406 :
名無しさん@ピンキー:2010/02/13(土) 03:29:53 ID:gKTxC/DU
GJ!泣いちゃった
GJ
GJ
あなたの作品が好きです。
たびたび失礼します。
バレンタイン当日編と平行してやってるのを投下します。
タイトルは
能登「…女って…怖いよ…」(前編)
です。
前半はエロなしで、若干キャラ崩壊ぎみですが…そこは目を瞑ってくださいまし。
では、7レスほどお付き合い下さい。
期末テストも終わり、テスト休みに入った竜児達はまた亜美の別荘へ旅行に来ていた。
男子は竜児、北村、能登、春田、女子は大河、実乃梨、亜美、奈々子、麻耶と総勢9人の大所帯だ。
夏ではないので海で遊ぶことは出来ないが、近くの観光や別荘内で思い思いに楽しんでいた。ただ春田辺りは「あ〜みちゃん達のせくし〜ビキニが見れなくて残念むね〜ん」等と言っていたが。
「いやあ、高須よ。海水浴が出来ないと何かやることはあるのかと心配していたが、いやはやこれが中々楽しめるものだな!」
「おうっ!北村。都会と違って空気も美味いし、食べ物も料理しがいのあるものばかりだ。おっ、春田そこのキノコ取ってくれ」
竜児ご自慢?の鋭い目利き(物理的にも)によって選りすぐられた野菜達が綺麗に刻まれていく。
今日の夕食担当は、竜児を中心とした男子メンバー。特に竜児は張り切っていて、あれやこれやと指示を出す。そんな時、密かに女子メンバーが集まっていることなど知るよしもない。
さて、なぜ今回海水浴も出来ない季節に別荘に来たかというと、女子達のある陰謀があったからだ。
それを知るには旅行の数日前、スドバで極秘会議が行われていた所まで遡ることになる。
「さてさて、テスト前の忙しい時期にお集まりいただいたのは他でもありません」
集められた女子達に向かって、いつになく真面目な口調で亜美はこう切り出した。
「皆さんにはそれぞれ、好きな男子がいると思います!今の片想いままでいいのですか?私は嫌です!」
「う〜ん…私も出来れば告白したい…かな?」
意外にも菜々子がこう反応した。すると、亜美は
「でしょ?だから私に提案があります!」
「ばかちーの提案?はっ、どうせろくなもんじゃないわ」
「タイガー、文句なら後で受け付けるわ。」
いつもなら大河に噛みつき返す亜美だったが、今回は自信があるのか軽く受け流してこう言った。
「テストが終わったら、私の所の別荘に行かない?そこでみんなで告白するの。ヤって既成事実作っちゃうの。もちろん、誰が選ばれても恨みっこ無しだからね」
その瞬間、周りは水を打ったように静かになった。
文句の1つでも言おうと構えていた大河も
「…北…村くんと、き、既成事じゅ…つ…」
と耳まで真っ赤にしながら呟いていた。
「どう、みんな?決して悪い話じゃないと思うんだけどな」
言った本人も恥ずかしかったのか、軽く頬を染めながら亜美はみんなに訊ねた。
「わ、私は乗るよ!その話!私だって既成事実作っちゃうもん!」
麻耶が顔を真っ赤しながらも賛成を表明した。
「私も、亜美ちゃんや麻耶、みんなと一緒にしよっかな」
「あーみん…それはダイエット戦士たる私に対する宣戦布告だね?受けてたつよ!」
「菜々子も実乃梨ちゃんもオッケーね。で、タイガーはどうするの?」
「…うん。私もヤるわ!ヤってやるわ」
「…大河…なんかその言い方怖いよ」
大河の何か間違ったやる気に、菜々子が若干戸惑っていた。
「よしっ!全員参加ね。それで…」
「あみちゃーん。なんで俺はここにいるのー?」
欲望渦巻き始めた女子達の中に、何故かストローを加えているのんきな春田が混じっていた。
「あ〜春田くんには私達のお手伝いをして欲しいのよ。ほら、春田くん年上の彼女いるじゃない?だから安心して話せるしね」
「あ〜瀬名さんのことねぇ〜確かにオレには瀬名さんいるしぃ〜全然オッケーだよ〜みんなには幸せになってもらいたいからねえ〜」
バカに任せるのは心配もあったが、今は猫の手も借りたい状況な為に選り好みはしていられなかった。
「ありがと〜春田くん。お礼は期待しててね〜」
「うっひょ〜!お礼楽しみだぁ〜」
こうして乙女達の戦いが始まったのだった。
時は戻り、亜美の別荘。
「いやマジで高須は料理上手すぎだろ?俺、今度教えてもらおうかな」
「おうっ!これくらいなんでもねえよ。能登も基本さえ抑えておけばすぐ出来る」
竜児と能登が、夕食後の食器洗いをしながら雑談していると
「ねぇねぇ、2人とも〜今さぁ女子達シャワー浴びてるんだってさぁ〜覗こうよぉ〜」
春田が小声で話しながらやって来た。
「俺は今、三角コーナーの滑り取りに忙しい」
「えぇ〜高っちゃん連れないなぁ〜能登は行くっしょ?麻耶ちゃんの体つききになるっしょ?」
「き、木原の体…い、いや、ダメだ。これ以上嫌われると思うと…」
竜児は三角コーナーに夢中で話などあまり聞いていないし、能登に至っては最初は乗り気だったものの、麻耶に嫌われると思ったからか、徐々に顔から生気を失い最終的にはキッチンの隅でいじけるように座り込んでしまった。
「春田よ、ズバリ個室のシャワーは覗けないと思うが」
「えっ?そうなの〜残念ショ〜」
北村はシャワーを浴びて来たからか、トランクス1枚という女子が見たら顔を赤くしてしまいそうな出で立ちで春田にツッコミを入れていた。
「北村、また女子に裸見せるつもりか?早く着替えてこいよ。風邪引くぞ」
「おお、高須。洗い物やらせて悪かった。では、俺は着替えてくるとしようか」「えぇ!北村、女子に裸見せたのか?」「いや、実は…」
そんな夏の思い出を話していると
「あ、みんないたいた。って祐作は?」
シャワーを浴びてきたからか、薄いピンクのキャミソールに黒の短パンといったラフな格好の亜美が声を掛けてきた。
「…お、おうっ!北村は今着替えしに行ってるぞ」
普段とは違った色っぽい亜美に竜児は目を反らしながら答えた。
「そうなんだぁ。あっれぇ〜高須くんなんで目を反らしちゃうの?もしかして亜美ちゃんのお風呂上がり見て欲情してる?」
「ばっ…そんなことねえよ。それより何か用があるんじゃねえのか?」
亜美のちょっとした誘惑にどぎまぎしつつ竜児は話を反らした。
「あっ、そうそう。みんなシャワー浴びて来たら下のリビングに降りて来てね。ちょっとしたゲームやろうよ」
「ゲームか、いいね。なにやるの?」
「もう、能登くんったら。ハヤい男は嫌われちゃうよ。それはリビング来てからのお・た・の・し・み。じゃあみんな、待ってるね〜」
亜美は人差し指をピコピコさせながらリビングへと去っていった。
「高っちゃん。ゲームたのしみだね〜」
「おうっ!待たせるのも悪いしさっさと浴びるか」
「…ハヤイ…嫌われる…」
「能登なにやってんだ。遅い男も嫌われるぞ」
「…えっ、マジで?」
能登の意識が飛んでいたのを戻しつつ、3人はシャワーへと向かっていった。
「…みんな行ったみたい。よし、さくっと準備しちゃいますか」
「あーみん…こ、こいつはどこに置いたら良いのかねぇ…」
「あ〜実乃梨ちゃんそれは隅の方に…照れちゃってかわい〜」
「そ、そんなことないぜ〜!ただ見るのは初めてでさ」
「私も初めて見たわよ。っていうか奈々子、良くこれ買えたわね」
「うん。サイズがわからないから困ったけど、ネットで買えるからね」
準備が終わった頃、シャワーを浴び終わった男子メンバーがリビングへとやって来た。
「おう、待たせちまったみたいで悪いな…って、このカーテンで仕切られた部分はなんだ?」
竜児はさっきまでなかったカーテンが気になり尋ねると
「今は気にしないで。ほら、みんなこっちに来てるからはやく」
「お、おう…」
奈々子にはぐらかされてしまった。
「じゃあ、みんな集まったし何のゲームしよっか?」
亜美はそう切り出すと、ぐるっと全員の顔を見渡した。その時、春田と一瞬アイコンタクトを取ると
「は〜い〜、俺はお〜さまゲームやりたいなぁ〜」
「「「お、王様ゲーム?」」」
男子メンバーは声を揃えて驚いていた。
「…春田。いくらなんでもそれはねえだろ…」
竜児が呆れながら言うと
「い、いいんじゃない?王様ゲーム」
「き、木原…マジかよ…」
「あら、私もちょっと興味あるわ。せっかくだしやってみましょうよ」
「香椎まで…ホントにいいのかよ…どうする、北村」
「ふむ、俺も興味ないと言ったら嘘になるしな!ここは多数決でもとってみるか。では、王様ゲームをやりたいやつ手を挙げてくれ」
「…おうっ!…マジかよこれ…」
手を挙げなかった竜児が周りを見ると… なんと竜児以外の全員が手を挙げていた。
「ズバリ!王様ゲーム決定だな。高須は嫌かもしれないが、まあ楽しんでくれ」
「いや、俺は構わねえけどよ…マジでわけわかんねえ…」
春田や能登、北村が王様ゲームをやりたいのはわかる。だが女子メンバー、あの大河でさえやると手を挙げていたので、竜児には意味がわからなくなっていた。 「じゃあ、今から割り箸持ってくるね。でさ、ちょっと提案があるんだけど」
「ん?なんだ、亜美」
「王様を紙のクジで決めた後割り箸の番号を男子と女子で分けない?男子の何番と女子の何番でみたいにさ」
「ふむ、確かにこういったのは異性で楽しんだ方が盛り上がるな。みんなもそれで構わないか?」
「「「異議なーし」」」
「了解!じゃあ亜美ちゃん割り箸持ってくるね〜」
こうしてメンバー達の(一部除く)欲望渦巻く王様ゲームがスタートするのだった…
以上です。
後半は明日の夜にでも投下出来ればとおもいます。
GJ!
続きが楽しみww
419 :
名無しさん@ピンキー:2010/02/13(土) 21:02:56 ID:WBJVvyoj
GJ!
やっちゃんSS投下
「バレンタイン」
静寂な夜を照らす月明かり。
遮る雲一つない夜空から降り注ぐそれは、寝静まった人たちを見守るよう。
その中でただ一軒、爛々と明かりを放つお店があった。
人気がなくても、いつ来るかもわからなくても、それでも誰かを待ち続けて明かりを絶やさない。
こんな風に考えてみると、コンビニってけっこうすごいのかも。
自動ドアが開くと流れてくるベルの音と、店内に反響するインフォメーション。
凍えそうな体をやさしく纏う暖房。
レジの奥から目を擦りながら出てきた男の子。
あくびはかみ殺した方がいいかな、やっぱり。
こんな夜更けじゃ眠いのも仕方ないけど。
適当にぶらぶらしながら物色していると、目に付いたのは人目を引くよう設けられた、ある一角。
並んでいるのは見慣れたお菓子。
けれどその日は、その日だけは特別で、大切で、ありったけの想いを託されたお菓子。
───大切なひとに贈りませんか?
