7THDRAGON/セブンスドラゴンでエロパロ 第五帝竜

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1名無しさん@ピンキー
ここはDSのためのRPG「7THDRAGON/セブンスドラゴン」の二次創作スレッドだ。
成人向け創作を発表するハントマンが数多く訪れるこのスレッドは、
冒険(性的な意味で)の拠点として、重要な意味を持つ場所となるだろう。

なお「7THDRAGON」は、世にでて間もないため
SSを投下予定のハントマンは、後進のハントマンに配慮して
ネタバレの有無を投下前に明記する事を強く推奨する。

全てのエロを語りつくせ!

公式 ttp://dragon.sega.jp/
Wiki ttp://www24.atwiki.jp/7thdragon/

前スレ
7THDRAGON/セブンスドラゴンでエロパロ 第四帝竜
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1245725580/

過去スレ
7THDRAGON/セブンスドラゴンでエロパロ 第三帝竜
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1240392763/
7THDRAGON/セブンスドラゴンでエロパロ 第二帝竜
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1238463258/
7THDRAGON/セブンスドラゴンでエロパロ
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1233975381/

保管庫
ttp://7thep.x.fc2.com/index.html
仮保管wiki
ttp://www29.atwiki.jp/nanadorakari/pages/1.html
2名無しさん@ピンキー:2009/12/10(木) 07:11:38 ID:ypThOytg
スレ立て乙っす。
3名無しさん@ピンキー:2009/12/10(木) 09:27:46 ID:g3GK8p8W
これは乙じゃなくてシンボルエンカウントがなんちゃら
4名無しさん@ピンキー:2009/12/10(木) 18:44:00 ID:Qa6I5znC
これは乙じゃなくておっぱいローグのポニテがかんちゃら
5名無しさん@ピンキー:2009/12/10(木) 18:56:07 ID:jpHvNdes
>>1さん乙かりゆ様!ゆっくりしていってね!
6 ◆Y62mw7fowc :2009/12/10(木) 19:29:00 ID:BAEB/1J8
スレ立て乙です!早速ですが即死防止もかねて投下行きます。
前スレ>>337-358より続き物。以下人名対象一覧
コレル:第一人称。骨の髄まで奴隷根性の日和見使用人。
バレッタ:ネバン的ルシェ魂至上主義の少女。
ニコレット:先輩の優しいお姉さん。
おっ侍:以前の一悶着で知り合った常連。
注意事項:・エロなし・無駄に長い
・ここ三週間ほどで製作しましたが、偶然本文中に他の作者様の作品に対するあてつけとも
取れかねない文章が入ってしまいました。小説中の個人の感情の描写であり、作者自身には
そのような意図はまったくありませんのでどうぞご了承ください。
また、様々な考え方の登場人物がいるという形をとっているため以降も同じようなことがあるかもしれませんが
同じ文章中でのフォローなど、精一杯精進して見苦しくないよう努力しますのでよろしくお願いします。
7ニギリオいいとこいちどはおいで 1/15:2009/12/10(木) 19:37:56 ID:BAEB/1J8
「……ふにみとっ!」
「あうっ」
ちなみにこれはルシェ言語ではなく、気合いの掛け声なのだそうだ。

こんにちは、今日はいきなり床に激突0,2秒前です。
今日も僕は元気にこのニギリオの宿で働いている。
同僚と笑ったり上司にいびられたり仲間と口論したりする毎日だが、相変わらずそれなりの暮らしだ。
世界が激動の渦に巻き込まれる中、この宿がそれに巻き込まれるのはまだ先の話だった。
さて、残念ながらこの状況から僕を救出できる人物はこの場におらず、僕は0,2秒後にきっちり床に激突した。
どすんっ!
「……ふんっ!」
床に倒れこむ僕の向こうで、僕を蹴り倒した張本人――バレッタさんが鼻を鳴らして歩いていく。
「今日も派手だなぁおい」
ここは宿の使用人控え室。
僕は助け起こしてくれたハンコツさんに礼を言いつつ、テーブルに座って蹴られたところを抑えた。
「しかしまあ、毎日毎日よく懲りないもんだ」
「おかげで最近一発じゃのされなくなりました……」
あれだけ蹴られたら体制もつくってものだ。
それにしても、僕は我ながら世間一般的な常識人であるという自覚があるのだけど、
どうも彼女の前ではあれこれ余計なことまで喋ったり頓珍漢な答えを返してしまったりする。
おかげで僕は日々大小時には意識無意識を問わず彼女の暴力的なツッコミをこの身で受け続けるわけだ。
ちなみにそれは大概彼女について考えているときに起こるので、
余程僕は考え事をすると迂闊になる性質と見える。考えてることが口から出ないように気を付けよう。
「それにしても」
と、ここで僕は考えを切り替え、先程ふと心に浮かんだ事を考えてみることにした。
脳裏に浮かぶのは、反射的に蹴りを繰り出すときには必ずと言っていいほど正確に頭部を狙うバレッタさんの姿。
「理不尽だ……」
「んー、まあな。多少は自業自得のもあっけど、大体はそのくらいで手を出すなよって感じだしな」
「あ」
先程注意しようと思ったばかりなのに早速考えが口に出ていた。やはり阿呆だ。
「口に出てました?」
「ああ。蹴られるのが理不尽だって」
「あ、いやそこじゃないんです」
「?」
「えーと……その、そういうつもりじゃないんですよ?ただ、ちょっと思っちゃっただけで」
「いや分かんねーよ、最初から話せ最初から」
少し慌ててしまい、訳の分からない弁解をする僕をハンコツさんが嗜めた。
叱られて少し落ち着いた僕は、努めて冷静になろうともう一度口を開く。
「その……ですね。……見えないんですよ」
「?」
「彼女、給仕服だからスカートはいてるじゃないですか。
 で、思い切り蹴飛ばすときには大体頭を狙ってくるんです」
「ああ」
「……普通、見えちゃうと思いません?」
「……………お前……………」
「あ、いやだから見えたらいいって訳じゃなくでですね!
 その、普通見えるはずなのにどうして見えないんだろうとただそれだけで……」
「ああ……分かった、分かったよ。ただ、後ろ……危ないぞ」
「へ?」
つられて僕は後ろを向いた。

……そこでは今まさに顔を真っ赤にした彼女がその右手をテーブルに叩きつけ、
その反動とともにテーブルを一直線に僕に向かって飛び越えてくるところだった。
「……トニミイッ!!」
ぐしゃっ!
どちらかというと顔面を水平に踏みつける感じで彼女の蹴りが僕の頭部を壁に打ち付ける。

……やっぱり、見えなかった。

――――――――――――――――――――
8ニギリオいいとこいちどはおいで 2/15:2009/12/10(木) 19:40:03 ID:BAEB/1J8
まあ、前述のように馬鹿なこともやっているが基本的にこの宿は平和だ。
日常的に裏家業の人やハントマンが入り浸り、一日一回はどこかで揉め事が起こるけどそれでも平和だ。
そんなある日のお昼のことだった。
「……だからねー、あんたもルシェの誇りさえあればそこそこいいセンいくと思うのよ」
「むー……」
僕達は二人で控え室にて昼食の最中だった。
掃除のキリのいいところということで、少し早めの昼食でいるのは二人だけだ。
二人で向かい合うテーブルの横では、備え付けられた中古品のテレビが通信販売の番組を流していた。
……正直、何でこんなところにテレビがあるんだろうとか
見てる人が世界にどれくらいいるんだろうとか
今流れてる『ヨクワカル商販』にしたって十分お客がいるのだろうかとか
プレロマが復刻する前史文化にも優先順位というものがあるだろうとか
そもそも電気はどこからとか突っ込みどころは満載なのだが、
木で出来た古びた部屋の隅っこの上に薄汚れた小さなテレビが
設置してある、という光景が理不尽なほどしっくり来るため何も言えなかった。
「……聞いてる?」
「あ、うん」
ほんとは少し気が逸れていたが、それでもちゃんと聞いてはいたので僕はそう返事する。
「だからね、やっぱり人間一本通った筋を持ってるほうがいいと思うの。
 せっかくルシェに生まれたんだし、どうせなら受け継がれてきた血を重んじて、
 誇り高く生きれたらいいと思わない?」
「むーーー……」
最近バレッタさんは僕をルシェの魂に目覚めさせようとご執心のようだ。
それで彼女に何の得があるのかは分からないが、きっと何かいいことがあるのだろう。
「分かるんだけど、分かるんだけどね」
「やっぱり消極的、っていうか不満そうよね。なにがイヤなのよ?」
「いやなんか、その考え方を受け入れるとそれって、ルシェだから勇ましくないといけない、とか、
 ルシェだから戦うべきだ、とかってのを受け入れることになると思うんだよね。
 自分がどんな人でどんなふうに生きるかは種族に関係なく自分で決めたいというか」
「言いたいことは分かるけど。でもそれはそれとしてあんたはそういう生き方を選ぶ気はないのかってことよ。
 世界には同じようにルシェの魂を持った仲間達が一杯いるし、その仲間になりたいかどうかってだけよ?」
「でもなあ……」
「でも、何よ」
「結局のところネバンプレス的な考えだし」
「あんたねえ……」
彼女が茶碗を置きながら呆れと腹立たしさの入り混じったため息をついた。
「ほんっとにあんた、ネバンが嫌いなのね。そりゃアイゼンの民だし仕方ないかもしれないけど、
 そこまであからさまだとさすがにお手上げだわ」
「別にそんなこと言ってないじゃないか。ただ僕はアイゼン人だからネバンプレスの考えが合わないってだけで」
「同じことじゃない。大体、ルシェの誇りはネバンだけの考えじゃないわよ。
 さっきも言ったけど、世界中に同じ魂を持つ仲間達がいるんだし」
「どっちにしたって僕はそういう人たちの外側にいるんだから同じことだよ」
「はっ……まあね。そりゃ下級階層でいることに慣れきったアイゼンのルシェ達じゃ期待できないかもね」
「(むっ……)下級階層で何が悪いのさ。貴賤の差こそあれ、アイゼンではそれぞれの階級が
 それぞれの役割を果たしあって国を動かしてるんだよ、そっちこそ相変わらず偏見を持ってるじゃないか」
「人がそれなりに考えて話したのに、あれこれ渋った挙句ネバンだからって理由で
 ルシェの誇りを蹴られちゃこのくらい言いたくなるわよ。それなら最初からそう言やいいのに。
 大体、偏見とか言うけど事実は事実じゃない。社会の役割を果たしてる?それはそれでいいわよ。
 でも結局は事実として、貴族階層に逆らうすべもなく搾取される現状じゃない。口車に乗せられてるだけよ」
「そうかもしれないけど、それは国として改善していく問題であってルシェの魂とは関係ないじゃないか。
 大体、生まれたときからルシェとはこうあるべきだなんだと教えられ続けてそういうものだと思い込んで、
 それこそ口車に乗せられてるのはどっちさ。そういうのは根拠もなく考えが固定されてるとは言わないの」
「……!根拠が無くなんてないわよ!プレロマの公式な調査でだって、
 ルシェとヒトとは遺伝学的にも統計学的にも性質の方向性に明確な違いがあって、
 明らかにルシェの本質というものは思い込みでもなんでもなく実際に存在するって出てるんだから!」
9ニギリオいいとこいちどはおいで 3/15:2009/12/10(木) 19:40:49 ID:BAEB/1J8
「そうだとしても、それに従ってそういう道を選ぶかどうかは個人の自由だよ。
 ネバンプレスみたいに国民皆が同じ考えをしてるなんて、それって少し怖いと思わない?」
「ぐぐ……………!!
 最初っから階層社会に組み込まれて、その一員になることを強制される国の住民に言われたくないわ!」
「そうだね。所詮お互いに自分の事を棚に上げあってるだけだし」
「ふん……!話し合うだけ無駄だったようね。所詮民族としての歴史が違うのよ」
「そうやって民族の話として片付けちゃうところが僕から見てネバンプレスの変なとこだと思うけどな」
「っ、ああそうね!ついでに言うならきっと私達の祖先とあんた達の祖先が別れるとき
 アイゼンには新天地を目指す気概の無い連中ばっか残ったから今みたいな状況になったんでしょうよ!」
「逆に言うと気の荒い人ばっか出て行ったからあんな国が出来たとも言えるね」
……ぱきんっ!
何の音かと思いきや、彼女の手に握られていたお箸がその握り締める圧力に耐えかねてへし折れた音だった。
半分の長さになってしまった箸がころころと音を立てながらテーブルを転がっていく……

……………怖くて直視できません。

「ああお腹空いた!先に上がってたのね、お疲れ!」
救いの天使がやってきたのはそのときだった。
危機的な空気など何のことやら、先輩のニコレットさんが陽気に控え室に飛び込んでくる。
「ニコレットさん」
「もう今日は朝から忙しくて忙しくて!さて、私もご飯頼んでこなきゃ……
 ……どうしたの?何かあった?」
「別に……先、行くわ」
彼女は不機嫌そうに言って部屋を出て行った。
見送ったニコレットさんがポツリと一言。
「ほんとにケンカばっかりねえ……」
「すいません」

本当の所は、分かっているのだ。
ネバンプレスに伝わる古語をルシェ言語と呼ぶことからも分かるように、
人口、文化、どれをとってもネバンプレスこそルシェとしての民族性を持った国と呼ばれるべきだ。
それに比べれば僕達アイゼンに暮らすルシェなどマイノリティーといわれても仕方がない。
けど、それを彼女が言うたびについ反発してしまうんだよね。
自分達をアイゼン・ルシェ、彼女達をネバン・ルシェと呼ぶように僕にはネバンプレスに対する対抗心がある。
それ故に僕は、どうしてもネバンプレスの考え方である『ルシェの誇り』には
それが良い考え方かどうかに関わらず抵抗感が生まれてしまう。
僕をルシェの誇りに目覚めさせたいのは分かるけど……分かってくれないかなぁ。

彼女を追って裏庭に出て行くと、彼女は箒を抱えたまま蹴りの素振りの最中だった。
「ふっ!はっ!……せやぁっ!」
「……」
時には地面ギリギリに、時には空中で舞うように、空間を自在に使っての蹴りを繰り返す。
右手で柄を、左手で穂先を持つように抱えられた箒が何故か時折前に突き出された。
「あの……」
「うるっさいわね、さっきのことだったらもうあのくらいじゃ引きずったりしないわよ」
「そうですか……」
だから邪魔しないでというように鋭い蹴りを繰り出し続ける彼女は、しばらくそれを繰り返した。
やがて動きを止め、何か考え事をするように腕の中の箒を見つめて彼女はぽつりと言う。

「はぁ……鉄砲撃ちたいなぁ」

どんがらがっしゃん。
今とても古典的な効果音を立てたのは、僕が抱えていた掃除用具だ。
「……何よ、そんなに驚かなくたっていいでしょ」
「いや普通驚くって!だって、え、鉄砲……だよね?」
「そうだけど……別に、元々銃を使う職業なんだしそんなにびっくりすることもないでしょ」
「いやでも……え?銃を使う職業?」
「そうよ?あれ、言ってなかったっけ?

 ……私、ネバンのソルジャーなの」
10ニギリオいいとこいちどはおいで 4/15:2009/12/10(木) 19:42:23 ID:BAEB/1J8
「言われてないよっ!!」
衝撃の事実。ああ、でも、そう言われて見れば彼女と交わす会話の節々にそんなヒントがぽつぽつあったような……
気付かなかった僕はやっぱり阿呆かもしれない。
と、そこまで考えて重要なことに気付き、僕は彼女に質問をぶつけることにした。
「え、ソルジャーってネバン軍の兵隊さんだよね……」
「言い方古いわね……まあ、そうよ。ネバン軍陸戦課所属、ちゃんとした正規兵よ?」
「それって……アイゼンには何かの任務で来てたり……?」
「ううん、旅行で来たってのは本当。ほんとはそんな事してる場合じゃなかったんだけど、いろいろあって。
 だから軍のほうには失踪兵や脱走兵じゃなく、休暇中の失踪として登録されてると思うわ。
 じゃなきゃ捜索対象になって誰かしら迎えに来るはずだもの」
……よかった。
いや、彼女にすればよくないかもしれないが、ここにネバン軍が来て彼女の引渡しを要求したりしたら
とんでもなくややこしい国際問題になるのは目に見えてる。
僕が一安心したのを知ってか知らずか、彼女はネバン軍について話し出した。
「ちなみに階級は伍長。どうも軍曹以上になるにはそれなりの経験がないといけないって
 暗黙の了解があるみたいで、私みたいに優秀だけど若いってのは大体伍長なのよ」
「自分で優秀って言う?」
「まあ、ね。一応射撃でもA評価はもらったんだから。格闘はCだったけど」
「えええぇぇぇっ!?」
「ちょっ……何よ。私が射撃上手くちゃ悪い?」
「いや、そっちじゃなくて!!」
格闘がC。その言葉は僕に大きな驚きを与えた。
ネバンプレスのABC評価は僕の知っているものと順番が逆なんだろうか?
それとも……ネバンプレスにはあのくらい朝飯前な人たちがわんさといるとでも!?
「受けに回ると弱いから一撃必殺を心掛けてるのよ……」
あ、なるほど。
「だから、私の本分は基本的に銃なの。基本はライフルだけど大体の銃器は扱ったわ。
 そのうち拳銃も持たせてもらえるようになるはずだったんだけど」
「……人を撃ったことは……ある?」
彼女は振り向いて、肩をすくめた。
「幸いなことに……なんでしょうね。ないわ」

よかった。

――――――――――――――――――――

「おう、元気そうだな」
「こんにちはおっ侍さん」
別の日のことだ。
休憩所のテーブルに座るお客さんの一人に僕は呼び止められていた。
この前の駆け落ち騒動で知り合ったお侍さんだ。
本当ならおっ侍なんて呼び方をしちゃいけないんだけど、本人がそう呼べ言うんじゃ仕方ない。
おっ侍さんは今やここの常連として、たびたび僕達と言葉を交わしていた。
まあ、もちろん他の仕事もあるけどお客さんの相手をするのも仕事のうちだしね。
「ところで、相棒はどうしたんだ?」
「バレッタさんですか?それなら、今は物干し場です」
「んん、別に用がある訳じゃねえがな……元気にしてるかと思ってよ」
「彼女は僕よりもっと元気ですよ。元気すぎるくらいに」
「そうか……。で、どうだ。気は惹けてんのか?」

この手の話は老若男女関わらず皆好きだなぁ……

僕はやれやれと思いながらも当たり障りの無いことを話した。
「いや、それが全然。相手にされないというより気付いてももらえない感じで」
「そんなもんか?まあ、あの性格じゃなあ……お前としてはどこがいいんだ」
「いや、どこというか……」
一目見て直感的にきたわけで、正直僕は彼女のどこがいいのかという質問に答えられない。
ただ感覚的に彼女に惹かれる、それだけだ。
しかしまあ、僕から見て彼女は可愛い。どこが可愛い?
どことは言えないが、全体的に。
11ニギリオいいとこいちどはおいで 5/15:2009/12/10(木) 19:43:00 ID:BAEB/1J8
それでもあえて言うなら……僕は考えた結論を口に出した。
「耳、ですかね」
「耳?」
「強いて言うなら、ですけど。
 なんというか、目は口ほどに物を言うっていいますけど耳も同じくらい感情が表れるし、
 見てるだけで幸せになれますし、こればっかりはルシェの女性だけの特性ですよね。
 人間の耳だとこうはいかない……」
「馬っっ鹿やろぉーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」
「うひゃあ!?」
突然おっ侍さんが怒号を上げた。
腰を抜かしかけた僕の前で、おっ侍さんは自らを抑えるようにぶるぶると震える。
「あ、あの」
「お前って奴は……」
「へ?」
「お前って奴は……人間の耳のよさってもんがわからねえのか!?」
「……へ?」
予想外だ。
っていうか、どう答えろっていうんですか。
僕は答えを返すこともなく、ただぽかんとするよりなかった。
「ちょっ……どうしました?」
先程の声を聞きつけてきたのか、ニコレットさんが慌ててやってくる。
「おう、聞いてくれ!こいつがな、こいつが、耳が可愛いのはルシェだけだとか抜かしやがるんだ!
 俺様はもう情けなくて情けなくて……」
「……へ」
ニコレットさんも大体同じような反応だった。
「えっと……つまり、人間の耳にもルシェに負けない魅力があると?」
「当ったり前よ!」
そうなのか?
僕とニコレットさんは顔を見合わせ、分かる?いや全然、という意思交換を行ってから顔を戻した。
「「……」」
「……俺の耳を見てどうする!」
「え、だって、人間は男女で耳の形が変わらないし……」
「かーっ、分かってねえ、全然分かってねえよ。年頃の娘が照れて顔を隠す、その艶めく黒い髪の間から
 覗く小さな耳がほんのりと赤く染まってるのになんとも言えねえ色気があるんじゃねえか。
 大体どいつもこいつもルシェ耳ルシェ耳言いやがって、情緒ってもんがねえよ情緒ってもんが」
「そう言われても」
……しかし、僕はこのおっ侍さんの意見に妙に肯定的な感想を抱いていた。
といっても人間の耳の良さに賛同したわけではない。
世の中の野郎共、特に人間達がやたらルシェ女性の耳をもてはやす事に対する反感に共感したのだった。
非常に悲しいことだが、一部の人間にとって僕らルシェの存在価値は
ルシェ女性>>>>>(アイゼンとネバンプレスの文化の違いよりも高い壁)>>>>>ルシェ男性
という差別なんてもんじゃねーぞ!という認識を受けている。
彼らの目に僕達ルシェの男が入っていないという事実は、
ルシェの別の呼び名である『半獣の民』を見ても明らかだ。
僕達を見ろ。どこに獣の要素があるというのだ。
大体女性にしたって、耳が狐のような形をしているだけで半獣扱い。極端すぎやしないだろうか。
残念なことだが、この時代においてもなお一般的な人間達の間には
『人間がいて、それ以外の動物がいて、その中間にルシェがいる』
という認識が流れている。
階層社会のアイゼンや、ルシェの住んでいないミロスやマレアイアでは特にそうだ。
……まあ、差別の象徴みたいなこの社会認識も仕方ないというところはある。
なんでも前史時代の頃、この星にルシェは存在しなかったのだそうだ。
人間から派生したのか、それ以外の動物が進化したのかは今なお謎とされているが
ともかくそうやって後から出てきたのがルシェである以上、
ルシェを異分子や傍流とみなす社会認識が作られたのは仕方がないことなのだろう。
だから僕はミロスの人やマレアイアの人に特異な目を向けられても怒ったりしようと思わないし、
アイゼンで生まれつき最下階級となっていることにも納得している。
(それに、アイゼンの社会では人と違うことをするのには大きな勇気がいるから社会認識も変わり辛いしね)
しかし、それらを許せたとしてもなお僕には許しがたいことがあるのだ。
それが前述した一部の野郎共のルシェ女性の耳に向ける好機の目線である。
12ニギリオいいとこいちどはおいで 6/15:2009/12/10(木) 19:43:36 ID:BAEB/1J8
たしかに彼女らの耳は可愛い。見ているだけで癒される。
しかしそれはあくまで魅力の一部であって、魅力の主体ではないのだ。
彼女らの本質を見ようとせず、その耳だけを見て褒めちぎるのは逆に彼女らに対する侮辱ではないかと僕は思う。
大体、好きになった相手がたまたま異種族だったというならともかく
そうでないなら同種族の女性に目を向けるべきではないだろうか。
(こんなことを言うのは僕がアイゼンの考えに染まっているからかもしれない)
それでなくとも普通に同種族結婚をしたいと思ってる人達は意中の女の子を巡って
激しい競争を繰り広げているというのにその上余計な連中が近付いてくるのが面白いはずがあろうか、
この宿にだって給仕の女の子が目当てでやってくる自称『ルシェ耳愛好家』がいるし、
何かにつけてナンパしようとする客がいるし、付き合うなら耳の可愛いルシェの子がいいとか
ふざけたことをいう奴もいるしそういう奴に限って気の強い女性は苦手なくせに
見た目は可愛いからバレッタさんに見た目で判断して近付いて口説こうとするしああもうっ!!

―――文章が支離滅裂になったことを心からお詫びします―――

はい、すいません。
いろいろ遠まわしに言い訳しましたが本音はそれです。
最近やたらバレッタさんに声を掛けるお客さんが多い。
彼らは実際に話して彼女の性格を知ると大概の場合慌てて去っていくのだが、
僕としては彼らがその愛らしい風貌に惹かれて彼女に近付くたび
激しい嫉妬の炎に苛まれ焦燥に駆られるのだ。
そのやつあたりをルシェ耳を愛する人たちにぶつけてしまった。本当にごめんなさい。
彼らは自由に恋愛するべきだと思う。彼らはルシェを差別しない心を作るから。
一説によるとルシェ女性の耳は本能的に可愛いと思わせるためにあの形をしているともいうしね。
「おーい、どうした?聞いてんのか?」
と、いけない。かなり心の迷宮に入っていたけど話の途中だった。
「聞いてますよ。人間の耳の話ですよね」
「んん、まあそうだが」
「残念ですけど僕は人間の耳をじっくり眺める機会なんてなかったので……」
「普通ないでしょうね」
そもそも僕には人間の女性と親しくなった覚えがない。
これまでの人生の中で親しかった人間の女性といえば、元旦那様のお母様くらいだ。
「そういうわけで、ちょっと僕にはよく分からないです」
「まあ、そいつもそうだなぁ……」
「というわけで、この話はこれで」
おっ侍さんの言うことにも興味はあったけど、実感も湧かなくちゃ仕方ない。
残念だがこの話は打ち切って、そろそろ仕事に戻ろう……
……そう思ったのだが、おっ侍さんの反応は斜め上をいっていた。
「よし、分かった!」
「はい?」
「要はあれだ、実物を連れてくりゃいいんだろ?それなら当てがあるからよ」
「いや、あの」
「そうとなりゃ早速いってくるぜ、ちょっと待ってろよ……」

そして。

てん。
次の日、おっ侍さんに呼ばれた僕とニコレットさんの前に、
小さな人間の女の子が僕の顔を見上げニコニコしながら立っていた。
女の子と言ったが……若い。若すぎる。はっきり言って幼女だ。
年の頃は七つか、八つか、いっちょまえにサムライの格好をして見上げている。
その後ろに座るおっ侍さんが、いつものようにお酒を手に言った。
「ほれ、触ってみろ」
「「……………」」
「おいなんだその犯罪者を見る目つきは」
「いや、だって……」
「一体どこからさらってきたんですか……?」
「今ならまだ間に合います、自首しましょう」
「俺様の娘だよ!!」
割と本気で心配する僕とニコレットさんにおっ侍さんが叫ぶ。
13ニギリオいいとこいちどはおいで 7/15:2009/12/10(木) 19:44:18 ID:BAEB/1J8
「ええぇっ!?娘さん!?」
「結婚してたんですか!?」
「おうよ。まあ俺様の嫁もそりゃあもう別嬪なんだがな、
 こいつもそれを受け継いでもう今から将来の姿が見えるようだろ?」
(親馬鹿だ……)
「まあ、で、若干歳は足りねーがこいつなら美人さで不足はねえだろ。
 さあ存分に人間の耳って奴を見ろ、ついでにこいつの可愛さを褒め称えてもいいぞ?」
(どちらかというと後半の方が本当に言いたいことなんじゃ……)
ふむ。言いたいことは分かった。
しかし、しかしだ。
「あの、ですね」
「ん?」
足元に目を落とす。
僕達三人の視線に晒されたおっ侍の娘さんだという女の子は、照れくさいのかもじもじと身体を揺らしていた。
「要はこれって、男性から見て女性の身体的な部分に感じる魅力の話ですよね」
「まあな」
「……こんな小さな子をそういう目で見るのは、さすがに犯罪だと思うんです」
「……」
「……」
「……」
「……」
「まあ、それはそれとしてだな」
「流した!?」
「とりあえずは観察しろや。わざわざ連れてきた俺様の面子もあるしよ」
「はあ……」
仕方なく、僕はもう一度女の子の顔を覗き込む。
「じゃあ……耳、さわってみてもいい?」
にぱっ。
純粋すぎる笑顔に心が折れかけるが、気を取り直して僕は手を伸ばした。
人差し指を伸ばし、その小さな耳の上端の部分にそっと触れる。
……むぅ。
肌とも骨とも違う硬さの耳に触れつつ、僕は指をその縁になぞらせて耳たぶへと移動させた。
女の子はくすぐったいのか、いやんいやんと体をひねる。

ニコレットさん助けてください、罪悪感で限界です。

必死に視線で訴えると、ニコレットさんもさすがにうろたえた。
「あの、もう十分じゃないかしら?
 こういうのは分からないものをすぐ分かるようにできるものでもないし」
「そうかぁ?んー、まあ仕方ねえな。半分娘を見せびらかしに来たようなもんだし、もういいか」
(やっぱりか!!)
なんにせよおっ侍さんが諦めたようなので僕は指を離す。
「もういいよ、ありがとう」
そして女の子に礼を言うと、女の子は再び僕を見上げてきゃらきゃらと笑った。
やれやれ……。
さて、そうとなればそろそろ仕事に戻った方がいいかもしれない。
そう思って僕は背中を伸ばした。
そろそろ戻った方が、というよりもっと早く戻ればよかった、と思ったのは
振り向いてその向こうのバレッタさんと目が合ってからだった。
「え?」
バレッタさんがこちらを見ている。
白い目で見ている。
耳がぴんと立ったまま、きゅーっと両の外側へそっぽを向いている。
聞く耳はあるが聞く気はねえ、という意思表示だ。
「あ、あ」
「あらま」
ニコレットさんの気の抜けた感嘆をおいて僕は急いで彼女に駆け寄った。
14ニギリオいいとこいちどはおいで 8/15:2009/12/10(木) 19:45:02 ID:BAEB/1J8
「えと、あの」
「変態」
「いやその」
「変態」
「だから、違」
「変態。変態変態変態変態変態」
「……勘弁してよ……」
そりゃあもう情けない声だったと思う。
見かねたニコレットさんがやってきてまたしても助け舟を出してくれた。
「こらバレッタ、そんなこと言わないの。コレル君にも事情があったんだから」
「事情……?」

「まあ、いきさつは分かったわ」
控え室のテーブルで腕を組んだ彼女が言う。
「分かったけど……さすがに大の男である同僚が小さな子供の耳を触ってニヤついてたら
 ひいても仕方ないと思うわ」
「ニヤついてないって!!罪悪感に押しつぶされそうだったよ……」
「そうかしら?」
「バレッタ、いじめないの。凄く困ってた顔してるでしょ」
「ま、ニコ姉がそう言うなら勘弁してやってもいいけど。
 ……それにしたって、少しいい思いしたとか思ってないの?
 幼女であることを差し引いても、人間の耳もいいな、とか」
そう言われれば。
犯罪的な気分ばかりで集中できなかったけど人間の耳はどうだっただろう。
……うん。
おっ侍さんの言いたいことがおぼろげに理解できる程度には把握しただろうか。
だが、だがしかし……
「……いや、やっぱりルシェの耳のほうが個人的にはいい」
「ほんとにぃ?」
「ほんとだって!そりゃおっ侍さんの言うように人間の耳にも魅力があるかもしれないけど、
 やっぱり個人的な好みにはかなわないというか、むしろ相手の耳が自分の好みになるというか……」
「しどろもどろで意味が分からないわよ、もっと分かりやすく!」
「え、ええと……そのつまり、どっちかというと君の耳が触りたいというか」

