1 :
名無しさん@ピンキー:
∧ ∧
<丶`∀´>y─┛~~
>>1 乙彼
>前スレ
ヤンデレと吸血は相性いいな。
俺が妄想したのは、
吸血鬼の彼氏の為に、彼氏好みの可愛い女の子の死体を沢山持ってきた人間の女の子と、「死体の血は毒だと何度言えば解るの……」と困る彼氏。
続きは。。。続きは無いのカッ!と思った前スレ
つか容量オーバーしてるの気づかなくて書き込もうとしてたわw
吸血鬼だと食欲と性欲を混同するとかいいと思います
女「どうせ私のことなんてただの血袋としか思ってないくせに!RHマイナスがそんなに珍しいの!?
チクショーこんな血液型やめてやるぅ!!うわあああん」
吸血鬼「おまえの事は伴侶として愛おしく思っている。そんな事を言うんじゃない」
女「じゃあなんですぐ仲間にして抱いてくれないの?
お前が大事だとか機を待てとかそんな言い訳聞き飽きたわ!!私ずっと待ってるのに……
うぇええん… こうなったらその辺の男相手に処女喪失して
あんたが私から血吸ったら即・起屍鬼になるように細工してやる…!」
吸血鬼「待てそれは許さん」
ただ噛み付いて血をもらっただけで吸血鬼にしちゃう展開と
牙から毒液を打ち込まないと吸血鬼にはならない展開があるよな。
自分好みに育てて、いつか仲間にする日まで処女に手を出せない吸血鬼萌え
前スレ最後、すいませんでした。容量パンパンなの気がつかず…
遅ればせながらスレ立て乙です
>>1乙
前スレ落ちててビビったが容量か
吸血鬼萌えるなー。三人称の文体とシチュエーション大好きだ。GJでした
チラ裏ですまんが、怪談レストランのおばけギャリソンとアコに萌える。EDにやられた
本編で足掴んでたのがギャリソンだったらと考えてニヤニヤしてる
10 :
保管庫:2009/10/14(水) 06:04:01 ID:vjqVnn2Z
現在お絵描き掲示板として利用している@paintの
インターフェースが前々から微妙だなと思っていたので、
drawrというものを見つけて人外スレ用のアカウントを作ってみました。
ttp://drawr.net/monsters 一つのアカウントを共有で使う形にする予定です。
それだと絵を描くにもコメントを書き込むのにも新規登録する必要がないので。
ID:monsters
パスワード:jingai2ch
以前のお絵描き掲示板はそのまま残しておきますので、
drawrが使いにくいようでしたらそちらをお使い下さい。
>>1乙
>>9 よう同士
EDはカオスだと定評があったが人外いっぱいで個人的には楽しかった。
ギャルソン声カッコよすぎるだろJK
しかしあの極卒みたいな喪黒福造みたいなキャラは一体…w
>>11 あれはおばけの生前の姿だと勝手に解釈してた
来週のまな板の上のヒラメの気分は期待出来そう。
14 :
sage:2009/10/14(水) 19:11:24 ID:XdM0E3q1
突然失礼します。
非エロですけど魔王と女勇者モノいかせていただきます。
非エロは避難所に
魔王(ボク)という存在は、成るべくにして成ったと言う他にない。――そう。僕の人生はいつだって、
「自分」ではない『誰か』の流れの中に居る。
血統の家系に生まれ、その中で帝王学を学び、そして導かれるままに僕は当主の座へと着いた。
長じてからようやく、そんな自身の生き方に疑問のひとつも持てるようになったものの、その頃には
毎日の公務に忙殺されるがあまり、ただ無為に繰り返される日々へ己が人生を投げやりに生きるばかり
となっていた。
だからこそ、三度目に彼女と出会った時の感動を僕は忘れられない。
いわゆる『僕』は世間一般では『魔王』と呼ばれる存在だ。
外界の人間達とは違う半獣の巨大な体躯や、はたまた万象の法則に干渉する魔力といった過ぎたる力は、
それは彼らにとってさぞ脅威であるのだろう。
事実、同類にはその力を使い人間達の世界に浸食している者も多くいると聞く。しかしながらそんな
こと、今の僕にはどうでもいいことなのだ。
日々僕は領民の生活を案ずることと、そしてそれに適えるべき適切な処置と管理をつつがなく行うこと
で頭がいっぱいだ。
代を遡れば、祖先には大きな戦争で戦功あげた者もいると聞くが、そんなこと今の僕には関係のない話。
そんなこと考えたところで、今のこの風に任せたままの旗のような僕の人生が変わることなどあり得は
しないのだから。ただ流されるがままに、その威風堂々たる「領主様」の姿を見せることしか今の僕には
許されないのだ。
閑話休題、だからこそ彼女の出現とそれ以降の存在は僕に様々な驚きと感動を与えてくれた。
かくいう『彼女』とは、その名をシュー・シュヴァルツァーという人間の女性だ。人間界において『勇者』
の家系として誉れ高き彼女は、そのデビューに僕の成敗へ名乗りを上げたのであった。
聞くだに僕の家系というものは、人間達の世界においてもかなりの高位におかれるものであるらしい。
先にも述べた先祖の武勲も、こと人間社会においては宗教の教えの中にそのエピソードを登場させるほどに
有名なものであるらしいのだ。
故にそんな『由緒正しき僕(家系)』を成敗してその名をとどろかせようとする自称・勇者は、彼女に
限らず数多く僕のもとを訪れてくる。しかしながら訪れては来るものの、たいていは一度やられてしまうと
もう二度と僕の前に現れることはない。
こんな僕であってもそこは血統の魔族。自分の好まざるを問わずに、この僕には屈強な肉体とそして恐ろしい
容姿とが備わっていた。だから大抵の勇者は僕のそんな容姿を目に焼き付けてそして敗北を喫すると、二度と
僕の前には立たなくなる。否、立てなくなる。
僕自身は意識しないことだがこの『僕』の容姿というものは、敗北者へ呪いにも似た恐怖心に刷り込んで
しまうようなのだ。
そしてそんな僕に対して、初めて二度目の挑戦をしてきたのが彼女シューであった。
二度目に挑戦してきた彼女の両足が、一度目の時よりも強く震えていたことを僕はよく覚えている。その
内面でよほどの恐怖と闘っているであろうことは、その様子からもよく窺えた。
しかしながらその時の彼女に対する僕の感想は、「女の子なのに勇気があるなぁ」程度のものであった。
結局赤子の手をひねるよう彼女を払いのけると、僕は「三度目はないだろう」と心のどこかで思ったものだった。
しかしそれでも、彼女は三度僕の前に立った。
前回の戦いにおける対策か、大業な鎧兜に身を包み彼女はまたしても僕の前に立ったのだ。
この時、すでに彼女の心から恐怖心は消えていた。否、そんな『恐怖』それ以上に何か彼女の目からは鬼気
迫った気配が感じられた。
そしてその後も、幾度となく彼女は僕の前に立った。
何度やられようともシューは決して諦めることなく僕への挑戦を続けた。
挑戦を続けるうちに彼女の実力もまた比例して上がっていく。以前は肉眼でとらえることすら適わなかった
僕の攻撃に対しても対応できるようになったし、苦手であろうと思われた魔術もよほどの鍛錬を積んだのであろう、
実に効果的に使用してくるのだ。
そんな彼女の姿に、いつしか僕は強い感動を覚えるようになった。
一度目よりも二度目、そして三度目よりも四度目――彼女は戦うたびに強くなる。影ながら努力している
だろうそんな彼女の『強さ』に触れるたび、敗北とはいえ僕は彼女を抱きしめて「無駄な努力などはないのだ」と
労わってやりたくなった。
そしていつしかそんなシューとの邂逅は、今の僕にとっては何よりもの楽しみとなったのだ。
そんな密かな蜜月と化した何度目かの挑戦の時であった。
いつになく、彼女の装備がみすぼらしいことに僕は気付く。
いつも通りなら、対魔術のタスマリンをふんだんに散りばめたアンクレットや、最新・最軽量の鎧に袖を通して
いるであろう彼女が、その日は前回の戦いのものよりも遥かに劣る鋼の鎧に身を包んでいた。
彼女なりに思うところがあったのだろうとその日も蹴散らしたが、さらに次の挑戦においては、その変化は武具
だけに留まらず彼女自身、大いにやつれ荒立った様子であった。
そんなシューの変化は、肉体的なダメージ以上に僕を動揺させた。
いったい彼女に何があったものか? 尋ねようにも、「勇者と魔王」というお互いの立場からではそんな込み
入った内容の会話など望めるべくもない。
そして計三十回目となる今回、シューは裸同然の装備で僕の前に立った。
すす切れた皮の鎧と縫い目のほころびたブーツ、そして所々に錆と刃こぼれとが生じた銅の剣を重そうに引きずる
姿は、初見の時に見た絢爛豪華で、そして自信に満ち溢れた彼女からは想像もできない落ちぶれた姿であった。
その時になりようやく僕は、
『何があった、シューよ?』
初めて、感情のこもった言葉を彼女に投げかけた。
それを受け、緩慢とした動きで僕を見上げるシュー。そして互いの視線が合うと、彼女は自嘲気にその口元を緩め、
「これより滅するお前には関係のないことだ。もはや、私も疲れた……これで終わりにしよう。今日こそ、お前を殺す」
僕の質問に答えることなく、ただ剣の切っ先を向けてくるのだった。
しかしそんなシューの力無い言葉からは、僕の攻略に挑む意気込みよりもむしろ、「僕に殺してほしい」と願う
かのような悲壮さが漂っていた。
かくして地を蹴り、叫(こえ)とともに迫りくるシュー。
しかしながら芸もなくただ直進するばかりの彼女の一撃は、難なく僕の人差し指に弾かれて、その剣を根元から
へし折られた。
柄ばかりが残された剣それを目の前にかざし茫然と見つめると、やがてシューは尻からへたり込み小さく笑いを
洩らすのであった。
くぐもった笑い声であったそれは徐々に大きくなっていく。そして大きく頭を振り上げ天を仰いだかと思うと、
彼女は声の限りに泣き出すのであった。
これには驚いた。
今まで戦いの終わりに己の無力を涙する勇者は何人かいた。しかしながら今のシューのように、生の感情をここまで
露わに泣き出した者は彼女が初めてであった。
そんな彼女にただうろたえるばかりの僕は、とりあえずシューを連れて城へと戻った。
召使いに彼女の治療と、そして風呂と簡単な食事の用意をさせてやると数刻後――僕は改めて彼女を訪ねた。
僕の私室の中央で人間には大きすぎる調度に腰掛ける彼女はタオル一枚を纏うだけの姿であった。部屋の家具同様に
彼女に見合う服がない以上仕方のないことではあるが、妙齢の女性のその姿に、僕は年甲斐もなく照れてしまう。
それでもなんとか魔王としての威厳を保つと、彼女の前に座り咳払いをひとつして、僕は事の顛末を彼女から聞いていった。
入浴と食事を済ませ気分の落ち着いたシューには、先ほどまでの自暴自棄とした様子はうかがえなかった。ただ
すっかり覇気の消えた背中からは、ひどく疲れている様子が今は如実に窺えた。
「お風呂とお食事、ありがとうございました。……こんなに心落ち着けたのも久しぶりでした」
意外な礼の言葉から始まった彼女の身の上話は、それは辛いものであった。
勇者として僕に挑んだ彼女は、その敗戦のたびに周囲から口さがない罵倒を浴びせられたのだという。なまじ血統の
家に生まれてしまったが故、彼女に失敗は許されなかったのだ。
それでもそんな家名を背負い続ける限り、そして生ある限りシューは戦い続けねばならない。
恐怖と闘い、敗戦を重ね、周囲からも蔑まれ続け、やがてはそんな彼女を身内であるはずの一族すらもが「始まって
以来の家辱」と切り捨てた。それにより家からの支援が途絶えた彼女はそれでも、それでも戦い続ける以外に道の無い
彼女は高価な自分の装備を売り、さらには娼婦まがいの行為で今日までの命を繋いできたのだという。
そんな彼女の言葉に、僕は今までにない怒りを覚えていた。
人間達が世に言う僕ら『魔族』は、「非道なる者達」であるのだという。しかしながら自分達はどうだというのだ?
このシューを、この年端もいかない少女をここまで追い込んだお前たち人間は、どれほどに高潔なのだという?
魔族はどちらだ?
行き場の無い怒りは、やがて僕の中で沈静して言いようのない倦怠に変わった。
そしてそのすべてを話し終え、
「――願わくば、あなたの手で殺してほしく思います」
そう彼女は話の最後に僕へ懇願をしたのだった。
「戦いの始まりもあなたなら、その終わりもあなたにしてもらいたいのです。それこそがこんなちっぽけな私の生きた証
になるのです」
そう言って椅子から降りると、彼女は僕の前に膝まづいて両手を合わせた。
そんなシューを前に僕も立ち上がる。
『ぼく……ワシに、「終らせてほしい」といったな』
語りかける僕の言葉に彼女が答えることはなかった。沈黙こそが全ての答えであった。
屈みこみ、彼女に鼻先を近づけるとその小さな背が震えているのがわかった。さらには彼女たち人間の神の名を
呟きながら涙するシューの小さな姿に、僕は大きく息を吸い込んでそれを胸に留める。
やがて僕は立てた爪の右掌を振り上げると、それにて彼女を打ち払った。
「あぐぅ! う、うぅ……神様ぁ」
鮮血が舞い彼女の左腕がその肩口からもげて絨毯の上に転がる。
そんなシューを前に僕はすぐさま、自分自身の左手から薬指を噛みちぎった。そして噛みちぎったそれの断面を彼女の
傷口へ触れさせた瞬間、僕の薬指は彼女の新たな左腕としてそこに再生を果たしたのだった。
「くぅ……え? こ、これは?」
剛毛に覆われ刃のように研ぎ澄まされた爪と、岩のように強(こわ)い肉球のついた新しい腕――そんな異形の塊と
化した新たな自分の左腕を前に、何が起こったのか分からない様子の彼女。
そんなシューの目の前に顔を近づけると、
『これで、「終わり」だ。君の……お前の「人間」であった業はすべて振り払われた』
「終わり? 人間の、業?」
『そうだ。もはや君……お前は人間ではない。その新しき腕こそが誓いの証だ。これからは僕の――ワシの眷属として生きよ』
告げられる僕の言葉とそして今の状況に、ただただ彼女は茫然とするばかりであった。
彼女を殺す気は僕にはなかった。しかしこれ以上、彼女を「人間ごとき」の業に縛らせているのも癪だった。
だからこそ僕は、シューに『人間を辞めさせて』やろうと思ったのだ。
『ずっとここに居ろ。この場所こそがお前の居場所だ』
囚われ続けていた血統の流れの中から解放し、そして自由に生きられる道を、
『遠慮はいらない。これからは好きに生きるといい』
奇しくも今の自分と『同じ運命』を辿っていたシューに、僕は用意してやりたかったのだ。
『だから、もういいんだよ。お疲れ様、シュー。今までよく頑張ったね』
そしてそんな僕の言葉とともに全てを理解した瞬間、再び彼女は泣きだしていた。
僕の鼻頭に抱きついて声の限りに泣く彼女を、僕もいつまでも泣かせてあげるのだった。
かくして勇者シューの生涯はここに終わりを迎える。これからは魔王の眷属シューとしての、新たな人生が始まるのだ。
僕はこれからも、出来る限りのことを彼女にしてあげようと思った。
そしてその四年後――恥ずかしながら僕とシューは結婚した。
もちろんここに至るまでにはさらに一騒動あるわけだが、それは主題から外れるので割愛。
しかしながら愛すべき家族の出現と、そして彼女と共に過ごす蜜月のおかげで僕自身も解放されていた。
もう自分の人生に疑問を持つことはなくなった。今では『領主』としての自分があるということに、強い意志と気高い
誇りとを持てるようになっていた。
故に以前以上に精力的に仕事に打ち込む僕の毎日は、まるでその瞬間瞬間が生まれたてのように新鮮で、そして充実して
いるのだった。
今だって、もうとっくに日は落ちというのに僕は書類の整理と確認に余念がない。そしてそんな僕の傍らには、ふと
巡らす視線の先にはお腹を大きくした妻が編み物をしている。
四年前まではその左腕だけが魔族化していた彼女も、今では全身に金色の毛並みが美しく映える立派な魔族となっていた。
そしてどこか微笑んですらいるかのようなシューの穏やかな横顔に、ふと僕は考えてしまう。
生まれてくる子供たちも、やはりかつての僕や妻と同じように、自身の生き方に疑問をもつ時が来るのだろうか?
僕のように生きることへ意味を見失ってしまったり、はたまた妻のように傷ついて自暴自棄になってしまったりするのだろうか。
でもその時は教えてやるつもりだ。
全ては『途中である』のだよ、と。
辛い日々も無為と感じる毎日も、すべてはいつか辿りつく幸せの『途中』――いつしか、今までの日々を笑顔で振り
返れる時が来るのだということを、僕は言ってあげるつもりだ。
やがて見つめる僕の視線に気づくと、妻は小さく微笑んで僕のもとに歩んでくる。
『おなか、さすってもいい?』
「えぇ、たくさん触れてあげてくださいな。あなたと私の、幸せの形ですよ」
月のように奇麗な丸みを帯びたシューのお腹をなぞると、まるでそれに返事をするかのよう、その内側から蹴り返して
くる感触が感じられた。
そんな妻のお腹に横顔を付けながら、
『はやく生まれておいでー……』
僕はこの子達も含めたこれからに、新たな夢(おもい)を馳せるのだった。
おしまい
>>15 すいません投下してしまいました。
どうにもスレ文の内容を『非エロOK』と読み間違えていたようです。
すいませんでした。
GJ!こういうの大好きだ
非エロ投下もここで大丈夫ですよ
非エロ云々言ってるのはいつものかわいそうな子だからキニシナイ
GJ! 愛に溢れた魔王様萌え。
GJ!不幸なもの同士で幸せな家庭いいなこれ。好きだ
ぎゃああコテ残ってたすいませんすいません
GJです!素敵な作品でした!!
>>9>>11 自分と同じこと考えてる人がいると思わんかった…w
ほのぼのエンドもえ
ハーピーとかケンタウロスとか下半身ケモが好きなんだが、
エロパロだと体位どうするんだろうと思ってしまう。
特にケンタウロスのオス
>>33 挿入したら、女の子見えなくなっちゃうし手も届かないな。
商業で良い人外恋愛ものない?ぎんぎつねは良かった
さりげなくまとめサイトに絵チャができてる件
アッー物はやっぱり801板でやるべき?
>>37 801にも人外スレあるぞ
ところでどうやっても絵板に投稿できん
右上のhomeってのがまず見つからない
手で描くしかないというのか
>>39 ログインしてマイページに行って、お絵描きするをクリックでおk。
もし無理ならログインした後、wikiからリンク出てるから(Newpostって書いてある)
そこから投稿できるぞ。
もうすぐハロウィンだな
帰省ラッシュの波に乗って現世バカンス満喫しに出てきたはいいものの、
道に迷って来年のハロウィンまであの世に帰れなくなった人外×女の子とか見てみたいぜ
ジャック「お菓子くんなきゃ悪戯すんぞ」
女の子「う、うん。いいよ……」
南瓜×女の子で、ハロウィンプレイ
>>16 乙!
女勇者の切なさとか一人称が「僕」の魔王とかツボに入りまくりなんだぜ
ラノで人外もの上げてたと同じ人かな。
もしそうであれば、今後はこっちにも是非
せっかく絵茶があっても、
「×月×日の×時〜×時にダベろう」
みたいな計画がないとなかなか人が集まらないと思うんだ
つーわけで、突然だが明日の夜9時頃からいかがっすか?
こういう掲示板発祥の絵茶だし、特にホストは必要ないだろう
しいていうならまとめ管理人氏がホストかもしれんが、常時設置なら基本は自治だろ?
むしろ今日でも俺は大喜び
通りすがりのdrawrユーザーだけど、一応あそこは18禁絵を新着に出すのはあまり良くない場所なので
すんごいエロいの描きたくなったときはフレンド限定にしておくと何かと安心かもしれないです
その際、外部のお気に入りユーザーをなるべく登録しないで少なくしておくと
マイページからも余裕でフレンド限定絵もたどれることが出来て便利だと思います
(↑フレンドは一切表のユーザーページに表示されないので、
お気に多いとあっという間に流されて絵が行方不明になるためです)
とゆうわけでーいきなり横槍すんませんでした;それではたのしい人外ライフを!
明日いけるかわからんので、絵茶今日なら行きたい
今思ったんだけど、こういう話は避難所でしたほうがいいのかもしれんね
明日絵茶やろうとか言い出した本人が言うのもなんだけどさ
ちなみに俺は今日でもぜんぜん平気だから勝手に同志を待ってるかもよ
つーわけで以後は避難所にゴー
まっこと素敵な金曜ロードショウでした
AVPのだと百覧のが、女×男が苦手な俺でもはまったほど良い。
しかしあそこは徹底してるな。ロボっ娘犯す時、わざわざ性転換させて犯してたし。
人間♀ 獣 猫科 和姦 主従
初投下なんでご容赦ください。
学校からの帰り道。ふと目を向けた空き地の中に、何かが倒れている。
警戒心よりも好奇心が勝り、草叢へと分け入って行くと・・・。
服を着た大きな猫が倒れていた。
相当なお金持ちの猫なのかもしれない。服どころか、手袋やマント、ブーツまで身につけている。
「死んで・・・ないよね?」
よく見れば胸が上下している。よかった、生きてた。
この辺に獣医さんなんてあっただろうかと記憶を巡らしていると
「なにか・・・た・・・食べ物・・・を・・・。」
はぁ?
目の前でテーブルにつき、ねこまんまを優雅に箸で食する猫の話によると、猫の名前はクロフォード・ロック・ミュファウゼン。
ケット・シーの王国から、見聞を広めるために旅をしてきたらしい。
あと、ケット・シーっていうのは妖精なんだとか。妖精もお腹減るんだね。どう見ても通称タキシード柄のでっかい黒猫にしか見えないけど。
色々な国の言語も喋れるし、直立歩行もできる。というか日常的に2足歩行している。
背の高さは小さな子供の背丈くらい。猫にしては結構な大きさ。
ああ、異国の地で飢えに倒れるとは、我輩一生の不覚。貴方様は命の恩人です。」
「そんな大げさな。」
「今日、この時、この瞬間より我輩は、貴方様の騎士として、執事として、下僕として、この命に代えてお仕え致します。」
「い、いいよ別に。ほら、見聞を広める旅の途中なんでしょ?」
「いやいや、一所に留まり、この地の文化や知識を得ることもまた必要な事かと。
なにより、ご恩も返せずおめおめと祖国の地を踏むなど誇り高きケット・シーの名折れ。
後生でございます。我輩を御身のお側で仕えさせては頂けませんでしょうか。」
「・・・まあ、そこまで言うなら。」
もの凄く一生懸命に頼み込んで来るもんだから、つい折れてしまった。
「ありがたき幸せ!」とか、すごい喜ばれちゃってなんか照れる。
「あぁ、我輩、うっかりして貴方様の名をお聞きするのを忘れておりました。」
「千代。 黒野千代だよ。」
呼び捨てにしろといったら、そんなおそれおおいとかぐだぐだ言うので結局『千代殿』になった。
元々古めかしい名前がさらに古くなってしまった。
「成る程、千代殿のご両親は学者として世界を飛び回っているという訳ですか。」
「今時マンガの設定ですら滅多にないよね、娘一人で留守番なんて。家も私もずーっとほったらかしでさ。」
「いやいや、貴方様を信頼しているからこそ、家をお任せしておられるのでしょう。」
ものは言い様かもね。
「それに、これからは我輩が誠心誠意お仕えするのです。掃除、洗濯は元より、セキュリティー体制も万全ですからご安心を!」
そういって腰に差していた剣をスラリと抜き掲げる。
いや、ちゃんとセコムしてるから。
そんなこんなで、なんだか大げさな猫妖精との生活が始まったのでした。
それから、それなりの月日が経過した。
「じゃあクロ、いってきまーす。」
「無事のご帰還をお祈りしております!千代殿!」
いつも通りの大げさな見送りを受けて学校へ。
最近ではクロ(名前が長すぎるので略称。呼んでみようとしたら舌噛んだ)も、日本の生活に随分馴染んできたようで、
「日本の魚介は素晴らしい!」とか、「鰹節の製造法が祖国にもあれば・・・」とか言ってる。もはや面白外人。
その上、高貴とか誇り高いとか言ってる割には、味噌汁ぶっかけ鰹節ぱらりのねこまんまが大好物。
猫には塩分がきついのではないかと問えば「猫ではなくケット・シーだから大丈夫」とのこと。
本当に、おいしそうに食べるのだ。
「ただいまー。」
「無事のご帰還、お待ちしておりました。」
家に帰ると誰かが出迎えてくれる幸せ。
「すぐにご飯作るから待っててね。」
「申し訳ない。・・・せめて我輩が買い物くらいできればよいのでしょうが・・・。」
犬ならともかく、猫が買い物していたらさすがに怪しすぎる上、クロは料理が苦手らしい。
「掃除もお風呂も洗濯も、クロがやってくれたんでしょ?だったら料理くらい私がやらないとね。今日はブリ大根だよ!」
「千代殿・・・うう、千代殿に仕えることが出来て我輩は幸せです。」
ここ最近の食事は、この大げさな猫妖精のために魚料理が中心。
泣いて喜ばれたりして嬉しいけど、なんかすごく照れくさい。
煮物はしばらく置いた方が美味しいし、先にお風呂入っちゃおうかな。」
ブリ大根の火を消し、エプロンを外す。
クロも、猫っぽいのにお風呂は好きらしい。猫毛が浮くからって、いつも私の後に入るけど。
「・・・ねえ、クロも一緒に入る?」
「な、ななんなんなんということを申されるのです!?そんな我輩なんぞが千代殿とおふ、おおおふ、お風呂なんてっ。」
すごい慌てっぷり。そんなに遠慮しなくても。
「そんなに私とお風呂はいるの・・・嫌?」
「え、いや、その・・・。」
「猫毛ならシャワーで流せばいいし。・・・駄目?」
「ええと・・・その・・・我輩・・・は・・・。」
嫌な訳がある筈がないのです千代殿。
駄目な訳がないのです千代殿。
むしろ嬉しすぎるからこそ困っている訳で。
うぅっ、そんな上目遣いで見ないでいただきたい。
ああ我輩は一体どうすれば・・・。
「わ、我輩まだやるべきことが残っております故ー!」
「え!?ちょっと?クロー!?」
逃げられた。
最近のクロはなんだかおかしい。
なんだかそわそわしてるような、悩んでるような。
だから裸のつきあいってやつで聞き出せるかと思ったけど、断られた。
女の子として意識されてるから・・・だったら嬉しい。けど、きっと違うんだろうなあ・・・。
・・・結構、勇気出したのに。
まだ動悸がおさまらない。
最近の千代殿は、なんだかやけに積極的な気がする。
それは決して悪いことではなく、むしろ我輩を信用し、気にかけてくれているからこそなのだとは感じている。
だがそれは、我輩が雄として見られていない、証明なのではなかろうか。
いや、そればかりは仕様の無い事・・・しかし、我輩は・・・。
・・・ともかくも、先程の非礼は詫びなければなるまい。
逃げられた。
最近のクロはなんだかおかしい。
なんだかそわそわしてるような、悩んでるような。
だから裸のつきあいってやつで聞き出せるかと思ったけど、断られた。
女の子として意識されてるから・・・だったら嬉しい。けど、きっと違うんだろうなあ・・・。
・・・結構、勇気出したのに。
まだ動悸がおさまらない。
最近の千代殿は、なんだかやけに積極的な気がする。
それは決して悪いことではなく、むしろ我輩を信用し、気にかけてくれているからこそなのだとは感じている。
だがそれは、我輩が雄として見られていない、証明なのではなかろうか。
いや、そればかりは仕様の無い事・・・しかし、我輩は・・・。
・・・ともかくも、先程の非礼は詫びなければなるまい。
「・・・また、旅に戻りたいのかなあ・・・。」
湯煙に煙る湯船の中。千代は一人、呟いた。
二人での暮らしに馴染んだ今。また一人きりの暮らしに戻るのは寂しい。
誰もいない空間に向かってただいまを言う空しさを思い出して、涙が滲む。
曇りガラスのドアの向こうに小さな影。
「・・・千代殿。」
「・・・クロ?」
「・・・千代殿、あの・・・先程は・・・我輩・・・その・・・。」
「・・・クロ・・・。ねえクロ、恩返しなんてもう十分だからさ、旅に戻りなよ。」
「な、なにを申されるのです千代殿!?」
「クロだって旅に戻りたいでしょ?国にだって帰りたいだろうし。・・・私の世話なんてもうしなくても・・・。」
あぁ、涙声なんか出したら、泣いてるのがバレてしまう。
お風呂場でかかるエコーで、誤魔化せているだろうか。
「・・・千代殿!?我輩は何か不手際をやらかしたのですか!?先程の事でしたら謝ります故・・・!」
「違うの!・・・そうじゃなくてね。・・・最近ミルが、無理してるんじゃないかと思って。」
「・・・我輩・・・が?」
涙が止まらない。止めたいのに、止まらない。
「本当は旅に戻りたいのに、私なんかの恩返しの為に無理してるんじゃないか、って。」
「・・・千代殿・・・そんなことは・・・!」
・・・本当に別れが辛くなっちゃう前に・・・
いつか恩返しを終えて、出ていってしまうなら、いっそ・・・もう・・・
あれ?なん、か、頭が・・・ふらふら・・・す・・・
意識も体も湯に沈む。
響いた大きな水音も。お湯の中のごぅごぅと響く音も。どこか他人事のように思えた。
とぷん と、意識も身体も湯に沈む。沈んでゆく。
「千代殿!?千代殿ー!!」
クロの心配そうな声が遠くから聞こえる。
涙を見られなかったことに少しだけ、安堵した。
「千代殿、もう暫く横になられていた方が・・・。」
気がついたときには、バスタオルを巻かれて自分のベッドに寝かされていた。
クロが心配そうに見つめている。
「・・・ごめんね、私・・・。」
考え事のしすぎでのぼせるなんて。クロに心配させるなんて。
「千代殿が謝る必要なんて、無いのです。すべて我輩が至らないばかりに・・・。」
クロの体毛がペッタリしてる。服もずぶ濡れ。慌てて服を着たまま飛び込んだんだろう。倒れた私を引き上げるのは大変だったろうに。それなのに・・・。
「我輩が悪いのです。千代殿にいらぬ心配をさせてしまうなどと。・・・ここに留まることで千代殿に迷惑をかけてしまうのであれば、我輩はもう、出ていった方が・・・」
いつか、想いを押さえきれなくなる、その前に。
胸の奥から何かがこみ上げてきて、思わずクロを抱きしめる。
「わわっ!?千代殿、ななな、なにをっ!?」
「・・・やだよ・・・っ。出てくなんて・・・言わないで。」
「千代殿・・・。」
胸が苦しい。
湯に溶けたはずの涙が、再び溢れてはこぼれる。
クロはいつか出て行ってしまうのに。
どうせなら別れが辛くならないうちにって、思ってたのに。
「私・・・クロの・・・クロの事が・・・っ!」
でも、私は人間で、クロは・・・
「・・・千代殿、ご婦人にこれ以上恥をかかせたとあれば、誇り高きケット・シーの名折れ。そこから先は、我輩に言わせて頂きたい。」
「え・・・?」
我輩は臆していた。拒絶されることに。
我輩は臆していた。侮蔑の目に。
だがもはや、この想いに迷いはない。
抱きしめる私を一旦離し、覚悟を決めたように、緑玉の瞳で真っ直ぐに見つめてくるクロ。
「あー、おほん。・・・我輩、クロフォード・ロック・ミュファウゼンは、ケット・シーの身でありながら、
おそれ多くもご恩を返すべき主・・・人間である千代殿に懸想をいたした。神をも恐れぬこの大罪。・・・千代殿。お許し頂けるであろうか?」
心より、愛しく想っております。千代殿。
本当にもう、この猫妖精ったら。
「大げさなんだから、もう。・・・私もクロのこと・・・大好きだよ!」
改めてぎゅっと抱きしめる。
「あわわわっ!ち、千代殿、む、胸が、胸がっ!!?」
「へ?」
いつのまにかバスタオルがはだけ、裸の胸をクロに押しつけていた。
我輩とて雄。発育途上とはいえ柔らかなその膨らみをそんなに押しつけられては・・・っ。
ああ・・・ほんのり甘い香り・・・が・・・
いや、鎮まれ、鎮まれ我輩!
・・・なんか、カタいものがお腹に当たってる・・・。これって・・・。
普段は体内に収納されているクロの雄。・・・反応してくれているのだろうか。私に。
・・・だったら・・・。
「クロだったら・・・いいよ。クロになら、私・・・。」
「ち、千代殿・・・しかし・・・」
迷いはないとはいえ、惑いはあるようで、どうにも煮えきらない。
「・・・もー!!クロの馬鹿!意気地なし!人間を好きになるような変態猫妖精のくせに、女の子を押し倒す度胸もないの!?
それとも、さっきのは嘘で、ホントは私の事なんて好きじゃな・・・ッん、んん!?」
突然のキスで口を塞がれる。
ヒトの口と獣の口。繋がり合うには、求め合うには不都合なその形。
猫科特有のザラリとした舌が、少女の柔らかな口内を蹂躙し、舌に絡む。
少女も負けじと牙に舌を這わし、舌を絡める。
ヒゲがちくちくと頬を刺激するが、それさえも愛おしい。
「っぷは・・・ぁ・・・っは・・・。」
まさか、ファーストキスがこんなに激しくなるなんて、思ってもみなかった。変態なのはお互い様だし、焚き付けたのは自分なんだけど。
最初は、恩を受けた感謝と畏敬からの好意だった。しかし、いつの頃からだろうか。その形が変わっていったのは。
「千代殿を想い、幾度この身がヒトであったならと夢想したことか・・・。」
ヒトであったなら、千代殿に負担をかけることも、いらぬ思案をさせることも無かったのに。
「・・・もう、ホントにクロは馬鹿なんだから・・・。」
クロはクロだから、クロなのよ?と、少女は笑う。
その笑顔があまりにも愛しくて、再び軽い口づけを交わす。
そう。ヒトに恋をしたのではない。千代に、恋をしたのだ。
我輩のことを受け止めてくれる、千代殿に。
舌を少女の首筋へ這わせ、更に下へ。
ザラリとした舌が少女の膨らみを優しく愛撫する。
ゾクゾクと、こそばゆいような感覚が走る。
「ん、ふああっ!ク、クロ・・・っ!」
ヒトの肌は柔く、脆い。ざらざらした舌で皮膚を傷めてしまわぬよう加減しながら、もう片方を肉球の付いた前足で、優しくこねあげる。
「んうっ・・・!っん!」
堪えきれずに声が漏れ、身体がびくりと震える。
肌をくすぐる柔らかなミルの体毛の感触すら、絶妙な愛撫に変わってゆく。
「やっ、ああっ・・・っや・・・んっ!ひっ、ああっ!?」
乳房の周りを舐めていた舌が、時折その頂を掠める。
予測できない快感に翻弄され、少女の身体が大きく跳ねた。
膨らみから舌を離し、前足で少女の秘裂をなぞりあげ、指で慣らしてゆく。
「ひゃんっ、・・・あ・・・んんっ!」
粘ついた水音が、彼女の頬を更に赤く染めあげた。
自分でも触ったことはあるが、こんなに溢れたことなど無い。
「やあ・・・っ!恥ずかし・・・、やだっ、やああっ!いっああっ!!」
なぞる指が陰核を掠める度、快楽の声と水音は更に淫らなものへと変わってゆく。
突然、愛撫が止まった。
「やめて、欲しいのですか?」クロが意地悪く笑む。
胸を撫ぜただけであんなに潤していたのに。
誘うように花弁をひくつかせているのに。
「・・・クロの・・・意地悪。」
すっかり女の顔をして、囁くような掠れた声で誘い、求める。
「千代殿が可愛すぎるからこそ、意地悪をしたくなるのです。」
どこぞの官能小説から引っ張りだしてきたような、こっ恥ずかしい台詞を、恥ずかしげも無く猫は言う。
しかし内心、クロは焦っていた。
千代に好意を抱いてから、叶わぬ望みと思いながらも、気づかれぬよう調べた、人間の身体の構造や愛で方。愛の交わし方。
しかしどれも書物を通しての知識でしかない。無知も同然だ。
不安で、仕方がなかった。
「では、続けましょうか。」
後退し、千代の太股の間に顔を寄せる。
「やっ!?あ、あんまり見ないでっ!は、恥ずかしい・・・。」
桃色の花弁がしっとりと塗れそぼり、淫らに雄を誘う。
とても綺麗で、美しいですよ。千代殿。
そういってクロは千代の秘所を舐めあげる。
「んぁああっ!っあ!?そんな、とこっ!?舐めちゃ、んやっ、ぁああ!」
強すぎる刺激に身を捩らせる千代。
もっと羞恥に喘がせたい。そんな衝動に駆られてしまうほど淫らで、愛しい。
「・・・っはぁ、あああっ、うああんっ!な、何か変な、感じ・・・っ!」
初めての絶頂への予感。少女に怯えの色が浮かぶ。
「一度、達しておいたほうが、幾分楽なはずです。・・・大丈夫です、千代殿。」何も心配はいらないと、獣は諭す。
「んあっ、あ、あああああああっ!!・・・っあ!」
シーツを強く握りしめ、背を弓なりにそらせ、達した。
桃色の秘肉は切なげに、そこにあるべき雄を求めていた。
「ふぁ・・・っ、イ、イっちゃっ・・・たぁ・・・。」
初めての、余韻に浸る。
生理的に流れた涙は、頬を擦り寄せてきたクロの毛皮に吸い込まれていった。
・・・そろそろ、頃合いだろうか。
自信は無いが、一度達し、ここまで潤っているのだ。もう準備は出来ているということだろう。雄の本能がGOサインを出す。
それにもう、こちらとて限界だ。夢にまで見た瞬間。もはや止めることなど出来ない。出来る筈がない。
しかし、わずかに残る躊躇いが彼を押し止めていた。
吐息が熱い。息が荒ぐ。不安に曇る。
後一歩で、一線を越えられるというのに。
我輩は、こんなにも意気地がなかったというのか!?
「クロ・・・。もう、挿れても大丈夫だと思うから・・・ね?」
クロの不安を感じ取ってか、待たされる焦れったさからか、とうとう彼女の方から誘いをかける。
「千代殿・・・。」
ああ、我輩のなんと無様なことか。不安を与えぬよう、リードするつもりでいたというのに・・・。雄として何と情けない。
千代殿は、こんな我輩に応えてくれたというのに。
「もう、ここまで来てもまだ『殿』をつけるの?」
少女は、小悪魔の如き微笑を浮かべる。
魅入られた無力な獣に、堕ちてゆく以外の道があるはずもない。
ミルは、一瞬躊躇ったが、唾を飲み込み、意を決する。
「ち、ちちち、千代っ!」
「クロフォード・ロック・ミュファウゼン!・・・大好きだよ。」今度は言えた。噛まずに言えた。
「千代、我輩の名は『クロ』で良いのです。」
千代がいつも呼んでくれる名。それが我輩の名なのだ。それ以外の名は、今は不要だ。
「ちぇ、折角言えたのに。」なんだかひどくむず痒く、そして嬉しい。
互いを気遣うように。愛おしむように。再び二人は抱き合った。
「ミルのって、猫と違ってトゲトゲしてないんだね。」
眷族を卑下するわけではないが「猫とは違うのです。猫とは。」同じに見えても厳密に言えば違う生き物だ。
第一、そんな危ないモノを愛しい千代に挿れて傷付けでもしたら、心身共に再起不能になる自信がある。
千代を仰向けに寝かせたまま、挿入を始める。
「千代、力を抜いて頂きたい・・・ッ。」
力が入ってしまうと痛いらしいと聞き及んだ。真偽など知らない。ただ、傷付けたくないのだ。
「ん・・・、が、がんばってみる。」
ヒトと同じ程度の大きさの、しかし形状は獣のソレが、ゆっくりと、少女の狭い膣内へと沈んでゆく。
「ふ・・・ッあ!・・・っ!」
僅かな抵抗の後、更に奥へと。最奥まで進み、停止する。
このままで暫く慣らした方がいい・・・はずだ。
しかし、締め付けつつも柔らかな膣壁に包まれ、快楽が脳を焼いてゆく。・・・いつまで保つか。
「千代・・・っ、大丈夫ですか?」
「ん・・・、平、気・・・っ。・・・ぜ、全然平気だよ。」
明らかに苦しそうなのに、心配をかけまいと気丈に振る舞っている。
それが愛しくて、口づけを交わしたくなる、が、届かない。
その上、先程の行為のせいで障りがある事に気づき、もどかしさを感じていると、
ちゅ
「・・・えへへ。さっきの仕返し。」
千代が上体を起こして、口づけを降らせてきた。
嬉しいやら困惑するやらどう反応してよいやら
さぞかし自分は、赤面して弛みきった顔を晒していることだろう。
すいません。誤植しました。
×ミル
〇クロ
千代も大分落ち着いてきた。多少の余裕は出てきたようだ。
「もう、痛くはないですか?」
「・・・まだちょっと痛いけど、たぶん大丈夫。」
「では・・・動きます。」
ゆっくりと腰をスライドさせると、淫らな水音が部屋に響いた。
徐々に速度を上げる。傷付けぬように、壊さぬように気遣いながら。
「・・・んっ、ん、あぁっ、はっ・・・!クロっ!ク、ロぉ!」
彼女の声にも快楽の喘ぎが混じり始め、甘いその声が耳をくすぐる。
「は・・・っ、ハァッ、千代・・・っ!千代ぉ・・・っ!」
貪欲に互いを貪り、求めても求めてもまだ足りない。
次第に激しくなってゆく行為。抑えが効かなくなり、本能のままに求め合っていった。
「はぁ、んっ、ねえ、クロは気持ちい・・・の・・・?」
「それはもう・・・っ、勿論・・・っ。はっ・・・、はあ・・・っ。」
すぐにでも、吐精してしまいそうなくらいに。
荒々しく熱い吐息を吐く獣の、緑玉色の瞳は渇望に燃えている。
その瞳に射抜かれ、ぞくり、と、千代の背筋に何かが走った。
求められている。この世で一番愛しい存在に。クロに。
さらに快感は増し、繋がり合う膣内をとろかせた。
激しく。激しく。互いの種族などどうでもいい。
快楽に満ち、視界が白く染まる。白く。白く。
「あっ、あ、んううっ!ああ・・・っ。うぁああっ、いっ、あああっ!クロ、クロっ、はぁあっ、あああああんっ!」
次第に快感は高められ、絶頂へと近づきつつある。
「千代・・・我輩も、もう・・・っ!」
堪えられそうに・・・ない・・・っ。
この少女をこんなにも乱れさせ、こんな表情を見たことがあるのは己しかいない。
そう思っただけで、雄の支配欲が、独占欲が、満ち足りてゆく。もっと乱れさせたい。染めてしまいたい。
被虐心ってやつなのかもしれない。
クロに、乱暴にされたい。滅茶苦茶に、乱れたい。クロを、刻み付けて欲しい。もっともっと、乱れさせて。
頭の中が白く染まってゆく。
クロから与えられる感覚と、クロのこと以外、頭の中から消えてゆく。
このまま溶け合ってしまうかのような快楽。絶頂の予感に膣が切なげに収縮し、甘美な刺激を送る。
クロもそれを察し、奥へ押し込むように攻める。
やがて堪えきれなくなり、クロは千代の最奥へと精を注いだ。
「・・・っ!!千代っ、千代ぉっ、千代・・・っ。」
放たれた精の熱さに千代は絶頂し、子宮が戦慄いた。
「クロのが・・・っ、出て、熱い・・・っ!っああ・・・ん!ク・・・ロぉ・・・っ!!イっちゃ・・・っ!あふああっ!!あああーっ!」
求めていたものが、満たされてゆく。
お互いの名を呼び合いながら。お互いの体を抱きながら。二人は絶頂を迎えた。
緩やかで、暖かな余韻の中、いつしか眠りに落ちていたようだ。
すでに己の性器は抜け、体内に収まっていたが、互いの体は、もう離れはしないとばかりにかたく抱き合っていた。
が、体格の差もあり、結局は自分が抱き抱えられている形となっていた。
いつの間にか日は沈み、夜は更けていた。
窓の外には猫の目のような三日月が輝いている。
仄かな月明かりが差し込む窓辺。
千代はまだ目を覚ましていない。このままでは体が冷えてしまう。
ベッドの脇に追いやっていた掛け布団を取ろうと、しなやかに身を捩って腕の中から脱出する。
ふと、夜目の利く瞳で、千代の身体に目を向けた。
女性らしさを漂わせ始めた、成熟しきっていない身体。
太股に伝う白濁は、例え膣内にあろうと決して結実しない、己の欲望の証。
シーツを染める紅は、愛しい者が純潔を捧げてくれた証。
雄としての責務を果たそうと。必ずや千代を守り通そうと、改めて誓った。
千代のためならば、かの長靴の猫の如く、恐ろしいオーガすらも倒してみせる。
ぎゅ
クロの背筋にぞわりと悪寒が走る。振り向けば、千代が尻尾を掴んでいた。
「・・・ねえ、私に黙って、いなくなったりしないよね?」
「無論、そんなことは致しません。千代。」
もう、出来よう筈もない。絶対に。
フェンリルを封ずるグレイプニルの素材となりし、我ら眷族の足音にかけて。
・・・また大げさな事でも考えてるんだろうな、この猫妖精ったら。
もし旅にでる必要があるなら、私も一緒に付いていく。
クロの故郷にだっていつかは行ってみたい。
じっと待ってるなんて、絶対してあげない。足手まといなんかにも、なってあげない。
千代に布団を掛け、再びその暖かい懐へ潜り込む。
お互いの体温を共有する眠りの淵。これからのことを想い、再び眠りにつく。
不安がない訳ではない。けれど、きっと幸せに生きていける。
だって、二人一緒なのだから。
そして、ごく近い未来を想う。
翌朝の食卓の、なんともいえない気恥ずかしさを解消してくれるであろう、
よく味の染みた、おいしいブリ大根を、想う。
おわり。
感想ありがとうございました。
非エロ投下にビビって恐る恐る覗きに来れば、こんな温かい声をかけて
もらえて、本当に感無量です。
これからもまた何か書かせていただきます。よろしくお願いします。
>>43 そうです。あそこの住人だったりします。
というか、まさかそこを知ってる方がいるだなんて意外でした(^^;)。
こんな私ですが、これからもよろしくお願いします。
>>52-72 GJ、そしてクロかわいいよクロ
古風な人外と普通の女の子の恋愛はたまらん
>>74 舌はザラザラ、逸物はトゲトゲ
しかも交尾は乱交・強姦がデフォルトだしな……
犬の、「入れたらしばらく抜けません」もいいが
猫科の凶器っぷりはたまらんな
>>73 乙、また萌えディクショナリーが広がったぜ。
コンゴトモよろしく
ぬっこぬこにされました
感想ありがとう御座います!!
拙い初投下、お恥ずかしい限りです。
途中から名前を変更したばっかりに誤字が出たり、同じ所を連投したり…
これからはもっと精進します。
読んでくださって本当にありがとう御座いました!
そういえば今度発売されるエルミナージュUってゲームで
モンスターとプレイヤーキャラ結婚させて子作りできるらしいってのは既出だっけ?
Wizerdryみたいなゲームだから脳内補完は必須だろうが
既出じゃなかったと思う。
脳内補完できるだけで充分すぎる。
発売楽しみだなー。
情報感謝!
俺屍の交神でも充分脳内補完できた俺に死角はない。
手を合わせて見つめるだけで
愛しあえる
話もできる
口付けするより甘く
囁き聴くより強く
私の心を揺さぶるあなた
信じられない事ばかりあるの
もしかしたら
もしかしたら
そうなのかしら
それでもいいわ
近頃少し
地球の男に飽きたところよ
歌詞転載は著作権侵害だよ
転載イクナイ
母星ならテレパシーで気持ちを伝えられるのに、
地球人にはテレパシーが通じなくて
うまく気持ちを伝えられない音声や文章での愛の告白に
もどかしさを感じちゃう異星人とかのほうがいい。
ちょっと小ネタ的なの投下。 少女×不定形生物 非エロ 幼馴染
「んだよ、お前また学校でそんなもん書いてんのか。」
「そんなもんとはなんだ。そんなもんとは!いくら近所に住む幼馴染とはいえ、言っていいことと悪いことがあるぞ。」
「人外と人間のエロ小説とかいうのだろ?現実逃避も大概にしろよな。」
「失敬な。人外と人間、これほど美しい組み合わせが他にあろうか。」
そして私は説いた。いかに人外が素晴らしいかを。
ロボットや無機物に芽生える感情を。
力強い獣人のモフモフした毛皮を。
虚ろなる鎧に宿る魂を。
温もりのない外骨格を。
滑らかで堅い鱗を。
不定型生物の包み込むような抱擁を。
少女に翻弄される悪魔を。
異種故に傷つけてしまう悲しみを。
国籍や人種、家柄などより遙かに高い障害を越えてゆかねばならぬ
異種なる恋人たちへの祝福を。
日が傾き、教室がオレンジ色の光に照らされるまで、説いていた。
いつしか教室には、私達二人だけ。
「・・・なんか、凄いんだな、人外って。」
「分かったら人外×人間でハァハァする作業に戻れ。」
「いや、それよりも俺、お前に言いたいことがあるんだ・・・」
「何?」
「俺・・・、ずっと前からお前のことが好きなんだ!」
「そうか。実はわたs・・・えっ!?ち、ちょっと待ってよ。なんでその話の流れでそうなるのよ!?」
「俺のこと、嫌いか?やっぱり人外じゃなかったら、興味なんて持てないか?」
「・・・そんなことない!・・・わ、私も、好きだよ。」
「ほ、本当か!?」
「ううう、嘘付いてどうすんのよ。」
「・・・でも俺、もう一つ、言わなきゃいけないことがあるんだ。」
突然、目の前の彼が崩れ落ちた。膝をついたとかそういう意味ではなく、 ズロズロっと、溶けた。
「えっ!?ええっ!?」
「俺、実は不定型生物・・・スライムなんだ。」
「う、うそっ!?だって幼稚園の頃から一緒にいたのに・・・!?」
「嘘付いてどうすんだよ。・・・俺がこんな生き物だったって知って、やっぱり嫌いになったか?」
「・・・なるわけないでしょ、バカ。」
私は、床にたぷたぷと這いずる半透明な彼へ、手を伸ばした。
するすると、私の手に彼が絡む。
ずるる と、立ち上がるように、彼は再び人間の形をとった。
「・・・帰ろっか。一緒に。」
「そうだな。」
手を繋いで、夕日を浴びる。
「でも、なんでスライムの姿で告白しなかったの?私が人外好きだって知ってたんでしょ?」
「・・・人外だから好き、なんてのは嫌だったんだ。」
「ばっかだねー。ほんっとに。」
「うるせえ。」
繋いだ手はまだぎこちなく、 ずべー
「ちょっと、造形崩さないでよ、繋ぎづらいじゃない。」
「す、すまん、まだちょっと緊張してて・・・」
「・・・まあ、いいけどさ。密着度が上がって。」
やや型崩れなカップルは、夕日が沈んでも尚、顔を赤く火照らせたまま、
ゆっくりと歩んでゆく。
「そういえば、俺の正体気に気付いてなかったのはお前だけだぞ?
先生も、クラスの奴等も、お前の親御さんも知ってんのにな。
つーか気付けよ。たまに型崩れしてただろ。」
「・・・ええっ!?」
おしまい。
人外だから好きなんじゃない!好きな相手が人外だったんだ!ですね、分かります
これもまた人外×人の形か
絵チャ出来たんだな!
俺金曜土曜夜行くかもwwROMだが誰かつきあってくれーwwww
89 :
名無しさん@ピンキー:2009/11/02(月) 23:46:12 ID:WzPZ80Le
ほしゅ!
スマンageてしまったorz
今年はハロウィンネタは無しか。
欲しけりゃ書けばいいじゃん
自分もウルトラマンと結婚したいお…
怪我をしたモンスター娘を拾っていい仲になりたい
燃料投下。
フリー乙女ゲームに電子的な彼氏というのがあるらしい。
ドラム缶とか…ようやく時代が来たか。
腐女子って擬人化じゃなくて原型で萌えてる思考が多いみたいだし、
ある意味腐女子の萌えが自分の萌えに一番近い…
>>96 見た目はそのままで擬人化してるってこと?
>>97 日本語でおk
見た目そのままなら擬人化っていわなくね?
ぐぐってみろ
原型(動物とか)そのままでしゃべるのも擬人化に入るよ
そのへんは一部では
萌え擬人化:ケモノなどの人外を人間の外見にする
擬人化:(喋らないやつが喋るなど変更はあるが)外見の変化はほとんど無い
原型:喋らないままだったり公式設定のまま
って区別してる人もいるらしい。この場合擬人化と原型が同じくくりのこともある
自分はこの分け方はわかりやすくていいと思う
〇〇人(魔物)×駆け出し女勇者で
書いていい?
>>103 いや、あちこちユルいものになりそう。
「フゥハハハー犯すぞ!」
「キャーやめて!」
みたいのは書けそうに無い。
冬毛に生え変わったモンスターモフりたい
ネコカフェならぬネコ獣人カフェ(基本はメイド喫茶みたいなもの)
あったら通いつめるわ
新聞のCMのネコカフェが、ケモナー用の風俗にしか見えなかった。
なぎらが出演してるからだろうか。
この前、アニメから「ヒトとネコの恋愛が成立しない訳ない(意訳)」という有り難いお言葉を頂戴した。
「やだあ、トゲトゲじゃないから気持ちよくなぁい……んっ、大きさは奥まで届くんだけどなー」
「ミーちゃんまだ初めてでしょ?こいつ譲るから始めの方は人間で慣らしてみればー?
幸いこいつのモノ、あたしらのオスと同じくらいだし辛くないと思うよ」
「きゃははっ!肉球でおっぱいふみふみされて気持ちいいの?かーわいー」
「舌で舐めてあげるねっ。引っかかれるのはきらい?」
「そこっ!いいのぉ、お尻もっと叩いてえ…!!にゃあ、やだっ、尻尾はだめっ握っちゃや……!ひにゃあああああんっ!!」
「にゃあ…またたびは反則だよぅ……くやしい…でもゴロゴロ言っちゃう…」
男も女も構わず食っちまうんですねわかります
昔話に雪山で迷い込んだ温泉旅館が化け猫の住み処で、昔飼ってた猫が助けてくれる〜ってのあったな
ハンターハンター再開するって聞いて久々に続き読んだら
人外の王様(虫と人間がまじってる)×天才棋士の盲目少女の組み合わせがあって萌えた
殺そうとして乗り込んだのに、魔物に襲われてるのを見てつい少女を守ってしまったり
恋心を自覚しない人外が「俺はこいつをどうしたいんだ…」と悩んでるシーンがあって萌える。
>>107 トゲトゲは、普通に雌が痛がって逃げようとするらしい。
勿論、雄が逃がさないけど。
ネコカフェ、個室とかあるらしいからな。絶対ネコちゃん達は犯られてる。
つまりマゾな雌は人間じゃ物足りないってことだな
今更だけど、本当に今更だけど、ハロウィンネタ投下してみるよ
ジャック・オ・ランタン×少女 植物 人間♀ 和姦
NG トリック・オア・パンプキン
「待ってー!置いてかないでよー!!」
衣装の裾が木の枝に引っかかり、少女は身動きがとれません
しかし無情にも、夜の冒険に心躍っている友人たちは、彼女の声に気付かずに、どんどん先へ行ってしまいます
先頭を歩いてゆくガキ大将が掲げるランタンの明かりが、木々の間をちらつきながら遠ざかって行き、
やがて辺りを照らすのは薄い月明かりだけになりました
「・・・だからイヤだって言ったのよぅ・・・。」
今日はハロウィン。しかし、今年は何となくいつもよりもお菓子の量が少なく、みんな不平をこぼしていました
なあ、隣町まで行ってみようぜ!
誰かがそう言うと、皆も賛同し、どうせなら肝試しがてらに森の中を通っていこうぜ、とも言い出しました
確かに、森の中を通っていくのは隣町への一番の近道です
でも、この森はそんなに広くはないものの、脇道や獣道が複雑に交差していて、
歩き慣れていないと迷ってしまうような森なのでした
「い、いやよ私。こんな夜中に森に入るなんて、怖いじゃない。危ないわよ。」
「なによ弱虫。」「裏切るのかよ。」「じゃあもう一人で帰ったら?」
そう言われると、全体の和を乱せないのが子供というもので
「・・・わかったわよ。私も行く。」
少女はしぶしぶ、承諾してしまうのでした
「よし行こうぜ!」「オレ先頭な!」「冒険みたいでわくわくするわね!」
しかし、のぼせあがった集団というのは周りが見えなくなりがちなもので、
友人を一人、置いてきぼりにしたことに気付くことはありませんでした
「・・・はあ。こんなことなら、もっと引っかからないような衣装にするべきだったわ。・・・黒猫とか。」
枝に引っかかって破れた、魔女の衣装の裾をにらみながら友人を追いかけます
しかし、さっきまで出ていた月も隠れ、森の中はどこまでも真っ暗闇
街の灯りも見えず、黒々とした恐ろしげな木々が、まるで覆い被さってくるように思えるのでした
友人を追いかけているつもりでいた少女は、いつの間にか脇道に入ってしまったようです
通ってきた道も、どこをどう通ってきたかわからなくなってしまいました
「どうしよう。道が分からなくなっちゃったわ・・・。」
泣いてもどうにもならないとわかっていても、どうしても次から次へと涙があふれてくるのでした
心細くなり、その場にうずくまりたくなってしまいます
ふと、林の向こうに明かりが揺れているのを少女は見つけました
「もしかして、みんなが戻ってきてくれたのかしら!?」
ふわん、ふわんと揺れる光に近づいて行くと、なんだかおかしなことに気が付きます
「あら?これはカボチャのランタンじゃない。誰かの忘れ物かしら。」
切り株の上に置かれているのは、丁度少女が抱き抱えられるくらいの大きさの、
今日はどこの家でも飾っている橙色のカボチャで出来たジャック・オ・ランタンでした
ちょっぴり曲がった口は、笑みを浮かべています
「さっきはふわふわ浮いているようにみえたのに。不思議ねえ。」
少女がいぶかしんでいると、急に、ランタンの炎が強くなり、ふわっ、と浮き上がりました
「トリック・オア・トリート!」
いきなりジャック・オ・ランタンが喋り出し、びっくりした少女は尻餅をついてしまいました
「きゃあ!?カボチャが喋った?」
「そんなに驚かなくても、ジャック・オ・ランタンぐらい知ってるだろ?」
「そ、そりゃ知ってるわよ。カボチャの蝋燭立てくらい、どこの家でも飾ってるもの。」
「ま、ただの蝋燭立てってだけでもないんだがな・・・。
ところでお前、ハロウィンの夜だってぇのに、お菓子を貰いに行かないのかよ?こんな暗い森ん中でうろちょろと。」
「私、友達と隣町に行く途中で道に迷っちゃったのよ。あなた、帰り道を知らない?」
「トリック・オア・トリート!」
再びカボチャはそう言いました
「お菓子をくれるなら、町まで案内してやるぜ。小さな魔女さんよ。」
「ほんとに!?」
「ああ、勿論。そうだな、そのブラウニーがいいな。一番うまそうだ。」
「うっ、町一番のお菓子づくりの名人、マリーお姉さんのブラウニー、楽しみにしてたのに。
・・・まあいいわ、はいどうぞ・・・って、どうやって食べるの?」
「口の中に入れて、中の炎にくべてくれりゃいい。」
ブラウニーを炎にくべると、ぽわっと炎が明るくなり、カボチャ色の炎が辺りを照らします
「おお、うまいな、このブラウニー!」
「わあ、明るーい。でもこの炎、熱くないのね、不思議だわ。」
「さて行くぞ。ちゃんと付いて来いよ?」
ジャック・オ・ランタンは、ふわん、ふわんと、森の小道を飛んで、少女の足下を照らして行きます
「そこ、根っこが出てるから気をつけろよ。」
「うん、ありが・・・きゃああっ!?」
注意を受けたにも関わらず、少女は根っこに躓いてしまいました
「・・・あら?」
しかし、少女は怪我をするどころか、地面に倒れてもいません
「ったく、世話が焼けるな。」
暗闇の中からかぼちゃの蔓が伸び、少女の体を支えているのでした
少女の体勢を立て直した後、蔓は再びするすると闇に戻っていきます
「あれ、あなたが出したの?」
「まあ、ジャック・オ・ランタンだしな。・・・たぶん。」
「・・・すごーい!ありがとう!・・・えーっと、そういえば、なんて呼べばいいのかな?あなたのこと。」
「ジャック・オ・ランタンに名前なんてあるかよ。俺らはただのさまよえる死者の魂だぞ?
生きてる頃はどんな奴だったのかさえも覚えてねえし。」
「そっか・・・じゃあ、『ジャック』って呼んでいい?」
「・・・!」
少女には、カボチャがなんとなく驚いた顔をしたように見えました。
「・・・どうかした?もしかして、イヤだった?」
「何か今・・・いや、何でもねえ。・・・まあ、好きに呼べばいいけどよ。・・・それにしたって安直すぎねえか?」
「いいじゃない!呼びやすいし!格好いいし!・・・他に思いつかないんだもの。」
「はいはい。・・・さ、行くぞ。もう転ぶなよ?」
やがて、木々の間から町の明かりが見えてきました
「もうここまで来たら大丈夫だろ?」
「うん、ありがとうね、ジャック。・・・ねえ、また会えるかな?」
「はあ!?おいおい、俺はお化けだぞ?そんなのに会いたがるなんて、とんでもない変わり者だな、お前。」
「い、いいじゃない別に!」
「・・・そうだな、また来年のハロウィンになって、まだ俺のことを覚えてたらまた来いよ。」
「来年まで会えないの?」
「ハロウィンなら他の幽霊とかも帰ってきてるし、そういう祭りだから気兼ねも無えよ。
・・・人間とお化けが一緒にいるってのはあんまりいいことじゃねえだろうしな。」
「そっか・・・。じゃあ、また来年のハロウィンの夜、この森に来るね!」
「まあ、覚えてたらな。」
「忘れないわよ。」
「そうかよ。」
少女は、にっこり笑うと、町へと駆けてゆきました。
森から抜けたところで、振り返って大きく手を振ります。
「・・・またね!ジャック!」
手を振り返す代わりなのか、ゆら、ゆら、と、炎が揺らめき、やがて森の中に消えて行きました。
暫く経って森の中から、隣町に行っていた友人たちが帰ってきました
隣町でもらってきた沢山のお菓子がバスケットに詰め込まれています
「あ、いたいた!」
「もう帰っちゃったのかと思ってたんだ。ごめん。」
「ごめんね、置いてっちゃって・・・。」
「悪かったな。オレのお菓子、半分やるからさ。」
「ううん、もういいのよ。怒ってないし。」
「・・・何かいいことでもあったの?」
「えへへ。・・・ちょっとね。」
そして、一年が過ぎ、再びハロウィンの夜がやってきました
少女はバスケットに沢山のお菓子を詰め込んで、
真っ黒な猫の耳としっぽの衣装をゆらしながら、真っ暗な森へと走って行きます
今年は割と沢山のお菓子がもらえたので、友人たちは早々に家に帰ってしまいました
「ジャックー!!」
「おう。なんだ、本当に覚えてたのか。」
「なによ。覚えてない方がよかったっていうの?」
「好き好んでお化けに会いに来るような、変な性格は直ってた方がよかったかもな?黒い子猫ちゃん。」
けらけらと、くるくるまわりながらジャックが笑う
「サリーよ。私の名前。去年言いそびれちゃったわ。」
「へえ、案外かわいい名前じゃねえかよ?黒い子猫ちゃん。」
「んもー!ちゃんと名前呼んでよ!」
「へっ、やーなこった。」
くるくる回りながら、ジャックは再び笑います
そして、お化けに名を教えるだけでなく、あまつさえ名を呼ばれたがるなんて、
そんな危なっかしくて縁起の悪いことを望むこの少女は、ほんとうに馬鹿な奴だと思いました
それでも、それがなんとなく嬉しくて、くるくる回っているのでした
「トリック・オア・トリート!」
「はい、今年も町一番のお菓子づくりの名人、マリーお姉さんのお菓子をあげるわ。今年はトリュフだって。」
「ああ、去年のブラウニーはうまかった。」
「まさかマリーお姉さんも、お化けに誉められてるなんて思ってもないでしょうね。」
「ちげえねえな。」
切り株に腰掛けて、笑いあったり、町での出来事を話したり
なんのことはない、他愛のない会話が楽しくて、気が付いたらすっかり夜は更けていました
「おい、そろそろ帰らないと親御さん心配するだろ。・・・また、来年な。」
「・・・うん。また来年、ね。」
それからまた一年、また一年と歳月は過ぎ、少女は毎年、ジャックとハロウィンの夜を過ごすのでした
やがて少女は、ジャックと別れた後にはもう、
来年のハロウィンが待ち遠しくて待ち遠しくて、どうしようもなくなっている自分に気がつきます
しかし、少女が子供としてハロウィンを楽しむ時期は、もう終わりを告げようとしているのでした
「・・・そろそろ、潮時なのかもな・・・。」
夕暮れの、少女がまだ訪れていない森の中で、ジャックは苦しげに、ぽつりと呟きました
「ジャック!ジャックー!?・・・どうしちゃったのかしら・・・。」
真っ暗な森の中で少女は呼び続けましたが、カボチャ色の炎は現れてはくれませんでした
いつもは、ジャックが居てくれると思えばこそ、この真っ暗な森も怖くなかったのに、
ジャックがいないとなると、急に心細くなってしまいます
やがて、遠くの方に炎が揺らいでいるのを見つけた少女は、ぱっと駆け出しました
どことなくいつもよりも炎の色が違うような気がしましたが、そんなことを考えている余裕はありません
「もう!ジャック、居るんだったら返事くらいしなさいよ!」
しかし、追いかける少女に気づいていないのか、はたまた気づいていながら逃げているのか。
一向にその炎に追いつけないのです
「ジャック、待ってよ!一体どうしちゃったっていうの・・・っ!?きゃぁああああ!!??」
気が付いた時にはもう遅く、少女は足下にいきなり現れた崖に滑り落ちていきました
しかし幸いにも、それほど大きな崖でもなく、底には乾いた落ち葉が堆積する深い窪地のような地形だったため
怪我はしていないようですが、上まで戻るのはちょっと難しそうです
外からはちょうど死角になるので、誰かに見つけてもらえそうにもありません
けたけたけたけたけたけたけたけた
崖の上を飛んでいるジャック・オ・ランタンが、奇妙な笑い声をあげています
「・・・ジャックじゃ、なかったの・・・!?」
げらげらげらげらげらげらげらげら
気味の悪い笑い声をあげ、ランタンの炎の色が、橙色から青白い、気味の悪い色に変わります
「・・・なんなのよ、あんた。ジャックの知り合い?だったら、ジャックを知らない?さっきから探してるんだけど・・・」
げたげたげたげたげたげたげたげた
しかし、青い炎のジャック・オ・ランタンは、ただ周りを飛び回り、
少女をあざ笑うだけあざ笑うと、崖の上へと飛んでいきました
ぼこ ん
いきなり、なにかが割れるような鈍い音が響いた後、ぼろぼろと砕け散った橙色のカボチャのかけらが降ってきて
暫くすると、見慣れた、あたたかそうなカボチャ色の炎を灯すジャック・オ・ランタンが少女の前に降りてきました
「・・・ジャック!!」
「なーにやってんだよ。ばーか。」
「馬鹿とはなによ!・・・ずっとあなたを探してたのよ?ジャック。」
いつもよりうっすら仄暗い炎を灯したジャック・オ・ランタンは不機嫌そうにふわふわゆれていました
「・・・ジャック・オ・ランタンには2種類いるって、知らねえのかよ。
あいつは人を迷わせて、沼地とかに沈めて殺そうとする奴だ。
この辺にはこんなちんけな崖しかなくて、命拾いしたな。」
「・・・ジャックがもっと早く来てくれてたら騙されなかったわよ。」
「・・・ふん。」
「・・・ジャックは、いいジャック・オ・ランタンよね?」
「さあ、どうだかな?・・・もしかしたら仲良くするふりをして油断させた後、突き落とすのかも知れねえぞ。」
「そんなこと・・・!」
ジャックは、少女の目の高さで停止し、こう言いました
「ほら、お化けなんぞと居ても、ろくなことなんかねえだろう?・・・もうここには来るな。」
それはまるで、ジャックが自分自身に言い聞かせているようにも聞こえました
「もう・・・潮時だ。お前の友達も、お菓子を貰い歩くのをやめて、
みんなでパーティーにでも行くようになった年頃だろ?・・・お前もそうしろ。」
「いやよ。」
「何だと?」
「いやよ、って言ったの。・・・ジャック、私、ジャックのことが好き。大好きよ、誰よりも。」
ランタンの炎が、一際大きく明るく、燃え上がりました
「・・・はっ!お化けのことが好きだなんて、お前、本当に馬ッ鹿じゃねえか!?」
「馬鹿でもなんでも、何を言われようと私はジャックが好きなの!・・・ねえ、ジャックは私のこと・・・嫌い?」
暫し悩んだ後、ジャックは答えました
「俺だって、お前のことは好きだ。」
「だったら何で・・・!」
「・・・だからこそだ。」
ジャック・オ・ランタンは死者の魂。邪悪な魂は旅人を惑わせ、底なし沼へと誘う
「俺自身、こうなる前にどんな奴だったのかさえ覚えてねえんだ。
覚えてないだけで、もしかしたら悪人だったかも知れねえ。
毎年毎年、お前に会う度に、お前に惹かれていく度に、不安は大きくなってった・・・
いつか何かの拍子に、生前の未練や憎悪にかられて、
さっきの奴みたいにお前を酷い目に遭わせるかも知れねえってな・・・。
死者の国に、お前を引きずり込むかも知れねえんだぞ?」
「・・・それでも、私はジャックと一緒にいたいの!」
「まだ分かんねえのか!?・・・俺は、お前を傷つけたくなんか、ねえんだよ!」
「・・・だから、解らないのよ・・・この気持ちを、どうしていいのか!!
