正々堂々と勝負し、負けたヒロインを捕らえて陵辱する方が美しい
でも、その状況だとヒロインの魔力が尽きてる状況だから、そこで陵辱しても面白みが無いから
拠点に拉致してからだな。
一人ずつ堕としのセーラーチーム壊滅は黒犬の十八番だろ
最近、投下が無くて寂しいな…
まだ年明けてすぐだからみんないろいろ忙しいのさ
362 :
杏の人:2010/01/16(土) 13:00:03 ID:P7nJD/Qm
どうも、杏の人です。
随分と間隔が開いてしまって申し訳ありませんでした。
諸々の忙しい用事も済みましたので、これからはもう少し短い間隔で投下できると思います。
それでは、今回は
荒野の魔法少女 第2話 共通7レス 通常END3レス BAD END7レス
を投下させて頂きます。
陵辱シーンはBAD END1〜7レスです。
今回は注意点として、
・流血などの描写
・快楽系と苦痛系が混ざっている
・マグロ(無反応)状態の描写
・出産
等があります。ご注意ください。
それでは、次レスから投下開始です。
・アスカ
10歳 140cm 黒髪で右側低めのサイドテール
称号:生命(地)
コスチューム:和装(白の胴着に紺の袴) 武器は刀
本部、リゾルートの支援を受けず、単身荒野の世界で生き抜いてきた魔法少女
「ねぇ、ちょっと待って!どこ行くのよ〜!?」
足早にスタスタと歩くアスカの背中を、ライザは数歩後ろから追いかける。
ライザが名乗った途端、アスカは立ち上がり、何も言わずに歩き始めてしまった。どれだけ声をかけても、全く反応を示さない。
「ねぇってばぁっ!」
ただ声をかけるだけでは埒が明かないと、ライザは小さくワープして、アスカの前に立ち塞がった。
「っ!!」
かなり勢いをつけて歩いていたアスカは慌てて足を止める。
「なんですか?」
そしてライザを睨むような鋭い眼で訊ねた。
可愛らしい顔をしながらも纏う強烈なプレッシャーに、ライザは怯んでしまう。
「えっと……」
反射的に追いかけてしまっていたので、ライザはなんと言えばいいのかすぐに思いつかなかった。
とりあえず会話を繋げようと思案しているライザの横を、アスカは通り抜けようとする。
「あの、なんで逃げちゃったのかしら、って!」
ライザは既に背を向けていたアスカに叫ぶような声をかけた。
「……魔法使いは、嫌いなんです」
「嫌い?」
自分だって魔法使いなのに。その言葉を飲み込んで、ライザは首をかしげた。
「私に構わないで下さい。心配も必要ありませんから、セリナさんにも伝えておいて下さい」
「あ、ちょっと!!」
背を向けたまま続けたアスカは、そのまま歩いて行ってしまう。
その後、アスカは何を言っても足を止めることはなかった。
まるで歩いて追いかけっこでもしているように、一定の距離を開けたまま二人は町まで帰りついた。
アスカは後ろからついて来るライザを無視し続けたまま、一軒の建物の扉を開く。
途端、大きな声が押し寄せてきた。建物の内部から聞こえる笑い声のようだ。
アスカの後を追うように、ライザも扉をくぐる。
広い部屋の中には丸テーブルが幾つも置かれ、席についた者たちは大声で談笑しながら飲み食いをしていた。
「おう、アスカ!!やっぱり無事に帰ってきたか!!!」
ガルダの太い声がアスカを迎える。かなり酔っ払っているのが、赤く染まった顔の色で分かった。
「ガルダさん……。ごめんなさい。魔物のボスは倒すことが出来ませんでした」
「なんだって!?アスカでも倒せなかったってのか!!」
「申し訳ないです……」
アスカは肩を落とし、小さく震えていた。悔しさと魔物にされた行為に対する恐怖が蘇ってくる。
「気ぃ落すなって!!失敗なんて、誰にだってあるもんだ。お前さんはよくやってんだからよ!!」
ガルダはアスカの小さな肩を大きな手でバンバンと叩いた。
「マスター、アルカ酒を頼む。とっておきのやつだ!!」
吠えるようにガルダが言うと、カウンターの奥で「あいよ!!」とまた威勢のいい声が聞こえる。
「まぁ座って飲めよ。軽く酔っちまえば、憂鬱なんざ吹っ飛ぶさ!!」
「あ……ええと、はい」
ガルダの勢いに押されて、酒は苦手だと断ることも出来ずに椅子に座ってしまうアスカ。
「お帰りなさい、アスカちゃん。アルカ酒だよ。うちの最高級品」
そう言って机に酒の注がれたグラスを置くのは、ウェイトレスの少女だ。
アスカよりも少し年上、女としての成熟を始めた年頃に見えた。
「イナちゃん」
少女を見て、アスカの表情が少しだけ和らいだ。
「品のいいアルカ酒は飲みやすいから、アスカちゃんでも大丈夫だと思うよ」
イナと呼ばれた少女はアスカにニッコリとした笑顔を向ける。
「すぐに抜けて後にも悪く残らないから、後でお買い物付き合ってね?」
「うん。わかった」
アスカは素直な笑みを返して頷く。
イナが離れていくと、大きなグラスを両手で包むように抱えて、恐る恐る飲み始めた。
ライザは少し離れた席について一連の様子を見ていた。
「店員さ〜ん、こっちお願い」
手を上げてイナを呼ぶ。
「は〜い、すぐ行きます!」
元気な声で返事をして、お盆を抱えたイナが走ってきた。
店内はそれなりに混んでいるものの、注文が絶えない様子ではない。手は空いているようだ。
「えっと……。これとこれ、頂戴」
席に置いてあったメニューを指差して注文する。
「はい、かしこまりました」
「あ、ちょっと待って!」
ライザは踵を返そうとするイナを呼び止めた。
「はい?」
なんだろうという顔で、イナはライザの顔を見つめる。
「あなた、あの子と仲いいの?」
「アスカちゃんですか?はい、お友達ですよ。うちの宿屋のお客さんでもありますし」
イナは笑顔で答える。だが、アスカに見せた笑顔に比べると少しぎこちない。
「宿屋?」
「はい。うちは2階が宿屋で、1階では飲食店を経営してるんです。ほとんど飲み屋ですけどね」
「へぇ〜」
「あの、アスカちゃんに何か用ですか?」
イナの声が少し強張る。
「ああっ、そんなに警戒しないで。どんな子なのかな〜って思っただけで」
「……そうですね。アスカちゃんは噂の魔法少女だから強いですし、心配は必要ないかな」
イナのセリフはライザを牽制しているようでもあった。だが、それよりも……。
「噂の魔法少女?」
気になった言葉を、ライザはオウム返しに口にした。
「そうです。知りません?世界各地に現れてる、異世界の魔法使いです」
「そんなに沢山いるの?」
ライザは驚いてしまう。その存在を認知されるほど多くの魔法使いがこのエルードに赴いているとは。
「この町ではアスカちゃんだけですね。でも、多くの町や村にいるみたいですよ」
「そうなの……」
「皆すごく強いんですけど、何故か若い女の子だけらしいんですよ。だから、魔法少女って呼ばれてるんです」
配属前に、この情報は知らされていなかった。何か胸に引っかかるものを覚える。
「実はね、私も魔法少女なのよ」
「え〜、ほんとですか?」
イナは信じていない様子だ。
「本当よ。それでお仲間のアスカちゃんに声をかけたんだけど、どうも嫌われちゃったみたいで」
「もしかして、自分が魔法少女だって言ったんですか?それなら当然ですよ」
「どうして?」
「アスカちゃん、他の魔法少女って嫌いみたいですから」
「うん、それは聞いた」
「もともと、あんまり人と関わろうとしないんですけど、他の魔法少女とだけは絶対関わりたくないみたいです。
前に一人、魔法少女がこの町に立ち寄ったことがありましたけど、一言も口をききませんでしたよ」
そこまで話したとき、他の客に呼ばれ、イナは軽くお辞儀をしてそちらへかけて行ってしまった。
ライザはアスカに目を向ける。
大柄な男達に囲まれ、真っ赤になった頭をフラフラと揺らしている。グラスはまだ半分も減っていない。
(今は話せそうにないわね……)
ここは無理に話しかけない方がいいと考え、ライザは一旦距離をとることにした。
頭を切り替えて、イナが持ってくるであろう、見知らぬ地の料理に胸を踊らせる。
しばらく後、アスカはイナと共に商店街を歩いていた。その顔はまだ、ほのかに赤みがかりだ。
この世界はどこも治安が悪いのだが、この町はその中でも突出している。
イナのような少女が一人で歩いていたら、いつ暴漢に襲われてしまうかも分からないほどだ。
だから、買い物が必要なときにはアスカが一緒に来ていた。
アスカの強さはこの町では有名だ。
アスカを知る男は二人に手は出さないし、知らないものが下手に手を出そうものなら、その力を知らしめられた。
「買うのは食材?」
「うん。もう色々と減ってきてるからね」
飲食店を経営してるだけあって、食材の消費量は多い。
いつもは店主である父親が買いに出るのだが、しばしば忙しくて手が話せないことがある。
そんな時には一人娘であるイナが出かけるしかないのだが、一人では危なすぎる。
護衛を雇うには金がかかるので困っていたところ、宿に住まい始めたアスカがその役を買って出たのだ。
そのため、アスカはイナとだけは仲が良い。他の人間には見せない顔も、イナには見せてきた。
「重くない?代わるよ」
「いいの。わたしの仕事だもん。行きぐらいは……」
イナは大きな台車を引きずりながら歩いていた。大量の食材を運ぶためのものだ。
帰りの時、荷物を積んで重くなった台車を運ぶのはアスカに任せているのだが、行きは自分が引くと言ってきかない。
「アスカちゃん」
「ん、なに?」
「自分は魔法少女だって言う人が、さっきお店に来てたよ」
「…………」
アスカは黙り込んでしまった。覗き込んでくるイナの視線を避けるように顔を逸らす。
「お仲間だって、あの人言ってたよ。なんでそんなに嫌いなの?」
「……駄目なの」
「え?」
「異世界の魔法使いは、この世界に不幸を呼ぶかもしれない。だから、駄目なの」
アスカの悲壮な表情に、イナは息を飲む。
「でも……。でも、アスカちゃんはこの世界に来てるじゃない。それで、わたし達を助けてくれてる。
他の魔法少女もそうだって聞くよ?各地で魔物を倒して、人々を救ってるって」
「分かってる。それは分かってるの。でも、どうしても駄目なの」
「でもアスカちゃん、いつも寂しそうだよ。わたしとは結構話してくれるけど、他の人とは距離をとってる。
わたしとでも、アスカちゃんは一歩引いて話してる。心配になるんだよ。そんなアスカちゃんを見てると」
「……ごめん」
アスカは俯いて一言だけ呟き、それきり口をつぐんでしまった。
イナもそれ以上は何も言わず、無言のまま買い物を済ませて宿に帰った。
「……っていう感じでした。もう、取り付く島もない感じで」
ライザは宿屋の一室で、壁に向かって話しかけている。端から見ると異様な姿だった。
ここはイナの親が経営する宿屋の2階の客室だ。6室あるうちの2室は大抵いつも空室だということで、長期契約をすることにした。
アスカと同じ宿に泊まっていれば、多少は仲良くなりやすいだろうと考えてのことだ。
というわけで、ライザは居住地をここに決定する手続きのためにセリナに連絡を取っていた。
「間一髪だったのね……。よかったわ」
白い壁にはセリナの顔が写っている。アスカが危ないところを助けたと言う話を聞いて、胸を撫で下ろしていた。
「あの歳で、この世界で一人で生活するなんて、無茶してますね」
ライザは苦笑いでセリナに言う。
セリナはアスカとライザ共通のサポート役だ。彼女は地球とエルードにおいて20に近い数の魔法使いを担当している。
その中で唯一アスカのみが、セリナの手を離れていってしまっていた。
去るものは追わない。リゾルートの庇護を放棄した魔法使いのことは放置するのが暗黙の了解となっているが、セリナは気がかりだった。
だからライザが他の担当魔法使いのことを訊ねたとき、ついアスカのことを頼んでしまったのだ。
「なんであんなに魔法使いのことが嫌いなのか、知ってますか、セリナさん?」
「それは……」
決まっている。あの出来事のせいだ。セリナはそう分かっているが、口には出せない。
「ごめんなさい。私の口から言う事じゃないと思うの。だから、出来たら本人から聞いてちょうだい」
「う〜ん。なんか難しそうですね。分かりました。頑張って話をしてみます」
ライザは大きな胸に手を当て、口を真一文字に結んだ表情でセリナを見つめる。
「ありがとう。私のわがままに付き合ってもらっちゃって」
セリナはライザの頼もしさから、自然と頬が緩んだ。
「いえいえ。私もこっちの世界でお友達が欲しかったですし」
本当はそれだけが理由ではない。だが、一人で見知らぬ地に放り出されてしまい、仲間が欲しかったのは事実だ。
「それじゃ、手続きはお願いしますね。私はさっさと寝ちゃいます。お酒も飲んじゃいましたし」
「あら、言われてみれば顔がちょっと赤いわね」
「えへへ、お酒って初めてだったんですけど、結構イケるみたいです。でも、ちょっと眠くなっちゃいました」
「ふふふ。じゃあ、おやすみなさい」
眠たそうに首をかしげたライザに、セリナは優しく声をかけて、通信を切った。
静かになった部屋で、ライザは腰掛けていたベッドに思い切り寝転ぶ。
「う〜ん。ちょっと硬いけど、こんなもんかしらね?」
あまり高級な宿屋ではないからか、ベッドのクッションは潰れてしまっている。
それでも、そんなことはどうでも良くなるぐらいに心地の良い眠気が押し寄せてきて、ライザはまぶたを閉じた。
(明日は、もう少し仲良くなれるかな?)