可愛らしいキャラクターの吹き出しにはそう添えられていた。
ほんの気まぐれで手を伸ばしたのは、そのイラストの少し奥、一口サイズの小さなチョコレート。
無造作に二つ摘むと、レジへと足を向けた。
***
漂ってくるお味噌汁のいい匂いは食欲をそそるのには十分すぎて、疲れてても眠くても、勝手に目が覚めた。
温もりが残る布団は魅力的だけど、でももっと魅力的なその香りに釣られるようにずりずり体を引きずる。
立て付けが悪くなってきてるせいか閉じきらない襖は冷たい空気を吸い込むのと一緒に色々なものも吸い込んで教えてくれる。
お味噌の香りに混じってしてくる、炊き立てのご飯のいい匂い。
それと、空気を震わせて耳に届く微かな音。
トントントン。まな板の上で踊る包丁。
ぐつぐつぐつ。沸き立つお鍋。
ぐーぐーぐー…あぁ、大河ちゃんのお腹の虫だ。
食いしん坊さんな大河ちゃんらしいや。
くー…やっちゃんも大河ちゃんのこと言ってられないなぁ、これじゃあ。
「おはよ〜」
開け放した襖の向こう、最初に見えたのはテーブルに並んだ朝ごはん。
ちょこんと座る大河ちゃんはお箸を両手に今か今かっていただきますを待っている。
でもやっちゃんが顔を出すと手にしていたお箸をきちんと並べてテーブルに置いて、笑顔。
「おはよっ、やっちゃん」
「おはよう」
腰を下ろすと、今度は台所から。
「なんだ、もう起きたのか」
制服の上から着けていたエプロンを外しながらの竜ちゃん。
それを棚に掛けると、流し台から包んだお弁当を手にして、それを大河ちゃんに渡す。
「うん。あんまりおいしそうな匂いがしてきて起きちゃった」
「眠いんならまだ寝てていいんだぞ、飯ならちゃんと取っといてやるから」
テーブルに着くと、竜ちゃんがそう言う。
帰ってきたのは暗かった空が白み始めてきた頃。
なるべく音を立てずにしていたつもりだけど、でも竜ちゃんは気付いてたみたい。
やっちゃんを見つめるその目尻は、少し下がり気味。
心配性だなぁ、本当に。
「でもやっちゃんお腹減っちゃったしぃ、それにご飯食べたらまた寝ちゃうからへーきだよ〜」
「お前なぁ」
そこで区切ると、一拍代わりにため息一つ。
「たく。太っても知らねぇぞ」
おデブさんになっちゃったら、それでもいいよ。
あんまりなりたくないけど、でも、そうやって少しでも安心してくれるなら、おデブさんでもいい。
ちょっとくらいだったらね。
「うわ、デリカシーないわね」
「ほっとけ。ほら、大盛りでいいんだろ」
大河ちゃんにぶっきらぼうにお茶碗を差し出す竜ちゃん。
やっちゃんにもご飯をよそって渡すと、そのままいただきますをして、いつも通りの朝食が始まった。
「そういえば」
そう前置きをしたのは三回目のお代わりを竜ちゃんにお願いした大河ちゃん。
点けていたテレビから流れてくるニュースの中から見つけた話題を、誰ともなしに口にする。
「明日ってバレンタインよね」
「そうだねぇ」
それじゃあ今日はバレンタイン・イヴになるのかな。
ついこの間クリスマスがあって、お正月もあって、今度はもうバレンタイン。
時間が経つのが早くってビックリ。
「大河ちゃんは誰にあげるの、チョコ」
気になるっていえばそうだけど、けど聞く必要もなかったかも。
「私はべつに、そんなの」
チラチラ正面を気にかけて、目と目が合う。
瞬く間に空にしたお茶碗を竜ちゃんに突き出して四回目のお代わりをする大河ちゃんは耳まで真っ赤っか。
竜ちゃんにそれを指摘されるとオロオロしちゃってしどろもどろ。
わかりやすいくらいわかりやすくって、可愛い。
「そ、そういうやっちゃんはどうなの」
なにがだろう。
強引に話を逸らす大河ちゃんがやっちゃんにそう問いかける。
「誰かいないの、チョコ贈る人」
あ、そういう意味だったんだ。
贈る人、かぁ。
「ん〜、そうだなぁ、やっちゃんはぁよく来てくれるお客さんとかにかなぁ」
大河ちゃんと違って義理もお義理のギリギリチョコだけど。
そう茶化すと大河ちゃんは真っ赤っかな顔をもっと真っ赤っかにさせちゃった。
ちょっとしつこかったかな。
「ごめんねぇ大河ちゃん」
「もうっ、知らない」
プイってそっぽ向かれちゃった。
やっぱりやりすぎちゃったみたい、こうなった大河ちゃんはしばらく口きいてくれないし、何を言っても今は伝わんない。
ほとぼりが冷めたらちゃんと謝らなくちゃ。
それまでは、あんまり触れないようにしよう。
「バレンタインか…」
竜ちゃんが呟く。
どこそこの有名店のチョコがとか、チョコと一緒に贈るプレゼントとか、告白にもってこいのデートスポットとか。
そんなのを取り上げては詳しく紹介している、テレビが垂れ流すニュースを、竜ちゃんはどこかぼんやり眺めている。
その横顔は、なんだか何かを思い出しているようにも見えた。
ふいにこんなことを思った。
竜ちゃんは、今までチョコを贈られたことってあるのかな。
もちろん義理チョコでも友チョコっていうのでもなくて、本命のチョコ。
そんな話を聞いたことはないけど、そういうのを誰かに話したがる竜ちゃんじゃないし。
態度でも素振りでも、そんなのでわかっちゃうくらい浮き足立ってたことだって、少なくともやっちゃんが覚えてる限りはないし。
じゃあ貰ったことないのかな。
でもやっちゃんが気付かなかっただけで、もしかしたら……
本当は、どっちなんだろう。
やっちゃんにはわかんない。
竜ちゃんしかわかんないことなんて、竜ちゃんに聞かなくちゃ知りようがないのに。
なのに、聞けない。
知りたいような、だけど知りたくないような。
なんでだろ、なんだか、変な気分。
「バレンタインがどうしたのよ」
似たようなことを思ったのかもしれない。
大河ちゃんが問いただそうと、キッと細めた目で竜ちゃんを見据えて口を開く。
やっちゃんがそうさせちゃったのもあるけど、放つ言葉にはかなり棘が含まれてる。
「いや、つーか大河、なんでいきなりそんな機嫌悪くなんだよ」
隠そうともしない苛立ちをぶつけられて、その理由がわかってない竜ちゃんは困惑してる。
「いいから黙って答えなさい」
それが余計に気に障ったのか、プリプリしている大河ちゃん。
竜ちゃんは不思議そうに後頭部の辺りをポリポリ。
「どうしたって、べつに何でもねぇんだけど、泰子が客にチョコ配るって言ってただろ? それのこと考えててよ」
竜ちゃんの説明は、それだけじゃよくわからなかった。
大河ちゃんもそう、怪訝そうにしてる。
竜ちゃんは咳払いを一つして、ご飯に手をつけながら話を続ける。
「だからよ、どっかの店でチョコ買ってきて客にやるよりも、俺が作った方が安上がりだろ」
「作るって、チョコ? 竜児が?」
「おぅ。手作りだって言っとけば向こうも泰子の手作りだって喜ぶだろうし、手作りなのはウソじゃねぇし。
買ってくるよりはそっちのがいいかって、そう思ったんだよ」
泰子も手間かかんなくていいだろ、って締めると、ちょっと照れくさそうな竜ちゃんはそれを隠すようにご飯をかき込む。
そんなこと考えてたんだ。
お店のことなんて気にしなくっていいのに。
「そんなのしなくっていいよ〜。竜ちゃん、大変でしょ」
その気持ちだけで十分。
「遠慮すんなよ、言うほど大変ってこともねぇんだから」
「でもぉ…やっぱり悪いし」
「いいって」
けれど竜ちゃんは頑なに譲らない。
大河ちゃんに帰りに必要な買い物のお手伝いを頼んで、断りを入れようとするやっちゃんをひらりとかわす。
本当にいいのかな、このまま頼んじゃっても。
竜ちゃんもそうだけど、大河ちゃんだってやらなくちゃいけないこと、あると思うんだけど。
「いいの? 大河ちゃんはそれで」
一応確認だけとってみた。
大河ちゃんはなんともいえない表情でこう返す。
「う〜ん…作り方教わるって思えば、まぁ」
「そっか」
優しいね、二人とも。
思わず笑みがこぼれた。
すると途端にハッとして目を見開き、大河ちゃんは慌てて顔を伏せる。
そろそろと上目づかいで見上げると、泣いちゃいそうなか細い声でこうこぼす。
「…あっ、ち、ちょっとやっちゃん、今のはその、あにょ」
人差し指で1を作ると、大河ちゃんの前へと持っていく。
噤ませると、今度はやっちゃんの口元へ。
内緒のしるしと、約束の合図。
ちゃんと伝わったみたい、大河ちゃんは小さな体をもっと縮ませてポツリ。
「…ありがと…」
そう言った大河ちゃんはさっきのこと、もう怒ってないみたい。
よかった、仲直りできて。
竜ちゃんはなんにもわかってなさそうに、やっちゃんと大河ちゃんを交互に見てた。
鈍ちんだね、ほんとに。
***
そんなやりとりをした日の夕方。
竜ちゃんと大河ちゃんが学校から帰ってくるなり、台所は戦場さながらの忙しさで、お仕事に出るまで手伝っていたやっちゃんはひーひー目を回して、
何度も竜ちゃんに注意された。
こんなこと言っちゃダメなんだろうけど、大河ちゃんが羨ましい。
だって竜ちゃんたら最初、はじめの内は横で見てればいいって、大河ちゃんにはなんにもさせようとしなかった。
ううん、させたくなかった、かなぁ。
率先してお手伝いを買ってでる大河ちゃんに、そんなに言うならって、竜ちゃんはお手伝いを頼んだんだけど…
「分かるよな、大河? 時間がねぇんだよ、マジで」
「…だって、私だって…」
まだ溶かす前、市販の板チョコを刻もうとしてうっかり指を切っちゃったのは、一度や二度じゃない。
湯せんをお願いしたらコンロに火を点けて、何を思ったのか火の上に直にボウルを置いて、危うく大変なことになるところだった。
なんとか止めてきちんとしたやり方を教えると、ぎこちないけど、それでも大河ちゃんは一生懸命細かくなったチョコレートを溶けるまで
かき混ぜていた。
次第に慣れてきたみたいで、大河ちゃんの手つきも見ていてハラハラしなくなってくる。
失敗しないようにって肩に力が入りすぎてるけど、丁寧にヘラを動かすその様子は心を篭めているようで、それにとっても楽しそう。
