(失礼、エロは無いのですぐに終わらせます)
翌日
薄暗い廊下の先にの先に外につながる門が見える、その門から熱狂と鼓動の音が漏れる。
『まさか俺が自ら進んでここに来るとは思わなかったが…後悔はない。』
扉が開くとともに扉の金具が呻くように音を立て、刺すように白い光が入り込む。
目が慣れると扉の先の全貌が見えてくる、円形に座席が広がり、観衆を溢れんばかりに収容している。
そして中心には草一つ生えていない砂場が広がり、中心に筋骨隆々たる初老の男が一人、この国の王である。
『奴がこの気性の荒い種族を纏め上げられた理由はただ一つ、奴より強い者が他にいなかったからだ。
奴は決闘という形で各部族から代表者を求め、その全員をこの舞台で殺し、求心力を強めていった。』
王子は廊下を抜け、門へと歩く。
『王位を望み、王に挑んだ第一王子は脳天を割られ死に、謀反の贖罪として王に挑んだ第二王子は
細切れにされて殺された、血縁だろうが奴は容赦しない』
日のもとへ出ると観衆の熱狂はより勢いを増す、親が子を殺す場面が見られると喜んでいるのだ。
王子の目に王の姿が映る、浅黒い肌に首元に届く白いひげを蓄え、目は鷹のように鋭く獣の狂気を孕んでいる
「…まさかお前が儂に挑むとはな、勝ったときの望みは何だ…言えッ!」
これまで王に対して敬語で話した王子が初めて敬意を抜いて父に語った。
「俺とエルフの女をこの国から追放してほしい。」
王は天を貫くように笑い声を上げる、しかしすぐにその目に殺意が映る。
「ハッ!ハハハッッ!女に手を掛けるうちに情が宿ったかッ!貴様には多少期待していたが無駄だった様だ!!
よかろう!!!お前を殺した暁にはあの女の首と一緒エルフの巣にお前の首も送ってやる!!!」
凍りつくような殺気がその場を支配する。
王は剣を鞘に納めたまま王子の懐へ隼のように入り込み、剣閃を煌かせる
『ッ!これは下からの切り上げ!!!!』
剣を鞘から抜き出す間もないと判断した王子は鞘から抜ききれぬ剣の柄で受け止める
「…さすがよく学習しておるわ…!」
王のこの言葉とともに互いを押し返し、仕切りなおすように間合いを作る
『今の一撃、とっさの機転が利いたが、もう少しで体を二つに割られていた…』
王子は慎重に日の光が差すほうへ回り、相手の隙を待つ作戦に出る
「一つ教えてやろう、そういう小細工は実力伯仲の相手でこそ効果があるやり方だ、
ッッお前ごときが戦いで主導権を握れると思ったかぁーーーーーーーーー!!!!」
怒号と同時に王は一気に間合いを詰め、重量のある剣撃を四方の死角から浴びせる
『…ッ何とか追いついてみせる!』
王子は懸命に凌ごうとするが、王はその先を行っていた、王子の剣の僅かな刃こぼれを何度と打ちつけ
楔を作り出していた、そしてついに…
「キンッ!」
堅い金属がはじける音が聞こえた、王子の剣は中腹から弾け飛び、地面に刺さった。
そして同時に王子のまだ若い手首から下が地面に一つ落ちた、王子の顔が激痛に歪む
『くっそ!腕だけでなく同時に受けた胸に掛けての傷も広い!』
このとき着実に死の淵に進んで行く薄ら寒い感覚を王子は感じていた
傍目から見ても勝敗は決していた。
観衆へのサービスだろうか、王は余興を思いついた。
「最後はお前が切りかかるまで待ってやろう、知恵を振り絞って最後を決めろ」
『…なめられたもんだ、まあ当然だがな…』
王子は息を整えようとするが出血がひどくそのまま倒れそうになる。
『…あいつを幸せにしてやりたかった…』
堰を切ったように皇女への想いが湧き出てくる。
