【死人と】ブラックラグーンVOL.11【舞踏を】

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1名無しさん@ピンキー
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【デレデレ】ブラックラグーンVOL.10【子猫ちゃん】
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【ずるいぜ】ブラックラグーンVOL.8【まったく】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1203247517/  

【アミーゴ】ブラックラグーンVOL.7【タコス】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1184475016/

【尻か?】ブラックラグーンVOL.6【尻よ
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1173400775/

【今晩はが】ブラックラグーンVOL.5【抜けてるぜ】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1167315026/

【言いたく】ブラックラグーンVOL.4【ねェな】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1157639957/

【むしろアニメが】ブラックラグーンVOL.3【ブラクラ】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1145776198/

【ふたりはブラクラ】ブラックラグーン vol.2
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1098608817/

ブラックラグーンでハアハア
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1067839049/

*保管庫
2chエロパロ板SS保管庫
ttp://sslibrary.gozaru.jp/
ttp://red.ribbon.to/~storage/index.html
2名無しさん@ピンキー:2009/10/30(金) 19:35:27 ID:Pg6DLiKR
>>1
3名無しさん@ピンキー:2009/10/30(金) 23:42:32 ID:LF/S4avp
>>1乙ー!
4続きません:2009/10/31(土) 03:57:21 ID:THy9R4jc
現代のソドムの都の、夜の波止場は、岸壁を撫でる波の一つ一つが判る程、静まり返っていた。
どちらもくわえ煙草の、『フライフェイス』と『ベイブ』の顔が、一瞬、灯台が放つ光に照らされた。

"交渉決裂、か……。"

広東語訛りで、『ベイブ』が言う。
煙が、その口から立ち上る。

"残念ね、私たち、今まで以上にいいパートナーになれると思ったのに。"

『フライフェイス』が、ロシア語訛りで応える。
まだ赤い灰が、ぽとっとコンクリートに落ちて、すぐに光を失う。

"舞踏会は終わりだ、そうだろう?"

"……そうね。"

二人の顔は、けれどなぜか楽しそうで。
脳内麻薬が溢れるほど分泌されるのを、二人は不敵な顔で静かに感じていて。

刹那、二人は懐からほぼ同じタイミングで拳銃を取り出した。
二発の、発射音が響いた。

一人の、くずおれる音がした。
残った一人は、更に二発止めを打ち込むと、吸いかけの煙草を捨て、新しい煙草に火を付けた。

再び、辺りは静寂に包まれた。
その光景を見ていたのは、遙か天頂の月だけだった。

月は、何も語らない。
ただそこで、輝いているだけだ。
〈続きません〉
5名無しさん@ピンキー:2009/11/01(日) 09:51:34 ID:+RSytkMt
ひどいな、今回の規制
6名無しさん@ピンキー:2009/11/01(日) 23:05:21 ID:rNFePFjL
>>4
相変わらずGJ
なんかノワール映画のワンシーンみたいだ

ところで、前スレの最後あたりはなんなんだろうか?
ぶっちゃけブラクラに関係ないような気がする
7名無しさん@ピンキー:2009/11/04(水) 08:55:02 ID:BaLK1Ni4
仕事中だけどあげ
8続きません:2009/11/04(水) 20:40:05 ID:0UNiAwdm
早朝の、がらんどうの大聖堂に、二人はいた。
ステンドグラスからの光が、二人の顔を様々な色に染めた。

いつもの色眼鏡を外した『クソ尼』は、想像以上に美しかった。
『見習い神父』は、『クソ尼』の白い手が自分の頬に添えられ、柔らかな、潤んだ唇が自分の唇に近づくのを
静かに感じていた。
神職にふさわしくない、甘い香水が、香った。

"動いたら殺すぞ……リコ。"

"は……はい、姐さん!"

"だから、その呼び名はやめろ!
ったく、ムードもへったくれもねえ奴だ。"

口は悪いが、『クソ尼』にはどこか上品さを、洗練されたセンスを、『見習い神父』はいつも覚えていた。
それは、『クソ尼』が、自分が普通のプエルトリカンの神父として本国にいたら出会えなかったような存在に
きっと違いない、という思いを抱かせるに充分だった。

『クソ尼』の唇は想像以上に潤み、こんな早朝にも関わらず明らかに『クソ尼』が発情していることが、
『見習い神父』にもありありとわかった。
その長い舌が、歯の隙間を割って自分の口の中に入るのを、『見習い神父』はただじっと感じていた。

絡ませられる舌に、思わず反応してしまう。
"動くな"と言われていても、つい舌を動かしてしまう。
唾液が、淫靡な音をたてる。
二人で、互いを貪りあう。

口は離れても、銀の糸が二人をつないでいた。
目の前の『クソ尼』が、舌なめずりをした。
まるでそれは、自分を誘っているようだ、と『見習い神父』は思った。

"……動くな、って言ったよな?"

"す……すみません!"

"まあいい、お前、けっこう上手いみたいだしな。
チェリーだったらどうしようか、と思ったよ。"

"……まあ、人並みには。"

"そうか……。
オーケイ、じゃお前の腕前、見せてもらおうか。
私はな、お前の得意なパイプオルガンよりも、ずっとデリケートだぜ?"

『クソ尼』はそう言いながらロザリオを外すと、アメリカ式に手のひらを上にして、『見習い神父』を手招きする。
『見習い神父』はおそるおそる『クソ尼』に近づくと、息をぐっと吸い込んで、上体を『クソ尼』の方に倒す。

十字架の上のイエス像が、睦みあう二人を見下ろしていた。
その背徳的な空気を、沈痛な表情でただ、見下ろしていた。

<続きません>
9名無しさん@ピンキー:2009/11/04(水) 21:56:48 ID:jemB/dBh
ここでまさかのエダリコが来るとは…
いつもGJ!
10名無しさん@ピンキー:2009/11/05(木) 04:12:02 ID:XL+r5li0
わーい、エダリコが来たよママン!
いつもながらGJです
11大神竜一郎:2009/11/05(木) 16:46:54 ID:tFmPbynw
ブラックラグーンのSSはここに書き込めばいいのですか?
12名無しさん@ピンキー:2009/11/05(木) 18:49:25 ID:CKE4DvTO
続かないシリーズもいいなw
エダは双子の片割れにTシャツまくり上げられそうになってるのがすごいツボ
オレが片割れだったら、道すがらエダに酔っぱらいの相手をさせて
そいつの射精と同時に頭を撃ち抜いて
「屍体に中出しされる気分はどう?」
とか言葉で嬲りたい
13名無しさん@ピンキー:2009/11/05(木) 19:32:25 ID:icm6BX40
>>11
スマートな投下を待ってるよ。


しかし続きませんシリーズはどこまで続くんだw
どの組み合わせも完成度高いけどロクレヴィはダントツ萌えた・・・
次はどの組み合わせがくるのかwktk
14名無しさん@ピンキー:2009/11/06(金) 19:38:43 ID:4sCkGv6C
小説版のカリブ海賊船長モーガン妹に連れ去られるヒロインロックとか、
海賊のルールに従い戦利品はもちろん船長の手で手篭めに…
15名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 11:22:50 ID:ftZeIvs7
残念だったな
そのロックは










シャドーファルコンだ
16名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 12:45:31 ID:TPf37xz1
>>15
激しくワロタw
つーか絶対エロくならねぇw
17名無しさん@ピンキー:2009/11/09(月) 02:13:57 ID:GYWNmAtG
>>15
寝る前に、ちょっとエロい夢でも見れるようにと覗いたら、なんたる仕打ち
嗚呼、きっと夢にでてくる<ファルコン
…寝るのコワイヨウ
18名無しさん@ピンキー:2009/11/10(火) 01:17:42 ID:opxt+Fxy
捕虜なんて恰好のシチュがあるのに意外にも全く無いんだな、中尉殿のエロって
いっそ原作でリンカーンシーンでもあればいいのに
19名無しさん@ピンキー:2009/11/10(火) 19:56:24 ID:UriUDEEG
みんなハートフルが好きなんだよwww
20名無しさん@ピンキー:2009/11/10(火) 20:32:28 ID:xpO10k8l
それもロクレヴィばっかなw
若様ロベまたは若様ファビを要求する
21名無しさん@ピンキー:2009/11/10(火) 20:53:45 ID:VqLs5jL4
まったりらぶらぶロクレヴィ夫婦ものでほっこりしたい気分
22名無しさん@ピンキー:2009/11/10(火) 21:01:49 ID:lIWoVt1W
ハートフルはロクレヴィばっかというより、みんな健気なレヴィたんの人並みの幸せをみたいんだろう
印象としてはシェンホアんちもほのぼの多いけどなー。
あまりに家族過ぎ&ロットンの童貞臭が強くて、ほのぼのや片方とのノーマルプレイは出て来ても、
3Pまではなかなか書きにくいだけというかもしれんが
ラブレス家は、ショタの相手がヤク中ターミネーターじゃほのぼのなんか哀しい夢物語だ、個人的に


というわけで、スーツな枝姉さんのハニトラを読んでみたい。
23名無しさん@ピンキー:2009/11/10(火) 21:52:57 ID:1XXcDxG6
ロクレヴィならほのぼのも鬱もなんでも大好きだけど、
六トンのマグナムの具合を看てあげるですだよとか
エダリコのエダ鬼畜攻めとかも見てみたいな

文才なくて書けないのが悲しい
24名無しさん@ピンキー:2009/11/11(水) 00:38:28 ID:m3s62gvd
大尉殿の鬼畜凌辱が読みたい御仁は
レッツ自家発電ですだよ
25名無しさん@ピンキー:2009/11/11(水) 13:43:53 ID:8KoCY0dP
ロトソヤ希望
26名無しさん@ピンキー:2009/11/11(水) 17:57:52 ID:rZj6dqXj
ガムシロ吐けそうな甘々ラブラブも、岡島に時に激しく、時に冷淡に犯られまくるレヴィたんも大好物れす
27名無しさん@ピンキー:2009/11/11(水) 18:03:55 ID:IJNklG2W
6dはなんか見かけ倒しで早漏っぽそうなイメージ
28名無しさん@ピンキー:2009/11/11(水) 18:19:52 ID:6nDfzJsI
捕虜になって敵兵に性的なおもちゃにされるパブロヴナ中尉が見たいんだよ、俺は
それをお前らハートフルハートフル甘いの甘いのって…女子中学生か
ちくしょう可愛い奴らめ
29名無しさん@ピンキー:2009/11/11(水) 19:27:46 ID:m3s62gvd
自分の萌えが満たされないからといって
他のカップル萌えや属性に対して愚痴ったり恨みごとを言うのはやめなさい
「投下がないなら自分で供給」は基本です
30続きません:2009/11/11(水) 20:55:15 ID:dvHyuTB4
『兄様』と『姉様』は、今日初めて入った部屋のベッドで、一つに溶け合っていた。
もはや、どっちが『兄様』で、どっちが『姉様』か、当の本人たちにもわからなかった。
否、これまでもずっと、そうだった。

一卵性双生児。
通常、違う性別で生まれることは非常に稀な存在。
まったく同じ遺伝子を共有する、二人で一つの存在。

二人とも、遺伝学的にはXY染色体を持っているはずだった。
だが、見かけ上の性別は異なった存在として、二人は生まれた。
だから、二人がどんなにその行為をしようとも、二人が子を成すことはありえなかった。
だから、『姉様』には月のものも来なかったし、あの頃だってキャメラの前でどんなことをされても、
決して子供ができることはなかった。
その忌まわしい思い出も、二人には過去のことにもう過ぎなかった。

生臭い、鉄臭い匂いのするその部屋で、二人はいつものようにその行為に耽っていた。
ベッドのほうに向けられた木製の椅子には、男が一人、いや、かつて男だったものが一人、
ギャグボールを嵌められて縛り付けられていた。
男には、目の前の光景はもはや拷問だった。

男からナイフで切り取られたそれが、バイアグラの空き瓶と一緒に、床に無造作に転がされていた。
男の性的興奮に合わせて、男の股間、茂みの中に開けられた切り口からは、鮮血が散発的に噴き出していた。
あれだけ錠剤をしこたま飲ませた上に、接合部をわざと見せ付けるように交わる二人を、男は呪った。

茂みもまだ育っていなく、まだ色素もほとんど沈着していない、けれども充血した二人のその部分は、
それらが結合しているさまは、こんな状況でなければ、その気のない人間にも過分に刺激的だったであろう。
二人の接合部から部屋に響き渡る淫猥な水音と、二人の嬌声は、どんな人間の興奮をも誘ったであろう。
小児性愛者でなくとも、それだけ魅力的だったであろう。

二人は、見かけの性別以外は本当に生き写しだった。
まだこの歳であれば、それも無理はなかった。
二次性徴に入りかけの二人だからこそ、そうに違いなかった。

さっきからの男の痙攣は、すっかり止まらなくなっていた。
体中に鳥肌が立ち、血の気はひどく引いていた。
男が縛られた椅子の前の床は、男の切り口から飛び散った赤黒い液体で、ひどく濡れていた。

二人はそれを横目で見ながら、互いを貪っていた。
男は今、静かに事切れた。

<続きません>
31名無しさん@ピンキー:2009/11/11(水) 21:12:21 ID:W9vtYJFk
シリーズ待ってました!ダークな双子GJ!

ロクレヴィ話だけど、
レヴィはS、Mどっちもいけるし
岡島も黒島、白島どっちもいけるから色々なパターンで楽しめるよな
32名無しさん@ピンキー:2009/11/12(木) 07:39:51 ID:nXix5DZi
最近の黒顔のせいでもう白いロックとか想像できねえw

つか元々ホワイトカラーなのは表面上だけで奴の本質は…
33名無しさん@ピンキー:2009/11/12(木) 13:32:06 ID:7vv/1Gaw
>>32
日本で生まれて育って染みついてる日本の倫理観とか道徳観のタガが外れたのが黒島な気がしてきた
そういう意味では姐御のいうところのいい悪党になれるってのは当たってんだよなw
34名無しさん@ピンキー:2009/11/13(金) 00:54:39 ID:m4510X2X
>>30
GJ!
双子好きだなぁ
だけど……、怖っ
35名無しさん@ピンキー:2009/11/13(金) 04:43:53 ID:3zrEg4Po
>>30
GJ!
いつもながらお見事ですな〜
36名無しさん@ピンキー:2009/11/13(金) 17:58:05 ID:lR5+hmIv
レヴィたんが日本で働くとしたら何が向いてるだろう?

個人的にモデル、ジムのインストラクター、保母さんw
37名無しさん@ピンキー:2009/11/13(金) 18:36:56 ID:VWhSGRG1
専業主婦がいい

炊事洗濯など勿論したことないから
いつも家の中はぶち壊されたイエローフラッグ状態
38名無しさん@ピンキー:2009/11/13(金) 18:48:39 ID:KCjb5845
海女さんとかいいんでないか?
泳ぎの腕前はダッチのお墨付きだぜ

ロックも大丈夫、あれはどんな環境でもそれなりになじめる男だ
39名無しさん@ピンキー:2009/11/13(金) 19:02:14 ID:VbALdns8
ハードボイルド喫茶
40名無しさん@ピンキー:2009/11/14(土) 19:41:26 ID:6XFnJtnP
双子編で、ロックが兄様と姉様に捕まって酷い目に遇うのではないのかと
ヒヤヒヤしていたんだが
41名無しさん@ピンキー:2009/11/14(土) 22:38:41 ID:C1dPensq
それはヒヤヒヤというかむしろwktk

いや勿論ロック好きなんだが
42名無しさん@ピンキー:2009/11/15(日) 21:26:52 ID:ksraHhyx
仕事7:主婦業3
くらいの割合で頑張って両立させようと奮闘。

レヴィたんでも洗濯、掃除程度はやろうと思えば出来ると思う。
てか一人暮らし生活それなりに長い(脱獄したガキの頃あたりから?)だろうから、最低洗濯は出来るんじゃ?

問題は料理だよな、料理はおろかその日ありつければ良い方って幼少期過ごしてきただろうし、職業柄今でもゆっくり食事とれてるのかどうか。
43『2009年、ベネズエラ』(多分続く):2009/11/15(日) 22:30:36 ID:p/FImS5Q
僕がバリナスの屋敷に戻るのは、何ヶ月ぶりだっただろうか。
当家が国営石油公社の経営に参画するようになってから、僕があの屋敷にいることは極端に少なくなっていた。
NYの、公社の米国法人か、でなければカラカスの本社か、そのどちらかに大抵僕はいた。
反米的なチャベス政権に、社会主義体制にこの国が移り変わっても、それは変わらなかった。
米国政府の肝入りでバイオエタノール政策が進行していても、米国での石油需要の多さには変化がなかったからだ。

屋敷を守ってくれているロベルタに会うのも、本当に久しぶりだった。
あのとき一度死んだことになってはいても、ロベルタは相変わらず米国政府にはマークされ続けていただろうから、
当然僕のいるNYに来ることはできなかったのだ。

ロベルタに会うのが待ち遠しくて、僕は防弾処理の施された米国製のSUVの後席で、ずっと気を揉んでいた。
隣に座った、カールした髪をふたつにまとめて、僕のものよりは劣るけれどそれでも仕立ての悪くない黒いスーツを着た
ファビオラは、きっとロベルタに少し嫉妬していたに違いない。
NYでもカラカスでもずっとファビオラと過ごしていたとはいえ、あくまで僕の法的な配偶者はロベルタなのだから。
ボディーガードという名目のファビオラと一年のほとんどを暮らしていたって、ファビオラとも男女の関係であったって、
独立記念日とホリデー・シーズンには僕は必ず、ロベルタに会うためバリナスに帰ってはいたのだから。

"若様、お帰りなさいませ。"

玄関で女中たちと一緒に僕を出迎えた、プラダのシンプルなワンピースドレス姿のロベルタは、相変わらず、綺麗で。
もうあの丸眼鏡はしていないけれど、僕の手を握るその両手の柔らかさにも、表情の柔和さにも、かつての『猟犬』の
片鱗がすっかり消えてしまっているけれど、やっぱりロベルタで。
口付けのあと、僕はつい、見惚れてしまって。
あの頃からずっと付けているロザリオと、ロベルタの顔が、僕にはとても輝いて見えて。

"……若様?"

"ねえロベルタ、何度も言ってるけど、もう『若様』はやめてくれないか?
君は僕の……何だったかな?"

"『妻』ですわ、ガルシア。"

"そうだろう?"

スーツの下、胸のホルスターの拳銃に手をかけながら、もう暗くなり始めている辺りにくまなく目を配りながら、
ファビオラは死んだ魚のような目でこちらの様子をちらちらと伺っていて。
僕と目が合うと、ファビオラは慌てて視線を他の方向に向けて。
その目はどこか、あのロアナプラの『トゥーハンド』のレヴィさん、今はすっかり『悪党』としての貫禄のついた
セニョール・ロックと一緒になっているあのレヴィさんの、あの頃よくしていた目と、どこか似ていて。
最近、ファビオラはそんな目をよくするようになって。

そんなファビオラの気持ちも、僕にはよくわかった。
普段いつも一緒にいて、身体だって重ねていて、けれど正妻にはなれなくて。
かつての上司、婦長だったロベルタがその当の正妻で、そして僕たちの関係を知っていて。
僕の仕事に同行しながら、いろいろ見たくないものを見続けてきて。
いくらバリオ育ちで人間の嫌な面を見ること自体には抵抗がなかっただろうとはいえ、それでもたまのガス抜きが
必要なくらい、いろいろストレスを貯めてきていて。

それでも僕のためにきっと綺麗でいようとしてくれているファビオラには、僕は若干後ろめたい気持ちを持っていた。
ロベルタと腕を組んで、女中の後に続いてダイニングルームに向かいながら、僕はすぐ後ろを歩くファビオラの
責めるような視線をずっと感じていた。
それが、辛かった。
44『2009年、ベネズエラ』(多分続く):2009/11/15(日) 22:30:59 ID:p/FImS5Q
その晩ロベルタは、僕を必死に求めてきた。
ベッドに仰向けになった僕の怒張を、馬乗りになったロベルタはその細い、柔らかい指で濡れそぼった自らの中に導き、
僕の両手をそのたわわな胸に添えさせ、僕の上で親の敵のように腰を動かした。

久しぶりに触ったロベルタの、揺れる胸の感触は、まるで水風船のようで。
ファビオラの控えめな胸とは、全く違っていて。
感じる場所も、乳輪の大きさも、何もかもが違っていて。
僕の初めてのひとは、まだ子供だった僕に『女』を教えてくれたひとは、やっぱり僕の心の大きな位置をいまでも占めていて。
身体を重ねた回数はファビオラとのほうが多いけれど、だけど、僕にはどうしてもロベルタのことを忘れることはできなくって。
だから、僕はロベルタと決して切れない絆を結びたくて。
ロベルタと、正式に夫婦になって。
今も、こうしていて。

僕の腰にかかる、ロベルタの体重が、どこか心地よかった。
二人の接合部から、ぴったり合わされた粘膜や皮膚から伝わってくるぬくもりが、僕は好きだった。
片手の指を絡ませあいながら、もう片方の手でロベルタの胸の先を、すっかり硬くなって大豆のような大きさになったそれを
弄びながら、僕はロベルタを下から思い切り突き上げた。
だんだんロベルタの子宮が下がってきているのを、僕は感じていた。
そのコリコリした部分が僕のそれの先に当たるたびに、ロベルタは背中を震わせた。
甘い、熱い吐息がロベルタの口から漏れた。
僕は、ロベルタの身体を自由にしていた。

ロベルタのそこの繊細な蠢きは、僕の中から熱い精を一滴でも多く搾り取ろうとするその蠢きは、僕の我慢をだんだん
難しくしていって。
ロベルタの声が、吐息が、僕の心をどんどん揺さぶっていって。
ずっと一緒にいたファビオラと、今こうしているロベルタを、僕にどうしても比べさせてしまって。
理性じゃない、本能か感情か、そういう動物的なものしか、だんだん考えられなくさせていって。
頭が、真っ白になっていって。

僕が達したのと、ロベルタが達したのは、おそらくほぼ同時だっただろう。
熱い飛沫がロベルタの中を汚すのと、ロベルタのそこから液体が噴出したのとには、ほとんどタイムラグがなかっただろう。
二人の身体の相性は、きっと相変わらず抜群だっただろう。

相変わらず片手の指を絡ませあいながら、隣り合って横になりながら、僕らは自分たちの呼吸が落ち着いていくのを
静かに感じていた。
振子時計が、10時半を僕らに知らせていた。
45名無しさん@ピンキー:2009/11/15(日) 22:48:27 ID:ZUX2yUXZ
なんだこの波乱の予感は。
9巻最後の正装ロベルタは憂い綺麗。

しかし若様はファビオラも・・・
肉体関係のある女ボディガードっていいよなあ。
46名無しさん@ピンキー:2009/11/16(月) 00:10:48 ID:X3DEYyMj
GJ!
ヤンデレってしまいそうな展開に、目が話せん

貫禄がついたロックと聞いて、ハゲデブを思い付いたのは内緒だ
47名無しさん@ピンキー:2009/11/16(月) 21:52:36 ID:hB0iCe+g
10巻、BD発売まで先が長いからレヴィたん同人買ってしまった…
なかなか高い買い物だったが後悔はしていない
48名無しさん@ピンキー:2009/11/16(月) 22:22:44 ID:ssYsvoNo
こんないい時間にそんな報告されたら、何処のレヴィたん同人なのかムラムラ気になって眠れなくなるじゃねえかコノヤロウ
49名無しさん@ピンキー:2009/11/16(月) 22:24:42 ID:hB0iCe+g
レヴィたん本で有名?なあの人の本だ
ずっと買おうか悩んでいたがついに決断しちまったぜ
50『2009年、ベネズエラ』(多分続く):2009/11/16(月) 22:46:55 ID:4AQWtuNs
エンパナダとホット・チョコレートの遅めの朝食を取った後、僕は小鳥の囁きを聞きながら中庭のガーデンテーブルで
経済紙に目を通す。
NYSEのアーチャー・ダニエルズ・ミッドランドの株が、また上がっている。

米国の連中は、猫も杓子もバイオエタノールだ。
そのせいでトウモロコシの先物価格が上がって、わが国のように貧しい国は、いつ飢えの危機に晒されてもおかしくない。
僕らはそうなってもエンパナダもアレパも食べられるけれど、かつてのファビオラのような貧困層は、それもわからない。
バイオエタノール政策のおかげで大型のFFVの売上が好調なのは、喜ばしいが。
ガスガズラーなSUVや大型車が売れてくれないと、僕らが困る。

それに、希土類の鉱山やプランテーションがどうしようもない今、ベネズエラ湾のガス田開発からも、今更手は引けない。
レプソルやENIに水を上げられるわけには、いかない。

"若様、ここにおられたのですね?"

いきなり、掛けられる声。
聞きなれた、声。
僕は、その声の方角に顔を上げる。

"ファビオラ……。
いいんだよ、誰もいないときは、いつものように『ガルシア』で。
それに、丁寧に喋られたら、なんかこそばゆいし、さ。"

そよぐ初夏の風に、カールした、つやつやした砂糖菓子のような黒髪がたなびいていた。
その髪の主は、相変わらずサックスであつらえたスーツに身を包み、僕のほうをしっかと見つめていた。
その目は、昨日の晩のような死んだ魚のようなそれではなく、視線に強さを、凛とした意思を、僕に感じさせた。

"いえ、若様、ここはNYとは違います。
それに、ここには奥様もいらっしゃいますし。"

"今更ロベルタに気兼ねすることも、ないだろう?
僕たちのこと、全部、知ってるのにさ?"

"いえ、これは私たちの個人的な問題というだけではございません。
『ラブレス家・若当主の爛れた女性関係』などと、ゴシップ紙に書き立てられたら、どうなります?"

タイトスカートの端を押さえながら、ファビオラは僕の向かいの椅子に、腰を下ろす。
僕は、経済紙をテーブルに置く。

"……でも、あたしのあんたへの気持ちは、あんたやこの家がどうなっても変わらないよ、若様。
ここが、あんたがくれたあたしの居場所なんだ。
あんたと、奥様がいる、ここがさ。"

小声でそう言いながら、髪を再びバレッタでまとめながらいたずらっぽく笑うファビオラの顔は、あの頃のままで。
毎日見ているのに、つい、じっと僕は、見つめてしまって。
最近のファビオラがときどき見せる、あの死んだ魚のような目は、もしかしたらNYの寒さと毒気のせいかもしれない、
なんて思ってしまって。

"ねえファビオラ?"

"はい、若様。"

"少し早いけど、シエスタにしようか。
そうすれば、二人きりで話もできるだろ?"

"…はい!"

また、一陣の風が僕らを撫ぜていった。
太陽がもう、あんなに高い位置から、にっこり笑うファビオラと僕を見下ろしていた。
51『2009年、ベネズエラ』(多分続く):2009/11/16(月) 22:47:41 ID:4AQWtuNs
僕の下で喘ぐファビオラの声と、僕らの荒い息で、その部屋は満たされていた。
いや、きっとファビオラのそこから匂いたつ発情した雌の匂いと、さっき僕がファビオラの口の中に放った精の、
ファビオラが少しだけ飲み込んでくれたそれの、青臭い匂いにも。
開けられた窓から吹き込むそよ風で白いレースのカーテンが揺れていても、その匂いは、まだ消えないほどで。

スーツの下のファビオラの身体は、今もあの頃のままで。
日課のカポエイラとランニングで鍛えられた、けれど幼さや女性らしさをも残した、野生動物を思わせる締まった身体で。
20代の後半にもう入っているというのに、まだティーンエイジャーのような、そんな身体で。
化粧も上手くなったし、つける香水だって、下着だって歳相応のものになってはいるけれど、それ以外はまったく変わりがなくって。

ファビオラのそこが、避妊具ごしに僕のそれをやさしく締め付ける。
僕は、腰と腹と太股の筋肉を総動員して、ファビオラが感じるところに僕のそれの先が当たるように、優しく腰を動かす。

"ぁ……ガルシアっ……ガルシアっ……!"

潤んだファビオラの唇が、僕を誘う。
僕らは、互いを求め合うように、口付ける。
二人の唾液が、混ざり合う。
さっき僕が出した残渣の、少しの青臭い匂いと、ファビオラのリップのフルーティーな香りが、僕の口の中に伝わってくる。
口が離れても、銀の糸が、二人を繋ぐ。

僕は、ファビオラが愛しくてしかたなかった。
毎日のように身体を重ねていても、ロベルタという妻がいても、それは変わらなかった。
いや、僕らはそんな婚姻関係なんていう社会的通念からは既に、超越していた。
ロベルタだって、僕らのことは認めていた。
その証拠に、僕らがこの部屋に入るとき、ロベルタはテラスから僕らを優しい目で見てくれていた。
あの悪夢のような、父が亡くなったときからの一連の事件を、僕ら三人は、一緒に乗り越えてきたのだから。
ファビオラとも、ただの使用人と主人という関係では、それ以来なくなったのだから。

僕の腰の動きは、いつしかファビオラを感じさせるためのそれから、自分が絶頂を迎えるためのそれへと、変わっていた。
ファビオラが、ギュっとシーツを、その両手で掴んだ。
起立した、僕のつけたキスマークが目立つ控えめな胸の先が、僕が腰を激しく差し込むたびに、揺れる。
ファビオラの体中に、鳥肌が立っている。

その瞬間、僕らはちょうど何度目かの口付けをしていた。
避妊具ごしに、ファビオラの中を、僕の精が打った。
ファビオラは、声にならない声をあげた。
その声が、背筋に電流が流れっぱなしになっている僕の耳に焼きついた。
52名無しさん@ピンキー:2009/11/16(月) 22:58:11 ID:QONFjAVy
>アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド

なんてそれらしい単語を持ってきたんだろう。
おまいさんは広江か。(誉め言葉
53名無しさん@ピンキー:2009/11/17(火) 00:55:16 ID:Shx6vYJC
こいつぁいいな。
しかし2009にはちょっと育ちすぎてないか。
54『2009年、ベネズエラ』(多分続く):2009/11/18(水) 22:04:18 ID:/XA6B8NF
"若様、若様!"

昼下がり、寝室でまどろむ僕らを起こしたのは、もう10年以上もいる女中の、アニータの声だった。
それは、甲高く、相当慌てた声で。
一体何事か、という声で。
毛布の中のファビオラは、ベッドに置いた片時も離さないUSPをすばやく裸のままで拾い上げると、髪をも揺らさないような動きで
入口の扉の横にすっと身を置いて。
そして、例の死んだ魚のような目で、劇鉄を起こして。

"若様、大変です、若様!"

ノックもしないでドアを開け、僕らのいる寝室に入ってきたアニータは、顔面蒼白で。
父が亡くなり、ロベルタがいなくなったあの時以来の、そんな顔で。

"若様、お客様が!"

"なんだいアニータ、そんなことか。
アポがないお客様なら、帰ってもらいなさい。
僕らのシエスタを邪魔した罪は、重いよ?"

ファビオラは安堵した顔で、銃を下ろして。
けれど、アニータは相変わらず青い顔で。

"それが……旭日重工の本社の方が!"

"旭日……重工……?"

日本の、うちの鉱山のルテチウムを相場にかなり色載せして買ってくれるお得意様だ。
その……本社だって?

"応接室にお通しして、5分で行く、と伝えてくれないか、アニータ。
先方をあまり待たせると、不味い。"

"承知いたしました、若様。"

アニータは一礼すると、すぐ踵を返し玄関の方へと向かう。
僕はそれを横目で見ながらクローゼットを開け、バーニーズでオーダーしたスーツに袖を通す。
後ろで、ファビオラが再びスーツを着ている、そしてホルスターをはめている音がする。
55『2009年、ベネズエラ』(多分続く):2009/11/18(水) 22:04:56 ID:/XA6B8NF
きっかり5分後。
応接室で待っていたのは、もう初夏だというのに3ピースのスーツを着こなし、白髪のかなり混ざった髪をオールバックにした
東洋人にしては背の高い細身の初老の男と、もう一人、その秘書らしい同じく東洋人の女性だった。
握手を交わすや否や、男の口からは流暢な、しかし若干古風なスペイン語が飛び出した。

"わたくし、旭日重工役員室・資材担当参与の景山と申します、セニョール・ラブレス。
以後、お見知りおきを。"

"セニョール・カゲヤマ、サンパウロ支社の方ではなく本社の方、それも参与などという肩書きをお持ちの方が来られるとは、
よほどの事情なんでしょうね。
この国の、いや、ラテン文化圏の伝統である『シエスタ』という習慣など、関係ないくらいの。"

"シエスタの時間にお邪魔したことについては、お詫び申し上げます。
取り急ぎ、さっそく本題に入らせていただきましょう。
……実は、折り入ってお願いしたいことがございまして。"

"お願い?
ルテチウムの増産なら、難しいと言わざるを得ませんね。
あの設備と人員では、今の量がいっぱいいっぱいですよ。"

"いえ、本日お伺いしたのは、ルテチウムの件ではございません。
お口利きを、お願いしに参ったのです。"

"口利き……ですか。
それは、どのような方面の?"

"当社の業務においても、あまり公にしたくない面というものは、当然ございます。
日本の商社はかつて、『インスタントラーメンからミサイルまで』、などと称されました。
少なからぬ当社へのそういった需要について、セニョール・ラブレスから直に大統領閣下にお伺いを立てていただきたい、と、
こう申し上げたい次第でして。"

"確かに、御承知の通り当家は国営石油開発公社の経営にも参画しておりますし、大統領閣下とも極めて近しい関係にありますが、
そういった問題については関わらないことにしているんですよ、セニョール・カゲヤマ。
『裏』とか『黒』などという名の付くものには、うんざりしているんでね。"

"しかし、コロンビアや米国との関係悪化については、大統領閣下も苦心なさっている。
FARCとの黒い繋がり、などという噂まで出る始末だ。
ましてや、そのコロンビアのご出身の奥様、確か、セニョーラ・ロザリタ、でしたかな、がいらっしゃるセニョール・ラブレスには
お悩みも多いことではございませんか?"
56『2009年、ベネズエラ』(多分続く):2009/11/18(水) 22:05:26 ID:/XA6B8NF
僕は、耳を疑った。
『ロザリタ』と、確かにこの男は言った。

なぜだ!
なぜ、この男がその名を知っている!?

僕は、狼狽した。
僕の後ろに立ったファビオラが、胸のホルスターに入れたUSPの劇鉄を起こす、小さな金属音がした。

"とにかく、そういった話には、当家は一切関わりを持つつもりはありません。
せっかく地球の反対側からお越しくださったのに申し訳ありませんが、どうぞお引取りください。"

僕は、冷汗をハンカチーフでぬぐいながら、なんとか返答した。
しかし、男……カゲヤマは引き下がらなかった。

"当社はバイオエタノール事業にも手を広げておりましてね、御存知とは思いますが。
近々バンコク郊外に、米国向け輸出を視野に入れた第1世代型の大規模プラントをひとつ、建設する予定が立っております。"

"……何が仰りたいのか、わかりませんね、セニョール・カゲヤマ?"

"そこに必要な重油需要を、オリノコタールに振り向けるか、サトウキビ由来バイオエタノールの残渣のバガスに振り向けるか、
当社では喧々諤々の議論が現在行われておりましてね。
そういった情報は、なるべく早くお耳に入ったほうがよろしいのでは?
奥様も、お喜びになるでしょう?"

カゲヤマの話は、確かに魅力的だった。
しかし僕は、そのために悪魔に魂を売るなんて、まっぴらごめんだった。

それにしても、なぜカゲヤマがロベルタの本名を知っている?
そして、『奥様』という単語を、そして『FARC』という単語を、なぜあんなにも強調する?
それが、気にかかった。
きっとカゲヤマは、僕を挑発しているに、違いなかった。
そんな僕の思いをよそにカゲヤマは、もはや市場在庫しかないファマ・デ・アメリカの豆で入れたコーヒーをゆっくりと飲み乾すと、

僕にこう言った。

"お返事は、すぐにとは申しません。
どうぞ、御考慮を、セニョール・ラブレス。"

カゲヤマは席を立つと、僕に会釈し、秘書を連れて部屋を出て行った。
あとには、僕とファビオラだけが、残された。
鳥の声が、相変わらず窓からは聞こえていた。
57名無しさん@ピンキー:2009/11/18(水) 22:41:33 ID:V4/RcucD
まさかの景山登場キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
バンコク郊外に第1世代型の大規模プラントキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!


続きが待ち遠しい。
58名無しさん@ピンキー:2009/11/19(木) 04:38:45 ID:/VoW/0Mj
>>49
いい買い物したな
59『2009年、ロアナプラ』(多分続く):2009/11/19(木) 22:35:00 ID:ZGTQiUJw
口付けは、相変わらずタバコの匂いがした。
ダニーと響―俺たちの、初めての子供たち―の乳離れが終わるまでずっと吸えなかったからだろう、それ以来レヴィは
以前にも増してヘビースモーカーになっていた。
だけど、不快ではなかった。
懐かしい、そして今も毎日のように感じている味だった。

子供を、それも双子を生んだにも関わらず、レヴィの身体は以前のプロポーションを保っていた。
いや、母乳の分泌のせいでその胸は、以前よりも明らかにサイズが大きくなっていた。
その水風船のような、マシュマロのような柔らかい感覚を、俺は両の手に感じていた。
首から続くタトゥーの上を、汗の滴が流れた。

"……ぁ……ロック……いいよッ……ロックっ……!"

レヴィの甘い声を聞きながら俺は、レヴィの腹の妊娠線に舌を這わせる。
そのままその舌は、深い、だがアメリカ人らしく綺麗に処理のされている茂みに到達する。
その間の襞の中から俺は、すでに小豆大に硬く、大きくなっている肉芽を探り当て、皮の上から優しく舌で撫で上げる。
むせ返りそうな、雌の匂いがする。
かすかな、塩味がする。

"っく……ぁ……ロック……それ……イイっ……!"

俺の頭を抱え込むレヴィの腕に、力が入る。
レヴィの両胸が、こちらも汗にまみれた俺の額にぴったりとくっつく。
乳首の硬い感触が、伝わってくる。
俺は、両手でレヴィの襞を開き、その間を、たっぷりと唾液をしみこませながら、レヴィの出した液体の味を感じながら
わざと音を立てて執拗に舐める。
どんどん、そこからは液体が、ちょっと酸っぱいそれが、溢れてくる。
俺は、片手でそこを開いたまま、もう片方の手を伸ばして避妊具を取る。

"ロック……じらすなよ……早くッ……お前のを……くれよッ……!
ゴムなんかするなよッ……そのまま……来てくれよッ……!"

"いいのか、また子供できちゃったら、しばらくお預けだぞ?"

"いいッ……できてもいいッ……お前をッ……直に感じたいッ!
……あたしがッ……お前のモノだって……完全にお前のだって……再確認ッ……したいッ!"

真っ赤な顔のレヴィが、俺の目をじっと見ながら言う。
その声のせいでもう寝かしつけた子供たちが起きてこないか少し心配ではあるが、こうなったレヴィにしてやれることは
一つしかない。
だいいち、俺だってもう我慢できない。

俺は自分のモノを掴むと、両脚をMの字に開いたレヴィの、ヒクヒクと俺を誘うそこに、そっとあてがった。
レヴィの鼻が、子犬のそれのように、鳴った。
少しずつ、俺のそれが、飲み込まれていった。

その後は、もう夢中だった。
覚えているのは、俺がレヴィの中に3発、精を放ったことだけだった。
俺たちはそのまま、自分たちの出した液体まみれになって、眠りに落ちた。
60『2009年、ロアナプラ』(多分続く):2009/11/19(木) 22:35:42 ID:ZGTQiUJw
枕元の、俺の携帯の着信音で、俺たちは叩き起こされた。
ディスプレイに映し出された『Lagoon Trading Co.』という文字を見て、俺は欠伸をかみ殺しながら通話ボタンを押した。

"ふぁい、岡島です。"

"ロック、よかった、まだ起きてたか。
俺だ、ベニーだよ。
いま、ガルシア君から電話が来てね、仕事を頼みたいって。"

"ガルシア君から!?
俺たちの結婚式のとき、御祝儀くれて以来の連絡じゃないか!?
それも、もう会わない、って言ってたのに!"

"だろ、だから俺もびっくりして心臓が喉から飛び出るかと思ったよ。
……それもな、旭日重工の、カゲヤマだったか、元のお前のボスがらみの話だって言うし。"

"なんだって!?
わかった、すぐ行く。
状況を整理しておいてくれ、ベニー。"

俺はそのまま電話を切ると、行為の後始末もそこそこに服を慌てて着込む。
背後でレヴィが、むくっと起き上がる気配がする。

"いま、『ガルシア』って言ったか、ロック?"

"ああ、10年ぶりの仕事の依頼だよ。
それもな、俺の前の職場に関係があるらしい。"

俺は鏡に向かってタイを締めながら、レヴィの声に応える。
最近伸ばしてるヒゲの手入れはさっき風呂上りにやったから、完璧だ。

"やめとけやめとけ、あのベネズエラ人どもに関わるとロクなことなんかありゃしねえよ。
どうせまた、あたしらが貧乏くじ引かされて終わるに決まってる。
……それに今度は、空砲じゃないかもしれないぞ。"

俺はムスクを吹いてケプラー製の防弾ジャケットを身に付けながら、レヴィの方を向いて微笑んだ。

"旭日重工、それも景山部長が絡んでると聞いたら、放ってはおけないさ。
大丈夫、俺だって10年前の俺じゃないよ。"

俺は、デスクの上のポンティアックのキーをつかんで、ディッキーズのジップジャケットを羽織った。

"とりあえず今日は俺とベニーだけで話をすすめとくから、詳しいことは明日の朝話すよ。
ダニーと響のことは任せたぞ、レヴィ。"

締まりかけの寝室のドアから、不安げな表情のレヴィの顔が、一瞬見えた。
だが俺はそのまま、廊下を抜けて玄関を開け、外へと歩き出した。
月が綺麗な、夜だった。
61名無しさん@ピンキー:2009/11/19(木) 23:34:14 ID:hKf9YKZ2
まさかの長編ッ!?
しかもロックが格好いいぞおい。
62名無しさん@ピンキー:2009/11/20(金) 01:24:17 ID:ygGDcSDs
またキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
最近一番更新を期待しているSSキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

・・・ブラクラで双子って聞くとなにかバイオレンスな。
63名無しさん@ピンキー:2009/11/20(金) 02:31:37 ID:rGYXCj+Q
姉御は…姉御はどこだ!
64名無しさん@ピンキー:2009/11/20(金) 14:27:13 ID:lFVvw4qM
ロクレヴィ夫婦ktkr!
なんぞこの鴛鴦夫婦w
萌えるぜ、まったく。

子供は両方おのこ?
国際婚は名前考える幅が広くて楽しそうだな。
65名無しさん@ピンキー:2009/11/20(金) 18:33:22 ID:DFUEiGXr
俺の姐御どこだああああああああああ!
66名無しさん@ピンキー:2009/11/20(金) 19:02:42 ID:0mhL78gC
>>65
君の姐御は張大哥とベッドの中で秘密会談中だ
67『2009年、ロアナプラ』(多分続く):2009/11/20(金) 22:23:03 ID:+EHwmRoZ
深夜の、ラグーン商会。
いるのは、俺と相変わらず無精ひげにレイン・スプーナーのアロハ姿のベニーだけだ。
窓からカーテンを揺らしながら吹き込んでくる夜風が、心地よかった。

"旭日重工のグループウェアに潜り込んで、探してみたよ。
カゲヤマ・ジョウジ、役員室・資材担当参与、東京都世田谷区在住、家族は妻と、子供が3人……。
こいつがお前の元のボスだな、ロック?"

ハードロックカフェ・バンコクのマグでネスカフェをすすりながら、ベニーが俺に液晶ディスプレイを向けてみせる。
間違いない、写真は俺が知ってるあの顔から多少老けてはいるが、間違いなく景山部長だ。
あの時俺を見捨てた、殺そうとしたあの部長だ。

"ああ、こいつだよ。
ベニーも会っただろ、あの時さ。"

"そんな一回会っただけの人間なんて、覚えてないって。
それに、10年もたってるんだぜ、あれから。"

"まあ、確かにそうだけど、さ。"

"予定表では、明日までサンパウロ支社に出張と書いてある。
間違いない、ガルシア君のところに行ったのはこの男だな。
その後は……おい、来週タイに来るぞ、こいつ。"

"なんだって?"

"『アユタヤ県のバイオエタノール工場建設現場の視察』、とあるな。
3日間、全部バンコク泊だ。
どうする、会いに行くか?"

"ガルシア君からの依頼は、部長の情報源を探ることと、バイオエタノール工場の燃料の件について裏を取ることだったよな。
どのみち工場は見に行かないといけないし、行きがけの駄賃だ、顔を見るのも嫌だが、遠くからだけでも俺の目で本人を
確認したほうがいいかもしれない。"

"ダッチの許可は必要だが、お前がバンコクに行くんならレヴィと一緒にってのがよさそうだな。
俺もダッチもバックパッカーに扮するにはトウが立ち過ぎてるし、お前ら東洋人のカップルなら目立たないだろう。
高級ホテルに出入りしても、あの辺をレンタカーで走り回っても、な。"

"新婚の頃だったら、な。
俺、もう35だぜ?"
68『2009年、ロアナプラ』(多分続く):2009/11/20(金) 22:23:28 ID:+EHwmRoZ
"大丈夫、日本人は若く見える。
喜べロック、あいつが泊まるジ・オリエンタルに空室がある。
ドン・ムアンまでの国内線も、割と空席が残ってるな。
スワンナプーム便もあるが、あそこ、バンコクからちょっと遠いから、嫌だろ?
……いまから職場の経費でハネムーンってのも、オツじゃないか。"

"おいおい、俺もレヴィもバンコクに行ったら、誰がダニーと響の面倒を見るんだよ?"

"うちじゃダメか、ロック?
ジェーンと俺で、面倒見るぜ?"

"お前らに預けると、なんかまた悪い遊びを覚えられそうで困るんだよな。
こないだお前らが見せた『らき☆すた』だったっけ、続きが見たい続きが見たいってうるさいんだよ、ダニーが。"

"何だよ、日本人の癖に日本のアニメのすごさがわからんのか、お前は?
じゃ、バラライカさんのとこか、張さんにでも預かってもらうか。
張さんのとこならプールだってあるし、変な忍者グッズとかもいっぱいあるし、退屈はしないだろう。"

"お前のとこじゃなかったらどこでもいいよ、ベニー。"

"わかった、じゃ何件かあたってみるよ。
そのかわり、ちゃんとお土産買ってきてやれよ、子供たちに。
あと、俺たちにも忘れるなよ?"

"ああ、もちろん。"

ダニーにはトランスフォーマー、響にはシルバニアファミリーのセットでも買ってきてやろう。
おもちゃなんて、ロアナプラじゃ安物かまがい物しか売ってないしな。

"よーし、じゃ俺はもう少しカゲヤマの交友関係について調べてみるとするか。
ロック、今日はもう帰ったほうがいい。
……レヴィが、寂しがるだろうし、な。"

"ああ、頼んだよ、ベニー。"

俺はベニーの肩をぽんぽんと叩いて、事務所を出た。
そしてポンティアックの鍵を開け、エンジンをかけた。
ドロドロしたエンジン音に混ざって、少しキャブレターがカブっているような音がした。
69名無しさん@ピンキー:2009/11/20(金) 22:34:38 ID:ygGDcSDs

キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
>『らき☆すた』キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
なに見せているんですか!!

>変な忍者グッズ
張さんww

姐御や張さんちの方がマシと思わせるベニーんちはすごいな。
バラ姐さんちはいい臭いがしそう。
70名無しさん@ピンキー:2009/11/21(土) 00:06:42 ID:tgiNnuZT
いつの間にか面白そうなシリーズが!
71名無しさん@ピンキー:2009/11/21(土) 05:32:06 ID:slv5JmQt
男女の双子なのねw
なんか幼少時に遊べなかったせいで、キラキラと瞳を輝かせながらシルヴァニアファミリーで遊ぶレヴィを想像した
72『2009年、ロアナプラ』(多分続く):2009/11/21(土) 14:54:06 ID:j0g0MRVO
翌朝。
俺とレヴィはいつものようにダニーと響を幼稚園に預けたあと、ポンティアックでラグーン商会の前まで乗りつけ、
パーキング・パーミッションをルームミラーに引っ掛けて、二人で入口の階段を上がる。

中からは、ダッチとベニーが、話している声が聞こえる。
ベニーのやつ、また家に帰らなかったのか?
ジェーンが、寂しがるだろうに。

"二人とも、おはようー。"

"おはようさん。"

"ようロック、レヴィ。
面白いことがわかったぜ。
カゲヤマの交友関係だが、意外な人物が出てきた。
通信記録によると、どうやらこいつが、ロベルタの情報をカゲヤマに流したらしい。"

俺たちに顔を向けながら、ベニーがまくしたてる。
二人の間から見える液晶画面には、隠し撮りされたらしいスーツ姿の白人女性、眉の薄い、金髪のショートボブの30歳前後の女性が
映し出されている。
背景の看板や建物から察するに、おそらくブラジルあたりで撮られた写真のようだ。

"ベルタ・フォン・シュティーベル、リオデジャネイロ在住、29歳。
表向きはセレブ連中相手の占い師ってことになってるが、かつてドイツ第三帝国・鉤十字騎士団にその人あり、と言われた魔術師、
グルマルキン・フォン・シュティーベル大佐の孫娘にして、南米のナチス残存勢力の総元締めの一人と言われる人物だよ。"

"この女がか?
イカレたネオナチ連中のボスにしちゃ、割とマトモそうじゃねえか?
そんなオカルトじみたことやってるようには、見えねえな。"

レヴィが、すたすたとベニーたちの方へ寄り、ひょいとディスプレイを覗きながら言う。

"全く、いけすかねえ女さ、ロック、レヴィ。
俺はファシストっていう連中がだいっ嫌いなんだ。
オカルトって奴もな。"

"俺もだよ、ダッチ。
あいつらにガス室送りにされた同胞のことを考えると、な。
そんな非科学的なことをマジメにやってたような連中に大勢殺されたんだぜ、俺たちユダヤ人は。"
73『2009年、ロアナプラ』(多分続く):2009/11/21(土) 14:54:29 ID:j0g0MRVO
"それで、こいつらと部長が組んで、部長にはどういうメリットがあるんだ?"

"ここからは俺の想像だが……きっと国際紛争の火種を欲しがってるのさ、あいつらは。
ネオナチは、チャベスと繋がっているFARCが暴れてくれることで、コロンビアの親米政府を転覆させて、支配地域を作りたい。
対して旭日重工は、米国のライセンス元との契約で本来輸出禁止となっている軍事技術を、FARCやらコロンビア政府軍やらに
横流ししたい。
おまけに、万が一米国がそれに参戦したら、米国向けの戦闘機やらなんやらの下請けをやってる旭日重工は、たんまり儲かる。
アジア通貨危機以降のこの世界不況下だ、旭日重工もなりふりかまっちゃいられないんだろう。
だろ、ベニー?"

"ああ、俺も同じ意見だ。"

"それで、ガルシア君のところに、チャベスとのパイプを要求しに行った、というわけか。"

"まあ、そういうことだな。"

"お前の前の会社、すげえな、ロック。
お前あそこ辞めて正解だったんじゃね?"

"ああ、そう思うよ、レヴィ。
俺には、そこまででかい話は性に合わない。"

"とりあえず、これであの『若様』との契約の半分は終わったようなもんだ。
あとはロック、レヴィ、お前ら、アユタヤの工場の建設現場、半分観光のつもりで見てこい。
ついでにカゲヤマとやらの顔も拝んでな。
こっちで当たれる情報は、ベニーに当たらせる。"

"いいのか、ダッチ?
こっちで別の仕事でドンパチになったとき、あたしがいないと困るんじゃねえのか?"

"なあに、俺はここにいるし、いざというときはシェンホァにでも頼むさ。
そういうエクストラ・ペイは、『若様』に請求できるんだ。"

ダッチはにやっと笑いながらそう言うと、ずっと片手に持っていた缶のペプシを一口飲んだ。
かくして、俺たちは機上の人となった。
74名無しさん@ピンキー:2009/11/21(土) 22:27:07 ID:ORIC0y5A
>南米のナチス残存勢力の総元締めの一人と言われる人物
ああ、とてもよい人物設定ですね。とても広江だ(誉め言葉

>俺たちユダヤ人は
そいやベニーはジューだっけか、忘れていた。

>これであの『若様』との契約の半分は終わったようなもんだ

後半分の契約分のドンパチとエロテキストを楽しみに待っています。
75名無しさん@ピンキー:2009/11/21(土) 22:53:45 ID:/F+NNUbH
>>71
クッキングトイなんかはもう、子供達の為に買ってやったのに子供以上に自分が一番楽しんで夢中になってそうだな
76『2009年、クルンテープ』(多分続く):2009/11/21(土) 23:04:25 ID:j0g0MRVO
マンダリン・オリエンタル・バンコク。
かつて『ジ・オリエンタル』と呼ばれた、伝統あるそのホテルの一室に、俺たちはいた。

髪にカールをかけ、顔はナチュラルメイク、タトゥーをドーランで隠し、パンプスを履いてセナダ・セオリーのチェックのワンピースを
纏ったレヴィは、ただの品の良い婦人にしか見えなかった。
俺が選んだ、バーバリーの香水が、その雰囲気を後押ししていた。

でも、それもこの部屋に入るまでだった。
俺たちのトランクを置き、チップを受け取ったボーイが、うやうやしくドアを閉めて退散するまでだった。
ボーイがいなくなるやいなや、レヴィは眼下に広がる昼下がりのチャオプラヤ川や、部屋の調度を見て子供のようにはしゃぎ出したのだ。

"うっひょー、すげえぞロック、こんないい眺めの部屋なんか、あたし泊まったことねえ!
おまけに見ろよこのベッド、お姫様のベッドみてえに柱と屋根がついてんぞ!
すげえ、すげえ!"

"…レヴィ、少し落ち着けよ。
タバコだって、吸えないんだから、ここ。"

"んだよ、うっせーな、お前、先公か何かか?
ガキどもだって今日はいねえんだ、ママらしくしてなくたっていいだろ、ロック?"

"まあ、誰も見てないとこなら、いいけどさ。
格好を考えろよ、な。"

"ほら、お前もベッドに上がれよ!
ほら、こんなに跳ねるぜ、このベッド!"

うわ、もう靴脱いでベッドに上がってる……。
俺が選んでやったワンピース、それタイシルク100%なんだぞ……。

"レヴィ、頼むからおとなしくしてくれよ、なあ……。"

"やだ、って言ったらどうすんだ?"

"じゃ、その口を塞いでやるまでさ。"

俺はベッドの端に腰掛けたレヴィの頬に手をかけ、そっと口付ける。
その味は、いつものラッキーストライクの味じゃなくって。
ペパーミントの、さわやかな匂いがして。
なんだか、それが新鮮で。

"なんだよ、あたしの顔に何かついてんのか?
ヘンな顔しやがって?"

"あ……いや、その……匂いが……レヴィの……。"

"飛行機乗ってから、タバコ、ずっと吸えなかったからな、ずっとフィッシャーマンズ・フレンド齧ってたんだよ。
……それにこの格好なら、お前もタバコ臭えの、嫌だろ?"

そういえばここ来るまで、確かに何かハンドバッグから出してしきりに口に入れてたっけ。
そっか、こいつもこいつなりに気を遣ってたんだ。

"じゃ、俺もリステリンを1クオートくらい使ったほうがいいかな?
せっかくおめかししたレヴィに、タバコの匂いが移っちゃう。"

"……お前は、お前でいいんだよ、ロック。"

今度は、レヴィから俺に口付けられる。
そしてレヴィは、俺の手を両胸に優しく導く。
77『2009年、クルンテープ』(多分続く):2009/11/21(土) 23:04:45 ID:j0g0MRVO
"こういう格好の女とシたいんだろ、ロック?
10年前、日本に行ったときも、お前の好みの服着てやったら、すげえ燃えたもんな。
あたしの足があの、銀次だったか、に刺されて使い物にならねえのをいいことに、好きにしやがってよ。"

まったく、こいつにはホントかなわない。
完全に、お見通しらしい。

俺は、レヴィの背を支えながら、ゆっくりとレヴィをベッドに横たえる。
そして、服の上から、レヴィの身体をまさぐり始める。
二人の荒い息と、空調のブーンという音、そして衣擦れの音だけが、俺の耳に入ってくる。

"うぁ……ロック……ッ……あたし……正常位は……嫌いだからなッ……!
本当は……嫌いなんだからなッ……!"

背中のファスナーの隙間からレヴィの肌を撫でると、レヴィは甘い吐息に混ざって、こんなことを言う。
それがなんだか可愛らしくて、俺はレヴィをついギュッと抱きしめる。

"すげえな、お前の。
自由の女神の松明みてえになってんぞ。
やっぱ、服とメイクか……"

"違うよ、レヴィ。
レヴィだからだよ……。
レヴィが、可愛いからだよ……。"

ひしと抱き合って、レヴィの顔は見えないけれど、俺がそう言った後、レヴィの肌が熱くなってきたのがわかる。
俺は、短いスカートの間から、レヴィの秘所に手を伸ばす。
じゅく、と、湿った感触が、ショーツごしに指から伝わってくる。

"なんだよ、お前だって興奮してんじゃないか、レヴィ。"

"そりゃな……あたしだって、女なんだ。
こういうのにだって、憧れたっていいだろ……。"

俺は、もう我慢できなかった。
レヴィのショーツを俺は乱暴にずらすと、自分のウールパンツのファスナーを開け、モノを取り出した。
そして、濡れそぼったそこへ、一気にそれを突き立てた。
レヴィが、スピッツのように、鳴いた。
レヴィのワンピースが、俺のウールパンツが汚れてしまっても、もう、かまわなかった。
腰の動きを、止められなかった。
二人は、動物のように交わった。
78名無しさん@ピンキー:2009/11/21(土) 23:16:47 ID:ORIC0y5A
まさか2回分が投下されるとは思わなかった。

>セナダ・セオリーのチェックのワンピース
ttp://shop.cafeglobe.com/detail/?Goods=12256&Color=99

これかww

>そりゃな……あたしだって、女なんだ。こういうのにだって、憧れたっていいだろ……。"

9巻147Pの「世の中にお花畑があると思っているのは私じゃない・・・、本当はあんたのほうだろ?」に対する
レヴィの本心のようで何かが来た。キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
79名無しさん@ピンキー:2009/11/22(日) 01:50:28 ID:m8HvKKda
単位がヤードポンドだから混乱するようなしないような俺は在米ねらー

ってかポンティアックの何だろうwktk
80『2009年、クルンテープ』(多分続く):2009/11/22(日) 13:20:50 ID:aHZZ9PjG
ホテルの吹き抜けのロビーは陽光で明るく、まさに『あちら側』を象徴していた。
いつの間にかどっぷり『こちら側』に浸かっていながら、眼鏡にジャケパンで『あちら側』の人間を偽装している俺と、
タトゥーをドーランで隠し、ディサヤのワンピースを着たレヴィは、どこか居辛さを感じながらもソファーに腰掛け、
英字紙を読みながら部長が来るのを待っていた。

ほかにも、何人かソファーには外国人客やタイ人客が腰掛け、談笑したり、雑誌を読んだりしている。
その中の一人、髪を後ろでまとめた、フレームレスの眼鏡にスーツ姿の、『TIME』を読んでいたキャリアウーマン風の
金髪の白人女性と目が合い、俺は会釈する。

……この人、どっかで見たような気もする。
けれど、思い出せない。
俺がまだ、旭日重工にいたときか?
いや、そんな前ではない、もっと最近、どこかで会っている。
そんな気がする。

と、一台のBMW―それも、7シリーズだ―が、エントランスに横付けされ、3ピースのスーツを着た長身の東洋人が下りてくる。
サングラスをかけ、髪をオールバックにまとめ、秘書らしい女性と荷物持ちのボーイを同伴したその男は誰あろう、間違いなく
景山部長その人だった。
俺をかつて見殺しにしようとした、会社のために俺を殺そうとした、あの景山部長だった。

英字紙を持っていた俺の手は、いつの間にかわなわなと震えていた。
眉間に、皺が寄っていた。
レヴィが、俺の膝に片手を置いた。
そして、最近ずっとしていなかった死んだ魚のような目で俺の目を見ながら、首を縦に振った。
もう片方の手は、スレトシスのクラッチバッグの中のカトラスに指をかけているだろうことが、俺にもわかった。

俺は、英字紙の端から、景山部長を注視した。
先日見た写真どおり、俺の知っていた頃より老けてはいるが、相変わらず冷徹そうな瞳がサングラス越しに辺りを覗いていた。

チェックインは秘書に任せ、景山部長は携帯でどこかに電話をかけている。
俺は、耳をそばだてる。
どうやら、ドイツ語らしい。

"景山です、フラウ・シュティーベル。
アユタヤの工場は、明日の朝イチで見に行く。
……もちろん、仰る通りに、設計変更させてあります。
お手をまた煩わせるが、宜しく頼みますよ、フラウ。"

ビンゴ!
やはり、シュティーベルがこの件に噛んでいるのは、間違いない。

俺は、オペラグラスでキーに書かれた部屋番号を確認して、景山部長が秘書とボーイと一緒にエレベーターに向かうのを見届けた上で、
席を立った。
レヴィと二人、俺たちは歩き出した。
81名無しさん@ピンキー:2009/11/22(日) 21:16:51 ID:MiuCuk/4
2009年のロックってアニメ版準拠だと…39歳か!
82『2009年、クルンテープ』(多分続く):2009/11/22(日) 22:20:41 ID:XylY9SAp
そのレストランは、タイ古式舞踊を見ながら料理を味わえる、というのが売りだった。
だが、ショータイムまでは、まだ間があった。
俺たちはウェイターにチップをはずみ、景山部長と、おそらくはエネルギー省の役人と思われるタイ人、そしてそれぞれの秘書の座る
テーブルからつかず離れずの位置をなんとか押さえることができた。

ショーが始まると、会話が聞こえなくなってしまうかもしれない。
いや、それどころか、部長もショーに夢中になって、何も話さなくなるかもしれない。
だから、それまでの時間にどれだけの情報をキャッチするかが、鍵だった。

部長と役人の会話は、ありがたいことに英語だった。
けれど専門用語が多くて、俺には内容はさっぱりだった。
レヴィに至っては、最初から理解することを放棄し、一生懸命タイスキのスープの煮え具合をチェックし始める始末だ。
まあ、確かに料理にも少しは気を配らないと目立つかもしれないから、これでいいのかもしれないが。

聞き取れたのは、アユタヤの工場で原料に使う『ラヨーン9号』は専門の契約農家で栽培されるため、中国向けのでん粉需要増の影響を
受けない、ということ、エネルギー省はE85の普及に積極的で、現行のE10・E20中心の状況より将来的は無水バイオエタノールの需要が
大きくなるが、それまでの供給過剰分を輸出する際の関税は免除されるから、盛大に輸出して欲しい、ということ、くらいだった。
うーん、工場で使う燃料の話が出ないじゃないか…。
俺は少し、苛立っていた。

俺たちのテーブルに、シャトー・ド・ルーイのロゼが、サーブされる。
レヴィはそれに目もくれずに、今度はタレを混ぜている。
自分の分だけでなく俺の分も、ニンニクとライムとプリッキーヌを少しずつ入れて、味をちょっとずつ確かめながら、これも違う、
いやこれも違う、という顔をして、いろいろ試行錯誤している。
料理は正直、俺の方がレヴィより上手いだろうと思うが、こういうときレヴィは仕切りたがるんだ。
俺も、二人の会話を聞き取るのに専念したかったし、レヴィを必要以上に不機嫌にさせたくないから、黙ってレヴィに任せることにする。
一応、ワインをサーブしてくれたウェイターに、会釈をしておく。

と、レヴィがタレを俺の前に置き、ニンマリしてこっちを見ている。
どうやら、満足いく味ができたらしい。
そろそろ煮えてきた具を、レヴィはニコニコしたまま取り分けてくれる。
怒らせるのが嫌だから、俺もニコっと笑ってそれを受け取る。
だが耳は、相変わらず二人のほうに集中している。
83『2009年、クルンテープ』(多分続く):2009/11/22(日) 22:21:03 ID:XylY9SAp
なんとなく、俺は具をタレにつけて口に運ぶ。
その途端、『オリノコ・タール』という単語が俺の耳に飛び込んでくる。

"そうだ……いいぞ。"

俺は、ボソっと呟く。
息を呑んでいたレヴィの顔が、ぱっと明るくなる。

"だろー、やっぱあたしが味付けしないとダメなんだよ。"

いや、タレの話じゃなくて……。
だがヘソを曲げられるのも面倒なので、黙ってうなづいておく。
そしてまた、なんとなく食べながら、二人の会話に耳をそばだてる。

しかし、今度は舞踊ショーが始まって音楽が流れだし、二人の声が聞こえなくなってしまう。
俺は、顔をしかめる。
レヴィは、申し訳なそうな顔でこっちを見る。

"タレ、辛かったか、ロック?"

いや、だからタレの話じゃなくて……。

"美味しいよ、レヴィ。
レヴィの味付けが一番だよ。"

こういうときは、こう言うのが多分一番いい。
レヴィが機嫌を損ねたら、えらいことになる。
それに、もう二人の会話は聞こえない。
だから俺は、目の前のタイスキに本格的に取り掛かることにした。
今度はなんとなくじゃなく、ちゃんとレヴィの味をしっかりかみ締めようと、そう思った。
また、タレに具を付けて、俺は口へと運んだ。

"うわ、辛いよレヴィ!?"

口から火が出そうなくらい、それは辛かった。
レヴィはそんな俺を不思議そうにきょとんと見つめながら、こう言った。

"ヘンなロック…。"

そして、あの死んだ魚のような目が嘘のように、子供のような曇りない顔で笑った。
俺もいつしか、笑い出していた。
84名無しさん@ピンキー:2009/11/22(日) 23:45:52 ID:mkNhBjRD
レヴィが可愛すぎてもうどうしたら良いのか解りません
85名無しさん@ピンキー:2009/11/23(月) 01:02:31 ID:Z+G55LLl
レヴィは一度人を好きになると尽くしそうだw
86名無しさん@ピンキー:2009/11/23(月) 01:56:52 ID:hGhHfbCY
>最近ずっとしていなかった死んだ魚のような目で俺の目を見ながら

もはや二児の母だというのにこんな目が出来るレヴィ母さんパネぇえ

>"ヘンなロック…。"

俺を萌え殺させる作戦だろ。そうだろ暴力教会!腐れラングレーめ!!
87『2009年、クルンテープ』(多分続く):2009/11/23(月) 15:05:44 ID:1VX9WjCI
カーステレオの95.5MHZからは、最新の洋楽ヒットチャートが繰り返し流されていた。
アユタヤ方面に続く朝の高速道路を、俺たちはバンコクで借り出したシルバーのシティで疾走していた。

2台前、黒いオプトラを1台間に挟んだところには、景山部長とその秘書が乗ったBMWがいる。
BMWはウインカーを上げて1つ内側のレーンに入り、ブルーと白の塗りわけの長距離バスを追い抜く。
俺も、離されないようあちらのレーンに入り、かつ近づきすぎないようにアクセルを向こうの速度に合わせて加減する。

しかし、気にかかることがあった。
俺たちの更に後ろを、いまドン・ムアンのインターから入ってきたライトグレーのマツダ3の後ろを、ずっと白いハイエース、
いや、ヴェンチュリーかもしれない、が走っている。
ルームミラーに写る助手席には、あの、昨日ロビーにいたキャリアウーマン風の眼鏡の白人女性が座っている。
それにサングラスをかけた黒人の運転手と、他に乗っているのは…後ろの席はよく見えないが、そこにも大柄な人影が
何人かいるようだ。

俺は、嫌な予感がした。
確かに、バンコクほどの世界都市の郊外だから、それもアユタヤの工業団地に向かっているのだから、外国人が大勢乗った
ワゴン車が同じ方向に来るのは充分自然なことだ。
しかし、彼らからは俺たちと同じ匂いがした。
最悪ドンパチになるかもしれない、そう俺は覚悟していた。

隣の席のレヴィに、ルームミラーを指差して俺は、ハイエースの事を言う。
レヴィは鼻を鳴らしながらうなづくと、ジム・トンプソンのダブル・デューティーバッグからホルスターとカトラスを取り出し、
イシューの、丈が短いワンピースの上に手早く装着する。
そしてその上から、薄手のパーカを羽織る。
下にレギンスを履いているから、おそらく動きやすいだろう。
足元も、いつものタクティカルブーツには劣るかもしれないが、このプーマのスニーカーなら、きっと鉄火場でも大丈夫に違いない。

"イングラムも持っておいたほうがいい、レヴィ。
あいつら、何人いるかわからん。"

"あいよ……。
だがなロック、あたしの得物はやっぱりカトラスなんだよ。
多勢に無勢、こういうのを使わにゃならんのはわかってるが、どうもしっくりこねえ。"

口の端をちょっと上げながら、不敵に笑うレヴィの顔は、10年前の、俺が臨んだ初めての鉄火場で、バオの店で見せたそれと
そっくり同じで。
俺との子を産んでも、レヴィの好戦的な性格は変わらなくって。
やっぱり、俺たちは『歩く死人』で。
MAC11を2丁、パーカの両のポケットに入れながら、昨日の子供のような笑顔とは対照的な、邪気に満ちた顔で、レヴィは
俺をジロリと見て。

俺は、右手をハンドルから離し、紺ブレの下の防弾ジャケットの感触を今一度確かめた。
そして、お守り代わりにそのポケットに入れてあるグロック26を、ギュッと握り締めた。
10年たっても銃なんてほとんど触ったことのない俺だったけれど、ゲームを有利に運ぶためにはそういう隠し玉も必要かもしれない、
そう俺は静かに決意していた。
手のひらにかいた汗で、ハンドルが滑りそうだった。
88名無しさん@ピンキー:2009/11/23(月) 23:03:31 ID:WCxTj3F5
やべえレヴィたんがいちいち可愛いw
和食や日本人好みの味付けの研究も密かにやってたりしたらいい。
89『2009年、アユタヤ』(多分続く):2009/11/24(火) 00:05:24 ID:fpgTVFkh
高速を下りてほど近く、幹線道路に隣接した工業団地の中に、その工場の建設現場はあった。
水田の中に、突如として現れる工業団地は、まるで一つの島のようだった。

部長を乗せたBMWは正面のゲートの手前で一旦停止し、中にしずしずと入っていく。
警備員は、いない。
それに、ひっきりなしに工事車両らしいクルマが、出たり入ったりしている。

俺たちも、その中の1台のD-MAXに続いて、シティを敷地内に乗り入れる。
BMWはそのまま走り続け、既に完成している事務所棟らしいところの前で停止する。
俺も物陰にシティを停め、その様子を伺う。
部長と秘書が、ほどなくBMWを下りる。

俺は、ベニーからメール添付でもらった、工場の図面を開く。
俺はアゴのヒゲを撫でながら、図面と実際の工場を見比べる。
まだ4割程度しか完成していないようだが、確かに図面の通り、四角い敷地の中に円形状にプラントやパイプラインが配置されている。
その形は幾何学的で、まるで魔方陣のようだ。

"おい、ロック見ろ!
あいつ、あの女!"

レヴィの声に、俺は顔を上げる。
年のころは30歳くらいの、金髪のショートボブの白人女性が事務所棟から出てきて、険しい顔で部長となにやら話している。

シュティーベル!?
ブラジルにいるんじゃなかったのか?

その片手には、題名はよく見えないが、革製の表紙の、古びた大判の本が握られている。
俺は、パワーウインドウを開け、2人の会話を聞き取ろうとする。

"……しかし、仰る通りにしたんですよ、フラウ?
今からまた設計変更とは、コストがかかりすぎる!"

"だが、この本には、あぶり出しの隠しページがまだあったことがわかってね、ヘル・カゲヤマ。
どうやら、不用意に使われないように奴らも考えたのだろう。
それにコストなど、我々の目的のためには、たいした問題ではない。"

何だって?
この工場は、ただのバイオエタノール工場じゃないのか?
それとも、俺のドイツ語は、もう大分錆び付いているのか?

