キモ姉&キモウト小説を書こう!part24

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1名無しさん@ピンキー
ここは、キモ姉&キモウトの小説を書いて投稿するためのスレッドです。

○キモ姉&キモウトの小説やネタやプロットは大歓迎です。
愛しいお兄ちゃん又は弟くんに欲情してしまったキモ姉又はキモウトによる
尋常ではない独占欲から・・ライバルの泥棒猫を抹殺するまでの

お兄ちゃん、どいてそいつ殺せない!! とハードなネタまで・・。

主にキモ姉&キモウトの常識外の行動を扱うSSスレです。

■関連サイト

キモ姉&キモウトの小説を書こう第二保管庫@ ウィキ
http://www7.atwiki.jp/kimo-sisters/pages/1.html

キモ姉&キモウト小説まとめサイト
http://matomeya.web.fc2.com/

■前スレ
キモ姉&キモウト小説を書こう!part23
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1251275428/

■お約束
 ・sage進行でお願いします。
 ・荒らしはスルーしましょう。
  削除対象ですが、もし反応した場合削除人に「荒らしにかまっている」と判断され、
  削除されない場合があります。必ずスルーでお願いします。
 ・趣味嗜好に合わない作品は読み飛ばすようにしてください。
 ・作者さんへの意見は実になるものを。罵倒、バッシングはお門違いです。議論にならないよう、控えめに。

■投稿のお約束
 ・名前欄にはなるべく作品タイトルを。
 ・長編になる場合は見分けやすくするためトリップ使用推奨。
 ・投稿の前後には、「投稿します」「投稿終わりです」の一言をお願いします。(投稿への割り込み防止のため)
 ・苦手な人がいるかな、と思うような表現がある場合は、投稿のはじめに宣言してください。お願いします。
 ・作品はできるだけ完結させるようにしてください。

SSスレのお約束
・指摘するなら誤字脱字
・展開に口出しするな
・嫌いな作品なら見るな。飛ばせ
・荒らしはスルー!荒らしに構う人も荒らしです!!
・職人さんが投下しづらい空気はやめよう
・指摘してほしい職人さんは事前に書いてね
・過剰なクレクレは考え物
・スレは作品を評価する場ではありません
2名無しさん@ピンキー:2009/10/07(水) 14:19:08 ID:pEyM92oV
>>1
3名無しさん@ピンキー:2009/10/07(水) 14:23:10 ID:YV2YX/lv
>>1
4名無しさん@ピンキー:2009/10/07(水) 16:58:12 ID:ulGDdweU
>>1

初めて一桁ゲットし
5名無しさん@ピンキー:2009/10/07(水) 17:38:54 ID:ylSIxjX0
>>1

やっとキモウトから逃げ切ったぜ・・・
6名無しさん@ピンキー:2009/10/07(水) 19:14:05 ID:ed4gcnC1
●がいるようになるのか?
7名無しさん@ピンキー:2009/10/07(水) 21:22:11 ID:ydQBBDMR
>>1
8名無しさん@ピンキー:2009/10/07(水) 21:25:59 ID:NbP/qlg4
すんません。前スレに書いたら容量オーバーになっちまった。
あれで終わりです。
9名無しさん@ピンキー:2009/10/07(水) 21:34:57 ID:XuAvAqzV
気網屠
闘気によって網を作り出し、それを対象に投げつけ絡め捕り、引き裂く
10名無しさん@ピンキー:2009/10/07(水) 22:34:03 ID:dVdIWuCE
前スレ>>767
>>8
まとめてになるけれど、埋めネタGJでした!
11名無しさん@ピンキー:2009/10/07(水) 23:08:15 ID:1D7wBk2q
前スレ>>779 GJ!
キモ姉っぽい羽村さんといい兄宅に監視カメラつけてる父母といいツッコミどころがありすぎる
家族ぐるみは卑怯だw

ところで、兄宅と実家って、実はあまり離れてなかったりするのか?
(監視カメラの電波が届くのはせいぜい数百メートル内だったはずだが)
12名無しさん@ピンキー:2009/10/07(水) 23:17:20 ID:aP49NCEk
立&埋乙っ!
そして、早々にこのスレの終焉と埋めを待つ俺ガイル
13名無しさん@ピンキー:2009/10/07(水) 23:24:52 ID:KJYSGUkL
>>12
何と気の早い…
14名無しさん@ピンキー:2009/10/07(水) 23:28:13 ID:ed4gcnC1
>>12
はっ?なんで?
15名無しさん@ピンキー:2009/10/07(水) 23:36:15 ID:L6QVwH43
前スレ>>778GJ! & >>1乙です
16名無しさん@ピンキー:2009/10/08(木) 00:15:00 ID:bU//BkqW
>>11一応録画したものを見てる的な。
まあ、

こまけぇこたぁ
    いいんだよ!!
  /)
 / /)
`///  __
|イ二つ/⌒⌒\
| 二⊃ (●)(●)\
/  ノ/⌒(_人_)⌒ \
\_/|  |┬|   |
 / \  `ー′  /

17名無しさん@ピンキー:2009/10/08(木) 00:16:10 ID:nNzg40Ix
18名無しさん@ピンキー:2009/10/08(木) 03:52:53 ID:xH3jKaYJ
>>17
で結局何やってたんだ?
19名無しさん@ピンキー:2009/10/08(木) 10:44:28 ID:OUDIcRqH
>>8
GJ
20名無しさん@ピンキー:2009/10/08(木) 23:27:10 ID:a1Jyv8cx
キモウト喫茶に行く…と言う夢を見た
店から出ようとしたら背後からスタンガンで
店の奥にはなんと地下室が

起きたら凄く虚しくなった
21名無しさん@ピンキー:2009/10/09(金) 00:38:12 ID:iGs0m9bR
だよな。監禁・逆レイプ、殺されるとこまでみないとな。
22名無しさん@ピンキー:2009/10/09(金) 12:17:59 ID:RQxB1QUF
友人の妹がやけに関わってくる、異常なまでに…
具体例
・どこに遊びに行っても必ず遭遇する。「偶然ね、お兄ちゃん。」
・修学旅行、空港までお見送り+お迎え。学校はどうしたのか?
・卒業式の後、Kさん(仮名)の胸倉掴んでた。アイツは止めようとしてたが役に立ってない。
・大学時代、合コンに行ったら…妹ちゃんがいた。アイツはEさん(仮名)にアピールしてたみたいだが…
・卒業旅行、俺+アイツと妹ちゃんの部屋割りから兄妹と俺の組み合わせに…男女別部屋論言い出したのお前だろ。
・なんか凄く妹ちゃんにソックリな恋人が出来たらしい。「まあ、俺には関係ないやヨロシクやってろ」と言ってやった。ほんとよく似てるな。
・アイツが例の人と結婚した。親類席に妹ちゃんが居ないことを聞いたら、妹ちゃんは四年前に事故死していたらしい。アイツはそのことには何も喋らなかった。本当に残念だ。
・最近、アイツを見ないので家に行ったら、シバかれてた。「あの女とどういう関係なの!」リアルで初めて聞いた。家庭不干渉の理念を貫くことにした。怖かったわけじゃないと思う…      
23名無しさん@ピンキー:2009/10/09(金) 12:26:14 ID:QRzp0YgE
ごめん
流し読みしたけどあんまりわかんない
24名無しさん@ピンキー:2009/10/09(金) 12:42:44 ID:MuX8Z2IS
1 奥さんと妹がそっくり
2 いつの間にか消えていた妹
3 奥さんと妹を同時にみたことはない…

……まさか同一…
25名無しさん@ピンキー:2009/10/09(金) 12:57:36 ID:8VZHki76
イミフ
26名無しさん@ピンキー:2009/10/09(金) 13:27:53 ID:xKeZSKu+
・設定はよくわかるし、面白いと思う。
・けど、箇条書きだと>>24の1のところで「んなわきゃねーだろ」と思ってしまう。

とゆーわけで、>>22をきちんと文章化する作業に戻るんだ!
説得的に描写できるようなら、ラノベデビューくらいは簡単だと思うぞ!
27名無しさん@ピンキー:2009/10/09(金) 15:44:54 ID:ONtNV82Y
一人暮らしをしている姉に呼び出された俺は夕刻頃、姉の住む東京郊外のアパートへとたどり着いた。
このアパート、最初こそ全部屋満席だったらしいが今では住んでいるのは姉だけなのだという。
それとなく「いわく付きの物件かもしれないから部屋変えたら?」と言ってきたが、「心配してくれるの? 嬉しいなぁ」とまるで相手にされない。
まぁ、そんなこんなで様子見も兼ねての訪問だった。

「いらっしゃ〜い。疲れたでしょ、お菓子作っておいたよ」
呼び鈴を押す前に扉が開き、俺は一も二もなく部屋の中に引きずり込まれた。
ガチャリ...と鍵とチェーンまでも掛ける姉。女性の一人暮らしにおける防犯対策らしい。
「で? 今日は何の用なの?」
お菓子とお茶もそこそこに、俺は本題を切り出す。男手が欲しいということは力仕事なのだろうか。
「ふふふ。実はね、お姉ちゃんと―――」

ガン!! ガン!! ガン!!
突然玄関の扉が激しく音を立てる。扉の向こう側から聞き慣れた妹の声が響いた。
『お兄ちゃんまだ無事!? 扉を開けて!!』
住人がいれば近所迷惑になったであろう。とにかく妹は激しく扉を叩きありったけの声を上げて俺の名を呼ぶ。
『お兄ちゃん聞こえる!? 早く扉を開けてっ!!』
「おいおい、何だってんだよ。今開けるからちょっと静かにしてろ」
俺は急いでチェーンを外し鍵を・・・
「開けちゃだめッッッ!!」
物静かな姉から発せられた怒号。あまりの意外さと迫力に俺は固まってしまった。
「弟君・・・何でお姉ちゃんがここに呼んだか教えてあげる」
ユラリ...と一歩ずつ近づいてくる姉。なぜだかその行動に俺は恐怖を覚えた。
「妹はね・・・弟君のことを性的な目で見てたの。知ってる? あの子、弟君のシャツやリコーダーで自慰とかしてるのよ?」
妹がブラコン気質だということは前々から感じていた。が、まさか俺に欲情を抱いていると誰が予想できるだろう。
扉の向こうの妹の動きも止まっている。
「だからこの部屋に呼んだの。ここで弟君を匿わなきゃいつかきっと妹に犯されちゃうもの。お姉ちゃん、そんなの見たくない」
俺の指が扉から離れる。鍵を開ける気にはなれなかった。
『騙されないでお兄ちゃん!!』
俺の動きを察知したかのように妹が再び吠えた。
『私見たの!! 一人暮らしする前にお姉ちゃんが手錠とかロープを買ってるところを!』
ビクッと姉が反応する。そしてギロリと扉を睨んだ。
『それに薬も沢山あるのよ! きっとお菓子とかお茶に睡眠薬とか媚薬を盛ってるはずよ!』
そう言われれば何故だか瞼が重い。それに身体の奥が熱を帯びているようだ。
まさか・・・本当に姉が薬を・・・?
『早くしないとお姉ちゃんに捕まっちゃうよ!? 扉を開けてっ!!』
「弟君」
ユラリ...
「開けちゃだめよ」
俺はどうすればいい―――?
『お兄ちゃんっ!』
ガンガンガン!!
『扉を開けてっ!!』
俺はどうすればいい―――?
姉が近づき、妹は叫ぶ。
瞼は重く、身体は熱い。
俺は・・・俺は・・・俺は・・・――――――


っていう話を大学の講義中に考えた俺はどうすればいい?
28名無しさん@ピンキー:2009/10/09(金) 15:54:31 ID:UoblSTy9
取り敢えず続きを
29名無しさん@ピンキー:2009/10/09(金) 16:18:14 ID:e+2dDrmv
>>27
続きを期待する一方で、コレで完結しているような気もする……
姉妹視点の前日譚、なんてものを期待してみる。
30名無しさん@ピンキー:2009/10/09(金) 16:46:28 ID:QkkCWjDc
3Pでおk、と思ってしまった俺は……
ああ、女性関係に寛容なキモ姉妹はいないものか……
31名無しさん@ピンキー:2009/10/09(金) 16:54:13 ID:VfpUMiW4
>>30
それは他の女はOKって事か?
それとも自分たち姉妹で兄や弟を共有するけど他はアウトって事?
32名無しさん@ピンキー:2009/10/09(金) 17:27:34 ID:lCJkku1F
基本、キモ姉妹的に兄or弟は永久貸出不可だろ
33名無しさん@ピンキー:2009/10/09(金) 17:57:38 ID:SobFRLSi
GJ
しかしどうすればいいも何も、すでに一服盛られていただきます待機じゃないの
34名無しさん@ピンキー:2009/10/09(金) 20:52:59 ID:01SxskO3
女性関係に寛容なのは
狂気度が下がってなんか違う気がする
35名無しさん@ピンキー:2009/10/09(金) 20:59:10 ID:lRoUtKUQ
姉「妹ちゃんはいいわよ?血を分けた姉妹ですもの。でも他の女はダメ」
妹「お姉ちゃんならしょうがないかな。お兄ちゃんを手に入れるのに協力してくれたし。
  でも他の雌共は近寄ってきたら即・斬・殺だからね♪」
36名無しさん@ピンキー:2009/10/09(金) 21:42:37 ID:DH94kWbo
そういうのって兄妹・姉弟間より姉妹間の方が仲良く見えて嫉妬してしまうぜ
37名無しさん@ピンキー:2009/10/09(金) 22:29:57 ID:HVyHnlDi
初投下させていただきます。
ジャンルはキモ姉ですが、序盤は普通の小説みたいになってしまった……。
38人と妖の姉:2009/10/09(金) 22:36:46 ID:HVyHnlDi
 現在は空で星が煌く夜。
 街のネオンサインや電光が、闇の世界に独特の魅力を彩りしている。
 遠くから見たその光景は、地上が星の海と化したような美しいモノだった。
「五月蠅くて空気が不味いあの街も、こんな所から見ると中々綺麗なもんだな……」
 呆れながらも何処か感心したような声が、静かな夜に響いた。
 街からはそれなりの距離が離れているこの場所は、今は廃墟となった工場の跡地である。
 山が近いということもあってか、森林地帯の中に建てられており、夜の闇と相まってより一層不気味さを醸し出していた。
 その工場の一室に佇んでいるのは、一人の少年であった。
 この少年が、先程の声の主である。
 夜風に何の抵抗も無く靡く鮮やかな黒髪。年齢は十代半ばであろうか、ややスラリとしたその目つきを、部屋の窓の外へと向けている。
 身に付けている衣服は何処かの学校の制服ではなく、ちゃんとした大人が着る黒を基調としたスーツである。だが上着のボタンは全て外しており、ネクタイは首元がだらしなく緩々としている。
 やがて少年は窓から見える街の光景に飽きたのか、どうでもよさそうな感じで窓に背を向け、工場の奥へと足を進ませる。
 夜の闇と無音が支配するこの錆びれた工場は意外と広く、中は複雑に入り組んでいた。
 少年は何かを探すようにあちこちへと視線を送り、何の躊躇も無くどんどん奥に進んで行く。
 そして彼はある一つの部屋の前に辿り着いた。
「作業場」と書かれたプレートの扉を開けると、そこにはそこかしこにミシンや電動鋸が放り捨てられている部屋だった。広さの規模は中々大きく、人数十人入っても十分余裕がある位だ。
 少年は部屋に入って扉を閉めると、辺りを見渡した。
「――当たりだな」
  そう呟いた瞬間、床から黒い手が覗き出し、少年の右足首を乱暴に掴んだ。
39人と妖の姉:2009/10/09(金) 22:44:30 ID:HVyHnlDi
『……ォオ……オオォ……』
 少年のとは全く違う、酷く低く不自然な声が、床から響いた。
 足を握る黒い手は、捥ぎ取らんばかりの握力を誇っている。
 だが当の本人は、平然とした顔でいる。
 しかしその直後、部屋の壁や床全体から、黒い手が無数に現れた。
『トモニ……ウマロウ……チノソコヘ――』
「地獄に叩き落とされるのはお前だけだ」
 不気味な声の言葉を遮るように、少年が静かに力強く言い放ち、同時に右足を勢い良く振り上げた。
 それに釣られて足首を掴んでいた手も引っ張られ、床に隠れていた手以外の部分がその姿を曝した。
 ソレは、人の形をした――黒。
 顔の部分は瞳が二つだけで、鼻と口は無い。
 見ただけで怖気の走るソレに向かって、
「吹っ――」
 少年は大きく息を吸い、
「――っ飛べ!」
 腕を振りかぶり、左ストレートをソレの顔面に放った。
 激しい打撃音が響き、ソレは空中で身体を回転させて奥の壁に激突。
 壁にはヒビが入り、ソレは力無く床に倒れた。
 少年は両手を合わせて骨をポキポキと鳴らす。
「俺は埋まる気なんて微塵も無い。俺がすることは一つだけ、お前を斃すことだ」
 余裕の表情で淡々と言い放つ彼と反して、黒いソレは怒りに身体を震わせる。
『ォ……ォォ…………オオオオオオオオ!!』
 ソレが叫び声を上げるのと同時に、部屋中に生えていた手が、一斉に少年に向かって伸びて来た。
(あいつが操っているように見える分、本体はあいつ一匹ってことか)
 向かって来る四方八方の手に目をやりながら、少年はなおも冷静だった。
 タンッと軽く足踏みをした直後、彼の両足が瞬時に紅く輝き始めた。
「はぁあっ!!」
 右足を軸に、少年は左足で回し蹴りを放つ。
 右足がドリルのように床を抉り、左足は目にも止まらぬ速さで回転し、襲いかかって来た手を容易く吹き飛ばした。
  驚愕する黒いソレに向かって、少年が喋る。
「俺は久衣那 綾斗(くいな あやと)。しがない退魔師だ。仕事の依頼でここに巣くっているお前を斃しに来た」

40人と妖の姉:2009/10/09(金) 22:49:40 ID:HVyHnlDi
『タイマシ……タッタ……ヒトリデ……クルトハナ……』
「もう一人来ているが、はっきり言って俺にやられた方がマシだぞ。おっかないからな」
 その言葉を最後に、少年――綾斗は腰を低くさせ、両拳を前に出して身構える。
 紅く輝いたままの両足を踏ん張り、床を蹴り黒いソレに向かって突進する。
 突進している間に、両足を包んでいた紅い光は消滅し、その代わりに今度は両手がその光に包まれた。
 ソレの眼前に迫った綾斗は拳を振り上げる。
 ソレはすぐさま自らの身体中から幾つもの手を生やし、それを全て身体に巻き付けて守りに徹した。
 綾斗の紅い右ストレートが直撃する。
『ヌウッ……!』
「硬いな」
 ズシンと重い振動が響くも、黒いソレは一瞬呻いただけで大したダメージは負っていない。
 綾斗はそれでも冷静とした表情。
「腕力が通用しないなら、その三倍の威力を持つ脚力なら――どうだ!」
 左手の紅い光を消えさせ、左足に再び光を纏わせてローキックを放った。
『ゴォ!?』
 蹴りの威力に流されるままに、ソレは真横に吹き飛ばされた。
 床に叩き付けられ怯むも、綾斗と間合いが開いたのを好機に身体に巻き付かせていた手を解き、その手を伸ばして突きを繰り出した。
 向かって来る鋭い手の脅威を、綾斗は身体を反らして紙一重で避ける。
 足元に飛んできた手を軽く飛んで避けると、その手に器用に乗って走り出した。
 瞬く間に二人の距離が無くなり、綾斗は紅い蹴りを顔面にめり込ませる。
 『ブホァア!?』
 間髪入れずに、紅い右フックを横腹に。
 紅い膝蹴りを顎に。
 連続で仕掛けてくる猛攻を、最早ソレはなす術無く喰らい続ける。
 勝敗は完全に決した闘いであった――一対一の闘いであったのであれば。
「終わりだ!」
 トドメと云わんばかりに、綾斗が渾身の一撃をソレに放とうとした瞬間。
 グイッと、身体が後ろから何かに引っ張られる感覚に、見舞われた。
41人と妖の姉:2009/10/09(金) 22:55:21 ID:HVyHnlDi
(何だ!?)
 綾斗が身体の自由が利かなくなったことに驚き、後ろに振り向く。
 そこには、自分の前方に居る黒いソレと全く瓜二つの黒いソレが、後ろから自分の両腕を掴んでいた。
(もう一匹隠れていたのか!?)
 てっきり敵は一匹だけと油断したことに自分を叱咤する。
『キャ――――キャキャキャキャキャキャ!!!!』
 背後にいる黒いソレは、目だけの顔を歪めて狂ったように笑い始めた。
 綾斗はすぐに頭を切り替えて後ろの黒いソレを迎撃しようとする。
 だが、前に居る先程斃しかけた黒いソレが無数の手を伸ばし、綾斗の身体に巻き付かせて手足を固定した。
「ぐっ!?」
『ユダン……シタナ……タイマシ……』
『オマエノソノレイリョクヲクラエバ! モットモットツヨクナレル! マズハハヤクシネ!!』
 二匹のソレが言い終わると同時に綾斗を拘束している手が、圧迫し始めた。
「ぬぅう!」
 ミシミシと身体が悲鳴を上げる。骨が軋む。
 これまでかと言う思いが頭を過ぎった瞬間、

「私の弟に手を出すな」

 とても無機質で静かな声が、はっきりとその場に響いた。
 その直後、この部屋の一つしかない扉が轟音を上げ、爆炎と共に吹き飛んだ。
 爆風に巻き込まれ、綾斗と二匹のソレはバラバラの方向に散らばる。
 爆炎が消えると、今度は黒い煙が部屋中を覆った。
「げほっ! ごほっ!」
 咽る綾斗を尻目に、二匹のソレらは一体何が起こったのか全く理解出来ずに混乱していた。
 しかし綾斗自身は、この事態が何の仕業かすぐに分かった。
 煙の向こう側から誰かがゆっくりとした足音で、こちらに近付いて来る。
 やがて影が見える位まで近付くと、煙がまるで操られたかのように強風と共に晴れた。
 そこに佇んでいたのは、腰まで伸びて風に流されるように靡く黒髪をし、身体のラインにぴったりと合っている紺のスーツを着た、
年齢は二十代前半であろう凛々しい女性であった。
 あまり感情の感じさせない静かな表情をしているが、鋭い眼つきは意志の強さを表している。
「……姉さん……」
 彼女の姿を見た綾斗がそう呟くと、目の前の女性は鋭かった眼つきを変え、慈愛の籠もった視線を彼に送った。
42人と妖の姉:2009/10/09(金) 23:00:47 ID:HVyHnlDi
「大丈夫?」
 女性は綾斗に近付くとしゃがみ込み、彼の頬に手を添えた。
「ちょっとヤバかったけど大丈――」
 問いかけの返事が遮られ、むぎゅっと、綾斗の顔が柔らかいモノに包まれた。
 女性がその豊満な胸で、綾斗の頭を抱きかかえたのである。
「良かった……本当に良かった」
 心の安寧を取り戻したかのように、女性は綾斗の感触を確かめる。
 髪を撫でながら頭に頬を寄せ、表情に笑みが零れる。
「ちょっ……ちょっと姉さん! 今はこんなことしてる場合じゃ……」
「ええ、ええ。分かってる。でももう少しだけ……このままで」
 弟の言うことを対して聞き流すように返事をし、なおも愛おしそうに抱き続ける。

『キャ――――――――ッ!!!』

 しかし、二人の世界を破るように、黒いソレの片割れが狂った叫び声を響かせ、両手を振り上げて背後に迫っていた。
「姉さん!」
「無粋」
 慌てる綾斗とは裏腹に、女性は声と表情を氷のように冷たくさせる。
 右手は綾斗を抱いたままで、左手を黒いソレに向かって薙ぎ払った。
 左手からヒュッと風を切る何かが飛び出し、それが敵の顔面に命中した。
『ムォ?』
 だが命中した割には痛みは無く、黒いソレは怪訝に思う。
 顔面に当たったのは、一枚の紙片であった。
 手の平サイズの紙片は縦に長い長方形をしており、見たままの御符という代物だった。
 御符には細かい文字が羅列されているが、一文字だけ「爆」と、大きく中央に書かれていた。
『コンナカミガナンダッテイウン――!!』
 黒いソレが叫ぶのも束の間、突如ソレの顔が、派手な爆音と爆炎を上げて吹き飛んだ。
「その声を聞くと耳が腐りそう。私が聞きたい音は自然の音と綾斗の声だけ」
 完全に顔が無くなった黒いソレは、残った首から煙を上げて床に倒れる。
 そしてその身体は風に流されるように、消えていった。
 その一部始終を見ていたもう片方の黒いソレは言葉を失った。
  女性は残りのソレに目を向け、冷徹に言い放つ。
「私は退魔家系・久衣那流現当主――久衣那 綾架(くいな あやか)。
私の弟を苦しめた罪と罰、受けてもらう。ただで殺しはしない。覚悟しなさい」
 女性――綾架はそう言い放つと、左手のスーツの袖から五枚の御符を取り出した。
43人と妖の姉:2009/10/09(金) 23:03:04 ID:HVyHnlDi
とこんな感じで一話を投下させていたただきました。
まだドロドロな部分は先なので、御了承下さい。
44名無しさん@ピンキー:2009/10/09(金) 23:51:12 ID:ueIYCmIP
いいね、好きな感じだ。
期待してるぜ、GJ
45名無しさん@ピンキー:2009/10/10(土) 00:43:11 ID:zG+F2nx3
>>43
退魔師&人外モノか……
続きの投下、wktkさせてもらいます!
46名無しさん@ピンキー:2009/10/10(土) 01:35:29 ID:YMk9RKbr
キモ姉系待ってました。
GJ
47名無しさん@ピンキー:2009/10/10(土) 02:21:50 ID:vjfXmwOh
なんという厨二
48名無しさん@ピンキー:2009/10/10(土) 05:08:15 ID:fxh7TDLB
邪気眼すぎてよめない
49名無しさん@ピンキー:2009/10/10(土) 07:11:00 ID:297kVrMf
文章は凝っていて良い方だとおもうんだが、
たしかに設定がありきたりと言われても仕方が無いかも。
でも今後の展開次第では神作品に化けることもないとおもうぞ。
続き書くのがんばってください。
50名無しさん@ピンキー:2009/10/10(土) 10:22:06 ID:wPkAlbYd
まて、つまりどう転んでも神作品に化けることは無い、と?
51名無しさん@ピンキー:2009/10/10(土) 10:50:52 ID:UtoQjopd
日本語でおk
52名無しさん@ピンキー:2009/10/10(土) 11:04:12 ID:fxh7TDLB
>>49
文章が凝ってるとか、ありきたりとかそういうことじゃなくて
ここはキモウトスレだからキモウトが主でファンタジーが設定なら
別なんもいわない、ファンタジー色が強すぎるってこと。
あと臭い。>>43の次回作に期待
53名無しさん@ピンキー:2009/10/10(土) 11:52:01 ID:297kVrMf
俺もキモウト>キモ姉だけども、スレがSSで賑わうほうがいいんだぜ。
ファンタジーでもサスペンスでもSFでも推理でもなんでもござれだ。
54名無しさん@ピンキー:2009/10/10(土) 11:58:55 ID:27ykK3Oz
SSにしろラノベにしろシチュエーションばっか気にして世界観やその他が薄っぺらくなる作品が多いだけに
設定をしっかり固めるのはむしろ歓迎だ。むしろしっかり固めた作品こそ良い物になりやすい
ここに書いたって事はキモ姉妹要素もあるんだろうし期待して待っておけばいいんじゃね
55名無しさん@ピンキー:2009/10/10(土) 12:11:49 ID:KbfSSy+p
>>52
テンプレ読め
56すてきなおくりもの:2009/10/10(土) 14:14:44 ID:qmdEolI/
小ネタ落とします

おはようございます兄さん
まだ眠そうですね、もう七時ですよ
お誕生日おめでとうございます

えっ?二度と部屋に入ってくるなと言ったのに何で入ってきたんだ?
そんなの禁止されたって入ってくるに決まってるじゃないですか、兄さんの可愛い寝顔をこんなに近くで見れて、触れて、これ以上に素晴らしい楽しみなんてないですよ

首に違和感がある?ああ、それのことですか
それはわたしからのプレゼントですよ、素敵でしょう?お揃いの首輪なんですよ

気色悪い?今すぐ外す?ええ、お気に召さないのでしたらどうぞ
頭と身体が『さよなら』してもいいのならですけど

どういう意味だって?あははっ決まってるじゃないですかその首輪は無理に外そうとすると爆発するんですよ
ああ、それとわたしから5m以上離れない方がいいですよ。それ以上離れても爆発しますから

え?お前と一緒に居るぐらいなら死ぬ?あははっいいですねそれ、大丈夫ですちゃんと兄さんの首輪が爆発したら連動してわたしの首輪も爆発しますから
これで二人の仲は永遠になるんですよ!!あははははっ
ねえ兄さん、式は現世で挙げますか?それとも黄泉路で挙げますか?
決めてください兄さん、ねえ・・・・わたしの兄さん

以上です失礼しました
57名無しさん@ピンキー:2009/10/10(土) 14:18:28 ID:8KWxav+8
GJ
58名無しさん@ピンキー:2009/10/10(土) 15:43:40 ID:0Qa8dnDl
長編は長い間投下されなかったらもうだめ、投下するな

ファンタジーではあるが、まだ先はわかんないのに、こういうのはダメだから控えろ


最近の流れを見るに職人が減るのもわかるな
59名無しさん@ピンキー:2009/10/10(土) 16:21:17 ID:tQEbzOKO
お前ら何様だよ。
60名無しさん@ピンキー:2009/10/10(土) 16:25:01 ID:UtoQjopd
"お前ら"とかみんな同じこと思ってるみたいに言うな
61名無しさん@ピンキー:2009/10/10(土) 18:50:18 ID:FBn6+KFB
そもそも2chに投下するのに
そんな責任持って書く奴いねえだろ
62名無しさん@ピンキー:2009/10/10(土) 18:54:31 ID:NWWh+riS
だよな。
俺、普通にノスタルジアの続きとか読みたいぞ。
大体他の話にしたって一話だけじゃ、いいとか悪いとかわからんし
63名無しさん@ピンキー:2009/10/10(土) 18:57:24 ID:ct80FLcG
何で俺の首には何もつけられてないんだろうか…
64名無しさん@ピンキー:2009/10/10(土) 19:31:24 ID:nYloTWaa
ガタルカナル2号だっけ?>首輪
65名無しさん@ピンキー:2009/10/10(土) 19:42:06 ID:qCo1jVhu
気長に投下を待ち、投下したのを読む。
それだけでいい気がするよ
66名無しさん@ピンキー:2009/10/10(土) 20:01:34 ID:16ZiHvqJ
俺もそう思う
そもそも投下して貰ってタダで読ませて貰ってるのに
偉そうに批判してる奴は何なんだ
俺は自分じゃ書けないし書き手さんは凄いと思ってる
67名無しさん@ピンキー:2009/10/10(土) 20:32:07 ID:Ejq1qpsK
>>56
今からみなさんに殺し合いをしてもらいます的な首輪を思い出したじゃねーかw
68名無しさん@ピンキー:2009/10/10(土) 20:37:23 ID:NVsvtB/J
ノスタルジアって綾の人だっけ
最後に投稿したのが去年の11月?だし、もう書く気ないんじゃね
69名無しさん@ピンキー:2009/10/10(土) 20:56:47 ID:pU2FQgWY
           __
        , ‐' ´   ``‐、             / ̄:三}
.     /,. -─‐- 、.   ヽ        /   ,.=j
 _,.:_'______ヽ、 .!       ./   _,ノ
  `‐、{ へ  '゙⌒ `!~ヽ. !     /{.  /
    `! し゚  ( ゚j `v‐冫   , '::::::::ヽ、/     そんなことより感想書こうぜ!
.    {.l   '⌒      ゙ 6',!   / :::::::::::::::/ __
.     〈  < ´ ̄,フ  .ノー'_ , ‐'´::::::::::::::;/ (_ノ)‐-、
.      ヽ.、 ` ‐", ‐´‐:ラ ':::::::::::::::: ;∠.   ヽ_}  ゙ヽ
        ,.r` "´  /:::::::::::::::::::ィ´  `ゝ  !、  /
     /       / :::::::::::::::: ; '´   /´\ /   r'\
.     i      ! ::::::::::::::/ 墨 | .!::::::::/ヽ、.._!ヽ. ヽ、
     {      {:::::::::::;:イ /   ‖i:::::::/:::::::::::::/  \
.      ヽ       ヽ,.ァ‐'´ /ヽ 二 ,/`ヽ、::::::::: /
>>56
ごめん。俺も67に同じく「死んだな…」「ああ」「うまい棒ごときでな…」な展開しか思い浮かばなかったw
70名無しさん@ピンキー:2009/10/11(日) 00:01:40 ID:QR45RcH1
>>66
「タダで」は関係ないだろ。書く人がいて読む人がいる。
それぞれ敬意をもてばいいだけ。そこにお金は関係ないよ。
批判はいいけど、悪口は良くない。それだけ。
71名無しさん@ピンキー:2009/10/11(日) 00:20:37 ID:5FC+0Y+0
昨日の続き、投下させていただきます。
一度投下したからには、最後まで書きたいと思います。
72人と妖の姉:2009/10/11(日) 00:23:41 ID:5FC+0Y+0
 部屋に相対するのは、綾架と黒いソレ。
 今まで闘っていた綾斗は、すでに闘う気を無くしていた。
 もう自分が闘おうとしても、必ず姉に制止させられるからだ。
 自分を護るようにして立っている肉親は、愛弟を苦しめられた怒りで心が沸騰している。
『グッ……』
 綾架の静かな気迫に圧され、黒いソレが一歩退く。
 その動作に眉をやや吊り上げた綾架は、左手に握っている五枚の御符の内一枚を、
ふわりと真上に投げた。
 すると投げられた御符は青く光り輝き、その輝きは瞬時に部屋中を覆った。
 御符の中央には、「縛」と大きく書かれている。
 何かを仕掛けられる前に黒いソレが床をすり抜けて逃げようとした直後、
身体全体が青白い電流に包まれ感電した。
『ガァアア!?』
「逃げるような仕草を匂わせておいて、易々と逃がす程私は甘くない。
今私が投げたコレは、指定した範囲に結界を張るモノよ。
無理に出ようとすれば、身体が焼ける。
逃げることは許さない。罪を犯しながら、罰を受けないことは許さない」
 追い打ちを掛けるように言い放つ綾架。
(やっぱおっかないな。怒った姉さんは……)
 姉の後ろ姿を見る綾斗は、苦い顔をしながら思った。
「私は退魔師としての本分を果たす。お前も妖としての本分を果たしなさい」
 その言葉を最後に、彼女は御符を握る左手をゆっくりと前に突き出す。
『グゥウウウウッ…………ッガァアアアアアアアア!!』
 最早これは負け戦。
 自棄になった黒いソレは身体中から手を生やし、それを全開の速度で伸ばして綾架に仕掛ける。
 綾架は縦横無尽に迫る手の群れを涼しい顔で眺めると、左手に握る御符を二枚、左右に投げた。
 二枚の内、一枚には「壁」、もう一枚には「爆」と書かれている。
 手の群れが彼女の手前数メートルまで近付いた瞬間、
「――爆炎障壁――」
 綾架の小さな呟きに反応した二枚の御符は青く輝き、爆発を起こした。
 発生した爆発は彼女の周りの外側のみで、その内側だけは全く巻き込まずに起こった。
 爆発により、綾架に迫った手はものの見事に消し飛んでいた。
『!?』
 一瞬の出来事に驚愕したソレは、動きを止める。
「もう終わり? じゃあ次は私が攻めの番ね」
 そう言った綾架はゆっくりと前へ歩き、黒いソレに向かって行った。
73名無しさん@ピンキー:2009/10/11(日) 00:24:40 ID:OPJFXscy
支援
74人と妖の姉:2009/10/11(日) 00:26:59 ID:5FC+0Y+0
 徐々に近付いて来る綾架に、黒いソレは恐怖に圧されるようにジリジリと後退する。
「後ろに下がって距離を取ろうとしても無駄。
私の御符は近付きさえしなければ避けられるとでも思ってるのかしら?」
 冷たい表情のままで呆れた綾架は、左手に残る二枚の御符の内、一枚を右手に取った。
 それには「炎」と書かれている。
 その御符が青く輝くなり、彼女は右手を大きく振るう。
 すると振るわれた御符の青い光は瞬時に青白い炎となり、
閃光の如き鋭さで黒いソレの左腕に喰らい付いた。
『ゴォアッ!?』
 左腕全体が一瞬で焼かれ、ソレは激痛に顔を歪めて崩れ落ちる。
「ほらね?」
 綾架は首を傾げ、ぽつりと喋る。
 しかし今度は今までの爆発とは違い、腕は吹き飛んでいない。
 表面を焼かれただけだ。何故吹き飛ばさない? 
 そのことに黒いソレは痛みに思考を支配されながらも、不可解に思う。
「言った筈だけど? ただで殺しはしない、と」
 ソレの心中を察した綾架は、当たり前だと言わんばかりの口調。
(やばい……姉さん、まさかっ……)
 後ろで闘いを見守っていた綾斗は、表情を曇らせる。
 そんなことなど露知らずの綾架は、ついに黒いソレの目の前まで辿り着いた。
『グッ……』
「どうしたのかしら? 悪足掻きはしないの?」
 ソレを見下す彼女の瞳には、光が見えない。
 ただただ憎しみの色だけが黒く写っている。
「多くの退魔師は「義務」や「正義」と言う理由で妖と闘うけれど、私は違う――」
 そこで一言区切り、声色を低くさせた。

「――「嫌い」なの。だから殺すの」

 そう言い放った瞬間、綾架の右手の御符が光り、青白い炎が再び黒いソレを呑み込んだ。
75人と妖の姉:2009/10/11(日) 00:29:55 ID:5FC+0Y+0
『グゥオオオオオオォォオオオオ!!?』
 炎に包まれた黒いソレは全身を焼かれ、耳を塞ぎたくなるような叫び声を上げる。
 だが勢い良く燃え盛るその炎は、数秒後に一瞬で消滅した。
 綾架が自分の意思で消したのだ。
『フゥッ! フゥッ! ハァッ……!』
 息を荒立たせ、四つん這いで床に倒れ伏す。
「あら、まだまだ元気じゃない」
 感心したような言葉を漏らし、綾架はもう一度「炎」の御符を輝かせた。
 再度炎が黒いソレを包む。
『ァアアアアアアアアアアアアアア!!!』
「じゃあ次はもう少し火力を上げてみましょうか」
 火達磨となった黒いソレの炎に照らされた綾架の表情は、冷たいまま。
『ァガア!! ガァアアアアアアアア!!!』
「そんなに叫ばなくても大丈夫よ。全開の火力じゃないから、死ぬまでには至らないから」
 言い終えるなり、炎を消す。
『モゥ……コロ……セェ……ッ!』
「命乞いじゃないけれど、命乞いみたいに聞こえるわね。でもそれじゃあ駄目じゃない。
お前がこれまで犯した罪の量と同じ罰を、苦しみを刻まないと」
 再び、炎。
『ヌゥウアアアアアアアアアアアア!!!』
「お前は今まで殺した人達の命乞いに耳を貸した? 情けをかけた? 慈悲を与えた? 
さっき私が始末したもう片方の奴と一緒に笑いながら殺し続けたんじゃないの? 
殺された人達の苦しみを考えた? 逆の立場になって考えてあげた? 微塵も考えてないでしょう?」
 畳み掛けるように言葉を紡ぐ綾架の問いなど、黒いソレの耳には全く届かない。
 身体が焼ける苦しみと痛みでそれどころではない。
 問いかけに答えないソレに、綾架の目が少し吊り上がった。

「質問に答えなさ――」
「姉さんもういいだろ!!」

 彼女の声を遮るように、綾斗が怒号を上げた。
76人と妖の姉:2009/10/11(日) 00:33:41 ID:5FC+0Y+0
「姉さんはいつもやり過ぎだ! 勝負は着いたんだ! これ以上苦しめて何になる!?」
 身内の行為を見ていられなくなった綾斗は、ついに声を荒げた。
 少し驚いた綾架は集中力が切れ、黒いソレの炎を消してしまった。
 しかしすぐに元の表情に戻った彼女は綾斗の方に顔を振り向かせると、不思議そうな顔をする。
「言ってるじゃない。犯した罪に比例した罰を与える――って。
そうしないとこの妖に殺された人達は報われない。殺された人達の哀しみが晴れることはないのよ?」
 言い終えて黒いソレの方に視線を戻すと、「何か間違っていることを言ってるかしら?」と漏らす。
 綾斗は言葉が一瞬詰まったが、それでも顔を堂々と上げ、反論する。
「でもこの世の中、「絶対」なんてことは有り得ない。
殺された人達が必ずしもそいつを苦しめて欲しいって願ってるとも、限らないだろ?」
 彼は綾架に近寄ると、「炎」の御符を持つ右手を両手で握った。
「だからもう終わらせてやってくれ。それに、本当の姉さんは優しいだろ?」
 愛弟の必死な訴えに、綾架は目を閉じて小さく溜息を吐いた。
「分かったわ……」
 そう言うと身体全体を綾斗に振り向かせ、猛威を繰り出していたその両腕で彼を軽く抱き締めた。
「貴方の気持ちも知らずに、御免なさいね」
 名残惜しげに綾斗から離れると、スーツの袖から一枚の御符を取り出す。
 身を翻し、先程追い詰めていた妖の正面に向かい合った。
 取り出した御符の中央には、「滅」と大きく書かれていた。
 その御符を人差し指と中指で挟んで持ち、瀕死の黒いソレに突き出す。
「一撃で楽にしてあげるわ。せいぜいあの世で綾斗に感謝するのね」
 最後にそう言い放つと、綾架の身体全体が青白く輝き――

 そして工場全体が静かに光に包まれ、事の終わりを告げた。

77人と妖の姉:2009/10/11(日) 00:36:26 ID:5FC+0Y+0
とりあえず二話終了です。
うん、自分でも思うように主人公はホント恥ずかしいセリフ吐きますね。
78名無しさん@ピンキー:2009/10/11(日) 00:42:48 ID:OPJFXscy
だが、それがいい
GJ!
79名無しさん@ピンキー:2009/10/11(日) 00:56:30 ID:IHMQmhD/
>>77
GJ
自治厨なんか気にせずに頑張ってくだしあ
俺は応援するぜ
80名無しさん@ピンキー:2009/10/11(日) 07:26:29 ID:bAYUnFLb
こういう作者は好感もてていいな。
投下GJ
81名無しさん@ピンキー:2009/10/11(日) 07:55:18 ID:w+uArGmV
GJ
キモ姉派の俺は応援してるぜ
82名無しさん@ピンキー:2009/10/11(日) 12:23:41 ID:agYrjn/L
GJ
続き待ってるよー
83名無しさん@ピンキー:2009/10/11(日) 21:13:20 ID:0F5Sue7t
姉に深夜襲われそうになって、裸足で家を飛び出して逃げる夢を見た。

裸足で家の前の道路に出て、1mでも遠くへ行こうと走るんだが、アスファルトが痛くて速度出ない。
加えて、住宅街は真っ暗闇で足元が見えないんだ。
やっと国道にでて国道の明かりの中走ってコンビニに辿り着いた時、名前を呼ばれた。
そこには姉の車と姉が… という所で起きた。
84名無しさん@ピンキー:2009/10/11(日) 21:24:29 ID:F4Gb/Sua
>>83
それ…本当に夢だったのか…?
85名無しさん@ピンキー:2009/10/11(日) 21:25:06 ID:hU8qSUOc
ここって男を独占しようとする姉or妹しかダメ?
ライバルの女の子と協力体制の下、弟を嵌めて××しようとする姉とか書いてみようと思うんだけど
86名無しさん@ピンキー:2009/10/11(日) 21:27:57 ID:FAnIk2Sj
キモければ強力プレイしててもおkだと思う
87名無しさん@ピンキー:2009/10/11(日) 21:34:39 ID:hU8qSUOc
キモというかストーカー気質、って感じになるかな

まあ、先ずは書いてみるか。投下するかどうかはその時決めよう
意見ありがとう>>86
88名無しさん@ピンキー:2009/10/11(日) 22:18:44 ID:OPJFXscy
>>86
強力プレイてw
89名無しさん@ピンキー:2009/10/11(日) 23:18:10 ID:IHMQmhD/
協力抜け駆け何でもありだー♪
90名無しさん@ピンキー:2009/10/11(日) 23:31:28 ID:0F5Sue7t
姉妹と女の子で会談を開き、少年を他の女から守り、攻める。
4Pとか交代制とかでお互いの利益を確保しつつ…

状況によっては冷戦になったり…姉側陣営と女の子側陣営とか…  
91名無しさん@ピンキー:2009/10/11(日) 23:49:42 ID:XMirdFXy
最終的にライバルを亡き者にして独り占めしてもらえるとなお嬉しいけど
92名無しさん@ピンキー:2009/10/11(日) 23:55:09 ID:9+Mvd9S9
姉妹が赤の他人と共闘する動機付けが難しそう
弟または兄と身体の関係は作りたいけど独占欲は無いってことだと
キモ分も薄まるからね

そこを上手く描写できたらキモ姉妹の新境地を開拓した神になれる
かも!
93名無しさん@ピンキー:2009/10/12(月) 02:17:10 ID:ZSFSS6Vf
兄の幸せのためと称してその障害をあらゆる手段で排除してきたキモウト
(この時点でのキモウトは恋愛感情を自覚しておらず尊敬とか敬慕とかの念で動いてると本人は思ってる)
その「兄を幸せにする事」の中には可愛い彼女を作らせる事も含まれている
都合の良い事にキモウトには兄の彼女とするにふさわしいスペックの持ち主で、
なおかつその子自身も兄が好きという親友がいる
2人をくっつけるべく工作活動を行うキモウト、当然泥棒猫には退場してもらう
暫くして工作の成果が実り2人は結ばれるのだが、それを知ってキモウトは酷く落ち込んでしまう
当初の狙い通り兄さんには幸せになってもらったのにどうしてこんなにも胸が苦しいのだろうか
そしてとうとう気づいてしまう、何故こんなにも兄に幸せになってほしかったのか、自分にとって兄はどんな存在なのか
というわけで自身の兄への想いに気付いたキモウトは親友を排除して兄をNTRしておしまい

てな感じのは思いついたがやっぱり最初からキモウトも兄(の体)狙いじゃないとダメだよなぁ…
よしんば完璧なあらすじを思い浮かべられたとしても俺文才無いからSSに書き起こせんし
94名無しさん@ピンキー:2009/10/12(月) 02:29:40 ID:G4pUPupX
兄二人に妹一人、妹の親友一人。下の兄にゾッコンな妹と、上の兄にゾッコンな親友の共同戦線は見たい。
95名無しさん@ピンキー:2009/10/12(月) 02:32:06 ID:9J4QDhcx
>>85
こういう新しいパターンもたまには見てみたいからいいんじゃないかな
96名無しさん@ピンキー:2009/10/12(月) 09:55:56 ID:0kT8zmip
>>93
問題なく読みたいから書いてくだされ。
97名無しさん@ピンキー:2009/10/12(月) 09:58:44 ID:RXWUHcw4
>>93
それアリだぜ!
98名無しさん@ピンキー:2009/10/12(月) 11:29:37 ID:alG7OoCg
>>93
前半部分は綾もそんな感じだったよな。
すごく読みたい。
99名無しさん@ピンキー:2009/10/12(月) 12:38:37 ID:tjsI2yE1
>>93
頼んだぞ
100名無しさん@ピンキー:2009/10/12(月) 13:45:51 ID:ZSFSS6Vf
なんかすっげー事になってる!?
期待してくれてる所非常に申し訳ないんだがマジで俺文章書けねえから
そもそもSS書いた経験の無い俺にいきなり>>93みたいな長編はなおさら書けねえ…
話の概要というかあらすじだけはポンポンネタが浮かんでくるのに、
それに肉付けして読める作品にまで昇華する能力の無い自分が本当に憎いorz

まあ…だったら最初から書くなって話だよな、うん
皆様の期待を裏切る事になるし、もしまかり間違って同じネタで書いてた人がいたらやる気を削ぎかねないし
本当に申し訳ない


だというのに俺の頭は「妹が親友をどう思ってるのかによって変化する結末」の事を考えてるよコンチクショウ
101名無しさん@ピンキー:2009/10/12(月) 15:20:44 ID:02ltwM70
べつにすっげー事にはなってないな。
102私は貴方に相応しい? 1/4:2009/10/12(月) 16:13:08 ID:tvgBn2Av
「ふぅ…これでよし、と」

人気のない廃倉庫。打ち捨てられたように機材が転がり、絨毯を作るほどに積もった埃。
そこに、一人の人間が居た。

「フン。少し優しくされただけで付け上がりやがって。これだから野良猫は」

年の頃10台半ば。背中までかかる髪をストレートに下ろした、セーラー服の少女だ。
その視線の先には、宙に吊られた『何か』があった。

「貴様は彼に相応しくない。それどころか、貴様からの一方的な言い寄りに、彼は心底迷惑しているのだ」

言葉を返さない『何か』に向かって、少女は吐き捨てるように悪言を叩き付ける。

「せいぜいあの世で指を咥えて見ているがいい。彼が貴様以外の女と幸福になるところをな」

最後に一言だけ投げつけると、振り向きもせずに立ち去っていく。
後に残るのは、少女とは異なるブレザーの制服を着た女性の亡骸だった。



ふわふわとした、軽い眩暈のような世界。ここがどこだか解らないにもかかわらず、何か安心できるような温もり。
ああそうだ、ここは…

「むにゃ…おかわり…」

布団の中だ。

「『御代わり』ではない。寝言をほざいてないで、とっとと起床しろ兄よ!」
「ぐげぶっ!?」

全身に広がる鈍い感触。鳩尾の辺りに激痛が走る。

「…ぁ…ぉ…」
「目は醒めたか? 我が愚兄よ」

痛みで呼吸困難になりながら目を開いてみると、ブラウスの上にエプロンを着ている、ポニーテールの少女が俺を見下ろしていた。

103私は貴方に相応しい? 2/4:2009/10/12(月) 16:14:12 ID:tvgBn2Av

「フン…私はもう行くぞ。戸締りくらいはしっかりやれよ、この歩く不法廃棄物」」

俺を凍てついた目で見下ろしながら何かを投げつけた後、可憐は鞄を掴んでとっとと出て行ってしまった。

「行ってきます」

それでも挨拶を忘れない辺り、礼儀には律儀な妹である。



「ふぅ。全く…」

教室について早々、私はため息を付く。

「あの愚兄は本当に…人の苦労も知らないで…」

もはや習慣になってしまった愚痴を呟く。
あんな怠け者とはいえ、一応は私の兄だ。妹として生まれた以上、兄の面倒を見るのは妹としての義務である。
ついこの間まで、高飛車な態度で言い寄ってきた女に苦労させられたというのに、2〜3日経った今では、元の怠惰な性格が顔を出してしまった。

「はぁ…あんな男に結婚などできるのだろうか?」
「何々? 可憐ちゃん誰かと結婚するの?」
「そんな訳がなかろう。というか、独り言に突っ込みを入れるな!」

つい癖になってしまった独り言をしながらの思考に、頓珍漢なツッコミを入れてきたのは、私の級友、『久瀬・真理亜』。
ショートカットの髪にやや小振りの顔。猫のように釣り上がった目で、どこか悪戯好きな雰囲気を窺わせる。
噂大好き、悪戯大好き、楽しい事大好きと、我が愚兄をそのまま女にしたような少女だ。

「きゃ〜! 可憐ちゃん恐〜い!」
「『恐い』がなぜその字なのだ!? 返答如何ではしばくぞ貴様!」
「そういうところ」
「殴ってもいいかな? 返答は一応聞いてやる」
「止めて止めて! 泣いちゃうから! 私の弱さに泣いちゃうから!」
「あらあら? 何だか賑やかですね?」
「あ、吹雪〜!」
「おはよう、吹雪」
「おはようございます、可憐さん、真理亜さん」
104私は貴方に相応しい? 3/4:2009/10/12(月) 16:14:38 ID:tvgBn2Av

私と真理亜の喧嘩(寸前)を止めたのは、私の親友、七海・吹雪。膝裏まで届く黒髪をストレートに下ろし、いつもほわほわした笑みを浮かべている。
少々天然ボケな空気はあるが、しっかりと芯の通った性格で、その様は正に、古代に滅亡したといわれる『大和撫子』と呼ぶに相応しい。

「いつも仲がいいですね?」
「貴様の目は節穴か?」
「あらあら? うふふ♪」
「ん〜? 吹雪ちゃん機嫌良さそうだね? 何かいいことでもあった?」
「え? そ、それは…」
「大方、今朝私の駄・兄貴に会ったとかそんなところだろう?」
「////」
「…吹雪ちゃん真っ赤…」
「女の私から見ても色気があるな…貴様、その美貌で今ままで、どれだけの男を侍らせて来た?」
「そんなことはありません! 私は聡明さん一筋です! …あ」
「うわぁ…」
「盛大なカミングアウトご苦労。あんな兄だからこの先死ぬほど苦労するだろうと思うが、まあ仲良くやってくれ。私もできる限りの手助けはする」
「////」

吹雪は、私が認めた数少ない女性だ。特に、あの怠惰な兄を更正させるには、彼女のようなしっかりした女性でなければ無理だろう。

「あの…ところで可憐さん?」
「何だ?」
「あの…ボソボソ(お昼の件なんですけど…)」
「ボソボソ(ああ、言われた通り、奴は昼飯抜きにしておいた。後で弁当を持っていってやれ。死ぬほど喜ぶぞ?)」
「(っ!)」
「何々? 内緒話? 私もまぜろー!」
「ああ何、美貌の割に奥手な吹雪に、我が兄を堕とすためのアドバイスを少々な」
「////」
「ふ〜ん…っていうか吹雪、まだ聡明君に告白してないの?」
「えっ!? そ、それは…その…」
「残念ながらそうなのだ。年下とはいえ、毎日弁当を作ってくれる女性が居るというのに、あの朴念仁は交際しているという感覚がないらしい」
「…マジで?」
「マジだ」
「わ、私はその…聡明さんのお傍に居られれば、それで幸せですので…」
105私は貴方に相応しい? 4/4:2009/10/12(月) 16:15:02 ID:tvgBn2Av
「…ねえ可憐、聡明君ボコっていいかな? 女心を理解するまで徹底的に」
「どうぞどうぞ、と言いたい所だが止めておけ。吹雪が泣きそうな目で私達を見ているぞ」
「げっ!」
「…………」
「あ、あはは! やっぱり何でも力で解決するのは良くないよね!」
「その意見には賛成せざるを得ないな。だが吹雪、これだけは覚えておけ」
「はい?」
「ここまで尽くされておきながら、我が兄が貴様を振った暁には…」
「聡明君の顔が変形するまで殴るからね☆」
「あ、あはは…」

まあ実際そんなことはないだろうが、真利亜と意気込みを示しておくことにした。



(本当にそれでいいの?)



っ!?

何だ、今の胸の痛みは? 何か悪いものでも食べたか?




>>100の代わりに書いてみた。所々視点が飛ぶけど、ご容赦の程を
106名無しさん@ピンキー:2009/10/12(月) 17:45:13 ID:sm4x5HOQ
>>105
面白いじゃないか
是非とも続きを書いてほしい
107105:2009/10/12(月) 18:12:56 ID:tvgBn2Av
ごめん、102-103の間に入れ忘れた

「…か…れ…」
「目は醒めたようだな。では着替えて降りて来い。朝食の時間だ」

一言呟くと、まるで興味を失ったように、さっさと部屋から出て行く。

「5分以内に降りて来い。でなくば今日の昼飯は抜きだ」

痛みで悶絶する俺に、無理難題をぶつける少女。
気が遠くなりながら、ふと

「これをDVっていうのかな…?」

そんなことを考えた。



俺は聡明。御影・聡明。とある公立高校に通う、17歳の高校二年生だ。

「ようやく降りてきたか。だが残念だったな。規定の時間を10分もオーバーだ。よって今日は朝昼共に抜きとする。文句は受け付けんぞこの鈍間」

目の前で俺に罵詈雑言をぶつけてくるのは、俺の一応の妹、可憐。なぜ一応と突けるのかと言うと、こいつが俺を兄として扱ったことがないからだ。少なくとも、物心付いてから今まで、敬ってくれた記憶はない。

「どうした? 何か意見があるのか? だが言ったはずだ。『文句は受け付けん』とな」
「いや、文句なんてないよ。ただちょっと考え事を…」
「ほう? ノリと勢いだけで生きている貴様が考え事か。良ければ聞かせてくれないか? この私のタメになる説教を聞き流すほどの考え事を」

新聞を読みながらコーヒーを啜る可憐。これで制服のブレザーでなければそれなりに絵になったのだろうが…

「いや…『可憐』ってお前の名前、明らかに名前負けしてるよな?」
「…………」
「あれ? 可憐、どこいっ―――」
「有罪(ギルティ)」
「ぐべひゃっ!」

目の前から可憐が一瞬で消え、耳元から声が聞こえてきたかと思うと、視界が縦に回転し、後頭部に激しい痛みが襲ってきた。
俗に言う『ジャーマンスープレックス』という奴らしい。

半年ROMります失礼しましたorz
108名無しさん@ピンキー:2009/10/12(月) 19:37:58 ID:3au8M2b4
半年ROMったところで>>105の見苦しい失敗が消えるわけでも何かが良くなるわけでもない。
己の失敗を恥じたり悔いたりしてるのなら皆が楽しめる続きでも書いて汚名返上をしろ。

とクールな姉が隣で呟いてました。全裸で。
109名無しさん@ピンキー:2009/10/12(月) 20:38:18 ID:Q533kzDf
>>100

(´_ゝ`)フッ
110名無しさん@ピンキー:2009/10/12(月) 23:02:22 ID:ZSFSS6Vf
なん……だと……
これは期待せざるを得ない
しかしまた随分と男らしい妹さんだな、流石にそれは想定外だわ
111名無しさん@ピンキー:2009/10/13(火) 00:13:10 ID:A0Au26fg
>>105 GJ!続き期待しているぞ!

>(本当にそれでいいの?)
心の中の妹が口の端を吊り上げながらながら言ったんですね、わかります
112名無しさん@ピンキー:2009/10/14(水) 10:35:23 ID:t1qsNvlY
誰もいない・・・
みんな姉妹に監禁されちまったのか・・・!?
113名無しさん@ピンキー:2009/10/14(水) 12:51:27 ID:moh2uoDH
>>112
あとはお兄ちゃんだけだよ・・・
さあ、一緒に二人だけの世界に行こう?
114私は貴方に相応しい? 第2話 1/5:2009/10/14(水) 15:13:50 ID:3aN78j+x
「先輩、今日はどうもありがとうございました」
「いやいや。それにしても、あの糞野郎に、こんないい妹さんが居たとはね」
「私もあの愚兄には心底参っています。で、先ほどの件、考えていただけますか?」
「ああ、君と付き合う、って奴?」
「はい。今一度考え直していただけたら、と」
「ゴメン。僕はやっぱり吹雪ちゃんの方が…」
「…そうですか」
「悪いね」
「いえ、相手が吹雪なら仕方ありません。ですが先輩、今後も私と付き合っていただけますか? 友人として」
「まあ、友人としてならいいよ? 君のお兄さんは大嫌いだけどね」
「愚兄の事ならどうぞお好きに」
「そうさせてもらうよ」
「…では、私はこれで失礼いたします。今日は楽しかったです、先輩」
「ああ。俺も楽しかったよ」
「さようなら、先輩」
「また明日な」

先輩と別れ、ホームを後にする。

「…何が楽しかった、だ。こちらは一日中不快な思いをさせられたというのに」

兄に手を上げた人間の側に居ることが、これほど苦痛だとは思わなかった。
ましてや、本気でなかったとはいえ、私の告白を受けて尚、『吹雪の方が好き』と抜け抜けと言い放つ男である。

「…まあいい。奴の命も、もうすぐ終る。せいぜいあの世で悔いるがいい」

兄に相応しいのは吹雪であり、貴様の割り込む隙などない。

「先輩、さようなら」



キキーッ!!
キャーーーーーー!!
ヒトガ トビコンダゾ!
ケイサツ ヨベ!
キュウキュウシャ モダ!



「永遠に」



115私は貴方に相応しい? 第2話 2/5:2009/10/14(水) 15:14:35 ID:3aN78j+x
「起立! 礼!」
「「「「ありがとうございました!!」」」」

号令が終わり、今から放課後になる。

「んーーーーーーっ!! 終った終った。さて、今日はどうするかな?」
「おい御影、今日も来てるぞ」
「へ?」

クラスメイトの声に目を向けてみると、教室の入り口に可憐と吹雪ちゃんが立っていた。

「いいなぁお前は。あんな可愛い子が二人もお迎えか?」
「片方は妹だ」
「じゃあもう片方は正真正銘の彼女か。どっちか紹介しやがれコノヤロウ!」
「彼女じゃねえよ。後そういう台詞は学園一の誑し野郎に言ってくれ」

友人の軽口を華麗にスルーし、俺は二人の元へ移動する。

「や、待たせちゃったかな?」
「い、いえ、とんでもない…」
「私達が来ているにも関わらず、友人と談笑するとはいい度胸だな。そんなに後輩を焦らせるのが好きか? このドSめ」
「誰がドSだ!」
「貴様だ貴様」
「まあまあ可憐さん。とし…先輩、今日もご一緒に帰りませんか?」
「え? あ、うん。俺はいいけど…」
「何を見ている。そんなに私が邪魔か? 安心しろ。二人の仲を引き裂くような野暮はせんよ。先日死んだKYな男と違ってな」
「可憐!」
「可憐さん言い過ぎです。亡くなった方を悪く言うものではありません」
「…すまん。失言だった」
「お前は吹雪ちゃんに対しては素直だな…」
「フッ。将来義姉となる女性だからな。嫁小姑関係を円満にするためだ」
「誰が将来の義姉だ!着々と既成事実を作るな!」
「だが貴様も嫌がってはいまい?」
「うっ、そ、それは…」
「ましてや我が学園で五指に入る美女だ。これで迷惑だ、とか抜かしようものなら沈めるぞ。東京湾に」
「まあ、吹雪ちゃんが絶世の美少女ってことは認めるけど…」
「それはなによりだ。彼女の友人として鼻が高い。しかし愚兄よ、貴様は今一番大事な事を忘れているぞ。この場に吹雪がいることをな」
「あ」
「////////」

可憐の言葉に我に返ってみると、頬を染めるどころかまるでトマトのように真っ赤になっている吹雪ちゃんが立ち尽くしていた。
116私は貴方に相応しい? 第2話 3/5:2009/10/14(水) 15:15:05 ID:3aN78j+x

「あ、吹雪ちゃん、これは、だね、その…」
「////////」
「ぁぅ…」
「フッ、青春だな…」
「って! 元はと言えばお前のせいだろうが!」
「奥手の二人にテコ入れしてやったのだ。感謝されてしかるべきだと思うが?」
「ぐぅ…」

確かに俺も吹雪ちゃんも奥手どころか初心なことは認めざるを得ない。

「さて、まだまだからかい足りぬところではあるが、我らは良いとして吹雪の家には門限がある。とっとと行くぞ」

俺と吹雪ちゃんを引っ張る可憐。

(そういや、可憐と手をつなぐなんて何年ぶりだろう?)

俺はふと、そんなことを考えていた。



「こちら妹姫。聖母、応答せよ」
『こちら聖母。二人の状況を述べよ』
「目標は十六夜通りを北上中。肩を並べて歩いている。何というか、見ていてむず痒い」
『聖母より妹姫へ。解っているな?今日のミッションは…』
「解っている。吹雪に告白させること。最低でも手をつなぐところまではいかせたい」
『解っているならいい。私はこれから予備校だ。休み時間になったらまた連絡する』
「妹姫了解。監視と尾行を続ける」

真理亜との電話を切り、愚兄と友人の後姿に目を向ける。
二人は談笑しながら歩いているようだ。時々吹雪が笑顔を兄に向けている。

「ふむ…」

しかし、視線を下に向けてみれば、触れようと伸ばしているものの、あと少しというところで引っ込めてしまう吹雪の手があった。

「吹雪も意外と臆病だな。いや、それ以前に」

我が愚兄は、あんな美少女と歩いていながら、邪な思いの一片も抱かないというのか?
これでは、学校に忘れ物をした振りをして、二人きりにさせた意味がないではないか。
117私は貴方に相応しい? 第2話 4/5:2009/10/14(水) 15:15:28 ID:3aN78j+x

「…あのへタレめ」

さてどうしてくれよう…む!

「きゃっ!」
「おっと」
「す、すみませんとし…先輩」
「いやいや、気にしなくていいよ?」
「…………」
「どうしたの?吹雪ちゃ…あ」
「////」

子供にぶつかられ、よろめいた吹雪を兄が抱きとめた。
しかも、二人とも今の状況が解ったのか、道行く人のど真ん中で、真っ赤になって立ち尽くしている。

「…ナイスだ少年!」

思わず右手を握りこんでしまった。
今日は手を繋ぐ所まで行けば上々だと思っていたが、これは予定外、嬉しい誤算だ。

「あ、あの、吹雪ちゃん?」
「へ?」
「その…あ、当たってるんだけど…」
「当たってる?…きゃっ!」

と、喜んだのも束の間、馬鹿の余計な一言によって、二人は再び離れてしまった。

「…チッ! あのボンクラが!」

普通そういう場合は、気付かない振りをして女性の胸の感触を楽しむものではないのか?
吹雪も吹雪だ。『当ててるの』くらい言えんのか。

「えっと、その、俺も男だから嬉しい…じゃなくて、そういうことは彼氏とか恋人にやるべきだと思うんだ、うん」
「か、彼氏…こ、恋人…」
「吹雪ちゃんにもいるんだろ? 好きな人」
「えっと…はい…」
「だったらその人にやってあげるべきだと思うんだ、うん」
「…………」

118私は貴方に相応しい? 第2話 5/5:2009/10/14(水) 15:15:50 ID:3aN78j+x
あの朴念仁は一体何を言っているんだ? 吹雪が貴様をどう思っているかなど一目瞭然ではないか。これだから童貞野郎は。

「と、とりあえず行こうか?」
「は、はい…」

ギクシャクしながら歩き出す二人。だが先ほどの件で何かが吹っ切れたのか、手を繋ぐ所までは進展したようだ。

ピリリリリ!

電話? ああ、真理亜からか。

「…こちら妹姫」
『こちら聖母。二人の状況に進展は?』

前回の報告から今までの状況を一通り説明する。多少私見が入っているのは、まあ許されたい。

「以上だ」
『…ねえ可憐ちゃん。やっぱり聡明君私刑していい?』
「気が合うな真理亜。そろそろ私の堪忍袋も限界だ。とりあえず、デートの何たるかが載っている雑誌を、あの木偶の坊に与えてみる。それで変化がなかったら簀巻きにしよう。割と本気で」
『その時は手伝うわ』
「感謝する」

電話を切って美女と野獣に目を向ける。
二人は手を繋いだまま、会話に花を咲かせているらしい。

「ふぅ…これでは吹雪と結ばれるのは何時になることやら…」



(あなたはその時どうなるの?)



む?

