都合によりテンプレ、過去スレは後程。
2 :
影姫:2009/12/27(日) 20:31:26 ID:eU1MsNf3
「小物2匹始末した位で、随分嬉しそうだね。
>>802?」
「!?」
自分しかいないと思っていたこの空間に、自分以外の声が割り込む。
闇の向こうから黒を纏い姿を見せたのは、幼い少女だ。自分と同じか、それ以下。だが、気配は普通の人間のそれではない。今まで狩ってきた化物とも違う。
「だ…誰よあなた…」
精一杯の威勢を張って見せたつもりの声が、震えていた。少女の恐怖心を見透かした来訪者は、先程化物を倒した時の少女と同じ様に笑う。弱者を見下す強者の、余裕を含む嘲笑だ。
「たかが小物を2匹仕留めるのに、大層な仕掛けまで準備して。大袈裟過ぎるんじゃない?」
「…ああ。そうしなきゃ、低位の化物にも勝てないんだったよね。ごめんごめん」
ブチッ。
少女の中で堪忍袋の尾がキレた。
「言わせておけばっ!お前もあの2匹と同じ目に遭わせてやる、覚悟しろ!」
叫ぶ事で恐怖心を無理矢理押さえ付け、相手に飛び掛かる。小さな掌の中に輝きを灯し、目の前で不敵に笑う黒い少女にその光を解き放った。
だが、2体の怪物を消し去った光はそれを上回る闇に取り込まれて消滅する。黒い少女の足元にある影が意思を持っているかのように隆起して黒い塊を作り出し、光を呑み込んでしまう。
「な━━っ!何をしたの!?わたしの力が…通じない…?」
驚愕し目を見開く少女の前で、もうひとりの少女が無邪気に笑って言った。
「意外と呆気ないね。くすくすくす」
少女の足元にある影が次々と形を作り出し、魔獣の群れを成していく。その中心で、黒影の女王が残忍な笑みを浮かべた。
(捕食パートに続く)
投下しようとしたら、制限オーバーだったので急いでスレ建てました。
本当は先にテンプレを書かなければならないのですが、投下作品をコピーで保存していたので、投下を優先させていただきました。
緊急時とは言え、慣例に従えず申し訳ありません。
スレ立て乙…と言いたいところだけど…
自分が投下したいからテンプレは後回しってなんだそりゃ
コピー保存うんぬんも、一旦メモ帳かどっかに貼り付けておけば済むことだろ
>>4 そうしようとしたんだが、メモ帳の字数が足りなくて冒頭のほんの頭の部分からしかコピー出来なかったから。
開始早々クソスレになってしまったね
あけましておめでとうございます。
巫女の話を書いているものです。
巫女の続きが、書いては消しの繰り返しループにはまったので、
今回は別のSSを投下します。
前後半の前半になります。
凄惨な描写がありますのでお嫌いな方はスルーしてください。
その怪物が現れたのは、およそ20分前に遡る。
突然割れた地面から這い出たのは、全長10メートルはある巨大な肉塊だった。表面は腐敗した
キャベツを思わせる黒い薄皮が何枚も重なり、動くとゴムのように柔軟に形を変える脂質体。
底部は吸盤と柔毛が無数に付いており、それらを器用に動かして移動している。
しかし、その移動速度は驚くほどに遅かった。
冗談のようにゆっくりと動いているそいつに、人々は戸惑いを隠せない。
一見すると、深海に生息している構造不明の畸形にも見えるが、ここは陸上。近くにいた人々は
戸惑いながらも離れて警察に通報したり、携帯電話で写真を撮影したりと反応を見せた。一部には
動画サイトに映像をアップしようと、デジカメを構える準備の良い者までいる。
眼鏡をかけた小太りの若者が鼻息を荒くして、カメラを向けた。
そして、群衆から前に出て、怪物の映像を撮り始める。
「ふう、はあ、やっべえ、こいつマジなん。ふう、ふう、記録してる俺、映画の主人公みたいじゃん?
