_人人人人人人人人人人人人人人人_
> ごらんの有様だよ!!! <
 ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^
_______ _____ _______ ___ _____ _______
ヽ、 _,, '-´ ̄ ̄`-ゝ 、 ノ | _,, '-´ ̄ ̄`-ゝ 、 |
ヽ r ´ ヽ、ノ 'r ´ ヽ、ノ
´/==─- -─==ヽ /==─- -─==ヽ
/ / /! i、 iヽ、 ヽ ヽ / / /,人| iヽヽ、 ヽ, 、i
ノ / / /__,.!/ ヽ|、!__ヽ ヽヽ i ( ! / i ゝ、ヽ、! /_ルヽ、 、 ヽ
/ / /| /(ヒ_] ヒ_ン i、 Vヽ! ヽ\i (ヒ_] ヒ_ン ) イヽ、ヽ、_` 、
 ̄/ /iヽ,! '" ,___, "' i ヽ| /ii"" ,___, "" レ\ ヽ ヽ、
'´i | | ! ヽ _ン ,' | / 人. ヽ _ン | |´/ヽ! ̄
|/| | ||ヽ、 ,イ|| | // レヽ、 ,イ| |'V` '
'" '' `ー--一 ´'" '' ´ ル` ー--─ ´ レ" |
Q投下したSSは基本的に保管庫に転載されるの?
A「基本的にはそうだな。無論、自己申告があれば転載はしない手筈になってるな」
Q次スレのタイミングは?
A「470KBを越えたあたりで一度聞け。投下中なら切りのいいところまでとりあえず投下して、続きは次スレだ」
Q新刊ネタはいつから書いていい?
A「最低でも公式発売日の24時まで待て。私はネタばれが蛇とタマのちいせぇ男の次に嫌いなんだ」
Q1レスあたりに投稿できる容量の最大と目安は?
A「容量は4096Bytes、一行字数は全角で最大120字くらい、最大60行だそうだ。心して書き込みやがれ」
Q見たいキャラのSSが無いんだけど…
A「あぁん? てめぇは自分から書くって事は考えねぇのか?」
Q続き希望orリクエストしていい?
A「節度をもってな。節度の意味が分からん馬鹿は義務教育からやり直して来い」
QこのQ&A普通すぎません?
A「うるせぇ! だいたい北村、テメェ人にこんな役押し付けといて、その言い草は何だ?」
Qいやぁ、こんな役会長にしか任せられません
A「オチもねぇじゃねぇか、てめぇ後で覚えてやがれ・・・」
813 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2009/01/14(水) 20:10:38 ID:CvZf8rTv
荒れないためにその1
本当はもっと書きたいんだがとりあえず基本だけ箇条書きにしてみた
※以下はそうするのが好ましいというだけで、決して強制するものではありません
・読む人
書き込む前にリロード
過剰な催促はしない
好みに合わない場合は叩く前にスルー
変なのは相手しないでスルー マジレスカッコワルイ
噛み付く前にあぼーん
特定の作品(作者)をマンセーしない
特に理由がなければsageる
・書く人
書きながら投下しない (一度メモ帳などに書いてからコピペするとよい)
連載形式の場合は一区切り分まとめて投下する
投下前に投下宣言、投下後に終了宣言
誘い受けしない (○○って需要ある?的なレスは避ける)
初心者を言い訳にしない
内容が一般的ではないと思われる場合には注意書きを付ける (NGワードを指定して名前欄やメ欄入れておくのもあり)
感想に対してレスを返さない
投下時以外はコテを外す
あまり自分語りしない
特に理由がなければsageる
テンプレここまで
小言みたいであれだけど容量見てギリなら新スレ立ててから埋めて欲しい
前スレに誘導のレスすら載せれなかったじゃないかOTL
>>1乙
朝起きたら埋まっててビックリだった
立てようとしたら立てられませんと言われたし
誘導レスがなかったのはそういう理由か
とりあえず
>>1乙
>>1乙
そして前スレのKARs様……ッ!
勘弁も何も!!
あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ
r'⌒X⌒X⌒X⌒X⌒X⌒X⌒X⌒X⌒X⌒X⌒ヽ ⊂゛⌒゛、∩
ヽ__乂__乂__乂__乂__乂__乂__乂__乂__乂__乂__ノ ⊂(。A。)
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ
乙
10 :
名無しさん@ピンキー:2009/11/04(水) 02:21:08 ID:el/Cfwza
相馬さんと俺のエロはまだですか?
前スレ最後の方で腹黒様の続編フラグ立ってんじゃんktkr
半分諦めてたけど、待ってて良かった\(^o^)/
やっと次スレ見つけた、
>>1乙
前スレに投下されたのも含めて174氏のNOTEシリーズ補完庫で一気読みしたけど、腹筋持たねえwww
ヒロイン竜児はどこまでフラグ立てて潰すんだwww
14 :
名無しさん@ピンキー:2009/11/04(水) 07:45:10 ID:sT+N7aW4
いちもつ
>>11 腹黒様の作者が「腹黒様の続きを投下する」とは言ってないようだが・・・?
俺も腹黒様の続きを読みたいけどね。
ちょっと投下します。
泰子ならともかく、奈々子はその薄い化粧の何処に時間をかけているのだろうか?
化粧なんて全く…とは言わないものの、極々、控え目な下地だけの様に見える。
いや、自分が気づかないだけで、奈々子なりのこだわりがあるのだろうか?
もし、自分という存在が…傲慢で自惚れに過ぎる考えだが、もしも、自分という存在が奈々子にそうさせているのだとしたら…どんなにか、嬉しいことだろうなぁ〜
自惚れたって良いじゃない。だって年頃だもの。−りゅうじ−
などと、アホな事を考えながら、ぼんやりと遠くの空を眺めていた。渡り廊下の窓の外。空寒く、風吹き、秋の空気。
外の気温は冷めたけどボクの心は暖かい。高須魔法瓶
「お〜い。高須君や。」
ぼーっとしてたところに背後からいきなり声をかけられる。
何か、最近このパターン多いな…余程、浮かれてんだな、俺。
「何だ、櫛枝か。どうしたんだ?こんなトコに。」
声と口調で解っていたが、振り返って一応、定文型を返しておく。
「何だ、櫛枝か−っとはご挨拶だね。私はこの先の部室に用があるのだよ。
高須君こそ、こんなトコ−っで何してんのさ?」
一々、物真似しながら返してくる。そして、割と似ている。相変わらず、芸の細かい奴だと少し、感心させられる。
「別に、何もしてねぇけど…ちょっと外見てただけだよ。」
「1人残されて、からかわれ続けるのが嫌で教室を抜け出したけど、
まさか、WCまで奈々子嬢を追いかける訳にも行かないから、何となく廊下でぼんやりしてた訳じゃないんだ?ふぅ〜ん。」
「………何だよ。」
「他意はありませんよ。ありませんったら。なぁ〜んもね。」
「別にそんなんじゃねぇよ。」
「あっそ。ちなみに、奈々子嬢ならとっくに教室に戻ってきてたぜ?
可哀想に高須君が居ないもんだから、今もからかわれ続けてるんじゃないかな?」
「今すぐ戻る。」
「なんつって。満更でも無さそうだったし良いんじゃない?急がなくても。それより、ちょっと私の−
「櫛枝も、本令鳴る前には戻れよ。じゃ。」
「………。変わっちまったね。君は。」
かつての憧れの変わっちまったドライな声は、駆け足出した竜児の耳に届かなかった。
藪蛇を悔いつつ、教室に戻ってみたら、竜児が居ない。
「高須君なら花摘みだぜ。」
と、櫛枝ちゃんから聞かされたが、あんまり良い予感はしなかった。
確か、さっきまで教室の隅に亜美ちゃんやタイガちゃんーと居なかっただろうか?
それが何故、こうして自然に溶け込んで居るのだろう…
櫛枝実乃梨は見た目通りの単純なだけの娘ではないかも知れない。
「んじゃ、私はちょっと部室に用があるから。ちゃんと良い子にしてるんだぜ?大河。」
自分は帰宅部だから、詳しくは知らないが、朝のこの時間帯に部室に一体何の用があるというのか。
竜児が櫛枝実乃梨を好いていた事は、なんとなく知っていた。誰から聞いた訳じゃない。ただの勘。
けれども、竜児はこうして、あたしを選び、あたしと付き合っている。
あたしが勝った。櫛枝実乃梨との比較であたしが選ばれた訳じゃない事は承知している。
竜児君はそんな人じゃない。だから、あたしは竜児君が好きなのだ。竜児君もあたしが好きで、あたしも竜児君が好き。
そもそも、同世代の男の人は信用ならない。だから年上の大人の人が良い。と、思い続け、信用に足る素敵な同世代の男の人にやっと巡り会えたのに。
結局、こうして不安になるのは、あたしの心の問題なのだ。
誰からアプローチを受けたって竜児君はあたしを裏切りはしない。でも、あたしがこんなに嫉妬深い女だって知ればどう思うだろう?
それでも、底抜けに優しい彼は受け入れてくれそうな気がする。あたしを優しく包み込んで、安心させてくれそうな気がする。
とにかく、今は、一刻も早く竜児の顔が見たかった。
−早く、あたしを安心させて−
「でもさ、お手洗いまで追いかけてくなんて高須君たら、奈々子にゾッコンどころじゃないね。
羨ましいようなウザイような…あたしだったらちょっとイヤかも。ね?奈々子もちょっと引いてたりする?」
冗談ではない。今は、あたしが追いかけそうだ。
あたしは5分に1度は竜児君を視界に入れないと、きっと死んでしまう。
「そんな訳無いでしょ?竜児君があたしの事を想ってくれて、それであたしがイヤなハズが無いじゃない。」
ホント、お願いだから、早く戻ってきて…
「何、死にそうな顔してんだ。ほら、笑えよ。ばかちー」
どう見てもボロボロのあたしに、空気を読まずか、それともあえて、か…
ちび虎は憎々しくもバケツいっぱいの罵声を浴びせてくれた。
「…実乃梨ちゃんは?」
「さっき部室行った。何か用事あるって。」
「ふぅん。で、高須君は?」
「トイレ」
「…あそ。別にど〜でもいいけど。」
「ばかちーこそ、何処行ってたのよ?」
「うるさい。今日、放課後スドバ寄るよ。」
「…寄れば?」
「あんたも来んの。後、実乃梨ちゃんと。」
「はぁ!?何であたしが。」
「奢るから。」
「だから、何で。」
「奢るから。」
これを最後の言葉に決め、あたしは席に突っ伏した。
放課後まで、絶対顔を上げないし、誰とも口聞かない。もういい。このまま寝てやる。
何分経ったろう。ムカムカして、とても寝れない。だからといって顔を上げる気力も度胸もない。
奈々子に続き、高須君も教室に戻ってきたらしく、また教室の真ん中の方は盛り上がっている。
耳も塞げりゃ良いのに…聞きたくもない会話が耳につく。
「あ〜。コホン。皆、奈々子と高須君ををからかうのは、もう止める様に。」
今まで、散々、からかっておいて、麻耶ちゃんが急に手のひらを返した。
そして、一拍置いて、
「ところで、竜児君、今日のお昼なんだけど…屋上で2人で食べない?」
と、奈々子。
…なるほどね。そういえば、麻耶ちゃんは祐作にお熱でしたっけ?
幼なじみのあたしじゃ役不足だってか!?キューピッド役には役者が不足してますか?。
ですよね〜こんな負けチワワには頼れませんよね。こんちくしょう。
「おう。勿論、良いけど。」
「決まりね。実は、あたし、お弁当作ってきたのよ。」
「へ?実は、俺も奈々子の分と2人分作ってきたんだが…」
白々しい。全てが白々しい。予定調和。ネタバレされた後でドラマ見せられてる気分。
どうせ、この後は、祐作がロクに考えもせず
「おお。弁当が四つか。残しちゃ勿体無いな。」
みたいな事を言うんだろう。そしたら麻耶が
「だよね〜。あたしとまるおで食べてあげよっか?」
とか言うつもりなんだろう。
はいはい。もう、いいって。昼休みに屋上でダブルデート気取りですか?おめでてーな。
勝手にすりゃいいじゃん。あたしには関係ねぇし。ふん。もういい。寝る。もう絶対、寝る。
ばかちーがボロボロになって戻ってきたと思ったら、今度はみのりんがボロボロで戻ってきた。
「スドバ?…うん、解った。あ、部活なら、今日は休むから。
え?体調?大丈夫。コーヒー飲んだら治るから。多分。」
とか言って、ばかちーと同じ体勢で寝込んでしまった。
一体、教室の外では、どんな恐ろしい事があるというのか。私は、今日は一切、教室から出ないと固く心に誓った。
それにしても竜児の奴、幸せそうだ。相変わらずの酷い面だけど。ププッ。
竜児が幸せそうだと、私まで嬉しくなるのは何故だろうね。今朝摂ったカルシウムのおかげか、それともケフィアの為せる技か…
飼い犬が主人の元を離れていくのは寂しい気持ちもあるけど、今は、それよりも竜児の幸せを喜んでいる自分がいる。
他人の幸せを喜べるなんて、単なる綺麗事だって思ってた。
ずっと、周りで幸せそうにしている奴らが、どうしようもなく、憎くて、憎くて、憎らしくて
全て、ぶち壊してやろうと、暴れ回った事もあったっけ?
私がこんなにゆとりを持てる様になったのは、犬を飼ったおかげかな?
アニマルテラピーってホントに効果あったんだね。
あの、幸せな光景を邪魔にならない場所で、見続ける事が出来るなら…私はずっと心安らかで居られそう。
でも、いつかは、見納めになるだろう。竜児はもう、私のモノじゃないから。
いや、最初から私のモノじゃなかったな。竜児は竜児だ。それでも、今、この時は竜児を見ていたいと思う。
今は、まだ言えないけど、『ありがとう』と、伝えられる日が来れば良いな。
あぁ〜早く、お昼になんないかな〜。元々、授業なんて真面目に受けてないけど、今日は、いつも以上に身が入らないよ。
『奈々子、怒ってる?』
『何の事?』
『つい、でしゃばちゃった事。チャンスだと思ったから。ゴメン。』
『別に良いわよ。
ナイスアドリブだと思ったけど?』
『そう?だったら良いんだけど……
お邪魔じゃない?』
『お邪魔する気なの?(笑
一緒に、お昼食べるだけじゃない。』
『ホントは2人きりで食べたかったんじゃない?』
『2人きりも良かったわね。けど、昨日、竜児君のお家でご飯頂いたもの。
それに、そんな機会は、これからいくらでもあるんだから、気にしなくて良いわよ。』
『ありがとう。奈々子。』
『それより、自分の事はどうなの?』
『ヴッ……(汗』
『テンパったりしちゃダメよ?』
『ど〜すりゃ良いのかなぁ?』
『…そうね、あたしが思うに−−−
不意に、ヒョイと携帯が宙に浮いた。
「木原さぁん?さっきから多目に見てたけどね、もう限界。もう、ゆりちゃん我慢の限界です〜
ずっと、携帯弄ってるわよね?面白くありませんか?そんなに面白くありませんか?
ですよね。三十路独身の『こころ』解説なんて聞きたくないわよね。
でもね、これ文部省に指定されてるの。わたしもやりたくてやってる訳じゃないの。最優先強制コードなの。
禁則事項。そう禁則事項なの。あ、大事な事だから二回言いました。
だから、没収。放課後まで、携帯は没収〜ぅ♪」
「えぇ〜そんなぁ〜」
「はぁ〜い。じゃあ授業続けま〜す。」
ゆりちゃんは、あたしの携帯を掠め取り教壇へと登って行った。
斜め後ろを涙目で振り返ってみれば、奈々子が悪戯っぽく、ちょこっと舌を出して笑っていた…
ふぇーん…携帯無しじゃ、午後の数U乗り越えらんないよぅ…
三角関数とかマジ意味解んないし…タンジェントって軍手の事じゃないのぉ〜?
健全な女子高生にとって、携帯は命そのものだと言うが…
しかし、授業中に弄っていたのは誉められた事では無いし、何も永久に没収される訳では無いしな。
木原には可哀想だが、どうしようもないな、コレは。うむ、仕方ない。
だが、携帯弄ってる木原が咎められて、後ろで爆睡かましてる亜美と櫛枝を完全スルーというのはどうなのだろう?
いささか、公平性に欠く裁定ではないだろうか。ここは、俺が抗議すべきだろうか?
いや、まてまて、正しいからと言って、常に直接的な行動が善だとは限らん。
大体にして、亜美は仕事、櫛枝は部活で疲れている。学生の本分は勉学だが、時には休息も必要だろう。
それに今、俺が騒ぎ立てれば、真面目に授業を受けている他の生徒はどうなる?
彼らは、亜美や櫛枝が寝てようが、起きていようがどっちでも良い筈。当然だ。
そんな下らない事で騒ぎ立てる俺は、彼らにとって迷惑に他ならないではないか。
結局、授業の進行を妨害する形になるのだから。
しかし、それは幼なじみ、チームメイトという特別な関係の者を依怙贔屓している事にならないか?
事は小さい。たかが、授業中の居眠りだ。でも、もしコレが大きな問題だった時、果たして俺は、亜美や櫛枝の不利益と知りながら、告発出来るだろうか?
ううむ。やはり、俺は生徒会長という身分にありながら、結局は、一個人としての感情を優先するんだろうな……
もし、貴方なら…どうしますか?会長。
「はい。ぶっちゃけると、『私』も『K』も『未亡人』狙いです。『お嬢さん』は『未亡人』に近づく為の手段に過ぎません。
あくまでも『未亡人』が狙いですからね。つまり『未亡人』は作中において、元、旦那を含め3人の男に想いを寄せられている事になります。」
!?ナ…ナンダッテーーー
「はい。先生、質問です。」
「はい。何ですか、北村君。」
「今の先生の解釈は原文の何処にも相当しません。
何を根拠にその様な解釈が成り立つのでしょう?」
突発した、トンデモ解釈に余所事を考えていた俺は、一瞬で授業に引き戻された。思わず、手を挙げていた。
「甘いですよ北村君。国語というものは、原文が全てでは、ありません。
机の上で勉強し、紙の上で文学を理解する。理解したつもりになる。
フフフフフフ………糞喰らえですよ。良いですか?『そうではない』と明記されていない以上、あらゆる解釈が成り立ちます。
ぼくのかんがえたこころ?チラシの裏に書いとけ?良いですよ、別に。全然、おK。」
ビリビリビリビリビリビリ
景気の良い音を立て、季節を先取りした白い吹雪が舞い散った。
「そう。フフフ。そうです。元々、教科書なんて必要無いの。
だって、結婚の仕方が載ってないもの。合コンのノウハウも、お持ち帰りの仕方も、され方も。
なら、必要無いじゃない?将来の役に立たなくて、何が教科書ですか?
はい。次回からは『小悪魔AGEHA』を教材にします。各自、書店で購入しておくように。
起立!礼。残りは自習とします。」
ドスドスドス。ガラガラガラ。ピシャンッ!!
どうしてこうなった?
その後、担任の姿を見た者は誰もなかった。
トルネルを抜けると、そこは雪景色…とか、言ってる場合じゃねぇな。
「ねぇ、大河。何があったの?コレ。」
「あ、おはよう。みのりん。
なんかね、独身が『小悪魔AGEHA』買っとけってさ。」
はぁ?まったく、意味がわからない。
「ま、何でも良いや。それより、もうお昼じゃん。お腹減っちまったよ。
ぼくはおにぎりが食べたいんダナ。大河は、お昼どうすんの?」
「コンビニでパン買った。」
ちっちゃな手が、すっと、コンビニの袋を差し出してきた。
どれどれ?ちょいと拝見。
コーンマヨパンにお好み焼きパンにメロンパンね…
「これだけじゃ足らないんじゃない?
私もさぁ、超ローcalorieー弁当持ってきてんだけどさ、ちょいとモノタランなのよね。
久しぶりに学食行かない?ちょっと、体調が思わしく無いし、滋養つけなきゃ。カツカレー(大)が私を呼んでる気がするんだ。
したら、やっぱ、学食に行ってやらねぇとって 思うじゃん?人として。」
「良いよ。行く。そうだ。ばかちーも誘ってやろーよ。
おい、ばかちー。起きろ。飯だぞ〜」
大河がどれだけ揺すろうと、あーみんは一切、起きる気配は無さそうだった。
「大河、そんなんじゃ生ぬるいぜ。大樽とデメキン持ってきな。
あーみんみたいなカチカチタイプの子は寝込みを爆破するのが一番だからさ。」
「え?大樽?」
大河にはわからないネタだったか…だよね、この子、ぷよ専だもんね。
けど、あーみんには伝わった様で
「あんたら。煩いって、耳元で。あたしは起きてるよ。起きてるけど、寝てるフリしてんの。
今は、あんまり食欲無いから、ご飯なら2人で行ってよ。
それと、実乃梨ちゃん。G位自分で用意しときなさいよ。あたし、嫌いなの。寄生厨って。」
などと、顔も上げずに返してきた。
「失礼な。今の私はソロ専だよ。」
「…もしかして、実乃梨ちゃんて、寂しい奴?」
「…ちげぇよ。課金切れたんだよ。
良いよ。あーみんはそうやって、そこで腐ってれば良いじゃん。行こうぜ、大河。」
「え?え?」
「そういう事だから、ちび虎も、あたしの事はほっといて、ご飯行ってきな。
大丈夫。これは寝言。だよね?実乃梨ちゃん?」
「寝言なら仕方ないな。
…あったかくして寝ろよ。」
「…ありがと。」
「じゃ、大河。カツカレー(大)食べに行こっか?」
…どう考えても、寂しい奴だよな、今の私って………
C
今回はいつもと違う書き方をしましたが、これってもしかして、後で保管庫さんでまとめて見たら、凄く読みにくいんじゃ……
ずいぶん、前に投稿した話なのに、覚えていてくれる人が居るのはとても嬉しいです。
皆さん、奈々子嬢が好きなんですね。私も好きです。
ー忙しい人の為の腹黒様ー
・皆の話を総合すると大抵、合わない。って話。
ちょっと、ネタバレをすると、ゆりちゃんはこの後、理容師になります。
なぜ、こんな事をいうのか。それは、ゆりちゃんにもう出番は無いからです。
次回。我が家の腹黒様〜昼ドッ〜ラ↑スペクタクル編〜
お楽しみに。
キター
腹黒様復活キキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
まだ負けたわけじゃないんだからファイトだ亜美ちゃん様。
ヒロイン達同士の争いを含めた竜児のハーレムものってなかったっけ
保管庫とかに
29 :
名無しさん@ピンキー:2009/11/05(木) 19:16:13 ID:f6GJKf9w
∧_∧
( ´Д`)
γU〜''ヽヽ
! C≡≡O=亜 デンデデッデデレデンデデッデデレデンデデッデデレデンデデッデデレ
`(_)~丿
∪
♪
♪ ヘエーエ エーエエエー
( '∀`) エーエエー ウーウォーオオオォー
((と つ ララララ ラァーアーアーアー
(( ⊂,, ノ゙
(_,/,,
♪ /
___/ ♪
[●|圖|●] ♪
 ̄ ̄ ̄ ̄
'∧ ∧♪ ♪ ナァォォォォ オォォォォ
( ;´Д`)/ サウェェェアァァァァ アァァァァ アァァァァ アァァァァ
♪ イェェェェェェェェェゥゥアァ…
♪ /
___/ ♪
[●|圖|●] ♪
 ̄ ̄ ̄ ̄
_ ∩ ヘェーラロロォールノォーノナーァオオォー
( ゚∀゚)彡 アノノアイノノォオオオォーヤ
( ⊂彡 ラロラロラロリィラロロー
| | ラロラロラロリィラロ
し ⌒J ヒィーィジヤロラルリーロロロー
書けるかな
規制解除されたらすぃ。
>>26 独神に笑いました。GJです。
>>26 GJ!!
メインヒロイン3人から竜児が離れていく様を見るのもちょっとツラいね……
でも幸せそうな奈々子様が読めるなら構わん!
あ、書き込み一回につき次々と視点が変わっていたから、先にまとめWikiを見た時は混乱したにゃー
サミット
高須棒姉妹
日記
xxドラ
NOET
etc...
印象が強烈なハーレム(争奪戦)ものがいくつかあるね
>>26 Gj。書き方、本音サミット風に戻した?
綺麗な大河と塞ぎ込んで被害妄想全開のあーみんとやけ食いするみのりんが、らしくて良いな
ただ、相変わらずネタが良い意味で酷い。タンジェント=軍手とか誰も解らんぞwww
最後の独神→理容師って、もしかして嫌われ松子の一生のパロ?だとしたら不憫すぐる(/_;)
でも、木原パートの奈々子様が可愛い過ぎるので、続き待ってます。
関係ないけど、ニコ動のトラPコメに「奈々子様〜」とかコメント打ってるの、お前らだろwww
奈々子様人気って多分、ななドラと腹黒様とななこいが火付け役だよな
奈々子様ネタって原作ネタだよな
あとなんでそんな目線が上からなんだいw
上から目線のつもりは全然なかった。誰でも良かった。今は反省している。
>>26 今さらだがGJ 待っててよかったと切に思う
>>37がそんな奴だとは思わなかったから・・
こちらこそなんか悪い言い方してゴメン
しかし、良作品が投下されたのに、とらスレにしては、過疎気味なのは、まだ規制されてる人多いのかな?
もし、自分が空気悪くしたからだったらマジスマン
以下、この書き込みは無視して普通の流れでお願いします。
>>39がさらに作品を投下してくれると信じて待ってるんだョ
気長にみなさんの投下を待ってます。仕事の合間の気分転換に使わさせてもらっています。
>>34 ありがとう
争奪戦に会長も含めたやつです
会長が絡む争奪戦はxxxドラ!と日記かな?
ちょっと、投下します。
※注。モンハンネタ
MINORI:ヨロロ〜♪
Ami:よろしくネ♪
Ryu-Ji:よろしくお願いします
TAIGA:よろしくおねがいします。
シキ4 15番街 仲間と遊んでいます。
ここは、私達、仲良し4人の馴れ合い部屋。
こうしてコタツでぬくぬくしながら、リアフレと狩りが出来るなんて、ホント3(トライ)は神ゲーだよね。
2Gの頃は地獄だったぜ。練習終わって、部室で狩りしてたもんなぁ〜
夏は蒸し暑いし、冬は、チョー寒い。それでも、モンハンが好きだから、我慢してやってたっけ。
でも、3の利便性の弊害と言うか…野良でやると、あんまり感心しない人も居るんだよね。例えば、そう。
Ami:はちみつちょーだい♪
こ〜いう奴。
MINORI:ほらよ。
ピコーン ピコーン
Ami:ありがとう♪MINORIちゃん☆
Ami:って、これツチノハチノコじゃん!?ふざきんな!!111
MINORI:Aーmiん…HR526にもなって何してんのさ…
MINORI:フンタ〜さんじゃないんだから。
Ami:ちょっとしたジョークって奴?
Ami:一応、言っとくけど、あたし嫌いだから。寄生厨。
Ami:馴れ合い部屋っつっても甘えない様に。
Ami:わかった?TAIGAさん。
TAIGA:了解です。
Ami:は?定文型??ナメてんの?
Ryu-Ji:TAIGAはキーボードねぇんだ。
Ryu-Ji:多目に見てやってくれ。
Ami:え〜?言ってるそばから甘やかし〜?
Ami:言っとくけど、甘やかす人も同罪だからね?
Ryu-Ji:解ってる。身内でもマナーは遵守するさ。
MINORI:まぁまぁ、リアフレ同士、気楽にやろうよ。
MINORI:それから、TAIGA。
MINORI:定文型は好きに編集出来るよ。
Ryu-Ji:確かに、その方が印象良くなるな。
Ryu-Ji:編集しとけ。TAIGA。
TAIGA:了解です。
まず、高須君のモンハン歴は2Gから。北村君や能登君と結構やり込んだらしい。
キャラは、至って普通の男性キャラ。バンギス一式にカオスラ剛なんて……凄く、大きいです…
次に、大河は3が初モンハン。今のキャラはセカンド。でも、それは熟練者という意味ではない。大河のファーストを殺したのは、この私だ。
だって、HUNTERだったんだぜ!?普通、止めさせるじゃん?人として。親友として。
そういう訳で、私はTAIGAについて、責任があるのです。必ず、私が一人前のプロハンにしてあげるからね。
ちなみに、キャラはTAIGAらしく可愛いのをエディットさせた。ファーストが担いでた太刀も止めさせた。
だって…使えてなかったんだもん。今のTAIGAはとりあえず片手剣を練習中。
そして、あーみんの経歴は不詳。これは、私のカンだけど、どうやらFもやってるくさい。
キャラは、可愛いくて、若干、MINORIよりスタイルが良く見える。なんでだ………
ガンナーでしかもフルエスカドラに中折れ式(カオスW)。
こいつぁ、核地雷か廃か見分けが難しいトコだけど、あーみんの事だから、絶対、廃だ。
でも、あーみん。仕事は大丈夫なの?強敵(とも)として、心配せずにはいられない。
隠密仕様が一層、悲哀感を漂わせていて、正直、気の毒過ぎて、とても突っ込めないよ…
最後にこの私、MINORIは、無印からやってるヘビーユーザーなのだ。流石にFはやってないけどね。
2Gまでは、なんとなくガチムチ兄貴キャラでフルアカムとか褌マグロとかやってたんけど、
今回からは、これまた何となく、女キャラで、結構可愛い装備(匠と耳栓位は付けてますよ。流石に。)にしている。
ううん。ホントはわかってるんだ。今は、劣等感よりも誰かに可愛いく見られたいって気持ちが、私の中にあるって。
ちょっと、脱線しちゃったけど、まあ、そんな感じです。
Ami:で、何狩るの〜?
Ryu-Ji:俺はなんでも良いぞ。
Ryu-Ji:好きなの貼ってくれ。
Ami:あ〜ん。Ryu-Ji-君ったら、やさしぃ〜♪
Ami:けど、Amiちゃん
Ami:別に、これといって狩りたいのないんだよな〜
Ryu-Ji:そっか。MINOEDAは?
MINORI:え?私?てか何だよMINOEDAってwww
Ami:………
MINORI:MINORIって呼んでよ。
Ryu-Ji:お、おう。
MINORI:ん〜私も特に……
Ami:TAIGAーのキークエ潰す?
MINORI:そだね。
Ryu-Ji-:了解。TAIGA、キークエ何が残ってるんだ?
・
・
・
TAIGA:きーくえってなに?
MINORI:TAIGAの次のキークエはレイアさんだよ。
Ami:何でMINORIちゃんが知ってるの?
MINORI:ふふふ。TAIGAはワシが育てた。
Ryu-Ji:レイアか。初クエには良いんじゃないか?
Ami:まぁね。基本だし。
MINORI:じゃ、レイアに決まりね。
MINORI:TAIGA貼りヨロロ♪
デデンッ
ガツガツガツガツガツガツ
およ?これは………
Ami:よろしくネ♪
Ryu-Ji:よろしくお願いします。
Ryu-Ji:レイアは巣に居るぞ。
MINORI:ヨロピクww
Ami:オッケ〜
MINORI:Ryu-JiクンGJ〜
TAIGA:よろしくおねがいします
『リオレイア』通称、陸の女王。私称、嫁。
私はリオレイアが、レイアたんが一番好きだ。私のリアル嫁が大河だとしたら、二次嫁は、レイアたんだ。
新旧含め、ダメ夫からレイアたんを寝取った回数は、軽く4桁に達する。
知らない人は居ないと思うけど、一応、レイアたんについて解説しておくよ。
雌火竜と呼ばれ、飛竜種の基本的な動きをレクチャーしてくれる、先生的存在で、
初心者にとっては、最初に対峙する巨大な敵という事で、抜群の人気を誇り、
この度も、さらに美人になって、シリーズ皆勤賞のー竜姫ーさんです。
外見は緑色の中型竜、前脚が翼になっていて、ワイバーンっぽい感じ。
身体に生える毒棘がちょっと卑猥だと言われてますが、女の子にだって毛はあるんだぞ〜
処理とか色々、大変なんだぞ〜と私は言いたい。
でも、秘棘とか言ってるし、カプンコさんも絶対、狙ってるよね?
ま、私の嫁についてはこんな感じでわかってくれたかな?
MINORI:目標を
MINORI:センターに入れて
MINORI:スイッチ
大樽Gのど真ん中に、ペイントボールをブチ当てて、MINORIの体力は、もはや風前の灯だ。
計算通り、誤爆じゃないぜ?
Ami:あれ?
Ami:MINORIちゃんって火事場だっけ?
MINORI:うん。火事場のネコ力だよ。
Ami:大丈夫なの?それ。
MINORI:大丈夫♪大丈夫♪耳栓あるし。
MINORI:これでもセーブしてるんだぜ?
MINORI:余裕あるもん。
MINORI:心配してくれてサンキューな^^
Ami:ばーか
Ami:心配なんかしてねぇ〜っつの
Ami:乙んないでよね。
Ami:迷惑だから。
MINORI:あいさ〜。
どんな攻撃だって、当たらなければ、どうと言う事は無いのだよ〜フハハハ。フハハハハハハハハー
初期位置が秘境だったおかげで、私が一番乗りで、レイアたんのお宅に着いた。
なにやら、無粋なピンク色が数匹居るけど、奥でキョロキョロしているカワイイ緑は…間違いなく、レイアたん!!
〈目〉リオレイアがログインしました。
うおぉ〜レイア〜私だぁ〜結婚してくれぇ〜
な〜んて叫びながら、MINORIはレイアたん目掛けて、斧剣を振り下ろしました。
そう。MINORIはスラッシュアックスユーザーなんだよね。
基本的に、どの武器でも、そこそこ使えるんだけど…新武器だし、やっぱり使ってみたいじゃん?
それに、変形とかロマンを感じるじゃん?あと、斧って好きなんだよね。
アイテムなぞ使ってんじゃねぇ〜〜
みたいな。そういう漢気っていうのかな?ま、さっきバリバリ爆弾とか使ってたけどね。
耳栓で聞こえやしないんだけど、レイアたんは何か叫んでます。
気にせず頭を、斬り斬り斬り斬り。よっしゃ怯んだ。この隙に後ろに回って、尻尾を斬り斬り。
そしたら、レイアたんは怒るんだけど、気にせず斬り斬り。仕上げに一発、ロ〜マ〜ン〜砲〜。
レイアたんをバックから、属性解放突き。しかもフィニッシュ。中出し。
エロくね?エロエロじゃね?妊娠しちゃったらゴメンね〜
属性解放突きってさ、な〜んか、技名とか叫んじゃわない?
ジェノサイドブレイヴァ〜〜!!
、とかさ。私だけかな?
それから、しばらくして、レイアたんの可愛いらしい尻尾がスパーンと切断されたトコにAーmiんが、続いて、Ryu-Jiがやって来ました。
Ryu-Ji:ナイスカット!!
Ami:すごぉ〜い。憧れちゃいますぅ☆
Ami:…間違えた。
Ami:やるじゃん。
MINORI:www
Ami:じゃ、麻痺撃つから
Ami:ハンマーさんよろしくネ♪
Ryu-Ji:おう
Aーmiんが麻痺させて、Ryu-Jiがスタンさせて、またAーmiんが麻痺させて、またまたRyu-Jiがスタンさせて…
Aーmiんはちゃんと2回目のスタンは滅気サポやってて…何か、息ピッタリって感じで…私は要らない子?
私だってRyu-Jiの邪魔にならない後背位からレイアたん責めてるけど…
何か…やりきれない……
なんて、心の中モヤモヤで、暗黒面に堕ちて、MINOBATOSUになりそうな位、一心不乱に斧振ってたら、
ログインしたんだよね…うん。TAIGAが。
間が…とにかく間が、悪かったんだろうね…それ以外に、言いようがないよ。
直撃したんだよね。見事に。それはもう、綺麗に入ってた。
Aーmiん狙いのレイアたんの火球がログインしてきたTAIGAに直撃したんだ…
そりゃ、Aーmiんは余裕で避けるもん。そしたら、後ろのTAIGAに当たるよね、当然。
TAIGAにしてみりゃ、理不尽だったと思うよ。発進したら、いきなりラミエルに狙撃された初号機みたいな気分になったろうね。多分。
あんまり気の毒で、私は一瞬、頭が真っ白になったんだけど、
でも、流石、Aーmiんは冷静で。閃光玉を投げたんだよね。TAIGAの回復タイムを作る意味で…
後から考えたら、頭が真っ白になったのは、閃光玉の光のせいな様な気もするんだけど…
とにかく、ハッと、我返ったら、レイアたんの尻尾の断面が見える訳よ。
振ったんだろうね。尻尾。目が眩んで見えないながらも、一生懸命。尻尾振ったんだね。
さて、どうする?
1.華麗にスルー。フレーム回避でゆゆうです(^_^)
2.Ryu-Ji-に助けて貰う。私をぶん殴って。
3.Aーmiんが粉塵を使ってくれる事を期待する。
A.避けられない。現実は非情である。
ぬ、ぬわぁぁ〜〜〜〜〜
MINORIは力尽きました。
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ
そして、ネコタクで運ばれるMINORIに不幸なお知らせ。
TAIGAは力尽きました。
Aーmiんの閃光玉…外れてたんだ…レイアたんが尻尾振ったから…顔の位置ズレて…
だよね。だって閃光玉って当たってたら怯むもんね。おかしいと思ったんだ…私。
Ryu-Ji:ドンマイ。気にすんな2人とも。
MINORI:ゴメン…皆
TAIGA:ごめんなさい
Ami:うわ…最悪…
MINORI:ホント、ゴメン。マジ、ゴメン。
Ryu-Ji:わりぃけど、2へ飛んだから頼むな
Ami:だりぃから、ちゃっちゃっと終わらしちゃって
Ami:MINORIちゃんは2で捕獲。TAIGAーはBC待機
Ami:そんくらい出来んでしょ?
MINORI:任せて下さい。
MINORI:必ずや
TAIGA:了解です。
MINORI:やりとげます
TAIGA:おぼえてろばかちー
Ami:乙った癖に、逆ギレですか?
TAIGA:うるさい
Ami:ばーか
TAIGA:うるさい
Ami:まさか、定文?
TAIGA:うるさい
Ami:ぷwww
AーmiんとTAIGAが、普通なら、晒し通報モンの低レベルな争いをしている間に、
MINORIは、レイアたんのお食事タイムにお邪魔しました。せっせと、痺れ罠を張って、捕獲玉を二個投げました。
メインターゲットを達成しました
MINORI:レイアたん
MINORI:お持ち帰りぃ〜♪
Ryu-Ji:お疲れ様でした。
Ami:うわ…
Ami:ウゼ
Ami:移動しますね^^;
…こ〜いうグダグダな時に限って、紅玉とか出るんだよな〜。ハァ……
Ami:信じらんない
酒場に帰っても、Aーmiんはまだ不機嫌だった。当たり前か…
MINORI:面目ない。
Ami:ホントにねぇよ。無さ過ぎ。
Ryu-Ji:まぁまぁ…気にすんなよ
Ryu-Ji:クリア出来たんだし、良いじゃねぇか
MINORI:ありがとう。Ryu-Ji。
Ami:甘やかしは本人のためにならないよ?
Ami:こんな地雷ほっといて
Ami:2人で移動しちゃわない?
Ryu-Ji:それはヒド過ぎるだろ
MINORI:いや、そうして欲しいッス
MINORI:TAIGA!!
TAIGA:?
MINORI:今から、2人で特訓すっぞ
デデン
MINORI:来るんだッ
TAIGA:了解です。
MINORI:その定文型も、しっかり添削してあげるから
MINORI:そのつもりで
その後、私は、心を鬼にして、TAIGAを三時間に渡り、みっちりシゴいた。脱、地雷!!目指せッ。プロハン。
その後のチャットログ
Ami:あ〜あ
Ami:行っちゃったね
Ryu-Ji:Amishimaがキツく言うから
Ryu-Ji:可哀想に…
Ami:変な名前で呼ぶな
Ami:Amiって呼べ
Ami:別に可哀想な事ないでしょ?
Ami:MINORIちゃんは前向きな子だって
Ami:強い子だって
Ami:Ryu-Jiだって知ってんでしょ?
Ami:それに、なんだかんだ言っても、
Ami:MINORIちゃんは上手だったよ
Ami:MINORIちゃんに鍛えてもらえば
Ami:ドジTAIGAーでもちょっとはマシになるでしょ
Ryu-Ji:…かもな
Ami:ところで、この後だけど
Ami:違う部屋で2人でしない?
Ryu-Ji:悪い。これから夕飯の買い物行こうと思ってる
Ami:え〜
Ami:そっか。あたしとは、やりたくないんだ…
Ami:なら、ハッキリそう言ってよ
Ami:ヤダって。性格地雷ウゼェって。
Ryu-Ji:バカ。ちげぇよ。
Ryu-Ji:そんな訳ないだろ?
Ami:もう、いいもん。
Ami:フンだ。
Ryu-Ji:買い物から戻ったらやるから
Ryu-Ji:晩飯作るまでの
Ryu-Ji:ちょっとの時間でも良いなら
Ami:ホント?
Ryu-Ji:おう。
Ami:じゃあ、戻ったら電話かメールちょうだい
Ami:あたし、隠密にしてるから
Ryu-Ji:わかった。
Ami:あたしの超絶テク
Ami:Ryu-Jiにだけ、特別に見せたげる☆
Ryu-Ji:おう。
Ami:期待してて良いよ?
Ryu-Ji:おう。それじゃ、一旦、お疲れ様
Ami:うん。お疲れ様♪
Ami:行ってらっしゃい。
さらに後のチャットログ
MINORI:うぉぉ〜
MINORI:TAIGAーもう一周だぁ〜
MINORI:やるぜ〜超、やるぜぇ〜
TAIGA:勘違いしないでよね。別にアンタの…ふん、あ、ありがと。
TAIGA:ねぇMINORIん
TAIGA:このあいさつおかしくない?
MINORI:全然。
MINORI:カワイイって。
MINORI:絶対。
TAIGA:そうかなあ?
MINORI:うん。絶対、可愛いよ。
MINORI:それより、もう一周だぁ〜〜
MINORI:気合い入れろぃ〜
TAIGA:おー
デデンッ!!
おしまいです。
改行規制なんてあるんですね…困ったものです。
昨日、モンハン3をプレイしてたら、チャットで
「親友の好きな人に告白されたの」
「あたしもその人の事、良い人だと思ってる。」
「どうしたら良いの?」
なんて言ってる人が居て、それで、こんなネタを思いついた訳です。
では、また次回。
速攻でAboneした
うーん…
プレイしたこと無いから…分かんない。
本名でチャットネームか……
実乃梨:みのりんとぉ〜
亜美:可愛い亜美ちゃんのぉ〜
二人:モンハン解説ぅ〜
実乃梨:え〜っと。このコーナーは、モンハン未プレイの読者さんも楽しめる様に
亜美:超絶可愛くて、ちょっぴり天然な亜美ちゃんと他一名が、モンハンについて解説するコーナーだよ☆
実乃梨:………
亜美:なぁに?実乃梨ちゃん。何か、言いたげだけど。
実乃梨:別に。なんでもない。
亜美:『モンスターハンター』、略して、モンハンとは、モンスターをハント、つまり、狩猟するゲームなんです。
実乃梨:そして、狩猟したモンスターの身体の一部を剥ぎ取って武器に加工する。っていうある意味猟奇的なゲームなのだ。
亜美:角とか爪とかとかね。鱗や外郭は防具になります。
実乃梨:防具にはそのモンスターの特徴が付く事が多いのだ。
亜美:俗に言う、スキルってやつよ。
実乃梨:例えば、あーみんの素材で防具を作ると、腹黒+2 陰険+2 性悪+2とかって感じなのだ。
亜美:………
実乃梨:武器にも属性があって、モンスターには耐性があるのだ。
亜美:クリスタルの飾りにソフトボールぶつけたら割れちゃう。みたいな感じね。
実乃梨:………
亜美:もっと分かり易く言えば、エアーマンにリーフシールドが有効。みたいな感じね。
実乃梨:以上が、モンハンの主旨になるのだ。ご理解頂けたかな?
亜美:次に、お話に出てきた用語について説明するわね。
1・フンターさん
このゲームのデフォルトネームがHunterなのよ。ハンターって読むんだけど、フンターって揶揄する人が多い訳。
「はちみつちょーだい」とか「ふざきんな!!111」なんかの発言で、フンターさん1人で部屋崩壊とかザラなんだよね。
要するに、自分の名前も満足に設定出来ないクズって事ね。ホント、死ねば良いのに♪
2・チャット表記
このゲームは、今シリーズからネトゲ仕様になったの。
お話の中の、Ami:移動しますね^^; みたいな表記は全てチャット表記って事よ。
3・火事場
これはスキルの一つで、体力が一定以下になると、攻撃力と防御力が格段に上昇するの。
でも、まさに背水の陣って感じで、一発でもモンスターの攻撃が当たるとオシマイ。要するにオワタ\(^o^)/式ね。
ちなみに、火事場する人は死んだらボロカスに叩かれるから、注意が必要なの。ね?実乃梨ちゃん♪
実乃梨:………。
4・隠密
これはオプションで設定出来る機能で、オンライン状態でも他人からはオフライン状態に見えます。
一種のステルス機能で、主に廃人ニートが使用します。仕事干されてる芸能人とかね。でも、HRはガンガン上がるから、バレバレなんだよね。
5:エスカドラ
これは、このゲームのラスボス「アルバトリオン」の素材から作れる装備なんだけど、
その製作難易度の割に性能はお察しの産業廃棄物なんだわ。ぶっちゃけると。
着てる人は、自己顕示欲の強い餓鬼か、隙を持て余した廃ニートな事が多いです。
6・性格地雷
行動がアイタタタな人を地雷と言うのに対し、行動は問題ないけど、性格がアイタタタな人を性格地雷といいます。
そういう人は、友達も出来難くて、孤立するパターンが多いです。「アルバトリオン」ソロ攻略とか。ね?あーみん♪
亜美:………
実乃梨:………
亜美:実乃梨ちゃんってさ、いっつも3倍くらい仕返ししてくるよね?ホント、良い性格してる…
実乃梨:仕返し?なんの事?
亜美:とぼけんの!?
実乃梨:先に喧嘩売ってきたのはあーみんの方じゃん?あーみんってさ、自分は口悪い癖に傷つき易いなんて、そんなのズリィよ。
亜美:実乃梨ちゃんにズルいとか言われたくねぇし。
ドンッ!!
亜美:何すんだよッ?この脳筋女!!
パンッ!!
実乃梨:やったな…顔は勘弁して貰えるなんて…思うんじゃねぇ〜ぞッ!!
亜美:やれるもんならッ。やってみろ臆病者!!
竜児:全然、解説出来てないし…てか、あの2人って微妙に仲悪くねぇか?
大河:バカ。そんな呑気な事言ってないで、早くみのりんに 加勢しなきゃ。
竜児:あ…お、おい大河ッ!!
大河:お〜の〜れ〜。ばかちー覚悟〜ッ!!
竜児:えと…この解説?は
>>53の後に付けといて下さい。
ちょ…お前ら、待て待て待て。落ち付け。落ち付けって。
あ、やめ…ミャアァァ〜〜〜〜〜
竜児が力尽きました
結局わかる人にしかわからない解説って寒いよね、って思った。
モンハンも解説もようわからんかったがなんか楽しめたw
というわけでGJ
63 :
名無しさん@ピンキー:2009/11/07(土) 22:25:49 ID:0dXFoP0X
そろそろ、日記できたかな?
全然聞き逃してくれていいんだけどさ
つまんね
厳しい
オッサンでついて行けない私が悪いのか……_ノ乙(、ン、)_
エロがないとダメとはいうつもりもないが、ここに投下すべきものでもないんじゃね
>>54 おつつ。
プロハンの俺には凄く面白いかった。
あるあるネタ過ぎてモンハン知らない人にはちょっと辛いとも思う。
「解説」すらあるあるネタっていうか、本編が前振りで「解説」がオチじゃんww
ちゃんと、注意書きあるし、こういうのは解る人だけ楽しめば良いネタだと思うよ
モンハンしつつもちゃんととらドラだし。
最後のあーみんとみのりんの喧嘩はどっかで見た事あると思ったら、国会中継だったわww
あいつら国民の血税で何やってんだか
一回だけなら我慢できるネタかな。
2回目はしない方がいいと思った。
本当にこの間投下した後に気付いた。
「NOET」
「NOET 2ページ目」
「NOET 3ページ目」
スペルミスってるよこれ。
NOETじゃなくてNOTEのつもりが、「NOET」を投下した際、投下宣言で何をどうトチ狂ったのかTとEの順番を逆にしていたという。
3回ともタイトルコピペしてたから本当に、全っ然、これっぽっちも気が付かなかった。
まぁタイトルくらい別にどうでもいいやとも思ったけど、3回も同じ話をやっておいて、しかも〜ページ目とか書いといて、
羞恥心に堪えきれなくなったので遅まきながら訂正と言い訳がてら小ネタを・・・ああもう訂正とかどうでもいいや。
「NOET あるページ」
11月--日
曇っているせいか、今朝は特に冷え込んでいる。
外なんかで待っている身としては厳しい季節になってきた。
予報では、午後からは雨も降るらしい。
朝から憂鬱だ。
傘なんてかさばるもんを持って歩くのも億劫でならない。
普段通りの時間に高須が家から出てきた。
タイガーも出てくる。
毎朝の事ながら、階段を下りきるところでタイガーがこけた。
傍から見ているとすぐ分かるが、放り投げられた猫のようにしっかり受身を取っている。
しかし高須にはそう見えないよう工夫でもしてこけているのか、高須は本気で心配している模様。
『立てるか、大河?』
『うん・・・痛っ・・・』
『おい、大丈夫なのかよ』
『平気よ、転んだだけなんだから・・・ただ、ちょっと歩きづらいから、手ぇ貸してもらってもいい?』
といったようなやり取りの後、手を繋いで歩き出した。
顔に似合わずお人好しなのは十分知ってるが、それにしたってこう毎朝繰り返しているのだから、
高須も疑うなり何なりしてもよさそうなものだと思うのだが。
ひょっとしたら認知症の気でもあるのかもしれない。
でなけりゃ、どういう風に毎朝毎朝転んでは手を繋ぎたがるタイガーを見ているんだろう。
しばらく歩くと通学路上で櫛枝と出くわした。
高須を発見した櫛枝が駆け足で寄ってくるものの、間にタイガーが立ち塞がる。
腕を広げていたため、おそらく抱きつくつもりだったのだろう。
阻止したタイガーとされた櫛枝は抱き合いながら挨拶を交わしていた。
表向き至って普通に、にこやかに。
お互いの背骨をへし折ろうとするように力んだ体がブルブル震えているが、高須の前ではおくびにも出していない。
女のこういった面に戦慄すら覚える。
学校に着く寸前、タイガーが一人で先を歩き出した。
いつものように高須の下駄箱の中身をチェックしに行ったようだ。
たまにラブな手紙が入っている事がある。
そういう場合、タイガーは勝手にその手紙を持ち去っていくので、高須はそれを目にするどころか存在すら知らない。
どういった想いを綴っていたのかは定かではないが、多分それと一緒にいついつのどこに来てほしい等がしたためられていたと推測できる。
手紙の存在自体知らない高須が指定された場所に来れないのも、ましてや相手の事を知る由もないのもムリはないが、
フラれたと思って傷付く誰かがいる事をタイガーはちゃんと考えているのだろうか。
高須達が下駄箱に着くと、上履きに履き替えたタイガーが待ち構えていた。
どうやら今朝は手紙が入っていたらしい、高須とおててを繋いでいた時とは打って変わってすこぶる機嫌が悪い。
ダベりながら歩いていたせいでタイガーとぶつかってしまった一年共が餌食にされた。
高須が叱りつけるが、タイガーは素知らぬ顔で歩き出した。
櫛枝はタイガーが何をしていたのか知っているのか、なんとも言えない顔で後輩に頭を下げている高須を宥めている。
教室ではこれと言って目立った部分なし。
高須はただ周囲と挨拶をしていただけだった。
他には恒例のように高須にじゃれつこうとする亜美ちゃんとタイガーの言い争いが勃発しただけだった。
朝っぱらからの口汚い罵り合いを聞くと何故だか今日一日が始まった気さえしてくる。もう嫌だ。早く終われ。
HRは先日の無断退勤でさすがにお咎めをもらったらしい。
ゆりちゃんが割りと大人しく出席を取っていた。
高須の名前を呼ぶ時だけ微妙に声色が違った気もしないでもないが、タイガーを無視するなんていうほどに露骨でもなかったから正直判断に困る。
1限から4限の間はこれといって目立った部分なし。
時たま床にわざと落とした消しゴムを高須に取らせようとした誰かがいたが、
わざわざ立ち上がったタイガーがそれを拾い上げて、開け放した窓の外へとぶん投げたくらいしかなかった。
昼休み
授業が終わってすぐに亜美ちゃん、木原、奈々子様が高須を昼食に誘った。
今日は亜美ちゃんまで弁当を持ってきたから、せっかくだし一緒に食べようとのこと。
何がせっかくなのかよく分からないが、相変わらず亜美ちゃんの仕草やらなんやらは反則的に可愛らしいし、
木原も一生懸命高須を口説いている。
当然の如く、高須が返事をする前にタイガーが拒否る。
『高須くん、こんなのほっといて亜美ちゃん達と一緒に食べよ?』
『・・・私に一人でご飯食べろだなんて、まさか言わないわよね、竜児』
と、決断を迫られた高須は普通に皆で食べればいいんじゃないかと言っていたが、すげなく却下された。
リアルに殺意が沸いたのは俺と春田だけだろうか。
そこへ、以前高須と弁当の交換を約束していた1年の女子が唐突に高須を訪ねて教室内へと入ってきた。
あれから随分経ったというのに、いじらしくも高須からの連絡を待ち続けていたそうだ。
しかし待てど暮らせど高須からあの娘に連絡が行く事はなく、ガマンできずに自分から出向いたしだいらしい。
途中からしゃくり上げていたが、堪えきれなくなったのか、泣き出してしまった彼女に高須が本気で申し訳ないと謝っている。
高須が言うには、なんでも気が付いたらアドレス帳から彼女のメアドが削除されていたらしい。
そのせいで連絡の取りようがなかった、と。
個人的には悪意ある誰かの仕業な気がしてならない。
あの娘はあの娘で嫌われてしまったのかと思ってずっと不安だったと、事情を聞いてそうじゃないと安心したのか、
余計にボロボロ涙をこぼしている。
そんな後輩にそこかしこから同情の目が向けられていた。
わんわん泣き続けるあの娘に、高須もどうしていいか分からない感じだ。
『なにしてんのよバカ犬ううううううううううう!』
そう叫ぶと、タイガーが高須と、高須にひしっとしがみついたあの娘を無理やりに引っぺがした。
あの娘は抱きつき癖でもあるのか? 前も、その前も高須に抱きついていたし。
それとも天然でやっているのか。
自分のした事の意味がいまいちよく分かっていない様子から察するに、そういうのは疎いのかもしれないとは思うが、
実際のところはどうなのだろう。
『ほぉらぁ、今の内今の内〜』
危うく目を離すところだった。
亜美ちゃんが混乱に乗じて高須の手を引いて教室の外へと出て行く。
どんな時でも我関せずの精神と、隙を逃さずに出し抜こうとする抜け目のなさはさすがだ。
さっきまでの可愛らしさが霞んで見える。
だけどすぐさまタイガーに見つかった。
走り出した亜美ちゃんに引っ張られていく高須を、虎というよりかチーターみたいな速さで追いかけていくタイガーだったが、
廊下を曲がったところで反対側から歩いて来た北村にぶつかる。
つい先日も櫛枝と亜美ちゃんに踏んづけられてた北村が今日はタイガー一人に吹っ飛ばされて頭から壁に衝突してるのが
ヤバそうで可哀想だとは思う。
が、それよりも尻餅をつくタイガーを見た亜美ちゃんが高笑いをしていたのがなんかスゲェ様になっていた。
それもすぐに止んだ。
『にゃはははは〜にーゃにがそんにゃにおもしろいのかにゃ〜?』
と言い切る前には、亜美ちゃんはどこからか現れた櫛枝に逆水平チョップをかまされ、咽こんでる間に雁字搦めにされていた。
一体どっから出やがった。謎だ。
『ズッケーんだもんなー、大河もあーみんも私に隠れてさー。
特にあーみんなんて、今度はなにしようとしてたのかなー、高須くん連れてなにしようとしてたのかなー。
・・・こういうのがあるから、だからヤなんだよねぇ、ミーティングって』
『な、なんのこと、亜美ちゃん知ら・・・ちょ、マジギブギブ! 絞まる、ホントこれ絞まってるから!
本気で喉いてぇからやめてぇぇぇ・・・きゅう・・・・・・・・・』
『おおそうだ、なんならあーみんも参加してみる? うちの部のミーティング。こんくらいじゃビクともしなくなるから』
ミーティングに出ただけで無酸素状態を克服できるのは世間の常識に当てはめたらぶっちゃけアウトじゃないのか、いろいろ。
あと亜美ちゃんもアウトってないか。
なお、その時高須は櫛枝を探しにやって来たと思わしきソフト部マネージャーと親しげに話をしていた。
以前似たような事があったが、その時とは櫛枝とマネージャーの立場が丸っきり逆だ。
マネージャーも、その時の事を手痛い教訓としているのか、あまり長話はせずに引き下がった。
別れ際に何か手渡していたが何なのだろう。メアドか? ていうか櫛枝を探しに来たんじゃないのか?
真っ青な顔をした亜美ちゃんを尚も締め上げる櫛枝に目もくれずに去っていっちまったが。
入れ違いに今度は通りがかった生徒会役員の女子が高須に寄っていく。
何か礼を言っているみたいだが、距離が離れすぎてる上に間にタイガー達がいるせいで近寄れず、会話が聞き取れない。
(どうも床に散らばった書類を拾った後、拾った書類を生徒会室まで運んでやったなんていうマンガみたいな事があったらしい。
別の通りがかり数人を捕まえて探りを入れた春田の話を総合するとそうなった。
ありえない、少なくともここ数ヶ月の話ではないはずだ。俺も春田も高須がそんな場面に遭遇した覚えはない。
それとも、まさか見落としがあったのか? いつだ)
特に何もせずに彼女もすぐそこから去るが、また入れ違いに誰かが高須に近寄っていった。
教室で泣き出したあの一年の女子だ。高須を追いかけてきたようだ。
また抱きついた。
その後はいつまで経っても自分を助け起こしに来ないで、他の女とくっちゃべってるどころかまたも抱き合っている高須にキレた
タイガーが泣き喚きながら暴れ回ったため、収集がつくまで残りの昼休み全部を使ったことを明記しておく。腹減った。
5限の体育は最初男女別での予定だったが、急遽男女混合でのバスケに変更。
チーム分けは適当に決めていいとのことだったので、てっきり高須のいるチームに女子が集中すると思われたが、逆に高須がハブられる結果に。
というか、タイガー達はキレイに散り散りなってチームを作ると、勝手に優勝したチームの景品にしてしまった。
高須を。
何だかこういうのをテレビでよく見る気がする。
動物の世界における雄同士による雌の取り合いみたいな。
性別が逆だろ。高須はどこのお姫様だ。
決勝戦へと着々とコマを進めたのは、やはりタイガーと櫛枝の肉体派。
真っ当に試合をしていた櫛枝の方に破れた木原と奈々子様のチームはまだいい。
タイガーに当たった方は手当たり次第に砲弾を彷彿とさせる勢いのボールを投げつけられ、軒並み失神させられた。
亜美ちゃんなんか鼻血まで出すくらい良い当たりを顔面にモロだった。
それバスケじゃなくて完全にドッヂじゃん。
最終的に体育館中を使ったバスケと言うドッヂ大会は同点のまま、ここでシュートが決まればタイガーのチームが勝ちという所で5限が終了、
お流れという運びになった。
肩で大きく息を吐いて、良い感じに流した汗を拭ったタイガーと櫛枝がガシッと腕を組んだ。
仲良いな、あいつら。
握手なのに握力測定みたいに力込めるくらいだもんな。
女ってよくわかんねぇ。
ちなみに高須は終始何も知らないように北村と春田と俺とでボール遊びをしていた。
暢気すぎる。もうちょっと身の危険を感じろ。今に取って食われるぞ。
それと関係ないが、黒間は近頃引き篭もりがちになってしまったらしく、今日は見ていない。
体格だけは立派だったが、見かけに反して内面は繊細だったのかもしれない。
6限と帰り際のHRはこれと言って目立った部分なし。
ただし、最後の最後に高須に居残りを言い放った直後、ゆりちゃんは忽然と姿を消した。
タイガーと櫛枝と亜美ちゃんも消えていた。
2分くらいでタイガー達は戻ってきたが、結局ゆりちゃんが戻ってくる事はなかった。
明日になれば何事もなかったように顔を出すだろう。
いつもそうだ。
明日もそうであってくれ。
放課後
予報通り、ポツリポツリと午後から降りだした雨が、今はもう本降りになっていた。
傘を忘れた生徒がチラホラおり、中にはカバンを雨避けに早足で帰っていく奴もいる。
高須も傘を忘れてしまったらしい、タイガーと並んで立ち往生していた。
タイガーが自分を棚に上げて傘を忘れた高須を責めている。
これはこれでタイガーなりのコミュニケーションというか愛情表現なのかもしれないが、高須はどう受け取っているんだ。
不愉快すぎるというわけでもないから、別段何も言わないのか。
いくら推測しようが答えは高須しか知らないのだが、なんとなく気にかかる。
しばし様子を見ていると
『そんな所でどうしたの、高須くん。傘、忘れちゃったの?』
『おぅ、帰るまでは大丈夫だと思ったんだけどな・・・香椎もか?』
『ううん、あたしはほら、ちゃんと持ってきてるから』
『しっかりしてるんだな』
『そんなこと・・・あ、そうだ。高須くん、よければこれ使ってく?』
『いや・・・香椎はどうすんだよ。それ借りてっちまったら香椎が帰れねぇだろ』
『それもそうね・・・なら、相合傘でもしてみようかしら・・・なんて、冗談だからそんなに睨まないでよ、タイガー』
『・・・フンッ』
『じゃあ、はい、高須くん。二人じゃ狭いだろうけど、ないよりはいいでしょ』
『お、おい・・・けどこれ』
『あたしはいいの、教室に折りたたみのがあるし。それに高須くん、こないだだって風邪引いてたでしょ。
体冷やしちゃったらまた・・・そうなったら大変じゃない、いろいろと・・・ね?』
『ちょっと、いろいろってそれどういう意味よ』
『よせよ、大河・・・いいのか香椎、これ、ホントに借りてっても』
『ええ、気にしないで』
『・・・悪いな、今度なにか』
『いいのよ、ほんと、気にしないでいいから。でも・・・悪い、じゃなくって、ありがとうって言った方がいいわよ、そこ。
迷惑ってほどじゃないし、あたしも気分いいかな、その方が』
『ああ、わる・・・ありがとな、香椎』
『はい、よくできました・・・ふふ・・・それじゃあね、高須くん、タイガーも。あたし麻耶待ってるから、バイバイ』
『おぅ、この傘キチンと洗って返すから』
そう言うと、高須はタイガーと帰っていった。
見送る奈々子様は、複雑な表情で高須を、高須の隣を歩くタイガーを交互に見送っていた。
この後は俺も春田も雨でビショビショに濡れて帰ったんで、今日のとこはこの辺で勘弁してください。
※ ※ ※
11月--日
今日、亜美ちゃんが高須くんとお昼を食べようって持ちかけてきた。
珍しいって言ったらあれだけど、自分で作ってきたみたい。
あの亜美ちゃんが。
びっくり。
それだけ本気だったのかもしれない。
一人だけ手作りのお弁当じゃない麻耶がちょっぴりへこんでたけど、まぁ、一緒にっていうのはやっぱり魅力的だったのかしら。
亜美ちゃんの次に強引に高須くんを誘ってた。
いろいろあって、結局は再三出し抜こうとした結果、高須くんもタイガーも亜美ちゃんも、お昼は食べられなかったみたいだけど。
・・・残念、だったかな、ちょっとだけ。
突然だったから全然普通のお弁当だったけど、それでも。
一緒にお弁当って、あたしにもすごく魅力的に映ってたから。
いっか。
チャンスは、また作ればいいんだから。
だから
あの傘は、できればずっと持っててもらいたいな。
〜おわり〜
おしまい
おいwwww
そのEとTが逆さになってる部分を深読みした俺の時間を返せwwww
毎回読む度に結構な時間考えたんだぜwww
内容はいつもどおり面白かった!
「ネオット」じゃなかったんだな・・・
なんかのゴロ合わせかと思ってたよ。
つかスペルミスかよwww
GJ!!!!
いい、っです、よ?
GJ。面白かった。
中の人ネタもあったね。
82 :
名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 12:19:45 ID:dN0IzwQN
スペルミスなんか気にするな!
>>76 亜美ちゃんさえ最初から本気参戦してくれれば、みのりんも勢いで本気になって、
こんな感じのラブコメらしいラブコメになっていたかもしれないと思った。
春田がスペルミスした題だと思ってた
>>85 >>72に化物語の羽川を意識したと思われる台詞が。
みのりんと中の人が同じなのだ。
GJ!
毎度腹筋がヤバイwww
>>86 ありがとん
そうなのかー、化物語も見てみよう
毎度GJ
大河ウゼェ…
ちょっと投下します〜
10レス程お借りしますね。
何かおかしい。
はじまりは、一本の電話からだった。
その時、あたしは自分の布団の中で、寝てるんだか、起きてるんだか…
よくわからないんだけど、何か、心地良い。そんなオフを一人寂しく満喫していた。
Tellll………
「………」
『亜美か?俺だ。俺だよ。』
「……なに?ゆーさく?」
『おお。久しぶりだと言うのに良く解ったな。
以前、電話を掛けた時は全く忘れ去られていたのに。
いやはや、亜美も成長したもんだ。偉いぞ。』
「はぁ?あんたなにいって…」
『もう、こっちへ来てるんだろう?