周囲を覗ってみるが、(私以外に)特に怪しい人影はなかった。

「幻聴か?」
119名無しさん@ピンキー:2009/10/14(水) 15:16:55 ID:3aN78j+x
終わりです。汚名挽回になったでしょうか?
120名無しさん@ピンキー:2009/10/14(水) 15:26:46 ID:UbjUhiHu
>>119
Good Job!
でも挽回しちゃだめよ。
121名無しさん@ピンキー:2009/10/14(水) 15:41:48 ID:By8VCqyT
返上だわな
122名無しさん@ピンキー:2009/10/14(水) 16:37:47 ID:6uFOzIRZ
>>119
乙です。
「汚名返上 名誉挽回」ですね、よくセットで使われますが実際は別々の言葉ですので
縮めると意味が正反対になるのでご注意をw
123名無しさん@ピンキー:2009/10/14(水) 20:59:59 ID:0xsr/gDe
>>119はジェリド
124名無しさん@ピンキー:2009/10/14(水) 21:06:18 ID:UpT5zeOO
汚名挽回ってネタじゃないのか
125名無しさん@ピンキー:2009/10/14(水) 22:27:17 ID:ynRjMyBn
>>119
GJ!先が楽しみな作品ができた

妹が病むのはこのスレの掟だが、可憐に限ってはそうなって欲しくない自分がいる…
126名無しさん@ピンキー:2009/10/15(木) 00:28:41 ID:r4S1XWbL
最初からキモウトじゃないのは凄くいい感じ
この妹はマジで可愛い
でも地の文が圧倒的に少なくて会話だけで物語を進めてるのがなぁ
127名無しさん@ピンキー:2009/10/15(木) 00:31:48 ID:fBHzjkum
人を殺めてる時点で十分病んでる気もするが…
そこまでして兄の為に動く理由が明かされるのを待つしかないな

しかし普通のキモウトと違って兄の彼女候補に寄り付く虫の駆除もしなきゃならんから大変だなぁ
128ポン菓子製造機 ◆lsywFbmPjI :2009/10/15(木) 01:54:25 ID:C3xiSig+
流れぶった切ってすみませんが投下します。遅れてすみませんでした。
129ポン菓子製造機 ◆lsywFbmPjI :2009/10/15(木) 01:54:50 ID:C3xiSig+
 肌を切るような秋風が北の街を吹き抜ける夜の下で北見遼一は、この町が見渡せる高台の記念公園にいた。
地元のカップルに混じって遼一は煙草をふかしながら、柵によりかかったまま天を仰ぐ。
「美幸、来たぞ」
うわごとのように、遼一は虚空に向けて次々と独り言を紡ぐ。
「すまん。しばらく忙しくてこれなかった」
咥えたままの煙草は、秋風が舞うたびに灰の欠片が次々に濃紺の空へと舞ってゆく。
「毎日位牌に手を合わせるだけ満足しないだろうからな。お前は」
すっかり短くなった煙草をはさみ、ふぅ。と煙を吐き出す。
まるで真冬に吐く息のような白く色づいた煙は、空へと昇っていった。
「……今日は色々話したいことがあるんだ」
クリーム色のジャンパーのポケットから携帯灰皿を取り出し、吸殻を入れると、遼一はそれを再びポケットにおさめる。
そして遼一はポケットをまさぐり、まだ新しいセブンスターを一本取り出し、咥える。もう片方のポケットから慣れた手つきで蛍光グリーンの使い捨てのライターを取り出し、咥えていた煙草に火をつけた。
 秋風に乗った煙は、北の街を駆け廻りながら天へ天へと高みを目指した。
まるでその先の何かへと、煙の主の言葉を伝えるかのように。
130ポン菓子製造機 ◆lsywFbmPjI :2009/10/15(木) 01:55:14 ID:C3xiSig+


「……何見てるんだ?」
「別に?」
市電通り沿いのファミレス。窓側のボックス席に俺とそらは座っていた。
俺はそらの視線を避けるようにして箸で裂かれたハンバーグに視線を落とす。
そらはにやにやと割りながら、シーフードドリアを口に運んでいた。
「だから何がおかしいんだよ」
「なんにもおかしくないってば」
どうも調子が狂う。
「ただ、外食なんて久しぶりだなー。って思っただけだよ」
「……まぁな」
 確かに、そらと外食なんてかなり久しぶりだ。
父さんが滅多に俺たちを外食に連れて行くことが滅多にない上に、そらが元々外食が好きではないから、我が家は家で食事を取ることが多くなってしまう。外食なんて半年に一回あるか無いかだ。
 今日だってただでさえ少ない俺の夕食当番の日にたまたま父さんの用事が重なって、父さんの分の食事がいらないと言う奇跡的な偶然を利用して、俺が楽をするためにファミレスにきたのだ。
「でも、こうしてるとさ」そらはカフェラテをすすりながら、言った。「私たちって、恋人同士に見えたりしないかな」
「どう見ても兄妹にしか見えない」
「そーかなー?」
 にやにやと目を細めるそら。
俺は、今度はクリームソーダに目を落とした。
ここ最近、どうにもそらを直視することが出来なくなった。
直接の原因は半年ほど前。ある日からさりげなくだが、そらの俺への対応が少しづつおかしくなってきていた。
俺への態度が積極的になり、家では露出の多い服装ばかりするようになる。以前は半々だった食事当番ももっぱらそらが作るようになり、夕食を「手料理」などと口走るようになる。
俺へ熱っぽい視線を送る頻度もかなり多くなってきていた。
そらのブラコンは昔から俺の周囲の人間に言われてきたことだった。今までの俺なら聞き流すかしてたのだろうが、今ならはっきりとわかる。
おそらく、そらのブラコンは本当なのだろう。それも重度の。
そして、そらの奇行の弊害は俺の内面にも変化をもたらしていた。
俺の中のそらを思う気持ちの、ある意味では悪化だ。
そらをどうしても妹以上の存在として見ようとする。兄としては絶対に許されない感情。
だがそれがそらの行動の一つ一つで悪化していくのが自分でも手に取るようにわかっていた。
もちろんそらの求めるようにすれば、俺とそらの人生は壊れてしまうだろう。
だが、そらを止めるにはどうすればいいのか。そらを不必要に苦しめるような真似は、俺には出来ない。
結局、俺は妹の気持ちに気付きながら、それを止めることも受け止めることもできない臆病者なのだ。
畜生。おれはそう毒づきながらクリームソーダを煽るしかなかった。
131ポン菓子製造機 ◆lsywFbmPjI :2009/10/15(木) 01:55:35 ID:C3xiSig+


兄貴は沈んだ顔のままクリームソーダをすすっている。
私はカフェラテに口をつけながら、その顔を眺めていた。
兄貴、私のことに気づいてるのはわかってるんだ。
ならもっと私を意識してほしいな。
兄貴だって私のこと好きなのわかってるんだよ。
私の心配なんていいから、私を奪ってよ。私を兄貴のものにしてよ。
私は何があっても全力で兄貴を幸せにしてあげるから。兄貴を笑顔にしてあげるから。
私のわがままばっかりだけど、もうこんな切ない気持ちは嫌だよ。兄貴、気づいてるなら全部、そらの全部をあげるから、全部持って行ってよ。
「兄貴……」兄貴に聞こえないほどの小さな声で、私はぽつりと呟く。
そうこぼすだけで、ひたすらに切ない気持があふれてきて、胸を締め付けられる感覚がした。
不意に、兄貴が顔を上げる。伏せられがちな兄貴の目に向かって、わたしは笑ってみせる。
兄貴も私に、困った顔のまま口元を緩めてみせる。
気づけば私たちは二人とも困った顔をしたまま、料理を食べ終わっていたのだった。
132ポン菓子製造機 ◆lsywFbmPjI :2009/10/15(木) 01:56:05 ID:C3xiSig+


気まずい外食から一夜明けた日の午後。私は図書室にいた。
お目当てだった新刊の文庫本を片手に、私はお気に入りの席へと向かう。窓際のテーブルの一番右側の席。冬でもこの時間だと陽のあたる良い席だ。
その道では中堅どこのイラストレーターによって描かれた美麗なイラストの中綴じを眺めてから、私はまず一ページ目をめくってみる。
物語はそこからいきなり急展開だった。
この手の小説はこうやって最初っから盛り上がる話が多く、低調な章がなかなか無いために読むのが多分に漏れず早くなる。そういう点では私はこの手の本は好きだった。
だが、その分物語としての室は若干微妙だが。
それでも活字だけに思いを避けるこの瞬間が、私は何故か落ち着いた。
活字に思いをはせてる間は、モノガタリ以外のことは考えなくていいから。
そのまま活字を追って何ページもめくっていくと、隣から椅子が引きずられる低い音が響いてくる。
そのまま隣を向くと、私は少しばかり驚いた。
真っ白な肌。丸っこい眼鏡。細い指。自分とおなじ色の胸のリボン。
この学校に、しかも同学年にこんな完全な文学少女がいたなんて。失われた古代文化の遺跡を発見した人の感覚とはこう言うものなのだろう。
私は物珍しさゆえに文学少女をしばらく凝視していたようで、視線に気づいたらしい文学少女はこちらを向いて、にこりと口元を緩ませる。
私はすぐに視線を本に戻した。
いくらなんでもじろじろ眺めるのも失礼だろう。
何分たっただろうか。文学少女は不意に本を閉じると立ち上がり、そのまま席を立とうとする。
「きゃぁぁぁぁぁぁっ!」
そして次の瞬間、ひときわ大きな音を立てて、椅子とともに文学少女は素っ転んだ。
低く鈍い突然の轟音は図書室の中にわんわんと響きわたる。何が起こったのかと図書室にいた生徒たちは一斉にこちらを向いた。
私もぽかんと口を半開きにしたまま、床に横たわる文学少女を眺めていた。
どうやら腕を打ったらしく、両腕をかばいながら文学少女は痛みに悶えていた。
私は立ち上がると、うめき声を上げる彼女の横を彼女の手の中からすり抜けて、離れた床に落ちていた文庫本を拾ってやる。
自分でもどうしてそうしたのかがわからなかったほどに、全くの気まぐれだった。
ようやっと立ち上がった文学少女の前に、私は経つ。
「はい、本」私は文庫本を少女に差し出した。
「…………ありがとうございます」大きくずれた眼鏡を直しながら、恥ずかしそうな表情で文学少女はぺこりと頭を下げる。「えっと……」
文学少女はそのまま私の顔を覗き込んで、そして、三〇秒ほどしてようやく口を開いた。
「名前……教えてもらえますか?」
 ああ。と私は頷く。
「北見そら。北見市の北見に、そらは平仮名」
「ありがとうございます、そらさん」文学少女は口元を緩ませた。
133ポン菓子製造機 ◆lsywFbmPjI :2009/10/15(木) 01:56:57 ID:C3xiSig+
「私は里野藍と申します。里芋の里に、野原の野、それと藍染の藍です」
 文学少女こと里野藍は再び頭を下げる。
こう何度も丁寧に感謝されるのも何かむずがゆいが、何故か、この少女のそれは何となく許せるような気がする。
彼女から漂ってくる文学少女とかドジっ子とか、そういういわゆる「萌え要素」のせいなのかもしれない。
「…………それにしても、結構渋い本読んでるのね」
 藍の読んでいた文庫本は、あまり女子高生が読むような内容ではない男性作家の小説だった。
「この小説、知ってるんですか?」
「前に家族が読んでて、私もついでに」
そう、兄貴の本棚に鎮座していたものを、兄貴との話題欲しさに引っ張り出して、一週間で読んでしまった本だ。
それじゃなければ、女子高生が好き好んで高度経済成長期の自衛隊が舞台の小説など読むわけがない。
 その時、私たちの頭上から古くさい電子音のチャイムが鳴り響く。休み時間終了のカウントダウン。
私と藍は揃って図書室を出ると、本の話題を続けたまま教室の方へと歩いてゆく。
やがて、一年四組と書かれたプレートの下がる教室の前で藍は立ち止まった。
「じゃ、私ここですから」
藍はそう言ってドアの向こうに消えていった。
(…………あれ?)
一年四組。というフレーズが不意に私の脳裏を駆け巡る。
一年四組。兄貴のことが好きな奴のいるクラス。
まさか彼女が。そこまで考えて、私は首を振る。
「…………考え過ぎね」私は床を軽く蹴って、自分の教室へと向かった。。


「っと、あったあった」
埃っぽい進路指導室の棚の中から、俺はやっとの思いで探し出した過去問を取り出した。
過去三年の過去問が詰まった冊子はこれまた埃っぽく、上の縁をすっと指でなぞると、指がうっすらと白灰色に染まる。
「……確実に肺に悪いよな。この部屋」
 俺は手に入れたばかりの過去問をぱらぱらとめくる。去年の入試のページに突き当たると、俺は試しにと問題を眺め始める。
手始めに英語。次は国語。歴史。数学……。ページをめくる速度は次第に加速してゆく。
そして一通りの入試問題を眺め終わるまでには、五分とかからなかった。
「いよいよヤバいんじゃないか……俺」
 「現状でたぶん大丈夫だ」と言いきっていた夏休みの模試の判定もかなり疑わしくなってきた。
 俺は過去問を小脇に抱えると、回れ右をしてスチール棚の列の中を歩いてゆく。
 その時、俺の目に、机の上に山盛りにされたパンフレットの束が飛びこむ。
パンフレットは日の丸をつけた戦闘機とイージス艦、それに戦車をバックに、三人の青年が微妙に厳しい顔をしている写真が前面に押し出ている。
「……こんなにあるんだから、誰も困らないよな」
俺は一番上のパンフレットを取ると、それも一緒に小脇に挟めて自分の教室へと戻ってゆく。もうすぐ予鈴もなるはずだろう。
他と違って薄いビニールのような材質のせいか、ずいぶん大きな音の鳴る南階段を一段飛ばしで昇ってゆくと、四階途中の踊り場でちょうど予鈴が鳴り響いた。
134ポン菓子製造機 ◆lsywFbmPjI :2009/10/15(木) 01:57:41 ID:C3xiSig+


「気をつけ、礼」
 その言葉とともに、まるで風船がはじけるかのように授業を終えた生徒たちのざわめきが教室内を覆った。
千尋はそそくさと授業道具の入ったスポーツバッグと、学校指定の体操服のバッグを持って教室の外へ出てゆく。
放課後すぐに、しかもこの寒空の中野外での練習とは、陸上部にはまったく恐れ入る。
景はいつもの如くすっとぼけた様子で掃除用具入れから座敷箒を取り出し、教室の後ろを掃きはじめる。そういや、今日は景の班が掃除当番だったのだ。
「景、待とうか?」私は声をかける。
「いやー、いいよー」景は座敷箒を左右に往復させながら、首を振った。「どうせちょっと遅くなるしー」
「わかった」私は鞄を持つと、景にじゃぁね。と声をかけて教室の外へ出る。
 帰宅を急ぐ生徒の波と同化しながら北階段に辿り着くと、不意にとん。と背中を叩かれる。
振り返ると、昼間の文学少女・藍だった。
「お久しぶりです、そらさん」
「うん、昼休みぶり」
私たちはそのまま人の波の中を漂いながら昇降口へと向かう。
 昇降口を過ぎると、すっかり日も傾いた空が私たちの目に入った。
もう四時で空がこんなに暗くなる季節になったんだ。と改めて感じさせた。
「さむっ」藍はブレザーの襟をきゅっと掴む。
 校門を抜け、電車通りの横断歩道に突き当たる。
不運なことに、信号は赤になった直後だった。
「藍も電車?」
「うん。家がT区だから」H橋の停留所でから通ってるの。と藍は返す。
信号が青に変わると、私たちは多くの生徒でごった返す停留所の島に辿り着く。
「あ」私は嬉しくなって不意に声を上げた。「兄貴」
 兄貴は私の声に気づくと、子がた建がしっぽを振るみたいな仕草でぱたぱたと手を振る。
私は藍をつれて兄貴の傍に向かう。
「今帰り?」
「ん、まあな」
「健史さんは?」
「個人面談だってよ。あいつ、結構今の大学ヤバいらしくて」
 そうなんだ。と私は頷く。そういや千尋がそんな話をしていた気もする。
「あ、そうだ。この子」私は藍の肩をよせた。「里野藍、今日知りあったの」
 兄貴は藍を見て、すぐにはっとしたような顔をする。
「あ、この前の……」
 兄貴がそう口を開いたその時、これからいっぺんに飽和するだろう、ガラガラの連節車が停留所に舞い込んだ。

電車は車両いっぱいの乗客を乗せてごとごとと進む。
兄貴と私、そして藍は専用席の前の吊革に三人並んでたっていた。
「そうなの。兄貴の鞄のマスコットねぇ……」
藍と兄貴の話を聞いて、私はうんうんと頷く。
隣で申し訳なく「ごめんなさい……」と呟く藍の肩にぽんぽんと手をやって、別に何ともないって。と声をかけた。
兄貴だけが気だるそうにじっと車窓を眺めていた。
多分学校で何かあったのだろう。と兄貴には何も触れなかった。
(でも……ね)
 私は兄貴と、そして藍とに視線を向ける。
(まさかとは思うけど、藍が兄貴のことが好きな子じゃないよね)
 もしそうなら、これは由々しき事態だ。
兄貴に藍と私のどちらかを選べと言うのなら、きっと兄貴は藍を選ぶに違いない。
私は兄貴の妹。
もっとも近しい女であると同時に、絶対に結ばれてはいけない女。
今まで、兄貴のそばにだれもいなかったから私は兄貴のそばで、兄貴の一番でいられた。
そこに誰かが入ってくれば、わたしはたちまち兄貴を失ってしまうだろう。
だから、兄貴に近づくものは処分しなければ。
だが、私にはそんな勇気はない。
落ち着かない気分を乗せて、連接車はモーター音をうならせながら秋の風を切って走った。
135ポン菓子製造機 ◆lsywFbmPjI :2009/10/15(木) 02:02:27 ID:C3xiSig+
投下終了です。

ちなみにネタばらしといてはなんですが、このSS、実はほとんどの人名が北海道の鉄道が由来してます。
各キャラクターの名前のネタは各自で見つけてみてください。
136名無しさん@ピンキー:2009/10/15(木) 02:55:13 ID:KwrdNu1N
GJ!!それにしても、「歩兵の本領」とはな…
自衛隊就職→営内生活(自衛隊施設の中)フラグがたったか?    
137名無しさん@ピンキー:2009/10/15(木) 03:03:24 ID:IeiaQxfP
・・・
138名無しさん@ピンキー:2009/10/15(木) 03:23:18 ID:tlNqyytG
GJ!
北見に千歳にあいの里に…T区もH橋も何か元がありそうですな
139名無しさん@ピンキー:2009/10/15(木) 19:33:47 ID:FIdSgQlx
永遠の城の続きが読みたい……白ねえ
140名無しさん@ピンキー:2009/10/15(木) 22:43:34 ID:n8+gCy3L
   ∩___∩         |
   | ノ\     ヽ        |
  /  ●゛  ● |        |
  | ∪  ( _●_) ミ       j
 彡、   |∪|   |        J
/     ∩ノ ⊃  ヽ
(  \ / _ノ |  |
.\ “  /__|  |
  \ /___ /
141名無しさん@ピンキー:2009/10/15(木) 23:16:51 ID:/zTY45F4
至路って良い名前だよな
最初みたとき感心した
142名無しさん@ピンキー:2009/10/16(金) 02:31:32 ID:CvrkM18D
>>135
GJ!!
個人的には文学少女に勝利して欲しいところだが
そうなるとスレ違いになっちゃうんだよな
143名無しさん@ピンキー:2009/10/16(金) 03:55:31 ID:N6Qv11IC
>>142
別にキモ姉キモウトが出てれば必ずしも勝たなくてもいいんじゃない
144名無しさん@ピンキー:2009/10/16(金) 05:25:20 ID:hdr4lbPR
おまえら。キモウトと文学少女のタッグを組めば良いだろ。
文学少女が同学年の雌犬駆除
キモウトが下を駆除
んで一緒に上を駆除と
んで主人公と3P
145名無しさん@ピンキー:2009/10/16(金) 07:30:36 ID:LAq1iDpk
文学少女はいらね
いかにもな名前と外見と性格だし
146名無しさん@ピンキー:2009/10/16(金) 11:31:24 ID:xG+yT8TI
続き投下します。
147人と妖の姉:2009/10/16(金) 11:33:45 ID:xG+yT8TI
 太陽が真上に位置している正午。
 都会から少し離れた山中に、久衣那姉弟は居た。
 滝の流れ落ちる音。川のせせらぎ。小鳥の囀り。生い茂る緑の匂い。
 ここは山中にある小さな湖がある広場。
 綾架は湖沿いの大きな岩の上に座り、読書をしている。
 服装は半袖のワイシャツに薄茶色のサマーセーターを上に着ており、
下は青のチェックが入ったミディスカートを穿いている。
 スーツ姿とは違い、ラフなプライベートで着る服装だ。
 そして綾斗は、広場の中心にある湖に佇んでいた。
 上半身は服を着ておらず、下はジーンズの半ズボンを穿いている。
 湖の水深は三十センチ程で、脹脛の上辺りの深さ。
 綾斗は目を閉じ、右腕は脇を締めて後ろに引き、左腕は肘を曲げて前に出している。
 左手は紅い光を纏っており、綾架に反して綾斗はラフな雰囲気とは思えない状況。
 そんな彼の様子など気にも留めず、綾架は読書に耽る。
 数分間このような状態が続き、変化は起こった。
「はあ!!」
 綾斗がいきなり、水面に向かって光を纏う左拳を突き付けた。
 バシャンと水飛沫を上げ、拳は無抵抗に湖に浸かる。
 それ以上は何も起こらず、ただ滝の音がその場に響く。
 その中に、綾架が本の頁を捲る音も混じる。
 とてもシュールな光景かと思われた瞬間、突如綾斗の拳が浸かっている水面が震え始めた。
 初めはプクプクと小さく泡立ち始めたのが、すぐにそれはボコボコと大きくなり出した。
 そして、綾斗を中心とした湖の一点が――爆発した。
 ダイナマイトを放り込んだのかと思う程の爆音と水飛沫を上げ、湖を波立たせる。
 そんなことが起こっても、綾架は平然と読書をし続けている。
 やがて水飛沫が晴れ、そこにはあれだけの爆発が起こったというのに、身体に全く傷一つ無い綾斗が立っていた。

「放つまでに霊力を溜める時間が四分十二秒一三。
送り込んで発破するまでが八秒七五。
威力は良いとして、総合的に見ればとても合格点とは言えないわね」

 不意に読書をしていた綾架が、本から視線を反らさずに言い放った。
 その言葉を聞いた綾斗は、肩をガックリと落とした。
148人と妖の姉:2009/10/16(金) 11:36:55 ID:xG+yT8TI
「久衣那流拳脚術の奥義――拳に集めた霊力を敵に送り込み、その霊力を内部から爆発させる技。
本来なら霊力を溜めて放つまでに五秒だと言うのに、
その何十倍も掛かってしまうのでは会得出来てないと同義よ。
実戦じゃ敵は何分も時間を待ってくれない。せいぜい数秒が限界」
 綾架は読書をしながら、淡々とした口調で喋る。
 姉の厳しい指摘に、綾斗は大きな溜息を吐く。
 二人は現在修行兼ピクニックでこの山に訪れていた。
 綾斗は修行のつもりで、綾架はピクニックのつもりでいる。
 修行を一旦中止し、湖から上がって来た綾斗は、大岩に座る姉を見上げる。
「でも初めてこの技をやった時に比べたら、随分時間も威力も上がったんだけどね〜……」
「とは言え、実戦で使用出来る域まで全く届いていないことは事実でしょ?」
 綾斗の見栄っ張りに言い返した綾架は、パタンと本を閉じ、軽やかに大岩から飛び降りた。
 着地した際に、彼女が来ているミディスカートが大きく舞った。
「パンツ見えてんですけど……」
 ボソリと呟く綾斗に、綾架は頬を少し紅くさせる。
「綾斗はそんなに私の下着が見たいの?」
「いえ結構です」
 恥ずかしそうだがやや嬉しそうに訊く彼女に、綾斗は無表情で即答した。
 彼の反応に、綾架はつまらなそうな顔になる。
 二人がそうやって平和なやりとりをしていると、その平穏を破るかのように――

 銃声が鳴り響いた。

 それは連続で三発響き、音の出所は近くであった。
 木々で翼を休めていた鳥達は驚き、瞬時に飛び去る。
 綾斗はその音に一瞬動揺するも、綾架は澄ました表情で右手を前に突き出していた。
 その手の数センチ先には、三つの銃弾が青白い光に包まれて空中で止まっている。
「相変わらず嫌なタイミングで来て、随分な挨拶をするのね」
 綾架は静かだが強い口調で喋ると、右手を下した。
 それに釣られて、三発の銃弾も砂利に乾いた音を出して落ちた。
 すると二人がいる湖の広場から少し離れた森の奥から、調子の良い声が聞こえてきた。
「いやはやそっちこそ〜、隙だらけに見えるのに全く隙が無いのは相変わらずだよね〜」
 そんなことを言うと、声の主はその姿を現す。
 黒いスーツを着た女性。
 下は綾架が来ているスーツのそれとは違い、ロングスカートではなくズボンである。
 金髪に染めたセミロングの髪と瞳を隠すサングラスは、太陽に反射して煌めいている。
 年齢は綾架と同じ位であろうその女性の右手には、リボルバー式の拳銃が握られており、
その銃口からは灰色の煙が微かに流れていた。
149人と妖の姉:2009/10/16(金) 11:39:07 ID:xG+yT8TI
「いや〜悪気はなかったよ〜? 
ただ退魔師である貴女が〜、平和ボケしていないかど〜かを見たかっただけだよ〜。
それに仮に命中してても急所は外してたから、許して欲し〜ね〜」
 へらへらと、気が抜ける口調で話す金髪の女性。
 そう言いながら、右手に握っている拳銃をクルクルと器用に回し、
右太腿に巻き付けているホルスターに仕舞う。
「ビビった……夜凪さんかよ……」
 彼女の姿を見た綾斗は、力が抜けたように砂利に座り込んだ。
「綾斗、玖梨子に「さん」を付ける必要は無いわ」
 彼女を一直線に睨む綾架は、無表情で話す。
「いやいや〜綾斗くん。年上に対して敬意を払うのは当然だよ〜。
だから君の言葉遣いは何ら間違いない等無いよ〜」
 またへらへらと、金髪の女性は調子の良い口調。
 彼女は夜凪 玖梨子(やなぎ くりこ)。
 日本政府の裏機関・超常現象特別捜査隊の隊員である。
 この機関は主に霊的なモノを調査・解決する機関であり、内容は退魔師と差ほど変わらない。
 玖梨子自身も綾架や綾斗同様に、妖を退ける能力がある。
 彼女と久衣那姉弟の関係は、簡単に言えば仕事の仲介役。
 何故退魔師と同じ能力を持ち、日本政府と言う大きな後ろ盾を構えながら、
あくまで表向きだが民間人である綾架達に仕事を紹介するのか。
 それは日本政府の後ろ盾が大きく関係している。
 バックにこれ程のようなモノがあれば、返って大きな動きが出来ないのである。
 彼女ら捜査隊が妖に関する事件に動いた時、
もし一般人に妖の事や日本政府が関係していることが明らかになっては、表の世界では混乱が生じる。
「何故こんな妖(モノ)が世の中に蔓延っているのに、政府は隠し続けていたのか」
「政府は今まで妖に殺害された人達の遺族や関係者に謝罪をするべきだ」
 などと言う声が飛びかねない。
 故に政府は民間人の退魔師に仕事を依頼し、報酬と引き換えに秘密裏に解決してもらっているのだ。
 だが常にそんなことでは、政府お抱えの裏機関の存在意義が無くなってしまう。
 上級の妖や、民間人の退魔師では解決出来ない事態が生じれば、機関も動きを見せる。
 その分、解決した際の一般人に感づかれない為の証拠隠滅にも、
大きな手間と費用が掛かってしまうのだが。
150人と妖の姉:2009/10/16(金) 11:41:21 ID:xG+yT8TI
 綾架は胸元から一枚の御符を取り出し、いきなりそれを玖梨子に目掛け投げ放った。
 弓矢のような鋭さで迫る御符を、玖梨子は即座に銃を抜き取って早撃ちの要領で撃ち落とした。
 撃ち落とされた御符は勢いが無くなり、何も起こらずにヒラヒラと砂利に落ちる。
 玖梨子は銃口の煙を息を吐いて掻き消すと、ニヤリと口元を歪める。
「な〜んのつもりかね〜? 久衣那嬢?」
「さっきのお返し。これでチャラでしょ」
 冷たい表情の綾架は、何事も無かったかのように言い終えた。
 この二人、共にあまり仲がよろしく無い。
 綾架は実直真面目で必要以外のことはあまりしない主義だが、
 玖梨子は面倒臭がりで必要以外どころか必要なことすらしないこともしばしばの道楽主義者。
 所々対極な面があるこの二人は、今のように衝突することが度々ある。
 その度に当事者の綾斗は冷や汗をかいているのだが。
「まあまあ二人共そこまでにして。それで今日は何の用ですか? 夜凪さん」
 二人の間を割って入った綾斗は本題に入ろうと言い出す。
 また玖梨子のことを「さん」付けで呼ぶ綾斗に、綾架は不満げな顔になるも黙ったまま。
 玖梨子は今度は「ニヤリ」とではなく、ニッコリ」と笑った。
「うんうん。やっぱ綾斗君は話が早くて良〜ね〜」
 感心したように話す彼女に、綾架は「さっさと話しなさい」と急かす。
「いや〜こんな所で立ち話もど〜かと思うしさ〜。とりあえず久衣那家まで戻ろ〜よ? 
あ、それとお茶とか茶菓子も出してくれたら嬉し〜な〜。いやホント〜」
 彼女のいつまでもへらへらとした態度と言い様に、
 綾架は図々しい奴と心中で舌打ちし、
 綾斗は本当にマイペースな人だなと溜息を吐いた。
151人と妖の姉:2009/10/16(金) 11:45:34 ID:xG+yT8TI
とまあここで三話終わりです。
キモ姉や修羅場の片鱗すらまだ見えてませんね……。
152名無しさん@ピンキー:2009/10/16(金) 12:15:54 ID:vwJvpT/i
さすがにそろそろ出てこないと…あくまでここはキモ姉妹スレだぜ?
153名無しさん@ピンキー:2009/10/16(金) 12:17:23 ID:tsnkwLTb
もうちょっと待ってやれよ気の短い奴だな
154名無しさん@ピンキー:2009/10/16(金) 12:58:21 ID:uuI2TkwA
いや流石にこれはないだろ。
これで作者がめんどくさくなって投下やめたら
ただの荒らしだぞ
155名無しさん@ピンキー:2009/10/16(金) 15:20:30 ID:DeOAaQ2J
キモ姉になるフラグは色々見えてきてるじゃん
少しは辛抱しろよ
つか、投下しなくなる前提で話すとか何様


>>151
投下乙
マイペースに頑張ってくれ
156名無しさん@ピンキー:2009/10/16(金) 17:34:43 ID:jjaDiIK9
>>154
言い過ぎ
157名無しさん@ピンキー:2009/10/16(金) 18:32:22 ID:Sk4auhJT
>>154
早漏はここにいないほうがいい

もうテンプレに早漏禁止とでもいれたほうがいいかもしれんなw
158名無しさん@ピンキー:2009/10/16(金) 20:19:11 ID:khF6g3zA
>>154

見なけりゃいいだろ。

俺見てないぜ
159名無しさん@ピンキー:2009/10/16(金) 23:31:30 ID:6Lp3Cz6H
キモ姉&キモウト作品の2大名作というば『綾』と『籠の中』みたいだけど、これ、どっちもキモウトなんだよね……

個人的な意見でかまわんから、キモ姉作品でオススメを教えちょくれ
160名無しさん@ピンキー:2009/10/16(金) 23:32:31 ID:2TuQqOIx
すぐ上でも出てるけど永遠のしろは良いものだ‥
161 ◆uC4PiS7dQ6 :2009/10/16(金) 23:46:51 ID:NtkIfX2N
日付が変わる頃に投下。

続き物で、今回はキモウトが余り出てません。
なので、そんなのが嫌な方は酉かタイトル、『妹堕天録ラーゼシフォン』でNGお願いします。
162『妹堕天録ラーゼシフォン』初 ◆uC4PiS7dQ6 :2009/10/17(土) 00:16:58 ID:momx04Ki
1
 その長く伸ばした赤い髪が気に入らない。
 その反抗的な赤い眼が気に入らない。
 その薄く水っ気を帯びた赤い唇が気に入らない。
 ボリュームたっぷりの胸も、細いウエストも、大きくムッチリとしたお尻も、太股もっ!!
 昔は子犬みたいに「おにいちゃん、おにいちゃん♪」ってくっついて来て可愛いかったのに、甘やかすだけ甘やかしてたら、どこまでもおっぱい膨らませてっ!! 勝手にエッチくなって!!
 身長なんか男のボクと同じだし、タレ目もいつの間にかツリ目になっちゃってるし、髪も派手に染めちゃってるし、本気で睨まれたらボク怖いよ。
 呼び方だって、おにいちゃん♪ えへへぇっ、よんでみただけー♪♪→にいちゃん→おにい→アニキ→おいクソアニキ!→名前呼び捨てだし、ちょー最悪。
 でも……でもね浮音(しふぉん)? ボクらは双子の兄妹だけどね? たった二人の家族だけどね? それだって限度が有るんだ。もぅ、我慢できないよ。

「早くマッサージしてよ拌羅(すてら)。オレ、胸デケェからさぁ、こっちゃって大変な訳よ」
 初秋の夜には雲一つ無く、空にはまん丸お月様。星達のビスチェに彩られた差せ明かりが、窓から降り注いでボクを応援してくれてる。
 生意気な双子の妹に、妹のお尻にチンコを挿れろって……思いっきり泣かせろって!! ああっ、考えただけでチンコおっきくなるよ。
 きっと狭くてキツくて、ローションでトロットロにしても、ぎゅっぽぎゅっぽって音がするんだろーなーっ♪
 そんで、ぎゅっぽぎゅっぽする度に内腸がはみ出したり戻ったりして、せーしを全部搾り取っちゃうんだ……ボクのチンコ使い物にならなくしちゃうんだっ!!
「んくっ……」
 ゴクリ。喉が鳴る。鼓動はいきなりトップギア。呼吸も荒くなって、凄く、興奮してる。
 チンコ痛い、チンコ挿れたい、ねばねばの作りたて特性濃厚孕ミルクを中出ししたい。
「ふぅっ、ふぅっ、ふっ……うん、じゃあマッサージ……するね?」
 家のリビング、電気カーペットの上。髪をポニテに束ねて、妹はうつ伏せになって小さな寝息を吐く。
 ブラジャーなんかしてないピチピチのタンクトップにジーンズで、年中変わらない妹の家着。
 乳首にはニプレスを貼り付けて、下は大事な所がまるで隠れてないローレグパンツ。お尻の穴が丸見えで、下着姿でうろつかれたら、視線をお尻から外せない。

 「あぁっ? なんだよアニキ、ニップレスに触ってみたいのか?」

 思い返せば、この台詞からボクはオカシクなった。

 「おにぃ、友達が、さ……弟のチンコ見たんだって……だからさ、ボクのも見せるから、おにぃのも見せて?」

 アレっ? この時だったっけ?

 「ねぇおにいちゃん? しふぉんね? おにいちゃんのこと、かんがえるとね? おまたがムズムズするのっ……おにいちゃんがタッチしてくれたら、ムズムズなおるかな?」

 それともこの時だっけ? まぁ関係無いよ。昔は素直で可愛くても、今は生意気なだけなんだから。
 ずっとワガママ聞いて来たんだから、前でする訳じゃないんだからっ、スキーン線をゴリゴリえぐる本気ピストンしたいのを我慢してるんだからっ!!
 だから、だから……お尻にチンコを挿れて、結腸をカリ首でこじ開けちゃっても、それは仕方の無い事なんだ。
163『妹堕天録ラーゼシフォン』初 ◆uC4PiS7dQ6 :2009/10/17(土) 00:21:27 ID:momx04Ki
2
 シフォンは自らの腕を枕にして横になり、ボクはその背へ馬乗りになる。
 そして背骨と肩甲骨の間を両手の親指を使い、ゆっくり、丁寧に。ぎゅっ、ぎゅっ、ぎゅっ、ぎゅっ、押していく。
 上から下へ、脇から潰れて見えるおっぱいを眺めながら、日課のマッサージをいつもと同じく淡々とこなす。
「すぅっ……んんっ、すうぅっ」
 するといつもと同じく、シフォンの吐息は深く静かに。こうなると三十分は起きない。
 確認してから座る位置を腰から膝裏まで移し、横のソファーに手を伸ばす。
 寝てる時の顔は幼くて可愛いのに。一生守ってあげたいと思った昔のままなのにっ。
「ふぅっ、ぁふぅっ! しふぉん……ボクのドーテイ、しふぉんのお尻にプレゼントする。プレゼントフォーユーしふぉん♪♪」
 ああっ、チンコがスボンの中で苦しいって言ってる。待っててね、もうすぐ出番だからね、思う存分アバれさせちゃうからねっ!!
 手を伸ばした先、ソファーの椅子部分を持ち上げれば僅かな収納スペース。そこに隠して置いた、人肌よりも温かいローションボトル。
 ホッカイロに囲まれた中から、裁ち切り鋏と一緒に手元まで手繰り寄せる。
「んはぁっ……唾液はいっぱい溜まるのに、ノドはすんごいカラカラ♪」
 お肉をこんなにムチムチプリプリさせてぇ、イヤらしいお尻に成長してぇっ、なんてイケない妹なんだっ!! お兄ちゃんは許しませんよ!!
 ハサミを一旦シフォンの背中に置き、粘着性バツグンなハードローションの蓋を開ける。
 そしてそれを逆さまにして力強く搾り、お尻の、ジーンズの上に、ベチャ、ベチャ、ベチャ。
 すぐにローションは染み込んで、一部分だけを変色させながら重量感を増す。
「あはっ♪ オーラしゅーとぉっ♪♪」
 空になったボトルは、部屋隅のゴミ箱へフリースロー。見事に得点GETでテンションあげあげ。
 続いて右手にハサミを持ち、左手でお尻の穴の上ら辺をちょっと摘まみ、ヂョキン。微かに切れ目を入れる。後はそこを頂点にして左右に切ってくだけ。
 ヂョキ、ヂョキ、ジョキ、ジョキ。
 パンツごと裁断して、アナルを中心に丸く縁取り、慎重に、大胆に、仕事を終える。
 シフォンはまだ夢の中で、余ほど素敵な夢を見ているのか、その寝顔は終始笑顔……
「ほんとに寝てるのシフォン? 早く起きないと大変な事になっちゃうよー?」
 だと思ってたけど、気付いちゃったよ。
「すぅっ、ふんん……ぃあっ、すぅぅっ」
 シフォンの頬は耳まで、うなじまで真っ赤で、心無しか呼吸も荒くなってるし、寝たフリしてるのバレバレさま♪ って事は、オッケーって事だよね?

 ぺろん。べちゃっ。

 ローションでぐっちょりと濡れて張り付いたジーンズとパンツを、ミカンの皮を剥くように一息ではがし、テーブルの上へと放り投げる。
「んくっ、はああぁっ……シフォンの、お尻からっ、湯気、でてるよぉっ」
 すると視線を釘付けるのは、パクパクと控え目に口を開閉してヒクつく、ピンク色で誘惑する妹の穴蔵。
 熱々のローションが腸液と混じって溢れ出し、糸を引いて水音を立て、入り口はコリコリにシコってヤル気モード全開。チンコが痛くて堪りません!!
 即座にズボンとパンツを脱ぎ捨て、こちらもカウパーでぐっちょりの先っちょを、後ろの挿入口に押し当てる。
 にゅちっ……
 ここまで来たらこっちのもんだ。例え急に起きて拒否されても、こんだけローションでヌルヌルになってたら簡単に差し込めるよ。

「ではっ……うおおおおおおおっ!! いただきまぁぁぁぁぁすっ!!!」
164『妹堕天録ラーゼシフォン』初 ◆uC4PiS7dQ6 :2009/10/17(土) 00:24:59 ID:momx04Ki
3
 くちゅ、くちゅ、ぐちゅ、ぐちゅ、ぐぢゅっ!!
 ぁっ、あっ、もっ……イッちゃう!!
 まだ挿れてないのに、まだ童貞のままなのに、精液がチンコの真ん中を登って来てる。
 またココまでなんだ? ここでおしまいなんだ? いつもみたいに自分の部屋で、裸でベッドに仰向けになって、いつも同じオカズでオナニーして……最低な、ボク。
 この先を知らないから、ここまでしか妄想できない。普段は怖くて生意気な妹を、アナルレイプしようとする。そんな妄想。
 左手にはシフォンの写真を持って、右手には否貫通で透明素材のオナニーホール。その擬似女性器にチンコを締め付けさせて扱き、限界を迎えるラストスパート。
「しふぉん、きもちいいよぉっ♪ ふぁっ、ぁ、イクッ……ふぎぃっ!?」
 グニュグニュの有り得ないヒダ穴に包まれて、一生懸命に右手を上下させて、これはシフォンのアソコだと思い込んで、ボクのチンコはそう勘違いする。
 『お兄ちゃ、あがっ、ぃうっ、ごめんなっ、さいっ……こわれちゃ、うからぁっ……もっ、ズボズボしないでよぉっ!! うわああぁぁぁぁぁぁぁん!!!』
 『うるさいっ! いっつもいーっつも迷惑かけてっ!! シフォンのお尻なんか、ボクのチンコ容れにしちゃうんだからねっ!!!』
 お尻の肉を掴んで、後ろから荒々しくハメ回す。泣いたって叫んだって、止めるもんか。絶対に中出しするんだっ。
 それでも、昔の優しいシフォンは好きだったんだよ? 誰かと結婚するまでは、ボクがずっと守ってあげたいと想ってた。
 昔の優しいシフォンは……
「スキ、すきぃっ、好きだよシフォン!! スキっ、スキっ、イッ、ぐぅっ!!?」

 ドギュッ! びゅぐびゅっ!! びゅるびゅるびゅる、ドクンドクンドクン……

 ああっ、ああっ、オナホに中出し、きもちいい。

 ああっ、けど死にたい。双子の妹をオカズにしてボクは、ボクは何をしてるのっ!?
 いつもと同じ、いつもと変わらない感情。大の字で寝転がり、溜め息を吐いて天井を見つめ、いつもと一緒で自己嫌悪。
 また三日もしたら、全く同じ事を考えるのにね。あははっ♪ おっかしー♪♪





     『妹堕天録ラーゼシフォン』

165『妹堕天録ラーゼシフォン』初 ◆uC4PiS7dQ6 :2009/10/17(土) 00:28:17 ID:momx04Ki
4
 ボクら双子の兄妹は、産まれた時から、瞬間から、運命の歌の命ずるまま。
 同じ髪に、同じ瞳に、同じ唇に、同じ体格で産まれて。胸の大きさも、お尻の丸みも、腰のくびれや声だって殆ど同じ。
 ただ一つ……足の付け根に存在する性器が、男か女かってだけ。
 ボクとシフォンは同じ日、同じ時間に産まれ、同じ性器を持って育った。男と女、その両方。つまりは両性具有(アンドロギヌス)。
 そして四歳を迎え、性別を決める段階で、ボクは女の、シフォンは男の性器を捨てた。何の問題も無く、兄と妹として、成長して行く筈だったんだ。
 だけど、そんな儚い夢さえ叶わない。ボクの身体は、幼い頃の妹とうりふたつ。
 妹は身長170超えたのに、ボクは未だに150超えないし。幾ら身体を鍛えようとしても筋肉が付かない。
 胸だって平らだけど僅かに柔らかくて、全体的に華奢(きゃしゃ)なんだ。どこまでも、いつまでも、女らしく、女らしく。
 だからシフォンに嫌われたんだ。意地悪されるんだ。だから、だからっ、明日から男らしくなろう! 長く伸ばしてた髪も切ろう!!
 明日から男になるからねっ、立派なお兄ちゃんになるからねっ!!
 だいたい、ダメなんだよボクはっ。家族以外の女性は緊張して上手く喋れなくて、結果的に妄想しやすいシフォンをオナペットにしてる。それじゃあまるでダメっ!!
「父さん、母さん、二人が見れなかった妹のウェディング姿、ボクがしっかり見届けるからねっ」

 妹はグレちゃったけど、ボクがしっかり更正させるから。どこへお嫁さんに出しても恥ずかしくないようにするから。
 ボクが『魔法』で、何とかするから。



 『男は16歳まで童貞だと、願いを魔法として、一つだけ叶えられるようになる』



 これは最近、科学的に証明された本当の事で、自分……もしくは自分の家族を対象に限り、その人ができる範囲なら願いが叶う。
 例えば、百メートルを9秒で走れ。とかは無理だけど、運動不足にならないように週一でジョギングして。とかなら大丈夫。
 これを使って、ボクは男らしくなる! 他の女の子とも話せるようになるんだっ!!
 今は高1の秋で、ボクの誕生日まで、後2ヶ月。童貞卒業する予定なんて無いし、余裕だねっ♪
「シフォン……ボク、頑張るから、ねっ、と」
 そう決意して上半身を起こし、精子の浮かぶオナホールを洗う為にベッドからおりる。
 そしてドアノブを捻って部屋の前、廊下に出た瞬間……

 べちゃり。

 ボクの右足は確かに、水浸しの床を踏み締めた。

166名無しさん@ピンキー:2009/10/17(土) 00:31:03 ID:momx04Ki
今回はここまで。
早い話しが、次の誕生日まで童貞を死守する話しです。
167名無しさん@ピンキー:2009/10/17(土) 01:13:31 ID:abNCWOEt
早くドロドロ展開に行きたいので投下行きます。
168名無しさん@ピンキー:2009/10/17(土) 01:14:54 ID:Bgv53wAX
支援
169人と妖の姉:2009/10/17(土) 01:16:21 ID:abNCWOEt
 山を下りて都会にの中心地域に、久衣那家はある。
 大きな和風建築の二階建てで、家を囲むようにして二メートルの塀が構えられ、
その塀の内側には芝生や盆栽の他に、小さな池やししおどしまでもある、豪華な庭が広がっている。
 久衣那家の一室。
 床は畳が敷かれており、掛け軸も掛けられている和室である。
 そこには久衣那姉弟と玖梨子が、木製の机を隔てて座っている。
 綾架は背筋をピンと伸ばした綺麗な正座をし、綾斗も少し猫背気味で不器用な正座をしている。
 玖梨子だけは胡坐をかいており、机に肘を頬杖をついている。
「お茶と茶菓子まだ〜?」
 人の家に上がり込んでおきながら、いけしゃあしゃあと喋る玖梨子。
「お前にやる物など一切無い。だがどうしてもと言うならこの御符をくれてやるけど」
 腹の内が煮え繰り返っているのか、綾架は再び右手に御符を握って見せ付ける。
 玖梨子は「ニヤリ」と笑い、右太腿の銃に手を伸ばし始める。
「あ〜らら〜? そんな態度に出ちゃうのかね〜? 
私は別にここで派手にブチかましても構わないよ〜? だってここ私の家じゃないしね〜」
 カチリと、激鉄が起こされる音が小さく響いた。
「はいストップストップー」
 二人の火花を断ち切るように、綾斗が再度割って入る。
「お茶と茶菓子なら俺が用意してきますから、ちゃんと仕事の話をして下さいよね」
「ありがと〜ん」
 やれやれと言わんばかりの様子で、綾斗は部屋の襖を開けてお茶と茶菓子を取りに行った。
 早足で出て行った綾斗を手を振って見送ると、玖梨子は綾架に向き直った。
「さて〜、そんじゃ話を切り出させてもらうかね〜」
 玖梨子が久衣那姉弟に仕事を仲介するのはいつもこのような感じだが、
今日は何処か様子がおかしいと、綾架は思った。
 そして、ようやく玖梨子は言い出した。

「紫乃(しの)――って妖、知ってるよね〜?」

 彼女がある妖の名前を口にした瞬間、綾架の目が見開き、その場の空気が凍り付いた。
170人と妖の姉:2009/10/17(土) 01:19:14 ID:abNCWOEt
「何人もの退魔師や私の機関の人間を葬った最強だった妖。
私も一回実物見たことあるけど……アレは本当に反則的な程の強さで美人さんだよね〜。
名前の通りの透き通るような紫の髪。
おまけにスタイル良過ぎの巨乳ちゃん。
女なら誰しもが憧れる美貌を持ち、男なら誰しもが憧れる強さを誇った――」
「奴は死んだ。そんな昔の話を持ち出して何のつもり?」
 知ってる情報を羅列し続ける玖梨子の言葉を、綾架は断ち切った。
 玖梨子は彼女の反応を楽しむが如く、顔を覗き込む。
「そ〜そ〜。六年前に久衣那嬢が斃したことになってるんだよね〜」
 言い放たれた言葉のおかしな部分に気付き、綾架は眉を吊り上げた。
「斃した……ことになっている……?」
 彼女の少し戸惑いを隠せない様子に、玖梨子はニヤリと笑う。
「うん。実はそうなってんの〜」
「それはどういう意味?」
 綾架が苛立ちを隠せない視線と口調で問う。
「最近機関の情報では〜、紫乃が生存している可能性が出て――」
「ふざけるな!!」
 激しい怒声と共に、両手で机を叩いて再び玖梨子の言葉を遮った。
「貴女ってそんなに私の台詞聞きたくないの〜?」
 苦笑する玖梨子をよそに、綾架は声を荒立たせる。
「奴はあの時私が殺した! 殺したんだ!! 生きている筈が無い!!」
「死んだのを確かにその目で確認した〜? 最期まで息が途切れるのをさ〜」
 綾架と違い、玖梨子は落ち着いた様子で言い返す。
 指摘されたことに対して、綾架は言葉を詰まらせて、畳に力無く座り込んだ。
「私は六年前に貴女と紫乃の闘いを見ていないから〜、どうやって殺したのかは知らないよ〜? 
本当にちゃんと始末したの〜? 詰めが甘かったってことは無いのかね〜?」
 玖梨子の問い等全く耳に入れず、綾架は上の空で机に写る自分の顔を見る。


 死は始まりに過ぎないよ。

 アタシは必ず取り返してみせる。

 アタシの血を、命を――。


 六年前の忌まわしい記憶が、彼女の頭に響いた。
171人と妖の姉:2009/10/17(土) 01:23:07 ID:abNCWOEt
 ただ茫然としている綾架の様子に構わず、玖梨子はスーツの懐から数枚の書類を取り出した。
 ファイル等に仕舞っていなかったせいか、若干シワが寄っている。
「紫乃が六年前に根城にしていた島――暮ヶ原島(くれがはらとう)〜。
彼女が生きていた時には人っ子一人居なかったけどさ〜、
実は貴女が彼女を斃した後〜、機関が彼女に関する情報を得るために小規模な研究所を建てたのよ〜。
何せ日本を震撼させた妖だからね〜。
機関はかなりの人数を放り込んで彼女の死体や遺品を見つけようと血眼になって調査してたけど〜、
な〜んにも見つからなかったのが事実だったんだよね〜」
 その書類には、研究所に関する資料の他に、暮ヶ原島の地形やあらゆる場所の写真が写っている。
「貴女自身も機関に彼女のことを訊かれても〜、ずっと黙秘権使ってたでしょ〜?」
 玖梨子が顔を覗き込んで訊くも、綾架は黙ったまま。
 これ以上詮索しても意味は無い、と悟った玖梨子は溜息を吐き、話の核心に迫った。

「つい三カ月前〜、その暮ヶ原島に居た機関の人間や関係者が――皆殺しにされたんだよね〜。
それもたった一晩でさ〜。監視モニターの映像と言ったらそら酷い光景だったよ〜」

 数枚ある書類の一枚を取り出し、それを綾架に見せる。
 その書類には、焼死体・惨殺体・水死体と言ったあらゆる方法で殺害された、
研究員達の無惨な姿の写真が写されていた。
「これって〜、尋常なモンじゃないよね〜? 
ど〜かな〜? 紫乃と闘った経験がある貴女としては〜、これって彼女の仕業に見える〜?」
 写真を見る綾架は目を驚愕に見開いただけで、言葉を発さない。
 彼女の反応を伺う玖梨子は、一通り書類を見せ終わると、懐にそれらを仕舞った。
「まだ紫乃の仕業と確信してる段階じゃ〜ないよ〜。
何せ監視モニターの映像では〜、何故か研究所の連中が殺された時間帯の映像がずっと砂嵐になっていて〜、犯人の姿が確認出来てないからね〜。
だから機関も迂闊に暮ヶ原島に調査隊を送り込めない状況なのさ〜。
そんで今日貴女の所に訪れたんだけどね〜」
 自分が話すべきことは全て話した。
 後は綾架の返答を待つだけだった。
172人と妖の姉:2009/10/17(土) 01:27:30 ID:abNCWOEt
 ジ〜っと綾架を凝視する玖梨子。
「これは……」
 ようやく、綾架が重い口を開いた。
「紫乃の――奴の可能性が高いわね。奴はこの世の人間全てを憎んでいる。
だからこんな殺し方が出来る。普通の妖も滅多にこんなやり方しない」
 冷静を取り戻した綾架は、ゆっくりと落ち着いた口調で喋る。
 それを聞いた玖梨子は、いつものようには笑わなかった。
「でもさ〜、彼女は貴女が斃したんでしょ〜? 自分でもさっき言ってたじゃ〜ん」
「どうにか生き延びたんでしょうね。それでも瀕死の重傷を負っていたのは確か。
六年間少しずつ傷を癒しながら、完全に回復する為に身を潜めていたのでしょう」
「それで傷が癒えたのを見計らい〜、島の研究員を皆殺しに、と〜?」
 玖梨子の推測に、綾架は「そうなんじゃない?」と他人事のように答える。
「じゃ〜協力してくれる〜?」
「は?」
 唐突に言い放った玖梨子の言葉に、綾架は怪訝な声を漏らした。
 先程は笑わなかった彼女だが、今度はニヤリと口を歪める。
「だって私達機関は〜、貴女が彼女を斃したというのを信じて研究所を発足したのにさ〜? 
それなのに実は彼女は生きていました〜。そのせいで職員は皆殺しにされました〜。
なのに「はいそうですか」〜、で済むと思ってるのかね〜?」
 急に口調が強くなった彼女を、綾架は睨み返す。
「つまり、責任を取れと?」
「そ〜そ〜」
 いつものへらへらとした態度に戻った玖梨子は続ける。
「だって相手はあの最強の妖だよ〜? 私達機関の人員総出で挑んでも勝てるか分かんない相手なのにさ〜。
だったらかつて互角どころか優勢に闘えた貴女に行ってもらった方が〜、被害も少なくなるでしょ〜?」
 玖梨子の言い様に、綾架は睨んだままで冷たい口調で返す。
「もし嫌だと言ったら?」
「あっははははは!」
 彼女の問いを待っていましたと言わんばかりに、玖梨子は吹き出した。

「くくくっ……。貴女がその気なら〜、こっちもそれなりの対応させてもらうよ〜? 
何せ妖を退治する筈の退魔師が〜、人に害をなす妖を討たないなんて有り得ないでしょ〜? 
このまま放っておけば〜、彼女は多くの人を殺すだろうからね〜。
それを止められていたのに止めなかった〜、つまり殺人と同罪として〜、貴女に社会的な報復を与えるよ〜?」

 ここに来て、玖梨子は日本政府と言う大きな後ろ盾を、利用した。
173人と妖の姉:2009/10/17(土) 01:29:30 ID:abNCWOEt
これにて四話終了です。
早くドロドロ展開に行きたいと言ってましたが、もうちょっと掛かります……。
174名無しさん@ピンキー:2009/10/17(土) 03:17:11 ID:hDfWd8V9
荒れるから、間を空けて投下しろとかはいうな
175名無しさん@ピンキー:2009/10/17(土) 03:21:28 ID:hDfWd8V9
sage忘れスマン
176名無しさん@ピンキー:2009/10/17(土) 03:40:41 ID:iAMLrXXb
>>174
触らぬ神に祟りなし
177名無しさん@ピンキー:2009/10/17(土) 07:52:20 ID:Hoyu/Odp
このスレにも書けやしないのに批判するバカが住むようになったか。
普通に面白い展開になってきたじゃないか。
投下GJ
178名無しさん@ピンキー:2009/10/17(土) 11:05:36 ID:/TG8g9S/
>>166
GJ
エロはやっぱり素晴らしいね!

>>173
GJ
ドロドロ待ってます
179名無しさん@ピンキー:2009/10/17(土) 14:12:29 ID:hDfWd8V9
>>177
批判する人が書けない人と決め付けるあなたの方が馬鹿
じゃないですか?レスするときにわざわざコテをつけると思いますか?
180名無しさん@ピンキー:2009/10/17(土) 14:17:48 ID:/EJofZ2L
>>179
なんですぐに反応してまうん?
181名無しさん@ピンキー:2009/10/17(土) 14:18:35 ID:wQDEED1A
>>180坊やだからさ
182名無しさん@ピンキー:2009/10/17(土) 14:47:49 ID:O1qQGCP7
お茶がうまい
183名無しさん@ピンキー:2009/10/17(土) 17:46:14 ID:ZCpLEnbE
テンプレ嫁
184名無しさん@ピンキー:2009/10/18(日) 03:27:10 ID:lFAU9TCX
>>166
もしかしてヤンキー デレデレ の人?
エロ面白いよー
がんばって
185名無しさん@ピンキー:2009/10/18(日) 09:13:16 ID:neSkw74S
ID:hDfWd8V9
とっても自治厨です‥
186私は貴方に相応しい? 第3話 1/7:2009/10/18(日) 09:40:07 ID:V10f0c/6
「おい御影、なんだその格好は。ウチの校則を何だと思っている」
「すみません」
私は今、生徒指導室の椅子に座らされている。それと言うのも、今朝風紀チェックに引っかかったからだ。
「大体なんだその格好は。ウチの制服は膝上10センチ以内だ。どう見ても20センチはあるぞ」
「申し訳ありません、今朝慌てていたもので。どうやらサイズが小さいものを、間違えて穿いて来てしまったようです」
目の前に立っているのは、今朝服装チェックをしていた男。小太りで少し油が浮いている。名は…まあどうでもいいか。
スカートから伸びるふとももと、サイズが合っていない故に、乳房に押し上げられてはちきれそうなブラウスをじろじろと無遠慮に眺めている。
これでまがりなりにも教育者だと言うのだから世も末だ。
「フン、口では何とでも言えるがな…大体その口調は何だ?本当に悪いと思っているのか?」
「勿論です。後この口調は素なのでどうかお気になさらずに」
「ふ〜ん…そもそもお前、なぜサイズの小さい服などとってあるんだ?」
「単に貧乏性なだけです」
「本当か?」
「何を仰りたいので?」
「話がわかるな…お前位の年齢の女と言うのは、アレだろ? 男とヤリまくってるんだろう?」
「それは偏見ではありませんか? 確かに世の中には、そういう女性もいるそうですが、それが全ての女子高校生とは限りません。それに私は処女です」
「へぇ…」
男の目付きが変わった。獲物を見つけたような、見定めたような目だ。
「(…この下衆が…)」
どうやら女子生徒に難癖つけて、セクハラまがいのことをしていたと言うのは本当らしい。
「おい御影。スカートをめくれ」
「何故です?」
「お前が本当に処女かどうか確かめてやる」
「どうやって?」
「処女のマ○コは臭いっていうからなぁ? 俺が直々に匂いを嗅いでやるよ」
「お断りします」
「何だと!? 俺の言うことが聞けないってのか!?」
「教師にあるまじき暴言ですね」
「うるせえ! 人が下手に出てりゃあ付け上がりやがって!」
「セクハラまがいをすることが下手ですか?」
「いい度胸だ! この俺に逆らえないようにしてやる!」
「どうやって?」
「俺の部屋に閉じ込めてやる! 朝から晩までヤリまくって、俺なしでは生きられない体に調教してやるよ!」
「ほぅ?」
「何発も中出しして妊娠させてやる! 子供が生まれてもまた犯してやる!」
「それはそれは面白い。ですが残念です。あなたの望みは叶いそうにないですね」
「何!?」
187私は貴方に相応しい? 第3話 2/7:2009/10/18(日) 09:40:47 ID:V10f0c/6

突然扉が開き、校長先生が入ってくる。

「○○先生? 今の発言はどういう意味でしょうか?」
「なっ!? こ、校長!?」
「前々から、生徒に対するセクハラの容疑はありましたが、ここまで明確な証拠を突きつけられては庇いきれませんな」
「な、何を仰っているのかわからないのですか?」
「恍けるのは止めなさい。先程の会話、全て全校に響き渡っているのですよ」
「なっ!?」
「加えて物的証拠もあります」
掌に隠していたボイスレコーダーを再生する。
「っ! てめぇ! ハメやがったな!!」
「そんな言葉を生徒に、それも女子生徒に吐きかける時点で貴方は教育者失格ですね」
「なっ!? ちょっ!」
「今日中に荷物をまとめてください。後警察には既に連絡してありますので、到着までこの部屋で謹慎していてくださいね」
「こ、こうちょ「さようなら○○先生」
力なく項垂れる下衆野郎を尻目に、私は校長先生と生徒指導室を後にする。
ふん、『吹雪の服装に異常があれば、それを口実にレイプできるのに』などと口にするからだ。



「ざまあみろ」

188私は貴方に相応しい? 第3話 3/7:2009/10/18(日) 09:41:37 ID:V10f0c/6

俺は自室で、椅子に腰をかけながら考えごとをしていた。
「う〜ん…」
今、ただでさえあまり良くない俺の頭を悩ませているのは、妹の友達(傍から見ると親友レベル)の女の子のことだ。
彼女の名前は七海・吹雪。初めて紹介された時は、どちらが名前なのか解らなかった事を覚えている。
「う〜〜ん…」
最近その子の様子が変なのだ。どう変かというと…
毎朝、登校時に校門の所で待っている。さっさと校舎に入ってしまえばいいのに。
休み時間、事ある毎に俺の教室を訊ねてくる。2年の教室は2階、1年の教室は1階。態々階段を上ってまで会いに来ることもなかろうに。
昼休み、毎日弁当を届けてくれる。料理上手のようなので特に文句はないのだが、彼女が弁当を持ってくるようになってから、可憐は俺の昼飯を用意してくれなくなった。どうせ朝の残りを詰めるのだから、俺の分も用意してくれればいいのに。彼女の手を煩わせる事もなくなるし。
放課後、一緒に帰ろうと誘いに来る。先も挙げたが、1年の教室は1階だ。どうせ降りることになるのだから、態々階段を上ってまで誘いに来る必要もないだろう。
「う〜〜〜ん…」
極めつけは彼女の目だ。陶酔しているというか、白馬の王子様を見るような目と言うか…そう、まるで『俺に恋をしている』かような目なのだ。
「う〜〜〜〜ん…」
だが、相手は学園で5指に入ると言われているほどの美少女だ。彼女に憧れている男子生徒も数多い。加えて、彼女はそれなりに高い身分と言うか、俗な言い方だが、『結構な金持ち』という奴らしい。(彼女の家を訪ねた事は無いのだが)
そんな絵に描いたようなお嬢様が、平凡と言う言葉が服を着て歩いているような、ましてや身体に故障がある人間に恋などするだろうか? 否! 断じて否!
「…よしっ!」
考えていても埒が明かない。こんな時は誰かに相談すべきだ。
「さて、誰に相談しようか?」
クラスの男共に話そうものなら、答える代わりに拳が飛んできそうだ。かと言って、こんなことを相談できるほど、親しい女友達もいない。
「こいつは参ったな」
こんなことを相談できそうな人間と言えば…
「とりあえず、可憐に相談してみるべきかな?」
当事者の友人だし。何より、血は水よりも濃いっていうしな。
思い立ったが吉日。自分の部屋を抜け出し、可憐の部屋の扉をノックする。
「可憐、ちょっといいか?」
『だが断る』
にべもなく拒否された。
「…そうか。邪魔したな」
可憐がダメとなると…参ったな。他に相談すべき人物がいないぞ。両親は当分帰ってこないと聞いているし、誰か「待たんか愚兄」む?
次に相談すべき人物を知人リストから探していると、扉が開いて可憐が顔を出した。
「どうしたんだ可憐?」
「どうしたはこちらの台詞だ。貴様私に何か話があったのではないか?」
「断ったのはお前だろう」
「すまん。貴様がお約束というものを、全く理解していない大馬鹿者だということを失念していた。先程のは条件反射という奴だ。貴様の声を聞くと無条件で拒否したくなるというな。ああ気にするな。私は気にしない」
…まあ、この際可憐の暴言は、遥かイスカンダルの彼方へ追いやることにしよう。
「でだ、少し相談に乗って欲しいだけど…」
「だがことわ…ゲフンゲフンいいだろう。聞くだけ聞いてやる」
こいつ、本当に俺の事が嫌いなんだなぁ…まあ無理もないことだけど。
「あのさ、ふぶ「とりあえず部屋に入れ」あ、うん」
189私は貴方に相応しい? 第3話 4/7:2009/10/18(日) 09:41:59 ID:V10f0c/6
可憐に促され、可憐の部屋に入る。
「…………」
可憐の部屋は、思っていたよりも生活観に溢れていた。絨毯とカーテンは桃色で統一され、窓際のセミダブルのベッドを、真っ白なシーツが覆っている。
ドアから入った真正面の隅に本棚、その右側にテレビ。入り口のすぐ右にアルミ製の洋服がけ、そのとなりに、高さ1メートルくらいのタンスが配置されている。
部屋の中央には小さなテーブル。教科書やノートが広がっているところから、勉強の最中だったらしい。
そういや可憐の部屋に入るなんて何年ぶりだ? …あれ? ひょっとして初めてなんじゃ?
「何を見ている」
「いや…思ったより女の子っぽい部屋だなって…ぐふっ!」
「殴るぞ貴様」
もう殴ってます。
「で、何だ?」
「ああ…あのさ、ちょっと聞きたいんだけど」
「どうした。さっさと話せ。私はこれでも忙しいんだ。貴様と違って、私は学校では優等生で通っている。そんな評価に未練など微塵もないが、将来の選択肢を広げるための勉強を捨てるほど、悟れているわけでもないのだよ。毎日をノリと勢いだけで過ごしている貴様と違ってな」
随分な言われようだ。まあ否定できるだけの要素もないんだが。
「じゃあ聞くけど。あのさ、お前の友達の吹雪ちゃん、いるよな?」
「ふむ。吹雪か。あの純粋培養貞淑可憐絶滅危惧種良妻賢母の大和撫子(外的評価)がどうした?」
「(外的評価)って…あのさ、吹雪ちゃんって俺の事好きなのかな?」
「…………」
まるで、ブリザードのように冷たい沈黙が襲ってきた。え? 何々? 俺何か変なこと言った?
「貴様…前々から聞こうと思っていたのだが…」
物凄く冷たい声。聞いているだけで身体の芯から凍えてきそうだ。こういうのを『絶対零度の声色』というのだろうか?
「貴様本当に男か?」
「は?」
「貴様は、本当に男なのかと聞いている」
一瞬、可憐が何を言ったのか解らなかった。
髭は生えるし、喉仏もあるし、胸も膨らんでないし、何より男性用の性器を持っている。
これで俺を『女』と言う奴がいたら、即刻救急車を呼ぶところだ。黄色いやつを。
「えっと、一応」
「…………」
可憐の『凍てつく沈黙(サイレント・ブリザード:俺命名)』は続いている。そろそろ風邪を引きそうです。いやマジで。
「はぁ〜〜〜〜…」
『凍てつく沈黙』は唐突に終焉を遂げた。っていうか何その深っかぁ〜いため息は。そこまでやりますか? というか何をそんなに呆れているんですか?
「なぁ愚兄よ」
「はい」
「貴様一度病院に行って来い。脳外科でも精神科でもいい。何なら私がいいところを調べておいてやる。後貴様が空いている時間を教えろ。私も付き添ってやる。なぁに、知る事は恥ではない。知らない事こそが恥なのだ」
あの〜、可憐さん? 一体何を仰っているのでしょうか?
「…はぁ」
首を傾げる俺に、今にもうずくまってしまいそうなほど脱力する可憐。
「えっと、どうしたんだ可憐? どっか具合でも悪い「黙れ下郎」イエッサー!」
地獄の底から響いてくるような、暗く殺意に満ちた声。絶対零度の声色と違って、こちらは熱に満ちている。ただし、どす黒い炎だが。
190私は貴方に相応しい? 第3話 5/7:2009/10/18(日) 09:42:27 ID:V10f0c/6
「マムだ。とりあえず最初の質問に答えてやる」
最初の質問って何だっけ? ああ、『吹雪ちゃんが俺のことを好きなのか』っていう話か。
「貴様その様子だと忘れていたようだな…まあいい。いや良くはないが…とりあえず返答だが、その質問に私から答えることはできない。その問いに答える権利があるのは吹雪だけだからな。私が彼女の感情を代返するわけにはいくまいよ。例え答えがどちらでもな」
「そうか…」
こういうのを『振り出しに戻る』と言うのだろうか? いや、『吹雪ちゃんに直接答えを聞くべき』という答えはもらえたのだから一歩前進? でも全体としてはあまり変わっていないような…
「さて、話は変わるのだが『駄』」
「だ…ひでぇ」
愚兄、馬鹿兄貴、女の敵、倒辺朴、朴念仁、駄・兄貴と、今まで色々な呼ばれ方をされてきたが、さすがに『駄』と呼ばれたのは初めてだった。ってか一文字かよ。
「貴様など駄で十分だ。さて駄よ。確か先週辺りに、貴様に雑誌を買い与えたよな?」
「せめて兄と付けてくれ…ああ、今時の若者が読むような奴だろ?」
「うむ。貴様それをちゃんと読んだか?」
「ううん」
「(ピキッ!)」
!?
何!? 何今の音!? 今何か聞こえたよ!? 可憐のこめかみの辺りから確かにナニカが!!
「ほぉぅ…貴様読んでいないのか…」
「か、軽く目を通した位かな…」
乗っていた情報は、男のファッションとかデートスポットとか、後は女性の口説き方とかばかりだった。
ハッキリ言って俺には関係ないことだらけだ。少なくとも今は。
「読み直せ」
「は?」
「もう一度頭から読み直せ。全部だ」
「で、でも今の俺には「問 答 無 用」ひっ!」
たった一言で、こちらの反論する意思を根こそぎ奪い去るくらい、暗い、暗ぁ〜い声だった。
瞬間理解した。『逆らえば殺される』。割と本気で。
「全てを読み直せ。一言一句覚えるくらいに。全てを暗記するくらい熟読しろ。理由など考えるな。貴様が今果たすべき使命はそれだけだ。わ か っ た か」
「サー! イェッサー!」
「マムだ!」
ふと思った。可憐が軍に入隊したら、さぞかし恐ろしい鬼教官となるだろうと。
191私は貴方に相応しい? 第3話 6/7:2009/10/18(日) 09:43:14 ID:V10f0c/6




キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン…

4時限目終了の鐘がなる。
「では、今日はここまでにします」
「起立! 礼!」
号令も終わり、これから昼休みになる。
「さて、と」
私は、右斜め前に座っているクラスメイトとアイコンタクトを交わした。
彼女は席から立ち上がると、私の後ろにいるクラスメイトの背後に回った。
「ふ〜っぶきちゃ〜ん!」
「きゃっ!」
真理亜が後ろから吹雪に飛びつく。ついでとばかりに彼女の胸を揉みしだいている。
「今日も聡明君の所行くの?」
「え、ええ…」
吹雪の胸は少しばかり大きい。確かDカップだったか?
「聡明君も果報者だね〜♪ こ〜んな美人な後輩にお弁当作ってもらえるなんて〜♪」
「あ、あの、真理亜さん?」
「吹雪ちゃんのおっぱい柔らか〜い♪ い〜な〜羨ましいな〜」
話しながらも胸を揉んでいる。Dカップの美乳が面白いほどに形を変えている。というか、
「そこまでにしておけ真理亜」
吹雪は弁当箱(青い包みに包まれている)を抱えたまま、真理亜の悪戯の餌食にされている。
女同士なので特に気に留める必要は無いのだが、将来兄のものになるのだと思うと、同性の指とはいえ、見ていて面白いものではない。
揉むなら自分の胸にすればよいものを。ああ、真理亜はAしかなかったな。
「むっ!? 可憐ちゃん! 今何か失礼なこと考えてたでしょ!?」
「とんでもない。真理亜の胸はAしかないから、揉んだところで面白くもなんともないだろうな、などとと考えていないぞ?」
「きーっ! 人が気にしていることをー! 可憐ちゃんのおっぱいも揉んでやるーー!!」
「だが断る」
伸ばしてきた両手の肘部分に右手を当て、胴体と一緒に抱え込む。開いた左手は、真理亜の首を軽く絞めてやった。
「く、苦しいよ可憐ちゃん! ギブギブ!」
「大げさだな。そんなに力は入れていないはずだぞ」
「あ、あの、可憐さん?」
割と本気にしているのか、苦しむ振りをしている真理亜におろおろしている吹雪。
「(今日はこんなことをしている場合ではないだろう)」
「(はっ! しまった! そうだった!)」
小声で真理亜に囁き、本来の目的を思い出させる。
「さて、真理亜の仕置きは後にするとして、吹雪、今日もあの愚兄のところに行くのだろう?」
192私は貴方に相応しい? 第3話 7/7:2009/10/18(日) 09:43:55 ID:V10f0c/6
「え? ええ、そうですが」
「なら一緒に行こうよ! 今日は聡明君と一緒にご飯食べたい気分なんだ♪」
「え?」
「私も同席しよう。今日は天気がいいしな。屋上で一緒に昼食にしないか? あの愚兄も交えてな」
「えっと…」
「吹雪ちゃんはこないの?」
「真理亜、そう強制するな。来るか来ないかは吹雪次第だ」
「…………」
「そうだ! 折角だから『あ〜ん』でもしてあげようかな!」
「!」
「それはいい。胸は薄いとはいえ、一応真理亜も美少女の範囲内だからな。あの男もきっと喜ぶぞ?」
「!!」
「胸が薄いは余計だよ! それでそれで、口移しなんかしちゃったりして…きゃ〜っ♪」
「!!!!」
「あまりあの朴念仁をからかうなよ? 女性と付き合ったことなどないのだから、勘違いされてしまうぞ」
「別にい〜よ? 聡明君可愛いし♪ 年上の彼氏っても案外いいか「私も行きます!」
「「どうぞどうぞ」」
「はっ!?」
面白いほど単純な罠にかかってくれた。これだから吹雪いぢりは止められない。
「さて。では行くとしようか、吹雪」
「さ、いこ〜? ふ・ぶ・き・ちゃ・ん♪」
「////」
初々しいな…これが若さか…



(『あ〜ん』の権利は、本来貴方だけのものよ? あんな女に譲っていいの?)