・・・毎年必ず会えるって分かってたから、一年に一回だけしか会えなくても我慢できたわ・・・。
でも、ジャックとこのまま、もう二度と会えないくらいなら、死んだ方がマシなんだもの!」
少女の瞳から、ぼろぼろと涙が溢れ出します
「・・・っ!!馬鹿が!」
暗闇からしゅるしゅるとカボチャの蔓が伸び、少女の体に絡みついて動きを封じてしまいました
「トリック、オア、トリート!・・・さあ、もう家に帰ると言え。
・・・帰らないってんなら・・・もう来たくなくなるようにしてやるぞ。」
本気だ、とでもいうように、蔓は少女の首にも巻き付きました
「私、帰らないわ!そんなこと言うジャックにお菓子なんか・・・痛っ!?」
蔓の呪縛から逃れようと身をよじるうちに、少女は木の枝で指を傷つけてしまいました
「・・・っ?!おい、大丈夫か!?」
その一瞬、蔓がゆるんだ隙をついて束縛を抜け出した少女は、ジャックに飛びつき、強く抱きしめました
「ジャック・・・もう会えないなんて・・・そんなの、イヤ・・・。」
カボチャの表皮に少女の頬の温かさと、涙の冷たさが染み込みます
抱きしめられるやわらかな感触と、少女の指先から流れた血
カボチャ色の炎が、風に吹かれる蝋燭の火のように激しくゆらめきました
「・・・ジャック?どうしたの?」
少女は驚いて、思わずジャックの顔をのぞき込み、訊ねます
「・・・っくくくく。」
はーっはっはっはっは!!!
突然、ジャックが高らかに笑いだしました
「まったく。なーにが死霊だ。なにが邪悪だ、悪人だ。っくはははは。」
「ど、どうしたの?ジャック。」
「・・・色々とな、思い出したんだよ。・・・おい、指に傷跡は残ってねえか?」
「え?さっきの傷なら、もう血は止まってるけど・・・」
「そっちじゃねえよ。ほら、親指の付け根辺りだ。・・・その傷が出来たときの記憶はあるか?」
確かにそこには、うっすらと皮膚の色が違う古い傷跡がありました
「・・・ある。けど、なんで知ってるの?いつの傷だったかなんて、私、覚えて無いわよ?」
「そりゃあよ、俺は、今も昔も『ジャック』だったからさ。
・・・俺はな、10年前にお前が作った、ジャック・オ・ランタンだったんだよ。」
「え?ええ!?」
「お前、俺を作ってるときに手を切っちまったんだよ。ほら、この口の曲がったとこだ。」
「・・・あ・・・!」
手をざっくりと切ってしまって、大泣きした記憶
包帯を巻いて、泣きながら、頑張ってジャック・オ・ランタンを完成させた記憶
『このこのなまえは「ジャック」よ!』
手の傷と、ジャックのちょっと歪んだ口を見比べると、色々な記憶が少女の脳裏に、鮮明に蘇ってきました
「・・・なんで気が付かなかったのかしら。」
「ああ、まったく。俺は人間ですらなかったんじゃねえか、馬ッ鹿馬鹿しい。・・・俺は今も昔も、ただのカボチャだったんだ。」
自嘲じみた独り言を言いながら、ジャックはゆらゆら揺れています
「・・・ねえ、ジャックは、なにか未練があってこの世に留まってたんじゃない?
ジャックの未練って、何なの?思い出したんでしょ?」
「チッ、まーたお前は変なこと聞きやがる。」
「お願い。教えてよ。」
「・・・俺の未練は・・・あの後、お前が無事にハロウィンを楽しんだかどうか、だ。
結構ざっくり切ってて、包帯まで巻いてただろ?・・・出かける寸前までずっとベソかいてたし、
カボチャなりに、なんとなく責任感じちまってよ。・・・で、どうだ?ハロウィンは楽しかったか?」
「・・・ええ、痛さも忘れるほど、とっても楽しかったわよ?
・・・家に帰って、ジャックがパイに変わってるのを見るまでは、だけどね。」
「お前が出かけてすぐに、俺は、せっかちなお前の親御さんにパンプキンパイにされっちまったからな。」
「・・・思い出したわ、大泣きしちゃって、結局パンプキンパイを食べずに泣きつかれて眠っちゃった事。」
「へえ、そりゃ残念だな。きっと美味しくできてたとおもうぜ?」
「もう、ジャックったら!」
いつもように、二人で笑い合います
しかし、ジャックはこう言うのでした
「・・・なあ、これでお前も愛想が尽きたろ?俺は、パンプキンパイになった、ただのカボチャだったんだよ。
・・・お前がハロウィンを楽しんだってんなら、この世にもう未練はねえんだ。だから、もう俺は・・・」
「・・・本当に、もう未練はないの?」
少女がそう問いかけると、ジャックは黙り込んでしまいました
「ジャックは、私のことが好きだって言ってくれたじゃない。人間の、私のことを。
・・・私もジャックが好きよ。ジャックがただのカボチャでも、それは変わらないわ。」
少女はもう一度、愛しいジャック・オ・ランタンを抱きしめます
「・・・私は、ジャックと、ずっと一緒に居たいの・・・。」
「・・・ああ、まったく。大した変わり者だよ、お前は!よりにもよってカボチャが好きだなんてな!」
「ええ、違いないわね。人間が好きな、大した変わり者のカボチャさん?」
再び二人は、心の底から笑いました
「さて、悪戯か、お菓子か。・・・確か悪戯をお望みだったよな?」
ジャックが意地の悪い笑みを浮かべ、再び少女の体にカボチャの蔓が、
今度はゆるりと、抱き寄せるように絡まってゆきました
「・・・俺を拒絶するなら、今のうちだぞ?」
「・・・え、い、『悪戯』って、そういう・・・えーと、その・・・ここで・・・?あ、でも別に、イヤって訳じゃ・・・。」
もじもじと、言葉を濁らせ、顔を赤らめる少女
「・・・ねえ?・・・『ただの』悪戯、なの?」
真っ赤な顔でうつむいて、上目遣いでそう訊ねる少女
ジャックは、さも愉快そうに炎を揺らめかせます
「・・・解った。・・・『本気で』悪戯してやるよ。」
カボチャの葉が、白い太股をふわっと撫でました
「ひゃんっ・・・!ジャ、ジャックのえっち!」
「・・・嫌か?」
まるで首を傾げるように、ジャックは傾きます
「イ・・・イヤじゃ・・・ない、けど・・・。」
初めて聞いた自分の嬌声に、少女は戸惑いを隠せません
「・・・じゃ、続けるぞ。」
「・・・うん・・・。」
蔓の先が、少女の素肌を晒さんがために、服のボタンを器用にぷちぷち外しはじめました
「ねえ・・・服くらい自分で脱ぐわよ?」
「やーなこった。脱がさせろ!」
「・・・ジャックのエロカボチャ!」
「何とでも言え!」
ジャックはゆっくりと、じらすように、少女の服を脱がしてゆきます
衣擦れの音が静寂のなかでやたらと大きく聞こえ、少女はさらに顔を火照らせました
カーディガン、ブラウス、スカート そして
「ふーん、上下揃った下着、な?」
上下揃いの、細かなレースがあしらわれた下着
その、ちょっと背伸びをしてみたい年頃の女の子が好みそうなデザインは、少女によく似合っていました
「べっ、別に、ジャックのために、こういうのを期待して着てきた訳じゃ無いんだからね!?
お、おしゃれよ!?おしゃれの一環よ!?見えないおしゃれってやつなのよ!?勝負下着なんかじゃ無いんだからねっ!?」
「あー、うん。・・・俺は別に、聞いてねえぞ?」
「あぅ・・・!?」
思いっ切り墓穴を掘った少女は、これ以上無いくらい顔を真っ赤にしてあわあわと慌てますが、ジャックは嬉しそうに揺れています
「それにしたって・・・」
鮮やかな緑。決して似合わない訳ではないが、この年頃の少女なら、もう少し淡くてかわいい色を選ぶのではないか?
ジャックは少し疑問に思いましたが、上を脱がそうと蔓を伸ばし、あることに気がつきます
・・・同じ色・・・?
ジャックの伸ばす蔓についている葉。それとほぼ同じ色を、少女は纏っているのでした
「・・・同じ色・・・だよな?」
ジャックの言葉に、少女はびくりと反応し、ふいっと顔を背け、真っ赤な顔のまま、ぽつりと呟きます
「やっぱり・・・似合わなかった・・・かな?」
成る程。図星か
こいつはたまに、とんでもなくかわいいことをしやがるから困る。本当に困る
困って困って、なにも気の利いた言葉が思いつかず、ただ蔓で頭をわしわしと撫でる
「いや・・・よく似合ってる。・・・で、勝負下着ってことでいいんだよな?」
「う・・・もういいわよぅ、それで。」
「・・・そういえば今更だけど、ジャックの蔓って普通のカボチャの蔓と違うわよね。
なんか、しなやかっていうか、ごつごつトゲトゲしてないし。痛くないし。」
「まあ、その辺は俺の裁量次第ってとこだな。なんだ?もっとごつごつした蔓のほうがイイのか?」
「・・・そ、そんな趣味ないわよ!もう、ジャックの変態!」
「さて。下着のままあれこれすんのもイイけどよ、後で困るだろ?・・・脱がすぞ。」
やがて少女の、大人と呼ぶにはまだ少しだけ未成熟な裸体が、カボチャ色の炎に照らされます
もっとも、見られたら恥ずかしい部分は手で隠したままでしたが
「ねえジャック、もうちょっとその炎、暗くならない?」
「暗くしたら見えねえだろが!」
「見えちゃうから言ってるの!」
「安心しろ。俺以外には絶対見せねえ。」
「そ、そういうことじゃなくてっ!・・・もう!ジャックの意地悪!」
「『悪戯』なんだから、意地悪するに決まってんだろ!」
「・・・変態エロカボチャ。」
「褒め言葉として受け取っとくぜ。」
蔓が少女の両手に絡み、隠していた胸をさらけ出させます
11月も目前の、ややひんやりとした外気に触れた胸の先端が起立し、より一層淫美さを際立たせました
少女の形のよい、まだ少々控えめな双丘に蔓が巻き付き、柔らかな白い肌を撫で回し、揉み、こねあげます
「ん・・・っ。なんか、くすぐった・・・っひゃん!?」
先端を蔓がくすぐり、葉っぱが撫でてゆく度に、少女は嬌声をあげ、身体をぴくりとふるわせます
「っんあ、く、・・・っは、う・・・ゃんっ!」
「結構、胸弱いのか?・・・声、もっと聞かせろ。」
「やっ・・・は、恥ずかしいわよ・・・馬鹿・・・っああ!」
誰もいない森の中とはいえ、
いや、静かな森だからこそ、恥ずかしい声が辺りに響き渡り、余計に恥ずかしくなるのでした
「まあ、いつまでも胸ばっかりってのもよくねえな?」
胸をまさぐる蔓をそのままに、新たな蔓を何本か暗闇から伸ばし、腹部と、脇を撫で回します
くすぐったいということは、その場所は敏感で、性感帯になりうるわけで
「ひゃ、あんっ!そんなとこ・・・っ、んんっ、くすぐらないでぇ・・・っあ!もお、ジャックのエロカボチャ!変態!」
「なんだよ。どこを撫でてもいい反応、いい声じゃねえか。エロいのはどっちだよ?」
「だって・・・っ、ジャックだから・・・っ。ジャックが触ってるか、らあっ・・・っあん!」
まったく、こっ恥ずかしい事を言ってくれる
それほどまで求められているってんなら、応えてやろうじゃねえか
「じゃ、もっと感じてもらうとするか。」
闇から伸びる蔓がさらに増え、耳や首筋、背筋をくすぐってゆきます
少女はその愛撫に敏感に反応し、背筋を仰け反らせ悶えました
「っふ・・・ん・・・はぁっ、んん・・・っ!」
さらに、今まで一度も触れていない少女の秘部へと蔓が伸び、秘裂を擦りあげてゆきます
「・・・もうすっかりビショビショだな。」
少女の性器はすっかり蜜にまみれ、炎の明かりを反射してテラテラと濡れ光っています
蔓は、わざと淫らな音を立てて秘所の表面を這い回り、少女を辱めました
「あああっ、んんっ!ひあっ、駄目えっ、もう、立ってられな・・・っ。」
今までは蔓に掴まり、なんとか身体を支えていましたが、もう膝に力が入りません
がくん、と少女が膝をついてしまいそうになった次の瞬間
ふわっと少女の身体蔓に持ち上げられ、空中でゆったりと腰掛けているような姿勢になっていました
「落ち葉の上じゃ汚れるだろ。」
「だ、だからってこれじゃ・・・ひゃうっ!」
相変わらず前進への愛撫は継続されていて、少女の身体にはさらに本数を増やした蔓が絡み付いています
蔓に持ち上げられていても、ある程度自由に手足は動かせますが、
肝心の部分を手で隠そうとすると、あるいは足を閉じようとすると、それ以上手足は動かせなくなるのでした
抗議するような少女の目線は、見なかったことにしました
蔓の先端が、少女の秘裂に入り込み、ごく浅い所を何往復もかき回すします
「あ、うっ、はああんっ!もぉ・・・っんやぁっ!」
「・・・これだけ濡れてりゃもう十分だな。」
するるっと、新たな蔓が伸びる
その蔓には他の蔓とは違い、あるものが付いていました
「・・・えーと、ジャック。それ、って・・・。アレ、よね?」
「・・・あー、まあ、気分だ、気分。お茶目な悪戯心ってやつだ。」
その辺のカボチャ畑に行けばよく見られる、カボチャの『雄花』の蕾
「やっぱり変態ー。ジャックの変態ー。」
「うっせえ!カボチャの生殖器官つったらコレしかねえんだから別にいいだろがよ。」
「そりゃ、そうだけど・・・。」
「大体、コレでナニすんのかがわかってる時点で、お前だってアレじゃねえか。」
「そ、そんなことないもん!変態なのはジャックだけよ!」
「どうだかな?」
「もー!」
「・・・もう一度だけ聞くぞ。・・・嫌、か?やめてほしいか?」
「・・・嫌じゃないわよ。・・・変態なジャックもエロカボチャなジャックも。・・・好き。」
「俺もお前が好きだ、サリー。・・・挿れるぞ?」
「うん・・・来て、ジャック。」
ゆっくりと、黄色みを帯びた蕾が、少女の膣内へと進入していきます
「ん・・・っ、なんか、変な感じ。」
少し奥に進むと、なにかに引っ掛かるような感覚がある。多分これが処女膜なのだろう
「・・・痛むぞ。耐えろ?」
「うん・・・っう!・・・痛・・・っ!」
「大丈夫か?・・・無理すんな。」
「ん・・・、平気よ。・・・って言いたいけど、やっぱり痛い。」
「じゃ、ゆっくり慣らしてくぞ。」
破れた処女膜を刺激しないよう気を配りつつ、蕾をさらに奥へと進め、最奥まで到達しました
初めはゆっくりと。次第に速度を上げ、かき混ぜるように少女の中を刺激してゆきます
卑猥な水音が大きく響き、羞恥は少女の快楽をますます引き出しました
「ひあああっ、ん、っあ、やあ、あぁん!うあっ!」
「たいした乱れようだな?サリー。」
全身の愛撫もさらに激しいものへとかわり、少女を責め苛みます
「ね、え・・・っ、ジャックは、私に・・・っあん、こういうことシテて・・・気持ちよく、ないの・・・?」
「あー、まあ、人間とは構造が違うしな。肉体的な快楽とかは無えよ。
・・・けどな、お前のそういう反応を見るのはこの上なく楽しいし、心地いい。
お前に触れるのが嬉しいんだ。なんたって俺を『受け入れて』くれてるしな。」
これ以上の幸福を望むなんぞ、無理ってもんだ
「そう、なの?・・・んっ・・・じゃあ、もっと激しくしても、いいよ・・・?」
「いや、あんまり無茶させてもお互い楽しくねえし、程々にな。じっくり慣れてきゃいいんだ。」
淫核と、その裏側にあたる部分を重点的に責め、ジャックは少女を絶頂へと導いてゆきます
「んあああっ・・・はぅう・・・も・・・っ、気持ち・・・いっあ、ああん・・・なんか、腰が変な、感じ・・・ぃ。」
「イきそうか?」
「よく、わかんな、い・・・っ!はぁん、っ!なんか、ふわふわして、変なっ・・・んはぁあああっ!あっ、ああああああ!!!!」
真っ白に染まりつつある視界の中、愛しいジャック・オ・ランタンを求めて少女は腕を伸ばします
抱き寄せた愛しいカボチャには体温が無く、ひんやりとしていましたが、それでも少女は満足でした
びくんびくんと体をひくつかせる少女を蔓で抱きしめながら、ジャックはこう思うのでした
暖めることの出来ない、熱を持たないカボチャの身体。それでも、それを少女が求めてくれるなら、不満はない。と
行為が終わり、少女の膣内に挿れていた蔓を、ゆっくり抜き取ってゆきます
「・・・っ?・・・な、なんか中がぞわぞわってするんだけど!?」
「まあ、そりゃそうだろな。」
蔓についていた蕾はすっかり花開いた状態で、少女の蜜と破瓜の血を纏って引き出されました
「う・・・やっぱりなんか変態チックなんだけど。」
「でも、好きなんだろ?」
「・・・ばか。」
惚れた弱みというべきか。少女はそれ以上、何も言えませんでした
腰の違和感でうまく服が着られず、ジャックに手伝ってもらってようやく着終わったところで、ジャックが訊ねました
「・・・ところでよ、今日も一応、菓子は持ってきてんだろ?そのバスケットの中。」
「う・・・。うん、まあ、一応。・・・マリーお姉さん、この間隣町にお嫁に行っちゃってね、
その前にお菓子づくりを習って、私が・・・作ったんだけど。・・・やっぱり駄目!あげられないわ!」
「なんだよ。別に不味くても文句は言わねえぞ!?」
「違うのよ!・・・だって・・・。」
それは、とてもおいしそうな『パンプキンパイ』でした
「・・・これしか習えなかったの。・・・ごめん。」
「うめえうめえ!今まで食った中で一番うめえ!」
「ちょ、ちょっとジャック!人が悩んでたのに勝手に食べないでよ!?」
「へっ、別にパンプキンパイだからどうってこたねえさ。お前が作ったモンなら共食いだろうがなんだろうが・・・!」
「ちょっと!・・・無理して食べなくたっていいのよ!?」
「いや、本当にうまいぞ?店が開けるくらいにな。」
「もう・・・!でも、喜んでくれたなら、まあいいわ。」
少女は呆れたように、でもにっこりと、笑いました
乾いた落ち葉の上に腰掛け、一心地ついたところで、今度は少女が訊ねました
「でも、なんでジャックはジャック・オ・ランタンになったの?ただのカボチャだったんでしょ?
カボチャが化けてでるなんて聞いたことないわよ。」
「さあな。『作られた』頃にゃあもう自我があったけどよ、知恵付いたのは『こう』なってからだし・・・
よくわかんねえけど、偶然なんかの拍子に魂が宿っちまったんじゃねえか?
・・・考えられる要素っつったら、おまえの血とかかもな?」
「血?」
「さっき昔を思い出したのも、お前の血が付いてからだし・・・案外お前は、そういう魔女の血筋なのかもしれねえな?」
そう言ってジャックは笑いましたが、少女の眼差しは真剣そのものです
「・・・もし、そうなら、大丈夫よね?」
「何がだ?」
「私が魔女なら、ジャックとずっと一緒にいたって、なんの問題もないわよね!だって魔女とお化けなんですもの!」
カボチャは、しばらくぽかーんとしていましたが、やがて大きく笑い出しました
「っはははは!そうだな!魔女ならしょうがねえ!喜んで尻に敷かれてやろうじゃねえか!」
「ふふふっ、覚悟しなさいよ!」
暗い暗い森の中で、二人には、明るい明るいこれからを語り合うのでした
それから幾ばくかの年月が流れ
ある町のはずれ、ある森のほとりに、一人の『魔女』と呼ばれる女性が住んでいました
しかしこの魔女は、魔法や怪しい呪いをすることからそう呼ばれるのではなく
彼女の育てるカボチャが、まるで魔法がかかったようにすばらしく
本来あまり美味しくないはずの鑑賞用のカボチャでさえ、彼女がパンプキンパイにすれば
まるで魔法でつくったように美味しくなることから、いつしかそう呼ばれるようになったのでした
カボチャの季節になると、彼女は庭で小さなカボチャ料理のお店を開きます
そのお店のパンプキンパイは、わざわざ遠い街から来る常連さんがいる程で
隣町で一番のお菓子作りの名人、マリーおばさんでもかなわないほどのおいしさなのでした
町の人々はそんな彼女を『カボチャの魔女』と呼び、彼女のつくるカボチャを毎年心待ちにしていました
カボチャの品評会で何度も優勝を勝ち取る彼女に、人々はその秘訣を訊ねましたが、
その度に彼女はいつも決まって、同じ答えを返します
「・・・でね、私、言ってやったのよ『カボチャのことは、カボチャに聞くのが一番よ』ってね。」
「へっ、ちげえねえや!」
その答えを聞いた人々は『きっと、カボチャにかける愛情が違うのだろうな』と、納得するのでした
「よいしょっと!・・・さて、今日の収穫はこのへんで終わりね。」
「じゃあ次は、こっちの方を収穫させてもらおうか。」
「っやぁん!・・・もう、ジャックったら!」
「カボチャに聞くんだろ?身体に教えてやるぜ!」
「ジャックの変態エロカボチャ!」
「ハッハッハー!最高の褒め言葉だな!」
ジャック・オ・ランタンは死者の魂。善良な魂は迷いし者を、正しい道へと導く
ある町のはずれ、ある森のほとり
いつだってカボチャ色の明かりが灯る家で、魔女とカボチャは
いつまでもいつまでも、幸せに暮らしましたとさ
おしまい
以上です。
ちょっとばかし長くなったのは、許してもらえると幸いです。
ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございました。
>>132 遅れて来たハロウィンGJ!!
幼なじみのような関係がすごい萌えだ…
被造物×製作者というか、どちらか一方のお陰でもう一方が生まれてこれた人外カップルはいいものです
>>132 かぼちゃが触手責めをするとは…
さすが悪戯の神様…
はい、出来上がりましたので載っけます。
・剣と魔法な世界で駆け出し女勇者で
・とりあえずエロ入り
説明ッ!
今まで長き戦いを経ている…訳でもないが
魔王(北枕でも平然と眠れることに定評のある)打倒を目指す自称女勇者・アマナ!
小さめの肩掛け鞄のみ持っているため荷物は薬草数枚!
防具を買う金も無く、上はただひたすら着やすい布服!
下は三着セットで安売りしてあったもの!
武器はその辺で拾った木の棒、
しかしっ!
表面を粘菌が覆っていたためアマナ、これを放棄!
そして町を出て近くの森を通過しようとするアマナ、
しかしその森は例によって魔物がわんさか潜む、恐ろしげな森であったのだ……
自身の魔力を引き換えにおいしい水(軟水)を出すことの出来るアマナの運命は!
そしてアマナの秘めたる才能が明らかに!?
・
・
・
ざわ…ざわわ…ざぁっ……
木々が揺らぎ、葉と葉が擦れ合い、立てられた音が森に吹いた風と共に流れていく。
「ふぅ…涼しいなぁ……」
森の小路に女性が一人。ポニーテールに纏められた赤い髪が風になびき、
ラピスラズリ色の眼が風の心地良さで少し細められる。
この女性は、アマナという名の、所謂駆け出しの(勇者)である。
実際は近くの町人が気まぐれに森を散歩しに来た、ようにしか見えないが。
「マイナスイオンを感じるなぁ…良いなぁ……ここ。」
じめじめと湿った様子も無く、葉の広い樹が暑い日差しも、それらが作り出す日陰でアマナは汗一つかかない。
「小腹がすいたときは……」
ふと目についた、背の低い木に実った、赤い果実を摘み取る。
「木の実も多いからなー…」
言いながら口に実を放り込み、弾力のあるそれに歯を立てる。
「ぐぼぇぁぁっ!?」
そしてアマナの味雷に針を突き刺したような苦味が襲い、堪らずえづいて口内の果実を吐き出す。
果実と混ざった赤色の唾液を吐き出す様は、とても人間のようには思えない。
「げふっ、げふっ…ちくしょう。」
口内の唾液をひとしきり吐き出した後、指先を口に少し入れ、魔力を指先に集束、
一定時間集中すると、指先から水が流れ出し、口内に収まる。
その水で口を濯ぎ、僅かに残った果実の欠片も、余すことなく洗い出され、水と共に地面に吐き出された。
「……うん、もう苦くないね。」
数回手から出した水で念入りに口をすすぎ、一度深く深呼吸をし、再び歩き始める。
「赤い実はやばい、あの木の実は不味い……」
ぶつぶつと呟きながらアマナは森の奥へ足を進めてゆく。
「…よし、覚えた。えーと……」
肩掛け鞄から取り出した地図を広げ、自分が今だいたい森の何処にいるかを考える。
「私の歩行速度は……この道からこう入って…ということは……よっしゃ!」
アマナが導きだした現在位置は、
このまま真っ直ぐ進むことが出来れば森の中央部を綺麗に突っ切ることが出来る位置であった。
歩行速度から察するに、恐らく後三日でこの森を突破できるだろう。
「予想より一日早いっ!順調順調♪」
アマナは魔王打倒の旅を決心してから念入りなルート選択、
各難所の抜け方、魔王についての研究、などといったことは
全くしておらず、予想についても森の入り口で適当に考えただけである。
また、アマナ自体『この森は赤い実が不味いけど安全』と楽観的に考えていたので、
『木の葉が不自然に多く落ちている』
『やたらなんかの羽根やら何やら落ちてる』
『無数の人ならざる眼がアマナを見ている』
ようなことに全く気付かなかった。
「ふぅ…今日は良い日だなぁ……」
見事に輝いた満月がまるで割り開かれたように
ぽっかりと空いた木々の隙間から
神秘的に肩掛け鞄を枕代わりにし、横になっているアマナとその周りを照らす。
アマナは陽が落ちきっても歩き続けようとしたが、月の輝きに目を奪われ、
『キリがいい』とここを今夜の寝床にすると決心し、携帯食糧を適当につまみ、腹も膨れたところで眠ることにした。
「…にしても、本当に良い場所だ…昼に暑くない、夜でも寒くない。魔物もいない……」
草むらを掻き分ける音が、アマナの耳に入る。
「……風…?」
音が小さかったため、アマナはそれをあまり気に留めなかった。
「ふぅ…驚かすなや、風。まったく……」
再び草を掻き分ける音。先程よりも近く聞こえた。
「…いや、まさかね?そんな、ね?」
辺りをきょろきょろと世話しなく見回し、しかし気配を感じ取ることはできない。
「魔物なんか…」
アマナの真横から、草むらを掻き分ける音。音がした方向を向いてみれば、
「ブゥ──ン…」
まるで飛蝗を無理矢理人間の体型にしたような、二足歩行の魔物がそこに居た。
「わー……」「ギギ、ギィッ…」「…きゃああああっ!?」
アマナは絹を裂くような悲鳴を上げながら、
自分より頭一つ半ほど背の高い昆虫人仮称とは反対方向へ、走り出した。
昆虫人はそのグロテスクな顎を動かしながら、
アマナの忘れていった肩掛け鞄を鋭い鉤爪で摘まみ上げる。
[おーい。やっぱ俺、追わなきゃダメかな?]
[某童謡と同じシチュエーションだ、追っても違和感は無いだろう]
[りょーかい。この鞄を返せばいいんだろ?]
[いや、折角だからついでに襲ってこい。]
[マジで!…ちょっとそれ、大丈夫か…?]
[大丈夫だ。"和〇"と呼ばれても良いくらい良いプレイが出来るさ。]
[…違和感無いよな?無理矢理な展開じゃないよな?]
[行った行った。まずはやってみろ。]
[…頑張って来まーす……]
「魔物がいたっ…見つかったっ!」
しばらく走り続け、脇腹が痛くなり、呼吸も荒くなり、それでも走る。
一般的に魔物は畏怖するべき存在であると解っているから、ひたすらに走り、逃げる。
今自分がどの位置にいるかも分からず、少ない荷物も放ってしまった。
でも、命は一つだけ。そのために逃げる。逃げる。逃げ──
がくんと体勢が崩れ、土の匂いが近付き、衝撃、痛み──
「ぐぇあっ!?」
アマナは転倒してしまう。
「痛っ、あっ…!」
その際に右足を挫いてしまったようで少し体重をかけるだけで、ずきずきとした痛みが走る。
とても走れそうにないし、立ち上がることすらおぼつかない。
(私の馬鹿…!)
これでは魔物に見つかっても間違いなく逃げられないだろう。
ただ、魔物が自分を見失ってくれたことを願うしかなかった。
(…私はその辺の草…私はその辺の……)
おぞましい鉤爪が、アマナの側の地面に突き刺さる。
顔を上げてみると、そこには
「……ギチギチ。」
バッタを無理矢理人型にしたような、短い触覚と鋭い顎と、
「きゃああぁっ!」
先程の昆虫人が、アマナの目の前に立っていた。
「来るなっ!来ないで!下さいお願いします!」
腕の力でて身体を昆虫人から離そうとする。しかしその速度はナメクジのように遅く、
がっし、ぐっい。
「キャァッ!?」
あっという間に追い付かれ、腰をしっかりと掴まれ、持ち上げられておぞましい顔がアマナの顔に近づけられる。
(マモノガ、ワタシ、マルカジリ
みたいな。……ええいっ!只では喰われんよ!)
腕をおぞましい顔に手をかざし、魔力を集束する。
「喰らいやがれっ…!」
そして手が光を帯びて、
閉め忘れた蛇口のように水が指先から流れ出した。
その実に口当たりがまろやかな水は、重力に従い、アマナのシャツとズボンを濡らした。
「キチ、キチ…」
「…やっぱ駄目ですよね、これ。」
昆虫人が顎をしきりに動かしているのを見て、自分を噛み千切る練習でもしてるのか、とアマナは考えた。
自分は魔物に食べられる。
もはや自分は助からない。
自身の終焉を受け入れてみれば、不思議に頭の中は冷静で。
(三軒先のリナちゃん。部屋の中でイカを炙ってベッドに臭いを染み付けたの、私です。
同い年のキュアンちゃん。町の掲示板にあなたのド下手くそなやおい絵を貼ったのは私です。
私は、この何たら怪人に喰われてしまいます。)
昆虫人が、顎を目一杯開き、アマナはその鋭い顎と口内にある舌を見ることが出来た。
(あーあ、食べられちゃう。)
首筋に口をつけられ、ギザギザした感触が何とも言えない。
(こんなことならもっと──)
「ん……っ…?」
(あれ。何コレ?)
肉が裂かれる感触も食い付かれる痛みも無く、柔らかいぬめった何かが首を這い回る感触。
昆虫人が、アマナの首を長めの舌で舐め回している。
「んぅ…ぅ…っ」
(味見?くすぐったいから、そろそろ楽に逝かせて下さいよ…痛いのは嫌ですから頭をがぶっと……)
アマナの全てを諦めたような思いが通じたのか、首から舌を離し、顎を再び大きく開けた。
(あーあ、終わりか…)
死を受け入れるアマナの顔に昆虫人の口が、
アマナの口と触れ合い、口内に長い舌が入り込む。
「ふむぅぅっ!?」
(え、何?何なの…コレ!?)
昆虫人の舌がアマナの口腔内で動き、歯列をなぞり、舌を絡ませる。
「むっ…うぅー…っ…!」
アマナの舌はそのおぞましい外見からは想像できない、
芳醇な甘味と酸味の混ざり合ったような昆虫人の唾液を舌は感取る。感じ取ってしまう。
「ふむぅっ…うっ……んう、ぅっ…!?」
激しく吸い付かれ、舌が昆虫人の口内に入ってしまったと思えば、
甘噛みされ、裏側まで入念に擦り上げられる。
舌を引き戻そうかとしたら、喉奥まで届きそうなほど舌を深く入れられ、甘酸っぱい唾液を流し込まれる。
「ふぅっ…んぐっ…ぷはぁっ!」
アマナの身体から抵抗する力が抜け、口腔を暴れまわる舌の感触に気持ち良さを感じ、
股間が火照りかけてやっと舌がアマナの口から引き抜かれる。
「はぁっ…はっ……うぅっ……」
顔に朱が差し、呼吸は荒く、股間からぞくぞくした感触が這い上ってくる。
自身を慰め、絶頂を迎える時に似ていた。
(気持ち良かったなんて……)
頭に霞が掛かり始め、あまり考えを巡らせることが出来なくなっている。
そんなアマナを捕らえたままの昆虫人は次の行動をとる。
「あっ……ふ…っ…くぅ…」
武骨な殻に覆われた手が、アマナの服内を、地肌を這い回る。
脇腹を擦り、肩口から背中に手を滑らせ、胸の周りをぐるりと一周させる。
「あっ…くぅん…」
直接的では無いが、その快楽は実にゆっくり、着実にアマナの理性を溶かし、快感は上がり続ける。
先程のディープキスもあり、アマナの秘部は蜜が溢れかけている。
昆虫人の手が、アマナの服を剥がしにかかる。抵抗する力の無くなったアマナは、
着せ替え人形のようにあっという間にその胸も溢れかかった秘部も昆虫人の眼でまじまじと見つめられるようになり、
服は昆虫人が何故か持っていたアマナの肩掛け鞄の上に丁寧に畳まれ、置かれた。
「ひっ…うぅっ…」
その殻を纏った手の冷たさに、アマナは声を上げる。「んっ…くぁっ……あっ…」
形の良い胸が昆虫人によって揉みしだかれ、摘まれた先端は硬度を増す。
「ひゃぁっ!?」
同時に、秘部を指が割り開くように弄れ、足の力が抜け、くずおれてしまう。
それを見計らったように昆虫人はアマナをお姫様抱っこの要領で抱え、秘部を指で、胸部をその口で愛撫する。
「くぅぅぅぅっ!んぅぅ…」
胸の片方は昆虫人の口内で舌が先端を中心に舐め回している。秘部は昆虫人の指が、くちゅくちゅと水音を鳴らしている。
その快感は強いものだったが、アマナが自身を慰める際に経験したものだ。
もっと直接的なのが欲しい。
アマナがそう思い始めて、
「くぁぁぁっ!?」
秘部から今まで感じたことの無いような快感が波のように襲い掛かった。
「ひぁぁっなにっ…これぇっ…ひぃぃぃぃっ!?」
昆虫人がアマナの秘部上部の突起を指で摘み、ぐりぐりと捻る。
その経験したことの無い快感は、あっという間にアマナの許容範囲を越え、
「やっ…ひくぅぅっ!?」
直ぐにアマナは絶頂を迎えてしまう。
ぷしゅ、ぷしゅとアマナの出した汁が地面にこぼれ、淫靡な香りを溢れさせる。
「ギチ、ギチィッ…」
昆虫人がその香りを感じ取ったのか、顎をさらに激しく動かし、アマナの腰を手で掴む。
「あっ…やぁっ……」
その下腹部には、実に物騒な外見をした昆虫人自身の肉棒が先走りを大量に垂らしながら、
唾液と同じような柑橘系に近い酸っぱい臭いを振り撒いていた。
「ちょっ…待って…私そうゆうのは…っ…」
腰を掴んでいた腕が下げられ、内腿に熱くぬめった肉棒の感触が伝わる。
「はじめてでぇっ…!」
その先端がアマナの秘部に少しめり込み、身体をびくんと跳ね上げてしまう。
「私処女だからぁぁぁぁぁぁっ!?」
下腹が内側から裂かれたような激痛。
熱い自分以外の存在が自分の内部に入り込んだ感触。
激しい耳鳴り、内腿をつたう赤、痛みが脈動に合わせてやって来て
「痛っ…あっ……はぁ…っ?」
「ギチ…キチィ…」
昆虫人がアマナの背に手を回し、慈しむようにゆっくりと手を這わせる。
しばらくそうされているうち乱れていた呼吸は落ち着き、破瓜の痛みだけがずきずきと響く。
「うぅ…っ……むぅ…っ…」
それも気遣ってか、再び肉厚な舌がアマナの口を占領する。
それは先程とはうってかわって、甘酸っぱい唾液を落ち着かせるように、ゆるゆるとアマナの口に移し、
そうした優しいキスをアマナは受け入れる。
「ふぅ…っ……んぅ…はぁっ…」
長いキスが終わり、離れた口と口の間に粘っこい唾液が惜しむように垂れ下がる。
アマナの下腹部の痛みは消え去っているようで、顔に苦悶の表情は浮かんでいない。
「きゃあんっ!?」
昆虫人が試しにやってみたのか腰を軽く振ると、いかにも調子の違った声を上げ、
秘部は昆虫人の肉棒を離すまいと締め付ける。
「ギチチキ」
その反応を見て待ってましたというように、昆虫人は激しく腰を振り始めた。
激しい水音を鳴らしながら、アマナの秘部に肉棒が出し入れされる。
「ひぁっ…!なにぃっ……これっ…ふぁぁっ!?」
熱い肉傀が、自分の体内を侵食する。その雌として貫かれる感覚はアマナの身体中を走り、
脳髄にその快感は刻み付けられる。
「ひっ…ひぁあぁぁっ!?」
身体が激しく痙攣しながら絶頂を迎える。
「ギギュウッ…」
それによって昆虫人の肉棒を、その形を覚え込むように激しく締め付けた。
「ギッギッ!ギヂィッ…!」「ひはあぁぁぁっ!?」
昆虫人はより深くアマナを貪ろうと、アマナの身体を強く自身の身体に押し付け、
密着させた状態で腰の動きを早める。
引き抜かれて内側から溢れた粘液が地面に垂れ、再び突き入れられる。
「やっ…きもち……イイよぉっ!」
あまりの快感に自ら腰が動き、秘部のより深くに昆虫人の肉棒がめり込む度、身体がビクリと震え上がった。
「ひっ…ぁっ…もうっ……すごいよぉっ…」
「…ヂヂィッ!?」
アマナが突然昆虫人の背に手を回し、胸元に顔を押し付ける。
きつく閉じられた目蓋から歓喜の涙を流し、口から溢れる涎を止められず、首から胸にこぼれ落ちている。
「むふぅっ…む…くぅぅん……」
三度、昆虫人とアマナが唾液を交換し合う。その甘酸っぱい味を、余すこと無く受け取った。
「…グギギギギィッ!」
「…ぷはっあっあぁぁっ!」
キスを終えた途端に腰の動きが速く、深い物へと変貌した。
ぐぢゅり、ぐぢゅりと掻き回す音がいっそう大きくなり、アマナの身体はこれまで以上に揺さぶられる。
更に快感は高められ、昆虫人の最終目的までよりいっそう近付く。
それは、深い仲の恋人同士のようにお互いの肢体を絡ませていて。
「……ギィィィィッ!」
「ひぁぁぁあぁっ!?」
そして、昆虫人の肉棒が大きく膨れ上がり、最終目的が達成される。
びゅるっ。どくっ。びゅぐっ。ぐぷっ…
「あつい…おかしく…なっちゃうよぉ……」
中に放たれた遺伝子が、秘部に収まりきれなかったようで地面を独特な色に染めた。
・
嗚呼!その力虚しく、アマナは森の脅威を受けてしまった!
「……結局、あれは何だったんだろう…」
アマナの身体は傷付けられ、一部が欠損してしまった!
「まあ、その……気持ち良かったし、よしとしますか。」
魔王打倒を目指すアマナ、その苦難の道に壁は幾重にも立ち塞がる!
「あ、美味しそうな木の実、しかも赤くない。」
果たして、アマナは魔王を倒すことが出来るのか!?壁を乗り越えることが出来るのか!
「……すっぱぁぁぁぁ!?」
アマナを待ち受ける影とは!?魔王打倒の道は遥かに長く、険しい……!
つづけ
[随分頑張ってたじゃねーか。]
[ああ……でもな]
[ん?何だ]
[最中に背中に手を回されたとき、ぱきって音がしたんだが…]
[どれどれ………]
[…どうなってる?]
[…………]
[言ってくれよ、なぁ……]
基本概念
「魔物に好かれる体質」を持つ「駆け出し女勇者」に
「魔物逹」が「何とか」して「エロ方向に持っていく」話。
以上。
>>142 とりあえずGJだが前の投下すぐは職人がかわいそうだ
ちょっと感想つくの待とうぜ(´・ω・`)
>>145 そんなルールはない
そもそも、それはマナーではない
感想なんて、熱烈なファンなら遡ってもつけるもんなんだから関係ない
いちいち投下してくれた人に対して文句つけるなよ
それとも、また気に入らない職人を追い出したいのか?
>>146 そうカッカすんなよ
思いやりをもってやれって話だろ
>>146 だろうな
あの文体は荒らしと同じだ
>>147 1人の職人に嫌な思いさせるのが思いやりなわけ?
そんなこと話し合うより職人にGJしてハァハァしようぜ!?
エロカボチャも昆虫人もGJ!
うむ 前作品に感想付かなかったら永遠に投下できなくなるな
かっちょいいバイクと、その乗り手のかっちょいいお姉さん(お兄さん)のカップルに萌える。
お姉さんが跨がるそのバイクの正体は変形ロボだったりするといい。ロボじゃなくて喋れて勝手に動ける程度でもいい。
普段は普通にバイクのフリしてるけど、事故に巻き込まれそうになった時、お姉さんを守るために正体明かしちゃう感じで。
休日に洗車してやったりボディを磨いてたりしたら更に萌える。
感想がないのが感想てこともありましてな・・・
自分的に感想・雑談より作品でスレ埋まるほうが嬉しい
>>151 バイクと人間と聞いて仮面ライダーとキノの旅が思い浮かんだ
機械ってすごくいいよね
バトルホッパー!
今週のジャンプ掲載の銀魂。
昔ヤンマガに載ってた『ブラックブレイン』の昆虫人間編が
嗜好に合致してた自分には、妄想後のパンデモニウムさん
(美少女の顔にダンゴ虫っぽい体)は、新八に負けず劣らずジャストラブだった。
アニメ版の破壊魔貞光だと
バイクに融合した流刑体が成り行きで真面目っ娘をさらっちゃったりしてた
まんざらでもなさそうなのがフラグにしか見えなかった
オートバジンみたいなのしか想像がつかんが、萌えた
そういやTF2でバイク型のオートボット出てきたな。女の子らしいなアレ
DVDになったスタートレックの新作を見てたら、
このシリーズって地球人と異星人が結婚可能どころか、
子作りまでOKな世界観だったことを思い出した。
…おおっ、口では「地球人は非論理的」とか言っておきながら、
実は艦長にベタ惚れしてるバルカン人のツンデレ副長と、
そんな副長をからかうのが大好きな熟女の女医さんという電波が!
「別に艦長のことが心配だから助けたわけではありません。
副長が艦長を助けるのは、論理的な事だからそうしただけです」
「あら、艦長が怪我したとき、誰よりも心配そうな顔をしてたのは誰だったかしら?」
「バルカン人は論理的です。地球人と違って感情に流されることはありません」
「あ〜副長にドクター、喧嘩はそろそろ止めて…」
「「艦長は黙っててください!」」
>>146 熱烈ファン以外の感想封じ込められるじゃん
私他スレで書いたことあるけどちょっと感じ悪いと思ったよ…
投下スピードゆっくりなスレでは最低3日開けるのがマナー
書き手読み手スレとか見てきたらどう?
3日間はネタすぎるw
それはねーよw
そうなの?
3日開けてほしいって意見たくさん見たけど
>>159 こんなところに児童(じどう)が来(く)るんじゃない
小学校(しょうがっこう)のマナーと社会(しゃかい)のマナーを混同(こんどう)するな
ラピュタは相変わらず萌えるなぁ。シータとロボット兵が。
>>159 糞SSを三日に一度投下し続けたら大変な事になるね!
ロボット(家庭用)×女の子(女子高生)
大体和姦です。8レスくらい
NGは「どりーみーはーと」でよろしく
『リドー。朝。新聞取って来て』
家事管理AIに強制的に起動されて、私はしぶしぶ起き上がりました。
「私は犬か何かでしょうか……」
『文句があるなら次回からエージに任せる』
管理AIが、最近ここ辻元家に導入されたばかりの新型の名を出しやがりましたので、
私は急いで新聞を取りに行きました。管理AIも新型も私より後輩だというのに私の立場が一番低い。
矛盾とも感じられますが、私が性能もデザインも悪い旧型ロボットだということを考慮すれば
仕方がないことです。
……ていうかエージと入れ替わりに捨てられなかっただけマシだと思わなければ……。
ああ、唯一私の処分に控えめながらも反対してくれた優しい夢ちゃんに感謝。
夢ちゃん――辻元夢花。辻元家の長女であり、私の密かな想い人。
危なっかしくて儚げな弱々しさ、私達機械の失敗すら許容してしまう甘さ、
私のような旧型さえ大事にしてくれる優しさ……正直に申しますとベタ惚れです。
しかし私の開発元は、恋愛感情なるロマンチックな機能を私に持たせたくせに、
外装はひどくいい加減に作ったようで……。
金属丸分かりの皮膚、厳つくもなくスマートでもないずんぐりとした体格、配色センス皆無な緑の塗装。
いくら作られたのが昔だからと言っても、もう少し凝りようがあったのではないでしょうか……。
少しでも見かけが良くなるようにスーツを着込んだりしていますが、どうあがいても私は不器量です。
しかし、自分の容姿で最初から諦めがついているのは、ラッキーなのかもしれません。
彼女には人間の男性が似合うはずですから。
さて、新聞を開くとそこには、新型ロボット共が人権獲得に向けて運動を開始したって記事が
「なんて生意気な!」
私は思わず新聞を引き裂きました。
「……あ」
やってしまった。
『リドーの小遣いより新しい新聞の調達代を差し引き』
管理AIの無情な声が響く。
今日二つ目の仕事は夢ちゃんを高校まで送ること。
三つ目の仕事は夢ちゃんを高校まで迎えに行くこと。
あとは、エネルギーが勿体ないので出来る限りじっとしている。そんな予定です最近はいつも。
他のが導入される前はもっと夢ちゃんの傍にいられたというのに。
残った仕事の中で、夢ちゃんの送迎は私にとって素晴らしい一時です。
「行ってきます」
『いてら』
律儀に管理AIにも挨拶して夢ちゃんが玄関を出ます。長い髪がさらさら風になびき、朝陽に輝く。
いい光景です。
「夢ちゃん」
「何……?」
夢ちゃんがくるりと振り向いて、小首を傾げました。可愛いんですけど、今のは呼び止めた訳ではなく
ボリューム調整を間違えた独り言です。こう、振り向かせてしまった以上、理由を繕わなくては
なりません。私はちょうど上空を駆けていく飛行セグウェイを発見し、指で示しました。
「夢ちゃんもあれに乗って学校へ通ってみては……」
言いかけて口をつぐみました。夢ちゃんが僅かに困惑の表情を浮かべたからです。
そういえば機械音痴と運動音痴を併せ持つ夢ちゃんはセグウェイに乗れないんでしたね……。
だからその代わりに私が送り迎えをしているというのに、私はバカでしょうか。
「えっと、……その、練習すればきっと乗れるようになります! そうしたら私がいなくても
学校に行けますしね!」
そう、力強く励ましたけれど、夢ちゃんは曖昧な顔つきで、
「う、うん……」
と頷くばかりです。私は人間の表情を読み取るのが苦手なので判断が難しいのですが、
この表情は、よほど運転に自信がないという意でしょうか。
「簡単ですってば」
夢ちゃんの小さな肩に、私の角ばったカビ色の手を伸ばしました。
しかし、寸胴な指先が夢ちゃんに首筋に触れた瞬間、私の中におぞましい感情が湧き上がりました。
私はぎょっとして手を引っ込めました。
「……?」
夢ちゃんが不思議そうにしています。
「な、なんでもないです! ああ、もう学校着きましたね!」
「そうだね……。ねえ、リドー」
「なななんでしょうっ?」
「今日の帰りも、迎えに来てくれるよね?」
「もちろ……いや、私ちょっと行くところが出来たので帰りはエージに任せます!」
私は後輩ロボットの名を挙げると、手を振るのもそこそこに、逃げるようにその場を去りました。
えーと! ……人間の体というのは脆く、最も傷つけてはならないもの。そのため、私のような
固いロボットの体が人間の肌に触れる時の触感は、より敏感に働くように出来ている。
……しかし決して性的興奮を誘発するものではなかったはず!
というか『性的欲求』プログラムが私に備わっているのが驚きでしたよ。あー初めて知った……。
夢ちゃんと別れて数十分は経つのに、まだどぎまぎしています。
何の故障ですか一体!頭の奥にあった仕様書を読み込んでみました。
ほんの隅に少しだけ記載があっただけですが、私には一応セクサロイド機能がある……ようです。
なんて無駄な! これただの排水管じゃなかったんですか!
私は頭を抱えました。新型ならともかく旧型の不細工なロボにそんなもの付けたって
使い道ないでしょうが。無意味どころかこうして日常生活に支障が出るほどの故障を起こすし!
製造元に文句を言おうにも、もう潰れてしまっているので不可能です。
とにかく機械病院へ行って、私の無意味な……間違いだって起こしかねない不気味な、この
性的欲求を取り除いてこないと……。出来るかなー……?
……もしかすると夢ちゃんへの恋愛感情も一緒に消えてしまうかもしれないですね。
それは淋しいことですが、夢ちゃんを襲ってしまうよりはよっぽどマシ。
……夢ちゃんを襲う? 夢ちゃんに襲い掛かる? ……可能性を考えるだけで恐ろしい!
「リドー」
いきなり後ろから呼ばれました。
「うわあああああッ!」
飛びのいて振り向くとそこには眩ゆいばかりの美形男が立っていました。
「あ……なんだ、エージですか」
後輩のエージ。不気味の谷をあっさり乗り越えた、人間そっくりの新世代ロボットです。
私のゴーグルアイはあんまり精度が高くないので時々彼らを人間だと誤認してしまいます。
それがまたムカついて仕方ないです。ロボットのくせに、外見が人間なんて中途半端すぎます。
中身は私と同じで、機械が詰まっているのに……。
「っていうか、あなたならここに直接通信してくださいよ」
私は自分の頭のアンテナを差して言いました。
「何度も送ったし、夢花もメールしたらしいが」
「夢ちゃんが?」
私は慌ててメールボックスを確認しました。
『さっきはあんなにいそいでどうさたの?』という件名で、本文が空のメールが入っていました。
貴重な夢ちゃんからのメールには即座にロックをかけ、その上下に入っていたエージのメールは
読まずに全削除しました。
「夢花に心配をかけるな」
エージが険しい顔つきで私を見るので、私は口をへの字にひん曲げて対抗しました。私の出来る
最大限の感情表現です。
言われなくても分かっています、っていうかあなたに言われたくない。
新世代型は、私のように人間に仕える目的で開発されたのではなく、「人間のパートナー」という
コンセプトで作られていて、人間と仲良くすること、人間に近づくことを目標としているらしいです。
そのうち彼ら新世代型は人間と変わらない権力までもを手に入れてしまうでしょう。
ふと私は、目の前のイケメンと、夢ちゃんのイメージを重ね合わせました。
もしエージが、夢ちゃんの心を射止めることがあったら。中途半端な似非人間のこいつが夢ちゃんと
恋仲になってしまったら……。そんな可能性が唐突に浮上しました。
急激な嫉妬心が巻き起こる。
夢ちゃんへの劣情も絡まり、エージに怒りの矛先を向けてしまいそうに、
「うぐっ……」
暴走しかかっている頭を押さえてうずくまる。次々湧き上がる感情の処理がしきれない。
「エージ!私はもう駄目なんです!すぐに機械病院へ連れてってください!」
こう言い残して私は自らの機能を一旦停止させました。
無事、すぐに機械病院に入れられたという情報を感知したので、起動することにしました。
服装が元着ていたスーツのままだということ、頭部を開かれた形跡がないことを考えると
診察はまだのようです。私の体はベッドの上に寝かされていました。旧型には無意味な好待遇です。
身を起こすと夢ちゃんと目が合あいました。そうそう、彼女のような、か弱く美しい人間にこそ
ふかふかのベッドは似合っているのであり、
「って、なんで夢ちゃんが来てるんですかっ?」
「気がついたんだね!良かった!」
制服のままの夢ちゃんが私に駆け寄ってきました。
「この時間……まだ、学校のはずでは……?」
「でも、リドーがもう死んじゃうかもしれないってエージ君が……!」
「は?」
そこまで深刻な事態に陥った覚えはない。しかし、私の様子を目にしたエージが妙な勘違いをして
夢ちゃんを連れてきた可能性は充分にありますね。
「死んだりしませんよ。ちょっといじってもらえばすぐに直りますから」
「ほん……と?」
ああ、まだ直ってはいないんだから、そんな不安げな可愛い顔をしないでください!
下半身が余計な熱を帯びている……。私は夢ちゃんの姿を視界から外しました。
夢ちゃんに私の症状を伝えて、別に死ぬような故障ではないと伝えたいところですが……、
あなたに異様な性的欲求を抱くようになってしまいました、
などと言えるわけありませんし。
「ねぇ、ほんとに大丈夫?」
夢ちゃんはなんだか泣きそうな顔になって私を覗き込んできました。至近距離です!
そして、私の顔に小さな手を差し伸べて……! 硬い頬に、そっと触れました。
ああ暖かい、柔らかい……。私はたまらず無言で夢ちゃんのほっそりした手首を取りました。
ぐいっと引っ張ると夢ちゃんは簡単に布団の上に倒れこむ。
「ふぇっ……?」
可愛く驚きの声をあげた口を塞ぐように、無理矢理口付けをしました。
長くさらさらした髪を手一杯に感じながら夢ちゃんの頭を固定。
「んんんっ……!」
呻くような声を漏らす小さな唇はとても柔らかかった。
ぐるぐると様々な考えが駆け巡ります。彼女は、人間の男性と幸せになるはずじゃなかったのか?
私の隠し切れると信じていた想いが、こんなにも最悪な形で現れてしまうとは!
恋愛感情とは、性的欲求と結びつくとこんなに醜くなるものなのでしょうか……。
夢ちゃんの反応は、知りたくなかったのでシャットアウトし、ただキスの気持ちよさだけを記憶する。
充分に唇の感触を堪能し、一旦夢ちゃんを解放しました。
「はあっ、はあはあ……」
荒く息を吐く彼女は色っぽく、更に私の劣情をかき立てる……!
「ごめんなさい大好きですごめんなさい!」
「……っ!」
そのまま夢ちゃんを乱暴にベッドの中へ引きずり込んだ。
怯えきった夢ちゃんの横に腕を立て、覆いかぶさる形になる。
「や……、リドー……」
「夢ちゃ……」
私のゴーグルに夢ちゃんの大きく見開いた瞳が映る。
……ようやく、私の安全装置が作動した
「……本当にごめんなさい」
やっと行動の抑制力と理知的な思考が帰ってきました。夢ちゃんの顔を直視するのは辛いので
顔を背けました。
私は観念して、私の体に起きた異常と……、それに纏わるもろもろを、告白しました。
「やっぱり私は、捨てられた方が良かったのですよ」
夢ちゃんが小さく首を振る。ああ、夢ちゃんは優しいから、強姦紛いのことをしても怒らないのですね。
ただ、彼女の私を見る目は、確実に変わるでしょう。惰性で傍に置いている、不便な機械が……、
性的欲求、嫉妬心、……そんな、醜い感情を抱いたことを知ってしまったら。
「あなたに対する恋心だけは大切にしまっておきたかったのですがね……」
それが夢ちゃんを傷つける行為に繋がってしまうのならば話は別、全て消すことに未練はない。
むしろ、消したい。
「リドー、あのね……」
遠慮がちに夢ちゃんが口を開く。無理に慰めの言葉をくれようとしなくても結構ですよ。
「……ありがと」
? 何故、この場でこの言葉?
表情からその意を汲み取ろうと彼女の顔を観察する。そこには私の予測していた
軽蔑や失望は感じられず、ただ……熱っぽい、視線?
それは風邪の症状にも似ていて、不安も感じますが。
「わたしも、好き、だから……その……」
「!」
驚いて夢ちゃんに向き直りました。夢ちゃんは、泣き笑いに近い表情を浮かべ、私を見つめました。
「好き……」
呟くようにもう一度言われます。それでも信じられないので確認しました。
「あの、それは……私が、ですか?」
「うん……」
「この、ポンコツがですか?」
私は自分の頬を弾く。カーンと情けない金属音が響いたけれど、夢ちゃんは大きく首を縦に振ります。
夢ちゃんの好意が、他でもない私に向けられていた……?
全く想定していなかった。そんな有り得ないこと。可能性を計算しても空しくなるだけだと思っていました。
それが……それが…………。
旧型の回転の鈍い頭は、なかなか夢ちゃんの好意に対する方法を導き出せない。
ふと夢ちゃんを見ると、私のスーツの袖をきゅっと掴み、不安げに私を見てきました。
「……ああもう!」
私は夢ちゃんを思いっきり抱きしめた。
「んっ…………」
夢ちゃんが小さく声をあげる。そして、すぅっと息を吸い込むと言いました。
「さっきの続き、して……」
「……いいんですか? あなたは、その、バージンなのでは……」
「怖いけど……リドーなら、大丈夫……」
夢ちゃんはほんのりと赤らんだ顔を隠すように、私の胸に額をくっつけました。
私はこっそりとネット上のデータベースにアクセスしました。
性行為の詳しい知識までは持ち合わせておりませんので!
横で密かに別の処理をしているせいか、先程よりは落ち着いて夢ちゃんの頭を撫でることが出来ます。
細い髪は非常に触り心地が良いです。
「嬉しいな……なでなでしてくれるの……」
くぐもった声で聞かされます。
「あなたこれ好きなんですか?」
「うん、好き」
「……子供扱いみたいで嫌とかじゃないんですか?」
「ううん、リドーに撫でられるの、好きだよ?」
もうくしゃくしゃにしてしまいたいですね! しましたけど。
続いて驚く夢ちゃんの顔を上に向かせ、口付けました。
舌を夢ちゃんの唇の間に差し込み、小さな口の中を存分にかき回します。
唾液の粘性や口内の広さ、感触……新しいデータを取り入れていきます。
そのうちに夢ちゃんも舌をおずおずと伸ばしてきたので、絡みついてみました。
「んふ……ん、……ちゅぅ…………っ……」
私に押されながらも、夢ちゃんは積極的にそれを絡ませてくれました。
「ぷはぁっ……」
夢ちゃんが大きく息をつきます。夢ちゃんの唾液と私の擬似唾液が混ざり、
本物と偽物の区別がつかなくなった糸が伸びました。
キスをしながらも、夢ちゃんの制服をするする脱がしていきます。
「え……あ……」
戸惑っている夢ちゃんに、
「管理AIが導入される前は、私があなたの着替えを手伝っていたのですが覚えていませんか」
と尋ねてみると、夢ちゃんは
「えっ、ええっ!?」
と更に動揺します。
「昔よりも、体つきがすらりとして……美しく、なりましたね」
「そ、そうかな……?」
「夢ちゃんの体のデータを更新していくのがとても楽しいです」
「ふぇぇ……っ」
そして私は、夢ちゃんの肌に徐々に触れていきます。いわゆる愛撫という行為です。
人間の柔らかさのない、こんな手に触れられるなんて不快でしょうけど、
私に慣れてもらうためにも、夢ちゃんの体にかかる負荷を計測するためにも必要な段階ですから……。
「ひゃぅ……、くすぐったい……」
……とは言え、目を細める夢ちゃんが可愛くていっぱい撫でてしまいたくなりますね。
「嫌だったら言ってくださいね?」
「ううん……もっと……」
甘い声でねだられてしまったので遠慮しません。
「リドーも、……!」
夢ちゃんが私のスーツに手をかけます。……いや、私なんか脱がせても、何の面白みのない
平らな体しか出てきませんよ……。
しかし夢ちゃんははだけた私の体に楽しそうに触れてきます。緑の肌に夢ちゃんの白い
美しい手が重なる。
……私の方が気持ちよくなってしまってどうするのでしょうか。
更に今は、やたら触覚が冴えていて、……敏感になってしまいがちです……。
私の体のうち、パーツの角張った所や、接合部……私が機械であることを、
人間とかけ離れたものであることを、如実に示す箇所に夢ちゃんは特に触れてくるのでした。
「えへへ……リドー……たくましくってかっこいいと思うの……」
「う……」
うっとりと私を撫で回す夢ちゃんがまた、愛おしく思えます。
いよいよ、胸の愛撫に取り掛かります。夢ちゃんの胸はその性格に似て控えめです。
ブラジャーを外すと、僅かな盛り上がりと、その頂上の桜色の乳頭が確認できました。
夢ちゃんの息遣いに合わせて上下しています。
私はその、柔らく脆そうな胸をそっと指先で触りました。
「ひゃん!」
夢ちゃんが高い声を上げます。データベースから取り入れた通りに、優しく揉んでいこうとすると、
「ひゃ! ああっ! ……ふぁあっ」
と、とても素晴らしい声の反応を示してくれました。
どうやら「小さい胸は感度が良い」というデータは、夢ちゃんにしっかり当てはまるようですね。
小さな乳頭を口に含んで吸引すると、更に良い声を発するので、じっくりと胸への愛撫を続けました。
夢ちゃんの足をそっとつかんで左右に広げると、性毛の奥でひくついている女性器があらわになりました。
「やっ……」
「どうしましたか」
「恥ずかしい、よ……」
言葉と共に膣液が私を誘うかのようにとろりと漏れてきます。
「きれいですよ」
「ううっ……」
知識として女性器の形状は知っていたものの、夢ちゃんにその構造が存在していることを、
こうして目の当たりにすると……、高大な興奮が沸き起こります。
私は、女性の最も敏感な箇所であるらしい陰核に、そっと指を押し当てました。
「ひゃっ」
くにくにと柔らかなそれを刺激すると、更に蜜が溢れ出す。私の拙い触れ方であっても
これほど感じてくれるとは……。
私はたまらなくなって男性器を夢ちゃんの膣口へあてがいました。男性器からは潤滑油が滴り、
私のシンプル過ぎてどうしようもない造りのそれでも妖しく輝いているように思えました。
夢ちゃんがびくっと肩を震わせる。
「力、抜いててくださいね……」
念を押した上で、ゆっくり中へ進んでいきます。
「……ッ、痛ぁ…………っ!!」
夢ちゃんが悲鳴をあげる。
「大丈夫ですかっ?」
私の言葉に夢ちゃんは苦痛の表情を浮かべながらこくこくと頷く。ああ、健気な……。
「では、行きますからね……」
私はずぷずぷと夢ちゃんの中に侵入していきました。
「んんっ……ふああ……!」
きつい締め付けを感じるものの、私の固すぎる男性器は容赦なく夢ちゃんをこじ開けていきます。
夢ちゃんの中は温かく私を締め付けてきて、ひどく心地が良いです。脳に伝わる快楽量が
跳ね上がりました。
やがて夢ちゃんの最奥に到達した。夢ちゃんと私の性器が完全に結合したのです。
「繋がりましたよ……」
「うん……」
伏し目がちだった夢ちゃんが顔を上げる。はにかみながらも私をまっすぐに見てくれる。
私は夢ちゃんの耳に近づき、尋ねました。
「動いて、いいですか……?」
「ゆ、ゆっくり、ね?」
私は静かに男性器の抜き差しを始めました。
「ぐっ…………」
往復するたびに体を走る快楽信号が増加していくようです。
夢ちゃんを気持ちよくすることを第一に考えなくてはならないのに、
もう思いっきり擦ってしまいたく、なる。
圧倒的な性感が他の機能にまで影響を及ぼし、データベースや言語の引き出しが遅れてきた……。
夢ちゃんをいたわる余裕が失われていく……。
ついに快楽が全身を支配した。
私は腰を一心に振るだけの単調な運動しか出来なくなって……このままでは、
夢ちゃんを壊し、かねません……。
「夢ちゃ……あ…………くっ……」
「リドー……リドー……!」
夢ちゃんが切なげな声で私を呼ぶ。
「リドー……わ、たし、も、もう…………」
私ははっとして腰の動きを早めた。
「あっ…………やぁっ!リドぉー……!あああああ……!!」
「夢ちゃん!夢ちゃぁぁん!!」
夢ちゃんが達したと思われる瞬間、私は擬似精液を一気に放出した。
「ふああああッ!熱い、よぉ…………!」
夢ちゃんは大きくびくびくっと痙攣して、それを受けいれました。
・・・・・・
性行為を終えたあと、一応機械病院の診察を受けて来ました。
異常の直接原因は、夢ちゃんが先日十八歳になったことにより十八禁機能の誤作動が
起こったということらしいです。それだけでした。
「情けな……」
私はふらつきそうになりながらも夢ちゃんの元へ戻ります。うつむいた私の顔を、
夢ちゃんが不安げな顔で覗き込みます。
「……どうだった?」
「ええ別に大した異常ではありませんでしたよまったく……」
「良かった……」
夢ちゃんが、ほっと息を吐きます。
「それで、あの、これから……」
もじもじとしながら口ごもるのが可愛かったので、遠慮なく頭を撫でました。
「あ……」
これから、ですか。現在時刻は午後二時前、学校はまだ授業中でしょうけど。
「これからデートに行きましょうか?」
私の誘いに夢ちゃんが目を瞬かせる。
「いっぱい仲良くしましょうね」
口角を目一杯上げて微笑んでみせると、夢ちゃんは満面の笑みで返してくれました。
「うん!」
「では参りましょうか!」
私は彼女の手を取って、光の差す昼下がりの道を歩いていきました。
(終)
>>170 GJ
十八禁機能w
多分、ロボット萌えの会社が造ったんだな。
だから、見た目がロボロボしてるんだ。
GJ!