だから、転校してくる前に―――
この時のあたしは、あんまり眠かったもんだから、祐作の、訳の解らない話を最後まで聞かなかった。
だって、ホントに意味が解らなかったし…久しぶりとか言ってなかった?昨日、学校で会ったばっかじゃん?転校?はぁ?
何言ってるの?あたしに転校して欲しいってか?ふざけんな。何で祐作にそんな事言われ…
なーんて事を思った様な、思わなかった様な、とにかく、そんな感じの夢を見た。
筈だった。夢の筈だった。
その日、目が覚めたのは結局、昼過ぎで二度寝、三度寝上等の体たらく。いくらオフだからって、我ながらど〜かなと思う。
全然、動いて無いのにしっかりお腹だけは空いてて、それを理不尽だと感じながらも仕方ないから、
ストレートティーと魚肉ソーセージを胃の中に流しこんだ。
出すモノ出して、顔でも洗うかと、洗面台に立った辺りで、ようやく意識がはっきりしてきた。
意識がはっきりしても、寝過ぎた後の身体は信じられない位怠いので、もうしばらくは、居間でダラダラテレビでも観るのが正しいオフの過ごし方。
―なんだけど、ふと、さっきの夢の事が頭によぎった。夢にしては、断片的にくっきり残っている現実感…
何の新鮮味もない祐作の声、いつか聞いた様な内容。自分でも良く解らないが、無意識的に枕元置いてある携帯に手を伸ばし…
次の瞬間、あたしの背筋は体感で摂氏−178℃にまで冷えていた。
あるんだけどないもの
あるべきものがなくて、ないはずのものがある
このトンチか、禅問答みたいなモノの解答は、あたしの場合、「着信履歴」だった。
あたしが寝ていた筈の時間に残る「北村祐作」以下、昨日以降には、ずらりと仕事関係者。
あたしの記憶が確かなら、着信履歴トップは「香椎奈々子」の筈…
しかし、「香椎奈々子」なんて人からの電話もメールも無くて、アドレス帳に、さえ「香椎奈々子」は存在しなかった。
「木原麻耶」も 「櫛枝実乃梨」も「ちびとら」も、それから「高須竜児」も…
「北村祐作」を残して、あたしの大切なアドレスは皆、消えてしまっていた。
あたしは怖くなった。怖くて怖くて怖かった。
携帯のディスプレイに表示された今日の日付。その、表示された、狂った日付が自身の機能の正常さを語る。
真冬にしては、妙に薄いあたしの布団。あたしの部屋着。そして、思ったより、寒くない。
まるで、春か春と夏の間みたいだねぇ〜なんて、呑気な事を考えていた。
1.願い
あああああああああ〜〜〜〜〜〜
今、あたしの真っ白な頭の中では「あ」が数十行位に渡って、書き連ねられている。
うそ〜?マジで?うそ〜?みたいな、そんな感じ。
あたしの頭が残念な感じにお釈迦になったのでは無いなら、これは…
『全部チャラにしなよ。それで一から始めたらいいじゃん。あたしのことも、一から入れてよ。』
聞き入れられたのだろうか…叶えられたのだろうか…
あたしが、超絶に可愛いから。そして、あんまり可哀想だから。それで、神様が、あたしに同情して…贔屓してくれたんだろうか
もの凄く、楽観的で自己中心的な考えだけど、難しい事わかんないし、何より、自分の正気を疑いたくない。
実は、ホントのあたしは交通事故にあっていて、ベッドの上でこんな夢を見ている。とか、
実は、度重なるストレスに心が壊れちゃった。とか、あまつさえ、ヤバイ薬で幻覚を見ている。とか、
そんな可能性は考えたくない。だって、それじゃ、あたしがいくらなんでも、可哀想過ぎるもん。
なら、やっぱりコレは現実なんだ。あたしは、過去に居る。
でも、記憶の引き継ぎってオマケは良いとして…こんなのまで…オマケしなくて良いのに…
今朝から微妙に重いあたしの身体。どうやら、寝過ぎだけが原因ではないみたい。
どうすんの?コレ………かつてのメタボリックなお腹。あたしの記憶が確かなら、早いうちに165cm45kgを取り戻さないと、結構、イヤな事になったハズだ。
ちくしょう。あたしが、どれだけ苦労して、コレを落としたと思ってんだ…
そして、さらに贅沢を言えば、もっと過去に飛ばして欲しかった。日付から考えて、もう「人間関係」出来あがってるんですけど…
このまま転校したって、相変わらず「異分子」なんですけど…記憶があるのはそういう事?
―状況は変わらないから、持ってる記憶で何とかしろ―
何だか、中途半端に願いが叶えられてしまった。あんまり、手放しで喜んでられないって事ね…
とりあえず、明日は祐作と祐作のおじさま、おばさまと会うんだっけ?
うわ…出だしじゃん。一番、大事な日じゃん…今日は夜更かししないで寝よう…
お風呂で念入りに綺麗にして、エクササイズしたら、即、寝よう。
これで、明日、目が覚めて、冬だったりしたら、笑うけど。
―翌日、風邪をひく事も無く、無事に朝を迎えたあたしは、指定の待ち合わせ場所で、非常にソワソワしながら、祐作を待っていた。
「お久しぶりです。おじさま。おばさま。」
「おかげさまで。母も元気でやっています。」
「あ、昨日もドラマに出演てましたね。」
「はい。自慢の母です。」
あたしの挨拶を、何か嫌なモノでも見るかの様な目でチラ見する祐作。
おにょれ。あたしだって、やりたくてやってるんじゃねぇやい。
あたしは、早くファミレスに行きたい。だから、あたしは、川嶋亜美は、機械の如く、忠実に過去を再現する必要があるのだ。
ここで、変なアドリブ入れて、ファミレスに行かないパターンに派生でもされたら目もあてらんない。
だから、今、この時は、女優になります。演じます。
そんな感じで、気分的には早送りでファミレスまで来た。
そして、この時、この瞬間こそが…リスタート。あたしの第二の人生の始まりなのね〜〜
2.初見殺し
「彼女、川嶋亜美。こう見えても俺とタメで、昔この辺りに住んでたんだ。
彼女が引っ越すまではお隣さんだったんだよ。いわゆる幼馴染って奴なんだ。」
「初めまして!夕月玲子の娘です。…なんてね。違うか。
初めまして!亜美です、よろしくね!」
あたしのボケに高須君、タイガーはもとより、祐作までもが、キョトンとしている。
でしょうね。この時期のあたしだったら、親の事を自分から言い出したり出来なかったろうからね。
でも、この2人は、あたしが川嶋安奈の娘だとか、そんな事、関係なしに接してくれるからね。別に良いの。
ふふん。参ったか、祐作め。さっきのお返しだ。
硬直する高須君に、あたしは、スッと…両手を差し出す。
「ね、握手。祐作の友達なら、あたしにとっても友達だよね。」
――手が溶けてしまいそう。手の平から、とろとろと。
高須君の手の感触を充分、堪能した後、あたしはタイガーの手にある雑誌をひょいと掠める。
「もしかして、これって…あ、ああ、あたしが載ってるやつだね。」
そうして、高須君の眼をじっと見つつ…
「高須君…だったよね?どう?もし、雑誌を見て、可愛いって思ってくれたなら…
あたしはモデルのお仕事をしていて、ホントに良かったと思います。」
うわ…やべ。やりすぎた。タイガーも祐作も当の高須君も、あっけにとられて…こころなしか、ちょっと引いてる。
「あ、あはははは。
な、なんてね。あっ、いっけない。
祐作。おじさまたち待ってるよ。席戻んなきゃ。」
「あ、ああ。悪いな。高須と逢坂はまだここにいるだろ?後でまた話そう。」
「お、おう。」
「また後でね!」
あたしは、2人に手を振って、逃げる様に踵を返した。
出来る事なら、食事中の、祐作の「どうしたんだ?お前」と言わんばかりの視線からも逃げたかった。
嫌な汗が止まらない。パスタの味が判らない。
「よう。うちの親、帰っていったわ」
相変わらずユニクロ丸出しの祐作に伴って、あたしは高須君とタイガーの席へ移動した。
「お待たせ。」
何か、前回よりも、周りの注目を集めてる気がする。なんたって、今日は本気でおめかしして来てるからね。
今日のあたしは最強に可愛い。自分で言うのもなんだけど、絶対にタイガーよりも可愛い。
「……ご機嫌だねぇ……犬が尻尾振ってるみたいだねぇ……」
タイガーの冷たい言葉が突きささる。
くぅ…この娘ってこの頃はこんなムカつく娘だっけ?最近は、すっかり丸くなっていただけに、油断した。
あたしはこんなのと張り合う気でいたんだ…あの頃のあたしは何を考えていたのだろう?
丸くなったのはあたしも同じなのかな?あたしも他の人からはこんな感じに見えてたの?な〜んて事を考えていたせいで
「あたしは高須君の横に座るから、祐作は逢坂さんの隣に座りなよ」と言いそびれ、ごく自然に同性同士でソファに座る事になってしまった。
「亜美、時間はまだ平気だよな?なにか頼む?」
この、アホ作がッ!!さっきパスタ食ったばっかだろうが。
「ううん。さっきお腹いっぱい食べたから、いらない。……お2人は?」
あたしに話題を振られた高須君は、ビクリと跳ねた。タイガーは俯き気味にぷるぷる震えてる。
「え、ええと。俺たちは……どうだろう?どうだ大河。」
タイガーは俯いたまま、ふりふりと首を振った。話題終了。そろそろかな?
「あーあ、家族サービスして疲れたな。悪い、ちょっとトイレ」
あたしの記憶通りに祐作が席を立ち、
「あ、なんか俺も便所……ええと便所はどっちだっけ……」
間を置いて、高須君も席を立った。
さて、あたしとタイガーの一騎打ちはこれが最初だっけね…確か。はぁ…
ここは「あの頃」の亜美ちゃんに頑張って貰おう。ホント「あの頃」のあたしは強かったんだなぁ〜
「ねぇ。あの人、あんたの彼氏?」
「……」
「亜美ちゃん、奪っちゃっていーい?」
「……」
「言っとくけど、冗談じゃないからね。マジよ。」
「……」
「黙ってるって事は、良いって事なのかな?」
「……彼氏じゃ、ないから」
「ふぅん。」
「……初対面の男に発情?ホント、犬みたいな奴。バカじゃないの?勝手にすれば?」
「ああ。そういえば彼、どことなく犬っぽいね。従順そうじゃん?」
「従順ね…アンタ、オモチャが欲しいなら、他あたれば?
それだけのツラだもん。従順なオモチャなんて、よりどりみどりでしょ?」
「ツラしか見えない様な、つまんない奴なんてお断り。」
「ふん。アンタに何が解る。あんな奴の何が良いんだ。」
「これから、知るのよ。良いこと教えようか?……明日からあたしは…う〜ん、やっぱヤメ。」
「……もったいぶんな。言え。」
「〜♪」
「ふん。思わせぶりな事言って、ホントは何も無いんだろう。」
「ヒ・ミ・ツ♪」
「………ムカつくわね……この場で、八つ裂きにしてやろうか?」
「〜♪」
あたしの安い挑発にタイガー爆発寸前。このままじゃ…マジヤバイ気がする。
だって、ホントはこの場面で一発ぶたれてるし……
こんな修羅場でも、余裕たっぷり人を見下した感を全開に出せるあたしは、絶対、将来は母を超える大女優になれるに違いない。
…って。祐作と高須君はまだなの?確か、もうそろそろ、水入りに来る筈でしょ!?まさか…殴られなきゃダメなの?
「あーあーあーあー何してんだ。何で仲良く出来ないんだよお前は。」
もうダメだ。あたしは覚悟を決め、歯を食いしばった瞬間、危機一発。
「まったく。どうせ、お前が、逢坂に何か失礼をしたんだろ!?」
「ゆぅさくぅぅぅ〜〜〜っ!」
おせぇんだよ。しかもタイガー贔屓かよ!?と、言いたいトコをグッと堪え、
「あたし、もう帰りたい。」
と、言っておく。別に、帰りたくないけど、このまま居ても仕方ないし。
「悪かったな、逢坂。高須も。俺、こいつ連れて帰るわ」
祐作は全身で申し訳無さを表現し、あたしを引きずって、店の外へ連れ出した。
「はぁ…遅ぇんだよ。助けに入るのが。
あの子のバカ力で殴られて…顔、腫れでもしたら、どうしてくれんのよ!?あぁん!?」
過去へ来て以来、あたしは初めて毒づいた。
「……お前な。どうせお前が悪いんだから、良いんじゃないのか?それで。」
「今回は、あたしは悪くないわよ。良いトコ、両成敗でしょ?」
「……今回は?どういう意味だ?」
しまったぁ〜〜勢いで、つい失言しちゃった…
「いや、あはは。え〜と」
「それに、何で逢坂がバカ力だって知ってるんだ?」
「え〜〜と…なぜでしょう?
何でかなぁ〜あたしぃ天然だから、わかんないなぁ〜てへ☆」
「………」
「イヤン。祐作のえっち♪顔ちか〜い☆きもーい★」
「………」
「イタイ!!イタタタタタ。千切れる千切れるって!!
マジ。やめ…やめて。亜美ちゃん、琵琶法師になる…なっちゃう。
わかった。わかったから。言う。言うから。ちゃんと話すから。話すから離して。」
解放された耳は、信じられない位の熱を持って今にも溶け落ちそうだった。
「冷やしとけ」
とか言って、祐作が缶ジュースを投げつけてきた。
「こんな高カロリーなもん飲めねぇよ。
どうせなら無糖ストレートティーでも奢ってくれりゃあ良いのに…
まったく気が利かないんだから。少しは、高須君を見習えば?」
長い話になるから…と、近くの公園にゆっくり腰を落とし、包み隠さずに全てを打ち明けた。
あたしが未来から来た事。高須君が好きな事。そして、今度こそ高須君の心を射止めるつもりでいる事。
「どう?話を聞いた感想は。当局に通報する?それとも入院?まぁ、尿検査位は受けるわよ。」
「にわか…には信じられん。」
「そりゃそうよね。」
「しかし、作り話にしては、出来過ぎている。」
「そう?あたしだったら絶対信じないけど。祐作ってバカ?」
「…お前。殴るぞ?」
「ィッタァ〜イ。さっきからなんなの!?その暴力癖は会長さんの影響?すっごい迷惑なんだけど……」
「!?」
「ふん。狩野すみれ、だっけ?冗談じゃねぇっつ〜の」
「……わかった。信じる。お前の言う事を全面的に信じよう。」
「はぁ?別に信じて貰わなくても結構なんですけどぉ〜」
「いや、困るだろ?色々。協力者が必要なんじゃないか?」
「別になんも困ってないんですけど…てかむしろ今、あんたに絡まれて困ってる。」
「いや、今は良くても、この先、困る事がある筈だ。
何故なら、それがこの手の話のお約束だからだ。」
「はぁ〜?」
「亜美。この話は誰にも言うな。言っちゃダメだ。これは、俺とお前だけの秘密に…」
うわ…何でいきなりテンション上がってんだよ?マジうぜぇ。祐作うぜぇ。
「キモイ。シネ。近い。
言われなくても、誰にも話したりしないわよ。
てか、転校先で「未来から来ました♪」なんて言えねぇし
いくら、亜美ちゃんでも、絶対イジメられるわ。」
「それが良いだろう。」
「てか、何でそんなに楽しそうなの?あんた。」
「いやいやいや。決して、楽しんでなどないぞ。
うむ。幼なじみとして、亜美を応援する所存だ。」
「なぁ〜にいってんだか。いつもタイガー贔屓な癖に。」
「それは、お前の世界の俺だろう。俺は亜美の味方をするぞ。
幼なじみだしな。お前の方が付き合いが長い。」
ホントかよ…
「いや、祐作に応援されて、事態が好転するとは思えないし…
出来れば、ご遠慮させて…」
「遠慮するなんて水くさいじゃないか。俺とお前の仲だろう?ハッハッハ。まぁ、任せておけ。
うむ。じゃあ、今日のところは、家に帰るとするかな。」
ハッハッハ。いやぁ、面白い事を聞いてしまったなぁ〜そうか、そうか
―などと大声で呟きながら、祐作は夕日へと消えて行った。
祐作に打ち明けたのは、どう考えても失敗の様な気がする…
まぁ、良いか。何か不都合があったら全て祐作のせいにしてしまおう。
祐作でもスケープゴート位の役には立つだろう。
あたしは、炭酸片手に沈みゆく夕日を眺めながら、いざとなったら祐作を切り捨てようと、深く心に誓った。
おしまいです。
早い内に続きを書くつもりですので、どうぞ宜しく。
>>99 エヴァやゼロ魔ではよく見るがとらドラではあまり見かけない記憶保持再構成ものキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
>どうすんの?コレ………かつてのメタボリックなお腹。
ww
続き期待して舞ってます。
これは期待せざるをえない予感がプンプンするぜ…
おいおい。なんだこれ。
思わず読みふけってしまったぜ。
「いくら亜美ちゃんでも」クソワロタw
やばい。
続きが気になって仕方ねー
>>99 GJ!
続きを楽しみにして待っています。
そういやベタな設定なのに保管庫とか全部読んでるはずだけど
この設定はなかった気がするな
亜美ってのが、いかにも結局報われない感じはするが
元の時間に戻ったら微妙に良い方に変化してたみたいな
少しは幸せになるのを祈ってるよ、職人さん
逆行物か、wktk
この裸族のキャラは竜児に似ているな
それになんか北村×亜美の匂いが…
っていうか竜と虎のデジャヴだった
でもおもろい
もしかしてあーみんの恋は15000回は成就しないのか
しかしその後にはきっと報われるハズ!
……勝手に想像しておいて泣けてきた
久々に来てみたら良作が投下されてたーーー!!
タイトルから夏休み合宿の話だけかと思ってたがとらドラシリーズ全部やるのな
これは期待大
チラ裏
俺は全体の逆行物となると微妙だな
全編焼き直しの冒頭のみ投下現在続き作成中とか未完候補筆頭だろ
まぁ、お手並み拝見といこうよ。
以下は聞き流してもらっていいのだが、
こ の 作 者、 未 完 の 作 品 多 いよ ね
これも聞き流してくれていいんだけどさ
どうせお決まりの
過去に起こるイベントを知ってる
↓
都合よく改変する
↓
繰り返してく内にズレが生じる、そしてオリジナル展開
↓
↓
↓
別の話に手を付けてお茶を濁すか消える
という逆行物の王道を突き進むんだろ
それか
>>110みたいな
未完の大作お疲れ様です
ここは作者のモチベをいかに下げるかを競い合うスレですね
なんでみんなネガティブな事ばかり書いてるんだ?
未完だなんだと書いたら良いことあるの?
私は続きを待ってますよ!
なにをぅ!!て奮起して頑張って書いてくれるかも知れない。
ともあれGJ
面白ければ良い。完結いただければ尚良い。
てか職人さんには気分悪いかもしれんが、全ての職人さんのコテを見ても
このコテよく見るな、くらいしかわからないし、前は何を書いていたかまでは覚えてないので
必死にこの職人は未完が多いとか感想言ってる奴は暇だなぁとしか思えん
未完成が多いなら、終了までの大まかなプロット作ってから
続きの執筆にかかってくれると嬉しいな
わざわざ特定の職人を名指しして「未完が多い」って、陰湿な嫌がらせ以外の何物でもないわな。
なんか殺伐としてるなぁ〜
純粋に楽しみたいのは俺だけか…
こういう奴はその陰湿さを日常生活では微塵も出さずに過ごしてるんだろうな…
取り敢えず俺は続きを楽しみにしてるわ
120 :
名無しさん@ピンキー:2009/11/09(月) 21:25:35 ID:ZKfUfww4
僕の肛門も未完になりそうです
書いて読んでの方ならまだしも、読んでしかいない方がイチイチ言うのは如何なものか?と思うのは自分だけ……?
かく言う自分も読んでばかりなのだがorz
まぁそれは置いといてGJでした!続きが楽しみです。
>>99 タイトルにも酉を付けてくれ
その方が、このスレが荒れなくて済みそうだ。
最初に書いた俺が言うのもなんだがスルー力なさ過ぎだろ…
>>110-112 チラシの裏にでも書いてろ
で済む話だろうに
竜虎スレもだけど、最近作者に冷たい意見ばっかり見かけるな
文句ばっかりいっちょ前のカスは消えればいいのに
「とりあえずギシアンしておけば埋めネタになった時代は終わったのだな」
昨日までとある一流企業に勤めていた斎藤さんが、ほっとしたように私たち夫婦に言った。
「ええ、これからは読み手が職人にNOを突きつける時代なんですよ」
普段は滅多に話に加わらない妻の靖子が、斎藤さんの肩に手を置いて優しく言った。
とりあえず、空気読まずに投下します。
10レス程、お借りしますね
3 協力者
「はじめまして。今日からこちらの学校に転入してきました。川嶋亜美です。よろしくおねがいします。」
望んだ事とは言え…全部最初からやり直しっていうのも、めんどっちぃなぁ〜何より、馴染んだクラスにあたしの席が無いというのが、妙に切ない。
この後、運ばなきゃなんないんだよなぁ〜机と椅子…はぁ、まぁ、イイや。身体動かした方が良いもんね、今は。
あたしの視線は自然と、ある一点へと流れた。ぷwwびっくりして、真っ白になってやんのww
そこで、あたしは、
「はじめましてじゃない人も居るね。良かったら、あたしと仲良くしてね?」
こ〜んなアドリブで、二度目の自己紹介を締めた。
「えー川嶋さん、それ自分で運んで来たの?男共に頼んじゃえば良かったのに」
運搬の鉄人たるあたしに麻耶ちゃんと奈々子が、記憶通りに話かけてきた。
確かに麻耶ちゃんの言う通り、アホな男どもを使役しても良かった。どうせ、今回は天然キャラやらないんだし。
でも、色々、燃焼させる必要があるし、なんとなく自分で運んだ。
もし、高須君が申し出てくれたなら、お願いしただろうけど…やっぱ、そうウマくはいかないよね。
「ところで、亜美ちゃん。さっき言ってたはじめましてじゃない人って?」
「あ〜それ。あたしも気になった。誰?誰?」
なるほど。アドリブ入れれば、やっぱり変化がある訳ね。
「祐作とは幼なじみなのよ。あ、祐作って、あの前の席のメガネね。」
「え〜まるおと亜美ちゃんって幼なじみなんだ〜」
つーか、本来は祐作の口から「亜美は俺の幼なじみ。皆、仲良くしてくれ」的な、声明があった筈なんだけど…
あのメガネ、やりやがらねぇ。やっぱ、祐作に打ち明けたのは失敗だった。
「それにしては、まるお君の方見てなかった様な……」
奈々子…流石、鋭い。
「ん〜とねぇ〜」
チラッ
「ひみつ♪」
チラッ
「かな〜」
チラッ
「えぇ!?まさか、高須竜――」
「シーー。麻耶ちゃん、声、大きい。」
とっさに麻耶ちゃんの口を塞ぐ。危ない、危ない。
「知り合いなの?何で!?」
「ええと、知り合いっていうか…あたしは知ってるんだけど、向こうは知らない?かも。
今、ぷいってされちゃった。あたし嫌われてるのかなぁ〜?」
あえて、高須君にギリギリ聞こえそうな声量で言ってみる。
「え〜高須って無愛想な奴だし、嫌ってるわけじゃないよ〜照れてるんだよきっと」
「だと良いなぁ〜。
あの人ってヤンキーっぽいし、怖い顔してるから、ついつい勘違いされがちだけど…ホントは結構、イイ奴なんだよね。」
「へぇ〜そうなんだぁ〜」
「うん、そうそう!」
そんな感じで、本来と台詞が逆になってしまったけど、なんとか麻耶ちゃんと奈々子とは友達になれた。
「あ、あたしちょっと祐作に用があるんだぁ〜
麻耶ちゃんも、奈々子もこれからよろしくネ♪」
「うん。」「よろしく〜」
「じゃね☆お〜い祐作ぅ〜ちょっと来てくれない?」
「ん?何だ、どうした?」
「良いから早く。」
あたしは、出来るだけ穏やかに、穏便に、力強く祐作を引き、教室の外へと連れ出した。
―ジュースの自販機を使用出来るのは以下略
「つまり、ここなら、人気がないから、大丈夫って事よ。ねぇ、そうでしょ?祐作。」
あたしは今、力いっぱいのグーをふるふるさせている。
「おお。お前の反応を見るに、あれで正解だった様だな。」
「はぁ?」
何いってんの?こいつ。
「最初、俺は、亜美は俺の幼なじみだからよろしく。と、言うつもりだった。
だから、言わなかった。つまり、未来を自らの意思で変えた訳だ。凄いだろう?」
「あんた…やっぱり、わざとか。やめてくんない?迷惑だから。
てか、あんた昨日、あたしの味方するとか言ってなかった?全然、期待してなかったけど。」
「何を言う。これは、お前の為の実験でもあるんだぞ?」
「…なんで?」
「良いか?未来には変化に対する耐性があるんだ。
例えば、このメガネの様に、外部の力によって別の形に変化しようとも……」
祐作は、メガネを外して、フレームをビヨンビヨンさせている。
「形状記憶合金というんだが…時間、歴史というものも、どうやらそうらしい。」
「……じゃあ、あたしがどんなに頑張ったって未来は変わらないって事?」
なんだか、恐ろしい話を聞いてしまった。固く結んだグーもほぐれ、膝が笑ってる…
「―の、可能性もある。ちなみにこれをセワシ理論というのだが…
俺は今回、このセワシ理論を打破すべく、一つ実験をした訳だが…
結論から言うと、喜べ亜美。お前の話を聞く限り、未来は変えられる。」
「ホ、ホント?」
やったぁ〜救われたぁ〜
「ああ。だが、力加減が難しい。形状記憶力を遥かに超える力を加えれば、メガネは壊れてしまう。
未来を微妙に変化させる為に必要以上の力を加え、結果、全てが壊れてしまいました…では、流石にマズイ。
それに、結果として、亜美、木原、香椎は再び友達になっている点も無視できん。
それは今回、結果が変わる程の大きな力を加えていないから…だが。
うぅむ。いかんな。頭がこんがらがってきた。」
「ねぇ、なんであんたそんなに詳しいの?」
「ああ。それは昨日、参考書を読んだからだ。」
「え?なにそれ。あたしも読みたい。貸して。」
「ああ。貸してもいいが。確か、図書室にも置いてたと思うぞ。」
「ホント!?タイトルは?」
「ドラえもん。一巻だ。」
「………」
「ん?どうした?礼なら無用だぞ。俺とおま―ふべッ
「……こんのアホがッ。帰れ!ダメガネ!!」
「いきなり、なにするんだ」
「いいから、もう帰れぇ〜〜〜〜ッ!!!」
あ〜あ。ムカツク…
あんなアホの言う事を一瞬でも真に受けちゃった自分が許せない。
やっぱり、あたしのプラスチックなハートを癒せるのは、この空間しかないわ。
愛しい愛しい、あたしの隙間ちゃん……
「はぁ…もう疲れたょ。」
「……なにしてんだ?そんなトコで。」
「ひぃッ!?」
自販機と自販機の間に挟まれ、うっとりと微睡み、自販機の側面に頬ずりするあたしを、
心底、気の毒そうに哀れんだ感じに表情を歪め、彼は立っていた。ちょっと…引いてる?
「やっぱ、モデルって色々大変なんだな…」
「ななな…
―何でアンタが?
続く言葉をあたしは寸でのところで呑み込んだ。
だって、高須君が自販機に来るのは、三限と四限の間の筈でしょ!?なんで?
「ちょい待ち!!待った。待って。待っててば。
コーヒー飲みに来たんでしょ?奢る。奢るから。だから、ちょっと待って。話、聞いて。」
ーここで見た事は誰にも言わねぇから。
おう。安心してくれていい。これでも俺は口が堅い方。
あと、余計な事かもしれねぇが、疲れは溜め込まない方が良いぞ。
なんなら、北村にでも相談してやれ。確か、幼なじみなんだろ?
か、川嶋さん…だっけ?俺は教室に戻るから。じゃ…―回想終了。
「ふごぉ〜〜〜締まる…締まるって…」
「い〜か〜せ〜な〜い〜」
気が付けば、あたしは高須君を背後から締めあげていた。
「げほっ…げほっゴホゴホゴホッ」
「とりあえず、このコーヒーはサービスだから、落ちついて飲んで欲しい。まぁ、ゆっくりしていきなさいよ。」
「ゴホゴホゴホゴホ…」
「もう。嫌味ったらしいなぁ〜そんなに強く締めてないでしょ?一々、大袈裟なんだから。」
「なんなんだ?なんなんだよ、お前は!?俺になんか恨みでもあんのか?」
「う〜ん…あると言えば、あるかも。
そんな事より話、聞いてくれる?」
「だから、俺は誰にも言わねぇって―
「話聞いてくれないなら、亜美ちゃん、大声出しちゃうかも。
きゃ〜襲われるぅ〜誰か助けてぇ〜とか、そんな感じで。」
「うッ……わかったよ。」
糸が切れたみたいに、ガクッとうなだれる高須君。
ふぅ。やっと観念したか。最初からそうして大人しくしていれば良いのよ。
「つまりね、別に高須君がクラスの連中に言いふらそうが、どうしようが、ぶっちゃけどうでも良い訳。
あたしは、ただ高須君に変な子だって思われたくないのよ。」
「いや、十分変だろ…」
「どこが?」
「どこって…いきなり首締めないだろ、普通。そんな転校生聞いた事ねぇよ。」
「ああ。そっち方面は良いのよ。
根暗とかキモイとかそんな風に思われなきゃ。」
「いや…別に、そんな風には思わねぇけど…
それに川嶋さんは、その、可愛いし…」
めまいがした。可愛いって?あたしが?高須君が、あたしを可愛いだって?
目頭が熱くなって…涙が、零れそうになった…熱いものがこみ上げてきた…
その言葉を聞けただけで、過去へ来て良かったとさえ思えた。生きてて良かった。
「お、おい。どうしたんだよ。お、俺、変な事言ったか!?」
「…ううん。ちょっと目に…ゴミ的なものが…
それより、何て言ったの、あたしの聞き間違いじゃなければ、可愛いって?
あたしが可愛いって、そう、言った?」
「え、いや、言った…けど。」
「ホント?カンだけど、あくまでカンだけど、高須君の好みって、ちっちゃなお人形さんみたいな子や太陽みたいに明るい子で、
あたしみたいなタイプは好みじゃないって思ってたんだけど?」
「…雑誌に載る様なモデルさんが何言ってんだよ。
川嶋さんなら、可愛いとか言われ慣れてるだろ?」
「うん。毎日言われてる。
けど、高須君は特別だから…」
「!?特別?何で?」
「……それは秘密。」
「からかってんのか?」
「本気じゃ悪い?」
「もしかして、以前どっかで会った事とか?まさか、生き別れの妹?
だったらスマン。俺にはまったく覚えがない。教えてくれ。お前は誰だ?」
「川嶋亜美よ。あなたのクラスメート
なぜ、高須君が特別なのか…それは、もう少し仲良くなったら教えてあげる。
知りたいなら、亜美ちゃんの好感度をもっと上げる事。ねぇ、仲良くしてくれる?」
「…なんか…ややこしい奴だな。」
「性分だもん。でも、それだけの価値はあるでしょ?」
「かもな。じゃ、俺、教室に戻るよ。コーヒーありがとな。
何で、俺なんかに構うのかマジで解らないけど、実はちょっと嬉しかった。それじゃ、また。」
もの凄い形相で、高須君は、そそくさと足早に教室へ戻って行ってしまった。
4 制裁
わぁぁぁぁ。完全にやっちゃったよぉ。何で、あたしってこうなの?
何で、あんな回りくどい言い方しか出来ないの?何で、あんな上から目線で偉そうに言っちゃうの?
性分?あほか。何気取ってんだ。あぁぁ〜今回こそは…今回こそは、天然キャラはムリにしても、
ちょっとはマシなキャラ立てしたかったのにぃ〜〜
完全に忘れてたもん。途中から、完全にいつもの調子で会話してたもん。
これじゃあたしは何のために過去に来たのか、わかんないじゃん。
C
「いや。大成功じゃないか。高須の奴は照れてたんだろう。」
そうなの?
「そうとも。あの顔は、確かに照れていた。」
ホント?
「ああ。それに、良かったんじゃないか?本性を隠して、接しても、いずれ破綻する。
お前の世界では、お前の本性も含め、高須はお前を認めてたんじゃないのか?」
それは…そうだけど…
「しかし、お前はちょっと変わったな。お前の本性はもっと黒くて醜くかった気がする。
あれじゃ、いいとこ灰色くらいだ。未来から来たという話も納得せざるを得ない。」
うるさい。
「これでも、賞賛してるんだ。だから元気出せって」
祐作に褒められて、あたしが元気出ると思う?むしろ気分悪い。
「おいおい。そう、邪険にするな。
高須をここへ導いたのも、俺のお手柄だぞ?どうだ?俺の実力もなかなかだろう?」
…そう、あんたが。あんたの仕業だったの。
「お。ようやく立ち上がってくれたか。
俺たちも、早く戻るぞ。もうすぐ授ー
ギョエーーー!!
「あれ?祐作、はやく戻らないと、授業始まっちゃうヨ♪」
ん〜?返事が無い。ただのメガネの様だ。
「あたし先行くねー祐作もはやくおいでよー」
それから、この日は放課後まで、特筆すべき事は何もなかった。
あたしは、人生でニ度目の高2ライフを満喫し、留年だけは絶対にしたくないと思った。
どんなに仕事が忙しくなっても、ちゃんと出席日数だけは稼ごう。そう思った。
そして、放課後、あたしは扉の前に立っている。この扉の向こうには…ふぅ、やっぱり緊張するなぁ……
ガラガラガラガラ
記憶の通り、タイガーは席に居た。
確か、あたしはここでタイガーに結構、ヒドイ事を言うのだ。あの時はゴメンね。タイガー。そんなあたしの感傷は、
「寄るな。クソガキ。」
タイガーのキツすぎる一言で、見事に霧散した。
む・か・つ・くぅ〜〜〜
何で?何で、何で、何で?今回のあたしは、そこまでヤな子じゃないでしょ?
なのに何でよ?あんた、今のあたしとは普通に友達じゃない!?
もしかして、あたしが一方的に友情を感じてただけ?くやしぃ〜亜美ちゃん悔しい。
いくらなんだって、その態度はあんまりじゃないの?そんなにあたしが嫌いだったか、この虎は。
「昨日、喫茶店で言い渋った事、教えたげようと思ってさ。
逢坂さんも、あのままじゃ、なんかモヤモヤするでしょ?」
「別に。」
我慢…我慢。
「あそ。でも、逢坂さんが良くても、あたしがモヤモヤするもん。
明日からあたしは、あなたと同じ学校に転校します。昨日は、そう言いたかったの。
あ〜スッキリした。ホントは昨日に言っても良かったんだけど、驚かしてあげようと思って♪驚いた?」
「うざい。どうでもいい。」
「………。まあ、同じクラスになったのも何かの縁だし。
これから仲良くやっていこうよ。よろしく。」
バチィッ!!
差し出した手は、弾き飛ばされ…
痛い…イッタイヨゥ…
もうヤダ。なんなのコイツ。どんだけ、心閉ざしてんのよ…
あり得ねぇだろ。ここまで譲歩してんのに…なにコレ?
痺れる…手、痺れてるし。
別にこんな奴、友達じゃなくても良いんじゃ…
あたしが、そう思った時、あたしに対して、無関心を貫いていたタイガーの様子が変わった。
「何なのよ!?何でアンタはあたしに構う?
友達なら…いっぱい出来たでしょ!?あたし1人位、別に良いでしょ?
あたしが寂しそうにでも見えた?そんなにあたしが寂しそうに見えた?
あたしはアンタみたいな奴はキライなんだ。イイ子ぶりやがって………
あたしに構うなぁ〜〜〜〜〜〜!!」
…………
「はぁ?バカじゃねぇの?」
あたしも…キレた
「なぁに、勘違いしてんだ。バカ虎。
寂しそうに見えた?あんた、他人からは、自分が寂しそうに見えると思うんだ?
ふざけんな。甘えんな。なんだそれ。
あんたにだって、親友居るんでしょ?あんたの事、一番に考えてくれる人だっている。
甘えてんじゃないわよ…ヒネてんじゃないわよ…恵まれてるくせに。
あたしがイイ子ぶってるだって?そうよ。悪い?なんか文句ある?
ふん。もう知らない。どーでもいい。一生、ヒネてろ!!」
………
何か、言い返して来るかと思ったけど…結局、タイガーはだんまりだった。
調子、狂うなぁ…事、タイガーに関しては、これまで通りに接した方が良かったのかな?
タイガーとも、最初から仲良くなれたら良いなと思って、行動したけど、失敗しちゃったみたい。
ショックかも…あたし、タイガーの事、結構、好きだったんだなぁ…
まあ、タイガーには、そんなの知った事じゃないだろうし、ましてや、このタイガーには尚更。
ドジッちゃったな…はぁ…これで、タイガーに関しては予測がつかなくなってしまった。
「それじゃあ、また明日ね!」
半ばヤケクソで、記憶通りの捨て台詞を吐き、あたしは教室を後にした。こんなんで修正出来るとは思えないけど…
もう、早く帰ってエクササイズして寝よう。落ち込んでばかりはいられない。明日もあるんだ。明後日もその次も。
未来を変えようとする事が、どれだけ大変な事なのか。簡単な事だと思ってたけど、死ぬ程大変じゃない…
普通に1日を送るより、倍は疲れてる気がする。まあ、良いか。ダイエットにはなるでしょ。
転校早々、過去の洗練を受け、その日、あたしはぐっすりと床へ沈んだ。明日へと繋ぐ明日のために。
おしまいです。
今日は休みだったので、ハイペースで書けました。
オチは一応考えているのですが、完結がいつになるか解りません。
北村のせいです。北村が喋り過ぎるからです。おかげで予定の半分しか進んでません。
私はSSを書く時、キャラが脳内で勝手に喋るのを代打ちするだけの事なので、投下ペースが安定しません。許して下さい。
計画的に綺麗な話が書ける人が羨ましいです。
GJ
北村が亜美の恋の応援をしてるな……
北村×亜美なんて方向じゃないといいなぁ
GJ!!
続き楽しみにしてますよ〜
GJ
続きが投下されてて、うれし
GJ
完結してくれればうれしい
>>136 投下お疲れ様でした。
とても面白かったです。特にどらえもんの件は噴きました。
お話の続きをとても楽しみに待っていますね。
GJです。
でも、北村とくっつくのはやだな…
>>136 GJだ
是非あーみんを幸せにしてやっておくれよ
エンドレスエイトは勘弁な
GJ おもしろいしイイ感じに楽しみ
>>144 同感
>>136 >私はSSを書く時、キャラが脳内で勝手に喋るのを代打ちするだけの事なので、投下ペースが安定しません。許して下さい。
計画的に綺麗な話が書ける人が羨ましいです。
オチは考えているとか言いつつも、これでは行き当たりばったりなのでは?
投下を急がずに、書きためた方が賢明だと思うのだが。
もし、中断したり、無理な展開の挙句に話が変な終わり方をしたら、スレが荒れるし、
何よりも、他の職人が投下しずらくなる。
その辺も、ちょっとは配慮してくれ。
>>146 どう考えても謙遜だろ……JK
てか、本編の方もちゃんと読んだ?明らかに凝った書き方するタイプだろ、この作者さんは。
>>136 GJ。のび太はしずかちゃんと結婚出来たんだから、あーみんだって竜児と結婚出来るよね?よね?
セワシ理論でいくと、ドラえもんって何しに来たんだろう?って事になるし。
感情の振幅が激しいなあーみんw
他人にも隠さない方針なのがまたwww
まあゆっくり書いてってくれ。
セワシ理論って何?
ggって出てくる?
>>149 詳しくは、北村が言ってる様にドラえもん一巻を読むと幸せになれるよ
「未来は紆余曲折を経ても結局、本質的には変化しない。」
って超理論で、のび太はしずかちゃんと結婚しても、いつかジャイ子と不貞を結ぶとか言われてる。
ちなみに、セワシ理論が正しいとすると、ドラえもんは何しに来たんだ?wwとか、タイムパトロール隊は給料泥棒wwって事になる。
一応、ドラファンの間では、セワシ君が正しく時間の概念を理解出来てない。もしくはまだ学校で習って事で落ち着いてる。
合ってるよね?この説明で。
20世紀のドラえもんの存在意義に疑問を投げ掛ける藤子F自爆理論
とらドラのドラはドラえもんのドラw
おもろいなぁ GJです
ななこい目当てでたまにしか来なかったこのスレだが
久々に楽しみが出来た
投下します。
また10レス程お借りしますね
5 調和
「もったいな〜い!」
そういえば、あたし、今休職中だっけ?完全に忘れてた。あたしの中でなかった事になっていた、ストーカー野郎の存在。
おのれ……だんだん腹立ってきた。全て、あいつのせいだ。あいつのせいで、あたしはこれからしばらく、干されるハメになるんだ。
そもそも、転校する事になったのだって……あれ?じゃあ、今のあたしが在るのは、ストーカー野郎のおかげって事?
あれ?あれれ?どゆこと?
「モデルさん御用達の特別なダイエットとかあるの?ねぇ教えて〜お願い!」
あたしがよそ事を考えている間にも、歴史は動いていた。
「え、え〜と…」
特別なダイエット?そんなもんあたしが知りたいっつうの!!
結局、あたしの45Kgは帰って来なかった…間に合わなかった。てか、3日くらいで、どうこうなる訳ないじゃん!!
最善を尽くしたけど…あたしは、未だに夢と希望をお腹に詰めたままでいる。
「え?亜美ちゃんのダイエット?あたしも知りた〜い!」
どう答えようか…確か、前回は「太らない体質なんだ〜」とか言って、不評を買ったっけ?
あたし、めっちゃ太る体質だし…今、めっちゃメタボだし…腹から先に来る体質なだけまだマシか…
どうしよう…「てっとり早いのは、お腹の中、空にする事だよ〜」とか言ってやろうか…
プロはな…腹周りスッキリさせる為なら、オシリを酷使する事だってあるんだ…
引くだろ〜な、皆、ドン引きするだろ〜なぁ〜
それに変な事言って、ムダに未来を変えるのは、あんまり良くない気がする。昨日の事で、ちょっと懲りた。
他にベストアンサーも思いつかないし…ベストがなけりゃベターって事で、
「あたし、あんまり太らない体質なんだぁ〜」
結局、あたしは、無難な道を選択した。
空気が冷める。あの時は、得意になって周りを見てなかったけど、3℃は下がってる。なんだか…殺気さえ感じるもん。そして、
「そいつぁ、聞き捨てならねぇなぁ〜」
ほら来た。やっぱり来た。やっぱり、実乃梨ちゃんの逆鱗に触れた。
「こう見えて、私はダイエット戦士でねぇ……」
ダイエット戦士が、ジリジリと間合いを詰めてくる…
「……大河よ。そこにおるな?」
「おう!」
実乃梨ちゃんの傍らから、にゅっと虎が姿を現す。
「行くぜ大河!」
「へい、みのりんリーリーリー」
「オッケー大河リーリーリー」
2人は、あたしの周りをグルグルと回る。
どれだけ頑張っても決して、2人以上に見えないのがミソだ。
「ふははははは。ふははははは〜」
「チビで悪かったわねぇ!変な名前で悪かったわねぇ!」
「………」
「行きますぞ?川嶋くん」
実乃梨ちゃんの合図で、後ろのタイガーは、ガッチリとあたしを羽交い締めにした。
あたしの動きを封じて、あたしのお腹を揉みほぐす算段なのだろう。
甘い。甘過ぎる。一流相手に二度も同じ手を使うなんてさ。
まぁ、実乃梨ちゃんやタイガーにとっては初めてなんだけど…
あたしはちゃんと予習している。これはフルネルソン。抜け方もちゃんと知っている。
万歳して、腰を落とす!!
「あぁっ!!」
よっしゃ。タイガーのクラッチを切った。
「おりゃあああ〜〜!!」
そして、襲い掛かるダイエット戦士とあたしは交差した。―ふっ。勝った。
あたしは指をVの字に立て、第二関節をクニクニさせる。
「ふふふ。流石はダイエット戦士ね。弛みやすい脇腹も、鍛えられてカチカチ。
でもね、実乃梨ちゃんは、もうオシマイ♪そうね、実乃梨ちゃんの命はあと、3秒ってトコかな?
数えてあげようか?ひと〜つ。ふた〜つ―
「ひ…ひぃ〜〜お助けぇ〜〜〜」
などと叫びながら、実乃梨ちゃんは尻尾巻いて逃げて行った。
ふぅ。良かった。実乃梨ちゃん対策にあの子が好きそうなネタを勉強しておいて。
まともにやったら、普段から鍛えてる実乃梨ちゃんにあたしが敵う筈が無い。
てか、軽く突き指した…あの子の腹筋、コンクリみたいな硬さなんですけど…イタヒ……もう、二度とやんない。
でも、ネタ重視の実乃梨ちゃんの事だから、絶対に乗ってくると思った。ふふっ、計算通り。
廊下から聞こえる実乃梨ちゃんの断末魔。
「うわらば」
…そこまで乗らなくても……
てか廊下に居る人は、いきなり奇声をあげる実乃梨ちゃんをみてどう思うだろう。
まさか、とは思うけど、飛び降りたり…してないよね?大丈夫…かな?
そして、一人残されたタイガーにチラリと一瞥をくれる。
「み、みのり〜〜〜ん!!」
タイガーは実乃梨ちゃんを追いかけ、廊下へと駆けて行った。
出口で一度だけ振り返り、
「お、覚えてろ〜〜」
などと口走った事は忘れてやろう。あまりにも寒いから。
「おぉ〜亜美ちゃんが、手乗りタイガーを撃退したぞ〜〜」
「うおぉぉ〜〜すげぇ〜〜」
パチパチパチパチパチパチ―
!」
タイガーは実乃梨ちゃんを追いかけ、廊下へと駆けて行った。
出口で一度だけ振り返り、
「お、覚えてろ〜〜」
などと口走った事は忘れてやろう。あまりにも寒いから。
どーでもいい男共の鳴り止まない拍手。
女性陣は、ポカーンとしている。やっぱり、こんな茶番劇はウケないか…
「こ、こんな感じで普段から、楽しく身体を動かすのが、ダイエットの秘訣かなぁ〜〜」
―シーン―
「アハハハハ。アハハハハハハ…」
喝采と沈黙の間で、あたしはただひたすらに笑い、誤魔化そうとしていた。
これは、なんだろう…端的に言えば、スベった…の?
―そして、昨日同様、後は特筆すべき事も無く、一日が過ぎた。
一度聞いた筈の授業なのに、全然、頭に入ってなったのは何故だろうか…
適当にやってりゃ、試験をパス出来る事を知ってる身としては、一層、やる気も出ない。
けど、転校早々、センコーに目を付けられるのもヤだから、一応、一緒懸命にノートを取るフリをした。
ノートを取りつつ考えた。今夜の身の振り方を…
どうしよう…下校してからも、ずっと、そればかりを考えていて、そして、夜が更けた。
―仕方がない。断腸の思いで、あたしは今、走っている。
足取りが重い。当然だ。自ら、死地に赴くんだから……
だいたい、エクササイズなら自宅で出来るのだ。わざわざ、マラソンなんてしなくたって……
それでも、あたしが走るのは……
「…ひぃッ」
おいでなすったわね。変態野郎め。
こンのストーカーが。あんたなんか別に怖くもなんとも無いんだからッ。
ホントだからねッ。今、一瞬、怯んだ様に見え…もとい、見せかけたのは演技なんだからッ!!
今回は、あの時みたいにカメラぶっ壊すだけじゃ済まさない!!ぶん殴ってやる。
今までの、か弱い亜美ちゃんだと思ったら、大きな間違い。
数々の修羅場を経て、酸いも甘いも噛み分けた、このリボーン亜美ちゃんの実力を思い知れば良いんだ。
でも、とりあえず、今は逃げる。走って逃げる。全☆速☆前☆進☆
ハァハァ……感謝…しなさいよね、タイガー。こんなに必死に走ってるのは…あんたの為なんだから。
「やっと追いついたぁっ!」
6 変革
結論から言うと、あたしとタイガーの絆は首皮一枚で繋がっていたらしい。
昨夜、開催された「モノマネ☆レイトショー」がその証拠。
はぁ…疲れた。あたしのモノマネスキルはレベルアップしてなかった。当たり前か、そんな練習してないし。
それにしても、あたしは、何て友達想いなのだろう。
木造借家の二階で過ごす甘美な一夜を蹴ってまで、最高級分譲マンションを選んであげたのだ。
まあ、それはちょっぴりの打算。
恐らく、タイガーはあたしが、木造借家を選択した場合、高須君をマンションに監禁し、自分とあたしは木造借家でレイトショー…とかしたに違いない。
そう、読んでの選択なのだけど…
いずれにしても、あたしは高須君ゲットの可能性を一つ潰してまで、タイガーとの友情を確認した。
そして、思う。あ〜あ、やっぱり、高須君家に泊まれる、僅かな望みに賭ければ良かった。と、今、切に。
「こっち来い。メシだ。」
昨夜の疲れにぐったりしているあたしに、超、超、超上から目線でタイガーが寄って来た。
良かったね。見下ろせて。あんたがあたしを見下ろして何か言う機会なんて、あんまり無いもん。主に、身長差的な意味で。
「……はいはい。しょ〜がないなぁ。実乃梨ちゃんのトコで良いの?」
「…ふ、ふん。やけに素直じゃない。
そ、そうよ。アンタがそういう態度なら、アンタのプライバシーについては保証してあげるわ。」
「あ、アレね。別に良いけど?公表しても。あたし的には、結構、楽しかったから。」
これは、嘘。あんなもん公表されてたまるか。でも、このハッタリは効果的だった様で…
「ほら。ボーっとしてないで、早く行くよ?あんたから誘ってきたんでしょ?」
呆気にとられるタイガーを放って、あたしは実乃梨ちゃんの待つ、タイガーの席へ移動した。
「おまたせ!」
「よく来たね。お客人。まあまあ、ここへお掛けなさいよ。」
「はぁい♪」
実乃梨ちゃんは暖かく、あたしを迎えてくれた。
ここで、あたしはふと思う。
確か、本来は、一緒に屋上でお弁当を食べよう。と、麻耶ちゃんからお誘いがある筈ではなかったろうか…
あれ?なかった?何で?まさか、昨日の一件で、あたしの初期位置は、この『変人組』に振られてしまったの?
これは…良い変化…なのだろうか?
「よう。俺たちも入れてくれ。」
「ん?良いよ。そこ、座りなよ」
「サンキュ。」
「ほらほら、高須君も遠慮しないで。なんならあたしの横、来る?」
「え?…いや、俺は。」
「お。ご指名だぞ。行け行け、高須。」
「およ?私はお邪魔かい?仕方ないなぁ。良いよ。交代だ、高須君。」
「あ、いや…ちょー
「ほらほら。転校生ちゃんをもてなしてあげ給え。
さて、私は大河でも餌付けするかな。」
「あ…ちょっと、竜児…」
「ほら、あ〜ん」
「ちょっと、みの…ア〜ン」
「ふふッ。実乃梨ちゃんとタイガーはラブラブだね。
ほら、高須君もあ〜んしてあげようか?
ミートボールは好き?ほら、口…開けて」
「ちょ…川嶋…」
「ヒュ〜大胆だねぇ〜川嶋くんは。」
「え〜そっかなぁ〜〜?」
過去に来た事も忘れ…あたしはいつもの昼食を楽しんだ。
いつものメンバーといつもの調子でいつもの昼食を楽しんだ。
7 鬼面
和やかな昼食で安らいだ亜美ちゃんのシルキーハートは、ストレスHOHHA!!爆発寸前。
理由は簡単。今、あたしの目の前に居る変態さんのせい。
「…はぁはぁ。待ってたよ…ずっと、今日のこの瞬間を。
嬉しいでしょう?このあたしが、あんたみたいなクズを……
なのに、逃げるなんて、ヒドイじゃない♪」
昨日から、走ってばっかで足痛いとか、朝食抜いてるせいでもうお腹空いたとか、
さっき、ジャンプの勢いが足りなくて、植え込みでちょっと足擦ったとか、
そして、何より、昼食以降、特に何も変化が無くてつまらないとか、そういうストレスも含め…
ぶ っ こ わ す ! !
「携帯と…カメラ…残念だったねぇ?
ちょっと踏んだら壊れちゃった。
あんたはどうかな?どうしたら壊れるの?ねぇ?」
「ひぃぃ。アンタは亜美ちゃんなんかじゃない!僕の亜美ちゃんはそんな…ち、近づくなぁ〜〜〜ヒィィ〜〜!!」
男の癖にビービーうるさい奴…集中出来ないじゃん…
まず、全身の力を抜いて…えっと…次に水をイメージ…だっけ?
あ、なんか手の先っちょが重くなったかも……
それで、どうするんだっけ?え〜と…こう?これを…このまま…こうッ!?
「すげぇビンタだったな。手跡って言うか…凹んでたぞ、あれは絶対。」
「イタイ…あたし、泣きそう。てか泣く。泣いていい?」
「そりゃ…殴った方の手が真っ赤だもんな…待ってろ。湿布持ってきてやる。」
夕日の差し込む高須君家の赤いリビング。
ストーカー野郎をビンタで成敗したところまでは良かったんだけど、まさか、こんなに痛むなんて……
人間って意外と硬いんだなぁ〜
貴重な経験の代償として、あたしの手は真っ赤に腫れた。
「あくまで、応急処置だ。あんまり痛むなら病院へ行った方が良い。」
「うん。ありがとう。」
「しかし、あんなビンタ初めて見た。川嶋は格闘技とかやってるのか?」
「やってない。前にも、ストーカー被害にあった事があってね。
護身術でも習おうかな〜とは思ったんだけど…毎日、練習とか稽古なんてイヤじゃん?
だから、お手軽に何か出来ないかな〜と思ってさ、格闘漫画読んでみたの。
さっきのビンタは、それを参考にしてやってみたんだけど…
はは、真似するもんじゃないね…」
「どんな漫画だよ…恐ろし過ぎる。もはや、ビンタじゃねぇ…」
「でも、ま、スッキリはしたかな?スッキリして―
グゥーーー
鳴った。漫画みたいな音。スッキリし過ぎて…鳴った…
「…あ、あ、あ………」
「今のって……」
「き、聞こえた?」
「おう。聞こえた。」
「………」
終わった。もうお嫁に行けない…
お腹が空き過ぎて、腹の虫が鳴るとか…女の子としてどーよ?
もうダメだ。亜美は旅に出ます。探さないで下さい。
「腹、減ったのか?」
あたしは顔から火が出そうだった。
「何か、作ってやろうか?」
もう、あたしに構わないで…
「ちょっと、待ってろ。」
「旨いか?」
「…うん。」
「なら、良かった。」
「あのさ…がっかりした?」
「何で?」
「いや、なんとなく。」
「別に気にする事ないだろ。」
「ふぅん。そか、高須君にとってあたしはそんなものなのか。」
「ちょっと待て、意味がわからないぞ、それ。
俺は単に、川嶋だって生きてるんだから、腹くらい減るだろうと。」
「………」
「なんだよ?」
「ねぇ…左手じゃ食べにくい。」
「おう。」
「食べさせて」
「………」
「ほら♪はやく」
「わかったよ。ほら。」
「あ〜ん。」
「ご馳走様。おいしかったよ。」
「お粗末様でした。」
「ねぇ、すこしお話しようか?」
「おう。別にいいけど…」
「とりあえず、質問。高須君はさ、あたしの事どう思う?」
「とりあえずでその質問!?
え〜と…いきなり転校してきて、何故か俺に親しくしてくれる子…かな?」
「他には?」
「さっきのビンタはちょっとビビった」
「それで?」
「うまそうに飯食って、川嶋も普通の女の子なんだと思った。」
「そっか。」
「あと、川嶋は意外に大河の奴と似てるかもな〜とか、ほんのりと思ったよ。
なんというか、行動パターンが。」
「ふぅん。それは光栄ね。」
「光栄?」
「あと、一歩かな〜って思ってさ。」
「…何が?」
「あたしはさ、自分で自分の事、あんまり好きじゃなかったんだ…
ヤな奴だって思ってた。自己嫌悪っていうのかな?でも、そんなの辛いだけじゃん?
だからさ、一番大好きなあたしになりたいって思ったんだ。」
「……え?」
「あたしが一番大好きなあたしになったら…
そしたら、高須君もあたしを好きになってくれるかな?」
「川…嶋…?」
「でも、頑張ってるあたしはご褒美が欲しいと思うの。
いつかは、あたしのものにするんだから…ちょっと位、前借りさせてよ。
今度は、冗談じゃ…済まさないんだから。」
………ン………
「ーって訳。だいたい、わかった?」
「うむ。なるほどな。ちっとも解らん。」
ここは、いつもの喫茶店。
あたしは、祐作にあたしが体験したロ〜マンティクな一時を惜しげもなく、ダイジェストに話してやった。
―にもかかわらず、この男は……
「はぁ。祐作、あんた理解力なさ過ぎ。そのメガネは飾り?」
「バカを言え。誰だって解る筈無いだろ?
俺の理解力が無いんじゃなくて、亜美、お前の話し方が悪いんだ。
部分、部分を断片的に切り取って話されても、なんとなくの雰囲気しか伝わってこないぞ?
あと、お前、ちょっと脚色してないか?」
「はぁ!?脚色なんてしてねぇし。
疑うんだったら、あんたのメガネかち割ってやろうか?
あたしだけのマッハで、粉々にしてやろうか?」
「お前な…俺は、お前が、逢坂に似ているなんて微塵も思わん。
逢坂は可愛いらしくて可憐だが、お前は邪悪だ。」
「べっつにぃ〜亜美ちゃん、祐作にどう思われようが、ど〜でも良いしぃ〜
てか、理解出来ないなら理解出来ないなりに、想像力でカバーすればぁ〜〜?」
祐作の青筋が、ピクピク痙攣している。
あ〜あ。こりゃ脳卒中で早死するな。ご愁傷様。
「………。まぁいい。お前に口で勝てる訳ないしな。
話を本題に戻そう。それで、お前は、ビンタであのストーカーを撃退し、
治療と称して高須の家へ転がり込み、イイ雰囲気だったから、そのまま押し倒して、強引に唇を奪った、と。
そこへ、俺たちが部屋へ入って来た訳だな?」
「なんだ。わかってんじゃん。
そうよ。大体合ってる。」
「まったく…俺の高須君に何をしてくれたんだ…この魔女め。」
……うげぇ〜〜〜
「うわ…マジ、キモいんですけど……
え?あんたそういうアレなの?うっわぁ……」
「冗談だ。冗談に決まってるだろう。何、本気にしてくれてるんだ。」
「……気持ち悪い冗談やめてくれる?
まあ、とにかく、役に立たない協力者が油売ってる間にあたしは、あたしで頑張ってたって事よ。」
まあ、タイガーがドブにハマるのは、規定事項なんだけどさ…
と、いう事は、もちろん言わないでおく。
「ちょっと、頑張り過ぎじゃないのか?
それに、お前が少しでも情報をくれてれば俺だってムダ足踏まずに済んだんだが?」
「過ぎた事はどうでも良いの!」
あたしは常に未来へ向かって前進するのみ!!
と、いう訳で、ついに協力者の出番が来たわよ。これから言う事、良く聞いてね☆
『夏休み合宿計画』
祐作、あんたの仕事は何もしない事。
あたしの足を引っ張ったら承知しない。
ヘマしたらあの洞窟に埋めてやる。
まあ、先にプール対決とかあるんだけど…
たまには、未来の情報を幼なじみに分けてやる位、今のあたしは機嫌が良いのだ。
おしまいです。
出来れば、早めに続きを書きたいと思います。
>>157の上数行がちょっと変な事になってます。
コピペ失敗したみたいです。失礼致しました。
早いなぁ GJ!
うわらばワロタ あーみんの幸せを願う
>>164 GJ
着々と竜児をモノにしつつあるな
ガンバレあーみん
いや〜
毎日読めて幸せですな〜
続き期待してます!
>>164 ムリに毎日投下しなくていいんで、マイペースによろ
>>169に同意
毎日読めるのは幸せだけど無理は禁物ですよ
こう言っちゃうのもこのスレ特有の毎日投下のトラウマがあるからだけど
GJ
むしろ毎日投下する習慣の人が間を開けるとやる気が切れたな、もう無理か…
と思うのは万人が日記や家計簿、夏休みの天気記録などで体験してきてるから当然のこと
その辺、作品は個人の日記とかとは別物だという認識を持っておかないとねぇ
竜児×みのりんで一本投下します。
12レス分あるので、この時間は導入部の3レス分投下します。
本番の9レス分も本日中に投下する予定です。
高須くんが男のロマンだのなんだの話すからだった。
裸エプロンは男のロマンだなんてポロっと言うもんだから。
「高須くんのヘンターイ」
と、ちょっとだけ侮蔑の視線を向けてみる。
「ひ、引いたか……?」
「ううん、すごく理解できるよその気持ち」
「わかるのかよ!」
裸エプロンは私にとってもロマンだ。
自分でする気は全くないのだけれど。
だってさー、高須くんだとこんなこと言いそうじゃない?
『包丁持ってたり火使ってたりする奴に変なことできるか!
ロマンはロマン、これはこれ。そんな危ないことできるか!』
それじゃ誘惑しがいがないじゃないか。
そんなことを思ったもんだから、ついつい言ってしまった。
「高須くんはさー、裸エプロンもいいけれど何かしてみたいこととかないのかね?」
「はぁ?」
「いや、だからさー」
「おぅ……?」
「もしさ、例えば私が裸エプロンするって言ったらどうする?」
「包丁持ってたり火使ってたりする奴に変なこ「ごめん、聞いた私が悪かった」
高須くんの両肩に手を置き、ガックリうなだれる。
面白いほど予想を裏切らない人だ。
「せっかくかわいい彼女が居るんだからさ、もう少し色々と要求してもいいんだぜ?」
「いっ……?」
「私とあんなことやこんなことしたいってのはないのかね?」
「あんなことやこんなことなら……その……だな……」
みるみるうちに顔を赤面させ、いつもしてるじゃねぇか、と力なく呟く。
そんな茹で蛸みたいなのを見せられるとこっちまで赤面しちゃうじぇねぇか、よせやい、照れるぜ。
「だからさー、踏まれたいぶたれたい罵られたいたいとかそういうのはないのかね?」
「おまっ!」
そう言って、その鋭い視線で私を睨みつける。
その視線に射抜かれるたびに私の体はジンジンと疼いてしまうのだ。
「なんなら縛ろうかね?」
「俺にはそんな趣味はねぇ!」
「じゃあ、どういう趣味ならあるのさー?」
「今さらだけど、お前相当変な奴だよな?」
「だってさー、私が高須くんの趣味を拒んだせいで浮気されたら嫌じゃない?」
「お前俺が浮気なんてすると思ってるのか?」
「質問文に質問文で返したらテストじゃ0点なんだ、このマヌ……おっと危ない危ない」
「お前の方が危ねぇよ!」
言い疲れたのか肩でゼェゼェと息をする高須くんに向かって、
「み、みのりんとしては結構マジなんだが。
どうやったらもっと高須くんを満足させてあげられるだろう、悦ばせてあげられるだろうと思うわけよ。
で、どうなのよ?」
「お、おぅ……急に言われても、だな……」
「私としては高須くんの要求に応えたいと思うし、応える心の準備もあると思う、のだが」
「いや、そうは言ってもだな……」
「どんなハードなのでも受け止めるぜ?」
高須くんの頭からプスプス、と火花が散った。
「おーい、大丈夫かね?」
と、どこかでピコン! という音がしたような気がして、高須くんがパリィを、もとい、顔を上げる。
「そうだ、思いついた」
「な、何かね?」
どんな試練が待ち受けているだろう、と身構え、高須くんの口から半ケツもとい判決が下されるのを待つ。
「一緒に風呂に入る、ってのはどうだ?」
「そ、その程度かね?」
「なんだよ!?」
「正直、掘られるくらいは覚悟していたのだが」
「お、お前っ……どんな覚悟だよ、それはっ……!」
「高須くんになら掘られてもいい」
「お前相手に掘る必要性が全くねぇ」
「違いねぇ」
アホか、納得すんな、という高須くんの突っ込みをパリィして、そうかそうか、と頷きながら
「しかしさー、高須くんちもうちの風呂もあまり大きくないぜ?
現実問題として難しいんじゃないのかね?」
「だからロマンになるんじゃねぇか」
なるほど、と妙な説得力に今度は納得させられかける。
「それじゃあ、さ……」
ひとまず、ここまでです。
最初に書き忘れましたが、この後はガチエロありです。
>>178 待ってました!
しかしなんてところで止めてくれるんだ…
最近賑わってていいな
GJ!つづき楽しみです。
しかしパリィとはこれまた……w
* * *
「そんな訳で、帰り道にあるラブホテルにやって来たのだ」
「帰り道じゃねぇだろ」
「ウホッ、いいお部屋」
「はいはいわかったわかった」
よくよく考えれば、こういうところに来るというのはすごい勇気のいることなんじゃないだろうか。
こういう所に来るカップルは、間違いなく『する』のだ。
私たちもそういうカップルのひとつに見られるということだ。
一番の問題は、こういう所ではムードもへったくれもないということか。
まぁ、相手は空気殺し(ムードブレイカー)高須くんだ。
もともと期待はしていない、と言ったら酷いだろうか。
「とりあえずさー、私先にお風呂場入ってるから後から来てくれるかね……って、おうっ!」
「おぅっ!?」
高須くんのツラがとんでもないことになっている。
口は耳元まで裂けたようにニヤリと笑みを浮かべ、目なんか吊り上ってギラギラとした光を放っている。
間違いない、とても期待している表情だ。
おそらく、これからのお楽しみに、であろう。
一般人には卒倒モノの表情なんだろうけど、私にとっては至高の表情だ。
もう、『もっとその目線で私を射抜いてっ!』って感じだよ。
「ななな、何でもないんだ。
私さ、先に入って色々と準備しているから、高須くんは後から入ってきておくれよ!