ドイツ語のわからないレヴィにも、俺の緊張はどうやら伝わっているらしい。
不安げな顔で、レヴィは俺を見る。
だがその右手は、胸元にある片方のカトラスをしっかり握っている。

と、タイヤのきしむ音とエンジンの咆哮が、反対側から聞こえてきた。
反射的にそっちを向いた俺の目に入ったのは、左のスライドドアを全開にしたさっきのハイエースが、こっちに向かってくる光景だった。
90大神竜一朗:2009/11/24(火) 16:08:19 ID:qIl/+dKn
    BLACK LAGOON
     〜8分程度の愛撫〜   大神竜一朗
                 
                  
 ロアナプラ。
この町では各国のギャング達が縄張りをひろげ
微妙な均衡のゲームを営んでいる。

 コンコン、俺はレヴィの部屋のドアを二度ノックし、中に入った。
部屋の奥のベットでパンツにタンクトップの女が背を向け眠っている。

 俺は町で喧嘩してパクられたあの日から、数回レヴィと関係を持った。
7本程度のビールの代わりに寝てやる、こいつはそう言った。
その後は、レヴィが美酒に酔い機嫌のいい時にさりげなくお願いすれば抱かせてくれた。

 
 ー部屋ー
 つけっぱなしのTVからは惨劇を伝えるCMNのリポーターの声が聞こえてくる。
死亡37名ー・・・  
 もう驚くような数字じゃなくなった。大使館建物は形を留めていません・・・て。
フッ、この部屋みたいにか?
「汚い部屋だな。」
 壁や棚には商売道具の銃器等が立てかけられ、机には薬莢やジャンクフードの包み紙や、
ピザの食べ残しが置いてある。だから小さいサイズにしとけって言ったのに。
「レヴィ、起きてるか。」
 背を向け眠るレヴィの反応はない。
「仕事だよ、ダッチが緊急だってさ。レヴィ!」
「うー…ん、……ロックか………?」
「そうだよ、とび込みで大口だってさ。」
 ブラジャーの引っ掛かったライフル銃を適当に隅に押しのけ俺の歩き道を作った。
部屋を少しは片付けたほうがいいっていつも言ってるのに一向に片付ける気配がない。
片付けると今度探すのに面倒だって言い返されたが・・・まあいい、困るのはお前だ。
「とっとと起こせって言われて、事務所から飛んで来たんだ。」
 俺はベットのレヴィの身体を跨ぎ、いつまでも夢の中から戻ってこないこいつの為に、
わざと身体を当てて、ブラインドを回し真昼の陽射しを眠るレヴィに浴びせた。
「うー…っ、………。」
 正解だった。
払いのける事の出来ない陽射しにうづくまり、憂鬱そうにも身体を起こした。
「チクショウ……仕事、誰からだって……」
「ミスター張だよ、三合会の。」
「−…………。」
 
まだ頭の中、憂鬱が大半を占めてるこいつに
ホワイトシャツのポケットから取り出した煙草を一本あげた。目覚めのお手伝いってわけだ。
「M7かよ…。」
 文句を垂れながらも煙草を口に咥え、火を待っている。
「俺のポケットだ、出るものはしれてる。どこにも通じてねぇしな。」
「……………。」
「笑うとこだろ。」
 レヴィ相手に日本のカルチャーをジョークに使っても分かるわけないか。
俺はレヴィの咥えた煙草に火をつけてやった。
煙草の先が、火で赤く光る。
「憂鬱そうだな、レヴィ。」
「まだ、……だりぃ………。」
「夜更かしでもしてたか?」
「今、何時だ…………。」
「午後二時。」
「ハァ……。」
91大神竜一朗:2009/11/24(火) 16:09:53 ID:qIl/+dKn

 俺は女の寝起きのその表情が好きだ。色気を感じる。
鬱陶しそうに髪をかき上げたりしたりなんかすると最高だ。
美少女より美女を好む男ならみんな気持ちが解るはずだろう。
 目の前の女に対し、少しだけ欲情してきた。
「レヴィ!」
「あん!?」
 レヴィの身体を抱きしめ、
「レヴィ、レヴィ!」
 レヴィの身体を求めた。今までで一番大胆な求め方だと思う。
欲求を溜め込んでいるせいか、レヴィのその鬱陶し気な眼差しのせいか。
「やめろ………だりィって言ったろ。」
 やりすぎるとキレる。今のはヤリすぎだ。
「ゴメン…………。」
 色々と自分をフォローする言葉を考えたがいいのが思いつかなかった。
下手に回りくどく誤ったり、バレバレの褒め言葉を遣っても
かえってこいつをイライラさせるだけだ。

 沈黙というほどではないが、俺が黙ると
「昨日他の奴とヤッてんだ……だから今はいい…。」
「え、…………誰と?」
 今の言葉には反省を演じていた俺も口を開いてしまった。
今、ヤッたって言った?
「誰と…?」
 二度言ってしまう。
「先週でかい報酬金が入ったろ……それでな。」
「…?」
「最近ロックとしかヤッてなかったろ、だから久しぶりに違う男と思ってな。」
「男娼……?」
「グラサンはイケてなかったが顔はいい方だろうな。
  値段のわりにはセックスが下手だったけどな。」
「………………。」
「あん?どうしたんだ?」
「いや、別に……。」
 なんだろうな、胸が重い。
レヴィが他の男を買ったからか?いや、違うよ。
「おい?」
 方眉をあげて俺の顔を覗き込んできた。
「ハァ……世話焼けるぜ、まったく。」

92大神竜一朗:2009/11/24(火) 16:16:40 ID:qIl/+dKn




 どれぐらいが経つ。そんなには過ぎていないだろう。
部屋に流れるつけっぱなしのCMNがまだ同じニュースを報じている。
 今朝ワシントンDCで行われた会見では・・・
そんなアナウンスをバックミュージックに。
「ああ、………レヴィ。」
 俺はベットの上で開脚した姿勢で座っている。ズボンのチャックだけを下ろして。
レヴィはというと……そんな俺の股の間にうずくまりチャックからでた俺のペニスを咥えていた。
「レヴィ……。」
 寝起きのままの格好で。グレイのパンツに包まれたその大き目のヒップを上げ、頭は俺の股間。
こいつはいつもフェラの時はナマでしてくれるから舌のヌメッて感触が直に感じる。
二回目の時に聞いたが、こいつはアナル舐めは嫌だって言うが
男のペニスを直接舐めるのには、さほど抵抗が無いようだ。
すると自然とわいてくる疑問がある。
「レヴィ…。」
「ん?」
 ペニスを咥えながら下から俺の方を見上げた。
「昨日の………その男にも……口でしたの?」
「ん。」
 語尾が下がった`ん`がひとつの返事。YESって意味か?
「ナマで……フェラチオしたの?」
 二度目の俺の問いかけにレヴィがフェラを止め
「フェラぐらいでスキンなんか着けるか?」
「…………………。」
 レヴィが再び口でしようと顔を近づけたとき
「レヴィ…。」
「ん?」
「アナル……舐めてくれない?」
「お前尻の穴好きだな。よっぽど女に舐めさせたいんだな。」
 呆れたような笑みを見せながら再びペニスを握る。
「駄目?」
「そんな汚ねぇ所あたしに舐めさすな。」
「お願い、レヴィ。」
 レヴィの眉間にシワがよりこころなしペニスを握る手に力が入るのを感じた。
これ以上言わないほうがいい。
「じゃあレヴィ…またチンチン……舐めて。」
「オーケィ。」
 レヴィが俺のペニスを口に頬張った。
正直こんな事すると思ってなかったから、ここに来る前にトイレに行った。
いつもなら抱き合う前にお互いシャワー浴びるんだが、今日は汚いままだ。
それを言えば……カトラスが火をふき俺の体に十番目の穴ができるだろう。

 そろそろイキそうだ。
普段フェラは前戯の合間にやってる。
そろそろって時になるとコンドームを着けてからこいつの性器に挿入するってパターンだ。
今日はこのまま…こいつの口に…!
「アッ!」

どくっ

93大神竜一朗:2009/11/24(火) 16:18:12 ID:qIl/+dKn
予告なしに射精してやった。
「ごめん、レヴィ…。おもわず口の中に…。」
 当然わざとだ。
俺の精子を口に咥えたまま舌で受け止め……ペニスから口を抜いた。
口内射精した事には特に機嫌悪くしている様子はない。
レヴィは口に俺の精子を溜めたまま枕元らへんに置いてあるティッシュを取ろうとした時
こいつの腕を掴み
「レヴィ、お願い………飲んで。」
「……。」
 俺の目をじっと見つめてきて、仕方ねぇなって目で見てきた。
俺にわざと見せるようにアゴをあげ嚥下した。
レヴィの喉が動く事で自分の精子が飲み込まれていくことを実感できた。
 こいつ、男が喜ぶ仕草を心得てるな。
「すまない……。」
「別に構わないさ。」
 イカした女に自分の精液を飲ませると征服した気分になれる。
支配欲ってやつか。これがあるからレヴィとの衝突にも我慢が出来るのだと思う。
「……どんな味なんだ?」
「味?…みんな変わらねぇよ。」

「……………。」
 他の男たちのも飲んだ事ある…って意味なのか。
「昨日の男とも?」
「一発もイキやがらなかったよ。トゥーハンドのあたしが怖いんだと。」
「でも昨日ヤッたって言ったろ……セックスが下手だったって。」
「ヤッたのは前戯だけだよ、何かするごとに恐怖でビクッて震えやがる。
  おかげでフェラの途中でこっちが冷めちまったよ。」
「そうだったのか…。」

どうした、俺。今の聞いて安心してるのか?
 
94大神竜一朗:2009/11/24(火) 16:19:17 ID:qIl/+dKn
 
 レヴィがベットから降り、床に落ちてたホットパンツを履き
ホルダーに腕を通し二丁のカトラスを装備する。トゥーハンドのレヴィの姿になった。
「いや、気持ちよかった……ありがと。」

「いつまでも浮かれたツラしてんじゃねぇよ。」
 背中を向けたままのレヴィ
「レヴィ……。」
「部屋から向こうはパートナーだ、そういうツラしな。」
 そう言い残しレヴィが先に部屋を出て行った。

 レヴィの部屋に一人残った俺。
なんだろうか、すっきりしないこの感じは。
レヴィに口でしてもらったのに……

 レヴィが男娼にフェラしたからか?
別に恋人ってわけじゃないから、浮気でもない。
だけど挿入…最後までしなかったと聞いてホッとしたりした。

なんなんだよ、この鬱陶しい気持ちは……。

 征服した領土を侵されそうになったからだ

 きっと
 

 どれだけ自分を納得させる理由が浮かんでも
レヴィが他の男のペニスを舐めたことは消えない。


 

事務所では
「さっきからずーっと待っているんだが、
  コーヒーの一杯も出ないのか、この店は。」
         
              END
95大神竜一朗:2009/11/24(火) 16:23:59 ID:qIl/+dKn
管理人さんへ、

BLACK LAGOON エロパロSS保管庫 へ収納お願いします。

みなさん感想聞かせてください。

  BLACK LAGOON
     〜8分程度の愛撫〜   大神竜一朗
96名無しさん@ピンキー:2009/11/24(火) 16:32:02 ID:g0AJisvf
感想乞食は嫌われるぜ
だがロックの嫉妬と黒さはよかった
97名無しさん@ピンキー:2009/11/24(火) 18:00:56 ID:bkEDX47h
ドライな作風だけに、最後に露骨に感想欲しがってる作者の私情が残念だ…
いや気持ちはわかるけどね自分もたまに書くから
98名無しさん@ピンキー:2009/11/24(火) 18:57:08 ID:0+2Rkxak
OK、ボーイ
まずは『sage』とメール欄に半角で入れようか
それから、どんなに感想が欲しくとも、それを口に出すのはクールじゃないねぇ

だが、筋はいい
お前さんの今後が楽しみだ
99名無しさん@ピンキー:2009/11/24(火) 20:31:29 ID:aOeiCMwQ
大神さんの投下を待ってた。ハードな文体が俺は好きです。
ただ、他の奴も書いてるけど良い作品なら感想は自然に出てくると思います。
次の投下を楽しみにしてます。ワガママを言えばバラ姐と軍曹が読みたいです。
100名無しさん@ピンキー:2009/11/24(火) 21:05:23 ID:NFGwBE0x
長編職人が二人も降臨していて素晴らしい…
緊張感漂うなかでもしっかりオシドリ夫婦なロクレヴィ、
殺伐としててダークなロクレヴィもどっちも好きだ
二人とも続き楽しみにしてます
101『2009年、アユタヤ』(多分続く):2009/11/24(火) 22:10:13 ID:51T36bsN
事務所棟の前でタイヤを鳴らしながら急停止したハイエースの中から、ベレッタを構えた、黒スーツにサングラス姿の白人の男が
2人飛び出す。
そして、あっという間に男の1人がシュティーベルの手から本をもぎ取り、2人がまたハイエースに飛び乗ったかと思うと、
ハイエースはホイールスピンしかねないような勢いで発進する。

部長の秘書が、片方の肩にかけていたコーチのハンドバッグから目にも留まらぬ速さでVZ61を取り出し、逃走するハイエースに向け
フルオートでぶっぱなす。
割れた窓ガラスやランプの破片を撒き散らしながら、ハイエースは走り去ろうとする。
閉まりかけのスライドドアからの散発的な銃声―おそらく3発バーストが数回―に、部長とシュティーベルがその場に伏せる。
右側のタイヤを撃たれたらしいBMWが、斜めに傾く。

"ヘイヘイヘイ、いったい何が起こってるんだ、ロック!?"

"わかるもんか、俺だって!"

と、俺たちのシティの左リアのドアが、急に開けられる。
驚いて振り向いた俺の額に、VZ61が突き立てられる。

部長の秘書。
真ん中で分けた長い黒髪を後ろでひとつ結わえにした、荒い息のその女が、後部座席から俺の額にVZ61を突きたてている。

"何しやがんだ、てめえ!"

レヴィが咄嗟に2丁のカトラスを抜いて、秘書に向ける。

"死にたくなきゃ、あのバンを追いな、早く!"

"おいおい、俺たちはあいつらとは関係ないぜ。
道に迷って、ここに入っちまっただけだ。"

"説明している暇はない!
いいから、出せ!"

"あたしたちはタクシーじゃねえんだよ、お嬢ちゃん?"

"黙れ!
彼氏の頭が、スイカみたいに破裂するのを見たいってのか?
それなりの金はくれてやる、だから早く追え!"

秘書は、元々釣り目気味の目を三角にして、俺の頭を銃の先でこずく。
相変わらずレヴィは険しい顔でカトラス2丁を秘書に向けているが、どちらが撃ったとしても俺は多分無事ではすまない。

"わかった、絶対金は払えよ!"

俺はそう言いながら前を向くと、レンジをDに入れて、アクセルをいっぱいに踏み込んだ。
シティのエンジンが、唸り声を上げた。
俺は、自分の身体がシートバックに張り付くような、そんな錯覚を覚えた。
102名無しさん@ピンキー:2009/11/24(火) 22:33:12 ID:o2BEy5Ds
ジェラロックいいねぇ。
レヴィたんの微笑ましいニヤニヤジェラシーとはまた違ったこの何とも言えないもどかしさがたまらんw
しかもエロい・・・
いいエロクレヴィでした。GJ!


ただ上でも指摘されてるけど、催促はNOですだよ。
sageを知らないようだし2ch始めてまだ日が浅いのかな?
保管庫もわざわざ言わなくても毎回スマートに収納してくれてるからこちらも催促は無用。

とはいえたまには保管庫さんにお礼言うのは全然いいと思うけどね。
103『2009年、アユタヤ』(多分続く):2009/11/25(水) 20:36:24 ID:2xn3uwPz
"兄ちゃん、もっと飛ばしな!
逃げられちまう!"

"あっちはハイエースだ、馬力は同じくらいだが重さが倍近く違うから、充分追いつけるよ。"

あの重いボディをドリフトさせながら、ハイエースは工場のゲート前の急カーブを曲がる。
焦り声の秘書をよそに、俺は冷静にサイドを引いて後輪を一瞬ロックさせ、スピードを殺さずにそのカーブを曲がって
ハイエースに迫る。
4本のブラックマークが、アスファルトに残る。

ゲート正面の信号は、赤だ。
客を満載にしたブルーのソンテオがクラクションをならしながら急停止し、その鼻先をハイエースはさっと走り抜ける。
怒りの形相で飛び出してきたソンテオの運転手を引っ掛けそうになりながら、俺も後を追う。
あの黒人、ハイエースを運転しているあいつも、相当の腕だ。

ハイエースの右後ろの窓から、白人の男がこっちに身を乗り出してきて、ベレッタで撃ってくる。
俺は、ハンドルを左右に振らしながら巧みによける。
目の前のペプシの看板に流れ弾が当たり、その破片を撒き散らしながらシティは突っ走る。

"こんの、クソったれ!
なんでこんなやっかいごと背負い込むんだよ、ロック!?
もうちょっとで、今回のビジネスは終りだったんだぜ!?
あとは会社の経費でハネムーンと、しゃれ込めるはずだったのによぉ!
こんなミミズの缶みてえなわけわかんねえ女なんか、いますぐ放り出しちまえ!"

"行きがけの駄賃だよ、レヴィ。
退屈な仕事だったんだ、これくらい刺激がないと、面白くないじゃないか。"

"お前、やっぱビョーキだな。
マリリン・マンソンよりずっと病んでやがる。
10年前からそう思ってたけど、やっぱそうだ。"

レヴィが、カトラスのセーフを外しながら言う。
秘書は右後ろのパワーウインドウを開け、身を乗り出しながら蛇行して走るハイエースに向け、盛大に撃ち始める。
反対車線をこっちに向かって走っていたトゥクトゥクのフロントが蜂の巣になり、急ブレーキをかけたトゥクトゥクはそのまま
斜めにひっくり返る。
秘書は舌を鳴らすと、空になったカートリッジをそのまま外に放り投げ、コーチのバッグから新しいものを取り出して、
手早く装填する。

"あんた、何者なんだ!?
あの日本人の、秘書じゃなかったのか!?"

明らかに堅気の動きではないその身のこなしに、俺は秘書に大声で尋ねる。

"俺のことより、今はあの本を取り戻すことが先決だ。
姉ちゃん、あんた銃持ってんなら加勢しな!
タマ代は、俺が持ってやる!"

"おいおい、あたしを『ラグーンのトゥーハンド』と知って言ってんのか、それは?
あたしの日当は、高いぜ?"

"るせえ、いいから撃て!"

"ハッ、あたしの腕、見て驚け!"

レヴィは助手席の窓から身を乗り出すと、両の手でカトラスを景気よくぶっ放し始めた。
汗で、ドーランが少しずつはがれ始めていた。
104名無しさん@ピンキー:2009/11/25(水) 23:35:04 ID:swso5kOB
マソソソは実はあんまり病んでないよ
あざといくらいに病んだフリしてショウビジネスを営む生粋のビジネスマンだよ
ビジネスマンのフリ(とも違うが)してる病人の岡島さんとは真逆のイキモノだと個人的には思う…
と場違い極まりないマソソソ擁護


ああ、病持ちの旦那に悪態吐きながらも着いて行っちゃう女房っぷり
レヴィたんかわいいなー
105『2009年、アユタヤ』(多分続く):2009/11/26(木) 20:58:10 ID:tUtxKLi3
鉛弾を大量に食らった、ハイエースのリアハッチが火花をあげて道路に転がる。
俺はひょいとそれをよけると、レヴィと秘書の銃口がしっかりハッチの中に向くよう、テイル・トゥ・ノーズで
執拗にシティのアクセルを踏み込む。
ハッチの中からは白人の男が2人、3列目シートの背もたれを防弾版代わりにして、こちらに向けてM4らしい
ライフルを構えている。

グレネード!
俺は急ハンドルを切り、反対車線に退避する。
向こうから走ってきたティーダが、ホーンを鳴らしながら慌てて脇によける。
間一髪、男のM4から発射されたグレネード弾は、シティの左のサイドミラーまであと20cmくらいの空間をかすめ、
アスファルトに大穴をあける。
次々に撃たれるグレネードを右、左と急ハンドルの連続で俺はよけ、レヴィはその反動で振り落とされそうになりながらも、
憎まれ口を叩く。

"チッ、あいつらきっと湯水のように予算使えんだぜ!?
旧正月の爆竹みてえに、惜しげもなくボンボン撃ってきやがる!
ロック、もっと近づけないか?"

"無茶言うなレヴィ、相手はグレネード持ってんだぞ!
こっちにもスティンガーでもあれば、話は別だがな!"

"無茶は承知さ、ロック!
『死の商社マン』の二つ名が、伊達じゃないとこを見せてやれよ!?"

"レヴィお前、その恥ずかしい名前で呼ぶなよ!"

"いいから、もっと近づけろ、ロック!
カトラスが、ちっとも当たりゃしねえ!"

秘書はまた新しいカートリッジを出して、VZ61に装填している。
男たちが、フルオートでこっちに向けて弾を乱射してくる。
ってことはあれ、M4じゃなくてM4A1か?

相手の弾が当たって真っ白になったフロントガラスを、俺とレヴィは素手で突き破り視界を確保する。
脱落して道路に落ちたガラスが、こなごなに砕ける。
少し表面が切れた俺の左手から、血がにじみ出る。

レヴィもいよいよこだわってる余裕もなくなったのか、今度はパーカの両のポケットからイングラムを出し、やたらめっぽう
撃って撃って撃ちまくる。
まずい、トリガー・ハッピーになりかかってる、レヴィの奴。
肝心のときに弾切れ、なんてことにはならないでほしい。

工業団地はまだ大部分が造成中なのか、やたら迂回路の標識が出ている。
ほぼ全てのカーブをパワー・スライドで曲がるハイエースに離されないように、俺はジェットコースターのようなスピードで
タックインをかましながら必死についていく。

そうやって曲がった何度目かのカーブ、セブンイレブンの角を曲がったとたん、ハイエースが急停止する。
俺も、ぶつかりそうになりながら、なんとかシティを止める。
道路を塞ぐように、UDの大型トラックと、屋根にラウドスピーカーを取り付けたアーバンが、止められている。

レンジをRに入れて後ろを向くと、今俺たちが曲がった角も、別のトラックで塞がれてしまっている。
まさか、ハメられた?

"そこまでだ、アメリキー!"

ハイエースと俺たちの行く手を遮る、アーバンの屋根に付けられたラウドスピーカーから、聞き覚えのある声が、聞こえた。
スライドドアが開き、ソヴィエト連邦空挺軍の制服を着た男たちと、その影にいながらも俺たちにはよく見覚えのある、
髪の長い人影が姿を現した。
顔の半分が焼け爛れた、それはロシア人の女性だった。
106名無しさん@ピンキー:2009/11/26(木) 23:52:52 ID:+9IgZa2r
待ってました!姉御ォォォォ!もちろん姉御のベトシーンありますよね?あると言って下さい!
107名無しさん@ピンキー:2009/11/27(金) 01:03:32 ID:7YQsBBxB
姐御だあああああああああああああああああああ!!!!
姐御ぉぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!!
108『2009年、アユタヤ』(多分続く):2009/11/27(金) 23:36:19 ID:T2gEcgWI
わらわらとそこかしこから出てきた、カラシニコフを構えた数十人の男たちが、ハイエースを取り囲む。
自らも軍服を着こんでその中心にいる女―ソーフィヤ・イリーノスカヤ・パブロヴナ元大尉、又の名を『バラライカ』―の
ロシア訛りの声が、街路に響き渡る。

"ヤンキーの諸君、動きたければ動け!
喜んで蜂の巣にしてやろう!"

"ハン、やっぱりお出ましになったか、『フライフェイス』!
オフィスでロシアンティー片手に、今週の『チェブラーシカ』、見てなくてよかったのか!?"

ハイエースの助手席から顔を出して、眼鏡に金髪の女が応える。
俺は、ドアを開け、運転席の横に立つ。

"お前らの冗談は、最近のハリウッド並みにつまらんな、『クソ尼』。
やはりお前を追っていてよかったよ、このラングレーの雌犬めが。
ロシア正教の信者として、私は、お前のように神を冒涜する連中が大嫌いでね。"

…え、『クソ尼』と言ったか、今?

"全て、お見通しというわけか……。
だがこの本は、何があってもお前らには渡せない!
あんたらの大好きなテトリスと一緒だ、どんなピースもはまるべきところがある。
それは、わが国以外にない!"

そうだ、この声。
いつもはサングラスの下の、あの顔。
絶対にどこかで会ったことがある、と思ったら。
でも、まさか……そんな!

"姉御、このくそったれな話は、何が一体どうなってんだ?
横からいきなり出てきて、あたしらには、何の説明もないってのか?
インフォームド・コンセントを要求する権利くらい、あたしらにもあるだろう?"

助手席のドアを開け、シティの左横に立ちながら、レヴィが叫ぶ。
だが、その返答は、あまりにもあんまりなもので。
何の説明にも、なっていなくて。

"ラグーンの諸君、ご苦労だった。
だが、これは私たちの大儀だ、手は出さないでもらいたい。
もし『若様』との違約金が発生するのなら、私たちが負担しよう。
だから、諸君はいまからでもバンコクを楽しんで、ロアナプラに帰ってくれてかまわない。"

"俺はどうなるんだ!?
それにお前ら、いったい誰なんだ!?"

同じく俺の右側に立った秘書が、血走った目でVZ61をバラライカさんに向けながら言う。

"『ホテル・モスクワ』タイ支部頭目・『バラライカ』と言えばわかるだろう?
あの本は元々、ロシア正教会のものだ。
私たちは、いや、正確には私たちと利害関係を一にする依頼主と私たち『ホテル・モスクワ』は、方々手を尽くして、
あれをずっと探していたのだよ。
1985年、アルゼンチンのマグダレナで目撃されて以降の行方が、とんと掴めなくてね。
そこに、旭日重工だ……まったく、奇妙な縁だよ。
さらに、満州国の落とし種のガスパジャー・カワシマ、貴女まで絡んでくるとは、わが国と貴国との因縁を感じるな。"

スチェッキンを秘書―カワシマと呼ばれた女―に向けながら、バラライカさんが応える。
俺たちはただ、絶句する。

スコールが、急に降り始めた。
ずぶ濡れになりながらも、俺たちはただ、立ち尽くしていた。
109名無しさん@ピンキー:2009/11/28(土) 00:09:40 ID:kEeLAhqp
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

映画版の大長編ブラックラグーンはこんな味付けだと俺感涙
110名無しさん@ピンキー:2009/11/28(土) 01:30:10 ID:gVHD4yWq
ただ、バンコクにハイエースは走っていてもティーダは間違いなく走っていないし、空挺軍なんて聞いたことないよ・・・
111名無しさん@ピンキー:2009/11/28(土) 04:10:53 ID:4EwX/PBE
こまけぇこたぁ(AA略
112名無しさん@ピンキー:2009/11/28(土) 08:46:43 ID:nQcPxLu2
タイ仕様・日産ティーダ
ttp://www.nissan.co.th/th/web/models/TIIDA/home/hpage.htm

バラライカは「ソビエト連邦空挺軍・ジェーン=ドゥ大尉」と名乗っている
ttp://elzast.blog51.fc2.com/blog-entry-292.html
113名無しさん@ピンキー:2009/11/28(土) 08:49:34 ID:nQcPxLu2
タイ語だとみんな読めないと思うので日本語のソースも
ttp://www.newsclip.be/news/20091016_025482.html
114『2009年、モスクワ』(続きません):2009/11/28(土) 14:21:34 ID:8QLt8qh8
マリオットのスイートルームで、全裸の大尉は私の顔にその秘所を押し付けるようにしていた。
私は、向こう傷のある顔を、大尉のそこかしこが爛れた両股に挟まれながら、舌で大尉の、雌の匂いと少しの汗の匂いのするそこを、
その間の既に固くなった肉芽を、優しく転がしていた。
その動きに合わせて、大尉の口からは、普段からは考えられないような甘い声が、漏れた。
じゅくじゅくと、淫らな水音が部屋中に広がった。
それは、私の口に含まれているストリチナヤのせいだけでは、決してなかった。

"スレヴィニンへの報告まではまだ間があるぞ、同志軍曹。
それまでは邪魔は入らない、せいぜい楽しもうじゃないか。"

この部屋に入るなり、上着を脱いだ大尉は私にそう言った。
大尉と身体を重ねるのは、私にとって非常に光栄なことだった。
激しい戦闘のあと、そして重大な事項に臨む前、必ずといっていいほど大尉は私を求めた。
アフガン以降、何度となく、私たちはベッドをともにしてきた。
ことにモスクワでスレヴィニン―大頭目―と会う前は、ほぼ毎回、このスイートルームで身体を重ねていた。

ストリチナヤを口に含んだまま、大尉の口が私のそれを、含む。
大尉の体温と、氷温近くにさきほどまで冷やされていたヴォトカが粘膜から染み込む、その熱で、私のそれは、既に激しく膨張している。
喉を鳴らしながら、大尉が私のエキスの染み込んだヴォトカを飲み乾す。
大尉の舌先が、粘膜と皮膚の境目あたりを、執拗に舐める。
私の背が、ビクビクと震える。

私のそこから口を離した大尉が、未だその白魚のような手で私のそこを弄びながら、妖艶な顔でこちらを見る。
半分は焼け爛れていても、その紅潮した顔の美しさに、私はしばらく見とれてしまう。

"ボリス……そろそろ来てくれないか?"

荒い息で、大尉が言う。
私は体勢を変え、大尉の上にのしかかる。

大尉の開かれた両股の付け根に、ひどく濡れそぼり、大きく口を開けたそこに、私は避妊具に包まれた自らのそれをあてがった。
刹那、そこの奥底までそれが届くよう、私は一気に腰を差し込んだ。

"うぁ……あ…ッ……ボリス……!"

大尉のそこは、私のそれを優しく締め付けて。
艶めく大尉の唇が、私を誘っていて。
私と大尉は、今日何度目かの口付けを、交わして。
2人の唾液が、ヴォトカの味の残り香のするそれが、混ざり合って。

私は、腰の動きを止めることができなかった。
軍に入る前の貧弱な私からはきっと想像もできないほど、私は激しく腰を動かした。
大尉の甘い吐息、そして大尉のそこに入った空気と大尉の出した液体が混ぜ合わされる音、乾いた肉同士のぶつかる音しか、
私の耳には聞こえなかった。
大尉の一番柔らかい部分を、私はひたすら突いた。
避妊具越しでも、キュッと収縮するそこの感触は、私のそれから快楽中枢まではっきりと伝わってきていた。
私が乱暴に剥ぎ取り、電気スタンドに引っかかっていた大尉のブラが、いま、床に落ちた。
それと時を同じくして、私の欲望の液体が、避妊具越しに大尉のそこを打った。
大尉は、背中をのけぞらせて、それを受け止めた。
少し汗で濡れた私の背中に、大尉の爪が、ガリっと傷をつけた。
115『2009年、モスクワ』(続きません):2009/11/28(土) 14:21:55 ID:8QLt8qh8
何度見ても温厚な紳士にしか見えないその男が、同志スレヴィニン―我々の大頭目―だと、顔を知らない者は誰が信じるであろう。
執務室で、八端十字架の前の肘掛け椅子に腰掛けて葉巻をくゆらせながら私たちを待っていたその男が、『ホテル・モスクワ』の
全てを統括する最高責任者であると、いったい誰が信じるであろう。

同志スレヴィニンは、私たちから例の本を受け取ると、満足げに笑みを浮かべた。
幾多の国の栄枯盛衰を左右し、ドイツ第三帝国の崩壊とともに南米に持ち込まれ、以後行方不明であったその革表紙の大きな本は
いま、執務室の机の上に鎮座ましましていた。
この後、総主教がその本をどう取り扱うかは、我々―そしてもしかしたら同志スレヴィニンも―の、あずかり知らぬところだった。

大尉と私は、うやうやしく一礼すると、執務室を後にした。
本部の外の街路は、社会主義崩壊前とはまた異なった雑踏に満ちていた。

"さて同志軍曹、またロアナプラの混沌の中に帰るとするか。
ここはもう、私たちの知っているあのモスクワではない。"

大尉が、そう呟いた。
私たちがメルセデスの後部座席に腰掛けると、アエロフロートのスワンナプーム便に間に合うよう、同志伍長はアクセルを踏み込んだ。
メルセデスは、静かにモスクワの街中を走りはじめた。
大きなコカコーラの看板が、私たちを見下ろしていた。

<連作『2009年』 終>
116名無しさん@ピンキー:2009/11/28(土) 16:01:16 ID:pDtNgn1X
>>115
激しくGJでございます!!
まさか今また旭日重工が出てくるとは。wktkしまくりましたよ!
そして大尉…素晴らしい!!何度も読み返してニヤニヤしてしまった。
117名無しさん@ピンキー:2009/11/28(土) 18:05:24 ID:zh2kAbdw
>>115
乙!あなたが神か!
まさか最後に念願の姐御エロまで見れるとは
本当ありがとう
118名無しさん@ピンキー:2009/11/28(土) 20:30:20 ID:GixqP6+K
>>115
お疲れ様&GJ!
ハイクオリティーなSSありがとうございました
119大神竜一朗:2009/11/29(日) 01:24:58 ID:tyo1F2Or
   BLACK LAGOON
     〜9回程度の関係〜   大神竜一朗


 トゥルルルルルル。
部屋に備え付けの電話が枕の少し上で鳴り響く。
心地よい眠りを妨げる音を鬱陶しくも思いながら
俺はベットにもぐったまま腕を伸ばして受話器を取った。
「はい、もしもし……。」
「ロックか?…こいつは部屋を間違えたかな。」
 どう考えても俺がこのレヴィの部屋で、寝ぼけた声で電話に出るのはおかしいだろう。
「いや…合ってるよダッチ。」
 もう言い訳をしても遅い。ダッチだ、俺とレヴィが何度か関係をしているのは
とっくに気づいていただろう。
「レヴィに伝えてくれ、日本行きの準備が整ったってな。」
「分かったよダッチ…レヴィに言っとくよ。」
「じゃあな。」
 そういってダッチが電話をきった。
最後の言葉の時、笑ってるダッチの顔が浮かんだ。

 「ハァ………。」
 ボーッとした頭でそれなりに今の事態を整理する。
朝の7時だ。早朝に来たって考えるより昨夜からずっといたと考えたほうが自然だろう。
 どうしよう、ダッチに気づかれたかもって事レヴィに言うべきか。
俺の隣でシーツから肩を出し、すやすや眠るレヴィ。
 眠ってるだけなら可愛いのに。

 昨日またレヴィを抱いた。数えてる、と言うより俺は回数を覚えている。
こいつとセックスするのは、シガーキスをした日から数えて9回目だ。
張さんの依頼があった日のフェラだけってのはノーカウントで9回。月に一度ってぐらいか。
 別に覚えようと思って覚えてるわけじゃない。きっと10回を越えた辺りから
数なんて気にならなくなるだろうな。
 レヴィにも分かりやすく説明するなら、人を殺した数、10より先覚えてるか?…だ。
120大神竜一朗:2009/11/29(日) 01:28:37 ID:tyo1F2Or



「うー……ん…」
 寝返りをうつレヴィ。まだ起きないようだ。
昨夜もレヴィとセックスをした。求めたのは俺の方からだ。
別に特に欲求不満だったわけではなく、むしゃくしゃしてたから。……レヴィに対してな。
 小さい事だがものの言い方だ。頼みごとっていうより命令調で話す。
日本にいたときからそうだが、俺は女の上司ってのが合わない。
大抵の男は女に命令されるとイラッとする。そういう趣味でもないかぎりな。
 フェミニストでもこいつの言い方にはイラッとするだろう。

本心で話すとビビッたよ。今日のレヴィはいつもにまして機嫌が悪かった。
 原因はハッキリとは知らないがベニー曰く、自分が出した請求書にあるとか。
冗談じゃない、俺は全く関係ない。そのおかげで今日は散々だったよ。

 それで仕事終わりに俺のおごりって事で、レヴィの部屋で飲む事になった。 
それは下心があってのこと。何度か肉体関係がある相手ってのはもっていきやすい。
こいつも例外ではなかった。恋人同士の甘い雰囲気というよりさり気なくお願いする形で。
「レヴィ、あの日以来誰かとした?」
「あの日?」
 張さんの依頼があった日聞かされた、男娼を買ったって話だ。
グラサンをかけたエレキの似合いそうな好男だったとか。
「ああ、あのインポ野朗な。顔はあんま覚えてないが…。
  いや買ってない。ロックは?」


 少々高くついたがバカルディに気分良くしたレヴィは、俺に裸で仰向けになるよう命令した。
この時ぐらいは、その命令口調も我慢しよう。黙ってる方がいい方に事が進む。
枕のおかげで辛うじて自分のペニスが見える。
「レヴィ…チンチン舐めてくれるの?」
 白々しく聞くと
「まぁ、黙ってろ…。」
 レヴィは勢い良くタンクトップを捲り上げて脱ぎ、床に投げ捨てると大きなバストが露になった。
こいつの胸を見るのは何度目だろうか。俺の前では乳首だって隠さない。
それでいてこの先レヴィにさせる事。俺はこの街の勝者なのかもしれない。

「アッ…!」
 レヴィが俺のペニスをいっきに口に含んだ。
「あっ、…レヴィ…。」
「ん、ん、…。」
 唇をすぼめたまま頭を上下に動かす。
「あっ…。」
 レヴィが一旦ペニスを抜き、俺に見せつけるかのように尿の出る鈴口を舌先で舐めた。
仰向けになった俺を、上目使いで見てくる。
「ああ、レヴィ、気もちぃ…。」
 そう言ってやると再び口いっぱいに含みフェラチオし始めた。
「レヴィ、ごめんね。…いつもチンチン舐めてもらって……。」
「フッ………ん、ん。」
 女にフェラチオさせるのが好きな男は自己顕示欲の強い男だと言うが、その通りだと思う。
昼間はこいつに散々な言い方をされた。機嫌がどうとか俺には関係ないだろう。
 ラグーン商会が会社だといっても、別にレヴィは上司ではない。
いや、今この瞬間は上司だと思った方が気分がいいのかもな。
生でチンチンを舐めさせてるこの瞬間だけは。
「レヴィ……アナル舐めるの……駄目?」
「ケツの穴なんか舐めれるか。」
 いまだにアナル舐めはしてくれていない。

 
121大神竜一朗:2009/11/29(日) 01:31:32 ID:tyo1F2Or

 その後、スキンを着けレヴィの中に入れた。
体位選択の権限は未だに、ほとんどレヴィにある。
 
 気持ちいい、こんなに気持ちいいのに、何故?
恋人?愛人?ただの肉欲だけ。
情欲ではなく……同じ意味か。情はほしていないという意味。
男性器を女性器に入れ、ゴム越しに粘膜を擦るだけの行為。

 
 そんな昨夜のセックスを思い出しながら、俺はベットから出た。
隣にいる人間の事なんかおかまいなしに。
 
 明日の今頃は日本か。
ミス・バラライカ達も一緒ならとうぶんの間は、お預けだ。
 ………レヴィが起きたらフェラだけでもさせようか。
さて、……どう言ったものか。

 俺はトランクスを履き、パイプ椅子に座りテーブルの上の灰皿を手元に近づけた。
他、テーブルの上にはセブンの煙草、レヴィを脱がしたバカルディのボトル。

 俺はレヴィに気持ちは無い。
こいつの肢体に惹かれてはいたが、溺れてはいなかった。
お互い深い関係ではなかった。
 いつかの暴力教会のシスターの事を思い出した。シンディ・クロフォードのような色気。
俺はどちらかと言うとエダの方が好みだ。レヴィは?
レヴィは俺にとっては金のかからない、無料のセックスフレンド……。
でも扱いを間違えると命を落としかねない。
 
 などと考えていると、レヴィが目を覚ました。
身体を起こし半裸のレヴィが部屋の明かりを眩しそうにしてる。
「レヴィ……おはよう。」
「………今、何時だ。」
「7時だよ。あ、…ダッチから電話があって…。」
「…何て。」
「日本行きの準備が出来たってさ。」
「そうか…。」
 裸のまま胸やヘアーを隠す仕草も無くベットから出ると、床のショーツを拾い足を通す。
辺りを見回しタンクトップを見つけた。
服を着てしまう前に言わなきゃ。
「レヴィ…。」
「……?」
「あの、……さ。お願いが、あるんだけど………。」
「ハッキリ言え。」
「今、フェラチオ…してほしいんだ……けど。」
「…………!」
 無言で俺を睨む。
「お願い……。」
「なあロック、……あたしたちの関係って何だ、言ってみろ。」
「え、…仕事でのパートナー…?」
「ならプライベートでは…?」
 俺は答えに悩む。気の利いたジョークで答えるのか、それとも恥ずかしいような
文学的なセリフなのか。少なくてもドラマチックな言葉はレヴィも期待していないだろう。
「セックスフレンド…かな。」
「………。」
「?」
122大神竜一朗:2009/11/29(日) 01:33:03 ID:tyo1F2Or
「自分の手でしごいてな。」
 機嫌の悪さは治ってないのか。まぁ寝起きは大抵機嫌が悪いもの。
俺の期待には応えてくれず手にしたタンクトップをブラジャーもせずに着た。
「レヴィ、日本に入ったら今みたいに…。」
「姐御にはあたしもついて行く事、ちゃんと伝わってるんだろうな。」
「ああ、ダッチが言ってくれてるはずだ。」
「なら、問題無い。」
「そうじゃなくて………。」
 レヴィがマガジンに弾丸を詰めフルにすると愛銃にいれた。
「確かお前の国では、こいつは御法度だったな。」
「………。」
 会話がかみ合わない。俺は性処理の話をしているんだ。
性処理にはお前の身体が必要になってくる。イヤなら口だけでもいいんだ。
「なあロック、あたしとお前がやってないことが一つある……。
  何だか分かるか?」
「…?」
 何だ?何の事について話してる?
最初に浮かんだのはアナルの事。まだレヴィは俺のアナルを舐めていない。
もしかしてやっと舐める気になってくれたか。
「それって……ベットでする事?」
「どこでも出来る事だ………。」
「…?」


「分からないなら、いい………。気にするな。」

 
 正直分からない。
レヴィはヘアゴムで無造作に髪を後ろで縛り、
二挺のカトラスを装備しトゥーハンドになった。


「………………?」
 レヴィの言いたい事が俺は分からなかった。

 
 もう一度考えてみたが、

 分からない。


             END



123名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 10:53:19 ID:oQeCBSL7
>122
ホント鬼畜だな、ロック
女の敵だ
だがGJ
124名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 11:14:05 ID:VilK2iMw
若様は将来第二の犯島さんとなって、屋敷中のメイドを食いつくすに違いない
125名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 12:06:40 ID:RMsfMlLI
GJ!朝からいいモン見せてもらった!
原作に沿ったストーリー展開で続きが気になる。
だんだんレヴィとロックの心に食い違いが…
126名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 20:29:10 ID:Tvos+om7
ロックヒドス。
乙女心をこれ見よがしに踏みにじっておきながらでもロック自身も何か葛藤してるあたり切ない関係ですな。
GJでした!
127名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 21:14:48 ID:V2BcMFWh
いつも思うけど、犯島の黒表現うまいよなあ
先の展開がどうなっていくか楽しみ過ぎる
128『1987年、香港』(多分続く):2009/11/29(日) 22:17:38 ID:Oo4THH+f
その日も俺はいつものように、買ったばかりの赤いMR2で、慌しく署に向かっていた。

アクセルを踏み込み、クロス・ハーバー・トンネルを抜けたとたん、再び電波を得たカーステレオからは大ヒット中の
レスリー・チャンの新曲が流れてくる。
コーズウェイ・ベイの景色が車窓を流れだす。
啓徳空港に下りるキャセイの747が、俺の真上を飛んでいく。

ドリンクホルダーに挿してあった、さっきセブンイレブンで買った缶入りの甘い烏龍茶を、俺は一口飲んだ。
そして、片手でハンドルを握ったまま、同じくセブンイレブンで買ったBLTサンドに、がぶっとかぶりついた。

"維新、お前は俺のようになるな。
……絶対になるな。"

俺は、その言葉―兄の最後の言葉―を、いま反芻していた。
そして、あんなにも兄を憎んでいたことを、後悔していた。

兄は驚くことに、自分が黒社会の人間であることを、この俺に、刑事である俺に、ずっと隠し通してきた。
俺が兄の正体を知ったのは、兄が亡くなるほんの数ヶ月前のことだった。
俺は、台北で逮捕された兄のせいで、担当していたある事件の捜査班からはずされた。

中華圏のみならず東南アジアにまでその版図を広げていた、国際犯罪組織の幹部。
その、麻薬取引を取り仕切る、半ば顔役の一人。
兄は家族にもそんな正体を知らせず、ひそかに悪事に手を染めていた。
あまつさえ、警察学校にわざわざ俺の顔を見にすら来ていたのだ。

俺は、激しく兄を憎んだ。
俺の未来を真っ暗にした、兄を恨んだ。
犯罪者の身内がいる警官が、出世などできるわけもなかった。
自分の仕事だと思っていた捜査から、全ての心血を注いでいたあの事件から、俺は外されたのだ。
そして俺への冷遇は、兄が死ぬまで続いた。

俺は左胸のホルスターの中のベレッタのグリップを、龍の紋と『天帝』という文字彫られたグリップを、その感触を確かめるように握った。
あの頃の自分をこれで蜂の巣にしてやりたい、俺はそんな考えに取り付かれていた。
何度か、実際に銃口を口の中に入れて、引き金に手をかけたまま何時間も迷うことすらあった。
あの頃も自分の将来を儚んでそうしたこともあったが、今そうする理由は全く逆のことだった。
そうでなければ、兄の形見の銃を今になって持ち歩くような真似など、しないはずだった。

俺はインターを下り、角を曲がって署へ続く坂道を登り始めた。
今日も香港の空は、憎憎しいほど晴れていた。
129名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 23:28:44 ID:D3G1tXu1
ちょwww
元ネタあれだろwww

楽しみすぎるがな!
130名無しさん@ピンキー:2009/11/30(月) 13:18:18 ID:DWGSzJlH
>>128
きた!楽しみにしてるぜ!
131『1987年、香港』(多分続く):2009/11/30(月) 14:27:20 ID:+0UWD0fk
香辛料の匂いに満ちた茶餐庁に、俺はいた。
王社長―ここの社長だ―は、もともと札付きの黒社会の人間だったが、兄と違い誰もが知っている悪党だったが、
今は更生して真面目に商売を営んでいた。
店員の女性たちはともかく、厨房にはどこか人相の悪い男たちが数人目についたが、彼らも顔に似合わず勤勉に
仕事をしているように、俺には見えた。

俺は飲みかけの紅茶のカップを置くと、ジタンに火をつけ、深く吸い込んで、煙を吐き出した。
俺の横に腰掛けた、エプロンを着た髭ダルマといった風体の王社長が、ボソボソとしゃべりだした。

"もうすぐ、あいつの命日だな、維仔。
墓にはまた、あいつの好きだったサン・ミゲルを持って行くのか?"

"ええ、あんな兄でも、たった一人の親族でしたからね。
大事な、大事な兄でしたから。
……それに、兄だって好きであの仕事をしていたわけじゃなかった、そうでしょう、王社長?"

"ああ、あいつは本気で引退したがってたんだよ。
君に、それから親父さんに、仕事のことを知られる前にね。
なのに、最後の最後に、ヘマをやっちまった。
……この店のメニューの半分は、あいつのレシピなんだよ。
引退したら一緒に店をやろう、そう約束していたのに。
なのにあいつは……バカなヤツだよ、本当に。
義理人情の世界に生きていた、そんな義理なんて切り捨てて自分だけでも生きるべきだったのに、あいつは、
あいつはそれができなかった。
古いタイプのワルだったんだよ、あいつはな。
だから、あいつは舎弟を庇ってわざと捕まったんだ。"

"父が結局、兄のことを知らないまま亡くなったのは、幸せだったかもしれませんね。
兄のことを、すっかり真面目な商社員だと思っていた。
死ぬまで、そう信じきっていた。"

"あいつのことを、責めないでやってくれよ。
あいつからも聞いてるんだろう、最初はお袋さんの病気の治療費を稼ぐためだった、ってことは。"

"ええ、俺には兄を責める気持ちは、もうありません。
けれど、なぜ兄が殺されなければならなかったのか、罪を償って綺麗な身体になれるはずだった、兄が……。
それも、囚人同士の諍いなどという、極めて単純な理由で……。"

俺の咥えたタバコの先から、灰が床にぽとりと落ちた。
それは、俺の背中の震えのせいかもしれなかった。
灰は少しの間、タイルの上で赤く輝いていたが、すぐにその光を失った。
棚の上のラジオは、日本のポップスのカバー曲を陽気に流していた。
132『1987年、香港』(多分続く):2009/11/30(月) 23:34:44 ID:uG90qg2z
それは、俺の非番の日の朝、9時頃だっただろうか。
いつもどおりの、DJの軽快なトークが一段落して、マイケル・ジャクソンの『BAD』のイントロがちょうどアパートの
ラジオから流れてきたときのことだった。
突然、玄関の呼び鈴が鳴った。

こんな時間に呼び鈴を鳴らすのは、どうせ『エホバの証人』か何かだろう、そう思って俺は、煙をあげるジタンを
口の端に咥えたまま、しばらくそれを放っておいた。
だが、呼び鈴はしつこく鳴り続けた。

"あーはいはい、今行くから!"

俺はため息をついてジタンを灰皿でもみ消すと、立ち上がって玄関のドアに歩み寄り、力任せに開ける。

"おあいにく、セールスも宗教も間に合って……うわっ!"

ドアを開けるなり、旗袍を着て大きなリュックを背負った、7:3に分かれたショートボブの3の側に赤い髪ゴムを留めた
女の子が、勢いよく俺に抱きついてくる。
俺はそのまま後ろに倒れて、女の子の下敷きになる。

"痛っつ……!
何だ、何なんだ一体!?"

"維新哥哥、ずと、会いたかたよ!"

俺の上に馬乗りになって、北京語訛りのたどたどしい広東語で、糸のように目を細めて笑いながら、女の子が言う。
俺の目を、曇りない笑顔で、女の子は見る。

歳のころは、14〜5歳。
大陸人、それとも台湾人か?
それは俺には、わからなかった。
しかし、もっと重大なことは、その女の子が間違いなく、俺の名前を呼んだことだ。
誰なんだ、この女の子は?

"言ってること、わかるませんか?
基隆から船に乗て、やと、ここまで来れたよ!
私、シェンホアよ、哥哥!"

そんな名前には、とんと聞き覚えがなかった。
俺には、何がなんだかさっぱりわからなかった。
わかるのは、旗袍のスリットから覗くその子の下着が、ブルーの横縞が規則的に入ったローレグだということと、
俺のTシャツごしに肌に伝わってくる、その子の太股の、柔らかい、暖かい感触だけだった。

ロリコンの趣味はないつもりだったが、俺の目はその子に釘付けになっていた。
以前、旺角の、いわゆる『御宅族』御用達の海賊版ショップ摘発時に飽きるほど目にした、PC-9801用のゲームの中の
シチュエーションに、それはあまりにも似ていた。
133大神竜一朗:2009/12/01(火) 10:52:55 ID:XBYfP/6a
        BLACK LAGOON
     〜10階程度の夜景〜  大神竜一朗


「…!!!」
「ヘイッ、ロック!」
「…!!?」
 声に寝覚め、目を開けると覗き込んでくるレヴィの顔が
「大丈夫か?ひでぇ汗だぜ。」
「クッ、……。」
 どうやら、ウィスキーを飲んだ後椅子に座ったまま眠ってしまったようだ。
レヴィが言う。古いビュイックのエンジンみたいな息してうなされていたと。
悪い夢を見ていた。
「深酒はいけねェなロック。これからは慌しくなるんだからよ。」

 俺は日本に戻っていた。ミス・バラライカの通訳として。
レヴィはそんな俺のボディーガードだ。
 慌しくなる、か。鷲峰組の事もあるが、あのチャカと呼ばれていた男。
レヴィはソード・カトラスが必要になってくると言ってる。
当然あの男とのコミニュケーションで使うのだろう。
 

 銀座、ビジネスホテル10階。部屋にはシングルベットが一つ。
窓の外はギラギラとしたネオンの都会に、白い雪が降っている。
まだ降りだして間もないのか、アスファルトを白く覆ってはいない。

「……やっぱり、争いごとになるのかな。」
 低いテーブルを挟み対面に座るレヴィに、不安をこぼした。
「そりゃなるさ。ホテル・モスクワはやる気だ。」
「…………。」
 レヴィはオレを安心させるような言葉は言わない。
俺もこいつにそんなものは期待していないが。
レヴィが自分のグラスにウィスキーを入れる。
「嵐が来るぜ、ロック。鉄と血の嵐だ。」
「!!……。」
 
 窓の外で降る白い雪。
白い雪を見ながら想像した赤い血は、すぐに恐怖へと変わる。
「……………。」
 夜のこの街ではクリスマスが待ちどおしいと言わんばかりに
一足早くキャロルナイトを演出するイルミネーションで、白、緑、黄色と、
色さまざまに輝いている。

 俺はこの街に戻りたいのか……、それとも、ロアナプラに帰りたいのか。
134大神竜一朗:2009/12/01(火) 10:54:25 ID:XBYfP/6a


 10階のホテルから見る人々は小さい。個々の表情は遠くて見えなくても
それぞれに生活があり、人生があり幸せを求め生きている。
それは感じれるし、想像することが出来る。
 小さな命ははかない。はかなくて尊い。

「どうした、ロック。」
「いや…。」
「暗ぇぞ、お前。」

 今日、実家に帰った。帰ったがその扉を開けることが出来なかった。
普段なにげなく開けていたその扉。
「俺、死ぬのかな……?」
「鉛玉が当たればな。でもそうはさせねぇ、あたしが守ってやる。」
「………………。」
「あん?お前震えてんか?」
 寒いから?いや、怖いから。
ホテル・モスクワの恐怖、ミス・バラライカの持つ狂気を知っているから。
レヴィの言うように必ず血の嵐になるだろう。

 もうすぐ白い粉雪が真っ赤な鮮血へと変わる。クリスマスだというのに。
多分今の俺は、雷に怯える子供のような顔をしているだろう。
抱きしめてほしい、母親のように優しく。
 
 ある生物学者の言葉を思い出す。
ヒトは死を恐怖し実感した時、種を保存しようとする、生き物として。
俺は今その言葉を実感できる。こんな不安な夜は女を抱きたい、避妊もせずに。
その矛先を目の前のレヴィに向けた。
「レヴィ、外見てみろよ。」
 俺の言葉に窓の外の夜景を見る。ロマンチストでなくとも都会の夜景に
嫌気のさす女はいない。この夜景はムードを高めるのに十分だろう。
都会の夜景は女を酔わし、脱がせる。今夜はレヴィを抱きたい。
 
「東京の夜景は綺麗だろ。」
「興味ない……。」
「……。」
 ここは10階。こんな程度の夜景では脱がせれないのか。
この街には、もっと高い所はいくらでもある。
「無事今回の仕事が終わればさ、東京タワ、…?」
 話の途中にレヴィが椅子から立ち上がり、ハンガーからジャケットを取る。
「レヴィ、どこか行くの?」
「自分の部屋に戻るのにお前の許可が必要か?」
「いや……俺は。」
「慌しくなるって言ったろ…、だから寝てフルにしときな。」
「………。」
「お互い死んでもいいってんなら、お前のセックスの誘いにのってやる。
 だがな、あたしはこんな所で死ぬなんてまっぴらごめんだ。
 それでもヤリたいってんなら売女でも買ってヤりな。」
「………わかったよ…。」

135大神竜一朗:2009/12/01(火) 10:57:05 ID:XBYfP/6a

 レヴィがジャケットに袖を通し部屋を出ようとした時
振り返りもせずノブに手を掛けたまま、背中で言った。
「てめぇが死んでもなぁ、エルビスやジェームス・ディーンのように
 誰も思い出して涙を流したりはしないぜ。」
「………。」
「それ位の価値だ、お前の命は。」
「!!?」
 何故そこまで言われなきゃならない。命の価値まで。
じゃあ、お前はどうなんだ!お前の命の価値はどうなんだ!
他人の命の価値を勝手に決めるお前の命は!頭にきた俺はレヴィに問う。
「お前は、どうなんだ!」

「あたしぐらいは、覚えといてやるよ。」
「?」
 質問の意味を履き違えたのか、
「涙は、……さーな。」
 ドアを開け自分の部屋に戻っていく。


「…………。」
 もうそこにレヴィの姿はない。

 だが、何かが残っている気がする。

 俺しかいない、この部屋に。


               END


136名無しさん@ピンキー:2009/12/01(火) 11:20:56 ID:8l7gIIu5
>135
セツナス
GJでした
だがsageをいい加減覚えようぜ?
137『1987年、香港』(多分続く):2009/12/01(火) 13:27:58 ID:Z0BxIAcw
玄関のドアが、ギィー、と音を立てて、閉まった。
俺は、女の子の下敷きになったまま、それを見ていた。

"哥哥のここ、すごく大きくなてるよ?"

シェンホアと名乗った女の子が、にゃはは、と笑いながらその白魚のような指で、ケミカルウォッシュのジーンズごしに
俺のそれを撫でる。
テントを張ったそれがピクピクと震えているのが、俺にはよくわかる。

そりゃそうだ、とんと女とはご無沙汰だったし、何より、その暖かくて柔らかい太股の感触が、まさに『女の子の体重』という
シェンホアの重さが、スリットからのぞく下着が、かすかに香の匂いのする息遣いが、俺を興奮させていた。
まだ発達途上の胸の膨らみが、その小豆のような先が、多分ノーブラの旗袍越しにもよくわかった。
けれど、仮にも法の番人である俺が、こんな子供に手を出すのは流儀に反した。
いくら歳格好に似合わぬ妖艶な瞳で見つめられても、それはまずかった。

"姐姐が言ってた、オトコのヒトには、こうしてあげたら仲良くなれるて。"

"おい、やめろ、おい!"

シェンホアは俺のTシャツをまくり上げ、その長い舌で、俺の左側の乳首を舐め始める。
そして片手は、相変わらず俺のそれをジーンズの上から撫でている。

背筋を、電流が流れる。
今まで付き合ってきた女にはこっちが一方的に攻めるばかりで、そんなことをされるのは生まれて初めてだったし、ましてや
この子はまだ中学生くらいの子供だ。
その背徳感が、いっそうの快感を俺にもたらしていた。

だが、興奮しているのはどうやら俺だけではないようだった。
シェンホアの座っている、直にシェンホアの下着と密着している、俺のジーンズの太股の部分が、うっすらと湿っている。
きっと、これはそういうことだ。

こんな子供にされるがまま、というのも悔しいので、俺もシェンホアのそこに指を伸ばす。
しとどに濡れて、おそらくはもう透け始めているクロッチ部分を、その食い込んで筋になっている部分を、俺は優しくなぞる。
俺の左の乳首を口に含んだまま、シェンホアは呻く。

"ん……んー……んー…!"

その肉芽は既に硬く、柔らかい、まだ薄い毛の間の溝は、じゅく、と音を立てそうなくらい湿っている。
ぐっちょりと重い、濡れた布の感触を、俺は楽しむ。
シェンホアの口が、反対側の乳首をついばみ始める。
俺は、ショーツの間に指を少しずつ差し入れる。
濡れた粘膜の上を、指が滑る。
ビクン、と背中を震わせたシェンホアの口が、俺の右の乳首から離れる。
二人の荒い息が、『BAD』のラストの部分に被る。
ぬるりと、粘っこい液体が俺の指を汚す。
俺の指が少しずつ、シェンホアのそこに吸い込まれていく。
138『1987年、香港』(多分続く):2009/12/01(火) 13:28:22 ID:Z0BxIAcw
"うあ……あ……ッ……哥哥……維新哥哥ッ……!"

暖かい、じっとり湿った、そこの中。
まだ青い果実のような、瑞々しい、シェンホアの出した液体の匂い。

俺の指を、ぬるぬるしたそこの襞が締め付ける。
少しずつドリルのように指を回しながら奥へ奥へと進めていくと、尿道の裏の部分に指が当たる。
そこを俺が指先でつつくたび、シェンホアは声にならない声をあげる。
シェンホアの両脚に、力が入る。
俺はその両脚を、ぐっと片手で開かせる。
シェンホアの両腕が、俺の首に回される。
俺にしがみつきながら、シェンホアはただひたすら喘いでいる。
中にだんだん空間ができ、空気と液体が混ぜ合わされる音を、ぐちゅ、という音を、俺はわざと立てながらそこをかき回す。
コリコリとした子宮口が、だんだん下りてくる。

"ぁ……もう……ダメよ……私…何も考えられないよ……!"

こんな状態でまだ、どうみてもネイティブではない広東語が出るのが驚きだったが、シェンホアは息も絶え絶えに言う。
背筋は、太股の筋肉は、ぴんと張ったままだ。
俺は、それでも執拗な攻めをやめない。

"!!"

と、声にならない叫びのあと、シェンホアの身体の力が、くたっと抜けた。
シェンホアはそのまま、俺にしなだれかかってきた。
シェンホアのまだ荒い息が、俺の耳元で聞こえていた。
139名無しさん@ピンキー:2009/12/01(火) 14:29:10 ID:Cu8JG/ye
>>133
クールでビターだけど、情が見え隠れするレヴィがいいね。ロックの黒いけど情けない所もいい。
でも日本編って正月じゃなかったっけ?

>>137
貧乏っ娘来た!縞パンってのがいいですね。ちょっとした小道具のチョイスが上手いと思う。

2人も職人さんがいてここに来るのが最近楽しみだ。
140名無しさん@ピンキー:2009/12/01(火) 18:24:02 ID:z5uUBiuu
>>137
ここに来てまさかのですだよw
しかし相変わらずクオリティ高いな
おまけにあんまり無いジャンルも書いてくれるから嬉しい
141名無しさん@ピンキー:2009/12/01(火) 19:34:04 ID:4nTs/9P7
>>135 
GJGJ!
日本編ネタはタイムリーで今の時期読むにはやっぱりいいなー。
切な描写上手いな。
142名無しさん@ピンキー:2009/12/01(火) 22:35:46 ID:nRVuU2gC
>>135
いいねえ。続き期待してます
143『1987年、香港』(多分続く):2009/12/01(火) 23:58:12 ID:uixGDJ2C
"で、お前、何しにわざわざ台湾からここまで来たんだ?
俺の嫁になりに、とか言うなよ?
そこまで馬鹿じゃない、俺も。
いまどきそんな、日本の三流マンガみたいなことが、あるわけがない。"

段々落ち着いていく息の中、俺はシェンホアの背中を撫ぜながら言う。
シェンホアが顔を上げて、俺の顔をじっと見る。

"……オジサンの、哥哥のお兄さんのこと、伝えにきたよ。"

"兄貴の?"

俺は、目を白黒させる。
だが目の前の少女は、大真面目な顔で。

"オジサンは、張国忠は、囚人同士のケンカで死んだ違うます。
……オジサンは本当は、香港の警察に殺された。"

"なんで、お前にそんなことが言えるんだ?
お前、兄貴の何なんだ?"

"私、台湾でオジサンにお世話なってた、朱俊夫の娘よ。
お父さんは香港来たら逮捕されるますから、来られない。
だから、私来た。"

"おいおいちょっと待て、いきなりそんなこと言われて、俺が『はいそうですか』ってそのままほいほい信じると思ってるのか?
だいたい、なんでそんなことがわかるんだよ?"

"これ、オジサンと一緒の写真よ。
それにこれ、オジサンからもらった哥哥の写真。"

シェンホアはリュックサックを脇に下ろすと、2枚の写真をその中の財布から出す。
確かにそのセピア色の写真の1枚には、笑顔の、生前の兄の膝の上に座っている、今よりも幼い、でもさっきと同じように
目を糸のように細くして笑うシェンホアが写っているし、もう1枚は、警察学校に入ったばかりの頃の俺の写真だ。
それに、確かに現在『中華民国』と『The Crown Colony of Hong Kong』の間には犯罪者引渡条約は締結されていないから、
そういう部分に関しては、この子は間違ったことは言っていない。

"ああ、確かにこれは俺の兄貴に、俺だ。
よし、お前の親父さんと兄貴が知り合いで、お前が俺や兄貴のことを知ってるというところまではいい。
だが、だからといって、お前が皇家香港警察の陰謀をなんで知っているのかの証拠にはならないんだよ、小姐。
何事も、証拠が必要だ。
ことに、そういう微妙な事情についてはね。
ジェンガをびっしり立てるように、あのくそったれな長城のように、積み上げた証拠が必要だ。"

だが、シェンホアはそれには答えず、俺の真後ろの大きな出窓の向こうを見て血相を変え、こう叫んだ。

"哥哥、伏せて!"

俺は再度シェンホアに押し倒される格好で、床に頭をしこたま打つ。
次の瞬間、出窓のガラスがビシッと割れ、玄関のドアに数発の弾痕が刻まれる。

"何だ何だ、何がいったいどうなってるんだ!?"

俺はいつしか、そう叫んでいた。
冷静なシェンホアが、リュックサックからごそごそと青龍刀を取り出すのが、見えた。
俺も、のそのそと床を這いながら、ラジオの載った棚の上の、兄の形見のベレッタに少しずつ近づいていった。
144『1987年、香港』(多分続く):2009/12/02(水) 11:56:47 ID:6Ti0+5mD
伏せたまま、青龍刀を片手に持ったシェンホアが、窓の向こうの林を指差す。
そしてそのまま、とっさに俺が逃げ込んだホームバーの方へと這い寄ってくる。

"あそこ、狙撃手いるますよ。
スコープが太陽に反射して光てる……多分、1人か2人。
私は、接近戦しかダメね。
……哥哥、どうするか?"

"そういうこと訊いてるんじゃない。
なんで俺が、朝っぱらから狙撃されなきゃならんのだ?"

"つまり、哥哥には、ずと監視がついてたってことですだよ。
きと、お兄さんのことで。
あいやー、私も不注意だたよ。
…何か、逃げる手段、あるか?"

"地下の共用ガレージに、俺の車がある。
だが、そこにたどり着くまでが、ちょっと骨折りかもしらん。
とはいえお前も多少の武術の心得は……ありそうだな。"

俺は、新しいジタンを咥えて火をつけると、さっきなんとか手を伸ばして取った、兄の形見のベレッタをホルスターから抜いて
両手に構える。
兄がグリップに掘らせた『天帝』の文字と、龍の紋章が鈍い光を放つ。

"それ、オジサンの銃か?
台湾で、見たことある。"

"ああ、そうさ、兄貴の形見だ。
皇家香港警察の人間としては、本当はこういう装飾が入ったのは使っちゃ不味いんだが、どうも愛着があってね。"

また、数発の弾が打ち込まれる。
俺たちの真上、棚の上のラジオと、半分も手をつけていないジョニー・ウォーカーの瓶が弾け飛び、床に落ちて砕け散る。
周波数の狂ったラジオからは、もう雑音しか聞こえない。

"あーあ、まだ少ししか飲んでないのに。
まったく、粋ってもんを解さない連中だな。"
145『1987年、香港』(多分続く):2009/12/02(水) 11:57:21 ID:6Ti0+5mD
バタン、と音がして、玄関の戸が蹴破られる。
紺のユニフォームとガスマスクに身を包んだ2人の男が、MP5を手に、ドカドカとなだれ込んでくる。
俺たちは、ホームバーの影から、それをちらちら確認する。

SDUの、『飛虎隊』!?
ということはだ、俺はとんでもないものを敵に回している。
この子の言うことは、もしかしたら本当かもしれない。

"とりあえず、ここから生きて出るのが先決だ。
お前と俺で1人ずつ、やれるか?"

"大丈夫ですだよ。
飛び道具なら、私も持ってるね。"

小声で話しながらシェンホアは、キラリと光る、何か日本の忍者の投げナイフのようなものを取り出す。
……たしか『苦内』だったか?
それを片手の指と指の間に4本挟み、もう片方の手では青龍刀を握っているシェンホアは、とても14〜5歳には見えなかった。
ある程度の場数を、この子も踏んでいる。
それが、心強かった。

"Let's Rock!"