『あんなことをあいつに言ったのに負けるとは…情けない』
『あいつは笑顔で俺のことを待ってるのか?俺が負けたらあいつも殺されるのに…』
弱気の後でふと心が沸きあがる
『あいつの人生を悲しみで終えさせるのか?』
『まだ間に合う、あいつを救えるのは俺だけだ!』
「あいつの人生は俺のものだ!他の誰にも汚させはしない!」
声はみなぎり、心は再び燃え上がり、目に力が宿った。
「シッ!」
王子は地面に刺さっていた折れた剣の先を王に蹴り上げる
「悪あがきだな!」
王は当然のように折れた剣先を上にはじき返す。
王子は折れた剣の柄を捨てず、まるで先の無い剣で王を突こうとしている様だった。
対して王は王子が自分の間合いに入った瞬間に草を刈るように首を刈ろうと待ち構えた。
王子は気が違っている、誰の目にもそう見えた。
しかし二人の間に折れた剣先が弧を描くように回りながら落ちてきた。
そしてその剣先は突き出された剣の柄の刀身と重なり合い、まるで元の姿に戻るかのように
王子の元へ戻った、その長さは王の体を突き刺すには十分だった。
「…ん…ぐふッ!?」
自分を折った者への復讐を果たすかのように剣が無敗の王の胸に突き刺さる。
王が膝を地につける、思わぬ逆転劇に観衆が沸きあがった。
「ガハッ…ゴフッ!、、…まさかの事もあるものだな…よかろう剣をやる、我が首を刎ねるが良い…」
この国の決まりである、王の首を刎ねたものが次の王になれる。
「…いや、それはできない」
「…ハッハハハッ!善人にでも生まれ変わったつもりか!貴様には無理だ!!」
「違う…あんたの首を取ればこの国の王にならなければいけなくなる…
しかしこの国はあんたが死ねば崩壊する、そうなれば王位なんてものは意味がない。
奴隷貿易で財力を得ようと考えたのも、あんたの死後を考えてのことだった…。」
「………」
「この国はエルフへの復讐のために成立した、復讐を果たしたとしても目的を失えばこの国は消え、
エルフとダークエルフの文明は消え、暗黒時代が訪れる。…俺はこの国が大嫌いだった。」
「首を切らねば儂は死なぬぞ…!貴様らに追っ手を放つかも知れぬぞ…!」
「あんたは武人だ、冷酷だが卑劣ではなかった。…それに生き残るという意味では
この勝負引き分けか、俺の負けだ」
王子は自分の体を見た、切られた胸部と手のひらを失った手首から血がとめどなく流れている。
使命を果たしたと思った瞬間、王子の体から体から力が消え、地に倒れ付した。
『…無敗の王に土をつけたんだ…俺が死んでも王のプライドからして、あいつには手を出さない…』
死に際も皇女のことを考えていた、皇女の純真な優しい目、それを思い出すだけで死すらも報われる気がした。
『…もういい…よくやった……もう…休もう…」
王子は目を瞑る、瞼の下には現世よりも美しい世界が広がっている
『………………………』
意識は地に融け、混ざり合い、そして消えた。
完
269 :
名無しさん@ピンキー:2012/07/13(金) 15:19:54.65 ID:k2oQ/C9j
乙!
駄文読んでいただいてありがとうございます
最初のほうはなれてなくてグダグダになって申し訳ない
いつかリベンジ出来ればと思います
gj
純愛よかった
けど 王が助けてくれないの
ところで奴隷騎士の作者さんは無事だろうか…
>>272 ハッピーエンドを考えてましたが
死を撤回すると登場人物の懸命さの意味がなくなりそうで
自分の力では中弛み無しに話に出来そうに無いんで止めました
なるほどあれで死んじゃうなら
姫様は後追い確定だし
あの世でお幸せにENDだぬ
GJ!
