【田村くん】竹宮ゆゆこ 29皿目【とらドラ!】

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289 ◆nw3Pqp8oqE :2010/03/12(金) 21:23:22 ID:8YTYuHqe

でもわかるよ・・・いくら私でもさ、クリスマスに誘われてるんだもん理由は一つしかないよね。
それに私は2人に何も言えない状況。それでもとてもパーティーなんてものに行く気になれなかった。あちこちで光るイルミネーションはあの時の私にはまぶしいだけだった。
でも大河は私にどうしてもパーティーにいや高須君に会って欲しいみたい。私が来ないと高須君は帰れなくなるという脅し文句付きで。
でもいいの大河?本当にそれで?多分告白されたら私は「うん。」と言うしかない。断る理由より付き合う理由の方が多いもの、でも・・・

私の中で自分と大河の天秤は決まらず、もう一度大河に直接聞こうとした『私と高須君が付き合っていいのか?』を。答えは聞けなかった。
いや聞く必要がなかった。だって『竜児ぃぃぃ〜〜〜〜〜っっ』って叫びながら泣いているんだもん。それを見て高須君と付き合う気には到底なれなかった。
だって知ってしまったから、大河にとって高須君はがどれだけ大切な存在なのかを。だから告白を聞かないという最悪の逃げの手段をとってしまった。
だってそれを聞いて「ごめん」という勇気は私にはなかったから。高須君には悪いことをしたと思ってる。

そのあと苦しいながらも必死に隠しながら高須君と接した。気まずいような雰囲気は出したくなかったしさ。
でもそれがさらに高須君を苦しめることになるとは思わなかった。でもそうすることが私にとっていいことだと思ってたんだ。
でも修学旅行、あ〜みんに私が冷血女みたいな言い方をされた時にはさすがにカチンときた。
私だって苦しむよ?いつものようにふるまうのがそんなに悪いこと?そしてなぜかそりでぶつかっただけでキレられて喧嘩した。
私はそう時どう思っただろう?あ〜みんにいろいろ悪いことを言ったのは覚えてる。でもそのあと無視されたりしたけど仲直りできた。
それにあ〜みんはやっぱりいい子だよ。大河の次にね!

「おっといけねえ、なんかしんみりしちまったZE!」

ついうっかり声に出してしまい顔を赤らめ周囲を見回す。
どうやら今の声を拾った人はいないみたいだ。なんで今年を振り返ったんだろう。不思議に思いながら先ほど届いたメールと時間をもう一度確認する。
それに改めてこのいろんなことがありすぎて、楽しくもあり大変だった1年を過ごせてよかったと思う。それにまだ終わってないよ?ね、大河?

「おおう!!あれは愛しのマイハニーではないか♪」

前方50メートルくらい先に長い髪を揺らす顔は見えないが小柄な美少女を見つけた実乃梨はターゲットめがけてダッシュを始めた。



ひとまず今日はここまでです。明日はもちろんあの人から始まります。ではまた明日きます。ノシ
290名無しさん@ピンキー:2010/03/12(金) 21:30:14 ID:7g9TMBai
GJ……なのだが、嫌でなかったら設定を書いて欲しかった。
普通に原作アフター?
291名無しさん@ピンキー:2010/03/12(金) 22:13:43 ID:xz/jLnE2
おう!、言ってみるもんだ。書き手が召還されてた。

既にSSを書いた事のある方かな、書きなれてる風があるね。
290の言うとおり、他の人みたいに、頭に簡単な説明入れてくれると
ありがたいかな。と言っても投下してくれるだけでありがたいのだが

読んでみると、三年の三月が舞台のようだね。
ただ、原作、アニメと違って、完全には人間関係が定まっていないのかな?
いやよく解からん。展開が読めん。なんで明日も期待してるよ。GJした。

余計な戯言
ここのスレは、とらドラ熟知してるばかりだから、
原作の設定、経緯を説明しなくててもOKだと思うよ。
292名無しさん@ピンキー:2010/03/13(土) 11:10:20 ID:vzHLCuY0
新作キター!続き楽しみに待ってます。
293名無しさん@ピンキー:2010/03/13(土) 12:47:49 ID:expfNNOG
いいねーいいよー!
続き期待してる
294 ◆nw3Pqp8oqE :2010/03/14(日) 00:51:40 ID:xMTz38Vs
昨日の続きを投下します。設定についてですが時期は二年の三月人間関係についてですが・・・
パラレルワールドということで!言葉足らずですいません。では次レスから投下いたします。
295 ◆nw3Pqp8oqE :2010/03/14(日) 00:54:05 ID:xMTz38Vs
「でさ、この前なんか駅前で手つないでいちゃついちゃってさ、マジ似あわねーって感じ〜」

明るい髪の色をしたまさに今どきと言えるギャル風の子がそう話す。

「そう?私はお似合いだと思うけどな〜。」

話した子とは対照的に落ち着いた清楚な雰囲気の子が答える。

「ええっ!絶対似あってないよ!男の方が劣ってるって言うか、基本この学校にいい男いないよね〜」

「それは同感かも。あたしも誰かと付き合おうと思わないしね。でもなかなかいい男の人とは会えないと思うしね。」

彼女たちにとってはいつも通りの放課後を過ごしていた。ここは大橋高校の近くの「スドバ」と呼ばれる喫茶店。
始めて聞いた人は全国チェーンの少しお高い緑の人魚が描かれた店を思い描くだろう。
だがこの店は基調の色は緑だが描かれているのは髭のおじさん。この「須藤スタンドコーヒーバー」の店長が描かれている。
そっちの方の権利権などで訴えられたら太刀打ちできなそうだがこの近辺ではそれなりに好評を得ている「スドバ」に大橋高校の2−Cの美少女達が集まっていた。

「そうそう!ここの学校の奴はバカときもい奴しかいないしさ!」

2−C美少女トリオの1人木原麻耶がそう話す。

「そうね〜みんな楽しくていい人たちなんだけど、付き合おうとは思わないわね〜何というか子供っぽいって気がしてね。」

同じく2−C美少女トリオの1人香椎奈々子が言う。

「・・・・・・・」

ここにいるのは3人、でももう1人の美少女は携帯とにらめっこしていた。

「で?亜美ちゃんはさっきから誰とメールしてるのかな?」

「ええっ!?い、嫌だなぁ奈々子・・・あたしは誰ともメールしてないよ。」

携帯が閉じる音がし、明らかに慌てた感じでもう1人の美少女、川嶋亜美がスマイル満開で答えた。

この「2−C美少女トリオ」はもともと木原麻耶、香椎奈々子の2人で「2−Cかわいい系女子ツートップ」と呼ばれていた。
容姿が優れる子は特に色恋に敏感な高校生において特別な存在とされる。
確かに顔がいいなら入学時人気を博した手乗りタイガーなどもいるが性格や雰囲気を交えると、
活発な木原麻耶、年の割に色っぽい香椎奈々子が人気となった。(二人が仲良しでよく一緒にいたのもあった)
そして5月、現役女子高生モデルの川嶋亜美が転校してきた。
容姿、性格、共に良く男女両方に大人気の彼女は特にこの二人と仲良くなりいつしか「2−C美少女トリオ」と呼ばれるようになった。
296 ◆nw3Pqp8oqE :2010/03/14(日) 00:55:26 ID:xMTz38Vs
今まで会話に入らず携帯を凝視していた亜美が切り出す。

「にしてもさ、もうすぐクラス替えだよね。あたしらさ、また同じクラスになれるかな?」

「クスッ・・フフフ・・・」

2人が顔を合わせ笑う。

「なっ・・・なによ急に!あたしそんなに変なこと言った?」

少し慌てた感じで亜美が尋ねる。すると奈々子がまだ少し笑いながら

「だって、それ麻耶が最初の方に言ったことだもん。亜美ちゃん本当に携帯に夢中だったんだなって思って。」

「ほんとほんと!あのときは亜美ちゃん会話に混ざってたはずなのに覚えてないんだね。」

麻耶もそう続く。

「・・・そう言えばそんな気も」

気まずそうに亜美が答える。

「で、亜美ちゃんは携帯で何を?」

と奈々子、麻耶も

「亜美ちゃん!私たちの仲だよねぇ?」

そう問い詰める。少しの間をおき亜美は体勢を少し直して

「し、仕事よ。仕事。ちゃんとやり取りしてたから耳に残らなかっただけだもん。」

目をそらし髪を払いながら答える。

「な〜んだ、つまんないの。」

麻耶口をとがらせそう言い放つ。

「ふ〜ん?会話も耳に入らないくらいの内容の仕事ねえ?一体どんな仕事なのかしら?」

「それは・・・条件面でね?いくら春休みになるっていってもあたしは学生なわけだし!」

そんなことを言いまた携帯に目をやると今の時刻が映し出される。それを確認すると亜美は

「ごめ〜ん、少しお手洗いに行ってくるね〜」

「あ、いってらっしゃい」

麻耶が手を振り亜美がカバンを持ち席を立った。
297 ◆nw3Pqp8oqE :2010/03/14(日) 00:57:42 ID:xMTz38Vs
「けどモデルも大変だよね。休むわけにもいかない世界だし。」