「むっ!?」
「どしたの可憐ちゃん?」
「いや…」

また幻聴か? 最近多いな…
193名無しさん@ピンキー:2009/10/18(日) 09:44:53 ID:V10f0c/6
以上です
会話文と地の文の間を詰めてみました。見づらければ元に戻します
194名無しさん@ピンキー:2009/10/18(日) 11:08:14 ID:M89/1m6o
>>193
GJ!
サイレントブリザード(warai)
195名無しさん@ピンキー:2009/10/18(日) 13:13:48 ID:Prb7ftF4
>>193

でも、単純な拒否で「だが断る」を使われているのを見ると、悲しい気持ちになる
196名無しさん@ピンキー:2009/10/18(日) 16:34:48 ID:d9XfBtW3
キモウト、キモ姉抜きで面白い
197名無しさん@ピンキー:2009/10/18(日) 22:00:27 ID:fzgKcUaA
和人の姉は、好きな人がいるらしい。という噂が学校に広まったのは一週間前。和人の姉はこの学校の生徒会長で学校始まって以来の秀才。そして美人。その姉、知絵が好きな人がいるとなれば学校中の人が知りたいと言うわけだ。
そうなると知恵の事を一番分かっている人に聞くというのが人間なわけで、弟に行き着くわけであります。
「和人、知恵会長の好きな奴はわからないのか?」
「和人君、知恵お姉さまの好きな方、わからない? わかったらお礼してあげるから、お願い!」
とまあ、こうなるわけでございます。もちろん和人は好きな人は分かるわけがありません。姉弟は姉弟でも男と女。
「ごめん。俺にはわからない」
と言うしかないわけで・・・
「今日も疲れた〜何で姉ちゃんごときの好きな奴を知りたいのかさっぱりわからん」
「そりゃあ、学校の有名人何だから知りたいに決まってるだろ」
「勇作は知りたくないの?」
「俺は小さい女の子しか興味ないもんでね」
「それ質が悪いぞ。おい」
「大丈夫。二次元だから」
「・・・・それじゃあ、また明日」
「スルーかよ!」
と1日が終わる。



「ただいま〜」
さっきの話で疲れた和人だが、パソコンの為なら頑張る和人である。表上は元気だ
「お帰りなさい。和人」
「何でいつも姉ちゃんはもう既に帰ってるんだよ! 生徒会はどうしたんだよ!」
「それはさっさと終わらせたわよ。10分で」
知恵はさぼっていない。万能の知恵なら一人で仕事をやってしまうのだ。しかも10で。
「後、家事の方が重要だもの。父さんも母さんも外国だし」知恵と和人の父と母は、父が外国支社の支社長をやっているため外国に行っていて、母は姉弟が高校入学と同時に父の元へ行ってしまったため、姉弟で家事をやっているのだ。
「そんなのは俺がやるから、姉ちゃんは生徒会を優先してよ」
和人は知恵に家事なんかさせず、学校の方を優先させたいと思っている。色々な人たちが期待されているのだから、知恵に頑張って欲しいのだ。
「嫌よ。そんなの、たかが生徒会に時間を潰したくないもの」
知恵の考えはよくわからない和人は
「家事なんかよりよっぽど時間の有効活用だと思うよ」
その瞬間、知恵の雰囲気がガラリと変わった。周囲が暗く、寒くなる感じだ。
「家事なんかですって・・・私の生きがいを侮辱しないでくれる? か・ず・と」
知らぬ間に至近距離にいる知恵。目が恐ろしい。
198名無しさん@ピンキー:2009/10/18(日) 22:12:49 ID:tGFOZzaY
しえん?
199名無しさん@ピンキー:2009/10/18(日) 22:20:50 ID:fzgKcUaA
「ごめんなさい。姉ちゃん、もう言いません」
と謝るしかない。知恵の怒り程、恐ろしいものはない。すると知恵はまたガラリと雰囲気が変わり、ニコリと笑うのだ。
「すぐに素直に謝る和人は好きよ」

「後、もう直ぐ夕飯できるから着替えてきてね」
知恵が台所に戻って言った。
そして夕飯。
食べながら、和人は近頃、気になっていた事を話した。
「姉ちゃんの好きな人って誰なの?」
「私の好きな人?」
「そう。近頃学校で話題になってるじゃん。姉ちゃんも聞かれるでしょ?」
学校の中にも本人に聞く勇者と姉ちゃんの友達なら聞くはずだ。
「ええ、聞かれるわね。」
「んで姉ちゃんの好きな人って誰?」
「それはね・・・和人よ」
和人は思考が止まった。しばらくして言語能力が回復し知恵に聞く
「え・・・俺以外に和人って居たっけ?」
自分の予想が外れることを祈って
「いないわよ。私の好きな人はあなたよ。和人。異性として」和人の予想が当たった。弟を異性と好きとサラリと言う姉に和人は何にも言えなかった。
「そろそろかしら」知恵は謎の発言をした。
「そろそろって?」
「薬が効く時間よ」「は?・・・・ぐっ」
和人は体に異変を感じ始めた。体が痺れ始めたのだ。
「これはどういう・・・・」
「私があなたを好きと言っても受け入れてくれないでしょ? だから・・・ね」
次第に意識が遠退く中、最後に姉が言った
「ずっと愛していくから安心してね。和人」



ただの妄想を書いてみた。レスを無駄にして失礼しました。
200名無しさん@ピンキー:2009/10/19(月) 00:31:59 ID:/T3jYLIW
>>199

さぁ、続きを書くんだ!!
っていうか書いてください。
201名無しさん@ピンキー:2009/10/19(月) 00:48:34 ID:xQjSspO8
>>199

だがこれで終わりなはずはないだろう?
そうだよね!?
202名無しさん@ピンキー:2009/10/19(月) 04:55:14 ID:/GWUP3pd
GJ
ハァハァ…久しぶりのキモ姉に興奮してしまった
203名無しさん@ピンキー:2009/10/19(月) 17:12:08 ID:j4VRMc/q
ここまでの奴が俺らを裏切るわけないだろ
204名無しさん@ピンキー:2009/10/19(月) 19:07:56 ID:3DsdwCb4
過疎ってるっぽいんで1レス小ネタ投下
205人生で死にたいと思った日:2009/10/19(月) 19:10:17 ID:3DsdwCb4
時は日曜、午前9時。
  
兄ちゃんは2階の部屋で勉強している・・・。この機を逃す手はあるまい。
私は1階にある書斎に籠もり内側から鍵をかける。この部屋はパパの部屋なんだけど今は単身赴任で帰ってこないの。
ママは日曜日はお昼くらいまでグースカ眠っちゃってて起きてこない。
つまりこの時間・・・そう、この時間は私の趣味、いいえライフワークとも言える「コレ」を嗜むのダ☆
―――ウィーン・・・―――
パソコン機動確認。待て待て焦るな私、でもこの機動時間はホントに身体に悪い。とりあえず今のうちに衣服は全て脱いでおく。
だいたいこのパソコン、起動してからデスクトップ表示まで5分もかかるとかマジ無いんだけど。ったくこれだからWin●ows97は・・・。
体感時間1年程の5分を潜り抜け、私は数あるフォルダから「MANAMI×TAKAYUKI」をクリックする。あ、孝之ってのは兄ちゃんの名前ね。
幾重にも張り巡らせたパスワードを入力し、私はあるソフトを起動する。
―――合成音声ソフト『話すんDeath★』・・・!
今年の春、秋葉に行ってなけなしのお小遣いで購入したソフト。コレをどう使うかというと・・・。
『マ、ナ、ミ、キ、ョ、ウ、モ、カ、ワ、イ、イ、ネ』
そう、入力した言葉を兄ちゃんの声で再生してくれる夢のような機械なのダ!!
ちなみにこの兄ちゃんの声は必死こいて兄ちゃん自身から(バレない様に)録音させてもらいました。もちろん「あ」〜「ん」までコンプリート済み!
「ウェッヘヘヘヘ・・・もう、照れちゃうよぅ兄ちゃぁん・・・」
音声はヘッドホンで繋いでいるから音漏れの心配はないけど私自身の声はそうはいかない。とにかく最小限の声で私は喘ぐことにしている。
『マ、ナ、ミ、ダ、イ、ス、キ、ア、イ、シ、テ、ル』
うおおおおおおんん!! 私も愛してるよ兄ちゃああああああん!!! もっとっ! もっと言ってええええええええ!!!
『ケ、ッ、コ、ン、シ、タ、イ。コ、ヅ、ク、リ、シ、タ、イ。セ、ッ、ク、ス、シ、タ、イ』
うんうん私もしたいよおおおおおおう!! ヤろう!! 今すぐヤろう!! 兄ちゃんのお●んぽで私のおま●こグチュグチュにしてええええッッ!!!
涎を撒き散らし吼える私。右手でアソコを、左手でキーボードを操作し快感に酔いしれる。
『マ、ナ、ミ、ト、ノ、セ、ッ、ク、ス、サ、イ、コ、ウ。オ、レ、ノ、コ、ド、モ、ヲ、ハ、ラ、ン、デ、ク、レ』
いいよっっ!! 兄ちゃんとの子供なら何十人でも孕んであげるッッ!! きてっ! きてっ! 奥まで来てええええええええッッッ!!!!
『イ、ク――――――――――』
イくうううううううううううううううううううううう!!!!!!!!!
妄想だということを忘れて思わず絶頂を迎えてしまった!! そして何となく兄ちゃんと台詞がシンクロしたことに感動を覚えた。

―――と、その時

「あ・・・な、何してるワケ・・・?」
機械ボイスではない本物の兄ちゃんの声。恐る恐る振り向くと絶句の表情をした兄ちゃんが立っていた。
「え?」
「え?」
頭の中が真っ白になるとはこのことなのだろう。私の思考は停止し、その目には兄ちゃんしか映っていなかった。
兄ちゃんも兄ちゃんでビックリしただろう。扉を開けたら妹が全裸+ヘッドホンでオナニーをしているのだから。
というか扉には鍵をしておいたはず・・・!! そういえば昨日ママが鍵が壊れてるとか言ってたような言ってなかったような・・・。
「な、なんか凄い声がしてたから気になって来てみたんだけど・・・」
兄ちゃんは明らかに目が泳いでいた。とにかく状況を把握することで精一杯のようだ。
「あ、と・・・。ラ、ライフワーク・・・かな・・・?」
兄ちゃんはゆっくり頷くと回れ右をして部屋を出て扉を閉めた。私は泣いた。


でも悔しいことに一番泣いていたのは私の股間だった。

                                                           おわり





206名無しさん@ピンキー:2009/10/19(月) 20:29:13 ID:kR0F5I7B
>>205
畜生……ッ! 畜生……ッ!
最後のあんなくだらないオヤジギャグ(しかも下ネタ)に噴いちまった。
この屈辱分GJせざるを得ない。
207名無しさん@ピンキー:2009/10/19(月) 20:48:31 ID:OM3+HIhE
なんというオチ

GJ
208名無しさん@ピンキー:2009/10/19(月) 20:52:18 ID:l9a+rDby
>>205
なぜそこで『見られちゃった?じゃあしょうがないね?本当にエッチしちゃおうか?』と行かないんだ!
このヘタレキモウトめ!
GJ
209名無しさん@ピンキー:2009/10/19(月) 21:30:01 ID:0xTg45xj
投下させていただきます。
210人と妖の姉:2009/10/19(月) 21:32:36 ID:0xTg45xj
「お待たせしましたよー」
 玖梨子が言い放った直後、綾斗が戻って来た。
 両手に持つお盆には、三つの茶飲み茶碗と色鮮やかな金平糖が乗っている。
「…………」
 綾架は入って来た綾斗を一瞥すると、玖梨子に向き直った。
「はいは〜い。待ってましたよ〜」
 しかし玖梨子は変わらぬ調子で嬉しそうに反応した。
 綾斗は少し様子がおかしいと思ったが、とりあえずお盆を机に置く。
 玖梨子は茶碗片手に金平糖を乱暴に鷲掴みし、一口で一気に頬張る。
「ほれれ〜、ほうふふふぉ〜(それで〜、どうするの〜)?」
 両頬をぷっくら膨らませて、彼女は綾架に問う。
 今さっきあのような脅しにも取れることを言ったとは思えないような間抜けな話しぶり。
 とは言えあの時の口調は本気だと思えた。
 綾架は黙したまま、鋭い眼つきで玖梨子を睨み続ける。
 やがて金平糖を喉に通した玖梨子は、お茶をガブガブと飲み下す。
「姉さん……どうしたの?」
 空気に耐え切れず、綾斗は横に座る姉に話しかける。
 その様子に、玖梨子は口をニヤリと歪めた。
「いや〜それがね〜。私が依頼を受けてくれないと〜、久衣那姉弟に――」
「玖梨子」
 彼女が先程の発言と同じことを言おうとすると、綾架は静かな声で遮った。
 その言葉に、玖梨子はやれやれと言わんばかりに肩を竦ませた。
(姉さん……本気で怒ってる……)
 姉の様子に、綾斗はややたじろぐ。
 数秒静寂がその場が広がったが、綾架が静寂を破った。

「分かった。お前の依頼は引き受ける」

 綾斗に無駄な心配をかけたくなかったのか、彼女はそう言い放った。
 その言葉に玖梨子はニッコリと笑い、前かがみになって綾架に近付くと、
彼女の手を取って一方的に握手をした。
「は〜い。ど〜もありがとさ〜ん。さっすが名門久衣那流の当主だよね〜。
そ〜こなくっちゃ〜。よっ、太っ腹〜」
 へらへらと笑う彼女の姿に、綾架は思わず御符を取り出しかけた。
211人と妖の姉:2009/10/19(月) 21:35:56 ID:0xTg45xj
 綾架は嫌気が差し、手を乱暴に振って玖梨子の手を振り払う。
「あ〜らら〜、釣れないね〜。太っ腹なのにね〜」
 へらへらしながらも、減らず口を叩く玖梨子。
「依頼を受ける上で、一つ条件がある」
 そんな彼女に構わず、綾架は淡々と話しだした。

「この仕事は私一人で行く。綾斗は連れて行けない」

 綾架の発言に、また場が静寂に包まれた。
 何を言ったのか一瞬理解出来ず、ぽかんとする綾斗。
 玖梨子は「は?」と言いたげな顔で茫然とする。
 二人の様子を見た綾架は小さく溜息を吐いた。
「言った通りよ。奴を殺すのは私一人で十分。綾斗を連れて行く必要はないわ」
「……奴?」
 彼女の話した依頼の内容に、綾斗はぽつりと呟く。
「紫乃って言う妖だよ〜。六年前に久衣那嬢が闘った妖さ〜」
「六年前……」
 玖梨子に言われたことに、綾斗は六年前のことを思い出そうとする。
 その時は綾斗は十歳で、まだ退魔師としての修行はしておらず、普通の子供の頃であった。
 だが、自分自身も六年前のことはあまりよく覚えていなかった。
「じゃあそういうことで。臆病者しかいない機関の連中にそう伝えて頂戴」
 綾架は話を終わらせると、立ち上がって玖梨子に帰るように促す。
 しかし、玖梨子は座ったままで帰ろうとせず、
「駄目だよ〜」
 と呟いた。
 彼女の言葉に綾架は眉を吊り上げた。
「なんですって?」
「それは了承出来ないね〜、と言ってるんだよ〜」
 またへらへらと、いつもの調子に戻った玖梨子は続けた。
「だって一度貴女は紫乃を始末することを失敗したかもしれないんだ〜。
それなのにまた二度目も貴女一人に行かせると〜、再び同じ失敗を繰り返してしまい可能性がでちゃうよね〜」
 そう言うと玖梨子は「あ〜、どっこらせ〜い」とおっさん臭く立ち上がり、綾架に近付いた。
 そして吐息が触れる程に顔を近付かせると、静かな声だがはっきりと言い放った。

「てなわけで〜、綾斗君にも一緒に行ってもらうよ〜。
だってその方が面白――じゃなかった〜、より確実だろうしね〜」

212人と妖の姉:2009/10/19(月) 21:39:28 ID:0xTg45xj
 玖梨子は言い終えると、ニヤリと口を歪める。
「私一人で十分だと言っている。綾斗は連れて行かなくて良い」
「な〜んでそんなに否定するのかな〜? ひょっとして〜、綾斗君を連れて行くとまずいことでもあるのか〜い?」
 カマをかけた玖梨子の発言に、綾架は僅かにだが眉間を皺を寄せたが、すぐに元通りの無表情になる。
 その僅かな変化を玖梨子は見逃さなかったが、あえて知らんぷりした。
「綾斗はまだ未熟なの。紫乃程の妖の闘いに連れて行くと、命の危険がある」
 綾架は淡々と、綾斗を連れて行けない理由を話した。
 愛弟を危険な目に遭わせたくないという言い分に、玖梨子はニヤリと口を歪める。
 すると玖梨子は瞬時に右太腿のホルスターに納まっている拳銃を抜き差し、

 未だ畳に座っている綾斗目掛け、発砲した。

 甲高い音で銃口から弾丸が飛び出し、それは綾斗の顔面横擦れ擦れを通り過ぎた。
 銃弾は軌道を変えずに壁に命中。
 壁には黒い穴とヒビが入り、綾斗の頬には一筋の血がツゥっと這う。
「………………え?」
 綾斗は一瞬何が起こったのか分からず、声を漏らす。
 その途端、綾架は玖梨子の胸倉を思い切り掴み、無表情のまま睨む。
「何のつもり?」
 それでも玖梨子はヘラヘラと、変わらぬ調子。
「私が後数センチだけでもズラして撃っていれば〜、綾斗君は間違いなく死んでいたと言うのは事実だよね〜。
このことから分かるよ〜に〜、人間誰しも一秒後の命を保障されてる人なんていないんだよ〜? 
いつ何が起こるか分からない世の中なんだからね〜。
だから綾斗君を連れて行くのも行かないのも〜、命に及ぶ危険なんて差ほど変わらないんだよ〜?
だから〜――」
 胸倉を掴まれつつも小馬鹿にした口調で話し、一言区切り、

「連れて行け。こいつは命令だ」

 温度を感じさせない氷のような声色で、言い放った。
213人と妖の姉:2009/10/19(月) 21:41:52 ID:0xTg45xj
 少し夕暮れが景色を紅く染め始めている頃に、玖梨子は久衣那家を後にした。
 ポケットに仕舞ってある携帯を取り出すと、何処かに掛け出す。
 携帯の画面には「機関」と記されていた。
「あ〜、もすも〜す」
 電話が取られると、玖梨子は間抜けな声で話し出した。
「D隊所属のNo.1042ですけど〜、No.953に繋いでくれないかね〜」
 しばし電話の向こう側には保留音が鳴り響き、やがて誰かの声が聞こえてきた。
「紫乃の件だけど〜、久衣那 綾架は快〜く引き受けてくれたぞ〜」
 全く快くも無かったというのに、玖梨子は抜け抜けと言う。
「それと私が必死にお願いしたら〜、弟の綾斗も一緒に行ってくれるってさ〜。
これでとりあえずは安心だよね〜。それと二人の為の暮ヶ原島に行く船の手配宜しく〜」
 玖梨子が依頼の完了を説明し終えると、話し相手が電話を切ろうとしたが、彼女は「ちょっと待って〜」と止め、

「この後〜、倉庫(アーカイバ)にアクセスして〜、六年前の久衣那 綾架と綾斗のデータを調べてくれな〜い? 
綾架が紫乃と闘う前の私生活や〜、紫乃と闘っている間〜、綾斗はど〜していたのかを調べて頂戴よ〜」

 と頼んだ。
 何故綾架は綾斗を連れて行くのを否定したのか、そして自分がカマをかけた時のあの反応。
 何か隠していることがある睨んだ玖梨子は、興味本位で調べてみることにした。
214人と妖の姉:2009/10/19(月) 21:44:47 ID:0xTg45xj
これで五話終了です。
早く修羅場行きたいです……。
ここまで話伸びるだなんて予想外でした……。
215名無しさん@ピンキー:2009/10/19(月) 23:44:49 ID:hsoXQD2R
>>214
GJ〜!
修羅場期待してるよ。
216名無しさん@ピンキー:2009/10/20(火) 00:12:08 ID:/YxqZP33
>>214
お前いい加減にしろ!
もう投下するな
217名無しさん@ピンキー:2009/10/20(火) 00:19:31 ID:wPK/kRPE
嫌いならNGするか読まないようにすればいいだけだろ
気に入らない作品だからって突っかかる必要があるのかね
218名無しさん@ピンキー:2009/10/20(火) 00:47:43 ID:8MPrhpOd
まあ、ここまでブっ飛んでるとそう言いたくなるのも分からなくはない
219名無しさん@ピンキー:2009/10/20(火) 00:49:17 ID:n2oO5RjB
いつかの血は争えないの短編的な。近々あれの最終回を投下するぜよ。
220血は争えない@平凡な休日:2009/10/20(火) 00:50:51 ID:n2oO5RjB
「ねぇ兄貴ぃ〜」

『なんだよ?』

「明日暇でしょ?一緒にこのカフェに付き合いなさいよ。」

『なんで俺が暇確定なんだよ……』

「実際暇でしょ。じゃあそういう事だからね。」

翌日

『へー。最近出来たって聞いたけどここだったのか。結構混んでるな。』

今私達は駅ビルに新しく出来たカフェに来てる。実はここのカフェ開店キャンペーンでカップル
割引絶賛実施中なのよね。私がそれを聞いて黙っている訳がないわ!

『しかしカップル割引のために兄を連れてくるとは、美咲もさもしい女っつう事だな(笑)』

「むぅ!何よ兄貴にだけは言われたくないんですけど〜」

『ごもっともで……。んでも美咲モテるんだから彼氏くらいつくったっていんじゃねえか?』

「はぁ!?いいのよ彼氏なんか作らなくても。だいたい私に釣り合う男なんていないわよ!」

この期に及んでまだこんな事言うなんて、なんて鈍感なの?お兄ちゃん。小学生の頃から本当に女の子
泣かせな兄だったけど未だに成長してない所を見ると、もうこれがお兄ちゃんの性分なのかしらね……。

『あはは。確かに美咲は俺から見ても美人だからな。でも若いうちにえり好みしてると歳食って
から痛い目見るぞ、美咲さん。』

「なっ!?そんなの兄貴には関係ないでしょ!わ、私にだって……その……好きな人くらい……ゴニョゴニョ」

221血は争えない@平凡な休日:2009/10/20(火) 00:51:26 ID:n2oO5RjB
『マジ?美咲にも好きな人いんのかよ!?へー意外な事もあるんですね〜。……いや、今だから言えるけ
どさ、美咲モテるのに彼氏いないから実はレズなんじゃないかと心配してた時期もあったんだよ。良かった
良かった我が妹が普通で良かった〜。』

バシッ

『痛ぇ!!』

「なんで私がレズなのよ!!!そんなわけないでしょ!ちゃんと男の人が好きよ!

……でもまぁ普通ではないかもね、だって私の好きな人は……

『そうかそうか。まあそれなりに応援してるからよ。』

「うん……。」

『んじゃもう行こうぜ。さらに混んできたし。』

「そうね。じゃあ会計は兄貴、任せたわよ!」

『はいはい。どうせそんなこったろうと思ったよ。』

店員「はい。ではカップル割引込みで1030円のお会計です。」

『はあい(結構高いな……)』

うふふ。今日はそう簡単に帰さないわよ!いーっぱい美咲とデートしてもらうんだからねっ!
覚悟してよ、お兄ちゃん?

222名無しさん@ピンキー:2009/10/20(火) 00:53:25 ID:n2oO5RjB
終わるです。はい全くキモさを微塵も感じないですね。しかしたまには息抜き的な。
223名無しさん@ピンキー:2009/10/20(火) 01:46:38 ID:vglWxxQR
>>222

ほのぼのもいいな〜
最終話期待しとります〜。
224名無しさん@ピンキー:2009/10/20(火) 17:02:04 ID:GmhFVLwY
たしかに>>216の言うとおりだ

225名無しさん@ピンキー:2009/10/20(火) 19:50:28 ID:RMilb3DK
あと何話くらいで修羅場に突入するのか明示しておけば文句も減るんじゃね?

>>222
GJ
ほのぼの展開も良いですね
226名無しさん@ピンキー:2009/10/20(火) 23:10:50 ID:/jsWRGge
>>216
>>224
なにこの自演ぽい子たち…可愛い…
227人と妖の姉:2009/10/20(火) 23:10:57 ID:Nhzx4Bxm
投下させていただきます。
はい、この六話目でようやく折り返し地点に到達した位かもです。
228名無しさん@ピンキー:2009/10/20(火) 23:12:22 ID:B7dpVIYo
支援
229人と妖の姉:2009/10/20(火) 23:12:41 ID:Nhzx4Bxm
 夢を見た。

 星が輝く夜空。

 紅蓮の炎が辺り一面に渦巻く紅い景色。

 その場に居るのは三人の男女。

 一人は炎に煌めき、眼を奪われてしまう程に美しい紫の長髪の女。

 その女は所々引き裂かれている真紅の着物を羽織っている。

 女はその白く細い両腕で、小さな影を愛おしそうに抱き締めている。

 それは一人は年端もいかない少年で、Tシャツに膝まで丈のある半ズボンを着ている。

 だが少年の服は抱いている女の着物と同じで真紅に染まっている。

 真紅に染まっているのは元々そういう色だったのでは無く、少年の腹部から溢れ出る血が、そうさせていた。

 そしてその二人を離れた場所で睨んでいるのは、地に這い蹲っている少女。

 少女の右肩は大きな火傷を負い、左太腿には深い切り傷が走っており、出血が酷く満足立ち上がることすら出来ない状態。

 少女は歯を食いしばり左足を震わせて立ち上がろうとする。

 紫の髪の女がそれに気付き、小言で何かを呟く。

 次の瞬間、大きく鋭い風が吹き、その風が少女の脇腹を切り裂いた。

 少女が悲鳴を上げて倒れる様を見た女は、口を愉快そうに歪めて見下すように笑った。

230人と妖の姉:2009/10/20(火) 23:14:53 ID:Nhzx4Bxm
「あーっははは! ははははは!!」
 女は激しく燃え盛る炎に呼応するかのように笑い、美しい紫の髪が不自然に揺れ動く。
 両腕に包まれている少年の顔は青白く、口の端からも血が垂れている。
「な〜にぃ? そんな生まれたての子馬みたいな立ち方しちゃってさぁ。
あまりに可笑しくて吹き飛ばしちゃったじゃな〜い。ね? 見た見たぁ?」
 女は少女を指差して愉快に話し、腕の中の少年の顔を覗き込んだ。
 少年の顔は無表情そのもので、眼の焦点は合っておらず瞳には光が無い。
 女が少年の顔を少女の方に向けさせると、少年の瞳から涙が流れだす。
 少女は蹲りながらも顔を上げ、少年を見つめる。
「――っ……!」
 少女が少年の名を叫ぶが、少年は口を微かに動かすのが精一杯で、声を発せれない。
 二人のやりとりが癪に障ったのか、女はより強く少年を抱き締め、自らの胸の中に少年の顔を押し込む。
 力が込められたせいか、少年の腹部の出血が多くなり、少年の眼が見開かれた。
「大丈夫だよ。怖がらないで……良い子だから、ね?」
 少年の痛みと恐怖を和らげるかのように、髪をそっと撫で、唇に触れるだけの口付けをした。
「君は言ってくれたよね? アタシが悲しんだら自分も悲しいって。
アタシが笑顔になるなら何でもするって。アタシが大好きだって、言ってくれたよね?」
 そう呟くと、ギュゥっと、少年の身体全てを包み込むように抱き締める。

「アタシは今とっても嬉しいよ。

だって君がこんなに近くにいるから。

もうずっと一緒に居れるから。

今までのアタシの悲しみが消えるから。

君と共に歩めるから。

だから、そんな涙を流さないで」

 女は恍惚とした表情で、詩を詠うように話しかける。
 しかし少年はヒュゥ、ヒュゥ、と苦しみの吐息を吐き出すだけ。
「ちょっと苦しいかもしれないけど、我慢してね? 
我慢が出来たら、この苦しみなんて忘れる位に――愛してあげるから」
 甘美な感覚に酔い痴れている女は、少年の腹部の傷口を力任せに握り込む。
「ッカ……ハァッ……」
 その衝撃で傷口の出血は勢いを増し、少年は吐血した。
 女は「大丈夫、大丈夫」と言い続け、行為を止める気配が無い。
 その光景をただひたすら地べたで見ていた少女は、力の限り、叫んだ。
231人と妖の姉:2009/10/20(火) 23:17:42 ID:Nhzx4Bxm
 そこで、夢は終わりを告げた。
 目覚めた綾架の視界に入ったのは、自室の天井。
 今の時刻は深夜二時。
 綾架の顔は汗が溢れており、布団を被っている身体はじめじめとした暑さが感じる。
 布団を静かに払い、上半身だけを起こした綾架は、額に手を当てて歯軋りをする。
(くっ……。玖梨子の話以降、夜はあの時の夢ばかり見る……。
もうすぐ暮ヶ原に行くと言うのに……私は何を恐れているの? 何を怖れているの?)
 重い溜息を吐き、フラフラとした重い足取りで自室を出た。
 洗面所で顔を洗い流して鏡を見ると、自分の顔色の酷さが分かった。
(――綾斗――)
 不意に愛弟の笑顔が頭に広がる。
(もう寝てしまっているわね……。でも……)
 洗面所を後にした綾架は、綾斗の部屋へと歩を進ませた。


 部屋の前に着くと、綾架はノックもせずに扉を開けた。
 案の定部屋の明かりは付いておらず、窓から差す月の光が部屋を薄く照らしていた。
 部屋の奥に敷かれている布団には、穏やかな寝息を立てている綾斗が居た。
 普段の勝気な雰囲気とは違い、閉じられた瞳と薄く開いている口には、まだ幼さが垣間見える。
 綾架は綾斗の傍に座り込んでその寝顔を見ると、先程までの疲れが消えていく感じがした。
「……綾斗」
 起こしては悪いと思いつつも、名前を呟いてしまう。
「ん……んぅ……」
 声に反応したのか、綾斗は小さく声を漏らすと、瞼をゆっくりと開いた。
「……姉さん? どうしたの?」
「御免なさい。起こしてしまって……。でも今夜だけ、一緒に寝ても良いかしら?」
 姉の何処か悲しげな様子に、綾斗はおかしいと思ったが、彼女の切なる願いに首を縦に振った。
 綾斗の肯定に、綾架は静かに笑い、布団の中に入り込む。
 人一人が入る位の大きさしかないこの布団では、綾架と綾斗が入るとはみ出てしまう。
 二人共しっかりと入り込めるように、綾架は綾斗を出来るだけ抱き寄せた。
「……恥ずかしいよ……」
 身体を密着させる彼女に、綾斗は顔を紅くさせて身じろぎする。
「誰も見ていないわ。今ここには私達だけなのよ?」
 愛弟の温もりをしっかりと感じ取りたい一心の綾架は、布団の中で足も絡め合い、その身体全てを使って抱き締めた。
 しばらくそうしていると、元々眠気があった綾斗はまた寝息を立て始めた。
 その姿に安堵を感じた綾架は、彼の額に静かに口付けをする。
(必ず……護ってあげる。……私の、たった一人の――)
 瞳を閉じた綾架にもふわふわとした眠気が頭を包み、綾斗を抱き締めたまま眠り始めた。

 そして、やがて二人が暮ヶ原島に行く日が、やって来た。

232人と妖の姉:2009/10/20(火) 23:21:16 ID:Nhzx4Bxm
ちょっと短めですが、これで六話終了です。
あのキャラももうじき出てくるので修羅場も近い状況です。
233名無しさん@ピンキー:2009/10/20(火) 23:28:25 ID:/jsWRGge
234名無しさん@ピンキー:2009/10/20(火) 23:29:50 ID:/jsWRGge
連投すまんorz

>>232
GJ
順調に行けば後1〜2話で修羅場かな?
何はともあれ期待してます
235名無しさん@ピンキー:2009/10/20(火) 23:42:06 ID:RMilb3DK
>>232
GJ
続きも期待しています
236名無しさん@ピンキー:2009/10/21(水) 12:42:40 ID:tweuqwsV
>>232
ありきたりなキモ姉見るために、邪気眼SSを5話も
見る気がないから、もう書かなくて良いよ。
容量食うしさ。
あと本当にちゃんとしたSS書きたいんなら、
〜〜た、〜〜だは少なめにしろ。作文かって
237名無しさん@ピンキー:2009/10/21(水) 13:48:11 ID:YI/OqRId
どうしてこう荒らしって沸くんだろうね
読みたくないなら読まなきゃ良いのに

>>232
GJでした
続き期待しているので頑張って下さい
238名無しさん@ピンキー:2009/10/21(水) 13:52:08 ID:Zckuhu5Z
荒らしってよりも批評じゃね
239名無しさん@ピンキー:2009/10/21(水) 14:15:12 ID:qyQryy35
追い出し続けて誰も居なくなったとか嫌だぜ
240名無しさん@ピンキー:2009/10/21(水) 14:36:50 ID:WD7MS9vX
それが荒らしの目的なんだよ、誰も居なくするのがな
241名無しさん@ピンキー:2009/10/21(水) 15:26:59 ID:DUlPXkCQ
>見る気がないから、もう書かなくて良いよ。

別にお前だけの為にあるスレじゃないんだけど
242名無しさん@ピンキー:2009/10/21(水) 15:30:28 ID:mF5qt3jV
こうやって何時も何時も爆釣れだとやめるわけにはいかないだろうな
243名無しさん@ピンキー:2009/10/21(水) 15:50:29 ID:5rh9alEL
文章的に未熟なのはまああるが、だからって尻切れ蜻蛉にされちゃあ一番困る
244名無しさん@ピンキー:2009/10/21(水) 19:58:58 ID:SdsP4H9O
いつものことだがテンプレ読め。批評すんな
245名無しさん@ピンキー:2009/10/21(水) 20:44:14 ID:w8To9G9A
>>243
それだとお前はもっと素晴らしい文章で面白物語を書けるなんだなwww
246名無しさん@ピンキー:2009/10/21(水) 20:45:07 ID:IeDuCtfG
日本語でー
247名無しさん@ピンキー:2009/10/21(水) 21:37:06 ID:4NY3++M6
もう皆さん忘却の彼方にあるであろう血は争えないのラストがてけたお。
まあ先ずは読んで欲しい

248また血は受け継がれていくのか:2009/10/21(水) 21:38:33 ID:4NY3++M6
最近お兄ちゃんの帰りが遅い。私といえば、あいも変わらず学校帰りはお兄ちゃんのアパートに
入り浸る毎日。週末は泊まる時も多々ある。それにしても最近のお兄ちゃんは帰りが遅い。バイトを
始めたのがその原因だ。……帰りの遅い夫を待つ妻の気持ちってこんな感じなのね。よくお父さんの
帰りが遅いと、お母さんが暇を持て余して、私にちょっかいを出してくる事があった。そのたびにこん
な節操の無い妻には成りたくないと思ったのだけど、それは無理そうね。こういう所は血の繋がり
を感じる。……ただ私の場合、お母さんと違い、待つ相手は”今は”夫ではなくてお兄ちゃんだけど。
まぁいずれお兄ちゃんは美咲の夫になるけどね☆ ……お兄ちゃんって、美咲の事どう思ってる
のかな……。かわいい妹程度かな……いや、自分で『かわいい』なんて形容するのは、自分を過
大評価し過ぎね。友達もクラスの糞雄豚どもも、「美咲ちゃん(たん)、かわいい!」なんて言っては
くるけど、私にとって有象無象の評価は全く重要ではない。……全てはお兄ちゃんにどう思われ
ているか、これに尽きる。そもそもお兄ちゃんは私の気持ちに気付いているのかな。気付いて欲しいと
は思う。でもその結果、私の事を避けたりしないだろうか。気持ち悪いとか思わないだろうか。……もしか
して受け入れてくれるかもしれない。でもお兄ちゃんは優しいから……。美咲を傷つけないようにと自分の
人生を なげうって私を受け入れてくれるかもしれない。でもそんなのは嫌……。自然に、本当に普通に、私
の事を一人の女の子として好きになって欲しいな。妹としてじゃなくて。本当に普通に……。

ガチャン

『ただいま−って、また来てたんかい。』
やっと帰ってきた。
「何?悪い?どうせ美咲が居ないと寂しがるくせに〜」
『……寂しいわけねえだろ。いつもいつも俺んとこに居ていいのか?家帰ってちゃんと勉強しろよ?』
「……うるさいなぁ。そんな事言ってほんとは美咲に居て欲しいくせに。」
『母さんが言ってたぞ。この前のテスト赤点あったって。俺んとこにばっか居て勉強してなかったんだろ?』
「兄貴には関係ないでしょ。いちいちお節介ね。」
『ったく、人がせっかく心配してやってんのに。……お前、期末試験まで俺んとこ来んの禁止な。』
「っ!?……なっ、何よそれ!嫌よ、そんなの!バカ兄!!」
『むっ。バカなのはそっちだろ、赤点取ってんだから。』
「うるさい……。美咲がいなきゃろくなご飯食べられないくせに!兄貴なんか早死にすればいいんだ……グスン」
249また血は受け継がれていくのか:2009/10/21(水) 21:39:42 ID:4NY3++M6
バタン!

『あ、おい。……行っちまったか。いくら母さんに言われたとは言え、少し言い過ぎたかな……』
何よ、お兄ちゃんのバカ!人の気もしらないで……。あんな言い方ないよ……グスン……。確かにお兄ちゃん
のとこに入り浸ってばかりで勉強しなかった美咲が悪いよ、でもお兄ちゃんのとこ行くの”禁止”だなんて……。
しかも期末試験までなんて一ヶ月以上じゃん……。そんなの寂しいよ……グスッ……。でもお兄ちゃんに酷い事
言っちゃったよ……。……嫌われちゃうかな。美咲なんて嫌いになっちゃうかな。……そんな事になったら生きていけないよ。



〜実家〜

父「おい、なんだか美咲のやつ落ち込んで部屋に篭ってるぞ。どうしたんだ。」
母「あの子、この前の試験で赤点あったでしょ?だから友紀人のとこに行くの禁止する様にしたのよ。
だから友紀人にそう言わせたわけ。兄妹仲良いのは大歓迎だけどやっぱり勉強を疎かにするのは
母親として見過ごせないわ。」
父「お前……。いやあ、見直したぞ!なんだかんだで親としての自覚があったんだな!!素晴らしい事だ。」
母「むっ、私はちゃんと母親やってますぅ。”ちゃんと”ね。ふふ。」
お兄ちゃんのバカ。お兄ちゃんは私が居なくてもいいの?……もしかしてバイト先で彼女でもできて、もう
美咲はお払い箱とか……。嫌っ、イヤだよぉ……グスッ……そんなの嫌。
それからお兄ちゃんにあんな事言われたショックで全然勉強に手がつかなかった。そんなものだから期末
試験の出来もイマイチだった。先生にはこのままじゃお兄ちゃんと同じ大学に受かるのは厳しいと言われた。
私は堪えられなくなっていた。お兄ちゃんの笑顔も見れない、一緒に寝れない、匂いもかげない。
……気付いたらお兄ちゃんのアパートに来ていた。

ガチャン

「よし、まだ帰ってきてない。」
ベットに寝転がって久しぶりに嗅いだお兄ちゃんの匂い。
「美咲、もう我慢できないから……。お兄ちゃんのせいだから……。」
〜再び実家〜
父「しかし美咲のやつは欝にでもなっているんじゃなかろうかという憔悴ぶりだ。
……そんなに友紀人に入れ込んでいたのか……そういや前にもこんな事があったな……。


〜回想〜

「うふふ……ギシギシ……お兄ちゃんが悪いんだから……アンアン……。私がいるのに……ギシギシ……彼女なんて作るからだよ?
……アンアン……ふざけんなよ糞が!!!お兄ちゃんは私と結ばれるのよお兄ちゃんは私と結ばれるんだよお兄ちゃんは
私と結ばれるんだよ!!!……お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん
…………ングッ!あは、あははははははは〜!出たよぉ!お兄ちゃんの赤ちゃんの種ぇ〜私の膣内にい〜っぱい!
うふふふふふふ……責任とってくれるよね?お兄ちゃん?私初めてだったのよ?スッゴく痛かったよぉ〜?
それなのにお兄ちゃんに中出しされちゃったんだよ?もうお嫁に行けないよ ?ね?……だから私はお兄ちゃんと
結婚するのよ?幸せにしてねぇ?うふふ……あはははははははは!!!」


250また血は受け継がれていくのか:2009/10/21(水) 21:40:56 ID:4NY3++M6
父「今でこそ夫婦円満とはいえ、当時妹の気持ちにうすうす気づきつつも彼女をつくった俺。
……妹が兄離れできるために良かれと思って彼女を家に連れてきた事もあった。そんな事をしている
うちに妹も大分落ち着いてきたと思っていた。しかし甘かった、鈍感過ぎた。妹は自分の事を”好き”などで
はなかった、そんなものはとっくに超越した自分に対する”狂愛”と”独占欲”に満ちていた。
その結果、睡眠薬を飲まされ、縛られ、逆レイプされたわけだ。」
父「あんな事に二人にはなって欲しくない。自分と違って友紀人は優し過ぎる。そして真面目だ。
もし美咲が友紀人を逆レイプでもすればあいつはきっと崩壊する。そして美咲も崩壊する。
……あの二人は一応自分達夫婦(?)の宝物だ。……ここはやはり父親として、男として、元兄
として友紀人にガツンと言ってやらにゃあならん!!ならんのだ!!」



プルルプルル

父「おう友紀人か?今どこだ?」
『ああ大学帰りだよ。つか父さんが電話してくるとか珍しいな。』
父「そうか、よし。今日は家に来い。お前とじーっくり話さなきゃならん事がある!!いいか?早く来いよ!?」
『お、おお……。(何だ……?なんか怒られる様な事したかな……)』
『ただいま−。父さ−ん。なんか用事か−?』
父「おう!まあいいから来いや。(美咲もいないしこれで友紀人ともじーっくり話せるぞ!」
父「では単刀直入に聞くぞ。お前は、美咲の事どう思って――――」




「あぁん、お兄ひゃ、お兄ひゃぁん。好きぃ、好きぃ。だいひゅきなのぉ。」
お兄ちゃんが居ないのを良いことに久しぶりのお兄ちゃんのベットでお兄ちゃんの服を着て
お兄ちゃんのパンツにしゃぶりついて……お兄ちゃんの匂いに囲まれての自慰。
「みひゃき、絶対お兄ひゃんのお嫁さんになりたいよぉ。それでぇ大事な大事なしょひょまくぅ〜
だいひゅきなお兄ひゃんに破ってもりゃってぇ〜いぃっぱい愛してもらってぇ、だいひゅきな
お兄ひゃんの赤ちゃん美咲のおにゃかに孕ませてほひいのぉ。それでねぇ、お兄ひゃんとずぅっと幸せ
で居たいの………うぅ………グスッ………お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん
お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん
お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん………お兄ちゃん……。……ひぐっ、イクっ!……はぁはぁ……」

本当に何してんだろう私。馬鹿だな、兄妹で結ばれる訳なんて無いのに。こんなとこお兄ちゃんに見られでもしたら……

ガサッ

っ!?

251また血は受け継がれていくのか:2009/10/21(水) 21:41:42 ID:4NY3++M6
『いや、ごめn……美咲……。』
「お兄っ、兄貴!?」
あぁ終わった。何もかもが終わった。見られてた。きっと嫌われる。だって自分の妹が自分のこと
オナネタにして必死こいてオマンコ摩って、おっぱい揉んでるんだよ?気持ち悪いよね。
吐き気がする。そんな妹なんかいらないよね。

『美咲……』
「何も言わないで!!!……今日は帰るから。じゃあね……兄貴……。」

死のう。お兄ちゃんに嫌われて美咲が生きている理由なんてないもん。ごめんなさいお兄ちゃん。
私は、美咲は貴方の妹で本当に幸せでした。もし生まれ代わったら今度もお兄ちゃんの妹がいいな。

『待てよ!!!』
「…………。」
『待てっつってんだよ、美咲!!!ガシッ』

「嫌っ!離してよ!兄貴はもう美咲の事なんか嫌いになったでしょ!?こんな気持ち悪い妹嫌なんでしょ!?」

パシン!

「痛い……よぉ。……ふぇっ!!??」

頬をぶたれたと思ったら、お兄ちゃんが私を、こんな気持ち悪いどうしようもない妹を……抱きしめてくれた……

『ごめん、ぶって……。でも美咲が落ち着かせるためにさ……。少しは落ち着いたか?』
「うん……。……どうして、お兄ちゃん?」
『久しぶりだな。美咲に”お兄ちゃん”って呼ばれるの。ナデナデ』

お兄ちゃんが美咲の頭を撫でてくれる。いつか私が男の子達にイジメられて泣いていた時の様に。

『美咲は昔っからこうしてやるとすぐ泣き止んだんだぜ。こういうのは赤ちゃんの頃から変わらないな。』
「むぅ……成長してないって事?」
『あはは。でも俺にとっての美咲は何も変わってないよ。大切な妹って事はな。』

妹……。妹かぁ。決して愛するお兄ちゃんの妻にはなれない。それが妹。
字の如く、兄にとっては常に”女未満”の存在。決して結ばれない。

『でもな、変わった事だっていっぱいあんだぜ?』
「変わったこと……?」
『ああ。例えば、美咲が俺にとってただ妹ってわけじゃなくなった事とかな……。』
「ふぇ?お兄ちゃん?」
『父さんがな……、俺に気付かせてくれたんだ。俺の本当の気持ちにさ。…………美咲……愛してる。チュッ』

252また血は受け継がれていくのか:2009/10/21(水) 21:42:42 ID:4NY3++M6

今何が起こってるんだろう……。こんなに幸せな気持ち、初めてだよ。

『美咲?俺と……お兄ちゃんと付き合ってくれないか?』

なぁんだ、お兄ちゃんも私の事……。えへへ鈍感バカがやっと気付いてくれた。

「遅いよ……バカ兄ぃ。……いいわよ、お兄ちゃん。……幸せにして……?」



「えへへ……可笑しいよね、兄を好きになる妹なんて、本当はいけない事なんだよね……。……でもね……グスン
……やっぱり美咲、お兄ちゃんの事好きッ……ヒグッ……本当に好きよ……。美咲、お兄ちゃんと普通に幸せに
なれれば、それだけでいいのよ?特別な事なんて要らないよ?……普通にお互い好きになって、恋人になって、
結婚して、子供いっぱいつくって、お爺ちゃんお婆ちゃんになってもずーっと一緒にいるの。それだけでいいの……。
でもね……ずっと叶わないって、所詮夢なんだって思ってた……。でも……グスン……でもぉ……グスッ
……夢叶っちゃったよ。嬉しい……。
『美咲……』

バタン!

母「話は聞かせてもらったわ!美咲ぃ〜!よく言ったわ〜!やっぱり美咲はお母さんの娘よ!!兄妹で愛し合うのってすごいハードル
高いわよね!?でもでも流石!私の子達!!」
「おっ、お母さん!?どうして……ここに?……ッ!?嫌よっ!?どんなに駄目だって言われたってお兄ちゃんとは別れないよ!!」
母「んもう!そんなんじゃ無いわよ〜!美咲と友紀人が結ばれるのは大歓迎よ〜!っていうかこのために、あなたたちを生んだ様なもんなんだからっ!!」
「えっ!?え〜!?」
『ど、どういう事だ?母さん!?』
父「それは俺から話そう……。」
「お父さん!?いつから居たの!?」
父「いや……お母さんが来た時に一緒に……。まあそんな事はどうでも良いんだ。まず美咲に友紀人のとこに行く
のを禁止なんてしたのはな、全て母さんの策略だったんだよ……こうなるための布石としてな。
……父さんもそんな事は露知らずまんまと母さんの手の上で踊らされていたんだ……。」
母「あら、そんな酷いわ〜。雨降って地固まるっていうでしょ??私はそれを実行しただけよ〜。」
父「……。それとな、これは言うべきかどうか今でも迷ってる……。でも言わなきゃならないのも事実だ………。
………………実はな、お父さんとお母さんは……、その………他人ではないんだッ!!」
『そりゃあそうだろ。何を今更。』
父「いや友紀人、違うんだ!……つまりその〜あの〜」
母「実の兄妹、なのよ。あなたたちと一緒。」
「えっ……」
『えっ…………本当……なのか、父さん?』
父「……まあ……そういう事です。」
『なんで今まで黙ってたんだよ!?つーかそれって法的にヤバくないのかよ!?』
「そ、そうだよ……私達戸籍とか大丈夫なの……?」
母「大丈夫よ〜!今日はその事も話そうと思って来たのよ。お母さんとお父さんもお互いがとっても
好き同士だったのよ?美咲の歳の頃この人、私のお兄ちゃんと愛故に結ばれて友紀人を妊娠したんだよ。」
父「おい待て、あれはお前が無理矢r」
母「お兄ちゃんは黙ってて!!!こういうデリケートな問題は母親が担当って昔から決まってるの!!!」
父「…………はあい」
母「よろしい。でね私達が本当の夫婦になれたのには、ある裏技があったのよ。まあ要は法の抜け穴とでもいうのかしらね。うふふ。」
「裏技……?何それ?お母さん、教えて!私、お兄ちゃんと本当の夫婦になりたいの!」
母「友紀人は?』
『俺もだよ……。俺も美咲と結婚したい、結ばれたい!!』
「お兄ちゃん……」
母「うん!よろしい!じゃあ教えてあげるわ。それはね………」



253また血は受け継がれていくのか:2009/10/21(水) 21:43:18 ID:4NY3++M6






〜5年後〜

「お兄ちゃん!起きて!会社遅れちゃうよ!?もうあの子達も起きてるんだから!私も子供達、幼稚園に
送っていかなきゃいけないんだからスーツ自分でアイロンかけてよね!?」
『んぐ……美咲ぃ〜今何時だ〜?』

「8時ちょうどよ。」
『8時か……8時!?ヤバいヤバいヤバい!!朝飯は!?』
「出来てるよ。食べるんなら早く食べてね〜」
?「もう〜パパはだめだめなパパだね〜、ママ?」
「そうね〜美友はこんなだめだめになっちゃだめだよ〜?」
美友(みゆ)私とお兄ちゃんの大事な娘。
美友「ママぁ。さーくんがまたごはんこぼしてる〜」
?「うわーん、おねえちゃんがくすぐってくるからだもん、ぼくわるくないもん……グスン」
咲人(さきひと)、あだ名さーくん。私とお兄ちゃんの大事な息子。
『美友、かわいい弟に意地悪しちゃ駄目だろ〜?』
美友「かっ、かわいいおとうとなんかじゃないもん!さーくんなんかきらいだもん……」
咲人「うわーんおねえちゃんのいじわる〜!ぼくもおねえちゃんなんかきらいだ〜グスッ」
『こらこら、そんな事言っちゃ駄目だろ?姉弟なんだから仲良くな?……きっと将来はお互いが大好きになってるぞ?』
娘&息子「「そんなことないもん!」」



お兄ちゃんと結婚して、子供も生まれて、今私は普通の家庭の普通の主婦。
……でもね、そんな普通の幸せが今の私にとっての宝ものなんだよ?

『んじゃ行ってくる。今日は早く帰れるからな。晩飯期待してま〜す。』
「はいはい。ほら、襟折れてるよ。……よし。じゃあいってらっしゃい。」

私はお兄ちゃんの奥さんだからお兄ちゃんを見送る。妹としてじゃない。愛する旦那様の妻として。
でも……でもね、あの時から何も変わってないよ。お兄ちゃんのちょっと眠そうな笑顔も、私のこの胸のときめきも。
なぁんにも変わってないよ。

『おお、行ってきます!……愛してるよ、美咲。チュッ』
「んもう!……私も。チュッ」

美咲はとっても幸せです。


〜Fin〜

254名無しさん@ピンキー:2009/10/21(水) 21:46:34 ID:4NY3++M6
んな訳で\(^o^)/オワタ

まあ修羅系にしようかハッピーエンドにしようか悩んだがあまちゃんな俺にはこういうのしか書けないです(´・ω・`)


たまには良いよね?こういうのも。お兄ちゃん?

全てのキモウト&キモ姉に幸あれ
255名無しさん@ピンキー:2009/10/21(水) 23:38:16 ID:3lCmjZll
>>全てのキモウト&キモ姉に幸あれ

いやいや、そこは兄&弟のほうgうわ何をするやめrアッ-!!


職人さんGJです!
次は姉モノを書いてくださいね、是非是非……うふふ
256名無しさん@ピンキー:2009/10/22(木) 00:04:12 ID:xNAx2yvn
>>254
GJ まさしく歴史は繰り返されるですね。
次回作に期待してます。
257名無しさん@ピンキー:2009/10/22(木) 00:29:31 ID:s+5gqm+c
GJ

あえて言えば結婚の手段が気になるぞ
どうやって結婚したのかのターンが省かれてるのが気になるぞ
258名無しさん@ピンキー:2009/10/22(木) 01:16:04 ID:u0vRRbXP
一番肝心なところが・・・
なんやかんやとやってのけたってことか?
259名無しさん@ピンキー:2009/10/22(木) 03:18:44 ID:iJAp6po6
>>258
日本は届出が受理されたら結婚したことになる。
成立してしまえば後は当事者、親族、検察官が取り消しを家裁にいうことになる。
(ただし検察官は当事者が死ぬと取消しをいえない)
そしてこれしか結婚は取り消せない。
(多分。法律に詳しい人が間違いに気付いたら訂正して)

届出ると、結婚が出来ない事情がないか調べるんだけど、
その時に使うコンピュータ(どんなのかはしらない)を狂わせれば何とかなるんじゃない?
取り消しをいう人の内、当事者は愛があれば大丈夫だし、
親族だって関わりあいになりたくないだろうし、
検察官も暇じゃないだろうし。
よしんば取り消されても、離婚と同じ様に取り扱われるだけで子供達に不利益はない。
260名無しさん@ピンキー:2009/10/22(木) 03:23:44 ID:eIE2wJ1B
>>259
そこはここキモスレなんだから検察官を行動不能にするくらい言っても良いような気がw
261名無しさん@ピンキー:2009/10/22(木) 05:15:04 ID:gZDf0qZ3
国家権力さえ駒にしてしまうくらいの実力があるなら、
いっそ金欠の国会議員をかき集めて民法改正を図っても……
262名無しさん@ピンキー:2009/10/22(木) 08:20:35 ID:6oRvA3jr
弟と結婚できる法律の抜け穴を探し求めるうちに
悩めるキモ姉キモウトたちで
行列のできる弁護士になっちゃった姉ですね
263名無しさん@ピンキー:2009/10/22(木) 09:05:09 ID:BZ5uSSmi
戸籍乗っ取りや改竄、出生届の虚偽記載なんかを平気でしてそうだw
264名無しさん@ピンキー:2009/10/22(木) 10:00:22 ID:Gq2X8Pk0
戸籍乗っ取りが一番簡単かな?
年齢と下の名前が同じ(名字は結婚すれば変わるから気にしない)でなるべく
係累のない人を…
265名無しさん@ピンキー:2009/10/22(木) 13:21:18 ID:8HWwaUib
で、戸籍のっとられたその人もキモ姉妹でこれ幸いと……
266名無しさん@ピンキー:2009/10/22(木) 13:29:44 ID:eGhm8T78
どうやれば兄と結婚できるか考え、そうだもういっそのことあの泥棒猫になればいいんだと思いつき兄の意中の女性と脳移植で入れ替わるキモウト

「ほら、お兄ちゃんの好きなあの女になったよ?これでお嫁さんにしてくれるよね」

という恐ろしい妄想をしてしまった・・・
267名無しさん@ピンキー:2009/10/22(木) 13:36:53 ID:j6B2ArF9
>>266
で、妹のボディになった泥棒猫が自分の身体を乗っ取ったキモウトの首を絞めるんだな?
サンダーマスクVSシンナーマンよろしく。
268名無しさん@ピンキー:2009/10/22(木) 16:41:23 ID:pLKSYNwp
>>266
『魂響〜円環の絆〜』というエロゲがそれそのまんまの内容だぜ。
269名無しさん@ピンキー:2009/10/22(木) 16:56:54 ID:4LU5jg2R
某国工作員みたいに別人に成り代わったとか…

妹「Aさん、名前下さい!」
A「妹ちゃんの名前もらうわよ。」
妹・A「交渉成立ね!!お互い幸せになりましょう!」

戸籍は 兄とAが結婚。妹とB(Aの兄)が結婚。 
270名無しさん@ピンキー:2009/10/22(木) 20:00:49 ID:tV0hU6Gh
>>267 例える物が酷過ぎるw
271名無しさん@ピンキー:2009/10/22(木) 20:48:18 ID:o5ysz2j6
>>269
ヤンデレスレか何処かで見たな、そういうの
272名無しさん@ピンキー:2009/10/22(木) 21:03:56 ID:hCqh1Rvj
つうか>>22
273名無しさん@ピンキー:2009/10/22(木) 21:05:20 ID:mYPeV/IY
>>267のレス読んでたらなぜか泥棒猫=ドラえもんに脳内再生された
妹のボディになったドラえもんが自分の体を乗っ取ったキモウトの首を締めるとか難しい想像だな

お魚くわえた野良猫=泥棒猫
裸足の陽気なサザエさん(包丁持参)=キモ姉

こっちのが良いな
274名無しさん@ピンキー:2009/10/22(木) 22:44:46 ID:s+5gqm+c
戦争しようと街まで出かけたが
戦車を忘れて三輪車で突撃
あっちは鉄砲だ、こっちは水鉄砲
るーるるるっるー人生最後の日
275名無しさん@ピンキー:2009/10/23(金) 00:46:58 ID:4QDHQTNF
戦車、街のフレーズでなんか電波が…

両親は兄離れさせる為に妹を陸自に入れる。
そこでキモウトは戦闘技能と戦車を手に入れる(強奪)。
兄に会うために74式戦車で突撃!!!!
泥棒猫の家に突っ込み蹂躙し、警察車両を粉砕する。
自衛隊が治安出動に踏み切るまでの間に破壊活動終了。
兄を回収?して戦車もろとも自爆。消息不明となる。二人の生存を臭わせて終わる。 
276名無しさん@ピンキー:2009/10/23(金) 03:12:58 ID:HPN1bddz
74式とかまったくわからんけど、オタ臭がハンパないな。
277名無しさん@ピンキー:2009/10/23(金) 04:25:21 ID:X4ywQcZ5
>>266
それって楳図かずおの「洗礼」のパクリじゃねえか
278名無しさん@ピンキー:2009/10/23(金) 09:46:13 ID:WrynOKNF
火の鳥復活編で主人公を愛するあまり、主人公の体を自分の体にする女ボスを思い出したw
279名無しさん@ピンキー:2009/10/23(金) 12:17:06 ID:+eqtyiYT
手塚先生はTS、体入れ替え、変身フェチの祖w
280名無しさん@ピンキー:2009/10/23(金) 12:59:56 ID:xu8BrFqF
人間の吐く息というのは実は二酸化炭素よりも酸素の方が多い

妹「らしいよお兄ちゃん。早速検証してみようか」
兄「何を・・・」
妹「風呂の中で二人キスしたまま何秒持つか、よ。限界を体験するために二人の手足と身体を固定させるね」
281名無しさん@ピンキー:2009/10/23(金) 22:02:39 ID:52B1YhVa
ええい!
桔梗の剣の続きはまだか!
寸止めなんてしやがって!ずっとたちっぱなしのコレどう処理しろってんだ!
282名無しさん@ピンキー:2009/10/23(金) 23:43:01 ID:y/pDoHjG
確かにこれからって時に更新がなくなって残念だ。
283名無しさん@ピンキー:2009/10/24(土) 00:27:32 ID:k6nYwq35
前の荒らしが原因じゃね?長編は間が開いたらもう見る気にならんとか言う
284名無しさん@ピンキー:2009/10/24(土) 01:34:01 ID:DVOSkn0t
>>283
いや、何時もこの位のペースだろ。
こない時は一週間投下ない時だってあったし
あんな中学生のこと真に受けてる奴なんていないよ
285名無しさん@ピンキー:2009/10/24(土) 01:49:26 ID:Tg4YNvZd
あんなのムキになってバカやってるのに比べたらささやかなもんさ
286名無しさん@ピンキー:2009/10/24(土) 20:18:26 ID:oMzLUt5J
というかとうとう嫉妬スレの自演荒らしがこっちにも移ってきたかといった感じだな、最近のスレを見ると
287名無しさん@ピンキー:2009/10/24(土) 23:52:43 ID:sTyF/dJM
お前ら落ち着けよ
いつだってラブアンドシスターだぜ
288名無しさん@ピンキー:2009/10/25(日) 04:55:33 ID:5btIEmco
「お兄ちゃんさぁ」
「ん?」
「よかったら私が練習台になってあげようか?」
「え? 何の?」
「セックス」
「……何いってるんだ?」
「でもお兄ちゃんって童貞でしょ?」
「それと何の関係が……」
「だって兄は妹で童貞を卒業するものって決まってるじゃない」
「え?」
「え?」




この空気を解消するために最近やったエロゲのキモウトを紹介しておくか
289名無しさん@ピンキー:2009/10/25(日) 08:42:17 ID:BP4VnylW
>>288
KWSK
290名無しさん@ピンキー:2009/10/25(日) 09:24:30 ID:mnNW4IDy
二郎食いてえ…
291名無しさん@ピンキー:2009/10/25(日) 09:29:09 ID:9AFH8agy
ここは馴れ合うためのスレではないのでお帰りください
292名無しさん@ピンキー:2009/10/25(日) 11:25:47 ID:2r75BmPR
>>288
雫ですね私もあの妹は大好きです
293名無しさん@ピンキー:2009/10/25(日) 19:56:43 ID:s564k/dU
キモウトに『これって間接キスだよな』って言ったらどうなるの?
294名無しさん@ピンキー:2009/10/25(日) 20:32:51 ID:5btIEmco
妊娠する
295名無しさん@ピンキー:2009/10/25(日) 20:38:35 ID:FZV4ogdI
キモ姉「中に誰もいませんよ」
296名無しさん@ピンキー:2009/10/25(日) 21:01:44 ID:iaDi+Xwr
>>293
vipでやれ
297名無しさん@ピンキー:2009/10/25(日) 22:50:41 ID:AgKVp3Vn
某ホラーゲームをやってて頭に浮かんだネタ

音無井阿仁  木網戸村中学校芋戸分校 
       初日 03:06:25
ガタガタガタ…ウァーァァ
阿仁「お前だけでも逃がしてやる!」
妹「お兄ちゃん……でも怖くないもん!」
阿仁「つーかさ、何で俺達は真夜中の学校で二人きりでゾンビもどきに囲まれてるの?」
妹「忘れ物を取りに来たんでしょ?」
阿仁「地震とサイレンの前に何かしようとしたじゃないか…」
妹「お兄ちゃんと二人きりになれたんだからやる事は決まっているよね?」
阿仁「ちょ、今非常時だって!目つきヤバいよ!」

終了条件 妹からの逃走 

…彼は屍人(しびと)と言われる者に見つかるも全力で逃走した。
妹は屍人たちを倒しながら阿仁に追いついた。
妹「大好きだよ、お兄ちゃん。」

終了条件未遂。(ゲームオーバー)
298名無しさん@ピンキー:2009/10/26(月) 00:21:29 ID:G7Tm2x9G
宮田をTSすればえーやん
299未来のあなたへ11.5前編:2009/10/26(月) 15:27:23 ID:egkU7mto
一ヶ月半ぶりに投稿します。遅れて申し訳ありません。
一部と二部の間の馬鹿話のつもりでしたが、ぐだぐだな内容になってしまいました。
妹の親友キャラ、藍園晶メインの話です。
300名無しさん@ピンキー:2009/10/26(月) 15:28:40 ID:egkU7mto
正直、油断した。


夏休みも終わり、残暑の厳しい季節となっていた。
青々とした街路樹の下を、一組の男女が歩いている。二人とも同じ市内にある高校のブレザーを身につけていた。タイの色から同学年とわかる。
片方はひょろりとした長身に整った顔立ち、柔和な表情。雨宮義明という少年。もう一人は肩の当たりで揃えて僅かに染めた髪に中肉中背。快活な印象の少女だった。
二人は楽しげに話しながら街路を歩いていく。放課後の帰り道。高校での出来事か、あるいは寄り道の相談でもしているのかもしれない。
青春を象徴するようなカップル。そんな微笑ましい光景を
夕食のためにスーパーで戦利品を獲得し、機嫌良く鼻歌を唄いながら帰る途中で目撃してしまった、わたしこと藍園晶がいるのだった。
……ゆ

「油断した――――っ!」



晶ちゃんの、泥棒猫を小一時間問い詰め大作戦 

前編

301名無しさん@ピンキー:2009/10/26(月) 15:29:23 ID:egkU7mto
優香ちゃんがいなくなってから二カ月ほどが経過している。
連絡の一つもよこさずに突然消えたわたしの親友。
というとなんだか推理小説の冒頭みたいだけど、事件性については薄いと睨んでいた。
退学届は出ているし、榊先輩も死にそうな顔をしていたけど出席している。
ではどうして彼女は消えたのか。
優香ちゃんは消える前の数週間、めちゃくちゃ機嫌が良かった。
どうしてと聞いてみれば、推理小説なら答えないだろうが、二人の間柄もあって彼女はきちんと答えてくれた。
曰く、ついに告白したらしい。
いや、びっくりしました。なにしろ二人は実の兄妹だし、生き別れでも何でもない。拒絶されて当然の蛮勇を、よくぞ成功させたもんです。
一昔前のギャルゲーで、公式設定で血が繋がってるようなものだ。まず社会が許さない。
社会というものの強大さをわたしは骨身に染みて知っている。ハブられたりイジメられたりパワハラ食らいながら、必死の忍耐で笑っていなければならない。
最大の悲劇は、それでも社会に属していなければわたし達がまともに生きていけないことだ。
それでも優香ちゃんはやった。その告白が拒絶されなかったのは、弛まぬ努力の成果だろう。
個人的には喝采を送るところだ。わたしは社会の底辺にいるが、その中で個性を発揮する人のことは素直に賞賛する。この場合は些か反社会的だが、自分でやる根性なんてありはしないだけに。
けれど結局、社会には勝てない。
この二カ月、折を見ては消えた優香ちゃんの手掛かりを捜していた。退学届は出ている。柳沢先輩曰く、退学手続きも通常通り取られている。
総じて事件性は薄い。心を鬼にして死にそうな榊先輩を問い詰めたら、田舎に転校したと口を割った。そういえば何故か女子が同伴してたけど誰だったんだろう。
ともあれ、事件に巻き込まれたのでなければ残る線は一つしか思い至らない。元よりそっちが本命だし、優香ちゃんへの処遇で裏も取れた。

親バレしたに違いない。

うわあ、御愁傷様。としか言いようがない。
庇護者である以上、逆らいようのない事態。学生というのは大人の世界と無縁でいるようで、やっぱりどうしようもなく影響下にある。
いや、そういう問題じゃないか。両親という社会の一端に、隠匿しなければいけない事態が発覚したのだ。
それは破滅に等しい。何故ならば、社会が許さないし社会には勝てないから。
ええとですね、神様。その、くたばってくれませんかね。
こんなわたしでもそれなりに憤りを感じたのだ。優香ちゃんはわたしにとって一種の憧れだったし、何より友達だった。
友達が理不尽に打ち倒されて、放っておけるわけがない。
とまあ、意気込んでこの二カ月ほど探ってみたけれど。結論から言うとほとんど無駄足だった。
なにしろ優香ちゃんの追放先すら分からなかったのだから。ちなみに携帯は契約を切ったのか繋がらず、メールのやり取りは元からしていない。
わたしが携帯電話を持っていれば、あるいは遺言の一つでも送られていたのかもしれないのに。
――――それにしても、よくぞ死人が出なかったものだと思う。
優香ちゃんの目的意識の強さは折り紙付きだ。でなければ、実の兄をマジで攻略しようだなんて思わない。
であるなら、障害を直接的に消去してもおかしくはなかった。まあ両親をぶっ殺すということだけど。
勿論殺人が露見すれば重罪だ。しかも親族で二件。庇護者を失うことになるし、発作的に行うにはあまりにリスクが高すぎる。
けれど計画的に行えばどうだろう。少なくとも発作的に行うよりは遙かに露見し辛くなる。罰を逃れることも不可能ではない。
これは優香ちゃんの言葉だが、およそ人類の知能というものは殺人から自分を守るため、あるいはそれを破るために発達してきたのだという。
事故に見せかける、自殺に見せかける、あるいは誰にも知られないように始末する。時間と覚悟さえあるのなら、あらゆる手段を講じることができる。
少なくとも、わたしも予定しているのはそういうことだ。
優香ちゃんがそれをしなかったのは何故だろう。
排除するまでもないと計算を誤ったのか、リスクの大きさに怖じ気づいたのか、あるいは(わたしにはさっぱりな感覚だけど)排除するには惜しい存在だったのか。
なんであれ、無駄な血を見ることなく済んだのは僥倖だろう。優香ちゃんはあれでキレた時の暴れっぷりはすごい、気がする。
(後で聞いたことだけど血は流れたらしい、性的な意味で)
とにかくそんな風にして、友達の方に掛かりきりになっている間。
我が愛しのマイダーリンに、悪い虫が付くのを見過ごしていたのだった、がっでむ!
302名無しさん@ピンキー:2009/10/26(月) 15:31:11 ID:egkU7mto
当然、その日のうちにダーリンを問い詰めた。小一時間問い詰めたい。
時刻は夕方、夕食時。テーブルに向かい合っての食事中。メニューは白米に味噌汁、秋刀魚の塩焼き。つけあわせの大根おろしは大量に摩ってある。
二人だけの食事中。例によって姑は仕事で邪魔者もいない。
お互いにちまちまと秋刀魚の身をほぐしている最中。わたしは満を持して切りだした。
そのとき背後にはゴゴゴゴゴ、とオーラが湧きだしていただろう。一切の言い訳を許さない、浮気を咎める恋人の空気だ。
「えーと、義明さん。今日の学校はどうでしたかー?」
「えーとね」
……笑えばいい。オーラなんてさっぱりぷー。わたしの声音は、普段と全く同じかやや腰が引ける程度だった。
わたしはこの人には勝てない。そういう風にできている。小一時間問い詰めるなんて、夢のまた夢だった。
「今日は体育でサッカーがあったよ。でも相手チームのサッカー部に二人がかりでマークされて全然だったな」
「いやいや、主力二人抑えてる時点で十分貢献してますって」
「それでみんな疲れたのか、午後の日本史で寝てる奴が何人かいてさ。先生に怒られて廊下に立たされてたよ」
「あー例の今時珍しい。ダーリンは部活で慣れてるから平気ですよね」
「うん。けど今日の部活は休みだったから、友達と帰りにゲームセンターに寄って遊んだよ」
「それだー!」
問題の個所に差し掛かって大声を上げたわたしに、きょとんとした表情を返すダーリン。ああんもう、殴りたい。
ともあれ不審がられないように、その友達のことを聞き出す。ちなみにその作業は呆れるほど簡単だった。どこまで鈍感なんだろうこの人は。
曰く――――
橘、雪菜。女性。高校二年生。マイダーリンとはクラスメイト。帰宅部。
外見はわたしの目撃したものと一致した。校則違反にならない程度に髪を染めていて、結構可愛い。中肉中背、胸も中肉。死ねばいいのに。
性格は明るく溌剌としており、面倒見がよく人気者。クラスで人の輪ができているとしたら、まずその中心近くに彼女がいるという。
「仲いいんですか?」
「うん、席が前後だし、それに同じ知り合いも多いから良く一緒の班になるしね。いい友達だよ」
「へーへーへー」
こいつあ臭えー! 横恋慕以下の臭いがプンプンするぜえー!
更に聞き出したところ、ダーリンは橘雪菜も含めた5〜6人の仲良しグループに属しており(色に当て嵌めるとしたらグリーンポジションすね)その中には件の橘雪菜もいるらしい。
それにしてもダーリンの学生生活というのは、経験したこともないことのオンパレードで現実感を喪失しそうになる。仲良しグループって何それおいしいの?
優香ちゃんがいなくなってからはその傾向はさらに大きくなっていて、だからダーリンの話に何度も出てきたはずの彼女の影を見逃していたのかもしれない。
そんな風に問い詰めていると珍しくわたしの危惧を察したのか、緊張感なくぱたぱたとダーリンが手を振った。
「ああ、大丈夫大丈夫。橘さんは、晶ちゃんのこと知ってるから」
「え、わたしのこと話してるんですか?」
「うん、彼女だからね。晶ちゃんとの付き合い方で色々相談もしてるし」
「いやーん、照れますってば。もう公認カップルじゃないですか、ダーリンってば」
わたしは頬に手をあてて、くねくねと身を捩じらせる。
嬉しかったのは確かだが、その裏で思考を走らせた。これまでの情報から、橘雪菜と雨宮義明の間柄を推し量る。
いや、これ結構やばいんじゃないんすかね?
色々相談を持ちかけていると言うけれど、それはつまりそういう間柄だということだ。知り合いと言うには語弊がある。友人以上が妥当だろう。
これはわたしの直感だが、あの女はダーリンを狙っている。
ただの勘に過ぎないが、これはわたしが備えたサバイバリティに直結したものだ。これを否定することは、これまで生き抜いてきたことを否定することになる。
それに安全保障的にも、ひとまず最悪の事態を考えて行動した方がいい。優香ちゃんが生きていればそう言っただろう(死んでない)。
唯一好材料は、わたしが彼女であるとダーリンが普通に吹聴していることだろう。
余程の悪い虫でなければつかないだろうし、この人はわたしが彼女であることを誇りに思ってくれている。そのことに深く祈りを捧げた。
ところでわたしの感謝するその人は、次の瞬間笑顔のままでこうほざいた。
303名無しさん@ピンキー:2009/10/26(月) 15:32:30 ID:egkU7mto
「そうだ。それなら今度、会ってみる?」
「ふあい?」
「土曜日に、友達とカラオケに誘われてるんだけどさ。橘さんも来るし、時間が合えば晶ちゃんも」
「げっ……うー、あー、それは、ですね」
彼女に無断で合コンに参加するなとか(ああただの友達付き合いですよねわかります)そういうことより
社会不適合社予備軍に突然突きつけられたハードルに、わたしはあうあうとお茶を濁して会話を終了することしかできなかった。
まったく、なんて情けない。対人関係が最大の弱点とはいえ、小一時間問いつめるなんて夢のまた夢だった。


さておき。尋問?が終わったなら行動しなければならない。
本来ならここで優香ちゃんに相談するはずだった。彼女に今まで色々と貸しを作ってきたのはこういう時のためなのだから。
そもそもわたしはイジメられっこだ。学生時代のコネなど壊滅している。だから実行力と戦略スキルのある友達に一点張りしていた、のだが。
優香ちゃんの失踪によってそれもご破算だ、くたばれ神様!
後のコネはもう微々たるものだし、犯罪行為にも発展しかねないことを考えると本格的な相談はできない。頼りになる姐さんは東京だし。まあ、あの人に相談しても殺す消すとかいう答えしか返ってこないんですけどね。
かといって、一人で対処できるのかと言われれば自信はない。わたしはわたしの身の程を知っている。
チビで非力で対人能力が絶望的で、空気が読めず人並の倫理も性的魅力も金も暇もない。取り柄と言えば面の皮と、ダーリンに対する忠誠心ぐらいだ。ジョブがあるとしたら奴隷だろう。
それでもなんとか、苦渋に苦渋を重ねて。約一名、利害の一致する人間を見つけだして相談した。
時刻は深夜の雨宮家。ダーリンはとっくにお休み中だ。
「というわけですよおかーさん、どうしましょう」
「なに……また義明に悪い虫が付いたの? まったく、こういうのは幾らでも湧いてくるのね」
「うわー、同類を見るような視線どうもです」
というわけで、我らのクズ母こと雨宮秋菜さんと深夜会議に臨んでいるのだった。
確認。二人の間柄は嫁候補と姑というものだけど、実のところは血を分けた母娘でもある。お互いに殺してやると決めている仲だけど。
リビングでごろごろしながら、お互いの手には酒がある。わたしはチューハイの缶、お母さんはワンカップ。ちなみに未成年の飲酒は法律で禁止されていますね、だから何?
アル中の機嫌を取るには酒が一番手っ取り早いし、警戒を解くにはこっちも開けるしかない。度数の差は年季の違いということで一つ。
そうそう、お母さんはアル中です。普段は仕事で朝早く夜遅いけど、休日なんかは酒をチビチビやりながら日がな一日転がっている。クズの要項は一通り揃えているわけですね、はい。
くぴくぴとお母さんがワンカップを啜った。基本的には小心な人だけど、さすがに酒まで入ると態度がでかくなる。
「んで、どうするの? 一応仮にも名目上はあなたが彼女なんだから、出て行って蹴りでもつけるの?」
「あははー、三重の仮付けどうもありがとうございます。まあ最終的にはそうするつもりですけど、それには相手の情報がわからないと」
「調べればいいじゃない」
「あのー、わたしもう学生でもないし、一介のフリーターだし。女子高生のことなんてどう調べろと」
「ああー、はいはい。使えないわね。橘雪菜、だったかしら。じゃあこっちで調べておくわよ」
「おおどーも。ちなみにコネとかあるんですか?」
「興信所に頼めばいいじゃない」
しれっと金を積むことを宣言するお母さん。予想の内だ。お父さんと離婚するときもその手口を使ったらしいから。
けれど……この調子じゃ、やっぱりわたしのことについても調べているに違いない。まあ、最大の地雷はお母さんと共有してるから問題もないだろう。
くぴくぴとお母さんがワンカップを干すのに合わせて、わたしもチューハイを啜った。ああ臭い。こんなものを好んで飲む人間の気が知れない。
昔から酒の臭いは嫌いだった。父親がいつも漂わせていた臭いだからだ。目の前の女のように、現実逃避のためにアル中になどなるものかと心から決める。
「ぷは……にしても面倒ね。なんなら貴女、包丁でも持って相討ちになってくれない? 葬式代ぐらいは出すわよ」
「あははー、てめえがやれよ」
304名無しさん@ピンキー:2009/10/26(月) 15:33:19 ID:egkU7mto
胡乱な目つきで睨み合う。酒が入りすぎたのか、急激に空気が悪くなりつつあった。
どんなに馴れ合ったとしても、所詮はクズ同士。信頼なんて望むべくもなく、貸し借りですら怪しい。そういう意味でも優香ちゃんを失ったのは痛すぎる。
いざというときの手駒と言うだけでなく、人間としての尊厳を守っているということが、わたしを安心させてくれていたのだ。普通兄相手に正攻法なんてしねーよ。
「そういえばカラオケ、あるんでしょ。どうするの、出るの?」
「出ないわけには行かないでしょー? かっきりきっちり楽しんできますよ」
出ないわけには行かない。ここでビビってしまえばお母さんが優位に立つし、何より自分が許せない。
情報という意味でも。お母さんが金を使って得た情報と、わたしが直接接触して得た情報を交換しなければいけないのだ。信頼など無いのだから現物取引しかない。
それにいくらハードルの高い試みでも、ここで怖じ気づくようではダーリンへの想いはその程度かということになる。ああ、まったくもって愛とは辛い。
初対面の、年上の、高校生の合コンに混ざる。考えるだに恐ろしい。ビビリ過ぎだと思う奴、今すぐカラオケにでも行って適当に乱入してこい。
「というかさ」
ぷしゅりと、お母さんが冷蔵庫から取り出したビールを開ける。おいおい何本飲む気だこのアル中。明日も平日ですよ?
「こんなまどろっこしいことやってないで、普通に義明に、別れろって命令すればいいんじゃないの」
「くたばれアル中……じゃない。ダーリンは友達付き合いのつもりなんだし、そもそも本当に友達付き合いかもしれないじゃないですか」
「ふうん、面倒ね」
あんたはな
自分の都合でダーリンを動かしてめちゃくちゃにしても、結局自分のためなんだからどうでもいいんでしょうが。わたしは違うんです。ダーリンが第一なんです。わかりますか? 愛ですよ。わからないとは思うけど。わからないからそんな人生なんですよね。
とか、罵りたいところを笑顔でこらえる。ここで機嫌を損ねれば、マジで直接命令に走りかねない。
そんなわけで、雨宮家嫁姑深夜会議は終了した。話が終われば酒飲みに付き合う意味もなく、リビングに放置してさっさと間借りしている部屋に戻る。
それにしてもわかってはいたけど、相談相手としては苦渋の選択すぎた。それもこれも優香ちゃんの失踪と、ダーリンに直接訴えられないせいだ。
けれども仕方がない。わたしはあの人に勝てないのだから。
305未来のあなたへ11.5前編:2009/10/26(月) 15:34:06 ID:egkU7mto