では、さらばだ強敵(とも)よ、また逢う日までっ!」
そう言って、脱衣所の扉をばたん、と閉める。
扉の向こうで高須くんが、いや、すぐ行くし、とか言ってるような気がする。
少しはこっちの気恥ずかしさというものを察してほしいものだ、やれやれ、と首を振る。
「わお……」
浴室の扉を開けると、まず湯船の大きさに驚く。
なんというか、異世界のお風呂屋さん! みたいなのだ。
「とりあえず、先にお湯張っとくかぁー?」
高須くんが見たらMOTTAINAI!と言いかねない容量だ。
こういう時ほどムード重視で言わないでほしいと思うのだが。
『その空気をぶち殺す!』と言わんばかりな空気殺し(ムードブレイカー)相手では無理な相談だろう。
「さて、お次はと……」
と、Tシャツとデニムを脱ぎ、ブラに手をかけたところで少し考える。
そういえば、今までは毎回脱がされていた、のだ。
「今日は、さすがに脱いでないとダメ……だよね。お風呂だし」
意外なところで壁は待っていた。
脱がされる方がなんと気が楽なことだろう。
これも大人になるために越えなければならない試練というやつか。
気合を入れて、一気に一糸纏わぬ姿になる。
よくわからないけど、すごい敗北感だ。
壁に右手をついて、少しだけうなだれてみた。
「おーい、櫛枝、いいかー?」
外から高須くんの声がする。
おっと危ない危ない、早く風呂場に退散するとするか。
そそくさと逃げるように風呂場に飛び込み、外の高須くんにオッケー、と声をかける。
「さて、どうするべ」
困った。特にすることもないのだ。
これだったら高須くんに先に入っててもらって、襲った方がよかっただろうか。
ひとまず、チェアに腰かけてみてあたりを見回す。
湯船もまだ張り終わってないみたいだ。
「うーん、これかな?」
シャワーの栓をひねり、軽く全身を流す。
「ふぅ……生き返るぜ……」
そのまま、いつも家でお風呂に入る時の流れで、スポンジにボディーソープを出してしまったところで気付く。
「って、何やってんだー、私は」
出してしまったものはしょうがないなー、と思っていると、ガチャリ、と音がして高須くんが入ってきた。
思わず、恥ずかしさで背中に緊張が走る。
「おぅ……待ったか……?」
「そんなことないさー」
「体洗うところなのか?」
そういって高須くんは私の正面に回り込むと、私から泡立ったスポンジを取り上げる。
「何さー?」
「洗ってやる、よ。いいだろ?」
私がえー、とちょっとした抗議の声を上げるのも気にせず、高須くんは私の足元によっ、と腰を落とす。
「って、前からー?」
「脚、洗ってやるよ」
そう言うと高須くんは私の右脚をとり、ふくらはぎを泡まみれの手でマッサージするみたく撫で始める。
「練習、辛くないか?」
「そりゃ、キツいよー。毎日クタクタさー」
少し苦笑、高須くんの顔を見る。
悪く言えば性欲異常者の目、なのだろう。
ギラギラと舐めるように私の脚を凝視している。
「あひゃひゃはひゃ、足裏はくすぐったいってば!」
「おう、ちょっとだけ我慢してくれ」
両の足裏をこすり終わった……と思うと、今度は指で入念に足の指の間を洗ってくる。
「ちょっ、そんなところまでー?」
「おう、足は念入りに洗わないとな。
それにしても、お前っていい脚してるよな。
無駄がなくて、締まってるけど、それでいてすらっとしていて」
「高須くん、脚フェチかね?」
「脚じゃねぇよ、お前の脚だからだよ」
ズキュゥゥゥゥゥン、ほぼイキかけました。
その目でそんなこと言うのは反則だぜー?
それになんだろう、さっきから執拗に足の指の間をなぞられているけれど、意外と嫌ではない。
いや、意外と気持ちいいのだ。
もちろん、性的な意味ではないのだ、と、鏡に映った自分に言い聞かせる。
「あとはそうだな……」
いったん立ちあがって、より私に近いところに屈み、、高須くんは私の太腿を洗い始める。
撫でまわすように洗うのだけれど、焦らすように核心の部分には決して触れようとしないのだ。
焦らしプレイか? これが焦らしプレイってやつか?
「高須くん、さっきから君の手が私の際どいところに当たりそうになってるんだが」
「おぅ?」
高須くんはそう言って私の太腿に落としていた視線を上げると、ニヤリ、と笑うのだ。
「お楽しみは、最後、な」
「けちー」
ぶーぶー、と私は唇を突き出しながら頬を膨らませる。
普段の高須くんからすると意外なのだけど、この人にはかなりサドっ気があるんじゃないかとたびたび思わされるのだ。
こんな風におあずけを食らうこともしょっちゅうだ。
高須くんはよっこらせ、と体を上げて私の背後に回る
「高須くん、よっこらせ、はジジくさいよ。
ってか、後ろからかねー!?」
「ちょっとポジションチェンジ」
椅子を引っ張ってきたのだろう、ゴトゴト、という音がする。
再びよっこらせ、っと呟きながら私の肩に手をかけて腰を降ろすのだ。
「背中、流してやるよ」
「お、おおっ!?」
高須くんの大きな掌が私の背中に当てられる。
もうちょっと性的なことをされるかと思っていたので、少し拍子抜けだ。
「ん、意外と気持ちいい……」
「そうか?」
「あ、いや、変な意味じゃなくてだね」
「はいはい」
力強く、それでいて優しく私の背中を洗い続けるのだ。
「櫛枝、ちょっと腕上げて」
「こ、こう?」
高須くんに言われるまま腕をあげると、脇腹を高須くんの掌が上下する。
「ひゃんっ、脇腹はちょっと弱いんだってば!」
私の抗議もお構いなしに高須くんは手をおへそのあたりに回し、後ろから抱きかかえるような体勢だ。
こうなるともう、高須くんのなすがままで、体重を高須くんに預けてしまいそうになる。
そうこうしているうちに高須くんが私のおっぱいを捉えようとするのだけど、摩擦が少ないのかうまく捕まえることが出来ないのだろう。
「ああんっ……」
そのぎこちない動きが、逆に私を扇情するのだ。
ゴツゴツした掌で乳首を擦られるたびに、吐息が漏れてしまう。
しばらくして高須くんは要領を得たのか、器用な手つきで私のおっぱいを揉みしだくのだ。
その手がおへそのあたりを通って下半身に伸び、私は来るべく快感に備え、体を硬直させる。
が、期待とは違ってその掌は下半身をすっと撫でただけで終わるのだ。
「え? え?」
「おぅ、どうした?」
何食わぬ顔で高須くんはシャワーをひねり、私の体に水流を浴びせるのだ。
「えっと……その……
か、可愛がってくれるんじゃない、の、かね?」
「中に泡が入っちまうと、洗うの大変だろ?」
「どどどど、どこで覚えたのさー? そんな知識!
そりゃあ確かに大変だけどさ!」
それを聞いて高須くんはニヤリ、と笑うのだが、その笑顔の意味するところはすぐには理解できない。
「男には色々と余計な知識があってな。
それより、大変だってわかるってことは……経験、あるんだな?」
「……あ……!」
顔がかぁっと熱を帯びるのを感じる。
しまったと思った時には既に遅し、高須くんのペースに嵌められていたのだ。
高須くんはシャワーを私の敏感なところに当てると、ヘッドを回してマッサージの位置に合わせ、刺激を強めるのだ。
少し困惑していた頭には刺激が強かったようだ。
「うぁあぁぁぁぁあぁんっ!」
「ちゃんとたっぷり可愛がってやるからな。
どうだ、痛くないか?」
なにを言われているかもわけがわからず、腰をうねらせ、あ、あ、あ、あ、と小刻みに息を漏らしながら左右に首を振る。
「どうやらその感じだと大丈夫みたいだな」
気がつくと高須くんの指も私の中に差し込まれているのだ。
下半身はがっちりとロックされていて、逃げようにも逃げ場はない。
「も……、もうダメ……!
ああああああぁぁぁあああぁぁっ!」
外からのシャワーの刺激と、中での高須くんの指の動きの二点攻撃の効果は抜群だ。
お腹の奥から湧き出てくる熱い波には抗いようもなく、ブルブルと体を痙攣させながら快楽に身を委ねるのだった。
* * *
何回か絶頂に達したあと、ようやく解放される。
私は高須くんを恨めしそうな目で睨み、というほどの迫力も出ず、途切れそうな声を絞り出す。
「お、お……に……。あく……ま……」
高須くんは怯むこともなく答える。
「そう言う割にはいつもより反応は良かったみたいだがな」
言い返す気力もなく、椅子から立ち上がろうとするが、力が入らずにぺたんと床にお尻をついてしまう。
「こ、腰抜けたかも……」
「大丈夫か?」
そう言って高須くんは少し私の顔を覗き込むと、突然踵を返し脱衣所へ向かう。
「ほ……、放置プレイ……反対……」
息も途切れ途切れに声を出すが、高須くんはちょっと待ってろ、と返すと、軽く自分の体を拭いてバスタオルを手に引き返してくるのだ。
「とりあえず、体拭こうぜ。
このままだと寒いだろ?」
私はこくん、と頷き、高須くんにいいようにされるがままに体を拭かれる。
「こ、これじゃあ犬とか猫みたいだよ……」
「そこは気にするな」
あらかた体を拭き終わると、私の脚と背中に腕を回し、私の体を持ち上げる。
「これは……いわゆるお姫様抱っこというやつかね?」
「おぅ、そうだが何か?」
「ていうか、まだ高須くんの体洗ってねぇ。洗いっこするんだー!
高須くんのナニをうりゃうりゃしながら、『ほら、ここがええのか?』とかやるんだー!」
少し涙目で暴れながら訴えるが、高須くんははいはいまた今度な、と取りあおうともしない。
気がつくとベッドに降ろされ、仰向けになった私の上に高須くんは四つん這いで覆いかぶさってくるのだ。
「えーと、この体勢は?」
「俺のがまだおさまりがつかなくてな」
高須くんのナニが、私の入り口に狙いを定めているのだ。
「私、さっき、イッたばっかり、なんだが」
「俺はまだイッてねぇ」
抗議する暇もなく、高須くんが私の両足を割って侵入してくる。
「ちょっと、待っ……あぁぁぁあああぁぁっ、ぁああぁぁんんんっ!」
情けないことに、敏感になった体は挿入されただけで達してしまったのだ。
色々な感情が溢れだしてきて、思わず涙ぐんでしまう。
「もう、高須くんのバカバカバカバカバカ。
今日、まだ、キスもしてもらってないんだよ!
お風呂でだって……あんなに……。
でもね、でもね、すごい気持ちよかったんだよ!
ああもう、何言ってんのかわからないっ!」
高須くんはごめんな、と言って私に覆いかぶさり顔を私に近付ける。
私はそれに応え、高須くんの唇を受け止めるのだ。
「櫛枝ってさ……やっぱり可愛いな」
「ななな、いきなり何言うかね?」
突然の甘い言葉に、思わず狼狽する。
「風呂場でお前の顔、鏡越しに見てたんだけどさ。
俺の行動に一喜一憂する顔とか、イキそうなの我慢してる顔とか、イッてる時の顔とか。
今だってそうだ、そのちょっと混乱したような、照れてる顔とかな」
「こ、こんな状況で変なこと言わないでくれよっ!」
がっちりと下半身と下半身で繋がっている時に、何てことを言う人だろう。
「普段のお前だってもちろん可愛いんだが、こういう、だな……
俺にしか見せてくれないような表情、好きだぜ」
もうダメだ、白旗。
「あーもう、私も大好きだよ!
ベッドの上では少し意地悪だけど、そんな高須くんが私も好きだよ!」
けーたいからセルフ支援。
というか、連続投稿8回までになってたのか…
しらんかった…
* * *
「私って、マゾなのかな?」
ベッドの上に横たわる高須くんに、問いかける。
高須くんはキョトン、とした顔でお、おぅ……としか答えられないようだ。
お前は何を言ってるんだ、というか、今ごろ気づいたのか? と言いたそうな顔。
あーそうですとも、そうですとも、私はドMみたいです。
顔面もサディストで、性癖もサディストな王子様に虐められて悦んでいましたとも。
かつては、あの視線に興奮できる泰子さんのことが理解できなかったのだが。
けれどなら、同志よ! ってなノリで語り合えるんじゃないだろうか。
人間って変わるものだ。
「今回のお風呂は高須くんのリクエストだったけど……意外とよかったぜー?
ちょっと恥ずかしいのは確かなんだ、けどさ……
癖になったら困るっつーか、あー何言ってんだもう、私は」
「お、おぅ……俺も楽しかったぜ……」
息も絶え絶えに答えるのだ。
「ところで高須くんや、もうそろそろ時間になるぜ?」
「おう、わかってる……」
「うちでは一応清純派で通してるもんで、悪いが朝帰りはお断りだぜ?」
私はてきぱきと服を着て、ベッドの上でまだだらしなく全裸の高須くんを見る。
「お前、風呂場では立つこともできなかったのに、どうして平気で立っていられるんだよ!」
「日ごろのトレーニングの賜物だよ!」
そう言って、高須くんに向かって満面の笑みでサムズアップ。
納得できねぇ、と呟く高須くんに向かって、さらに追い討ち。
「あれだけ長い間、腰カクカクやってれば、そりゃあ足腰も立たなくなるさー。
一時間延長して、高須くんの回復を待つという手もあるのだが……」
「おぅ?」
「その場合、その1時間を利用して動けない高須くんにあんなことやこんなことをすることになるのだが」
「あ、あんなことやこんなこと……だと!?」
「今日はまだ私のフィンガーテク(みのりんスペシャル)を披露してないからねぇ?」
そう言って、両手をワキワキと高須くんの目の前で動かしてみるのだ。
「さて、どうするかね? 高須くん」
「も、もう勘弁してくれ……」
「じゃあ、帰るかね?」
「……帰らせていただきます……」
この子はきっと「高須くん」という名の別人なんだよ!
すみません、攻めに回った竜児を書ききれませんでした。
もっと精進します。ではでは。
>>191 あまりにツボだったので2回目のレスします
GJ&乙
みのりんは実は隠れMだと思ってる俺にしては最高だった
超GJ(;´Д`)ハァハァ
今夜はグラップラー亜美の投下はないのかな〜?
先の展開が楽しみ過ぎて寝れないス
テス
>>191 GJすぎる・・!俺もみのりんは隠れMと認識していたので
かなりツボでした も一度GJ!
おつ!
みのりん含め、ヒロイン3人は皆Mだと思うのは俺だけ?
ドM 大河 すみれ 瀬奈さん
隠れM みのりん あーみん
ソフトM 麻耶 ゆりちゃん やっちゃん
ドS 奈々子様 さくらちゃん
ボクはこうだと思いました。(>_<)
さくらがどSとか完全主観妄想すぐる
保管庫のドSさくらちゃんのSS読んで、イイなぁ〜と思ってしまった
完全に主観です本当にありがとうございました
瀬奈さんはドMと言ってもかなりヤンデレっぽい気がする
初登場シーンの印象からして
竜児はサドの素質あると思うんだ。
ソースはとらPのみのりん口喧嘩。
奈々子様はドSイメージなのに
SSで竜児と絡むとなんかヤンデレ尽くしタイプとか
感情的に依存性が高いだけって見えなくもない
いや、それはそれで面白いが
どこかドS奈々子様モノあるかなー
か……KARs様……
KARs様作品の麻耶成分が枯渇してきましたので続き……を……
ガクリ
エンドレスあーみんの続きが読みたいです。
まさか、原作2巻分で終わりとか無いよね?よね?
その心配は早いだろ。
心にゆとりを持とうぜ
未だにななドラ系を待ってるやつがいるからな このスレには
俺も含めて
俺は永遠に新たなる独身×竜児を待つっ!!
よく考えたら、エンドレスあーみんが読めるという事は腹黒様が読めないって事じゃん
ナンテコッタ パンナコッタ\(^O^)/
大丈夫!!両方とも読めるんだ…!俺はyk6vさんを信じる!!
深夜の車道は何だか気持ちが良い
そういう気分で投下していきます
8 創聖
「つまり、亜美が勝つ事は決まってるんだろう?それって殆ど八百長みたいなもんじゃないか…
何か、テンション下がるよな〜聞くんじゃなかったなぁ〜
俺は逢坂が火事場のクソ力で、生意気な亜美を打ち破るっていう少年漫画的王道展開を断固、要求する。」
「ふぅ〜〜ん。何だ、祐作は夏休みにあたしの別荘来たくないんだぁ〜?
へぇ〜、あんた楽しそ〜にハシャいでたけど、ホントは乗り気じゃなかったんだぁ?
あ、ごめんごめん。どっちにしても祐作は別荘に来られるんだった。
あたしが負けた場合は、ちょっと暗くてジメジメしたトコになるけど、住所はだいたい一緒だから、良いよね?」
たまには良いかな、と思い。今後の歴史をちょっとだけネタバレしてやったのに、
このダメガネは、あろう事か、不平不満を述べやがった。
「誰も、協力しないとは言ってないだろ?」
「あのね…あんたがちゃんとやらないとこっちが困るの。
未来改変って凄く難しいのよ。あたしは、ここ数週間で、嫌って程、学習した。
何も、難しい事言ってないでしょ?」
「何もするな、だったか?」
「そうよ。何がどう作用して変化するか解んないんだから、余計な事はしない方が良いの。
あんたは、あたしの知る通りタイガーを贔屓してりゃ良いの。」
「負けると解ってる逢坂の応援か…あまり気が進まないな。
半端に希望を持たせる様で、逢坂に悪い。」
「…その気遣いの半分でも良いから、この幼なじみに振って貰えないもんかしらね。」
「ムリな相談だ。」
「あぁ!?大体、タイガーとあたしにどれほどの差があるっていうのよ?」
「ズバリ、逢坂の方が断然、可愛い。
それに、特に何もさせないんだったら、俺にネタバレしなきゃ良いのに。聞いたのは俺だが…」
「…その方が良かったかもね。
まぁ、あたしも機嫌が良かったもんだから、つい口が滑ったのよ。
と、とにかく、変なアドリブとか考えない様にッ!わかった?」
「はいはい。了解しました。」
ホントだろーな。マジ、頼むわよ…
あの一件、あたしが高須君を押し倒してホントにキスしちゃった一件から向こう、歴史は少しズレてきている。
タイガーは、怒るよりもしょんぼりする事に忙しいみたいで、前より大人しい。
まあ、それでも不機嫌は不機嫌みたいだけど…
そして、高須君はあたしを見る様になった。
相変わらず、実乃梨ちゃんの方を見ていたり、急に頭を抱えて首をブンブンさせたり、謎の行動を取るけど…
実乃梨ちゃんと比べて、6:4位の割合であたしの事も見る様になった。
背中に視線を感じた事もある、目が合った事もある。そんな時はニコッてウィンクしてやるんだ。
そしたら、微妙な顔して、ぷいってされるんだけど、また目が合って…
それが、あたしには嬉しくて、ついつい舞い上がって、機嫌が良いのだ。
ちなみに、ど〜でも良い事だけど、祐作は以前よりも無遠慮になった気がする。
おおっぴらにタイガーを贔屓しやがって。前は、もう少し、あたしに対して遠慮がなかったろうか…
ま、ホント、ど〜だって良いんだけど。
あたしと祐作が、コソコソ内緒話をしている間も、時間は当然流れている。
「ドゥルルルルルードゥルルルルルーーー」
皆が、ちょっとずつ変化している中、変わらない者も居る。
「対決種目はぁ〜〜。ジャカジャン!!水泳25m自由型に決っ定〜〜ィ☆」
実乃梨ちゃんだけは、相変わらず以前の調子だ。それに…良かった。対決種目も変わってない。
胸をなで下ろす気分。もし、万が一、タイガーと殴り合いとかになってたら…
考えたくもない。ホントに良かった。
これで、余程、下手を打たない限り、あたしの『夏休み合宿計画』は盤石だ。
ふふふ。覚悟しててよね、高須君。
「あ」
「おう。」
水泳対決の前日、あたしはまた自販機に挟まれていた。
「高須君もサボリ?」
「ま、まぁな。何か飲むか?奢るよ」
「ん?何で?」
「前、コーヒーご馳走になったろ?」
「ん〜じゃあ、ストレートティー」
「おう」
コトンー。カラカラコロ……ジャーーー
「ほら。」
「ありがとう。」
あたしにカップを手渡し、高須君は廊下を挟んで向こう側の壁に背を預け
「どっこいしょ。」
おっさん臭いセリフとともに腰を落とした。
「ん〜?何だか、お疲れ?」
どうでも良いけど、この角度…高須君からはあたしのスカートの中見えてるんじゃ…
スパッツを穿いている事が非常に悔やまれる。残念。
あ〜あ、高須君にだったら、ノーパンでも良かったのになぁ〜
でも、モロはどうなんだろうね?あんまり見れたモンじゃないと思うんだけど…
男の人は興奮するもんなのかな?でも高須君って結構、女の子に幻想抱くタイプだしなぁ〜
こればっかりは、いくらあたしがG級美少女でも、どうにもならないトコだし。
タイガーはともかく、実乃梨ちゃんだって、あたしとそんなに変わらなかったし…
そ〜いうモンなんだと思ってもらうしかないよなぁ〜
最悪、剃るって選択肢もあるけど…チクチクヒリヒリしてヤダしなぁ〜
「なぁ、何か悩んでるのか?」
「へ?」
「いや、こんなトコに一人で居るからさ。
何か悩んでるなら力になりたいな…とか、思うじゃねぇか。やっぱ。」
不意打ちだった。泣きそうになる。嬉しさのあまり、泣きそうになる。
生まれて初めて、嬉しくて泣きそうなる。大事な事だから三回言った。
「やっぱ…こないだの事気にして?」
「え?…あ、いや。別にあたしは、辛い時だけ、ここに来る訳じゃないよ。
嬉しい時もここに居る。この自販機はいつだってあたしを支えてくれたからね。
そう。
今のあたしは嬉しいの。こないだのって…やっぱアレかな?キス?」「…お、おう。」
「あたし的には、理想的な初チューだったよ。
あれ以来、高須君もちょっぴり、あたしを意識してくれてるみたいで…
ふふふ。言うことなし。満足。満足。…そうでしょ?」
「###…は、初めてだったのか?」
「うん。」
「マジかよ…意外だ…」
「え〜〜〜!?あたしはそんなに安くは無いんだよ?失礼だなぁ〜」
「あ、いや…そういう意味じゃなくて…
モテるだろ?やっぱ…」
「モテるよ。当然じゃん。」
「俺なんかで、ホントに良かったのか?」
「もぉ〜〜。良かったに決まってるじゃない。」
「何で、そんなに俺を良く想ってくれるんだ?
そろそろ、教えてくれよ。好感度…まだ足りないか?
あ、アレは俺だって初めてだったんだ……」
…どうしよう…かな?ホントの事言うのは祐作に止められてるんだっけ?
別に、祐作如き、無視しても良いけど…未来云々は言わない方が良い、あたしのカンもそう言ってる気がする…
でも、嘘つきたくないし…雰囲気的に言わないってのもナシっぽい。
「ん…わかった。事情があって、ホントの事は言えないんだけど…
それでも良いなら、教える。真実では無いけど嘘じゃない、それでも信じて欲しい。それが…条件」
「おう。解った。」
「高須君は前世って信じる?」
―あたしは、未来と言う単語を使わず、あたしの気持ちを可能な限り、まっすぐに伝えるため、こんな話をした。
「実は、あたしは前世の記憶があって、高須君は、あたしの前世での想い人なの。
前世では、片思いだったけど…現世では結ばれたい。それが、あたしが高須君を気にかける理由。
ちなみに、高須君は前世でも怖い顔であたしは超絶美少女だったよ♪
一万年と二千年前から愛してる。」
こりゃ…ダメだな…カルト過ぎる。あたしは、最後にふざけてしまった。
真面目に話せば話す程、ドン引きされそうな気がしたから。
「八千年過ぎた頃からもっと恋しくなった……か?」
高須君、怒るかな?ふざけんなッ!!って、怒るかな?
怒るよね…普通。あたしだったらキレるもん。
「なるほど。よく解らんが、解った。」
「え?」
「信じる。今の話。だって、それ位、突飛な話じゃないと説明が付かねぇ。
俺が、川嶋みたいな可愛い子に好かれるなんてさ。
それに、話してるお前は真剣だった。だから、信じる。
…最後のは、嘘っぽかったけどな。」
「もう……。
きっと、一万と二千年経っても愛してる、高須君の事。」
あたしは、もう、心の中がムチャクチャになって、とても平静ではいられそうになかった。
「でも、今の川嶋の話が本当だとしたら、俺は川嶋に謝らねぇと。」
「へ?何で?」
雲行きが…怪しくなった。
「俺には、前世の記憶は無い。だから、川嶋の気持ちに応えられるかどうか…
もうこの際だから、はっきり言う。俺には好きな奴が居るんだ。
川嶋の他に、好きな奴が。けど、最近の俺は、川嶋の事が気になり出してる。
何が、あっても一途に貫く恋路だと思ってた。でも今は、揺らぎまくってる。
優柔不断で浮気な奴だと思うなら、それでも良い。けど、今の俺は、誰の事が好きなのか…良く解らないんだ。」
ごめん…と、高須君は頭を下げた。
「良いよ。謝る事無いよ。高須君の恋心を揺らしたのはあたしなんだしさ。
それに浮気っていうけど、高須君は、その子と付き合ってる訳じゃないんでしょ?なら、良いじゃん。
それと、実乃梨ちゃんには、この話したの?」
「いや。してねぇけど……
って、何でお前……何で知ってんだよ?櫛枝って。」
「記憶だよ。これも。
前世には、実乃梨ちゃんもタイガーも居たんだ。
あたしにとっては、2人とも大切な親友だから。
今は、まだタイガーとはぶつかり合ってるけどね。」
「はぁ…、もう完全に信じるしかねぇな……これじゃ。」
「あたしにだけ話してくれたんなら、実乃梨ちゃんよりあたしの方が高須君に近づけてるって事かな?
でも、このまんまじゃ、やっぱり不公平だよね。だから、高須君に良い事教えてあげる。
あたしにとっては、全然良い事じゃないんだけど……
実乃梨ちゃんも高須君の事が好きなんだよ。あたしの知る限りではね。」
「え?」
「ホントだよ。あとタイガーもね。」
「はぁ!?流石に、それは嘘だろ?あいつは北村…」
「祐作は単なるカモフラで、タイガーの本命は高須君なんだよ。
ちょっとでも思いあたる節はない?」
「………」
「でも、実乃梨ちゃんよりタイガーより、あたしが一番、高須君を想ってる。
ちょっと、口が滑っちゃったから、最後に自分を売り込んでおくよ。」
あたしは何を言ってるんだろう。誰でも良いから、あたしの口にチャックを縫い付けて欲しい。
「……マジか…。何か、頭痛くなってきた……。」
「奇遇だね。あたしもだよ。」
「………」
「………」
「一応、断っておくけど…あくまで前世の話だからね?
あたし以外の現世は知らないよ。」
「そうか…そうだよな。うん。
ちなみに、俺は前世では誰が好きだったんだ?」
「あたし以外。てか、高須君はあたしの事なんか気にも止めてなかった。
腹立つから、それは秘密。」
「ああ、そう………
いや、解った。この話は、後でゆっくり考えたい。
衝撃がデカ過ぎて…パンクしそうだ。
」
「うん、そうね。あたしも、ちょっと現実感ないもん。」
「それと、別件でもう一つ話がある。」
「なぁに?」
「悪いが、今回の水泳対決、俺は大河の応援をする。」
「……そう。」
「か、勘違いしないでくれ。別にこれは大河をアレするとかじゃねぇ
経済的事情って奴で。
だから、川嶋、お前が負けたとしても、俺を別荘に誘って欲しい。
俺は、お前と一緒に夏を過ごしたいと思ってる。お前さえ…良ければだが。」
「それは却下。
なぜなら、あたしが100%勝つから。
高須君のお財布には、泣いて貰うけど…夏休みは期待しててよ。」
「…うっ。」
「でも、タイガーの事はアレじゃなくても、あたしの事はアレだよね?
夏を一緒に過ごしたい。だなんてさ、さては惚れたな?」
「………。た、大河と、水練の打ち合わせしてくる。」
とか言って、高須君は足早にクラスへと戻って行った。
はぁ…あたしは何をしているんだろうか…ホント、妙な仏心なんて出してる場合じゃないのに…
また、泣きたいのか、あたしは。
でも、ちょっとウマくいってるんじゃ…そういう気もする。
嬉しさと悲しさを複雑にブレンドした、胸焼けしそうな気分は、自販機にはちょっと重すぎたらしい。
『自販機故障。只今、調整中。』
コイン投入口に、張り紙一枚。翌日の事である。
9 合体
WINER。何てイイ響き。
水泳対決はあたしが圧倒的差で勝利を収めた。
「あ、毛。」
なんて卑怯な騙し討ちは、当然スルーし、タイガーが溺れる暇も無いほどの速さでゴールしてやった。
横から、手が伸びてきたのが見えたので、つかんで足かけた。
そしたら、タイガーの奴、勝手にすっころんで、派手に水柱を上げたのは面白かったなぁ〜
ざまぁwwタイガーざまぁww
と、いう訳で、高須君の夏は、めでたくあたしのものとなった。
どうせ、タイガー 実乃梨ちゃん 祐作も一緒について来るんだろうけど…
それは、まあ規定事項だから仕方がない。
そんな事より、高須君との一夏の思い出。感じずにはいられない合体の予感。
あぁ、今から待ち遠しい。今夜は、お赤飯にしようかな?
いや、待て待て。それはいくらなんでも早すぎる。うん。
あ、そろそろ時間かな?
TELLLLLLL
『あ、祐作。うん、わかった。よろしく。うん。それじゃ』
さて、それじゃ、行きますか♪
――川嶋亜美、高校二年二度目の一学期は、こうして幕を閉じた。
洞窟の暗がりに潜む影。亜美、実乃梨、大河の3人は何を思うのか。
次回・せめて合宿らしく
この次も皆で見てね♪
kita-
エロースな展開を待ってます><
しかし前世情報ばらしすぎだぜあーみんww
てゆーか祐作www
なにがテンション下がるだ、
このメガネに打ち明けたのがそもそも間違いだろあーみんw
皆さんこんにちは。
[キミの瞳に恋してる]の続きが書けたので投下させて頂きに来ました。
前スレでは御迷惑を御かけしてしまい申し訳ありませんでした。以後、気をつけますのでご勘弁ください。
※今回は能登視点、微エロ。
自己曲解でキャラが違うかもしれませんので苦手な方はスルーしてやってください。
では次レスから投下します。
[キミの瞳に恋してる(9)]
突然ですが俺はこの前、素晴らしい体験をしました。
ふっふっふ……それは文字通り『昇天』した出来事、そう木原にフェラチオをして貰いました。
…それだけじゃなく彼女の身体も見たし、触ったし、一番大事な部分まで悪戯させて貰った。
キスやハグを性的接触に数えないとするなら初めての『セックスに限り無く近い』行為をしたわけだ、それも木原から積極的に。
初っ端からあれだ、いわゆる『シックスナイン』 パイパンの御褒美付き、童貞な俺には刺激が強過ぎた。
もうぶっちゃけちゃうけど、実は修学旅行の時に木原の下着を愛でて堪能したんだが…そんなの霞んじまうよ。
いや…あれはあれで素晴らしいものだ、触り心地とか。けどね……その包みの中は更に素晴らしい正直な話、感動した。
マシュマロ? それともスポンジケーキ? 半端無く柔らかい、それでいて程よく押し返してくる胸。
透き通るような白さのすべすべな肌が汗ばんで……こう…ピトッ…て吸い付いて……ふへへへ。
思い出しただけで鼻血を吹出しそうだ、あ…更に加えるなら…木原の言動がいちいち『エロい』のよマジ。
俺の精液を飲んでだな…とある言葉を言ったわけ、何かは教えない、俺と木原だけの秘密だ。
その言葉の破壊力は計り知れない、瞬時に暴走モードてか覚醒させられちまった。
腰が抜けそうなくらいムスコを吸われ、しゃぶり回されて蕩かされた挙句、恥かしそうに『感想』を言われたら…ノックダウン。
でも悲しいかな、その一回きりなのよ。あれから一週間過ぎたけど彼女は何もしてくれないし、こちらからも出来ない。
え、避けられてる? いや違う、キスして抱き合って寝転がったりは出来る。それでも充分だけど…。
だけど一回でも『して貰う』と毎日の『触れ合い』で期待するのは当然だよね、自分で処理する気にもなれなくなる。
またしゃぶって貰いたいと考えるのは当然、だけど言い出せない。答は簡単だ、恥かしいし彼女に嫌われたくないから。
『がっつかれたら…怖いよ』
そう言われたから、どうしたら良いやら…誘い難い。
その結果………俺は溜まっているわけさ!
思春期真っ盛りな俺にとっては苦行を通り越して、生き地獄っっ! 彼女を大切にしたい気持ちとは裏腹な本能の衝動と日々戦っている。
なに? 一週間くらい耐えろ…だと?
何を言うか! 現状こうして耐えてるじゃん、木原に命じられたわけじゃないよ、でも頑張ってるだろ!
うぅう……ごめん、ちょっとヒステリった、わざとじゃないんだ解って欲しい。
欲求不満になり過ぎて俺は色々とヤバいんだ、更に今日は年に一度の『魔の日-後夜祭-』だから神経質なんです。
『血のバレンタイン』と対を成す『白い厄日』すなわち『ホワイトデー』
そう……今日は三月十四日。生まれてこの方、この日は一年でも五指に数えれる憂鬱な日なのだ。
バレンタインにチョコを貰い、無事に一ヵ月が過ぎて…お返しを贈る、モテ男リア充の日。
ふん……だが今年の俺はひと味違う、木原がいる…ふふん、なんてね。
浮かれてもみたが、すぐ気付く…俺……木原に貰って無いじゃんチョコ、一月前は喧嘩中だったし?
先月のD-dayに『義理チロル』を櫛枝から下賜して頂いたが、今日の朝に『義理』だから返さなくて良いと本人に言われた。
『能登くんからお返しを貰ったら"嫉きもち焼きなネコさん"に爪で引っ掻かれちゃうからね』
と……ニヤニヤ笑顔で忠告まで賜り、件のネコさんをこっそり伺うと
『フーッッ!!』
毛を逆立たせて櫛枝氏を威嚇していた。
かなり胸がキュンとした、仕草が可愛い…持て余す。
そして本日の俺には隙が無かった、完璧なまでの陣地を構築して彼女を待受ける。鉄壁の守があってこその積極攻勢だ。
それは学ランの内ポケットに忍ばせた『らぐ〜じゃプラネタリウムのペアチケット』
『今年は貰えなかったけど来年はお願い。今度、一緒に行こうよ』
放課後にそう言ってさり気なく渡せばパーフェクト、まさに隙の無い作戦だ!
正月にクジ引きで貰って以来、自室の学習机で護り通した『神器』を使えば彼女は胸キュン間違いなし。
諦めて高須にあげなくて良かった、意地で護り通して良かった。
物より思い出 その価値はプライスレス
渡すタイミングだって緻密に計算している、放課後に俺の部屋で渡す予定だ。
どうよ? 俺だってやる気になればこんなもんよ、天狗になる訳じゃないが流石だ能登久光、今日ばかりは自分を褒めてやりたい。
その御褒美にカップルシートで満天の星を見ながらイチャイチャして告白でも出来たら僥倖。
テンプレは王道、端折れる過程はあれば上等。
乾坤一擲の決戦は近い、横に並んだ木原とテクテク帰りながら脳内でシミュレーションを繰り返している。
「木原、今日は何の日だか解る?」
と問い掛けると、恥かしそうに俯いた彼女が返してくれる。
「ホ、ワイトデー…だね、うん」
そう、そうだよ。苦行の一日が福音の日に変わる記念の日だ。
「で、でも…私、能登にあげれなかったし、バレンタインのチョコレート」
そうシュンとして続けた木原に俺はすぐさま返す。
「仕方無いよ、喧嘩してた訳だからね。渡したくても出来なかったんだよね?」
さり気なく彼女の気持ちを聞き出そうとするのは大目に見て欲しい。
少し時間を置いてコクン…と小さく頷いた彼女を見て俺は幸せになる。
木原の想いはチョコレートより甘い、甘々で溶かされそうだよ。
首に巻いたバーバリーチェックのマフラーで口元を隠した彼女の頬が朱く染まり、落ち着き無く辺りを伺っていた。
「だからじゃないけど……しにとって……ょうが……………の代わり」
彼女は何かを呟き、俺に視線を向ける。
普段の勝気な大きい猫目は鳴りを潜め、寂しそうに恐る恐る俺を伺っている。
「え…あ、どうしたの?」
そんな風に見られたら俺は気になる、だからそう言って伺い返す。
それは作戦遂行の障壁になるやもしれない、芽は摘んでおかないと不安だ。
「べ、別にぃ。バレンタインデーが無いとホワイトデーは発生しないよね、みたいな。
て事は今日は何も起きないかもだし、てか忘れていたんじゃないけど…"始まり"が無いと何も起きないじゃん。
うぅ…つまり、つまりね……」
彼女の言う事は半分理解出来た、残り半分はしどろもどろで要領を得ない。
一つだけ解るのは彼女が遠回しに何かを訴えかけていて、こちらが意図を汲み取れなければ真相不明という事。
俺の脳内の低スペックOSが、クラッシュしそうなカリカリ音を出しながら答を導き出そうと足掻く。
『バレンタインデーとホワイトデー』は一対の事象だから、スタートを意味するバレンタインデーが無いとホワイトデーは発生しない。
俗にいう『フラグが立たない』だ、ん………まさかっ!
『バレンタインチョコを渡して無いのに、お返しを貰うわけにはいかない』
と言いたいのかっ!? そうなのか、そうなんだなっ!?
ぐああっっっ!!! 何をおっしゃる、気にするなよ! それじゃ作戦が実行する前に立ち消えになる!
「ま、まあ…人それぞれだと思うよ? あはは…ナンバー1よりオンリー1とかで良くね?」
予想外な彼女の気遣いに俺はショックを受けて意味不明の言葉を紡いでしまう、棒読みで…。
意識してくれてるのは嬉しいが、何だろう…この敗北感は。
「ちょ…なんで燃え尽きてるわけぇ? あう…だ、だから! "バレンタインデー"が無かったら"ホワイトデー"も無いっ! って言ってんじゃん!」
うあぅっ!? 強調までされてっ…そこは律義にならず流されるべき所だって!
ファミレスのレジで会計合戦する主婦達じゃあるまいし、遠慮するなよぅ!
残念な事に今年は貰えなかった、だが来年は貰える、すなわち一年間楽しみに出来る。
俺はそれで良いんだ、後でそうしっかり伝えるから……もっとこう…デレッとだなぁ。
「う…もう良いっ! 能登ってマジで鈍いってか…ヘ、ヘタレ!」
ピュアハートに強烈な一撃、木原の『ツン』は良い意味でも悪い意味でも俺には効果覿面なのだ。
今回は悪い意味で効いたよ、へへっ…こりゃあ痛いぜ…。
「へっ…流石は木原さん、良く解ってらっしゃる。だがヘタレはヘタレなりにカッコつけれるんだからな」
ちょっと毒付いて強がるのは男の性ね、無様でも前のめりに倒れるのが日本男児…逃げる姿は見せれない。時には貫き通さないと…。
...
..
.
時間ってのは残酷だ、止まれと願っても受け入れずに刻一刻と刻まれて流れていく。
俺の部屋で相対し、二人して俯くこと一時間が経過している。
モジモジして…互いの間合いを計り続け、タイミングを失い焦る。
いかん…これはいかん、非常によろしくない。ここはやはり俺が無理矢理にでも突破しないと事態は動かない。
今日の世界史で習った塹壕戦よろしく、膠着して睨み合い…いや停滞してしまう。
「木原」「能登」
意を決して彼女に話し掛けると、同時に俺も話し掛けられる。
「あはは…えっと先にどうぞ!」
「の、能登からどうぞ!」
ガチガチに緊張した俺と木原、譲り合ってしまう。
「いやいや木原の方が先に口を開いたし?」
「ち、違っ…能登が微妙に早かったんじゃないかな」
そんなやり取りを繰り返すこと数十回、結局根負けしたのは彼女の方だった。
「……バ、バレンタインってさ女の子にとって特別な意味があるの」
そう上目遣いでモジモジしながら紡いで、彼女はチラチラと俺の反応を伺っている。
「特別な意味?」
なら俺は彼女が続きを言いやすいようにしてやらないといけない、話に食い付く、これ大事。
「そっ…、友チョコとか義理チョコとかもしちゃったりするけど、やっぱり"本命"を渡したくて頑張るんだよ」
肝心の主語を省いて彼女は続ける。一拍、二拍……深呼吸して紡いでくれる。
「友チョコも義理チョコも沢山用意する娘もやっぱり居るけど、本命って…一つだけなんだ。
その…そのままの意味じゃん、ダミーとかじゃなく精魂込めて用意するのが本命チョコ。
うぅ…バレンタインデーは弱気な女の子が男の子に想いを伝えれる日……なの。で…ね……」
言葉足らずだけど木原は身振り手振りを交えて必死に俺に伝えようとしてくる、なんとなく解ってきた。
「かなり遅れちゃったけど…私にとって今日が…三月十四日がバレンタインデーみたいな。
バレンタインデーとホワイトデーが一緒に来る感じ? ああ…ごめん、何を言ってるか自分でもわかんないや…」
彼女はそう言ってカバンの中から何かを取り出して俺に差し出す。
「はい…遅くなったけどバレンタインチョコ"ほ、ほんめー"の手作り…味は保証出来ないけど、頑張って作ったよ」
赤い包装紙に包まれた長方形の箱にリボンが巻かれている…。
「今日が"私達の"バレンタインデーだよ、……うん、開けてみて?」
「う、うん、ありがとう。凄く嬉しい…わ、じゃあ…さっそく」
俺は焦る気持ちを抑えて丁寧に包装を剥していく、破れば早い…だけどゆっくりゆっくり…。
包み方、リボンの巻き、どれを取っても彼女の気持ちが詰まっている、なら俺もそれを踏まえて行動する。
白いボール紙の箱が現われ、両手で上蓋を開ける、義理なんかじゃない『本命』…愛情の込められたソレと対面する。
「っ…」
形枠を使えば誰だってこの形のチョコは作れるだろう、木原もそうした筈。
だけどコレは…正真正銘一つしか有り得ない。
縦横十センチ程のハート形チョコレート、それにホワイトチョコで書かれたメッセージ。
『大好き 付き合ってください 木原麻耶』
これって『告白』だよな? 間違い無い。すぐさま彼女の方に顔を向ける。
「女の子が…大好きな男の子に告白出来る日…だもん。
人が何て言おうと…………私にとっての」
顔を真っ赤にした木原はそう呟くと視線をスカートの上に載せた手の平に移す。
「あ…ぅ、つ…つまり、えっと…俺は木原に返事をしないといけないよね」
そう言うと木原は猫目に期待を込めて俺を見詰める、う…可愛い。俺は全身が燃えるように熱くなる感覚に襲われる。
「……ここに初デートで行こうよ、うん…お、俺も木原が大好きだから……そ、その…付き合って欲しいなって…」
返事と共に贈るのはらぐ〜じゃのチケット、ようやく彼女がさっきから言っていた事の意味を理解出来た。
一ヵ月遅れだけど…木原はしっかり贈ってくれた、こじつけ? 他人がそう言うなら言わせておけ。
遠回りしまくったのだお互いに、周回遅れをここまで戻した…それで良いじゃん。
「あう…、やば…マジ嬉しいんですけど…。う…じ、じゃあ……その…か、彼女として能登に初めてのプレゼント…をあげようか、な」
モジモジしながらそう言い、彼女は………。
ああ…デジャヴ。木原が四つん這いでジリジリと俺の方へ寄って来る。
前にこうにじり寄られた時はキスだったよな、つまり……『カレカノとしての初キス』といった所か。
へへっ…前はテンパっちまったが今回は大丈夫、耐性もあるし、気持ち的に余裕もある。
毎日のようにしている、ゆえに不覚は取らない…さあおいで木原。
と高を括っていた俺。だが予想から斜め上に吹っ飛んだ事を木原は口走る。
「え、ええっと…えっ……"えっち"しよっ?」
俺の膝の上に乗り肩を力一杯掴んだ彼女は、鼻先5センチまで顔を近付けて……そう言った。
「へ…?」
突然の事に俺は呆気に取られる、言葉の意味は理解出来る…が急過ぎる! 何故に今?
「あれよ…能登はしてみたいよね、えっち…、わ、私もしてみたいなって……あうあう、今あげれるのは……"初めて"くらいしか無いから……」
ちょ…待て落ち着け、お返しの贈り合戦をしているわけじゃ……。
嬉しい、が……それとこれは別だろ。しかしこのまま流され……いやいや、けど……ああでも!
「今、付き合い始めたばかりじゃん? そんなに急がなくて、も……」
眼前で熱っぽい目差しの彼女、甘いベビードールの香りと女子特有の甘ったるい匂いにクラクラしちまう。
プルプルの唇が口付けしろ…と俺を誘い、柔らかいフトモモと尻が下腹部にギュッと……。
あ、勃きるなムスコ! まだお前には早い、寝てなさい!
『父さん…それは無理だよ、俺の走りは誰にも止めれない』
あああ…ちくしょう! 生意気を言いやがって、育て方を間違えたか!?
下着の中で頭を擡げ始めたムスコは思春期、俺の言う事なんて何処吹く風だ。
「ちんちん……おっきくなってる」
木原が甘えた声でそう呟き下腹部を擦り付けてくる、スリスリ……いやグリグリ、密着して…腰をふりふり…。
「うぅ…でもでも、ほら準備とかしてないし…ねっ、ゴム…とか持って無いし」
俺の下半身は彼女のスカートに覆われていて、ムスコは下着越しとはいえ柔らかい部分で刺激され続けている。
甘い彼女の香りと柔らかく小さな身体の質量、そして視覚的効果に俺は理性の糸が一本ずつ切れていくのを感じた。
「いいの…ずっと我慢してたじゃんバレバレだし、ちょーヘタレだから…言い出せなかったんだよね?」
サラリと酷い事を言われた気がするけど、そこはスルーする。反応したら認めたも同然だ。悔しいかな部分的に図星だし…。
「ま、まあ……ええと、木原……機会を改める勇気も……うおっ!!」
暴走気味な木原にクラクラ〜フラフラ〜理性が切れる前になだめようとした………が、背中と後頭部に衝撃が走る。
「……意気地無し」
気付いたら天井を見ていた……いや俺を上から覗き込む木原を見ていた…か?
押し倒されている…んだよなこれは、うぅ…どうしたら良いんだ。
「私…嬉しいんだよ? 能登の彼女になれて、ずっと恋焦がれてて……遠回りしてやっとカレカノになれたもん
だから……早いとか遅いじゃなくて……うぅ…能登に初めてを貰って欲しいの」
両手首を掴まれて床に押しつけられ、額を合わせた木原が囁く。
甘く、媚び、蕩け、憂い、様々な感情を交ぜたような……扇情的な表情で俺を誘うんだ。
「う…」
紅潮した頬、潤んだ瞳……甘い吐息に俺は絆される。
そして再び彼女は囁く。
「 えっち…しよっ? 」
もう抗えない、どんなに頑張ったって…俺は拒否出来ない、いや初めから望んでいたのだ。
彼女の言う通り、意気地無しだから…先延ばしにしようとしていただけ、期待する反面怖くもあったのだ。
仮の話、彼女が経験済だったならホイホイ誘いに乗っただろう。
だが互いに初体験で……大好きな彼女の処女を奪うのは堪らなく魅力的で、同時に俺なんかで良いのか、と不安にもなって…。
二つの考えを選ぶ勇気を持てなかった。
「う…本当に良いの? 俺が木原の初めてを貰って良いの?」
彼女がどう返事するかなんて解りきっているのに…臆病な俺は最後の一押しを押して貰おうとする。
「いいよ…だって能登は私の彼氏だもん、全部…あげる」
そう言うと木原は俺のズボンを脱がしに掛かり、細い指がベルトのバックルを探る…。
俺は彼女の言葉に感動すら覚えていた、『彼女』という響きに胸の奥がジーンと暖かくなっていく。
「能登ぉ…なんか前より…硬くなってない?」
開いたズボン…いや下着の中に手を忍ばせた彼女は恐る恐るといった感じにムスコを探る。
冷たい指先が滑る、なぞる…つついて、揉む。紅潮し緊張した様子の木原は
『おっきい』だの『あわ…わ、すご…』とか呟きつつ二度目の出会いに夢中だ。
「う…そりゃあ…期待しちゃうよ、俺だって初めてだし…くふっ。てか……恥かしい話だけど…溜まってるんだ」
とボソボソ言い訳して彼女から視線を逸らす『そういう目』で見て期待しまくっていた自分を晒すのは負い目を感じる。
「た、溜まる? 何が…………あ。…へ、へぇー……溜まってるんだぁ? バ、バカ…変態、そんな事は言わなくていいの」
「な、何でもさせてあげるし、してあげる……って言ったじゃん。
なのに…能登は言ってくれないもん、うぅ…奈々子が言ってた……男の子ってさ…溜め過ぎると"悪い事"をしたくなるんだって…。
これからは……ちゃんと言ってね? 能登に悪い事をさせたくないし…」
彼女は顔を真っ赤にしてムスコを揉みつつ、そう言ってモジモジ…。
奈々子様…GJ!! 何が『悪い事』なのかは見当もつかないけど…アドバイスしてくれてありがとうと言わざるおえない。
「う、うん…。ちゃんと言うよ」
「約束だよ…、ふふ…」
彼女が上体を寝かして顔を俺に近付けてくる、ゆっくりゆっくり…紅潮し照れ笑いしながら…。
「ん…」
唇を優しく啄まれ、緩慢だけど…熱情を込めてムスコを下着から出されて扱かれる。
それは扱くより…擦るに近い動作だけど…とても気持ち良い事、彼女の情が伝わる。
「…いっぱい我慢してたんだよね、初めての前にスッキリ…させとこう?」
軽い口付けの後、木原は額を重ねて甘く囁く、その言葉に返答する間も無く俺の身体は素直な反応で返す。
硬くなったムスコの血流が更に増し、より硬く…ジンジンと疼く。
彼女が身体をずらして俺の股の間に割って入り、顔を近付けていく。
その光景をスローモーションで見ている感覚、そして暖かい吐息が当たる感覚も…。
「ふ…っ」
暖かくて少しザラザラ、柔らかくて…ぬるぬる…様々な感覚を一交ぜにした…言い様の無い快感。
敏感な部分に彼女が舌を這わせ始めた、ねっとり…強く。
「ん、ふ…ぴちゃ…」
力を込めた舌先が小刻みに舐める、ムスコの張り出しに沿って強く早く…。
前回より手慣れた感じ…でもたどたどしいには違いない。それでも俺には充分堪らない刺激。
その証拠にムスコはヒクヒク…と痙攣、腰がムズムズする。
「能登のちんちんって素直だよね、ちょっと可愛いかも…ちゅー…してあげる」
その反応を見た彼女は慈しみを込めた声でそう言い、ムスコに口付ける。
「ちゅっ…んん…ちゅぷ」
瑞々しく柔らかい唇が吸い付く、ムスコの頭から竿…再び頭…先端、裏筋。
むず痒く、同時に微弱な電流が巡る。唾液の軌跡を残して彼女は蠢く。
甘く吸い付かれたと思うと強く、掛かる鼻息と吐息、そして唇で甘噛みされ啄まれる。
俺は彼女以外にされた事が無いから……上手いとか下手とかなんて解りはしないけど、充分だ。
刺激に慣れていない部分への愛撫は堪らなく気持ち良くて…これ以上無い程に張り詰めていく。
「ちゅるっ…っはぅ、ん、ん…」
横笛を吹くように裏筋を唇と舌が上下に滑っていき、口付けの雨と共に彼女のくぐもった声も増していく。
「ん…ちゅ…っ、ちゅぷ…ちゅ…ぷぷ」
「は…あ…あ…」
ムスコの先に柔らかい唇が触れ、甘く吸われ舌先が躍る。ゾクゾクとした快感が背中を走って……
窄められた唇の中へ誘われる圧迫感を覚えた瞬間、ヌルンと熱く柔らかい口内へ呑まれる。
惚けてしまいそうな気持ち良さ、全身が縮こまっていくような…強い刺激。
「ぬぷ…ちゅぷ…ちゅぷ…んあ、ちゅぱ」
狭められた口内で優しく吸われ舌が絡み付く、ムスコの頭の形に沿って全周、隙無く這わされる。
ゾクッと心地よい刺激が絶え間なく贈られる、ゆっくり抽送されながら吸う力は強くなっていく。
「ちゅぷ…ちゅ……くちゅ」
AVなんかで見るような激しさなんて無い、ゆっくり味わうような下遣いと抽送にジワリジワリと追い込まれていく。
正直、愛撫され始めて五分と経っていないが…今にも達してしまいそうだ。
だが腹に力を入れて耐える、早々に達するのは恥かしいから、そして一秒でも永く彼女に溶かされていたいからだ。
「ちゅぷ…ちゅぷちゅぷ、ぴちゃ…はふ」
舌で強く弾かれ、巻き付かれて圧迫され…ねっとりしゃぶり付かれて…唇が引っ掛かりながら奥へ奥へ吸引される。
彼女の口内は熱く、そして潤っていて、時折擦れる上顎の堅さが快感を増させる。
彼女は夢中で蹂躙してくる、俺への愛情を載せて熱で燻らせる。
「は…あ、木原……凄い…っふ」
「ちゅっっっ!! んふ、ちゅぶっ! は…ふ」
舌先でチロチロ…尿道の先を小刻みにくすぐられ、唇でキュッと締められ強く吸われながら口内から引き抜かれる。
反応を上目遣いで伺ってくる彼女と目が合う、すると楽しそうに笑って根元近くまで呑まれる。
その姿は艶めかしく、悪戯っぽく…淫らで乱れていて…愛らしくて、何と表現すれば言いのか……ああ『女の顔』だった。
恥かしがりの照れ屋な彼女に潜む『野生』を見せつけられ、激しくなっていく愛撫は順応していっている証左だった。
そう、彼女は俺を悦ばせる術を覚え始めている、一週間前より今日、一分前より今……といった具合に。
「ちゅばっ! ちゅっっ……ぱ! ちゅくっ…ちゅぷ」
ねっとりと唾液を絡ませた舌が包み、擦り、抉って…強弱をつけて吸って、唇で圧迫しながら擦り付けて、反応を伺って覚えていく。
熱く蕩かされて絆され、貪られる強い快感に腰を震わせながら甘受する。
「っは! う…も、もう限界かも」
禁欲していなかったなら、まだ保ったかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
刺激に慣れない敏感なムスコに粘膜接触は耐え難い快感をもたらす、つまり我慢出来ない。
欲望を吐き出そうと暴れるのを気合いで押し込めているのだ、どんなに頑張っても最後は解消しないといけない、その時は近付いている。
「ちゅばっちゅばっ!! ちゅっ!! ん、はぷっ!!」
彼女は俺に絶頂を与えようと激しく口内で弄ぶ、速く抽送され、べろべろと力強い舌遣いで舐め、熱い唾液の海で溺れさせる。
強い刺激に痺れ、腰が浮いてくる。呼吸は乱れ、全身が総毛立ち、身悶えしてその時を待つ。
込み上げてくる欲求、後は力を抜くタイミングだけ、でも…これが意外と難しい。
ただ身を委ねれば済む話なのに、やっぱり遠慮してしまうのだ。
前回と同様だが、このままでは彼女の口内で果ててしまう、木原もそれは承知しているだろう。
だが今日は…まあ溜まっているわけで『濃ゆい』し『多い』と思う、申し訳無いのだ。
「っくあ!! あ…あ…」
でも快楽に絆された頭で何を考えてもたちまち霧散してしまい、理性は本能に覆い隠され欲求に負けるのだ。
その瞬間はあっけなく来た、俺は彼女に腰を押し付けて射精してしまう。
金縛りになったように身体が硬直し、強い快感を伴って彼女の口内をムスコが暴れ回る。
ビクビクと何回も脈打ちながら性の欲望を吐き出してしまう。
彼女はそれを許容し、愛しそうに優しく舌と手で後戯してくれる。「っは……」
吐き出す体液が無くなっても脈打ち続けるムスコから口を離して彼女は口元を手で隠す。
女の子座りして頬を朱に染めて少し涙目、何かを俺に訴えかけている。
「あ…えっと、うーん…ティッシュ?」
そう聞き返すと彼女は強く頷き肯定する。
多すぎるは濃ゆすぎるはで……飲めないのだろう。
俺ティッシュを数枚引き抜いて彼女に手渡す、すると木原は左手で受け取って口にあてがう。
ティッシュに精液を吐き出し、クシャクシャと丸める。その姿はエロいの一言に尽きる、俺は新たな性癖を覚えた気がする。
これはとてつもなくヤバい、エロいよ木原。意識せずにしているから余計にエロい。
「ごめん…流石に出し過ぎ……飲めないよ」
こんな一言も加わり、俺はノックダウン。
「あ、その…」
何を言えば良いのか……。
「で、でもっ! 次からは頑張るしっ!! あう…能登の……せーし飲むから…」
彼女は恥かしそうに言って人差し指同士を擦り合わせてモジモジ。あーもう! いちいち言う事が健気で可愛いんだよ。
「あ…う」
俺は堪らず身体を起こして彼女をギュッと抱き締めてみる。
「…能登……次は……」
木原も俺の背中に手を回してギュッと抱き付き、耳元で甘く囁く。
「…ベッド……行こっ?」
続く
今回は以上です。
続きが書けたらまた来ます。
では
ノシ
━━━━━━━━━━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━━━━━━━━━━
>>247 GJ
麻耶は割とありふれたキャラだと思ってましたけど、よくここまで
萌えキャラに仕立て上げられますね…凄いです。
そして相変わらずの寸止めに乾杯
GJ!!
なんという過疎…職人の皆様乙乙だというのに……
合宿♪合宿♪ほとんど竜児を攻略寸前なあーみんの続きが見たいです
『みの☆ゴン』
前スレからの続きを投下させていただきます。11レス分(90〜100)です
スレが変わりましたので、再度注意書きをお読みください。
内容 竜×実です。その分、カップリングが原作と変わっています。虎×裸、亜×春など。
時期 1年生のホワイトデー 〜 2年生の夏休みまでです。今回は体育祭前(5月下旬)という設定です。
エロ 今回はありません。本番は、ラスト付近になります。
補足 内容、文体が独特で、読みにくいかもしれません。
ご不快になられましたら、スルーしてください。
また、続き物ですので、ここからお読み頂いきますと、ご不明な点が多いと思います。
エロシーン(妄想シーン)は、本編より独立させました。今後、外伝として投下したいと存じております。
規制で中断するかもしれませんが、宜しくお願い申し上げます。
「……ったく、体育祭なんてオリンピックみたいに4年に一回くらいが丁度いいのよ。あ〜、
ウザい! ウザ過ぎるっ!……ウザ過ぎて、夏来にけらし白妙の……」
「衣ほすてふ天の香具山……まあ、そう言うな逢坂。みんなで力を合わせて一喜一憂するの
もいいもんだぞ」
週末の金曜日。ここは、放課後のファーストフード店である。毒づく生徒会庶務(仮)の
大河は、となりに座る生徒会副会長である北村から、やさしい口調でたしなめられてしまう。
「あいかわらず逢坂は、言いにくい事をズバズバ言い切りやがるな。おもしれえ」
やさしい北村とは対照的に、生徒会長のすみれは、目を細めて不敵な笑顔、毒づく大河に
そういい返す。大河は、上級生だろうが、会長だろうが、すみれを容赦なくギラギラと睨み
返す。そんな緊迫した冷戦状態の二人の間には、冷汗をかいた生徒会フルメンバー総勢6名
がガン首を揃えており、来る体育祭の実行計画を練っているのであった。
「……そういえば会長。本当に俺が考えるんですか? その、サプライズ競技、でしたっけ?」
すみれは大河から目線を剥がし、不幸のデパート、幸太の質問に答える。
「サプライズ競技? あーあれだ。借り物競走のお題の事だな? 幸太。ブワーっと盛り上がる
ヤツを頼むぞ。ありきたりのつまらねえお題にしやがったら、ただじゃ済まさんぞ。そん時は
そうだな……体育祭じゃなく、体、臭い委員に任命してやる。卒業までな」
「嫌です……だいたい俺は体臭くないですよ。多分ですけど……しかし、さっき北村先輩から、
うちの体育祭、毎年全然盛り上がらないと聞きましたが、そうなんですか?」
すみれは、ふふんとした表情で、幸太を見据える。飽きて来た大河は、ふんぞり返ってチュー
チュー、オレンジジュースを飲んでいたが、2年生の書記が、そんなすみれと幸太の、どうでも
いい会話を一生懸命書き留めているのを見て、呆れたような表情になる。しかしすみれは、
「たった一日のお祭り、ってことで無埋やりにでも盛り上げてやる。予算は例年のほぼ倍、さら
にあれこれ条件ももぎ取ってやる。なんといっても、1学期で一番大きな学校行事だからな」
はっきり、きっちり、しっかりしたアニキ口調で喋るすみれを、北村は持ち上げる。
「あの演説はお見事でした。『毎年毎年盛り上がらない体育祭は歴代生徒会に受け継がれし負の
遺産! 相続放棄という手もあるが、私が盛り上げてみせる!』でしたっけ? 三年生の実行
委員長なんて感動しちゃって、スタンディングオベーションしてましたよ」
「感動するにはまだ早いな。今年の体育祭は盛り上がるぞ。あれだけ大見得切ったんだ、私の本
気を見せてやろう、……って、おい、幸太。てめえひとりでポテト抱えてるんじゃねえよ」
「会長だってひとりでナゲット全部食べちゃったじゃないですか。ちょっとやめてください、ケ
チャップなんてかけないでください。いい年して子供舌なんだから」
「私はまだ十八だよ子供だよ! 寄越せ! 寄越せってんだっ」
「やです、だめです、ポテトにとってもそんな食べられ方は不幸なんです、逢坂先輩パスパス!」
「うわわわっ!! こっちにパスすんな! アホー! ってか食べ物で遊ぶな! 北村くんっ」
「ひゃああー! 俺の眼鏡に油っこい指で触るんじゃなーい!」
そんな中でも、書記は黙々と目の前に起こっている事実をノートに書き留めていくのであった。
***
「えーと、それじゃあ後は、体育祭実行委員に議長を任せるか……春田、よろしくな」
「イエス」
週明けの月曜日。連絡事項の伝達を終え、クラス委員長の北村は教壇から降り、2年C組の
ロングホームルームの議長の座を、じゃんけんで負けて実行委員になった春田に明け渡す。す
れ違う瞬間に「ヨロシク」「シクヨロ」と、ニヤニヤ肩を叩きあう。とはい
え、実行委員は春
田だけではなかった。
「亜美ちゃーん、がんばってー」
「あはは、がんばるー・」
そう、クラス中のとろけるような視線と声援を浴び、優雅な足取りで教壇に向かっていくの
は亜美であった。転校してきたばかりの亜美は、なんの係にもなっておらず、「向いてそうな
気がするなあ」というゆりの適当な一存で、体育祭実行委員に任命されたのだ。
「議長なんてやるの初めて。緊張しちゃうなあ〜……頑張ろうねっ、春田くん!」
「う〜ん、がんばるぅ」
教壇に並んで立って、へら〜っと、友のだらしない顔を見上げながらも、竜児はみんなと
一緒になんとなく拍手してやり、とにかくロングホームルームを盛り上げていく。
「それではっ! さっそく、議題に入りたいと思いまっす! え〜、体育祭での我が2年C
組の仮装行列のテーマを何にしましょーかっ! っという話なんですがっ!」
春田が興奮のあまり、顔をテカテカ光らせ、教壇に両手をついてクラス中を見下ろしてい
る。しかし『なんにもやらなくてよくなーい?』『とりあえず春田は目立たないようにしと
け」……と、ダラけた姿勢で、柄の悪いヤジを飛ばす連中がいる中、事件が起こった……
「じ〜ん〜せ〜いーじゅ〜う〜し〜ち〜ね〜ん……」
何かを訴えたそうな実乃梨の姿があった。紅蓮の炎を背負い、ゆっくり立ち上がる。
「……意見、っていうかね……」
もじっ。と、今度は顔を赤く染め、照れる。机に『の』の字をくりくり描き、
「まあ、その、別に私がやりたいっていうわけじゃないんだけどね。いや、むしろ私はそうい
うの嫌いなんだけどね。……ええと、ほら、みんなが楽しめたらいいかなーって。だから嫌々
ながら言うんだけどね。結構、アレ、いいかなーって。そう、その……おっ、おば……うっ!」
鼻血だ。タラタラと、ポケットティッシュで押さえたが、追いつかない。ガタッ! 竜児は
彼女の緊急事態にすばやく反応し、駆け寄った。しかし実乃梨は竜児を手で制し、ふっふえ!