麻耶がそう切り出す。

「そうかしら?あの感じ、あんなに真剣に携帯を見る亜美ちゃんなんて始めてみた気がするけど。」

亜美の様子を気にした奈々子がふと疑問を口にする。

「そう言えばそうだね。いつもこういうとき亜美ちゃんあんまり携帯いじらないし仕事の連絡って電話だったような・・・」

2人の間に流れる沈黙・・・亜美はまだ帰ってくる気配はない。

「亜美ちゃんの好きな人ってさ・・・高須君しかいないよね?」

麻耶が若干声を小さくしながらそう言う。

「そうね・・・それ以外に亜美ちゃんのよく話す男子ってまるおくん位だし。」

「でもでも、亜美ちゃんとまるおはないよね?いつもの感じを見ると!」

少し声を大きくして麻耶が即座に否定する。

「あったら麻耶も困るしね?」

意地悪気に奈々子が言う。

「今は私のことはいいの!ってことは?」

「業界人ってこともなさそうだしやっぱり」

目つきは悪いが人のいい少年が2人の間に浮かぶ。

「お待たせ〜ってとこで悪いんだけどこの後用事があるからもう行くね。またね〜。」

戻ってくるなる開口一言亜美はそう言い放つ。

「うん・・・またね。」

「またね。亜美ちゃん。」

麻耶は困りながら、奈々子はいつもどおりに亜美を見送る。
そして亜美は机の上に自分の分の代金をおき店を出る。

「聞かれたかな?」

亜美が出て行ったのを確認し、麻耶が言う。

「たぶん大丈夫だと思う。それに・・・」

少し言い淀む奈々子。それに対し麻耶も

「それに?なに奈々子!?」

『早く!』とせかすように身を乗り出し返事を待つ。

「亜美ちゃんの化粧の感じが変わったような・・・」

2人の間に流れる一時の間。

298 ◆nw3Pqp8oqE :2010/03/14(日) 01:03:06 ID:xMTz38Vs
「・・・確かにトイレにしては長かったね。」

再び顔を合わせる二人。

『やっぱりなんかあるのかな?』

そう思いつつ2人の足はまだ席から動かなかった。

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スドバを出て亜美はいつも行く家の方角ではなくそれとは逆の方向へ前髪をいじりながら足を進める。
初めは若干急ぎ足だったが携帯に映る時計を見るとまだ時間があるようだ。
汗をかいて行くのも嫌なので長い脚の歩幅とペースを緩める。

『川嶋亜美』中高生を中心に人気のある売れっ子モデルだ。
実の母に有名女優の川嶋安奈を持ち、流れるような長髪、
身長165センチの八頭身、顔は拳ほどに小さくそして体の線は細いもののスタイル抜群の美少女だ。
そんな売れっ子ゆえに彼女は悩みを抱えることになる。それはストーカーだ。
売れるにつれてファンは増えるもののその全部に常識がある人なはずもなく、数が増えるほどそんな非常識なファンができてしまう。
こと女性についてはその問題は深刻なのだが亜美についてしまったストーカーは一筋縄でいくものではなかった。
普通の悪質なストーカーなら警察に突き出せば済むがこのストーカーは撮ったプライベートな写真を送ってくるだけと十分気味の悪いものだが何せ実害がない。
そのため警察も踏み込んだことはできずストーカーから逃れるために、亜美は都会から少し離れたかつて幼少を過ごしそして伯父母の住むこの大橋の地へときたのである。
仕事を休業してまでこの地へ来たのにかかわらず、ストーカーはここまで付いてきた。
そのおかげでストレスのたまった亜美は暴飲暴食を繰り返してしまいモデル体系から少し遠のいてしまった。
本来ならここでの回避生活も少しのはずなのにストーカーに見つかるという誤算、それに亜美にとっては珍しい出会いもあった。

ゆっくりだが足を確実に進めつつ亜美は彼女たちとの出会いを思い返す。

まず「逢坂大河」自分から見ると相当小柄なこの少女は亜美にとっての宿敵だった。
いつもどおりみんなに好かれる亜美ちゃんだと思いこの小さな少女にも奉仕させてやろうと思った。
しかしこの少女は無視するだけでなくこともあろうにモデルの、亜美ちゃんの顔を殴った。
さらにこいつは転校先で同じクラス!距離を置き様子を見ていたがどうやら大河は友達がいない様子。
いるとしたらなぜか世話を焼いている高須竜児くらいだった。

気に入らないやつだったしどうせこの高須ってやつも亜美ちゃんにメロメロだしこいつを1人ぼっちにしてやろうと思った。
でもこの「高須竜児」いや高須君は最初こそあたしに興味を持ってくれたみたいだけど学校だとファミレスの時とは距離感が違うように思えた。
祐作はさておき多くの男子の視線を感じたけど高須君からはあんまり感じなかった。
ゴミ拾いの時に「俺に好かれようと努力して何の意味がある?」って言われた時、初めてあたしを見てくれた気がした。
モデルとしてでなくただの川嶋亜美として。そしてストーカーに怯えることなんかせずに立ち向かっていったタイガーを見たら何か吹っ切れた。
そのあとは夢中だった。勢いでストーカーに向かって行って・・・後は気付いたら高須君の家に着いていた。
タイガーが無茶できる理由は高須君がいるからだと思う。あたしがその時無茶できたのもきっと高須君のおかげ。
なぜか高須君といると安心する。思えばあの時からもう高須君に惹かれていたのかもしれない。
299 ◆nw3Pqp8oqE :2010/03/14(日) 01:06:33 ID:xMTz38Vs
けど高須君を好きになるわけにはいかなかった。夏にあたしの別荘に行って気づいたことが二つあった。
まず高須君の好きな人、これは見てればわかりやすいよね?明らかに彼女に対する態度がいつもと違うもん。
そして最後の思い出にと思ったこの旅行だったけどもう一つ気づいてしまったこと。それはタイガーの気持ちだった。
好きという気持ちではなかったと思う、けど応援してる彼の恋が成就することがどういうことかというのを気づいてしまった。
そしてなぜかあたしにはタイガーを救ってやらなきゃという思いが生まれていた。

迎えて二学期に訪れた文化祭準備、あたしなりの考えを実践してみた。
プロレスをやるはめになってやる気をなくしているクラスのやる気を出させることしてクラスのムード作りを買って出た。
基本的に大河はみのりちゃんと高須君くらいしか話し相手がいない。だからまずあいつをクラスに馴染ませてやろうとした。
そうすればまずあいつが感じている孤独感をクラスに居場所を作ることでなくそうと考えた。
文化祭はクラス全体行事みんなに馴染むにもってこいのイベントだし最初は嫌がっていたけど父親が来るとかで主役をやりたいと言い出したりと徐々にやる気を出してくれたようだ。
みのりちゃんと高須君がケンカするなんて出来事もあったけどあたしにとっては順調に文化祭当日を迎えられていた。
けど当日、順調にことは進まなかった。ショー自体は上手くいった。クラスの出来としては最高だった。大河が主役を演じることがなかった点を除いて…
続くミスコン、亜美ちゃんがばっちりなのは当然として大河も麻耶たちのおかげで完璧なメイクで登場。
父親は最後まで来なかったみたいだけどミスコンも無事優勝。まあ背はともかく素材はいいしあたし的には当然かな?
けど結果的にこの優勝がまずかった。その後の福男レースは奮起した高須君とみのりちゃんの優勝。
大河の自立を促すつもりがさらに高須君への思いを強めてしまった。そして同時にみのりちゃんにも・・・

自ら糸を絡めてしまった。みのりちゃんと大河どっちとくっつくべきかは高須君が決めることだということはわかってる。
けど高須君は気付くだろうか?自分とみのりちゃんがくっついた後の大河のことを。
そしてもう一人その事実に気づいてる人がいる。

高須君は大河は祐作が好きなんだと思ってる。大河が言ってる通り高須君とみのりちゃん、祐作と大河が結ばれればと思っていた。
恐らくその事実を知るもう一人もね。けどそうもいかない事態が起きた。それは生徒会長選挙での祐作の告白だ。
全校生徒の前で前生徒会長狩野すみれに告白・・衝撃的な告白ののち大河がすみれに喧嘩を吹っ掛け停学。
その後始末で2−Cのみんなが見てしまった。大河の手帳の中身を。でもそこに映るキャンプファイヤーの写真。
そしてもう一枚・・・これはあたしともう一人しか気づかなかった。もちろんあたしは知ってたことだけど今は後悔・・いやずっと後悔している。
知ってるくせにまた考えこんでいるいる奴に、とっさに出てしまった嫌味、自分の嫌いな本性が出てしまったこと。彼女の罪悪感を強めてしまったこと。
お詫びの意味も込めてクリスマスパーティーを盛り上げようとしたけどもう遅かった。
大河はクリスマスの申し子なんて言ってすっかりクラスの一員になっているようなんだけどみのりちゃんは考えっぱなしで落ち込んでいる様子。

その時ふと思った。『あたしはなんでこんなとことをしているんだろう』って。
もとはと言えば高須君があいまいな態度をとってるせい。
好きなのはみのりちゃんのくせに大切なのはいつも大河。
なんて違う・・仲間はずれの自分がさみしいだけ。そんな思いをふと彼にぶつけてしまった。
馬鹿な高須君は気付いてくれなかったけどね。
あたしも彼が好きなんだと思うけどそんな事をしたらむちゃくちゃになるだけじゃ済まない。
クリスマスパーティー自体は成功を収めたんだろうけど相変わらずあたしを見てくれなかった高須君にいらつくだけであたしにとっては寂しいだけのパーティーになった。