間。

「え?……………え!?」
「あ」
なんだかどさくさに紛れて凄いことを言ったような気がするのは気のせいだろうか。
「え、な、私?私の耳に触りたい、ってそんな……」
「いやその、あの」
「え、だ、だめよ。そんな、なんていうか、みだりに男の人に触らせたりしちゃいけないっていうか……」
「ああ……そうなの」
「え、あ……う、うん。
 ……そ、それに!例え問題ないとしても?誰でもいいからルシェの耳を触りたいって
 人には触らせてあげられないわよ。うん、そうよ」
「そう」
……『君の耳が触りたい』って言ったんだけどな。
でもまあ、そうだよね。
よく考えたら、特別親密ってわけでもないのに触らせてもらえるわけはない……か。
「……」
「……」
「……」
三人がそれぞれに食べ物、飲み物を口に運ぶ。
こうしてこの話は、なんとなく釈然としかねるものを残しつつも終わってしまった。
15ニギリオいいとこいちどはおいで 9/15:2009/12/10(木) 19:45:35 ID:BAEB/1J8
書き忘れていたが、このときは食事中だ。
なんだか食事中の描写ばかりだと思う人もいるかもしれないが
それは仕方ないことだと思う。
清掃作業の様子を延々描写したってつまらないだけだし(やるのは楽しいけどね)、
それに食事は人生の中でも重要な楽しみに数えられるものの一つだ。
仕事中はあまり私語をしてられないという事情もある。
「そういえば、箸の使い方も随分とうまくなったわね」
ニコレットさんが煮芋を口に運ぶバレッタさんを見て言った。
ここに来た頃はまったくといっていいほど箸の使えなかった彼女だが、
意地になって練習を続けた今では生まれ付きのアイゼン人と同じように箸を使う。
「まあね……すくうことは出来ないけどそれ以外の汎用性は高くて便利だし。
 こっちの食べ物にもけっこう慣れたわ」
「そっか、向こうとこっちじゃ食習慣も全然違うものね」
「ちなみに、向こうではどんな食べ物が好きだったのかな」
「そうねえ……」
彼女は頬杖を着き、記憶を反芻するかのようにうーんと唸った。
「好きなものなんて数え切れないくらいあるわ。
 肉、魚、野菜、向こうならではの料理も色々あるけど……
 ああでも、なんといっても私が一番好きなのはデヴォカレーね!
 子供の頃から好きで好きで、夕飯がデヴォカレーだと知ると躍り上がって喜んだわ」
「あ、名前だけは知ってるわ」
「とても辛いんだよね」
「そう。といっても、子供用に甘口にしたやつを食べてたけどね。
 それと同じデヴォカレーでも、砂漠の暑気を払うためのデヴォカレーと
 雪原で身体を温めるためのデヴォカレーでは辛さの質が違うの」
「へえ」
「私は北の帝国首都の生まれだから、小さい頃から食べて育った、
 私の好きなデヴォカレーは寒冷地方風のとろみのあるタイプね。
 熱々のルーを深皿によそって、パンをたっぷり浸してさらにその上にカレーの具やらルーを乗せて
 思いっきりかぶりつくともうこたえられないわ」
「熱弁ね」
少し熱の入った口調でデヴォカレーの思い出を語る彼女をニコレットさんが笑いながら見る。
彼女はちょっと気恥ずかしげに咳払いをして、ニコレットさんに問い返した。
「まあね。そういえば、ニコ姉はどう?こっちの食べ物でこれはって物があったら教えてよ」
「私?そうね、好きなものっていっても……白いご飯かしら。
 食べてるときはそんなにおいしいとか意識しないけど……いつまでも心に残るのよ」
「ふぅん。あんたは?」
質問の先が僕に代わる。
「うーん。僕もなんかニコレットさんと同じ答えになっちゃいそうな」
「つまんないわねー、他になんかないの?今まで生きてきた中でこれが一番おいしかった、ってのが」
「そうだな……」
僕は記憶をめぐらせる。
今まで食べた中で一番おいしかったもの。そもそもうちは使用人家業で、
しかもいっちゃなんだが旦那様の家もそうお金があったわけじゃないからそんなにいいものを食べていない。
しかしあえて言うなら、そうだ。
彼女の求める答えとは違うだろうが、僕にとって一番おいしいものといえばこれだ。
「お母さんの作ってくれたもの……かな」
今は亡き母が作ってくれた料理の味は、いまなお脳裏にしっかりと刻まれている。
これからも僕はあの味を忘れないだろうし、思い出として大事にしていくだろう。
「ふーん……」
案の定彼女はあまり面白くなさそうに生返事をして僕を見た。
「まあ、大事な思い出だってのは分かるわ?別におかしいことでも笑うことでもない。でも」
「でも?」
「マザコンよね」
「ぐっ!!」
刺さった。心に刺さった。
バレッタさん、それを言うのは反則というものではないでしょうか。
ニコレットさんがやれやれといった風に嗜めた。
「こらバレッタ、そんなこと言うもんじゃないわ」
「ニコレットさん」
16ニギリオいいとこいちどはおいで 10/15:2009/12/10(木) 19:46:05 ID:BAEB/1J8
「だって……」
「いいバレッタ、アイゼンの男はね、多かれ少なかれ皆マザコンなのよ」
「ぶっ!!」
……と思ったらいきなり何を言い出すんだこの人は。
バレッタさんもさすがに呆気に取られた、という表情をしている。
「え、そう……なの?」
「そうよ。ねえバレッタ、アイゼンは男尊女卑の国みたいに言われてるわよね?」
「う、うん。家事を始め何から何まで女の人にやらせるって」
「そうね。でもそれって、逆に言うと何もかも女の人に依存してるってことだと思わない?
 まるでお母さんに世話をしてもらう赤ちゃんみたいに」
「はあ……」
「アイゼンの男は皆、大人になっても多かれ少なかれ子供っぽさを残しているものなの。
 どんなに突っ張っていてもお母さんに対してはある種の弱さがある。
 それでいつも偉そうにしてるけどお母さんには逆らえない、って人がいるのね。
 アイゼンには『男の子は母親に似た女の子を好きになる』ってことわざがあるくらいなのよ」
「……そうなんだ」
そう言いながらちらりとバレッタさんが視線をよこしてくるのが辛い。
まあ、『男の子は母親に似た女の子を好きになる』というのは確かによく聞く話だ。
武士道の死を美徳とする文化には深層心理の胎内回帰願望が関係しているって本も読んだことがあるし、
冷静に考えればニコレットさんの言うこともいい加減ではない。
ちなみにその本によると、そうして男は無意識に母親に似た女の人を選ぶわけだが、
多少にせよお嫁さんの中に母親らしさを求めてるわけだから、接し方にも『甘え』がある。
そのため結婚してしばらくすると女性は男性の扱い方を覚えてあしらえるようになり、
子供が出来て本当の母親になるとますます女性は強くなる。
家の外では亭主関白、家の中ではカカア天下。それがアイゼンの男というものだ……らしい。
「ふぅん……そう。
 ……………。
 ところで、あんたのお母さんはどんな人だった?」
「え?」
いけない、話の途中で考え事をしてたせいで反応が遅れた。
お母さんがどんな人だったか、ときた。
急いで記憶を引っ張り出し、思い出すままに答える。
「そうだな……どっちかというと大人しい感じで優しくて……
 うーん……
 ああ、バレッタさんと正反対って言ったら分かりやすいかな?」

「……あ っ そ」

……凄まじく冷たい殺意をぶつけられた。
一体何が悪かったんだろうか。
乙女心とは難しい。

「え、ええと、話を戻すわよ?
 滅多に食べられないものよね……そうだ、鯨なんてどうかしら」
「クジラ?」
空気を戻そうとしたのか、ニコレットさんが鯨の話題を出した。
とりあえず機嫌の悪いのを引きずらなかったらしい彼女が反応する。
「そう、鯨。知ってるでしょ?なかなか食べる機会もないけど、
 たまに私達でも食べられるわ。あ、それとも、バレッタは鯨食べられない?」
「ううん。ネバンでもクジラは食べるわよ」
「そうなの?」
「北の海では昔からクジラ漁が続いてるの。……アイゼンでもクジラは獲るようだけど、
 極寒の海でクジラを追いかけるネバンの漁の過酷さとは比べ物にならないわね」
「そうかな。アイゼンの鯨漁では船から鯨に飛び移ったりするし、過酷さでは変わらないと思うけど」
「む」
僕はただ単純にそう思っただけだったのだが、どうやら彼女は対抗心が頭をもたげたらしかった。
「それは海に落ちても大丈夫なくらいの暖かさだからでしょ?
 こっちじゃ海に落っこちでもしたら高確率で凍死よ」
17ニギリオいいとこいちどはおいで 11/15:2009/12/10(木) 19:46:38 ID:BAEB/1J8
「凍死しなくたって海に落ちて網や鯨の泳ぐのに巻き込まれたら十分死ぬかもしれないじゃないか。
 ……と、いうか」
こうして彼女と言い合いをするのはもう何度目だろうかと僕は思った。
本当はこんなことで言い争いなんてしたくないのに、どうしても売り言葉に買い言葉を返してしまう。
こんな不毛な話をしてる間に、もっと、彼女と話したいことはたくさんあるのに。
「……いい加減、こういうのやめない?」
「え?」
「ネバンプレスの人たちが勇敢なのはもう十分知ってるよ。
 もうこんなことで言い合いしたってなんにもならないじゃない」
「なん……、ネバンの民の私がネバンの自慢をしちゃいけないての?」
「そうじゃないよ。ただ、アイゼンに対抗してネバンプレスの事を出すのはやめて欲しいってだけ」
「……、う……」
「別にいいでしょ?僕も気をつけるから」
僕はこれで言い争いの機会が減らせるに違いないと思った。
言い合いが少なくなれば、どちらにとってもきっといいことだろうと。
しかし、帰ってきたのは意外な反応だった。
「分かってる……分かってるわよそんなこと……」
「……?」
「分かってるけど、でも」
「あの」
「でも、そう簡単にいかないのよ……」
「バレッタさん?」
「……ちょっと待って、……考える時間が必要だわ……」
それだけ言い残し、彼女はテーブルを立って部屋を出て行ってしまう。
僕は事情の理解が追いつかずに、混乱するしかなかった。

「また」
その声に、ぼくは悩ましげな表情のニコレットさんを見上げた。
「国のことになると、どうしてもこうなるのね、あなたたち」
「すいません……」
「謝ることじゃないわ。でも、ね、よく考えて欲しいの」
そう言ってニコレットさんは僕と目線を合わせた。
「コレル君は、ネバンプレスもアイゼンと方向性は違うけど尊重できる国だと思っているのよね?
 なんでもアイゼンが一番だと思ってるわけでもない。
 でも、それなのにどうしてこういうことになると意地を張っちゃうのかしら」
「それは……
 ネバンプレスの自慢をされると、つい、反発しちゃうんです。
 『でも、アイゼンも劣ってるわけじゃないよ』って。普段は自分がアイゼン人であることなんて
 意識してないのに、他の国の人と話をするとつい……アイデンティティ、って言うんでしょうか」
そう、アイデンティティだ。
アイデンティティは優劣や、合理的かどうかといった価値基準とは相容れない。
自分がそれに属しているというだけでプライドの対象となるのだ。
普段アイゼン人であることをなんとも思っていなくても、
一歩国を出ればそれは自分というものを定義づける大切な要素になる。
「だからつい、反発して必要以上にアイゼンの事を誇るような態度になっちゃうんだと……思います」
「うん。そうよね。まったくその通りだと思うわ。
 それなら、バレッタも同じだって事も、分かって上げられるんじゃないかしら」
「っ……?」
18ニギリオいいとこいちどはおいで 12/15:2009/12/10(木) 19:47:09 ID:BAEB/1J8
「きっと辛いと思うの。よその国に住んで、よその国の食べ物を食べて、よその国の事を聞かされて。
 そうやっていると国のアイデンティティが侵食されて、自分が何人なのかが揺らぐわ。
 そうならないために、事あるごとに自分の国のことを口に出さないといられないんじゃないかしら。
 私はそう思うの」
「あ……」
それまで気付かなかった事実を指摘されて、僕は少なからぬショックを受けた。
彼女がここへ始めてきたときに彼女がその振る舞いほどは強くないと知っていたはずなのに、
僕は深く考えようともせず彼女がすぐネバンプレスの話をしだすのを疎んじてさえいたのだ。
「また……どうしよう……」
「分かってあげればいいのよ。あなたの言いたいことをちゃんと受け止めてる、それだけでいいの」
「……………」
「まあ、そう言おうにも声をかけづらいなら何か贈り物でもしたら?
 お詫びの気持ちに貢ぎ物を添えるのは世界共通の文化よ」
「貢ぎ物って……でも、そうですね。なにか探してみます」
「頑張りなさい。私にアドバイスできるのはここまでだから」

――――――――――――――――――――

さて、なにか探すとは言ったが、プレゼントしたいものはもう決まっていた。
デヴォカレー。子供の頃から親しんだ味が大人になってからも心の支えになることは自分の身で知っている。
それを、彼女にも送りたい。
しかし。
「作ってあげたいのは山々なんだけど……作り方がわからないと、さすがにねえ」
「そうですか……」
相談しているのはこの宿の調理業務を担当する調理師さんの一人だ。
調理師の中で唯一のルシェであるこの人はお客さん用の料理はもちろん、
僕達の食事をも材料費が安いなりに少しでも栄養があっておいしいものを食べさせようと努力してくれている。
そんな人柄に期待してデヴォカレーを作れるか相談しにいったのだが、
答えとしてはレシピも無しに外国の料理を作るのは厳しいということだった。
「売店のおじさんに聞いてみたらどうかしら?
 いろいろあちこちから入荷してるから、なにか分かるかも」
「ああ、そっか。ありがとうございます!」
ヒントを貰った僕はその足で受付カウンターの横にある売店『風光明媚』へと向かう。
カウンターの裏から入ると、目的の人物はすぐ見つかった。
「あの、すいません」
「ん、何か用かい?」
売店を一人で担当するこの人は、壮年男性とは思えない気さくな性格が特徴だ。
僕はつい先程調理師さんと相談して、ネバンプレス関係で何か知識がないか聞きに来たことを説明した。
「あー、残念だけどネバンプレスからは商品は来てないからなぁ。
 ごめんね、分からないよ」
「むう……」
早くも計画が頓挫してしまいそうだ。
こうなったらこの宿に来るハントマンに聞こうか?
でもここにはネバンプレスからのお客さんなんてほとんど来ないし……
「カレー、ねえ。少し昔には、外の国の料理もいろいろ本で紹介されたりしてたんだけど」
「え?」
「いろいろよその国と交流して珍しい文化に触れよう、って風潮があったころの話だよ。
 あの頃は普通の料理書にも他の国の料理の作り方が載ってて、特にカレーなんかは人気だったんだけど。
 今は他の国なんて興味ないって風潮が一般的で当時の本なんてそうないからなあ」
「ちょっ……それだ!」
「うん?」
「ありがとうございます、助かりました!」
「え、おーい?」
思いもよらないヒントをうけて、僕は走り出した。

なんてことだろう、灯台下暗しとはこのことだ。
僕は従業員が寝起きする宿舎に取って返し、自分の数少ない荷物を漁った。
取り出すのは一冊の本、『現代風家庭料理百選』。
もちろんここに書かれている『現代』はこの現代じゃない、数十年前の現代だ。
19ニギリオいいとこいちどはおいで 13/15:2009/12/10(木) 19:47:42 ID:BAEB/1J8
元々は元旦那様の家を出るときにそれまで働いた褒章代わりにガメ、いや頂いてきたもので
ここに来てからは自分で料理などしないので無用の長物と化していたが、
今はこの本に重要な価値がある。
「あった……『南蛮風辛子汁掛飯』」
いわゆるカレーのことだ。これさえあれば、材料と作り方がわかる!
その材料欄を読み進めるうち、僕は片眉を上げた。
「んん?これって……」
ウコン……洋名ターメリック。桂皮……洋名シナモン。
「色々スパイスが必要だって聞いてたけど……ほとんど漢方薬じゃないか。これなら何とか……
 ……
 ……なんだこりゃ?」
そういえば、僕が作りたいのはただのカレーではなくデヴォカレーだった。
そのために通常のカレーの材料に加えなければいけない特別な材料。
それに僕は、思いっきり首をかしげた。

――――――――――――――――――――

いつの間にか控え室に戻ってきていてテーブルにうつぶせていた彼女は、
僕の足音を聞くとゆっくりと体を起こした。
「……なんだ、コレルか」
「なんだとはひどいな」
「悪いけどもうしばらくほっといて。今気分がよくないの」
「そっか。むむ……この匂いに反応すると思ったんだけど」
「匂い?そうね……さっきからネバンの事を思い出しすぎて、幻覚の匂いが……え?」
「幻覚じゃないと思うよ。ほら」
僕の掲げた小さな鍋を見て、彼女は気だるげな雰囲気を吹き飛ばして僕を見た。
「あんた、それ」
「バレッタさんの話してたデヴォカレー。……になってるか不安だけどね。
 ……アイゼンじゃ、ネバン人らしい生活はあまり出来ないよね。
 でも、せめて、ネバンプレスの食べ物くらいできないかな……って思って」
「っ……………」
彼女の前に深皿を置き、その中へ試作デヴォカレーを注いだ。残念ながらパンはない。
「これ、どうやって……」
「いろいろあって。いいから食べてみて」
「……」
そう言ってスプーンを渡すと、彼女はしばらく逡巡して、恐る恐るスプーンをカレーの中に沈めた。
そしてそれを、ゆっくりと口の中に運ぶ。
僕は緊張してそれを見つめていた。
彼女の口が動き、そして、口に含んだカレーを嚥下する。
やがて、彼女はスプーンを持った手をテーブルに置いた。
うつむいたまま、一言だけ呟く。
「……ネバンで食べたのとは、味が違うわ」
「……」
僕はやるせなさに肩を落とす。
そんな僕をよそに、彼女がもう一度口を開いた。
「でも……間違いなくデヴォカレーだわ……」
「え」
彼女はそれ以上何も返してくれなかった。
ただ、黙々とスプーンを口に運ぶ姿に、自然と顔から力が抜ける。
「よかった」
「……。……それにしても、本当によくこっちでデヴォカレーが出来たわ」
「まあね……色々大変だったよ」
本当に大変だった。
あれこれ頼み込んでスパイスになる漢方薬を分けてもらうのはもちろん、デヴォカレーに必要な二つの材料。
『つややかゼリー』と『貴重な角』。魔物の身体の一部なのだ。
ゼリーの方はまだ何とかなったが、角の持ち主は西大陸にしかいないため同種の角で代用することになる。
そのために僕は、この半島に生息する巨大な草食獣の角をへし折って逃げてくるという
これまでの人生でも最大級に命懸けのミッションを遂行するハメになったのだ。
「ま……でも。いいよこのくらい、君のためなら」
「……………」
20ニギリオいいとこいちどはおいで 14/15:2009/12/10(木) 19:48:13 ID:BAEB/1J8
返事はなく、ただ食器の立てる音だけが耳に入る。
そしてしばらくして、彼女の手が止まった。
「コレル」
「何?」
「耳……触る?」
たぶんこのとき僕は目をぱちくりさせるというか、意表を突かれた表情をしたと思う。
突然の申し立てだったんだもの。
「いいの?」
「私、借りは作らない主義なの。
 あんたにはただ当然のように、同僚に気を使っただけかもしれないけど、
 私にとってはこれは、大きな借りだわ。だから……私の耳でよければ、触っていいわ」
……ただの同僚のために、あんな苦労したりはしないんだけどな。
でも、まあ、今回はいいや。
それより彼女が耳を触らせてくれることのほうが重要だから。
「じゃあ……触るよ?」
僕はありがたく彼女の耳に触れさせてもらうことにした。
いすに座る彼女の耳にどきどきしながら手を近づける。
そしてそっと、その指が耳に触れた瞬間。
ぱしっ。
超反応で動いた耳が手をはたく。
「……」
「……今のは反射的に動いたのであって悪意があるわけじゃないわ」
「分かってる」
今度は後ろの根元から包み込むように触る。
またも手の中で耳が跳ねたが、今度はどうやら手の中に納まってくれた。
「……」
犬や猫とは違う、ふかふかとした手触り。
しばらく手のひらで全体の感触を味わった後、そっとその耳を撫でてみた。
毛並みに沿って数回手のひらで撫で上げ、次に指の腹で撫でる。
個人差はあるのだろうがふかふかさの割に滑らかな指触りのする柔らかい毛の上を滑り、
指が先端のほうに触れるとまたもぴくりと耳が跳ねた。
「もう少しゆっくり移動させて、こそばゆいわ」
「ごめん」
より慎重に触れつつ、今度は縁のほうへ触れる。
その状態で全体を包むようにすれば、手のひら全体に暖かくかすかに震える耳を感じつつ
指の先に柔らかな耳毛の感触を感じることが出来た。
これ以上なんと言えばいいのか、幸せな感触を楽しみつつ僕は考える。
いや、考える前にすでに行動に起こしていたと言った方が正しかった。
「……ん」
「!?」
いや、ただ僕は、その幸せな感触に対して本能的な愛情表現をしようと思っただけなんだよ?
そしてそれを深く考えることなくそのまま実行しただけで。
抱きしめた子猫には頬擦りをしたくなる。
顔を近づけるのは生物の基本的な愛情表現だからだ。
僕もただ、耳の間に顔を埋めるように彼女に自分の頭を預けたに過ぎない。
……ただ、その行動とセットで無意識に彼女の首を後ろから抱いてしまったというだけで。
「……きゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」
肘打ち。
肩打ち。
半月蹴り。
彼女が悲鳴とともに反射的に繰り出した三段コンボを見事に喰らい、
僕は後ろにたたらを踏んで壁に後頭部を打ち付けた。
「ぁいったーー……!」
「いきなり何するのよこのバカ!スケベ!変態!」
「ご、ごめん……」
「まったく……!もう、私はカレーの残りを片付けるから、あとは勝手に触りなさい」
「へ?まだ触っても……いいの?」
「別にあんたがもういいってんならいいわよ。あんたが満足するだけ触ればいいって話なんだから」
21ニギリオいいとこいちどはおいで 15/15:2009/12/10(木) 19:48:37 ID:BAEB/1J8
……いやに寛大だ。
ともかく僕は彼女の厚意に甘えて、再び耳を触り始めた。
ただしさすがに懲りたので、撫でる触り方中心で。

「…………」
そんな風にし始めて少したつ内、やがて彼女がため息を漏らした。
「どうしたの?やっぱり口に合わなかった?」
「違う……ネバンの事を思い出してたのよ」
そう気だるげに彼女は言った。
「ねえ」
「何よ」
「もしよかったら……聞かせてくれないかな。思い出していたこと」
「………構わない、わ」
少しだけ哀しげだった彼女は、きっと誰かに聞いて欲しいと思っていたはずだ。
遠くの何かを見るように、彼女はとつとつと語り始める。
「……ネバンの冬は寒いわ。
 特に雲に空が覆われた日なんか、日が暮れて夜になると心まで凍るくらいに。
 そんな日には暖炉に薪を一杯くべて、暖かい部屋で、皆で暖かいデヴォカレーを食べるの……」
「うん」
「外は凍るように寒くても、家の中で家族と一緒に食事をしていると心の芯まで暖まった。
 帰りを急ぐ日も、窓から漏れる明かりを見るとほっとして」
「うん」
「ずっとそうだったのよ」
「うん」
「ずっと、そうだった。
 それが当たり前だと思って、ずっと。
 子供の頃から、ずっと……」
不意に、うつむいたままの彼女の声が震えた。
いつの間にかスプーンは止まり、手がきつく握り締められて肩が強張る。
「うん……」
「……、ごめん、お腹一杯だから、少し、寝るわ」
切れ切れにそれだけ言って、彼女はその顔を隠すようにテーブルに突っ伏した。
時折震える背中と、聞こえてくる湿っぽい音に気付かない振りをしたまま僕はその頭を撫でる。
いつの間にか僕は耳を触っていたことを忘れ、ひたすら彼女の髪を撫で続けていた。
長い沈黙。
切れ切れに続くすすり泣きの中、彼女の呟いた言葉がかすかに耳に入った。
「……お姉ちゃん……」
僕はもう何も言うことができず、ただ、いつまでも彼女の頭を撫で続けた。
いつしか湯気の経たなくなった深皿がすっかり冷えてしまい、
やがて日が傾き始めるまで、いつまでも、いつまでも。
22 ◆Y62mw7fowc :2009/12/10(木) 19:49:28 ID:BAEB/1J8
投下終了。ほんとにもう少し短くまとめる才能がつかないものでしょうか。
ところでこのスレはドラゴンの擬人化には寛容な方が多いみたいなので
これとは別に次あたり書いて見たいです……
後個人的なことですが、スピード取締りの覆面パトは原付を優先して狙いますので気をつけてください。
では本当に>>1さんスレ立て乙でした!ノシ
23名無しさん@ピンキー:2009/12/11(金) 19:55:43 ID:5gGNMYI5
GJ!

耳にこんなにドキドキさせられるとは…
たかが耳
されど耳

長くてもいいと思います
24名無しさん@ピンキー:2009/12/15(火) 02:09:44 ID:NyEUTweJ
「どうせドラゴンに滅ぼされるんならやりたいことやってやるぜ!!」

と決意し世界を巡り気に入った女を襲って種付けしては逃亡する
最悪男の壮大鬼畜ストーリーが読みたい!!

エラン→エメラダ→ファロ→バントロワ→セティス→シャンドラ→エメル&アイテル

の流れで
25名無しさん@ピンキー:2009/12/15(火) 17:37:29 ID:wYICBJKO
それ最初の人が難易度高すぎー
26名無しさん@ピンキー:2009/12/18(金) 15:35:49 ID:vOQQ9/nZ
GJ!!

良いよね、耳…
27名無しさん@ピンキー:2009/12/24(木) 09:04:28 ID:0roWZ/f6
過疎ってるな〜やっぱ世界樹3の影響だろうか

上げとく
28名無しさん@ピンキー:2009/12/24(木) 10:03:39 ID:2JlPW5Bm
こちらもそろそろ2を発表しないと・・・
29名無しさん@ピンキー:2009/12/26(土) 15:41:08 ID:HQ7gHhkz
7TH DRAGON -REACT-

あれ、なんだか格ゲーっぽいぞ…
30名無しさん@ピンキー:2009/12/28(月) 01:36:13 ID:GDJnJyuj
ん、ナナドラのキャラで格ゲーとかやってみたいかも
当然二頭身な
31名無しさん@ピンキー:2009/12/28(月) 01:46:56 ID:pA/3Yp2H
負けた方のお仕置きエロCGが出るんですね
二頭身の
32名無しさん@ピンキー:2009/12/28(月) 13:19:09 ID:LbzBu5KN
上級者向けすぎる…
33名無しさん@ピンキー:2010/01/07(木) 08:14:43 ID:0D8vRLlJ
保守
34名無しさん@ピンキー:2010/01/24(日) 21:48:12 ID:mjEX1ilq
保守
ところでこのスレ未完結作品どのくらいある?
それらは期待してもいいのかな……。
もちろん急がなくていいし、書く予定があるよ、ってだけでいいんだけど
35名無しさん@ピンキー:2010/01/24(日) 22:19:43 ID:FI31NNrd
俺達はあの人達を待つしか出来ないんだ
36 ◆Y62mw7fowc :2010/01/31(日) 01:31:35 ID:3Q54Peaq
自分も待ちます。彼女が鈴を付けてるワケ、空腹ルシェの物語、レハナザ珍道中に真竜様の大冒険 etc……
クレクレ厨は嫌われるそうなのでこんな駄文でよければ置いていきますね。

投下します。
・以前投下した『ある主従』の続き(仮保管庫様に保管中?)
・ナイト♀×プリンセス『♂』
・つまり女装(notショタ)
・最大注意事項、ドラゴン擬人化

姫(紫):お家の事情でマレアイアに逃れ、性別を偽って育てられた青年。
ナイト(ツインテ):姫の家に仕える一家の娘。姫に対する感情は複雑。

NGな方は『邂逅』をワードにしてくださいませ。
37邂逅 1/20:2010/01/31(日) 01:34:11 ID:3Q54Peaq
――その日、その場所で、それはするりと生まれ落ちた。

見渡す限りの紅い景色、一面に咲き誇るフロワロの草原。
燐光の中、結晶質のゆりかごから解き放たれた、形を持たないそれは思考する。
……覚えているのは、温もりだった。
自分が何なのか、何故生まれたのかは魂に刻まれた記憶が知っていた。
自分がどんな生き物なのかも、姿を定め、環境に合わせて適合することも。
やがてそれは、覚えている自らの望みのために、それに相応しい姿を求めて形を変え始めた。

――――――――――――――――――――
38邂逅 2/20:2010/01/31(日) 01:34:59 ID:3Q54Peaq
ナイトは鏡を覗き込んだ。
「……」
バスタブに寄りかかるように、それとともに裸の足に揺らされた湯がちゃぷんと音を立てる。
すぐに鏡が湯気で曇っていることにナイトは気付き、
彼女は手でその表面を拭って、水滴の伝うそれをもう一度覗き込んだ。
「……………」
黙り込み、注意深く鏡を見ることしばし。
じっくりと観察した結果、ナイトはそこに映る顔を生意気そうな顔だと評価した。
わがままで、傲慢で、何かあるとすぐに口答えをしそうな顔だ。
もちろんそれはそんな印象を受けるというだけで、実際の人格とは関係ないとナイトは思った。
自分はわがままでもなければ傲慢でもないし、どちらかといえば真面目で公序良俗に厚い人間だ。
口答えだって……するけどあれはむしろ自分の主が悪いのだ。
しない、と思いかけてさすがに無理があると思ったナイトはそう思いなおした。
「そうよね、無茶なことを言うのは大体姫のほうだし」
「私がなんだって?」
「っ」
ぎくりと身を竦ませる後ろで、カーテンの間から流れるような長髪を備えた男が顔を出す。
肩越しに振り返るナイトにその人物はうん?と首を傾げると、軽く微笑んでカーテンの内側へ入ってきた。
「お邪魔するわよ」
そう言ってバスタブに足を踏み入れた彼に、ナイトは躊躇いがちに声を返す。
「あの……なんでしょうか。私まだ……」
「んー、たまにはナイトの背中を流してみようと思って」
「わぷ……いいです、自分でやりますから!」
先程『姫』と呼ばれた、丁寧な女性のような言葉を紡ぐ彼はまったく気にせずにかけてある桶を取った。
すくったお湯をゆっくりとナイトの頭にかけながら、彼は石鹸に手を伸ばす。
ナイトは頭を洗うのが嫌いな子供がやるように頭を振り、先んじてそれを奪った。
「あら、目上の人間の親切は素直に受け取っておく物だと思うけど」
「結構です、余計なお世話ですから。というか出て行ってください!」
「そういうつれないことは言わないの」
彼の左手がナイトの胴を抱き、右手でそっと石鹸を奪い取る。
そのまま手で石鹸を泡立て始めた彼に、ナイトは眉を曇らせ慌てて自らの胸を抱いた。
「さて」
「う……」
泡だらけになった手がナイトの背中に触れる。
「〜……♪」
「……」
泡を塗りたくられる感触に、ナイトはうつむいたまま無言で耐える。
沈黙したままじっと耐える様子を背中越しに感じ、彼は悪戯げに笑った。
その指がおもむろに背筋に添えられる。
「ひゃあっ!?」
彼にしか分からない線を、彼にしか分からない力加減で指がなぞる。
悲鳴を上げて後ろを睨むナイトに彼は悪気なく笑った。
「なっ、何を……!」
「冗談、そんなに怒らないの。……もっとも」
「わ」
「そんなに冗談でもないのだけど」
抱きすくめるように両腕がナイトの腰に回り、押された彼女は慌てて浴室の壁に両手をついた。
しまった、と思ったときにはもう遅く、ガードの解けた身体の前面へと彼の手が伸びる。
「きゃ……!」
「むう、なかなか育たないわよね……」
「なにが、ですか……やめ」
不躾な手を払おうとしても、まるで気にしないようにそれは柔らかな肌を弄んだ。
身体の前面にも泡を塗りたくるようにしながら、滑る手が控えめな胸を覆って柔らかく指を食い込ませる。
乱暴に振り払うことも出来ず、ナイトは声を押し殺して耐えるしかなかった。
39邂逅 3/20:2010/01/31(日) 01:35:45 ID:3Q54Peaq
「ところで……」
「……は、はい……?」
「ねえ……最近ご無沙汰だと思わない?」
「何……ちょ、いやだから待って!」
ようやく手の侵攻が一旦停止し、ナイトは息をつきながら振り返る。
「わ……分かりましたから!その、今晩にでもお相手します。だから今は……」
「それとね……」
「ひゃ……だから、手を回さないで……」
「思ったんだけど、ナイトとするときはいつもこれは義理だといわんばかりよね?」
「それは……義務上ですから」
「あら」
彼はちょっと首を傾げると、ナイトの身体を包むようにもう一度深く抱きしめなおして
耳元に口を寄せた。
「前にも言わなかったかしら。私は貴女が思ってるよりずっと貴女が好きなのよ」
「っ……どうして欲しい、と言うんですか」
「別に?ただたまには少し違う刺激も欲しいと思って……たとえば」
「?」
「そうね、たまには後ろからしてもいい?」
「なっ……!」
彼が思っていたよりも、大分激しくナイトは反応した。
「いっ……嫌です!恥ずかしいじゃないですか、そんな……!!」
「……今冷静に考え直してみたけど、そこまで嫌がられるような要素が今提案した
 ことの中に含まれていたという事実が認識できないわ……」
彼は若干勢いを削がれた様子で真剣に頭を抑えた。
そんな彼に構わず、ナイトは全身で嫌否を訴えながら拒絶を表明する。
「と……とにかく!嫌です、それだけは嫌ですからね」
「今時正常位以外嫌とか、化石扱いだと思うのだけど」
「何でも、です!」
「はぁ……」
ため息が一つ。
「仕方ないわ」
「……?」
様子の変わった彼に、ナイトは首をかしげてその顔を見た。
「身体に説得するしかないわね」
「なっ、ちょっ!」
バスルームに再び二人が揉み合ってお湯の跳ねる音が響く。
ただし、今度はすぐにそれは止んだ。
足の間に彼の男性にしては細く長い指が滑り込む感触を受け、ナイトは硬直して暴れるのを止める。
「っ……」
「ナイトの弱いところはここと」
「ぁ」
「ここと」
「ぁあっ」
「ここ」
「ふぁ……!」
「それにやったことないけどこんなこともしちゃおうかしら」
「ひゃあっああっ!」
普段ならやすやすとさせないことさえ、石鹸のぬめりによってあっさりと許してしまう。
心と身体の準備が出来ていない状態でのそれは刺激が強すぎ、
されるがまま、彼が弄ぶまま面白いようにナイトの身体は跳ね踊った。
「さて……どうせだし、ナイトには少し男の生理を知ってもらったほうがいいかしら」
「は……は……」
手を離せばすぐにでもへたり込んでしまいそうなナイトに、
その頭を覆いこみながら彼が低くささやく。
「何、です」
「こういうときも、男は止まれなくなるものよ」
「な……!?」
40邂逅 4/20:2010/01/31(日) 01:36:18 ID:3Q54Peaq
その声に静かな情欲を感じてナイトは顔を跳ね上げた。
ゆっくりと身体が引き起こされ、支えられたまま足が開かされる。
「こ、こんなところで、やめてください!」
返ってきたのはいっそ優しげさえ感じる笑顔だった。
「やめない」
「っっ―――………!!」