あれならもう大丈夫、これで一安心。
でも、緊張の糸を切るのは早すぎた。
一生懸命すぎて、溶けたチョコレートを見てもらおうとした瞬間、足を滑らせて転んじゃったのは、もうしょうがないとしか言えないよね。
宙を舞ったチョコレートを頭から被っちゃったのも、しょうがないよ。
わざとやってるんじゃないんだもん。
失敗しちゃったら、またやり直せばいい。
誰だって始めからなんでもかんでもできないんだから、めげることなんてないよ。
やっちゃんだってそう。
失敗して、失敗して、何度も失敗して、今だって失敗することもあるけど、だけど、できるようになったことだっていっぱいあるもの。
なんだってゆっくり覚えていけばいい。
やっちゃんは、そう思ってる。
「頼むからこれ以上面倒を増やすな」
でも、そういうわけにもいかないみたい。
「だだだだけど、だって!」
竜ちゃんが大河ちゃんの手を取ると、マジックで大きく平がなの『だ』を書く。
「なによこれ」
「この手は『だって』だ。次だってって言ったらそれが消えるまで皿洗いに風呂洗い、トイレ掃除もだ。
とにかく他にも色々とさせるからな。それが嫌だったらもうだってって言うんじゃねぇぞ、いいな」
しげしげと手の甲を見つめる大河ちゃんに、竜ちゃんは無情にもそんな言葉を浴びせた。
大河ちゃんの顔が青ざめて引き攣る。
「そ、そんな!? だっ、じゃなくって! しょうがないでしょ!? 私こういうの慣れてないし、それに」
「言い訳すんな、自分でやるって言ったんだろ」
ピシャリと大河ちゃんを叱り付けた竜ちゃんはマジックをエプロンのポケットに突っ込むと、大河ちゃんがひっくり返しちゃったボウルを拾い上げ、
まだ残ってて使えそうな分を別のボウルへと移して、壁や床に飛び散っちゃった、もう食べれないチョコを雑巾で拭きはじめる。
そんな竜ちゃんを前にどうしたらいいかわからなくって、立ち竦んでる大河ちゃんはエプロンの裾を握り締めたまま、しょんぼりうな垂れてる。
すっと、下を向く大河ちゃんの目の前にタオルが差し出された。
「いつまでそうしてんだ、大河」
「…うるさい、邪魔なら邪魔って言いなさいよ」
剥ぎ取るように受け取ったタオル。
とぼとぼとやっちゃんの横を通り過ぎ様、大河ちゃんの背に竜ちゃんが声をかける。
「早くシャワー浴びてこいよ。出てきたら、今度はちゃんと教えてやるから」
大河ちゃんが振り返るけど、でも竜ちゃんは屈んで、雑巾片手に手早くチョコを拭き取っていく。
「…うん、待ってて」
今度こそ大河ちゃんは浴室へと消えていった。
ほどなくしてタイルを叩く無数の水音がこっちにまで届く。
残されたやっちゃんはひたすら無心に板チョコをポキポキ砕いて、パキパキ刻んで。
容器がいっぱいになったら別の容器を出して、またポキポキパキパキ。
おかげですっかり茶色くなっちゃった手からも濃厚な甘い匂いがしてきて、これじゃ簡単には落ちそうにないかも。
本当にすごい量のチョコレート。
一体どのくらい買ってきて、どのくらいこうしてるんだろう。
もしかしたら、もうやっちゃんが食べる一生分ぐらいはチョコを粉々にしたのかもしれないけど、数えだすとキリがないし時間はもっとない。
それにそんなの知っちゃったら、一生分のチョコを食べた気になって、もうチョコはいいやってなりそう。
「悪い、一人でやらせてて」
ようやく納得いくまでキレイに拭き終えたみたい。
しっちゃかめっちゃかになっていた足元は見間違うほどにピカピカで、どれだけ熱中して掃除してたのがよくわかる。
竜ちゃんはやっちゃんの隣に立つと、いくつかあるボウルを一つ取って、それに砕いたチョコを入れていく。
ふーっと一息、首を回すと間接がチョコを砕くときみたいにポキポキ乾いた音を鳴らす。
歳はとりたくないなぁもう、これじゃあまるでおばあちゃんだ。
「休んでていいぞ。泰子、もうすぐ仕事だろ」
気を遣ってくれる竜ちゃんの言葉に甘えたい。
けど、ここで甘えてちゃ本当のほんとにおばあちゃんみたいで、それはやっぱり23歳としては否定しなくちゃあ。
「だぁいじょうぶ、やっちゃんまだまだがんばれるよ」
袖を巻くって力こぶを作ってみせる。
これでもまだ赤ちゃんだった竜ちゃんを軽々抱っこしてたんだもん。
赤ちゃんって、見かけよりもずぅっと重いんだよ。
抱き癖がついちゃって、そっちの方が大変だったくらい。
けどそのおかげで、竜ちゃんが大きくなった今も、野球のボールみたいな立派な力こぶなんてできないけど、弛んだ二の腕ってわけじゃない。
ちょっとした、自慢。
「それにね、竜ちゃんにばっかり任せてるのもやだなぁって」
「おい、別に手なんて抜いてないぞ、俺」
そうじゃないんだけどなぁ。
「ううん、ちがうの。お願いしてやってもらってて、なのにやっちゃんはなんにもしないなんて、って。それがやなの」
「いいんだよ、俺が勝手にやってんだから。そうでなくても泰子、疲れてんだしよ」
微妙に噛み合ってないのはどうしてなんだろう。
それにしても頑固だねぇ、竜ちゃんは。
とっても頑固で、すっごく心配性で、いっつも気の遣いすぎで。
そんなんじゃ疲れちゃうよ。
そういうとこが、竜ちゃんらしいけど。
「…じゃ、ちょっとだけいい?」
「おぅ」
押し問答を先に降りたのはやっちゃん。
これ以上長引いても、竜ちゃんが折れないって知ってるから。
握っていた包丁を置いてお湯で洗って、エプロンで軽く水気を拭うと背中に手を回す。
邪魔にならないように一纏めにしていた髪。
留めていたシュシュを取ると、パサリと広がる。
「んん〜…んー? なぁに?」
伸びをしているやっちゃんを、なんでか知らないけど竜ちゃんがじっと見てる。
目線が絡まると、弾かれたような勢いで逸らされる。
心なしかその顔に朱が差したように感じた。
どうしたんだろ。
「どうかしたの、竜ちゃん」
「…なんでもねぇ」
なんか怪しい。
こっち見ようともしてくれないし、覗き込んでも目が泳いでるし、益々赤くなってくし。
へんなの。
それからしばらくの間は特に何があるでもなく、竜ちゃんは淡々とチョコを刻んでるだけ。
やっちゃんは、隣でそれを眺めてるだけ。
ポキポキ。
パキパキ。
それにシャワーの水音が、狭い家の中、響き渡る。
「ねぇ、そんなに沢山使うの?」
「ああ、大河がな。友チョコにしてみんなに配るって言って」
練習に使って、それで余ったのを、なんだろうね。
こういう時ばっかりは、女の子が建前になってくれて便利。
女の子だからこういうことしなくちゃいけないっていう風潮がそもそも面倒だし、出費もばかになんないんだけど、それはそれ、これはこれ。
「いくらぐらいした?」
「そんなにはしてねぇぞ。明日が明日だから、どこも特売やっててよ。それにほとんど大河持ちだから安くすんだんだ」
まぁ、投売りしてでも余っちゃうよりはいいもんね。
余りもののそのまた余りものだって、食べてもらえる方がいいに決まってる。
「なら、大河ちゃんにお礼しなくっちゃ」
「おぅ。今度、大河の好きそうなもんでも晩飯に出しとくか」
喜びそうだねぇ、それ。
炊飯器の中身を空っぽにしちゃう大河ちゃんがありありと浮かぶ。
「竜ちゃんもするの? 友チョコ」
「ただでさえ目つきで色々言われてんだ、これ以上変な噂がたつのは勘弁してくれ」
かわいいのに。
「今年は、もらえそう?」
「どうだろうな」
これじゃ大変だなぁ、大河ちゃんは。
「…ほしい?」
「…さぁ」
微妙に空いた間に、なぜだか胸がチクリ。
「それじゃ、やっちゃんがあげよっか」
「どうせこの板チョコよりも安いやつだろ」
立てた指でわき腹を押した。
「もぉ、ホントはうれしいくせに」
「嬉しすぎて指から血が出ちまったよ」
蛇口から生える水柱に指を差し込む竜ちゃんに、大河ちゃんにとポケットに入れていた絆創膏を巻いてあげる。
「…痛い?」
「たいしたことねぇよ、このくらい」
真ん中に滲んだ赤い点が痛々しい。
「…ごめんね」
「平気だって。そんなに気にすんなよ、少し刺さっただけなんだから」
するよ。竜ちゃんがどう言ったって、しちゃうものはしちゃう。
「うん…ごめん…」
何も返ってこない、返さない竜ちゃん。
その肩に、頭を預けて寄り添う。
途切れる会話、訪れた無言。
聞こえるのは、チョコを刻む音と水音。
それに微かな息遣い。
耳を澄ますと、寄りかかった分近づいた鼓動が、呼吸に合わせて聞こえてくる。
重たいかな、鬱陶しいかな…邪魔かな。
言ってくれればすぐにやめるのに、肩を少し動かしてくれれば離れるのに、竜ちゃんは黙々と手元を動かすだけで、
なんにも言ってくれなくて、けど、なんか、嫌がってないように感じるのは、そう思いたいやっちゃんが都合よすぎなせいかな。
それでもいい。
もう少しだけでいいから、こうしてたいのに。
「なぁ」
「…ん」
だめなのかな、やっぱり。
「泰子も、誰かに贈ったことあったりするのか。こうやって、自分で作って」
思いがけない質問で、息苦しいほど締め付けられる胸に自分でもようやく気付く。
覚られぬよう吐き出した吐息のおかげで、強張っていた体から余計な力が抜ける。
気持ちも、少し楽になった気がする。
肩越し、見上げた先にはまっすぐに見下ろす竜ちゃんがいて、返答を待っている。
なにを、なんて一々聞かなくてもわかる。
わからないのは、どうしてそんなことを気にするんだろう。
乳白色の明かりを放つ流し元灯で照らされたその顔からは何も読み取れなかった。
「あるよ」
緩慢に、けれど機械的な動作で動いていた包丁が一瞬止まったのを見逃さなかった。
わざと溜めを作ったけど、しなくてもよかったかな。
「竜ちゃんに」
取り戻しかけたリズムがまた乱れて、一際大きな欠片がシンクに転げ落ちていった。
もったいなくって、摘み上げて口の中へ放り込む。
うん、ちょっぴり水が付いちゃったけど食べちゃえば一緒だし、ぜんぜん食べられる。
ね、竜ちゃん?