300 ◆nw3Pqp8oqE :2010/03/14(日) 01:11:11 ID:xMTz38Vs
にもかかわらずあの三人は同じことを繰り替えし、
言われるがまま再トライの高須君、自分の感情を隠して高須君を応援する大河、ずっとこのままを意地でも続けるみのりちゃん。
気持ち悪いったらありゃしない。
特に一度告白しようとしたのにそれをなかったことにできるはずがない。
そうして逃げてるみのりちゃんに一番腹が立った。修学旅行にその本意を聞こうとした。
けどそこに誰もたどり着こうとはさせなかった。無理やり聞こうとしてもいつもはぐらかす。
そのくせそのことを根に持って陰険な攻撃。そしてあたしはすべてをぶつけた。

もう駄目だと思った。自分で居場所を壊して、もうここにはいられないと感じた。
けど高須君はあたしがいなくなったら寂しいと言った。だけどその言葉は残酷だよ…
それは友達としてだとわかったから・・・それでも嬉しかった。だってあたしを見てくれた。
だから残ることにした。みのりちゃんとも仲直りして決めたんだ。ここでみんなと卒業するってね。

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もう一度時間を確認する。うん。ちょうどいい時間だ。カバンから手鏡を出す。うん。今日も亜美ちゃんかわいい。
なんて・・かわいい亜美ちゃんは武器にならない。なんせ高須君が相手だから。
それにこの辺はストーカーに付かれていたときに高須にかくまってくれたところ。確かにたくさんのことがありすぎた。
取り返しのつかないところまで行ってしまった感じもある。けど今こうしてメールで家まで呼んでくれたってことはあるいは

『川嶋!…いや亜美って呼ばせてくれ!今まですまなかった。俺と付き合ってくれ!』

なんてことはない。か。だいたい現実味がなさすぎる。
大体へたれの高須君が告白するなんてありえないし・・・
フフフ、だったらこっちから襲ってみようかな。そしたらあるいは・・・

多分あたしはにやつきながら道の中央にいたんだろう。周りの目を気にせずに・・・




今回はここまでです。明日というか14日中にラスト投下します。もう少しお付き合いください。駄文失礼しました。
301名無しさん@ピンキー:2010/03/14(日) 01:22:57 ID:VnOZ49j2
そろそろ新スレ?
302名無しさん@ピンキー:2010/03/14(日) 01:59:03 ID:vcEd8LEY
GJ 
どういう結末になるのだろ?
幸せあ〜みんだったら、うれしいがの。
303名無しさん@ピンキー:2010/03/14(日) 11:53:39 ID:P0lS12MQ
あーみんの章、書き込みの熱量が違うな。ヒロイン、亜美でいいのか?
だが話は進展してない。それとも恋愛方向薄いから日常報告的なSSなのか?
やはり先がよめん。ラスト楽しみにしてますよ。
304名無しさん@ピンキー:2010/03/14(日) 13:51:41 ID:681T4F4x
タイトル的に考えて恋愛調の話と言うより3人娘が竜児の家に行く話で、メインとかはいない気ガス…
あまり予想すると書きにくくなってしまうのでやめるか。
何はともあれGJ
305 ◆nw3Pqp8oqE :2010/03/14(日) 23:28:32 ID:aGaAB12w
さてオレンジラスト投下です。あんまり期待しないでくださいね?
306 ◆nw3Pqp8oqE :2010/03/14(日) 23:31:53 ID:aGaAB12w

「たーーーーーーーーーーいーーーーーーーーーーがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「えっ!みの・・・ぶぎゃっ!!!!!」

日頃から鍛えられた女ながらも強烈な突進の前に、いくら手乗りタイガーといえど突然の事態で対処しようもなく、後ろから来た親友に抱きとめられる。

「おお〜〜大河〜〜!!久しぶりすぎておれっち感激だぜぇ!!」

大河の頭を抱え力いっぱい抱きしめながらみのりがそう言う。

「む〜〜〜む〜〜〜〜!!」

手足をばたつかせ必死に脱出を試みるががっちり決まった寝技のごとく離れられる様子はまるでない。

「なんだい大河!?無視とはみのりん悲しいよ〜」

ようやく大河の頭を開放し実乃梨がそう言う。

「ぶはっ・・・もう!みのりん!!あんなに強く抱きしめられたら何にもしゃべれないもん。それに今日学校で会ったばっかりじゃない。」

「そうだったかのう〜?最近婆めは記憶がおぼろげのう…」

「全くみのりんってば…そう言えばどうしたの?こんなところで会うなんて。この辺で新しいバイトでも見つけたの?」

「そう言う大河は?こんな時間にこの辺にいるとは珍しいじゃん?」

「私は帰ってる途中だよ。なんか竜児が今日は遅く帰って来いとか言ってたからさ。」

三月といえどまだまだ日は短くもう6時近くなるころには辺りは暗くなる。
部活で帰宅が遅い実乃梨はともかく帰宅部の大河がこの時間に下校するのは珍しい。
一方実乃梨も自宅はこの辺でもないしバイトを雇いそうな店もないわけで夕方、帰宅中の2人が会うことはほぼありえないわけで

「へぇ〜大河も高須君の家に?」

実乃梨は少し震えた声でそう発した。

「そうだよ。まったくあの駄犬。ご主人様に時間つぶしをしろだの本当にいい度胸してるわ!!
っといけないいけない確か6時にってメールにあったわね。じゃあねみのりんまた。」

そう言って大河が去ろうとしたが

307名無しさん@ピンキー:2010/03/14(日) 23:32:10 ID:ERrmaNGV
やだね期待する
308 ◆nw3Pqp8oqE :2010/03/14(日) 23:34:21 ID:aGaAB12w
「あいや待たれい!!。」

実乃梨の一喝に大河は足を止める。

「みのりんも一緒に行くぜよ」

「え!?なんでみのりん?これから私は晩御飯を食べるだけだけど」

こんなことはなかったために当惑する大河

「・・・・」

じっと大河を見つめる実乃梨。

「ええっと・・・」

本当なら断りたいが実乃梨の誘いを無下にするわけにもいかない。困った大河は

「竜児がいいって言ったらいいと思うよ。」

と言うしかなかった。それを聞いて実乃梨は満開の笑顔で

「さっすが大河〜〜〜〜〜!高須君に関しては大丈夫だしね」

「う、うんまぁ・・ね。」

こんなことが今までなかったが恐らく竜児は実乃梨の突然の訪問も歓迎するだろう。
過去にいろいろあったとはいえ実乃梨を追い返す真似は絶対にしないだろう。大河は歯切れの悪い返事をするしかなかった。

そして実乃梨は、おや?と言うと前方を指差し、

「ふむ、それにもう一人高須家に用のある人がいようだね。」

大河が顔をあげ実乃梨の指をさす方を見てみると、電柱を前に両手を頬にやり頬笑みながら腰を振って悶えてるクラスメイトの姿があった。

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『お、おおう!?川嶋!?お前何を!?』

『高〜須君♪亜美ちゃんにぜ〜ん部任せて♪ねっ?♪』

『任せるって…おい!?なんでそんなに近づくんだよ!?』

『大丈夫、すぐ終わるからさ』

『何がだよ!?』

『高須君ならすぐ終わりそうじゃん』

『それは俺に失礼だぞ!?俺は以外と…って何言わせるんだよ!!』

『へぇ〜なら楽しめそうだな〜じゃあ行くよ?』

『おまっ、ちょっ、おおおうっっっっ〜〜〜〜〜』

クイクイ
309 ◆nw3Pqp8oqE :2010/03/14(日) 23:35:14 ID:aGaAB12w
誰かがあたしのブレザーの裾を引っ張った。
「今いいとこなの!ほっといてよ!?」

と、誰かも確かめずに怒鳴ってしまった。

「へぇ〜何がいいところなのかしら?教えてばかち〜?」
「お〜あ〜みんも夢の世界行きかぁ〜〜おれっちも連れて行ってくれよ!?」

その瞬間あたしは頭が真っ白になった。
そこにいたのはチビトラとみのりちゃんだった。

「な、な、なぁ!!?。」

言葉がうまく出なかった。自分の世界から一気に現実に引き戻されたからだろう。

「なにその妙なダンス?新しいダイエット法?っうかこんなところでやるんじゃないわよこのメタちー。」

いつものように亜美に疑問をぶつける大河、ようやくしゃべれるようになった亜美は

「メタボじゃね〜よ!!亜美ちゃんはいつでも完璧ナイスバディだよ!つかなんでチビトラとみのりちゃんがいるのよ?」

と言い返す。大河は一息ついて

「はぁ〜〜。干されモデルはこれだから困るわ。私はこの辺に住んでるのよ。そんなことも覚えてないのかしら?」

腕を組みながらそう言い放つ。

「うっ・・・そう言えばそうだったわね。」

いかにもけげんな顔をして亜美がそう言う。と、大河は先ほど実乃梨の言ったことを思い出す。

「ねぇばかちー?もしかしてあんたも竜児の家に用があるとか言わないわよね?」

鋭い目つきで大河がそう言う。すると亜美は驚いたように目を見開き

「なっ!?なんでそれをあんたが知ってるのよ!?」
310 ◆nw3Pqp8oqE :2010/03/14(日) 23:36:39 ID:aGaAB12w
料理というのは基本的に時間が掛かる。それはお菓子作りになればなおさらだ。
ずっと作業していられれば料理好きの人にとっては楽しいことばかりだが、お菓子作りは基本的に焼く作業に最も時間を要しかつ大切な作業だ。
この間に皿洗いなどをすればいいのだが手際のいい彼はその作業を終えて一息・・・と言いたいところだが