「……………
 ……しまった」
息を呑んで身を竦ませたが、それは来ない。
恐々と見上げると、そこには憮然とした表情の彼がいた。
「今日はお昼からマレアイアの連絡係の人と会うんだった」
「な……」
呆気に取られるナイトの顔が、次第にいつもの表情に戻ってくる。
「そ……それならこんな事をしている場合ではないでしょう!?
 早く準備をして下さい!」
「や……でもまだ時間は少しあるし」
「いいから、早く、出て行ってくださいっ!!」
決然と、容赦なくナイトは彼をバスルームから押し出した。
締め出された彼は苦笑いし、やれやれと肩をすくめて部屋に戻っていく。
バスタブの中で、ナイトは再び一人になった。
「……もう」

ナイトが出て来たとき、彼はすでにほぼ全ての準備を終えていた。
つやめく髪を三つ編みにし、派手さはないが上品なドレスをまとう。
中性的な顔立ちに凛とした雰囲気を漂わせた、『姫』がそこにいた。
「さて、どう?変なところはない?」
「はい……髪型、少しお変えになったんですか」
「いつまでも前髪ぱっつんで勝負できる歳じゃないもの。
 少し両脇の髪を伸ばしてみたの。
 これでもうしばらく女で通せると思うんだけど、どう?」
「前のままでも十分女性で通せましたけど……少し落ち着いて見えるようになりました」
「うん、じゃこれでいくわ。……いつの日かこの格好をしなくても
 いいようになったとき、女言葉が取れなそうで怖いわね」
「たぶん、もう手遅れです」
「たは。まあ、行って来るわ」
「お気をつけて、行ってらっしゃいませ」

これが、彼女の主だった。

――――――――――――――――――――
41邂逅 5/20:2010/01/31(日) 01:37:01 ID:3Q54Peaq
「さて、姫が戻ってくる前に終わればいいけど」
鎧を身にまとったナイトは、眼前に広がるフロワロの海を眺めて呟いた。
曲がりなりにもハントマンとして活動する以上、カザンとの連絡もあったほうがいい。
となれば情報などと引き換えに、旅の合間にカザンの推し進める
フロワロ除去活動に参加するのも自然な成り行きというものだった。
「フロワロが広がるのを止めるだけでいい、とか言うけどそれだけで十分大変よね」
とりとめのないことをぼやきながら、ナイトは自らの主に思いを馳せた。
(それにしても、一時期大人しくなったと思ったけど
 最近またわがままが過ぎるようになったのよね……特に夜の方)
「はぁ。もう必要ないと思ったけど、お守り捨てるんじゃなかったかなあ……。
 物騒なものだったけど、私にはまだ相談出来るものが必要なんだ」
ナイトはぼやいた。

ナイトは、自らの主のことが嫌いではなかった。
少なくとも自分の事を大事にしてくれるし、なんだかんだ言って長い付き合いだ。
もちろん、色々と癖があって困ったことのある主人ではあるけれど。
基本的にナイトの意見など聞きやしないし、頻繁に性的な交渉を求めてくる。
……ナイトのことが好きだというが、さすがにそれは冗談だろう。彼女はそう思った。
おとぎ話では主従を越えた愛情は賛美されるが、
もし本当に支配する方が支配されるほうをを愛したとすればそれは愚か者でしかないのだし。
お嫁にしようというのも、きっと家督を継ぐのに失敗して何もかも失ったときには
お互い一人で生きるのも厳しいし結婚相手にしてもいいという程度でしかないだろう。
だから、やたらと好きだとか愛してるだとかいう言葉を口にしないで欲しい。
「……もし、万一姫が本気でそんなことを言っていたんだとしたら」
そのときには彼女ははっきりと姫の勘違いを正してやらなければならない。
彼女は姫の役に立つためにいる。恋人ごっこの相手をするためではないのだ。
(……それに……)
ナイトはこれまでを振り返る。
広く冷たい世に放り出され、ナイトは『騎士』であることだけを心の支えに生きてきた。
味方がいない、姫との間にも心の壁が出来ていて何を考えているか分からない、
そんな状態の時期に、彼女は純潔を心の伴わない体の繋がりに奉じた。
自分は従者で姫は主なのだから好きにすればいいのだ。
そんな自暴自棄のような心のまま結んだ体の関係はずっと続き、
好きだとか嫌いだとか、そんな事を考えるようになる前に
今ではもうなにもかもあけっぴらげになりすぎていて。
「……いまさら、そんなふうになんて考えられないわよ」
知らず知らずのうちに口から言葉がこぼれた。
「そう、考えられない……」
足元へ伏した目は何も見ていない。
ナイトが一人でこぼした言葉は、その内容とは裏腹に小さく、そして沈んでいた。

しばらくそうしていただろうか、不意にナイトは我に返る。

「……さ、はやく片付けなきゃ」
ここにきた理由を思い出した彼女は、それまで考えていたことを
全て忘れ去ろうとするように事務的な仕草でフロワロの中へと踏み込んでいった。

――――――――――――――――――――
42邂逅 6/20:2010/01/31(日) 01:37:59 ID:3Q54Peaq
「……何かに、見られてるような気がする」
フロワロの中にきれいに道をつけていくナイトは、何度目かの気配に後ろを振り返った。
目に入るのはひたすら紅くどこまでも広がるフロワロの海。
人の腰より上ほどまでに成長したフロワロが地面を覆い尽くしている。
「……………」
ナイトは顔を戻し再び歩き始めた。
フロワロを踏んでゆきながら、前を見たまま耳に神経を集中させる。
……鎧の擦れ合う音や、足元でフロワロが散る音に混じって聞こえるのは、
追跡者の足音か、それとも風がフロワロを揺らす音だろうか。
ナイトは再び立ち止まった。
立ち止まって、いちいちこんなことで立ち止まってはしかたないと肩をすくめる。
そして、
ナイトは歩き出すと見せかけて止まった。

明らかに風ではない何かが慌てて踏みとどまる音を、彼女は聞き逃さなかった。

(……やっぱり、何かいる!)
振り向かないまま、沈黙すること数秒。
突然、ナイトは勢いよく振り向いて音のした方向に走り出した。
「!」
向こうで何かが驚いて跳ねる。
すぐさま反転して逃げて行くそれを、確かにナイトは見た。

――フロワロの中を疾る黒い影。
それは、人を襲い魂を喰らう忌むべき者達のシンボル。

「……ドラゴン!」
叫びながら剣を抜き放ち、ナイトはそれを追った。
やはり尾けられていたのだ、しかし襲ってこなかったのは何故?
フロワロの中を見え隠れしながら逃げるそれはそれほどの速さではない。
(罠……?だとしたらフロワロの奥のほうへ誘うはず。これは外側に向かってる……)
判断しかねるナイトを知ってかしらずか、何かは一直線に逃げていく。
その前方に、ちょうどフロワロの中にぽっかりと明いた空き地が現われた。
「わぁっ!?」
そのままそれは空き地に突っ込む。
フロワロから飛び出す音、何かが転ぶ音、そして誰かの声。
(声!?こんなところに一体誰が!?)
その誰かが自分の追っていたものに襲われるかもしれないと
いうことに思い当たったナイトは、即座にその空き地に自らも飛び込んだ。
フロワロから飛び出し、周囲を確認する。
空き地の端、まばらに生えた小さなフロワロの上にそれはいた。
「〜〜っ、――!?」
「…………子供……?」
そこにいたのは子供だった。
男か女か判断はつきかねるが、黒髪に黒い服をまとった子供が尻餅をついている。
「どうし……」
「!!」
剣を納め、とりあえず手を差し伸べようとしたナイトに、
その子は酷く怯えたように身を竦ませた。
「……?」
剣を抜き血相を変えて飛び出してきたのが怖がらせてしまったのだろうか。
安心させようとして笑顔を作り、ふと子供の下の方を見たところで、ナイトは気付いた。
――その子供に踏まれているフロワロが、散っていない。
弾かれるようにその子供の顔をもう一度よく見る。
そこにあったのは、人間にはありえない真っ白な瞳。
「――まさか!」
再び抜刀しながらナイトは飛び退った。
この星に存在する様々な生物の特徴を取り入れてあらゆる場所に生息するドラゴン。
実際に現われたという話は聞いていなかったが、それなら
人間の形をしたドラゴンがいたとしても――!
43邂逅 7/20:2010/01/31(日) 01:38:33 ID:3Q54Peaq
「ひゃあああぁぁぁ!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい殺さないで!」
「へ?」
襲い掛かってくるか、逃げ出すか。
ナイトの予想したそのどちらでもなく、それは頭を抱えて悲鳴を上げた。
「ぅぅぅぅぅぅ……」
「……」
どうしたものか。
危険なのかもしれないし、本当に怯えているのかもしれない。
どう対処すべきかナイトは決めかねた。
「あの」
「ひっ!」
声をかけただけで跳ねる肩に思わず嘆息する。
少し呆れながらも、これだけははっきりさせねばとナイトは言葉を続けた。
「あなた、人間?」
「……………」
その沈黙とこちらを窺うように見上げてくる目が答えを物語っていた。
違う、と答えたらどうなるのか考えていると見ていいだろう。
「……ドラゴン?」
「っ!」
いよいよ怯えるその様子が半ば答えのようなものだったが、確認のために今一度繰り返す。
「そうなの?」
「っ………
 ……はい…………」
「……」
さて、今度こそどうしたものか。ナイトは考えた。
本当なら、人類の敵とわかっている相手をこのままにはしておけない。
それもぱっと見人間と見分けがつかないような危険な相手ならなおさらだ。
しかし……
ナイトはそれをもう一度見下ろした。
腰が抜けたまま立ち上がることすら出来ず、自分を見上げる怯えた目。
(……これが斬れたら、普通の感覚じゃないわ)
「あなた」
ため息をついたナイトは、落ち着いた声を意識しながらドラゴンに話しかけた。
ビクビクしていた肩が一際跳ね上がる。
「人間を襲ったりする?」
「!し、しないよそんなこと、人間を襲うなんて」
心外だといわんばかりの否定。
「……本当に?これからも?」
「本当だよ!……それに……ボクがかかっていっても人間になんて勝てっこないよぅ……」
(確かに)
少し考えた末、やはりナイトの選んだ答えはこれだった。
「……なら、いいわ」
「へ?」
「それならいいって言ったのよ。ほら、手を貸してあげるから立ちなさい」
剣を納め、ナイトが差し出した手を恐る恐る人の形をしたドラゴンが掴む。
引っ張りあげて立たせてやるとそれは戸惑いながらナイトに聞いた。
「あ、あの……見逃して、くれるの?」
「本当に人間を襲ったりしないならね。もし嘘だとわかったら酷いわよ」
「う、嘘じゃないってば!ほんとだよ!」
「そう。ならいいの。じゃ、私はもう行くわ」
見逃してやりはするが、ドラゴンと必要以上に馴れ合うつもりもない。
そう考えたナイトは呆気ないほどにあっさりとその場を後にした。
空き地に背を向け、歩きながら考える。
本当によかったのだろうか。
しかしあれを始末するなんてことは到底出来そうになかったのも事実。
見たところ本当に人間の子供くらいの力しかないようだったし放っておいても……
そこでナイトは足を止めた。
44邂逅 8/20:2010/01/31(日) 01:39:22 ID:3Q54Peaq
「ねえ」
「っ」
「どうしてついてくるの?」
後ろを振り返ると、フロワロの影からこちらを窺う先程のドラゴンの姿があった。
「さっきも私を尾けていたし……なんのつもり?」
「だ、だって……ボク近くで人間を見たのは初めてだったんだもん」
「人間に興味があるの?」
「う、うん」
(偵察活動かな……考えすぎね)
「いい?人間は私みたいに見逃してくれる人ばかりじゃないの。
 あまり人間に近付きすぎるとそのうちひどい目に遭うわよ」
「うん」
「分かったらついてこないで、人間の目に触れないところにいたほうがいいわよ」
それだけ言ってナイトはまた歩き始める。
やはりこれなら放っておいても大丈夫だろうと思った。
この辺りのフロワロも直に除去作業が始まるだろうが、そのころにはあれも遠くに……
「……」
「……」
「……」
「……」
「……ねえ、本当に分かってるの?」
三度ナイトは足を止めた。
振り返れば相変わらずあのドラゴンがついてきている。
「うん、分かってるよ?」
「ならどうしてついてくるの。人間は皆私みたいに甘くないって言ったでしょ」
「うん」
「だったら、早く、どこかへ行きなさい。じゃないと私が怒るわ」
「でも……」
「でも、じゃないの。私はこれから人間がたくさんいる町に戻るの。
 そこにはあなたは入れないの。分かる?」
「う、うん」
「そしたら入れないどころか、他の人に怪しまれて捕まっちゃうかもしれないの。
 だから、早く、あなたも帰りなさい」
「…………」
「……はぁ」
なおも寂しそうな目を向けてくるそれにナイトはため息をついた。
「とにかく。もう私はこれ以上忠告しないからね。
 適当なところで満足して帰るのよ。いいわね」
確認ではなく断定の『いいわね』を最後に、ナイトは返事も待たずに踵を返した。
言うだけ言った、あとは無視、とにかく無視だ。
背後からは相変わらずフロワロの間を縫って追いかけてくる音が聞こえるが、そのうち帰るだろう。

そう思って、ナイトは歩き続けた。

――――――――――――――――――――
45邂逅 9/20:2010/01/31(日) 01:40:00 ID:3Q54Peaq
そして。

(どうして私は、結局町の中にまであれをつれてきてるのかしら……)
人の行きかう商店街。
露天が立ち並びにぎやかなそこで、呆れたことにドラゴンはまだついてきていた。
いや、それどころか人ごみではぐれないようにとでもいうのか、
ドラゴンはその距離を縮めてもはや連れ立って歩いている状態だ。
目を輝かせながらきょろきょろするそれを、ナイトはげんなりとして見つめた。
「?なあに?」
「何でもないわ……」
力なく言って視線を戻す。
(誰もこの子の事を怪しまない……)
もしかして、ドラゴン云々はからかわれたのだろうか。
ナイトはもう一度それの瞳を覗き込む。
ん?と見返してくるその瞳で、
塗りつぶしたように白い虹彩と爬虫類のように細い瞳孔が
不思議そうな視線を返してきた。
(少なくとも、まともな人間じゃないのは確かね)
ますますげんなりとして、ナイトはもう気にしないようにしようと思った。
開き直りに近いが、考えたってどうにもならないのは事実だ。
そう思えば、次に浮かぶのは現実的かつ生理的な欲求だった。
(お腹すいた……たぶん姫は別の場所で食事にしたはずよね)
ドラゴンに関することをさっぱりと思考の片隅に押しやり、
ナイトはふと目に入った露店へとその足を向ける。
「一つ下さい」
数枚の硬貨とひきかえに焼菓子の入った紙袋を受け取る。
『クリーム鯛焼き』なるその珍妙な菓子が、今日のナイトの昼食だった。
その場で袋を開け、焼きたての生地を口に運ぼうとしたところで、
ナイトはじっと見つめる視線に気付く。
「……………」
指をくわえて見つめてくる、というものを実際に見るのは初めてだった。
その羨望に満ちた視線は、ナイトが今まさに手にしている菓子に注がれている。
到底、無視できる視線ではなかった。
「すみません、もう一つお願いします」
何故だか微笑ましげにおまけしてくれた菓子を受け取り、一つをドラゴンに差し出す。
46邂逅 10/20:2010/01/31(日) 01:40:35 ID:3Q54Peaq
「ほら」
「え、あ」
「いらないならいいけど」
ほんの少しだけ逡巡したドラゴンの喉がごくりと鳴った。
「あ……い、いる」
(何で私はドラゴンに食べ物まで……)
一心不乱にかぶりつくドラゴンを見ながら、ナイトはぼんやりと思った。
どんなに無力でも、一応これは人類の敵のはずだ。
それに食べ物を買い与えるなんて、これではまるで。
そこまで考えて、はたとナイトは気付いた。
いかに人間に近いといえど、フロワロの咲く平原からやってきたドラゴンが
怪しまれずに町には入れたのはナイトと一緒だったからだ。
そしてナイトは、これが人間と見分けのつかないドラゴンだと知っていながら
町を連れ歩いて人に近付け、食べ物まで与えている。
(もしかして私……内通者?)
背中に冷たい汗が流れた。
自分のおかれている状況の危機に気付き、彼女は慌てて周囲を確認する。
幸い、道行く人々に道端の二人を気に留めている様子はない。
「ちょ、ちょっとここにいて」
もう一度あたりを見回したナイトは、ちょうど目に入った衣類の露店に駆け寄った。
「この帽子、下さい」
適当に見繕った黒い帽子をつかんで元の場所に駆け戻り、
何事かと見上げるドラゴンに有無を言わせず被らせる。
「こ、ここは人通りも多いし、もっと落ち着ける場所に行きましょ」
「え、え?」
「ほら早く。……それと、帽子は出来るだけ深く被っててね。……目が隠れるくらい」
「それじゃ前が見えないよ〜?」
ドラゴンが戸惑うが、人通りの多いこの場所にこれ以上留まる度胸はない。
その手を掴み、ナイトは足早にその場を立ち去った。

――――――――――――――――――――
47邂逅 11/20:2010/01/31(日) 01:41:10 ID:3Q54Peaq
「へぇ、じゃあその『姫』さんって男の人なんだ」
「……そう」
(その上どうして私はこれと身の上話をしてるんだろう……)

町を見下ろせる城壁の上で、ドラゴンと話しながらナイトは
どうしてこうなったのか真剣に考えていた。
「ええと、それでナイト、その姫さんは……」
「ねえ」
「何?」
とりあえず、ふと気付いたことをドラゴンに注意する。
「常識的に、特別親しくない相手を呼び捨てにするのはどうかと思うわ」
「え」
呼び捨てにするな、とストレートに受け取ったのであろうドラゴンが突き放された顔をした。
ナイトはやれやれと思いつつフォローをいれる。
「ま、私はいいんだけど。初対面の人にはダメってこと」
「う……うん」
ドラゴンがあいまいに頷いた。
と、そこでナイトは更なる疑問に気付き、ついでに投げかけてみる。
「……呼び方といえば、あなたの名前。なんていうの?
 それと、気になってたんだけどあなた男の子女の子?」
「……ドラゴンに、性別なんてないよ」
「え?」
ナイトは予想しなかった答えに思わず声を出した。
「んとね。帝竜とかくらいになれば精神的に性別とかもあるかもしれないけど、
 ボクたちみたいな花から生まれるしたっぱには、男の子も女の子も無いの」
「あ……そう」
「だから、ボクには名前も無いよ」
「そう……なの」
「そう」
そのことが不幸な事なのかどうなのかも分からず、ナイトはなんとも言えずにいる。
それを知ってか知らずか、ドラゴンは続けた。
48邂逅 12/20:2010/01/31(日) 01:41:40 ID:3Q54Peaq
「他のドラゴンはね?同じところで生まれたら大体皆同じ姿になるから
 まとめて狼竜とか、鳥竜とか呼ばれるんだけど、ボクはなんか変な生まれ方しちゃったし……」
「あ、やっぱりあなたは普通とは違うの?」
「うん。普通は生まれたら、たとえばここなら魚の形になれば泳げるなとか、
 飛べたら暮らしやすいなとか考えるみたいなんだけど、ボクは人間のことばっか考えてたから」
「だからそんな姿に?……なんていうか、つくづく変わり者ね」
「うん」
「ふうん。でも、そうね、狼竜とか鳥竜とか……
 それじゃあなたは、人間の形をしてるから人竜ね」
「人竜?」
「そう。何か変?」
「ううん。そっか……じゃ、ボクは人竜だね」
「え」
話が思わぬ方向に飛んでナイトは思わず聞き返した。
「え、人竜って、名前が?」
「うん」
「そ……そんなのでいいの?」
「何か、ダメなの?」
「あなたがいいならいいけど……」
「うんっ。えへへ、人竜、人竜。ボクの名前……」
何故かとてつもなく悪いことをしたような気分になり、ナイトは目を逸らした。
前を向けば、目の前に広がる町が夕日に照らされてオレンジに染まっていく。
「もう日が沈む……そういえば、あなたはどこで寝てるの?食べ物とかも」
「どこって、フロワロの中だよ?」
「野ざらしよね?」
「そうだけど……ボク、ドラゴンだもの。フロワロの茂みにいさえすれば
 雨が降っても風が吹いても平気だし、というか寝なくても食べなくても平気だよ」
「……便利な身体ね……
 ってちょっと待って。じゃああの焼き菓子はどういうこと?」
「え……だ、だって……おいしそうだったから……」
「あ、そ」
もはや怒る気もしない。
夕日を眺めてため息をつくナイトに、人竜はそれでそれで、と話しかけた。
「でね、その姫さんのことなんだけど」
「何、まだ聞きたいの?」
「うん!それでね、ナイトと姫さんは……」

――――――――――――――――――――
49邂逅 13/20:2010/01/31(日) 01:42:22 ID:3Q54Peaq
予想外だった。

「男の人と女の人って、色々あるんだね」
「……」
(本当に、冗談抜きで、どうして私はこんなことまで話しているんだろう……?)

この時点で、ナイトはすでに驚愕さえ覚えていた。
とりとめのないことから始まって細かいところまで根掘り葉掘り聞き出される。
ここまではまだ覚えているのだが、一体どんな手管を使われたやらふと気付いたときには、
出自から姫と自分の今までの関係に至るまで、半生の何もかもを人竜に話してしまっていたのだ。
狐につままれたどころではない。悪魔にとんかちでぶん殴られた気分だ。
それに、そう、『何もかも』だ。
性的な事柄に関しても、若い娘同士の内緒話でさえ話せないようなことさえナイトは聞き出されていた。
一体何を言っているのか分からないと思う。実は自分でも分からない。
その上さすがに直接的な言い方はせず、抽象表現をフルに駆使した話だったにもかかわらず
何故か人竜は全て正確に理解して詳細を迫ってくる。
見た目子供の人竜に理解され、ナイトは思わず死にたくなった。
顔を赤らめたりするなどの反応があればまだいいものを、
性別がないせいか淡々と続きを促してくるところがさらに自殺衝動を駆り立てる。
「……どうして……」
「?」
「どうして……そんなことまで知ってるの?子供なんじゃ……」
「うーん、確かについこないだ生まれたばっかだけど、ボクドラゴンだから」
「それ……関係あるの?」
「だって、ボクたちお父さんもお母さんもいないでフロワロから生まれるんだよ?
 難しいこともえっちなことも、一通りのことは知って生まれてくるもの」
「そう……」
もはやなにをいえばいいか分からない。
尋常じゃないことまで話してしまったナイトは、許されるなら膝を抱えて泣きたかった。
「ふーん、でも、そっか」
そんなナイトのことなどどこ吹く風、人竜は一人で納得したように頷いている。
そして。
人竜は何の前触れもなく、ナイトにとって最大級の衝撃を持つ一言を口にしてのけた。

「ナイトは、姫さんのことが凄く好きなんだね」

なんと言ったか理解するのに数秒。
何を言われたか理解するのに更に数秒。そして、
「――なっっ――――――!!?」
絶叫レベルの勢いを持つ、声にならない驚愕の声をナイトは上げた。
「……?どうしたの?」
そんなナイトを、不思議そうに人竜が覗き込む。
あまりの衝撃に絶句するナイトは、辛うじて立ち直るやすぐさま人竜に対する疑義を叫んだ。
「な、ど、……どこをどう聞いたらそんな話になるのよっ!!」
「違うの?」
「全然違うでしょ!?大体、私は姫が嫌いだったことすらあるって……」
「好きだったから、嫌いだったんじゃないの?」
「な、何を言ってるのか……」
瞬時に気力を消耗したナイトは再びへたり込んだ。
手をついたナイトは、もはや哀れささえ感じる声音で人竜に諭そうとする。
「あのね、好きな子に意地悪とかじゃないのよ?あの頃、本気で姫が嫌いだったもの」
「あの頃ってことは今はそんなに嫌いじゃないんでしょ」
「それは、そう……だけど」
「じゃ、やっぱりそうだよ。
 好きだけど、自分の事を見てくれないし考えてくれないから嫌いだったってことじゃない」
「う……な」
「いっつも、もっとこうだったらいいのに、って思ってるんでしょ。
 不満なのは今より幸せになりたいからだよ。
 好きだから、そうして欲しいから無意識にいらつくんだよ」
「わ……私……」
50邂逅 14/20:2010/01/31(日) 01:43:04 ID:3Q54Peaq
流されかけて、そこではっとしたナイトはぶんぶんと頭を振った。
「ちょ、ちょっと待ってよ!
 勝手なことばかり、肝心なことが抜けてるじゃない!
 どうして私があんな、わがままだし」
「でも、なんだかんだいって大切にしてくれてる」
「人の意見なんてこれっぽっちも聞いてくれないし」
「あの人にとって一番大事なのはナイトだもんね」
「私を困らせてばかり、事あるごとにちょっかいを出して喜んで」
「ナイトが好きなんだもの、仕方ないよ」
「ずっと、何も言わずに私を抱き続けて……」
「どう接すればいいのか分からなかったんだよ」
立て続けにまくし立て、次第に必死になっていくナイトに淡々と人竜は返していく。
言うことがなくなって黙り込むナイトの顔を、もう一度人竜は下から覗き込んだ。
「姫なりに、ずっとナイトの事を大切にしようとしてたんだよ」
「……だとしても……」
歯を食いしばり、喉の奥から搾り出すような声がナイトから出た。
「今更……そういうふうには考えられないのよ。
 これまでずっとこんな主従関係を結んでて……今更恋人同士なんて想像できないのよ……!
 敬語以外で話せないわ。どうしても間に線を引いてしまうの。
 上下関係だからと思えばこそ逆に何でも許してこれたの、恋の幻想なんて壊れちゃったわ。
 だから、これは……そんなんじゃないのよ……」
「……」
先程までとは違う、暗い表情に人竜も圧されざるを得なかった。
しかし、それでも一言だけ、人竜は言う。
「……なら、どうしてそんなに迷うの?」
「……」
「難しいことはほんとはよく分からないけど……ごめんね。
 でも、でもね。ずっと一緒にいて、助け合って、お互いを大事にしてきたなら、
 少なくともそれは、好きになっても当たり前だってボクは思うよ。
 ううん、ならなきゃ変だよ。それじゃ、だめなのかな」
「……………」

長い沈黙の後、ナイトがふ、と息を吐き出した。

「あなた……自信満々よね。一度も姫にあったことなんてないのに」
「だってドラゴンだもの」
「答えになってないわ」
「なってるよ。ドラゴンはね、魂の匂いに敏感なんだよ。
 ナイトの魂の匂いや、その姫さんの移り香で、なんとなく分かるもの」
「……」
町を照らす夕日はさらに沈み、やがて西の地平線に茜色の帯だけが残る。
それを眺める人竜がぽつりと言った。
「もう、暗くなるね」
「そうね。戻らないと」
「帰るの?」
「そう」
「じゃあボクも今日は帰るね」
「きっと、もう会うこともないわ。明日出発だもの」
「えぇ〜〜……」
「えぇ、じゃないの。これが最後だからね。人間とドラゴンは敵同士なんだから、
 これ以上人間の近くにいちゃだめ。じゃないと本当に捕まるわよ。
 違うところで、静かに、幸せに暮らしなさい。分かった?」
「……うん……」
「じゃあね、元気で」
言い聞かせるように注意すると、ナイトはそのまま人竜に背を向けた。
そのまま振り返ることなくナイトは去っていく。
その背中を、人竜はただ一人で見えなくなるまで見送っていた。

