夜。教室の中は不気味に静まり返っていた。10人もいるというのに、誰一人声を上げない。
声をあげることで場を仕切る役になることを恐れているのだ。私はため息をついた。
日ごろ粋がっていても、男子なんて臆病なものだ。ここはひとつ、私が盛り上げなくてはならない。
「さ、みんなケータイ出して。そろそろはじめないと、帰りが遅くなるよ」
うん、そうだな、と各々ぼそぼそと相槌をうち、のろのろと携帯電話を取り出した。
みんな、本当は怖くてたまらないのだろう。手が震えて、ポケットからうまくケータイを取り出せない男子もいた。
今日の放課後、誰かが言い出した『怪人アンサー召喚大作戦』は、参加したいという子でにぎわい、
あれよあれよという間に今日の夜、10人が集まることになってしまった。女子は私だけで、あとはみんな男子。
私を含め、10人ともが深く考えずに勢いだけで参加したのだろう。結果が、このグダグダっぷりだ。
言いだしっぺが誰だったかははっきりしないが、とにかくその子がこの場を取り仕切る気はないようなので、
このまま私が場を仕切り、とっとと終わらせて帰って「嵐にしやがれ」を見て寝よう。
そう思った私は、また声を上げた。
「じゃ、丸くなろうか。机はそのままでいいよね。」
慣れ親しんだ教室も、時間が時間だと不気味である。誰もいない学校が、こんなに怖いものだとは思わなかった。
みんなが恐る恐る輪を作ったのを見計らい、わたしは再び場を仕切る。