「・・・う〜ん・・・」

雑誌を読もうとするもののそれも手に付かず竜児はレンジの中を何度も覗き込む。
手際はいつも通り完璧、お隣さんのようにドジもしない、
生地から乗せるオレンジ、クリームなどとすべて手作りであとは焼きあがりを待つのみ。
だがやはりきちんとできているかが不安で、レンジからなかなか離れられない。
何度もその鋭い目で『早くできなきゃつぶすぞ!』と言わんばかりの視点を浴びせてもレンジのタイマーは同じペースでしか時間を刻まない。
お茶の準備ももう済ませたし指定した時間ちょうどに焼きあがるようにタイマーも時を進めている。

「もうすぐだな」

レンジのタイマーの表示時間が一分を切ったころ階段を上がる複数の足音、話し声、そしてドアの開く音が聞こえる。

「つかばかちーは来るな。帰れ!」

この声は大河だろう。

「はぁ?なんであんたにそんなこと言われなきゃいけないのよ?」

言い返すのは川嶋だろう。それに

「まあまあお二人さん!おっ!」

櫛枝がこっちに気付いたようだ。それを見て大河と川嶋も言い合いをやめてこちらを向く。

「おおっす!高須君!」
「こんにちわ高須君。」
「ふん。来てやったわよ。」

櫛枝が元気よく左手を上げて笑顔で、川嶋も右手を振って、そして大河は腰に手を当てあごをそらしそれぞれあいさつしてくれる。
311 ◆nw3Pqp8oqE :2010/03/14(日) 23:38:31 ID:aGaAB12w
「で?わざわざ私たちを呼んだからにはきっとすごい理由があるのよねぇ、竜児?」

自称マイ座布団に座りながら大河はそう言う。実乃梨も亜美も同じく興味しんしんと言った感じで竜児を見る。三人とも呼ばれただけで何があるか知らない。

「ふふふ・・・それはな…」

竜児が口を紡ごうとした瞬間

「その笑い方きもい。」
「ってか早く言ってくれる?」

相変わらずの2人から容赦ない突っ込みが入る。

「うるさいな、お前らが言わしてくれないからだろ!!」

顔を赤らめ竜児がそう言い返す。

「なんかいい匂いしない!?私が推理するにはズバリレンジの中からだね!」

実乃梨が鼻を動かしそしてレンジにビシッと指差す。

「えっなに!?食べ物!?」
「ほんとだ、この香りは・・オレンジ?」

大河が急に顔色を変える。亜美も気づいたようだ。

「そうだ!今準備するから待ってろ」

うまく言いだせなかったがまぁいっかと思いつつすでにタイマーの止まったレンジを開けた。
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「うわ〜〜」

三人から感嘆のため息が漏れる。

机の上にはまさに出来たてといったオレンジタルトが用意されていた。

「今日はホワイトデーだろ?これは俺なりの感謝の意味を込めて作ってみたんだ。なんせこれは気合の入れようが違うからな!俺の最高傑作といっても過言ではない。」

タルトに少し合わないかもしれないがお茶を出しながら得意げに竜児が言う。

「すっげーよ高須君!これ手作り!?」

「おう!もちろんだ」

「本当においしそう、って先食べるんじゃないわよチビトラ!」

「うるふぁい!ふぁふぁいはひほ!」

一足先に大河が食べたようだ。

「なにが早い者勝ちよ!だよ?まったく口にものを入れたまましゃべるなって言ってるだろ?まぁいっか・・・櫛枝も川嶋も遠慮せずに食べてくれ。」

いただきまーすと2人が言った後、実乃梨は手づかみで、亜美は上品に、大河はフォークを使いながらもいそいそとそれぞれ口にし、

「んめ〜〜!!」
「うん!おいしい♪」
「・・・(モグモグモグ)」

三人の評判も上々だ。これなら大丈夫だなと竜児は安心してお茶を口にした。
312 ◆nw3Pqp8oqE :2010/03/14(日) 23:40:00 ID:aGaAB12w
みんな1つづつ食べた後、竜児は何か作業をしにキッチンに戻った。そんなとき大河が疑問を話した。

「ねぇ?竜児ってさなんでみのりんやばかちーにまでお返ししたんだろう?2人とも竜児にチョコあげてないよね?」

「たしかにそうね?けどあんたがあげたのはチョコらしき何かだったわよ」

「けど大河の言うことも一理あるべ?わたしもあーみんも渡してないわけだし。」

三人が口ぐちに疑問を並べる。確かにそうだ。
竜児がもらったチョコはバイトの派生で作った大河のものだけ。実乃梨も亜美も結局渡すことはしなかった。

「ってことはこれを食べる権利は本来私1人だよね?じゃあ残り全部私のもの〜」

大河がそう言いタルトに手を伸ばす。しかし

「いやいや大河!高須君は私達も呼んでくれたってことは私達三人に食べてほしいってことだと思わない?」

「そうよチビトラ。けどそれだとさらに妙ねぇ、タイガーだけならあたしらは呼ばないわけだし」

三人の疑問それは今日の竜児の目的だ。すると

「キ、キアイ!キアイーーーーイ」

「居たのブサ鳥?いきなりしゃべりだすと心臓に悪いわ!」

大河がそうインコちゃんに食いかかる。
だがそんなインコちゃんの言葉に引っかかるものを感じた亜美は

「気合い?そういえば高須君もそんなこと言ってなかったっけ?」

「言ってたねぇ!最高傑作とか何とか!」

「ホワイトデーに最高傑作・・・」

亜美がそうつぶやくと大河もインコちゃんから興味が亜美たちに戻る。

ホワイトデーそれはバレンタインの逆で男子が女子にアプローチをする日・・・
なんだかんだで未だに竜児は誰とも付き合ってないわけで
そんな竜児に思いを寄せる三人は『もしかしたら私のために…』とか思った時、竜児が戻ってきた。
313 ◆nw3Pqp8oqE :2010/03/14(日) 23:41:40 ID:aGaAB12w
「どうしたんだお前ら?みんなして黙りこんで?」

インコちゃんにえさをやりつつ場の空気がわからない竜児がそう言う。
だが誰も口を開けない。なにを言ったらいいかわからない。そんな折に

「いやあ、しっかしうまく作れてよかったぞ。なんせこれがうまくいかなかったら俺自身の想いを疑っちまうからな!」

それを聞いてさらに顔を赤らめる三人。
竜児は誰かを想いこのタルトを作ったようだ。

「ねぇ竜児。1つ聞いていいかしら?」

実乃梨と亜美がすごい速さで大河を向く。
「カッ」っと目を見開き『聞くのか!?』という視線を投げつける。

「なんだ大河?別にかまわんが?」

すっかり上機嫌の竜児。本当に場の空気お構いなしに大河の問いに答える。

「今日はなんで私たちを呼んだの?」

聞いたよこいつ!と2人が注目する。そして竜児の答えは・・・

「言っただろ?今日はホワイトデーだって。
確かにチョコは大河からしか貰ってねえが櫛枝と川嶋にも世話になったからな。
女子とこんなに親しくなったのは初めてだし、今年一年本当に楽しかったしな。
俺なりの感謝の意味もこもってるんだ。それにお前らに食べてもらえなきゃ困るわけだしよ」

「高須君・・・」
「竜児・・・・」
「高須君・・・」

その言葉に素直に心が温まる。本当にこの男ときたら・・・という感想を三人が思っただろう。
こういう人が喜ぶことを何気なくする。高須竜児とはそういう人なんだって。
314 ◆nw3Pqp8oqE :2010/03/14(日) 23:44:35 ID:aGaAB12w
「なんたって泰子のために作った大切なタルトだ。男と女の味覚は違うっていうし味見してくれて率直な意見を言ってくれそうな女子ってここにいる三人しかいないしな!」

『うんうん・・・ん?』

三人に疑問が浮かぶ。いまなんつった?
そんな三人を尻目に竜児がこのタルトを作った理由を語る。

「やはり息子の立場からしたら母親が夜の仕事に就くよりも普通の時間で働いてくれる方がありがたいし安心する!
今までの職場には悪いが弁財天国に移ってくれて俺は本当にうれしいんだ。
泰子ももう若くないしもともと体も弱いしな。ちょうどホワイトデーだし持っていったら店の人も喜んでくれるだろう。」

言葉を失う三人。三人は再び思う。高須竜児はこういう男だって。
インコちゃんも空気を察してか「アワワ…」と震える。そして鳴り響くレンジのタイマーの音。何かができたようだ。

「ふふっ・・出来たようだな。生地とかはお前らが食べたのと一緒だし焼いた時間も同じ。完璧だ!
・・・さて俺はこれを泰子のとこへ持って行くから大河!後は閉じ・・・!!!ぐはっ!!」

腕を組み目をつぶりながら得意げに語る竜児。
大河に家のことは任せ泰子のもとへ行こうとしたが感じたのは腹部の激痛。原因はもちろん…

「ねぇ?竜児?ということは私達ってただの味見役ってことでいいのよね?そうなんだろこの駄犬!?」

今しがた竜児のみぞおちに入れたばかりの拳を握り締めながら大河がそう言う。
一時は竜児の家に通わなくなった大河だが毎日ではないにせよ竜児の家でご飯を食べる生活、
そして自立の両立で生活が送れるようになってきていた。
かつて北村に向いていた恋心も言うタイミングがつかめなかったものの竜児にあると自覚している。
それなのに味見などと言われたら黙っていられない。だが納得いかないのは大河以上に・・・

「高須君?亜美ちゃんさ、味見に来るほど暇じゃないんだよねぇ?プレゼントをもらう時間はあるんだけどさ。」

外面全開笑顔満開で亜美がそういう。しがらみやらいろいろな気を遣ってきた亜美だがその関係も落ち着いたころだと思った。
そろそろ素直に?など思ったころにこの誘い。少しは期待もあっただけにこの扱いはプライドの高い亜美を苛立たせるには十分だった。