わたしはあの人には勝てない。そういう風にできている。
表面上は色々と、わたしがダーリンをやりこめているように見えるかもしれない。あるいはフランクな恋人関係に見えるかもしれない。
けれども実際のところの順列は揺るぐことなく、わたしが下で、あの人が上だ。
ダーリンが威張っているわけではない。というか実際のところに気付いてすらいない。わたしが勝手に這い蹲っているだけだ。
それがどうしてかというと、奴隷根性、としか言えない。
いい加減、社会の中で我を張って生きていくことに疲れたのだ。
確固たる自分を以て生きていくことは、素晴らしいとは思う。いや実際掛け値なしに、この世の中で個性を発揮する人たちのことは尊敬する。優香ちゃんもその一人だ。
でも、個性というのは排斥と表裏一体なのだ。片親がクズで、貧乏で、空気が読めないという因果で、イジメを食らったりして。慎ましやかに生きるためには必死で笑顔でいるしかなくて。
OK理解した。この世界は自由じゃない。
それでも、独りで笑っているのは限界だった。あらゆる場所を警戒するのは限界だった。そうしなければ生きていけないとしても、限界だったのだ。生きるために生きることが。
あの人がわたしを救ってくれたのは、そういう環境からだ。
『藍園晶さん。結婚を前提に付き合ってください』
あの瞬間に、わたしは、自立を捨てた。
自分だけの個性を発揮する人生を捨てた。あるいは、他人の支えとなるだけの人生を甘受した。
なんの権利も持たない代わりに、なんの責任も負わない。あの人の庇護下に入ることを、わたしは十全の満足を以て選択したのだ。
それは堕落だと優香ちゃんなら言うだろう。はいその通り堕落ですが、それが何か?
大体順序が逆なのだ。わたしは生まれてこの方ずっと放置されてきた。独りで生きてこなければならなかった。普通の人が親の庇護下から自立に憧れるように、わたしの場合は逆のパターンが起きただけだ。
自立などもうたくさんだ。過酷に空を飛ぶよりも、衣食足りた篭の中にいたいと願う鳥もいる。
それを一言で表すなら奴隷根性というのだろう。実に結構。わたしは篭の鳥でいい。いいや、あの人の持つ篭の鳥がいい。
わたしはあの人に勝てない、勝つつもりもない。争うつもりもないし、争えない。できることはただ慈悲に縋るだけだし、それで良い。
充分な満足を以て、わたしはあの人の奴隷になった。
だからこそ、この場所を奪おうとする敵がいるならば。わたしはあらゆる手段で自衛する。
306未来のあなたへ11.5前編:2009/10/26(月) 15:34:46 ID:egkU7mto
さて、カラオケ当日。土曜日。
ダーリン達は午前の授業が終わったら食事がてら街に繰り出し、その後カラオケ。わたしは午後三時までバイトがったので途中参加になる。
着ていく服については悩む必要もない。ダーリンに買ってもらった一張羅(水色のパーカーにジーンズ)だ。どうせ相手は制服だし、そもそも他に着ていく服もない。
最大の問題は敵地に踏み込む緊張感だが、これについては乏しいコネの残りを駆使して根回しを行っておいた。
すうはあ、とボックスの前で深呼吸をする。準備は尽くした、あとはアドリブあるのみだ。
中に入ること自体はカラオケのバイトで幾度となく繰り返している。扉から漏れる曲の合間を聞きわけて、中に入るタイミングを計る。
ぐい、と扉を開いた。
途端、溢れてくるBGM、お喋り、こもった匂い、そんなものが押し寄せてくる。
入ると同時にざっと人数を確認する。男四人、女三人、思ったよりも多い。まあ増やしたのはわたしだけれど。
視線が集中してくる。震える背筋を隠して、客商売のつもりで愛想笑い。男性二人が真っ先に声を上げた。
「あ、晶ちゃん。こっちだよ」
「おー、やっと来たか。待ってたぜ」
「ちーっすお待たせしました。義明さん、柳沢先輩」
ソファの一角に座った二人にぱたぱたと手を振る。一人だけ制服の違う柳沢先輩だけど、きっちりその場に溶け込んでいた。合コン大好き人間だなあ。
言うまでもなく、これがわたしの打った手だった。敵地に踏み込むリスクを減らすには味方を増やせばいい。彼はダーリンとわたしの仲も知っているのでいい牽制になるだろう。
ほんとは榊先輩を誘ったのだが、例によって死にかけてたので柳沢先輩にお鉢が回ってきたのだった。まあ適材適所ですな。
あちこちに頭を下げながら、ダーリンの横に座ろうとする。空いていない。
ぱちりと、ダーリンの横に座る女子高生と真正面至近距離から目が合った。肩で揃えた薄い茶髪、中肉中背、結構可愛い。

こいつだー!
「はじめまして、橘雪菜です。いつも雨宮君から惚気は聞いてるよー。晶ちゃんでいい?」
にこりと笑って、朗らかに屈託無く、橘雪菜が自己紹介した。その場をどく気配はない。
わたしも笑う。やや口元が引きつっていたかもしれないけれどご愛敬だ。
「ちーっす。藍園晶です。晶ちゃんで良いですよ。よろしくお願いします、橘先輩」
「うん、よろしくね。私のことも雪菜ちゃんでいいよ?」
「いやいや、流石に先輩ですからー。じゃあ橘さんで」
「えー、気にしなくていいのに。可愛いなあ、晶ちゃん」
「…………」
「…………」
一瞬空気が停まった。狭い道ですれ違おうとして、お互いに同じ方向に足を踏み出してしまった時のような、気まずい雰囲気。橘さんは座ったままだ。
けれどそれも一瞬で、よいしょと横にどいて座るスペースを作ってくれた。わーい、とすっぽりとはまり込む。
そのままダーリンにしがみつこうとしたら、反対側から絞められた。
「やーん、ほんとに可愛いー! ちっちゃーい! ほそーい! ねえ雨宮君、この娘持って帰っていい?」
「ぐほうっ、しまっ、ぎぶぎぶ!?」
「えー、困るよー。あ、橘さん。なんか晶ちゃんが苦しがってるから程々にね」
ダーリンの取りなしで背面ベアハッグから解放されたわたしは、ぜえはあと息をついた。
油断した。まさこここで殺しに来るとは! しかも胸も触られた気がする、セクハラだ! ちっちゃいってどういうことだくおら!
ともあれわたしは小動物が避難するように、そそくさとダーリンの膝によじ登る。股の間に腰を下ろすと頭を撫でてくれた。わふわふ!
その一連の動きを見て、柳沢先輩が呆れたような声を上げる。
「お前等仲いいなあ。そのまま結婚しちまえよ」
仕込みキター! ナイス柳沢先輩。
「えへへへ。言われなくてもその予定っすよー」
「えー! 雨宮君って雪菜と付き合ってたんじゃなかったのー!?」
案の定、女子モブから黄色い声が上がる……って、普段どういう付き合いしてんじゃ!
ぱたぱたと手を振りながら橘さんが否定する。
「だから言ったじゃない。そんなんじゃないってば」
「えー。だって仲良いしー」
「普通だよ普通〜」
キャピキャピとした女子高生同士の会話。く、割り込めねえ……
まあ、誤解も解けたようだしこれはこれでいいか。
ところで柳沢先輩は、ダーリンを除いた男連中とひそひそ話をしているわけだけど。どうせまた下らない打ち合わせをしてるんだろうなあ。
307未来のあなたへ11.5前編:2009/10/26(月) 16:05:59 ID:egkU7mto

ともあれその後は、無難に合コンは過ぎて行った。合コンというより、ほんと友達同士でカラオケに来ただけみたいだけど。
わたしは例によってアニソンオンリーで時々ダーリンとデュエットしていたわけだけど、驚いたことにアニソンチョイスの人が他にもちらほらいた。
え、アニソンブーム来てるの? と世間に疎いわたしは驚いたりもしたけれど、どうやらその手の人間が多めに来ているだけみたいだった。
この合コンで幹事をしているのは橘さんのようなので、彼女がチョイスしたのかもしれない。そーするとわたしも単にアニソン要員ってことなんだろうか。
ちなみに橘さん自身はポップをメインに当たり障りのない歌のチョイスで、非アニソン派のバランスを取っているみたいだった。
そうして予想よりははるかに穏便に、合コンは過ぎて行った。
ダーリンが歌っている間。橘さんと少し、話もした。
「ねーねー晶ちゃん」
「な、なんすか?」
「晶ちゃんって一個下だよね?」
「ういっす。まあ高校は通ってなくてフリーターっすけどね」
「どこで働いてるの? 今度行っていい?」
「今のところ商店街の肉屋と南のカラオケっすけど。いや遊びに来られても……」
「えー、いいじゃなーい。私晶ちゃんが働いてるところみたいなー」
「ま、まあ客としてきてくれるならいいっすけど。見ても面白いものじゃないっすよ?」
「でも友達が働いてるってだけでも新鮮なものだよー。そういえばお肉屋さんって何してるの?」
「えっと、まあモノをスライスしたり合挽きにしたり。あとコロッケやメンチカツも作ってますよ」
「へー、おいしそー! やっぱり今度寄らせてもらうね」
「はあ、まあ毎度ありがとうございます」
「あ、それとそれと。はいこれ、私のメアドと番号ね」
「ああいやその、すみません。わたし携帯持ってないんで……」
「うん、雨宮君から聞いてるよ。けど私はこれからも晶ちゃんとお話ししたいからさ」
「そ、そうっすか?」
「だから気軽に掛けていいからねー」
そうして橘さんはにこりと笑った。
あれ……いいキャラ? いいキャラなの?
308未来のあなたへ11.5前編:2009/10/26(月) 16:06:32 ID:egkU7mto

カラオケも円満に終わり、柳沢先輩及び他校の生徒とお別れした。
わたしとしては最悪、あの狭い個室で修羅場(刃傷沙汰にあらず)を起こすつもりだっただけに、拍子ぬけもいいところだった。
けれども油断は禁物だ。何しろ彼女は、今わかってる範囲だけでも、わたしの持っていない部分がありすぎる。
ダーリンの同級生で、同じ高校に通っていて、人付き合いがよく、プロポーションも普通に良い。
対してわたしは……まあ、その正反対だと思えば手っ取り早い。
しかもその上、共に過ごす時間帯はあちらの方が圧倒的に多い。わたしがダーリンと過ごす時間なんて平日3,4時間がいいところだ。
優香ちゃんの言葉を借りるなら『デメリットの付随する相手をわざわざ選ぶ必要性はない』ということだ。その理論はとてもよく理解できる。
もちろんわたしの心配しすぎである可能性も高い。自分より優れた人間を全てぶっ殺すような真似はできないし、ダーリンとの間には繋がれた縁と積み重ねた時間がある。体の関係はまあ追々ということで。
実際会って話してみれば、彼女は概して気の良い人間だった。わたしに敵意をぶつけるどころか、はっきりとした好意を示していた。あんなに可愛がられるのはダーリンを除けば初めてかもしれない。
まんざらでもなかった。一体ダーリンは高校で、どんな話を橘さんに吹き込んだんだろう。
ああ、そうか、もしかして。
「どうだった? 今日は」
「喉の調子はまあまあでしたね。一応ポップも一曲仕込んできましたけど、披露する必要もなかったみたいで」
「そうなんだ。今度見せて欲しいな」
「はいはいはいはい喜んで。二人きりで夜のカラオケ、ダーリンのマイクを熱唱とかでもいいですよ」
「?」
「すかった下ネタはさておき。でもやっぱり知らない人がたくさんいるとキンチョーしますね」
「そっか、頑張ったね」
なでなで
「えへへー」
「橘さんはどうだった?」
「んー、まあ普通にいい人じゃないですか? あと、ものすごい抱きつかれたんですけど。ダーリン一体どんなふうに話してるんですわたしのこと」
「いや、あはは。写真とか見せたら是非会いたいって言われててさ」
「えー、じゃあ元からわたしは誘うつもりだったんですかー? 酷いですよ罠に嵌められました!」
「ごめんごめん」
なでなで
「なーご。許します」
「うん、ありがとう。それでさ、橘さんがこれからも晶ちゃんと遊びたいって言ってたけど。どうしようか?」
「……………」
優香ちゃんがいなくなってから二カ月ほどが経過している。
わたしはただ一人の友達を失った。
そのことに対して憤って、行方を捜して、けれどそれらは全て無駄になって。ダーリンはいてくれたけど、わたしはやっぱり寂しかったのだ。
自分を形作る世界の領域が、ごっそりと削れた喪失感。元々からして狭い世界だっただけに、失われた範囲は大きい。
この人はそれを見かねて、わたしの友達になってくれそうな人を、探してきてくれたのだろう。
勿論、優香ちゃんの代わりなど誰にもできない。
それにわたしは、この人さえいてくれたなら生きていける。
それでも、思いやりへの感謝と、橘さんへ抱いた幾ばくかの好感と、胸に抱えた空洞から。未知への恐怖を押しのけて、わたしはこくりと頷いた。

「はい、いいですよ」
「ん、よかった。きっと、いい友達になれると思うよ」

あの人は笑った。大切な人の幸せを願う、底抜けに純粋な笑顔だった。
309未来のあなたへ11.5前編:2009/10/26(月) 16:07:23 ID:egkU7mto





それでも、私には
・・・
私の……
私の両親は、ひどく見栄っ張りな人たちだった。
本当は貧乏なのに、見栄ばかり張っていて。外面を保つために躍起になって。
お金もないのに無理をして高いマンションを借りて、外車を買って。
もちろんそんなお金はないから、借金をしてやりくりして。
まるでそのためだけに生きているようで、私はそんな両親が大嫌いだった。
縁を切れるのなら切りたかった。そうして心を隔絶して、私は自分を守ってきた。
あの人達は見栄だけを気にしているから、だんだん家族も壊れてきて。
夫婦喧嘩はしょっちゅうだし、子供にも手を上げていた。
そこに借金も押し寄せてきて……
何かあれば世間への愚痴、自分たちを取り巻く状況への愚痴。怒って、怒鳴って。
物事が上手くいかないことのすべてを、自分以外のすべてに求めずには居られなかったんだろう。
自分の親のことながら、この人たちは馬鹿なんだなって思った。
この人たちは自分の弱さをどうやっても認められない、そういう呪いを持っているのだ。
だって、借金も、家族に笑顔がないのも、全部自分たちのせいなのに。
・・・
結局あの人たちは、その呪いで自滅した。
私は絶対にあの人たちみたいになりたくなくて、怒鳴り声から呪いが伝って感染しそうで。
あの人たちに繋がる、あらゆる全てを閉ざした。
それでも私には、それでも私には
・・・
呪いに追いつかれたくなくて、私は必死で世間に溶け込もうとした。誰かにとって必要な人間になろうとした。
小学生の時に必要だったのは、足の速さと、誰かの意見に上手く協調することだった。私には幸運にも、それらを満たすことができていた。
それから月日を重ねて必要なものは色々と変わっていったけど、私はその度に人の中にいられるよう努力した。今必要なのは、メールをこまめに打つこと、色々な話題を合わせること、八方美人であること、それから演技力。
だけど、だけど。
たくさんの知り合いが私にはいるけれど、本当に心を許せる親友はできなかった。私のやっていることは、結局あの人たちと同じ、表面を取り繕うことだけなのだ。
呪いが迫ってくる。
・・・
それでも
それでも私には、それでも私には……たった一人だけ、救いを望める人がいた。
ずっと昔から、私はそれだけを心の支えにして生きてきた。
310未来のあなたへ11.5前編:2009/10/26(月) 16:08:41 ID:egkU7mto
前編ここまでです。
後編は近い内に投稿する予定です。それでは。
311名無しさん@ピンキー:2009/10/26(月) 17:08:29 ID:HJRK6/Lh
晶がんばる超がんばる
しかしゆかっち不在の間に泥棒猫か・・・
312名無しさん@ピンキー:2009/10/26(月) 17:54:15 ID:HBrY5j6A
GJ!
晶ちゃんただでさえ両親の始末がついてないのに大変だなー
313名無しさん@ピンキー:2009/10/26(月) 18:57:32 ID:ja3Hc0Md
>>310
GJ!
しかし泥棒猫の矛先は違うほうに向いてそうだな
晶の写真を見て会いたいと言い出したってことは……
314名無しさん@ピンキー:2009/10/26(月) 19:02:07 ID:UTSN0r/q
晶ちゃん好きだわー。しかし展開が読めない、後編も期待して待ってますよ。
315名無しさん@ピンキー:2009/10/26(月) 19:10:48 ID:wZ9c1hTr
GJ! 晶ガンガレ!
このまま良い人でしたオチにならないだろうか
やっぱりダーリン狙ってやがったなと思ったら
それは勘違いで普通に良い人でしたみたいな
316名無しさん@ピンキー:2009/10/26(月) 19:33:01 ID:sM2+8T98
GJ
本筋も脇道も気になるぜ
317名無しさん@ピンキー:2009/10/26(月) 23:32:17 ID:hb1vhxfx
GJ!
何というか、晶ちゃん色々な意味で暴走しすぎw
それにしても、この世界のキモ属性の人達は、人間として必要なものの一部が尽く抜け落ちてるな
家族愛だったり両親の仲だったり善悪の判断基準だったり…

ところで、健太に付き添ってた見慣れない女性ってもしかして…?
318名無しさん@ピンキー:2009/10/27(火) 00:34:45 ID:IuPj2VDx
わたしです^o^
319名無しさん@ピンキー:2009/10/27(火) 01:46:24 ID:zhC8e06y
変な電波を受信してしまった。
『義理の兄妹として育てられたが実は本当の兄妹でした⇒妹にのみバレる⇒妹覚醒⇒両親を■す(義理親だと思ってたので躊躇なし)⇒兄と2人暮らし⇒食事に媚■混入⇒妹告白⇒兄は義妹だと思ってるのでそのままセクロス』

エロゲにある『本当の兄妹として育てられたが実は義理の兄妹』の逆パターン(キモremix)、てこと。
だれか死ぬほど文才ない俺のかわりにSS書いて〜
320名無しさん@ピンキー:2009/10/27(火) 07:42:12 ID:G+okggNc
>>319
他人任せにしてないで自分の力で未来を切り開いてみたらどうだい?
ほんの少し努力すれば書く楽しみも味わえるようになってくるんだぜ
321名無しさん@ピンキー:2009/10/27(火) 09:21:24 ID:qhFzLffP
まつりパニックっていうエロマンガなんだが
とてもかわいいキモウトでオススメ
322名無しさん@ピンキー:2009/10/27(火) 10:30:03 ID:10nIqKF+
>>321 あれって義妹じゃなかったけ?
323名無しさん@ピンキー:2009/10/27(火) 10:45:13 ID:WD6T13yW
いきなりオススメと言われてもな…どんなキモウトかもわからん
324名無しさん@ピンキー:2009/10/27(火) 11:30:54 ID:AD7R7fE+
>>319
検索キーワード「てぃーぽっと小説館」
325名無しさん@ピンキー:2009/10/27(火) 19:35:30 ID:Xx+Hr2o+
なんか安直に殺人に走ってる作品が多すぎる気がするわ
326名無しさん@ピンキー:2009/10/27(火) 20:09:14 ID:0ety4jmm
>>325
キモさを出すのにそれが一番手っ取り早いからですかねぇ。
単に近親上等の姉妹というだけだと「キモさが無い」と叱られそうで…
327名無しさん@ピンキー:2009/10/27(火) 21:13:12 ID:m1jjj07q
殺人してでも兄、弟を手に入れたいと思う愛の深さがキモイのであって
殺人自体にそういった要素はないんだよな…
だから近親上等なだけでも俺は十分だと思う
328名無しさん@ピンキー:2009/10/27(火) 21:53:36 ID:M0gC86cQ
確かに重要なのは狂愛であって、殺人は手段の一つでしかないな
兄や弟を愛する以上の究極の禁忌という意味でわかりやすいので
自然と定番パターンの1つになってるんだろうけどね
329名無しさん@ピンキー:2009/10/27(火) 23:37:02 ID:zhC8e06y
ためらいなく殺人に走るキモ姉妹はいるのに、ためらいなく逆レイプに走るキモ姉妹って少ないな。

なぜ『最終手段』としての順位が『逆レイプ>殺人』なんだ……
330名無しさん@ピンキー:2009/10/27(火) 23:40:26 ID:oH5bbFDC
そりゃ、向こうから自発的に抱いてもらいたい…と乙女なことを考えてるからさ
331名無しさん@ピンキー:2009/10/27(火) 23:50:16 ID:zhC8e06y
乙www女www
どの口がほざきやがるんだ図々しいwww
てかキメェよwwww
332名無しさん@ピンキー:2009/10/27(火) 23:51:27 ID:GRUjIzot
ID:zhC8e06y
なにこいつ‥草いな‥
333名無しさん@ピンキー:2009/10/27(火) 23:54:50 ID:0ety4jmm
作戦目的が「愛されること」なら、一般的には逆レイプは
作戦目的と合致しない。障害となる人物の排除は合致する。
そういうことではないか?
334名無しさん@ピンキー:2009/10/28(水) 00:03:05 ID:oH5bbFDC
てか、そこらへん優香さんがちゃんと説明してくれてたよね。
335名無しさん@ピンキー:2009/10/28(水) 00:05:13 ID:f6IHZeaX
>>333
既成事実作ってそれで縛り付けてじっくり洗脳する手段なら逆レもありだと思われ

只これだと作戦目的が全く違う物になるな
336名無しさん@ピンキー:2009/10/28(水) 00:29:38 ID:KLbZOxdL
>>335
逆レ後、数時間で堕ちちゃう兄もいたしけっこう有効そうだよな
337名無しさん@ピンキー:2009/10/28(水) 03:27:09 ID:UwiJP3ry
>>310
GJ!!雪菜キター
晶サイドも混沌としそうだ
338名無しさん@ピンキー:2009/10/28(水) 21:44:35 ID:FUgS8Mc7
「やっぱり血は争えない」に登場したどう見てもキモ姉の羽村さんサイドのやつを書きました。書いているうちに
どんどんキモくなっていきました。吐かないように気をつけてね☆
339血は争えない〜番外編〜:2009/10/28(水) 21:46:26 ID:FUgS8Mc7
今私は大学帰り。
何よ!!!俊樹のバカ……。
『あはは、俺、女子になんだか避けられてるみたいんだよ。話しかけてきてもすぐどっか行っちゃうし……。
バレンタインも高校に上がってからはなんも貰えないしな〜。モテ期は中学で終わったんじゃね?』
なぁんてぬかしてたくせにぃ!!
私の弟、俊樹。彼は本当にかっこいい。いや、姉補正とか抜きにしてもかなりの美少年。イケメンとかそういうレベル
とは違う。しかしなんとも罪なことに本人にはまるでその自覚がない。朝の挨拶で彼が振り撒く屈託のない笑顔、
なにか思いついた様な悪戯気味に緩めた口元、テストの日の朝見せる眠たそうな眼...et cetera
そんな彼が見せる色んな表情、仕種。全てが周りの女を彼への恋に落としていく。
しかし当の本人は恋もまだ知らない、初な少年。……ほんとたちの悪い弟でしょ?

ガチャン

あ、今日まであの子試験だったのよね。早く帰ってきてる。うふふ。

『ただいまぁ。俊樹ぃ、帰ってるの〜?』

「…………。」

むっ、返事がない。

『俊樹ぃ〜!?帰ってるんでしょ〜!?』
トントントントン

私は弟の部屋のある2階へ上がる。
全く!お姉ちゃんが帰ってきたっていうのにぃ!

アン、ダメッイッチャウヨ〜

『何ごとっ!?まさか俊樹のやつ……』

バタンッ!

『ちょっと!俊樹!!何やってるn』

「うわっ!ねっ、姉ちゃん!なんで……」

PC「あんっ!〇〇君のぉ、硬いのがぁ私のしょひょまくぅ、ブチブチってひてるぅ〜!……ずっとぉ、〇〇君とこうなりたいって思ってたのぉ!」

『…………。』

「あはは……。えへへ……。」

PC「いいよぉ?膣内に出していいよ〜!〇〇君、愛してr」
ブチンッ!

『なぁにやってんの?俊くん……?ピキピキ』

「いや、これは、その……だな、おさっ、幼なじみとの愛の……」

『なぁにが幼なじみよっ!!!俊くんに幼なじみの女の子なんていないでしょ!!
……またこんなえっちなゲームやって!!不潔っ!』

「いや、これは友達から借りただけだよ。それにこれは泣きゲーといってな、感動的な」

『そんなの関係ないわよ!俊くんの変態☆』

「はぅ……」

340血は争えない〜番外編〜:2009/10/28(水) 21:47:02 ID:FUgS8Mc7

何よ!ゲームの中の女とあんな……。でも良かった〜。部屋に女でも連れ込んでるんじゃない
かと心配しちゃったぁ。……ううん、俊くんに限ってそんな事ないわね!弟の事信じられないなんて姉失格よ。私のバカバカ。

『んもう!……今回は大目に見てあげるわよ。晩御飯作るの手伝って?』

「オッケー!いやぁ、理解ある家族の中でこそエロゲは楽しめるのだよ。にひひ。」
バシッ

『馬鹿な事言ってないで早く来なさい!……それと手洗ってよね。』

「はいはい。お・姉・さ・ま。にひひ。」

『もうっ!』




〜大学〜

『って訳でうちの弟ったら試験終わりに家直行したと思ったらえっちなゲームやってたのよ!?ほんと信じられない!!』

姉友1「あはは。まぁ大目に見てやりなさいよ。そういう年頃なのよ〜。」

姉友2「ねえねえ、それはそうと今度加奈んち行ってもいい?」

加奈、私の名前。ちなみに名字は羽村。

『駄目駄目!うちにはあの馬鹿弟がいるんだから!絶対駄目よっ!』

姉友2「そんな事言っちゃって〜。ほんとは弟君の事かわいくてしょうがないくせに〜。
加奈の弟君、俊樹君だっけか。すんごいイケメンなのよ。うちの高校では二大イケメンの一人だったんだよ〜。」

姉友1「へぇ〜!凄いね!会いたぁい!超会いたい!んで二大イケメンのうちのもう一人は?」

姉友2「ふふふ。実はそいつ、うちの大学にいるのよ〜。ほら、あそこにいる三枝君ってやつよ。」

姉友1「あぁ、三枝君だったの?私のサークルで三枝君と同じ学部の子達の間ですっごい
噂になってるから知ってるよ、超イケメンでしかも性格も良くて、彼は天使の生まれ変わりだって。」

姉友2「なんじゃそれは。でも高校の時も凄い人気だったよ。何故か誰とも付き合わなかったみたいだけど。そういえば加奈も同じ学部だよね?
もし二人が付き合ったりでもしたら日本一のイケメン−美人大学生カップルになれるわよ?」

『あんなへなへな男、興味ないわよ。みんなに良い顔してるだけよ。
……それに、多分もう三枝君は予約済だと思うわよ。うふふ。』

美咲ちゃんのあの眼。あれは完全に私のする眼と同じだったもの。三枝君も妹泣かせな人ね。ふふ。

姉友1「え〜残念だね〜。」

姉友2「予約済!?私の知らない情報をどこで入手したの!?ってか誰の!?」

341血は争えない〜番外編〜:2009/10/28(水) 21:47:34 ID:FUgS8Mc7
『ひ・み・つ。バラしたら私殺されちゃうかもしれないもん。』

いや冗談抜きで。

姉友2「むむむ……。んじゃ今日は加奈の家で弟君と交流会としましょう!」

姉友1「いいねいいね〜。」

『駄目だったら!うち片付けるのめんどいし来んなぁ〜!』

姉友2「うわ〜”弟の事は、お姉ちゃんである私が飢えた雌ハイエナ達から守らなきゃ!”とか思ってるんでしょ〜?ブラコ〜ン。』

姉友1『ブラコ〜ン。」

『そんな訳ないでしょうがっ!!!……ていうか自分達の事、雌ハイエナとか言っちゃってるし。』

姉友1&2「うるせ〜!」

まぁ私はブラコンなんかな訳、ないに決まってるんだけど。寧ろそれ以上。




〜自宅姉部屋〜

ふぅ、なんとかあの子達をせき止められたわ。まぁ悪い子達じゃないから私も友達やってるんだけどね。
にしても美咲ちゃんには頑張って欲しいわね。でも今は俊くんの事よっ!
……全くぅ!私がいたころはまだ雌豚どもを監視できたのに。
彼の美少年っぷりは筋金入りだ。小学校、中学校と区内の別の学校にすらファンクラブができる始末。
いやいや、幼稚園の時から凄かったか……。まぁ私は俊くんがこの世に生を受けた瞬間に彼への
恋に落ちたのだけれど。しかし当人にはまるでその自覚無し。今なんてえっちなゲームすらやってるし。この前なんて、

「糞!なんでエロゲの主人公にはかわいい義妹にかわいい幼なじみに美人の担任がいてモテモテなの に、俺には居ないんだよ!」

とか吠えてたし……。ていうか姉は?どうして姉が入ってないのよ!?って突っ込みたくなったわ。
全くぅ!ほんとに全くぅ!あの子には姉である私がいるっていうのに!……私だって昔から結構モテるんだぞ。
年に10回は告白されるし、ナンパだって数え切れないくらいされてる。自分で言うのもなんだけど顔立ちだって
お母さん譲りで良い感じだし、胸だってかなりある。周りの男、というよりは雄豚達が私に近づいてくるのも一応は納得だ。
しかしあいつらゲスは私の身体や顔だけが目当てで近づいてくるんだ。俊くんは違う。時々へらへらしてる事もあるけど至って
真面目。そして私の事を姉としても女性としても尊敬してくれてる。そんな大切な弟と糞豚達が比べられる訳がない。

342血は争えない〜番外編〜:2009/10/28(水) 21:48:17 ID:FUgS8Mc7
俊くぅん……早くお姉ちゃんを俊くんのものにして欲しいなぁ……。




〜深夜〜

にゅふふふふ。今日も俊くんのお布団に侵入にゃのら〜。

「スピー……スピー……」

『かわいい寝顔でちゅね〜。にょほほほほ。俊くんのこぉんなかわいい寝顔顔はお姉ちゃんである私しか見る事を許されないんだからぁ。』

ンチュッ

私は最愛の弟の唇をついばむ様にキスする

『うふふ。俊きゅんの初めての唇だよぉ?チュッチュッ! お姉ちゃんのキス、どう?……お姉ちゃんも俊きゅん
とのキスが初めてにゃんだからぁん。いけない子、実の姉をこぉんなにメロメロしちゃって、ファーストキスまで奪うなんてぇ〜。にゅふ。』

もうこんな事を続けて4年くらいかしら。ある日、確か俊くんが中2ぐらいのときかな、同級生に告白されてそれを
すっごい嬉しそうな顔で私に報告してきた。俊くんには小さい時から

『何かあったら必ずお姉ちゃんに報告しなさい。』

とおめつけしていた。ちっちゃい時の俊くんは

「うんっ!わかったよ、お姉ちゃん!」

なぁんてかわいい顔で応えちゃって素直だったのよ。……あぁ今思い出しただけでも濡れてきちゃう程きゃわいいんだからぁん!
おっと話が脱線した……。
そんな嬉しそうな俊くんを見ていて耐えられなかった私はすぐに俊くんに告白してきた女の存在を抹消。(え?何したって?それは
……ひ・み・ちゅ!これを読んでる皆さんなら容易に想像できるんじゃないかしら?)しかしそれ以来どうしようもなく収まらない、
言われもないような焦燥感と、かわいい私だけの弟が誰かに取られるんじゃないかという気持ちに駆られてしまった。その結果がこれ。

『さぁて、俊くんの逞しいおちんちんも可愛がってあげりゅう〜。』

いつもの様にパジャマをずらし俊くんのモノを取り出す。

『チュッ!んふふ。俊くんのおひんぽさん、こんばんはわぁ。今日もお姉ちゃんがたぁくさん愛してあげるんだからね〜。ンチュッ』

俊くんのモノを右手で扱きつつ先っぽにキス。それと同時に左手は私のすでにグチョングチョンなあそこをまさぐる。

『んにゃ、俊きゅぅん。ほらほらお姉ちゃんのあしょこ俊くんのせいでこんならんらよぉ?
……うふふ。オマンコきゅんきゅんさせられちゃってまひゅぅ〜。』
343血は争えない〜番外編〜:2009/10/28(水) 21:48:59 ID:FUgS8Mc7

チュパチュッチュパチュパ

『先っぽから俊きゅんのえっちなネバネバ出てきたよぉん。ふふ、お姉ちゃんで感じてくれてるんだね?嬉しいぃ!』
ジュルッ!ゴクン!

『ぷはぁ。……にゅふふふ。おいひいよ俊きゅんのえっちなネバネバお汁ぅ。ますますおひんぽもガチガチになってきらぁ。』

チュパチュッンチュッチュボチュボ!

『もうこんなにおっきくしちゃって凶暴過ぎだよぅ、俊きゅんのおひんぽぉ////
どうせこんな凶暴なので私のこと、あなたのお姉ちゃんのこと襲ってやろうとか思ってるんでしょ〜?
まだ乙女のお姉ちゃんのあしょこをこぉんなにしちゃっておいてすっかり発情させといてから、
この凶暴なおひんぽさんをお姉ちゃんのきっつきつの処女マンコにぐっさり挿入しちゃうつもりなんでしょぉ〜?』
チュッチュッンチュッチュパチュパ

『それでお姉ちゃんが、

『痛い!痛いよぉ!もっと優しくしてよぉ!?……初めてなんだよ?お願い……優しくして。グスン』

ってどんなに懇願しても俊きゅんは

「うるせぇ!!処女のくせにこんなにぐちょぐちょにしといて、優しくして、だぁ!?あはははは。笑わせるぜ!
……もっとガンガン突いてやるからな!そんで突かれまくってすっかり俺のモノにメロメロにされて降りてきた、
処女のくせにどスケベな姉ちゃんの子宮にたっぷり注いでやるからなっ!」

って全然許してくれなくて、私が

『駄目ぇ!駄目だよ!絶対駄目ぇ!妊娠しちゃう!俊くんの赤ちゃんできちゃう!私達姉弟なんだよ!?ほんとに駄目なんだからぁ!』

ってどんなに許しを請うても俊くんは

「はぁ!?毎晩毎晩弟のチンポしゃぶりながら処女マンコまさぐってたくせに何言ってんだよ!?
……気付いてないとか思ってた?あはははははは!バァカ、全部気付いてたんだよ〜残念でしたぁ〜!処女のくせに
ド淫乱な姉貴には弟の子種で孕んだボテ腹がさぞお似合いだろうなぁ!?……ほらイクぞっ!!しっかり孕めよな!?ビュッビュッビュッ!」

344血は争えない〜番外編〜:2009/10/28(水) 21:49:34 ID:FUgS8Mc7
って濃ゆぅい精液、子宮いーっぱいに注がれちゃって、もうお姉ちゃんのこと完全に俊くんのものにしちゃうつもりなんでしょ〜?』

ビクッビクッ

『んん〜。ふふ、もうイキそうなんだね?お姉ちゃんもイクよぉ。いいよ〜お姉ちゃんが全部呑んであげるから
お姉ちゃんのお口にびゅっびゅっしてね?一緒にイこうね?んふふ。あぁん、イクっ!イクイクイクぅぅうううう!』
ビュッビュクッビュクッ!ビュッビュッ!

『ハァハァハァ……。んふふ。ほぉらぁ、お姉ひゃんのおふひにひーっはいへはよぉ〜。』
ゴキュッ!ゴクン

『んふぁ……ごちそうさまぁ!すっごい匂いぃ。お姉ちゃんほんとに発情しちゃうぅ〜!んふふ。早くお姉ちゃんの事貰ってね?俊くん?』




〜翌朝〜

母「加奈、俊樹の事起こしてきて。あの子毎朝毎朝起きれないんだから。ほんとしょうがないわね。」

『うんわかった〜。』
トントントントン

2階へと上がる途中、昨夜の弟との愛のまぐわいを思い出し、またときめいちゃった☆
……まぁ俊くんが起きれないのは私が毎晩毎晩、精根吸い取ってるからなんでしょうけどね。てへっ。

『俊樹ぃ〜早く起きなさい!起きないとお姉ちゃんがキスしちゃうぞ〜!』

「んにゃあ……それだけは勘弁れす……。ふぁああ……眠い……。」

むかっ!昨日はあんなにお姉ちゃんの唇に貪るように吸い付いてたくせに!

『早くしなさいよね!遅刻するわよっ!?うりゃ!』

私は俊くんの朝の生理現象+昨晩の御奉仕の効果ですっかりいきり立っていたモノを踏ん付けた。

「んぎゃあぁぁ……。姉ちゃん……。酷いれすぅ……ガクッ」

あら、また寝るの?口から泡吹いてるけど。えへへ。


今日も良い日になりますように。

345名無しさん@ピンキー:2009/10/28(水) 21:51:05 ID:FUgS8Mc7
終わりだす。やはりキモ姉こそ至高。
346名無しさん@ピンキー:2009/10/28(水) 22:00:23 ID:jfxCbeJu
おお、妹派の大攻勢に対する姉派の反攻作戦か?
とにかく堪能させていただきました。
347名無しさん@ピンキー:2009/10/28(水) 22:39:43 ID:7yL4ne0t
この姉は今すぐ入院させるべき
348名無しさん@ピンキー:2009/10/28(水) 23:40:00 ID:lv5/xcKu
我々の業界ではご褒美です
349名無しさん@ピンキー:2009/10/29(木) 00:27:06 ID:gZP+PFOQ
いい姉じゃないか
350名無しさん@ピンキー:2009/10/29(木) 00:56:16 ID:B9BVP/v5
キモ姉派の俺大歓喜
とても良いキモ姉でした。GJ
351名無しさん@ピンキー:2009/10/29(木) 09:52:47 ID:bdWzbNrW
>>345
もうなんというかGJ。
近年稀にみる、キモさ特化型のお姉ちゃんでした。
352名無しさん@ピンキー:2009/10/29(木) 11:22:11 ID:wowpFaSB
>>319について少し考えてみた。

> 『義理の兄妹として育てられたが実は本当の兄妹でした⇒妹にのみバレる⇒妹覚醒⇒両親を■す(義理親だと思ってたので躊躇なし)⇒兄と2人暮らし⇒食事に媚■混入⇒妹告白⇒兄は義妹だと思ってるのでそのままセクロス』

という流れだけど幾つか。
まず媚薬はいらないのではないだろうか。趣味も入ってくるけれど、兄は義理だと思ってるのだから普通にアタックすれば落ちる可能性も高いと思う。
その方が見せかけ義理設定も生きると思うし、両親を■してるなら時間もたっぷりある。法律上義理なら結婚もできるし。
ただ。両親を義理だと思ってるから躊躇なく■、というのはどうだろうか。大切な物でも愛のためならためらいなく踏みにじれる方がそれっぽくないか。
根幹となる義理に見せかけて実は血縁設定だけど、これは幾つかパターンがあると思う。一番よくあるのは父親が浮気してできた子供、というパターンだろうか。
何にしろ義理として育てなければいけなかった理由付けが必要になる。

また、妹にのみ事実がばれるという状況も考えなければいけない。
単純に盗み聞きでもいいけれど、自分が考えたのは順序を前後して
『妹告白→受け入れられる→本当は実の兄妹と知らされる→妹覚醒→■→二人暮らし→結婚』
で、妹が両親に三つ指突いて「御義父様、御義母様、御兄様を私に下さい」しにいったところで事実発覚という状況。
ちなみに自分の脳裏に浮かんだのは何故か剣術居合物。

そんな感じでどうだろうか>>319
353名無しさん@ピンキー:2009/10/29(木) 13:04:15 ID:Yp1u9OoI
おおお…
こんな真剣にレスしてくれるなんて思わなかった。

剣術ものでもなんでもござれ、全裸でわくてか期待してます!
354名無しさん@ピンキー:2009/10/29(木) 14:14:29 ID:wowpFaSB
>>352自己レス
そんな感じで(書いてみたら)どうだろうか>>319
という意味です、自前は長編にかかりきりなので無理!
剣術云々はフレーバーなので気にせずどうぞどうぞ。
355名無しさん@ピンキー:2009/10/29(木) 14:47:45 ID:F1222/rq
 ビンから指で掬って直で舐めるぐらい、姉と妹は超が付く程のハチミツ中毒。
 家には大量にハチミツのストックが有った。
 その光景を主人公は、ちょっと気持ち悪く思いながらも、人の好き嫌いなので文句も言わなかった。
 しかし数日後、相次ぐハチ被害に、『世界同時ハチ全滅作戦』が敢行される。
 当然ハチミツも作られなくなり、家のストックもなくなり、ジャンキーだった姉妹は徐徐に情緒不安定に。
 見かねた主人公がなだめようとするが、荒れた姉妹に噛み付かれる。
 だがすぐに噛み付くのをヤメ、一心不乱に舐め出す姉妹。
 そうです。主人公の身体は世界で唯一人、体液がハチミツの味なのです。



みたいな話しを誰か!!
356名無しさん@ピンキー:2009/10/29(木) 16:34:50 ID:IYdpLDtV
>>355
旅行から帰ってきた両親が見たものは、リビングで主人公の股間をチュッパチャプスのように舐めしゃぶりくわえる娘たちの姿だった…

つーか兄弟が好きなんじゃなくて蜂蜜が好きなだけの姉妹やないかい
357名無しさん@ピンキー:2009/10/29(木) 16:41:15 ID:sZUE6RB7
いやいや、本当は主人公をペロペロしたいけど
我慢して代わりにハチミツを舐めてたということでしょう。
358名無しさん@ピンキー:2009/10/29(木) 23:32:28 ID:Mkbnnvpu
さて、ハロウィンが近い訳だが
キモ姉妹のネタとして使えないだろうか
359名無しさん@ピンキー:2009/10/29(木) 23:56:20 ID:4bCHBuFH
>>355
イロモネアでやっていたななめ45の全身キャラメル男みたいだな
360名無しさん@ピンキー:2009/10/30(金) 10:15:05 ID:QKjyVuDd
キモくなる娘ってほとんど美少女だったり美女だったりして萌えないから、容姿も性格もキモい娘が出てくる小説お願いしますフヒヒ
361名無しさん@ピンキー:2009/10/30(金) 13:06:46 ID:DmdKoIyl
>>360
よっぽど言われたいらしいな
はいお約束の

誰得?


普段は美少女なのに兄と二人きりだと変態性丸出しのキモウト化というネタは以前にあったな

自分が美人すぎて害虫が群がってくるのが嫌で
弟以外の前ではわざとキモブサを装ってる姉とか
アレンジネタも考えられるけど
362名無しさん@ピンキー:2009/10/30(金) 21:49:58 ID:Ityz0PFn
GJ!
363名無しさん@ピンキー:2009/10/30(金) 21:57:17 ID:QKjyVuDd
チンパンの妄想投下
364名無しさん@ピンキー:2009/10/30(金) 22:05:34 ID:QKjyVuDd
朝起きたら目やにやら鼻水よだれまみれのヒゲ生やした姉に「おはようっ♪」って顔ぐちゅぐちゅグチャグチャすり付けられて寝起きの生臭い口臭撒き散らしながら舌で無理矢理口ん中ねろねろんぢゅっんじゅって犯された後
365名無しさん@ピンキー:2009/10/30(金) 22:08:17 ID:QKjyVuDd
「弟君……キス上手…ふふっ」とか言われて
布団から出て立ち上がるといきなりスカートとパンツ脱いで風呂嫌いの三週間も洗ってないよっちゃんいか臭いまんこを顔とか頭皮に押し付けてきて
366名無しさん@ピンキー:2009/10/30(金) 22:13:15 ID:QKjyVuDd
ぐちっづちゅっぢゅずゅる「ああっ!いいぃっ!弟君の変態ッ!ド変態ッッ!弟君みたいな異常な性癖持った人受け入れてくれる娘なんて絶対に居ないよ!?だっ…あぅッ!だからね!?
367名無しさん@ピンキー:2009/10/30(金) 22:13:44 ID:QKjyVuDd
はあぁっ!お姉ちゃんがね!ッ?お姉ちゃんが恋人になってあげる!ずっとずっと弟君の性欲処理してあげるぅぅぅ!!なあ゛あ゛あ゛あ゛!弟君ぅぅん!……」
しゃああぁぁぁ

―「さあ弟君!一緒に登校しよ♪学校でムラムラしてもお姉ちゃんの事襲っちゃだめよ?/////」
368名無しさん@ピンキー:2009/10/30(金) 22:15:06 ID:QKjyVuDd
終わり
書き込める量の少なさに驚いた
369名無しさん@ピンキー:2009/10/31(土) 00:49:54 ID:Y0zY7fUT
何で書き込んだんだ?
PSPでももう少し書けそうだが…

…キモ姉・キモウトにPSPの中見られたらどうなるんだろうな?
例えば、フォトの所にエロ画像。音楽の所にエロゲのサンプルボイス等…が詰まっている。
履歴もアダルトサイトだらけ。 
370名無しさん@ピンキー:2009/10/31(土) 01:20:18 ID:4nrPK0za
改行してないから、とかじゃないのかな
371名無しさん@ピンキー:2009/10/31(土) 17:21:17 ID:f77DpIEb
>>358
trick or treat! 精液くれなきゃ無理矢理シちゃうぞ!
372名無しさん@ピンキー:2009/10/31(土) 17:27:37 ID:HKcM2I8/
おかしてくれなきゃいたずらするぞ!
373名無しさん@ピンキー:2009/10/31(土) 17:59:42 ID:ZrCm8i80
抱いてくれなきゃレイプしちゃうぞ!
374名無しさん@ピンキー:2009/10/31(土) 23:57:58 ID:N7aVbcSX
あれ……?
『傷』って完結したの?
375名無しさん@ピンキー:2009/11/01(日) 00:00:09 ID:K7eJj+jo
ちょっと遅いですがハロウィンネタ
キモ分少なめ
改行が見にくかったらすみません


「Trick or treat」

珍しく俺の部屋のドアをノックしたと思ったら、マイシスター、絢音よ。
何だイキナリ。

「とりっくおあとりーと?」

「そうよ、Trick or treat」

妹の言葉に脳内検索をかける。
該当件数ゼロ。役に立たない検索エンジンだ。
と言うか、英語だよな? 俺、英語出来ないんだよ。

「えーと何だっけか、それ」
「知らないのかしら? それならヒント。今日は何月何日でしょう?」

妹のヒントにも全く反応しない、俺の脳。
はて、10月31日? 芳賀玲子の誕生日か?
いや、そんな事知らんか。いつのゲームだ。

そういや、なんでコイツ家の中なのに帽子被ってんだ。
中世の魔女みたいな。
それに黒いローブも。

厨二病なのは知っているが……。
アレかな、また何かのアニメにでも感化されちまったのかな。

376名無しさん@ピンキー:2009/11/01(日) 00:02:42 ID:Bo1SqQz1
この前は、
『フン。私は悪魔《ディアブロ》の化身。この姿は仮の姿よ。
お前みたいな人間が話かけていい存在じゃないわ。わかるかしら?
まぁ、人間なんて下等生物にわかって貰おうなんて思ってないのだけれど』

なんて、言ってたし。
あんまりだったから、殴っといたけど。
最近の中学二年生ってこんなものなのかね。
俺が中二のときはもっと落ち着いていたけどなぁ。
こんなんで友達とかいんのかな。イジメられたりしてないのかな。
お兄ちゃんちょっと心配。

「何よ。答えなさいよ。せっかくこの絢音様がヒントを出してあげたと言うのに。
ハッ。まさか、答えられないの?
だとしたらとんだ低能ね。息をする価値もないわ」

前言撤回!
もう絶対コイツのことなんか心配しない。

と言うかなんで、答えられないぐらいでこんなに罵られなきゃならないんだ。

377名無しさん@ピンキー:2009/11/01(日) 00:05:04 ID:Bo1SqQz1
「へーへー、スミマセンネ。絢音様。
ちょっと息止めてるんで部屋出てってくれませんかね」

「仕方ないわね。低能の貴方に教えてあげるわ。心優しい絢音様に泣いて跪いて感謝なさい」

「人の話は無視か」

「そして、『ハァハァ、あ、絢音さま、ぼ、ぼ僕を踏んづけてくだしゃい、もっと強く打ってくだしゃいおねがいしましゅ』って涙と鼻水で汚くなった顔で懇願でもすればいいじゃない」

「お前割りと濃い趣味してんのな……」

『ハァハァ、あ、絢音さま、ぼ、ぼ僕を踏んづけてくだしゃい、もっと強く打ってくだしゃいおねがいしましゅ』の部分なんて迫真の演技だったぞ。

「勘違いしないで。私の趣味じゃないわ」

「じゃあ誰のだよ」

「貴方の趣味でしょう? 本棚の裏の『セーラー女王様とM男』とか。マゾ系のシチュエーションが多かったわ」


「べ、別にたまたまだぞ! たまたま買ったのがそういう……って、何で隠し場所知ってんだよ!」

「フン。アレで隠したつもりかしら?
ミジンコでももっとまともな隠し場所見つけるわよ」

いやミジンコには負けねーよ。
378名無しさん@ピンキー:2009/11/01(日) 00:08:31 ID:Bo1SqQz1
「いいか、絢音。いや、絢音さま。どうかこの事はご内密に」

言ってから気付いたが、コレじゃ俺がマゾみたいじゃないか。

マゾじゃねーよ俺。どっちかって言うとサドだよ? 本当に。いや、本当だよ?

「安心なさい。流石に私も身内が、女の子に踏まれて貶されて喜ぶような人間だなんて、喋るわけないわ。
うっかりネットに流出『させ』ちゃうだけよ」

「そっちの方が問題だろ!
と言うか、『させ』ちゃうって。
計画的犯行じゃないか!」

「何よ。言い間違えただけじゃない。
そんな所に目くじらたてるなんて、心の狭い人間ね。
これだから、『一之瀬さん家の絢音ちゃんは成績優秀で容姿端麗なのに、お兄さんの方は……。
聞く所によると、高校辞めて、刺身の上にタンポポを載せる仕事してるらしいわ、お兄さん』って噂されるのよ」

「誰だよ! そんな噂流したの。聞いたことないぞ!」

「当然じゃない。私が流してるんだから。
貴方の耳に入らないようにね」

「お前かー!」

言葉の暴力って残酷だと思うんだよね。
もう、そろそろ殴ってもいいんじゃないか? 俺結構耐えたよな?
379名無しさん@ピンキー:2009/11/01(日) 00:12:49 ID:Bo1SqQz1
「それで、元の話に戻るのだけれど。
Trick or treat、わかったかしら」

「いや、わからないな。
それよりもさっきの件、ちゃんと守ってくれるんだよな?」

「10月31日は、Halloweenよ。聞いたことぐらいあるでしょう?」

「また無視かよ。もういいけど。
ハロウィン? えぇと、カボチャとか魔女とかの仮装して練り歩くんだっけか?」

あぁ、やっと合点がいった。
だから、絢音のやつこんな格好なんだな。

「そうよ。正しくはお化けや魔女なのだけど」

「それで、トリックオアトリーってのは?」

「仮装した子ども達が、一軒一軒家を訪ねて回るの。
そこで『Trick or treat』お菓子をくれなきゃイタズラするぞって唱えるのよ」

「へー。そんな風習があるのか」
「まぁ日本の場合はバレンタインデーしかりクリスマスしかり、企業の策略に乗せられてる感じが強いのだけれどね」

「いいじゃないか。皆で楽しめるんだ。悪いもんじゃないだろう?」

「えぇ、そうね。私もそう思うわ」

そう言って、にこりと笑顔になる絢音。
なかなかどうして、こういう顔をされるとドキッとしてしまう。
いやいや妹だぞ?
しかも厨二病。
その上、性格は傲岸不遜。
380名無しさん@ピンキー:2009/11/01(日) 00:15:57 ID:Bo1SqQz1
顔の造作が、ちょっと、いや、かなり良いからって騙されちゃだめだ、俺。

「あぁ、そうだ。兄さん」

「ん?」

兄さん? コイツがそう呼ぶのなんて何年ぶりだよ。

「Trick or treat」

「え? あぁお菓子か。悪い、今手元にな―――」

『手元にない』そう紡ぐことはできなかった。

なぜなら俺の口が絢音の口で塞がれていたから。

そのまま口腔内を舌で蹂躙してくる絢音。

「ぷはっ! な、何してんだ! 絢音!」

「ちゃんと言ったじゃない。Trick or treat《お菓子をくれなきゃイタズラするぞ》って」

「それにしたって、イタズラの度が過ぎるだろ!」

「何言ってるのよ。 この程度のイタズラで、この絢音様が満足するとでも?」

「えっ?」

本当に間の抜けた声が出た。

「大丈夫よ。安心して。
貴方が泣いて跪いて感謝するまでイタズラし続けてあげるわ。
だってそれが貴方の趣味なんでしょう?
ねぇ、兄さん……」

そう言って笑う絢音の表情は、俺が見てきた中で一番美しいものだった。
381名無しさん@ピンキー:2009/11/01(日) 00:21:53 ID:Bo1SqQz1
投下終了です

携帯だと変な所でぶつ切りになるのが辛いです

キモ分薄すぎですかね?
この後の展開は個人の妄想で補完してください

それでは11月も良いキモウト・キモ姉ライフを
382名無しさん@ピンキー:2009/11/01(日) 00:36:01 ID:SQDUQCYx
>>381
GJ

キモ成分が薄いのではなく、兄の趣味を知った妹の放置プレイだと既に脳内変換していた俺に隙はなかった
383 ◆6AvI.Mne7c :2009/11/01(日) 12:08:26 ID:pPMoBxmP
ハロウィンの夜なんか、とうに過ぎてしまったぜはっはっは〜……orz
寝落ちで目覚めたら朝とか、もうどうしようもないな……
 
でも一応書いたので、ハロウィンネタを投下してみる。
タイトルは『ブラックアウト・ナイト』。大体約5.6KB。
以前書いた『ホワイト〜』の続編。でも特に繋がりはない。
 
次レスより投下。2レス借ります。投下終了宣言あり。
384ブラックアウト・ナイト (1/2) ◆6AvI.Mne7c :2009/11/01(日) 12:12:03 ID:pPMoBxmP
 
「………………」
 ノックに促され、自室のドアを開いた先には、変な女が2人いた。
「とりっく・おあ・とり〜とぉ!!」
「とりっく・おあ・とり〜とぉ!!」
「…………」
 バタン。ガチャリ。
「ふう……。俺は何も見なかった」
 こうして俺は、2人の悪魔から逃げることに成功し――
 
 ドンドン!! ドンドンドン!!! ドカドカドゴォッ!!!!
「……ってわかったよ!! 今開けるから待てっ!!」
 近所迷惑になる前に、観念してさっき閉めたドアを開ける俺。
 決してドアを叩く音に、狂気を感じたからではない。断じてない。
 
「うぅ〜……、とりっく・おあ・とりぃとぉ〜……」
「うぅ〜……、なんでドア、閉めちゃうのぉ〜……」
「ええい泣くな。というか、そんなカッコした奴が来たら、普通は閉めるぞ。
 大体なんなんだよその格好は。気でも触れたのかよ2人とも……」 
 そんなワケで、俺の目の前にいる妙な格好をした2人は、俺の実の姉と妹だ。
 今夜はなんだかよくわからない、仮装みたいなカッコをしている。
 
「なによ、今夜は一段とノリが悪いぞ、おとーとっ!」
「ノリが悪いと女の子にもてないよ、にーちゃんっ!」
 もてないのは誰のせいだと思ってんだよ、このバカ姉妹め。
 昔からずっと、俺がもてないように、裏工作ばっかりしてたくせに。
 オマケに今じゃあ、もう絶対他の女と付き合うなんて、出来やしないってんだ。
 
「大体おまえら、自分の可愛い子供たちを放っといて、何やってんだよ?」
「あ、あの子たちなら心配しなくても大丈夫。もうぐっすり眠ってるから」
「ちゃんと心配してくれるんだね。まあ、あたしたちの子供だもん、ね?」
 そう、こんな子供じみたことをしているが、実は2人とも1児の母だ。
 そして、2人の子供の父親は、実は血の繋がっている俺だったりする。
 俺の寝込みを襲い、勝手にセックスして、子供をこさえやがったのだ。
 それも初めてそれを知らされたのが、出産の1ヵ月前という計算ぶり。
 2人とも○学生と○学生の身で、とんでもない無茶をしやがって……。
 
 ちなみに子供たちは現在7ヵ月。2人とも可愛い盛り。
 父さんと母さんの協力を得て、現在すくすくと成長中。
 
「で? 結局なんなんだよ、その格好は……?」
「あ、やっぱりおとーとってば、ハロウィンのこと覚えてなかったのね?」
「にーちゃん、今日はハロウィンの日なんだよ?」 
「ハロウィンの夜には、子供たちがお化けのカッコして、家々を訊ね回るの」
「そんで『Trick or Treat』って唱えて、お菓子をもらうんだよ♪」
「ふぅん、まぁアレか。日本の某業界が陰謀のエセ祭りなんだな?」
「もう、おとーと(にーちゃん)ってば、夢がなさすぎっ!!」
 
 どっかで聞いた科白を聞き流しつつ、俺は目の前の姉妹の格好を観察してみた。
 妹の格好は、黒い魔女の帽子と外套を羽織り、その下は下着のような服だった。
 それはオレンジ色でふわふわしていて、何か『かぼちゃぱんつ』を連想させる。
 姉の格好は、首から下を長くて薄い白色の布で覆った、幽霊のような服だった。
 うっすら透き通ったり、輪郭が出てきているが、おそらく布の下は全裸だろう。
 妹が持っている、かぼちゃのランタンが少しは温かいとはいえ、寒くないのか?
「「もちろん寒いよっ! だからあっためて♪」」
「だったらちゃんと服を着ろ! このバカ姉妹っ!!」
 なんかもう、心配するのもアホらしくなってきたよチクショウ。
385ブラックアウト・ナイト (2/2) ◆6AvI.Mne7c :2009/11/01(日) 12:21:36 ID:pPMoBxmP
 
「まあそういうわけだから、とりっくおあとりーとっ♪」
「おかしをくれるまで、あたしたちは部屋に帰んないよ?」
 言いながら、2人とも俺の部屋に侵入してくる。
 まあ俺の部屋の中なら、廊下よりは温かいし、別にいいけど。
 
「ああちょっと待ってろ2人とも。おかしなら確か……」
 言いながら、俺は机の引き出しの中を漁ってみる。
 たしかこの中に、非常食用のスナックを貯めといたはずだが――
「あ、その中のおかしなら、私たちがこないだ食べちゃった♪」
「うん、にーちゃんの浮気調査のために、忍び込んだ時だね♪」
「浮気とかいうな。そんで人の部屋に勝手に忍び込むなっ!」
 
 なんかやる気をなくすと同時に、ふと嫌な予感が頭をよぎった。
 その予感が確信に至ったのは、姉妹2人が俺の目の前に立った時だった。
「なっ、なんだよどうしたんだよおまえr」
「……そっか、おかしはないんだね、おとーと?」
「……だったら、もうイタズラするしかないね?」
 そう言いながら、俺の身体をずいずいとベッドへと押しやる2人。 
 どう考えてもこの展開は、そっち方面の展開でしかなさそうだ。
 だってコイツらどう見ても、明らかに欲情してやがんじゃねえか!
 このままじっとしてたら、俺はこいつらに犯される。早く逃げ――
 
「ってあれ? 身体に力が入らな……ってかなんか、熱い………」
 なんだコレ? なんだか気分がムラムラしてきやがった。
 ペニスが勃起して、誰かに直に触られただけで射精しかねない。
 驚いている間に、俺はあっさりと、ベッドに押し倒されていた。
 そして両腕を姉妹2人に絡め取られ、もう逃げられそうにない。
「うふふふ。ようやく媚薬が効いてきたよ、いもーと♪」
「ランタンの媚薬キャンドル。使えたね、ねーちゃん♪」 
「そんなもん仕込んでたのか……おまえら………」
 俺のそんな呟きは、姉妹2人の濃厚なキスに、飲みこまれていった。
 
「あのさ、おとーと。私たちそろそろ、2人目が欲しいな〜?」
「だからにーちゃん、あたしたちにまた、白いのちょーだい?」
 馬鹿なこと言ってんじゃない、とツッコむ余裕は、今の俺にはない。
 どんだけ父さんと母さんに迷惑かけりゃ気が済むんだよおまえらは。
 まあ母さんは笑顔で「もっとやれ」みたいなこと言ってくるけどさ。
 その横でひきつり気味な笑顔の父さんを見ると、いたたまれねぇよ。
 
 というか、なんでマジであの2人、俺らをどうにかしないんだ?
 普通なら子供たちが姦通しあって妊娠したら、隔離しにかかるだろ?
 まさかとは思うけど、あの2人も兄妹ってこと、ないだろうな……?
 
「精液(おかし)をくれなきゃ性的暴行(イタズラ)するぞっ♪」
「犯してちょうだい? じゃないとエロスなイタズラするぞっ♪」
「どっ……どっちもかわってねええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?」
 最後の俺の全力の叫びは、もはや誰も聞いちゃくれなかった。
 てか胸や尻が押しつけ……前が見え………だから呼吸g…………
 
――この日、俺は何度目かの意識暗転(きぜつ)を体験した。もうやだこの姉妹……!
 
 
                            ― Which are Treck or treat, you? ―
386 ◆6AvI.Mne7c :2009/11/01(日) 12:23:31 ID:pPMoBxmP
以上、投下終了。
 
書いた後に1レスネタと微妙にかぶったりすると、妙に恥ずかしい。
そして、先にハロウィンネタを投下されていた>>381さんに、GJを。
 
さて、いい加減書けない病から脱出しないと、長編の続きが溜まり過ぎた……
1ヶ月に2話で落とさないと、最終話に間に合わない……
387名無しさん@ピンキー:2009/11/01(日) 12:58:38 ID:TB5FsiJI
>>386
ナイスだGJ!
相変わらずぶっ飛んだ姉妹だぜ!っていうか妹、○学生ってもしかしてちゅ(以下強制終了
388未来のあなたへ11.5後編:2009/11/02(月) 22:53:37 ID:77Gx4fu1
晶編続き投下します。
正直内容gdgdです。オチがつきます。
389未来のあなたへ11.5後編:2009/11/02(月) 22:55:01 ID:77Gx4fu1
ある平日の昼過ぎ、雨宮家にて
「馬鹿なの馬鹿なのねえ死ぬの? なんで事態悪化してるのよ、どれだけ無能なのよ、ねえ?」
「うるっさいですね社会ギリギリ適合者。わたしはお母さんみたいな狂犬じゃないんですよ」
いきなり罵り合いが発生した。わたしの人生初の合コン参加から二週間程が経っている。
いわゆる橘さんの件で興信所に頼んで行っていた調査の結果が出たらしいので、お母さんが休みの日を見計らって第二回雨宮家嫁姑会議を開催したのだが。
まずはこちらの現状報告を行うことになり、つらつらと述べたところ盛大な罵倒合戦になったのだった。
まったくもって、五月蠅いったらない。
「まあいいわ。それで肝心要なんだけど、結局橘雪菜は義明を狙ってるの、どうなの?」
「その前に。そっちの方でもそれなりに調べたんでしょう? そろそろ教えてくださいよ」
「はん? あなたからは『おともだちになりました』なんてふざけたことしか聞いてないんだけど。こっちは金掛けてんのよ?」
「あーもうこの酔っぱらい。第一次接触に成功したって言ってんでしょうが」
例によってお母さんの手には缶ビール。今度はわたしが持ち込んだものじゃなく、勝手に朝から飲んでるものだ。これだからクズな人種は。
その後しばらく嫌味とあてこすりの応酬が続いたけど、結局お母さんは大振りの封筒を持ちだしてきた。
どうせ少しでも相手の優位に立つための嫌がらせだ。橘さんの件なんて片手間みたいなもの。不倶戴天もいいところの相手は、お互い目の前にいるのだから。
それにしてもなんて非効率的な共同戦線なんだろう。やっぱり一人で対処すべきだったのかと後悔する。
ぺらぺらと、お母さんが封筒の中に入っていた何枚かの書類をめくる。
「えー、橘雪菜。市内商業高校の二年生、でまあ義明と同じクラスね」
「ういっす。それが全ての元凶っすね」
「住所は……あら、名字が違うわね。今は親戚の家に居候してるみたいよ。両親は……うわ、これは酷いわ」
「あんたが言うか」
「うっさいわね。えーっと、車や不動産、ブランド物で借金を重ねて二回自己破産してるみたいね。で、しばらく生活保護を受けてたけど贅沢がばれて打ちきり。それからしばらくして夫婦揃って詐欺で逮捕されてるわ」
「パーフェクトのクズ来たー!」
「嬉しそうね。でまあ、その後も色々問題起こして服役中。橘雪菜は親戚の家に引き取られたみたいね。うーん、本人は特に素行不良はなさそうね。売春でもしてるかと思ったのに」
「くたばれ。にしても何ですかねダーリンも、そういう人間引きつける匂いでも出してんでしょうか」
「あんたもね」
橘さんのことを思い浮かべる。屈託無く、心配りのできる人間。そのイメージからは、クズな両親のことなど伺えない。当たり前だけど。
まあ、今現在高校に通えているということは、世話になっている親戚とはそれなりに良好な関係にあるのだろう。いや、それとも気に入られるように演技しているのかもしれない。
それはありそうな想像だった。できるかどうかは別としてわたしだってそうするだろう。ただもしも橘さんの態度が演技だとしたら筋金入りの猫かぶりだ。
もちろん性格が遺伝するだなんて絶望的なことは言わないが、少なくとも教育環境においては子供は親の影響を免れない。なにしろわたし自身がそうなのだから。
個人的には橘さんに対して俄然親近感が湧いてきたが、ある種のクズである疑惑は持っていた方が良さそうだ。
ただ、クライマックスで告白するような設定を攻略サイトで見てしまったような後ろめたさは否めない。
「それで結局、肝心要のところ、橘雪菜はどうなの? 義明のこと狙ってるの?」
新しい缶を取り出して、お母さんが下衆い口調で聞いてくる。このやろう。
「ん……とりあえず、わたしの感触だとシロじゃないですかね」
「本当に? 根拠は?」
「あー、なんというかですねー」
その時、ピンポーンと玄関のチャイムが鳴った。来客の合図だ。
うわ、早い。慌てて腰を上げたわたしに、立つ気配もなくお母さんがうろんげな目を向ける。こいつ家主の分際で、誰が来ようがわたしに応対させる気満々だったな。
しっし、と奥の方に追い払うよう指示してから玄関に向かう。
サンダルをはいてドアを開くと、小さく手を振る橘さんの姿があった。高校のブレザーに、大きめのバッグを提げている。
「やっほー、晶ちゃん。約束通りゲーム持ってきたよー」
「やー、いらっしゃい橘さん。どうぞ上がってください」


晶ちゃんの、泥棒猫を小一時間問い詰め大作戦
後編
390未来のあなたへ11.5後編:2009/11/02(月) 22:56:42 ID:77Gx4fu1

あの日から、橘さんとは友達付き合いを始めていた。
合コンの夜におそるおそる電話を掛けてみたら、そのまま一時間も立ち話をする羽目になった。例によって雨宮家の電話を使ったのだけど、足が痺れましたマジで。
聞いてみると彼女達ぐらいの年齢にとって一時間や二時間の電話など常識の範疇らしい。恐るべし女子高生!
その日から、夜のバイトに出かけるまでの三十分程を、わたしは橘さんとの電話に費やしていた。まあ、向こうから掛かってくるんすけどね。
話題は実に多彩だった。わたしの熟知するサブカル向けのジャンルもあれば、わたしのまったく知らない流行や音楽の話題を面白可笑しく語る話術にも彼女は長けていた。
ダーリンとの時間が削られるのは惜しかったけど、それ以上に橘さんとの会話は新鮮だった。
中学時代は優香ちゃんともよく話していたけれど、話題を振るのはもっぱらわたしからだった。それとて毎度似たようなことの繰り返しだ。
わたしも優香ちゃんも、程度の差こそあれ閉じた人間だった。身の回りの僅かな人さえいればそれで充分生きていけると、そんな世界を持っていた。
話をするに橘さんをまったく逆で、開いた世界を持つ人だった。
広く、浅い。知人はたくさんいるけれど、親友と呼べる人はいない、そういう人のようだった。
だから人に頼られることも多く、実際にそれを捌くための人脈も持っている。合コンのセッティングとか、試験の山とか、流行のファッションとか、カップルの状況だとか。
そういう情報を、携帯一つで取り出せるのだ。やっていることは普通の女子高生ではあるんだけれど、彼女はそのスキルが卓抜している。ほとんど人脈屋といってもいい。
要するに、なんてことはない。わたしも彼女の人脈候補として白羽の矢を立てられたということなんだろう。自分自身にどんな価値があるのか、さっぱりわからないんすけどね。
これでわたしが、彼女に何かを頼めばもれなく貸しとしてカウントされ、いつか橘さん経由で誰かのお願いに協力しなければいけないという案配だ。
ギブ&テイクのネットワーク。それが橘さんの束ねるものだ。
それは、使える。
社会性の欠如したわたしの欠点を補うのに、これほど適したものはない。大多数と我慢して付き合う必要はなく、橘さん一人と関係を維持すればいいのだから。
他人の面倒事を抱え込むリスクを考慮したとしても、彼女との友達付き合いは有益なものになるはずだった。


わたしはテレビゲームの類をほとんどしたことがない。
まずあの手の娯楽はお金がかかり過ぎる。わたしは貧乏キャラだ。
ついでにハブにされ続ける人生を送ってきたから、友達の家に招待されてマリオに触れるなんて経験もなかった。
だからわたしのサブカルな趣味はマンガ方面に偏っている。一応はネットユーザーなので一通りのネタは抑えてはいるが。マンガ喫茶は月に一度の贅沢です。
もちろん今なら自由になるお金もあるけど、この年になるまでゲーム抜きで生きてくれば今更手をつけようとは思わなかった。
そんなことを橘さんに漏らしたら、一気にゲームやろうと誘われたのだった。
『友達が使わなくなったPSPあるっていうから貰ってくるよー。モンハンやろう、モンハン』
とのことで。そうして翌日、橘さんが我が家を訪れることに相成った。
とりあえず彼女を居間に通し、お茶を入れる。幸いにもお母さんはどこかに引っ込んでくれたようだ。やっと空気読んだか。
橘さんが鞄から、掌より大きいくらいのゲーム機を二つ取り出す。片方はそっけなく使い古されたもの、片方はぺかぺかとラメやシールが貼ってある。こっちが橘さんのだろう。
「こ、これが噂の。いやー、携帯ゲーム機でネット対戦ができるなんて時代は進んだんですねー」
「えーと、晶ちゃんってホントに今までゲームやったことないの?」
「生まれてこの方自前の機械は電卓止まりでしたぜー!」
391未来のあなたへ11.5後編:2009/11/02(月) 22:58:28 ID:77Gx4fu1
そうしてしばらく、二時間ほど橘さんと遊ぶ。ネット対戦をやるには一人でしばらく進めなければいけないらしく、じょうずにやけましたーと声を揃えながら同じ画面を覗き込む。
そうか、友達と遊ぶというのはこういう感覚だったのか。道理で、どいつもこいつもしたがるわけだ。
それはひどく新鮮な感覚だった。今までテレビの中の出来事としか思っていなかったものが不意に押し寄せてきたような。
感動といえばそうだったのかもしれない。涙が出かけた。
「ってうおう、もうこんな時間ですか。夕食の準備しないとー!」
「あ、そうなんだ。それじゃあそろそろ私、帰ろうか?」
当たり前のように彼女が提案する。時間配分的には、わたしが食事の支度をしているときにダーリンが帰ってくることになる。
この点が、橘さんをシロだと思う最大の理由だった。どう考えてもダーリンよりわたしの方にアプローチをかけてきていて、何の厭味も見せないのだ。
そこに橘さん自身の利用価値も相まって、どうしても彼女を敵視しにくくなっていた。
「いあー、もうすぐ義明さんも戻ってくるし、良ければ待っててくださいよ」
「そう? じゃあ晶ちゃんのモンハンで素材集めておくよ」
「おおサンクス!」
エコバッグと財布を掴んで家を出る。家捜しされてもヤバいものは部屋に鍵かけてあるし、ダーリンが一足先に帰ってきても、お母さんがいるから大丈夫だろう。