のんびりとそんな考えを巡らしながら。
「付いてこないで下さいっ!」
翌日。
しつこく付きまとってくるライザに、アスカの叱責が飛んだ。
その声はか細く、ライザを押し返すほどのプレッシャーは持ち合わせていない。
むしろ可愛らしさすら滲ませるもので、全く効果を発揮しなかった。
「ね、お願い。一度ゆっくりお話しましょう?」
「……嫌ですっ」
アスカは根負けしそうになっていた。
朝起きて朝食を食べ、シャワーを浴びて、宿屋出てギルドに向かう今もずっと、声をかけられ続けていたのだ。
拒み切れなくなりそうなのは、それだけが原因ではない。
昨日イナにも指摘された、アスカの中の孤独感が疼いているのだ。
共に戦う魔法使いがいれば、どれほど心強いだろう。そう思う心を、アスカは歯を食いしばって押さえつける。
(でも……)
アスカの心が語りかける。ライザがいなければ、自分は昨日死んでいたはずなのだと。
アスカが他の魔法使いと交わることを拒むのは、理屈ではない。かたくなな信念によるものだった。
だから、その信念が揺るぎ出した今、アスカはライザを拒む理由を見失いつつある。
後ろから付いてきて話しかけるライザを無視しながら、アスカはギルドの扉を開いた。
「おう、アスカかっ!!いま呼びに行こうと思ってたところだ!!」
中に入るやいなや、ガルダが血相を変えて話しかけてきた。
「どうしたんですか?」
そのただならない様子に、アスカは気を引き締める。
「いま、魔物の群れがこの町に向かってるって情報が入った」
「えっ!?」
「な、なにそれ!?」
アスカだけでなく、ライザも驚愕の声をあげる。
魔物が人の住む町を直接襲いに来るなど、通常は滅多にないことだ。
「昨日の魔物の巣だ。あそこから小さな魔物が沢山湧いてきて、一直線にこっちに向かってるらしい」
「復讐ってわけ?」
「みたいですね」
アスカは唇を噛み締める。いま町が危機にさらされているのは自分の失態のせいだ。
「……ライザさん」
「え?」
アスカに名前を呼ばれて、ライザは驚く。一度だけ口にした名前を覚えてくれていたのか、とも思った。
「ごめんなさい、一度だけ……、一度だけ力を貸してもらえますか?」
そう言って、アスカは深く頭を下げる。
自分のせいで町に迫る危機を回避するためには、自分の信念などに構ってられない。
「アスカちゃん、顔を上げて?」
ライザはそっと微笑んで言う。
「早く行こう。町が危ないんでしょ!」
「はいっ!!」
アスカは頷き、駆け出した。
アスカは深呼吸をして、刀の鞘を握り締める左手に力を込める。
既に和装に変身しているアスカの隣には、同じく変身を済ませたライザが立っていた。
その姿はまさに魔道士といった感じの青色の薄い魔法衣で、膝までのスカートから長く細い脚が伸びている。
胸元はV字に大きく開いていて、豊満な胸が谷間を形成していた。
裏地の赤い黒マントを羽織り、その上にウェーブのかかったピンクのロングヘアーがもたれかかっている。
先端に大きな水晶を頂く大きな杖を片手に、遠く塵のように見える魔物の姿を眺めていた。
「あら、ずいぶん沢山いるわねぇ」
「たった一日で、あの数を産んだんでしょうか、あの魔物は?」
目視でも、魔物が数百はいることが分かる。とんでもない繁殖能力だ。
「でも、急造の魔物なら大した力は持っていないはずですから、簡単に蹴散らせます」
「頼もしいわね。確かに、感じられる魔力からすると雑魚以外の何者でもないかも」
「町の人達にとっては強敵です。残らず倒さないと」
ガルダには町の警護を頼んだ。万一倒しそこねた場合の保険的役割だ。
「問題は、あの親玉ね」
ライザが呟くと、アスカはギリ、と歯ぎしりをした。
「きっと倒してみせます。ライザさん、申し訳ないですけど、頼りにしてます」
「任せて!絶対にやっつけてあげましょ」
ライザはそう言ってアスカの肩に手を当て、胸元に抱きよせた。
「んむ……。やめて下さい、苦しいです」
胸に頬ずりするような羽目になったアスカは、両手でライザの腕を引き剥がして距離をとる。
「もう、恥ずかしがりなんだから」
「そんなんじゃありません!」
アスカはそう言い返しながら、ほんの少しライザの温もりを恋しく思ってしまった。
「行きますよ!」
照れ隠しに強く言い放ち、アスカは一歩を踏み出した。
スラリと刀を抜き放つ。初めから全力でかかるつもりだ。
「よし、さっさと倒しちゃうわよ!」
既に魔物はすぐそこまで近づいてきている。
ライザは杖を両手で掴み、天にかざした。
水晶に魔力が流れていくのを感じながら、呪文を呟く。
「地獄の業火よ、悪しきものを焼き払え、エクスプロ……」
「でやぁっ!!!!」
だが呪文を唱え終わる前に、アスカが抜き身の刀を地に突き立てた。
すると、荒れた大地が盛り上がり、壁のように高くそびえ立つ。
「うぇっ!?」
ライザは慌てて呪文を中断する。土の壁が敵の姿を完全に覆い隠してしまった。
「いけっ!!」
アスカが刀を振りかざすと、土の壁は幾つもの土塊へと姿を変え、魔物の群れに襲いかかる。
まるで弾丸の嵐のように、土塊は魔物の体を打ち抜いた。
衝突の衝撃で細かく砕けた土塊は、方向転換して、なおも魔物めがけて突撃する。
塵と化すまで何度となく襲い来る土塊に、魔物の数は凄まじい勢いで減っていく。
動くものがいなくなるまでに、そう時間はかからなかった。
魔物はすべて生命活動を終え、土塊は大地へと還っていった。
「これは……思った以上ね」
ライザは唖然となって、アスカを見つめる。
「ボスを倒さないと、雑魚はいくらでも湧いてきます。早く行きましょう!」
アスカはそう言って先に行ってしまった。
「ま、待ってよぉ」
ライザはその背中を慌てて追いかけた。
「覚悟してください。今度こそ負けませんよ!」
アスカは最深部に佇む巣穴の主に刀を突きつけた。
「ギギ……いい度胸だ。今度こそ食い殺してやる!!」
魔物は昆虫的なその体躯を大きく伸ばし、尖った手足の先端をギラつかせる。
「そうはさせないわ。今度は一人きりじゃないんだから!」
ライザがアスカを守るように前に出て叫んだ。
その背中に、アスカは今までに感じたことのない気持ちを抱く。
「ほざけぇっ!!!」
「わっ!!」
鋭利な昆虫の手が、一瞬前までライザが立っていた場所に突き刺さった。
反射的に後ろに飛び退いた二人は、すぐに体勢を整える。
「敵を射抜け、ファイアーランス!!」
かざされたライザの杖から、炎の槍が四本放たれた。
「クェェッ!!」
魔物は口から粘液を吐き、炎にぶつけてかき消す。さらに余りが二人に向かって降りかかった。
アスカは粘液をかわしながら魔物に迫る。刀を大きく振りかぶり、魔物に斬りかかった。
「く……っ!!」
しかし魔物の硬い体には刃が通らない。アスカの手が衝撃で痺れるほどの勢いがついているというのに。
「くらぇっ!!」
アスカが一旦退くと、ライザは火球を投げつけた。
「ケケケ!!効かねぇなぁっ!!」
頑丈な体で火球を弾き、魔物は二人に飛びかかる。
「危ないっ!!!」
避け損ねそうになっていたアスカを、ライザは跳びかかって助ける。抱き合ってゴロゴロと地面を転がった。
そこへまた襲いかかった魔物の手を、ライザが杖で受け止める。
「ぐぅぅ……っ!」
ライザは魔物の力に押し切られそうだった。踏張る足がズリズリと地面を滑る。
「だあああっ!!!!」
アスカは魔物の体に体当たりした。拮抗していた力のバランスが崩れ、ライザが前に踏み出す。
アスカが魔物を蹴り飛ばして後ろに下がるのと入れ替わりにライザが魔物の胸元に杖を押し当てる。
「弾けろっ!!!!」
爆炎が杖の先で迸り、魔物の体が大きく後ろへ吹き飛ばされた。
ライザも爆風で飛ばされたところを、アスカがその体を受け止める。
「グ……この程度で、俺が倒せると思うなよっ!!!」
魔物は多少のダメージを受けているようではあるが、この調子では倒せそうにない。
「アスカちゃん……。少しだけ、時間を稼いでくれる?」
「え?」
「魔力を集めて、特大の魔法をお見舞いしてあげるわ。でも、少し時間がかかるの」
ライザは心苦しそうに顔をしかめながら言う。
アスカ一人で魔物を相手にするのは危険であることを承知した上で頼んでいるのだ。
「分かりました。任せてください!!」
アスカは頷き、魔物に向かって刀を振る。魔物の足元の地面が隆起し、槍のように魔物を突き刺そうとした
だが魔物の身体には通じない。土はボロボロと崩れ落ち、魔物はアスカに向かって粘液を吐きかける。
「うっ、くぅっ!!」
降りかかる粘液を辛くも交わしながら、アスカは少しずつ魔物に近づいた。
アスカの刀と魔物の手とが金属的な高い音を立ててぶつかり合う。
アスカは何本もの手を同時にさばきながら、口から吐きかけられる粘液を避ける、ギリギリの戦いをしていた。
後方で魔力を貯めているライザの邪魔をさせないよう、接近戦で自分だけに意識を向けさせる。
「ぐっ!」
魔物の力に押され、アスカは尻餅をつく。追撃を受けないように後ろに飛び退いた。
だが魔物はその隙を逃さなかった。粘液を手に吐き、それを鞭のようにしならせてアスカの足を捉える。
「あっ!!」
足首を引っ張られる感覚がした後、アスカは地面に叩きつけられた。
「捕まえたあぁっっ!!!!」
魔物はアスカの体を引っ張り、空中に放る。手の一本が大きな鎌のように姿を変えて、アスカの体に迫った。
/共通 END
「アスカちゃんっ!!」
ライザは反射的に飛び出していた。
その体に溢れるほど取り込んだ魔力を燃料として、爆発的なスピードで魔物の懐に飛び込む。
「今度こそくらえっ!!ハイ・エクスプロージョン!!!!」
杖を魔物の体に押し当て、呪文を唱える。
「グガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!!!」
爆発とともに魔物が吹き飛んだ。ライザも一緒に吹き飛ばされる。
「あぐぅっ!!」
魔物の鎌がライザの右腕を掠めた。マントが破れ、血がにじむ。
ライザは勢いよく地面に衝突し、ゴロゴロと転がった。
「ライザさんっ!」
魔物の攻撃を受けずに済んだアスカは、ライザのもとに駆け寄り、抱きかかえる。
「あ、アスカちゃん……。私はいいから、魔物にとどめを」
ライザは痛みをこらえながら、震える指先で魔物を指し示す。
砂煙の中でもだえ苦しむ魔物は、腹の部分の堅固な体表が消え失せ、やわらかな内部が露出している。
アスカは刀を強く握りしめ、魔物に向かって突進した。
「であああああああっっ!!!」
そして、魔物の腹を貫く。
「ガアアアッ!!!!!