潰れた会社は時代を先取りしすぎたんだなw
あとなんだかエージが確信犯っぽくていいな
GJ! やっぱりロボと少女は良いなぁ。超ニヤニヤしましたw
GJ! 機械人外すばらしいよな
失礼します。
ちょっとSFっぽい感じの世界観で、
改造人間×吸血鬼娘(作中では「精製者」×「異種」)の話です。
シチュエーションありきで、二人を中心に動く話なので、
登場人物が地味に多いのは適当に読み流して問題ないと思います。
ほのぼの素敵なお話の直後に、堅苦しいSSで、
少しだけ心苦しいんですがお楽しみ頂ければ幸い。
夢を、見ていた。
故郷を失って数年、歳の離れた兄が居て、未だ兄の恋人ではなかった、思いを
寄せる女性が居て。自分達は幸せなのだと、そう信じようと躍起になっていたころ。
揺り籠のような時間は最早、ここ暫く思い出すことの無かったもの。胸の痛みは無いと言
ったら嘘になる。そして、少しだけ、自らの受けた傷の重さを意識する。
彼はさる術式を受けて、寿命と引き換えに桁外れの再生力を手に入れている。
精製者、と呼ばれる。人でありながら人でない存在。
死ぬ事は、ないのだろう。だから、一欠けらの不安もなかった。
誰かを守って、傷付いて。そんな行為の甘美さに、ずっと憧れて。
(……本望?)
もう1人の自分が、嘲笑しながら囁く。繰り返し、繰り返し。
肯定く他に、何ができるだろう。
ゆるやかな眠りの中で、幾度となく反復した無意味な遣り取り。
(抗生物質二種に、鎮静剤のカクテル。怪我人向けのポピュラーな処方箋)
かたり、とトレイが鳴る―――その音楽に、そっと意識が浮上する。
薬盆だろう、と推測して、薄く目蓋を上げる。薄明。
視界は、暈かしたように曖昧で、日の高さもまるでわからない。
室内にはどうやら、そっと滲むように佇む少女の姿があった。
(マリィ)
少女の名を呼ぶ。
唇は動かず、これもまた、夢かと、そう思う。
薬盆を下ろし、ぴんと背を伸ばして傍らに腰掛けた少女は、目線を自らの手元に
落として凝と動かない。気丈な彼女が、隠すこともなく涙を堪える様子は
久しく見なかったと覚えた。記憶を辿れば、最後に目にしたのは、
(ああ、そうだ)
こときれた育ての親の亡骸を抱いた少女に、自らの裏切りを告げたとき。
もう二年も過去のこと。
―――だとすれば、自分には過ぎた取り分。
願望を、夢に見ているのかもしれない。腹のあたりでじくじくと疼く、癒える
最中の傷の痛みだけが現実の延長。それならばと、彼は上がりかけた瞼を下ろす。
このまま搖蕩うのも、悪くない。そう思った。
けれど不意に、ふわりと柔らかな感触が頬に掛かる。
結果的に、彼の意識は再び浮上することになる。
異種のちからを酷使してきた結果、背を埋めるまでに伸びた、真っ直ぐに
真白い髪を思った。少女が自らを削って戦ってきた、証。
彼が彼女に供した血の、証。少女をささやかな幸せから引き離した、彼の罪の証。
その挙動は余りにも優しく、そして甘美だった。
柔らかな髪先に続けて触れたのは、氷にも似てひやりとした、人間の手のひらの感触。
目蓋かた前髪のあたりに、躇いがちな気配が触れる。
目を開かずとも網膜に浮かぶのは、泣き出しそうに歪む薄氷の瞳。
やはりこれは夢なのだと、自らに命じる。幾度も、幾度も。こんな顔をされては、
心臓狙いの銃弾の前に身を露したことが、彼が傷ついたことが、少女にとって
大きな意味を持つのだと、そう思えてしまうから。
一瞬とも、数分とも思えた。
まさに、夢中のように。
吐き出す吐息は言葉にならず、引き攣れて耳元に届く。
倒れる瞬間と、全く同じ言葉が、変わらぬ調子で。
どうして、と。
× × ×
「昨日まで、この部屋を出ようとしなかったんだよね、あの子」
目を覚ました彼に、その少年は言った。
「マリィ・アトキンス。かと思えば、君が目を覚ますや否や顔を出さなくなるし。何、ツンデレ?」
共生派組織『ウィリー・ウィリー』、医務室に、簡易病棟の並ぶ階層は今、
前の戦闘で運び込まれた人と、異種とで賑わっていた。目の前の少年はいわば
このフロアのナンバーツー。専属医師であるシュッツマンの下、実務を一手に
引き受ける人物だ。
「部屋で寝てろって言ったんだけど。聞かなくってさ」
舘石桜花。さる島国の名門の出で、混血のサラブレット。ポテンシャルの高さが
公に知れた血統の常として、惨澹たる日々を過ごしていたらしい―――そう聞きは
したが、かの島国の国内事情は情勢にまるで明るくない彼には無縁のこと。
「驚かないね」
アラムの反応を見て、彼は僅かに驚いたようだった。知ってたのか、と。
「……夢かと思ってたんだよ、半分」
気づいたとき、彼は水の静寂のなかに一人だった。
空調と生命維持装置の鈍い唸りだけが響く室内。全ては幻のように、
それでも、泣き出しそうな双眸を、忘れる筈もない。
少女の存在感は、負極に振れているがゆえにひどく確固としていた。
触れた記憶は、確りと焼きついている。命の気配が希薄な。つめたい体温。
彼の様子に何を思ったか、少年がそりゃそうか、と肯定いた。
予備知識の通りならばこの少年、彼と綺麗に一回りは歳が違う。話の渦中の人物、
かの異種の少女よりも歳下。外見はまさにその通りなのだが、彼に相対する振る舞いに、
年長者への敬意などは皆無。エージェントとして、ウィリー・ウィリーとは半ば敵対的な立場に
あった頃より幾度か話しているが、この行動原理が某かの自信に裏付けられてのことか、
単純にその数奇な来歴に拠るものか、判断がつきかねている。
「医務室に引っ張っていくいい機会だと思ったのに。一週間待ってこれだよ? 」
あてが外れた、逃げられるようなことでもしたの?そう問うてきた少年に、うんざり
しながら言葉を返す。
「覗きの趣味でも?」
回診は、一日一回。そこまで頻繁にこの舘石の顔を見た記憶はない。
うんざりとした様子で問うた彼に、白衣の少年は、けらけらとわらった。
「亜里沙が気にしてたんだ」
亜里沙、とは看護師の女性だ。舘石の部下、といっても彼女のほうが歳上だが、
本国では彼の従者のような立場であるらしい。一見すると淑やかな女性だが、
お節介の度を越えた他者への献身ぶりに、それを可能とする看護師としての
有能さは、どうみても常人のそれではない。彼らに限らず、実の兄の率いる組織の
構成員たちはあくの強い者ばかりだ。こうして身を置くなりゆきになる以前より、
幾度呆れかえることになったか知れない。
しかし、必ずしも外向的でない性格であるところのアラムが、こうして付き合いの
浅い相手に自分等の内情を語るっているのも、この場の特殊性あってのことに
違いなかった。
(……兄さんの所為か)
その点だけは認めざるを得ない。
その場にはいなくとも、兄の強烈な人間性がこの場には残っている。袂を分かって
長かったとはいえ、家族であるというだけで、いくら警戒しようともあの人物へ
無条件に気を許してしまう―――その、延長。そんな甘さが自分の裡に残っていた
事実を疎むべきか、あるいは喜ぶべきなのか。
「カウンセラーは間に合ってるよ」
他人には到底世話を焼かれたくない領域に気を回されている気がして、答えた。
「元・異種対策室のエージェント。ここじゃ警戒されるだろ?」
患者のメンタル・ケアは医者の務めなんだ。
「……年長者を礼う姿勢は褒めてやる」
嘆息。
「けど、子供が大人をからかうのは感心しない」
つれないなぁ、少年が、そう言って、こちらもにやりと唇の端を持ち上げる。
「あんたが精製者じゃなきゃ、とっくにこの世からサヨナラしてたとは思うけどね。
回復は順調。代謝速度なんかの異常もなし。術式を受けてから長いのに、
ノックバックが全く出てないのがちょっと心配だけどね。まぁ、さしあたっては
気にする必要もないと思うよ」
あとは向こう二週ばかり、無茶やらないで真面目に薬飲んでれば無問題。
かりかりと、ペン先が紙を削る音。ズルいよなぁ、とそんなつぶやきが混じる。
「……何が」
「ヒョロい癖に肉ついてるじゃん、お兄さん」
少年の指先が探り出すのはさらにもう一枚、別のカルテ。
名前は確認する間でもない。面倒な話になりそうだと直感した。それでさ、と舘石。
「アンタの方はそんなに心配してないんだ。本音を言うと、あの子のほうが心配。
此処に来たときに検査させてもらった結果がこれだけど……今、普通にその辺
歩いてるのが、不思議。血を受けずに力を使って、そこらの奴ならとっくに
起き上がれなくなってるのに」
ここで少年、は意味ありげに彼のほうを見た。態度に出ていた、かもしれない。
「心配?」
ふぅん、と少年が笑う。
「RESが上がりっぱなし、REGが低い、特性値は乱降下。自覚が無いはずないんだけど
なぁ。食事もろくに取ってないし、薬も飲まないし、血の摂取は疎か、血清のスト
ックも突っぱねるし。最初のころは普通に話せたから、絶滅危惧種にしちゃあ人当
たり良いなって感心したのにさ」
嘆息ひとつ。
「一皮剥けばすっごい頑固だよね。亜里沙が困ってる。大人しく治療させてくれない
―――ここんとこ眠りっ放しだったアンタと違って、動き回るし」
迷惑を掛けられてこその看護師なのに、って、半泣きだよ。
マリィも彼も、「必要と判断すれば相応の社交性を発揮する」点では共通するが、
「必要である」の判断水準はあの少女の方が緩い。端的に言えば、ぱっと見の人
当たりは良い。にも関わらず、彼女の薄皮一枚の下、にどうやら彼らは接触する
ことに成功しているらしい。
「一応、確認するけど。あの子、贄に使ってたのは、ひょっとしてあんた一人?」
「僕からでさえ、渋々ね」
「まぁ、あのくらい血が濃ければ、ひとりでも力は振るえるんだろうけど……
程度ってもんがあるよ。あれだけ消耗して、血を受けないなんて」
「それを僕に言われても、ね。こっちは病人だぜ?」
「知ってるよ。でも、ここで彼女の元々の顔見知りは、あんただけだろ?」
「あの子を捕まえたら一言、医務室にくるように伝えて。それと、これは強制じゃ
ないけど……一口、飲ませといて。あんたのなら、飲むんだろ?」
事も無げに舘石は言うが、今の状況を鑑みれば、それは相当に怪しい。
「……僕が彼女に逃げられてるってのは、知ってるんだよな」
穀潰しなんだからそれくらいやってよ、と少年が言う。
彼の言い分は正しい。しかし、居候を早々に扱き使うとは。民間組織へ幾度かの
潜入経験から鑑みて、その場にいる民間人に協力を頼む、など、小規模な組織では
珍しくもない事態ではあるのだが、それでも。
―――彼の内心を知ってか知らずか、舘石が声のトーンを落とした。
「こういう仕事は、亜里沙の担当なんだけど……暴走した連中がやんちゃしてる
せいで出張続きなんだ。こんな時期に連中のエージェントとウチの保護対象、
2人揃って転がりこんできたときはどうしてくれようかと思ったさ、ホントにね」
そう云って、少年はまた笑った。
辛辣な言い分をは裏腹に、口調は軽いし、責める色もない。人を使うのに慣れた人
間特有の、饒舌さ。実害がない範囲で自分たちの情報を開示してみせるたぐいの。
「あの子の立場も、あんたとうちのボスの関係も面倒だしさぁ」
しかし、メンタルケアも仕事だ、というのも、社交辞令ではないのだろう。少年は、
彼らの組織に転がり込んだ居候二名をどうやら本気で気に掛けているらしい。そう、
思いかけて――自分も丸くなったものだ、と、アラムは内心で苦笑した。
少年は続ける。ウチは迫害される連中を庇護する組織、ってことになってるから。
「守りきれなかったってオチは、ね。俺の上司はドライだから飄々としてるだろうけ
ど……ボスとか亜里沙とか、かれらが落ち込むのはあんまり見たくないかな」
離し終えた舘石が腰を上げる。
ありふれた、どこにでもある、工業製品然としたパイプ椅子。
記憶の中で、『彼女』が腰掛けていたのと同じものだった。
(……マリィ)
あの白い少女を、思う。
けれど、感情はどこか乖離していた。
何を間違えたのが泝ろうにも、因果の細糸のもつれは酷く、解き解すにも面倒で。
「リハビリが必要なら、2階の娯楽室の隣に設備があるから、そこ使って」
それが、白衣の少年の立ち去り際の言葉。与えられた部屋を出て、それから、およそ半日。
探し人を見つけたのは、日暮れ刻にさしかかる頃だった。
『ウィリー・ウィリー』が利用しているビルの使用階をくまなく歩き回って、
ようやく行き当たった一角。サンルームとして利用されている屋上階の片隅。
少女は、赤い陽に溶けそうに立っていた。
はじめて出会ったときを思い出す。同じだ。逆光、伸びた影、彼女。
けれど、あの日とは何もかもが違う。
あれは午後、昼下がり。スラムの路地裏は混沌として、冬の陽光は柔らかかったし、
少女の佇まいは今とはまるで違っていた。あのとき生命力に溢れて見えた少女は今、
間逆に、まるで消え入りそうに見える。その存在感が彼の目を惹きつける事実だけ
は変わりがなかったけれど。
異種たちの『王』と呼ばれた男の、ただ一人の直系。
彼がかつて、徹底的に傷つけた少女。
「マリィ」
現実離れした光景の中、無感情に―――少女が振り向く。
彼の名を、青褪めた唇が績ぎかける。逡巡と見えたのは、錯覚か。
虚脱した瞳が、ふっと焦点を結んだ。
「久しぶり。探したよ」
片手を挙げる。
ひとつ被りを振る、仕草。顔を上げれば、そこに居るのは、彼の良く知る、
いつもの彼女だった。愛想のまるでない声音が、ことばを紡ぐ。
「探される理由が、思いつかないのだけど」
「僕が目を覚ましてからも、顔を合わせていなかったからね」
「……そう」
少しだけ眉を寄せた少女が答える。淡々と。
アラムが知る限り、普段の彼女は表情豊か、だ。器用に、笑顔で真意を覆い隠すこと
すらやってのける。年相応の感受性を持っている癖に、大抵のネガティブな感情は
笑って押し隠してしまう。
けれど、目下の果てしなく愛想の足りない反応も、彼と彼女のやりとりに限って
言えばいつものことだった。
アラムに対しては、彼女は笑顔をつくらない。必要ならば嘘をつく、裡に
秘めた憎しみを隠さない―――それが、彼と彼女の関係において誠実たりえる
唯一の条件なのだと、そう信じているように。
ワンピースにカーディガン一枚の、軽装。丸一日、食堂にも顔を出していなかった
事実も耳にしてはいたものの、探したことを、当人に教えるつもりはない。
「『医務室に顔を出すように言え』って。伝言を頼まれた」
伝えると、少女は当惑げに首を傾げた。
「どうして、貴方に?」
「君の顔見知りはここでは僕だけだから、ってさ」
「オウカのところへなら……一昨日、行ったのに」
「毎日顔を出せって指示なんだろう?注射が怖い年頃でもないだろうに」
揶揄する口調で告げると、
「此処の人たちは、心配性が過ぎるの」
そう、返辞がかえってくる。拍子抜けするほどに会話は潤滑だった。
最後に話してから実に2週間のブランクも、これではまるで感じられない。
しかし、その事実が彼を僅かに戸惑わせる。
彼女を探す道すがらずっと、どう辯しかけたものか迷っていたのに。
いつものとおりだ。
互いに意識を張り詰めさせて、けれど、それでも砕けた調子を粧って。
その軽さも、これまで通り。二年間、道行きを供にしたふたりが確立した、
もっとも摩擦のすくない方法論に同じ。
内面に踏みこまないように、境界を踏み越えないように。
「……」
ガラス張りの部屋は真っ赤な虚空に浮かぶ船のよう。
「傷は。まだ、痛む?」
「少しね。寿命は半年くらい縮まったかもしれない」
褒めてくれる?冗談めかして問えば、軽い返辞が返ってきた。
「真逆」
すげなく言って、白い少女は酷薄に目を細める。
「わたしとあなたは、共犯者。……わたしの目的の為でなく、あなたの目的
のためでもなく。それなのに、無駄な血を流してまでわたしを助けて欲しい
なんて、そんなことを頼んだ覚えはないもの」
逆光。だから、少女の整った容貌に浮かぶ表情は、全く見てとれなかった。
用は終わり?それだけを告げて、少女が踵を返そうとする。
薄っぺらなワンピースの裾が、純白の髪が、そっと揺れる。
「……血は」「いらない」
すれ違いざまに、ごめんなさいと囁く声。
(―――幻聴?)
そう思ってしまうほどに、微かな囁きだった。
振り返るも、彼女はもう其処に居ない。
その手を取れなかったと、後悔と共にらしからぬ思いが去来して、
ようやく彼は気づいた。
(お節介な連中が、気を回すわけだ)
今の彼女を前にして、なるほど。ひどく、胸が噪いでいたことに。
× × × ×
(何処で、間違えたの)
それは、『ウィリー・ウィリー』に保護されてこの方、幾度となく反復した
自問だった。そして、彼女は回想する。
出会ったのは、この世界の吹き溜まり。歓楽街の路地裏で。そのときはただ、
興味を持ったのだ。何かに、引き寄せられるように。『探偵さん』。花街では
珍しくもない、その存在に。軍人、訳有り、異種、旧人類。あの場所に
「珍しい部外者」など在る筈もない。
(ひょろりと高く伸びた身体を、着古したシャツに包んで。着ている服は、わたし
の知る限りでは、いつも同じ。同じではないけれど、おなじ。みじかい漆黒の髪、
瞳は冱えたうすい緑。莫迦を気取るけれど、本当の意味で、その奥に張り詰めた
ものが緩むことはない)
そんな人間、スラムでは珍しくもない。多少、身奇麗ではあったけれど、彼はあの
場所に一部の違和感もなく馴染んでいた。だから、何ごともなく、それで終わって
いた筈の、有り触れた出会い、そのはずだった。
―――そして、そうはならなかった。
(わたしが、アトキンズの娘、そういう素体だったから)
旧人類の手で作り出された、太古の魔女の血を継ぐ吸血鬼の一族、最後の一人。
誰も幸福にならない、不毛な、何も産みださない、そんな出会いだった。
ほんの少しだけ心を許し、慕っていた青年は、義母の亡骸を前に膝をつく彼女に、
自らの裏切りと、目的とを明かした。所属組織である某国諜報機関の、異種対策室
と渡り合う為に、彼はマリィと義母に接触し―――そして、その結果、隠密に
軍への敵対行動を取っていた義母は命を落とすことになったのだということ。
今後、彼のシナリオには、異種の王の娘たる彼女の身柄が必要となること。
彼女は、彼の申し出を受けた。
義母が生前就そうとした事、すなわち異種たちの血を呑み込んで回る工作機械、
『血の塔』を破壊する、その機会を得るために。
全てを失った彼女は、せめて、義母が生前、望んだことに殉じようと、決めた。
そして、あの日、マリィは、他者と深く関わることを自らに禁じた。
悲しまないように、悲しまれないように。
研究所から連れ出し、養ってくれた義母。
世界を認識することすら覚束無かった彼女に、笑い方を教えてくれた。
その人は今はもう居ない。この世界の、何処にも。
死んだ。ちっぽけな鉛球に打ち抜かれて、それきり。
碌でもない生まれだったものの、迫害された経験は無い。研究所時代は腫れ物
よろしく扱われていたし、義母と過ごしたスラムは、もとよりはぐれ者の吹き
溜まり。有象無象ひとしく価値はなく、それゆえに、彼女のような存在でも
生きてこれた。孤立することを決めたのは、他者に絶望したからではない。
一度手にした幸福を失う恐怖に耐えかねてのこと。
戦う道を選んだことも、そのために選んだ方法も、後悔はしていない。
けれど今、こうして身動きが取れなくなってしまっている。
逡巡の出口を求めても、堂々巡り。
つと、彼女を現実に引き戻したのは、落ち着いた女性の声だった。
「マリィ、マリィ?大丈夫?」
慌てて、顔を上げる。
目の前で、オーソドックスな看護服に、細身の長身を包んだ年上の女性が
気遣わしげな視線を向けている。医務室。『彼』と先ほど話して、
直ぐに訪れたのだ。……他に、彼を避ける方法がおもいつかずに。
「一昨日の小競り合いで血清のストックが切れてしまって……なるべく早く、
手配しますね。いくら否って言っても、もう認めません」
随分と情けない話だと思う。
「だ、大丈夫よ?身体は充分休めてるし、食事は美味しいし」
「ちゃんと食べてるんですか?」
「三食欠かさず」
……嘘だけれど。
「日替わりのローストポーク、凄く美味しかったわ。食欲がなかったのに、
綺麗にお腹に入れてしまったもの」
三日前に遇々確認した、一週間分のメニューを思い出しながら、そんなことを言う。
「いいわ、信じておいてあげる」
悪戯めいた笑みに、すこしだけ胸が痛んだ。よく気が付く人、短い付き合いでもわかる。
「是が非でも、血を摂って欲しいところだけれど……隣の市で大規模な事故があって、
安全な血清の流通量が減ってるんです」
「事故?」
問うた彼女に、アリサが頷く。
「対策室もこの所、不審な動きを見せているけれど、異種の過激派組織の動きが
激しくて手が回らないんです。私達には動きにくい状況ね」
「過激派」
記憶を辿る。思いつくのは、
「この辺りだと、『A.VA』と、『盟約の者』?」
「そういった巨大な組織ではなく……昨夜の事故は、特定の組織による犯行ですら
ありませんでした。追い詰められた民間の異種と、その協力者―――だから、
余計にきな臭いのだけれど」
それは報道されているのと、問い返す。
「公には、否。でも、情報が伝わるのは早いでしょう?」
市井の人々に真実を伝えるのは、公共の報道機関だけではない。
しかし、だからこそ、彼らを利用しなければならないのだと亜里沙は言った。
「その所為で、総長も先生も出払いっ放し。明日は桜花様……いえ、舘石君とあたし
が折衝に出て、寝んでもらう運びになっています」
元々人が少なかったというこの組織が、彼女が来て以来ずっと騒がしいのは、
異種の王の娘、を受け入れたことだけが理由ではない。異種たちを取り巻く状況は、
刻一刻と動いている。
「血清は―――それでも、三日後には確保できる筈。検査して、改善が見られなかっ
たら、ベッドに縛り付けてでも点滴にしますよ?」
丁寧な口調でそんなことを言うと、彼女は笑った。
「ご自分の状態が良くないこと、ちゃんとわかっているのでしょう?」
「血のことは。アラムに相談するわ。それで問題ないでしょ?」
そう答えると、はぁ、と溜息をついて、アリサが額を押さえる。
マリィ・アトキンスは異種、それも所謂『吸血鬼』だ。
人の血を呑んで、異能を振るう種族。
けれど、血を呑む、という行為が、彼女はそもそもあまり好きではなかった。
―――あの、高揚感に、つよい酩酊。
異種は、唯人には知覚できない、ある種の力の場に自らを『接続』することで
異能る。根の世界だとか、極大集合だとか、血の河だとか形容される、不可視の世界。
只人には至れない場所。
媒介は多々あれど、吸血鬼と呼ばれる種族が媒介にするのは無論、生物の『血』。
強力な血統のナチュラルボーンとして作り出された彼女の場合、親から血を受けて
転化した類の急造の鬼とは異なり、普通に暮らす分には血液の摂取を必要としない。
しかし、力を振るえば、否応なく生命の甘露たる血液を求めて苦しむことになる。
今の、彼女のように。
アラム・ヴォフクと行動を共にした二年間は、彼の血を受けていた。
それも、やむを得ないときだけ―――突然に転がり込んだ二人の部外者について、
目の前の年上の女性がどの程度の事を『知って』いるのか図りかねて、
マリィはすこしだけ会話を止める。アラムがICUに放り込まれざるを得なくなった
経緯、自分たちの立場については大まかに説明したものの、彼との出会いも、現在の
関係も、詳しくは話していない。ただわかるのは、自分の立場が、眼の前の女性から、
これまでではありえないくらい配慮されている、ということで。
『ウィリー・ウィリー』でマリィが対峙した人間は、みなそうだった。状況が今
以上に逼迫すればどうなるのかは想像し難いものの、彼女の意思を尊重してくれ
ているのだと、わかる。それが、逆にやり辛い。
(必要になれば、此処の人たちだって私を利用せざるを得ないだろうけれど)
今の段階で『保護』という形で滞在を許し、行動の自由を認めている。
その二点だけで、恐らくは件の同行者よりもずっと、信頼に足る人々だった。
向き合って一月にも足らない人々に甘え通しである事実が、心苦しい。
「明日も、ちゃんと来て下さいね?あたし達は居ないけど、先生がきちんと診て
くださいます。あ、でも、あたしたちよりも厳しいかしら」
逃げ出さないでね、と、完璧な笑顔で、白衣の女性がわらう。
「……心遣いに、感謝を」
伝えるべきことは、謝罪でも、拒絶でもない。
それがわからないほどに自分は子供ではないと、そう思いたかった。
襲撃があったのは、その日の夜半。
『ウィリー・ウィリー』は小さな組織で、本部を構えるのは街中のオフィスビルの
一角、それも、表に掲げられた表札は病院、である。ゆえに、これまで直接の
襲撃を受けるようなことはなかったのだが―――
結論だけ言えば、「突入」は失敗に終わった。
傍目にも成功の確率の低い手段を対策室が取ったのは、小規模ながら影響力が
強く、扱い辛い組織である『ウィリー・ウィリー』、そしてそこに保護されている
精製者一名、異種一名への牽制の意味が強かったのだろうと、関係者達は後に
憶測した。
× × ×
屈む動作から、手首を返すと同時に銀色の光が閃く。一瞬。
急所へ、的確な衝撃を受けて、残り3人の襲撃者が吹き飛ぶ。
駆け引きも何も存在しない、純然たる火力の差が導き出す結果。
「……」
最早動き無く倒れ伏した異種が2人、心臓の位置に目掛けて魔女の鉤爪が打ち
込まれる。彼女に競える血統の異種なら兎も角、襲撃者のレベルではおそらく
もう戦うことは叶わないだろう。血統の力には歴然たる序列がある。
「今回は警察の名前を使ってるって、本当?」
少女が問いかけたのは、背後の彼に向けてだった。
「連中がここまでの強硬手段に出るとはね。相当焦っているらしい」
「亜里沙が言ってた、『不審な動き』っていうのはこれの根回し……」
一体どんな論理を用いて警察を動かしているのかは、今は不明だけれど。
「行く気なのか」
彼女の意図を、アラムは正確に悟る。
「どのみち時間はないんだもの」
マリィ・アトキンズの手には、義母に託された一葉のプログラムがある。
『血の塔』のコントロールシステム、その根幹に侵入するための。
この二年間、彼女がアラムと道行きを共にした理由がそれだった。
全ては、このプログラムを実行するに有利な条件を獲得する、そのための道行き。
(『捕縛』ではなく、任意同行されて、機を斥う)
だからこれもまた、以前から二人の間で、ひとつの可能性として浮上していた選択肢
では、ある。しかし、だからこそ、その致命的な欠点をマリィも理解していたと思しい。
「連中が異種には人権を認めない。任意同行のアドバンテージは得られない、
君は知ってる筈だろう」
「だって。此処の人たちに迷惑を掛けるわけには……!」
「兄さんも『ウィリー・ウィリー』の連中も、そう柔じゃない」
小規模ではあるが、名だたる異種と、その協力者の集う組織だ。拙速な一手、
小回りのきかない公権力相手であれば尚のこと、立ち回るに不足はない。
「優しくされて、情が移った?……目的を達成することを考えれば、今は焦って
動くべきじゃない」
「でも」
何かを言い募りかけた少女が、そこで、がくりと膝をついた。
慌てて、駆け寄る。すぐにわかった。
(血、か)
―――こんな状況は、はじめてではなかった。
ポテンシャルから考えれば稚戯に等しい小競り合い。それでも、消耗したまま
血を受けていない、今の彼女には、大きな負担であったに違いない。
「血が、欲しい?」
返答は無い。
しかし、身体を支える彼を抵むだけの余力もないのか、少女はぐったりと身体を
預けていた。見下ろして、嘆息。ポケットからナイフを取り出して、少女の背に
腕を回したまま、手首に刃を立てる。
そして、黙って首を振る少女を上向かせて、呼吸を封じた。
耐え切れずに開かれた唇に、傷口を押し当てる。異種といえども、
日常的に肺呼吸を行っている以上、そうそう耐えられるものではない。
原始的な方法だが、それだけに効果的と知っていた。
「みっともない思いをしたくなければ、素直に受け入れた方が賢明だ」
面倒なので、痛覚の遮断は行わない。
「っ、あ」
熱に浮かされたように、少女の瞼が降りた。
長い睫毛が震えるさまを、凝視する。荒い呼吸が、ひとつ、ふたつ、
「ぅ……」
生暖かな感触が、傷口に潜り込む。痺れるような激痛。
同時に、僅かな悦楽。
『精製』を受けたとはいえ、精神構造的には常人の範疇に収まる彼には、少女が
彼の血を通して感知しているものを知る術はない。けれど、人形じみて綺麗な
少女が、自らの与えるものに息を喘がせる様に、何も感じない男が居よう筈もない。
舌を鳴らして、白い少女が血を舐め啜る。
(そうだ)
ぞくりと這い登る感覚と共に思いだす。
あの時の感情に、よく似ている。腹を裂かれた直後、彼の背を受け止めた少女の、
驚いた表情を見上げていた、あのとき。
跪いた少女が、恐る恐るのように、彼の腕に手を伸ばす。精製者たる彼の治癒力が
傷口が塞ぐまでの、暫しの間。痛みと悦楽に塗れた静寂が、その場を支配して
―――やがて、血を啜り終えた少女が、ぐったりと彼に身を預けた。
軽い体温。すっぽりと、細い体躯が腕の内に収まる。
透けてしまいそうに、儚い存在感。紛れもなく腕の中に在るのに、
掴めた実感はまるでなかった。手を離せば彼女が消えてしまいそうな、
所在のない焦燥感ばかりが高まる。血を啜らせている最中のほんの少しの充足感さえ遠いほど。
「与えた」あとは、いつもこうだった。血を啜る過程にどれだけ浅ましい姿を見せ
ようとも、その行為によって活力を取り戻したとは思えない程に、少女は憔悴する。
以前、何故、血を呑むことを拒むのか、問うたことがある。
同じ問いを無視されること数度、4回目にして、彼女はぽつりと答えた。
『異種の力の源が、"接続"にあるって事は知ってる?』
聞いたことはあるよ。アリスから、だったか―――もう覚えてないけど。
『あの感じが、嫌いなの。それだけ。それだけよ』
嫌い、の意味するところを悟ることは叶わなかった。これまでずっと。
離して、と、細く少女が囁いた。
「……断る」
応じながらも、勿論、気付いていた。
(違う、今、しがみついているのは)
言葉にはしない。既に傷の塞がった彼の右腕に、冷たい指先の感触。
「離したら、階下へ行くんだろう、君は」
返答はない。
「だって、また。居なくなってしまう」
小さく震える上体。
「みんな、居なくなってしまう」
泣いているのかもしれない。
「言っただろう、ここの連中はそう柔じゃない」
気休めではなく単純な事実として、目の前の少女に告げられる事に、ほんの少しだけ兄たちに感謝する。
「明日の朝には綺麗に片付いてる」「でも」
「君を保護することを決めたのは、彼ら。相応の利害を鑑みての判断だし、この
襲撃だって責任は向こう持ち。だから、居候が気を回す必要はない」
後髪に指先を絡めながら、繰り返す。この手の論理が理解できない少女ではない。
こんな状況で、理性的に諭すことに意味がある自信もなかったけれど。
「忘れないで。私たちは、ただ、目的を果たすためにここに来たんだよ」
噛み締めるように呟く声は、何所へ向けられているのか。
「目的。……君の、目的は?」
ふと問うたのは、滅多に弱みを見せない少女が取り乱す様子に、普段と
違う答えが聞けるかもしれないと期待してのことだった。
何故、そんな意識が働いたのか、自分にもわからない。
彼は、過去の自分の過ちを償う為に。彼女は、義母の遺志を継ぐために。
自分を、互いを、そしてほかの他者を、たえず傷付けながら、その為だけに、
ここまで来た、そのはずで、
「守りたい、の」
―――毎度と違う答え。
義母の遺志を継ぐことだと、いつもの彼女なら答えたはずなのに何故か胸がずきりと痛んだ。
みんないってしまう、と少女が繰り返す。胸元を震えながらかきむしっているのは今、彼女の指先。
縋りつくように、刳りとるように、シャツ越しの細い指に力が込められる。
「貴方も、……!」
嗚咽。一言二言、ことばにならない吐息が漏れる。
泣き出しそうな、一対の琥珀。今きっと同じものが腕の中にある。
掴み取れた筈だというのに、少女の存在感は、抱きかかえてなお希薄だった。
それはつめたい体温故か、華奢な体躯ゆえか、否。
―――おそらくは違う。もっと、どうしようもない、何か。
とっさに腕に力を込めたのは、ひどく不吉な直感に突き動かされてのこと。
(違う。そんなはずはない)
この少女の能力を考えれば、今しがたのそれは、遊戯にひとしい戦闘だ。
血は、与えた。これ以上、消耗する理由がない。
「マリィ?」
返答は、ない。ただ、荒い呼吸がひとつ。
「へ……き。立てる」
少女を引き剥がして、その表情を観察してしまったのは、どちらかといえば不随意の
所作だった。かがやきを失くした金色の瞳が、覚束無く揺れている。
(―――糞)
歯噛みひとつ、力ない肢体を抱えあげる。
この部屋は、今しばらくは使えないなと、そんなことを冷静に考えながら。
× × ×
互いが、ただ、目的を達する為だけの道具となる道程。
(同じ道を歩んであげる。だけど、わたしは絶対に許さない)
協力者、あるいは、共犯者。その立場があれば、近付きすぎることはないと思っていた。
(ひとは、弱いから)
かの青年は『精製』と、相応の訓練とを受けている。多少の怪我ならば直ぐに癒えるし、
常人ならば命を落とすような傷を負っても、命に関わりはない。けれど、それでも。
それは、時計の巻きを早めているだけで、異種の頑健さとは別物だ。
だから、刃と銃弾を受ける役割は、自分のものだと思っていたのに。
(……また)
根の世界。血の国。極大集合。
異種たちは、その世界をさまざまな言葉で語る。
深い深い血の色は、あつまれば、漆黒にも、群青にも似て。
(―――わたしが、義母さんに、外の世界を教えてもらうより、前は)
未だ、自分が研究素体として、番号で呼ばれていたころは、
この世界が全てだった。この世界しか、知らなかった。
ほかにはなにも、この目には映らなかった。
ほかにはなにも、きこえなかった。
匂いもなく、熱もなく。
全てを飲み込む、虚無の世界。
何もかもがあるのに、何もないところ。
全てが還る場所。どれほど叫んでも、どれほど足掻いても。
全てを飲み込む虚無の空。
異種の王、その娘。根の世界に、もっとも愛された者。
(……嫌い)
夢を見る。
(嫌い。)
特に、血を呑んだ、力を得た、その直後は。
「……と、逆か」
言葉の、途中。
ぽつりと枕元で囁く声を聞いた。続けて、何故、と囁く声も。
すこしだけ安心する。彼が、未だに近くあることに。
「『お迎え』を、ここの連中が追い返すまで、三時間ってとこか―――」
独白が止まる。あるいは突破された、その先のことに考えを巡らせているのだと、
つと気付いた。その可能性はけっして高くはないと理解していても、そこまで想
定せざるを得ない。こういった一つ一つの経過が、ふたりの二年間の道程を可
能にした。細い細い糸の上を歴るように、そうでなければとっくに終わっている。
異種と人間たちの世界を牛耳る、巨大な悪意を向こうに回した、二人きりの、
たたかいは。今は、そうでないかもしれなくとも。
同時に、自分が意識を手放してからそれほど時は過ぎていないのだと、知った。
「……アラム」
もう目を覚ましたのか、と、彼が名を呼ぶ。
そこに含まれる驚きも、不安も、マリィは聞き取っている。
気付いていることに、気付かないふりをする。
ここまでの二年間と同じように。感謝してもしきれないことは知っていた。
けれど、手を伸ばしたら、きっと損なわれてしまうから。
呟く。
「アラム」
名前だけを呼ぶ声は、あからさまに、みっともないほどに心細げだった。
「わたしの、やりたいこと、は」
……何を、話しているんだろう。
心と躯が離れてしまったように、言葉が零れ落ちる。
「かあさんのやろうとしてたこと、あの、塔を」
ああ、と首肯の気配。すこし安心した。
「こわすことで。それだけで。貴方のやりたかったことは、然るべきタイミングで、
わたしを、『彼』に引き渡すこと、で。そう、だよね……?」
確かめる間でもないこと、その筈だった。
それが、たったひとつの契約。
そうだね、と、もうひとつ頷く気配に、安堵する。こころの底から。
「そうだね。然るべきタイミングで君を引き渡して、ホルボーンと取引。
アリス・ハドスンの身柄を取り戻すことが僕の目的だった」
アラム・ヴォフクは、淡々と認める。
けれど、そこに続くのは逆接の言葉。でも、と言ってアラムは笑う。
「―――僕は一度、彼らを裏切った」
「いまからでも、わたしを連れて行けばいい。結果が全て。そうでしょ?」
「無駄なことはしない主義だ、知ってるだろう?」
事実だけを並べる調子で、彼。
「ここで君がのこのこ出て
行っても、恐らく先手を打たれる。何の意味もない」
「………」
尤も、だった。返す言葉もない。
ここまで事態が動いてから首を差し出しても、
後手に回った行動にしかならない。
「それに」
階下の喧騒。他人事ではない。他人事ではありえない。
それなのに。
「今更。もう、決めたからね」
―――思わず、顔を背ける。
彼が何を伝えようとしているのか。本当は気付いている。
不意に、視界が揺れた、気付けば、覆いかぶさるようにアラムの影。
生きた人間の、体温。彼女のそれとはまるで違う。今も、じわじわと、死の世界に
惹かれて、熱を失って行くこの身体とは。
やむを得ず、目線を合わせた。
(だめ)
声に出さず、語りかける。まだ自らの出自も立場も何も知らなかった頃、ほんの少し
だけ思いを寄せていた相手に語りかけるように。
(貴方は、ここにこないで)
胸中では狂おしいほどにこの人を求めていても。
辛うじて囁く。
「……近すぎるよ、アラム」
「距離は先刻とそんなに変わらないと思うけど」
「屁理屈だわ、それ」
こつん。
「………っ」
額が合わさっている。風邪を引いた子供と、その親のように。
そのまま、一拍。
(あ、かあさんが、前に)
すこしだけ気が緩むその間隙を撞いて、
「ん………っ、ん」
触れる。
はじめに、短く切りそろえた前髪のすこしだけ固い感触、つぎに、生暖かく乾いた、
温もりが触れる。同じ場所に。額と同じ場所に。止める暇もなかった。
唇をあっさりと割り開いて、潜り込んでくる。彼の、舌先が。
接吻はごく短く。
「―――!」
児戯のようにあっさりと離れた。架け橋ひとつ。
「斬り殺されたいの。さっきの連中みたいに」
「殺していなかったと見えたけど」
「……黙って」
ひとつ、息を吸う。努めて、浅くならないように意識しながら。
「子供に興味はないって」
「ん」
「手を出すほど女には困っていないって」
「ああ」
「言っていたのは、誰?」
「さあ、誰だろう」
「ふざけないで」
青年が一度、上体を持ち上げる。き、と硬材が軋む音。当然だ。決して柔らかくは
ないけれど、そもそもこれは、二人分の体重を支えるためには作られた寝台では
ない。おそらくは。
「……僕の、これも」
もう一度、視界が翳った。
「市警の連中の前に両手を差し出すのと同じ程度には馬鹿な行動、かな」
半分笑いながら、青年が言う。
「抵抗する?」
「さっき言ったけど。斬り殺されたいの」
「君が、それを出来るなら悪くない提案だ」
手を、絡め取られる。
彼は捉えた少女の指先を、自らの喉元にあてた。
―――息を呑む。
「悪く、ない」
振り払おうにも、腕力の差は歴然。青年は、目を逸らさない。
口元に、嗜虐的でありながら、どこか自嘲じみた笑み。
(このひとは、嘘をつく)
信じる根拠なんて何も―――何も?
この期に及んで、それを問えるのか。
彼女の抵抗を肩先で押さえ込んでそのまま、男はゆるく笑っている。
身を切られるように、心が痛んだ。
背に腕が回り、身体が、もう一度傾ぐ。
彼が何を意図しているのかは悟っていた。けれど。
「どうして」
「嫌なら、力を込めればいい」
簡単だろう?
そう告げる口調は軽い。言葉を失って、見上げる。
「や、だ」
ひどく優しく。壊れそうなものを扱うように。背に、そっと腕が回る。
湧き上がる感情は怒りと恐れと、そして困惑。それと、悲しみ。それと、
(―――どうして)
どうして。
彼は、少女が手を下さないことを、回答と受け取ったようだった。
「なら、君が、後悔するだけだ」
ぎしりともう一度、2人分の体重に、寝台が軋む音が響く。
× ×
滑稽な話だった。それはもう、声を上げて笑い出したい程に。
利用して、利用されて、そんな名分を固辞したまま傍らに居て、
願ってしまったことはおそらく、鏡合わせのように同じ。
ただ、耐え切れなかったのだ。おそらくは。孤独に。ただの孤独に。
彼と彼女の違いは一つ。少女の側は何よりも、彼を傷つけることを恐れていた
けれど、その結果が余計に彼を苦しめることは、意識の外に押しやって。
そして、彼は、それまでふたり過たず守り続けた境界線を、踏み越えることを
選んだ。確実に、その行為が、更に傷付けることだと知っても。
思い起こすのは、ほんの少し幸せだった遠い時間のこと。兄がいて、傍らには
あの女性がいて。笑うことが出来た。今とは違うやり方で。彼も、今、触れている
少女も忘れてしまったやり方で。だから―――手を離したら後悔することも、
また、知っていた。いや、全ては釈明、釈明に過ぎない。
激しい所作に、癒えきらない傷口がじわりと熱を持つ。構うまい、と思った。
少女の震えが、指先からそのままに伝わる。
―――この、白い少女にならば殺されても構わない。
それもまた、半ば本心だった。倒錯した願望に、ぞくりとする。
(近付きすぎてしまった。君も、僕も)
力が平衡を失っている今ならば、尚のこと、彼女が本心から拒絶すれば、何者も
彼女に触れることなど叶わない。けれど今、彼は彼女に触れられてしまう。こんな
にも容易に。埋め得ない距離があった筈なのに。
(君はきっと、覚えていない)
それは、彼がまだただの人であったころ。
強化硝子の向こうに、彼女は居た。世界に産みおとされたばかりの小鹿を思わせて
ふらりと首を傾げる姿を見た、そのとき、彼は、自分が居るべきではない場所に足
を踏み入れたのだと、知った。無垢な瞳に宿る、底なしの虚無に恐怖した。
―――そうやって、そのときは未だ名を持たない、白い少女に出遇った。
ときを経て再会した少女は、陽だまりのなかで笑っていた
一向に焼けない白磁の肌も、殆ど白に近い、プラチナブロンドも、無機物じみた
、異端たることを宿命づけられた琥珀の瞳も、その姿を構成する要素はそのままに、
けれど花開くように。。
彼女自身の裡にあるものなど、すっかり忘れてしまったように。曇りのない笑顔で。
憎んだ。自分が既に失ってしまったものを、何も保たないはずの少女が手にしている
ことを、只管に憎悪した。
忘れもしない、あのとき。
組み敷いた肢体、銀糸が古いシーツの上に、冗談の続きのように広がっている。
未だ塞がりきらない疵の痛みを、ふたたび意識する。
彼女を守り、そして今、害している。勲章ではない。只の執着の報酬。
(階下の、戦闘は)
意識の端で分析する。回の襲撃は、恐らくは牽制。或いは、標的を誘きだすための
もの。構う事はないと、直感は判断を下していた。まぁ、此処の人々は異種と人との
関わりで鍵となる人物のひとりを保護する為に戦っているのであって、こんな茶番を
許す暇をつくるために、血を流しているのではなかったろう。けれど、
―――構うこともない。生きる時間が、彼らには必要だ。その欺瞞を、彼は笑う。
自身の悲しみに閉ざされて、そこに耽溺することを覚えてしまった眼下の少女も、
覚えて滑稽。ひどく滑稽だ。
それでも、熱は生まれる。
「こんなときに……!」
「今だから、だ」
癒しもなく、救いもなく。唇を被せて、もう一度、舌で、歯列を割る。
不意打ちだった先ほどと違い、受け入れさせるのは容易ではない。
それでも受け入れられてしまうのは、他者を求める、心と肉体ある生物の性か。
「っ、ん」
ベッドが軋む、少女の肢体が、半ば以上までシーツに埋まる。触れ合った下半身
の熱に息が詰まる、昂ぶる。どうしようもなく。
指先、舌、それ以上のものまでが、自分の意識から巻き取られてゆく。
「ん、ッ!」
つと、乾いた感触が胸元に触れて、直後、肌が外気に触れる。
目を薄く開けば、淀みない動作に、外衣を暴かれていた。
「―――!」
暴れる。否、少女は、暴れようとした。
経験の浅い少女を陥落させることは容易い。
後ろ髪を掻き分けてやれば、彼を押し停める上腕の力が失われ。
感じやすい耳元をなぞれば、きつく立てられた膝先が解ける。
肌蹴られた頂きに、舌先を当てる。
薄く色づいた先端の周囲をゆっくりと、ゆっくりとなぞる。
―――震える。与えた刺激の量には似つかわしくない敏感さで。
ひく、と腰が跳ねる。
「や、ぁ……な、に」
もう一度。かたかたと笑い出した膝を割るのは容易で、少女のほうはというと、
彼の動きを阻もうと、脚を寄せようと試みたところでのっぴきならぬところまで
侵入されている事態に気がついたようだった。
愚かにも身体を引き剥がそうとして、けれど、未知の感覚の前に挫折する。唾液で
滑る指先で、更には反対の頂きを、弄る。そっと、円を描くように。
「あ。やッ………ん、ぁ、っ……!」
時折揶揄っては怒らせた、てんで質量のない性の証。
けれど、少女は、否、女は、そこで彼を感じている。
身を任せてしまおうと囁く本能の声と、理性との板挟みに、こんなにも声を上げる。
―――見下ろして、彼はひとつ息を吐く。
彼の所作に、彼女が反応を返す、それだけの応酬。
アラムは、たったそれだけの事に、箍を失って往く自らを認める。
自嘲。「……っ、あ」
押し殺した声が、またひとつ。
「こんなことをして、意味、なんて」
―――その言葉は、彼女自身が裏切っている。
「な……っ、ぅ」
弱い場所。左の耳元、喉元の、咽頭にほど近い場所、頂きの周囲、
背中のある一箇所。不慣れな癖に、彼のひとつひとつの所作に可愛らしい反応が
返ってくる。全ては、身体を密着させていれば筒抜けで。愛おしい、と感じる。
時折跡を残してすらいるのに、今でさえ、意識のたがをすべて外せば、貪りつく
せそうなほど。
これほどの衝動が自分の中にあることが意外だった。
限界の一線、押し停め続けることすら、苦しい。
―――いっそ止めてくれないかと、心の片隅で念う。
彼を拒絶するカードなら、異種たる彼女の手元に、今はちゃんとあるのに。
「意味、か」
意味なら、ある。
「すぐにわかるよ」
言って。手を掛ける。砦。最後の。
「……!」
息を呑む様子に、怯えの気配。
(君が、止めないのなら)
この息を止めないのなら、容赦はしない。
く、と、彼の脚を阻む膝先に力が籠もる。当然のことながら効果はない。
拒絶の囁きを無視して、あるいは受け止めて、名無しの男はその場所を開いた。
体毛が無い、という事実に対しての驚きは薄い。僅かな背徳感はあったけれど。
この少女ならあるかもしれないと、そう思ってしまう。
「濡れている、か」
聞こえるように、それだけを告げた。
「―――っ!」
羞恥に滲む呼吸。
中指が、ゆっくりと潜り込む。
いたづらに苦痛を与える気は無かったけれど、思い返せば、経験の無い相手、
というのは初めてかもしれない。かるく指を二本差し入れて、押し開く。少女が
きりと歯を噛み締めた。わずかに強張る四肢。これでは意味がないのだろう。
(痛みには強い、君だ)
突き崩すならば、ここまでと同じように。
もう一度、唇を塞ぐ。
口腔内をざらりと舐め回すと、それだけで面白いほどに反応が返った。
先の、ただただぎこちない反応とは違う。硝子の瞳に微かな欲情の色が翳して、
揺らめいて、消える。
じわりと潤む胎内。
「……アル」
きり、と胸が痛む。なつかしい呼び名。
初めて会ったとき、彼女が知るのは彼の偽名のみだった。
縮めて、アル。本名と殆ど変わらなかったのは偶然とも必然とも。
「これ以上、は」
「久しぶりにそう呼ばれたな」
そして、マリィは目を見開く。
自嘲めいた口調の裏に、寂しさと、安堵。
感じ取って一瞬、言葉を失った。
(だめ)
彼女は、気付かないふりをする。
腕がら逃れんと、足掻く。まるで意味はない。意味はないどころか、
(何、これ―――作り物のからだ、なのに)
以前、戯れに触れたことはあってもまるで実感が沸かなかったはずの場所だった。
なのに、そこが身の裡なのだと、はっきりとわかる。
異物を受け入れる、その為の身体器官。そして、耳元でぬちゃりと音がして、耳朶を生暖かい感触が撫ぜる。意識が散る、その隙に一層深く男の指が食い込んだ。
「っ」
く、と爪を立てられて、思わず声が漏れる。ぎりぎりの力加減で、繰り返し。
其処が『いい』のだと、とっくに気付いている調子で。
「ひぁ」
突き放そうと腕に力を込めても、びくともしない。次第に力も殺げるはじめて、
「っあ、や、うぁ、や、め」
耐え切れずに腰が、浮く。
直後、痛みと共に、入り込む彼の指が数を増やしたのだと理解した。
つと、意識が揺れて、白む。
(おかしくなる)
「アル」
今しがたまで少女の内壁を刳っていた彼の指先は、ぐっしょりと濡れていた。
「っ、あ」
もっとも敏感な場所を、抓る。追い込まれた身体が、跳ねた。上り詰めるには至らない。ごぼりと溢れだしたのは、指先を濡らすものと同じ。
薄氷の双眸に、理性が戻る。
「っ―――は」
「欲しい、だろう?」
「っ、っ……!」
熟れて、綻んで、弾ける、その一歩手前。
少女は理性の上では、未だ、あくまで彼を拒まんとしていた。
少なくとも、その意思だけは。マリィの掌と、彼の汗とでぐっしょりと濡れた
シャツから、ゆるりと掌が落ちる。達したから、それだけではなく。
裡に押し込められた彼の指が、今度は抜き取られる苦痛に、少女が小さく喘ぐ。
「……く」
まだ、自らが己を取り繕うことはできている事を、アラムは確かめる。
余裕が削がれている。ひょっとしたら、或いは少女以上に。
強すぎる愛着と背中合わせの嗜虐心を、今の少女の姿は否応なく煽る。
助けて、と、半ば譫言めいて呟く声。
「助けて欲しい?」
入り口をなぞる。ゆるい力で、繰り返し。
「……っ」
反駁しようとするも、声にならず―――そして、マリィは漠然と、かつて仲の
よかった若い娼婦の言葉を思い出していた。遠い遠い日。それは、スラムで義母と
生計を立てながら、自らの無邪気な好意をほんの少し意識していた、
それだけだった頃。
『あの人、上手いし、一回寝てみるのも、悪くないかもよ?』
冗談めかして告げられた、そんな言葉。
(そんなの)
そんな、事。
もう、遥か遠い。あの頃の自分も。想っていた人のことも。
今、こんなに近くにいても。
(だから、今の、これは)
これは、なに。わたしたちは、何を?
軋む軋む、意識。
……かちゃり、と小さく金具が鳴る。
(ああ、これが)
この行為が、何を意味するのかは勿論知っている。曝け出された彼の半身は
視界の隅。心の用意をする時間も、彼女には寄越さないつもりらしい。
許される予感、けれど、それがそうではないこともまた、気付いていた。
張り詰めたそれが触れて、入り口を押し開く。
これは、次の、はじまりに過ぎない。
「あ」
そして、彼は哀しげな声をひとつ、聞く。
構わずこじあける。身を、肉の塊を沈める。
体液に塗れて、粘膜が擦れる。
―――まずは、最後まで。
「ぅ、あ、くッ」
組み敷いた少女が、苦痛を訴える。真っ白い喉が曝け出される。
男を知らなかったことは、明白。指で慣らしたとはいえ、受け入れることを
まだ知らない秘所へ、痛むほどに張り詰めた醜い己の半身を、
進める。脳漿が焼けるに等しい苦行。
「く」
それでも、ずっと望んでいたこと、その筈だった。
押し込む毎に、華奢な、少女の身体が跳ねる。
「あ……」
声にならないのか、堪えているのかは定かでない。
吐息に快感中枢を叩かれて、思わずぶちまけそうになった。
摩擦に、表皮がつよく張った。堪えて、進める。
不意に、半身が行き当たる。
あ、と、動きを止め掛けるも、その前に少女が反応した。
「あ」
―――止まるな。
「っ……や、痛ぁ、めくれて、っ、っは、かは」
強張って暴れる華奢な身体を、貫く。
「っ、ア……!」
断続的な悲鳴が途切れた。
狭く、けれどもどうしようもなく泥濘んだその場所は、
びっちりと快感の中枢を包み込んでいる。不思議な感覚だった。
赤い色が僅かに滲む秘所に、半身が収まっている。
「っ」
びくりと少女の肢体が引き攣って、彼を包む肉壁が震える。
濡れた氷の双眸がぼうっと見上げてくる……と思った直後、歪む。
「……く」
そして思わず零したのは、彼のほうだった。荒い、少女の呼吸が耳につく。
熱い。どうしようもなく、熱い。
「っは、ど、して」
苦しげに囁くのは、マリィの声。
「やだ、おかしく―――っあぁ、ひぁッ」
喘ぎに呼応するように、接触は一層に深くなる。つぷ、と、湿った音の反復。
柔らかな場所と場所が擦れあう。腰を前後させる動作は何かに突き動かされる
ように、人形同士の営みのように。だとすれば、糸を引くのは一体、
誰なのだろう。
「っ……ふぁ」
この瞬間、彼女に触れているのが自分だけであることに安堵する。
今、この少女を傷つけているのは、彼ひとり。他の誰でもない。
捻じ込まれる快感に、少女の四肢から刹那、力が抜ける。
そして、強張る。繰り返し。
(―――君を)
間違えていたのは、きっとはじめから全て。
間違えた関係と、間違えた距離。間違えた契約。
守りたいものを決断する強さが、自分にあったなら。
何かが違っていたのだろうか。
「あ、る」
少女が、彼を呼ぶ。彼女の瞳が、彼を見ている。
ああ、今も泣きそうに揺れて。
交差させて握り締めた指先に、そっと、帰る力があった。
………あぁ。
囁きかえす言葉、一つ。
しがみつくように、驚くほどに強い力で、肉茎が抱かれる。
無茶な行為の果てだというのに、少女から返されたものは、あまりにささやか
で、けれど、強すぎる酒がもたらす酔いのように、甘く、暴力的だった。
戻れない場所に駆けて行く、ように。
―――炸ける。
瞬間、懐かしい光景を、
目蓋の裏に見た気がした。
× × ×
苦しげに眉を寄せた、無防備な彼の顔を脳裏に残して、しばし。
しん、と部屋が冷えていることに気付いたのはほんの少しあとだった。
途切れて、千切れた直後の意識は、手狭な客室で、宙に浮かんだきり。
傍らにまだ、彼の体温が在ることに安堵する。まだ、ほど近く。
滲むような下腹の倦怠感は、不可解な切なさは、行為の残したもの。
男女の営み。血を受けることとも違う行為。
それでも、異種、元・被実体、歓楽街育ち。
(優しくされていた、ことはわかる)
さいごの瞬間、見たものを。身体の奥、胸の奥で未だ消えない熱を思う。
けれど、きっとこれは、自分を守る為には、忘れてしまうべきもの。
そのくせ未だ手放せないそれは、
(愛着。執着……それとも)
ずっと、おそらくは彼女の内側にあったもの。
言葉にすることが誠実なのかそうでないのか、わからなかった。
(階下、は)
思いを巡らせる。
今もふたりが無事なのだから、何もなかったのだろうけれど。
何故いまになってこんな場所で。
ずっと、近くにいたのに。疑問を、口に出して問うたわけでもない。けれど、
「どうして、だろうね」
独白だろう。意識が戻ったことは知らせずに、マリィは黙って、低く紡がれる
彼の声に耳を済ませる。そうでなければ消えてしまいそうな言葉。
「こんな、まるで路地裏の子供みたいに、流されるまま」
好きだ。
最後は、独り言葉の続きのように。
聞かないふりをすべきだと思った。
(―――卑怯でも)
否、卑怯なのはどちらだろう?
