newcomer氏のページが見れなくなっているけど、詳細知っている人いる?
復活してくれなかな
>>709 何だか掲示板で鬱患ってたって書いてあったから難しいかもな
711 :
リハビリ室:2012/11/15(木) 13:22:13.89 ID:ZXsuqIAt
どうも、はじめまして。こちらのスレには初めてお邪魔します。
なんとなく思いつきで書いてみたので、例に投下してみます。
男女それぞれのサイボーグリハビリと言うネタです。
誤字脱字等有るかと思いますが、笑って許していただければ幸いです。
タイトルはリハビリ室です。6レス分ほどお付き合いください。
よろしくお願いします。
712 :
リハビリ室1:2012/11/15(木) 13:23:13.75 ID:ZXsuqIAt
キュイーン・・・・
腕一本で逆立ちをしたままバランスを取る男性型サイボーグが一体。リハビリ室でゆっくりと稼動していた。
その姿をジッと見つめる眼がひとつ。部屋の片隅の、少しばかり丈夫そうに作られた椅子の上にあった。
まだ傷の碌についてない軽金属と炭素繊維のフレームが丸見えで、ところどころネイキッド構造になっている
女性型のサイボーグ。
まだ体内機器の構造バランス取りが終わっていないのだろうか。
フレームのあちこちに付箋で寸法調整操作の指示が書き込まれている。
チラリと見える頚椎上部には、鈍く光る球体。
脳髄などの重要パーツが納められてるのだろうか、大きく[NOTICE]の文字が見えていた。
その球体の前半分には、ハイブリット人工筋肉で作られた表情筋に覆われる女性の顔がある。
年の頃ならまだ16か17か。未成年と言って良い位の顔立ちなのだけど・・・・
「俺になんか用?」
まるで玉乗り曲芸の練習中とでも言いたそうな男性型サイボーグは、目を向ける事無くそう言い放った。
「あの・・・・」
「なに?」
「何してるんですか?」
ヒュンヒュンと音を立てるモーター駆動部分の音に混じり、プシュップシュッと音を立てて駆動する空気シリ
ンダーの作動音。
そして、僅かに聞こえるピピピピピと鳴る警告音。
「君とおんなじ」
「え?」
「稼動域を確かめながらバランスカウンターを調整してるんだ。胸の部分の3Dジャイロに誤差が多い」
右腕一本でまっすぐに逆立ちしている姿に女性型サイボーグは見とれている。
「君も三半規管無くなっちゃったんだろ?」
「うん」
「じゃぁ、ちゃんと調整しておいた方が良いよ」
「そうなんですか?」
「例えば、歩いてるときに、何かにつまづいたりするじゃん」
「うん」
「その時にさ、3Dジャイロの姿勢制御パラメーターに誤差があると、変な方向へジャンプしたりするんだ」
唐突に『ピー!』と警告音が響いた。
右手一本で立っていた姿勢から肘を曲げて顔を床に近づけていたのだけど。
「おっと、危ない危ない」
「今のは?」
「関節部のアクチュエーターが負荷限界超えたんだ。壊れる!って機械が悲鳴あげたんだよ」
「・・・・・・・」
水平に広げてバランスをとっていた左手をそっと床について。
そのまま両手で身体を再び持ち上げた。そしてそのまま、逆立ちのままの腕立て伏せ。
キュイーン ガチャン キュイーン ガチャン プシュー・・・・・
713 :
リハビリ室2:2012/11/15(木) 13:24:21.30 ID:ZXsuqIAt
「やらないの?」
「・・・・立てないの」
「どうして?」
「立ったこと無いから」
「リハビリ担当の人は?」
「何か確認してくるって言って事務所行ったきり」
「ふーん」
逆立ちのまま下半身を折り曲げると、今度は勢いをつけて反対側へ振り上げた。
その反動を使って半分の宙返りを行い正常立位で立っている男性のサイボーグ。
あちこちに接触痕や打撲痕が残っている外装金属は、だいぶ艶の無くなったつや消し状態だった。
「もう長いんですか?」
「なにが?」
「あ、いや、あの」
「サイボーグ?」
「はい」
まっすぐに見つめられてちょっと恥ずかしくなったのか。
ピョイと顔を背けて部屋の隅にあったガウンに袖を通し始めた。
「・・・・・・7年目かな。16の時にバイクでミスってどうしょもなくなってさ」
「7年・・・・ですか」
「うん。で、今ンところ本体更新を2回やってるからね。この身体はまだ4ヶ月なんだ」
「よんかげつ?」
「そう。前に使ってた人が相当荒れてたらしくてさ。あちこちガタガタなもんだから、ゆっくり調整中」
「使ってた?」
不思議そうに聞いてくる女性の声。
その声に男性の方もまた不思議そうだった。
「君は?」
「わたしですか?」
「そう。もうどれ位?」
「・・・・・・たぶん。四日目です」