紫色の体液が迸り、アスカの体を濡らした。魔物は苦しげにその足をバタバタと動かしている。
「た、たすけてくれっ!!」
そう命乞いをする魔物の言葉に、アスカは耳を傾けない。
刀を一息に引き抜き、その傷跡に魔法で岩を投げつけた。
そして、魔物の体内でその岩を炸裂させる。
「ギギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」
岩と同時に、魔物は断末魔の叫びをあげて散り散りに弾け飛んだ。
「……やった」
アスカはそう呟くと、急に力が抜けるのを感じて膝から崩れ落ちる。
これほどまでに苦戦した相手は今までにいなかった。危ないところだったが、辛くも勝利したことに安堵の笑みを浮かべる。
「アスカちゃん、やったわね!」
ライザは傷ついた右腕を押さえながらアスカの傍にやってきた。
「はいっ!」
アスカは不意に素直な笑みをライザに向ける。
その時、突如魔物の肉片が光りだした。
「え……?」
「な、なんなの!?」
魔物の体は無数の光の粒となって、一点に収束していく。
身構える二人だが、目の前に現れたのは意外なものだった。
「……ほ、本?」
ライザが首を傾げる。
そう、それは一冊の本だった。重厚だが、何の変哲もない本。
アスカはライザとは違い、どこか納得のいった表情をしている。
「そうか、そういうことだったんだ」
「ど、どういうこと?」
ライザはアスカに訊ねた。
アスカは本を手に取る。そして、それを見つめながら言った。
「私は、この本を探しているんです。魔界との繋がりを持つ、この本を」
「ま、魔界?」
ライザは声をひそめて訪ねる。その声の震えを、込み上げる感情を悟られないように。
「そうです」
アスカは一つ頷くと、しばらく考え込む素振りを見せた。
「ライザさんには話しておきます。私が何をしようとしているのか」
「どういうこと?」
「私が生まれた世界、イルシリアの話から始めないといけません」
アスカはそう言い、話し出した。5年前のことだ。
イルシリア。アスカが生まれたその世界は、魔法の発展した世界だった。
その世界には大きな魔導院が存在した。世界中の魔法使いが集い、魔法研究を行う機関だ。
魔導院の書庫には、その魔法研究の成果の結実ともいえるいくつかの魔導書が保管されていた。
そして書庫の奥深く、禁書の間と呼ばれる場所にそれはあった。
書のタイトルは「異界の書」。
イルシリアは、異世界の存在を理論上発見していた。
ある魔法使いはそこへのアクセスを可能にする方法を追い求めていた。その集大成ともいえる書だ。
なぜこの書が禁書の間に収められているのか。それは、ごく単純な理由からだ。
「この書は魔界の扉を開く」
魔導院の院長は、献上されたその書を読み終えたとき、そう結論付けた。
無数に存在する異世界。異世界とイルシリアとは、魔力の流れでつながっている。
その異世界の中に、ひときわ強力で邪悪な魔力の流れを持つ世界があることを、この書は証明していた。
そして、その世界へと繋がる扉の開き方すらも記載されていたのだ。
それは研究者としての純粋な探究心から導き出されたものであった。
しかしその危険性を鑑みて、この書は禁書として封じられざるを得なかった。
多くの研究者はそれを惜しんだが、この決定と同時に異世界の研究自体が魔導院では禁忌とされた。
そして、5年前。
その禁書は厳重な警備にも関わらず奪われた。
書を奪ったものは、あまりに強力な力を持つ者、異界の魔法使いだったからだ。
リゾルートから派遣された魔法使い。
数年前から突如あらわれ、魔物を討伐してイルシリアの平穏を守っていた者の一人による凶行だった。
彼は戸惑うこともなく、魔界の扉を開いた。そして魔界から途轍もなく強力な魔物があふれ出す。
リゾルートが地獄と化すまでに要した時間はほんの一瞬のことだ。
その悪夢のような光景を、アスカはその幼い瞳に映していた。
魔導院で働く両親のもとに生まれたアスカは両親が殺されるのを目の前で目撃した。
血臭と悲鳴が立ち込める中、殺される寸前のアスカを救ったのは、当時イルシリアに派遣されていたセリナだった。
セリナと共にイルシリアから脱出したアスカは、幼くしてすぐに魔法使いに志願する。
両親を殺し、故郷を破壊した魔物の脅威から世界を守るためだ。
そして同時に魔法使いを嫌悪した。魔法使いは世界に破滅をもたらしかねない存在であることを心に刻んだ。
自分だけは、絶対にそうならないよう固く誓いながら。
「アスカちゃんはその……イルシリア、から脱出してきたんだ」
「はい。そして、魔法使いとしてこの世界に派遣されてからは、ひたすら魔物を狩っていました。でも、ある日……。出会ったんです」
彼は魔導院の研究者の一人だった。
多くの魔法使いが魔界の扉を開いた男から書を奪い返そうと戦いを挑んだ。
圧倒的な強さを持つ男も、多数の魔法使いを相手に苦戦し、書を取り落とす。
彼はそれに飛びつき、とっさに書を開いた。
これ以上、魔界の扉を開かせるわけにはいかない。男から書を遠ざけなくてはいけない。
だから彼は書の力を借りて異界へと逃げ込んだのだ。イルシリアから最も近い世界であるとされるエルードへと。
エルードの砂浜に流れ着いた彼は、書に目をやって愕然とした。
あまりにも禍々しい魔力が流れ出していたのだ。
魔界の扉を開こうとする書の魔力はまだ働いていた。あろうことか、エルードでも魔界の扉が開かれようとしている。
慌てて彼は書に封印を施した。研究者は誰もが習得することになっている緊急措置の呪だ。
書の魔力を6つに分かち、写本を生成。その力を持って書を封印する。
封印は無事に成功した。
誤算だったのは、魔力があまりに強大だったため、6つの写本の魔力がぶつかり合い、世界中に散らばってしまったことだ。
彼は焦った。緊急措置は、原本である書を分割することで魔力を削ぎ、各個処理することを目的としたものだ。
今のままでは流れ出す魔力は止まっておらず、周囲に何がしかの悪影響を及ぼす状態だった。
その日から、彼の旅が始まる。
研究職で、魔法使いとしては落ちこぼれであった彼は、ワープの魔法すら使えなかった。
移動手段の限られた彼にとって、世界のどこに散ったともしれない写本の探索は困難を極める。
4年の月日を費やしてやっと見つけた最初の写本は、森の木を異常に変異させていた。
彼は近づくものを攻撃するその木の根元に埋まった写本を命がけで奪取するも、深手を負ってしまう。
辛くも写本の処理は終えたが、それが彼の限界だった。
大量の血を流しながら近くの町にたどり着いた彼は、ついに歩くことすら出来なくなり、倒れこむ。
薄れゆく意識の中、彼は使命を果たせずに死にゆくことを悔いた。
「すみません……」
誰も彼に手を差し伸べようとしない中、彼は母国の言葉で誰にともなく呟いた。
「えっ!?」
その言葉を耳に止めた者がいた。アスカだ。
アスカは彼に駆け寄り問いただす。彼は最後の力を振り絞って事情を話した。
アスカの幼い姿は、全てを託すには頼りなかったが、他に誰も頼りようがない。
話し終えて目を閉じた彼にアスカは慌てて治療の魔法をかけるが、既に手遅れだった。
こうして、アスカは彼の使命を引き継いだのだ。
「イルシリアの生き残りである私が、彼の後を継いで、写本を見つけ、処理するべきなんです」
アスカはそう言って本を地面に置く。確かに本からは禍々しい魔力が流れていた。
魔物はこの本を取り込んでいたのだろう。だからこそ異常なほどの強さを誇っていたのだ。
アスカは刀を逆さにして本の上にかざす。
すると、刀から煙のように溢れた魔力が、あふれる魔力ごと本を包んでいった。
魔力が漏れ出る隙もないほどに本を包み込むと、吸い込まれるようにして本の中に入っていく。
全ての魔力が本に吸い込まれると、もう本からは魔力が感じられなくなった。
「ふぅ……」
アスカは一つ溜息をつき、刀を鞘に収めた。
「ライザさん、お願いがあります」
「ん、なに?」
「残り4冊の写本、そして原本である禁書。その処理を手伝ってもらえませんか?」
アスカは深く腰を折ってお辞儀をしながら言った。
「え……でも、いいの?」
ライザは戸惑ってしまう。あれだけ自分と関わることを嫌がっていたのに。
「私一人では難しいことが分かりました。変なプライドよりも、確実に使命を果たすことの方が大事ですから。……駄目ですか?」
アスカは不安げに眉をひそめて訊ねる。対するライザは満面の笑みで答えた。
「駄目なわけないじゃない!これからよろしくね!!」
ライザは右手を差し出す。アスカはおずおずとその手を取り、言った。
「よろしく……お願いします」
/第2話 END
(避けられないっ!?)
すぐそこまで迫っている鎌を前に、アスカは反射的に全ての魔力を防御に費やした。
あれだけの強さを持つ魔物の鎌をまともに受けようものなら、腹から真っ二つになってしまう。
「ぐううううっっ!!」
アスカの腹を正確に捉えた鎌と、アスカの魔力とが拮抗する。
パリン、とガラスが弾けるような音を立てて、アスカの防壁が打ち破られた。
「うああああああああああああっっ!!!!」
防壁によって胴体切断はなんとか免れたものの、アスカの体は吹き飛ばされ、壁にぶつかっては地面に落ちた。
「んくっ!!あ、うあぁ……」
服の腹の部分はバッサリと切り落とされ、白い肌にうっすらと赤い切れ目が見える。
アスカにはもう立ち上がる力が残されていなかった。
「アスカちゃんっ!!」
ライザは倒れ伏したアスカに駆け寄ろうと足を踏み出す。
そのとき。
「いっ!?きゃあああああっっ!!!」
ライザは足に痛みを感じ、バランスを崩して倒れ込んだ。
「な、なにこれっ!?やだっ!!!」
足を見ると、そこには小さな魔物が食らいついていた。
拳より少し小さいサイズの羽根虫のような魔物が、ライザの柔らかなふくらはぎに牙を立てている。
「いやっ!!はなれてよっ!!」
何とか振りほどこうとしているうちに、壁の中から一匹、また一匹と羽根虫が現れ、ライザに群がってくる。
「ひっ!!うそ、やっ!!いやあああああああああああああっっっ!!!」
瞬く間に、数十匹の羽根虫がライザの全身に群がり、自由を奪ってしまった。
「ハハッ!ちょうど卵が孵ったみたいだな」
アスカのすぐそばまで歩み寄って、魔物は愉快そうに笑う。
「俺の可愛い子どもたちも散々殺しやがって。俺の巣をよくも荒らしてくれたな!」
魔物は怒りに打ち震えるというよりも、むしろ目の前にした獲物に興奮している様子だった。
「ぅあっ……」
手をアスカの脇に回して持ち上げる。力を使い果たしたアスカの四肢はダラリと垂れ下がった。
「ヘヘ、旨そうだ。この間は食いきれなかったからな。今度はじっくり味わい尽くしてやる」
「んぅぅ……」
魔物が長い舌をアスカの頬、首筋へと滑らせると、アスカは苦しそうに目を閉じたまま眉をひそめる。
「だめっ!!その子に手を出さないでっ!!」
群がる羽根虫に拘束されながらも、ライザは叫んだ。
「馬鹿じゃねーのか?なんでわざわざ獲物を我慢しなきゃならないんだよ!?」
そう言って、魔物は舌をアスカの服の中に潜らせる。
「ゃ……んっ!!」
乳首を舐められ、アスカは気味の悪さに声を漏らした。
「お願い……、やめてっ!!」
「うるさいな。お前ら、そいつは食っちまっていいぞ!!」
懇願するライザに苛立った魔物は、羽根虫達に命じる。
命令を受けた羽根虫達は、ライザの体を食らおうと蠢きだした。
「あっ、やああああああああああああああっっっっ!!!!」
「あっ!!ぐっ!!!ぃああっ!!!!」
足に食らいついた最初の一匹以外はどれも牙を立てていなかったのだが、命令を受けて全ての羽根虫が牙や爪をライザの柔肌に突き立て始めた。
「いたっ!!痛いっ!!!ぃぎっ!!!」
一つ一つはそう大きな傷ではないが、体中に穴を開けられ血がにじむ苦しみは相当なものだ。
このまま、文字通りに食べられてしまうのではないかという恐怖にかられる。
だが、羽根虫達には別の狙いがあった。
「ん……ふぁっ!?え、なにっ!?」
ライザは痛みが遠のいていくのを感じた。全身に痺れるような感覚がある。
一瞬、多量の失血による麻痺かとも思い、死を恐れたが、それも違うのだとすぐに分かる。
(これって……、媚薬っ!?)
感覚が麻痺しただけでなく、羽根虫の鋭利な牙や爪に抉られる傷口がライザに奇妙な心地よさすらも感じさせていた。
話にだけは聞いたことのあった媚薬が自分に使われたことに、ライザは戸惑う。
傷口から塗りこまれているのだとしたら、いったいどれほどの量になるというのだろう。
数十を数えるほどの羽根虫から一斉に媚薬を擦り込まれ、自分は正気を保っていられるのだろうか?
「ふわあああああああっっっ!!!」
ライザは全身を震わせた。それは媚薬による快楽と、それを恐れる気持ちの両方がないまぜになった感覚のせいだ。
羽根虫たちはライザに媚薬の効果が出たことを確認すると本格的に行動を始めた。
両手両足、そして背中に張り付いた羽根虫達は、まだ綺麗なままの部分を赤く染めようと、次の目標を目指して、肌と破けた服の上を這う。
「んああああんっ!!!はぅっ!!き、気持ち悪いわよっ!!!」
ライザは気丈にも快楽に抗った。こみ上げる感覚はただの不快感なのだと切って捨てようとする。
だが、いつまでもそれが続くはずもない。何せ、まだ陵辱は始まったばかりなのだ。
「ひっ!!!だ、だめっ!!そっちはっ!!!!」
数匹の羽根虫は、ライザの開かれた胸元へと這い寄った。
手足や背中ですら快感を覚えてしまっているのに、性器に触れられてしまえばその程度では済まない。
「ひゃううううんっ!!!やめっ!!!だめええええっっ!!!!」
羽根虫はライザのボリュームのある胸にしがみつき、乳首を口に含んだ。
電流のように流れる鋭い快感が、ライザに高く甘い嬌声を強いる。
「んくぅっ!!あうっ!!んうううっ!!!!」
羽根虫達は次々にライザの胸に群がる。牙や爪を立てては体躯を振動させ、共鳴するように乳房がゆるりと震えた。
「ううっっ!!!やめっ!!ぃぐっ、はああああああああんっ!!!」
ライザは耐えようのない快感に咽ぶ自分が情けなくなり、瞳に涙を湛えながら、肢体を震わせた。
乳房の感度がいいことを知った羽根虫たちは、ライザの乳房をつかんで羽ばたいた。
「ひぎっ!?ああああああっっ!!!いだっ!!いだいいいっ!!!!!」
たわわな果実のように実る二つの乳房に食いついたまま、羽根虫達はライザの上体を吊るし上げる。
「やぅっ!!!んがああっっ!!!ちぎれるっ!!!!やめてええええええっっ!!!!」
羽根虫達はライザの身体を持ち上げては下ろしを繰り返した。
柔らかな乳房は持ち上げられた時には楕円のように長く伸び、下ろされるとひしゃげたボールのように潰れる。
ライザは乳房を根元から引きちぎられるような痛みに苦しんでは、豊満な乳房のたわむ波が生み出す快感に震えた。
「助けてっ!!こんなの、無理よぉっ!!!おかしくなっちゃうっ!!!!」
四肢と背中、そして乳房を走り抜ける激しい痛みと快感で、ライザは苦しいほどに悶えていた。
そして、ライザに絶望的な瞬間が訪れる。
「あぐっ!!あ、あれっ!?あぐっ!!なに!?なにか、なにかくるっ!!!?」
ライザは忍び寄る未知の感覚に気がついていた。
14歳になるライザは処女だ。自慰行為すら知らない少女は、当然絶頂の経験などあるはずもない。
「やだっ!!こわい!!こわいよっ!!んあっ!!たすけ、たすけてっ!!!!」
ライザは自分を押し流しそうな快楽の奔流を恐れ、震え上がった。
羽根虫はとどめとばかりに、持ち上げていた乳房を思い切り押しつぶす。
「んひゃああああああああああああああああああああああっっっっ!!!!!」
身体の末端から中心へと駆け抜けるような快感の波に流され、ライザは生まれて初めての絶頂に絶叫した。
「はぅぅ……ぅくっ」
初めて味わう絶頂の余韻を残したままのライザを、羽根虫達は絶え間なく責め続けた。
より敏感な反応を求め、足に食らいついていた羽根虫達は股間にまで這い上がる。
「ひゃうっ!!!だめ、そこはっ!!!」
処女のライザも知識だけはあった。
胸よりも敏感な性感帯であるクリトリス、そして男性器を受け入れるための膣がそこにはある。
下着を掻き分けるようにして、羽根虫はライザの閉ざされた秘裂に到達した。
