【参号機】 新世紀エヴァンゲリオン 【パターン青!】
353 :
二人のアスカ:
エロパロ1本投下します。エヴァ板だと描写が禁則に抵触するのでこちらに投稿
ジャンルはLSS(love 式波×惣流)
・Wアスカのレズものです。惣流アスカのいるTV版の世界をベースに、4thチルドレンが新劇の式波アスカだったらという話
・完結済み。誤差がなければ全23レス。濡れ場は9レス目からと長いので、
NGワード 二人のアスカ
・時系列的には第拾七話あたり。一旦惣流のシンクロ率がシンジに抜かれ、愛憎が増し始めるころです
・式波が惣流の「隠し子の双子」というのは宮村優子さんが式波のスタンスを例えたものです
354 :
二人のアスカ:2010/02/24(水) 00:27:45 ID:djKyL9q7
「あの女」がアスカの前に現れたのは、使徒の襲来と同じようにあまりに唐突だった。
そしてあの女が来てから、すべてが狂いだしたのだった。
※ ※ ※
相模湾沖に第13使徒発見の報を受け、三機のエヴァンゲリオンと共に現地に向かったシンジとレイとアスカを
迎えたのは、既に使徒殲滅を終え勝ち誇るもう一機の赤いエヴァだった。
「ちょっと、どうなってんの、これ!? なんで私の弐号機が二つもあるのよ? 誰が乗ってるの!」
エヴァから降りた三人のチルドレンは、相模第1路線を移動する赤いエヴァンゲリオンの元に集まっていた。
「こっちの弐号機、角がついてるね。作戦ももう終了しちゃったみたいだし」
シンジは見知らぬ赤いエヴァと、その向うの青い空にそびえ立つ巨大な2本のポールを見上げた。
全高1000メートルにも及ばんとする傾いだ柱は、殲滅された振り子時計のような第13使徒の「脚」の部分だった。
柱の上空を哨戒機がいくつか旋回し、綾波も無言でその様を見つめている。
「違うのは外装だけじゃないわ」
赤いプラグスーツ姿の少女が、もう一つの弐号機に仁王立ちして声を張り上げた。
逆光を背負い、金髪を風になびかせて。
「あんたたちの弐号機は所詮量産型の露払いに過ぎないマスプロダクションモデル。
でもこの2号機は違う、闘争に特化してリミッターの人為的な解除も可能な、
特別なエヴァンゲリオンなのよ。世界でただ一機のね」
「ええっ、アスカが二人?!」シンジは傍らに立つアスカと、エヴァの上のもう一人のアスカを見比べた。
「…みんな、紹介するわ。彼女がユーロ空軍所属、そして今日から一緒に闘うフォースチルドレン――
式波・アスカ・ラングレー大尉よ」
ミサトに紹介された少女はふん、と鼻をならすと、そのまま高みから
自分と同じなりかたちの惣流・アスカ・ラングレーをにらみつけた。
355 :
二人のアスカ:2010/02/24(水) 00:29:03 ID:djKyL9q7
今まで、惣流は相手よりも高い位置から初対面の挨拶をするのが常であった。誰よりも優秀な成績を上げ続け、
自己を喧伝することによりバランスを保つという、彼女の脆さと裏表の強さがそうした態度を取らせていた。
ゆえに二人のアスカの出会いとしてこれは最悪だった。
式波が上、惣流が下。
二人のアスカがぶつけ合っていた視線は、2号機が橋を通り過ぎて隠れることによって途切れた。
「ミサト、これはどういうこと。説明して」式波が視界から外れるとすぐさま惣流はミサトに問う。
「私も今はじめて知らされたのよ、ドイツ支部から。向うの説明によると、アスカは惣流家のご令嬢で、
式波大尉は…“隠し子の双子”…みたいなものらしいの」
「はぁ〜!? 隠し子の双子? この私の?!」
と突然のフォースチルドレン配属の経緯を説明していると、式波が輸送台から軽快に駆け下りてきた。
「まったくネルフ本部は役立たずの集まりね。状況終了後に雁首を揃えるとは、そろって間が抜けてるわ」
「ちょっと! そういう言い方はやめなさい」
「あんたが葛城ミサト三佐ね、はじめましてよろしく。で、これが司令のお気に入りのエコヒイキと
ドラ息子のナナヒカリ、シンクロ率三位のサンバンテ(三番手)ね?」
チルドレンは全員プラグスーツを着用しているため、初対面の式波でもすぐに見当がついたようである。
なんですってぇ、と惣流は挑発に激昂し、あわや式波とつかみ合いの喧嘩になりかけたが、
なんとかミサトが仲裁して事なきを得た。
「やめなさいあなたたち! 式波大尉も私の部隊に正式に配属されたわ。これからは一緒に闘うの。
せっかく初めて会ったんだから、姉妹同士仲良くしなさい」
「死んでも御免だわ! 何が姉妹よ!」
「フン!馬鹿馬鹿しい。サンバンテ!」
356 :
二人のアスカ:2010/02/24(水) 00:30:08 ID:djKyL9q7
帰還したネルフ本部、リツコのオフィスでミサトは画数の多い漢字だらけのレポートをめくっていた。
「2016年5月12日、エヴァ2号機および2号機担当パイロットネルフ本部配属。同日12:47、
エヴァ2号機を空輸中のユーロ空軍は期を同じくして襲来した第13使徒と交戦を開始、
同49分水飲み鳥状の目標のコアデコイを超電磁洋弓銃により貫通せしめ、解体後再構築した目標のコアを
洋弓銃の一斉射および弾頭をスパイクとして蹴り込む近接戦闘によりこれを殲滅」
コンピュータのディスプレイを眺めていたリツコが補足を読み上げる。
「機体の損傷率は頭部をかすめた初弾のみで0.02%未満。初陣としては完璧な戦果ね」
コアを失い「あられ」のように自壊した第13使徒の構成部品は現着したドイツ政府の単独調査班が回収、
ネルフ本部への政治的圧力のリソースとした。本拠地たる第3新東京ではなく相模湾での交戦という条件が、
ネルフ本部側にわずかな初動の遅れをもたらし、ドイツ支部に多大なアドバンテージを与える結果となった。
使徒の資料の一部譲渡と引き換えにユーロは式波大尉の個人情報の開示を拒否。
「要はパイロットと引き換えにユーロのやることは不問に処せっていう脅迫でしょう?