俺のその言葉を合図に、2人はホームバーからさっと飛び出した。
そして、俺は二丁拳銃、シェンホアは苦内でそれぞれ1人を片付けると、俺たちは廊下へと足を踏み出した。

きっとまだ、アパートの中にはSDUの連中が潜んでいるに違いなかった。
だが、どのみち逃げ場はここしかなかった。
血中のアドレナリンが、満ち満ちているのを俺は感じていた。
146大神竜一朗:2009/12/03(木) 15:39:02 ID:p6fXJOSY
         BLACK LAGOON
     〜11mg程度の二酸化炭素〜  大神竜一朗


 ロアナプラ。俺はこの街に帰ってきた。
日本に戻ることを選ばず。

 陽も沈みかけたぐらいに、ベニーに頼まれた仕事の為事務所に向かった。

 ガチャ
「あん?…ロックか。遅いじゃねぇか、今頃お目覚めかい。」
 事務所のドアを開けると、ソファーにレヴィが寝転がり雑誌を読んでいた。
銀次との決闘での傷がまだ治っていなく、松葉杖が背もたれに立てかけてある。
癒えてないなら自分の部屋にいればいいのに。
別にここに来てデスクワークを手伝ってくれるわけじゃないんだ。
「レヴィ来てたの…。あれ、ダッチは?」
「姐御んとこだ。」
「そうか。」
 着てきたジャケットをデスクトップのある椅子に掛け、コーヒーを入れに
流し台に向かった。
「あたしのもな。」
 寝転んだままのレヴィが俺に言う。
「砂糖もミルクも入れんなよ。」
「………ああ。」
 出来上がったコーヒーが準備されているわけなく、ヤカンを火にかけ
デスクトップのある机に向かった。
「あれ?コーヒーはどうした。」
「まだ、湯が沸いてない。」
「チッ、さっさとしろよな。」
 先にいたお前が湯ぐらい沸かしてろよ。イヤなら自分で缶コーヒーでも買いに行きな。
ろくに歩けねぇその足でな。
「レヴィは、いつからここに?」
「昼前だ。てめぇが迎えに来ねぇから足引きずってなあ。」
「行くとか、約束してたっけ。」
「いや……。」
 こういうヤツだ。いつも自分中心でモノを考えやがる。
きっとこの調子じゃ今日起きてから何も食ってないんだろうな。
ま、俺が知ったことじゃないけどな。
椅子に座りPCの電源を入れた。
「ロック、この雑誌読んだか?笑えるぜ。」
「いや、まだ……。」
 PCが立ち上がりファイルを開く。
ん?ほとんどベニーがやってくれてる。これなら早い。
早速作業にとりかかり、キーボードをたたいた。
「ロック、この前の張の旦那のジョーク覚えてるか。ケンタッキーを間違えた話し。」
「悪いがレヴィ、俺は今日中にこの仕事を終わらせなきゃいけないんだ。」
「ベニーはどうした。」
「バンコクまで買い物に行ってる。それで俺が頼まれたんだ。
 だから今は話せない。」
「そうかい………。」
 レヴィは再び雑誌に目を移す。
お前は気楽なもんだ。そうやって一日中寝転がって雑誌見てりゃいいんだからな。
喉が渇けば俺にコーヒーを入れさせ、退屈になりゃ俺に話しかけ、まったく迷惑だ。

 確かに日本では守ってもらった。駐車場でミス・バラライカに殺されそうになった時も
お前は俺の為に、銃を抜いてくれた。それは感謝してる。
 でもなレヴィ、それはお前の仕事だ。お前自身、自分が俺の銃だと言ったんだ。
だからロアナプラに帰ってきてからも、礼の言葉は言っていない。言う必要もない。

147大神竜一朗:2009/12/03(木) 15:40:57 ID:p6fXJOSY

「暇だな……ロックこっち来て話でもしようぜ。」
「ここからでも十分聞こえるよ。」
 自分勝手なヤツだ。俺は今仕事をしてる、そう言わなかったか?
暇なのはお前だけだ。
「なら、カードだ。金賭けてな。」

 だんだんイライラしてきた。こっちの仕事が片付かない。
「何か話してよ、ここからでもトークできる。」
 PCでの仕事を進ませながら、ソファーで寝転ぶレヴィに言った。
俺の視線はデスクトップのディスプレィ、耳はソファーに。
「…………………。」
 話の相手が黙っているのか、背中の方からは何も聞こえてこない。
黙り込む話し相手の方を見ると、雑誌を開いたまま顔に落としソファーに寝そべっている。
こいつから話そうぜって言ってきたんだろ。
まあいい、黙ってくれてりゃ話さずにすむ。

「なあロック……。」
「ん?」
「いつか言ったコト、覚えてるか?」
 雑誌で顔の隠れたレヴィが、篭もった声で暇つぶしのトークを始めてきた。
きっと中身のないくだらないトークだろう。明日になったら忘れるような、くだらない。
「いつの話し?」
「日本に行く前、あたしの部屋で話した……。」
「さあ、ちょっと分からないけど……。」
 正直分からない。俺とお前との会話なんて全部覚えてるわけないだろ。
「…………。」
 黙りこむレヴィ。被さった雑誌で顔が見えないせいで表情が分からない。
何も言わない。続きはないのか?まあいい、仕事にかかれる。
再びキーボードをたたき始めると、その手を止めさせるように、
「あたしとお前がやってないことが一つある……。覚えてるか?」
「……?」
 確かそんなコトを言われた気がする。9回目のセックスをした翌朝に。
とっさに浮かんで言ったのはアナル舐めだ。レヴィはまだ俺のケツの穴は舐めてくれていない。
ペニスは生で舐めるくせに、アナルはできねぇっておかしな話だ。
 レヴィが言うにはベットでも外でも出来るコトらしいが。
「ごめん、ずっと考えてたけど分からなかったよ。」
 嘘だ。全く考えてなんかいない。忘れてたぐらいだ。
「………。」
 また黙り込むレヴィ。やめろ、その沈黙。
顔が見えないんで怒ってる度合いが分からないから、話の返しようがない。
「えー…と。」
 白々しくも考えてる演技をする。ディスプレイを横目にレヴィの寝そべる
ソファーの方を見た。

148大神竜一朗:2009/12/03(木) 15:42:19 ID:p6fXJOSY



「確か……まだ、してねぇよな。」
 雑誌で顔が隠れたままの彼女、
「何を?」
「…キス。」

 それがクイズの答えか。くだらない。引っ張るだけの答えか?
したか、してないかで言うとしてないよ。でもそれはなお前と初めてセックスした日、
キスしていいかって俺が聞くと、照れ臭ぇからイヤだって言ったんだろ。
 それからお前とセックスしてもキスはしなかった。
俺としてはフェラしてくれるから全然気にならなかった話だ。
 そんなコトをいまさら。

 くだらないクイズだ。レヴィ、笑えねぇよ。

 今、部屋の時計は16時半。ダッチも、ベニーも今日は帰りが遅い。
下手したら時刻の針が明日を指す頃になるかもな。それまでレヴィと二人っきり。
考えようによっちゃあ、いい。プレイ時間がたっぷりある。それに事務所はまだ未プレイだ。
 さて、どうやってもちこむか。

 俺はレヴィが出したダイスを使うことにした。

「レヴィ、………キス………しよ?」
「え…?」
 今の声は雑誌で顔が見えなくとも分かる。怒ってはいない。
俺はレヴィの寝転がってるソファーの肘掛に腰掛けると、その気配でとっさに身を起こした。
バサッと雑誌が床に落ちる。
「レヴィと、……キス、してみたくてさ。」
「は!?あたしはそんなつもりで言ったんじゃねぇよっ。」
 起き上がってくれたお陰で、ソファーにスペースが空きそこに座った。
レヴィとは拳一つ分ほどの距離。
「キス、…ダメ?」
「おいっ、あたしとなんかキスして楽しいのか?」
 そりゃあ出来ることならエダとキスがしたいさ。でも彼女とはそんな関係じゃない。
それにこの場合でのキスは鍵だ。セックスまでのな。
「お願い、レヴィと……キスしたい。」
 こいつの鍵の開け方はこうだ、決して強引に開けたりしない。とことんした手に出る。
「お願い………させて。」
「……………。」
「おね……っ!!?」

 レヴィが俺の唇に自分の唇を重ねた。

「!!?」

 一瞬のことだった。
レヴィが顔を離し互いの唇が離れた。別に顔を赤くするわけでもなく、
「うるせぇから、してやったぞ。これで満足か?」
 早すぎるキス。言葉だけじゃなく本当に唇を重ねただけのもの。
これじゃ次に進ませようがない。別にマジでキスがしたかったわけじゃない。
キスってのはあくまでセックスする為の鍵なんだよ。
レヴィ、お前だってそのつもりでしたんじゃないのか?
「あ、ありがと……。」
 礼になる言葉を言っておく。他に言いようが無い。
149大神竜一朗:2009/12/03(木) 15:43:38 ID:p6fXJOSY

「あたしとキスしたとか、ダッチやベニーに言うなよ。
 仕事がしにくくなる。」
「言わないよ。」
 言ってどうなる。何の自慢にもなりゃあしない。
こいつはこいつで照れるでもなく、どちらかというと呆れた風に。
何かすかされた気分だぜ。このダイスは投げ損てわけか。
押し倒すってキーもあるが、そいつは利口じゃねぇ。レヴィには使えない。
ソファーで向き合い座ってる俺とレヴィ。
「…………。」
 何だよ、何か話せよレヴィ。
クイズも終わり、お前の暇つぶしにも付き合い、もういいだろ。
セックスさせないんなら、仕事の続きさせてもらう。
俺はデスクワークに戻るためソファーから立ち上がると、
「待てよ…。」
 レヴィが俺の手を掴んだ。
「ん?」
「………。」
 何だよ、お前の暇つぶしトークならデスクとソファーからでも出来るだろ。
俺はレヴィに引き戻され、またこのソファーに座った。
すぐ隣にいるレヴィ。笑顔、何故?
「クッ、…。」
「?」
「クッ、ハッハッハッハッハッ!」
 何がおかしい。
「ハッハッハッハッ、すまねぇ。いやまさかお前とキスするなんてな。」
 お前がフったからだろ。
「初めて会った時はよぅ、すげぇ弱そうで気に入らなかったんだけどな。
 いつのころからかヤる仲になって。……フッ、笑えるぜ。」

ピュー

 火にかけていたヤカンが沸騰したようだ。
火を消そうと立ち上がる俺をさっきより強い力で引き戻す。
「ロック、もっ一回。」
 すぐにキスの事だとわかった。レヴィの方からダイスを投げてきた。
俺はソファーに座り、隣にいるレヴィとの距離をつめ、空間をつめた。
これならセックスに繋げれそうだ。キスはエダを思い浮かべてしてみたい。

 俺とレヴィの唇が重なっている。
まぶたを閉じ俺は暴力教会のシスター、エダを思い浮かべながらキスをした。
エダの唇は想像してたより柔らかい。透き通るように白い肌、美しすぎる外見に似合わず
ブラックなジョークをよく言う。この柔らかい唇が言うのか。
吸い付くわけじゃなく重ね合う、まるで恋人同士のようなエダとのキス。
 一度でいいからエダとキスをしてみたかった。
その先だってエダとしてみたい。

「ロック…。」
 唇と唇の間で声がした。エダではなく、レヴィの声。
その声に目を開けるとレヴィの顔が目の前にあった。
現実に引き戻された俺は、さり気なくレヴィの身体を離す。
気が付かなかったが、俺はレヴィの肩に手を掛けてキスしてたようだ。抱え込むように。
 情けない……。
150大神竜一朗:2009/12/03(木) 15:45:12 ID:p6fXJOSY

 レヴィがネクタイを引っ張り、俺の身体を自分に引き付けると、
何も言わず、目を閉じ俺の唇にキスをした。
「ん……。」
「……。」
 別に舌を絡ませるようなディープなものじゃない。
レヴィも目を閉じている。こいつは一体、誰を思い浮かべ俺とキスしてるんだ。
俺は誰の代わりなんだ?
「ん……。」
 レヴィの吐いた息が唇の隙間から俺に入ってくる。

 ほんの僅かな二酸化炭素が。
 

「ロック…。」
 再び俺の名を呼んだ。かすかに開いた隙間から。だがそれも密着し唇を重ねると、
消えてしまう程度の小さな声。

 一度消えたエダの顔は戻らない。
次に進むべくレヴィの唇から離れる。
「ロック…?」
「レヴィ、また……チンチン舐めてもらえるかな。」
「…………初めてしたんだ。もう少しキスでいいだろ。」
「レヴィにはキスより、フェラチオしてもらいたいなー……って。」
「!?」
「レヴィのフェラチオ……気持ちいいからさ。」
「…………。」
 俺はレヴィにペニスを舐めさせる為にズボンのチャックを下げる。
「今日は……ヤリたくねェ。」
 ハァ?まあいい、ペニスを出しゃあ咥えてくれる。レヴィはそういう女だ。
俺はズボンを履いたままトランクスの隙間から、まだ勃起してないペニスを出した。
我ながらみっともない格好だ。でも勃起すればさまになる、だから早く咥えてくれ。
「もうやめだ、やめ!」
 レヴィが反対側を向く。

 何だよ、自分勝手なヤツだぜ。こいつの鍵は一体どこにある。
そん時に気分でころころ形変えやがって。
 俺は出したペニスを引っ込ませチャックを上げた。まったくダサい絵だな。

151大神竜一朗:2009/12/03(木) 15:47:09 ID:p6fXJOSY


 セックスのあてが無くなり、デスクワークに戻ろうと立ち上がったとき
トルルルルルルル

 事務所の電話が鳴った。
歩くのに不自由なレヴィ、じゃあ俺が出るか。きっとダッチかベニーだろう。
「はい、ラグーン商会…。」
 電話に出ると、
『あーん、色男じゃないの〜。』
 声の主はシスター・エダだった。
「あ、…エダ。」
 レヴィが遅れて興味なさそうにこっちを見る。
「ああ、分かった。……ああ、…………ああ、言っとくよ、それじゃ。」
 受話器を置き、電話をきった。


「エダ………何て。」
 少しトーンが低い。
「久しぶりに飲もうって、レヴィに伝えてくれ…てさ。」
「あいにく今日はそんな気分じゃねぇ……。」
「そう……。」
 俺は着てきたジャケットに袖を通し、ポケットの中の車のキーを確認した。
「あん?どこ行くんだよ。」
「行くって言ってしまったんだ、俺だけでも行かないとな。」
 こんなチャンスめったにない。レヴィが一緒じゃなくエダと二人っきりだ。
しかも電話の声が少し、酒が入ってた。こりゃあ上手くいけばヤレるかもしれない。
 エダは系統がレヴィに似ている。した手にでてウブな男を演じればいい。
そうすれば向こうから俺を持ち帰ってくれるだろう。
「行く必要なんてねぇだろー!」
 何かレヴィが叫んでいる。

 俺はヤカンの湯でコーヒーを作ってやり、それをレヴィに運んだ。俺の足取りは軽い。
「なぁロック、あいつは一人で飲むのが好きなんだ。ほっとけよ。」
「一人がいいならわざわざ電話なんかしてこないさ。」
 コーヒーを置くと、もう一度受話器を取りダイヤルを回した。
「オイッ、何処にかけてやがる。」
「静かにっ。」
「聞いてんのか!」
 レヴィの言葉を無視しつつ相手が出るのを待つ。
『ハイ。』



 電話が終わると受話器を置いた。
「レヴィ、ピザをデリバリーしといたから。」
「勝手なことすんな!」
「サイズはMにしたけど、多かったら残しといて。明日俺が食うから。」
「デスクワークはどうするんだ!?」
「明日すっとぼけた顔して、ベニーに謝る。」
 エダと二人っきりで飲める。上手くいけばヤレるかもしれないんだ。
土下座の一つぐらいしてやるよ。
「勝手にしろ……。」
 レヴィからお許しが出た。
152大神竜一朗:2009/12/03(木) 15:48:36 ID:p6fXJOSY

 俺はさっと流し台でコーヒーのついた手を洗った。
急がないとな。エダの酒が冷めちまう。イエローフラッグに行く前に
自分の部屋に寄らなきゃ。今コンドームをもっていない。


「仕方ねぇなあ……。」
 ソファーに座ってるレヴィが、呆れたような表情で
肩をすくめ、トントンと俺とキスしてた時座ってた場所を叩く。
「?」
 何だ?そこに座れって意味か?
「仕方ねぇから、フェラチオしてやるよ。ここ、座んな。」
「え、でもさっきイヤだって……。」
「可愛そうだからな、……してやる。だから座れよ。
 今日はお前のワガママに付き合ってやる。」
 はあ!?ふざけんな!しないとか、するとか。
仕方ないか、俺達プライベートはセックスフレンドだもんな。
その時の気分に左右されても。ホント、仕方ねぇ話だ。
「ゴメン、…今はいいや。」
「!?」
 レヴィに笑顔で返してやる。

「………………。」

 無理させてゴメン、の意味を込めソファーのレヴィに手を振って、
事務所を出た。




 今夜のことを想像しただけで……



 高鳴る胸を押さえきれず、俺は車のキーを回した。


       
             END


153名無しさん@ピンキー:2009/12/03(木) 17:50:34 ID:sBX08FK9
相変わらずGJヽ(゚∀゚)ノ

レヴィたんかわえぇ〜
その分岡島さんが腐れ外道に見えてしまうw
ヤることしか頭にないのかこの男。。。
154名無しさん@ピンキー:2009/12/03(木) 20:18:23 ID:HOvD85Bj
もう黒島っていうか屑島だな…
でもレヴィは相変わらず切なくてGJ
155名無しさん@ピンキー:2009/12/03(木) 21:26:18 ID:wu9BhlGL
うわーー犯島殴りてぇ…
156名無しさん@ピンキー:2009/12/03(木) 21:54:40 ID:VXQZVSW8
なんか、「誠死ね」を思い出した。
イヤイヤ、でもGJです。こういう男、いるよね。
クズすぎるのに、読んでいて何故か腹はたたず、ただ切ない。
絶妙ですな。
157名無しさん@ピンキー:2009/12/04(金) 02:12:53 ID:sRamlYL9
レヴィたんがかわいそうすぎるw
屑島死ね^^
158名無しさん@ピンキー:2009/12/04(金) 04:45:52 ID:5Uq54rK5
ちょw犯島・・・

レヴィたんが一途すぎて泣けてくる。
これからお互いの気持ちが交わってくれることを信じて・・・GJ
159名無しさん@ピンキー:2009/12/04(金) 08:17:28 ID:d2xtijvQ
後味悪すぎ
ラブラブなロクレヴィ希望
160続きません:2009/12/04(金) 10:31:20 ID:FV9PQpnk
いつものロアナプラのアパートで、いつものようにあたしは目覚めた。

畜生……頭がズキズキしやがる。
しかも着替えないでそのまま寝てたのか、あたし。

ったく、ロックの野郎、なんであんな底なしなんだよ。
あたしがこんなになるくらい飲んでるってことは、あいつはもっと飲んでたはずだ。
クソッタレのホワイトカラーめ……。
そのうち額でお前の好きな……『マイルドセブン』だったか、吸えるようにしてやるからな、今に見てろ。

迎え酒にバカルディをショットグラスで流し込み、アパートの前で流しのトゥクトゥクを捕まえて一路ラグーン商会へ。
クソッ……これならタイレノール飲んでくるんだったか?
相変わらず、頭はコンクリートで固められてるように重い。

ラグーン商会に着くと、あたしはチャラチャラした格好の運転手に50バーツ札を『釣りはいらねえよ』とばかりに投げつけ、
駆け足で階段を上がる。
そして、力任せにドアを開ける。

ドアの音に振り向く、ダッチとベニー。
ん、ロックのヤツ、まだ来てやがらないのか?

"遅かったな、レヴィ。
あんまり遅刻が続くなら、今度から15分遅れるごとにお前の給料から50ドル引いてやるぞ?"

"なんだー、また二日酔いか、レヴィ?
もういいトシなんだからさ、そんなになるまで飲まなきゃいいのに。"

"おい、ロックのクソ野郎どうした?"

"ロック?
そんなヤツ、聞いた事ねえな。
知ってるか、ベニー?"

"いや……知らない。"

"おいおいお二人さんよ、エイプリルフールまではあと4ヶ月以上もあるぜ?
ロックだよロック、あのホワイトカラーのイカレたジャパニーズ野郎だよ!"

"何言ってんだお前?
ははーん、また二日酔いで頭痛がするからって、タイレノール、指定量以上飲んだんだろ。
酒の後にあれ飲むとヤバい、って俺前に言っただろ?
それとも、レガーチかトー・チーあたりからなんかヘンな薬でももらってトリップしてたのか?"

"レヴィ、クスリやるのは関心しないぜ。
身体、ボロボロになっちまうぞ。"
161続きません:2009/12/04(金) 10:31:41 ID:FV9PQpnk
"ふざけんな!
あんまりあたしをバカにすっと、いくらお前らでもケツの穴溶接して一生人工肛門でしかクソできねえようにしてやんぞ!"

"……お前、『人工肛門』なんて単語、知ってたんだな。"

"ベニー、こういうときはそういう冗談は……。"

あたしは右のカトラスを抜くと、ベニーの足元めがけて一発ぶっぱなす。
そんな冗談、ちっとも笑えねえ。

"おいレヴィ、どこ行くんだ!?"

あたしは、腰抜かしてションベンちびりそうになってるベニーと困惑した表情のダッチを背に、ドアを乱暴に開け、
来たとき以上の勢いでまた階段を駆け下りていた。
背後で、ドアが閉まる音がした。

ロックなんて、始めからいなかった?
全部……あたしの夢?
いや、そんなはずはない、だって昨日、イエローフラッグで飲んだ後、あいつはあたしをアパートまで送ってくれたんだ。
あのとき二人で乗ったタクシー、確かピカピカのアルティスだったが、その新車の匂いだってはっきり覚えてる。

あたしは、気付いたらロックのアパートの前まで来ていた。
そうだ、ロックはここに住んでるんだ。
昨日までは、確かにそうだったんだ。

だが、ロックの部屋のドアには、ちんぷんかんぷんのタイ語と連絡先らしい電話番号、それと英語で『AVAILABLE』と書かれた紙が
張られているだけで、長らくヒトの住んでいた痕はどこにも見えなかった。
部屋番号だって、ここで間違いなかった。

"おいロック、いるんだろ!?
かくれんぼは終りだぜ!
ローック!!!"

あたしは、ドアをドンドン叩きながらロックを呼ぶ。
だが、中からは何の音もしなくって。
相変わらず、生活感らしいものは何も感じられなくって。

"ロック……バカヤロー……畜生……!"

あたしの両の目から溢れてるこれは、何だ?
もう泣かないって、NYの頃からもっと酷い目にずーっと遭い続けて誓ったはずなのに、この熱い滴は何だ?

あたしは、ドアの前に無力に崩れ落ちた。
頬を伝ったあたしの涙が、コンクリートの床に丸いシミを何箇所も作っていた。
だが、あたしの涙は止まらなかった。
あたしは、いつまでも、いつまでも泣き続けた。

<続きません>
162『1987年、香港』:2009/12/04(金) 21:39:16 ID:mSo/DwPw
更に4人の男たちを倒してたどり着いた共用ガレージの俺のMR2は、果たして無事だった。
見たところ、タイヤに穴も開けられていないし、爆弾の類も仕掛けられていないようだ。

俺はキーを開けると、シェンホアを助手席に招き入れる。
キーを捻ると、4A-GEの小気味良い唸りがガレージを満たす。

"とりあえず九龍城に逃げ込めば、あいつらもそう簡単には追ってこられない。
俺も身内だから、皇家香港警察の弱点は、いやというほど知っている。"

"哥哥、そんな簡単に、飛虎隊が目標を逃がすますか?
絶対まだ何かあるよ、きっと?"

俺も、そう信じたかった。
だが、俺がアクセルを踏み込んでMR2を発進させると、ガレージの中の一台、少し前の型の白いクラウンが急発進して、
俺の車にそのまま突っ込んでくる。
急ブレーキを踏み、間一髪でクラウンをよけると、そのクラウンはそのまま横に駐車されていたシトロエンに突っ込み、
またバックして戻ってくる。

"おっと、こりゃジャッキー・チェン張りの映画が撮れるかもだぜシェンホア!
シートベルトは締めたか?"

俺はそういいながらも再びアクセルを踏み込み、ギアを入れてMR2を発進させる。

"ちょっと哥哥、これじゃベルト締められないよ!
香港は英領だから運転はみんな丁寧、って言ったのはどこの馬鹿か!?"

シェンホアはわめくが、そんなことは言っていられなかった。
駐車された車の陰からわらわらと紺色の制服にガスマスク姿の男たちが出てきて、こっちにいっせいにMP5を向けていたのだ。

俺は、シェンホアの背中をぐっと押して、身を伏せさせる。
俺たちの真上を銃弾が横切り、Tバールーフに何発か穴が開く。
クラウンは、俺たちの後ろを思い切りアクセルを吹かしながら付いてくる。

ガレージのシャッターは、閉まっていた。
だが、俺に選択の余地はなかった。
俺は目を見開いたまま、MR2のアクセルを踏み込んだ。
シャッターがアメのように曲がって吹っ飛ぶのが、スローモーションのように俺には見えた。

俺のMR2のバンパーの部品も、そしてオークションで手に入れた希望ナンバーも、一緒に吹っ飛んでいく。
あーあ、これボディ同色バンパーの限定車なのに……しかし、そんなことは言ってはいられない。
今度は、さっきのクラウンと、さらに同じく少し古い型の白いセドリックが俺たちを追ってくるのが、ミラーごしに見える。
俺はニヤリと笑いながら、目に付いた小路に逃げ込む。

麺やら粥やらの屋台を2〜3個引っ掛けながら、俺はどんどんアクセルを踏む。
クラウンも、セドリックも、負けじと俺についてくる。

小路を抜け、目抜き通りに出る。
極彩色の看板の中、クリーム色の、ダブル・デッカーのレイランドのバスが、クラクションを鳴らしながら急停止する。
後ろの2台も、そのままだ。

と、クラウンの助手席からガスマスクの男が上半身を乗り出し、こっちにMP5を向けてくる。
俺はサイドを引いてロックさせた後輪を振りながら、再び小路に逃げ込む。
クラウンは小路の入口の郵便ポストに突っ込み、エンジンルームから白煙をあげる。
163『1987年、香港』:2009/12/04(金) 21:39:38 ID:mSo/DwPw
"これで、1台、と。"

"安心するのは、早いね!
まだ、1台ついてきてるよ!"

シェンホアの言う通り、セドリックは、まだしっかり俺の後ろにいる。
セドリックの助手席の男も、身を乗り出してこちらに狙いを定めている。
俺は再び大通りに出ると、一段ギアを落として急加速する。
そしてそのまま、信号をいくつも無視して郊外の方へと車を進めていく。
セドリックは、まだまだついてくる。

"シェンホア、少しハンドル頼む!"

"え、ちょっと、私クルマなんて運転したことないよ!"

俺はアクセルを踏んだまま、窓から後ろ向きに上半身を出し、ベレッタを数発ぶちかます。
そのうちの一発がセドリックの運転手の胸に命中し、セドリックはそのままガードレールに横っ腹を擦りながら街灯に引っかかって
横転する。

俺は、急ブレーキを踏んでMR2を停める。
そして、俺を追う連中の手がかりを掴むために、バックしてセドリックのところまで戻る。

逆さまになり、白煙を上げるセドリックの助手席から、ガスマスク姿の男が一人、片方のブーツが脱げた脚を引きずりながら
よろよろと降りてくる。
俺は両手にベレッタを構えたまま、男に近づく。

"ま、待て『ベイブ』、俺だ!
梁だよ、同期の!"

俺がガスマスクを剥ぎ取ると、現れたのは確かに梁の顔だ。

"梁、まさか、お前と銃を向け合うとはな。
誰の命令だ?"

"それは、言えない。
だが、お前にSDUのマークが付いていても、文句は言えないだろう?
なにせお前の兄貴は……。"

俺は梁がそう言い終わる前に、奴の腕をねじ上げた。

"痛ててて!
やめてくれ、腕が折れちまう!"

"言え!
誰の命令だ!?"

"哥哥、こっちのが早いよ!"

シェンホアが、ギラリと光る青龍刀を抜き、梁の首に当てる。
薄く皮が切れ、梁の首を、つーっと血が垂れる。

"香港脚のお兄さん、言うね。
首、ナマスにされたいか?"

"わわわわ、わかった、言うよ!
林署長だ!
署長が、お前の部屋を盗聴して、台湾から誰か来たら、お前と一緒に殺せ、と!
秘密をばらされる前に、殺せ、と!
しゃ、喋ったからいいだろ、俺を解放してくれよ!"
164『1987年、香港』:2009/12/04(金) 21:39:59 ID:mSo/DwPw
俺は無言で、梁の鳩尾に一発パンチを食らわせる。
梁は、そのままバタンとアスファルトの路面に倒れる。

『林署長殿 尖沙咀のスターフェリー乗り場で今夜20:00に待つ 張維新』とその場で走り書きしたメモを、俺はセドリックの
ワイパーに挟んだ。
そして俺は再びシェンホアと一緒にMR2に乗り込むと、ギアを入れ、アクセルをぐっと踏み込んだ。
165『1987年、ビッグ・アップル』:2009/12/05(土) 18:35:37 ID:gX6UMDGw
二棟建てのワールド・トレード・センターが、青空を背に、太陽の光を反射して燦燦と輝いていた。
そこらじゅうに、星条旗がはためいていた。
俺は、少し鼻にかかったレイバンを、くっと指で上げた。

俺と王社長とシェンホアが、完全武装の警官20人を尖沙咀のスターフェリー乗り場で血祭りにあげてから
既に数週間がたっていた。
林署長の最期の言葉が、それが俺の心に、ずっと引っかかっていた。

"お前の兄貴を葬る算段をつけたのは、確かに俺だ。
だが、俺たちを動かしていたのは、NYにいる『The Shadow』だ。
この俺も、そいつが日本人だと言うこと以外は、何も知らない。
お前の兄貴のことは、すまないと思っている。
本当だ!"

俺はいま、NYにいる。
ブロンクスにいる、王社長の知り合いの牧師を頼り、こうして身ひとつでやってきたのだ。

長距離バスの停留所から件の教会までは、まだかなり距離があった。
俺は、まだ林署長の言を、信じきれずにいた。

表向きはキャッサバでん粉をタイから輸入する商社に勤めていた兄が影で扱っていた薬、それは、人間の戦意を
高揚させる薬だったという。
『レッド・アイ』―それは、目薬状の、投与した後の目が血走る様子から名づけられた、興奮剤。

ソ連のアフガン侵攻時に、それは実戦投入された。
無益な戦争で疲弊させ、ソ連の国力を削ぐために。
ムジャヒディンとソ連軍双方に、戦いを少しでも長引かせるために。
そして、投入される各国の兵器を増やし、軍需産業を潤わせるために。

俺は、ジタンを咥えながら、この混沌とした人種の坩堝を歩く。
そこまで話が大きくなるとは、俺も正直想像していなかった。
だが、どうやらかなりそれは確からしかった。

と、雑踏の中、栗色の髪を真ん中で分けた、目つきの悪い、中国系らしい少女と、肩が触れ合う。

"どこ見て歩いてんだ、チョウ・ユンファ!?
おまえの額に、新しいケツの穴、空けてやろうか!"

穴だらけのジーンズに色あせたパーカを着たその少女は、俺をなじるとまた雑踏へ消えていく。
ああいう手合いは、香港でも仕事柄よく見たもんだ。

…まさか。

やはり、スーツの胸ポケットに入れておいた財布がなくなっている。
振り向いてみても、少女は、もう見えない。
どうやら、地下鉄じゃなく俺は歩いて教会まで行かないといけないらしい。
どうせ現金百数十ドルと、アメックスのカードくらいしか入っていない。
パスポートや何かは、ちゃんと別のところにしまってある。

この国は、俺を祝福してはくれないようだ。
あと10年でくる香港返還の後、どうにかして逃げ込めればいいと思っていたのだが。

俺は顔を上げて、ブロンクスの教会を目指して歩き始めた。
今日も、太陽が眩しかった。
166名無しさん@ピンキー:2009/12/05(土) 20:03:21 ID:gDq+dp6U
おお香港からNYか!!
このシリーズ小ネタがいちいちツボるんで今までで一番楽しんでるぜ!!
167名無しさん@ピンキー:2009/12/05(土) 20:04:28 ID:5IiyHLA/
レッド・アイってカウボーイビバップだったっけ?
168名無しさん@ピンキー:2009/12/05(土) 21:24:00 ID:xBIymfRo
ジョン・ウーテイストがちりばめられてて最高です!
169『1987年、ビッグ・アップル』:2009/12/05(土) 21:41:41 ID:gX6UMDGw
ギギー、と、大きな古びた扉が開けられる。
口ひげを蓄えた、50がらみの長身の洪神父―王社長の、極道時代の仲間だったという―と、同じく50がらみの
隻眼の白人のシスターが、俺をその教会の中へと招き入れる。

"王から話は聞いています、長旅、大変でしたね、張さん。
人探しをされている、そういうお話でしたね。"

"単刀直入に言いましょう。
王社長から聞いておられるとは思いますが、『The Shadow』の件で。
ここなら、いろいろな懺悔をする方も来られる、そのあなた方なら、街の事情にはお詳しいでしょう?"

"シスター・ヨランダ、張さんに紅茶を入れて差し上げてください。
フォートナム・アンド・メイソンの、とっておきのがあったでしょう?"

"アッサムのTGFOPを、お出しればいいんですかね、神父?
ありゃ、あたしだってめったに飲まないんだ。"

うなづく神父の顔をじろっと一瞥し、不承不承といった風で、のそのそとヨランダと呼ばれたシスターが礼拝堂の
奥のほうへと入っていく。
俺たちはキリスト像に見下ろされながら、話を続ける。

"『The Shadow』……怪しげな取引には必ずといっていいほど名前が出てくる日本人だ。
ですが、それ以上の情報にはね、まず先立つものがいりますよ?
私たちだって、そっちの方の仕事は慈善事業じゃない。
そりゃ、ホームレスの炊き出しだってしますがね?"

"事前の打ち合わせどおり、指定の口座に、充分な寄附金を入れさせていただきますよ、神父。"

"ええ、ですが、何事にも確認は必要だ。
チェスの一手を打つには、それなりの算段がいる。
うちからも何人か人を出さないといけないでしょうしね。
……シスター・ヨランダも、ああ見えて大口径の得物を扱わせるとなかなかなんですよ。
あとは、そろそろ来るはずなんだが……。"

バタン、と、礼拝堂の扉が開けられる。
シスター・ヨランダが戻ってくるには早すぎる、と思いながら俺はそっちの方を振り向く。
そこにいたのは……あ、あいつ、さっき俺の財布をすった、あのメスガキ!

"生臭神父さんよ、あたしに用ってなんだ?"

"ああ、レヴェッカ、待っていたよ。
ひとつ、仕事を頼みたくてね。"

"この、チャイニーズの旦那がクライアントかい?
……レイバンにお上品なスーツなんぞ着やがって、いけすかねえな。"

こいつ、そ知らぬふりを通しやがって!

"おいお前、さっきの金、返せ!"

"知らねえな、なんのことだ?"

こんなクソガキと組むなんて、俺はまっぴらだった。
だが、洪神父の紹介とあらば、そこは仕方ないのだろうか。

"張さん、あなたの身辺はレヴェッカに守らせます。
もっともあなたは『サウス・チャイナ・モーニング・ポスト』の一面を飾った男だ、その心配は無用かもしれませんがね。"

俺は、レヴェッカと呼ばれた少女に睨みをきかせてやった。
しばらくむっとした顔でこっちを見ていたレヴェッカが、ふん、と鼻を鳴らしながら、視線をそらした。
170名無しさん@ピンキー:2009/12/05(土) 23:57:10 ID:J4m/5vZs
>>161
あれ・・・?目から海水が・・・・

GJです。
誰かレヴィたんの涙を拭ってあげてくだちい(´;ω;`)
171ロック×レヴィ 日本編  ◆JU6DOSMJRE :2009/12/06(日) 09:43:47 ID:9Vk7Z89d

「……あんた、思ったより馬鹿だな」
冬枯れの空の下、公園の子どもたちの目の前で、実弾を発射させて見せた後。
ホテルの一室に戻ってようやく、レヴィが口を開いた。
レヴィは羽織っていたコートを脱ぎ、乱暴に椅子に向かって放る。
椅子の背に引っ掛かったコートは、僅かにずり下がって中途半端な形でそこに落ち着いた。
「ホワイトカラーってのは、もっと賢い人種かと思ってたぜ」
目を伏せて、レヴィは取り出した煙草に火を付ける。
薄暗い室内灯の中、ライターの火が頬を明るく照らした。
長い睫を一回瞬かせてから、レヴィは手慣れた様子でライターを畳み、
唇からゆっくり吐息とともに煙を吐き出した。
「……あたしが帰れと言ったのは」
壁に背を預け、煙の行く末をぼんやりと見やりながら、レヴィが低めの声で静かに続ける。
「帰った方が、あんたのためになると思ったからだ」
――あんたはあたしなんかと違って、まだ汚れちゃいない。
「レヴィ」
遮ったロックの声を無視して、レヴィは構わず続ける。
「でも」
琥珀色の瞳が真っ直ぐロックを捉えた。
「もう、行っちまえなんて言ってやらねぇ」
――この先あんたが後悔しようと、そんなのあたしの知ったことか。
レヴィは睨むようにロックを見据え、鋭く投げつける。
その強い口調とは裏腹に、ほんの少しだけ下瞼がふるえて瞳の表面が揺れ、
一瞬、泣き出しそうに脆い顔にも見えた。
「レヴィ」
ロックが静かに一歩近寄った時には、もうその顔は煙草を挟んだ手の中に伏せられていて、
表情を確認することはかなわなかった。
「後悔なんて、しないさ」
――だって、最初から決まっていたことだから。迷ったことなんか、無い。
穏やかに、しかしきっぱりとそう告げて、自らもワイシャツの胸ポケットから煙草を取り出した。
――だから、あんたは馬鹿だ、っつってんだ。
つい、と顎を上げ、レヴィは綺麗なアーモンド型をした目を歪める。
鋭くロックの目を射た視線は、彼がくわえた煙草にゆるりと動き、
それが未だ火のついていないことを認めると、当たり前のように火を貸すことを了承したようだった。
くわえた煙草の根本を人差し指と中指の間で支えて、何も言わずに伸び上がるレヴィに、
ロックも少し背をかがめて火を貰い受ける。
互いの視線を煙草の先端に絡ませ、ロックのマイルドセブンの先に火が移ったのを確認すると、
申し合わせもせずに二人は肺の中に溜まった煙を同時に吐き出した。

吐き出して、次に視線をやったのは、お互いの瞳だった。
どちらが先だったかは分からない。
けれど、気づいたら逸らせなくなっていた。
どちらも外さぬ、まっすぐな光。
暫くの間、凍りついたかのように動かなかった二人の間の空気を乱したのは、ロックの右手だった。
煙草を指に挟んだまま、レヴィの背後の壁へ、とん、と手をつく。
レヴィの透き通った瞳が室内灯を反射するのがはっきりと見えた。 
視線を絡み合わせたまま、ロックはゆっくりとその距離を詰める。
つい先程、煙草の火を借りた時のように。
煙草の火は既について、お互いの指の中に収まり静かに燻っているというのに。
レヴィは動かない。


いつもは2本の煙草を挟んだその距離が、ゼロになった――。
172ロック×レヴィ 日本編  ◆JU6DOSMJRE :2009/12/06(日) 09:45:23 ID:9Vk7Z89d
磁石が引き寄せられるように、自然に重ねた唇。
それが特別なことだとはっきり認識したのは、触れた彼女の唇が予想以上に柔らかかったのと、
触れた瞬間、彼女が小さく息を飲むように身体を震わせたのを感じた時だった。

柔らかく重ねていた唇をそっと離して、ロックは迷いなく、付けたばかりの――といっても、
実際それは3分の2以上が灰になってしまっていたけれど――煙草を、
備え付けのデスクの上に置かれた灰皿に押しつけた。
それから次に、同じようにレヴィに指の間に所在なく挟まっていた煙草も。  
「……レヴィ」
彼女の頬に手を伸ばして、静かに名を呼ぶ。
レヴィは眉根をきゅっと寄せてから顔を上げ、紅い唇を開いた。
「……ロック、あんた、ほんとに馬鹿だな」
絞り出される、少し掠れた声。
――けど、あたしも、馬鹿だ。
囁くような声の最後の余韻は、ロックの口腔に消えていった。

柔らかな頬を片手で包み込むようにして深く口付け、自由になったもう片方の手でレヴィの腰を抱き寄せる。
思ったよりずっと柔らかな彼女の身体と、細い腰。
喉の奥で僅かに彼女の声が震えた気がして腕の力を緩めると、レヴィのしなやかな両腕がロックの背中に回ってきた。
彼女の口腔に滑り込ませた舌で彼女のそれを絡め取ると、腕の中の身体が強ばる。
背中の手が、ぎゅっと白いシャツを握り締めた。
日頃、豹のようにしなやかで獰猛に身体を閃かせ、無骨な二挺の拳銃を自在に操り、
鉛玉をお見舞いする時には愉悦に満ちた顔で昏く笑う彼女。
火薬と硝煙の匂いを纏い、本当は美しい形をした目を歪めながら、鬼神のように引導を渡す。
口を開けば悪態ばかり。それも小汚いスラング。
短気で乱暴。戦闘と狂乱の中において最も眩く輝く彼女。  
彼女の所行は地獄からの使者のそれに違いないのにも関わらず、どこか神がかった戦闘能力を見せる彼女の躍動は、
美しく、異形の存在であるようにロックには思えた。
ロックとは違った、手の届かない遠いところにある存在。
けれど、実際距離を詰めてみれば、荒事とは無縁の男の腕の中にすっぽりと収まってしまう程に心許ない。
いくら鍛えたところでその筋肉は男のように堅く太くはならないし、
ぎりぎりまで体脂肪を絞ってもそのシルエットは滑らかな曲線にしかならない。
ようやく彼女の身体から余計な力が抜けたところで、ロックは頬に添えていた手をゆっくりと耳へ滑らせた。
つめたい耳の淵をなぞり、柔らかな耳たぶを指の腹で感じてから、耳の後ろの窪みに指を沈める。
力が抜けた身体をまた竦ませるレヴィの反応が腕と合わせた胸から伝わってきて、
普段はあんなに跳ねっ返りで人を小馬鹿にした態度をとるくせに、どうして今はこれぐらいのことで、
とロックは可笑しくも哀しい気持ちになる。

潜水艦でのあの言葉。
仲間に淫売だと思われる程つらいことは無い。
生きる為ならなんでもやった。

ローワンの店で、二度とやらねぇと腹立たしげに吐き捨てた彼女。

自在にしなを作って見せるエダに向ける、半ば本気で苛立った目。

女として見られることを殊更に拒絶しているのではないか、とすら思う時のあるレヴィを形作った、彼女の過去。

レヴィの反応は「これぐらいのこと」すら彼女には与えられて来なかったということだ、と想像できる程度には、
もうロックは彼女のことを知りすぎていた。
そんなことを彼女に確認するつもりはない。
彼女が何を思っているのか、本当のところは分からない。
ロックの想像が当たっていようといまいと、そんなことはどちらでも良かった。

ただ――。

ただ、今、彼女が嫌がっているのではないといいのだけれど。

それだけを願った。
173ロック×レヴィ 日本編  ◆JU6DOSMJRE :2009/12/06(日) 09:46:57 ID:9Vk7Z89d
動けなかった。

ロックの黒くつややかな瞳に見据えられた瞬間、動けなくなった。
一瞬の反応の遅れが命取り。そんな修羅場を幾つも乗り越えて来たというのに。
ロックの手が顔の脇に付かれ、そして唇が触れた瞬間。
触れているのは、柔らかく重ねられた唇だけ。
他はどこも。
それなのに、触れられていないはずの胸の奥が痛んで、レヴィは動けなかった。

身体を無理矢理押さえつけられているのでもなく、首を絞め上げられているわけでもなく、
レヴィの意志などお構いなしに強引に割り込んでくるのでもなく、ただ触れるだけの。
逃げようと思えばいくらでも逃げられるのに――。
二挺のカトラスが手に馴染んだ頃、これでやっと、あたしの身体はあたしだけのものだ、と思った。
命知らずの男には、鉛玉をプレゼントしてやれば良い。
我慢するのはお終い。
あたしは自由。
もう、誰にも好き勝手にはさせない。

そう、思ったのに。
心臓を縫い止められたように動けないなんて。

しかし、自分に逃げるつもりなど全く無いことも、ちゃんと分かっていた。
――まったく不本意なことに。 
174ロック×レヴィ 日本編  ◆JU6DOSMJRE :2009/12/06(日) 09:47:29 ID:9Vk7Z89d
清潔で温く、平穏な空気を纏ったこの男。レヴィが与えられず、望んでも叶わず、そして諦めたもの全てを持つこの男。
あの背徳の街で、いつまでもそれを後生大事に抱えたまま、しっかりと自分の居場所を作っていった男に、
レヴィは随分と苛立った。
けれど、今では、その苛立ちの底には羨望があったのだと気付いている。
いつしか、この男が隣にいることが当たり前になり、それが最も居心地の良いことに変わるのに長くはかからなかった。
自分とは違って、でも存外似ているこの男。
だから、会える家族がいるなら、会った方がいい。
あんなクソみたいな街で汚れるよりも、平和なこの国に帰った方がいい。
情が移ってしまった今だからこそ、レヴィは本気でそう思っていた。

ロックが日本ではなくロアナプラを選ぶ理由は、どこを探しても見あたらない。
自分が持っているものは銃だけ。
こいつが今あたしの側にいるのは、あの世界で生きていく為に必要だからだ。
他に何がある?
銃なんか、日本じゃ必要ない。

思いの外、レヴィの中でこの男の存在が膨らんでしまっているのを修正する。

この男がロアナプラに留まっているのは、ただの気の迷い。
平凡な日常に少しばかり飽きただけだ。
つまり、ほんのスパイス。
正気に戻れば正常な判断能力を取り戻し、何事も無かったかのように帰っていくだろう。

――勘違いするな。
レヴィは自分を諫める。
――執着なんて、あたしらしくないだろう?
ただの相棒。ビジネスパートナー。
こいつじゃなくても、カトラスさえあればあたしは上手くやっていく。

そう、言い聞かせていたのに――。
結局のところ、全ては自衛だったのだと思い知らされた。
やがて来る喪失に身構えていただけ。
望んで叶ったことなど一度も無かったから。
それが、ロックが同じ場所で生きることを選んだのだと聞かされたあの瞬間。
あの時レヴィの心を占めていたのは、昏い喜びだった。
失いたくないのだと思った。それがこの男を不幸にしようとも。

あんたとあたしは違うもの。
それでも、すぐ側にいたかった。

距離を縮めたいと願っていたのは、他でもない、自分だった。
175ロック×レヴィ 日本編  ◆JU6DOSMJRE :2009/12/06(日) 09:48:27 ID:9Vk7Z89d
触れていた唇が離れ、存在を忘れていた煙草が灰皿に押しつけられるのをぼんやりと見ながらレヴィは思う。
この男は、どういうつもりなのだろう、と。

しかし、
「……レヴィ」
少し掠れた、低くも高くもない、耳に心地よい声に名を呼ばれ、ああ、狡い、と思う。
その声で名前を呼ばれると、問い質したい気持ちは霧散する。
全く自分らしくもない思考にレヴィは苦った。
――馬鹿は、あたしだ。


ロックに腰を捉えられ、広く堅い男の胸と体温を感じた時、柄にもなく身が竦んだ。
それも、怯えや嫌悪からでは無く、むしろそれとは全く逆の――。
ロックの腕は決して強引なものでは無かったが、躊躇の無い男の力だった。
レヴィの心臓が大きく跳ね、全身がざわめく。
腕は力強くレヴィを捕らえるが、指先は優しい。
決して苦しいわけではないのに、胸がつまってしかたない。
気付いた時には口付けは深くなっていて、柔らかに溶かされる。
呼吸は浅くなるばかりで、身体が全く思うようにならない。
知らぬうちにそっと、あちこちの螺子を弛められているように。
出来ることといえば、目の前の身体に縋り付くだけ。

――らしくない。
まったく、あたしらしくない。
本当なら、いつものように、不器用なロックを鼻で笑ってから
「しょうがねぇなぁ、こうやるんだよ」とでも言って教えてやって――。
でも無理だ。
白く霞む思考の隅でレヴィは思う。
だって、こんなやり方は知らない。


知らないから、無理――。
176ロック×レヴィ 日本編  ◆JU6DOSMJRE :2009/12/06(日) 09:50:30 ID:9Vk7Z89d

腕の中のレヴィが身じろぎをして、喉の奥からの小さな声に少し切羽詰まったものを感じて、
ロックはようやく唇を解放した。
ため息に似た熱い息を大きく吐いたレヴィの瞳は潤んで見えた。
しかし、すぐに睫が降りてきて伏せられてしまい、僅かに色づいた頬だけが確認できた。
どこか不本意な表情で軽く眉根に力を入れ、濡れた唇を引き結ぶ彼女はどこからどう見ても美しい女で、
反応のひとつひとつが可愛いとしか言えなかったが、それを口に出してしまえば、
彼女は不機嫌な顔をして罵りの言葉を口にするのだろう。
その不器用さも素直じゃないところも、存外照れ屋であるところもロックは気に入っていたが、
今は普段見せてはくれない顔をもっと見ていたかった。
彼女の腰に緩く回していた手で背中をゆっくり撫で上げると、
タートルネックのニット越しに無駄な肉ひとつ無い感触がして、
それからぴくりと背骨に沿った二本の筋が浮かび上がったのが分かった。
後ろで一つに束ねるには長さが足りずに顔の脇で垂れている髪を、もう片方の手で掻き上げる。
指にさらりと細い髪の感触がして、こぼれ落ちていった。
レヴィはロックの行いを咎めない。
拒絶が無いことをいいことに、ロックはレヴィの後頭部へ手を伸ばし、
無造作に束ねられた結び目を探り、そっとほどいた。
長い髪が広がる。
硝煙の匂いと東京の埃っぽい空気を外側に纏わり付かせていた髪は、
内側からほのかにシャンプーの香りを匂い立たせた。
ロックのものより色素の薄い栗色の髪に指を潜り込ませると、
彼女の肌で少しあたためられた髪の感触がして、
そのまま下に梳くと毛先の方はつめたかった。 
いつも潮風と強烈な太陽光線に晒され、手入れに関してはまったく無頓着なように見えるのに、
なぜこんなに滑らかなのだろう、とロックは不思議に思う。
背をなで上げた手に、革製のホルスターが当たった。
先程あんなに近くに抱き寄せたというのに、
無骨な拳銃の存在を今まですっかり忘れていたことに心の中で苦笑した。
カトラスの堅さも一緒に抱き込んだはずなのに、レヴィにしか意識がいっていなかったということか。

「……外しても?」
耳元で問うと、レヴィは小さく肯いた。
両肩にかかったベルトに手をかけ、下ろして腕を引き抜く。
ずっしりと重い二挺のカトラスを収めたそれを、脇の椅子に置いた。
そして、もう一度、抱きしめる。
レヴィそのものを、知る為に。


結局、足りなかったのは覚悟だけだった。
最初から、決まっていた。
あちら側とかこちら側なんて、知ったことか。
俺が立っている場所に立つ?  
それも違う。
俺が立つのは、立ちたいと願った場所は一つだけだ。
――彼女の、隣。
177ロック×レヴィ 日本編  ◆JU6DOSMJRE :2009/12/06(日) 09:52:23 ID:9Vk7Z89d

彼女は、終始、戸惑いの中にいるようだった。
ぴしりとひかれた白いシーツに横たわるレヴィの首筋を撫で下ろし、そのまま肩から腕へ滑らせると、
何をしているんだという目で困ったようにロックを見上げる。
柔らかな胸を包み込んでから脇腹をなぞれば、くすぐったいと身を捩る。
今だって、浮き上がった鎖骨に口付けると、短く息を飲んで
「なっ……、なにやってんだ」
頭を浮かせてロックを睨む。
そんな涙目で睨んだって、可愛いだけだよ。
思うが、言わない。
いつも護ってやってる男にそんな余裕を見せられるのを甘受できるほど、彼女のプライドは低くない。
恐らく誰もそんな風には彼女を抱かなかったのだろう、そのことがロックを哀しくさせた。
「なに、って。……言った方がいい?」
鎖骨をなぞっていた唇を僅かに浮かせて、上目遣いで彼女を見上げる。
「………………………………言うな」
彼女は眉を顰めて唇を尖らせ、憤懣やる方ないといった様子で沈黙してから、ぷいと顔を逸らせた。
更に彼女を困らせてみたい気もしたが、今は言い合いがしたいわけではない。
機嫌を損ねただろうかと彼女の唇に口付けると、抵抗は無く、柔らかに受け止められた。
粘膜の触れ合う音が空気を震わせる。部屋の密度が上がった気がした。
ロックは未だぎこちない彼女の肌にそっと手を伸ばす。
空調の低い音だけが微かにうなる室内に、リネンがたてた衣擦れの音は、ハッとする程鮮やかに響いた。
掌に感じる、しっとりと吸い付くような肌の感触と、そして幾つもの傷痕。
ふわりと柔らかな胸をすくい上げて通り過ぎれば、薄い皮膚の下には鍛えられた筋肉と、細い骨。削げた腹。
辿るごとに彼女は息を飲み、空気を乱す。
彼女の吐息が、鼓動が、熱が、ロックを煽る。
先程まで自らのものより冷たかった肌は、もう自分の掌と同じ熱さをしていた。
片手に余る白い乳房の先端を唇ではさみこむと、すぅっ、と短く息を飲む気配がして、
そのまま軽く吸い上げれば、今度は震えるように吐き出された息によって、胸郭が沈み込んだ。
唇はそのままに、手はゆっくりと彼女の肌の上を滑らせる。
ほんの少しの力で形を変える乳房から、浮き上がった肋骨を一本一本数えるようになぞり、
すとんと平らな腹部、尖って突き出た腰骨、引き締まった太ももへ。
どこだって、彼女の一部なら同じようにいとしい。
膝まで撫で下ろしたところで、皮膚の薄い内股に指を這わせると、反射的にレヴィの膝に力が入った。
しかし構わず撫で上げる。
少しずつ彼女の領域に踏み込む。
指先に感じるとろりとした熱。
ゆっくりとかき混ぜ、溶かす。
白い肌にトライバル模様を描き出すタトゥーの上に、小さくキスをひとつ。
形の良い眉が寄せられるのを美しいと思いながら、中指を彼女の中に沈めようとしたとき、
閉じられたままだったレヴィの瞳が開いた。
室内灯の僅かな灯りを反射させた琥珀色とぶつかる。
その瞬間、ロックの全身の動きが止まった。
明るさを落とした室内の僅かな光でも、とうにその暗さに慣れたロックの目は、
彼女の瞳に映った表情を、おそらく正確に読みとった。
彼女に出会ってから、ただの一度も見たことの無い――。
 
178ロック×レヴィ 日本編  ◆JU6DOSMJRE :2009/12/06(日) 09:53:30 ID:9Vk7Z89d
そう、多分、それは「怖れ」や「怯え」と呼ばれる類の色だった。
ロックは、確信にも似た思いで理解する。
これは、とても壊れやすい女。
他のどんな女より、いや、もしかすると並の男より強靱な身体をもっていたとしても。
誰よりも壊れやすい女。
既に彼女はヒビだらけだ。
硬い床に落下した陶器のように。
下手に触れれば簡単に壊れるだろう。
――もしかして、もう、すでに壊れてしまっているのかもしれない。
それを、必死で組み上げ直しているだけで。
しかし、修復された陶器は、少しの衝撃で必ず同じ処から砕けるのだ。

ロックは確かに、その時、彼女の脆さを見た――。
179ロック×レヴィ 日本編  ◆JU6DOSMJRE :2009/12/06(日) 09:54:53 ID:9Vk7Z89d
ロックとならば、我慢できるかもしれない。
それが大きな間違いだったと気付いたのは、ロックがゆっくりと自らの内側に入ってきて、
熱い溜め息をひとつこぼしてからレヴィの唇に口付けた時だった。
予測していた痛みは無く、代わりに、隙間を埋められていく感覚。
合わせていた唇が少しずらされて、下唇を食まれる。
息を漏らした瞬間に、隙間からそっと舌が差し入れられた。
柔らかく、温かに溶けていく。
ベッドについたロックの両肘の間に囲われて、ほんの少し空いた互いの胸と胸との間の空気が暖かい。
腕を伸ばせば、男にしては肌理の細かいロックの肌。
首に回して引き寄せてみても、二の腕に力が入っただけで、決して体重をかけてこようとはしなかった。

――ああ、そんなことしなくていいのに。
レヴィは途方に暮れる。
あたしはロックの体重を受け止められないほどやわじゃない。
第一、いつもどこぞの姫だという扱いで護っているのは自分の方だ。
頑丈さにおいてはこの男より自信があるというのに、今更こんなこと。
まるで普通の女にするような、こんなこと。
あたしにはそんな価値も資格も無い。
レヴィは自分の知る、決して少なくは無い過去とはまるで勝手の違う扱いに戸惑う。
けれど、まるでB級映画のヒロインのように甘い溜め息をこぼしている女は、一体誰だろう。
皮肉のひとつも吐けずに、ただ息だけが上がっていく。
堪えきれなかった声、それも、信じられないような高い女の声がひとつ喉から漏れ出て、
レヴィは目の前の肩口に顔を寄せて埋めた。


上からのしかかられるのは、不快で苦痛なものでしか無かった。
饐えた匂いと粘りつく汗、無遠慮に蹂躙する舌や腐った息。
――臭ェんだよ、クソ野郎。とっとと終わらせてどきやがれ。
罵声は腹の中に留め、早く時間が経過してくれることだけを祈る。
痛い。嫌だ。苦しい。気持ち悪い。止めて。誰か。誰か助けて。
吐き気と嫌悪感。
耐え難い屈辱。
そういうものだと思っていた。

けれど。

気付けば自分から縋り付いていた。
熱い肌と、うっすらと滲んだ汗の感触。
どちらのものとも分からない汗がお互いの肌の間で混ざり合う。
腕も、脚も、舌も。
躰のすべてを繋げ合わずにはいられなかった。
上がり続ける心拍数と、大量の酸素を要求する肺に耐えきれず、唇だけはずっと繋げているわけにはいかなかったけれど。
だから、唇の代わりに熱く湿った吐息を絡め合った。
ロックの律動に合わせて肺から押し出された空気が、僅かに声帯を震わせる。
声になり損なった欠片が切れ切れに、皺の寄った白いシーツやくすんだ絨毯の上に零れていった。
重なり合う鼓動に、耳元ではずむ呼吸。
きしむスプリングに、繋がったところからあふれる水音。
掠れた声で低く名を呼ばれ、身体の奥が震えた。
鳩尾のあたりから締め上げられるような、感じたことのない痛みが広がる。
その痛みを持て余し、レヴィもまた男の名を呼んだ。
男が一瞬息を飲む気配がして、腕に力がこもった。


――あとは、もう、互いの衝動を混ぜ合わせるだけ。

互いが同じものを求め、そしてそれは叶えられた――。
180ロック×レヴィ 日本編  ◆JU6DOSMJRE :2009/12/06(日) 09:57:25 ID:9Vk7Z89d
後始末を済ませ、まだ軽く息が上がっているレヴィの側に戻ると、
ロックは彼女の額に張り付いた前髪を軽く掻き分けた。
琥珀色の瞳が見上げる。
指に纏わりつかせた髪を耳に掛けてやりながら、
「大丈夫?」
問うと、レヴィは一瞬、ぽかんと、あどけないと言っていい程の顔を見せてから盛大に眉を顰め、
「……大丈夫じゃないわけあるか、バカ」
舐めんな、何言ってんだ、このボケ。
まったく彼女らしい暴言を吐いて、くるりとロックに背を向けた。
顔は枕に埋められてしまって、ロックからは彼女がどんな表情をしているのかは見えないが、
耳の縁が赤いのが夜目にも分かる。
――なら、いいんだ。
そう言って頭を撫でても、レヴィの顔は背けられたままだ。
「……眠い?」
緩やかに繰り返し撫でながら訊く。
「……いや」
否定しながらも緩慢な首の動きに苦笑して、自らも彼女の隣に横たわり、首の下に腕を差し入れようと試みる。
「……レヴィ」
「なんだよ」
「首」
「は?」
あちらを向いていた彼女が、うるさそうに顔だけで振り返る。
「首、ちょっと持ち上げてくれないと、腕が入らない」
「腕? なにすんだよ」
こちらの意図をなかなか理解しないレヴィに、言葉で説明するよりも行動に移した方が早いと、
ロックは僅かに空いた枕とレヴィの首の間に半ば強引に手を潜り込ませ、
回した腕で彼女の肩を抱き寄せた。
「こうする」
呆気にとられたように腕の中で硬直するレヴィの顔をのぞき込むと、
彼女はその視線から逃げるように俯いた。
「…………………………バカみてぇ」
呟いて、苛立たしげにひとつ息を吐いてから、レヴィはするりと身体を回転させて、ロックの腕の中に収まった。
彼女の頭が座りの良い位置を探すと、それはぴったりと誂えたようにそこに落ち着いた。

「寝よう。朝までにはまだ時間がある」
ロックの全身にも眠気が浸透してきている。
彼女の方もすでに半分夢の中だ。
ん、と、いつになく素直な反応が返ってきて、身じろぎをする気配。
力が抜けた、しなやかな彼女の身体。
朝になれば、また彼女は鍛え上げたその身体をぎりぎりと巻き上げて研ぎ澄ませ、銃で身を固め、修羅の道を行くのだろう。

けれど、今は。
ただ無防備に眠る女の体温を側に感じていたかった。

「おやすみ、レヴィ」
囁きは彼女に届いたかどうか。
それを確かめる前に、ロックの意識も夢の中へと沈んでいった。




181名無しさん@ピンキー:2009/12/06(日) 10:04:09 ID:iMiC9VyN
>180
せつないのキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
いいねえ、実にいい
こまやかな感情の動きが、実に昂ぶらせる
文句なしのGJです
182名無しさん@ピンキー:2009/12/06(日) 10:16:38 ID:OY43oOaa
え、何、ここは神様がおわすスレ?
ジョン・ウーテイストも切ない純愛系も大好物です、ありがとう
183『1987年、ビッグ・アップル』:2009/12/06(日) 21:51:20 ID:isWxxjq+
教会で暮らし始めて3日目の朝、俺は新聞を買いに最寄のセブンイレブンまでの道のりを歩いていた。
……当然、あのクソガキも一緒だ。
教会で取っている『New York Times』でもいいが、やはり中国語の新聞が読みたい。
そう言った俺に、あのメスガキは、レヴェッカはこう言いやがったのだ。

"あたしも行くよ……神父の野郎からは、あんたの後に、便所以外は全部付いて歩け、と言われてる。
それがビジネスだからな、あたしだってあんたの顔なんか一秒たりとも見たくないが、仕方ない。"

俺には、それが我慢ならなかった。
俺のほうこそ、ちょっと角まで出るくらいなのに、なんでこのクソガキの顔なんか拝まなきゃならんのだ。
拝むのは、関帝廟か孔子廟くらいで充分だ。
それに、レヴェッカがぶかぶかのパーカの腹ポケットにいつも持ってるサタデー・ナイト・スペシャルなんか、
俺に言わせれば子供の銀玉鉄砲の親戚のようなもんだ。
どれだけ場数を踏んだかは知らないが、こいつは俺の脚を引っ張りこそすれ、戦力になるとはとても思えなかった。

俺はレイバンをかけたまま、入口の、ドアを押して、セブンイレブンに入る。
『世界日報』は、と……お、あった。

『香港スターフェリー乱射事件続報―容疑者は複数の模様』。
中ほどの面の、囲み記事にそう書かれている。
やはり、随分、タイムラグがあるんだな。
だが俺がNYにいることは、まだ皇家香港警察にはバレてはいないらしい。
それは、俺に安堵のため息をつかせた。

と、レヴェッカが、フォーモストのホールミルクの1クオート・パックを手に、先にレジに並んでいるのに気付く。
ミルクなんか飲むのか、こいつが?
栄養バランスなんて、気にしたことなさそうなのに。

会計をすませ、帰り道を俺たちは、相変わらず無言で歩く。
心なしかレヴェッカの顔は、少し嬉しそうだ。
顔に似合わずミルクがよっぽど好きらしいな、と皮肉の一つも言ってやろうと思った瞬間、ぱらぱらと、雨が降り始める。

"急ぐぞ、チョウ・ユンファ!
ドブ鼠みてえなあたしだって、濡れ鼠にゃなりたかないんでね。"

"俺は、『男たちの挽歌』なんかにゃ出てねえぞ、メスガキ。"

"それ言ったら『誰かがあなたを愛してる』にもだろ。
現実のクソみてえなNYにゃ、そんな甘いロマンスなんかねえよ。"

へえ、意外と、文化的素養はあるようだな。
そんなことを心の片隅で思いながら、俺はレヴェッカの後を走る。

少し濡れながらも教会にたどり着いた俺は、目を白黒させた。
レヴェッカの奴が、教会に着くなり台所でミルクを鍋にあけ、そのまま弱火で暖め始めたのだ。

"おい、どうすんだ、それ?"

"うっせーな、直接胸からタバコ吸えるように、2〜3個風穴でもあけてやろうか?"

言いながらも、レヴェッカは人肌程度に温まったであろうミルクを浅い、少し端の欠けたスープ皿にあける。
そして、テーブルの上のタオルとそのスープ皿を持って、勝手口の方へと走っていく。

ドアの向こうには、ずぶ濡れの痩せた子猫が3匹、にーにーと泣きながら、レヴェッカが来るのを待っていた。
レヴェッカが勝手口の前にスープ皿を置くと、子猫たちは、それをぴちゃぴちゃと勢いよく舐め始めた。
俺は、いつもと違い、えらく優しい目をしたレヴェッカを、不思議な気持ちで眺めていた。

"本当は4匹だったんだが、1匹、こないだ死んじまった。"

レヴェッカは、優しい目のまま、寂しそうにそう呟いた。
184名無しさん@ピンキー:2009/12/06(日) 22:16:31 ID:BhLyP8Hj
ロクレヴィより萌えるかもしれん…
185『1987年、香港』:2009/12/07(月) 16:17:26 ID:PGrpStUu
俺たちの頭の上の鉄橋を、十何輌もの貨車を引いた貨物列車が、けたたましく通り過ぎていった。
その音に紛れて、レヴェッカの構えたサタデー・ナイト・スペシャルが、火を噴いた。
空き箱の上に載せてあったダイエット・ペプシやバドワイザーの空き缶が数本、どてっ腹に大穴を空けて、
硝煙の香りとともに河川敷にカラカラと吹っ飛んだ。
さすがに全部とはいかないが、ほとんどの缶に弾が当たっていた。

"そのオモチャみたいな銃でそこまでできるとは、大したもんだ。"

"何年もこいつを扱ってるんだ、少しは慣れるさ。"

レヴェッカの顔は、誇らしげだ。
先日の猫の件以来、俺は少しこのガキのことを見直し始めていた。

"けどな、上には上がいる。
そいつを見せてやるよ。"

俺は言いながら、新しい空き缶を箱の上に並べる。
そして、ホルスターからベレッタ2丁を抜き、両手に構えてみせる。

"なんだよ、そのグリップの彫刻。
趣味悪いな、あんた。"

今度は、旅客列車が来た。
機関車も客車もシルバーに赤、白、青のラインの入った、スマートなものだ。
美国人の連中は、九広鉄路のそれとは、やはりセンスが違う。
そんなことを思いながら、俺は列車が鉄橋の上に来るのを見計らって、缶に狙いを定める。
186『1987年、ビッグ・アップル』:2009/12/07(月) 16:17:48 ID:PGrpStUu
列車のたてる、轟音。
俺の両手のベレッタからの、閃光。
バラバラにちぎれ飛ぶ、空き缶。
ふたたび、少しずつ聞こえてくる、街の喧騒。

"うお、すげえ、二丁撃ちで、それも全弾命中かよ!
西部劇みてえ!"

"ざっと、こんなもんさ。"

俺は、銃口から立ち上る硝煙の煙を口で吹いてみせる。

"なあ、あたしに教えてくれよ、撃ち方!
あんたの銃、壊したりしねえからさ!
その彫刻にも、傷ひとつ付けねえよ!"

レヴェッカが、目をキラキラさせて俺に駆け寄る。

"こいつはな、俺の兄貴の形見なんだ。
皇家香港警察の装備品にもベレッタがあるが、あれは92、これは76だ。
こいつは元々競技用の拳銃で、92より撃ちやすい。
それをガンスミスに依頼して、カスタムしたんだな、兄貴の奴。
……確かに兄貴の趣味は、おせじにもいいとはいえなかった。
でも、今となってはこれだけが俺と兄貴を繋ぐ絆みたいなもんだ。
92でベレッタの癖はわかってたから、すぐ慣れたよ。"

"能書きはいいから、あたしに貸してくれよ、兄貴!
なぁ!"

"おいおい、俺はいつからお前の兄貴になった?
俺の顔なんか、一秒たりとも見ていたくないんじゃなかったのか?"

"いいから、教えてくれよ!
なぁ、なぁ!"

レヴェッカは、それから俺にますますまとわり付いてくるようになった。
だが、前と違って、それが嫌な感じではなくなってきていた。
俺の中で、何かが変わりつつあった。
187名無しさん@ピンキー:2009/12/07(月) 16:19:05 ID:PGrpStUu
あ、>185の題名は『1987年、ビッグ・アップル』の間違い
保管庫収録時には修正よろしく
188名無しさん@ピンキー:2009/12/08(火) 00:31:41 ID:Lv+y8CeE
>>186
張兄貴、かっこよすぎ!レヴィが無邪気でかわいい。
毎回wktkしながら楽しませてもらってます!
189大神竜一朗:2009/12/08(火) 14:31:06 ID:Cvy3ZyLn

BLACK LAGOON
     〜12時間程度の姫君〜  大神竜一朗


 見上げると、

 見慣れた天井、俺の部屋。


「……………。」
 目覚めて初めにこの天井を目にするのも、もう一年になる。
この街、ロアナプラに住むようになって一年ってことか。

 ブラインドの隙間から自然の光が、ベットの上の俺の顔にかかってくる。
眩しい……。
 光による微かな寝苦しさもすぐに消え、心地よい導きへと変わって
俺を夢の世界から引き戻した。
 ベットから起き上がりブラインドを開けると、いっきに差し込んでくる陽の光。
部屋と外を繋ぐ配管に、夜中の雨を気付かせてくれる水の雫。

 美しい朝、美しすぎるぐらいに。

 昨日レヴィとケンカした。
きっかけは些細な事からだ。いつもながらにあいつの言い方に問題がある。
 俺の事を坊ちゃんだとか、ガキだとか…。それだけじゃなくあいつは、
俺の過去自身を否定しやがった。確かに俺はお前のNY時代のように命賭けては生きてなかったよ。
でもな…、お前なんかに否定されるような人生は歩んでいない。
学生時代、学問だって放り出さず国立大に入ったし、
日本という国で俺は十分ぐらい戦ってきたつもりだ。 

 部屋の窓から見える、ロアナプラの朝。 

「…………。」
 人とのケンカなんて、ホントは小さい事なのかもな。
ケンカ自身も人と人を繋げておくための鎖なのかもしれない。

 なに言ってんだ、俺。

「………………。」
 浮かんだ一人の顔。

 急にそいつに会いたくなってきた。
どうかしたのか、俺。滅多にないぐらいの朝だから。
窓から入る、少し雨の混じった風が心地よい。

 この風のせいにすればいい。
ならケンカしたままのあいつとも顔を合わせられる。

 俺は軽く伸びをした後、車のキーを持って部屋をあとにした。
190大神竜一朗:2009/12/08(火) 14:32:18 ID:Cvy3ZyLn
 ブー ブー
借家の一室のブザーを鳴らす。日本で言う長屋のような住居。
 ガチャ
鍵も閉めずにいたドアが開き、間から今ブザーで起きた様な住居人が顔を出した。
「おはよう…レヴィ。」
「あん…?」
 彼女にとって廊下の光は目にキツイようだ。
うっとおしそうに俺を見る。
「入っていい?」
「……。」
 目つきが一層キツくなる。まだ寝てぇんだよと言いたげな眼差しで俺を睨む。
「部屋…マズい?」
「いや……。」
 開いたドアの隙間を広くしてくれた。
「ありがと。」
「……………。」
 俺がドアのしきりを跨ぎ玄関に入ると、無愛想にレヴィは先に部屋に戻っていく。
そんな後姿を見て安心した。銀次との決闘の傷、大分治ったみたいだな。
調子を聞いても平気だとしか答えないから、心配はしてたんだ。
もしあとに残るようなら、廃業だもんな。

 レヴィの部屋。
ずいぶん久しぶりな気がする。実際日本から帰ってきてからこの部屋に入るのは初めてだ。
居心地は別に悪くはない、何度も夜を明かしてもいるし。
適当にあるパイプ椅子を広げ座った。
 レヴィはベットで仰向けになって寝煙草。
「何しに来た……。」
 こっちを見るわけでもなく、
「何しに……て。」
「…………。」
 視線は変わらない。こいつにとって見慣れた天井。
口に咥えた煙草の先が赤く光り、灰に変わる。落ちることもなく、灰に変わる。

 手持ち無沙汰。
でも、今煙草を吸うべきではない。じゃあ、何?
この乾きつつも重い空気の中。
「どう?」
 何が?って自分でも突っ込みたくなるきり出し方だ。言葉を間違えた。
これじゃほとんど相手まかせだ。
「何が…。」
 と、レヴィが仰向けになったまま言った。…まぁ、そうだ。
「いつから仕事出来そうか?…って、ダッチが……。」
「言ってたのか?」
「いや、言ってない…。」
「ハッ、何だソレ。」
 わずかだがレヴィが笑ってくれた。

 ムクッと、レヴィが上半身だけ起き上がる。
「ロック、冷蔵庫の水。…取れ。」
「ああ…。」
 ほんの少しだけ空気が軽くなった。この場の命令口調は我慢しよう。
冷蔵庫からペットボトルを取り出し、ベットのレヴィに渡した。
ミネラルウォーターを喉に流すレヴィ。
191大神竜一朗:2009/12/08(火) 14:34:08 ID:Cvy3ZyLn
「そういやぁ、この前のエダ……どうだった。」
「?……ああ、普通に朝まで飲んで終わり。…って言うか俺が気分悪くなった。」
「ハッハッ、情けねぇ野郎だぜ。」
「今度はレヴィも一緒に飲もうよ、だって。」 
 心なしレヴィが嬉しそうに見える。

「なぁ、レヴィ。」
 俺は今日の本題に入ることにした。
「あん?」
「キングゲームをしないか?」
「何だ?それ。」
「簡単なゲームをして勝った方がキング。負けた方が奴隷。
 キングは奴隷に何でも命令できる。奴隷は逆らえない、キングの命令は絶対だ。
 キングであれる時間は半日、つまり日没までだな。」
「てめぇの魂胆は分かるぜ、ロック。お前はキングになってあたしにケツの穴を
 舐めさせてぇんだろ。」
「レヴィがNGを初めから作っときたいってんなら別に構わないけど?」
「!!………喧嘩売ってんのか?」
 やばい…挑発しすぎた。レヴィの性格からして今のは言い過ぎてしまった。

「オーケィ、NGは無しだ。キングはオープンでかまわねぇぜ。」
「?」
 どうして急に。でもいまさら、ころころ変えるのもレヴィの逆鱗に触れてしまう。
本人がNG無しってんならそれでいくしかない。仮に俺が負けても……。
レヴィの奴隷…キツそうだなぁ。
「で、そのキングはどうやって決めるんだ?」
「日本だと大抵酒の場でやるから、割り箸にキング…王様って書いて…。」
「おい、チョットは考えな。この部屋に割り箸なんてねぇよ。」
「そっか……。」
 無い時ってどうしてたっけ。爪楊枝?とか、おてもと袋…はあるわけないか。
「トランプならあるぞ。」
「あ、それいい!元々キングが書いてあるし。」
 レヴィがベットから立ち上がり机の引き出し一番目を引きトランプを出して
テーブルに投げ置くと、俺と対面してパイプ椅子に座る。

 煙草を咥えたまま口の端から煙を吐く。
「フー……順番にカードを捲っていき先にキングが出たほうが勝ち…てのでどうだ。」
「うん、分かった…。」
 俺がもちかけたゲームのルールをレヴィに説明された。
まあ、誰が決めたってそんな変わるものでもないか。
レヴィがカードをシャッフルさせながら
「命令………何でもいいんだな。」
「え……。」
 な、何を俺にさせるつもりなんだ。
シャッフルし終えたレヴィは短くなった煙草を灰皿でもみ消した。
「今更NGはナシだぜ………なぁロック。」
「!?」


「あ、あのさ…レヴィ…。」
「どっちから引く?」
「……!!」
 目の前に置かれたトランプ。レヴィ…昨日の喧嘩のことまだ怒ってるのか。
「あたしのカードだ。あんたから引きな。」
「あ、ああ………。」
「その前に。」
「…?」
192大神竜一朗:2009/12/08(火) 14:35:17 ID:Cvy3ZyLn

「逃げんなよ…。」
「!?」
 レヴィが新しく煙草を咥え火をつけた。め、目が笑ってない!
でも、ここで逃げるわけにはいかない。いや、逃げたくとも逃げられないだろう。
「……。」
 俺は覚悟を決め山積みされたカードの一番上をめくった。
「!!?」
「何!?マジかよ!」
 出た。キングだ。俺に奇跡がおこった。53分の4、可能性として無くはないが。
「てことは、…俺がキング?」
「待ちな、あたしはまだ一枚も引いちゃいねぇ。」
「そ、そうだったな。じゃあレヴィがキングが出たらもう一回だ。」
「ああ。」
 レヴィが一番上のカードを引く。

「!!?」
 Q…クイーンのカード。
「クソッ!」
「ふぅ……さ、約束だよレヴィ。何でも言うこときくって。」
「ハイハイ、わかったよ。好きにしな。」
 ふっ切れたようにベットに横になった。
「こういうやり方でもしなきゃ、レヴィ恥ずかしがってしてくれないからなぁ。」
「チッ……。」

「さ、行こうか。」
「あん?」
「デートだよ。NGなんて言わないよな、お姫様。」
「姫…?プリンセスじゃなくて、クイーンなんだがな。」
「どっちでも構わないよ。さ、準備して。」
「へいへい、わかったよ。今日半日付き合ってやらぁ。」
 呆れた顔のままベットから立ち上がりホットパンツを履いた。

 俺はレヴィの手を引き、車に向かった。


 ハンドルを握り車を走らせ、開けた窓から吹き込む風を顔で感じながら。
そして助手席に座る姫もまた風を感じながら。
だが俺とは違ってこの時間が退屈そう。
「どこ向かってんだよ。」
「行けば分かるって。」
「チッ…。」
 少々機嫌を悪くしつつも黙って俺の運転に身を任せていた。

 ここに行きたいってのは初めっから決めていた。今日、朝起きた時から。
そう。朝起き窓の外を見た時から行ってみたいって。
そこにレヴィがいたらって思ったから。
193大神竜一朗:2009/12/08(火) 14:38:38 ID:Cvy3ZyLn
 その場所に着き車を停めた。
「ったく、だりィぜ。こんなとこまでこさせやがって。」
 文句を言いながら俺の後に車を降りた。

 その場所は、

 
 丘だった。


 ロアナプラの街が見渡せる丘。
「俺の部屋からここが見えるんだ。朝起きたら虹がかかっててさ。
 で、レヴィと一緒に見に行こうと思って。」
 虹なんてどこにもない。初めからなかった、俺の作り話。
「バッカだなぁ、虹なんてその場所に行って見れるわけないだろー
 ホント、バッカだなぁ。」
 何でもいい。レヴィを笑わせたかった。こんなジョークにもならないぐらいの
バカ話の方が笑ってくれる。

 丘に風が吹く。もう、俺が朝感じた雨交じりの冷たい風ではない。
少し暖かい。それはまるで日本の春のよう。
こんな街にも春の風が吹く。
「レヴィ、その辺で座ろっか。」
「はぁ?」
「俺、王様だし。」
「チッ、しゃあねぇな。」
 と、愚痴りながらもその場に座り込むレヴィ。
「うわっ!」
「うん?」
「濡れてた。」
 あ、昨晩雨が降ったんだっけ。手で芝生を触ってみると湿っている。
俺は着ていたジャケットを脱ぎ、姫の為に芝生に掛けた。
「サンキュッ。」
 遠慮なく座ろうとする。
「あ、半分俺の場所だから。」
 狭いジャケットの上で並ぶ二人。
「狭ぇーよ。」
「文句言わない。」

 さっき俺が感じた春の風が、隣にいるレヴィの前髪を揺らす。
こいつ、こうやって黙ってれば綺麗なのにな。

 丘の向こう一面に広がるロアナプラの街。
ここからでは銃声も聞こえなければ、硝煙の匂いもしない。
「あの辺が、あたしの部屋かな。…で、あんたんちが…。」
 意外にも話しだしたのはレヴィの方からだった。
しかも俺がきり出しに使おうとしていた話を。
「ああ、あの辺かな。俺んちと意外に近いんだな…もっと遠い気がしてたけど。」
「あんなもんだろ。……事務所ってここから見ると結構目立つな。」
「レヴィ、あれ見てみろよ。半壊した建物、あれ張さんのところだよ。」
「ホントだ。はっはっはっはっはっ。」

「………。」
 やっぱりお前は、笑ってる時が一番いいよ。
素直で子供みたいな笑い方をする。だから、笑ってた方がいいよ。
「ん?どうしたロック。ニヤニヤして。」
「さーね。」
「おい…。」
「俺、今日は王様。」
「はいはい……。」
194大神竜一朗:2009/12/08(火) 14:40:10 ID:Cvy3ZyLn
「いや、ここから見るロアナプラはわりと綺麗だなーって。」
 話の繋ぎ方はおかしいが何とか誤魔化した。
レヴィの横顔が綺麗だって言うよかマシだろう。
「……。」
 レヴィの沈黙。ただ黙り込むだけじゃなく、さっき俺が頬を赤くしてしまいそうな
笑顔も消え表情を曇らせた。
「?」
「もう、ここに慣れちまったのか?」
「いや…完全には…。一生馴染めないかもな。当たり前のように人が死んでいく。
 俺の育った日本ではありえない事がここにはある。」
「じゃあ今、目の前の死をみて何を思ってる。」
「その命は消えて、魂が次の命へと移っていく。」
「死んで次は、幸せな人生へ…ってか?てめぇはいつから宗教家になったんだ?」
「幸せかどうかは、その人間がどう歩んでいくかで決まる。
 初めから用意されてるものじゃない。」
「どうした?今日のロック変だぞ。」

 確かに変かもな。でもそれもこの心地よい春風のせいにすれば
お前とも笑って話せるだろ?別にお前とは喧嘩がしたいわけじゃないんだ。
こうやって笑って話し合う…仲でいたいんだ、本当は。

「もし、俺とお前が明日死んで明後日に他の誰かとして生まれ変わったら面白いよな。」
「…面白いか?」
「例えばだけど二人とも日本人として生まれ変わって、それは兄妹なんかじゃなくてさ。
 家が近所なんかで学校とか一緒に行ったりする。で、一緒に遊んだりケンカしたり、
 中学までは同じ学校なんだけど。」
「幼なじみ…ってやつか。」
「高校なんかは別々なんだけど…。」
「……あたしは学校ってトコに行ったことが無い。…だからイメージがわかないよ。」
「あーゴメン。学校ってのは勉強する所で、他にも色々楽しいことがいっぱいあるんだ。」
「………………もういい。」
「え?」
「もういい、って言ったんだよ…………。」
 うつむき瞳を閉じる。

195大神竜一朗:2009/12/08(火) 14:41:18 ID:Cvy3ZyLn

「てめェと話してると死にたくなってきた……。」
「!?」
 いつか聞いたような冷たい言い方。そう、海底で。
閉じたままのレヴィの瞳が、あの時の死んだ魚の目をしているのだと感じた。
「ロック……これ以上続けてると殺すかもな………。」
「!!」
 
 顔を上げ立ち上がるレヴィ。俺に背を向けて立ち上がったためその表情は
確認できない。レヴィは以前自分の事を`歩く死人`と形容していた。
きっと後姿で見えない今もそんな瞳をしているのだろう。

「………。」
 何も言わず車のほうに歩き出すレヴィ。
俯きかげんで歩いていくその後ろ姿はまさに`歩く死人`だ。


 そうかよ。


 俺とのくだらない`もし`なんて話してるのも苦痛ってわけか。
悪かったな。お前に、恋人とするようなくだらない話をして。
生きてきた街が違うだけかもしれないが。

お前とはこれからもラグーンの仲間だ、それは変わらない。


でも、俺にとって`大切`になることは無いだろう。



この先ずっと。



           END

196『1987年、ビッグ・アップル』:2009/12/08(火) 15:46:09 ID:AMy6f7Mx
露になったレヴェッカのそこは、まだ子供らしく毛も薄くて、色素もあまり沈着していない、綺麗なそれだった。
だが、その白い身体の右の肩口に、火のついたタバコを押し付けられたような跡がいくつもあるのが、
俺の心をちくちくと刺した。

"銃を教えてもらったお礼だ、だから、いい……。
どうせ、綺麗な身体じゃないんだ、あたし。
11のとき親父に、クソッタレのロクデナシのDV親父に、無理やりヤられたからさ、あたし初めてだったのに。
それで親父のヤツをぶっ殺して、家を飛び出したんだ。"

薄暗い部屋の中、ベッドの上でその襞を片手で広げながら、一糸纏わぬレヴェッカはそう言った。
普通ならジュニア・ハイスクールに行っているような子供に手を出すのは、本来俺のポリシーには反していた。
だが、あの日香港でシェンホアにいきなり迫られて以来、俺はずるずるとそういう関係を許容してしまうように
なっていた。

俺は優しく、レヴェッカの頬に手を添えて、唇に、首筋にキスをする。
既に濡れたそこに、指を這わせる。
指先から、唇から、レヴェッカの、体温を感じる。
レヴェッカの口から、甘い吐息が漏れる。

レヴェッカのそこからとめどなく溢れる潤滑液を避妊具の上から擦り付けるように、俺は自分のそれを
優しくレヴェッカのそこに摺る。
レヴェッカはそのたびに、背中を震わせる。

手を添えた俺のそれが、少しずつレヴェッカのそこに入っていく。
キツい、だがぬるぬるしたそこを、ちょっとずつ押し開いていく。
レヴェッカの顔が、苦悶の表情を浮かべる。

"ぁ……好きにッ……動いてッ……いいぜッ……!
あたしのッ……うぁ……身体のッ……こと……なんかッ……気に……しなくて……いいッ……!"