――――――――――――――――――――
51邂逅 15/20:2010/01/31(日) 01:43:35 ID:3Q54Peaq
「戻りました」
「お帰りなさい。貴女にしては珍しく遅かったのね」
「少し……色々と」
「そ」
マレアイアに送るのであろう手紙を綴りながら、姫は簡単にナイトと言葉を交わした。
そしてふと顔を上げ、少し首を傾げてみせる。
「なあに?聞いて欲しいの?」
「いえ……別に」
「聞かないで欲しいの?」
「……別に」
姫は肩をすくめてふっと笑うしぐさをすると、ペンを置いて立ち上がった。
「そ。じゃ、一応聞かないでおくわ。もし話したいことがあったら
 横に座って最後までしっかり聞いてあげるからね」
「……」
ナイトは是とも否とも言わずにあいまいな沈黙を返した。
「さて。じゃあ、お夕飯はどうする?」
「お昼が遅かったので、私は」
「そう、実は私もなの。じゃあ後にしようか」
「はい」
うーんと背伸びをして姫は書きあがった手紙を手に取る。
首と肩を回しながら自分のかいた文面を確認する姿を見て、ナイトはベッドに腰掛けた。
「……………
 ……昼前、フロワロ踏みに出かけたときに」
「ん」
ナイトが呟くと同時に姫は意外そうな顔で振り向く。
しばしぱちぱちと瞬きした彼は、手紙を置くとすすすとナイトの隣へ移った。
「うん、うん。それで?」
「一人でやろうと思って」
「うん」
「フロワロを踏んでいたら」
「うん」
「人に会いました」
「……男の人?」
「子供ですよ」
凄く真剣な顔で聞く姫にナイトは少し呆れた顔で返した。
「まあ……うん。それで?」
「それでといわれても……奇妙な子で。少し、話をしただけです」
「うん」
「子供らしく好奇心旺盛でしたけど……」
「うん」
「不思議な子で……心が見透かされるようでした。
 いつの間にか、なんか人生相談でもさせられてるみたいになって」
「見ず知らずの子供に人生相談を受ける貴女って一体……」
「だっ、だから『みたいに』って言ったでしょう!?
 向こうが勝手にお節介に人のプライベートに踏み込んだだけです!」
「ふーん……そう。それで?」
「それだけです」
「……はい?」
「それで帰ってきました」
膝に置いた腕をずるっと滑らせた姫が腕を組んで真面目に考え始めた。
「そんなに印象に残るほど人生相談のうまい子供だったのかしら……」
「あ、いや、そういうわけじゃなくて……
 とにかく、これまで会った事のない未知との遭遇だったんです。
 たぶんこれからももう会うことのないくらい……でも」
「でも?」
「でも……なんだか、近しいものを感じたんです。
 なんというか……仲良くなれるかもしれない、そんな感じで」
そこで姫がくすりと笑った。
怪訝な顔をするナイトに彼は嬉しげな表情を見せる。
52邂逅 16/20:2010/01/31(日) 01:44:16 ID:3Q54Peaq
「なんだ。つまり、友達が出来て嬉しかったのね」
「え……」
「そうね。私達、小さな頃からお互い以外同年代の知り合いなんていなかったもの」
「……そう、ですね。でもあれは友達というより」
「弟か妹みたいで放っておけない感じ?」
そうかもしれない、とナイトは思った。
あれは危なっかしくて放って置けなくて、少し情が移ったのかもしれない。
「でも……もう、会うこともありませんよ」
明日には出発なのだから。
そう言うと、姫は笑って目を瞑りながらナイトの肩を抱いた。
「大丈夫、私達は旅の空なんだから。また会えるわ」
「……そうでしょうか」
「そうよ」
確証も何もないのに、姫は自信満々にそう言った。
ナイトも肩の力を抜く。会えても会えなくても、まあなるようになると。
「ところで」
と、その肩の力を抜いたところで姫が、好奇心に満ちた顔を向けてくる。
「結局、具体的にはどんな子だったの?
 漠然としたことばかり言ってよく分からないんだもの。
 次会ったら、よければ私にも紹介してよ」
「え」
ナイトは返答に窮した。
さすがに人間の形をしたドラゴンだとは言えない。
「……それはちょっと」
「そうなの?じゃあ、どんなことを話したのかだけ」
「……」
ナイトは再び返答に窮した。
あなたとの関係のことを深いところまで聞かれましたとは言えない。
「……それもちょっと」
「むぅ」
姫が面白くなさそうな、疑念と嫉妬の混じった顔になった。
「ねえ、ちょっと」
「はい」
「その子……男の子?」
「違いますよ」
「本当に?」
「本当に」
少なくとも嘘は言っていない。
「むぅ〜〜……」
追求を諦めた姫が渋い顔で唸った。
口達者な彼のこんな表情を見るのは随分久しぶりで、
思わずナイトは彼女には珍しいくすりとした笑いを浮かべてしまった。
「……」
やはり面白くなさそうな姫が、ずい、と突然顔を寄せた。
さすがに面食らってナイトも至近距離のその顔を見返す。
「ねえ」
「は、はい」
「お腹がすくこと、しようか」
その意味を、理解するまで考えること数秒。
ナイトの頬にゆっくりと朱が上る。
「は、はい……かまいませんけど……」

――――――――――――――――――――
53邂逅 17/20:2010/01/31(日) 01:45:00 ID:3Q54Peaq
(こういうとき、何か話したほうがいいのかな)
ベッドの上でごそごそされながらナイトは思った。
服を脱がされるのに合わせ、体を浮かしてあげながら考える。
(正直、前戯の間が一番気恥ずかしい……こっちからも何かしたほうがいいかも)
そう思いついてあがったナイトの手は、しかし彼の背中に回るだけで止まった。
(何をしていいか分からない……)
「ん、どうしたの?」
「いえ、その、なんでも……」
上から不思議そうに聞いてくる姫にナイトは慌てて答える。
(いつもしたいようにさせて早く終わればいいって思ってたから)
姫の背中に回った手が、その身体を抱き寄せるように交差した。
(仕事だと思ってたから)

『ずっと一緒にいて、助け合って、お互いを大事にしてきたなら、
 少なくともそれは、好きになっても当たり前だってボクは思うよ』

(そうかな?)
「あ……んむ……」
自分からは見えない場所に姫の手が触れ、それに声を上げようとしたとたんに口を塞がれた。
ぼんやりと口付けを受けながら、ナイトはさらに思った。
(もっと、この状況を好意的に考えてもいいのかな)
ナイトの手がまさぐるように動いた。
どうしていいのか分からないなりに背中を撫で、裸の胸を押し付ける。
(こんなふうに大事にしてもらって、女としても……)
姫が唇を離し、体を起こした。
もう一度だけ見上げるナイトの唇にキスを落とし、
続けて首、鎖骨、胸、腹へと口付けを落としていく。
「ああっ」
意識せず身体の芯がぞくりと震えた。
(もう少し、この人が喜ぶことを私も喜んでいいのかな)
下に目をやれば、姫がそっと自分の足を開かせようとしていた。
「あの……」
「うん……?なあに?」
「その……後ろから、しますか?」
ナイトの足の間で膝立ちになった姫が、目を丸くしてナイトを見下ろした。
「……いいの?」
「は、はい……あ、じゃこっち向きます……ね」
そう言うとナイトはその場でうつぶせになり、それから体を起こす。
両手と膝をつくとやはりこの体勢への恥ずかしさは消えるものでもなく、
ナイトは項垂れて改めて羞恥に赤くなった。
「……」
しばらくぼうっとその背中を眺めていた姫が、両手をナイトのそれの近くに置いて耳元でささやく。
「ありがと」
ナイトはぎゅっと目をつむって、声にならない声を小さく喉の奥で出した。
「……入れるね」
「っ……」
優しく入り口を押し広げて姫が入ってきた。
ゆっくりとそれが奥へ届き、その感覚がナイトの背筋を抜けた。
「……うん」
いつもと違う感覚を確かめるようにナイトの中に自分自身を納めた姫は、
それがしっかりとそこに落ち着いたのを確認するとゆっくりと動き始めた。
54邂逅 18/20:2010/01/31(日) 01:45:32 ID:3Q54Peaq
「ぁ……」
「うん……いい感じ」
「あ、あ」
緩いリズムで濡れた音が響く。
姫がかすかに上気した顔でナイトの背中に指を這わせる一方で、
ナイトは想像以上のいつもとの違いに混迷しながら喘いでいた。
(何か……変、いつもと違う)
身体の奥から押し上げてくる感覚に歯止めがきかない。
「っふ、ぅ……あぁ……!」
いつもなら、正面から姫を受け止められて、心の準備が出来て、快楽に抗うことが出来た。
最初はそれでも性交の感覚をどこに逃がせばいいのか分からなくて泣き声をあげたものだったが、
やがて回数を重ねるうちに、そうやって翻弄されず自分を保つことが出来るようになったのだ。
今はそれができなかった。
(感じる、恥ずかしい……!)
背後から犯される感覚にどう対応していいか分からない。
抱きしめあい、口付けを交わしながらではないより直接的な性の動き。
それなのに呼吸や心音、体温はいつものように密に背中越しに伝わってくる。
深く、姫がナイトの中を貫いた。
「あ、あー!」
戸惑いに押し流され、ついにナイトが声を上げた。
その声に引かれ、もう一度姫が覆い被さるようにナイトの手に自らのそれを重ねた。
「……感じる?」
「ひぃん、あ……」
姫が腰を使うたびに、ナイトの口から断続的な喘ぎが漏れる。
ナイトは快楽に押し流され始めていた。
「……嬉しい。ね、こっち向いて……」
「ふ、ふぁ……?」
姫が、そっとその顔をナイトの顔に寄せた。
振り向いてぼうっとしたナイトは、少ししてその意図を理解する。
「……」
考えるより前に身体が動いていた。
目を閉じ、自分からも顔を寄せる。
ちゅ、と音を立てて唇同士が触れ合った。
お互いの唇と舌先が戯れるように求め合う。
随分と長い間そうしてから、姫はかすかな笑いを浮かべながら顔を離した。
その手がナイトの頭に伸びる。
「……」
「あ」
その髪を結んでいたリボンが、すっと姫の手で引き抜かれた。
続けてもう片方のリボンもほどかれ、さらりと音を立てて髪がベッドに落ちる。
無造作な長く伸ばしただけの髪型になったナイトは、半ば呆然として姫を見ていた。
「あ、あ……」
「……じゃ、続けるね」
再び姫が動き始めた。
「ああぁっ…………!」
打ち込まれる快楽と一緒に、それまでにない痺れが背筋を貫く。
髪を下ろされたナイトは、同時に心の鎧まではがされてしまったような喪失感を感じていた。
二つに分けて髪を留める大きなリボン。
自分のお気に入りのスタイルであるとともに、自分を勝気そうに見せるアイデンティティー。
それを取り払ってまっすぐに髪を下ろしたナイトはおとなしい少女にしか見えなかった。
ナイトは自分が何の力も無いただの娘になったような錯覚を覚えていた。
55邂逅 19/20:2010/01/31(日) 01:46:06 ID:3Q54Peaq
「気持ちいい?」
「ひあ、あ」
「もっと感じて」
「んあ、あああっ」
「ほら、もっと!」
「や、あ、あ、ああっ、あああああああっ!!」
姫が昂ぶり始めた情欲をナイトに叩きつけ始めた。
虚勢を剥がされて、自分さえ見失いかけた心に暗示のようにその情欲が刻み込まれていく。
スポンジが水を吸うようにナイトの心はそれを受け入れ始めていた。
歪んだ主従関係も、自分を保つための虚勢も、今は全てどうでもいい。
ただ今は、女として愛される悦んびを感じていたい。
「あ……」

(きもち、いい……………)

「ああぁーーーーーっっ!!」
涙を流しながらナイトは絶頂した。
背筋が強く反り返り、仰け反った喉が悲鳴のような叫びを搾り出す。
断末魔のような絶頂に合わせて体内が締まり、姫が小さく呻いて愛液にまみれた自分自身を引き抜いた。
「ひんっ」
引き抜かれる刺激でもう一度軽く痙攣したナイトが、糸が切れたようにがくりと俯く。
その身体に覆いかぶさって姫が放つ精液の熱さを背中に感じながら、ナイトはゆっくりと崩れ落ちた。
「……う……」
枕に顔を埋めるように前のめりに突っ伏して小さな声を出す。
頭の芯が鈍く痺れ、強力な倦怠感が全身を包み込んだ。
虚脱感に浸るナイトの耳元に、屈みこんだ姫が口を寄せる。
「……素敵だった」
そう囁くと側頭部に軽い口付けをして、姫はナイトの顔が向いてるのと反対側に倒れこんだ。
気怠げな腕が頭と腰に回り、ナイトを自分のほうへゆっくりと引き倒す。
そのまま抱き寄せられると虚ろな幸福感がナイトを包んだ。
(あ……)
つ、と背中を精液がつたった。
思考の全てが熱に侵され、ぐずぐずに溶けきった理性で、ナイトはぼんやりと思った。
(今聞かれたら……何を聞かれても本当の気持ちを答えてしまいそう……)
抱きしめたまま、姫が囁いた。
「……ねえ、ナイト」
(あ……)
「あのね……」
どうしよう、という、何を聞かれるのか、という、恐れにも期待にも似た感情が駆け巡る。
「姫……」
そして、ヒビの入った器から水が流れるように、
ナイトの口からある言葉が勝手に零れ落ちようとした。
「私……」

「次は、目隠しを使いたいのだけど」

嬉しげに、楽しげに、姫が言った。
力の入らない首をゆっくりと巡らせ、ナイトが後ろの姫を見る。
……正直、従者を辞めようかと一瞬本気で思った。

――――――――――――――――――――
56邂逅 20/20:2010/01/31(日) 01:46:40 ID:3Q54Peaq
「さ、ミロスに戻らなくちゃ」

翌日、カザンの城門前で旅支度をした姫が言った。
鎧を着込み荷物を背負ったナイトが、歩み寄りながら姫に言う。
「言われたとおりギルドオフィスにも連絡はしておきました。
 向こうに着いても、しばらくはミロス支部の指示に従うようにとのことです」
「うん。セティス様からは危険なミッションには参加しないように言われてるけどどうかしらね」
「一応マレアイアから公式に連絡は行っていますし、あまり危険なミッションへの
 参加要請は来ないでしょう。カザンとしてはそうも言ってられないかもしれませんが」
「そのとき考えるとしましょうか」
「そうですね」
ふふっと笑うと、姫は改めて隣に立つナイトに顔を向ける。
「さ、行きましょう」
「はい」
そして、歩き出す姫の後を着いてナイトは歩き出した。
「……」
「……」
「……」
「……あ」
「どうしたの?」
しばらく行った所で、ふとナイトは立ち止まった。
「あ、いえ……ええと、すみませんが先に行ってもらえませんか」
「忘れ物?それなら一緒に戻るけど」
振り返って尋ねる姫にナイトは首を振った。
「いえ。とにかく……すぐに追いつきますから」
「そう……分かったわ、すぐにね」
少し考えた末、姫はナイトの言うとおりに先へ歩いていった。
しばらくその背中を見送り、後ろ姿が小さくなったのを確認すると
ナイトは背後のフロワロ畑に向かって声をかけた。

「……そこにいるんでしょ」

フロワロの中からひょこん、と人竜が頭を出した。
ナイトは深くため息をつく。
「はぁ……」
「えと、あの、だって……」
人竜がごにょごにょと困ったような申し訳なさそうな顔をして何か言う。
「……いいわ、好きにしなさい」
「え」
もう一度ため息をついて、ナイトは一言だけ呟いた。
人竜が意外そうに顔を見上げてくる。
「ただし。絶対他の人の前に出ないこと、私に迷惑をかけないこと。
 もし破ったら、もう絶対に口を利かないからね。分かった?」
「う、うんっ!」
人竜の顔にぱあっと笑顔が広がった。
やれやれ、と肩をすくめてナイトは踵を返す。
再び人竜がフロワロに引っ込んだのを感じつつ、ナイトは向こうを見た。
まだ姫の姿は小さく見えている。
そして、ナイトは走り出した。
後ろからは人竜がフロワロの中を着いてくるのが気配で分かる。
ふと足音に気付き振り返った姫のもとへ、ナイトは足取りも軽く駆けていった。
57 ◆Y62mw7fowc :2010/01/31(日) 01:47:53 ID:3Q54Peaq
投下完了。
もう片方の話が当分エロい展開にならなそうなのでこちらを引っ張り出してきた次第です。
本当はもっと早く仕上げたかったのですが他スレのSSを読んで砂糖を吐きまくっていたので遅れました。
希望があればこちらの続きも書きます。ではこのスレの盛況を祈ってノシ
58名無しさん@ピンキー:2010/01/31(日) 19:26:01 ID:c4RnHsOJ
>>36-57
GJ
この2人の複雑な関係は好きだし、さらに第三者が入ってくるとなると先が楽しみに
あと姫はもうちょい気持ちを汲んであげてwww
59名無しさん@ピンキー:2010/02/01(月) 18:45:18 ID:gZS0OQAM
>>36
GJ!
後ろからとかゾクゾクしました
次回は目隠しプレイになるのかと思うと今からワクワクです
続きも気長に待ってます!
60名無しさん@ピンキー:2010/02/02(火) 20:21:55 ID:FDuxLiK+
PC全鯖規制が解ける様子もないんだお…
でも携帯も昨日から始まった永久っぽい規制でPINKにしか書けないんだお…
だからPINKでやるお!

注記
・ギャグです
・多分百合です
・一部チビキャラを含みます
・プレイヤーキャラに関してはチビキャラTALKの名前と、職業名による俗称が混在します
・抜けません

登場人物
・カリユ(かりゆ):カザンの酒場六花亭の看板娘。可愛い。エビフライがとても好き。
・イクラクン:とあるギルドのルシェメイジ。ふかふかしている。イクラちゃんと呼ばれるとマジギレする。
 夜誰かの気配を感じたとき振り代えるとイクラクンの耳が物陰からはみ出ているという都市伝説がある。
・桃姫さん:とあるギルドのおっとり太眉プリンセス。料理が得意で物腰柔らか。
 ただしお腹はとても黒い愉快犯。
・鬱姫:とあるギルドのルシェプリンセス。語尾に鬱とつける。
 水を飲むぐらいの頻度で自殺を試みるがことごとく失敗している。
・赤平さん:とあるギルドの赤髪ヒーラー。無差別ガチレズの変態だが超執刀を体得した神医。
 鬱姫の死亡フラグを潰しながらヒーラー業を務め、変態行為にも励む偉い人。

登場しない人物
・ナムナ:ピコピコ。
61逆から読むと百合か 1/6:2010/02/02(火) 20:23:08 ID:FDuxLiK+
 世界一ハントマンの人口密度が高いと謳われるカザンの酒場、六花亭。
 そこでは昼も夜もなくハントマン達が飲み、騒ぎ、キザなマスターが作る絶品料理に舌鼓を打っている。

 とはいえ、閉店時間近くともなればさすがに店内も落ち着いてくる。
 今は数人の常連客がマスターと談話したり、カウンターで寝こけたりしているだけだ。
 鬱姫などは自ら致死量の毒を混入した酒を煽ろうとする直前で酔い潰れ、すやすやと眠っている。
 赤平さんは彼女の寝顔を苦笑して眺めながら毒入りの杯を床に叩きつけ、
代わりに無害だが死ぬほど苦い薬を混入した酒を鬱姫の前に置く。
 目が覚めたら鬱姫は「またうっかり生きてしまった鬱」と呟き、毒入りと思ってそれを飲むだろう。
 そして舌を貫く苦味に悶絶するだろう。
 赤平さんはそこに「苦さを中和する薬は私の奥歯に仕込んであるわ」と告げるつもりだった。
 自分の口の中に熱烈に舌をねじ込む鬱姫を想い、赤平さんは涎を垂らした。

 閑話休題。

 今の時間は天下の六花亭も静かなものだ。
 とはいえ、ウェイトレスたるカリユの姿が見えないのはおかしな話である。
 彼女は普段、閉店後の片付けまでやってから帰宅しているからだ。
 マスターは注文もないため常連の戯言に付き合っており、カリユの不在に気づかない。
 カリユはどこに?
 答えは廊下の一番奥、「従業員控え室」とプレートのかかった扉の向こうだ。
 主にカリユが休憩や着替えに使っている小さな部屋。
 そこにカリユはいた。
 大きな人影の前に座り込んだ姿で。
62逆から読むと百合か 2/6:2010/02/02(火) 20:24:22 ID:FDuxLiK+
 カリユは目の前に突き出された棒状のモノに唇を当て、隙間から舌先を少しだけ出してくすぐっている。
 棒から染み出る透明な液体にまみれ、健康的な唇は艶かしく光っている。
「んっ……」
 已む無く鼻で息をすると、それの匂いが直に鼻腔へ流れ込む。
 カリユはその匂いに眉を下げ、陶然と頬を朱に染めた。
 続いて大胆に舌を伸ばし、棒にべっとりと絡める。
 人前では恥ずかしくてできない行為だが、目の前の人物になら見せても構わなかった。
 頭を撫でられるとルシェ特有の耳を嬉しそうに揺らし、唾液の絡んだそれの先端をぱっくりくわえ込んだ。
 上目遣いに人影を見上げると、小さな頷きが返ってきて、それに微笑みを返す。
 カリユは唇をすぼめ、今までより強く吸った。
 棒の奥から濃厚な味の汁が少しだけ先走って飛び出した。
「っ……ん……おいひい……」
 それを嚥下し、カリユはうっとりと声を漏らした。
 その表情はヒトの本能的な欲にまみれ、はしたなくも美しい。
 もっと欲しい。味わいたい。
 その一念はカリユの我慢を砕き、より過激な行為へと導いた。
 くわえ込んだ棒にそっと歯を押し当てる。
 そして、顎に力を込め、一気に棒をかりゅっと噛み砕いた。
 中から濃厚な汁と身が弾け、カリユの味覚を強く刺激する。
 エビの甘味。衣の隠し味。油のコク。
 それらが一体となって幸福感を紡ぎ出す。
「美味しいよ! 美味しすぎるよ! どういうこと!?」
「逆ギレされても」
 人影はふかふかと体を揺らし、手に持ったエビフライの後ろ半分をカリユの口に押し込んだ。
「んあ、おいひい」
「そいつは重畳」
「ありがとうねイクラちゃん」
「ボク、イクラちゃんじゃなくてイクラクン様だよっ」
 人影がふかーっと怒る。
 人影はイクラクンだった。
 身長はカリユと同じぐらいだが、チビキャラゆえに横幅があり巨大に見える。
 のしかかってくるイクラクンをバシーンとレシーブすると部屋中をぽよんぽよんと跳ね回り、元の場所にぽてっと着地した。
「落ち着いた?」
「おうよ」
「可愛いねイクラちゃんは」
「ボク(ry」
 バシーン。ぽよんぽよん、ぽてっ。
63逆から読むと百合か 3/6:2010/02/02(火) 20:25:37 ID:FDuxLiK+
 カリユが何故こんなところでエビフライを貪っていたかといえば、イクラクンに連れ込まれたからだ。
 イクラクンが何故連れ込んだかといえば、エビフライと引き換えにけしからん行為を要求したいからだ。
 エビフライを見せつけられては可愛いカリユはホイホイ着いていくしかない。
 唇の油をぺろぺろ舐めるかりゆに、悪いイクラクンは悪い表情と悪い声で迫った。
「じゃあ約束どおりボクと百合的な性行為をしてもらうよっ」
 かりゆはふにっと首を傾げる。
「百合的な性行為」
「左様」
 イクラクンは首もない頭を縦に振る。
 言葉の意味を熟考すること20秒。
 赤平さんに吹き込まれた知識を思い出し、カリユの顔がぽっと赤くなる。
「で、でもそれっていやらしいことなんじゃ」
「赤平さんは女の子の友達同士なら当たり前って言ってたよ」
「い、言ってたけどっ」
 そう言いながら迫ってくる赤平さんはなんだか卑猥なので撃退していたが、イクラクンにいやらしさは感じない。
 だがカリユとて年頃の可愛いルシェ娘。
 性的なことに羞恥を感じないほどアホの子ではなかった。
「わ、私後片付けがあるからまた今度っ」
「そうはイクラクン」
 諸手を挙げマントをはためかせ、眉を立てて口を三角にする詠唱の構え、
いわゆる荒ぶるイクラクンのポーズを取り、イクラクンは怪しい術を発動した。
 控え室の扉が脈絡なく消えた。
 何もない壁にぶつかり、かりゆは尻餅をつく。可愛い。
 カリユはおろおろしながら周囲を見渡す。
 地下ゆえに窓はなく、さっきまであった扉以外に出口はない。
 むむぅと考え、カリユはその場にどっかと腰を下ろした。
「仕方がないから約束は守って事に及ぶとするよ」
 エロパロだしね。
「わーい」
 荒ぶるイクラクンのポーズのまま表情だけニュートラルに戻してイクラクンは喜んだ。
「それで、どういうプレイをするのが一般的か分かる?」
「ベッドの上で裸になって気持ちいいところを擦り合わせるって赤平さんが昼間の往来で力説してたよ」
「赤平さんに恥はないのかな」
「ある可能性を少しでも期待してた?」
「実はあんまり」
「ボクはちょっぴり期待してたのにっ!」
「よしよし、泣くのはおやめ」
 無表情に男泣きするイクラクンの柔らかな銀髪をふかふかと撫でる。
 良い手触りだった。
64逆から読むと百合か 4/6:2010/02/02(火) 20:26:45 ID:FDuxLiK+
 泣き止んだイクラクンを抱っこなぞしてみながら、カリユは重大なことに気づいた。
「でもここ、ベッドがないよ」
「なんと」
 イクラクンはルシェ耳をビビビと振動させて動揺する。
 控え室にはロッカーと机と椅子、あとはエデングルメ紀行の収まった本棚ぐらいしかない。
「じゃあ立ったまま床の上でやろうよ」
「ワイルドだねイクラクン」
「ふふん」
 得意げに胸を反らすが、チビキャラゆえにバストなどという気の利いたものはない。
 カリユは若干恥ずかしそうにしながら、胸から上と腰から下を隠す仕事着を下着ごとスポーンと脱いだ。
 カリユの全裸についてはあまりの美しさに該当する言葉がないため描写は控える。
 ただ、イクラクンはその美し可愛さに立ったまま気絶したほどだった。
 それをレシーブして起こし、イクラクンにも脱ぐよう要求する。
 イクラクンは手をふにふにと動かし、足をぽてぽて動かしたが、裸になる気配はない。
「四肢が短くて脱げないよ」
「だろうねぇ」
 生暖かい表情で納得したカリユが、イクラクンを万歳させてマントとローブとカボチャズボンを脱がしてやった。
 ――ローブの下からは、同じ柄のローブが出てきた。
 ふにっと首を傾げ、さらに剥いてやる。
「あーれー」
 無表情に恥ずかしがるイクラクンだが、ローブの下にまたローブを着ていた。
 脱がす。ローブ。
 ひん剥く。ローブ。
 ひっぺがす。ローブ。
 脱がすたびに総量が減り、イクラクンはじわじわ小さくなっていく。
「親類に玉ねぎは?」
「あいにく天涯孤独の身でね」
「うーん」
 イクラクンのローブの胸元に手を突っ込む。
 ぎゃーと叫ぶイクラクンは無視してまさぐると、そこにはお肌の感触と体温が感じられた。
「もう一皮だよイクラクン!」
「だといいけどねぇ」
 カリユはローブをビリビリ破り捨てる。
 中からは新品のローブが姿を現した。
65逆から読むと百合か 5/6:2010/02/02(火) 20:28:28 ID:FDuxLiK+
「どういうこと!?」
「逆ギレされても」
「いや、これは割と正当なキレだと我ながら思うよ」
 覚悟を決めて裸をさらしたというのに相手は皮ばかりの玉ねぎだったのだ。涙も出ない。
 腰ほどの身長になったイクラクンと、同じぐらい積もったローブを見て、
カリユとイクラクンは揃って耳をふんにゃり垂らした。
「一体どうすれば…」
「話は聞かせてもらいました」
 ロッカーがバターンと開いて中から桃姫さんが出てきた。
 きゃっ、とカリユがお胸を手で隠し、イクラクンがぴょんぴょん跳ねて下半身を隠す。
「な、なんで桃姫さんがここに!?」
「私尿意を催しまして、酔ってトイレと間違えてロッカーに入って用を足してそのまま寝ていた次第です」
「ロッ」
「ご心配には及びません。こんなこともあろうかとオムツを穿いていました」
「さすが桃姫さん」
「それほどでも」
 頬に手を当て、得意げにしっとり微笑む。
「聞けば何やらお困りの様子。私がそのローブを何とかいたしましょう」
「おお」
 二人は感動して耳をぱたぱたはためかせる。可愛い。
 桃姫さんは純白の大きな布をローブの山に被せると、凛とした声で歌った。
「1、2、3、はいっ!」
 鋭く布を引き抜く。
 ローブの山があった場所には、ハーフサイズのイクラクンがぽってり座っていた。
 カリユと元からいたイクラクンは耳をビビビと振動させて驚く。
 それを見て桃姫さんはふふふと笑い、「それではごゆっくり」と会釈した。
 カリユが反射的に「ゆっくりしていってね!」と返す間に、
桃姫さんは元扉の壁をリクエスト「開けゴマ」でこじ開けて退室した。
 後には可愛いカリユと、鼻先を突き合わせる同サイズのイクラクン×2が残された。
「わ、ダブルイクラちゃん」
 カリユが今さら突っ込むと、イクラクン達は一糸乱れぬ動きで激怒した。
「「ボクら、イクラちゃんじゃなくてイクラクン様だよっ」」
 猛然と体当たりしてくる二人を高い高いすると、ビリヤードのようにぶつかって
複雑な軌道でぽよんぽよんと跳ね回った末に元いた位置に落下した。
「落ち着いた?」
「「おうよ」」
 本気で惚れてしまいそうな愛らしさだった。
66逆から読むと百合か 6/6:2010/02/02(火) 20:29:58 ID:FDuxLiK+
「なんかもう立ったままどころか服着たまま3人でやらない?」
「ワイルドだねカリユ」
「ふふん」
 得意げにかりゆは仕事着を再装着する。
 そしてぺたんと正座してイクラクンどもの目線に合わせる。
「それではふつつかものですがよろしくお願いします」
「「します」」
「それで、気持ちいいとこってどこだろうね」
「ボクは耳だと思う」
「ボクも耳だと思う」
「なるほどなー」
 ぴんと立った耳をピコピコ動かす。
「それではエビフライの盟約に基づき、私とイクラクンの百合的な性行為を始めます」
「「始めます」」
 頭頂部を向け合い、3人は柔らかで敏感なルシェ耳をぴっとりくっつけた。
「ふわ、くすぐったい」
「我慢だよカリユ、初めては苦しいって聞くし」
「あー、でもふかふかだねー。気持ちいー」
「ふかー」
「ふかー」
 3人は安らいだ表情で耳をふかふかと擦り付け合う。
 ふかふかふかふかふかふか。
 ピコッ。
 ふかふかふかふかふかふか。
 ピコピコッ。
「極楽極楽」
「イクラクイクラク」
「イクラちゃんイクラちゃん」
「「ボク(ry」」
「わわわ、激しいよイクラクンっ」
 ふかふかふかふかふかふか!
 ピコッ!
 3人の理性をかなぐり捨てた百合的な性行為は激しく続いていく。
 夜はまだ長い。
 カリユを探しに来たマスターが、サボりウェイトレスに減給を言い渡すまでこの狂気の愛撫合戦は続くだろう。
 ふかふかふかふかふかふか。
 ふかふかふかふかふかふか。
 かりゆぅぅぅぅぅぅぅぅぅ
67名無しさん@ピンキー:2010/02/02(火) 20:31:40 ID:FDuxLiK+
携帯ゆえ改行ミスなどありましたらすいません。
68名無しさん@ピンキー:2010/02/02(火) 20:51:09 ID:r9xZqiHy
>36
しっとり読ませてもらいました。ナイトの細やかな心の揺れとエロ美味しすぎる

>60
テンポいい、可愛い、大好きです。規制に負けないでー
69名無しさん@ピンキー:2010/02/02(火) 22:44:32 ID:xvMlIm3k
>>60
キャラスレに規制でこれないとは・・・。かりゆぅぅぅぅぅぅぅぅぅ
70名無しさん@ピンキー:2010/02/03(水) 00:37:47 ID:ovT0j3kY
かりゆぅぅぅぅぅぅぅぅ
71名無しさん@ピンキー:2010/02/03(水) 13:13:15 ID:xT+yaRw0
かりゆぅぅぅぅぅぅぅぅ
72名無しさん@ピンキー:2010/02/04(木) 05:26:03 ID:h/kbX1Mh
来た!かりゆぅぅぅぅぅぅぅぅぅの人だ!
こっちで楽しみつつキャラスレも適度に保守しながら帰ってくるのをのんびり待ってるから、
エロパロでもゆっくりしていってね!
73名無しさん@ピンキー:2010/02/04(木) 05:42:41 ID:h/kbX1Mh
一通り読んでみると、今までのかりゆぅぅぅぅぅぅぅぅぅの人ネタよりもセリフというかキャラ間のやりとりが多めで、
氏の中でのキャラクターの関係や口調など、イメージのいくつかを改めて知る事ができたような気がする
ほんのりとエロスを感じる描写もあって、なんかこう、新鮮な気分がしたな
同じ人の書き物でもスレが変わるとやっぱりどこか変わる所もあるのかねぇ…

と、エロがほとんど関係ない感想になってしまったがそんな印象
74名無しさん@ピンキー:2010/02/04(木) 12:42:43 ID:DTDxy231
かりゆぅぅぅぅぅぅぅぅ
75名無しさん@ピンキー:2010/02/12(金) 20:26:46 ID:UNffJkZG
規制が解けたとキャラスレ用に書いたら一時間前に再規制されてたんだお…
でも18禁シーンがないからPINKにも載せられないんだお…
だから付け焼き刃で18禁にするお!