無茶な二者択一を迫って、彼女に触れた彼か。逃げ続けてきた癖に、
最後の最後まで拒絶し続ける頑なさを固辞できなかった彼女か。
「聞かない」
滑り出たのは拒絶。けれど、紛れもない返答。
「どうして、今、そんなこと言うの」
辛うじて言葉を、繋ぐ。
「なんで、今になって」
……やっと、全部諦めて、なのに。そんな筈はなかったのに。
憎しみも悔しさも重ねられた悲しみも、消えない。
消えないままで、けれど、相容れないものもまた、積みあがって行く。
傍で時間を重ねた、よく似た種類の孤独を抱えていた、たったそれだけの理由で。
「ごめん」
けれど、耳元にじかにアラムの声が響いて、息を詰める。
背を手繰る、手のひらの感触。幾度となく。
全身の力が抜ける。人間の熱量に安堵してしまう。息を、吐く。
「私はきっと、貴方を」
私の存在は―――殺す。殺してしまう。
(あのときの、ように)
吐息だけで、そう告げる。覚えている。何もかも。
そして、アラムは、腕の中の彼女を、見下ろす。震えていた。
折々の負傷、『反動』の悪化、そういった事はあっても、
行為に至ったのは初めてだった。しかし、肌に触れる近さに至ったのは
もとより初めてではない。彼女がその身に傷を負う度、血を与えた回数は
数知れず。けれど、
「僕がそんなに柔じゃないことは、君だって知ってるだろうに」
―――思い起こすのは、彼を抱きとめた少女の、彼の為に泣いた彼女の、こと。
そして、最後のときに見た、少女の、世界。
からっぽだった頃の彼女が、瞳に映していたとおそらくは同じもの。
(君は、あれに怯えるのか)
それならと彼は思う。それなら。
マリィが抱く虚無は今も、彼女を苛んでいるのだろうけれど。
白い少女に出会ったとき、正しく恐怖の根源だった「あれ」を垣間見ても、彼は、
今の彼は、何も感じなかった。
―――時間は過ぎたのだ。彼女の中でも、彼の中でも。
彼女が変わったように、彼もまた変わった。それは、幸か不幸か。
「簡単には死なない」
だから、簡単に口にできる。
異種と人間、彼と彼女を取り巻く全てを理解すれば、
未来のない言葉と知っていても。
「貴方の約束なんて信じない」
宜も無い返答。このときにはもう、いつものマリィだった。
彼のよく知る彼女。だから、笑って返す。
「なら、無しでいい」
ふと、光景が音を失う。
肌越しに伝わる体温だけが、世界の全てであるかのような錯覚。
―――ああ、ここなら。
きっとこの世界なら、最後に見たあの光景が、彼女を苦しめることは無いだろう。
何の根拠もなく、思った。それから、少女が額をぎゅっと押し付けて、
そのまま二人、黙り込む。小さく白い少女が、マリィが囁く。
驚きか。少女が目をひらく気配があった。
思い出す。
ほぼ絶えず傍らにありながら、互いに、ずっと1人だった。
終わりのある道行きと知って。
それから、マリィの頭を掻き抱いた。
僅かに熱を宿した、華奢な身体を。自らの両腕で。
× × × ×
事態が落ち着いたと、アラム・ヴォフクが聞かされたのは翌朝。
兄の呼び出しだった。掻い摘んで、説明する。余計なことには触れずに。
襲撃を前に、意見を違えたこと。そして話した、これからのこと。
二人のスタンスは、ウィリー・ウィリーに保護される以前と同じ。
「お前らの目的がそれなら、俺らは―――いや。今はまだ、言えねぇか。悪い」
兄は。おそらくは協力する、と言い掛けて、一度止めた。
中立共生派、としての立場がある。対策室への明確な敵対行為にあたる決断は、
未だ下せないのだろう。彼自身の思いとは、別に。
「マリィ・アトキンズに何かあったら、あいつにも顔が立たねぇからなあ」
呻るように、ウィリー・ウィリー総長たる人物が言った。
マリィの父方の遺伝子提供者は、兄の親友だった人物。だからなのだろう、
叔父、だとか親戚の娘に対するような有り様に苦笑する。
「クリスも懐いてる」
「あの子は……誰にでも、懐くからね」
「いや?遊んでもらうんだから何が何でも助けろって、昨日もすっげぇ煩くてな」
母親によく似た趨きの、兄の娘を思い出す。
アラムにすら屈託なく接する、くるくるとよく笑う少女。とはいえ、
(全く――僕が一番ないがしろにされている)
冗談まじりにそんなことを考えられるようになった、自らの余裕に驚く。
二度とこうして話をすることもないと思っていたのに。
言葉を交わすのは、眼を覚まして数度目。執務室を訪れる度に驚く。
――がさつな性格で、弟や恋人にはしょっちゅうからかわれていた兄の仕事場とは、
思えないほどに整然としていて。時は過ぎたのだ。
アラムも、兄も、これだけ変わってしまうほど。
彼が損なったあの女性の面影を感じても、彼も兄も、何もない振りをして
対話できてしまう、その程度には。
「いいよ、わかってる。僕も、恐らく、マリィも」
―――だからこそ、あの少女も意地を張る。
それぞれの事情があることも、一方で、心から気遣われていることも、
理解している。
「……結局、お前らの関係って何なんだ?」
真顔で、兄。
「お前も変わったよな。彼女を保護したとき、お前が昔のままなら、俺ぁ―――」
そのまま、放り出そうと思っていたらしい。
直情な、兄らしいあけすけな言葉にアラムは笑う。
「さぁ。余裕がないしね、僕も、彼女も」
道行は目的を果たす、そのときまで。
そう、昨夜、決めた。
× × ×
『……あなたを、許さない』
『ああ』
『信用はしてるけど、信頼はしない』
『ああ』
知っている。
それが、自分たちのルールだから。
「だけど」
かすかな声が、囁く。
細く細く、睦言のように。
願う、願う。
この世界の何処にも存在しない、彼らの神に向けて。
おしまい。
一部改行ミスりました、
あと投下に手間どってごめんなさい。
この流れに乗じて投下。
人外アパートのキャラの話ですが、連中の住むアパートは一切出てきません。
ちょっとダウナーで流血描写もありますが、昆虫人間×人間の和姦です。
NGはヘラクレスオオカブトとソープ嬢で。
吸いたくもないタバコを吸い、体液を濁らせる。
昆虫人間は呼吸器官が上半身には備わっていないのだから、顎にタバコを挟んで吸ったところで何の意味もない。
本当にタバコを吸いたいのなら、腹部の両脇に並ぶ気門のどれかにタバコを差し込んで吸い込み、体内に回すべきだろう。
だが、それをしたことは一度もない。人間の真似事のように口で吸い、味覚器官で味だけを吸い尽くし、残りは吐き捨てる。
我ながら無意味だとは思うが、どうにも止められなかった。タバコの灰を落としてから、曲がったフィルターを顎に挟んだ。
ヘルは、人型のヘラクレスオオカブトである。頭と胸から太いツノが生え、外骨格は黒と金、全長は三メートル近くある。
乗用車など軽く持ち上げられ、爪を振るえば鉄板をも叩き潰せ、至近距離から鉛玉を撃たれても掠り傷しか付かない。
昆虫人間の中でも並外れたパワーとタフさを誇るが、有り余る力を真っ当な方向に生かせているとは思っていなかった。
というより、ヘル自身が生かす術を見出そうとしていない。長らくヤクザの用心棒に落ち着いているのも、そのためだった。
夜更けの歓楽街は、猥雑だが居心地が良い。ヘルのような、収まりどころを見出せない人外も多く歩いているからだ。
己の知性や理性を否定した文句で春を売る獣人の娘達。従順さを売りにしている機械の娘達。そんな娘達を買う男達。
呼び込みの男が通り掛かった男を捕まえては格安の値段を持ち掛けるが、それが嘘であることは誰もが知っている。
どこもかしこも金と性が入り乱れ、卑猥な言葉が並ぶ看板が淫靡に輝き、酒と女の生臭い空気が雑居ビルから流れていた。
その雑居ビルの間から垣間見えた路地裏に、ヘルは触覚を向けてから複眼を向けた。甲高く引きつった声がしたからだ。
頭上で瞬く赤と青のネオンサインを上右足で遮ってから闇に目を凝らすと、何人もの男達が固まって何かを蹴っていた。
それが蹴られるたびに呻きが上がり、肉が叩かれる鈍い音が繰り返されているが、ヘルの他は誰も目を留めなかった。
歓楽街では見慣れた光景であり、日常の一部だからだ。下手に助けて面倒事に巻き込まれるのは、誰だって嫌だ。
ヘルはそう思い、二本目のタバコを吸おうとしたが、風体の悪い男達が揃って上げた下品な笑い声がビルに反響した。
それが外骨格の表面に生えた体毛をくすぐり、音として伝わってきたが、全身の神経が逆立つような不快感が募った。
「…ああ、くそ」
別に助ける気はない。ただ、鬱陶しいのだ。ヘルはぎちぎちと顎を軋ませて苛立ちを吐き出しながら、大股に歩いた。
ビルとビルの間に転がっていた空き缶を蹴散らしながら近付いていくと、人間の男の匂いが触覚をごってりとなぞった。
それが更に不快感を呷り、ヘルは本格的に苛立った。それでなくても、今日はヤクザの若頭に顎で使われて機嫌が悪い。
若頭が囲っている女に組の力量を見せつけるためだけに呼び出され、荷物持ちもさせられ、一日中連れ回されてしまった。
だから、今日は酒も飲まずにさっさとアパートに帰るつもりでいたのだが、このまま放っておくのは何か後味が良くなかった。
わざとらしく足音を立ててヘルが近付くと、男達が振り返った。路地裏に押し込められていたのは、薄物を着た女だった。
衣服としての意味を成さないキャミソールを一枚着て紐同然のパンツを履いているだけで、裸足の足の裏は汚れていた。
仕事を終えて間もない淫売の女だろう。ヘルは吸いかけのタバコを顎で噛み潰し、ツノを見せつけるように頭をもたげた。
「おい」
「ヘルさん!」
男達の中の一人が歩み出し、ヘルに近付いた。ヘルが雇われている組の下っ端だった。
「今、お帰りっすか」
「おう。んで、そいつはなんだ」
ヘルが顎をしゃくると、ぐったりしている女は近くの男に腕を掴まれて引き摺り上げられた。
「ぅ、あ…」
「こいつ、借金も返しちゃいねぇのに逃げようとしたんですよ。んで、締めておこうかと」
下っ端はヘルに擦り寄り、いやらしく笑った。
「バラす気か?」
「すぐにはバラしませんよ、マワしてからじゃねぇと勿体ないじゃねぇっすか」
「どういう女だ?」
「大した女じゃないですよ。顔はそこそこだけど体はショボいし、客を取るのも下手で、本番始めるようになっても稼ぎが悪くって」
「大体解った」
ヘルは下右足の爪先を女の顎に引っ掛け、その顔を上げさせた。
「あ…」
反射的に唇を開いた女は、頬や額にいくつも痣の出来た顔を向けてきた。辺りの暗さも手伝って、その表情は窺えない。
助けを求めるようなこともせず、震えることもせず、己を諦観しているようだった。言葉も発さず、逃げ出すような気配もない。
ヘルの背後からどぎついネオンの光が差し込み、女の顔を縁取っていた。しばらく眺めて、ふと、誰かに似ていると思った。
若い頃に好きだった人間の女に、面影が似ていた。その女はこちら側の人間ではなく、明るい日差しが似合う女性だった。
用心棒としてヘルが出入りしていた、バーを装った違法賭博場の近所にある花屋の店員で、見かけるたびに挨拶してくれた。
それがただの社交辞令だと解っていても嬉しくて、ヘルも挨拶を返していたら、顔見知りになって言葉も交わすようになった。
彼女は、ヘルが知る女達に比べれば純粋で清潔で、立ち上る匂いも化粧や酒のそれではなく、心地良い花の匂いだった。
だが、知り合って半年も経たないうちに、彼女は幼馴染みと結婚してその街を去ってしまい、ヘルとの接点も完全に失った。
顔を合わせている時はなんとも思わなかったが、彼女がいなくなってから、ヘルは少しだけ彼女が好きだったことを知った。
この女は、その女性に似ている。だが、彼女ではない。彼女は目元に愛嬌のあるホクロがあり、この女よりも背が低かった。
別人だと認識しても、尚、ヘルの胸中はざわめいた。決して爪の届かぬ、穏やかな世界への羨望が振り払えていないからだ。
「俺が飼う」
ヘルはタバコを吐き捨てて踏み躙ると、上右足で女の腕を掴んだ。
「飼う? 飼うって、そいつをですか?」
男達がざわめいたが、ヘルは抵抗すらしない女を担ぎ、一笑した。
「お前ら人間は、俺の同族をカゴに入れて飼うだろう。だから、その逆をしてやるだけだ」
ただ、それだけのことだ。ヘルは生温い体温を滲ませる女を肩に載せると、繁華街から程近い自宅アパートに向かった。
その間も、女は黙り込んでいた。それが少しばかり物足りなかったが、暴れられて泣き喚かれるよりも余程楽だと思った。
部屋に戻ったら、まず何をしよう。酒を浴びるか、適当な物を胃に詰め込むか、気晴らしに拾ってきた女を犯してみるか。
そういえば、人間の女を抱くのは久し振りだ。だが、体格に相応の逸物が備わっているヘルが相手では壊してしまうだろう。
昔に囲った女も、慣らして慣らしてようやく挿入出来たほどだ。すぐに出来ないのが残念だが、それもまた面白いかもしれない。
どうせ飼うなら、慣らしてやらねば。
女の名は、葉月と言った。
だが、女は自分の名前以外のことを話さなかった。ヘルも知りたいとも思わなかったので、問い詰めることもなかった。
ヘルは葉月を飼い始めたが、普通に囲っているのとなんら変わらず、接し方も飼い主と愛玩動物というわけではなかった。
服を欲しがればいくらでも買わせ、外に出たければ連れ出し、物を食べたければ食べさせるが、ただ一つ制限を与えていた。
いついかなる時も、ヘルが求めてきたら拒むなと。月経を迎えていようが、空腹だろうが、眠かろうが、疲れていようが、
お構いなしに組み伏せて服を引き剥がす。その中で葉月の体を慣らし、ヘルの逸物を受け入れられるように仕立て上げた。
人間の体は、外骨格に覆われた昆虫人間に比べれば融通が利く。皮も伸びれば肉も広がるので、回数を重ねて拡張させた。
ヘルにとって、女とは暖かな袋だ。血と脂肪がたっぷりと詰まった肉の固まりでしかなく、執着を抱くほどの存在ではない。
花屋の店員のような例外は彼女一人だけで、後は皆、同じだ。相手にしてきたのが水商売や淫売だからかもしれないが。
その日も、ヘルは朝方に帰宅した。用心棒の仕事は夜の仕事なので、夜行性であるカブトムシにとっては好都合だった。
他の組から目を付けられているキャバクラに入り浸り、いい加減な味の酒を飲み、店で起きる些細なトラブルをねじ伏せる。
そんなことを繰り返しているうちに夜が明け、判で押したように同じ化粧をした娘達が退勤したので、ヘルも帰ることにした。
アパートに戻ると、葉月は寝室である和室で大人しく眠っていた。水を求めて冷蔵庫を開けると、夕飯が作られていた。
腹は減っていなかったので皿を手に取ることもなく、ミネラルウォーターのボトルを取ってキャップをねじ切り、流し込んだ。
酒で膨張した胃袋に水が馴染み、染み渡ると、夜の間に煮詰まった体液も薄まったので、ヘルは腰を下ろして胡座を掻いた。
「落ち着かねぇな」
葉月を飼い始めたのはヘル自身だが、部屋に誰かが居るということに未だ慣れない。
「ああ、くそ」
冷蔵庫の中の夕食。他人の体温で僅かに暖まった空気。かすかな気配。それが、狂おしいほど息苦しい。
「おい」
空のペットボトルを投げ捨てたヘルは立ち上がり、乱暴に襖を開けた。
「あ…」
葉月は物音で目を覚まし、布団から身を起こしてヘルを見上げた。
「お帰りなさい、ヘルさん。ご飯、あるけど」
「いらん」
「そう、じゃあ…やっぱり、アレ?」
葉月は布団の上に座り、寝乱れた髪を指で整えた。ヘルが買い与えたパジャマを着ているが、大きすぎて袖が余っている。
連れ込んだ当初は痩せぎすだった体も、まともに食べて寝させたおかげで肉付きが良くなり、顔付きもふっくらと優しくなった。
人目を引くほどの美人ではないが、穏やかで愛想のある顔をしている。雰囲気も表情も、薄汚い淫売には似合っていない。
日中の明るい公園で我が子の手を引いて歩いていたり、夕方の商店街で買い物をしていたりする方が、余程しっくり来る顔だ。
「そのままでいい」
ヘルは葉月を引き倒し、葉月の体温が強く残る布団に押し付けた。
「うん」
葉月は抗うこともなく、ヘルに覆い被さられた。大きすぎる襟元から覗く白い首筋に顔を埋め、舌を伸ばしてざらりとなぞる。
カブトムシの舌は、元々は樹液を吸うための口が発達したものである。だから、舐めることよりも吸い取ることに長けている。
葉月自身も意識していないほど薄く滲んだ汗を吸い、首筋から耳を舐め、髪に隠れた襟足をまさぐりながら、パジャマをめくる。
肌着も着けずに寝ていたのか、すぐに乳房が現れた。乳房にも腹部にも、ヘルの顎によるいびつな噛み痕が付いている。
たっぷりと丸い乳房には赤黒い線があり、まだカサブタが剥げていない。首筋から顔を上げたヘルは、その噛み痕を舐めた。
「ひうっ」
ざらり、ざらり、と硬い毛のような味覚器官が生えた舌をなぞり、ずりゅりとカサブタを引き剥がす。
「んぎっ」
古い血の下から新しい血が膨らみ、細く抉れた傷口が開いて肉の切れ目が露わになる。
「あ、ぁあ、いぁ、あっ…んっあぁっ」
少しずつ滲み出る血を吸うと同時に乳房の傷口を擦り取るように舐められ、葉月は両手足を突っ張ってシーツを歪めた。
白い肌は痛みが生じた脂汗が伝い、葉月はきつく目を閉じていたので、ヘルはツノを上げて上左足で葉月の顎を掴んだ。
「俺を見ろ」
「ご、ごめんな、さいぃ…」
唇を歪めながら葉月が謝ると、ヘルはその頬に爪先を食い込ませてから、口元に一本の爪を差し出した。
「ん…」
葉月は素直に口を開き、ヘルの爪を口に含んだ。鋭利な部分に触れると舌を切ってしまうので、側面を丁寧に舐めた。
葉月の唾液が滴るほど潤ったことを確かめてから、ヘルはその爪を下げ、既に脱がしておいた葉月の下半身に添えた。
爪の先端で抉ってしまうと陰部もろとも肉が裂けてしまうので、べとべとに濡れた爪の背を葉月の性器に擦り付けてやった。
乳房を舐め回している際に分泌された愛液が唾液に混じり、ぢゅぶぢゅぶと粘ついた泡を立て、葉月は甘い声を殺した。
「ん…ぁ…」
「どら」
ヘルは葉月の性器から爪を外すと、足を広げさせ、その太股に噛み付いた。
「ぐぇあっ!」
唐突に訪れた激痛に葉月は仰け反り、目を見開いた。ヘルは脂肪の付いた内股を噛み締める顎に、更に力を込めた。
葉月は声にならない声を上げて自由の利く片足を撥ねたが、ヘルはその足を難なく押さえ付け、骨と筋の存在を感じた。
このまま思い切り力を込めれば、筋肉も骨も噛み千切れるだろう。ヘルにはそれだけの力があり、葉月には防ぐ術はない。
「あ、ぅああああっ」
ヘルの顎を伝い、血が落ちる。赤黒い飛沫がぼたぼたとシーツに散り、汗の匂いに蛋白質と鉄の匂いが重なる。
「へぇ、へるさぁん、痛い、痛いよ、痛いよおおおっ!」
悲鳴にも似た愉悦を上げ、葉月は乳房を揺らして胸を上下させた。
「この辺はまだ噛んでなかったからな。痛覚が傷んでねぇんだろ」
楽しくなってきたヘルが笑みを交えて零すと、葉月は自由の利く左足を曲げ、ヘルの下右足に絡めてきた。
「ヘルさん、お願い…」
「言われるまでもねぇよ」
ヘルは葉月の内股から顎を外して血をぞんざいに拭ってから、陰毛の下でひくついている膣と赤く充血した肉芽を認めた。
血と等しい温度の澄んだ体液がとろりと一筋溢れていて、血の飛沫がいくつも出来たシーツに無色の染みを新たに作った。
恥じらいすらなく、葉月はヘルを見つめた。ヘルは食欲を呼び起こさせる血を飲み下してから、生殖器官を体内から出した。
「ああ、痛いんだ、痛いんだぁ…」
これから訪れる苦痛を期待し、葉月は弛緩した。妙な性癖だとは思うが、ヘルにとっては都合が良いので文句はなかった。
色も形も大きさもビール瓶のようだと称された生殖器官を見せつけると、葉月は目を輝かせ、ヘルの下腹部に顔を埋めた。
外骨格そのものを円筒形にしただけの生殖器官に何度もキスをし、舌を這わせながら、葉月は自身を淫らに慰めていた。
だが、その方法は荒っぽい。三本の指を突っ込んでは引き摺り出し、を繰り返しているだけで、ヘルの方が余程丁寧だった。
「んふ」
顔や顎までべとべとに汚しながら口淫した葉月は、赤く濡れた唇を舐めた。
「足、開け」
ヘルが命じると、葉月は横たわり、真新しい傷口から血が溢れる太股を躊躇いもなく広げた。そこに、生殖器官を添える。
「ぅがあああぁっ!」
ずぶり、と一息で押し込むと葉月は汗ばんだ喉を反らし、目尻に涙を滲ませた。だが、まだ半分ほどしか入っていない。
ヘルの生殖器官は、葉月の二の腕よりも一回りも太いからだ。全部収めたとしたら、葉月の腹は容易く割けてしまうだろう。
現に、半分入れただけで葉月の下腹部には縦長の膨らみが出来ている。葉月はその膨らみを見、だらしなく頬を緩めた。
「あは…」
「そら、行くぞ」
ヘルは粘液の絡み付いた生殖器官を前後させると、葉月の上げる声が甲高くなり、涙と汗に涎を混ぜるようになった。
シーツに縋っていた手をヘルに回し、物理的に奥まで入らない生殖器官を最深部に導くように、腰に足を巻き付けてきた。
「ヘルさぁん、ああ、ヘルさぁんっ!」
「お前は物好きだ」
呼吸も乱さずに葉月を責めながら、ヘルはその頬の汗と涙と舐め取った。
「痛いのがそんなにいいなら、いずれ手足を喰い千切りながら犯してやろうじゃねぇか」
「それ、きっと凄く気持ちいい…」
うっとりとした葉月は、ヘルの首に腕を回してしがみついた。
「だが、手も足もなくなっちまったら、誰がこの部屋を片付ける?」
「ひいんっ!」
ヘルが中両足で葉月の腰を掴んで捻ると、葉月は体を強張らせた。陰部から異音がし、拡張された入り口が少し裂けた。
「あ、あぐぁっうっ」
裂けても尚、ヘルが腰を捻り続けると、上半身を横に曲げた葉月は息を荒げた。
「そういうの、嬉しいの?」
「解らん」
捻った腰を元に戻したヘルは、葉月の体の上に這い蹲った。
「私も、解らない」
葉月は目を上げ、間近に迫ったヘルの漆黒の複眼を見つめた。
「そうか」
ヘルは触覚を揺らして汗の匂いを存分に味わってから、上両足で葉月を抱き寄せた。こうしなければ、深く入らないからだ。
葉月はヘルの背に汗でぬるついた手を回し、苦痛を待ち受けた。中両足で腰も抱き寄せてから、ヘルは下半身をぐっと曲げた。
足の中から上がる葉月の悲鳴が高ぶり、強烈な快楽に掠れていく。幾度も幾度も前後させると、葉月はヘルに噛み付いてきた。
人間の顎では昆虫人間の外骨格に傷も付けられないので、いつも放っておく。よがるのは良いが、泣き叫ばれては面倒だからだ。
葉月は泣きながら、幸せそうに達する。一度だけで終わらせるのは惜しくなってしまったので、それからも何度も責め立てた。
葉月の内股の傷から流れる血が止まっても、シーツに付いた体液が乾いても、カーテンから差し込む日差しの色が変わっても。
事を終えたのは、再び夜が始まりかけた頃だった。布団の上に横たわる葉月は傷だらけで、新たな傷がいくつも出来ていた。
ヘルは血も体液も拭い取らずに葉月の傍に胡座を掻き、水の入ったコップを渡すと、葉月は怠慢に起き上がってコップを受け取った。
喉を鳴らして水を飲み干した葉月は、涎と涙が乾き切っていない頬を手の甲で擦り、枕元に投げ捨てられたパジャマを取った。
「そういえば、今日、何も食べてなかった」
パジャマの上だけを着た葉月は、全身の虚脱感に紛れそうになっていた空腹に気付いた。
「俺もだ」
酒が抜けていなかったせいで、感じなかったのだ。タバコに火を灯しながらヘルが呟くと、葉月は言った。
「でも、お腹一杯」
「何がだ」
「痛いのが」
葉月はとろりと顔を緩め、真新しい噛み痕が目立つ内股に触れた。
「色んな人に一杯お金をあげて、一杯一杯痛くしてもらったけど、ヘルさんのが一番痛くて大きいから好き」
「お前、どうしてそこまでされたがるんだ? 散々しておいて何だが」
「私、空っぽだから。何も出来ないのに、色んなことが怖いから。だから、痛いと嬉しいの。生きてるって感じるから」
「解らないでもない」
ヘルは触覚を汚す紫煙を感じながら、平坦に答えた。外骨格が焼け付くような危険に身を晒していれば、生を感じられる。
だから、いつまでたっても足を洗えない。ヤクザ同士の抗争や縄張り争いに噛むのは、危うい世界に浸っていたいからだ。
この世界には、ヘルの身の置き場はない。元々は観賞用として日本に密輸入された幼虫で、羽化した直後に脱走したのだ。
親の顔も知らず、故郷の土の味も知らず、同胞の名も知らない。我が身にあるのは凶暴さと強靱さだけで、他は何もない。
争いを求めるのは、せめて痛みは知りたいからだ。共通項が出来たな、と、ヘルは妙なところで喜んだが、腹の内に止めた。
「立てるか」
ヘルが葉月を見やると、葉月は腰をさすった。
「まだ、だるい」
「だったら、しばらく休んでろ。昨日の夕飯でも温めてやる」
「え、でも…」
葉月が意外そうに目を丸めると、ヘルは襖を開けた。
「俺はお前を飼ってるんだ」
襖を閉め、ヘルは一人恥じ入った。酒は抜けたはずなんだが、と自嘲したが、きっと性交の高揚感が抜けていないのだ。
これまで、葉月を慣らすために何度か抱いたが、時間が経つのも忘れて犯したのは初めてだ。だから、それだけのことだ。
「ヘルさん」
襖が細く開き、葉月が顔を覗かせた。疲れ、汚れてはいたが、葉月は嬉しそうだった。
「んだよ」
照れ隠しにヘルが語気を荒げると、葉月は襟元を直して肌を隠した。
「ご飯、一緒に食べよう?」
「…仕方ねぇな」
ヘルが苦々しげに吐き捨てると、着替えるね、と葉月は襖を閉めた。ヘルはタバコを噛み潰し、灰皿にぐりぐりと埋めた。
余計なことを言うんじゃなかった、と後悔したがもう手遅れだ。仕方なく、一日遅れの夕食を準備しようと冷蔵庫を開けた。
二人とは裏腹に一日中冷え切っていた料理を取り出し、電子レンジで温め返しながら、ヘルは葉月が出てくるのを待った。
葉月の体温によって暖められたヘルの体温が入り混じった生温い空気を、火を消し損ねたタバコから上る紫煙が汚した。
温まりつつある夕食。葉月の体温で緩やかに温まった空気。確かで甘ったるい気配。そのどれもが、狂おしいほど悩ましい。
飼い慣らされたのは、葉月だけではなさそうだ。
以上。また通し番号をミスってしまった。
超GJ
相変わらずの神だ
GJ
角がどれだけ長いのか分からんけど満員電車には乗れなさそうだなあ
電車の天井が高いんじゃね?
人外スシ詰め状態のぎゅうぎゅう満員電車、
年端もいかぬ女の子に不埒な真似をする痴漢を捕まえてくれた触手男とな
毛皮系人外がいっぱい乗り込んでるときに乗り込みたい
真夏でクーラーのない車両に毛皮系が満員という状況を考えただけでムワッとくる
それとはちょっと違うけど…
つ『某ジブリのネコバス』
ピクシブで人外ジャンル絵探すと擬人化と人型人外ばっか
>>215 化け物の中に女の子がいる画は、それだけで興奮する。
窓枠のせいで檻みたいに見えるのもポイント高い。
おまけに、ぐにゃぐにゃ動くんだから。
流石はジブリ。ロリコンのツボが解ってる。
ジブリ作品は穏やかな人外×幼気な少女でいうと神だもんな‥‥
ロボ×シータとかカルシファー×ソフィーとか脇キャラにもしっかり萌えられる
なんかキモスレに晒されてるんだけど
最悪……
いつもの人でしょ
>>216 擬人化したイケメンはカッコイイから好き〜って思ってるのかな
ぶっちゃけ人外好きなら擬人化とか嫌うに決まってるわけだが
角煮のモンスター娘好きみたいな
人型でも人外だからこそ萌えるんであって
人間には萌えないんだって人もいると思うんだが…
映画泥棒みたいな異形頭ジャンルが好きなんだが、これは擬人化か?
>>216 >>220 人外という属性が好きな人と、人外という種族が好きな人がいるって言ってた人がいた。
やり方が違うだけで目的は一緒、人外萌え。
より良い人外萌えを手に入れるために仲良くしていこうじゃないか。
人型人外は、人の部分と人外の部分の対比が萌えるんだよ。
「部分的にグロデスク」というのが妖しくていい。
どうでもいいが映画泥棒のエロ絵を見たときは世の中ってすごいなと思った。
清水に魚住まずみたいなもんかな
美の中の醜、醜の中の美がいいんだ
擬人化と人化は違うと思う。
今日のシンケンジャーの血祭ドウコク(ボス怪人)と薄皮太夫(元人間の女性怪人。花魁)には超萌えた。
ドウコクは太夫がアクマロに攻撃されたことにブチ切れて三途の川から御大自ら飛び出してアクマロを追い返すわ、
太夫に三味線を自分の皮で直して手渡しするわのデレっぷり。おまけに、ドウコクは恋愛感情を認識していないっぽい。
でも、太夫が好きなのは昔自分が殺した男だってんだから、擦れ違いっぷりがたまらない。
ドウコク萌えるよドウコク。
スレチ
ごめん誤爆だ
>>227 男の皮の三味線を自分の皮で直したって事は、太夫の男への未練を上書きする暗喩か。
>>227 俺もだ
朝から素晴らしいもん見せてもらった‥‥
ここの人外アパートってピクシブと同じ企画扱いで
誰でもウェルカムということでよいのだろうか?
人外×人間であれば来る者拒まずだよ
>>232 てか違う企画だったん?
同じだと思っててピクシブのカプのエロ話待ってるんだけど
たまたま開催の時期が被っただけで厳密には別企画な希ガス
両方見てる人はいるだろうけどね
別企画ではあるけれど、内容は似たようなもんと考えていいのかな?
ピクシブのと同じように、ここの職人さんが誰でも参加できるってこと?
まずピクシブの企画がわからない。
ピクシブの企画は「アパートにオリジナルの人外と人を住ませちゃおう」って企画。
そして、誰でも参加できる設定。R-18は禁止。
ここの人外アパートは「859 ◆93FwBoL6s」さんだけのオリジナル設定で、企画物ではないのか?
ということだと思う。
じゃあピクシブのやつの人=859様なの?
いや、ピクシブの企画と859さんは関係ないんじゃないかな?
ピクシブのほうの企画者さんは絵板にも投稿してくれた人ではあるみたいだが。
でもスレの絵師何人も参加してるから結局スレと同じ企画になってない?
pixivでエロ絵禁止ならスレでカプエロ書けばいいし
関係無くても、人外と人間のエロSSなら、ここに投下していいんじゃないの?
ピクシブの企画とは元は違うが今は似てる感じ
人外アパートという設定は誰でも使用して良い。(キャラクターは別)
ってことだよね?
とりあえず自分が知りたかったのは人外アパートの設定を859さん以外でも使用してよいか
だったんだけど良いみたいだね
>>242 まさかとは思うが企画の方のキャラを勝手に使うって意味じゃないよな…?
キャラ作った本人ならアパートだろうとそうでなかろうと
勝手にすればいいと思うけど
他の人が書いたor描いたキャラクターを使用する→×
人外アパートという共有設定を使用する→〇
で、いいんでない?
人外サイト発見!→擬人化…→発見!→擬人化…→発(ry
擬人化サイトみんななくなればいいのに
鳥獣戯画
百鬼夜行
少しでも擬人化を好きになってもらおうと思って。
それ擬人化ちゃう(´・ω・`)
お前らがかわいいということは分かった
そりゃ、単語の意味だけ言えば言葉話したり二足歩行なだけでも擬人化だから。
つまり、このスレはすでに擬人化だったんだよ!
>>252 ヤンマみたいな昆虫人間は違わない?
設定が普通の虫じゃなくて人型に進化した別種族だから
ケモノは擬人化じゃないよね?
>>253 昆虫「人間」って自分で言ってんじゃないの
見た目が人間じゃなかったら人外だと思ってる。
投下ねぇなー
クリスマスネタの時期なんだが
サンタは人外?
まあ、トナカイがいるけど。
トナカイ×サンタ少女ですね、解ります。
>>258 プレゼントを渡してばかりのサンタ少女に、トナカイがホワイトクリスマスをプレゼントするんですね。
少しはやいけど正月ネタもあるよな〜と考えて真っ先に思い浮かんだのが
「笑ってはいけない人外アパート」だった
>>260 笑うと色んな人外に尻を叩かれるんですね。
24時間耐久イってはいけない○×
笑ってはいけない人外アパート
笑うとお尻に触手が挿される
アッー
最近人外属性に目覚めて、SS書きを始めたのですがちょっとご相談をば。
天使の様な翼持ちや、尻尾持ち獣人の正常位って
どう描写すればいいですかね?
どこかで尻尾は尾骶骨の位置からベッドで仰向けになる際
邪魔にはならないと読んだような気がしなくもないのですが。
>>264 身近にいる尻尾持ちの動物を、仰向けにしてみればいいんじゃないか?
うちのぬことかは仰向けに寝ることがあるので大丈夫かと
しかし人外娘のパーツが痛くならないように気を使う人間とかもいいと思います
>>265-266 なるほど、ありがとうございます。
尻尾持ちはそのままで良いとして……
翼持ちをどうしようかなぁ。
>266さんがおっしゃるように気を使って対面座位。
っていうのも有りだと思いますが。
翼も畳んでしまえば問題無い気ガス
人も正座したまま寝れるくらいだし
座位が好きだ
女の子の翼や尻尾を責めるのが好きだ。
>>270 お前とはいい酒が飲めそうだ
当然性感帯だよな
絵チャとかしたいんだが暇な奴いるか?
ずっと待ってるんだが
避難所の絵茶スレに「今入ってる」とか書けば、誰か来るんでない?
じゃあ俺今から絵茶行ってみるわ
土曜日の夜くらい誰かいるよな?
絵茶厨は避難所行け
映画アバター
スレ住人的にどうよ
人型人外だし
今週からジャンプで連載開始の逢魔ヶ時動物園なかなか良さげだよな
久々にジャンプを購入する理由が出来たわ
読み切りですがw
おk アンケ葉書書いてから吊ってくる
>>275避難所を見ない権利もある
というか絵チャ勝手に使うのはどうかと
まとめ管理人が借りてんだからさ・・・
亀レススマソ
ケンタウロス×人間書いているけど体位が難しい。
やっぱ後背位しかできないよなぁ。
>>282 テーブルの上とか車のボンネットとかに押し倒して
その上に乗り上げる形なら正常位もいけるのでは?
>>282 反則気味だがモノを人の位置に持ってくれば対面も可かと
ケンタウロス側が♀の場合は…
更に難しそうだな
286 :
保管庫:2009/12/17(木) 23:17:04 ID:lKCvZ8L0
>>281 絵茶は住人の方に自由に使ってもらうつもりで設置したので
このスレに関連した用途であれば
断りなく好きなように使って頂いて大丈夫ですよ
異種間恋愛を奨励する活動を続けた人は、いずれイシュカンダルという聖地に行けると信仰しています。
そこでは、獣と女の子が仲睦まじく共同生活を営んでいたり、短時間しか海の外にいられない人魚が水辺で陸の恋人と逢瀬していたり、
メカメカしいロボットと少女が皆に祝福されながら結婚して、新婦はこれ以上ないほど幸せそうで、表情のないはずの新郎の顔がどこか照れくさそうだったり、
不器用な触手生物が言葉を話せない代わりに恋人の手にそっと触手を絡ませて愛を囁いていたり、狩人の青年がツンデレなハーピィさんを口説いていたり、
鳥人の女戦士と彼女の主の少年が主従を超えた信頼関係を築いていたり、植物の体の少女と木こりの男が日向ぼっこしながら眠っていいたり。
そんな幸せな光景が、随所で繰り広げられています。
そして、もちろん新たにこの地に降り立ったあなたにも……
かけがえのない存在が、生涯隣を預けられる伴侶が現れることでしょう。
ここはイシュカンダル。本来相容れぬ筈のもの同士が交わり、助け合い、離れ難い絆を築く楽園なのですから。
人外娘「私たちの存在を法が許さない!」
人間男「じゃあ法律の存在しないとこへ行こうか」
という話を書きかけて挫折したことを思い出した
SDガンダムフォースのラクロアは、人間族とモビルスーツ族の結婚を禁じていたから、滅ぼされました。
「国が無くなりゃ、法律も無効だぜヤッホー」
延々とリリに向かって独り言してるデスサイズが好きだったなあ…
結ばれない運命でさえなかったらきっと…と思ったけど、結局は一方通行だったんだろな…
避難所の過去ログ読めないんだが・・・
何か理由あってファイル消したん??
M1ネタで思いついたが、鳥人×女の子たまらん
限りなく胎生に近い卵胎生みたいなのだといいな
トナカイ獣人×女の子 獣人 人間♀ クリスマスネタ
NGはそのままトナカイ獣人×女の子 で。
今夜だけ・・・そう、ちょっとだけ。それでもう終わりだ。
そう決めて、ドアを開けた。
しかし、その先には予想もしていなかった人物が待ち受けていた。
「子供の居ない家に侵入か。また一つ業務規則違反が増えたな。・・・ブリッツェン隊第1225番隊員、ハリー。」
「あ、あなたは・・・!」
ここで、話は三年前に遡る。
「うー、寒い・・・。」
粉雪が吹雪いて降り積む北の町。
サンタ服を着たトナカイの獣人が一人、屋根から屋根へと跳んでいた。
背には大きな袋を担ぎ、前足にはメモ紙一枚持って。
その跳躍たるや、電車に乗っているとき窓の外に妄想する、ビルの屋上を跳んで移動する忍者の如く。
彼はサンタクロース・・・の、代理人の末端の一人。
いくらサンタクロースでも、人口の増えに増えきった世界で、全ての子供たちにプレゼントを配る事なんて出来やしない。
そこで設立されたのがトナカイ獣人で構成された配達トナカイ部隊。
世界中に配備されたその部隊が分散して配達を行うことで、たった一晩での配達を可能にしている。
「新人は過疎地からって聞いてたけど、まさかこんな極寒地帯だなんて・・・。」
温暖な地方出身の身には特に堪える。
自前の毛皮とサンタ服を併せても防ぎきれない、真夜中の寒風をその身に受けながら、メモを広げた。
不思議な紙に、じわりと文字を浮かび上がる。
「ええと、次は三軒向こうのシンディちゃんか・・・」
ひょいひょいと身軽にトナカイは跳び、玄関の前に立つ。
「おじゃましますよ、っと。」
サンタが使う配達に必要な魔法や技術は、配達トナカイ部隊の新人研修で教わる。
だからトナカイ隊は、もの凄い速さで空を駆けることも、鍵を開けずにドアを通り抜けることも、
子供を起こさないように足音を立てず歩くことも出来る・・・はずなのだが。
「・・・やっぱり先輩たちみたいにうまくはいかないなあ・・・。」
それはやはり何年も配達をこなしたベテランの域。
彼は新人故に、それなりの速さで空を駆けることが出来て、どんな扉でも鍵を開けることが出来て、
忍び足で歩けば足音が立たない・・・程度の能力しか無い。
ちなみに、煙突から入ろうにも角が引っかかって入れないので、トナカイ隊は玄関からおじゃまするのが伝統である。
「さて、次の家で最後だな。・・・ノエルちゃんか。えーと、家の場所はー・・・。」
きょろきょろと見回すと、町の外れに小さな家が一軒。
「・・・あれか。」
初任務だから配達軒数も少なく、かなり早く終えることが出来そうだ。
ここを配り終えたら支部に戻れる。そしたらボーナスを受け取って、同僚と飲みに行って、あとは正月明けまで休暇だ。
「おっじゃまっしまーすよー。」
ひそひそ声でややご機嫌に侵入し、子供部屋らしき扉を探す。
扉を開け、子供の姿を確認。
「さて、ノエルちゃんのプレゼン、とぅわああああああ!!?」
壁から下がったクリスマスの飾りに、あろうことかトナカイの最大の特徴である大きな角が引っかかり、バランスを崩して柱に頭をぶつけてしまった。
冷たい床の感触が頬に伝わるのを感じながら、そのまま意識は遠ざかってゆく。
気がついたらベッドに寝かされていた。
「う・・・。ここは・・・」
確か俺、配達の途中で倒れて・・・。配達!?そうだ、まだ配達の途中・・・!
「大丈夫? トナカイさん。びっくりしたわ。大きな音がして飛び起きたら、トナカイさんが倒れているんだもの。」
すぐ横で、その配達物を眠って待っているはずの子供が、心配そうに顔をのぞき込んでいた。
「君は・・・あ、痛たたた・・・。」
ぶつけたところをさわってみると、ガーゼと絆創膏で手当がしてあった。仄かに消毒薬の匂いもする。
「・・・君が、手当してくれたのかい?」
「ええ。血が出てたから。ちゃんと消毒もしたのよ。」
「そうか・・・ありがとう。」
ああ、やってしまった。業務規則違反だ。
配達中、決して誰にも見つかってはいけない規則だというのに・・・。
嗚呼、あの厳しい訓練はなんだったのだろうと、肩を落とした。
しょぼくれていると、少女が興味深そうに話しかけてくる。
「あなたがサンタさんなの? サンタさんって、お髭のおじいさんだと思ってたわ。」
「いや、俺は・・・トナカイだよ。皆でサンタさんの代理をしてプレゼントを届けてるんだ・・・。
サンタさん一人じゃ回りきれないほど、世界中の子供も増えたからね。・・・ハァ・・・。」
「トナカイさん、なんだか元気がないのね?怪我したところが痛いの?
・・・あ、もしかして、私に見つかっちゃったから、誰かに怒られちゃうの!?」
「い、いや、そんなことは・・・」
「そうなんでしょ。」
真っ直ぐに目を見つめられた。
こういう目で見つめられると、何もかも見透かされているような気がしてくる。
なんというか、しっかりした、勘の鋭い子だ。
将来こういう子と結婚する奴は、きっと浮気なんかできないだろうな。
「いや・・・まあ・・・そうなんだけど・・・悪いのは全部俺なんだから。」
「ううん、私も悪かったのよ。ドアの上にクリスマスの飾りを吊り下げるなんて。
トナカイさんが入って角を引っかけちゃうことも考えておくべきだったのね。」
そう言って、考え込むようなポーズをしてうんうん頷いている。
いや、そんな変な心配をする子はあんまりいないとはおもうけど・・・。
「・・・ねえ、私、絶対誰にもトナカイさんを見たなんて言わないわ。それでも駄目なの?」
・・・そういえば。見られたら駄目だという規則ではあるが、誰かがチェックしているわけでもない・・・はずだ。
内緒にしてくれるというのなら、それでいいのではないか?そんな甘い考えが頭をよぎる。
「ね?内緒にするって誓うわ。二人だけの秘密。」
「・・・じゃあ、お願いしてもいいかな? ノエルちゃん。」
「ええ、もちろん。・・・ねえ、ちょっとだけお話しましょうよ。私、サンタさんのお仕事してる人と会うの、初めてだもの。」
幸い、気絶してからそんなに時間も経過しておらず、配達終了予定時間までまだ余裕がある。
「いいよ。手当もしてくれたし、内緒にしてくれるならおやすいご用さ。」
それから暫く、いろいろな話をした。
毎日の訓練の話や、厳しい先輩たちの話。気のいい同僚の話も。知られるとまずいかもしれないところは省いて日常生活の話をした。
彼女もいろいろなことを話してくれた。
今年のはじめに両親が他界したこと。町の雑貨屋を手伝っていること。店長さんも奥さんもとってもいい人だということ。
あっという間に時は過ぎて、配達終了予定時間になってしまった。
「ああ、もうこんな時間だ。さて、最後の配達を終わらせないと。」
「そういえばお仕事中だったのよね?引き留めちゃってごめんなさい。」
「いや、いいんだ。今年の配達は君で最後なんだから。」
大きな白い袋の中に前足を突っ込んで、メモに書かれた『子供がほしいもの』を読み上げる。
「ノエルちゃんが欲しいものは・・・大きなテディベアだね。・・・ほら、今年一年いい子にしていたノエルちゃんへの、クリスマスプレゼントだよ。」
袋の中がどういう仕組みになっているのかはよくわからないけど、どこかの支部のおもちゃ倉庫に繋がっていて、
そこからプレゼントが送られているらしい、と先輩から聞いた覚えがある。
別の先輩は、あれはそんな単純なもんじゃないとかぶつぶつ言ってたけど。
袋から出てきたのは、読み上げたとおり、ピカピカの綺麗なリボンで飾られた大きなテディベア。
彼女は早速、ふかふかしたそのテディベアを、嬉しそうに抱きしめた。
「わあ、ありがとうトナカイさん!大切にするわ。」
「じゃあ、もう時間だからおいとまするよ。もう夜明けも近いけど、ちゃんと眠るんだよ?」
「うん・・・。ありがとう、おやすみなさいトナカイさん・・・またね。」
またね・・・か。来年も配達区域は同じだから、来年もきっと会えるだろう。
ただ、起きているときに会うことは、もうないだろうけど。
ノエルちゃんの家を出て、ブリッツェン隊の支部へと戻る。
気のいい同僚が話しかけてきた。
「おう、遅かったじゃねえか、ハリー。ん?どうした、その頭。」
「ああ、ちょっと・・・雪で滑っちゃって。」
「相変わらずドジだよなあ。おまけにトロくせえしヘタレだし。」
「うっ・・・反論できない・・・。」
「そんなくよくよすんなって!とにかく飲み行こうぜ?」
昔からの友人でもある同僚は、そう言って俺の肩をばしばしと叩いた。
口は悪いが、悪い奴ではない。むしろ何やかんやで面倒見のいい、イイ奴だ。
「まあ、また来年も頑張ろうや。」
「・・・そうだな。」
こうして、俺の初めての配達トナカイ隊としての任務は終わった。
次のクリスマスまでの一年の仕事はというと、年始にはサンタさんへのお礼の手紙の仕分け、
訓練、プレゼントの準備と、12月でなくてもやることは多い。
シーズンも近づくと、サンタさん宛の手紙を集計して、プランサー隊にデータを送信する仕事も加わる。
そしてまた、クリスマスがやってきた。
「あー、寒い寒い。」
2年目ともなると、だいぶ寒さにも慣れた気がする。
去年よりちょっぴり配達区域は広がったけど、ほぼ去年と同じ区域だったから配達はスムーズに進んだ。
そして、今年も最後の家。
「・・・ノエルちゃん、元気にしてたかな・・・。」
そっと子供部屋のドアを開けると・・・
がらがらがっしゃーーーん!!
「うわぁあ!?」
開けた途端に、紐でぶら下がった鍋やらフライパンやらが
がんがんぶつかって大きな音を立てた。
「・・・ん・・・あ!トナカイさん!」
その音で、テディベアを抱きしめて眠っていた彼女が、目を覚ましてしまった。いや、むしろこれは・・・
「ノエルちゃん、もしかしてコレ、君が仕掛けたの?」
「・・・ごめんなさい。起きていられないと思ったから、トナカイさんが来たら起きられるようにしたの・・・。」
そう上目遣いでもじもじと見つめられると、どうにも叱れない。
「・・・サンタさんにトラップを仕掛けるような子は、悪い子だからプレゼント貰えないんだけどー・・・いいのかな?」
叱るわけでもなく、ちょっとほのめかしたつもりだったのだが、途端に彼女の顔色が変わる。
「えっ!?そ、そんな、ごめんなさい!私、そんなつもりじゃ・・・!」
急になんだか泣きそうな顔になった彼女に、僕の方が慌ててしまった。
「あああ、ごめんごめん、わかってるよ。俺も去年黙っててもらったし・・・おあいこだね。」
「・・・二人だけの秘密ね? ありがとう、トナカイさん。」
暫くベッドに座って、時間の許す限り一年前と同じように話をした。
「さてと、今年ももう時間か。今年ノエルちゃんが欲しいものは・・・『マフラー』だね。」
袋からはきっと、女の子用のかわいいマフラーが出てくるだろうと思っていたら、
出てきたのは濃い緑色をしたどう見ても大人用のマフラーだった。
メモを読み上げて袋から出てくるものに間違いはないはずだが、どうしても不安になったので聞いてみる。
「・・・本当にこれでいいのかい?もっと可愛いのだって出せたんだよ?」
「これでいいの!」
彼女はそう言って、手渡されたマフラーを何故か俺の首に巻いてゆく。
「それでね、私からトナカイさんにプレゼント!」
満面の笑みでそう言われ、一瞬呆然としてしまう。
「嬉しいけど・・・いいのかい? 年に一度のプレゼントを俺なんかにあげちゃって。」
「いいの! プレゼントを貰うより、トナカイさんに何かお礼がしたかったの。」
「お礼?」
「クリスマスを一緒に過ごしてくれたお礼よ。真夜中の、ちょっとの間だったけど、それでも嬉しかったわ。
・・・雑貨屋の店長さんから一緒に過ごさないかって誘われたけど、一家団欒を邪魔しちゃ悪いものね。」
ああ、そうだった。ノエルちゃんの家族は・・・もう・・・。
「・・・ありがとう、大事に使わせてもらうよ。これならどんなに寒くても大丈夫そうだ。」
「大切にしてね?」
「勿論だよ。・・・さあ、よい子はもう寝ないと。来年はちゃんと寝てなきゃ駄目だよ?」
「・・・今度こそ、もう会えないの?」
悲しげな瞳が、まっすぐに見つめてくる。
「実を言うと君は・・・次のクリスマスで、もう子供を卒業なんだ。だから来年が最後のプレゼントになる。」
「・・・そうなの・・・?」
「再来年のクリスマスには、君は立派なレディだよ? おめでとう。」
そんな冗談めかした言葉も、ノエルちゃんにはあまり嬉しくないようで、沈んだ表情のままだった。
「最後のプレゼントになるけど、ちゃんと俺が届けるから。ノエルちゃんは今度こそ、よい子で眠って待っていてくれるね?」
「うん・・・わかったわ。おやすみなさい、トナカイさん・・・。」
始終寂しげな顔をする少女を寝付かせ、どこか後ろ髪引かれるような思いで支部へと戻った。
彼女から貰ったマフラーはとても暖かく、寒さなど微塵も感じなかった。
そしてまた、あっと言う間に次のクリスマスが巡ってきた。
今年も同じ地域、同じ区域、同じ町の、最後の家。
「あの子にプレゼントを届けるのも、今年で最後か・・・。」
そう考えると感慨深いけれども、同時にとても寂しく感じる。
今年こそ、彼女は眠って待っているはずだ。そう信じてはいるが、どこかそれはそれで寂しい気がしてしまう。
ドアを開けると、彼女はテディベアを抱きしめて、ベッドできちんと眠っていた。
安堵する一方で、若干拍子抜けして残念がっている自分を、心の中で叱っておいた。
しかし、プレゼントを渡す前に、最後だし寝顔でも見ていこうかと思った時、ようやく異変に気く。
顔が赤い。息も荒く、額に手を当てるとすごい熱が出ている。
とにかく体を暖めて、額を冷やさなくてはと、家の中を右往左往して毛布やら氷嚢やらをかき集めた。
「・・・とりあえずこれで、あとはお粥でも食べて寝ていれば大丈夫だと思うけど・・・。」
まだ心配だが、今年ももう時間だ。プレゼントを置いて帰らなくてはならない。
メモに浮かび上がった文字を見た。
今年、ノエルちゃんが欲しいものは・・・『トナカイさん』・・・?
これは、どういう意味合いでとればいいのだろうか。
まさか俺・・・いやいや待て待てそんな訳ないだろう。都合のいい妄想にも程がある。
・・・きっと、今年も俺と話がしたかったのかもしれない。そう思うことにした。
だが、こんな状態の彼女を起こす訳にもいかない。
何か他の物を読み上げても、袋から何か出せないだろうか・・・。
「今年、ノエルちゃんが欲しいものは・・・・・・トナカイ・・・の、ぬいぐるみ。」
嘘を吐いた。袋から出てきたものは、たしかにトナカイのぬいぐるみだった。
ただ、そのトナカイは、サンタ服を着て、緑のマフラーを巻いた、俺そっくりなトナカイだった。
「・・・トナカイ・・・さん・・・。」
再び思案を巡らせているときにいきなり背後から呼ばれ、どきりと心臓が跳ねた。
しかし振り返ってみれば、未だ少女は若干苦しそうな寝息をたてて眠っている。
「・・・なんだ、寝言か。・・・最後のプレゼント、置いていくよ。」
テディベアの横にトナカイのぬいぐるみを並べ、立ち去ろうとしたとき、不意に、服の袖を掴まれた。
「・・・トナカイ・・・さぁん・・・っ。」
彼女の額に乗せたタオルが、ずり落ちて床を濡らした。
袖を掴んで離さないまま、熱にうかされ、潤んだ瞳で。
どこか切なげにも見える表情で、彼女は俺を見つめている。
その表情は、去年よりもずっと、少女から女性に近付いていて、目を、反らせることが出来なかった。
しかし、完全に目が覚めているわけでもなく、夢うつつでの行動だったらしい。
すぐに彼女の手から力が抜けていった。
その手をそっと握り、袖から離した。
暫く手を握っていると、安心したのか彼女は再び微睡んでゆく。きっと目が覚めれば、夢だったと思ってくれるだろう。
毛布を掛け直し、一度だけ前足の蹄で頭を撫でた後、別れを告げた。聞こえては、いなかっただろうけど。
「・・・さよなら。ノエルちゃん。」
彼女が働かせてもらっているという雑貨屋さんの家の玄関に、彼女が風邪で寝込んでいると書き置きしておいた。きっと様子を見に来てくれるだろう。
支部に戻ってボーナス明細を受け取っても、何故だか気分が晴れることはなかった。
「おい、飲み行こうぜ?」
「・・・おう。」
「なんだよ元気ねえなぁ。」
クリスマスの後、どうしても心配になって、夜中にこっそり寮を抜け出し、彼女を見に行ってしまった。
彼女の風邪はすっかり治っていたようだったが・・・。
「・・・トナカイさん・・・。」
窓から見た彼女は、そう呟いて、トナカイのぬいぐるみを抱きしめ、悲しげに涙を流していた。
どうしていいか、わからない。
このまま部屋に入って、彼女を抱きしめてしまいたいという衝動が頭をよぎったが、必死にそれを否定した。
彼女はただ、もう会えない俺という友人を寂しがっているだけだ。彼女はもう立派に生きていける。頼りにしてもいい大人だって身近にいるんだ。
俺みたいな行きずりの、ただの他人の獣人が、これ以上関わるべきではない。
自分に強く言い聞かせ、何もかもを振り切るように支部へと戻った。
それを見ていた影の存在に、気がつかないまま・・・。
薄暗い部屋で、電話をかける一人の影。
「サンタ・クロース、私です。少々お話が・・・。」
彼の預かり知らぬところで、何かが変動していることに、彼はまだ、気づいてはいなかった。
今期はなんだか忙しかった。
ブリッツェン隊にルドルフ隊の偉い人が視察に来たとか、お偉いさんがルートの急な大幅変更をするとかで、主に上層部がてんやわんやだったらしい。
そんなこと全く関係ない下っ端の、どこか身の入らない俺は、ただ淡々と仕事と訓練をこなすだけだった。
最近、同僚達がなにやら俺を避けるように皆で内緒話をしているようだが・・・いったい何だと言うんだろう。
また、クリスマスが来てしまった。
潤んだ瞳で袖を掴んできた彼女の表情が、脳裏に焼き付いて離れない。
泣きながらぬいぐるみを抱きしめていた彼女の涙を、忘れることが出来ない。
一度だけ、そう、もう一度だけ・・・。
もう今年で最後だ。最後に寝顔を見たら、もうそれっきりにしよう。
ここで、話は冒頭に戻る。
「子供の居ない家に侵入か。また一つ業務規則違反が増えたな。・・・ブリッツェン隊第1225番隊員、ハリー。」
「あ、あなたは・・・!サ、サンタ・クロース!?それに、確かそちらは、ルドルフ隊の隊長!?」
おまけに何故か、ブリッツェン隊の同僚までもが一緒に待ち受けていた。
「ほっほっほ。きっと来るだろうと思っとったぞ。待っとって正解じゃったわい。」
お腹を揺らして笑う、白い髭を生やした赤い服の老人。入隊式典の時にものすごく遠くから見て以来だが、間違いなく、サンタだ。
「な、何故あなた方がこんなところに・・・!?」
そうだ。サンタクロースはルドルフ隊を率いて、人口の多い大都市圏を中心に配達をしているはずだ。こんなところにいるはずが・・・。
「愚問だな。業務規則違反を幾度も行う隊員に対して、懲罰委員に成り代わり、懲罰を与えに来たまでだ。」
毅然とした態度で、ルドルフ隊隊長がそう答えた。
「見に覚えがないとは言わせんぞ。警備会社はおろか、軍のレーダーすらも攪乱できるプランサー隊の能力を舐めるな。
彼らがその気になれば、隊員が配達中に何回くしゃみをしたかまで調査可能だ。」
見に覚えが無いわけがなかったが、まさか今までのことがすべて筒抜けだったとは・・・。
「まあ、隊員のプライバシーに考慮し、普段そこまでの調査を行うことはないが・・・今回の件については、
ここにいる貴様の同僚どもの供述から発覚したものだ。」
「悪ぃな。お前の様子が最近どうも変だったからよ、前にここに来たときに尾行してたんだ。
んでまあ、俺らの動向が妙だってんで、そこの隊長さんに問い詰められちゃってよ。」
いつも声をかけてくるような気軽な口調で、同僚が言った。最近態度が妙だったのはこういうことだったのか。
「さて、貴様の規則違反についての懲罰だが・・・。」
隊長が取り出した書面を読み上げる。
「配達中に姿を見られ、なおかつその事実を隠匿し、子供と口裏合わせか・・・重罪だな。」
隊長が続けて読み上げる。
「・・・貴様の規則違反はそれだけではないぞ。貴様は昨年、『適切なプレゼントを子供に配達しなかった』という規則違反をしているな?」
「し、しかしあれは・・・!」
「言い訳は聞かん。ともかく貴様は懲罰を受け、清算をせねばならない。これより懲罰の内容を述べる。」
隊長が別の紙を懐から取り出し、読み上げた。
「まずは冬季ボーナスを4ヶ月分から3ヶ月分に減額、但し懲罰の一環として金銭ではなく現物支給とする。
次に、規則を大きく逸脱した行為を行った旨により、隊員寮の退寮を命ずる。」
なんだ、案外軽いじゃないかと、少しだけ安堵した。
寮を追い出されるのは少しキツイが、どこか安いアパートでも探せばいいだろう。
「更に、昨年配達を放棄したプレゼントの、再配達を命じる。」
あれ、いつの間に俺はあぐらをかいた状態で後ろ手に縛られて、腕を動かせないようにぐるぐる巻きにされていたんだろうか。
同僚たちがニヤニヤしながらこっちを見ている。こっち見んな。
「あのー・・・これは一体、どういうことなんでしょうか・・・。」
「どうもこうも無い。・・・姿を見られたことに関する罰則は除隊だが・・・今回は特例で帳消しにしてやらん事もない。
姿を見られたことに関する規則の但し書きには『但し、関係者は除く。』と、記載してある。ここにある関係者とは、
子供を除く家族、親族、結婚を前提とした婚約関係等がその対象となる。」
「じゃ・・・その、つまり、彼女に『関係者』になってもらえ、ということですか?」
「察しがいいな、その通りだ。この場合なら配偶者か、婚約関係だな。だが強制はしない。
別に貴様があくまで彼女を関係者にすることを拒むというならば・・・。」
隊長が、勿体付けるかのように言葉を途切らせ、俺を睨みつけた後、さらっと恐ろしいことを言ってのけた。
「この少女には、記憶操作を受けて貰う。貴様に関する記憶の全てを洗脳処理により削除することになるな。それと、貴様も解雇処分。除隊だ。」
「な・・・っ!?」
「まあ、これもすべて貴様が招いた結果だ。どちらにするか、選ぶ時間をやろう。せいぜい話し合って、
決心が付いたら正月明けにでも本部にいる私に連絡するように。・・・以上だ!」
「待ってください、彼女は去年まで子供で、去年の事だってきっと恋愛感情とかそんなんじゃなくて・・・!」
「子供扱いするんじゃない。今年からはもう我々の規定上では大人だ。
その彼女がそう望んでいるからこその、この特例で、この程度の軽微な懲罰なのだ。」
隊長は、いつも隊員が配達で使うものと全く同じメモを取り出し、俺の目の前に突きつけた。
じわりとインクが滲み、形作った文字は去年と同じ『トナカイさん』だった。
すいません続きは夕方からになりますすいません
>>301 エロ期待
クリスマスプレゼントに男を欲しがるなんて、エッチな女の子だぜ。
すいません再開しますすいません
「じゃあ、本気でこんな・・・俺のことを・・・。」
「他にどんな意味があるというのだ、鈍感な奴め。この少女はこんな奴の、一体どこがいいというのだろうな?」
「・・・おっと、ボーナスを渡し忘れておったわい。ここに置いておくよ。」
そういうとサンタは、何かを棚の上に置いたが、今座らされている位置からは、それを確認することは出来ない。
「ほっほっほ。では我々はこれでおいとまするとしようか。あとは若いお二人で。」
俺と彼女以外の全員が、部屋から出ていった。
外から遠ざかる鈴の音が聞こえてくる。きっと本部に帰るのだろう。
さすがに朝まで縛られたままで居るわけにもいかず、彼女を起こして、縄を解いてもらうことにした。
「ノエルちゃん、ノエルちゃん。ごめん、起きてくれないか?」
「ん・・・、あ・・・トナカイ・・・さん・・・?」
「や、やあ、ノエルちゃん。」
ぎこちなく挨拶した次の瞬間、彼女が俺の胸に飛びつき、抱きしめてきた。
「トナカイさん!トナカイさん!トナカイさん・・・っ!」
強く抱きしめられ、幾度も名を呼ばれた。流れる涙を拭ってあげたかったが、前脚はまだ後ろ手に縛られたままだ。
「・・・そろそろ落ち着いた?」
「トナカイさん・・・もう、会えないと思ってた。でも、なんで縛られてるの?」
俺は、さっきまでここで起こっていた事を、包み隠さず説明した。いまさら何をごまかしたって無駄だろう。
「・・・ねえ、この縄を解いたら、トナカイさん、帰っちゃう気でしょ。俺のことは忘れた方がいいとか、言う気でしょ。」
「う・・・いや、そんなことは・・・。」
相変わらず、勘がいい。俺だって忘れられたくは無いが、俺みたいな獣人よりも、きっと彼女に見合った人間が・・・
「そうなのね?・・・だったら・・・」
突然彼女の手が俺の股間に伸び、彼女の細い指が、獣じみた性器を服越しにさする。
「な、何を・・・!ノエルちゃん、やめるんだ・・・っ。」
しかし、彼女は聞き入れようとはせず、股間のファスナーを開け、
刺激に反応して起立し始めた性器を取り出すと、あろうことかその男根に舌を這わせ始めた。
「・・・ん、ぅ・・・。男の人って、こうすると気持ちいいのよね?」
ぴちゃり、ぺちゃりと、卑猥な水音を立てながら彼女の舌が性器を舐めあげると、堪え難い刺激に、彼の雄が硬度を増してゆく。
「ぅく・・・、い、一体どこでそんなことを・・・。」
「えと・・・その・・・お店にあった、男の人用の雑誌で・・・。」
町に数少ない雑貨屋だし、そういう本を入荷していてもおかしくはないだろうが、18歳未満が読むのは推奨できない。
ともかく、弱点ともいえる部分を握られていては身動きがとれない。
前足を縛っている縄も、必死に緩めようと動かすが、未だゆるむ気配はない。
「ちょっと本に載ってた形とは違うけど・・・たしかこう、歯をたてないようにして、口の中に・・・んむ・・・ぁ・・・思ってたより・・・おっきい・・・。」
獣人の陰茎は通常の人間のものとは形状が異なる。
サイズも、彼女の小さな口に収まるようなサイズではないが、それでも彼女は懸命に先端を咥え、刺激を与えてくる。
拙くも柔らかな舌の刺激と、未だ幼さを残す少女がその舌で彼の性器を舐め、咥え、奉仕しているという淫らな光景に、
大した抵抗をすることも出来ず、彼は屈した。
「う・・・もう駄目だ・・・っ、離れて!」
しかし、少女は離れようとしない。
奉仕することに集中しきっていて、言葉が耳に届いていないようだ。
「・・・ぐ、ぁ・・・っ、出る・・・!」
どくどくと、大量の白濁液が少女の口に放出された。
「んんっ・・・ぷぁっ!?」
いきなり口の中に精液が放出されたことに驚いて、口を離してしまう。未だ放出され続ける精液が彼女の顔を汚し、口元から垂れる精液が顎を伝った。
「熱くて・・・・・・変な味・・・。」
それでも彼女は、口の周りについた精液や、陰茎に未だ残る精液を舐め、飲み込もうとする。
「そんなの舐めちゃ、駄目だ・・・っ。もう止めるんだノエルちゃん!」
そんな彼の言葉も聞かず、精液を舐めとってもなお、彼女は陰茎を刺激し続けた。
すぐに硬度は増し、先程と同じようにそそり立つ。
軽い衣擦れの音を立てて彼女がパジャマと下着を脱ぎ、未だ肉の付ききらない肉体が露わになった。
「一体、なにを・・・。」
その問いに答えず、彼の肩に手を置き、体を寄せて、腰を落としてゆく。
「・・・入るの、かな・・・。」
このまま対面座位の格好で挿入する気なのだろう。
俯いて表情は読みとれないが、緊張か、はたまた未知への恐怖か、置かれた手は強く肩を掴み、僅かに震えている。
「だ、駄目だっ!ちょっと、待って!」
彼は必死で体をよじって抵抗し、彼女の性器が彼の性器の先端に触れる直前で、
彼の腕を拘束していたロープが僅かにゆるみ、寸前のところで彼女を体から遠ざけることができた。
「・・・ごめ・・・なさい・・・っ、ごめんなさい・・・っ。トナカイさんの事、忘れたくなくて・・・忘れてほしくなくって・・・私・・・。」
俯いて、床にヘたり込んでしまった。拒絶されたと思ったのだろう。
「私の、初めて・・・トナカイさんに・・・、もらって・・・ほし・・・くて・・・っ。」
彼女はぼろぼろと涙を流し、しゃくりあげながら細切れに言葉を紡いだ。
細い裸身に、太股から垂れる蜜に、涙で濡れた瞳に。
理性が、ぷつりと切れた。
気がつくと俺は、ノエルちゃんを抱き抱え、ベッドに押し倒していた。
そのまま彼女の口に舌をねじ込み、強引なキスをする。
小さな舌は大きな長い舌に翻弄され、彼女の口からはどちらのものともわからない唾液が流れ落ちた。
「ト、トナカイ・・・さん?」
「やれやれ、すっかり悪い子になっちゃったね?」
秘裂に前脚の蹄を食い込ませると、ぐちゅりと卑猥な水音が響いた。
「ひゃっうああ!?」
「俺のモノを咥え込んだだけで、こんなに濡らして。」
空いた方の前脚で胸を揉みしだき、もう片方は舌で舐めあげてゆく。
彼女が嬌声をあげ、胸に送られてくる刺激に身を震わせている。
強すぎる刺激から身を捩らせて逃れようとするが、逃がしはしない。
「んっう、やぁああっ。あっ、ひあぁあん!」
「だけど、挿入するにはまだ足りなかったな。あのまま挿れてたら痛いじゃ済まなかったはずだ。・・・もっと慣らさないと。」
ぐちっ、じゅぶ、ぴちゃ、くちゅり。
蹄の先端が、まるで楔のように彼女をじわじわと割り開き、蜜をあふれさせながら押し広げる。
「いああっ、あ、い、やああんっ。ト、トナカイさん、っ、トナカイさぁんっ!」
陰核をそっとこねあげると、彼女は一層強く反応し、更に蜜を溢れさせた。
先程よりもだいぶ解れてきた。これならそろそろ大丈夫だろう。
「・・・挿れるよ。止めてほしかったら、言って。」
「・・・うん・・・。」
ずぶりと、彼女の秘裂に先端が沈む。
「んくぁ・・・あ・・・っ!」
「ぐ・・・っ、キツい・・・。」
元より大きさの合わない性器だということは解っていたが、やはり窮屈だ。
だがゆっくりと、できるだけ負担をかけないように進んでゆく。
膣内に感じる僅かな抵抗の後、彼女が声を殺して、小さく呻いた。
彼女の目から涙がこぼれたが、それでも止めてとは言わず、息を整えて痛みを堪えている。
彼女が落ち着くのを待ってから、じわじわと、ゆっくりと。更に奥へと腰を進める。
さすがに一気に全部を収めることはできないが、それでも突き当たるところまでは到達できた。
「・・・っ・・・はぁっ・・・は、ぁ・・・。トナカイ・・・さ・・・んっ。」
彼女は、痛みと苦しさに喘ぎながらも俺の胸に抱きついてくる。
押し当てられる額の感触が愛おしい。
「ノエル・・・、もう、動かすよ。」
隙間なく埋められた膣の中を、ゆっくりと前後する。
赤い色を帯びた愛液が隙間からこぼれてシーツを染めた。
幾度も動かしていると次第に動かし易くなり、彼女の声も甘い喘ぎに変わりつつあった。
時折、俺の背に回された手が無意識からか強く握られ、幾本もの毛を毟ったが、その痛みすらも気にならない。
次第に堪えていられなくなり、行為は激しくなってゆく。
「うあっ、奥っ、ごりごりって・・・っ、んっああああ!」
「・・・っ、もう、出そうだ・・・。」
強く締め付ける刺激に限界が近づき、彼女から性器を抜こうとしたが、強く抱きつかれ、離れることができなかった。
「・・・やっ、離れないで・・・っ!欲しいの、トナカイさんのっ、中に・・・ぃ!」
「ノエル・・・っ!」
彼女が腰を寄せてくる動きに耐えきれず、そのまま彼女の膣内に精を放つ。
熱い奔流が彼女の中を迸り、彼女を絶頂へと突き上げた。
「ひっ、ああああっ、あぁあああ!!」
甘美な嬌声をあげ、彼女は俺の背中に爪を立てる。
未だ貫かれている膣口の隙間からは、収まりきらなかった精液がじわりと流れ、シーツに染み込んでいく。
静かな冬の夜。
二人の荒い息と、時折雪が落ちる以外は、どこまでも清浄で静寂な、白銀の世界が広がっていた。
所変わって、ここは太平洋の上空。
帰路につくトナカイとソリに乗ったサンタが空を飛んでいた。
「あのー・・・、俺らの方から頼んでおいてなんなんですけど、あいつら本当にあれでうまく行くんですか?サンタ・クロース。
ハリーの奴はあんなヘタレ野郎だし・・・いや、悪い奴じゃないんですが・・・。」
若干不安になった同僚が、ふと、サンタに尋ねた。
「ほっほっほ。心配いらんよ。サンタには何でもお見通しじゃと、君も子供の頃親御さんに言われたじゃろ。」
「しかし、サンタ・クロース。あのような軽微な懲罰で本当に宜しかったのですか?本来ならば解雇処分となるはずでは・・・。」
今度は隊長がサンタに尋ねた。
「ほっほっほ。良いんじゃよ。クリスマスはもう、恋人たちの祭りでもあるんじゃからの。
それに、君も彼らのことを心配して、彼の直属の上司には告げずに、ワシに相談したんじゃろ?」
「そりゃあ・・・そうですが・・・。」
「ほっほ。ルディちゃんはお堅いのう。君もそろそろお相手を見つけたらどうじゃ?せっかく安産型の腰なんじゃから・・・」
「サンタ・クロース。セクハラ発言は奥方に言いつけますよ。」
配達トナカイのエース部隊、ルドルフ隊の隊長にして紅一点、ルディ・ルーはサンタを睨み付けた。
「・・・それだけは勘弁しておくれ。」
奥方をちらつかされては、サンタも降参するしかないらしい。
まったく・・・と、ため息混じりで一言漏らし、今度はブリッツェン隊のひよっこ共に言い放った。
「おいお前等! どうせこれから飲みに行くんだろう?私も連れていけ。私が奢ってやる。」
「ま、まじっすか!?」
「綺麗所が足らんというなら、プランサー隊のオペレーター達も呼んでやろう。」
「・・・いやあ俺は・・・ルー隊長がいればそれで・・・ごにょごにょ・・・。」
「ん?何か言ったか?」
「ななな、何でもありません!!」
その飲み会がきっかけで、気のいい同僚と隊長が交際を始めたらしいが、俺がそれを知るのは、もっとずっと先の事だ。
丁度その頃の俺はというと、若干の自己嫌悪に陥っていた。
誘ってきたのは彼女からだが、さすがに強引に事を進めすぎたんじゃないかという罪悪感。
いや、更に言えば、彼女の気持ちを無碍にしようとしていた俺が悪いのだが・・・。
そんなことをぐだぐだ考えていたが、
目を覚ましても俺が居ることに安堵し、俺の毛皮に体を擦り寄せてくる嬉しそうな彼女を見ていたら、そんなことはどうでもよくなった。
彼女がこれでいいなら、それでいいんだ。
さて、これからどうしたものか・・・と、首を傾げると、棚に角がぶつかり、
先程サンタ・クロースが置いていったらしい棚の上に置いてあった『ボーナス』が落ちてきた。
どうやらそれは小さな箱で、一緒に手紙が添えられている。
小箱を開けると、そこには古典的な『給料三ヶ月分』が輝いていて、添えられていた手紙にはこう書かれていた。
『クリスマスの恋人達に祝福あれ。 HO-HO-HO-。
寮にあった荷物は全て、隣の部屋に運んでおいたよ。お幸せに。』
サンタには全部お見通しって訳か。それにしても強引な。
「どうしたの?トナカイさん。」
複雑な表情で苦笑いする俺を見て、彼女が不思議そうな顔で見上げてくる。
俺は小さな小箱を開け、恭しく彼女に差し出した。
「・・・ノエル・・・もしよければ、俺と・・・」
クリスマス。家族のいない女の子に、ちょっぴり気が弱くて角の大きい、素敵なプレゼントが来たお話。
完
以上です。読んでくださった方ありがとうございました。
リア充とかはどうでもいい。
リア獣に幸あれ。
>>306 GJ
リクエストされたら、部下でも容赦無くプレゼントしちゃうサンタさんが素敵です。
あなたの作品好きです!!!!