だが、俺には、そんなことはできなくって。
どうせなら、ちゃんとこいつを愛してやりたいって、そう思って。
俺は、優しく優しく、少しずつ腰を動かして。
けれど、だんだんそうしている余裕もなくなってきて。
いつしか、レヴェッカがスピッツのような声を上げてしまうほどに、俺は腰を動かしていて。
自分の快感だけしか、目が行かなくなって。
レヴェッカの中に、そのまま避妊具ごしに、熱い精をたっぷり出してしまって。

だんだん、息が落ち着いていく。
ジタンを吸う俺の腕枕の上で、レヴェッカがふとこう言う。

"兄貴、タバコ、一本もらっていいか?"

"ほらよ……でもな、子供がタバコなんか吸うと、背、伸びなくなるぞ?
ずっと、ちびっこのまんまでも知らないぞ。"

俺は、ジタンを渡して火をつけてやりながら、レヴェッカの頭をぽんぽん叩く。

"『ちびっこ』って言うな。
気にしてんだ、あたしだって。"

"そうだ、ヴェッキー、お前、俺の財布、いい加減に返せよ。"

"知らねえっつってんだろ、兄貴。
これは掛け値なしだ、イエス様に聞かれたってそう答えらぁ。
ていうか、『ヴェッキー』って言うな。
あたしはハーフでもブロンドでもねえし、MITだって行っちゃいねえ。"

そんな会話を交わしながら、俺たちはベッドの中で一緒にジタンを吹かした。
カーテンの閉まっていない窓からの、向かいのリカー・ショップの毒々しいネオンが、眩しかった。
197名無しさん@ピンキー:2009/12/08(火) 20:38:10 ID:Orxqmzm8
>>195
続き待ってました!

やっと白島モード入ってラブラブ展開かと思いきや、
最後でまたすれ違い&微黒島化…でも切なくてGJ
198名無しさん@ピンキー:2009/12/08(火) 20:53:21 ID:2q6Cw8oO
>195
ロックの黒さと白さのバランスが絶妙だ
かたくなにレヴィの心を拒んでるようで、本当は求めてるような、切なさが残った
199『1987年、ビッグ・アップル』:2009/12/09(水) 21:35:09 ID:Ao0c463C
洪神父とシスター・ヨランダが情報収集をしている間、俺たちは毎日のように昼は河川敷で銃を撃ち、夜は愛し合った。
昼も、そして夜も、レヴェッカの腕の向上は目覚しかったし、NYに来たばかりの頃は考えられないくらい、俺たちは
2人で一つのようにいつしかなっていた。

レヴェッカのそこは、少ししょっぱくて、でもまだ未成熟ながら汗の匂いと混ざって雌の匂いがして。
俺の舌に転がされるレヴェッカの肉芽が、どんどん硬くなっていくのが、俺にはわかって。
その小さな口に咥えられる俺のそれがビクビク跳ねるのを、レヴェッカは懸命に逃さないようにしていて。
大きく口をあけた溢れ出してくるレヴェッカの液体の、他の女と似ているようで違うような、少し酸っぱい、少し鉄臭い
その味にも、俺はもうすっかり慣れて。

舌で肉芽を、そこの中へと差し込んだ指でその裏の部分を、同時に責める。
俺の鈴口の部分をちろちろ舐めていたレヴェッカの舌が、レヴェッカの声とともに離れる。

"ンッ……あ……ッ……ぁ……うぁ……!
兄貴ッ……兄……貴ッ……!"

どんどん、レヴェッカの中からは液体が溢れ出してくる。
俺の指の動きにあわせて、その液体と空気が混ぜ合わされる、淫猥な水音が部屋に響く。
もう、シーツにまでその液体が垂れ、ひどくぐしょぐしょに濡れてしまっている。

"兄……貴ッ……早くッ……兄貴のをッ……くれよッ……そんなッ……焦らされたらッ……あたしッ……ぁッ!
あたしッ……おかしく……ッ……なるっ……うぁッ……あ……!"

俺はベッドの上に膝立ちして、四つんばいになったレヴェッカのそこに、避妊具に包まれたそれを静かに当てる。
首を曲げてこっちを見る、荒い息のレヴェッカが、こくっとうなづく。

少しずつ、それがレヴェッカの中に入っていく。
レヴェッカが、背中を震わせる。
レヴェッカの喉の奥から、悦びと苦痛の混ざったような声が絞り出される。
レヴェッカの細い腰を、俺は両手で掴む。
俺はそのまま腰を動かさずに、レヴェッカの中の、繊細な蠢きを、しばし楽しむ。

"ッ…ン……兄ッ……貴……ッ……動か……ないッ……のかッ……!?"

"レヴェッカ、お前を感じていたい。
お前の感触を、ずっと味わっていたい。"

"恥ず……ッ……かしい……ッ……ことッ……言うなよッ……兄貴ッ……!"

本当は、正常位がよかった。
ひとつになりながら、レヴェッカの顔を、見ていたかった。
レヴェッカを俺のものにした、という、俺がレヴェッカの身体を自由にしているという、そんな実感を、俺は欲していた。
顔が見える、というなら対面座位もそうだが、あれはレヴェッカのほうも好きに動けるので、なんだか主導権を
俺が握れないような気がして、どうせなら正常位がいい、と俺には思えた。

けれどレヴェッカは、正常位を頑なに拒んでいた。
親父に犯されたときが正常位だったから嫌なんだ、そうレヴェッカは言っていた。
親父のことにレヴェッカが縛られている限り、身体を自由にしていても、心は自由にできていない、そう俺には思えた。

俺は、少しずつ腰を動かし始めた。
俺のそれが奥まで届くたび、レヴェッカは声にならない声をあげた。
避妊具越しに、レヴェッカの子宮口のコリコリする感触が、そのたびに伝わってきた。
レヴェッカの体温が、腰を掴む両手から、そして二人の接合部から、感じられた。
肉と肉のぶつかる、乾いた音が、レヴェッカの声と混ざり合いながら、俺の耳を刺激した。

レヴェッカの内側を直接感じたい、そういう気持ちに身体を重ねるごとに俺はどんどんなっていっていた。
けれど、避妊具が二人を、未だ隔てていた。
俺は、その避妊具の中に、欲望の滴をたっぷりと放出した。
その瞬間、レヴェッカが、軽く呻いた。
200名無しさん@ピンキー:2009/12/10(木) 00:27:12 ID:jbP+f39E
>>195
GJ!
二人ともらしくて切なくていいね!
201名無しさん@ピンキー:2009/12/10(木) 03:52:29 ID:8om6whmt
このスレはつ投下なんで、深夜にこっそり行きます。
短いです。
9巻のアフターで、例えばココで完結したら?の作です。
202街の真実:2009/12/10(木) 03:53:13 ID:8om6whmt

「あ!…くっ!ど、どうしたん!だロッ!!クゥゥ!!」
何度となく繰り返されてきた情事。
だが何処か今夜は違った。

熱い。


熱い。


身体が。心が。想いが…熱かった。

ロアナプラの蒸し暑い夜すらも何処か涼しげに、そんな夜のそんな情事。
身体を重ねるロックの息づかいすらも自分の中を突き上げる。思考と心を、貫く。

「はぁはぁ!ぅくっ!れ、ヴィ!!」
一際深く突き刺す激情。
「あ!ロ、イぃ!!馬鹿ヤ!!!やあああぁあ!!!!…あ……あ!……っあ!…ぅ」
ロックのモノが自分の中でドクンドクンと脈打つのを感じながら、全てが白く染まっていく。



レヴィは思う。やっぱりコイツは最高のドラックだと。
刹那的で開放的で、ソレでいて世の中の全てのどうでもいい事を、どうでもいい世の中の事を、ただ何処までも吹き飛ばしてくれる。
他の野郎じゃ駄目だ。
やっぱアタシにゃコイツのがしっくりきやがる。

どこかまどろみ、らしく無いとは思いながらもロックの胸にもたれてみる。

彼の心音にどこか安らぐ。
ロックが徐に咥えたマイルドセブンを取り上げて吸い込む。
「!おい〜…ふぅ」
呆れた声と共にもう1本のタバコに火を点けるロックに思わず笑みが漏れる。
空缶一つ弾けない男の癖に、そんな男の腕の中でとろける自分が妙に可笑しい。
そんないつもの。だが、いつもとはどこか違うまどろみの時間を越えた時、ふと、ロックが動く。
203街の真実:2009/12/10(木) 03:53:42 ID:8om6whmt

「なぁレヴィ」
「なぁんだょ」

やんわりとしたやり取りが心地良い。
するとなにやら枕の下に手を突っ込み、ごそごそもぞもぞとロックが動いている。
「あん?なにやってんだよロック」
折角のまどろみを害された。どこか不機嫌を匂わせ始めたレヴィの手をロックは片手で掴み、くるりとレヴィを回す。
「ちょ!」
くるん。と丁度、背中から抱きかかえられてる様な感じに収まったレヴィが声を上げる前に…

「…ほら」

「……な、なんだよ?コレ」
レヴィの前に小さな、小さな箱が背中越しに差し出される。

「メイドの一件で張さんから少なくない小遣い貰ったんでね。俺の国じゃあ給料の3ヶ月分ってのが少し前まで定番だったんだけど。
ま、この街じゃあ給料も値段も風まかせの運まかせだからな。だから、まぁ、カトラス3ヶ分って所かな、コイツは」

ロックの話を聞きながら、大して考える事も無くレヴィは箱を手に取る。
意味が分からない。
「ったく。だから一体何が言いてぇんだ?テメェは……はぁ?」
開けて、思わずマヌケな声が出た。
自分でも余程マヌケだと思う声。それが自然に出た視線の先に…箱に収まってる指輪があった。

「?リング??」

自分はいつも手袋をはめてる。指輪なんて必要も無いし興味も無い。
そんな事はコイツも知ってる筈なのに。
レヴィの心中は至極当然の結果を導き、ロックもまたそんな胸中を知る関係にある。ソコを押して渡す真意は

「結婚しよう。レヴェッカ」
「……ロック?」

レヴィの思考がゆっくりと止まる。

「この街の流儀は知らないしな。この悪徳の街でソレがどれほどの重みを持つのかなんて知りもしないけどな…それでも」

レヴィをしっかりと、後ろから抱きとめる。

「お前が銃で、俺が弾丸……そんな血と火薬の匂い染み付いた俺達なら、今の刹那じゃない。これからの一生を共に弾けて行くのも悪くないかなってさ」
「……ロック……」
「……嫌か?レヴェッカ」

答えは返らない。
ただ、彼女は身体を回し、彼に口付けを与えるだけだから。

「……リングの重みでカトラスの照準がずれたらテメェの所為だからな」
「その時は俺が、替えのマガジン渡してやるよ」

二人の誓いは血生臭い指輪と、冷たい銃の話をもって……絆になった。
204街の真実:2009/12/10(木) 03:54:11 ID:8om6whmt




成り行きまかせで及んだ二度目の行為が終わり、暫し、ついばむまどろみの時を抜け、ふとロックは服を着て出掛ける用意をしだす。
「へっ。早速浮気の準備かい?旦那さまよぉ」
まだ自分はベットから出る気は無い。ココが気持ちが良い。
いつもより少し弱くなった自分にの軽口に、それでも笑顔のロックが嬉しい。
「ホテルモスクワに脅されたって浮気はしないさ。実はココだけの話なんだけどな?」
「ん?」
にかっ。と笑う。子供の様に
「俺はカミさんの尻に敷かれるのが夢だったのさ」
「はいはい。OKだロック。テメェの勝ちだよ」
どうやら自分は惚れてしまったらしいと悟る。もう、どうしようも無い位に。
平和ボケした日本人の冴えない白シャツに、呆れる位に惚れてしまった。
それが口惜しくて、それが嬉しい。
もう話す事は無い。勝手に行けば良い。どうせ帰ってくるのだから。
そう思って今一度タバコに火を点け様と動いた時
「あぁ、そうだ。なぁレヴィ」
「あんだよ」
「俺はこれからダッチの使いを二つ程回って終いなんだけどさ、そのまま夕食にしないか」
出掛ける理由は分かったが、外食など何時もの事だ。
何をわざわざ改まって。とも思う。
「わ〜ったよ。イエローフラッグで先にやって」
「いや、そうじゃなくて」
「は?」
食事と言えば何時もの店だ。どうせ酒も入る。
無論、他にも馴染みの店は多いのだが。
「あ〜〜…ま、まぁ、アレだ。折角の記念日だし、な。『サンンカン・パレス』のレストランってのはどうだい?
さし当たっての金も有るしな。良いだろ?……レヴェッカ」

「ま!!」

レヴェッカと呼ぶのはずるい。それだけで自分に反論する機会が無くなる気がした。

「わ、わ〜ったよ!ったく。なんでわざわざ。別にいつものトコだっていいじゃねぇか」
ブツブツと文句を言うレヴィに、笑みを洩らしながら、「じゃ、サンカン・パレスに今夜7時、な」と言って背を向ける。
レヴィはそんな背中に聞いてみた。

「だけどよぉロック」
「うん?」
ふと立ち止まり此方を伺うロックに言葉を続ける。

「なんで急に…その、こんな物を?」
205街の真実:2009/12/10(木) 03:54:32 ID:8om6whmt

はめたばかりの指輪を見せる。
まだ真新しく、それは光を反射し輝いて見える。
「……ガルシア君が言ったろ?」
「あん?あの若様が?」
レヴィにはたいして気になる事も無い。
「俺はもうこの街の住人だと」
「あぁ…そういやそんな事言ってたな」
確かでは無いが、行ってた気がする。

「俺はずっと、どこかこの街を少し外から見てた気がしてた。俺の人生の中の一時の通り道。いつかはココでは無いどこかへ。
良い奴ほど死んでいき、悪い奴ほど長生きするこの悪徳の街の。それでも生きている平和な国の旅人。それが俺だと思ってた」

「………」

「でも彼に言われて分かったよ。いや、ホントは分かってたんだな、自分でも。俺もまた、そんな悪徳の街の住人なんだって事が。
そして思ったのさ。だったら俺はお前と共に在りたいと。お前と共に生きたいと」

「ロック」

「それだけの事さ」

ベットの上で身体を起しているレヴィを一度見やり、ロックは背を向け部屋を後にする。



後ろ手に片手を挙げ



「じゃあな。レヴェッカ」



と、言葉を残して。
206街の真実:2009/12/10(木) 03:54:58 ID:8om6whmt


その数時間後、サンカン・パレス・ホテル最上階のレストランでは異様な光景が在った。

レヴィが居る。

想像してみよう。
『スローピー・スウィング』の女達に豪奢なドレスをあてがわれ、ばっちりメイクを施され、カトラスの替わりにイヤリングやネックレスを装着したレヴィの姿を。
………それが今、まさにココに在った。
既に右手と右足が同時に出ている事すらも突っ込む事は出来ない。否、してはならない。即死ねる。
こんな彼女をからかおうものなら間違いなく手近なナイフやらフォークが眉間にヒットするに違い無い。無いのだが…
そんな彼女がフルフルと震える先には………これまた異様な光景が在った。


「私はフォアグラのソテーにしよう。軍曹、君は?」
「はっ。軽いリゾットを注文致します」
「上出来だ軍曹。リャザン料理学校の講師達も喜ぶ事だろ「って何やってんだよアネゴ!!」あら?レヴィ。偶然ね」

絶対に違うと断言出来そうな位に、何時もと同じ軍服で浮きまくってる二人のロシア軍人崩れ。

そんな突っ込みどころ満載の軍人二人を前に震えるレヴィの右横で


「まいったな彪。どうやらチャーハンは無いらしい。俺としてはアノ美味しさを世界中の人間に知って貰いたいもんなんだがな」
「しかし張アニキ。ここのフカヒレスープはなかなかもモンですよ」
「ん〜〜。まぁそれも良しだな。ま、この街でウチの店以上のチャーハンは味わえな「だったらそこで喰やいいだろう旦那!!」ん?レヴィじゃねぇか」

黒スーツ野郎二人が呑気に座るレストランも気味が悪い。まして悪党ならもう、もはや何かの取引の最中にしか見えない。

そんなあからさまな不審者二人にこめかみをピクピクさせるレヴィの左横で


「はっはーー!やっぱココのワインは良いねぇ。主もさぞかしお喜びだぜ」
「おいおい。ココはやっぱりスコッチだろう。お前はドレスコードからやり直したほうが良いぜ」
「は!ソイツはお前の方だろうダッチ。こういう店ではまずワインを2本飲み干してからメインディ「樽ごと持ってとっとと消えろエダぁぁぁ!」ん?おぉ、レヴィじゃないか」

いつからエダとダッチはレストランでディナーをする仲になったと言うのか。いや、間違いなくここ数時間の間であろう。

まさか身内の、しかもボスの登場に、もうカトラスを取りに帰ろうかと本気で考えるレヴィの背後で


「いやいや。ベニー坊やとゆっくり過ごすのも久しぶ「流石に速攻突っ込むぞシスター・ヨランダぁぁぁ!!!」…レヴィ嬢ちゃんは短気だねぇ」

シスターとベニーの、まるで介護か懺悔の最中のディナー風景はまさに即断即死である。



ようするに……どこからか情報は漏れた。漏れに漏れた。
本日の支配人はイエローフラッグのバオだった。
「お待たせあるよ」と知人に良く似たチャイナウエイトレスがウロウロし、厨房からチェーンソーの音が聞こえるのは気の所為だろうか?
やたらと高い所から登場するソムリエに入れられたワインは飲む気がしなった。



「てめぇぇぇぇぇぇぇらぁぁぁ!!!」



レヴィが爆発するまでにそう時間は掛からなかったという。
207街の真実:2009/12/10(木) 03:55:18 ID:8om6whmt
ホテルも、流石にこの面子が相手では、もう好きにしてくださいとしか言うほか無い。
騒がしく、喧しく、けたたましく。それでも…笑いがあった。

どこまでいっても、レヴィとロックは好かれている。

馴れ合いの関係ではない。明日には銃口を向け合うかもしれない。
そんな者同士、それでもこうして二人の門出をからかい、邪魔し、そして祝う事が出来る。
それもまた、こんな背徳で悪徳な街の、一つの真実だった。

そんな会話のなかで、ふと出たロックの言った言葉。

「良い奴ほど死んでいき、悪い奴ほど長生きするこの悪徳の街…か」
「なんだよ?それ」
レヴィの呟きにエダが耳を向ける
「あぁ。ロックの奴が言ったのさ。この街はそんな街で、自分もそんな街の住人だってよ」
「は!そいつはとんだ思い違いだな」
エダも、周りに居る奴らも思わず笑う。
「まぁな。良いさ。だからアタシが居るのさ。アイツにソレを…教えるためにさ」
そう言って、どこか眩しそうに指輪を見詰める。

一斉に冷やかされ、怒り狂う。そんなレヴィを見やりながら

「ほんと、分かってねぇぜロック。この街は…」

ダッチはグラスを傾けながら窓の外に目を向けた。




カラン。
ダッチの使いを終え、店を出たロックが時計を見ると、6時45分を少し回った所だった。
「まずいなぁ。少し遅れるか。まったく、こんな時に限って話が長いんだからあの爺さん」
急ごうかと車に向う時、ふと、公衆電話が目に止まる。
暫し、ほんの暫し考え、彼は徐に受話器に向う。
208街の真実:2009/12/10(木) 03:55:43 ID:8om6whmt


「……そうですか……えぇ是非……どうかお幸せに。ミス…いえ、ミセス・レヴェッカにもよろしくお伝え下さい。それでは」

「若様。今の方は」

コロンビアの庭園で受話器を置いたのはガルシアだった。
ロアナプラからの電話を終えたばかり。

「うん。ミスター・ロックだよ」
「彼はなんと」
ロベルタにとって、あの街はもう2度と関わりあっては成らない場所だった。ガルシアの為に。

「ミス・レヴェッカと結婚するそうだよ」
「…あぁ、あの」

2丁拳銃のガンマンを思い出す。ただそれだけ。

「僕の言葉で踏ん切りが付いたから、お礼をって。そんな事は無いのにね。
僕は彼に言った言葉を少し後悔しているんだよ。結果として、僕らがこうしていられるのは彼のお陰で有る事は間違いないのにね」
「……申し訳有りません、若様。私の思慮が足りないばかりに」
「はは。それはもう良いんだよロベルタ。結果として、アレも良かったとは思ってるんだ。それにソレがあったから、彼らも結婚出来るんだしね。
言うなれば、ロベルタがキューピッドだったって言えるんじゃないかな」
「キュ!もう!若様ったら」
「ははは」

コロンビアの美しくのどかな荘園に、穏やかな笑い声が染み渡る。

「良い奴ほど死んでいく街の中で、それでも俺達は生きていくから。君達が言う死の舞踊を踊り明かした後に、きっとまた会おうって」

彼はそう言った、と締めくくる主人に、メイドは静かに首を振る。
「それは違うのです若様」
「?ロベルタ?」
メイドはどこか悲しそうに告げる

「私もかつてあのような街と近しい世界に身を置いた者。だから分かるのです。あの街は…あの悪徳の魔都は…良い者から死するのでは無いのです……ただ……」

「ロベルタ?」

メイドは晴れ渡る空を寂しく見上げ呟くのだった。

「………不運な方が死に逝くだけなのです……善も悪も無く……運の無い…話があるだけなのですよ。若様」
209名無しさん@ピンキー:2009/12/10(木) 04:00:40 ID:AGvfgUnM
4
210街の真実:2009/12/10(木) 04:00:55 ID:8om6whmt

ガチャン。

ガルシアとの電話を切り、時計を見ると7時少し前。
流石に不味いと車に向おうとすると、向かいの酒場から泥酔いの男達が車に乗り込む。
また次の店へと繰り出すのだろう。ロアナプラは眠らない。
それは何処にでもある光景


「おらぁぁ!!いくぜぇぇ!!!」
「ひゃはあああ!!!!」
ハッピーに。快調に。ご機嫌に。

ガン!!ガン!!ガン!!

STOPの標識に鉛玉を打ち込んで軽快に車を走らせる。

悪徳の街の何時もの光景。

「は〜〜〜。ったく、最低の街だな。ホントにさ」



3歩。



歩けただろうか……




どさっ









ただ、ついて無いだけ。

何時もの街の何時もの光景の中で

何処かの馬鹿の弾丸が、何処にでも在る看板に打ち込まれて…

その1発が跳ねて誰かの胸に突き刺さる。

そんな不運に、ただついて無い男が命を持っていかれる。

今もまだ、光灯る明るいホテルの最上階。大勢の友人に囲まれながら自分を待つ愛しい女を、想いを馳せる間も無いままに……




岡島緑郎の生涯は、幕を閉じたのだった。
211街の真実:2009/12/10(木) 04:01:47 ID:8om6whmt
以上です。

1箇所。舞踊→舞踏でした。
失礼しました。
212名無しさん@ピンキー:2009/12/10(木) 12:40:11 ID:Tp0NPuYL
途中から死亡フラグが出てきたけど、
なんてこったい
213名無しさん@ピンキー:2009/12/10(木) 12:47:32 ID:u1T7O8nt
くだらん突っ込みだが若様やロベルタが住んでるのはコロンビアじゃなくてベネズエラだよ
しかしロックカワイソス
214『1987年、ビッグ・アップル』:2009/12/10(木) 18:36:27 ID:u1T7O8nt
レヴェッカと俺は、道路の反対側に停められたポンコツのシビックの中から、グランド・セントラル駅近くのあるビルの正面玄関を凝視していた。
洪神父によれば、『The Shadow』はまもなくここから出てくる筈だった。

しかし、奴が女だというのは、それも老婆だというのは、俺の想像にはないシナリオだった。
俺は、神父に貰った封筒をもう一度開け、中身を確認した。

奴の名は、川島芳子。
国籍は日本だが清朝皇族の末裔で、太平洋戦争の頃に『東洋のマタハリ』・『ハルビンの鬼姫』の異名を取った女だ。
だが、満州国崩壊後、中華民国政府により処刑された、そのはずだった。

しかし、奴は生きていた。
中華民族の裏切り者が、中華民国を勝利に導いた、だが大陸を追放され台湾で失意のもと亡くなった蒋介石の、その後妻と同じく、このNYで余生を過ごしている。
それは、皮肉な話だった。

と、左胸を膨らませた黒服の男たちが、何人もわらわらとそのビルから出てくるのが見えた。
そして、ブーメランアンテナを装備した黒いタウンカーが3台、入口に横付けされた。

俺は息を飲んだ。
歳に似合わぬ確実な足取りで、『The Shadow』が、その老婆が、姿を現したのだ。
215名無しさん@ピンキー:2009/12/10(木) 19:44:52 ID:sABU7E9h
打ち切りの女神を持ってくるとは見上げた作者だwww
張レヴィもゴチですGJ!
216名無しさん@ピンキー:2009/12/10(木) 20:15:18 ID:161hAXdh
川島芳子キター!
老婆かと思ったら外見は若くて張大哥の精気を搾り取る(無論性的な意味で)
なんて方向に行ってくれたらすごく滾る
217名無しさん@ピンキー:2009/12/10(木) 21:37:07 ID:JUKZNeDF
>>210
予想はしてたけどやっぱり…
オールキャラのギャグパートが挿入されていたから余計に切ねえ…
218ロック×レヴィ シャンプー  ◆JU6DOSMJRE :2009/12/12(土) 22:40:07 ID:O++40qWy

「髪、洗ってあげようか」
ロックが唐突にそんなことを言い出したのは、ある晴れた休日の昼下がり。
レヴィが、ロックの部屋で一緒にあり合わせの昼食を済ませ、
「今日もあっちィなぁ……」と、ぐったりぼやいた時のことだった。

この男は時々突拍子もないことを言い出す。
業務時間内であろうとなかろうと、レヴィは何度もそんな場面に出くわしてきたので、今更驚くことはしない。
しないが、今度はまた一体何を思いついたのだろうか、と訝しむ。
「なんだよ、いきなり」
小さな木製のテーブルを挟んで向かい合う男を伺うように見ると、
「その腕じゃ、髪、洗いにくいだろうと思って」
ロックは、包帯を巻いたレヴィの右腕を、顎でしゃくった。
レヴィの右腕に巻き付いた包帯はまだ取れない。
傷は大分恢復してきたものの、元々軽傷とは言い難い傷だったのだ。
吊ってこそいないが、下手に動かすと、突き抜けるように鋭い痛みが走る。
だからといって、そんな事に構っていては仕事にならないし、
第一、「痛い痛い」とアピールしてみたところで、何か良いことがあるわけでもない。
まわりに自分の弱点をご丁寧に教えてやっているようなものだ。
だから、レヴィとしては自らの傷の状態を知らしめるような行動を取ったつもりは全く無かったのだが、
「右手、あんまり使ってないだろ、レヴィ」
左手で出来ることは左手でやっていたのを言い当てられ、妙なところで目聡い男だ、と思う。
しかし、この男には特に隠しておく理由も無いので、レヴィは「まぁな」と肯定した。
「だろ?」
ロックは我が意を得たりと満足そうに笑うと、席を立ってすたすたとバスルームの方へ歩いてゆく。
「ちょっ、おい、ロック!」
――あたしはまだ、最初の提案に対する返事はしてねェぞ!
レヴィは中腰になってロックを呼び止めたが、ロックの背中はバスルームのドアの中に消えた。
「早く来いよ、レヴィ!」
バスルームからは、楽しそうな声しか返って来なかった。
がたん、とシェルフの扉が開け閉めされる音がして、マットを敷いている気配。
――駄目だ。これは何かのスイッチが入ったらしい。
レヴィは諦めて、自分もバスルームへと向かった。
219ロック×レヴィ シャンプー  ◆JU6DOSMJRE :2009/12/12(土) 22:40:47 ID:O++40qWy

「で? 何をどうするって?」
バスルームのドア枠に肘をついてレヴィが中を覗き込むと、ロックはシャンプーのボトルを手にしたところだった。
足元には、厚手の布製のマットが敷いてある。
ロックはそのマットを指して言う。
「ここに膝ついて、バスタブに向かって頭下げて。そうすれば、他のとこ濡らさないで髪を洗える」
ロックの部屋に付いているバスルームは、ユニットバスだ。
狭いとはいえ、バスタブに向かって跪く姿勢になれば、確かに、取り外したシャワーで髪だけを洗うことが出来そうだった。
 
レヴィは思案する。
片手しか使えないと、髪を洗うのは案外大変だ。
シャンプーを出し、もう片方の手で受けて、泡立ててから洗い、流す。そして、拭く。
両手が使えないわけではないが、動かせば傷口がその存在を主張してくるので、一人の時くらいは出来るだけ動かしたくない。
おまけに、髪を洗えば包帯も濡れる。
身体だけシャワーを浴びるなら如何様にも右腕だけを濡らさないようにすることは出来るが、
シャンプーもとなると、包帯が濡れるのは避けられない。
濡れた包帯を放置しておくわけにもいかず、髪を洗うとなると必然的に、
傷口の消毒、包帯の交換、が漏れなく付いてくることになる。
――面倒くさい。
自然、髪を洗うのは億劫になっていた。
だが、ここ数日は熱帯の太陽が本領発揮している。
正直、頭が気持ち悪い。

というわけで、ロックには手先の器用さという点において一抹の不安を感じるが、
水とシャンプーだけならどう頑張っても自分の髪が全焼、などという事態に陥ることはあるまい。
どうせ今日は暇だったのだ。乗ってみるのもまた一興。という結論に、レヴィは至ったのだった。
220ロック×レヴィ シャンプー  ◆JU6DOSMJRE :2009/12/12(土) 22:41:27 ID:O++40qWy

ロックがシャワーのコックを捻ると、細かな水が迸った。
神妙な顔をして湯の温度を調節するロックを、レヴィはその隣に跪いて見上げる。
バスタブに降り注ぐ温水から、湯気が立ちのぼった。
何度か細かくコックを左右に動かしてから、ようやく、ロックは納得したようだった。
「じゃ、下向いて」
言われた通りに、レヴィはバスタブの縁に手をついて、俯いた。
背中の中程まである髪の毛が、顔の両脇から前へと垂れる。
レヴィの首筋に残っていた、一筋か二筋の髪を、ロックは指ですくい上げて前へ落とした。
そして、左手で軽く髪の毛をときほぐすように揺らす。
「いくよ」
「ああ」
心持ち緊張したロックの声に、レヴィが短く答えると、頭に温かな水が広がった。
すぐに髪が水を吸って、じわりと重くなる。
レヴィの目の前で、髪を伝った水が幾筋も、バスタブに流れていった。
ロックの持つシャワーは、ゆっくりと頭全体を濡らしてゆく。
シャワーヘッドがうなじ付近に近づいて、レヴィは水がこぼれないよう、更に深くバスタブへ身を乗り出した。
ロックの手がレヴィの首に添えられる。
シャワーの水が、首を伝わないように。
手は生え際で水をせき止め、シャワーヘッドの動きに合わせて耳の後ろを滑っていった。

「耳に水入れたら殺すぞ」
黙っているのも気詰まりになってレヴィは言ったが、今のところ、その心配は無さそうだった。
「はいはい」
笑いを含んだ二つ返事が、レヴィの頭上から降ってきた。
なかなか水の届きにくい側頭部の髪を、耳に水が入らないよう、掻き上げるようにして何度もロックの手が往復する。
水を頭全体に行き渡らせるように、ロックの手が髪を梳いた。
最後に前髪の方から手を差し入れられ、地肌も潤したところで、ロックが訊ねた。
「まだ濡れてないところ、無い?」
レヴィの頭は充分に水を含み、髪は重たく水を伝わらせていた。
「いや、無い」
答えると、背後の気配が遠のいて、キュ、とコックが閉められる音。
バスルームを満たしていたシャワーの水音がやみ、突然静かになった。
シャンプーボトルのノズルが上下し、それから、クチュ、とロックの両手の間でシャンプーが泡立てられる音が響く。
ロックの気配が戻ってきたのを、レヴィは背中で感じた。
伏せた頭に、ロックの手の熱が近づいてくる。
両手で、くしゃり、と2,3回髪をかき混ぜてから、気配は遠ざかる。
新たにシャンプーを出す音がして、また、泡立てられたものがレヴィの髪になじむ。
それをもう一度繰り返してから、ロックの手は髪を洗う作業へと移った。
 
221ロック×レヴィ シャンプー  ◆JU6DOSMJRE :2009/12/12(土) 22:43:06 ID:O++40qWy

ロックは、僅かに立てた指の先で、レヴィの髪をリズム良く端から洗っていった。
切りそろえられた爪は地肌を傷つけることなく髪の間を掻き分ける。
「……痛くない?」
問うロックの声に、レヴィは小さく笑いを漏らした。
「全然」
もっと乱雑に、グシャグシャと遠慮なく洗われるかとレヴィは思っていたが、ロックの指は優しかった。
むしろ、いつも自分で洗う時の方がずっと乱暴で適当だ。
こんな風に丁寧に洗おうとしたことすら無い。
目を瞑ると、心地よい頭皮への刺激で、まどろんでしまいそうだった。
ちょうど先程昼食を食べたばかりで、眠気は一層誘われる。
「気持ち良い?」
心中を見透かされたようなタイミングで訊かれ、レヴィは苦笑しながらも短く肯定した。
ロックは根気よく、レヴィの髪を隅々まで洗ってゆく。
泡立った髪の中に、指を開いたロックの両手が、ゆっくりと差し入れられた。
レヴィの頭の形をなぞるように額の方へ滑っていって、そのまま垂れている髪へと流れ落ち、
毛先まで絡め取って、そして離れた。
ぱた、と、白くきめ細かな泡が、バスタブに零れた。
瞼を上げたレヴィの目の前で、髪を滑るロックの指が何度も往復する。
バスルーム内には、シャンプーの爽やかな香りが満ちていた。
ロックがいつも使っているシャンプーの香り。
――ロックの髪に顔を寄せた時の匂いと同じだ。
レヴィは、自らの髪から広がる香りを、そっと吸い込んだ。

ぱた、ぱた、と、バスタブの底には、生クリームのような泡のかたまりが幾つも増えていく。
頭を緩やかに揺さぶられながら、レヴィは思う。
それにしてもコイツ、上手いな、と。
もやい結びひとつであんなにモタモタしていた姿からは、想像もつかない。
レヴィには他人に髪を洗ってもらった記憶など無いので、比較するべくもないのだが、それにしてもこれは少し予想外だった。
――洗い慣れているのかもしれない。女の髪を。
そう思い当たって、レヴィの胸につかのま、陰がさした。
しかし、すぐに振り払う。
――なんで陰がさすんだ。あたしには関係のねェことだ。
洗い慣れていたなら、それがどうだと言うのだ。
損の無いことだけ考えろ。と、いつかロックに言ったのと同じ言葉で言い聞かせようとして、また気づく。
――“損”ってなんだ、“損”って! 
ロックが女の髪を洗い慣れていたとしたら、ロックの過去にそういう女がいたとしたら、
それが自分にとっての“損”になるとでもいうような思考。
どうかしてるぜ、まったく――。

「洗い足りないところは無い?」
ひとり忙しく問答を繰り返しているレヴィの頭の上でロックの声がして、慌ててレヴィは意識を戻した。
「あ、いや、無ェよ」
ん、と返事をして、ロックはシャワーを手に取る。
また、シャワーがバスタブを打つ音が広がった。
「かけるよ」
頷いて、レヴィは思う。
せっかく心地良いのだ。 
余計な事を考えるのはやめだ。
目の前の事を楽しむべし。

そう結論づけて、レヴィは流れ落ちる泡が目に入らないよう、瞼を下ろした。

222ロック×レヴィ シャンプー  ◆JU6DOSMJRE :2009/12/12(土) 22:45:02 ID:O++40qWy

シャワーをかけると、レヴィの髪から白い泡がまたたく間に流れ落ちていった。
バスタブの底を白く泡立った水がうねって、排水口へと消える。
段々と、レヴィの髪本来の栗色が姿を現してきた。
洗い残さないように、しかし水を身体へ垂らさないように、慎重に生え際をなぞり、耳の脇で防波堤を作る。
指を髪に潜り込ませて梳くと、しっとりとつややかな感触。
丹念に繰り返すと、バスタブに流れる水は、いつしか透明になっていた。
レヴィは珍しく、文句らしい文句も言わず、大人しい。
されるがままの無防備な首筋が、ロックの目の前に晒されている。
あまり日焼けしていない、白い首筋。

――いいのかよ、そんな無警戒で。
穏やかないとしさと同時に、言いようもない不安が静かに沸き上がる。

――今だったら、俺のような非力な男にだって、お前を殺せるんだぜ。
男のものより細い首筋に、薄い皮膚。
ロックは、レヴィの首筋に青く透ける大動脈を見つめた。

――ま、俺には出来っこないけどな。
きっぱりと感傷を隅に追いやって、ロックはシャワーを止めた。
――他の奴の前では、そんな姿、見せないでくれよ。
ロックは胸の中で呟く。

「終わったか?」
バスタブの中に垂らした毛先から水を滴らせながら、レヴィが問う。
「いや、まだ。今度はコンディショナー」
シャンプーよりも粘度の高いクリーム状の液体を手に受けていると、レヴィが微かに笑った。
「コンディショナー? 男でもコンディショナーなんかすんのかァ?」
男でも、ということは、レヴィはいつも使っているのだろう。
それこそ、「レヴィでもコンディショナーなんか使ってたのか?」と言いたいところだが、
レヴィの言葉にはそれほど毒が無い。
今日のレヴィは機嫌が良い。
さっきから、よく笑う。
「いいだろ、別に」
適当に受け流して、コンディショナーをレヴィの髪に伸ばす。
ずっと下を向きっぱなしで、そろそろ首がだるくなってきているかもしれない。
日本にいた頃に美容師がやっていた洗髪の方法を、思い出しながら真似てみたのだが、
それでも洗い慣れた自分の髪と他人の髪、特に女の髪は勝手が分からなくて、随分と無駄に時間がかかった気がする。
乾いていてもさらりと気持ちがよいレヴィの髪は、こうしてたっぷりと水を含んでいる更に滑らかで、
いつまでも指を通していたかった。「シルクのよう」とされる比喩は、まったく正しい。
223ロック×レヴィ シャンプー  ◆JU6DOSMJRE :2009/12/12(土) 22:47:02 ID:O++40qWy

しかし、そろそろ手早く終わらせなければならない。
ロックはシャワーを止めると、バスタオルに手を伸ばした。
濡れたレヴィの髪から、ぽたぽたと水滴がいくつも滴っている。
静かに項垂れるレヴィの首の根本に、尖った骨が突き出ていた。
縦に三つ、並んで山を作っている。

――あの、頸骨。あそこに舌を這わせ、一番出っ張った真ん中の骨を唇で包みこんで吸い上げたなら、どんなに――。

思わず吸い寄せられそうになったが、レヴィの髪を拭かなければいけないことを思い出して、
ロックは慌ててバスタオルを広げた。
毛先から水気を取っていこうと、包み込む。

――と、その時、レヴィが首を上げようとした。
まだ毛先の方しか拭けていない。
「あ、ちょっと――」
だが、静止は間に合わず、レヴィのうなじから、透明な水が一筋、流れた。
首筋に踊る黒々としたタトゥーの上を伝って、つう、とタンクトップの背中に入っていきそうになる水を、
ロックは反射的に指で受け止めた。
指先に感じる、レヴィのしっとりした肌。
背中の弱いレヴィが、ん、とわずかに漏らした声が、バスルームで反響して妙に響いた。

瞬間、ロックの中で何かが弾けた。
レヴィのタンクトップの背中を指で引き下げ、突き出た頸骨に唇を寄せる。
突然のことに驚いたレヴィが小さく悲鳴を上げて背中を震わせたが、
ロックは構わず、タンクトップに掛かっているのとは逆の手で、レヴィの後頭部を押さえた。
突起を唇で柔らかく包み、軽く吸い上げてから、そっと舌でなぞる。
レヴィの背中が、鋭くはねた。
ロックは自らもレヴィの後ろに跪いて、片膝をレヴィの脚の間に割り込ませる。
身体を起こそうとするレヴィの肩をとらえ、頸骨から背骨にかけて、何度も口付け、舌でなぞり上げる。
「ちょっ、ロック――」
抗議の色を滲ませたレヴィを無視して、ロックは左手を彼女の胸へと滑らせた。
タンクトップ越しに、温かく息づく彼女の乳房。
やわやわと動かすと、ロックの掌からあふれるように柔らかい。
休日は特に、レヴィは下着をつけずにそのままタンクトップを着ることが多い。
今日も例に漏れず、そんな感触。
胸を包み込んだ手でレヴィの半身を引き寄せ、後ろから抱きしめる。
ロックの手に、かたくなった乳房の先端が当たった。
「ロック、何す――」
レヴィの声は、彼女の先端をつついたロックの人差し指のせいで、途中で切れた。
人差し指と中指の間に挟んで僅かに締めると、彼女の口からは、もう息を飲む音しか聞こえてこなかった。
224ロック×レヴィ シャンプー  ◆JU6DOSMJRE :2009/12/12(土) 22:47:43 ID:O++40qWy

レヴィの鼓動を指先と自らの胸で感じながら、ロックは右手をレヴィの腰に回してぴったりと抱き寄せる。
ろくに拭いていないレヴィの髪からたらたらと水がこぼれ、黒いタンクトップを瞬く間に濡らしてゆく。
休日によく着ているロックの白地のTシャツの胸も、同じように濡れていった。
布越しに触れていた左手を、タンクトップの裾の方にのばし、下から潜り込ませて、
今度は、触れていなかった右の乳房を包み込む。
直に感じるレヴィの肌。
いっそう心地よい感覚。

濡れた髪の間から覗く耳朶を唇で挟み込んで、吸う。
レヴィの身体が小さく震えた。
乱れて散らばっているレヴィの髪を、右手で掻き寄せ、剥き出しになった首筋に、唇を落とす。
レヴィの呼吸に、甘さが増した。
首筋を露出させる役目を終えた右手は、休まずレヴィの右肩から腕にかけて、ゆっくりと撫で下ろす。
手の甲を経て、指を絡ませると、きゅ、とレヴィの指も応えた。
バスルームは少しの音でもよく拾う。
ロックのたてる、唇がレヴィの肌に触れる濡れた音が、大袈裟に響く。

絡めていた指を解いて、ロックはレヴィの腹に手を寄せる。
鍛えられた腹筋。
くぼんだ臍をくるりとなぞってから、ロックはレヴィのホットパンツの隙間に手を差し込んだ。
心持ち中指に力を入れながら、そのまま下に滑らせる。
んっ、とレヴィの身体が揺れた。
レヴィのどこが彼女を疼かせるのか、よく知った指は、的確にそこを押さえたようだった。
中指の腹でゆっくり捏ねると、ほとんど力を入れていないというのに、レヴィの身体が揺らめいた。
更に奥に指を進ませると、薄い下着の中はもう、ゆるゆると溶けているのが分かった。
窮屈なホットパンツの中で、くにゅ、と指を押しつけて動かすと、
段々と湿り気が下着に染みてきて、ロックの指先を濡らした。

ロックの中心も、とうに熱を持って昇ぶっている。
ここで止めることなど、出来そうになかった。
ロックは、一端手を引き抜いて、レヴィのベルトに手をかけ、外す。
ジーンズのホットパンツを引き下ろし、次いで、シンプルな黒い下着も。
レヴィは抵抗せず、膝を抜くのに協力した。
225ロック×レヴィ シャンプー  ◆JU6DOSMJRE :2009/12/12(土) 22:48:27 ID:O++40qWy

ロックは後ろからレヴィの膝の間に陣取って、右手を前にまわし、レヴィの脚の間を撫で上げる。
邪魔するものが無くなって、ロックの指は自由に動いた。
充分にとろかして、あふれ出る粘液を指にまとわせ、襞を繰り返しなぞる。
レヴィの体温が上がり、不規則になった呼吸が、湿ったバスルームに響いた。
濡れた中指で、レヴィの奥を探る。
レヴィの背中が丸まって、喉の奥から短く声が漏れた。
熱くなった肌よりもっと熱い、レヴィのなか。
中指1本だというのに、柔らかい内壁はぴったりとロックの指に吸い付いた。
上下に動かすと、なめらかな液体があふれ、粘る音。
ロックの指が、根本まで濡れた。
レヴィの熱で、指が溶けてしまいそうだった。
中指の第一関節を曲げ、掌全体でも押しつけるように圧迫すると、ついに、レヴィが、「あ――」と声をあげた。
手と指の動きに合わせて、レヴィの身体がうねる。
レヴィの反応で、ロックの熱も高まってゆく。

「……気持ち良い?」
耳元で囁くと、
「なっ……、ふざけんな、殺されてェか」
息の上がった声で、レヴィが毒づいた。
「どうして? さっきは素直に答えてくれたのに」
髪を洗っていた時のやり取り――。
ロックは指を止めない。
レヴィの眉間に皺が寄った。
「……あんた、性格、悪ィ……」
しかし、レヴィの文句はそれで終わりだった。
レヴィの左手が、ロックの左腕をとらえ、強く握った。
「……あっ、……ロック……、も…………ッ」
言われるまでもなく、ロックの方も我慢の限界だった。
静かに指を抜く。

――指だけじゃ、足りない。全然。
226ロック×レヴィ シャンプー  ◆JU6DOSMJRE :2009/12/12(土) 22:49:47 ID:O++40qWy

オフの時しか履かないジーパンを脱ぎ捨てて、確か、バスルームに避妊具の予備を置いておいたはず、
と備え付けのシェルフの中を探すと、確かにそれはそこにあった。
取り出すのももどかしく、準備を整えると、レヴィの背後に戻る。
「いくよ」
「ああ」
レヴィが上体を倒し、バスタブの縁に手をつく。
普段日に当たっていない、乳白色の尻が、眼下でまるく盛り上がっている。
レヴィの背中を手で優しく押し下げて、ロックは突き出された柔らかな双球の間に、自身を沈み込ませた。
狭く、しかし温かくとけた内部に、ゆっくり押し入る。
レヴィの筋肉が緊張し、ロックを締め上げる。
――最初から、そんなに締めつけるな。
早くも脊髄に痺れを感じながら、レヴィを分け入るように押し進める。
すべてを収めきると、ようやく、レヴィの身体が緩んで、深い溜息が彼女の口から漏れた。
形よく張りのある尻に比べると、不安になるほど薄く引き締まったウエスト。
鍛えられた背筋は、二本揃ってまっすぐに背中を縦断している。
滑らかな陰影を描く筋肉の下には、肋骨の形。
ロックは、両手でレヴィの背中をゆるやかに撫で上げ、そのまま覆い被さるように後ろから抱いて、掌で乳房を受け止める。
普通に立っていても豊かなレヴィの乳房は、こうして前傾姿勢になると、更にたっぷりとロックの掌を満たす。
くい、と二本の指に力をこめると、急に、ロックへの締めつけが増した。
段々と、ロックの腰は勝手に動き出す。
バスタブの縁をつかむレヴィの手に力がこもり、甲には青く血管が浮いていた。

「……痛く、ない?」
レヴィは揺さぶられながら、鼻で笑った。
「全、然」
――って、言えば、いいのか、よ。ボケ。
とのおまけ付きで。
レヴィを突き上げながら背中に口付けると、がくり、とレヴィの頭が落ちた。
くっきりと肩胛骨が浮き上がる。
――翼のようだ。
ロックはぼんやりと思う。
肩胛骨の下にできた窪みに、親指を潜り込ませ、人差し指とで挟む。
皮膚と筋肉に包まれた下の、白い骨を思った。
それから、両手でレヴィの腰を掴む。
肌と肌のぶつかりあう音。
ロックの腰が速まるのに合わせて、レヴィの乱れた呼吸が、堪えるような声が、バスルームに反響する。
いつもはすぐに空気にまぎれて消えてしまうレヴィの声が、今日はかすかな震えに至るまで、すべてが増幅された。
バスルームの空気中で、たくさんの目に見えない水分とレヴィの声が混ざって、漂っているようだった。
ロックはレヴィの顔を見ながら情を交わすのが好きだったが、
この無防備な状態の女を思うままに突くという体勢は、なぜか、野蛮な本能を増幅する気がした。
相手に見られているときには抑圧される部分があるのだろうか。
自分にはそれほど無いと思っていたが、なるほど、支配欲といわれるような類の劣情は、
確かにロックの中にも存在するようだった。
ただ、何となく自分勝手な振る舞いのようにも思えて、ロックはレヴィに対して少し罪悪感を抱く。
――ひとりで楽しみたいわけじゃ、ない。
ロックは片手を前にまわし、繋がっている部分の少し上、レヴィの一番敏感なところを指で圧迫した。
レヴィの甘い声が、ロックの脳髄を刺激する。
そろそろ、余計な事は考えられなさそうだった。
生理的な欲求が身体を突き動かし、本能が理性を駆逐する。
しかし、すべてを本能に委ねてしまう前に、ロックは理性をかき集めて絞り出した。
「足りない、ところ、は、無い?」
227ロック×レヴィ シャンプー  ◆JU6DOSMJRE :2009/12/12(土) 22:50:12 ID:O++40qWy

――次の瞬間、レヴィは背中を捻って、上半身だけで勢いよく振り返った。
不安定な体勢から、左手をロックに向かって伸ばす。
レヴィの手が、ぐい、と、ロックの首を引き寄せた。
とても強い力で。
「ある」
息がかかるほど近い、レヴィの顔。
嫣然と笑う。

そして、レヴィは奪い取った。

――ロックの唇を、自らのそれで。
228ロック×レヴィ シャンプー  ◆JU6DOSMJRE :2009/12/12(土) 22:52:59 ID:O++40qWy

二人の中に渦巻いていた熱が過ぎ去り、冷静さを取り戻してから改めて見回してみれば、酷い有様だった。
ほとんど拭いていなかったレヴィの髪から滴った水と二人の汗で、レヴィのタンクトップも、ロックのTシャツもびしょ濡れ。
髪を拭こうと用意したバスタオルは、隅の方で無様にたごまっている。
バスマットだって、早急に天日干しが必要だろう。このままだと腐って黴が生えそうだ。
バスルームのあちらこちらには水滴が飛び散っているし、
脱ぎ捨てられた二人分のジーンズと下着もじっとり湿っている。
せっかく綺麗に洗ったレヴィの髪は、乱れてもつれている。
濡らさないようにしたかったはずの包帯も勿論、水難を免れ得ず。

顔を見合わせた二人に、苦笑が浮かんだ。
「……ったく、ちょっとは加減しろよ。一応、怪我人だぞ、あたしは」
あられもない格好で、レヴィがぼやく。
「……悪かったよ。お詫びに責任もって、包帯の交換はする」
ロックは、あまり悪いとも思っていないような顔で返した。
「あー、あー。どうすんだよ、これ。びったびたじゃねェか」
呆れたように、レヴィは水浸しの室内と服を見回す。
ロックもその視線を一緒に追っていたが、
「バスルームは自然乾燥。服とマットは洗濯。……けど、その前に、俺達はシャワーだ」
あっさり言い切って、さっさと着ていた自らのTシャツを脱ぎ捨て、そして、レヴィのタンクトップも脱がしにかかった。
「――おいおい」
面食らった様子を見せたレヴィだったが、
結局、この状態だったらロックの言う通りシャワーを浴びるしかないと思ったのだろう、
素直に両腕を上げて、頭を抜いた。

「来いよ、レヴィ」
先にバスタブの中に立ったロックが、「洗ってやるから」と、レヴィに向かって手を差し出す。
「今度はほんとにシャワーだけか?」
片頬に笑いをのせ、レヴィはロックの手を取って、バスタブを跨ぐ。
「――それは、どうかな?」
どこか物騒な笑顔を浮かべたロックの手が、勢い良くシャワーカーテンを引く。

シャワーカーテンの白が、二人を隠した。

休日の午後は、まだ長い――。



229名無しさん@ピンキー:2009/12/12(土) 22:55:45 ID:xh7ROsjV
>228
うおおおおおおおおおおおおおおおおお!
これは実にGJだ
GJと言わざるを得ない
いやまったくGJだ

またの投稿を楽しみにしているよ
230名無しさん@ピンキー:2009/12/12(土) 23:12:06 ID:gRj4eXbe
>228
本当に GJ です
ありがとおおお!
231名無しさん@ピンキー:2009/12/12(土) 23:59:33 ID:vZwfw2XU
俺は今日、寝る前に何気なくスレを開いたことを心の底から良かったと思ってしまった。

例え明日が休日出勤であっても、だ。


>>228
GJでございました。
今夜はイイ夢が見れそうだ。
でもその前にもっかいちょっと読みたくなってきた。
こういうエロに辿り着くまでのやりとりがまた禿しく萌えるSSって大好きw
レヴィたんの乳…お鍋の具でいうと白子のような絹ごし豆腐のような
232『1987年、ビッグ・アップル』:2009/12/13(日) 00:06:53 ID:SfrjWqez
"俺を、どうするつもりだ!?"

俺は鉄製の椅子に縛りつけられた両手を振りながら、野犬のような目で、その老婆―『The Shadow』こと川島芳子―を睨んだ。
シビックの中でこいつを殺す機会を伺っていた俺とレヴェッカは、このビジネススーツ姿の老婆に、ものの本によれば若い頃は
相当綺麗だったそうだが、今は皺くちゃの老女に、その配下の黒服の連中に、あっけなく捕らえられたのだ。
そして、例のビルの地下室に監禁された、というわけだ。

同じく椅子に縛り付けられたレヴェッカは、何かの薬を与えられたのか、胸は上下しているから生きてはいるようだが、
さっきからぴくりとも動かなかった。
老婆は舌なめずりをして俺を、まるで八百屋でトマトの品定めをするかのように、俺の頭の上から足の先までを見た。
そして、古風な北京語でこう言った。

"なかなか、いい身体をしているじゃないか、張刑事。"

"俺は、生理も100年前に上がったようなババアに弄ばれる趣味なんかないぞ!
そういうのがお好みなら、ホストクラブにでも行くんだな!"

"ほう、これを見てもお前は、そう言うのか?"

言いながら老婆は、首元から何かを剥がし始める。
……特殊メイク?
この顔は、特殊メイクなのか?
確かに、この歳―資料に拠れば、今年80歳のはずだ―で、あの軍人のような歩き方は、不自然だった。
俺の感じた違和感の正体は、これだったのか。

顔を剥がし終えて、白髪のカツラを取った『The Shadow』は、翠の黒髪を真ん中で分けた、端正な顔立ちのうら若き女性だった。
それはまさに、俺が中学時代に国史の教科書の写真で見た、あの『男装の麗人』、川島芳子そのものだった。

"……どういうことだ?
お前は、本物の川島芳子じゃないのか?"

"いや、正真正銘の本物……粛親王の第14王女、愛新覚羅東珍さ。
君の住んでいる香港お得意の海賊版か、ベガスのそっくりさんショーに出ている役者か何かとでも、思ったかね?
なあに、簡単なことさ。
我が愛新覚羅家に伝わる、秘薬の力をもってすればな。
生理も、ちゃんと毎月来ているよ、おかげ様でね。"
233『1987年、ビッグ・アップル』:2009/12/13(日) 00:07:13 ID:SfrjWqez
"なぜ、兄貴を殺した!?"

"張国忠君か、彼はうまくやってくれていたよ。
あの薬を流してくれたおかげで世界が不安定化し、そして再度我々の薬に需要が起きれば、大儲けだ。
この国の軍需産業も潤うし、あの元大根役者がこの国の頭にいる限りは、共産圏には強硬な姿勢を取ってくれる。
……上海コミュニケが発表されたときは、目の前が真っ暗にはなったがね。
そうすれば、今度こそあの中南海のアカどもを倒して、満州人による国家が再建できるのだ。
だが、獄中の彼の口から、我々のことが漏れたらコトだ。
だから、彼には消えてもらったよ、林署長に動いてもらってね。
もっとも、林署長にもいずれ消えてもらうつもりだったから、君が殺してくれて手間が省けたな。"

俺の心を、怒りが支配していた。
この女、齢80にして未だ20代の肉体を保った魔性の女を、俺は今すぐ本来の居場所―天帝の下―にFedExかUPSで送り届けてやりたかった。
こいつは兄、そして林署長をまるでチェスの駒のように扱って、かつ、用済みになったら紙クズを捨てるかのように、葬り去ったのだ。
配下の人間を、なんとも思っていないのだ。

"お前だけは、絶対に許さない!
絶対に、兄の敵はとる!"

"そうそう、君の銃を見せてもらったよ。
これは、お兄さんのものだった、そうだな?
……まったく、兄弟揃ってひどい趣味だ。
そこのお嬢さんも、とんでもない安物の銃を持っているな。
まったく、気に食わないねえ。"

"兄を侮辱するのは、許さん!"

"ふふふ、そう熱くなりなさんな。
私は、もっとふさわしい『銃』をこのお嬢さんにくれてやろう、と言ってるんだよ。"

川島が指を鳴らすと、地下室のドアが重苦しい音をたてて開き、黒いビキニパンツに黒い覆面姿の男たちが3人、入ってきた。

"この『銃』は3丁ある。
『2丁拳銃』は聞いた事はあるだろうが、1人で3丁、それもこんなお嬢さんが扱うというのは、なかなかの見ものじゃないか。"

男たちは、レヴェッカを縛り付けていたロープを切り、レヴェッカをその場に寝かせた。
そして、部屋の端にあったバケツの水を、レヴェッカに浴びせかけた。
レヴェッカは軽く呻いて、そのずぶ濡れの目をしばたかせた。
234名無しさん@ピンキー:2009/12/13(日) 01:05:38 ID:Icgtf6PU
>>233
よかった、打ち切りの女神が老婆のまま張さんを食う話でなくてよかった……
続き待ってる。裸にネクタイ一丁で。
235東京都 51歳 匿名希望:2009/12/13(日) 21:27:35 ID:EbOJooja
ヨランダ先生、こんにちは。
いつもコラム楽しみに読ませていただいております。
このようなことをご相談するのは筋違いとお考えでしたら大変失礼かとは存じますが、心配事がありまして、
恥ずかしながらお便りを送らせていただきました。

私は都内のある企業で部長職を務めているサラリーマンなのですが、部下がどうも最近ノイローゼ気味で
ほとほと困っております。
先日の東南アジア出張以来、ずっと様子がおかしいのです。

最初は、今若者に流行っているという「新型うつ」を疑っていたのですが、どうもそうではない。
「○島君、調子はどうだい」などと声をかけても、「○島は死んだ、あんたがそう言った、俺はロックだ」などと
呟くばかりで、要領をちっとも得ないのです。

毎日会社に来はするのですが、中国系米国人の同僚の女性に「レヴィ、またピザか…お前の国には栄養バランスって
言葉はないのかい?」だの、「お前は銃、俺は弾丸だ」と、セクハラまがいの言動を繰り返しており、コンプライアンスの
観点からもこのまま放置しておくのはどうもよろしくないという話が、先日の会議でも議題に上ったほどなのです。

上司として産業医への受信を勧めたのですが、「そんなことを言って、本当はBSEで牛肉が食えなくなったから
お前ら俺をミンチにしてハンバーガーを作って輸出するんだろう!?」などと言って、相手にしてくれません。

私としては、彼を守ってあげたいのです。
東南アジア出張の際はいろいろ気を回させて、かなり無理を聞いてもらいましたし、彼の御両親は高齢で
一応お兄さんはいるのですが、そろそろ介護等についても心配な年頃です。

私は、どうすればいいのでしょうか。
先生の、豊富な御経験に基づいたアドバイスを何かいただければ幸いです。
236『1987年、ビッグ・アップル』:2009/12/14(月) 16:06:46 ID:8vtPYM7k
"やめろッ!
あたしを、どうするつもりだ!?
クソッ……お前ら、あたしに何をした!?"

レヴェッカが叫ぶ。
だが、周りの男たちは、淡々とレヴェッカを押さえつけ、服を脱がせるばかりだ。

"レヴェッカ!
やめろ、レヴェッカに触るな!"

"我々は、薬に関してはスペシャリストでね。
『房中術』という言葉を聞いた事があるかね?
このお嬢さんに与えた薬は、その秘術の一つでね、一時的に交感神経の働きを活発にして、脳内麻薬物質の分泌を促進する。
……言うなれば、レイプ・ドラッグの強力な奴だな。"

にやにやしながらそれを眺める川島をよそに、男の一人が、一糸纏わぬレヴェッカの股をぐっと開かせる。
別の2人は、レヴェッカが動けないように、懸命にその身体を押さえる。
レヴェッカのそこはすでに滴るほど濡れそぼり、薄い毛に粘液が絡み付いてぐちゃぐちゃになっているのが
ここからでもわかる。

"やめッ……うぁ……ア……ッ……あ……ン……っは……ァ……! "

男の、芋虫のような指がレヴェッカのそこを撫でる。
いつも、高価な宝石を扱うように繊細に動かす俺の指と違い、荒々しい動きで。
だが、レヴェッカは、背筋をビクビクと震わせ、快感に打ち震えている。
ぐちゅ、ぷちゅ、と、レヴェッカの出した粘液と空気が混ぜ合わされる、淫らな水音が地下室に響き渡る。

"ァ……や……やめッ……やめろッ……兄貴ッ……助けてッ……あ……うぁ…ン…あ……!"

"レヴェッカ!
てめえら、絶対殺す!
くそう、俺を放せ!"

"姐さん、もうぐちゃぐちゃですよ、こいつのここ。
これなら、スムーズにいけそうだ。"

"胸のほうも、すっかり乳首が硬くなってやがる!
まだ発展途上でも、こんなに感じるんだな。
それにこの身体、すげえ柔らけえ…!"

レヴェッカのそこを指で攻めながら、胸をわしづかみにしながら、荒い息の男たちが口々に言う。
悲鳴のような、スピッツの鳴き声のような、レヴェッカの声が、俺の胸を痛くさせる。

"俺にも、早く触らせろよ!
ふふふ、こんな子供に手を出せるなんて、本当に久々なんだからな。"

"当然だ。
私が調合した薬だ。
効果は抜群だよ。"

興奮を禁じえないような、荒い息に混ざった覆面姿の男の一人の声。
それとは対照的な、川島の冷静な声。
それが、レヴェッカの嬌声と、本人も望んでいない嬌声と、そしてレヴェッカのそこと男の指の織り成す激しい水音とあいまって、
こんなのは嫌なのに俺をも興奮させる。
237『1987年、ビッグ・アップル』:2009/12/14(月) 16:15:29 ID:8vtPYM7k
"なんだ、張刑事、君も興奮しているのか。
自分の女が、目の前で犯されるのが、そんなにいいのか。"

"てめえら、レヴェッカを放せ、バカヤロウ!!"

"あッ……はッ……ぁ……うぁ……ン……あ……!"

川島の手が、俺のジーンズのフライ部分にかかる。
ジーンズごしに、俺の敏感な場所を、既に充血し、硬くなったそこを、繊細なタッチで撫で上げる。

"やめろッ……化け物ッ……お前ッ……本当は80歳なんだろッ……!"

"私とて、一人の女だ。
そして、目の前に興奮した男がいる。
何が問題かね?"

言いながら川島は、俺のジッパーを下ろし、ぽろんと外気にさらされた俺のそれを、指でつーっと撫でる。
浮き上がった青筋を、川島はいとおしそうに、指でなぞる。

"ふふふ、伊達に歳を重ねているわけではないよ、私は。
地獄を見ながら、天国を味わうといい、張刑事。"

言うが早いか、膝をついた川島の口が、俺のそれを咥える。
暖かい、唾液で湿った口内の感触が、そこから伝わってくる。

"うあ……やめ……やめろッ……化け物ッ!!"

背筋に、走る電流。
俺の亀頭と竿の間の窪みをなぞる、川島の舌。
俺のそれに吸い付いては離れる、その潤んだ唇。
じゅぷじゅぷと、たっぷり溜まった唾液と空気が混ざる音。

"ふむッ……ん……むッ…れろ……ッ……!
楽しもうじゃないか、張刑事ッ!"

だめだ、抵抗しきれない。
こんな化け物に与えられる快感などに、俺は屈したくない。

目の前のレヴェッカの開ききったそこに、今まさに後ろからレヴェッカを抱き上げるようにしている男の1人のそれが、
押し当てられている。
男はレヴェッカの粘液を自らのそれに刷り込むように、レヴェッカのその部分を、ひどく濡れているそこを、自らの
それでぐちゅぐちゅと撫で回す。

"お前、後ろはバージンだろう?
処女を切る感覚を、久々に味合わせてやるよ。"

"や、やめろっ……そこは出るトコで、入るトコじゃッ…ねえッ……!"

刹那、男のそれが、レヴェッカの後ろの穴に、排泄口に、少しずつ飲み込まれていく。

"痛ッ……やめ……やめろッ……ほかの事は何でもするッ……だからッ……やめッ……ぁ……!"

レヴェッカの菊門からは、いくら自らの粘液を絡ませてあるとはいえ、無理に挿入されたそれのせいで一筋の血が流れ、
床に赤い染みをポツポツと作る。
もう一人の男が、今度は前からレヴェッカの足を抱えて、自らのそれを前の穴に押し当てる。
238『1987年、ビッグ・アップル』:2009/12/14(月) 16:15:53 ID:8vtPYM7k
"お前、やっぱこっちの方がいいだろ?
2本入ったら、すげえぞ、気持ちよくて。"

"やめッ……殺すッ……命乞いしても絶対殺すッ……うあ……あ…ッ……ン……!"

"レヴェッカっ!!"

