。俺に足りなかったのは、ハードボイルドさだぜ。
そうなんだよなー。考えてみりゃ今まで俺は、軟弱で軽すぎたんだ。
もっとこう、背中で男を語るような渋さが足りなかったんだよ)
どこから調達したのか、泰介は黒のタイトスーツにサングラス、ソフト帽、派手なカラーシャツ、ネクタイと
完全にドラマの主人公になりきったつもりでいた。

(まずは第一印象が肝心だぜ。9割は見た目で決まるというからな。
西園寺たちも少しは俺の事を見直してくれるだろう)
ここでポイントを稼げれば、高嶺の花である言葉やクラスの人気者である世界は
厳しくても、噂が広まって他の女子たちが注目してくれるに違いない。

(そうすれば、俺もオトナの階段のォ〜ぼるゥ〜♪
待ってろよ、まだ見ぬ俺のハニー達)
そんな都合の良い妄想たくましく、泰介はその時を待つ。

泰介がアクアスクエア前で誠達が来るのを待っていた頃、
遠山と松平はパチンコで大勝し、ほくほく気分でその近くを散歩していた。
「今日は随分稼げたぜ。あそこの台は結構狙い目だったな」
「ああ。朝から遠征した甲斐あったなあ。次もあの店行こうぜ」
「ん?おい見てみろよ。あれ澤永じゃねえか?」
「あ、そういやそうだな。なにやってんだあいつ?」
「仮装大会にでも出るのか?それにしても…はははは」

腹がよじれそうになるのをこらえながら笑う遠山たち。
そして、彼らは何かを思いついたような顔つきになった。
「ちょっとからかってやろうぜ。…ピ、ポ、パと」
500mark:2010/08/01(日) 19:40:07 ID:rLpLaBLc
同じ頃、誠、言葉、世界、刹那、光の5人がアクアスクエアに向かって歩いていた。

「澤永のやつ、先に行って待ってるって張り切ってたけど」
「はあー。まったく下心見えすぎなのよあいつ」
「誘ってくれって頼んだのは黒田だろ?なんで溜息つくんだよ」
光の微妙な女心など超絶ニブチンな誠にわかるはずもない。

「あれ…澤永さんじゃないですか?」
「あ、本当だ。なんであんな格好してんのかしら?」
(……なんとなく、想像はつく。ついでにあれは、偉大な俳優を冒涜してる)
「どうする?このまま行くの?」

「……他人のふりが賢明」
「そうだね。あいつと同類に思われるのは……ねえ?」
「西園寺さんと同じ意見です。失礼ですが、私もあの格好はちょっと……」

刹那のツッコミに、このまま泰介の所へ行くか決めあぐねていた世界や言葉も
同調し、彼を見捨てる事にした。彼に好意をもつ光は反対するのかと思いきや……
「予定変更してどっか別のとこ行こ」
女心と秋の空。
そして誠もこのガールズ達の流れに逆らう気など微塵もなく、一行は
泰介を置き去りにして去っていった。


「楽しかったね勇気。また一緒にプール行きたいな」
「うん。そうだね(姉ちゃんも粋な事してくれると思ったけど、
チケット代僕の小遣いから勝手に前借りしやがって……
でも、路夏が喜んでくれたからよかったかな)」
「あれ、あそこ何騒いでるのかな?」
「ん… ゲッ、何やってんだよあのバカは」

「だから、俺は怪しい者じゃないんだってばあ〜!」
「はいはいわかったから。話は交番で聞かせてもらうよ」
勇気と路夏が見たのは、不審者がアクアスクエアの入口付近にいるとの通報を受けて
ずるずると警官にひきずられる泰介だった。

(おしまい)
501500:2010/08/01(日) 19:43:52 ID:rLpLaBLc
ハードな話の息抜きになったでしょうか?今度は乙女・可憐姉妹話を投下するつもり。
長編のような殺伐さは一切ないので。

ある意味本編で見たかったシチュエーション(笑)。
路夏は結構積極的なのね>丁字屋氏
502名無しさん@ピンキー:2010/08/07(土) 02:47:08 ID:WuOcap8v
規制解除キタ、ずっと感想書けなかったけど
路夏の復讐劇も贄と成就アフターも楽しみに読んでます。