く、クローバーフィールドみたいな感じぃ」
「ここまで至近距離だと、RECやダイアリー・オブ・ザ・デッドでござろう。お主はミィハァでござるな」
痩身の男性が非難めいた口調で、小太りの後ろに続いた。
そのとき、怪物の表皮がべりべりと破れ、鋭い牙が生えた口が現れる。10メートルの巨体の前半分
に切り込みを入れたかのような大口は、人間ならば顎が外れているレベルまで開かれた。
「ちょ、おまっ、待て待て待て待て!」
人々が悲鳴を上げて後退し、撮影していた男性二人も腰を抜かして倒れる。
直角に近い角度まで開かれた上顎部は、唾液に濡れた赤黒い肉から太い牙が放射状に生えて、
巨大な肉壁のオブジェのよう。下顎部には黄色い垢が雪のように積もる、マットのように厚い舌。
怪物の表皮から赤黒い触手が飛び出して、前方の男二人を絡め取る。
「ぶっ、ひいいいいっ!」「おっ、お助けくだされえええっ!」
男の手から落ちたデジタルカメラが、怪物の口に引き寄せられる男二人の映像を映し続けた。周
囲の悲鳴と絶叫が木霊する中、フレームの中で男たちの上半身が食い千切られ、鮮血が散る。
それは皮肉にも、彼らが求めた見事な映像だった。
「きゃあああああっ!」
「くっ、喰いやがったっ! 逃げろ、逃げろおおおっ!」
波のように退いていく群衆に向け、肉塊は何十本もの触手を伸ばして追撃する。贔屓目に見ても
俊敏とは言い難い本体とは逆に、触手は宙を泳ぐかのように高速で獲物に向かっていった。
「離せええっ、止めろおおおっ! くそっ! ウソだろ! こんなのっ!」
「きゃああああっ! ママぁっ! 助けてえええっ!」
「こんなの夢よ、きっと夢で……!」
大学生風の若い男や、近くで遊んでいた幼い少女、そして通りすがりの主婦らしき人間が、身体中
を触手に巻き取られてアスファルトを引き摺られる。後に残されたのは剥がれた爪と血の跡のみ。
三人は半狂乱になって暴れながらも、怪物の舌上まで運ばれる。
巨大な怪物の口が閉じると、乱暴に肉と骨を切断する音が響き、男の首と少女の下半身が血を噴
きながら落下した。触手はそれを丁寧に巻き取ると、再度口の中に投げ入れる。
そのとき、サイレンを鳴らした警察車両が、逃げ惑う群衆を前に停車した。
「おっ、お巡りさん、早く、早くっ! ピストル持ってんだろ!」
「撃って! 撃って! 撃って! 早く撃って! 撃ち殺してえええ!」
群衆に詰め寄られた中年警官は混乱するも、触手を振り回す肉塊がすぐに視界に入る。そして、
そいつは遠慮の欠片も無く、人間をぐちゃぐちゃと貪っているではないか。
「に……逃げ遅れた人々を安全な場所に誘導しろっ! 応援も呼べ! 急げっ!」
異常事態の発生を察知した彼は、後輩の新人警官に指示を出し、標準装備の銃を構えるや即座
に引き金を引いた。乾いた火薬音を連発して、怪物に銃弾が撃ち込まれる。
応えるように、一本の触手がこれまでに無い速度で動き、彼らを薙いだ。
「ぐぼあっ!? がぼっ、ごぼっ……」
発砲した警官の上半身が、触手に斬り飛ばされた。周囲にいた人々も腰から千切れ飛び、両断さ
れて大破した警察車両の運転席では、頭の潰れた警官が無線を片手に沈黙する。
無数の悲鳴が木霊する中、警察車両の爆発が平和な街に大きく轟いた。
……怪物は地上の環境に慣れていくように移動速度を増していき、現状では、平均的な成人男性
の全力疾走よりも遥かに早く動いていた。人の多いショッピングモールに現れた怪物は、そのまま
モールのドアを体当たりで粉砕し、中の人間を喰い散らかしながら前進し続けた。
街には警察のサイレンの音が増していき、上空には無数のマスコミのヘリが飛び始めている。
しかし、恐るべき食欲を見せる怪物の正体は不明なままで、警察は市民を避難させようと試みてい
るものの現場は混乱し、出現した怪物に対しても逃げる以上の対策を取れない。
警官隊の指揮から死傷者数の把握、怪物の正体、能力、目的、移動経路、銃撃が有効か否かの
分析まで、地方都市の警察署では対応も限界を迎えていた。
街は完全に怪物の狩猟場になってしまい、多くの市民はただ逃げ回るしかない。
しかし、この恐るべき怪物に立ち向かおうとする、1人の少女がいた。
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……………………
割れた窓ガラス、穴の開いた壁、散乱した商品、そしてカバンやベビーカー。
床から天井まで悪趣味なアートのように張り付いた血液と肉片。床やベンチに山盛りになった臓
物、バラバラに喰い散らかされた人間の腕や脚の破片。虚ろな目をした首、中身が噴いた胴体。
無人のショッピングモールは今や、怪物が行儀悪く食事を終えた大きなお皿と化している。
「そこの腐ったお餅みたいな怪物! お前が行った残虐非道、この私が絶対に許さない!」
最後に仕留めた女子高生の上半身をぐちゃぐちゃと咀嚼する怪物に対して、凛とした宣戦布告が
行われた。怪物が口を止めて振り返る先に、ゆらりと優美に立つ一つの影。
生存者が近くにいれば、驚きの声が上げていただろう。
