>>637-639の続きー
夕子さんは美人だ。
「あのね、拓海君、ヒミツ守れる?」
新学期が始まって、僕の家に夕子さんが何度目かに来たとき、夕子さんはそう言った。
短いスカートから覗く白いふとももも、傾げた頬に落ちかかる髪の毛もステキな夕子さん。
「あのね。私の前の学校ってね…」
僕の耳元にこっそり囁いてくる声もステキだ。
僕の奥でなにかがビクビクと震えてしまうくらい。
上の空になりそうな意識を必死に会話に留めて、夕子さんに答える。
「えーと、○女学院ですか?」
僕は夕子さんがかつて通ってた学校の名前を挙げる。
夕子さんは頷くと、言う。
「うん。あそこってね、一見ヘンサチ高いようにみえるよね?」
「え? 高いでしょ?フツウに」
中学校のときに見た高校偏差値一覧だと68とか70とか、トンでもない数値だったと思うけど。
「うん。あれってね。ウソなんだよ」
「…え?」
僕は鳩が豆鉄砲を食らったような表情をしていただろう。
「○女ってね、小学校からエスカレーター式で外部からの編入ってほとんどないんだ」
と夕子さん。
「大学までそのままエスカレーターだからなんだけどね。
それでも高校一回生のときにちょっとだけ外部生を入れるんだ。
その枠がすっごく少なくて、十何人くらいしか取らないんだよ。
○女子大っへのエスカレーターを狙って結構賢い子が応募して来るんだけど、でも外部入学の人数少ないから。
だから、偏差値がすごく高いように見えるの」
「…えーと。それってつまり」
「うん。だからね、○女のコって、キホン的にあんまり頭良くないんだ」
「ええええ?!」
「必修の時間もね、じつは授業とかあんまやってないんだよ。
日舞とか、お琴とか、お茶とかお作法とか、そういうのをナイショでやってるんだ」
「え? 夕子さん、もしかして日舞とかできるんですか?」
「うん。ちょっとだけね」
「うわあ…」
僕は想像してしまった。
夕子さんが、長い黒髪をふわっと振り乱しながら、扇をかざしてる姿。
長い脚を着物で包んで、柳腰な身体のラインでステキに優雅に踊る夕子さん。
きっとすごく似合ってる。
「着付けだってできるんだよ。拓海君、私の和服姿見たい?」
「ええ、もちろんです!」
「じゃあ今度着てあげるね! いつがいいかな。涼しくなったら野点やろうよ」
僕の耳に息を吹き込むように語りかけてくる。
どくん。
僕の胸が高鳴る。
僕の身体に半ば抱きついてるみたいな夕子さん。
その制服の白いブラウス越しに感じられる夕子さんの胸の柔らかさ。たわわっぷり。
あわわああわ。
胸がドキドキする。
下半身もズキズキしてくる。
キレイで可愛い、身体は大人っぽいのにしぐさは幼いとこのある、夕子さんが言った。
「うん。だからね、私ね、あんまり勉強できないんだ」
「え?」
「あんまり私の成績がアレだと、○女の名誉に関わっちゃうし…拓海くん、勉強教えてくれる?」
にっこり笑った夕子さんは僕に抱きつきながら、そんなお願いをしてきた。
とまあ、そんなわけで僕と夕子さんの勉強会は始まったわけで。
週三回、月水金と僕の家で夕子さんと一緒に予習復習をして。
僕のちょっと頭が悪い弟の岳志も時々参加する。
「おねえちゃん、宿題教えてー」
と甘えてくる岳志のことを夕子さんは可愛がってくれる。
やっぱり血がそうさせるのか、いつもは人見知りな岳志は珍しく、夕子さんに懐いている。
一人っ子の夕子さんは「おねえちゃん」と呼ばれるのが嬉しいのか、岳志にいろいろ優しくしてくれてる。
「よくできました。じゃあ、十時から七十分足したら何時何分になるのかな?」
「んーと、んんんーーーー」
バカなりに頑張ってる岳志を、夕子さんは優しそうな目で見つめてる。
さんすうドリルを岳志にやらせてる夕子さんに僕は言う。
「さあ、次はこっちですよ夕子さん。タンジェントの計算は一昨日やりましたよね?」
「…ぎく」
とまあ、そんな勉強会の成果なのか、一学期の中間テストではびっくりするくらいアレだった
夕子さんの成績が最近はみるみる上がってきた。
期末では結構いいとこまで行くんじゃないのかな。
問題集の模擬試験を採点すると、なんだか○ばっかりだ。
その答案用紙を夕子さんに渡すと、まるで花が咲くみたいなとても嬉しい表情を見せてくれる。
晩御飯を一緒に食べてから、僕は夕子さんをおうちまで送る。
しっかりと手をつないで、夕子さんを歩道側にかばいながら。
そうすると夕子さんが嬉しそうに僕の腕に抱きついてくる。
「んー。私ね、こうしてるときが一番しあわせー」
と、無邪気な表情で夕子さんが微笑む。
まるで幼児みたいな、無垢な微笑み。
そんな笑顔に僕はキュンと来てしまい、制服の下の夕子さんの肌の暖かさにどうにかなってしまいそうになる。
マンションの入り口のオートロックを夕子さんは鍵で開けると、ホントは僕が送っていくのはそこまででいいはずなのに、
夕子さんは僕の手を離さない。
「一秒でも長く一緒に居たいんだよ。ダメかな?」
そう言いながら上目遣いで僕を見つめてくる可愛い女の子に、僕は抵抗できない。
エレベーターの中で夕子さんは僕にキスをする。
今年で二十歳になる、僕の大好きな女の人の甘い粘膜が僕の唇の上で、溶けそうな甘い感触を伝えてくる。
上昇してるのはエレベーターなのか僕の興奮なのか、よくわからなくなってくる。
最初はついばむようなキス。
そして急ぐように、僕の唇を割ってくる夕子さんの舌。
その柔らかくて、儚いくらい薄い、でも甘くていい感触のする、ざらざらとした夕子さんの舌に僕は酔ってしまう。
その間も、夕子さんの腕は僕の背中に回されて。
僕の腕は夕子さんをぎゅっと強く抱きしめていて。
僕の胸の上で、夕子さんのむっちりとしたおおきなおっぱいが柔らかくつぶれているのがわかる。
最上階に着き、エレベーターの扉が開くと、名残惜しそうに夕子さんはようやくやっと唇を離す。
キスが終わると僕の顔は真っ赤なのに、夕子さんは涼しい表情で、でもやっぱり蕩けそうな甘い瞳で僕のことを見つめている。
名残惜しいとばかりに、僕の腕をぎゅっと抱きかかえる夕子さん。
夕子さんのご自宅までの十数メートルをそのままで歩く。
「ただいまー」
という夕子さんの声に由美子さんが答えてる。
「おかえりなさい」
そして僕にも。
「あらあら、拓海くん。今日もありがとうね」
とてもとても高級なマンションの、とても立派な玄関から夕子さんのお母さんの由美子さんがそう言ってくれる。
「これ、頂き物なんだけど」
といっておっきなメロンを二玉もくれる。
高級そうな。っていうか、これスーパーで買ったら何千円もするんじゃ?