「じゃぁ、まだ慣れないね。歩けないのも仕方ないか」
女性はコクリと頷いた。
頚椎部分の駆動系から空気シリンダーの排出音が僅かに漏れた。
「ところでそのボディ。もしかしてまっさら新品じゃない?」
「新品?中古ってあるんですか?」
「仕方ないでしょ。だってこれは国からの借り物なんだから。仕様許諾の書類にサインして宣誓しなかった?」
「なっ なにも・・・・ して・・・・ ません」
「そうか。じゃぁこれからなんだね」
男性はガウンの脇においてあったカバンから書類を取り出した。
「指が金属むき出しだと、紙を摘むのが大変なんだよ。床に小銭落としたりすると、まず取れないし」
書類と一緒に指サック状のゴムカバーを指に被せている。
その仕草がまるで男性器にコンド−ムを被せているようにも見えている。
714 :
リハビリ室3:2012/11/15(木) 13:26:42.58 ID:ZXsuqIAt
「先端に空気が入るとダメなんだ。密着させないと接触センサーに誤差が出るし、温度センサーが狂う」
「危ないんですか?」
「例えば、えらく熱を持ってる金属とか油断して掴むと、まずセンサー類が全部焼ききれて、それからエラー信
号が光神経に入ってくるから、脳がすごく痛がる。おまけに稼動部分の油圧系統が全部やられて動かなくなるん
だよ。自分の手が全く動かなくなったら、生身だってサイボーグだって大変でしょ?」
「そうですね」
男性の取り出した書類はA4版の紙に20枚以上有るようなものだ。
あれこれ事細かに諸注意と契約事項が書かれていて、最も重要な免責条項だけで5ページもあった。
「保険が効くから個人負担は最終的に87150円だけど、この身体は本体だけで約3億するんだって」
「サンオクエン????」
「そう。3億。だから、ある程度使いまわししないと国もたまらないって話なんだよね」
事も無げに言う男性の言葉が、逆に女性には驚きだった。
「でも、何で使いまわしを?」
「そりゃ、しょうがないよ。だって僕らはモルモットみたいなもんだから」
「モルモット?」
「そうだよ。まだまだ全身義体は進化の途中だからさ。使いながら改良してるような状態」
「そうなんですか。知りませんでした」
「この身体は科学技術庁の機材で厚生労働省が間に入ってレンタルしてるって訳だよ」
「・・・・・・・・」
「レンタル料が毎月25万だか26万だかって話だけど・・・・」
「そんなお金ないですよ。どうしよう・・・・・」
「あ、平気へいき。俺達はタダだから」
「なんでですか?」
「これ(身体)はメーカー側から動作テストのモニターと言う大義名分でさ」
「・・・・・・・・・」
「アルバイトみたいなもんで、レンタル料をメーカーが払ってくれてるんだよ」
「だからモルモット・・・・」
「そうそう。たぶん君の身体は最初から神経回路が光ファイバーだろうし、駆動系は静穏型の空気式だと思う」
「違うのもあるんですか?」
何も知らないんだね・・・・
どこかちょっと呆れている。
そんな空気を女性が感じ始めている。
気を使ったのかどうかはともかく、男性は声色をちょっと変えて話し始めた。
「うん。僕が最初に入った型のサイボーグは駆動系が水圧式で、おまけに駆動コンプレッサーがピストン型だっ
たから、そもそも同じ体積のボディで重量が3倍強あってさ。スリム体系なんだけど体重200kg越えてた。おまけ
に水圧式は駆動速度が遅くてさ。指先とかある程度早く動いて欲しい所は全然ダメだったんだよ。パソコンの
キーを叩くのに1分で120文字が精一杯だったり、あと、自転車すら乗れなかったし。一番困ったのが神経回路に
使ってたメタル結線部分で、水圧式だと中でさびたりするし、僅かに進入した水でショートして、真夜中に勝手
に体が暴れ始めたり。今はだいぶ良くなったけど、7年前は生活防水どころか雨の日には外出できなかったんだ
よね。君の身体はたぶん10気圧防水位になってると思うよ。ほら、ここにパッキンの取り付けマウントがある」
男性の黒いゴムカバーが付いた指先が、女性の炭素繊維で作られた鎖骨部分をなぞった。
「うぅっ!」
「あ、ごめん!もう神経回路繋がってたんだ」
「あ、いいんです。いいんです。私も初めて・・・・知りましたから。知らない事だらけです」
重い沈黙。そして、椅子から見上げる眼差しと、それを受け止める眼差し。
男性は書類を隣の椅子に置くと、そっと女性のほうに手を出して立ち上がる事を促した。
「立ってみなよ。まっすぐ立てるように成るには練習あるのみだよ」
「練習?」
「そう。3Dジャイロの学習機能にデータをためておくんだ。生まれたばかりの子供って寝返りすらうてないっ