"姐さん、俺も、いいすか?"

"ああ、来い!"

さっきまでその口で俺のそれを咥え込んでいた川島のスラックスを、残った一人の男が下ろす。
黒いレース遣いの下着とガーターベルトを、そのまま剥ぎ取る。
そして、自らのモノを男は川島のそこに、ぐっと差し込む。
俺のそこと川島の口の間の銀の糸が、その衝撃でぷつっと切れる。

"ン……ッ……!"

川島の、生めかしい声。
しばしその感覚に酔っていた川島が、再び椅子に縛られて身動きの取れない俺のそれを咥える。

"……ふ……む……ン……はぁ……ッ……!"

さっきまでと違い、俺のそこにいっそう絡みつくような、川島の舌の動き。
ますます赤くなった、川島の頬。
潤んだ、その瞳。
俺の茂みに当たる、川島の息遣い。

俺は、もう限界だった。
こんな化け物の口で達してしまうなど、本当は嫌だった。
でも、俺は背中が反り返ってしまうほどの快感からは、もう、逃れられなかった。

"うあ……っく……あ……ッ……!"

"ふぁ……ッ……あ……ン……!"

どぷっ、びゅくっ、と音がしそうなくらいの勢いで、俺の欲望の滴が川島の口内に放たれた。
川島はわざとじゅるっと音を立てながらそれを飲み込み、次いで放たれた覆面姿の男の精を、自らのそこで受け止め、背中を震わせた。

"あ……だめッ……中はッ……やめッ……やめろッ……うぁッ…あ……!"

快感の余韻に浸る俺の耳には、レヴェッカの前と後ろの穴に男たちの白濁が放たれ、レヴェッカが屠殺される豚のような悲鳴を
上げるのが聞こえていた。
俺はその余韻の中、全身の力が抜けていくのを、静かに感じていた。
239『1987年、ビッグ・アップル』(続きません):2009/12/16(水) 00:01:27 ID:s6qBnOTq
次の瞬間だった。
俺は、まばたきすらできずにそれを見つめていた。
ぐったりしていたレヴェッカが、あっという間に男たちを跳ね除けると、脇の机に置かれていた俺のベレッタをひっつかみ、
見事な二挺捌きで3人の男たちの頭を打ち抜いたのだ。

"……たった今中出しされた男が、もう死んでいる気分はどうだい、プリンセス?
あたしは、すんげえハッピーだ。
まるで、州営のロッタリーにでも当たったみてえだ。"

その薄い茂みの間から血を流しながら、川島に銃を向け、ニヤリと笑った全裸のレヴェッカが言う。
レヴェッカのずぶ濡れの髪から水が滴り、コンクリートの床にできた血の染みがそれを吸って、ぱっと広がる。

川島は、自分に覆いかぶさったままこときれている男の死体を、不敵な笑みを浮かべてドサリと落とす。
そして腰を起こすと、口元の、俺の吐き出した残渣を指でぬぐい、舌なめずりをする。

"お嬢さん、なかなかやるじゃないか。
君が漢人じゃなく満人だったら、私の王国の武官として迎えたところだよ。"

"だとしても、お断りだ。
あたしみてえなABCのバナナ・ガールにゃ、東洋の専制君主国家なんぞは性に合わねえ。
……てめえも得物を持っているんだろう、抜きな。
あんたとあたし、サシで勝負といこう。"

"ふははは、そうかお嬢さん、私とサシで勝負したいと、そう言うのか。
この、『ハルビンの鬼姫』と。
面白い、受けて立とうじゃないか。"

川島はそう言いながら、胸のホルスターからモーゼルを、さっと抜いた。
二発の銃声が、地下室に響き渡った。



あれから、1週間が過ぎた。
香港に戻るあてもなく、俺は相変わらずブロンクスの教会で、のんべんだらりと過ごしていた。

レヴェッカは、あの日川島の胸を見事撃ち抜いたレヴェッカは、俺のベレッタがえらくお気に召したらしく、稼ぎを貯めて
自分もベレッタを2丁買うんだ、と息巻いていた。
だが、いつものように勝手口の前で子猫たちにミルクをやるレヴェッカの顔は、以前と変わらぬ、本当に優しいそれだった。

と、庭の入口の木戸が、ギーっと開いた。
そこには、相変わらずにこやかな洪神父と、見慣れぬ、中国系らしい、黒いスーツにサングラスの男が立っていた。

"皇家香港警察の、張刑事だな?
三合会の荘戴龍が、お前を雇いたがっている。"

男は無表情のまま、ネイティブの広東語でそう言うと、通りの向こう側に停まった白いキャデラックを、親指で指差した。

かくして俺は、黒社会の一員として、再び香港に帰ることになった。
そして数年後、プロの荒事師になったレヴェッカと、これまた思いもかけない場所で再会することとなる。

だが、それはまた、別の話だ。
その話については、機会を改めてすることとしよう。

<連作 『1987年』 終>
240名無しさん@ピンキー:2009/12/16(水) 05:33:16 ID:4Tozke9e
GJですだよ
最近このスレはいいSSばかりだなー
241名無しさん@ピンキー:2009/12/16(水) 19:30:14 ID:sP+h6Y4Y
>>239
GJです
ありがとうありがとう

台詞がいちいちかっこよすぎて痺れた
242名無しさん@ピンキー:2009/12/16(水) 21:08:54 ID:nvOgJWG1
>>239
GJ!
硬派でまさにブラクラな世界観楽しかったっす
243名無しさん@ピンキー:2009/12/18(金) 01:33:58 ID:nad6sC3M
レヴェッカちゃあぁぁぁぁぁぁぁん
244名無しさん@ピンキー:2009/12/18(金) 07:55:58 ID:5qoo2ano
このスレ最近凄い。今、何人ぐらいの神が投下してくれてんの?
245ロック×レヴィ 赤  ◆JU6DOSMJRE :2009/12/18(金) 20:20:52 ID:/79Fmw6c
ラグーン商会の被雇用者であるレヴィの機嫌は、大変悪かった。
本日のラグーン商会のお仕事は、貨物の運搬。
指定の場所で荷物を受け取り、高速魚雷艇・ラグーン号に積み込んで海上を運航、
指示された小さな田舎町の港で待つ者へ荷物を引き渡し。以上、完了。
積み荷の中身は白い粉だと推測されたが、好奇心は猫をも殺す。
運び屋は、荷物の内容物になど、興味を持たない。
今回の依頼は、赤子の手を捻るように容易いものとなるはずだった。
海上の天候も良好。のどかに晴れて、波は穏やか。
沿岸警備隊に出くわすこともなく、ラグーン号は無事、目的の港に入港した。
ランチボックスは無いが、快適なクルージング気分で、レヴィの機嫌は大層良かったのだ。
ほんの、つい先程までは。

港とは名ばかりの古ぼけた木製の桟橋に接岸して積み荷を降ろす段になって、
レヴィの機嫌はまたたく間に急降下した。
「よう、姉ちゃん、頑張るねェ」
原因は、港で待ち受けていた引き渡し相手の、この三人の男たち。
金で雇われた田舎者のゴロツキだろう。
だらしなく馬鹿笑いをしていた男たちは、レヴィの姿を認めると、
一斉に粘りつくような視線でレヴィの全身を眺め回した。
まず、顔。
それからすぐに、黒いタンクトップに覆われた胸。その裾から覗く腹。
次に、デニムを短く切りつめたホットパンツの尻。
そして、剥き出しの太ももから足先までじっくり下がって、また上がる。
最後は、胸と、太ももの付け根を交互に見て、仲間内で目配せし、下卑た笑いを漏らした。

レヴィは内心嘆息した。
――またあの目か。
あの目は知っている。
好色の目だ。
レヴィをちらちら見ながら卑しい笑いを交わし、
指で卑猥なジェスチャーをしてみたり、腰を前後に突き動かしてみたり。
そんな姿が目に映り、レヴィの腹の底には、たちまちどす黒いもやが溜まっていった。
氷の目で睨みつけたが、男たちはレヴィが見ていることに気づくと、一層大袈裟な動作をして見せた。
下品な笑い声が大きくなって、レヴィの苛立ちもいや増した。

ラグーン号から男たちの乗ってきた日本製のRVへ、
黙々と積み荷を移動させるラグーン商会のメンバーを尻目に、
男たちはにやにやとレヴィの姿を追うだけで、手伝おうともしない。
他のラグーンメンバーであるダッチやベニー、ロックも男たちの態度には当然気づいているが、
ここはさっさと作業を済ませてしまうに限る、と意識的に無視を決め込んでいた。
それをいいことに、男たちは調子に乗って、レヴィが船とRVを往復するごとにこうして近寄ってきて、
馴れ馴れしく肩や腰を触ってきたり、よろけたふりをして尻を掴んできたりする。
レヴィの嫌悪感は喉元までせり上がってきた。
殴り殺してやりたいところだが、今は業務中。
感情にまかせた行動は禁物だ。
取引相手をぶちのめしたとあっては、ラグーン商会の信用に関わる。
どうせこの男たちは使いっ走りだ。
取引先の本元がどんな団体であるのか詳しくは知らないが、
今回の貨物の中身からして、大事にしたら後々面倒なことになりそうな団体であることは明白だ。
それにしても何でまた本元はこんなゴミ虫どもを雇っているのか、下請けを繰り返したなれの果てか、
いよいよこの業界もヤキが回ったかと思ったが、とにかく、軽率は控えるべき。
レヴィは短気だったが、同時に合理主義者でもあった。
246ロック×レヴィ 赤  ◆JU6DOSMJRE :2009/12/18(金) 20:22:09 ID:/79Fmw6c

だが。
「重そうだねェ。手伝ってやろうかァ?」
その気も無いくせに、脂ぎった手でべたべたと素肌の背中に触れ、捏ねるように撫で回し、
ウエストの隙間からホットパンツの中へ侵入しようとする男の手に、レヴィの我慢の針は振り切れそうになった。
「必要ねえ。どけ」
乱暴にその不潔な手を振り払って作業を続行するが、
懲りずにレヴィが荷物を上げ下ろしをするすぐ横でしゃがみ込み、
下から覗き込んでは醜く唇を歪めてニヤつく男に、
レヴィはコンバットブーツの底をその顔面に思い切りお見舞いしたくなった。

――こんな事はよくある事だ。
レヴィは必死で頭を冷やそうとする。
今でこそ、腕にものを言わせて、自分に手を出したらどうなるのか周知させているが、
非力な子供だった頃は、こんなことは日常茶飯事だったのだ。
さすがにロアナプラ内でここまで命知らずな行動を取る奴はいないが、
それでも、時折好色の目で盗み見られていることには気づいている。
一部の奴らの間では、猥談の対象になっていることも。
そんな奴らの理屈では、そういう目で見られる女の方が悪いらしい。
誰も好きこのんでこんな身体に生まれてきたというわけではないのに。
まったく非論理的だと腹が立つが、そんなことにいちいち拘っているのも馬鹿らしい。
今回だって、あと1,2回往復すれば、こんなクズ共とはおさらばだ。

――だから、こらえろ。
レヴィは、この荷物を運び終わって、一途、ロアナプラに帰還することだけを考えて、嫌悪をなだめた。


「よう、ご苦労だったなァ」
しかし男たちは、そんなレヴィの忍耐には気づかないらしい。
ようやく最後の積み荷を運び終えたレヴィを、汗くさく弛んだ身体が囲んだ。
――図体だけは馬鹿でかい。
「どけよ」
不機嫌をあらわにしてレヴィは睨み付けたが、男たちは引かない。
「そうつれねェこと言うなよ」
「このタトゥー、イカしてるじゃねェか」
「どこで入れたんだ? つか、どこまで入ってんだ?」
「ちょっと見せてみろよ」
男たちは、レヴィの右肩を中心に、腕、首、そして背中から胸部にかけて入っている
トライバル模様の黒いタトゥーを無遠慮に触り、
耳障りな声で笑いながら、タンクトップの肩紐に手を掛けようとする。
レヴィの全身を、ざわりと悪寒が駆けめぐった。
寒くもないのに、鳥肌が立った。
「触んな」
レヴィは男の手を荒々しく肘で払いのける。
「随分みじけェタンクトップじゃねぇか」
「ご自慢の肉体ってか?」
「見せたくてたまんねェのか?」
「サービス精神旺盛だなぁ、おい!」
「おいおい、それ下パンツ見えてねェか?」
「やっぱりわざと見せてやがるぜ、このアマ!」
「そんなに短いホットパンツ穿いちゃってよォ、お前、あれか? 露出癖あんのか?」
顔の筋肉が痙攣するのを感じながら、レヴィがさっさと船に戻ろうとすると、
男はむさ苦しい手でレヴィの二の腕を掴んだ。
247ロック×レヴィ 赤  ◆JU6DOSMJRE :2009/12/18(金) 20:23:38 ID:/79Fmw6c
「まァ待てよ」
「一緒に楽しもうぜ」
何を言ってやがるという憎悪と、あぁやっぱりねという軽蔑が、同時にレヴィの血管を駆けめぐった。
レヴィの目の端が、鋭く痙攣した。
「なァ、お前も好きなんだろ?」
「いい身体してんじゃねェか、なかなか」
「そんな格好して誘ってんだろォ? いつもよぅ」
「太いディックが大好き、って身体してるぜ、このアマ」
「俺たち、ちょうどたまってるからな。満足させてやるぜ」
「お前のプッシーに濃いィの沢山くれてやるから、楽しみにしとけよ!」
「お前も欲しいんだろ?」
――最低のクズ野郎だ、こいつら。
レヴィは、不快感で顔を歪ませながら、思った。
仕事中でなければ、すぐにイかせてやったのに。
――二度と戻ってこれないところへ、な。

男たちが下種な言葉を吐き続けるのをBGMに、
レヴィは、目の前の男たちがカトラスの餌食となって横たわるところを想像する。

撃つとしたらどこがいいだろう。
額か? 心臓か?
苦しませずに死なせるのはつまらない。
しかし、腹を撃って出血多量で死ぬ前に助かられてはたまらないし、薄汚い悲鳴を聞くのも不愉快だ。
とすると、喉がいいかもしれない。
声帯をやれば、もうこの醜い声を聞くこともない。
レヴィは、男たちの真っ赤な鮮血が吹き出し、乾いた大地に広がり、
そして染み込んでいく様を思い浮かべた。
それはきっと、済んだ空色と、深い緑、乾燥した大地に、よく映えるだろう。
こんな汚らわしい男の死体を処分する誰かを思うと気の毒だが、
タイ人の死体に対するあっけらかんとした感覚を考えればば、
このカスどもも、死体となれば充分にTVショーの娯楽として人様を楽しませることができるだろう。
ようやく善行をひとつ積めるというわけだ。
――そうすればみんなハッピーなのになァ?
レヴィは頭の中で男たちを速やかに葬った。
248ロック×レヴィ 赤  ◆JU6DOSMJRE :2009/12/18(金) 20:24:53 ID:/79Fmw6c
「放せ」
そろそろ付き合ってられない。
レヴィが力をこめて男の手首を取り、捻り上げると、
レヴィの腕を掴んでいた男は悲鳴を上げて手を放した。
しかし、他の二人の男が距離をつめてくる。
腕を捻り上げてやった男も、手首をさすりながら目を怒らせている。
「んだよォ、ケチケチすんじゃねェぞ」
「ほんとはヤりてぇんだろ?」
「太いの欲しいのォ、って顔に書いてあるぜ」
「イヤよイヤよもイイのうち、だろ?」
「突っ込めば、グチョグチョにして腰振るんだろ?」
「俺たちがたっぷりイかせてやるからよォ」
「それともマジで不感症か?」
「マジか? だったら俺たちが開発してやるぜ」
「最後には、もっと欲しいのォ、もっと突いてェ、ってよがらせてやるぜ」
ヒャハハ、と下品に口を歪めた男に、ぎゅう、と力まかせに片胸を握られ、
痛みで一瞬レヴィの身体はつめたくなった。

レヴィは男たちの様子で、遅ればせながら理解する。
――こいつら、ヤクやってやがるのか。
さっきからレヴィは、自らの眼だけには、憎悪を思うまま噴出させることを許していた。
レヴィの経験上、チンピラ程度の奴は、この眼で睨んでやれば大人しくなるはずだった。
なのに、ここまでしつこいのは、薬で判断能力を欠いているからだったのか。
――どうしてくれよう、こいつらに言葉は通じない。
……だとしたら、
「レヴィ!」

その時、低い声が大きく響いた。
その声の強さに、レヴィにまとわりついていた男たちの動きも止まる。
ダッチだ。
ラグーン商会のボス。レヴィの雇用主。冷静で知的な、頼りになる黒人の大男。
そのダッチが、古びた木で出来た桟橋のたもとから、黒いサングラス越しにこちらをじっと見つめていた。
レヴィは男たちの動きが止まった隙に、素早く汚らしい腕の間から抜け出した。
「引き上げるぞ」
ダッチは、親指でラグーン号を指し示す。
「ああ」
レヴィは足早に歩きながらタンクトップの乱れを直した。
「ご苦労。後は俺がやっとく」
「どうも」
「お前は船に乗ってろ」
分かった、と短く返して、レヴィはダッチの脇をすり抜けた。

男たちに触られたところは気持ちが悪いし、遠慮会釈のない力で掴まれた胸が鈍く痛む。
卑猥な言葉の数々は頭にくるばかりで、まだ身体中に陰鬱な怒りが渦巻いていたが、
ともあれ一難は去ったのだ。
レヴィは無表情で船に乗り込んだ。
249ロック×レヴィ 赤  ◆JU6DOSMJRE :2009/12/18(金) 20:27:09 ID:/79Fmw6c
ダッチが事務的な手続を終え、ようやく出港できるとなった時、桟橋から声がかかった。
「なァ、そちらさんのボスにちょっと頼みがあんだけどよォ」
見れば、先程の男たち。
この上、何の用があるというのか。
デッキで出港準備をしていたラグーン商会の四人はうんざりして顔を見合わせたが、
ややあって、ダッチが、しょうがねぇな、といった様子で進み出た。
他の三人に、そこにいろ、と目配せをして。
「なんだ」
威圧感を漂わせながら、ダッチが男たちを見下ろした。
「あのよォ、ガソリン、分けてくれねェか?」
男の一人が、卑屈な笑みを浮かべて言った。
「いくらだ」
「あー、40リッターほど……」
 ダッチは腕組みをしたまま見下ろす。
「いやぁ、入れようと思ったんだけどよ、ガスステーションも無いチンケな街だとは――」
「ロック」
 そんなことは聞いていない、とばかりにダッチが男の言葉を断ち切った。
「予備タンクは積んでるな」
「ああ、積んでるよ」
 ダッチが、フン、と鼻を鳴らして頷いた。
「いいだろう。きっちり料金を払うならな」
高速魚雷艇に、燃料のガソリンを積むスペースはあまり無い。
しかし、万が一足りなければ、途中で別の港に寄港して調達しても良いと思ったのだろう。
ダッチは、いち早くこの男たちを追い払う方を優先したらしかった。
うちは便利屋じゃねェぞ、とレヴィは全く不愉快だったが、ここで怒鳴り散らしても何にもならない。
ぐっと飲み込んだ。

「あとよ……」
まだあるのか、とさすがのダッチもげんなりした表情を見せた。
が、男は恐るべき無神経さで続けた。
「そこの女、ちょっと貸してくれねェか?」
男はちらりとレヴィを見て、顎で示す。

レヴィは自分のことを言われたのだと知り、眩暈がした。
「いやぁ、あんたらもイイ思いしてんだろ?」
「俺ら、こんな売春宿もない辺鄙なとこまわらされてよォ、たまんねえっつぅの」
「船乗りも大変だっつー話だけどよ、その点おたくらはいいよなァ」
「同じ船に慰安婦が乗ってるんだからよォ」
「しかも夜だけじゃなくて昼も仕事させてんだろ?」
「すっげェお買い得じゃねえか!」
「そっちって男が三人か? ちょうどぴったりじゃねェか! うちも三人だからよ!」
「どの穴が一番イイんだ?」
「なぁ、いいだろ? 楽しませてもらったらちゃんと返すからよォ」
「金もちゃんと払うぜ?」

ラグーン号のデッキには、怖いくらいの沈黙が漂っていた。
ダッチもベニーも、そしてロックも、冷え切った鉄のように無表情だった。
静寂の中に、男たちの俗悪な声だけが沸き上がっていた。
レヴィは、両手で頭を抱えたくなった。
眼窩が真っ赤に染まる。
侮辱されたのはラグーンの男三人も一緒だ。
けれど、どうして自分が、ダッチの、ベニーの、そして――ロックの目の前で、
まるでレイプされているかのような屈辱を感じなければならないのだろう。

ゆらり、と殺気が鎌首をもたげた。
殺しはしない。殺してブツが届かなかったら、ラグーン商会の不利益になるのだから。
――そう、ブツだけは、届けさせてやるさ。
お使いに必要な、最低限の機能さえ残っていればいい。
キツさはどうだの、色はどうだの、聞くに耐えない妄言を繰り広げる連中を黙らせたのはしかし、
レヴィではなく、ダッチだった。
250ロック×レヴィ 赤  ◆JU6DOSMJRE :2009/12/18(金) 20:28:13 ID:/79Fmw6c
「そのへんで黙ってもらおうか」
ダッチの低い声はよく通る。
「うちはしがない運び屋でな。プレイガールを雇う余裕は無えんだ。超過勤務手当を払う余裕も、無え。
それに俺はこう見えて従業員思いでね。契約外労働も時間外労働もさせねえ主義だ」
腕組みをしながら、微動だにせず男たちをねめつける。

「うちの船は魚雷艇だが、魚雷だけじゃなく、高性能の誘導ミサイルも載せてるんだぜ」
ダッチは、ちらりとレヴィの方をうかがって、続けた。
「この誘導ミサイルは一等危険なヤツでな、」
レヴィは、のっそりと歩き出して、胸元のホルスターに収まっているカトラスに手を伸ばし、引き抜いた。
「狙った獲物は絶対に逃さない」
親指で撃鉄を起こす。
「いい仕事をするんだ」
そして、ゆっくりと、桟橋の男に銃口を向けた。
憎悪の炎を燃えたぎらせて、レヴィは低く言った。

「さぁて、どこを撃たれたい? 選ばせてやるぜ。答えろ」
男たちがそれ以上何か言ったら、迷わず撃つつもりだった。
空気が凍りつく。
港には、穏やかな潮騒だけが響いていた。
男たちは、開いた瞳孔で暗い銃口を見つめる。
レヴィの瞳は揺らがない。
遠くで海鳥の鳴く声がした。

「――うちの誘導ミサイルにブレーキがついていたこと、神に感謝しとくんだな」
沈黙を破ったのは、ダッチの一言だった。
「ベニー! ロック! こちらさんにガソリンをくれてやれ」
二人にそう指示し、それからダッチは男たちに向かって言い放った。
「ガソリンは用意してやる。だから、お前たちは今すぐあのRVの中に消え失せろ。今すぐにだ」
251ロック×レヴィ 赤  ◆JU6DOSMJRE :2009/12/18(金) 20:29:47 ID:/79Fmw6c

男たちが足をもつれさせて退散するのを見ながら、ダッチが溜息をついた。
「……やれやれ。災難だったな、レヴィ。もうキャビンで休んでていいぞ」
ぽん、とレヴィの頭に大きな掌をのせると、ダッチは操舵室の中に消えていった。
レヴィの背後からベニーがやってきて、並ぶ。
「気にすることないさ。
あいつら、ヒラリー・クリントンとモニカ・ルインスキーの区別もつかないに決まってる」
晴れない顔のレヴィを見て、ベニーは眉を下げて小さく笑った。
「ああいう手合いの連中は去勢してやるべきだと思うね、実際。
それか、ジョー・ボナムのような“芋虫”状態も捨てがたいけど。
奴等に選ばせてやろうとしたレヴィは寛大だね」
他人には干渉しないベニーが、レヴィにここまで言うのは珍しい。
「まさかあいつらの言ったこと、真に受けたわけじゃないだろ?」
「……当たり前だろ」
とりあえず何らかの返事を返したレヴィを確認したベニーは、
「じゃ、とっとと片づけに行くとするかな」
そう言って、レヴィの側を離れていった。


レヴィは、キャビンの固い床に座り込んで、カトラスを分解していた。
怒りとも苛立ちとも憎しみともつかない感情は、レヴィの底で低く唸り続け、
身体を流れる血液が熱いのか冷たいのかも分からなかった。
腹立ちまぎれに鉄製の壁に拳を叩きつけてみたものの、痛いのは自分の手ばかり。
まったく、収まらない。
それで、気を落ち着けようとカトラスをバラし始めたのだが、もう手はその手順を覚えきっている。
目をつぶっていても出来るその作業で、頭は勝手に別のことを考え出す。

ベニーの言う通り、あの男たちに言われたことで不愉快な感情に振り回されるのは、まったく馬鹿げている。
あの男たちはレヴィのことなど何も知らないのだし、あんな奴等にどう思われようと、痛くも痒くもない。
ラグーン商会のメンバーは、レヴィをガンマンとして認めている。
何も、問題は無い。
252ロック×レヴィ 赤  ◆JU6DOSMJRE :2009/12/18(金) 20:31:50 ID:/79Fmw6c

――けれど、耳に残るのは、あの言葉。
あの男が偶然口走った、『慰安婦』という言葉。
軍隊ではそれが結構切実な問題になっているらしいが、
ラグーン商会においては、一切、そのようなことは無かった。
表の世界から転落し続けたなれの果て、最後に行き着く掃き溜めのような街に身を置きながら、
ラグーン商会の待遇は信じられないほど快適だ。

しかし、レヴィがロックとただの仕事仲間という一線を越えてから、もう少なくない時間が経っていた。
二人の間の関係は何であるのか、という点に関しては、あやふやなままに。
それを確認し合うのはタブー。
そんな暗黙の了解が出来ていた。
その根底には、日本で見たあの光景、共に生きようとして死んでいった二人の姿が重苦しく横たわっている。
だが、はっきりとした恋人というわけでもなく、不明確な関係のまま情を交わす二人は、一体何なのだろう。

レヴィに分かるのは、自分にとっての相手はロックだけ、ということのみだ。
他は無い。

しかし、いくらレヴィ自身が、相手はロックだけと思っていたとしても、それはレヴィの主観に過ぎず、
客観的に見れば、ただ一人の男としか交わらない『慰安婦』、ロックの『慰安婦』なのかもしれなかった。

――信じたくない。そんなことは。

けれど、お互いの思惑を確認したことが無い以上、
それが違うのだという確証は、どこにも無いのだった。
レヴィの色事に対する心証は、お世辞にも良いとは言えない。
あの男たちのような、勘違いした連中の頭の中では、
レイプした女は次第に快感に溺れることになっているらしいが、冗談ではない。
他の女がどうなのかまでは知らないが、
望まない男と交わることに対して、レヴィは嫌悪感しか抱いたことが無かった。
しかし、ロックに対しては、まさに情欲と呼ばれるものを抱いているという事実を、
レヴィは否定できなかった。
あの男たちに揶揄された通り、ロックにとって、レヴィはただの淫蕩な女なのかもしれなかった。
他の誰に、淫売と思われても構わない。
そう思われても致し方ない過去があったことは確かだ。


――けれど、ロックにだけは。
ロックにだけは、そう思われたくはなかった。

ひどく惨めな気分になって、レヴィはとっくに組み立て上がっていたカトラスを手に、うつむいた。



253名無しさん@ピンキー:2009/12/18(金) 21:16:49 ID:z0Wghqxw
GJ過ぎ。これは続きを期待せざるを得ない

つかダッチがかっけえ…!
そしてラグーン商会の絆に激しく萌えた
254名無しさん@ピンキー:2009/12/18(金) 22:02:59 ID:fC8wY59q
こりゃいい
クリスマスプレゼントにゃ早いが、白い夜にゃ最高の肴だぜ
GJ
255名無しさん@ピンキー:2009/12/18(金) 22:47:46 ID:CL8NN1Hr
岡島さんの沈黙が気になりますなぁ
GJ
続きまってるぜ
256『もう一つの、1996年』(続きます):2009/12/19(土) 01:04:51 ID:ZcDjfvkq
夢。
夢を見ている。

海。
青い海の、そのただ中。
紺碧の熱帯の海の、船上に俺はいる。

太陽。
波間に反射する、太陽が見える。
俺たちをじりじりと、太陽が焼いている。

女の子。
両手に一丁ずつ銃を持った、女の子がいる。
首筋から肩までタトゥーに覆われた、その女の子を俺はよく知っている。

銃。
二丁の銀色の銃から、弾が放たれる。
その銃を、カスタム・メイドのそれを、俺はよく知っている。

声。
声が聞こえる。
その声を、女の子の声を、俺はよく知っている。

そうだ、この声は……。

"起きな、ロック!
遅刻すっぞ、こらバカ起きろ!"

大音量の電子音とともに聞こえるその声に、俺は慌てて上半身を上げた。
そこには、いつもの朝の光景があった。

"バカロック、お前はイツまで寝てやがんだ?
放っといたら、地球温暖化で首まで海水が来ねえと起きねえんじゃねえのか?"

開け放たれたカーテンから、冬の朝の柔らかい光が差し込んでいた。
セーラー服の女の子、幼馴染のレヴェッカ・チョウことレヴィが、死んだ魚のような目で俺の布団のまん前に立ち、
腕を胸のところで組んでいた。

"…レヴィ、今、何時だ?"

俺は、トランクスとTシャツのまま、目をこすりながら、布団から這い出る。
その途端、俺の顔にレヴィの鞄がクリーン・ヒットする。

"痛っつ、何すんだ、レヴィ!?"

"うるせえ、バカヤロウ!
てめえのその……不潔なんだよ、朝からっ!
いいから、早く服着て出て来い!
玄関で、待ってるからな!"

レヴィは顔を真っ赤にして、俺の部屋のドアを閉めて階段をドカドカ駆け下りていく。
その音が、窓の外を走り抜けていく京浜東北線の騒音に、半ばかき消される。

"……朝立ちは男の生理現象だ、って、前にも言ったんだけどな。"

その俺の呟きは、誰にともなく放ったその呟きは、きっと本来向けられるべき相手には、届いていなかっただろう。
いや、そもそも聞こえるように言ったとしても、きっと、聞いてはもらえなかっただろう。

だから俺は、ハンガーから学ランをもぎ取り、慌てて着ると、靴下を履いてレヴィの後を追った。
アラームを止めた時計は、8時5分を指していた。
257『もう一つの、1996年』(続きます):2009/12/19(土) 01:05:31 ID:ZcDjfvkq
学校までの道を走りながら、俺は今朝見たひどい夢のことを、レヴィに話す。
俺たちの息が、白く、後ろに流れ去っていく。

"レヴィ、俺さ、なんか、ひっでえ夢見ちまって。"

"あン?
どんな夢だ?"

"俺、夢の中ではサラリーマンで、仕事で船に乗ってて海賊に捕まるんだけどな、その海賊の一人が、レヴィなんだよ。"

"はぁ……?
わけわかんねーな、お前の夢。"

"だろ……しかも人質の俺にレヴィが呑み比べをふっかけてくるわ、俺を引きずりまわしたまま二丁拳銃で大活躍するわ、
俺の上司は……景山先生が俺の上司なんだけど、会社のために俺を見殺しにしようとするわ、おまけにターミネーターみたいな
すんげえ強いメイドが俺たちをぶっ殺そうとするわ、雪緒ちゃんがヤクザの娘で、用心棒をレヴィに倒されて俺たちの目の前で
自殺するわ、もう散々だ。"

"ほんっと、ヘンな夢だな。
それに、どっちかって言うと、いつもはあたしがお前に引きずりまわされてるんだぜ、ロック?"

"……そうか?
その辺は、いつもどおりだと思うが。"

"んだと、コラ?
あたしが、いつお前を引きずりまわしてるんだよ?"

"……お前が隣に引っ越してきてから、ずっとだと思うぞ?"

そう。
ずっとそうだ。
幼稚園のとき、親父さんの仕事でこいつが隣に引っ越してきてから、ずっと。
それから、もう10年以上になる。

レヴィは、中国系アメリカ人のくせにアメリカン・スクールには行かないで、公立の小学校、中学校と、ずっと俺はこいつと
一緒だった。
おまけに"いやー、遠いところだと通うの面倒なんだよなー"とか言って俺と同じ高校を受け、今も一緒だ。

えらくガラのよくないこいつの日本語は、その間、ずっと治らなかった。
何からどうやって日本語を覚えたのかはわからんが、なぜかずっと、こんな男みたいな喋り方をずっと続けていた。
それが、正直惜しいと俺には思えていた。

レヴィは、正直可愛いと思う。
中国系の遺伝子のせいか頭身は高いし、足は長いし、出るところは出てるし、細いところは細いし、おまけに体育の成績も抜群だ。
中学の頃から弓道部で、大会にだって何度も出ている。
いわゆる「美少女」という奴に、きっと当てはまると思う。
ただし、喋らなければ、だが。

"ロック、もっと早く走れよ!
お前のナメクジみてえな足じゃ、これ以上のスピードは無理か?
また景山に説教食らうぞ!!"

"弓道部のお前と違って、俺は文科系なの!
あんま無茶言うな!"

そう言いながらも、俺たちは予鈴の鳴る前になんとか校門に滑り込んだ。
いつものような一日が、また始まろうとしていた。
258名無しさん@ピンキー:2009/12/19(土) 11:22:42 ID:XrPEHIyx
なにこのとなり暮らしブラクラブコメディw

なんかもう・・・GJすぎて怖いっ(ゾクゾク

これすげー巻末で見たい。
もしくはこんな同人ほしい。
259『もう一つの、1996年』(続きます):2009/12/19(土) 12:50:25 ID:VMxxdN5m
それは、いつもの学食での昼食の時間。
俺はAランチ、レヴィはカツ丼、雪緒ちゃんとまきちゃん―1年下の後輩―はお弁当だ。
レヴィとまきちゃんは、目下大流行中の、たまごっちの話で盛り上がっている。
雪緒ちゃんと俺は、そんな二人の話に入れるような入れないような感じで、それをにこにこと見ている。

そう、それは楽しい昼食の時間だったはずなのに、嫌な予感がした。
それは、ぷんと香る、安物の男性用オーデコロンの香りのせいかもしれなかった。

"よう色男さんよ、スケに囲まれてニヤケてんじゃねっぞゴルァ!
……なあお嬢、午後の授業サボって俺とカラオケでも行こうぜ、なっ!"

俺はいきなり首根っこを掴まれる。
そこにいたのは、茶髪のウルフにヒゲ、ピアスだらけの顔のギャル男……チャカだ。

"うっせえチャカ、その排水溝に詰まったカスみてえなテメエの顔見てると虫唾が走る。
さっさと失せやがれ。"

"レヴィちゃん、焼いてンの?"

"んだコラ、いわすぞテメエ!"

"ちょっと、やめてください、二人とも。
レヴィさんも、チャカさんも落ち着いて。"

見かねた雪緒ちゃんが、止めに入る。
俺とまきちゃんは、おろおろするばかりだ。

"ケッ、岡島、テメエいっつも女に庇われてばっかで情けねえ奴だな。
俺みてえな奴に、テメエのハーレム、いつ掻っ攫われてもおかしくねえんだぜ?"

"何言ってんだよチャカ、違うって、ハーレムとかじゃないから!
ていうか、銀さんが今日たまたまいないだけだから!"

あ、レヴィ、すげえ怒ってる。
これは、沸騰寸前の顔だ。
260『もう一つの、1996年』(続きます):2009/12/19(土) 12:50:58 ID:VMxxdN5m
さすがに不味いと思って間に入った俺の顔を、レヴィのパンチがヒットしたのは、その次の瞬間だった。
俺の鼻から、鮮血が飛び散った。
学食が、騒然とした。

生徒指導の景山先生が、竹刀片手に学食に入ってくる。
あ、チャカのやつ、ぱっと窓開けて外に逃げやがった。
学食が1階にあることを、俺は恨んだ。

"岡島くん、また君か。
それとチョウくん、君も、女子なんだからもっと、こう物事を丸く収めるってことを知った方がいい。"

"るっせーな、先公。
あたしらの問題に口出しすんじゃねーよ!"

"何だと?"

"違うんです、先生!
チャカさんが私と岡島さんに絡んできて、それでレヴィさんが怒って、だから、レヴィさんは悪くないんです!"

"鷲峰くん、君も、友人は選んだ方がいい。
こういう問題児たちと、君のような名家の令嬢がお付き合いするのは、あまり褒められたことではないと思うがね。
……岡島くんとチョウくんは、放課後、生徒指導室に来るように。
それから、鼻血の手当て、早めに保健室でしてもらっておくことだ。"

景山先生はそう言うと、また竹刀をぶら下げたまま、廊下へと出て行く。
まきちゃんが、ポーチからティッシュを出して、俺の鼻に当ててくれる。

"レヴィ、悪い、俺……。"

"おめえなぁ、なんで間に入ってくんだよ!
あそこに顔出したら、あたしのパンチ食らうって、ミエミエだったろうが!"

"まあまあ、レヴィさん。"

"うっせえよ、お嬢!
お前もへらへらしてんじゃねえよ!
お前がはっきりしないから悪いんだろ!"

あーあ、これじゃせっかくのランチタイムが台無しだ。
俺は、ため息をひとつ吐いた。
レヴィの鋭い目が、俺を突き刺すようにこちらを向いていた。
261『もう一つの、1996年』(続きます):2009/12/20(日) 10:32:12 ID:UXMcdWXo
"おーい、エダ、いるか?"

レヴィが、保健室のドアを開ける。
中は、もぬけの空だ。

"江田先生、またいないみたいだな。"

"どうせまた男漁りに行ってんだろ?
いっつも、出入りの業者とかに片っ端からコナかけやがってよ、あいつ。
……しゃあねえな、あたしが手当てしてやるよ。
そこ、座んな。"

レヴィはそう言うと俺の向かいの丸椅子に座り、手馴れた手つきで脱脂綿をピンセットでつかんで、アルコールに浸し、
俺の鼻から出た血をふき取る。
アルコールの香りに混ざって、間近で、レヴィのいい匂いがする。
息遣いが、俺の顔に当たってこそばゆい。

"おめえが、悪いんだぞ。
あのタイミングで顔なんか出されたら、クリーン・ヒットは確実だ。"

"悪かったね、レヴィ。
悪者にしちゃって、さ。"

"いいんだよ、あたしは慣れてるから、そういうの。
行動の荒っぽい『ガイジン』を悪者にすりゃ、なんでもうまく収まるからな。
実際あたし、ケンカなんかしょっちゅうしてんだし。"

そう言いながら、レヴィは一瞬、目を伏せて。
その顔が、ひどく悲しそうに見えて。
なんだか少女漫画の主人公のような、ガラにもない、そんな顔に見えて。

"なあレヴィ、お前、俺のためにチャカをぶん殴ろうとしてくれたんだよな。
俺なんかのために。"

"……幼馴染を馬鹿にされたら、誰だって怒るだろう?
お前とは、ずっと一緒だったんだ、腐れ縁で。"

"二人で、随分イタズラしたりして怒られたよな。
俺がノリで言いだしたこと、お前が実際やって、二人仲良く怒られて。"

"小5のときだったっけか、お前が買ったエアガン、あれベレッタだったよな確か、で街灯割って回ってたのバレたときとかは、
ホント大目玉だったぜ。
いつもあたしが実行犯、お前が黒幕。
あたしが銃なら、お前は弾丸みてえなもんだった。
…銃にばっか目が行って、誰も、弾丸のこたぁ気にしねえ。
実際に人を殺すのは、弾丸のほうなのによ。"

"だが、銃がない弾丸は、何の役にも立たない。
そうだろう、レヴィ。"

"……何が言いたい、ロック?
ちょ……ロック、なんだよいきなり!?"

次の瞬間、俺は、レヴィをぎゅっと抱きしめていた。
レヴィの持っていたピンセットが、カラン、と床に落ちた。
脱脂綿が、転がった。
262『もう一つの、1996年』(続きます):2009/12/20(日) 10:32:37 ID:UXMcdWXo
"レヴィ、俺は、怖いんだ。
お前なしではいられなくなることが。
……お前と、離れ離れになるかもしれないことが。"

"……え?"

"レヴィ、俺にはお前しかいない。
お前はモテるから他にいくらでも誰かいるかもしれない、だけど、俺、お前のことしか考えられないんだ。
いつもそばにいて、離れることなんて考えもしなかったけれど、だけど、お前がいつか俺の前からいなくなってしまうかもしれない、
それが、怖いんだ。"

"……ロック。"

俺は、レヴィに唇を奪われていた。
柔らかく湿った、レヴィの唇。
それが、俺の唇に触れている。
レヴィの体温が、唇から、そして頬に添えられた手から、伝わってくる。
レヴィの、匂いがする。

"あたしも、お前との腐れ縁を今更ぶったぎるつもりはねえぜ、大将?
親父が国に帰るって言い出しても、あたしは残る。
……お前が、ここにいる限りな。
銃がねえ弾丸も、弾丸のねえ銃も、どっちも不完全。
あたしらは二人で一つだ。"

"……レヴィ!"

と、入口のドアが急に開く。
金髪にサングラス、白衣の江田先生が、ノブを手に、にやにやしながらこっちを見ている。
俺の全身の毛穴から、汗が噴き出す。
俺はレヴィの肩から、両手を離す。

"ふっふっふ、見ーちゃった、見ーちゃった!
先ー生に言ってやろー!"

"あっ、くそエダこのアマ!
どっから見てやがった!"

"『あたしが銃なら、お前は弾丸だ』の辺りから、かな。
まったく水臭えぜ、そういうことならゴムくらい用意しといてやったのによ!"

"てめえ、ぶっ殺す!
てめえの臓物ぶちまけて、学食でシチューにして明日の昼出してやる!"

"あらー、何の罪もない養護教諭を、不良少女が惨殺!
神も仏もない話ねー。"

"うっせえ、バカヤロー!!"

"メイク・ラブならもっと雰囲気のある場所でやんな。
あたしの神聖なる職場を、エテ公のラブジュースとそこの種馬くんの子種で汚されたくねえ。
黙っててやっから、どっかヨソ行きな。"

俺は、苦笑いするしかなかった。
レヴィにいきなり腕をつかまれて、俺はそのままたっぷり200mは校舎の廊下を引きずられていった。
263ロック×レヴィ 赤  ◆JU6DOSMJRE :2009/12/20(日) 20:28:34 ID:ix7O/yvm
ラグーン号にエンジンがかかって程なくして、キャビンの扉の向こうに足音が響いた。
キャビンに向かってやってくる、規則的な足音。
聞き覚えのある、革靴の。

「やぁ、レヴィ」
金属音をさせて開いた扉の向こうから表れたのは、思った通り、ロックだった。
晴れ晴れとした笑顔を見せるロックが、今のレヴィにはどうにも神経に障った。
口を開くのも億劫で、レヴィは何も言葉を返さなかった。
そんな陰にこもったレヴィの空気に気づいているのかいないのか、
ロックは平然とした様子でドアを閉め、備え付けの簡易ベッドに腰を下ろした。
「面白い話があるんだ」
ロックは自らの足の上に肘をつき、両手を組んだ。
「……今は下らないジョークを聞く気分じゃねえ……」
万が一それが面白いジョークであったとしても――、今は、笑える自信が無かった。
しかし、ロックは怯まない。
「まぁいいから聞けよ。面白いか面白くないかは聞いてから判断してくれていいから」
ふてぶてしくも見える笑いを浮かべるロックに、レヴィは軽く肩をすくめ、
だったら好きにしろよ、と顎で促した。

「あいつらの車、日本製のRVだったな」
「それがどうした」
刺のあるレヴィの言葉をものともせず、
ロックは、そのRVを製造している自動車メーカーの企業名を挙げた。
機能性とコストパフォーマンスの高さに定評がある、世界的に有名な日本の自動車メーカー。
「俺の記憶が正しければ、あの車種には欠陥があるらしくてね。リコール対象になってる。
どうやら、リレーロッドっていう部分が破損することがあるらしい。
ここが破損すると、ブレーキが効かなくなる」
「……何が言いたい?」
「この欠陥リレーロッドというのはとても脆いらしくてね、
大きくハンドルをきったり、急ブレーキをかけたりすると、破損することがある。
怖いよな、もし、高速乗ってる時にブレーキ効かなくなったりすると」
「……あんた、何した?」
段々と、この男の不穏な笑顔の意味が分かってくる。

「さぁね。ただ、今日、この近くで、そんな事故があるかもしれない。そんな話だよ、レヴィ」
「……ダッチは知ってんのか」
「まさか? ラグーン商会は、そんな事故には何の関係も無い。
だって、事故が起こったって、何の利益も無いからね。
それに、事故は不確定だよ。誰も知るはずがない。
仮に、“不幸にも”あいつらの車のリレーロッドがどこかで破損したとしても、
事故が起きるかどうかすら分からない。すべて可能性の話さ」
運が良ければ、何もない荒野のど真ん中で立ち往生、かもね。
と、ロックはあくまでも穏やかな笑顔を崩さない。

レヴィは腰を上げた。自分の口元に、笑いが滲んでいるのを感じていた。
「ラグーン商会の仕事は、あいつらに荷物を引き渡したところで完了だ。
運悪く、その後事故が起きたとしても、そいつはラグーン商会の責任じゃない」
段々と愉快な気分になってきて、レヴィは、腰掛けたロックの正面に立った。
ロックはレヴィの目を見ながら続ける。
「ここの警察は、白い粉を大量に積んだ、リコール対象になっている車両の事故を、どう見分するんだろうね?
とても興味があるな。車を製造メーカーの工場まで送って鑑定するかな? 
あの車、どんなルートで入手したんだろうね。あのメーカーのアフターサービスはどこまでかな。
あそこ、リコール隠ししてたようだけど、今の経営方針はどうなってるだろう。是非知りたいよ」
ロックは、歌うように言う。
264ロック×レヴィ 赤  ◆JU6DOSMJRE :2009/12/20(日) 20:29:31 ID:ix7O/yvm

――まったく、この男は……。
気抜けした愉快な気分が込み上げ、レヴィの口から笑いが声となってあふれた。
それは、屈託なく、長くキャビン内に響いた。
「……あんたは、あきれた天然ギャンブラーだぜ、ロック。賭事が癖になったか?
侮辱されてそんなに頭に来たか。楽しそうな顔じゃねぇか」
ようやく笑いをおさめて、レヴィがロックを覗き込むように見ると、ロックはふいに、微笑を引っ込めた。

「……楽しい? 俺は楽しくなんてないよ、レヴィ」
ロックは真顔で言う。
意外な返答に、レヴィは怪訝な顔でロックを見た。
「“レヴィが”侮辱された。それで楽しいわけ、ないだろ」
反射的に片眉が歪んだのを、レヴィは感じた。
思わず顔を伏せる。
眉間に皺を寄せるレヴィの指先を取って、ロックは握る。
「……分かってる? レヴィ」
ロックの手は温かくて、レヴィは、自分の指先がひどく冷えていたことに気づいた。
「俺は、別に、振った目がどう出るかなんていう結果はどうでもいいんだ。
そりゃあ、あいつらは殺してやりたいほど憎らしいけどね。
ただ、俺は――、」
レヴィが少しでも笑ってくれれば、あとは、もう――
そう続けられた言葉に、レヴィは更に深くうつむいた。
唇をぎゅっと引き結んで、歯を強く噛みしめる。
寄せた眉が、小さく震えているのを感じた。
きっと自分は今、すごく情けない顔をしている。
それをロックに見られたくなかった。
けれど、いつもはロックに見下ろされる身長差のせいで隠すことができても、
今日はロックが下から見上げていて、無理だった。
「……そんな顔するなよ、レヴィ。笑えよ」
ロックは、レヴィの顔を覗きこんで、
力無く垂れ下がったレヴィの指を握ったまま、軽く腕を揺らした。
レヴィは、ひとつ呼吸を整えると、ゆっくりとロックに視線を合わせた。

「なあ、知ってたか、ロック。
――嬉しいときに出る顔って、笑顔だけじゃないらしいぜ」
「……あとは、どんな顔?」
レヴィは、片膝をロックの脇の簡易ベッドについた。

「こんな顔」
265ロック×レヴィ 赤  ◆JU6DOSMJRE :2009/12/20(日) 20:30:13 ID:ix7O/yvm
レヴィは片手でロックのネクタイを、ぐい、と掴みあげると、ロックの方へ身を屈めた。
ゆっくりと。
まっすぐにロックを見て。
ロックの黒い瞳の中に、自らの顔が映っていた。
ネクタイを掴んだ手とは逆の手を、ロックの肩にかける。
ベッドについた膝に体重がかかり、ギッ、とベッドが小さく軋んだ。
焦点が合わなくなる程に互いの顔が近づいたとき、ロックが瞼を閉じた。
それに一瞬遅れて、レヴィは唇を、ロックの唇に重ねる。
温かなロックの唇。
ネクタイを強く引いたまま、静かに口づける。
ただ重ねるだけの口づけを、ロックは黙って受けていた。
互いの呼吸が、頬をわずかにかすめた。
ややあって、下唇をそっと食み、それから唇をずらして上唇も挟み込んでから、
最後に舌先でぺろりとロックの唇をほんの少しだけなめて、レヴィは唇を離した。
同時に吐き出された息が触れ合う距離で、ロックは言った。
「……それだけ?」
「不満か?」
「いや?」
そういうわけではないけれど、という顔をして、ロックは片手でレヴィの後頭部を引き寄せた。
「お返し」

そしてロックも口づける。
唇は熱く重なり、すぐに、ロックの舌はレヴィの唇の隙間からわりこんできた。
レヴィも素直に迎えいれ、自らの舌を寄せる。
ロックの手がレヴィの腰をとらえた。
強く抱き寄せられる。
片膝をベッドについた状態で、このままだとロックの膝に座ってしまうので、
反射的にレヴィは自分の筋肉で身体を支えた。
しかし、ロックはなおも引き寄せされる力を緩めようとしない。
レヴィは諦めて、すとん、とロックの膝の上に腰を下ろした。
床についていた足も、ベットにのせる。
互いの胸と胸が近い。レヴィはつかんでいたネクタイを放し、ロックの首に腕を回した。
ふかく、やわらかく、舌を絡ませ合う。
つるつるした舌下に下を割り込ませてきたり、内頬を舌先でなめたり、
あちこちに動き回るロックの舌を、レヴィも自分の舌で追いかけた。

ロックは、長いこと、レヴィをとらえた腕を弛めなかった。
ようやく唇が離れたときには、二人の口の中は唾液でいっぱいになっていて、
互いの舌先を透明な糸が、つぅ、とつないでいた。
糸がのびて、消えていくまでを二人で見守り、
それからロックは口の中にたまった二人分の唾液を飲み下した。
白いワイシャツからのぞく喉仏が、上下するのが見えた。
266ロック×レヴィ 赤  ◆JU6DOSMJRE :2009/12/20(日) 20:31:27 ID:ix7O/yvm
ロックは、穏やかにレヴィを見上げた。
「さっき、どこ触られた?」
「――見てたのか?」
「いや、船からはちょうど死角になってて、よくは見えなかった。
けど、何が起こってるのかぐらいは、分かった」
レヴィは曖昧に頷いた。
この男には知られたくなかった。――何となく。
「頭が沸騰しかけたら、止められたよ、ダッチに」
それで、あの時ダッチが呼びに来たのだ。 
この男は、一度ヒューズが飛んだら、次はどこに繋がるか分からない。

「で、どこ触られた?」
ロックは問いを重ねる。
「……別に、どこだっていいじゃねェか。大したとこ触られたわけじゃねえよ」
レヴィが流そうとした途端、ロックは叫んだ。
「大したとこじゃないとか言うなよ、レヴィ!!!」
突然声を荒げたロックに、レヴィは驚く。
その声の大きさに驚いたのは声を上げたロックも同じだったようで、
すぐに、ごめん、と謝りの言葉を口にした。
「怒ってるのは、レヴィに対してじゃない。あいつらに対してさ」
憤懣を露わにしたロックに、レヴィは安らいだ気分になる。

そっと手をロックの頭にのばし、髪に指をさしこんだ。
「ほんとに、大した触られ方してねぇって。ほら、……肩とか」
「肩とか?」
ロックの掌が、そっと肩を包み込む。
温かな熱と、多分自分のものより柔らかい掌。
「腕とか……」
「腕とか?」
ロックの掌は、そのまま腕を撫で下ろす。
親指の腹は二の腕の皮膚の薄い内側をなぞり、肘の脇に飛び出た骨で一瞬止まり、
そして手首まで下がって、掌で包みこまれる。
ゆっくりとした動作。
「腰とか……」
「腰とか?」
ロックの逆の手が脇腹にのばされ、背中の方へすべっていった。
掌全体を、素肌で感じる。
じんわりと熱が伝わってきて、凝った血が温められていく気がした。
「……腹、とか……」
「……腹とか?」
背中で止まっていた手がするりと戻ってくると、円を描くようにゆるやかに撫でられた。
267ロック×レヴィ 赤  ◆JU6DOSMJRE :2009/12/20(日) 20:31:57 ID:ix7O/yvm

――全然、違う。
さっきの男たちとは、全然違う。熱がしみこむ、ロックの手。
もちろん、ダッチの大きな手は頼りになるし、
ベニーの触れない礼儀正しい距離感には好感が持てる。
けれど、ロックの手だけは、ちがう。
レヴィは、自分が段々と輪郭を取り戻していくような気がした。
「……あとは?」
穏やかに促すロックに、逡巡してから、結局言う。
「………………………………胸、とか…………………………」
「………………」
ロックは今度は何も言わず、ただ触れた。
タンクトップ越しに伝わる、ロックの温度。
乳房というよりは胸に掌を押しあて、そのまま動かない。
レヴィの心臓の鼓動が、ロックの手を下から持ち上げているように見えた。
「……レヴィ、心臓、すごい」
ロックがくすりと笑って言った。
「…………あんたのせいだ」
そうなの?
言って、微笑んだロックは、胸に顔を寄せた。
そして、キスする。
タンクトップの上から、レヴィの心臓へ。

優しいはずのキスを、レヴィの胸の奥は痛いと告げた。
268ロック×レヴィ 赤  ◆JU6DOSMJRE :2009/12/20(日) 20:32:30 ID:ix7O/yvm

レヴィはたまらず、ロックの頭を抱き寄せた。
ぎゅう、と抱きこんだら、その自分の力の強さのせいで、
先程奴等に思い切り掴まれたところの痛みがぶり返した。
すっかりそんなことは忘れていたため、レヴィの筋肉はうっかり反応した。
その反応を、ロックは見逃さなかった。
レヴィを引きはがすと、ロックは「どうした?」と問い、返事が返って来ないと知ると、
勝手にレヴィのタンクトップをめくった。
そして、その下につけていた機能性を重視したスポーツタイプの下着も、上にずらされる。
乳白色のふくらみには、くっきりと残る赤く鬱血した痕。
それを認めたロックは、レヴィを見上げた。
目が合う。

――気まずい。
「大した触られ方したわけじゃない」と言った手前、非常に気まずい。
これぐらい、騒ぎ立てるようなことではないが、しかし、
だからといって誰にでも「さあどうぞ」と差し出してなんとも思わないわけではなく、
というか実際のところ、不愉快で不快なこと極まりなく、
――つまり、ロックに、自分が誰にでも平気で身体を許すような女だとは思われたくないのだが、
そんなおぼこい願望は最も自分に似合わないもので、まさか口にできるわけなどなく――。
ロックは無言で、複雑な表情を浮かべるレヴィを見つめていたが、やがて、
ふ、とひとつ笑いをこぼすと、赤くなった肌の上に唇を這わせたた。
唇だけで、丹念に。
269ロック×レヴィ 赤  ◆JU6DOSMJRE :2009/12/20(日) 20:33:33 ID:ix7O/yvm
触れていた唇を離すと、ロックは言った。
「……痛かった?」
――痛かった。
けど、
「今は痛くねえ」
答えると、ロックは少し目を見開いた。
それから、唇の端に笑いをのせ、やれやれというように首を左右に振ると、
「あいつらやっぱり全然分かってないな。……レヴィは、優しく触れられるのが好きなのに」
今度はじかにレヴィの素肌の上から掌で包みこんだ。
「――――!」

――なんだ、その恥ずかしい優越感は!
――そして、なんだ、その根拠の無い断定は!
レヴィは羞恥のあまり、目の前の頭を平手ではり飛ばしたくなったが、
口に出したことは無いにも関わらず、それは確かに図星で、
だから、それについてはノーコメントを貫くことに決めた。
しかし、これだけは言っておかなくてはいけない。

「分かってねぇのはあんたの方だぜ、ロック。
あんなクソ野郎にそんな風に触られたって、嬉しくもなんともねェ」
睨みつけると、ロックは視線を合わせた。
「……あんなクソ野郎に、は?」
レヴィは憤然と頷いた。
「じゃあ、俺には?」
かあっ、と、レヴィは顔全体が熱くなるのを感じた。
今、自分の顔は絶対に真っ赤だ。
「…………………………ロック……、あんた、分かって言ってんだろ…………」
低くうめくレヴィに、ロックはしゃあしゃあと返す。
「いや? 分からないなぁ。言われないと、分からない」
最後の言葉だけは、どこか真剣な目をしていた。
「……レヴィ。俺は、レヴィの嫌なことは、したくないんだよ」
今は、ロックの目はまったく笑っていなかった。
ロックの黒い目は、深く、真剣な色をしているように思われた。


――今を逃すと、失われるかもしれない。
いつものように、軽口と毒舌に混ぜ込んで流してしまうこともできたが、
レヴィは、今、何かのきっかけが到来しているのを感じて、言葉を選んだ。
「……ロック、大切なのはな、『どこをどんなふうに』触られるか、じゃない。
『誰に』触れられるか、だ」
なぜ自分はこんなことを大真面目に語っているのだろう、という気がしたが、
ロックは真顔でひとつ頷いた。
無言で、その先は? という風に、眉を上げ、促してくる。
レヴィは助けを求めるように中空を見上げたが、もちろん、逃げ道などあるわけがない。

「……………………あんたなら、いい」
意を決する。

「あたしが許すのは、あんただけだ」
レヴィはロックを見下ろして言った。傲然と。


ロックは笑った。
いっそ、無邪気、と言っていいほどに。
270ロック×レヴィ 赤  ◆JU6DOSMJRE :2009/12/20(日) 20:34:28 ID:ix7O/yvm
レヴィの返事に嬉しそうに笑ってまた胸に顔を寄せるロックに、レヴィは嫌な予感がした。
「――ちょっと待てよ、おい、あたしだけかよ」
「ん? レヴィだけ、って?」
「……あんたはどうなんだよ」
「俺? 俺の事は分かってるだろ?」
なんだこいつ、自分だけ逃げるつもりか、と理不尽さに苛立ちかけたレヴィの顔を見て、ロックは言った。
「さっき、レヴィを侮辱して身体触ったヤツに、地獄への優待券をプレゼントしてきたばっかりなんだけど」
それでも分からない? と言うようにロックはレヴィを見上げる。
「いや、あー、まあ、だから、それはいいとしてだな、その、
あんたは、あたしじゃなくてもこういうことをやらかすんじゃねえか、ってことだよ」
代名詞ばかりの要領を得ない言葉を、ロックは正しく理解したらしかった。
ロックの眉が顰められる。
「そっち?」
顔に、心外だ、と書いてある。
「――そいつは考えてなかったな。俺はふたつ以上のことを同時にできるほど器用じゃないんだよ。
なにしろ、俺のパートナーは超高性能誘導ミサイルだからなぁ。
危険だし、扱いにくいし、整備は大変だし、意外と繊細だし。それだけで手一杯だよ。
他に目をやってる暇は無いし、興味も無い」
「誘導ミサイルって、ロック、あたしが銃で、あんたが弾丸なんじゃなかったのかよ」
「そうだっけ?」
ロックはとぼけた顔でレヴィを見る。
「そうだっけって、その程度だったのかよ!」
「――嘘だよ、レヴィ」
笑ってレヴィをいなしてから、ロックは言葉を切った。
一瞬、考えて、真顔になる。

向けられた目は、真摯だった。
「俺にとって、レヴィは、唯一無二だ。代わりはいない」
レヴィが黙りこくっているのを見て、ロックは困ったように笑った。
「信じてないのか? ――まぁ、言葉の真偽なんて、証明しようが無いからな」
しかし、ロックの瞳は、おそらく真実らしきものを伝えているように、レヴィには思えた。
確かに、言葉など虚しい。
けれど、「唯一無二」。
その言葉に、レヴィは満足した。

――他に何を望む?

「じゃ、行動で証明しろ」


ロックは、応えた。
唇で、すぐに。


271名無しさん@ピンキー:2009/12/20(日) 20:52:27 ID:tB+QPMBi
GJすぎて何もいえねえよ!馬鹿!
272『もう一つの、1996年』(続きます):2009/12/20(日) 22:00:23 ID:cQVCo5ZE
放課後。
生徒指導室でたんまりしぼられたレヴィと俺は、いつものように俺の部屋で雑誌を読みながらダベっていた。
レヴィは部活がある日も、ない日も、いつも自宅で着替えてすぐ俺の部屋に来ては、入り浸っていた。
二人とも両親が共稼ぎで、帰りが遅いから、少なくとも俺にとってはそれがけっこういい暇つぶしになっていた。

けれど、今日は、どこかそれも上の空で。
必死にいつもどおりを、俺たちは互いに演じていて。
今日の昼のことなど、何もなかったかのように、俺たちは振舞っていて。

"ったく、か、景山の奴、う、うぜえよな。
あ、あんなに説教かましやがってよ?"

"ま、まあ、あ、あれくらいで済んでよかったじゃないか。
で、でもな、先生の言うとおり、べ、勉強はもう少しした方がいいんじゃないのか、レヴィ?"

"ロ、ロック、今度、キリンから『サプリ』っていう新しいスポーツドリンクが出るらしいぜ。
でも、前売ってた『ポストウォーター』、ゲロマズだったもんなぁ。"

レヴィが、雑誌から顔を上げて言う。
その顔はやっぱり、どこかぎこちない。

"露骨に、話を逸らすなよ。
お前、将来のこととか、考えてんのか?"

俺は俺で、なんかギクシャクとしながらも、声が裏返りながらも、話し始めたことを、そのまま続ける。

"お、お前も知ってる通り、な、内申だってあの通りだぜ、あたしは?
就職でもいっかなー、とか思ってるんだよな、あたし。"

"だとしてもだ、ある程度成績とっとかないと、留年するかもしんないぞ?"

"うっせーな、お前も先公とおんなじこと言うんだな?"

"とりあえず、今日の宿題、一緒にやろうぜ?
年明けにまたテストあるんだから、やっとかないと、対策。"

"しょうがねえな、お前は。
そんなに泣いて頼むんだ、やってやってもいいぜ?"

というわけで、俺たちは座卓にLの字型に向かい合って、『英熟語ターゲット1,000』の穴埋めを一緒に始めたのだった。
よかった、これでまたいつもどおりだ、そう思った矢先だった。

"あー、めんどくせえ。"

"なんだよレヴィ、お前、アメリカ人じゃなかったのか?
だったら英語の宿題なんて、楽勝だろ?"

"うっせーな、こんな凝った表現なんか、あたしら使わねえよ!
受験英語なんて、やっても無駄なんだよ、だから。"

レヴィはそのまま、『ターゲット1,000』を自分の後ろ側の、俺のベッドの方に放り投げる。
『ターゲット1,000』は、俺の目覚ましに当たって、目覚ましがベッドの裏側に転げ落ちる。

"うあー、何やってんだよ、レヴィ!!"

"ほざけ、バーカ!"
273『もう一つの、1996年』(続きます):2009/12/20(日) 22:01:02 ID:cQVCo5ZE
"うあ、やべっ!"

俺は、ベッドの方へ駆け寄ろうとしただけだった。
けれど、俺の足が、机の足に引っ掛かって、俺は前方へとよろけてしまったのだ。

ドサッ。

柔らかい、感触。
俺の手から、伝わってくるレヴィの体温。
俺の下の、タンクトップにショートパンツの、レヴィ。
レヴィの上に、俺は倒れこんでいた。
そして、悪いことに、俺の片手がレヴィの胸を鷲づかみにしていた。

"ロ、ロック、て、てめえっ!"

"うわああ、ごめんレヴィ!
俺、ちょっとトイレ!"

俺は慌てて立ち上がると、ドアを開けて階段の下へと駆け下りる。
そしてトイレに逃げ込むように入り、ドアを閉めると、便座の上に腰掛けてため息を吐く。

きっと、俺の顔はまだ、赤かったことだろう。
俺の心臓は、まだドキドキ言っていたことだろう。

あの、レヴィの、普段の印象よりずっと細い体。
その細さに不釣合いな大きさの、柔らかな双球。
暖かい、血の通った、ふにっと俺の手を包み込む、あの感触。
レヴィの、息遣い。
今日の昼、あんな間近で、息がかかるほど近くで見た、レヴィの顔。

俺、今日はホントおかしい。
保健室でレヴィを抱きしめて告白まがいのこと言って、レヴィにキスされて、そして今度はレヴィを押し倒して。
おかしすぎる、俺。

レヴィとは、異性であることは今までほとんど意識してこなかった。
『親友』であり、『悪友』ではあっても、『恋人』になるかもなんて、これっぽっちも思わないでいた。
……そのはずだった。

けれど、さっきの手の感触は、あれは本物で。
あれは本当にあったことで。
あいつは、まぎれもなく『女の子』で。

俺のそれが、いつしかジーンズに、大きなテントを張っていた。
それが、すごく熱かった。
俺は自然と、ジッパーを下ろして、自分のそれを擦り始めていた。

ちゅくちゅくと、先走りと皮が、淫らな水音を立てる。
いつものその行為のときより、ずっと、敏感になっている。
生々しい、さっきの体験のせいで、きっとそうなっている。
レヴィの肌の温もりを、息遣いを、匂いを、身体が覚えている。

う、ヤバい、そろそろ…。
俺は、トイレットペーパーを手に巻き取り、欲望の液体をそれで受け止めるために身体の前方にもってくる。
刹那、目の前のドアが急に開けられる。
ビクッと、反射的に俺は手を引っ込める。
ぴっ、と、その液体が俺の目の前を飛んでいく。

そこには、不安そうな表情を浮かべた、レヴィがいた。
その液体は、レヴィのちょうどタンクトップの腹あたりを目掛けて、飛んでいった。
絹を引き裂くような、悲鳴が家中に響いた。
274名無しさん@ピンキー:2009/12/20(日) 22:58:37 ID:EhomdzJY
>>270
待ってたよ、GJ!
期待通りの黒島発動にスカッとしたw

その後のレヴィが癒されてく過程が素晴らしい…ニヤニヤが止まらん
275名無しさん@ピンキー:2009/12/21(月) 00:27:04 ID:LTw4XTZr
最近はもう素晴らしい方々がいらっしゃって、
ただただ感謝です
276『もう一つの、1996年』(続きます):2009/12/21(月) 22:42:44 ID:jPbgq1qw
"ま、待ってくれ、レヴィ!"

俺は、逃げようとするレヴィの背中に、必死でしがみつく。

"や、やめろ、こら変態、エロ猿!
に、日本人の男は、みんな変態だっ!"

"違うんだ、レヴィ!"

"何が違うんだよ!
どさくさであたしの胸揉んで、勝手に興奮してトイレで……そんなことして!
その上、あたしに抱きついて!
お前の……その……硬いのが、当たってんだよ、あたしの尻に!
っ……む……ん……!"

俺は、こっちを向いたレヴィの唇を、自分の唇で塞ぐ。
二人の、唾液が混ざり合う。
さっきレヴィが飲んでいた、ポカリスエットの味がする。
レヴィの舌が、俺の舌に絡んでくる。

"……サイテーだな、お前。
ホント、サイテーだ。
おっ死んだらぜってー地獄に落ちるぞ、お前。"

口が離れたとたん、レヴィが言う。
けれど、レヴィはそれまでのように逃げようとはしないで、俺の腕の中で、静かに震えている。

女の子の、レヴィのうなじ。
細い首と、華奢な肩。
タンクトップ一枚を隔てた、レヴィの柔肌。

"でも、レヴィの身体は、嫌だって言ってないよ?"

俺は、恐る恐るレヴィの腹を撫でる。
俺のさっき出したアレが、まだ熱を持ったアレが、俺の指とレヴィの白い肌の間で、きっと糸を引いている。
にちゃ、くちゃ、と、淫らな音がする。
俺はそのまま、レヴィの唇を、その指で撫でる。
レヴィの口が、俺の指を咥える。
ぴちゃ、にちゃ、くちゅ、水音がする。
レヴィが、俺の指先についたアレを、舐めている。

"本当は、そういうこと、期待してたんだろ?"

"そりゃ、あたしだって、お前となら……だけど、こんなのは嫌だ。
もっと、ちゃんと、段階を経て、するもんだろう、こういうのは。
お前にとって、あたしは何なんだ、ロック?"

赤い顔のレヴィは、今俺の指から口を離したレヴィは、すごく可愛くて。
いつも俺を小突き回している、俺を振り回しているレヴィが、俺の前で、こんな顔を見せている。
それが、俺の心を突き動かして。
いま、『幼馴染』を、一人の女の子として俺にすごく意識させていて。

"レヴィ、ごめん!"

俺は、レヴィのショートパンツを、すっとずり下ろす。
飾り気のないグレーの下着が、露になる。
277『もう一つの、1996年』(続きます):2009/12/21(月) 22:43:05 ID:jPbgq1qw
"……やめろ、バカ!"

"なんだよレヴィ、そんなこと言って、なんだよその下着の染みは?
どうして、こんなに濡れてるんだよ!?"

"そ、それは……。"

俺はレヴィを羽交い絞めにしたまま、レヴィの唾液と俺のアレで湿った指先で、レヴィの濡れたクロッチをなぞる。
レヴィと俺の荒い息が、二人の熱気が、誰もいない家の、寒い廊下を満たす。

"……ぁ……ッ……うぁ……あン……やめろッ……そんな……とこッ……触るなッ!"

"レヴィ、可愛いよ、お前は。
すげえ、可愛いよ、レヴィ。"

俺がそう言うと、なんだかよけいにレヴィのそこは熱を持って、湿ってきているように、俺には感じられた。
二の腕に当たるレヴィの、タンクトップごしの、胸の先が、いっそう固くなってきているように、俺には感じられた。
俺は、もう何も言葉らしい言葉を言えなくなっているレヴィのショーツをずらして、手を添えた俺のそれを、レヴィのそこに
そっと当てた。
くちゅ、と、湿った音がした。

"レヴィ、本当に嫌なら、拒絶してくれ。
でも俺、もう我慢できないんだ、レヴィ。
お前が欲しくて、たまらないんだ。"

"バーカ、ここまでしといて、じゃあやめます、なんて言えるのかよ?
しょうがねえ奴だな、お前はよ。"

荒い息混ざりで、こんな状況でも軽口を叩くレヴィが、俺はいとしくて仕方なかった。
レヴィを、俺のものにしたかった。
こんなことを女の子とするのは、初めてだったけれど、どうすればいいかはなぜかわかっていた。
それは、本能かもしれなかった。
だから俺は、一気に腰を入れて、レヴィのそこを貫いた。
濡れた、狭い、熱い、そこの感触が、俺のそれから、伝わってきた。

"ッ……う……あ……ん……ン……ぁ……ッ……!"

"ごめんよ、レヴィ!
だけど、俺、レヴィと……レヴィと……!"

"うあッ……あ……痛えよッ……クソッ……痛えッ……ロックっ!
だけどっ……あたしッ……お前ならっ……いいッ……!"