「だめよっ!!そこは、そこだけはっ!!!」
ライザの声を聞き流しながら、羽根虫は包皮の上からクリトリスをくわえ込んだ。
「ひゃぐううううううううんんっっ!!!!!」
痛みのような鋭い刺激が走る。既に充血して張り裂けそうに勃起しているクリトリスは、震え上がる程の快感をもたらした。
その感度の良さに満足した羽根虫達はさらに股間に群がってくる。
口の奥から細く長い舌を伸ばし、クリトリスに巻きつける。左右の大陰唇に牙を突き立て、秘裂を大きく開く。
「ひゃああああああっっ!!んぐっ、やめっ!!んはああああっっ!!!!」
怒涛のように押し寄せる責めに、ライザは激しく悶えた。
羽根虫は胸への責めも忘れてはいない。しかし股間の感度の良さを知ると、これまでの胸の反応では飽きたらなくなった。
だから羽根虫は更なる刺激を求め、次の手段を講じた。
その昆虫的でグロテスクな腹の先端にある、細い針を左の乳首に刺したのだ。
「んあああああああああああああっっっっっ!!!!!」
途方もない快感がライザを貫いた。だがそれだけでは終わらない。
「あづっ!!!あづいっ!!!!やだっ!!!変なの出さないでっ!!!!」
ライザは熱いものが乳首から乳房に流し込まれるのを感じた。
これは精液だった。この羽根虫の精液は、強力な媚薬効果を併せ持っている。
「あぐっ!!ひがっ!!!うぎぃっ!!!!やっ、おねがっ、たすけてえええっっ!!!!」
次から次へと、快感はインフレーションを起こすように高まっていった。
「はぎっ!!!!」
右の乳首にも針が刺される。両の乳房が燃えたぎるように熱い。そして痛いほどに疼いている。
「あっ、うあっ、だめっ!!もうだめぇっ!!」
羽根虫は再びライザの乳房を激しく弄んだ。先程のように吊し上げはしないものの、前後左右に大きく振り回す。
「あひゃあああんっ!!!かひっ!!はっ、うくっ、あああああっっ!!!」
乳房が暴れまわるのに比例して、ライザは激しく乱れた。
「はぐっっ!!!!ああああああああああああああっっ!!!」
ついには、乳房以外の羽根虫達も針を使い、精液を体中から注入しだす。それは、秘裂に群がる者達も例外ではない。
「はきゃああああああああああっっっっ!!!!!!」
陰唇に、尿道に、膣壁に、そして当然クリトリスにも、容赦なく針が刺され、精液が注がれた。
針のむしろのような痛みの後、沸き立つような熱感が襲ってくる。
「んはあああああああああああああっっ!!!あぐっ、がはっ、んきいいいいいいいっっ!!!!!」
金切り声を上げて、ライザはのた打ち回る。
「やめでっ、やめでやめでぇええええっっ!!!んああああああああああああああああああっっっっっ!!!!」
首を振り回して叫び、ライザは二度目の絶頂を迎える。
最初の絶頂の勢いを遥かに超える波に、身体が浮かび上がるほどに脈打った。
羽根虫達はさらに活発に動き出す。そして、ついに仕上げにかかった。
羽根虫の中で一番大きな一匹が、その腹をライザの膣口にあてがったのだ。
「うぎいっっ!!はっ、がっ、あふっ!!やぅううっ!!!」
ライザは全身の激しい快感に気を取られ、その事実に気がついていない。
羽根虫がその羽根を動かし、ヴヴヴと不快な音を立てて膣内に侵入したことも、気づくまでに多少の時間を要した。
「あぅ……っ!!ぎっ!?いっ……うそ、まさかっ!!!?」
気がついたのは、処女膜の圧迫感からくる痛みを感じた時だった。つまり、それは処女を喪失する直前のことだ。
「うあああああああああああああああああああああああっっっっ!!!!!」
羽根虫は、先端の針をギラつかせた太い腹でライザの処女を奪った。裂傷から処女の証が流れる。
「やだあああっっ!!!そんなっ!!!あがっ!!があああああっっ!!!!!」
痛みすらも快楽に変換されているはずの身体なのに、ライザは破瓜の痛みだけは奇妙なほどリアルに感じていた。
「ひゃぐっ!!!あ、ぐぎいっ!!いづあああああああっっっ!!!!!」
羽根虫は膣壁に針を突き立てる。何度も突き刺しては精液を放ち、膣内の感度を高めていった。
そしてピストン運動を開始する。ジュボ、ジュボと水音を立てて、ライザの膣の奥深くまで潜っては抜け出してを繰り返す。
「いひゃあああっっ!!!んぐ、がっ、ぎっ!!!あがああああっっっ!!!!!」
もうこの感覚が痛みなのか快楽なのかすら判別が出来ない。
ただ強烈な感覚が、自分の理性も、純潔な少女としての身体も、全てを流し去ってしまうということだけを認識していた。
白い柔肌はどこも小さな噛み傷と刺し傷で赤く染まり、見る影もない。
「ひぐっ、あっ、あっ、あっ!!!あああああああああああああっっ!!!」
吠えるように叫び、自由の聞かない手足をバタつかせ、裂けんばかりに大きく開いた口から唾液を散らす。
麗しい少女はもうそこにはおらず、魔物に淫らに犯された女がいるだけだった。
「ぎっ!?うがああああああああああああああああっっっっっっ!!!!!」
膣を犯す羽根虫が一段と深く潜り込んだ衝撃で、ライザは身体の最も奥から突き上げる絶頂を迎えた。
収縮する膣道の刺激を受けながら、羽根虫は針の先端を子宮口の狭い入口に差し込んだ。
そして、濃い精液を子宮に直接流し込む。
「あああ……で、でて、るっっ……!!せーえき、わたしのなかに……」
呆然とするライザは弱々しく呟いた。その絶望的な事実を、信じられないことのように。
「せいえき、わたしのなかに……じゃあ、わたし、どう、なる……の……?」
先細るようにその言葉は小さくなっていった。その言葉が何を意味するのか、時間をかけて咀嚼するように。
羽根虫がピストンを再開する。敏感になった膣が生み出す強烈な刺激と共に、魔物の子を身籠る恐怖を、ライザは自覚した。
「いやああああああああああああああああああああああああああっっっっっ!!!!!」
悲痛な絶叫が、地中の奥深くで響き渡った。
ライザの絶叫が響いたとき、魔物はその痴態を楽しげに眺めていた。
ぶら下がった性器は、前回アスカの尻穴を犯したときよりも一回り大きい。
「よし、こっちも始めるぞ」
「ぅ……ぁ……?」
魔物はアスカを地面に仰向けで寝かせると、その上に覆いかぶさった。
朦朧とした意識の中で、胸を舐め回される不快感だけをかすかに感じていたアスカには、魔物の声は届いていない。
魔物はアスカの袴と下着を破り捨てると、勃起した性器をいきなりアスカの膣口に押し当てた。
性器は以前と微妙に形が異なっている。先端が細っていて、まるで釘かネジを思わせる。
それは、アスカの狭い膣内にその性器を無理やりねじ込むために加えた変化であった。
「前戯は昨日やったからいらないよな?」
無茶苦茶な理屈を、聞こえていないことを分かっていながら口にする。
そしてアスカの肩を手で固定し、一気にアスカの膣を貫いた。
「がっ!!!!!?ひぎゃあああああああああああああああああああああっっっっ!!!!!!!」
アスカの意識が急激に現実に引き戻された。
処女膜は跡形もなく引きちぎられ、膣口は無残に避けて処女であることが関係ないほど血が滴った。
「あぎゃああっ、がひっ!!ひぎゅっ!!!ごへええええっっっ!!!!!」
およそ少女の口から漏れているとは思えない凄惨で無様な悲鳴を上げ、アスカは泣き叫ぶ。
何が起きているのかも理解できない。自分が処女を失ったことはおろか、処女という言葉の意味すらも知らないままに、アスカは蹂躙される。
「ごげえええっ!!!!うべええええええっっっ!!!!!」
アスカの叫びは、ただただ襲いかかる苦痛を僅かでも紛らわせるべく、喉の奥から迸っている。
だが、焼け石に水、という言葉がこれほど適切な事態もないだろう。
叫んだところで痛みは全く和らぐことはなく、泣いたところで状況は変わらない。
「いぎいいいっっ!!!!がひゅっ、ひぐっ!!!」
アスカは身体を捩ってどこへともなく逃げようとするが、肩と膣で押さえつけられた身体はびくともしない。
突っ張る足が引きつり、痙攣を起こす。あまりの痛みに細い身体が弧を描くように反る。
弱々しいその身体は、今すぐにでもポキリと折れてしまいそうだった。
「ぎゃうっっ!!!ぎっ!!!ぐげっ!!!!」
魔物の性器はアスカの膣内で自在に動き回る。長さも形状も変幻自在なそれは、先端を子宮口に差し込むと、いきなり膨れ上がった。
「ぎゃああああああああああああああああっっっ!!!!!!!」
子宮の入り口を拡張された痛みにアスカの身体が跳ね上がる。
先端を丸めた性器はアスカの子宮の最奥まで行き当たった。魔物は長く伸びた性器を蛇のように波打たせる。
「がはああああああっっ!!!うげっ!!ごああああああああっっ!!!!!」
縦横に波打つのにつれて、アスカの膣口の裂け目が広がっていく。
魔物が性器を奥に押し込むと、アスカの腹はボコッと膨らんだ。
「おお、面白いな」
その様子が気に入ったのか、魔物はその挙動を繰り返す。
「ぎへっ!!!ごぎゅっ、きひっ、ごおおおおおおおおっっ!!!!!!」
その度アスカは獣めいた叫び声を上げて悶える。
これはもはや性行為ではなく、ただの拷問に近かった。魔物の嗜虐心を満たすため、不幸な少女が一人消費されるだけの行為だ。
「ギヒヒヒッ!!!!いくぞっ!!!!」
魔物はアスカの腹を思い切り膨らませた状態で、性器の先端から精液を迸らせた。
「がひゃあああああああああああああああああああああああっっっっ!!!!!!」
溢れた精液の勢いで、アスカの腹はさらに膨れ上がる。
爆発的なその勢いで、アスカは壊れた操り人形のようにガタガタと揺れた。
アスカの身体を陵辱した魔物は、その心地よさに味を占めた。
魔物は、気を失って反応の無くなったアスカの身体を散々に弄ぶ。
二度目の挿入はアスカの身体を後ろから抱え込む形で行われた。
鋭角にそそり立つ魔物の性器に、コスチュームを引き千切られたアスカの身体を勢いをつけて落とす。
アスカの身体を上下に揺すると、僅かに乳房の膨らみが揺れた。
それだけではなく、魔物も上下に運動を加えた。アスカの身体を引き上げると同時に、腰をおろす。
そしてアスカの身体が重力につられて落下すると同時に、性器で抉るように突き上げる。
その度、アスカの腹は歪に膨れ上がった。
射精が終わって性器を抜くと、アスカの身体はそのまま前傾に倒れ込む。
三度目の挿入は、そこからアスカの下半身を逆エビ反りに持ち上げた体位で行われた。
ほぼ真上に開かれたアスカの股間に、魔物は性器を上方からねじ込む。
ピストンをすると、子宮に溜まった精液がポチャポチャと音を立てた。
アスカの右の頬と薄い胸が地面に擦り付けられ、浅い傷が幾つもできていく。
射精を行い、性器を引き抜くと、溢れた精液は逆流して流れ出し、アスカの身体を胸元まで白く汚した。
四度目は、アスカに膝立ちをさせた後背位での挿入だった。
アスカの髪と右の腕を無造作に掴み、上体を浮かせたままピストンする。
獣の交尾を思わせるその交わり方は、それまでで一番激しかった。
髪が抜け落ち、肩が抜けるのではと思うほどの急速な前後運動で、アスカの全身から汗が吹き出て、精液と混じり合って地面を濡らした。
四度目の射精は、アスカの子宮の限界を感じさせた。
精液を放とうにも、もう一杯にまで埋まっていて、抵抗が強く快感が薄い。
そのため、五度目の挿入は膣ではなくアナルで行われた。
魔物は対面の姿勢でアスカの太ももを掴み、挿入した。
アスカの上半身は後ろにだらしなく垂れ下がっている。意識のないその瞳は白目を剥き、口は開かれたままだ。
一度目の射精を終えて以来、アスカは呻き声すらほとんど上げていない。
ただ、五度目の射精に続けて、そのままの姿勢で六度目の射精が行われた時は、胃にまで精液が到達したせいか、
「けふっ」
と、小さく空気が漏れるような音がした。
六度目の挿入は、アスカの身体の右側を地面につけ、左足を上に大きく開いた形で成された。
加減のない魔物の力は、アスカの股関節を外したが、アスカは反応を示さなかった。
そして七度目の射精では、ついに精液が喉から逆流するという状態になる。
さすがにこの時ばかりは意識のないアスカの身体も、
「うごげえええええええええええええええええええっっっっっ!!!!!!!」
と、苦しげな音声を伴なう反射でもって反応を示した。
呼吸を阻害していた精液を排出し終えた後も、アスカは無意識のまま苦しげに呼吸をしていた。
その姿に興奮と好奇心を覚えた魔物は、七度目の挿入を咽喉で行う。
仰向けに寝転んだアスカの顔にまたがる形で性器をくわえさせた。
喉を完全に塞ぎ、呼吸を遮った状態でのピストンを続ける。
異物を排除するために嘔吐するような喉の動きに魔物は快感を覚え、アスカが死なないようにだけ気をつけて挿入を行った。
八度目の射精では、七度目とは逆の現象が起こった。つまり、咽喉から放たれた精液によって、肛門から精液が溢れ出したのだ。
これは面白いと感じた魔物は、アスカの消化器官に詰まった精液を全て排出してみようと戯れに考えた。
性器を引き伸ばし、アスカの内臓をかき回せば可能なはずだ。
しばらくアスカに呼吸をさせて、再び咽喉から挿入した。咽喉の壁にこびりつく精液をこそぎ落とし、胃に貯める。
胃に溜まった精液をかき混ぜると、アスカの身体は苦しそうに痙攣し、魔物を楽しませた。
四度ほど挿入して引きぬいてを繰り返すことで、アスカの消化器官の精液はほぼ全て肛門から流れ出し、精液溜まりを形成した。
満足してきた魔物は、一旦最後の射精をすることを決めた。せっかくアスカの消化器官を制圧しているのだからと、そのまま行う。
アスカの咽喉から侵入した性器は、触手のように長く伸びて肛門から顔を出し、さらにアスカの膣に挿入された。
アスカの消化器官と膣と子宮を使ったピストンは二分間行われ、魔物は貯蔵されている精液を全て吐き出す射精を行う。
子宮を風船のように膨らませた精液は、流石に入りきらずに、性器は途中から膣から抜き出され、アスカの身体に精液を降らせた。
魔物はアスカの喉から性器を引き抜いた。アスカの苦しげな呼吸は消え入りそうに弱っている。
魔物が仕上げにアスカの腹を足で踏みつけると、丸く膨らんだアスカの子宮内に蓄えられた精液が、血液と共に噴出した。
一週間が過ぎた。
アスカとライザの二人は、魔力の回復を待つ小休止のみを挟んで犯され続けていた。
「はひゅっ!!!!らめれしゅよおっ!!!こんにゃ、はげしすぎてっ!!!」
ライザは魔物に犯されながら、快楽を貪っていた。
アスカはと言えば、
「……………………」
もの言わぬ人形となって、ただ羽根虫に犯され続けている。
対極的な様相を呈している二人だが、共通する点があった。それは……。
「もう……、こんなに中に出されちゃったら……っ!!!はっ、あん、く、くるっ!!!」
ライザは大きく膨らんだ腹をかばうようにうずくまる。
「はっ、ふっ、んあああっ!!また、元気な赤ちゃんかな?」
ライザは愛おしいものを抱き抱えるように、腹を撫でた。
アスカの腹も同様に膨らんでいる。突然腹が歪んだかと思うと、アスカの身体がガクガクと震えだした。
しばらくすると、アスカは仰向けに倒れ、開かれた両足の間、股間から奇妙な粘液をまとった不恰好な魔物が顔を出す。
二人とも、魔物の母体、生産工場へとその身を化していた。
子宮に魔物の卵を植え付け、精液を注げば、母体の魔力を吸い取って、二、三日で魔物は生まれる。
今、二人は何度目かの出産を迎えたところだ。
幼い二人の少女は、無残にも魔物を産み落とすだけの存在となった。
だが、それが彼女達にとって不幸なことなのかは分からない。
既に、その不幸を認知できる少女は存在していないのだから。
/ BAD END
381 :
杏の人:2010/01/16(土) 13:20:55 ID:P7nJD/Qm
以上です。
ミスで、ほとんどの共通部分に「共通」と付け忘れてしまったり、
頭に謎の「7」が付いたりしてしまいました。申し訳ありません。
今回は説明的描写が長くなってしまいました。
もう少しうまくまとめられたらいいんですが…。
そして通常部分が長くなったら、その分陵辱シーンもある程度書き込もうと思うから長くなるわけで…。
ともあれ、次回は第3話です。
少しでも楽しんで頂けていれば幸いです。
それでは、また次回。
乙でした。
杏の人 おつかれ&GJ!