注記
・ギャグです
・キャラスレ用ゆえ行頭1マス空けもサボっています
・1レス目の下から2行目が18禁なので18歳未満の方はそこだけ読み飛ばしてください

登場人物
・ハルカラにゃん:とあるギルドのルシェファイター。肉食獣系女子。
 端的に言って武器を使える猛獣。
・ビリッチ:とあるギルドのツインテールナイト。のんびり屋。
 ツインテールというエビっぽい髪型な上に名前がエビチリっぽいのでカリユに狙われる。
・モルモルさん:とあるギルドの黄ヒーラー。ちっちゃい。
 とてもちっちゃい。時々さらにちっちゃい。
・ポニテローグ:とあるギルドの青髪ローグ。むっちりした腿が性感帯。
 この上の行も18禁なので18歳未満の方はそこだけ読み飛ばしてくださいました。

登場人物以外
・ナムナ:コーンコーン。
76スーパーカリユカートDS 1/2:2010/02/12(金) 20:30:22 ID:UNffJkZG
せっせと働く可愛い看板娘のおかげで、六花亭は今日も無事つぶれることなく閉店時間を迎えられた。
ランチ営業をしていることもあり、周りの酒場より多少早い。
可愛いカリユはカウンターで酔い潰れている可愛い鬱姫をギルドハウス直行の可愛いダストシュートに放り込み、
店の東西南北に鎮座する4イクラクンを回収して段ボールに詰めて1イクラクンに戻した。
「「「「ボク、段ボールっ子じゃないよっ」」」」
ぷりぷり怒るイクラクンの声はまだ四重だ。
その鼻先にかりゆの指先がピッと突きつけられる。
「イクラクンクンイクラクン〜」
そう唱えながら指をくるくる回すと、視線で追いかけて顔を回したイクラクンはふにゅっと寝入った。
段ボールを閉めてガムテープでよく巻いてダストシュートに投げ込む。
あとは食器を片付け、テーブルを拭き、床を掃いて、お冷やだけで居座る客を追い出せばお仕事終了だ。
ふきふきはきはきなむなむ。終了した。
「お疲れさん、もう上がっていいぜ」
マスターが投げたエビフライを桜の唇でちゅっと受け止め、はむはむと召し上がった。
美味しさのあまり震えが走った。
「エビフライー!」
駆け巡る衝動のままに、かりゆは頭からぴょこーんとダストシュートに飛び込んだ!
滑る!
剥き出しのお腹に金属の内壁が冷たいが、おしぼりを装備することで事なきを得た。
ぴしっと四肢を伸ばし、ルシェ耳をたたんで空気抵抗を減らした高機動モードでカリユはぎゅんぎゅん加速する。
前方に光が見えた。出口だ。抜ける。
カリユはキリッとした表情でお得意様のギルドハウス内に発射された。
出口近くのベッドで睡眠薬を瓶ごと飲もうとしていた鬱姫を弾き飛ばす。
ビリッチはカリユを視認するや否や髪をポニーテールに結い直したが、真っ直ぐ自分に飛んでくるかりゆを見て卒倒。
倒れることで進路から避けたビリッチの額に優しいカリユはおしぼりを投げてやり、
超執刀で回り込んでかりゆ唇の通過地点へ唇を突き出す赤平さんに耳をビビビとして戦慄。
たまたま空中をぽてぽて歩いていたイクラクンに衝突し、弾力で斜め45度に吹き飛ぶ。
天井からポニテビリッチの命を狙うポニテローグの柔らかい太ももで減速と方向転換と腿キス。
――ポニテローグはカリユの巧みな腿への口唇愛撫に秘裂を潤わせ、性的絶頂を迎えた――
そしてカリユは重力加速に身を委ね、直下に設置されたカリユトロッコにパイルダーオンするのだった…!
77スーパーカリユカートDS 2/2:2010/02/12(金) 20:32:36 ID:UNffJkZG
絶妙な傾斜で設置されたカリユトロッコは、搭乗者の重みを得ることで転がり始める。
背面に、衝突事故の慰謝アブラゲを要求するイクラクンが体当たりすることで加速。
「ゆっくりしていってねぇー…」
ドップラー効果で低くなっていく挨拶を残し、カリユトロッコは玄関から飛び出した。
道にびっしり詰まったドラゴン達を速度という名の暴力で弾き飛ばし、かりゆはただ前を見据える。
トロッコの中でお行儀よく正座するかりゆ可愛いよかりゆ。
どんどん入る経験値で順当にオートレベルアップすることでカリユトロッコの速さは増していく。
おっと、前方の噴水広場に人影が。
ドラゴンの群れ相手に無双するハルカラにゃんだ。
そのピンクの髪にはぎゅっと目を瞑ったちんまりモルモルさんが掴まっている。
ハルカラにゃんはドラゴンをちぎっては食い、ちぎっては食いの大暴れだ。
モルモルさん的にはそのおこぼれの経験値でレベルを上げ身長を伸ばすつもりなのだが、
あいにくハルカラにゃんは存在そのものがニフラムなので経験値は入らない。
もう2mぐらいになったかなーとモルモルさんがちらりと目を開けると、
ゆらゆら耳を揺らすカリユがトロッコに乗って爆走して接近していた。
「来た! かりゆだ!」
モルルンが嬉しそうにぴょんぴょん跳ねると、ハルカラにゃんはくわえていたドラグ笹身を飲み込み、カリユに目を向けた。
「ニク…」
ハルカラにゃんの体躯がシュバッと宙を舞う。
その鋭牙が狙うはカリユのふかふかした谷間! に! 挟まった! エビフライである。
しかしそれを許すかりゆではない。
ルシェ耳でバサッと羽ばたくと、ぴょこーんとトロッコから跳躍した。
加速に従いカリユは斜め前方へ飛ぶ。
着地点はカリユ家の屋根、綿でできた箇所だ。
もふーっと屋根を突き破ったカリユは自分の部屋のベッドの上に見事着地してガッツポーズを取った。
起き出したマクラクンがパチパチと拍手してすぐに枕カバーに帰った。
カリユは意気揚々と机に向かうと、かりゆ日記にペンを走らせた。
『○月×日 ていうかどうしてお得意様の家にトロッコがあるんですか? 意味が分からないです』
耳はビビビと震え、半べそをかいて全身は脂汗でぺとぺとなカリユ可愛いよカリユ。
谷間から抜いたエビフライはほんのりしょっぱく湿気っていた。
かりゆぅぅぅぅぅぅぅぅぅ
78名無しさん@ピンキー:2010/02/12(金) 22:50:31 ID:OvWCjtpa
かりゆぅぅぅぅぅぅぅぅぅ
79名無しさん@ピンキー:2010/02/13(土) 00:36:28 ID:HM0Z/YyK
相変わらずわけわかめw
かりゆぅぅぅぅぅぅぅぅぅ
80名無しさん@ピンキー:2010/02/13(土) 09:32:11 ID:UT44kKn0
>お冷やだけで居座る客を追い出せばお仕事終了だ。
>なむなむ。

なむなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
81名無しさん@ピンキー:2010/02/13(土) 14:37:51 ID:M4LP2oHr
ポニテローグのゴリ押し18禁描写がにんともかんとも
82名無しさん@ピンキー:2010/02/13(土) 22:13:33 ID:JGWWoR0G
さすが、エロパロ板だけあって、18禁描写もハンパないぜ!

ところで、モルモルさんのちっちゃい属性がどこから来たのかが気になる。
83名無しさん@ピンキー:2010/02/14(日) 15:22:28 ID:FbNgAoBK
>>82
「モル」モット
ってことなんじゃね?
時々「ちゅー」とか言ってるし
84名無しさん@ピンキー:2010/02/14(日) 16:49:40 ID:PEP3DMvE
>>82
幼めで小柄っぽい印象なのがイクラクンとの兼ね合いと悪のりで更にちんまりと。
85名無しさん@ピンキー:2010/02/18(木) 19:36:51 ID:tteR8sk7
かりゆぅぅぅぅぅぅぅぅぅ
86名無しさん@ピンキー:2010/02/24(水) 19:13:10 ID:Qnm9+EOR
注記
・ギャグです
・やや百合です
・チビキャラを含みます
・チビキャラTALKの名前と、職業名による俗称が混在します
・規制が解けたのは3日間でした

参考用語
・グドン(怪獣):ツインテールを食べるという設定の怪獣。劇中では殺害はしたが補食はしていない。
・ツインテール(怪獣):エビの味がする怪獣。
・ツインテール(髪型):ギザミシックルともいう。エビの味がする髪型。
・グドン(髪型):ありません。

登場人物
・ジェリコさん:とあるギルドのルシェヒーラー。とても胡散臭い。

人物
・ナムナ:ござるござる。
87美味ッチの憂鬱 1/6:2010/02/24(水) 19:14:30 ID:Qnm9+EOR
 世界一ハントマンの人口密度が高いと謳われるカザンの酒場、六花亭。
 そこでは昼も夜もなくハントマン達が飲み、騒ぎ、キザなマスターが作る絶品料理に舌鼓を打っている。

 なんとも騒がしい酒場に、一人の鬱病のプリンセスがいた。
「むなしい鬱…」
 などといつも通り呟き、飲み干した杯をちるちると舐める。
 ぴったりと静電気で額に張り付いた前髪が今日の鬱の原因だろう。
 この季節になると静電気まみれになり、鬱姫的には不快の極みだ。
 ぴょこーん、と突然鬱姫が垂直に全力跳躍した。
 このままでは天井にぶつかり細い首がへし折れるだろう。
「。」
 ようやく鬱から解放されると思った鬱姫の脳天は、何かとても柔らかいものに弾かれた。
 自殺行動を見越して天井にへばりついていた赤平さんの豊かなお胸だ。
 鬱姫は苦笑すると、跳躍の速度のまま床に射出された。
 床を突き破り、ズボッとうまいこと首までハマった。
「晒し首鬱…」
 ほろほろと涙していると、天井から舞い降りた赤平さんが鬱姫の席に座り、鬱姫の舐めた杯を大事に大事に舐めた。
 鬱姫がにゃーにゃー鳴いて抗議すると、赤平さんの変態アイがそちらに向いた。
 赤平さんは動けない鬱姫にいたく興奮し、手指を舐めさせたり足指を舐めさせたり、
酒を口移ししたり、採取した唾液を顕微鏡でじっくり観察したりと凌辱の限りを尽くした。
 鬱姫はやや躁になってに゙ゃーに゙ゃー鳴いた。

 暴れる客が立てる埃を除去するのがイクラクンのバイトだ。
 店の壁にかかった巾着袋の中でむにゃむにゃと眠り、出番が来るとかりゆが取り出す。
 眠そうなイクラクンをカリユが宙に放ると、一瞬で目覚めてショックヴェイルをまとう。
 そしてムササビのようにマントで滑空し、店内をふかふかと横切るのだ。
 すると静電気で埃を吸着し、進路上の空気を見事に浄化する。
 そして反対の壁際にあるイクラクンバケツに着水して体を洗い、フレイムヴェイルで乾かす。
 そして壁をトコトコ歩き、そちら側にもかかっている巾着袋の中に入ってふにゅっと眠るのだ。
 一回あたり油揚げを一枚支給される破格のバイトである。
88美味ッチの憂鬱 2/6:2010/02/24(水) 19:16:01 ID:Qnm9+EOR
「ニク…」
 奥のテーブルではハルカラにゃんがルシェ耳をピコピコしながらマンガ肉を貪っていた。
 大皿の上にレジャーシートを敷いて座っている小さな小さなモルモルさんが野菜を奨めると、
肉の中に生の人参やキュウリをねじ込んでバリボリと貪っている。
 モルモルさんはレジャーシートごとずりずりと皿の上を移動し、自分と同じぐらいにカットされたトマトを頂いた。
 ぷしっとトマト汁が飛んで目を直撃し、「狙撃です! 目をやられました!」とギルドに危険を知らせる。
 が、その声は体に比例して小さく、一部始終を見てケタケタと笑うハルカラにゃんにしか聞こえなかった。
 視界が真っ赤です! 誰か! 誰か医者をー!
 ケタケタ。

 モルモルさんがお冷やのコップに飛び込んで顔を洗った頃、ハルカラにゃんとカリユはジェリコさんのお話を聞いていた。
 ジェリコさんは思慮深そうに目を閉じ、エビの姿焼きを愛用のメスで丁寧にカットしている。
「ですので、ツインテールというドラゴンはそれはそれは美味しいエビの味がするそうですよ」
「うんうん」
「ニク…」
 カリユとハルカラにゃんは涎を垂らしてふかふか頷く。
 ジェリコさんはより細かく、ミリ単位以下でエビを切り裂いていく。
「生きてないツインテールも美味ですが、生キタママノハ格別だそウですヨ」
 すっ、すっ、と縦に横に偏執的かつ異様な精密さでエビを切り裂く。
 紙より細く裁断される頃にはジェリコさんの息遣いは荒く、口調も地が出ていた。
「う、うん…」
「ニクぅ…」
 さすがのカリユとハルカラにゃんも引いて、耳をビビビと震わせる。
「イーッ!」
 ジェリコさんがおもむろにテーブルをばしーんと叩くと、ハルカリユにゃんはぴょんと跳ねた。
 微塵にされたエビの身がホロリと崩れ、切られなかった部分だけが残る。
 そこには青い帽子を被った雪だるまの像がヒーホー!と立っていた。
 さすがジェリコさん、メーカーのマスコットを仕立てるとは営業活動に余念がない。
「オ、ナイスデザイン」
 ジェリコさんは穏やかに笑い、エビの破片をドレーンで吸って食べた。
 美味だったそうだ。
89美味ッチの憂鬱 3/6:2010/02/24(水) 19:17:26 ID:Qnm9+EOR
 ツインテールの神話を聞いてから、カリユは髪型をツインテールに変えて仕事を再開した。可愛い。
 だが皿を運んだりイクラクンをぶん投げたりするうちにその表情は曇っていく。
「お腹空きました」
 カリユはハルカラにゃんにしょんぼりと弱音を吐く。
「ちゃんとご飯が食べたいです」
「ニク…」
 こっそり漫画肉にかぶりつこうとしていたカリユの柔らかほっぺをぐいぐいと押しのける。
 そして、自分がエビ味ツインテールになっても自分を食べられるわけじゃないという旨を伝える。
 うっかりゆはピコーンと耳を立てて驚く。
「そうでした! お腹空きました」
 ハルカラにゃんは犬歯を見せて嘲笑う。
「でもそう言うハルカラにゃんだってツインテールになってます」
「ニク…」
 ハルカラにゃんは苛立たしげに漫画骨を噛み砕いた。

 鬱姫が口の中を隅々まで触診され、イクラクンが油揚げの夢を見、モルモルさんがドレッシングの上に転んだ頃。
 入口が開き、また一人ハントマンが入店した。
「いらっしゃい! ゆっくりしていっ…!?」
 元気な挨拶が身上のかりゆが絶句した。
 そこにいたのは鉄壁の鎧に身を包んだ金髪のツインテール。
 その名もビリッチだった。
 あまりのツインテールっぷりにカリユが絶句した時にはもう、
ハルカラにゃんが視線も向けないまま斧を降り下ろしていた。
 明らかに天井よりでかい斧が店の奥から入り口までを両断する。
 が、ビリッチはかっこよく盾を構えてそれを受け止めていた。
 自信満々な表情が可愛い。
 ハルカラにゃんはチッと舌打ちをして斧を捨てると、そこで初めてビリッチを見て、
にゃんにゃん喜んでテーブルに誘った。二人はギルド内でも仲良しなのだ。
 アホの子なのか日常茶飯事なのか、ビリッチは緩い笑顔でぽてぽてとハルカラにゃんの席に向かう。
 ガリッ。
 その背中に可愛いカリユが飛び付いてかじった。
 ビリッチは手をじたばたして慌てるが、幸いカリユの歯は鎧を貫くことはできなかった。
「一匹様ですか? ゆっくりしていってね!」
 歯の通る部分がないか撫で回しながらカリユが笑顔を向ける。
 もうお客として扱っていいのかエビとして扱っていいのか錯乱している模様だ。
 ビリッチは疑問符をいっぱい浮かべながらもハルカラにゃんの隣に座った。
 ガリッ。
 ハルカラにゃんも肩に噛みついた。
 じたばた。
90美味ッチの憂鬱 4/6:2010/02/24(水) 19:19:29 ID:Qnm9+EOR
 ふんふんと鼻を鳴らしてエビの香りを楽しみながらカリユ達はビリッチの弱点を模索する。
 ツインテールな頭部が剥き出しかと思いきや、ドット絵的に露出して見えるだけで
実際には兜でがっちりガードしている。
 ハルカラにゃんは今日の戦果について談笑しながら、かりゆはお奨めメニューについて語りながらくんくんかみかみする。
 ビリッチがおずおずとエビフライを注文すると、カリユは何やら思案げに頷き、
「エビ濃度が高まるかも…」
 と呟いてオーダーを禿に伝えに行った。
「ニク…」
 ハルカラにゃんもさすがの鉄壁ビリッチに顎が疲れたのか、堅パンをかじって休息をとった。
 ビリッチはようやく餓鬼地獄から解放され、つきだしのキュウリをパリポリかじる。
 美味しかった。

 その頃、唇と舌と口腔粘膜を弄くられることに耐えかねた鬱姫が落葉金切りで自傷を始めた。
 こいつはいかんと赤平さんは鬱姫を引っこ抜きその矮躯をカウンターに横たえて緊縛、
「緊急オペを開始するわ!」
 とかっこよくポーズを取った。
 ほっぺが切れただけの鬱姫は涙目で首を振るが、赤平さんは自傷癖がキラル反応の増大によるものと患者に説明。
 手術開始。
 超執刀による高速機動で鬱姫の周りを旋回して翻弄しながらべたべた触りに触る。
 切開を行わない呪術的処置だというが、実際手術後の鬱姫は血色良く恍惚としていたので適切だったのだろう。
 
 カリユ的にはこの公開手術プレイは日常茶飯事なのでスルーし、赤平さんの気持ち悪い加速による埃だけ気にした。
 巾着で眠るイクラクンをもふっと取り出し、手の上で転がして起こす。
「イクラちゃん、お願いね」
「ボク、イクラちゃんじゃなくてイクラクンらしいよ…?」
 寝起きで前後不覚のイクラクンは、自信なさげにそう言ってる間に放り投げられた。
 マントが広がりふかっと滑空。眠たくてもショックヴェイルに曇りなし。
 赤平さんの立てた埃を吸着し、イクラクンはハルカラにゃんの側のバケツにとぷんと着水した。
 ぴょいと飛び上がった先はビリッチの肩アーマー。
 微笑ましそうに見守るビリッチの上でイクラクンは発熱して水分を飛ばした。
 鎧がじゅーっと熱くなる。
 すかさずハルカラにゃんが懐から出した卵を反対側の肩に割ると、すぐに目玉焼きになった。
 ビリッチは「ふぅ、暑い暑い」とのんびりっち鎧を脱いだ。 鎧を、脱いだ。
91美味ッチの憂鬱 5/6:2010/02/24(水) 19:21:28 ID:Qnm9+EOR
 かりゆがぴょこーんと跳躍してビリッチの前のテーブルに着地。
 衝撃でモルモルさんが「ちゅーっ!」と飛んで赤平さんの襟首にすぽっと収まった。
 首の後ろにハムスターが入ってヒゲでこちょこちょされたかのような絶望的なくすぐったさに襲われ、赤平さんは死んだ。
 それはともかく、キャミソールに裸足という涼しい姿になったビリッチは、
舞い降りたカリユと、目玉焼きを食べ終えたハルカラにゃんにじーっと見つめられた。
 恥ずかしくなって空き皿を盾のように構えてみたが、それがまずかった。
 もはや二人のエビイーターには皿の上のエビとしか映らない。
 テーブルの上で四つん這いになったカリユはすぐさまビリッチの唇を奪い、中のエキスをじゅるりと吸った。
「〜〜!」
 赤くなるビリッチに対し、カリユは「新鮮ないいお味です」と好意的な評価をくだした。
「ニク…」
 すかさずハルカラにゃんがビリッチの耳たぶを甘噛みし、その稜線を舌先でなぞる。
 喉奥に甘い声をくぐもらせ、ビクンと跳ねたビリッチの姿に、ハルカリユにゃん達は同じ感想を抱いた、
 エビ反り、と。
 早くも呼吸を乱すビリッチを、二人はテーブルの上に寝かせた。
 手術の気配に赤平さんが蘇り、「医者は必要かしら?」と気取って言ったが、
突っ込みどころか一瞥すら頂けず、泣きながら超失踪した。うだつの上がらない神医だ。
 鎧でたっぷりと汗ばんだビリッチの滑らかな柔肌を、二人のルシェは隅々までくんかくんかと調査する。
 二人の嗅覚では、ツインテール娘の匂いは上質なエビの香りと認識されている。
 ビリッチは真っ赤になってじたばたするが、盾と鎧を外したナイトなどウェイトレスにも勝てない。
 それどころか朱に染まった肌が茹で上がったエビを彷彿とさせ、二人を興奮させる。
 カリユは足の指、ハルカラにゃんは腋のくぼみが他より濃厚で特に気に入ったらしく、それぞれ舌で味わっている。
「ニク…」
「エビ…」
「あぅぅ」
 ビリッチは息も絶え絶えに、敏感かつ羞恥を煽る箇所への責めに断続的に体を震わせる。
 時に醤油を垂らされ、時に胡麻油を塗りたくられ、そこをまた丁寧に舌で拭われる。
 甘噛みを交えながらのツインテール味見会は尚も進み、上は胸部を守る脂肪、下は太ももの付け根へと侵攻していった。
92美味ッチの憂鬱 6/6:2010/02/24(水) 19:23:19 ID:Qnm9+EOR
 最早まな板の上のエビであるビリッチは、味わわれる恐怖と羞恥の奥に微かな悦楽を感じ始めていた。
 どうやら補食されることはないようだ。
 それならば普段は友好的な二人に身を委ねるのもいいのではないか、と。
 その時、甲冑に身を包んだ母の言葉を思い出す。
『ビリッチ。あなたが体を委ねてもいいと思える人に会えたなら、鎧を脱いでやや俯き気味にツインテールを解きなさい』
 パパもそれでイチコロでした――
 ビリッチはそっと斜め下、キャミソールに酢醤油が染みたあたりを見つめ、自由な右手で自慢のツインテールを解いた。
 効果はてきめんだった。
 夢中でビリッチ汁を味わっていた二人がぽかんと呆けた表情でビリッチの顔を見ている。
「ビリッチさん! ビリッチさん! こんな卑猥な格好、誰にさせられたんです!?」
「ヤサイ!」
 カリユがとても心配そうに詰め寄り、ハルカラにゃんも珍しい怒りの言葉を吐いている。
「えぅ?」
 ストレートビリッチは上がった息を整えながら首を傾げる。
 ツインテールなき者に荒くれルシェの欲望は向けられない。
 戸惑うビリッチをよそに二人はまだ見ぬ強姦魔に憤る。
「こんな人気の多い場所で許されない蛮行だわ! そんな人、エビフライ禁止でも生ぬるいよ!」
「スベスベマンジュウガニ!」
 ハルカラにゃんも同意する。
 マスターは客たちと共に深く頷くと、一枚の張り紙をしたためた。
『カリユとハルカラにゃん。以上の者達に一切のエビフライを禁ず』
「ひ、ひどいですマスター! 私達が何をしたって言うんですか!」
「何ってまぁ、概ね全部」
 ビリッチにお詫びのサービスエビフライを差し出し、マスターが頭を掻く。
 かりゆとハルカラにゃんは抱き合ってわんわんにゃんにゃん泣き、
唾液まみれのビリッチはエビフライの美味しさに幸せそうにふにっと笑う。
 イクラクンは巾着袋から頭だけ出して、くわえた油揚げをもはもは食べている。
 泣くカリユ達にエビフライをお裾分けしようとしたが、マスターが「そいつはいけませんぜ」と制止する。
 ビリッチはそうなの?と首を傾げ、思い出したように髪をツインテールに結い直す。
 やはりこれでないと落ち着かない。
「エビ…」
「エビ…」
 ビリッチの頭に二条の尻尾が生えた瞬間、抱き合っていた二人がぐるりとそちらを見た。
 かりゆぅぅぅぅぅぅぅぅぅ
93名無しさん@ピンキー:2010/02/24(水) 20:56:11 ID:HuFNLsVC
さすがかりゆぅぅぅぅぅぅぅぅぅの人
相変わらずのぶっとびっぷり
ナムナいないと思ったらいたし…

でもナナドラはSEGAでヒーホーはATLUSじゃ(^-^;
94名無しさん@ピンキー:2010/02/24(水) 23:14:15 ID:7qF0ZidB
相変わらず冴えててGJです大好きです

>ヒーホーはATLUS
 >93が指摘するまで気づかなかった
95名無しさん@ピンキー:2010/02/26(金) 00:30:09 ID:nv/BaxZb
 な
 む
 な
 ぴ
 こ
 ぴ
 こ
 。

なむなー!なむなー!
96名無しさん@ピンキー:2010/02/27(土) 23:44:28 ID:txfuvvLh
ぅぅぅ
97名無しさん@ピンキー:2010/03/03(水) 22:58:06 ID:/LbX1OzA
ビリッチのいたぶられっぷりが普通にエロい。ビリッチ可愛いよビリッチ。
98【冒険者No.261】:2010/03/09(火) 06:19:35 ID:zlrLqlrQ
 遅れてごめんなさい。
 ※注意!
 この作品には狂気が含まれてます。嫌な方は回れ右。最後の方に補足入れますので
( ゚Д゚)「何か続いとるからあらすじだけ知りたい」
と言う方は最後の方をご覧下さい。
 では、ちょっとしたあらすじ。
◇空腹ルシェ店員さんとアイゼンの青年のお話。
 
◇ちょっとした手違いで振られた誤解した青年は自暴自棄のまま旅へ
 
◇主人公メンバー(名称不明)は誤解を解きたいルシェ店員のクエストにより、青年を追う。
 
◇途中、リタ達と再会したり、ルシェ店員の悲惨な過去を聞いている内に彼に追いつく。その場所はヒューロ氷洞。
 
◇中に入るも、フロワロにより、狂気へとはしるルシェ店員。そこへ現る魔物と化した青年。
 
◇果たして、主人公達はどうなるのか!
 
◇エロ無し、続く。ごめんなさい。
 
 では、どうぞ。
99【冒険者No.261】:2010/03/09(火) 06:20:24 ID:zlrLqlrQ
 
◆◆◆
 
 彼女は消えた。
 何も、私に告げずに消えてしまった。
 何故なんだ?
 私は泣きたくなった。怒りにも似たその悲しみは、誰が知ることもなく、すぐ消え失せた。しかし、その問いが消えることは、生涯無いだろう。
 何故彼女は消えた? 何故彼女は私に何も言わずに? 何故彼女は――?
 私は彼女を探すために冒険者として、家を出た。表向きは家の名声を高める為として。
 しかし、彼女は見つからなかった。ありとあらゆる王国や村で彼女を探したが、手がかり一つ見つけることすら出来なかった。
 諦めよう――。一生を誓った仲でもないのに、いつまでも女の影を追いかける、己の何と女々しい事か。そう叫び始める自分がいた。
 
「あの……何か、買ってくれますか?」
 
 そんな時、彼女と出会った。
 似ていた。いや、似ているなんてモノじゃない。彼女だ。私の本能が叫んでいた。
 頭のどこかで違うんじゃないかと、冷静に言っている自分がいたが、はやる心を抑えきれずに、しかし、怪しまれないよう、彼女にそれとなく聞いた。
 
「……? いえ……私は幼い頃から、ずっとこの街に住んでいますが……どうしてそんな事を……?」
 
 その言葉に、私はガッカリすると同時に、ホッと溜め息をつきながらまたそれとなく返した。
 ――何だ。やはり自分はこの程度か。そんな自嘲気味な考えを浮かべながら、もし彼女であったらどうしようかと心配していた自分に渇を入れた。
 ――彼女を見分ける事すら出来ないのに、有り得ない未来を心配するな。と。
 
 それから私は、彼女の下へ何度も通った。
 『彼女』に似ていた事もあってか、妙に庇護欲をそそられる彼女に、私は親愛の情を持ち始めていた。
 それが、恋愛へと変わったのは、それから幾月経ってからか。
 『彼女』へこだわるのは、止めにした。『彼女』には、『彼女』なりの事情があるのだろう。それに対して、きっと私に出来ることはない。
 寧ろ、邪魔になるだけだろう。そう考える事にした。
 その事を彼女に話したら、こう言ってくれた。
「そんな事! あ、あの……そんな事、ありません……きっと、その人は……貴方にとって、迷惑をかけるから、消えたんだと……すいません、勝手なこと言ってしまって……」
100【冒険者No.261】:2010/03/09(火) 06:23:08 ID:zlrLqlrQ
 私は純粋に嬉しかった。私如きに、こんなにも優しい言葉を言ってくれた彼女が、ただただ嬉しかった。
 そして、私は婚約を告げることに決めた。あんな親には――それでも我が親だ――ただ一方的に告げるだけで充分だろう。
 誰が反対したって構うものか。私はそう覚悟して、一旦アイゼンに戻る準備をする。
 何て言おうか? そうだ、確か×××××を――
 ……? あれ……? 何を貰ったんだっけ……?
 
「あの……これ……御守――して――良かっ――ど――」
 
 思い出せない……大切な――『×××××』と同じくら――大切――誰――誰だ――! 誰――!
 
 誰だ! 思い出せない! 誰なんだ! 私は誰に――何を――!
 
「×××××」
 
 誰――誰――誰――そうだ――×××××――綺麗に――しな――。
 
 
 
 
 
 
 ――血だ。
 
 
 
 ァ゙ア゙ァ゙ア゙ア゙ア゙ァ゙ア゙ア゙ァ゙ア゙ァ゙ア゙ア゙ア゙ァ゙ァ゙ア゙ァ゙ア゙ア゙ア゙ァ゙ア゙ア゙ァ゙ァ゙ア゙ア゙ア゙ァ゙!!
 血だ――! 駄目だ――! 汚い―― ! 駄目だ――! 嫌わ る――×××××に ――『×××××』 も――もう  会えな ――。
 洗 な  は― 。見られ  よう ――。 く洗わ くて ― 。
 
 
 
 
 ミタナ……?
 