いつかは自分もあんな話を書けるようになりたいです。
それと短編を投下します。
503名無しさん@ピンキー:2010/08/07(土) 02:48:40 ID:WuOcap8v
ここはピュアバーガー、榊野学園の近くにあり多くの学生から愛用されているファーストフード店である
今そこに、二人の男子生徒の姿があった、田中と足利、身長は大きく離れてはいるが、
こう見えても同級生で中学時代からの仲である。
今日は勇気から相談があるといって田中を誘ったのである。

「悪いな、突然相談なんか乗ってもらっちゃってな」
「ん」(心配すんなって、どうせ暇だったし)
「じゃあ早速だけど、バスケ部で2組の喜連川路夏って娘知ってるか?」
「ん」(喜連川……、悪い、知らないな、どんな娘?)
「なんだ、知ってるのか、なら話が早い、実はさちょっと路夏の事気になっててさ」
「ん」(足利が誰かと付き合おうとしているのは、黒田から聞いてるけど)
「なんだよ、背が低い事は関係ないだろ」
「ん」(人の話聞いてるのか?)
「そういうこと、それで路夏に告白をしたいんだけど、この前にちょっと怒らせちゃって
どうしたらいいかってさ、謝っても聞く耳持ってないし」
「ん」(そりゃ、相手に納得してもらうまで、何度も謝り続けるしか、ないんじゃないのか?
もしくはプレゼントか何かを用意するとかどうだ)
「おいおい、なんだよひと気の無いところで襲い掛かって既成事実を作るって、
そんな事できるわけないだろ!」
「んんっ」(誰もそんなこと言ってねーよ)
「そりゃ確かに格闘技やってたからそれだけの技術はあるけど」
「んん」(格闘技の技術をそんなことに使うなーー)
「あとは僕のテク次第で路夏はまたコッチに振り向くか、さすが田中だな
そんな方法思いつかなかったよ」
「ん」(ああ、俺も足利がそんなこと言い出すとは思っても見なかったよ)
「そんなこと言われると照れるなぁ」
「ん」(照れんな!!)
「だな田中の言う通り善は急げって言うし、そうと決まれば早速路夏のよく通る
ひと気のない所をリサーチしないと、じゃあ僕は先に帰るや」
「ん」(ちょっと待て、そんなんでうまくいくわけ無いだろ)
「おごってくれるのか、さすが田中、太っ腹!」
「んんん」(人の言う事を聞けーーー!)

そういって勇気は田中を残してピュアバーガーを去っていった、
もちろん料金も払わずに、一人取り残された田中は追いかけられず
ただ、立ち尽くすしかなかった、そして田中にはある確証が生まれた。
足利のこの恋はどう頑張っても実らないということを……


おしまい
504丁字屋:2010/08/14(土) 19:30:52 ID:vU1Qjdsn
「贄と成就」アフター
>>495からの続きいきます
505丁字屋:2010/08/14(土) 19:31:53 ID:vU1Qjdsn

そんなこんなで、僕は今、路夏の胸で性器を挟み込むようにして擦られている。
俗に言うパイズリというヤツである。

学園祭以来路夏とはまだ三度目のエッチだが、パイズリされるのは初めてだった。
しかし小さめな身体に反してかなりボリュームのある路夏の胸での刺激は…
「どお勇気、気持ちいい?」
「う、うん…」
そう、すごく気持ちよかった。

「ふふっ、よかった。
でもうらやましいんじゃない?」
「え?うらやましいって何が…?」
だってぺったんこな勇気の胸じゃこんなことできないでしょ?」
う、またその話題か…。
僕は反論しようかとも思ったが、また会話が一方通行になりそうなのでやめておく。

それにそんなことよりも
「路、路夏…もう…」
そう、路夏の胸が与えてくれる快感に、僕の股間はもう限界だった。
それでも路夏は、休むことなく僕のイチモツを挟み込んだ胸を動かし続けて……