「いつだよ」
不服そうに、けれど戻したりしないで、飲み込んでからの竜ちゃん。
「すんごい前、まだ竜ちゃんが幼稚園ぐらいのときかなぁ」
成功した悪戯とこみ上げてきた懐かしさに、自然と笑みが浮かんでた。
竜ちゃんの方はちょっと、ていうか、かなり納得がいかないみたいだけど。
「本当かよそれ。俺、全然記憶にねぇんだけど」
釈然とせず、疑いの眼差しを向けてくる竜ちゃんに、だけどやっちゃんは答えない。
記憶にないって、そんなの、覚えてない竜ちゃんが悪い。
本当はどうだったか、なんて、竜ちゃんがちゃんと思い出せばいいだけの話だもん。
だから、答えない。
代わりに、空いていた竜ちゃんの腕に両手を絡ませる。
「…揺すったりすんなよな。これ以上指切るのはさすがにイヤだぞ、大河じゃあるまいし」
でも、やめろとも、離れろとも言わない。
そっけない物言いだけど、それはいつものこと。
相変わらず素直じゃなくって、隠すのもへたっぴで、見た目のことも相まって誤解されちゃうのに、そういう言い回ししかできない。
不器用なんだろうね、きっと。
おかしいよね、こんなになんでもできるんだから絶対器用なはずのに。
けど、不器用なんだろうなぁ。
「うん。それよりも、もういいの?」
「なにがだ」
「さっきのこと」
竜ちゃんが視線を外した。
「遅いな、大河」
思い出したようにを装って、取ってつけな話題を振る。
お風呂場からは、シャワーを浴びる音が今もしてる。
たしかに、もうずいぶん長く篭ってる。
手に書かれた『だ』の文字を落とすのに躍起になってるのかもしれない。
竜ちゃんが持ってたのってたしか油性だったから、お湯で流してるだけじゃ中々消えないのに。
それにしても。
「ふーん」
「なんだよ」
はぐらかしたつもりなんだろうけど、全然はぐらかせてないよ。
竜ちゃん、知りたかったからわざわざ聞いたんじゃないの? チョコのこと。
やっちゃんはべつにそれでもいいんだけど。
ああでも、逆にやっちゃんも知りたくなったかも。
そんなことを知りたくなった理由。
なんだろうなぁ、ひょっとして、
「やきもち?」
「痛って」
包丁の先っちょが刺さったのは、よりにもよって今切って絆創膏を巻いたばかりの、それもほとんど同じ場所。
見てるだけでこっちまで痛い。
「大丈夫?」
即座にポケットからもう一枚、新しい絆創膏を巻いてあげる。
「大丈夫だけどよ、揺すんなって言ったばっかだろ」
あれ、おかしいな。
今度はやっちゃんなんにもしてないよ。
どっちかっていうと竜ちゃんがビクンって動いたような気がするんだけど。
まさか、
「…竜ちゃん、図星だったりして」
冗談半分にそう言ったけど無視された。
さすがにそれはあんまりだよ、さっきのだって今のだって、半分は本当に冗談のつもりだったのに。
もう半分は……
パタンとドアが閉じる音がするのと同時に、甘い匂いに混じって石鹸の香りが鼻をくすぐる。
抱いていた腕を解いた。
寄せていた体も離して、人一人分空ける。
「お待たせ。あーさっぱりした」
大河ちゃんが乾ききっていない髪の毛をバスタオルで拭きながら歩いてきた。
その手が微妙に赤みがかってる。
案の定インクを落とすのに大変だったみたい。
と、竜ちゃんの顔を見た大河ちゃんが訝しげに眉を顰めた。
「なんかあったの? 竜児、顔赤いわよ」
「…気のせいじゃないのか。それよりも早く用意しろよ、まだやることが山積みなんだからな。手伝うんだろ、大河」
「あ、うん…ねぇ竜児、その」
少しの間言い難そうにもじもじしていると、大河ちゃんが小さく呟く。
「…作り方、おしえて」
ほっぺが染まっていたのは、きっと湯上りのせい。
それから時間の許す限りみんなでチョコを作ってた。
あんまり広くない台所に三人並んで、そりゃもうギュウギュウで狭かったけど、だけどああやって一緒になってなにかをするのがとっても楽しくて、
気が付いたら出なくちゃいけない時間を過ぎちゃってた。
だから、お店にはちょっと遅刻しちゃった。
でも竜ちゃんと大河ちゃんのおかげでいいプレゼントができそう。
***
バレンタイン当日。
今夜はいつにも増して盛況だった。
もしかしたら貰えるかもって、軽く引っかけるついでにチョコ目当てにお店に来てくれたお客さんが大勢いて、
これだけあったら余っちゃうんじゃないかってくらい用意していたチョコは、お客さんの中の何人かが知り合いを呼んでくれたりもしたおかげで、
あっという間に底をついた。
遅くに来てくれたお客さんにはあげられなかったから、代わりにその分少しだけサービスしたけど、それを差し引いても、
ちょっと早いけどホワイトデーのお返しだってお客さんたちは大盛り上がりで騒いでくれて、お酒もおつまみも飛ぶように売れた。
そんなに喜んでくれると思ってなかったから、逆に申し訳ないな。
酔い潰れちゃったお客さんを担いで、また来るよって、満足気にそう残して街へと繰り出していったお客さんを見送って。
がんばってくれた娘たちも送り出して。
簡単に後片付けを終えると戸締りを確認してからお店を後にした。
その途中に立ち寄ったコンビニから一歩踏み出た瞬間、全身に吹き付けられる冷たい風。
袖口や裾から入り込んできて、寒くて鳥肌が立つ。
身震いをどうにか抑えて取り出したケータイ、映る時刻は三時の半分を過ぎていた。
横に表示されている日付は───
どうりで寒いはず。
一年で一番寒い季節、一番寒い月、しかも一番寒い時間帯。
あと一月もすれば、昼間だったら少しはマシになるのかもしれないけど、それでもやっぱり夜は冷え込んだまま。
こうやってマフラーに顔を埋めて歩かなくってもいいようになるのは、まだまだ先のことになりそう。
───二月十五日。
特別な日は数時間前に終わって、今はもうなんでもないただの今日。
大河ちゃんはチョコ、どうしたんだろう。
歩きながら、一日中気にかかっていたことをぼんやり考える。
今朝、朝ごはんの時間に遅れてきた大河ちゃんは眠たそうにゴシゴシ擦る目の下に、でっかい隈を作ってた。
大河ちゃん、ご飯食べながら寝ちゃったりもして。
竜ちゃんはそんなになるまで夜更かししてチョコ作ってたのかって呆れてたけど、
自分のためにそんなに頑張ってるって知ったらどんな顔するんだろう。
大河ちゃんも、ちゃんと渡せたのかな。
やっちゃんは朝会ったきりだから、結局どうなったんだろ。
朝だったら大河ちゃんがあの調子だったし、竜ちゃんも至って普段どおりだったから多分まだ渡してなかったろうし、
竜ちゃんたちが学校に行って、帰ってくる前にはやっちゃんもう出かけてたから、その後なにがあったかは知らない。
学校で渡したのかな。
うーん、ないなぁ、人一倍恥ずかしがり屋さんな大河ちゃんのことだから、人がいっぱい居るとこでそういうのしないだろうし。
じゃあやっぱり家で、二人っきりのときに?
それが一番無難で、ありえそうで、大河ちゃんも必要以上に緊張せずに自然に渡せそう。
贈って、贈られて、どっちも真っ赤になった竜ちゃんと大河ちゃんが簡単に想像できる。
だけど想像の中の二人はとっても幸せそうで、それで───……
そんなことを考えているとアパートの前を通り過ぎていた。
疲れたとか眠いとか、そんなんじゃなくて、言葉では表せない何かで、なんだか気が滅入る。
変なこと考えるんじゃなかったなぁ、なんか、帰りづらい。
こんなことならもっと飲んでおけばよかった。
あとで怒られるのも小言をいぃっぱい言われるのもわかってはいるんだけど、くだらないことで悩むよりはいいのに。
差し込んだ鍵をゆっくり捻ると、カチャンて小さく音がした。
回したノブがやけに重く感じる。
当たり前だけど家の中は真っ暗で何も見えない。
もうこのまま寝ちゃいたいけどさすがにこんな寒さの中、居間なんかで寝たんじゃ風邪をひく。
見えない壁に手を這わせて手探りで明かりを点けた。
一度、二度と頭上で明滅する蛍光灯。
その真下でモゾモゾと不気味に蠢く、大きな影。
いきなりのことに驚いて提げていたバッグを落とした瞬間、その影はあくび交じりにこう言った。
「おぅ、おかえり。今帰ったのか」
ビックリして損した。
得体の知れない変な影だと思ってたのは丸まって寝ていた竜ちゃんだった。
竜ちゃんは体を起こすと傍で呆けているやっちゃんに気付いて、
「なにしてんだ泰子、そんなとこでボケっと突っ立って」
って、変なものでも見るような目を向ける。
なにしてるって、それ、やっちゃんのセリフだよ。
なんで自分のお部屋じゃなくて、こんな寒いとこで、それもお布団も敷かないで竜ちゃんが寝てるんだろ。
「四時前か…なら、もう十分だな」
疑問を口にする前に、竜ちゃんは台所へ。
冷蔵庫を開けると中からなにか取り出して、それをやっちゃんから隠すよう後ろ手に持って戻ってくる。
「ほら。これ、俺と大河から」
「え?」
差し出されたのはこれ以上なく意外なものだった。
右手には淡いピンクの包装紙に黄色いリボンが十字に巻かれた、ハートの型をした箱。
左手には装飾もなにもない、シンプルな四角い箱。
そっと受け取るとまだひんやり冷たい。
「これって…」
手の中に納まる二つの贈り物。
バレンタイン・チョコ…なんだよね、もしかしなくても。
それも竜ちゃんと大河ちゃんの、手作りの。
考えてもみなかった。
こういうのは贈るのが当たり前で、実際今夜だってお客さん相手にそうやってて、なのに、まさか贈られることになるなんて。
いきなりの展開に頭がついていかない。
だって帰ってきたらなんでか竜ちゃんが寝てて、でも起きてすぐこんなことになって。
だめだ、やっちゃんの頭じゃ上手く纏めらんない。
お酒も入ってるし、ひょっとしたらこれって夢なのかも。
本当はやっちゃん、またいつもみたいにだらしないカッコで寝てたりして。
でも、掌から伝わる冷たさと重さが、確かな現実感を与えてくる。
「帰ってくる途中、大河が急に泰子にもって言い出したんだ。
俺はまぁそこまでしなくてもいいんじゃねぇかって言ったんだけど、贈るったら贈るってきかなくってよ、あいつ。
作り方だってろくに知らなかったくせに、それでも」
竜ちゃんの言うとおりだよ、大河ちゃん。
その気持ちだけでいいのに。
「そうなんだ…大河ちゃんが…」
「…自分で渡すんだってずっと待ってたんだけど、やっぱ疲れてたんだろうな。
寝不足もあったみたいだし、けっこう前に寝ちまったよ」
まぁ俺もなんだけどなって、バツが悪そうにため息を吐く。
だから竜ちゃん、そんなところで寝てたんだ。
ベッド、大河ちゃんに貸してあげたんだね。
自分よりも大河ちゃんを大事にできる竜ちゃんが嬉しくて、けれどそれと同じくらい、もっと早く帰ってくればよかったって後悔した。
眠いのを堪えて待っててくれたのに、こんなに素敵なプレゼントまで作ってくれてたのに、なのに帰りづらいとか思ったりして。
明日会ったらちゃんと謝って、お礼を言おう。
ああ、そうだ。
忘れていたことを思い出した。
お礼、まだ言ってなかった。
「それとよ、その、なんだ…ありがとうな、泰子」
だけど、言おうとしたその矢先。
伝えようとした言葉は竜ちゃんに先を越された。
「…竜ちゃん…?」
「…感謝してる。いつもだ。ただ、面と向かってっていうのは恥ずかしいっていうか、こういう時じゃなきゃ…なに言ってんだろうな、俺」
そうだよ竜ちゃん、なに言ってるの?
感謝してるって、それはやっちゃんの方。
掃除とか洗濯とか、ご飯のことだってそう、お家のことなんでもしてくれて、感謝なんてしてもしきれないのに。
ありがとうを言うのはやっちゃんの方なのに。
「…泰子?」
俯くやっちゃんに竜ちゃんが不安げに声をかける。
「お、おい」
顔は上げないまま、声のする方へと一歩、もう一歩。
すぐになにかにぶつかって、それ以上進めなくなった。
面と向かうのが恥ずかしいって、竜ちゃんは言った。
だからほら、こうすればお互い顔が見えないから恥ずかしくない。
素直な気持ちを言葉にできる。
「…ありがと…チョコ、作ってくれて…待っててくれて…こんなバレンタイン初めて…うれしい」
「…おぅ」
「これ…大切にするね」
「いいんだ、大切になんかしなくても。食ってくれた方が大河も喜ぶぞ? …俺だって…」
「…そっか…うん、そうだよね…大切に食べる」
「おぅ」
「…ねぇ、竜ちゃん」
「ん?」
「あのね…大河ちゃんもだけどね」
「なんだよ、改まって」
「大好き」
***
「もう! どうして先に渡しちゃったのよ! ていうか渡すんなら渡すでなんで起こしてくれなかったの!」
朝から大きな声で怒っているのは大河ちゃん。
「だからそれはついでのつもりで、大河もよく寝てたし…ちょ、た、大河? お前なにを…っ!?