 ミルナ……ミルナミルナミルナミルナミルナミルナミルナミルナミルナミルナミルナミルナッ!
 コロサナクテハ……! ダレニモ……ダレニモイウマエニッ! 
 ×××××ニ……! シラレナイヨウニ……ミラレナイヨウニッ……!
 コロスッ……! コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスッ!!
 シネシネシネシネシネシネシネシネシネシネェエエエエェエエエエ!!
 
 
 
 ……シンダ?
 ハハハッ……! ハハハハハハハハハハハハハハハハッ!! ハハハハハハハハハハハハッ!!
 ハハ……。
 
 
 
 …………………………………………………………………………………………………。
 
 
 
 ……×××××……オレヲ、ミナイデ……クレ……×××××……。×××××……タスケテ……クレ……。オレヲ……タスケテクレ……。
 イヤ……ダ……モウ、イヤダ……アイタイ……×××××……モウイチドダケデモ……アイタイッ……!
 
 
 
 
 ……ミタナ?
101【冒険者No.261】:2010/03/09(火) 06:23:42 ID:zlrLqlrQ
 
◆◆◆
 
「シネェエエエエェエエエエェエエエエェエエエエ!!」
 『彼』は、いや【ロスト】はそう叫びながら襲いかかってきた。
 力任せに振るう刀に込められる怨念は、洞窟内のフロワロさえも綺麗に見せた。
「攻撃が速いから気を付けてっ!」
 リタのアドバイスを背中に、彼らは最小限の動きでかわすと、すかさず隊列を組む。何であろうと、まず自分達は生き延びなければならない。リタ達を後ろに下げ、武器を構える。
 臨戦態勢の彼らを紅き目が、空気を切り裂かんばかりに睨み、叫んだ。
「ダレダ……! オレヲ……オレヲミルノハ……ミルナ……ミルナミルナミルナミルナミルナミルナッ! オレヲミルナァアアアアァアァアァアアアアッ!!」
 ロストは再び叫び、突進してくる。
 その速度は人間にしては異常であった。――人間にしては、だ。
 
 肉を切り裂き、骨が砕ける音がした。同時に、ロストは前のめりに倒れ伏す。
 ロストの足には、彼らからの斬撃の痕がいつの間にかあり、そこから噴水のように血が吹き出てくる。
「ァガッ……! ァアァアアァァァアアアアアアァアァアア!!」
 ロストは決して弱くない。寧ろ、一個小隊なら一瞬で潰せるほどに強い。
 それを相手に生きているリタ達もそれなりに強い。
 だが、相手が悪かった。
「つ、強い……」
「目の前でやられると……何だか自信なくすな……」
 今、ロストの目の前にいる四人は、数千の魔物を殺し、数百の竜を殺し、国を滅ぼす竜を殺し、闇に潜んだ竜を殺した、人類最強の四人。
 格が違う。次元が違う。『強さ』の意味が違う。
 この洞窟が修羅道ならば、まさしく彼ら以上に相応しい場所はない。
 彼らは言うなれば【阿修羅】。たかだか人以上の存在に、殺される人間ではない。
「ウグッ……! ァア! アァアアアアアアァアァアアァァアアア!! コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスッ!」
 必死に立ち上がろうとするロストだが、激痛がはしり、立てるどころではない。それどころか、徐々に足が変色し始めてくる。
 血が無くなり、その肌の色のみとなってきたのだ。洞窟内は氷点下であり、そう簡単に腐りはしないが、このままでは失血死してしまうだろう。
102【冒険者No.261】:2010/03/09(火) 06:24:17 ID:zlrLqlrQ
「ァアアァアァアァアアァアアァアァアァアア!! ミルナミルナミルナミルナミルナミルナミルナミルナミルナミルナミルナミルナミルナァアアァアァアァアアッ!」
「ちょ……ちょっと! 何か助ける策があるんじゃないの!? あのままだと死んじゃうわよっ!!」
 もはやロストの周りは血の海と化しているが、まだ意識がある。やはりフロワロによる身体変化があったのだろう。想像以上に人間よりも強靭になっており、あの程度では致命傷どころか万が一にも治癒してしまう可能性もある。
 リタ達がそれを知らずに声をあげるのも無理はない。
 しかし、彼らはそれを知りながらも、必死に今すぐ治してやりたい衝動を抑えていた。
「……何か、考えがあるのね?」
 その問いに、彼らは静かに頷いた。
 彼を戻す算段はある。それは、『生死の狭間から蘇らせる』――という賭にも似た方法だ。
 彼らの内一人が、この症状を仲間より知らされた時、ふと思い出したことがあった。
 それは三年前。発症者は自分達。
 
 ――三年間の、植物状態である。
 
 植物状態自体は、医学においてそう有ることではないが、珍しい事ではない。
 しかし、彼らの発症した原因は【フロワロ】である。
 そして目覚めた後に身についた特性。
 常人であれば、一日として保たないフロワロの毒に対して、まるで無いかのように平気でいられる【耐性】。
 姿形は変わっていなくても、その特異性には類似点がある。
 つまり、自分達も【ロスト化】していたのではないか――。
 
 そう考えてからは話は早かった。要は何も『ロスト化を消す』必要は無い。大事なのは『心身が変わってしまった原因を見つける』こと。
 自分達が助かった理由は何か。
 そして、彼らが変わってしまった理由は何か。
 彼らは一つの結論へと辿り着く。
 おそらく、『精神力』だろう。と。
 『彼』は自暴自棄の状態でここに来た。
 そして、おそらく、言動から察するに(“ミルナ”と言う言葉と明らかに彼の物ではない血にまみれた剣から)、【ロスト化】した人を何が何なのか分からずに殺してしまい、罪悪感から畜生への道へと歩んだのだろう。
 で、あれば。まず、その罪に取り憑かれた彼を一時期仮死状態にして、意識を無くす。
 その後、彼の想い人である彼女から『生きたい』という意識を与えながら蘇生を施す。
103【冒険者No.261】:2010/03/09(火) 06:24:53 ID:zlrLqlrQ
 素人考えではあるが、ロスト化の治療法はプレロマでさえ分からない。
 時間は、無い。これ以上彼のロスト化が進行して、本当の魔物に堕ちる前に、何とかして助けなくては。
 これが今彼らが出来る、最善にして唯一の方法なのだ。
「分かった……確かに、今はそれしか方法は無いわね……貴方達を信じるわ! じゃあ、あたし達は近づいてくる魔物がいたら追っ払うわ! エミリ! ハリス! もう回復したでしょ! 私達も少しは役に――あれ……?」
「ァア……ガ……ア……ァ……!」
 絶対に、成功させなくてはならない。彼のために。そして彼女のために。
「どうしたんですか……?」
「リーダー?」
「いない……」
 彼らは全集中力を彼と、自身に近づくまたは、狙ってる魔物はいないか。それだけに注いでいた。
「え? いないって……?」
「彼女が、いない……!? みんなっ!! っ! しまっ――!!」
 だからだろうか。
「駄目ですよ、彼を殺そうとしちゃ」
 彼らに気付かれないように移動していた彼女が、何処にいるのか気にも止めなかったのは。
「彼を殺していいのは――」
 彼らは気付くと同時に駆ける。彼女の手には、冷たく光る銀色のナイフ。
「彼のモノである――」
 距離は数字にして二メートル。だがたった二メートルが、長くとても長く。そして――
「私だけの――権利なんですからねぇ!」
「だめぇええええぇぇえええ!!」
 ――残酷で、冷たい壁に感じた。
 
 
 
「――コロ ス。ミタ モノ ハ コロス!」
 肉を食いちぎられる音が響く。
「あ……れ……?」
 骨が砕ける音が響く。
「あ……あぁっ! 止めて……止めてぇえええぇええ!!」
 彼女の手が、腕が、肩が、彼の口で、牙で、顎で――
 
 
 
「おか……しい……なぁ……私が、殺す筈なのに……」
 ―― 切り裂かれて、千切れていった。
104【冒険者No.261】:2010/03/09(火) 06:25:26 ID:zlrLqlrQ
 
◆◆◆
 
 私は消えた。
 何も、彼に告げずに消えてしまった。
 どうして?
 私は恨みたくなった。悲しみにも似たその怒りは、誰が知ることもなく、すぐ消え失せた。しかし、その問いが消えることは、生涯無いだろう。
 何故彼から消えなきゃいけないの? 何故彼と一緒に生きていけないの? 何故彼と――?
 私は彼から消えた後、商人の家に養子となった。表向きはアイゼンからの家出として。
 彼と分かれてから私はがむしゃらに働いた。彼の事を考えてしまうと、涙が止まらなくなってしまうから。
 諦めよう――。所詮は貴族と奴隷、いつまでも夢みたいな事を考える、己の何と幼い事だろう。そう自分に言い聞かせた。
 
「あ、あの……少し聞いてもいいですか? 昔……アイゼンに住んでいたりとか……して、いませんでしたか?」
 
 そんな時、彼と出会った。
 彼だ。かなり変わってしまったが、彼だ。彼なんだ。私の本能が叫んでいた。
 何か幻想を見ているんじゃないかと、冷静になろうとしている自分がいたが、心がドキドキとうるさくて、顔から火が出るんじゃないかと思い、必死にいつも通りに接しようと務めた。
 
「そう……ですか……あ、あの! その……用事が無くても会いに来て……いい、ですか……?」
 
 嘘をついた事に、彼はガッカリすると同時に、何故かホッと溜め息をつくと、そう提案してきた。
 ――何だ。やはり自分は彼にとってその程度なんだ。そんな自嘲気味な考えを浮かべながら、もし彼が私に気付いたらどうしようかと心配していた自分に渇を入れた。
 ――彼の隣にいることすら罪なのに、有り得ない未来を心配するな。と。
 
 それから私は、彼が来るのを何度も待った。
 きっと彼は『彼女』に似ているとか、そういう事で来ているのだろう。
 そう思うと、今までの悲しみが嘘みたいに消し飛んだ。
 彼から『大事な人』を探している事。
 しかし、それはその人にとって迷惑になるだけだろうからもう探すのは止めると言われた。
 私は、そんな事はない。と、偉そうに彼に言ってしまった。嫌われたかな……? そう思っていたら、彼はこう言ってくれた。
「ありがとう……そう言われると、少し気持ちが楽になったよ。ありがとう」
105【冒険者No.261】:2010/03/09(火) 06:26:44 ID:zlrLqlrQ
 私は純粋に嬉しかった。私如きに、こんなにも優しい言葉を言ってくれた彼が、ただただ嬉しかった。
 そして、私はこれからもひっそりとだが彼を助けることに決めた。きっとそうすれば、彼は私と、『彼女』ではない私を必要としてくれるから。
 ずるいなぁと、我ながら思う。でも、ちょっとくらいはいいよね?
 そうだ、×××××を作って――
 ……? あれ……? 何を作ったんだっけ……?
 
「ありがとう……御守――大事――使――」
 
 思い出せない……大切な――×××××との――大切――何――何――! 何――!
 
 何で!? 何で思い出せないの!? 私は……! 私は×××××に――何を――!
 
「×××××」
 
 そうだ――そうだ――×××××――に――謝ら――。
 
 
 
 
 
 ――×××××が――死ぬ?
 
 
 
 
 
 ァ゙ア゙ァ゙ア゙ア゙ア゙ァ゙ア゙ア゙ァ゙ア゙ァ゙ア゙ア゙ア゙ァ゙ァ゙ア゙ァ゙ア゙ア゙ア゙ァ゙ア゙ア゙ァ゙ァ゙ア゙ア゙ア゙ァ゙!!
 嫌だ――! 駄目――! ×××××が―― ! 嫌――! とられる――また ――×××××が――もう  会えな くなる――。 早 行  きゃ――。××××× また から消  前 ――。
 
 
 
 
 嫌……。
 
 ……嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だっ!
 もう嫌だ……! また……また失うのはもう、嫌……! 
 ×××××に……×××××に会えなくなるのはもう嫌だぁああああぁあああああ!!
 ……そうか。私が……殺せばいいんだ……そうだよね。私がとっちゃえばいいんだよね……ふふふ……なーんだ、簡単な事じゃない。
 
 
 
 ふふふ……あはははははははははは! もう誰も! そうよ、もう誰も! 私達を引き離せない……! だって私達は一つになるんだもん! あははははははははははははははははははははっ!!
 あはは……。
 
 
 
 …………………………………………………………………………………………………。
 
 
 
 ……×××××……私ね……もう、一人は嫌なの……×××××……。×××××……ねぇ……助けてよ……あの時みたいに……助けてよ……!
 ……一緒にいたいよ……×××××……一人に、しないでぇ……いるだけで、いいから……×××××……っ!
 
 
 
 
 助けて……っ!
106【冒険者No.261】:2010/03/09(火) 06:37:45 ID:zlrLqlrQ
 以上です。改行が多すぎますって初めて見た……。
 ちゃーんとハッピーエンドにします。
 誤解して欲しくないのは唯一点。
 
 最初はギャグにするつもりでしたっ!!
 
 これだけです。何か気付いたら修正出来なくなる程に……どこで選択肢間違えたんだろ……ほ、本当だよっ!
ヽ(;゚Д゚)ノシ
 
 では最後に今回の話をまとめてさようならノシ
 
 
 
◇彼を元に戻す……その為に一度仮死状態にしなくてはならない……後少し……! しかし、彼が殺されると思った彼女は「とられるぐらいなら……!」と彼を自らの手で殺そうとする。
 しかし、彼は突如として彼女へと牙を向けた……。
 
 次回へ続く。
107名無しさん@ピンキー:2010/03/09(火) 19:12:20 ID:JWsnHZgt
キャラが勝手に動いた結果ってやつか
続きを楽しみにしております
108名無しさん@ピンキー:2010/03/22(月) 08:41:14 ID:s5FToUL5
どう決着がつくのか…。楽しみにしてるよ!

さすがに1年たつと人少ないね。規制もあるだろうけど
自分も何か書いてみようかな
109名無しさん@ピンキー:2010/04/04(日) 21:34:33 ID:oEbfVLYo
職人さんがきたタイミングでバカみたいに長い規制とかひどすぎる
携帯から書き込めばいいと気付かなかった自分もアホだが
110名無しさん@ピンキー:2010/04/05(月) 14:59:05 ID:BxXvg8MO
携帯も規制に引っ掛かった奴がいてだな
111名無しさん@ピンキー:2010/04/20(火) 16:19:26 ID:NSM1Pz2Q
4レス目の下から3行目を見てわかる通り、最初からPINK想定で書いたものであり、
決して規制解除を喜びキャラスレ用に書いてる途中で再度規制されたものではありません。
112名無しさん@ピンキー:2010/04/20(火) 16:19:49 ID:NSM1Pz2Q
六花亭に衝撃走る――
というほどでもないが、また寝てる間にエビフライを食われた常連客が突っ伏してわんわん泣いている。
いい歳した大の大人がわんわん泣いている。
キザなマスターがカキフライをサービスしてやりながら聞くことにはこうだ。
「ルシェだ。ルシェ耳が見えたと思ったら気が遠くなって、目を覚ましたらもぬけの皿だった」
わんわん。
しかし困ったことにこの六花亭、ルシェの容疑者には事欠かない。
マスターと客達の視線が、床に空いた穴にはまってジタバタしているイクラクンに向く。
「ふかふか。ボク、わるいイクラクンじゃないよ!」
諸手を上げて威嚇し、無罪を主張する。
まぁ、開店前からずっとはまっている彼女にはちょっと無理だろう。
続いて黒侍子からローストチキンを奪って勝ち名乗りを揚げているハルカラにゃん。
「ニク……」
これも違う。ハルカラにゃんは抵抗する相手からありったけの食料をもぎ取ることを至上とする肉食獣系女子だ。
たかがエビフライ一本、しかも眠る相手から奪うとは考えにくい。
カウンターでお冷やに醤油やラー油を混ぜてオリジナルカクテルを作っているナムナを見る者はいなかった。
ならば鬱姫。
鬱姫は額を打ち付けてピアノを演奏している。
そのアグレッシブなメロディに聴く者皆が涙している。
幸い、赤平さんが負傷する傍から完治させているので流血沙汰にはなっていないが。
演奏は連続3時間目に突入しており、鬱姫の躁っぷりも最高潮だ。
彼女も無理。となれば。
店内の視線が一点に集まる。
「えっ? わ、私?」
かりゆぅだ。
というか最初から皆この娘しか疑っていない。
カリユはお盆をぶんぶん振り回して否定する。
「違いますよぅ! 私今日はまだ黒侍子さんの豚角煮しか貰ってませんもん!」
「じゃあその唇の食べかすは?」
カリユは慌てて唇を擦る。
「こ、これは多分ついさっき黒侍子さんから貰った唐揚げの衣で……」
「どう思う?」
マスターがお得意様ギルドに尋ねると、システムがすかさず応じた。
「なんということだろう、犯人はまたもや可愛らしいウェイトレスだったのだ!」
「また!? またって何ですか!?」
ふかーっと耳を立てて怒るカリユだが、彼女に有利な証拠や証言は出てこなかった。
113名無しさん@ピンキー:2010/04/20(火) 16:20:41 ID:NSM1Pz2Q
「うっうっ、酷い鬱……」
無実の罪を被ったかりゆは、ルシェ耳を垂らして鬱姫さながらの鬱オーラを店の隅で放っている。
壁に貼られた「ウェイトレスに料理を与えないこと」という貼り紙を見てポロリと涙を流す。
その周りには力尽きた鬱姫が倒れ、腹をさするハルカラにゃんが座り、イクラクンがジタバタしている。
ルシェ耳勢揃いである。
イクラクンはぽよんと穴から這い出ると、カリユの膝をなでなでして慰めた。
かりゆは撫で返して感謝の意を表すと、悲しみを怒りに変換した。
「……酷い! 酷すぎるよあの禿げ頭!」
かりゆの可愛い罵詈雑言に耳をぴこーんとさせて驚いたイクラクンは、
なだめるべくカリユの首にもふーっと抱きついた。
「こしょばいこしょばい」
ふゃはははと奇妙な笑い声でくすぐったがるカリユ可愛い。
引き剥がして「めっ」と叱ると、イクラクンは素知らぬ顔で耳を畳んだ。
そんなイクラクンをもっふり頭に乗せてかりゆはむむむと考える。
この冤罪をなんとかして晴らす必要がある。
そのためにはエビフライがどこに消えたか真実を突き止めねばならない。
しかし犯行は大胆にして狡猾。
満員の酒場で被害者にしか見られることなく、しかもその被害者もたちまち昏倒させた手練れだ。
カリユの脳内に悪夢のような光景が浮かぶ。
お客様のエビフライを50人分寄付してもらったカリユが、嬉しそうにエビフライを食べようとするたびに
謎の犯人に50回気絶させられ、1回ごとにエビフライが消えていく光景が。
「いや、まず前提の時点でマスターに叩き出されると思うよ?」
「人の夢想に侵入するのはやめようねイクラクン」
かりゆが頭の中で夢イクラクンをぺいっと外に投げ捨てると、頭上で寝ていた実イクラクンがハッと起きた。
「でも実際、どうやって犯人を見つければいいんだろ…」
肝心のハントマンは2秒でかりゆを犯人認定する有り様だ。あてにはできない。
「過去を覗いて犯行の瞬間を目撃できればなー」
「ではそうするです」
カリユの剥き出しの腹に抱き着く不届きな幼女あり。
名をファロファロちゃんという。お久しぶり。
「ファロファロちゃん、でもどうやって?」
カリユがふにっと尋ねると、ファロファロちゃんはふふんと得意気に言った。
「ルシェ耳をぴこぴこするです!」
ついに狂ったか。
114名無しさん@ピンキー:2010/04/20(火) 16:21:49 ID:NSM1Pz2Q
ファロファロちゃんの説明によるとこうだ。
秒間数億とも言える振動で大陸間通話をも可能とするルシェ娘の特権、耳ぴこぴこ。
これによって生じる怪光線は時に時空間すら超越するという。
「マジなの?」
「夏休みの自由研究で学会にマジで認められたです」
このぴこぴこの超常的特性に友情パワーとファロ様理論を加味すれば、任意の時間に跳躍する時空の穴が開くという。
「ファロ様理論?」
「先の学会で提唱した新理論なのです。実は命名者は私ですですよ」
「だろうねぇ」
幸いにして、この場には一線級のルシェ耳ぴこぴこ使いが4人も集まっている。
4人のぴこぴこを結集すれば或いは――とのことだ。
「私とイクラクンとハルカラにゃんと鬱姫ちゃんだね」
「ござる」
「ですですよ。鬱姫さんやれるです?」
「躁!」
力尽きてもライブの熱気冷めやらぬ鬱姫は、床に顔面をめり込ませたまま垂れ耳をビビビと振動させた。
「ハルカラにゃんは?」
「ニク!」
過去の肉が食えると乗り気の様子。
「イクラちゃん!」
「ボ(略)っ!」
ふかーっと怒るイクラクンの耳の動きは速すぎて視認すらできない。
士気の高さは申し分なかった。
イクラクンを頭から落とし、犯行現場の席を4人で囲む。
カリユは厨房側だ。
空になった皿は証拠品として残してある。
被害者は床の穴にはまってジタバタしている。
「ではエビフライが消えた時間を想いながらお皿に向かって全力でピコピコするです!」
「うん!」「鬱…」「ニク!」「ふかー!」
あ、鬱姫のテンション下がった。
四者四様のとてもやわらかいルシェ耳を一斉にピコピコビビビと振動させる。
皿は振動波でたちまち微塵に砕け、破片が一点へ収束していく。
時空の穴の誕生だ。
「その調子です! もっと速く! もっと強く! もっとファロく!」
ファロファロちゃんがかりゆのお腹にぶら下がったままキリッと指示する。
だが四人は既に最大の力でピコピコしている。
過去を覗くには振動数が少し足りない。
「せめてあと一人ルシェがいれば…」
ファロファロちゃんが悔しそうに呟く。
そこに颯爽と現れるナムナ!
「ないものねだりしても仕方ないよ。私達で何とかしないと」
「左様で鬱」
「ニクニク」
「ふっかり」
「エビフライが食べれるかれないかなんだ、やってみる価値はありますぜ!」
コーンコーン。
115名無しさん@ピンキー:2010/04/20(火) 16:23:14 ID:NSM1Pz2Q
とはいえ、どう頑張ってもこれ以上のピコピコは望めない。
ここまでか。
そう思ったとき、天井からカリユに怪光線が飛んできた!
『拝啓お姉ちゃん。こないだうちで食い散らかしたエビフライ代そろそろ払って リーコ』
という文面だ。
悪寒はピコ耳通信以上の速度でかりゆの神経を走り、筋肉を駆動させ、背後からの怪光線をひょいと避けさせる。
リーコの催促通信が、時空の穴にぶつかった。
カリユの妹のルシェ耳ピコピコ。これが弱かろうはずもない。
「ファロちゃんホール、開きますです!」
時空の穴がもにっと開き、その向こうにエビフライが一尾乗った皿が見えた。
犯行の直前だ!
皆の視線に頷き返し、カリユはその穴に頭を突っ込んだ!
勢いよく突っ込んだ頭は過去のその場所に座っていた客の頭をガツンと打ち据え、かりゆの目にも星を飛ばす。
「いたぃ」
ふにゅっと涙ぐんだカリユは、この悲しみを癒すために本能的にエビフライを発見。
さくっと捕食した。
「おいひー」
にこーっと笑顔になったカリユは、上機嫌で穴から首を抜いた。
時空の穴が閉じる。
皆がカリユの口元をじーっと見ている。
可愛く首を傾げる可愛いかりゆ可愛い。
やがて自分のやったことに気づきそのままの姿勢でだらだらと冷や汗を垂らすかりゆ可愛い。
一部始終を見ていたマスターと客も生暖かい目でカリユを眺めている。
ナムナは新作カクテルに塩を入れたのは失敗だと思った。
「……うん」
カリユはすっと目を閉じ、両手を胸の前で組み、歌うように言った。
「まさか犯人が未来からの使者だなんて思わなかったです。でも過去の私に罪はないからお仕置きは撤回ですよね?」
「なわけあるか」
「あり得ない鬱」
「サカナ」
「そうはイクラクン」
『お姉ちゃん、お金早く リーコ』
「あぅぅ」
一斉にダメ出しを食らってはさすがの打たれ強いカリユもしょんぼりせざるを得なかった。
(ところで、一連の流れの裏で自慰に耽っていた赤平さんがついに絶頂を迎えた)
皆にうっかりゆ呼ばわりされて涙ぐむカリユ可愛いよカリユ。
かりゆぅぅぅぅぅぅぅぅぅ
116名無しさん@ピンキー:2010/04/21(水) 18:54:14 ID:0mTETVS8
最下層油age
117名無しさん@ピンキー:2010/04/22(木) 10:04:50 ID:UEMW5hI8
かりゆぅぅぅぅぅぅぅぅぅ
118名無しさん@ピンキー:2010/04/22(木) 13:59:34 ID:xX9ao0K7
かりゆぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ
119名無しさん@ピンキー:2010/04/24(土) 19:12:08 ID:IJe/XHEs
お前らどんなのがお好みだ!
ゲームクリアしたら俺が適当に書いてやろうじゃないか!!

ちなみに俺アイゼンなう
120名無しさん@ピンキー:2010/04/25(日) 18:35:41 ID:Efpk6TYy
イクラクンがルシェヒーラーに無理矢理やられてるのが好みだ!

今どこら辺まで行った?
121名無しさん@ピンキー:2010/04/26(月) 18:42:16 ID:bI7Ikskg
プロレマだ!!

書きたいけどゲーム面白過ぎてそれどころじゃないぜ!
122名無しさん@ピンキー:2010/04/26(月) 21:15:37 ID:UzXv6Kbb
それは良かった!
とにかくゲームを満喫するといいぜ
123名無しさん@ピンキー:2010/04/27(火) 12:47:52 ID:AYSQ7d26
とりあえず、プレロマな!
ゲームを楽しんでおいでなー
124名無しさん@ピンキー:2010/05/07(金) 20:03:59 ID:MbxTFKnd
保守
125名無しさん@ピンキー:2010/05/13(木) 07:26:31 ID:OlT2q8+I
お久し、NGはPTSSで

今回のキャラ表
鑑:ルシェ癒、保護者

スゥ&クゥ:黄平&鬱姫、被保護者、悪童
鏨:若侍、半裸じゃない、朴念仁

10レスを予定
126PTSS鑑編 E・B:2010/05/13(木) 07:28:14 ID:OlT2q8+I
 カザンを襲撃した帝竜を、誰かが倒したあの日からどれ程経ちましたか……。
 それでも全てのドラゴンを撃退した訳ではなく、ハントマン達はそれぞれ竜退治に遠征に行く者や、
街にフロワロが蔓延らないようフロワロ刈りに精を出す者がいる。
 斯く言う自分もハントマンな訳ですが、ヒーラーを生業としている分外より内での方が忙しい。
 ドラゴンが来る前からイカス治療院で手伝いをしているけれど、以前よりも怪我人や病人が目に見えて増えている。
 稀に息絶えた人も運ばれて来ますが、そういう時は黄色い影が音もなく近付いてきて。
「あら、イキのいい死体じゃない、ねぇカガミくん、ちょっとこれ貸してくれないかしら」
 目敏くかっ攫いに来る、それに活きって……。
「貸しませんよ、何する気ですかスゥさん、いいから貴女はクゥさんと用意をしてきて下さい」
 貴女のやり方は遊びが過ぎるんですよ、大事な患者を持って行かせられません、
なので付いてきた青いのと一緒に早々に捌けさせる。
「失礼を、それで施術はどの位ですか?
 全快だとその分高く付きますけど、起こすだけなら安く済みますよ」
 そうして様々な人達の治療をしていたある日の事──。
127PTSS鑑編 E・B 2:2010/05/13(木) 07:33:08 ID:OlT2q8+I
「鑑、明日から出る、用意をしておけ」
「はい? なんです唐突に」
 広場で休憩中、鏨さんが突然現れ淡々と話し始める。
 聞けば何やら遠出の用で旅路のケアに私が必要だとか。
 まあこれは、ギルドに籍を置く際の要件ですからいいとして、気掛かりなのは二人の事……。
 連れていくかどうか悩んでいると、そこに件の黄色い三つ編みと青いルシェ耳を見付けて。
「スゥさん、クゥさん、ちょっといいですか」
 手を招いて二人を呼び寄せ、事情を伝える。
「──と言う訳でこれから数日、鏨さんとネバンプレスまで行って来ますので、二人には留守を頼みますね」
「え−」
 間髪入れずに揃って非難の声が上がる。
「え、じゃあ来るんですか? ……別に私は構いませんけど」
「行かないわよ」「いかない」
 早ぇよ。
 ……気を取り直して話を続ける事にして。
「まぁそうですね、大陸を渡るわけですから結構危ないでしょうし、その方がいいかもしれませんね」
 するとスゥさんは何やら少し考える素振りを見せ。
「やっぱり行くわ」
 よく解らないが意思を変更する。
「ん? 来るんですか」
「色々と見たいものもあるし」
「つれてけ」
 続いてクゥさんも気が変わったようだ、何故に?
「だ、そうですが……」
 今のやりとりを見ていたであろう鏨さんに承諾を伺う。
「……俺は別に構わん、兎に角明日出立だ」
 そんな返事が帰ってきた、あ、言う事言ったら行くんですね。
 ……まあ、二人が近くにいても遠くにいても不安な事に変わりは無いんですよね。

128PTSS鑑編 E・B 3:2010/05/13(木) 07:36:49 ID:OlT2q8+I
━━━━━━━━━━━━━━━

 ……そしてその道中、鏨さんが船にて飛び魚の群れに噛まれてあっさりと出血死した。
 ──最初の仕事が傷の治療よりも先に蘇生ってのはどうかと思いますよ。

 そんなこんなで西大陸に着いてすぐの港町、ゼザでまた準備を整えて、そこから砂漠を渡る事に。
 ヨーバー大滑砂では細いの二人をそれぞれ担いで渡る途中、自分が先導してドラゴンその他から必死に隠れようとしているのに、
後ろで半端ない殺気を放っているのは何故ですか鏨さん!?
 そりゃあクゥさん担いで貰ってますけれども、そんなに怒らないで下さい、気付かれますって。


 で、何はともあれ無事に流砂を渡り切った矢先、今度は大蠍に石化させられてるわ。
 孔雀に惑わされて三人掛かりでやっと正気に戻したりと……。
 ──なんだこれ、怪我よりも蘇生回数のが多いじゃねぇか。
 私らを守る為なのかも知れませんが、いや、この人がそんな事考えるとはとても……。
 まあ暴れ馬二頭を伸して手懐けていたのは凄かったですけど、そのお陰で移動が結構楽に。


 等と色々あったが、ネバンプレスに着いた早々。
「ぐぁっ!!」
「カガミ君、ちょっといい?」
 後ろ髪を思い切り引かれてスゥさんに呼び止められる、話を聞くとクゥさんと二人で行動がしたいと言うので、
城壁の外に出ない事を始め、……言い出したらキリがないが、諸々を条件に送り出す。
 ──大丈夫ですかね、面倒事を起こさないで下さいよ……。
 一人も嫌ですし、私はクエストオフィスへ行くと言う鏨さんに付いて行きますか。
129PTSS鑑編 E・B 4:2010/05/13(木) 07:39:24 ID:OlT2q8+I
 ──しかしネバンプレスには初めて来たけれど、殆どが石造りの建物で堅固な印象を受けるな、
それに雪も結構積もるほどに寒い中子供たちが外で遊び、家々の前には様々な表情の雪だるまが立っている、
治安は良い方なんですね。

 そんな事を思いつつ後に続いてクエストオフィスに入ると、旅するメイドの人を見掛け。
「どうも、お久し振りです、ゼザ以来……ですか」
 気さくに声を掛ける、でも貴女、私達より後にゼザを出た筈じゃ……。
「あら、貴男は、色々な所で逢うものですね、
 ……これも何かの縁ですし、とっておきの技を教えて差し上げますわ」
「取って置き……ですか」
「とりあえず、建物の中では実演出来ないので、外に行きましょうか」

 メイドさんに連れられて、湖の近くに来た所で。
「この辺りなら、被害は出ませんわね」
 彼女はそう呟いて振り返り、どこから取り出したのか麺棒で素振りをしてから。
「さあ、危ないので一回しかやりませんよ、よく見ていてくださいね」
 メイドさんは肩慣らしを終えると、その麺棒の端を両手で持ち半身に構え説明を始める。
「先ず、楽に構えて体全体に流れるマナや気を意識してください」
 その正面に立っていると、段々後頭部辺りにチリチリとした感覚や、下腹の辺りに重い感触が顕れる。
 ──うわぁ、構えてるだけなのになにこのプレッシャー。
 なので正面から離れて見る事にする、…………まだ何もしていないのに疲労感が。
「あら、そこからでいいんですか? ……それでは次に、直接打ち込む部分に意識を集中させてください、
 私の場合これですね、でもそれだけじゃいけませんよ、ちゃんと体の方も維持していてくださいね、……行きますよ!!」
 その途端メイドさんは天高く跳び上がり、数秒後光の尾を残しながら高速で降りてくる。
 そして地面に激突して……。


130PTSS鑑編 E・B 5:2010/05/13(木) 07:42:09 ID:OlT2q8+I


 ドゴォォォォォォ!!!!