第二支部と四号機の消滅に乗じた露骨な勢力争いじゃないの」
「どの国だって自分が一番大事なのよ。人はエヴァのみによって生くるにあらず、されど、
エヴァなしに国家は生くることあたわず。もはや今ではね」
「そのエヴァなんだけど、あのもう一つの2号機はなんなの?」
「おそらく、ドイツ支部の地下に保存されていた建造過程のパーツを使ったものよ。ゴミ捨て場からの再利用。
設計思想もプラグ深度を大幅に重視したユーロ独自のもの、らしいわ」
「さすが赤木博士」
「懸案の3号機も、目下4号機のあつものにこりてなますを吹く状態ね。日本に全部押し付けたいところでしょうけど
ユーロに対抗するため自国で開発続行ね」
最後にミサトは4人のチルドレンのシンクロ率を記述した箇所を見た。
「シンクロ率は式波大尉がトップか。あの影の使徒の事件でシンジ君のシンクロ率は落ちてるものね・・・
なし崩し的に大尉が一位になるわけだけど、アスカ、2度も抜かれるのはショックでしょうね」
「そうね。私達が知っているアスカ、焦るわね」リツコは言う。「人間関係のメンテもあなたの仕事よ」
「式波大尉は加持君ともまったく面識がないみたいなのよ…。ここに来て謎だらけとはねぇ、こんな状況なのに」
357 :
二人のアスカ:2010/02/24(水) 00:31:30 ID:djKyL9q7
しかし、それからは表面上変わらない日常が過ぎていった。使徒はしばらくの間、来なかった。
そして、日本の第3新東京市という異国の地で、式波は孤立無援だった。
責任者としてはいまだ軽率さや稚気の残るミサトとも加持とも面識がない、欧州からの突然の闖入者。
残念ながら3LDKの葛城宅にはもう部屋がない。一人がいい、という式波の強い希望もあって、
彼女は一人暮らしを選んだ。式波が暮らすのは、ミサトに引き取られる前にシンジが入居するはずだった
ネルフ本部地下・居住区域第6ブロックであった。
ユーロ空軍のエースはコード707、つまり第壱中に入学し、シンジ達とは学校と訓練で顔を合せる毎日に
落ち着いた。とはいえ、孤高を保つ式波はクラスメートとも双子の姉とも距離を置いて、彼らを近づけなかった。
葛城家の惣流は加持とよりを戻したミサトと徹底して口をきかず、
シンジもシンクロ率を抜かれてからとげとげしい態度を取る惣流に、困惑していた。
そんな日常のとある日の昼休みに、変化が訪れた。
「あの式波、さん…? これ」
惣流アスカにお弁当を渡した後、ぽつんと教室の席に一人ぼっちでいた式波にも、シンジはお弁当を持って行った。
箸箱には安野モヨコによる可愛らしい犬のキャラクター、パンくいの顔が描いてある。
「何よ、これ」
「お弁当。式波さん、お昼いつも購買でしょ。作ってみたんだけど」
「お弁当なのは見りゃあわかるわよ。私が聞きたいのはなんで作ってきたかってこと」
「ミサトさんに頼まれたから。それに、3人分作るのも4人作るのもあんまり変わらないし」
「『ミサトに頼まれたから』!? 『4人目のおまけ』!? 何よその理由! あんたこの私をバカにしてんの!?」
「ごめんっ」
まずいことを言ったかとあわてて引き返そうとするシンジを式波は引き止めた。
「待ちなさいよ。誰が食べないって言ったわけ。生き物は生き物を食べて生きてんだから、
漏れなく食べつくすのが礼儀ってもんでしょうが。食べるわよ」
「そ、そっか。口に合えばいいんだけど」
シンジから受け取った弁当を一口食べて式波は目をみはった。
「うまいわね、このお弁当・・・! ナナヒカリのくせに」
358 :
二人のアスカ:2010/02/24(水) 00:33:03 ID:djKyL9q7
「アスカ、式波さん、お昼に誘わなくていいの? 式波さんは双子の妹さんなんでしょ?」とヒカリは惣流に言った。
「いいのよ、双子ったってこっちに来てからいきなり知らされたのよ。誰とも付き合いたくないならほっとけば。
第一、姉妹だなんて言われたって、いまさら家族面できるわけないわよ・・・。あっ」
「どうかした?」
惣流は気付いた。忌々しい人形女の綾波が、シンジと式波のやりとりを見ていたことに。
――あれは、あの鉄面皮の人形女にわずかに浮かんだ表情は、嫉妬だ。
シンジを見つめる綾波はいつも通りだったが、惣流は勝手にそのように解釈した。
次の変化は文化祭のときに訪れた。
文化祭でのシンジの出し物は、チェロの独奏の発表と鈴原達と組んだ地球防衛バンドであった。
音楽に没入している間は、煩わしい人間関係を忘れていられる。
午前の部の音楽室で、まばらな観客の中に人を遠ざける同僚、式波をシンジは認めると、やや緊張しながらも
そつなくバッハの無伴奏チェロ組曲を弾き始めた。演奏が終わり式波は控えのシンジに会いに行く。
「あんたにそんな特技があったのね」
「5才のときから始めてこの程度だから、特技ってほどでもないよ」
「ふーん。5才からなら、私の方が1年早いわね」
「式波さんも楽器をやってるの?」
「私は軍事訓練よ。楽器なんてとどのつまり手すさびでしょ。ま・・・・・あんたのはそこそこ達者で悪くないわ」
「なんか、妙な気分だな。アスカにチェロを誉められて、おんなじ曲をまた双子の人に誉められるなんて」
「あのサンバンテもあんたの演奏を知ってんの?」
「まあ一緒に住んでるから。式波さんは一人暮らしだよね?」
「そうよ、一人でいても別にさびしくなんかないから。まあ、でも、娯楽には事欠いてるのよね。
音楽でも聞こうかと思ってるんだけど、チェロで一番すごいのはどこの誰なの」
「一番すごいのって・・・。それは、カザルスだと思うけど。指揮者としてもすごく面白いよ。
バロック音楽でもチェンバロより表現力があるっていう理由でピアノを使ってたり。
あ、全部先生の受け売りだよ。大したことじゃないから」
「あんたって・・・・・・、男のくせに楽器や料理が上手いから、音楽バカの家庭バカね。
ネルフで軍務についてるとは思えないわ。だから、あんたのことをバカシンジって呼んでやるわよ。
その代わり、わたしのことも特別に『アスカ』って呼ばせてあげる」
359 :
二人のアスカ:2010/02/24(水) 00:34:09 ID:djKyL9q7
文化祭から何週間が過ぎた。が、惣流は式波のわずかな変化を見逃さなかった。
学校でお互いを無視してすれ違うとき、訓練やシンクロテストで顔を合せずにはいられないとき、
式波が左手の指に怪我をしているのが目に付いた。しかも、日を重ねるうちに絆創膏は減るどころか
その数を増していった。そしてついにやってきた運命のその日、勘の鋭い惣流が抱いていた疑惑は確信に変わった。
「ほら、シンジ。あんたの分よ」
「あ、ありがとう、・・・・・・アスカ」
「このあたしが直々に作ってやったんだから、もっと嬉しそうな顔しなさいよ。でえ、今日のは? 開けるわよ。
ん・・・。まずまずじゃないの。いっつもちゃんとした素材を選んでるのは誉めてあげるわ」
自分と同じ顔をしたもう一人のアスカが、シンジと弁当を交換している。
しかも楽しそうに料理の作り方を教えあっている――お互いをファーストネームで呼び合って。
少なくとも惣流には二人が楽しそうにしているように見えた。
それまでは自分だけがシンジと名前で呼び合う女だったのに。シンジに声をかけるとき、
名前を呼び捨てできるのは、自分だけの特権だと思っていたのに。
式波の弁当を受け取って微笑むシンジを見て、惣流の中で何かが壊れはじめる。
ジオフロント内、ネルフ本部付きの加持の仕事部屋に惣流はいた。
学校が終わると彼女はすぐさま救いを求めて思慕する男の元に向かっていたのだった。
「加持さん! 加持さん、私ね、今日学校で・・・」
「アスカか。すまないが今忙しい。後にしてくれ」
「・・・ゆうべはミサトと飲んでたくせに」小さく呟くと、惣流は精一杯明るさを振り絞って後ろからじゃれ付く。
「わっ!」
「こら、やめろ! 小さな子供じゃあるまいし、よさないか。妹さんの式波大尉を見習ったらどうだ?」
360 :
二人のアスカ:2010/02/24(水) 00:35:40 ID:djKyL9q7
加持に他意はなかったものの、今、このタイミングでこのように叱り付けるのは惣流の逆鱗に触れることだった。
「何が式波よ。私の名前は惣流アスカラングレーよ! あんなのとは何の関係もないわ、いくら加持さんでも一緒にしないで!