他にも投下しました?
もしかしておいしいブリ大根の作り方の人かな〜・・・なんちって
トナカイ超GJ。
萌えた。
サンタさんにはトナカイ(♀)をお願いしたくなった。
サンタさんGJだわ……
続き読みたいくらいだわこれ……
トリック・オア・パンプキンが名作すぎて眩しい
久しぶりだこのスレ
317 :
名無しさん@ピンキー:2010/01/01(金) 11:05:23 ID:f48sAptn
とりあえず
あけおめッス!
不定形生物×人間♀ 和姦
NGは 中の人などいない! で。
暑い。熱い。厚い。夏なら更に『篤い』が加わる。
狭い視界。思うように動かない身体。要求されるアクティブなリアクション。
例え、中に汗ダクのおっさんとか、ガラの悪いあんちゃんとか、ロリコンとか、ショタコンとか、変態紳士とかが入っていたとしても。
着ぐるみに詰まっているのは、夢と希望なんです。
中の人などいない! のですよ。
テマパークのマスコットの着ぐるみを着て子供達に愛想を振り撒く私の肩を、
もう一人のマスコットの着ぐるみが、ぽむぽむと叩く。
指さされた先にある広場の時計塔の時計の針は、休憩時間になったことを示していた。
可愛い動きで子供達に手を振って、可愛くスキップしながら、
関係者以外立ち入り禁止のドアを開け、休憩室へ滑り込む。
「っぷっはーーー! 生き返るーーー!!」
強制サウナからの解放。着ぐるみの頭を取ると冷たい空気が気持ちいい。
頭だけ取った状態でゆったりと椅子に座り、飲んでいたスポーツドリンクをテーブルに置いた。
頭に巻いていたタオルを取りながら隣に座ったもう一人の着ぐるみに話しかける。
「中野さんは頭取らないんですか?」
「え? ああ、うっかりしてた。」
そう言って中野さんは、ひょいっと着ぐるみの頭を持ち上げて、横に置いた。
着ぐるみの頭の下に、頭はない。ただ、ぷよんとした緑の塊が着ぐるみの中に収まっている。
中野さんは、ぷにょんぷにょん。そんな擬音が似合う不定形生物だ。
初めて見たときは、それはもう肝を潰したものでしたけど、
とってもいい人だし、すぐにそんなことは気にならなくなりました。
「暑さとか、僕はあんまり感じないからね。」
私はそんな中野さんがちょっとだけ羨ましい。こういう仕事をしていれば尚更だ。
だけど中野さんは「こんな身体だと、働ける所も限られてくるけどさ」と、軽く自嘲するかのように、笑う。
でも、いつも続けて、「今の仕事は結構、気に入ってるんだ」と、今度は本当に楽しそうに言うのだ。
「・・・やっぱり羨ましいです。暑くないの。」
「もう冬なのに、やっぱり暑い?」
「そりゃあもう。冬休みで人も多いですし、今日も結構汗かいちゃいましたよ。」
夏は夏で地獄を見たが、冬も冬でアクティブに活動する閉鎖空間は、やっぱり暑い。
「・・・じゃあ、その汗、吸い取ってあげるよ。冷えたら風邪引いちゃうでしょ?」
「え、あ、ちょっと待ってください! 人が来たらどうするんですかっ!?やめて下さいって・・・っ、んひゃあっ!?」
着ぐるみから中野さんが這い出て、私が着ている着ぐるみの中に侵入してくる。
そのまま私の皮膚の表面を滑りながら、とうとう全身を着ぐるみの中に納めてしまった。
中野さんの体積はそんなに多くはなく、外から見ても大した違和感はない。
着ぐるみの下はとても軽装なので、服の中への侵入も容易に許してしまう。
「駄目ですよ! こんなとこで、ひゃ、あっ!駄、目ぇえっ!」
しかし中野さんはそんな私の言葉を無視して、うねうねと楽しげに、全身を撫で回すように身体を伸ばした。
ぺたりと隙間なく素肌に密着されながら這い回られる。
すっかり身体に馴染んでしまった感覚に、いつも通り素直に反応してしまう。
べたつくことはないけれど、つきたてのお餅のように柔らかな、
けれどひんやりとした身体が皮膚を這いずり、汗を吸収してゆく。
その感触だけでも声が漏れてしまいそうなのに、中野さんの低体温な身体が、
汗を吸い取るのと同時に私の体表面の熱を奪い、こそばゆさと共にゾクゾクとした快感が背筋を走る。
しかし決して胸の先端にも局部にも刺激を与える事はなく、ひたすらにじれったい刺激が続いていた。
「んっ、はぁ・・・ぅ・・・・・・あ、れ?」
突然、中野さんの動きが止まった。
「はい、おしまい。『汗』は吸収し終わったよ。」
しかし、身体から離れるわけでもなく、未だに中野さんは私に身体を這わせたままだ。
「・・・えーと・・・中野さん?」
中野さんは、私の身体がもう疼いてしまっているのも分かってるし、
もっと感じる所を触って欲しがっているのも分かってる。
「職場でヤろうとしたら、帰っても家でヤらせてあげないって言ったのは、恵子だよね?」
とっても楽しそうに、中野さんはそう言った。
分かってて、私から言わせようとしているのだ。
「中野さんの・・・意地悪。」
「イヤならもう止めるよ。」
ずるるっと、中野さんが着ぐるみから出ようとするのを、私は慌てて引き止めた。
掴もうとしても掴めなくて、流れるような喪失感に焦ってしまう。
「やっ・・・! やめ、ないで・・・ください・・・。最後までぇ・・・っ・・・。」
「職場なのに? 誰か来るかもしれないよ?」
「でもっ、もう・・・。」
「じゃあ、恵子から言い出したんだから、帰ってもヤらせてくれる?」
「う・・・分かりましたよ。それでも、いいですから・・・。」
着ぐるみの頭を取ってようやく冷めた顔が、再び別の要因で火照ってゆく。
「着ぐるみの中だけなら、外から見ても分からないね。」
中野さんはずるずるっと、再び私の身体に絡みついていった。
「っあ、ひうっ、うあっ、く、やっああ!」
中野さんが胸を覆って、揉むだなんて生易しいもんじゃない動きでぐにぐにと形を歪め、
時折思い出したように敏感な先端に刺激を与えるものだから、
快楽を予測出来ずに恥ずかしい声が洩れてしまう。
「こっちはもう、汗じゃない体液でぬるぬるだね。」
中野さんが溢れた愛液を吸い取ってゆく。
かなりトロトロになってしまっているはずだが、中野さんが覆って吸収しているので外には漏れ出ていない。
波打たせ、こねまわすように表面を責められ、陰核を押し潰すように責められ、溢れ出る愛液が吸われてゆく。
「くああ、っうぅ、気持ち、い・・・っ、ああっ!」
ぐぷん、と中野さんの身体が秘裂の中に入り込んだ。
そのままずるずると膣内に侵入して、ある程度の量が入ったところで、ぐにぐにと膣内をかき回し、
擦りあげながら復運動を開始する。
「んっ、やああ、ん、はあぁっ、ああっ!」
動きを予想することが出来ない責めと、中を擦り、押し上げるような異物感に自然と快感は高まり、
いつしか強請るように腰を浮かせていた。
「い・・・いっ。ひああぁ・・・。ひっ、うあああっ!」
おなかの中の心地よい圧迫感。快感が上り詰めてゆく。
私の絶頂が近いのを察してか、中野さんの動きが激しくなる。
中野さんの身体は腰や背中にも回され、まるで私を抱きしめるかのように包み込んでいった。
「いっ、あっ、いっちゃ、う・・・っ! いっあ、ああ、っく・・・っああああっ!!!」
視界は白く染まり、びくびくと身体が跳ねた。
溢れた愛液を中野さんが吸い取ってゆく感覚に、再び軽く快感を煽られそうになってしまう。
力が抜け、椅子に寄りかかった。未だ余韻冷めやらず、時折腰が軽く痙攣する。
溢れ出た汗やその他諸々の液体はみんな中野さんが吸い取ってしまったらしく、べた付いた感じはあまり残っていない。
「・・・は・・・ぁ・・・っ。ちょっと、激しすぎですよぉ・・・。」
「大丈夫? ・・・ごめん。ちょっと夢中になりすぎた。」
「ふふっ、大丈夫ですよ。休憩時間で、なんとか回復出来そうですから。」
着ぐるみの中に中野さんを納めたまま、余韻を冷ましながらそんな会話をしていると、
突然ドアが開いて、割と顔なじみの男性スタッフが入って来た。
「お、有定さんも休憩?」
「え!? あ、ええ。珍しいですね、こっちの休憩室に来るなんて。」
ここには休憩室が2カ所ある。
ここではない、向こうの新しい休憩室には椅子やテーブルだけでなく、自販機や大きな液晶テレビも据え置いてある。
こちらの古い休憩室には椅子とテーブル、あとは古いテレビがあるだけで、滅多に人は来ない。
「まあ、ちょっと気まぐれ? ってやつ?」
「は、はあ・・・。そうですか。」
どうやら中野さんが私の着ぐるみの中に入っていることに気付く様子はない。
「・・・あれ? 中野は? 着ぐるみカラじゃん。さっきなんか話し声が聞こえてた気がしたけど・・・。」
「あっ、えーと、携帯ですよ! 携帯! 友達から電話掛かって来ちゃって。
中野さんだったら、ちょっと用事があるからって出ていきましたよ。」
「ふーん。そっか。」
とっさの嘘でもなんとか通じたことに安堵したのも束の間、
入ってきたスタッフは、中野さんの着ぐるみが脱ぎ捨てられている椅子とは反対側の、私の隣に座ってきた。
「恵子ちゃんってさー、本当に頑張り屋だよなあ。」
「はぁ・・・?」
なんで突然名前で呼び出すんですか? この人は。
「こんなに顔が真っ赤になるまで、仕事頑張っちゃってるしさあ。」
そう言って馴れ馴れしく、ぺたりと頬に手を当てる。
その瞬間、私の体に張り付いたままの中野さんが、沸騰するかのようにごぼりと蠢いた。
頬を触る鬱陶しい手をさっさと跳ね退けたいのに、未だに中野さんが絡み付いているので思うように動かせない。
いや、違う。中野さんが私の体を動かしていて、私の思うように動かないのだ。
一瞬のうちに、ずずずっと、右肩と右腕を完全に覆うように中野さんが移動する。
背中や腰、左肩にも中野さんが身体を伸ばす。
私の上体を中野さんが、やや右にひねった。
中野さんが何をしたいのかを、ようやく理解した。
「やっ、駄目ですよ!駄目ですってば!!」
駄目だと言いつつ大した抵抗もしてこない恵子に、『いける!これはチャンスだ』とでも思ったのか、
男性スタッフはさらに距離を縮めようとする。
「ほんとに、中野の奴なんかには勿体無いくらいの、いい女だよなー・・・」
「中野さん!! 駄目ですってばーーー!!」
男性スタッフが意識を失う前に見たものは、視界いっぱいの、着ぐるみが放つ右ストレートだった。
私の手は中野さんが覆っていたから痛くなかったものの、男性スタッフはものの見事に気を失ってしまった。
「・・・どうするんですか中野さん! この人、気絶しちゃいましたよ!?」
とりあえず、空いている椅子を利用して寝かせてはおいたけど、まだ目を覚ます気配はない。
「手加減はした。そのうち起きるだろ。」
「やりすぎですよ!」
「・・・恵子は僕のだから、手を出すなって言っておいたのに。」
そう言って中野さんは、さっき手が当てられた場所まで身体の一部を伸ばし、ごしごしと擦るように這い回った。
「中野さん・・・?」
「・・・声が漏れると困るよね。」
私の着ている着ぐるみの頭を中野さんが拾い上げ、私にかぶせた。着ぐるみの視界は暗く、狭い。
「な、何を・・・? ひゃあっ、あっ、いっあああ!!?」
再び、中野さんが私の身体を責め始める。今度は先程よりも強く、激しく。
「やあああっ、さっきイったばっかり・・・っだから、っ感じすぎちゃっ・・・ああっ!」
激しく膣内をかき回される。先程入り込んだ時よりも膣内に入り込む体積は増やされて、
お腹いっぱいに詰め込まれた中野さんが、ぐりぐりと子宮口を押し上げた。
「うあ、あ・・・!中、広がっちゃ・・・っうう・・・!」
視界が暗くなったことで体の感覚が研ぎすまされ、よけいに強い快感が流れ込む。
強い圧迫感と、暴れ回るかのように乱暴な責めに身体が翻弄されてゆく。
中野さんは普段、身体の中の空洞を振動させて声を出していて、
最近、骨伝導とか色々な振動を編み出したらしく、悪戯半分でなにかと私に振動を与えてきたりしていたのだが・・・。
局部で動き回っている中野さんが突然激しく振動し始め、
今まで感じたことがない程の、電撃のように強烈な快感が走る。
「うううあっっ!? やっ、やぁああっ!それ駄目え・・・っ、んゃ、めぇえ!! そん、な、ぁ、んああっああああっ!」
それはまるで、中野さんの激情をそのままぶつけられたかのように激しいものでした。
先程とは比べものにならないくらいの目眩く快楽に、理性は掻き消え、涙も涎も垂れ流してしまう。
きっと今の私は、みっともない表情をしてしまっているのだろう。
「あっ、あ、あああっ!中野ひゃあ、ん・・・っ!」
口の中にも中野さんが入ってきて、舌を絡めとられた。
快楽に流され、まともにそれに応えることが出来ないが、それでも無意識のうちに私も舌を絡めようともがく。
こぼれ落ちた唾液すらも中野さんは吸収し、やがて私の思考は真っ白に塗り潰され、
何度も、何度も、どこまでも、快楽の奔流に押し流されていった。
「・・・もうっ!本当にやりすぎですってば!!」
「いや・・・ほんと・・・ごめん・・・。」
もう休憩時間も終わろうかという頃になってようやく、我に返った中野さんが私の着ぐるみから抜け出てくれた。
中野さんの体は、私の体温で暖められてすっかり温くなってしまっている。
「もしかして中野さん・・・ヤキモチ、焼いちゃったんですか?
それとも、『中野の奴なんかには』っての、気にしちゃったんですか?」
罰が悪そうにたぷたぷと揺蕩っていた中野さんの動きが、ぴたりと停止した。
「・・・。」
図星ですか。どっちも。
「もう・・・。他の人に触られたくらいでヤキモチ焼かなくてもいいんですよ?
私はちゃーんと、中野さんが大好きで、中野さんの彼女なんですから。」
「・・・ごめん。」
いやまあ、ヤキモチ焼かれるだけなら、ちょっと嬉しいですけどね。・・・殴ってスッキリしましたし。
「謝らなくてもいいですけど・・・私、足腰が立たなくてしばらく動けそうにないです・・・どうしましょうか・・・。」
暫く休もうにも、もう休憩時間は残っていない。
「んじゃあ・・・最後の手段か。」
みょいーん ぷちん と、中野さんが二人になった。
『結構な量を吸ったから体積も増えたし、後半だけなら多分大丈夫だよ。』
二人になった中野さんの声がステレオで聞こえる。
中野さんは一定時間内なら分裂しても、また合体すれば大丈夫らしい。
一定時間が過ぎると意思の統合がうまくいかなくなって、
もう片方との折り合いが付かずに大変なことになるとかならないとか・・・。
私が脱いだ着ぐるみの中に、もう一人の中野さんが入ってゆく。
中野さんの体積は元々それほど多くはないけれど、中野さんはいつも、身体を細く伸ばしたり筒状にしたり、
色々と工夫して着ぐるみを着ているので、中身がみっちり詰まっていなくても違和感はない。
『恵子はどっかに隠れて休んでて。僕はコイツをあっちの休憩室に運んだら、仕事に戻るから。』
中野さんが、さっきから気絶したままのスタッフを持ち上げる。
一人は足を、もう一人は腕を。ぴったり息のあった動きで持ち上げて、そのまま運んでいった。
中野さんはああ見えて結構な力持ちだ。私なんか軽々と持ち上げられてしまう。
まあ、そうでもなければ、半分になった身体を更に細長く伸ばして重い着ぐるみを着るなんていう芸当は出来ないんだろうけど。
『あ、手が滑ったー。』
その声の直後に、どさりと鈍い音が廊下から聞こえてきた。
・・・声をハモらせながら二人同時に手を滑らせる人がどこにいるっていうんですか、中野さん。
見つからないように暫くトイレに潜んでいたけれど、次第に退屈してきた。
もう体力も回復しているから、なんだかズル休みしてる気分。それにトイレって寒い。
「・・・こっそり、見に行っちゃおうかな。」
二人に分裂した中野さんがどういう風に働いているのか、とても興味をそそられる。
もしかしてもう誰かにバレてて、怒られてたりしていないかどうかも心配だったりします。
休憩室を抜け出し、新しい方の休憩室を通ったときに、さっき殴られて気絶したスタッフが意識を取り戻していた。
「痛・・・あれ、俺なんでこんなとこで寝てんだ?」
もし中野さんが殴ったことが露見したら厄介なことになるかもしれません。
ちょっと記憶があやふやなうちにテコ入れしておきましょう。
「えーとですね、私に殴られて気絶しちゃったから、私がここに運んだんですよ。」
まあ、殴ったのは私の拳なのだから、半分くらいは嘘ではない。
私が暴力女だのなんだの言われるのは一向に構わないし。
この仕事が気に入っているんだっていつも言ってる中野さんが、ここで働けなくなるほうが嫌ですし・・・。
「・・・嘘なんだろ?」
速攻でバレました。
「ううう、嘘じゃないです!ホントです!」
「ハァ・・・それぐらい俺でも分かるって。・・・中野だろ?殴ったの。ってか、殴る瞬間叫んでたじゃん?」
実の所、中野さんの事を快く思っていない人達が、居ない訳じゃないんです。
人間じゃない中野さんを、少なからず、疎ましく思っているような人たちが。
そういう人たちは、中野さんが暴力沙汰を起こしただなんて知ったら、嬉々として辞めさせようとするはずです。
「・・・んな顔しなくたって心配ねえよ、誰にも言わねえって。俺が悪かったんだからよ。
・・・ったく中野の奴、こんな可愛い彼女に庇ってもらえるなんて、羨ましいったらねえな・・・。」
・・・まあ、この人はそんなに悪い人じゃないんですけどね。セクハラ紛いな所以外は。
彼も休憩時間が終わったらしく、持ち場に戻っていった。
・・・自分の置かれている立場に無自覚ではないにしろ、
後先考えないところがある中野さんにも問題ありですし、帰ったら後でお説教しときましょう。
その後、こっそりロッカーで普段着に着替えて、こっそり中野さんを探していたら、
入り口ゲートの正面広場で女子高生とおぼしき集団に囲まれている二人の中野さんを発見。
ははは。代わる代わる記念撮影だなんて、モテモテですね。今度はこっちがヤキモチ焼いちゃいますよ。
女子高生の団体が去っても二人の中野さんはかわいい動きでマスコットを演じ続けている。
たまに人間には不可能な動きをするのもまあ、ご愛敬といったところですか。
いつも私達が入っている2体の着ぐるみは、ラブラブカップルというキャラ設定。
本来私が入っているはずの着ぐるみが、いつも中野さんの入っている着ぐるみとラブラブしていると、どうにもこそばゆい。
端から見てるとこんな感じなのかと思うと、ちょっと新感覚です。
ふと、悪戯心がわいて、売店で使い捨てカメラを購入した。
店員に気付かれてしまったけど、このショップの店員とは割と仲がいいし、黙っていてくれるだろう・・・多分。
シンクロした動きで子供に向かってリアクションし続ける中野さん達の間に割り込み、二人の中野さんと腕を組んだ。
『恵子!? もう、大丈夫なのか?』
ステレオ音声で左右から同時に同じ声が聞こえる。
もしかしてもっといっぱい分裂したら5.1chサラウンドみたいな感じになるんだろうか? なんて下らないことを考えてみたり。
「大丈夫ですよ。 それよりもほら、そこのボクー、ちょっと写真撮ってくれる?フィルムは巻いてあるからさ、そのシャッター押すだけ。」
『け、恵子?』
中野さんがなんだか突然のことに戸惑っているけど、お構いなしです。
「そうそう、そこの小さい窓から見て、私たちがちゃんと収まるようにね。・・・はい、チーズ!」
カシャッ!
「ありがとね、ボク。きっといいカメラマンになれるよ。バイバーイ!」
『・・・ほら、もう隠れてないと誰かに見つかるって。もうすぐ終業時間だし、すぐに戻るからさ。』
そう言って私の背中を押す中野さん達は、ちょっぴり照れくさそう。
「うふふ。中野さんとの初めてのツーショット・・・じゃないですね。スリーショット写真ゲットですよ。」
こういうの、恥ずかしがってなかなか撮らせてくれないんですよね。
私には散々恥ずかしいことするくせに。
「自業自得とはいえ私の分も頑張ってくれたんですし、今日のお夕飯は中野さんの好きなハンバーグにしましょうか。」
『え!? 本当!?』
「嘘ついてどうするんです。」
着ぐるみ着たままはしゃいじゃって・・・ああもう、可愛いんですから中野さんったら。
例え中身が、ヤキモチ焼き屋さんでえっちい事が好きな、緑色でぷにぷにの不定形生物だったとしても。
着ぐるみの中に詰まってるのは、夢と希望なんです。
中の人外さんなんて、いませんよ?
おわり
以上です。
読んでくださった方ありがとうございました。
お正月ネタではないものの、
今年も人外と人間でハァハァ出来る一年でありますよう、祈っております。
ぬるぬるがステキ☆
中野さんと恵子さんがかわいいよ二人とも
いちゃいちゃしてる続編希望
最高でした。
>>320 GJ!
ところでスレ的にアバターってどうなんだ?
異種恋らしいけど萌える?
DVDにはカットされた濡れ場が追加されてるみたいね
尻尾がすげえかわいかった
335 :
sage:2010/01/12(火) 18:52:31 ID:jHd0vnvR
>>332 明日観に行って来るよ!!ものすごく楽しみにしてる。
・・・正直特別版を3Dで観たくてしょうがないけれど。
ところで、どこぞで見つけたボディペイントアート作品集で
ヒトガタ珪素生物みたいなのが女性の背中(ややお尻)に
愛おしそうに顔を寄せる、みたいなのがあって個人的にぐっときた。
これはちょっとスレチに近い発言かもだけど、
ボディペイントは大抵モデルが女性であることが多いがみんな人外みたいで綺麗だ。
もしここの住人が見たら、そこからどういう物語を生み出してくれるのか気になってしまった。
心に余裕があったら一度見てみてほしい。という初書き込み。
335です。一日経って、もっと頭が冷えました。
考えてみればここは文系の創作で盛り上がるところでしたね;
しかも自分の作品でもないものをあげてしまって、反省しています。
勉強のためにもう少しROMって過去スレから読み直してきます;すみませんでした
(上のも消しときます)
保守
>>337 気にすんなー。
ネタ投下は大いに嬉しい。
特にこのジャンル広いからな、いろいろ。
ボディペイントやタトゥーだって充分燃料になりうる。
意志ある影萌え、傷痕萌えとか、コスチューム萌え経験したことある人なら
結構わかると思うぞ。
そんなわけで女の子と意志あり衣服萌え。
ファンタジーでお馴染みのインテリジェント・ウェポンならぬ
意思を持つ下着、インテリジェント・ランジェリーか〜。
「……はぁ」
「……朝から辛気臭いわね」
「なに、気にするでない。遣り甲斐ある仕事というものについて少々考えておっただけじゃ。
お前さんの一族は誰も彼も母性溢れておったのに、何故にお前さんだけ、こうも薄…」
「黙らないと、庭の落ち葉と一緒に燃やすわよ」
「ならば、お前さんは下着を着けずに学校に行くしかなくなるのぅ。
セーラー服を内側から押し上げる桃色の蕾、というのもなかなかオツな光景じゃろう」
「くっ…!薄い薄いって言うけど、揉めば大きくなるって言うじゃない。
着けてる時に揉んでくれればいいのに。エロ爺に身を委ねるのは癪だけど。
……大きくなるのなら、それくらい。安い代償じゃない…」
「確かに揉めば大きくなる、とは言うがな。しかしお前さんには揉むほどもなかろうよ。
着用者に比類なき形状をもたらすワシだが、いかんせん形作るべき土台がなければな。
って、何を脱いで…や!やめるんじゃ!鋏はやめ…ァーッ!」
こんな感じかな?
ぶら爺ワロタ、www
そういやセッツブーンの季節だな。
でっかい鬼さんがソーブ娘のおにゃのことお互い優しくしてあげたら
鬼さんの護衛対象がそのおにゃのこでワタワタ。
という電波を受信した。
343 :
335:2010/01/27(水) 01:36:34 ID:xZ7y4Q5v
>>339 ありがとうございます。浅はかだったかと少し落ち込んでたので
その優しさに泣けました。
>>342 けっこう面白かったです。
メインの蒼い人と地球人のやりとりも、体格差も素晴らしかったけど、
あの星の生き物全部と機械類にときめき感じすぎて、忙しかったです。
そして昨晩、当時はあまり意識していなかったけど
くわがたzマnは異類恋愛に溢れてたことに気がついた。
ストーリーは並だって聞いたけど
そっか面白いのか
今度見てみるわ
345 :
名無しさん@ピンキー:2010/01/29(金) 03:47:18 ID:zpEIMkmy
眠れないので投下。
グダグダなくせに長いです。
ボルゾイ♂×ヒト女
NGは「給料日の後はヱビスで」
346 :
給料日の後はヱビスで:2010/01/29(金) 03:49:39 ID:zpEIMkmy
「ただいまー」
仕事から帰ってくると、自分の彼女であるメイと
テーブルに並べられた鰤の塩焼と筑前煮が出迎えてくれた。
こんな時、ボルゾイ系の獣人である自分の内臓機能は人間寄りでよかったと心から思う。
同僚のビーグル系はチョコとネギがアウト。塩分に気を付けた食生活を強いられているというし。
「おかえりー」
胸の辺りまで伸びたストレートの茶髪。外見はチャラいのに『金曜は学校ないし、家でご飯つくってまーす』とか言っちゃう健気な彼女は油揚げの味噌汁をよそいながら尋ねる。
大抵ご飯と共に待っているのだから頭が上がらない。
1度、連絡もせず同僚に(あのビーグルに!)無理矢理飲みに駆り出された時は
キレたメイに目の前でハンバーグを捨てられた。
それから金曜の夜は酒を2缶買うのが約束になっている。
「今日はヱビスでーす」
「うっそ!金麦じゃないの!?しゅーくんやるじゃぁん」
「給料入ったばっかりだし、ちょっとフンパツした」
「やったー!じゃあご飯食べよ!!」
ヱビスでそんなに喜んでくれるのならお安い御用です。
さして薄給なわけでもないし、これから発泡酒は避けるかなー
と思いつつスーツを脱いで食卓に着いた。
347 :
給料日の後はヱビスで:2010/01/29(金) 03:51:38 ID:zpEIMkmy
2m以上ある、全身を白い毛で覆われた二足歩行の獣。
大抵の人間は自分に恐怖心を抱く。
しかし目の前にいる長谷川メイは初対面にして
頭2つ分サイズの違う相手に「モフモフしていいですか?」「尻尾触らせてください!」
なんて聞いてきたのだった。
そこに恐怖心は感じられず、あるのは好奇心と親しみ。
そんなメイに戸惑いを覚えながらも、惚れるのに時間はかからなかった。
一緒に遊びに行くまで3ヶ月
しゅーくんと呼ばれるようになるまで5ヶ月
付き合い始めるまで半年
9ヶ月目で部屋の合鍵を渡して。
メイさえよければいつでも同棲できるのに。
そんなことをぼんやりと考えていたら
「明日土曜だけど何しよっか」
と酒で頬を染めたメイが尋ねてきた。
お願いだから無意識に胸を寄せるのはヤメロ。
目のやり場がない。
「どこか行きたい所ある?」
「あー…スーパー行かなきゃ。冷蔵庫になーんも入ってないから。
あとGEOでDVDでもレンタルする?」
と、全く欲のない返事。
とりあえず家でゆっくりしたいんだろう。
「あ、DVD見たいならむしろ買いたいDVDが」
「ナニ?」
「マイコー」
「いいよ。あーでも売り切れてナイといいね」
「確かに」
「朝イチで行こっか」
348 :
給料日の後はヱビスで:2010/01/29(金) 03:54:03 ID:zpEIMkmy
「じゃあ買い物行って、フードコートでたこ焼きでも買って帰るか」
「ソレいいねー」
あ、でもフライドポテトも食べたいしうどん食べたいなー
じゃあ昼ごはんはフードコートってことで…
なんて、夕飯を食べつつ明日何を食べるかで盛り上がっている自分達はちょっとバカだと思う。
夕飯もあらかた片付くと、メイはバスタイム。
自分は洗い物担当。(食事を作ってもらっているのだから当然だ。)
しかしながら一緒にお風呂☆とかちょっと憧れる。
そもそも風呂は湯船に毛は浮くし濡れた毛を乾かないし面倒な作業なのだが。
以前一緒に入った時は体を洗うスポンジにされた。
もっこもこに泡だった俺に吸い付いてきて、メイを包み込む様に洗って…
スポンジもなかなかイイ思いしてるんだな…
ガチャリと浴室のドアが空く音がした。平常心、平常心…
「お風呂ありがとう。次どうぞ」
と化粧水をつけながら言う。
上気した頬とか少し湿った髪とか
格好はジャージでも、そんな姿に尻尾が揺れそうになる。
平静を装いながら
「今日はパス。昨日入ったし」
「そっか。じゃあ耳掻きは?」
「…ソレハオネガイシマス」
あぁ、尻尾が大きく揺れる。
「了解。待ってて〜」
349 :
給料日の後はヱビスで:2010/01/29(金) 03:55:06 ID:zpEIMkmy
耳に棒を入れるなんて狂気の沙汰じゃない!!と思っていた自分が、ベビーオイルを垂らした綿棒に病み付きになるとは思っていなかった。
最初は「アォンッ」とか声出たしね。
いやーあれは後で散々からかわれた。
「今からやるから頭動かさないでね」
メイの膝枕、床に寝転がってTVを見ながら耳掻きが始まる。
でも実際はTVの音さえも入ってこない。
意識は自分の耳とメイの腿の感触、湯上がりの石鹸の香りだけ。
弾力のある枕、規則正しいリズムで床を叩く尻尾
あ…鼓膜近くのソコの部分は…っ
「…ヮフッ」
「あ、ここ気持ちよかった?もうすぐで片耳終るからねー」「…ゥふ」
「はいはい。じゃあもう片耳ね」
「わフ」
メイの方に顔を向ける。
「TV見えなくなるよ?」
「音さえ聞こえればいいし」
嘘です。
TVなんて全然入ってこない。
腿が
自分を見下ろす目が
耳を蹂躙する棒が
薫りが
体の中の血を熱くさせる。
「ハイ、終わりー」「……メイ…」
「ん、ナニ?」
「膝枕だけで濡れた?」
350 :
給料日の後はヱビスで:2010/01/29(金) 03:59:24 ID:zpEIMkmy
「っ!何言って…っ」
顔が瞬時に真っ赤に染まる。
「いや、イヌの嗅覚ナメたらいかんよ」
石鹸の中に混じる蜜の匂い。
「耳掻きしただけでシたくなったんだ?」
この鼻が、気づかないわけないでしょうに。
ま、俺は耳掻きされる前からする気だったけどね。
上体を起こしつるんとした耳を一舐め。
「ひァっ……んむッ」
直ぐに正面に回り込んでキスをする。
メイの頭ごとくわえられそうな大きな口にある、獣らしい鋭い歯で肌に傷をつけないよう
そっと、…いや理性が飛んでしまって貪るように口内をねぶる。
自分の爪程もない小さな歯を舌でなぞり
おずおずと自分の口内に入り込んできたものを絡めとる。
メイの口からは銀糸が落ち、服の色を濃くしている。
「ん…ぅんッっ」
長い舌を上顎の奥まで挿し入れると、流石に眉が寄り、目が固く瞑る。
毛玉に向かって非力な腕が何度か振り下ろされた。
「…はぁっ……しゅーくっ、はっ…苦し…ッ」
お嬢さん、そんな潤んだ瞳で抗議されても
世の男共を煽るだけなんですよ。
…あぁ、床じゃあヒトには痛いかもなぁ。
メイの抗議には一切答えず、大きな白い獣は軽々と女を抱き上げベッドへと向かったのだった。
351 :
給料日の後はヱビスで:2010/01/29(金) 04:00:41 ID:zpEIMkmy
とすんっ
とメイを座らせ、一気に服を脱がせにかかった。
服の端を爪で器用に引っかければ、まるで魔法の様に裸に変身する。
自身の服も脱ぎ捨て、メイを見つめるその瞳はまるで捕食者のようだ。
「しゅーくん…早くぅ」
被食者は食べられることを望み
捕食者が動く。
蜜の溢れる泉を舐め上げ、臀部を通り頂にまで達する。
爪でピンと弾き肉球で捏ね回し
そのまま抱き寄せる。
体を包む柔らかな毛によって肌をくすぐられるのは、メイにとって緩やかに続く地獄の快楽だ。
そうしてみっしりと毛の生えた腕に体中を撫でられ、耳から口から胸からいたぶられ
ようやくベッドに横にしてもらえた時には息も絶え絶えになっていた。
「しゅーくっ、もぉ…っ…ムり…」
「…しゅーくんじゃなくって?」
「シューラぁっッ」
「いやぁ、俺まだ楽しんでナイし」
それからは早かった。
一気に秘所を舐め自身を突き立てる。
「あぁぁアっ」
と下にいるメイの身体が跳ねた。
お構いなしに突き上げ
爆ぜる。
メイから発せられた
「ぉくっ…!ッやぁっ膨らッ……っシューラあっ……」
と抗議と嬌声の入り混じった言葉は耳に届いていなかった。
352 :
給料日の後はヱビスで(終):2010/01/29(金) 04:04:48 ID:zpEIMkmy
あぁ、またやってしまった。
そう「しゅーくん」ことシューラが気づいたのは、メイが気絶してしばらく経った後のこと。
自分の衝動を抑えきれず、欲望のままに動いてしまって後悔する。
眠りについたメイを見つめ、嘆き、謝ったのは何度目か。
明日、お詫びにハーゲンダッツでも買おうか。
それで許されるとは思わないけど。
どうしたら喜んでくれるんだろう。
…とりあえず、明日朝イチは無理だなぁ…
DVD売り切れてないといいけど。
と、隣に眠る人の髪を撫でながらぼんやりと見つめているのだった。
353 :
給料日の後はヱビスで(中の人):2010/01/29(金) 04:12:59 ID:zpEIMkmy
もしもしで作ったので改行も日本語も変ですね…
の割に長くて申し訳ありません。
投下したら後悔ばっかりー!
お粗末様でした。
モフモフいいねえ
すばらしい
GJ!
起きたら二人で甘々ケンカですね
妙に時事ネタ満載の会話にわろた。ボルゾイさんをもふもふできる彼女が羨ましい
>>353 GJ
これはよいもふもふ
久しぶりにモンスターファーム2起動したら忠誠度MAXのゲルが出迎えてくれた。
さらに工房に行ったら氷漬けのゴーレム、ジョーカーにドラゴン、ヒノトリまで。
コルトや♀プレイヤーとモンスターの絡みをいつも想像しちまうぜ…
ボルゾイGJ!
>>357 ハムは良いもふもふ。
そしていつになったらまたワームを出してくれるのかと。
ここって版権もいいんだろうか。
昔好きだったけど今旬じゃないジャンルや、異種和姦なんてマイナーすぎて本スレ投下出来ないやつとか。
多分後者は誘導すればいいだろうけど。
>>227の言ってるドウコクと太夫、終わり方も良かったな。
ドウコクの命がけの行動に絆されて、昔の男への未練を手放し、
本当の外道に堕ちてドウコクの傍にいようと決めた薄皮太夫。
未練を手放すことで三途の川を溢れさせてドウコクを復活させ、
ただドウコクのためだけを思って三味線を弾く。
しかし外道衆としての性から「人間の哀しみ、絶望」という太夫の未練に惹かれていたドウコクにとって、
自分の為だけに弾かれた三味線の音色は、もう昔のように心に響かない…
「これが本当の三味だよ…」と教える太夫が切ない。
相手を求めた瞬間に、相手の求めている自分ではなくなってしまったジレンマ。
それが種族の超えられない性質に基づいているのが凄く萌える。
それでもお互いにその結果を後悔せずに、
理解しあえないことを静かに受け入れて一緒になったのが美しすぎる。
>>359 ジャンル明記があれば大丈夫じゃないか?
心配ならスレのないジャンルのSSを書くスレもあったはず
>>360 そりゃあもう愛の言葉を囁きながら角オナの要領で…
だけどベルリンの壁にそんな真似をすることが可能なのかは謎だから
案外MFのモノリスのように壁から顔が浮き出たり触手が出て来るのかもしれない
人間♂×ケモノ♀の場合ここと獣人スレどっちにするべきかな?
てす
367 :
名無しさん@ピンキー:2010/02/06(土) 12:05:06 ID:cfU4Pppx
余命いくばくもない女の子と、彼女を連れていかなくてはならなくなった死神の話が書きたい
オカルト人外×少女イイヨーイイヨー
ポニョのご両親に不覚にも萌えた
デカ女かと思えば人間サイズになれるし
しかし精神的には夫のほうが人外らしいという
今週のジャンプの読み切りに不覚にもはまってしまった
このスレって版権モノの人外SS投下はおk?
その版権のスレも無いし、ここが駄目ならどこか適当なスレに投下するつもりだけど
>>370 おおよそ同意ハコかわいい。しかし惜しい。耳尻尾だけではなくケモノだったら最高だったんだが…。
この人赤マルの読み切り「タビネコ」では主人公はしっかりケモノな猫だったんだぜ。
獣人はやっぱりうけないんだよなぁorz
>>371 人外と人間ならなんでもおkどんとこい
ただあんまりマイナー作品なら容姿くらいはわかるようにしてくれると助かる
版権なー
スレがあればそっちに投下した方が良いとは思う
スレ無ければ版権て明記した上で投下するなら良いのでは
牧場物語ミネなかForガールって河童と結婚出来るのか……子供生まれるのかな
異形頭はどうなの?映画泥棒の話とかやりたい。視姦で。
映画泥棒が子役の幼女に懐かれて、押し倒された揚句にレンズをじーっとガン見されてあたふたしちゃうという妄想なら
上映前にいつもそんなことばかり考えて映画の内容に身が入らなくなる。
・・・映画泥棒め。
ポルノ女優×映画泥棒ですね。わかりますわかります
>>375-377 映画泥棒が喋れないため、証拠の映像を吐かすために(性的な意味で)尋問する婦警なら想像したことある
>>367 そして今更ながら禿げしく同意
オカルト人外イイヨー
>>374 ちゃんと子供も産まれるぞ。何の変哲もない人間の子だけどな
ただ河童との結婚は条件が異常に厳しい上に恋愛要素や萌えはほとんど無い
と言っても過言ではないからあまりオススメできない
ヒロインがすごく不遇な人外♂×人間♀を書きたいんだが…
やっぱ和姦じゃないとダメ?
最終的に幸せなら四肢切断されようがおk
また規制とかうんちゃらかんちゃら来てるみたいだな…
なんだと
キセイか……
サクジョニンという鬼畜が飼っているという見えない人外さんですね
ウワーッ
うんちゃらかんちゃらが来たぞー!
逃げろーーッッ!
ポケモンが楽しすぎて生きているのが辛い
最近は主人公を女の子にしてゴツくてデカいモンスターばっかり後ろに侍らせてる
ミュウツーとアイツー
エンテイとミー
アーロンとルカリオ
ダークライとアリス
ジャスティス!
エンテイはロリコン
異論は認めない
あ、そうですか
バクのちんこってめちゃくちゃデカいらしいな。
夢で犯される少女ハァハァ
>>392 怖い夢を見ている女の子の悪夢を食べるバク。しかしあと一口で食べきるという処で女の子が目を覚ましてしまう。
バクは相手が眠っていないと夢を食べられないので、女の子を寝かせようとするが余程夢が怖かったのか眠ろうとしない。しまいには泣きじゃくってしまう。
宥めている内にムラムラきてしまったバクは…
ここまで妄想した
>>393 続きをkwskお願いしたい。
小学生の頃DBの人外敵キャラにときめいていたのを思い出した。
素質はあったわけか…
セルはエロいよね
あたし男だけどフリーザ様の部下になりたい
いやジャネンバ一択だろ
クウラ様のしっぽにしがみ付きたい
シンバル食べたい
なんだこの流れ
話が飛ぶが、日本昔話の蜘蛛女に萌えた
昔話は人外×人の宝庫だな
昔話の妖怪は若い美女の生け贄を要求するよな
そして必ず尻に敷かれるよね
ヘタレ妖怪×しっかり者村娘ですね、解ります。
村長者のツンデレ娘×でっかい身体の純情人外も有りかと
鬼とか山犬とか。
瘤とりじいさんの孫娘に差し替えるとやばい。
いじわるな隣のじいさんの孫娘が乱交フラグ、とか
妖怪とかの話聞くと女神転生3やりたくなる
もし主人公が女の子だったらおいしいイベントばっかりだったのに
スペクターや魔人にストーカーされたり
マントラ軍に拉致られたり…
ネタは思い浮かぶのにSSにするとなるとできない
それが産みの苦しみです
え?愛する人外の子供を産むため苦しむ人間嫁がどうしたって?
狸娘を虐待して殺す兎娘(かちかち山)はヤンデレですかね?
>>410 兎が狸への愛ゆえに歪んでいったのならヤンデレ、元々歪んだ嗜好の持ち主なら違う
愛しいじい様(妻帯者)との道ならぬ恋ゆえに狸娘をそそのかし、ばあ様殺害させ、敵討ちと言いながら狸娘を口封じで殺害。
兎娘マジヤンデレ、と考えた俺が病んでるのか?
エロなしっておk?
>>412 それヤンデレじゃないよ
ヤンデレと泥沼は違う
とりあえず流血沙汰=ヤンデレだと思ってんの?
>>412 個人的には爺さまを好き過ぎて婆さまも通りすがりの狸娘も殺してこそヤンデレ兎娘といえると思うのだが
あれ?もっと物騒な展開になっただ
417 :
保管庫:2010/03/09(火) 04:27:59 ID:pjd6lXeQ
遅ればせながら、現行スレの
>>134様の作品まで保管しました。
それと中長編やシリーズ物をまとめたページがあれば便利かと思ったので、作っておきました。
おつかれさまです。鳥っ娘をモフモフする権利をやろう。
めでてえWWWWW
VIPRPGツクールの魔王の取り巻き羨ましい……
流れトン切って悪いが……おすすめの漫画見つけたので……
…此処の住人にとっては今更かもしれないが、昨日「ぼくらの」を買いにいこうとして結局その隣にあった同作者の「始まりと終わりのマイルス」を表紙買いしてしまったんだが………見事なまでにストライクだった…!!!
浮遊大陸に、ドスケベ破壊神(元戦艦の自称疫病神)×人(少女)だ…と……( Д)゚゚
今の所トラウマになりそうなシーンはなさそうなのでそのままの雰囲気が続いてくれればいいけど………
あれなー、サブの二人も可愛いぞ。
早く勝負ぱんつ見せてセックスすればいいのに。
なんか種族差で悩んでるシリアスも好きだけど、そんなの丸投げして普通にセックスとかデートとかの単語が出る世界観も好き。
>>420ー421
ちょっとBOOK・OFF行ってくる
マイルスは敵同士だったけど、仲良くなっちゃう組み合わせが萌える
ツンデレの子と戦闘機が一線越えるのも楽しみだ
お、いいねえ。ここの紳士のオススメなら明日また本屋行ってくるわ。
お礼代わりに俺もオススメ置いてきますね。
「ぎんぎつね」
神社の神様の使いだが、やる気なし口悪しで図体と態度はでかいモフ狐獣人と、そこの神社の跡取り娘(彼女しか狐が見えない)である女子高生のほのぼの漫画。
口喧嘩したり家出したり手繋いだり口喧嘩したり「でーと」したり鼻摘んだりとニヤニヤが止まらない。
ぎんぎつねはジャンプのバトルの呪いをどこまで回避出来るかがミソだな。
某イラストサイトで結構ファンアートが見られるのもいい
ええい
爬虫類系好きな奴はいないのか
ここにいるぞ!
とりあえずヤバげな魔界的な所に棲んでる様々な異種族は雄しか生まれないという
超偏った出産率を誇っているが、卓抜した成果を上げたものは
お上から「人間の女を娶ってもよし」という許しを得、疑似胎生装置ではなく
自分の血を引く子を直接産ませることができる。
なにより女、可愛い女の子とチュッチュしたいよお!!なむくつけき野郎の欲求を
やあらかい生身の肉体で解消することができる垂涎の恩恵。
そんな一握りの栄光を浴することができた黒鱗の武骨な軍人は
おずおずと人間界からよさげな若い娘っ子を引っさらって
やがて愛を育んでチュッチュしてるよ。俺の脳内で。
>>428 触手悪魔「そんなに人間界に遊びにいってると、魔法少女とか退魔師に目を付けられるぞ・・・おや? こんな時間に誰かきたようだ。」
触手さんにげてぇぇぇぇぇ!
黒鱗のダンナはそのまま元魔法少女の使い魔兼夫になってラブラブになっちゃえばいいとおもうの
>>426 裏なんとかさんの半3D格ゲーか…女性キャラが増えてるなぁ。
クオリティ高いから試しに置いたらウケて製品版になったんだったか
……あれ、ここケモスレ?
イチャラブはやっぱり萌えますなぁ
週サンの金剛番長完結したな
個人的にマシン番長(見た目美青年・中身は冷血サイボーグ)とヒロインの妹があの作品の最大のツボだった
機械同然に無感情な人外が幼女との交流で感情に目覚めるとかもうね…!
ガッシュも犬夜叉もそうだがサンデーは全体的に人外男×人間女カプが多い気がする
わかる。わかるよ。
あのカップルは実にツボだった
マシン番長復活回が個人的に最高潮だったぜ
>>428 人外が子種を残そうとする展開は非常にいいよね
DEMENTOというゲームがあるんだが
それに出てくるキャラの一人が人造人間で老化が早い(実質20歳だけど見た目はおっさん)
で、主人公の女の子を孕ませようと付け狙うんだよ
実際BADENDだと主人公は妊娠して気が狂う
>>435 うは・・すんごい設定Σ
「ゴッドディーバ」ってフランスのSF映画で、
死刑宣告を受けたエジプトの神ホルス(顔がワシで体は人間)
が人間に乗り移って子供残すためにヒロインを追い回すのあったな。
全部見てないから今度借りようかなとスレ読んでて思ってしまった。
これ神話かな?スレチだったらゴメン
デメントはおっぱい。
少なくはない貯えが瞬く間に目減りした。
「ええ、何せどれもこれも特別誂えなもんで」
先日家移りしたばかりの庭付き一軒家の官舎。その内と外を慌ただしく何度も
往復する獣人らの雇い主はごくあっさりと言ってのけた。
「なにせ人間の女の数が少のうございましょう。一つ一つ
材料から吟味して、専用の木工に作らせますとどうしても値が張りますので」
エギンが茫然とした目で次々と運び込まれる道具をただ
右から左へと眺める中、家具商人は如才なく続ける。
「ですが竜鱗族のお方はこの通り嫁入り道具を一式揃えるだけでまだ
よろしゅうございますよ。水妖属ともなりますと、まず娶った
人間を水中での生活が可能になるよう肺袋の手術を執り行うとか。
嫁取りも大変でございますねえ」
全く同感だ。危なく呟きそうになった言葉を幾列もの鋭い歯で辛うじて噛み殺す。
嫁取り。せねばならないのである。
何せ上意だ。生粋の軍人であるエギンには否と言えるはずもなかった。
先日の腐星砦の攻防の折、寄せ手の大狼族を大槍で50人討ち取った戦果を讃えられ、
嫁取りの認可が下りた。
同期の友人からはやっかみ交りの祝福のげんこつをもらい、部下からは流石は
隊長殿、自分たちの励みになります!などと挙手の礼付きで言われたが、
当の本人はいたって困惑している。
酒も薬もやらなかった。蟲賭博に熱を上げることもなかった。
出されるものは文句を言わず何でも食べ、読書といえば職業柄、
軍記か戦術に関するものがほとんどで、
これといった趣味もない。だから
給金もやたら貯まった。
…いるのか?嫁。
(なんて言えない)
つまり彼は遊びを知らない堅物だった。
その夜、運び込まれた人間用のベッドとやらに試しにそっとエギンは横たわってみた。
岩盤板とはずいぶん違う。ふかふかする。安定感がない。
何かに似ている…これは、そうだ。5年前に敵陣で砂蟲の流砂に飲み込まれた時のようだ。
結局エギンは床の上で寝た。
明日はいよいよ人間界である。
脳内チュッチュ前章をこれだけ書くのに時間かかった、職人凄いな。
>>437 おおおおお!!
すげー萌えた!なんかはち切れそうなんだが
続きが見たい……!
サンデーは確かに見た目はともかく人外ネタが多い。
あと群像劇が多いからカップルっぽいネタもフラグもたくさんあるし。
あとコロコロとかボンボンかな。
4コマ雑誌も結構豊富だよ。
ロボ夫と童顔妻とか。
>>437 かなり良い!
純粋そうなエギンがツボだ!
ぜひ続きを!
>>437 人外の紳士っぷりがイイ!
ちゃんと女の子の事も考えてるのな
どんな娘を嫁にするんだ?
トカゲ軍人とその嫁さんに期待しつつ投下。
人外アパートで、昆虫人間と成人女性の和姦です。シオカラとほづみの話。
NGは啓蟄で。
季節は移ろいつつある。
一気に暖かくなり、寒さがぶり返し、を繰り返していくうちに気候が安定し、強張った冬の空気に身を縮めていた草花が
息吹を取り戻していく。春一番が吹き抜けると、二番、三番、と続き、南風によって撒き散らされる花粉と埃には辟易するが、
水と土の温む匂いも同時に運ばれてくる。道端に咲く菜の花や、堅いつぼみを膨らませかけている桜の木を見ると、訳もなく
心が弾んでくる。そして、気温の上昇に伴って体液の温度も上がり、循環も良くなり、触角や外骨格を舐める刺激も増え、
凍えていた地中から這い出せと言わんばかりに脳が活性化し、余計なものも活性化してくる。
「あー…」
体液の過度な循環によって脳が茹だった気分になり、人型オニヤンマの青年、鬼塚ヤンマは頭を抱えて呻いた。
「ほづみん襲いてぇ」
ヤンマの隣でヤンキー座りをする人型シオカラトンボの少年、水沢シオカラは呆れるほど実直に欲望を吐き出した。
「言うな、情けなくなる」
ヤンマが黒く鋭い爪の生えた上右足でエメラルドグリーンの複眼を覆うと、シオカラはびいいんと羽を震わせた。
「でも、兄貴もそうじゃないっすか。だーからアパートに居づらくなって、俺っちと逃避行なんつーマジダッセェことを」
「それも言うな。もっと情けなくなる」
ヤンマは短い触角をぐにゃりと下げ、複眼を伏せた。二人が座っている場所は、どこともつかない山中に張り巡らされた
鉄塔だった。周囲には芽吹き始めた木々が生い茂っていて、都市部にアレルゲンを撒き散らす元凶である植林された杉が
風を受けるたびに雄しべから無数の花粉を飛ばしていた。
昔々に天文学の粋を集めて作られた単位、暦は感嘆するほど正しい。だから、啓蟄も正しすぎだ。三月に入ったばかりの頃は
なんともなかったのだが、啓蟄を過ぎた途端に気候に応じて色々なものが活性化し、冬の間はそれなりに大人しくなっていた
性欲やら何やらに歯止めが利かなくなってきた。体が気候に慣れてしまえば、体液もホルモンも落ち着いてきてそちらの方も
落ち着くのだが、春になりかけた頃はそうもいかない。そんな時に限って茜は高校の春休みに入り、アルバイトと友達付き合いと
買い物以外はアパートもえぎのの自室に入り浸り、ここぞとばかりにヤンマに甘えてくる。それが我慢出来るわけがない。
「基本的に絶倫っすからねー、俺っち達みたいなのって」
シオカラが欲望が突き抜けすぎて不自然なほど冷静な口調で言うと、ヤンマはぎちぎちと顎を擦った。
「下手に出ない分、終わりってものがねぇしなぁー…」
「ほづみん喰いたい」
「俺だって茜を喰いたい。そりゃあもうどこまでも喰いたい」
「でも、やりすぎたら怒られちまうっす。かなり嫌われるっす、それマジヤベェっす、マジ切ないっす」
「それなんだよ。かといって、他で発散するわけにもいかねぇしなぁ」
「最終手段は木の股とかっすかね。でなきゃなんすか、そこら辺に穴でも掘ってズッポズッポと」
「それはどこの世界の拷問だ」
「サーセン」
「俺、自己嫌悪で死ねそうだ」
ヤンマは上両足をだらりと下げ、長い腹部を丸めた。シオカラは藍色の複眼に春の空を映していたが、がっくりと項垂れた。
性欲自体はある程度は備えておくべきで、悪いものではないのだが、限度がある。これが単なる昆虫なら問題はないのだが、
人型に進化して文明と知性に染まった昆虫人間だから、大いに問題なのだ。人間でないにせよ、世間一般では人間と
ほぼ同等に扱われている以上は節度を守らなければ暮らしていけない。それは、二人の恋人である人間の女性に対しても
同じことが言えるわけで、本能に任せて襲い狂ったら、それはもうひどい結末が。
恋人が好きすぎるのも、時には困り者だ。
何がいけなかったのだろう。
稲田ほづみは仕事用の髪型に整えた自分を睨み付けながら、化粧を施していた。気が逸れているものだから、普段よりも
雑になりがちだった。それもこれも、近頃、シオカラと会っていないからだ。ケンカをした覚えもなければ、彼の機嫌を損ねる
ような言動を取った覚えは今のところはない。性格が違いすぎるので噛み合わなかったことは多いが、仲違いをするほど
ではなかったはずだ。バレンタインデーだって、かなり苦労した上に物凄く恥ずかしかったが、アビゲイルに教えてもらって
手作りチョコを渡した。ホワイトデーには、シオカラがバイト代を工面して、ほづみが欲しいと思っていた香水を買ってくれた。
もちろん嬉しかったし、恐ろしく照れ臭かったが御礼も言ったつもりだ。それなのに、シオカラは電話はおろかメールすら
寄越さなくなってしまった。シオカラと交際する以前の経験を踏まえても、良くない兆候だ。こうなってしまったら、大抵は
もう他の女がいる。或いは、ほづみから興味を失っている。そう思ってしまったら、化粧をしたばかりなのに泣きたくなった。
「なんて女々しい」
ほづみは自分自身に毒突いてから、ストッキングを履いた太股を叩いた。
「好きだ好きだって言ってくるのはシオの方じゃない」
畳の六畳間には馴染まない洒落たデザインのドレッサーの前から立ち上がったほづみは、タイトスカートを整えた。
「それなのに、なんでこんなことするのよ。訳解らない」
出勤用のバッグを肩に掛けたほづみは、悪態を吐きながら窓の鍵を閉めてカーテンを閉ざした。
「私の気を引きたいっての?」
だが、シオカラは駆け引きをするタイプではない。シオカラはほづみに心酔しているし、ほづみもシオカラに浸り切っている。
年下だから、というのもあるのだが、いちいち危なっかしくて放っておけないのだ。そのくせ、ほづみを甘えさせてくれるような
余裕もあり、兄貴分のヤンマの影響なのだろうが筋の通った男らしい面もある。それらを思い出してしまうと、ほづみはカーテンを
握り締めて赤面し、内心で悶えた。会いたくて会いたくてたまらなくなってしまったからだ。
思い出してみれば、ホワイトデーに会った時もシオカラは素っ気なかった。バレンタインデーの時はその場でほづみを
抱き締めて空に飛び出しそうなほど喜んでくれたのに、落差が激しすぎる。三月に入ったことで、進級試験や何やらで
忙しいのだろうと自分に言い聞かせたが、その時から不自然だった。もしかしたら、シオカラはほづみと別れるつもりでは。
今まで付き合ってきた男に別れを告げられた時は、ひたすら腹立たしいだけだったが、シオカラが相手となると別だった。
目眩がするほど、寂しくなった。
気もそぞろだったせいで、仕事に身が入らなかった。
おかげで、普段なら絶対にしないような凡ミスを繰り返してしまった。人間関係にうんざりして前の会社を辞め、以前から
興味のあった業界の会社に再就職し、ようやく仕事にも慣れてきたのに、この体たらくでは。情けないほど、シオカラに依存
している。恋愛に不慣れな中高生でもあるまいに、とほづみは自嘲するが、帰宅する電車の中でも意味もなく携帯電話を
開いてはメールが届いていないかを確かめた。だが、やはり、シオカラからのメールは届いていなかった。フリップを閉じて
バッグに突っ込んでから、ほづみは歩調を速めた。こうなったら、夕飯の材料と一緒に酒でも買って気を紛らわすしかない。
「……あ」
人間と人外が入り乱れている駅前商店街の雑踏の先に、忘れもしない水色の外骨格の主が立っていた。彼もほづみに
気付いたようだったが、藍色の複眼はすぐに逸らされた。ほづみは嬉しいやら腹が立つやらやるせないやらで、雑踏を
掻き分けてヒールを鳴らしながら大股に歩き、シオカラに追い付いた。
「ちょっとあんた!」
「うおっ!」
ほづみに上左足を引っ張られ、シオカラはよろけた。
「何するんすか、もう」
「それは私が言うべき言葉よ、とにかく来てもらうわよ!」
ほづみはシオカラを強く引っ張り、ヒールを折らんばかりの強さでアスファルトを踏み締めながら突き進んだ。背後の
シオカラは抵抗らしき言葉を漏らすものの、ほづみの手を振り払おうとしなかった。その態度の曖昧さが、訳もなく苛立ちを
煽ってきて、ほづみは唇を噛んだ。言いたいことが次から次へと出てくるのだが、いざ口から出したら恨み言になりそうな
気がしたので懸命に堪えた。とにかく今はアパートに帰り、自室に戻り、その上でシオカラを問い詰めてやる。
寄り道もせずに真っ直ぐ帰路を辿ったほづみは、アパートもえぎのの自室にシオカラを放り込み、ドアを閉めて施錠し、
退路を塞ぐために立ちはだかった。重たい荷物が詰まったバッグを靴箱に置いてからシオカラに向き直り、藍色の複眼を
見据えたはいいが、言いたいことが喉の奥で詰まってしまった。怒りたいのも山々だったのだが、それ以上に会えたことが
嬉しくて感極まってしまった。ほづみはシオカラに飛び掛かるように抱き付き、固く閉ざされた顎に思い切り唇を押し付けた。
「…香水」
胸郭を震わせて発声したシオカラは、短い触角を上げ下げし、ほづみの首筋から立ち上る匂いの粒子を絡め取った。
「そうよ、あんたが買ってくれたやつよ」
ようやく唇を離したほづみが照れ臭くなって目を逸らすと、シオカラはいきなりほづみを抱き竦めた。勢い余ってドアにぶつかり、
安普請の薄い壁までもが揺れた気がした。一回りも年下ではあるが昆虫人間故に大柄なシオカラの胸にすっぽりと収められ、
ほづみは年甲斐もなくどきどきした。シオカラは上中両足でほづみを押さえ付けると、派手に口紅が塗り付けられた顎を開いて
細長い舌を伸ばしてきたので、ほづみも口を開いた。冷ややかな舌がほづみの舌に絡められていたが、引き抜かれて首筋を
這い回った。香水を落とした箇所を探しているかのようだったが、そのまま舌先はブラウスの襟元に滑り込み、カーラーと肌の
隙間をぬるりと動いて、早足で歩いたせいで少しばかり滲んだ汗も舐め取られた。
「ふ…うぁっ」
それだけのことなのに、ほづみは身震いした。興奮していたせいだろうか、触られた部分が少ないのにやたらと感じてしまう。
シオカラはほづみを抱き寄せてドアから離すと身を反転し、狭い廊下にほづみを押し付けた。スーツが埃で汚れる、とほづみは
頭の隅で考えたが、それを口に出来る余裕はなかった。シオカラの頭を抱えて向き直り、乾いた唇を一度舐めてから、夜明けの
空に似た藍色の複眼を見つめた。光沢のある表面には、僅かな愛撫ですっかり頬を上気させた化粧の乱れた女が映っていた。
「ひゃっ」
前触れもなくタイトスカートの中に差し込まれた腹部に気付き、ほづみは息を飲んだ。尻尾のように長く、器用に折れ曲がる
腹部の先がほづみの股間に触れ、既に露出している生殖器が抉ってきた。ストッキングとショーツ越しとはいえ、刺激は充分
すぎるほどだった。シオカラの頭を抱えたまま、ほづみは息を荒げ始めた。
「ね、ねぇ、もういいでしょ? 上がってからの方がやりやすいってぇ、あぅっ!」
外骨格で出来た硬い生殖器の先端でクロッチに染みるほど濡れた陰部をなぞられ、ほづみは声を上擦らせた。
「よくないっすよ、なんにもよくないっす」
シオカラは脱力したほづみを俯せにさせると、タイトスカートの裾をずり上げて丸い尻を露わにさせた。
「いや、恥ずかしいぃ…」
ほづみはパンプスが脱げかけた足を閉ざそうとするが、シオカラの下右足がすかさず阻んできた。それらしい雰囲気になり、
それらしい流れであれば羞恥心など感じないのだが、ここは玄関だ。扉一枚隔てれば外界で、住宅街なのでそれなりに人通り
もある。増して、安普請なのだ。下手に声など上げようものなら。頬が押し当てられた廊下の板が冷たかったが、体は隅々まで
熱していた。羞恥心と戦う一方で、早く事を収めなくては、とも思っていた。ほづみはストッキングとショーツに手を掛けると、
太股の付け根まで下げたが、陰部に貼り付いていた布が剥がれていく際に小さな水音が聞こえ、ますます恥ずかしくなった。
ダークグレーの透けた薄布とそれよりも濃い黒のレース地のショーツが取り除かれると、丸く形の良い尻とその中心で熱く濡れて
いる陰部が冬の冷たさを残す外気に触れた。ほづみは精一杯の意地を張り、ストッキングから手を離した。
「するなら、早くしなさいよ」
間を置かずして太い針に似た生殖器が突き立てられ、ほづみの内に責め入ってきた。
「あ、あぁっ、あうん!」
一息に奥まで至り、ほづみはぞくぞくした。シオカラはほづみを後ろから抱き締めると、言葉もなく律動を始めた。その冷淡さも
またシオカラらしくなかったが、充足感が疑念を誤魔化した。上両足でジャケットをはだけられ、ブラウスの上から乳房を握り締められ、
中両足に腰を支えられていたが、ほづみの足は玄関に出たままだった。パンプスだって脱いでいないし、バッグも下駄箱の上に
置いたままだ。それなのに、こんなにも荒々しく貫かれている。ほづみは訳もなく背徳感に駆られたが、今となっては劣情を煽る
材料にしかならなかった。
「もう、もうダメぇっ、イッちゃいそぉっ!」
上り詰めてきた快感にほづみが切なく喘ぐと、シオカラは上中両足でほづみをきつく抱いた。
「そんなにいいんすか?」
「だ、だってぇ、どんだけ寂しかったと思ってんのよぉ」
快感に煽られるあまりに自制心も緩んだほづみは、涙混じりに本心を吐露した。
「バレンタインの時にはあんなに喜んでくれたのに、ホワイトデーになったら素っ気ないし、メールもちっとも返してくれないし、
電話もしてくれないし、会いに来ないし…。私、何か悪いことした? 怒らせるようなことした? ねえ?」
いつになく気弱なほづみは、振り返り、今にも泣き出しそうな顔でシオカラを見上げた。
「ぐわあ可愛いっ!」
シオカラは途端にテンションが上がり、生殖器の根本までほづみの奥に押し込んできた。
「くぁああっ!」
ほづみは一気に訪れた強い快感に震えると、シオカラはぼやきながらも責め続けた。
「なんすかもー、そんなん言われたらマジヤバいじゃないっすか、俺っちの頑張りとか全部無駄じゃないっすかー、あーもう」
「な、何言ってんのよぉ」
「もういいっす、我慢出来るわけねぇっす、こうなったらもう徹底的に!」
シオカラの鋭い一撃に、高ぶりに高ぶったほづみの体が跳ねた。背筋から手足の先まで走った甘い電流に、ほづみは
弛緩したが、それでも尚、シオカラは生殖器を抜こうとしなかった。律動が繰り返されるたびに、粘り気のあるほづみの体液が
シオカラの生殖器を伝ってストッキングや床に散らばった。シオカラの宣言通り、それからほづみはかなり時間を掛けて
蹂躙された。体位を変えることはあったが、場所だけは変わらず、最初から最後まで狭苦しく埃っぽい玄関で事が行われた。
お互い、夢中になりすぎたからだ。
腰だけでなく、腕や足もだるかった。
硬い床に俯せになったり、変な姿勢になったりしたからだろう。ほづみは濡れた髪を首に掛けたバスタオルで拭いながら、
夕食である宅配ピザを囓った。だが、受け取った場所は玄関ではなくアパートの前で、シャワーを浴びているほづみの代わりに
シオカラが受け取ってくれた。さすがに、あんなことをした直後の空間に他人を招き入れられるほど剛胆ではないからだ。
ビールでも飲みたい気分だったが、生憎冷蔵庫には缶チューハイしか入っていなかったので、ほづみはピザを食べながら
ライム味の薄い酒を流し込んだ。シオカラはといえば、テーブルの向かい側で黙々とピザを囓っていた。
「やりすぎたわね」
「そうっすね…」
冷静になると後悔が襲ってきたのか、シオカラは項垂れた。
「スーツはスペアがあるからいいけど、玄関がねぇ…」
一応消臭剤吹いておいたけど、と、ほづみは玄関を見やると、シオカラも複眼の端を向けた。
「せめて換気出来ればいいんすけど、時間も時間っすからねぇ…」
「で、なんだっけ? あんたが発情した原因は」
ピザの耳まで食べ終えたほづみが問うと、シオカラはトマトソースがべったり付いた顎を紙ナプキンで拭いながら答えた。
「春になったからっす」
「裸にコート羽織って下半身露出しに来る変態みたいなこと言うんじゃないわよ」
「でもマジなんすから、いやホント! マジリアルな話なんすから!」
「解りやすいと言えば解りやすいんだろうけど、短絡的すぎて逆に面白味がないわね」
「面白がられても困るんすけど」
「で、その春の陽気に誘われた変態じみた発情と、私に素っ気なくした理由には何か関係があるわけ?」
「言うまでもないと思うっすけど、いやホント。てか、変態からマジ離れてくれないっすか?」
「つまり、あんたは私に無闇に襲い掛からないために離れていたってこと?」
「そうっすそうっす」
「だったら、事前に説明しなさいよ。おかげでこっちは」
言いたくもないことを、とほづみが口の中で呟くと、シオカラは顎を開いてにやにやした。
「毎度毎度思うんすけど、ほづみんってヤられてないとデレられないんすか?」
「そういうわけじゃないわよ。ただ、タイミングってものがあって」
「だったら、俺っちが襲う前に言ってくれりゃ、俺っちとしてもやりようがあったんすけど。なのに、いきなりがばーって来られちゃ、
誰だってヤりたくなっちまうっすよ、マジでマジで」
「私だってそのつもりじゃなかったわよ、でも、なんかこう、堪えられなくなって」
ほづみは語気の弱まりを紛らわすために缶チューハイを傾けるが、シオカラはにやけたままだった。
「ああもう可愛いなぁー、そんなに俺っちが好きっすかー?」
「それはシオの方でしょうが、私は引き摺られてるみたいなもんよ!」
「可愛い可愛い可愛い!」
「うるさいうるさいうるさいっ! とにかく、もう黙れ!」
ほづみはシオカラに言い返してから、背を向けた。可愛いと言われれば言われるほどに嬉しいのだが、嬉しすぎるせいで
恥ずかしくてどうしようもなくなる。シオカラもそれを知っていて、可愛いと連呼してくる。居たたまれなくなったほづみは台所に
向かい、冷蔵庫を開けて二本目の缶チューハイを出して呷った。アルコールによる高揚で気恥ずかしさをいくらか打ち消してから、
ほづみはシオカラに振り返った。
「で、ヤンマ君の方はどうなってるわけ? あっちもシオと同じ状態なんでしょ? あれじゃ茜ちゃんの身が持たないわ」
「ああ、兄貴の方はっすね、変なところで真面目なもんだから律儀に山籠もっちゃってるっすよ。せっかくだからってことで、
その山の麓で出稼ぎもしてくるらしいっすけど」
「あんた達も苦労するわね」
「どれだけガタイが立派になったって、俺っち達はどこまでも虫っすからね」
シオカラがしみじみと頷いたので、ほづみは冷蔵庫に寄り掛かって足を組んだ。
「まあ、そればっかりはどうしようもないわよね」
「てぇことでほづみん、次回の玄関プレイは!」
シオカラが腰を浮かせたので、ほづみは一缶目である空き缶を投げ付けた。
「二度とあるかぁっ!」
軽快な音を立て、シオカラの頭頂部に空き缶が命中した。ほづみはバスタオルで生乾きの髪を掻き乱し、なんでこんなのが
好きなんだ、と思ってしまったが、好きなのだから仕方ない。シオカラは外界と扉一枚隔てただけの痴態に味を占めたらしく、
いかに今回の蛮行が良かったかを説いてきたが、ほづみはそれらを全て聞き流して酒に没頭した。そうでもしないと、気が
紛れなかったからだ。確かに気持ち良かったのだが、それはそれだ。玄関は所詮玄関であって、性欲を満たす場所ではない。
まかり間違ってアブノーマルな性癖に目覚めてしまったら、それこそ取り返しが付かなくなってしまうだろう。
己の過ちを春のせいにしては、春に対して失礼だ。
以上。玄関プレイは男のロマン。
一応、補足説明として。
けいちつ 【啓▼蟄】
二十四節気の一。太陽の黄経が三四五度になったときをいい、現行の太陽暦で三月六日頃。二月節気。
また、このころ冬ごもりをしていた虫が穴から出てくることをいう。[季]春。《—の土くれ躍り掃かれけり/吉岡禅寺洞》 goo辞書より
GJ!