ふっふぇ! ふぇっふぉ! と、不吉な笑い声を漏らす……どれだけ興奮しているというのか。
「ふっ、ふぐ……へへ……竜児ふんっ、らい丈夫ぅ。鼻血、出ちゃっだ……やだみんな、誤解
しないでよ? 変なこと言おうとしてるわけじゃないんだからね……たっ、ただね、その私
……あの、あの〜、なんだ、その、おっ、おばっ……!っ……おばけやしきっ!!」
大変なことになった……2−Cの面々は、揃いも揃って唖然とアホ面。実乃梨の教案にざわ
めきが渦巻く。事件は教室で起きている。
『……お、おばけ屋敷? そりゃ文化祭だろ? おばけの仮装の間違いで
は……』
『どっちにせよ、さっぶ……!』
『……さぶいうえに、かーなーり、めんどくさいよ……』
『ていうか、まったく興味もてないんだけど』
『ハロウィンでもないのに、高二にもなっておばけってなんだよ』
『櫛枝ヤバい、超ヤバい』
女子たちの言い分はごもっとも……と、そこへ、教室のドアをノックもせずに、ズバコーン!
と、豪快に開ける無頼者が現れた。そんな横暴にして、猛々しい登場の仕方をするのは、この世
界でただひとり。『手乗りタイガー』の二つ名をもつ。ご存知、
「ああん?……何してる、バカ犬コンビ。ボーっとしてないで、とっとプリント受取りやがれ」
大河であった。庶務(仮)として、わざわざプリントを各クラスに配布しているのだった。
「SANKYU〜タイガー♪ あだっ!! 目っ、目ぇ〜〜!!」
大河は持って来たプリントを筒状に丸め、春田の目に突き刺したのだ。大げさなヤツ……と
吐き捨て、大河は教室を去ろうとするが、そこで生徒会ナンバー2の北村が素早く立ち上がり、
「逢坂……伝令ご苦労! うむ、まだ半分か……よし、俺も配布を手伝うぞ!」
「ええ? 北村くんっ……う、ん……」
後を頼む! っと北村に託されてしまった春田はスチャッ、と敬礼でスタスタ去っていく大河
と北村を見送る。そして自分はひょいひょい教壇のド真ん中に戻り、
「タイガーから入電〜っ☆ つい先ほど、校長せんせーから、決定が下されました〜っ!」
入電て……? 思いっきり人力では……と首を捻るクラスメイトたちにかまわず声を上げる。
「今年の体育祭はクラス対抗戦っ! 一位になったクラスには豪華景品が出ま〜っす! わか
りやすく図解すると……え、っと、こうっ! こうか!」
興奮のあまりか春田はナゾの円と矢印をぐねぐね黒板に書き始め、「わかんねーよ!」と総つ
っ込みを受ける。となりにいた亜美は、ためらいもなく黒板消しで春田の字をオールクリア。
「じゃあ景品、私が板書していくねー」
カッカッカッ! と踊るチョークの跡は鮮やか。亜美は意外に達筆であった。で景品は、
一、来年から交換予定の最新型、うるおいたっぷりエアコンを優先的に今月中に設置。
一、今年度一杯、クラスに据え置き冷蔵庫設置。
一、現在生徒は使用禁止になっているトイレ電源の開放。
一、持ち回りの共用部分掃除の免除。
一、スーパーかのう屋の割引券。
ざわ……ざわ……とどよめき出したのは、これまで基本的にやる気ゼロのまま、体育祭なん
てなんもやんないのが一番と、ほおづえをついていた女子たちだった。一気にハイテンション。
『やっばー、やばやば! これってちょっと、勝ちたいかも!!!』『エアコンは人類の至宝、
まさに科学の勝利よね』『プリン、ゼリー、ヒンヤリまじヤバい』『掃除やりたくなくね?』
『コテ巻きたーい! 絶対巻きたい!』
女子たちはほとんど立ち上がらんばかりに興奮し始め、きゃあきゃあ高音波で騒ぎ出した。
「はーいはいはい、みんなでいろいろ意見出してくださいね〜・ あ……実乃梨ちゃんは、
オバケだっけ?」
と、天使の笑みで亜美は愛想を振りまく。実乃梨はブンブン頭を縦に振る。だがしかし、
そこに、仮装=コスプレという等式を脳内で弾き出した、欲望フルスロットルの能登久光が、
某特務機関の総司令のように、メガネをクイッとあげ、しゃしゃりでるのだった。
C
「はーい! せっかく仮装するんだったら、仮装したい衣装を着るんじゃなくって、それぞれ
が胸の内に想う異性の、『非日常的かわいい姿』を見たいと思わないか? 例えば俺は、断
然チャイナを推したい……あれ? なにこの沈黙……なんか俺、マズい事言った?」
そうではない。それぞれが、それぞれの思い浮かべるターゲットに、胸の内でコスチューム
プレイをさせていたのだ。その証拠に、おお……低いどよめきが巻き起こる。またキョロキョ
ロと、周囲を見回し、目が合って赤面する者まで……新たな意見が飛び出して来る。
『チャイナもアリだが、やはりここはメイド姿じゃあないのか? 常識的に考えて』
『……いや、待ってくれ、俺はロリ! ないし、ゴスロリ!』
と、女子に負けず、一部の男子が意見を出し始め、かぼそい拍手まで自然発生するのだが、
「え────────っっっ!?」
亜美が板書し終えるより早く、女子らの間から大ブーイングが発せられる。
『そんなの超オタクっぽくねえ? やっばいよやばいやばい! や・ば・い!』『あったしそ
んなのぜーったいやだーっ!』『だいたいメンズはなんのコスプレする気だよ? ダボハゼ
とかか? え?』『どーせ亜美ちゃんにエロエロなかっこさせて、てめえらが喜ぶ気でいる
んだろ!』『エーロエーロ!』『へんたーい! 滅びちゃえ!』……滅多打ちである。
「そうだ。男の子たちが表でがんばって、私たち女子が裏方に回ればいいのよ。ホストの仮装
とか、どうかしら」
「さっすが奈々子。いいこと言うね〜! 超いいじゃん、ホストホスト!」
ふむふむ、ホストね、と亜美は綺麗な字で板書する。まずい方向に話が流れゆく雰囲気に、
男子たちはおどおど目を泳がせるばかり。そこへさらなる試練が訪れる。
「ホストっつったら、よっぽどイケメンでないと納得してもらえないじゃん。いっそのこと、
オカマバーでよくなーい? こっちのが絶対笑える!」
竜児のとなりで大人しくしていた実乃梨が「ぷっ」と吹き出した気がする。気のせいだろう、
か……そんな混沌とした流れを断ち切る春田。
「こっ、これじゃーラチがあかないっ! ……かくなる上は、決戦投票っ! 全員紙にさっさ
とやりたいことを書け! 書いたらどんどん前に回せ! コンビニ袋に放り込め!」
お化け屋敷──と竜児はもちろん書いた。投票と言っているくらいだから、多数決であろう。
おばけの仮装はきっと、竜児と実乃梨の2票……のはずだったのだが。
「おっしゃ! みんな書いたな!? これで全部だな? シェーイク! アーンド、クジびき!
一発勝負だー! 泣いても笑っても文句なし、これで決定だぞー!」
クジ引きかよ! っというツッコミを華麗にスルー、春田は満面の笑み。そして気合一発、
せいっ! と一枚の紙を掴み出した。
「発表しまーすっ! 今年度文化祭、我がクラスの仮装行列のテーマは、ナナ──んんっ!?」
その春田の手から、紙がハラリと舞い落ちる。脇からさっと拾い上げたのは亜美で、
「えーと、なになに?……なにこれっ!? The Nightmare Before Christmasって……なんな
のよこれー! こんなの書いたの誰!?」
「……わたし」
「ゆ、ゆりちゃん先生……?」
「おどきっ! 楽しいことなんか、させないからね……っ!」
ヒップアタックで春田と亜美を押しのけ、教師とは思えぬ言葉を独々と吐くのだ。
「私は担任として、みんなにはシビアな現実を見つめて欲しいの! ……私ずっと女子高で、
楽しいことなんかなーんにもなかったわりにつらい現実ばっか見てっけどね……楽しいこと
なんかさせないからね……絶対、させないからね……! キーキーキーキィ───!」
とても正視出来ない。このままではゆりが妖怪変化に成り果てる……しかし、さりげなく
無駄に運を使ってしまい、見事クジびき勝負に勝ったゆり(独身)であった。
***
「──あーあ。『手乗りタイガー』に触りたい……」
ため息混じりに漏れた、それはスーパー不幸体質である幸太の独り言だった。が、
「おい、エロガキ……今何て言った……」
最初に反応したのは無論、大河であった。指をバキンバキンと鳴らし、幸太に凄む。
「な、なんで突然機嫌悪くなるんですか! あ、もしかして逢坂先輩『幸福の手乗りタイガー』
のこと、知ってるんですか?」
放課後、生徒会室には、体育祭の各クラスの仮装行列のテーマをまとめるため、全メンバーが
揃っていたが、幸太のリスキーな話題に皆、黙りこくってしまい、会話の経過を静かに見守る。
「質問に質問で答えるんじゃない! 幸福ぅ? 何なのよそれ? ただでさえ手乗りうんたら
とか聞くとイライラすんのに、変な修飾語付けんな!」
ドンッ! っと机を叩く大河。ビビる幸太は、座っていたイスから後ろ足に離れる。
「だからなんで、逢坂先輩が機嫌悪くなるのか、意味わかんないですって! クラスの奴らが、
言ってたんですよ! なんでも『手乗りタイガー』に触ると、卒業するまで三年間、ずっと
幸せに過ごせるらしいよ! って」
ガーンっと衝撃を受けて動けなくなる大河。北村は蝋人形と化した大河を心配し駆け寄る……
その時、
「ふむ。で、不幸なおまえさんはその『手乗りタイガー』とやらに、ぜひ触りたいと思ったも
のの、友達じゃないから詳細を聞くことができなかった、と。どこまで内気なんだよ」
すみれが会話に割り込んできた。その声に幸太は背を向け、呟く。
「もういいです。放っておいてください……別に、ちょっと気になっただけですし。本気にな
んてしてませんから。おまじないみたいなもんでしょ、どうせ」
「いいや、違うぞ。『手乗りタイガー』は実在のものだ。俺は見たことがある」
見たことがあるどころか、介抱している北村の声が、不意に大きく部屋に響く。
「えっ!? そうなんですか?」
驚くべきことに、すみれもしなやかな手を上げて見せ、
「私だって見たことある」
他のメンバーも目を見交わしながら、会長に続いて「あるある」と手を上げるのだ。
「先輩たちはみんな、目撃したことがあるってことですか?」
「ああ……しかし、幸福の手乗りタイガー伝説か……そんな大層なことになっていたとは……
なあ逢坂」
こらえきれず、北村は「くふ」と笑い声を上げるが、こっちの世界に戻って来た大河が、そ
んな北村の意地悪な態度に、ぷーっと頬を膨らます。すみれ以下、他のメンバーは妙に、にや
にやと顔をゆるめている。
「……な、なんなんですか、この空気は一体……そして逢坂先輩の機嫌が一層悪くなった気が
するんですけど……」
幸太は一人事情を飲み込めず、状況を探ろうと辺りを無駄に見回すと、
「そうだ幸太、おまえ『手乗りタイガー』に触って、その不幸を治せ。おまえみたいな不幸体
質なヤツが身内にいると、生徒会全体にまで累が及びかねん。触って不幸を治してこい」
戸惑う幸太。大河はキッと、すみれを一瞥。しかしすみれはなんてことない顔。北村は、ま
あまあと、大河をフォローするのだが、
「へえ、面白い。笑っちゃう。わたしも是非触ってみたいわねえ、『幸福の手乗りタイガー』
に。でも、そんなくっっ、だらない噂は、『修正』しないといけないわねぇ……」
大河の小さな体躯に暴力的な不機嫌パワーがみなぎっていくのを幸太は勘違いしてしまった。
「なんか逢坂先輩が一番『手乗りタイガー』に詳しそうですよね? もったいぶらないで教え
て下さいよっ」
「はんっ……よろしくてよ。教えてあげるわよ……そして、触った瞬間、幸福どころか、強烈
な不幸が訪れる事を……貴様の体に直接教えてやるああぁぁぁ!」
弾丸のように飛び出す大河。しかし、
「待て逢坂! 興味があったから傍観していたが、すまん! ここは俺に免じて堪えてくれ!」
北村は、大河の両脇に手を差し、羽交い締めにする。すると大河は真っ赤になり、借りてき
た猫のように大人しくなる。そのタイミングで生徒会室の扉をノックする音がしたのだ。
「失礼しま〜す!2−Cの川嶋です!体育祭の仮装行列のプリント持って来ました〜」
「ちーっす☆あれ……北村とタイガー、なんでプロレス(ガチ)してんの?」
「チッ……なんだまたバカ犬コンビか……プロレスしたいならいつでもかかってきやがれ。
返り討ちにしてやる」
唸る大河に、亜美の笑顔は揺るぐ事なく、
「逢坂さんいたんだ? チビッこくて気づかなかったわ〜? でもちょっと背のびた? あ、
それ寝グセ? そっか〜残念だね? 伸びるわけないよね! あははっ!」
怒りで、髪の毛が逆立つ大河をからかう亜美。大河は熱視線で、焼き殺すように睨みつける
が、亜美はさらりと受け流す。腕の中で暴れる大河をなんとか制する北村。それを見た幸太は、
「……よくわからないですけど俺が原因ですよね? ヒステリー起こさないで下さい」
「違う! どう考えたらそうなんのよ! お前なんか関係ない。よくわからないなら、すっこ
んでろ!」
そう言う大河も、訳がわからず興奮しパニック寸前、収拾がつかなくなりそうになる。
「そこまでだてめえら。話がずいぶんズレてきてるぞ」
混乱を収めようとしたすみれだったが、大河の怒りの矛先は再びすみれへ。
「元はといえば、バ会長が、エロガキにわたしのこと触らせようとしたからじゃない!上手く
まとめようとすんな!」
逆上する大河は、愛しの北村のワキワキキャッチくらいでは、沈静化する事はすでに手遅れ。
フランス人形めいた美貌がわなわな震えている。北村はズレる眼鏡もそのままに、
「お、落ち着くんだ逢坂! 会長、ご無礼お許し下さい。亜美も、言い過ぎだぞ」
腕を組んで、プイッと、そっぽ向く亜美。この状況下でも、まだまだ余裕なのであった。
「ちょっと佑作〜。それってタイガーの肩持ちすぎじゃな〜い? ズル〜い! ズルいよねえ、
春田くん?」
「そ〜だぞ北村、ズル〜い!ってなにが?」
春田まで巻き込まれ、更にカオス状態が加速する。北村が力つき、遂に猛虎が解き放たれる。
そんな押し合い圧し合い、取っ組み合いが始まり、バトルロワイアルな騒々しい生徒会室の中、
「逢坂大河。タイガー……なるほど『手乗りタイガー』の正体は逢坂先輩だったのか……しか
しなんて恐ろしい光景なんだ……」
学園七不思議の謎が解た幸太は、ひとりでウンウン納得するが、この直後、すみれが避けた
大河の放つビンタを食らうのである。凄く強いヤツを。
そして机やイスも飛び交い始めた中でも、書記は黙々と目の前に起こっている事実をノート
に書き留めていくのであった。
***
「なあ、実乃梨……聞いてるのか?」
「ん? んっんーっ! 何? ごめん、えーっと、体育祭の仮装行列のことだっけ?」
最近よくある事なのだが、実乃梨は竜児の顔を覗き込んでくる。竜児的にそれは特に悪い気
はしなかったのだが、そういう時の実乃梨は、竜児の話を聞いてない事が多く、会話の途中で
それをやられると、もう一度話し直さなくてはならない。
……まあ、それも悪い気はしないのだ。そういうところも竜児は好きであった。
今日はめずらしくバイトも部活もなく、竜児と実乃梨は放課後デートを満喫中なのだ。
「おうっ、そうそう、さっきのホームルームで決まった仮装行列なんだけど、あれ、大丈夫な
のか? ナイトメアなんとかって、ディズニーのよくわからないコスプレより、実乃梨の提
案通り、普通にオバケにした方がよかったんじゃねえかなって」
腕を組む竜児に実乃梨は、
「いいんでないかい? でも、竜児くんはいっつも私の味方になってくれるねっ! うれしい
ぜっ! そだ……もしオバケやるなら、竜児くんはラーメン大好き小池さんに任命するぜよっ」
「……それオバケじゃねえだろ。登場人物じゃねえか……でもまあ、決まっちまったもんはし
かたねえか。しかし、あれって、みんな知ってんのか? 俺だけ知らねえって事はねえよな」
「うちにDVDあるよ? 今度一緒に見ようよ。簡単に言うと、ハロウィンのカボチャの王様が、
ハロウィン風のホラーでスプラッターなクリスマスをやるっていう話なんだぜ〜」
そう説明を聞いた竜児の表情が曇る。
「それだけ聞くと、すっげぇ嫌な予感がするな。もしかしたら俺、大活躍しそうじゃねえか……」
「えー! いいじゃーん! 竜児くんがカボチャの王様やるなら、わたし、サリーやりたいっ」
そのDVDのラストで、カボチャキングとサリーはキスをする。最近、実乃梨が竜児の顔を覗
き込んでいるのは、そこらへんに答えがあったりするのだが、鈍感、奥手の竜児に分るはずも
なかった。実乃梨は、できることなら、お花畑のような、キレイで花がパッ、パッっと、あたり
一面に咲きほこっているみたいなトコロでファーストキスをしたいと願っていたのだ……できる
ことなら。だが。
そんな平和なふたりの正面。進行方向にあるケーキ屋さんで本当の事件が起こる。
ガシャン!!
ショーケースのガラスが割れ、破片と同時に真っ黒なジャージのマクスした男が飛び出して
きた。そして、店先にいた主婦らしい客をドンッと、弾き飛ばす。
「っとおおおっ!! だ、大丈夫ですか?」
「おうっ、なんだなんだ!?しっかりして下さい!!」
目の前で倒された主婦は、実乃梨がすばやく気付いたおかげで、地面
に頭を打たずにすむ。
続いてコックスーツの店主らしき男性が店の奥から飛び出してきて、
「ドッ、ドロボー!!」
ジャージ姿の賊が、手提げ金庫をワキに抱え、走り去っていった。
「竜児くん、このヒトお願いっ!」
実乃梨は、事件現場に転がっていた空きビンを拾い、構えた。当たれっ! 叫ぶ。
ヒュンヒュンヒュンヒュンッ……すっこ────────んっ!!!
実乃梨の投てきした空きビンは、見事に賊の後頭部に命中。あれは痛い。痛そうだ。賊は崩れ
落ち、道ばたの生け垣に頭から突っ込んだ。
***
木でできた看板には、『洋菓子店アルプス』と懐かしいような字体で店名が踊っている。
竜児と実乃梨は、警察署におもむく事無く事情聴取が終わり、店舗の奥で店主から
モンブランをご馳走になっているのだった。
「いや〜、ほんと、ありがとう。実は、パートの売り子さんが、インフルエンザで休んじゃって
さ、店番いなくて困ってんだよね」
「そうなんですか……大変ですよね。強盗に狙われるし」
「そうだ君。迷惑じゃなかったらバイトしてくれないかな?水曜日まででいいから。迫力あるし」
突然の勧誘に竜児は驚きを隠せない。
「おうっ! 俺っすか? バイトやった事ないし、逆に営業妨害じゃないっすかね……」
「簡単だよ。困ったら、店の奥に俺がいるし、ぶっちゃけ、店番だけでいいから、おいしい話
だろ?」
……竜児の事情をなんとなく知っている実乃梨は、困っている竜児の代わりに答える。
「わたし、やろっかな……バイト」
「え? 実乃梨はファミレスのバイトあるだろ?いいよ。何かの縁だし……俺がやる、バイト
させて下さい」
驚く実乃梨。そして、店主は気が変わらない内にと、竜児を急かせる。
「本当かい? いやあ、嬉しいなぁ! じゃあ早速着替えた着替えた!」
「今からっすか? いきなりっすね!……わかりました、やります」
泰子には仮装行列の準備で遅くなるとメールを打つ竜児。それを見た実乃梨は、
「竜児くんが、このファンシーな背景の一部になるのかっ。いよ〜し、私は君を応援する
ぜ、高須竜児! 頑張れ人生初バイト! ……あの、店主さんっ。女性用の制服ありません
か? わたしも彼のお手伝いたいんです」
「え?……いいけど、ひとり分しか、バイト代出せないよ。それでいいなら君、かわいいし助
かるなあ」
「マジかよ実乃梨、店番くらいひとりでできるから」
「今日バイトないし。竜児くんわたしの超高速レジ打ち伝授してあげるよ、ね?いいでしょ?」
願ったり叶ったりのアルプスの店主は、二人に握手する。
「ありがとう!じゃあ二人ともこっちに来て!」
***
「竜児くん、カッケーよ、それ!」
貸与されたバイト用のユニフォームは、真っ白なコックコート。もし竜児を知っている人物が見
れば、もの凄く胡散臭いニセパティシエなのだが、上手く寡黙な職人さんって感じに変身した竜児。
「そうか? 実乃梨こそ、かっ、可愛いな」
実乃梨は、エプロンドレスのついた黒ベロアのワンピーススタイル。
「うふふっ〜。うれしーかもっ! ねえ、竜児くん写メ撮っていい? 記念にさ。レアな一枚」
ピロリ〜ンと、間の抜けた撮影音。嬉しそうに、実乃梨は、ケータイの待ち受けに設定する。
そこにアルプスの店主が店の奥からやってきた。
「じゃあ、今からお願いね。高須くん、だったね? レジ打ち練習しようか。できる?」
と、少し不安げな店主に、
「はい、できます。多分」
竜児はやる気たっぷりにレジの前に立つ。そして練習のために店主が「これくださいな」と気持
ち悪い裏声で空箱を渡して来る。竜児は、ぎこちない手付きでレジを操作し、空箱を包装して手渡す。
「ありがとうございました!」
ニヤリッ!
「うっ! ……やっぱり櫛枝さんのほうが……まあ、いいか! オッケー! それじゃあ頑張って!
短時間だから休憩はあげられないけど、手洗いなんかは適宜行ってね」
そう言い置いて店主は店内へ戻っていった。店頭に残された竜児と実乃梨の目の前を、人々が
忙しそうに通り過ぎていく。商店街はまだ買い物の時間には少し早く、近所の私立高校の生徒達
が慌ただしく歩いていて、『あっ! ケーキ売ってる〜!』『おいしそ〜』……などと指差すが
そのままスルーしていってしまう。まあ、こんなこんなもんだよな、と油断した竜児に、近所の
主婦らしき、最初のお客さまが声を掛けてきた。
「ん〜。いい匂いね。これはおいくらかしら?」
「あっ? ええと、 一応、これが……その、ひゃっ、ひゃあ」
口の中でモゴモゴと不明瞭に答える。実乃梨が「140円です!」と、フォローするが、主婦
はすぐ興味をなくしてしまったようで、フゥンと漏らしただけで、去っていってしまった。
「うわ、失敗した……緊張するな、挙動不審だ俺」
まあ、もともと店番が目的だし、別に売れなくても竜児的には、それはそれで緊張しないで
済むのだが、デキる天才バイト少女、実乃梨は、違かったらしい。
「よってらっさい、見てらっさ〜い! アルプス自慢のスィートポテト! 出来たてっすよ〜!」
せめてバイト代くらい売らないと、そう考えた実乃梨は、まるで八百屋のように、よく通る
クリアな声で、客寄せをし始めたのだ。すると、スルーしていた歩行者が、足を止め、集まり
だす。そして、ここが勝機と、実乃梨は、本領発揮し、なんと唄い出した。
「♪ ア、ル、プ、ス、じ、ま、ん、の、スウィートポ〜テト、と〜ってもあ、ま、く、て、
お、す、す、め、さっっ! ヘイ! ラ〜ラランラン、ランランランラン……♪」
そのアルプス一万尺の替え歌に、竜児はなんとか手拍子で加勢する。最後の、ヘイ! では、
一緒にコブシを突き上げたりしてみたりした……恥ずかしかったが、実乃梨と一緒なら、そん
な思いは、吹っ飛んでしまった。実乃梨は、竜児の持っていない部分を持っている。引き出し
てくれる。そこに竜児は惹かれている。そんな所も実乃梨を好きな理由の1つなのだ。
出来立てのスイートポテトには、行列が出来る。その行列がまた人を呼び込む。包装したり、
バッグに入れたり、忙しく動き回る実乃梨が輝き出す。それを横目に竜児の心臓も高鳴り出す。
寡黙にレジを打つ竜児は竜児で、『気難しそうな若いパティシエさんが自ら売ってるんだ……』
『あんな感じの新進気鋭の職人さんって、期待できそうよね』と上手く誤解されてくれた。
そんなこんなで、アルプスは稀にみる大繁盛をする。
***
4?
W
「♪スイ〜トポ、テ、ト、は、家までガ・マ・ン・だ、途中〜で喰〜たら、また買いなっヘイ!
ラ〜ラランラン、ランランランラン……♪」
……そんな感じで、客をこなしていく実乃梨。スイートポテトは、数分で完売してしまったが、
店主が追加を作り出して、待ちになり、ひとまず混雑は一段落する。
「は〜いっ、毎度あり〜! はい、じゃあ次のお客さんは、竜児くんね? よろしこっ」
無茶振りだが、振られたからには、なんとか男の意地を見せたい竜児。そこにホールケーキを
予約していた客が来た。ケーキを包装し、客に差し出したが、頭の中が、真っ白になる。とりあ
えず、唄わなくては……
「♪アルプス、一万円〜、預かりま〜した、お釣りは、ろくせん、ご、ひゃ、く、えんっ ヘイ!」
ラ〜ララン…♪ 竜児は、高らかに唄った……唄いながら自分の中で、何かが弾けてしまった
気もしたのだが、後悔はしなかった。いつの間にか緊張は解け、バイトって楽しいかも……そう
考え出したのかもしれない。唖然とした表情で帰る客を見送った後、実乃梨が竜児に一言。
「ひゅ〜♪ ナイスアドリブだぜ! 竜児くん! キレイにまとめるねえ」
パシンと、ハイタッチ。そこに聞いたことある声がふたりの耳に飛び込んで来た。
「あっれ〜? 俺、チミたちと、ソックリさん知ってるよ〜☆」
「い、いらしゃいま……おうっ! 違えよ春田っ! ソックリさんじゃねえよ。本人だ本人!
……それはそうと、なんでお前そんなにボロボロなんだよ……」
レジごとズッコケそうになる竜児の前には、能天気でおなじみの愛されアホ・春田がひょっこり
出現した。大河とのバトルロワイアルで、髪はボサボサ、顔には引っ掻きキズがチラほら……しか
し春田は、そんなことに構わず、ほんげ〜☆って感じで、コックコート姿の竜児をジロジロ、ニヤ
ニヤ観察している。
「ヤッホー! 春田くん、ずいぶん漢らしいツラになったじゃねえか! ケンカでもしたのかい?
てか、せっかくだから、なんか買ってってよ。ティラミスなんかどうだい?」
「どんも〜っ、櫛枝も一緒なんだ〜。やっぱ、高っちゃんとセットなんだな、ウヒヒ☆え〜っと、
何? ティラミス? チラ見っす〜、なんちゃって☆ これパンナコッタ? なんのこった?
うひょ〜☆」
「寒いぞ春田……遊んでんじゃねえんだ。つまんねえ事言ってねえで、買わねえんなら帰れ帰れ」
シッシッと、追い払おうとする春田の背後が騒がしい。『あの娘かわいい』『モデルかな?
背高いし』とか……竜児は思い出す。そういえばこのコンビも最近セットなんだった。
「あっはーっ! 誰かと思ったら、実乃梨ちゃんじゃないっ! 可愛い〜っ! すっごい似合
ってるよ? っそ〜だ、今度モデルの撮影くる? カメラマン紹介しよっか?」
春田と体育祭実行委員を務める無敵の美少女、亜美がいた。その亜美の一言に、えっ、そっか
な……と、本気で照れる実乃梨。超人気の美少女モデルに褒められればそりゃあ、実乃梨でなく
てもまんざらでもないだろう。竜児としては自分のことは別に褒めて欲しくはないのだが、
「川嶋もいたのかよ。それよりなんで俺を全力で無視しやがるんだ」
クルっとワザとらしく竜児に振り返り、亜美は人差し指を唇にあて、
「もう、高須くんったら、見なかった事にしようと思ったのにな・ だってぇ〜、実乃梨ちゃん
の前でホントの事いえないじゃない・」
春田も調子づく。
「めるへんちっくなお店なのに、なんか高っちゃんだけバイオリズム&サイレンスって感じ!」
「……バイオレンス&サスペンスじゃねえか? その間違え方、ずいぶん無理矢理だろ?
ってか、ひでえ悪口なんだが春田」
ケタケタ笑い出した亜美に、実乃梨がダメ押しする。
「あーみん、わたしのニュー待ち受け画面だっ! くらえいっ!」
「……え? 実乃梨ちゃん、何これ? ……ブッハー!」
「……おう。ちょっと、その画面見せろ。どんなふうに撮れてんだよ」
だめ〜っと、実乃梨は舌を出す。その仕草に竜児の恋心は、ズキンと跳ねる。許す。許してしまう。
そんなダラダラな店先には、カリスマ美少女モデルがいる訳で、再び人集りができるのであった。
気付いた亜美は写メは丁寧に断りつつ、「えー、よく気づいたねー・ 応援してくれて、みんなあ
りがとー・」などとうるうるチワワモード、愛想良く握手やサインに応じている。
スイートポテトも出来上がり、またも忙しくなる竜児と実乃梨。その最中、竜児がポツリ。
「さっきの写メ。撮り直さねえか?」
「ううん。わたし、この待ち受け好きっ! 自慢自慢♪」
……そんな事いわれちゃうと何も言えなくなるウブな竜児なのである。
***
「高須くん3日間、おつかれさまっ! いやー、助かったよ。はい、これ給料ね」
「いえ、こちらこそ短い間でしたが有り難うございました。今度は客として買いに来ます」
礼儀正しく深々と会釈する竜児。人生初のバイトは何事も無く任期を終え、持ち前の責任感
からなのか、それとも緊張から解放された安堵感からなのか、竜児の表情がニコリと和らいで
いる。あくまでも竜児にしてはだが。
「怖! ……しかし、君の彼女。え〜櫛枝さんだっけ? すっごいセンスあるよねえ。是非ま
たクリスマスにでも……おおっ、噂をすればナントやら」
「おっつ〜、竜児くんっ! もしかして丁度バイト終わったとこかね? グッタイミンじゃん
か! 一緒に帰ろーよ。でもなんか雨振りそうな天気だねぇ?」
今にも泣きだしそうな空の下。地上に降りた太陽のような眩しい笑顔を輝かせる実乃梨が、
部活を終えた後、竜児を迎えに来てくれたのだ。竜児はその燦々とした笑顔を全身に浴び、
体中の血流がグングン速くなり、みるみるうちに疲れが解消していくのを感じるのであった。
コックコート姿も見納めか〜っと、名残惜しそうな実乃梨に照れる竜児。そこに店主は奥から
スカイブルーの傘を持ってきて、二人に差し出した。
「1本で良いよね、傘。帰りに雨に降られそうだから、これ使ってよ」
***
「実乃梨っ……思ったより分厚いんだが、これ……給料袋」
手にしていた給料袋の中身を確認する竜児。たかが三日のバイトで、この金額はない。もし
かしたら、泥棒の撃退分も加味されているのかもしれない。実際に撃退したのは実乃梨なのに。
「おおっマジだ。すっげーよ! 竜児くん頑張ったもんね! ありがたく頂戴しようよっ」
商店街を抜けた国道沿いの歩道を、竜児と実乃梨は寄り添って歩いている。アルプスの店主
から借りた傘を、実乃梨はステッキのようにクルクル回していた。
「実乃梨にも、半分渡すよ。手伝ってくれたし」
「え? い〜よ〜! わたしが手伝ったの初日だけだし、もともと勝手にやった事だしね」
「そんな訳いかねえよ。店主さんも、その分、増やしてくれたみたいだぞ。ほら受け取ってくれ」
うーん……と、額に手を当て、実乃梨は少し考え、
「じゃあさ、そのお金で、パ〜っと、一緒に遊びに行こうよ! ね、そうしよ?」
「そうか?……そうだな、パ〜っと……おおうっ!!」
「わわっ!お札が!」
突然の強風で、封筒から頭をだしていたお札が数枚、車道にばら撒かれてしまった。実乃梨
は、鋭い反射神経でパシッと一枚掴むが、取り損ねた数枚が、国道の中央分離帯まで飛んでい
ってしまう。飛んでいったお札は、中央分離帯の植え込みの枝に引っかかる。
「うわ……あんなところに。信号変わったら取りに……ありゃ、雨だ」
ポツリと、一粒。脳天に雨の雫が落ちてきた。しかし二人は信号が変わるやいなや、雨に構わ
ず、走って横断歩道を渡っていく。実乃梨はセンターポールの裏、竜児は植え込みのお札に向う。
「一枚ゲッ〜ツ! はぁ〜危なかった! 竜児くん、そっちはどお?」
「おうっ、取れたぞ。あ、信号変わっちまう」
お札を拾っていた二人は、無人の中央分離帯に取り残されてしまった。そして無情にも、雨足
は強くなり、容赦なく二人の制服の色を濃くしていく。
「傘、傘! スゲー降ってきた! ほらよっ竜児くん! 入ってくんなまし!」
大粒の雨は、スカイブルーの傘に当たり、バラバラ派手に音を立てる。傘を差す実乃梨の元へ
駆け込んだ竜児は、走り込んだ勢いでつい、ドンッと、抱きついてしまうのだった。ワザとでは
ない。ワザとではないのだが、そういえば、こんな事……前にもあった……そう、竜児が実乃梨
に告白した時。あの時もそうだった。
「おふっ! 竜児くん、いらっしゃ〜い!」
「だ、大丈夫か、実乃梨。ぶつかっちまった。すまねえ……」
初めての、相合い傘。なんとなく抱きしめ合ったまま、二人は動けなくなる。もう少し、この
まま、抱き合っていたかった……抱きしめたまま、愛愛傘の中で……竜児は一度、預けていた胸
を放し、実乃梨を見つめる。大きな瞳が潤んでいた。どうしようもなく愛しさがこみ上げる。
「……実乃梨……俺たち、付き合ってるよな……」
「……うん、そうだぜ……付き合ってるんだぜ……」
ゲリラ雨だろうか。雨はさらに強くなり、豪雨となる。雨に遮られた二人の視界は次第にボヤ
け、周りが見えなくなっていく。二人だけの世界。狭い傘の中で、二人は互いの体温を、胸のド
キドキを、感情を確かめ合う。
「お、俺、お前が好きだ」
「わたしも好き……もう、竜児くん……いつも突然なんだからっ」
そう言うと実乃梨は、竜児を見つめていた瞳を、長い睫毛をゆっくり閉じたのだ。竜児は、唇
をつぼめ、少しずつ、実乃梨に接近していった……のだが。
カチン!
「いったいっ! 歯が当たった! 歯!」
「ってえっ!……脳に、響くな……す、すまねえ、もう一度……いいか?」
「クススっ、うん……竜児くん……何度でも。しよ」
竜児は実乃梨の腰に手をまわし、今度は優しくキスをした。
チュッ……
甘い、最初で最後のファーストキス。重なり合う唇は互いに震えている。しかし竜児は、一歩踏
み込んだ。実乃梨は、差していた傘を手放し、竜児の首に両手をまわす。傘は車道へコロコロ転
がり、走っていた車に急ブレーキを踏ませ、止まった車はクラクションを鳴らしたのだが、ずぶ
濡れの中、抱き合う二人を見ると、なにも言わず、走り去っていった。そのまま絵画のように長
いキスをする竜児と実乃梨。二人が発する熱は、雨に濡れた制服から蒸気を出させる。
信号は青に変わり、通行人たちはチラ見しながら、時には冷やかしながら、若い恋人たちの横
を通り過ぎていく……
──そして、その交差点の周りには、まるで実乃梨の望んだお花畑のように、通り過ぎる人々
のキレイな傘の花が、パッ、パッっと、あたり一面に咲きほこるのであった。
以上になります。
支援有り難うございました。また投下に時間かかって申し訳ございません。
お読み頂いた方、有り難うございました。
次回、スレをお借りさせて頂くときは、エロシーン(みの☆ゴン外伝2)を投下させて頂きたいと
存じておりますが、投下につきましてはまた、様子を見させて頂き、判断させて頂こうと存じます。
またこの時間帯をお借りするかもしれません。
失礼致します。
みのりんとくっつくのはぜんぜんOKだが
タイガーやあーみんが他のキャラとくっつくのはイヤでござる
ふしぎ!
誰と誰がくっつこうが構わんが話が無事に完結するか不安
GJ
9Vさんは未完が無いから安心出来る
誰かさんみたいに完結させる気もないのに、思いつきで投稿されると迷惑だよな
内容にしても、一部の奴が異常にもてはやしてるだけで、俺はあんまり面白いとは思わない。
というか、シーンの省略が多くて読みにくいし、酷い時は会話文だけとか……
面白くないんだったら読まずに黙ってスルーすりゃいいのに
スルーしたいんだが、いちいち鼻につくんだよ
大体、半分は甘やかしてるお前らのせいなんだから、責任取れよな
文の質及び量が一定の水準に満たない方は投下を控えて下さい。
ってハッキリ言ってやった方が本人の為だろ。
それじゃ一定の水準ってのが曖昧だよな
てか投下された直後にやれ、他作品の投下の後に今更書くな
悪口や誹謗中傷なしで改善点を普通に書け
俺は同じ事思って既にあぼんしてる
テンプレに一言添えとくべきだろと思う
1人のクズ作家にスレ全体が掻き回されるのはダメだろ
自演なのか、文盲信者が居るのかは知らないが、他作品を跨いでのGJがウザイ事この上無い
以前、一時的にスレが荒れたのも元はと言えば奴のせい
本人は否定していたが、2つのトリップを使い分けている疑惑もあるしな
クズ作家とか書いてる時点で、必要無いのは君のレスってのは全スレ共通
>>278 流石にアホ丸出しだな。
他人を屑呼ばわりするのは快感かもしれんが、鏡に映った自分の姿は見られたもんじゃないぞ。
よせ。からむとムキーーーーってなるからそっとしとこう。
可哀相な子には優しくしてやれ。
だから、お前らがそうやって庇うから荒れるんだろうが
本当の事を言って何が悪い!?
まあ、どれだけ荒れてもあの作家はいつも完全スルーで知らんフリなんだがな。
で、落ち着いた頃にまた出てくるから性質が悪い。
お前の事で揉めてるんだから、顔出して謝罪しろよって話。
とにかく、他の真面目に書いてる作家の為にキチンと断罪すべきだろ
揉めたら作者が出てきて謝罪しろっておいおい……
どこまでモンスターなんだか。
>>283 庇ってるつもりはない
お前の人間としての器があまりにも小さすぎるだけ
それがこのスレを荒らしている原因にもなっているんだが、一度お前自身を少し客観的に眺めてみる事を勧める
以上俺の自演でした
>>283君の発言が荒らしになってるってみんな言ってるんだから
君が書き込むのを控えるべき
むしろ君の方が定期的に現れる荒らしと認識される発言してるし……
嫌な作品はスルーってのが暗黙の了解というか当然の行為だろ
この板にいるってことは、作家さんゃシチュを見て読む、読まないの選択ぐらいできる年齢だろ?
君の発言で新人作家さんまで投稿を渋ったらどうする?
それが大作でも、言われるのが嫌で投稿しなかったらそれこそスレの損失だろ
自分の意見を言うのも大事だが空気を読むことも大事だよ
文句→アドバイスにすれば尚良し
長文スマン
なんだまたいつもの流れかと思ったら違うじゃねーか!
オラwktkが止まらねーだ!!!
まあ、誰かさんを特定して名指しした訳じゃないのに、皆、話が成立するんだから、本当は皆、心の中でどう思ってるのかがハッキリしたな
誰かさんもこの流れじゃ出るに出れないだろうから、しばらくこのスレは快適になるな。良かった良かった。
だって話が成立するのは君という明確な荒らしが存在するからなんだよ
いかに君が特異な存在かを認識するべきだと思うが如何か
続きは場外乱闘にでも行ってやれ
無駄レスを使いやがって
クズ作家がいるなら、この喚いてるお子様はさしずめクズ読み手ですな
文盲にも解る様に書いてやるよ
以下の作家は投下禁止
・文章が稚拙
・情景描写が書けない
・短文しか書けない
具体的に言えば、正統派の長文を書く実力が無いから、会話文、日記形式、時間遡行等の誰でも思いつく様なネタで、
自分の文才の無さをごまかして作家面する様な奴
ところで句読点すら満足に使えないのは文盲の定義に当てはまると考えるがどうよ?
。のない作者って今まで見かけないんだがw
>>273>>275 思い付きだろうがなんだろうが
投下してくれるだけでブラボー!だぜ
面白ければ快哉を叫べばいいし、つまらなければスルーすればいい
そんだけ
公共の便所で下痢便垂れんな!きれいな一本グソ以外は周りの迷惑だ!
って感じだね。
>>294 aAtaLSmKはリアル文盲+池沼なんだから勘弁してやれや!
気に入らなきゃブラウザいれて見ないようにしてればいいのに…
おれ自分の興味がさほどない娘のは読み飛ばすぞ
文盲にも解る様に書いてやるよ
以下の読み手はレス禁止
・文章が稚拙
・まともな批評、感想も書けない
・作品に対する批判だけでなく、すぐに誹謗中傷をおこなう
はあ、ここの読み手はレベル低すぎだな
読み手がこれじゃ頑張って長文書いてる作家がバカみたいだわ
お前らはあのレベル低いSSにバカみたいにGJしてれば良いや
全員が批判するにしてもクズとか言ってんじゃねぇって言ってるのに
今だに庇ってるとか(´・ω・`)
ふーんw やっぱり句読点打てないんだ・・・
朝鮮版パクリOSだと。が打てないのはハン板だと常識なんだが。
これから打ってもコピペだろうから無理しなくていいよ。
ま、ファビョっぷりだけでどこの国の人間か良く分かるしね。
OK。じゃあバカみたいにGJして楽しんでるから。
君は君で、レベルの高い作品でも書いてて下さい。
以前はあの作家叩くと賛同者が何人か付いたもんだが、やはり読み手の質が落ちたのは間違い無いな。
あなたのことですね、わかります。
なのでいい加減黙っていて下さいな。
aAtaLSmK さん。
書き込みの内容に、典型的な『自己愛性人格障害』の特徴が見られます。
なかなか自分では気がつかないものですが、ストレス障害から他の神経疾患に
発展する場合があるので、専門医に相談したほうがいいと思います。
ただ、確率的には統合失調症など深刻な適応障害を併発することは稀なので、
あまり気に病む必要はないかもしれませんが…。
老婆心より、ついマジレス。 失礼しました。
賛同者がいても、明らかに幼稚なレスでのっかる気にもならないんだろうな
早く平和にならんかな〜
書き手さんにとっても投下しづらい空気だし
>>307 このスレでは措置入院がええんとちゃう?
もう発症してるし周りに迷惑かけまくってるし。
文句があるなら、まとめサイト更新→新作読む
を繰り返せばいいと思うよ。
ここに来る限りは、君のレベル(笑)に合わない作品が投下される可能性はあるんだから。
以下荒らしはスルーで
伸びてると思ったらまたKYがわいてるのか。
前から定期的に湧くよなこの構ってチャン。
その社会適応力の無さは凄い。感心する。
どんな甘やかされ方したらこんな歪んだ性格になるんだろう?
314 :
◆..4WSlv9x6 :2009/11/17(火) 02:25:24 ID:bwIij53+
なにやら空気が険悪ですね。でもそんなの関係ねぇ!と言うわけでSSを
投下させていただきます。以下の点についてご注意ください。
1このSSは続編ものです。初めての方は保管庫の補完庫で
「すみれ姉ちゃん」1,2を読んでからお読みください。
2この作品はとらドラ!のIFストーリーです。兄貴と竜児が幼馴染と言う
設定です。
3キャラの崩壊があります。
4三人娘がほとんど出てきません。
2〜4の項目が苦手な方、読んでいて不快に感じた方はスルーしてください。
以上のことがOKな方は次レスからどうぞ。
すみれ姉ちゃん第3章
……素晴らしい…素晴らしすぎる……圧倒的じゃないか!!
「ふっ…ふふふ……クククッ……すげぇ、すげぇぜこいつは…俺は、とんでもない代物を手に入れちまったみたいだ。」
にやけっ放しの面、この台詞、そして認めたくないがギラギラと狂おしく光る三白眼。これだけを見れば俺は危ない
クスリを打ってヘヴンな状態の男にしか見えないだろう。しかし、それは否、断じて否である。
「何時もより多めに買い物したのに……使った金額がさほど変わらない……このカード、噂以上だ。」
両手で掲げるカードの真ん中には「かのうや従業員専用カード」の文字。このカードを提示すればどんな商品だろうと
二割引され、そしてそれが何回であろうが使えると言う、主婦にとってはまるで夢のような代物である。
カードをニヤケ全開で眺めていた時、
ヴーッヴーッヴーッ
「っぉおう!?」
机の上の携帯がバイブレーションしていた。何度あってもあれには慣れない。フリップを開き通話ボタンを押す。
あ、相手誰か確認すんの忘れた。
「えと…もしもし?」
「よう、竜児」
凛とした女性の声、そして俺の呼称、この二つを総合し、導かれる人物は…
「何の用だ、姉ちゃん?」
狩野すみれ、生徒会副会長、そして俺の幼馴染、もとい俺の姉的存在だ。
「明日の昼についてだ。」
ああ、店の中で話したやつね。
「んで、場所はどこにしたんだ?」
「屋上だ。明日は晴れて日差しも暖かいだろうしいいと思った。」
そういや天気予報でそんなこと言ってたな。
「分かった、腕によりをかけて作るから期待してろよ?」
「ほう、随分と自信たっぷりじゃないか。期待して明日を待つとしよう。では、また明日。」
「おう、おやすみ、また明日。」
ふう、さて、どうしてこうなったんだっけ?
たしか姉ちゃんが俺に料理の腕前が上がったかを聞いて、それに俺は自分自身じゃわからんと答えた。
うん、そこまではOKだ。問題はその後だ。
それで姉ちゃんが明日私の分の弁当を作れ、そして一緒に食べようと言ったんだ。
弁当を作るのはこの際良い、何故一緒に食べるんだ?別に朝渡して帰りに感想を聞くでもいいんじゃないか。
そう考え指摘しようとしたが、時既に遅し、話が決まってしまった。
全く、どうしてこうなったんだ。………まぁ、いいや。姉ちゃんと一緒に飯なんかほんとに久しぶりだ。
楽しみじゃないわけが無い。それに今あれこれ考えても仕方ない。風呂に入って寝るとよう。
******
四時間目のチャイムが鳴り授業が終わッたこと告げる。
号令係が起立、気をつけ、礼と号令をかけ、教室は昼休みモードへと移行する。
背筋を逸らす、これが中々に気持ち良い。さて、屋上へと行きますか。
ギイ、と音を立て屋上へとつながる扉は開いた。姉ちゃんはまだ着てないらしい。
暫く待つか、それにしても良い天気だ、コンクリートも暖められていて良い感じに暖かくて気持ち良い。
こうやって座ってボケーっとしてると寝てしまいそうだ。
…………
「悪いまたせたな。」
「んん、あ、ああ、姉ちゃん……」
少し寝ちまったみたいだ。
「授業が中々終わらなくてな……ってお前寝てたのか?」
「ああ、少しだけな。」
「まあ、こんな天気じゃあ仕方ない。まあいい食べよう。」
「おう、ほら姉ちゃんの。」
昨日渡された弁当箱を渡す、そしていざ自分の分を開けようとした時、
「おいちょっと待て。」
「ん、何だよ、食わねぇのかよ。」
なんとなく不機嫌そうに言ってみた。
「いや、そういう訳じゃなくてだな、その、なんだ、あそこで食べないか、良い景色だぞ?」
姉ちゃんが指した所はちょうど先程上ってきた階段の真上に位置するところだった。※
「まあ、別にいいけどよ。」
「よし、さっさといくぞ。」
「……………」
「な?良い景色だろ。」
あまり見慣れない光景に思わず見とれてしまった。
「ほら、早く食わないと昼休み終わっちまうぞ。」
はっ、そうだそうだ早く食わねば、
「お、おうそうだったそうだった。」
「では。」
弁当を開き、両手を合わせる、そしてどちらからとも無く、
「「いただきます」」
※注釈:文章では分かりにくいですが、アニメで北村が大河に告白した後、兄貴が登場した所です。
「ごちそうさま、あーっ食った食った。」
………こういう男っぽさが「兄貴」と呼ばれる所以なんだよなあ。本人は無自覚みたいだけど。
「お粗末様、んで味の方はどうだった?」
正直言ってかなり気になる。姉ちゃんがしたリアクションと言えば最初の一口で目を見開いたぐらいだ。
「美味い!」とか、「この弁当は出来損ないだ、食べられないよ。」とかせめて簡単な批評が欲しかった。
「んー、そうだな、青は藍より出でて藍より青しって奴だな。」
アオ?アイ?何だそりゃ。
「知らないのか?簡単に言えば師匠を超えたってことだよ。」
「えっ、それってまさか……」
「ああ、悔しいが同じ料理でも私はここまで美味くは作れない。負けたよ。」
実感が涌かない。料理を姉ちゃんに教えてもらって以来特に何も特別なことはしていない、
それなのにいつの間にか姉ちゃんを追い越していた。雲の上の存在だと思っていた姉ちゃんを追い越していた。
「どうした?もっと喜んで良いはずだぞ?」
「いや、違うんだ、実感が涌かないだけなんだ。」
「そうなのか。……よっと、あー日差しとコンクリートが程よく暖かい。このまま寝ちまおう。」
この生徒会副会長、堂々と午後の授業放棄を宣言した。これでいいのか?大橋高校。
「飯食ってすぐ寝ると牛になるぞ。つーか堂々とサボりを宣言すんなよ。」
「美味い飯を食ってこんな良い天気中寝られるなら牛になっても私は構わない。」
それはひょっとしてマジで言ってるのか?でも確かにこれは気持ちよさそうだ。あー、何か眠くなってきた。
………寝ちまおうかなー
「何だよ、そういうお前も寝るんじゃないか。」
「なんか俺も眠いんだよ。それに次の授業古典だから授業に出ても結局寝そうなんだよ。」
「先生ー、一年C組の高須竜児君は授業をサボるようでーす。」
間延びした声、いかにもふざけて言ってる感じだ。
「姉ちゃんが今言って良い台詞じゃねーぞー。」
俺も同じように返す。のんびりぽかぽか平和な時間。こういうのも悪くないなー
そう思っていた。そうであって欲しかった。
ガチャ、バタン!!荒々しく閉められた。思わず起き上がりドア付近を見る。横を見ると姉ちゃんも
同じ様にして下を見ていた。ドアから現れた者、それは、一言で言えば小さかった。
ふわふわしたのロングの髪、華奢な体つきで押せば倒れ、割れてしまいそうな繊細さがあった。
「………ッ!」
やばい気づかれた、二人で慌てて腹ばいに伏せる。ああこっち睨んでる、怒ってる。でも、なんて言うんだろうな、その、
(かわいいな、あいつ。そう思わないか?竜児。)
(ああ、俺もそう思った。フランス人形って感じだ。)
緊張感に欠けた会話を繰り広げた。それにつられたかどうか知らないがこちらを睨んではいなかった。
ふう、と息をつく。全身の筋肉からも力が抜けるのが分かる。
あの目は狩る者の目だった。なんで一介の女子高生が殺気を発してるんだ。一体何があったんだ?
あ、大変なことに気付いちまった。
(なあ、姉ちゃん大変だ。)
(どうした竜児?)
(ここから降りれなくなった。)
(?見つからないように降りればいいだけじゃないか。)
(んなスネーク見たいな事俺に出来ねーよ。)
「ヒイッ」
しまった、この人蛇が名前も聞くのが嫌なくらい蛇が苦手だったんだ。でもまさか英語も駄目とは思わなかった。
「そこにいるのは………誰じゃあああああいっ!!」
oh my god マジでばれちまった。さて、どうしたものかなーアッハハハ。
「俺だ、しかしよく気付いたな。」
そうだよ俺だよって……アレ?誰だ、あいつ。
あの坊ちゃん刈り、眼鏡、どっかで………あ!俺のクラスの北村だ。でも何故ここに?
「あなたはキレイだ!」
ゑ?告白?今の、さっきの。
「気持ち悪い!」
女子が北村に右ストレートを繰り出した。けど鼻先で拳がとまる。無風のはずなのに北村の髪が揺れた。
寸止めって奴だ。達人クラスなると失神できるらしい。この女子の寸止めはそこまで行かないものの、
北村をへたり込ませていた。へたり込んだ北村は嬉しそうな顔で立ち上がった。
「いい!そのストレートなところに惚れた!」
すげえ、フられてもまた告白した。普通なら逃げ帰るはずなのに、そこでまた惚れたといった。
………俺には真似できそうにねぇなあ。
「死にさらせぇい!」
北村の脇腹に右フックが綺麗に入る。うずくまり呻いてる北村に一瞥をくれてやり、その女子は屋上から出て行った。
ひどいふられ方だった。自分だったら御免被りたい。でも少しうらやましいと思う。ひどいひどいふられ方とはいえ、
ちゃんとフられたんだ。俺みたいにじゃなく、ちゃんと………
(なあ、姉ちゃん)
(なんだ?)
(あんな風にフられるのと答えをはぐらかされてよく分からないまま終わるのとどっちが辛いと思う?)
(あいにく私は誰かから告白されたことも、したことも無いから分からん。)
姉ちゃんらしい答えだと思った。でも今俺が欲しい答えはそんなものではない。
(おい竜児、あの眼鏡を生徒会に引き込むぞ。)
(はあ?北村を?何で?)
(ほう、北村と言うのか。竜児、耳を貸せ、協力してもらうぞ。)
(……それまじでやんの?)
(当たり前だ、ほら、やるぞ。)
…ええいままよ!
「そこの新入生!悪いがすべて見させて貰ったぞ。」
二人一緒に立ち上がり腕を組み、下を見下ろす。正直恥ずかしい。
「あ…あなた達は…」
北村が俺達を視認し動揺する。すまん、許してくれ。
「ん?私達か?私達はなぁ……」
「通りすがりの!」
「せっ…生徒会だ!」
………………空気が死んだ。
「いや、っていうかあのー生徒会の副会長さんとうちのクラスの高須君ですよねぇ?」
折角のきめ台詞が台無しになってしまった。あ、姉ちゃんの顔が少し赤い。
「ま、まあそれはそれとしてだ。お前、ふられてたよな、だが安心しろ、お前の学校生活は始まったばかりだ。
これからいくらでもなる。だから生徒会に来い!お前が傷心するヒマが無いくらいに忙殺させてやる。」
北村はポカンとしていた。それもそうだいきなり生徒会に入れと言われたんだ。無理も無い。
「放課後、生徒会室に来い、できれば後一人連れて来い!いいな!」
「は、はいい!」
「よし、行くぞ竜児。」
「お、おおう。」
弁当箱を引っつかみはしごから下り、階段へと向かう。
階段を下りてる途中、後ろから男の笑い声が聞こえてきた。
「姉ちゃん、聞きたい事が二つ。」
「何だ、今日のお前は質問ばっかだな。」
「何で北村を入れようとしたんだ?」
「生徒会の人数が少ないってのが一つ。」
確かに現在の生徒会は俺含め三人、あまりにも少なすぎる。
「後他に何かあんのか?」
「ああ、あいつが面白そうな奴だったからだ。」
面白そう、そんな理由とは思わなかった。肩透かしを食らった気分だ。
「まあいいや、後一つなんだが、忙殺ってもしかして……」
「ああ、お前もだぞ、夢に見るくらいに事務仕事をしてもらうぞ。」
ハハハ、俺の場合マジで忙殺されそうだ。
「じゃあ姉ちゃん俺はここまでだ。また放課後に。」
「ふふふ、期待して待ってろよ?」
あくまでも期待しとくよ。
放課後、生徒会室へと向かう。北村は来るのだろうか。
「失礼しまーす。」
中には会長一人だけだった。
「やあ、高須くん。」
この広い部屋に一人でいたのかと思うともう少し早く着けばよかったなと思った。
「会長、新しい生徒会役員二人を連れてきた。」
がらりと引き戸が開け放たれて姉ちゃんが登場した。
二人ってことは北村とあと一人いるのか。
「へえ、まさかまた買収したんじゃないよね?」
「まさか、普通に勧誘しただけだ。」
あれが普通なのだろうか果たして
「ほら、二人とも入って来い。」
開け放たれたドアから北村ともう一人男子が現れた。
「こんにちは、君達が新しく生徒会に入る二人かい?」
柔和な顔で二人に話しかける。その問いに二人は「はい」と答えた。
会長はほっとした、といったような顔で「ありがとう、そしてようこそ、生徒会へ」と二人に
歓迎の意を示した。
「あ、ありがとうございます。1年C組の北村祐作と言います。どうかよろしくお願いします。」
「え、えと僕は1年A組の村瀬といいます。よろしくお願いします。」
「うん、よろしくね。じゃあこっちも紹介しなきゃね。」
何か俺の時よりすんなり進んでいるな。俺がゴネすぎただけか?」
「まずは僕から。っていってもさっきの会話を聞いてれば分かると思うけど僕が会長だ、
分からないことがあったらどんどん聞いてね。」
「次は私だな。私は狩野すみれ、生徒会副会長だ、お前達のサポートはできる限りやっていくつもりだ。よろしく。」
さて、次は俺の番だ、何を言おうか。
「えーと庶務担当の高須竜児です。俺に関する噂は多分ほとんどがデマなんで鵜呑みせず接してくれるとありがたいです。
えと、一緒にがんばって行きましょう。」
これぐらいしか思いつかなかった。
「よーし早速だがお前らに仕事だ。」
姉ちゃんは期待してろと言った。どんなものが出てくるんだ?
「これらの資料を今月中にまとめて欲しい。」
姉ちゃんが指差すところには三つのダンボール。そしてその中には膨大な資料。
横の二人を見ると唖然としていた。当たり前の反応だ。
まじで過労死は嫌だぜ?姉ちゃん。
続く
以上で投下を終了します。
ここでお礼を一つさせていただきます。前回の投下後、たくさんの
GJをいただきました。ありがとうございました。
さて、次回なんですがいきなり夏休み編に入ろうと思っています。
次回の予定は未定ですが今月以内には投下したいと思っています。
最後までお付き合いありがとうございました。
GJ!
読んでてふと思ったのがさくらはこの後に出てくるのかな。会長と幼なじみなら絶対に会ってるだろうし、さくらからは兄さんみたいにみられてるのかなぁ
姉妹丼フラグ…だと…
待ってましたよ!GJ!
無駄な描写シーンが多いのが気になります。推敲して書いたらもっと面白くなると思います。まとめる力をつけて下さい。
なんで上から目線なの?
バカなの?死ぬの?
GJでした〜
ID:aAtaLSmK 自分で書いてみろカスが
読んでやって、批評してやったからだよ。
妄想オナニー文の垂れ流しで気取ってんじゃねぇるハゲ
気取ってんじゃねぇるハゲ
ねぇるw
ただのタイプミスにこの食いつきっぷり、圧倒的にレベルが低くて、むしろ哀れですらあるな。
自分で何も書けない評論家気取りの池沼が喚いているスレはここですか?w
332 :
名無しさん@ピンキー:2009/11/17(火) 19:29:25 ID:LPESCPN0
おまいら荒らしの対処方法も忘れたのか?
いつの間にか2ちゃん初心者しかいなくなっちまったのか?
餌をやるな。それだけだ。
良き批評家が良き作家である必要はない
こんな事も解らないのにホントに成人なの?
334 :
331:2009/11/17(火) 19:41:12 ID:H2Ka1Kip
スマン、ミスったw
×池沼
○池沼なぇるハゲ
プ・・2行越える文章が作れない上に句読点が使えない
厨二病評論家ぇるハゲ先生ねw
ぇるハゲといういかにもな表現にワロタw
さっさと焼そばバン買ってこいぇるハゲ!
なんか面白い事になってる
これはこれで愉快。
だがこのままだと投下無いぞ?誰得??
病人はそっとしといてあげようねぇるハゲ。
ここは誤爆でSSが出来るスレだ、誤字からSSが出来るやもしれねぇるハゲ
春田「亜美は俺のモノだから。nell」
木原「もしかしてallって書こうとした?」
そこまで言うなら仕方ないから俺も久しぶりに何か書くよ。
バイオ板に居座っていたキ○ィと同じようなのが沸いてるな・・・何はともあれ投下乙です。兄貴元気すぎw
アミ「練れば練るほど色が変わって?」
大河「てーれってれー♪」
春田「おれっち思うんだよね〜。SSが投下されるってすごいことなんじゃなーい?ねぇる高っちゃーん?」
高須「確かに、まったく投下されることのない所があることを考えると、頑張って書いて下さる人には感謝感激だな。てか、ねぇるってなんだ?」
北村「アレじゃないのか、高須?ほら、ねるねるねるねだ。」
高須「なんつー懐かしいモンを……。てか何故ねるねるねるねなんだ?」
春田「さぁ?でも、うまいよなぁ、greap味。」
能登「お前今でも食ってんのかよ?てかgreapってなんだよ、grapeだろ……。」
放課後、狩野屋にて。
大河「りゅーじ、ねるねるねるね食べたい!」
竜児「!?」
おい、書きながら投下か?