大体あいつは何なんですか?! 私には誰も、何も教えてくれない! 加持さんなら何か知ってるんでしょう?」
「・・・そうだな。確かに、君には知る権利がある。直接の面識はないが、俺の知りえた限りでは真実はこうだ。
君には、生れたとき双子の妹がいた。だが、理由は不明だが君が物心つく前にお父さんが彼女をユーロ空軍に預け、
彼女はそこでテストパイロットとしての訓練を受けた。苗字が変わったのはその時らしい」
「なんでパパはそんなことを・・・。まさか」惣流には思い当たる節があった。
惣流の義母は周囲から「近代医学の担い手」と羨望されるほどの女医であり、義母自身もインテリであった。
エヴァ弐号機の開発に深く関与した実母キョウコもまた、ネルフの優秀な科学者として高い生活水準を保証して余りある。
だから今まで、自分が何不自由なく暮せてきたのは選ばれたエリートだからだと惣流は思っていた。
けれでも、それには隠された秘密があったのではないか。今思い返してみれば、惣流家が自由にしてきた金の額は、
あまりにも大きいのではないか。アスカたちの世代は既にコンビニに物が溢れており、ステーキがご馳走だった
セカンドインパクト世代とは隔たりがある。しかし15年前、確かに存在したあの地獄の季節に、
惣流家が莫大な富を手にすることが出来たのはなぜか。
「パパが自分の子供を売ったってこと・・・・・・? お金のために」
「おい、そんなことを言うもんじゃない。どこにも証拠はないんだ。そう刹那的にならずに、もっと自分を大事に・・・」
「私のことなんか、ちっとも大事に思ってないくせに!!!」
加持の半端な慰めを途中で断ち切って思い切り怒鳴ると、惣流は駆け出した。
シンジにシンクロ率を抜かれ、突然現れた自分と同じ顔の別人、「式波」には自己の存在意義を揺さぶられた。
自分にはプライドがジャマして決して出来ないようなアプローチを「式波」がシンジに平然と仕掛けた。そして、
自分にはただの一度も向けられなかった、シンジの微笑み。
自分もいつか捨てられるのではないか? 親と子の絆が金でたやすく置き換えられるものだとしたら、その場合
金の代わりに捨てられた子供はどうなるのだろう? 人形遊びに倦んだ子供が玩具を押入れに放り込んだまま
二度と手をつけないように、闇に取り残され再び太陽の光を浴びることもなくなるのだろうか?
どこにも確かな証拠はない。それらはすべて惣流の勝手な思い込みに過ぎなかったのかもしれない。
しかし、酷薄な人間関係に魂を傷つけられた惣流には、もう何もかもが限界だった。
361 :
二人のアスカ:2010/02/24(水) 00:36:50 ID:djKyL9q7
そのとき既に式波は自室に戻っていた。
――バカシンジ、あたしの作ったお弁当気に入ってくれたかな。味付けはあれでよかったかしら。私はずっと軍の
寮食だったもの。あいつの料理はお肉も天然物を選んでるし、火加減も味付けもしっかりしてる。今はまだ
上手じゃないけど、いつかきっと、私だって・・・
ハンカチで大切に包み直した弁当箱を胸にかきいだき、我知らず微笑んでいると妙に明るい声が部屋に響く。
「ふーん、軍人のくせに意外と女らしい趣味してるのね。サーベルの一振りでも飾ってるのかと思ったわ」
その声は録音された自分の肉声を聞いたときと同じ違和感を式波に感じさせ、のみならず不気味な卑屈さがあった。
惣流が式波の部屋に立っていたのだった。
「あんた、どうやって入ったのよ!」
「DNA認証パネル」惣流はひらひらと手を振ると、そのまま不躾に部屋の物色を始めた。独身者用のキッチン付き
居住区画。NERVカーゴ2台分の大荷物もどこに行ったのやら、部屋は女の子らしく小奇麗に整頓されている。
ベッドに学習机に本棚。惣流も式波も学校帰りのため壱中の制服を着ており、式波は部屋用のスリッパを履いているが
惣流はソックスのまま靴も揃えずに上がりこんでいた。
ベッドには化粧用のクリームがあった。奇しくもそれは惣流の愛用しているブランドと同じものだった。
好みが同じ、か。机にはCDも雑然と積み上がっている。EMIから出ているチェリストカザルスのCDだ。
「ハン。勉強熱心な努力家ですこと」
「質問に答えなさいよ!」
答える代わりにかばんを雑に床へ放る。式波のベッドに無断で腰掛けた。
「そうよねえ、毎日顔を合せて話題があれば、恋に墜ちるわよねえ」脚をぶらぶら揺らしながら惣流は言う。
「あ、あんた勝手に何やってんのよ!」
「けなげじゃない、料理で気を引いて、音楽の趣味も合わせようっていうの。あんたは人間だもの、人形女とは違うわね」
惣流が枕元に置かれた"ASUKA"と書かれたマペットに手を伸ばすと、式波はベッドに駆け寄ってひったくる。
「触らないで! あんた何様よ、さっさと出て行って」式波は大切なものを側の机に置く。
直接触れられたわけではなかったが、自分の行為が中断された事実そのものに惣流は怒りを感じた。
立ち上がって睨み付けると手を振り上げる。
だが軍人の式波は惣流の平手を受け止め、とっさに柔道の支え釣り込み脚の要領で体重を崩し、ベッドに引き倒す。
川面に浮かぶオフィーリアのように、惣流の細やかな金髪がばっと純白のシーツに広がる。
362 :
二人のアスカ:2010/02/24(水) 00:38:16 ID:djKyL9q7
ベッドの上で、式波アスカラングレーは惣流アスカラングレーの上に覆いかぶさっていた。お互いの吐息が交わるほど近く。
「なんで、あんたなのよ。わたしじゃなくて、どうして!」
そのままの体勢で、惣流は喉の奥からしぼりだすような、悔しさにつぶれた恨み言をつぶやいた。
式波の目の前にあるのは自分と同じ顔、同じ学校の制服、自分と同じ青い瞳。鏡の中で見慣れた己の姿の中で、ひとつだけ
決定的に違う点がある。それは、目に浮かぶ闇の深さだった。同い年とはとても思えない、深い業を感じさせる憎しみと憂い。
惣流の目を覗き込んで、式波は今まで感じたあらゆる恐怖とは違う種類の恐れを感じた。それは、闇を覗き込む者だけが感じる、
闇からも覗き返される感覚だった。
「わたしがほしいものをあんたが手に入れるっていうなら・・・・・・。あんたを全部、わたしのものにしてやる・・・・・・!」