 物凄い轟音や衝撃と共に地面が割れ、空高く土柱が立ち上る。
 そしてその土煙の中からメイドさんが現われて。
「これがアースブレイカーです、こう……、アースがブレイクなんです、コツとしては、
 ……ないですね、集中を途切れさせなければ出来ると思います、さ、どうぞ」
 どうぞって、……取り敢えず見様見真似でやってみますか。
 足を肩幅に開き、一対の旋根に改造したウォーハンマーを構え、マナを練る。
 次に打ち込む部分、旋根を意識し回転させ、速度が乗ってきた所で跳躍して……振り下ろす。



 結果は旋根の先が少し地面に埋まる位で、先程の様な威力はない、そもそもこれは重さで埋まった感じがある。
「まあ、始めはそんなところですわね、自分のやりやすい動きを見つければいずれ完成しますわ、
 それでは失礼しますね」
 そう言って、メイドさんは去っていく、て言うかあの中から土埃が殆ど付く事なく出て来てたんですね……。
 埃まみれの自分と見比べて、改めて彼女の実力に驚嘆する。

131PTSS鑑編 E・B 6:2010/05/13(木) 07:46:02 ID:OlT2q8+I
━━━━━━━━━━━━━━━
 それから数刻、森に入って何度か試行を繰り返し、一休みしていた時。
「ん? 何か……」
 後ろから何かが来るような感じがして、振り返り目を凝らすとライノがこちらへ向かって来るのが見えた。
「おぉ、マズイな」
 息を殺し、身を隠せそうな木の影に身を潜める。
 そのままやり過ごせればいいのですが……。
 しかし、ライノは通り過ぎず、歩みを止めて草を食み始めた。


「…………」


 ──何故そこで止まる、おっかねえなおい……。
 恐る恐る様子を窺い、まだ自分には気付いていない様子を見て、一息つく。
「大丈夫そうですね、なら気付かれる前に離れないと」
 言うが早いかその場から走り出す、あれは嗅覚や聴覚が良い方だから早いとこ行かないと……。
 急ぎながらも細心の注意を払いつつ森の外へと駆ける。


 森から出たところで後ろを確認する、ライノは……いない、逃げ切れたみたいですね。
 そこで気が弛んだのか、誰かにぶつかり押し倒してしまう。
 その際触れた部位に女性らしき事に気付き後ろに飛び退く。
「うわぁ!! ごめんなさい、失礼しまし……っ!?」
 言葉を失った私の前に居たのは……。


132PTSS鑑編 E・B 7:2010/05/13(木) 07:48:46 ID:OlT2q8+I

 鳥人種だった。
 ──今度はハーピーか! 思いっきり見つかりましたし距離が近い、しくじったな……どうする。
「────────!!」
 手を考えている内に、一際高い声でハーピーが鳴く、すると相手の速度が目に見えて速くなった。
 まずいな、逃げられない……か。
 腰に提げている旋根を取り様子を窺う、ハーピーは高速で旋回し、一体なのに全然逃げ道がない。
 待っていても埒が開かない、しかし相手の機動が速すぎて手の出しようが無い……。
 もうあれか、アレだ、カウンターで叩けば撃退出来るかもしれない、教えてもらったあの技ならなんとかなるだろう。
 半ば自棄だが守備に重点を置いて構え、教えを反芻する、……速いな、目で追うのがやっとじゃないか。
 たまに円周から外れて襲撃してくるのをギリギリ往なしてはいるが、意識を得物に集中させる程の余裕が無い、
半端な攻撃は躱されるだろうし、一矢報いるには……。
 その時ふとメイドさんの言葉を思い出した。

 ──自分のやりやすい動きを見つければいずれ完成しますわ──

 やりやすい動き……確かにあの時もこいつに気を流すのはしっくりこなかった、
でも、日頃の治療でマナの扱い自体は慣れている。
 なら、無理に腕のその先に送らないで、拳で直接打ち込むのはどうだろう。
 試してみるか……。


 襲撃の頃合いに合わせ、旋根を投げ付ける。
 当然躱されたが、まあこれは当たれば僥倖と言う程度のモノだ、
必要なのはそれを躱すためにスピードを落としたところを全力で殴り飛ばす事。
 注意を逸らしたその頭部に拳を……打ち噛ます。

「──入った、……けどなんか違う、まあ結果オーライだ」
 ハーピーが態勢を崩した隙に逃げられるだろうと気配を薄め、先ほど投げた旋根の方へ拾いに走りそのまま一目散に駆け出した。
133PTSS鑑編 E・B 8:2010/05/13(木) 07:52:49 ID:OlT2q8+I

・・・・・・

 安全を確認し、ネバンまで戻る途中、一連の出来事を考察する。
 ──あの技ならハーピーくらいは倒せた筈、また失敗ですか、
それに毎回旋根投げる訳にも行きませんし、どうしたものでしょうね。
 そこはメイドさんの言っていた「やりやすい動き」にも関係がありますし、う−む……。


 ネバンに戻ってからも、数日頭を捻り続けて、とある改良案を閃いた……。
 そして。

━━━━━━━━━━━━━━━

 一人別行動中の鏨さんを見付け、事情を話し少し付き合ってもらう事に。
「貴男なら防げるでしょうけど、念のため気を付けて下さいね」
 首肯で返事が返ってくる、それを見て少し離れて構え、意識を集中し一点にマナを集める。
「じゃあ、行きますよ」
 構えを解き一気に距離を詰め、間合いに入った所で旋根を大きく振り被り……。

134PTSS鑑編 E・B 9:2010/05/13(木) 07:57:03 ID:OlT2q8+I

      ∧_∧   アースブレイカー!
     _(  ´Д`)
    /      )     ドゴォォォ _  /
∩  / ,イ 、  ノ/       ―= ̄ `ヽ, _
| | / / |   ( 〈 ∵. ・(   〈__ >  ゛ 、_
| | | |  ヽ  ー=- ̄ ̄=_、  (/ , ´ノ \
| | | |   `iー__=―_ ;, / / /
| |ニ(!、)   =_二__ ̄_=;, / / ,'
∪     /  /       /  /|  |
     /  /       !、_/ /   〉
    / _/             |_/
    ヽ、_ヽ

135PTSS鑑編 E・B 10:2010/05/13(木) 08:02:16 ID:OlT2q8+I

「あっ……」
 ──あれ? 入っ……た。
「ごふっ……」
 人がくの字型に折れ曲がり夥しい量の血を吐く、慌てて着物の襟を掴んで支えるものの無惨に崩れ落ちる。
「たっ、鏨さん! あ−これは不味いな」
 抱き起こして容体を見るが、既に事切れていた。
「…………さてと、蘇生蘇生」

 ・ ・ ・

「いやすみません、真逆入るとは思いませんでしたよ、取り敢えず治療はしましたので、有難う御座いました」
 直ぐに蘇生し、何事も無かったかの様に振る舞う。
 鏨さんは起き上がって血を拭い、余り気にしていない様子で私の頭に右手を置く、
この人能く能く人の頭撫でま痛い痛い痛い。
「がぁああああああああ」
 頭蓋が割れる程に圧搾される、砂漠の時と似た気圧される感覚と、指の隙間から見える鏨さんの瞳孔が閉じ……切っ……て…………。



 雪に顔面を叩きつけられる。
 意識が切れる寸での所で解放された様だ。
 朦朧とする意識の中鏨さんの後ろ姿を見送り。
「……許してくれたんですかね、危なかったな」
 かなり命の危険を感じましたよ。
 一先ず技も完成しましたし、後は安定して出せる様になればですね。

 ……今日はこれ位でやめにしてもう休みましょう。



【EARTH BREAKER・終】
136名無しさん@ピンキー:2010/05/13(木) 08:06:28 ID:OlT2q8+I
以上
137名無しさん@ピンキー:2010/05/21(金) 05:33:36 ID:QNJOk2dx
保守。
138名無しさん@ピンキー:2010/05/21(金) 22:00:09 ID:kYzQPV/8
キャラスレ>>588-589
その間丸々規制です。
139名無しさん@ピンキー:2010/05/21(金) 22:10:12 ID:2hFf2c2c
>>138
まだ規制中なのね・・・。いつまでも待ってる
140名無しさん@ピンキー:2010/05/28(金) 18:31:21 ID:LmIWveuG
保守
141名無しさん@ピンキー:2010/06/06(日) 05:39:29 ID:aHiVG8b0
a
142名無しさん@ピンキー:2010/06/15(火) 06:32:07 ID:08+DF5Im
143名無しさん@ピンキー:2010/06/17(木) 18:12:01 ID:XFud5Ux4
カリユほどの名うてのウェイトレスともなれば、遺跡探索もお手のものだ。
古代のエビフライの化石を求め、かりゆは探索を嘗めた露出度の高いウェイトレス服で遠方の遺跡に来ていた。
暗いところに入るとEX発動して発光する習性を持つハルカラにゃんを先行させている。
EXでパッシブスキルと化したミートイーターで、魔物は出会う傍から漫画肉に変化して食われるので楽々だ。
鬼の形相なんていらなかったのだ。なむなむ。
脇を固めるはお料理桃姫さんと手乗りモルモルさん。
やはりこのウェイトレス、根本的に探索を嘗めている。
超親友のイクラクンは連れてきていない。
カリユとて毎回オチを持っていかれるのは本意ではないのだ。
その時、ハルカラにゃんが触れた祭壇の台座がズズズとせり上がった。
その上にはやや大きめのイクラクンが座っていた。
置いてかれたイクラクンは恨みがましげにカリユを見つめる。
「イクラクンを笑うものはイクラクンに泣く。蓋し名言だよね」
させるものか。
かりゆは油揚げが食べたくなる周波数のルシェ耳ぴこぴこ通信を送った。
油揚げが食べたくなったイクラクンは「大変大変」と慌てて豆腐屋さんにぽてぽて走っていった。
何とかオチるのは回避した。
かりゆはハンカチと間違えてモルモルさんで額の汗を拭うと、探索を再開した。

転がる大岩、落とし穴の先の竹槍、幻覚ガス。
これらの障害を四人はかりゅっと乗り越えた。
何故こんなもんが遺跡にあるのだろうか。実はトラップハウスの遺跡なのだろうか。
カリユはぺっこりしたお腹を撫でながら遺跡の過去に思いを馳せる。
モルモルさんはガスが全身に回り、カリユのルシェ耳がお布団だと思い込んで髪の上ですやすやと寝ている。
モルモルさんの寝息が至近距離最大音量で聞こえることに鳥肌を立てつつ、カリユはお弁当の天むすを頬張る。
宿の裏庭の樹からもいだばかりの新鮮な天むすはとても美味しかった。
お昼時となれば活躍するのは桃姫さんだ。
枯れ果てた遺跡の壁材や謎の植物など現地の材料だけで味噌汁を仕立てて皆に振る舞った。
食通のハルカラにゃんもかりゆも舌鼓を打つ美味しさだ。
味噌は何で代用したのかと問えば「企業秘密です」と答え、
桃姫さんは飲まないのかと問えば「いいえ、私は遠慮しておきます」と答える。
しょおー。
144名無しさん@ピンキー:2010/06/17(木) 18:13:42 ID:XFud5Ux4
すっかりゆ満腹になった一行はふにふにと遺跡の深層を目指す。
ゲーム的に言えば最深部に目的のものはあるはずなのだ。

「あ、そこに何かあります!」
正気に戻ったモルモルさんがちゅうちゅうと耳を引っ張るので見てみれば、壁の窪みに小さな宝箱があった。
俄然やる気を出した一行はシュパーッと宝箱を取り出した。
鍵がかかっていたが、桃姫さんが偶然高度なピッキング技術を持っていたためニコニコと開けてくれた。
ぱかりと宝箱が開く。中からは何か小さくてふかふかした、
「イクラクンデース」
やらせん。
カリユは間髪いれずエクスポータを貼り付けてタカラクンを外に転送した。
丸っこい姿が一瞬でかき消える。
危ない危ない。
危うくオチるところだった。
「ニク……」
肩で息をするかりゆをハルカラにゃんがぎゅっと抱き締めた。

最深部に着いたぞ。
だがそこには不自然な突き当たりがあるばかりで化石らしきものは見つからない。
「ここまでの道のりから考えると隠し扉ですね」
桃姫さんがおっとりと言う。
「わわわ私もそう思ってたよ!」
ふて寝するべく枕を取り出していた可愛いかりゆも慌てて同意する。
周囲をよく見れば一ヶ所だけ色の違う壁がある。
触ってみると動かせるようだ。
恐らくスイッチか何かがあるのだろう。
しかし、とカリユは考える。
イクラクンがオチを狙うとしたら恐らくここが山場だろう。
何が起きても何もなかったかのように冷静に対処する必要がある。
「……よし」
カリユはきりっと真剣な表情になると、壁をスライドさせた。
露出した窪みにはイクラクンABCDEが横にみっちりと5人並んでいた。
かりゆは表情一つ変えず、目にも止まらぬ手捌きでイクラクンをBDAECと並べかえる!
行き止まりの隠し扉が開く!
壁を即閉める!
壁の奥からふかふかと呪詛が聞こえる!
無視!
進!

カリユとて毎回オチを持っていかれるのは本意ではないのだ。
かりゆぅぅぅぅぅぅぅぅぅ


保守
145名無しさん@ピンキー:2010/06/17(木) 18:14:53 ID:XFud5Ux4
書き込み画面を更新したらsageが消えていたことに関しては猛省します
146名無しさん@ピンキー:2010/06/18(金) 12:55:03 ID:wkiGYmmY
sageゆううううぅぅぅぅ
147名無しさん@ピンキー:2010/06/18(金) 23:08:01 ID:HXNKdOi1
>>145
ハハハ何をおっしゃるイクラクン、エビフライはエビをageたものではございませんか
148名無しさん@ピンキー:2010/06/20(日) 01:49:16 ID:IaKLeCiF
久々にいったらスパイス系の人がブログやめちまってた……
ブームの去りを感じて寂しいな
149名無しさん@ピンキー:2010/06/27(日) 04:17:53 ID:pQMM8BY6
うお、マジだ…
次のキリ番本気で狙ってたのに……
前回取った奴が名乗り出なかった時に
嘘ついてでも頼んどきゃよかった

アニスううううぅぅぅぅ
150名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 22:37:15 ID:2zOjtlb/
昔々あるところに可愛いカリユとイクラクンがいました。
カリユは海へ海老釣りに、イクラクンは台所へ蕎麦打ちに行きました。
天ぷら蕎麦を自ら作り出そうという魂胆のようです。見上げた食欲と言えましょう。

イクラクンは混ぜ合わせた粉を前にマナっぽいポーズを取ると、繋ぎのマナ芋を指先からとろろーっと出しました。
続いて指の又からマナ水を噴射し、全力で生地を捏ねます。
何しろ不自由な二頭身。
体を丸め、生地の上でぽんよぽんよと跳ねるのであります。
粉がまとまっていく実感を得るうち、イクラクンは自分が蕎麦なのか蕎麦が自分なのか分からなくなり、
混乱のバステが付着してしまいました。
眠そうな据わった目で虚空を睨みながら、丸まり姿勢から指ひとつ動かさずにぽんよぽんよ跳ねます。
匠の力加減で生地はうまいこと捏ねられ、イクラクンと同等の球形を為していくのでした。

一方かりゆは近所のフィヨルドで勇ましく竿を構えていました。
勇ましいだけであり、竿はホウキにタコ糸を結わえただけのものです。針すらありません。
ただ、かりゆ的には釣りってそんな感じかなーという認識のため、伊勢海老が糸の先に次々かかっています。
カリユはそれをひょいひょい釣り上げてはクーラーボックスに放り込むだけです。
ビギナーズラックここに極まれりと申しましょうか、とにかく可愛いので仕方がないのでした。

すっかりボックスが満タンになったので、カリユは自宅にふかふかと凱旋しました。
イクラクンが蕎麦を打ち終えているはずです。
招待したマスターに海老を揚げてもらえばもう天ぷら蕎麦は目の前です。
空腹と希望に涙滴型の涎を垂らし、カリユはぴょこーんと直接台所に飛び込みました。
そこではイクラクンと蕎麦の生地が揃ってまな板の上に並んでいました。
ルシェ耳をぴっこり傾げてかりゆが訝ると、イクラクンと生地は口を揃えて「ボクをお切りめされよ」と重々しく告げるのでした。
「ご冗談でしょう」
片足立ちでもう片足と上体を横にひねり、両腕を斜め上方に伸ばした動揺のポーズでカリユは驚きます。
151名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 22:38:11 ID:2zOjtlb/
しかし蕎麦の香りのイクラクンは退きません。
「ボクも蕎麦として生まれたからにはそろそろ麺になるべきだと思うんだよね」
イクラクンからは無表情ながらも吹っ切れた爽やかな心意気を感じます。
すっかり蕎麦気取りです。
「あとそのポーズ疲れない?」
「そういえば割と」
姿勢は変えぬままルシェ耳を傾けて安定を得たカリユはむむむと考えます。
イクラクンが血迷うのは今に始まったことではないのですが、急がねばお腹が空いてしまいます。
「さぁ、太く短いボクの麺生を細く長く切って終わらせて!」
「そんなことできないよっ!」
涙を浮かべてカリユは慟哭します。
だってお世辞にもイクラクンが麺として上質だなんて思えませんからね。
カリユは泣きながら蕎麦生地の方をトントンと切り、沸騰させた湯に放ちます。
そしてわくわくと見上げるイクラクンをボウルの中の氷水に落とします。
「ちべたいちべたい」
イクラクンは哀しそうにボウルから這い出ようとしては傾斜に阻まれ、とぷんとぷんと水に落下します。
荒療治ですがカリユは他にイクラクンの頭を冷やす方法を知りません。
「イクラちゃんの本質は?」
「ボク、イクラちゃんじゃなくて誇り高きイクラクンのイクラクンだよ!」
「よし」
まだイクラ蕎麦と抜かすようであればぬるま湯に落としてお蕎麦湯を取るところでした。
「ボク! ちゃんじゃなくて! イクラ!」
「そうがなりなさんな」
ゆったりたしなめるカリユ可愛いです。
ボウルの中でイクラクンがぱちゃぱちゃ暴れるうちにキザなマスターが颯爽と現れ、伊勢海老を次々と天ぷらに仕立てました。
コツは衣水をよく冷やすことだそうで、イクラクン入りのボウルから取った氷水で粉を溶いていました。
もちろんイクラクンも衣水に落ちます。
最後の伊勢海老にしがみついていたイクラクンがつられて油に落ちます。
しかし比重の軽いイクラクン。
煮えたぎる油の上にちょーんと爪先立ちして難を凌ぎました。
「揚がるかと思ったよ」
「おお、可哀想にね」
泣くラクンをふんわり抱きしめながら蕎麦に揚げたての海老天を乗せ、かりゆは天ぷら蕎麦を貪り食いました。
かりゆだけで貪り食いました。
全部ね。

愛でたし愛でたし。
かりゆぅぅぅぅぅぅぅぅぅ
152名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 23:06:05 ID:rIFTbi+7
かりゅうううううううむ
153名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 00:52:16 ID:Tg5sH7Ls
>>150
ほほう、イクラクンが又からマナ水を噴射とな! 又からマナ水を噴射とな!
さすが、エロパロ板やでぇ。
154名無しさん@ピンキー:2010/07/17(土) 19:58:15 ID:TXw2ZVTI
SSを書いても規制で投稿できないし、GJな作品読んで感想書きたくても投稿できないし
どうすればいいんだ

かりゆぅぅぅぅぅぅぅぅぅ
155名無しさん@ピンキー:2010/08/02(月) 20:02:58 ID:M9c83rue
ほしゅ
156名無しさん@ピンキー:2010/08/06(金) 23:34:05 ID:6a+xMez/
拙いけど雑談のネタ振りになれば…
キャラ絵の初見の印象ってどうでした?

例えば自分は、ジェリコさんうさんくさそうには見えなかったんで意外だったり
ケイトが特典テレカでπ/が判って乳パーティーは姫騎魔盗かとか思ったりしました

他に、ハルカラがレイプ目に見える人がいたりな
そう言うのを

そう言えばナムナは特典テレカじゃ胸薄めだったな…


また、世界樹スレの方で擬人化話があったのですが、ここではどれくらい許容できますか
157名無しさん@ピンキー:2010/08/07(土) 21:44:29 ID:V6QRCTYf
>>156
大まかに言うと
ナイト…実はM
メイジ…生意気
サムライ…助平
ローグ…変態
ヒーラー…実はS

こんな感じだった。
最近ガッサンにセクハラされるシャルルの妄想が止まらない。
158名無しさん@ピンキー:2010/08/15(日) 01:33:37 ID:Lc/x99m0
今こそ言おう
ヴァネッサの乳はあんなにけしからんのに
なぜネタにならんのかと
159名無しさん@ピンキー:2010/08/27(金) 19:19:36 ID:a/eL8L/X
私はその日、辛く厳しいウェイトレスの仕事を終えて家路についていました。
日付も変わり、繁華街はともかく住宅街は静まり返っていました。
お耳をそばだてても聞こえるのは庭の植物が爆発的に成長する音だけです。
なのに何だか視線を感じたんです。
赤平さん? いいえ、あの人はランチタイムに補導されていたので違います。
振り替えると、道端の樽から白いルシェ耳が覗いていました。
その耳はだんだんせり上がってきて、眠たそうな目までが見えました。
その生き物は世にも柔らかい声でこう鳴きました。
「ふかー」
あ、今の私の声すごく似てました。
ええ、イクラクンです。
彼女はふかふか鳴きながらどんどんせり上がり、ついには短い足までが見え、
その下にまた別のイクラクンの頭が見えてきました。
「わわわ、増えるイクラちゃん」
今思えば不用意な発言でした。
「ボク、イクラちゃんじゃなくてイクラクンだよ!」
怒声は時間帯を配慮して私への直接ぴこ耳通話で浴びせられました。
私はお耳を震わせて一目散に逃げ出しました。
「ぎゃー」とか叫んでたかもしれません。
私、怒られるのがすっごい嫌いなんです。

随分走った後、目の前に誰かの後ろ姿が見えました。
白くてまるっとして小さいルシェでした。
私は人心地ついてその子に駆け寄りました。
「助けてイクラクン! イクラクンに怒られてるの!」
するとその子は背を向けたまま呟いたんです。
「お嬢さん、そのイクラクンは……こんな顔じゃあありませんでしたか?」
くるりと振り返ったその顔は――間違いなく、イクラクンでした。
私はお嬢さんと呼ばれたのが嬉しくて耳をピコピコしてましたが、ハッと正気に戻って「ちょっとふかーって鳴いてごらん」と言いました。
果たして、その鳴き声はイクラクンの柔らかボイスでした……!
私は死に物狂いで目の前のイクラクンの脳天のツボを適切な強さで突きました。
こうするとイクラクンは詠唱ポーズで30秒間静止するんです。
(※過去スレ参照のこと)
その隙に私はとことこ逃げました。
きゃーきゃーって。
160名無しさん@ピンキー:2010/08/27(金) 19:20:57 ID:a/eL8L/X
50kmぐらい走ったでしょうか。
うっかりゆミロスに着いて引き返したからそれぐらいだと思います。
その間中イクラクンの温かな視線が背中に降り注いでいました。
カザンに着いた私はお耳を激しく振動させて警戒にあたりましたが、効果は疑わしいものでした。
その時です。
「道行く可愛いカリユ、何かお困りゆかな?」
声のした方を見ると、赤いマフラーとかっこいいベルトを装備したイクラクンが塀の上でポーズをとっていました。
「あのねイクラクン、実は痴漢が」
「おっと、ボクはイクラクンじゃなくてイクラマンなんだよね」
よく見ればベルトの中では一粒のイクラがぐるぐる回っていました。
ちょっと塀からはたき落としたい気持ちを抑え、私は言い直しました。
「あのねイクラマン、」
「ボク、イクラマンじゃなくてイクラクンだよっ!」
「うわぁこの子面倒くさい」
思わず口に出るぐらい面倒くさかったことを覚えています。
イクラマンはマフラーを耳にしまい、ベルトをカボチャズボンにしまい、ふかーっと怒りました。
なんとその姿は
「げぇっ、イクラクン!」
「ふふふ、気づいてしまったようだね」
何やら得意げなイクラクンを塀からはたき落として向こう側のヒラタケ農園に沈めると、私は無我夢中で家に逃げ帰りました。
後ろ手にドアを閉め、ほっと一息ついたときでした。
台所から何かを揚げる音がしていました。
恐る恐る懐のイクラクンにEX発動してもらい照明を得、台所を照らしました。
そこでは踏み台に立ったイクラクンが油揚げを作っていたのです……!
歯の根が合わなかったのでピコ耳通話で尋ねました。
「イ、イクラクンは何で油揚げを……?」
イクラクンはゆらりと振り返り、背後の火に照らされながらふかりと無表情に笑っていました。
そして背筋のむず痒くなる声でこう言ったのです。
「ふふふ、お前に食べさせるためさぁ」
「ぎゃー!」
私は悲鳴を上げてスッ転びました。
「ぎゃー!」
手元のイクラクンが巻き込まれて悲鳴をあげました。
「ぎゃー!」
お料理イクラクンが油揚げを焦がして悲鳴をあげました。
そして私はすやすやと気絶しました。
161名無しさん@ピンキー:2010/08/27(金) 19:22:30 ID:a/eL8L/X
目を覚ましたのは次の日の昼でした。
あれは悪夢だったのかと耳を傾げても答えは出ません。
むくりと起きると、お腹にすっごい丸文字のメモが置いてありました。

『ボク達が心を込めて運びました』
「うむむーぅ」
暗号解読に明るい私にも理解できず耳を90度傾げていると、なんだか体がくすぐったくなってきました。
それもそのはず。
私の脚の間やパジャマのお腹の内側や首元で、恐ろしいイクラクン達が丸まってすやすや眠っていたのです。
「こしょばい!」
私はそんな恐怖の悲鳴をあげ、ぴょーいとベッドから跳ね起きました。
振り払われたイクラクンは私の体温が残る箇所に集まると、ふかふかと二度寝を始めました。
テーブルの上には狐色を通り越した色の油揚げ。
その横にはものすごい丸文字で『焦がしちゃってごめんなさい』と書き置きがありました。
一口で食べたそれは、ちょっと苦かったです。
ああ怖かった。
おしまい。

   *   *   *   *

「――どう? 怖かったでしょ!?」
カリユは半べそで怪談を語り終え、酒場の客達を見回した。
薄暗くしてある店内を埋めていたハントメーンは一様に青ざめ、ぶるぶると震えていた。
途端に得意げになったカリユは「これでみんな夜一人で油揚げを作れないねっ」と朗らかに笑った。
ひどいかわいさだ。
キザなマスターまでも油揚げ用の豆腐をそっとしまい、イクラクンに至っては油揚げを豆腐に戻して自らの頭に乗っけた。
「それじゃあ今夜の六花亭ホラー劇場はこれにて……」
「たのもー!」
バターンと扉を開けて入店するはナムナ、その手にはお冷やのつまみにしようというのか大量の油揚げ!
「お冷やと無料の漬物を所望するでござ」
「「「「ぎゃーー!!」」」鬱」
カリユが、マスターが、エメル様が、大量のハントマンが、一斉に悲鳴をあげた。
「!?」
ナムナはさっと油揚げを盾のように構える。
それを見てさらに強まる悲鳴の渦。
半泣きでおろおろするナムナ。
ふにゅっと気絶する可愛いかりゆ。
それを心を込めて運ぶイクラクン。
コーンコーン。
かりゆぅぅぅぅぅぅぅぅぅ
162名無しさん@ピンキー:2010/08/27(金) 19:23:50 ID:a/eL8L/X
>>158
大好きです

また規制です

保守
163名無しさん@ピンキー:2010/08/28(土) 23:30:10 ID:WtRbZ3aw
gjです
規制かかって半年くらいたつので保管庫のうpロダ借りようかな、
でもあそこ一杯だしなとか思って見に行ったらごっそり消えてた
一体どういうことなの・・・そして使ってもいいんだろうか
164名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 05:32:03 ID:tfiS4irt
手付かずだと一ヵ月二ヵ月で全部消える仕様だっけ
165名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 03:47:56 ID:XXekjpT8
九月にある行事って何かセブンスドラゴンと掛けられる物あったっけ?
166名無しさん@ピンキー:2010/09/09(木) 23:11:23 ID:wIaUUjtE
うちの地域は秋祭りがある
サムライ♂×2で神輿をかついでもらおうか
167名無しさん@ピンキー:2010/09/18(土) 18:50:29 ID:RMbbmK4d
保守
168名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 07:42:21 ID:fvN8Jm29
昨日は十五夜たったってのに
全くネタが浮かばんかった
169名無しさん@ピンキー:2010/09/28(火) 07:55:12 ID:bfjmb7zy
保守
170名無しさん@ピンキー:2010/10/10(日) 07:08:08 ID:SX+nzr0g
保守
171名無しさん@ピンキー:2010/10/14(木) 10:09:21 ID:F2PE+SQ+
ここがエロなしでも大丈夫なのに過疎ってるのは
もうかりゆの人以外書く人がいないって事かね?
次から>>1に総合みたいな事書いとかない?
次がいつかは解らないけど

…ホントにいないのかな
172名無しさん@ピンキー:2010/10/14(木) 18:43:14 ID:djEGhPea
いるよー
クレルのようにひっそりと…

一応SS書いてるが、投下できるか不明
173名無しさん@ピンキー:2010/10/14(木) 19:06:08 ID:fr+/CaqV
規制されてて全然書き込みできないんだよね
素晴らしいSSが来てもGJ!さえ言えないのがツライ
174名無しさん@ピンキー:2010/10/24(日) 01:18:53 ID:gDMMZxHm
精力絶倫のジェリコさんのシリーズが読みたいよう
175名無しさん@ピンキー:2010/10/27(水) 10:07:20 ID:8iFF7yDy
>>174
残念だったな!ここのジェリコはだいたい絶倫だ!
176名無しさん@ピンキー:2010/10/29(金) 22:28:21 ID:p+z7ChL5
>175
歴代のシリーズ全部読みたいから、全然残念じゃないぜ!
177名無しさん@ピンキー:2010/11/14(日) 11:49:49 ID:46nzkkDX
保守
178名無しさん@ピンキー:2010/12/04(土) 17:16:22 ID:SM43zNzg
保守
179その後の世界:2010/12/21(火) 22:21:44 ID:TfRqcPRI
誰もいないんで勝手に投下します。
文章力無いけど、何か書きたい欲求には逆らえないので…