レヴィの、獣のような、だけどさっきのポカリスエットの匂いなのか甘酸っぱい匂いがする息遣い。
俺の、動物のような腰遣い。
乾いた肉と肉の、ぶつかる音。
レヴィの、声。
そこの先から、俺の腕から伝わる、あったかい、女の子の体温。

俺は、ほかには何も考えられなった。
レヴィのことしか、今は考えられなかった。
レヴィの奥へ、もっと奥へ、入りたかった。
だんだん、俺の頭の中が真っ白になってきていた。
レヴィの中に俺は、熱い精を、思い切りぶちまけた。
その瞬間、レヴィが軽く呻いた。
びゅるびゅると音がしそうなくらい、俺のアレが、レヴィの中をきっと満たしていた。
278名無しさん@ピンキー:2009/12/22(火) 08:32:21 ID:IKL/yv3g
>>245>>256
GJ!!!
素晴らしすぎるクリスマスプレゼントをありがとう…
279名無しさん@ピンキー:2009/12/22(火) 11:56:41 ID:UKgiEw4C
冬といえば日本編


「苦手か?」
「……………………………………………………ぁ?」
「地下鉄。ずっと黙り込んでるから」
六本木に向け、真っ暗闇を進む鉄の塊。
何やらそれに乗り込んだきり黙り込んだレヴィに、ロックの声がかかる。
「別に好いちゃいねぇけど、それだけの話さ。気にするようなことじゃねぇ」
それだけ言って再びレヴィは黙り込む。

この返事に偽りはない。気にかかっているのは地下鉄などではなく、隣に座る男のこと。

たった今、彼の育った町を二人で訪ねた。
いい場所だった。平和だった。
銃声や悲鳴とは無縁で、公園では子供が笑顔で遊ぶ住宅街。
家族に会えば、もう戻って来ないかも。そんな覚悟は決めていた。
ロックにとって、その方がいいのだと。
だから、自分はこの場所を記憶に焼き付けたならば不似合いな場から立ち去ろう。
そう思っていたのだ。
だが、肝心のロックは家族に会うことなく……最低のタイミングでレヴィの目の前に現れた。
ロックの顔を目にした刹那沸き起こった様々な感情。
子供と戯れる姿を見られた羞恥心。
こんなにも早い帰還への怒り。
そして、何よりも大きな安堵。
実家が留守だったというこの男の弁を信じて良いのかわからない。
ばつの悪そうな様子を見るかぎり、嘘である気がしてならない。
だがそれでも、隣で過ごす時間が、ほんの少しだけ、…延びた。
そんな、どこかで喜んでいる女々しい自分がたまらなく嫌いだった。



淡いピンク色に濁った湯に身体を沈める。
この国へやって来た最初の日に二人で立ち寄ったセブン・イレブンで、「日本の入浴剤だ」といくつか買っていたのは知っていたが、
大して興味も無いからリカーコーナーで部屋で飲む酒を物色していたのだ。
が、彼が買った色とりどりのそれは、ロックが自ら入るのではなく連れであるレヴィを楽しませる目的を持っていたらしい。
つまり、毎夜ロックは手ずからバスタブに湯を溜め、レヴィに入浴を勧めてくる。
どれだけ色気の無い間柄とは言え、人目に触れぬホテルの一室で、妙齢の男女が二人きり。
そんな相手に入浴を勧められれば俄かに何かを予感するのはあまりにも当然と言える。

彼女だってはじめはそうだった。
280名無しさん@ピンキー:2009/12/22(火) 12:00:05 ID:UKgiEw4C
 冬の東京で芯から冷えた身体を甘い香りの湯で温めながら、この後どんな格好で出ていけばいいのだろうとか、歯を磨いておかな
 ければとか、コンドームを用意していないとか…処女のようにそんなことばかりがレヴィの頭をぐるぐると回った。
 日本に来て早速関係を持つのも展開が速い気がするが、ロックとならそれもやぶさかではない。
 そうは言っても、どうせならばがっかりされたくない…もっと言えば喜んでもらいたいのだが、部屋に備え付けの膝丈のパジャマは
 どうにも色気が無い。
 とは言えいきなり裸というのも、いかにもヤる気満々だ。いや、その気ではあるが、あまりがっついて引かれてしまっては実も蓋も
 無い。
 バスタオルを巻いたところで、大して変わらない。というか、かえっていやらしい。
 湯から出て鏡の前であれやこれやと試してみるも、やはりここは自然が一番と胸元を少し肌蹴てパジャマを羽織る。
 ロックの指がこの無粋な夜着を剥がす様を想像し、顔が真っ赤に染まった。
 「よし、行くか」
 そう小さく呟き、ドアを開いた。
 暖房はきいているが、湯気の立ち込める浴室と比べてどこか肌寒い。
 部屋でテレビを眺めていたロックは、湯上りのレヴィを一瞥すると、「ビールは冷蔵庫。湯冷めするから飲んだら寝ろよ」と言い残し
 浴室に消える。
 そんな態度と台詞に肩透かしを食らったのは事実だが、その後に色気のある展開が待っているとまだ信じて疑わなかった。
 ベッドに尻をついてビールを流し込む。
 テレビは日本の報道番組を映していて、どんな内容かなんてさっぱりわからないのに、ロックと共に彼の母国にいるのだと思うとそ
 わそわした。
 心臓がうるさい。今更生娘みたいに緊張するなんて。

 セックスなんて、股を開いて男のモノを突っ込ませてやれば、空しさや情けなさと引き換えに、ほどほどの快楽を得られる、それだ
 けの行為。
 酒やタバコ、そしてドラッグと同じ。
 これといって好きではないが、何となく背伸びで始め、数ある享楽の一つとして営んできた最も原始的で本能的な行為。
 そうは言っても酒とタバコは生活の一部として定着したが、セックスとドラッグは必ずしもそうはならなかった。

 色々なことを覚え始めの時分、ドラッグパーティでの乱交の最中に見た幻覚が無性に気持ち悪かった。
 気が狂いそうになる強烈な快楽の中で目にしたのは、ねっとりと全身を這い回る蛇に絡み取られながら、毛むくじゃらの猿に犯され 
 る光景。
 目玉だらけの天井。
 醜悪な天使と美麗な悪魔、ショッキングピンクと紫のマーブル模様のマネキンの三人組が、ケラケラと高笑う溶けかけのボーイ・ジョ
 ージの口の中からこちらを覗き込んでいた。
 きっと、全身を舐め回されるか撫で回されるかしながら、複数にマワされていたのだろう。
 身動きが取れなかったのは、暴れないように押さえつけられていたからかもしれない。


 怖くてたまらなかった。
 そして、とてつもなく幸運だった。

 ドラッグでハイなセックスに溺れている最中に幻覚までもがハッピーだったなら、きっと自分は元に戻れなかった。
 薬のために身体だって売るようになっただろう。そんな『元・人間』をうんざりするほど見てきた。
 それ以来、クスリといえばせいぜいマリファナを楽しむ程度に控えるようにはなったが、顔も覚えていないような男とは何度も身体を
 重ねてきた。
 だが、言い訳するわけではないが…対価を受け取ったことは無い。
 決して『綺麗』では無い身体だが、どんなに尻軽呼ばわりされようとも職業にしてはならない気がしていた。
 何となくでしかないが、それだけは譲れない気がしたのだ。
 ハタチを過ぎた頃には、空っぽの快楽と空しさの天秤が大幅に後者に傾くようになって自傷のように股を開くことは少なくなり、ロック
 が現れてからは、一度も無い。

 壁を眺めながらぼんやりと反芻していると、シャワーの音が止まる。程なくして聞こえてくるドライヤーの送風音。
 どんな顔で迎えればいいだろうか。
 自分の経験を思うと、先程までの高揚感は消え失せた。
 緊張は相変わらずだ。
 金を受け取って来なかっただけで、ただの男の肉便器だった自分。
 自分が育ったあの街ではそれが当たり前だったとは言っても、惚れてしまった男に差し出すにはあまりに手垢が多すぎる。
 どんな顔をしていればいい。きっと後悔で情けない顔をしている。
 無言で壁をにらみ続けた。

 浴室のドアノブが、回った。
281名無しさん@ピンキー:2009/12/22(火) 12:06:13 ID:UKgiEw4C
数日前の出来事を思い出し、小さく舌打ちした。
あの日、自前の寝巻きを着たロックは、ビールを飲むと彼女に指一本たりとも触れることなくさっさと寝てしまった。
ありもしない彼との行為を妄想し、勝手に盛り上がっていた自分はまるで道化だと頬を膨らませる。
2日目も同じだった。
タイからの移動、ヤクザとの会合や連れ回してしまったカーニバル。
疲れることばかりだったそれまでの日程。
だから3日目に期待してはみたが、何も変わらなかった。

3日目は、バラライカのショッピングに同行し銀座へと赴いたのだ。

 マフィアに身を窶しても軍人としての矜持を崩さぬバラライカであるが、女として装うことに一切の手抜きはない。
 結い上げられた豊かな金髪、手入れが行き届いた爪、目元を引き立てるメイク、艶やかに引かれたルージュ。
 纏うものだって上質だ。スーツはもちろん、繊細で上質なストッキングはシルク、靴だって細身のハイヒール…。
 そんな彼女が、気まぐれで中国人の小娘を連れて異国の地でショッピング。完全な引き立て役。要らないと言っているのにノベルティ
 やら化粧品のサンプルやら、レヴィの持ち物は増えて行く。
 だが、興味の無いそぶりを見せながらも、店に並ぶ煌びやかな服を追わずにいられなかったのは彼女なりに楽しんでいたからだろう。
 東京は寒くてかなわないと愚痴を漏らしていたためか、下着店では防寒用のインナーを買い与えられた。
 もちろんそれも有り難かったのだが、1番嬉しかったのは、ふと凝視してしまったレースとリボンのロマンティックなベビードール。
 要は、男を誘惑する他に使い道の無い下着。
 レヴィがそんなものにいたく気を向けていることに気付いたバラライカは、渋い顔を浮かべながらも、一揃えで用意するようにスタッフに
 伝えた。
 そんな下着の使いみちなど、どうせ誰の目にも明らかだ。
 日本に来て、こんないかにも女みたいな服を着て、加えて男を誘うレースの下着。
 「気持ち悪い」とか「別にいらねぇって」とか「似合わない」とか口では文句を垂れながら、その実少し…いや、相当に嬉しかった。
 そんな彼女の内心を知ってか、ロックやバラライカは彼女が普段選ばないようなものを与えてくる。
 それを受け取れば、冷やかすでもなく、ロアナプラの面々が見れば唖然とするような出で立ちの彼女を当然のものとして受け入れて
 いた。
 当初は照れ臭くてたまらなかったガーリーな服装への違和感も薄れていく。
 こそばゆくて、でも、少しうれしかった。
 だから、ホテルに戻った時にロックに渡されたやけに少女趣味なフリースのパジャマも素直に受け取った。

 レースのランジェリを着け、上からロックに買い与えられたモコモコの夜着を着込む。奇妙な取り合わせだとは思ったが、せっかくロ
 ックに買って貰ったのだから早く着てみたかったのだ。
 ロックはベッドでタバコを燻らせ寛ろいでいた。そんな彼を誘うように、傍らに腰掛ける。
 彼が眺めるテレビからは「カブキチョー」とか「コーサカイ」とかいう単語が聞こえてくる。
 きっと昨日の爆破のニュースが読まれているのだろう、ロックの目は尚も画面に釘付けだった。
 何となく面白くなくて視界を塞ぐように腰に跨ると、微かに身体を震わせ視線を逸らされる。
 頬に触れ、ゆっくり顔を寄せる。ロックの息が浅くなる。あと3センチ、2センチ。微かな吐息すら感じるほどに近い。
 だが。
 「風呂、入って来る」
 言いながら身体を押し退けられた。
 出鼻を挫かれ面白くなかったが、ロックの硬く隆起した下半身を見止め、真面目な彼はマナーとして入浴するのだろうと疑わなかった。
 そんな思考に、自分はそんなにこの男と『したい』のかと呆れるが、惚れてしまったものは仕方ないのだ。
 言葉で想いを伝えられないから、彼を手放す日が来る前に、せめて身体くらいは繋げておきたかったのだ。

 だが結局、何事もなかったかのように振舞われ、明らかな彼からの拒絶にそれ以上踏み込む勇気を持てずに互いに眠りについた。
 真っ暗な部屋の中、惨めで情けなくてたまらなくなる。
 外は風が強くて、時折低音となって部屋の空気を震わせていた。
 ろくでもない経験ばかり重ねてきたくせに、こんなに心底欲している男とはキスすら叶わない。
 頭の中でこっ恥しいばかりの妄想を繰り広げてみたり、馬鹿みたいなランジェリを揃えてみたり、とにかく空回りばかりしている。
 「馬ぁ鹿…」
 消え入るように呟いて、レヴィは瞼を閉じた。
282名無しさん@ピンキー:2009/12/22(火) 12:09:43 ID:UKgiEw4C
結局何の進展も無いまま更に数日が経ってしまった。
口を尖らせ鼻先まで湯に漬かる。
馬鹿馬鹿しい、自分は何をしにこんな異国の地までロックを追って来た?
決まっている、彼の身を守るためだ。
……守る?笑わせる。ほんの数時間前にチンピラにボコボコにされるロックを助けることすら出来なかったのに。
結局、何に於いても自分だけで独りよがって空回っている。
何だか、惨めさが上塗りされる一方だ。
「コロス…」
暴行を受けるロックの姿を思い出し、一度は収めたはずの怒りがこみ上げ天井を仰ぐ。半分は不甲斐ない自分への怒りだが。
ロアナプラでだってあんなに怪我をさせたことはない。なのに平和なこの国で…ロックの国で怪我をさせた。
許せない。許さない。
二度と彼を傷つけさせてなるものか。
レヴィは沸騰しそうな怒りのまま唇を噛む。ストロベリーミルクの色の湯に一滴の血が滴り落ちて溶けるように消えていく。
ロックにとって自分の存在価値が暴力にしかないのならば、それでもいい。今はただ暴力で応えてロックの役に立つだけだ。
レヴィは切れた唇を一舐めし、怒りのまま立ち上がるとバスタブを跨いだ。
頭上の棚に置かれたバスタオルを取ろうと背筋をぐっと伸ばした瞬間…膝から力が抜けた。

意識が遠のく。

昼間、公園で出会った子供たちへ行ったレクチャーを思い出し『そう、こんなカンジなんだよ』と己の正しさを確認するも、身体のバラ
ンスを立て直すことが出来ない。
何かに掴まるべく咄嗟に伸ばした腕が、アメニティのトレイをひっくり返す。
倒れこんだ床はひんやりして気持ちが良い。

「レヴィ!!??」

浴室のドアが開き、どことなくひんやりした空気が肌に触れた。
「何でも…ねぇ……見んなよ…出て…け…」
言いながら起き上がろうと床に手をつくが、馬鹿みたいに力が抜けてうまくいかない。
「随分長いこと入ってると思ったらっ…」
身体を抱き起こされる。肩を抱きこまれ、膝裏に腕が回された。
「のぼせるまで、入ってるなんてっ…」
身体がふわりと浮く感覚。
抵抗する間も無く抱き上げられて浴室を出たと思えば、何かを考える間もなくベッドに下ろされる。
ハァハァと荒い自分の吐息。
一糸纏わぬ姿を少しでも隠すようにびしょ濡れの身体を丸める。
こんなシチュエーションでフルヌードを晒すなど、何の冗談だ。
出し惜しみするべき身体とは思っていないが、それでもこの男に見られる時は抱かれる時だと勝手に決めていた。
全て晒して尚、欲情すらされないのでは…立ち直れる気が全くしない。
そう身を硬くするレヴィに、フワリとタオルがかかる。ぶっ倒れた女にいきなりのしかかって来る男ではないし、そんな男ならば惚れた
りなどしないが、「お前は対象外」と言われた気がしてますます惨めたらしい。
283名無しさん@ピンキー:2009/12/22(火) 12:14:13 ID:UKgiEw4C
頬に冷えたペットボトルの感触。
「ほら水。飲めよ」
「……ん。」
とりあえずの気持ち悪さの波は去って、頭も冷えてきている。
嘆息して目を開けると、目の前にはロックの…胸板。
「てめ、何で脱いでんだよ!!」
スラックスはそのままとは言え、思いがけないトップレスに再び顔に血が上る。ロックは殴られた痣の残る顔を真っ赤に染めると「仕
方ないだろ、濡れネズミを抱き上げてびしょ濡れになったんだ!」と抗弁し、それでも紙でパタパタと扇いでくれる。
ロックの身体など、船で見慣れているのにドキドキする。だってこんなに近い。
思わず目の前の裸体を凝視すれば、ノータリン男に受けた暴行の痕が痛々しい。
赤く腫れてきているそこに触れると、「いたっ」と震える身体。
「悪かったな…助けてやれなくてよ」
「お前のせいじゃないだろ、もういい…。気にして無いんだからそんな顔するな」
「うん」

レヴィに下心があったわけではない。
性欲とか情欲とか、そんなものとは無縁の衝動で、熱を孕む打撲痕へ唇をよせた。
唖然とするロックに一言「ママのキスだ」と薄く笑う。
「お前、明日色が変わるぞ…これ」
「…………………………ああ」
「氷で冷やしながら寝ろよ」
「…腹まで冷えちまうだろ」
レヴィが違いないと笑うと、ロックの指が彼女の頬に触れた。
「…顔も…蹴られて痛いんだ」
言わんとしていることは理解出来るから、何やら期待めいた感情を抱かずにいられない。
ダメ押しするように「キスしてよ」と囁く声に、脳髄が、痺れる。
よたよたと起き上がると申し訳程度に身体を隠していたタオルが滑り落ち、全てがあらわになる。指し示された箇所に無言で口付ける。
赤く腫れ始めの頬の次に、痛々しく切れた口の端。
軽く触れるだけの、ママのキス。
なのにやけに心臓がうるさかった。




続くかもね
284名無しさん@ピンキー:2009/12/22(火) 13:10:01 ID:P+P56IY2
>>283

続けてくださいお願いします
285名無しさん@ピンキー:2009/12/22(火) 19:44:05 ID:IKL/yv3g
>>283
自分もお願いしますだ
286名無しさん@ピンキー:2009/12/22(火) 22:32:39 ID:yN7HCm7M
>>283
よろしくお願いします
287名無しさん@ピンキー:2009/12/22(火) 23:05:56 ID:4mKKMEl8
(;*´Д`)/ヽァ/ヽァ

こんなこれからのファインプレイに心躍らせるタイミングで停めて「かもね」だと!?

サンタのおじさん、いいこにしてるから283のつづきをください。
おねがいしましゅ。
288名無しさん@ピンキー:2009/12/23(水) 00:33:26 ID:uJ0flBV1
誘い受けしても叩かれない奴と叩かれる奴の差ってなんなんだろうな

つまんないのしか書けない奴が叩かれるのかな……orz
289名無しさん@ピンキー:2009/12/23(水) 00:41:42 ID:e93n76Lr
自分だったらつまらないと思ったやつは普通にスルーするけどなぁ…住人の性格にもよるんじゃないかな?
必ずしも叩く=つまらないじゃないよ、気にしない方がいいよ
290名無しさん@ピンキー:2009/12/23(水) 00:50:32 ID:DNPtV3Vp
単に誘い受けのさじ加減だと思うけど?
面白いモン書いても叩かれる人は叩かれる。
叩かれる人って、「んなモン自分の脳みそで考えろ」と言いたくなる自立心のない誘い方をしてると思う。
「何コイツ、めんどくさ」っていう…。
291名無しさん@ピンキー:2009/12/23(水) 02:10:30 ID:hZJWHI1i
>>244
5人ぐらい?の神に感謝。投下してくれてるのそれぐらいだよね?
292ロック×レヴィ 赤  ◆JU6DOSMJRE :2009/12/23(水) 20:51:47 ID:6IJuNhTg

この日三度目の口づけも、長いものとなった。
ロックの手がレヴィのタンクトップの背中にさし入れられたのは、
二人の空気を貪る音がキャビン内に響き始めた時だった。
中途半端にずり上げられているレヴィのタンクトップとその下の下着を、ロックは胸元までたくし上げた。
――ああ、今日、レヴィがタンクトップの下に下着をつけていたことが、せめてもの救いだ。
そう思いながら。
「ちょ――っ、ロック、ダッチとベニーもいる――」
「さっき鍵はかけたよ」
「そうじゃねェ!」とレヴィが言葉を発する前に、
ロックは、目の前でふるりと揺れる白い乳房の先端を、唇でそっとはさみこんだ。
反射的に逃げる背中を手でとらえて引きよせる。
ロックの片手をちょうど満たすほどにふっくりした乳房に比べ、その先端はつつましやかだ。
紅色を薄めたような、淡い色。
軽く吸いたてると、レヴィの背中が震えた。
逆のふくらみに手をのばしつつ、ロックは思う。

なんて、いとしい女だろう、と。


自分の人生を丸ごとひっくり返したこの女。
憧れたのは、しなやかな鋼のような強靱さにか、美しい破壊行為にか。
今でもそれはよく分からない。
ただ、肌を焦がす太陽と、目が眩む程の紺碧の中で、自由自在に舞う彼女の強烈な残像だけが、
ロックの脳裏に鮮やかに焼きついていた。
肉食動物のように獰猛な女。
夜の底を生き延びてきた女。
そんなレヴィの抱える闇の深さに気付き、
彼女が自身を堅く鎧えば鎧うほど、中身は柔らかく脆いのだと知るのに、そう時間はかからなかった。
虚勢を崩せない不器用な女。
どうしようもなく、惹かれた。

ロックは、自分がレヴィを救えるなどという傲慢なことは思わない。
情けないほど非力だった。
余りにも、足りなかった。
彼女の隣に、並ぶには。
けれど、知りたかった。
彼女のすべてを。


日本語で、「いとしい」と「かなしい」は、同じ字を書く――。
そんなことを、思い出した。
293ロック×レヴィ 赤  ◆JU6DOSMJRE :2009/12/23(水) 20:52:31 ID:6IJuNhTg
レヴィは、触れると少女になる。

普段の、狂暴で不遜な彼女はどこにも見当たらない。
剣呑な目は静かに伏せられ、うすく開いた唇から深い吐息だけをいくつも零す。

しかし、レヴィが、その行為について本当のところどう思っているのか。
それが、ロックには分からなかった。

彼女が過去どんな目に遭ってきたか。
詳しく聞いたことは無いが、多分、男との交わりに良い思い出などひとつも無いだろう。
レヴィの胸の奥の一番やわらかいところは、少女のまま凍りついているのかもしれなかった。
レヴィが自分から求めてくることは、ほとんど無い。
たまらず手をのばせば拒みはしないものの、腕に感じるわずかな身体の強ばり。
レヴィは何も言わないが、彼女にとっては未だ恐怖なのかもしれない。
忌むべき行為。
それなのに、ロックは自分勝手なこの衝動を抑えることが出来なかった。
レヴィは、一体どんな想いでこの行為に付き合ってくれているのだろうと思うと、罪の意識を感じた。

――本当は、嫌?

その一言が訊けなかった。
294ロック×レヴィ 赤  ◆JU6DOSMJRE :2009/12/23(水) 20:53:20 ID:6IJuNhTg

けれど、今は。

「――レヴィ」
耳元に唇をよせ、直接、鼓膜へ響かせるように囁いて、
それから耳たぶの根本に口づけると身をすくませるその反応も、
本当に嫌なわけではないのだと、確信を持てる。

レヴィのベルトの留め金に手をのばすと、レヴィの手が掛かった。
「――ほんとにここですんのかよ」
「避妊具なら、持ってるけど?」
「――そうじゃねェ!」
「それも大事な事だろ」
しれっと言うと、レヴィは口ごもったが、すぐに言い返した。
「そうじゃなくて、ダッチとベニーに聞こえ――」
「ダッチとベニーは操舵室だよ」
「こっちに来るかもしれねェだろ!」
「ダッチとベニーは置いといてさ、レヴィ自身はどうなの? 嫌?」
レヴィが、ぐ、と返答に詰まった。
「嫌なの?」
レヴィの顔が赤く染まる。
「ほんとに嫌ならやめるけど?」
目元まで染めて憎々しげに見てくるレヴィに、最後の一言。
「レヴィはいつも、ほとんど声出さないんだから、大丈夫だよ」
つかみかかってくる寸前のところで、抱きとめた。
これ以上は、本当に怒らせる。

「冗談だって。ほんとに嫌ならやめる、っていうのは本気だけど」
耳元で囁くと、レヴィはしばし静止した。
それから、ロックの膝から腰を浮かせて床に降りると、自分でベルトを解いた。
無骨なコンバット・ブーツを脱ぎ捨てる。
そして、デニムのホットパンツとその下にはいている下着も一緒に降ろして、長い脚を引きぬく。
豪快な脱ぎっぷり。
男の情欲を煽ろうとする気が全く感じられないその豪快さが、レヴィらしかった。
レヴィは、胸の上までたくし上げられたタンクトップと下着に目をやって、
どうしようか逡巡していたが、結局、脱ぐことに決めたらしい。これも一緒に頭から抜いた。
ロックがまだ自らのベルトすら外していないのを見咎めると、
レヴィは、はやくお前も脱げ、と手振りで伝えてきた。
バックルを外していると、レヴィの手がネクタイに伸びてきて、
人差し指を根本に差し入れ、ぐっ、と引き下ろされた。
首もとが緩む。
295ロック×レヴィ 赤  ◆JU6DOSMJRE :2009/12/23(水) 20:53:53 ID:6IJuNhTg

スラックスを脱ぐ前に、指をレヴィの脚のつけ根に持っていき、
中指の腹で浅く奥を探れば、温かいうるみ。
何度かゆるくかきまわすと、すぐに中指はとろりとした液体に覆われた。
その中指を手前にこすりあげ、また、もどす。
レヴィのなかからあふれた液体を、先端の突起にからめるように指先でこねると、
レヴィの太ももに力が入った。
それを繰り返すと、中指は簡単にレヴィのなかへ入っていった。
レヴィは、一瞬息をのんで、あとは首を落として胸を浅く上下させるだけだった。
けれど、その密やかな呼吸しか聞こえない静寂は、ロックの中指がたてる音をいっそう際立たせた。
ラグーン号の低く唸り続けるエンジン音は、どこか妙に遠くに感じられた。
ロックの指が立てる音がさらに高まった頃、指を二本に増やそうとすると、
レヴィはかすれた声で「もういい」と言って、ロックの腕を押しとどめた。

そして、レヴィはスラックス越しにロックの熱を持った中心に触れた。
掌で包みこみ、撫であげ、指を滑らせる。
布を通して、レヴィの手の温度が伝わってきた。
先端に、カリ、と軽く二本の爪を交互に立ててくるレヴィの指。
脳まで快楽が走った。
ジッパーを引き下げ、中にもぐりこんできた手が、今度は薄手の下着越しに触れてくる。
生々しい感触。ますます高まる熱に、ロックはレヴィの手を思わず制した。
今日は限界が近そうだった。
ロックは、スラックスと下着と靴、それから少し迷って靴下も、結局脱ぐことにした。
とても、間抜けな姿だったので。
296ロック×レヴィ 赤  ◆JU6DOSMJRE :2009/12/23(水) 20:54:22 ID:6IJuNhTg

レヴィは、神妙な顔をして、簡易ベッドに座ったロックの足の横に両膝をついて跨ると、
うるんだ自分の中に、ロックを沈めた。
ロックは彼女の腰と背中に手を添える。
レヴィのペースで進められるように。
ゆっくりと温かいとろみに浸されていく。
最奥まで到達すると、レヴィは吐息とともにロックの首に腕をまわし、頭を寄せてきた。
はぁ、とロックの耳元で湿ったため息をついてから、レヴィは頭を起こし、ロックを見つめる。
レヴィの唇が、紅さを増していた。
ロックの想いはレヴィに伝わって、しずかに唇が寄せられ、重ねられる。
レヴィは唇を離すと、ロックの顔を挟みこんでいた両手を、ゆっくり首へとすべらせた。
やんわりとロックの首を包み、それから、白いワイシャツの両肩へ。
レヴィの指がワイシャツのボタンにかかった。
上からひとつずつ、着実に外していく。
最後のボタンを外し終わると、レヴィはロックのワイシャツの合わせ目を開き、
両腕を差し入れてロックの背中にまわした。
ロックの首筋に、レヴィの顔が埋められる。
直接感じる、素肌のぬくもり。
ロックは、彼女の温かさを全身で味わった。

レヴィが身体を起こすと、ロックの目の前には柔らかな二つのふくらみ。
ロックは、その白いふくらみの谷間から少し外側にずれたあたり、
ちょうど心臓の上あたりに唇をよせ、強めに吸いあげた。
レヴィの身体がたじろいだが、背中をとらえて十分に長く吸ってから離す。
白い肌には、鮮やかな赤い痕がついていた。
「……にすんだよ、ロック」
怒りというよりは戸惑いの方を多く含んだレヴィの声が降ってきた。
「大丈夫。ここなら見えない」
「……見えるところにつけたら殺すからな」
物騒な、彼女の容認の言葉。
レヴィの腰がゆらめき始める。
ゆっくりと上下に、最初は小さく、だんだんと大きく。
うねるように、かき回す。
あたたかく、やわらかい。
締めつけて、震える。
はじめはレヴィのペースに合わせようと思っていたロックの身体も、自らレヴィを求め出した。
背中を抱き合って、お互いの欲情を混ぜ合わせた。
297ロック×レヴィ 赤  ◆JU6DOSMJRE :2009/12/23(水) 20:55:06 ID:6IJuNhTg

レヴィは声をあげなかった。
呼吸を激しく乱していても、ロックが下から突きあげても、それはもう、完璧なまでに。
あまりにも徹底していて、ロックは何だか可笑しくなってきた。
――普段からレヴィは声をあまり出さないけど、これはちょっと、徹底しすぎだろ。
短い笑いがロックの口をつき、それに気づいたレヴィは、何? という風に目で訊いてきた。
――何でもない。
ロックは目で返し、そして笑うと、レヴィも目元をほどいて微笑んだ。
安心したように。

レヴィの尋常でない沈黙っぷりに悪戯心がわいたのは、そのすぐ後のことだった。
頑固なまでに一切声をあげようとしないレヴィの腰を支えて、
くるりと回転させ、簡易ベッドに押しつけた。
上になって主導権を握ったロックは、勢いよくレヴィの奥を突いた。
片脚の膝裏を腕ですくい上げ、レヴィを揺らす。
レヴィの肩が内に入り、全身の筋肉に力が入った。
強く締めつけられて、ロックも思わず声をもらしてしまいそうになる。
レヴィは切羽詰まった抗議の表情を浮かべたが、ロックは構わず大きくかき混ぜた。
レヴィが眉を寄せ、瞼を震わせ、ぎゅっと目をつぶるのを、甘美な気分でロックは見た。
甘い声が聞きたいのか、それともこうしてこらえる姿を見たいのか、
それはもう、どちらであるのかよく分からなくなっていた。

と、その時、ロックの腰の自由が急に奪われた。
レヴィが、両脚をロックの腰にまわし、動けないように締めつけたから。
がっしりとロックを固定したレヴィは、呼吸を乱れさせながら、低くささやいた。
「今、わざとやっただろ、ロック」
そうはさせるか、とレヴィは、絡めた脚でギリギリ締めあげてきた。
「ちょっ、レヴィ! わかった! 待てよ! ギブギブギブギブ!」
ロックは無声音で降参を告げる。
レヴィはロックから、絶対もうしない、との確約をとりつけると、ようやく脚を解いた。
298ロック×レヴィ 赤  ◆JU6DOSMJRE :2009/12/23(水) 20:55:56 ID:6IJuNhTg

その後も、レヴィはまったく声を出さなかった。
しかし、濡れた吐息や、心臓の速さ、ほのかに赤く上気した肌、つま先の熱さ、筋肉のふるえ、
腰のゆらめき、そして二人が繋がったところの蠕動で、
彼女が今、どう感じているのかは、手に取るように分かる気がした。
殊に、合わせた瞳は、雄弁にたくさんのことを伝えていた。
揺れた瞳の奥に何があるのか、ロックはそれに触れたいと思った。
レヴィもまた、ロックの瞳をのぞき込む。
頭蓋の奥まで見通す光で。


ロックは、思わず、口に出してしまいそうになる。
あの、世界中の恋人たちが交わしている、最もポピュラーな言葉を。
今まで何度も口走りそうになり、寸前で飲み込んできた、あの言葉。
レヴィが望まず、しかし無意識に望んでいるであろう、あの言葉。

――俺たちの間には、言えない言葉が多すぎる。

しかし、言葉はむしろ、不完全なものなのかもしれなかった。
こうして合わせた瞳から得られたものを、そして自分が伝えたいすべての事を、
表現しきれる言葉など、存在しないように思われた。
微細な揺れを、震えを、痛みを、感じ取れ。
言葉にすると、見失う。
そんな気がした。


あの言葉は、口にしない。
とりあえず、今は、まだ。
あの言葉が死の宣告であるという呪縛から、二人が解き放たれる日まで。
 
ロックは、心の中だけでその言葉をつぶやき、それを瞳にのせて、レヴィの大きな瞳へ注ぎこんだ。
――少しでも伝わるといい。
そう、願いながら。


レヴィは最後の最後に、喉の奥をちいさく、くぅ、と鳴らした。
ロックの耳の、すぐ側で。
それから、「あ」とも「ん」ともつかぬ震えた声を、わずかにもらした。
それは、甘く、甘く、ロックの鼓膜を揺らした。
299ロック×レヴィ 赤  ◆JU6DOSMJRE :2009/12/23(水) 20:57:03 ID:6IJuNhTg

こんなにも、半ば意地になって声をひそめて交わったのは、初めてのことだった。
高揚がおさまってくると、ほとんど修業のようだった行為に何だか無性に可笑しくなって、
二人同時に吹き出した。
みぞおちのあたりから笑いがふつふつと込み上げ、
互いに鼻をつき合わせ、身体を震わせて声を出さずに笑った。
下になったレヴィの手が、ロックの背中をぱしんと叩いた。
しぃーっ、と指を立てるロックに、レヴィが楽しそうに笑う。
「しぃーっ、じゃねェよ。さっき暴走しようとした奴が」
また、声をひそめて肩を揺らした。
ふと思い当たって、ロックは言った。
「……これ、笑い声までひそめる必要、無くないか?」
「あー、そういやそうだな。……でも、いきなり笑い声が響いたら、そっちの方がびっくりされんぞ。
とうとう頭が沸いたかと思われる」
「ていうか、今思ったんだけどさ、
それまで話し声してたのに、突然静かになるって、そっちの方がヤバくないか?」
ロックの言葉に、レヴィが一瞬顔をしかめた。
だが、仕方がない。
あの洞察力に長けたダッチは、そして多分ベニーも、最初からとっくにお見通しだろう。


レヴィは、そこらへんに散乱している服を手早く身につけると、上機嫌で言った。
「よし、今日はロアナプラに帰ったら、レッドラムで祝杯だな!」
「レッドラム……?」
「いつもバカルディじゃ、つまらねェだろ? イカれたあんたのために、今日は特別だ」
「ああ、“REDRAM”か。でも、俺はまだ、ジャック・トランスほどイカれてないぞ」
「ばぁーか。ジャックはバーボンだろ」
あの酒、ちょっと甘ったるいが、ネーミングセンスはなかなかイカしてる、
と、ご機嫌なレヴィを見ながら、ロックは思う。

――レッドラムは、レヴィにこそお似合いだ。
 

美しい赤色に、危険な酩酊。
トロピカル・フルーツの酸味に、甘美な香り。


“REDRAM”

“MARDER”

この、うつくしき、ひとごろし。



300名無しさん@ピンキー:2009/12/23(水) 21:02:41 ID:U1nlPRVz
>299
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
GJ!
301名無しさん@ピンキー:2009/12/23(水) 21:15:03 ID:e93n76Lr
GJGJGJ!!
302名無しさん@ピンキー:2009/12/23(水) 21:16:57 ID:YIQW4ddr
すばらすい。GJ。
303名無しさん@ピンキー:2009/12/23(水) 21:55:40 ID:DeLx7Us7
もうGJとしか言えねえ
304名無しさん@ピンキー:2009/12/23(水) 23:12:40 ID:lUcYaSKq
もう最高でした
305『もう一つの、1996年』(続きません):2009/12/24(木) 00:03:48 ID:pP1jytbR
"責任、取れよな。"

落ち着きつつある息の中、二人、廊下に寝転びながら、レヴィが言う。
冷え切ったフローリングから伝わる冷気で、背中が冷たい。
でも、繋ぎあった手からは、からむ指先からは、レヴィの体温が伝わってくる。
俺たちが今まで交わっていた証の生臭い匂いと、レヴィのいい匂いが混ざった、そんな匂いがする。

"え、初めて?"

"……初めて。"

"おい、嘘だろ、あんなにモテるレヴィが?"

"嘘なもんか!
お前、あたしを傷物にしといて、なんだよそれ!"

"マジか……。"

"マジもマジ、大マジよ。
つかよ、お前の口からあたし、まだ大事なこと聞いてねえんだけどさ。"

"え、何?"

"すっとぼけやがって、やっぱりテメエはサイテーだ。
クリスマス前だから、ヤらせてくれんなら誰でもよかったのか?"

"何なのか、はっきり言えよ、レヴィ。"

"なあ、あたしは、お前の何なんだ、ロック?"

"何って、幼馴染で、隣人で、悪友で……。"

"そうじゃねえだろ、なあ、わかってんだろ、本当は?"

"お前は銃で、俺は弾丸、だよな。"

"ちげーよ、だから……ホント、テメエは悪党だな、ロック。"

"……レヴィ、好きだよ。
順序は逆になっちゃったけど、お前が好きだ、俺。"

真っ赤な顔でこっちを見るレヴィの目を見つめながら、俺はそう言った。
その瞬間のレヴィの顔は、これまで見たどんなレヴィよりも、可愛く見えた。

"Damn, fuck, You, son of a bitch!"

いつものように悪態を吐くレヴィに、俺はそっと口付けた。

"ホント、テメエは人でなしの意地悪ヤローだ。"

そう言うレヴィの顔は、あのレヴィのそれとは思えないほど、どこまでも優しかった。
口には出さなかったけれど、これからの人生を俺はレヴィと一緒に歩む、そんな決意を俺は胸に秘めていた。
二人で一つの俺たちは、きっとうまくやっていける、そう思えた。

暗い空に白い雪がちらつきだすのが、玄関の明り取りの窓から、見えた。
それは、俺たちをまるで、祝福しているかのようだった。
雪は、どこまでも、どこまでも、降り続けた。
全ての穢れを清めるように、どこまでも降り続けた。

<『もう一つの、1996年』 終>
306名無しさん@ピンキー:2009/12/24(木) 00:10:01 ID:EHBmiS1a
ああ、クリスマスイヴになんて甘いものを
307名無しさん@ピンキー:2009/12/24(木) 01:28:37 ID:2+9PCWEB
GJです
最高のクリスマスプレゼントに感謝
308名無しさん@ピンキー:2009/12/24(木) 19:48:09 ID:9Y/kFGnr
>299
どうでもいいけど、『マーダー』のスペルは"MURDER"だよ
しかしそんなことはどうでもいいくらいGJでした
309名無しさん@ピンキー:2009/12/24(木) 20:46:19 ID:xHc0DDOK
そういう言葉遊びがあるんだよ
310名無しさん@ピンキー:2009/12/24(木) 21:02:21 ID:9Y/kFGnr
だから、逆にして"RED RUM"じゃないのか?
"RAM"じゃダッジのピックアップだろう
311訂正  ◆JU6DOSMJRE :2009/12/24(木) 21:33:27 ID:hcsgvGrR
>>308>>310ご指摘ありがとう。穴掘ってでも入りたい……。

>>299
下から3行目 誤) 「"REDRAM"」 → 正)「"REDRUM"」
下から2行目 誤) 「"MARDAR" 」 → 正)「"MURDER"」

>>247
下から5行目 誤)「感覚を考えればば、」 →  正)「感覚を考えれば、」

致命的なところで誤字、大変申し訳ありませんでした。精進する。
312名無しさん@ピンキー:2009/12/24(木) 21:43:22 ID:9Y/kFGnr
>>311
ごめん、つか本当につまらない揚げ足取って申し訳ない
他の部分は最高にGJだった
313名無しさん@ピンキー:2009/12/24(木) 21:53:24 ID:aBNikd7e
俺もレヴィたんの穴に入りt…

細かいこと気にならんってか知識ないから気づかなかっただけなんだけどw とにかくメリーGJ!

この、うつくしきひとごろし に乾杯!
314名無しさん@ピンキー:2009/12/25(金) 02:11:14 ID:L9LFfyV8
メリーファックリスマス!

最近燃料不足のせいで冷めかけてたけど、ここの素晴らしいSSのおかげでロクレヴィ熱再発火したw
やっぱりロクレヴィいいよロクレヴィ。
職人さんたちありがとう&本当にGJ!
315名無しさん@ピンキー:2009/12/25(金) 03:00:49 ID:0HxIRhm7
本物のサンタはこの板にいるのですね。
316名無しさん@ピンキー:2009/12/25(金) 18:15:30 ID:TL6sYbV1
BD二巻のジャケットにニヤニヤが止まらん…
一巻の書き下ろしスリーブのレヴィとヒロイン岡島も良い感じだ
317名無しさん@ピンキー:2009/12/28(月) 12:17:38 ID:KYWZQ36C
今月のGXの表紙も良かった

「ほぅら、レヴィ
ちゃんと、剃らなきゃ」
「止めろよ、ロックゥ〜」
「ついでにコッチも」
「ふざける……、アンッ
後ろは」
「生えてないけど、まあ、念のため」
「シェービングつけるな!」
「ほら、動くと切れちゃうよ」
「バカ!指を入れるな」
「ゴメン、シワシワで剃りにくかったから
別のモノ、入れるね」
「アヒィ!?」
「スルッと入っちゃった
これで縁まで伸びきってるし、キレイに剃れるよ」


と、イラン妄想を……
318名無しさん@ピンキー:2009/12/28(月) 16:55:08 ID:T412NI2N
今回こそはとサンタガール衣装のレヴィたんを期待したが・・・・まぁあれはあれでカワイイからよしとする。

>>317
よくあの絵だけでそこまで妄想広げられるなw
脱帽した!

そして今投下されてるロクレヴィ話追いかけ中なんだがGJすぎて桃源郷が見えてくる。
319R18-G:2009/12/28(月) 17:12:08 ID:z5ea0qrp
路地裏で、二人の男女が折り重なるように倒れていた。
ワイシャツにネクタイ、ウールパンツ姿の男は眉間を打ち抜かれたまま女の上に覆いかぶさり、
その下の、タンクトップにホットパンツの女は、そのたわわな胸から鮮血を滴らせていた。
それはまるで、男が女を庇っているかのような、そんな倒れ方だった。

青息吐息の女が、もはやこときれている男に向かって、言った。

「あたしたちは、生きようとしちゃいけなかったんだ、そうだろ、ハニー。
でもな、あたしはもう一度生きたかった。
ここでお前と一緒に生きていきたい、そんなことを思っちまった。」

男の、返答はなかった。
男はパーフェクトに、100%、既にこの世から去っていた。
女はそれでも、続けた。

「初めて会ったときな、オメエのことなんか、つまんねえ男としか思ってなかったんだぜ、あたし。
最初の印象は、ホント最悪だ。
このお坊ちゃんをどうやって痛い目に合わせてやろう、それしか考えられなかった。」

女の肺に開いた穴から、女の口から、血が泡になって噴出していた。
餌の匂いを嗅ぎつけた蝿が、早々と二人の周りをぶんぶん飛び回っていた。

女は、グローブをはめた手で腹を押さえながら、声を絞り出した。

「この腹ん中のガキ、こいつが出来ちまったのが、全ての狂いの始まりだった。
オメエとのガキがいなきゃ、あたしもそんなこたぁ思わなかったんだよ、生きようなんてこたぁ。」

ものいわぬ男の亡骸を、女は優しく撫でた。
震える手で、優しく、優しく撫でた。

「畜生、いくら熱帯のタイっつってもやっぱ寒いな、夜は。
ロック、あたし、なんかすげえ寒いぜ…どうしようもなく寒い。」

それが、女の最期の言葉となった。
もう、街の喧騒と蝿の羽音しか、聞こえなかった。

道に落ちた、女の二挺のカスタム・メイドの拳銃が、街灯を反射して鈍く光っていた。
それはまるで、二人の墓標のように、輝き続けた。

<終>
320名無しさん@ピンキー:2009/12/28(月) 21:00:14 ID:coZlNBhz
(つД`)・゚・。・゚
321名無しさん@ピンキー:2009/12/28(月) 23:06:34 ID:7mrgX+oo
>>317
俺はGxのサイトで初めて見た時、
背面座位のように後ろにロックが
いるように見えて仕方なかった
322名無しさん@ピンキー:2010/01/02(土) 18:11:14 ID:w3Q3AeSe
283の続き



どちらからそうしたか、なんて論じるのもナンセンスだと、レヴィはロックにしがみつきながらそう思った。
気付けば唇同士が重なっていたのは自然なことで、掌を握り合いながら互いに舐めたり舐められたりしていた。
再びのぼせ始める頭。言いようの無い恍惚感にくらくらする。
男をベッドに引き倒し、頭を両腕で抱え込むと応えるように背中に回される掌。乳房が胸板に押し潰されるほどに密着し、漏れ出る甘
ったるい吐息を抑え切れない。
ロックとこうしたかった。
ロックに抱かれたいと、ずっとずっと思っていた。

「…くしゅんっ」
なまめかしい吐息で埋め尽くされた室内に、妙に控えめなくしゃみが響く。
「………………………レヴィ。髪乾かさないと…風邪ひく」
しばしの痛い沈黙の末、濡れそぼったまま冷たくなった髪を一撫でしてロックはレヴィから目を反らす。
「何でもねぇよ、この部屋乾燥してっし、すぐ乾くって」
「そういう問題じゃなくだな……あー…買ってやったパジャマ着て寝ろ」
「布団の中でヤればいいだろ」
尚も口答えをしてやれば呆れたような、何かを考えるような顔をし、「ごめん、ちょっと、ちょっと待ってて」とそわそわベッドを降りる。
身体を包んでいた体温を失ったレヴィが不満に口を尖らせるのにも構わず、ロックは死角にしゃがみ込んだかと思うと自らの荷物を
ごそごそと漁る。
ついでに空調をいじくりまわすと、いそいそと戻って来て再び布団もろとも覆いかぶさってきた。
そんな浮き足立った不審な動作に何となく冷めてしまいそうになるレヴィだったが、まぁいいかと気を取り直すことにする。
だって、直に触れ合う素肌の温もりが心地好い。
「寒くないか?」
「ああ。あんたも全部脱いじまいなよ」
未だロックの身体に纏わりついている服が邪魔で仕方ない。それに自分だけ素っ裸なのも照れくさい。
「その前に…」
なのに、ロックはベルトに手を掛けることなくそう言うと、さっきまでレヴィの身体にかかっていたタオルを手に取り乱暴に彼女の髪を
拭き始める。
「あ、てめ、いってぇ…!ちょっ…やめ…」
「髪を、乾かさないっ…お前が、ワルいんだっ」
「やっ…はははは…はは…」
セックスの前にこんな風に他愛なくふざけ合うのなど初めてで、それが無性に笑えてケラケラ笑うと、つられてロックも笑い始める。
「ぷっ…ひどいな、髪がボサボサだぜ。このまま乾いたら、明日の朝は大爆発だ」
ヘラっと笑うロックの頭を軽く小突きながら「てめぇの仕業だろ」と口を尖らせるレヴィに、彼は「まぁね」とキスをくれる。
323名無しさん@ピンキー:2010/01/02(土) 18:15:16 ID:w3Q3AeSe
逸る気持ちを抑えきれない様子で布団の中で全てを脱いだロックは、そのままレヴィの隣に横になって目の前の身体を抱き寄せる。
「あーすっげー気持ちいい」
「お前…まだ触ってやってすらいねぇぞ」
そんな軽口を叩けど、レヴィ自身も感じていた心地良さを共有しているようでどこか嬉しい。
「別にそれだけがキモチイイことじゃないだろ、柔らかくて抱き心地いいしさ、あったかいし。」
「ふーん…じゃあこのまま寝ちまうか?」
けれど、もっとそれでは意味は無い。意地悪く笑いながらレヴィの指が絶妙なタッチでロックをなぞる。
微かに顔を歪めたロックのソコは、数度扱くだけで放出してしまいそうなほど張り詰めていて、面白がって裏筋のあたりをくすぐると、
もの凄い力でシーツに縫い付けられた。
「そんなにがっつくなよ」
下半身に余裕の欠片も無いくせに、余裕ぶった顔で笑うロックが気に入らずに反論しようとすると唇を塞がれる。
中断してまで文句を言うのも馬鹿馬鹿しくて…というより、中断したくなくて…、もっと欲しいとねだるように甘えるような吐息を漏らす。
乳房を刺激するロックの掌は微かに汗ばんでいる。そして、レヴィの唇から首筋、鎖骨と続いて移動してきた唇が頂を含むなり、乳
飲み子のように熱心に吸い付いて来た。
「野郎ってのはよ、乳触って何が楽しいんだ?」
そんな、嬉しくてたまらないと言わんばかりの様子に、前々からの疑問を問わずにいられない。
大抵の男がやたらと嬉しそうに乳房を揉みたがるが、母乳も出ないそこはただの脂肪の塊だ。
「柔らかくてキモチイイだろ、自分で触ったことないのか?」
「無いワケねえだろ、んなモン触っても面白くもナンともねぇよ」
「えー勿体ない…」
「なんだソレ、わっけわかんねぇ…」
レヴィが自ら乳房を揉み上げながら、「こんなのただのチチだ」と納得出来ない顔をすると「そりゃあそうだろ」と笑われる。
「触られるのは?気持ちイイ?」
再び果実を口に含ませながら問うロックの唇の感触は確かに気持ちよくて、苦し紛れに「……死ね」と返せば「このまま死ねるなんて
本望だな」と真顔で返ってきた。
何と返そうかと考え、自分が優位に立てる返事が咄嗟に思いつかずにそのまま何となくされるがまま流される。
言葉も無くもぞもぞと互いの身体を触り合う度に掛布がめくれ、裸体を余すことなくロックに晒す。
脚が大きく割り開かれ、股間に触れる空気の一際の冷たさに自分がどれほど濡れているかを思い知らされた。
「ん…や…あ…」
笑えてしまうほどに緊張していて、思わずそんな生娘のような声を漏らしてしまう。
そんなレヴィの顔を嬉しそうに一瞥し「…真っ赤だ…」と呟く声。
割れ目に沿ってゆっくりとロックの指が滑っていく。
「うるせぇ………」
撫で付けられるたびにぬめりを増すソコは、ロックの指紋すらも感じ取れそうな位に鋭敏になっていた。
「……どうしてこんなに濡れてるの?すぐにでも入れられそうだ」
嫌らしくニヤニヤしながら指を入れられて奥を掻き回される。
「…ぁ…ぁ…ニヤけやがって…そんなに楽しいかよ…」
「というより嬉しい」
ぴちゃぴちゃとわざと音を立てて指を動かすロックに挙動を観察されることにいたたまれなくなり「そういうメンドくせぇのはいいからよ、
さっさと始めろって」と、逆に押し倒す。
「それとも『犯して』やろうか?ベイビー?」と、腹につかんばかりに立ち上がったモノを手に取りニヤリと笑うと、ロックはきょとんとした
顔の後、呆れたように「一回目くらいは普通に抱かせろって」とぼやく。
324名無しさん@ピンキー:2010/01/02(土) 18:15:43 ID:w3Q3AeSe
一度きりで終わらない関係を匂わされて、次はレヴィがにやけそうになる。
「うるせー。ねちねちしつこくいじり回しやがって。大体、次があるってのか?」
あるとしても、今夜一晩だけだ。だってもうすぐあたしはこいつを手放さなくちゃならない。レヴィは自身にそう言い聞かせながら歪み
そうになる顔を皮肉めいた笑みに換える。
「抱かせてくれるならな」
「いいぜ、けどネチっこいのは嫌いだ」
だから細かいことはさておきさっさと突っ込めと、脚を大きく開き、指で性器を割り開いて見せ付ける。だが。
「………………もっと、こう…何ていうか…恥じらいっていうの?さっきみたいに頬を染めて隠された方が燃えるんだけど」
良かれと思って誘ったつもりが心底嫌そうに呟かれ、どうやら何かを間違えたらしいことに気付く。
「……ポルノフィルムじゃみんなこんなんじゃねぇか。野郎は好きなんじゃねぇの?」
そう、今までの相手ならば口笛を吹いて食いついて来たというのに。
「俺はプロと寝てるつもりは無いんだけど…っていうか、だから悩んで………あー…まあ…もういいや…」
口ではごちゃごちゃと言いながらも、シーツに溺れたスラックスのポケットから小さな包みを探り出す。一目見れば判るそれ。つまり
は、スキン。コンドーム。
「……お前、いつそんなん買ったんだよ」
すかさず尋ねるレヴィの声にぎくりと震える身体。日本語で何か書いてあるからには来日してからだろうが、冗談抜きで、いつ用意し
たのか解らない。言葉の通じないこの地でロックと離れたのはお互いの用足しかバラライカとの買い物で下着屋に入った時くらいだ
ろうか。もしや日本では便所でコンドームが買えるのか?などと悶々と考えていると、「怒るなよ」との前置きの後、答え合わせ。
「………さ………最初に行ったコンビニ」
挙動不審に目を泳がせる男の返事に些かコメントに困り、気付くと一番突っ込まれたくないであろうところを突くはめになっていた。
「……………………………………ハナっからヤる気満々だったわけか」
自分のことは棚にあげ、じっとりとロックを眺めやる。
「…違うって!たまたま…その…目に入っただけで…」
「別に悪いなんざ言ってねぇ。責めてもいねぇ。ただ、すましたツラで内心ヤりたくてたまんなかったんだと思うと可笑しくってよ」
でも気に病まなくていい。あたしだって同じだ、あたしだって最初の夜から期待してた。あんたがあたしに手を伸ばしてくるのを待って
いた。
そう告げようとするレヴィだったが、一方のロックは必死に下心を否定する。
「……あーその…違うから!…………ヤりたかったとかそういんじゃなく、単に緊急事態に備えただけというか……」
哀れなくらいにわたわたと慌てる男。しかもヤリたいから今ここでこうしているのではなく、不慮の出来事などと抗弁する。
「…そうか、これはハプニングってわけか。お前の意思じゃなく事故ってわけか。だよなーずっとよそよそしかったたもんなー、誰だっ
て事故りたくは無ぇしよ………」
「あ…ちが…………」
違う。こんなことを言いたいのではない。こんなのはただのわがままだ。いざ欲しかったものを手に入れられそうになって、欲を出し
てもっと深い何かが欲しくなっただけ。
このままでは何も得られない。決めたではないか、少しは正直になると。事故だろうと何だろうと関係無い、せっかくここまで漕ぎ着
けたのだ、別れがやって来る前にこの男と交わっておきたいのではなかったか。
「まぁいいさ、んなこたぁどうだって。悪かったな。からかってよ……まぁ、ナンだ…その……あんたにその気があるならさ、あたしの
方は…いつでもいいから」
「……本当にいいのか?」
「クドい。いいからその大事にしまってたモン着けちまいな」
325名無しさん@ピンキー:2010/01/02(土) 18:17:31 ID:w3Q3AeSe
ごそごそと準備を始めるロックを眺めながら、惚れていると言ったならばこの男はどんな顔をするのだろうと考え…今更だと思い直
す。目の前で股を開いてスタンバイしている女が今更そんなことを言ったところで、…ただ重いだけだろう。
ロックは正しい。これはハプニングだ。そういうことにしておけば、何の気負いも無く身体を繋げることが出来て、時が来ればこの男
はあの平和な日常に還っていけるのだ。
膝が押し広げられ、ロックがその間に陣取った。
顔の右側に掌が置かれ、股間に圧し付けられるアレの感触。
「…レヴィ。入れるよ」
言うなり入って来る。
久方ぶりに許した男の進入に、ぞくりと背中が震える。最近は使っていなかったとは言え、昔は散々使い込まれたそこ。緩いと思わ
れるのが嫌で慌てて腹に力を入れる。
だが、頬を撫でてくる男を見上げると、薄く微笑を浮かべながらも明らかな後悔を滲ませていて、さっきまで喜々として人のカラダを
いじりまわしていた男とは別人のようだった。
気楽に目の前の据え膳を食べてしまえばいいというのに、どうしてこの男はこんな苦々しい顔をしているのだろう。
売女のような吐息を漏らしながら、目の前の身体に腕を廻して引き寄せる。顔が見えぬほど密着してしまえば彼の後悔を目の当た
りにせず済む。躊躇いがちにロックの掌も背中に差し込まれ、ぴったりと隙間無く身が重なり合った。抜き挿しが始まり、首筋にかか
るロックの吐息が荒くなり始める。擦られる粘膜で、密着しあう皮膚で、絡み合う舌で、ロックを感じることに集中する。
熱を孕む子宮を突かれる度に全身の神経が鋭敏になって、その度に緩みかける股を締め上げる。
ざらざらした舌で首筋を舐められる度に大仰な喘ぎ声が部屋に響き渡る。
「レヴィ……気持ちいいよ」
耳元にロックの声。直接耳に触れる生暖かい息と舌と唾液の感触に、全身の皮膚がざわめく。
「あたり…まえ…だ…っつーの…」
そうは言っても行為の最中にどう振舞えば悦んでくれるのかがわからなくて、誤魔化すように荒い吐息と唾液を互いの口の中で混
ぜ合わせていると、そのままロックが達した。
腹の中で勢いよく精が吐き出されているのを、薄いゴム越しに感じる。
本当は、身体の奥深くに直接注ぎ込まれたいそれ。別に深い意味なんて無い。きっとそうすればもっと満たされるような気がするだ
け。

326名無しさん@ピンキー:2010/01/02(土) 18:18:05 ID:w3Q3AeSe
「……ごめん…」
「何が」
息が落ち着くのも待たずに、ロックは謝罪を口にする。レイプされたわけではないのだから謝られる理由なんか無いはずなのに。
「…………物足りないって顔だ」
「………別に…」
満たされない何かの正体なんて、漠然とし過ぎていて自分でも解らないが、きっとロックが思っているような理由ではない。
だって目的は快楽ではない。抱かれるだけでよかった。それ以上は望まない。なのに満たされない。
不機嫌を隠しもせずに顔を背けると、ため息と共にロックが身体から出て行く。喪失感に顔が強張った。
「明日さ、ベニーに頼まれた買い物に行こうと思うんだけど」
そんな彼女を知ってか知らずか、ロックはさっさと立ち上がって机の上のティッシュを数枚抜き取りレヴィに渡すと、自らも後始末を
しながら明日の話をし始める。男なんてみんなそう。出すものを出せば実に事務的だ。
「………ふーん…」
感傷に浸るつもりなど無い。行為そのものに深い意味なんか無い。愛だの恋だのを語るほど真っ直ぐになんか生きて来なかった。
「行くだろ?」
なのに、数メートル先の生白い背中が妙に遠い。行為の残滓がくずかごに放り投げられる。直前までの営みなどゴミに等しいと言わ
れた気がする馬鹿げた被害妄想と、それを鼻で笑うニヒリストな自分がせめぎあっている。
「気が乗らねぇな、マシーンなんか興味無ぇし…」
ロックはくすりと笑うと「…レヴィは嫌いだもんな、機械。」とそれに同意し「…ならどうする?」と、煙草に火を点けながら問うて来る。
「……別に。映画でも見るかそこらをふらふらする」
顎をしゃくって自分にも寄越せと要求すれば、何故だか自分の吸いかけを寄越して来る。すんと鼻を鳴らして不満を表すが、全く意
に介す様子も無く「気が向いたら行こうな?」と流すから「……………気が向いたらな」と彼女も適当に受け流す。
煙を肺いっぱいに吸い込むと、慣れ親しんだものより弱いながらも、愛してやまない酩酊感。灰皿を片手に再びベッドに潜
り込んで来た男を視界の隅に捉え、無言で煙草を押し付ける。右肩に回される熱い掌。促されるまま身体を傾けると、ロックの唇が
待ち構えていた。
「物足りないって顔してる」
軽く触れ合う唇が紡いだからかい文句に反論する間もなく、唇をぴったりと塞がれた。

深く、浅く、舌と吐息を絡ませる。二回目を求められていることは理解していたし、拒むつもりもない。
ただ、抱いたことを後悔しているくせに、再び求めて来るこの男を心底理解出来なかった。
327名無しさん@ピンキー:2010/01/02(土) 18:19:35 ID:w3Q3AeSe
「じゃあ、行って来るから。映画は有料放送で見れるし、フロントの人は英語できるから近くの映画館までの地図をくれる。メシはルー
ムサービスか、下のレストランで食うか…そうだな、そこのコンビニで買ってきてもいい。ああ、そうだ、面倒なら買って来ておこうか?
どうする?」
ベッドで身体を丸めるレヴィの背中に矢継ぎ早に降りかかるロックの声。
「…しつけーな……お前はあたしのママか…適当にやるから、ぐだぐだ言ってねぇでさっさとどっか行っちまえ」
「……その…面倒だからって抜くなよ?あと、今日は寒いから。その………早く服着ろ…」
いまだ裸のままでいることを嗜めるロック。レヴィとて早いところ服を着たい。だが。
「だったらさっさとどっか行け。あんたがそこにいたら出られねぇ」
「…………今更……っ…ォ…オーライ、わかった。じゃあ、夕方までには戻るから。…その後飲みに行こう、な?」
余計な軽口を叩こうとするロックをシーツの隙間からキッと睨みつけると、たじろいだようなはにかんだような微妙な様子で外出を告
げ部屋を出て行く。
……別に恥ずかしいわけではないのだが、この真っ赤な顔をロックは実に自分に都合よく解釈したようだった。
「………ぁっ…たまぃて……」
ベッドを離れるのを躊躇っていたのは裸を見られたくなかったからなんて勿体付けた理由じゃない。身体の変調に気付かれたくなか
っただけ。つけ加えるならば程よく温まった布団からも出たくなかったが。
だが、いつまでもこうしているわけにはいかないこともまた、聡明な彼女は理解していた。
そういえば、この間寒い寒いとぶつくさ喚いていたら、バラライカの部下(名前は忘れたが)にウォトカを貰った。ロックがくれたパジャ
マを着たならば、それでも飲んで寝てしまおう。
レヴィはそれだけ決めるとシーツを被ったままベッドを抜け出す。
「あーダリい…」
立ち上がって頭痛が酷くなった気がする。
床に座り込んだままフリースのパジャマに袖を通す。もこもこして色気が無いくせに妙に女々しいフリル付き。悪趣味極まりないが温
かなそれにどこかほっとする。
ロックが帰って来る前に少しはマシな状態にしておきたかった。彼の後ろをついて見知らぬ土地を歩き回るのは、いつもと逆で、至極
楽しいから。本当は、今だって一緒に行きたかった。一緒に行って、愚にも付かない感想に辟易されながらも後ろをついて回りたい。
残された時間を少しでも長く一緒にいたい。
「……薬……」
養生など柄では無いが仕方ない。フロントに電話をしてスープか何かと一緒に持って来て貰おう。
スラングを使わぬよう丁寧に。こんなに気を使って他人に何かをお願いするなど初めてだ。何で客なのに畏まっているのだろう?教
科書通りの英語しか理解出来ぬ日本人に合わせてるだけさ、アホくさ。
釈然としないまま受話器を置いて再び潜り込んだシーツの中は昨晩の情交の匂いに満ちていた。
328名無しさん@ピンキー:2010/01/02(土) 18:27:00 ID:w3Q3AeSe
あんなに好き放題ヤリ倒したくせに、素っ気なくロックは出掛けて行った。いや、ヤリ倒したからこそさっぱりした顔をしていたとも言え
る。異変に気づく前に出て行けと思えど、もう少しだけ気にかけて欲しかった気持ちもどこか否定出来ない。
昨晩は何回したのだっけ。
求められる度、歯の浮くような台詞を囁かれる度、実はロックもまんざらではないのでは、などと淡い期待を抱いては頭を振ってそれ
を打ち消した。
こんなのはこの男なりのベッドマナーだ、期待するほどに裏切られた時の落胆が大きいことは解っているだろう、と。
結局、真面目なあの男は溜まってるという理由で手近な女と寝ることを躊躇っていただけなのだ。好きなだけヤって憑き物が落ちた
ような顔をしていた。どうせああだこうだと気を揉んでいるのは自分だけ。
馬鹿らしい。
確かに始まりこそ、風邪をひくと言って逃げようとしたロックを問題ないと言いくるめた。だがロックも存外あっさりとそれに乗ったでは
ないか。結果的にこうなった一因は、夜通し求めて来たあの男にもある。にも関わらず、それを気取られぬように意地を張って、夕方
帰って来たロックと何食わぬ顔で街に繰り出さんと悪あがきをする自分。本当は夕方までに持ち直すなんて無理なことと解ってる。
けれど、嫌われたくない。面倒な女になりたくない。
だからロックの都合が最優先。自分は我が道を往くよう見せかけながら、はぐれてしまわぬように必死に後ろをついていく。
おかしな関係だ。
でも仕方ない。
ロックの都合で何者にもなる自分はロックが思う様生きるためのロックのための道具。
昨日まで、自分が供することができるものは暴力だけだった。だが、それに色も加わった。
嬉しい。
だって、役立たずだと思われるのは怖いから。だから『マスター』である彼に求められるうちはいくらでも応じよう。
昨晩から何度も言い聞かせたそれ。それでもやっぱり。
「ムナしぃ…」
無意識に口をついた。








タイトル
「ロックさんがアキバでベニーさんのお遣いしてる間レヴィたんはどこで何してたん?」
ところで、どこのホテルに泊まってたんだ
アキバへの足で山手線乗ってた時点で新宿って気がするが、それなら代々木で足止めされた時点で迷わず歩け
329名無しさん@ピンキー:2010/01/02(土) 19:45:21 ID:1H0NoMYO
>>328
GJ!
年明けからいいものみせてもらいました
330続きません:2010/01/02(土) 21:51:47 ID:1H0NoMYO
その屋敷は、しんと静まり返っていた。
否、しんしんと降り続ける雪が積もるかすかな音に混ざって、二人の男女の声が途切れ途切れに聞こえていた。

その暗い部屋でも、『人斬り』の背中から二の腕まで彫られた鮮やかな刺青は、きっと見分けられただろう。
もっとも、『人斬り』に組み敷かれた『お嬢』には、それを見ることはできなかっただろう。
物理的にも、心理的にも、それどころではなかっただろう。

『お嬢』の中は、『人斬り』しか知らぬ『お嬢』の中は、その行為に少しずつ慣れてきてはいるだろうけれど、
それでもまだひどく狭く、まるでそれを搾るかのようにきつく『人斬り』のそれを締め付けて。
生まれてから18年間、何にも触れずにきた粘膜がその刺激に耐えられるようには、まだきっとしばらく時間はかかって。
だからこそ、『お嬢』には、自分の中の『人斬り』のそれの脈打つ感覚や熱さを、いっそうはっきりと感じられて。
自分のそこを押し広げる、『人斬り』のそれの形すら、はっきりと『お嬢』には感じられて。

"もうッ……動いてもッ……いい……ですよッ……銀……さん……!"

"お嬢、無理はしねえでくだせえ……。"

"わたッ……しはッ……大……丈夫ッ……です……よッ!"

『人斬り』は、ゆっくりと腰を動かす。
そのたびに『お嬢』の口からは、苦痛と歓喜のないまぜになった、淫猥な吐息が漏れる。
『人斬り』の背中に回された『お嬢』の両手が汗で少し滑るが、それでも、『お嬢』は必死に『人斬り』にしがみつく。

"あぁ……銀さんッ……銀さんッ……ん……!"

あの『犬っころ』は、おそらくショートケーキのてっぺんのイチゴは最後まで取っておくタイプだったのだろう。
それも、クリームとスポンジを少しずつ剥ぐようにバラしていき、最後に残った完全な形のイチゴを、ぐちゃっと潰してから
食べるようなタイプだったのだろう。
初めて『お嬢』を抱いたとき、『トゥーハンド』と『ホワイトカラー』の手を借りてあの『犬っころ』から『お嬢』を取り戻した晩、
『人斬り』は『お嬢』のそこに『犬っころ』が手を出していなかったことを知って、ひどく血相を変えた。
『お嬢』の初めてを自分が奪ってしまったことを知って、顔を青ざめた。
『お嬢』は、"あの人たちを忘れさせてください。こんなに汚れてしまった私を、清めてください。"と、そう言ったのに。
その言葉を信じて、『お嬢』の頼みを、聞く気になったのに。

『お嬢』は、生まれついての策士だった。
『ホワイトカラー』が『コナカを着た悪魔』なら、『お嬢』は『トンボを着た孔明』だった。
その『お嬢』は、今度は『フライフェイス』の売った喧嘩を買おうとしていた。
あの断片的なビデオテープから、『フライフェイス』の本拠地を割り出す策を、『お嬢』はあっさりと導き出した。

"銀さんッ……はァッ……あ……ん……あッ……!"

"お嬢……お嬢………!"

『お嬢』の中を、いつしか激しく動き出していた『人斬り』のそれが蹂躙する。
それはさながら、『プラハの春』を彷彿とさせた。
その首謀者の国家にかつて属していた『フライフェイス』の喧嘩を『お嬢』が買おうということは、ある意味皮肉だった。

蠢く『お嬢』のそこは、『人斬り』のそれをまるで別の生き物のように、優しく、けれど繊細に締め付けて。
あふれ出た蜜が、『お嬢』のベッドのシーツに、ひどく染み込んで。
ぐちゅ、ぷちゅ、という水音が、愛液と空気が混ぜ合わされる音が、『お嬢』の声に混ざって『人斬り』の耳には届いて。

"ン……あッ……銀さ……んッ……!"

刹那、『お嬢』の中で、『人斬り』は快感を堪えきれずに欲望の滴を思い切り吐き出した。
綺麗に手入れされた『お嬢』の爪が背中に食い込み、『人斬り』は色眼鏡の下の顔を歪ませた。
『お嬢』の足が、ビクビクと震えた。
息の上がった二人は、両手を絡ませながら、しばらくそのままの姿勢を維持していた。
『人斬り』は、大きくため息をついた。

<続きません>
331名無しさん@ピンキー:2010/01/04(月) 10:06:55 ID:kCeCqozl
遅ればせながら新年おめでとうございます
お嬢と銀さんのSSは初めてだなぁ
相変わらずGJでした、ありがとう
332名無しさん@ピンキー:2010/01/04(月) 14:27:08 ID:1m7Umd+f
ことよろでございます。
333大尉×軍曹 冥  ◆JU6DOSMJRE :2010/01/07(木) 21:20:04 ID:ELCxayha

「脱げ」

質の良い黒い革張りのリクライニングチェアーに深く腰掛け、締まった長い脚を組んだ女は、
葉巻をくゆらせながら、傲慢に目の前の男に言った。

「はい」

大柄でいかにも寡黙そうな男は、直ぐに従った。
厚い胸で見事に着こなしていたスーツの上着を脱ぎ、その下のワイシャツの釦を外し、
それから、ベルトのバックルに手を掛ける。

分厚いカーテンによってぴったりと外界から閉ざされ、
毛足の長い絨毯が些細な音を全て吸い込むこの部屋に、バックルの金属音が響いた。

灯りを落とした室内で、クラシックなランプの朧な光を片頬に受けた女は、
リクライニングチェアーの背に凭れたまま、静かに服を脱いでいく男の様子を、微動だにせず眺める。

女のアイスブルーの瞳は永久凍土のように冷ややかで、
右目周辺から頬にかかって広がる火傷の痕のせいで、余計に禍々しい印象を与える。
美しく整えられた長い爪を持つ二本の指は、その細く長い指に似合わぬ太さの葉巻を挟んだまま、
女の赤い口元に寄せられた。
女の唇は、爪の色と同じ、血のような赤。
唇から、甘く燻る紫煙が立ち昇った。


男が着ている服を全て脱いでしまうと、
女は、身体中のあちこちに引き攣れた傷痕を持つ、その精悍な身体を吟味するように見た。

「脱がせろ」

言って、細く高い踵の黒いハイヒールを履いた右足を、上げる。

「はい」

男は、女の足元に跪くと、両手で女の足からハイヒールを脱がせた。

「逆もだ」
「はい」

主を失った両のハイヒールを、男はきちんと揃えて隅に置く。
女は葉巻をクリスタルの灰皿に押しつけると、立ち上がった。

「面倒だ。全部脱がせろ」
「はい」
334大尉×軍曹 冥  ◆JU6DOSMJRE :2010/01/07(木) 21:22:06 ID:ELCxayha

男は、女の着ている上質なスーツの釦を外すと、
女の背後に回って、襟刳りのあたりからそっとジャケットを持ち上げ、肩から下ろした。
鍛えられた女の長い腕が抜かれる。
男は、そのジャケットを丁寧にハンガーに掛けた。
そして、身体に沿うよう仕立てられた白いブラウスの釦を、一つずつ外してゆく。
黒い豪奢なレースに包まれた、豊かな乳房が顔を出す。
そして、透けるような白い肌に、残酷なまでに刻みつけられた火傷の痕。
男は顔色一つ変えずにブラウスも取り去ると、タイトなスカートの腰に手を伸ばし、ホックを外した。
ジッパーを下げる音が、小さく鳴る。
スカートがゆっくりと下ろされ、足首まで来たところで、女は足を抜いた。
上と揃いの黒いレースの下着からガーターベルトによって繋がれた薄手の黒いストッキングが、
筋肉質の脚を包んでいた。

女は、眉ひとつ動かさずに、また、リクライニングチェアーに腰を下ろした。
そして、片足を男に向かって突き出す。

「舐めろ」
「はい」

男は、その足を押し頂くように支えると、極薄のストッキング越しに、女の爪先へと唇を寄せた。
親指の爪の先を唇に含み、唾液を含ませた舌で舐め上げる。
次に、人差し指。
そして、中指。
小指まで丹念に口に含んでから、男の舌は女の足の甲へと移動する。
女の足は冷たい。
足の甲の筋を辿った舌は、足首へ滑っていく。
男の、足を頂いているのとは逆の手が、女のふくらはぎを支えた。
手で僅かに撫でながら、男は唇を這わせ、頸骨を唇で挟み込み、舌で骨を辿る。
男が膝を一歩進めた。
女は、生暖かい男の舌を感じていた。

女の情事の相手は、いつもこの男だ。
男は、女の命令に決して逆らわない。
いつだって、命令通り、忠実に動く。
335大尉×軍曹 冥  ◆JU6DOSMJRE :2010/01/07(木) 21:22:56 ID:ELCxayha

女は思う。
お前は、どこまでいっても『軍曹』なのだな、と。
従順に、愚直に。

そして自分は、どこまでいっても、『大尉殿』なのだ。
国家を無くした亡者の先導者。
皆の偶像。

男の舌と唇が、膝を越えて、腿に迫ってきた。

かつて自分は、国家の人形だった。
体よく利用され、そして、切り捨てられた。
ただの傀儡。

男の唇を、素肌で感じた。
熱い。

脚を僅かに広げると、男の手が太股に掛かって、ぐいと開かれた。
男の舌は黒いレースの上を這う。
熱い。

女は、たまらず、男の頭に手を伸ばし、引き寄せた。
開かれた脚が、リクライニングチェアーの肘掛けまで上げられる。
黒いレースの上で、男の唾液と女の体液が混ざった。
女の脚の間で溢れる熱。
固く尖らせた男の舌が芯を捏ね上げて、女は思わず背中を丸めた。

――人形のくせに、性欲だけはあるらしい。

女は自嘲気味に思った。
336大尉×軍曹 冥  ◆JU6DOSMJRE :2010/01/07(木) 21:23:53 ID:ELCxayha

「寝ろ」
「はい」

男は、女が顎で示した寝台に横たわる。
自らの牡を反応させながら、男は静けさを失わない。
下着を取り外した女は、男に跨り、足りないと訴える自分の身体を満たす。
男の猛りが、女の胎内に収まってゆく。
奥まで飲み込んで、確かめるように数回、揺らす。
そして、ゆっくりと抜く。
先端、ぎりぎりのところまで。
浅く僅かに上下させてから、また、奥まで誘い込む。
ぬるぬるとした内壁が、擦れた。
深く埋めてから、そのまま旋回させる。
溢れた体液が、粘着質な音を漏らした。

――お前は、こんな命令にも、簡単に従うのだな。

女の身体は熱かったが、頭だけは酷く冷たかった。
男は、「脱げ」と言われれば脱ぎ、「寝ろ」と言われれば寝る。

――お前もまた、私の人形なのか?