惣流はそういい終わると、ものすごい勢いで式波を跳ね除け、その喉に手をかけ、首を絞め始める。
鬼気迫る態度と言葉に気をとられた式波は、抵抗が遅れて逆にベッドに引き倒されてしまった。
逃れられないよう全体重をかけて腕を押さえると、悲鳴を上げさせる間も与えずに、惣流は自分の唇で式波の唇をふさいだ。
私に腕がもう2本あったら、と惣流は思う。このまま細い首を絞め上げて、窒息させてやるのに。
ふーっ、ふーっと、逃れようと暴れる式波の鼻息が惣流の頬にしきりにかかる。
強く唇を吸われ式波は恐怖した。振り子型の異形の使徒を殲滅した時には微塵も感じなかった恐怖を、
自分の肉体を奪おうとする同じ姿の少女に感じた。
「ちょと・・・やめて、やめなさいったら! はぁ、はぁ・・・。」馬乗りになって押さえつけられたまま、式波は混乱していた。
憎しみに突き動かされながらも、惣流は妙に覚めた意識で式波を見下ろす。
私の偽りの優しさで、この女を壊してやる。まだ、今はおびえていて駄目だ。もっと優しくしてやることが
一層残酷な仕打ちになる。
またがったまま体を沈めて顔を近づける。乱取りまがいのどたばたで、既に式波のスリッパは脱げ飛んでいたから、
二人の格好は鏡に映したかのように同じだった。式波が何か言おうとするよりも早く、惣流は自分の生き写しの胸に手を触れた。
服越しに愛撫したかと思うと、突然ブラウスをつかんでブチブチとボタンを引きちぎり、ブラジャーを下にずらして
胸をむき出しにさせる。壱中制服の蝶々結びのリボンが乳房を半ば隠す形になる。制服を着たままベッドに押し倒され、
胸だけを露出させられているのがどうにも扇情的な光景だった。
「ひっ・・・・・・」式波は絶句した。
363 :
二人のアスカ:2010/02/24(水) 00:39:35 ID:djKyL9q7
式波の乳首は透明なピンク色で小さい。もう一度、むき出しになった胸を、指先を滑らせるようにして優しくなでる。
まだ硬くはなっていなかったが、その乳首を円を描くように指でこね回すと――
「・・・あっ。んぅ・・・」
いける。その鼻にかかったうめき声には、同性の手でもたらされる未知の感覚への驚きが含まれていた。
この女はもっと欲している。惣流は勝利を予感した。
ジャンパースカートの肩紐からスナップをはずす。見事な手管に式波は翻弄されていた。
ミサトと「背が伸びた以外にも女らしくなった」という会話をオーバーザレインボウの艦上で交わしてから、
かなりの月日が過ぎている。式波のどこを責めれば最大の快楽がもたらされるか、どんな愛撫を肉体が欲しているかを
惣流は全て熟知していた。なぜなら、式波はもうひとりの自分なのだから。
まだだ。もっと愛撫してから。ムードも何もない乱暴な始まり方だったから、まだ私を受け入れるには式波の体は準備が整っていない。
「さぁ、体起こして。いいことしてあげるから・・・」
うながすとスカートを脱がせ、リボンをほどき、ブラウスの残っていたボタンにも手をかけていく。今度は丁寧に。
ブラも取り外してぱさりと床に落としてしまえば、いまや式波が身につけているのは赤いラインが一本入ったスポーツソックスと、
縞柄のボーダーショーツと、彼女が誇りとする、パイロットの証たるインターフェースヘッドセットだけとなった。
「あんた、これから・・・私に何をするつもりなのよ・・・・・・」
4歳のみぎりからユーロで軍事訓練を積み重ねてきた空軍大尉が、青ざめ、裸で肩を震わせている。
「怖いの、女が? だったら逃げればいいじゃない、いくじなし」惣流の答えは問いかけをすり替えた挑発だった。
そして返答代わりに執拗に乳房を愛撫する。そう、「私」はこうされるのが好みなのだ。好みが同じ。
式波を仰向けに寝かせると、乳首をぺろりと舐め、おもむろに口に含む。mm刻みで、
乳頭から乳輪へと順繰りに軽く齧っていく。強く吸ってみる。
「ああ・・・。ハッ・・・んん」惣流の唇に吸われて、式波の乳首が硬く勃ち始めた。
ショーツの上から性器の襞を指でつまみあげる。くにくにと撫でさする。クロッチ越しでも感触は柔らかだ――
わずかに湿り気を感じる。爪で蕾の上をかりかりと引っかいてみる。
「い、イヤ・・・。そんなところ触らないで・・・。サンバンテの癖に・・・・・」
もう一押しかしら? だんだん、ほぐれてきたみたい。
364 :
二人のアスカ:2010/02/24(水) 00:40:37 ID:djKyL9q7
「これ、取っちゃうわよ。いいわね。ソックスも・・・」
「・・・・・・」
ライン入りのスポーツソックスまで、式波は自分と同じだ。
式波は腕を交差させて胸を隠し、そっぽを向いて「いや・・・・・・」と小さくつぶやいた。だが拒絶の言葉とは裏腹に、
ほんのわずかにだが、式波は自ら腰を浮かせて惣流が下着を脱がせてくれるのを助けた。すらりとした長い脚を抜けて
縞柄のパンティーが裏返しに丸まってゆく。全裸に靴下だけという卑猥な格好になったが、
最後に残ったそれらも脱がしてしまう
一糸纏わぬ姿の式波を見て惣流は息を呑んだ。本当に、自分と瓜二つ。自慢にしているサラサラのブロンドの髪、
今は潤みを帯び始め、大人しくしていれば優しさすら感じさせる垂れ眼気味のブルーの瞳、押し倒すときに絞め掛けた
折れてしまいそうな首、細い肩、日々女らしさを増して行く体のラインに、高い腰の位置・・・・・・。少し痩せ気味な
おかげで、くびれたウエストの上に肋骨の優美なカーブが浮き上がっている。まるで陶器のようだ。
視線を下に落としてゆく・・・。
清潔で純白のベッドシーツに解き放たれた金髪と同じ、生姜色の薄い恥毛がさらけ出ていた。そしてその下の秘所も。
昔自分自身の性器を見たときは「生肉みたいだ」などと思ってみたものだが、式波のそれはまだ未成熟な印象を与えた。
胸を責めたあたりから、式波の白い肌に赤みが差し始めている。頬もいよいよ朱に染まってゆく。
惣流は制服を全部着たままで式波の肌を視姦しているのだから、恥辱に紅潮するのも当然であろう。
手始めに、惣流は式波の鎖骨にキスをした。式波は弱々しく掴んで止めようとするが、振り切られてしまう。
胸、肋骨、お腹、おへそと、段々と下って雨あられに口づけを降らせる。
「や、やだ、くすぐったいわよ!」
キスと共に惣流の制服のリボンが皮膚を掠めていくのも、こそばゆさを助長しているのかもしれなかった。