わ、悪かった、全部俺が悪かったからインコちゃんのカゴから手を離せ、な?」
怒られてるのは竜ちゃんで、さっきからずっと大河ちゃんに平謝り。
お腹をさすってるのはお腹が空いてるからじゃなくて、まだ痛むんだろうなぁ。
「知らないわよ、あんたが勝手なことするからいけないんでしょ!? どうしてくれんのよ、竜児のバカ! バカバカバカ!」
「それとこれとは関係ねぇだろ!? インコちゃんに当たんな!」
「うるさいうるさいうるっさぁい! なによこんなブサインコ!」
「…げぽっ…」
「インコちゃん!? お前、いい加減にしろって!」
冷蔵庫の中から忽然と失くなっていたチョコレートを大騒ぎで探していた大河ちゃんに起こされたのは、まだほんの十分くらい前の話。
居間にお布団敷いて寝ていたやっちゃんと、一緒に寝ていた竜ちゃん。
余分なお布団はなくて、最初竜ちゃんには遠慮されたけど、風邪なんてひかれたら大変だし、やっちゃんも竜ちゃん一人寒いままにして寝られない。
だから、一緒のお布団に包まって、一緒に寝て。
それだけだけど、懐かしかったなぁ、あーいうのって何年ぶりだろ。
そうやって寝てた竜ちゃんは、大河ちゃんにお腹を踏んづけられて無理やり起こされてた。
耳元で騒がしくされて、やっちゃんも目を覚ます。
ぼやけた視界にまず飛び込んできたのは胸元を両手で掴まれて、がっくんがっくん揺すられている竜ちゃんだった。
でもその時はまだ何があったのか知らなかったから、
『どどど、どうしよ竜児…チョコ、ない…』
って、大河ちゃん、泣きそうな顔してた。
咽こんでところどころつっかえちゃってた竜ちゃんに代わって昨日のことを説明すると、
事情を飲み込んだ大河ちゃんは一転して、節分もとっくに終わったっていうのに鬼みたいな形相で竜ちゃんをポカポカ叩き始めたけど。
「たーいーがーちゃん」
「ひゃっ」
背中に飛びつくと、大河ちゃんの動きが止まる。
その隙に竜ちゃんは引っ張り合っていたインコちゃんのカゴを奪い取った。
「あ…やっちゃん…」
「うん?」
「…あの…」
「おいしかったよ」
ぎゅっと力を込めて抱きしめると、大河ちゃんが息を飲む。
「…ほんとう?」
「ほんと。ほっぺ落ちちゃうかと思ったくらい」
あ、いま落ちちゃったかも〜、なんて言いながら大河ちゃんのほっぺにほっぺをくっ付けて、ぐりぐり擦り合わせる。
くすぐったそうにしてるけど、大河ちゃんからもぐりぐりしてくる。
滑らかで柔らかい大河ちゃんのほっぺ、あったかい。
「ありがとう大河ちゃん、やっちゃんとってもうれしかった」
「…いいの、喜んでもらえたら、それで」
「そうだ、今度は大河ちゃんから直接もらいたいからぁ、今から来年の分、予約しちゃってもいい?」
「え?」
自分で言っといてなんだけど、あつかましくって図々しいなぁ。
断ったりしないってわかっててやってるんだから余計にたちが悪いっていう自覚もある。
「だめ?」
ダメ押しまでつけると大河ちゃんがブンブン首を振る。
髪の毛が顔にかかって、今度はやっちゃんの方がくすぐったい。
「じゃ、約束。楽しみにしてるね」
「…うん、期待しててね」
いい子いい子は子供扱いしすぎたかなぁ。
いっか、大河ちゃんもなにも言わないし。
それに大河ちゃんはもうやっちゃんの可愛い子供だもん。
よしよし、えらいえらい。
「それじゃあ次はぁ、竜ちゃんと仲直りしよっか」
「え、えぇ!? そそそ、それとこれは」
「いいからいいからぁ〜」
途端にうろたえだす大河ちゃん、その脇の下に手を差し込んでひょいと持ち上げる。
軽いなぁ、ちょっぴりうらやましい。
そのまま成り行きを黙って見守っていた竜ちゃんのとこまで抱えてくと、目の前で降ろした。
「ほぉら、大河ちゃん」
最後にポン、て背中を押してあげる。
「う…」
大河ちゃんが目を伏せる。
けど、固く握り締めた手─── 一昨日、竜ちゃんに『だ』を書かれた───を見ると、おずおずと視線を上げていって、
「…ごめんなさい」
への字に結んだ口を緩めた竜ちゃんは、重そうなため息を一つ吐き出した。
「…俺の方こそ悪かった。大河のやつまで一緒に渡しちまって」
「竜児……」
「だけどな、大河、インコちゃんにはきちんと謝っとけよ。大変だったんだぞ、げーしてて」
竜ちゃんの言葉に、大河ちゃんがインコちゃんへと体を向ける。
「悪かったわね、ブサコ」
「イィーッ!」
「どっちよ、それ」
「インコちゃんもう怒ってないって」
インコちゃんへの謝り方は、竜ちゃんにしたような素直なごめんなさいじゃなくて、大河ちゃんらしいものだったけど、
多分そう言ってるんだよね、インコちゃん?
「…これでいいでしょ、竜児」
「まぁ、大河にしては素直だったしな。いいんじゃないのか」
言って、やっちゃんを横目で見やる。
「うん。仲直りしたんなら、もういいよ」
そう言うと、竜ちゃんはすぐさま台所へ行こうとする。
「あ、ちょっと待って竜ちゃん」
それを押し留めて、朝ご飯の支度を待ってもらった。
首を捻る竜ちゃんと大河ちゃんを前にして、きっとやっちゃんは隠しきれてないにやけ顔になってたと思う。
「ホワイトデーには三倍にして返すけど、先にこれだけ、ね」
二人の手に握らせたのは、気まぐれに買った、あの小さなチョコレート。
竜ちゃんと大河ちゃんがケンカしてる時、こっそりポケットに忍ばせていて、渡す機会を窺ってた。
貰ったチョコと比べたらぜんぜん吊り合わないけど、今日はもう特別な日じゃないけど、なにか、なんでもいいからあげたかった。
想いや気持ちを形にして、大切なひとに。
竜ちゃんはやっぱり安物じゃねぇかって苦笑して、ぽかんとしてた大河ちゃんも竜ちゃんにつられてくすくす笑ってた。
やっちゃんも、なんだか可笑しくって。
ひとしきり笑いあったあと、竜ちゃんと大河ちゃんが顔を見合わせる。
「ありがと、やっちゃん」
「ありがとな」
二人は満面の笑顔で、口を揃えてそう言った。
───大切なひとに贈りませんか?
なんでもないただの今日。
そのはずだったけど、ただの今日から、忘れられない今日になった。
特別で、大切で、かけがえのない思い出がたくさんできた、一日遅れのハッピーバレンタイン。
───贈ったよ、小さなチョコいっぱいに想いを託して
大切で、大好きなひとたちに
おしまい
GJ。
竜児の大河に対する接し方にほのかに嫉妬する泰子さんを俺の嫁にください><
俺もこんな母ちゃんほしい
ていうかやっちゃんがほしい
やっちゃんは竜児に彼女が出来たら、彼女にやられる前にムスコの筆卸しをやりそうだから困る
こんばんは。
前回の続きバレンタイン当日編を投下します。
2レスほどですが、お付き合い下さい。
2月14日…朝の高須家
「さて、今日は朝から大河も出掛けていねえし、掃除でもやるか」
ピンポーン
「おうっ!朝からなんだ?はい、今開けます」
「すいませー…ひっ!ゆ、ゆうび、んな、んですけどっ、判子いや、血判じゃ、なく、てですね、すいません!殺さないで下さい」
「はあ、じゃあこれで…」
「ありがとうございましたー!」
「また、ヤクザと間違われちまったよ。で、俺宛に指定日配達の郵便か…なんだ?」
ビリビリッ
〜高須竜児様〜
下記の場所へ午後1時にお越しください。指定の場所へ到着次第、連絡の程よろしくお願いします。
「なんだこりゃ?差出人も連絡先も書いてねえじゃねえか…とりあえず、行けば何かわかるかも知れねえな」
・・・・・・・・・
「一応、指定された場所に来てみたが…ここ、川嶋の住んでるとこじゃねえか。なら、川嶋に連絡取りゃあいいのか?」
ピッ プルルルル プルルッ
「は〜い、亜美ちゃんで〜す。高須くん?うちの前に着いた?」
「おう、あの手紙は川嶋だったのか。名前ぐらい書けよ」
「ゴメンねぇ〜でもわかったからいいじゃない。それより早く入って。早く亜美ちゃんの所まで来てね〜バイバーイ」
ピンポーン コンコン
「…入っていいのか?川嶋がいいって言ってたならいいか」
ガチャ
「お邪魔しまーす…誰もいねえのか?…ん、なんか紙が落ちてるな」
「なになに?リビングに来てね…か」
トントン ガチャ
「高須くん、いらっしゃ〜い。」
「おうっ!って大河に櫛枝、お前らもいたのか」
「ヤッホー高須きゅん」
「遅い!竜児、待たせるんじゃないわよ」
「悪いな。なんで俺は呼ばれたんだ?」
「だって今日はバレンタインじゃない?やさし〜亜美ちゃん達がバレンタインのプレゼントをあげよっかな〜って」
「マジかよ…いままで泰子にしか貰ったことなかったからすげえ嬉しいよ」
「それは祐作から聞いたから知ってるの。それでね高須くんに選んで欲しいのよ」
「選ぶのか?何をだ?」
「たきゃすくんがこの中で付き合いたい子を選ぶの。それはお前だぁ〜ってね」
「大丈夫よ、竜児。ばかちーもみのりんも私も誰が選ばれても恨みっこ無しだからって決めたから」
「お、お前らが大丈夫でも、俺が…」
「ごめんね。私達もう待てないの…ねぇ、高須くん」
「たきゃすくん…」
「り、竜児!」
「「「誰を選ぶの?」」」
「お、おう…」
続く?