それはスレを荒らすだけだから。自粛しろ。
いや、これはただのネタだろw
いや、小ネタだろ
356FLGRです。
「きすして5」が書き上がりましたので投下させていただきます。
概要
「きすして4」の続編です。「2」「3」「4」の既読を前提としております。
未読の場合、保管庫の補完庫さんで読んでいただけると嬉しいのですが、結構な
物量なので長いのはダメってかたは華麗にスルーしてください。
基本設定:原作アフター
基本カップリング:竜児×大河
本作独自の人間関係(きすして4まで)
奈々子→竜児
大河は母親と弟と同居している。新パパは仕事の都合で別居中。
北村祐作は狩野すみれへの恋を終わらせている。(きすして3B)
大河の親権は大河の母に移っているが新パパとの養子縁組は実家の反対
により頓挫。(きすして4)
このため大河は逢坂大河のままで母親とは別姓。
注意事項:シリーズ全体としてシリアス傾向です。
奈々子については二次創作補正が強くかかっております。
大河の母についてはほとんど情報が無いので完璧に創作です。
次レスから「きすして5」の投下を開始します。
時期は高校三年の十月初旬。今回はエロなしです。
今回も結構な物量(47レス)になっております。
まずは前半24レス分の投下を開始します。
規制とかで中断するかも。
文化祭を翌日に控えた大橋高校は、その準備の喧噪と祭りを控えた浮ついた雰囲気と
でちょっとしたカオス状態だった。とはいえ、校長室はそのカオス空間とは完全に隔絶
されており、その室内はまったくもって静かな物である。その静寂空間のドアが開かれ、
招き入れられたのはスーツ姿の若い女性だった。
すらっとした細身の躯。ダークグレーにストライブのパンツスーツ。襟の広い純白の
ブラウスに緩く巻かれた光沢のあるシルバーグレーのネクタイ。ブラックのローヒール
パンプス。腰まである漆黒のストレートヘア。そして、整った精悍な顔つき。
前生徒会長にして伝説の中退者。狩野すみれだった。
すみれが帰国するのは約一年ぶりだった。結局、渡米してからこれまで一度も帰国し
なかったのだ。理由は節約、それだけである。そうは言っても一年に一度ぐらい帰って
来いと両親に懇願され、すみれはハイシーズンを避けて三泊五日という強行日程で帰国
したのだ。そして母校に報告がてら挨拶しに来たところ、元担任につかまり、生徒会顧
問につかまり、教頭につかまり、なんだかんだで校長室に連れてこられてしまったのだ。
すみれは教師達にアメリカでの日々を報告し、教師達はいちいちそれに驚嘆感嘆する
ばかりであった。中退扱いとはいえ大橋高校が輩出した才媛、VIP待遇である。お茶
も出ればお菓子も出る。もっとも、当のすみれにとって、それは居心地の良い物ではな
かった。ソファーに腰掛けて話すすみれを大勢の男性教諭が取り囲み、彼女の一言一言
に感嘆している様子はどう見たって異常であり、お茶汲みをするハメになった恋ヶ窪ゆ
りから見ればそれはもうセクハラにしか見えないのだった。
すみれはそんなセクハラ地獄…もとい、手厚い歓迎を半ば無理矢理お開きにさせて校
長室を後にした。すみれには他に用事があったのだ。現在時刻は十五時二十分、文化祭
のオープニングイベントが始まる十六時までに用事を済ませるべく、狩野すみれは高須
竜児がいる理系選抜クラスへと向かっていた。
***
高須竜児はクラス展示の準備を一時間程前に終えて文系選抜クラスの教室でまったり
と過ごしていた。理系選抜クラスの展示は文系選抜クラスとの合同展示でお題は写真館。
選抜クラスは一般クラスより人数が少ないので負荷軽減ということで合同展示になった
のだ。さらにこの展示は一年あまりのブランクを経て復活した女子写真部との合同展示
でもある。
地味な展示なのだが、普通の撮影の他に貸衣装もあるというのがこの写真館の特徴だ。
客は好きな衣装に着替えて写真部に撮影してもらいその場でプリントしてもらえる。普
通のプリント以外にシールも作れるしメールで携帯電話に送る事もできる。さらに画像
データを収めたCDも購入可能。衣装の方も集めれば集まるものでスーツは男物、女物
各種、ドレス、迷彩服、着物、浴衣、体操着、全身タイツなんてものまである。勿論、
各サイズの制服もとりそろえた。小物は帽子、眼鏡、アクセサリー類、ウィッグ、靴も
各種。秘密兵器、というか主力兵器として川嶋亜美の等身大パネルなんて物まである。
そんなクラス展示のために竜児が仰せつかった役割は繕い物だった。集まった衣装は
基本的に古着だから破損しているものも多かったのだ。それを休み時間や放課後にチマ
チマチマチマと補修したのだ。女子に混ざって毎日毎日である。それはもう大変だった。
大河の機嫌が大変だったのだ。
やれ、今日は違う女の匂いをさせてるだの(させてねぇよ)
鼻の下が伸びているだの(のびねぇよ)
こんな可愛い彼女がいるのに浮気三昧だの(浮気なんてするかよ。お前可愛いし)
もう、本当に言いたい放題だったのだ。しかも、そういう事を竜児の左手をしっかり
握ったままで、仲良く手をつないだまま、ブツブツブツブツブツブツと言うのだ。そん
な日々もやっと今日で終わりである。
ともあれ、衣装の直しも無事終わり、お役御免となったお裁縫部隊はオープニングま
での時間をのんびりと過ごしていた。スタジオやらフィッティングルームの建て込みは
まだ続いていたのだが、システマティックに仕事をしているところには手が空いたから
と言って入り込む余地はなく、竜児は持ち分の仕事をやり終えた同級生に混ざり教室で
時間をつぶしていた。
そんなのんびりとした雰囲気の教室に、
「じゃまするぞ。高須はいないか?」
不意に女の声が響いた。
教室の出入り口に腕を組んで立っていたのは、狩野すみれだった。
途端に教室はざわめき出す。
「アニキだ」「高須だってよ」「宿命の対決か〜」「おお、リベンジリベンジ」
そんな、喧噪に引きずり出されるように竜児はすみれの前に立った。
「なんですか?」
「ご挨拶だな。ちょっと話せないか。大して時間は取らせない」
すみれはそう言って教室の外を指差した。
「いいですよ」
「こっちだ」
言われるがまま、竜児はすみれの後に続いて教室を出た。すみれが何を話すつもりな
のか竜児にはまるで想像がつかなかったが晒しものの様になっているのも癪だった。
すみれはそんな竜児を引き連れて廊下をつかつかと歩いていく。ビシッとスーツを着
込んだアニキとヤンキー高須の行軍である。もう、画的には『極道の妻たち』、姐さん
に付き従う若頭みたいな事になっている。その迫力に廊下の生徒が割れて道ができる。
歩きやすい事この上ないのだが、竜児的にはやっぱり微妙な気分だった。二人は階段を
上がっていき、屋上の手前の踊り場まで来た。
「ここでいいだろう。ん、前にここでお前と話しをしたことがあったな」
「ええ。しました。よく覚えてますね」
「バカにするなよ。あんなの忘れるわけがないだろうが」
「そうですね」
「ふっ。奇遇だな。まあ、いい」
「で、なんの用ですか?」
「まあ、そう急くな。お前、進路は決まったのか?」
「は? 進路、ですか」
竜児は呆気に取られていた。竜児は北村絡みの話しになるものだとばかり思っていた
から、すみれからそんな話しを切り出されるとは思っていなかったのだ。
「ああ、進路だ」
「進学します」
「そうか。実はな、お前に考えてもらいたいことがあるんだ。お前にとっても悪い話し
じゃないと思うぞ」
そう言ってすみれは不敵に微笑んだ。
***
能登久光はどん底な日々を送っていた。理由は単純かつ明快である。二学期が始まっ
てすぐに木原麻耶の雰囲気が激変していることに気付いたのだ。なにより衝撃的だった
のは、北村のことを『まるお』ではなく『祐作』と呼ぶ様になっていた事だった。まだ、
付き合ってるという感じでは無いけれど、親密度は桁違いに上がっている上に、北村が
木原を見る目つきまで変わっているような気がしたのだ。
能登は北村が木原になびく事など絶対にないと思っていた。故に能登は木原が北村を
諦めてからアプローチした方が上手く行く可能性が高いと考えた。だがしかし、にもか
かわらず、夏休みが終わってみれば状況は激変していたのである。それは、能登にとっ
てはルール無用の不意打ちであり、いきなり投げ飛ばされて受け身も取れずにアスファ
ルトの路面に叩き付けられたようなものだった。
そんなわけで、二学期のスタート早々に能登は完全に打ちひしがれて、そのまま一ヶ
月以上もジャングルで泥水に浸かりながら匍匐前進させられるがごとき日々を送ってい
るのだった。
そんな超絶的にダウナーな能登はクラス展示の準備を無気力にサボりまくっていて、
それは今日も同じだった。そんな能登に春田は健気にも付き合っていたのだが、それは
つまり春田もサボってしまっていると言う事であり、アホなりに気まずさは感じつつも、
それも友達ガイ(GUY)だよね〜なんて思ってる春田だった。
とは言え、サボるというのは本質的に後ろめたい行為に他ならず、故に二人は人の少
ない方へ、目立たない方へと彷徨い階段へ。これを上がれば滅多に人が来ない屋上手前
のスペースがある。ところがそこには先客がいた。
「あれ? 高っちゃんの声じゃね」
階段を上がりかけた春田の足が止まった。
「誰と話してるんだ?」
明らかに女の声、なのに言葉遣いは男のそれだった。
「…アニキだ」
「え〜。なんでアニキがいるの? なんで高っちゃんとしゃべってんの?」
「知らないよ」
なぜかこそこそと身を隠す二人だった。
『…と、まあ、そんなワケでな、お前に来てもらえれば私も助かるのだがな』
『買いかぶりですよ』
『そういうな。お前の実力は確認済みだ。うちの連中も納得するだろう』
『相変わらず、手回しが良いんですね』
『どうだ、悪い話しじゃないだろ』
『ええ、確かに、そうですね』
『お前程の逸材はなかなか見つからないからな』
『それこそ買いかぶりですよ』
『いや、お前みたいな人材、探してもそうそう見つかるもんじゃない。貴重と言っても
良い』
『でも、俺も考えてることがありますから』
『だろうな。まあ、ここでいきなり決めろなんてことは言わん。考えてみてくれ。お前
にとっても大事な事だからな』
『…わかりました』
『じゃあ、頼んだぞ』
『あ、狩野先輩』
『ん?』
『北村には?』
『…まだだ。なにせ、振られてしまったからな』
「うわ、やべ、降りてくるぞ」
能登と春田は這いずる様に階段を下りて教室の前で暇つぶしをしている振りをした。
階段を下りてきたすみれは二人を一瞥してそのまま階段を下りていった。
「春田。とにかく高須が降りてくる前に撤収だ」
「え〜。なんで逃げんの〜」
「いいから来いよ」
二人は階段を降りていき、体育館に向かう人並みに紛れ込んだ。オープニングイベン
トまでまだ十五分以上あるが既に生徒が集まり始めていた。そのまま二人は体育館に入
り並べられたパイプ椅子に並んで腰掛けた。
「さっきの高っちゃんとアニキの話しさ〜、あれ、どういうこと?」
「お前、わかんないの? あれはアメリカに来いってことだよ。絶対に」
「え〜っ。アメリカって外国じゃん」
流石に春田慣れしている能登でもコケた。
「外国に決まってるだろ」
「すげーっ! 高っちゃんアメリカ行くんだぁ」
「いや、行くって決まったわけじゃないだろ」
「え〜。でも、いくっしょ。高っちゃん、あったまいいもん」
「そうだよな。誘われたら行くよな。それにアニキからの話しだろ。絶対、普通の留学
じゃないよ」
「すげ〜」
「ああ、すごいよな。けど…、タイガーどうするんだ?」
「連れていくっしょ。高っちゃんがタイガー置いてくわけないもん」
なぜか春田は自信満々である。
「そんな簡単に連れていけるわけないだろ。やっぱり断るんじゃないかな」
「え〜、もったいないじゃん…」
「あ!」春田が素っ頓狂な声をあげた。
「なんだよ?」
「そう言えば、アニキ、北村せんせーに振られたっていってなかったっけ?」
「あ! あああああああ。そうだったのかぁあああ。裏切ったなぁ、北村ぁあああ」
能登の叫びは体育館に響き渡り、周りの生徒が一斉に能登を見た。
「あ…」
あまりのバツの悪さに能登と春田は小さく身体を丸めた。逃げ出そうにも周りの席は
すっかり埋まっていて、二人はそのまま周りからのチクチクと突き刺さる様な視線を浴
び続ける事となった。
「別に裏切ってないっしょ」
小声で話しかけた春田に能登は「そんなの…わかってる…」と小声で言った。
それから十分ほどで体育館に置かれたパイプ椅子は概ね埋まり、ステージから離れた
後方では立ち見も出始めた。徐々に照明が落とされて体育館の中は暗くなっていき、控
えめな音量で無駄に荘厳な感じのBGMが流れ始めた。
『生徒諸君! 生徒会会長、北村祐作です』
どこからともなく「大明神!」のかけ声。
『静粛に!』
水を打った様に会場は静まりかえる。
『文化祭の開幕に先立ち、私から注意事項を述べさせていただきたい。今年の文化祭は
ただいまより開催の前夜祭、そして明日とついに二日間の開催となりました。』
おおーっ、と湧き上がる歓声。そして、拍手。祐作は右手を上げてそれに応える。
『私からお願いしたい事は唯一つ。ハメを外しすぎない様にしていただきたい。文化祭
の治安を乱す不埒な輩を見かけたら迷わず実行委員に連絡をお願いしたい。文化祭平和
維持軍はそのような輩を速やかに排除、捕縛するであろうことをここに宣言するもので
あります!』
「こえ〜」とか「恐怖政治だぁ」というヤジが飛んで、それに笑いが追従する。
『ともかく! 堅苦しい話は以上だ。それでは、多いに楽しもうではないか!』
湧き上がる拍手と歓声。
『大橋高校、文化祭… 前夜祭開幕です』
進行役を勤める放送部の女子生徒の声が体育館に響く。
スポットライトがステージのセンターに立つ少女を照らし出した。
「あみちゃ〜ん」
「あっみちゃ〜ん」そして湧き上がる『あみちゃん』コール。
川嶋亜美は満足げに恍惚の表情を浮かべてポーズを決める。そして天使の様に微笑む。
もちろん演技だ。
「掴みはオッケーだな」
ステージ下で生徒会長、北村祐作は腕を組みつつ満足げに微笑んだ。
『さぁ、みんなぁ〜! いっくよー。 まずは第二回、ミス大橋コンテスト』
うぉぉぉ、とヤローどもの怒号が響きわたる。
まさに川嶋亜美の独壇場。
前夜祭は激しくヒートアップしていくのであった。
***
一夜明けて、翌日。
竜児は暇だった。当たり前といえばそうなのだが、北村も村瀬も生徒会役員だから忙
しいのだ。大河は予定通り実乃梨と模擬店荒らしに出撃してしまったし、ぶらっと展示
でもまわってみようか、とも思うのだが不特定多数の人々を恐怖に陥れるのも憚られる。
いくら慣れてるとは言っても、見知らぬ人から「ヒッ」とか言われるとやっぱり凹む。
せめてツレがいれば多少はマシなのだが…
ま、春田でも捕まえるか…と、竜児は歩きだす。そして竜児は自らの危惧通り、ひと
かけらの悪意も敵意も無いままに校内に恐怖を振りまくのだった。人と目を合わせない
様に廊下の隅に視線を送り俯いて歩く姿はそっち系のプロフェッショナルにしか見えず、
気を使えば使う程に竜児の姿は遺憾な状態となっていき、すれ違った一般客に「ヒッ」
とか「うっ」とか言われること六回、子供に泣かれる事三回、最上階に付く頃には竜児
はすっかりブルーになっていた。
窓から外を眺めて軽く溜息。
『大河がいてくれりゃこんなに酷くねぇんだけどなぁ』と心で呟く。
「うーす、高須君」
「おはよう、高須君」
「ん? おぅ」
振り返った竜児の目の前にいたのは川嶋亜美と香椎奈々子だった。
「あれ? タイガーは?」
「櫛枝といっしょ。友情パワーで盛り上がるんだってよ」
「へぇ」
「そんで置いてけぼりくって凹んでるワケね」
「そんなんじゃねぇよ」
「ふぅん、でもさ、あんた明らかにブルー入っちゃってるじゃん」
「目が合っただけでビビられたり泣かれたりすりゃあ凹むさ」
竜児は不機嫌そうに言った。
「なるほどね」
「納得されちまったよ」
「思うんだけどさー、下手に俯いて歩いてっから余計悪いんじゃないの?」
「そうなのか?」
「そうかもしれないわね。ちょっと俯いてみて、高須君」
「え? こ、こうか?」
奈々子に言われて竜児は俯いて斜め下に目線を落とした。
「げ…」「ひっ…」
亜美と奈々子に軽くビビられて竜児は溜息をついた。
「ヤバいって。そんなだからビビられるんだって。普通にしてなよ、フツーに」
「普通? これでどうだ」
竜児は普段の表情と姿勢にもどった。やっぱりプロにしか見えなかった。
「その方がいいわよ。ねぇ亜美ちゃん」
「だね。そうしてればビビられないって」
と、亜美と奈々子は言うのだが…
「そ、そうか」
と表情を多少緩ませた竜児と廊下を通りがかった女子中学生の目がたまたま合った。
「ひっ…」
息を詰まらせて女子中学生は足早に竜児の目の前を通りすぎていった。
相変わらずの見事な攻撃力だった。
竜児はカクンと項垂れて、「ま、こんなもんだよ」と呟いた。
「気にする事無いって」
「そ、そうよ。気にしない方がいいわ」
「おぅ。ありがとよ」
とは言ったものの、竜児自身、自分の外見に凄みが加わってきた自覚はあったのだ。
去年から更に少し背も伸びたし、顔つきも少しごつくなった。三白眼とのマッチングも
バッチリで、もはや誰がどう見ても自分は心優しき青年になんか見えない事を自覚して
いる竜児だった。
「そういや、木原は?」
「麻耶は実行委員だから」
「ああ、そうだったな。それにしても木原が実行委員とはなぁ」
「祐作の役に立ちたいの〜、だってさー。ごくろーさんって感じ」
「お前だって駆り出されてるんだろ? いろいろとよ」
「まあね。でも、メインは昨日のミスコンの司会だったから、今日はそんなに忙しくな
いんだよね。そういうあんたは?」
「俺? クラス展示だけだし、店番とか無いんだよ。客がビビるから」
「じゃあ、暇なんだ」
「今のところ…」
亜美と奈々子は顔を見合わせてニヤリ。
「それじゃ、あたしたちの護衛をよろしく」
「なんだよ、護衛って」
「えー。わかんないわけ? こーんなカワイイ女の子が二人でいたらさ、うざいヤロー
どもに声かけられまくりでメンドーじゃん。そこで…」
「あんたよ」言いながら亜美は竜児を指差した。
「高須君が一緒にいてくれればナンパなんて絶対にないわね」
「俺は魔除けか?」
「ふふ、そんなところかしらね」
「いいじゃん。そのイカしたご尊顔が役に立つんだから」
言われて竜児は不機嫌そうに溜息をついた。
「ご尊顔ねぇ。で、どこに行くんだよ?」
「ちょい待ち」
亜美は制服のポケットから生徒会謹製文化祭ガイド(ダイジェスト版)を取り出して
ガサゴソと広げた。
「どこにする? 奈々子」
「そうね。これなんてどうかしら?」
「んー、おもしろそうじゃん。じゃあ決まりね」
「じゃあ、高須君。よろしくね」
竜児はどこに行くのかも言わないで歩き出した亜美と奈々子に続いて歩き出した。
***
亜美と奈々子が竜児を連れて来たのは地学部のプラネタリウムだった。段ボールで作
られたドームは直径が三メートル以上ある気合いの入った物だった。投影機の方は家庭
用の物なのだが、その性能はなかなかのものだと竜児も聞いた事があった。手作り感たっ
ぷりのパンフレットによれば、その家庭用プラネタリウムに全天投影を可能とする改造
を加えた、というのがこの展示の売りらしい。
三人は他の五人程の見学者と一緒にドームに入った。照明が落とされるとドームの中
は墨で塗りつぶした様な暗闇になった。残った灯りは女子部員が手にしている小さなL
EDライトだけだ。
「それでは投影を始めます…」
女子部員のアナウンスを合図に投影機が輝きドームに無数の星が投影され、それを見
た全員が感嘆の声をあげた。まさに予想外のクオリティ。
「うわ、すご」
「すごいわね」
「ああ。こんなに本格的とは思わなかった」
C
「秋の星座の代表格といえばやはりペガスス座でしょう…」
女子部員による解説もなかなかのものだった。随分と時間をかけて脚本を練って練習
したであろうことが感じられ、三人は星空に見入り、解説に聞き入った。プログラムは
十五分程だったのだが、それはあっという間で物足りないぐらいだった。
そんな束の間の星空見物を楽しんだ三人は渡されたアンケート用紙を埋めていた。
「でーきたっと」
亜美は鉛筆を置いてアンケート用紙を折り畳んだ。
「早すぎだろ。ちゃんと書いたのかよ?」
「もうバッチリ」
「嘘つけ」
竜児は亜美のアンケート用紙に手を伸ばす。亜美はさっと腕を伸ばしてアンケート用
紙を竜児の手から遠ざけた。
「みっせないも〜ん。出しちゃおっと」
亜美は回収ボックスにアンケート用紙を押し込んだ。
「奈々子もサラッと書いちゃいなよ」
「だめよ。高須君に怒られちゃうわ」
「別に怒らねぇよ」
竜児はチマチマとアンケート用紙を埋めていた。想像以上に感動させてもらったお礼
とばかりにきっちりと感想を書きこんでいた。
「ふふ、でもホントにきれいだったわね。亜美ちゃんの別荘で見た星空を思い出したわ」
「あれから二ヶ月だもんねー。早いもんだわ」
「そうだな。もう十月だもんな」
本当にあっという間だったな、と竜児は思った。
この二ヶ月間は竜児にとって本当に激動の二ヶ月間だった。
「高須君、進学するんだよね?」
「おぅ。なんとかな」
「奈々子も進学だよね」
「とりあえずね」
「とりあえず、なんて言うなよな」
「…そうね。ごめんなさい」
「あ、いや。まあ、いいんだけどよ」
とは言ったものの、本当に経済的に進学は無理だと思っていた竜児にしてみれば、
『とりあえず進学』なんて言われてしまうと文句の一つぐらい言いたくもなる。
「川嶋は?」
「あたし? あたしの進路はナ・イ・ショ」
「亜美ちゃん、教えてよ」
「なんだよ。香椎も知らねぇのか」
「そうなのよ」奈々子は頷いた。
「もうちょっと待ってよ。はっきりしたら奈々子には教えるから」
「あたしには教えてくれるのね。ふふ、じゃあ待ってるわ」
「なんだよ、それ」
「気にしない、気にしない。で、タイガーはどうすんの?」
「ん、ああ。同じ大学を受ける」
「だよねぇ」「そうよね」
亜美と奈々子の声が妙にハモった。
「ま、あんた達なら大抵のとこは間違いないでしょ」
「んなことねぇって。結構、必死に勉強してんだよ」
「タイガーといっしょに?」
「ま、まあな」
「ホントに勉強してるの?」
奈々子はジトっと竜児の顔を見た。
「してるってぇの」
「しちゃってるんだぁ。わぉ」
亜美はわざとらしく頬に手を添えながら言った。
「なに、あらぬ妄想を展開しちゃってんだよ」
「そりゃ、するって」亜美はニヤニヤと竜児を眺める。
「そうよ。彼女と二人で過ごして何もしないなんて犯罪よ」
「犯罪はねぇだろ」
「ふふ、そうね。でも、二人っきりなのになにもしてくれなかったら、それはそれで
きっと不安になるわよね」
「なるよねぇ。でもさ、ぶっちゃけキスぐらいしちゃってんでしょ?」
「ぐらいって言うなよ。つーか、学校でする話じゃねぇ」
周りの生徒や部員が聞き耳を立てていた。
「そ、そうね」と奈々子は気まずそうに言い、
「つまんねぇの」と亜美は本当につまらなそうに言った。
「よし、出来上がり」
竜児は鉛筆を置いてアンケート用紙を折り畳んだ。
「私も」
奈々子もアンケート用紙を折り畳んだ。
「この後どうするんだ?」
「んー、まだ出番には早いけど体育館に行っとこうかな」
「私もそろそろクラス展示の当番だから」
「そうか。じゃあ、ここで解散だな」
「だあね。んじゃ、先行くね」
亜美は立ち上がって教室を出て行った。
「じゃあね、高須君。後でウチのクラスにも来てね」
「おぅ」
竜児は教室を出て行く奈々子の背中を見送った。
***
「ターゲットをセンターに入れて…」
実乃梨はスコープを右目で覗き込みながら呟いた。全長一.二メートルにもなるドラ
グノフ狙撃銃を抱える様に構えて十五メートル先の小さなターゲットに狙いを付ける。
ほんの僅かに指を動かすだけで十倍の光学スコープの中のターゲットがゆらゆらと揺れ
る。息を吐きながら、実乃梨はトリガーをじわっと引き絞っていく。
ぱしゅ
拍子抜けする様な音がして直径六ミリのBB弾がターゲットに飛んでいく。
「ターゲットをセンターに入れて、スイッチ」 ―ぱしゅ
「ターゲットをセンターに入れて、スイッチ」 ―ぱしゅ
「ターゲットをセンターに入れて、スイッチ」 ―ぱしゅ
「ターゲットをセンターに入れて、スイッチ」 ―ぱしゅ
「ターゲットをセンターに入れて、スイッチ」 ―ぱしゅ
「ターゲットをセンターに入れて、スイッチ」 ―ぱしゅ
「ターゲットをセンターに入れて、スイッチ」 ―ぱしゅ
「ターゲットをセンターに入れて、スイッチ」 ―ぱしゅ
「ターゲットをセンターに入れて、スイッチ」 ―ぱしゅ
「はい、全弾はずれ〜。おつかれさま〜」
大河と実乃梨は射的で遊んでいた。ただ、縁日の射的と比べるとやけに銃が本格的だっ
た。光学スコープまでついているライフルタイプのエアガンは有効射程三十メートルと
いう肩書きで、それもあって的は十五メートルも先の小さな箱だった。
「みのりん、ぜんぜんダメじゃん」
「おっかしーな。絶対に当たってると思ったんだけどなぁ」
「ダメよ。ちゃんと風を読まなきゃ」
「おっ。言ってくれるじゃん」
「ふふん、まあ、見ててよ」
防護ゴーグルをかけた大河は肩に担いでいたL96A1スナイパーライフルを構えた。
大河の人差し指がトリガーを引く。
―ぱしゅ
―ぱしゅ
―ぱしゅ
―ぱしゅ
―ぱしゅ ぱす
―ぱしゅ
―ぱしゅ ぱす
―ぱしゅ
―ぱしゅ ぱす
―ぱしゅ ぱす
「はい、四発命中」
「よっしゃ〜」
「すごいよ。大河」
「ま、あたしにかかればこんなもんよ。よいしょっと」
大河は構えていたライフルを下ろして男子生徒に返した。
「景品はこの箱の中から好きな物を四つね」
店番の男子生徒が差し出したプラスチックのコンテナにはうまい棒がどっさりと収まっ
ていた。
「みのりん、二つあげる。好きなの選んで」
「おおっと、いいのかい?」
「いいの、いいの。ね、どれにする」
「う〜む、悩むねぇ…」
「あたしは…、これとこれ」
大河が手に取ったのはサラミ味ととんかつソース味だった。
「そうくるか。じゃあ、私は…こいつとこいつだぁ」
実乃梨はテリヤキバーガーとチキンカレーを選んだ。
「はい、どうも〜」と、男子生徒に見送られ二人は『やけに本格的な射的』を後にした。
大河はうまい棒サラミ味を開けてかじり付く。
「うわ、サラミだ」
「そりゃあそうだよ。だってサラミ味だもん」
「なんかさ、なんとか味とかっていうお菓子、不思議だよね」
「びっみょうなのもい〜っぱいあるけどねぇ」
実乃梨はテリヤキバーガー味のうまい棒をかじった。
「う〜ん、確かにテリヤキなんだけど、どうやって作るのかねぇ。本当にテリヤキバー
ガーが材料ってわけじゃないだろうし」
「ホントにそうだったら悲しすぎ」
「う〜ん、確かに悲しいよね。こーんなでっかい機械にさ…」
実乃梨は身振りで得体の知れないマシーンの輪郭を描く。
「…大量のテリヤキバーガーが投入されてさ、ガーとかゴーとかグイングイン、ゴイン
ゴインって、それで出てくるのがコレだったら、そりゃ悲しいよね」
「犠牲になったテリヤキバーガーが哀れだわ…」
実乃梨のうまい棒(テリヤキバーガー味)を眺めて大河はしみじみと言った。
「星になったね。テリヤキ君」
遠い目をして実乃梨は空を見上げた。
「なったわ。もう完璧に犬死にだけど」
遠い目をして大河も空を見上げた。
「ありがとう、テリヤキ君。僕らは君を忘れない」
空いている左手を握りしめ、妙に凛々しく実乃梨は空に向かって呟いた。
「星屑と消えたテリヤキ君に捧ぐ…」空を見上げて二人で敬礼…
二人は顔を見合わせて、ほとんど同時に「ぷっ」と小さく吹き出した。
「大河。ダーリンなら知ってるんじゃね?」
「え? いくら竜児だって、そんなの知らないって」
「いや、いや、試しに聞いてみてくれたまえ」
「まあ、憶えてたらね」
実乃梨はうまい棒(チキンカレー)の袋を開けて一口かじった。それから、油でテカ
る唇にくっついたカレー風味の粉をぺろっとなめとって、大河の方を見て話しかけた。
「ねえ、大河。 高須君と仲良くしてる?」
「え、な、何よ? いきなり」
「…ほら、前と違ってさ、あんまり二人で一緒にいるところを見ないから、みのりんは
心配しとるんだよ」
「みのりんはそればっか」
「ごめん」
「…仲良くやってるよ。たまには喧嘩もするけどね」
大河はそう言って微笑んだ。
「惚気てくれちゃって…この、このぉ」
実乃梨は指先でくりくりと大河の脇腹を突つく。
「やめ…くすぐったい」
「ほほぉ、ここかい? ここが感じるのかい?」
「…やめ…もう…」
大河は実乃梨の脇腹を人差し指で思い切り突ついた。
「ぐひゃあっ」
大河の奇襲に実乃梨は飛び退き、そしてファイティングポーズ。怪しげな構えでゆっ
くりと腕を動かしている。内なる小宇宙が燃え上がっちゃってる感じだ。
「もう…、知らない」
大河はそっぽを向いた。
「ごめんごめん」
実乃梨は小さく舌をだしておどけて見せる。
「でもね、心配してるのはホントだよ。大河とも高須君とも違うクラスになっちゃった
からねぇ」
「うん…。でも、大丈夫だよ」
大河は『本当に婚約したんだよ』と言いたかったけれどそれは秘密だった。まだ、そ
れを話すべきタイミングではなかったから、彼女達に秘密を抱えさせたくなかったから、
それはまだ内緒にしておかなければならなかった。
「大河、ちょっと座って話さない?」
「え、うん」
実乃梨は大河の腕を引いて校庭の端に作られた休憩スペースに連れて行った。そこは
まだ人影はまばらで、実乃梨は適当な椅子に大河を座らせて自分も隣に座った。
「あのさ、大河。ずううっと、聞こうと思ってた事があるんだけどさ…」
実乃梨は大河の首に腕を引っかけて引き寄せて、
「高須君と、き、キスぐらいは、し、したんだよね?」と、大河の耳元で囁いた。
「な、な、な」
「実はね、大河」
「うん…」
「みのりんも興味はあるのだよ。彼氏がいるってのはどんなもんなのかなーと、知るだ
けは知っておきたい今日この頃なのだよ」
と言いながら、本当に知りたいのは二人がどうなっているのかだった。
「…は、話す様なコトじゃないもん」
「じゃ、じゃあさ、質問するから、イエスなら頷いて、ノーなら首振ってよ」
「ま、まあ、それぐらいなら…」
「じゃあ、キスした?」
… こくり と、大河は小さく頷く。
「十回以上?」
… こくり
「百回以上?」
大河は心の中で数えてみた。
毎日、三回。竜児がウチでご飯食べる様になって半年ぐらいだけど、来ない日もある
から少なめに見積もって百二十日×三回で三百六十回。一回エッチすると二十回はキス
をするでしょ。この前、十一回目だったから、それだけで二百二十回。
合計すると… 五百八十回…
計算してみて驚いた!継続は力なり!
……… こくり
「うわっ」
「うわって何?」
「え、ああ。絶対にこれは無いかなって思ってたもんだから。ゴメンゴメン」
「じゃあ、次ね」
「…… あのね、高須君とえっちした?」
***
竜児は前髪を弄りながら俯き加減で廊下を歩いていた。お目当ての春田とは遭遇出来
ず、体育館で行なわれいるバンド演奏でも眺めて暇を潰そうと、行き交う一般客や子供
たちと目が合わない様に細心の注意を払いつつ移動している最中だった。
「高須!」
背後から名を呼ばれ、軽く肩を叩かれて振り向いた竜児の頬に細い指がめり込んだ。
竜児の視界の端に移ったのはニヤッと微笑む狩野すみれの姿だった。
「ふふふ。今時、こんな悪戯に引っかかる奴がいるとはな」
「そりゃ、今時、こんな悪戯する人がいないからですよ」
竜児はちょっとだけ呆れた表情をすみれに見せながら言った。
「違いない。… それにしても一人とはな。ツレと喧嘩でもしたのか?」
「喧嘩なんかしてませんよ」
「そうか…。暇そうだな」
「ええ、見ての通り」
「じゃあ、付き合え。昨日の答えも聞かせてもらわないとな」
すみれは文化祭のパンフレットを眺めて「ふむ」と小さく呟き、おもむろに竜児の手
首を掴んで歩き出した。
「か、狩野先輩。どこに行くんですか?」
「地学部だ。なかなか、面白そうじゃ無いか」
竜児は、『俺、そこから来たんですけど…』と言う間もなく、すみれに引きずられて
いった。画的には女刑事に連行されるヤンキーみたいな事になっていた。
「なかなか気合いが入っていそうな展示じゃないか」
「そ、そうっすね。あの、先輩。離してください。逃げませんから」
「ん? そうだな。すまん」
すみれはぱっと手を離した。そして、そのまま歩き続ける。竜児は半歩遅れですみれ
と歩いた。
「プラネタリウム…ですか?」
「ああ、そうだ。狙ってたんだがな、女一人でプラネタリウムじゃいかにも寂しすぎる
だろ」
すみれはチラッと竜児に視線を送った。
「先輩もそういうの気にするんですか?」
「意外か? 私だって女だぞ。それぐらいの繊細さは持ち合わせているつもりだが」
さほど声のトーンを変えずにすみれはそう言った。
「いや、あの。すいません」
「ふ、まあ、いい。みんな、そう思ってるだろうからな」
「…失言でした。先輩は、繊細な人ですよ」
「分った様な事を言うんだな」
「ええ、先輩のノート、一年間ずっと見てきましたから。分りますよ」
「そうだったな。役に立ったのか?」
「そりゃもう。実績が証明済みってことで」
「それは高須の努力の成果だろう」
「いいえ。俺はあのノートで何かコツみたいなものが分かったんですよ。だから、やっ
ぱり先輩のお陰です」
すみれはほんの少しだけ竜児に微笑んで、
「そうか。役に立ったのか。嬉しい物だな」と呟いた。
C
歩く事、数分で二人は地学部の展示が行われている教室についた。
「結構、並んでるな」
「二十分待ちですよ。どうします?」
「どうせ暇だろ」
「ええ」
二人は並んで壁によりかかった。
「さて、時間もあることだし。答えを聞かせてもらおうか。無論、私はお前を説得する
つもりでいるがな」
狩野すみれは涼やかな目で竜児を眺めてそう言った。
***
「高須君とエッチした?」
「な、な、な」
とんでもなくシンプルでストレートな質問に大河は声を詰まらせた。実乃梨は親友だ
けれど、けれど彼女も竜児のことが好きだったのだ。そんな彼女に竜児とのセックスを
告白するなんて…。けれど…
「ねえ、どうなんだよ?」
真顔で迫る実乃梨に、大河は押し切られる様に、
………………………… こくり
と、小さく頷いた。
実乃梨が知りたいと言うのなら、大河はそれに応えるべきだと思った。
「やっぱり痛かった?」
「…うん、初めてのときはね。…でもね、すごく嬉しかった」
「そうなんだ」
大河は無言で小さく頷いた。
「どんな感じなのかな。されるのってさ」
「どんな感じって…」
抱かれている時のことを思い出す。
首筋が熱を帯びる。カラダの内側に熱がこもっていく。
あれをどんな言葉で表すと言うのか。
あの、何もかにもが満たされて行く感覚を、自分の生き物としての本質が歓喜する様
を、意識が途切れてしまう程の悦びを、言葉で表すなんて到底できない。
「上手く言えないけど、幸せ…かな、満たされるっていうか…」
大河は呟く様に言ってから小さく首を振った。
「言葉にはできないよ…」
「そっか…でも、幸せ…なんだよね」
「うん」
なら、それで良い。実乃梨はそう思った。
「高須君は優しくしてくれる?」
大河は小さく頷いて、優しく微笑んだ。
「すごく優しいよ」
大河は実乃梨の耳元に口を寄せた。
「髪の毛を撫でる時も…
キスする時も…
耳朶を甘噛みする時も…
パジャマのボタンを外す時も…
あたしのカラダに触る時も…
胸にキスする時も…
あたしの中に入ってくる時も…
どんなときもすごく大切にしてくれるんだよ…
だからね…あたし、竜児と『する』の好きなんだ」
話した大河より聞いていた実乃梨の方が真っ赤だった。
「た、た、大河…。お、大人の、か、か、階段、の、上りすぎ」
「み、みのりん、鼻血」
「あ、あで?」
実乃梨の鼻から赤いスジがツーっと流れた。
「あわわ。ティッシュ、ティッシュ」
大河は制服のポケットからティッシュを出して実乃梨に渡した。実乃梨は慣れた感じ
でティッシュを丸めて鼻に詰めた。
「うーっ。ださげだい」空を見ながら実乃梨は言った。
「変な事、聞くからバチが当たったんだよ」
大河に冷たく言われて、
「かだじけだいでぇ」と実乃梨は応えた。
鼻にティッシュを詰めて数分で実乃梨の鼻血は収まった。
出すのも止めるのも得意なのだ。なんの自慢にもならないが。
やれやれ、なんて言いながら実乃梨は鼻からティッシュを抜いて丸めると、すぐ近く
に置かれているゴミ箱にそれを投げ込んだ。
「ありがと。大河」
「え?」
「話してくれて。これで、みのりんも一安心」
「うん…」
大河が言うのとほとんど同時に携帯電話から着信音が流れ始めた。大河はポケットか
ら携帯電話を取り出して電話に出た。
「もしもし」……「うん、迎えにいくから」……「うん、待ってて」
大河は母親と短い会話を交わして電話を切って制服のポケットに入れた。
「みのりん、ごめんね。ママ、着いたって」
「いいよ、いいよ。いっといで。親子水入らずでさぁ。ずずずぃーっと」
「うん、ありがとねっ」
大河は立ち上がるとくるっと向きを変え足早に校門に向かって歩いていった。実乃梨
は大河の姿が見えなくなるまで見送って、それから椅子に腰掛けて背もたれに身体を預
けた。
大河の母が来るのは予定通りだった。去年の事があったから、大河の母が本当に来て
くれて実乃梨はホッとしていた。とはいえ、一人になってしまったのは事実で、祭りの
雰囲気の中で独りぼっちでいるのはなんとなく惨めだった。
「ふられちゃったぜぃ。どーすっかな」
良く聞こえる独り言を言ってみた。
実乃梨はポケットから携帯を取り出して時刻を確かめた。クラス展示の当番のシフト
まではまだ時間がたっぷりある。あたりを見回してみると、今年もなかなかの盛況で近
隣住民、小中学生、他校の生徒と様々な人々が思い思いに楽しんでいるようだった。
去年は高須君と見て回りたいな、なんて思ってたら大河のことで喧嘩になっちゃって
ダメだったんだよね…
やっぱりちょっと避けちゃうんだよね。親友の彼氏って、やっぱ微妙だよなー。ソフ
トボールを選んだとはいえ、高須君のことは嫌いでは無いんだよね…
はぁ、我ながら…軟弱だわ。と思いつつ実乃梨は空を見上げて軽く溜息をついた。
実乃梨は竜児と話すのも怖かった。『やっぱり好きなんだ』それを思い知らされるの
が怖かった。もっと好きになってしまうことが怖かった。部活がある間は自分の選択の
正しさを実感できたし、忙しさにかまけていられたからまだ良かった。でも、引退した
今は、いろんな事を考える余裕がありすぎる。
なんかさ…。実乃梨は心の中で呟く。
大河とも前みたいには付き合えないんだよね。
そりゃあ一人の男の子を二人で好きになっちゃったんだから仕方ないんだけど。
自分の本当の気持ちに気付いてからの高須君は大河だけを見てる。
それは嬉しいんだけどさ…
嬉しいんだけど…
嬉しい筈なんだけど…
そんな感じだったから、実乃梨は大河とも距離を置いて付き合う様になっていた。大
切な友達だから、彼女には嫉妬したくなかった。そんな風にしか付き合えないのに親友
だなんて言うのはおこがましいんじゃないか、とも実乃梨は思っていた。だから、こん
な状態を終わらせたくて、彼の恋人は大河なんだと認識するために、二人の関係がどこ
まで深くなっているのか確かめたかった。
大河。幸せそうだったな…
幸せそうに微笑む彼女を思い出した。
高須君の中ではきっと私は過去形なんだよね… あるいは過去完了形とか…
だぁあああああああああ ったく、何考えてんだよ。しっかりしてくれよ私ぃっ!
一人でのたうつ様に身を捩る女がそこにいた。
「はぁ…。やっぱ、暇すぎだよ」
そう呟いて実乃梨は立ち上がった。
ソフト部の後輩を捕まえてクラス展示でもまわってみよっと。自分を鼓舞するみたい
に心の中で呟いた。
***
ソフト部の後輩を求めて一人校内を徘徊する実乃梨が地学部の展示の前を通りかかっ
たのは唯の偶然だった。
『いいですよ』
行列の中から聞こえきた竜児の微かな声を実乃梨は聞き取った。実乃梨はとっさに壁
面に出っ張っている柱の影に身を隠す。ついさっきまで大河と竜児の事で頭が一杯だっ
たのだ。今、出くわしてしまったら普通の態度など絶対に不可能だ。
『俺なんかでよければ』
間違いない。高須君だ…
『いらん謙遜はいやみだぞ。お前の実力はお見通しだといっただろう。大体、俺なんか、
とか言うな。そういう言葉は自分の価値を下げるぞ』
この声、話し方…、狩野すみれ。前生徒会長。狩野姉妹の兄の方。
『…わかりましたよ。かないませんね。先輩には』
『受けてくれるんだな』
『ええ。喜んで』
『じゃあ、これは渡しておく』
『はい』
どうして、彼女がここに? どうして、高須君と?
教室の引き戸が開けられて行列が進み始めた。
『やっとだな』
『ですね』
教室に入っていく二人の気配をすぐ近くに感じながら実乃梨は静かに息をひそめてい
た。二人の関係が少しだけ気になったが、会話の中身や雰囲気は男女の仲という感じで
はなく、だから、久しぶりに帰国した狩野先輩に高須君が何かを頼まれたんだろうと解
釈して、実乃梨はそれ以上の詮索をやめた。
程なく教室の引き戸は閉められて、そこに新たな行列が出来始めた。
「あれ、櫛枝先輩。こんなところでストーキングですか?」
声をかけたのはソフト部の後輩、二年生でポジションはセカンド。実乃梨より少し小
柄で実乃梨が思うにソフト部で一番かわいい娘である。
「な、そんな人聞きの悪い事いわないどくれ。ストーキングじゃなくてスニーキング
ミッションなんだからさ」
「武器も装備も現地調達ですか?」
「そう! その通り」
「… 作戦の成功をお祈り致します。では」
触らぬ神に祟りなし、とばかりに後輩はその場をそそくさと立ち去ろうとしたが、
「おっと、逃がさないよ」
実乃梨は後輩の腕をがしっと掴んだ。
「既に作戦は完了したのだよ。つーことでさ、一緒に見物、見物」
後輩の腕を掴んだまま実乃梨は歩き出した。
これぞ体育会系のスキル、絶対服従。後輩は実乃梨の言いなりだった。
「なんか食べたいものある?」
「おごってくれるんですか?」
「もちのろんだよぉ。まっかせたまえ」
実乃梨はちょっと引っかかるものを感じながら、でも高須君の万能ぶりなら、誰に何
を頼まれたっておかしくないよね、そう思うことにした。
***
二回目のプラネタリウム鑑賞を終えた竜児は教室でアンケート用紙を埋めていた。
まるでデジャヴュの様だが、今、正面に座っているのはスーツ姿の狩野すみれである。
「なかなかのモノだったな」
「そ、そうっすね」
確かに、そうなのだが、二回目だと感動も薄れがちではある。とはいえ、今更二回目
なんです、とも言い出せない竜児だった。
「おっと」
竜児はポケットに入れていた携帯電話が震えているのを感じて携帯を取り出して開い
た。大河からのメールだった。
『でんわして』とだけ書かれた横着なメールだった。
「先輩、すみませんけど…」
「呼び出しか?」
「ええ」
「ふ、気にするな。相変わらず仲良くやってるみたいだな」
「まあ、なんとか。それじゃあ失礼します」
すみれは書きかけのアンケートをポケットに突っ込んで教室を出ていく竜児の背中を
見送った。それからもう一度アンケートに目を落とし、それを埋める作業に没頭し事細
かに感想と提言を奇麗な文字で書き込んでいった。紙面を埋め終わると、すみれは書き
込んだ内容を一通り確認してから用紙を折り畳んで回収箱に入れた。
さてと… 生徒会室に顔を出すか…
すみれは立ち上がり教室を後にした。
自分が振って、そして自分を振った男、北村祐作に会うのが楽しみだった。彼がどん
な生徒会長になっていて、どんな風に変わっているのか見てみたかったのだ。
***
竜児は大河の母親と合流し、二人で二十分程文科系の部活の展示を見てから大河のク
ラスに向かった。大河のクラスの展示は紅茶とクッキーをメインにした喫茶店だった。
「いらっしゃいませ」
二人を向かえたのはウエイトレス姿の大河だった。メイド服なのだが装飾は控えめ、
クラシカルなロング丈、エプロンのボリュームも控えめで清楚なイメージ。
「ママ、どう?」
「似合ってるじゃない。なかなか良いわよ」
「へへ」
大河は子供みたいな表情で笑い、
「なかなかでしょ?」と、その場でくるっと回って見せた。
「おぅ。イイんじゃねぇか」
「でしょ。ね、ママ、何にする?」
「そうね。クッキーセットのロイヤルアールグレイにするわ。竜児君は?」
「俺は、アールグレイのストレート」
「クッキーセットのロイヤルアールグレイとアールグレイのストレートね」
大河はメモ用紙にオーダーを書き込みカンペを覗き込む。
「かしこまりました。チケット五枚になります」
竜児は財布からチケットを五枚取り出して大河に差し出す。
「結構取るんだな」
小声で竜児は言った。紅茶一杯でチケット二枚というのは他の模擬店の倍だ。どこの
模擬店でも飲み物はチケット一枚が相場なのだ。
「ケチくさいこと言わない」
大河は小声で言いながら竜児からチケットを受け取った。
「ありがとうございます。少々お待ちください」
軽くお辞儀してから大河はテーブルを離れて教室を仕切るカーテンの前に立っている
フロア係とおぼしき男子生徒にチケットとメモ用紙を渡した。
それからしばらく竜児と大河の母は大河のちょっとぎこちない接客や少しだけ危なっ
かしい給仕の様子を眺めた。竜児は大河を目で追いながら、同じ様に大河を眺めている
大河の母親の様子も眺めていた。
「ちょっとドキドキものね」
「はは、まあ、大丈夫ですよ」
と言いつつも竜児もドキドキものだった。ただ、春になってから大河は竜児の台所仕
事も手伝う様になって、一年前と比べれば随分といろんなことが出来る様になったのだ。
そんなこともあって、竜児は弟子の闘いぶりを見守る師匠のような気分でもあった。
ティーカップ二つとクッキーの入ったカップを載せたトレーを大河が運んで来た。
「おまたせしました」
テーブルにトレーを置いてミルクティーを母親の前に、ストレートティーを竜児の前
に置き、最後にクッキーを真ん中に置いた。
「以上でおそろいですか」
「大丈夫よ」母は娘に微笑みかけた。
「では、ごゆっくり」
大河は照れくさそうに微笑んで定位置に戻っていった。
竜児はカップに口をつけて紅茶を一口飲んだ。
「お、意外に本格的」
「あら、香りもいいわね。ちょっと意外だわ」
さすがに高いだけのことはある。
大河はウェイトレス姿の女子生徒と何か話して微笑んだりちょっと照れた様な表情を
見せたりしていた。
大河の母は紅茶を飲み、クッキーをかじりながらそんな大河の様子を眺めていた。
「楽しそうね。あの子」
「ええ…」
そうだよな。今年は約束、守ってもらえたもんな。心の中で竜児は呟いた。
「きっと、お母さんが来てるからですよ」
「そうかしら?」
「そうですよ。やっぱり、大河は見てもらいたかったんだと思います」
「そうね。ねぇ、泰子さんは来ないの?」
「来ませんよ」
「そう、でも残念ね」
「うちはそれが普通ですから」
そう言って竜児はクッキーをかじった。なじみの味だった。自分のレシピなのだから
当然だった。
「どう? お弟子さん達の仕事ぶりは」
「良く出来てると思いますよ」
二週間程前に竜児は大河と奈々子、それに彼女らの同級生二人にクッキーの作り方を
教えたのだ。奈々子はクッキーの作り方は知っていたけれど大量生産となるとそう簡単
でもなかったのだ。竜児は量産向きのちょっと手抜きなレシピを彼女らに教えたのだが、
成り行きで大河の家で実際に作ってみせることになってしまったのだ。
「香椎さん、だったかしらね?」
「ええ」
「あの娘、きっとあなたの事が好きなのね」
「へ?」
「だめよ。浮気しちゃ」
「しませんよ。てか、香椎は川嶋と一緒に俺を弄って遊んでるだけですよ」
「そんなことないわよ。見てれば分るもの」
「はあ…」
竜児は納得出来る様な、出来ない様な、そんな気分だった。
「大河にもなんとなく分ってるのよ。それで警戒してるのね」
「警戒ですか」
「そうよ。彼女、家事もこなせるし、おっぱいも大きいし」
竜児は小さくコケた。
C
「笑い事じゃないのよ。泰子さんも大きいでしょ。竜児君マザコンでしょ。大河にとっ
ては深刻な問題なのよ」
「いや、大河のだってそんなに小さくはないですよ。形も奇麗だし」
彼女の母親に、彼女の胸の美しさを語る高校生。高須竜児だった。
「あら、そうなの?」
「え、ええ、まあ」耳を赤く染めて消えそうな声で竜児は言った。
ふわふわとした触り心地を思い出してしまう自分が恥ずかしいやら情けないやら。
「胸のことはともかく、あなたが誰にでも優しくしてしまうのは、大河にとっては不安
よね。大河もあなたの事をわかっているし、信じてるから言わないだろうけど。そうい
う気持ちを分ってあげてね」
「はい」
それは竜児にも分かっていた。けれど自分のそういうところも大河は好きだと言って
くれている。そもそも、自分がお人好しでなかったら大河とこんなふうにはなれなかっ
ただろう。だから、そういう所を変えるというより彼女の気持ちを分かろうとすること
や、それを忘れてしまわないことが大事なんだろうな、と竜児は思った。
それから竜児と大河の母は取り留めの無い話しをしながら紅茶を飲みきり、クッキー
を食べ終えた。模擬店は結構繁盛していて、あまり長居するのも憚られたので二人はそ
こを出る事にした。二人は席を立って大河の傍へ。
「ママ、どうだった?」
「美味しかったわよ。紅茶もクッキーも」
「よかった。あと三十分ぐらいで当番が終わるから、そしたらまた見て回ろうよ」
「いいわよ。竜児君も一緒にどう?」
「ええ、いいですよ」
「え? いいの?」
校内では自重するルールは今でも続行中だった。増して、今は二人にとって最もデリ
ケートな時期だ。だから竜児がそれにあっさりと同意したのが大河には意外だった。
「今日ぐらい、いいだろ」
そう言う時期だとは言っても、今日は祭りだ。タイガー&ドラゴンが久々に並んで校
内を闊歩したっていいだろう。
「…うん」静かに、嬉しそうに、大河は呟いた。
「じゃあ、後で」
「うん、電話するね」
竜児は大河の母に続いて教室を出た。教室を出ると大河の母は、
「恋ヶ窪先生とお話したいから、ちょっと行くわね」と言った。
「あの、俺も行った方が…」
「ダメよ。これは私の用事だから」
彼女は竜児に背中を見せて歩き出した。
準備は静かに粛々と進んでいた。
***
実乃梨と後輩は2−Cのメイド喫茶(ブームもボチボチおわりだろう)にいた。別に
メイドには興味はないけれど、実乃梨はなんとなく2−Cの教室を覗いてみたかったの
だ。窓際の席に座り外を見ると、なんとなく懐かしい風景がそこにあった。見える景色
自体は三年の教室と大して変わらない。けれど、フロアが違えば見える角度もちょっと
違う。
「櫛枝先輩、去年はこのクラスだったんですよね?」
「そーなのだよ…。2−Cか、何もかも皆懐かしい…」
「あれ? 櫛枝じゃん」
一つ奥の席に座っていたのは能登だった。
「へ? ああ、能登クン。なんか久しぶりっすなぁ」
「同級生にそういうことを言うなよなー」
そこにアホロン毛が合流。
「あれ〜櫛枝じゃん。どったの?」
「どうもこうもねぇべさ。フツーに後輩と祭りを楽しんでるだけだがね」
いかにも失敗した、という表情で実乃梨は春田に言った。
「先輩。お邪魔だったら私、失礼しますけど」
「ああ、いいって。こいつら追い払うから。シッシッ。あっちへおいき。もたもたして
るとウチの巨神兵で焼き払っちゃうからね」
「そこまで言われちゃだまってられないね。春田、そっち持て」
能登と春田は勝手に机を動かして櫛枝と後輩の席に強制合体。
「むりやり相席だー」
能登は椅子を引きずって動かすと後輩のとなりにどかっと座った。それに付き合う様
に春田は実乃梨のとなりに座った。その様子を見ていたメイドさんが堪らずに声をかけ
てきた。
「あの、勝手に机を動かされては…」
「コーヒー」「俺もコーヒーね」
言葉をさえぎり能登と春田はむりやりオーダーしてチケットを渡す。仕方なく、
「ジンジャーエール」「わたしも、それで」
と、実乃梨と後輩もオーダー。実乃梨はメイドさんに二人分のチケットを渡した。
「コーヒーが二つとジンジャーエールが二つですね。かしこまりました」
すっかり押し切られて可愛いメイドさんはオーダーを確認すると戻っていった。あま
りに酷い自分たちの最上級生っぷりに、実乃梨はたまらず溜息をつく。
「随分と強引じゃないか? 能登君よ」
「ふふん。いいだろ、せっかく同級生にめぐり合えたんだからさ。これも何かの縁だと
思って諦めてくれよ」
「クラス展示の準備をサボりまくる様な不埒な同級生は櫛枝にはおらんのだよ」
「俺はそんな気分じゃねーのよ」
能登は口を尖らせて言った。
「あ、そう。その気分とやらはサボって晴れたのかな?」
「く…」
「やだねぇ。麻耶ちゃんが北村君と仲良くなっちゃって凹んでるわけ?」
「くしえだ〜」
情けない声を上げたのは春田だった。それ言っちゃダメ、とでも言いたいのか、手を
ばたつかせる。
「ぐっ…」
「あれれ、こりゃ〜悪いこと言ったかねぇ」
などと白々しく言ってみるブラックみのりんだった。
「俺は北村はアニキ一筋だと思ってたんだ。まさか、木原に手を出すとは…」
「手を出すって、麻耶ちゃんはあんたの女じゃないでしょ」
「そうだけどさ」
「いいじゃない。麻耶ちゃん、ずっと北村君を追っかけてたんだから。きっちり北村君
に想いを伝えた麻耶ちゃんの勇気の勝利だよ」
腕組みをした実乃梨は自分の言葉にうんうんと頷いていた。
「く…」
能登はがっくりと肩を落とした。
そこへ気まずそうにメイドさんが飲み物を運んできた。修羅場チックでどんよりとし
た雰囲気の中、メイド姿の女生徒はコーヒーとジンジャーエールを机に置いて、
「ご、ごゆっくり」と消え入りそうな声で言ってそそくさと下がっていった。
なんとも気まずい気分の中、四人はそれぞれの飲み物に口を付けた。
「そういえば狩野先輩、帰ってきてるんだねぇ」
実乃梨は大して興味もなさそうに言った。
「ああ。俺らも見た。昨日だけど」
「私もさっき見かけたよ。高須君となんか話してたみたいだったけどさ」
「ほんとか! 何を話してた?」
能登はかぶりつきそうな勢いで身を乗り出した。
「な、な、なんだよ」
「いいから、言えよ!」
「そんな細かいこと憶えてないって。狩野先輩が高須君になんだかお願いしてて、それ
を高須君が引き受けてたみたいだけど、別に高須君が頼まれごとするのは珍しいことじゃ
ないだろうし…」
「…ほんとか?」
「何が?」実乃梨は不機嫌そうに応えた。
「受けたのか。高須のやつ」
「何か知らないけど、俺でよければ、なんて言って引き受けてたけど…。どったの?」
能登はストンと落下する様に椅子に腰を下ろし、
「マジかよ」と呟いた。
「どうしたの。大丈夫?」
「高須はアメリカに行くつもりだ…」
「え?」
実乃梨は自分の顔から血の気が引くのを感じた。
「どういう事。ちゃんと話して」
青白い顔をして、今度は実乃梨が身を乗り出して能登に詰め寄った。
「昨日、聞いちゃったんだよ。狩野先輩が高須に言ってたんだ。お前程の逸材に来ても
らえれば助かるって。おまけに向こうの人間も納得してるって言ってたんだよ。それっ
てつまりアメリカに来いってことだよな。その時はとにかく考えておいてくれって狩野
先輩は言ってたんだけど」
「高須君はそれを受けたって言うの?」
「それっきゃないよ。引き受けたんだよな?」
『受けてくれるんだな』『ええ。喜んで』
引いた血の気は逆流し、今度は一気に駆け上っていった。
「大河は? 大河はどうなるんだよ?」
顔を紅潮させた実乃梨は能登に食らいつく様に吠えた。
「わかんねぇよ。俺に言われたって」
「高っちゃんがタイガーを置いてくわけ無いじゃん」
「そんなのわかんないだろ」
「…確かめる」
実乃梨は小さく噛み締める様に言った。
「確かめるって?」
「高須君に直接聞く! それっきゃない」
椅子がひっくり返るほどの勢いで実乃梨は立ち上がった。
「櫛枝先輩!?」
後輩がそう言い終える前に実乃梨はもう走り出していた。
大河を泣かすようなことをしたら、絶対許さない!
教室を飛び出し、廊下を行き交う人にぶつかりそうになりながら、それを華麗なフッ
トワークでかわす。彼がどこにいるのか分からない。でも、最後に見かけた場所に向かっ
て実乃梨は全力で走り続けた。その後を春田と能登が追っていることにも、携帯電話と
いう便利なモノがあることにも実乃梨はまったく気付かなかった。そして、自分がそれ
ほどまでに熱くなっているという事にも気付いていなかった。
***
C
以上で「きすして5(前編)」の投下を完了します。
支援、ありがとうございました。
母親らしい大河母だなあ。
>そうよ。彼女、家事もこなせるし、おっぱいも大きいし
そりゃ、奈々子様のおっぱいは魔乳だけれども。
>一回エッチすると二十回はキスをするでしょ。
きゃっきゃうふふだな、オイコラ。
>>378 後編も楽しみにしていますぜ。
この人の話の展開ってベタなんだよな
でもベタだからこそ、誰もが想像できる、してたようなアフターにかすってきて
はぁ実際書かれてたらこんな話あったろうなって思ってしまうんだよ
大河母ともう一回揉め事とか、竜児と大河母が意外と仲良くとか
亜美の自分なりの決着や、竜児の浮気とかなんか疑惑で実乃梨暴走
あるよなぁって思ってしまうぜ
GJ。文化祭という一大イベントで各キャラを一斉に動かしているのは凄いですね。
いざ書くとなると立体パズルを組み立てるようで大変だったでしょう。
続きも期待してます。
356FLGRです。
「きすして5」の後編25〜47を投下させていただきます。
途中、規制などで中断するかもしれません。
竜児は合流場所に指定された二階の空き教室で大河を待っていた。そこは机と椅子を
並べただけの休憩スペースで、教室の中には机を六つ組み合わせたテーブルが四つ作ら
れていて、その周りには椅子が置かれていた。竜児は空いていた窓側のテーブルのそば
に置かれた椅子に座って大河と彼女の母親を待っていた。
『くしえだ〜。どこいくんだよ〜』
「ん? 春田?」
バタバタと廊下を走る音と春田っぽい声が聞こえた。
「何やってんだ? あいつら」ぼそっと呟いた。
それから暫くして竜児の電話が震えた。竜児はポケットから携帯を取り出して開いた。
『櫛枝実乃梨』
ディスプレイに表示された名前を見た竜児は少し驚いていた。彼女から直接電話がか
かってくる事なんて、もう何ヶ月もなかったのだ。彼女からの連絡はメールが基本、そ
れもほとんど大河経由だった。
竜児は自分でも気付かないまま怪訝な表情を浮かべ、そして着信ボタンを押した。
「櫛枝?」
『あ、きゃきゃすきゅん!』噛みすぎだろ。心の中で激しく突っ込んだ。
「どうした?」
『いまどこ?』
「どこって、二階の空き教室。休憩コーナーになってる教室あるだろ」
『ごめん、良く聞こえない』
竜児は、そりゃあ、お前が走ってるからだろ、と思いつつも、
「二階の空き教室だ! 休憩コーナー!!」と音量を上げて言った。
『うわ、ミスったあ、あたた』
「なんだなんだ?」
『・・・にケリ入れちゃった』
「ケリ入れたってなんだよ?」
『ああ、いいの。とにかく話しがあるから』
「話しってなんだ?」
『いいから。逃げないでそこにいて!』
「逃げねぇって」
『じゃ、すぐ行くから』
「待ってりゃいいんだな? …って切りやがった」
仕方なく携帯を畳んでポケットにしまい込んだ。しまい込みながら、なんとなく漠然
と、嫌な予感がした。さらに教室にいた人々が口々に「ケリ入れたって」とか「話しっ
てなんだ?」とか「逃げないってことはここでバトルかよ」なんて事を言いながら次々
と教室を出て行くのを竜児は見た。ものの三十秒程で教室の中にいるのは竜児を含めて
も数人だけとなっていた。
最初は原因が分からなかった竜児だが、言われていることを繋ぎ合わせてみて、えら
く的外れな誤解をされているらしいことに気がついた。
誤:ケリを入れた相手に話しがあると言われたヤンキーが逃げずに待ち構えている。
正:友人に話しがあると言われて竜児はここでまっている。
「まったく…」
なんともブルーな気分になった竜児は溜息をついた。
その時だった…
「た、高須クン!」
竜児は教室の入り口に立っている実乃梨を見た。
「話しを聞かせてもらうよ」
「ったく、何だよ?」
竜児は椅子から立ち上がった。
「逃がさん!」
「へ?」
実乃梨はエボシに襲いかかるサンの様に駆け出すと机に飛び乗りその上を駆けた。竜
児に向かって一直線に、最短距離で詰め寄るために。そして思い切り踏み切った。
しかしだ、机は床に固定されていないのだ。そんな不安定な物を踏み台にして、思い
切り踏み切ったら…
「あれ?」 … コケるにきまっている …
机はぐらっと傾き、実乃梨の身体は前のめりになりながら竜児に向かって一直線にま
るでミサイルの様に突っ込んでいった。竜児はそれを避ける事が出来なかった。避けた
ら実乃梨の身体は机や床に叩き付けられてしまう。そんなヤバすぎる角度と速度で実乃
梨の身体は宙を舞った。
机が倒れぶつかり合う激しい金属音 ――
「ぐげぇっ」という声と『ごん』という鈍い音 ――
「いったー」
実乃梨が目を開けるとそこには竜児が大の字になって倒れていた。実乃梨は竜児の胸
に受け止められ、竜児の身体がクッションになって無傷だった。一方、フライングボディ
プレスをまともに喰らった竜児の方は机や椅子に背中を打ち付け、倒れ込んだ拍子に後
頭部を床に強打して身動き一つ取れなかった。意識はあるものの、ああ、本当に頭を打
つと星がでるんだ〜なんてことを虚ろな意識の中で思うのが精一杯で、ショックで自分
の呼吸が止まっていることも良くわかっていなかった。
「た かす くん」
実乃梨は竜児の身体に跨がって、胸ぐらを掴んで引き起こした。
「どういう事?」
竜児は何も答えない。応えられない。目のピントも合っていない。
それでも実乃梨は問いただすのを止めない。テンションが上がりすぎていて、竜児が
どうなっているのか実乃梨は全く分かっていなかった。
「高須君! どういう事! アメリカに行くってホントなの?」
実乃梨は叫びながら竜児の胸ぐらを掴んで揺すった。竜児はぼやけた頭をさらに振り
回されて、いよいよ意識が怪しくなっていった。それでも、実乃梨が言っていることが
自分にとって意味不明であることだけは分かった…ような気がした。
「ねぇ、なんとか言ってよ! 大河も連れて行くんだよね?」
意味不明に唸るだけの竜児を床に押し付けて実乃梨はさらに問い詰める。
「そうだよね? ねぇ、答えろよ! 答えてよ! 高須君!」
竜児のぼけた意識は、今度は一気に押し寄せた危険信号でパンクしそうになっていた。
呼吸が止まったままになっていた。胸の痛みが脳に伝わり横隔膜の再起動が開始される。
でも、なかなか起動しない。只今、竜児の自律神経系は上を下への大騒ぎである。その
お陰で意識が少しづつ鮮明になり始める。
『とにかく、くしえだ、やめてくれ』
けれど、考えている事が声にならない。呼吸出来ていないのだから声が出る筈が無い。
ぱくぱくと口を動かしても音の一つも出やしない。
「りゅーじっ!!!」
その声と同時に糸がちぎれる様な音がして、実乃梨は竜児から引き剥がされて一メー
トルほど後ろに向かって吹っ飛んだ。
「あ、あぁぁ、りゅ、りゅ…」
実乃梨の襟首を掴んで投げ飛ばしたのは大河だった。
ぐったりと横たわる竜児の姿を見て、大河の顔から一気に血の気が引いて雪のような
白さに変わっていった。それぐらい竜児の見た目はヤバかった。目はいっちゃってるし、
口の端からだらっと血が流れ出ていた。
大河は竜児に駆け寄ってゆっくりと抱き起こした。
「りゅーじ、りゅーじ」
ちいさな掌で弱々しく竜児の頬を叩く。
「しっかりして。りゅーじ」
溢れた涙がこぼれ落ちて竜児の頬を濡らしていく。
「死なないで!」
死なねぇって! これぐらいで死ぬかよ! だから、泣くな! 竜児は心で叫んだ。
「ぐうぅぅぅ、ふぅ、はぁ」
そして、やっとの事で竜児の呼吸は再起動した。最初は弱々しく、徐々に元通りの力
強さを取り戻していく。
「た、いが…」
「りゅーじ! 大丈夫?」
「なんとか… いててて」
投げ飛ばされた実乃梨は、ボロボロと泣きながら竜児を介抱する大河を見て、ようや
く自分がやらかした事を把握し始めていた。
「た、大河…」
実乃梨は恐る恐る声をかけた。
「馴れ馴れしく呼ぶなぁ!!」
叫ぶ様にそう言って、大河は実乃梨を睨みつけた。睨みつけて、やっと気がついた。
「み、み、み、みのりん?」
投げ飛ばした相手が実乃梨だったことにやっと気がついた。
「なんで? どうして、みのりんが? こんな…」
「わ、私は高須君がアメリカに行っちゃうって聞いて、それを確かめたくて…」
「お前…さっきから、何言ってるんだ? さっぱり意味がわかんねぇ」
大河に支えられてようやく上半身を起こした竜児は弱々しく言った。
「え? だって、狩野先輩に誘われたんだよね」
「はぁ?」「へ?」竜児と大河は間の抜けた声を上げた。
「みのりん…。あのね、竜児が誘われたのはね、かのう屋のバイトよ」
呆れ顔で大河が言った。
「ああ。卒業したらかのう屋でバイトしないかって、そのまま正社員になってもいいっ
て、言ってくれてな」
「え? えええええ?」
「断ったけどな」
「で、でも、引き受けてたよね」
「引き受けたのは…かのう屋の…お客様モニターだ」
口の中が血まみれで段々話すのが辛くなってきていた。
「おきゃくさまもにたー?」
「アンケートみたいなもん」
つまり…
「か、勘違い? 早とちり?」
「しらねぇよ」
「え? あれ? 大河は知ってたの?」
「バイトの事は昨日竜児から聞いてたから。モニターは初耳だけど」
「ったく、あー、くそ」
竜児の唇の端からどろっとした赤い液体が溢れた。
「わわ、竜児。大丈夫?」
大河はポケットからハンカチを取り出して溢れた血を拭った。
「ハンカチじゃなくてティッシュを使え」
「ばか! そんなのどうでもいいわよ。ホントに大丈夫なの?」
「口の中が切れてるみてぇだ。大したことないだろ」
強がってみたものの口の中はどろっとした鉄の味で満たされいて最悪だった。口を開
けば血が溢れて、かといって飲み込むのも気持ち悪い。大河の淡いピンクのハンカチは
血でまだらに染まって見るも無惨な姿になっていった。
実乃梨は冷たい床にへたり込んだまま、その様子を呆然と眺めていた。
勘違い… ドジ…
二人の間に疑う余地など微塵も無かったのに。
「は、はは、よかった」
実乃梨は安堵の表情を浮かべて、そして大河に向かって微笑んだ。
ふにゃっと溶ける様な笑顔で大河を見た。
大河は… 実乃梨の表情を、笑顔を見た。
「よかった? なんで?」
大河はゆっくりと立ち上がり、実乃梨を睨みつけた。
「え、あ…た、たいが?」
血の気を失った雪の様に白い小さな顔があった。
怒りと哀しさで凍り付いた視線に貫かれ実乃梨の背筋は震えた。
「竜児にケガさせておいて、なんでヘラヘラしてんの?」
そして実乃梨は本当に自分が何をしたのかを自覚した。
自分が大河の愛している者を傷つけたことを認識した。
「ねぇ、どうして笑ったの? ひどいよ」
「ご、ごめん。大河」
大河は音もなく実乃梨の間近に歩み寄った。
「こんなに血が出てるのに…」
大河は血でまだらに染まったハンカチを実乃梨の胸に叩き付け、左手で実乃梨のブラ
ウスの胸ぐらを掴んで引き上げた。ちぎれかけていたブラウスのボタンが弾けて落ちた。
『だめだ、大河』竜児はそう言おうとしたけれど、口の中に溢れる血糊のせいで声を出
す事が出来なかった。
「なんとか言ってよ…」
「わ、私は…高須君がどこにも行かなくて良かったなって」
「そう…」
「う、うん…」
「…疑ったんだね…竜児のこと」
… わかってない。この女はなんにもわかっちゃいない。
『嫁に来い』彼は言ってくれた。
『大河を俺にください』
『大河と結婚する』
あたしと結婚することを、みんなと約束してくれた。
どれだけの覚悟で約束をしてくれたのか…
そんな竜児を櫛枝実乃梨は冒涜した!