「お、おう!?」

怒られる理由がわからない竜児は未だにに混乱中。そして実乃梨までも

「高須君、さすがにそれはよくないと私も思うんだよね?」

一度は大河に譲ろうとした。けどそれは大河自身の決めること。そう思って過ごしてきたが進展はない模様、ならいいのかな?
など思った矢先の今日の誘い。実乃梨も純粋にうれしかった。まだ可能性はあるんだろうなと。だから実乃梨もカチンときてしまった。

異様な雰囲気で詰め寄ってくる三人に恐怖心を感じる竜児。

「ま、待てお前ら!とりあえず甘いものでも・・・」

そんな言葉が火消しになるわけでもなく

「んなもんいるか〜!!!!この鈍犬野郎!!!」

三人で見事にハモリ、そして…

≪うまく言葉にできそうにないのでインコちゃんが実況いたします≫

「ア、アア―!ギャアアーー!!クワ?ク、クワ!!ハ!ハッパ?
パッパー!パイー!イ!イ、イン、イイン、イン、テル!ハイル!イルーー!」
315 ◆nw3Pqp8oqE :2010/03/14(日) 23:46:08 ID:aGaAB12w
ピンポーン

「はーい!竜ちゃーん。いらっ・・・竜ちゃん!!!?どうしたの!?その傷!?」

わざわざ開店祝いのタルトを届けてくれた息子をねぎらおうと出迎えたが、そこにいた息子は一戦交えかろうじて帰還したやーさんの姿以外の何物でもなかった。

「虎はともかくチワワも肉食だったな・・・」

そう歴戦の勇者、でなく竜児がそう漏らす。

「え?虎?チワワ?」

話をつかめない泰子はまだ動揺中。さらに竜児は

「太陽に触ったらやけどするしな・・・」

遠い目をしてに竜児がそうつぶやく。

「竜ちゃん?なにがあったかやっちゃん、まだ分からないでガンスが大丈夫でガンスか?」

心配そうに聞く泰子に竜児はこう答えた。

「虎とチワワに襲われて太陽に焦がされただけだ。ってもいつものことだがな。」

タルトを渡しながら竜児はそうつぶやいた。


「まったくあの駄犬さっさとこのご主人様に決めればいいのに。(モグモグ)」

ところ戻って高須家では残った少女たちのティータイム。八等分されたタルトは竜児、大河、実乃梨、亜美が一つずつ食べて残った三人がもう一つずつ。

「いやいや大河よ?大河のターンはとっくに過ぎたぜ?まわりまわってもう一回みのりんのターン到来だ」

ともに戦った者同士は気が通じ合うと言うかそんな感じで談笑中な三人。話題はもちろん・・・

「はぁ?あんたらはもう賞味期限切れよ。まだ何もないあたしが有利に決まってるじゃん」

「ばかちーは勝手に妄想でもしてな。」

「してねーよ!んなもん!」

言い合いの中大河がすっと残りの1つに手をつけようとしたとき、

「待ちなチビトラ。」
「ちょっと待ったーー!!」

すかさず待ったを掛ける二人。残るタルトはもうひとかけらだ。

「なによみのりん、ばかちー。私のものになったはずじゃない?」

「なってないし。勝手に決めないでもらえる?」

「ぬけがけはずるいぜ大河?この一つは譲れない!」

1つを取り合う三人。この一つは誰のものになるのか?というのはまた別の話。

「クレ!リュウチャン、タルト、クレ!」

「いや、あんたは無理でしょ・・・」
316 ◆nw3Pqp8oqE :2010/03/14(日) 23:52:30 ID:aGaAB12w
以上です。なんというか・・・すいませんでした(苦笑)設定むちゃくちゃキャラもあんまり活かせなかったなあ・・・
エンディングで上手く作れないかなと思いプラスホワイトデーで作りましたがいやはや・・・
特定のカップリングやらなかったのはそれだと三人がうまく回らないかと思ったからです。
っとあんまり愚痴っちゃいけませんね。次はきちんと恋愛させる気でいます。相手は…わかりやすいだろうな(笑)
以上、お付き合いくださってありがとうございました。
317名無しさん@ピンキー:2010/03/14(日) 23:54:28 ID:zfT2U4jL
GJ!面白かったです。
次の作品にも期待してます。
318名無しさん@ピンキー:2010/03/15(月) 00:08:13 ID:oQZZ8MyN
そろそろ次スレの季節か
ちょっくらいってくる
319名無しさん@ピンキー:2010/03/15(月) 00:17:25 ID:CieYBvfx
と思ったけど調子が悪くて?無理だった
320名無しさん@ピンキー:2010/03/15(月) 00:20:12 ID:LJK6q90p
>>316
インコ落ち着けww
いい終わり方でしたGJ
次作カプ決まってるなら前書きよろ(出来ればだが)
321名無しさん@ピンキー:2010/03/15(月) 03:31:15 ID:tBasRjBz
GJでした。
おもしろかった。
322名無しさん@ピンキー:2010/03/15(月) 18:48:28 ID:IDLjQluZ
次スレ立ちました

【田村くん】竹宮ゆゆこ 30皿目【とらドラ!】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1268646327/
323356FLGR ◆WE/5AamTiE :2010/03/15(月) 21:00:45 ID:sqZ7wYm+
356FLGRです。
 書いてしまったので投下します。
 タイトル:「Tears of joy / きすして〜Supplemental story」

「きすして3 Thread-B」=(北村×木原)の続編です。補間というか、補足というか、
そんな位置付けのお話です。前スレで予告していた最終話は次スレに投下します。
「きすして3 Thread-B」の既読を前提としています。未読の場合、保管庫の補完庫さん
で読んでいただけると嬉しいです。

注意事項:北村×木原、エロ無し、時期は高校三年の夏休み、レス数11
次レスより投下開始。
規制等で中断するかもしれません。
324Tears of joy 01:2010/03/15(月) 21:01:53 ID:sqZ7wYm+
 清水寺の舞台からバンジージャンプを決めるぐらいの意気込みで北村君に告白してから
三週間あまり。夏休みは残すところ一週間ほどだが、空模様もジリジリと照るつける日差
しも三十度を超える気温もまだまだ夏が終わっていないことを私に教えてくれている。
 あの日、亜美ちゃんの別荘で交わした約束を北村君は守ってくれて、ついに今日、私は
彼とデートしてしまうのだ。

 と、状況を反芻するだけで顔が赤くなったような気がする。大丈夫か? 私。

 平日の十一時ちょっと前ということもあって、大橋駅の改札口は閑散としていて、待ち
合わせに失敗するようなことは万に一つも無さそうだ。待ち合わせの時間まであと十分。
私は携帯電話を握りしめ、それが鳴らないことを祈っている。

「木原!」
 はっとして顔を上げると、小走りで近づいてくる北村君の姿が見えた。
「北村君」
 私は手を振って応える。呼び方もちょっと変えてみた。『まるお』はいかにも友達って
感じでちょっと嫌だったから。亜美ちゃんみたいに『祐作』って呼べたら素敵なんだけど、
いきなり下の名前で呼んで馴れ馴れしい奴なんて思われたくないし、だからとりあえず、
しばらくは『北村君』。

「ごめん、待たせちゃったか?」
「ううん… 私も今来たところ」 もちろん、ウソです。

 北村君は今日もシンプルなカジュアルファッションだった。黒いスリムジーンズにTシャ
ツとチェック柄のカジュアルシャツ。
 私は半袖の白いワンピースにパステルブルーのサマーカーディガン。ちょっと地味で子
供っぽいかなと思いながら、でも北村君の好みに合いそうな服を選んだらこうなった。昨
日、美容院で落ち着いた感じのダークブラウンに染め直してしてもらったロングヘアはさ
らっさらのきらっきらで、今日の私は避暑地のお嬢様って感じだ。

「じゃあ、行こうか」
「うん」
 応えた私を北村君はちょっと眺めて、
「かわいいね」と。

 ホント? ホントにそう思ってる? かわいいって思ってる? 
 首筋がかぁっと熱くなって、彼の顔を見ていられなくなる。

「本当に? うれしいな。北村君も、格好良いよ」
「そうか? 俺はいつもこんな感じだけど」
「じゃあ、いっつもかっこいいんだよ」
 わ、わ、何恥ずかしいこと言っちゃってるのよ。そりゃ、いっつもそう思ってるけど、
タイミングってのがあるでしょ。
「…そ、そうかな」
 ほら、北村君、困ってるじゃん。
「う、うん。良く似合ってるよ。北村君、そんな感じの格好だろうなって思って、私も合
わせてみたんだ。いつもとちょっと違う感じでしょ」
 スカート部分の裾を摘んで身体を捻って見せた。
「ああ、なるほど。それでか…」
 彼は小さく、うんうんと頷いた。
 ああ、何とか乗り切った。もう、浮かれすぎだよ。
325Tears of joy 02:2010/03/15(月) 21:02:34 ID:sqZ7wYm+

「切符は?」
「え? 切符? ああ、まだ…」
「じゃあ、買ってくるよ。待ってて」
 そう言って彼は自動販売機の方へ歩いて行った。
 こんなに舞い上がっちゃっていて、私は今日を乗り切れるのだろうか。ちょっと不安だ。

***

 私達は三十分ほど電車に揺られて大きな街にやってきた。初デートのために北村君が選ん
でくれたのは映画鑑賞だった。定番中の定番だけど、共通の話題が作れるから私もこのプ
ランに全面的に賛成だった。