以上、駄文で申し訳ないです。
あと、能登「女って…怖いよ…」の後編も投下しますしようと思ってたのですが、携帯では限界が…また明日にでも。
パソコン早く直さないと(笑)
失礼いたします。一応時間取りましたが、投下後のレスになってしまい、
大変申し訳ございません。時期ものですのでご容赦頂きたく存じます。
先月完結させて頂いた。みの☆ゴンのアフターものです。
題名 * M☆Gアフター6(チョコレート篇)
時期 * 二年生の二月。
設定 * 竜×実付き合って八ヶ月。
物量 * 九レスになります。
注意 * 原作とカップリングが違うので、みの☆ゴン未読ですと不快かもしれません。
宜しくお願い申し上げます。
『よし! ソープに行け!』
『……ソー? ……え? 北村くん?』
『深く考えるでない逢坂。みなさんこんにちは。生徒会長の北村佑作です。二月に入ってから
風は冷たく、空気は乾燥しています。いやですね、インフルエンザにうっかり火災。そんな
いやなものを吹き飛ばす、本日から始まるランチタイムの新番組。『クイズ香椎奈々子』の
時間です。アシスタントを務めてくれるのは生徒会庶務のご存知……』
『みなさま、ゴキッ……御機嫌よう。アシスタントの、逢坂です』
『いいぞっ逢坂……そして、本日のゲスト。香椎奈々子さんです。香椎さん本日はお忙しい中、
お越し頂き誠に有り難うございます。よろしくお願いします!』
『うふふ。みなさんこんにちは、香椎です。……まるおくん、お手柔らかにね』
週末の金曜日。午前中の授業を終え、昼休みの大橋高校2−Cの教室に設置されているスピ
ーカーからただ漏れされているのは北村祐作率いる生徒会の自主的校内放送。番組紹介が終わ
り、テーマ曲らしき陳腐なインストロメンタルが流れるそんな中、教室の窓際の席を陣取り、
今日も自作の弁当を開けるのは高校生主夫、高須竜児その人である。
「新番組だと? ……『クイズ香椎奈々子』っていったいなんだよそれは。北村はクラスメー
トに何をやらすつもりなんだよ」
そのブーイングの矛先である北村祐作は、生徒会長に就任以来、ランチライムにラジオ番組
風の校内放送『大明神の失恋レストラン』を、演劇部のラジオドラマ共々、絶賛放送していた
わけなのだが、遂にネタが尽き果たようで、今日から新番組と表して、クイズ番組を放送しよ
うとしているのであった。しかしなぜ香椎のクイズを……。ローカルネタにもほどがある。な
んて竜児が苦言をポツリと呟くと、真正面から少し鼻にかかるチャーミングな声が聞こえるの
だ。
「北村くんさぁ、先週くらいから、奈々子ちゃんにすっげーお願いしてたもんよ。伝家の宝刀、
土下寝までしてさ。生徒会長として学校を盛り上げよ〜! って、一生懸命なんだよ。奈々
子ちゃんもゲストで出てるし、竜児くんここはひとつ、だまって聴いてやろーではないか!」
そういって強く箸を握り締め、その拳を竜児に突きつける少女は櫛枝実乃梨。突き出した拍
子に実乃梨の箸先にこびり付いていたご飯ツブがテイクオフし、竜児のおデコにビシッ、っと
ディープインパクト。大仏のように白毫を作ってしまう竜児であったが、竜児の衷心は非常に
穏やかになっていく。
なぜなら竜児と同じ机を囲み、ヘルシー弁当を広げている実乃梨は、竜児のいわゆる彼女だ
からである。そう、恋をしたのは一年生の頃。二年になって、同じクラスで友達になり、春が
終わる頃には、恋人になれた。夏には一緒に旅行に行き、結ばれた。秋には文化祭。冬には修
学旅行などのイベントがあって、駆け抜けた季節の中で二人は恋心を順調に育くみ、そして彼
女は今、竜児の目の前でスピーカーから流れる軽快な音楽に乗り、指揮者のようにお箸を振り
回しながら、楽しそうに笑ってくれている。
そんな実乃梨を見つめているだけで竜児は堪らなく嬉しく、楽しく、幸せになる。そんな感
じで竜児がニヤニヤ述懐していると、スピーカーから北村のハキハキした音声が鼓膜を揺らし
た。
『えー、それではクイズの前に一曲お聞きください。We love Marines!』
D.J.北村が曲紹介して流れてきたアップテンポな曲は、「アタック」だの「熱気」だの「王
者」だのと、学校のお昼に流すにしては少々勇ましすぎる内容。不自然に感じた竜児が首をひ
ねっていると実乃梨が竜児に解説してくれた。
「これ千葉ロッテマリーンズの応援歌だよ。あさっての日曜日バレンタインデーだしね。ほら、
千葉ロッテの元監督、ボビー・バレンタインにかけてるんだよ、きっと。北村くんもトンチ
が利いてらぁな」
はたして大橋高校の一般生徒でそんなトンチが利く生徒が一体何人いるのであろう……竜児
はローマにある真実の口のように呆然と開口し、石化してしまうのだが、そんなレリーフ状態
の竜児の肩をポンッと叩く手があるのだった。
「ちょっとちょっと高須〜、なに黙っちゃってんのよ。みんなで大先生のありがたい放送、盛
り上げてやろうじゃないのよ。放送委員から聞いたんたけど、今から出題されるクイズの解
答をメールで送るんだってさ。で、これがメアド。答えが分かったら送信っ! みたいな」
手の主に振り返ると、そこにはケータイとカワウソのような瞑らな瞳(かわいくない)を竜
児に向ける能登久光がウインクをしていた。派手なセルの眼鏡がチャームポイントの能登は、
竜児が1年生の頃からの友人だ。さらに、
「そ〜だよ高っちゃ〜ん! 俺なんてこれからゆりちゃんに職員室呼ばれちゃって、北村を応
援したくても出来ないんだからさ〜☆てことでヨロシコ〜」
と言って、もう一人の友人、春田浩次は焼そばパンを頬張りながら、アホっぽいロン毛を振
り乱し、慌しく登場したと思ったら忙しく教室を出て行ってしまった。竜児はそんな残念な友
人、春田を見送ってから、
「春田あいつ恋ケ窪から呼び出しって、まさか留年すんじゃねえだろうな……おうっ、それは
そうとクイズだよなっ……。あのな能登。クイズの問題って、香椎に関する問題だろ? 俺
が解答するより、いつも香椎と一緒にツルんでいる、川嶋か木原が答えたのほうがいいだろ」
すると能登は、目一杯小さな眼を見開き、軽やかにターンを決める。
「そっか。そういえばそうだよね。ナイス高須。ナイスだよ! おーい、木原〜! 解答して
よクイズ、解答してよ〜!!」
名指しされた木原麻耶はガタッと立ち上がり、綺麗にカラーリングされた長い髪をプンプン
振り、全力で断るのだった。
「はー、あたし? いいっ、いいってば、そんなの、超緊張しちゃうもんねえ? こういう
のはさ、男子のほうががいいよねえ? そうだよね亜美ちゃん! ねー!」
そこであたしに振る? と首だけちょっと捻って、スラリとした八頭身を誇るモデル、宝石
のようなオーラを振りまく完璧美少女、川嶋亜美は華麗に立ち上がり、とりあえず無難に適当
に切り返すのだ。
「そーよね麻耶。あたしたちじゃあ、奈々子と親しすぎるし、フェアーじゃないわよね……っ
てことで高須く〜ん? お願いね?」
ほんの少し頬にかかったサラサラの髪をかき上げ、トンボを捉まえる時のように、クルクル
回した指先を竜児に向ける亜美。フェアーとかではなく、亜美は単純に面倒くさいだけだろう
……そのアンフェアーな美しさが故に、竜児の中で亜美への憎たらしさが増殖するのだが、
「へいへい竜児く〜ん。あーみんからそんなふうに頼まれたら漢としてイヤとは言えないじゃ
んねえっ。及ばずながら私も竜児くんとクイズの答え考えっからよ……あ、もう曲が終わり
そうだし……一緒にガンバローぜ!」
亜美は置いといて、実乃梨からそんなふうに言われたら彼氏として竜児はイヤと言えない。
だいたいクイズといっても賞品も景品も無いなんてどうなんだこの企画は……という言葉を飲
み込んで、竜児はケータイと睨めっこしてスタンバイする。するとなんだかいい匂いがするな、
と思ったら、実乃梨が至近距離で竜児のケータイを覗き込んでいた。
『……はい! 景気づけに軽快な曲をお送りしました! ではさっそくクイズを始めましょう!
皆さんケータイの準備はいいですか? ではアシスタントの逢坂さん! 一問目!』
ジャカジャン! ジングルが鳴る。
『えっと……第一問。香椎さんのチャームポイントのホクロは、一体何処にあるでしょうか?』
『これはかなりのサービス問題、ものすごく簡単ですねっ。みなさんの解答をメールしてくだ
さい。早い者勝ちです! ……おっと早い! もう解答が着たようです! やはり簡単すぎ
たでしょうか?ではアシスタントの逢坂さん、クラス名と答えを読み上げてください!!』
『一番早かったのは、一年B組です。っと……答え、はっ! ……おっ……おおっ、おおおっ』
『おお? ……逢坂、どうした?』
もともと大河は緊張すると滑舌が悪く、よく舌がもつれてしまうのだが、原因はそれだけで
はないように、竜児には思える……そして大河の震える声。
『おっ……ぱい』
ザワッ……と、低いどよめきが2ーC中に沸き上がる。ランチをパクつく生徒たちの手が止
まる、あまりに微妙すぎる展開であった。竜児もケータイで変換途中の指先がフリーズしてし
まい、そのまま何秒経過したろうか……本物のラジオなら五秒以上で放送事故だが、
『おっぱ! ……いやあ違います! 残念! 一年B組のみなさん。解答は早かったのですが、
不正解ですねっ、では次に届いた解答は……』
しかし北村の進行を遮る甘い音声がスピーカーから流れる。
『ねえまるおくん待って? ……それ、正解かもしれない。私、胸にホクロあったかも』
『ほほう! これは意外ですね……。あ、逢坂、確認できるか?』
『え、私が? 確認?……いったいどこにあんのよ。ホクロ』
『ここら辺かなあ……タイガーちゃん見える?』
『ふおおっ……くっ……たっ、谷間にっ……手が埋まるっ!』
『やだあ、タイガーちゃんくすぐった〜いっ!』
なんとも艶かしい嬌声が、物音一つしない教室にただ響きわたる。竜児が確認出来る範囲の
生徒たちの顔は皆揃って、風呂上がりのように真っ赤になっていた。
『……えー。いま確認していますので……皆さんしばらくお待ちください。ちなみに私は眼鏡
を外しましましたので、決して何も見えていません……逢坂どうだ?』
『どうって言われてもっ……ムニュムニュしてて……ああっ! 見つかんないっ!』
『ああんっ、そっちじゃないよ。もっと奥っ』
『ったく、こんな凶悪なものぶら下げて恥ずかしくないのかしら……あっ、あった! これで
しょ? ムニッ!』
『いやあんっ! タイガーちゃん、違〜うっ! そこは黒くないでしょ〜?』
『……手に汗握る展開ですね。ぼんやり見えるのが逆効果です……』
『もう、わかんないっ! あんた面倒だから脱ぎなさいよ! おりゃああっ!』
『きゃあっ! いやあ〜っんっ』
『しっ、しばらくお待ちください! 止めるんだ逢坂! ガガッ!』
……そしてスピーカーの網目から再びマリナーズの応援歌が流れ出るのだった。そこで竜児。
「……これ、マズイんじゃねえか? 放送事故レベルだろ」
「そうだね竜児くん。まだ一問目だし大変だのお。大河のやつ大丈夫かいな」
「いや、そうじゃなくて……」
こんな状態では興奮する魑魅魍魎が湧いて出るのはとっても自然な事。わずかな白眼部分を
血走らせ、粗い息に鼻を膨らませる能登の眼鏡が真っ白に曇る。
「どうしよう高須っ! 奈々子様がっ、タイガーに襲われてる!」
「どうしようかと俺に聞かれてもどうしようもねえよ! あーもう、川嶋! お前がなんとか
してくれ!」
「だからなんであたしが……てか、これネタなんじゃいのかな? もしかしたら台本読んでる
だけとか……そうであってほしい気もするけど、もしマジなら奈々子の胸って、柔らかくて、
面積大きいから、確認するの結構大変よねえ……」
亜美が奈々子の乳に対しての余計な解説してしまったおかげで、男子生徒たちそれぞれの脳
内では、過激なお色気シーンが上映されてしまい2ーCの教室の気温がわずかに上昇するのだ
が、しばらくしてマリナーズの応援歌がプツリと止まる。
『……お待たせいたしました。いやあ〜、アシスタントの逢坂さんに、ゲストの胸を細部ま
で確認してもらいましたが、結局不正解でした。番組途中、お聞き苦しい点がありました
ことをお詫びいたします。それでは仕切り直して、二番目に解答をくださった方の答えっ!