「……」
ピコピコ
「……」
ピコピコ
「……」
ピコピコ
「あー。ねえ」
「はい? えーと、お……雨宮君の」
「うん、母よ。あなたは橘雪奈……よね?」
「はい、雨宮君からお話は伺っています。秋菜さんって呼んでいいですか?」
「ええ、まあいいけど」
「よろしくお願いしますっ」
「……」
「……」
「ちょっと聞きたいんだけど、義明のクラスメイト、よね?」
「はいっ。雨宮君とは仲良くさせてもらってます」
「一応聞くけど、あの娘……藍園晶が義明の彼女なのは知ってるわよね?」
「はい、知ってますよ」
「……」
「……」
「ええと……じゃあ、義明のこと、どう思ってる?」




392未来のあなたへ11.5後編:2009/11/02(月) 23:01:53 ID:77Gx4fu1

それからしばらくして、第三回雨宮家嫁姑会議が開催された。
場所は例によって雨宮家リビング、時刻は双方仕事帰りの午前零時。
わたしとしては橘さんを取り込む方針で進みたい以上、お母さんを適当に誤魔化して有耶無耶にするつもりで、それは難行だと思っていた
が。
「あのー、別にもう」
「まあ、あの娘のことはもういいんじゃないかしら」
「は?」
いきなり終わった。
お母さんが手にしているのはコップに注いだ大吟醸だが、それはまだ大して減ってない。既に酔っぱらっているわけではなさそうだが、妙に笑っている。にやにや。
はっきり言って気味が悪い。ていうかなんだその余裕、あんたそもそも酒が入ってなければ小動物のように怯えるキャラでしょうに。
当初の予定を考えれば、渡りに船なんですが余りにも都合が良すぎた。
「一応確認しますが橘さんのことですよね?」
「ええ、雪菜のことね」
「……は?」
ちょっと待てちょっと待てちょっと待て。ええと確か、前回まではフルネーム呼ばわり、だったよね? 乏しい記憶容量を掘り起こして確認する。
うん多分そうだ、でなくても名前だけ呼び捨てはあり得ない。ついでに言うと口調からとげとげしい敵意が消えている。ただしわたしに対するものは除いて。
「あれ、橘さんと知り合ったんですか?」
「ああ、ほら。この前家に来てたじゃない。そのときにちょっと話してね、それからまあちょくちょくね。いい子じゃない」
「まさか継続的に話してるんですか? 二十も年増だしそんなテクはあんたにはないでしょう」
「ぶっ殺すわよ。そんなのあなたにもないでしょうに」
それからしばらく、ぎゃあぎゃあと聞き苦しいことこの上ない罵声を浴びせ合う。
お互いの認識は完全に正しい。なにしろ現時点で建設的な会話は不可能になっているし、似た者同士といえばそうだがクソッタレすぎる遺伝だ。
となれば、その手の会話テクを持ち合わせているのは橘さんということになるし、その推測はおそらく正しい。
もっと言うならお母さんは喋らされていただけだろう。会話スキルに隔絶の差がある以上、誘導などお茶の子さいさいに違いない。
やれやれ、全く。その程度で警戒を解くなんて、どれだけ腑抜けた危機感の持ち主なんだ……か……
「ちょっと待て」
「ん? なによいきなり」
「……手玉にとられたのはわたしも? わたしもっすか?」
「はあ?」
……ぞっとした。背筋に冷たいものが走り抜ける。
それまでずっと、わたしは、わたし達は橘さんの存在を大した脅威とは思っていなかった。お母さんとわたしはお互いを最大の敵と見做しており、今回の件もその延長線上のやり取りでしかなかった。
大体。お互いいつか殺してやると決めた相思相殺の間柄だ。時期的にあり得ないと理解していても、油断していればどこから刃物が飛んでくるかわかってものじゃあない。
それに比べれば(確かに死角ではあるが)学校のクラスメイトなんて大した問題じゃあない。大体わたしには、既に彼女であるという圧倒的アドバンテージがある。
最悪ダーリンがレイプされたとしても、見逃さずにフォローさえ利けば最終的な勝利はわたしのものだ。だからこそ、そのアドバンテージを覆す手札を持つお母さんだけは絶対に殺さないといけないわけだが。
けれど。
敵を排除することだけが勝負じゃあない。将を射んとするならまず馬を射よという諺もある。
たとえばわたしとお母さんの両方に取り入って、時期尚早の同士討ちに導けば漁夫の利で勝利を手にできる。いや、それ以前に警戒されずに取り入るだけでも、わたし達はお互いに憎悪を向けて橘さんが自由に動けることになる。
やばいやばいやばいやばい。だとしたらわたし達はどれだけ素直に騙されてるんだ。他にどんな仕掛けがあるかわかったもんじゃない。
いや、流石に今は外堀を攻めている段階だとは思うから仕掛けはないか? 大体考えすぎである可能性の方が遙かに高いのだ。何が悲しくて、彼氏持ちの男をわざわざ選んでアタックしなければならないのか。
けど優香ちゃんも言っていた。大切なことは最悪を想定して行動するべしと。
貰ったゲーム機を叩き壊したくなる。一体わたしは何を浮かれていたんだろう。
「お母さん、橘さんのことですが」
「なに、まだなんかあるの?」
「興信所の調査、追加で何か来てませんか?」
「ああ。あれならもう打ちきったわよ、どうせ必要なさそうだったし」
「う、嘘だっ!」
「何よいきなり。あれ成功報酬とかじゃなくて日給なのよ? だらだら続けても仕方ないじゃない」
「……うーん、じゃあ仕方ないっすね」
393未来のあなたへ11.5後編:2009/11/02(月) 23:02:18 ID:77Gx4fu1
愉快そうに日本酒を啜るお母さんをじっと凝視する。上機嫌。さっきからあまりに不自然な態度だ。
考えられる事態としては、調査は継続していて橘さんについて何か決定的なことを掴んだが、それをわたしに隠しているとか。
基本的に興信所を使っているのはお母さんだからそんなことはし放題だ。それについてはわたしも初めから覚悟はしている。
考えられる最悪としては、橘さんとグルになってわたしを追い落とそうとしている、とか。
わたしとお母さんはお互いにジョーカーを持ち合わせているが、それは出せば自滅する類のものだ。
だからそれ以外の方法で殺し合わなければいけないし、追い詰めすぎての諸共自爆も警戒しなくてはいけない。けれど橘さんならそんな心配はない。
お母さんの立場で考えれば、橘さんを後押しする戦法も充分考えられるのだ。ただしそれは、お母さん自身が橘さんに騙されなければという前提だが。いや、もう騙されてるのか?
「……じゃあ、橘さんのことはもういいってことで、いいんですか?」
「あんないい子なんて早々いないわよ。どっかの自称嫁よりよっぽど信用できるんじゃないかしら」
「まあそれについては同感ですが。目の前の相手よりはよほど信頼できますよねー」
「死ね」
「お前が死ね」
ああもう、やっぱり単独で対処するんだった。信頼できない相手との共闘なんてろくなものじゃない。優香ちゃんカムバック!
というわけで、雨宮家嫁姑会議はgdgdのまま終わりを告げた。得たものは徒労と時間の無駄だけだった。とんだ回り道だ。



わかってはいたことだけど、わたしには戦略構想が欠けすぎている。じっと耐えるだけの人生だったから仕方ないけど、優香ちゃんの爪の垢でも煎じたい。
ついでに言うと紫織姐さんのような『事を運ぶに当たっての猛烈な運の良さ』も持ち合わせてはいない。いわゆる負け犬の類なのを自覚すべきだった。
それでも一つだけわかっていることがあるとするのなら、ダーリンは悪くない。
ならば何が悪いのかと言えば、わたしであり、お母さんであり、橘さんであり、世間が悪い。悪いものは是正されなくてはいけない。OK,立ち直った。
さて。
ここまで突っ走っておいて難だけど、橘さんが敵か味方かはまだまだ不明だ。
確率論的に考えれば味方である可能性が高いけれど、最悪の事態を想定するなら敵と考えるべき。
じゃあどうするかといえば、どちらでも良いように対応手段を考えておくのが戦略というものだって優香ちゃんが言ってた(今更思い出した)
まず橘さんが味方だった場合。味方というか、敵でない場合か。わたしに対しても、お母さんに対しても、そしてダーリンに対しても、ただコネを繋げるためだけに接近してきているのだとしたら。
それなら話は簡単だ。前述した通り橘さんには利用価値がある。友達付き合いもゲームの相手もこっちからお願いしたいぐらいだ。ただし優先順位はダーリンの次にだが。
では橘さんが敵だった場合。ダーリンに好意か敵意を持っている場合になるが。それはこちらで橘さんを攻撃すればいい。お母さんと組んだりしたら返って足の引っ張り合いになるから単独で。
……なんだ、方針はこれだけでいいのか。なんてシンプル。gdgd行動するのはダメすぎる。
つまるところ、まずすべきことは警戒線を引くことではなく、橘さんの真意を見極めることだったのだ。情報第一。
というわけで『泥棒猫を小一時間問い詰め大作戦』を実施します。作戦概要は、一緒に遊びに出かけた日の最後に、人気のない公園で行う。これ最強。
394未来のあなたへ11.5後編:2009/11/02(月) 23:05:56 ID:77Gx4fu1
「やー、今日は楽しかったです。ありがとうございます」
「うん、そう言ってくれると嬉しいなー」
かねてからの予定通り、わたしは橘さんと祝日一緒に遊びに出た。
バイトはシフトを変更させてもらって空けた。ダーリン部活の方で試合があるそうだ。ホントはそっちを応援し行きたいところだけどぐっと我慢。
わたしからの申し出に、橘さんは喜んで応じてくれた。その時点で、彼女との友好度は(優香ちゃんを100とするなら)60ぐらいはいっていたと思う。
毎日電話でお話しするし、モンハンも一緒に狩りができるようになったし、学校帰りに良く訪ねてくるし。
はっきり言えば有難かった。わたしの単調な生活の中で、貴重なメリハリを提供してくれた。そこには確かに友情があったと思う。ただしダーリンと優香ちゃんの次にだ。
今日は午前十時から待ち合わせて、二人で映画と食事、それからショッピングと洒落込んだ。
橘さんの服装は、髪をヘアバンドで留めてボレロにミニスカートというキャピキャピしたもの。わたしは例によって水色のパーカーにジーンズ。
あまりの一張羅っぷりに、橘さんの監督で服と小物を何着か買いこむ羽目になった。安さ優先にしては良いものがそろったとは思うけれど。
映画はヒトラー暗殺の実話を映画にした軍事スパイもので、結構燃えた。後でwikiってみたらほとんど史実で二度びっくりのお得感。
ショッピングの後は休憩も兼ねてアイス屋で、二人とも三段重ねのカップアイスを頼んだ。お互いにぬるい攻防を展開しながら、計六つの味に舌を喜ばせた。
本当に、楽しい一日だった。
帰る途中「ちょっといいですか」と公園に入り、ベンチに座った。時刻は夕方、逢魔が刻。橙色が遠くで目に染みる。
そうして冒頭の会話に戻る。
「にしても、さすがに今日だけで年間予算を大散財ですよ。しばらく一カ月一万円生活ですねー」
「あははは。小物はともかく、服はそろうと高いからね。私のお古でも晶ちゃんなら着れそうだし、今度持ってこよっか?」
「ハイハイどーせチビですよ! まあこれでも社会人のはしくれですし、それくらいは自前で揃えますから結構っすよ」
「ほんとー? 晶ちゃんって放っておくとずーっと同じ服着てそうで心配だなー。化粧っ気も全然ないしー、うりうりー」
「若さゆえにそんなものは必要ねーですよ。HAHAHA!」
夕方の公園、ベンチに座ってお互いにじゃれあう。人気はない。わたしたち以外には誰もいない。なんておあつらえ向きな舞台なんだろう。あまりにも狙いすぎだ。
言葉が途切れればすぐにでも本題に入れる。わたしは心を落ち着かせながら、静かにそのときを待った。
「そーいやお母さんから聞いたんですけど、あの人とはよく話してるんすか?」
「うん。この前雨宮君の家に行ったとき、知り合ったから。いろいろ面白いお話聞かせてもらってるよ」
「いや、よくあのアルちゅ……じゃない、年の離れた相手と会話続きますねって感心ですよ。ていうか時間合うんですか?」
「えー、いい人だよー。でも確かに時間は合わないから、やり取りはもっぱらメールかなあ」
「メール! そういう文明の利器もありましたね。自前のメアドとかないからすっかり忘れてましたよ」
「晶ちゃんもケータイ持ったら? あると色々便利だし、プリペイドなら結構安くて済むよ」
「いあー、別になくても生きていけるっすからねー。緊急事態にはちっと不便ですが」
「うーん、そっかー」
「……」
「……」
会話が途切れた。

395未来のあなたへ11.5後編:2009/11/02(月) 23:06:34 ID:77Gx4fu1
「あのですね、橘さん」
「うん、なあに?」
間合いを調整する。もぞもぞとお尻を動かして、手を伸ばしきらなければお互い届かない距離に。これ以上は不自然だ。たとえいきなり首を絞められる危険があっても。
準備した武器はただの二つ、ダーリンを想う心と、アクセサリ風にベルトに引っかけたメリケンサック。心許ないことこの上ないが、たぶん使わないだろうと踏んでいた。
橘さんの運動能力は優香ちゃんと違ってわたしとどっこいどっこいだろうし、姐さんみたいに凶悪な武装を隠し持っているわけでもない。
大体あの二人は何か誤解しているようだが、暴力というのは最終手段であって、交渉段階ですべきことは無数にある。もしもやるとしても背後から不意打ち一択……こほん。
ともあれ、わたしはにこやかなまま、『泥棒猫を小一時間問い詰め大作戦』の仕上げを開始した。
「そういえば前から聞きたかったんですけど、橘さんって彼氏とか好きな人とかいないんですか?」
「うーん。今はまあ、いないかなあ」
彼女が困ったように眉根を寄せて、苦笑いした。不自然な仕草じゃないし、そこから何かを読みとれる程わたしは空気を読めない。
それでも失言を狙って言葉を重ねていく。今日一日、わたしは本当に楽しんだし、橘さんもそうだと思う。誓ってそこに嘘はない。
だからこそ、彼女も多少は油断しているはずだった。一日がかりで失言を引き出す作戦。その割にはあまりにも狙い過ぎな場所を選んでしまったことを後悔もしたが。
「えー、勿体ないですよ。彼氏持つと色々物の見方が変わりますよー」
「でもそういうのは色々あるからね。結局相手次第だし、晶ちゃんの場合は雨宮君がいい人だからだったと思うよ」
「えへへ、まあそうかもしれませんけど。でも橘さんって結構もてたりしないんですか?」
「そんなことないってー。あのね、同じ学年にすごく綺麗な人がいてね……」
「いやいやいや。義明さんから聞いてますよ。結構告白されてるそうじゃないですかー」
ダーリンからあらかじめ裏を取っておいた情報だ。彼女の知り合いには同年代の異性も多い。接触の機会が多ければそういうものも芽生えやすいということだろう。
もちろん、橘さん自身も普通に可愛い。普段から身だしなみに気を遣ってるし、細かい気配りのできる性格は高嶺の花よりもある種の理想と言えるかもしれない。
そうして結局、これで彼女はぼろを出した。
橘さんが照れくさそうに笑う。
「えー、雨宮君、そんなこと言ってたんだー。ちょっと寂しいかな。でも私なんかほんと、あんまりパッとしないし……」

「――――寂しい?」

「あ……」
わたしの声音と表情から一瞬で感情が抜けた。背筋を冷たいものがぞわりと撫でていく。
今のは失言だったと橘さんも自覚したのだろう、反射的に口を手で押さえる。それが決定的だった。
『告白された』という話を『ダーリンに』話されて『寂しい』とはいったいどういうことなのか。自分に当て嵌めてみれば一瞬だ。
あり得ないけれど、もしもわたしが仮に誰かに『告白された』として、それを『ダーリンに』なんてこともないように流されたのだとしたら、胸をかきむしるほどに『寂しい』だろう。
だってそれは異性としてなんとも想われていないということだから。自分の想いが空回りしているだけだから。嫉妬の一つもしてくれたっていいじゃない、と。
それは、つまり、そういうことだ。
同じ種類の好意を抱いているということだ。
ああ、さよなら友情。
「えーとですね、橘さん」
にっこりと笑う。彼女は顔を真っ青にしている。これからの展開を悟ったんだろう。
こんなことを言うのは心苦しいんですが、と前置きをする。本心だ。この数週間で培った友情は本物だったと思うから。
396未来のあなたへ11.5後編:2009/11/02(月) 23:09:48 ID:77Gx4fu1
「そーいうことなら、あんまりわたしの彼氏に近づかないでくれませんか?」
「ち、ちがっ……」
「いやいやいやいや、誤魔化さなくて結構です。ていうかですね、悪いんですが最初っから疑ってたんですよ、ぶっちゃけ。
 あ、でも橘さんのことは友達だと思っていましたよ、これは誓って本当に。できればこれからも友達でいたかったんですけど。
 でも、でもですね。自分の男を誘惑する女に、そこまで寛容にはなれないですよ。
 ちょっとよくある話と奇跡があって、わたしはダーリンに救われたんです。私はそれに殉じると決めたんですよ。それを邪魔するのなら許せません。
 ああ、気持ち悪い女だと思いますよね。その通りで、わたしは地雷の仲間です。橘さんの友情はありがたかったですけど、それより遥かに大事なことがあるんです。
 誤解ですか? それなら尚更いいじゃないですか。義明さんにこだわる理由もないなら、どうかお引き取り願いますよ。それがお互いのためですよね?」
にこにこと笑いながら、わたしは橘さんを恫喝する。対して彼女は泣きそうな顔をしている。傍目からみればわたしの方がひどい女なんだろう。
でもその通り、わたしはクズだ。犬が自分の縄張りに入ってこようとする者に牙を剥いて唸っているのと変わらない。大変結構!
「違う、違うの……」
「はあ、一体今更何がですか?」
この期に及んで橘さんは逃げない。目の端に涙さえ浮かべているのに、立ち上がって逃げ出そうとしない。キレて罵倒しがえしたりもしない。
これ以上は噛まれるだけだってのに、よくわからないけれどプライドというものか。あるいはそこまでダーリンに惚れてるのか。どっちにしろ殴っていいということになる。
それにしたって腑に落ちない。確かにダーリンはかっこいいけど、かっこいいけど、そこまで入れ込むほどの理由になるんだろうか、常識的に。
あるいは、もしかしたら、橘さんも
わたしの知る何人かと同じように、常識から外れた信念を抱えているのだろうか。
「違うの、雨宮君は、私の……」
眉根を寄せたわたしに、橘さんは絞り出すような声音で
夕陽に染まった公園の中、懺悔するように告白した。


「雨宮君は、生まれ変わる前から私のお兄ちゃんだったのっ!」



……
……ぜ


前世系キタ―――――!?


397未来のあなたへ11.5後編:2009/11/02(月) 23:10:20 ID:77Gx4fu1





それでも私には、たった一人だけ、救いを望める人がいた。
それが、お兄ちゃん。
一人っ子だった私には兄弟なんていない。けれど物心ついた時から、その人が私を救ってくれると知っていた。
強くて、優しくて、かっこよくて、なにより私を大切にしてくれる人。
馬鹿な両親から、押し寄せる借金から、ギスギスした家庭から、外面だけを取り繕う呪いから、私を守ってくれる人。
その人がいると知っていたから、私は生きてこれた。
その人がいることを頼りに、私は生きてきた。
きっと私達は一緒に生まれるはずだった。生まれる前があるのならそのときから、生まれ変わった先があるのならそこででも。それが何かの手違いで、離れ離れになってしまっただけなのだ。
そうでもなければ、私の中にある確信は説明がつかない。
私にはお兄ちゃんがいる。私はその人を、ずっと探して生きてきた。
……そうして、会えた。
初めて雨宮君に会った時、体に電流が走った。胸がどっくんどっくんと高鳴り、かあっと顔に血が上り、目の奥に火花が散った。
その瞬間に世界が塗り替わったみたいだった。
私はこの上もなく確信する。この人が、私のお兄ちゃんなのだと。
この人が私の救いなのだと。
・・・
私は雨宮君に、いいやお兄ちゃんに近づいた。まずはクラスメイトとして話をして、それから趣味や行事の話題を通じて仲良くなっていった。
お兄ちゃんはやっぱり、強くて、優しくて、かっこよくて、イメージ通りの人だった。私は嬉しくなってべたべたと甘えてしまい、他の人にからかわれることもしばしばだった。
けれど一つ残念なことがあるとしたら、お兄ちゃんはまだ前世の記憶を取り戻してはいないようだった。私のことは名前で呼び捨てにしてもいいのに『橘さん』と遠慮がちな呼び方しかしないのだ。
それに今のお兄ちゃんには彼女がいるみたいで(どうしてか、そのことを考えると泣きたくなる)女性との関わりに最低限の線を引いている感じがあった。私はその線と、前世との隔絶を乗り越えたくて、ある日お兄ちゃんを放課後の教室に呼びだした。
記憶を取り戻すための呼び水として、その人を呼ぶために。
「……私ね、ずっと兄弟が欲しかったの。お父さんもお母さんも馬鹿な人で、借金して言い争って、私はずっと一人でいて。私はずっと、苦楽を分かち合える兄弟に憧れてたの」
「うん」
「それでね、あのね。男女の関係とかじゃなくて……雨宮君のこと、お兄ちゃんって呼んでいい?」
「――――ああ、いいよ」
お兄ちゃんは頷いてくれた。
結局、お兄ちゃんは前世の記憶を取り戻さなかった。けれどそれでもあの人は、私を受け入れてくれた。それはきっと、とても尊いことだ。それなら、前世の記憶なんて無くてもいいかもしれない。
一人の人間として、見栄ばかり張っていながら都合のいい救いを求めている、こんな私を認めてくれるのなら。
何かから解放されたようだった。
そうして、二人きりの時にお兄ちゃんと甘えて、お兄ちゃんの彼女やお母さんとも仲良くなって、ようやく私は本当の家族を手に入れられたような気がするのだ。
今、私はきっと幸せだ。



398未来のあなたへ11.5後編:2009/11/02(月) 23:14:31 ID:77Gx4fu1
……さて。
そうして、それから、橘さんがどうしたのかといえば。
まだ、いたりする。
「ねえねえ晶ちゃん。今日の夕御飯、なににしよっか?」
「あー、たしか今日は肉のバーゲンがあったはずですから、鶏肉でも狙ってみましょうかねー」
「じゃあ親子丼とか、唐揚げとかかな。お兄ちゃんはなにがいい?」
「ん? そうだなあ……なんでもいいから雪菜に任せるよ」
「もう、お兄ちゃんったら。そういうのが一番困るんだよ、ねー晶ちゃん」
「いやいや雪菜ちゃん、倦怠期風ダーリンも萌えっすよー」
「ええええ、レベル高い、レベル高すぎるよっ!」
「えーと……買い物行くなら僕も一緒に行こうか? 手が空いてるしさ」
「おお、じゃあダーリンには米袋背負ってもらいましょうかね。ちょうど切れてましたし」
「頑張ってねお兄ちゃん」
「あ、あはは。お手柔らかに頼むよ」
こんな調子で。
『泥棒猫を小一時間問い詰め大作戦』から数週間が経っている。あれから橘さん、いや雪菜ちゃんは更に雨宮家に入り浸るようになり、今や家事手伝いまで行っている。どんだけだ。
あの作戦は結局成功したのか失敗したのか微妙なところだった。真意を引き出すという意味では成功だが、邪魔者を追い出すという意味では失敗している。いや、雪菜ちゃんもダーリンも意識はあくまで『妹』なんすけどね?
雪菜ちゃんのあまりにも衝撃な前世系カミングアウトで思考停止してしまいあの場はお開きになったが、その日の内にダーリンを問い詰めた。その場凌ぎの言い逃れにしてはぶっ飛びすぎていたが、裏まで取れてしまう。
なんと二人きりの時はお兄ちゃん雪菜呼ばわりしているらしい。ちょ、呼び捨てとか、わたしですらまだなんですが。
ただし半分キレながら更に聞いてみると、雪菜ちゃんは前世云々の話はしていないらしい。あくまでただの疑似兄妹。同級生だけどね?
一応、ダーリンはお互い恋愛感情はないときっぱり断言してくれた。信じる。言い方は悪いが可哀想な子を保護したという程度なんだろう。色々と言いたいことはあるけれど特性的に文句は付けられない。
流石に、わたしは雪菜ちゃんを追い出すわけには行かなくなった。要するに、わたしもまたダーリンに同情されて拾われた可哀想な子に過ぎないからだ。雪菜ちゃんの気持ちは痛い程わかるし、ここで攻撃したらダーリンに愛想を尽かされるんじゃないかという恐怖がある。
結局、わたしの敗北は最初から決まっていた。ダーリンとそこまで仲良くなっている時点で、対恋人に0%の勝率を誇るわたしにできることなど無かったのだ。
あと、お母さんが途中から明らかに手の平を返したのは、どうにかしてそういう事情を知ったからだろう。そのことでまた会議を開いたりもした。
『くおら駄目母! あんた雪菜ちゃんの妹キャラ知ってやがりましたね?』
『ああなんだ、もうばれたの? もっと泥沼になってくれれば良かったのに』
『あーそうでしょうね。雪菜ちゃんが妹キャラならライバルにはならねーし、わたしが牙を剥いて自滅すれば万々歳っすか』
『まね。それに、雪菜の方がよほどいい子だし。普通に母親としてもあっち応援するわよ』
『まともな母親面するのは死の間際だけで結構です。あんたの遺伝子半分受け継いでるし。っていうか、矢面に立たせておいてその言い草はねー』
『うっさいわねえ、あんたなんてわたしの子じゃないわよ。義明と雪菜で充分よ。そうよそういうことにしましょ?』
『別にそれでもいいけどくたばれ! ま、さておき……前世って存在すると思いますか?』
『あるわけないでしょ』
『ですよねー。じゃあ雪菜ちゃんの妄想っすか。アトランティスの転生戦士とか言い出さないだけマシですが』
『生い立ちが悲惨だったのは裏を取ったし、王子様願望の変形じゃない?』
『ああ、あんたの意見に賛同する日が来るとは……にしてもなんですかね、ダーリンはそういうの引きつける匂いでも出してるんすか?』
『つくづく不憫ね、義明も……』
『わたしを見ながらお前が言うな。お父さん呼びますよ?』
『ひいいいいっ!』
399未来のあなたへ11.5後編:2009/11/02(月) 23:16:30 ID:77Gx4fu1
最後憂さ晴らしにびびらせておいた。アポカリプスに決着は付けてやる。さておき。
わたしが彼女への呼び方を改めたのはダーリンに合わせてだ。一人だけ名字で呼んでいたらハブになる。これは雪菜ちゃんへの対応にも関係することだが。
現状維持。これが対雪菜ちゃんの戦略とした。同類として推測するなら、現状さえ維持できているなら雪菜ちゃんが暴発する可能性はゼロに等しくなる。そのためにはわたしも家族ごっこに参加して状況をコントロールするのが最善だ。
味方でさえあるのなら、彼女はとても使い勝手のいい道具だし、気のいい友人だ。そうするメリットは充分にある。これで恋人でも作ってくれれば言うことはないのだけれど、それはこちらから働きかけていけばいいか。
やれやれ、それにしてもわたしは行き当たりばったりの消極的な案ばっかりだ。こんなことで人生を戦い抜くことなんてできるんだろうか。
「どうしたの、晶ちゃん。悩み事?」
「えー、まあなんというかですね……ダーリン」
「うん。なに? 晶ちゃん」
「そう、それです。えーとですね、雪菜ちゃんだけ、その……」
「?」
「あっ、あー、そっかそっか。ごーめんねー、晶ちゃん。そしてお兄ちゃんは鈍感すぎっ!」
「え、え? どういうこと?」
「いやいや、雪菜ちゃんもそれくらいでいいですから。そのですね、名前……」
「あっ、そっか! ああ……ごめん、その……晶」
「きゅー」
「ああっ、晶ちゃんが鼻血吹いて卒倒した! しっかり、ほらお兄ちゃん!」
「う、うんっ! 大丈夫か、晶!?」

……まあ、いいか。
400未来のあなたへ11.5後編:2009/11/02(月) 23:26:24 ID:77Gx4fu1
以上です。着想は初恋というゲームからです、はい。新しい相棒追加編でした。
次回はしばらく間をあけて、本編12で開始します。また新キャラ出るよ!
401名無しさん@ピンキー:2009/11/03(火) 00:06:29 ID:iyuT+DSx
GJ!!
雪菜w電波ワロタ
402名無しさん@ピンキー:2009/11/03(火) 00:31:58 ID:KKKElAGJ
電波gj!
続きも期待してますー
403名無しさん@ピンキー:2009/11/03(火) 00:46:04 ID:6lmVjx9M
GJ!
でも晶ちゃんから見れば兄を「お兄ちゃん」と呼んで慕う別の女が現れたって事なんだよなぁw
彼女的にはいいのかもしれないけど、キモウト的にその辺りはどうなんだろうか?w
本編続きを鶴首してお待ちしております
404名無しさん@ピンキー:2009/11/03(火) 01:57:22 ID:OwlXWxI7
自分がリアル妹だもの、妹キャラに文句は言えないわなwww
405名無しさん@ピンキー:2009/11/03(火) 02:17:12 ID:yrFs3FQu
GJ! 前世ワロタw
やっぱり親が異常だと子供の方も
方向性は違えど異常になるんだろうかw
406名無しさん@ピンキー:2009/11/03(火) 06:47:08 ID:ZYzoA7TA
>>400
まさかの「ライバルは電波系」GJ!
晶サイドの話は、相変わらずシリアスなのかギャグなのか、区別が付けにくいぜ!

それにしても義明の周りの女性って、
・兄妹の関係を捨て、恋人関係を望むキモウト
・電波な願望から、擬似兄妹の関係を望む同級生
・息子を性的な目で見る、アル中気味の母親
――見事に変人しかいねぇ…!
407名無しさん@ピンキー:2009/11/03(火) 16:02:27 ID:PKc8mcf5
「実は私、雨宮君じゃなくて晶ちゃんの事が好きだったの!」
って展開だと思ったww
408名無しさん@ピンキー:2009/11/03(火) 16:50:00 ID:B56ddwn6
俺もそう予想してた 
409名無しさん@ピンキー:2009/11/03(火) 18:51:36 ID:yrFs3FQu
実は俺もw
410名無しさん@ピンキー:2009/11/03(火) 19:09:21 ID:Omk3eH1e
ペロ…これは晶のお兄ちゃん呼びフラグ!
411名無しさん@ピンキー:2009/11/04(水) 00:58:46 ID:7MZw7ubw
>>400
GJ!
しかし、この話。もし晶ちゃんじゃなくて
優香や紫織姐さんだったらどうしてたんだろう?
健太を赤の他人であるハズの同級生が兄と慕ったり
柳沢を弟みたいに可愛がる女を目の当たりにした時の
この二人の反応と思考・行動も見てみたいw
412名無しさん@ピンキー:2009/11/04(水) 01:27:32 ID:mopTfZ3X
強行「殺しましょう」
議長「賛成の反対なのだ」
413名無しさん@ピンキー:2009/11/04(水) 02:00:05 ID:a/b9vZ+3
GJ!予想の斜め上を行くとんでもキャラだったwww
414名無しさん@ピンキー:2009/11/04(水) 14:38:18 ID:7FuOMccd
お母さんいじめたい・・・
415名無しさん@ピンキー:2009/11/04(水) 18:16:16 ID:Kza69V5Y
実は、その晶母に少し萌えてる

なんか可愛いじゃん
416名無しさん@ピンキー:2009/11/04(水) 20:40:45 ID:7MZw7ubw
子供の年齢的に三十路は間違いなく過ぎている
アル中のおばさんが実の息子に欲情してるんだぜ?
417名無しさん@ピンキー:2009/11/04(水) 20:46:20 ID:V7v7Me2i
美人なら問題は無い
418名無しさん@ピンキー:2009/11/04(水) 21:52:55 ID:Kza69V5Y
>>416
はっはっは
そもそもこのスレの住民であること自体だな
「性的嗜好が倒錯したどこか壊れたオンナ」
に惹かれるってことさ
419名無しさん@ピンキー:2009/11/04(水) 23:11:17 ID:bh5Gl2A6
>>412

久しぶりにみたわwそのやりとり
420名無しさん@ピンキー:2009/11/04(水) 23:30:52 ID:xFf9TxA/
>>412
強行というより凶行…
421名無しさん@ピンキー:2009/11/05(木) 03:27:10 ID:TPCv+vYF
優香の脳内会議また見たいなw あれ好きだw
>>411みたいな状況はやっぱり許せないんかな?
422名無しさん@ピンキー:2009/11/06(金) 11:18:21 ID:GmENEUoZ
優香の脳内優香ってまともなの分析くらいだよな……
423名無しさん@ピンキー:2009/11/06(金) 12:47:43 ID:sR4r65gr
議長は?
424名無しさん@ピンキー:2009/11/06(金) 16:07:32 ID:Kiy1lnMd
>>422-423
それと性欲と打算も案外まともじゃね?
強行と潔癖がとにかく酷かったから相対的に他がまともに見えるだけかも知れないけどw
潔癖に至っては名前だけで単なる欲望の塊だったしw 性欲より性欲らしかったぞアイツw
常識も最初はまともだったけど信仰に進化してからはダメになったなw
425名無しさん@ピンキー:2009/11/06(金) 16:41:40 ID:0b5LlD0O
また脳内会議を見たいな
426名無しさん@ピンキー:2009/11/06(金) 17:33:23 ID:RdadJsBZ
新世紀エヴァンゲリオンでさ、確か一人の人格を女、母親、科学者の3つに分けてプログラムした
スーパーコンピューター「MAGI」が出てきたよな。
それをキモウト/キモ姉で分けてみた。
女・妹(姉)・科学者 の三つ。
兄/弟が危険な目に会う作戦はすべて全会一致で反対するが…。
427三つの鎖 1:2009/11/07(土) 00:24:16 ID:ugR8nC3i
初投稿です
ここ一か月ほど規制が激しく、書き込もうとするといつも規制でストレスのたまる日々でした
これは一話ですが、すでに7話までできてます。
428三つの鎖 1:2009/11/07(土) 00:25:03 ID:ugR8nC3i
朝4時30分。
 まだ日も昇らない暗いうちに僕はむくりと起きた。
 布団にもぐりこみたいのを我慢して着替え、階段を降り、顔を洗い、キッチンに向かう。
 手早く調理器具を取り出し、冷蔵庫から昨日のうちに下ごしらえした食材を取り出す。
 機能セットしたご飯が炊けているのを確認する。
 (炊飯器が壊れた時は大変だったな)
 あの時は朝昼サンドイッチにしたのを覚えている。
 みそ汁の出汁をとりながら家族四人分の弁当を作る。弁当には京子さんの好きな鶏のから揚げを入れる。
 続いて朝食の用意と晩御飯の下ごしらえを始める。
 晩御飯は妹の好きな鶏肉の料理にしよう。
 鶏肉を冷蔵庫から取り出し考えること一分、照り焼きに決め鶏肉を手早く切り分ける。
 下ごしらえの終えた食材を冷蔵庫に戻し、朝食を手早く作る。
 旬のカツオの切り身をフライパンで生姜焼きにする。血圧の高い父のことを考慮し、塩分は控えめ。
 みそ汁を味見していると京子さんが降りてきた。
 すでにスーツを着ている。とても父と同年代とは思えない瑞々しい肌。
 「幸一君おはよう」
 「…おはようございます」
 「いつもありがとうね。手伝うわ」
 京子さんはエプロンを付け、キッチンに入る。
 「ありがとうございます」
 特に手伝ってほしいことは言わない。それでも京子さんは手早く朝食を手伝ってくれる。
 次に父が降りてきた。すでにスーツに身を包み鞄を手にしている。
 「おはよう父さん」
 「おはよう。いいにおいだな」
 かすかに顔をほころばす父。魚の匂いに気がついたのだろう。
 朝食の準備も後はご飯とみそ汁をテーブルに並べるだけ。
 しかし最後の一人がやってこない。
 「幸一君、梓を起こしてあげて」
 京子さんがお椀を取り出しながら言う。
 「…分かりました。後はお願いします」
 僕はため息をついてエプロンを外した。
 妹の梓とはあまり仲が良くない。京子さんもそれを分かっているからあえて僕に起こしに行かせるのだろう。
 階段を上り梓の部屋の前でノックする。返事無し。
 「あずさー。入るよ」
 扉を開けた途端、むわっとした空気が流れる。
 まだ春先にも関わらず締め切られカーテンのかけられた暗くて空気の澱んだ部屋。
 僕はまずカーテンひらき窓を開ける。
 朝のまぶしい日の光が差し込む。相変わらず散らかった部屋。
 外の空気を吸い込みベッドに向かう。
 タオルケットから白い足がはみ出ている。
 梓はいつも締め切って熱くなった部屋で寝るので、春先でも平気で下着にシャツで寝る。
 起こしに行くといつも目のやり場に困るが、何度言っても直してくれない。
 床にある短パンをつかみ、梓をゆらす。
 「あずさー。起きて。もう朝御飯だよ」
 梓はむっくり起き上がった。
 長い髪が壮絶にぼさぼさになっている。
 眠そうな眼をしている。
 「すぐ行く。出て行けシスコン」
 きれいな桜色の唇からはいつものように罵倒が飛ぶ。
 僕は苦笑しながら短パンを渡し部屋から出ていく。
 部屋が散らかっていたから今度掃除してあげよう。



429三つの鎖 1:2009/11/07(土) 00:27:08 ID:ugR8nC3i
 リビングでは湯気の上がる朝食が並んでいた。
 京子さんは調理道具を洗ってくれている。
 「京子さん僕がしますよ」
 「いいのよ。いつもおいしいご飯を作ってくれてるんだし。これぐらいさせて」
 京子さんはにっこり笑った。
 心臓がでたらめな鼓動を刻むのを、意志を総動員して抑え込む。
 梓はすぐに降りてきた。
 家族全員が椅子に座る。
 『いただきます』
 「…いただきます」
 妹だけ不機嫌そうに口を開く。これもいつものこと。
 静かな朝食が進む。
 「幸一君、今日もおいしいわね。腕を上げたかな?」
 「そんな事ないですよ。ありがとうございます」
 「幸一、このカツオはうまいな」
 「村田のおばさんがくれたんだ」
 父の質問に答える。梓の眉がぴくっと動く。
 「梓、高校はどうだ?」
 父さんが尋ねる。
 「…まあまあ」
 梓は不機嫌そうに答える。
 「梓は生徒会から勧誘されているんだ」
 「ほう。まだ入学したばかりなのにか」
 父さんは感心したように答える。
 「何度か手伝わされただけよ」
 梓は不機嫌に答える。
 朝食が終わり、緑茶を京子さんが入れてくれる。
 梓だけ冷たいお茶を渡す。梓は一気に飲んでリビングを出た。いつも通りシャワーを浴びるのだろう。
 お茶を飲み終わった二人が出勤するのを見送り、僕は家事を片付ける。
 朝食の洗い物を行い、僕と父と京子さんの部屋の布団を干す。ゴミ箱のゴミをまとめ軽く掃除する。
 梓の部屋に入り、ため息をつく。どうやれば二日でここまで散らかすんだろう。
 床は脱ぎ捨てた服や下着やシーツが散らばり、本が散乱している。
 僕は手早く服と下着とシーツを洗濯かごに入れる。こんな空気の蒸した部屋にいるせいか、散らかった服も下着もシーツもしけって感じる。梓が部屋を閉め切るせいで部屋はすごく暑い。
 梓は汗をかくとすぐに着替えるから部屋には服や下着が散乱する。暑がりな梓と全く逆の行動をいつも不思議に思いながら片付けを続ける。本を棚に入れ、アイロンと台を片付け、布団を干す。フローリングの床に掃除機をかけゴミをまとめる。
 掃除機を片付け風呂場に向かう。
 下ではすでに梓が制服に着替えて牛乳を飲んでいた。
 梓が無言でブラシを投げつけてくる。
 僕は受取り、梓の髪にブラシを通す。風呂あがりなためか梓の体温を熱く感じる。
 別に妹は髪の手入れをできないわけでない。面倒くさがり屋なのだ。ここで小言を言うと睨まれるので何も言わない。
 「梓、部屋を掃除したよ」
 梓の頭がぴくっと動く。
 「このシスコン。そんなに妹の部屋をあさるのが好きなの」
 「たまには換気しないとだめだよ。埃がたまりやすいし」
 梓は無言で髪止めのゴムを渡してくる。
 僕は手早く妹の髪をポニーテールにする。
 終わると梓は何も言わず鞄を持って出て行った。
 いつもの事だが少し悲しい。
430三つの鎖 1:2009/11/07(土) 00:28:02 ID:ugR8nC3i
 落ち込みながら風呂場に向かう。梓は風呂に入る前に洗濯機を回すように頼んでいる。僕の頼みをほとんど聞いてくれないが、これだけはちゃんとしてくれる。洗濯物を取り出し庭へ。
 洗濯物を干していると声をかけられた。
 「幸一君。おっはー」
 庭の外には知っている女の子が黒い犬と一緒にほほ笑んでいた。長い髪をまとめた女の子。
 女の子はどうでもいいが、この黒い犬はシロという。黒いのに。
 「おはよう春子。おばさんがくれた魚、お父さんがおいしいって喜んでいたよ」
 「本当?お母さんに伝えとくね。梓ちゃんは?」
 「もう学校」
 「ふーん。ねえ、一緒に学校に行かない?」
 「分かった。ちょっと待ってね」
 春子は手を振り隣の家に入った。
 待たしてはいけない。僕は残りの洗濯物を急いでほして制服に着替えた。
 弁当を取りにキッチンに行くと、二つあった。僕のと梓のだ。
 僕は二つとも鞄に入れた。





 春子と二人で学校に向かう。
 道すがらとりとめのない話をする。
 「相変わらず梓ちゃんに避けられているの?」
 「うん。嫌われているのかな」
 「しょーがないなー。お姉ちゃんが一肌脱いであげるよ」
 「ありがとう。期待しないで待ってるよ」
 春子と話すといつも不思議に思う。春子も小さい時からの知り合いだから気兼ねなく話せるのに、何で妹と話すと緊張するんだろう。
 靴箱でいったん春子と別れ梓のいる教室に向かう。
 こっそり教室をのぞく。梓は僕が教室に来ると怒るのだ。
 教室に梓はいなかった。
 「あれれー?お兄さんじゃないですか」
 後ろから突然声をかけられた。
 「またお弁当ですか?」
 見覚えのある女の子がにやにやしていた。
 「ええと…」
 誰だっけ。
 「中村です。梓の友達の。ひどいですねー。覚えてくれてないのですか?」
 「覚えているよ。中村夏美さん」
 今思い出したけどね。
 「梓見てない?」
 「あの子時間ぎりぎりまでどこかで時間つぶしていますよ」
 それは知っている。
 「申し訳ないけど、梓に弁当を渡してくれないかな」
 「うーん。私としては全然OKですけど、あの子私が渡すと不機嫌になりますよ。兄さんは私に弁当渡すのも嫌なぐらい会いたくないんだって」
 何その理不尽。
 「お昼休みに渡してあげてください。そっちのほうがあの子喜びますよ」
 「教室に行くと怒るのに」
 「そんな事ないですよー」
 中村さんはけらけら笑う。
 「分かった。お昼休みにまた来るよ」
 「伝えときます!イエッサー!」
 中村さんは何故かびしっと敬礼した。
 



431三つの鎖 1:2009/11/07(土) 00:29:18 ID:ugR8nC3i
 お昼休み。
 立ち上がるとクラスメイトの耕平が声をかけてきた。
 「こーいちー。飯にせえへん」
 「妹に弁当渡してくるから先に始めといて」
 「ああ。梓ちゃん弁当忘れたんや。オッケーオッケー。こっちは適当に始めとくわ」
 耕平は笑ってほかのクラスメイトと学食に向かった。
 「幸一君」
 今度は春子が声をかけてきた。
 「梓ちゃんの所に行くのでしょ。私も行く」
 「いいけど…。なんで?」
 「これを機に梓ちゃんとの仲を修復するの。私お姉ちゃんが一肌脱いであげる」
 胸をそらす春子。
 「さ、行きましょ」
 僕の手をつかみ歩き出す春子。温かい手に頬が熱くなる。耕平達と食事の約束が。
 「耕平君なら女の子のお誘いを断るやつは絶交じゃー、って言うと思うよ」
 「何で僕の考えていること分かるの」
 「何年目の付き合いだと思っているんですか」
 「分かったから手を離して」
 「えー?何で?」
 「その、恥ずかしいよ」
 「相変わらず恥ずかしがりやですね」
 春子はにこにこしながら手を放してくれない。さらに僕の手をにぎにぎしてくる。ドSだ。
 「何で僕をからかうときだけ敬語なのさ」
 「それはですね、私が幸一君のお姉さんだからです」
 たった1日なのに。
 「それに私は幸一君の料理のお師匠様だからです」
 「…わかりました師匠」
 「分かればよろしいです」
 梓の教室をこっそりのぞく。
 中村さんが目ざとく僕を見つけた。
 「おにーさーん!こっちです!」
 梓がものすごい形相で僕を睨む。怖すぎる。
 恐怖で教室に入れない僕を春子が押す。
 「ほら梓ちゃん。幸一君とお弁当をお届けにまいりました」
 「いらない」
 即答する梓。冷たい視線を僕に向ける。
 「まあまあ。ここはハルお姉ちゃんの顔に免じて一緒にご飯食べよ」
 「あ!私もご一緒していいですか?」
 姿勢よく挙手する中村さん。びしっという音が聞こえてきそうな勢いだ。
 「もちろん。梓ちゃんのお友達?私は村田春子っていうの」
 「村田先輩ですね。私は中村夏美といいます!夏美って呼んでください!」
 意気投合する二人。
 「なんか僕たちおいてきぼりだね」
 「珍しく兄さんと意見があったわ」
 取り残される兄妹。
 「はい梓。お弁当忘れていたよ」
 無言で受け取る梓。
 「こら梓ちゃん!幸一君にお礼を言わないとだめでしょ」
 「あーずーさー!お兄さんが可哀そうでしょ!」
 二人に攻められ梓は面倒臭そうに口を開いた。
 「…兄さんありがとう」
 胸にじわっときた。妹に礼を言われるのなんて何年ぶりだろう。
 「…うん。どうしまして」
 思わず涙ぐみそうなのをこらえる。
 そんな僕たちを春子と中村さんはにこにこ見ていた。



432三つの鎖 1:2009/11/07(土) 00:30:45 ID:ugR8nC3i
 四人で机を囲み弁当を開く。僕と梓が向かい合う。
 「さすが兄妹。中身は一緒だー」
 中村さんが僕と梓の弁当を見てはしゃぐ。
 「お兄さん」
 「何?」
 「鶏からいただきます!」
 中村さんが僕の弁当から鶏の唐揚げをひょいとつかみ口に運ぶ。
 「私も弟子の進歩を確認しよーっと」
 春子も僕の唐揚げをひょいとつかむ。
 「うんめー!お兄さんうますぎですよ!」
 さらに一つ食べる中村さん。あれ?から揚げ弁当がご飯と野菜弁当になっちゃったぞ?
 「結構なお手間です」
 春子はにこにこしながらサイコロステーキを一つ僕の弁当に入れてくれた。さすがお金持ち。
 「お兄さんこれどーぞ」
 中村さんがミートボールを僕の弁当に入れる。唐揚げとは釣り合わない気がする。
 「ありがとう」
 食べようとしたら梓が素早くサイコロステーキとミートボールを奪い口に詰め込む。
 呆然とする僕を冷たく見つめながら梓は飲み込んだ。
 「シスコンの兄さんには勿体ない」
 結局僕はご飯と野菜だけの昼食となった。





 「えええー!?お兄さんが弁当作っているのですか!?」
 中村さんの大声が教室に響く。
 「夏美うるさい」
 「ちょっと梓!お兄さん料理の鉄人?」
 「私が料理を教えたからね。これぐらい当然なのです」
春子は胸を張る。中村さんは思わず春子の揺れる胸を見つめ自分の胸に手を持って行った。
 「春子先輩!ししょーと呼ばせてください!」
 「幸一君は朝昼晩とご飯を作り洗濯掃除もこなす自慢の弟子なのです。一家に一台幸一君なのです」
 二人ともネタが古い。
 「お兄さん何者ですか?家事万能ですか?」
 「あのね中村さん」
 「ノンノン!私のことは夏美と呼んでください」
 「ええと夏美ちゃん、梓も手伝ってくれるから」
 「お兄さんいい人過ぎ!梓!お兄さんもらっていい?」
 梓は手で顔をあおぎながらうっとうしそうに口を開く。
 「夏美、ひとつ言っとくけど、兄さんはいつもあられない格好で寝ている私に鼻息荒く近づいて鼻の下伸ばしながら起こしに来るのよ。妹の髪をとかしながらウットリして、妹の部屋を掃除と称して荒らす変態シスコンよ」
 「いやいやいや」
 僕は慌てて否定する。
 「えー。それはちょっとドン引きですね。妹の髪ととかしてウットリとか。お兄さん、そんなに梓ちゃんの髪が好きなのですか?」
 中村さんが僕から距離をとる。
 「ふふふ。夏美ちゃん分かってないですね」
 春子がにこにこ笑う。嫌な予感がする。
 「梓ちゃんは面倒臭がり屋だから幸一君にさせているだけなのです」
 「梓そうなの」
 「まあね」
 「どんだけお兄さんをこき使ってんだYO!」
 あっさり認める梓に突っ込む中村さん。
 「幸一君覚えていますか?女の子の髪の手入れの方法がわからなくて私に教えてと頼んできたのを」
 春子が自分の長い髪をなでながらウットリささやく。無論ほかの二人に丸聞こえ。戦慄が走る。
 「春子待って」
 「何回も私で練習させてあげましたよね」
 「春子先輩!その言い方はなんかエロいっす!」
 梓の視線が絶対零度より低くなる。
 「ふーん。そんなことあったんだ。シスコンじゃなくて幼馴染好きだったんだ」
 梓は手で顔をあおぐ。怒りで熱くなっているんだろうか。
433三つの鎖 1:2009/11/07(土) 00:31:56 ID:ugR8nC3i
 「幸一君。今度女の子の髪の扱いが上昇したかテストさせてあげます。私を満足させたら合格です」
 その言い方はやめて!
 「お兄さん。その、あの」
 中村さんが頬を染める。
 「今度私もお願いしていいですか?」
 机の下で梓が僕のすねを蹴った。許してください。






 お昼休みも終わりが近づき僕と春子は一年生の教室を後にした。
 去り際に中村さん、いや夏美ちゃんが「いつでも来てくださーい!」と元気いっぱい手を振ってくれた。梓は相変わらず不機嫌そうだった。
 自分の教室に戻ると耕平が声をかけてきた。
 「その様子だと珍しく梓ちゃんと昼飯食べたみたいやな」
 「うん。行けなくてごめん」
 「何言っとんねん!妹とはいえ女の子の誘いを蹴るようや男とは絶交やで!」
 耕平が笑う。その台詞は春子が予想していました。
 「で、どやって梓ちゃんを飯を食ったんや?」
 耕平が好奇心丸出しで訪ねてくる。
 「ふふふ。それは私のおかげなのです」
 胸を張る春子。耕平は思わず春子の胸に視線が行く。大きいもんな。
 「っと俺としたことが。ハルの姐御すいません」
 「ふっふっふ。見るだけならいいですよ。哀れなチェリーボーイが私の胸に興奮するのは仕方ないのです」
 「姐御サーセン!」
 頭を下げる耕平。
 僕は苦笑する。春子は面倒見がいいしノリも意外といい。けど少しオヤジ臭い所がある。
 「幸一君」
 春子は僕の顔をのぞく。顔が近い。
 頬が熱くなるのがわかる。
 「梓ちゃんとご飯食べて楽しかった?」
 僕はうなずいた。
 「春子のおかげだよ。ありがとう」
 春子は微笑み、背伸びして僕の頭をなでた。春子も身長は高いが、僕はそれ以上だ。
 「ちょっと恥ずかしいよ」
 「ふっふっふ。存分に恥ずかしがれなのです」
 耕平は指をくわえて見ていた。
 「ええなー。あねごー。俺の頭もなでてーな」
 「今すぐ大気圏から消え失せて」
 「ひどっ!」
 耕平は頭を抱えて絶叫する。クラスメイト達は生暖かい目で見ていた。
 



434三つの鎖 1:2009/11/07(土) 00:32:56 ID:ugR8nC3i
 放課後。耕平はHR終了と同時に飛び出した。今日はバイトらしい。
 春子は生徒会に向かった。
 僕も帰ろうとしたところ、靴箱で梓と夏美ちゃんに会った。
 珍しい。梓は人ごみが嫌いだからすぐに帰ることはしない。
 「おにーさーん。今から帰りですか?」
 「うん。夏美ちゃんも?」
 「一緒に帰りましょう。いいでしょ梓?」
 梓が渋い顔をする。
 「ええと、やっぱり遠慮しとこうかな」
 「何言ってるのですか。梓もうれしそうですよ」
 この子はどこを見ているんだろう。
 「ほら、行きますよ」
 夏美ちゃんが僕と梓の手を一緒に握りひっぱる。
 梓と夏美ちゃんの手の暖かさが伝わりどぎまぎした。
 「変態シスコン」
 梓がぼそりとつぶやく。
 「え?梓なんて?」
 「夏美。この変態シスコンは妹と後輩の手にドキドキしているのよ。妹として恥ずかしいわ」
 「えー。お兄さん本当ですか?」
 「ええと、女の子に触れるのが苦手なんだ」
 「ほら夏美。否定しないでしょ」
 「お兄さんって恥ずかしがり屋ですね」
 そんな事を話ながら帰る。
 分かれ道で夏美ちゃんは手を放し、放した手を大きく振って去った。
 周りは帰る学生や買い物の主婦でごった返している。
 梓は不機嫌そうに顔を手であおぎながら立ち尽くして動こうとしない。
 理由を僕は知っている。人ごみが嫌いな理由も。
 「梓」
 僕は梓に手を差し伸べた。
 梓が冷たい視線を僕に向ける。
 「何?後輩の手の温もりが無くなったから妹の手の温もりがほしいの?」
 「うん」
 梓はそっぽを向く。
 「このシスコン。まあいいわ。兄さんが女の子にふれる練習にもなるし今回は付き合ってあげる」
 梓は僕の手を握った。僕も握り返す。梓の手は燃えるように熱い。
 「練習って。まあいいや」
 「私が練習に付き合ってあげないと春子にお願いするかもしれないでしょ。女の子にふれるのが苦手だからってそんなことしたら私が恥ずかしい」
 相変わらず不機嫌そうな梓。
 そこから何もしゃべらず僕たちは帰った。話しかけて梓をこれ以上不機嫌にすることはないと思った。




435三つの鎖 1:2009/11/07(土) 00:34:17 ID:ugR8nC3i
 家に着き、僕たちは分担で家事を行った。
 布団をたたみ、カバーを付ける。
 梓は洗濯物をたたみアイロンがけと風呂掃除。いつもは僕が行うことも多い。
 そして二人で晩御飯を作るのと明日の下ごしらえを行う。普段は梓が帰ってくるのはもっと遅いので僕一人で作ることが多いが、今日は珍しく二人で作った。
 梓の料理の腕前は僕より上だ。春子の言うとおり梓は面倒くさがりだが、やればいくらでもできる。
 この家の子供の夜ごはんは早い。父さんと京子さんの帰りはいつも遅いし、今日は柔道の練習がある。
 「いただきます」
 鳥の照り焼きを口に運ぶ。おいしい。梓は無言で食べるが、心なしか頬が緩んでいる気がする。
 梓はやっぱり鳥料理が好きなんだなと実感する。僕は父さんに似て魚が好きだけど、梓の好みに合わせて晩御飯は鳥料理が多い。安いし。
 食後、僕は食器を洗う。
 梓はのんびり僕が入れたアイスティーを飲んでいた。暑がりな梓はいつも薄着で家では特に顕著だ。今も短パンにシャツ一枚と目のやり場に困る格好だ。
 僕も食後の緑茶を飲み一息つく。
 そのまま無言が続く。本当なら気まずいはずだが、僕はもう慣れてしまった。そのことが少し悲しかったりする。
 コップを流しに置いて、鞄を持つ。中に道着と帯があるのを確認し、梓に告げる。
 「梓、行ってくる」
 梓は無言。
 いつものこと。僕は家を出た。

 僕が向かったのは市民体育館。ここで週に何回か柔道の練習が行われる。
 ここの練習は短いが濃い。集まっているのが大学の体育会や現役の警察官ばかりだからだろう。本当なら僕のような高校生が来れる場所では無い。警察勤めの父の口添えがなければ無理だっただろう。
 へとへとになりながら着替えを終え体育館を出る。そこに春子がいた。
 「幸一君お疲れ様」
 春子は微笑んだ。春子はこの市民体育館で行われる合気道の練習に参加している。僕の参加しているのとは反対に、子供中心ののんびりした練習だ。
 「一緒にかえろ」
 僕が返事をする前に僕の手をつかみ歩き出す。
 頬が熱くなる。
 「春子」
 「手は離しませんよ」
 にこにこする春子。いや、にやにやしている。
 「なんか最近手を握ること多くない?」
 「へー。お姉ちゃんと手を握るのが不満なのですか。おじ様おば様ごめんなさい。春子は幸一君の教育を間違えました」
 「いや、その、今日は二回目じゃない」
 「三回目でしょ」
 え?
 「帰り道に夏美ちゃんと梓ちゃんと」
 気のせいだろうか。僕の手をつかむ春子の手が冷たく感じる。温かいのに。
 春子がにこにこしながら握る手に力を入れる。
 そのまま僕たちは無言で歩く。
 「幸一君。何か反応してよ」
 「えっと、なんて言っていいかわからなくて。怒ってる?」
 「まさか」
 春子がにっこり笑う。
 「今日の練習で子供たちが『ハルお姉ちゃんのカレシが女の子二人と手をつないで帰ってた』と聞いた時は幸一君も立派になったと思ったのです」
 空気が弛緩する。
 「帰り道に見られたのかな。人多かったし」
 「情報を提供してくれた子供たちには丁寧に指導しちゃいました」
 舌を出す春子。何をしたのだろう。
 「私びっくりしたよ。梓ちゃんが人の多い時間に帰ってるの久し振りに聞いたし」
 「夏美ちゃんに引っ張られたのだと思う」
 春子は梓が人ごみを嫌う理由を知っている。
 とりとめのないことを話しながら帰った。時々僕の手をぎゅっと握ってくるのにどぎまぎした。
 春子の家の前で手を放し別れる。春子の家の犬のシロがわんと吠えた。
 「おやすみ幸一君」
 「おやすみ春子」
 「また明日ね。困ったことがあればいつでも言ってね。お姉ちゃんはいつでも幸一君の味方だよ」



436三つの鎖 1:2009/11/07(土) 00:35:03 ID:ugR8nC3i
 父さんと京子さんは食事を済ませてお風呂も終えていた。
 僕は道着を洗濯機に入れシャワーを浴びる。
 復習予習を軽く済ませて寝間着に着換えた。
 歯を磨こうと洗面所に向かうと水音がする。梓がシャワーを浴びているのだろう。
 仕方なくキッチンで歯を磨く。
 磨き終えて戻ろうとしたらキッチンに梓が来た。僕は無言でコップに牛乳を入れ渡す。
 梓は無言で受け取り無言で飲み無言でコップを返して踵を返した。
 「おやすみ」
 梓は何も言わない。

 ここで自己紹介をしておく。
 僕は加原幸一。
 高校二年生。
 好きなことは柔道。
 悩みは妹に嫌われていること。
 詳しい話はこれから語っていくと思う。
437三つの鎖 1:2009/11/07(土) 00:38:09 ID:ugR8nC3i
一話終わりです
規制されなかったら明日のお昼にでも続きをうpします
438名無しさん@ピンキー:2009/11/07(土) 01:07:53 ID:Z1PZWWz2
一番槍GJ!
しっとりした雰囲気のある出だしでした
439名無しさん@ピンキー:2009/11/07(土) 08:03:36 ID:A3/M4CW+
起きてすぐ見て良かったぜw
GJ!
テンプレかもだが長くなるならトリップ付けたほうがいいかも。
440名無しさん@ピンキー:2009/11/07(土) 09:44:09 ID:syiNqKzC
ぐっぢょ!!
続き期待
441名無しさん@ピンキー:2009/11/07(土) 10:43:31 ID:wDpz5GsA
GJ!!!
ありがたやありがたや
442名無しさん@ピンキー:2009/11/07(土) 15:54:09 ID:gsPttRig
これは続きが楽しみ
443名無しさん@ピンキー:2009/11/07(土) 18:41:37 ID:syiNqKzC
明日の昼って日曜日か……
随分と長い間、待機しちまってたぜ
444名無しさん@ピンキー:2009/11/07(土) 19:22:22 ID:RR07PHtn
>>443
俺もスゲー楽しみにしながらちょくちょく覗いてたww
445 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/07(土) 23:01:13 ID:DamrVLf2
三つの鎖 2話

投稿予告してたのにすいません
ハードディスクがあぼーんしやがりました
バックアップがなかったら終わりでした
今は実家から投稿しています
実家のお父さんお母さんごめんなさい

ではどうぞ
446 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/07(土) 23:03:36 ID:DamrVLf2
三つの鎖 2

 朝4時30分。
 まだ日も昇らない暗い時間に私は起きる。
 耳を澄ます。隣で兄さんが起きて着替えるのが分かる。階段を降りる音がする。
 兄さんは朝キッチンに戻ると当分戻ることはない。父さんと母さんが起きるのはまだ後だ。
 私は部屋を出て兄の部屋に向かう。
 兄の部屋は整理整頓されている。カーテンは開き窓は開いて朝の空気が流れ込んでくる。きっちり布団と寝間着も畳まれている。
 私はまだ温かい兄さんの寝巻を胸に抱き布団にもぐりこむ。
 布団はまだ温かく兄さんの匂いがする。
 「…ふー、ふっー、ふー」
 息が荒くなる。兄さんの温もりと匂いが私を包み込む感覚に興奮する。
 兄さん好き。
 そのまま兄さんの布団でごろごろする。本当は自慰をしたいが、さすがに跡が残る可能性があるので行わない。ただ兄さんの布団に横になるだけで下着が濡れるのが分かる。
 兄さんの温もりと匂いに頭がくらくらする。
 時計を見る。もうすぐ父さんたちが起きる時間だ。名残惜しく思いながら私は布団を出る。布団と寝間着をたたみ来る前と同じ状態にしてから兄さんの部屋を出る。
 自分の部屋に戻り布団に入る。昨日の兄さんのカッターシャツを抱きしめ匂いを嗅ぐ。締め切られ空気の澱んだ私の部屋でも兄さんの匂いは分かる。
 私は我慢できずに自慰をする。兄さんの匂いが堪らない。兄さんの部屋にいたときから我慢するのに大変だった。
 兄さん好き。
 兄さんを想像し何度も自慰をする。兄さんの腕に抱かれ、兄さんに口づけされ、兄さんに組み伏せられて犯される様を想像しながら。
 やがて階段を上る音が聞こえた。兄さんの足音だ。
 私は兄さんのカッターシャツをベッドの下に隠しタオルケットをかぶる。
 ノックがする。
 私は何も答えない。
 「あずさー、入るよ」
 扉があき兄さんが部屋に入る。
 兄さんは手早くカーテン開き窓を開ける。
 寝たふりをする私をゆする兄さん。私をゆする兄さんの手が心地よい。
 「あずさー。起きて。もう朝御飯だよ」
 私は起きて兄さんを睨みつけた。今すぐにも抱きつきたい衝動を我慢する。
 「すぐ行く。出て行けシスコン」
 兄さんは困ったように、少し悲しそうに苦笑した。私に短パンを渡し部屋から出ていく。
 私は兄さんの困った顔も悲しそうな顔も大好きだ。胸が熱くなる。
 深呼吸して胸の熱い空気を吐き出す。
 私は下着を替え短パンをはき下に行く。手早く歯を磨きリビングに行く。
 兄さんと父さんと母さんはすでに座っていた。
 全員でいただきますと言い朝食が始まる。今日の朝食はカツオの生姜焼きだ。
 この家の食事はいつも静かだ。私と父さんは無口だし母さんも食事中はあまりしゃべらない。兄さんは無口なわけではないが、私に何度も無視されているせいか静寂を何とも思わないようになった。
 別に余所余所しいわけではない。
 「幸一君、今日もおいしいわね。腕を上げたかな?」
 母さんが茶目っ気たっぷりに兄さんに言う。
 「そんな事ないですよ。ありがとうございます」
 兄さんが少し照れながら言う。
 「幸一、このカツオはうまいな」
 父さんが言う。父さんは魚好きだ。いつも無表情な顔もこころなしほころんで見える。
 「村田のおばさんがくれたんだ」
 私は無表情なままいようとして失敗した。
 それに気がついたのか父さんが私を見る。
 「梓、高校はどうだ?」
 私はこの春から兄さんと同じ高校に通っている。
 「…まあまあ」
 私は答えた。不機嫌そうに見えたかもしれない。実際私は不機嫌だった。
 村田。隣に住んでいる一家。いい人ばかりだ。昔から何度も面倒見てもらったし、一人娘の春子は私と兄さんにとってお姉さんみたいなものだった。
 だが、血のつながった兄に好意を抱いている私にとって、兄と親しい女性に好意を抱けるはずがない。
 「梓は生徒会から勧誘されているんだ」
 「ほう。まだ入学したばかりなのにか」
 「何度か手伝わされただけよ」
 母さんはにこにこしている。
447 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/07(土) 23:07:03 ID:DamrVLf2
 私は視線だけで動かし母さんを見る。父さんの再婚相手。私の生みの親は私を生んですぐに亡くなったらしい。それ以来、母さんはよく私たちの面倒を見てくれた。
 私は母さんが嫌いでない。むしろ好きだ。気難しい私の面倒を見てくれた。私にとっては母代わりだ。兄さんは母さんと呼ばずに京子さんと呼ぶが、私は母さんと呼んでいる。
 いつも思う。私が兄さんの妹でなく、京子さんの連れ子だったら何も悩むことはなかったのに。
 朝食が終わり兄さんが食器を運んでいる間に母さんはお茶を淹れてくれる。私には冷たいお茶を淹れてくれた。
 「母さんありがとう」
 兄さんには冷たくしている私も母さんや父さんまでそうではない。
 母さんはにっこり笑った。
 私はお茶を一気に飲みリビングを出た。
 いったん部屋に戻り着替えと一緒に兄さんのカッターシャツを持っていく。
 洗濯機のスイッチを入れシャワーを浴びる。
 兄さんは優しい。
 私がどれだけ冷たくし罵倒しても離れない。困ったような、少し悲しそうな苦笑を私に向ける。どれだけ冷たく接しても怒らない。いつも少し悲しげで困った苦笑をする。
 先ほどの兄さんの表情を思い出す。わずかに悲しみのにじむ困った苦笑。私は兄さんのあの表情が大好きだ。思い出すだけで体が熱くなる。
 シャワーの温度を下げる。私は暑がりだと思われているが、別にそうではない。むしろ暑さに強いといえる。もしそうならあんな締め切った部屋でいられるはずがない。
 私は暑がりなのではなく、考え事をすると体温が上がるのだ。特に兄さんのことを考えると体中が熱くなる。そうなるとどうしても汗をかく。家なら別に着替えるなりシャワーを浴びればよいが、外だとそう簡単にはいかない。汗だくになると怪しまれる。
 結局、私は体温を冷ましやすい涼しい格好を好むようになっただけだ。
 家で冷たい飲み物を好むのも同じ理由だ。兄さんの近くにいるとどうしても意識してしまい体温が上がるのだ。
 こう書くと暑いのが嫌なように思われるが、嫌いではない。むしろ好きといえる。兄さんのことを考えている時の全身が燃えるような感覚は好きだ。ずっと溺れていたいと思う。だから自分の部屋は閉め切って暑くしている。
 あの部屋で兄さんのことを思い自慰するのが私の慰めの一つだ。
 シャワー出て体をふき制服に着替える。
 リビングには誰もいなかった。二階で掃除機をかける音がする。兄さんが掃除しているのだろう。
 キッチンに行くと弁当の包みが二つあった。体温が上がるのが自分でもわかる。
 私はあまり女らしくないと自分で思う。普通は好きな人に尽くしたいと思うのが女らしいのだろうが、私は逆だ。むしろ好きな人に尽くしてほしい。
 兄さんは人並み以上に料理をできるが、私の腕は大きく上回る。だが兄さんの料理は好きだ。兄さんは栄養を考慮しつつも私の好きな料理をよく作ってくれる。それが私にはたまらない。
 深呼吸して胸の熱い空気を吐き出す。冷蔵庫から牛乳をとり飲む。私は身長こそ普通だが、胸は…これからが期待だ。
 兄さんが下に降りてきた。私は兄さんにブラシを投げつける。
 兄さんはいつものように困ったように苦笑して私の髪にブラシを通す。
 私の髪にふれる兄さんの手の感触が心地よい。冷たいのに熱い感触。
 私は兄さんに甘えるのが大好きだ。昔はいつもべったりくっついていた。今でも気持ちは変わらない。兄さんに抱きつきたいし、さわりたい。キスしたい。
 だが今はそんな事はしない。そんな事をすれば私は自分の気持ちを抑えられなくなってしまう。しかし兄さんに私の気持ちを告げても双方にとって不幸になるだけだ。
 兄さんに甘えたいが、自分の気持ちを抑えられるレベルで。このぎりぎりの妥協点が兄さんに髪をすいてもらうことなのだ。
 「梓、部屋を掃除したよ」
 私は意識を戻す。
 「このシスコン。そんなに妹の部屋をあさるのが好きなの」
 兄さんが困っている気配が伝わる。
 「またには換気しないとだめだよ。埃がたまりやすいし」
 私は何も言わずに髪止めのゴムを渡した。
 兄さんは私の髪をポニーテールにまとめてくれる。
 私は別に長い髪は好きでは無い。体温が上がった時に首周りが汗をかきやすくて困る。それでも髪を伸ばすのは兄さんに髪をすいてもらうのが好きだからだ。そんな私が好む髪型は首周りが涼しいポニーテールだ。
 私は何も言わずに家を出た。これ以上兄さんの近くにいると抱きついてしましそうだからだ。




448 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/07(土) 23:08:45 ID:DamrVLf2
 手で顔をあおぎながら登校する。周りはまだ人が少ない。登校には早い時間だ。
 私は人ごみが嫌いだ。だからいつも人の少ない時間に登校する。
 教室に入る。当然のごとく誰もいないはずだった。が、一人いた。
 「ちーっす!」
 彼女はうれしそうに挨拶してくる。
 「おはよう夏美」
 「梓も。相変わらずはやいね」
 輝くような笑顔を私に向けてくる。
 彼女も私と同じく人がいないような時間に登校している。初登校日からそうだった。理由は知らない。
 夏美は私と違って愛想がよく友達も多い。私のように無愛想な人間とは本来接点がないはずだが、朝の遭遇のせいか不思議と気が合う。
 人が多くなるまで夏美と話すのが私たちの日課だ。人が多くなると私は人の少ない場所で本を読んだり音楽を聞いたりする。
 教室に人が増えてきたので夏美に断って私は教室を出た。
 今日は屋上に行った。
 屋上で音楽を聴きながらぼんやりとしていると、他の人間が来た。
 屋上に人はめったに来ない。風は強く日差しは強い。私は平気だが、普通の人間は春先の今でも暑いぐらいだろう。
 私は黙ってmp3プレイヤーをしまった。
 見覚えのない女子が二人だ。染めた髪に濃い化粧、短いスカートなど全身でヤンキーであることを主張している。リボンの色から二年生だと分かる。学校で何度か見た顔だ。
 「あんたが加原ね」
 身長の高いほうが偉そうに言う。
 「人違いです」
 私はそっけなく言った。
 「しばっくれてんじゃねーよ。調べは付いてるんだ」
 小さいほうが巻き舌で言った。全く迫力がない。おせじにも友好的な雰囲気では無い。
 ノッポが口を開く。
 「あんたさーユウヤをふったらしいじゃん」
 入学早々付き合えといったあの男か。
 「それが何ですか」
 チビが目をむく。
 「何チョーシこいてんだ。何様のつもりなんだよ」
 口汚い罵り。
 私はこういう経験は多い。自分で言うのもあれだが、私は美少女とよく言われる。しかも見た目は無口で無表情で、大人しそうに見えるらしい。勘違いした男から告白されることは多い。
 男というものは自分が支配できそうな女を狙うことが多い。そのような男からすれば私は格好の獲物なのだろう。
 あのユウヤという先輩は私に何をされたかこの二人に告げてないらしい。
 ぎゃあぎゃあわめく二人を睨む。
 「何か言ったらどうなんだよ。びびってんのかよ」
 「知ってるー?こいつの兄貴シスコンらしいよ。よく妹のクラスに来るんだってさ」
 「へー。残念でちたねー。ここに愛しのお兄ちゃんは来まちぇんよー」
 私は反論しない。このような愚物に言葉で反論しても無意味だからだ。
 素早く周りを確認する。他の人の気配はない。ここは屋上だからほかに高い場所からのぞいている可能性も無い。
 チビの足を払い倒す。お尻から落ちたチビの喉を踏みつける。
 カエルが潰れるような音がした。苦しそうにもがくチビ。
 「てめー!」
 ノッポが殴りかかる。喧嘩慣れはしているようだ。
 相手の腕を流し、腰をかけ投げ飛ばす。
 背中から落とす。ノッポは悲鳴もあげずに屋上で苦しそうにもがく。
 頭から落とすのが一番効果的だが、こんなコンクリートで頭から落とすと命を落とす危険がある。
 そのまま二人の荷物と持ち物をチェックする。録音機や通信中の機器は無かった。
 これで遠慮はいらない。
 二人の荷物からハンドタオルとハンカチを取り出し、口に押し込む
 そのままノッポの手首を極める。
 ぐもった悲鳴を上げるノッポ。
 私は蹴ったり殴ったりはしない。証拠が残るからだ。その点手首というのは少しで大きな痛みが走る。鍛えていない人間にはつらい。
 訳の分からない事を喚くノッポ。「ごめんなさい」と言おうとしているのだろう。
 散々痛めてからチビに近づく。
 震えて離れようとするが、腰が抜けているのか動けない。
 同じように痛めつける。
 涙と涎と鼻水でぐちゃぐちゃになった二人の顔を見てやっと気分が収まった。
 二人に二度と近づくなと告げて屋上を去る。
 それにしてもと思う。私の気持ちを誰にも知られてはならない。高校生の女でも男をふったというだけで目を付け迫害しようとする。
 もし私の気持ちを他人が知ったらどうなるだろか。私は勿論、兄さんも迫害されるだろう。実の妹が懸想するような行動をしたと。それは兄さんを苦しめ不幸にする。
449 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/07(土) 23:10:33 ID:DamrVLf2
 私はそんな迫害を屁とも思わない。だが兄さんはそうでは無い。誠実な兄さんは苦しみ、私を説得しようとするだろう。兄妹で添い遂げることはできないと。
 それは私にとって最も残酷な言葉になる。愛しい男に愛するなと言われるのだから。
 手で顔をあおぎながら教室に戻ると、夏美がニヤニヤしながら声をかけてきた。
 「おにーさんが来たよ」
 弁当だろう。
 「またお昼に弁当を持ってくるってさ」
 「そう。教えてくれてありがとう」
 私が弁当を持っていかないのはわざとだ。こうすれば兄さんはお昼に教室に持って来る。そうなれば兄さんがシスコンという噂に真実味が増す。女というのは不思議なもので、マザコンとシスコンにはどれだけ格好いい男でも評価は厳しくなる。
 何度も繰り返すが私は兄さんを不幸にしたくはない。だが兄さんの隣に私以外の女がいるのは耐えられないのだ。
 自分でもエゴだと自覚している。私は兄さんを愛している。しかしそれは兄さんを不幸にする。だから自分の気持ちは打ち明けない。だけど自分から兄さんから離れられない。だから兄さんに冷たくして兄さんから離れるように仕向ける。
 だけど私は知っている。兄さんは優しいからそんな事では離れない。これは矛盾だ。
 私は兄さんの不幸は望まない。それなのに兄さんがほかの女性と幸せになるのは我慢できない。
 矛盾しているようだが矛盾していない。これは私のエゴなのだ。
 手で顔をあおぎながら私は授業を受けた。