「うっ…」
「きゃっ!?」
その瞬間、僕自身から放たれた精子が路夏の顔にかかる。

一瞬ぽかんとしていた路夏は、頬についた白濁液を指で拭うとそれを舐めながら
「もう、勇気ったら、自分だけ気持ちよくなんてずるいよ」
そう拗ねたように言った。

「ご、ごめん…」
「ふふっ、でも勇気のはまだまだ元気だね」
路夏の言う通り、僕のイチモツはまだ固くなったままだった。

「じゃ、今度は私も気持ちよくしてね」
路夏はそう言うと下着を下ろし、自分の秘所を僕のイチモツにあてがうと、一気に腰を落としてくる。

そして、新たな快楽が僕と路夏を同時に貫いた。

506丁字屋:2010/08/14(土) 19:32:36 ID:vU1Qjdsn





午後の授業の終了まであと30分となった。

僕と路夏はすでに行為を終え、
授業をさぼっての校内でという背徳的かつ、一方が女装というややアブないエッチの余韻に浸っていた。
ちなみに僕はようやく着替えを済ませ、ノーマルな男子の服装に戻っている。

さて、もう今更授業に出ても仕方ないので、
僕と路夏は改めて桂の語ってくれたことを整理することにする。

507丁字屋:2010/08/14(土) 19:33:05 ID:vU1Qjdsn

まず澤永についてだが…

「勇気は桂さんはなんで澤永と付き合ってたと思う?」
「いや、さっぱりわからない」
そう、桂の話からわかったことは、桂自身澤永と付き合いたくて付き合っていたわけではないらしく、
桂はむしろつらいと思っていたらしいこと・・・。
ただ、それなら桂が何故澤永と付き合っていたかについては、
桂はそのことに触れられることをひどく恐れているようだった。

「ねえ勇気、例えば澤永が桂さんを脅して無理やり付き合ってってことはないかな?」
「いや、それは…」
たしかに、澤永は年中彼女が欲しいと騒いでるようなヤツだし、
はた迷惑ではっきり言ってバカだけど、根は悪いヤツではない。
いくら彼女を作るためでも女の子を脅すなんてさすがに考えがたい。
僕はそれをはっきり路夏に言う。

「そっか。うーん…。
 でも、例えば澤永が、桂さんが自分に気があるって勘違いして強引に迫って、
 伊藤のことで傷ついてて気弱になってた桂さんが、
 断りきれずに付き合う羽目になったとかならありそうじゃない?」
「ま、まあそれくらいならありそうかな…」
「あるわよ。
 だいたい澤永って人の気持ちとか全然わからないし、
 それだけじゃなくて、人の気持ちを勝手に決めつけたりするじゃない。
 最初に私が勇気と黒田さんが付き合ってると勘違いしたのだって
 もともとあはいつのせいなんだから」
「う、うん、そうだな」

「そうじゃなかったら、二人が付き合いはじめてから、
 澤永が桂さんに何か嫌なことをしてひどく傷つけたとか…」
「ん?」
「たしかに、澤永って勇気の言う通り悪い人間じゃないかも知れないけど、
 それでも自覚なしに相手を怒らせたり、傷つけるタイプだとは思うのよね」
「あ・・・うん、それはあるかもな…」

路夏は僕と付き合うようになって、僕と澤永が話している時に側にいることもあるし、
今のはそうした経験からの路夏なりの分析なのだろうし、かなり的確だと思う。
「ただ、桂自身がそのことについてはあまり踏み込まれたくない様子だったし、あ
 まり詮索しない方がいいかもな…」
「ん…そうね…」

508丁字屋:2010/08/14(土) 19:33:34 ID:vU1Qjdsn

そして次に伊藤のことについてだけど…

「本当に勇気の言った通りだったんだ…」
路夏は開口一番そう言った。

「伊藤のやつ、桂さんと付き合いながら、影で西園寺さんと関係を持って……」
「ああ…。それに今じゃ露骨に避けて、着信拒否までしてる」
「伊藤って、そんなヤツには思えなかったんだけどな…」
「路夏?」
「学祭の時に私が勇気にやきもき妬かせるために一緒に回ってって頼んだ時にも、
 嫌な顔一つしなかったし………でも、そうやって女の子みんなにいい顔しながら、
 一方で桂さんを裏切って傷つけてたんだ…」
「ああ、許せないやつだよ」

「だったら勇気、今度こそ前歯全部折っちゃう?」
学祭の頃以来に伊藤への怒りが再燃しかけてきた僕に、
路夏はそうイタズラっぽく問いかけ、僕は苦笑いで答える。
「……いや、やめとくよ」
「ふうん。やっぱりキスしたから情が移ったのかな?」
うわあ、またその話に行くんですか?