逢坂さんっ! どうぞ!』
『ふぁいっ! 2年A組からの解答で、はうっ! ……おおおっ! お尻ぃ? ……またぁ?』
『残念! 不正解です! みなさんお願いします! 真面目にお答えくださーい!』
『ねえまるおくん? ……今度こそ、正解かもしれない』
『何? 本当か、香椎っ! ……これは……またもやきましたね……。逢坂……頼んだぞ』
『ええーっ! 北村くん、私も〜やだ〜! さっきからヘンな答えばっかじゃない! だい
たいあんたも余計なこと言うんじゃないわよ、このエロボディ! もう不正解でいいっ』
『落ち着くんだ逢坂! し、しばらくお待ちくださ〜い!』
またもや放送は中断、曲が流れてきた。今度はさっきと違い、テクノでポップな曲が流れ、
チョコレイトディスコと、連呼している辺り、どうやらちゃんとしたバレンタインソングのよ
うだ。
「もう無茶苦茶だな。新番組はいきなり初回で打ち切りだろ。エロすぎる」
「ん〜、北村くん着眼点は良かったんだけどね。内容がちょっと深夜向きだよね。お色気
大賞」
そうこうダベっているうちに、曲が終わる。
『クイズ香椎奈々子、お別れの時間になりました。残念ながら今回が最終回になります。
来週、月曜日からはクイズ川嶋亜美をお送りします! こう御期待!』
北村には珍しく、若干粗暴な口ぶり。しかもさりげなく幼馴染みを餌食にする。当然のよう
に猛反対する亜美がスピーカーに向かって怒鳴り散らす。
「ちょっとー、佑作! 勝手に決めんな! やんならクイズ高須竜児にしろっつーの!」
竜児の名前が飛び出たら、実乃梨も超反応するのだ。
「ダメだって、あーみん! 竜児くんはジルベールみたいな繊細な男の子なんだからっ」
やいのやいのと次回ゲストのなすり付けあいを繰り広げていると、エンディングの音楽がフ
ェードアウトし、北村が再登場する。
『……みなさん、来週の放送ですが、クイズ川嶋亜美を無期延期にします。代わりにご本人か
らの強い要望メールが届きまして……クイズ黒マッスルをお送りいたします』
『うえっ……本当? ……ゴメン北村くん、それ私無理かも……』
『……えーっと、それはそうと、あさっての日曜日は、カップルさんはもちろんのこと、恋に
迷えるキミたちも楽しみにしているセントバレンタインデーですね。ロマンティックな聖な
る日に願いが成就するよう、大明神こと、私にお祈りしに来てくださいね。お待ちしており
ます! 生徒会はあなたの恋のサポーター。ではまた来週!』
***
「あのっ、私……高須竜児くんの事、お慕い申し上げております……」
辿々しく、恭しく、差し出された可愛らしく包装されたチョコレート。バレンタインデー当
日の日曜日の昼過ぎに、須藤コーヒースタンドバー、通称スドバのカウンター席で、竜児は実
乃梨からバレンタインデーのチョコレートを受け取っているのだ。
「おうっ、ありがとう実乃梨。改まってそうやって言ってもらえると、なんか照れるな」
「へっへー。私もちょいとばかし恥ずかしいけど一回こういうのやってみたかったんだよね。
なけなしの乙女心がそうさせるのだよ。竜児くん、受け取ってくれてありがとう」
頬をポッと赤らめながら、潤んだ瞳を浴びせる実乃梨。可愛い。竜児の胸は正直に跳ねる。
「ああ、こちらこそ実乃……おうっ? 須藤さん、なんすかこれ? こんなの俺注文してない
っすよ?」
二人が張った強固なラブラブ結界をぶち破り、オーナーの須藤氏が、甘い匂いを放つペアカ
ップをそっとテーブルに置く。
「まあまあ、これは熱いアベックに私からの奢りだよ。カフェ・ド・ショコラ。今日はバレン
タインデーだしね。召し上がれ」
アベックなどという、太古に絶滅した言葉を浴びせられ、一瞬沈黙してしまう竜児なのであ
ったが、須藤氏の不可解な言動に違和感を感じ得ない。
「あ、ありがとうございます須藤さん……あの、こんなの初めてじゃないっすか……なんか企
んでませんか?」
図星だったようで須藤氏は笑顔を保ちつつ、僅かにひるむ。さらに実乃梨。
「……要件を聞こうか」
ゴルゴ化し、ストローをタバコのようにくわえ、須藤氏を問い詰める。するってーと、
「え? そうそう。そうなんだよ。鋭いねえ二人とも。実は相談あってね? 野球。草野球を
ね? 高須くんが一緒にやってくれないかな〜って」
優しい口調で語る須藤氏の面もちは、なんとなく断り辛い雰囲気を醸し出していた。
「野球?」
竜児がリピート。すると須藤氏は持っていたトレーを胸に抱き、大きく息を吐く。
「そっかー……最近の若い子は野球知らないのか……まずボールとバットをね? ……」
「いや須藤さん、それぐらい知ってますって。なんで俺が須藤さんと野球やらなきゃなんない
んすか?」
ぎらつく竜児の懐疑的な視線を受け流し、須藤氏は言葉を紡ぐ。
「いい質問だ。大橋駅あっちの商店街とさ、毎年この時期に草野球大会やるんだよ。高須くん
野球知っているんなら話が早いなあ。いやあ、実に助かるよ! じゃあ来週の土曜日。土手
沿いのグラウンドに朝十時に集合! ヨロシクね」
「ヨロシクしないでください。勝手に決めないでくださいって。でもまあ、事情次第では考え
ますよ。で、なんで俺なんですか?」
「ぶっちゃけ、誰でもいいんだけどね。今朝判明した事なんだけど、酒屋の稲毛さんとか、い
つものメンバーが仕事の都合でみんな出れないってんで困ってんだよ。負けた方の商店街は
通例で、勝った方の商店街の宣伝ポスター貼らなきゃいけない事になっててさ。去年の屈辱
を晴らしたいんだけど、メンバーが八人足りないんだよ。一ヶ月間、コーヒー一日一杯無料
にするからさ、高須くん頼むよ」
と、須藤氏は、不動明王の生き写しのような竜児の顔面に合掌してしまい、高須不動尊は渋
々その重い腰を上げる。
「どんだけ他力本願なんすかそれ……事情はわかりました。俺でよければ別にいいっすけど、
彼女に聞かねえと……なあ実乃梨。来週の土曜なんだけど、須藤さんと野球やっていいか?」
竜児が実乃梨に視線を戻すと、隣で香しいカフェ・ド・ショコラにも手をつけず傍観してい
た実乃梨は、大きな瞳をスパークさせた。
「いつ私に話振ってくんのか待ってたんだけどさっ! ベースボールと聞いて私が黙って見て
いると思う? まだメンバー足らないなら私もやるぜよ。まだリトルリーグん時のグローブ
もあるからよ。やろうやろう、やったろうじゃん!」
二つ返事で快諾。なんとなく二人はコーヒーカップで乾杯をし、そのまま実乃梨は、エス
プレッソのようにグイッとカフェ・ド・ショコラを飲み干すのだった。
「そっ、そうか実乃梨、サンキューな。……じゃあ須藤さん。俺と彼女、二人で出ます」
「ありがとう! ……迷惑ついでに高須くん。あと六人集めて来てよ」
そんな言い難い事をサラリと言う須藤氏に、これが大人のズルいとこだよな……とか、竜児
は思いながらも、カフェ・ド・ショコラと共に、その胸中を飲み込むのであった。
***
バレンタインデーの休日というのに国道沿いの並木道は人もまばらだった。この時期は午後
五時過ぎにもなると太陽はビルの谷間に落ち、雪が舞い落ちてもおかしくないくらいほど肌寒
くなる。たまに通り過ぎる人々は皆、挙って首をコートの襟に引っ込め歩いていて、櫛枝家に
向かう途中の竜児の左腕に絡まる実乃梨もまた、白い息を吐き出しながら、くっ付けている身
体を小刻みに震わすのであった。
「うっぷるるっ! さっびいね竜児くんっ。でもほら、冬って星空が綺麗だよねえ?」
そう言って夜空と竜児を交互に見上げる実乃梨。竜児の心はそう、耳元で囁かれただけでほ
んのり熱を帯びる。
「おう……本当だ。綺麗だな……」
足元を見ながら歩いていた竜児は、実乃梨の一言のおかげで綺麗な星空を見つける事ができ
た。そんな常に前向きな彼女に、竜児の焚き付く心は激しさを増し、炎と化すのだ。
「そうだ実乃梨。さっきの草野球のメンバー集めの事なんだけど……結構、安請け合いしちま
ったよな。大丈夫だろうか?」
「そ〜だね。月曜んなったら一応ソフト部の連中にも声掛けてみるよ。……でもなんか楽しみ
だな〜。竜児くんと野球出来るなんて、なんか私、嬉しいぜよ」
ギュウッと、さらに強く身を寄せる実乃梨。熱く上気した竜児が再び空に目をやると、四階
にある櫛枝家の明かりが目に映った。
***
「皆の者っ、控え居ろ〜うっ! 竜ちゃん様のお通りだ〜!!」
「おうっ? ……こ、こんばんは高須です……」
「お母さんっ! 何やってんのさっ! 竜児くんごっめーんっ!」
櫛枝家の扉を開けた途端、実乃梨の母親の、娘にも負けない太陽のような眩しい笑顔が竜児た
ちの目に飛び込んできた。引き気味の竜児に気付いた母親は、ぺろっと舌を出した。
「お姉ちゃんが久しぶりに竜ちゃん連れて来てくれたから興奮しちゃって〜! ごめ〜んねっ!