気絶してるもしくは寝てて反応がないエロは好物です。
それを好きなだけ連続射精でいたぶるのは堪らない。
幼い少女の子宮姦にあつらえた細い性器でアナルをほじって
咽頭を突き通す流れは凄い好き。仰向けまたがりイラマチオは好物すきでやばい。
同人誌が9千円分届いたけど流れがよすぎてこっちで抜けました。
SSで非エロとエロの割合はエロが多くないと納得できないのがよくわかります。
自分で読んでエロが少ないと納得できないですよね。
あとホムペのほうのインデックスで荒野の魔法少女のリンクがちょっとおかしくなってるみたいです。
本物の凌辱をみせてやると言わんばかり。GJですた。
和風っぽいコスの魔法少女GJ!
相変わらず地味に健気な少女を描くのが上手いなぁ、そんなオニャノコがお腹膨らませて絶叫しまくりでエロドリーム全開だよ。
自分的にはアスカはなんとなく腋巫女なビジュアルを重ねてるんで、異種→腹ボコの流れに腋コキとかのフェチな責めも絡めて欲しかったり。
なにはともあれ、規制のなかで満足に感想も受けられないかもしれませんが、杏の人投下乙でした!
GJ!!
小さくて華奢な女の子がとことんまで滅茶苦茶にされてしまうゾクゾク感が堪らないです
お話も色々と膨らんできそうな雰囲気ですし、次回の投下も心待ちにしてますよ
387 :
名無しさん@ピンキー:2010/01/24(日) 20:37:03 ID:CkROB2PI
保守揚げ
荒野の魔法少女の一話が見れないんですがライザって幾つぐらいのキャラでしたっけ?
389 :
杏の人:2010/01/24(日) 21:59:37 ID:Pr2jbcpZ
390 :
名無しさん@ピンキー:2010/01/26(火) 23:56:59 ID:4WWW+rsv
マスクドライダー竜王VS大怪獣ヴァルアス
以前、『魔法少女ユキ』というタイトルで書いたものです。
長ったらしい上にエロの比率が少ないので、申し訳ないのですが、続きを描いてみたので投下してみます。
今回は苦痛系のエロですが、初挑戦なので自信ないです。
今にも雨が降りだしそうな黒々とした曇の下、男が一人車を走らせていた。
「全くこういう日は部屋の中でのんびりさせてもらいたいんだが、まあ商売柄そういう訳にもいかんよな」
大通りをしばらく走り、そこから右手に曲がってすぐの場所に、彼は目的地の公園を見つける。
公園の周囲には立ち入り禁止を示す黄色いテープが張り巡らされ、制服姿の警官が警備に当たり、野次馬やマスコミの取材班を押し止めていた。
その人の群れを通り抜けて、男は公園の脇に車を停め、車の外へと降り立った。
「しかし、みんな結構暇なんだな……一体、どこからこれだけの人数が集まったんだ?」
携帯のカメラのシャッターを切る事で頭がいっぱいの野次馬達と、男の姿を見つけてマイク片手に押し寄せてくるマスコミ達、
彼らに懐から出した手帳を掲げながら、男は公園の入り口へと近付いていく。
男は地元警察の刑事だった。
彼の顔を見て、制服警官の一人が声を上げる。
「あ、竹内巡査部長、待ってましたよ」
彼の名前は竹内海国、『海』の『国』と書いて『ミクニ』。
しかし、大仰な名前とは真反対のどうにも冴えない、覇気の感じられない容姿のせいか、下の名前を覚えている同僚は皆無だった。
「遅れて悪いな。で、現場の様子は?」
「どうもこうも無いですよ。またいつものヤツです」
制服警官の視線の先、公園の内部は滅茶苦茶に破壊されていた。
金属製の遊具はひしゃげ、まがり、一部は得体の知れない腐食性の粘液で溶かされている。
押し固められていた地面のそこかしこがえぐれ、その下にある火災時のための防火水槽までが露出していた。
まるで、映画のスクリーンから飛び出したモンスターが行ったかのような、徹底的な破壊。
いや、実際にその場に居合わせた目撃者達はこれが巨大な怪物の仕業であると証言している。
「この光景を見ると、認めざるを得ませんよ。人間業じゃないですもの」
「確か、今回は警察関係の目撃者もいるんだったな?」
「ええ、しかも一連の事件でこっちに出張ってた県警の誰だかが見たらしくて、これで、警察も怪物犯人説で動くしかなくなりましたね」
一ヶ月ほど前からこの街に奇怪な事件が起こり始めた。
自動車が、電柱が、建物が、道路が、大型の建設重機でも不可能なくらいの徹底的に破壊された。
現場で被害に巻き込まれた人々のほとんどが、怪物の姿を見たと証言した。
もちろん、警察は当初、これらの証言を信じず、危険なテロ組織の犯行と見て捜査を行っていた。
しかし、度重なる事件と、その度に目撃される怪物の証言を前にして、警察もようやくその認識を改めようとしていた。
そして、これらの事件には、奇妙な事がもう一つ
「例の二人組は今回も目撃されてるのか?」
「はい。今度もものの見事に怪物をやっつけてくれたみたいですよ。例によって、誰も姿形を覚えてないみたいですが……」
街を襲う怪物を倒す、謎の人物。
奇妙な事に、何人もの人間に目撃されているにも関わらず、目撃者達は彼らが二人組であるという事以外、何一つ覚えていない。
彼らは巨大な怪物を魔法染みた方法で倒し、さらに周囲の怪我人をこれまた魔法染みた方法で治療して去っていく。
最初はテロ事件の首謀者とも疑われたが、今ではこの街の誰一人としてそんな事は信じていない。
「……正義のヒーローか……」
自分で口にしてみて、その言葉の現実離れした響きに海国は肩をすくめる。
裏で何が起こっているのであれ、今の彼に出来るのは目の前の事件を調べる事だけだ。
「全く…一体、何が起こっているんだろうな……?」
不安げに呟きながらも、海国は現場の捜査に取り掛かるべく、公園の中へと入って行ったのだった。
一方、事件現場から少し離れた街の中心区域。
周囲に立ち並ぶビルの中でも一際巨大なその建物の内部、
会議室に集まったスーツ姿の男達がスクリーンに映し出された、事件現場の公園からの生中継の様子を固唾を呑んで見守っていた。
「今回の件についても、警察は見解を変えるつもりは無いようだな……」
「表向きは、でしょう。今回は警官の中にも目撃者がいるようですし、彼らもそろそろ捜査方針を転換する筈です」
「だが、だからといって何になる?見たまえ、あの公園の惨状を!警察などがあんな相手に対抗できると思うか?」
「この程度で済んでいる内はまだいい。だが、この街に致命的なダメージを受けるような事になれば……」
「当然、この街と共に発展してきた我々の中央工場も、ただでは済みますまい………」
最後の台詞を聞いて、会議室に集まった男達の全員が押し黙った。
この街に根を下ろし、現在の繁栄を築いてきたこの企業にとって、続発する怪物事件は切迫した問題だった。
やがて、会議室にいる中でも最年長の男がゆっくりと顔を上げ、部屋の隅に座っていた”その男”に話しかけた。
「先生、我々は一体どうすれば……」
「何も心配なさる事はありませんよ」
答えたのは、身の丈2メートルをゆうに越えようかという禿頭の巨漢。
身にまとったボロボロの法衣と、左手に巻きつけた数珠を見るに、どうやら僧侶であるらしい。
「この街を脅かす悪鬼、魑魅魍魎の輩どもに御仏の加護というものを見せてあげましょう」
「それではお引き受けいただけるので!?」
「勿論です。これはあなた方だけでなく、同じく苦難に遭われている街の方々を救う事にもなるのですから」
その声は穏やかでありながら、この場に集まった男達の不安を簡単に拭い去るほどの力強さが秘められていた。
無数の傷を刻まれた、岩石を思わせるゴツゴツした顔に浮かぶ笑顔は、慈愛に満ちた仏と見紛うほどである。
僧侶は会議室の男達にはっきりと言ってのけた。
「拙僧にお任せください。必ずやこの街を守り抜いてみせましょう」
「「「「おおおっ!!!!」」」」
会議室に男達の喜びの声が響き渡った。
放って置けばどれほどの被害をもたらすか全く分からない謎の怪物達。
男達はその怪物達への強力な対抗手段を手に入れたのだ。
と、その時、会議室のドアがノックされる。
「おや、こちらも用意が整ったようで……入ってきなさい」
ドアの向こうから現れたのは大きなアタッシュケースを片手にぶら下げた年若い男。
彼は僧侶の目の前の机にアタッシュケースを置いて、そのフタを開く。
その中に入っていたのは……
「これはほんの前金、怪物退治に必要な分があれば逐次お申し付けください」
ギッシリと詰まった札束の中から、僧侶は一束を手にとって確認する。
僧侶の口元がニィッと歪み、異様なほどに白い歯が照明を反射してギラリと輝いた。
「契約成立ですね」
「ええ。この金徳法師、全力をもってこの街を襲う怪異と戦いましょう」
謎の僧侶、金徳は先ほどまでとは打って変わった獣の如き獰猛な笑いを浮かべて、そう答えたのだった。
また、街の中心部を遠く離れた山の麓の森の中では、一人の男が大きな岩の上に腰掛けて空を見上げていた。
年の頃は三十代の後半といったところだろうか。
編み上げのブーツと、山歩きには似つかわしくないブラウンのスーツ、その上に時代がかったマントを羽織っている。
何の意味があるのか、長く伸ばした前髪で左目だけを隠し、残された右目で男はじっと空の青を見つめ続けていた。
「戻って来たか……」
男が呟いた。
男の視線の先、青い空を背景にひらひらと羽ばたきながら近付いてくるものがあった。
それは薄く透き通った美しい羽を持ち、淡い光に包まれて飛ぶ一匹の蝶だった。
男が右手を差し出すと、蝶はゆっくりと木々の合間を下降し、その上に舞い降りた。
男は手の平の上の蝶にそっと話しかける。
「あの街はどんな様子だった?華姫…」
『思ったより被害は少ないみたい。多分、噂の二人組のおかげでしょう』
男の問いに、まだ幼さを残した少女の声が答える。
どうやら、それは華姫と呼ばれた蝶が発しているものらしい。
『それから、街の上空に異界への扉らしきものがあったの。ほぼ間違いなく、化け物達はそこからやって来たんだと思う。ただ……』
「なんだ……?」
『扉自体はもう消えかかっていると言っていいぐらい小さなものなの。どんな強力な化け物でも単独であそこを通って来るのは無理ね』
「という事は……その扉を使って化け物どもを強引にこちらの世界に送り込んでいる何者かが存在する……そう考えた方が良さそうだな」
男はしばし顎に手を当て思案していたが……
「面白い!この私、応天門龍伍、久方ぶりに興味をそそられたぞ!!」
大岩の上に立ち上がり、嬉々とした表情を浮かべて叫んだ。
その瞳は遥か彼方、怪物事件に怯える街の方角の空を真っ直ぐ見据えていた。
そして、また別の場所、多くの生徒達で賑わうとある中学校の校長室。
気弱そうな校長と机を挟んで向かい合い、ソファに腰掛けた少女の姿があった。
「…急な転校という事で、君も色々と苦労しているだろうが、そういう時は我々教師に何でも相談してほしい」
「ありがとうございます」
首の後ろで一本にまとめられた艶やかな黒髪。
白磁の如く白い肌、桜色の唇が柔らかな笑みを形作っている。
「では、来週からは君もウチの生徒だ。頑張ってくれたまえよ」
「はい。それでは、失礼いたしました」
それからしばらくの会話の後、少女は席を立ち、校長室を立ち去った。
校長室から職員室の前を通り抜け、校舎の外に出た時、少女の顔からふっと笑いが消える。
「得体の知れない魔物が暴れてるというのに、随分と平和なものね……」
先ほどまでとは違う、冷たく鋭い氷のような眼差し。
それは、百戦錬磨の狩人を彷彿とさせるものだった。
「複数個体の魔物に、謎の二人組、どういう関係かは知らないけど、この仕事ずいぶん長引きそうね」
少女が一人呟いたその時である。
「おーい!ユキちゃん、こっちだよ!!」
背後からの声、どうやら友人を呼んでいるらしい。
「ああ、シオリちゃん、そっちにいたんだ!」
それに応える声が今度は少女の前方から聞こえた。
見れば、この学校の制服を着た小柄な女子生徒がこちらに向かって走って来る。
女子生徒の邪魔にならぬよう、校舎の出入り口に立っていた少女は少し横に移動する。
「あ、すみません!」
そして、少女と女子生徒がすれ違った瞬間。
(……!?…何、この感じ?)