「私の身体は醜いだろう?」
「いいえ。美しいです」

男は即答した。

「美しいわけがなかろう。醜いだろう?」
「いいえ。美しいです」

男の返答は変わらない。

どうしようもなく黒く淀んだ渦が、女の腹の底から沸き上がる。

――嘘を吐くな。

全身に火傷の痕を無様に残すこの身体。
幾日にも及ぶ拷問の末、捨てられた。

誰にも必要とされなくなった亡霊の女を、女の部下は、生かして、崇拝した。

崇拝。
それは、非常な孤独だった。

――醜い私を、それでも、そのまま受け入れてくれた方が、どんなに――

女は、一人、昇り詰めた。
男は、それを確かめてから、自らも追った。

最後まで、男は従順だった。
337大尉×軍曹 冥  ◆JU6DOSMJRE :2010/01/07(木) 21:25:05 ID:ELCxayha

無言で服を身につけながら、女は問うた。

「お前は、もし私が『死ね』と言ったら、死ぬのか」
「はい。大尉殿の為に死ぬのが、私の望みです」

即答する男に、女の眉間の皺は深くなる。

――「大尉殿」。「大尉殿」。「大尉殿」、「大尉殿」、「大尉殿」「大尉殿」「大尉殿」!

「死ぬな。軍曹。生きろ。私の為に生きろ。私が死ぬ時まで、お前は生きるのだ」

女は、命令した。
男は答えた。

「恐れながら大尉殿、それはできません」

森閑とした、声だった。
女は僅かに目を瞠る。

「それは、できません。もし、冥土においでになる時があるとすれば、どうか、私の後に」
「――許さんぞ。それは、許さん」

――それでは、生き残ってしまった私は、一体、

「申し訳ごさいません」

男は頭を垂れて、粛然と述べる。

「同士軍曹、許さんぞ」
「申し訳ございません」


女は、理解する。

――私が、この男を、殺すのだ。
――この、私が、生きて欲しいと願う、殊に生きて欲しいと願うこの男を、殺すのだ。


女は悚然とした。

――これは、何と、何と残酷な男だろう。


男は、沈黙のまま、うずくまる。



338名無しさん@ピンキー:2010/01/07(木) 21:48:58 ID:uItAH+O/
>337
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
GJ!
339続きません:2010/01/08(金) 12:15:52 ID:+FXGkTfl
ベージュと赤に塗り分けられた一台のボルガが、ピオネールの制服姿の少年の目の前に停まった。
否、正確にはその少年ひとりではなく、大勢の同じような服装の少年少女たちの前で停まった。

時間通り、いつも時間通りだ。
この運転手は日本製の時計を持っている疑いでシベリアに送られはしないのだろうか、と、
この光景を見る度にいつも少年は思っていた。
だが、そんなよくあるアネクドートのことなど、もはや少年の頭にはなかった。
ボルガからいつものように下りてくる、背嚢を背負った同じく制服姿の少女のことで、
彼女にどう別れを告げるか、いや、そもそも別れなど告げるべきなのかということで、
少年の頭はいっぱいだったからだ。

ピオネールのことは、西側では、ボーイスカウトとか言うらしい。
だが、西側にはそのボーイスカウトが、国家の大動脈たる鉄道を、例え実物の数分の一サイズの
ミニチュアであっても、人が立派に乗れるそれを動かすなどという活動はさすがにないだろう、
そう少年たちは自負していた。
彼らは、地区のピオネール鉄道で、その運行を任されているのだ。

学年も学区も、家柄も違っていては、その活動でしか少年は少女に会うことは叶わなかった。
偉大なプロレタリアート革命の後に、家柄という言葉が残るのは不可思議ではあったが、
そうしたものがある以上、無力な少年にはどうしようもできなかった。

ソーフィヤ、それが彼女の名前だった。
少女の艶やかな金髪を、青い瞳を、それにほど近い泣きぼくろを、少年はそっと見つめた。
少女に、気づかれぬように。
自分の思いを、知られぬように。

それは、少年期にはありがちな、叶わぬ恋というやつかもしれない。
どんどん大きくなっていく思いを、決して相手に告げることなく、何かに昇華させる、
それが関の山かもしれない。
増してや、年頃にしては華奢で線の細い自分など、祖国に何の貢献ができようか。
彼女を、守ることなどできようか。

だから少年は、もう自分の身の振り方を決めていた。
ダーチャでもすぐに息切れする自分を、モヤシのような自分を叩き直して、あの米帝の
ブルジョワどもに報いる一本の矢に鍛えあげるために軍に入る。
そうするべきだ、それしかない、そう少年は確信していた。

だから少年がここに来るのも、もう今回が最後だった。
来週からは、自分を殺戮機械に変えるための訓練が始まるのだ。

少年の名は、ボリスといった。
この二人がどういう形で再会し、どのようにその後の人生を歩むか、そしてそのとき
この国がどうなっているかは、例えあのラスプーチンが今生きていたとしてもきっと
想像がつかなかったろう。
マルクスにも、レーニンにも無理だったろう。

それはまだ、平和な時代。
古き、善き時代…。

<続きません>
340名無しさん@ピンキー:2010/01/10(日) 19:12:25 ID:k4M8R4La
>>333
GJGJGJ!!
ほのかに切ない大人の関係だな!!
341340:2010/01/10(日) 19:12:55 ID:k4M8R4La
ごめん、上げちゃった!
342名無しさん@ピンキー:2010/01/10(日) 22:12:18 ID:8MNqhtmX
>>337
足舐め!足舐め!GJ!
>>339
ロリライカともやしって初めて見るな。もやしが健気でなんかいい
343名無しさん@ピンキー:2010/01/12(火) 19:59:37 ID:WtgXu7qY
あのままではあんまりだなと思ったから>>328の続き書いた、まだ続くけど
--------------

秋葉原に向かうべく乗り込んだJRにはちらほらと空席が目立ち、小さな幸運を享受するべくロックは手近な席に腰を下ろした。
昨晩はあのレヴィを抱くという幸運な巡り会わせに馬鹿馬鹿しいほどに舞い上がってしまい、何度も何度も彼女を求めてしまった。正
直、夢中になりすぎて疲れていた。本当は彼女と二人、昼までだらだらし、部屋で何かつまみながらアクション映画でも眺めた後、近
場に飲みに出る…そんな自堕落な一日を過ごすのも悪くは無かった。だが、今日は秋葉原に行くと宣言した手前行かないわけにもい
かず、その上レヴィにはにべもなく同行を断られ、猛烈に後ろ髪を引かれながらも部屋を出たのだ。
レヴィとの一夜は、一人になった今思い出しても最高だった。艶っぽい表情はもちろんそそられるし、中に入れば当然ながらキモチヨ
く、身体だって抱き心地がよくて背中に腕を回して抱きしめれば誂えたかのように肩甲骨の間に腕がはまる。そのまま抱き枕にして眠
ってしまいたいくらいだった。

『…あぁ……ロッ…ク………ぁ…あ、あ…、あ…んっ…ん…はぁ…ぁ……ロック…ロックぅ…』
不意に、レヴィの声が頭の中で再生される。
中を掻き回す度、奥を突く度、控え目に鳴く彼女が可愛くて可愛くて、もっと鳴かせたくてたまらなかった。
レヴィは、直前までの蓮っ葉ぶった態度と裏腹に、行為が進むにつれ何かに戸惑ったように恥じらってみせた。
そうかと思えば、喉の奥まで彼のものを咥えて奉仕する顔はひどく淫靡でそれだけで達してしまいそうだった。

昨晩の秘め事を思い出して反応してしまうロック自身。あれだけしてもまだ立つのかと苦笑するが、考えずにいられないのだ。それほ
どまでに普段とのギャップが大きすぎた。
だが、本当はロックだってどこかで気付いていた。
自分と二人の時に彼女がとる可愛いげのない言動の多くが彼女なりの照れ隠しであることに。

 耳たぶを甘噛みしながら名前を囁くと、ひくひくとうごめく彼女の肉。
 頬に掛かる甘く熱い吐息。
 「可愛い。感じたんだ?」
 「…るせ…」
 「可愛い」
 「ぅる…せ……黙らねぇと…テメエの『カワイイ』ナニ…へし折るぜ。」
 可愛いと言われ、あまり頑丈ではない彼の心がえぐられかけるが、いや、待て。そうは言いつつ明らかに感じているではないかと気
 を取り直す。
 「…気持ちいいって顔してるよ」
 「…はっ…可愛すぎて入ってるかどうかもわかんねぇ…つの」
 「はいはい」
 彼女の悪態に余裕ぶって笑いながら音を立てて耳たぶにしゃぶりつく。
 レヴィに気づかれぬよう指を局部に伸ばして二人の境界をなぞった途端彼女の身体はびくりと震え、腰が上へと引けた。
 「ゃぁっ……ゃ…ん…」
 それを許さず、身体を押さえ付けて更に深くまで自身を捩込んだ。
 「声も…可愛い………すごくいやらしい顔してる…可愛いよ…綺麗だ」
 「……っ………はぁ……あんま下らねえコトばっか抜かしてっと…てめぇのケツ、ファックすっからな……」
 「今抱かれてるのはお前だってこと、忘れないでくれよ」
 「誰が…っん…」
 可愛げの無い悪態を、唇を塞ぐことで封じる。憎まれ口ばかり叩いていたくせに、さしたる抵抗も無くロックの舌を受け入れるレヴィ
 の唇。
 自分と同じタバコの味がするのが、意味無くうれしい。
 こうやって、キスをする度、綺麗だよ、可愛いよと囁く度、身体を愛撫する度、ロックを受け入れるレヴィの下の口はきゅっと締まり、
 その熱を増す。口で言うほどロックの賛辞を嫌がっていないのだろう。
 そう思うと、次々と歯の浮くような台詞が口から出て来た。その度にしおらしくなる彼女は最高に可愛かった。
344名無しさん@ピンキー:2010/01/12(火) 20:02:31 ID:WtgXu7qY
ふと、耳に入る子供の金切り声。そうだ、ここは電車の中だ、これ以上回想に耽ればただの変質者になってしまう。慌てて中吊り広告
に目を向ける。
それにしても、あんなにいい女を何故今まで抱かずにいられたのだろう。
自分の人生を180°変えた女。自身を誘拐し慣れ親しんだ日本での日常から引き離したあのヒトは、自分に新しい生き方を教えてく
れた。運命の女とすら思っている。
運命の女だが、彼女と寝たがっている男がゴマンといることを考えたならばこんな巡り会わせはラッキーとしか言いようが無い。
だが、幸運とは思えど…何も予感していなかったといえば嘘になる。
いや、予感というよりも期待と呼ぶに相応しい。更に踏み込んで言えば、一年ぶりに踏んだ祖国にやはり単に浮かれていただけなの
かもしれない。

 長期滞在中にアメニティだけでは補えない細々したものを調達するつもりで立ち寄ったコンビニ。店内を眺めるロックの目に入る、
 カラフルな箱。
 洒落た外装でごまかしはきいているが、要するに男と女が裸でナニするときに使うアレ。セイフティセックスの必需品。
 何故だかわからないが「買っておこう」と、そう思ったのだ。
 思った後に何を考えているのかと眩暈を覚えるが、この先2週間も「運命の女」と同じ部屋で寝起きするのだ、何かが起こった後に
 慌てたのではもう遅い。
 それに、日本製は質がいい。買っておいてタイに持ち帰ったっていいじゃないかと、自分を納得させる。
 レヴィが熱心に酒を選んでいるのを横目で確認し、比較的穏やかなパッケージの有名メーカー製の箱を素早く籠に放り込む。
 色気のない買い物籠の中で明らかに異質なソレ。間違ってもレヴィに見られてはならない気がして、とりあえず似たような大きさの
 入浴剤やカイロを無作為に放り込む。
 日本人相手にはバレバレのカムフラージュだが日本語の読めぬ彼女ならばこれで騙されてくれるに違いない。
 妙にそわそわしながら早々に会計を済ませる。まるで初めて成人雑誌を買う中学生のようだと自嘲せずにいられない。

 「ナンだよ、もう金払ってんのか」
 不意に背後から声がかかり、内心飛び上がらんばかりに驚いた。
 「あ、ああ…ごめん…」
 肝心のモノは既に紙袋の中。良かった、見られてはいない。
 店員からビニルの手提げを受け取るロックに「日本のビールってのはどれがウマいんだ?バドワイザーもハイネケンもありゃしねぇ」
 と、ビール選定のご要望。
 上の空のまま彼女に伴われてドリンクストッカーへ向かう。
 明らかに挙動不振な有様に、後ろから店員が蔑んで笑う声が聞こえた気がした。
345名無しさん@ピンキー:2010/01/12(火) 20:04:20 ID:HqoMstPR
 我ながら滑稽だった。
 レヴィの入浴する気配だけで身体が反応し始める。
 大声で叫びながら寒空をジョギングでもしてこようか。だが、そんな不審者一発で逮捕だ、間違いない。
 気を落ち着けようとテレビをつける。
 適当にザッピングしていると、画面に大写しになる、あられもない姿で犯される女。
 音声のボリュームは絞っているのに、静かな室内に卑猥な音がやけに響く。
 思わずごくりと唾を飲み込み、慌てて頭を振ってチャンネルを地上波に変えた。
 もっともらしく報道番組に合わせるが、内容なんか頭に入るはずがない。
 画面の中の女とレヴィを重ね合わせて興奮し始める自分に、罪悪感でいっぱいだ。
 そういえば、半年前に一度だけベニーに伴われて女を買って以降、ずっとそういった色事とは無縁なのだ。つまり、溜まってる。
 いっそのこと歌舞伎町あたりで抜いて来ようか…と悶々と考えていると、背後のドアが開いた。
 丈が長めのシャツから覗く、締まった脚。半端に開いた胸元から素肌が覗く。
 何でホテルのパジャマにはズボンがついてないのだ。いつもより露出控え目のクセにエロさ割り増しなのは何故なんだ?
 何でほんのり頬が赤いんだよ…って、風呂に入ったからだよ、そうに決まってるだろ!
 頭の中で実にヘタレに叫びながらも平静を装いどうにかバスルームへ逃げ込むと、入浴剤の甘い香り。
 バスタブの湯がきっちり抜かれていることに、レヴィの警戒心を感じ取って色々な意味で落胆すると同時に、どこか変態染みた考え
 に自己嫌悪。
 だが、今レヴィの肌に吸い付けば同じ香りがするのだろうと想像し、硬さを増す愚息。
 「あー……何考えてんだよ、俺…」
 頭から、かなり温めの水のような湯を被る。
 深呼吸して気を落ち着けようと試みるも、どうにも静まらない。
 どうやら、文字通り一発抜かないと収まりはつかないだろう。
 「…はぁ…」
 侘しいが仕方がない。日本に着くなりサカって軽蔑されるより遥かにマシだ。
 どうせシャワーの音でバレやしない。
 自ら慰めながら頭の中でレヴィを犯す。
 キスをして、ベッドの上で身体中を撫で回し、乳房に顔を埋める。
 レヴィの舌が自分のモノを這い回り、硬くなったそれを咽の奥まで突き入れる。
 だが、妄想がエスカレートするほど、昔見たAVをそのまま重ねているだけであることに気付き…。
 吐き出したモノが排水溝に吸い込まれるのを眺めながら、この衝動がレヴィが欲しいがためのものなのか、それともただのつまらな
 い性欲でしか無いのか、さっぱり解らなくなっていた。

 レヴィは可愛い。
 けれどガラが悪い。品が無い。ファッションセンスだって絶望的。
 日本に来て真っ先にしたことは、故郷の空気に懐かしさを感じることではなく、彼女に服を買い与えることだった。
 だって仕方ない。空港への行きがけに寄ったサイアムで彼女が調達した冬服は趣味の悪いスカジャン(しかもピンクだ!)と
 「Kiss my ass」とプリントされたケミカルジーンズで、そんなファッションのレヴィは日本の町並みで明らかに浮いていたのだから。
 何か用意してやらなければ、一緒に歩くのは途方も無く恥ずかしかった。
 「悪目立ち出来ないのだから、日本のストリートファッションに合わせよう」とどうにか言いくるめ、適当に入った店のマネキンが着て
 いた服一式に着替えさせると、…見違えるほどに可愛くなった。
 そう、可愛いのだ。ものすごく。
 普段の粗野な言動では霞んでしまうが、見知らぬ地で一人立っていればナンパもされる。不機嫌な低い声で返答すると、逃げて行
 ってしまうのは、彼女の迫力か相手の英語力の乏しさかは判らないが。
 寒そうに手に息を吹きかける様は、どこか幼くて可愛くて、カイロ(避妊具と一緒に買ったアレだ)を与えて使い方を教えてやれば、
 やけに感心した顔で嬉しそうに両手を暖めていて、そんなロアナプラではありえないほどコロコロ変わる表情が普通の女の子みた
 いで本当に可愛くて、一緒にいるのが楽しくて、買った経緯を思い出すとたまらなく後ろめたかった。
 ヤクザとの会合の最中に若い連中の下卑た視線を受けていたのも知っている。そんな視線に…何故だか自分まで不快になった。
 「いい女」を抱きたいと思うことを悪いとは思わないが、こんな『普通の女の子』にしか見えないレヴィがそんな視線に晒されることが
 許せず、仕事中にも関わらず周りに敵意が芽生える。だが、ならば自分は違うのか?自分はもっと高尚なことを考えているのかと、
 ふと思い直した。
346名無しさん@ピンキー:2010/01/12(火) 20:05:58 ID:HqoMstPR
 同じだ。
 結局ハダカに剥いて、レヴィの呼ぶところの「ファック」をしたいと、そう思っている。まったくもって他の連中と違わない。
 だから、寒さを言い訳に夜着を買い与えた。
 出来るだけ体型の隠れる色気の無いもの。
 そうでもしないと後先構わずに迫ってしまいそうな自分が嫌だった。







 よこしまなことを考えぬよう睨みつけるテレビの画面は、前の晩の爆破事件を映し出していた。
 辛気臭い老人キャスターの隣に座って訳知り顔で「背後関係」を語る解説者。ただのヤクザ同士の抗争と、そう思っているらしき口
 ぶり。
 まさか、旧ソ連軍の亡霊の仕業であるとは、ご両人とも露ほども想像していないのだろう。

 歌舞伎町。学生時代の飲み会に始まり、社会人になってからも何度も足を運んだよく知る歓楽街。
 レヴィを伴い歩いていたって、「学祭の打ち上げで来た店だ」とか「ここのコースは最悪だった」とか「ここは生演奏を聴かせてくれる
 んだよな」とか「飲み過ぎてそこの電柱に吐いたヤツがいたな、何て言ったっけ…斎藤だっけ…?」とか。
 そんな些細な記憶が次々と蘇った。平和に生きていた日常の一コマ。そんな、恐らくは大いに美化された記憶に上書きされるきな
 臭い現実。日本で生きていれば「物騒な世の中になったものだ」と社交辞令で語り合い、当分歓楽街を避けるかもしれないし、避
 けないかもしれないが、どちらにせよ自分が当事者になることなど露ほども想像しなかっただろう。
 だが、今テレビを眺める自分は紛れも無い当事者。それも、きな臭いコトを起こした側の、だ。
 敵対する勢力を謀殺するなど、深酒した酔っ払いが歌舞伎町の路地裏でゲロを吐き散らすくらいに当たり前の日常を生きている自
 分。それでもここは、ヤクザの事務所に銃弾一発ぶち込まれただけで全国ニュースになる国。銃声がBGMのロアナプラとはわけが
 違う。とは言え、この程度はホテルモスクワにとって稚戯に等しいことも知っている。事実、コトを起こした翌日にバラライカは何食わ
 ぬ顔で銀座でショッピングに興じ 自分もそれに同行した。合間にロシア語で交わされていた会話が今後の破壊行動に関わるもの
 であることも想像に難くない。
 複雑だった。自分がいてもいなくても、もたらされたであろう結果は変わらない。それでもだ。


 浴室から出て来たレヴィに声をかけようか一瞬考え、晴れない気持ちを持て余したまま他人と会話をするのが何となく億劫で、その
 まま目の前の画面を凝視し続けた。それに、何を話せばいいのかも思い付かない。
 視界の外でため息を吐いたレヴィは、おもむろにロックのくつろぐベッドに寄り添うように腰をかけ、日本語のニュースに目を向ける。
 言葉の解らぬ彼女でも、単語の断片と映像で、何を話題にしているかは読み取れるだろう。ますます会話の糸口がわからなくなる。
 考えてみれば、今日の買い物の話でもしていれば、それでよかったのだ。レヴィからふんわりと香る入浴剤とシャンプーの香り。
 頼むからそんなに近寄らないでくれ。
 ロックは必死に念じる。何のためにそんな色気の無いパジャマを買ってやったと思っているのだ。
 腕に押し付けられる柔らかな乳房の感触。甘やかな香りが一層強烈に鼻をくすぐる。彼女を一瞥ともしていないのにいきり立ってし
 まいそうな自身に哀しくなった。
 画面がCMへと切り替わる。
 その刹那、レヴィの身体が翻り、ロックに馬乗りになった。
347名無しさん@ピンキー:2010/01/12(火) 20:10:23 ID:HqoMstPR
 何が起きたか理解するより早く、ロックが考えたこと。それは、自分の選んだレヴィの夜着のチョイスは間違いであり、そして大正解
 でもあるということ。
 一言で言えば、そう、「可愛い」のだ。やたらともこもこしたシルエット、シンプルだが襟と裾に小さなレースが着いた控え目で少女趣
 味なデザイン。そんな身体の上に少し湿った髪を下ろし、桜色の頬で艶の増した顔が乗っている。しかもいい匂い。そんな生き物
 が自分の腰に跨がっているのだ、勃つなという方が無理だ。
 ああ、変な気を回さずにジャージとトレーナーでも買い与えておけばよかった。今の自分ではそれでも欲情しかねないが。
 レヴィの顔が近付いてくる。射抜くほどに真っすぐな視線。もしかしなくても「誘われて」いる。だが、このままなし崩しでいいのか?
 今はいわゆるアンニュイな状態だ。鬱屈している。性欲だって溜まってる。とは言えこ のまま勢いだけで抱くには、レヴィという女
 はあまりに近すぎる。
 ロックの頭の中で、一瞬のうちに様々なことが駆け巡る。目の前の柔らかな身体を抱いたら気持ちいいだろうとか、改めて見るとい
 い女だよなぁスタイルだっていいし…とか、わざわざ日本まで着いて来てこんな風に誘ってくるからには彼女だって満更でもないの
 ではないか?とか。
 だが、自分には彼女を抱くほどの覚悟が無い。覚悟も無く感傷と惰性で抱いていいほど生半可な女では無い。
 隠し切れぬほどに膨らんだオスに押し付けられる彼女の股間。互いの纏う幾枚かの布の向こうに、彼女の秘めたる場所がある。
 考えただけで流されそうだった。
 「レ…レヴィ…。…風呂、入って来る…」
 唇が触れる刹那、咄嗟に出て来たセリフがこれだった。
 「…え…?」
 唖然とする彼女の肩をぐいと押し返し、ベッドを降りる。あらかじめ用意していた着替えをひっ掴んで一直線に浴室へと逃げ込んだ。
 だが、一人になって一息ついたところで、たまらなく後悔が押し寄せる。もっと他の言い方があったのではないか。あれでは彼女に
 恥をかかせただけではないか。最悪だ。
 彼女とそうなることを予感して買ってしまった避妊具。だが、目の前にその機会が転がってくると尻込みしてしまう自分。
 悪者になりたくないだけなのだ。レヴィが忌み嫌う、彼女をファックしたがっているだけの連中と同じになるまいと、触れることすら憚
 っている。
 彼にとっての命題は至極シンプルだ。
 つまり、性欲さえ満たされれば他の女でもいいのか、それともレヴィでなければ駄目なのか。たったそれだけ。なのに、答えは出な
 い。
 レヴィに謝らなければ。だが、何を?女の子にあそこまでさせて逃げたこと?だが、きっと彼女は単なる謝罪が欲しいとは思ってい
 ないだろう。自分だって人並みの性欲くらいあるし、レヴィにそそられている。なら、今 から仕切り直すか?だが、女を抱いて吐き
 出したいだけならばデリヘルに電話をかけた方がマシだ。ていうか、俺、どうして悩んでるんだ?あんなイイ女に誘われたならヤっ
 ちゃえばいいんだよなぁ、普通に考えれば 誰だってそうするだろ。やっぱりそうだよなぁ、抱いたからって俺は悪く無いよなぁ、いい
 悪いの問題じゃないけど。
 「あー…ヤリてぇ…」
 自問自答するうちに無意識にぽつりと呟き、愕然とする。そう、この「ヤリたい」って衝動だけでレヴィと寝るのが嫌なんだ。排泄行
 為の受け皿にしたいだけだろ。そんなのだめだ。どうして?プロ相手ならいいってのか? そうさ、レヴィは大切だから。いや待て、
 大切だというなら、女を抱く理由になるのではないか?いや、だからそういう問題じゃない。思考が何度も同じところをぐるぐる回る。
 もう明日は実家なんか訪ねずに90分無制限の店にでも行った方がいいのではないか。それでもレヴィを前に我慢ならないような
 ら腹を括ろう。って、問題は今この時をどうするか、だって…。
 結局何の決心もつかぬまま戻ったところで、そんなロックがレヴィに手を出せるはずもなく、そのまま朝を迎える。そんな夜を繰り
 返した後の秘め事だったのだから、ロックが夢中になってしまうのも無理からぬ話であった。
348名無しさん@ピンキー:2010/01/12(火) 20:11:21 ID:HqoMstPR
雪の電気街を安物のビニル傘をさして歩き回りながら、レヴィに何か土産でも買っていこうとロックはきょろきょろと辺りを見回す。
映画のソフトだろうか。
だが、彼女が映画好きと知ってはいても、いまいち好みを把握していないし、鑑賞済みのものをプレゼントしてもつまらない。
古臭いカセットプレイヤーを使い続ける彼女を思い出し、MDプレイヤーだろうかと中りをつける。
だがしかし、サイアムのソニー直営店の前で買い換えろよと冷やかした時に、「いらねーよ、録り直すのもかったりーし」と興味なさそ
うにそっぽを向かれたことも同時に思い出した。
デジタルカメラなんて喜ぶとは思えないし、気楽に受け取って貰うには少し高すぎる。
昨晩あんなに何度も交わったのに、彼女が喜ぶものが解らない。
雪が酷くなってきた。この街の脆弱な交通網が止まってしまう前に帰らなければ。いや、その前に一服したいところだが、さっき最後
の一本を吸ってしまった。そういえばレヴィの煙草も残り少なかったような気がする。ならば思い出した時に彼女と自分の分の煙草を
調達しようとコンビニに立ち寄ったロックの目に、限定パッケージのリップクリーム。
そういえば、彼女のキスは微かに血の味がした。乾燥で割れてしまったのかもしれない。 とりあえず今日はこれでいいかと、陳列さ
れたそれを手早く取り、何となく店内を一周する彼が無意識に探してしまう、男女の営みの必需品。昨晩夢中になりすぎたおかげで、
残りはあと2つしかないのだから、買い足さなくては今夜の分は足りないと…そんな不埒なことを考える。
彼の命題は解決したように思えた。決して多くは無い経験ではあるが、それでもあんなに相手を欲したのは初めての体験だ。
他の女相手では、ああまで見境無く盛ったりはしなかったろう。
何だか憑き物が落ちたような気分だった。それ故に、重苦しい雲の下妙に晴々した気分で、恐らく今夜も色っぽい事になるであろう女
の機嫌を取ることばかり考える。そういえばカトラスを取り寄せるように言われていたっけと思い出す。
だが、肝心のレヴィが臍を曲げる前に早く帰らなければと逸る気持ちとは裏腹に、無情にも限界を迎える首都交通。
情報を待ちながらかけた、買い物の報告とレヴィの硬く冷たい相棒を取り寄せる国際電話。遠い空の向こうの同僚との穏やかならざ
る会話を終えたロックが『彼女』と再会したのは、その電話を切って一息も吐かぬうちだった。



父はテキ屋だと語った少女。その意味を察することが出来ないほどロックは世間知らずではなかった。加えて彼女を「お嬢」と呼び
付き添っていた長身の男。どんなに世間知らずでも、彼が所謂堅気の人間ではないこと位は容易に察しがつく。早い話、彼女がヤク
ザと呼ばれる人間と浅からぬ関わりがあるということ、更に言えば幹部の令嬢であるということ。その程度は縁日の時点で理解してい
るつもりだった。

『バンドウサン』
彼女の口が呼ぶ聞き覚えのある名前。
よくある名前。決して珍しくなどない。
自らにそう言い聞かせるロックの希望を嘲笑うように…少女は自らを鷲峰と名乗った。

自らの甘さを痛感した。
ヤクザの娘だというのならば、狭い世界での話、今回の件に何らかの関わりがあっても不思議ではない。今のところ鷲峰組とは協力
関係にあるが、ホテルモスクワの過激なやり口に鷲峰の若頭が警戒心を示したことはロックとて把握している。
バラライカがそれを不快に思っていることも。
そして、敵対した相手への彼女の絶対零度の非情さも、ロックは理解しているつもりだった。
昨晩自分を暴行した若い男の存在を思うと、組は一枚岩とは言い難い。それどころか、レヴィはあの男に明らかな殺意を抱き、それを
知っていながら自分はたった今彼女の愛銃の密輸を手配したばかりだ。
残念ながら、このままでは鷲峰組が平穏無事に春を迎える可能性は絶望的に、低い。
349名無しさん@ピンキー:2010/01/12(火) 20:13:08 ID:HqoMstPR
先程までの浮かれ気分が嘘のように陰鬱だった。浮かれている場合ではなかったのだ。少女と別れた喫茶店から、歩いてホテルを目
指した。一人で考える時間が欲しかった。遠いように思えた距離は呆気ないほどに短くて、ロアナプラでは普通に歩く程度の距離であ
ることを思い出す。
考える時間が、足りない。何を考えるべきかも解らないが、裏社会の人間同士の出来事だと思って傍観していたそれに、あんなに普
通の少女が巻き込まれてしまうのは納得が出来ない。
その片棒の一部が自分であることも、やりきれない。

こんな感傷、レヴィに言えば馬鹿にしたように笑うだろう。だから、さっきまであんなに会いたかった女なのに、何となく帰る気になれず、
結局戻ったのは8時を過ぎた頃。きっと腹を空かせている。それともジャンクフードでも食べながら洋画でも見ているかもしれない。
どちらにせよ何らかの制裁を覚悟して入った部屋は、予想に反して真っ暗で、奥から聞こえて来たのは押し殺したような鳴咽だった。


後悔した。
昨晩、倒れた彼女と関係を持ったことを。
朝、照れのあまりろくに会話もせずに彼女を置いて部屋を出たことを。
さっき、ホテルにたどり着いた時点で戻らなかったことを。
明かりを点したロックの目の前には、ベッドと壁のわずかな隙間で目を真っ赤にして泣き腫らしているレヴィの姿があった。







日本編は妄想するといろいろ楽しい
350名無しさん@ピンキー:2010/01/12(火) 20:35:02 ID:dES9Msyr
大作だが、若干読みづらいキライがある
351名無しさん@ピンキー:2010/01/12(火) 22:02:56 ID:k2Cs1C52
GJ!
激しく続きが気になるぜ
352名無しさん@ピンキー:2010/01/13(水) 21:53:19 ID:k38OpbOa
乙!大変GJでございます!
続き楽しみにしてます
353名無しさん@ピンキー:2010/01/16(土) 00:24:18 ID:up+VFz9U
GJなんだけど、ひょっとして何行か抜けてたりする?
354名無しさん@ピンキー:2010/01/21(木) 19:28:50 ID:ivjLu+md
チョコパイとベーグルの甘い奴希望
355ロック×レヴィ エダ視点  ◆JU6DOSMJRE :2010/01/21(木) 21:02:19 ID:G5L3Vlen

とても静かな夜だった。
私は礼拝堂の隣棟にある自室で、ロックの部屋に仕掛けたカメラから送られてくる映像を、再生した。


数日前、私はロックの部屋に盗撮カメラを設置していた。
「盗撮」という響きは穏やかでないが、何もこれは特別な話ではない。
この街で、他に盗聴器や盗撮カメラを勝手に居候させて頂いている場所は、星の数ほどある。
私は、この街の状況をいち早く正確に把握しないといけないからだ。

最近、ラグーン商会には『暴力教会の尼』としては些か職務権限を越えた働きを提供している。
互いの腹は探らないのがこの街の暗黙のルールだが、
相手が私の素性に気づいているか否かという点を知ることは非常に重要だ。
それによって、私のとるべき行動も変わる。
特に、ロックは要注意だ。
意外と察しが良いのに加えて、この街のルールをまだ完全には把握していない傾向がある。
いや、把握しつつ、ルールに従わない恐れ、というべきか。
見極めねばならない。

常に自分以外の全ての者の弱みを握ること。
切れる手札を増やすこと。
それが重要だ。


とはいっても、私は、この盗撮カメラに過度の期待はしていなかった。
会話の端から、彼らが何をどこまで認識しているのかという空気を掴むことができれば充分。
ラグーン商会の内情も気になるが、特にダッチとレヴィはこういった機器に聡い。
電気機器、という点ではベニーだって侮れない。
事務所と車、ラグーン号、レヴィの部屋という選択肢だけは無かった。
ベニーの部屋、更にダッチの部屋など、言うまでもない。
私が仕掛けたのは、無線カメラと受信機が分離している型の盗撮カメラで、
もし見つかったとしても仕掛けた者を特定することはできないが、
盗撮カメラが発見される事、それ自体が許される事ではない。
だから、案外頭は回るようだが、まだまだその手の勘には疎いロックの部屋に、
お邪魔させて頂くことにしたのだ。


盗撮カメラを仕掛けるにあたっての主たる目的は以上のようなものだったが、私には
方々のカメラが寄越して来るその映像を定期的にチェックする気など、全く無い。
理由は簡単。
退屈だからだ。
他人の生活を覗いて面白い事など、万にひとつでもあれば良い方だ。
そればかりでなく、漫然と仕掛けた盗撮カメラから重要な情報が得られる可能性は、限りなく低い。
気が遠くなる程の根気が必要だ。
現実の必要性が生じた時に見れば充分だが、必要性が生じた時にだって出来る事なら見たくない。
そんなスタンスだった。

だから、早々にロックの部屋に仕掛けたカメラからの映像を見てみよう
などという酔狂な気を起こしたのは、単に下世話な好奇心があったからだと言わざるを得ない。
356ロック×レヴィ エダ視点  ◆JU6DOSMJRE :2010/01/21(木) 21:03:36 ID:G5L3Vlen

私はレヴィという女を案外気に入っている。
がさつで短気だが、頭は悪くない。
家柄と品だけ上等で、頭の中身はおがくずの連中と付き合うよりも、
あの女と下品なスラングを飛び交わせている方が、ずっと気楽で愉快なことだった。

そのレヴィは、ここ暫く、自分が攫ってきた日本人、ロックに入れ込んでいる。
からかった時に見せるウブな反応や、二人が一緒にいる時の雰囲気から、
この二人の間に何も無いわけがないと思っているのだが、未だに口を割ろうとしない。
街中の人間から「あいつらはデキてる」と思われているのだから、
今更何をそんなに頑なになる必要があるのかと不思議だが、
とにかく、レヴィは、ことロックの事となると、貝のように固く口を噤む。

気が付けばいつも一緒にいて、業務後はイエロー・フラッグで並んで酒をあおり、
そしてその後は、どちらかの部屋に二人で消えていくことが多い。

そんな二人が、部屋で一体どんな会話をしているのか、
いや、まさか本当にお喋りをしているだけということはあるまい。
新たなからかいのネタを仕入れることが出来るかもしれないし、
ちょっとした暇つぶしにはもってこい。

そんな諸々の思惑が重なって、私はモニターを立ち上げ、再生スイッチを押すことにしたのだ。


私は、戸棚に置いてあったドメーヌ・ド・ミケのボトルを取り上げ、ブランデーグラスに注いだ。
グラスの三分の一ほどを満たした琥珀色の液体を、掌で温めてから唇へ。
荒々しくも官能的な香りが鼻腔に広がり、食道を熱が通過していった。
最高だ。
秘蔵のアルマニャック。
一日の締めくくりには相応しい。
特に、ちょっとした楽しみと共に呑むには。

私は、録画映像の頭を出し、そこからロックが帰宅するところまで早回しした。
モノクロの画面には、右手側を枕にしたベッドの全貌と、そのベッドの左側に位置する小さな木机。
部屋の四隅までは映らないが、小さな室内であるし、音声も入るので、これで充分だ。
モニターには、無人の室内の映像が続く。
窓の外の色で、夜になったのが分かる。
――帰ってきた。
私は、再生速度を元に戻した。
ロック、それに、レヴィも一緒だ。
357ロック×レヴィ エダ視点  ◆JU6DOSMJRE :2010/01/21(木) 21:04:57 ID:G5L3Vlen

「あー、今日も疲れたぜ」
レヴィは、他人の部屋だというのに勝手に木製の椅子を引いて、どかっと乱暴に腰掛けた。
「今日はそんなに仕事入らなかったじゃないか」
ロックは、そんなレヴィを気にすることなく、腕時計を外してベッドサイドに置く。
「暇だと余計疲れんだよ」
「あぁ、まあそれはあるかもね。時間の経つのがやけに遅かったり。
……でも、暇だったのはレヴィだけで、俺は帳簿の整理とかで結構忙しかったんだけど」
「あんたの話はしてねェよ。あたしが疲れたっつってるだけだろ」
レヴィは椅子の背に片肘を乗せ、乱暴に足を組む。

――お前、何だその粗暴さは。足を組むにしても、もっと色っぽい組み方があんだろ。
私はつい、いつもレヴィと話している時の調子に戻って、画面の中の女を窘めた。
夜、男の部屋で二人っきりだというのに、イエローフラッグでの態度と全く変わらない。
こう、男の前で脚を組むならば、椅子に浅く腰掛けて、
片肘をテーブルにつくなどして、ちょっと斜めに身体を傾けて腰をしならせ、
横に揃えて投げ出した脚を片方、ゆっくりと引き上げ、逆の脚に絡ませる。
とかなんとか!
――あるだろう! やり方ってもんがよ!
あんな大股開きで脚を組むなど論外だ。
疲れて帰ってきたオヤジじゃあるまいし。
私は今すぐにでも画面の中へ押し入って、
この女に、男の部屋における脚の組み方というものを一から叩き込んでやりたくなった。

「はいはい、それはお疲れ様。――レヴィ、何飲む?」
しかしロックは慣れた調子で彼女をいなし、キッチンに向かった。
グラスを出す音がする。
「ん、水」
「分かった」

――水!?
私は思わず前のめりになって目を見開いた。
あの女、いつも「酒以外は飲み物にあらず」みたいな態度を取ってるくせに、「水」だと!?
「水」!?
――お前、それ、単純に今飲みたいもの言っただけだろ。
普通、妙齢の男女が夜に二人きりで飲むものといったら、
こう、ちょっと色気のあるスピリッツなどではないのか。
スコッチとか。
コニャックとか。
そう、それに、アルマニャックとか。
私は自分の手の中で揺れる琥珀色の液体に目を落とした。
――そうじゃなかったらせめて茶とかよォ、色々あんだろうが!
酔っ払いじゃあるまいし、何が「水」だ。
苛立つ私を余所に、レヴィは出された2リットルのペットボトルからそのままラッパ飲みしている。
――どうしてお前はラッパ飲みなんだ! グラスを使えグラスを! ロックが出してくれてんじゃねェか!
358ロック×レヴィ エダ視点  ◆JU6DOSMJRE :2010/01/21(木) 21:05:50 ID:G5L3Vlen

やきもきする私のことなど知るはずもなく、画面の中の二人は至って普通だ。
「そうだ、またエダにボラれた」
「ボラれたっていうか、カードで負けただけだろ」
私は、自分の名前が出たので、少し耳をそばだてた。
二人は、木製の小さなテーブルに向かい合って、煙草をふかしている。
「あいつ、やけに強ェんだよな。絶対何か仕込んでやがる」
「決めつけるのは良くないよ、レヴィ」

――全くその通りだ。
私はロックの言葉に、モニターの前で相槌を打った。
私には、娯楽のカードゲームでイカサマをしようなどというセコい趣味は無い。
レヴィが負けるのは、畢竟、考えている事が全て顔に出るからに他ならない。

「何だよ、ロック。あいつの味方すんのかよ」
「そうじゃないさ。でも、レヴィも楽しんでやってるんだから、いいじゃないか」

――可愛い奴め。
私は頬がにやけるのを感じながら、ドメーヌ・ド・ミケをひと舐めした。
レヴィは、決して自分からは口を割ろうとしないくせに、
こちらがちょっとロックにちょっかいをかけると、猛然と食ってかかる。
素直なんだか素直じゃないんだか分からない。
359ロック×レヴィ エダ視点  ◆JU6DOSMJRE :2010/01/21(木) 21:07:05 ID:G5L3Vlen

それにしても、二人はそんなたわいもない会話を、いつまで経っても続けている。
これはこれで楽しいが、ちょっと期待外れだったかもしれない――。
私は煙草を一本引き抜いてくわえ、火をつけながら思った。
深く肺まで吸い込んで、煙を吐き出す。
脇に置いた灰皿に、とんとん、と軽く叩きつけ、灰を落とした。

画面の中の二人も、煙草をくゆらせている。
ぽつぽつと続いていた会話が、
二人同時に煙草を吸い込んだことで、ふと、途切れた。
煙が白く立ちこめる。
向かい合った二人の目が合った。
空気が、一瞬にして、しんと静かになったように思えた。
沈黙の後、ロックが煙草を灰皿に押しつける。
それから、レヴィの目を見ながら椅子を立ち、彼女の側に回った。
レヴィも目を逸らさない。
ロックを見上げる格好になったレヴィの唇から、ロックは二本の指でそっと煙草を外した。
その手をテーブルについたかと思うと、ゆっくりと、レヴィの方へ身を屈めた。
レヴィはロックを見上げたままだ。
タイピンをしていないロックのネクタイが垂れる。
二人の顔は近づいて、そして、唇が重なった。
二人は唇を重ねたまま、動かない。
その部屋で動くものは、ロックの指に挟まれた煙草から立ち昇る煙だけだった。

私は、知らず、息を詰めていた。
二人の唇が離れてようやく、深く息をすることを思い出した。
煙草を口元に持っていこうとして、今にも零れ落ちんばかりに長く灰が伸びているのに気づき、
私はすぐにそれを灰皿に捻り付けた。

ロックは、レヴィから奪った煙草を灰皿に押しつけて揉み消すと、黙って彼女の頭を撫でた。
頭頂部から、耳の方へ下がって、そのまま頬へ。
ロックの親指が、レヴィの唇をなぞった。
レヴィの唇が、ほんの少し、柔らかく開く。
モニターの画面はモノクロだというのに、私には、レヴィの唇の紅さが見えた。

ロックの親指はレヴィの顎を伝い、また、二人の唇は重なった。
今度は、深く。
ロックの舌を受け入れたらしいレヴィの頭が、わずかに後ろへ傾いた。
レヴィの肩が揺れる。
息を吸ったのだろう。
ロックの手はレヴィの顎をとらえたまま、放さない。
レヴィが息継ぎの時に立てた音を、カメラのマイクは鮮明に拾った。
そして、二人の舌が絡み合って、粘膜どうしが触れては離れ、口腔内で唾液が混ざり合う音も。
360ロック×レヴィ エダ視点  ◆JU6DOSMJRE :2010/01/21(木) 21:07:57 ID:G5L3Vlen

唇を離したロックは、レヴィの二の腕を取って、立ち上がらせた。
そして、腰に腕を回して、また口づける。
もう片方の腕は、レヴィの背中へ。
レヴィの両腕もロックの背中に伸びてゆき、ぎゅう、と力がこめられた。

ロックの手は、レヴィの腰を緩やかに撫でてから、タンクトップの背にもぐり込む。
彼女の肌の感触を確かめるように抱きしめ、それから背中の真ん中のホックを外した。
ふっ、とレヴィの胸が心もち緩む。
脇を通って、ゆっくりと胸部の方へ移動してきた手は、レヴィの乳房をすくい上げるように包んだ。
タンクトップの生地が、ロックの手の形に盛り上がる。
穏やかに沈む指は、彼女の乳房の柔らかさを伝えていた。
レヴィは、ロックの手の動きに合わせてわずかに背中を波打たせながら、時折肩を緊張させる。
彼女の胸が沈むその瞬間は、ロックの指が敏感な先端をよぎったのだと推測された。

ロックは、そろそろとレヴィのタンクトップを捲り上げた。
締まった腹部、縦に一筋通った腹筋と肋骨の陰が露わになり、
ホックを外された下着がタンクトップにつられて持ち上げられた隙間から、柔らかい曲線が覗いた。
ロックは両腕を上げたレヴィからまずタンクトップだけを抜き取り、
次に、肩の端に引っ掛かっている下着も、そっと外した。

女の私の目から見ても、レヴィの身体は美しい。
あちこちに、治癒したものしていないもの取り混ぜた傷痕が残っていても、
むしろその傷痕こそが美しさを引き立てているように見える。
豊かだが大きすぎない乳房から、ひとかけらも無駄な贅肉がないウエスト、
そして形良く張った尻が描く曲線は、野生動物のように凛として完成されていた。

ロックが自分でネクタイを引き抜くと、レヴィはロックのワイシャツのボタンに指を伸ばした。
レヴィがボタンを外し始めると、ロックは両手を彼女の後頭部に持っていった。
そして、ひとつに束ねられていた髪を解く。
髪を引っ張らないよう、結び目の根本を片手で押さえながら。
子猫のしっぽ程の量しか無いレヴィの細い髪の毛は、するんと抵抗なくほどけた。
ボタンを外し続けるレヴィを見下ろしながら、ロックはレヴィの髪を梳く。
さらりとした髪の毛が、何度も、ロックの指にまとわりついては離れていった。

レヴィがボタンを全部外し終わると、ロックは自分でワイシャツを脱ぎ捨てた。
そして、レヴィを抱き寄せる。
361ロック×レヴィ エダ視点  ◆JU6DOSMJRE :2010/01/21(木) 21:09:01 ID:G5L3Vlen

その瞬間、レヴィの身体は女のものとなった。
ロックの身体に沿うように、やわらかく形を変える。
レヴィの肩はロックの胸の中にすっぽりと収まり、
彼の背中に腕を回して頭を少し落とすと、
それはロックの首筋にぴたりと落ち着いた。
そこが、レヴィの為の定位置であるかのように。

ロックの身体もまた、レヴィ一人を抱き込むのに丁度だった。
何の過不足も無く。
ロックの腕は、レヴィの腰のくびれに隙間無く巻き付き、
もう片方の腕は浮き出た肩胛骨の間で収まった。

私には、二人がまるで、最初からひとつのものだったかのように、
パズルのピースがぴたりとはまったかのように、見えた。
たかが、上半身裸の男女が微動だにせずただ抱き合っているだけだというのに、
私は息を潜めて画面を見つめていた。
目が離せなかった。

二人は下着一枚になると、部屋の灯りを消し、枕元の読書灯だけをともした。
画面が暗くなったが、高感度のカメラは問題無く二人を映し続ける。
ロックが上掛けを捲りあげると、その隙間にレヴィが滑りこんだ。
そして、ロックもレヴィの上に覆い被さるように入り込み、腰のあたりまで上掛けをかけた。
ロックは、両肘の間にレヴィを囲う。
レヴィが見上げる。
二人の目が合う。
長いのか短いのかもよく分からない、息詰まるような静止の後、
ロックの頭はゆっくりと落とされ、二人の唇が重なった。
レヴィの腕がロックの背中に伸び、しっとりと絡みついた。

すべてが流れるような動作だった。
二人は、煙草を消してから、一言も言葉を交わしてはいなかった。
それなのに、これからどうすべきかという事など、互いに分かり切っている滑らかさだった。
362ロック×レヴィ エダ視点  ◆JU6DOSMJRE :2010/01/21(木) 21:09:47 ID:G5L3Vlen

舌を絡ませながら、ロックはレヴィの全身をなぞってゆく。
頬、髪、耳、こめかみ。
顎、喉、項、くびすじ。
ロックの手はゆっくりとレヴィの肌の上を滑り、
喉元を通り過ぎたかと思うと、ゆるやかに盛り上がる曲線を這いのぼり、
その全体を掌の中に収めた。
彼の手には、ほとんど力が入っていないように見えた。
それなのに、――いや、それだから、か――レヴィの身体は甘く沈んで、肩が内に入った。
ロックはレヴィの乳房を包み込んだまま、手首からやんわりと揺らす。
レヴィの呼吸が僅かに乱れる。
彼の手の熱で中身を溶かされてしまったように、レヴィの乳房は柔らかさを増していた。
ロックの指先が、彼女の乳房の先端に触れ、
レヴィが重なった口の中でくぐもった声を漏らした。
ロックは、唇も、柔らかくこねる先端も、解放しない。
レヴィの背中が小さくうねる。
口腔中の声が高まる。
上掛けの下で、片方だけ立てられた彼女の膝が、かすかに揺れた。

やっと唇のみを解放したロックは、指で刺激し続けていた突起を、今度は自分の唇で包み込んだ。
レヴィの息が震える。
「んっ」と空気を揺らしたレヴィの声は、引き結ばれた唇からは漏れず、彼女の鼻の奥で響いた。
眉根が、きゅっと寄せられた。
ロックは、レヴィの呼吸が大きな溜息となって漏れ出しても、唇と舌での刺激をやめず、
彼女の手がロックの背中をはい上がって、うなじを登り、髪に指が差し込まれてようやく、
ちゅ、と小さく音を立てて唇を離した。
そして、今度は逆の乳房の先端を、唇の中に取り込む。
指は、今まで彼自身の口によって濡らされ、とがっている突起へ。
両方の先端をこねられたレヴィの背中が反った。
363ロック×レヴィ エダ視点  ◆JU6DOSMJRE :2010/01/21(木) 21:10:50 ID:G5L3Vlen

ロックの手は、段々と腹の方へ下がっていく。
みぞおちを通り、臍のあたりに到達したところで、
二人を包む上掛けによって、彼の手を直接目視することは出来なくなった。
しかし、薄い上掛けは、ロックの手がレヴィの脇腹を撫で、腰骨をなぞり、太ももの外側をさすり、
そして太ももの内側にたどり着くまでを、鮮明に伝えていた。
ロックの指は焦らすように腿の内側を這いのぼる。
指がいつレヴィの芯に触れたのかは、彼女が全身をぴくりと震わせたことで知れた。
上掛けの下に突き出たロックの肘が、小さく動く。
その下で、レヴィの腰もむずかっているのが分かった。
レヴィはまだ下着をつけているはずだった。
その下着を取り去ることなく、ロックは指を休めない。
レヴィの眉が、快楽に耐えるようにきつく寄せられた。
彼女の身体がねだるように波うち始めると、
ロックは彼女の胸元から顔を上げ、彼女の下着をさげた。

用済みとなった布きれを上掛けの隙間からベッドの隅に追いやって、
ロックの指は、今度は直接、レヴィの脚のつけ根に触れたようだった。
指先がとろけた粘膜に触れて、ほんの少し沈みこみ、浅いところでうごめき、襞の間を撫で上げる。
上掛けの下で行われているであろうロックの指の動きは、レヴィの表情が全部伝えていた。
指は、繊細な襞を何度もなぞるが、
レヴィが一番触れて欲しいところには、なかなか到達しないようだった。
耐えられない、といった様子でレヴィの瞼が震えるのを、ロックはじっと見つめていた。
見られていることに気づいたレヴィは、見るな、というように自分の腕で顔を隠したが、
ロックはその手首を取って、シーツの上に縫いとめた。
その直後、彼女の顎が反った。
ロックの指が欲していた芯に触れたのだろう。
レヴィの身体が強ばって、震える。
息をつめ、そして開いた唇から、深く透明な溜息が漏れた。

ロックの指は、レヴィのなかから溢れ出す体液を絡めて、何度も芯を責めあげているようだった。
レヴィの胸が、ロックの指の動きに合わせて上下する。
「――ん…………っ」
レヴィの喉が震え、眉間に皺が寄ったとき、せわしなく動いていたロックの指が静まった。
おそらく、レヴィのなかで。
閉じられていたレヴィの瞳が開いてから、またロックは動きを再開する。
探るように。かき出すように。
レヴィの膝が締まったが、最初からレヴィの脚の間にあったロックの片脚のせいで、
それ以上閉じることは出来なかった。
レヴィの呼吸が荒くなる。
薄く開いた唇から吐き出される空気に、小さく声が混じる。
私の背筋までをもぞくぞくさせる、甘く掠れた声。
声が出てしまう度に、レヴィは唇を閉じるのだが、すぐに鼻呼吸だけではままならなくなり、
また、吐息混じりの震えた声を漏らすのだった。

ロックの手が上掛けの外に出た時、彼の中指だけがとろりと濡れ、
黄みがかったほのかな灯りを受けてつやつやと光っているのが、見えるようだった。
364ロック×レヴィ エダ視点  ◆JU6DOSMJRE :2010/01/21(木) 21:11:23 ID:G5L3Vlen

ロックはレヴィの脚の間に身を置くと、「いい?」というように、合わせた目で訊いた。
レヴィの顎が小さく引かれる。
それを確認してから、ロックの腰が沈んでいった。
ゆっくりと。
レヴィの頭が揺れ、睫が震えた。
ロックの腰が沈みきると、レヴィの大きな溜息に、ロックの短い吐息が重なった。
二人は浅い呼吸を繰り返しながら、ただお互いの顔を見つめる。
痛いくらい真剣な、表情で。
そして、引き寄せられるように口づけをした。

重なり合ったまま口づけを交わしていた二人の身体は、少しずつ波うち始めた。
最初のうちは、ほんの僅かに。
段々と、激しく。
唇が離れた時、二人の息は窓ガラスを曇らせる程に乱れて湿っていたが、
合わせた双眸は、酷く苦しそうだった。

ロックは、抑えたいのに身体が勝手に動いてしまう、
そう言いたげに、背中を震わせ、シーツを握り締めた。
項垂れた額に、前髪がはらりと落ちた。

レヴィも、抑えたいのに身体が求めてしまう、
それを彼女自身がどうにもできずに、
眉を寄せ、ただロックの背中を抱きしめているようだった。

そんな本人たちの思惑に反し、
ロックの身体はレヴィを貫き、
レヴィの身体はロックを誘い込んだ。

上掛けの下では、ロックの腰が、浅く、深く、上下し、
レヴィの立てられた両膝に、力が入っては、抜ける。
二人の吐息が室内を満たす。
そこに、ベッドの歪んだ軋みが加わった。
365ロック×レヴィ エダ視点  ◆JU6DOSMJRE :2010/01/21(木) 21:12:17 ID:G5L3Vlen

瞬間、レヴィの顔が美しく歪んだかと思うと、ロックの肩口に埋められた。
そして、たまらない、というように、吐息混じりの声が絞り出された。

「――――――あぁ……っ」

私は反射的に、口元を片手で覆っていた。
息を吸ったまま、暫く吐き出すことが出来なかった。
心臓が一瞬、大きく跳ね、それから思い出したようにどくどくと鳴動した。

――レヴィ、お前、なんて声……。

それは、淫欲に溺れている声ではなかった。
自分の中からあふれる何かを抑えきれなくなった悲痛さを伴っていた。

――レヴィ、なんで抑える必要があるんだ。

柄にもなく、私の眉までもがつられて歪んだ。
誰かを「欲しい」と思うことは、人間の本能だ。
何もおかしなことではない。
誰も、そんなことでお前を淫売だなどとは思わない。
下らない自制心や見栄などドブに捨て去って、素直にそのままのお前をぶつければ良い。
お前のその少し掠れたアルトで、甘い喘ぎを存分に聞かせてやれば良いのだ。
それを嗤ったりなどしない。
少なくとも、今お前の目の前にいるその男は。

画面の中の二人は、いよいよ大きな流れに抗えなくなっているようだった。
ロックの腕がレヴィの腰を引き寄せ、激しく打ちつける。
レヴィの身体が反って、胸郭が浮かび上がるのを美しいと思いながら、
私は、さっき見たレヴィの引き締まった腰が、ロックの腕の中でしなる様を想像した。
引き寄せられたレヴィの膝につられて上掛けが少し乱れ、その裾から二人のつま先が覗く。
荒い呼吸が声帯を掠めてしまう。レヴィはそんな声を時折漏らした。
レヴィのつま先が、ぎゅっとシーツを巻き込む。
いかにも安物のベッドが悲鳴を上げた。
二人は、まっしぐらに駆け昇ってゆく。
ロックは、レヴィの呼吸が止まるほどに突き立てる。
レヴィの腕が、強くロックを抱きしめる。
彼女が達したと分かったのは、ロックの背中で強く力がこめられた指先と、
指を内側に折り込んでぴんと伸ばされたつま先で、だった。
硬直した彼女を二、三度行き来してから、ロックの動きも止まった。

私は、小さく息を吐き出した。
ひどく、息苦しかった。

ロックは、横向きになってくったりとしているレヴィの首に出来た空間に手を寄せた。
レヴィが軽く頭を上げると、ロックの腕はその隙間にするりと入っていく。
レヴィの頭がロックの肩口近くに収まったのと、
ロックの腕がレヴィの肩を抱き寄せたのは、ほぼ同時。
やはり、流れるような動作だった。

ロックが上掛けを引っ張ってレヴィの肩まで掛けると、レヴィは目元を緩ませた。
ロックの顔はカメラに頭を向けてしまっていて見えないが、
レヴィの表情で、彼がどんな顔をしたのかは大体想像がついた。
ロックの手が読書灯に伸びて、灯りが消される。
今度は、本当の暗闇となった。
366ロック×レヴィ エダ視点  ◆JU6DOSMJRE :2010/01/21(木) 21:13:30 ID:G5L3Vlen

私は、のろのろと映像の停止ボタンを押した。
暗い画面に、私の渋面が映っていた。
酷く、重苦しい気分だった。

解せなかった。
なぜ、あの二人があんなに苦しそうに交わっていたのか、全く解せなかった。
あの二人の行為は、遊びでも、ましてや性欲の解消でもなく、「本気」だった。
そう、所謂「愛し合っている」と言われるような状態。
私の目には、そんな状態に見えた。
それが、どうしてあんなに苦しそうな顔をしないといけないのか。

レヴィは色恋沙汰に関してはからっきしであるし、
特にセックスに関しては嫌悪しているきらいがある。
山猿娘のくせに意外と奥手なところがあることも分かった。
どうせ、淫乱な女だと思われたくない、などと阿呆な事を考えているのだろう。

ロックの方も、大体想像がつく。
私がレヴィに関して想像している事ぐらい、あの男だって当然考え及んでいるだろう。
存外に繊細なあの女を毀したくないという想いが先立っているに決まっている。

しかし、だとしても、なぜ……?
それならば、砂糖菓子のように甘く幸せに乳繰り合えばいいだけの話だ。
こんな破壊と狂乱の街には似つかわしくないが、
別に誰が見ているわけでもないのだから、好きにやればいい。
まあ、正確に言えば、今こうして私が見ていたわけだが、
それはこの問題に関して重要なファクターではないので、すぐに頭から追い出す。

私は、置き去りになっていたドメーヌ・ド・ミケの存在を思い出し、グラスを手に取って傾けた。
しかし、芳醇な液体は妙にどぎつく鼻について喉を焼き、
すぐさま、グラスをデスクの端へと押しやった。

私は思考を戻す。
あの二人の様子は、まるで、相手を欲することが罪悪であるとでもいうかのようだった。
しかし、抑えきれずにあふれ出てしまったものは、どこまでも透明な愛おしさにしか見えなかった。
――なぜ、それを抑える必要がある?
何度目かの堂々巡りを終えた時、もしかしたら、という閃きが私の頭の隅で弾けた。
367ロック×レヴィ エダ視点  ◆JU6DOSMJRE :2010/01/21(木) 21:14:28 ID:G5L3Vlen

――気づいていない、のか?

――お互い、想いを伝え合っていないばかりでなく、相手が自分のことをどう想っているのか、気づいて、いない?

まさか、という思いと、それだったら全て説明がつく、という納得が同時に頭を満たしていった。

レヴィの場合は、身体だけではなく心までもを求めずにはいられない苦しさ。
ロックの場合は、欲情をぶつけたいわけではないのに、求めてしまう苦しさ。


――お前ら、二人揃って大馬鹿だ。

レヴィ、手を伸ばせば、目の前の男は、お前がずっと欲しかったものを与えてくれる。
お前が気づいていない――いや、気づこうとしていない、のか――だけで、本当は、今だって。
今こそ掴み取れ。
そんな泣きそうな顔をするぐらいなら、なりふり構わず奪えばいい。
お前はずっと、その手で、明日の生を奪い取ってきたんだろう?

ロックもロックだ。
欲しかったら、躊躇せずに今すぐ捕まえろ。
この女を毀れやすいガラス細工のように扱うぐらいだったら、
いっそ毀れるほどに抱きしめて、嵐のごとく攫ってしまえばいい。
お前の中途半端な優しさが、この欠損した女を余計に苦しめていることが分からないのか。

『求めよ、さらば与えられん』
マタイ伝第26章64節。
神もそう言っているではないか。
――尤も、神は彼女には優しくなかったようだが。

全く気づいていない、ということでは無いのかもしれない。
特にロックの方は。
けれど、頭だけが先走り、それが視界を曇らせ、身動きを取れなくさせている。

――そんなに、失うのが怖いか。

求め、そして拒絶される可能性の前に、立ち竦んでいるのか。
それとも、その臆病で優しい躊躇いこそが、惹き合うのか。
私には分からない。
セックスは駆け引きの道具、もしくは、目的達成の為の手段。
そんな割り切った無機質な認識しか持たない私には、この二人の本心は分からない。

けれど、そんな私に間違いなく言えることが、ひとつだけ、ある。
368ロック×レヴィ エダ視点  ◆JU6DOSMJRE :2010/01/21(木) 21:19:06 ID:G5L3Vlen

――楔を打ち込むとしたら、ここだ。

ラグーン商会の弱点。
この、薄皮の中に、今にもあふれてしまいそうな中身を抱えて寄り添う二人。
薄い皮膜の間にナイフを差し入れ、ほんの少し手首を捻ってやれば、
簡単に二人まとめて崩壊させることが出来るだろう。

そう、例えば、レヴィにこんなことを囁いてやれば良い。
「ロックって、なかなか床上手じゃねェの。優しいし、ちょっと見直したわ」と。
レヴィは、ロックに真偽を確認することもなく、身を翻すだろう。
もしロックを問い詰めたとしたって、構わない。
いくらロックが否定しようと、レヴィはいつも最悪の状況を想定してそれに備える。
あの女の回路は、そういう風に出来ている。
レヴィのあの薄茶の大きな瞳が、一瞬驚愕で無防備になり、そしてみるみる傷ついていく様が、
私の脳裏にはっきりと浮かび上がった。

しかし。

――出来ない。

一番の大馬鹿者は、私かもしれなかった。
私にとって他人は、「使えるか使えないか」、そして「仕えるか仕えさせるか」、
そのいずれかだった。
それ以外の基準で考えはしないし、また、考えることは許されない。
なのに、誰かに対して出来ないことがある、
しかも、その理由が個人的感情によるものであるということは、致命的だった。

そうは言っても、私には、あの愚かな女の心が
私の手によって砕け散る様を平然と見届ける自信など、全く無かった。

――知らない内に情が移ったか……。
私は、片手で両のこめかみを押さえ、溜息をついた。

しかし、致し方あるまい。
私は録画映像を消去し、早いうちにロックの部屋からカメラを引き上げようと決め、頭を切り換える。
あの二人は、お互いが相手の安全弁の役割も担っている。
その安全弁が飛んだら、どんなモンスターが顔を出すか分からない。
二人の間に楔を入れるということは、
人食い虎を二匹、生み出す可能性を高めるということだ。

――そんな危険なことは出来ない。そうだろう?