ついに下腹部に到達すると、惣流は式波のヘアをしゃわしゃわともてあそんでみた。
「じゃあ、行くわよ」
惣流はそう言うと、つぅっと爪で亀裂を撫でた。
「ああっ、駄目!ダメぇ!」と式波は叫ぶと股を閉じようとする。
「痛くなんかしないわよ・・・。力抜きなさい」太ももをさすってやる。初陣で振り子使徒を蹴り砕いてみせた幼少からの訓練の賜物か、
式波の脚は贅肉がなく驚くほど細い。肌も憎らしいほどすべすべしていた。
ゆったりと愛撫しながら、式波の脚を開かせる。観念したのか抵抗がまるでない。惣流は意を決して昂然と見据えると、
もう一人のアスカの、濡れそぼち始めた果肉に舌を這わせた。それを受けて式波は、アアアっ、とよがり声をあげてしまう。
「何、これ・・・!? 」式波は思わず口走った。
365 :
二人のアスカ:2010/02/24(水) 00:42:18 ID:djKyL9q7
秘所へ舌を這わせようとすると、ツーサイドアップの髪が垂れ下がって邪魔になった。乱暴に首を振って後ろに振り飛ばす。
惣流はぺろりと舌を長く突き出し、式波の芽の部分に押し当て、そのまま一気に腹側に動かして舐め上げた。
一度、二度、三度、さらにもっと。
そのたびに式波は悶えて金切り声を上げる。
「きゃぁ!? アっ・・・あああぁぁ!」電気が流れるような、脳細胞を焼き尽くすような、快楽のスパークが式波を襲う。
何度も何度も単調に繰り返す。効果的だった。だがすぐに舌がくたびれてきたので責め方を変える。
「ほら、もっと欲しけりゃお願いしなさいよ・・・・・」
「うっ、く・・・・・。い、イヤよ、あんたなんかに誰が・・・・・・ あっ?!」
クリトリスが前歯で柔らかく挟まれ、そのまま硬く尖らせた舌先で転がされた。
が、惣流はすぐに口を離して甘美な拷問を中断する。
「んん? それがものを頼む態度かしら・・・・・・? 戸籍上は私が姉よね?」
「や、ぁぁ・・・。う、うう〜。お願い、もっと、して・・・・・・!」
勝った。自分と同じ顔の憎い「アスカ」を私は屈服させた。そう確信した惣流は歪んだ笑みを顔に浮かべると、
願いを叶えてやる。ひとしきり舐めまわしてやった。次に惣流は、愛液でべっとりと濡れた口周りを手早くぬぐうと、
式波の乳房をそっとなでながら耳たぶを甘噛みする。耳も「アスカ」にとっては弱点なのだ。そしてそのままささやいた。
「あんたもさ、自分でしてた?」
惣流が自慰を覚えたのはドイツの大学に在籍中、一度実家に帰省したときだった。
彼女は寝ぼけ癖がある――夜中にトイレに起きると、寝室で父と義理の母が抱き合っているのを見てしまった。
汚らわしいことをまた父と義母がしている。そもそも本当のママが狂ってしまったときからあの人たちは密通していた。
しかし睦みあう両親を見ていると、我知らず腰の奥がジュッ・・・と熱くなった。脚をぴったり閉じて、
股に力を入れると何かわからないが不思議な快感がある。背徳感と性への嫌悪を感じつつも、気がつけば心とは反対に
体の欲望を満たすようになっていた。そしてそれは、たまらなく気持ちが良かった。性という原始的な欲望への嫌悪感、
大人になることへの拒絶とは裏腹の、ねじれた欲求。誰かに認められたい。抱きしめられたい。愛されたい。
ドイツ支部にいたころは、加持さんに優しく抱きしめられることを想像していた。が、日本に来てから同じように
快楽を求めた時、しばしば映画のモンタージュのように、一瞬フラッシュバックで割り込んでくる
憎らしい同居人のイメージがあった。強迫観念のようにまとわりついてくるイメージ。
だが、そのイメージを思い浮かべているときの方が、なぜか感度は確実に向上していたのだった。
366 :
二人のアスカ:2010/02/24(水) 00:43:36 ID:djKyL9q7
そのことに気づいてから・・・・・・ストレスの負荷がどうにもならないとき、惣流アスカは発作的にシンジを想って
自分を慰めていた。どれだけ体で気を引こうとも決して自分の気持ちをわかってくれないシンジが、自分を抱きしめ、
手をつなぎ、キスをして、優しく「愛してるよ」とささやく情景を思い浮かべて。この行為は妄想ゆえに甘美だった。
そして今、自分も父や義母と同じことをしている。獣のように、もう一人の自分の裸体をむさぼっている。自分は服を
着たまま、もう一人の自分の服を剥ぎ取って。欲望をぶつける対象も、碇シンジから双子の妹の式波アスカに成り果てて。
「あんたも私と同じなら・・・おかずにしてたのは愛しのシンジ様かしら」
「イヤ、そんないやらしいこと、話したくないわよ」
「いやらしいこと今してんでしょーが」こりこりとした式波の乳首を意地悪くつまむ。弁当の交換や音楽CDが思い出された。
「どうなの? あそこまでご執心なら、してんでしょ?」
「誰が、言うもんですか・・・たとえ殺されたってそんなこと・・・・・・」
「それじゃあ、私があんたの初めてになってやるわ。あんたがイくところをここで見ててあげるから」
自分が誰にも必要とされなくなってしまう――そんな悪夢が現実になったのなら、今度は淫夢で悪夢を塗りつぶしてやる。
式波の肩をかぷ・・・と噛む。歯型がつくほど強くではない。痛くしては駄目だ。そんな意図を知ってか知らずか、
式波は惣流を抱き寄せ、受け入れ始めた。惣流はひとしきり胸を揉みしだくことにする。式波の髪から立ち昇る
よい香りをかいで、惣流はふと気付いた――こいつ、シャンプーまで私と同じのを使ってるわ。
乳房をリズミカルに撫でさするのを止めると、式波の膣から湧き出している蜜をすくって、乳首に擦り付ける。
潤滑剤代わりにして指の腹を滑らせてみた。
「ほら、こうされるのがあんたの好みでしょ? こうやってするのが」惣流は悔しげに眉をひそめる。「私と同じだもんね」
前戯の締め括りに、惣流は枕を取って式波の腰の下に敷いた。二つ折りにしたり色々と動かしたりして角度と向きを調節する。
「あっ、まさか、これって」
式波の勘のよさは、来たる快楽の種類を敏感に察知した。
「そうよ。自分がもう一人いたらこんなことが出来たのに、って行為」まず、右の靴下を足首まで下ろす。
惣流は左ひざを式波のウェストのくびれに置くと、両手をベッドについた。右脚のすねの部分を、