少女は言葉に言い表すことの出来ない、ほんの僅かな違和感を感じ取った。
だが、それも一瞬の事、友人と合流した女子生徒が立ち去った時には、それは嘘のように消えてしまっていた。
(気のせい?それにしても………)
困惑する少女、この街を襲う怪異に立ち向かうべく派遣された退魔師・朝霧キョウカが
先ほどの女子生徒、山門ユキの正体を知るのはしばらく後の事である。
「えっと、野菜は買ったし豆腐も買った、キノコ類にぬかりはなく調味料もOK、後は肉だな、肉!」
「お兄ちゃん、今からタイムサービスだって!!」
その日の夕方、俺はユキと一緒にスーパーに夕食の買出しにやって来ていた。
ユキがこの世界にやって来て、俺の妹になって約一ヶ月。
その間、俺達は時空の裂け目を通って送り込まれてくる敵を、何とか大した被害も出さずに倒してきた。
授業中だろうが、部活の真っ最中だろうがおかまいなしに出現するヤツらのおかげで俺の生活ペースは乱れまくっていたが、
周囲の人間の記憶をユキが魔法で誤魔化してくれるので、表向きには一応問題らしい問題は生じなかった。
幾度かの戦いで強く実感したのは、ユキの魔法使いとしての驚くべき実力だ。
巨大な怪物の攻撃をさばき、かわし、受け止めて、隙あらば攻撃を加えて追い詰めていく。
必殺魔法の威力や魔法のコスチュームの防御力、その強さは下手な軍隊など相手にもならないだろう。
ユキが元いた国(ヘヴンズフィルドと言うらしい)でも最高クラスの魔法使いだったというのも肯ける話だ。
そして、俺も及ばずながらユキと共に戦い、その手助けをしていた。
ユキが必死で守る『禍の宝珠』の魔力を受けた剣のおかげで、俺は怪物の出現を察知し、戦う為の力を手に入れた。
緑に輝く魔力の刃は怪物の体をやすやすと切り裂き、威力さえ落とせばちょっとした遠距離攻撃も可能になる。
ただし、俺の剣は怪物に対する決定打にはなり得ない。
敵が送り込んでくる怪物は、どれも選りすぐりの強力な物ばかりで、バラバラの肉片にされても戦い続けるという、とんでもなくタフな奴らなのだ。
怪物達の息の根を止めるには、ユキの必殺魔法で塵一つ残らず消し飛ばすしかない。
しかし、強力な怪物達の力は、戦い慣れしたユキにすらその隙を与えてくれない。
俺の役目は魔力の剣で敵を牽制し、ユキが必殺魔法を使うチャンスを作り出す事だ。
今のところ、そのコンビネーションは上手く機能していて、俺とユキの二人は今日まで無事に戦って来れた。
この先どうなるかは分からないけど、今はユキが明るく笑っていられるこの時間が愛おしかった。
とまあ、そんな所で、俺は回想に浸っていた意識を目の前の、これから始まらんとしている決戦の場に戻す。
「さて、オバちゃんどもに負けんように、安い肉を確保しないとな!」
「私も頑張るよー!!」
というわけで、俺とユキはオバちゃん達でごった返す精肉売り場へと飛び込んでいったのだった。
「よおおおしっ!!肉、確保完了っ!!!」
「でも、いくら安いからって多すぎな気も……。二人じゃこんなには食べきれないよ」
「余ったんなら、それはそれで冷凍しとけば無駄にはならないだろ?」
「それもそうだね」
安さ自慢のこのスーパーの精肉コーナー。
特に夕方のタイムセールでは半額商品が惜しげもなくズラリと並べられる。
元値の時点で同じ地域の同業者達から二歩も三歩もリードしているだけに、値引きが加わるとその安さはもはや破壊的である。
あまりの安さに疑いを抱いた新聞記者が取材を決行したが、産地偽装や虚偽表示などの不正はゼロ。
ただ、安さを維持し続けるシステムの一端を知ってしまった記者は、後日、黒服のスーパー店員に連れ去られて行方不明になったとの噂もある。
そしてその安さは我が家の食卓に豊かな食材を持ち帰らんとする客達の間に熾烈な戦いを呼び起こす。
現役高校生にして運動部所属の俺と異界の最強魔法使いであるユキですらボロボロである。
「ともかく、レジの方も相当人が並んでるだろうし、さっさと会計を済ませて帰ろう」
「うん!私、お鍋楽しみだな」
と、そんな時である。
「うおおおおおおっ!!!この応天門龍伍、唐揚げ用の鶏肉を手に入れるまでは……ぐはああっ!!!」
食材を満載したカートを押して、その場を立ち去ろうとした俺達の前に、精肉コーナーから一人の男が弾き飛ばされてきた。
「ぐ…むぅうう…肉汁のしたたる唐揚げを…諦めるわけには……」
思い切り床にぶつけた頭を抑えながら唸る男の姿は、何だか少し妙なものだった。
落ち着いた茶色のスーツの上に、何故だかマントを羽織って片目を前髪で隠したりなんかしている。
なんというか、コスプレっぽかった。
子供の遊ぶ夕方の公園で目撃されたら、一発で通報されそうな怪しい男である。
「あの、大丈夫ですか?」
倒れた男に手を差し伸べるユキを一瞬止めるべきかとも考えたが、人助けをやめろとも言えない。
男は意外に端整なその顔をユキに向け、ふっと笑って
「ああ、大丈夫だ。この程度、どうって事ないさ」
ユキの手は借りずに自分で立ち上がった。
「心配してくれてありがとう。しかし、私も君のような小さな女の子の手を借りるのは忍びないからね」
「お肉売り場、大変な事になってますからね」
「ああ、オバちゃんの肘鉄が人中と鳩尾に立て続けに入って、一瞬意識が飛んだかと思ったら吹き飛ばされていた……」
男は身長も高く、体つきもガッシリしていたが、それでもあの戦場で勝ち抜くには力不足だったようだ。
見かけない顔なので、最近引っ越してきた人なのかもしれない。
確かに、慣れない人間にあの精肉コーナーの混雑を突破するのは難しいだろう。
俺はしばし思案してから
「あの、良かったらこれを……」
鍋物・唐揚げ用のぶつ切りの鶏もも肉のパックをひとつ、男に差し出した。
「有難いが……本当にいいのかね、少年?」
「さっきも妹と少しカゴに入れすぎたかなって相談してた所ですから、どうぞ」
男は少し躊躇ってから、俺の手から鶏肉のパックを受け取った。
それから深々と頭を下げ
「恩に着る、少年」
「いや、そんなにかしこまられても……」
「もし、また出会う機会があれば必ず礼をさせていただこう」
という感じで、やたらと大げさな感謝の言葉を残して、男は去っていった。
「こっちの世界には変わった人がいるのね、お兄ちゃん…」
「いや、俺もあんな人を見るのは初めてだ……」
兎にも角にも、レジで会計を済ませて俺達は家路についたのだった。
くつくつとカセットコンロの上で煮える鍋から、何とも言えない美味そうな匂いが漂ってくる。
俺とユキはテーブルを挟んで鍋をつついていた。
「どうだ?俺の鍋、口に合うか?」
「うん。美味しいよ、とっても!」
嬉しそうに答えたユキの笑顔を見て、俺も頬が緩んだ。
この週末、父さんと母さんは結婚記念日を祝う旅行で家を空けていて、今このダイニングにいるのは俺とユキの二人きりである。
夕食代は貰っていたので、さて何を食べるかと思案して、鍋を食べようという話になった。
食事をしながらゆっくりと話をするにはこれが一番だろうと考えたのだ。
「そういえば、こないだ言ってた友達、あの娘とはどうなってるんだ?」
「シオリちゃんの事だね。うん、仲良くしてもらってるよ」
ユキは中学校で、本来いない人間である自分が溶け込みやすい部活として文芸部を選び、そこに所属していた。
ユキの学校の文芸部はあまり活動が盛んとは言えない、どちらかと言うと仲良しグループのたまり場のような場所になっているらしい。
年に一度、文化祭で発行される部誌をユキが借りて帰ったとき、俺も少し読ませてもらったが、その内容は惨憺たるものだった。
やる気のない人間が書いた文章というのは、正直、中二病爆発の自意識過剰ポエムなどより遥かに痛々しいものである事を思い知らされた。
だが、文芸部の全ての部員がそんな人間というわけでもない。
ユキの友人、南沢シオリはその数少ない例外の一人である。
「どの本を借りようか迷ってたら、シオリちゃんが色々教えてくれて……どれも面白かったなぁ」
「小説も書いてみるって言ってたよな?」
「うん。シオリちゃんに教わりながら、少しずつだけどね。完成したら、お兄ちゃんにも読んでほしいんだけど」
「もちろん、楽しみに待ってるよ」
本を読むのも書くのも、両方大好きな女の子、それがユキのこっちの世界での初めての友達だった。
彼女とユキはクラスメイトでもあるのだが、初めて面と向かって話をしたのは文芸部での事だったという。
魔法で学校に入り込み、明るい少女を演じていたユキだったけれど、心のどこかでクラスの空気に馴染めずにいたらしい。
クラスでは明るく振舞いながら、文芸部ではどこか寂しげなユキの様子から、何かを察してくれたようだ。
今ではどこに行くのも一緒の大の友達同士だという。
「私もちょっと聞きたい事があるんだけど……」
「ん、何だ?」
「お兄ちゃん、何であんな強いの?」
「え?いや、俺も怪物との実戦で鍛えられたし、そもそもあの剣の力が凄いから……」
「ううん、剣抜きでも最初からお兄ちゃんの強さはちょっと……お兄ちゃんのやってる剣術はあくまでスポーツなんだよね?」
「…………ああ。……一応、建前はな……」
俺の所属する剣道部はこの辺りでもかなりの強豪なのだが、他校との大きな差を挙げるとすれば、やはりその練習の質にあるだろう。
そして、それは顧問である南条先生の指導によるところがかなり大きい。
練習の最中、先生はふらりと俺達に近付いてはアドバイスをする。それがまるで部員全員の一挙手一投足を把握しているかの如く的確なのだ。
多分、冗談でも何でもなく、勤続35年の老教師の眼は道場の中をくまなく見渡していて、そこで起きる事は何一つ見逃す事はないのだ。
先生が見ている、見られている、その意識は部員の緊張感と集中力を否応無く高め、それが我が部の実力を高めているのだろう。
しかも、先生自身はあくまで温厚な性格、穏やかな物腰を崩さないので逆に怖い。
そして今、先生の指導は異界の怪物相手の戦いにも通用するものである事が実証されようとしているのだ。
(俺がこの一年余り打ち込んできた事って、そんなにヤバイものだったのか……)
まあ、それがユキや俺の助けになっているんだから、結果オーライなのだけど。
ここで少し、この一ヶ月ほどの戦いの事が脳裏に蘇ったのか、俺とユキは二人して黙りこくってしまう。
それから、ユキは少し照れた笑顔を見せて
「改めて、ありがとうね、お兄ちゃん……お兄ちゃんがいなかったら、私きっと……」
「それはむしろコッチの台詞なんだけどな……」
この一ヶ月ほどの戦いであの怪物達の恐ろしさは身に沁みている。
最初の襲撃のとき、身も心もボロボロだった筈のユキは、それでも決死の覚悟で敵と戦ってくれた。
もし、あの時のユキが立ち上がってくれなければ、あの怪物の為にどれだけの被害が出たか想像もつかない。
俺は椅子から立ち上がり、テーブル越しにそっとユキの頬に触れる。
「俺がどれだけ力になってやれるか分からないけど、俺は最後までお前と一緒に戦うから……」
「うん……」
肯いたユキの安らかな表情に、俺も安堵する。
きっとユキの頭の中は、元の世界の事や敵に奪われた故郷の事、心配事や不安でいっぱいで、本当はいても立ってもいられない筈だ。
ユキが少しでも笑顔で、安心した気持ちでいられるのなら、俺にとってそれ以上嬉しい事はない。
「っと、長話してる内に鍋が煮詰まったな」
「早く食べよう、お兄ちゃん!」
そう言って、二人してまた鍋を食べようとしたその時だった。
ピンポ〜ン!