「ち、違うよ。
伊藤の前歯を折って桂が助かるならそうするけど、今は桂のことが先決だろ?」
「そっか。そうよね。
 じゃあ伊藤の前歯折っちゃうのは、桂さんのことが一段落ついてからだ」
「ろ、路夏はそんなに僕に伊藤の前歯を折って欲しいの?」
「安心して。勇気が傷害で刑務所に入っても、私は新しい彼氏を作って幸せにやってるから」
「あうう、ちっとも安心できないよ」
「あははっ。
 ……でも、伊藤のことはともかく、私、伊藤よりもむしろ西園寺さんの方が許せない…」

509丁字屋:2010/08/14(土) 19:34:02 ID:vU1Qjdsn

そう、最後は西園寺についてだ。

西園寺は桂に友達になろうと自分から近づき伊藤を紹介して、
二人が付き合うようになってからはその仲を応援するなんて言っておいて、
だが裏では桂の知らないところで伊藤と関係を持ち、
更にそれが発覚すると、今度は開き直ったように桂を遠ざけるようになった。
僕は学祭の頃、西園寺のことを、
桂の彼氏である伊藤を寝取って平気な顔をしているひどい女だと思っていたが、
僕が思っていたより遥かに非道い。

西園寺のしたのはもはや悪質な友人への裏切りであり、そして略奪だ。
路夏も同じように思っているのだろう。
だからこそ、伊藤より西園寺を許せないと言ったのだ。

その路夏がー
「でも、本当は私、西園寺さんって前から何となく嫌な感じがしてた」
「え?路夏は西園寺を知ってたのか?」
「うん。学祭の時に…」
「そっか。伊藤と一緒にいたんだから、西園寺とも顔を合わすよな」
「ううん。伊藤と別行動してる時に話したんだけど、私に対してずっとつんけんしてたのよね。
 伊藤は私と一緒に学祭回ることを、西園寺さんも納得してるって言ってたけど、
 私にそういう態度取ってたってことは、結局伊藤を信じてなかったってことでしょ?」
「あ…うん…」
まあ、あの頃は路夏もなかなか僕を信じてくれなくて苦労したものだが、それは黙っておくことにする。

510丁字屋:2010/08/14(土) 19:34:43 ID:vU1Qjdsn

「それと…」
「え?」
「あの時の3組では、伊藤と西園寺さんってずいぶん以前からの公認カップルって雰囲気だった。
 そう、周りが話している感じだと、二学期が始まってほとんどすぐ付き合ってたような…」
「え? だってそれじゃあ桂と伊藤が付き合い始めた頃から…
 いや、下手すりゃ付き合い始める前から西園寺は伊藤と付き合ってたってことに……まさか!?」
「そう、まさか…よね…。いくら何でも…」
そうだ。いくら何でもそれじゃあ…西園寺と伊藤は、最初から桂の気持ちを持て遊んでいたことになるじゃないか…。

もしそうだったとしたら、西園寺は桂に友達になろうなんて近づいた時から既に、
実は意図的に桂を傷つけようと、明確な悪意を持っていたことになる。
いくら何でもそんな…。
だが…。

そう、僕は思いだす…。
学祭の直前に、西園寺が自分の身体を餌にするようにして、
伊藤に無理矢理桂のことを嫌いだと言わせながらエッチしていたことを…。
それはまさに西園寺が示していた桂への悪意ではなかったか?

と、その時路夏が
「どうしたの?勇気、怖い顔して」
と訊いてきた。
僕は、さっき思い出していた西園寺の言動を路夏に話す。

511丁字屋:2010/08/14(土) 19:35:39 ID:vU1Qjdsn

路夏は、僕の言葉を聞き終えると、表情を強張らせながら
「信じられない…」
そう呟いた。

「ああ。信じられないかも知れないけど、でも本当なんだ。
西園寺は伊藤に抱かれながら本当にそうやって…」

「信じられない!
 勇気ってば伊藤と西園寺さんのエッチを覗いてたの?」
「え?」

「勇気って…他人のエッチを覗き見る変態覗き魔だったんだ!?」


……あれぇ?

僕、また何か地雷踏んだ!?


512丁字屋
今回はここまでです。

長い前振りだった割にエッチの本番はアッサリ終了であしからず(汗