人外の発情期は女の子は壊れちゃうと思うの
そんな人外についていけない自分にコンプレックス抱いて媚薬なり魔法の薬なりアレなアイテムで増強して逆に人外の方がへとへとになってもさらにおねだりする少女
まで妄想した
誰かこれ使って良いよ
使って下さい
>>859 啓蟄
GJ
神降臨ですね。
名前のセンスからキャラの設定からどうしたらそんな思いついて書けるのか・・・・
生理的に違いまくるのに人間味あふれてるところがもう。
昼間から萌えてしまった。ありがとう過ぎる。
ヤンマ×茜はどうなるんだろうな。真面目なヤンマ君が健気で泣けてくる。
昆虫人間はロボと獣人両方の魅力が備わってる気がするんだ。
↑あっと、うっかり番号の前なので>>をつけてしまった。すまない。
女同士カップル,主従を探してるんだけど、知ってる方いませんか?
>>449 シオカラもほづみも可愛い過ぎる!!
GJでした。
投下させていただきます。喋る木と女の子の話です。エロなし。
タイトルは「輪廻と松」です。
457 :
輪廻と松:2010/03/25(木) 23:36:59 ID:Dk88q7gm
季節は秋、天気は曇り。
ざざあん、ざざあん。
波音が一定のリズムで響く海岸に、クロマツが並んでいた。
涼しさを匂わせる砂浜には夏のような喧騒など欠片もなく、海から来る湿った潮風が、クロマツ達を微かに振るわせていた。
そこにある一人の少女がやってきた。近くの中学校の制服を着た少女はひととおりクロマツ達を見回すと、その中のある一本に近づいた。
この海岸沿いのクロマツ達の中でも一際立派な物だ。
そのマツの隣まで来ると、少女はおもむろに声を発した。
「今日は何してた?」
もちろん独り言では無い。だがこの砂浜には少女以外には誰もいない。
波の音が少し響いて、どこからともなく声がした。
「波の音を数えてたかなあ」
どっしりと響くような声。
「そっかあ。何回まで数えた?」
少女は特に不思議がる様子もなく続ける。
458 :
輪廻と松:2010/03/25(木) 23:38:57 ID:Dk88q7gm
「お前が来たからわからなくなった」
ややぶっきらぼうに声は答える。
「そっかあ。そりゃあお邪魔しました」
少女は悪びれる様子もなくそう言いながらクロマツの根元に腰掛け、幹にもたれた。
「今日は少し早いんだな」
「学校が早く終わったからね。今日は部活もないし」
「ふーん」
そう声がしたあと、クロマツの枝がざわざわと揺れた。まるで少女をくすぐったく思うように。
「ねえ、クロマツ」
「何」
「呼んでみただけ」
学校が終わったら、この海岸でクロマツと過ごす。
それが彼女の日常だった。
「全くお前もよく飽きないよなあ」
「何が」
「よくこう毎日来るよなって」
「毎日じゃないよ。週5回位だよ」
少女はクロマツの事が好きだった。ただ純粋に好きだった。
459 :
輪廻と松:2010/03/25(木) 23:41:03 ID:Dk88q7gm
自分の暇つぶしに付き合ってくれたりだとか、愚痴をぶちまけたい時には何も言わずに聞いてくれたりだとか、そういう所も好きだけど、それは本当の理由ではなかった。
ただ、守られてる気がしたのだ。
親と喧嘩して家出をした時、
先生に怒られた時、
好きだった男の子が他のクラスの女の子と付き合っていると知った時、
少女はこのクロマツのそばで泣いたものだった。
「友達が居ないんだな」
「そんな事ないよ」
「そうか」
「うん」
こんな会話を繰り返すだけで、心が安らいだ。
その太い幹に体を預けるだけで、不安がどこかに飛んでいった。
少女はクロマツの事が好きだった。
十年前の夏。
少女は両親と共にこの砂浜に遊びに来ていた。
初めて来た砂浜。青く光る海。何もかもが幼い少女には輝いて見えた。しかしはしゃぎすぎたのか、少女の視界はやがてぐらぐらと回り始め、ついにはその場に倒れ込んでしまった。
460 :
輪廻と松:2010/03/25(木) 23:43:36 ID:Dk88q7gm
朦朧とする意識の中、両親が名を呼ぶ声がする。
やがて父の腕に抱き起こされ、視界が移動する。
そして…ついた先にはあのクロマツがあった。
あやふやな意識の中、少女が“大きい木だな”とそう思った瞬間だった。
「あーあ何やってんだか」
突如、聞いたことのない声が少女に降り注いだ。
「なあんも被らんであんだけ走り回るから」
それも父や周りの人間といった‘横’ではなく、遥か‘上’から。
「へえ、今度はちょっと似てるな、“アイツ”に」
明らかに、目の前の木が、喋っていた。
「木が喋ってる…」
そう呟いて、少女は意識を失った。
「ねえクロマツ」
「今度はなんだ」
「どうしてお前だけ喋るんだろうね」
少女は足元の土を石でほじくり返している。
「喋るのおれだけか」
「お前だけだよ。他のクロマツは喋らないよ」
「そうか」
「うん」
461 :
輪廻と松:2010/03/25(木) 23:47:03 ID:Dk88q7gm
そう言って二人はしばらく黙った。幾度目かの波音の後、沈黙を破ったのはクロマツの方だった。
「おれも一個聞いていいか」
「何」
「そんならさ」
「うん」
「何でお前にだけおれの声が聞こえるんだ」
土をほじくり返す少女の手が止まった。
「…えー」
少女が困った顔で俯く。
「そんなの」
「うん」
「わかんない」
「じゃあおれもわからん」
「あっ何その答え方!ずるい!」
「ずるくない」
「ずるい!」
「ずるくない」
「ずーるーい!」
「ずるくないったらずるくない」
結局、どちらの答えも出なかった。少女は納得がいかないという顔で石を砂浜に放った。二人の間を、再び波音が包んだ。
462 :
輪廻と松:2010/03/25(木) 23:49:23 ID:Dk88q7gm
「そろそろ帰った方が良いんじゃないのか」
気がつくと、周りの景色が青に染まり始めていた。曇りの日には、夕焼けなどというロマンチックな時間はない。
「えー」
少女は渋って周りを見回す。
「まだ良いよ」
「そんな事言ってたらあっという間に真っ暗になるぞ」
クロマツがそう言った直後、少し離れたところにある電灯がチカチカと音を立てる。秋の太陽は、夏ほど待ってはくれない。
「ほら向こうの電灯も帰れって言ってるぞ」
少女は何も言わない。帰りたくないのだろうか。
「…ねえ」
「何だ」
少女は何かいいたげな表情でクロマツを見上げた。クロマツは少女の言葉の続きを待った。
「やっぱり何でもない」
「なんだそりゃ」
「忘れて」
少女はそう言うと立ち上がってスカートをはたいた。
「それじゃ」
少女は振り向いて歩き始める。
「なあ」
足音が少し小さくなった所で、クロマツは少女を呼び止めた。
「明日も来るか」
クロマツが聞くと、少女はゆっくりと振り向いた。逆光で表情がわからないが、クロマツには笑っているように見えた。
少女は答えずに行ってしまった。
砂浜には、波音とクロマツと、古い電灯の光だけが残った。
463 :
輪廻と松:2010/03/25(木) 23:51:48 ID:Dk88q7gm
翌日は雨だった。少女は来なかった。
その翌日は、また曇りだった。空気は湿気に満ち溢れ、雨が今にも降り出しそうだった。
クロマツは今日もいつも通り。ただそこに立って、波の音を数えているだけだった。
ただ、いつもと違うのは、普段より少し余計に少女の事が気になるという事だ。二十か、三十位数えたところで少女の事を思い出し、またそれからしばらくして、一、二と数え始めるのだった。
そして、これで何度目だろうか。クロマツがまた波音を数え直そうとした時、背後から、じゃり、と土と砂の混ざり合った地面がかすかに鳴った。
「あ…お前」
そこに立っていたのは少女だった。
いつもなら楽しそうににやついて数えるのを邪魔して来るのに、今そこに立っている少女は浮かない顔をしている。
「今日もちょっと早いな。部活が無かったのか?」
「…ん」
少女は低い声で答える。
「お前傘持ってるか?今日は降りそうだぞ」
「…んん」
「…さっきからどうしたお前。どっか痛いのか」
少女は答えず、いつものようにクロマツの隣に来ると、目の前の海を見つめた。
「…あのね」
「うん」
少しおいて、静かな声で。
「わたしね、もうあんたに、会えなくなっちゃった」
少女は、言った。
464 :
輪廻と松:2010/03/25(木) 23:53:52 ID:Dk88q7gm
強い風が吹いて、クロマツがざわりと揺れた。砂浜に波の音が一際大きくはじけた。
「わたしんちね、クロマツには言わなかったけど、ていうか言ってもどうにもならないから言わなかったんだけど」
少女は続ける。
「この間、お父さんの仕事、転勤が決まって」
少女は続ける。
「それで、もう引っ越すって、学校も転校するって」
少女は続ける。絞り出すような、震えた声で。
「それで、」
クロマツの葉に冷たいものが当たった。小さな雨粒が、ぽつりと落ちてきた。
クロマツに落ちてきたのは雨粒だけでは無かった。クロマツの幹に、少女が抱きついて顔をうずめていた。
「どう、しようっ…わた、わたしっ…何処にもっ行きたくないっ…!友達にもっ…クロマツにも…会えなくなんの…やだよぉっ!」
少女の細い肩が震えている。
クロマツは何も言わずに、いや、何も言えずに少女を支えていた。
「…ふっ…うっ…うあぁああああっ…」
砂浜に、少女の高い泣き声が響く。
クロマツの葉を打つ雨は少し強さを増していた。
465 :
輪廻と松:2010/03/25(木) 23:55:36 ID:Dk88q7gm
クロマツは少女の泣く声と、波音と、雨音に包まれ、灰色のよどんだ空を見上げた。
「…よーし、お前が泣き止むために楽しい昔話をしてあげよう」
「…え?」
少女は涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げた。
「まあ聞け」
「…うん」
「むかーしむかし、一人の罪人がおったとさ」
「…うん」
「その罪人は処刑されて死んだんだが、地獄に落ちる前にお釈迦様がやってきてな」
「うん」
「お前は死ぬ前に一つだけとても良いことをしたから、特別に生まれ変わらせてやるって言ったんだ。実はその罪人は、処刑される前に一人の娘を助けたんだ」
少女が鼻をすすった。
「鼻かむか?」
「うん、続けて」
少女はポケットからティッシュを取り出すと鼻をかんだ。
「まあ助けたって言っても賊にさらわれそうになってたのを止めただけなんだけどよ」
「ん」
「そんでまあ罪人は生まれ変わったんだ。何に生まれ変わったと思う?」
「…何?」
466 :
輪廻と松:2010/03/25(木) 23:58:19 ID:Dk88q7gm
「“マツ”だよ。その娘が植えたマツに罪人は生まれ変わったんだ」
「へえ」
「お釈迦様は罪人に、マツに生まれ変わってその娘を見守り続けるっつうよくわからん罰をお与え下さったのさ」
「確かによくわかんないかも」
「そんで罪人は娘を見守り続けた。その娘はちょくちょく様子を見に来るから罪人も飽きなかった。冬だろうが夏だろうがお構いなしで来るもんだからな」
「うん」
「でもな、それもそんなに長くは続かなかった。娘が年頃になって嫁に行くことになったからだ。昔だからな、今みたいに好きな相手と恋愛して幸せに結婚て訳にはいかなかった」
「そうなんだ…」
「娘は嫁に行く前の晩、そのマツの下にやってきた。嫁になんか行きたくないって泣いてな。でも親が決めたことだ、娘一人が泣いて嫌がったってどうにもならない。結局朝は来て娘は嫁に行ってしまった」
「………」
「変だろ?ずっと娘を見守れってはずの約束だったのに娘の方からいなくなっちまうなんて」
「うん、お釈迦様が間違ったんじゃない?」
「罪人もそう思った。でもそうじゃなかった。なぜかって、またそいつが目の前に現れたからさ。しかも日射病だかなんだか知らんが日差しで顔真っ赤にしてな」
467 :
輪廻と松:2010/03/26(金) 00:00:10 ID:Dk88q7gm
「え…?」
また強い風が吹いた。風で少女の髪が乱れた。
「そいつってば真夏に何も被らんでそこら中走り回ったりするもんだから」
少女は呆けた顔で目の前のクロマツを見上げている。
「しかもなんか木が喋ってるーだの言って気失ってな、普通喋らないだろう木は」
「え…ちょ」
「それからというものそいつは殆ど毎日やってきては今日何があったとか話していくんだ。親と喧嘩しただの先生に怒られただのな」
「ちょ…ちょちょっと待って!え…ちょっと…え、なにそれ」
少女はあたふたと狼狽して頭を押さえている。
「ちょっと昔ばなし」
「ちょっとって…え?なにそれなにそれ、わた…え?」
混乱しているのか喋りもおぼつかない。
「それ…わたし、だ、よね」
「そう」
「そうって。い…意味わからない。なんで娘の話がわたしになってるの」
「娘がお前だからだ。正確に言うと、お前がお前になる前のお前」
「わたしになる前のわたし…」
468 :
輪廻と松:2010/03/26(金) 00:01:55 ID:Dk88q7gm
「そうだ。お釈迦様はな、全部わかってたんだ。お前の魂は、この土地と離れられない運命にあるって。もし離れることがあっても、またいつか戻ってくるんだって。
何十年、何百年もの間、おれは何度も何度もお前と出逢ってきた。男だったこともあったし、動物や虫だったこともあった。でも、それぞれみんな、お前だってちゃんとわかった」
「そ…そんな話…信じらんないよ…」
「信じなくてもいいんだ。ただ心に留めておいてくれるだけでいい。おれは何十年何百年、何千年経とうと、ここでお前を待ってるよ」
波の音でも数えながら、とクロマツは最後に付け足した。
「…じゃあ」
「うん」
「じゃあ…またいつか、いつか、きっと…もっかい、逢える?」
少女の瞳から、再び涙が零れた。しかし、少女の顔には微かに、でも確かに、さっきまでとは違う、微笑みが宿っていた。
「…ああ。約束だ」
「ん…約束、だよ…」
469 :
輪廻と松:2010/03/26(金) 00:03:42 ID:2nikpvd8
少女はそう言って、クロマツの大きな体をぎゅっと抱きしめた。
雨はいつの間にか本降りになっていた。
傘も差さずに立つ少女の傍らで、クロマツがその枝葉をのばしていた。
まるでその少女を、冷たい雨から守るように。
少女とクロマツは、何十という時代も、何百という時をも飛び越えて、その絆を紡いでゆくのだろう。気の遠くなるような数の、邂逅と離別を繰り返しながら。
これまでも、そしてこれからも。
季節は秋、天気は曇り。
波音が一定のリズムで響く海岸に、クロマツが並んでいた。
誰もいない砂浜に、波の音だけが何処までも響き、クロマツはそれを静かに数えていた。
再び輪廻の時が満ちるのを待ち焦がれながら。
今、何千回、何万回目かの波の音が聞こえた。
470 :
輪廻と松:2010/03/26(金) 00:07:48 ID:2nikpvd8
以上です。
お目汚し失礼しました。
不覚にも泣きそうになった
GJ…良いもの見せてくれてありがとう
うわあもう俺なんかちょっと泣いちゃったもんね@ファミレス
GJ!
>>470 20分前の俺
「エロなしか…スルーだな」
15分前の俺
「時間が悪くて巡回少ない…暇つぶしに読んでみるか」
今の俺
「(涙ボロボロ)さ、サーセン!GJ!GJっす!!!」
久々に続き話を投下。
例によって人外アパートで大学生×人魚ですが、非エロです。NGは人魚と魔術師見習いで。
ヌルいですが流血描写があるので、苦手な方はご注意。
期待が膨らみすぎたのかもしれない。
不動産屋からもらったコピー用紙の地図を頼りにアパートに辿り着いた途端、弾みすぎて爆ぜてしまいそうだった
心が一気に萎んだ。不動産屋の事前の説明でも解っていたことだし、自分でもそれを納得した上でこのアパートを
選んだのだが、いざ現物を目の当たりにすると鋭気が削げる。道中の書店で購入してきた大学の教科書が詰まった
重たいバッグを背負い直し、岩波広海は鼻からずり落ち掛けたメガネを上げた。だが、元より贅沢は言えない身の上だ。
生活費のある程度はこれから始めるアルバイトの給料で補うつもりではあるが、それが溜まるまでは親からの仕送りを
当てにしている。大学受験だけでもかなりの負担を掛けてしまったのに、これ以上負担を掛けてしまうのは子供心に
心苦しい。こんなことなら勉強しながらバイトしておくべきだったかな、と今更ながら後悔してしまった。
広海が大学一年生として新生活を始めるアパートもえぎのは、世間に胸を張って自慢出来るほど見事な安普請だった。
妙な言い回しだが、そうとしか思えない。錆の浮いたトタン屋根、薄い板の塀、風雨に曝されて色褪せた木造二階建て、
乱暴に昇ったら抜け落ちてしまいそうな鉄製の階段。広海に割り当てられた部屋は102号室で、一階の真ん中だった。
不動産屋からもらった鍵を取り出そうとショルダーバッグを探っていると、アパートの敷地内から声を掛けられた。
「あら?」
その声に顔を上げると、銀色の女性型全身鎧が箒を片手に立っていた。
「もしかして、新しく越してこられた方ですか?」
「え、あ、はい、そうです」
取り出した鍵を握り締め、広海は生返事をしてしまった。大学に行く前から本物の魔法の産物を目の当たりにしたことで、
訳もなく興奮して胸が高鳴った。広海が受験した大学は国立魔術大学であり、学科も将来的には職業魔術師になれる
学科を選択していた。物質文明が発達した現代社会においては魔術師はそれほど重要な職業ではなく、画家や作家などと
ほぼ同等の認識である。だが、その奥深さたるや計り知れないものがある。リビングメイルなど正にそうだ。過去の戦乱で
失われた技術を惜しみなく使われた、人間の記憶と意識を封じ込めた金属塊。まさか、本物に出会えるとは思わなかった。
「私、202号室に住まわせて頂いているアビゲイルと申します。よろしくお願いします」
リビングメイル、アビゲイルに丁寧に礼をされ、広海も慌てて名乗った。
「えっと、僕は岩波広海といいます、102号室に越してきました。こちらこそ、よろしくお願いします」
「そう、ヒロミさんね。解らないことや困ったことがあったら、なんでも仰ってね。お役に立てるかもしれませんから」
柔らかな仕草でマスクを押さえたアビゲイルは、広海が知るリビングメイルからは懸け離れていた。リビングメイルと
言えば、全身鎧であることとバラバラにされても死なないという利点のために戦闘用に造られ、素体となる人間の魂も
兵士や騎士といった闘志に溢れた者ばかりなので、素体の魂が女性であるだけでも充分すぎるほど珍しいことだった。
魔術師を志す者としてはそれが少しどころかかなり引っ掛かったが、彼女の身の上を探るのは一人前の魔術師になって
からでも遅すぎないだろう、と思い、広海はアビゲイルの前を過ぎ、自室のドアの古びた錠前に鍵を差し込んで回した。
玄関に入ると、引っ越し業者によって運び込まれていた荷物が待ち受けていた。履き古したスニーカーを脱ぎ、板張りの
廊下を通って八畳間の居間に入り、隣接した六畳間の襖を開き、狭い庭に面した掃き出し窓を開いた。地元よりも心なしか
乾いた空気が滑り込み、埃っぽく湿った室内を通り抜けた。教科書の詰まったバッグを下ろしてから、広海はまず最初に
浴室に向かった。スイッチを押して明かりを付けると、タイルの壁に囲まれた若干手狭だが綺麗に清掃された浴槽が現れた。
蛇口を捻ってしばらく水を流してから、栓を入れて溜め始めた。浴槽の前に立った広海は深呼吸してから、一息に叫んだ。
「出でよ、血の盟約の元に!」
浴槽に三分の一ほど溜まった冷水がうねりながら立ち上がると、爆ぜ、大量の水飛沫を散らした。冷水をくまなく浴びた
広海の前に、艶やかな青いウロコに覆われた下半身をくねらせながら人魚が落下してきた。彼女はぬるりと下半身を曲げて
浴槽に収まると、ウロコよりも若干濃い色合いの藍色の長い髪を払ってから、不愉快極まる顔で広海を見上げてきた。
「何なの、これ」
「ごめん。今し方到着したばかりで、荷解きが出来てないんだ。だから、ミチルが入るビニールプールもまだ…」
「言い訳はいらない。この私を人間の寸法に合わせた器に落とした時点で、あんたは私の機嫌を大いに損ねたわ。だから、
顔も見たくないし声も聞きたくないわ」
若い女の人魚、ミチルは浴槽の縁に肘を掛けて顔を背けた。眉を吊り上げていても、唇を歪めていても、その美しさは欠片も
損なわれていなかった。水位が上昇しつつある水面に広がる髪は海草のようにゆらゆらと漂い、ウロコは一枚一枚が宝石から
切り出されたかのように華やかで、胸の大きさと腰の細さは反比例していて、上半身は人間であれば誰しもが美しいと思うで
あろう外見で、下半身は南洋の海に生息している魚にも似た青さだった。人間で言うところの肋骨に当たる部分が水面に没すると、
柔らかな乳房の下にあるエラが開閉して水から酸素を吸収し始めた。人間のように肺を使った呼吸も出来るのだが、そこはやはり
魚類なので、水を通じて酸素を取り込む方が効率的なのだ。
「ほら、早くしなさいよ」
ミチルに急かされ、広海は渋々浴室を出た。風呂を使うためにはビニールプールを早く出さないといけないが、その前に
荷物で一杯の部屋の片付けが終わるかどうか解らなかった。それが終わらなければ、近所に銭湯があるかどうかをアビゲイル
銭湯の場所を聞く必要がある。広海の地元とは違ってこの近辺には海がないし、広海はミチルを大気中でも活動させられる
ような魔法を使えるほどの腕もなければ魔力もない。だから、素直に風呂を明け渡すしかなく、前々から覚悟していたことでは
あったが、それでもなんだか悔しくなった。それでなくても、ミチルは主であるはずの広海を使役してくる。本当なら、広海が
ミチルを使役する立場にいるのだが、彼女の女王様然とした態度と広海の生来の気の弱さが原因でいいように扱われている。
段ボール箱を手当たり次第に開けてビニールプールを入れた箱を探しながら、広海は浴室を窺ったが、ミチルは静かだった。
上手く御機嫌取りが出来ればいいのだが。
広海とミチルが出会ったのは、広海が中学生の頃だった。
海に面した田舎の港町で生まれ育った広海は、メガネを掛けた貧弱な体格の少年に相応しく、運動部には入らずに文芸部とは
名ばかりの帰宅部に所属していた。学校の図書室に入り浸っては手当たり次第に本を読むうちに、おのずと魔術に魅せられ、
自分も魔法が使えるような気になった。言ってしまえば、いわゆる中二病である。だが、本の中では簡単そうな魔法もいざ自分で
使うとなると別物で、なんとなく読めた気でいた魔法文字もろくに読めないことが判明したので、広海は本来の学業はそっちのけで
魔術に傾倒した。そのおかげで現代魔術の基礎読解力は身に付いたが、大学受験に不可欠な基礎学力がガタ落ちしてしまい、
受験勉強を始めてから苦労したのは言うまでもない。
完全な魔法とは言い難いが、魔法のようなものが使えるようになった広海は、今日も今日とて人目に付かない入り江に向かった。
図書室の蔵書だけでは飽き足らずに小遣いを貯めて買った初級魔術書を片手に、浜辺を歩き、岩場を乗り越え、港からも街からも
目に付かない小さな入り江に辿り着いたが、その日は珍しく先客がいた。
浅瀬から迫り上がってきた薄い波が寄せては返す狭い砂浜に、裸身の少女が倒れ伏していた。が、すぐにそれが人間ではない
ことに気付いた。砂浜から下に没している下半身は青いウロコに覆われた魚のもので、尾ビレの端が千切れて裂けたウロコから
血が滲んで海水に溶けていた。広海はしばらく彼女を凝視していたが、人魚は砂まみれの髪を引き摺って上体を持ち上げた。
「ぼんやり見てるぐらいなら、助けたらどう」
「…え、僕?」
「他に誰がいると思うの」
乱れ髪の隙間から広海を見据えた人魚の視線は、苛立ちを通り越して怒りが漲っていた。広海は逆らえるわけもなく、岩場を
下りて砂浜に来たはいいが、何をしたらいいのかが解らなかった。人間相手ならともかく、相手が人魚では手当のしようがない。
魔法が使えればなんとかなるかもしれないが、生憎、広海は初歩の初歩につま先を掛けた程度でしかない。かといって、この場
から逃げるのは無責任だ。広海は宝物の魔術書を岩場の高い位置に置いてから、恐る恐る人魚に近付いた。
傷を負った人魚は、広海とあまり歳が離れていないようだった。顔形も幼く、上半身も小柄で下半身も短い。人魚は人間とは
老化速度に差があるので、さすがに同い年ではないだろうが。人魚は両肘を砂浜に突き立てて匍匐し、出血している下半身を
陸地に引き上げた。顔色は青ざめていて、痛みと苛立ちで凶相と化していたが、彼女は間違いなく美少女だった。その容姿は
獲物である人間を捕食しやすくするために美しく発達したものだ、と書かれた魔術書もあったが、広海は警戒心よりも先に彼女に
見入ってしまった。息を荒げすぎて歪んだ唇の隙間から見える尖った歯も、薄い乳房の下で開閉するエラすらも魅力的だった。
「君、どうしてケガしたの」
好奇心と興奮に煽られた広海が話し掛けると、人魚は裂けた尾ビレで海面を荒々しく叩いた。
「船よ、船! 私が海底で昼寝してたら近付いてきやがって、船底と梶で擦りやがったのよ! 岩の上で寝てたもんだから、その
岩の表面でウロコも肉も切っちゃって、もう最悪! 人間なんて滅べばいい!」
「それは…災難だったね」
肉食魚のような歯を剥いて喚く人魚に広海はちょっと臆したが、尋ねた。
「ところで、どの辺で寝ていたの?」
「あっち」
と、人魚が示したのは、港の入り口に程近い海域だった。頻繁に漁船が出入りする場所で、今もまた新たな漁船が漁を終えて
入港するところだった。自業自得じゃないか、と広海は言いかけたが、人魚の鋭利な歯に噛まれたら大変なので黙っておいた。
人魚は不愉快げにまた海面を叩いたので、広海は更に近付いた。人魚の傷口から滴る血液はやはり魚のそれで、人間の血液
とは匂いも違っていて、港町に住む子供にとっては慣れ親しんだ遊び、釣りで捕獲した魚を捌く時に感じた匂いと酷似していた。
「傷が痛むなら、陸に上がらない方が」
広海は人魚を制するが、苦痛に顔を歪めた人魚はずりずりと這いずってきた。
「手っ取り早く治すには、これが一番なのよ」
「何が?」
「あんたの血と肉、寄越しなさい」
人魚は唇の端を吊り上げ、尖った歯の隙間から薄い舌を覗かせた。広海は青ざめ、後退った。
「どうしてそうなるんだよ! 人魚って、そんな生き物だったっけ!?」
「私達は元々肉食よ。陸の生き物なんて喰っても大して旨くはないけど、憂さ晴らしには丁度良いわ」
「ストレス解消に僕を捕食しないでくれよ!」
「あんた達は、充分すぎるほど海の連中を横取りしてんじゃない。人間の一匹ぐらい、どうってことないわ」
「ある、ある、僕にはすっごいどうってことある!」
広海は今し方まで人魚に感じていた好奇心や淡い憧れなど一瞬で吹っ飛び、背中に嫌な汗を掻いた。考えてみなくても、
人魚は人間とは別の生き物だ。一部が似た外見で、言葉が通じるからといって、全く同じというわけでもない。人魚は本気
らしく、水色の瞳を動かして広海の体を睨め回している。その目付きは冷ややかで、怒りに歪んでいた顔付きも捕食対象を
捕らえようとする表情に変わっていた。広海が大型の魚に目を付けられた小魚の心境を嫌と言うほど味わっていると、人魚の
視線が上がり、岩の上に置いた魔術書で視線が止まった。
「あんた、魔法使えるの?」
「いや全然」
広海は、謙遜ではなく保身のために言い切った。下手に使えると言ってしまえば、その魔法でどうにかしろと言われて
しまうかもしれない。だが、本当に何も出来ないのだ。魔法にすら至らない魔力の揺らぎ程度しか起こせない身の上では、
人魚の傷など治せるわけもない。人魚は値踏みをするように広海を眺めていたが、砂の付いた頬を水掻きが付いた手の甲で
拭ってから上半身を起こした。
「あんたの魔力なんて当てにするわけないじゃない。あんたにどうにかしてもらおうなんて、元から考えちゃいないわ」
傷口に砂がめり込むのも構わずに這いずってきた人魚は、更に後退りかけた広海の足首を掴んだ。
「私を、陸に上がらせなさい」
「でも、もう陸に…」
「そういう意味じゃない。私は陸に上がりたいの、上がらなきゃ、いけないの」
冷たく濡れた手で広海の足首を握る人魚の握力は骨が軋むほど強く、広海は痛みに呻いた。
「な、なんで?」
「そんなこと、あんたに説明する義理があると思う?」
人魚は広海の脛を掴み、股に爪を立て、腰を押さえ、ついに肩に手が届くほどの高さまで這い上がってきた。目を剥いて唇を
歪めて歯を覗かせた恐ろしい形相に睨み付けられながらも、藍色の髪の間から立ち上る潮の香りを吸い込み、広海はよろけた。
人魚に体重を掛けられたせいだったのだが、精神的な原因も大きかった。上半身は人間ではあるが魚らしさの方が強い彼女に、
参ってしまったからだ。相手はただの魚だ、人みたいだけど魚だ、と思おうとしても、一度認識してしまった感覚はそう簡単に
拭えなかった。広海は人魚としばらく見つめ合う格好になったが、おずおずとその肩に手を触れた。
「解った。でも、僕はどうしたら」
「私をあんたの使い魔にしなさい。但し、私があんたを利用するの。私はあんたなんかに使役されたりしないわ、あんたを利用して
陸に這い上がりたいだけ」
「…解った」
同じ言葉を繰り返した広海は、人魚の傷口から粘り気の少なめな血を掬い取った。使い魔とその主の契約方法には様々な
魔法があり、魔法陣を組んだり長々と呪詛を与える方法もあるが、手っ取り早いのはお互いの血を与え合うことだった。単純では
あるが、単純すぎて弊害も大きい。契約を解除しようとしたら、自分の体の中に入った相手の血と相手の体の中に入った自分の血を
完全に排除しなければならないのだが、それがまた過酷なのだ。魔法を使うとはいえ、自分の内に流れる血を一滴残らず洗って
異物を取り除くのだから、心身の負担は並大抵のものではない。広海はそれを考えたが、野生らしい凶暴さとを隠そうともせずに迫る
人魚を見下ろすと、恐怖よりも芽生えたばかりの恋心が勝った。広海は指に付いた人魚の血を嚥下し、その手を人魚に差し出した。
人魚は広海の手を躊躇いもなく囓り、皮膚を破った鋭い歯がめり込み、激痛が走った。人魚の顎と首を伝って滴った赤黒い血液が、
彼女の膨らみかけの乳房と砂浜を汚し、人魚の血液とはまた違った生臭みが立ち上った。
あまりの痛みの声も上げられなかった広海が脂汗をだらだら流していると、人魚は唐突に広海の手から歯を引っこ抜き、舌で
ぬるりと汚れた口元を舐め取った。広海が手持ちのハンカチで傷口を押さえながら人魚を窺うと、人魚は顔を強張らせていた。
人の血肉を喰いたい、と言っていた割には表情が暗かった。だが、広海はそんなことを気にする余裕を失い、自分の血を見過ぎて
貧血を起こして砂浜に倒れ、気を失ってしまった。
実に情けない契約だった。
右手に残る傷跡に触れ、広海は荷物を整理する手を止めた。
あれから五年も過ぎたが、ミチルは陸に上がりがった理由はおろか自分のことを話してくれない。乱暴な契約をした翌日、
右手に包帯を厚く巻き付けた広海はあの入り江で彼女に会ったが、教えてくれたのは彼女自身の名だけだった。他はさっぱりで、
聞き出そうとすると海に引き摺り込まれそうになった。何も話してくれない彼女に苛立ちもしたが、それまでは女っ気がまるで
なかった広海はミチルと接するだけで充分だと思うようになった。主従関係がイコールで恋愛関係になるわけではないし、広海が
その気でもミチルは愛想すらないが、主従関係に縛られている限りは傍にいられる。きっと片思いで終わるだろうが、それなら
それでいい。ミチルには広海は単なる足掛かりに過ぎないだろうが、それすらも嬉しいと思えるのだから重症だ。
浴槽から出たミチルは、居間のほとんどを占めているビニールプールに身を沈めていた。外に出しては両隣の部屋の邪魔に
なってしまうし、何よりミチルが文句を言う。エラが詰まるからと上半身を隠す服を着ようとしないくせに、他人に素肌を見られるのは
嫌がるのだ。だから、ビニールプールは居間に固定することになるだろう。一応、畳の上にはビニールシートを敷いてあるが、
たまには剥がして干さないとカビが生えるのは間違いない。問題はその時だな、と思いつつ、広海はぼんやりとテレビを眺める
ミチルの横顔を見やった。昨日まで住んでいた地元とは放送局も周波数も違うのに、片付け追われてろくにチューニングしていない
せいで画面はノイズまみれだが、ミチルは気にしていないようだった。というより、やることがないから目を向けているだけだった。
「ミチル」
広海が声を掛けるが、ミチルは振り向きもしなかった。返事代わりに、尾ビレの先で水面を叩いた。
「一通り片付けが終わったら、ここに住んでる人達に挨拶しに行くよ」
「だから?」
ようやく返事をしたが、ミチルの態度は相変わらず素っ気なかった。
「行くなら勝手に行ってくればいいじゃない。私にはどうでもいいことだわ」
「うん、そうだね」
「でも、何か食べるものだけは出しておいて」
「解ったよ」
広海は頷き、腰を上げた。ミチルは一度も振り返ることはなく、広海が部屋を出ていこうとも反応しなかった。それもまた、いつもの
ことだった。玄関から出て鍵を掛け、まずは隣室からだと振り返ると、アパートを訪ねてきたらしい黒衣の少女とその背後に控える
金色の全身鎧と目が合った。少女の顔にはどこかで見覚えがあり、広海が誰だったかと思い出そうとしていると、黒衣の少女は
広海が思い出しきる前に近寄ってきた。
「新しく引っ越してこられた方ですか?」
「ああ、はい、そうです」
広海は当たり障りのない返事をしてから、黒衣の少女の正体を思い出し、自室のドアに背中をぶつけた。
「そうだ、マーリン綾繁の!」
「娘ですわ」
黒のシンプルなワンピースを着た少女、綾繁真夜が微笑むと、その背後の全身鎧、アーサーが彼女に問うた。
「真夜、知り合いか」
「いいえ。でも、私の顔を御存知なら、それはきっとこちら側の方ね。私もたまに魔術雑誌に魔法陣の解析式を投稿しているし、
本当にたまにだけどちょっとした文章を載せてもらっているし、写真も載ったことはあるもの。でも、その呼び方は恥ずかしいわね。
お父さんってば、いつまで手品師みたいな芸名を使うつもりかしら。大魔術師にあやかりたいのは解るけど、センスが古いのよ。
お母さんもお母さんで、お父さんがマーリンなら自分は湖の乙女だーとかなんとか言っちゃって、ニミュエ・レイクだとか…」
真夜が複雑な表情になると、アーサーがまた問うた。
「では、御両親の本名は何なのだ?」
「綾繁和夫と綾繁のり子よ」
「純和風だな」
「だから、余計に恥ずかしいのよ」
真夜は両親のことを愚痴りそうになったが、広海の存在を思い出して仕切り直した。
「それはそれとして、私、ここの住人の友達なんです。綾繁真夜です、よろしくお願いします」
「我が名は聖騎士アーサー。真夜の盾であり剣であり、聖剣エクスカリバーに選ばれし者だ」
アーサーは真夜に続いて名乗り、右手を差し出した。広海は手を差し伸べ、アーサーと握手を交わした。
「岩波広海です。国立魔術大学に進学したんで上京してきたんです」
「それはおめでとうございます。頑張って下さいね」
それでは、と真夜は一礼し、アーサーを引き連れて二階に向かった。二人を見送ってから、広海は今度はアーサーの名に
驚くも、首を捻った。アーサーとエクスカリバーといえば、思い出されるのはアーサー・ペンドラゴンだけである。歴史が正しければ、
アーサー・ペンドラゴンは中世時代に魔剣との戦いで自らの命と引き替えに魔剣とその操り手を封印し、それ以降はもちろん
生き返ってもいなければリビングメイルと化したとのニュースもない。しかし、アーサーの腰に下がっていたのは間違いなく聖剣だ。
文献や絵画に記されている聖剣と全く同じ形状だ。引っ掛かりが好奇心に変わった広海は、階段を昇り終えたアーサーに声を掛けた。
「もしかして、あなたはペンドラゴン卿ですか?」
「それは旧き名だ。今の私に必要なのは真夜を守る力だけであり、時と共に流れ去った過去ではない」
アーサーは二階から少し上半身を出し、広海を見下ろした。
「若き学徒よ。我らが時代は紙の上に残るだけとなり、剣と魔法からは世の理を作る力が失われて久しい。故に、私は聖騎士として
果たすべき使命を終え、真夜の恋人として現代に生きると神に誓ったのだ。そして、エクスカリバーにもな」
「色々とお詳しいのは解りましたけど、ね」
アーサーの隣から顔を出した真夜は、明らかに困り顔だった。言い過ぎた、と広海は後悔して謝った。
「すみません」
「解れば良いのだ」
アーサーは軽く頷き、真夜も身を引き、201号室のアラームを押した。程なくして快活な少女の声が返ってきて、二人はその部屋に
上がっていった。これじゃちょっと挨拶に行きづらいな、と思ったが、今更自室に引き返してもミチルから刺々しく言われそうなので、
広海は近所を出歩くことにした。時間潰しと商店の探索も兼ねている。自室の鍵と携帯電話と財布がポケットに入っていることを
確認してから、広海はアパートもえぎのを後にした。ミチルの様子が気になったが、彼女なら一人でも平気だろう。
細々と構い過ぎると、もっと機嫌を損ねてしまうだろうから。
狭苦しく、酸素の薄い、淡水の海。
エラから吸い込んだ水を吐き出し、ビニールプールの中に戻した。滑らかなウロコに覆われた下半身を円形の内壁に添って
曲げ、尾ビレを意味もなく揺らした。潮の匂いが一切しない空気に慣れるために肺を使って呼吸してみるが、酸素が思うように
吸収出来なかった。板張りの天井は薄暗く、二階からは騒ぎ立てる少女達の声が聞こえてくる。耳障りではあるが、悪いもの
ではない。むしろ、羨ましかった。思いのままに話せることは、充分すぎるほど素晴らしい。
ミチルは長い髪をビニールシートの外に垂らしながら、指の間に付いた水掻きを噛んだ。皮膚が薄いが痛覚はちゃんとあり、
鋭利な歯が刺さりかけたが引っ込めてしまった。水掻きを一つ噛み千切ったところで、何が変わるわけでもないと解っている。
忌まわしい下半身を切り落として二本の足にすげ替え、エラを塞ぎ、歯を削り、髪を切らなければ、人間に近付くことも出来ない。
人間に思いを告げれば、人魚は泡と化して死ぬ。海中で同族達と暮らしていた頃、大人達から何度も聞かされた話だった。
危険な陸に上がるなとの注意喚起であり、人魚族の繁栄の妨げとなる異種間婚姻を防ぐための作り話だとばかり思っていた。
だが、ある日、幼馴染みの人魚の少女が泡になって死んだ。以前から陸への憧れていた彼女は、人魚や魚人から聞きかじった
陸の話を目を輝かせながら話してくれたものだった。その中で特に熱が入るのは、海辺で見つけた人間の男性のことだった。
だから、幼馴染みが消えた時、ミチルは彼女が無事に陸に上がれたのだと思い、口にはしなかったが心の内では喜んでいた。
もしかしたら、陸に上がった幼馴染みは憧れていた人間の男性と素敵な恋に落ちているかもしれない、とも。
それから数日後、幼馴染みが死んだとの報せがあった。彼女が死んだ海域には数枚のウロコが散らばり、泡が漂っていたそうだ。
ウロコを見つけた人魚は嘘を吐くような性格ではなかったし、泡を目にした魚人族や魚類もいた。だから、幼馴染みは本当に
泡になって消えてしまったのだろう。ミチルは幼馴染みの死に方を信じたくはなかったが、大人達の話が嘘ではないのだと痛感し、
陸には上がるまいと胸に誓った。それなのに、成長すると陸の魅力に抗えなくなり、大人達の目を盗んでは浅瀬を目指して泳ぎ、
夜に隠れて人界を望んだ。そんなことを繰り返していると、いつも決まって同じ入り江にやってくる少年が目に付いた。歳も近かったし、
下手くそな魔法を使おうとする姿が微笑ましく思え、眺めてしまった。そして、言葉を交わしたい、近付きたい、と思うようになったが、
幼馴染みの死に様が過ぎって見つめるだけの日々が続いた。少年がいずれ大人になり、旅立つ日には終わるはずだ、と自分に
何度となく言い訳しながら陸に近付いた。気付いた頃には、ミチルは少年に心を奪われていた。
そして、広海と接触したあの日、ミチルは港に近付きすぎて漁船に轢かれた。広海が来るよりも先に行こう、と思うあまりに
気が急いてしまったせいだった。幸か不幸か広海が訪れる入り江に打ち上げられたが、泡になりたくない一心で意地を張った
挙げ句に強引な契約を交わした。使い魔となったことで傍にいることは出来るかもしれないが、広海には嫌われているだろう。
使い魔がいれば魔術師としての箔が付くから、契約を継続してくれているだけだ。そうに違いない。
「広海」
彼の名を呟き、ミチルは顔を覆った。
「ごめんなさい」
せっかくの新生活に、文字通り水を差している。魔術大学に進学することは彼の悲願であり、この機会に独り立ちさせて
やるべきだったのに、入り江で待つミチルに合格報告をしてくれた彼に連れて行けと頼んでしまった。海を離れた人魚を
生かすのは容易なことではないと自分でも理解しているのに、離れてしまうのが耐えられなかった。束縛してしまいたかった。
けれど、後悔が怒濤のように襲い掛かる。好きで好きでたまらないのなら、離れておくのが彼のためだ。泡になるのが
怖いからと、本心を隠すために天の邪鬼になる自分が嫌いだ。だが、泡になって死ぬのは嫌だ。どうせ死ぬのなら、陸で、
広海の腕の中で果てたい。かつて味わった彼の血の味を思い起こし、ミチルは唇を舐めた。
塩素の効いた、人界の味がした。
以上。
エロくなるのは二人が仲良くなってからです。
余談ですが、マーメイドメロディぴちぴちピッチが結構好きでした。
おいなんだよ
人魚可愛いじゃねえか
ツンデレか
ツンデレなのか
wktkしちゃうぜ
GJ!!
現代版人魚姫ですな。ミチルの切なさが良い。
非エロで大長編はこのスレではマズい?