突然、玄関のチャイムが鳴った。
「誰だろうな、こんな時分に…?」
鍋の用意に手間取った為、現在時刻は既に午後八時半を回っている。
両親も不在のこんな日のこんな時間に、来客があるとはちょっと思っていなかった。
ともかく、俺は箸を置いて立ち上がり、玄関に向かった。
「結界もあるし、敵の追っ手じゃないと思うけど……」
追われる身であるユキはこの街全体や家の周囲に、それとは気付かれぬよう幾重もの結界を張り巡らせている。
ただし、日常生活に支障が出ると厄介なので、こっちの世界の普通の人間は強い悪意を持った者以外は素通りになる仕様だ。
それでも、突然の来客に若干緊張しながら、俺とユキが玄関まで行くと、
ドアの向こうの誰かさんはこちらが確かめようとするその前に、自分で正体を明かした。
「お〜い、タケシ君、夜分に失礼するよ!」
「部長!!?」
聞き覚えのある声に慌ててドアを開くと、ジャージ姿に馬鹿でかいリュックサックを背負ったあの人、
民俗文化・考古学研究部部長、竹内礼子は野暮ったいその格好とは不釣合いな美貌で俺に笑いかけてきた。
「夜も遅くに申し訳ないんだけど、少し上がらせてもらってもいいかな?」
「何かあったんですか、部長?」
「うん。ちょっと父さんの仕事がたてこんでて……ほら、例の怪物騒ぎにかかりきりで、家に全然帰って来ないんだ。
ここまで一人ぼっちの夜が長く続くと、流石の私もちょっと人恋しくなってきてね……」
彼女にしては珍しい、少しバツの悪そうな笑顔を浮かべて、部長はそう言った。
部長の親父さんは地元警察の刑事課に勤務しており、怪物出現からこの一ヶ月ほどの間、かなり忙しい日々を送っているらしい。
「そういう事なら全然構いませんよ。ちょうど鍋もしてたところだし、くつろいでいってください」
「すまないね。恩に着るよ」
俺が答えると、部長はぺこりと頭を下げて、家に上がってきた。
そんな時である。
「…………っっ!!?」
俺の背中を何かゾクゾクと悪寒が走り抜けた。
思わず振り返ると、そこには何故かジト目で俺を睨む妹の顔が……。
「お、おい、ユキ?どうしたんだ!?」
「ううん、べっつに……」
声をかけた俺に返って来たのは、いつになくそっけないユキの返答。
そんな俺達の様子を横目で見ながら、部長は意味ありげな笑みを浮かべる。
二人の間に挟まれた俺は、戸惑う事しか出来ない。
「それじゃあ、お邪魔します。タケシ君」
そして、部長がそう言ったのと同時に、玄関のドアはバタンと閉じられたのだった。
こんな事で怒るのは筋違い。
それは自覚してる。
お兄ちゃんが何か悪い事をしたわけじゃないって事も、十分に理解している。
それでも私は、心の奥底から湧き上がる腹立たしいような悔しいような気分を止める事が出来ない。
テーブルの向こう側、並んで座るお兄ちゃんと、お兄ちゃんの学校の先輩である部長さん。
二人をじっと見つめる私の眉間には、いつの間にやら深いシワが刻まれてしまう。
「うう〜……」
私は自分自身の心の変化に正直戸惑っていた。
自分がこんな風に感情を押さえを利かせられなくなるなんて、思ってもみなかった。
見知らぬ世界に投げ出された私を、受け入れ、支えてくれたお兄ちゃんへの感情は、自分が思うよりずっと大きく育っていたみたいだ。
(……でも、いくらなんでも、こんなのってないよ……)
現在、私とお兄ちゃんはテーブルの上のお鍋を挟んで、真正面に向き合って座っている。
お兄ちゃんの顔を見ながら、たっぷりとお話しをするにはこのポジションが一番だったんだけど、
ところが、一緒に鍋を囲む事になった部長さんは、四脚ある椅子の内よりにもよってお兄ちゃんの隣に座ってしまった。
「それで、今日は部長、何しに出かけてたんですか?」
「うん。ちょっと隣の市まで遠出して古墳と、古い神社を見てきたんだ」
(うう……さっきからお兄ちゃん、部長さんとばっかり喋ってる……)
そんなこんなで状況は一変、すっかり置いてけぼりの私は黙ってお鍋を食べるのも忘れてそんな事ばかり考えていた。
「この辺りは古墳や遺跡の類が数え切れないほどあるからね。調べれば調べるほど興味深い発見にぶつかるよ」
「古墳に神社って……まさか、また勝手に何か持ち出したんじゃないでしょうね!?」
「失礼だな。私が調査で見つけたものを持って帰るのは、それが早急に保護する必要があるものの時だけだよ」
「それで、気に入ったのはそのまま自分のコレクションにしちゃう癖に……」
「あはは…そこはそれ、学術的な必要性とか」
「部長のやってるのはあくまで高校の部活ですから。学者先生じゃないんですから……」
呆れたようなお兄ちゃんの口調と、全く悪びれる様子のない部長さんの話しぶり。
傍で見ていると、息の合ったやり取りに思わず聞き入ってしまいそうにさえなる。
そして、ふとこみ上げてくる寂しさ。
(やっぱり、私はこの世界ではよそ者でしかないのかな……)
そんな思いが私の心を強く締め付ける。
さっき部長さんが話していたモンスター達の襲撃だって、そもそもは私がこの世界にやって来た事から始まったもの。
私という異物の存在がこの世界の人たちを苦しめている。
以前、お兄ちゃんはその事で自分ばかりを責めるのは筋違いな話だ、無意味な罪悪感と責任感は違うものだと言ってくれたけど……。
考えている内にだんだんと私の背中は丸く小さく、顔は俯いていく。
だけど、その時……
「ユキ」
その声に呼ばれて、私は顔を上げた。
「お兄ちゃん?」
「さっきから箸が止まってるみたいだから、ほら…」
お兄ちゃんは私のお椀に鍋の中身を盛って、渡してくれた。
それから、申し訳なさそうな表情を浮かべて
「すまん。さっきからユキの事、置いてけぼりにしちゃってたんだな」
小さく頭を下げてから、そっと頭を撫でてくれた。
(ちゃんと気付いて、見ててくれたんだ………)
こんな、ほんの些細な事が私の胸の奥を温かな感情でいっぱいにしてしまう。
「うんうん、兄妹仲が良いのはやっぱり素晴らしい事だねぇ」
「また部長はそうやって人を茶化す」
「いや、私のとこは一人っ子だったからね。正直、羨ましいよ」
気が付けば、部長さんまでもがどこか優しげな眼差しで私とお兄ちゃんのやり取りを見ていた。
そういえば、玄関でのお兄ちゃんとの会話から察するに、部長さんはお父さんと二人暮らしのようだ。
今はモンスターの襲撃のせいで特に忙しいらしいけれど、そうでなくても警察の仕事は自由な時間は少ない筈だ。
私は、この世界に一人きりで投げ出されたときの孤独感を思い出す。
部長さんもきっと長い間、寂しい時間を過ごしてきたんだと思う。
そう考えると、部長さんが一人ぼっちの真っ暗な自宅より、お兄ちゃんのいる家に来たくなったのも分かる様な気がした。
(一人ぼっちは、誰だって嫌だよね……)
お兄ちゃんと、部長さんと、それと私。
温かい空気に包まれたこの部屋にいられる、その事の喜びを噛み締めながら、私は再びお鍋を食べ始めたのだった。
その後、食事の席の話題は部長さんの民俗文化・考古学研究部の活動についての話題になった。
今度はちゃんと私も会話の輪に入って、部長さんのお話しを聞いている。
この世界の事について、魔法でおおまかな情報は集めていたけれど、細かな歴史については疎い私には為になる内容だった。
「そもそも、この街を中心とした一帯に古代の集落があったんだ。それも吉野ヶ里遺跡クラスの大規模なヤツが縄文時代から存在してたらしい。
その他に、古墳も昔からの神社も数え切れないくらい存在してるけれど、中でも目を引くのが数多くの巨大な環状列石だ」
「環状列石って?」
「ストーンサークルとも言うんだけど、石を輪の形になるように並べた古代の遺跡で、昔の人の祭祀の場所だったって言われてる」
私の質問に、お兄ちゃんが答える。
「その祭祀の場所っていうのが問題なんだ。さっきも言ったけど、数が多過ぎるんだ。この街の周辺で発見されただけで四十以上、
祭をするのにそんな数が必要だとは思えない。それも一つ一つが最低でも2,3メートルの巨石を一つは使った大掛かりなものだ。
古代人だって暇じゃないだろうに、どうしてそんなたくさんのストーンサークルが必要だったのか……?」
だんだんと熱がこもってきた部長さんの話に、私もお兄ちゃんも気が付けば、身を乗り出して耳を傾けていた。
「実はストーンサークルの多くはこの街を丸く囲むように配置されてるんだ。そして、残りは全部その輪の内側に存在する。
この辺、学会では色々な意見が出てるらしいけど、私はこの街そのものがかつては超巨大なストーンサークルだったんじゃないかと思ってる」
「この街そのものって……!?」
「あくまで私の勝手な推測だけど、かつてここにあったのは
曼荼羅のように、幾つものストーンサークルを内包した超大型でかつ多重構造のストーンサークルだった……。
どうして、そんなものが必要だったのかは、まだ私にもよく分からないけどね」
部長さんの話を聞きながら、私はある事を思い出していた。
『禍の宝珠』が封じられていた石の祭壇。
それを丸く囲む、封印の印を刻まれた12人の『閃光の騎士』達。
それらが何故か、部長さんの話してくれたストーンサークルと頭の中で重なり合う。
(もしかして、私がこの世界の、この街に飛ばされてきたのは偶然じゃないのかもしれない……)
それは偶然の一致と呼ぶにも足りない、単なる私の思いつき。
だけど、その考えは不思議とその後も私の頭の中から離れてくれなかった。
さて、お鍋もその後の雑炊も食べ終えると、お兄ちゃんはテーブルの上の食器を片付けて、台所に行ってしまった。
「お兄ちゃん、私も食器洗い手伝うよ?」
「いや、大した手間じゃないから、ユキは向こうでくつろいでてくれ」
そう言われて、現在、私はテーブルを挟んで、部長さんと二人きりで向き合っている。
さっきの一件で少し親近感は湧いたものの、やっぱり初対面の人の前だと少し緊張してしまう。
それに、この人は………
「ユキちゃん、今日はせっかくの団欒の真っ最中に家に上がりこんじゃって、迷惑をかけたね」
「いえ、そんな事……」
「改めて自己紹介するよ、私の名前は竹内礼子。今後ともよろしく」
「山門ユキです。こちらこそ、よろしくお願いします」
「さて、せっかく二人きりになれたから、ちょっと聞かせてもらうよ……」
部長さんの表情が真剣なものに変わる。
「君が来てから約一ヶ月、そろそろ今の生活にも馴染んできただろうしね……」
「…………」
この人は知っている。
私が本来、この家の人間では無い事を。
まだ、お兄ちゃんが私の正体を知る前、唯一私の事について相談した相手がこの部長さんなのだ。
その後、部長さんはお兄ちゃんには私との関係について『上手くいってるか?』と聞いてきたきり、何も言わなかったという。
だけど、実際のところ、部長さんは私という異質な存在をどんな風に思っているのだろうか?