・竜擬人化
・ゲームクリア後の世界です
・主人公は黄色ヒーラーさん(モルさん)
1.
その日はとても月の綺麗な夜でした。
ここはカザン近くの海辺です。
西の海へ傾いていく月を眺めながら私はぼんやりしていました。
さっきまでカザンの酒場で、いつもの通りみんなとお酒を飲んできたところです。
すっかり酔った私は、夜風にでも当たりながらのんびりしたいと思って酒場を抜け出してきたのでした。
今日は少し飲みすぎました。
だんだんと頭がぼんやりしてきて気持ち良いような…
だんだんと胃から内容物が逆流してくる感覚が気持ち悪いような…。
今日は月が綺麗なので、もうさっさとその辺りの岩影にでも胃の中身を吐いて、月明かりを浴びながら寝てしまおうと思いました。

思っていた以上に飲んでいたようです。
ぼんやりしているうちに、かなり酔いがまわったようで目がまわります。
私はよろよろと立ち上がり杖で身体を支え、大きな岩の方へ向かいました。

さぁ、吐くぞ〜っ…。

…しかし、胃の内容物は喉の辺りからゆっくりと胃へ戻っていきます。
まわっていた目もすっ
180その後の世界 1 2/2:2010/12/21(火) 22:41:57 ID:TfRqcPRI
かり元通り、頭も急にスッキリしました。
それは、私の目の前のもののせいです。

それは一人の少女でした。
その少女は私が吐こうとしてた岩の影で横になっていました。
少女がこんな時間にこんなところで寝ているのも去ることながら、少女はお腹から血を流していました。
少女のお腹の辺りの砂は、すっかり血が染み込んで赤黒く染まっています。
…私は医者です、ヒーラーです。
こんな大怪我してる少女を放っておけませんでした。

「大丈夫っ!?」

私は少女の頬をぺちぺち叩き、服をめくりあげてみます。
ざっくりと切れた少女のお腹「いや、じゃないの。このままじゃ死んじゃうわよ」

私はささっと応急処置をしてあげました。
それから少女を抱えてカザンへ歩き始めました。

(続きます)
181その後の世界 2:2010/12/21(火) 23:22:13 ID:TfRqcPRI
お、携帯から書いたら途中で途切れました。
すみません…



2.
私はカザンの診療所に少女を届けました。
それからふらふらとギルドハウスへ戻ります。

「ただいま…」

もう、みんな寝たかな?…と音を立てないように扉を開けます。
返ってきたのは「おかえり〜」という元気な声。
見ればハルカラちゃんがお酒を片手に手をぱたぱた振っています。
その足元にはモモメノちゃんが痙攣を起こしながら倒れていました。
酒場でさんざん飲んで来たのに、また飲み直していたようです。
私はしっぽを振りながら近づいて来たポチをもしゃもしゃ撫でてから、テーブルの上の水差しを取ります。

「途中でいなくなっちゃって、どこに行ってたのかにゃ?」

ホッケをつつきながらハルカちゃんが言います。
私は水をぐっと一飲み。
お水美味しい。

「海まで、夜風に当たりに行ってたの」
「にゃい。戻って来ないから心配してたんだよ、にゃい」
「ごめんね」

ホッケをつつきながらハルカちゃんが言いました。
そっか、心配してくれてたんだ…。
勝手に出てきて悪いことしたなぁ。

「ところで」

ハルカちゃんがホッケを置きました。

(続きます)
182その後の世界 3:2010/12/22(水) 02:46:44 ID:y8iV2CCe
「誰か抱えて街に入って来たけど、あれは一体だれなのかにゃ? にゃい」

いつの間にか見られていたようです。
ハルカちゃんのルシェ耳はよく聞こえるそうなので、私の足音がギルドハウスを通りすぎて行くのに気づいたのでしょう。
ハルカちゃんは私の答えを待たずに、再びホッケをはもはもし始めました。

「海の方で女の子が大怪我をしていたの。診療所まで運んでから帰って来たのよ」
「そうだったんだ、にゃい。もっちゃんは良い子だねぇ、にゃい」

ハルカちゃんはにゃはははとご機嫌に笑いました。
私は「おやすみなさい」と言って寝室へ向かいます。
モモちゃんはまだ痙攣中です。

「にゃい。もう寝るのかにゃ? 話し相手になってよー…にゃい」

ハルカちゃんが少し寂しそうでしたが、私はもう寝ます。
ニアラを討伐、そして裏ダンジョン攻略…。
…あれから一年半。
しばらくの間は英雄だとちやほやしてもらっていましたが、さすがに今では平和過ぎてかえって暇なのでした。
世界各地のダンジョンも全て回り尽くしたおかげで、新しい冒険はありません。
おかげで私達は毎日、酒場に入り浸る日々を過ごしていました。

(続きます)
183その後の世界 4:2010/12/22(水) 11:52:40 ID:y8iV2CCe
朝です。
私がお茶を沸かしていると、みどりさん(ナイト)が帰ってきました。
剣や盾を置いて、ガチャガチャと鎧を脱いでいます。
真面目なみどりさんはドラゴンがいなくなった後も、毎日早朝特訓を欠かしません。

「ドラゴンがいなくなったからって、みんな怠けすぎよ」

みどりさんが言いました。

「みどりさんはいつも頑張りますね」
「それはそうよ。私は姫を守らなきゃならないんだから…。…ああ、姫、姫っ! ああ〜…可愛い…姫、可愛いなぁ…」

みどりさんはモモちゃんが大好きです。
その守るべき主人であるモモちゃんは、昨夜と同じ場所で痙攣していますが。
私は卵をフライパンに落としながら言います。

「とりあえず、朝ごはんにしますね。ハルカちゃんを起こしてきてもらえますか?」
「わかったわ。ところで姫はどこに行ったんだろう?」

足元で痙攣しているモモちゃんに気付かないまま、みどりさんは寝室へ入って行きました。

やがて、寝巻のままのハルカちゃんが目をこすりながら「にゃい、おはよう…」と顔を出しました。
椅子に座って「にゃわわゎゎ…」と眠そうにあくびをしています。
そんなハルカちゃんの前に目玉焼きを置きます。

(続く)
184その後の世界 5:2010/12/22(水) 15:20:35 ID:y8iV2CCe
ハルカちゃんは眠い目をこすりながら、いつものように目玉焼きを指でつまみます。
そのまま口に持っていって、とろける黄身と固まりかけた黄身の合わさる味覚に「ふにゃ〜…」と至福の一時を味わうのです。
…まあ、今日は残念ながら途中で黄身が潰れてしまい、少し涙目でみゃうみゃう泣いていますが。

「姫っ、いつまでも痙攣していないで。朝食ですよ」

みどりさんがモモちゃんを椅子に座らせました。
モモちゃんはテーブルに突っ伏し、「気持ち悪いよぅ、頭が痛いよぅ…」と元気がありません。
ハルカちゃんに相当飲まされたようです。

「そうだ。朝食が済んだら私、出掛けてくるね」

私は言いました。
みんなが「どこへ行くの?」と言っていますが、内緒です。
やっぱり、関わってしまったからには気になるんです。
昨夜の女の子はどうしただろう。


(続く)
185その後の世界 6:2010/12/22(水) 18:25:16 ID:y8iV2CCe
携帯からだと、字数の関係で少しずつしか書けないんです。
だらだら長いですがお許しください。


6.
眩しい朝日の中、私はわっせわっせと診療所へ向かって歩いています。
にぎやかなカザンの大通りですが、やっぱり朝だと人もまばらです。
酔ったまま道で寝ていた人も目を覚まし、街の出口へゆっくり歩いて行きます。
宿屋の前では数人集まって本日の行動を確認しているギルドの姿。
どうやら新人ギルドのようで初々しいです。
そんなみんなが朝日に負けないくらい眩しく輝いて見えたのでした。
…今の酒場に入り浸りの私達とはえらい違いです。

それはさておき、私は診療所までやって来ました。
コンコンと扉を叩いて中へ入ります。

「おはようございます」
「あら、モルさん。おはようございます」
「あのー、昨夜の女の子は…?」

お医者さんはにっこり笑い「大丈夫ですよ」と言いました。

「今はよく眠ってるから、お話したいのでしたらお昼過ぎが良いわね」
「いえ、大丈夫かなぁ…って気になってただけですので。大丈夫なら安心しました。彼女によろしくお伝えください。ではー」

私はぺこりんとお辞儀をしてから診療所を後にしました。

(続く)
186その後の世界 7:2010/12/22(水) 19:42:54 ID:y8iV2CCe
診療所からの帰り道。
ふらふらとした足取りで歩いていたモモちゃんを見つけました。
どこへ行くのか聞いてみると「ウサちゃんの足が取れちゃった…」と、白い糸を買いに行く途中とのこと。
私も一緒について行き、糸を買うついでに雑貨屋さんを見てまわったり、露店で売っているお菓子を買ったりしながらギルドハウスへ帰りました。
ハルカちゃんは自分の剣をふーふーしながら磨いています。
そして私達を見るなり、ふんかふんかと鼻を鳴らします。

「あー、ずるいっ。二人して何か美味しいもの食べてきたでしょ。にゃい」
「鼻が良いわね」
「僕もついて行けば良かったな。にゃい」
「わかったわ、お昼の用意するから」

私は台所に向かいます。
何もない、いつも通りの日。
…私は思っていたことをポツリと言いました。

「ねぇ、ハルカちゃんとモモちゃん」
「にゃい。何かな? にゃい」
「たまには何か依頼でも受けて来ない? 毎日ご飯食べて、お酒飲んで、寝るだけじゃ…さすがに堕落するだけだと思うの」

ハルカちゃんは「にゃはは」と笑いました。

「良いよ良いよ。たまには身体動かさなくちゃね、にゃい」
「…うう、私は家にいたい…」

(続く)
187その後の世界 8:2010/12/22(水) 21:31:33 ID:y8iV2CCe
8.
午後。
私達はクエストオフィスで一件依頼をもらいました。
もう暗くなり始めていたので、その足でギルドハウスとは反対の方へ足を進めます。
私達はいつもの酒場、六花亭へやって来ました。
これからお酒を飲みながら久しぶりの依頼達成の為の会議です。
お酒を飲みながら、というのが、いかにもだれてますけど。

「いらっしゃい、ゆっくりしていってね!」

ウェイトレスのかりゆさんが、いつもの席へ案内してくれます。
私達はワイワイと席につき、ビールとエビフライを二皿注文しました。

「あとホッケ」

ハルカちゃん、ホッケ好きだなぁ。
先にビールが運ばれてきたので、みんなで乾杯をしてから依頼書に目を通します。

『最近、バロリオン大森林に凶暴なモンスターが出るので退治してほしい』

これはミロスよりの公式な依頼…というよりミッションでした。
ハルカちゃんは「にゃい。楽勝楽勝、にゃい」と余裕です。
モモちゃんは「…おうちかえりたい…」と涙ぽろぽろ。
…そこへエビフライが運ばれてきました。
二皿とも数本ずつエビフライが減っていますが…まぁ、いつものことです。
私が至高のエビフライを一本つまみ、口に入れようした時でした。

(続
188その後の世界 9:2010/12/23(木) 08:06:22 ID:SkLOiU9Q
9.
「モルさん、いますか?」

声のする方を見てみれば、診療所のお医者さんが階段のところでキョロキョロしていました。
私はエビフライをさっくりと一口かじってからパタパタと手を振ります。
お医者さんは私を見つけて近寄ってきました。

「ごめんね、せっかく楽しんでいるところを」
「いえ、まだ飲み始めたばかりですから。ところで、わざわざ私を探しに来るなんて何の用です?」

ホッケが運ばれてきました。
ハルカちゃんは「にゃいにゃい!」と嬉しそうに騒いでいます。
それを横目に見ながらお医者さんが言いました。

「昨夜、貴女が運んできた女の子なんだけど」
「…何かあったんですか? 急に容態が悪くなったとか?」
「大丈夫、回復に向かっているから。その彼女がね、どうしても貴女に会いたいって言うの」
「私に?」

…さぁ、どうしよう。
私は放っておけなくて助けただけだし、回復に向かっているなら安心して元通りの他人同士になろうかと思っていたのに。
ハルカちゃんはホッケをはもはもしながら「行っておいでよ、にゃい」とニコニコ。
モモちゃんはお酒を煽りながら涙をぽろぽろ流していて、たぶん話なんか聞いてなかったでしょう。

(続く)
189その後の世界 10:2010/12/23(木) 17:16:57 ID:SkLOiU9Q
10.
夜になって、カザンは昼よりもにぎわっていました。
その日の手柄を自慢し合う人達、遠くから初めてカザンにやって来て目を輝かせている新人冒険者…。
そんな人達でにぎわう大通りから外れて診療所の前までやって来ました。
お医者さんが扉を開けて、私を中へ促します。
中へ入ってみると、ベッドの上に昨夜の女の子がちょこんと座っていました。
私は笑顔で近づきます。

「こんばんは。もう起き上がって大丈夫なの?」

女の子はにっこりして頷きます。
それから「ありがとう」と言いました。

「どういたしまして。あんな大怪我して、一体何があったの?」

女の子は何も言いません。
言いたくないのを無理に言わせるのも可哀想です。
私は話題を変えました。

「あなた、お名前は?」
「…」
「お名前…」
「…」

…名乗ってくれません。
名前も教えてくれないなんて。
すると女の子はもぞもぞと言いました。

「…名前なんて無いの」
「名前が無いの…?」
「うん…」

さぁ、困った。
よほど複雑な事情の子を拾ってしまったようです。

「ずっとこんな感じなんですよ。名前も無いって言うし、どこから来たのかもわからないって…」

(続く)
190その後の世界 11:2010/12/23(木) 18:59:28 ID:SkLOiU9Q
11.
「それで悪いんだけどね…しばらくこの子を預かってもらえないかしら?」
「えっ!?」
「貴女達のところなら安心だし、なによりこの子が貴女になついてるみたいだから」

いつの間にか女の子は私のスカートをつかんでいました。
ぎゅっと握りしめていて離してくれません。

「…仕方ないかぁ。これも何かの縁ね」

私はしばらく、この女の子を預かることにしました。
…さすがにこの子を連れて六花亭へ戻るわけにもいかないし、ギルドハウスへ帰ろうかしら。

するとそこへ、ちょうど日々の野外鍛練から戻ってきたみどりさんとすれ違いました。

「あ、みどりさん。おかえりなさい」
「ただいま…あれあれ、どうしたの? 可愛い子を連れて…」

(続く)
191その後の世界 12:2010/12/23(木) 19:51:44 ID:SkLOiU9Q
12.
「にゃい、かりゆさん。この子にジュースとホッケね。にゃい」

…結局、この子が一緒に行きたいと言うので六花亭まで戻ってきてしまいました。
ハルカちゃんはずいぶん気に入ったらしく、さっきから女の子を離しません。
みんな、この子をしばらく預かることを快諾してくれました。
今日は帰ったらお布団用意しないとなぁ。

「ほらほら、ホッケばかりじゃ飽きるわよ。はい、エビフライ。美味しいよ」

かりゆさんが女の子の前にエビフライの皿を置きました。
ついでに一本つまんで去って行きます…。

「それにしても、この子は何て呼べば良いの?」

みどりさんが言います。
…確かに、名前が無いと不便です。

「にゃい。じゃあホッケちゃんにしよう。にゃい」
「モルさんになついてるんだからミニモルさんにしよう」
「え」

ハルカちゃんが出してた案を華麗にスルーして、みどりさんが勝手に決めてしまいました。
何だかミニモルだと恥ずかしいので、せめてミニモちゃんと呼ぶことにしました。

「にゃい。モモちゃん、遠慮してないでホッケどうぞ。にゃい」
「うう…もうホッケは飽きたよぅ…」

ハルカちゃんは今日もモモちゃんを潰す気です。

(続)
192その後の世界 13:2010/12/23(木) 20:55:42 ID:SkLOiU9Q
13.
深夜のギルドハウス。
今日はお酒をほどほどにしておいた私は、みどりさんと一緒にハルカちゃんとモモちゃんを運んできました。

「にゃい。まだのめるよ…にゃい」
「ダメ。自分で歩けないくらい酔ってるんだからダメ」
「にゃい。ホッケ…」
「うぅ…もうやだ…鬱…」
「姫もさっさと寝てくださいっ!」

私達は二人を寝かしつけ、ソファーに腰かけます。
ミニモちゃんは私の横にちょこんと座りました。

「あなたももう寝なきゃ」
「ううん、眠くない」

ミニモちゃんはにっこりと笑いました。
私とみどりさんは「やれやれ」と笑い合い、「眠くなったら、私のベッドに来なさい」と言っておきました。

「ところでモルさん。この子は昨日、すごい怪我してたんでしょう? こんなに連れ回して良かったの?」
「うん、私も最初はおとなしくさせようとしたんだけど…。お腹の傷が広がらないか、見てみたの。そうしたら…」
「そうしたら?」
「…お腹の傷が、綺麗に無くなっていたの。跡すら無くて、まるで最初から怪我なんかしていなかったように…」

もちろん驚きました。
きっとお医者さんも「この子はただの女の子じゃない…」と知り、私に預けたのかもしれません。
193その後の世界 14:2010/12/23(木) 21:58:40 ID:SkLOiU9Q
14.
朝。
私がもぞもぞと目を覚ますと、横にはミニモちゃんが寝ていました。
昨夜は私とみどりさんが寝ようとしてた時でも「眠くない」と言ってた起きていたので心配でしたが。
私がリビングへ行くと、あんなに酔い潰れていたハルカちゃんがピンピンしています。
剣の整備をしていました。

「にゃい。もっちゃん、おはよう。にゃい」
「おはよう…早いんだねぇ…」
「にゃい。今日からミロスへ出発だからね、武器も整えておかないと。にゃい」

私はいつものようにお茶を沸かして、フライパンに卵を落とします。
ずっと続いてきた、何も変わらない朝の光景は今日から数日間お別れです。
私達は昨日受けた依頼を片付けに、早速久しぶりの旅に出るんです。

「カザンから離れるのなんて、いつ以来だろうね」
「にゃ〜に。さっさと用を済ませて帰ってきて、かりゆさんとこでお酒とホッケ。にゃい」
「ずいぶん余裕ねぇ」

そうしているうちにみどりさんが早朝訓練から帰り、モモちゃんも「行きたくない…手首切りたい…」と起きてきました。
行きたくない割にはしっかり荷物をまとめて準備万端なのが可愛いです。

「さぁて…ご飯だし、ミニモちゃんも起こさないと…」


(続)
194その後の世界 15:2010/12/24(金) 18:28:23 ID:BYcuJMmz
15.
「むにゃむにゃ…」

ミニモちゃんを起こして来たのは良いんですが、かなり眠そうです。
だから早く寝なさい、って言ったのに。
「眠くなかったの…」
「眠くなくても寝なきゃダメよ」

みどりさんがミニモちゃんをわっしゃわっしゃと撫でて言います。

「お布団に入って羊さんを数えていれば自然と眠くなるわ」
「にゃい。羊かぁー…食べたいなぁ、にゃい」
「ちゃんと朝食は食べようね。目が覚めないわよ」

ここでミニモちゃんが目玉焼きをわし掴みにして、みどりさんに「ハルカラさんのマネしないで、フォークを使いなさい」と注意されています。
フォークを持たされるものの、手付きがぎこちない…。
そういえば昨日もエビフライやホッケを手づかみで食べてたなぁ…。
もしかしたらフォークとか使ったことがないのかもしれません。

「ミニモちゃん。私達、今日から数日間留守にするから、その間は自由にこの家を使ってね。帰ってきたらフォークの使い方を練習しましょう」

私は言いました。
するとミニモちゃんはふるふると頭を横に振ります。

「わ、わたしも一緒に行くよ…」
「ダメよ、危ないもん」
「でもー…」

…困ったなぁ、どうしよう。

(続)
195その後の世界 16:2010/12/24(金) 19:26:10 ID:BYcuJMmz
16.
昼過ぎ。
私達はカザンとミロスをつなぐ橋を渡っていました。

「これなら夕方には到着するわね」

モモちゃんと手をつないだみどりさんが言いました。
モモちゃんはみどりさんから離れようとしません。
仲が良くて微笑ましいです。

「にゃい。もっちゃん、お昼だね。お腹空いたよ、にゃい」
「それじゃあ、お昼にしましょうか…」

ちょうど良い木陰を見つけ、そこにみんな腰を降ろします。
私はカバンからサンドイッチを出してみんなに配りました。

「にゃい。ホッケが良かったなぁ…にゃい」
「このホッケねこ!」

いつものようにワイワイしながら食べます。
私達を眺めながらミニモちゃんも「おいしい」とサンドイッチを食べていました。

…そう、結局は連れてきてしまいました。
「一緒に行きたい…」とスカートを離してくれなかったので。

「本当は心配だったんでしょ? 母性本能だわね」
「にゃい」

みどりさんやハルカちゃんがニマニマ微笑んでいます。
…まぁいいか。
日頃から何かと鬱なモモちゃんも、ミニモちゃんと一緒にいると和むようです。

「…ぅぅ、ミニモちゃんの前では手首切らないよ…」

それは良かった。
お昼を済ませ、すぐ出
196名無しさん@ピンキー:2010/12/24(金) 22:00:15 ID:XlJ8+BaY
ID:TfRqcPRI
ID:y8iV2CCe
ID:SkLOiU9Q
ID:BYcuJMmz
過疎スレに甘えて細切れ投下にしないで、
メモ帳とかである程度の量書いてからまとめて投下しれ。
197その後の世界 16-2:2010/12/24(金) 23:10:18 ID:BYcuJMmz
途中で切れてしまいましたm(_ _)m

16-2.
発しました。
久しぶりの遠出ということもあり、みんな少しはしゃいでいるようでした。

ミロスに到着し、宿を取ります。
みどりさんとモモちゃんで一部屋、私とハルカちゃんとミニモちゃんで一部屋を取りました。
その30分後、夕飯に行く約束をしといたので、私はみどりさんとモモちゃんを呼びに行きました。

「みどりさーん」

「ぅぅ、ミニモちゃんと一緒の部屋が良かったよぅ…ぅぅ…(さくさくさくさく)」
「姫っ……ぁあ…っ! ひめっ……ひめぇっっ! …んっ…んんぅっ(くちゅくちゅ)」

部屋を開けてみればモモちゃんがリストカット、みどりさんがそれを見ながら自慰にふけっていました。
私の後ろからそれを見たミニモちゃんは恥ずかしそうに目を伏せました。
すでに見慣れている私は二人に「ご飯に行くから早く準備して」と言って扉を閉めました。
素晴らしい騎士と姫の主従関係です。
…ただ、普段は真面目なみどりさんだけに、ミニモちゃんが受けた精神的ショックは意外と大きかったでしょうね。

そして夕飯を済ませた私達は、さすがに今日は飲み過ぎず、おとなしくベッドに入りました。

(続)
198名無しさん@ピンキー:2010/12/24(金) 23:13:26 ID:BYcuJMmz
>>196
すみません、携帯からやったら細切れになりました。
ちょっとネカフェにでも行って、まとめて投下してきます。
本スレはともかく、ここは最近ほんとに誰もいなかったので、もうナナドラは下火になったか、と寂しく思ったもので(^_^;)
199名無しさん@ピンキー:2010/12/27(月) 04:17:00 ID:jT4vI1sv
失礼します
季節外れではありますが
保管庫のロダにハロウィンの話を一つと、もう一つ話を上げてあります
気が向かれましたらよろしくお願いします
200名無しさん@ピンキー:2010/12/31(金) 16:42:26 ID:bPce63X6
ネカフェより遅ればせながら二方とも超GJ。自宅PCは永久規制に巻き込まれてGJ一つできないよ!
PTSSの人、前に同じようなことを言われた自分が言うのもなんだけど
もしよければ読む直前に登場人物の固有名詞紹介が目に入るといいな
201名無しさん@ピンキー:2011/01/01(土) 04:33:24 ID:/H1zbj5q
そうですか
はい、それでは登場順に

ヒーラー♀1;スゥ
ヒーラー♂2;鑑(カガミ)
プリンセス4;クゥ

ヒーラー♀2;捧(ササギ)
侍♂1;鏨(タガネ)

侍♀2;爽麻(ソウマ)
侍♀1;硯(スズリ)

ローグ♀1;賽河(サイガ)

メイジ♂2;海里(カイリ)
メイジ♀2;彩香(サイカ)

ローグ♂1;篝(カガリ)

ナイト♀1;ソウ
プリンセス2;楔(クサビ)

こうなります。後、何か足りない事ありますか?

それと、私のでないもう一つの話。アレはスレにも報告が無かったですし、雰囲気が違うような気がするのですが。
もしかしたら別の作品のSSではないでしょうか?
202名無しさん@ピンキー:2011/01/03(月) 18:54:40 ID:B4kPTxHy
早速のレスありがとう、ただ一々レスせず次の投下のときに反映してくれればそれでよかったんだぜ?
『SSを読む直前』に目に入るのが重要なんだし。
ただでさえ過疎気味なスレなんだからレスがあるたびに即返信すると不気味に思われちゃうし、
全レスに近いレスの仕方は空気を微妙にするから注意。(つまりこのレスにも返事はいらないよ)
あと保管庫はこのスレ専用だけどうpろだまでそうとは限らないから気にしないでいいんじゃないかな。

長文失礼、あけましておめでとう。今年こそナナドラのリメイクとかが出ますように
203名無しさん@ピンキー:2011/01/06(木) 20:17:12 ID:/NVneCs/
204名無しさん@ピンキー:2011/01/17(月) 19:52:44 ID:+kUPy9MA
205名無しさん@ピンキー:2011/02/06(日) 07:56:10 ID:GvYiGMYu
206名無しさん@ピンキー:2011/02/25(金) 23:41:12 ID:hwqcvKBz
207名無しさん@ピンキー:2011/02/26(土) 00:52:42 ID:Jnd6cjnx
208名無しさん@ピンキー:2011/03/03(木) 08:49:57.72 ID:Cn48J4vd
209名無しさん@ピンキー:2011/03/18(金) 09:45:20.93 ID:R9bPdS3v
210名無しさん@ピンキー:2011/04/04(月) 20:59:31.72 ID:8TjYPy0M
生きてるか?
211名無しさん@ピンキー:2011/04/23(土) 20:40:45.22 ID:+aG0CFHZ
勿論だとも
212名無しさん@ピンキー:2011/05/10(火) 00:51:01.11 ID:aiu0HHAU
ほしゅ
213名無しさん@ピンキー:2011/05/11(水) 11:18:01.96 ID:Jox6Q3ky
214名無しさん@ピンキー:2011/05/14(土) 11:49:27.84 ID:d6M1u4nH
>>213
そのパッケだけで判断するなら俺は買い
だがキャラメイク・・・というかパーティキャラを選べる要素は残しといてほしいね
215 ◆Y62mw7fowc :2011/05/26(木) 23:36:21.33 ID:uljZea2p
お久しぶりです。
前回の投下一年以上前ってなんだよ!遅すぎだろ!
誰も待っていないかもしれませんが、それでもこのスレが残ってて
ここに投下できることが幸せです。よければ見てやってください。

注意事項
・エロ少な目
・女装
・ドラゴン擬人化
以上がダメな方はタイトルNGお願いします。
人物対象一覧
ナイト(ツインテ):少し強情な『姫』の従者。主従ではない主従である自分達の関係に悩んでいる。
姫(黒姫):とある事情で女性の姿をしている青年。気ままで内面が読めない。
人竜(シンボルの擬人化):人間に興味があるといい、ナイトについて来る、人間の形をしたドラゴン。

正直もう前の話なんて忘れてて話の流れが分からない、なんてことがあるかも……
とりあえず前の話はこのスレ、その前は仮保管庫様にあります。
216 ◆Y62mw7fowc :2011/05/26(木) 23:47:09.09 ID:uljZea2p
いきなりですがすいません、新しいシステムを理解していませんでした。
大分厳しい文字数制限があるようで……本家保管庫様のうpロダも消えちゃってますね。
仮保管庫様への投稿の方法がよく分からないので、少し勉強して出直してきます。
お騒がせしました。
217 ◆Y62mw7fowc :2011/05/27(金) 00:21:23.46 ID:hICtT49b
たびたびお騒がせします。これで最後です。
決死の覚悟で編集した結果、仮保管庫様に作品を投稿させていただくことに成功しました。
「人竜と歩く」
ttp://www29.atwiki.jp/nanadorakari/pages/37.html

ニギリオの宿の方も近いうちに仕上げたいと思いますので、そのときは良ければ見てやってください。
218名無しさん@ピンキー:2011/05/27(金) 12:23:58.10 ID:XiCjWQDM
ずっと待ってた。人竜と姫とナイトの三角関係きちゃうのか!? まあ食いっぱぐれただけかもしれんが。
219名無しさん@ピンキー:2011/05/27(金) 14:14:23.46 ID:o1mc39zi
>>217
GJ。こういう甘酸っぱさもいいね!あと人竜はひきょう
220名無しさん@ピンキー:2011/06/08(水) 06:35:31.35 ID:YRv3ahvS
失礼。
とりあえず、ギリ間に合わなかった季節ネタをロダに。
約55kb、長いのは失礼。

ttp://u3.getuploader.com/eroparo/download/94/PTSS+%E4%B8%89%E5%A4%A7%E7%8F%8D%E5%91%B31.txt

硯(スズリ)・侍♀1
爽麻(ソウマ)・侍♀2

後、NPCと公式名キャラは性格をいじってあります。

221名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/12(日) 15:30:23.23 ID:PsVk1d7f
エロパロ板保管庫なんてあったんだな、知らんかったからどこにあるかちょっと迷った
ともあれ乙!新作発表きたしまたにぎやかにならんかな
222 ◆Y62mw7fowc :2011/06/30(木) 23:45:40.47 ID:7TIhPaW0
こんばんは。仮保管庫様に一個投下しました。よければ見てやってください。
「ニギリオいいとこいちどはおいで(その6?)」
ttp://www29.atwiki.jp/nanadorakari/pages/39.html
これまた前回の投下は一年以上前……覚えてない方は同じ場所に保管してある
前回までのお話でもざっと流し読みしていただけたら幸いです。

以下人名対象
コレル:第一人称。訳あってニギリオの宿に居ついた由緒正しいアイゼン奴隷階層の青年。
    生まれたときから使用人なので家事スキルはあるがそれ以外は基本中途半端。
    宿にやってきたバレッタに一目惚れし、いろいろ努力をしてはいる。
バレッタ:ネバンからやってきた少女。故あって旅費を失い宿の世話になることに。
     始めはネバン的ルシェ至上主義だったが、コレルとぶつかり合ううち
     すこし心境に変化もでてきた模様。
ニコレット:モデルは「にっこりする給仕」。たよりになる先輩お姉さん。
ハンコツ:モデルは「反骨精神のルシェ」。根はいいが偉いやつは大嫌いな先輩。
マンザラ:モデルは「まんざらでもないルシェ」。今の生活で満足な穏健派の先輩。
223名無しさん@ピンキー:2011/07/23(土) 08:09:56.68 ID:AN+XW6oa
ようやくクリアできたからスレ覗けるぜ
2chで叩かれるほどつまらなくはなかったが、色々とストレスが溜まるゲームだったな
とりあえずメガネがウザすぎ、ラスボス弱すぎ、アリエッタ天使すぎだった
チラ裏すまん
224ninja!
http://u3.getuploader.com/eroparo/download/111/PTSS%E3%80%80%E8%8A%B1%E8%A6%8B.txt

お久し振りです。
取り敢えず、前上げてから結構経ったので。
諸事情で四月には上げられなかった物を上げます。

・季節外れ
・女体化
・全年齢

外見
・鏨=シシマル
・捧=ロザリー

・硯=ラン
・爽麻=ナムナ

・鑑=ジェリコ
・スゥ=モル
・クゥ=モモメノ

・賽河=メルク