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グリンの村に戻るまで、ニゲラはジークの手を掴んで離さなかった。
(もう良いんじゃないの?あのおばさんもニゲラのことは諦めたみたいだし)
(小さい村ですから、お芝居だってばれたらすぐに広まっちゃいます)
道中、エアが囁いたがニゲラは態度を変えなかった。
(俺はこのままでも構わないぞ)
嬉しそうなジークをエアがきつく睨むが、こちらも態度を変えない。
(ねえジーク、ニゲラも貴方の好みからは外れるんじゃないの?)
(別にそんなこと無いぞ)
(……)
エアは自分の胸元とニゲラの胸元を見比べた。
そういえばルー様がマジックアイテムで姿を変えたとき、ジークは大喜びしていた。
ドレイク姉妹に迫られたときの「胸が大きい女は嫌い」と言う叫びはその場しのぎの嘘だったのか?
それともまさか、ニゲラや自分や、変装したルー様は「胸の大きな女」には入らないのか?
さっぱり判らない。
「わかりました、僕たちのレースに協力してもらえた、信頼できる方として、グリンの村長に責任を持って進言します。……そして、ソーラリィム様のところまでご案内します」
「様付け!?」
「ナニやったの、あの子!」
ラシーの言葉に一同はどよめいた。
「まぁそれはあのナイトメア本人に聞くのが一番でしょう。明後日のレース後ということでよろしいのですかな?」
「はい。申し訳ありませんがそれまでは、村長に進言しても通らないでしょう」
「そりゃそうでやす、まだレースを無事に行えると決まったわけじゃありやせん。他の出走者への脅迫だけで済むとは限りやせんからね」
「つまり、我々はそれまでラシーさんを護衛することになるわけです。さらに報酬アップ!……とりあえず宿をお借りできますかな?」
「駄目に決まってるでしょう、明後日にお嫁さんが来る家よ?ラシーさん、軒先……と言うかこの家の近くをお借りして良いでしょうか?」
「構いませんが、追加の報酬となるとどうして良いか……」
「んー、それは良いや。レースが無事に行われるようにって依頼なんだから、それまでの護衛も込みで、ソラに会わせてもらうことが報酬で構わない」
「ありがとうございます」
「じゃ、ニゲラはジークさんと同じテントですね」
いつものように二張りのテントを張り終えて、ニゲラがまたもジークの手を取った。
「そりゃそうだな」
(……ニゲラ、危険よ?)
(どうしてですか?ジークさんとニゲラは恋人同士なんですよ?)
(そこまでお芝居しなくても良いでしょうって言ってるの)
(だって、決まった人って言っちゃいましたから)
「それじゃエアもいっしょで。そっちはメッシュとイスミーな」
「承知いたしました。夜半の見張りはわたくしとウサギが担当いたしますので、どうぞごゆっくり」
「ちょ、ちょっと」
エアは抵抗を試みたが、ジークに手を引かれニゲラに背を押されてはどうにもならなかった。
「……どうすんのよ」
「どうもしない。夕食が済んだら夜中までこの3人で見張りを担当して、その後は一緒に寝るだけだ」
「ジークさんは女の子を食べないですから、安心ですね」
「ニゲラ、それは誤解よ。この男は女の子と見ると片っ端から」
「でもこないだも、寄り添って寝ても何もされませんでしたよ?」
「……それは、そうなんだけど……」
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次は「本編」に入れるかな。