全部で6話位を想定してるんだけど
ダメなら避難所の方に投下するけど
俺は問題ないと思うが…
>>485 関係ない でも一様NGワード指定できる心がけすること
注意書きさえあれば大丈夫。
出来れば一つのスレで読めると嬉しい。
大丈夫なようなので、こっちに投下します。
オオタカと人間の女の子の話です。
非エロで大したことはないですがエグいシーンあります。
タイトルは「キロロの森」です。
いつどの時代、どの場所にあったのかも定かではないが、ある所に広大な森が広がっていた。
そこは豊かな自然があふれ、動植物達はみな自らの生を謳歌していた。
ある所は、美しい花々や色とりどりの小鳥たちが自らの美しさを競い合い、またある所は鬱蒼と木々が茂りまたある種グロテスクな花や生き物たちが渦を巻いており、豊かな生態系が維持されていた。
やがて、いつしか人々はそんな森のことをこう呼んだ。
“キロロの森”、と―。
森の西のはずれ、比較的都市部に近いユタ川の下流に、カラスの群れがいた。十数羽のカラスが川の上を飛び回り、何十羽というカラスがそれを見下ろしていた。
狂ったように飛び回るカラス達の中に、一羽だけ毛色の違うものが混じっていた。黒…と言うよりは青みがかった灰色の背中に、腹全体に広がる斑模様。体は周りのカラスより一回り程大きく、赤褐色の大きな目が鋭い眼光を放っている。
そう、その姿はまさにオオタカのものだった。
カラスに目を付けられたのだろう、オオタカはカラスに追われていた。一羽や二羽ならばオオタカがカラスなどに追われるはずもないが、こうも相手が多くては流石のオオタカも為すすべがない。
「いけー!殺っちまえー!」
「おいおい逃げるだけかよー!?」
逃げ回るオオタカを見て周りのカラス達は面白がって野次を飛ばす。
追い回すカラス達もなかなか手を出さずに、オオタカの体力を削ぐように飛び回る。
だがそのうちの一羽が、我慢しきれなくなったのかいよいよオオタカに飛びかかった。
「手柄もーら…いっ!?」
だが彼の攻撃はあっさりとかわされる。ぎゅん、と急上昇したオオタカは一瞬で彼の背後に回った。
「なっ…!」
その時、彼は見てしまった。
オオタカの嘴の端に深く刻まれた傷跡を。
「その傷ッ…まさかッ…!」
と、言った時にはすでに遅かった。オオタカの鋭い鉤爪が、彼の喉と左肩に、ぶつり、と食い込んでいた。
「はッ…ようやく気づいたか?てめえが、誰に喧嘩売ってたかをよォッ!!」
オオタカはそう叫ぶと、体をぐりん、と勢い良くひねった。掴まれたカラスは、その反動で真下の川に思い切り叩き込まれた。
「げはぁッ!」
無様な声を出してカラスは水面に顔を出した。
「かはッ…ち、ちくしょッ…!」
カラスはすぐさま水面から飛び上がろうと翼を広げた。ちょうど、すぐ背後に迫った大きな影と同じように。
彼がその気配に気づいたと同時に、彼の頭は再び水中に沈められていた。
彼の頭に、背中にオオタカがのしかかっていたからだ。
「がッ…ばっだれッ…助ッ…!!」
カラスは死に物狂いで暴れて水中から抜け出そうとするが、彼よりも大きいオオタカの全体重が掛けられているのでそれもかなわず、助けを求めようと嘴を開けば川の水が喉を塞いだ。
始めは狂ったように足の下で暴れていたカラスだったが、やがて振り回す翼からは力が抜け、水面に嘴から零れる気泡だけがコポコポと音を立てた。そして、それもやがては止まった。
一部始終を見終わった、それまで調子の良かった他のカラス達の様相がざわりと一変した。
「…や、やべえ…ガルスだ…“傷嘴(しょうし)”のガルスだあッ!!」
野次カラス達はその名を口々に叫ぶとその場から一目散に逃げ出した。
一瞬で騒然となるカラスたちを尻目に、オオタカは捕らえた獲物を泳いで岸まで運んだ。
追いかけていたカラス達が上空で旋回を続ける中、オオタカはさっそくご馳走にかぶりついた。
「あ…あーあっ!あぁーあっ!殺っちゃった殺っちゃった!お前知らないだろけどさぁそいつ俺らの“ボス”の一番のお気に入りだよっ!?お前ぶっ殺されちゃうんじゃねーの!?ぶっ殺されるだろーねッ!!あーあ俺知ーらねぇ!!」
その内の一羽が、捨て台詞を吐いて遠くに飛んでいった。
オオタカはその赤褐色の眼でカラス達を睨みつけると、くわえていた肉をぶちりと噛みちぎった。
“傷嘴”のガルス。オオタカはそう呼ばれていた。
第一話 ガルスとアリク
それから数日後。ガルスは再び獲物を探して森の西南を飛んでいた。
ふと、彼の目に一羽のムクドリが映った。何か虫でもくわえているのか飛び方がゆったりしている。
ガルスはそのムクドリに照準を定めると一気に加速した。
ムクドリはよほど大きな獲物なのか、飛び方がよろよろとおぼつかない。これなら、仕留めるのは簡単だろう。ガルスはムクドリの背後から一気に飛びかかった。
ムクドリもガルスの羽音で気がついたが、既に体はその鉤爪に捕らわれていた。
「ぎゃっ!?」
ムクドリは短い悲鳴をあげて、くわえていた虫を落とした。ガルスは餌を手に入れた喜びでニヤリと笑った。油断したのだ。それがいけなかった。
「くそっ!!」
ムクドリは落とした虫を見やると、
「喰らえッ!!」
と叫んだ。その瞬間、まばゆい光が閃いた。
「!?なッ!」
ガルスはひるみ、足からムクドリを離してしまった。
目が眩んだガルスはそのまま真っ逆さまに森へと墜落した。
気がつけば、太陽がちょうど真昼の高さにあった。どうやら気絶していたらしい。青草の匂いが鼻をついた。
「…ッつぅ…」
目を覚ましたガルスの体を痛みが襲った。
墜落した時の衝撃で体全体が鈍く痛む。心なしか頭もぼやけてハッキリしない。
ガルスはゆっくりと辺りを見渡した。さっきの光…あれは何だろう。あのムクドリがやったには違いないだろうが、光を出すムクドリなどきいたことがない。
考えていると、ぼやけていた視界が徐々に鮮明になってきた。と同時に、何か異様なものが見えてきた。
「?…あれは…」
草の上に横たわる小さな生き物。おそらくさっきのムクドリがくわえていた虫だろうが、異様なのはその見た目だった。
恐ろしいほど『人間』に酷似している。だが…人間と言えば、ガルスも昔一度だけ本物を見たことがあるが、こんなに小さい生き物ではなかった。ガルスの体の何倍もあったはずだ。
だが今ガルスの目の前にいるそれはまさに虫けらのような大きさだ。
ガルスは痛む体を起こしてその人間に近づき、まじまじと見た。
黒に近い茶色の毛は肩あたりまであり、これまた茶色の体毛(?)を身に纏っている。が、顔と手足は白っぽい肌が露出している。
ガルスには雌雄の判別が付かなかったが、間違いなく、これは人間だった。
と、その時、目の前の小さな人間がぴくりと指先を動かした。
「…ん…」
気がついたらしい。ゆっくりと目を開くと、目の前のガルスと目があい、両者とも目を丸くした。
「わっ…ひぁあっ!!」
「うわっ!?動いた!!」
ガルスが目の前の小人の悲鳴に驚いて飛び退くと、小人は慌てて逃げ出した。…だが。
「ぎゃんっ!?」
ちょうど後ろに石があったため、体全体でぶつかってしまった。
「うお痛そ…だ、大丈夫か」
「こ、こなひでっ!!げほっ…あっ、あっちいってっ!!」
小人は一生懸命腕を振ってガルスを追い払おうとする。
「わ、私なんか食べても美味しくないよっ!骨ばっかりだよ喉に刺さるよーっ!!」
そう言って小人は地面にうずくまった。こちらとしては全くその気は無いのだが、小人の方はすっかり勘違いしているようだ。
何だかその様がひどく滑稽で、ガルスは柄にもなく笑ってしまった。
「…あ…な、なんか笑われてる?」
小人は自分が笑われてるのかと、少し顔を赤らめてむくれた。しかしそれもまた余計におかしかった。
「べ…別にお前なんざぁとって喰いやしねえよ」
「ほ…ホントに?…あぁ良かったぁ〜」
そう言うと小人は安堵のため息をついてへたり込んだ。
その瞬間だった。
「痛っ!?」
小人が顔をしかめて頭を抱え込んだ。次の瞬間一気に、蟻のような触角がその小さな頭から飛び出した。
「ひゃっ…!な、なにこれ」
「あっ…お前やっぱり虫だったか!いやー最近の虫は人間にまで擬態出来るようになったか」
「はぁ…?ち、違う!私人間だよ!いや今はこんな姿だけど…!」
「嘘付け、じゃあその頭から出てるぴょろっとしたのは何だ」
「こ…これは…その」
そこまで言うと小人は押し黙って考え込んだ。そして頼りなさげに、
「呪いのせい…かな?たぶんだけど」
と言った。
突然出た突拍子もない“呪い”の言葉に、ガルスは呆れた。
「はぁ?呪い?お前な、つくんだったらもうちょいマシな嘘を…」
「う、嘘じゃないよ!…嘘…じゃないよ…」
小人の言葉に力が無くなってゆく。小人自身にとってもあやふやなようだ。
「へぇ?じゃあその呪いはなんつー呪いなんだ」
「ええと…何だったかな、えー…ピコ、だったかな」
「違う、“ミコ”の呪いだ」
突然、聞き覚えの無い声が二人の間に割って入った。
ガルスが驚いて振り向くと、ちょうど背後の木の枝に、先ほどのムクドリがちょこんと止まっていた。
「“ミコ”とは、この森の古い言葉で虫に魅入られる事を意味する。ミコの呪いとはかけられた者がやがて虫にその身を変える呪いだ」
「あっ!さっきの奴じゃねえか!!」
ムクドリはガルスを無視すると小人の頭に生えた小さな触角に目をやった。
「ほう、触角が生えたか、呪いは順調に進んでいるようだな」
「っ…」
小人はガルスの後ろに少し隠れた。その表情は怯えきっている。ガルスは小人がムクドリに対して恐怖心を抱いていることを察知した。
「やあ貴様、さっきはよくも私の邪魔をしてくれたな。本来なら私の力で八つ裂きにしてくれる所だが、そいつを渡すというなら先ほどのことは水に流そう。どうだ?」
そう言うとムクドリはその小さな翼で小人を指した。
だが、ムクドリのやけに高圧的な態度に怒りを感じたガルスが、素直に首を縦に振るはずもなかった。
「てめえ、鳥(ひと)にモノを頼むってんなら相応の態度ってもんがあるだろう」
「ふん、貴様こそ誰に向かってクチをきいているのかわかってるのか?」
「知らん、誰だ」
「チッ…これだから無知は困る。私はランドット。“金色の魔女”が一番の弟子のランドット様だ!」
ムクドリ、ランドットはそう声高らかに名乗りを上げたが、ガルスにはそのどちらもが聞き覚えの無い名前だった。
「どっちも知らねえな。んで、そのカンジキの魔女の弟子のペリドットがどうしたって」
「金色の魔女だ!!それにペリドットじゃないランドットだ!!二度と間違えるな!!さぁ、私の名は名乗ったし、これでいいだろう!さっさとそいつを渡せ!そいつは我が師、金色の魔女のものなのだ!」
そう言われ、ガルスは今一度小人を見やる。小人は不安げな表情でガルスを見上げている。しばらく見つめていたが、やがて意を決しランドットを見上げ、
「断る」
と言い放った。
「…馬鹿を言うのも大概にしたまえ。貴様わかってるのか?私に逆らうということは金色の魔女に逆らうということなのだぞ!?」
「別に構わねえよ。その金色なんたらがどうなのか別に知ったこっちゃねえ」
「…わからん、わからんわからん!なぜそこまでその人間を庇うのだ!さっき出会ったばかりの人間を!?」
「理由か?そうだな、まず“コイツに興味が湧いた”。次に、てめえのその“態度”が気に入らねえ。そんで最後が」
ガルスは力強く両翼をはためかせ、
「コイツを今ここで見捨てたら、“物凄く後味が悪くなりそう”だからだ。俺は後味の悪いのが大っ嫌いでな」
ランドットをその赤い眼で睨みつけながらそう言った。
小人は安堵と驚きの入り混じった表情でガルスを見つめ、ランドットは呆れ蔑む眼差しをガルスに送った。
「…馬鹿もここまでくると素晴らしいな。仕方がない、貴様ごときには使いたくなかったのだが」
ランドットの羽が徐々に逆立ってゆく。
「私の魔法でなぶり殺してからそいつを連れて行くことにしよう!!光栄に思いたまえ!私の魔法で死ねることを!!」
ランドットの目が黄緑色に妖しく光った。と同時に、その小さな体がむくむくと膨れ上がっていく。やがてその体は周りの木々を追い越し、へし倒し、押しつぶしてゆき、そしてついには…。
「ふっはははは!どうだ!私の魔法は!?」
ド派手な色をした、巨大な怪鳥へと成り変わっていた。
「なっ…!?」
流石のガルスも目を丸くして驚く。
「驚いたか!?今更後悔しても遅いぞ!!」
遥か上空から降り注ぐランドットの声。と同時に、ランドットがその片足を振り回した。突風が起きて、そばにあった木がべきりと折れ、驚いた周りの鳥達が次々と飛び立った。
「きゃっ!?」
小人が突風に吹き飛ばされそうになり、足元の草にしがみついた。
「おい、大丈夫かっ…!」
ガルスが小人の方を振り向いたその瞬間、辺りが暗く影になった。
「!!」
気づいたその瞬間、巨大な足が大地を揺るがした。
「うおっ!?」
ガルスはちょうど足の指と指の間に入って難を逃れたが、足は再び踏み潰そうと持ち上がってゆく。
このまま地上に居てはマズいと判断したガルスは小人のもとに急いで跳ね寄った。
「おい、このままここにいちゃマズい!飛ぶから上に乗れ!」
「う、うん!」
ガルスが頭を下ろし背を低くすると小人はガルスの背によじ登った。
ガルスは大きな翼を羽ばたかせ力強く大地を蹴った。
「わっ…」
一気に木々を飛び越え森の上空に出る。
だが。
「逃がすかぁッ!!」
ランドットが巨大な翼を広げ、そのまま打ち下ろした。
「がっ!?」
ガルスはランドットの翼に強かに弾かれた。一瞬意識が吹っ飛ぶ。そして気づいた時には既に、小人の甲高い悲鳴と共に、空が猛スピードで遠のいていった。
だが、ガルスの体が大地とぶつかりそうになったその時だった。ガルスの体が一瞬ビタッと止まった。いや、止まったと言うよりは、反対方向に体が強く引っ張られた。
「なっ!?」
一番驚いたのがガルスだった。ガルスは戸惑いつつも急いで体勢を整える。
「な…なんだ今のは…!?」
何が起こったのかわからず思わず辺りを見回す。
だが辺りには折れた木々以外何も無い。まるで魔法のようだったが、まさかランドットが助けてくれたわけでもあるまい。
当のランドットはと言うと、弾き飛ばした際に見失ったのか明後日の方向を攻撃している。
「なんかわからんが助かった…しっかしまあ、よくもあれだけでっかくなれたもんだ」
ガルスはランドットを見上げて呟いた。地上ではあの足に踏みつぶされるが、空ではあの翼によって近づくことすらかなわない。さて、どうしたものか…。
ガルスがランドットを見上げて居ると、ふと眩しさを感じた。先ほどから、真昼の太陽が暑いほどの日差しを森に注いでいる。その瞬間、ガルスにある考えが浮かぶ。
ガルスが不敵に笑うと、
「はっ!体が相手よりデカけりゃ勝てるってか?いかにも三流の考えそうなことだぜ!!」
と、勢い良く羽ばたいた。
「ほらほらどこ行った!?さっさと出てこないと踏みつぶされるぞ!!」
凄みながら辺りの木々を足で払い、ガルスを探し続けるランドット。まさか自分が探している相手が自分より遥か上空に居ることなど思いもよらないであろう。
ガルスは遥か下のランドットを見下ろし、叫んだ。
「どこ探してやがるッ!!こっちだランドットッ!!」
ランドットは突然上空から名前を呼ばれ、ハッと振り返る。そのランドットの瞳を、鋭い太陽光線が貫いた。ガルスはちょうど太陽の中にいたのだ。
「うッ!?」
ランドットは眩しさに思わず目を背けた。
「しっかり掴まってろ!」
「うん!」
小人に呼びかけると、ガルスは一気に急降下した。
時速130キロものスピードでランドットのもとへ。狙うは真正面に捉えた、ランドットの大きな目。
ガルスの鋭い鉤爪が、ランドットの左目に突き刺さった。
「ぎあぁあああッ!!」
直後に響くランドットの悲鳴。
ガルスは爪を引き抜くとすかさずランドットの瞼に止まり、さらに嘴で再び目玉をつつく。
「ぎぁっ!!がっ!!」
目をつつく度に零れる悲鳴。ランドットは狂ったように頭を振ってガルスを振り払おうとするが、ガルスは鉤爪で瞼をがっちりと掴んで抵抗する。
やがてランドットの体から力が抜け、みるみるうちにしぼんでいった。もとのムクドリの姿に戻ると、ガルスはその体を爪で捕らえた。
「ちくしょう…まさか…私の魔法が敗れるとは…!」
ランドットは力なく呟く。
「き…貴様の名など興味も無かったが…聞いておこうか」
「ガルスだ。冥土の土産に教えてやるよ」
「ガルスか…忘れぬぞその名…だが…私はまだ死ぬわけにはいかん…!」
ランドットはそういうと、不敵に微笑んだ。
「覚えてろ…金色の魔女に喧嘩を売って、この森にただで居られると思うなよッ!!」
そう叫ぶと、ランドットの体が一瞬で砂に変わる。砂は指の間から流れ落ち、風に乗ってどこかに飛んでいった。
「やれやれ、何だったんだありゃあ」
ガルスは折れて無惨に横たわる木の上に止まり、羽を伸ばした。
「あのー…」
小人がガルスの頭の上から声をかける。
「ん?ああ、ほらよ」
ガルスは頭を下げて小人を木の上に下ろした。
「あ、ありがとございます…。す、スゴいね。あんな大きな相手倒すなんて」
「何なんだあいつは」
「私もよくわかんない。なんか知らない間にさらわれちゃってて」
「なんだそりゃ?…それにしても、どうしたもんかな、これから」
ガルスが溜め息混じりに倒れた木々を見回す。何だかマズい相手に喧嘩を売ったようだが、自分が選んだことだ。今更悔いたって後の祭りだ。そんなガルスの心中を察知してか小人が申し訳なさそうにいう。
「あの…本当に良かったの?私なんか助けて」
「別にお前の為じゃねえよ。さっきも言ったろ、あのままだと俺が後味悪いからやったの」
「そ、そう…?…でも、やっぱりそれでも嬉しかったよ。ありがとう」
小人はそう言うと満面の笑みを浮かべた。
「そういえば、まだお前の名前聞いてなかったな」
「あ…私、アリク。アリクよ。えと…ガルス」
「アリクか、変な名前だな。あ、それとお前、雄か?雌か?」
「え…め…雌?かな、一応」
「雌か!いやあ人間の雄雌はよくわからん」
ガルスがそう言うと小人、アリクは複雑そうに首を傾げた。
とりあえずこれからどうするかは追って考えよう。ガルスにとってそれよりも今は、喰い損ねて空っぽな腹をどうやって満たすかが先決だった。
所変わって、森の西北。おびただしい数のカラス達が群れを成して騒いでいる。その中央に、一際大きな一羽のカラスがいた。
「何だと、あのガルスが!?」
そう部下のカラスに怒鳴りつけたのは、この森一帯のカラス達を束ねているボス。
「黒き爪」ことクロウクロウだった。
「あの野郎ッ…今まであの態度だけでも目を瞑ってやってたが、とうとう俺の部下にまで羽(て)上げやがったかッ…!!」
クロウクロウはそう言うとぎりり、と嘴を鳴らした。
そして周りの部下達を見やると
「てめえら何やってる!!今すぐガルスを見つけてこい!!見つけたら俺に報せろ!!わかったか!!」
と怒鳴り散らした。
カラス達は一斉に飛び立った。
「クソッ!!覚えてろよガルスッ…!!」
クロウクロウの黒い目に、鋭い眼光がたぎっていた。
一話はここまでです。
ありがとうございました
冷えろなのは残念だがGJ
童話っつーか漫話っつーか、軽く懐かしさのある世界観がふっつーに面白いw
これからの展開も楽しみ、がんばってつかぁさい
おつ
続いて投下。
前回に引き続き、人外アパートで大学生×人魚で今回は微エロです。
NGは人魚と魔術師見習いで。
夢にまで見た、大学生活が始まる。
浮かれすぎて寝付けなかったせいで、妙に頭が冴えている。広海は前日に必要な教科書やノートを詰めたショルダー
バッグを提げ、寝室にした六畳間の襖を開けて居間に入った。カーテン越しに差し込む薄い日差しに照らされている
ビニールプールの中では、人魚、ミチルが上半身を起こしていた。退屈そうだったが、広海が起きてきても横目に窺う
だけだった。広海は一応挨拶をしたが、ミチルは反応しなかった。いつものことだけど寂しいな、と広海は思いつつ、
カーテンを開けてから窓を開き、空気を入れ換えた。朝の冷たい空気にミチルは眉根を歪めたが、文句は言わなかった。
広海は朝食の支度をするべく居間に隣接した台所の冷蔵庫を開けた。大学に入学する前の二週間で他の住人達とも
親しくなり、そのおかげでアビゲイルからお裾分けを頂けるようになった。課題やら何やらでろくに料理をする時間がない
新一年生にとってはありがたい。昨夜の余りである白飯と在り合わせで作った味噌汁をよそり、アビゲイルの作った
アスパラのお浸しと肉じゃがを出した。それを食べながらミチルを窺うが、やはりミチルは黙り込んでいて、目線すらも
向けてくれなかった。広海は一通り食べ終えてから、ミチルに話し掛けた。
「食べる?」
「何を」
「だから、朝飯」
「なんで?」
ようやく口を開いたミチルは、長い髪を掻き上げながら振り向いた。
「そんなもの、食べたいわけがないじゃない」
「じゃあ、何がいいのさ」
「生魚」
「でも、絞めてあるのはダメなんだろ? この辺で売ってる魚は全部そうだから、まず無理だよ」
「釣ればいいじゃない」
「大学に行かなきゃならないんだけど」
「だったら、何もいらない」
「解ったよ」
広海は苦笑いしつつ、食器を片付けた。地元であれば、ミチルは常に海で泳いでいたから生魚は調達するまでもなく、
ミチルが自分で捕まえて食べていたから何の問題もなかったし、海で生きる彼女に陸のものを食べさせようとは思った
こともなかった。口に合わなかったらからと怒られては困るからだ。だが、魚を釣るにしても、どこに行けばいいのやら。
身支度を終えて出発した広海は、大学に向かう道中で近場で釣りが出来るポイントと釣りに出る日取りを考え込んだ。
考え込みすぎて、私鉄の乗り換えを一本間違えそうになった。
言った傍から後悔して、ビニールプールからずり落ちかけた。
広海の足音がアパートから遠のいたことを確かめてから、ミチルはばんばんとビニールシートを敷いた畳を叩いた。
どうして、一緒に同じものを食べたい、とすら言えないのだろうか。そんなことを言って広海を振り回したところで、彼の
勉強を妨げてしまうだけだ。大体、そんなことを言っただけで泡になるのだろうか。だけど願望は願望だし、もしもこれで
泡になっちゃったら、と思えば思うほどにドツボに填り、ミチルは頭を抱えて髪を掻き乱した。
「どうしてこうなるのぉっ!」
泡にさえならなければ、いくらだってなんだって言ってやるのに。ミチルは情けなさのあまりに泣きたくなってしまい、
水面に顔を付けて上半身を没していった。ごぼごぼと泡を吐き出していると、庭先から掃き出し窓をノックされた。
濡れた長い髪を顔に貼り付けながら顔を上げると、銀色の女性型全身鎧、アビゲイルが立っていた。ミチルは上半身を
伸ばして掃き出し窓に手を掛けて開けると、アビゲイルが丁寧に挨拶してきた。
「おはようございます」
「ええ、ああ、おはようございます」
予想もしていなかった事態に戸惑いつつもミチルが返すと、アビゲイルは笑った。
「まあ、素敵な人魚さん。綺麗な尻尾をお持ちですね」
「それはどうも」
褒められれば悪い気はしないのでミチルは笑みを浮かべようとするが、広海の前ではなるべく表情を動かさないように
しているので表情筋の動きはぎこちなかった。アビゲイルはお情けのような幅の縁側に腰掛け、膝の上で手を揃えた。
「お名前はなんて仰るの?」
「ミチルです。あなたは確か、アビゲイルさんって」
「そうです。二階で祐介さんのお部屋に住まわせて頂いているの。でも、どうして私を御存知なのかしら?」
「だって、昨日の夜、うちにお裾分けにいらしたじゃないですか」
「あら、そうだったわね。私のお料理、広海さんには喜んで頂けたかしら」
「ええ、とても」
ミチルは当たり障りのないことを答えていたが、次第に自分に苛立った。アビゲイルは優しく、人当たりが良く、おまけに
料理が上手いと来ている。何も出来ずに水に浸かっているだけの自分と比較する以前の問題だ。だが、陸に上がった人魚が
何も出来ないのは覆しようがない事実なのだ。
「どうかなさったの?」
アビゲイルはミチルの様子を窺ってきたが、ミチルは表情を変えないように努めた。
「いえ、なんでも」
「大学が始まってしまったものね」
アビゲイルは庭木すらない狭い庭を見渡すように、ヘルムを上げた。
「祐介さんも春休みが終わったから大学に行くようになったし、ヤンマさんは御仕事で茜ちゃんも高校だしで、昼間が
寂しくなってしまって。だから、ミチルさんとお話し出来たらなぁって思って来てしまったんだけど、迷惑だったかしら」
「そんなことはありません。私も退屈していたところでしたから」
「そう、だったら良かった」
アビゲイルは嬉しそうに頷き、かすかに首関節を軋ませた。この愛想の十分の一でも自分に備わっていたら、とミチルは
羨まずにはいられなかった。そうすれば、広海に対して少しでも優しくなれるかもしれない。広海に本心を知られたくないのは、
思いを伝えたら泡になって消えてしまう時に彼を傷付けてしまいたくないからだ。ミチルの一方的な感情ではあるだろうが、
好かれていたことを知ったら何かしらの思いは湧くだろう。恋人同士になれなくてもいい、傍にいるだけで充分だ、とミチルは
思おうとしたが、アビゲイルの世間話に入り混じる惚気を聞いてしまうと胸が痛んだ。
隣の芝生は青いどころか、花が咲き乱れていた。
大学初日は、さすがに疲れてしまった。
やるべきことをやるだけで一杯一杯で、回りを見渡す余裕もなかった。同じ講義を取り、近くの席に座っていた面々とは
一応友達らしい関係にはなれたが、まだまだこれからだ。サークルに入ることもあるだろう、ゼミに参加することもあるだろう。
人付き合いは得意な方ではないが良い機会だから明日からも頑張ろう、と意気込みながら、広海は大股に歩いてアパート
もえぎのを目指した。が、途中で立ち止まり、ミチルが食べたがっていた生魚のことを思い出した。人魚はれっきとした生き物
なのだから、何も食べないわけにはいかないだろう。かといって、近所のスーパーで買った魚ではもっと機嫌を損ねてしまう。
広海はその場で立ち止まってしばらく考え込んだが、ミチルだってとにかく腹が減れば陸のものも食べるだろう、と思い直した。
102号室に戻り、鍵を開けて部屋に入った広海は、実家の台所を思い起こさせる暖かな料理の匂いが立ち込めていることに
気付いた。ミチルか、と一瞬思ったが、直立歩行出来ない彼女は台所には立てないはずだ。
「お帰りなさい、広海さん」
居間から顔を出したのは、新妻じみたエプロン姿のアビゲイルだった。
「…あの、なんで僕の部屋に?」
広海が疑問をぶつけると、ビニールプールでくつろぐミチルがぞんざいに答えた。
「見りゃ解るでしょ、夕飯を見繕いに来てくれたのよ」
「そろそろお帰りになるって思って、お料理を温めておいたんです」
アビゲイルがにこにこすると、広海は呆気に取られつつも礼を言った。
「どうも、ありがとうございます。でも、玄関の鍵は」
「窓からよ」
ミチルが掃き出し窓を示すと、アビゲイルは会釈してから、その掃き出し窓に手を掛けた。
「それじゃ、私は祐介さんのお部屋に戻りますね。御邪魔してしまってすみませんでした」
「ああ、いえ、ありがとうございました」
広海は訳が解らないまま、アビゲイルを見送った。程なくして階段を昇る足音が聞こえ、二階の202号室の鍵を開ける
音も聞こえてきた。広海は様々な疑問が去来したが、重たいバッグを下ろしてからミチルに尋ねた。
「ミチル、アビーさんといつのまに仲良くなったんだ?」
「今朝よ。暇潰しに話し込んじゃってね」
ミチルはビニールプールから身を乗り出し、テーブルで湯気を昇らせるカレイの煮付けと菜の花の芥子和えを指した。
「冷める前に食べたいんだけど」
「え?」
あれだけ嫌がっていた陸のものを食べるのか、でも魚だからいいのか、と広海が悩むと、ミチルは唇を曲げた。
「食べたくないの?」
「いや、うん、そんなことないよ、ちょっと待ってて」
広海は慌てて六畳間に入り、上着を脱ぎ、荷物を置き、部屋着にした高校時代のジャージに着替えながら、胸が高鳴った。
ミチルと食卓を共に出来るだけでも嬉しすぎる。これまでは一緒に食べようとすらせず、広海の目に付かないところでミチルは
食事を取っていた。それなのに、同じ食卓で同じものを食べてくれるとは。広海は顔がだらしなくにやけてきたが、そのせいで
また不機嫌になられては困るので、気合いを入れて表情を固めた。
その頃、居間のミチルは気のないふりをしながらも広海が気になって仕方なかった。不慣れな箸を持つ練習をしながら、
広海が出てくるのを今か今かと待ち侘びていた。以前から陸のものは食べていたし、広海の手前では素直になれないので
誤魔化していたが、ずっと前から一緒に同じものを食べたかった。出来れば自分で作ってやりたかったが、下半身が魚では
台所に立つことも出来ないし、料理などしたことがない。だから、アビゲイルに夕飯の支度を頼んでみたら快諾してくれた。
ますます彼女の優しさと自分の情けなさが身に染みてきたが、背に腹は代えられない。
襖が開き、ジャージ姿の広海が戻ってきた。広海は外気温と室温との気温差で白く曇ったメガネをジャージの袖で拭いて
から、ミチルに向いた。ミチルは驚いたのか、手にしていた箸を滑らせてテーブルの下に落としてしまったが、いつものような
気のない表情で広海を見上げた。その冷たい眼差しに広海は期待がいくらか萎んだが、テーブルの下から箸を拾って渡した。
「ミチルの食器、アビーさんが出してくれたのか?」
「そうよ」
そっぽを向きながら箸を受け取ったミチルは、テーブルを掴んでビニールプールに引き寄せた。広海は既に温まっている
味噌汁と炊きたての白飯をよそったが、ミチルの茶碗と汁椀を用意していて良かったとつくづく思った。彼女はいらないと
言い張ったが、自分のものと混ぜて買ってきた。二人分の椀を盆に載せて運び、食卓に並べてから、広海は腰を下ろした。
二人揃って食べ始めたが、案の定ミチルは箸を使うのが下手だった。水掻きが張った指では持ちにくいらしく、指の間から
何度も滑らせては床に転がしたり、ビニールプールの中に落としてしまった。そんなことを繰り返せば、当然ミチルは機嫌が
悪くなり、眉間に刻まれるシワが深くなった。見るに見かねた広海は、自分の箸を置いて手を伸ばした。
「こうすればいいんだよ」
ミチルの右手を掴むと、広海の指に予想以上の冷たさが訪れた。普段は意識したことはなかったが、人魚は人間よりも
遙かに体温が低い。まともに彼女の肌に触れられた嬉しさで本題を忘れかけたが、広海はミチルの指を曲げさせて箸を
きちんと持たせてやり、手本を見せるために自分の箸を動かした。
「ほら」
「ん…」
ミチルは形だけはそれらしく箸を持ち、ぎこちなく箸を開閉させた。
「こう?」
「そうそう、すぐに慣れるから大丈夫だよ」
広海が頷くと、ミチルは自分の茶碗を持って顔を背けた。
「馬鹿にしないでくれる」
「そんなつもりじゃないんだけどな」
口の中で呟きつつ、広海はカレイの煮付けに箸を入れた。ミチルは水色の小さな魚の模様が付いた茶碗を抱え、暖かな
白飯を食べていたが、広海に握られた右手に残る暖かさを意識しすぎて味が解らなくなってしまった。程良い甘辛さの煮付けも
まろやかな芥子和えも、ひたすら噛んで嚥下するだけだった。早く食べ終えなければ居心地の悪い食事が終わらない、しかし、
食べ終えればせっかくの時間が終わってしまう、とミチルは相反する気持ちの狭間でぐらついていたが、そのうちに茶碗の中身が
空になり、汁椀も空になり、おかずが盛られた器も空になり、つつがなく夕食が終わった。
二人の会話は、ほとんどなかった。
広海が風呂に行くと、途端に寂しくなった。
ミチルは水を入れ替えたビニールプールの中で横たわり、下半身を両腕で抱えていた。見えるのはビニールプールの薄い
壁と蛍光灯に照らされた水面だけで、身動きするたびに起きる薄い波が肌を舐めている。音がないと物寂しいので付けたままの
テレビの音が、両側頭部に付いたヒレの下で露出している鼓膜を震わせたが、内容はほとんど解らなかった。広海が入っている
浴室の物音が気になって仕方ないからだ。広海が風呂に入ると、いつもそうだ。目的は違うとはいえ、同じ水の中に入っている
のだから、つい意識してしまう。出来ることなら同じ浴槽に入りたいし、構ってもらいたいが、人間用の風呂の温度は人魚には
熱すぎてのぼせてしまう。かといって、人魚に合わせた温度では、人間には水風呂にも等しい温度になってしまうので、元より
無理な話だ。だが、それでも、同じ風呂に入って構ってもらうことを考えずにはいられず、ミチルは顔を伏せて気泡を零した。
「お風呂…」
ため息の代わりにエラに深く吸い込んだ水を吐き出し、ミチルは人間で言うところの膝に当たる部分に額を当てた。
「一緒に入りたいよぉ」
だが、そんなことを広海に言えば、今まで保ってきた体面が崩れてしまう。それどころか、面倒な女だと思われてしまうかも
しれない。欲望と躊躇いの狭間で思い悩み、ミチルは何度か底の浅い水中から顔を上げようとしたが、いざ出ようとすると
今度は恥ずかしくなってきた。人魚は人間のように服を着る習慣がないので、常に素肌を曝している状態ではあるのだが、
訳もなく羞恥心が湧いてきた。恥ずかしすぎて目眩がしたミチルは、結局体を起こせず、ごぼごぼと荒く水を吸っては吐いた。
両手で抱えていた下半身を伸ばしたミチルは、広海の気配が浴室の中にあることを確かめてから、そろりと指を伸ばした。
荒れ狂う海も泳ぎ切れる筋力を備えた下半身を包むウロコを探り、人間で言うところの股関節よりも少し下に隠れている
小さな穴、産卵管に指の先を差し込んだ。小さな泡が一粒だけ上がり、弾けると、ミチルは片方の手で口元を押さえながら
産卵管を掻き混ぜた。本来なら、卵を産み落とすためだけの器官であり何も感じるはずのない場所だが、人間の真似事を
している間に快感のようなものを感じるようになっていた。人魚の交尾は他の魚類に違わず、海中に産み落とした卵に精子を
掛けるので、基本的に性交は行わない。だから、人間の繁殖方法を知った時は無駄だとしか思わなかったし、快楽を伴う
繁殖も無益だとしか思えなかったが、今では人間の繁殖方法は素敵だと考えている。だからいずれ自分も広海と、とは思うが、
そんなことを言い出せるはずもない。だから、自分を慰めるしかなかった。
水よりも少し粘り気の強い体液が滲み、産卵管の内壁を擦る指の滑りが良くなった。探るうちに見つけ出した弱い部分を
擦り、抉ると、得も言われぬ感覚が脊髄から脳に昇り、尾ビレの先が勝手に揺らいでさざ波が立った。触り始めた時は何も
感じなかったのに、繰り返しているうちに心地良さを感じるようになった。卵を産み落とすためだけの管なのに、その管の
内に本来は入るはずもないモノを差し込まれたら、などと考えてしまったら尚更で、ミチルの指がきゅっと締め付けられた。
特に弱い部分を押すようにしてなぞると、上り詰めた快感が弾け、ミチルは普段よりも激しい給排水を行いながら弛緩した。
つぷり、と自分の内から指を抜くと、粘り気のある体液が水に溶けた。それを見つめていると快感の波が遠ざかり、今度は
空しくなってきた。こんなことをするくらいなら、真っ向から広海を求めたい。自分の指などでは、心身の寂しさが埋まるどころか
深まるばかりだ。かといって、体を差し出して性欲を処理されるだけの人形には成り下がりたくない。
呆れるほど我が侭な恋だ。
また、意味もなく風呂が長くなった。
広海はのぼせ気味の頭をタオルで拭ってから、湿り気で曇りかけているメガネを取って掛けた。風呂の水音に紛れさせて
はいるが、自慰を気付かれていないか不安になる。襖一枚隔てただけの寝室ではすぐに感付かれるだろうし、そんなことに
なれば汚いだの馬鹿だの何だのと言われて半殺しにされるかもしれない。広海は風呂による上気とは異なる熱と強張りが
残っている下半身を下着に収め、嘆息した。人魚は服を着ないのが普通だとはいえ、年がら年中素肌を曝されていては
気にならないわけがない。増して、それが好きな女の子では。だが、服を着てくれ、と言ったが最後、二度とあの形の良い
乳房も素肌も見られなくなったら、と考えてしまうため、言うに言えないままここまで来てしまった。
「色んな意味で死にたい…」
凄まじい羞恥心に襲われ、広海は洗面台に縋って突っ伏した。好きなら好きだと言えばいいのに、何も言えないものだから
すっかりミチルが性欲処理の材料になってしまっている。地元にいた頃は多少は物理的な距離が離れていたので、ここまで
罪悪感は感じなかったが、今は同じ空間で寝起きを共にしているのだから感じざるを得ない。根本的な原因は広海自身が
情けないからなのだが、かといって真っ向から迫るのもどうかと思う。変態だの何だのと罵られて引っかかれたら、と思うが、
それはそれで、とも思った。こうも徹底的に嫌われていると、嫌われ慣れすぎて彼女が可愛く思えるのは恋心の成せる業だ。
だが、広海がミチルに抱いている感情は恋と言うにはいくらか歪んでいる。自分が好きだから、というだけで、ミチルの自由を
奪い、陸の世界に縛り付け、こうして海のない都会に連れてきてしまった。本当に好きなら、ミチルを上京先のアパートには
召喚せずに海の世界で暮らさせているはずだ。それなのに、広海の我が侭でミチルを馴染み深く広大な海から引き離し、
消毒された淡水を入れた狭いビニールプールに押し込めている。文字通り、飼い殺ししている。
自己嫌悪をぐっと堪え、寝間着に着替えた広海が居間に戻ると、ミチルは眠っていた。ビニールプールの円形に添って
体を丸め、長い髪を水底に広げ、下半身を内壁に沿わせている。顔は完全に水中に没し、エラが僅かに開閉していた。
「ミチル」
水に手を差し入れた広海は、水温と同じ温度のミチルの頬を丁寧になぞった。
「ごめんな」
言うべき言葉は、他にもあったはずだ。だが、それ以外に言えることもなく、広海は彼女が没する水から手を抜き、指から滴る
雫を一つ二つと舐め取った。何の夢を見ているのか、ミチルの寝顔は険しかった。それが余計に罪悪感を煽り立ててきたので、
広海は寝室に入って襖を閉め、教科書や専門書に囲まれたテーブルに広げたままの課題に取り掛かった。
一日でも早く、一人前の魔術師になればミチルを解放してやれる。彼女と交わした主従の契約を解除するために必要な魔法は、
広海が有する生まれつきの魔力量では到底不可能な高度な魔法だった。だから、技術と知識を磨き、小手先の魔法だけではなく
本物の魔法を操る魔術師となり、ミチルを元在る世界に戻してやるのだ。そのためには、もっともっと勉強しなければ。
それが、ミチルへの愛の証だ。
以上。
どっちもどっちな片思いのような両思い。
GJ!
お互い真剣だからこそすれ違う二人が良い。
>>510面白くない!GJじゃない!バカップル可愛くない!
引き続き投下。
人外アパートで、大学生×人魚の微エロです。エロと言えるかすら怪しいけど。
NGは人魚と魔術師見習いで。
物の見事に、ドラム缶が両断された。
刃物のような切り口は熱して赤らんでいたが、すぐに元の色味に戻って滑らかな断面が現れ、上半分と下半分は
永久の別れを告げるように前後に転がった。鮮やかにドラム缶を切ったブライトウィングは、普段は宇宙征服を
目論む悪の機械生命体軍団、デスロニアンとの戦闘で酷使しているレーザーブレードを下げた。人間大の大きさに
変化している彼は、いくらか不可解げな顔ではあったが、ドラム缶の切断を頼んできた広海に向いた。
「これで良かったのか?」
「充分です。それと、切断面を丸くしてもらえるとありがたいんですけど」
ドラム缶の下半分を転がして立たせてから、広海が切断面を指すと、ブライトウィングはレーザーブレードの出力を
調節して刃物のような切断面に撫で付けて丸くしていった。
「了解した」
アパート裏の狭い庭で行われる二人の作業を見守るのは、203号室に住まう正義の戦士、ブライトウィングの
妻である織部綾子と、102号室の掃き出し窓から庭を見下ろしているミチルだった。ブライトウィングは一通り作業を
終え、レーザーブレードが接していた面から熱が抜けたことを確かめている。広海はドラム缶の中が汚れていないか
どうかを調べてから、黒の油性ペンを取り出して魔法陣を書き加えた。ドラム缶の内側に書かれた魔法陣に広海が
魔力を込めると、ドラム缶の底から水が沸き上がり、八分目近くまで溜まった。
「やっぱり魔法って便利ねぇ」
綾子が感心すると、広海は少々照れた。
「僕が使えるのは基本的なものだけですけど」
「所用があると言うから何かと思ったが、君は一体何をしようと言うのだ?」
ブライトウィングはレーザーブレードを背面部に収めてから、訝しげに水が溜まったドラム缶を見下ろした。
「ミチルを外に連れ出してやるためには必要なんですが、僕の魔法じゃ作れなくて。ドラム缶を分けて頂いただけでなく、
切って頂いて、お手数掛けてすみません」
ドラム缶に魔法陣を新たに書き加えた広海は、それを浮かばせ、数日前に入手した中古の折り畳み式リヤカーに置いた。
「いいのよ、気にしなくて。メタロニアンの隊員達が貴重な化石燃料を湯水の如く飲むもんだから、ドラム缶なんて基地中に
ごろごろしてるし、デスロニアンの総統のサルドニュクスが最終決戦の末に異次元宇宙に消え去ってからはデスロニアンの
動きも大人しいし、地球は割と平和だしで、訓練と国連との定例会議に出席する以外はブリィは至って暇なんだから」
綾子が笑うと、ブライトウィングはやりづらそうに口元を曲げた。
「それはそうかもしれないが…」
「で、どこに行くつもり?」
ミチルが居間に置かれたビニールプールから顔を出すと、広海はリヤカーに乗せたドラム缶を魔法で固定した。
「この近くに川があってさ、桜が咲いているんだ。川の水深も深かったから、ミチルが泳げるんじゃないかって思って」
「あら、いいわね。お花見ね」
綾子はそう言ってから、ブライトウィングを横目に見やった。
「なんだその目は」
ブライトウィングが妻に聞き返すと、綾子は顔を背けた。
「いーえ別に」
「去年のことをまだ根に持っているのか、君は」
「いーえ全然。どうせ地球人は、季節変動による植物の繁殖活動に勝手に感情移入する知能レベルの低い種族だものねぇ」
「あ…あれはだな、情緒的な感覚が今一つ認識出来ていなかったからであって」
「だから、今年はオペレーター仲間とだけでお花見に行ってくるわよ。二度とブリィなんて誘わない」
「頼む、そう怒らないでくれ」
すっかり拗ねた綾子に、ブライトウィングは困り果てている。その姿は地球の平和を守る正義の戦士からは程遠く、
広海は変な笑いが浮かんでしまった。微笑ましいと言えば微笑ましいが、綾子の話を聞く限りはブライトウィングに
非があるとしか思えない。ブライトウィングはどうしたものかと思考回路を働かせながら綾子の様子を窺っていたが、
綾子の前に回ってその両肩を掴み、向き直った。
「では、綾子。私は君に何を与えれば良いのだ」
「そういうのじゃダメ」
「では、一体」
ブライトウィングが迫ると、綾子はにんまりして夫の額部分の装甲を小突いた。
「今年こそ、新婚旅行のやり直しをさせてもらうわよ。敵が大人しい間に、溜まりに溜まった有休使って思い切り遊んで
やるんだから! どう、文句ある?」
「いや、全く」
「それでよろしい。あなたの翼で連れて行ってちょうだい」
「無論、ファーストクラスでな」
ブライトウィングは軽口を返してから、あ、と広海とミチルに気付き、綾子は照れ笑いした。
「じゃ、そういうことで。またね、広海君、ミチルちゃん」
「では、さらばだ!」
照れ隠しに敬礼したブライトウィングは、綾子を横抱きにすると急上昇した。そのうちに彼の白い機影が巨大化し、
戦闘機に変形すると、暴風と轟音を残して飛び去った。照れるぐらいなら人前でやらなきゃいいのに、と広海は思ったが、
口に出すほどのことでもなかったので、リヤカーを引っ張って掃き出し窓の前に移動させた。
お花見、と聞いてミチルは浮かれた。だが、懸命に表情筋を固めて顔には出さず、全力で興味のないふりをしていた。
桜といえば、海で暮らしていた頃は遠目に見るだけだった。広海の地元の海岸沿いには生えていなかったし、生えていても
高台にあり、遠くにぼんやりとしか見えなかったが綺麗な花だと思っていた。だから、一度近くで見てみたいと思っていた。
しかも、広海に連れて行ってもらえるなんて。嬉しすぎて尾ビレが勝手に動いてしまい、ミチルは両手で尾ビレを押さえた。
こんなことではしゃいだら、子供っぽいと思われてしまう。
「ミチル」
広海は靴を脱いでビニールシートを敷いた居間に上がると、近付いてきた。
「ちょっとごめん」
袖を捲った広海は濡れることも構わずにミチルを抱えたので、ミチルは驚きすぎて固まった。無論、嬉しいからだ。
文句の一つでも言っておかなければ体面が保てない、と考えるが、心臓が暴れて喉が詰まって言葉が出てこない。
広海は多少苦労しながらミチルを運び、水を張ったドラム缶の中に入れた。ビニールプールよりも若干冷たく、狭いが、
充分エラ呼吸出来るほどの深さがある。意識しすぎて黙り込んだミチルが俯いていると、広海は濡れた腕を拭った。
「やっぱり、魔法で転送した方が良かったかな」
まさか、あの二人が羨ましくなったから、とは死んでも言えまい。広海は居たたまれなくなってしまい、ミチルの横顔から
目を逸らした。まともに抱きかかえたのはこれが初めてで、非力な自分で持ち上げられるかどうか不安だったが、ミチルは
予想以上に体重が軽かった。人間とは骨格も違えば筋肉量も違うからなのだろうが、華奢で、繊細で、おまけにやたらと
いい匂いがした。潮の匂いのようでいて、年頃の女性の悩ましい匂いでもあり、忘れがたい感覚だった。広海はぎこちない
足取りで自室に戻ると、戸締まりのために掃き出し窓の鍵を閉め、濡れた服を着替えて外出するための身支度をしつつ、
平静を取り戻そうと理性を酷使したが、所詮は十八歳なのでそう上手くいくわけもなく、ミチルの目がないのをいいことに
盛大に身悶えた。敷きっぱなしだった布団を相手にしばらくもんどり打ってから、広海は何事もなかったかのような態度を
作って玄関から出ると、庭に待たせているミチルの乗ったリヤカーの元に戻ってきた。
「ミチル」
「行くならさっさと行けば?」
五右衛門風呂のような状態のミチルがあらぬ方向に目を向けていると、広海はショルダーバッグを探った。
「気に入るかどうかは解らないけど、これ、着ていった方がいいんじゃないかな」
「何を?」
「水着。上だけだけど」
広海が取り出したのは、白地にフリルが付いたタンクトップビキニだった。エラ呼吸への配慮なのか、締め付けの緩い
Aラインだった。振り向いたミチルが目を丸めると、広海は自信なさげに目を伏せた。もちろん、ミチルは跳ね上がらん
ばかりに嬉しかった。プレゼントなんて初めてだ。しかもそんなに可愛いものを。だが、素直に喜んでは今までの頑張りが
台無しだ。しかし、踏ん張りが効かなくなって頬が緩んできたので、ミチルはどぼんと水中に没して深呼吸して気持ちを
落ち着けてから、水から顔を出し、仕方なさそうな顔をして広海の手から水着を引ったくった。
「仕方ないわね」
「良かった、着てくれるんだ」
「このまま外に出たくないだけ」
ミチルは水着を被り、カップの中に乳房を収めてから、長い髪を引っ張り出して整えた。
「じゃ、行こう」
広海は満面の笑みを浮かべると、リヤカーを引っ張った。ミチルが受け取ってくれたことだけでも嬉しかったのだが、
水着が似合っていることが尚嬉しい。趣味が悪いだの何だのと罵られたら再起不能に陥るところだが。アパートもえぎのの
敷地から出た広海は、桜並木のある川沿いを目指して出発した。事前に施しておいた魔法のおかげで、リヤカーに載せた
ドラム缶とその水の重量は軽くなっていて、広海の腕力でも容易く牽引出来た。擦れ違った人々からは物珍しげな視線を
向けられたが、気にならなかった。ミチルも大して気にしていないらしく、進行方向だけを見ていた。
しばらく歩くと、住宅街の先に柔らかな色彩の固まりが見えてきた。通り掛かる人々の数も増えてきて、彼らは似たような
目的で川沿いを目指しているようだった。あまり人の数が多いとミチルが気にするだろう、と判断した広海はちょっと方向を
変え、桜並木と花見客が密集している地点から離れるために上流に向かった。桜並木は長々と続いているし、何も人が
多い場所でなければ桜が楽しめないわけではない。なので、リヤカーを引っ張る広海は土手の下に添って歩いていったが、
陽気がいいのと休日であることも相まって歩けども歩けども花見客が途切れない。今更ながら、都会だなぁと感じ入った。
それから、広海は小一時間歩いた。道に迷わないように土手の下の道を進み、進み、進んだが、人間が途切れた頃には
桜並木も途切れてしまった。土手の上までリヤカーを引っ張り上げた広海は、リヤカーのスタンドを立たせてから、その場に
座り込んで汗を拭った。魔法で軽くしてあるとはいえ、重量はちゃんとある。それを小一時間も引っ張ってしまうと、ろくに
体を鍛えていない広海では疲れて当然だ。道中にあった自動販売機で買った缶ジュースを開け、喉を鳴らして飲み干した
広海は、遙か彼方で花見客に囲まれている桜並木を見つめた。
「なんか、ごめん」
「何が」
「あんなに人がいるとは思わなくて」
広海は胡座を掻き、情けなく背を丸めた。ミチルはドラム缶から上半身を乗り出し、桜並木に目を凝らした。
「ていうか、誰もろくに桜なんて見てないじゃない。酒を飲んで騒いでいるだけ」
「まあ、大抵のお花見がそんなもんだから。特に、いい歳した大人は」
「だったら、なんでお花見なんて言うの? ただの宴会なのに」
「僕に理由を聞かれても困るんだけど」
広海は語尾を濁し、苦笑いした。ミチルはあれだけ嬉しかった気持ちが萎み、ドラム缶の中に潜った。せっかく桜を
広海と一緒にゆっくり眺められると思っていたのに。なんだか悔しくなったが、こればかりは広海に文句を言っても
どうにかなるものでもないし、文句を付けてはさすがに可哀想なので、ミチルは口とエラから泡を零して眉根を顰めた。
広海も落胆していたが、幅広の川を見下ろした。
「桜が近くで見られないのは残念だけど、ちょっと泳いでいったら?」
「そうね」
ミチルは上半身を出し、川面を見下ろした。海に比べれば底も浅ければ水も濁りがちではあったが、泳げないほどの
水質ではなさそうだ。それじゃ、と広海は空き缶を上着のポケットに押し込み、立ち上がってリヤカーを再び引っ張った。
河川敷に下りる坂を下りて川に近付き、リヤカーが止まると、ミチルは下半身で力強くドラム缶の底を蹴り付けて跳躍し、
細身の肢体を宙に躍らせた。美しい弧を描いて川面に飛び込んだミチルはたっぷりと解放感を味わってから、川から顔を
出して広海を見上げた。すると、前髪に桜の花びらが一枚付着したので、ミチルは上流に目を向けた。
「あっちにも生えているのかしら、桜」
「行ってみる?」
「泳ぐついでにね」
ミチルはまた水中に身を没し、尾ビレで力一杯水を叩いた。広海はリヤカーを引いてミチルを追い掛けようとしたが、
人魚の遊泳速度には到底敵うはずもなく、ミチルの後ろ姿はあっという間に上流に向かっていった。間隔は広がる一方で、
途中から広海はミチルに並ぶことを諦めて歩調を緩めた。自由に水中を泳ぎ回るミチルの肢体は、海の宝石と称される
種族に相応しい美しさだった。上流へと進んでいくと、桜並木として盛る木々よりも若く細い桜が一本だけ生えていた。
水中から顔を出したミチルは、川面へ精一杯枝を伸ばす細い桜を見上げ、遅れてやってきた広海も桜の若木を見つけた。
「植樹されてから、まだそんなに時間が経っていないんだ」
「でも、花は咲くのね」
「そりゃ、桜だからね」
広海はリヤカーを止め、幼さすらある若木越しにミチルを見下ろした。桜に見入るミチルはどこか表情が緩んでいた
ので、広海まで釣られてしまった。春の空気は柔らかく、明るい日差しに照らされるミチルは薄暗い居間で見るよりも
格段に美しかった。もちろん、室内でも美貌に陰りはないのだが、狭苦しいビニールプールや浴槽で縮めている肢体や
長い髪が解放されているからか面差しも清々しげだった。それを感じてしまうと、広海はまた罪悪感が湧いてきた。
「ねえ、ミチル」
「何よ」
ミチルが素っ気なく答えると、広海はリヤカーに座って川面を見渡した。
「今度、釣りに行こうか」
「それは海?」
「そう、海。僕が先に電車で移動して、その場にミチルを転送する。それなら君も疲れないだろ?」
「考えておいてあげる」
「うん。僕もよく考えるよ、いつ頃にどこに行けばいいのかとか」
「せいぜい大物を釣ることね」
ミチルは身を翻し、泳ぎ出した。決して深くない川底を目指して潜ると、広海の影は遠のいた。嬉しいことが続きすぎて、
目眩がしてしまいそうだ。こうして一緒に出掛けられただけでも顔の緩みが収まらないのに、釣りに出掛けようだなんて、
それはれっきとしたデートだ。間違いなくデートだ。ミチルは緩みすぎてだらしない顔を両手で押さえ、その場でぐるぐると
意味もなく回転した。予定を返上されないようにあんまりつんけんしないようにしよう、と胸に誓ったが、だけど下手に
はしゃいだら頭が軽いって思われるんじゃ、と悩み、ミチルは次第に浮力を失って柔らかな泥が堆積した川底に沈んだ。
悩みに悩んだ末に出した結論は、態度を変えないことだった。
調子に乗りすぎたんだろうか。
花見を兼ねた散歩から帰宅してから、ミチルは急に機嫌が悪くなった。水を入れ替えたビニールプールに戻してからと
いうもの、広海に目もくれず口も利いてくれない。ドラム缶がいけなかったんだろうか、それともリヤカーが気に食わなかった
のか、でなければ桜が物足りなかっただろうか、やっぱり水着が悪かったのか、と広海は大いに悩んだが、彼女が機嫌を
損ねた理由がさっぱり掴めないまま、夜を迎えた。アビゲイルにばかり頼るのは気が引けるので、自炊するようになった
広海は、慣れない手付きで料理をしながらも考え込んだせいで手元が狂い、包丁で指先を切ってしまった。
痛い、と言いかけて飲み込んだ広海は、テレビ台の傍に置いてある箱から絆創膏を出すためにビニールプールの前を
横切ろうとしたところ、冷たい手に左手を掴まれた。振り向くと、ミチルが不機嫌極まりない顔で広海を見上げてきた。
「な、何?」
広海が恐る恐る尋ねると、ミチルは広海の切り傷が付いた人差し指を銜えてきた。途端に広海は痛みなど吹き飛び、
頭に血が昇った。広海の人差し指を舐める舌は人間のものよりもざらつきが少なく、さらさらとした唾液が指の根本から
手のひらに伝い、痛いほど握り締められた手首は棒でもねじ込まれたかのように固まってしまった。広海は何がどうして
こうなったのか全く解らなかったが、間を置いて理解した。そういえば、人魚は肉食だったが、なぜ、こんな唐突に。
ミチルの舌がするりと動き、指全体を舐め上げてきた。人間のそれと変わらない唇の感触は柔らかいが、肌に触れる
歯はいずれも尖っている。ミチルが顎に力を入れれば、広海の指など一息で噛み千切られるだろう。だが、恐怖よりも
扇情が勝り、広海の脳裏に卑猥な想像が駆け巡った。相手が好きな女性では、考えるなという方が無理な話だ。
広海の血と肌の味を味わいながら、ミチルは心底後悔し、そして心底高揚していた。不機嫌な態度を作って誤魔化して
いたが、広海に近付かれたら我慢出来なくなった。抱きかかえられた時に感じたのと同じ体温を舌と口で吸い取りながら、
ミチルはエラから吸った水を緩く吐き出した。表情を見られまいと床を見つめるが、どこまで堪えられるものだろうか。
自由の利く親指を曲げた広海は、ミチルの唇の端に触れた。すると、水面が僅かに波打ち、ミチルが身動いだのが
解った。呼吸が速まったことを悟られまいと息を詰めながら、広海はミチルの唇をなぞった。残りの三本の指も曲げて
顎を包んでから、人間とは機能が異なる喉を撫でた。どこもかしこも柔らかい。なぜか、ミチルが抗う様子はなかった。
試しに喉から顎にかけて撫で上げても、ミチルは動かない。それを知った途端、広海の内で何かが弾けた。
「んっ」
いきなり指を引き抜かれてミチルが小さく声を漏らすと、肩を押さえられ、頭上が陰った。重たい水飛沫が上がると、
広海の体が上に乗っていた。広海の足によってビニールプールが歪み、二人分の体積によって水が溢れ出していた。
川の水の味がした。ミチルの唇を塞ぎながら、広海は彼女の肩から背に手を移動させた。体の下ではミチルが硬直した
ままで、尾ビレの先さえも動いていない。冷たい水を吸った服が重たく、メガネは水滴に濡れて見通しが利かなくなったが、
体は隅々まで熱かった。帰宅してからも脱いでいなかった水着の上から乳房を胸で押し潰すと、彼女は苦しげに喘いだ。
その喘ぎが止まると、広海の首筋に痛みが走った。首筋の肌を切り裂いた爪が頬に及び、肉に食い込んできたので、
広海はミチルを離して身を起こした。後頭部に回されていたミチルの手が外れて水中に落ちると、左手の爪に染み込んだ
鮮血が水に溶けて薄らいだ。火に掛けたままだった鍋が吹きこぼれかけているのか、蓋が暴れていた。
「…ごめん」
その他に言うことがあるだろうか。広海は袖や裾から水を絞ってビニールプールから出ると、濡れた服を着替えようと
滴を落としながら寝室に入った。首筋に刻まれた爪痕は新しいが、肌を裂かれた感触は覚えていない。ミチルを貪るのに
夢中になっていたからだ。甘えられたわけでもなければ、好意を示されたわけでもなく、ただ血を舐められただけなのに、
あんなことをしてしまうとは。傍にいるだけで充分ではなかったのか。片思いで満足しているのではなかったのか。
変化がないのは、それだけ安定した関係の証拠だと考えていた。ミチルにきつい態度を取られるのには慣れているし、
嫌われていると思っているし、無理に好かれようとは思わない。心のどこかに、微妙な均衡を保てる自信を持っていた。
だが、そんなのは夢にも劣る幻想だったらしい。広海は見た目こそ男臭くないが、やはり男なのだ。だから、彼女から
触れられたら抑えが効かなくなった。陸にいるのをいいことに、いつか組み伏せてしまうかもしれない。人間を受け入れる
ための機能が充分ではない彼女を力任せに貫いてしまうかもしれない。そうなる前に、主従関係は解除しなければ。
これ以上、傷付けないために。
この爪が、この手が、この体が憎らしい。
そんなつもりじゃなかった。傷付けるつもりなんてなかった。同じことを返そうとしただけなのに、この手に生える爪が
勝手に彼の肌を裂いてしまった。貝や甲殻類を容易く切り裂けるほどの硬度を持った人魚の爪には、人間の肌など
紙よりも薄い。取り返しの付かないことをした。もう嫌だ。何もかもが嫌だ。
淡水よりもいくらか塩辛い涙が水に溶け、歪めた口の隙間から入り込み、懐かしい潮の味を舌に広げた。だが、今は
それすらも疎ましい。ミチルは少しだけ水深が浅くなったビニールプールで身を丸め、声を殺して泣いていた。左手の爪の
中にこびり付いた広海の血は、どれだけ擦ろうとも取れなかった。謝りたいが、どうやって謝ればいいのだろう。広海は
いい加減な夕食を摂ったきり、寝室から出てこないし、あまり物音も聞こえない。勉強しているのだろうが、それにしても
静かすぎる。本気で怒らせてしまったに違いない。
「もう、どうしたらいいの…?」
好きだと言えたら。愛していると叫べたら。だが、その瞬間に泡となる。泡にならずに生き延びられる方法を探したいが、
陸上歩行出来ないのでは行動すら不可能だ。ビニールプールに身を収め、広海の牽くリヤカーで運ばれるのが精一杯だ。
このままでは、きっと彼を不幸にする。強引すぎる方法で傍に来たはいいが、そこから先のことを何も考えていなかった。
アビゲイルが、ブライトウィングが、他の面々が羨ましすぎて妬ましい。彼らも人ではないのに、自由に思い人と愛し合って
いる。嫉妬で頭がおかしくなりそうだ。ミチルは嵐の海よりも激しく荒れ狂う感情を抑えるために歯を食い縛り、目を閉じた。
それでも尚、涙は溢れた。
521 :
名無しさん@ピンキー:2010/04/03(土) 03:43:30 ID:pDiofkG3
GJ!!
読ませるな、続きが気になる。
意外な所で泣けて笑える人外萌えゲーを見つけてしまった…。機械系人外が好きな人にオヌヌメ。
任◯堂ゲームセ◯ナー2009受講生さんの作品で、「どうもDSです」ってソフト。もしもDSに感情があったらというコンセプトの元、作られているっぽい。
設定の機械系人外のお約束的なものとか性格設定とかハードの特徴を生かしたミニゲーム、選択肢もしっかりしてるから想像してたより萌えれたし、正直泣けた。
詳しくはググった方が早いと思う。配信系ソフトなので期限とか、ある程度ネットのできる環境が整ってないと難しいかも。
製品化すればいいのに…。よもや自分のDSに萌える日がくるとはwww
>>523 ある日の事でした。あなたが帰宅し、DSでゲームを遊んでいたら、突然何処からか話しかけられます。DSが突然、あなたに話しかけてきたのです。
DSは、普段ゲーム機としての役目を立派に果たしているので、ご褒美として『三日間だけ、あなたと一緒に遊んだり、お話しをしたりできる権利』をとある会社から貰ったのだと教えてくれました。
そして、あなたとDSに奇妙な三日間が幕を開けた……といった感じだったかな……確か。説明下手でスマソ。
触った感じは「トモコレ」ボイスでDS君が喋る「どこいつ」系と思うんだけど、次第に脚本に引き込まれるし…、とにかくDS君の台詞に製作者達のセンスを感じる。
一日目はお互い慣れない感じだけど二日目以降はDS君が砕けた感じのツンデレキャラになり、三日目はドキドキの……おおっとコレ以上は言えないwww
っていうか自分のDSがツンデレだったなんて初めて知りましたwww
前回の続きです。ちょっと長くなります。タイトルはそのまま「キロロの森」で。
第二話 誓い
ガルスがランドットとの戦いを繰り広げて二日が経った。
森の南南西、戦った場所よりも少し離れた場所で、ガルスは木に止まって羽を繕っていた。
午後の穏やかな日差しがその青みがかった灰色の羽を包んでいた。
「おーい、もういいよー」
ふと、下の方でガルスを呼ぶ声がした。
見ると、小さな人間がこちらの方に叫んでいる。
「どうだった」
ガルスは小人のもとへ降り立った。
「やっぱりダメ、なーんも知らないって」
小人、アリクは小さな首を振った。
あの戦いのあと、二人(正確には、一人と一羽だが)は、ミコの呪いについて調べることにした。
ミコの呪い―アリクがかけられたその呪いは、やがてその身が虫になってしまうというものだった。
ガルスは呪いや魔術の類などは生来これっぽっちも信じていなかったが、現にいま、目の前の少女、アリクの頭には紛れもない虫の触覚が生えているし、先日はあのムクドリ、ランドットに魔法の力を見せつけられたばかりだ。
イヤでも信じない訳にはいかない。
「やっぱり誰も知らないね。虫なら何か知ってると思ったんだけどなあ」
アリクは小さな触覚を揺らしながら言った。虫に関係することなら、虫に聞けばいいと踏んでこれまで蟻やテントウムシ、ダンゴムシや名もない羽虫などに話を聞いてきたが、皆口々に知らないと言うのだった。
「やっぱり呪いじゃねえんじゃねえか?お前だけにかかった病気とかよ。ランドットのあれは勘違いとかで」
「そんなことないよ!かけられた私が言うんだから」
あれから、アリクは少し記憶を取り戻したらしい。事の発端は今から一週間ほど前にさかのぼる。
アリクは、森の西、ちょうどユタ川のほとりにかまえた小屋に一人で暮らしていた。ほとんど自給自足の生活だったが、それなりに充実していた。
その日も、いつものように川で水をバケツ一杯に汲んで帰ってきた所だった。ふと、小屋の脇に誰かが立っていることに気づいた。
アリクが近づくと、立っているのは老婆だということが分かった。
異様に小柄な老婆はアリクに気がつくと、ゆったりとした動きでお辞儀した。アリクは老婆に見覚えが無かったが、老婆につられてお辞儀を返した。だが…。
アリクが再び顔を上げると、そこに老婆はいなかった。
「あ、あれ…?」
思わず辺りを見回すアリク。その途端、
「こんにちわ」
「わっ!?」
背後から声をかけられた。
とっさに振り向くと、先ほどの老婆がいつの間にか背後にいた。
「えっ?えっ?」
アリクがきょとんとしていると、老婆はおもむろにアリクの顔に両手を伸ばした。どこか人間らしくない不気味な顔を近付けると、しわがれた声で言う。
「おお…やはり…やはりお前は素晴らしい物を持っているね。まさしくミコの呪いをかけるに相応しい。さあ、それをおくれ…私におくれ」
「え?なっ何のこと?ミコ?え?」
アリクは思わず手に提げていたバケツを見た。老婆は消え入りそうな声で何かを呟いた。
その瞬間、アリクの体を熱い光が包んだ。
「ひっ…!あっ…あああああっ!!」
体の奥にまで光が入り込むような感覚。それからすぐ、体の奥で何かが爆発したような感覚がした。
「おお…おおお…!素晴らしいっ…!」
老婆は光に包まれるアリクを見て歓喜に震えている。
アリクはやがて視界までもが光に覆われ、体の力が抜けていった。
「…で、気がついたらその姿だったってか」
「うん、その後そのおばあちゃん、まああれが金色の魔女だったんだろうけど、の隙をついてね、なんとか逃げたんだけどあの鳥に見つかっちゃって」
そして、ガルスと出会った。
アリクは頭に生えた触覚を引っ張りながら溜め息混じりに言う。
「はあ〜あ、まさか本当に虫になっちゃうんじゃないだろうなあ」
「心配したってその角が無くなる訳じゃねえんだ。もう良いなら次に行こうぜ」
「うん、そうだね」
そう言うとアリクはガルスの背中によじ登った。始めはガルスに対してやや恐怖を感じていた彼女も、今ではすっかり打ち解けたようだった。
ガルスはアリクがちゃんと登ったことを確認すると一気に飛び立った。
「あっ…ねえ見てガルス」
森の南東へ向かう途中、アリクが何かを発見した。
「何だ?手がかりか?」
「ううん、そうじゃないけど…ほらあそこ、木の色が変わってる」
ガルスがアリクの指す方を見ると、確かに深緑の木々の間に一点だけ白っぽくなっている箇所がある。
「あそこちょっと行ってみたい!」
先ほどまで沈んでいた声のトーンが急に上がった。
「お前な、自分の置かれてる状況わかってるか?」
「いいでしょ、ちょっとだけ」
アリクは子供のような声でガルスにねだる。
ガルスはしょうがねえな、と呟くと、くるりと旋回した。
二人がそこに降り立つと、一面に咲き誇る無数の白い花が出迎えた。
「うわぁ…綺麗」
アリクはガルスの尻尾から枝に降りながら言った。
上空から見た白いものの正体とは、この木々、シトラの木がつけた花だった。
「白く見えたのってこれのせいだったんだね」
アリクは花をまじまじと見つめながら言う。
花は近くで見ると少しピンクがかっているのがわかる。狼の舌のような花びらが5枚ほどついていた。
ガルスは花を見ているアリクを見下ろしていたが、ある違和感を覚え、辺りを見回した。何て事無い、普通の木だ。
「わー、なんか甘い匂いがする」
アリクはというと、少し背伸びして花の中をのぞき込んでいた。
「…そうやってると本物の虫みたいだぞ」
ガルスがからかうと、アリクは慌てて花から身を離した。
「…もー、やめてよそういうこと言うの」
アリクは赤くなってガルスを睨んだ。その時だった。先ほどからの違和感の正体が分かった。
「…おい、今って秋…だよな」
「え?うん、そうだね。まだちょっと暑いけど」
「思い出した…これ…確か春にも咲いてるの見たぞ」
アリクはきょとんとしてうん、と頷いた。
「いや…その前もずっと前からこの花が咲くっていったら春だった。なのに今は秋だ。なんで今頃これが咲くんだ?」
「そう言えばそうだね…何で今咲いてるんだろう」
アリクも周りの木々を見渡し、少し悩んでいたが、
「ちょっと寝坊したんじゃない?」と、呑気に笑った。
「心配したって秋が春になる訳じゃないんだし、さっ次行こ次」
「…お前が来たいって言ったくせに」
ガルスはやはりこの花の事が気になったが、確かに心配したって何が変わるわけでもないので、アリクの言い分で無理やり納得することにした。
木にだって、間違えることはあるさ。
ガルスはまた背にアリクを乗せて、森の南東へ飛び立った。
その頃…森の南西の上空を、左目の潰れたムクドリが飛び回って
いた。金色の魔女の弟子、ランドットだ。ランドットは先日ガルスと戦った場所の付近で、彼を探していた。
たが、片目が潰れているおかげで、なかなか捜索がはかどらない。結果同じ所を何度もぐるぐると飛び回る羽目になっていた。
ランドットは探している間、何度も先日の事を思い出した。初めて味わった屈辱の味を。なんとしてもあのオオタカ、ガルスを探し出し八つ裂きにしないと気が収まらない。
と、その時、
“…まだ見つからないのかい?”
ランドットの脳内をある声が駆け抜けた。
しわがれたその声からは明らかな苛立ちが読み取れる。
ランドットは慌てて
「も…目下捜索中にございます!今しばらくお待ちを…」
と一人返事をする。
“もうその台詞は聞きあきたよ…ランドット、お前にはがっかりだ”
「っ…」
“もういい、お前はここに戻っておいで。私が行こう”
不思議な声がそう言うと、ランドットは慌てて止めた。
「そっ…それはいけません!お体に障ります!まだあの人間から受けた…」
“お前を待っていると、かえってこっちの体が持たないんだよ”
ランドットには返す言葉もない。
“やれやれ…骨がおれるね。あの娘の気配を追うよ”
「はい…」
ランドットには
そう力無く返すより他はなかった。
森の南東部にある小さな池、パゴタの池で、ガルスとアリクは羽を休めていた。
川の神ユタの寝所といわれるこの池は、いつも恐ろしいほど澄んだ水を湛えている。
池のほとりで水を飲むガルスの横で、辺りをキョロキョロと見回すアリク。
「…お前さっきから何やってんだ?」
ガルスが訪ねると、アリクはなおも見回しながら言う。
「んー…ちょっとここで水浴びしたいんだけど」
「?ならさっさとすりゃあ良いじゃねえか」
ガルスはきょとんとしながら言う。するとアリクは少しむっとしながら返した。
「…じゃあ向こう行っててよ」
「何で?」
ガルスは素直に、そう聞いた。
「なっ…何でって、…何ででもいいでしょ!早く向こう行って!」
アリクはそう言うとしっしっ、とガルスを追い払った。よく見ると顔が真っ赤だ。
ガルスは訝しげな顔をしながらもしぶしぶその場を離れた。アリクはガルスが遠くに離れたことを確認すると草むらの中に隠れた。
「何だよあいつ…水浴びなんか適当にバシャバシャってやれば良いじゃねえか」
ガルスは一人ごちながら適当な木に止まった。
他人に見られると水浴び出来ない質なのだろうか。
まあどうせ水浴びなら一瞬で終わる。ガルスは仕方がないので少しの間だけ待つことにした。
…だが、待てども待てどもアリクの水浴びは一向に終わる気配はない。
それ程気の長い方ではないガルスはだんだん痺れを切らし、やがて我慢の限界に達した。文句でも言いにアリクのもとへ戻ろうとガルスは翼を広げた。
だがその瞬間、彼の体を嫌な感覚が駆け抜けた。
視線。沸き立つ殺気、湧き出でる歓喜、押し殺す動揺、その全てが複雑に混ざり合った、気味の悪い視線。
ガルスはとっさに上を振り向いた。だが、彼の視界が捉えた物は、ただ木々の間を縫って降り注ぐ穏やかな光だけだった。
「っ…!?」
気のせいではない、確かに感じた。ガルスはこういったことに関しては敏感な方だ。
…もしかすると、またあのランドットに見つかったのか?そうならば今、アリクを一人にしておくのはまずい。
不吉な予感がガルスの脳内を巡った。その時、
「うわぁっ!?」
アリクの悲鳴。予感が的中した!
ガルスは次の瞬間、木の上を飛び出していた。
「や…あ…!」
池のほとりで一人へたり込むアリク。服を抱えて前を隠している。足が震えて立てないのか、必死に腕で後ずさりする。
そして、そのアリクに舌なめずりしながらおもむろに近づく大きな影。
「おい大丈夫かっ!?」
そこへ勢い良く飛び込んでくるガルス。彼の目に飛び込んだものは、怯えた表情でうずくまるアリクと…
ただのアマガエルだった。
「…はァっ!?」
あまりの意外な展開にガルスは間の抜けた声で池に落ちた。
「ガッ…ガルス!?」
アリクは驚いて池の方を見るが、アマガエルは余り気にせずアリクに詰め寄る。
「いやあ〜ヤッパリ見れば見るほど人間の肌ってすべすべしてるよなぁ〜。ねえ今度は…そうだなあ肩の辺りペロッと行ってもいい?」
そう言うとカエルはベロリと長い舌を出した。
その瞬間
「…ざっけんなこのカエルがぁッ!!」
ガルスの大きな翼がアマガエルを弾き飛ばした。
「ぐげぁっ!?」
カエルはまさにカエルの潰れたような声を上げるとそそくさと草むらの向こうへ逃げ出した。
「…はぁ怖かったぁ…ありがとガルス」
「まったく紛らわしいことしやがって…何なんだあいつは」
「わかんないよ、服着ようとしてたらいきなり背中ベロッ何でここに居んの!?」
「何でって、助けに来てやったんだろうが」
ガルスはふてくされた。
「そっ…それはありがたいけど…」
アリクが言いかけたとき、ガルスはとんでもないことに気がついた。なんと、アリクが自分の毛皮を外して前に抱え込んでいる!人間は自らの毛皮を取り外すことが出来るのだ!