「君は君のお兄さんの事を、タケシ君の事をどう思ってる?」
部長さんのまっすぐで、透き通った眼差しが私の全身を射抜く。
私はその視線をしっかりと受け止めながら、ただ素直に自分の心の内を部長さんに告げる。
「お兄ちゃんは……私のお兄ちゃんは……」
たとえ出会って一ヶ月あまりの短い時を共に過ごしただけの関係だとしても、お兄ちゃんは私を妹だと認めてくれてた。
唐突に表れた異世界の人間である私を受け入れ、一緒に敵と戦うとさえ誓ってくれた。
お兄ちゃんは私を信じてくれたのだ。
私はそのお兄ちゃんの思いにしっかりと応えたかった。
だから、私の解答はただ一つきり。
「お兄ちゃんは、私の大切な、大好きなお兄ちゃんです」
お兄ちゃんが私を妹だと言ってくれるなら、時間も、生まれた世界も関係ない。
私とお兄ちゃんは兄妹だ。
そこに嘘も偽りもある筈がない。
私のその答えを聞くと、部長さんはふっと満足そうな笑顔を浮かべて
「その言葉が聞きたかったんだ……」
そう言った。
「君達はかなり特殊な関係の兄妹だから、ちょっと心配してたけど、これならきっと大丈夫。安心したよ……」
「部長さん……」
それから、部長さんは私の頭に手を伸ばして、そっと撫でながらこう言ってくれた。
「何か困った事、君たち兄妹二人でもどうにもならない事があったら、遠慮なく相談してほしい。私は君たちの味方だよ」
「他に、何か聞かなくてもいいんですか?」
「そっちも色々事情があるんだろ?野暮な詮索は趣味じゃないよ」
たぶん、部長さんは私と同じ時期に出現を始めたモンスター達との関連にも気付いているのだろう。
疑うのは当然な事の筈なのに、この人はさらりとそう言ってくれた。
また一人、この世界に、私の大事な人が出来た。
シオリちゃんや他の学校の友達、近所で顔を合わせる色んな人たち。
私の戦いは、私の肩にかかる責任はますます大きなものになっていく。
だけど、今の私にはその重さが、不思議と心地良く感じられた。
その後、食器の片づけを終えたお兄ちゃんも一緒になって、私達はしばらくテレビゲームに熱中していた。
この間発売されたばかりのアクションゲームを、二人モードで交代でプレイ。
魔法で頭に叩き込んだこの世界の知識はあっても、複雑な操作が必要なゲームは私にはなかなか難しい。
ウンウン唸りながらプレイし続けて、ようやく操作に慣れ始めた頃、誰かの携帯の着信音が鳴った。
「ああ、私のみたいだ」
そう言って、部長さんが携帯を取り出した。
「父さんからか…もしもし?うん、こっちは特に問題なく過ごしてるよ。今は友達の家に上がらせてもらってる」
それから、部長さんは悪戯っぽく笑って
「ただし、その友達ってのは男子で、しかもご両親は今夜は不在なんだけど………あはは、そんなに慌てなくても大丈夫だよ。
その子の可愛い妹さんもご一緒だからね。そっちの調子は?…………ああ、やっぱりしばらくは戻れそうにないんだ」
「親父さんにもあのノリなんだ……まあ、半分予想してたけど……」
傍から聞いているだけでも、受話器の向こうで我が娘にからかわれて困った表情を浮かべている部長さんのお父さんの姿が眼に浮かぶようだった。
ところが、そんな電話越しの父娘の会話の様子が少し、おかしくなり始める。
「ん?どうしたの?……えっ、窓の外?……空が歪んで……!?」
そして、私もソレを感じ取っていた。
この街の遥か上空、僅かに残った時空の裂け目が再び開き始めている。
「ユキ……」
「うん。やって来たみたい……」
戦いの時が訪れた事を知り、私とお兄ちゃんは顔を見合わせて静かに肯き合った。
「あの、部長さん……」
「ん、用事があるんなら早く済ませてきたらどうだい?」
私達が何かを言うよりも早く、部長さんは背中を向けたままそう言った。
「ただし、こう見えても私は寂しがりやだからね。お早めのご帰還を願うよ」
部長さんは何も問わず、聞かず、ただ私達を送り出してくれるつもりのようだった。
私とお兄ちゃんはその後姿にぺこりと頭を下げてから、家を出て行った。
再び表れたモンスター。
時空の壁の向こうの敵達は邪神復活の目論見を捨て去るつもりはさらさらないようだ。
果たして今回はどんな刺客を送り込んできたのだろうか。
「変身!」
私の声と共に、凝縮された魔力がコスチュームを編み上げていく。
ピンクのラインの入ったワンピースの上に、金の留め飾りのついた白いマント。
胸には魔力制御用の赤いダイヤ形の宝玉が生成される。
これこそが私の戦闘服。高い対魔法・対物理防御力を誇り、身体能力を増加させる魔法使いの鎧だ。
「行こう、お兄ちゃん」
「おうっ!!」
胸の奥で高まる緊張を押さえつけながら、私達は戦いの場へと向かった。
モンスターの出現地点へ向け、私は全速力で空を駆け抜ける。
お兄ちゃんは魔法が使えないので、目的地までは私の飛行魔法のフィールドの中に入ってもらっている。
「見えたぞ!」
お兄ちゃんが繁華街の一角に視線を向けて言った。
「うん。今回のも、一筋縄でいく相手じゃないね」
繁華街の雑居ビル群よりも遥かに高く大きく、小山のように盛り上がったその体は無数のツタが絡まりあって出来ている。
その頂点にはまるでワニのような巨大な口があり、時折毒霧を噴出していた。
さらに長く太く触手のように自由に動き回る無数のツタが周囲の建物を破壊し続けている。
その先端には本体と同じく鋭い牙を備えた口があり、コンクリートの壁や金属製の街灯の柱をいとも簡単に食いちぎってしまう。
巨体故の鈍重さをツタの素早さとリーチ、破壊力で補っているわけだ。
「全く、どこのビオ○ンテだよ……」
ただ、ユキには、元の世界にいたとき、これと同じモンスターとの戦闘経験があった。
その時は苦戦させられたが、一度戦った相手ならばパターンも読み切れる。
(私が倒したのはもう一回りは小さなヤツだったけど、なんとかやってみせなくちゃ…)
と、その時、街を破壊していたのと同じツタが私達の魔力に反応して攻撃を仕掛けてきた。
「このっ!!邪魔だぁあああっ!!!」
お兄ちゃんの放った斬撃が緑色の光の軌跡を放ち、群がるツタをまとめて叩き切る。
だが、次から次へと押し寄せるツタの群れの勢いは止まらない。
「だけど、こっちにツタが集まり始めてるのは好都合だな。俺の剣でも斬れるって事は防御も大した事はないだろう。
ユキ、ここで降ろしてくれ!!俺が下で囮になってるから………」
「うん。上空からあの本体に近付いて、スプリームレインボーで一気に決める!!!」
肯き合うのと同時に、お兄ちゃんは私の飛行魔法のフィールドから抜け出て、重力に引かれるまま真下のビルの屋上へと落下していく。
途中、襲い掛かってきた太さ2メートルはあろうかというツタに縦一文字に斬りかかり、その摩擦で落下エネルギーを殺しながら着地する。
「お兄ちゃん、すごい………」
この世界の多くの人間と同様、お兄ちゃんは自ら使える魔力を持っていない。
だけど、最初の戦いで剣に宿った魔力を驚くほど見事に使いこなしている。
お兄ちゃんが剣さばきと押し寄せるツタの勢いが拮抗する。
勝負をかけるなら、今この時しかない。
私はお兄ちゃんが切り飛ばしたツタの合間を通り抜け、一気に植物モンスターの本体へと向かう。
「エアースライサーッ!!!」
お兄ちゃんが引きつけてくれていると言っても、まだまだツタの数は多い。
前方に立ちはだかるツタを右手に顕現させた杖から発生させた、風の斬撃魔法で切り飛ばしながらさらに前へ。
やがて、間近に迫ったモンスター本体と、その周囲の様子を見て私はこみ上げる怒りと憤りに叫び声を上げた。
「……なんて事を…っ!!!」
モンスター本体を囲むように、ツタに捕らわれ宙に吊り下げられた人たち。
男性はツタに締め上げられ、打ち据えられ、体中が傷だらけになるまで痛めつけられていた。
女性は衣服を引き裂かれ、ツタの先端を大事な場所に強引にねじ込まれ、陵辱を受けていた。
「グフ…グファハハハハハハハハ……ッッッ!!!!」
耳障りなモンスターの哄笑が響き渡る。
この怪物は楽しんでいるのだ。
痛めつけられ、陵辱される人々の悲鳴を聞きながら、歓喜の声を上げているのだ。
そして、おそらく、怪物のツタに捕らわれた人々は、いずれ必ず攻撃にやって来る筈の敵に対する盾でもある。
実際、今の状況でスプリームレインボーを放てば、十中八九、彼らを巻き込んでしまう。
「ドウシタ?ヤッテミロ?オレヲ倒スノデハナイカ、魔法使イ……」
「言われなくても……っ!!!」
一斉に襲い掛かるツタの群れを切り飛ばし、私は怪物の巨大な顎の下に取り付く。
「何ヲヤッテイル?ドレダケ近付コウトモ、オレヲ倒スレベルノ魔法デハ周リノ人間ドモモ巻キ添エダゾ!!」
「もちろん!この世界の人たちを、これ以上傷つけさせたりなんてしないっ!!!」
私は右手の杖を怪物の体に直接押し当て、そこにありったけの魔力を集中させる。
「ナ…ナニィ……!!?」
「くらえぇええええええええええっっっ!!!!!」
爆発的な魔力を一気に敵の体内の体液に流し込む。
「動物のような口を持って、自分で自由に動く事が出来ても、あなたが植物である事には変わりない。
そのツタを動かすのだって、筋肉を使うんじゃなくて中に流れてる体液の圧力を利用してる。だから……っ!!」
通常の生物よりも遥かに体内の水分への依存度が高い植物モンスターの体液は、私の流し込んだ魔力の影響で暴走を始める。
怪物の巨体のあちこちが爆ぜ、そこから濃い緑色の体液が噴出した。
周囲のツタ達も力を失い、捕まっていた人たちが解放される。
私は彼らがこれ以上怪我をしないよう、周囲に魔力のクッションを展開し、ツタから落下する人たちを受け止める。
「グ…グアアアアアアアアアアッッッ!!!オノレェエエエッッッ!!!」
モンスターは軋む体を強引に動かし、最後の武器である巨大な口で私に襲い掛かる。
「オノレッ!許サンッ!許サンゾォオオオオオオオオッ!!!!!」
「それは、こっちの台詞よっ!!!」
私は全身に魔法防御を施して、その口の中に飛び込んだ。
光の刃でモンスターの体内を切り裂き、その中心部へ侵入。
そして、敵の体の内部から、とどめの魔法を放つ。
「メイルシュトローム・ブレイカーッ!!!!」
私の魔力をたっぷりと流し込まれた怪物の体液が、その魔法に反応して勢い良く渦を巻き始める。
それはモンスターの巨体を内側から抉り、切り刻み、まるでミキサーにでもかけられたかのようにドロドロにしていく。
「ギアアアアアッ!!!!ガハッ!!グァアアアアアアアアアアッ!!!!!」
やがて、断末魔と共にモンスターの体内は伽藍堂になり、残された外皮は重さに耐え切れず崩壊する。
「ふぅ…前に戦った事のある相手で良かった……まともに戦ってたら、周りのみんながどんな目にあわされてたか……」
崩れ落ちる怪物の中から脱出した私は、無残な残骸に成り果てた怪物を見下ろしながら、ホッと息を吐いた。
以前の戦いでは植物故のタフさに随分と苦労させられたけれど、その時の経験はしっかり役立った。
後は本体を失い、体液の供給を絶たれても、まだ暴れている大型のツタ達を倒せば終わりだ。
だけど、私はそこで違和感を感じた。
(どうして、以前私が倒した怪物をわざわざ送り込んできたの…?)
邪神の末裔達は未だ私が戦った事もないモンスターもたくさん保有している。
今回の植物モンスターは強力で厄介な相手だけど、その使いやすさから戦いの場に出てくる事も多かった。
私にこのモンスターとの戦闘経験があるかもしれない事は、十分予想出来る事なのに……
(まさか……!?)
そこで私は思い出す。
私が初めてこの植物モンスターを倒したとき、隣で一緒に戦っていた人の名前を……。
(アウクモス…師匠……)
ゾワリ、全身を駆け抜ける怖気。
みんなを裏切り、私の国を、ヘヴンズフィルドを壊滅させた裏切り者。
私の師匠……。
彼はあの時の私の戦いを見ていた筈。
ならば……。
ゴゴゴゴゴゴゴッッッ!!!!
大地の唸る音と共に繁華街に広がっていたツタがそれぞれ三箇所に集結し始める。
寄り集まり、絡み合ったそれらはやがてそれぞれが先ほど私が倒したのと同じ、怪物の本体の形になった。
(ぜんぶ…仕組まれてたんだ……!!)
一体、一体は一回りほど小さくなっていたが、敵の本体が三つに分かれた事で形勢は完全に逆転した。
(たぶん、どれか一体を倒しても、残りの二体が魔力で復活させてしまうバックアップになってるんだ……これじゃあ、どれだけ戦ってもキリがない…)
最大威力のスプリームレインボーで一気に消し飛ばせば倒せない事はないだろうけれど、
そんな事をすれば街やそこにいるみんなに致命的な打撃を与えてしまう。
まさに、絶体絶命。
そして、手も足も出ない状況に一瞬呆然としていた私はソレに気付くのに遅れてしまう。
三体の植物モンスターから、魔力がたっぷりと込められた体液を供給され、一度は萎れた筈の足元のツタが再び復活しようとしている事に。
「きゃぁああああああっっっ!!!!」
四方八方から再び生気を取り戻したツタが私の腕に、脚に絡みつく。
強烈な力で四肢を拘束された私は、それでも右手の杖だけは放すまいと必死にそれを握り締めていたのだが……
「くぅ…な、何なの?」
私に向けられたツタの先端、そこに大きく開いた口から緑色の毒気が大量に噴霧される。
コスチュームに施された魔法防御がそれを弾くが、膨大な量の毒気はやがて魔法を侵食し、ついに私はそれを吸い込んでしまう。
「かはっ…あっ……ぐぅ……うあ…く…苦し…うあああああっ!!!」
体内に一気に浸透した毒は私に凄まじい苦痛を与え、抵抗する力を奪う。
力の抜けた四肢をギリギリと引っ張られ、毒に侵された体は痛みと息苦しさで満たされる。
だけど、怪物の責め苦はまだ始まったばかりだ。
「ひっ…がぁああっ…い…痛い……うあああああっ!!!」
ツタの先端についた口が、その鋭い牙を剥いて私の体のあちこちに噛み付いてきた。
固く鋭く尖った牙は私の肌に深く食い込み、そこから少しずつ魔力を吸い出していく。
全身に回った毒の効果を抑え、私の生命を維持している魔力が全て奪われれば、どんな事になるかは考えるまでも無い。
「は…放せ…放…して……うぅ…ぐぁああああああっ!!!!」
必死の思いで振り絞った声も、新たな牙で胸元に噛み付かれた痛みに断ち切られる。
どんどんと力の抜けていく体。
無力になっていく私。
怪物はさらにツタの一本の先端からヌルリと長く太い舌のようなものを出現させる。
そして、それをもはや無抵抗で吊り下げられているだけの私の口に強引にねじ込んだ。
私が精一杯に口を開けても持て余すほどの太さを持ったソレは、無理矢理に喉の奥へと進みそこからさらに食道に侵入する。
当然、呼吸など出来はしない。
「ん…ぐぅううっ!?…ぐぅ…んぅ…ぐぅううううううっ!!!!」
酸素の供給を絶たれ、朦朧とする意識の中で、私の体はその苦痛にのたうつ。
怪物はそんな私の事などお構いなしに、ねじこんだ舌状の器官の先端から何かドロドロとしたもの流し込み始めた。
(ああっ…ぐっ……体の内側が……)
謎の粘液がもたらしたのは火傷したかと思うほどの強烈な痛みだった。
恐らく、これもこの怪物の持つ毒の一つなのだろう。
止め処なく注ぎ込まれる毒粘液は食道を流れ落ち、私の胃を満たしていく。
ほどなく、私の胃の中ははち切れんばかりの粘液で満たされてしまう。
だけど、怪物は私の中に流し込む粘液の流れを止めようとはしなかった。
(あ…がは……もう…お腹の中、いっぱいなのに………)
胃袋を内側から破裂させんばかりの勢いで、流入してくる毒粘液。
恐らく、これはさっき、私が怪物の口の中に飛び込んで、内側からその巨体を破壊した事に対する意趣返しなんだろう。
行き場を失った粘液は私の食道を逆流し、舌状器官をねじ込まれた私の口の隙間から緑色の汚れた飛沫となって飛び散る。
そしてもう一方、腸へと繋がる出口からも少しずつ毒粘液が流れ出ていく。
「おぶぅ…ぐぼっ…がっ…うぐぅうううううっっっ!!!」
このままでは毒の効力に殺される前に、体が内側から破裂させられてしまう。
恐怖と絶望に取り付かれた私の心は、ただひたすらにあの人を呼び続ける。
(…お兄ちゃ…たす…けて……お兄…ちゃん……)
涙と鼻水でみっともなく顔を汚した私は、一心にお兄ちゃんに助けを求める。
だが、敵が三体に分裂して復活した今、お兄ちゃんが私の元に辿り着く可能性は限りなくゼロに近い。
きっと、お兄ちゃんが目にする事になるのは、散々に蹂躙され、ただの骸と成り果てた私の姿だ。
(…せめて…も…一度…会いたかったよ……)
やがて、私の心をゆっくりと諦観と絶望が満たしていった。
shien
十ちゃんは長持ちしたな その分、悲惨な目にあったんだろう