 私達は駅近くのファーストフード店に入ってポテトフライと飲み物をオーダーして、二
階のこぢんまりとしたテーブル席に座った。北村君はバッグから情報誌を出してテーブル
の上に広げた。広げられているのは映画の紹介ページ。この街には大小合わせれば二十以
上もの映画館があって、国内で観られるほとんどの映画がこの街のどこかの映画館で観ら
れる。だからこの街に来ることだけ決めておけば、あとはどの映画を観るのか二人で決め
れば良いワケで、それだって話のネタだった。

「木原は何がいい?」
「え? う〜ん。どうしよっかな」
 私は情報誌のページをめくっていく。お目当ての映画はあるけど、いきなり『じゃあ、
コレ』なんてあっさり言ったら投げやりな感じで可愛くない。

「北村君はどんなのが好きなの?」
「うーん。ありきたりだけどアクション物とかだな」
「へぇ。私もそういうの好きだよ。じゃあさ、これなんかどうかな?」

 私は情報誌のページを開いて北村君の方に向けた。そのページで紹介されているのはア
クション物のいかにもハリウッドものっぽい映画で、ミイラがわらわら出てきてひたすら
アクション&バトルという、そんな映画だった。
 北村君はそのページを見て、一瞬驚いたような表情を見せた。
「へぇ、意外だな。俺もこれはちょっと興味があったんだが、その、なかなか言い出す勇
気がなくってな。確かにアクション物ではあるな」
「え? そんなに変だった?」
 ひょっとして駄作だったとか? 評判倒れだったとか。
「いやいや。そんな事無いさ。言っただろ。俺も興味があるって」

 北村君は雑誌を手にとってぱらぱらとページをめくっていく。

「すぐ近くの映画館でやってるよ。時間も丁度良い感じだな」
 彼はそう言って、ポテトを口に放り込んだ。

「それにしても意外だな。木原がこういう映画に興味があるなんて」
「そうかな。普通だと思うけど。それにさ、恋愛ものとか苦手なんだよね」

 特に、『死んじゃう』系の物語って、絶対に反則だと思う。

「そうなのか。女子って恋愛物が好きだと思ってたけど」
「嫌いじゃないけどね。苦手。なんか、いろいろ考えちゃうんだよね」
326Tears of joy 03:2010/03/15(月) 21:03:05 ID:sqZ7wYm+

 私はポテトを摘んで口に運んだ。炭水化物の揚げ物なんてダイエットの大敵だけど、
でも、おいしい。赤い厚紙で作られたパッケージから二人で交互にポテトを摘み出して口
に運ぶ。こんななんでもないシーンだって、ずっとずっと憧れだった。

「へぇ。でも、そうかもな。俺はあんまり観ないからわかんないけど」
「男の子は、そういうのあんまり観ないんだよね」
「そうだな。男同士でそんな映画見るのはかなりヘンだろ」
「う、うん。ちょっとアレだよね」
 一瞬、北村君と高須君がペアシートに座っているイメージが…。
「女の子同士はいいのに不思議なもんだよな」
 うああ。なんか、男同士で恋愛映画が観たいように聞こえる。そう言えば、高須君が女
だったら絶対惚れるとか、北村君言ってなかったっけ。

「お、女の子は良いけど、高須君はダメなのっ!」
「え? いきなりどうした? なんで高須?」

 それは私が私に聞きたい。ぜひとも問い詰めて行きたい。どうして思ってることが口に
出ちゃうかな。 

「そ、それは…。北村君と高須君が一緒に恋愛モノを観てるのを想像しちゃって」

 くくっ…と北村君は笑って、それを奥歯で?んだ。

「俺もそれは遠慮したいよ」
「そ、そうだよね」
「高須に泣き顔なんて見られたくないからなぁ」

 ええっ。一緒に観ること自体はアリなの? なんてことを思っている私の目の前で、北
村君は最後のポテトを口に入れた。

「そろそろ行こうか」
「う、うん」 …… 深く考えないでおこう。
 
 私達は席を立って店を出た。平日の昼前ということもあってか、歩いているのは夏休み
中の学生がほとんどで、通りはそれほど混雑していなかった。。
 私は北村君の行く方向へと付いていった。ただ、彼の向かっている先は私の知っている
映画館とは微妙に違う感じだった。でも、方角的にはそんなに違っていないし、何より彼
の足取りは自信満々、戸惑う素振りなんてまるで無い。もし、彼が迷っているのだとして
も、そんなの全然問題ない。こうやって一緒に歩けることに比べたらそんなことはどうで
もいい。

 けれど、この三十センチの距離がもどかしい。

 でも、仕方ない。彼はまだカレシになってくれたわけじゃない。今は『お試し期間』み
たいなもので、私が強引にデートを約束させただけなんだから。今日の夕方になったら、
『やっぱり友達で』なんて言われてしまうのかも知れない。ひょっとしたら、北村君はも
うそのつもりでいるのかも知れない。
327Tears of joy 04:2010/03/15(月) 21:03:46 ID:sqZ7wYm+

 あーっ! もう、なに弱気になってんのよ!

 そうならないために必死に服だって選んだし、メイクだって髪の毛だってばっちり決め
てきたんだから。清楚な感じでまとめたコーディネートはシンプルカジュアルの彼とベス
トバランス。誰が観たってお似合いのハズなんだから。
 とにかく、デートに誘ってくれたってことは北村君にも好意があるって事なんだから、
もっと自分を見てもらって、もっと好きになってもらわなくっちゃ。

「どうした? 木原」
「ええっ! ううん、な、なんでもない」

「そうか。おっ、ここだな」
「え?」
 思わず声を上げた。見上げた看板に描かれていたのは…

『○○戦隊 ××××ジャー 劇場版!』
 どうみたってハリウッドのハの字も無かった。確かにアクション物には違いないが、私
達の周りにいるのは親子連ればかりで、しかも子供の方は小学校低学年ばかりだ。あきら
かに私達二人は三百メートルは浮いている。

 これは何? どういうこと? ひょっとしてギャグ? ボケ? 
 突っ込むの? 突っ込まなきゃいけないの? 

「櫛枝のお薦めだったんで気にはなってたんだよな」
 腕組みしながら頷く北村君に「そ、そうなんだ」と言うしかなかった。どうやらギャグ
でもボケでも無いようだ。それにしても櫛枝実乃梨、恐るべし。まさかこんな展開になる
とは思わなかった。
「そ、そう。櫛枝さんのお薦めなんだ。そういうのって良くあるの?」
「まあ、そうだな。ソフト部には櫛枝の推奨作品リストが貼ってあるからな」
「そんなのがあるんだ」
「ああ。こういうアニメとか特撮ものが特に多いんだけどな。それで、俺もいくつか観て
みた、というか無理矢理鑑賞させられたというか、ともかく、結構刺さってくるんだよな。
櫛枝リコメンド作品は」
「ふーん。そうなんだ」
「そうなんだよ。それで気にはなってたけど、こうやって観る機会にめぐまれるとは思わ
なかったよ。一人で観に来る気にもなれないし、それでいて微妙に気になって引っかかっ
てたんだよな」
 北村君は大真面目。基本的にそういう人なんだけど、でも、特撮ヒーロー物の映画を観
るか、観ないかでそんな深刻な顔をするのはどうだろう。まあ、そういうところも好きなん
だけど。
「木原はどうしてコレを?」
「え?」

 し、しまったぁぁあああ! 今更、『コレじゃない!』なんて言えない。

「え、ええっと…。
 せっかくだから、普通だったら、ぜぇぇったい観ない映画にしよっかなぁ〜とか…」

328Tears of joy 05:2010/03/15(月) 21:04:28 ID:sqZ7wYm+
 あ、ああ…。終わった。これ観るんだ。初デートなのに。
 最初で最後のデートかも知れないのに… 特撮ヒーロー物なんだ… ははは…

「なるほど。普段は観ないんだな。こういうの」
 観るわけないじゃん。高校三年でこれをリコメンドする櫛枝がおかしいんだよ。
「観ないよ〜。小さい頃にちょっとテレビで観ただけ」
「まあ、普通そうだよな」
 そう言って北村君は微笑んだ。安心してくれたのか、がっかりさせたのか分からない。
なんだか凄く不安だ。

「じゃあ、チケット買ってくるから。ちょっと待っててくれ」
「あ…」
 行っちゃった。引き留める間もなく。
 
 私はロビーのソファーに腰掛けた。テンション上がりまくりのお子様達が走り回るやら
跳ね回るやらで兎にも角にも騒々しい。ロビーには見覚えのあるポーズをビシッと決めた
原色バリバリの五人組の等身大看板が立てられている。こいつらはさっきの情報誌に、こ
の看板とまったく同じ決めポーズで、よりによってお目当ての映画の次ページに載ってい
た…ような気がする。後で確認しておこう。手遅れだけど。
 ロビーのモニターでエンドレス再生されている予告編映像をしばらくボンヤリと眺めて
いると、北村君が駆け足で戻ってきた。
「お待たせ」
 そう言って彼はチケットを私に差し出した。
「あ、お金」
 私はバッグに手を入れた。
「いいよ。今日は俺のおごり」
「そんなの、悪いよ」
「いいから」
「うん…。ありがと」
「どういたしまして」
 そう言って北村君は微笑んだ。それから彼はちらっと腕時計を見て、
「もう、入ろうか」と言った。