相手の上向きになった秘蕾にあてがう。そしておもむろに、脚を前後に動かして性器へすねをこすりつけた。
摩擦の無いなめらかな皮膚と骨が、敏感な箇所を滑走していった。硬質な骨とクォーターのきめ細かい肌がつるりと通過するのは、
絹による愛撫よりも繊細でまた大胆であった。爆発するような快感に式波はのけぞって痙攣し、脚をつっぱってブリッジする形になる。
367 :
二人のアスカ:2010/02/24(水) 00:44:27 ID:djKyL9q7
もはや式波の性器はとろとろに充血し興奮している。頃合が来たことを悟り惣流は言う。
「これで・・・あんたは全部あたしのものになるわ」
彼女の裂け目に中指を差し込んでゆく。くちゅ・・・・っと指が飲み込まれていく。1本が限界のようだった。
「はうっ・・・ぁぁ。あぅぅっ!」
第二関節の中ほどまで入った。なんて暖かいのだろう、と惣流は思う。しかもぎゅうぅっと締め付けてくる。
爪を伸ばしているため粘膜を傷つけるのは絶対に避けたかった。今は優しさで相手の肉体を侵食しているのだから。
中指の腹で天井の部分をこする。女医が触診するかのように淡々と。もう一方の手は皮の上から芽を押さえて刺激する。
「あぁ、すごい・・・キモチイイ・・・・・」
官能に息を震わせ肉の悦びに浸りきった式波を見ていると、不意に惣流は空しさに襲われた。私、何やってんだろ。
自分の行為を分析する驚くほど冷め果てた自分を発見し、自らの心と体がばらばらになってゆくような感覚を覚えた。
唐突に、指で責めるのをやめてしまう。式波は息が上がり、みぞおちがばくばくと脈動している。式波の心拍数が
跳ね上がっているのが視覚をもって把握できる光景だった。突然の中断に何が起こったのかと、朦朧とした意識で
式波は双子の姉を見た。
惣流は汚れた右手を凝視していた。親指を人差し指や中指と擦り合わせると、愛液がとろりと糸を引く。
華奢で小さな右手をぎゅっと握り締める。
「ちくしょぉッ・・・」そう吐き捨てると、惣流は体液にまみれた親指の爪をかじり始めた。いや、
爪を噛んでいるのではなかった。爪の下の生皮の部分に犬歯を突き立てて、血が吹き出るまで痛めつけているのだった。
汚れた手の存在そのものを消そうとするかのように激しく。式波は仰天してすぐに止めにかかる。
368 :
二人のアスカ:2010/02/24(水) 00:45:17 ID:djKyL9q7
「な、何やってんのよあんた! やめなさいよ! 血が出てるわよ」
「分かってたわよ、こんなことしてもむなしいだけだって。ちきしょう、ちっきしょう!」
自分の体が蹂躙されたことよりも、惣流が自傷行為に走ったことの方に式波は面食らった。
これは式波が持つ他人を思いやる心、優しさゆえのショックだったが、今は傷つけるのを止めるのが先決だった。
「あんただけが居ればいいのよ!もう私のことなんて誰も必要としてないのよ! 」惣流は叫ぶ。
「私のことなんて誰も、誰もぉ・・・・・・」
もう決して泣かないと自分に誓ったのに、一番見せたくない相手であるもう一人の自分の前で、
悔しさのあまり涙が止まらなかった。
惣流が式波を抱いたのは、自らの欠点を相手に投影し、問題をなすりつけたまま破壊しようとする
精神の防衛機制からに過ぎなかった。そこに愛はなかった。
――結局、惣流が憎悪し、愛することが出来なかったのは惣流自身だったのである。敵意と熱情が退いてしまえば
後には空虚さが残るほかない。だが、女の手の力では汚らわしい自分の肉体を傷つけることもかなわない。自分が
女に生まれたことも、今生きていることも、何もかもが疎ましく憎らしい。だから歯で噛んで、我と我が身を傷つけた。
式波は惣流の本質的なことを何も言わない理不尽な言動に頭を抱えていた。突然あがりこんで暴力を振るったと思いきや、
この上なく優しい快楽を与えて来て、今度は勝手にわっと泣き出す。訳がわからなかった。それでも放っておくわけにもいかない。
つい先ほどまで、式波に愛撫を加えていた時はまるで5歳は年上であるかのような退廃的な色気をまとっていたのが、
今ここで痛みと後悔に震えているのは年相応の少女に過ぎないように式波には見えた。
369 :
二人のアスカ:2010/02/24(水) 00:46:42 ID:djKyL9q7
とめどなく流れる惣流の涙を前に、式波は悩むのをやめて行動に出る。
幼児のように嗚咽にむせぶ惣流の涙をサッとぬぐってやると、きゅっと姉の肩を抱いて包み込む。
優しく、本当の家族にするかのように。
「訳がわかんないわよあんた。あんたは何も言わないもの、全然わかんないわ」
惣流のにおいをかいで、式波は姉が自分と同じシャンプーを使っていることに気付いた。
「わかんないけど、泣かないで。お願い」
「何、よ・・・。同情なんて、するんじゃ、ないわよ・・・」
「同情なんかじゃないわよ。ただ・・・ただ、あんたが心配なだけ」
言葉の上では罵りつつも、惣流が式波の抱擁を拒絶しなかったのには三つの理由があった。
一つは惣流の罪悪感だった。なかば力ずくだったため、当然非難や侮辱を予想していたのだが、
式波は抱きしめて「心配だ」と言ってくれた。式波の裏表がない素直な性格も幸いした。
もう一つは、同じ女の子であるため、惣流が潜在的に持つ男性への依存心と一体になった恐怖心が刺激されなかったことである。
最後に、「こんなどうしようもなく辛いときは誰かに抱きしめて欲しい」という心の奥底の願望が、二人のアスカの間で
共振したことだった。
式波も、日本に来るまではずっと独りで生きてきた。独りではどうしようもない孤独の辛さを、誰よりもよく知っていた。
さびしいという事の辛さを、骨身にしみて理解していた。
さらに式波が惣流を抱きしめることが出来たことにも、大きな幸運が背後にある。狂った母のトラウマがない式波には
素直をに人を愛するという、惣流の周りのどの人間にも出来ないことが自然に出来たのである。
ある決意を込めて式波は言う。
「惣流。服、脱いで。私だけじゃなくてあんたにも必要だわ」
370 :
二人のアスカ:2010/02/24(水) 00:47:35 ID:djKyL9q7
惣流と式波は服のサイズが全く同じだった。お互いの制服が混ざるのと、放置して皺がつくのを避けるために、