丁度みどりも戻ってきてるのよ?」
母親の背後から、背の高い実乃梨の弟が坊主頭をカリカリ掻きながら登場する。
「あ、竜児兄さん、お久しぶりっす。みどりっす……」
坊主頭を小さく下げ、みどりが挨拶する。竜児はギラリとした鋭い目をみどりに向けるが、決
してケンカを売っているのではない。兄と呼ばれ、少し照れているのだ。
「おまえ何しに来たんだよ? いつも盆と正月以外、帰って来ないくせに。しかも竜児くんの前
だからってかしこまりやがって、不気味なんだよ! レンタルキャットかっつーの!」
「っさいな姉ちゃんはよ! センバツでベンチ入り決まったから、これから地元の奴らが壮行会
やってくれんだよ。明日の朝一で帰るよ! ああ、竜児兄さん寒いっすから早く上がってくだ
さい」
みどりに勧められ、竜児は靴を極力丁寧に脱ぐと、さりげなく実乃梨が揃えてくれた。そこに
ラスボスが現れる。
「竜児くんいらっしゃい。久しぶりだね。私たちもみどりと一緒に壮行会に出掛けてしまうから、
なんのもてなしもできなくて申し訳ないが、ゆっくりしてってくれ。しかし騒がしい家族で、
ほんと、すまないな……」
「いや、ぜんぜんお構いなく。家族が泰……母親しかいないので、賑やかで問題ないってか、そ
の……楽しいっす」
実乃梨姉弟が、軽く小競り合いを始め、賑やかになる櫛枝家の玄関。さりげなく口にした泰子
の話題に母親が乗っかる。
「あっそーだ、竜ちゃん、泰子さんお元気? 年末にウチのお父さんと一緒に毘沙門天国に遊び
に行ったんだけど、それっきり、ご無沙汰してるわねえ」
「その節はありがとうございます。母は元気です。母も来てくれて嬉しかったそうです」
話しながら居間へ通される竜児。気付けば竜児の左腕には、母親が絡みついていた。
「本当〜? 実はあの時、泰子さんと『竜ちゃんファンクラブ』発足したんだから! ちなみに
私、団長! うふっ!」
「このアホ母! そんな事やったの? なななんて失礼なことを!」
「いいじゃんそれくらいお姉ちゃん嫉妬しないの! だってお姉ちゃんは竜ちゃんの事、旦那に
するんでしょ? いつもウチで言ってるじゃないの」
「ま、また竜児くんの前で、そんな恥ずかしいことを……もう、やめてくれえええっ!」
「実乃梨落ち着け。俺は大丈夫だ。全てを受け止める自信あるから」
「やさしいのね〜、竜ちゃんはっ! ますますファンになっちゃう〜!」
「いー加減にしろよなあああっ、もう早く壮行会でもなんでも、とっとと行ってこい!」
実乃梨はついにキレ、居間にあったクッションを投げつける。
「ハイハイ、お邪魔虫は消えますよ〜……って竜ちゃん、ごゆっくりっ! ウッフーッ!」
そのやりとりに、竜児はただ、ペコペコ頭を下げることしか出来なかった。
***
「っはー! だめだ、やっぱ緊張するっ!」
実乃梨の家族たちは出掛けてしまい、櫛枝家には竜児と実乃梨の二人きりになった。そこで
やっと竜児の緊張が解ける。
「お疲れさま竜児くん。ってかマジごめんねえ、ウチの家族、竜児くん来るとテンション上が
っちゃってさあ……悪気は無いんだけどねえ」
「おう、わかってるよ。みんな俺の事認めてくれていて。嬉しい」
居間であぐらをかいている竜児の元に、紅茶をいれてきた実乃梨が台所から戻ってきた。実
乃梨にことわってから、竜児は実乃梨から貰ったチョコレートの包装を解く。
そしてぱくんと一つ、口に放り込んだとき、紅茶の香りを楽しみながら、実乃梨が話し出す。
「ねーえ、竜児くん。今さらなんだけど竜児くん、ウチのソフトボール部に入んない? 仮入
部って事でもいいからさ? 今度の草野球の練習にもなるし。ウチのソフト部、男女統合し
たんだけど、メンズどもがイマイチやる気無くってさ〜。刺激にもなるし、あいつらも土曜
日の草野球やらせっからよ。文句は言わせねえ!」
と、部長の顔になる実乃梨。少し考え、竜児は答える。
「いや、いい。俺が入部したら……お前の事ばっかり気になって練習どころじゃなくなっちま
う……と、思う」
もちろん一緒に居られる時間が増えるのは嬉しいのだが、迷惑を掛けたくないのが本音だっ
た。
「え? あ、そ、そっか。じゃあ仕方ないね……私も……」
カップに目を落としたまま実乃梨はそこで言葉を切る。吐き出す言葉を選んでいるようだ。
その間、紅茶の香りが竜児の鼻先をくすぐる。
「私も……竜児くんが私以外の娘と仲良くしちゃってたりしたら、気になって……練習どころ
じゃなくなっちゃうかも……ヤバいよね? あははっ……はっ」
「そ、そんなことねえよ! 俺は、お前だけだっ」
即答した。竜児は頭の中に浮かんだことをそのまま実乃梨にぶつけた。ガン見していた実乃
梨の顔が一気に、溶けた。
「私も貴方だけ……です」
真っ赤な顔を伏せたまま、実乃梨は瞳だけ、竜児に向けた。一番嬉しい、欲しかった返事を
貰った竜児のリビドーが奮い立つ。
「実乃梨……キスしていいか?」
……そして交わした口づけは、チョコレートの甘い味がしたのだ。
***
「ん……竜児、くうん」
エッチのとき。どうしても私は積極的になる。そうしないと逆に恥ずかしいからだ。頭の中
を彼のことでいっぱいにして、彼の好きなところにいっぱいキスしてあげて、エッチに集中す
る。私たちは、私の部屋のベッドで裸になっている。
「おうっ……んぐっ……っはあ」
そんな彼の声をBGMに、私の唇は、ゆっくり彼の素肌をなぞる。竜児くんのからだの真ん
中から、脇のほう。そして……下のほうへ。
「ねえ竜児くん、ここ、舐めていい?」
「実乃梨……あおうっ!」
彼の返事を待たずに私の口の中に、彼の大っきく、熱いモノを頬張る。くちゅん、くちゅん、
と、一定のリズムで舌を絡める。その時、彼と一緒に、エアコンの動作音も唸る。
「んっ! ぐっ……んっ……んはっ」
私はこの行為が好き。竜児くんが私の中に飲み込まれた感じがして、いっぱいになった気が
して、すごく好き。彼も多分好きなんだと思う。いっぱいエッチな声が聞こえてるし。
口の中でピクッと動いて、もっと熱くなって、もっと大きくなって、喉の奥に当たると……
いつも彼が上半身を起こし、そこで立場が逆転されちゃう。
「あは、んっ……んんっ!」
竜児くんも私の下半身を舐めまわす。痙攣しそうなほど感じちゃうけど、意識が跳びそうに
なるのに堪えて、私もまた、彼の熱いモノを舐めるんだ。
「んっ、んくっ……んんんっ……あんっ!」
アイスクリームの蓋を舐めるように貪るような竜児くんの舌先……私のからだが跳ねる度、
じゅんっ、と溢れてくるものすべてを拭い去るように竜児くんの舌は、激しく動く。そうなっ
ちゃうともう、竜児くんのを舐められなくなって、先っぽをちゅルンと、吸うくらいしかでき
なくなる。
「あんっ! あんっ! あんっ! んやぁっ!」
おっぱいを握られた。強く。イヤなんじゃなくて、感じちゃうのが、なんか、くやしい……
だから、
「えいっ!」
「おうっ! な、なんだ?」
彼を仰向けにして押し倒した。そっとキスして、馬乗りになる。
「今日は私が上になる……ね」
私の唾で、ぬらぬらしていて、そこにゴムをつけるのは簡単だった。そして、それを、私に
ニュルリと挿れたんだ。
「あはっ……ふうっ……んっ」
……でも動かさない。動かしたいのをガマンした。そのかわり、大好きな竜児くんに、いっ
ぱいキスをした。彼は二つのおっぱいをムチャクチャに揉んできた。私もガマンできなくなっ
て、ギリギリまで溜めて、思いきり彼の上で、踊った。
「はっ、はあっ、あっ、あっ、あふっ、あんっ!」
何度もすべり込み、何度も私の奥に当たるたび、どうしても漏れてしまう声。からだ全体が、
火の中に飛び込んだくらい熱い。大きく上下に揺れる私の胸の尖端を竜児くんの指先がグニュ
リとつまんできた。その刺激に彼を飲み込んでいるところが思わずギュンッと、締めつける。
「おうっ! ……実乃梨……! くはぁっ、すげえっ」
「はあんっ、あんっ! ああんっ! 竜児くん! 竜児くん!」
繋がっている部分の一体感が一気に増して、私の奥から、ゾワゾワした感覚がからだ全体に
広がっていく。すると、彼の熱い舌が欲しくなってくる。
「んんんっ、竜児くん、んふっ」
腰を打ちつけながら、私は彼と舌を絡めた。麻酔がかかったかのように、たくさんの唾が彼
の口になだれ込んじゃうんだけど、竜児くんは私が出した唾をすべて、飲み込んでしまった。
「いっ、いっ……ちゃう……」
気持ちいい。びりびりしてきた。動かしている腰が止まらない。それどころか早くなる。夢
中で快感に溺れる。
「あんっ! あんっ! あはっ! くうっ!!」
いっ……ちゃっ……た。
「実乃梨っ!」
思いきりギューンッ! て締めつけて、彼も同時だったみたいだ。折れるほど、私を抱きし
めてくれた。
感じる。まだ私の中で、ツンツン動いている。
***
「あれ? メール。大河から」
実乃梨は部屋着にしている中学時代のジャージに着替えながら、器用にジャンプしてケータイ
に飛びつく。
「こんな時間にか? 一体なんだろうな」
まだ上半身裸の竜児は、ベッドサイドにある目覚ましを確認した。時計の針は午後九時を回っ
ている。
ケータイを開き、メールをチェックする実乃梨。さっき触れた時に柔らかかった実乃梨が、次
第に固まっていった。そしておもむろに着たばかりのジャージを脱ぎ出した。
「私、いまから大河のマンションに行く。北村くんもいるって。竜児くんも来て」
***
「……で、いつなんだ引越し」
「来週の日曜日。いきなりなんだけど、ママの都合でね。実は年始くらいから話はあったの。パ
……あいつが失踪してからね」
辿り着いた大河のマンションは、汗ばむほど暖房が効いていたが、そこにいた大河と北村は、
凍えるように表情を強張らせていた。
「俺は、聞いていたんだがな。まだ確定してなかったからみんなには黙っていた。すまない」
「いや北村くん、それは仕方ないけど、ねえ大河。北村くんと遠距離でしょ? それでいいの?」
実乃梨は大河の肩をつかみ、一度だけ強く揺さぶる。力なく大河の唇が開く。
「みのりん、もうママには散々お願いしたの。でも、ダメだって……」
十畳はある、ただっ広いマンションの一室に、グスッと、大河の鼻をすする音が虚しく響く。
壁にもたれ掛かっていた竜児は、北村に歩み寄る。
「…北村もそれで……いいわけねえよな、すまねえ」
しかし竜児の胸の内は微妙だった。母親の泰子が自分より幼い頃に、竜児を身籠り、家を飛び
出し、女手一つで育ててくれたのを知ってたからだ。でも、その厳しさも知っている。だから、
無理強いは出来ない。自分の無力さに気付き、ギリッと、歯を食いしばる。
「俺たちのために、わざわざ来てくれてありがとう。どうしようもない……よな? だから最後
にみんなで笑って逢坂を送りたいんだ。引っ越すといっても、逢えなくなるわけじゃないし」
北村と大河は腹を決めているようだった。竜児は実乃梨と視線を合わせ、互いに頷いた。
「わかった! すっげー寂しいけど、私たちらしく、最後にパアッとクラスのみんな呼んで遊び
に行くか! じゃあ、来週の土曜日……って、あっ!」
そして話し合いの結果、大河のお別れ会は、来週の土曜。草野球大会になったのだ。
──To be continued……
以上になります。お読み頂いた方有り難うございました。
また、まとめの管理人様、更新ご苦労様です。いつも有り難うございます。
次回、スレをお借りさせて頂くときは、職人様のお邪魔にならなければ来月
続き、M☆Gアフター6(マシュマロ篇)を、投下させて頂きたく存じます。
またこの時間帯くらいをお借りするかもしれません。
失礼いたします。
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
GJ。相変わらずキャラがコロコロ動いていて楽しいなあ。
スドバでのゴルゴ化するみのりんやみのりんちで大歓迎を受ける竜児が脳内アニメ化された。GJ
ところでアフターというのか番外編というのかラベルが付けられないのですが、3と4はどれなんですかね。
投下&スレ立て乙
はいはい埋め埋め
,' : . : .〃 ハ:. : . : . : .jl __ __
{ : . {{ / ∧:. : . : ./:| '.:´::::::::::::::::::` 丶
', : . ∨ー ":.:.. ∧:. : ./ | /::::::::::::::::::::::::::::::: . :: :: .ヽ
゙、 : . ∨:.:.:.:.:.:.:.. ヘ/ |゙. : . :.:::::/ヘ:::::、::::ヽ::::::::'; :: :`、
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\ : . : . : . : . : 「7>!、、 ヽイイび゙犲V::::::l:::|
ヽ . : . : . : . : ノ|ィ7てカ` ゞつン 小:!::|:::| 全力で埋めさせてもらおう
丶. : . : . : ./ ゞ゙‐'" 、 イ::l:::ト}:|
`、ー- --:‐'''~ ハ |:::|:::|;!:|
/ ̄ ̄_\ ヽ,..、. リ 「7 ̄ ヽ !:::!:::l:::l
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} _,、-¬-、\〉 ヽ公.、 ゝ _ _ン .ィ|:|:::|::::!:::! _____
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ヽ ゙´ ,r-、ン| /⌒ヽ::::Y'" ̄二≧z{;;;」::::{;;:1::1 〈′ :| ,.-‐'' ハ
∨ イ:.:.:. |′ `、::ヽ、 イ [l |:::::{;;::l:::l {`ー入{ ,、-‐ ハ
V 丿:.:. | `,::ヽ >ゝヘ、_|__ {:::::l;;::|:::{ ヽ .::廴{_ z‐ 1
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