 まあ、いっか…

 彼の笑顔を見てそんな気分になった。何を観たって、彼と同じ時間をすごせるって事に
は変わりないんだから。

「うん。そうしよ」私は笑顔で彼に応えた。


 北村君が取ったのは劇場の後方の席だった。平日ということもあって席は三分の一ほど
空いている。後ろの方は割と空いていて、周りに気を遣う必要もなさそうだった。

「子供のころさ、亜美がウチに遊びにきてたんだよ」
「そっか。幼なじみだもんね」
 だから亜美ちゃんは彼を『ゆうさく』と呼ぶ。それがちょっと羨ましい。

329Tears of joy 06:2010/03/15(月) 21:05:17 ID:sqZ7wYm+
「それでさ、よく三人で一緒に観てたんだよ。戦隊モノ。俺と兄貴と亜美で、母さんがビ
デオに録っておいてくれてさ。ごっこ遊びなんかもしてたな」
 北村君は肘掛けに頬杖をついて優しい目をしていた。
「へぇ。ごっこ遊びかぁ。やっぱり、亜美ちゃんがピンクだったりするの?」
「いや、それがさ…」
 北村君は悪戯っぽく笑った。
「亜美は敵の女幹部役なんだよ。で、兄貴がレッドで俺がブルー」
 敵の女幹部っていうのがどういうキャラなのか私には分からない。
「えー。じゃあ北村君とお兄さんで亜美ちゃんをいじめるわけ?」
 北村君は首を振りながら手をパタパタと振って、
「いや、亜美が勝つことになってるんだよ。ヒーローやられちゃうの。俺たちのごっこ遊
びでは悪の組織が勝利して亜美が高笑いして終わるんだよ」
 北村君はそう言ってクスクスと笑い始めた。
「だめじゃん。負けちゃったら」
 私も可笑しくてクスクスと笑ってしまう。
「だろ。けど、俺も兄貴も亜美の言う通りに芝居をするだけだから、筋書きは亜美の思う
ままなんだよ。そうそう、レッドが亜美に籠絡されてブルーと戦って相打ちなんてのもあっ
たな。すっかり忘れてたけど思い出したぞ」
 
 思わず吹いた。

「それっていつ頃の話?」
「小学校の二年とか、そんなもんじゃないかな」
「亜美ちゃんって、その頃から可愛かったの?」
「そうだなぁ。その頃はなんとも思ってなかったけど、昔の写真を見るとやっぱ美少女っ
て感じだよ」
「そっか…」

 照明がすーっと暗くなっていく。

「お、始まるみたいだな。携帯切っておかないとな」
 北村君はポケットから電話を取りだして電源を切った。私も鞄から携帯を出して電源を
切った。スクリーンが明るくなり、予告編の上映が始まった。
 皮肉なことに、私のお目当ての映画の予告編が流れている。
「これも面白そうだよな」
 北村君が小声で話しかけてきた。面白そうでしょ。私もそう思ったんだよ。
「うん、そうだね」
 
 そうだ、ここでさりげなく次のデートの約束をしてしまおう。

「あ、あのさ。北村君」
「ん? どうした」
「こ、今度はこれを…」
「お?」

 前の席に座っている男の子が私達をガン見してた。そして口の前で人差し指を立てて、

「シーッ!」

330Tears of joy 07:2010/03/15(月) 21:05:56 ID:sqZ7wYm+
 北村君は私の顔を見て肩をすくめた。それから口の前で人差し指を立てて男の子と同じ
ポーズを取る。男の子はそれに納得したのか、前を向いてすとんと椅子に腰掛けた。
 小さな男の子に咎められて、なんだか猛烈に恥ずかしかった。別に予告編なんだからい
いじゃん、と心の中で言い訳する私の耳に『上映中はお静かに!』という予告編に続いて
上映されている注意事項のナレーションが飛び込んできて、私の身体は五パーセントぐら
い小さくなった。

 そして、本編スタート。
 冒頭の巨大ロボの格闘シーンから物語はハイテンション、ハイスピードで突っ走る。子
供の頃にちょっとだけ見たヒーローと比べるとあきらかに垢抜けている。CGも結構凝っ
ていて、そりゃあハリウッド物の大作なんかとは比べものにならないけど、アクション
シーンは思っていたより全然まともだった。と、言うか、かなり引き込まれちゃってる自
分がちょっと嫌だ。隣に座っている北村君は、完璧に小学生の顔になっていた。

 そして、微妙に露出度の高いコスチュームのお姉さんが登場。そうか、これが噂に聞く
女幹部というやつに違いない。

『おのれ、××××ジャー。これを喰らうでおジャル』

 ごめん、亜美ちゃん。ウケた。笑いのツボにずっぽりだった。
 もう、このお姉様が亜美ちゃんに見えて仕方ない。
 笑いを堪えていると苦しくて涙が出た。

***

「いやー、なかなか良かったな。結構、ストーリーもしっかりしてるんだな」
「うん。ホントに。ちょっと引き込まれた」
 それは本当の事だったけれど、大きなスクリーンと音響の効果だと思いたい。ただ、思
いの外、映像もアクションもストーリーもまともだったのは事実だ。それは潔く認めよう。
多分、期待してなかった分だけ驚きが大きかったのだ…だと思いたい。

 映画館を出ると、時刻は二時を少し過ぎていた。
「お腹空いたね」
「そうだな。昼メシにしよう。木原は何がいい?」
「北村君が決めて。でも、あんまり脂っこいものは嫌だな」
 
 そんな私のリクエストに応えて、彼が選んだのは、それほど高くないイタリアンレスト
ランだった。昼ご飯には少し遅い時間だったけれど、店はかなり繁盛していて席は殆ど埋
まっていた。
 私と北村君は『これ、美味しそう』とか『これなんかどうだ?』とか言いながらメニュー
を眺めた。私は、やっぱりニンニクとかは避けたいな、とか。白いワンピにトマトソース
のシミがついたら嫌だなとか、色々と熟慮の末にサラダとリゾットをオーダー。北村君は
ピザとパスタという炭水化物コンボだった。男の子は基礎代謝が高いからこれぐらいの量
は全然問題ないんだろう。

 オーダーを済ませた私達は映画の話や亜美ちゃんの別荘での事を話した。
 しばらくすると料理が運ばれてきてテーブルに並べられた。

 私は熱い湯気を立てるリゾットを眺めながらサラダに手をつけた。北村君はピザカッター
でスモールサイズのマルゲリータを四半分にカットして、その一つを手にとってかじりつ
いた。
331Tears of joy 08:2010/03/15(月) 21:06:27 ID:sqZ7wYm+

「うん、うまい」と北村君は顔をほころばせる。

 彼は二口、三口とピザを囓り、残った一欠片をぱくりと口に入れた。
 私はリゾットをスプーンですくい、ふうふうと息を吹きかけて少し冷ましてから口に入
れた。

「んー…、おいし」
 空っぽの胃袋にリゾットがすとんと吸い込まれる。お腹がすいていた所為もあるかもし
れないけれど、なんたって目の前に北村君がいて、ふたりで食事しているのだ。美味しく
ないはずがない。目の前の北村君はペンネアラビアータをフォークでつついて口に運んで、
うんうんと頷きながらもぐもぐと口を動かし、

「うん、これもうまいな」と満足げに微笑む。

 その表情。言っては悪いけど、やっぱりかわいい。

「ねえ、北村君。ちょっと味見させて」
「ああ、いいよ。食べてみなよ」
「うん、ありがと。頂くね」

 私はフォークでペンネを突き刺して口に入れた。ぴりっとした刺激が口の中に広がる。
オリーブオイルとトマトのフレーバーが赤唐辛子の辛みを引き立てる。個性の強い食材で
作られたソースだけではくどくなってしまうところをイタリアンパセリの香りがさりげな
くカバー。

「おいしいね」辛い料理を口にしたのに私の頬は緩みっぱなし。

「そう言えば、亜美の別荘に行ったとき、高須がアラビアータを作ってくれたよな。高須
のアラビアータ、これに全然負けてないよな」

 チクッと針で刺すような小さな痛みが胸に走った。

「うん、ホント。でもさ、高須君、ひどいよね」

 うん、高須君はひどい。ある意味、女の敵だと思う。

「え? なんで?」
 北村君は不思議そうに私を見た。
「だって、あれで手抜き料理だ、なんて言われちゃったらさー、私、立つ瀬無いよ」
「まあ、そう言うなよ。高須的にはそうだったんだろうし、みんながあんまり褒めるから
照れくさかったんだろ」
「そうかもしれないけどさ。私は、その、あんな風には出来ないから…」
 
 …羨ましいんだよね…

 好きな人と一緒に食事をするだけでも楽しいのに、美味しい料理が作れて、それを好き
な人に食べて貰って、喜んでもらえて、笑ってもらえて…。そんな幸せ、私は知らないか
ら。
332Tears of joy 09:2010/03/15(月) 21:07:11 ID:sqZ7wYm+

 私はスプーンでリゾットをすくって口に入れた。

「いいじゃないか。今は出来ないってだけだろ」

 ううっ。励まされてしまった。しかも、全然料理が出来ないと思われてるっぽいリアク
ション。いくらなんでもそれはない。そこはちゃんと否定しておかないと。

「北村君、私が全然料理が出来ないと思ってるでしょ。言っておくけど、全然出来ないっ
てワケじゃないんだからね」
「いや、そんなつもりじゃないんだ。ごめんごめん」
 そう言って北村君は首に手を当てた。