ベッドに寄せた椅子の背に一枚一枚脱いだ服をかけてやる。
ブラウスを脱がせたところで「下着は自分で・・・」と言って惣流は背を向けた。
式波はそんな姉に視線を注ぎ続ける。「見てあげる」ということが絶対に必要だと感覚的にわかっていた。
私を見てくれる人は最初からいない――そんな想いを惣流にさせてはいけない。
裸になって向き合うと、今度は惣流が恥らう番だった。式波の方が少女らしく赤らむことが多かったが、
これから行うことを想像すれば惣流も不安と期待を感じずにはいられない。
自分の大胆な提案を惣流が受け入れてくれたことが、式波には嬉しかった。
「あんた、私の喜ぶことばっかりしてくれたけど・・・ここはまだよね」ベッドの上で、式波は惣流の右足を手に取る。
「撫でられるのと舐められるのと、どっちが好き?」
その言葉だけで惣流は式波の意図を悟った。思わず照れから惣流は眼を伏せてしまう。
「わかってるくせに・・・」
承諾の言葉にこくりとうなずくと、式波は惣流の足の裏に舌を這わせた。足の指を一本一本、丁寧にしゃぶってゆく。
惣流は足のネイルにも気を使っていて手入れが行き届いていた。
あっ、とくすぐったさと性感の入り混じる声が惣流の鼻を抜ける。
式波は惣流の腰にまたがって顔の横に手をつく。式波の髪の房が惣流に軽く触れる。火照り始めた顔を覗き込む。
「さっきとおんなじようにすればいいのよね。あたし、あんたほどは上手くないと思うけど・・・」
恐る恐る、不器用に愛撫を加えながら乳首を噛んで軽く引っ張り挙げてみる。
「っ・・・・・・。ちょっと痛いわ。こうするのよ」
惣流は腕を伸ばして式波の胸に触れ、ピアノを弾くように手を戯れさせる。親指をスライドさせて式波の乳首にこすりつけた。
「んっ・・・!」すぐさま式波は反応する。やはり技巧においては惣流が先んじていた。
式波ってすごく敏感、と惣流は思う。自分と同じだと思ってたけど、もしかすると、私よりも感じやすいかも。
371 :
二人のアスカ:2010/02/24(水) 00:48:43 ID:djKyL9q7
惣流は大きく肩で息をしていた。
心のそこにわだかまっていた黒いかたまりを、汗と熱と体液に変換して流しつくしたような清々しさがあった。
緊張の糸が切れた式波は、惣流の隣にどさりと倒れこんで添い寝する。寝そべって惣流を見ると
桃色に染まった乳首がまだ硬く隆起していた。自分が味わった、あの神経が焼き尽くされるような素晴らしい感覚を、
惣流もまた味わったのだ。その余韻の素晴らしさを物語っていた。
惣流と手をつなごうとして式波は気付く。
「そうだ、傷の手当をしないと。えっと、薬箱・・・・・・」
毛布で体の前を隠すと、スリッパを突っかけて薬箱を探しはじめた。ぼんやりと、惣流はその姿を追う。
むき出しになった背中から腰にかけてのスレンダーな曲線を眺めて、
改めて、式波は美しい少女だと惣流は感嘆した。同時にあのマペットも視界に入った。
式波は薬箱をベッドに持ってくると、包帯と消毒液と医療テープを取り出す。
「ねえ式波」
「何」
わたし、あんたに聞きたいことがたくさんあるの。あんたって、どんな子なの?
私と同じ名前が書いてあるこのお人形、ママからもらったの? 人形が嫌じゃないの?
ママのこと、覚えてる?
・・・・・・パパとママがいなくても寂しくない? たとえ誰も見てくれなくなったとしても。
「何でもないわよ。・・・・・・。私達、うまくやっていけるかしら?」
「もうやってるわよ!」惣流の不安を吹き飛ばすような、確信に満ちた断言だった。
「ほら。指、見せて」
一心に自分の怪我を手当てする式波――その横顔をじっと見て、惣流はある提案を投げかける。
「式波。キスしよう」
稚拙でありながらも、それは愛の交歓だった。
傷ついたプライドの補償行為として性に逃げるのではなく、相手のより喜ぶ場所を探って、快楽を共有する。
孤独に生きてきた二人のアスカは、何よりも欲していた接触と容認を互いに与え合っていた。
そして式波は手を添える。普段は惣流が独りで欲望を処理していたあの箇所へ。
嫌悪を感じつつも忘れることが出来ず、肉欲に逃げていたあの場所に。
「行くわよ・・・」式波は既に騎乗位から体をずらして惣流の隣に座っている。
指を四本あてがい、前後左右に動かし包皮の上から蕾を刺激する。
惣流の裂け目からは蜜がじわじわ染み出ているのがわかる。
「はっ、はっ、はあぁぁぁ。はぁん」
式波の刺激がもたらす快楽はすさまじいものがあった。惣流は、一呼吸ごとに肺が焼けるような快感を味わった。
空気を吸う事すら心地よい。もっと息を吸って、吐き出したい。
天国のような感覚。確かに愛されている感覚。素晴らしい生と性の感覚。
「ああっ! 式波、式波っ! わ、わたし!」
惣流はシーツをぎゅっと掴んだ。
式波は惣流の硬く握りこんだ拳に片手を差し出す。すがるように惣流は式波の手を握った。
「大丈夫、大丈夫よ。惣流、あたしがついてる!」
関節が白くなるほど二人は手を握り締めあう。指の痛みなど惣流はどこかに吹き飛んでいた。
テュクテュクと皮膚と粘膜が擦れる音がする。式波の手の動きはますます速まる。
「あぁ、ああぁ、っく・・・。あああああっ!!」
ひときわ高く歓喜の声をあげ、身をよじると、式波の指で惣流は果てた。
373 :
二人のアスカ :2010/02/24(水) 00:52:07 ID:djKyL9q7
「な、何よ。あんた、まだしたいの?」
「違うわよ、これが最後。これでおしまいよ。でも」と惣流は言う。
「まだ、ちゃんとしたキスはしてないでしょ。キスだけしたいの、式波と」
このように自分の気持ちを吐露した惣流こそ、式波が見てきた中で最も美しい表情を浮かべた惣流だった。
疎遠だった式波には知る由もなかったが、それは加持に甘える時とも、嫉妬と激情に狂った時とも違う顔つきである。
強いて言うならば、恋に酔った乙女の瞳に浮かぶ陶然とした色に近い。
「式波がキスしてくれたら・・・」
「あんたは、もう・・・こんな風にはならない? 元気になれるってこと?」
惣流は無言で頷いた。式波はまっすぐに、惣流の目を見る。惣流の目は、部屋に来たときの怒りや憎悪が消え、
唐突な願いとは逆に――正気を取り戻した目つきになっている、と考えた。精神の均衡を踏み外した惣流が、