怪物の前に現れたのは、新体操などに用いられるレオタードを装着した美少女だった。
腰まで伸びた漆黒の長髪は風で靡き、子供らしさを残した丸い顔は、精巧に造られた愛玩人形のよう。
しかし、淡いピンクの唇を固く結び、強い意志で怪物を睨む顔は、敵に挑む戦士のものだ。
身を包んだ手作りのレオタードは、深蒼色の生地に純白の星とビーズが散りばめられた星空模様であり、
スリーブには柔らかな水色のフリルが付き、腰からは薄地の白いスカートが開花している。
童顔とは対照的に、柔らかい肉を十分に蓄えた胸部から、無駄肉が無い腰までの曲線は勿論のこと、
露出した両腕や太股にも若気に満ちた肉が付き、健康的な甘い香りを醸していた。
枠線の中でリボンやフープを動かして舞う可憐な妖精と異なる点は、戦闘時の動きを考慮して両手
に装着した白いグローブと、膝まで高さのある黒いロングブーツを履いていることぐらいだろうか。
「トランスジェニックガール・アスカ! ここに参上!」
腰に片手を当て、怪物を指差し、可憐な少女戦士は名乗りを上げる。
トランスジェニックガール・アスカ、その正体は佐久島アスカという少女である。
スーパーヒロインとしてのキャリアは2年。
彼女の戦績は、地元で暴れていた不良軍団の制圧、連続放火魔の拘束、銃器を所持した外国人
窃盗団の壊滅など、人間相手では無敵に近い。しかし、彼女の戦果は一般には知られていない。
そもそも、彼女は自分からスーパーヒロインになったわけではなかった。
旅行先で食べた料理に、偶然にも古代の翼竜の化石が混入しており、残されていた遺伝子情報を
体内に取り込んでしまい、肉体が変異を起こしたのである。本人の意思はレストランで料理を選んだ
のみであり、後は不幸な事故とさえ言える偶然の産物なのだった。
しかし、結果として彼女が取得したのが、人間を超える五感の能力。そして、日常生活ではコント
ロールも可能な、銃弾も弾き返せる強靭な肉体と、成人男性の数十倍はあるパワーだった。
彼女は、普通の少女としての日常を守りたくて、活動を始めた。
人間を超えた能力を持った彼女の目には、当然のことに思えた平和すら、悪意を持った存在に簡
単に壊される脆いものに映った。気付くはずの無い脅威を、彼女の五感は捉えていた。
日常に跋扈していた、血やガソリン、そして麻薬の匂いがする人間たち。
彼らは、普通の生活のすぐ隣にいる。
陰惨な非人道的行為を遊びで繰り返していた、命を命とも思わない少年少女たち。
快楽のために火を弄び、無数の命を焼き尽くしていった放火魔。
そして金銭のために人間を殺すことができる異国の犯罪者集団。
口喧嘩すら滅多にしない性格の彼女を戦いに赴かせるほどに、彼女の大切な人々のすぐ近くに、
無数の脅威が存在したのである。
もっとも、人間を食べる怪物という直接的な脅威は、初めてのこと。
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……………………
アスカは怒りに満ちた声で怪物を見据え、力強くグローブを握り締めた。相手が未知の怪物という
こともあり、全身が緊張で強張っているのが脳に伝えられる。
しかし、今の彼女には未知への恐怖よりも、醜い怪物への怒りで満ちていた。
今日、このショッピングモールで友人たちと待ち合わせをしていたが、別件でアスカだけが遅れてし
まった。急いで駆け付けるも既にモールは人間の残骸だらけ。友人たちが無事に逃げられたのかと
考えていると、とても判別しやすい友人の残骸が捨てられていた。
下半身を噛み切られ、苦悶の表情で絶命した友人。
見覚えのあるバッグを肩から掛けている胴体と頭のみの遺体。
そして、血の海に張り付いている、見覚えのある髪飾りと毛髪を持つ首。
友人たちの遺体は、まるで味見をして喰い散らかしたように放置されていた。まるで、不味いからも
う要らないと言わんばかりに、一部を噛み切って、投げ捨てられていた。
ショックのあまり、アスカの涙はすぐに止まった。
もう少し自分が早く来ていれば、彼女たちを守れたかもしれない。しかし、それを自分の責任として
背中に負えるほどに彼女の心は強くなかったし、割り切れるほどに乾いてもいない。
心の中で数十色の絵の具を全て混ぜたようなぐちゃぐちゃでどろどろの感情が湧きあがるのを、怒
りの赤で塗り潰した。彼女は常に持ち歩く戦闘コスチュームに着替えるや、怪物に挑む。
友人たちのために泣くのは、戦闘が終わってからでも、できる。
「この人喰いの化物めっ! よくも、みんなをっ!」
アスカは勢い良くフロアを蹴り、触手を展開する怪物に向けて駆け出した。
全力の彼女は軽自動車ぐらいなら持ち上げられるし、銃弾も効かないほど肉体も強化される。いく
ら正体不明の化物が相手でも、決して負けることは無い。そんな考えが彼女にはあった。
改めまして、
今年もよろしくお願いいたします。
後半は来週か再来週に投下します。
ではまた。
5スレ目最初の長編キター
後半も期待
新スレ新年おめ!
そして前後編すごく楽しみ!