私は誰にともなく問いかけ、今夜の私の記憶もまた、ダストボックスへ放り込んだ。



369名無しさん@ピンキー:2010/01/21(木) 21:51:45 ID:ivjLu+md
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
GJ!!
370名無しさん@ピンキー:2010/01/21(木) 21:52:26 ID:VGJN4ACE
なんか長いの来てる!嬉しい!!
家じゃ規制くらって書き込めないから先にGJを言うよ ありがとう!
これから読む!
371名無しさん@ピンキー:2010/01/21(木) 21:56:43 ID:8Q2XqYe9
最高でした!
372名無しさん@ピンキー:2010/01/21(木) 23:53:54 ID:66mHpDkx
いいっすわぁ〜gj
373名無しさん@ピンキー:2010/01/22(金) 05:19:00 ID:+iH9SxOZ
いやはやGJでした
374名無しさん@ピンキー:2010/01/23(土) 10:30:35 ID:SKuB83b3
もう、なんか『エダ視点』ってだけで嬉しいわ。

『畢竟』なんて言葉初めて知った浅学な自分です
375名無しさん@ピンキー:2010/01/23(土) 18:48:03 ID:dBwXzfuk
ロクレヴィの関係も切なくていいけど、エダがレヴィに情移ってるのがたまらん!
まじでGJ!
376名無しさん@ピンキー:2010/01/24(日) 11:30:04 ID:RNk3PX6Y
エダいいねぇ。
たまらんねぇ。
エダが2人の心中を察してるのもそれらしくていい。
377名無しさん@ピンキー:2010/01/24(日) 13:33:50 ID:kDUP9rZI
超GJ!!!
これはやべえ(´Д`*)
378名無しさん@ピンキー:2010/01/25(月) 22:24:57 ID:p+Gi+wmx
うおおお、すげぇもん読んじゃった
言葉が出ない、グッドジョブ。よい仕事をありがとう!
379名無しさん@ピンキー:2010/01/28(木) 08:35:37 ID:bFvRdh5v
まったりスレタイ考えんか?
あっという間に432KBだwww

スレタイネタが無いけどw
380名無しさん@ピンキー:2010/01/28(木) 09:04:47 ID:UmpRdXZq
順当にいくとベーグルちゃんとかチョコパイとかか? >スレタイ

それにしてもレヴィたんのファックなら25ドルなんて安いもんだぜ


381名無しさん@ピンキー:2010/01/28(木) 12:16:13 ID:5tWI1uY7
382名無しさん@ピンキー:2010/01/28(木) 12:27:58 ID:5tWI1uY7
↑ごめん強風に煽られミスった。失礼した。

遅ればせながら>>368腸GJ!
正直合衆国至上主義な今の原作の江田さんは好きじゃないけどこのエダさんはいいね。
思わず画面の向こうのレヴィたんにツッコミや激励飛ばしてるのも微笑ましいw
可愛い後輩の世話を焼く年上の先輩みたいだ。

ロクレヴィも切なくて萌えた。寧ろ萌え尽きたぜ・・・
本番中一言も喋らないのが儀式みたいでこれまた・・・
383名無しさん@ピンキー:2010/01/28(木) 21:09:55 ID:eXyxv5o4
>>380
べーグル チョコパイに一票

しかしベニーがべーグルなら、
ロックとレヴィとダッチは何なんだろう
384名無しさん@ピンキー:2010/01/28(木) 22:54:28 ID:LvwefdaZ
【甲賀デスシャドー流】ブラックラグーンVOL.12【マスターNINJA】

酷いノベルだったなあ(誉め言葉
385名無しさん@ピンキー:2010/01/28(木) 23:03:43 ID:nxPdq0aS

384がいいなあw
386名無しさん@ピンキー:2010/01/29(金) 02:24:25 ID:B4/4cwxg
あのノベル、色々てんこもりだったけどなんかもうファルコンと張大兄が全部持ってったよなw
387名無しさん@ピンキー:2010/01/29(金) 03:52:30 ID:YZGcilNl
>>383 
ロック→おにぎり
ダッチ→かりんとう

レヴィたんは・・・ジャンクフード?
ジャンクって言うなあああああ!
388名無しさん@ピンキー:2010/01/29(金) 19:49:51 ID:oytKByBy
ファルコンは本編か動画で見たいw
つかエロに繋がる要素がない…
レヴィが意を決してロックにおそいかかったら
それは変装したファルコンだった、とかいうオチ…
389名無しさん@ピンキー:2010/01/29(金) 20:28:51 ID:VZtQ2fW7
>388
ヘイヘイヘイ、あれを間違う奴がこの地球上のどこにいるってんだい?
390名無しさん@ピンキー:2010/01/29(金) 22:02:14 ID:apO67rN5
>>387
ピz…
391名無しさん@ピンキー:2010/01/30(土) 08:44:17 ID:6o3sC69V
ピッツァマルゲルゥィ〜タ
って言うとあっという間にオサレな響きに。

つってもレヴィたんが好きなのはシンプルな本場イタリアスタイルのピザじゃなくてジャンクなNYスタイルのピザなんだろうが。

ピザよりフライドチキンやフライドポテトのほうがデブってイメージがあるんだけど一体いつからピザ=デブって喩えに使われるようになったんだろうな。
ピザってオリーブオイルかければ肥らない(肥りにくい?)みたいだし。
392名無しさん@ピンキー:2010/02/02(火) 01:09:48 ID:nzMe+5Ih
原作レヴィたん不足すぎで血迷って同人買った。後悔はしていない。
ロックマジキチ
393名無しさん@ピンキー:2010/02/05(金) 07:22:11 ID:ngBmQYR1
レヴィたんと渚でフィッツダンスしたい
394名無しさん@ピンキー:2010/02/06(土) 06:50:49 ID:6Zdbi9zd
渚にて
395名無し@ピンキー:2010/02/06(土) 16:13:44 ID:tCo9HC5p
保守
396名無しさん@ピンキー:2010/02/06(土) 22:39:38 ID:gF9G1Dct
で、節分の日にレヴィたんはロックに恵方巻ぶち込まれて敏感な豆をつまみ食いされたのか?
397名無しさん@ピンキー:2010/02/06(土) 22:46:30 ID:4iC+dDZn
レーヴィ、レーヴィ、レヴィたーん♪
噛むンとふにゃんにゃん・・・

おっと誰か来たようだ・・・
398名無しさん@ピンキー:2010/02/07(日) 00:23:28 ID:KFawjjNR
噛むーとやわらかレヴィ〜のほっぺ♪


ロックとレヴィたんが踊ってる後ろでヴィーナス像がマダムフローラに変わるんですね、わか(ry

技術があればそんな動画作りたいぜ!
399ロック×レヴィ 月  ◆JU6DOSMJRE :2010/02/07(日) 20:59:41 ID:EH+S4pqv

――もう、やめなければ。 

レヴィは、ロックの部屋の狭いベッドで彼の腕の中に囲われながらそう思い、
しかし結局、拒絶の言葉は口に出せなかった。
ロックの頭が静かに迫ってきて、口づけが落とされる。
瞼を降ろす前、彼の肩越しに丸い月が見えた。

――もう、やめなければいけない、のに。

レヴィの腕は意志に逆らって、目の前の男の背中へ伸びる。
そっと唇をわりひらかれ、やわらかく舌を絡めとられると、決心はあっけなく溶けていった。

――もう、やめなければ。
 
何度、そう思っただろう。


口づけは深くなり、互いの呼吸は荒くなる。
すっかり馴染んだ身体の体温と、厚み。
彼の手が、肌の上をすべる。
彼の掌が、乳房を包みこむ。
彼の指が、先端をこねる。
彼の唇が、首筋に口づける。
髪を梳かれるのも、耳のふちをなぞられるのも、鎖骨の窪みに指を沈められるのも。
そのどれもが、レヴィは好きだった。


彼はレヴィの身体に熱を与える。
ゆるやかに、しかし、容赦なく。
ふくらみを通りすぎた手は、肋骨が尽きたところでみぞおちを滑り落ちてゆく。
身体の厚みを確かめるように脇腹をなぞって、腰骨の出っ張り具合をレヴィにおしえる。
撫でる強さで太ももの外側に手を這わせ、そして、内側は触れるだけの強さで。
レヴィの身体の輪郭を、皮膚の厚さの違いもすべて、伝えるように。
彼の手は、お前は一人の人間なのだと、一人の女なのだとレヴィに突きつける。

経験した幾つものおぞましい過去とは、まったく違う。
レヴィの内に満ちるのは、多分、多幸感とでも呼ばれるものに似た、甘ったるいなにか――。

そんな感覚を呼び起こされるのはきっと、レヴィ自身の中に原因がある――。
甚だ不本意ながら、それを認めなければならないだろうと、レヴィは思う。
彼に対して、他の誰に対するのとも違う、特別な感情を持っている。
それを突き詰めて明らかにすれば、自分たちを破滅へ追いやるであろう感情。
何かに執着した者は、この地獄の底ではすぐに墓石の下。
あってはならない感情だ。
自分一人がくたばるだけならば自業自得。
しかし、彼の命もまた、この腕にかかっている。
封印しなければいけない。
生まれた感情はこのまま閉じ込めて、腐らせてしまわなければ。
彼に触れられると、どんどん後戻りできないほどに膨らんでいくから。
そして、いつの日か自分の中の檻を食い破って出ていってしまうだろうから。

だから、もう、やめなければ。
400ロック×レヴィ 月  ◆JU6DOSMJRE :2010/02/07(日) 21:00:36 ID:EH+S4pqv

なのに、彼の腕に抱きしめられる度、決心は儚くなる。
下着の上から触れてくる彼の指は、
レヴィが既に言い訳ができないほどに潤っていることを自覚させる。
やわらかく、やわらかく刺激を与えてくる指に、脳まで溶けてくる。
いつの間にか、まるでねだるように身体を揺らしている自分に気づいて、
高揚していく身体とは逆に、レヴィの心は沈んだ。

――あさましい。
淫売扱いはごめんだ。次にこの話を蒸し返したら殺す。
そう啖呵をきっておきながら、この体たらく。
自分はきれいな身体じゃない。
……でも、好きでやったことなんか一度もない。
それを一番分かって欲しかった男の前で、こんな嬌態を晒しているなんて。
なんて皮肉なことだろう、とレヴィは自嘲する。

彼の指が、今度は直接、レヴィの粘膜に触れた。
自分でも困惑するほどとろけていた窪みに指先がひたされ、うるかすように揺らされる。
段々と指は広範囲に渡って動きを広げた。
襞の間を自由に泳ぐ。
普段はぴたりと閉じ合わされている襞の間を優しくすり抜けていく指に、
レヴィの背筋は泡立った。
それでも彼の指は、一番はずれの突端には、いっさい触れない。
時折、さっとかすめるように通り過ぎていくだけ。
思わず腰で導きたくなるのを、レヴィは目を瞑ってこらえた。

視線を感じて瞼を上げてみると、そこには、ひたとレヴィを見下ろすロックの瞳があった。
ベッドサイドにひとつだけつけた読書灯のわずかな光を受けた瞳は、
黒く、すべてを映しこむような光沢を放っていた。
――見るな。
ことごとくを見透かされているような視線に耐えきれず、
レヴィは顔を背けて枕に半分頬をうずめ、腕を上げて顔を隠した。
その手首を優しくとらえられる感触。
彼の手は、ゆっくりと、レヴィの腕を顔からどかせる。
全く、強い力ではなかった。
まるでレコードの針を移動させるような。
そんな穏やかな力で、ロックはレヴィの手首をシーツの上に着地させた。
レヴィの腕も、きちんと手入れされたレコードの針の滑らかさで、それに従った。

途端、彼の指が望んでいた刺激を与えてきて、レヴィは鋭く息を吸いこんだ。
下着の上から指の腹で一点を押さえ、ゆらゆらと揺らしてくる。
甘い疼きが、下腹、腰に広がって、胸元までせり上がってきた。
――隠せない。
手首を拘束する彼の手は、ただレヴィの手首をゆるやかにとらえているだけだ。
女の手首は強くつかむものじゃない。
そう心得ているように。
本気で外そうと思えば、いくらでも外せる。
しかし、その優しい強さが、レヴィを動けなくさせた。
401ロック×レヴィ 月  ◆JU6DOSMJRE :2010/02/07(日) 21:01:35 ID:EH+S4pqv

――やめろよ。
レヴィは思う。
全く不快ではない温かい拘束を手首に感じながら、思う。
――そういう風にすんの、やめろよ。
自分の手首は、そんな優しい扱いが似合うほど華奢じゃない。
破壊し、奪い、殺すための腕だ。
手加減せずにひっつかんで、骨がきしむほど強く握りつぶせばいい。
あの、いつかの夕暮れの市場でのように。
癇癪を起こしたレヴィを、ロックは真正面から受け止めてねじ伏せた。
純粋で真剣な怒りでもって。
あの時、ロックは確かに自分を見ていた。

――けれど、今は?
ロックの手は、華奢な手首の女を知っている。
その優しさで、レヴィの手首をとらえている。
そんな優しさは必要の無い手首を。
――あたしの向こうに、誰を見てる?
この男と同じような黒曜石のつややかな瞳を持った、可憐な女だろうか。
――あたしは誰の、身代わりだ?
レヴィの胸はきしむ。

けれどレヴィは、自分がそれを非難する資格など、どこにも無いことを知っていた。
――あたしが、奪った。
割に合わない仕事にちょっとした欲を出して、後先考えない軽率な行動に出た。
結果、レヴィは得て、彼は失った。
彼の生活を、日常を、帰る家を、国を、人生を、奪った。
その後、彼が「選んだ」としても。
本来、そんな選択はする必要の無いものだった。
選択肢など、無いも同然。
戻りたくてももう、彼の戻れる場所は無かった。
それだけの話だった。

――これは、罰か。
そうだとしたら、なんと甘く残酷な罰だろう。
こんなに惨めな状況だというのに、レヴィの身体は彼を求める。
一度身体の内側に沈められた指が抜かれた時、まるで彼の指が誘い水となったかのように、
レヴィの身体の奥からぬるま湯があふれた。
指はすみずみまで這いまわって、また沈む。
二度目は、何の抵抗もなく、滑り落ちるようにはいっていった。
粘液が感覚を鋭敏にする。
レヴィの呼吸が乱れ、ため息が漏れ出た。
指で探られるごとに身体は波うち、快楽が声となってあふれそうになる。
こらえきれずに漏れてしまった音は、馬鹿みたいに高く震えた、女の声だった。
402ロック×レヴィ 月  ◆JU6DOSMJRE :2010/02/07(日) 21:02:59 ID:EH+S4pqv

彼は目で、レヴィに挿入してもいいかという伺いを立てる。
駄目なはずがないのに。
レヴィは思うが、しかし、毎回毎回、返事は分かり切っているだろうに
律儀にもそれを欠かさない彼のマナーを好ましく思う自分がいて、
一体何を期待しているのだとレヴィの心は乱れる。

ロックがはいってくる。
ゆっくりと押しひろげられるような圧迫感。
押しあげられた身体の中の空気が、ため息となって口からあふれた。
身体の内側で感じる他人。
自分ですら知らない奥を、彼には許す。
そう、彼にだけ。

けれど、彼の方はどうだろう?
レヴィは頭を落としてきた彼と唇を重ねながら、思う。
やわらかくした唇を軽く触れ合わせては静かに角度を変え、吐息を湿らせる。
舌も絡ませ合い、身体中をぴったりと密着させると、それだけで満足感が沸き上がった。
でも、彼の方は?
きゅう、と少し締まったレヴィのなかに呼応するように、ロックの身体が徐々に動き始めた。
最初は、穏やかに。
繋がったところが疼き出すと、少しずつ大きく。
ゆるやかに揺さぶられると、レヴィの疼きも高まる。
なめらかさを増したレヴィのなかで、彼はゆっくりと往復する。
粘液で守られた内部をぬめりながら移動される感覚に、レヴィの腰は浮き上がりそうになった。
奥まで埋めこまれて、やわらかい外側も優しく押しつぶされると、
呼吸が一瞬止まって、息苦しくなる。
酸素が足りない。

彼は、レヴィをゴミ捨て場に捨てられたガラクタのように乱暴に扱った男達とは違う。
それは分かる。
決して無理強いはしないし、ちゃんとレヴィの準備が整ってから、はいってくる。
触れる手は優しく、温かい。
レヴィが何も言わずとも、丁寧に満たす。
痛くない、苦しくないセックスもあるのだということは、彼で知った。

しかし、彼が女というものを乱暴に抱いているところは、どうしたって想像できなかった。 
彼ならば、どんな女であってもこうやって、いかにも優しく抱くのだろう。
403ロック×レヴィ 月  ◆JU6DOSMJRE :2010/02/07(日) 21:04:08 ID:EH+S4pqv

分かってる。分かってる。
――当たり前だろ。
つい勘違いしてしまいたくなる衝動を抑え、レヴィは自分に言い聞かせる。
自分が彼に対して抱いているような種類の感情を、
彼が自分に対して持っているはずがない。
こんな、狂暴で、破壊と人殺ししか能がない、およそ女らしくない女に対して。
穢れという穢れすべてをこの身に溜めた女を、どうして肯定的に思えるだろう。
男は、感情が無くたって割り切って快楽を追求できるものだ。
それは自分が身を以て実感してきた事実じゃないか。
彼だって男だ。
発散したいことだって当然あるだろう。

なぜ自分を選んだのかは分からないが――
一番手近にいたからか、
性別が女であれば誰でも良かったからか、
娼婦を買う勇気が無かったからか、
それとも、只で抱けるからか――。

特に一番最後にゆきあたった可能性に、自分で考えたことながら、レヴィの胸は激しく痛んだ。


でも、それならば良いのだ。
むしろそれこそが、望ましい。
レヴィは自分を落ち着かせる。
自分が厄介な感情を飼っていたとしても、彼がただ欲求を解消したいだけなのであれば、
それはそれだけの関係で終わる。
一時の快楽を分け合うだけ。
何も発展はしない。
ひっそりと育ちつつある感情も、餌を与えられなければそのうち死ぬだろう。
そうして、自分たちは生き延びる。
――殺せ。
レヴィはそっと自分に命令する。
自分さえうまくこの感情を殺すことができれば、何の問題も無い。
この男に知られてはならない。

――殺すのは、得意だろう? 


レヴィは、振り切るように彼を求めた。
深く、大きく。
どんなに彼が激しく動いても、レヴィの身体はなめらかに受け入れた。
――淫売? 上等だ。
何も間違っていない。


しかし――。
理性とは逆の場所で思う。
もし。
もし、彼が自分をただの道具だと思っている、なら――。
 
それは。
すこし、
つらい。
404ロック×レヴィ 月  ◆JU6DOSMJRE :2010/02/07(日) 21:05:33 ID:EH+S4pqv
彼言うところの『趣味』を達成するための、道具。
彼はもう、レヴィ肌がどう熱くなるのか、どこに触れると身体が溶けるのか、
どんな風に達するのか、全部知っている。
レヴィがこの行為に溺れていることだって、百も承知だろう。
逃げないように、裏切らないように、繋ぎとめて――。
それは担保か、報酬か。

分からない。
全く、分からない。
レヴィには彼の本心など分からない。

――それでも、あたしは、――。

「――――――あぁ……っ」

こらえきれない声が、吐息とともにあふれ出た。
辛うじて目の前の首筋に顔を埋めるのが間に合ったおかげで、
彼に顔を見られてはいないはずだった。
けれど、声だけは間に合わなかった。
すべてが露呈する、女の声だった。
今、彼はさぞかし淫らな女だと思っていることだろう――。
そう思うと、レヴィはたまらなく情けない気分になった。

レヴィは矛盾を抱え込んだまま、縋りつくように、ロックを抱きしめる。
彼にぎっちりと絡みついたのは、
正常な世界から昏い地獄の水底へと引きずり込む、呪われた腕に違いなかった。


その後は、結局欲望だけが残った。
彼に腰を引き寄せられ、強く打ちつけられると、レヴィの熱も高まる。
――もっと、このまま……。
削ぎ落とされたシンプルな思考は、ダイレクトに彼へ伝わるらしかった。
息もままならないレヴィの感覚を、彼は容赦なく押し上げた。
レヴィの脚は強ばり始め、自らの腰も、彼の動きに合わせて動く。
大きくベッドがきしむ音と、レヴィがつめていた息をつぐ時に喉を震わせる音、
ロックが息を吐く音の裏で、小さく、しかし確かに、体液の粘る音がした。
最後は意識だけになって、声もなく、果てた。
きつく収縮を繰り返すのが、彼にも伝わったのだろう。
少し遅れて、レヴィの奥で、彼も果てた。


深い憂鬱をかくまいながらも、レヴィの身体には甘い陶酔感が満ちていた。
繋がりをといて、少しの間天井を見上げた後、レヴィはくるりと身体を横向きに回転させた。
まだ静まりきらない呼吸に肩を上下させながら端の方へにじり寄って、彼のためのスペースを空ける。
シングルベッドは狭い。
シロップの中を漂っているような浮遊感に身をひたしていると、
ロックの手が首のあたりに寄せられた。
少し頭を上げると、首の隙間から入り込んだロックの手が、レヴィの肩に巻きつく。
汗ばんで少し湿った肌。
目を合わせると、彼が微笑んだ。
つられて、レヴィの顔も緩む。
彼の手によって引っ張り上げられた上掛けで肩をくるまれながら、レヴィは思う。
ロックが何を思っているのかは分からない。
自分に都合の良い夢を見たって、後で馬鹿を見るのは自分自身。
けれど、眠る前、こんな風に上掛けをかけてくれる人なんか、誰もいなかった。
今だけは、その事実に満足したかった。
彼によって小さな灯りが消された暗闇の中で、眠りに身をまかせる。
――今だけだ、今だけ……。

すぐに、レヴィの意識は闇の底に沈んでいった。
405ロック×レヴィ 月  ◆JU6DOSMJRE :2010/02/07(日) 21:06:32 ID:EH+S4pqv
 * * *

――もう、やめられない。

ロックは、吸い寄せられるようにレヴィの紅い唇に口づけを落とし、
しなやかな身体を腕の中に閉じこめて、彼女の体温を肌で感じながら思った。
彼女の腕が背中にまわって抱きしめ返されると、自然に抱き込む腕にも力が入った。

――もう、やめられない。

素肌の彼女はやわらかく、
首筋からは、火薬臭さの奥に野生の果実のような甘酸っぱい香りが匂いたつ。
しっとりとした首筋に唇を寄せると、彼女がほんの少し震えて、息を漏らした。

――もう、どうしたって、やめられない。

今日も、劣情は止められなかった。


やわらかく狭い内部を押し進めると、彼女の顎が上がって、吐息が漏れた。
眉が苦しそうに歪められる。
合わせた彼女の瞳には、苦痛の色がのっていた。
優しく、触れているつもりだった。
痛い思いはさせたくなかった。
ゆっくりと、大切に抱いているつもりだった。
ちゃんと、待って、ととのえて。
けれど、どんなにそっと触れても、彼女の瞳は痛みを伝えていた。

ロックは時々、彼女のことが分からなくなる。
こんなに近くで触れていても。
406ロック×レヴィ 月  ◆JU6DOSMJRE :2010/02/07(日) 21:07:36 ID:EH+S4pqv

前に、「痛い?」と訊いたことがある。
レヴィは否定した。
確かに、繋がったところはなめらかに潤って、身体を傷ませているわけではなさそうだった。
――じゃあ、何がいけない……?
彼女は行為中の余計なお喋りを嫌う。
その問いはうやむやのまま、立ち消えた。

けれど、本当は分かっている。
傷つけているのは、彼女の身体じゃない。
ロックが爪を立てて引っ掻いているのは、彼女の――記憶。

思い出させたいわけじゃない。
苦しみを与えたいわけじゃない。
彼女のつらさを少しでも和らげたい。
自分は、彼女を傷つけた男たちとは違う――。

しかし実際は、ロックもそんな男たちと、そう大差無いのかもしれなかった。
愛の言葉ひとつ吐けずに、優しくしたかった身体も、最後には自分の欲求を追い求めてしまう。
何かに耐えるように身をよじらせ、喉を晒し、身体を反らせる彼女。
締まった、それでいてやわらかい鞭のような彼女の身体に、ロックの自制心は遠のく。

あたたかく締めつける彼女のなかを何度も往復して、彼女の吐息を耳元で聞く。
声を殺す彼女に、そんな風に我慢することはないのにと思いつつも、
そうやってこらえる姿にそそられ、短くこぼれ出た細く震える声に胸の奥を抉られる。

「――――――あぁ……っ」

ロックの首に縋りついた彼女の、泣きそうな声が頭の芯まで響いて、罪悪感が膨れ上がった。
――違う。思い出すな。俺は違う。俺は、お前を、――。

けれど、その後に続く言葉はいつも見当たらなかった。
407ロック×レヴィ 月  ◆JU6DOSMJRE :2010/02/07(日) 21:08:26 ID:EH+S4pqv

日本で、初めて彼女と交わった時。
あの時も、言葉は無かった。
ただ、時が来た、と思った。
こうなるのは必然。
その時が来ただけだ、と。
言葉は無くとも、触れたところでお互い通じ合えた気がした。

そのすぐ後。
自分たちが越えてしまった一線は、生死の一線だったのだということをまざまざと見せつけられた。
共に生きようとすれば、ああなる。
二人の前に横たわっていたのは、血にまみれた二つの骸。
しかし、まだ間に合った。
行為に意味を与えてはいけなかった。
そして、言えなかった言葉は、行き場を失った。

それは、本当に「間に合った」のか――?
それとも、「遅かった」のか――。

時々、すべてがどうでも良くなって、洗いざらいぶちまけてしまいたくなる。
言えてしまえば、どんなに楽だろう。
――けれど、言えない。
言っては、いけない。
408ロック×レヴィ 月  ◆JU6DOSMJRE :2010/02/07(日) 21:09:47 ID:EH+S4pqv

結局本能に負けて彼女をむさぼって果てた後、
力なく横たわり、眠たげな顔をしている彼女を抱き寄せて言い訳のように微笑むと、
彼女はかすかに睫を震わせた。
それは「笑顔」と呼ぶにはあまりにも不十分なものだったが、
すぐに掌からすり抜けていってしまいそうな一瞬のあどけなさが、ロックの胸を打った。

ベッドサイドの読書灯を消すと、横向きに身体を寄せていた彼女は、
ロックの肩口で頭を安定させるように位置を探した。
二、三度、鼻先をロックの肌にこすりつけるように。
そして、片手をロックの腕の付け根あたりに置くと、すぅっと彼女の身体の力は抜けた。
一回大きく息を吸って、長く吐いたかと思うと、すぐに呼吸は穏やかなものとなった。

ロックは、くるりと丸められた彼女の肩を抱きながら、思う。
本当はこうして身を寄せ合って眠るだけでいいのに、と。
彼女に、あんなつらそうな顔をさせたいわけではなかった。
何の武器も身につけず、こうやって無防備な身体をすり寄せて眠る彼女を見るに、
一応ロックにそれだけの信頼を寄せていると言ってもいいのだろう。
抱き寄せると、ふわりと身体の力を抜いて頭を預けてくる彼女。
それだけで、充分幸せなことなのに――。

けれど、彼女の姿を見ればそばに行きたいと思い、
そばに行けば触れたいと思い、
触れれば抱きしめたいと思い、
抱きしめれば、もっと深く繋がりたいと思うのだ。


レヴィはロックにとって特別な女だった。
そして同時に、ロックは彼女自身に、特別な女だということを自覚して欲しかった。
驚くほど自己評価の低い、やけっぱちな彼女に。

しかし現状は、ただ性欲をぶつけているのと何も変わらない。
最悪の状態だった。
生理的な快楽が欲しいわけではないのだと、そうではないのだと口に出せないのなら、
せめて彼女を抱くべきではない。
分かっているのに――。

本当は、彼女に訊かなければいけないのは、痛いかどうかではない。
つらいかどうか、だ。
やめなければならないことを分かっていつつ、彼女が否定してくれそうな問いを選んでいる。
――俺は、卑怯だ。
彼女の明確な拒絶が無いことを免罪符にして、終わりを引き延ばしている。

だが、腕の中で穏やかに寝息をたてるレヴィを手放す決心などつくはずもなく、
ロックは彼女を静かに抱き寄せ、ため息をついた。
409ロック×レヴィ 月  ◆JU6DOSMJRE :2010/02/07(日) 21:11:13 ID:EH+S4pqv
 * * *

不意に意識が浮上して、ロックは瞼をゆっくりと持ち上げた。
眠りについた時には腕の中にあったはずの体温が、消えていた。
すぐ横にあるはずのレヴィの顔も無い。
寝ぼけ眼を巡らせてみると、
隣で背中を丸めて膝を抱えているレヴィの後ろ姿があった。
腰から下には上掛けがかかっているが、裸の上半身は夜気に晒されている。
日中は暑くとも、夜は結構冷える。
寒々しい姿に、はやく中に入れと言いたくなったが、しかし、ロックは声をかけられなかった。
窓から射し込む満月の蒼白い光をうけた彼女は、じっと頭を落としていた。
なめらかな背筋はぴくりとも動かない。
どうした?
そう言って、後ろから抱きしめてやれたら――。
だが、起き上がって腕を伸ばせば届くほんの1メートルほどの距離が、とてつもなく遠く感じた。
――届かない。
彼女は時々、すとんと昏い奈落の底に落ち込んでしまったように遠くなる。
くるくると変わる表情は凍りつき、もう百年も生きてきた老婆のような顔をする。
どんなに手を伸ばしても、彼女の奥底には届かない。
泣くか怒るかしてくれた方が、どんなに良いか――。

その時、レヴィの手がゆるりと動いたので、ロックは反射的に目を閉じた。
寝たふりなどする必要は無い。
けれど、今ロックが目の当たりにしたのは、多分、剥き出しの彼女だった。
それを黙って見ていたのは、きっとそれを見せる気など無かった彼女に対し、
ひどく無遠慮な振る舞いだったように思えた。

彼女は脚の方も上掛けの中から抜き出し、めくれた部分をロックに掛けた。
そして、肩の方までしっかりと掛け直そうとする。
上掛けを持った彼女の手が顔の近くまで迫ってきて、
ロックは瞼が震えないよう、必死で呼吸を抑えた。
下ろした瞼の向こうに、彼女の視線を感じる。
ぎし、とかすかにベッドがきしんで、彼女の気配が近づいた。
手の熱が寄せられてくる。
額と目の奥あたりの神経が、彼女の指先から放出される圧力で押さえつけられるように緊張した。
――触れる。
そう思ったが、彼女の指は前髪をすくい上げるように絡め取っただけで、離れていった。

レヴィがベッドから降りる。
脱いだ服を着る衣ずれの音がした。
ベルト、そして二挺のカトラスが入ったホルスターも身につけている。
コンバットブーツを履く、重たい音。
ドアが静かに開けられ、そして、閉まった。

彼女の足音が外の廊下を遠ざかっていったところで、ロックは目を開けた。
いつも彼女は朝になる前に黙ってひとりで帰ったりはしない。
時計を見てみれば午前二時を過ぎたところ。
こんな夜更けに女の一人歩きは危ない、という常識はレヴィには当てはまらないが、
ロックは自らもベッドから出ると、服を着込んで部屋を出た。
彼女の様子が気にかかった。
410ロック×レヴィ 月  ◆JU6DOSMJRE :2010/02/07(日) 21:12:29 ID:EH+S4pqv

外に出ると、耳が痛くなるほどの静けさがロックを包んだ。
夜中であっても常に銃声や怒声、破壊音が響くこの街にしては、不気味なほどの静寂だった。
急いで左右を見回すと、通りの向こうに、小さくなりかけたレヴィの後ろ姿があった。
ロックは、彼女に気づかれない距離を保ちつつ、そっと後を追った。
彼女は街の賑やかな方へは足を向けず、淡々と歩いていく。
自分の下宿に折れる道も素通りした。
段々と街灯がまばらになっていく。
蒼い満月の月明かりが存在感を増した。
彼女とは充分に距離をとっているにも関わらず、
自分の靴音が彼女の耳にまで届いてしまうのではないかと思うほど、あたりは何の音もしなかった。

その静寂を破ったのは、穏やかな波の音だった。
海はもうすぐそこだ。
潮の匂いが届いた。
防波堤の向こうに、暗く波立つ水面が見える。
空を見上げてみると、天頂から少し傾いたところに、
くらりと眩暈を覚えるような蒼白い光を放つ満月が出ていた。
雲ひとつ無い、星を散らした夜空の中で、月は冷たくそこにあった。
冴え冴えとした光を、海面は静かに受け止める。
黒い水の表面に、月の道ができていた。

レヴィは防波堤を降りて、小さな砂浜になっている波打ち際を歩いていった。
砂の上にブーツの足跡が転々と連なる。
ロックは防波堤に行き着いたところで少し足を止めて、遠ざかってゆく彼女の後ろ姿を見守った。
彼女は、砂浜に生えている椰子の木のところまで歩くと、そこで足を止め、幹に背中を預けた。

ロックも防波堤を降り、彼女の足跡を追った。
重たい砂に足を沈ませて、背後から一歩一歩静かに近寄る。
段々と、幹の陰から覗く彼女の半身が大きくなっていった。
黒いタンクトップの背中で、髪が風に乱れる。
いつもは無造作にひとつに纏めている長い髪。
陽の光に透けると薄茶にも赤茶にも見えるその髪は、今は闇を吸い込んだように暗く、
月の光に照らされた肌だけがほの白く浮かんでいた。
その時、風向きが変わった。

不意に届く細い声。
歌声だ。
聞こえるか聞こえないか程度の、ほとんど囁くような。
ロックは思わず足を止めた。
まわりを見回してみたところで、周辺には二人しかいない。
歌っているのは、ロックでなければ彼女に決まっている。
今にも消えてしまいそうにかすかな声でも、掠れ気味のアルトは間違いなく彼女のものだった。
ロックは息をひそめて耳をすませる。
411ロック×レヴィ 月  ◆JU6DOSMJRE :2010/02/07(日) 21:13:55 ID:EH+S4pqv

「――私を月まで連れてって。そして、星の間で遊ばせて」
そう歌う、有名なジャズナンバー。

――"Fly me to the moon"

しかし、普段ノリの良いアップテンポの曲を好む彼女にしては珍しい選曲のように思われた。
ロックはぼんやりと考える。
ニューヨークのスラムで育ったという自分が知らなかった頃の彼女も、
この曲を歌ったことがあるのだろうか。
彼女が「糞溜め」と称するところから連れ出してくれる「誰か」を夢見て。

こんなことを想像したところで、彼女に聞いても、
返ってくるのは冷笑を伴った否定だけだということは分かり切っているので、
真偽の程など分かりようもないのだが。

「――私の手を握って」
「――ねぇ、キスして」
およそレヴィに似つかわしくないフレーズが彼女の唇から零れる。
それが存外に美しく聞こえたのは、何も彼女が英語を母国語として育ったせいだけではないだろう。
透き通るように高く明るい声などでは、決して無い。
酒と煙草のせいでわずかに掠れた声。
けれど、囁くような音で密やかに歌う声は、どこか甘やかな透明感を宿していた。

彼女は歌詞を違えることなくつむぎ出す。


「――ずっと変わらずに愛して」
「――私はあなたを愛してる」

――"I love you!"

彼女は絶対に言わないであろう言葉。

――歌でなら、聞けるのか。
苦々しさを滲ませて、ロックは思う。

現実に彼女自身の言葉として聞くことは叶わないだろう。
そして、ロックがそれを言うことも。
ロックは、彼女を死の縁に追いやる事を良しとしない。

永遠に聞くことはできないであろうその言葉を聞いてしまったことは、
喜ぶべきことなのか、それとも悲しむべきことなのか。
分からぬまま、彼女が最後のリピート部分を口にするのが聞こえる。

しかし、二度目の"I love you!"がロックの耳に届くことは無かった。
412ロック×レヴィ 月  ◆JU6DOSMJRE :2010/02/07(日) 21:15:39 ID:EH+S4pqv

「立ち聞きとは良い趣味だな、ロック」
レヴィが空を見上げたまま、突然歌を中断させたから。
我に返ると、彼女はゆっくりと顔だけで振り返った。
「……いや、邪魔しちゃ悪いと思って、レヴィ。偶然聞こえて……その、珍しかったから」
言いながら歩み寄って隣に並ぶと、
「……ふん。悪かったな、似合わなくてよ」
いつものようにふてくされたレヴィは、顔を伏せて煙草を取り出した。
「そんなこと言ってないだろ」
綺麗だった。上手かった。
そんな事を言おうものなら、彼女が顔をしかめて不機嫌になるのは目に見えている。
しかし、こうしてロックが隣にいることについては何も言わないところを見ると、
そう腹を立てているというわけではないのだろう。

「夜中にひとりで出て行くなよ。心配するだろ」
彼女を追って来た目的を思い出して言うと、レヴィは小さく鼻で笑った。
「心配? アホぬかせ。ガキじゃねェんだ。お守りが必要なのは、丸腰のあんたの方だろ」
「それはそうだけど……。心配ぐらいさせろよ」
火のついた煙草を、レヴィは吸い込んだ。
そして煙を吐き出す。
「……勝手にしろ。――ただの散歩だ」
――いつから、気づいてた?
人の気配には聡いレヴィが、
自分が背後に立っていることを最後まで気づかなかったなどということがあるだろうか?
しかし、ロックはそれを口に出すことはできなかった。
「……何となく、月が出てたから。それだけだ」
煙草を唇の端に引っかけてくぐもった声を返すレヴィを横目で見て、
ロックはそれ以上追求するのはやめにした。
自分も煙草を取り出してくわえ、火をつける。
「ああ、なんか今日の月は蒼いな」
「そうか?」
「大気の具合かな」
「……さぁな」
隣でレヴィが、深々と煙草を吸い込む。
……ジ、と巻紙と葉の焦げる音がして、先端がふわりと朱さを増した。
一緒に見上げた視線の先で、二人分の煙がゆっくりと夜空に立ちのぼり、絡まって溶けていった。
413ロック×レヴィ 月  ◆JU6DOSMJRE :2010/02/07(日) 21:17:29 ID:EH+S4pqv

「月、綺麗だね」
しばらく続いた沈黙を破ったロックの言葉に、レヴィはちらりとこちらを見上げた。
「……なんだよ、さっきから。イェーツにでもなったつもりか? そんなもん見りゃ分かる」
「言ったのは俺じゃないよ。詩人でもない。作家だ」
「……フン。どうりで寒気のするセリフだと思ったぜ。日本人か?」
レヴィは興味無さそうに煙草をくわえたまま、月へ目を戻す。
「そうだよ。夏目漱石って人」
「ナツ、メ……? 知らね」
そう、レヴィは知らない。
「うん、ま、そういう人がいたんだ」
知るはずが、ない。
「随分おセンチだな、ロック。日本が恋しくなったか?」
「そうじゃないさ。何となく思い出しただけだ。――柄じゃないのは分かってる」
何も知らないレヴィが、唇の端で小さく笑った。
「……さすが"blue moon"。滅多にないことが起こる夜だ」
「まったくだな。レヴィの珍しい歌も聴けたし」
「うるせェ」
レヴィは、眉をひそめて睨み上げてくる。
その剥き出しで冷たくなった肩に、ロックは手をまわした。
「帰ろう、レヴィ。夜は冷える」
「……ああ」
レヴィは案外素直に提案を受け入れた。


二人で、来た道を戻りながらロックは思う。

レヴィは知らなくていい。
この先も、ずっと。
知らなくていい。


夏目漱石が、" I love you."を「月が綺麗ですね」と訳したことなんか。




414名無しさん@ピンキー:2010/02/07(日) 21:22:33 ID:3+t3qQKD
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
切ないねぇ、泣かせるねぇ!
エヴァであの曲を知った人間は多いだろうが、夏目漱石のくだりはみんな知らんだろうなw
GJ!
415訂正  ◆JU6DOSMJRE :2010/02/07(日) 21:49:48 ID:EH+S4pqv
>>404
2行目 誤)「レヴィ肌」 → 正)「レヴィの肌」

誤字脱字が多くて申し訳ない。
416名無しさん@ピンキー:2010/02/07(日) 22:01:16 ID:TveDTbWm
>>413

うわあぁぁぁ!すごくいいです。
レヴィ切ないなー。ロックが幸せにしてあげてくれ!

いいもの読ませてもらいました。ありがとう!
417名無しさん@ピンキー:2010/02/08(月) 01:29:53 ID:RylIfSZ+
もう最高!
まとめ方がうますぎる!
418名無しさん@ピンキー:2010/02/09(火) 08:08:04 ID:2hqklrDr
GJまじでGJ!
前回のもよかったけど更に切なさ上乗せでいい!

ロクレヴィはお互い不器用過ぎてもどかしいぜ。
だがそれが萌える。
ロックいっそ孕ませちまえよw
419名無しさん@ピンキー:2010/02/09(火) 08:57:53 ID:HFEQefYe
>>418
どぞ

「というわけで、借りて行くわね」
ホテルモスクワタイ支部が首領、バラライカがそんな台詞とともに岡島緑郎を連れ去って行ったのは、5日前のことだった。
彼の『パートナー』であるレヴィには彼が連れていかれた小難しい事情は解らない。
何回も説明されて理解出来たのは…。
ロシアがアジア向けに計画する石油パイプラインの利権に、日本の商社が首を突っ込んで来たとか何とかで、
ロシアンマフィアと太いパイプのある現政権であるが故にホテルモスクワのアジア拠点であるタイ支部のバラライカも関わらずにはおれず、
その流れで日本の商社出身故にロックにアドバイザーとしての白羽の矢が刺さり、何故だか1ヶ月間レンタルされる運びとなった。
それだけ。
簡単に貸し出されやがって、おかげであたしの我慢は限界だ。レヴィはたまらなく苛々していた。

出会って6年。
なし崩しの同居を始め、彼の子供を産んでもうすぐ3年、2年。
腹の中にもう1匹。
身重の『同居人』と手のかかるクソガキ2匹を残してロックはどこぞに行ってしまった。
まぁどこぞというか、シベリアだが、どこだろうと関係無い。問題は、今金切り声を上げて泣いている娘と息子。
この2匹をどうやって黙らせるか、だった。
まるで動物だ、レヴィはそう思う。
人間の言葉が通じない。母親という生き物になってもうすぐ3年、いまだに泣く子らの扱い方が分からない。
可愛くないわけではない、レヴィなりに二人に目をかけている。
機嫌よく遊んでいる時など何度キスしても足りないくらいだ。キスなどしたことはないが。
けれども一度泣き始めてしまうと相手をするのはロックの仕事。
なのに、今彼はここにいない。
ロックは言っていた、どうして泣いているのか考えてやれば、どうあやせばいいのかわかるものだと。
我が子二人が何故泣いているか、そんなのは明らかだ。
だが、だからといってどうしようもない。
だってそうだ、パパががいないと泣いているのだから。
ママではいやだと言って泣きわめくのだ、こっちが泣きたい。
ああ、この先またこんなモンスターが増えるのだからたまらない。
この惨事の原因で、更なる災禍を我が身に種付けした馬鹿を百回ボコったところで釣りが来る、レヴィは本気でそう思う。
昨日まではまだいい。事務所でダッチに世話を押し付けた。ああ見えて自分よりも手馴れた子守をする。
だが、今日から3日はベニーを伴い武器密輸。
子らのグランパは海の上。
別の誰かに押し付けようにも車はドックだから、一人ならいざ知らずここから子二人を抱いて40分は歩かなければならない、途中で襲われ
れば親子3人蜂の巣だ。
大体、ロハで面倒見てくれるようなお人よしなどこの街でそうそういるものではない。

420名無しさん@ピンキー:2010/02/09(火) 08:58:58 ID:HFEQefYe
最初は放っておけば泣き疲れて寝るだろう、そう思ってた。
なのに、父親不在に加えて母親に無視されて、癇の虫はますます派手に暴れ出す。
1歳までは通じた方法も、自己主張を覚え始めた年頃には通じないらしい。
かと言っておもちゃを片手にご機嫌とりをしたり、ロックが大量に残して行った食事を解凍して与えてみたところで、いやいやと首を振るだけ。
ああ、全く、年子で子供など授かるものではない。
シンクロしているかのように同時に泣くのだ、行動が同じなのだ、姉が駄々をこねれば弟もそれに倣う。弟が泣けば姉も負けじと泣き喚く。
別に子など欲しくなかったのに何でこんな目に遭うのか。
…………………………………
………………………………………………
……………………………………………………………
……………………………………………………………………
…………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………ブチ。
「うるせぇ!ガタガタ言ったってクソオヤジは帰ってきやしねぇんだよ!
泣きやまねえなら海に放り込むよ、それとも人売りのトコでも連れてってやろうか!?」
キレた。
思わず怒鳴り散らす。
泣き声が激しさを増したのは言うまでもない。駄目だ、このままでは手を上げてしまう。だって、それしか方法を知らない。
自分一人では散歩にも連れて行けない。。
いらいらする。
あ、小便漏らしやがった。
いらいらする。煙草が吸いたい。ロックはいないのだから文句を言うヤツはいない。
レヴィは思う。
腹のガキがどうなろうと知るか、よくよく考えればあたしがあいつのガキを産んでやる義理なんかこれっぽっちもありはしない。
一度そう考え至ると、それ以外の結論が見当たらなくて、レヴィはおざなりな後始末をすると泣き喚く姉弟を残して外に出る。
ドアが閉まって、遠くなるはずの泣き声にますます火が点いた。罪悪感が無いわけではないが、15分で戻る。
鍵だけはしっかり締めて買い物に出た。

「あばずれ、お前何してるか」
目立ち始めて久しい腹を隠しもせず、くわえ煙草で食料と酒を抱えるレヴィに聞き覚えのある声がかかった。
「見りゃわかんだろ?ショッピング」
「ガキ共これ一緒じゃないか」
「家。『オルスバン』。ギャーギャーうっせーからエサでもくれてやろうと思ってよ」
そう苦々しく呟くレヴィの手には、アイスクリームやジェリーやヌガーキャンディ、合成ジュースにポップコーン…要するに菓子の類ばかりが詰まった袋。
「ボンクラは」
レヴィを観察するように目を細めて、子らの父親の所在を聞くシェンホアに「ホテルモスクワにレンタル中」と短く吐き捨てる。
「さっきお前の部屋の下とおた時ガキ共泣いてたね」
「だから?」
暗に責めるカタコト女に、努めて冷ややかに問い返す。
余計なお世話だ、今から帰るのだ、帰って、菓子でも食わせれば機嫌も直るだろう。
だが、シェンホアは、深々とため息を吐くとこう言った。
「お前、今顔だけで人殺せるよ、その顔で子が懐くはずなかろ、アホちん。
ガキ共のメシ作るしてやるから頭冷やすよろし。ワタシ、これ損な性格よ、子には敵わないね」
ここにいた。ロハで子守をするお人よし。
421名無しさん@ピンキー:2010/02/09(火) 08:59:54 ID:HFEQefYe
電話が鳴っている。もうずっと鳴りっぱなしだ。
どうやら諦めるつもりの無いらしい相手。誰かなんて想像がつく。だからこそ出たくないのだが、仕方がない。
レヴィは重い身体を持ち上げよろよろと受話器を上げる。
「HELLO?」
『―――レヴィか?出掛けてたのかい?』
予想に違わぬ相手の声。今回の元凶。『同居人』。
「別にぃ。ずぅっといたぜ、……ずぅ〜っとなぁ…」
呂律の回らない声で、無視していただけだと言ってやる。お前と話したくなかっただけなのだと。
『―――…………酔ってる?』
「だとしたら?」
『―――だとしたら…って!妊娠中はお互い止めようって約束したよな?』
日本人を辞めたくせに、こういう時だけ日本のモラルを押し付けてくる。鬱陶しいことこの上ない男にさっき出した結論を突きつけてやる。
「はっ…考えたんだよ、何であたしがてめぇのガキなんざ産まなきゃならねぇんだって」
『―――はい?何でって…ええ!??』
予想だにしていなかったレヴィの言葉に、間抜けな声で疑問符を投げかけるロック。自覚が無いのがますますレヴィを苛立たせる。
「…………………………………もう……いやだ、………うんざりだ」
『―――………チビ達は?』
徒ならぬ様子の通話相手に、ロックは火に油を注ぐとも知らず庇護すべき幼子の心配をする。
「っ…!?どいつもこいつも!ガキ!ガキ!たくさんだ!」
どうやらNGワードだったらしいそれ。レヴィは烈火の如く喚き散らし始める。だが、だからこそ確認しなければと、同じ質問を繰り返す。
『―――なあ!チビは!?』
「てめぇにゃ関係ねぇ」
『―――関係無い!?ふざけるな!もう一度聞くぞ、チビはどこにいる?』
3度目の質問に、レヴィは一言「売った!」と吐き捨てた。
『―――………ぇ……ぁ…………ちょっと待て、今…何て言った?』
ロックは即座に意味を理解出来ないようで、聞き返して来る。
動揺しているのが電話越しでも解った。真っ青な顔が目に浮かぶ。
「売ったよ、ギャーギャーうるせえしよ!うんざりなんだ!」
『―――…冗談だろ?』
震える声で確認する声に可笑しさがこみ上げた。嘲笑を殊更強調して、返してやる。可笑しくて可笑しくてたまらない。
「はははっ…冗談だろ?だってよ!くはは…馬鹿か、てめぇ」
『―――ォ…オーライ、レヴィ、落ち着け、まずは…そう…水を飲んで。お願いだ』
「あたしは冷静だ、お前の方がよっぽどキョドってんじゃねぇか」
受話器の向こうで深呼吸する気配。動揺している自覚はあるらしい。だが、努力空しく声は震えを止められないどころか、涙まで出てきたらしい。
涙声で、縋るように聞いてきた。
『―――そう、なら…そう、売ったって…どこに…』
「この街にゃガキの売り先なんざ掃いて棄てるほどあるさ、見ない顔のヤツだった。」
『―――嘘じゃないなら…お願いだレヴィ、迎えに行って。
     俺が帰るまで…あー…教会か…フローラのところか……どこでもいいから…預けて……頼むから』
「何泣いてんだ、お前。気色わりぃ。見ない顔って言ってんだろ?何処にいるかなんてあたしが知るか…ハハハ…」
受話器の向こうからは、言葉にならない嗚咽だけが聞こえてくる、心底悲しんでいる様子のロックに少しずつだがなけなしの良心が痛み始めた。
「…なぁロック。おまえ…」
『―――ぁ…後でかけ直す!出ろよ?絶対だ』
だが、彼女の言葉半ばで電話は一方的に切られた。
面白くない。いつだってあの男は、こっちの意思を気に掛けない。最悪だ。
それでも、今にも吹き出しそうだった憤りは、電話の向こうで泣きわめいていた同居人の醜態によって圧力を下げたような気がした。
テーブルの上で汗をかいたグラスの中身を飲み干す。冷たく熱い液体が食道を落ちていく。
だが全然味がしない。さっきからどれだけ飲んでも美味くない。
煙草もだ。ムキになって一箱吸ったが、全然美味くなくて、それでもアルコールとニコチンは身体を巡るから、悪酔いで気持ちが悪い。
寝てしまおう、嫌なことを忘れて。
切り際のロックの台詞を思い出して律儀に電話線を抜くと、寝室のドアを開ける。
両親のベッドの上で眠る姉弟。
「寝相わりぃ…」
これでは自分の寝る場所が無い。自分もロックもこじんまりと寝るのを好むというのに、ナンだ揃いも揃って大胆不敵な寝姿は。
どう寝場所を確保するべきか、セミダブルのベッドで涎を垂らして眠る二つの小さな身体を見下ろし考えた。
422名無しさん@ピンキー:2010/02/09(火) 09:00:48 ID:HFEQefYe

信じたくなかった。

少しばかりシェンホアを窺った末、何の畏れも警戒も無い顔で笑って見せたのだ。
ロックやダッチに見せるのと同じ顔。決して自分には向けない顔。
自分は子供達に嫌われているのだ。薄々気付いてはいたが、認めたくなかった。だが、これでは認めないわけにはいくまい。
だって、自分にはあんな顔では笑わない。

意味無く手を上げたことなんて無い。
硬くがさつで、人を殺すしか能の無いこの手で触れるのが怖いくらいだというのに。

恐る恐る二人の身体を壁側へずらして外側に横になる。
鳴り続けた電話にも、怒鳴り散らす母親の声にも起きなかった子らは少し触れた程度では起きなかった。
そういえば昨晩もくずっていたから寝不足だったのだろう。
今日寝付かせたのはシェンホア。
何もかも面白くなくて、でも子らにとってこの方がいいのだろうと、黙って見ていた。
二人まとめて抱え込むように腕を延ばす。
子供独特の高い体温に頬を寄せ、陰鬱にため息を吐いた。
ロックは自分の狂言を信じてしまった。
まるで信用されていない。否、事実、酒と煙草でフラフラしているのだから信用されないのも当然だ。
哀しい。
何故。
同居人にも子らにも信頼されていない。
必要とされていない。
ママよりパパ。ママよりダッチ。そして、……ママより近所の他人。
―――そして、母親である自分よりも、武器商人や売春宿の主人に信頼を置いた同居人。

ずっと考えまいとして来たことがある。
自分達二人は一体何なのだろう…と。

妊娠するずっと前から、疑問に思っていた。
それを問えば詭弁で煙に撒かれた。
第一子の妊娠時、ロックに妊娠を悟られる前に子を堕ろそうとした事がバレた。
彼は『俺、子供好きなんだよね』と監視するように彼女の部屋に入り浸り始めたのだ。
気付けば彼自身の部屋は物置に、彼女の狭い部屋には彼の持ち物が増えて行った。
産まれる少し前に、今の部屋に越した。
それだってロックが一人で決めて、前の部屋を引き払うよう勝手に手配したのだ。
そのまま今の生活が始まり、仕事の時には教会を託児所代わりに使い、
子守に追われながらも月に2〜3度は性欲を満たすだけのセックスをして、気付けば三人目。
出会ってから今日に至るまで、一度だって好意を伝えられたことがない。
子らの両親だが夫婦ではない。
互いをパートナーとは呼ぶけれど、彼の抱く感情は、きっと友情か、良くて家族愛。
スキンシップが過ぎて共通の子を持つこととなっただけの同居人。
相棒。
目眩がする。
脳がシェイクされているように世界がぐるぐる回る。
酒か煙草か目の前の現実か。原因のわからぬ不快感を目を閉じてやり過ごす。
頭と身体が鉛みたいに重い。
そういえば、夜泣きで眠れなかったのは子供だけでは無いのだ。…今気付いた。
「あっちぃ…」
寝汗で湿った息子の髪に鼻を埋める。そういえば、いつの間にか赤子独特の乳臭さが無くなった。
そのことが…何となくだが、寂しいような気がした。
423名無しさん@ピンキー:2010/02/09(火) 09:01:52 ID:HFEQefYe
聴覚と触覚。二つの感覚が意識を泥の中から引きずり上げる。
服の中に何者かが頭を突っ込んで乳房にしゃぶりついている。こんなことする馬鹿はロックしかいない。
眠い。うぜぇ。無視決定。
『…ホン……だって…………からぁ、何度も言わせんな』
ドアの向こうから声が聞こえる。
よく知った悪友の声。小声。独り言。否、何者かと電話で話している。
「ん…ぁん…」
胸元で乳首に吸い付く唇に思わず溜息が漏れる。

『あんたの嫁もガキも仲良くお寝んねしてるって。………ああ、………だから叩き起こそうか?って言っ………どうしたいんだよ』

嫁?誰がだよ、という突っ込みを抱けど、とりあえず金髪のヤンキー女が話しているのが誰かという想像はついた。
ついでにさっきから乳をしゃぶるのが誰か、ということにも。
「……………ママのおっぱいは製造中止中だっつーの…」
目下、目を背けたい『乳離れの出来ぬ息子のおしゃぶりで喘ぎ声を上げた』たという事実は、羞恥心に忠実に黙殺することにする。
不思議なものだ、されていることは同じなのに認識した相手が違うと性欲など湧きもしない。
湧いたら湧いたで問題だが。
それにしても、わざわざシャツの裾から潜り込むとは器用な真似をする。
だが、今引き剥がせば泣き喚くこと必至。そうなればロックと話さなければならない。今は気が進まない。
身体も重いし気持ち悪い。
レヴィは胸元の頭を服越しに撫でながら聞き耳だけはしっかり立てる。

『…泣くなって………………………ぁあ?そうだよ、製造場所で3人並んで…………』

まだ泣いてんのかよ、ウぜぇ。酷く冷めた気持ちでそう思う。それにロックが泣いているかどうかより気になったことが一つ。
「製造場所ってジョークのつもりか?面白くもねーよ。」
直前に息子に呟いたジョークと丸被りであることは棚に上げ、小さく哄笑する。
というか、さっきから噛まれてる。痛い。ミルクが出ないとなったら食い千切る気か、クソガキめ。

『……ああ、しこたま飲んで吸ってるなこりゃあ……………って………………知るか!』

「何チクってんだよ、死ねクソ尼」
痛みと怒りに身体を震わせながら、ロックに後々受けるであろう説教にレヴィは頭を抱える。
大体、子らを押し付ける便宜上鍵を教会に預けてあるのは事実だが、いざ在宅時に無断侵入されると気分が悪い。
これがエダではなく強盗ならば今頃ベッドの上で三人仲良く脳漿をぶちまけているところだろう。
もっとも、好き好んで実入りの少ない上にリスクの高いこの部屋に押し入る馬鹿はいないだろうが。
想定されうる結果を思い、己の迂闊さに唇を噛む…が、今はそれよりも…。
「ていうか、いてぇぇぇぇええええええ」
駄目だ、限界だ。泣かれるのを覚悟し息子の口を無理矢理引き剥がす。
乳房から剥がされて息子が情けないぐずり声を上げる。
服の外に引き出して抱き寄せると小さな小さな掌で胸をふにふにと触って再びもぞもぞと潜り込んで来た。
「ああぁぁぁああぁぁぁ…もう…、好きにしろ」
諦めに似た溜息が漏れ出る。
上はあっさりしたものだったというのに、こちらは乳が止まっても吸いたがる。
まぁロックのガキじゃ仕方ない。胸を触るのが好きな父親を思い出して再び溜息。
「噛み付くんじゃねぇぞ?」
424名無しさん@ピンキー:2010/02/09(火) 09:02:34 ID:HFEQefYe
『あ?わかったって、ったく、…………………あー、あとよ、あんま首突っ込みたくねぇんだけど、そこまで気にすんなら何で結婚してやんねぇの?』

悪友の口から突如飛び出した『結婚』という単語に耳は象のように大きくなった。

『…は?何?きこえねぇ。あ?………………………………する気がねぇならガキ量産してんじゃねぇよ』

どうやらロックは電話口でぐだぐだと何か言っているらしい。そして、そのつもりは無いと。アホ臭い。

『はぁぁぁあああああ?ヘイヘイヘイヘイヘイヘイ、ロメオぉ?何のハナシだそりゃ…………』

何を言ったのか、エダが頓狂な声を上げて食いついた。何を言ったか気になる。気になって仕方が無い。

『ねぇ?起こしてあげるから…悪いこと言わないから、一回話しなさいよ、ね?』

口調が変わって宥めモードに入っている。
冗談じゃねぇ、余計なお世話だ。
レヴィは言葉無く口の動きだけで彼女に抗議する。今ロックと話せば間違いなく修復不可能なことを口走る。

『あ?明日?わかった、…………………わかったって!……んじゃ、切るからな』

がちゃりと受話器を置く音と、エダの溜息。会話が終わったらしい。ロックと話さなければならないという、今考えうる最悪の事態は避けられた。
このまま寝てしまおうと思いつつ、ロックの言動が気になってたまらない。
息子は、「ママのおっぱい」に夢中で離れてくれない。
暫しの葛藤の末、姉に起きる気配が無いのを確認し、弟を腕に抱えてベッドを降りた。


「ナニ人んち上がり込んでんだよ」
乳をしゃぶり続ける幼子を片腕に抱えたままドアを開けたレヴィを、よく知るニヤけ顔が出迎えた。
「あら、いい恰好。…ケンちゃんったら…オトコノコねぇ」
母親の胸にしがみ付く息子を見止め、からかうような第一声に思わず「殺すぞ」と口から漏れる。
「片乳見えてんぞ」
「知るか」
エダは、薄笑いを浮かべたままレヴィを観察すると「…いいバイヤー紹介してやろっか」と、これまた可笑しそうに提案してきた。
何を言わんとしているかを直感し、思わず息子を抱える腕に力が篭る。
「……………は?」
「『売る』んだろ?」
ニヤけているくせに真っ直ぐと見据えて問う目の前の女が、レヴィの目には悪魔に見えた。
「………誰も買わねぇよ、こんなチビガキ」
視線を合わせることが出来ずに時計を見るふりをして目を逸らす。針は深夜3時をさしていた。
「その位のガキじゃなきゃ勃たねぇって変態も多いぜ」
「…………二束三文じゃ御免だね」
「いやいや、今意外と供給少ないのよん。こいつら見た目も悪かねぇし、結構いい値段つくって」
尚も食い下がってくる女の声は馬鹿みたいにあっけらかんと明るくて、それはいつも酒を飲みながら儲け話に花を咲かせる時と同じ有様。
それなのに、責められているような気分になって思わず舌打ちを返すと、そんなレヴィを鼻で嗤って話題を換えて来た。
「ロメオからの伝言だ。明日の朝電話すっから線抜かないでくれってさ」
「…………………何の用だよ」
「さぁ??あーあと、どうしてもってんなら酒はビールをグラス一杯と煙草は一日一本だ、だってよ」
約束を反故にしたことを責めるでなく、そんな風に譲歩して来たことが意外だった。
いつもなら一方的に理不尽な正論を捲くし立てるのに。
だが、彼の前提としている結果と彼女の希望は食い違っていた。
俯き、人の形に盛り上がった胸元と丸く膨れた腹を交互に見遣り、一言搾り出す。
425名無しさん@ピンキー:2010/02/09(火) 09:03:34 ID:HFEQefYe
「……………………………………………………………………………産みたくねぇ」

言った瞬間、抗議するように赤子が腹を蹴る。
思わず顔が歪んだ。
解っている。
もう後戻りできない程に育ってしまった。ロックが喜ぶのが忌々しくて黙っていたが、もう胎動を始めて半月は経つ。
何も持たないと決めて生きてきた女に重荷と枷ばかり増やしていく男が心底憎たらしい。
それを受け入れる理由も与えてくれないくせに。そのくせそれを捨て去れない女々しい自分も大嫌いだ。
「なら、明日そう言やいい」
「…口じゃ勝てねぇ」
きっとロックは一晩頭を冷やして口八丁で丸め込んでくるに違いない。
叛乱を起こしたところで、いつもそうやって何もかも半端なまま決着し、もう何年経っただろう。
口で駄目なら、強行手段に出ればいい。
そう思って一瞬本気で子らを売り腹の子も殺してしまおうと妄想したが、出来ず仕舞いだ。
「ちゃんと話を聞くって反省してたぜ」
「………………」
思うことを話したところで、叶えられないのなら意味は無い。
そしてそれをエダに話したところで意味はない。
なのにこれ以上話していると、思いもよらぬことを口走りそうだ。
それに、抜け切らぬ酒のせいで、立っていると吐き気がする。
「疲れた。寝る。わりいな、付き合わせて」
素直に礼が出た。夜遊び好きに見えて、昼間は聖職者の皮を被っているこの女の朝が早いのはよく知っている。
「アレキサンドライト買って来てくれるってんだから、エテ公の世話くらい焼いてやるさ」
「ナンだよ、それ」
「さてね。欲しけりゃおねだりしてみろよ。じゃね〜」
片腕で息子を抱えたまま仁王立ちするレヴィにぞんざいに手を振りエダは出て行く。
後姿を見送り、寝るかとドアに鍵を掛け、電話のケーブルを抜いて…そのまま固まる。
泣いてたなー、あいつが泣いたの見たのって初めてガキ産んだ時だけだ。
なかなか出て来なくて股をはさみでちょん切られて悲鳴を上げたら無理矢理部屋に入って来たんだ。
泣きたいのはこっちだってずっと口汚く罵った。
ロックは謝りながらずっと泣いてたけど、ごめんと万回謝られるよりも、
……………………一言、好きだと言われてみたかったのだ。
考えるほど、彼女の中の大嫌いな女の部分が悲鳴を上げた。
挿し直すか否かを逡巡して、床へ放る。子供が心配で泣くなら泣けばいい、と。今は、ただ困らせてやりたかった。

ふと思い出す。そういえば、エダに話の内容を聞くのを忘れてた。
いいや、聞いたところでどうせ大したことは言っていない。それよりも今は寝るのだ。
努めて男のことを思考から追い出して考えぬようにする。
嫌なことを思考から締め出すのは幼い頃から不安や恐怖に曝されて生きてきた彼女の特技の一つ。
今日は上手く出来ないが、眠気が優位に立っている今は問題なくこなせるだろう。
胸に息子を収めたまま再びベッドに横になり、娘の口から垂れている涎を拭いて目を閉じる。

乳首に走る激痛にレヴィが悲鳴を上げるまであと2時間。




大昔に書いて没ったヤツですが…。
426名無しさん@ピンキー:2010/02/09(火) 21:48:24 ID:/lj12Zy1
容量オーバーする前に新スレ

【ベーグル】ブラックラグーンVOL.12【チョコパイ】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1265719459/
427名無しさん@ピンキー:2010/02/10(水) 00:05:46 ID:W2agjfnp
>>419
全然レベルが没じゃねぇww
Good Job!
428名無しさん@ピンキー:2010/02/10(水) 01:26:14 ID:fWWVWA7Y
>>427
自演???
429427:2010/02/10(水) 17:01:03 ID:W2agjfnp
>>428
いや、ただの読み手。
430名無しさん@ピンキー:2010/02/10(水) 21:00:32 ID:Q3c7IEUS
続き無いの??
何で没っちゃったの?
431名無しさん@ピンキー:2010/02/10(水) 21:06:47 ID:XPCP8Spp
相変わらずここの職人さんたちはGJだ

そしてひそかに>>349の続きを待ち続けてます
432418:2010/02/10(水) 22:15:00 ID:8o947jkn
>>419

>>418
> どぞ

> 「というわけで、借りて行くわね」
> ホテルモスクワタイ支部が首領、バラライカがそんな台詞とともに岡島緑郎を連れ去って行ったのは、5日前のことだった。
> 彼の『パートナー』であるレヴィには彼が連れていかれた小難しい事情は解らない。
> 何回も説明されて理解出来たのは…。
> ロシアがアジア向けに計画する石油パイプラインの利権に、日本の商社が首を突っ込んで来たとか何とかで、
> ロシアンマフィアと太いパイプのある現政権であるが故にホテルモスクワのアジア拠点であるタイ支部のバラライカも関わらずにはおれず、
> その流れで日本の商社出身故にロックにアドバイザーとしての白羽の矢が刺さり、何故だか1ヶ月間レンタルされる運びとなった。
> それだけ。
> 簡単に貸し出されやがって、おかげであたしの我慢は限界だ。レヴィはたまらなく苛々していた。

> 出会って6年。
> なし崩しの同居を始め、彼の子供を産んでもうすぐ3年、2年。
> 腹の中にもう1匹。
> 身重の『同居人』と手のかかるクソガキ2匹を残してロックはどこぞに行ってしまった。
> まぁどこぞというか、シベリアだが、どこだろうと関係無い
433418:2010/02/10(水) 22:23:56 ID:8o947jkn
↑失敗orz すみません。。。

>>419
GJ有り難う。
まさか投下くるとは思わんかったw
しかも子沢山だw

ロック、散々孕ませて産ませといてまーだ関係はっきりさせてないのかよ・・・ズルい男!
電話で江田さんに何を言ったのかレヴィたんと同じくらい気になります><
434名無しさん@ピンキー:2010/02/10(水) 22:43:55 ID:wPAs6U3W
ここのスレは投下ペースが遅いかわりにクオリティが凄まじいことになっとるな
435名無しさん@ピンキー:2010/02/11(木) 11:31:13 ID:gg+eKuZ6
>>430
犬も食わん話がダラダラ続いてつまらない

エ ロ く な い
436名無しさん@ピンキー:2010/02/11(木) 13:06:13 ID:yy9Wcjix
必ずしもエロエロでなきゃならない、って決まりはないからなぁ。

普通に面白かったってか自分も続き気になるんだけど書き手さんが書いててつまらないと感じたなら仕方ないか(´・ω・`)
437名無しさん@ピンキー:2010/02/11(木) 23:55:37 ID:Un9sFAZ8
つまらんと思うものを面白くするのも腕の見せどころだぜぃ。
続かせるつもり無いなら投下すんな、投下すんなら完結させろ。



と発破かけてみる。

てか、少なくとも投下分は面白いでつ。
気になりまつ。
438名無しさん@ピンキー:2010/02/12(金) 11:59:06 ID:riGkCx3o
つまんなくないよ!
激しく続き希望
439名無しさん@ピンキー:2010/02/12(金) 21:12:13 ID:rydF84fF
◆JU6DOSMJRE はいいね。
440名無しさん@ピンキー:2010/02/13(土) 07:59:56 ID:o7RwYzpm
普通に飯作って一緒に遊んで団欒してれば子供達も素直に甘えてくるんだろうけどな。
そういう経験がないからレヴィたんもどうしたらいいかわからない罠。
441名無しさん@ピンキー:2010/02/15(月) 21:52:20 ID:oSueFHgi
あれはメタルなんだし、頭振って何が悪いんだかw
見るだけで不快、頭悪い、ダサいんだよお馬鹿さんってわざわざ他人を馬鹿にするくらいなら、
無理してロックなんか来ない方がお互いの精神衛生上いいんでないかい?
程度の差はあれどこにでもいるもんだ、そういうジャンルだ、煽り文句にするバンドは数え切れん。
振ってる本人もふと「頭わりーな、自分」と思ってたりするけどさー

大体さ、君がキャーキャー言いながら見てるステージの上の人も豪快にやってるでしょうにwwww
442名無しさん@ピンキー:2010/02/15(月) 21:54:11 ID:oSueFHgi
誤爆です
申し訳ない。




レヴィたんって部屋で一人でヘドバンしてそう…
443名無しさん@ピンキー:2010/02/17(水) 01:22:02 ID:27vlSjX5
ロアナプラでギターウルフ聴いてるレヴィたんか・・・
444名無しさん@ピンキー:2010/02/17(水) 08:01:04 ID:Vm319I2B
>>442
勝手にお前なんかと一緒にするなよ
445名無しさん@ピンキー:2010/02/17(水) 21:52:46 ID:Chyg64gF
>レヴィたんって部屋で一人でヘドバンしてそう

何故か栗コーダーカルテットのピタゴラスイッチのBGMを聞いて
ふんふんと頷く感じに頭を動かしてるレヴィたんが想像できたんだぜ……
446名無しさん@ピンキー:2010/02/18(木) 08:38:21 ID:kiw2Ba3U
>445

静かにノリノリになってた所を
いつの間にかロックに見られてたってオチですな
447名無しさん@ピンキー:2010/02/18(木) 08:52:24 ID:ezanwCHT
レヴィ「ピタ〜ゴラ〜スイッチ♪」

ロック「…」

レヴィ「……!!(ビクッ」

ロック「なんなら一緒にアルゴリズム体操でもするか?」

レヴィ「フレーミーのほうが好き」
448名無しさん@ピンキー:2010/02/18(木) 12:23:56 ID:4sP2OeS+
>>447

レ「装置作ろうぜ!!装置!!」
449名無しさん@ピンキー:2010/02/18(木) 13:32:32 ID:7PF01KHz
「アルゴリズム行進ー!」
「アルゴリスムこうしーん!」
「「ホテルモスクワの皆さんと一緒にー!!」」


うん、これはこわいw
450名無しさん@ピンキー:2010/02/18(木) 14:17:55 ID:ye7UxiPb
>>449
バラライカと陳さんによる「アルゴリズム体操」・・・駄目だ、「ピタゴルァスイッチ」になってしまうw
451名無しさん@ピンキー:2010/02/18(木) 15:22:44 ID:6PY9ohEJ
手を横にー
あーら危な   『跪け!』
・・・・・・
452名無しさん@ピンキー:2010/02/19(金) 19:37:00 ID:TJtqGxiM
何それ凄く見たいw
453名無しさん@ピンキー:2010/02/19(金) 20:11:18 ID:AbMr0xFX
バレンタイン話とピタゴラスイッチネタの流れを続けて読んだせいで
「バンバンバンバンバレンタイン♪」
って口ずさみながらチョコ作ってるレヴィたんが脳裏に再生されちまったじゃまいか
454名無しさん@ピンキー:2010/02/19(金) 23:50:53 ID:hJXBb5Gb
作品の年代的に・・・


レヴィ「ハッチポッチステーション ゥーゥーゥー」

レヴィ「何でもありのっ♪ 楽しい駅♪ 楽しいなかm…!!」

ロック「レヴィはダイヤさんか…」

レヴィ「…グッチがいい」

ロック「QUEENの曲で犬のおまわりさんか…」

レヴィ「ママミヨ、ママミヨー♪」



ごめんね
455名無しさん@ピンキー:2010/02/20(土) 07:22:18 ID:kHfgvTjQ
なんだ、レヴィたんは教育テレビが好きなのか。
てことは『ひとりでできるもん』や『つくってあそぼ』や『いないいないばあっ』も毎日欠かさず視てるんですね。

それよりグッチがダッチに見えた。
456名無しさん@ピンキー:2010/02/20(土) 12:17:51 ID:KNGaWBP5
おまけまんが見て、女だと思っているレヴィの胸に躊躇い無く抱きついた岡島に萌えた。
普通そこは躊躇うだろ、いつも胸に抱きついてんのか?と。
457名無しさん@ピンキー:2010/02/21(日) 16:03:56 ID:4HRjEAtA
>454 
レヴィ「なんでもありの♪ 楽しい街♪ 楽しい仲間♪ 滅多に魚雷艇 出ないけど♪
さあ おいで (ロック)
みんなでいっしょに (ダッチ)
たのしくあそぼ (レヴィ)
ハッチポッチ(ワンワン!)パ〜ティ〜ターイム♪」

ロック「ベニーは?」

レヴィ「・・・あ゙・・・え、エチケットじいさんで」
458名無しさん@ピンキー:2010/02/21(日) 21:30:45 ID:RBjn9Jva
クリアファイルの女王レヴィにしばき倒され可愛がられる岡島が見たい
459名無しさん@ピンキー:2010/02/21(日) 21:45:49 ID:l7PoSXd6
力関係が最近主従染みてるから、ロック相手にSをしても結局は
「ロックをしばくなんてしたくない、ナンでこんなことしてるんだろう、あたしは最低だ」
ってな具合に、M女として感じまくる展開だな
他のヤツ相手ならそんなこと無いんだろうけど

本当にSでもMでも美味しい稀有なキャラだw
460名無しさん@ピンキー:2010/02/22(月) 04:16:38 ID:BBbX3Lxm
レヴィがテレビ見ながら、まいんちゃんと一緒に料理作ってるの想像しちゃったよ

まいんちゃん「ハピ!ハピ!ハッピー♪」

レヴィ「ハピ!ハピ!ハッピー♪」

目撃したのがバレたら魚の餌かな。
461名無しさん@ピンキー:2010/02/22(月) 07:21:03 ID:KCFcS2OJ
もうレヴィたんの料理の師匠はグッチ裕三、森野熊八先生でいいよw
462名無しさん@ピンキー:2010/02/22(月) 20:45:12 ID:RW2KLn2i
レヴィたんはガサツで下品で殺人鬼なのに、
何故か今まで読んだ漫画の中でも一番カワイイ
463名無しさん@ピンキー:2010/02/22(月) 20:55:58 ID:oRCbdJnJ
>>461
OK、お誕生日プレゼントにはよくカエル(ターナー)、モ〜煮えた(片手鍋)
オニの鬼おろし(おろし器)、フライパンダなどを贈るロックが想像できたw

「レヴィ!」
「ナンだよロック。……ハン? 妙な模様の鍋に、フライパンじゃねぇか」
「これで毎朝俺のために味噌汁を作ってくれないか」
「ミソスープだぁ? お前とうとうココが沸いたのか?
 ロアナプラでお前の国の材料がどんだけ値が張ると思ってんだ!」
「俺がちゃんと買ってくるよ! 大丈夫ツテはあるんだ!」
「……ロック、交渉はお前の得意分野だってのは分かるが、
 ジャパニーズの食い物に関するこだわりだけはどうも理解出来ねェ……(ブツブツ)」

※ちなみに翌朝レヴェッカさんが作ってくれたのはホットケーキだったようです
464名無しさん@ピンキー:2010/02/22(月) 22:59:51 ID:3K7gxriZ
ホットケーキにバターと蜂蜜でなく、生クリームとかジャムだったりしたらなんか微笑ましいw
465名無しさん@ピンキー:2010/02/23(火) 16:21:41 ID:/mLQJvYc
いや、ホットケーキの上のバターが溶けてく様を息を止めて真剣に見つめてるレヴィたんのほうが微笑ましいぞ
466名無しさん@ピンキー:2010/02/23(火) 16:25:48 ID:Uyr1UBKF
レヴィのことだからアイスクリームスクープでバター盛るぞ
つかよ、雨人のバターの塗り方はすげえんだホント
467名無しさん@ピンキー:2010/02/24(水) 15:54:26 ID:2HNrr6IE
>>466
在米者としては同意せざるを得ない
468名無しさん@ピンキー:2010/02/24(水) 18:37:03 ID:ilBobE5q
もうバターメインじゃねえか…
すげぇな
「ほらよ、ロック。」

みんなの分のソフトドリンクを買いに行ってきたレヴィが、スーパーの茶色の紙袋の中から差し出した緑色の瓶を、
俺はしげしげと見つめた。

「何、これ?」

「おめえ、グリーン・ティーが飲みてえって言ってたんじゃねえか、だから買ってきてやったんだ。」

確かに、"GREEN TEA"とも、漢字で『緑茶』ともラベルに書いてある。
いかにも外国人が描いたっぽい、桜か梅の木と、芸者か花魁かよくわからない和服の女性のイラストと一緒に。
…俺は、いやな予感がした。

「あ、ありがとな。」

そう思いながらも、俺はレヴィからその瓶を受け取り、口を開ける。
そして、ごくりと一口飲む。

「あ…甘い!?」

俺は、口の中身を噴出しそうになりながら、咳き込みながら叫ぶ。

「ん…甘すぎたか?
エクストラ・スウィートはよけい喉が渇くだろうから、オリジナル・フレーバーのヤツにしたんだが。」

「な、なんで緑茶に砂糖が入ってるんだよ!?」

「は?」

「いや、だから、何でこの緑茶、こんなに甘いんだよ!?」

「え…つーかよ、アイス・ティーったら普通甘いもんだろ?
こないだお前、リプトンの甘ーいレモンティ、旨そうに飲んでたじゃねえか?」

「緑茶は甘くしないんだよ!」

「紅茶の甘いのはよくて緑茶はダメってのか?
お前、どっかおかしいんじゃねえのか?」

「どした?」

オフィスの奥から、クリームチーズをたっぷり塗ったベーグル片手にベニーがのそのそと出てくる。

「ベニー聞いてくれ、レヴィのヤツ、こんなダダ甘い緑茶買ってきやがって…。」

「え…緑茶って、甘いんじゃないのかロック?」

「ウソ…?」

「ほらなロック、おかしいのはお前の方だよ。」

「レヴィ、俺のクリスタル・ペプシは?」

「ほらよ、ベニー。
つーかよ、お前なんでこんなのが好きなんだ?
普通のペプシのが旨いだろうが?」

俺は、なんだか自分の知っている世界が、ちっぽけなものに思えてきてしかたなかった。
自分の信じている世界が、ガラガラと音を立てて崩れていくような、そんな気分だった。
レヴィとベニーの与太話を聞きながら、俺はだんだん気が遠くなっていった。
470名無しさん@ピンキー
10年以上前にフランスの古城でPV撮ってた某ビジュアル系バンドのロットン似のアホボーカルが、
城主に砂糖入りグリーンティを出されて「邪道だ」とブチ切れたっつー痛い話を思い出した…。
日本人てお茶甘くしないよね。
中国茶も甘くないイメージだが、菓子は破壊的に甘い。
菓子も茶も甘いんじゃ舌が疲れそう…。
タイって菓子は馬鹿甘いイメージがあるけど、お茶はどうなの?