 昼休みに兄さんと春子が来た。
 春子は私が小さい時から隣に住んでいた。父さんは警察官で家をあけがちだった。面倒を見てくれたのは隣の村田一家と京子さんだった。
 私は春子が嫌いでない。
 だが私と兄さんが仲悪いと思い、関係を良好にするために色々してくるのは正直うっとうしい。
 兄さんと一緒にお弁当を食べるのは正直うれしい。二人きりだとなおうれしかったが。
 だが兄さんに弁当を届けさせるのは冷たくされながらも弁当を届けに来るシスコンな男というイメージを広めるためだ。これでは意味がない。
 そんな私の考えをよそに意気投合する春子と夏美。この二人乗りが合いそうだ。
 弁当を開き興奮する夏美。にこにこする春子。
 二人とも兄さんの唐揚げを奪い自分の弁当からおかずを入れる。
 困った顔をする兄に腹が立って私はそのおかずを奪った。
 腹が立つことにおいしかった。
 無論兄さんの弁当にはかなわないが。






 お昼休みにいろいろ話した。
 「えええー!?お兄さんが弁当作っているのですか!?」
 興奮する夏美。確かに男でここまで料理できるのは珍しい。
 「夏美うるさい」
 「ちょっと梓!お兄さん料理の鉄人?」
 「私が料理を教えたからね。これぐらい当然なのです」
 春子は胸を張る。夏美は思わず春子の揺れる胸を見つめ自分の胸に手を持って行った。断わっておくが悔しくはない。
 「春子先輩!ししょーと呼ばせてください!」
 「幸一君は朝昼晩とご飯を作り選択掃除もこなす自慢の弟子なのです。一家に一台幸一君なのです」
 二人ともネタが古い。やはりこの二人気が合うのか。
 「お兄さん何者ですか?家事万能ですか?」
 「あのね中村さん」
 「ノンノン!私のことは夏美と呼んでください」
 「ええと夏美ちゃん、梓も手伝ってくれるから」
 確かに多少は手伝うが、ほとんどは兄がする。
 「お兄さんいい人過ぎ!梓!お兄さんもらっていい?」
450 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/07(土) 23:12:33 ID:DamrVLf2
 ふざけるな。兄さんは私のものだ。
 「夏美、ひとつ言っとくけど、兄さんはいつもあられない格好で寝ている私に鼻息荒く近づいて鼻の下伸ばしながら起こしに来るのよ。妹の髪をとかしながらウットリして、妹の部屋を掃除と称して荒らす変態シスコンよ」
 全部逆だ。起こされて鼻息を荒くしているのは私だし、髪をとかされてウットリしているのも私。兄さんの部屋の布団に潜り込み興奮しているのも私だ。
 「いやいやいや」
 兄さんは慌てて私の言葉を否定する。その困った顔が可愛い。
 「えー。それはちょっとドン引きですね。妹の髪ととかしてウットリとか。お兄さん、そんなに梓ちゃんの髪が好きなのですか?」
 夏美がわざとらしく兄さんと距離をとる。
 「ふふふ。夏美ちゃん分かってないですね」
 春子がにこにこ笑う。嫌な予感がする。
 「梓ちゃんは面倒臭がり屋だから幸一君にさせているだけなのです」
 「梓そうなの」
 「まあね」
 私はあっさり認めた。ここで否定すると兄さんが好きだが認められない妹になってしまう。
 「どんだけお兄さんをこき使ってんだYO!」
 夏美がつっこむ。
 「幸一君覚えていますか?女の子の髪の手入れの方法がわからなくて私に教えてと頼んできたのを」
 春子が自分の長い髪をなでながらウットリささやく。無論私に丸聞こえ。兄さんを見るとちょっと困った顔をしている。
 気に入らない。
 「春子待って」
 止める兄さん。
 「何回も私で練習させてあげましたよね」
 「春子先輩!その言い方はなんかエロいっす!」
 顔を赤くして突っ込む夏美。意外と純粋なのね。
 私は怒りとうれしさという矛盾した感情を味わっていた。女の子をさわるのを苦手な兄さんが、そこまでして私のために練習してくれたのは素直にうれし。他の女で練習したのは減点だけど。
 「ふーん。そんなことあったんだ。シスコンじゃなくて幼馴染好きだったんだ」
 私が意地悪く言うと兄さんが困った顔をする。だめだ。濡れそう。手で顔をあおぐ。
 「幸一君。今度女の子の髪の扱いが上昇したかテストさせてあげます。私を満足させたら合格です」
 春子はいい人だが、オヤジ臭い所があるのは女としてどうなんだろう。
 「お兄さん。その、あの」
 夏美が頬を染める。腹が立つ。
 「今度私もお願いしていいですか?」
 私は机の下で兄のすねを蹴とばした。






 昼休みが終わって兄さんと春子は去って行った。
 「夏美のお兄さんって面白い人だねー。春子先輩も」
 「春子はともかく兄さんは変態シスコンよ」
 顔を手であおぎながら夏美に答える。
 「えー?そうかなー?結構格好いいじゃん。料理得意なのもポイント高いし」
 そうなのだ。兄さんは男としてのスペックは高い。そこが好きなわけではないが、魅力を感じる女はいるだろう。
 私は深呼吸した。熱い息を吐き出す。
 「どうしたの梓」
 「何でもない」
 手で顔をあおぎながら私は答えた。




451 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/07(土) 23:13:31 ID:DamrVLf2
 授業の後のHRが終わる。
 教室を出ていくクラスメートを尻目に、私は本を読んでいた。今帰ると人ごみが多いからだ。
 私は人ごみが嫌いだ。兄さんや春子は勘違いしているが、私が人ごみを嫌うのは私の可能性の無さを思い知らされるからだ。極端にいえば、今日私に絡んできた愚物二人でも兄さんと結ばれることは可能なのだ。世界中の女たちには少なくとも血縁という意味での障壁はない。
 「あーずーさー」
 そう。この夏美でも可能性はあるのだ。可能性がどれだけ小さくても、ゼロでは無い。
 私はゼロなのに。
 私は顔を手であおぐ。
 「一緒にかえろ」
 「断る」
 「そこはだが断ると言うとこだよ」
 なぜか怒る夏美。意味不明。
 私の手をひっぱる夏美。私はため息をついて立ち上がった。
 今日は楽しいことがあった。兄さんとお昼ご飯をお一緒に食べられた。たまには人ごみで自分を戒めるべきだろう。私には可能性が無いのだと。
 そんな事を考えながら靴箱に向かう私たち。私は相変わらず手で顔をあおぐ。
 なのに。
 もし運命があるのなら。
 それはなんて残酷なんだろう。
 靴箱に兄さんがいた。
 「おにーさーん。今から帰りですか?」
 「うん。夏美ちゃんも?」
 「一緒に帰りましょう。いいでしょ梓?」
 にこやかに話す兄さんと夏美。
 何で世界は私の意志にことごとく反するのだろう。
 私が兄さんを愛するのには反対し、頭を冷やそうとすると兄さんに合わせる。
 残酷だ。
 「ええと、やっぱり遠慮しとこうかな」
 私の表情を勘違いしたのか兄さんがそう言う。
 兄さんにそう思われるように冷たく接してきたのに、私は悲しかった。
 兄さん。お願い。私を捕まえて。手を握って。頭をなでて。抱きしめて。キスして。犯して。
 私の思いは兄さんに伝わらない。伝わってはならない。
 気がついたら私の手は夏美に引っ張られていた。兄さんと私の手を夏美が一緒に握る。
 兄さんの手。心地よい感触に私は体温が上がるのを止められない。
 頬を染める兄さん。兄さんは女の子にさわったりさわられるのが苦手だ。私がずっと冷たく接したから女の子に苦手意識があるんだろう。単なる恥ずかしがり屋かもしれないが。
 「変態シスコン」
 私は兄さんに毒づいた。
 「え?梓なんて?」
 夏美が聞き返す。
 「夏美。この変態シスコンは妹と後輩の手にドキドキしているのよ。妹として恥ずかしいわ」
 「えー。お兄さん本当ですか?」
 「ええと、女の子に触れるのが苦手なんだ」
 「ほら夏美。否定しないでしょ」
 「お兄さんって恥ずかしがり屋ですね」
 そんな事を話しながら帰る。周りは人でごった返していたが気にならなかった。
 分かれ道で夏美と別れた。元気いっぱい手を振る。
 私は立ち尽くした。周りは多くの人がいる。男も女も。女がうらやましかった。どんな愚かな女でも兄さんと血のつながりという壁はないのだ。
 顔を手であおぐ。
 「梓」
 兄さんが手を差し伸べていた。
 私は泣きそうになった。絶対に手に入れてはいけない存在が私に手を差し伸べる。うれしくて、悲しくて、残酷な運命を呪いたくなる。それでも。
 「何?後輩の手の温もりが無くなったから妹の手の温もりがほしいの?」
 「うん」
 今この瞬間は感謝しよう。
 兄さんの手を握る。ひんやりしていて心地よい。
「このシスコン。まあいいわ。兄さんが女の子にふれる練習にもなるし今回は付き合ってあげる」
 「練習って。まあいいや」
 「私が練習に付き合ってあげないと春子にお願いするかもしれないでしょ。女の子にふれるのが苦手だからってそんなことしたら私が恥ずかしい」
 自分でも無茶苦茶言っている。兄さんはそれ以上しゃべらなかった。私は兄さんが話しかけると無視するか罵倒するかが多かったから、兄さんの行動は当然だった。勝手だと分かっていても私は悲しかった。
 私も無言だった。兄さんの冷たい手が心地よくて、何もしゃべる気になれなかったのもある。それ以上に口を開くと私の気持ちを伝えてしまいそうだったからだ。
452名無しさん@ピンキー:2009/11/07(土) 23:16:07 ID:1HOszymW
しえn
453 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/07(土) 23:17:27 ID:DamrVLf2





 家に着いたら二人で家事を行った。
 いつもは私が家に着くのはもっと遅い。家事を手伝わずに兄さんに全部押し付けることも多い。今回は早目に家に着いたので洗濯物をたたんだ。
 今日は久しぶりに二人で料理をした。兄さんが下ごしらえをした照り焼きを手早く作る。
 両親の帰りは遅いのでいつも二人で食事をとる。兄さんが柔道の練習に行くことが多いので晩御飯ははやい。
 しかしと私は思う。お昼に唐揚げで晩御飯に鳥の照り焼きとはどうなんだろうか。確かに私は鶏肉が好きだ。母さんは鳥の唐揚げが好きだ。父さんは魚。兄さんも魚。
 兄さんの料理はおいしい。それ以上に食べる相手のことをいたわっている。食材、栄養をよく考えて作っている。少しずつだがおいしくなっている。食べる相手のことを考えている。
 私にはそれがうれしく悲しい。兄さんが私を想う感情は私の望む感情でないからだ。
 いけない。また顔が熱い。
 食後兄さんはアイスティーを入れてくれた。よく冷えている。
 食器を洗った兄さんは緑茶で一息ついていた。
 無言だが何も気まずいとは感じない。兄さんのそばにいて兄さんの入れてくれたアイスティーを飲んでいるだけで私は満たされていた。
 兄さんは鞄を持ちリビングを出ようとする。
 「梓、行ってくる」
 私は返事をしたいのを我慢して無視した。





 兄さんが練習に向かってから私は兄さんに部屋に入った。兄さんのベッドの上で兄さんの布団を抱きしめる。
 母さんが帰宅する音がすると、手早く布団をたたみ自分の部屋に戻る。
 私はずっと部屋にこもっていた。隣の村田の家のシロがわんと吠えた。
 この犬、黒いくせに名前がシロなのだ。春子もそうだ。冬に生まれたのに名前が春子だし。
 カーテンを少し開いて外を見る。兄さんと春子が何か話していた。いらいらする。
 春子は市民体育館で行われる合気道の練習に参加している。昔は私も一緒に参加していた。
 兄さんは春子の事をどう思っているのか。春子は兄さんの事をどう思っているのか。いつも気になる。
 兄さんはあまり問題ない。兄さんにとって春子は恋愛の対象ではないと私は確信している。
 問題は春子だ。春子はもてる。顔はきれいだしノリもいい。高い身長にそれに見合う豊満な体。それなのに春子に男ができたと聞いたことはない。
 春子はいつも私たち兄妹の面倒を見ようとする。春子自身は一人っ子だから弟や妹的な扱いなのだろうか。今日のように私と兄さんを誘ってお弁当を食べたりもする。これは恋する乙女として矛盾する行動だ。
 しかし私の直感が警鐘を鳴らしている。春子は油断ならない。
 二人は別れ兄さんも家に帰ってきた。出迎えたいのを我慢する。
 耳を澄ます。兄さんは帰ってきたらシャワーを浴びてすぐに寝る。朝が早いからだ。
 兄さんがシャワーを出て階段を上がったのを確認して、私は風呂場に向かう。
 目的は兄さんの道着。私は洗濯機から兄さんの道着を取り出し服を脱いで洗濯機に入れ、浴室に入った。
 シャワーを流す。こうすれば他の人間は入ってこない。
 私は裸で兄さんの汗で濡れた道着を抱きしめる。兄さんの匂いが鼻孔をくすぐる。
 私は兄さんに抱きしめられるのが大好きだ。小さい時は何度も抱きついて抱きしめてもらった。抱きしめられた時の兄さんの温もり、匂い、鼓動。何もかもが堪らない。
 だがそんな事は今は望めない。
 だから私はその狂おしい欲求をこうして慰める。朝に兄さんが抜け出した布団に入るのも同じ理由だ。
 思わず長風呂してしまった。洗濯機の私の服の下に兄さんの道着を入れ証拠を隠滅する。
 キッチンに牛乳を飲みに行くと兄さんが歯を磨き終えたとこだった。私が風呂に入っていたからここで歯を磨いたのだろう。
 兄さんは私に気がつくと無言で牛乳と取り出しコップに注ぎ私に差し出した。
 私はコップを受け取る。ふれる兄さんの指が、冷たいのに熱い。
 一気に飲みほし私は兄さんに背を向けた。
 「おやすみ」
 兄さんの言葉に振り返りそうなのを必死に抑え私はキッチンを出た。
 部屋に戻る前に風呂場から今日の兄さんの買ったシャツを取り出しバスタオルにくるんで私の部屋に戻る。
 締め切った部屋で、私は兄さんのカッターシャツを抱きしめながら眠りについた。
454 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/07(土) 23:18:38 ID:DamrVLf2




 ここで自己紹介をしておく。
 私は加原梓。
 高校一年生。
 好きな人は兄さん。
 悩みは兄さんへの想いをどう抑圧するか。
 兄さんは勘違いしているが、私は兄さんを嫌いなのではない。むしろ愛している。
 詳しい話はこれから語っていくと思う。
455 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/07(土) 23:24:57 ID:DamrVLf2
三つの鎖 2話は以上です

レスしてくれた人ありがとうございます

>>439
こんな機能があるとは知りませんでした
アドバイスサンクス

もうすでに続きはできていますが、めっちゃ長いですのでここで終わります
パソコンを直したらまた投稿します
456名無しさん@ピンキー:2009/11/07(土) 23:36:27 ID:YsnpICoj
携帯からGJ!
457名無しさん@ピンキー:2009/11/07(土) 23:42:17 ID:RR07PHtn
>>455
リアルタイムGJ
今日投下されてテンションが無駄に上がった
458名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 00:54:37 ID:5Jalz6CD
GJ! 続きも期待
459名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 01:26:15 ID:bPFJctIa
>>455
やいお前なんてものを!興奮して眠れなくなっちまったじゃねえか!
手前にはこの言葉がお似合いだ!
GJ
460名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 01:33:22 ID:B2BkM8su
>>455
何かこのSSの書き方が懐かしく感じる。
嫉妬スレ全盛期の時みたいだ・・・
何はともあれGJ!!
461名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 04:06:29 ID:1fjkV3Dq
>>455
早くPCを直すプセロスを希望する
462名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 11:31:08 ID:T08sWl9L
久しぶりの良作の予感
463理解のある友人:2009/11/08(日) 16:36:36 ID:r+jXiGH7
兄「まあ上がっていけや、麦茶位なら出してやる。」
友「おう、悪りぃな。んじゃお言葉に甘えて。」
ガチャ…
兄「ただいまー、一人来たから麦茶二杯よろしくー。」

友「しっかしオメーの部屋片付いてんな。部室とは大違いだ。エロ本も隠せねーぞこれ。」
兄「勝手に片づけに来るんだよ…」
?「お茶とお菓子をお持ちしました。」
友「どうも。かわいいね、コイツの妹さん?」
兄「妹の」「妻です。」
兄「妹の冗談」「ではありません。」
友「オッケイ!事情はわかった。お前は実は既婚者だったんだな!そして妹に偽装した妻を持っている!」
兄「高二で結婚無理だから!そして近親婚不可だから偽装できない!信じるな!」
妹「偽装なんてしてませんよ?実妹で妻なんですよ?」
友「うらやましいぜ!リアルでエロゲのような奴が居たなんて!」
兄「ナニ泣いてんだ!つか社会的にマズイとか考えられないのかオメーは!」
友「お前、全国3万のお兄ちゃんの願望を実現したんだ!(オタク)社会も(が)認めてくれるさ…」
妹「さあ、私達はイベント起こしますのでお茶をのんだらお引き取り願えますか?」 
兄(こいつ等2次元の住人脳か?)   
464転生恋生 代理投下 ◆j3gvf0a2hI :2009/11/08(日) 18:42:13 ID:0Czsv8gj
今更ですが代理投下
465名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 18:42:31 ID:WFAI3niT
支援
 異変を感じたのは電車の中だった。寒気を感じた。
 電車を降りて、家まで歩く間、どんどん体が重くなっていった。
 玄関にたどり着くと、先に帰っていた姉貴が昨日同様のエプロン姿で迎えてくれた。ようやく機嫌を直したのか、にこやかな顔だったのは覚えている。
「たろーちゃん、これから連休だね。明日明後日まではふたりきりだから、絶対に一線を越えようね。逃がさないんだから……」
 そんな物騒な言葉が耳に入ったところで意識が飛んだ。姉貴の胸の中に倒れこんでしまったことはかすかに覚えている。
 俺は高熱を発して寝込んでしまったんだ。

 目が覚めると、真っ暗な部屋の中で俺はベッドに寝かされていた。頭を支えている枕がふにゃふにゃなので、氷枕を当てられているらしいと気づく。
 重い頭をゆっくりと右に回すと、サイドテーブルの上の時計が見えた。蛍光塗料で弱々しく光る時針は9時過ぎを指している。
 ……3時間以上も眠っていたのか。
「……起きたの?」
 その声で初めて姉貴が傍にいてくれたことを知った。もぞもぞと体を起こして俺の顔を覗き込む。
「……俺、どうしたんだ?」
「風邪よ。凄い熱が出てる。玄関で倒れたの、覚えてない?」
 姉貴が部屋の電気をつけた。蛍光灯の光がまぶしくて目をつぶってしまう。その俺の額にひんやりとした感触が走る。姉貴が額をくっつけてきたんだ。
「まだ熱が高いわね。氷枕を換えてくるわ」
 部屋から姉貴が出ている間、俺はぼんやりと記憶を辿り、自分の状況を把握することに努めた。
 多分、猿島から伝染したんだと思う。約1日の潜伏期間を経て、ウィルスが決起したってわけだ。せっかくの連休が台無しだ。
 それでも、今のところ症状は熱だけのようだ。咽喉は腫れていないし、腹も痛くない。
「食欲はある?」
 姉貴が冷えた氷枕を持ってきてくれた。
「何も食いたくないけど、咽喉が渇いた」
「たくさん汗をかいたから、脱水症状になっているのよ。頭とか咽喉とか、痛いところはない?」
「どこも……。とにかく熱っぽくて頭がふらふらする」
「熱だけなら、おとなしく寝ていればすぐに治るわね。……はい、お水」
 姉貴が水差しで水を飲ませてくれた。用意しておいたらしいが、時間が経っているせいでぬるい。
「もっと冷たいのがほしい」
 病気のときほどわがままを言ってしまうのは何故だろう。でも、姉貴は面倒がらなかった。
「林檎をすり下ろしたの、食べる?」
「うん」
 昔から俺が風邪を引いたときの定番メニューだ。
 ものの10分ほどで、姉貴がすり下ろした林檎に砕いた氷をまぶしたものをガラスの皿に盛ってきた。ガラスの皿だから、実際以上に冷たく感じる。
 こういうところの細かい気配りが嫁さん向きだ。
「はい、あーん」
 姉貴がスプーンで林檎を食べさせてくれた。俺もこういうときはおとなしく食べさせてもらう。
 ひんやりして、甘くておいしかった。
 こういうときは、世話焼きの姉がいてくれてよかったと心から思う。
「汗をかいたから、すぐによくなるわ。体を拭こうね」
 毛布が除けられ、俺は初めて自分がTシャツとトランクスだけで寝かされていたと知った。そして俺の体を覆っていたわずかな衣類が姉貴の手で脱がされた。
 俺は頭がぼんやりしていて、特になんとも思わなかった。風邪なんだから、しょうがないとさえ思った。
「頭を洗うのは無理だけど、あとは全部きれいにしてあげる」
 姉貴がおしぼりで俺の顔と耳の裏をぬぐい、何度かおしぼりを洗面器の水につけ直しつつ、次第に胸・腕・腹と下がっていった。
 股間を拭われたときはちょっと不安になったが、意外にも姉貴はあっさりそこを通過して足を拭いていく。
 一応、病人相手ということで自制するだけの理性は持ち合わせていたらしい。
 安心すると、むしろ姉貴への感謝の念が湧いてきた。
「姉貴……」
「なぁに?」
「ありがとう」
「バカね、水臭いこと言わないの」
 姉貴は手を休めずに答えた。
「愛し合うふたりが健やかなる時も病める時も助け合うのは当然のことなのよ」
 ……まあ、家族愛という言葉もあるしな。突っ込むのはやめておこう。というより、そんな元気もない。
「はい、ひっくり返って」
 姉貴の手で横向きに転がされ、俺はうつぶせ状態になる。姉貴は背面をおしぼりで拭いていく。
 足まで拭き終えたので、やっとパジャマでも着せてもらえると思ったが、その気配がない。このままだと体が冷えてしまう。
 そう思って顔を後ろへ向けようとしたとき、ひんやりした液体が肛門にかけられた。そのまま姉貴の指が俺の肛門の中に入っていく。
「な……なにやってんだ?」
 姉貴の指が俺の肛門にぬるぬるした液体を塗っていると理解するまでに暫くかかった。
「熱冷ましのためにお尻に葱を入れるの。このままじゃ入りにくいから、ローションを塗ってあげるわ」
「葱!?」
 葱を尻に挿すと風邪が治るという民間療法は聞いたことがある。だが生まれてこの方それを実行したことはないし、本当に効能があるのかも疑わしい。
 とりあえずこの場で自分が被験者になるのは御免蒙りたかった。
「やめ……アッー!!」
 いきなり異物が肛門にねじ込まれた。ローションを塗っていたとはいえ、あまりにも太かったので痛みが背筋を走りぬけた。
 部屋の電気が消えて真っ暗闇になる。
「大丈夫よ、ずっとついていてあげるから」
 姉貴は耳元でそう囁くと、俺にのしかかってきた。冷たくも生温かい柔らかさが俺の全身を包んだ。いつの間にか姉貴は服を脱いで、裸になっていた。
 その上から姉貴は自分ごと毛布をかけた。
「ゆっくり休みなさい。朝には熱が下がってると思うから」
 そんなことを言われても、尻から全身に痛みと熱が広がっていく。尻がとにかく熱い。こんな状態で眠れるわけがない。
「抜いて……くれよ」
「ダメよ」
 姉貴が手で俺の尻を左右から押さえて、葱が抜けないようにする。あまりの痛さと熱さに、全身から汗が吹き出てきた。
 ……ぴちゃぴちゃ。
 湿った生き物が俺の背筋を這う。
 いや、生き物じゃない。姉貴の舌だ。姉貴が俺の体から吹き出る汗を舐めとってる。
 姉貴は全身で俺の汗を受け止めるつもりだ。そう悟った瞬間、頭が沸騰しそうなほどに熱が出た。

 それからはもう記憶がたどれない。一晩中眠れなかったのは確かだが、何があったのかは覚えていない。
 ただ、全裸の俺が全裸の姉貴に抱き締められ、体中を舐めまわされたということはわかる。体が覚えている。
 とにかく尻が熱かった。やめてくれと叫びたかったが、声は出ないし手足もも動かなかったから、抵抗しようがなかった。
 
 気がつくと、俺は自分の部屋で寝ていた。カーテンは閉めきられていたが、薄明かりが入ってくることから、今が日中だとわかる。
 枕は相変わらず氷枕だ。腕が動くので、自分の胸を撫でまわしてみた。裸だった。
 俺は全裸にタオルケットを巻きつけられた状態で、更に毛布をかけられていた。汗を吸い取るための配慮だろう。
 恐々尻に手を回してみたが、異物が入っている感触はなかった。葱は抜き取られたらしい。
 肌も乾いている。姉貴が体を拭いてくれたんだな。
 現状は理解したが、体に力が入らず、起き上がることができない。頭はぼんやりしているが、熱っぽさはなかった。
 一応快復には向かっているようだ。頭が働かないのは、ずっと眠っていたからだろう。体に力が入らないのは、まともな食事をとっていないせいか。
 ……一体、俺はどうなるんだろう。
 風邪ごときでどうなるはずもないのに、理由のない不安が湧きあがる。姉貴はどこへ行ったんだ?
「姉貴……」
 弱々しい呼びかけに反応したかのようにドアが開いて姉貴が入ってきた。
「起きたのね。制服のYシャツにアイロンかけておいたわよ」
 そう言いながら、姉貴は体温計を取り出して俺の脇に挟んだ。1分ほどして取り出すと、37度8分だった。まだ熱がある。
「だいぶよくなったと思ったんだけどな」
「40度近くあったから、すぐには下がらないわよ。食欲は戻った?」
「それよりパジャマを着させてくれ」
 裸だと落ち着かない。
「ダメよ。熱が下がりきるまでは汗をかかないといけないんだから」
 押し問答をする元気もない。さしあたり体力を回復するべく空腹を訴えると、30分後に姉貴はおかゆを持って来てくれた。
「はい、あーん」
 案の定、姉貴は自分で食べさせようとする。口移しでないだけマシだと思って、おとなしく従った。
 おかゆを食べながらの会話で、俺は今が連休初日の夕方だと知った。いったい、何時間寝ていたんだ?
「たろーちゃんは明け方まで寝付けなかったのよ」
 そりゃそうだろう。尻がとにかく痛かった。
「でも、汗をたくさんかいたから熱が下がったんじゃない」
 でももうごめんだ。
「それじゃ、私と汗をかくことしようよ」
 そんな体力はない。
「むう……」
 俺が同意しようがしまいが、その気になったら襲ってくる姉貴だが、さすがに病人相手ということで自重してくれた。裸の添い寝で我慢することにしたようだ。
 ……それでも裸で絡み合わなきゃ気がすまないのか。
体を拭いてもらった後、部屋の電気を消してから裸の姉貴がベッドに入ってきた。
「いくらなんでもすぐには眠れないよ」
「とにかく横になって汗をかくことが大事なのよ」
 そう言って布団を何枚もかぶせる。姉貴自身も肉布団だ。とにかく暑い。眠れるわけがない。
「汗をかいたら舐めてあげる」
 気色悪いことを言うな。そう思う間もなく、姉貴が俺の首筋に舌を這わせてきた。相変わらず有言実行だな。ますます眠れない。
 というより、これじゃあ俺の体が唾液まみれになるじゃないか。体を拭いた意味がないぞ。
「気持ちよくなってきたら、遠慮なく勃起していいのよ。私が飲んであげる。風邪ウイルスを外へ出した方が早く治るわ」
 だから気色悪いんだっていうのに。
 文句を言いたいが、力が湧いてこない。だんだん体が熱っぽくなってきた。やっぱりまだ熱が高いんだな。
 やっぱり体が休養を求めていたのか、姉貴に抱きつかれ、舐めまわされるうちに俺の意識が遠のいていった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 夢を見ていた。
 夢だとわかるのに、夢の中の自分は現実のつもりでいる。そんな不思議な感覚に包まれていた。

 そこは電化製品も木製の家具もない、草を編んで組み立てたような、粗末な小屋だった。
 蝋燭1本の弱々しい明かりの中で、黒髪の美しい女が俺を見つめている。見るからに安物だが、清潔感のある着物を着ていた。
「旦那様」
 女が俺に体を寄せてきた。
「今宵もお情けを頂戴しとうございます」
 口紅を塗っているわけでもないのに、女の唇は艶めいていて、色白の肌が薄暗い小屋の中でほんのりと朱に染まっているのがわかった。
 女の体に手を伸ばして初めて、自分も着物を着ているのがわかった。下着も褌だった。
 俺は女の襟元に手を入れて、乳房をつかみ出した。ほどほどの大きさで、柔らかい感触が生々しい。
 しばらく乳房を揉みしだいていると、女の息が荒くなってきた。その細い指が俺の着物の裾を割って、股間をまさぐる。
 俺はたまらなくなって、褌をずらして、ナニを取り出した。既に十分固くなっていた。
 そのまま女を組み敷くと、女の着物をはだけさせ、股を開かせた。そこはもう濡れぼそっていた。
 俺は慣れた手つきで女の中に入っていき、とりつかれたように腰を動かす……

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 腰が爆ぜるような感覚がして、目が覚めた。俺は激しく腰を突き上げていた。
 自分のペニスが屹立して、激しく射精している感覚がする。それもなんだか生温かくて湿ったものに包まれている。
 ……やばい。夢精したか?
 反射的に股間に手を伸ばすと、硬い感触がした。人間の頭だ。
 ……!?
 とっさに毛布をはねのけると、俺の股間に姉貴が顔を埋めていた。
 いや、そうじゃない。姉貴が俺のペニスをしゃぶっている。寝ている間にフェラチオされたんだ。
 それなら前にもあった。だが……!
 認めたくないことに、俺は姉貴の口の中に射精していた。こんなことは今までになかった。たとえ意識がなくても、俺が姉貴にイかされることなんてなかったのに!
 姉貴はうっとりとした表情でしゃぶり続けている。口の端から白濁した液体がこぼれる。
 それが自分の出した精液だと悟って、俺は怖気が走った。強引に姉貴を自分の股間から引き剥がす。
「離れろ! 俺に触るな!」
 嫌悪感むき出して俺は姉貴を突き飛ばした。姉貴はとろんとした表情で、力なく転がった。
 俺は慌ててティッシュをつかんで股間を拭く。姉貴の唾液まみれで、とにかく気色悪い。
 そのまま部屋を飛び出すと、浴室へ駆け込んでシャワーを浴びた。念入りに股間を洗う。
 服を着て、ようやく俺は落ち着いた。時刻は朝の6時だ。頭もすっきりしている。熱も平熱に戻ったらしい。
 とにかく、俺は姉貴にとうとう犯されてしまった。事実なんだから、しかたがない。不幸中の幸いだったのは、妊娠の心配はないということだ。
 だが、姉貴が俺をイかせることができると判明した以上、俺の貞操は極度に危険な状態におかれたことになる。
 俺は命がけで姉貴と談判して、二度と睡眠中の俺を襲わないと誓約させないといけない。
 だいたい卑怯にもほどがある。病気で弱っている俺を、意識がないうちに手篭めにするなんて。
「姉貴! このクズ! 今日という今日は見損なったぞ!」
 部屋に戻ると同時に怒鳴りつけたが、姉貴は全裸のまま動かない。さっき俺が突き飛ばしたままだ。
「おい、いつまでも寝てんじゃねぇ!」
 体をゆすったが、姉貴は反応しない。
 ……意識がないのか?
「おい、姉貴」
 額を触ると、火傷しそうなくらい熱かった。尋常じゃない発熱だ。

 俺が快癒したのと入れ替わりで、姉貴が流行性感冒にかかってしまったのだった。
470代理投下 ◆j3gvf0a2hI :2009/11/08(日) 18:46:54 ID:0Czsv8gj
投下終了です。
作者様遅くなって申し訳ありません。
471名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 20:38:55 ID:yoNvOY64
裸の肉布団、たまらねえ・・・・
作者も代理投下の人もGJ!!!
472名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 21:07:57 ID:vaBCQl56
GJすぎる
473名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 23:11:19 ID:r+jXiGH7
GJ!! つーか尻の処女喪失?貞操って…処女と引き替えに童貞だけは守れたんだよな…。
474名無しさん@ピンキー:2009/11/09(月) 01:05:05 ID:4HeaZLFi
>>470
これってやったの?
やってないの?
475名無しさん@ピンキー:2009/11/09(月) 03:23:16 ID:aV58jBf9
やってないだろ
姉的にはやったー!つー感じだろうが
476名無しさん@ピンキー:2009/11/09(月) 03:25:00 ID:aV58jBf9
こんな下らねーダジャレのためにあげてしまうとは…すまん…
477三つの鎖 3 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/10(火) 00:08:19 ID:vQ9fj4LH
PC直しました。
続きを投下します。
478三つの鎖 3 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/10(火) 00:12:34 ID:vQ9fj4LH
三つの鎖 3

 今と違って、昔僕と妹は仲が良かった。
 物心ついた時から梓はいつも僕についてきた。昔から気難しい子だったが、僕の言う事だけは不思議と素直に聞いた。
 僕は腕白な子供だったからよく外で遊んだ。春子は僕以上に腕白でお姉さんぶる性格だったから、よく僕と梓を連れて遊びまわった。
 外に出ても梓は僕にべったりしていた。そのことでよくからかわれたが、僕はからかわれる理由が分からなかった。梓はずっと僕にべったりだったから、それが普通だと思っていたのだ。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 僕が小学校に上がってから梓と一緒にいる時間は減った。次の年には梓も小学校に通いだした。家でべったりな梓も、学校で一緒にいることはあまりなかった。
 それでも家に帰れば梓は相変わらずくっついてきた。春子も相変わらずお姉さんぶって僕たちの様子を見てくれた。
 僕の母さんは梓を産んでから亡くなったらしい。だから僕も母さんの記憶はほとんどない。僕たちの面倒を見てくれたのは京子さんと村田一家だった。
 京子さんは父さんの高校の時からの知り合いらしい。今は父さんと再婚している。梓は京子さんの事をお母さんと呼ぶ。梓にとって、もの心ついた時から面倒を見てくれたのだからそうなるだろう。
 反対に僕は京子さんをお母さんと呼ぶことはない。何だか僕を生んでくれたお母さんに申し訳ない気がするからだ。
 僕の家でお母さんの話題が出ることはない。父さんも語ろうとしない。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 僕が小学校三年生の時に柔道を始めた。きっかけはテレビで見た柔道の試合だった。人が投げられるのを見て、子供心に格好いいと思ったのだ。
 僕は京子さんにねだって柔道を教えている教室に連れて行ってもらった。その教室は市民体育館で子供を中心に柔道を教えていた。
 僕は柔道に夢中になった。技を覚えるのに、技を磨くのが楽しかった。
 その時は気がつかなかったが、梓はそのころからさらに気難しくなった。
 梓は一人で家にいることが多くなった。春子が遊びに来ても気難しく黙ったままだった。
 村田のおばさんも心配し、梓を市民体育館で行われる合気道の練習に連れて行った。村田のおばさんとおじさんは大学の時に合気道部で知り合ったらしい。外で体を動かせば少しはましになると思ったのだろう。
 村田さんの判断は正しかった。梓は少しだけだが明るくなった。その頃すでに合気道を始めていた春子はよく梓の面倒を見た。はたから見れば姉妹に見えただろう。
 この頃から梓は家の家事を手伝うようになった。京子さんも村田のおばさんもこの時期は忙しく、なかなか僕と梓まで手が回らなかった。春子が料理を得意とするのも村田の家の家事を手伝っていたからだ。
 僕が中学生に上がる頃には梓がほとんど一人で家の家事を行っていた。
 中学で僕は当然のように柔道部に入部した。そこでも僕は典型的な部活馬鹿だった。
 僕は柔道部でさらに上達した。僕の身長はすでに中学で一番だった。先輩でも僕には勝てなかった。
 中学一年の時点で柔道が強い高校の関係者から声を掛けられていた。僕は有頂天だった。梓の事は頭から消えていた。
 この頃梓が何をしていたか全く知らなかった。練習で夜遅くに帰った僕は梓の作った料理を食べ、風呂に入ってすぐに寝るという生活を繰り返していた。
 そんな生活に転機が訪れたのは僕が中学二年生の夏だった。
 ある日練習行こうとした僕に京子さんから電話があった。春子が救急車で運ばれたと。
 柔道を始めてから春子に会う機会も減った。春子も村田の家の家事を手伝っていたかのもある。それでも春子は時間を作っては僕と梓の世話を焼いた。
 僕は生れてはじめて柔道の練習を休んで見舞いに行った。
 見舞いに行ったとき、春子は手術が終わって寝ていた。
 あの時の春子は忘れられない。春子は僕にとって幼馴染というよりお姉さんのような存在だった。小さい時から僕と梓の世話を焼いてくれた。いつも元気で明るかった。その春子が青い顔をして死んだように眠っていた。僕には衝撃的だった。
 次の日、僕は柔道の練習に行ったが、全く集中できなかった。柔道の練習で集中できなかったのは生れて初めてだった。
 練習後見舞いに行った。春子はまだ寝ていた。
 村田のおばさんとも話した。おばさんにとって春子は一人娘だ。やつれていたが気丈にふるまう姿が印象的だった。何があったかは話してくれなかった。
 ある日、村田のおばさんから電話があった。春子が意識を取り戻した。幸一君に会いたいと言っていると。
479三つの鎖 3 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/10(火) 00:14:55 ID:vQ9fj4LH
 僕はすぐに病院に向かった。
 春子は目を覚ましていた。相変わらず顔色は悪いが、意識ははっきりしていた。
 春子は村田のおばさんに僕と二人きりにしてほしいと言った。おばさんは何も言わずに二人きりにしてくれた。
 春子が話してくれたのはにわかには信じがたいことだった。梓が夜の街を徘徊し、絡んでくる者を片っ端から叩きのめしていること。春子はそれを知って、梓を止めようとしたこと。梓と喧嘩になって、春子は頭から投げ落とされて今に至ること。
 呆然とする僕に春子は泣きながら言った。
 「幸一君、ごめんね。頼りないお姉ちゃんでごめんね。私じゃ梓ちゃんを止めれなかった。頼りないお姉ちゃんでごめんね」
 最後に、春子は梓を助けてあげてと言った。
 僕は病院を飛び出した。
 春子から聞いた場所を僕は走りまわった。春子のいう場所は、繁華街の近くで治安が悪い。そんな場所を一人でうろつく梓が心配でたまらなかった。
 僕は春子の言うことが信じ切れなかった。僕自身柔道をやるから分かるが、人を投げるというのはとても難しい。技だけでできる者はほとんどいない。
 実際に柔道がうまいのは大柄で力のある者が多い。柔道の試合が体重別で分けられるのも、体格と体重が違いすぎると投げることが難しいからだ。それなのに中学一年生の梓が大の男を投げ飛ばすなど信じられなかった。
 運よく僕は梓を見つけた。何人もの不良が走り回っているのを後からつけた結果だった。
 僕が見たとき、梓は十を超える男に囲まれていた。
 すぐに僕は飛び出した。梓を抱え脱兎の如く逃げ出した。梓は信じられないぐらい軽かった。
 幸いにも逃げ切ることができた。これは運が良かった。いくら鍛えているとはいえ、人一人を担いで大の男の集団から逃げ切るのは難しい。
 振り切った時、僕と梓は公園にいた。梓は不機嫌そうに僕を見上げていた。
 僕は梓を抱きしめた。泣きながら謝った。梓も僕の背中に腕をまわして抱きついた。梓の体は燃えるように熱かった。
 気がついたら僕は地面に叩きつけられていた。激痛に声も出ない。突然の事に受け身を取れなかった。
 苦痛にもがく僕を梓は見下ろした。
 「今更何を言ってるの兄さん。もう遅すぎるのよ」
 僕は間に合わなかったことを知った。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 その後の事は覚えていない。気がついたら梓と一緒に家に帰っていた。
 次の日僕は退部届を出した。周りはいろいろ聞いてきたし留まるように言われたが、僕は耳を貸さなかった。
 その日から僕は家事を始めた。梓が非行に走ったのは家の事をすべて押し付けていたと思ったからだ。
 家事がどれだけ大変か僕は思い知った。こんな大変なことを、梓は何も言わずにやってくれていたのだ。
 梓は僕に冷たかった。僕との会話は無視か罵倒かのどちらかだった。作った料理もまずいと言った。実際まずかった。
 春子は無事に退院した。幸い後遺症が残ることはなかった。春子は知らない誰かと喧嘩したと周りに説明した。
 この頃父さんと京子さんが結婚した。二人は何も知らなかった。僕たちも何も言わなかった。
 僕は京子さんと春子に家事を教わった。教える側が優秀だったのだろう。僕の家事は上達していった。
 同時に僕は勉学にも励んだ。梓の兄として恥ずかしくない男になろうと思ったからだ。
 梓との仲は冷え切ったままだったが、自分でも気がつかないぐらい少しずつ改善していった。以前にも増して春子が家の様子を見に来てくれたのと京子さんの存在が大きかったと思う。
 本当に時々だが、梓が家事を手伝ってくれることもあった。手伝ってくれる回数は少しずつだが増えていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
480三つの鎖 3 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/10(火) 00:18:11 ID:vQ9fj4LH
 ある日、僕は学校で用事があっていつもより少し遅い時間に帰った。
 いつもは学校が終わるとすぐに家に帰るが、この日は少し遅れて校門を出た。僕はいつも一人で帰る。梓と一緒に帰ることはない。春子も生徒会やら委員会で忙しかった。
 帰り道は学生と買い物に行く主婦でごった返していた。
 僕はそこで梓を見つけた。
 梓は一人で人ごみの中を立ち尽くしていた。
 僕は梓のそばに駆け寄った。
 「大丈夫?」
 梓は無表情に僕を見上げた。
 「その、嫌なことでも思い出したの?」
 梓は人ごみを嫌う。その理由は、あの日僕が梓を見つけたときに男たちに囲まれていたのを思い出すからと思っていた。
 あの時の梓は中学一年生だ。大の男に囲まれて恐怖を感じないはずがなかった。今でも背筋が寒くなる。あの時、見つけるのが遅かったらどうなっていたのか。
 僕と梓の間に沈黙が走る。
 雑踏の中でも沈黙ははっきり感じた。
 梓は何も言わない。下を向いたままで。
 「…先に帰るよ」
 背を向けて歩き出そうとした瞬間だった。
 梓はうつむきながら僕の袖を握った。
 僕は驚いた。
 梓は僕を嫌っている。
 それは仕方がないことだ。僕はずっと梓をほったらかしにして家事を押し付けていたのだから。
 それでも今は僕を頼ってくれた。
 それは僕を赦したわけではない。ただ単に嫌なことを思い出して心細かっただけなのかもしれない。
 それでも僕は嬉しかった。
 「帰ろう。梓」
 僕は涙をこらえて言った。
 二人で一言も言葉を交わさずに帰った。それでも僕は嬉しかった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 平穏な日々が続いた。
 僕は高校に進学した。梓と話すことはほとんど無かったが、時々家事を手伝ってくれた。
 時々僕は早朝にランニングをしていた。柔道をやめて以来、運動する機会は減った。もともと体を動かすのが好きだった僕は、体を動かしたいと思うときは走った。
 そして走った後、庭で柔道の練習をした。
 無論、一人でできることなどたかが知れている。足捌きの確認、型の確認。その程度だ。
 なんだかんだで僕は柔道を忘れる事が出来なかった。
 ある日、珍しく梓が話しかけてきた。
 「柔道をしたいの?」
 僕の心臓は凍りつきそうだったが、言葉は自然に出た。
 「昔は夢中だったけど、今は全然」
 嘘だ。だがそれを気付かれてはならない。僕は柔道に夢中だったせいで梓を一人にした。梓は僕が柔道を忘れられないのを快く思うはずがない。
 「何で?忙しいから?」
 梓は無表情に尋ねる。
 「別にそういう訳でもないよ。今は家事も楽しいし。最近料理も分かってきたしアイロンも上手くなったでしょ?」
 梓は無表情に僕を見つめる。きれいな顔だなと脈絡なく思った。
 「それに今は柔道よりも家をしっかり守って梓に苦労をかけないほうが大事だよ」
 この言葉に嘘は無い。柔道にかまけて梓に苦労をかけた事を僕は後悔している。
 今は柔道よりも、梓に苦労をかけたくない。
 僕は走った後に柔道の練習を行うのはやめようと思った。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
481三つの鎖 3 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/10(火) 00:20:25 ID:vQ9fj4LH
 その日の晩に梓は僕を深夜の公園に呼び出した。
 梓は僕に道着の上を渡し着るように言った。
 はおった僕に梓は無表情に言った。
 「兄さんの好きな柔道をしよう」
 梓は僕の胸倉をつかみ投げ飛ばした。僕は自然に受け身をとった。
 あの日梓に投げられた時は全く反応できなかったのに、柔道をやめた今は反応できたのは不思議だった。
 僕は立ち上がり言った。
 「梓。僕は柔道はやめたんだ」
 梓は耳を貸さずありとあらゆる技で僕を投げた。
 僕は驚いた。梓の投げは柔道でない投げもあった。おそらく昔梓が習っていた合気道だろう。
 それ以上に梓の投げは上手だった。僕が投げられたことのない投げだった。
 僕のように体格がいいとどうしても体格に頼る。これは間違いではない。柔道では「柔よく剛を制す」という言葉が有名だが、「剛よく柔を断つ」という言葉もある。力も技も大切ということなのだ。
 現実問題として、体格と体重が違いすぎると投げるのが難しい。柔道の試合が体重別なのもこれが理由だ。
 しかし梓の投げは違った。梓は小柄で細身だ。僕と梓の身長差は20cmを優に超え、体重も30kgは違うだろう。
 にもかかわらず梓の投げはそれを感じさせない。まともに勝負しても勝てる気がしなかった。
 春子が言っていた、深夜を徘徊しては絡んできた男たちを片っ端から投げ飛ばすというのも、今なら信じる。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 ある日、梓は僕に市民体育館での柔道の練習に参加するように言った。
 僕は驚いた。その練習は僕も知っている。参加者は大学の体育会の柔道部や現役警察官など猛者ばかりだ。高校生が参加できるような練習では無い。
 にもかかわらず参加は許されていた。父さんの口添えがあったのを知った。
 渋る僕に行くように梓は強く言った。梓が何でこんな事をするのか分からなかった。
 それでも久しぶりの柔道は楽しかった。結局僕は柔道が好きだった。
 だが昔の過ちを繰り返すことはしなかった。家事と勉強は柔道以上に真剣に行った。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 一年が過ぎ、梓が僕とおなじ高校に入学した。
 梓は相変わらず冷たい。それでも、少しずつだが仲を改善できているように感じる。
 高校二年で初めて春子と同じクラスになった。小学校も中学校も同じ学校だったが、不思議と同じクラスになることはなかった。
 春子は相変わらず僕と梓の面倒を見ようとする。春子自身は生徒会に入りそれなりに忙しい日々を送っている。梓を生徒会に勧誘しているらしい。
 梓のせいで入院しても、春子は優しかった。相変わらず梓と僕を妹弟のように接する。今回初めて同じクラスになってからは特に僕の世話を焼きたがる。正直恥ずかしいが、春子には恩もあるし感謝もしている。これぐらいは好きにさせてもいいかと思う。
 高校になってから比較的穏やかな日々が続く。色々な部活や活動に勧誘される。僕はすべて断った。柔道と家事と勉強で精いっぱいだと思ったからだ。
 高校で僕は有名な存在らしい。仕方がないかと思う。僕の身長は180cmを超える。立っているだけで目立つ。毎日のように妹のクラスに弁当を届けているせいでシスコンと言われているが。
 そんな生活も耕平のおかげで穏やかなものだった。中学の時からの友達で今も続いているのは耕平だけだ。僕は中学の時は本当に何も見ていない子供だった。柔道の腕を鼻にかけて調子に乗っていた僕は、柔道をやめてから続く友達はほとんどいなかった。
 数少ない例外が耕平だった。
 耕平に僕と梓の関係を話したことはない。それでも耕平は何も尋ねず、何かと気をまわしてくれる。春子も同じだ。そのおかげで穏やかで楽しい日々が続く。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 この穏やかな日々の果てに梓に赦してもらえる日が来る事を僕は望んでやまない。
 だけど僕は分かっていた。当たり前のような日々は、いつ砕けるかも分からない脆いガラスのような存在であることを。
 それならば、梓が赦してくれなくても、この日々が続く事を心のどこかで臨んでいることに僕は薄々気が付いていた。
482三つの鎖 3 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/10(火) 00:32:47 ID:vQ9fj4LH
三つの鎖3終わりです
読んでくださった方に感謝します
只今9話を執筆中です
エロを期待している方すいません
エロは7話まで無いです
規制されなかったら明日にでも続きをうpしたいと思います
483名無しさん@ピンキー:2009/11/10(火) 00:56:27 ID:32Esg+5V
>>482
GJ!楽しみに待ってるよ
484名無しさん@ピンキー:2009/11/10(火) 01:33:50 ID:g38n7SlV
>>482
GJ!!
面白かった!
でも今後も柔道ネタが続くのかな?
こういうネタってやったことない人にとってはなんのこっちゃ
って感じだし・・・
485名無しさん@ピンキー:2009/11/10(火) 02:36:54 ID:cz5OyDJf
486名無しさん@ピンキー:2009/11/10(火) 03:09:08 ID:Gb7QuxV1
ウホッ
このキモウトかなり病んでるぜ!(褒め言葉)
487名無しさん@ピンキー:2009/11/10(火) 03:29:38 ID:LajsPaTr
>>482
登場人物の周囲の描写まで丁寧に書かれてて良い感じ
更新頑張ってください
488名無しさん@ピンキー:2009/11/10(火) 03:31:28 ID:N6zI9YAG
柔道を他の格闘技に置き換えても
大してストーリーに変化ないレベルだしいいんじゃない?
489名無しさん@ピンキー:2009/11/10(火) 04:18:25 ID:LWxEgmga
>>484
別に柔道の専門用語がいっぱい出てくる訳じゃあるまいし、問題ないでしょ。
490名無しさん@ピンキー:2009/11/11(水) 20:16:05 ID:j3U04tAI
保守
規制が憎い
491名無しさん@ピンキー:2009/11/12(木) 01:15:10 ID:1erMFYFA
父さん、母さん、今まで有り難うございました。
俺は貴方達の元から出ていきます。おもに姉貴と妹のせいで。
決して夫婦二人の時にお兄ちゃんいつまでも大好き!なんて母さんが父さんに言ってたからでは無いはずです…

俺は荷物一個と数十万の現金で今、新幹線を降りて港に来ている。
姉貴と妹が夜中に忍び込んできて性的暴行をしようとしたのだ。
ヤバいと思った俺は翌朝、家を飛び出した。始発に乗り、新幹線で西へ。
そしてフェリーで沖縄に行こうと思ったが、神戸からはすでに船は出た後だった。
仕方無しにタクシーに乗り大阪へ。運転手の顔はどっかで見た気がしたが気のせいだろう。
そして待合いで待つこと一時間。どっかで時間潰すべきだったな。
えっ?姉貴?妹?駆け落ちって何の話?しかも運転手さん神戸の叔父さん!?

こうして逃避行は二人の書き置きの手紙により駆け落ちに早変わりした。
沖縄に着いてすぐに母さんと父さんからの激励の電話が来た…叔父さんの通報でバレたらしい。
整形しても、変装しても見つけてきそうだからこの姉妹は怖い。     
492名無しさん@ピンキー:2009/11/12(木) 15:01:15 ID:W3xfZjPY
>>491
時事ネタにも程があるぜGJ!
不謹慎にならない程度で、姉妹サイドの続編を期待。
493名無しさん@ピンキー:2009/11/12(木) 17:37:43 ID:VV/9hFln
野暮は言いたくないが
一発ネタで終わらせるのが吉と思うわな
主人公が手配写真の顔で再現されてしまうんでな
494名無しさん@ピンキー:2009/11/12(木) 17:45:48 ID:V7baP6jS
>>493
やめてー!
495名無しさん@ピンキー:2009/11/12(木) 20:39:15 ID:uFUlv6c/
桔梗の剣の続きはまだかぁぁぁあ!
全裸待機してるうちにもう冬だぞ!風邪ひくわ!
496名無しさん@ピンキー:2009/11/12(木) 22:17:07 ID:CfSIRTRR
>>493
最近の逮捕後の写真は水嶋ヒロ似のイケメンだったんだが何故だろう・・・
497名無しさん@ピンキー:2009/11/12(木) 22:19:30 ID:MAAk8Nln
義妹いいよ義妹
498名無しさん@ピンキー:2009/11/12(木) 22:57:01 ID:0wgAcMYi
永遠のしろはまだなのか
499名無しさん@ピンキー:2009/11/12(木) 23:08:17 ID:bmwzbhth
どこもかしこも規制だらけ
うずくまって泣いてても始まらないから
500名無しさん@ピンキー:2009/11/13(金) 00:01:48 ID:Tlim4/D4
500
501三つの鎖 4 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/13(金) 01:00:38 ID:ZTskBLYo
規制が終わったので投下します。

※注意
多少の厨二設定を含みます
エロは当分ないです
502三つの鎖 4 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/13(金) 01:03:29 ID:ZTskBLYo
 三つの鎖4

 私が兄さんを男として愛するようになったのはいつからかは覚えていない。物心ついた時から、私は兄さんを愛していた。
 幼いころは自分の気持ちが分からなかった。ただ単に兄に対する独占欲と嫉妬が強く、それを抑えることができなかった。大人から見たら気難しい子供でしかなかっただろう。
 幼いころから兄さんは優しかった。私の母さんは私を生んですぐに亡くなったから、私は余計に兄さんに甘えた。
 物心ついた時から村田のおば様や京子さんが面倒を見てくれた。あの人たちには感謝している。
 しかし、それでも私が一番好きなのは兄さんだった。常に兄さんにくっつき離れなかった。兄さんがあやすように抱きしめるのが嬉しかった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 兄さんに対する私の気持ちが世間一般におかしいことであるのを自覚したのが小学生になってからだった。
 それまで私の知り合いは少なかった。友達というのもほとんどいなかった。兄さんと、春子だけだった。どこでも兄さんにくっついていた。
 小学校に上がって私と同じ年頃の子の知り合いが増え、そこで私は異端であることを自覚した。兄が好きな子はいたが、私の好きとは違っていた。
 そのころから私は積極的に家事を手伝うようになった。あの頃は私も女の子らしい喜びがあった。私の手料理をおいしいと言ってくれるのが嬉しかったのだ。
 家事を手伝うようになったのは、兄さんが小学校に上がって友達が増え私に構う時間が減ったのもある。それでも兄さんが家にいる時はべったりくっついていた。
 このころから私は兄さんの事を考えると体温が上がるのを自覚した。兄さんに抱きついている時は兄さんがひんやり感じた。
 私は冬が好きだった。寒いのが苦手な兄さんはよく私を抱きしめた。
 そのころの兄さんに対する気持ちはまだ十分抑制できる範囲だった。家では兄さんにべったりできたのもある。そのころの私に対する印象は、気難しいけどお兄ちゃん子という程度だった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 兄さんに対する気持ちに歯止めがかからなくなってきたのは私が小学二年生になったころだった。兄さんが柔道を始めたころだ。
 兄さんは柔道に夢中になり、家に帰るのも遅くなった。帰ってもすぐに寝た。今の兄さんからは想像もできないかもしれないが、そのころの兄さんは腕白な子供だった。特に土日も練習や試合でいなくなることが多いのは私をイライラさせた。
 私は家で家事を行う以外は兄さんの部屋の布団にいることが多くなった。自慰を覚えたのはこのころだ。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
 兄さんは柔道に夢中だった。素質もあった。
 この頃、私は春子に連れられ市民体育館で行われる合気道の練習に参加していた。兄さんと一緒にいる時間が減ってふさぎこんだ私はますます気難しく見えた。私を心配した村田のおば様が連れて行ったのだ。
 私は上達した。そして数年で辞めた。辞めたとき私は小学六年生だった。
 辞めた理由はもう既に学ぶことがなくなっていたからだ。合気道の練習は子供たちが集まるゆるいものだった。
 また合気道自体も実戦的ではなかった。私はそのころすでに自分の外見が男たちにどう映るかを理解していた。私が求めたのは自衛の手段だった。合気道にはそれが余りない。そして練習に通った数年で私は合気道の実戦的な技と動きは高いレベルで身につけていた。
 私は素質があった。異能というべきものかもしれない。私は自分のイメージ通りに動くことができた。どんな技も一度見たらものにできた。兄さんの練習や試合を見ているだけで柔道の技を理解し身に付けた。
 身に付けた技と動きは実戦で磨いた。私は一時期荒れていた。夜の街を徘徊し、絡んでくる者を片っ端から叩き伏せた。
 事情を知る人間は、家事を押し付けられてストレスがたまっていたのだと思っている。昔、兄さんは家事をしなかった。家事はほとんど私の仕事だった。
 そう考えるのも無理はない。あの頃は両親も村田のおば様も忙しくて家の家事は私が一手に引き受けていた。兄さんは柔道に夢中で中学一年生の時点で柔道が有名な高校から声がかかるほどだった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
 私が荒れているのを兄さんが知った時、私が中学一年で兄さんが中学二年生だった。兄さんは柔道部を辞め家事を始めた。
 今思い出しても笑ってしまう。最初の兄さんの家事はひどかった。料理はめちゃくちゃ、洗濯はぐちゃぐちゃ、アイロンをかけると煙が出た。
 それでも兄さんは忍耐強く家事を学んだ。今ではどこでも通用する家事の技能の持ち主だ。それもすべて私のためだった。
503三つの鎖 4 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/13(金) 01:05:37 ID:ZTskBLYo
 兄さんは勘違いしているが、私が荒れていた理由は家事を押し付けられていたストレスではない。理由は少し長くなる。重複する部分もあるが最初から話そう。
 昔から兄さんは優しかった。はたから見れば気難しい子供でしかない私に辛抱強く付き合ってくれた。だが兄さんが柔道を始めてから変わった。兄さんは柔道に夢中になって私に構う時間が大きく減った。
 兄さんといる時間が減った私はますます気難しくなった。私が合気道を始めたのはそのころだ。前にも書いたが、ますます気難しくなる私を村田のおば様が見かねて春子に練習に連れて行かせたのだ。
 私はそこで体を動かすことを覚えた。適度な運動はある程度のストレス解消になる。
 だがそれもある程度でしかない。そのころから私は自分の気持ちが、兄さんを愛することがどれだけ認められないか理解したのだ。根本的な解決は不可能だった。
 そして私は夜の街に繰り出した。夜の街は下劣な人間だらけだった。恐喝してくる少年。私を誘拐しレイプしようとする男。お金を見せて援助交際を持ちかけるサラリーマン。
 私は全て叩きのめした。気分はほとんど晴れなかったが、一人でいるよりマシだった。
 要するに私が荒れていたのは八つ当たりでしかない。兄さんを愛することが兄さんを不幸にするだけだと理解し、諦める事のできない気持ちが私を凶行に走らせたのだ。
 そのうち私は有名な存在になり、ヤクザに目を付けられることになった。叩きのめした人間にヤクザがいたのだ。刃物をちらつかせ囲まれたこともある。
 それでも私は負けなかった。私は喧嘩に関しては天才だった。天才というのは人格的に問題がある人間に多いと聞く。おそらく人格と引き換えに異能ともいえる素質を得るのであろう。私もその類なのだろう。
 無論、私はそんな素質を望んだ事は一度もなかった。望むのは兄さんと結ばれることだけだった。
 警察に捕まることはなかった。私は狡猾だった。警察には訴えない人種ばかり選び必ず相手から先に手を出させた。叩き伏せても大怪我はさせなかった。
 兄さんが私の非行を知ったのは春子からだった。春子は私の非行を目撃し、私にやめるように訴えたのだ。無論私は黙殺した。春子は力づくでも連れて帰ると言った。
 春子は本当に力ずくで私を抑えつけようとした。春子は強かった。傷つけてでも私を止めるという意思があった。それが私のためになると信じていた。
 それでも私の敵ではなかった。
 喧嘩は長引いた。私の喧嘩の必勝法は相手を投げつけて動きを止めてから急所を攻撃するというものだった。いくら鍛えていても子供の力ではそれ以外に方法はない。
 投げは体重が軽くて受身のとれる人間には効果が薄い。春子はすぐに起き上がり急所を責めることができなかった。私は相手を大怪我させない投げしかしないのも長引いた要因だった。
 春子は投げても投げても受け身をとりすぐに起き上がった。場所が公園なのも春子に有利に働いた。地面が土でコンクリートほど硬くなかった。いつもは手加減のために選ぶ場所だが、それが裏目に出た。
 終わりは春子の一言が原因だった。
 起き上がった春子は、私に言った。
 「梓ちゃんが何を思っているのか分からないけど、こんな事を繰り返して何になるの!?」
 迷いのない言葉だった。春子の言葉は全く正しい。
 だからこそ我慢できなかった。
 私は春子を頭から叩き落とした。合気道は柔道と違って頭を打つ受け身は絶対にしない。春子は一撃で意識を失った。
 何も嬉しくなかった。私の行動は、兄をどれだけ愛しても決して報われない気持ちを、他の人間に八つ当たりしているだけだ。
 私が叩きのめした人間は人間の屑ばかりだったが、その屑に八つ当たりをする私も同じだ。むしろ自分の欲望とは関係のないことを繰り返す私よりも人間らしくあった。
 そしてついに人間の屑でない春子にまで八つ当たりしたのだ。
 私は救急車を呼び春子を残して消えた。春子は入院し手術を受けた。私に頭を叩きつけられ急性の脳内出血を起こしたのだ。幸い春子に障害は残らなかった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 春子は見舞いに来た兄さんに事の顛末を話したらしい。
 兄さんはすぐに飛び出して私を探した。
 私はいつも通り夜の街で荒れていた。兄さんが私を見つけたとき、私は十人を超える男に囲まれていた。私はいつも通りたたき伏せるつもりだった。
 そこに兄さんが飛び込んできた。私は意表を突かれた。兄さんは私を担ぐと走った。
 既に兄さんの身長は180cmを超えていた。また兄さんは鍛えていた。私が軽かったのもありその場は逃げだすことに成功した。
504三つの鎖 4 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/13(金) 01:07:01 ID:ZTskBLYo
 兄さんは逃げだすことができたのは奇跡的だと思っているが、あの時気が立っていた私はすでに何人かをいつもより痛み付けていて、それに怖気ついて単に追ってくる気が無かっただけというのが真相だ。
 人気のいない公園で兄さんは私を抱きしめて泣きながら謝った。何も気づいてあげられなくてごめん、僕にできることなら何でもすると、何度も謝った。兄さんに抱きしめられたのは本当に久しぶりだった。
 私は兄さんの背中に腕を回し抱きしめた。私は燃えるような快楽とそれを上回る喜びに包まれた。兄さんが私を力強く抱きしめてくれる。それだけで絶頂を迎えそうだった。
 兄さん。私の恋人になってください。私にキスしてください。私を犯してください。
 そう言いたかった。必死で押さえた。それは叶わない望み。兄さんを不幸にしたくなかった。
 私は兄さんの腕をつかみ投げた。あれだけ柔道が好きで腕の立つ兄さんを、面白いぐらい簡単に投げることができた。兄さんはしたたかに地面にたたきつけられた。
 これは兄さんが下手なのではない。私に投げられるなど全く考えていなかったのだ。受け身も取れずもがく兄さんを見下ろして私は奇妙に興奮していた。
 それでも私の一部は冷静だった。兄さんを不幸にはしたくない。ならば困らせてやる。私はそれで我慢する。だから兄さんも我慢して。
 エゴだった。もともと許されない想いを我慢する代わりに困らせるというのだ。それでも私には耐えがたい妥協だった。
 私は兄さんに冷たく告げた。
 「今更何を言ってるの兄さん。もう遅すぎるのよ」
 その時の兄さんの顔は忘れられない。悲しい表情。そしてそれを受け入れる覚悟。憎まれても仕方ないことをしたと思い知った顔。全てが勘違いなのに。
 私は兄さんを不幸にしたくない。それでも兄さんが悲しむ顔に奇妙な興奮を覚えた。
 その時は分からなかったが今なら分かる。私は違う意味で兄さんを手に入れたのだ。愛しい人を傷つけても、絶対に離れない。それどころかますます近づこうとする。赦しを、償いを求めて。
 今までは私が兄さんを追いかけてきた。これからは兄さんが私を追いかける番だ。
 追う理由が私の求めるものとは違っても、兄さんは私を求める。
 兄さんが求めるのは私の赦しと償いであって私ではない。
 それでもいい。兄さんが私を追ってくれるなら。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 それから兄さんは私に尽くすようになった。
 たとえ私からどんな暴言を受けても、いつもの困って少し悲しそうな笑顔を浮かべるだけで私に従った。
 私が家事を積極的に行っていたのは、兄さんに尽くしているという自己満足のためだった。たとえ実の兄を愛するのが許されなくても、尽くしたい。そんな自己満足だった。
 だが私は兄さんの家事から自分の本質に気がついた。私は尽くすよりも尽くされるほうが好きなのだ。
 兄さんに料理を食べてもらうよりも、兄さんの料理を食べるほうが嬉しかった。
 兄さんの部屋を掃除するよりも、兄さんに私の部屋を掃除してもらうほうが嬉しかった。
 兄さんの服を洗濯するよりも、兄さんに私の服を洗濯してもらうほうが嬉しかった。
 私は本当に女らしくないと思う。
 一つ面白かったのが、私が人ごみを嫌う理由を兄さんが勘違いしていることだ。
 私が人ごみを嫌うのは、そこにいる女全てに兄さんと血縁の障害が無いのに、私にはあることを思い知らされるからだ。
 自戒の意味を込めて私は人ごみにいることがたまにある。どれだけ兄さんが私を追ってきても、兄さんは手に入らないという事を自分に言い聞かすためだ。暗示といってもいい。
 それを兄さんは、あの夜男に囲まれていたのを思い出すからと勘違いしているのだ。
 兄さんの発想は非常識ではない。むしろ常識的だ。中学一年生の女子が大の男に囲まれて恐怖に震えるのではなく、全員を叩きのめす方法を考えているほうがおかしいのだ。
 一度人ごみの中でぼんやりしていると、顔色を変えた兄さんが走ってきた。
 「梓?大丈夫?」
 最初は意味が分からなかったが、兄さんの言動から兄さんの考えを把握した。兄さんらしい優しくて何も分かっていない勘違い。
 私は兄さんの袖をつかんだ。
 兄さんは驚いたがすぐに微笑み私の手を握った。
 「帰ろう。梓」
 私は勘違いを正さなかった。正すには本当のことを言わないといけなかったし、兄さんと堂々と手をつなぐ機会を得たからだ。
 あの日、兄さんが私を追うようになってから私は夜の街で暴れるのをやめた。
 春子とも仲直りした。春子の怪我は私以外の者との喧嘩と春子は言った。
 父さんと母さんは何も知らないままだった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
505三つの鎖 4 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/13(金) 01:08:35 ID:ZTskBLYo
 それからしばらく平穏な日々が続いた。
 兄さんは変わった。柔道が好きな能天気な少年は、物静かで忍耐強く思慮深い男になった。
 柔道部を辞めてから兄さんは柔道とは縁を切った。中学になってから部活一本に絞っていた兄さんは、柔道を練習する機会を無くした。
 それでも時々早朝の庭で足捌きや型の練習はしていた。忘れられないのだろう。
 しかし柔道は一人で練習して上達するものでも満たされるものでもない。兄さんは柔道に関して優れた素質を持っているが、私のような異端な素質ではない。どれだけ優れていたとしても、あくまで一般的な素質だ。
 兄さんが早朝に一人柔道の練習をしているのを知った私は兄さんに囁いた。
 「柔道をしたいの?」
 正直に白状すると、この時まで私は兄さんを見くびっていた。
 兄さんは不思議そうに私を見たのだ。
 「昔は夢中だったけど、今は全然」
 柔道に対する兄さんの想いを全く感じさせない態度だった。
 「何で?忙しいから?」
 兄さんは苦笑した。
 「別にそういう訳でもないよ。今は家事も楽しいし。最近料理も分かってきたしアイロンも上手くなっただろ?」
 兄さんの言うことに嘘はない。確かに兄さんの家事全般は目覚ましく向上していた。
 「それに今は柔道よりも家をしっかり守って梓に苦労をかけないほうが大事だよ」
 兄さんの言うことに嘘を感じなかった。兄さんは本気でそう思っているのだ。
 私の兄さんは成長していた。武道は心技体を鍛えるのが目的だ。柔道で兄さんは技を体を鍛えたが、心はあまり鍛えることができなかった。柔道をやめ私と過ごす日々は、兄さんの心を鍛えたのだろう。
 その日の夜、私は兄さんを人気のない公園に呼び出した。そこは私が荒れていた頃よく使用した場所だった。つまり柔らかい土の上で投げても大怪我をさせにくい。
 私は兄さんに道着の上を渡し着るように言った。
 不思議そうに兄さんは道着をはおった。
 「兄さんの好きな柔道をしよう」
 私は兄さんの胸倉をつかみ投げ飛ばした。兄さんは受け身をとった。きれいな受け身だった。
 「梓。僕は柔道はやめたんだ」
 私はありとあらゆる技を兄さんにかけた。兄さんはされるがままだった。
 兄さんはそれ以来早朝に一人で練習する事もなくなった。
 私は逆に確信した。兄さんは柔道を忘れていないと。
 兄さんは私に対して本当に優しい。兄さんは私が柔道を嫌っていると思っている。兄さんからしてみれば、柔道に夢中だったせいで私が非行に走ったと思っているのだろう。
 だから私に対しては柔道を見せないのだろう。私が思い出さないように。受け身をとったのは怪我をしないためだ。あの状況で受け身を取らずに怪我をすると、私に疑いがかかる。そうなれば余計な疑惑を招く。
 ひとつ言っておくと、別に私は柔道は嫌いでも何でもない。むしろ感謝しているぐらいだ。結果的にとはいえ兄さんが私を追ってくれるようになったのだから。
 強烈な欲求が私を締め付ける。
 私は兄さんを困らせたくなった。兄さんの困って少し悲しそうな顔は、私を興奮させた。要するに私は兄さんを試したくなったのだ。どこまで兄さんが私を優先してくれるのか。
 今は柔道と私なら、私を優先してくれる。それは柔道をしていないからだ。
 ならば柔道に夢中になった時、私と柔道のどちらを優先してくれるだろうか。
 市民体育館で厳しい柔道の練習が行われているのを私は知っていた。父さんに頼んで、兄さんを参加できるように頼んだ。私が中学三年生、兄さんが高校一年生の春だった。
 父さんは驚いた。無理もない。私が必要最低限の頼み以外をするのは初めてだったからだ。
 その練習は高校生で参加した者は今までいなかったが、警察官である父の口添えと兄さんの昔の実績から特別に許された。
 最初兄さんは驚き、柔道はもう忘れたと言ったが、私が参加するように強く言うとしぶしぶ参加した。
 しかし兄さんはすぐに夢中になった。もともと柔道が好きで上達したいと思っているのだ。当然の結果だった。
 練習での評判も良かった。兄さんはもともと素質がある。よい環境さえあればいくらでも伸びた。
506三つの鎖 4 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/13(金) 01:09:36 ID:ZTskBLYo
 私が兄さんに柔道を再開させたのは、いつか奪うためだ。その時の兄さんの困った顔を想像するだけで私は濡れた。
 しかし兄さんは昔と違った。練習には積極的に参加しつつも、家事は絶対におろそかにしなかった。柔道に夢中にでも溺れる事は無かった。それどころか勉学も励んだ。
 兄さんは高校ではちょっとした有名人だ。文武両道で家事を担いそのうえ穏やかで優しい。見た目もまあいい。身長もある。
 しかし学校の運営にかかわる役職には絶対に着かないことでも有名だった。実際、生徒会や委員会の勧誘も多い。それを勉学のためとすべて断った。私のためといわなかったのが兄さんらしい。シスコンという噂さえ無ければ間違いなくモテただろう。
 私は肩透かしを食らった気分だった。兄さんに与えておいて奪う。その時の兄さんの困った顔が楽しみだったのだ。
 しかし同時に嬉しくもあった。兄さんがそこまで私の事を大切に思っているのを確認できたからだ。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 私は危険な道を歩いているのを自覚している。兄さんを困らせても不幸にしないというのが私の最低限のルールだった。今では困らせるのと不幸にするの境界があいまいになっているのが分かる。
 兄さんが私のものにならないなら、思い知らせてやればいい。
 安っぽい破滅願望を自覚するからこそ兄さんと一緒にいる時間を減らした。これ以上一緒にいると自分でも何をするか分からなかった。兄さんを邪険に扱い近づかないようにした。
 それでも兄さんは優しかった。冷たく接すれば接するほど、兄さんは私を追いかける。
 私は今まで以上に兄さんを愛するようになった。それと同時に私の満たされない思いも大きくなっていた。
 妹としてではなく、女として兄さんに愛してほしい。大切にしてほしい。
 その気持ちはどんどん大きくなってくる。
 そんな日は来ないと私は分かっている。
 この二律背反に心がきしむ。
 私は常に恐れる。
 もし兄さんに愛する女性が出来たら。
 私はどうなるのだろう。
507三つの鎖 4 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/13(金) 01:13:59 ID:ZTskBLYo
投下終わりです