それで真に再生できるのならば。
「いいわ。わかった。しましょう」と式波は言う。「でも、それが私達のセカンドキスで、ラストキスよ」
まるで鏡写しのようだった。裸のままで、惣流と式波は互いの肩に手を置く。式波のベッドの上で、
二人とも足をハの字に開いてぺたんとお尻をつけて。
目をそっと閉じて首を傾け、身を乗り出してゆく。二人のアスカの唇が重なる。
柔らかい――女の子の唇って、こんなに柔らかいものなんだ。ふんわりしてる。惣流は驚嘆の念を禁じえなかった。
ゆっくりと、式波の口内に舌を進める。
最初に式波の唇を奪ったときは、無理矢理だったため舌を挿し入れることはためらわれた。
抵抗して噛み付かれる恐れがあったからだ。だが、今はもうその心配はない。
そしてシンジとの悲しい口付けのように、鼻をつまんだりすることもない。
相手が愛してくれるとはっきりわかっていたからだ。
374 :
二人のアスカ :2010/02/24(水) 00:53:28 ID:djKyL9q7
舌で式波の口の中を刺激してゆく。舌先を絡め合わせる。
それは素晴らしく心地のよい感覚だった! 唾液は味がしない。しかし、
好きだという気持ちが混じり合う媒体として、今はどんな甘露よりも甘く感じられた。
丸めた舌で式波の舌をつつくと、相手も同じようにつつき返してくる。
勢いのあまり前のめりになりかけると、髪の房がかかって邪魔になる。手で背中に払い除けた。
寸暇を惜しむようにまた手を戻す。すると、式波は惣流のその手に自らの手を重ねた。
手を取りあって、ぎゅっと指と指を絡み合わせて手をつなぐ。唇は触れ合ったままで。
どちらともなく二人のアスカはキスを終えて、見つめあった。
「もう1回だけ!」
そう叫ぶと、惣流は式波の顎を両手で挟み、唇を合わせるだけの軽いキスをする。
「ばか。言ってることが違うわよ」と式波は文句を言う。
「これじゃサードキスじゃない。とんだ眠れる森のお姫様だわ、あんたって」
だが、照れ隠しとも受け取れる棘のない口ぶりだった。
おそろいの赤いヘッドセットを髪留めにしている以外は生まれたままの姿で、惣流と式波は抱き合っていた。
「ねぇ、なんで私に優しくしてくれたの?」と惣流が聞く。
「あんた、バカ? 優しくしてきたのはそっちでしょ。最初はびっくりしたけど、あんなにふうにされたのは初めて」
言うべきことをいってしまったせいか、二人は押し黙ってしまった。
沈黙を取り繕うように、式波は惣流の細い背中を撫でる。
「惣流って、お肌が綺麗ね。すべすべしてる・・・」
「前にも言われたことがあるわ、それ。ミサトにだったけど。そういえば、制服のボタン・・・」
「いいわよ、ソーイングセットくらい持ってるから。今までずっと一人で生きてきたもの・・・・・・」
式波は続ける。「惣流・・・惣流って呼ばせてもらうわ。まだあんたのことはお姉ちゃんって呼べない。
・・・こんな始まり方だもの! むちゃくちゃすぎるわよ」
惣流を抱きしめたまま、側頭部をたしなめるようにぶつけて、こつんと音を響かせる。
「もっとあんたのこと話してよ。誰かと話すって、心地いいわよ」
375 :
二人のアスカ :2010/02/24(水) 00:54:50 ID:djKyL9q7
「わかってるわよ・・・!」
「わかってないわよ。私だって、今まではわからなかったもの。シンジが教えてくれたから・・・。あいつから知ったの」
「シンジ・・・。シンジか」
「孤独なんて、気にならなかったのに・・・。ここに来るまで。私に優しくしてくれる人なんて、
初めからいないって思ってたのに」
「式波は・・・あいつのこと、好き?」
「うん・・・・・・」
今は、惣流はシンジについて何も考えたくなかった。感情の奔流に押し流されてしまいそうだったから。
あまりにも今日はたくさんのことが起こった――生きてゆくうえでは、時には何も考えずにいることも必要だった。
けれど、素直に人を好きだと言える式波が、惣流はたまらなく羨ましかった。
惣流の愛は歪んでいたが、愛を知らないのではなかった。むしろ誰よりも激しく愛にかつえていた。
親から愛されて人は人を愛することを学ぶ。両親から学ぶはずの事柄を、惣流は肉体を通じて
双子の妹から学ぶこととなった。
今日初めて、惣流は自分で自分を愛せるかもしれないと思った。素晴らしい感覚を与えてくれる肉体を、
自分で肯定出来るかもしれないと思った。式波に出来ることなら、自分にも出来るかもしれないと思った。
いつかきっと、私だって・・・。
それはたとえ子供の祈りのような願いに過ぎずとも、意味のある変化だった。
その後、惣流は服を着て家に帰った。
結局最後まで惣流は謝らなかった。そしてそれは仕方がないことだと式波も考えている。
まだ姉のにおいの残るベッドに潜り込んで、式波は第3新東京市で唯一自分の見慣れた天井を見上げた。
頭がぼーっとしている。おかしくなりそうな一日だった。
376 :
二人のアスカ :2010/02/24(水) 00:56:08 ID:djKyL9q7
既に二人のアスカはラストキスをすませてしまった。もう肉体のつながりに逃げることは出来ない。
だからこそ、あんなことをした惣流が式波はひたすら心配だった。無事を祈らずにはいられなかった。
そして、もっと仲良くなりたいとも思った。双子の姉は、自分と同じ位、いや自分以上に寂しがり屋で傷つきやすい、
優しい女の子だったから。
「今度は、一緒に笑えたらいいな・・・・・・。姉さん」
※ ※ ※
ジオフロントを出れば、外は正気を奪うような猛暑の夏が続いている。
式波アスカラングレーが来たことで、惣流アスカラングレーの運命はわずかに狂い始めた。
その中心にはシンジがいた。本人の弁ではたとえ「言われたからやった」ことに過ぎずとも、
シンジに優しさがなければ、そもそも式波が彼に惹かれるはずはなかった。
彼のほんの少しの優しさが式波に伝わり、その式波が惣流を変えることとなった。
これから惣流は家に帰らなければならない――。家での生活は決して楽なものではないだろう。
最強の使徒が来るだろう。心や体を侵す使徒も来るだろう。
でもきっと、きっと大丈夫。愛が壊れていない式波と、参号機に敗北せずに真の再生を遂げた惣流がいれば、
結果はきっと違うはず。