暗闇に怯える姫が可哀相可愛い。
それにほだされる王子の描写も純愛ぽくてよかった
>>276 (すみません、もう少し努力してみます。)
王子と王は相打ちとして互いに傷の手当を施された。
王は突き刺さる剣を反射的に心臓から逸らし、致命傷を避けた。
しかし王子は傷の縫合は上手く言ったがあまりに出血がひどく、内臓の機能が著しく落ちていた。
そのため薬を飲ませても吐き出してしまい、体温は上がらず、助からないとして自室に戻された。
『………』
皇女はすべての顛末を知らされた、愛する人が自分を救うために死すら厭わなかったことを。
瀕死になって戻ってきた大切な人の横顔を見つめ、人が出払った後、悲しみに涙が零れた。
愛しい人が傷だらけにされて戻ってきたことがあまりにも悲しいのだ
「……愛しています、…あなたが傷つけられ苦しんだのだ思うと気が狂いそうになります…
…あなたに私は一生分の愛をいただきました…だから…わたしはあなたを一生愛し続けます…」
夜、燭台の明かりだけの部屋で、柔らかい唇を意識のない王子の唇と合わせ、献身の誓いをたてる。
皇女は自身の荷物を開いた、城に来る前に香用と薬用に森の薬草を十数種、粉末にして持ってきていた。
中には皇家の者のみが知る妙薬もある。
『私が物心つく前、病気で何も喉を通らなかったとき、お母様者が私にしてくれた治療法…』
皇女は水と香油に薬草を混ぜ、王子の体に塗る、栄養を皮膚から吸収させる方法である。
『…この後、お母様は私を肌で直接あたため、胸に私の頭をあてがい、鼓動で私を安心させてくれたはず…』
皇女はドレスのコルセットをゆるめ、初めて自分から肌をあらわにする、その行為に頬が染まってしまう。
薬草の匂いが蔓延した部屋の中、皇女の少女と大人の中間のような肢体は魅惑的だが、純潔すら感じられる。
処女を奪われ調教を受けたとは誰一人思わないだろう。
王子が横になっているベッドに皇女も体を預け、王子の体に沿うように肌を密着させ、体の温みを伝える。
そして恥ずかしそうに、そして愛しそうに王子の頭を抱擁し、頭の側面に胸をあてて鼓動を伝える。
するとゆっくりとだが皇女の耳に王子の呼吸が聞こえ、顔に赤みが差し、王子の唇は何かを探す。
王子は唇の先に皇女の均整のとれた乳房の感触を見つけるとそれを唇に含み、吸い始めた、まるで赤子のように。
「…ぁ、、あぁん…」
恥ずかしさと甘い痺れに皇女は腰が砕けて声を出してしまう、しかし皇女はそれを払わない。
『…私はあなたの物ですよ…。あなたが望むなら、いつまでもあなたのそばでこうしています…』
皇女はあどけなさの残る、穏やかな声で微笑みながら王子の頭を優しく包み込む。
皇女の肌の熱は次第に移りはじめ、乳房を吸う力は徐々に増していく…。
>>274 コンスタントに投下のあった人だし、作品もまだ続きそうだったから、
何かあったのか心配になるよな。
続ききてた!
王への服従の印に皇女が差し出されるのも
生き別れで不憫ぽくていいな
意識が浮き上がっていく、そして目覚めると俺は王の首を刈っていた。
狂喜した、俺に怖いものは何も無いと!
それから若さの勢いと狂気に身を焦がし、人を殺し、略奪し、売り、財を築き、
この時、俺はこの世に生まれた理由は快楽を得るためだと考え、実行する。
世界がまるで自分ものにできるかのように錯覚していた。
そして時は進み中年になり、満たそうとしても満たされない自分の人生に疑問を持ち始めた。
贅を極め、金銀螺鈿を身に纏い、他国の美女を奪い陵辱する、この繰り返しに何があるのだろうか?