読んでくれた方に感謝します

近いうちに規制が無ければ続きを投下します
508名無しさん@ピンキー:2009/11/13(金) 01:21:59 ID:RUs/1wi5
おお、リアルタイム
乙です
509名無しさん@ピンキー:2009/11/13(金) 09:15:03 ID:jVnjeYFc
乙!!
エロが楽しみ
510名無しさん@ピンキー:2009/11/13(金) 10:09:03 ID:Q9hytZwr
GJ
これはなかなか楽しみだ
それにしても主人公スペック高いな
511名無しさん@ピンキー:2009/11/13(金) 11:28:19 ID:wbGXhoHJ
主人公(姉&妹)がハイスペックなのはこのスレの常識。

GJです。
512名無しさん@ピンキー:2009/11/13(金) 15:11:33 ID:BiMYOijm
>>507
GJ!!
キモイね、キモイよ!!
513名無しさん@ピンキー:2009/11/13(金) 22:47:50 ID:gMKx3HeU
たまには主人公がハイスペックだったりしないかな
514名無しさん@ピンキー:2009/11/13(金) 23:34:53 ID:n5+AHfDz
社会的にハードルがかなり高い恋愛だけに、スペックの低い姉妹は
物語が成立する前に淘汰されてしまうのかもね。
515名無しさん@ピンキー:2009/11/13(金) 23:40:20 ID:PnWaftDl
確かに
だいたい姉と妹がめっちゃスペック高くて、愛される兄や弟が普通だったり鈍感だったり
でも>>507は兄のスペックが結構高い
ていうか兄が妹に尽くしてるし
鈍感っぽいけど
516名無しさん@ピンキー:2009/11/14(土) 00:52:04 ID:phopXaO2
>>515
妹のスペックが無駄に高すぎて、兄のスペックなんて気にならんな。
あの年齢でストレス発散気分で複数の年上の男相手に
勝ち続けるなんて、連載開始時のバキより強いぞ。
もう護身完成の門だって見えるレベルじゃない?
517名無しさん@ピンキー:2009/11/14(土) 02:22:04 ID:sCV7Tnu7
妹のスキルに.格闘Sが付いているな。
海自の特殊部隊や海保のSSTに入れそうだ。 
518516:2009/11/14(土) 05:02:00 ID:phopXaO2
そういえば書き足しとくけど、
正直な所キモウトとしては強烈な違和感を感じていた。
その理由を考えてみて思いついた理由。

むしゃくしゃしたって理由で
負けたら即レイプな所に喧嘩を売りに行くなんて、
兄に貞操捧げたいキモウトとして完全に失格。

でも、一般的なフィクションにおける強い女の子という
先入観を捨てて、バキの渋川並の超人合気使いと考えると
筋はきちんと通るんだよな。絶対に負けない訳だから。

まあそれなら描写不足は否めないけど。
519名無しさん@ピンキー:2009/11/14(土) 07:57:00 ID:cTkxxtiP
注意書きの厨ニ設定とはこういう事か
520名無しさん@ピンキー:2009/11/14(土) 08:43:53 ID:+K/vSevX
>>518
で?
521名無しさん@ピンキー:2009/11/14(土) 09:05:55 ID:nSZswu1q
>>518
わかったからお前は黙って友人のキモウトに毒手ビンタされて死にかけとけ
次また変なこと書いたら金玉を下からおもいっきりぶん殴るぞボケが
522名無しさん@ピンキー:2009/11/14(土) 09:42:31 ID:eD1ZwMJo
>>518
日本語でおk
523名無しさん@ピンキー:2009/11/14(土) 12:04:20 ID:5ioBMChD
>>517
特殊部隊員なキモウトとか見てみたいな!
524名無しさん@ピンキー:2009/11/14(土) 14:18:50 ID:XctfZ6+N
北斗の拳のゴッドランドみたいなキモウトを連想してしまったぜ
525名無しさん@ピンキー:2009/11/14(土) 22:23:55 ID:F4KXZ/YB
「汚物(泥棒猫)は消毒よー!!」


こうですかわかりません
526名無しさん@ピンキー:2009/11/14(土) 22:43:58 ID:eD1ZwMJo
>>524
「姉に勝る恋人はいねぇ!!」

こうで(ry
527名無しさん@ピンキー:2009/11/14(土) 23:11:50 ID:GJEdwBYf
>>518
きめえなんだこいつw
528名無しさん@ピンキー:2009/11/15(日) 00:36:33 ID:W2B7dfni
>>527
コラッ!見たらダメでしょ!
529名無しさん@ピンキー:2009/11/15(日) 00:40:52 ID:hmA8S4sT
>>518
意訳:キモ姉妹は処女じゃなきゃヤダヤダー
530降下技能持ち:2009/11/15(日) 00:56:07 ID:f4e9RMpJ
>>523のネタ
妹「お兄ちゃん開けてー!また一緒に寝ようよ!」
兄「オメー何歳だ!つーか体力凄いな、何時間か掛けて帰省してその晩に襲撃ってどんだけ力余ってんだ!」
妹(仕方ないなあお兄ちゃんったら。お父さんの登山用品有ったよね。あれ借りよ…)
…深夜
兄(ドアは鍵、戸棚で閉鎖。窓は閉めてる。うん、これでよし。)
数時間後
妹(ブレーカーオフ!配電盤確保は制圧の常識よ!さて屋根に上がりましょうか。)
その数分後
兄(暑いなオイ…寝られん!エアコン逝ったかな…とにかく窓開けよ。)
兄(よし、窓の下に脚立が置けるスペースは無いな。夜風が涼しいな…zzzz) 
妹(ラペリング降下によるエントリー実施。所要6秒)
母(あら…ブレーカ落ちてる戻しとこ。)
妹(安全具よーし、ロープよーし、降下待機位置よーし、安全確認。降下始め。)
スルスルスル…ピタッ…
兄「zzzzzz…」
妹(突入!お兄ちゃんのベットへ!)
翌朝
父「母さん、俺の登山用具知らないか?スリングとハーネス。」
母「たぶんあの子が練習に使ったんじゃないの?」
兄「うわ!何で此処に!あっ!しまったドア塞いでた!その格好で固め技ヤバいって!アーッ!」
 
531名無しさん@ピンキー:2009/11/15(日) 08:33:21 ID:UptfQ46X
ブラコンとキモウトの違いを教えてくだしあ
532名無しさん@ピンキー:2009/11/15(日) 08:47:10 ID:JrSr/kAX
キモウト(キモ姉もほぼ同じ)とは、ブラコンの特殊型あるいは重症化した物です。

典型的なキモウトは、強度のブラコンがヤンデレを併発した合併症として観測されます。
従って典型的には、対象が兄であるという点他はヤンデレに酷似した症状を示します。
著しい場合はブラコンが他の精神作用を圧殺してしまうため、兄以外の存在全てに対して
強い攻撃性を帯びたり、肝心の兄さえ自分の思い通りにならなければ攻撃する主客転倒の
症状を示すことがあります
533名無しさん@ピンキー:2009/11/15(日) 09:15:49 ID:31PhikLO
話を蒸し返すが、なんで518が叩かれてるんだ?
イベント後から初めて好感もたれたのなら問題ないけど、
イベント前から素直じゃないにせよ、もう結構好感度高そうな描写だぞ。
矛盾を感じてしまうのは当然だと思うが。
534名無しさん@ピンキー:2009/11/15(日) 09:32:29 ID:+K8xRTQg
ID変わったからって蒸し返すなよめんどくさい
535名無しさん@ピンキー:2009/11/15(日) 09:42:35 ID:o9mtwx4a
>>533
どうでもいい話蒸し返すんじゃねえよこの豚野郎。黙って姉妹とモンハンでもやってろや
536名無しさん@ピンキー:2009/11/15(日) 14:54:29 ID:P251SBgI
「お姉ちゃん!! おにいちゃんは私とフルフルを狩りに行くの!!
 ほらっ、おにいちゃんのフルフルもフルフルしてヨダレ垂らしてるじゃないっ!!」
537名無しさん@ピンキー:2009/11/15(日) 17:06:57 ID:8kNkajmi
ひと掘りイこうぜ!
538名無しさん@ピンキー:2009/11/15(日) 18:37:19 ID:q4w1G0Hf
イモレウスやアネレイアが出て来るゲームとな
539名無しさん@ピンキー:2009/11/15(日) 19:49:29 ID:P251SBgI
おにいちゃんのグレートピッケルで私の採掘場はマカライト鉱石だよぉっ♪♪
540名無しさん@ピンキー:2009/11/16(月) 01:23:12 ID:YmgT9m9T
妹「上手にできました♪」
兄「子供がね……orz」
541名無しさん@ピンキー:2009/11/16(月) 01:37:34 ID:xkni25ug
ひとりでもできるもん
542名無しさん@ピンキー:2009/11/16(月) 03:29:56 ID:6kbNELsx
親父が凄い浮気性で、姉7人妹が5人で全員キモスキル持ち。
ヤバいだろうな。姉妹間での冷戦、同居の問題とか…

「お兄ちゃん、泊めて下さい。」
「ああ、良いよ。お母さんには連絡しとくね。」

「くっ、最年少の小●低学年だから普通にオッケー?くそぅ。」
「あんただって中●二年の癖に!あたしゃ高三だから受験大丈夫?なんて聞かれるのよ!」
「明日、講義無いから泊まれるわ〜じゃあね、妹ちゃん達。」
「「抜け駆けすんなやゴルア」」 
543名無しさん@ピンキー:2009/11/16(月) 14:32:17 ID:sFdgmPkW
高3は「あたしゃ」なんて言葉絶対に使わない。
544名無しさん@ピンキー:2009/11/16(月) 15:07:03 ID:TKy8xFSG
俺のクラスメイトに何人かいるけど?『あたしゃ』。

てか悪ノリしてるときちょくちょく言いだすやついるぞ、とマジレス
545名無しさん@ピンキー:2009/11/16(月) 15:40:34 ID:PFRQSaVn
妹のパソコンの検索履歴に近親相姦があった件




まさかなぁ・・・ハハハ
546名無しさん@ピンキー:2009/11/16(月) 15:44:59 ID:qr/NsDTi
>>545
安心してくれ。それはきっと弟を狙っているんだ。そうだろう?そうだと言ってくれ!
547名無しさん@ピンキー:2009/11/16(月) 16:21:23 ID:PThBHqck
>>545
妹のパソコンの履歴を勝手に見たお前が悪い。まあ頑張れ。
548名無しさん@ピンキー:2009/11/16(月) 16:22:28 ID:PThBHqck
久しぶりにsageそこなった。今から姉に電話して謝るわ。
549名無しさん@ピンキー:2009/11/16(月) 17:33:29 ID:ehLlG0qW
はやまるな
検索履歴に睡眠薬とか媚薬とかがあったら行動するべきだが
550名無しさん@ピンキー:2009/11/16(月) 18:18:38 ID:ax2jsmJz
高校生がこんな所見てちゃ将来心配だなw
551名無しさん@ピンキー:2009/11/16(月) 19:28:42 ID:jzP2ZCH1
いつ見たって同じさ
同じ穴の狢よ
552名無しさん@ピンキー:2009/11/16(月) 19:39:03 ID:qr/NsDTi
>>551
妹「同じ穴の狢。つまり、私とお兄ちゃんは同じ穴から生まれてきたってコトなのよ!」
兄「生々しい話はするな!」
母「ちなみに、私と旦那も同じ穴から生まれてきたのよ♪」
父「ちょ、おま」
妹「ふ〜ん。私達と同じだね♪」
兄「だからお前は…え?」
553三つの鎖 5 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/16(月) 22:36:07 ID:DrdEP+Ae
三つの鎖 5です

投下します
554三つの鎖 5 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/16(月) 22:37:29 ID:DrdEP+Ae
三つの鎖 5

 わたくし夏美には高校に入って面白い友達ができた。
 これはその友達と愉快な仲間達のお話。
 
 授業が終わりお昼休みになる。
 この学校に学食はあるが、全生徒を収容する余裕が無いので弁当の持参を推奨している。
 わたくし中村夏美も弁当派の一人だ。
 「あーずーさー!弁当食べよ」
 私は友達の梓に声をかけた。
 「兄さんが持ってくるから先に食べて」
 梓はにこりともせず言う。相変わらず綺麗な顔にポニーテールがよく似合う。
 「またまたー。相変わらずお兄さんをこき使いすぎだYO」
 スルーする梓。反応してくれないと寂しい。
 私は梓の前の席の机を無断拝借して座った。
 同じクラスメイトの美奈子が声をかけてくる。
 「加原さんのお兄さんってあの大きい人でしょ?」
 「そうなのよ美奈子。あの身長が高いちょっと格好いい先輩」
 美奈子は首をかしげた。
 「でもシスコンなんでしょ?毎日妹の教室まで弁当を届けに来る」
 「でも格好いいでしょ?」
 うーんと悩む美奈子。うーむ。気持ちは分かる。女の子はシスコンとマザコンが嫌いなのだ。
 噂をすれば本人が登場。
 教室の入り口からこっそり中をうかがうお兄さん発見。いや、丸見えですよ?
 私はお兄さんに手を振る。控え目に手を振ってくれるお兄さん。ちょっと可愛い。
 梓が不機嫌そうに椅子から立ち上がりお兄さんに近づく。
 「はい梓」
 お兄さんが笑顔とともに差し出す弁当を無言で受け取る梓。こえー。
 「出て行けシスコン」
 いつも通り不機嫌そうに暴言を吐く。お兄さんは苦笑して去って行った。
 今日は美奈子と梓の三人で机を囲む。
 「梓、お兄さん可哀そうじゃない?」
 私は梓をたしなめる。
 「えー?でも梓のお兄ちゃんシスコンなんでしょ?あれぐらいでいいと思うよ」
 弁当を開く美奈子。のり弁か。
 「みなこー。梓のお兄さんすごいんだよ?朝昼晩とご飯を作る上に掃除洗濯も引き受けるのよ」
 「え?何それ?メイド?」
 目を丸くする美奈子。
 梓は不機嫌そうに弁当を取り出した。
 「私も少しは手伝ってる。お母さんもてつ」
 弁当を開き沈黙する梓。
 「え?お母さんも鉄?」
 梓のほうを振り返り聞き返す美奈子。その表情が劇的ビフォーアフター。
 「どしたの。ピーマンでもあったの?」
 私はピーマン好きだぞ。
 梓の弁当を覗き込む私。
 沈黙の理由を理解した。梓の弁当は鮭弁当だった。ただ、鮭は細かく砕かれてご飯の上に心の形でまぶしてあった。
 心。ハート。
 白米の上にピンクのハードがでかでかと。
 「えっと、梓?」
 私は恐る恐る梓に声をかける。梓はうなじまで真っ赤になっていた。おおっ。色っぽいぞ。
 美奈子が口を押さえて立ち上がる。
 「何この愛妻べんとー!これが妹に渡す弁当?きもすぎー!」
 お兄さんごめんなさい。私もそう思います。
 教室で弁当を食べていた他のクラスメイトも寄ってくる。みな一様に梓の弁当を見て絶句した後いろいろ言う。梓は無言で弁当に蓋をして袋に入れると、弁当を持って教室を出て行った。
 「ねえ夏美。梓だいじょうぶ?耳まで真っ赤になってたよ。ありゃお怒りじゃない?」
 「うーむ」
 私は腕を組んでうなる。
 「お兄さんてドMなのかな」
 あの子お兄さんをしばきに行ったんだろうな。
555三つの鎖 5 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/16(月) 22:38:51 ID:DrdEP+Ae
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 お昼休みが終わる直前に夏美は帰ってきた。
 顔色はまだ赤い。ハンカチでしきりに顔をぬぐっている。大丈夫かな。すごい汗だ。
 「ちょっと梓。お兄さんをどれだけフルボッコにしたの?」
 「ふるぼっこ?」
 怪訝な顔をする梓。手で顔をあおぐ。暑そうだ。
 「ええと、お兄さん生きてる?」
 「あの変態シスコンに何かあったの?」
 あれれ?
 「梓、お兄さんの教室に行ったんじゃないの?」
 「行ってないわよ」
 よかった。お兄さんは無事か。
 「じゃあどこに行ってたの?」
 「屋上」
 短く答える梓。そこでお昼休み終了のチャイム。
 私は自分の席に戻った。
 授業を聞きながら私は別の事に頭フル回転。
 梓が屋上に行った理由は?
 1.怒りを鎮めるため
 2.恥ずかしい弁当を見られるのがいやだったから
 どっちもありそう。
 梓がお兄さんを問い詰めに行かなかった理由は?
 …分からない。恥ずかしかったのかな?
 でもそれなら呼び出して問い詰める事もできたはず。でもそれもしなかった。
 梓のほうを見る。相変わらず顔が赤い。無表情な顔を手であおいでいる。
 でも。
 顔が赤いのは、本当に怒っているからなのだろうか?
 いつも通りの無表情なのに、嬉しそうに見える。
 アルェー?
 なんでー?

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 終わりのホームルームが終わった。
 「あーずーさー!」
 私は梓に声をかけた。
 「何?」
 「お兄さんに今日の愛妻弁当の事聞きに行こう!」
 梓の事も気になるけど、お兄さんの事も気になる。
 実の妹にあんなお弁当を渡すということは本当にシスコンなのだろうか?
 梓は少し考えて頷いた。
 お兄さんはいつもすぐに帰るらしい。帰る学生でごった返している廊下を梓と二人で走る。
 お兄さんの教室をのぞく。幸いお兄さんはハル先輩と知らない男子生徒と話していた。
 「おにーさんはいねーかー!」
 私はそう言って教室に入る。私に視線が集中する。うおっ。ちょっと恥ずかしい。
 「おいおい幸一。お前は梓ちゃんだけじゃ飽き足らず、こんな可愛い女の子にまでお兄さんって呼ばせてるんかいな。どれだけ妹が好きやねん」
 「耕平。僕にそんな趣味はないよ」
 あの男の人は耕平さんというのか。胡散臭い関西弁だ。でもお兄さんと仲良さそうだ。
 「夏美ちゃーん。おにーさんはここだー!」
 後ろからハル先輩がお兄さんの首に腕を回す。ちょ!こんな人が多いクラスで抱きつくとは!さすがハル先輩!私にはできない事をやってのけるっ。そこにしびれる!あこがれるゥ!
 だが周りは反応薄い。いや、何て言うか生暖かい空気だ。
 何さこれ!またいつもの事みたいな空気!
 「ハル先輩!まさかいつもお兄さんにそんな、その、ゴニョゴニョな事をしているんですか?」
 「夏美ちゃん。言い方がヒワイだよ」
 そう言いつつも後ろから抱きついているのを離さないハル先輩。恥ずかしそうに頬を染めるお兄さんが可愛すぎる。
 「ねえ春子。恥ずかしいから離れて」
 小さな声で恥ずかしそうに言うお兄さん。やっべー。ハンパなく可愛いっす!
 「ふっふー。お姉ちゃんに意見とは100年早いですよ」
 そう言いつつ後ろからお兄さんの背中に胸を押し付けるハル先輩。
556三つの鎖 5 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/16(月) 22:41:06 ID:DrdEP+Ae
 恥ずかしそうに頬を染めるお兄さんが可愛すぎる。
 「ねえ春子。恥ずかしいから離れて」
 小さな声で恥ずかしそうに言うお兄さん。やっべー。ハンパなく可愛いっす!
 「ふっふー。お姉ちゃんに意見とは100年早いですよ」
 そう言いつつ後ろからお兄さんの背中に胸を押し付けるハル先輩。
 「ちくしょぉぉぉぉ!ちくしょぉぉぉぉぉ!羨ましくないわい!」
 血の涙を流している男が一名。
 「春子。お願いだから」
 「ダメでーす。恥ずかしがる幸一君が可愛すぎるのです」
 そう言って後ろからお兄さんに頬ずりするハル先輩。今にも涎を垂らしそうな笑顔だ。めっちゃ幸せそう。
 血の涙を流していた男、確か耕平さんとやらが目元をふき私のほうを向く。
 「で、どないしたん?あっちはお取り込み中や。何か幸一に用事なん?」
 突然立ち直るお兄さんのクラスメイトに面食らう私。
 「あの、そのですね」
 「すまんすまん。自己紹介がまだやったな。俺は田中耕平。加原幸一のクラスメイトや」
 「あ、こりゃご丁寧にどうも。私は梓のクラスメイトの中村夏美です。夏美って呼んでください」
 「夏美ちゃんね。幸一になにか用なん?」
 お兄さんのほうを見る耕平さん。ハル先輩は幸せそうにお兄さんに頬ずりしている。お兄さんは恥ずかしそうにうつむいている。見てるこっちが恥ずかしくなる。
 「ええとですね、梓と一緒にお弁当について質問しに来たのですが」
 「梓ちゃん来てるん?」
 「ええ。そこに」
 教室の入り口を向くとそこには修羅がいた。何で今まで気がつかなかったのだろう。
 「ちょ!あずさー!乙女が決してしてはいけない表情してるよ!」
 私と耕平さんは思わず後ずさる。
 梓の存在に気がつくお兄さんとハル先輩。
 お兄さんも梓の表情を見てちょっと困った表情をする。
 って、あれ?お兄さん?あの表情を見てその程度のリアクションですか?
 「梓。どうしたの?」
 穏やかに聞くお兄さん。怖くないすか!?あんたすげーよっ!
 「変態シスコン。楽しそうね」
 こわっ!梓怖すぎ!
 「梓ちゃんだー!」
 お兄さんを放り投げて(あれれ)梓にダッシュするハル先輩。そのまま梓を抱きしめる。
 梓の顔がハル先輩の胸にうまる。
 「梓ちゃーん。ごめんね幸一君にばっかりかまってー!寂しかったんだねー。よしよーし」
 「春子。離れて」
 ご機嫌で抱きしめた梓の頭をなでるハル先輩。梓の冷たい言葉もスルー。
 「そんな冷たいこと言わないでー。お姉ちゃん寂しい」
 梓に頬ずりするハル先輩。豊満な胸が梓の胸…うん胸とぶつかって潰れる。梓がさらに不機嫌になった気がする。
 「えい」
 「やんっ」
 春子を突き飛ばす梓。
 「梓ちゃんひどい!お姉ちゃんに何てことするの」
 抗議する春子を無視する梓。ちょーこえー。
 ゆっくりとお兄さんに近づく梓。その不機嫌オーラにクラスが黙る。
 お兄さんの手前で止まる梓。そのまま背の高いお兄さんを下からにらむ。
 「ねえ兄さん」
 「梓、どうしたの?」
 困ったように頬をかくお兄さん。なんでそんなに平然としてられるんだこの人は。それともあれで困っているのかな。
 「私の友達にお兄さんと呼ばせたり、挙句の果てに春子にまでお兄さんと呼ばせたり。そんなに妹が好きなのこのシスコン」
 何その言いがかり。断わっておくが、お兄さんが頼んだわけじゃない。私が勝手に呼んでいるだけだ。だって名字だと梓と被るじゃん。名前呼ぶのは恥ずかしいし。
 お兄さんは膝をついて梓を目線を合わせた。
 「梓。僕が頼んだわけじゃないよ」
 「そーだよ梓ちゃん!私は幸一君のお姉ちゃんだよっ!」
 突っ込むハル先輩を兄妹そろってスルー。あ、ハル先輩へこんだ。
 「じゃあ今日の弁当は何なの?」
 不機嫌MAXの梓。
 「あのシスコン丸出しの弁当は何だったの?クラス中が引いてたわ」
 「梓。あれは違う」
 「言い訳するつもり?この変態シスコン」
557三つの鎖 5 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/16(月) 22:42:40 ID:DrdEP+Ae
 梓は顔を真っ赤にしてお兄さんの頬を両手ではさむ。
 「何を想像しながらあんな弁当を作ったの?私がどんな事を考えてあの弁当を食べるか分かってた?」
 「梓。落ち着いて」
 「黙れこのシスコン!あのハートは何なの?今時のバカップルでもしないわよ!」
 「梓。話を聞いて」
 「何?そんなに妹が好きなの?兄さんの分際で私が好きなの?どうなのシスコン?」
 「梓」
 「私の名前を呼ぶな変態シスコン!」
 顔を真っ赤にしてお兄さんの頭を揺らす梓。ヒートアップしすぎて汗だく。
 梓は荒い息をつき肩で息をしながらお兄さんを睨みつける。お兄さんをつかむ細い腕まで真っ赤にして。
 「何か言ったらどうなのシスコン!」
 困ったような顔をするお兄さん。クラス中が梓の剣幕に怯えている。
 その時、勇者は動いた。
 「あのー。梓ちゃん」
 耕平さんが恐る恐る声をかける。
 勇者を睨みつける大魔王梓。
 「あのさ、弁当って鮭を砕いて白米の上にハートの形にまぶしたやつやろ?」
 「耕平さんには関係ありません」
 「あの弁当って京子さんが作ったって聞いたんやけど」
 時が止まる。ザ・ワールド!
 …そして時は動き出す。
 「あのね梓ちゃん。幸一君のお弁当も鮭でハートがまぶしてあったんだ」
 ハル先輩がのんびりと言う。
 梓はお兄さんの方を向いた。
 今気がついたけど、お兄さんと梓の顔が近い。梓がお兄さんの顔を両手ではさんで揺らしていたからだ。
 梓は不機嫌そうにお兄さんを見ている。顔が真っ赤で息が荒い。興奮しすぎだ。
 「本当だよ。今日は京子さんがお弁当を詰めたんだ。僕もお弁当を開けてびっくりしたよ」
 困ったように言うお兄さん。
 梓はしばらく硬直していたが、やがてお兄さんにもたれかかる。
 「梓?大丈夫」
 受け止めるお兄さん。
 「…すぴー」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 帰り道。
 お兄さんと耕平さんと梓と私でのんびり帰っていた。ハル先輩は生徒会の用事で学校に残った。
 梓はお兄さんの背中で寝息を立てている。スカートで背負われると下着が丸見えなので、私のカーディガンを腰に巻いている。
 スカートからのぞく白くて細い太もも。怒っているときはあれだけ真っ赤だったのに。
 「しっかし幸一。気を失うぐらい梓ちゃんショックだったんだな」
 「うん。ちょっと悪いことした」
 「いやいや。おめー何も悪くないやろ?」
 のんびりボケるお兄さんに突っ込む耕平さん。息がぴったりだ。
 「いや、梓に京子さんがお弁当を詰めてくれたって伝えてなかったからさ」
 穏やかに言うお兄さん。梓は気持ちよさそうな寝息を立てる。すごく幸せそうな顔をしている。なんかちょっと腹が立つ。
 だけど、無防備な寝顔はいつもの不機嫌な顔からは想像できないぐらい幼かった。
 「こうして見ると梓ってめっちゃ可愛いですね」
 「まじでっ!っと。紳士たるもの女性の寝顔をのぞくんはあかん」
 変に男らしい耕平さん。
 「んじゃ俺バイトやから」
 そう言って離れていく耕平さん。
 控え目に手を振るお兄さん。私も手を振る。耕平さんも手を振って去って行った。
 軽く背負いなおすお兄さんの動きに梓は目を開いた。
 「あれ?起きちゃった?」
 お兄さんなんで気がつくの?梓の顔見えないでしょ?
 眠たそうな梓。
 「寝ていていいよ」
 穏やかに言うお兄さん。
 「梓、後でいいからお兄さんに謝っておきなさいよ」
 「…うん」
558三つの鎖 5 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/16(月) 22:43:59 ID:DrdEP+Ae
 私の言葉にびっくりするぐらい素直な梓。
 「兄さん」
 「何?」
 「ごめんね」
 そう言って梓は目を閉じた。心地よさそうな寝息。
 「梓もいつもこうだったらめっちゃ可愛いんですけどねー」
 そう言ってお兄さんを見て私はギョッとした。
 涙がお兄さんの頬をつたっていたのだ。
 「え、あ、その、えと」
 私はテンパってしまう。お兄さんどうしたの?
 「夏美ちゃんごめんね。みっともないとこ見せて」
 いつも通りの穏やかなお兄さんの声にさらに慌ててしまう。
 「あ、いえ、そんな、私そんな事気にしませんよ。あはははー」
 私のバカ!何があははーよ!
 沈黙。
 …無理無理!ええと、何か話題は…そうだ!
 「お兄さん!」
 「なに?」
 「妹が素直だと泣くほど嬉しいんですか?」
 私のバカ!空気読まなさ過ぎだろ!
 でもお兄さんは怒らなかった。それどころか少しほほ笑んだ。
 「うん。やっぱり嬉しいよ」
 いつものような困った笑顔とは違う。
 その笑顔を見て頬が熱くなるのを感じる。今まで見たことのない種類の笑顔だった。
 私はお兄さんの事を勘違いしていたのかもしれない。わがままな妹に振り回される情けない人と思っていた。
 でもお兄さんは。もしかしたらずっと苦しんでいるのかもしれない。
 だってお兄さんの笑顔は、まるで赦されない罪を後悔する人が、赦しを得た瞬間のように安らぎと感謝に満ちていたから。
 「えっと、あの」
 私にはお兄さんの力にはなれない。でも。
 「その、お兄さん」
 せめて涙だけでも拭いてあげたい。
 「どうしたの?」
 何でだろう。ほほ笑むお兄さんをまともに見れない。
 「あの、私、用事あるんで失礼します!」
 うつむきながら叫ぶ。私のバカ。何やってんだ。
 「夏美ちゃん」
 先輩の声が心地よく響く。初めて知った。自分の名前を呼ばれるのがこんなに心地よいなんて。
 「今日はありがとう」
 何でこの人は私にお礼をいってくれるのだろう。
 涙すら拭けない私なのに。
 「私、何もしてません」
 うつむいたままの私。
 「夏美ちゃんが梓を連れてきてくれたから」
 違うんです。
 「本当に感謝してる」
 そんなつもりはなかったんです。
 「それじゃあ。さよなら」
 お兄さんが今どんな顔をしているのか知りたい。
 だけど恥ずかしくて見れない。
 「あの!」
 やっと顔をあげたとき、お兄さんはそばにいなかった。
 私は何を聞こうとしたのか。
 分からない。
 見渡すと人ごみの中のお兄さんが見えた。
 人ごみの中でもお身長の高いお兄さんはすぐに分かる。
 お兄さんの背中にいる梓が羨ましかった。
559三つの鎖 5 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/16(月) 22:47:57 ID:DrdEP+Ae
投下終わりです

読んでくれた方に感謝します

皆様の感想を読んで笑ってしまいました

確かにこの妹強すぎです

「僕の妹はかつて特殊部隊で格闘技の教官だった」とか「かつて妹は地下のアリーナで死闘を繰り広げた経験を持つ」とかが違和感無く浮かびます

リアルにバ○より強そうです。

これも僕の力量不足が原因です。どうかご容赦ください。

皆様の感想が創作(妄想)意欲にもなります。遠慮のない感想をお願いします。
560名無しさん@ピンキー:2009/11/17(火) 00:07:04 ID:XpIyOKcs
じゃあ遠慮のない感想をば。

続きが楽しみですGJ!まってます!うおー!!
妹ちゃんかわいいいい!
561名無しさん@ピンキー:2009/11/17(火) 02:06:19 ID:Hwl2TKK7
>>559
遠慮のない意見とか書いたら、書く気が失せるぐらいめったんめったんに叩かれるよ〜?
562名無しさん@ピンキー:2009/11/17(火) 02:16:26 ID:LtwZCb2M
称賛も同じくらいあるだろうけどねw
563名無しさん@ピンキー:2009/11/17(火) 06:13:54 ID:TOtcQp8q
キモ成分が全然足らない駄作
564名無しさん@ピンキー:2009/11/17(火) 08:40:15 ID:tbzswZ6H
本当に遠慮なく感想なんか書いたら荒れるだけだけどそれでも良いの? メタクソに書くよ?
565名無しさん@ピンキー:2009/11/17(火) 08:55:27 ID:BKhlmtcm
キモウトがその友人(自分の事を好きらしい)を焼き殺して、
炭化した死体が目の前で崩れるという鬱な夢で目が覚めた

とりあえずアレだ
投下された作品を扱き下ろしまくって職人が投下しにくい空気を作って新作を枯渇させ、
スレの衰退を狙っているらしい輩が複数のスレで見受けられるからな…

俺としては必ずしも料理に自分の体組織混入とか兄or弟の臭いクンカクンカとかしなきゃいけないわけじゃないと思うのだけれど
566名無しさん@ピンキー:2009/11/17(火) 10:36:00 ID:H2Rad4cV
>>545
キモウトスレを読んでいる兄を心配して(怖れて)
何か対策や相談を考えるのかもしれないぞw
567低スペックキモ姉:2009/11/17(火) 11:52:13 ID:qXOTRYws
『ふんふ〜ん♪よし。』

「何『ふんふ〜ん♪』とか言っちゃってんの?キモ過ぎるんですけどぉ〜」

『いやいや、まぁ聞きたまへよ。ふふふふ……実はクラスの女子から一緒に買い物に行こうと誘われたのだ!!!』

「えっ!?………そそそっ、そんなのどどどっ、どうせ荷物持ち係とかそんなやつでしょ!?」
『何を言うか、愚姉様よ。一昨日放課後呼び出されて、それでその子が夕日に負けないくらいに顔を真っ赤にして俺にお誘い
をしてきたんできたんだぜ。もう完全にデートだろうがっ!!!遂に俺にも春キタ━━(゚∀゚)━━!!』

弟くんが……デート……?しかも私以外の誰とも知らない女となんて……。確かに弟くん、女の子に好かれそうな顔立ちだも
んね……。でもでもそんな急にデートだなんて。…………嫌、だよ……。弟くんが他の女に盗られるなんて絶対嫌……。だっ
て、弟くんが生まれた時からずっと二人一緒だったのに……、嫌だよぉ……グスン

「ふっ、ふ〜ん!あっそ!!!でもあんたなんて顔立ちはかっこよくて、背もすらっとしてるし、時折見せる可愛らしい仕種
なんかキュンってしちゃうけど、性格なんて女々しくて、オタクで、童貞のヘタレ男なんだからねっ!!!そんなだからどう
せ帰ってきたら私に『うわ〜んフラれちゃったよ〜お姉ちゃん〜こんなかわいそうな僕を慰めてくれ〜』とか泣き付いてくる
に決まってるんだからねっ!!!勘違いしないでよねっ!!!……ふんっ!!」



はぁ………。あんな風に強がってはみたけど、やっぱり、嫌……だな…………そうだ!!!!弟くんを尾行してデートの邪魔
してやろう!!!………うん、そうすればまた私だけの優しくてお姉ちゃん思いの弟くんに戻ってくれるに違いないんだからっ!!!



〜数時間後、駅ビル内デパート〜

アナウンス「お客様のお呼び出しを致します。〇〇区からお越しの三枝様、〇〇区からお越しの三枝様。お姉様が四階迷子センター
にてお待ちでございます。至急お越し下さいませ。」



「ああああんたの事尾行してたらまままっ、迷子になっちゃったとか……そういうんじゃないんだからねっ!!!絶対違うん
だからねっ!!!???……グスン……うぅ……寂しかったよぉ〜グスッ」



たまにはスペックの低いキモ姉もかわいい
568名無しさん@ピンキー:2009/11/17(火) 12:03:51 ID:Mc5eWcpl
すごくいいとおもいます
569名無しさん@ピンキー:2009/11/17(火) 14:54:12 ID:J2mmJ0Yt
>>559GJ!
ピクルみたいな妹欲しい^^v
570未来のあなたへ11.5前編:2009/11/17(火) 15:10:54 ID:+z6b1JDi
>>569
烈だろjk

妹「兄さん……あんた、ほんっとうに優しいんだな」
兄「(かああ〜〜)……早く食うんだっ」

あれ?
571名無しさん@ピンキー:2009/11/17(火) 16:06:18 ID:BKhlmtcm
名前残ってんぞ
572名無しさん@ピンキー:2009/11/17(火) 16:12:04 ID:+z6b1JDi
>>571
ぎゃああ!ごめんなさい。
573名無しさん@ピンキー:2009/11/17(火) 17:06:08 ID:wvNO/f5D
ドンマイ。

スペックの低い兄弟ってどうだろうか。
たとえば
学力…ヤバい
体力…貧弱
色仕掛け耐性…低い
容姿…平均的なサイズ。モブキャラ的
       
574名無しさん@ピンキー:2009/11/17(火) 17:13:00 ID:W1bbK6EG
ここぞでも働かないのび太くん
575名無しさん@ピンキー:2009/11/17(火) 17:17:49 ID:Kb2Aj7eP
>>569
俺は勇次郎みたいな妹がほしい

妹「邪ッ!チェリャァア!」
576名無しさん@ピンキー:2009/11/17(火) 18:10:03 ID:tfgqvZmB
>>573
容姿が平均って、それは並であって低くないだろ。
577名無しさん@ピンキー:2009/11/17(火) 18:36:03 ID:gFQH3nOD
容姿=ドンマイ
成績=中の下
でも柔道だけは誰にも負けんですたい!なキモ妹。
578名無しさん@ピンキー:2009/11/17(火) 19:57:17 ID:/D76NRlL
>>559
GJ!
ただ、弁当のキモいのくだりは可哀想過ぎて泣きそうになったから
他のクラスメイト達の誤解もちゃんと解いてあげて下さいw

>>567
これ(・∀・)イイ!
579名無しさん@ピンキー:2009/11/17(火) 19:58:31 ID:6uSM3JcK
>>577
なんかアルソックのCMに出てくる奴が脳裏によぎった
580名無しさん@ピンキー:2009/11/17(火) 20:27:22 ID:2MU0zAI5
バキみたいな妹だとすごそう
581名無しさん@ピンキー:2009/11/17(火) 20:50:27 ID:OqsEGgw3
親父に叩きのめされたりママンに慰めてもらったり腹違いの兄がステロイドジャンキーだったりするのか
582名無しさん@ピンキー:2009/11/17(火) 21:07:10 ID:2MU0zAI5
>>581
嫌過ぎるwww

>>559
ていうかこの兄に死亡フラグがたってないか?

妹→バキ並み
妹の友達→妹の兄に恋愛フラグ
583名無しさん@ピンキー:2009/11/17(火) 21:25:43 ID:sCqdkjC7
>>581
いいえ。腹違いの姉が弟ジャンキーです
584名無しさん@ピンキー:2009/11/17(火) 23:02:39 ID:wvNO/f5D
何かが駄目な妹
成績、ヤバすぎる。進学の危機
容姿、モブ的存在。メガネっ娘
特技、狙撃、あやとり。
特記事項 兄の風呂によく乱入。
依存癖あり。口癖は「お兄ちゃ〜ん何とかしてよ〜」
どう考えてもの●太です…。
 
585転生恋生 ◆.mKflUwGZk :2009/11/17(火) 23:40:16 ID:BI5fNDPp
規制が解除されたので投下します。
586転生恋生 第十六幕(1/4) ◆.mKflUwGZk :2009/11/17(火) 23:41:21 ID:BI5fNDPp
 せっかくの連休だというのに、俺たち姉弟は入れ替わりで風邪を引いて寝込んでしまった。
 さしあたり、俺は姉貴をバスタオルでぐるぐる巻きにした上で担ぎ上げ、姉貴の部屋のベッドに寝かせた。
 本来ならパジャマを着させるべきなのだろうが、手足を持ち上げて袖やら裾やらを通すのは口で言うほど簡単なことではないので断念した。
 それ以前に姉貴は真っ裸だから、下着を穿かせないといけない。そのハードルは高すぎた。
 姉貴の発熱はかなりのもので、言葉にならないうわ言が口から漏れてくる。こうなるとキモ姉といえども哀れなものだ。
 まあ、俺が一昼夜あまり寝込んだ程度で治ったのは、姉貴の変態的もとい献身的な看護あってのことだから、俺もそれなりのことはしてやらないわけにもいかない。
 ……肉布団はごめんだけどな。
 台所から氷枕を持って来て当ててやると、俺の腹が鳴った。一昨日の晩からまともな食事を食っていないことを思い出す。
 手っ取り早くトーストを焼いて腹ごしらえをしてから、俺は姉貴の部屋に戻った。姉貴は熱にうなされている。
「姉貴、何かしてほしいことはあるか?」
 聴こえているのかどうかわからないが、とりあえず訊いてみる。姉貴の口が動いたが、よく聴こえない。
 口元に耳を寄せてみると、「だんなさま……だんなさま……」と微かな声が聴こえた。
 てっきり「たろーちゃん」と俺のことを呼んでいるのかと思ったから、これは予想外だった。
 だんなさまって誰だ? 例の男のことか? 自分のことを旦那様と呼ばせるなんて、どういう男だったんだろう。
 これ以上してあげられることもなさそうだったから、俺は部屋の電気を消して、自室に戻った。
 
 朝食に続いてパンで昼食を済ませた後、親父が我が家のベルを鳴らした。単身赴任先から帰ってきたのだ。
 お袋の入院中に戻ってこないような薄情なことをしたら熟年離婚になるぞ、と脅したのが効いたらしい。明日の退院に立ち会えるように、今日帰ってきたというわけだ。
 親父は姉貴が風邪で寝込んでいると知ると顔を曇らせて姉貴の見舞いに行った。やっぱり男親は娘の方がかわいいらしい。まあ、姉貴の方がスペック高いしな。
 姉貴の部屋から出てきた親父は、俺に姉貴の汗を拭いてやるように命令した。高熱で汗の量が凄いらしい。
「親父がやってやれば?」
「そんなことしたら、あとで仁恵に口をきいてもらえなくなるだろう。年頃の娘だからな」
「弟ならいいってもんじゃないだろ」
「命令だ」
 しかたがないので、言われたとおりにするべく姉貴の部屋に入った。確かに姉貴はうんうんうなりながら、苦しそうにしている。
 かけぶとんをはがして、体に巻きついたバスタオルを外したが、汗でぐっしょりだった。絞れるんじゃないかというくらいだ。氷枕もぬるいを通り越して温かくなっている。
 ……これ、かなり深刻な症状じゃないか? 下手すると入院かもしれない。ただ、発熱だけで咳はないんだよな。俺もそうだったし、一晩眠れば治るか?
 とりあえず様子を見ることにして、俺は姉貴の体をおしぼりで拭いてやった。
 顔・首筋・胸・腹・足と一通り拭いてから、うつぶせにさせて背中を同じように拭く。見慣れているから何とも思わないが、本当にわが姉ながらきれいな体だ。
 外面だけじゃなくて内面も文武両道家事万能と揃っているから、客観的には理想の女なんだよな。変態でさえなければ。
 姉貴ならどんな男でもよりどりみどりだから、女の幸せをすぐに手に入れられるはずなのに、どうしてよりによって俺を選ぼうとするんだ。
 それとも、ひょっとして血がつながってないとかいうことはないか? それなら考えなくも……
 いやいや! 何を考えているんだ、俺は! 正真正銘の姉弟なんだ。許されるはずがない。
 さっさと用事を済ませよう。バスタオルを巻きつけて、ふとんをかぶせて、氷枕を当ててやる。
 立ち去ろうとしたとき、姉貴が無意識に俺の手をつかんだ。ちょっとためらったが、俺はその手を振り解いて部屋を出た。
587転生恋生 第十六幕(2/4) ◆.mKflUwGZk :2009/11/17(火) 23:42:14 ID:BI5fNDPp
 リビングへ入ると、親父が缶ビール片手にくつろいでいた。まだ昼間なんだけどな。まあ、堅苦しいことは言うまい。
「ちゃんと汗を拭いてやったか?」
「ああ。今は寝てるよ。それより」
 俺は気を取り直して、親父に姉貴が学校の進路調査で「結婚」と書き、学校側が俺を呼び出して事情聴取をしたことを打明けた。
 仮にも家長なんだから、はっきりと姉貴を諭してくれるだろう。姉貴にまっとうな人生を送らせるにはこれしかない。
 一部始終を聞いた親父は、姉貴の担任(名前は忘れた)と同じ質問をした。
「仁恵には結婚の約束をした相手はいるのか?」
「いないと思う」
「それじゃあ、結婚のしようがないだろう」
「そうなんだけど、姉貴が結婚するつもりでいる相手は俺なんだ」
 たちまち親父が険しい目つきで俺を睨みつけるので、俺は慌てて弁明した。
「いや! 俺にはそのつもりはないから! そんな事実もない! 姉貴が勝手にバカなことをほざいているだけだから!」
 親父は缶ビールを一気に呷ると、2本目を開けた。
「お前も飲むか?」
「俺、未成年だぞ」
「そうか」
 親父はそれ以上無理に勧めなかった。ちょっと惜しい気もする。せっかく親公認で酒を飲める機会をふいにしてしまった。
「念のために確認しておくが、少なくともおまえの方には近親相姦願望はないんだな?」
「あたりまえだ!」
 俺は思わず声を荒げた。親に変態と思われたんじゃ、立つ瀬がない。
「誤って一線を越えたとかいうことはないな?」
「ないっ!」
 寝ている間にフェラチオでイかされたことなんてノーカウントだ。
 親父は暫く天井を見上げていたが、やがて俺に向き直った。
「仁恵は小さい頃、よく父さんと母さんに向かって、自分と太郎が恋人同士の生まれ変わりだと言っていた。今でもそんな話をしているのか?」
「毎日だよ」
 どうやら親の前では口にしない程度の良識はあるようだ。小ざかしいというべきかもしれないが。
「仁恵はなぁ」
 親父は昔話を始めた。
「おまえが生まれる前は母さんにべったりだったんだ。母さんがおまえを妊娠すると、自分にあまりかまってもらえなくて癇癪を起こしたりもしていた」
 よくある話だ。幼児は弟や妹ができると、親が自分に関心を失うのを恐れて、わざと気を引こうとするらしい。保健の時間に聞いた。
「それが、おまえが生まれて、初めて対面したときから、おまえにぴったりくっついて離れなくなった。自分も赤ちゃんみたいなものなのに、姉の自覚がすぐに備わったんだと大人たちは感心した」
 俺と姉貴は学年は1つ違いだが、誕生日は俺が3月で姉貴が4月だから、実質的に2歳の年齢差がある。それでも早すぎるな。
「言葉が話せるようになるのと同時に、おまえに向かって『愛してる』なんて話しかけるもんだから、おませさんだと笑ったもんだ」
 いや、不気味だろ。
「しかし、生まれ変わり云々の話をするようになると、さすがに気味悪くなってな。『そんな話を他人にしてはいけない』と言い聞かせた。素直に言うことを聞いたと思ってたんだが」
 俺にはその話をし続けている。
588転生恋生 第十六幕(3/4) ◆.mKflUwGZk :2009/11/17(火) 23:43:03 ID:BI5fNDPp
「で、実際のところどういう話なんだ? おまえは具体的に、前世の話がどうだとか聞かされているのか?」
「姉貴の話によると、俺と姉貴は千年前に恋人同士だったが、悪いやつらのせいでふたりとも命を落としたということらしい」
「ふうむ」
 親父はビールを咽喉に流してから、大きく息をついた。
「おまえは生まれ変わりが本当にあると思うか?」
「そんなことあるわけないだろ」
「実を言うとな、父さんは学生の頃オカルトサークルに所属していて、生まれ変わりの事例を熱心に集めていたことがある」
 初耳だ。親父にそんな趣味があったとは。
「多くの事例を研究して、ある種の結論にたどりついた。それを説明するために、ある生まれ変わりの話を聞かせてやろう」
 そんな前置きをして親父が話してくれたのは、19世紀のアメリカで起きた話だった。
 ある男の子が、突然自分の前世の話を始めた。なんでも自分は妻がいながら若い娘と恋に落ち、邪魔になった妻を毒殺したが、事が露見して絞首刑になったという。
 周囲の大人たちは初め笑って取り合わなかったが、あまりにリアルな話なので次第に気味悪く思い、男の子にそんな話はするなと叱りつけたが、その男の子は生まれ変わりの話を止めなかった。
 そんなある日、隣の州から来た親戚が男の子の話を聞いて顔色を変えた。その男の子の話とそっくり同じ事件が、親戚の住んでいた町であったのだ。
 驚いた両親が詳しく問い質すと、男の子が生まれる5年程前の事件で、処刑された男は30代半ばだった。
 男の子を呼んで聞いてみると、自分はまさにその男の生まれ変わりだと言い張った。そこで両親は思い切って息子を連れて親戚の住む町に行き、墓地を訪れた。
 墓地に足を踏み入れた途端、男の子は聞きなれない女の名前を叫びながら憑かれたように墓石の間をさまよいだし、ある墓石の前にたどりつくと、謝罪の言葉を絶叫して気絶した。
 その墓石に刻まれていたのは、処刑された男に毒殺された妻の名だった。
「男の子は命に別状はなかった。意識を取り戻すと、すぐに元気になった。しかも、生まれ変わりのことは二度と口にしなくなった。というより、忘れてしまったらしいということだ」
 親父は一気に話し終えると、缶に入っていた残りのビールを一気に飲み干した。
 俺はというと、体感温度が低くなるのを感じた。こういう話はどうも苦手だ。
「さて、この話には後日談というか、種明かしがある」
「種明かし?」
「実は、妻を毒殺した男の話は、事件当時大ニュースだった。当時のアメリカの田舎町はわりと平和だったから、殺人事件なんてのは5年くらい酒の話題になったらしい」
 ……ということは?
「男の子の両親はすっかり忘れていたが、母親が妊娠していた当時、同じ親戚が見舞いに来て、その話を熱心にしたらしい。男の子は母親のお腹の中でその話を聞いていたわけだ」
「それを覚えていたってのか?」
「ありえない話じゃない。胎児の脳をバカにしちゃいけないぞ。胎教なんてのがあるんだから」
「でも、音楽とゴシップ話じゃ、程度が違うだろ」
「仮説ではあるが、それで説明できる。男の子は胎児のときに妻を毒殺した男の話を刷り込まれた。そしてどういうわけか、自分がその男で、妻に対して謝罪しなければならないと思い込まされた」
「で、念願の謝罪を果たした途端に強迫観念から解放されて、刷り込まれた話を忘れ去ったっていうのか?」
 出来過ぎた話だ。ご都合主義にもほどがある。
589転生恋生 第十六幕(4/4) ◆.mKflUwGZk :2009/11/17(火) 23:44:00 ID:BI5fNDPp
「人間の脳はまだまだわからないことで一杯なんだ。それに、他の生まれ変わりの事例にしても、本人が胎児のときに元になる話を刷り込まれた形跡があるケースが多いんだ」
「じゃあ、なんだよ。姉貴が胎児のときに、父さんと母さんが千年前に命を落とした恋人の話でもしたってことか?」
「そんな覚えはないが、その頃はまだ面白半分でオカルトの話題を口にしてたからな。ありえない話じゃない」
「それにしてもなぁ」
 ちょっと受け入れがたい話だ。姉貴の電波話が元をたどれば親父の与太話だったなんて。
「それなら、生まれ変わりの話が本当だったと受け入れるのか? 胎教説をとれば、少なくともオカルト現象なしで説明できるんだぞ」
「うーん……」
 これは痛いところを突かれた。姉貴の話を信じるか、親父の説明を受け入れるかだ。
「親父は、今では生まれ変わりを信じていないのか」
「父さんが自分で集めた事例については、全部生まれ変わりではなかったと思っている」
 なるほど、それはそれで筋の通った考え方だと思う。
 でもなぁ、姉貴の話が一筋縄じゃいかないのは、雉野先輩の話とも符合するってことなんだよ。複数の人間が同時にひとつの胎教を共有できるんだろうか? 
 もしうちのお袋と雉野先輩のお母さんが妊娠中に同じ話を聞かされていたというのであれば別だが……。
 いやまて、それよりさっきの話に重大なヒントがあった気がする。
「ところで、最初の話の男の子が生まれ変わりの話から解放されたきっかけだけど」
「ん? そんな話したっけか?」
 親父の手には3本目の缶ビールがある。頭がアルコールにやられる前に確認しないといけない。
「ほら、自分が殺した女の墓の前で謝罪したっていう話だよ」
「ああ、それがどうかしたか?」
「他の生まれ変わりの事例にもそういう条件が共通してあるのか? 謝罪か何かをすれば生まれ変わりの話を忘れてしまうのか?」
「全部とは言わないが、そういう事例は多いな。胎教の時点で、何か刷り込まれるんだろうな。強迫観念を消し去るための条件が」
 だとすれば、姉貴の場合も何かの条件をクリアすれば、生まれ変わりの話をしなくなるというわけだ。俺への執着もなくなるかもしれない。
 俺は親父の仮説を受け入れることにした。それが姉貴を救うことにもなるはずだ。
「それはそうとして、姉貴の進路はどうするよ」
「とりあえず話を合わせて、おまえの口から『大卒の女でないと嫁にしたくない』とでも言っておけ」
 親として諭す気はないのか?
「反抗期の娘を無理矢理押さえつけてもいいことはないからな。第一、娘に嫌われたくない」
 一浪して俺と同じ大学に行くと言ってるんだが、俺は大学に行ってまで姉貴につきまとわれたくないぞ。
「大学に行ってくれるんなら、一浪くらいどうってことはない。おまえが我慢すれば丸く治まるんだ」
 もう充分犠牲になっている。これ以上の犠牲となると、本気で貞操の心配をしなけりゃならない。
「最悪、妊娠さえしなければ目をつぶろう」
 ダメだ。ビールが回って顔が赤くなっていやがる。今日はもう話にならないな。

 夕方、もう一度バスタオルと氷枕を取り替えて、体を拭いてやった。
 結局、姉貴は寝込んだままで起き上がれなかった。熱もほとんど下がっていない。やっぱり葱を挿してやるべきか? でも俺にはできないな。
 親父に頼んでみたが、やっぱり「そんなことしたら後で口をきいてもらえなくなる」の一点張りだったので、断念した。
 俺と親父は出前を頼んだが、姉貴は俺が水差しで水を飲ませてやっただけだった。
 さすがに心配なので、夜は姉貴のベッドの隣に俺の布団を敷いて寝ることにした。何かあったらすぐに対応できるようにだ。
 そうしたら、夜中に寝苦しくて目が覚めた。電気をつけてみると、姉貴が熱にうなされたまま俺の布団に忍び込んで、全裸で抱きついていた。
 頭に来た俺は姉貴をバスタオルで簀巻きにしてベッドに戻すと、重石がわりに敷布団をかぶせてから自分の部屋に戻った。もう同情なんかするものか。
590転生恋生 ◆.mKflUwGZk :2009/11/17(火) 23:46:03 ID:BI5fNDPp
投下終了です。
生まれ変わりの事例が胎教云々は適当にでっち上げた与太話なので、深く突っ込まないでください。
太郎の父親はそのように考えているということです。
591名無しさん@ピンキー:2009/11/17(火) 23:48:49 ID:J2mmJ0Yt
一番槍GJ!
この時間巡回しててよかったぜ!
592名無しさん@ピンキー:2009/11/17(火) 23:56:15 ID:2MU0zAI5
二番槍GJ!
弟の現実的なツッコミが面白い
593名無しさん@ピンキー:2009/11/18(水) 01:52:59 ID:9/yvqBFq
熱にうなされながら布団に侵入する全裸姉GJ!!
594名無しさん@ピンキー:2009/11/18(水) 02:59:55 ID:z8ZBrFye
GJ
ずっと姉のターン!
595名無しさん@ピンキー:2009/11/18(水) 04:49:33 ID:fQg9u7UA
親父かがセクロス許可だしとる…。
596名無しさん@ピンキー:2009/11/18(水) 17:21:21 ID:/SdUYChc
親父っテメー保し…機嫌取りに走りやがったな!
ねーちんに葱を突き立てたその時が何かの終わりだ。
GJ
597名無しさん@ピンキー:2009/11/18(水) 20:58:14 ID:Ry4YXHqx
ここは親父GJとしか言えない
弟には失礼だがwGJ
598名無しさん@ピンキー:2009/11/19(木) 07:54:30 ID:dCCjT1Ze
今まで転生読んでなかったが今回の見て最初から読み直した

続きを楽しみにしているGJ
599名無しさん@ピンキー:2009/11/19(木) 17:38:02 ID:GaoQ75yP
規制解除をこのスレで知った俺は一体……

親父GJ
600三つの鎖 6 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/19(木) 23:41:53 ID:FfJ/mHzL
親父がGJすぎです。
上の方すいません。続きを投下します。

注意
エロは(まだ)ないです
601三つの鎖 6 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/19(木) 23:44:14 ID:FfJ/mHzL
 昨日、わたくし加原梓の一日は慌ただしかった。
 色々ありすぎて目が回る日々だった。

 お昼の弁当はすごくうれしかった。
 私はああいうバカップル的なシチュエーションに弱い。いや、憧れている。
 お弁当に鮭の身でハートが描かれていた時は本当に興奮した。
 私は騒ぐクラスメイトを放置して、一人屋上で弁当を味わった。至福の時だった。
 もちろん食べる前に携帯で写真を撮った。ばれないようにロックつきのフォルダにしまった。
 予想外の事に私は浮かれていた。まさか兄さんがこんな弁当を用意するなど夢にも思わなかったのだ。ここ数年、ずっと冷たく接しているのに、
 午後の授業もそのことを思い出しては幸せに浸っていた。
 だから夏美が兄さんに弁当の事を問い詰めに行こうと言っても、問い詰める気は全くなかった。
 ただ、兄さんが何を考えてあんな事をしてくれたのか知りたいとは思った。ついでにこの件を利用して兄さんがシスコンという評価を固めるのも悪くないかと思った。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 兄さんのクラスに着いたとき私は上機嫌だった。私は意外とめでたい人間かもしれない。兄さんの作ってくれた弁当にハートのマークがあるだけで幸せに浸れるのだから。
 だが春子が兄さんに抱きつくのを見て一気に不機嫌になった。兄さんが照れているのも気に食わなかった。
 私の兄さんにふれるな。
 喉まででかけたその言葉を私はぐっと飲み込んだ。
 だいたい兄さんも兄さんだ。私が触れても顔色一つ変えないくせに。毎朝起こしに来るとき私の下着姿を見ているじゃない。家で薄着姿の私の姿も見ている。なのに春子がくっつくだけで何であんなに赤くなるのよ。
 その時の私の表情は夏美と耕平さんが後ずさるほどの危険な表情だったようだ。
 私に気がついた兄さんがのんびりしているのも腹が立った。何が「梓。どうしたの?」よ!
 春子が私に抱きついて頬ずりしてきてもうっとおしいだけだった。春子の腕に抱きしめられ、春子の胸が私にふれる。腹立たしいことに柔らかくて気持ちよかった。
 兄さん。春子の胸にデレデレしてたんだ。本当に腹が立つ。
 私は春子を突き飛ばして兄さんの前に仁王立ちになった。もちろん兄さんの方が大きいので下から睨めつける形だ。
 「私の友達にお兄さんと呼ばせたり、挙句の果てに春子にまでお兄さんと呼ばせたり。そんなに妹が好きなのこのシスコン」
 自分でもとんでもない言いがかりだ。
 兄さんは膝をついて私と目線を合わせた。その動作が私を子供扱いしているようで余計に腹が立った。
 「梓。僕が頼んだわけじゃないよ」
 「そーだよ梓ちゃん!私は幸一君のお姉ちゃんだよっ!」
 うるさい。春子は無視だ。
 「じゃあ今日の弁当は何なの?」
 私は不機嫌そうに尋ねた。実際不機嫌だった。ちょっと前まであれだけ上機嫌だったのに。
 「あのシスコン丸出しの弁当は何だったの?クラス中が引いてたわ」
 私は嬉しかった。
 「梓。あれは違う」
 「言い訳するつもり?この変態シスコン」
 私は兄さんの頬を両手ではさみ揺らす。自分で理由を尋ねて言い訳するなと言う。どれだけひねくれているんだ私。
 「何を想像しながらあんな弁当を作ったの?私がどんな事を考えてあの弁当を食べるか分かってた?」
 分かる兄さん?あの弁当を食べてる間私は至福の時を過ごした。妹としてでも、兄さんが私を好きな証だと思った。
 「梓。落ち着いて」
 兄さんの困った顔が目の前にある。兄さんの顔が近い。
 「黙れこのシスコン!あのハートは何なの?今時のバカップルでもしないわよ!」
 嬉しかった。ハートに兄さんの愛があると思った。
 「梓。話を聞いて」
 兄さんが私に懇願する。だめだ。濡れそう。
 「何?そんなに妹が好きなの?兄さんの分際で私が好きなの?どうなのシスコン?」
 違う。妹の分際で私が兄さんを好きなのだ。
 「梓」
 「私の名前を呼ぶな変態シスコン!」
 もっと私の名前を呼んで。
 ぶつけた罵倒はそのまま私に帰ってきた。奇妙な興奮を感じた。
 兄さんの悲しそうな困った顔がさらに私を興奮させた。
 体が熱い。兄さんを罵倒するのも興奮する。私の両手が兄さんの顔にふれている。気持ちいい。
 兄さんの顔が近い。唇に目が行く。
 キスしたい。キスしてほしい。
 「あのー。梓ちゃん」
 耕平さんの声が聞こえる。
 「あのさ、弁当って鮭を砕いて白米の上にハートの形にまぶしたやつやろ?」
 「耕平さんには関係ありません」
602三つの鎖 6 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/19(木) 23:46:50 ID:FfJ/mHzL
 邪魔をするな。
 兄さんの唇。柔らかそう。
 体が熱い。兄さんの唇を見るだけで興奮する。
 ふれたい。ふれて欲しい。
 「あの弁当って京子さんが作ったって聞いんやけど」
 耕平さんが何か言っている。今更そんなことどうでもいい。
 兄さんが困ったように私を見る。可愛い。
 「あのね梓ちゃん。幸一君のお弁当も鮭でハートがまぶしてあったんだ」
 兄さん。もっと私を見て。
 「本当だよ。今日は京子さんがお弁当を詰めたんだ。僕もお弁当を開けてびっくりしたよ」
 だからもうそんな事はどうでもいい。
 兄さん好き。愛してる。
 興奮しすぎて頭がくらくらする。
 柔らかそうな兄さんの唇。
 もういいや。兄さんの唇が欲しい。
 兄さんの唇に顔を近づける。だけど力が入らなかった。
 そのまま兄さんに倒れこむ私。
 兄さんは私を抱きしめて受けとめてくれた。
 私は兄さんの腕の中で意識を失った。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 気がついた時誰かに背負われていた。
 すぐに兄さんの背中だと気がつく。広くて温かい兄さんの背中。
 珍しく興奮よりも心地よさを感じた。まるで昔の私たちのようだった。
 「あれ?起きちゃった?」
 優しい兄さん声。
 「寝ていていいよ」
 「梓、後でいいからお兄さんに謝っておきなさいよ」
 夏美の声。
 「…うん」
 私は素直に答えた。
 兄さんの背中が心地よい。ずっとこのままでいたい。
 優しい私の兄さん。勘違いしたままの兄さんに私はいつもひどい事をしている。それでも兄さんは私のそばにいてくれる。
 「兄さん」
 「何?」
 「ごめんね」
 だましてごめん。好きになってごめん。妹なのに愛してごめん。
 それでも諦めなくてごめん。
 兄さんの髪に顔をうずめる。兄さんの匂い。
 不思議な気持ちだった。何も知らずに兄さんの事が好きだった、子供の頃に戻った気分だ。
 私は兄さんの背中で眠った。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 目が覚めたとき、私は家のベッドで寝ていた。
 時計を見ると、もう遅い。両親が帰ってきているかもしれない時間だ。
 ベッドを下り部屋を見渡す。きれいに掃除され私の制服が丁寧に畳まれている。私は寝間着に着換えさせられていた。
 着替えた記憶がないから兄さんが着替えさせてくれたのだろうか。
 体が熱くなる。兄さんが私の制服を脱がしパジャマに着替えさせているのを想像するとそれだけで濡れてきそうだ。
 私は深呼吸した。熱い吐息を吐く。きっと弁当みたいに京子さんだろう。あの兄さんが私を脱がす根性があるとは思えない。
 お腹が減った。兄さんなら料理を作ってくれているはずだ。私は起き上がり、一階に下りた。
 「あら。起きたの」
 京子さんがリビングでのんびりとお茶を飲んでいた。
 「お母さん。お腹減った」
 「はいはい。幸一君の料理があるから待ってね。温めるから」
 京子さんは笑って立ち上がった。思わず京子さんの胸に視線がいく。春子と同じかそれ以上。
 今日の兄さんは思い出す。春子に抱きつかれて恥ずかしがっていた兄さん。腹が立つ。
 「梓ちゃん。どうしたの?乙女がしちゃいけない表情をしているわよ」
 にやにや笑う京子さん。この人は全部お見通しなんだろうな。血こそつながってないけど、私が物心ついた時から面倒を見てくれたから。
603三つの鎖 6 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/19(木) 23:50:33 ID:FfJ/mHzL
 子供の時から私は疑問に思っていた。京子さんは私の気持ちに気が付いているのだろうか。私が兄さんにゆるされない気持ちを抱いていることを。
 京子さんなら気がついてもおかしくない。それなのに何も言わないという事は、やはり気がついていないのだろうか。もし気がつかれたのなら、私は兄さんと引きはがされるはずだ。
 「どうしたの?そんなに私の胸が気になる?」
 京子さんはにやにや笑いながら私の胸を見た。ちょっとムッときた。私は別に胸の大きさなど気にしない。本当だ。意識したこともないぐらいだ。女の価値は胸なんかでは決まらない。まったく。
 ふと思う。私を生んでくれた人は胸が大きかったのだろうか。
 「お母さん。怒らないで聞いてね」
 「なあに?」
 「私を生んでくれた人って胸大きかった?」
 京子さんは複雑そうな顔をした。この家で私と兄さんを生んでくれた人の話題は無い。お父さんと京子さんは話さないし、私と兄さんも聞かない。
 私も生んでくれた母の事は興味ない。私にとってお母さんと言えば京子さんの事だからだ。ただ、胸がどうだったかはほんの少し気になる。
 「そうね」
 京子さんはにっこり笑った。
 「私と同じぐらい大きかったわよ」
 思わず京子さんの胸を凝視してしまった。
 「だから梓ちゃんにも将来性は十分よ」
 そうなのかな。将来性は十分なんだ。よしっ。ていうか私は何を聞いているんだ。
 「お母さん」
 「なあに」
 「変な事を聞いてごめんね」
 京子さんはにっこり笑った。いつもの笑顔だった。
 とりあえず牛乳の摂取は続けようと思った。
 「あとで幸一君に感謝しときなさいよ。梓ちゃんを背負ってベッドまで運んでくれたんだから」
 「お母さんには礼を言うわ。私を着替えさせてくれてありがとう」
 京子さんは笑った。いや、にやにやしている。
 「なによ」
 「梓ちゃんを着換えさせたのは幸一君よ」
 …え?
 「いやね、私今日はお仕事早く終わって帰ったら梓ちゃんを背負った幸一君とばったり会ったのよ」
 言葉が頭に入らない。
 「幸一君が私に頼むのよ。梓を着替えさせてほしいって。制服がしわになるし風邪をひくって」
 京子さんは楽しそうに話した。
 「もちろん私は言ったわよ。お兄ちゃんなんだからそれぐらいしなさいって」
 耐えきれないというように京子さんは腹を抱えた。
 「幸一君たら必死に抵抗するのよ。年頃の妹にそんな事できないって。ま、無理やり幸一君にやらせたけどね」
 あの兄さんが私の制服を脱がせてパジャマに着換えさせた。
 意味を理解した途端、頭が爆発しそうになった。体中が熱い。恥ずかしさに叫びたくなる。
 「……兄さんはどんな風に私を脱がせたの」
 京子さんはにやにやと私を見た。
 「面白かったわよ。顔を真っ赤にして恥ずかしそうに梓の服を脱がせるのよ」
 あの兄さんが私を脱がせて恥ずかしがった。
 そうなんだ。兄さん私の体を見て恥ずかしがってくれたんだ。
 私は嬉しかった。兄さんは私を女をとして見てくれたんだ。
 「恥ずかしいって聞いたらね、いいえって消えそうな声で言うのよ。すっごく可愛かった」
 真っ赤になった兄さんを想像して鼻血が出そうになった。いけない。
 「ご飯が出来たら呼んで!」
 私は京子さんに背を向けた。部屋で落ち着こう。
 「幸一君もう寝てるから起しちゃだめよ」
 京子さんの声を聞きながら私は二階に上った。
 兄さんの部屋の前で立ち止まる。ドアをゆっくり開けると中はすでに暗かった。兄さんの静かな寝息がかすかに聞こえる。
 部屋に入りドアを閉める。私は兄さんのベッドに近づき顔をのぞいた。
 兄さんは少し疲れたように寝ていた。寝顔が可愛い。
 私は兄さんの手を握った。ひんやりと冷たい兄さんの手。
 この手が私の服を脱がしたんだ。
 そう思うだけで興奮する。私は本当に馬鹿だ。何で起きなかったのか。そして寝た振りをすれば恥ずかしがりながら私にふれる兄さんを見れたしその手を感じれた。なんてもったいない。
 私は兄さんの頬にキスした。ちょっと兄さんの頬を舐めた。兄さんの味がした。
 いけない。今の私は完璧に変態だ。でもいいや。
 私は何度も兄さんにキスした。ついでにちょっと舐めた。
 京子さんが私を呼ぶ。兄さんの作った晩御飯が温まったのだろう。
 私は上機嫌で兄さんの部屋を出た。今日の締めくくりは兄さんの手料理だ。
 今日は実りある一日だった。
604三つの鎖 6 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/19(木) 23:54:39 ID:FfJ/mHzL
投下終わりです
読んでくれた方に感謝申し上げます
読み返すと妹より母親がキモイです
キモウトを書くのは難しいです
605名無しさん@ピンキー:2009/11/20(金) 00:05:10 ID:AyMZAJDY
>>604
確かに気付いてそうで何も言わないのは伏線なのかただキモいだけなのかw
っていうか規制解除されてやっと感想言えるわー 更新乙です、次も期待
妹のキモぷりがたまらなくいいです
606名無しさん@ピンキー:2009/11/20(金) 00:08:42 ID:tFp1sHKi
キモさも秘すれば花なりき…結構なお点前です。
会話ではお母さんなのに、地の文では京子さんというのが
ちょっと印象に残りました。
607名無しさん@ピンキー:2009/11/20(金) 02:11:40 ID:ruYlkB/T
梓かわいいいいいいい
お弁当は残念だったねw
608名無しさん@ピンキー:2009/11/20(金) 02:26:43 ID:iHKtccsH
母親公認かいな…。
609名無しさん@ピンキー:2009/11/20(金) 08:05:06 ID:2ARwlKj+
gj
やっぱ梓かわいい
610未来のあなたへ12:2009/11/20(金) 14:46:15 ID:rJNNsrGt
遅くなりましたが投下します。
第二部に入り新キャラでテコ入れしようと思ったけど失敗した的な話
611未来のあなたへ12:2009/11/20(金) 14:46:54 ID:rJNNsrGt
じりりりりりん、じりりりりりん、と何かが耳元でけたたましく喚いている。
なにかというか、ぼくらの仇敵目覚まし君だ。ぬくぬくとした布団から人間様を追い出そうとする天敵。寝起きの悪いあたしは、携帯のタイマーではなく実物のベルを叩く目覚まし時計を使っていた。ものすごくうるさいものを選んだ。
ものすごくうるさいので手を伸ばして止め、丁寧に後ろの電源スイッチを切ってそこらに放り捨てる。よしこれで寝れる、ただいまお布団、ぐう。
それからまた、しばらくして
眠気にぼんやりと身を任せていると、ゆさゆさと体が揺すぶられた。無視。ゆさゆさ、ゆさゆさ、ゆさゆさ、ゆさゆさ。
「香奈枝さん、香奈枝さん。おーい、朝だよ。朝だよ。遅刻するよ、もうご飯できてるよ」
ぐう。
「ああもう。俺はもうご飯食べ終わってるのに……ほら、布団取るからね。よいしょっと」
がばー、と布団を引っ張られるのに、あたしは抵抗すべく必死でしがみついた。例えるならそれは赤ん坊が母親を求めるように。
結果としてあたしの体は布団ごと引きずり出され、床に落ちた。どすん。ぐへっ。
「うわっ、ご、ごめん香奈枝さん。大丈夫?」
「おーはーよーうー、この恨み晴らさずでおくべきかー!」
「ひいいっ!」
がばりと布団を被ったまま、あたしを起こした男の子を驚かせる。素直に悲鳴を上げて逃げ出す健太君。いいカモだ。
床に叩き落とされたせいで愛すべき睡眠欲は背中の痛みに紛れてどこかに飛んでいってしまった。ああ、さよなら安眠また今夜。
頭を切り換えてさっと制服に着替えて、身だしなみを整える。床に転がった時計を拾うと、なるほど確かに時間がやばい。部屋に戻る暇はないので鞄と櫛を持って一階に向かう。
食卓では叔母さんが一人でもそもそと朝ごはんを食べていた。元気よく挨拶。
「おっはよーございまーす」
「ああうん……おはよう、香奈枝ちゃん……」
眠気でぼけた声が返ってくる。前に聞いたところによるとこれでも二度寝後らしい。あたし以上に惰眠を愛する人だった。
時間もないし、急いで朝食をかきこむ。ごはんと焼き魚を口の中に詰め込んで、お味噌汁で流し込んだ。もぐもぐ、はぐはぐ、ずるずる。ごちそうさま! 女の子としてはちょっとはしたないかな、えへ。
さておき、朝食を終わらせたら洗面所で顔を洗って髪を梳かす。手早く済ませたら鞄を掴んで玄関に向かった。バスが来るまでもう本当に時間がない。前に住んでいた所と違って、バス通学じゃ脚力での挽回はほとんどできない。
「いってきまーす!」
家を飛び出すと健太君が足踏みをしながら門の脇で待っていた。歩道に出るのと同時に、息を合わせて走り出す。
「先に行ってくれてよかったのにっ!」
「そんなことできないって!」
どたどたどた。
あたしは男子に比べてもかなり健脚だけど、健太君はきっちり付いてきていた。やるう。
もっともあっちからしてみれば、女だてらに、ということになるのかもしれないけど。
ともあれ、そんなふうに朝からバタバタしたおかげか、なんとかバスに間に合うことができた。