 謝らせちゃった。そういうつもりじゃなかったのに。言い方が悪かったのかな。なんか、
悔しくてつんけんしちゃう。もっと可愛らしくしなくちゃ。

「ううん、いいの。気にしないで」
「そうか。ごめんな」

 ああっ。なんか雰囲気悪くなっちゃった。どうしよう。

「ホントに気にしないで。それにさ、実はあんまり料理得意じゃないから。やっぱり男の
子ってそういうの得意な女の子が好きなのかな…」

 って、何言ってるのよ、私。これじゃ、誘導尋問じゃん。答えよう無いじゃん。
『いやぁ、俺は料理の出来ない女が大好きなんだ』…とかって有り得ないから。

「…なんて聞かれたら困るよね。ハハハ…。ああ、気にしないで、気にしないで…」

 一人相撲の泥沼状態。もう、このままさくっと地面に埋めて欲しい。北村君はすっかり
困惑。情けなくて、恥ずかしくて、私はリゾットをスプーンで無意味にかき回す事ぐらい
しかできない。

 もうやだ、せっかくのデートなのに。楽しくお話したかったのに。彼の笑顔を見ていた
かったのに、何を言っても混乱させて困らせちゃう。 

「木原」

 伏せていた顔を上げて彼を見た。

「すごいモノを見せてやる」
「え?」
 まさかここで脱ぐの? と思ったらさすがに違った。ごめんね、北村君。
 北村君は水の入ったグラスに人差し指を入れて濡らすと、その指でテーブルに五センチ
ほどの円を描いた。私は意味が分からなくて、ただ、その輪を眺めた。

「これな、スイッチなんだよ。指で押すとちょっとだけ時間が戻る」
 私は多分、きょとんとしている。そんな私に北村君は「いいから、押してみろよ」と言っ
た。私は言われるまま、水滴で描かれた輪の中央に右手の人差し指を置いた。すると北村
君は効果音のものまねをして「きゅぃーん…」っと。まるっきり意味が分からない。
333Tears of joy 10:2010/03/15(月) 21:07:37 ID:sqZ7wYm+

 北村君はおもむろにフォークでペンネを突いて口に入れ、
「うん、これも美味しいな」と微笑んだ。

「木原も食べてみろよ」
 彼はそう言ってフォークでペンネを突き刺して、私の目の前に突きだした。
「いいから」
 私は彼の突きだしたフォークにかじり付くようにペンネを口に入れた。
「おいしいね」
「そう言えば、亜美の別荘に行ったとき、高須がアラビアータを作ってくれたよな。あい
つのアラビアータ、これに負けてないよな」

 そっか。そういうことか。

「ふふっ。ホントに時間戻っちゃった」
「え? 何言ってるんだよ」
 北村君は真顔でそんなことを言っている。

「ううん、なんでもない。そうそう。高須君のアラビアータ、ホントに美味しかったよね」

 私は目一杯微笑んだ。暖かくて、甘くて、ちょっと酸っぱいような、そんなフィーリン
グに私の頬はだらしなく蕩けるように緩んでいる。たぶん、きっとそうなっている。


***


「さてと、そろそろ引き上げるか」
「うん、そうだね」

 頃合いだった。食事の後、買い物に付き合ってもらっていろんなお店を見て回った。そ
して時刻はもうすぐ午後五時。清い交際の第一歩としてはこれぐらいにしておくのが良い
と思う。物足りない、と言えばそうだけど、好きな人から好いてもらえそうな自分でいるっ
て言うのは結構疲れる。

 でも、肝心の第二歩はあるんだろうか?

「あのさ…」
 聞くのが怖い。『またね』と言わせてもらえるのだろうか。
「ん?」
 北村君の優しい目が私の表情を捉えた。
「…その、また、デートしてくれるかな? 北村君が暇な時でいいから」
 ぼぅっとするのが自分で分かった。私の顔も耳も真っ赤だろう。
「もちろん!」
 そう言って彼はにこっと笑った。

 嬉しくて涙が出そう。だから、私は瞼を閉じて彼に微笑んだ。こんな事ぐらいで泣いちゃ
うような女の子だって思われたくないし、変に気を遣わせたくもない。
334Tears of joy 11:2010/03/15(月) 21:08:04 ID:sqZ7wYm+

「ありがと。北村君」
 私はちょっと俯いて、軽く洟をすすった。

「帰ろ」涙を押し戻して彼に微笑んだ。

 夕方の街は人波で溢れていた。はぐれてしまわないように人混みを縫うように歩く。

「やっぱり、夕方になると混むんだな」
 彼の声も雑踏にかき消されそうになる。
「そうだね」
 私は少し大きな声で応えた。
 彼がふっと振り向いて、微笑んだ。次の瞬間、彼は私の手から紙バッグを取り上げて、
大きな左手で私の右手をそっと握った。
「えっ!」突然の事に思わず声を上げた。
「ああ、ごめん。はぐれちゃいけないと思って」
 北村君はそう言ってはにかんだ。
「ありがと。離さないでね」
 私も笑顔で応えた。

 大きな手は温かくて、夏なのに、暑いのに、その温もりが嬉しくて、

 嬉しくて、
 嬉しくて、
 嬉しくて、

 本当に、唯々、嬉しくて…


 押し込んでおいた涙がたった一粒だけこぼれて頬をつたった。


(Tears of joy / きすして〜Supplemental story おわり)

335356FLGR ◆WE/5AamTiE :2010/03/15(月) 21:08:30 ID:sqZ7wYm+
以上で投下完了です。
読んでいただいた方、ありがとうございます。

356FLGRでした。
336名無しさん@ピンキー:2010/03/15(月) 21:24:47 ID:00WJlwen
>>335
相変わらずGJです。
それにしても、乙女ですねー。 麻耶たん。
あと、亜美の悪の女幹部。 似合いすぎw
自称、川嶋原理主義の私にもツボでしたww
337名無しさん@ピンキー:2010/03/15(月) 23:32:23 ID:E+XCXAPn
>>335
いつもながら癒されますGJです。
あーみんの高笑いはまさに女幹部www
338名無しさん@ピンキー
例によって埋め代わりの何か。


大河とする時は大体食後になるか。食欲の次は性欲を満たそうという本能が働いているかは謎だ。
とりあえず皿洗ってる時に後ろからズボン脱がそうとするのはやめてほしい。絡まったりするし。
どうも大河にはムードというものを介さない節があるから困る。そっと抱きしめてやって何度もキスしてやると
俺の腕の中で虎が猫になっていく様はとてもかわいい。そのままお姫様抱っこでベッドに運んでから
蕩けるまでキスしてやってからことに及ぶ。なるべく事前に力を削いでおかねば、虎との交わりは危険なのだ。

実乃梨は事前にすると決めておかないとはぐらかされてしまいがち。それを押し切って、というのも悪くはないが
基本的に目覚ましフェラなど予定にある時以外は性的なことをしない。本番に向けて調子を上げ心構えを整えてから
いざ本番、という具合。それなりに回数を重ねても緊張はするらしい。全裸でベッドの上に正座して待つ実乃梨の
緊張を解すため、軽くマッサージしてやりながらなだれ込むのが通例となっている。鍛えられ絞られた身体には
亜美や奈々子とはまた違った美しさを感じるな。肌がほのかに桃色に染まるまで解したら食べ頃だ。

亜美は色々と趣向を変えてくる。突然(大河の)部屋にポールが設置されたかと思えば、どこで習得したのか
ポールダンスとストリップで俺の劣情を煽ってくるし、時には手首が傷つかないような柔らかい素材の手錠を使い
自らを後ろ手に拘束するなどしてくる。とにかく奔放にエロいことをしたいしされたいのだ、このエロアホ娘は。
それなりに嬉しくもあるので、野外露出とか言い出さない限りはこの方向でいいかとも思う。あと自分でマ○コを
広げて見せつけてきたら、ちゃんと綺麗だって褒めてやらないと不機嫌になるので注意が必要。実際綺麗だけど。

奈々子はそれとなく触れてくることが多い。肩や背中、座っている時の膝、寝ている時の脇腹やつま先、そんな俺の
性的とは言えない場所に触れる回数が増える。それが奈々子のサイン。決して自分からしようとは言ってこない。
亜美に言わせると、そういうところが奈々子はずるいそうだがよく分からん。一度、敢えてサインを無視し続け
こちらからも肝心な場所には触れないよう、ギリギリの場所を愛撫し続けることで奈々子から言わせようとしたが、
最終的には泣いても我慢を続けたので俺が折れた。許してもらうまでに抜かないまま5連を要したことを記す。

麻耶とは友達感覚で一緒にいることが多くなった。最初の頃はお互いにそれなりに意識したもんだが、今では教室で
話すのと同じぐらいの距離感で一緒に過ごせる。ただ二人きりだと無防備になりがちで、麻耶がベッドに寝転がって
雑誌読んでるとスカートの中が覗けてしまったり、イヤホン片耳ずつで音楽プレイヤー聞いてる時に覗き込めてしまう
胸元だとか、そんなちょっとしたことで欲情して抱き寄せることは多い。麻耶の方から誘ってくることもそれなり。
じゃれてふざけて笑い合えて、不意に自然と身体を重ねられる……こういうのをセフレっていうんだろうか?

独神が俺に一夫多妻制のある国籍を取るように勧めてきたのはともかくとして、する時は思いっきりムードを上げる。
年齢差のことを気にしているからか、セックスがややもすると愛を確かめる行為でなく、子作りになってしまいがちだ。
だから耳元でいかに先生が魅力的か、俺が先生を愛しているかということをなるべく甘い言葉で囁き、身体を寄せる。
とどめに「ゆり」と普段は口にしない名前で呼んでやれば完全に女のスイッチが入る。そこからはしつこいぐらい
絡み付いてくるので気合を入れる必要ありだ。……いつまでも独神じゃなんだし、入籍をそろそろ真面目に考えるか。