無意味な作業、繰り返せば繰り返すほど胸の奥が空になり苦しくなる。
そして醜い老人になったとき、自分が地獄に落ちたのだと気づいた。
金欲、色欲、食欲、全て老いとともに抜け落ちたが、生存欲と疑心だけは若いころよりも強くなる。
玉座に侍る人間は俺がいつ死ぬのかを計っている、残りの命はあとわずかだと表情が語っている
金も地位も名誉も合理的な自殺の方法でしかない、そう思った瞬間に俺は気が触れた。
奇声を発して、這いずって逃げようとした瞬間、赤く焼けた剣が俺の胸を突き刺す、またもや奇声を発す。
最後に刺した刺客の顔を見た瞬間に血の気が引いた、若いころの俺がいる。
俺はそのまま剣に焼かれ干からび、自分の築いた財も城もすべてが塵になって消えた。
おそらく俺は生まれる以前に無限地獄に落ちたのだ、何をしようが俺の結果は変わらない
何度も何度も繰り返し、生かされ、空虚に身を蝕み喰われ、そして恐怖に取り付かれ、死んでいくのだ…
繰り返しの中でどうにかして救われるために天に昇る塔を建造させていた。
奴隷が足りない、老いる前に作り出さねば俺はまた俺は殺される、戦争が必要だ、そう思った。
しかしその瞬間、香の匂いがした。どこかで嗅いだことのある匂い、なのに思い出せない。
思い出そうとする、だけど、とどかない、何か大切なものを忘れている。
なぜか涙が溢れていく、これは喪失感、悲しみ、愛しさ。抱きしめたいのに、ここにはない。
それが天にはないことは分かっている、俺は間違い続けていた。
匂いが道になり、草を繁らし、可憐な花が微笑む。あいつだ、あいつがこの先にいる。
ゆっくりとだが思い出し始めた、俺は救われるために生きていたんじゃない、あいつを救うために生きた。
暗闇だが道は分かる、大丈夫だ、あいつは俺の部屋にいる。
扉を開けた
王子は目を覚ました、昼なのだろうか、目がくらむほど明るい。
天井にレースのカーテンの陰が風になびいて踊る、そして風があの香りを運んでくる。
皇女はベッドの横で王子の手を握りながらうたた寝していた。
ずっと王子のそばで看護をしていたのだろう、そう簡単に起きそうにない。
皇女の手を王子が質感を確かめるように握る、夢ではない、確かに本物だった。
自分が皇女を救えたと安堵を感じるとともに皇女に救われたと感じた。
指で皇女の柔らかく滑らかな頬を撫でる、すると皇女が微笑んだように見えた。
無防備で純真な表情、王子以外、誰一人この皇女の心の優しさと可愛さを知らない、
これからも皇女の心を傷つけることが起きる、それから守るのが自分の使命だ、そう王子は確信した。
新たな人生が始まる、どんなものになるか誰もわからない。
しかしそれを分かち合える相手が居る、それだけで王子は自分の心が満たされるのを感じた。
>>281 ×
>それから若さの勢いと狂気に身を焦がし、人を殺し、略奪し、売り、財を築き、
>この時、俺はこの世に生まれた理由は快楽を得るためだと考え、実行する。
>世界がまるで自分ものにできるかのように錯覚していた。
○
>それから若さの勢いと狂気に身を焦がし、人を殺し、略奪し、売り、財を築いた。
>この時、俺はこの世に生まれた理由は快楽を得るためだと考えていた。
>世界がまるで自分ものにできるかのように錯覚していた。
ほかにも細かく多く誤字脱字がありますね…気づかず申し訳ない
一応これで終わりです、駄文ですがお読みいただいた方本当にありがとうございました
機会があれば次はもっと計画的に誤字脱字無く出来ればと思います。
あああ乙 乙
幸せでよかった
ありがとう
286 :
名無しさん@ピンキー:2012/07/21(土) 12:55:46.14 ID:OjqBmciD
このスレに新SSが投下されるのはいつになるのだろうかな…
287 :
名無しさん@ピンキー:2012/07/31(火) 22:03:31.49 ID:D0SGD7r9
保守
288 :
名無しさん@ピンキー:2012/08/11(土) 20:51:24.10 ID:FGktEggs
ほしゅあげ
従愛
堕愛
つかこのスレ版権ものはありなんか?
スレ立ってない作品ならokだと思う
立ってるのは…?
別に建っても大丈夫だよ
何故に駄目だと思うのか?
ほ
も
test
保守
誰かネタを・・・
保守しとくか
ho
クリスたんハァハァ・・・
いずれはハッピーエンドを期待するが、
それまでにはもっともっといたぶられてほしい
うらやましいぜロドリゲス!
保守
304 :
奴隷騎士:2013/11/10(日) 15:31:06.86 ID:xl67AvU/
応援ありがとう。ちよっと事情があって長い間中断してしまってすみません。まもなく再開しますので
お待ち下さい。
309 :
名無しさん@ピンキー:2013/12/26(木) 01:41:16.18 ID:1Lbm0Z6P
松
304を待ち続けて幾星霜
過疎り過ぎだな