未来のあなたへ

612未来のあなたへ12:2009/11/20(金) 14:47:40 ID:rJNNsrGt
かくして無事登校に成功し、授業が始まる。
授業は転校前の学校よりもかなり進んでいる。勝手に教科書を進めていたから付いていけるけど、でなきゃ転入もできなかったと思う。ババアの言うこともたまには役に立つ。
元の田舎学校ではダントツの成績だったけど、どうやらこっちではどこかの集団に落ち着きそうだ。やっぱり井の中の蛙だったか。それでもまあ、健太君よりは上だけどね。
それにしてもああ、授業が新鮮だなあ。先生の話も聞かずに黙々と一人で自習状態なのは空しすぎた。
そんな風に新鮮な気持ちを味わっていると昼休みになる。
ここで朝に続いて猛ダッシュタイム再び。お弁当を持ってきてない人間は、購買で昼食のパンを手に入れなければならないのだ。出遅れるとろくな物が残らないのは経験済みだった。
加えて今日は運が悪いことに授業が二分長引いた。随伴は健太君と、クラスメイトの柳沢君。お財布を握りしめて猛ダッシュを掛ける。ちーん。
今日の戦果はジャムパンにあんパン。かなり残り物に近い。健太君も似たような感じ。柳沢君は流石の貫禄でカレーパンにハムサンドをゲットしている。くそう常連め。
それぞれ自販機で好きな飲み物を買って、さあ教室に戻ろう、というところであたしはふと聞いてみた。
「そういえば、この学校って屋上出れるの?」
「ああ、出られるよ。今日はそっちで食べよっか?」
「おおいいな。いい天気だし、風通し良さそうだし、そうするか」
というわけで三人揃って屋上に向かう。実は前々から狙っていたスポットだった。
なにしろ前の学校は三角屋根に木造だったから、まあ上れないことはないけどくつろげる場所じゃない。
ばたんと鉄の扉を開く。
屋上はがらんと広く、少し埃っぽく、空が青く近かった。
緑色のフェンスに備え付けられたベンチ。幾つかは既に埋まっている。九月。緩やかに収まりつつあるけどまだまだ暑い。そして確かに屋上は風のおかげで涼しかった。
空いているベンチに三人で並んで座り、ばりばりとパンの包みを開く。健太君を真ん中にして挟んだ格好。もふもふと食べながら世間話をした。色気無いなあ。
「それにしてもあれだねー。三人もいて全員パンとジュースなんて、ちょっと味気ないよね」
「あーそりゃそうだけど。香奈枝ちゃんは弁当作らないのか?」
「香奈枝さんは朝弱すぎだって。もっと早起きしないとお弁当は無理だよ」
「いつも起こしてくれてありがとーねー。料理はできるんだけどね? 本当にね?」
「おいおいちょっとまてや榊。お前、香奈枝ちゃんを毎日起こしてるのかよ。何でだ、何でお前だけ何だオラア!」
「ぎゃー! そ、そんなの知らないって!」
がくんがくんと柳沢君に揺さぶられる健太君。おー頑張れと、オレンジジュースをちゅーちゅー吸いながらしばし観戦する。
一段落ついたところで柳沢君が話題を変えた。
「そういや香奈枝ちゃんと榊は親戚なんだよな。従姉弟だっけ?」
「うん、あたしの方がちょっと年上ね。おねーちゃんと呼びなさい!」
えへんと胸を張るけど、言われた健太君の方は今一乗り気そうではなかった。大体『香奈枝さん』なんて呼んでる時点でわかっていたが、普通に他人行儀なのだ。仕方ないこともあるけど。
「いや、それはちょっと……会ったの随分久しぶりだし」
「ん、そうなのか? 普通従姉って言ったら、かなり近い親戚じゃね?」
「理由は三つ! 1,あたしは養子。2.ババアが偏屈で滅多に親戚と会わない。3.住んでたところがすっごい田舎!」
「いやあの香奈枝さん、だから叔母さんのことそんな風に呼んじゃダメだって」
「へえー、血が繋がってないのか。んじゃ結婚もできんのか?」
「従兄弟同士なら元々結婚は可能っしょ。まあでも、健太君は友達としてはいい人だけど男としてもいい人で終わるよね」
「あっはっは、落ち込むなよ榊。ほれ、いつかお前のことを好きになってくれる物好きが現れるって!」
「……うん」
ばしんばしんと柳沢君に背中を叩かれる健太君は、見るからに落ち込んだ。暗い目をして俯き、陰鬱なオーラを出している。
柳沢君と顔を見合わせる。どうやら地雷を踏んでしまったらしい。どうしてそういう繋がりになるのか、柳沢君は今一理解できなかったみたいだけど。
あたしはもちろんわかる。
613未来のあなたへ12:2009/11/20(金) 14:48:22 ID:rJNNsrGt
あたしはもちろんわかる。
榊優香。自分の、もう一人の従妹のこと。
榊家には入れ替わりで入ったからこっちでの面識はない。けれど色々なところでその残滓は感じていた。
あたしが今使っている部屋は元々彼女の部屋だし、少し前まで健太君のお弁当を作っていたのも彼女だ。毎日健太君と一緒に登校していたのも。朝起こしてもらう役回りは逆だったみたいだけど。
そうして、どこかの誰かさんに暗い影を落としているのも、榊優香という彼女の残滓というわけだ。
まーさておき、あたしは空気を変えるためにハイテンションな声を張り上げた。
「そういえばさ、購買のパンって買うのに何かコツってあるのかな。授業遅れたらどうしようも無くない?」
「あー、あれはなー……」




午後の授業も滞りなく終わり、放課後になる。
帰りの会をやっている間、ちこちこと健太君とメールでやりとりをする。携帯電話! なんて便利な道具なんだろう。
何より誰も彼も持っているのが素晴らしい。あの田舎でも電波はなんとか届くけど、全く普及していなかったから掛ける相手がいなかった。大体誰も彼ものんびりしすぎているのだ。
閑話休題。
『部活見学行こうと思うんだけど、一緒に来る?』
『ありがとう。でもいいよ』
ま、この程度だけど。
放課後になって、あたしは柳沢君とクラスメイトにさよならして部活見学に向かった。鞄は教室に置いてあるので手ぶらだ。
といっても、許可をもらって体験入部するようなものじゃない。グラウンドと校舎をぐるりと一周して覗くだけだから、散歩に近い。
この高校には色々な部活がある。転校前の学校では生徒数の問題で、男女学年混合で野球をやるのが精々だった。勿論そんなのは部活じゃない。
目新しいものは色々あった。もしもあたしが部活にはいるなら、どんなところがいいだろう。つらつらと想像する。
適性で言うなら運動系。女子なら陸上、バレー、バスケ、柔道、剣道、テニス、卓球、ラクロス。こんなところ。
あるいは余技を磨くなら文化系。美術部、吹奏楽部、茶道部、科学部、料理部、漫画研究会、園芸部、etc。こっちは他にもたくさんある。
けれど結局、部活には入らないだろうとあたしは思っていた。理由は幾つかあるけれど、強いて言うなら面倒くさいから。
実際、転校初日に何人かから部活に誘われていたけれど、それら全てを断っていた。
散歩も終わり、教室に戻る前。ふと思いついて昼食を取った屋上に上がる。
扉を開けるとそこは朱い世界だった。
太陽は東の稜線に掛かり、散乱した赤色光が降り注ぐ。空に近く色調に乏しいこの場所では、全てが朱に染まっていた。
その真ん中で、ぽつんと健太君が空を見上げていた。

614未来のあなたへ12:2009/11/20(金) 14:49:30 ID:rJNNsrGt
服が汚れるだろうに、健太君は屋上の真ん中で大の字に転がっている。寝ているのかな、と思ったけど目は開いているから起きてはいるんだろう。
授業が終わってからこの時間まで、ここにいたんだろうか。日が暮れれば風も冷たい。風邪を引いてもおかしくはないのに。
少し頭がクラクラした。なんというかその……なんてあからさまな落ち込み方なんだこいつは! 見つけて欲しかったのかと勘繰りさえする。
ババアに吹き込まれた、人生に不要な知識(中二病とか何とか)が頭の中をぐるぐると回る。そっと近づき、上からひょいと顔を覗き込んだ。
「なにしてんのさ、健太君。屋上で黄昏れてるなんて何十年前のパターンだよって感じだけど」
「ん……香奈枝さん……」
従弟がぼんやりと視線をあたしに向ける。上から覗き込んでいるけれど、スカートは股で挟んでるからパンツを覗かれる心配は事故でもない。堂々と見せる程あたしは色気系じゃない。
自己評価をするに、あたしはボーイッシュなタイプだろう。髪はショートカットで、性格ははきはきして喧しい。プロポーションは中の下、背は平均よりやや上。顔つきはそこそこ可愛いと思ってる。眉毛が太めなのはご愛敬。胸さえ誤魔化せば少年で通るかもしれない。
血が繋がっていないので当たり前だけど、この従弟とは似ていない。血縁以前にまともな付き合い自体が二週間程度なんだから、ぎくしゃくするのは当たり前だった。
それでも健太君が何を思い悩んでいるかは、当たり前にわかっていた。
「……」
「……」
お互い、その体勢のまま沈黙。あたしは健太君の目をじっと見下ろして、健太君はあたしの目をぼうっと見上げている。
こんなところで寝転がっているのでわかる通り、従弟は部活をしていない。少し前まで熱心に空手部に通っていたらしいけど、ある事件の心労で続けられなくなって退部したらしい。いつでも戻って来いとは言われているらしいけど。
事件後しばらくは学校も休み部屋に閉じこもって、廃人みたいな様子だった。その様はあたしも見ているし、そこからの地道な回復も手伝った。
というのも、当初彼は年頃の女性を見ると悲鳴を上げて怯えるというものすごい失礼な反応をしていたので、そのリハビリ相手として役目を仰せつかったわけだ。はいはい、どうせ男らしいですよ。
療養に夏休みをほぼ費やして、健太君の症状は今ではかなりマシになっている。ほとんど治ったと言ってもいいだろう。もっとも、あたしは元の彼を知らないので比較判断なんてできないけれど。
朝起こしに来たり登下校を一緒にするのも、そのリハビリの名残だった。今日はとっくに帰ってるのかと思ったけれど、待っててくれたんだろうか。
だからといって、恋とか愛とか芽生えたわけじゃない。というか彼の負ったものはまさに、恋とか愛とかそういうものに対するトラウマなのだから、そういうものを感じさせない気安さこそが大事だった。
何の気為しもなく、あたしは会話を再開しようとする。
「そーいえば、この前私服の女の子に呼び出されてたけど、あれ誰だったの? 彼女?」
「ああ、晶ちゃんだよ。中学からの後輩で、友達の彼女で……優香の友達」
空気が底なしに落ち込んだ。彼の周囲だけ赤色が濃くなった気がする。うはあ、いきなり地雷踏んだ!
慌てて、だけど焦りを表に出さず、あたしは言葉を繕った。
「へー。あの時は自己紹介し損ねたけど、今度会ったらちゃんと話してみようかな」
「ん……そうだね。明るい子だから、香奈枝さんと気が合うかもね……」
くらっ! 暗いよっ!
いい加減気を遣うのも面倒になってきたあたしは、ぐいと手を掴んで彼の体を引き起こした。どうせ非建設的な自問なんだから構うことはないのだ。
従弟を襲った悲劇について、あたしは一通り聞き及んでいたし、だから健太君が何を落ち込んでるかは見当も付く。けれどそいつは悩んだところで無駄なのだ、何しろ時間は戻らない。
それなら落ち込むエネルギーを、もっと別のことに使った方が建設的というものだろう。
「とりあえずさ、そろそろ日が暮れるし帰ろうよ。ずっと残ってたら鍵掛けられちゃうし、屋上に閉じこめられるなんてごめんだよ」
「……うん、そうだね。ありがとう、香奈枝さん」
「何のお礼かよくわからないけど、それを形にしてくれると即物的なあたしはとても嬉しいな」
「ええー。じゃあそうだな……なにがいい? あんまり高いものは勘弁してよね」
「おいおい、そこは断って、あたしが誠意誠意とごねるところでしょ」
屋上を出て、階段を下り、教室で鞄を回収し、下駄箱で履き替え、グラウンドに出る。
615未来のあなたへ12:2009/11/20(金) 14:50:13 ID:rJNNsrGt
日が暮れるにはまだもう少しある。運動部の練習が終わるにはまだもう少し時間があった。
校門に向かう途中、健太君が格技場の方を見ていた。あたしは話題の一環としてそれを扱った。
「健太君、空手部に入ってたんだよね? そろそろ再開してもいいんじゃない?」
「ん……いや、いいよ。あんまりやる気ないし、そういうので参加しても迷惑だから」
「そっかー。ところでどれくらい強かったの?」
「俺なんか全然だよ。結局一年ぐらいしかやってないしな」
「ちなみに伏線はっとくけど、あたしはかなり強いよ?」
「香奈枝さん、空手やってたんだ? あれ、でも拳ダコがないし……」
「得物持ちだったからねー。竹刀か木刀があれば、そこらの奴には負けないと思うよ」
「へえー。じゃあ剣道部に入るの?」
「いや、もうああいうのはやめたから。まあ健太君と同じでさ、今はごろごろしてる期間」
そんな他愛のないことを話しながら、あたしと健太君は帰る。
夕焼けは、地上の方がくすんで見えた。


榊家に帰ると、叔母さんがリビングから外を眺めてぼーっとしていた。貴女もですか。
ゆさゆさ揺すって、慌てた彼女と一緒に夕食の支度をする。居候的に、朝は無理だけど夕食の手伝いはするようにしている。従弟は部屋で勉強させておく。
榊優香という少女が抜けた穴は、やっぱり家族にとっては相当大きいみたいだった。当たり前だけどあたし程度じゃ穴埋めはできない。
まあ、叔父さんだけはなんだかものすごく平気な顔をしているのだけど、ババアの言う通り不感症なんだろうかあの人。
さておき。
食事が終わり、なまらない程度の運動をこなし、お風呂に入り、パジャマに着替えた。授業の予習復習をする、前にベッドに転がって携帯電話を開いた。
まず先輩の番号を開いて、掛ける。しばしの沈黙後『電波の届かないところか電源が入っていません』旨を伝えられる。まあ想定内。
もう一人の方に掛ける。今度は何コールかした後繋がった。
「こんばんはー、優香ちゃん」
『こんばんは、香奈枝さん』


そろそろ自己紹介をしよう。
あたしの名前は榊香奈枝。くそったれババアこと榊智子の、義理の娘。榊健太と榊優香の、義理の従姉。
歳は17、高校二年生。性別は女。身長は170。体重はダイエット教に入信してるので秘密。
さて、細々した経歴は無視して。どうしてあたしが榊家にいるのか、それを話そう。
元々あたしが住んでいたのは、この町より関東寄りの、そしてずっと山奥の村だった。綺麗な空気と溢れる自然だけが売り物みたいなところだ。
そこにいたのは生まれ故郷だからじゃなく、単に引き取り手のババアがそこに建てられた研究所に勤めていたからだ。あんな田舎に唐突にコンクリートの建物があると、何かやばいもの研究してそうなんだけど。要するに地代の問題らしい。
人口は三千人弱。学校と名の付くものは小学校と中高学校を纏めた木造建築が一つずつあるだけで、ついでにクラスは学年バラバラで入り交じっていた。自習か、年下に教えるかがあの学校でのあたしの仕事だった。お金をもらってもいいと思う。
文明圏と呼ばれるものに接触するには、山を二つ三つ越えなければ辿り着けないし……ま、このあたりは本筋には関係ないし省こう。
ともあれそんな辺鄙であたしが暮らしていると、いきなり従妹が送り込まれてきたのだ。
榊優香。血の繋がらない同い年の従妹。十年近く前に顔を合わせただけで、ほとんど面識はなかった。彼女の方は憶えていたか、どうか。
そんな子があたしの家に住むという。
一通りの事情は、彼女本人から聞いた。つまり彼女はタブーを犯して追放されてきたのだ。その内容については、今はどうこう言うまい。別件だ。
追放先にあたしの家が選ばれたのは、単に地理的な問題だろう。あの土地は陸の孤島みたいなものだ。車を持っていなければ特に。
そしてしばらくして、入れ替わりにあたしが都会榊家に厄介になることになった。ババア曰く。
『当たり前だろ、人間一人を引き受けるんだ、こっちばかり負担増になってどうする。お前が代わりにあっちに行けばちょうどいい。幾ら低能でも四則演算ぐらいできるだろ』
あのババア、人間を足し算引き算すればいいと思ってやがる!
とはいえあたしも、外の世界を見たいという欲求があったのは確かだ。まともな思春期ならこんなところで一生を終えようとは思わない。他にもまあ、いろいろ。
そうして、一ヶ月程優香ちゃんと一緒に暮らし、都会榊家に出てきて、二週間程健太君のリハビリに付き合って今に至る。
ちなみに、健太君はそのことを知らない。優香ちゃんの行方も知らない。それが精神衛生上の配慮だった。
616未来のあなたへ12:2009/11/20(金) 14:52:08 ID:rJNNsrGt

「そっちはどうだったー?」
『世は全てことも無し。こちらは平和なものですね。野球に加わらせていただきました』
「ああ、なんかすっごく懐かしい。みんなでできるのってそれくらいしかないからね、死ぬ程やったよー」
『そうでもないですよ。辺りを散歩したり、浅賀先生のところに通ったり、智子叔母さんお手伝いをしたり』
「好きこのんでジジババの相手なんて物好きねえ。あ、先輩は?」
「今日も元気そうでしたよ」
浅賀先生というのは村の爺さんで、趣味で剣道教室みたいなものを開いている。何しろ娯楽というものが少ないところなので、通っている人は割といたりする。あたしもその口だった。
智子叔母さんというのは言うまでもなくあたしの養母。家事と整理が致命的にできない人間なので、ほっとくと部屋がゴミで埋まって虫が湧く。いい大人なんだから自分の面倒ぐらい自分で見ろや。
先輩というのはあちらで大変世話になった人だ。この人についてはそのうち話そう。
『そちらは』
「こっちも大したことはなかったかなー。部活見学してみたけど、冷やかすぐらいだったしね」
『剣道部か美術部に入らないのですか?』
「いやー、今はお休み期間って決めてるから」
『兄さんの様子はどうですか?』
「大分マシになったけどまだ重傷。今日なんて放課後屋上で黄昏れてたよ。こっちの世界に戻ってこいって感じ」
『……ふふ』
「そこ、嬉しそうに笑わない」
そんな調子でしばらく近況報告と雑談をする。
この従妹のことを、あたしは基本的に気に入っていた。男の趣味はどうかと思うけど、それさえ除けば合理的精神の鏡みたいな子だ。つまり、賢い。その上性格も曲がっていない。
今まで自分の周りには(先輩を除くなら)純朴か陰険しかいなかったので、彼女と暮らした一ヶ月はひどく新鮮だった。
接した感じも、とても性格破綻者には思えない。語りはひどく落ち着いていたし、行動は論理的だ。問題の健太君に関して聞いてみても、彼女はそれが異常なことだとはっきり認識していた。趣味が悪いんです、と。
どちらかと言えば。彼女は異常性愛の持ち主というよりも、ただ単にとてつもなく意志の固い、世間知らずな子供のように思う。
女の子なら誰だって、父親や兄に憧れを抱く時期はあるだろう。おとーさんのお嫁さんになる、という奴だ。親知らずのあたしですら、養護施設のお兄さんに憧れていた時期はある。
だけどそんなものは日々の中で忘れられていくものだ。子供の気持ちは移ろうものだし、大体思春期すら訪れる前の言葉遊びだ。まさしく児戯に等しい。
そして、優香ちゃんはその児戯をこの歳になるまで頑なに引きずってきている、だけじゃないんだろうか。
ってことは、彼女がどんなに大人びた振る舞いをしようとも、その本質は子供じゃないかということになる。合理的な子供。なんかものすごい矛盾だ。どこの小学生探偵。

従妹との通話を終えて、勉強道具を持って、従弟の部屋に向かう。途中叔父さんと遭遇した。うわ。
「あ。ども」
「健太と勉強か」
「はいっ」
どうもこの人の前に立つと緊張してしまう。理由はわかっているのだけど、いやはや。
さっきまで健太君と話していたんだろうか。優香ちゃんの部屋と健太君の部屋はすぐ近くにある。
あれ、ぱっと見冷血漢な人だけど、もしかしたら根は家族思いの人なのかもしれない。雨の日に子犬にミルクをあげてる不良的な意外性。
「健太も君のおかげで随分と立ち直ったと思う。感謝している」
「いあー、まああたしが好きでやってることですからお礼なんていいですよー」
「香奈枝君は健太に好意が?」
「言葉の綾です。一般的な同居人程度の好意はありますよ」
変なところに食いついてきた叔父さんに、びしりと誤解を招かない物言いで訂正しておく。気のせいだろうけど生暖かい目で見られてる気がするなあ、うう。
なんとなく、この人はあたしと健太君をくっつけようとしている気がする。その目論見は論理的にはとても正しいんだけど、当人達の気持ちをまるきり無視してるし、百歩譲っても時期尚早です。
従弟が色恋沙汰に対するトラウマから立ち直るには、まだまだ時間が掛かるだろう。それに患者は一人でもない。
「それより叔父さんは叔母さんのこと気にしてあげてくださいよ。今日も夕ご飯作らずにぼーっとしてましたよ」
「いや、彼女は象に踏まれようが問題ない。どうせすぐに忘れて立ち直る」
「ひどっ! ひどいですよその言い草」
「事実だ」
きらーんとメガネを光らせる叔父さん。く、酷いこと言ってるのに様になっている。美形ってのはこれだから。
それから二言三言言葉を交わして、すれ違う。気を取り直して、健太君の部屋の前に。
617未来のあなたへ12:2009/11/20(金) 14:54:54 ID:rJNNsrGt
ノックしようとしてふと思いつき、そっとドアを開けて中の様子を伺ってみた。鍵は掛かっていない。
健太君はこちらに背を向けて、勉強机に向かっていた。予習復習しているように見えたけど、頬杖を付いて手は動かしていない。
ああ、また遠いところに旅立ってるみたいだ。
ドアを開けてすり足で近づき、側頭部にチョップを叩き込んだ。
「ちょいさっ」
「おあっ!」
がくん、と頬杖が外れて健太君がつんのめる。びっくりしたように振り向く先には、教科書を持った従姉がいた。つまりあたしです。
「勉強しよっか?」
「うん、それはいいけど。部屋に入る時はノックぐらいしてよね……」
「したよー、嘘だけどー」
こうして部屋を訪ねるのは珍しいことじゃあない。というか、毎日やってる。
それは夏休みにやっていた日課の名残だ。
あたしがこっちに越してきた当初(夏休みまっただ中)一ヶ月も引きこもっていたせいで健太君の学力はがた落ちで、ついでに課題を片づける気力もなかった。
そこでリハビリの一環として、あたしは彼の勉強を監督することにした。こっちとしても、授業の進み具合を把握するのには大いに役立ったし。
その礼として、朝起こしてもらったり奢ってもらったり色々と便宜を図ってもらっていた。
夏休みが終わり、課題が終わり、健太君の学力が何とか戻ってきて、あたしも授業の進み具合を把握して。意義は薄れていたけど、なんとなくで夜の勉強会は続いている。
けど飽きた。
「ねー、健太君。漫画読んでいいー?」
「いいよー」
本棚から一冊取り、ごろりと従弟のベッドに転がる。昨日の続きだ。ぺらりぺらりと、面白さだけを追求した紙面を、頭を空っぽにして読んでいく。
今使わせてもらっている部屋にも本は何冊も置いてあるけど、優香ちゃんの蔵書は実用書ばかりで面白みがないのだった。あたしも同じようなのは沢山持ってたし。
その点、健太君の蔵書は、運動関係の実用書も少しはあったけど、概ね娯楽目的の漫画や雑誌で占められている。素晴らしい。
ぺらぺら、ごろんごろん。
彼の方をちらりと見ると、部屋の真ん中に置いたガラステーブルに教科書とノートを載せて、うんうん唸っていた。頭はあんまり良くないけど根が真面目なのか、それとも勉強することに約束でもしてるんだろうか。
漫画のごろ見を楽しみながら、頭の半分で榊健太という人間のことを考える。
彼は――――普通の人間だ。
運動が得意で勉強が苦手。容貌人望、共に人並。虐められているわけでも孤立しているわけでもない。無個性というわけでもなく、結構お馬鹿な発言多し。
性格は概ね純朴。物事を信じ込みやすく、騙されやすい。また自責の念が強く、我慢強い。詐欺師にとってはカモネギとはまさにこのこと。
態度がキノコみたいな感じでじめじめしているのは、どうも周囲から聞くに優香ちゃんが消えてかららしい。みんな首を捻っていたけどあたしは真相を知っている。
トラウマを負う前の彼は、いわゆるいい人で、いい人で終わる。そんな人柄だったみたいだ。枚数で言うなら三枚目。色恋沙汰の対象にはならないけどムードメーカーみたいな。
勿論、今はそんな面影微塵もない。陰惨な過去を抱えちゃった受け身キャラだ。いや実際その通りなんですがね。
それに関してはどうこう言うまい。他人からの言葉でしか以前の彼を知らないのだから、安易に軽蔑も同情もしまい。あたしが思うのはただ一つ。
どうして優香ちゃんはこんなのに惚れたんだろう?
「んー……香奈枝さん、この問題の解き方がわかんないんだけど……」
「どれどれー。これ? どこがわかんないの?」
「使う式は前のページのこれでいいと思うんだけど、この形に持っていく方法がわかんなくて」
「ところで健太君、話は変わるんだけど」
「え!? ここで変えないでよ!」
618未来のあなたへ12:2009/11/20(金) 14:55:44 ID:rJNNsrGt
構わず変える。色恋沙汰はタブー。ただし健太君から見れば、あたしは事情を知らないことになっているから、多少は踏み込んでもいいはず。
「ねえ、知ってる? あたしの養母(ババア)なんだけどさ、昔叔父さんのこと好きだったらしいよ」
「え、ほんと? 智子叔母さんが、父さんのこと?」
「そうそうまじまじ」
「でも、母さんと叔母さんって姉妹なんだよね?」
「うん、だから姉妹で一人の男を取り合ったってことになるんだよね。ドラマみたいでしょ」
「へえー……でも父さん母さん見てるとそんな風には見えないけどなあ。小さい言い争いばっかりしてるし」
「それはあたしも思うけど、まあ現実の夫婦なんてそんなもんじゃないかな」
「でも、それじゃ智子叔母さんが結婚しなかったのって……まだ父さんのこと好きなのかな?」
「え、まっさかー。単に貰ってくれる相手がいなかっただけでしょ。性格悪すぎなんだって」
うへえ、と舌を出す。そんな純情テイストな何かはあのババアには似合わない。もう五十近いってのに。
それでも酒が入るたびにそんな話を愚痴るのは、いわゆる若き日の過ち、人生の汚点だからだろう。よく知らないけど研究者としては成功しているらしいし。
あまりに何度も聞かされたせいで、あたしの中の父性象が殆ど会ったことのない薫叔父さんになってしまった程だ。
あの人の前で落ち着かないのはそのためで、本来父親だったかもしれない人だという妄想が捨てきれないのだ。論理的矛盾は認める。
「あー、別にまだ彼氏は欲しくないけど、嫁き遅れになりたくないなー」
「あはは。まあ、まだまだ若いんだから大丈夫だって」
「でも柳沢君なんかはすっごい軟派って感じがしない?」
「いや、あいつはそういうポーズなんだよ。別に手当たり次第ってわけじゃなくて、結構純情だと思うよ」
「じゃあ健太君はさー」
地雷を確認する。好きな人がいるの? 好きって言ってくれた人はいるの? 誰かと付き合ったことはある? 付き合うならどんなタイプがいい?
ダメだ、どうやっても接触する。この話題から離脱するのが一番安全なんだけど、そうも行かない事情もある。仕方なく、毒にも薬にもならないようなことを聞いた。
「健太君は彼女とか欲しい?」
「んー……とりあえず、今はいいよ」
少し寂しそうに健太君が笑った。そういうものは既に自分からとてつもなく縁が遠いんだと、昔を寂しがるような笑い方だった。
あたしも笑った。暗い諸々を笑いものにするような、長年薄暗がりにいれば自然に身に付く熟練の技だ。
「そっかー。それじゃああたしと同じだね。とりあえず今はいいやー」
「ん、そだね。とりあえずは」
とりあえず。
素晴らしい言葉だ。何の解決にもなってない、気休めにしかならない、何の役にも立たない。そこがいい。
物事を白と黒に割り切ることは人生には必要だけど、ただの気休めが必要な時もあるんだから。
「まあ、モラトリアム同士、ゆっくりごろごろしていけばいいよね。まだ若いんだしさ」
「いいだけど、なんかそれ。年寄りみたいな言い方だね」
「ええー、若さ云々先に言い出したの健太君じゃーん」
「そうだけど、それは香奈枝さんが結婚のこととか言い出したから、それはまだ焦る程じゃないってことで……」
17歳の高校生が、お互いにまだ若いと励まし合うのは、奇妙な会話だったのかもしれない。けど要するに、誰だってそれなりに暗い過去を背負っていると言うことなんだろう。
問題はそういった諸々を、自分の中でどうやって、どんな風に処理するかだ。逃避なり、憎むなり、忘れるなり、後悔するなり、固執するなり、なんなり。
そして見たところ、健太君はあまりいい片づけ方をしていないようだった。まあ、引きこもり時と比べればかなりマシにはなったんだろうけど。
その見極めをするのが、あたしがこの家に来た理由の一つでもあるのだ。大した動機があるわけでもないんだけど。
619未来のあなたへ12:2009/11/20(金) 14:58:24 ID:rJNNsrGt
今日の勉強会も終わり、自分の部屋に引き上げる。後半はごろごろしていただけだけど、あたしは。
この時点で時刻は22時ちょい過ぎ。寝るまでごろごろする前に、もう一つだけ日課があった。
本棚から大判無地のノートを取りだし、今日一日の中で心に残った光景を思い浮かべる。
――――屋上。
フェンスで四角く切り取られた空を、思い出しつつ描いていく。地面は砂だらけのコンクリート。そんなところに寝っ転がる人影。天には空を、地には人を。
描き込んでから気付いた。健太君がいると言うことは、今描いてるのは夕方の空だ。右側、フェンスの向こう側にぼんやりとしたまるを加える。夕陽。
記憶が頼りなので細部はどうしようもなくあやふやだ。けれどいい。どうせ明日にはもっと忘れてるんだし、これはただの日記みたいなものだから。
輪郭ができたら色鉛筆で彩色していく。色を塗るというよりも、大ざっぱに色分けする程度。空はオレンジ、太陽は赤く、フェンスは緑、地面は灰色、人影は黒。
完成。まるで子供の落書きだ。まあ、あたしの描画技術なんてこの程度でしかない。日付を記入し、ぱたんとノートを閉じる。
子供の落書きでも、気付けば随分時間が掛かっていた。日付が変わっている。
ああ、そろそろ寝ないとまた明日健太君の手を煩わせることになりそうだ。手を洗って寝ることにする。
今日は今一、ダメだった。また明日頑張ればいいや。おやすみー。

健太君に彼女を作らせる。それが、あたしがこの家に来た目的だ。
ババアの勝手な要求もあるし、自分が都会を見てみたかったのもある。けれど最大の目的はそれなのだ。
論理の飛躍があるのはわかっている。
優香ちゃんと一月、暮らして。あの子がどうしてあんな田舎に来たのか教えてもらって。
それでもあの従妹は、あんなド田舎に閉じ込められておきながら、微塵も後悔していなかった。いや、身内をレイプしておいてその態度はおかしい。ババアは大笑いしてたけどあいつもおかしい。
けど、それを除けば彼女はとても好感の持てる人間だった。一本筋の通った考え方をして、それに対する責任というものを知っている。そして決して迷わない、強固な目的意識と判断力。
目的の正当性はさておいて。目的を求めて迷う人間や、何も考えずに服従するだけの人間にとっては、榊優香の在り方はとても眩しいものだろう。彼女のような純粋さはひどく希少なのだ。
でも、だからこそ。あたしは彼女を更生させたい、まともな道に戻してやりたいのだ。
あのベクトルが社会に出て噛み合えば、従妹は必ず名前を残すと思う。頭脳運動能力判断力集中力全てが高いレベルにあり、意志の強さはそれらを更に凌駕する。
それが近親相姦のタブーを打ち破ることに費やされるなんてもったいなさ過ぎる。それに才能云々を差し引いても
そもそも人は自由であるべきだ。
今の彼女は――――それが自分で望んだものだとしても――――檻に閉じ込められているようにしか見えない。
そうして、自由になったときに、思うのだ。ああ、自分は何であんなものに閉じ込められていたのだろう、と。
620未来のあなたへ12:2009/11/20(金) 14:58:51 ID:rJNNsrGt
……さてそれではどうするか。
これについてはババアの愚痴が珍しく役に立った。曰く
『振られ方にもいろいろあるが、他に女ができたってのは最悪だぞ。全否定だからなあー。お前の全てと、あっちの女の全てを比べて、あっちを選んだってことだからな。女として、人間として負けたってことになるんだぞ。こんなわかりやすい屈辱があるか』
とのことだった。あのババアをしてそこまで根に持たせるんだから、色恋というのは修羅の巷だ。
つまり
健太君が優香ちゃんの存在を承知の上で、他に恋人を作ったのなら、さすがに諦めるのではないのだろうか。
ということだ。よってあたしの目的は、健太君に彼女を作らせることになる。
果たしてそれで諦めるのか、疑問があるのは認めよう。自分自身、従妹の意志の強さを高く評価しているが今回だけは折れてほしいと願う複雑な心境だ。
とはいえ、問題は他にもある。
健太君に彼女ってできるの? ということだ。
会ってみて意外だったのだけれど、あたしにとって健太君はぜんぜん魅力的な人間ではなかった。背は低いし顔だって普通だし、内外から陰気オーラが出てるし、よく一人で黄昏てるし、何か取得があるわけでもないし、そもそも引きこもりだったし!
周りの人間に色々吹き込まれてたから、正直どんな人間かちょっとは期待してたのにがっかりだよ。落差がひどいよ。
ほんと、どうして優香ちゃんはあんなのに惚れたんだろう? 彼女ほどの人間が固執する相手とは思えない。趣味が悪いって自分でも言ってたけどそのまんまの意味だったんだろうか。
それとも、優香ちゃんがぶっ壊した残り滓が、今の健太君なんだろうか(自分の大切なものを何で自分でぶっ壊すのか理解不能なんだけど)
そこに期待して色々リハビリを手伝って元の従弟を取り戻そうと思ったけど、元の姿を知らないから復元率何パーセントなのかさっぱりわからない。
少なくともあたしが見知らぬ女子だとしても、今の彼に惚れることは有り得ない。そういうことだ。
とはいえ、だからといって人間として健太君を嫌ってるわけじゃない。友人としては普通に付き合える。あの暗さには時々辟易するけど、基本的に人が良いことは言動の端々からにじみ出る。まあ、いい人で終わりそうな子だ。
はあ……積極的に探させようとしても恋愛拒否症が出そうだし、どうしたものだか。柳沢君にでも、事情は伏せて相談しようかな。

そんな風に悩みながらごろごろしてる間に、夜は更けていき
次の日、やっぱりあたしは寝坊する羽目になったのでした、まる。
621未来のあなたへ12:2009/11/20(金) 15:08:42 ID:rJNNsrGt
以上です。
そろそろ兄もモテ期に入るべきかと思って新キャラだしたけど全然萌えない。
なぜかと思ったらキモウト否定派だったからですね。道理で。

次の話は柳沢災難編の予定ですが、他の話を書くので少し遅れると思います。敬具。
622名無しさん@ピンキー:2009/11/20(金) 16:01:46 ID:JLUsM6ks
>>621
こんな時間に、不意打ちのように投下が……!!
とりあえず、榊サイド新展開にGJ!
ややドライな新キャラだけど、優香と真正面から対立するわけじゃなく――
離れ離れになった榊兄妹と、どんな絡みをするのか予想がつかないな……

過去キャラ復活フラグ(らしきもの)にも期待しながら、次回を待っています。
623名無しさん@ピンキー:2009/11/20(金) 17:07:44 ID:0/JDLhMJ
>>604
GJ!!
過去レスでもあったけどホントに嫉妬スレっぽい。
とっても面白いです!!
624名無しさん@ピンキー:2009/11/20(金) 17:10:07 ID:0/JDLhMJ
VIPばっかやってたから下げるの忘れちゃった
625名無しさん@ピンキー:2009/11/20(金) 17:20:12 ID:2JOFHfut
>>622
IDの頭二桁が日本航空
626名無しさん@ピンキー:2009/11/20(金) 21:25:20 ID:sTxjdT0d
GJ
優香ちんは相変わらずですのう
627名無しさん@ピンキー:2009/11/21(土) 01:08:27 ID:cMqduObx
GJです
でも何か新キャラがウザイです
これの何所に惚れたのとか言う場面は一寸……
628名無しさん@ピンキー:2009/11/21(土) 02:14:38 ID:s5SuKFMS
GJです
俺はむしろ「これの何処に惚れたのか〜」のくだりがちょっと面白かった
優香の思いの独白シーンとの対比がきいててよかったです
629名無しさん@ピンキー:2009/11/21(土) 02:44:14 ID:82/m7AKh
新キャラが烈さんじゃないだけいいじゃない
630名無しさん@ピンキー:2009/11/21(土) 02:58:49 ID:8//Y1P4c
GJ!
確かに新キャラは今の所は萌えないしウザいですけど今後どうなるかに期待してます。
個人的に大好きなあの御方の復活フラグ(の様な気のする物)もある事ですし……
ところで確認なんですけど新キャラは健太と同い年でいいんですよね?
優香の事を
>血の繋がらない同い年の従妹
と言っていたので混乱してしまって
631名無しさん@ピンキー:2009/11/21(土) 04:47:01 ID:purl7lfe
他にどう取れというんだ
632名無しさん@ピンキー:2009/11/21(土) 07:26:11 ID:qKWVYIGe
しかし、この新キャラはキモウトを甘く見てると言わざるをえない。
彼女なんて作らせたって強行たんの出番になるだけだぞ……
633名無しさん@ピンキー:2009/11/21(土) 11:15:50 ID:QHwczb2r
梓いいなー
634名無しさん@ピンキー:2009/11/21(土) 11:55:07 ID:SFsGTPbB
毎回おもうけど未来って自演してる人絶対いるよね。
635名無しさん@ピンキー:2009/11/21(土) 12:43:42 ID:LiIIwYTL
ごめんそれ俺だ
636名無しさん@ピンキー:2009/11/21(土) 16:38:10 ID:NRxHxB4p
GJ!
続きはしばらく後か
待ち遠しい
637名無しさん@ピンキー:2009/11/21(土) 19:08:27 ID:3WjVm/Un
相変わらず面白かったー
今回新キャラのド田舎出身や絵日記の伏線でどこかへ行ってしまった桜子先輩がちらつく

わくわくが止まらない
638名無しさん@ピンキー:2009/11/21(土) 22:39:01 ID:QmNNluEV
この新キャラ、どう転ぶのかさっぱり分からんなw
健太と優香の行く末といい、続きが楽しみすぐる。今回もマジGJでした
639名無しさん@ピンキー:2009/11/22(日) 03:16:13 ID:0SWzKHOd
「ちなみに伏線はっとくけど」に噴いた
メタ発言やめいwww
640名無しさん@ピンキー:2009/11/22(日) 16:48:05 ID:wsCrWxi7
ゴドーのおじいさんは確か幼なじみと結婚したんじゃなかったっけ?
641名無しさん@ピンキー:2009/11/22(日) 17:09:04 ID:wsCrWxi7
ごばww
642名無しさん@ピンキー:2009/11/23(月) 18:44:19 ID:J5Q3pPPD
キモ姉とキモウトに板挟みにされて死にたい保守
643名無しさん@ピンキー:2009/11/23(月) 20:41:46 ID:nXI76rIS
キモウトと争ってるキモ姉はキモウトが幼い内に何とかしようと思わなかったのだろうか
644名無しさん@ピンキー:2009/11/23(月) 20:43:55 ID:/53KLab+
まな板おっぱいに挟まれて死にたいだと
645名無しさん@ピンキー:2009/11/23(月) 21:32:28 ID:scfVZ9Yl
幼い妹はまだ大丈夫と考えていました。もしくは可愛いなとでも思ってました。


「お姉ちゃん、おにーちゃんの部屋に全裸で転がりこむってどういうつもり?ブチ殺すよ。」
「ああ、もう目覚める年になったのね!小さいときはアイス分けてあげたり口拭いてあげたりしたのに…」
「ごまかしてもダメだよ。お兄ちゃんを誘惑してモノにしようとしてるのは分かってるんだから。」
「私はね、二人が大好きなのよ。頼りがいが出てきた弟君も、可愛い妹ちゃんも。」
「ちょお姉ちゃん泣かないでよ、ヘッドロック掛けないでよ!放してよ痛い痛い。」
カチャ…
「姉ちゃん…なにやってるのさ…済みませんでした!」
バタン
「誤解されたー!お姉ちゃんのせいで同性愛者に間違えられた!」
 
646名無しさん@ピンキー:2009/11/23(月) 22:19:33 ID:cvY6pPYv
>>645
これは弟くんの視点だと
「自分の部屋に入ったら、何故か全裸の姉がいて、妹(着衣か否かは不明)と絡み合っていた」
状態なのか…
647名無しさん@ピンキー:2009/11/24(火) 09:14:47 ID:nyh5wYwc
そして自分の姉&妹の思わぬ秘密を知って思い悩んでいる所に
その様子を心配して「ウチ来る?」と声をかけてくる泥棒猫
「お兄ちゃん、邪魔。どいて。」

『あぁ、ごめん……。』

「…………。」

これが俺と妹のとある一日の中での唯一の会話。妹は俺の事が嫌いだ。何故こんな冷めた関係になったのか。全く分からない……訳でもない……。

『はぁ、明日も大学かぁ。めんどくせ。一限、大したことないからサボるかな……。』

俺はベッドにねっころがり天井を見上げる。なんだか眠たくなってきた……。最近バイトやり過ぎてたからかなぁ。少し寝よ。



「お・兄・ちゃ・ん。お兄ちゃんも今から部活だったの?言ってくれれば一緒の電車乗れたのに〜。」

コトン

『ん?あぁ美月か。そうだな、ごめん。』

俺しかいないバス停でバスを待っていると聞き慣れた妹の声が。俺に呼びかけてくると同時に自分の小さな頭を俺の背中に預
けてくる。俺と妹の通う高校へは家から電車とバスを併用しなくてはならない。だからうまい時間に電車に乗らないとバス停
でかなり待たされる場合がある。今だってそうだ。おそらく妹は俺の乗ってきた電車の二本後のやつだろう。そんな事を考え
ていると、妹が後ろから俺の腰に手を回してきた。

『お、おい。止めろよ。……誰かに見られるだろ。』

「うふふ。大丈夫だよ〜。今、私達しか並んでないし〜。それに傍から見ればイチャイチャしてる恋人達にしか見えないんじ
ゃない?」

確かに今バス停には俺達しかいない。このバス停に休日の昼過ぎに並んでいるのは学生くらいだろう。しかも部活がある生徒
くらいしか並ばないだろうから、今は俺達しかいないんだろう。近くを通り過ぎる人も疎らなので気にしすぎる必要もないの
かもしれない。しかし問題はそんな事ではない。妹である美月が兄である俺に対してまるで恋人に対するかのような接し方だという事だ。

『そういう問題じゃねえよ。ほらべたべたすんな、離れろよ。』

「んもう!お兄ちゃん恥ずかしがり屋さんだなぁ。はいはい離れますよ。ギュッ」

離れたと思ったら今度は妹が俺の手を握ってきた。

『はぁ……。わあったわあった。手ぐらいなら繋いでやるよ……。』

「お兄ちゃん優しい〜。うふふ。ラブラブぅ〜。」

とか言いながら握り方を指と指が交差しあう恋人結びに切り替えてきたし……。

まだ小さかった頃、妹は割と引っ込み思案な子だった。何をするにもどこに行くにも俺の後に付いてきて俺の陰に隠れるよう
にしていた。そんな引っ込み思案な妹ではあったが、俺にとってはかわいい妹だった。そうでない時もあったが……。妹も、
とても素直で兄である俺の言う事ならなんでも聞いた。そんな風だから俺もすっかり妹の事を甘やかしていたと思う。その成
れの果てが今の美月だ。

「あっ、バス来たよ。乗ろ?お兄ちゃん。」

俺は妹に手を引かれて、バスの一番後ろに乗る。最近寒くなってきたのもあって、座席の足元から流れてくる暖房の生暖かい
風が心地好い眠気を運んでくる。

『ふぁあ〜あ〜、眠いなぁ……。』

思わず欠伸が出てしまった。普段のバスの中ではこんな大きな欠伸はかけない。今日は俺達以外には老人2、3人くらいしか
いないから大欠伸もできる。

「私もなんだか眠いぃ〜。んにゃ〜。」

妹が俺の右腕に自分の両腕を絡め、身体を預ける様に寄り掛かってくる。

『おい、止めろって……。』

「んふ、いいじゃ〜ん。すりすりぃ〜」

妹が歳にしては少々主張気味の胸を俺の右腕に押し付けてくる。それと同時に自分の太ももで俺の右手を挟み込んできた。制
服のスカート特有のサラサラとした生地の感触が俺のやり場に困った右手の甲に触れる。

『何してんだよ……。止めろって。おい!』

ガッチリとホールドされていた右腕を妹から離し、妹から20cm程離れる。

『お前、冗談も程々にしとけよ……。そんなんじゃ彼氏の一人もできないぞ……。』

「ふんっ。お兄ちゃん、こんなので恥ずかしがっちゃうの?情けな〜い。それに彼氏なんていらないから!私にはお兄ちゃん
がいるし。だから、ね?ムギュ」

懲りない妹はまた俺の右腕を手足でホールドしてくる。そう言って一度座り直す様に腰を上げた時に、少し自分のスカートを
上げていたのに俺は気付いた。さっきまでより短くなったスカートのせいで手に妹の太ももが直に触れる。あまり直視したく
はないのだが、妹の太ももは程よい張りと艶があり若さに満ち溢れている。キメも細かくシルクのような肌触り。色も透明感
に満ちた白桃色で、歳相応以上の色香をも感じさせるものだ。同年代の男ならもうクラっとするレベルだろうが、俺はこいつ
の兄だ。身体付きが良いとはいえ妹の身体に欲情などできない。あるのは気まずさと恥ずかしさだけだ。

『あ、おい。次だぞ。ボタン押せないから、な?美月、離してくれ。』

そう言ってなんとか妹に離してもらえた。バスに乗ってから15分くらい、ずっと妹に捕まっていたのだ。下手に手を動かせ
ば妹の秘所に触れてしまう事さえできそうな状態にあったため、緊張していた右手が痺れていた。まぁしばらくほっとけば治るからいいが。

俺達はバスを降りた。バス停のすぐ向かいが俺達の高校だ。俺と妹の通う高校は都内の私立ではそこそこの進学校だ。とは言ってもうちの高校は難関都立の
併願校という立ち位置で、もちろん第一志望で入ってくる生徒もいるがおそらく入学者の30%くらいは難関都立に落ちて仕方な
く入ってきた連中だろう。そういう俺も都立に落ち、名前しか知らない併願校のここに入って来た訳だ。しかし妹は違う。俺
の妹は頭も良く、勉強もできる。しきりに担任からは有名都立の進学校や、難関私立のお嬢様学校などを受験する様、言われ
ていたみたいだが、その妹の担任曰く、

「自分の第一志望は兄と一緒の高校だけです。それ以外は受験しません。」

との一点張りだったそうだ。当然頭の良い妹の事だから、俺の通う高校に受かった。しかも特待生扱いになる上位3名のうち
に。因みに順位は一位であった。兄としては妹に早々に追い抜かされた気分であまり純粋に喜べなかったのだが、妹は

「お兄ちゃん、また一緒に学校行けるね?うふふ。嬉しいなぁ〜」

と喜んでいたので、嫌な顔もできなかった。入学式の新入生代表挨拶では当然、成績一位で受かった妹がした。妹の俺に対す
る日頃の態度から入学式の代表挨拶でとんでもない事でも言うんじゃないかと心配していたのだが、単に俺の自惚れで済んだ
ので安堵した記憶がある。しかし翌日からクラスの男友達や、そうでもない連中、果ては他学年の生徒までもが、前日の入学式
の代表挨拶をした妹の虜になり、その兄である俺の所にも、仲を取り持ってくれだの、紹介してくれだのうるさく付き纏って
きたのであった。妹は顔立ちも良く、小さな顔にくりくりとして可愛らしい瞳をもち、ふっくらとした薄ピンクの唇は男達を
虜にするには充分過ぎる。さらには先に言ったように、胸も大きく、制服の上からもその大きさを見てとれる。すらっと延び
た足にも関わらず、どこかあどけなさを演出するスカートから覗く太もも。きゅっとくびれた腰。極めつけは背中まで伸ばし
たサラサラの黒髪。常に淡いシャンプーの香を漂わせるそれは、すれ違う者達を必ず振り返らせる。
そんな完璧美少女の妹に
当然ながら有象無象は注目する。昔からそうだ、美少女で頭も良い妹は皆から可愛がられていた。小さい頃の俺はといえば、
そんな妹に子供なりの嫉妬心を抱き、一時、妹に対し辛く当たったり無視していた時があった。そんな事をしても自分が評価
されるという事は皆無と、当時の俺にもわかっていたはずだ。しかしともかく妹が妬ましかった。……あれはまだ年明け前だった
か。そんなあるとき、夜中、妹が俺の部屋にやってきて

「おにいちゃん……いっしょにねてもいい……?きょう、さむいでしょ?だからね……わたしがおにいちゃんのこと……あた
ためてあげたいの。だからいっしょにねても……いい……?」

辛く当たっていた妹が、暗くて見えなかったが、おそらく眼に涙を蓄えて精一杯の勇気を振り絞ったのだろう、俺に話し掛け
てきた。しかしその時俺は、

『ふざけんな、お前なんかと一緒に寝るわけないだろ。お前なんか廊下で寝ろよ。』

と、辛い言葉を浴びせてしまった。

「……ごめんなさい。おにいちゃん、ごめんね……。わたしなんかいらないよね……おにいちゃんのきもちもかんがえられな
いわるいいもうとなんて、いらないよね……。ごめんね。」

そう言って、トボトボと部屋から出ていった妹。内心、俺はその時、少し言い過ぎたかと思ったが、つまらない意地のせいで
そのまま妹を放っておいた。二、三時間くらいだろうか、眠りが覚めてしまい水でも飲みに行こうとベッドから出て、部屋の
ドアを開けると、廊下のすぐそこにパジャマ姿の妹が寝ていた。目には泣き腫らしたような跡があり、身体は寒さで震えていた。
あぁ、とんでもない事をしてしまったとその時初めて気付いた俺は、妹を起こした。

『おい、起きろよ……。お兄ちゃんが悪かったよ……ごめんな。ほら一緒に寝ような?』

妹はすくっと立ち上がり、俺の後に付いてベッドに入った。その時、妹が言った言葉は忘れられない。

「おにい……ちゃん……?ほら、わたしがあたためてあげるからね……?あ……だめだね、わたしこんなにつめたいもんね?
……だいすきな……おにいちゃんにかぜひかせちゃうかもしれない……。ごめんね……ごめんね……おにいちゃん。」

どうしようもなく妹がかわいそうになり、自分が情けなくなり、冷えきった妹を抱きしめた。

『ごめん……グスッ……ごめん……。』

ただただ妹にごめん、としか言えなかった。その一件以来、俺は妹をもう、決して悲しませないと、そう誓った。


652名無しさん@ピンキー:2009/11/24(火) 11:50:10 ID:FQhCMJ2y
C?
653名無しさん@ピンキー:2009/11/24(火) 12:32:15 ID:NvbFmSOH
>>651
キモウトとか関係なしに妹が可愛すぎて会社なのにおっきした。スリスリとかやべぇ
だから生殺しはやめてくださいわっふるわっふる
654名無しさん@ピンキー:2009/11/24(火) 13:15:34 ID:9DtJFngw
俺、冒頭で主人公が「ため息→状況説明的独り言」のコンボがあると
その後の内容とは無関係に読む気が失せるんだ
655名無しさん@ピンキー:2009/11/24(火) 14:46:55 ID:XOzJp41i
最近、殊更に感じるのは誰も訊ねてもいないのに、唐突に自分語りを始める人間が増えたということ

しかもその内容は投下されたものに自分好みじゃないと文句を付けたり、
誰かの神経を逆撫でするようなものだったりして、救いようがない

スレも職人が投下するものも誰か一人のために存在しているわけではない
分別のつかない子供じゃないのだから、例え自分の嗜好に合わなくてもわざわざ口に出さなくてもよろしい
656名無しさん@ピンキー:2009/11/24(火) 14:48:14 ID:gWJ4wM0g
>>654
そんな俺様的読み物嗜好の類いは、いちいちレスにしないで、自分の心のなかに止めとけ。

>>648-651
投下前の宣言もなく、投下も唐突に終わってしまって、なにがなにやら……
アクシデントで投下できないのか、長編として日を改めて投下するのか、はっきりしなくてモヤモヤする……
要は「続きマダー?」
657名無しさん@ピンキー:2009/11/24(火) 16:22:53 ID:UAJxuszq
>>654
こういうやつのおかげで何人か職人消えたよな
傷とか永遠の白とかフラクタルとか、あとノスタルジアも
658名無しさん@ピンキー:2009/11/24(火) 17:29:01 ID:xuXLEauN
桔梗の剣の続きマダ-?
いいかげん全裸待機しすぎてインフルになっちまうぜ
659名無しさん@ピンキー:2009/11/24(火) 18:00:45 ID:mCSdb4kw
>>651
GJ!
どんな風に冒頭の状況になったのか気になる
続きに期待

このスレッドもう483KBだ
まだ700いってないのに
恐ろしい子...!
660名無しさん@ピンキー:2009/11/24(火) 20:30:20 ID:xhmCd8wf
>>651
台詞は「」で統一したほうがいいよ。
661名無しさん@ピンキー:2009/11/24(火) 20:37:29 ID:hd1MWx2z
>>651ですお。なんかカキコしたらちょうどいいとこで携帯電池キレたお(´・ω・`)
今やっと充電できますた……

すいまそんm(._.)m

>>660 理由がない事はしないおクククwwwwww
662名無しさん@ピンキー:2009/11/24(火) 22:41:22 ID:xaIIzaEO
>>661
続き期待
663名無しさん@ピンキー:2009/11/25(水) 12:48:55 ID:cLiC5EBV
続き書くお
最近、妹の俺に対する依存度合いは少し異常なんではないかと、考えることも少なくない。両親も妹に対してそれとなく俺か
ら自立するように言っている。しかし彼女は聞く耳持たずという調子だ。中学生になっても一緒に風呂に入ろうとしてきたし
、高校生の今でも朝気づくとベッドに妹が潜り込んでいた、なんて日常茶飯事だ。なんとかしないとあいつはこれから兄である俺
無しでは生きていけないかもしれない。……いや、そんな深刻に考える必要はないよな。あんなの思春期特有の兄に対する憧
れみたいなもんだよな。きっとそうだ。

?「なぁに考え込んでんの?前向いて歩かないと危ないわよ?ていうかあんたが考え事なんて珍しい。」

妹と別れ、自分の部室に向かう途中聞き慣れた声がした。同じ部活の天王寺美佳だ。こいつとは中学から一緒だ。因みに同じ
都立高校を受けて共に落ち、この高校に入学した。要は腐れ縁ってやつだ。

『まあ、俺も色々考えるんだよ。それよりどしたんだよ?胴着姿で?』

俺の部活は弓道部だ。なんで弓道なのかというのは、まあ運動部の中で一番楽そうだったからという理由にもならん理由だ。

美佳「部長さんが遅いから様子を見にきたんです〜。なんで部長のあんたより副部長のあたしの方が早いのかしらね〜。」

理由にもならん理由で入った部活であったが、もともとそんなに人数も多い部でもないので、三年生の中で一番上手い俺が部
長になってしまった。

『ごめん、電車乗り違えたんだよ。』

美佳「まあ、良いけど。それよりさぁ、ちょっと見て欲しいのよ、私の型。最近調子悪くてあんまり当たらないの。あんたな
ら何か分かるんじゃないかなって。」

『ああ、良いよ。お前に頼られるなんて珍しい。』

美佳「うっさい!ほら、来てよ。」

まだ誰も来ていない道場に俺と天王寺の二人だけがいる。二人だけだと小さい道場もゆったり
としている気がする。



パシュンッ

美佳「……。ほらね、当たらないでしょ?自分では完璧な型だと思うんだけど……。」

『確かに綺麗な型だよな。何が悪いんだろ。……もっかい射ってみてくれ。』

その後もああでもないこうでもないと天王寺の型について色々と語りあった。

『あっ、ちょっと肩を緩めてみたらどうよ?』

美佳「え?よくわかんないよ。」

『だからほら。こう。』

口では伝わり辛いようなので天王寺の背後に廻って彼女の肩を掴み、少し緩めるようにほぐしてみた。

美佳「ひゃ////ちょ、ちょっと!」

俺が肩を掴んだ瞬間、天王寺はビクッと反応しこちらを振り向いた。

『なんだよ。どうした?肩痛めてるとか?』

美佳「ちっ、違うわよ。別に痛めてるとかじゃないから。……い、いきなり掴んでくるからビックリしたのぉ!」

『だって、口じゃわかんないだろうから直接教えてやろうと……。』

美佳「いきなりは反則。……もう////」

なんだ?こいつ。肩が敏感とかだろうか?……そんな事聞いたら殴られそうだな。

そのあと他の部員が来て2時間
程で部活は終了。その間、終始天王寺のやつは俺の方をチラチラと見ていたが、目を合わせることはなかった。


さすが理由にもならない理由で入った部活ではあったがその理由もあって2時間の部活の後でもそんなに疲れてはいない。さ
て妹はテニス部なのであと30分くらいで終わるはずだ。妹には

「一緒に帰りたいからちょっと待っててね。」

と言われているので待つことにする。

『暇だしテニスコートの方にでも行くか。』

妹の部活姿もそんなに見た事はないし、テニスに限らずサッカーや野球も見るだけなら結構好きだ。見るだけなら。

美佳「あれ?彩人どこいくのよ?」

彩人(あやと)、俺の名前な。テニスコートに向かう途中、天王寺に会った。


『あぁ、妹がテニス部なんだよ。だからちょっと見てみようかと思って。』

美佳「そうなの?じゃああたしもついてくわ。」

そう言って天王寺も俺について来た。こいつもテニス好きなんだろうか。まあいいや。



パーンパーン

『おおやってるやってる。あ、いたぞ。』

美佳「一目見れば分かるわよ、あんな美少女。ほら、あんたに手振ってるみたいよ。」

天王寺も妹の事は知っている。中学から一緒なので、まあ当然と言えば当然か。妹も確かに美少女ではあるが天王寺もそ
こそこだと思う。妹とは違った活発さを感じる可愛さだ、とクラスの連中は言っていた。確かに中学のころからクラス委員長
を勤めていたし、何かとクラスの中心的人物だった記憶がある。俺もよくこいつに振り回されたっけ……。よく告白されてい
たみたいだし、今も結構人気はあるみたいだが何故か誰とも付き合ったりはしていないみたいだ。
俺に気付いた妹はこちらに向かって手を振る。俺もそれとなく返す。しかし妹はテニス姿も本当に絵になっている。普段は降
ろした黒髪をポニーテールに結び、ラケットを振るたびにそのポニーテールがぴょんと跳ねる。同時にテニスウェアに押し込
まれた大きな胸が揺れ、ブリーツスカートがひらりとめくれ、あどけない太ももがちらりと覗かせる。

美佳「なあに自分の妹に見とれれてんのよ?」

『別に見とれてなんかねえよ。しかしあいつ目当ての見学者らしき連中も多いな〜。』

新入生挨拶での知名度もあり何しろ美少女の妹のことだ、彼女のテニスウェア姿を一目見ようと他の部活終わりの連中あたり
が、テニスコートの周りにちらほらといる。

美佳「なぁに?兄としてはヤキモキしちゃう?ふふ。」

いたずら気に俺に微笑む天王寺。

『しねえよ。あいつの事だ、昔からあんな調子だからな。もう慣れたよ。』


「お兄ちゃん!待たせちゃってごめんね。寒いし早く帰ろ?」

部活も終わり妹が俺と天王寺の方にやってきた。

『おつかれ。そうだな、寒いし帰ろう。天王寺はどうする?俺らと帰る?』

美佳「あ、うん。じゃあそうしよっかな〜」

帰りは余り待たずにバスに乗れた。行きとは違い、他の部活終わりの生徒もちらほらいる。しかし朝程混んでいる訳でもない。
俺達三人はやはり一番後ろの席だ。俺が真ん中で右に妹、左に天王寺。妹はと言うと、行きのバスの中とはまるで別人の様に
大人しくしている。単語帳を静かに読んでいる様だ。やはり俺に対してあんな態度の妹でも人前ではさすがに普通にしている。
こういう訳だから何も常に兄である俺にべったりという訳ではない。

その後も電車に乗り換えても妹は大人しくしていた。ドア横に立ち、参考書に目を落としている。駅に着きドアが
開くと客が乗車してくる。妹は借りてきた猫状態なのだが、静かに佇む姿も凛としている。乗って来た客も一瞬目が妹に釘付
けになっている様だ。
電車から降りても俺と天王寺だけが話しているが、妹は俺の後ろを静かについて来るだけだ。

美佳「じゃあ私こっちだから。またね、二人とも。」

あいつの家は駅の反対側だ。天王寺と別れた後も妹は大人しくしていた。朝の登校時などは電車に乗るまではいつも、手を繋
ぎたいだのおんぶしてだの、幼稚園児の様に駄々をこねるのだが、今日に限っては本当に大人しい。俺も特に話す事はなかっ
たので互いに無言であった。最近は冬の訪れを感じさせる匂いを感じる。一昨日辺り木枯らし一号も吹いたらしい。俺は冬は
好きでも嫌いでもない。暑いのよりは寒い方が断然好きだ。暖房の効いた部屋でこたつに入り寝ている時は至福の時だ。でも
寒くなってくると寝る前にいつも思い出す。

―――おにい……ちゃん……?ほら、わたしがあたためてあげるからね……?あ……だめだね、わたしこんなにつめたいもん
ね?……だいすきな……おにいちゃんにかぜひかせちゃうかもしれない……。ごめんね……ごめんね……おにいちゃん―――



そんな事を考えているといつの間にか家に着いていた。両親は共働きなので家には誰も居ない。俺は鍵を開けると冷たいドア
ノブに手をかける。

ガチャン

ドアを開け、玄関で靴を脱ごうと屈もうとすると

ガバッ

「寒い〜。お兄ちゃ〜ん、暖めてよ〜ん。」

と言いつつ妹が後ろから抱き着いてきた。

『おい、靴脱げないから離してくれ。な?』

「だぁめ。帰りにお兄ちゃんが手繋いでくれないから私の手こんなに冷たいんだもん。だから暖めてぇ?ギュッ」

そう言ってさらに強く抱きしめるように引っ付いてきた。

『わかったから、まず家入ろうな。ほら、こたつ点けとくからさ。着替えてこいよ。』

なんとか妹を引き離し、こたつを点けて、着替えた。すぐに妹が来たが、ブレザーとセーターは脱いでリボンも外していたが
まだ着替えはいなかった。

『なんだ早く着替えろよ。』

「だって寒いんだもぉん。それにこういう格好好きでしょ?お兄ちゃん。よいしょっと。ふぅ〜暖か暖か〜。ほらお兄ちゃん
もこっち来て?」

そう言って妹が自分の隣に入れとこたつの布団を上げる。

『はぁ……。はいはいわかったよ。ふぅ。暖っけ〜』



その後はみかんを食べたり雑誌を読んでいるうちに眠くなってきた。

「お兄ちゃんも寝ようよ〜」

『そうだな。』

妹とこたつに入ったまま寝転がる。

「うふふ。お兄ちゃ〜ん。」

子猫の甘える様な声を出して妹が俺の胸に顔を埋めてくる。甘いシャンプーの香りが妹の髪から漂ってくる。

「私、汗臭くないよね??」

『ああ。別に汗臭くなんかないよ。でも女子って汗かいてもあんま臭くないよな。』

妹も自分の匂いとか気にする方だとは意外だと思った。

「うふ。だって乙女ですもの。それともお兄ちゃんはちょっと汗の匂いしてた方が好きとか?」

『そんな変態趣味じゃねえよ。』

しばらくして妹はすやすやと寝息をたてて眠ってしまった。俺に背を向けた状態なのだが、見ると白いブラウスに妹の下着が
少し透けている。ブラウスの上からも模様が分かる。可愛らしい花柄のだ。ブラウスは大きな胸のせいで身体にぴったり
と張り付いているかの様だ。こんなに女性としては魅力的な身体を持ってるんだ、俺なんかにべたべたしてないでとっとと彼
氏でも作れるんだから作ってしまえと思ったりする。




ふあ〜眠ってたのか……。昔の夢でも見てた気がするけど覚えてないや。今は……一時半か。明日一限サボるにしても早く風
呂入んないと。
しばしばした目を擦りながら、風呂場へと向かう。途中、妹の部屋の電気がついているのがドアの隙間から見
えた。あいつも来年は受験だ。そうでなくても彼女はよく勉強はしてる。見た目は美少女でしかも頭もいいと妬まれる事さえ
ある妹ではあるが(実の兄にすら)、陰できちんと努力を怠らないからこその良い成績なんだ。そんな事を知っているのも俺く
らいだろう。シャワーを浴びて髪を拭きながら、自室に戻ろうとする途中、まだ妹の部屋に電気がついていた。もう二時過ぎ
だ、そろそろ寝た方がいいと言うべきか。……いや止めとこう。妹だって夜更かししても勉強効率はよくない事くらい知っている
だろう。それを自分よりも出来の悪い兄に注意されてもうっとうしいだけだ。でも、もしかして勉強途中で寝てしまってそのま
ま電気をつけっぱなしにしているのかもしれない。それにそろそろ夜は寒いし、風邪でも引いてしまうかもしれない。……一応部
屋を覗いてみるか。それで勉強してればそのまま何も言わなければいい。そう思って妹の部屋のドアの隙間から中を覗いてみ
る。ガサゴソと音がする。布の擦れる様な音。それになんだか荒い息の様な音も。うなされてでもいるのだろうか。……っ!?

「………ちゃん……。お兄……ちゃん……」

俺……?よく聞こえないが俺を呼んでいる……?

「お兄ちゃん……ダメ……。膣内はダメ……だよぉ……赤ちゃん……できちゃうぅ……。ひぁん……好きぃ……お兄ちゃあん……」

見えないけれど妹はおそらく自慰に浸っている。………しかも兄である俺をネタに。

「ひゃめぇ……そんな強いのぉ……おかひくにゃるぅ……いいのぉ……お兄ちゃん……」

声は微かだからあんまり聞こえない。しかし普段の妹からは決して聞く事のない甘えた様なとろける声。いやそんな事はどう
でもいい。今だに妹のやつ……俺の事……。



朝になった。昨日の妹の事もあって余り眠れなかった。一限をサボって寝ていようかと思ったが目が覚めてしまったのでコー
ヒーを飲もうと居間に行くと妹が制服姿で朝飯を食べていた。昨日の事もあってなんだか気まずい。しかし何食わぬ顔でコ
ーヒーを入れて飲んだ。変に意識して挙動不審になれば妹に何か感づかれるかもしれないからだ。……いや、別に俺にはやま
しい事はなく、寧ろ自慰をしていた妹の方こそやましいのだろうが、何故か俺の方が緊張してしまう。何食わぬ顔で朝ご飯を
食べている妹が本当に昨日の晩の妹と同一人物なのだろうか。そんな事を考えながら妹の顔を見ていると

「何か用?私の顔になんかついてるの?」

気付かれてしまった。俺は直ぐさま

『いや、別になんでもない……』

と言いさり、自室に戻る事にした。

妹との関係がぎくしゃく仕出したのは俺に彼女ができたから。相手は中学から一緒の天王寺美佳。
現在、大学も同じ学部だ。美佳と付き合うようになったのは高校の卒業式に美佳の方から俺に告白
してきたためだった。俺は全く気付いていなかったが、どうやら中学の時から好きだったらしい、というか本人がそう言って
いた。俺も美佳の事は別に嫌いでは無かった。寧ろ女友達としては結構気も許せる相手だったし、魅力的なやつだとは思って
いた。だから彼女の告白を受け入れ、付き合う事にした。付き合うとはいってもお互い気の知れた仲だし別段、二人の関係に
大きな変化はなかった。ただ、俺と妹の関係は大きく変わってしまった。しばらくして妹に彼女ができたと言うと、それまで
妹からは聞いた事の無いような怒号で

「何言ってるの!?お兄ちゃんにあんな女釣り合うわけないよ!!!そんなんじゃお兄ちゃんの方が腐っちゃうよ!?」

などと俺と美佳が付き合うのに猛反対した。それから一週間近く毎日喚きちらし、早く別れろだの、あんな女死ねばいいだの、
普段の妹からは到底想像出来ないような暴言を吐き続けた。俺も美佳の事は大事に思っていたので、

『そんな事を言うお前は嫌いだ』

的な事を妹に対して言った。すると妹はそれ以来、何も言わなくなり、その代わり、今までのようにべたべたくっついてきた
りどころか、俺とは必要最低限の話しかしなくなった。少し寂しい気もしたが、あぁ、これでこいつも兄離れできる、とほっ
としてもいた。前々から、甘えるように擦り寄ってくる妹の眼には兄に対するものとは掛け離れた、熱を感じていた。妹は単に
兄に甘えるというよりも、俺の事を異性として見ているんじゃないかと薄々感付いていた。だが、少々強引とはいえ、これで
妹も正常になって恋人でも作って、俺の事なんか忘れてくれるだろうと期待もしていた。美佳には悪いが、俺が彼女を作った
のだって妹に俺の事を諦めさせるためでもあったのだ。
670名無しさん@ピンキー:2009/11/25(水) 13:05:13 ID:cLiC5EBV
とりあえずここまで。
671名無しさん@ピンキー:2009/11/25(水) 17:41:38 ID:K+UCSojc
>>670
GJ
続きに期待
わっふるわっふる
672名無しさん@ピンキー:2009/11/25(水) 20:02:53 ID:b5LY4TMt
埋めネタのソウカンジャーが埋める容量が…
これは次スレの一番槍として期待すべきだと判断した!
673名無しさん@ピンキー:2009/11/25(水) 21:14:26 ID:nnqG4Lb/
その次スレが立てられません……
携帯から立てて、メッセージも確認したんだけど、検索しても表示されないし。
674名無しさん@ピンキー:2009/11/25(水) 21:25:29 ID:SOlQfkrl
675名無しさん@ピンキー:2009/11/25(水) 22:33:27 ID:nnqG4Lb/
>>674
ありがと〜もしくはGJ
ああ、埋めネタ投下する容量(よゆう)がもうないか……
というわけで、普通に埋め。
676名無しさん@ピンキー:2009/11/25(水) 22:39:42 ID:K7o2xwNs
うめえええええええええええええええええええええええええええ
677名無しさん@ピンキー:2009/11/25(水) 23:23:44 ID:qhZHZ3e/
美佳さん死なないで
678名無しさん@ピンキー:2009/11/26(木) 01:22:32 ID:AMvjfqkv
産め、もとい埋め
679名無しさん@ピンキー
>>672
あれはもういらん。
正直クソつまらん。