ぐつぐつと心が煮立っていく。心の中のケモノが暴れ出す。
それは大河に右手を振り上げさせる。固く拳を握らせる。
実乃梨は大河を見た。全部の感情がごちゃ混ぜになった様な表情で、目に涙を浮かべ
て、自分に拳を振り下ろそうとしている親友の姿を見た。殴られても仕方が無いと思っ
た。それで許してもらえるのなら、思い切り殴り飛ばされたかった。蹴り倒されること
も覚悟した。けれど…
拳は振り下ろされなかった。
大河は自分の中のケモノを、衝動と言うバケモノを必死に押さえ込んでいた。一時の
感情の爆発に身を任せて、そして人を傷つける。そんな事はもうしないと約束したから。
誓ったから。固く瞼を閉じて暴発寸前の心が弾けてしまわない様に押さえ込む。唇を小
さく震わせながら肩を揺らして呼吸する。ぶるぶると震える拳をゆっくりと押し開き、
振り上げた腕を理性の力で引きずり下ろした。最後に実乃梨の胸ぐらを掴んでいた左手
がゆっくりと開いて彼女を解放した。
「大河…」
「あやまるなら…竜児に…謝ってよ…」
大河は叩き付けたハンカチを拾い上げ竜児の傍らに戻り、冷たい床に座って竜児の口
元を拭った。竜児はそんな大河の頭を無言で撫でた。優しく旋毛を撫でられて大河は涙
を浮かべて呻いていた。
実乃梨は這う様に二人に近づき、
「ごめん。高須君。本当に、ごめん」と床に座ったまま、まるで土下座でもするみたい
に何度も頭を下げた。
「もういい。事故みたいなもんだからな」
竜児がそう言うと、また唇の端からだらっと血がこぼれた。
「いったい何事?」
「ママ…」
十人ほどの野次馬の間から現れたのは大河の母親だった。
「えーと」大河は説明に困り竜児を見た。
「櫛枝が机の上でふざけてたらスッ転けて、助けようとして下敷きになった俺が口の中
を切ってこの有様」
と話すそばから血がとろとろと。ビジュアル的には吸血鬼。
「あらあら」
「んで、血を見た大河がパニクって号泣」
「あらあら」
「そ、そーだよ。櫛枝がふざけが過ぎるからこんなことになるんだよ〜」
思わぬ援護射撃を放ったのはしっかり櫛枝の後を追いかけてきた春田だった。
「まったく、何考えてんだか」
竜児は呆れ顔でそう言った。
「ほ〜んと、高っちゃんがいなかったら大怪我だよ〜」
春田のその言葉に、そこにいた全員が空気を読んだ。
そうか、そうか、不慮の事故か。
櫛枝の事だからそんなこともあるだろう。いや、そうに違いない。
何もメンドーな事にする必要ないじゃないか…
良くわかんないけど本人達も納得してるっぽいし…
せっかくの文化祭なのに職員室に連行されて事情聴取なんてノーサンキュー。
野次馬全員の意思がここにめでたく一致した。見物人は一人二人と去ってゆき教室は
平静を取り戻していった。野次馬の中にいた能登はその場に呆然と立っていた。
「え、え、え?」実乃梨は状況の変化に戸惑うだけだった。
竜児はゆっくりと立ち上がり、大河の手からハンカチをつまみ取った。ポケットから
自分のハンカチを取り出して大河に渡して、大河のハンカチで唇の端を拭った。
「口の中が気持ち悪ぃ。ちょっと濯いでくる」
「深く切ってるといけないから、保健室で診てもらったら?」
大河ママは冷静に言った。
「そうだね。竜児…、行こ」
竜児は口を開くのが面倒で、ただ大河に向かって頷くだけだった。
「大河…」
実乃梨のかけた声に大河はただ沈黙して背中を向けた。
竜児は春田の肩をポンと叩いて大河と一緒に教室を出ていった。それを見送った春田
は床の上に座ったままの実乃梨の傍にしゃがみ込んだ。
「櫛枝〜。俺も悪かったよ。なんか俺らのガセネタで大騒ぎになっちゃってさ〜」
「はは、はぁ〜、あたしゃ情けないよ」
「う〜ん、そだね」
「あっちゃ〜、春田君に言われちゃったよ」
「え〜、それってバカにしてる?」
そう言って春田は立ち上がった。
「いつまでも床に座ってたら痔になっちゃうよ」
春田は手を差し出した。
「ありがと。春田君」
実乃梨は春田の手を取らないで立ち上がった。
「櫛枝さぁ、ジャージかなんかに着替えた方がいいんじゃね?」
「え? そうなの?」
実乃梨はブラウスの襟に触れて、端がちぎれているのを確かめた。それにボタンもい
くつか取れていた。
「ありゃりゃりゃ」
「ほいじゃね、待ち合わせしてるからさ〜」
春田がひょこひょこと教室から出て行くと、教室に残っているのは実乃梨と能登だけ
になった。ちょっと離れて気まずそうにしていた能登が実乃梨に歩み寄った。
「ごめん。なんか、とんでもない事になっちゃって」
自分の当て推量でとんでも無いことになったことが申し訳なかったのだが、それ以上
に申し訳なかったのは修羅場をどうにもできなかったことだった。場を収めたのは竜児
と春田の機転でそれを見ていることしかできなかった能登はどうにも情けない気分になっ
ていた。
「はは、ま、まあ悪いのは私なんだし。あーあ、もう、よれよれだよ」
実乃梨はブレザーを脱ぎ捨ててスカートからはみ出しているブラウスを直し始めた。
「わわっ」と、声を上げて能登はそっぽを向いた。その顔は真っ赤だった。
「く、櫛枝、む、胸」
「え?」と実乃梨は自分の胸元を見た。ボタンが取れてしまったせいでブラウスの胸元
は超大胆に開いていて、胸の谷間と繊細な細工を施された薄桃色の布地がばっちりと見
えてしまっていた。
「わわ、わー、み、見ないでー」
顔を真っ赤に染めて実乃梨は腕で胸を隠してその場にしゃがみこんだ。
その時だ…
「突入!」という凛々しい声が響いた。
それを合図に黒い剣道着を着た男子生徒三名と柔道着を着た男子生徒三名が教室に駆
け込んできた。突然の事に実乃梨も能登も金縛り状態で、ただ成り行きを見守るだけだっ
た。六人の男子生徒に続いて教室に入ってきたのは竹刀を担いだ狩野すみれだった。
「こ、これは…」状況を見てすみれは唸った。もう、唸るしか無かった。
そこに駆け込んでくる男がもう一人。
「むぅ、遅かったか。状況は? って、か、会長!?」
駆け込んできたのは北村祐作現生徒会長。
「会長はお前だろう。まあ、話は後だ。見てみろ。この由々しき状況を」
北村が見たものは…
床に乱雑に捨てられたブレザー
ボタンのちぎれたブラウスの胸元を腕で隠して床の上にへたり込む女子生徒
そしてそれを呆然と眺めている男子生徒が約一名=能登久光
「生徒会室に顔を出したら乱闘騒ぎだと言うのでな。お前も不在だったから平和維持軍
と一緒に出動したのだが…なんたる不祥事」
すみれは冷たい怒りの表情で能登をにらみつけた。
「能登…。お前、なんて事を」
祐作は搾り出すように、呻くようにそう言った。
そこに遅れて駆け込んできた木原麻耶、
「祐作。どうなって…って、い、いやぁぁぁ」
想定外の状況に顔面蒼白。ふらふらと後ずさり壁にもたれかかった。
「あ?」能登は自分の置かれている状況を改めて冷静に考えた…
母さん…、
誰がどう見たって、この状況は性犯罪なわけで。
母さん…、
僕の人生、ひょっとしてオワタ??
「あ、あ、こ、ここ、これは、ち、ちち、ちがうんだぁぁ」
能登はうろたえながらも無実を主張してみた。だが、能登の見立て通り、どうしたっ
て状況が悪かった。
「く、櫛枝。なんとか言ってくれよ」
「そそ、あの、えと、その、うわー、だめだよー」
何をどう説明したものか、さっぱり分からず実乃梨は動転するばかり。
「の、能登くんは、その悪くないんだけど、実は諸悪の根源っていうか、黒幕っていう
か、そうじゃなくて、そうそう、ちょっとした誤解で投げ飛ばされた拍子にボタンがと
れて、そしたら能登君におっぱい見られちゃって…」
まったく意味が分からないのにしっかり状況は悪化した。
「可哀想に動揺しているようだな。無理も無い。どうする? 会長」
「とにかく櫛枝を保護しないと。先輩と木原は櫛枝を保健室に」
「わかった。北村、上着を貸せ」
祐作は上着を脱いですみれに渡した。すみれはそれを実乃梨の肩から掛けて、優しく
手を取り立ち上がらせた。麻耶は床に捨てられた上着を拾い上げ、かるく叩いて埃を落
として抱えた。
「あ、怪我は無いんで。保健室は、その…」
保健室には竜児も大河もいるはずで、この状況でそこに行くのはいくらなんでも避け
たい実乃梨だった。
「そうか。では相談室でいいな? 歩けるか?」
「あ、ああ、大丈夫です」
すみれと実乃梨の後を追うように麻耶も教室を出た。出て行く瞬間、麻耶は絶対零度
の視線を能登に浴びせて、ぷいっと振り向き歩いていった。
「悲しいぞ。能登。まさか自分の友人を取り調べる事になろうとはな」
「き、北村。ちがうんだ」
「とにかく、話は生徒会室で聞こう。連行!」
六人の大男に取り囲まれ、重々しい足取りで生徒会室に連行される能登の心にドナド
ナの悲しい調べが響いていた。
***
能登と実乃梨の証言から事件のあらましを把握した祐作とすみれはなんとも情けない
気分になっていた。
「まったく、三年がよってたかって何をやってるんだか」
呆れ顔ですみれは言った。
「まあ、良かったですよ。しょうもない話しで」と、祐作。
「まったくだな。それにしても勘違いが原因とはな…」
「それについては俺が完全に早とちりしちまったもんで…すみません」
能登はひたすら謝っていた。
「わたしも、なんかもう、うわーってなっちゃって…ホントにすみませんでした」
実乃梨もひたすら平謝りするばかりだった。
「高須だけが災難だったんだな。あいつは大丈夫だったのか?」
すみれは心配そうな表情を浮かべて言った。
「高須君、口の中を切っちゃったみたいで。たぶん保健室」
実乃梨は申し訳なさそうに言った。
「そうか。連絡が無いってことは大した事は無かったんだろう」
祐作にそう言われて、実乃梨の表情がわずかに緩んだ。
「能登、疑ってすまなかった」
祐作は頭を下げた。
「まあ、あの状況じゃな。仕方ないよ」
「うむ、しかし我々も早とちりだった。悪かった。この通りだ」
すみれも非を詫びて頭を下げた。
「え、いや、そんな」
新旧会長に頭を下げられ、かえって恐縮してしまう能登だった。
「北村、もういいよな」
「ああ。本当に悪かったな」
「いいって。なんせ俺は諸悪の根源で黒幕だからさ」
「能登君よ、それはもう言わないでおくれよ」
恥ずかしそうにそう言った実乃梨の言葉に、能登は、へへっ、と軽く笑って生徒会室
を出て行った。
「本当にお騒がせしました」
実乃梨は体育会系らしくビシッとお辞儀してから生徒会室を出た。実乃梨は生徒会室
のドアを閉めておもいきり溜息をついた。今日ほど自分のドジっぷりを思い知らされた
ことは無かった。
「散々だったな」
廊下で実乃梨を待っていた能登が声をかけた。
「ホントだよ」
「あーあ、なーんで、あんた達の言ってる事を真に受けたんだかねー」
「俺もマジだったからなー。妙に説得力が有ったんじゃないの」
「それは言えてる」
うんうん、と実乃梨は頷いた。
「私もう一回大河と高須君に謝ってくる」
「おい、待てよ。櫛枝、諸悪の根源を置いていくなよ」
二人は早足で保健室に向かって歩いていった。
***
生徒会室は元の喧噪を取り戻していった。体育館のイベント進行が遅れているだの、
隣のクラスの行列が長過ぎて邪魔だの、ひっきりなしに問題が持ち込まれ役員達と実行
委員達はその対応に忙殺されていた。
「やれやれだな」
すみれは呟きパイプ椅子に腰掛けた。
「ですね。会…」
会長と言いかけて祐作は苦笑い。
「狩野先輩。お久しぶりです」
「そうだな。まあ、座ったらどうだ」
祐作も椅子に腰掛けた。
「本当にどうなることかと思いましたよ」
「同感だな」
今度は二人揃って苦笑いだった。
「それにしても…」
祐作はすみれの顔を眺めた。
「なかなか来てくれないから心配しましたよ」
「いろいろと野暮用があってな。高須にとっては災難だったろうが」
祐作にはバツが悪そうに話すすみれが随分遠い存在に思えていた。
一年近く会わないでいるうちに彼女は随分と大人に近い雰囲気を身につけていて、大
学生どころか社会人にすら思える程だった。清廉で凛とした雰囲気には磨きがかかり、
祐作から見てもある種の近寄り難さすら感じる程だった。
「先輩のせいじゃないですよ」
「うむ、まあ、そうなんだがな…」
「どうして高須にバイトを?」
「ちょっと親父に頼まれてな。ウチの親父も例の一件で高須の事を知ってたしな。高須
はうちの常連客で店員の間でもちょっとした有名人なんだ。生鮮食品に精通している男
子高校生なんて珍しからな。有望な戦力になってくれるだろうと、まあそんなところだ」
「… なるほど」
「高須君は成績も料理の腕も一流ですからねぇ」
二人の様子をうかがっていた麻耶が割って入る様にすみれに言った。
「ほう、そうなのか」
「ええ。そりゃもう。ねー、祐作」
「あ、ああ。そ、そうだな」
なんとなく麻耶に気圧される祐作だった。
その様子がおかしくて、すみれは小さく笑った。
「ところで、北村」
「え、はい」
「あの悪趣味なシロモノは一体なんだ?」
と、すみれが指差したのは失恋大明神の社だった。
「あの、それは…」
祐作は言葉に詰まった。さすがに『あなたにフラれて失恋大明神になっちゃいました』
なんて言えなかった。
そんな祐作の様子を見て麻耶が話し始めた。
「それはですね、北村君が誰かさんにこっぴどくフラれちゃってですね、それ以来、北
村君は失恋大明神としてみんなの恋の悩みを聞いているんですよ。聞いてるっていうか、
拝まれてるっていうか、拝み倒されてるっていうか、どっちかって言うと悪いものは全
部北村会長に押し付けちゃえ、みたいなそんな感じなんですよ」
「ほう。そいつは驚いたな。さくらは一言も言ってなかったぞ」
そりゃ言わないだろう。と祐作は思った。
「実は…、あの後、あまりにもドツボだったもので、自分をふっきるためにやってみた
ら予想以上に受けてしまって、引っ込みが付かなくなりまして」
「私はもういいんじゃないかなーと思うんですけどね。いつまでも失恋キャラなんて引っ
張ってちゃだめですよ。そう思いませんか? 先輩」
「そうだな。過ぎた事をいつまでも引きずっていても仕方あるまい」
「ですよねー。さっさと失恋大明神なんて廃業しちゃえばいいんだよ」
「しかしだな…」
実を言えばちょっとだけキャラに愛着もあったりするのだ。
「しかしも案山子も無いの」
「ふふ、北村。形無しだな」
「先輩…」
「彼女の言う通りだと思うぞ。私のせいで北村が失恋大明神になったなんて言われるの
も不愉快だしな」
「そ、そ、そんなつもりは…」
「あ、時間です。会長、体育館に行かないと」
麻耶はしれっと言った。
「えっ?」
「では、狩野先輩、失礼します」
「えっ、木原、ちょっと…」
留まろうとする祐作の言葉を無視し、麻耶は彼の右手首を捕まえて引きずるようにし
て生徒会室を出て行った。
その様子を眺めてすみれは微笑んだ。
あれは、あれでお似合いだな… なんて思いながら。
***
保険室の長椅子に並んで座る竜児と大河、それに大河の母はようやく落ち着きを取り
戻していた。竜児の口の中はやっぱり切れていたのだが、ガーゼで圧迫止血することで
無事収まった。止まらなかったら歯医者で縫ってもらわないとだめね、という養護教諭
の言葉に大河の方が凹んでしまい、それを当の竜児がもごもご言いながら励ますという
微笑ましくも微妙な光景が展開していたのだが、ともかく無事に出血は収まって大河の
表情もすっかり柔らかさを取り戻していた。
「ホントにどうなる事かと思ったわよ」
「すまねぇな」
竜児は口の中にガーゼを入れたまま、ぼそぼそと言った。
「まったく。無茶してもらっちゃ困るわ」
大河ママはちょっとだけ厳しい表情で竜児を見た。
「すいません」
「まったくよ」大河もジトッと竜児を睨む。
やむを得なかったとは言え、軽率と言えば軽卒だったな、と竜児は思った。結果的に
は自分も櫛枝も無事だったけれど、それは単にラッキーだっただけで、打ち所が悪けれ
ばちっとも笑えない状況になっていたかもしれないのだ。それに吹雪の中でピクリとも
動かない大河を見つけた時の自分の動揺っぷりを考えれば、ぶっ倒れている自分を見て
大河がどれだけショックを受けたのか痛い程分かるのだ。そんなワケで…
「すまねぇな。心配させちまって」と、被害者なのに謝らざるを得ない竜児だった。
「でも、しょうがないよね。悪いのはみのりんだもん。竜児は悪くないもの…」
「許してやれよ。悪気はねぇんだから」
「わかってるわよ。そんなの…」
大河がそう言い終わると同時に保健室のドアが開いた。そこにバツが悪そうに立って
いたのは実乃梨と能登だった。ドアが開いたことに気付いて入り口の方を見た大河は、
ふっと目を逸らして俯いた。実乃梨に悪気が無かったのは分かっているけれど、あっけ
らかんと許す気分にもなれなかった。大河にとってはやっぱりショックが大きくて、本
当にわけもわからずボロボロと泣いてしまうぐらいのダメージだったのだ。
「どうしたの?」
養護教諭は実乃梨に声をかけた。
「あの、高須君の様子が気になって」
「ああ、大丈夫よ。血も止まったみたいだし」
「良かった。少し、話をさせてもらってもいいですか?」
「ええ、いいわよ」
実乃梨は保健室の奥の長椅子に腰掛けている大河と竜児の前に立った。
「櫛枝…」
「…」大河は何も言わなかった。
「高須君、本当にごめんなさい。それにありがとう。春田君の言ってた通り高須君がい
なかったら本当に大怪我してたかもしれないよね。それに、大河も、ごめんね。早とち
りして、高須君に怪我させちゃって。笑ったのも、ごめん。なんかホッとしちゃって。
もう、完璧に自爆の誤爆で、ホントにこの通り」
そう言って、冷たい床にすとんと正座して土下座を決める実乃梨だった。
「櫛枝、もう、いいって。土下座なんてすんなよ」
そう竜児に言われても実乃梨は顔を上げなかった。
竜児はすっかり困惑。隣の大河の顔を見て、『もういいだろ』と目で合図した。
でも、大河はそんなに簡単に許せる気分ではなかった。いくら親友の実乃梨でも、い
や、親友だから許せなかった。竜児のことをちゃんと知っているハズなのに、彼のこと
を疑ってかかった実乃梨が許せなかった。
「どうして、竜児のこと疑ったの?」
実乃梨は顔を上げて大河を見た。
「高須君がアメリカに留学するのって妙にリアルだったから…」
「それだ、それ。なんでかのう屋のバイトがアメリカ留学になっちまうんだよ?」
まさにそれが知りたかったのだ。なんでこんな事になっちゃったんだよ? と竜児は
実乃梨に聞きたかったのだ。
「それは…」
「すまん、高須。実は全部俺のせいだ」
実乃梨の背後で気まずそうにしていた能登が声を上げた。そして、能登は昨日の盗み
聞きから始まった事の顛末を包み隠さず全部話した。
「むぅ…」竜児はうなり、
「はぁ…」と、大河ママは眉間を指でつまんで溜息をつき、
「…」大河は無言で呆気にとられていた。
「く、くだらねぇ。そんな勘違いのおかげでこの有様かよ…」
竜児は怒るというより、もう、ただ、あきれるばかりだった。
「俺はもう本当に高須がMITに行くもんだと」
「うんうん、なんかホントに説得力があってさ」
正座したまま実乃梨は頷く。
「そりゃ説得力あるだろ。能登が完璧に勘違いしてるんだから」
「けどさ、そんなの言い訳だよね。高須君のこと疑ったのは事実だし、大河を置いてい
くなんて言ったら本当に殴るつもりだったんだから」
「おいおい」
「だから、ホントに…ホントにゴメンね大河。高須君も、ゴメン」
実乃梨は床に額を擦り付けるようにもう一度土下座した。
「みのりん、もういいよ…」
「ごめん、ほんとにごめん」
顔を伏せたまま呻くように謝り続けた。
「…ホントにもういいよ。今回だけは許してあげる。親友だもん。竜児の怪我も大した
ことなかったし、だから今回だけは特別」
「大河…」
実乃梨はようやく頭を上げて大河を見た。
「あたしも、みのりんのブラウス、ぼろぼろにしちゃって…」
実乃梨のブラウスは外れたボタンの代わりに安全ピンで留めてあった。破れかけた襟
も安全ピンで留められていて、あちこち安全ピンだらけだった。
「これはいいんだって。私が悪いんだしさ。とにかく、ごめんね」
正座したままで実乃梨は言った。
「もういいよ、みのりん。心配してくれたんだよね」
「うん…、大変だーって思って勝手にパニックになって突っ走ってた」
「ったく、自重しろよ。本当に大怪我するぞ」
少しあきれた口調で竜児が言った。
「ごめん。高須君。今度ばかりはホントに身にしみたから…」
実乃梨は俯いて溜息をついた。
「なんかもー、何やってんだよって感じ。考えてみたらさ、私、ずっと大河を傷つけて
ばっかだよ。こんなの親友失格だよ…」
本当に傷つけてばっかりだ、と実乃梨は思った。そのたびに許してもらって、なのに
また傷つけて、そんな事ばかりだった気もするのだ。大河の父親が現れたときもそうだっ
た。その後、気まずくなって距離を置くようになった。それだって多分、大河を傷つけ
たのだ。再び、彼が現れたとき、竜児に自分の経験を、大河の父がどんな人物なのか語
らなかった。それで大河も竜児も傷つけた。宝物のガラスの星を粉砕したのも自分だっ
た。大河が遭難しかけたのも自分と亜美の喧嘩が原因といえば原因だった。
「ホントに、失格だよね…」
「そんなことないよ」
大河は首をふった。
「みのりんは一番大切な友達だよ。あたしの大事な親友だよ」
「大河…」
「きっとね、みのりんと友達になれたから、みのりんが傍に居てくれたからあたしは竜
児を好きになれて、こうやって一緒に居られるんだよ。もし、みのりんと出会えなかっ
たらね、きっとあたしはもっと酷くなってて、竜児と出会えても、面倒なんか見てもら
えなくて、好きになってもらえなかったと思うんだ…」
大河は優しい眼差しで実乃梨を見つめた。
「だからね…、ありがと、みのりん。心配ばっかりかけてたけど、でもね、もう大丈夫
だから。竜児がいてくれるから私はもう大丈夫だよ」
実乃梨は潤んだ瞳で大河を見た。
ただ、シンプルに、単純に、嬉しかった。
実乃梨は自分が居なくてもきっと二人はこうなっただろうと思ったけれど…
でも、大河がそう思ってくれていることが堪らなく嬉しかった。
「大河は強くなったね…」
「そうかな」
「そうだよ。私も見習わなきゃね」
それは実乃梨の本当の気持ちだった。
もう大河は世界を拒絶していない。諦めていない。
世界を受け入れて、恋人と、高須竜児と一緒にここで生きて行こうと思っている。
二人で幸せになろうと思っている。
それは強さなんだと実乃梨は思う。
大河は実乃梨に微笑んで、実乃梨も大河に微笑んだ。
「と、友達っていいよな…」
能登だった。能登は実乃梨と大河のちょっと青春な会話に目を潤ませていた。
感動に震える諸悪の根源を大河は冷たい目で見た。
「結局、一番悪いのはアンタよね?」
大河の冷めた声は能登の背筋を凍らせた。
「そ、そうだな。お、お、俺のせいだよな」
黒幕はビビッていた。もうビビりまくっていた。
「本当にすまなかった。俺も、これ、この通り」
すとん、と実乃梨の隣に正座をすると、へこへこと土下座しはじめる能登だった。
「すまん、高須。この通りだ」
「もういいから。立てよ、櫛枝も」竜児は言った。
「い、いいのか?」身体を起こして能登は言った。
「竜児がいいって言ってるんだからいいのよ」
能登と実乃梨は立ち上がり、なぜか小声で「せーの」と言って同時に「ごめんなさい」
と頭を下げた。
『ぴぴぴ、ぴぴぴ、ぴぴぴ』
実乃梨のポケットの中から電子音が響いた。
「だぁーっ、ヤバ、クラス展示の当番だった。ごめん、大河、私、行くね」
「はいはい、分かったから」
「あわただしい奴だなぁ」能登は暢気に言った。
「あんたも同じシフトなんだよ! このサボり魔が」
「うぎゃぁ」
ぎゅっと耳を掴まれて能登は絶叫。そのまま実乃梨に引きずられるように保健室を出
て行った。
「ホントにあわただしい娘ね」
「みのりんだからね」
「そうだな。さてと、血も止まったし、ぼちぼち行くか。で、何処に行くんだよ?」
「地学部!」大河がきっぱりと応えた。
「ち、地学部か。い、いいんじゃねぇか。人気らしいぞ」
言いつつも、ああ、絶対に女子部員に顔を憶えられちゃってるな、俺。と思い、何回
も違う女の子をつれて観に行く俺ってどう思われてるんだろ。なんてことがちょっとだ
け気になる竜児だった。
***
グランドの中央でキャンプファイヤーが燃え上がる。藍色の空をバックに茜色の火の
粉が無数に舞い、文化祭の締めくくり、後夜祭が始まった。祐作は表彰式の仕切りを生
徒会の二年生に任せ、その様子を少し離れたところで眺めていた。
まず、福男の賞品授与が行なわれ、商品である『すみれのノート一式』が福男の手に
渡された。それと同時に二十人程の男子が歓声を上げ、中には泣いている者までいた。
今年の福男は陸上部の二年で、歓声を上げたのは陸上部員達だ。去年の福男レースで
ヤンキー高須と女子ソフト部員に福男の優勝を奪われるという最大級の屈辱を受け、一
年がかりで雪辱を果たしたのだ。部員達が歓喜に沸くのも無理は無い。
続いてミス大橋コンテストの優勝者への戴冠が行なわれた。優勝者は一年の女子で、
福男はぎこちなく彼女の頭にスワロフスキーが輝くティアラを載せた。すぐに彼はダン
スを申し込んだが、あっさりと断られ、今度は悲しみの涙にくれたのだった。
最後に総合優勝したクラスの代表者に巨大な目録とショボイ優勝カップが渡され、優
勝したクラスの生徒達は一斉に歓声を上げた。
終わった。一日半限定のバカ騒ぎが終わった。
テントの下で軽く放心している実行委員たち。
炎を囲んでバカ騒ぎのエピローグを思い思いに楽しむ者。
その様子を疲労感と達成感がごっちゃになった表情で眺める生徒会役員。
祐作は燃え盛る炎を眺めながら、寂しさと達成感を同時に味わっていた。生徒会長と
して皆に支えられて一大イベントである文化祭を無事に実行できた事が誇らしかった。
同時にそれは生徒会長としての仕事が終わったということでもあり、高校生活の終わり
がすぐ近くに来ているということでもあった。
「さてと…」
いつまでも感慨にふけっている場合ではなかった。祭りが終われば待っているのは後
始末。仲間達の所に歩き出そうと踏み出した祐作の目に炎をバックに近づく人影が映っ
た。それが誰なのか祐作にはシルエットだけで分かった。
「狩野先輩」
「良い文化祭だな」
すみれは涼やかな表情で祐作に言った。
「みんなのおかげです。本当に、みんなに支えてもらって」
「そうだな。私もそうだった。いいものだな」
「はい…」
すみれは祐作の隣に立ち、二人は並んでグランドの様子を眺めた。
「狩野先輩…。手紙、ありがとうございました」
「ふ、礼には及ばんさ。お前の手紙と同じ、あれは半分、自分宛だ」
「でも、勇気を貰えました」
「そうか。私にも必要なものだからな」
Fortune favors the brave. / 運命の女神は勇者に味方する。
それが手紙の締めくくりの言葉だった。
「先輩、いつまで日本に?」
「さくらに聞いてないのか?」
「はい」
「そうか。明日の便で向こうに戻る」
「戻るんですね」
「ああ、そうだ」
グランドに設置されている年季の入ったスピーカーからワルツが流れ始めた。
「さて、そろそろ帰るとするか。親が首を長くして待ってるからな」
「次はいつ日本に?」
「さあな。来年の夏、かもな」
「会えますか?」
「友人として、か?」
「はい」
「いいだろう」
ぐっじょぶ以外何も出ない!楽しかったです
すみれは一歩前にでて振り返った。
「北村…」
「はい」
「お前は良い会長だ。ちゃんと引き継げよ」
「…はい」
応えた祐作の声は小さくかすれた。
すみれは小さく息を吐いて、それから微笑んだ。
「以上。さらばだ、北村祐作」
そして、すみれは歩き出す。綺麗な黒髪を躍らせて。
「狩野先輩!」
祐作の声にすみれは振り向く。
「Good luck!」
祐作は右の拳を突き出して親指を空に向かって突き立てた。
彼女に祐作が言える事はそれだけだった。彼女の資質を信じているから、祐作にでき
ることは彼女に幸運が訪れることを願うことだけだった。
「Same to you.」
すみれはそれだけ言って微笑み、再び祐作に背中を向けて歩き出した。
右拳を空に、宇宙に突き上げて、人差し指で自分の目指す場所を指し示した。
やがて掌は開かれ、大きく二回だけ振られた。
祐作はその姿を見送って、眼鏡を外して袖で濡れた頬を拭った。
力強く、正面を見据えて眼鏡をかける。
まだ、祭りは終わっていない。
生徒会長、北村祐作は仲間達の場所に向かって走り出した。
最後の段取りのため。そして、もう一つ。
生徒会長ではなく、北村祐作としてやらなければならない事がある。
***
竜児はグランドの端のフェンスに寄りかかっていた。隣には大河がいる。大河の母は
一足先に息子とベビーシッターが待つ家に帰って行った。
―――
三人でプラネタリウムを観て、いくつかの展示を見て、それから竜児のクラスに行っ
てコスプレ無しで普通に写真を撮った。機材がいいのか、写真部の女子部員の腕がいい
のか分からないが、それはとても良く撮れていて、大河の母は普通のプリントとデータ
の入ったディスクを購入していた。
大河の母は娘に「竜児君と二人だけで取ってもらったら?」と言い、そして二人は照
れながら一枚の写真に収まった。出来上がったプリントを眺めながら盛り上がる母娘の
姿がとても素敵で、それが竜児には嬉しくて、そして切なかった。
五週間後、母は去る。けれど二人で彼女から逃げ出したあの冬の日のことを思えば、
三人でこんなふうに過ごせるのは本当に素敵なことなのだと竜児は思った。
―――
「口の中、大丈夫なの?」
「んん、まあ、大丈夫だろ。血も止まってるし」
「散々だったわね」
「まったくだよ。治ったら能登のおごりでラーメンだな」
「あたしも奢ってもらおっと」
「おぅ、炒飯と餃子もつけよーぜ」
「あたしチャーシュー追加トッピングね。そうと決まれば早く治しなさいよ」
「んな簡単に治るかよ」
「へへ」大河は軽く笑って、竜児に微笑んだ。
そんな大河を竜児は穏やかな眼差しで眺めた。
グランドの中央、炎の周りではスピーカーから流れるワルツに合わせ数組のカップル
がぎこちなく踊っている。それを冷やかしている野郎どももいるが、ここでは冷やかさ
れた方が勝者だ。
「ねぇ、竜児」
「ん?」
「ホントにさ、狩野先輩にアメリカに来ないかって誘われたら、どうする?」
「行かねぇよ」
「あたしがいるから?」
「まあ、そう言っちゃえばそうなんだけど。そりゃ、すげぇ環境で勉強できるのって魅
力かもしんないけどよ…」
竜児は大河から視線をそらして斜め上を見ながらポリポリと頬を掻いた。
「…けど、俺にとっちゃあ、お前と生きてく事の方が大事なんだよ」
「…ありがと」
嬉しさに大河の頬はゆるんでしまう。それが照れくさくて、
「けど、そう言う事はさ、ちゃんと顔を見て言ってよね」なんて言ってしまう。
「お、おぅ。次からは気をつける」
「ならいいわよ」
「言い直そうか?」
「恥ずかしいからいい」
「そりゃ、助かる」
竜児は大河の姿を視界に入れようと首を少し傾けた。それを待っていたかの様に大河
の頭がふっと動いて紅の光をたたえた瞳が竜児を見た。
「あのね、竜児…」
「ん?」
「もし、あたしのために竜児が何かを諦めなきゃいけないんだったら、それはちゃんと
言ってね」
「聞いてどうするんだよ?」
「憶えとく…」
呟く様に大河は言った。
「あたしは竜児を諦めたりできないけど、竜児があたしの為に諦めたものは全部私の荷
物だから。それをどうする事もたぶん出来ないけど、でもね、憶えておく事ぐらいはきっ
とできると思うから」
竜児は彼女の意思を削り出して作った様な優しい光を宿した瞳を見た。
「わかったよ。お前も、な…」
大河は無言で頷いた。
二人は炎の生み出す暖かい灯りに照らされたお互いの姿を眺めた。
その灯りには心を照らす力がある。
普段は照れくさくて言えない言葉を引っ張り出す力がある。
「あのさ…」
そう言いながら、大河は竜児の左手をそっと握った。
「恥ずかしくてずっと言えなかったんだけどさ…かっこよかったよ。結婚の事、おじい
ちゃんに話してくれた時も、ママに話してくれた時も」
「そうか? なんか、もう、俺的には完璧にテンパってたけどな」
大河はふるふると首を振った.
「そんなことないよ。なんかね、あんたがおじいちゃんを説得してるのを見てて、あん
たと一緒なら絶対大丈夫って思ったのよ」
「… 俺はお前がいてくれればなんとか出来るって思ってるからな」
「うん」
「俺一人じゃじいちゃんは説得しきれなかったかも知れねぇし…」
「そうかな」
「そうしとけよ」
「わかった。そうしとく」
「でもさ、あんたが格好いいのはホントだから。その…」
大河は目を伏せて、頬を赤く染めた。
「あたしには勿体ないぐらいのかっこいい旦那だから…その…」
握る手にきゅっと力が入って…
「…よろしくお願いします」
髪の毛の隙間から覗く大河の耳は燃える様に赤く染まっていた。
「お、おぅ。こっちこそ」
いきなりしおらしくお願いされた竜児の耳も赤く染まった。
「なぁ、大河。そういう事は顔を見て言わなきゃいけないんじゃないのか?」
「うっ」大河は唸って俯いた。
「ぅぅぅぅ…」
「どうした? 大河」
「踊るわよ!」
つないだ手をぐいぐいと引っ張って大河はグラウンドの真ん中に向かって歩き出した。
「おい、踊るって、お前、恥ずかしいだろ」
「大丈夫! 今、あたしは最高に恥ずかしい状態だから、何をやっても大丈夫!」
「お前はいいけど、俺はどうなる」
「あたしと同じだけ、こっ恥ずかしぃ思いをするだけよ!」
あっという間に竜児はグランドの真ん中に引きずり出されてしまった。
「どうなっても知らねぇぞ。まともに踊った事なんてねぇんだから」
「大丈夫よ。あんたがどんなにへたくそでもちゃんと合わせてあげるから」
大河は右手を竜児に差し出した。
「ふん、言ってろ」
竜児は左手で大河の手を取った。手を握り、右手を大河の肩にそえる。
曲に合わせてステップを踏む。
ワルツに合わせて流れる様に。
言葉に偽り無く、大河は竜児のリードでステップを踏む。
「あんた、上手じゃない」
「あ? ああ、泰子の練習の相手をさせられてたからな」
酔っぱらいをあしらう為のダンスだからまともなシロモノじゃないけれど、それでも
二人のダンスは周りのカップルがうらやむぐらいに様になっていた。
スローなテンポのワルツに合わせて、
流れる様に、水面を滑る様に…
***
いいなぁ…
麻耶は踊る二人を眺めていた。
祭りの終わりまで残り五分、実行委員としての役割も全て終え、あとは後片付けだけ
である。キャンプファイヤーの火勢が弱まるのに合わせて祭りの高揚感も静まっていく。
祐作の力になりたくて、彼の気持ちを、見ている景色を知りたくて一緒に一ヶ月間突っ
走った。初めて感じる達成感、満足感、そして高揚。それは大切な思い出になるのだろ
うけれど、今は寂しかった。
未だに祐作との関係は保留になっていた。
忙しい日々の合間に二回だけデートをした。その時に聞くこともできたけれど、麻耶
はそこで関係が打ち止めになってしまうことが怖くて聞けなかった。
やっぱり、狩野先輩のこと、好きなのかな…
二人の間にそういう雰囲気は感じられなかったけれど、でも祐作は未だに彼女に憧れ
ている、そう思う。
確かめよう。随分と勢いが弱くなった炎の様子を見つめながら、麻耶は思った。
逃げていたって仕方ない。あの夏の日の様に、もう一度、勇気を出して。
「木原!」
背後から呼ばれて麻耶の背中がびくっと跳ねた。
祐作だった。麻耶に駆け寄り、手を取ると祐作は炎の方に向かって走った。
「ちょっと来い」
「ちょ、ちょっと」
「いいから。時間が無い」
祐作は炎の近くで立ち止まり振り向いた。
「木原、踊ってくれないか」
「でも、恥ずかしいし。踊ったことなんてないし」
「簡単だよ。ただ、手をつないで回っていればいいんだから」
「へたっぴでも良かったら」
「かまうもんか」
祐作は手を差し出し、麻耶はその掌に細い綺麗な指をのせた。
一方、グランドの隅には怪しげな一団が集まり始めていた。
「ありゃー。くっついちゃったよ」
実乃梨はぎこちなく踊る祐作と麻耶を見つけて言った。
「あらあら、生徒会長が踊っていていいのかしらね」と奈々子。
「… まあ、いいんじゃないの」
達観した様な表情で能登は言った。
「へぇ。冷静だね」と、実乃梨。
「まあね。あそこまで仲良くされたら認めるしかないよ」
「だあね」
「で、あーみん。何をやろうっての? こんなところに集まってさ」
「ふふふ。みんなでね、踊るのよ」奈々子はそう言って妖しく微笑む。
「踊る? みんなで?」能登は怪訝な表情で奈々子を眺める。
「そういうこと。残ってる知り合いみ〜んなとっつかまえて、楽しく強制マイムマイム」
亜美はそう言ってにんまり。文化祭の最後の最後、後夜祭終了後の十分間を元2―C
メンバーでジャックするつもりなのだ。
「おもしろそうじゃん。でも音楽はどうするよ?」
「歌うの。春田君よろしくね」と亜美は営業スマイル。
「え〜。ちゃ〜らちゃらちゃらちゃん、だっけ?」
「バカ、それはオクラホマミキサーだ」と能登が突っ込む。
「やっぱ春田だ」と誰かが言って笑いが起きる。
「春田君、マイムマイムはね…」
ちゃんちゃんちゃららん、ちゃんちゃんちゃんちゃん、ちゃんちゃんちゃんちゃら
ちゃんちゃん… だよ。と実乃梨は歌う。妙に上手くて「やっぱり櫛枝だ」とあちこち
から笑いがもれる。
「あ〜そっちか。オッケーオッケー」
謎の集団が待ち構える中、ワルツがフェードアウトして後夜祭の終了を告げるアナウン
スが流れた。
「みんな、いくよ」
亜美の合図で「やー」とか「おー」と奇声を上げて十数人ほどの元2−Cメンバーが
グランドに乱入していく。
「タイガー捕獲!」
「うわっ、なんだお前ら」
「たかすくぅん」
「ああっ、竜児になにすんのよ。ばかちー」
「こっちは北村君ゲットだぜ」
「うわ、櫛枝! 何事だ? なんだなんだ」
「ふふ、麻耶、お楽しみのところわるいわね」
「奈々子! なに? なんなの?」
「春田君! うたいなさい!」
亜美に命じられて春田はマイムマイムを歌い始めた。『ちゃんちゃんちゃかちゃん』
と軽快な、聞けば思わず踊ってしまうあのメロディを歌い始めた。それに、続いてみん
なが歌う。テキトーに大声で歌い出す。いつしか人の輪が出来てぐるぐると回り始める。
「ゆりちゃん発見!」
輪の一部が切れて、元担任を追いかけ回して捕獲する。無理矢理引き込まれた独神
(31)は「あなたたち、なにやってるのぉ…」と叫びながら輪の中に取り込まれ、狂
乱のマイムマイムの餌食となった。マイムマイム教団はグランドを阿鼻叫喚の渦に巻き
込み、実行委員会も、生徒会役員も次々と取り込んでいく。
最後のバカ騒ぎは十分間続き、そして春田の声は完全に枯れ果てた。
***
翌々日
竜児は祐作と一緒に昼食を取っていた。そこに麻耶がいるのも、この教室では当たり
前になってしまっていて、普段なら誰も何も言わないのだが、今日に限って周りの視線
が自分たちに注がれていることを感じないわけにいかなかった。見ている人は見ている
もので、祐作が麻耶と踊った事がクラスに知れ渡るのに半日とかからなかったのである。
もっとも、当の北村祐作はやっぱりマイペースなのだ。
「狩野先輩の親父さんにまで認められてるなんて高須は凄いよな」
「何の話しだよ?」
「かのう屋のバイトの件だよ」
「ああ、それか。それがよ、実は変な話しだったんだよ。途中からお前と逢坂がいてく
れればウチは安泰だから、とか言い出してよ。で、聞いてみたら妹の彼氏が不運の塊み
たいな奴で、そんなのが婿入りしてきたらかのう屋がピンチだとか言い出してよ。
それで幸福の手乗りタイガーパワーにあやかりたいから、とかなんとか。宇宙を目指
そうって人がそんなオカルトみてぇな事を言ってくるし、しかも茶化してる様子もねぇ。
もう、いたって大マジなんだよ」
「しあわせの手乗りタイガー伝説ね。そんな話しあったよねー」
「でよ、大河は今回の諸々はその不幸の塊が悪いのよ、とか言い出してよ、狩野の妹を
締め上げて吐かせるとか言ってたんだけど、ああ、そりゃ勿論冗談だけどよ、その不幸
の塊ってのは誰なんだ?」
祐作は表情を僅かに曇らせ、
「富家幸太」
溜息まじりにその名を告げた。
「富家って…あいつか?」
「そうだ。あいつだ」
「そりゃあ、先輩の気持ちも分からんでもないな」
「うむ…」と、腕を組んで俯く祐作だった。
「ああ、そうだった。そんで、先輩に頼まれてたんだけどよ…」
そう言って竜児は鞄からはがきを一枚取り出して祐作に渡した。
「それを妹に渡してくれって」
「うわ、なんだ。これ」
はがきの裏を見て祐作は思わず声を上げた。
「何なの、コレ?」
麻耶も不思議そうに竜児に聞く。
「お守りなんだと。大河に書いてもらうようにって先輩に頼まれたんだけどよ、さっぱ
り意味がわかんねぇ。大河はノリノリで書いてたけどな」
「お守り? とてもそうは見えないんだが…」
祐作が手にしたはがきには極太の黒マジックでデカデカと、
たった二文字、『ばか』とだけ書かれていた。
(きすして5 おわり)
以上で「きすして5」の投下を完了します。
相変わらず、物量多くてすみません。
面白かった
大河が完全にデレてるのは、原作ではなかったし違和感感じるかと思ったが
大河が前面に出る場面は少なかったし、竜児の事で怒る大河は原作でもあったから自然に読めた
会話文が若干多い気もしたが、さほど気にせずいけたな、GJです
長いのにスラスラ読めたわ読み応えあるものを投下してくれてGJ!!
前編の感想掻いてるときに投下されるとは。
割り込んじゃった
お疲れさまでした!
>>408 お前、最近沸いてる荒らしか?上からの物言いな上に、会話文が多い云々て……
今度は句読点も付けて普通の読者のフリしてるみたいだけど一つ忠告してやるわ。
「会話文多すぎ(キリッ」とか言ってるの、このスレにお前しか居ないから。
よ〜く考えたら、自分が、いかにアホな指摘してるのか解るだろ?
よく見てないのは俺だった…
>>408は句読点使って無いし……
あからさまな荒らしに突っ込んじまった、俺を許して欲しい。
ただの批評にうざいくらい食いつくあなたが荒らしです。
『会話文が多い』というのは、もう少し情景等を書いた方が読み手に伝わるという意味でしょう。
書き手としては、読んでもらえたらアドバイスをもらえたほうが嬉しいです。
あなたの書き込みは空気を悪くするだけですので、もう書き込まないでいただきたいです。
少なくとも、批判と批評の区別がついてからまた書き込んでください。
414 :
名無しさん@ピンキー:2009/11/18(水) 22:26:17 ID:0WSJ9z+t
書き手ねw 代表作とトリップドゾー
またぁ?
ほんわかレス推奨だぜ>fall
>>416 つかこんな間違え方じゃあ春田よりずっと偉いじゃん
スマン皆。連日の荒らしでちょっと過敏になってた。
明日、風俗で抜いてくるから許して欲しい。
麻耶ちゃん似の可愛い子指名してきますね(^^;)
>>407 色々なキャラが出てきて面白かったです。
麻耶の幸せそうな感じがまた良かった。
>>419いや!その店を教えてくれれば何一つ構わない。
お兄さんに打ち明けてごらん!!
>>419 全員バニー姿のあれかね、是非私にも教えていただきたいw
おぉっ俺の感想のせいで若干荒れとる
俺は職人に誹謗中傷を書いたりしてた人とは違うぞ
やはり感想はもう少し丁寧な口調やかたい文章で書いた方が良いんかな
以下、騒動を忘れてネタでなごましてくれてた方も感想をどうぞ
fall
落ちる;降る;散る;(性的に)堕落する;〔古〕(女性が)貞操を失う
↑ある意味では的を射ている気がするw
春田が俺たちの一つ上をいってただと……?
>>407 GJすぎる
竜×虎好きだから最後は悶えまくったわwww
429 :
名無しさん@ピンキー:2009/11/20(金) 02:43:38 ID:+YKtDbXe
なんだこの流れ・・・
ゆゆこに動きがないんでみにきたらこれか
アニメ化の弊害って怖いね
「なんだこの流れ」って
まるでここにいる全員をバカにしたような口ぶりだな…
スルーしよ♪
ぇるハゲだろ
スルースルー
かなり前の作品だけど、大河 実乃梨 亜美の三人が想像妊娠する話があったと思うんだけど、あれって完結した?
良いとこで途切れてるんだけど……
三 人 ?
×××どらだろ?たしか3つくらいまとめにあったはず。
>>94 >初めまして!夕月玲子の娘です。…なんてね。違うか。
ものいいww流石、今、女子高生に人気のコンビだけあるなww
作中であんまり、触れられてないけど、やっぱり亜美ちゃんも親との確執とかあるんだろうか?
とりあえず、17歳の女の子がトーカー被害について母親に相談出来ないというのは、ねぇ?
喧嘩中のみのりんとあーみんを監禁拘束してW陵辱したい。
プライドの高い2人にお互いの恥ずかしい姿を見せ合わせて羞恥と快感に身悶えさせたい。
みのりんのマン毛の裏側を徹底的に擦って、自分がどうしようもなく女である事を再認識させたい。
腰が砕けて立てなくなるまでイカし続けたい。人格崩壊するまでイキっぱなしにしたい。
あーみんは、どうかイカせて下さい。って懇願するまで寸止め責めしたい。
生意気なあーみんの顔を悔しさと惨めさで歪めさせたい。
犬耳と犬尻尾を装着させて、首輪につないでお散歩したい。
四つん這いで片足を上げさせて電信柱に向かって放尿させたい。
最後はみのりんとあーみんの乳首とクリトリスに紐を結って 綱引きさせたい。
負けた方はg浣腸だよ。って脅して、本気で競わせたい。
みのりんとあーみんのどっちのチクリが優れてるかを見物したい。
勝った方は優しく抱っこして頭をナデナデしてあげたい。
なぁ、俺って変態かなぁ?男だったら皆、同じ事考えるよな?
タイガーはどうすんだよ
エロいことばっか考えているのは認めてやろう。
ただ、君と同じ性癖や趣味を持っているとは思わないでくれ。
春田万歳
エロいのは自認するが
>>438とは気が合わないことは分かった
あぁ、俺は変態なのか。自分の性癖は歪んでるのかなぁ〜やっぱ。
アニメのあ〜みんの眉間に皺が寄るシーンとかゾクゾクしちゃうんだけど、やっぱ危ないのかな、これ。
プライドの高い女の自尊心を粉々に打ち砕いて虚仮にしたい願望がある。非常にある。
>>439 大河にはむしろ俺を壊して欲しい。あのニーソ脚でグリグリされたい。大河に跪きたい。気の済むまで虐めて欲しい。
おいおい……あんまり妄想が過ぎて犯罪者にならないでくれよ
というかだな
自分でその話をネタにSSを書いてみたら良くね?(自給自足的な意味で)
>>438 途中までニヤニヤしてたが最後まではついていけなかったぜ……
>>444 バカ。お互いの合意無しでやらないってww
勘違いされがちだけど、愛だから。まず前提が愛なんだよ。傷付け合うのが愛だと僕は思うんだよね。虐めたり虐められたりしたいんです。
書くのは誰かにお任せします。変態な方よろしくお願いします。
……('A`)
題名『むかしばなし(みの☆ゴン外伝2)』です。
規則的に投下させて頂いております、みの☆ゴンのエロパートで没にしたエピソードを再構築して
制作しております。タイトル通り、昔話をベースにした、エロパロものになります。そういう物語
が苦手な方は、スルーして頂けたらと存じます。シチュエーション的にリアリティとは無縁です上、
長い目で見て頂きたく存じます。本編である、みの☆ゴンともども、気軽にお読み頂けたらさいわ
いです。ちなみに6レスになります。宜しくお願い申し上げます。
「むか〜しむかし、そのむかし。ある片田舎に、じいさまとばあさまとがおったそ〜な……」
「誰に話してんだよ実乃梨……まあ、それはいいとして……しかし、俺たちには子供が出来ね
えな。こんなに毎晩、その……励んでいるのに……やっぱ、年末のインフルエンザの高熱が
原因なのか……」
冒頭の実乃梨の言う通り、これはむかしむかしの、とある片田舎のはなしである。竜児はま
だ、じいさまと呼ぶには早すぎる17歳の冬。ここでは竜児と実乃梨は、村一番のおしどり夫
婦なのであった。実乃梨を嫁に貰い半年が過ぎた。この半年、毎日のように子づくりに励んで
いるのだがまったく子宝に恵まれなかった……今晩も既に2ラウンド目を終えたところである。
戌の刻、夜8時。当たり前の事だが、電気の無いこの時代では、太陽が沈むと、ものの見事
に真っ暗になる。特に今夜は月がかげり、自分の手の平も見えないほど屋外は漆黒の闇。屋内
では冬のするどい風が、扉に当たる音がカタカタ聞こえている。
火皿の上のろうそくの灯が不規則に揺れ、壁や柱の隙間から、すきま風が侵入している事が
わかった。裸で抱き合うふたりは、ボロい布団の中では、互いの体温以外に暖めるものはなく、
まあ、それだけ貧乏なわけなのだが、ふたりは十分幸せだった。なぜなら愛し合っているから
である。愛がすべてだった。
竜児は腕まくらをしていない方の手で、実乃梨のみだれ髪をかきあげてやる。それがくすぐ
ったかったのか、実乃梨の表情が和らぐのであった。
「赤ちゃんほしい?」
「こんなにビンボーだし、不憫かもしれねえけど、親に孫の顔見せてやりてえかな……」
すると実乃梨はガバッと起き上がり、
「そーだ、竜児くん! わたし明日、川に洗濯に行くよ。したら桃とか流れて来るかもっ!
でっけー桃の中に、玉のような赤ちゃんが入ってるらしいぜ! そんなウワサ聞いた事あ
るんだっ。よし決定〜!」
実乃梨は拳を突き上げた。そんな無邪気な妻の頭を撫でる竜児。
「じゃあ、俺は、竹やぶに竹取りにでも行こうかな……俺も同じような話、知っているんだ。
根元が光る不思議な竹があって、そん中にやっぱ赤ちゃんがいるんだってよ」
……竜児くん……実乃梨……見つめ合うふたり。
そして、二人は、3ラウンド目に突入した。
***
翌日の早朝。このあたりは冬でも積雪は無いのだが、まだ春の足音は遠く吐く息は白い。無
意識両手を擦りあわせてしまう実乃梨は、昨日の計画通り川へ洗濯に来たのだ。巨大な桃が流
れてくることを願いながら。
「う〜っ!さっびーな! しかしこのシミ、なかなかしぶといでごさるっ。とれやしない」
昨晩汚したシーツをゴシゴシ洗っていると、なにやらドンブラコ、ドンブラコと、川上から
流れてくるのが見えた。実乃梨はシーツを洗う手を止め立ち上がり、目を凝らす。
「おおおっ! なんだあのボストンバッグはっ! 巨桃じゃねえじゃんっ! まあいいや♪
っしゃああ! ゲットだぜいっ!」
パワー全開、冷たい川にバシャバシャ膝まで浸かり、実乃梨はバッグをすくいあげる。する
とその、ボストンバッグから怒鳴り声が。
「持つな───────────っっっ!」
しかし持たないと運べない。実乃梨は叫び声に構わず40キロほどあるバッグを、二の腕細
くなるかも〜♪ と、のんきな事呟きながら岸辺へ拾い上げた。
「開けろ───────────っっっ!」
「元気なやっちゃな〜っ! なぜか聞き覚えあるような声……待ってな、今開けるよ!」
実乃梨はファスナーに手をかける。
***
「おうっ! あの竹、金色に輝いている……」
竜児は、やはり昨日の計画通り、竹やぶにいた。そして都合いい事に、いかにも怪しい黄金
色に光る竹を見つけたのだ。竜児は、期待半分、不安半分ッてな感じで、持っているカマで、
その竹を切り落とした。スパッ!
「っぶねー!! いま頭、ジョリッていかなかった?……あ、はじめましてっ! わたし川嶋
亜美! 亜美ちゃんって呼んでね? うふっ!」
生まれてすぐ自己紹介するのもどうかと思うのだが、特に突っ込みもせず、竜児は亜美を背
負って、ボロ家に戻るのであった。
***
「ねえみのり〜ん、お腹すいたかも。チャーハン食べたいな。ニンニクどっちゃり入れてね」
「高須く〜ん、ペペロンチーノ作って〜・あ、お金は大丈夫! カード貸してあげるから!」
「……この時代でカードなんか使えねえし、金があっても食材が手に入らねえ。……ってか、
お前ら飯喰わせろとか、ずうずうしい且つ、いきなりすぎるだろ」
囲炉裏を囲み、必要以上にダラけるふたりに竜児は批難。そこに実乃梨が炊事場から戻る。
「まあ、まあ、竜児くん! 二人ともイモならあるぜ! 高須農場からの採れたて新鮮、当
代随一の逸品だ! さあさあ、喰いねえ、喰いねえ、長靴いっぱい食べたらいい!」
湯気が立ち上る、ほくほくのサツマイモが大きなザルに超〜盛られている。香ばしいいい
匂なのだが、所望の料理と違うメニュー。ブツブツ文句をたれながら、わがままチルドレン
は、蒸かしイモを口にした。すると、
「うんま───い!! うまさで家が建ぁ───つっ!」
「あら……普通に美味しいわっ」
などと勝手なことを……
そして、夜になる。
***
「ちょっとタイガー。これって……犯罪じゃね?」
「しっ!……ばかちー、声デカい……ワザとじゃない。遺憾よね……」
いくら美味いとはいえ、朝昼晩と、イモばかり食べさせられて、飽きてしまった大河と亜美は、
竜児と実乃梨が風呂に入っている隙に、ボロ家に食い物がないか、物色していたのだ。しかし夫
婦の寝室に潜入した時、二人が風呂から上がって来てしまった。という訳で押入れに逃げ込んだ
のである。
「あっれ〜、大河とあーみんいないね。何処に行ったのかな〜」
「あいつら肉食っぽいからな。イノシシ狩りにでも行ったんじゃねえか? もしかしたら戻って
こないかもしれねえし……やっぱり子づくりは自力でなんとかしよう、実乃梨」
「もう竜児くんのエッチ、スケッチ、ストイコビッチ!……う〜ん……そだね……しよっか……」
実乃梨は、湯上りで火照った頬を、さらに赤らめ、竜児に吸い寄せられていく。
チュ……
愛しい。竜児は何度でもそう想う。心が、実乃梨を求める。
「実乃梨……愛してる」
「わたしも……愛してる……竜児、くん……」
鼻先が押し潰されるほど、ふたりの口づけは激しい。竜児の両手は、実乃梨の艶やかなカラダ
の至る所をまさぐるのだ。その熱さ、柔らかさをむさぼるように。実乃梨も、竜児の意外になめ
らかな肌を這うように指先で確かめだす。実乃梨の愛の矛先である竜児を。
「あ……んっ」
竜児の太ももが、実乃梨の股の間に食い込んできた。グイグイ刺激され、実乃梨は、立ってい
られなくなってしまう。竜児は強く抱きしめ、あやうく倒れそうだった実乃梨を支えたのだった。
「ねえ、押入れから布団。ださないと……」
「そ、そうだな……あれ?」
何故か布団は、きっちり一組。押入れから出されていた。
「……素早いわね、ばかちー。ナイス」
「あんた覗きに熱中しすぎなのよ! っはー、あぶなかった〜……」
布団が出されていた事に疑問を持たないのは、ラッキーだろう。それだけ二人は、興奮してい
たわけだが。そんな二人はテキパキと、布団メイキングを終え、いざ布団インする。
「今日シーツ洗濯したけど、シミ残っちまったよ。ゴメンな……」
「こりゃあ完璧には取れねえよ。てか気になんねえレベルだ。処分するにはまだ使えるし、MO
TTAINAI。もともと二人でつけたシミだ。俺と実乃梨の愛の証、だろ?」
竜児くんったら……恥じらう実乃梨。そして新たなシミをつけるべく、二人は愛しあう。
竜児の指は、実乃梨の汗をなぞり始めた。首筋から、のど、胸の谷間へ。そして敏感なピンク
色の頂点に辿り着く。
「はんっ……」
頂点を中心に、快感が波紋のように広がっていく。思わず実乃梨は、愛しい夫の首を、噛む。
「んふっ」
竜児は、噛まれた仕返しとばかりにピンク色の先端に吸いつき、甘く噛んだ。
「はくぁっ……やん……おかしくなっちゃうよおっ」
おかしくなりそうになる実乃梨は、竜児のシンボルを握り締める。
「っ!」
その瞬間、竜児は、ピタリと固まる。が、すぐにまた、実乃梨の丸い乳房にむしゃぶりつく。
実乃梨の手に力がこもり、竜児がもがこうとも、シンボルはしっかり握られていた。
チュパンッ
ピンク色の先端を解放した竜児の唇は、ゆっくり実乃梨の下半身へ向かう。同時に実乃梨は
シンボルから手を放す。
ジュル……チュルル……
実乃梨の手は、今度は竜児の髪の毛を掴む。
「あはっ! ああんっ! そこぉ……い、いい……」
ガクンと、のけぞる実乃梨。竜児は息をするのを忘れるほど、溢れ出る蜜に溺れていく。
実乃梨の口から漏れる甘い声に、心臓の鼓動が速まる。愛情が膨れ上がる。
「竜児くん……お願い……」
それを正しく理解した竜児は、生肉を目の前にしたケモノのように、腕で口元を拭った。
「ちょっとエロタイガー、あんたどこ触ってんのよっ……あっ、もうやだっ! わたしのおしり
に変なとこ押し付けないでよっ!!」
「ふええっ……だってだって!……わたしのカラダに変化が……」
「興奮しすぎだろっそれ! 見つかっちゃうじゃんっ……これからが本番なのに……」
押入れの中でモンモンする二人に気付くことなく、亜美の言う通り、本番が始まる。クチュン。
「はあっ……んっ」
膣道が、竜児のカタチになる。ギュンっと締め付けられる。
「おおうっ……み、実乃梨」
しばらく竜児は、そのまま動かなかった。しかし実乃梨の中に挿入った、竜児のカラダの一部
は、ピクピクと動き、濡れた肉壁を突く。実乃梨の腕は、竜児の熱い胴体を必死に絡みついた。
「は、入っちゃった! ねえ、ばかちー! 竜児のち、ち、ちんすこうがっ」
「うっせーよ! 見りゃわかるわよっ! だからあんたが興奮してどーすんのよ!」
やはり大興奮する二人に気付くことなく、竜児は、腰を動かしだす。リズミカルに。
「あんっ! あんっ! あんっ! あんっ! あっ……はぁぁん!」
実乃梨の嬌声が高まるにつれ、二人の汗の臭いと、いやらしい酸っぱい臭いが、部屋中に広が
っていく。もちろん、押入れにも……
「わ、わたしもうガマンできない! ばかちー、あんたでいいや。ちょっとチューしてよ、チュー」
「ねーよ! ねーからそれ! 自分の指でもしゃぶってガマンしやがれ!」
そう言う亜美の指先は、自分の秘部に伸びていた。
「はあっ、はあっ、くうっ!……実乃梨っ!」
「あんっ、あはん!キ、キスして……」
二人の舌は絡み合う。その滑るような感触に脳みそがトロける。実乃梨を突く竜児の腰が早まる。
お互い充分過ぎるほど分かっているのに、何度も『愛してる』と、囁きあってしまう。
そして、チュパっ! と、熱いキスをしていた唇が離れたその時……爆発する。
「「「 あはぁぁぁっっん! 」」」
「え?」
脱力し、カラダの上に落ちてきた竜児を抱きしめながら、自分以外の声に気付いた実乃梨。竜児
は、そのまま眠ってしまったのだが。
***
「すっご〜い実乃梨ちゃん! 毎日でしょ? あれ。さっすが体力あると違うわね〜!」
「あんなみのりん、見たくなかった……バッチリ見ちゃったけど……」
グーグー寝ている竜児はさておき、囲炉裏のある土間に移動した実乃梨は、正座する大河と亜美
の前に仁王立ちしているのだった。
「ったくよ〜……まあいいや。謝まってる事だしね。ほらよ。これで手打ちだ! 忘れた!」
パンっ! っと胸の前で手を叩く。寛大な裁きに大河は感動し、
「みのりんっ、わたし鬼退治に行く。そんで財宝かっぱらってきて、みのりんにあげるねっ」
「なによ自分ばっかり良い子ぶって! わたしも行く! てか、わたしが行くわよ!」
「一緒に行きたいなら始めからそう言いなよ、ばかちー。そうだ! あんたチワワだし、ちょうど
いいわ。わたしの家来になりな。犬ね。犬! キャハハッ、キビ団子なんかやんないけどっ」
「はあ〜? 冗談じゃねえから。あんた桃太郎気取り? ボストンバッグ太郎のくせに! だいた
いあんたはどっちかっていうと、桃太郎ってより一寸法師じゃね? このちびタイガーっ!」
あーあーあー……陰険なケンカを始めたふたりに頭を抱える実乃梨。そんな感じで、三人は朝ま
で激論し続けるのであった……
━━という、もしものお話。
つづくかも
以上になります。
お読みいただいた方、ありがとうございました。
たま投下させて頂きたく存じ上げます。
失礼いたします。
ななこいまだー?