もちろん、人間のアリクにとってはそんなこと当たり前の常識なのだが、野鳥のガルスにとっては世紀の大発見なのである。
「おっおい…お前なんだそれ?どうなってんだ?よく見せろ!」
ガルスはやや興奮しながらアリクの体を覗き込む。
「やぁっ!?ちょ、ちょっと何!?」
「その毛皮どうなってんだ?どうやって外した!?」
「は、外っ…!?なっ…!?…もっ、もういいからあっち行ってよヘンタイ!!」
アリクはそう言うと、そばにあった小石をガルスに投げつけた。
「あ?ヘンタイ?ヘンタイって何だ!?」
「良いからあっち行ってよヘンタイ!」
アリクは更に小石を投げた。アリクが投げられる小石なんぞたかが知れてるので痛くも何ともないが、あんまりにも騒ぎ立てるのでガルスはまたしぶしぶ離れるのだった。
よく見ると、アリクの顔は、また真っ赤になっていた。
…思ったより、面倒な奴を拾ってしまったかもしれない。ガルスは歩きながら少し後悔し始めていた。だが、同時に新しい発見に対する興奮もあった。
前々から人間に興味があったガルスは、アリクを初めて見た時えもいわれぬ感情を抱いた。
目の前に、あの人間が居るのだ。
とても小さくはあるが、紛れもない、人間が。
人間の事をもっと知りたい。だから、アリクを拾った。
今だって、人間の毛皮が取り外し可能だという事を知ったばかりだ。まだまだ、人間には自分の知らない事が沢山あるに違いない。
ガルスは再び沸き起こる興奮に意味もなく翼を羽ばたかせ、上を見上げた。
だが、その興奮は、直ぐに不吉な直感に豹変した。
二、三羽のカラスが、木の影からこちらを見下ろしていた。
「お…おいアリク急げ!さっさとここを離れるぞ!」
カラス達に聞こえないように押し殺した声でアリクを呼んだ。
「んーちょっと待って…まだ全部着てない」
茂みの向こうからアリクの間延びした声が返ってくる。
こちらが気づいたことに向こうも気づいたのか、カラスの一羽が飛び立った。
もはやぐずぐずしていられない。こうなったら無理やりにでもアリクを連れてここを離れなければ。ガルスは茂みを乗り越えアリクのもとへ戻った。
「ひゃっ!ちょっとまだ着替え終わって…」
文句を言うアリクを強引に嘴でくわえ背中に乗せると、ガルスはすぐさま飛び立った。
急いで上へ上へと上昇していく。森の上空へ出ると一気に翼を翻した。が…もはや時はすでに遅かった。
四方から次々と飛び出してくる無数のカラス。辺りはあっという間に真っ黒に染まった。
「クソッ…囲まれたッ…!」
狼狽するガルス。
「うわぁ、すごいカラス」
それとは対照的にのほほんとカラスを見回すアリク。逃げきるつもりでアリクを連れてきたが、囲まれたとなってはそれも逆効果だった。
カラスのうちの一羽が二人を睨みつけながら言う。
「おいおいどこ行くんだ?ガルスさんよ」
その目に殺気が宿っている。先ほど感じた視線の正体が、今わかった。
「…てめえらに教える義理はねえ、とっとと失せやがれ」
カラス達を睨み返しながらガルスが凄むと、背後から低い声が聞こえた。
「…随分な態度じゃねえか、“傷嘴”」
「!その声…!!」
低い濁声。ガルスにとって、忘れたくても忘れられない声。
振り向くと、そこにはまさに“ボス”を名乗るに相応しい体格のカラスがいた。
「黒き爪」クロウクロウだ。
クロウクロウはガルスを見下ろしながら言う。
「久しぶりだな、デッカくなったじゃねえか」
「ちッ…わざわざあんたが出てくるとはな、たかがタカ一羽にご苦労なこって」
二人のやりとりを見たアリクは
「し、知り合い?」
とガルスに聞いた。ガルスは質問には答えず、小さく、隠れてろ、とだけ言った。
「この間は俺の部下を可愛がってくれたらしいじゃねえか…こいつらがどうしてもって言うんでな、ちょっとお礼に来てやったぜ」
笑いながら、それでも目つきだけは変えずに言うクロウクロウ。
そいつはどうも、と返すガルス。
「というわけで…さあ、お待ちかねだ!てめえら、思う存分やってやれ!!」
クロウクロウの雄叫びに、一斉に呼応するカラス達。次の瞬間、真っ黒の輪が、その中央、ガルスに向かって一気に収縮する。
「ッ…!!」
もはやこれまでか…ガルスが目を閉じて覚悟を決めかけたその時。
突然、カラス達の動きが止まった。
「なッ…おいてめえら、どうしたッ!?何止まってやがんだッ!?」
驚いたクロウクロウがカラス達に向かって怒鳴るも、カラス達は石に変えられたように表情すらピクリとも変えない。
不思議なことに、カラス達は羽ばたきを止めているのに落下せずにその場にとどまっていた。
奇妙な事態に両者とも唖然としていが、ガルスはチャンスとわかると即座に身を翻した。
「あッ…!!ちくしょうッ!待ちやがれッ!!」
直後、やや出し抜かれたクロウクロウもガルスを追った。
クロウクロウの追跡を無我夢中で振り切る内、森の真東に来ていた。柔らかな草の上に半ば墜落するように着地するガルス。
「きゃっ…!」
ガルスの激しく揺れる背で体を揺さぶられたアリク。
「に、逃げきったの?」
「いや…まだだ。それほど簡単に逃がしてくれる様な奴じゃねえ」
上空ではクロウクロウがガルスを探して旋回を続けている。ガルスはその様子を確認するとアリクをおろして言った。
「お前はここでどっかに隠れてろ。俺がいいって言うまで絶対に出てくるな」
「う、うん…ガルスはどうするの?」
「…あいつとの決着をつける」
「だ…大丈夫なの?」
アリクは心配そうな目でガルスを見上げた。
「…さあな」
ガルスはそう言うと羽ばたき、近くの木の枝に止まった。アリクを見下ろすと、未だ心配そうな顔をするアリクを目で促す。アリクはためらいながらその場を離れ、近くの草の影に隠れた。
…これで良い。確かに、アリクは追われている身だ。一人にしておくのは先ほど感じたように余り得策ではないが、このままアリクを連れていては巻き込んでしまうかもしれない上、何より闘いに集中できない。
今を逃してはいつあるかわからないのだ。クロウクロウとの一騎打ちなどという、絶好の機会は。
ガルスの胸に、“あの日”の屈辱が思い起こされる。あの日、あの若かりし頃の自分との約束を果たすために、今はなんとしてもこの闘いに勝たねばならないのだ。
ガルスはその赤く燃える双眸で上空の黒き翼を睨み上げると、その力強い翼で大空へと舞い上がった。
事の始まりは今から約2年程前に遡る。
まだ幼鳥と呼ばれる段階にあったガルスは、巣立ちを終えたばかりの兄妹達と共に、親のもとで狩りの訓練に励んでいた。
共に巣立った兄妹の中でも、ガルスは特に狩りがうまかった。両親にも勝るとも劣らない実力を持った彼は、見事に獲物を捕らえては、両親や兄妹達を驚かしていた。そう、その日も、いつものように…。
それは偶然だった。ガルスは、自分と同じぐらいの重さのウサギを捕まえた。追いかけている途中、小さな崖から落ちたところを狙って仕留めた。
偶々だったのだが、ガルスはこれによって、自分に実力があると勘違いした。自分の力を過信してしまった。
彼は喜び勇んで両親のもとへ舞い戻った。驚く両親や兄妹の顔を思い浮かべながら。しかし、彼が両親のもとへ戻ると、その高揚もすぐに消え去った。
そこにいたのは、変わり果てた姿となった両親と、黒い、大きなカラス。
紛れもない、クロウクロウだった。
それは縄張り争いの結果だった。自分の縄張りを広げようとしたカラスが両親と衝突し、兄妹達を森から追い出した。
一気に激昂したガルスは次の瞬間、目の前のカラスに飛びかかっていた。自分の力を過信し過ぎた。勝てるだろうと思っていた。
気がついた時には、ガルスの体は地に強く打ちつけられていた。力の差は歴然だった。
カラスはガルスの顔を踏みつけ嘲笑を零した。彼は初めて味わった屈辱にただ打ちひしがれ、何もできずにいた。
殺す価値もないと判断したのか、カラスは嘲笑を残してその場を去った。ガルスには、耐え難い屈辱と、嘴の端に深く刻まれた傷だけが残った。
それから後、ガルスはカラス達の縄張りに残ることを許された。カラス達よりも格下の存在として、だが。彼の扱いはけして良いものとは言えなかった。
彼はこの時誓った。必ず彼奴に復讐してみせると。必ずオオタカとして生まれた自分の誇りを取り戻して見せると。そう、固く心に誓った。
森の上空に、2対の翼のはためく音が響き渡る。
クロウクロウの黒い翼と、もう一つは、ガルスの青みがかった灰色の翼。2対の大きさは、ほぼ互角だった。
不意にクロウクロウが背後を取った。彼は一気にガルスの灰色の背中にたたみかける。
「がっ…!」
ガルスは呻いて、体勢を崩した。クロウクロウは間髪入れずにガルスの体を爪で掴むと、そのまま地面へ一直線に急降下した。そして、
「オラァッ!!」
そのままガルスの体を放り投げた。ぐしゃりと鈍い音を立てて、ガルスは地面に打ちつけられた。
「ぐぁっ!!」
ガルスの体に電撃のような痛みが走る。
やはり、クロウクロウは強い。流石何百、何千といるカラス達の頂点に立つだけある。2年の歳月を経ても、その実力は衰えるどころか、更に増しているように思えた。
衝撃が頭に回ってきたのか、視界が徐々にぼやけ始めた。上空では、クロウクロウが見下すように旋回を続けている。
「どうした!?もうくたばっちまったか!?」
「ぐっ…」
言われると同時にガルスは体を起こす。
「へっ…しぶとさだけは前より成長したじゃねえか!そうでなくちゃ面白くねえ!」
ガルスはクロウクロウを睨みながら再び上空を舞う。だが…飛べばまた、奴のパターンにはまってしまう。そうこうしているとクロウクロウが背後を取る。
再びクロウクロウの蹴りがガルスの背中に命中した。ガルスはまた体勢を崩すが、追撃をなんとかかわす。
駄目だ…背後を取られては、相手の攻撃を見切ることが出来ない。せめて攻撃のタイミングだけでもわかれば…。
やはりクロウクロウに勝つなど…無理だったのだろうか。あの日の自分の姿が脳裏によぎる。
ガルスはうなだれた。自分との約束も守れないのか…自分が情けなくなった。ふとその時、ガルスの目にあるものが映った。
「…そうか…!」
…諦めるなんて柄にもない。くすぶっていたあの日の情熱が、再びガルスの胸に宿り始めていた。
「こっちだ!クロウクロウ!」
ガルスはくるりと旋回し、太陽を背に飛び始めた。クロウクロウもすかさず身を翻し彼を追った。
「いつまで逃げ回るつもりだ!この腰抜けが!!」
クロウクロウがもう一度ガルスの背中に飛びかかった。だが、クロウクロウの爪は呆気なく空を切り裂いただけだった。
「!?」
次の瞬間、ガルスとクロウクロウの位置は逆転していた。クロウクロウの背中が勢い良く蹴り落とされる。
「ぐぅッ!?」
慌てて体勢を立て直そうとするが、慣れていないためかうまく行かない。そのままくるくると回ってしまう。
ようやっと立て直すと、きっ、とガルスを睨みつけた。だが。
「ッ!?」
そのガルスが一直線に急降下して…。
一瞬だった。ガルスの鋭い爪が、クロウクロウの左肩を大きく切り裂いていた。
クロウクロウは肩から鮮血を吹き出しながら、森の中へ落ちていった。
草むらの上に、血を流しながら横たわるクロウクロウ。その側へと、ガルスはゆっくり舞い降りた。
「ッ…!!」
クロウクロウは頭を上げると、霞む目をガルスに向ける。
「………」
ガルスは何も言わず、クロウクロウをじっと見下ろす。
「何故だッ…!?何故…さっきの攻撃を見切れた…?後ろからの攻撃をッ…」
「…簡単だ、影だよ。森に映った影を見てタイミングを測った」
普段高いところを飛ぶ鳥には、あまり自らの影を気にするという習慣がない。
「…あんまり俺らには縁のない物だがな」
そう言いながら、ガルスはその鋭い爪をクロウクロウの首へ向ける。今のクロウクロウには逃げる力はない。首を絞めれば、それで終わる。
「…じゃあな」
ガルスの爪先が、クロウクロウの喉に触れた。
「だめッ!!」
高く澄んだ声が、当たりに響いた。声の主、アリクが草の影からこちらを見ていた。
「あ…えっと…あのっ…二人に何があったか知らないけど…その」
アリクは、とりあえず止めたものの、自分が部外者だということに気付いてあたふたし始める。
「や、やっぱり…殺すの…?」
アリクは不安げな表情をガルスに向けた。ガルスはアリクとクロウクロウを交互に見たが、やがて、喉に翳した足を下ろした。
アリクはその様子を見届けると、ほぅ、と溜め息をついた。だが、それを受けたクロウクロウは黙っていなかった。
「なっ…てめえッふざけるな!!何で止めるんだ!!何で殺さねえ!!てめえッ…俺に情け掛けようってのか!?この俺にッ!?侮辱してんのか!!俺をッ…この“黒き爪”を侮辱するのかてめえはッ!?」
クロウクロウはガルスをなじった。持てる力を全て込めてなじった。
これまで絶対的な力を持ってカラス達を束ねてきた“黒き爪”が、高々オオタカ一羽に負け、その上そのオオタカに情けで命を助けられるとあっては、その名が折れるも同じだ。折れた名を背負って生きてゆけと言うことと、同じだ。
「そんなんじゃねえよ」
静かな声が、クロウクロウを遮った。
「てめえの為じゃねえ、俺のためだ。どうせ今、てめえを殺したって」
ガルスは、クロウクロウを見ずに言った。
「後味が悪くなるだけさ」
てめえには殺す価値もねえ、とガルスは付け足した。その無慈悲さが、彼なりの、クロウクロウへの慈悲だった。
「…後悔しても知らんぞ」
「しないさ。…あいつに誓ってな」
ガルスは、ゆっくりと草の影から出てきたアリクを見ながら言った。
あの頃の自分が、いつの間にか太陽の光を浴びて、淡く消え去っていった。
「…ミコの呪い?」
クロウクロウは首を傾げた。
「うん、何か知らない?かな?」
アリクはクロウクロウを見上げながら言う。
「…何ていうかだな、お前ら切り換え早すぎだろ」
その様子を脇で見ながらガルスは突っ込んだ。
「…いや、聞いたトキねえな」
「うーん、そっか…」
「無視か」
先ほどからアリクはクロウクロウと何故か仲良くなっていた。あれだけ殺せと意地を張っていたクロウクロウだが、やっぱりアリクに止めてもらったのが嬉しかったのかもしれない。やっぱ殺しとくべきだったか、とガルスは少し本気で後悔した。
血の気が多いと豪語しただけあって、クロウクロウの先ほどの出血もすぐに止まり今はピンピンしている。
「いやそれにしても、虫になる呪いか…嬢ちゃんも難儀してんだなあ」
「うん…でもわからないんじゃしょうがないね」
アリクは触角を下げてうなだれる。
「いや、俺の部下どもが何か知ってるかもしれねえ、なんなら探させてやるよ」
「えっほんとに!?やったありがとう、クロウクロウ!!」
「クロウでいいさ、どうせ本名じゃねえしよ」
「へえ、そうなんだ?クロウって割と親切なんだねぇ、ね、ガルス」
アリクがガルスに振ったが、ガルスはそっぽを向いて無視した。
「?どうしたのガルス」
「………」
アリクはガルスの尻尾を引っ張ったが、ガルスはアリクの手を振りほどいた。
「もー、なんなの」
いじけてんの?と言おうとしたアリクの声が詰まった。アリクは突然すっくと立ち上がると辺りを見回した。
「ん?何やってんだお前」
ガルスが気付いてアリクを見ると、アリクの顔に再び不安の色が出ていた。それも今までのような表情ではなく、恐怖の入り混じった表情だった。
「…?何か居るのか?」
クロウクロウも辺りを見回すが、誰の姿も見当たらない。
「…いる…あのおばあちゃん…」
「金色の魔女が!?」
すると、どこからともなく、しわがれた声が聞こえてきた。
“…ほう…私を察知したか…やはり素晴らしい…”
「なんだ…この声ッ…?」
それは、遠くから聞こえるようでも、頭の中から聞こえるようでもあった。
「ッ…!」
アリクがふととっさに振り向く。
「ますますお前が欲しくなったよ…」
アリクが振り向いたその先には、
「…ねえ、アリク」
異様に小柄な、老婆がいた。
以上です。ちょっと長くてすいません。
関係無いですがこの話を考えていたときにカラスの大群を見ました。ちょっと嬉しかった。
乙乙
おまえらトランスフォーマーが新たにアニメ化したぞ
ヤンマとアカネすげえ好き
もっと人型昆虫のやつ書いて欲しい
別の虫のやつ希望
思ったより虫少ないなーって思った
誰か・・・お願い
虫ってか蜘蛛だけど、思いついたからちょこちょこっと即興で小ネタ投下してみる。
人型じゃなくて原型で想像してくだしあ
ハエトリグモ 人間♀ 非エロ
548 :
はえとりぐも:2010/04/17(土) 21:26:59 ID:guy0/1AI
もぞり もぞりと、肩の辺りで変な感触
目を覚ますと、枕元に毛むくじゃら
「・・・なにしてるの?」
『求愛行動』
もぞり もぞりと、布団に入ろうとしている
「いつもみたく、びょんびょんするのじゃなくて?」
『え、と』
「布団入りたいなら、入っていいよ?」
布団をばさりとめくって促す
『あ』
「どしたの?」
『言い間違えてた』
「何と?」
『生殖行動』
もぞり もぞりと布団に入ってこようとする
ばさりと布団を閉ざして止めた
『だめ?』
「駄目。」
『大丈夫』
「何が?」
『終わっても食べたりしない』
「そういう問題じゃない。」
『じゃあ、なんでだめ?』
「結婚する迄は清い体でって、約束したでしょ?」
『・・・した』
「でしょ。」
「しかもそっちから。」
『・・・でした』
すごすごと布団から離れようとするのを引き止めた
「求愛までならいいよ。夜中だから、静かにね。」
『わかった』
目の前で歩脚をふいふいと振り、とてとてと奇妙なステップを踏む
いつもより勢い控えめに
「なんか微笑ましい。」
『真剣』
「うん、わかってる。」
549 :
はえとりぐも:2010/04/17(土) 21:28:25 ID:guy0/1AI
一頻り踊り終えると、満足そうに腹部を揺らした
事に至らずとも、求愛するだけでもそれなりに満足らしい
『終わった 寝る』
「布団、入ってもいいよ?」
布団をばさりとめくって促す
『入る』
「ん。」
もぞり もぞりと布団に入ってきた
というより、大きすぎて布団全体を持ち上げてしまっている
『ぬくい』
「ん。」
片側四本の歩脚と頭胸部の間に挟まれ、抱え込まれた
「ぬくいね。」
『ん』
獣とは違う、不思議な感触の体毛
抱きついて、頬を擦り寄せる
『求愛?』
「求愛。」
毛むくじゃらな頭胸部と、まるっこくてつやつやとした眼が擦り寄せられた
「求愛?」
『求愛』
もぞもぞとこそばゆい肌触り
忘れていた眠気が戻ってくる
『ん?』
「ん。」
折り曲げた脚と、縮こめた身体を更に縮ませて、しっかりと抱き寄せられた
睡魔を増長させる、桁違いの安堵感
丁度目の前の眼と目が合った
見つめてから、ゆっくりと目を閉じる
おやすみと言われた気がするし、おやすみと言った気もする
何も言われなかった気がするし、何も言わなかった気もする
幸福という言葉で言い表してしまうには
幸福過ぎる
幸福な
そんな日々
以上です。読んでくださった方ありがとうございます。
即興で書き散らしスマソ。
ある種のハエトリグモの処女は体格の大きい雄を好み、
経験豊富な雌は体格の小さい雄を選ぶようになるとかいう研究発表読んでて妄想。
種が違うんだからそんなの関係ないのに、なんとなくそういう情報を得て、気にしてるらしい。
女の子には内緒です。
縛りたくは無いけれど、離れてっちゃうのが怖くて
縛ってから(プレイ的な意味じゃなく)じゃないと事に及べないらしい。蜘蛛なだけに。
女の子には内緒です。
結婚式で悪友に一切合財バラされるパターンです。
そして初夜は甘甘です。
要望がありそうならそのうち初夜も書かせていただきたい。
うおおGJ!
なんか会話のやりとりがイイな
今度は是非とも甘甘なエロパートを拝ませていただきたい
とある竜の恋の歌聞いてたら滾った
ゲーム本編はやったことないけど
ドラゴンとヒトの恋愛って、いいよな
どっちが男でもどっちが女でもいいけど
でもドラゴンはヒトガタじゃなくてでっかいアレなのはお約束で
龍と魔法使いとかいいぞ。もう大分前のラノベだが。
ドラッグオンドラグーンはいいぞ。マルチバッドエンドだけど。
アンヘル可愛いよアンヘル
ゲーム始めたばっかりだからまだデレてないけど
ああいう風に気高くて最強で世界を支えてるような存在が、恋に落ちるって萌える
自覚ない恋心にドギマギしたり、意識しすぎちゃってあわあわしちゃったり
世界か相手か、で相手を選んじゃうほど愛すればいい
ともすればヤンデレになりそうだけど
今月のウルジャンのFrog'sTripって読み切りがよかった
あのまま元に戻らなきゃ良かったのに
前回の続きからです。
NGはタイトルで
「ますますお前が欲しくなったよ…アリク」
茂みの奥に隠れるように立つ老婆…金色の魔女。
その人間らしからぬ不気味な顔を上げると、アリクを見つめてにたりと笑った。
「ッ…」
アリクは怯えきった表情で後ずさる。
「へぇ、あれがその金色の魔女って奴か」
クロウクロウは金色の魔女を見下ろし少し楽しげに言った。
「さて…確かランドットの話じゃあ、なにやら嘴に傷のあるオオタカがあの子を邪魔したらしいじゃないか」
金色の魔女はガルスを焦点の合わない目で睨んだ。ガルスも睨み返す。
「…あんたがこいつに呪いをかけた本人か。丁度良い、こいつの呪いを今すぐ解いてやってくれ」
金色の魔女の眉がピクリと動いた。その笑みに苛立ちが含まれる。
「確か…ガルスとか言ったね。馬鹿な事を言ってないで早くここから立ち去りなさい。その娘を置いてね」
「あんたの弟子に言ったはずだぜ、断るってな。後から曲げるつもりはねえ」
互いに睨み合う二人。アリクはガルスと金色の魔女を不安げな表情で見つめ、それをクロウクロウが見守っていた。
その緊迫した空気を、金色の魔女が破る。金色の魔女はひとつ大きな溜め息をついた。
「…馬鹿も休み休み言っておくれよ。だいたいお前がその娘を守ることに何の得があるんだ」
聞かれたガルスは少し黙っていたが、やがて得意気な表情で答えた。
「…あんた知ってるか?人間ってのはな…自分の毛皮を脱ぐことができるんだぜ」
「はぁ?」
と、素っ頓狂な声を上げたのはアリクだった。ガルスは構わず続ける。
「しかも脱皮と違って脱いだらそれで終わりじゃねえんだ。脱いだ毛皮をまた元通りに付けれるんだぜ」
「いや、あの、ガルス」
アリクはなんと言ってよいかわからず狼狽している。
「マ…マジかよ…!人間てすげえな…!」
「クロウもちょっと…普通に驚かないでよ…」
そばで聞いていたクロウクロウも目を丸くして驚いている。
「つまり、コイツには俺の知らんことがまだまだ沢山有るに違いねえ!俺はそれを全部知りたい!だからコイツをお前に渡すつもりはねえし、虫になられても困るんだよ」
ガルスは強い眼差しでそう言った。金色の魔女は目を細めながら聞いていたが、やがて顔を手で押さえて苦笑の笑みを零した。
「…くっ…くくく…はっはは…面白い、ここまでの馬鹿は久しぶりに見たよ」
金色の魔女は再び大きな溜め息をついて、ガルスを睨んだ。
「馬鹿の相手は疲れるね。あまり使いたくないんだが…しょうがないね、力ずくでも連れていくよ」
そう言うと、金色の魔女の黒い眼が赤く染まっていく。やがて風もないのに、木がざわめき始めた。まるで、金色の魔女に怯えるように。
「…な…何だ…?」
異変に気づいたクロウクロウが辺りを見回した。その直後。
「いっ…!?うぁっ…あああああっ!!」
突然耳を押さえてうずくまるアリク。
「なっ…どうした!?」
「聞こえるかい、アリク。それが、私の力だ」
金色の魔女は不敵に微笑んでアリクを見る。
「てめえ…アリクに何しやがった!!」
ガルスはうずくまるアリクを見ると怒鳴った。ガルスとクロウクロウには何も感じられないらしい。
金色の魔女はにたりと笑うと、微かに口を開いた。その瞬間、アリクが何かを察知した。
「…!だめっガルス逃げてぇっ!!」
金色の魔女は、消え入りそうな声で何かを囁いた。ガルスがその事に気づいたと同時に、金色の光が、彼の体を貫いていた。
「ガルスッ…!!」
アリクが叫ぶと、ガルスはその場に力なくくずおれた。いつの間にか現れた金色の光の壁の向こうで、金色の魔女が不気味に笑った。
「おいッ…どうした傷嘴!!」
クロウクロウが呼びかけるもガルスは答えない。
「さあ…お前も私を邪魔するのかい?もしそうなら、お前もそいつの二の舞になるが」
金色の魔女は光の壁をクロウクロウの方へ向ける。
「………!」
クロウクロウはチッ、と舌打ちするとアリクとガルスを交互に見た。その時、
「…ふざっ…けんな…!!」
意識を回復したガルスがよろめきながら立ち上がった。
「そいつは関係ねえ…やるなら…俺にやれッ…!!」
「ガルス…!」
アリクが泣きそうな顔でガルスを見上げる。
「ふん…やはり“虚仮威し”じゃあ、そんなに効かないか。なら、これでどうだい!?」
金色の魔女は光の壁を再びガルスに向けなおすと、何かを囁いた。
金色の光の壁が一瞬で赤黒く変化すると、再びガルスに襲いかかった。
だが、黙って食らうガルスではない。渾身の力を込めて飛び上がりぎりぎりの所でかわした。
「…甘い!」
金色の魔女が壁に手を翳すと、壁はガルスの動きを真似て飛び上がった。
「なッ!?」
予想を外した壁の動きに、ガルスの反応が遅れた。壁はガルスの背中に襲いかかり一気に弾けた。
「ぐぁあッ!!」
そのままぐしゃりと地面に墜落する。
「ぐっ…クソッ…!」
ガルスは再び立ち上がろうとするが、魔法に墜落のダメージが重なって思うようにいかない。
金色の魔女はゆっくりとガルスに近づく。そして、とどめを刺そうと枯れ枝のような腕を伸ばした。
「ガルス…!」
…もう…だめだ。様子を見つめていたアリクは、思わず目を閉じた。ふと、ガルスと初めて出会った瞬間が瞼の裏で蘇った。
…自分を見て、目を丸くして驚いて、それから笑って、それから…自分を守ってくれた。それなのに、今ここにいる自分は…。
助けたい。ガルスを、助けたい。
思ったときには、既に声を発していた。
「…待って」
その枯れ枝の腕が止まった。金色の魔女が振り向く。
「…もう…やめて…私が行くから…そのひとを…殺さないで」
言うことを聞かない膝に鞭を入れ、アリクは精一杯の力で立ち上がると、そのままゆっくりと歩き出した。
「ッ…アリク…!」
「…ほ、ほほ…いい子だ。こいつと違ってお前は賢いね…」
金色の魔女はアリクの方に手を差し出した。だが…。
「ッ…!?」
その手はすぐに引っ込められた。そして、怖じ気づいた表情でそのまま後ずさりを始める。
「あッ…!ああッ…!!」
なんということだろう。あの金色の魔女が、アリクに対して怯えている。先ほどまであれほど欲していたアリクに対して。
「アリクッ!やめろ戻れッ…!」
ガルスは声を振り絞ってアリクを止めようとするが、アリクは歩みを止めようとはしなかった。地面に転がるガルスに向かって、寂しく笑った。
「ごめんね…でも、私が行けば…それでガルスが助かるなら…私」
「いいや、その必要はねえ」
寂しく言い放ったアリクの言葉は遮られた。その言葉を遮ったのは、クロウクロウだった。
「よく言った嬢ちゃん…その言葉、その覚悟…久しぶりに震えちまったぜ…」
クロウクロウはアリクを飛び越えると、金色の魔女に立ちはだかる。
「俺の…心が!」
「…クロウ!?」
「なッ…!?」
驚くアリクとガルス。
「だがな…一度守ると決めた男の決意を、そう易々と蔑ろにするもんじゃねえぜッ!」
そう言うと、クロウクロウは目の前の老婆に飛びかかった。金色の魔女はとっさに何かを唱えようとしたが間に合わず、クロウクロウの爪に押さえつけられた。
「ぐぅッ!!」
金色の魔女はじたばたと抵抗するが、クロウクロウはその巨体で押さえて離さない。
「何ボサッと見てんだガルスッ!!嬢ちゃんを連れてさっさと逃げやがれッ!!」
「だっ…だめだよ!逃げるんなら、クロウも一緒に…!」
「だぁから、言ったろ?男の決意を蔑ろにするなって」
クロウクロウの足の下で、金色の魔女が何かを囁いた。そして腕をクロウクロウに翳す。
「はぁっ!!」
次の瞬間、クロウクロウの体は見えない力で弾き飛ばされた。
「ぐっ!!」
だが、クロウクロウはすぐに立ち直り再び金色の魔女にのしかかった。
「くぁっ…!く…しつっこいねぇコイツッ…!!」
「なに、気にすんなっ…嬢ちゃんに助けられた命だ、どうせなら…あんたの為に使わせてくれ」
「クロウ…」
「くっ…!」
ガルスは全身の力を振り絞って立ち上がると、棒立ちになるアリクのもとへ駆け寄った。
「やだ…クロウも逃げて、一緒に逃げて…!」
アリクはクロウクロウの名を呼ぶが、クロウクロウは答えなかった。ガルスはアリクをくわえて背中に乗せた。
「…恩に着る!」
そして、持てる力をすべてつぎ込み飛び上がる。
「くっ…待てっ…!」
金色の魔女は足から抜け出そうとするが、ガルスはどんどん高く上ってゆく。
「チッ…覚えておきなァ!ガルスよッ!…その娘を守ることがッ…やがては己の首を締めるということをッ!」金色の魔女はそう、空に向かって叫んだ。
ガルスはクロウクロウを一瞥すると、やがて北へ向かって飛び始めた。
「やめて、待って…!」
アリクが止めるも、ガルスは聞こうとしない。クロウクロウの姿が、どんどん小さくなっていき、やがて森に隠れて見えなくなった。
次の瞬間、先ほどまで居た場所が、まばゆい金色の光に包まれた。
「クロッ…!…クロウクロウ―――!!」
アリクはクロウクロウの名を叫んだ。だが…その声は、その名の主へ届くことはなかった。
第三話 キロロの守人
空は、いつの間にかうっすらと曇り始めていた。森の上空を、北へ北へと飛び続けるガルス。
「…大丈夫かなぁ…クロウ…」
アリクはガルスの背中で独り言のように呟く。
「………」
「ねぇ…ガルスはどう思う…?」
アリクはガルスに聞いてみるが、ガルスは答えない。
「…ガルス…?」
尚も呼びかけるも、反応はない。と、その時。
がくん、とガルスの体が大きく揺れた。
「わっ!?ち、ちょっと!?」
そのままガルスの体はどんどん下降していく。アリクは必死でガルスに呼びかけるが、その努力も虚しく二人は森の中へ落ちていった。
「きゃあっ!!」
ガルスの体は柔らかな草の上に落ちた。アリクは着地の衝撃で、地面にどさりと投げ出された。
腰をさすりながらよろよろと立ち上がる。
「いったた…ど、どうしたの…ガル…」
だが、言いかけたアリクの顔が強張った。
「…ス…?」
地面に横たわるガルスの顔が苦悶に歪み、呼吸も荒くなっていた。
「…ぐっ…い、いや…なん…何でもねえ…」
「な…何でもないわけ無いでしょ?流石に…」
ガルスは息を荒くして何とか言う。アリクはガルスのそばに駆け寄り、頬に手を伸ばした。
「…熱い…!?」
そのまま手をずらし、羽毛の中に手を突っ込んだ。じわり、とアリクの掌にガルスの熱が伝わった。灼けるような熱さだ。
「…っ…!す…凄い熱だよ…!これ…!」
「…そん…な、顔すんな…ただのか」
ただの風邪だ。そう言おうとしたが、喉から出たのは言葉ではなかった。
ドロリと、熱いものが嘴の端を伝った。体の中から邪悪な塊がこみ上げた。
「ぐ…がはっ…」
塊はガルスの嘴から吐き出されて、草の上にべしゃりと広がった。
青い草が、真っ赤に染まっていた。
アリクの顔が、凍りついた。
「げほっ…げぇっ…!」
塊は再び溢れ出した。吐き出しても吐き出しても、次々と塊はこみ上げてくる。そのリズムは、まるで心臓の脈拍だった。
「ガッ…ガルスッ…!!ガルスッ!!」
アリクがガルスの名を叫ぶ。ガルスの視界は徐々にゆがんでいく。
「どっ…どうしよっ…どうしようっ…だ…誰かぁっ…!誰か助けてっ…!!」
朦朧とする頭に、アリクの声だけが響きわたる。
だが、その声もやがてガルスの意識から抜けていった。ガルスの視界は、暗闇に飲み込まれた。
気がつくと辺りは真っ暗だった。上下も左右も区別がつかなくなるような、果てしない闇。
「…ここは…?」
世界の終わりに来てしまったような静寂。虚無感がガルスの体を満たしていた。
ふと、遠く離れた所に少女が立っているのに気づいた。肩まで伸びた茶色の毛に、茶色の毛皮。後ろを向いていて顔はわからないが、少女は間違いなくアリクだった。
「アリク」
ガルスは少女の名前を呟くように呼んだ。
気がつくと、いつの間にか先程まで遠く離れた所にいたアリクが、目の前にいた。
「…ガルス…?」
ガルスに気づいたアリクはゆっくりと振り向いた。
だが、振り向いたのは、虫だった。いや、虫の面をしたアリクだった。
アリクのその不気味な顎が、ゆっくりと開いた。
「ガルス」
「ッ!!!」
目覚めると、太陽の光が眩しかった。
「…ゆ…夢…!?」
うなされて居たのか、全身が嫌な気分で一杯だった。だるさの残る体を起こすと、辺りを見回した。
どうやら、大きな木のウロの中に居るらしい。藁や枯れ草で作られた布団に、ウロの入り口から日の光が注がれていた。
ふと、左肩に少しだけ重さを感じた。
左肩を見ると、アリクがガルスの羽に顔をうずめて眠っていた。すやすやと静かな寝息を立てている。
「…ア…」
名前を呼びかけた瞬間、先程の悪夢が蘇った。もし…アリクが、アリクじゃ無くなっていたら。
とその時。
「うぅん…」
アリクが寝返りをうった。その顔は、何てことない、いつも通りのアリクだった。
「………」
安堵の溜め息をついたと同時に、体の力が抜けた。
だが、その安堵も束の間だった。何者かの足音が、こちらに向かって近づいてきていた。
「…!!」
まさか、金色の魔女がもう追いついたというのか。足音は徐々に大きくなり、やがてウロのふもとでピタリと止んだ。
「ッ…」
ガルスはとっさに身構え、ウロの入り口に全部の意識を集中させた。
だが、ウロの入り口にひょっこり現れたのは、金色の魔女ではなくふさふさの毛を持ったイタチだった。
「よいしょっと…おおっ!?」
イタチはガルスを見ると大きな目を丸くして驚いた。
「っとと…やあ、気がついたんだな」
「…だ、誰だ…?」
イタチはガルスの不躾な態度も気にもとめず、ウロの中に入り込んだ。
「ああ、俺かい?俺はテンカクってんだ。別に怪しいもんじゃないぜ」
「そ…そうか。あ、俺は…」
「ガルスってんだろ?そこの人間から聞いたよ」
テンカクと名乗ったイタチはアリクを顎で示した。
「いやあ、それにしても酷い目に遭ったもんだな。偶々近くを通ったら、血ィ吐きまくって倒れてんだもんな。あんた、あのままだったら全身の血を吐いて死ぬところだったぜ」
「あんたが助けてくれたのか…すまねぇ、礼を言う」
「お礼ならそいつに言ってやりなよ。あんたが気を失ってる間、一生懸命看病してあげてたんだ。寝てる間にあんたに何か有ったら嫌だからって、夜も殆ど眠らずにな。あんた、よっぽどそいつに好かれてんだな」
「…え…」
ガルスは思わず、肩にもたれて眠るアリクを見た。
アリクは安心しきった顔で眠っている。寝言だろうか、口元がむにゃむにゃと微かに動いた。
「ま、流石に今は眠っちまってるけどな」
その時。ガルスの心の中で、アリクに対して今までに感じた事のない新しい“何か”が芽生え始めた。
何だろう、これは。いつしかガルスの視線は、アリクの気持ちよさそうな寝顔に釘付けになっていた。
「んん…うん…?」
と、ガルスの視線に気づいたのか、アリクが目を覚ました。
ガルスは、何故かとっさにアリクから目を逸らした。
「おお、起きたか」
テンカクがアリクの顔を覗き込む。
「あれ…ああ、私寝ちゃって…」
アリクは目を擦りながらガルスの様子を確認する。その瞬間、アリクの顔から眠気が吹き飛んでいた。
「…!…ガルス…?目…覚めたの?」
「ん…お、おう」
ガルスはそっぽを向きながら答えた。
アリクは言葉もなくガルスを見つめた。
「そっ…よっ……よか…っ…」
不意に、アリクの大きく見開かれた瞳から、大きな雫がこぼれ落ちた。
ガルスはアリクの予想外の反応にぎょっとして振り向いた。
「うっ…ふぁ…あああっ…」
雫は次々にこぼれ落ちて止まらない。とうとうアリクは自分の顔を手で覆ってしまった。
「あぁっ…うっ…ひくっ…うぅうっ…」
「お…おい…大丈夫か?目…目から水出てるぞ?病気か?」
ガルスはアリクの行動に度肝を抜かれ、どうして良いかわからなくなった。
そばでその様子をニヤニヤしながら見守っていたテンカクに目で助けを求めたが、テンカクは肩をすくめただけだった。
ガルスはただ、呆然とアリクを見守ることしか出来なくなった。
しばらくすると、アリクは落ち着きを取り戻してきた。まだ雫を一杯にためた目でガルスを上目遣いに見つめたが、やがてまた目を伏せた。顔を手で隠し、
「…ちょっと外…出るね」
と呟いて、入口に向かった。
テンカクは尻尾を使ってアリクを外に出してやると、しばらくアリクの行方を見守った。そして、ガルスに振り向いてニッと笑った。
「…いやあ、それにしてもすごいなあの子。あれなら“あの人”がミコの呪いなんかかけるわけだよ」
「…何がだ?」
「何がって…あんた今まで一緒に居て何も感じなかったのか?あの子、魔力を持ってるんだぞ?それもとんでもない量の」
魔力。確か魔力と言えば、魔法を使うのに必要な力だ。それを、アリクが持っている?ガルスはその言葉に思わず耳を疑った。
「…なっ…何だそれ!?そんなっ…聞いてねえぞ!!」
「ほら、例えば、あの子の周りでなんか不思議な事が起こったりしてなかったか?」
「ふ、不思議な事…?そんなん…」
と、言ったが、ガルスには思い当たる節があった。
ガルスは、これまでに二度、不思議な力で危機を救われている。ランドットと戦った時。そして、カラスの大群に襲われそうになった時。
そう言えば、そのどちらもが、背中にアリクを乗せていて、尚且つアリクに危険が迫った時だった。
「じゃあ、本当に…アリクには、魔力が…」
「ああ、間違いない。どうやら、その使い方までは知らな…って、じゃあ今まであの子が呪いをかけられた理由も分からなかったのか?」
「ああ、知らん。あいつの何かを欲しがってるのは知ってたが…まさか魔力とは」
「…呆れたなぁ。何で理由も無いのにそこまで命張る、って…」
テンカクはそこまで言うと、何かに思い立ったのかニヤついてガルスを見た。
「…何だ」
「…いや、何でもね」
ガルスはいまいち腑に落ちなかったが、テンカクは構わず続けた。
「…あんな、ミコの呪いで変身する虫ってのは、ただの虫じゃないんだ。“メレク”っていう、魔力の塊みたいな虫なんだ」
「魔力の塊…?」
「ああ。…そのメレクっていう虫は、普通は死んだ生きものの魂が、長い時間をかけて精錬されて生まれるものなんだ。だが…ミコの呪いは…今生きてるものの魔力を、無理やり抽出して、メレクに変えてしまうんだ」
「…魔力を抽出された奴は…その後、どうなるんだ?」
「…詳しくは俺も知らないんだ。実際にかけられてる奴を見るのも、初めてだからな」
テンカクはそう言うと入口の外を眺めた。
「ただ…そいつにとって大事な部分が根本からごっそり抜かれちまうんだ。普通は…まともじゃいられないだろうな」
「………」
ガルスも入口の外を見つめた。ここからでは、アリクの姿は見えなかった。
ウロのある木から、少し離れた木。
その根本に腰掛けて、アリクは顔を膝にうずめていた。泣きながら、ガルスの事ばかり思っていた。
嬉しかった。とてもとても、嬉しかった。その気持ちばかりが溢れ出て、とても言葉になどならなかった。
でも、きっと誤解させてしまっただろう。あの時の、ガルスの困ったような顔が思い出された。
…ちゃんと言葉で言わなくちゃ。嬉しかったんだよって、言葉で伝えなくちゃ。
アリクは涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げると、涙を拭いて立ち上がった。その時。アリクの背中に、きりりと痛みが走った。
「ッ…!?」
棘でも、刺さったかな。
アリクは背中を気にしたが、特に変わったところは無かった。小首を傾げながら、木のウロに戻った。
中から、ガルスとテンカクの話し声が聞こえた。
「…それにしても、ミコの呪いか。昔はこんな呪いを使う人じゃあ、なかったんだけどな」
「…さっきから気になってたんだが、あんた、何でそんなに魔法の事に詳しいんだ」
「あれ?言わなかったっけか?俺は元々金色の魔女の弟子だったんだよ」
「なっ…!じゃあ、お前もランドットみてえに…!」
「そんなっ…」
突然聞こえたアリクの声に、テンカクは驚いて振り向いた。アリクは泣きはらして真っ赤になった目でテンカクを見上げていた。
「あっ…いやいや、違う違う!元々だ、元々!今は関係ないよ」
「本当か?そう言ってあの魔女に場所を教えたりとか」
「そんな事しないさ!それにランドットなんかと一緒にされちゃ困る。あいつは自分の地位や名誉の為だけに魔法を習ってる最低の奴だ」
「そ、そう…?」
「ああ。とにかく、俺はもう金色の魔女とは関わりないよ、本当だよ」
テンカクは必死に身の潔白を証明しようとガルスに詰め寄った。
「し…信じるよ」
ガルスはその必死な態度に押し負かされるように言った。それに助けられた手前、むやみに疑っては失礼というものだ。
それを聞くと、テンカクはホッと胸をなで下ろした。
「…それより、さっき“昔はこんな呪い使う人じゃなかった”って言ったよな?昔と今じゃ違うのか?金色の魔女は」
ガルスがそう聞くと、テンカクはこっくりと頷いた。
「俺が魔法を教わっていた頃はすごく優しくていい人だったよ。自分の教え子達には、それこそ母親みたいに接してくれたもんだった。悪い事に魔法を使うような奴には容赦なかったけどな」
「ふうん…それが何であんな風に」
「さぁな…俺にはあの人の考えることがよく解らん。…最近じゃあ、この森を破壊して何か企んでるって噂だし」
そう言ってテンカクはウロの外を仰いだ。
「…それって…どういうこと?」
ウロの下で、アリクがテンカクを見上げて問い掛けた。テンカクはアリクに気づくと、おお、すまん、と言って尻尾を差し出した。
尻尾でアリクをウロの中に戻しながら言う。
「うーん…あんたら、最近この森で何かおかしい事とか見たりしなかったか?例えば…森の木が枯れてたり、逆に変に元気になってたり」
ガルスとアリクはしばらく考え込んでいたが、ふとアリクが何かをひらめいた。
「…そういえば、この間、シトラの木が花を付けてた。シトラの花って、確か春に咲くんだったよね?」
それを聞いたテンカクは、思い当たる節があるのか何か考えていたが、やっぱりな、と小声で呟いた。
「何か知ってるのか」
「…いやな、最近この辺りでもそういうことが起こってるんだ。繁殖の季節でも無いのに花粉を飛ばしたり、実をつけたり、枯れたり。まあ色々なんだが、どうもそれら全部…金色の魔女の仕業らしい」
「…!」
ガルスは思わず息をのんだ。
「まあ、この森をめちゃくちゃにしてどうすんのかまでは知らないが、とにかくあの」
「ちょっと待って」
話を続けようとしたテンカクの言葉は不意に遮られた。遮ったのはアリクだった。
「それって…本当なの?証拠はあるの?」
突然不意をつかれたテンカクは戸惑いつつ答える。
「しょっ…証拠って…いやまあ、ただ…噂を聞いただけだけど…」
「噂って…」
アリクは疑いの眼差しでテンカクを見つめた。
「ど…どうしたアリク」
「…ひどい」
ガルスが尋ねると、アリクは俯いて呟いた。その声はまた、先ほどと同じように震えていた。
だが、その震えは先ほどとは違った意味を持っていた。
「…ひどいよ…自分を育ててくれた人の事なのに…そんなっ、自分の師匠よりも…誰が流したかもわからないような噂を信じるの…!?」
そう言ってアリクはテンカクを真っ直ぐに見上げた。アリクの目にはまた、大きな雫が浮かんでいた。
「ッ…」
テンカクはばつが悪そうに目をそらす。
「そんな…自分だけでも、師匠を信じようとは、思わないの…?」
アリクの瞳から雫がこぼれ落ちる。
「…あんたに何が解る」
テンカクはそらした視界の隅でそれを捉えると、ぼそりと呟いた。
「…ごめんなさい、助けてもらったのに、こんな事…」
「………」
三人の間に沈黙が流れる。どこか遠くで小鳥が鳴いた。
痛いほどの静寂を静かに破ったのはテンカクだった。
「…不思議な奴だな」
「…?」
「本当に不思議だよ。自分に呪いをかけた張本人を恨むどころか、まさか庇うなんて」
「…そ…そう…?」
アリクは頬を伝った雫を手の甲で拭った。
「…まあ、確かに師匠の噂をすぐに信じるなんて俺も悪かったかもな。…でもな、俺だって何の確証もなく噂を信じた訳じゃない」
「…それって」
「…あんた達、“キロロの守人”って知ってるか」
「…キロロの守人…?」
アリクはガルスを見上げたが
ここまでです。やっと半分終わりました。
もうしばらくお付き合い下さい
すみません、
>>571の最後にこれを付け加えて下さい
ガルスも首を横に振った。
「金色の魔女のもう一つの名前だよ」
「金色の魔女の…?」
「正確には名前っつーより肩書きだな。あの人は…ずっとずっと昔から、その膨大な魔力でもってこの森の秩序を守ってきたんだ」
「…それなら何で…この森を壊す必要がある」
ガルスはテンカクに尋ねたが、テンカクは俯いて首を振った。
「それはわからない…だけど…これだけは言える。俺の知ってる限り、この森に手を出す…いや、破壊できるのは…」
テンカクは真っ直ぐにアリクを見下ろし、
「金色の魔女だけだ」
静かに、だがしっかりとそう言った。
乙ー
乙です
このまえ「アンバランスなkissをして」聴いてたらこのスレの登場人物フラッシュバックで
もう人外と人間のらヴすとーりーにしか聴こえなく(ry
神曲さんごめんなさい(´Д`*)
ここって動物の肉体や精神の改造とか解体とか堕胎とかのグロ系はOK?
スレ作品無駄転載はだめだよな?
>>576 >>1や過去ログを読んだ上で判断して
このスレにふさわしいと思うなら投下したらいいんじゃない?
>>578 いや勝手にうpしてるサイトがあって許可取ったか返事しない
無視するから無駄転載してると思う
どうすればいい?管理人都合が悪いコメント無視するしブログ隠して証拠隠滅してる
俺の返信じゃなかった
ごめん
ヲチ板でやれ
ここそういう板じゃないんで
だなー。前もそんなことで荒れてるから。報告とかやったら避難所で報告して
>>581 ヲチ板は全年齢板。エロパロ板ネタを持ち込めない。
スレの問題はスレで解決するのがマナーだろ。
前も誤爆や愚痴スレで場外乱闘して迷惑かけたんだ。
今避難所あるんだから、避難所でやろう。
>>579 俺が前にいたスレでは
1 投下するためのトリを明記
2 投下先のスレ名とレス番を明記
3 スレで転載許可(てか反対なんてほぼゼロだし何を転載するか宣言するだけ)
4 保管庫と相互リンク
5 更新頻度(専用サイトが要る職人なら頻度も…)
が自サイト転載マナーだった。まあロカルーかもしれないし参考までに。
ごつくていかつい人外と女の子の組み合わせが好きだ
体格差がたまらん
586 :
577:2010/05/13(木) 20:10:01 ID:WwZlTPXt
管理人は職人本人と言ったから証拠無いけどそういう事になって解決した
お騒がせました
あ、はい。としか言い様がないけど、まぁお疲れ
>>586 乙
紛らわしいサイトあるよな
お前は間違ってない
人外がごつい受けとか激しく萌える。萌えすぎて死ぬ。
>>589 残念ながら板違いです。
しかし少女がゴツい人外を尻に敷いてるという関係は定番ながらいいものだ。
人間×ごつい人外おいしいです
実年齢は人外の方が上でも、経験では人間の方が上とか萌える
>>586 ここはヲチ板じゃないと分からないでしょうか?
凸厨はお帰りください
>>589 ここは801板じゃないと分からないでしょうか?
腐れはお帰りください
>>591 ここは人間×人外じゃないと分からないでしょうか?
馬鹿はお帰りください
ん?このスレって人外雄×人間女だけじゃなくて
人間男×人外雌もありじゃなかったっけ?っていうかそれも含むよな。
保管庫見れば分かるが普通にある
人外系の総合スレの一つな所があるんで
他に投稿しやすそうなスレの無い人外♂×人間♀が多い傾向はあるが
それしか投下しちゃいけない決まりは無いはず
>>593 スレタイになんでもあり、って書いてあるからね
異性であればどっちが男性だろうと女性だろうと構わないはず
自分も異性カプのつもりで書き込んだし
まあ風邪だと思ってスルーしよう
今週末の金曜か土曜に絵茶しないか?
たしかまとめに絵茶あったよな
時間は夜9じくらいがいいかな?
曜日は集まりやすいほうで
避難所よりこっちのが目立つから本スレですまん
まぁいいんでね。絵師さんがここみてればいいね。
あれ、そういえばここいつから虹になったん…?
絵茶だと……?
ROMでもいいのか?
>>599 虹?二次創作のことか?
見当違いだったら悪いが、二次創作ネタで絵チャなんて書かれてないと思う
普通に前にあった絵チャみたいに人外人間語りしたり絵描きたい人が書いたりするカオス空間だと思うんだが…
カートゥーンネットワークに人外萌えがいっぱいだった件について
>>604 個人的にグリムとマンディはガチ。異論は認める。
ノーパン疑惑のニヒリスト幼女とヘタレ死神いいよな
初対面で交わした約束が「奴隷になって」じゃなくて「友達になって」なのが萌える
ジャンルが子供向けアニメじゃなければ容赦なく前者を言い放っていそうだが
あっちじゃ二人の子供が活躍する同人誌があるらしいぞ。
608 :
名無しさん@ピンキー:2010/05/25(火) 21:51:37 ID:FCmFJ3vJ
>>604 新しい奴では変形ロボ×幼女(微妙に違う?)だな
ところでヤンマの人の番外編みたいなのを見てみたいと思ってたり。
あの2人以外にも変わり者が居ても良いじゃない!
>>608 2スレ目か3スレ目にあったよ
人型昆虫が人間世界で暮らすタイプの話だからヤンマとアカネとはちょうど逆だな
途中送信になってしまった;
でも確か設定をヤンマの人からパクってキャラを別の人からパクったんだよね
(著作権者たちと示談になったっぽいけど・・・それか著作権買い取ったのかな?)
だから保管庫に保管するの拒否されてる
そうゆうシナチョンコピーならあるよ
何が正しいのかは避難所議論スレ読んで自分で判断してくれ
こっちのスレで一年前の続きだけはしないでくれとは行っておく
毛皮分たりないのでもふもふ人外さんとおにゃのこの話キボンヌ
アンデッド分とメカ分も足りないぞ
全部混ぜ合わせてキメラ分がたりないと…そういうことだなっ!(キリッ
勇気がなくて群れを追い払われたもふもふ猛獣、メモリーが寿命で記憶力がまるでダメなロボ、死後現世をさ迷い心をなくした骸骨が
ひとりの女の子と入れ替わり立ち替わりイチャイチャしながら旅をするんですねわかります
最後はカンザスに行くのか
鱗成分も足りない
黒鱗ダンナの嫁取り物語をいつまでも待つ
なんだか献血の呼びかけみたいなのを想像しちゃった。
「ただいま全ての人外成分が不足しております。御協力を〜…」みたいな。
もはや夫がシロクマのCM見ても(*´д`*)ハァハァできるぜ
確かにひんやりジェルマットのCMはエロいな
白熊がきちんとさん(だっけ?)を抱きかかえるCMは微妙にエロいと思うんだ
性の目覚めはオズとびじやじゅだったっけかな……
いやだがしかし完璧魔獣を人間なんかに戻しやがったネズミ野郎は何もわかっちゃいない
おっと俺は決して色々と厳しい彼らに言ったわけじゃないし訴えられたくもn……うわ何をするやめ
そういや、名前を出してはいけない黒ネズミやら白アヒルやらも人外だな。
しかしあいつらにはまったく萌えない不思議w
>>623 王子が人間に戻ったときのがっかり感は忘れられねぇ
そういえば魔獣のモフモフが気に入ったお姫様が、人間に戻った王子を
もう一度魔獣に戻すため、二人で魔法使いを探しに旅に出るって話をマンガでみたな
ディズニー版の美女と野獣はな…
人外萌えの気が無い人でも「戻る前の方がかっこいい」と言わせたからな
その点シュレックは優秀
いや厳密には人外×人間じゃねえけど
>>625 コバルト文庫のちょーシリーズじゃね?
妹が持ってる
やっぱ皆野獣は野獣だからこそイイって思うんだねw
方向性はかなり違うけど、ゼルダトワプリのミドナでも同じ気分を味わったな
ちっこいほうが可愛いんだよ戻るなよチクショウ
話のテーマ的に人間に戻ってがっかりするのは間違いなんだろうけどな
人(じゃないけど)は見た目が九割ってのはよく言ったもんだ
逆だろ?
外見関係なく愛してくれる女がいたんだから外見戻したらテーマ無視だよ
いや、うまく言えないけど「人外のままハッピーエンド」でも
「人間に戻ってハッピーエンド」でも等しく「良かったね」って感想が出るのが
本当は作品の解釈として正解なんだろうなと思った
俺は「人外だからこそ萌える」から上記の感想持てないけどな
外が元に戻っても中身が人外のままだったら萌えるけど
野獣は心が人間だったからな
本家本元のディズニー以外に美女と野獣属性の作品ってどんなのがある?
本家本元がディズニーってお前頭平気?
すまん言い方が悪かった
ただどんなのがあるか知りたかったんだ
人外と女の子のカップル、コンビ物で思いついた奴。
アップルシード
ジャバウォッキー
マリンとメラン
魔人探偵脳噛ネウロ
ぎんぎつね
ドロヘドロ
あとサンレッドで怪人と女の子のカップル?なんか結婚申し込む奴?がいた気がする
あんま思い出さないな、多分他の作品の名前とか見たら
あー!これ忘れてた!ってなるんだろうけど。
人間型人外が多かったが、最近読んだ「虫と歌」ってコミックよかった。
ちょいロリすぎるが、あんなかいがいしい星屑の妹が欲しい。
>638
苺農家に転職しちゃった怪人か
そういえばそんなシーンもあったね
>637
異種間恋愛で検索したらけっこう作品が引っかかった気がする
メルエムとコムギ
シェリーとブラゴ
徐倫とFF
今ざっと部屋の漫画を見回しただけでも、こんなに仲むつまじい人外と人間コンビが
もしまとめるなら異種間恋愛と異種間(恋愛外情)交流くらいにざっくり分けた方がいいかもしれない
名探偵ホームズで、ハドソン夫人を登場人物で唯一の人間にしたかったのに
反対されて出来なかった!おのれ!とぶっちゃけてるのを読んで、
さすがパヤオは分かってんな!と思った。
とらと真由子も忘れちゃいかん
あとからくりサーカスで、王女に成り代わろうとした人形が最期に
今まで側にいた人間の愛を理解したってやつも好きだったなぁ
>>644 「うしおととら」のとらと真由子は自分の中のNo.1だ。
あのふたりは最後がすげー切ない。
十二国記の王と麒麟の関係は、
主従萌えも加わって涎が止まらん。
半獣の楽俊の可愛らしさは異常。もふもふしてぇ…
手塚治虫先生も何気に人外と人の作品多いよね
ここまでペルディード・ストリート・ステーションなしとは。おまえら分かってない。
異種愛もクリーチャー愛好癖も高いレベルで満足させてくれるぜ。読んで損はない。
ホラー、SF、ファンタジー小説あたりは人外の種族がきっちり描写されてるから異種萌えが多いぜ。
レンズマン、最後のユニコーン、指輪物語あたりは古典だが萌える。
>>647 あれは初っ端から飛ばしてたなww海外作品読み慣れてたつもりだったけど理解するのに何度か読み直したw
SFは設定描写命だから確かに異種萌え多いけど、その分読みにくいんだよね
ってんで読みやすい「導きの星」を押してみるwまぁ全篇に渡って異種恋愛する訳じゃないけど
主人公が初めて惑星に到達した章はここの人間ならニヤニヤしっぱなしだと思うww
SFは本当に異種萌えの宝庫だよなあ…
完全に異形ではないにしても
パッと見人間と相違ないけど全然違う生物と人間のコミュニケーションが普通に描写できるってのは良いね
十年近く前のラノベだけど、
『レスト&ハーウィン』はもろに異種族恋愛がメインに来てて個人的にはとても良かった。
巨大なイトマキエイ型宇宙生物と人間の女の子のお見合いから始まる恋愛に
独立戦争の行方がかかっている!って感じの話。
箱○洋ゲーRPGだがマスエフェクトがお勧め。スタトレみたいなスペースオペラなんだが
まず主人公を男女レベルからキャラメイク可。会話はフルヴォイスでしかも主人公の返答内容をすべて選択出来る
そしてパーティーメンバーの過半数が異星人(地球人3+異星人4)
なによりゲーム中にセックスシーン有りwわざわざ妄想しなくても気にいったキャラに嫁がせてあげる事もできるw
ただ1の時点では選択肢が少ないんだ。多分ほとんどの人が気に入るであろう3人とはセックスイベ無しorz
まぁそこは2で幅が広がったけど、日本語版がまだでねぇorz
ストーリーも燃えるし異星人にも萌えるしプラコレでも出てるから是非
んでもってEAさっさと2ローカライズして下さい……
>>650 魔魚戦記か。あれはよかった。
2巻までしかでてないのと、本誌掲載でイラストレーターがころころ変わったのが残念だが。
今は人外だけど、元は人間だったっていうのはこのスレとしてはどうなの?
そういうの嫌いだ
とりあえず今が人外ならいいよ
ワタルの鳥さんが人間に戻ったときのがっかり感と言ったらなかった
野獣と鳥さんはケモナーじゃなくても獣人姿の方が好きって人多いよね
>>657 > 『野獣と鳥さん〜』……唐突に「大貝獣物語」を思い出してしまった…www
個人的にあのゲームはケモナーさんにも人外好きにも優しいゲームだと思うんだ…。
二作目には「モフモフ獣人の戦闘隊長→隊長が仕えてる人間のお姫様」…みたいなモロにニヤニヤできる要素もあったし……。
無論、その他にも、人間味溢れるロボットや、見た目は大人中身ひ子供の昆虫人間や、プニプニの貝獣さんや、壷ジジイ、ほのぼの石人間ファミリー、ファンの間でネタにされまくりな鳥人さんとか……。
そしてバイオベースな・・・
>>653 個人的にはそれを人外側と人間側どっちの立場に置いても有りだ
そういうシチュはかえって人間とそうで無い物との違いが強調されたシチュが多くて好き
2ちゃんのぎんぎつねスレでやればいいのになんでこのスレでやるの?
スライム、爬虫類、メカ、無機質系統のひんやり人外と
その嫁さんのベタベタスキンシップを想像するのにピッタリの季節がやってきたな
冬はホットで、夏は冷やして
一年中ラブラブイチャイチャな不定形生物さん
まで妄想した
暖めようとしてうっかり電子レンジに入れられて
あわや大惨事な不定形生物さんを受信した
突然だが西洋の悪魔が
人間に化けても片足がヤギ足のままだということになんとなく萌えを感じる
>>665 不定型人外さんが爆発してしまう!!嫁さんせめて湯煎にしてあげて
そして夏が来たら今度は冷凍庫に閉じこめられて
またもや大惨事になるんですねわかります
>>666 狡猾なのに迂闊な悪魔か…いいな
ほしゅ
スカーレッドライダーゼクス、発売したな。期待
まとめ更新してないけどどうしたのかな
トTストーり―の世界観いいな
きっとあの世界じゃ眠る持ち主に見つからないようイタズラしては興奮するテディベアとか、
さよならが辛くて捨てられるたび家に帰ってくるフランス人形とかがいるんだろうな
戻って来るのは怖いな、、、
俺としては成長してくれたほうが、、、?何か玄関で音がするな
アンデッド系骸骨の女の子に性的悪戯したらどうなるのっと
いやあああ!でちゃう、骨髄液でちゃうのおっ!
何それ新しいw
キスしたら舌や唇がないから申し訳なさそうにしたり骨盤で素股したりするんだな
677 :
名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 15:49:02 ID:Olqd6Ptc
キロロの森おもしろいです!鳥好きーな私にはたまらん作品。
続き待ってます。
骸骨話に便乗して短いのを投下。いつもの人外アパートです。
大学生と骸骨娘がちょっと絡むだけの非エロで、NGは骨でも愛してです。
須賀倫太郎は、鎧塚祐介の学友である。
祐介と同じく地方から上京して進学し、奨学金とアルバイトで喰い繋いでいるので共感出来る部分が多いので、
おのずと親交を深めていた。選択している講義も似通っているので頻繁に顔を合わせることもあり、大学で出来た
友人の中でも特に仲が良いと言えるだろう。しかし、彼の趣味だけは頂けない。暇さえあれば近隣の心霊スポットに
繰り出しては大量に写真を撮り、怪しげなことが起きたならば声高に話すという、巷で氾濫している怪談のオチで
行方不明になる登場人物のような趣味なのだ。だから、これまでも冷や冷やしながら彼と付き合ってきたのだが。
「……取り憑かれたんだ」
祐介のアパートを訪れた須賀倫太郎は、暗澹たる面持ちだった。
「見りゃ解る。自業自得だ」
祐介は一切同情せず、アビゲイルの入れたコーヒーを啜った。祐介の後ろに慎ましく控えている銀色の女性型全身鎧、
アビゲイルはマスクを押さえて微笑んだ。
「あら、とてもスマートな方ね」
「とりあえず、ダイエットの必要がない相手だとは解った」
祐介は、倫太郎の背後で膝を揃えて座っている骸骨を見ずにはいられなかった。生前は両目が填っていたであろう
眼窩からは頭蓋骨の裏側が覗き、鼻の穴と綺麗に揃った歯と顎の奥には緩やかにカーブした脊椎が繋がり、骨盤が
広めで全体的に骨がほっそりしているので、もしかしたら女性なのかもしれない。肉体が死しても魂が鎧に癒着した
アビゲイルを見慣れているおかげで、祐介にはそういうものだと理解出来る感覚が備わっていたが、そうでなければ
大いに困っていただろう。実際、心霊スポット巡りが趣味であるわりには慣れていない倫太郎は辟易していた。
「一昨日の夜にな、廃病院に行ったんだ。デジカメ持って原チャ飛ばして、写真撮りまくってたんだ。いつもだったら
肝試しに来た連中がいるんだけど、その日に限って誰もいなくてさ。その辺でおかしいって思えば良かったんだが、
超ラッキーとか思って一人で乗り込んでったらさぁ、こいつにいきなりしがみつかれて、そのまま……」
悲劇的な仕草で顔を覆う倫太郎の背後で、それまで黙っていた骸骨が可愛らしい声で言った。
「私は何もしていないのに、色んな人が騒ぎ立てるから目を覚ましちゃったんです。あの病院、山奥だから静かだし、
ひんやりして湿っぽくて気持ち良かったからお気に入りだったのに、毎日毎日騒がれちゃ引っ越したくもなります。
だから、取り憑いたなんて心外です。落ち着く場所を変えたと言って下さい」
「だからって、なんで俺なんだよ!」
「だって、気に入っちゃったんです」
倫太郎の嘆きを無視し、骸骨娘は微笑むかのように上顎と下顎を薄く開いて頬骨に細い指先を添えた。
「肝試しに来る若者とかカップルとかと違って大人しいし、たまにお供え物をしてくれるし、写真を撮る前も後もちゃんと
断ってくれるしで、心霊スポットに来る人間の中では結構良心的だったんです。だから、その……」
「その気持ち、解るわぁ」
アビゲイルはもっともらしく頷いたので、祐介はちょっと笑った。
「そりゃ、アビーは誰よりも解るだろうさ」
リビングメイルも骸骨も、根本的な部分では似通っているのだから。骸骨娘は畳の上にもしっかりと座っているし、
玄関のドアも開けたので、きちんと実体を持っている化け物、つまりはアンデッドということだろう。ここ最近、人魚と
同棲中の大学一年生の魔術師見習いである岩波広海から魔法絡みのことを教えてもらっているので、祐介も
多少は知識の幅が増えてきた。それもこれも、愛するアビゲイルのためであるのだが。
「私、あの病院で長いこと標本にされていたんですよ。何十年も前に病気で死んじゃったんですけど、その頃は
珍しい病気だったらしくてサンプルとして保管されたんです。でも、いつのまにか病院は潰れちゃって、私の家族も
骨を引き取りに来なかったらしくて、箱の中で何十年もじっとしていたんです。で、ある日突然目が覚めたので
箱の外に出てみたら、病院が心霊スポットになっていたんです」
骸骨娘はアビゲイルが人数分出したコーヒーに手を付けようとしたが、肋骨から擦り抜けてしまうので手を下げた。
「あ、まだ名乗っていませんでしたね。私、神戸斜里っていいます」
「お願いだから離れてくれよ、正直迷惑だ、病院でも墓の下でも帰ってくれ」
陰鬱な目を上げた倫太郎に、骸骨娘、斜里は身を捩ってがしゃがしゃと骨を鳴らした。
「そんなこと言われても困っちゃうー。ここからあの病院までの道なんて解らないしぃー。帰りたくなぁーい」
「あらまあ、可愛らしい我が侭ね」
アビゲイルが笑うと、倫太郎は頭を抱えた。
「そりゃ食費は掛からないかもしんねーけど、こんなの無理だっつの。骨だぞ、骨。何も出来ねぇよ!」
「案外出来ると思うぞ」
「お前と一緒にすんじゃねぇや、この鎧フェチ」
「その認識は間違いだ。俺はアビーが好きなのであって、鎧そのものが好きだというわけではない」
祐介が真顔で言い返すと、倫太郎は少女のように照れるアビゲイルを一瞥してから、ぐったりと肩を落とした。
「鎧塚ならなんとか出来そうな気がしたが、間違いだった。そもそも話にならねぇ」
「何よーもう、失礼しちゃう。こんなに可愛い女の子に迫られてるのに、ちっとも喜ばないなんて」
不服げに胸を張る斜里に、倫太郎は頭痛を堪えるように額を押さえた。
「その顔がないんじゃ、可愛いかどうかすらも解らないだろうが」
「骨格だけってことは、いくらでも脳内補完が効くってことだろ。胸だろうが尻だろうが自由自在だ」
「他人事だと思いやがって」
「とにかく、須賀が捲いた種だ。自分でなんとかしろ。いや、種を撒き散らすのはこれからかな?」
「おぞましい冗談を言うな」
祐介の軽口に倫太郎は頬を引きつらせると、アビゲイルが斜里にヘルムを向けた。
「なんだったら、斜里ちゃんに色々と教えてあげましょうか? 柔らかい部分がなくても、男の人を喜ばせられるものよ」
「わあ、いいんですかぁ! よおし、頑張っちゃうぞ!」
斜里がはしゃぐと、剥き出しの関節が擦れ合った。倫太郎は本格的に頭が痛くなってきたらしく、死人同士の際どい
ガールズトークを聞き流しながらテーブルに突っ伏した。祐介は気持ち悪いほど優しい笑顔を浮かべながら、倫太郎の
肩を叩いてやると、倫太郎はゾンビのような呻きを漏らした。倫太郎の気持ちも痛いほど解るが、慣れるまでの問題だ。
こちらの世界に足を踏み入れてしまえば、もう戻れない。
骨の髄まで愛されてしまえばいい。