「あ、あの、いつもありがとうございます」
「いいのよ。真由ね、私に似て全然勉強ダメだったのに、最近成績上がってきちゃって。拓海くんのおかげよ」
夕子さんは、僕がエレベーターの下ボタンを押してもまだ、玄関から片足を出したまま手を振ってくれる。
僕が手を振り返すと、嬉しそうにその手を振る速度を増す。
エレベーターに乗って、その扉が閉まっても夕子さんはまだ手を振ってくれてる。
エレベーターの窓越しに、その姿が見える。
僕が手を振り返すと、夕子さんは可愛らしく目をつぶって僕に投げキスをしてくれる。
エレベーターが下って、窓から見えなくなるまでずっと、夕子さんは僕のことを見てくれていた。
そんな夕子さんが可愛くて。
僕が見えなくなるととたんに寂しそうな顔になる夕子さんを想像して。
胸の中が熱くなった。切なくて、甘くて、でも寂しくて。
なんで、夕子さんと別れるたびにこんなに胸の中が苦しくなるんだろう?
一人きりで夜道を歩くのに、違和感がある。
そばに誰かがいないのは、どうにもヘンな気がする。
どうしてなんだろう。
そんな疑問を抱きつつ歩く僕に、メールが夕子さんから届く。
そんな疑問を抱きつつ歩く僕に、メールが夕子さんから届く。
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私ね、いつも拓海君のことを思ってるんだよ。
目を閉じれば拓海君の顔が浮かぶんだよ。
眠る寸前まで拓海君のことを考えてるんだ。
そしたら、拓海君の夢を見れるかもしれないから。
拓海君の固くて太い男の子っぽい指を思い出すんだ。
その掌が、私の頬を優しく撫でてくれたときのことを思い出すと、
胸の中が熱くなって、体の芯からじわじわと甘い蜜みたいな
スキスキな気持ちが溢れてきちゃうんだ。
これって私だけかな?
私だけじゃないよね?
拓海君も私のことを思ってスキスキな気持ちになってくれてるよね?
ねえ、拓海君。
拓海君に「大好き」って言われたいよ。
拓海君に頭を撫でられながら、可愛いですって言ってほしいよ。
拓海君にぎゅって抱きしめられながら、ちゅってキスしてほしくなっちゃうよ。
でもあんまりこんなメールばっかり出してると拓海君が眠れなくなっちゃいそう。
明日も早いんだよね拓海君。
お父さんと岳志君のぶんまでお弁当作るんだもんね。
だから、おやすみなさい。拓海君。
大大大好き!だよ!拓海君!
わたし拓海君のことを考えながら眠るね。
おやすみなさい(*^ヽ^) ンー……ヽ(*^・゚)ノ~チュッ♪
私の大好きな拓海君♥
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うわああ。
なんだか顔がニヤけてしまう。
全身の筋肉にちからがはいらない。
そんな僕は、必死に体に鞭打ってメールを送る。
そんな僕は、必死に体に鞭打ってメールを送る。
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夕子さん、大好きです
世界で一番大好きです
僕も夕子さんのこと考えながら眠ります
おやすみなさい
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そこから家に帰り着くまで、僕の足は一度も地面を踏まなかったに違いない。
ふわふわして、まるで雲の上を歩いてるみたいで。
家についてシャツを脱いだら、ケータイが点滅してる。
夕子さんからのメールだ?
添付画像があるみたいだ。
とりあえずまず本文を先に読んでみる。
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眠れなくなったら、コレ見て!
拓海君にだったら、もっと全部見せてもいいんだよ?
でも他の人に見せちゃダメだからね。
拓海君がそんなことする人じゃないのは知ってるけどね(*^^*)ポッ
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ウインクしながら、パジャマの胸をはだけてる夕子さんの画像が。
前のボタンを外して、ブラもしてないから、その可憐な先っぽの色がパジャマに絶妙に隠れてるというか半分隠れてないというか…
拓海くんが眠れないまま終わる
たぶんつづく