>>455 GJ
昔ばなしとか面白い設定だな
本編ともに続き楽しみにしてますよ
グッジョブですが、あーみんの一人称は「わたし」では無く「あたし」
更に細かく言うと、大河、実乃梨も「わたし」ではなく「私」
誰かこまけぇこたぁいいんだよのAA↓
こまけぇこたぁ
いいんだよ!!
/)
//) __
`/ ∠つ/⌒⌒\
| ニ⊃ (● ●)\
/\ノ( ⌒(_人_)⌒ )
/ > 丶ニノ <
GJです。所々原作ネタがあって面白かった。配役が妙になじむなw
>>438 みのりんの場合どんなに責めても
「腹ん中がパンパンだZE」
「良い事考えた。そのまま、私の中でしてみてよ。」
「女は度胸。何でも試してみるもんだよ。」
とか言われそう。愛のある関係だと仮定した場合に限って。
>>461 意地でも「うほっ」なんて言ってやらない…!!
まあ、亜美ちゃんも何だかんだ言って(竜児の)ある程度までの変態行為に付き合える気がする。
惚れた弱みを突かれやすいイメージなので。
むしろ亜美ちゃんの方が変態なんですけどね。
竜ちゃんが草食系気味だとするなら、ヒロインには肉食系しかいない。
それがとらドラという物語なのだと私は思うのです。
ヒロインに変態しかいないような。
肉食筆頭はゆりちゃんだな
(トリップ上手くいってますように・・・)
今夜、他の方の投下の邪魔にならない感じで投下させていただこうと思います。
続き物になりますが、間が空きましたので、お読み頂ける方はマトメで読んでからの方が分かると思います。
「日記。徒然に。。」になります。
通常のSSとは異なる文になっていますので、ご注意下さい。
タイトルにもトリップを付けますので、不快な方はスルーして頂けると幸いです。
それでは失礼致します。
wktk
468 :
名無しさん@ピンキー:2009/11/24(火) 15:43:41 ID:mPCeLc4o
とうとう今夜復活か!
作風の似通った、作家AとB
作家Aが雲隠れして作家Bが復活
これはどういう事を意味するんだろうな
お前の考えすぎということを意味しているのさ
作者が途中で投げ出すから荒れるんだよな
今回は最後まで頼むぜ
>>472 望むなら挙げてやっても良いが?
てかピンと来ない奴って真性のアホなの?普通、気付くだろ。
あんなあからさまに自演してるのに気付かないとか無いわ
気付いてて庇ってる奴は面倒だからレスしないでね
日記ってカプあるんすかね?
無いとか決まってないならいいとして、決まってるなら前置きが欲しいところだが……それによって続き見るか見ないか決めたいけど
そこが分からないのが楽しいのか……orz
またでたのか
ID:18npH70cは今日明日だけでもコテつけてくれ。NGするから
>>474 どうせ、亜美か奈々子だろ
作家が力尽きなきゃ全員分あるかもしれないが、多分ない
ならエンドは、この作家が贔屓してる亜美か奈々子になるよ
>>473 俺は、挙げなくても分かるよ。
作風というか、話の展開が荒っぽくて、長編のくせに、話がとびとび。
それに、初期設定から外れて暴走してるやつだよね?
おおおお、おれじゃねぇっ!
>>477 へー、他読んでないからわからんがレスさんきゅ
>>478 最初はちょっとウケるんだが、だんだん劣化していくんだよな
しかも、回を増す毎にキャラがほぼオリキャラ化していく
一番、酷いのが奈々子
その癖、竜児のキャラだけは作品間で定まらない
安定感の無さだけはこのスレ随一
そこは胸張って良いぞ(笑)
ID:18npH70c 早くコテつけてくれ。オレもNGするから
キャラ崩壊が一番ひどいよね。
なのに、それで叩かれないのも不思議なんだな(棒
キャラ崩壊に至る過程をストーリーにムリヤリ詰めてるから、破綻するんだよな
普通は、○○があったから、このキャラは××になっていきました
って感じのストーリーなのに、この作家だけは、
キャラを××にしたいが為に○○なストーリーにしましたって感じ
これ言ったらどの作家の事か特定されるだろうけど、具体的に言えば、亜美が過去へ遡行した話なんて、特に顕著
亜美というキャラの特徴である黒さが消えて、只の綺麗で良い子になってしまってる
これは単に作家が綺麗な亜美を書きたいがために時間遡行させて辻褄を合わせただけ
別段、面白い設定でも何でもない
亜美の強くてニューゲームが書きたかっただけの下らない妄想オナニーに過ぎないんだよな
だから、結局ツマラナイ
片方がこれじゃ、日記の方も期待が持てない
別人を装っても結局、作品の質は変わり映えしないからな
ンナ技量があったら、はなっから二次書いとらんがな
ここまで俺の自演
以下通常の流れに戻すヨロシ
18npH70c=TkJVVeaG 自演乙
488 :
名無しさん@ピンキー:2009/11/24(火) 19:06:01 ID:PzGmHUaz
数ヶ月ぶりに戻ってきたら、ちょうど日記
復活ktkr
>>487 耳の痛い意見は自演扱いか?
本人か信者か知らないが、だから成長しないんだよ
お前、もしくはお前が好きな作家が最初に投下した作品は何だ?
はっきり言えば、デビュー作から全く成長してないんだよ
むしろ、劣化してる
別に、俺はアンチじゃない
今はツマラナイ駄作しか書いてないが、お前にも、ちょっとは面白い作品が書けたろ?
その事を思い出せたら、そんな下らないレスしてないで真剣に執筆しとけ、な?
俺も亜美ものSS書いてんだが、黒さなんか全然書けん
というか、それが無くとも表現出来ると思うんだな
亜美の最大の特徴ってそこじゃないと思う
粘着の上にエスパーとか凄えな
作者も付けてるんだし確かに粘着もコテとトリは付けてほしいなw
3.トリップ
2chでは、名前欄に、#password (passwordのところは適当な文字)と書き加えれば、
別の文字に変換されるので、本人確認の印となります。これを「トリップ」と言います。
初心者板から転載。早めに頼むよ。
誰かNGの仕方も貼ってやってくれ
493 :
98VM:2009/11/24(火) 20:15:41 ID:rUB/3Yxt
こんばんは、こんにちは。 98VMです。
なんか雰囲気悪いですねー。おおらかにいきましょー。
最近リアルが忙しくて時間がとれません。 で、ローマシリーズの進捗状況ですが…
ローマの平日5 (特別編) 6月頃に書きあがっていたものを書き直そうとして失敗。 再調整中(T_T)
ローマの平日6〜9 プロット完了
ローマの祭日(事実上の最終回) プロット完了
ローマの祭日お・ま・け♪(最終回) 完成。 いつでも投下可能……って、アレ?w
で、幸せなあーみん書いてるとですね、どうも筆がすべってこんなのが……
折角早く帰ってこれたからねー。 製作時間30分弱。適当でゴメンなさい。
――― 『 』 ――― 98VM
「高須くんにそんなこと言う資格ある!?」
「あたしが悩んでるときにも、傷ついてるときも、いっつもいっつも気づいてくれなかったじゃん!あんたは、いっつも、
あたしのことには気づいてくれなかった!」
「知るかよ!?わかんねえよ!俺だって、そんなにうまくできねえんだよ!」
「だったら余計なこと言わないでよ!あんたなんか……っ!あんたとなんか、会わなかったらよかった……」
…
……
…ソレは、生まれたときから不治の病を患っていた。
なんだか得体の知れないソレだったが、なぜかあたしはソレを育て始めてしまっていた。
……いつかは死んでしまうのに。
ソレは少しずつ、少しずつ、
育っていく。
何者かも判らず、醜いソレ。
あたしはとりあえず、暗い、暗い奥底の小部屋にソレを閉じ込めておくことにした。
しかし、ソレはいつの間にか、小部屋一杯に大きく育ってしまった。
けれど、とてもじゃないけど、部屋の外に出すことなんか出来ない。
恐ろしく、大きく、育ってしまったソレは…
きっと周りの人を傷つけてしまうから。
だから、あたしはソレをもっと奥深くに閉じ込めることにした。
けれど、真っ暗な深淵で、ソレは確実に、少しづつ、少しづつ、育ち続ける。
恐ろしい。
あまりに大きくなっていくソレが恐ろしかった。
けれど。
真っ暗なそこにも、不意に光が射すことがある。
それは、本当に気紛れに、いや、気紛れですらないのだけれど…
そんな時だけはソレも、笑うのだ。
本当に、本当に、素敵な笑顔で……幸せそうに、笑うのだ。
でも……………
死んだ。
…殺して…しまった…。
夢中で公園から走り出した。
今は、ここがどこかも判らない。
もう景色は歪んでしまって、まともになんか見えないから。
走ることが出来なくなって… 街路樹に手をついて… 寄りかかって…
立ってなんかいられなかった。
『やっぱりね。』 『思ったとおり。』 『そんなの初めからわかってた。』
何度も何度も言い訳する。
ほんの僅かに、希望を抱いてしまっていたことに。
―追いかけてきてくれるかもしれない―
そんな希望を抱いてしまったことに。
あたしは、あらためて思い知った。
彼にとって自分は、ここからいなくなってしまっても、諦められる存在なのだという事を。
それはたぶん、自業自得。
何もかも間違えて、結局なにも出来なかったあたしが、何かを手に入れられるはずなんか無い。
第一、あたしは自分から絶交だなんて言ってしまったんだから、きっとこれが当たり前の結末なのだ。
それでも胸の痛みは誤魔化せなくて。
ただ、ただ、泣き崩れるしかなかった。
…
……
…ソレは、生まれたときから不治の病を患っていた。
だから、最初から死ぬ運命だったけれど…
ソレは悲しげな目であたしを見ている。
もう、死んでしまったのに…
…埋めてしまおう。
間違えて生き返らないように。
深く、深く、深く…
深く、深く、深く…
ソレは誰にも知られること無く。
深く、深く、深く、埋もれていく。
けれど、私は知っている。
私だけが、知っている。
ソレが誰よりも純粋に、誰よりも精一杯、生きたことを……
さ よ う な ら
私の ――― 『 』 ―――
了
例の書き手が成長してないってのは全面的に同意。
情景描写や心理描写がpoor過ぎるし、
場面場面で話が恐ろしく飛ぶから、ストーリーがつながらない。
少なくとも、これらの難点を改善しないとダメだろ?
こんなのにマンセーできる奴は、感服する。
497 :
98VM:2009/11/24(火) 20:18:07 ID:rUB/3Yxt
お粗末さまでした。
すいません、なんか発作的に書いてしまいました。 嫌ですねー 発作。
で、『 』の中はご自由に補完なさっていただければと。
ほとんど一択だと思いますが、人によって微妙に違ってくるかもしれないですね。
活字を読んだときに、それらの文字から、どんな情景を思い浮かべるか?
「それはね、字面じゃなくて、貴方の心の中にあるのですよ。」
と、私は思うのです。
>>497 乙
しかし、それ とか『 』連呼されるとなんとなくクトゥルー的な何かを連想してしまうw
18npH70c=TkJVVeaGさんよー
亜美の最大の特徴が黒さとか、浅いにも程があるわw
さっさとコテつけれ
>>497 切ないなぁ……お疲れ様でした。
ええと、『おっぱい』?
それだと大河の話になっちゃうしなあ。
ああ、台無しにしちゃってごめんなさい、木刀で殴らないで、往復びんt
>>497 お疲れ様です。そしてご苦労様です。ほんとに・・・。
98vm様相変わらずの素早い仕事振りさすがです。
切ないな。これは書いてられる幸せ亜美の反動なんすか
ということは、期待しております
507 :
98VM:2009/11/24(火) 21:04:16 ID:rUB/3Yxt
>>499 くっ・・・ これは我慢できない・・・ レス返しすみません。
書いているときに
『イア・イア・ハスター・ウグ・ウグ・イア・イア・ハスター
・クフアヤク・ブルグトム・ブグトラグルン・ブルグトム
・アイ・アイ・ハスター』
なんて、呟いてなんかいないんだからね!
…書いてる本人が超思ってましたとさw
>>497 GJ
> 「それはね、字面じゃなくて、貴方の心の中にあるのですよ。」
銭形警部 乙
こんばんわ。
既に少し迷惑を掛けている様で申し訳ありません。
3分程待って他の方の投下が無い様なら、投下させてもらいます。
日記。徒然に。。です。
高須竜児の日記より抜粋。
1月4日。
う〜む、不味いな。どうやら年末年始の俺の病は我が家の家計にご機嫌なダメージを与えてくれたらしい。
このままでは非常に不味い。3学期には修学旅行も控えている事だしな。
一応短期のバイトを探してはみたんだが…どうにも良いのが見つからない。
そう言えば川嶋が何か当てが有るみたいな事言ってたな。明日にでも聞いてみよう。
しかし。どうでも良いが大河よ。
いくら俺が寝込んでいる間暇だったからと言ってもだな。紅白にダウンタウン、新春お笑いにかくし芸に長編時代劇。
おかげで昨日から一睡も出来ないんだがな?
録画物耐久レースを開催するのは勝手だが病み上がりの俺にどんな罰ゲームなんだ?これは。
「アンタも観とかないと話が合わないじゃない」とは良く言ったな。
まぁ、お前の話に首を傾げると面白い位に絶望するからな、お前は。観ろと言われりゃ観といてやるが…なんで邪魔をする。
お前は俺に観せたいのか?観せたくないのか??
一体、どっちなんだ?
逢坂大河の日記より抜粋。
1月4日。
うふふ。竜児は昨日からずっとテレビを観てる。私が竜児の為に録画しといたんだ!
ほら、この時期って面白い番組いっぱいあるじゃない?だからいっぱい録画しといた。
私は全部観てたから良いんだけどさ。それじゃあ竜児が可哀相でしょ?
ねぇ竜児!あのネタどうだと思う?って聞いたら「まだ観てる途中だ!」だって。
早くしなさいよね。あっ!超凄いかくし芸があるのよ?修学旅行でやってよ、竜児。
「だからそれはこの次に観るから言うな」って言うんだけど、早くしてよね〜。折角、今夜は竜児がご馳走作ってくれるんだからさ。
やっちゃんも早めに帰ってくるって。
そうだ!二人羽織って面白そうなのやってたのよ!ねぇ、あれやってみたい!
あっ!明日バカチーに会いに行くんでしょ?帰りに福袋買いに行こうよ!
やっちゃんが竜児は凧揚げ上手いって言ってたよ。明日やろうよ!
お正月が楽しい。こんなの初めてだ!
ねぇみのりん。
新しい年って、凄いウキウキするよね!
1月5日。
ほんとにバカチーはバカチーだ。
竜児にバイトの口が有るって言うから会いに行ったら、バカチーの付き人だって。
要するにバカチーの身の回りの世話をするのが仕事だって言ってたけど、場所がハワイってなんでよ。
当然竜児は断ってたけどね。
大体、竜児がこの家をそんなに空ける訳無いじゃないの。折角元気になったのにさ。
……行かないよね?竜児
川嶋亜美の日記より抜粋。
1月5日。
あ〜あ〜、惜しかったな〜。
折角高須君と一緒にハワイに行けると思ったのにな〜。ま、駄目元だったから良いんだけどさ。
結構な金額提示したから高須君も考えてたんだけどね。タイガーが一緒じゃ厳しいかな。
ま、タイガーの機嫌はお土産買ってくる事で直ったし、高須君も「折角言ってくれたのに悪いな、川嶋。今度埋め合わせするからよ」って言ってくれたし。
別にいいよ。とは言ったけどね。
でもね?高須君。
それでも私は一緒に行きたかったよ。
焦っても仕方ないけどさ。この前の年末年始でどうやらバトルは必死みたいだしね。
面白くなりそう。
櫛枝実乃梨の日記より抜粋。
1月6日。
今日、大河から話を聞いた。高須君がバイトを探してるらしい。
水臭いな〜高須君。
そう云う事なら勤労怪奇ファイルの私に言ってくれれば良いのに。なんでも有りますぜ〜旦那〜。
イベント関係?呼び込み?ティッシュ配り?
短期だと選べる幅も少ないけどそれなりには稼げるよ〜…って言ってあげたら高須君が固まった。
どうやらもう決まったらしい。
ありゃりゃだね高須君。ま、どっちにしろ決まったなら良かったね。高須君、大河。
香椎奈々子の日記より抜粋。
1月9日。
……そう来たか。そう来るか。そう逝きますか。
あれ?漢字が…まぁいいわ。
今日、スーパーかのう屋に行ったら高須君が居た。店員の格好で。
…なにしてるの?高須君。
「いや〜。入院した時に結構金が掛かったからな。バイトを探してたら狩野先輩が声を掛けてくれてな。冬休みだけでも良いって事で助かったぜ」
先輩もそろそろ忙しいんでしょうから手伝ってる暇は無いんじゃないですか?私もバイトしましょうか?
「いや、私はもう大学も決まったしな。お前も忙しいだろう?気持ちだけ貰っておく。あぁ、竜児。後で倉庫に行くぞ、付き合ってくれ」
ねぇ高須君。いえ、ねぇ店員さん。アレ取って下さい。い〜え、目の前に有っても私には取れないんです。取ってく・だ・さ・い!
今度は雑音に負けずに最後まで投下してくれよ…待ってた者は俺以外にも沢山いるのだから
狩野すみれの日記より抜粋。
1月11日。
うむ。どうやら竜児の奴も仕事に慣れてきたようだな。
大体、バイトを探してるなら真っ先に聞けば良いものを。コンビニで見かけた時に情報誌を買っていたから声を掛けたんだが。
「助かります!マジ、地獄に仏っす!」と私の話に1も2もなく喰い付いたな。
まぁそれほどバイト代ははずんではやれないが、それでも足しにはなるだろう。
そういえば逢坂の奴もチョクチョク顔を出してはいるな。まぁさくらと遊んでいるからもっぱら家の中だがな。竜児の仕事が終わるまでは大人しく遊んでるぞ?
心配するな。さくらには小遣いを奮発してある。
私の父が夜に出掛けているのを気にしている様だが、そう気にするな。竜児の気にする事じゃないさ。
うん。いい冬休みになりそうだ。
高須泰子の日記より抜粋。
1月12日。
ほんとにもう!やっちゃんが働くからいいって言ってるのに、竜ちゃんがアルバイトを辞めてくれないの。
でもまぁ、「そういう竜児君の気持ちも分かってあげてはどうでしょうか」って狩野さんも言うしね。やっちゃんも辛抱するの。
竜ちゃんの事が心配だろうからって、狩野さんのご主人てばよく飲みに来てくれるんだよ。
すっごく気さくで、理解があって、竜ちゃんの仕事振りもすっごく褒めてくれてる。
近頃のバイトには珍しい位に真面目に働くってさ。
竜ちゃんの事をちゃんと見てくれる人に出会えて、やっちゃんは本当に嬉しいでがんす。
逢坂大河の日記より抜粋。
1月13日。
なんか竜児がバイトを始めたら暇になると思ったけどそんなんでもない。
竜児が仕事の間はすみれの家でさくらと遊んでるし、すみれのお母さんはオヤツを一杯くれるんだ。
竜児の仕事が終わったら偶に一緒に夕食食べるけど、やっぱり大人数で食べるのって楽しいよね!
ま、私の食べ方に竜児が煩く言うのは変わんないけど、なんかそれで笑いながらご飯が食べられるんなら良いよ。
泊まってけって言われる事も有るけど、それは竜児が辞退する。だって家にはやっちゃんも居るしさ。
あっ!やっちゃんも一緒に来れば良いじゃない!そうすればもっと楽しいよ!ね、竜児!
木原麻耶の日記より抜粋。
1月14日。
奈々子に聞いてはいたけど、今日スーパーに行って見たら本当に高須君が居た。
っていうか、なんかすっかり板についちゃっている感じ?
もうテキパキ陳列はするわ、呼び込みはさまになってるわ、食料品なんて奥様方と料理談義しながらしっかり売り込んでる。
煩い中高生なんてヒト睨みで静かに列に並びだすし、新人さんらしい人に指示まで出してる。
高須君、本職?
いや、そんな事よりコレはヤバイわよね?だって狩野先輩のお母さんなんか
「ちょっと竜児君、今日のお酒ってもう発注終わったんだっけ」なんて普通に発注任しちゃってるし、高須君も
「あぁ、成人式もありますから、少し多めに上げときました。終末も絡みますし、充分にイケますよ」なんて、何でやる気満々?
大河はなんでか店の中走り回ってて「ほら!大河、お前は黙って家の中に引っ込んでろ!店内を走るな!」なんて高須君に嗜められてたし。
あれって社長?
「竜児君。泰子さんが今夜は早めに出るから夕食はいいそうだよ」って、なんで高須君のお母さん知ってるの?高須君も「すいません」なんて笑顔で応えてるし!
でもだからってなんで「なぁ竜児、今夜はシチューにしようと思うんだが良いか?」って狩野先輩が高須君に聞く訳?
「肉大目にね!すみれ」って言う大河に「野菜も同じだけ食べろ、逢坂」と笑顔で言うんだけど、
「じゃあ俺が後でなんか軽い物も作るから、シチューはお願いします」って高須君に言われて
「うん!」って……
マジ。可愛いんですけど。
高須君。あなた状況わかってる?
川嶋亜美の日記より抜粋。
1月14日。
麻耶と奈々子からメールが来た。
なるほどね。搦め手で来たわけね、先輩。
これはどうあっても沖縄の修学旅行は勝負に出なきゃね。
タイガーへのお土産はちょっと奮発しよう。
高須君のバイトを邪魔する訳にはいかない以上、この冬休みは先輩の勝ちでいいわ。でも3学期になれば同級生の私達が有利だしね。
さ!私も気合、入れなきゃね!
高須竜児の日記より抜粋。
1月15日。
ふぅ。今日でかのう屋のバイトは終了だ。ほんとにお世話になりました。
しかしどうにも最近は夢見が悪くて寝付けなかったな。
あれは一体なんの暗示なんだか。
戦国時代の様な場所で必死に城で篭城しているのに、どんどん外堀を埋められて追い詰められてく殿様になってばかりだ。
思い出しても寒気が走る。
それにしても随分とお世話になったな。
先輩の留学騒動の時にはホントに迷惑を掛けたのに笑顔で迎え入れてくれる。なんて良い人達なんだ。
思わず張り切って働いてしまった。っていうかそれも当然だな。
大体なんで大河が先輩の家でゴロゴロ喰っちゃ寝してるのかが皆目分らんぞ?
あの一家にはお前も充分に奉仕するだけの借りが有る筈なんだがな?どうやらそんな事はとっくのとうに忘れてしまわれている様だ。
お前の食費を請求でもされたら俺のバイト代など瞬時で消えてしまいそうだな。
そんな米喰い虎を飼っているのは世界広しと言えども俺位だろう。勘弁して欲しい。
どうやらすっかり我が家の如くくつろいだみたいだがな?さくらちゃんに迷惑を掛けてないかが心配だ。
それにしてもさくらちゃんに「お兄さん」と言われるのはどうにも背中が痒いな。変な気は無いぞ!
あんな可愛い娘にお兄さんと呼ばれるなんてな。うん。男冥利に尽きるぜ!
夕食時に、君みたいな妹が居ればきっと楽しいだろうな。って頭を撫でてしまったが…いや、なんで社長と奥さんの顔がにやけるんだ?
先輩はあんなにトンカツにソースをかける人だったんだな。ドボドボとまぁ真っ黒になってたが。
3学期が始まってからもバイトをしないか?と誘ってくれたのは素直に嬉しかった。
でもあまりお世話になるのも悪いし、なにより泰子との時間も大切にしたいしな。それは丁重にお断りした。
「そう。じゃあ高校卒業したら、うちに来なさいよ!永久就職してくれると嬉しいんだけどな〜」とは奥さん。
まぁ、バイト中にもよく「あら!もしかして、かのう屋さんの跡取りだったりして!」なんて影で言われてたしな。就職ってのも悪くはないか。
でも流石に跡取りは無いな。それでは幾ら何でも先輩に申し訳がない………あれ?
なんか………変だな?
狩野すみれの日記より抜粋。
1月15日。
明日からは3学期か。なにか慌しかったんだが…いや、楽しかったんだな、私は。
いやはや、お前がココに居る生活と云うのも存外に良いものだな。
両親もお前の事は気に入っていたぞ?少し気が早い話も出してるくらいだ。
こんな未来も悪くない。そう思ったさ…
ま!もちろんまだ先の話だ。今はただ、毎日が楽しいのが嬉しいってだけだ。
それにしても香椎といい木原といい、毎度アリって奴だな。
そんなに心配か?毎日毎日買い物に来てたがな。香椎はともかく、木原、お前はジュース1本で1時間もウロウロするんじゃない。
ふふふ、そんなお前達を見ていると飽きないよ。
さぁ、私のアドバンテージはココまでだ。修学旅行、お前達は動くのか?
冬休みは貰ったからな、そこはお前達に譲るよ。
精々頑張るがいいさ。私は私、お前達はお前達だからな。
だが話は聞かせてくれよ?必ずな、竜児。
恋ヶ窪ゆりの日記より抜粋。
1月17日。
いやあああ!!!
なんで?どうして宿泊施設が燃えちゃうの!!
修学旅行どうしようって言うのよぉぉぉ!
もう教師全員で大慌てよ!旅行の代理店も来て、もう夜中の2時よ?1時過ぎまで学校ってありなの?無いわよーー!!
コレで生徒にぎゃあぎゃあ言われようもんならもう爆発よ!
人生思どおりにはなんねーぞ!ってなもんよ!!
でもまだ何も決まってない。って決まるまで言える訳無いじゃない。
あぁ、明日は6時集合か…って3時間も寝れないじゃない!
…………お見合い、しよっかな……
1月18日。
今朝ギリギリでなんとか修学旅行の行き先が決まった。
2泊3日のスキー旅行IN長野。はぁ。やっぱりそりゃ文句も出るわよね〜。
もういいや。クタクタ。
寝よう。
川嶋亜美の日記より抜粋。
1月18日。
もう訳わかんない。
なんでいきなり沖縄のビーチが長野のゲレンデになっちゃうのよ。どうせなら北海道にしてよね。
ま、私はどっちでもいいんだけどさ。
タイガーはお土産喜んでたし、高須君は・・・・難しい顔してたわね?
どうやら長野には良い思い出が無いみたい。私がこっちに来る前らしいからよく知らないけどさ。
あ!でもそんな話を電話でしたらママがなんか大ウケしてた。なんで?ママ。
でも問題はそんな事じゃないのよ!
5泊6日の予定だったもんだから、私と奈々子と麻耶で取り敢えずは一夜づつ手出し無用って話だったのに、2泊ってどうよ。
二人は引く気無いみたいだし、私だってそんな気は更々無い。
だって折角の修学旅行じゃない。ほんと、譲れないってのよ!
冬休みの間は先輩の良いトコ取りだったんだもん。ココは欲しいよね!
明日話し合うことになってるけど、ほんと、高須君には苦労させられるわね。
分ってるの?高須君。私はもうそろそろ限界よ?
修学旅行に色々とすっきりさせて、もうハッキリさせようって感じだよ?
いつまでも、恋に恋する女の子じゃないんだよ。ソレを分ってよ、高須君。
香椎奈々子の日記より抜粋。
1月18日。
なんかバタバタよね〜。ま、それならそれでも良いんだけど。
でもゆりちゃん少しやつれてたわね。どうせ昨日は眠れなかったんでしょうけど。
いいよ、亜美ちゃん、麻耶。明日話し合おう。
3年になればクラスも変る。受験だって控えてる。もうそんな暇も余裕も無い。
あとたったの2・3ヶ月で、私達の今は終わる。
頃合だよね?
ハッキリさせよう、この旅行で。
ね?高須君。
木原麻耶の日記より抜粋。
1月19日。
修学旅行が田舎のある長野なんて、なんか不思議。でもちょっと嬉しい。
長野って私と高須君の思い出の場所だもんね。
一応今日、奈々子と亜美ちゃんと話して、仕方が無いから旅行中の個人攻撃は無しって事で決着。
ま、しょうがないか。
でも班は私達の予定通りになった。
高須君と私、それに奈々子に亜美ちゃんに大河と櫛枝。
あと、まるおと春田と能登か。ま、いつも面子よね。
なんか楽しい予感がするね、高須君!
高須竜児の日記より抜粋。
1月19日。
いや……あまりのトラウマに昨日は書く事すら出来なかった。
長野……NGワードだ!!
ちょっと待ってくれよ、ゆりちゃん先生!いや、あの夜のよしみでゆり!!
どうしてよりにもよって長野なんだよ!上野動物園でもディズニーランドでも良いじゃねぇか?
なんなら俺は日帰りでも構わない!!あそこよりわ!!!
あぁ、思い出しただけで哀しくなる。あの紅く光るランプと白黒ツートン。
コレはなんの拷問なんだ?俺は何を喋れば許されるんだ?
俺は何も知らない!知らないんだ!!
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いかん。冷静さを欠いたな。これでは昨日の俺と変らないじゃないか。
まぁいい。この際コレは学校行事の一環として割り切ろう。俺は長野には初めて行くんだ。生まれて初めてだ!そう言い聞かせよう。
そう、もはや昨日迄の俺は居ないのさ。そう、今の俺は高須竜児(改)だ!
それはそうだろう?だって………櫛枝と同じ班だぜヒャッホーーー!
降り注ぐ粉雪に二人で描くシュプール!
見てごらん?ウサギや鳥達も俺達を見守ってくれているじゃ無いかヤッホーーーー!
すまん櫛枝。俺はもうパウダースノーの様な綺麗な体では無くなってしまったのだが、ソレはソレ!コレはコレ!
心はいつでもお前向きだぜ!
いや、まぁ、今でもオカズはあの保健室での一夜なのだが……K・U・S・H・I・E…DA!!
しっかりしろ俺!
しかしもう、沖縄とかどうでも良いね?俺はさ。あとは如何に俺達の修学旅行を桜色に染まる思い出旅情にするかで一杯一杯さ。
どうやら我が家のミニイエティもスキーは出来ないそうだ。それでは流石に俺の邪魔も出来まい!
頑張ってボブスレーで遊んでいたまえ。お前ならジャマイカチームに位は勝てるさ、ハッハーーーーっだ!
恐い位に事が運ぶ気がするぜ。参ったな〜……ん?俺がどうしたって?大河。
「アンタはどうなのよ?」って可笑しな事を聞くなぁ………滑れねぇじゃん俺って!!
狩野すみれの日記より抜粋。
1月20日。
修学旅行か。
そういえば私達もしおりを作ったな。アレはアレで楽しい思い出だ。
まぁ沖縄は楽しかったが、皆でスキーと云うのも存外、楽しいものだと思うぞ?
しかし竜児。お前達の班はやはりその面子か。
ま、ある程度は予想の範疇だ。範疇なのだが、なんか面白くないな。
2泊3日で良かったな、竜児。
北村裕作の日記より抜粋。
1月20日。
いやはや、今日はなんか凄い一日だったな。
まぁ、しおり作りの為に場所を提供してくれた逢坂には本当に感謝だ。
それにしても広かったな、逢坂の家は。ソレをアソコまで綺麗にしてる高須には正直脱帽だ。
しかし、やはりと云うか当たり前と云うか、ま、コレだけの人数が居ればまともに作業には成らないか。それも含めて修学旅行なのかもな。
だが「なんか皆で楽しめる遊びしよ〜よ〜」と騒ぐ春田は予想通りなんだが「じゃ王様ゲームしようぜ!」とは能登も弾け過ぎだろう?
当然女子から反発が来ると思ってたのだが、意外と、いや寧ろ乗り気だったのが驚きだ。
やはり女子の考えは分らんな。俺が時代遅れなのかな?
いや、でもまぁ中々に照れるな。ゲームとはいえ「ほんじゃあね〜…一番が八番をぉ〜〜好きだよって抱きしめる〜」って春田に言われた時は、な。
なんと言うか、ソレまではあえて皆、その手のワードは避けてたんだけどな。お前は凄いよ。
好きだ、か。そう云えば一年の時にも、俺はお前にそう言ったんだよな?逢坂。ま、あの時は抱き締めはしなかったが。
あんなに小さかったのか、お前は。
俺が、好きだよって言った時、小さく「私も」って聞こえた。
可笑しいな、俺たち……どうして掛け違ったんだろうな、俺達は。
でも流石に返事は反則だぞ?照れるじゃないか。
お前も高須も全力だったからな。無理も無いか。でも楽しかった、そして嬉しかった。これは本当だ、逢坂。
お前は楽しかったか?初めてだったんだろ?王様ゲーム。
木原麻耶の日記より抜粋。
1月20日。
もう信じられない…みんなの前で、そんな「…愛してる」って手を絡めらながら耳元で囁くなんて!それも十回も!
春田ってばもう最高よ!今度スドバ奢ったげる、マジで!
まさか好きとか言い出した後に「じゃあ、3番が王様の肩を揉む〜」とか王様アリの突破口開いちゃうんだもん。
しかも、しかもしかもしかも!この王様ゲームってば超有利なのに!
高須君と大河ってコレやった事無いらしくて、今一つ飲み込めてない。まぁ後は二人の性格なのね、きっと。
彼等は分かりやすい。
王様の時は良いんだけど、それ以外。
あの二人が一番の棒を掴んだ時は、もうすっごく嬉しそうな顔するの!
それで八番なんか掴もうものならこの世の終わりみたいな顔。別に番号で勝ち負けは決まらないのに、やっぱり一番って数字は強いのね、あの二人にとって。
で、二番を掴めば、惜しい!って顔するし、アッブねぇ〜ってホッとするのって七番よね。
それだけでも分りやすいのに……春田も一緒のリアクション。もう、コレだけでかなりの有利よね、私達。
そりゃあもう、一番さんには王様と手を絡めて恋人握りしたまま耳元で囁くように愛してると言ってもらった。そうね、十回にしようか。
エロは無しって方向だし、コレはエロじゃないよね?亜美ちゃん、奈々子?
ま、能登を無力化するまではココまでは出来なかったけどね。それは奈々子に感謝だよ。
もうその後はよく覚えてない。言葉が気持ち良いってああ云う事なんだね?高須君。
マジ、今日はありがとね。
香椎奈々子の日記より抜粋。
1月20日。
もう、もしかしたら修学旅行ではっきりさせようと思ってたのに、これじゃあ揺らいじゃうよ、高須君。
ところで旅行のしおりってどうなったの?ってもう良いか、どうでも。
王様ゲーム。あぁ、なんて画期的なゲームなんだろう。考えた人最高。
ま、約三人がもの凄く分りやすかったから、不安要素には早々に退場願ったし。
大河って素直よね。
このゲームは王様の命令が絶対だから、言われた事には全力でね?って言うと「分かったわ」ってもう真剣。あ、でも高須君も真剣だったね。
エロは無いって言ってるのに、じゃあ、王様の太ももでも二番にぃ……ってエロは無しだったね、御免御免。
鼻息荒いね、能登君。
八番。二番にアッパーカッ「ぐひゃ!」トって早かったわね、大河。良い子良い子。
そこで八番の棒は無くなったから七番までね。
でも少し、ほんの少し、後悔。
こんなに気持ちが安らぐなら、最悪ケジメを付けようと思っている私が揺らぐ。
七番が王様の頬に手を添えて名前を呼んで愛を告げる。なんて言うんじゃ無かった。
「……奈々子……愛してる」
って分ってるの?高須君。貴方今、酷い事をしてるのよ?本当に、罪な事を。
好きな人に名前で呼んでもらえるって事がこんなに気持ちの良い事なんて思わなかった。もう、私の名前は高須君の物よ。
だから貴方の手を取って指先を軽く甘噛みしたのは、些細な復讐よ。少しくらいドキドキしてくれないと不公平だから。
貴方の鋭い目と私の上目遣い。ふふ、いい勝負じゃない?私達。
逢坂大河の日記より抜粋。
1月20日。
えへへへへへへへへへへへへへへ。
北村君が好きって、「好きだよ」って言って抱き締めてくれた。
そりゃあゲームだって分かってる。そんな事分かってる。
でも嬉しかった。幸せってこういう事なんだね、竜児。
って竜児も今日は幸せだ。あんな事されたんだもんね…えへへへ「えへへへ」
不味いわね。二人で、えへへて馬鹿みたいじゃない。でも顔が緩む。
竜児が今日は凄い美味しい肉を出してくれた。すっごく美味しかった。
今日はもう幸せすぎて考えられないけど、明日は二人で作戦を練るんだ!修学旅行大作戦。
私は北村君と。竜児はみのりんと。
キーワードはサプライズよね!やっぱり私達は二人の事が好きなんだ。
今日、またハッキリと分かった、そして、ソレが叶うと、きっとこんなに幸せなんだよ、竜児。
一緒に幸せになろうね、竜児。
櫛枝実乃梨の日記より抜粋。
1月20日。
いや〜〜。久々の大河の家は驚いたね〜。私が行ってた頃とは大違いだね大河。
コレも高須君のおかげだね、GJだよ高須君。
だから、まぁ…今日の事はそのお礼って事も含めてって事で、貰ってやってくんなまし。
いや、櫛枝もやっぱり恥ずかしいよ。うん。でも…
なんだろう、悪い気はしない。
だから、修学旅行、一緒に楽しもうね、高須君。
私には大河のあんなに嬉しそうな顔を引き出す事が出来なかった。だから……
大河の事、ヨロシクね、高須君。
川嶋亜美の日記より抜粋。
1月20日。
はぁ。もう今夜は最高。
お姫様抱っこして「幸せになろうな?亜美」なんて言ってくれるなんて。
私の事だけ考えて。って抱きついたけど仕方ないじゃない?しがみ付かなきゃ落ちそうだってだけよ。多分ね。
でもキチンと三分間はそのままっだったのは偉いよね。
高須君て意外に力有るのね。
ま、しおりは裕作が仕上げるでしょうから心配ないし、明後日はもう修学旅行なんだもん。準備準備。
この旅行で何が有るのかは分からないけど、何か有って欲しいと願う。でも…
この時間が変ってしまうのも恐い。
恐いよ。高須君。
香椎奈々子(父)の日記より抜粋。
1月20日。
……母さん。コレが親離れって奴なのかな〜。
冬休みは普通の物が食べれたんだけどな。三学期早々にコレか。
奈々子。出来ればメロンはオカズとして扱わないで欲しい。
いや、もの凄くうわの空って感じなのは分かるんだけどな……やっぱり奴か?奴が絡んでるのか?奈々…そうだった。まさかお前が私を見るなり
「……お父さん。もう私を奈々子と呼ばないで……」
………何があったんだ娘よーーーーーーー!!
高須竜児の日記より抜粋。
1月20日。
ヒーーーーーーーハーーーーーーーー!!
もう…もう……HI−−−−−−−HA−−−−−−−−−だぜ!
春田。いや春田君。いやいや春田様!!
貴方は既に生き仏だ。俺は将来、春田神社の設立に粉骨砕身すると誓おう!
王様ゲームとはこれ程のゲームなのか。いや、驚きを通り越して轟きを覚えるな。どこをどう通り過ぎたかも既に分らんが。
能登が大河に沈まされた時は、なんて過酷なゲームだとビックリもしたが、それ以降は穏やかと言うか穏やかでないと言うか。
なるほど。基本、女子が王様、つまり女王様の時には、やはり愛の言葉を賛美として贈れと言う事か。流石に女王だけの事はある。
それに引き換え王様は、やれ誰に何しろ、彼に何しろと話を振る様に出来ているのか。
まぁ、俺が春田の肩を揉まされたのには今一つ納得が……俺の馬鹿!!むしろ春田様の肩は明日から率先して揉ませて頂こうではないか。
エロは無しと云う約束事を最初に確認する事の意味が良くわからんが、能登の顔が少し曇ったのが気になる。この場でソレは無いだろ?ハナから。
それでもゲームは楽しかった。
能登は大河にブッ飛ばされて眠ったままだったが、どうやらこのゲームは全力を出さねば成らんらしいからな。止むを得まい。
その大河と来たら、北村に好きだと言われて夢心地。既に記憶も曖昧な事だろうて。
ゲームが進んでくにつれて、川嶋や香椎、木原も少しボヤ〜っとしてきたしな。そろそろお開きにしようぜって言った俺こそがGJなのか?イエイ!
「そんじゃコレでラストね〜」って言った春田様こそがまさに王様。ラストエンペラーだ!
「最後位は〆って事で〜〜…いっしょ。んじゃあ、三番が七番にチュ〜〜って事で」と仰られまし奉りまする。
「はちゃ!アッシってば三番ですよな」
…………いや、一瞬眩暈がしたな。
一体ぜんたいドチラの美女が何を言いました?この、七番の棒を握っているボンクラに聞こえる様に言って下さいませ!
まさか何処かから横槍が入らんかと心配したが、特に意見は無い様で。ある訳無い様で。はい。
「じゃあ………これで」っとホッペに ちゅっ
ホッペに ちゅっと ホッペに
きゃーーーーー!ほっちゅにぺっと!
「いやはや、照れますな」ってなんて可愛いんだ櫛枝。
いかんなんて可愛いんだ櫛枝。思い出してもなんて可愛いんだ櫛枝。顔が垂れるなんて可愛いんだ櫛枝。あぁ、もう顔を洗える気がしないなんて可愛いんだ櫛枝。
なんて可愛いんだ櫛枝。なんで可愛いんだ櫛枝。なんで可愛いい茎枝!
少し取り乱したな。
OK。神は俺に舞い降りた。大河よ。お互いに今夜は冷静では居られない。全ては明日だ。
綿密なプランを立て、明後日からの修学旅行に全てを掛けよう。
そう!俺達の熱い想いを、白銀の世界で成就させるのだ!!
今日はもう寝よう。あぁ。いい夢が見れそうだ。
もう篭城するのは勘弁して欲しいな。お休みだ、大河。
お読みいただきありがとう御座います。
取り合えずココまでにしておきます。
また少し間を空けて投下させて頂きます。
まとめ人の皆様ご苦労様です。
トリップと言うモノをつけましたので、お暇な時に私の作に付けておいて下さい。
私の所為で迷惑を被って居る方がいらっしゃる様ですので、出来ましたらお願い致します。
日記は2作目になります。
1作目はGWに投下させて頂いた「そんなこんなとらドラ(昼ドラ)」になります。
当時、PCも持たずsageもトリップも知らず、ご迷惑をお掛け致しました。
よろしくお願いします。
それでは失礼します。
読み難い、改行して
GJ
正直突然消えていろいろ話題に上った作者だけに偽物かと疑ってたが、このニヤニヤさせるクオリティは相変わらずだ。
続きも楽しみにしてます。待つのは慣れたけど、出来れば今度はもう少し焦らしプレイの時間は短めでお願いしますw
カッシィーの相変わらずの不憫っぷりにほっとしました。
日記楽しみにしてました!!!!
やっぱり、ハーレム気味のとらドラいいなぁ〜
これからも自分のペースで投下して下さい
面白かったよ、お疲れさん。
痛い人が沸いてるがどうか気にしないで続きも頑張って
日記GJ!!もう嬉しくてたまらんねwww
昼ドラの人だったのかあ。
GJでした〜〜
これからも続き頑張って下さいまし
日記の人おかえり! そしてGJ!
冬休みの長さで本人かどうかが判断出来た俺がいる。
道民の従兄弟が一般的には冬休みが1/7or8なのを知らないん
だよなぁ。
>>523 お帰りなさいませ。
相変わらず面白いです、続きを待ってて良かったなぁ〜と思います。
せっかくなんで、私も次レスから投下していきたいと思います。どうぞ宜しく。
珍しく、祐作がホームランを打った。それも値千金の特大タイムリー弾。
「さあさあ男子軍団。あーみんのお疲れを癒やすべく、
お楽しみトークの本塁打を狙って貰おうか。へい、り〜り」
な〜んて事を実乃梨ちゃんが言ったのだ、そしたら祐作が
「よし。では、トークの前に席替えなどしてみよう。と、いう訳で、亜美、替わってくれ。」
「へ?」
「ほらほら、どいたどいた。」
「ええッ!?ちょ…ちょっと」
10 沸騰
「宜しくね、高須君♪」
「お、おう。」
席替えた結果、あたしと高須君が隣同士、あっちの席では祐作とタイガーが隣同士で向かい合わせに実乃梨ちゃんが座って居る。
ナイス祐作。GJ祐作。この発想は無かった。誉めてつかわす。
「ねぇ…クマ、目立ってる?」
「え?いや、そんなでもねぇよ。気にする事ねぇって。」
あたしは、じぃっと高須君の目を見る。
「ホント?あたしって、痩せても枯れても綺麗?可愛い?」
「お……ぅ……」
高須君は目が合うなり、視線を下に逸らしてしまった。
相変わらず、可愛い反応だなぁ…
そして、下を向いたままゴソゴソとバックを漁り、銀色の包みを取り出した。
あたしはそれが何か知っている。高須君特製の超、超美味しい梅おにぎりだ。
あたしはこのおにぎりを最も美味しく頂くために、あえて朝食を抜いて来た。
今回は、朝ご飯を食べようと思えば、食べられる余裕はあったんだけど……
やっぱり、高須君の手握りは全てに優先されるのだ。
「朝飯、おにぎり持って来た。これ食って元気だせ。ほら。」
高須君は、銀紙を剥いて、おにぎりをあたしの口元に持ってきてくれた。
「!?……美味しいね、これ。」
前回よりも、美味しく感じたのは、きっと愛情の差。
「お前らも、朝飯まだだろ〜?おにぎり持ってきたから皆で食べてくれ。
北村ーほい、パスッ。」
「うっそ、マジ!?嬉しい〜やったぁ」
「おぉ、サンキュー高須。」
あたしは、ちょぴりの特別感、というか、いつもタイガーが独占していたであろう感慨に胸がいっぱいになる。
「お返しに、あたしもあ〜んしたげる。ほら、アーン」
「…お、おぅ。あ〜ん」
「な〜んかさ、あの2人怪しいよね〜距離近すぎっていうかさ〜」
「ああ、そうだな。亜美がああまでベッタリなのも珍しい。」
「………」
外野3人そっちのけであたしと高須君は、完全に2人の世界を築いていた。
と、あたしは思う。多分。アホがアホな事を言うまでは…
「なぁ、逢坂、俺達もやってみないか?」
「みゅ!?」
な・ん・だ・と!?今、なんつった、あのダメガネ
「ほら、口開けて。あ〜ん」
…正気かよ……あたしは、思わず振り返る
「え?えぇぇぇ〜〜それ、き、きた…きたむ…ら君の…」
ほ〜ら。タイガー困ってるし。
「ちょ、ちょちょちょちょっと待ちんしゃい。ヘイヘイ北村君。ダメだぜ、それは。
それじゃあ、間接チューになっちまう。
渡さんよボクは。タイガーの穢れなき無垢なる唇をどうして渡せよう?」
だよね〜食べかけでソレやるのは、ちょっと…って感じだよね。
あたしと高須君でさえ、新しいのを食べさせあってるんだから、祐作とタイガーがそんな…
……と、ちょっと待てよ?祐作ってタイガーにそんなアレだっけか!?
ヤベ。思い出せない。あ〜〜、この頃は、こいつらなんて心底どうでもイイ存在だったから…
最初から覚えてなかった…のかも。でも、祐作は会長さんじゃなかった?
いや、でも、祐作とタイガーって、それなりには仲良かったっけ?あれ?あれれ?
亜美ちゃん、ちょっと混乱中。
「ハッハッハ。すまんすまん。冗談だよ。悪かったな、逢坂。」
ちっとも悪そうに見えない祐作
「た、食べゆ…き、北村君のおにぎり。」
赤くなって、もじもじするタイガー
「え!?え〜〜〜。ふ、不潔だぁ、い〜けないんだ、いけないんだ。」
動揺して小学生みたいな事を言ってる実乃梨ちゃん
「おお。流石だ、逢坂。」
そして、とことん嬉しそうな祐作
なんなの?てか、祐作、たまに気を利かしたと思ったら…
もしかして、自分がタイガーの横に座りたかっただけなんじゃ……
これも、新たな変化なんだろうか?高須君があたしとくっつく(予定)から…
タイガーには祐作があてがわれてる?良いのだろうか?そんなんで……
………ま、イイヤ。亜美ちゃん、し〜らないっと。
どうせ、祐作もタイガーも悪い奴じゃないんだし、お互い、不幸にはなんないでしょ、多分。うん。問題ないない。
そんな事より、あたしは高須君の方が大事なのだ。今、この時、この場所が大事なのだ。
「…?何か、付いてるか?」
「ん〜?」
「いや、さっきからずっと、見てるからさ、気になって」
「な〜んも付いて無いけど?
いつも通りだよ〜ピンときたら系だよ〜」
「…ピンときたら系?」
「1・1・0だよ☆」
「………」
「あはははは。」
な〜んて。あたしの目には世界で一番カッコイイ顔が映ってるよ。目も鼻も口も耳も髪も……髪も……おや?
「あ、高須君。ちょっと動かないでね。………ていっ!!」
ピッ
「テッ。ちょっと、何す−
「光ってた。ほら、白髪。」
「おおおおお……ま、マジかよ……」
「苦労してんだねぇ〜〜」
「この若さで、もう白髪?ヤバくないか?これ……」
「何か悩みでもあるのぉ〜?ほら、お姉さんに言ってみなさいな。聞いたげるから。」
「実は……って言えるかっ!?」
「え〜〜なんでぇ?良いじゃん別に。」
「ダメ。」
「むぅ〜〜。」
「ダメ。そんな目してもダメ。」
けっ。そ〜いうのは家でやれよ、家でさぁ〜
周りから注がれるヤな視線に、あたしが屈する訳も無く…
気が付けばもう、別荘に着いていた。
楽しい時間は経つのが早いと言うが、あたしにとっては、駅を降りて、山道を歩くのでさえ、隣に高須君を置けば、矢の如し。
今度の撮影に、高須君が来てくれれば、一発OK間違いなし。ニコニコニコニコニコニコ。
仕事場にペットを連れてくるアホの気持ちも解らなくもないかな〜
お察しの通り、浮かれてます。有頂天です。
楽しかったのだ。久しぶりに心の底から笑った。そんな、あたしを誰が責められよう。
「あたしさぁ〜、けほッ…さっきまで電車に乗ってた、ケホッケホッ…様な気が…ケホッケホッケホッケホッ……」
「ちょ…大丈夫か!?川嶋。」
「ケホッケホッ……だ、大丈夫。えと、何だっけ?
そう、さっきまで電車に乗って、それからちょっと歩いて…
それで、何で今、こ〜んな状況になってるんだろ〜〜って、そう思う訳よ。ね、どう思う?」
「何でって言われても…そこに埃があるからだ。汚れてるからだ。
掃除に理由なんてないのさ。さ、川嶋も現実逃避してないで、拭け。
マスク二重にすれば大丈夫だから。ほらほら、見ろよココ。こ〜んなに汚れてるんだぜぇ〜
拭きたいだろぉ〜普通、拭くだろぉ〜ヘヘヘヘヘ、抵抗したって無駄さ。ほらほらほらぁ〜〜」
「うへぇ〜変態さんだぁ。亜美ちゃんコワーイ。」
今年に入ってから、まだ誰も足を踏み入れていない別荘は、やっぱり埃塗れだった。
「まず掃除だな。」
「いやいやぁ〜まず海でしょ〜」
変態さんと実乃梨ちゃんの意見は割れて、実乃梨ちゃんは我先にと海へ飛び出して行った。
タイガーも、泳げやしない癖に海へと飛び出し、あたしもそれに倣おうとした。
そしたら、後ろから変態さんにガッと腕を掴まれて、
「掃除しようぜ、掃除。」
と、凄まれ…もとい、懇願されたのだ。嫌とは言えなかった。
だって、変態さんの目が、どうか一緒に掃除して下さい。
僕はあなたが居なければ生きてはいけない。駄目野郎なんです。捨てないで。見捨てないで。
まるで、実家に帰ろうとする妻にすがりつく情けない亭主の様だったから。
あたしって、ホントお人好しだから、頼まれたら断れない性質なんだよね。
そしたら、アホが、
「よし。では、2人の事は任せてくれ。櫛枝は、まあ放っておいても問題ないだろうが、
逢坂が溺れそうになったら、ちゃんと救出しておく。任せてくれ。
あと2人には、高須と亜美は掃除が三度の飯より好きだから、気兼ねなく遊んでいて欲しい。
と、いう旨も、伝えておくから。それじゃッ。」
などと口走りながら逃げて行った。あれは絶対、掃除したくなかっただけだ。
ちょっとは気兼ねしろ。
しかも、とうとう実乃梨ちゃんよりも下の扱いになったらしい。
なぜ、あのアホはあたし以外にだけ気を遣うんだろうか……
まあ、祐作の中でのあたしのランクなんて別に知ったこっちゃねぇけど。
以上、回想終わり。あ〜〜ダルッ!!
「誰が変態だよ、誰が。」
「あ、聞こえた?もう、あたしの心まで覗かないでよ〜えっち。」
「おもいっきり、声に出してたぞ?遠い目で、声を大にして、モノってたぞ?」
「えぇ〜うそ〜ん。」
「うそ〜ん。じゃねぇよ。
それに北村は、むしろ、俺達に気を遣ってるんじゃないか?
邪魔だと思ったんだろ。多分な。」
「邪魔、ねぇ〜〜。ふぅん…フフフン。そんな風に言うって事はぁ〜〜
さては、高須君、掃除は口実で、あたしと2人っきりになりたかったのかな〜?
それならそうと、言ってくれればいいのにぃ〜」
「そ、そんなつもりじゃねぇって。別に、そんな。」
「そんな事言って、あたしの手掴んだじゃん。実乃梨ちゃんでもタイガーでもなく、あたしをさ。」
「いや、それは、アレだ。やっぱり、お前の別荘だから、お前が居ないと困るっつうか…」
「…それ、本気で言ってんの?」
「お、おう。勿論。」
その言葉を聞いた瞬間、身体が熱くなって、頭が瞬間湯沸かし機みたいにカァーっとなった。
だってさ。これって、あんまりじゃん?
「ブゥワァーーーーカッ!!」
あたしは叫んで、
「ちょ、どこ行くんだよ?」
その場から立ち去った。
「お ふ ろ そ う じ
ついでにシャワーも浴びるから、覗かないでよね!!」
などと捨て台詞を吐きながら。
11 冷却
あぁ、クソッ。チクショウ。
好きな相手が、なびいてくれないからって、腹を立てるのは自分勝手過ぎる。
解ってる。でも腹立つ。そんな事、解ってる。でも仕方ないのだ。あたしはそういう奴だから。
自覚はあるのだ。川島亜美は、そんな生き物だって。だから、仕方ない。どうにもならない。
自分の事が嫌いでも、向き合う事はしない。変化する事を望みはするが、省みたりはしない。
何故なら、それがあたしの天命だと思うから。
キリストだか釈迦だかソクラテスだか知らないが、もしあたしが天寿を全うし、彼らと会う機会があったなら、
天で最も美しい微笑みを浮かべながら刺してやろうと思う。
この美貌を与えてくれてありがとう。よくも、こんな性格で世に堕としてくれたな。
きっと、自分はこの世で最も美しく、醜い女だと思う。
でも、それはあたしのせいじゃない。生まれつき、こうだったのだ。
そんな事を考えている時のあたしは、大体頭に血が登ってる状態で、
それは、冷水をちょっと頭から被った位では到底収まらない。
あたしの怒りは有頂天。ついには高須君の事さえ憎らしく思えてきた。
大体、あの鈍感は無いんじゃないの、と。少し位、あたしに寄ってくれたって良い筈だ。
今だって、そうだ。お風呂に入るから覗かないでね、とあたしは言った。それは、覗きに来てね。って事でしょ?そうでしょ?
高須君が覗きに来る筈ない事は初めから解ってる。でも、それとなく様子を伺いに来てくれたって……バカ…
何で、いつもあたしを傷つけるんだろう?ホントは嫌いなんじゃないだろうか?
だったらあたしも、高須君の事なんて、嫌って、忘れてやれば清々する。
でも、結局、出来ないのだ。それが、一番、嫌だった。いつもいつも、泣くのは自分だ。
今も、こうして、シャワーを浴びながら、浴槽にお湯を張っている。
高須君もきっと、お風呂に入ってサッパリしたいだろうから。バカはあたし。
ループする思考。モヤモヤする胸。顔が、熱い。目が、痛い。
こんな時、剃刀の刃を絶対に見ちゃいけない。
まあ、ここは旅行先だから、そんな物は無いのだけれど……
「よっ」
お風呂から出てリビングで腰を下ろそうとしたあたしに
「さっぱりしたか?」
高須君が話かけてきた。
「………」
あたしは、タオルで髪をクシャクシャさせて
「………」
無視した。顔も下向けたままで、高須君と目を合わせようともしなかった。
「ちょっと待ってろ。」
あたしは返事しない。やっぱりあたしは怒ってる。
高須君にとっては理不尽な怒りだろうけど、それでもあたしは怒ってる。
…しばらくして、コトンッと音がした。びっくりして、反射的に顔を上げた。
テーブルの上に、グラスが置かれていた。中身は麦茶。良く冷えた、麦茶だった。
「麦茶。水筒に入れてきたやつだけど、流石に温くなっててさ、ちょっと、冷蔵庫に入れさせて貰ったぞ。
冷凍室に氷も入ってたけど、いつのか解らないから、やめといた。」
「……あれは、ママがウィスキー飲む時用だよ。
ロックアイスに賞味期限があるのかどうか知らないけどね。
多分、去年に買った分の残り。」
「そ、そうか。やめといて良かった。
ま、まあ何だ、それ飲みながらで良いからちょっと話聞いてくれるか?」
「…何?」
「あのさ、掃除は楽しいけどさ、やっぱり一人は寂しいと思って。
横に居て、何か喋っててくれるだけで、非常に助かる。
だから、川嶋に残って貰ったんだ。悪かったな。ゴメン。」
「な〜んか、ズレてね?あたしが怒ってるのはそ〜いう事じゃ無くて……
ま、良いや。許したげるよ。でも、謝るのがおせぇ〜んだよ、バーカ。
と、言う訳で高須君には罰を受けて貰います。」
「えッ!?何させる気だよ?」
「Aコース。掃除ご苦労様。お風呂入ってきなよ。お湯張っておいたけど、熱すぎる様だったら、自分でちょっと埋めてね。
Bコース。戸棚に蜂蜜が入ってたと思うから、取ってきて。
で、亜美ちゃんの身体に蜂蜜をたっぷりかけて、高須君にはそれを舐め取って貰います。
ベタベタするのヤダから、後でお風呂で洗いっこしよ♪
ちなみに、オススメはBコースだよ☆」
「Aコースでお願いします。」
「ケッ。根性無しめ。」
「ありがとな。風呂、わざわざ沸かしてくれて。」
「###もうッ。早く行きなよ。ついでだよ、 つ い で ッ!!
あたしの残り湯に浸かれる事を誉れに思うがいい。末端価格にして、金と同じ価値があるんだから。」
「砂金風呂か、そりゃ贅沢だな。」
「いいから、はよ行けってば。」
リビングから高須君を追い払った後、あたしは、煎れて貰ったお茶で一息付いていた。
さっきまで、あんなに火照っていた身体が隅々まで、冷やされていくのが実感出来る。
高須君の気遣いが嬉しかった。望んだ気遣いとは違ったものだけど、素直に嬉しかった。
あたしが、あんなにも怒り、激昂したのは、嬉しさの裏返しだったのだ。
過去へ来て以来、あたしは上手くやっていると思っていた。
高須君も少なからず、あたしを意識していて、もう一歩のトコだと思っていた。
それが、一気に崩れ落ちた様な気がしてショックだった。
積み木を崩されて、泣き喚めく幼稚園の子供みたいに…
痛い痛いと泣き喚めき、駄々をこねる。優しい園長先生は「どうしたの?」とは聞いてくれなかった。
それが、あたしの未来。元いた過去。
それじゃあダメなのだ、園長先生にあたしを解って貰うには、
「ここが痛い」「ああしたから怪我した」「治して」「慰めて」「あたしを見て」
全部、口に出して言わなきゃダメだ。あたしは言わない。だけど、察しろ。ではダメだ。
もっと素直になろう。寄り掛かろう。大丈夫。高須君なら、あたしの体重位、支えてくれる。
依存しない。同等の存在になる。あたしが前を歩く。ムリ。だって、性じゃないもん。
そう。より良い未来にする為に、一番大好きなあたしになるって決めたじゃない。
人間、根っこの部分は結局、変わらない。だけど、余計な外殻を剥がす位なら…
それ位なら、あたしだって出来ると思う。
うん。出来るよね。だって、あたしは亜美ちゃんだから。
よしッ、じゃあ善は急げって事で、早速、動きましょうかね。
お疲れの背中でも流しに行ってやるとしましょうか♪
ちなみに性的なサービスは一切無し。Aコースだし、仕方ないね☆
おしまいです。
今回、投下が遅れたのは事情がありまして、一回書いた内容を全部書き直したんですよね(^^;)
ちなみに没内容は『高校生探偵・川嶋亜美』をやる予定でした。
とりあえず、祐作君に死んで貰って、次回予告〜解決編とか煽って本次回は何事も無かったかの様に文化祭の話をするつもりだったんですよね。
でも、やっぱ無いなと思い書き直した次第です。
あと、この作品はあくまで、亜美ちゃん視点って設定ですので、客観的事実とは当然、異なります。
同時に、祐作君、竜児、大河、実乃梨の物語も裏で進行してるんだと、想像して読んで頂きたいです。
意訳すると、変なトコがあっても勘弁してちょんまげ♪って事です。
では〜
GJでした。
今、まとめから色々と読んでます。
色々迷惑かけてすんません。
また楽しませてくださいね。
なんか盛り上がってきたなぁ
リアルタイムで読みました GJ
良いぜ良いぜ
荒らしに負けずに職人さんたちが頑張ってくれると俺が嬉しいんだぜw
>>541 GJ
なぜ竜児はBコースを選ばないのかw
エロ<清掃、な彼には尊敬の念すら覚える
あーみん最初からこんなに頑張ってるんだし二回目の2年生くらい二人で幸せになってほしいわ
547 :
名無しさん@ピンキー:2009/11/25(水) 03:25:41 ID:zoJikiNz
お二人ともぐっじょぶであります
そして竜児、クールランニング…
日記はこのスレ特有のハーレムものとして安定感があるな
前みたいなハイペースじゃなくていいけど、出来るペースで定期的に投下があると嬉しいな
亜美時間逆行は若干初期に比べて、一人語りが増えてきてせいか
その部分の口調が亜美なのか作者のイメージだけなのか微妙なところがあるな
まぁ作風ともいえるが原作の風味とのバランスがもう少し良いと
もっと入り込んで読めそうな気がする
>>541 GJ
前回から少し間が空いたので心配していました。
これからも執筆頑張って下さい。
>>547 亜美と竜児が修学旅行に向けて風呂でボブスレーの練習をするのですね、解りますw
日記の人GJ!
待ってたかいがあった…
エンドレスJG!!
>>541 毎度GJです。度々出てくる「一番大好きなあたしになりたい」っていうフレーズは、もしかしてGOーmyーwayからの引用ですかね?
さあ盛り上がってまいりました!
ところで能登麻耶マダー?
俺も俺も
丿\ ))
|8 )
_ ∩/
_(_゚∀゚)彡
(\ ∞⊂彡 麻耶!
\)_ノ | 麻耶!
し⌒J
これ、書き込んだのお前らだろ?怒らないから、犯人は正直に名乗り出なさい。
118:ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン :2009/11/27(金) 01:29:49 ID:nj85N+eC [sage]
今、酒場で仲良くなった子から相談受けたんだけど、
何でも、その子は父親と2人暮らしで、炊事洗濯は交代でやってるらしい。
で、自分の当番だったから、近所のスーパーに買い物行ったらしいんだけど、たまたまスーパーでクラスの男子にあったんだってさ。
その男子は目つきが悪くてヤンキーみたいな人だから、怖がったらしいんだけど、なんやかんやあって好きになっちゃったらしい。
怖いのは見た目だけで、中身は主婦夫で優しい人だったとか。
でも、クラスにはその人の事が好きな人が三人も居るらしくて、地味な自分は勝ち目ないんじゃ……って落ち込んでるらさい。
いつも一緒に居るちっちゃくて可愛い子と、明るくて元気でユーモアな太陽みたいな子と学校で一番の美人で現役モデルがライバルらしい。 「あたしが勝ってるのは胸のサイズだけ……」
とか言って、めちゃくちゃ落ち込んでるんだけど、俺はどうアドバイスしてあげたら良いんだろう?
それもしかしてな(ry
『酒場』>未成年は行けないだろ?
『クラス』、『学校』>どう見ても高校だよな。大学だったら、『〜科』
設定が破綻してるから、
案外、このスレの誰かさんかもねwww
>>557 説明が遅れたけど、酒場ってのはチャット場の事な。後出しでスマン。
これ、ネ実の某ネトゲスレに書き込まれてたんだわ。
ネトゲのネカマプレイネタなんだと思うが、やっぱ、なな○○だよなコレは。
なんで酒場?
おっと
書きこする前にリロードしなかった
スマン
誤爆からSSを生んでしまうドラ職人さんの事だから、きっと、他板スレのネタからでも作ってしまうよね?
期待して待ってるわよ☆
保管庫の補完庫の、我らが同士2が途中までしか
表示されないんだけど、俺だけ?
×××ドラの続きまだかな
催促みたいで心苦しいけど、早く読みたいな
×××ドラって次々に妊娠が発覚する話だっけ?
僕も続き読みたいです。(>_<)
俺の過ぎる勘によると、ゆりちゃんに続いてやっちゃんも妊娠する展開になる筈。
竜児×やっちゃんのエロって普通にありだよな?
×××ドラの作者さんはほぼ唯一と言っていいやすドラ書き手だった気が
補完庫の更新有難うございました
補完庫の対応はえぇw
GJw
>>541 ボディ洗いを期待しながら正座して待ってるぜ
全裸で
569 :
♯sami:2009/11/28(土) 03:12:59 ID:2Dj5UwEw
今回は、故あの先生を偲ぶをテーマに急遽、読み切りを作成しました。
今日のアニメを観た方には解るネタだと思います。
『クレヨン竜ちゃん』
埋めちゃったらごめんなさい。
規制掛かっちゃったら、支援お願い致しますです。
「すみませ〜ん。宅急便で〜す。」
玄関から居間まで、良く通る声で鳴くのはペリカンさんか黒猫さんか…どっちにしても近所迷惑だなぁ〜と思う。
この家にインターホンなんてものは無いから、仕方ないと言えば仕方ないが。
そして、木の葉の舞うこの季節。我が家、唯一のホットスポットから出なきゃならない。さむ〜い、さむ〜い、玄関に出なきゃならない。
そういう意味では、自分にとっても迷惑な話だ。
左を見る。猫の様に目を細め、だらしなくテーブルに顎を載せて、溶けてる奴が一名。
下半身をすっぽり炬燵に突っ込み、カバーしきれない上半身には毛布をくるむ徹底ぶり。
猫は炬燵で丸くなると言うが、虎もそうらしい。まあ一応、猫科だし。
右を見る。必死に蜜柑と格闘している奴が一名。良い年齢して指先真っ黄色にして何をやってるんだか。
我が親の事ながら、ときどき心配になる。ま、身体さえ健康なら、何でもよかろう。
老け込むよりは幼い方がマシというものだ。最近は、そう思う事にしている。
そんな事より、右も左も動く気配がない。そもそも、来客に気づいてすらないんじゃないだろうか…
結局、いつも自分が寒い目に逢わなきゃならないのは理不尽だ。
−おい。大河。宅急便だ。取って来なさい。
と、どっしり構えて指示出来る立場に、今の自分はあると思うのだが、
そんな事、一度たりとも出来た試しは無く、やっぱりやっぱり今回も自分が寒い目に逢うのである。はぁ、しゃあねぇな。
斬れ過ぎ注意。クリムゾンハイスラッシュラインガードで研磨されたテグハよりも、鈍く、鋭く光る、両の眼。
まだ、18年しか生きていないというのに、彼、高須竜児の持つ邪眼は千年生きた邪竜ミラボレアス(G級)よりも禍々しい。
別に、この時だって、
−この俺がわざわざ出向くんだ、それなりのモンは用意して貰わねぇとなぁ。
不足分はあんちゃん、あんたの内臓で埋めて貰おうか。
なんて、考えてる訳では無いのだ。
本性は、タダで貰える物なら、ゴミでも貰う。リサイクルこそ人類の誇りだと、胸を張って宣言する。
そんなエコ野郎なのだ。
「はいはい。ちょっとお待ち下さいね。え〜と判子判子。おう。あったあった。」
ガラガラガラガラガラガラ
「あ、宅配便で……ヒィ。」
「あ〜寒いのに、ご苦労様です。判子は〜あ、はいはい。ここですか?ここに判子ね。はいはい。」
「あ、あ、ありがとうございました〜〜」
ペリカンのアルバイト君は業務を全うし、足早に去って行った。むしろ、全速力に見えた。
余程、急いでるのかな?師走という程だし、やっぱり忙しいのだろう。
悲しくなるから、深くは考えないでおこう。だって、幸せは手の中にあるから。
ペリカンさんが運んで来てくれたのは、中位の小包。重さは意外と軽い。
何だろう?食べ物じゃないのかな?何かな?何かな?
わくわくするな〜中身は何かな〜早く中に入って開けてみよう。
というか寒い。炬燵。炬燵炬燵。早く炬燵に戻って開けよう。そうしよう。
「何?食べ物?もしかしてハム?やったね。」
さっきまで、ピクリともしなかった癖に、食べ物の匂いを嗅ぎつけた虎は、目を爛々と輝かせていた。
よっこいせ。おっさん臭い台詞を吐きながら、炬燵に潜る。
「さあ。重さからして食べ物じゃない気がするけど。
大体、うちにハム贈って貰える様な付き合いは無いぞ?」
「ん〜。竜ちゃん宛てみたいだねぇ。」
泰子は顔だけ、此方を向けながら、手は未だに蜜柑を剥いていた。
皮は剥き終わったらしく、今度は白いトコを懸命に除けている。意外と器用な奴。
「竜児宛てぇ〜?あんた、まさか、通販で他人には言えない様なモンを?
ああ、ヤダヤダ。私と言うものがありながら…あんたは、余所の女にはぁはぁしたいんだ?」
「バカッ!!何言ってんだよお前。そんな訳無いだろ!?」
「どうだかねぇ〜?最近、ご無沙汰だしねぇ〜」
「バカ。泰子の前で変な事言うなよ!!恥ずかしいだろ!?」
全く。まだ、18なんだし、ましてや女の子なんだから、もう少し慎みをだな…
「えぇ〜別にぃ、恥ずかしがらなくてもイインダヨ〜
やっちゃんはぁ、そ〜ゆうの容認派だし、早く孫の顔みたいもん。
竜ちゃんと、大河ちゃんの子供だから、きっと可愛い子だと思うなぁ、ね〜、大河ちゃん♪」
「ね〜、やっちゃん♪」
何故だろう。泰子は自分の実母の筈だが……
たまに、自分が婿で、大河と泰子が実の親子なんじゃないかと錯覚する事さえある。
女同士、結託して、ナイスな連携で自分をいびる事が、稀に良くある。
まさか、実家でマスオさん気分を味わう事になろうとは、思わなかった。
恐るべし手乗りタイガー。しかも、どんなに辛くても、返品は不可だという。
まあ、辛くも無ければ、まして返品するつもりなど全く、毛ほども無いのだけれど。
この程度の苦労で、手乗りタイガーと共に、幸せ享受し、共有する事が出来るなら、幾らでも来い。どんと来い。
鱗や外殻を堅固にし、竜として虎に並び立つ、一生をかけて守り抜く。そういう対象が居る事は、竜児にとっても、大きな喜びだった。
「まあ、食べ物じゃなくてもさ、例えば、商品券とか。
何かの懸賞が当たったのかもしれないぞ?」
「商品券?」
「おう。お米券とかギフト券とか。ビール券だったら、ちょっと嫌だな。俺たちは飲めねぇし。」
「大丈夫だよ〜。バレなきゃイインダヨ〜
やっちゃんは、秘密にしてあげるし〜」
「バカ。どこに、未成年の飲酒を助長する親がどこにいんだよ。
ダメです。うちは絶対、断固、NOです。ダメゼッタイ!」
「そんな下らない事言ってないで、早く開けてみなよ。
何券かな?肉券?魚券?乳製品券?ワクワク。ワクワク。」
「いや、そんなピンポイントな券ねぇだろ。いや、あるか?
てか、まだギフト券だと決まった訳じゃ…
まあ、とにかく開けて見るか。」
とか、言ってる竜児も内心はワクワクで封を解く。
それを見ている2人はもっとワクワクで。家中、ワクワクがワクワクでワクワクだった。
「そ〜れご開帳〜♪」
「わ〜〜い。…って何コレ?」
「う〜ん、カレンダー?」
カレンダー。ワクワクの三乗積。その解はよりにもよってカレンダー(虎年)だった。
「えぇ〜カレンダぁー?期待して損した。
あ〜あ。何か、私、無駄に消費したからお腹減ったぁ〜。」
「さっき、晩飯喰ったばっかだろ?いつも通りに三杯。
しかも、何を消費したんだよ、寝てた癖に。」
「うるさい。減ったもんは減ったんだ。プリン食べたい。
そだ、あんたにも食べさせてあげるから取って来てよ。」
「いらねぇ。寒いから嫌だ。自分で取ってこい。」
「私を大切にしないとバチ当たるよ?
きっと、中身がカレンダーだったのも、竜児のせいだ。」
「はいはい。俺はカレンダーでもありがたい。タダなんだし。」
「ふんだ。イイもん。自分で取りに行くもん。ベーだ。」
唇尖らせながら、大河は、軽やかな足取りで台所へと駆けて行った。
「そんな動けるんなら、人を使おうとするんじゃねぇよ。」
そんな事言いつつも、やっぱり、プリン位取って来てやっても良かったかな?
とか、思っちゃう竜児はプリンより甘かった。
「まあ、せっかくだし、ちょっと中見てみるか。」
カレンダーを手に取ってとりあえず、一枚ペロッと捲って見る。絶句。
「ああ、寒い。寒い。台所寒過ぎ。寒くて死んじゃう。
プリン食べるの命掛けだよ、これじゃ。」
光の速さで炬燵にダイブする大河に、
「おい、これ。これ。」
竜児はカレンダーを広げて見せてやる。絶句。
「これって、大河ちゃん?」
泰子以外は絶句。
泰子の言う通り、カレンダー(虎年)の1ページ目を飾って居たのは大河だった。
その華奢な両腕に愛らしい仔猫を抱いて、ニッコリと慈愛に満ちた、エンジェル大河だった。
竜児は絶句。大河も絶句。しかし、プリンは食べる。
「何で、カレンダーに大河ちゃん?
あれ?箱に何かまだ入ってるよ?手紙?」
泰子が発見したのは、一枚の紙キレ。どうやら、カレンダーの下に入ってたらしい。
「え〜と。なになに、
『高須竜児様。この度は、ご応募まことにありがとう御座いました。
高須様に、ご応募頂いた、御写真が見事、佳作に入選されました。
つきましては、』
え〜と…え〜、やっちゃんムリ。読めない。」
写真?応募?
「あっーー!!思いだしたぁ〜アレだぁ。」
叫んだのは2頭、同時だった。
夏の事
「あぁ〜〜。暑いよぉ〜。りゅ〜じ〜。どっか遊びに行こ〜よ〜」
「こんな日は、家でゴロゴロしてんのが一番なんだよ。あ〜あちぃ。」
みーんみーんみーん。耳を済ませば聞こえる。オーケストラ。
こんな暑い日にどこに遊びに行こうというのか。家に居りゃいいじゃん。動かなきゃ、涼しいんだし。
「遊びに行くったって、どこにだよ?
外は暑いし、涼しいのは市民プールくらいのもんだが、お前、プール嫌だろ?」
「嫌。」
「だろ?だから、家で寝てようぜ。
夕方になったら、スーパー連れてってやるから。
今日は、卵がお一人様1パック79円だ。お前も来い。」
「えぇ〜〜。」
「帰りにアイス買ってやるぞ?」
「行く。」
「おう。」
みーんみーんみーん。しばらくして、
「ねぇねぇ、りゅ〜じ〜。」
また、大河が話しかけてきた。本当に、落ち着きの無い奴。
「なんだよ?」
「ファミレスいこ〜よ〜あそこなら涼しいよ。クーラー効いててさ。ね?行こうよ。」
「ファミレスって櫛枝がバイトしてるトコか?」
ファミリーレストラン・ジョニーズ。
櫛枝実乃梨は今や、一番の古株で、バイトリーダーの地位に居るらしい。
時給も30円上がったとかで、複数掛け持ちしていたバイトは、非効率的だから、とジョニーズに一本化したらしい。
おかげで、所得も上がってしまい、学生の身でありながら、お上に血税を納めているとか。
「うん。ね、久しぶりに行こうよ。きっと、みのりんも居るよ?」
確かに、バイトリーダーだし、多分、実乃梨は居るだろうが、
「でも、帰りはともかく、行きは暑いぞ?」
「それ位、我慢しなよ。それに、去年はあんなに行ったじゃんか。」
そりゃ、去年はな。と、竜児は思う。
確かに去年は実乃梨に会いたいがために、ムリヤリ大河を連れてジョニーズに通った。
けど、今年は、大河が居る。今、隣に大河が居る。竜児にはそれで十分だった。
「まぁな〜。そりゃあ、去年は櫛枝に会いに通い詰めたけど、
今年は、別に良いや。大河がバイトしてるなら、俺は喜んで行くけどな。」
付き合い出した当初、実乃梨の話題はお互いに禁畏とされていた。
何で、俺だけ?大河も北村の事、禁畏だろ?
とか、思ったが、女は逞しいもので、過去を振り返らないものらしい。大河は北村と普通に友達やっていた。
そういえば、実乃梨も自分に対して、普通に友達として接して来たっけ?
でも、春先から夏へと時間は経ち、こうして、軽口を言えるまでになった。
時間を掛けて、傷は綺麗に塞がったのだ。
「竜児……」
「大河……」
お互いに熱い視線を送る。−そして…
暑い暑い言いながら何やってんだ、と言われるかもしれない。
でも、どんなに暑くても熱いのは我慢出来る。むしろ、大歓迎。
みーんみーんみーん。事後、しばらくして、
「ねぇ、ねぇ、りゅ〜じ〜」
再び、大河が話し掛けてきた。
何だよ、もう出ねぇぞ?ったく、そのうち、干からびるんじゃないだろうか…
「ん?」
「これ。」
大河が差し出してきたのは、一冊の雑誌。
竜児が疲れて寝てる間、大河は雑誌を読んでいたらしい。
あれだけやって、何故、女は平気なんだ?
これも、竜児が理不尽に感じざるを得ないトコロだった。女ってコワイ。
「え〜、写真応募?賞金10万円?」
「そうそう。何か、可愛い写真撮って応募したら、10万円貰えるんだってさ。」
「入賞すればだろ?」
「そうそう。10万円あったら、涼しいトコに旅行行けるよ?行こうよ。旅行。」
「だから、入賞したら、だろ?俺も旅行行きたいけど。」
「ふふふ。大丈夫。我に秘策有り。」
とか言って、大河はどこかに電話を掛けだした。
ま、大体、誰に掛けてるかは、予想出来る。ちょっと、向こうの声聞こえるし。
「来てくれたら、お礼にガリガリ君をやろう。」
いやいや、さすがにガリガリ君では釣れないだろう、と竜児は思う。
しかし、夏休みに入って、あいつにもしばらく会って無いな。
あいつは元気にやってるのかな?まあ、あいつに心配なんか無用か。
なにより、楽し気に電話を掛ける大河を見て、竜児の心も安らいだ。
「ふざけんじゃねぇ〜〜つの!!」
この暑いのに、ガリガリ君一本で、わざわざ友人宅に来さされた、スーパーモデルはご立腹だった。
「久しぶりに電話掛けてきて、困った事があった。どうしても力になって欲しい。
っていうから、忙しい身だってのに、わざわざ来てやったのに、
写真撮らせろだぁ!?あぁ!?
こっちゃプロなんだよ。これで飯食ってんの。
そんな素人のままごとみたいなコンテストに応募出来るかっつうのッ。
そんなもん、川嶋亜美の名に傷が付くわ。賞金10万だと?
誰が引き受けるかよ。ほとんど、ノーギャラじゃんそれ。」
川嶋亜美。大河、竜児の共通の友人。自他共に認める、現役高校生スーパーモデル。
きっと、実乃梨よりもいっぱい、税金を払っていて、確かに彼女なら、こんなコンテスト役者が不足しているどころの騒ぎでは無い。
オスカー女優が高校の文化祭の舞台で、お地蔵様の役を演じる位、勿体ない話である。
へぇ〜川嶋にとって10万ってノーギャラなんだ…すげぇな。
へぇ〜忙しいとか言って、すぐ来たじゃん…暇なんだ、やっぱり。
スーパーモデルを前にして、竜児も大河もそれぞれ、勝手な事を思っていた。
「とにかく、あんた、自分の写真撮って送りゃ良いじゃん。
あ、それと、高須君、ガリガリ君持って来て。」
「え?いるの?」
「当たり前だろうがッ!!こっちは、この暑い中、こんな熱い家に、アホみたいに下らない用事で来てやってんだよ。
さっさと、茶くらいだせよ。この穀潰しがッ。良いから持って来い。5秒で持って来い。いいな?はい、5〜4〜。」
「はいはい。」
「あ、竜児。私にも。」
「わかった。わかった。」
ハァ〜〜。去年に比べて、こいつもだいぶパワーアップしたよなぁ…
元々、超美人だったが、今は、枕に『絶世の』を付けねばならなくなった。
以前より、川嶋亜美らしさがハッキリしたというか……
あの、女優、川嶋杏奈が、今では川嶋亜美の母親とか言われる始末。
逆七光現象。川嶋杏奈も嬉しいやら悔しいやら、胸中複雑だろうに違いない。
ただ、パワーアップしたのは、川嶋亜美だけではなかった。「亜美ちゃん」まで一緒にパワーアップしてしまったもんだから、周りは良い迷惑だ。
誰だか知らないが、こいつのマネージャーさんも気の毒にな…きっと、
「あたしが、何か頼もうと思ったら、既に買いに行って居ない位がベストよ。わかった?」
とか、言われてるんだろうな。
多分、それ程外れてないだろう。竜児には確信があった。自分が川嶋亜美、並びに亜美ちゃんをちゃんと理解していると。
「はい。」
「ありがとう。」
「私ソーダ味が良い。」
「もう、レモン味しか残ってねぇ。五本ずつ入ってんのに、先にソーダ味ばっか食うからだろ?」
「えぇ〜やだ。だって、レモン味すっぱいもん。」
「いやいや、そんな訳ないでしょ。
ガリガリ君なんて、色が違うだけで、味なんて一緒よ。一緒。」
「コンビニバカ舌のばかちーに何がわかる。」
「定番コンビニアイスでしょうが、ガリガリ君なんて。
ハーゲンダッツとかレディボーデンじゃないんだから。」
「それもコンビニにあるだろ。」
「また太れ。メタちー」
「あんたが太れ。メタイガー。
あたしは、今、デトックス半端ないから、安心だも〜ん。
最近、ストレスも無くて、絶好調だもんね。
多分、頭、ピストルで撃たれても死なないよ、今のあたし。」
「いやいや、無い無い。それは無い。」
「ばかちー。あんた、まさか、変な薬やってるんじゃ……」
「ちょ、ばか。マジシャレになんねぇからソレ。
うちは事務所しっかりしてるし、そんな事にはなりませ〜ん。」
「いや、個人の問題だろ、それは。」
久しぶりの友人との会話。弾みに弾み、笑い、ふざけ合い、それは楽しい時間だった。
元気そうでなにより。竜児は安心する。
「で、本題だけどさ、タイガーの写真を高須君が撮って応募しなよ。
あんた見た目だけは可愛いんだし、多分イケるよ。」
「お前が言うかよ…それ。」
「高須君はお口チャック。次、無駄口叩いたら死刑だから。
ぶっちゃけ、あたしの写真送っても、落選するよ、絶対。
だって、あたしの写真なんか絶対、本人が送る訳無いんだし、まず事務所に問い合わせ来るよ?
そしたら、事務所はNG出すから、落選決定。
だから、あんたの写真贈りなって。ポーズ位なら教えてやるから。」
「ホント?」
「うん。ホントホント。」
「わかった。じゃあ、やってみる。
竜児、カメラお願い。」
「お、おう。」
何だか、変な事になってきた。まあ、どうせ暇だから、良いんだが、
え〜と、写ルンですで良いのかな?これ。デジカメなんて無いし。
「はーい。笑って笑って。」
パシャパシャ
「表情硬いよ〜リラックスリラックス。」
パシャパシャ
「肩の力抜いて〜大きく深呼吸して〜」
パシャパシャ〜パシャパシャ〜パシャパシャ〜
「どう?」
「イマイチかなぁ〜」
「だよなイマイチだよなぁ〜」
一通り、撮り終えての感想。イマイチ。これに尽きる。
原因は明らかだった。亜美が大河に教えたポーズ。
これは、亜美がやるから映えるのであって、大河がやると、なんというか…哀れだ。しかも、表情が硬い。
まあ、それでも、やっぱり可愛いから、この写真は後で、アルバム−大河メモリーvol32に収録しておこう。
「あんた、貧相過ぎ。むしろ、哀れさえ感じるわ。」
「そ、そんな事ないもん。私も哀れだと思ってたけど、
竜児が、そうじゃないって言ってくれたもん。
私の胸は、肉質が柔らか過ぎて、服に押されてるだけで、
綺麗で形が良いって褒めてくれたもん。ね、竜児。」
おう。そうだぞ。しかしな、人前でそういう事言うのは止そうな。良い子だから。
「ふぅ〜ん。あそ。」
案の定、亜美のつめた〜い視線が竜児に突き刺さる。
大河が失言する度に、何故か竜児が、周りからこういう目で見られる。
ははは。まったく、良い清涼剤だぜ。あはははは。
「仕方ない、場所変えようか。ここじゃ、背景として殺風景過ぎるんだよ。
公園でも行ってみる?良い絵が撮れるかもよ?」
「え〜暑いからヤダ。ばかちーが行って来てよ。よろしくー」
「バカ。あんたが来ないでどうすんのよ。ほら、さっさと行くよ。
変態カメラマンさんも良いわよね?それで。」
うう…辛い。
それから、道中、竜児はひたすら亜美にチクチクチクチク、アタックされながら、何とか公園に着いた。
もうやめて。俺のライフはとっくに0よ。
−公園は犬の散歩のメッカらしく、大小様々な犬が居た。
可愛いのやら、怖いのやら。
「にゃーん」
にゃーん?何と、足下にはちっちゃい仔ネコが。可愛い、可愛い過ぎる。
「あ〜可愛いなぁ〜」
うん。可愛い、可愛い。亜美の言う通り。めちゃくちゃ可愛い。
思わず、腰を下ろして、仔ネコを撫でてやろうとした、その時。
ゾクッ…
背後から、得体の知れない、突き刺さす様な黒いオーラを感じた。
可哀想に仔ネコは一目散に逃げ出し。
「…この、浮気者。」
地獄から響く様な重低音。久しぶりに聞いたな〜大河のこの低い声。
って、そんな場合じゃねぇ、浮気者?何が?
「あの泥棒猫。竜児に色目使いやがって。地獄の果てまでも追い詰めて、八つ裂きにしてやる。」
えぇ〜〜〜〜!?
「ちょ、ちょっと待て大河。誤解だ。てか浮気ってなんだよ。そんな事無いから、な、落ち着けって。」
必死だった。
や〜ね〜あの子達修羅場って奴かしら?
男の方、悪そうな顔してるもの。
可愛いそうに、お嬢ちゃんの方、いったいどんな酷い事されたのかしら。
そんな奥様方のヒソヒソも、竜児にはどうでも良かった。
お願い。鎮まって下さい。大河様。今は、ただ、それを願い続ける。
「あはははははははははは。ひ〜〜ひ〜〜げほげほげほ!!ひ〜ひ〜。」
ちゃっかりと、一人、公園の隅に設置されたベンチに避難していた亜美は、笑い過ぎて、蒸せていた。
「死ぬ。亜美ちゃん、笑い過ぎで死んじゃう。苦しー。ひ〜〜ひ〜〜。」
「…笑い過ぎでしょ。」
「だって、だってだって、猫に嫉妬とか、ありえねぇ〜マジありえねぇ〜よ。
さすが、手乗りタイガー、あたしたちに出来ない事を平然とやってのける。
そこに憧れないけどマジ笑える〜〜」
なら、笑い死んでしまえ。竜児は思う。
こっちは笑い事じゃねぇんだ。大河を鎮めるのに、竜児が受けた精神的ダメージは計り知れない。
「だって、だって、猫でも、私以外の女に竜児があんな顔するのは許せないもんッ!!」
「ぶっ。女?ひ〜〜ひ〜〜ヤバイ。マジウケるんですけど〜〜
私以外の女に竜児があんな顔するのは許せないもんッ!!(キリッ
ぶふぅ〜〜ありえねぇ〜〜マジ最高。あの猫オスだったじゃん。」
「へ?」
「だって、付いてたじゃん、アレ。」
「オス?ホント?」
「え?俺は見てないけど。」
「マジだよ。オスだよ、オス。ば、ばかだ。猫ってだけでも笑えるのに、オスだし。
高須君、オス猫と浮気…ぶふぅ〜マジぱねぇ、マジぱねぇっすよ、タイガーさんマジぱねぇ。」
「その…竜児、ごめんね。私の勘違いだったみたい。」
いや、謝られても…。オス猫だったから謝る。素直に謝るのは良い事だ。
でも、もしメス猫だったらどうなってたの?
よもや、自分は生涯、メス猫を可愛いがってはならないのか?
いや、猫だけではない、全てのメスを愛でてはならないのか?
インコちゃんって性別どっちだっけ?
インコちゃん焼き鳥化の危機に竜児に戦慄が走る。
そして、その時、竜児達の横を小さな影とそれを追う3つの影も同時に走った。
「今のって、あの猫だよな?」
「うん。なんか逃げてた?」
「てか、犬が3匹追いかけてた?」
何という、薄幸な猫なのだろう。コワーイ虎に凄まれ、逃げた先では、犬に追われ…
「私、ちょっと見てくる。」
そういって、大河は駆け出した。
「おい。ちょっと待てって。…って早ッ!!」
竜児の制止も聞かず大河は猛スピードで駆けていった。
「追うぞ、川嶋。」
「はぁ!?何で?」
「いいから。早く。」
「えぇ〜〜〜。」
大河は義理固い女だ。恐らく、さっきの仔猫を救出に向かったのだろう。
先ほどの己の不備を詫びる為に。仔猫を虐める不届きな犬共を追い払うつもりなのだ。
野犬でもあるまいし、飼い主の目を盗んで、ちょっとハメを外した飼い犬如き、
虎が後れを取る筈はない。ないが、やっぱり、大切な彼女。
竜児は、駆けずにはいられなかった。
そして、苦笑しつつも、結局、後を追う、亜美。お人好し癖は治ってない様だ。
その頃、現場は既に緊張状態だった。
大河の背には、怯える仔猫(♂)。前面には、犬3匹。大河は身をかがめ、威嚇体勢。
犬3匹も低く唸り、もはや、いつ殺し合いが始まってもおかしくない雰囲気。
先に動いた方が殺られる…
駆けつけた、竜児と亜美も、殺伐とした雰囲気に呑まれ、動けずにいた。
一瞬とも永遠とも、もはや時間の概念などない獣の世界。
均衡を破ったのは、…どこからか、聞こえる、他の犬の遠吠えだった。
−ワォ〜〜〜〜ン
ビクッ。犬達の様子がおかしい。
−ワォ〜〜〜〜ン
ビクッ。ビクッ。明らかに怯え、萎縮している。
ザサァッ!!奥の茂みから、黒い巨大な影が飛び出した。
それだけ、たったそれだけで、3匹の犬は蜘蛛の子を散らす様に、四散した。
−ワォ〜〜〜〜ン
威風堂々と、天高く、勝ち名乗りをあげる。
筋骨隆々、猛犬注意、真中にむっちむちのダブルコートの被毛も頼もしい巨大なハスキー犬。
「あ、あれはチーコちゃん!?」
「!?知ってるの?高須君。」
「ああ、横綱チーコ。奴は、大河にさえ力勝ちした、この公園の帝王だ。」
「ええ!?あのタイガーが負けた?」
「ああ。大河自身が負けを認めた。」
般若そっくりの容貌が、大河をじっと睨み付ける。
よう。久しぶりだな。その目が語る。あんた弱くなったな。ふん、まあ、女は幸せだけ求めりゃイイのさ。
そして、チラッと竜児に一瞥をくれ、チーコちゃんは、元居た茂みへと帰って行った。
「チーコは大変なものを盗んで行きました。それはタイガーの心です。」
「えっ!?嘘?」
「…何、間に受けてんのよ。正気?」
動物相手に嫉妬ってバカップルっレベルじゃね〜ぞ。
あ〜あ、休日返上して、何バカな事やってんだろ、あたし。やってらんねぇ〜〜と、亜美は愚痴る。
「いや、まあそりゃそうだ。何を焦ってんだ俺は。犬相手に。」
ふぅ。溜め息ついて、大河の方を見てみれば、それは素晴らしい絵があった。
怖かったね?大丈夫、大丈夫。もう大丈夫だよ。ヨシヨシ。
聖母の如く、仔猫を慈しむ大河の姿がそこにはあった。
(完)
何かトリップが大変な事に…今後、これでいきます。ご迷惑掛けて申し訳ないです。
(完)って付けたのこれが初めてじゃないかしら?
って読み切りは他に幾つか書いてますけどね、未完が多い事は反省してます。すみません。
貴重なアドバイスを頂きつつも、途中まで書いてる作品に反映させる事が難しく、心苦しく思っていた次第でして、
この短編に力の限り、反映させてみました。
原作っぽく書いたつもりですが、やはり地の文が目立っちゃってます。
ゆゆぽ先生マジぱねぇって感じです。これが、きっとプロと落書きの差なんでしょうね。
比較する事自体、おこがましいというか、何言ってんの?って感じですよね。
「エンドレスあーみん」も半分位、執筆中。では、また次回、宜しくです。
(前略)
「何だか、飴と鞭って感じだな…」
竜児のぼやきに、亜美は苦笑した。
「あんた、飴と鞭を誤用してない? 飴と鞭ってのは、譲歩と弾圧とを併用して行う支配または指導の方法でしょ。でも、あたしたちは同志なんだから、
一方が支配とか指導する関係なんかじゃない。相方が苦しければ、助けてやって、相方が怖気づいているときは叱咤してでも励ましてやる。
それをお互いがする。そういうものなんだわ。それに…」
「それに?」
亜美は、ちょっとだけ躊躇うようにうつむいて、言葉を継いだ。
「ママとの確執は決定的だけど、パパともそうなったと決まったわけじゃない。さっき、あんたは、憂鬱そうに自分のことを“悪い虫”とかって卑下したけど、
ママよりも分別がありそうなパパなら、竜児のことを、適切に評価してくれるんじゃないかって気もするのよ」
そう言って、亜美は、遠く、沖合いの方に目を向けた。
竜児も、亜美に倣うようにして、視線を海へと向けてみた。絵に描いたような真夏の青い空と紺碧の海原がそこにあった。海原は折からの陽光を
受けて、水面がきらきらと輝いている。
シビアではあったが、亜美の言うことはもっともだ、と竜児は納得した。際限なく甘え、甘やかすといった関係は、結局は長続きしないのだろう。相互
に尊重し合うがこそ、時にはシビアに接することも必要なのだ。
それに、亜美の父親とは、いずれ相まみえることになる。自己を卑下して、それに怯えるよりも、避けがたい現実として堂々と受け止めなければならない。
「わぁ、風、風よ…」
午後になり、照りつける強い日差しで陸地の方が海面よりも温度が高くなったのか、海からは心地よい浜風が吹くようになっていた。
(中略)
竜児の手を引いて歩を進めていた亜美は、水位が膝頭に達したところで立ち止まった。
「ここで、いいかしらね…」
水深は子供の水遊び程度の深さだったが、夜間となれば、これ以上深みに嵌まるのは得策ではないと亜美も思ったのかも知れない。
それでも、遠浅のせいで、波打ち際からはかなり離れ、穏やかな入江の中に、竜児と亜美だけが、ぽつんと取り残されたような錯覚に襲われる。
「月の輝きがもの凄いな…」
二人の真上には、真夏の満月が、青白く輝いていた。その光は、水面を貫き、水底の竜児と亜美の足元まで明るく照らし出していた。
穏やかな波が二人の脚を、ちゃぷ、ちゃぷ、と洗っている。その音と、浜辺に打ち寄せる波の音以外には、何も聞こえなかった。
亜美は、他のものの気配を確かめるように、周囲をぐるりと見渡してから、天空に輝く満月に暫し見入っていた。
「この入江に存在しているのは、あんたとあたしだけ…。そのあたしたちを、この海と、空と、月が見守ってくれているんだわ…」
(中略)
竜児は、改めて川嶋安奈からの手紙に目を通した。
「お袋さんは、俺たちのことを許した訳じゃねぇが、認めるつもりはあるらしい…。しかし、美人だけど傲慢で陰険なだけのオバサンかと思ったが、
意外に思慮深いんだな。おみそれしたよ…」
「結局、あたしたちは、ママの手の中で踊らされていただけだったのかもね…。その点は、ちょっとムカつくけど、あたしたちの夢の実現を願って
くれていることは分かったわ…」
亜美は、川嶋安奈は完全に善意からバラの花束と手紙を送ってきたと思っているらしい。だが、竜児は、川嶋安奈の真意に気付いていた。
それを言うべきか否か、一瞬、竜児は躊躇したが、二人の間に隠し事は宜しくないと思い、率直に告げた。
「だがな…、これはお袋さんからの挑戦状でもあるんだぜ」
(後略:本編は次レスにてトータル80レスにて、濃厚エロありで投下予定)
585 :
訂正:2009/11/28(土) 08:17:39 ID:n9E5w2dt
(後略:本編は次『スレ』にてトータル80レスにて、濃厚エロありで投下予定)
作品も予告編も乙です
シリアスな感じのあみドラに久々期待
にしても臼井さんの件は悲しすぎる
> くれよん
全角!全角!
元ネタは知りませんが面白かったです。
エンドレスあーみん待ってますよ〜
日記 徒然に・・・っの続きマダー?
589 :
名無しさん@ピンキー:2009/11/28(土) 13:30:35 ID:JB0Hkg2Z
「大潮の夜に」って、前にあった「指環」の続きですか?
指輪の続きっぽいね。
以前にも予告?っぽいのなかったかな。どこかで見た気がする。亜美と杏奈のやりとりの場面。
C/カードだと……
592 :
名無しさん@ピンキー:2009/11/28(土) 18:02:20 ID:JB0Hkg2Z
「指環」の続きも楽しみですが、
以前あった竜児と亜美が修学旅行に行かないってssの続きも気になります。
次スレが待ち遠しい。
ななこいって、
保管庫に1〜4まであったんですが、
続きはまだ投下されてないんでしょうか?
ないです。
煮豆が食べ・・・読みたい
>>583 GJ。原作の雰囲気はちゃんと出てたよ。炬燵を囲む高須家のほのぼの感とか、相変わらず可哀想なあーみんとか。
本編より、スピンオフ2の虎肥ゆる秋みたいな感じでサクッと読めました。
>>584 ゴ、ゴクリ…
インテリあーみんキターーー
僕は、このシリーズの賢いあーみんが好きです。
次スレが楽しみだこりゃ。
次スレ立てるにはまだ早いかな
まだちょっと早いかも。
書き手さんが次スレ待機してる中でまだ30KB以上あるしね。
まったり雑談しつつ・・・VMさんの埋めネタ期待。
実は竜児と奈々子様は幼い頃一緒に何度も遊んだ事があって竜児の特性ホットミルクを
お医者さんごっこの薬と称して「おくしゅりおいしい」と何度も飲んでた、でもいつの間にか疎遠に。
その事を夢に見て昔を思い出す竜児と奈々子様。で、とある日にスーパーに行こうと自転車に
乗ってたら雨に降られて濡れてしまう奈々子様、これまたスーパーにいた竜児といろいろ話して
その後竜児が相合傘で送っていくことに。若干奈々子様は濡れたせいで寒気を感じるそうなので竜児はその場で
風邪をひいちゃ悪いと特性ホットミルクを作成、それを飲んだ奈々子様はこんな感じの味をどこかで・・・と思い
確かめに高須家へ赴く。やっぱりこの味だ!と奈々子様、その後色々あって仲良くなって・・・
こんないろいろ無理のある話の骨組みが頭に浮かんだ。
思いつくのは結構だが、それを第三者が読んで感動する文章に昇華できるかってのは、別問題。
オリジナル展開や、突飛な設定は、それだけ物語を構成することが困難になる。
その困難を乗り越えて、物語を完結できるか否かが問われることをお忘れなく。
すみれと竜児が幼なじみって設定で良作品を書いてらっしゃる作者さんも居るんだし、オリジナル設定はアリだと思いますよ〜
そもそも、竜×虎以外はオリジナル設定と言えなくも無い訳ですし。
あんまり突飛な設定は難しいと思うけど、頑張って頂きたい。
>>602 そんな事書かなくてもよくないか?
見たくなかったらスルーしたらどうよ?
俺も竜児×すみれのパターン
大好きだし、オリジナルの大抵は歓迎するぞ。作者さん達、頑張って!!!
完結しなくても面白いならいいや
結局そうだよな
偉そうに語っちゃってる恥ずかしい奴が一人いただけ
雑音を気にせずに書けるなら書いて欲しいものだ
そういえば、数日前に日記作者とサミット作者が同一人物とか言って騒いでたアホが一人居たね。
昔から居る人は解ってるだろうけど、2人の作者さんの作風が似てるのは当たり前なんだよね。
日記作者さんが投下の時に言ってた、参考にした作品ってのがサミット作者さんの作品なんだから。
確か7皿目か8皿目の『香椎奈々子の憂鬱』がそうだった様に思う。
なんにしても、以前の静かなスレに戻っておくれ。
ま、まただ。またヤツが来た。
凶悪犯のような顔面を持ち、三白眼の奥を光らせ、不気味な笑みを浮かべ、平然と仲間達の命をさらっていった死神。
手には僕の仲間達を死に追いやった奇妙な棒を持っている。
マスクの下の口端はきっとおかしいくらい上がっていることだろうことは容易に想像できる。
なんとか難を逃れてきた僕もとうとうこの男の手にかかるらしい。
うっ。み、見つかった!?
くそぉ。不気味に光ったヤツの眼はさらに輝きを増し、僕を見つけた喜びに満ちているようだ。
ん?
いや、ヤツの視線の先に僕はいなかった。
端に隠れていた仲間が見つかったのかもしれない。
……やっぱり。
やっぱり物陰の奥に隠れていた仲間が見つかってしまった。
ヤツは小刻みに不穏な動きを繰り返す。
「や、やめてくれ―――っ!!」
耳を塞ぎたくなるような仲間のいたたまれない悲鳴が聞えてきた。
「さ、斉藤―――――っ!!」
僕は無意識の内に叫んでしまう。
その声が聞こえたのか斉藤の息の根を止めたヤツは僕の方へ身体を向ける。
……近づいてきた。
さっきよりもずっと凶悪な笑みを浮かべて。
次は僕の番らしい。
僕を倒しにやってきた。
時間稼ぎをできるはずもなく、されるがまま蹂躙されるしかない。
身体が動かない僕が必死に生きてきたこの場所。
ヤツはそこから追い出そうとするわけではなく、僕という存在を闇へと葬ろうとしている。
同情の余地くらいないのか?
僕はヤツに何もしていないというのに!
なんだ?
なんなんだ、この理不尽な暴力は!
四月にヤツがこの家にやって来るまでここは僕らにとって楽園だった。
それなのに――ヤツが現れた瞬間、ここは地獄と化した。
早々に忘れたい記憶だったが、簡単には忘れることはできなかった。
僕達の縄張りにズカズカと入って来たと思ったら部屋の中を見渡した瞬間、嬉々とした表情をし、どこからか出してきた凶器で僕達を排除しにかかる。
薬を捲き、窒息させた。
ガザガザの布で拭い、水の中に溺れさせた。
機械を使い、次々に飲み込ませていった。
僕らは突然訪れた地獄に飲まれ、パニックに陥り、何も出来なかった。
残ったのは僕と一握りの仲間達。
その仲間達も次々に葬られていった……。
なんとか今までヤツの手から逃れてきた僕の命も残りわずからしい。
悔いはあるがそれが僕の運命なんだろう。
それを受け入れるしかない残酷な運命。
僕は今ほど自分の無力さを呪ったことはない。
ぐあっ!
気が付いたら僕の身体が削り取られていた。
僕の顔が苦痛で歪むほど、ヤツの顔は狂喜で歪んでいく。
どうやら僕の命はここまでらしい。
ただ僕は生き……たかっただけ…なのに……。
な…んで………。
僕が最後に見たものは、ヤ…ツの歪んだ……笑みだった―――。
「ふう、これで最後か。今回の敵は結構なもんだったが、終わっちまうと少し虚しいな」
竜児はかつてない程の大掃除に歓喜し、頼まれもしないうちに大河の家を綺麗に掃除してしまった。
満足したのか、綺麗になった家に興味がなくなったのか、掃除道具を持って早々に立ち去っていった。
おわり。
さっさと埋めて
>>584さんのSSを読みたかったんやけど、ネタがこんなんしか思いつかなかった……。
なんかせつない気持ちになりました
『みの☆ゴン』
>>252からの続きを投下させていただきます。
(初見の方は、前回の注意書きもお読みください)
9レス分(101〜109)です
エロ 今回もありません。本番は、本編ラスト付近になります。
補足 内容、文体が独特で、読みにくいかもしれません。
ご不快になられましたら、スルーしてください。
また、続き物ですので、ここからお読み頂いきますと、ご不明な点が多いと思います。
エロシーン(妄想シーン)は、本編より独立して投下しております。
スレ容量で中断するかもしれませんが、宜しくお願い申し上げます。
「ねえ、タイガー。今日の放課後。ちょっといい?」
と、昼休みに川嶋亜美からそう言われた逢坂大河は、夕暮れのファミレス、禁煙席のソファ
に、ちょこんとおとなしく座っていた。てっきり亜美がセメントマッチでも挑んできたのかと
思いきや、終始ニコニコしている亜美に、拍子抜けしてしまった大河。
ここは櫛枝実乃梨のバイト先でもあって、さらに雨上がりの金曜日は客も疎らで、それをい
いことにウェイトレス姿の実乃梨を含めた3人娘は、客席でギャルトークを展開し始めたのだ。
話題はもちろん……先日の、
「キスッ、キスッ?! キ〜スッ!!! 竜児とキスしたの? みのりん! ひゃー!」
「ぎゃー! ななに大声でいってんのよっ! 違う違う! キス、え〜アジ。そうだアジだよ!
アジの開き!! い、いや〜、竜児くんのキス……じゃなくて、アジ美味しかったな〜。キ
スの味じゃねえよ? 食べ物の味。もとい、アジの味っ! てか大河っ!! そんな事大声
で叫ぶんじゃねえよ!! ここって私のバイト先なんだってばよ!! 壁に耳ありクロード
チアリッ!!」
「テンパり過ぎだって実乃梨ちゃん。いいじゃな〜い、キッスぐら〜い? キッスの次は……
ウフフ?よね〜、あははっ! いやーん、あーん、乙女のピンチ〜〜〜っ! たぁいへん!」
いまさらカミングアウトして後悔する実乃梨。耳まで赤い。薔薇より赤い。しかし他のテー
ブルから『注文良いですかー』と声がかかって、バイト中である実乃梨は慌てて小走りでそち
らへ向っていくのであった。
「……あー、びっくらして、ばかちーの事、思わずブン殴るところだったわ……せっかくだか
ら一発殴っとくか……」
「なんでそうなんのよ、ド暴れ性格ブス! この前は春田くんに犠牲になってもらったからい
〜けど……まあ、そんな生意気なこと言えるのも今のうちなんだからね!……しかし、おっ
そいわね。あのバカトリオ。もうここのおごり決定ね〜」
実はこのファミレスの会合には他にも竜児、北村、春田の3人が呼ばれている。なんでも先
日のストーカー騒ぎで、解決に関わってくれた全員に、負け犬検死官・夕月玲子が、旅行に招
待してくれるというのだ。しかも沖縄。もちろん飛行機代も夕月玲子こと、川嶋安奈、つまり
は亜美の母親が負担してくれるというのである。
遅れている3人に待ちくたびれた亜美が、退屈しのぎにケータイのスケジュール帳をチェッ
クしだした時、店内にチャイムが鳴り響く。するとむさ苦しい高校生3人が現れキョロキョロ
と辺りを見回し、大河と亜美を見つけるやいなや、駆け寄ってくるのだった。
「いやー、遅れてすまん! おっ、ずいぶんと待たせてしまったみたいだな。申し訳ない」
空になった大河のグラスを見て、北村が頭を掻いた。「ううん、ヘーキ」っと、おとなしい
対処をする大河の代わりに亜美は北村に苦言を呈す。
「ちょっと、も〜佑作ぅ? ちびすけはいいとして、っこ〜んなに可愛い亜美ちゃん待たせる
なんて、百万年早いっつ〜の! ドリンクバー代よろ〜」
「……いや、俺が仮装行列につかう衣装の素材にこだわっちまって……すまねえ」
そう申し訳なさそうに頭を低くする竜児の背後にいる、箱やら紙袋で顔が見えない人物は、
どうやら春田らしい。
「ちょっとみんな〜!早く着席してくれよ〜!だいたい俺に荷物持たせすぎだって〜」
「お前がジャンケンに負けたんだろ? てか、荷物持ちの言い出しっぺは、お前じゃねえか春
田。しょうがねえな、ほらっ、先に座れ」
ふ〜助かった〜☆と、言ってさり気なく亜美の隣に座る春田。席を詰めてもらい竜児も同じ
ソファーに腰を降ろす。そんな訳で大河の隣に、北村が腰を降ろすのだが、その緊張を誤魔化
すためなのか、大河は竜児たちが買って来た紙袋をガサガサあさり、竜児に問い掛ける。
「っへ〜竜児。結構本格的じゃない。あんたそんなに優勝してバ会長んところの割引券が欲し
い訳?」
まあな、と竜児はうなずくが、今日集まったのはその話ではない。亜美はテーブルに身を
乗り出し、パチンと手を叩いた後、本題を切り出した。
「あのね、実はストーカー騒ぎに関わってくれたみんなに、ママが夏休みに沖縄旅行に招待し
て御礼したいって提案してくれたの。まだ先の話なんだけど、みんな予定もあるだろうし、
早めにと思って集まってもらったのよ。あたしは、そこまでする必要ないって言ったん……」
だけど。っと、亜美が話が終わる前に北村が立ち上がる。
「行き先は沖縄か! ちなみに俺は初飛行機! 否が応でも高なる期待はもはやレッドゾーン!
吹け! 琉球の風! もちろんみんな、行くんだよな?」
「もっちろ〜ん! 沖縄だろ? 沖縄! ハブっ! コトーっ! の沖縄だよー! 青空の下で
亜美ちゃんのビキニだよー! タダでいけるんだ〜☆撃ちてえ〜、銃! バキュ〜ン☆」
「おまえは沖縄を根本的に勘違いしてないか? 俺は……実乃梨が行くなら行こうかな……。
そこんとこどうなんだ?大河」
「ずいぶん主体性がないのね、竜児。みのりんは行くって言ってたわよ。沖縄……か……。ねえ
北村くんっ、沖縄って、もしかして、泳ぐ……の?」
「そりゃあ逢坂、沖縄って言ったら泳ぐだろう。どうしたんだ?暗い顔して。いつもの逢坂ら
しくないぞ! あっはっはっは!」
「ちょっとあんたたち最後まで話し聞きなさいよ! それにストーカー騒ぎに関係ない佑作は、
タイガーのオマケなんだから勝手に話し進めないでくれる?」
それぞれ言いたい事言い始めてしまい、騒がしくなるテーブルに、実乃梨が戻ってくる。
「やぁやぁ、皆の衆ぅ〜、ご注文は決まりましたかね?」
オーダーを取りにきた実乃梨に、バタバタとメニューと睨めっこし始める五人。その時、亜
美は、実乃梨にチョイチョイと制服の裾を引っ張られる。
「……ん?何、実乃梨ちゃん?」
何やら神妙な面持ちの実乃梨に、亜美の耳は周囲の雑音をシャットダウンする。
「後であーみんのメアド教えてくんないかな? ちょいと相談あるんだけど……」
「相談? いいけど、なあに?」
「なんでもねーっす、あひゃひゃひゃ〜!」
別にからかうつもりはなかったのだが、実乃梨は何故か両手をバタつかせ焦り出す。そんな
ひそひそ話がなんとなく聞こえてしまった竜児は、気になってしまい、
「ちょっと、それやめてよ! ガタガタすんの! 貧乏ゆすりっ! 気が散ってメニュー決め
られないじゃない!……みのりん私、いちごパフェがいい……」
「高っちゃん、貧乏な人を強請ったらダメじゃ〜ん! 俺、バニラアイス〜」
「違う。貧乏強請りじゃねえ。貧乏揺すりだ。まあ、気をつける……俺はドリンクバーにする」
「俺はコーラだ! よし! というわけで次はスケジュール決めな。終業式が7月18日だっ
たな? まず俺はここが生徒会の合宿で、ここがソフト部の試合で、合宿で……よしっ、逢
坂の予定はどうなんだ?」
リーダーシップを発揮する北村は、楽しげに眼鏡を押し上け、ルーズリーフにフリーハンド
で線を引いただけのお手製カレンダーを作り、テーブルに広げる。
「私は特にないかな。家族旅行なんて死んでもいかないし、そもそもそんな予定はないわ」
「うむっ、櫛枝のスケジュールはどうだ?」
「お! どれどれ!? ええとねー、北村くんと一緒にここは部活、ここも部活で、この辺
ずーっとバイトのシフト入れてるから、この辺がベストかなー」
「だな。春田はどうなんだ?」
「おりぇも部活あるけど〜……亜美タン最優先すっからいつでもイ〜ンダヨ〜☆」
「いや……春田は、補習あるんじゃねえか。定期考査落とすなよな? マジで。俺は特になに
もねえな。もしかしたらちょこっと墓参りぐらいは行くかもしれねえけど、いくらでも予定
はずらせるし」
「なるほどっ!ってことは、この週の……」
「ちょっ、ちょっ、ちょっと! 祐作! だから仕切らないでよね? なんで勝手に決めち
ゃうのよー!」
北村は心底嬉しそうに笑い、「亜美、この夏は楽しくなりそうだな」と小さく囁くが、亜美
は聞こえなかったのか聞こえないふりなのか、とにかく返事はしなかった。フフッと穏やかな
顔になる北村は、少し不貞腐れたような幼馴染みからカレンダーに目を移し、「よし! じゃ
あ旅行はこの日に決定!」
北村の声に同意の拍手がパラパラと上がるのだった。
***
「竜児くん、おまたせ〜っ! 帰ろうぜいっ」
七時過ぎの街並みに吹く夜風は、実乃梨の髪を颯爽と揺らし、彼女のやわらかな香りを竜児
に運んでくる。薄いオレンジ色のウェイトレス姿もいいのだが、見なれた制服姿に着替えた実
乃梨もやはり可愛らしかった。そういえば6月になれば衣替えになり、薄着の夏服になる。非
常に楽しみ……なんて、不埒な妄想を展開し始めた竜児は、これから櫛枝家にて体育祭で仮装
する『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』のDVDを観賞する事になっている。
さっきのファミレスで、その事をみんなに話すと……
『あっら〜?DVDとかいって、違うもの鑑賞しちゃうんじゃな〜い?……でも高須くんってぇ、
そ〜ゆ〜のにガッついてないってか、淡白? もしくは、草食系、だよね? せぇっかく実
乃梨ちゃんち行っても、結局何にもしなさそうなのよねぇ〜。実乃梨ちゃん、可哀想〜っ』
『たしかに竜児って、なんか本当に結婚するまで何もしなさそう……遺憾、でもないかっ、プ』
……そんな感じに、ひやかされたのかバカにされたのか、さんざん言われてしまった竜児なの
であったが、健康な男子高校生が、好きな女子とのホニャララな事に全く興味がないはずはなく、
いつも以上にグリグリと前髪をくゆらせているのである。
そんな竜児の下心に実乃梨は気付く事なく、普段と変わらない屈託のない笑顔を振りまきな
がら、喋り続けてくるのだ。
「……ってな感じでさ〜。私、爆発しそうでカップラーメンの『かやく』にお湯注ぐときって、
超〜っ緊張するんだよね〜……ありゃ? 竜児くん、聞いてる?」
「お、おうっ! そ、そうだな……え〜……犯人はヤス……だっけ?」
「あはは! そうそう! って、違っがぁ〜う!! もう竜児くん、ちゃんと聞いてよね〜!
でもそれウケるかもっ!」
そんな取り留めのない会話を交わしつつ、ふたりは無事に櫛枝家のある団地に到着する。
実乃梨はエレベータの中で4階のボタンを押し、ポケットから家の鍵を取りだす。チンっと、
到着の合図が響き、ふたりは玄関までの外廊下を通り玄関前に辿り着く、と。
「竜児くん、いらっしゃ〜〜い!! 元気そうねぇ!? ゆっくりしていってね!!!」
二人を待ち伏せしていたかのように、実乃梨の母親は玄関の扉をフルオープン。娘に負けな
い100万ワットの笑顔で竜児たちを迎え入れる。実乃梨は鍵を用意したまま呆然。サングラ
スを持ち合わせていない竜児は、その笑顔の眩しさにおうっ! と、三白眼が焼け焦げたほど
圧倒されるのだが、
「おうっ! ……こんばん……わわっ! ……ええっと、あ、あなたは、この前の!」
「いらっしゃい。竜児くん。ちゃんと会うのは初めてだね……実乃梨の父です。改めてよろし
く」
そこには、実乃梨の父親もいた。竜児の驚きは、倍率ドンッ! さらに倍っ! てな感じだ。
「え? なんで? お父さん、竜児くん知ってんの? 何故上?」
大きな瞳をパチクリさせる実乃梨に、ちょっとな、と実乃梨の父親は答えて、竜児にアイコ
ンタクト。竜児も素早く状況を理解し、恥ずかしそうに苦笑いした。
「ん〜……なんかわかんないけど、自己紹介の手間が掛からなくってよかったわよね、お姉ち
ゃん。お母さんたちこれから駅前に用事あるから、2時間くらいお留守番ヨロシクね〜!」
と、ウインクし、実乃梨の両親は竜児たちが歩いて来た外廊下に消えていった。
***
竜児が通されたのはテレビがある櫛枝家のリビング。ラバーウッドのローテーブルに、寝っ
転がれそうなベージュのソファー。シンプルで機能性の高い、ツボを押さえた家具で統一され、
インテリア好きの竜児は密かに及第点をつけるのであった。
「竜〜児くん、なんか飲むけ?カフェ?オァ、ティー?」
居心地悪そうにソファーに座っていた竜児が振り返ると、バイトとは違う、フランクな接待
をするウェイトレス実乃梨が、オーダーを取りにきた。制服のブレザーを脱いできた実乃梨の
ボディラインに視線をロックしてしまい、竜児は罪悪感に囚われる。何エロい事考えてんだ俺
……と。
「さっきファミレスで北村に付き合ってコーラすげえ飲んだし。そうだな、カフェ、プリーズ」
ラジャー、ブラジャー! と、何かのパロディーなのであろう、微妙なフレーズを残し、実
乃梨は、キッチンへ消えていった。それを見送り、ふうっと竜児はため息をつき、反省する。
竜児は、これから実乃梨とずっと一緒なのだ。そう誓ったのだ。大河や亜美に、あーだこー
だ言われたからといって、実乃梨とのホニャララな関係をなにもそう焦る必要はない……そう
いうのは、いつか自然にそうなるんだろう……そう、自分に言い聞かせる。
コーヒーをガッツリ飲んで、カフェインのリラックス効果に期待しよう。と、ひとり納得す
る竜児であったが、コーヒーのアロマによる欲情効果に関しては、特に気にしなかったようだ。
***
「ジャジャ〜ン! これが例のDVDでござるよ」
自慢気に実乃梨が突き出したのはもちろん仮装行列でやるDVDのソフトである。コーヒー
をテーブルに置き、テレビとプレーヤーの電源を入れ、ディスクをプレーヤーに吸い込ませた。
「おっと、茶請けがないね? 竜児くんがバイトしたアルプスのタルトタタンがあるでよ!」
持ってくるねっ!っと、立ち上がった実乃梨は、テレビとプレーヤーのリモコンを二丁拳銃
のように構え、ピピッと操作。急いでキッチンへ戻る、その時だった。
「おうっ! こ、これはっ!!」
テレビの前で突然エキサイトする竜児。実乃梨は怪訝に思い振り返る。
「え? 何? 竜児く……はあああっ!! なななんだぁこりゃぁぁぁぁっつ!! ストップ、
ストッープ!!! うおおっ! ……見た? 竜児くん、今見ちゃいましたか?」
松田優作ばりのなんだこりゃを披露した実乃梨と、氷像のように凍り固まる竜児。さっき一瞬、
テレビのモニターに浮かんだものは、ディズニーの人形劇とはほど遠い、素っ裸の男女が抱き合
っている、あられもない姿。しかも生々しい「あっは〜ん!」という艶かしい声もけっこうな音
量で再生されてしまったのであった。つまり簡単に言うと、こいつはアダルトDVDなのである。
「ひえぇ……なんでなんで〜? 竜児くんゴメン! ゴメンよっ!」
慌てふためく実乃梨は、DVDを取り出し、ディスクのラベルを確認する。
「間違ったかな〜、え〜っと……ナ、ナ、ナイトメイト・ビフォア・クリスマス〜?
ナイトメイトって、なんなのさっ? 夜の仲間? 笑えねーっての!! そっか! ヤツかっ!
みどりだな? く〜っ! あのドスケベニンゲンぐぁ〜!」
顔を真っ赤なして、ジタンダを踏む実乃梨。負けずに真っ赤っ赤になっている竜児は氷解する。
「いや……みどりは悪くねえよ。こういうの興味持つのって普通……だと思うぞ。年頃だしな」
もしかしたら義理の弟になるかもしれないみどりを懸命にフォロー。それに対し思わずエロ
DVDをへし折りそうになっていた実乃梨は、
「りゅ……竜児くんも?」
と、問いただすのだが、聞いた後で後悔しているようだ。このタイミングでそんな事聞いて、
いったい竜児にどんな返事を期待するのであろう……気まずい。非常にまずい。
「ま、まあ、な……俺も年頃だし……」
と、思わず本音を洩らす竜児にドキッと実乃梨が跳ねた。そしてモジモジし、シュンっと恥
ずかしそうに縮こまる。
「そ……そうなの?」
「実乃梨……」
竜児に名を呼ばれた実乃梨の瞳は、心なしか潤んでいた。視線がぶつかると脳天から湯気が出
てしまうほど上気する。
「ふあ〜……わ、私DVD取り替えてくるねっ!! 竜児くん、しばし待たれよ!」
ピンク色の空気に負けた実乃梨は、その場から逃げ出した。リビングに残された竜児は、急激
に干上がった喉にコーヒーを流し込むが、せっかくの味や匂いやらは全く感じることが出来なか
ったのだ。
***
たぶん実乃梨の自室なのであろう、奥の方からガサゴソする音が止み、暫くして実乃梨がD
VDを、さっき運んでこれなかったタルトタタンと一緒に持ってきた。
「はいっ! 今度は間違いないっす〜! さっきのは忘れてくれぃ!!」
「おうっ! 忘れた忘れた! 仕切り直しだ! 早く観ようぜっ!」
無理矢理さっきのピンク色の空気を一掃しようと、ふたりは取り繕うのであったが、そんな
簡単に忘れる事など出来るはずはないのだ。どことなくぎこちない会話が始まる。
「へえ、綺麗な映像だな……これってアニメじゃないのか? CG?」
「竜児くんストップモーションって知ってる? これって全部人形なんだぜ〜」
「そうなんだ、ってか今更なんだが、ハロウィン……って何する日だっけ?」
「いや〜、この監督、ティムバートンらしい個性的なキャラがいいよね〜!」
「しかしこの衣装上手く作れるかな。みんなの袖丈くらい採寸しないといけねえな」
「あはっ、気持ちわる〜っ! でもカワイ〜のぉ……おおっ! ジャックキタ───ッ!」
……と、だんだん話が噛み合わなくなってくるのだ。お互い、さっきの本番シーンが忘れられ
ず、心ここに有らず状態なのだ。そのことに気付き、ふたりはいつの間にかDVDなど上の空。
そして流し見状態の均衡を破るのは、さっきは逃げてしまった乙女、実乃梨であった。
「あのさ……竜児くん、やっぱ、気になるよね……その……さっきのDVD……年頃だもん、
ね……」
「そ……そうだな……衝撃的だったからな……」
竜児の三白眼が泳ぐ。ソファのすぐ隣に座っている実乃梨の顔を見ることが出来ない。しかし
視界ギリギリの実乃梨が竜児の方に振り向くのは分った。
「りゅ、竜児くんも、あんな事し、したい?……はあっ!? へぇっ、変な意味じゃなくてさ!
あれ? えっと……どんな意味なんだ、まあ…その……何言ってんだ私……」
竜児の体温が急上昇する。もしサーモグラフィーで計測したら、部屋中真っ白で何も映らな
いであろう。
「し、してえ。してえよ。してえけどよ……い、いつかは……な」
乾いた唇を噛む。竜児は限界だった。
「そ、そう、だよね竜児くん……いつか……はぁっ!!」
突然竜児は飛び込むように実乃梨に抱きつく。不意をつかれた実乃梨は、たじろぐのだが、
なんとか竜児に乞う。
「くっ、苦しいよ、竜児くん……私、逃げないから……ありゃ?」
抱きついたはいいが、竜児は、その後のことを考えていなかったようで、シューシュー脳ミ
ソがオーバーヒート。なんとか生きているみたいだが、人間、慣れない事はするもんじゃない。
「うわはっ! 竜児くんが壊れた! お、お〜い……んもうっ! 竜児くん、そのまま動くで
ないぞ……」
そ〜っと抱きついて固まっている竜児を引きはがし、実乃梨は一度、距離をとる。しばらく
竜児を観察してから、チュッと、燃えるように熱い頬に、キッスした。しかし照れてしまった
のか、実乃梨は溶けた顔が見えないように、竜児のおデコに自分のおデコをコツンとくっつけ
るのだ。まるで熱を計るように。
「み、実乃、梨……」
リブートした竜児。おデコがくっついているゼロの距離では、竜児が呟く度、その唇が実乃
梨の唇に軽く触れる。息をするほど、実乃梨のなんとも言えない体臭が、肺の中へ送り込まれ
る。……これがフェロモンというものだろうか……そんな考えが心臓へガソリンを送り込む。
竜児は破裂しそうになる心臓の音が、実乃梨に聞こえてしまわないか、急に恥ずかしくなっ
てくる。実乃梨の肩を握る手が、小刻みに震えだす。情熱で窒息しそうになる。そして、
欲望が理性を、超える。
新スレ立てさせて頂きます。
Please wait 4 a while.
規制で新スレ立てられませんでした。申し訳ございません。
容量ギリギリですので、今回はここで中断いたします。
失礼致します
スレ立て乙
622 :
98VM:2009/12/02(水) 01:15:26 ID:56nDvvPI
こんばんは、こんにちは。 98VMです。
埋めネタ行きます。 容量が微妙なので、もし入りきらなかったら再投稿します。
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ヽ . : . : . : . : ノ|ィ7てカ` ゞつン 小:!::|:::|
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ヽ ゙´ ,r-、ン| /⌒ヽ::::Y'" ̄二≧z{;;;」::::{;;:1::1 〈′ :| ,.-‐'' ハ
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624 :
98VM:2009/12/02(水) 01:16:10 ID:56nDvvPI
あぎゃw 再投稿しますわw
トランクス一枚で床に座る竜児。
身体を壁に寄りかか
汗
その手にある何か。
ヴヴヴヴヴヴヴ……
手が滑ったスマン
じゃあ普通に埋め
亜美「高須くん…タイガーを追いかけるの?」
竜児「…お、おう!」
亜美「じゃあ、亜美ちゃんが勇気あげるよ………ごめん。タイガー」
……チュっ。
この日、俺は大河のことを追い掛けるのも忘れるくらい川嶋亜美が気になって仕方なかった。
埋め
梅
肩に掛からないくらいの黒髪には艶があり、よく手入れされている。
制服のスカートは膝上辺りだが、わざわざスカートを短くして脚を強調しなくてもすらりと綺麗なのが容易に想像できた。
整った顔立ちの中でも目立つのは大きな黒い瞳。
長い睫毛がより女性らしく彼女を演出してくれている。
気弱な性格が出ているのか竜児を眺める彼女の瞳は少し震えているようだった。
光井百合子。
彼女が竜児を知ったのは大橋高校の有名なヤンキーとしてだった。
一年の百合子と二年の竜児が関わることはない。
しかし、百合子がたまに見かける竜児の姿は噂とは違い、おかしなものだった。
文句を言いながらも大橋高校の問題児として知られる大河の世話をしている姿。
余計なお世話をしたのか、なぜか大河に追いかけ回されてもいた。
モデルで人気者の亜美にちょっかい出されるが、媚びることもなびくこともなく、単純にからかわれている。
快活な実乃梨に話しかけられ、おどおどしている場面も見た。
生徒会副会長の北村と仲良く一緒に笑っている姿はよく目にした。
ヤンキーというには外見以外ピンとこない。
極めて温厚で、怒っている姿や人を脅している姿を見たことは一度もなかった。
百合子が母親に頼まれ夕食のおかずをスーパーに買いに行った時には、目の奥が光っているように思えるほど鋭い眼光で食材を見極めようとしている姿を見た。
気になって隠れながら遠目から竜児の姿を眺めているとレジを通った後、持っていたエコバックに買ったものをまとめていた。
そういう姿を見てしまった為か、百合子の目に竜児が問題児に映ることはなかった。
百合子自身も出場した文化祭のミスコンでは何があったのかは理解できなかったが、体育館が静寂に包まれた時に竜児が大河のために拍手を送っていたのがわかった。
その姿は痛く、自分を責めているように見えてしまった。
その時からだろうか、
百合子が竜児のことを気になっていたと明確に意識したのは。
文化祭が終わり、通常授業に戻ってもついつい竜児を探してしまう。
友人と話をしていても、視界の端で竜児の姿を追いかけてしまう。
知り合ってもいない。
ただの同じ高校に通う高校生。
接点はなく、すれ違ったとしても話すことはない。
二人の関係はそれだけだった。
自分の想いに気がついた百合子だったが、臆病な性格がわざわいし、自分から行動する勇気はない。
この想いは泡のように消えてなくなるはずだった。
転機は十二月二十四日。
生徒会長となった北村の提案で開催されることになったクリスマスパーティ。
親しい友人に誘われた百合子もそのパーティに参加していた。
特に何事もなく、友人と楽しく過ごした数時間。
パーティが終了し、友人と別れ、帰宅してから体育館に忘れ物をしたことに気が付いた。
急いで取りに戻りに行く途中、苦しそうな表情で走り去って行く実乃梨を見た。
しばらく歩いていると校門の前に熊の着ぐるみを着た人が倒れている。
もしかして何かあったの!?と思い、急いで駆け寄ると気を失っているその人は竜児だった。
ここから二人は親しくなっていくことになる。