て言うでしょ。それと一緒だと。まず立てるように成るには、100回くらいは立ったり座ったりを繰り返して」
715 :
リハビリ室4:2012/11/15(木) 13:28:01.64 ID:ZXsuqIAt
男性の差し出した手に女性が掴まっている。
「圧力センサー正常?バランス崩してビックリして、俺の手を握りつぶさないでね。怒られるから」
「はい」
両手を添えてもらって、彼女はやっと立ち上がった。
男性型とは違う作動音が部屋に響く。
ヒューンと言う小さな送風音と、そして、空気シリンダーが伸び縮みするシューと言う音。
「やっぱり空気式だ。いいなぁ静かで」
「あなたは?」
「俺のは油圧と、あと、形状記憶合金を使った電熱式瞬発駆動の板ばね併用型なスプリング動作」
確かに男性型の方からは空気式とは違う音がする。
「力は油圧式の方が有利だけど、煩いんだ。早くカバー付けたいよ」
男性がゆっくりと後へ下がった。
「歩ける?片足で立つって結構高度な姿勢制御だから」
男性の手に掴まっていて尚、女性の身体は前後左右に揺れている。
両足の空気シリンダーがプシュポシュと細かな姿勢制御を繰り返しているのが聞こえる。
やがて段々と振れ幅が大きくなってきて、明らかに女性の顔に狼狽の色が浮かぶ。
「キャッ!」
僅かに悲鳴を発して女性がバランスを崩した。
ただ、倒れこんだのは男性の両腕の中。
不可抗力で抱きしめられるような形に・・・・
「ごっ ごめんなさい・・・・」
「大丈夫?」
「すいません」
「慣れて無いんじゃしょうがないよ。リハビリって重要だよ?」
両腕に支えられて女性は椅子へ再び腰を下ろした。
丈夫に作られているはずの椅子がギシリと軋んだ。
「まっさら新品の身体なんだからさ。なるべく傷入れたり壊さないようにしないとさ」
「そうですね」
「次に使う人に、出きるだけ綺麗に引き渡してあげたいでしょ」
「・・・・・・私もこの身体を更新するんでしょうか?」
「たぶんね。だって、中身は最新式に切り替わってかないとつまらないでしょ」
「つまらない?」
「そうそう。最初はさ、動かすのが簡単なのに入るんだよ。考え方としてはロボットに乗ってると思えばいい」
「あぁ、そうか。段々と難しいのに」
「そうだね。反応が早かったりパワー制御的にピーキーなのだったり。サイボーグ慣れしてくると・・・・」
唐突にリハビリ室のドアがガチャリと開いた。
男性のほうはすばやくドアの方に顔を向けたのだけど、女性は一瞬部屋を見回してからドアを見た。
716 :
リハビリ室5:2012/11/15(木) 13:29:34.01 ID:ZXsuqIAt
「サイボーグ慣れすると、いきなり女の子口説いたりするようになるな」
「先生勘弁してくださいよ」
「だいぶ慣れたね」
「えぇ」
白衣を着た医師と思しき男性が入って来た。
胸のネームプレートには[義体制御内科/義体構造外科]の文字があった。
「ちょっとモニターとるよ」
「あ、はい」
タブレットPCを起動させてタッチパネルで何事かをいじっている。
男性の胸部にある埋め込み型のモニターにPC-LINKの文字が浮かんだ。
「あ、繋がってる」
「中身が見える?」
「あー 何もストアされてませんね。制御ソフトもバージョン一緒だし」
「おかしいなぁ」
「昨日の夜にQRコードのキー貰ったんで夜中の間にバージョンアップしておいたんですが」
「え?マジ?ほんとに?まだデバック終わってないよ!」
「まじっすか!んじゃ!」
医師と男性型サイボーグは二人揃って女性を見た。
その眼差しに一瞬気圧されるのだけど・・・・
「ちゃんと手を握れた?」
「はい。おまけに抱きしめちゃった。役得だった」
「危なかったなぁ・・・・ 出力制御パラメーター空欄だったんだよ」
「え゙?じゃぁ!」
もう一度女性を見た二人。
さすがにちょっと怖くなったようだが・・・・
「あの、何か問題があったんですか?」
女性型サイボーグが口を開いた。
その問いに男性型のほうが口をパクパクとさせている。
「いや。危うく君が彼の胸でプレスされてぺしゃんこになるところだった。彼の上腕部出力のパワーリミッター
が掛かってなかったんだ・・・・」
ちょっと青ざめてる医師。
だけど女性型のサイボーグはちょっと笑顔になった。
「じゃぁ、危うく私、もう一回死ぬ所だったんですね」
「そうなるね。いやぁ危なかった」
717 :
リハビリ室6:2012/11/15(木) 13:31:22.78 ID:ZXsuqIAt
冷や汗をハンカチで拭きながら、医師がタブレットPCをいじり始めた。
何かをインストールするのだろうか。男性型サイボーグの胸部インジケーターが高速で点滅してる。
「うわ、これは重いなぁ」
「制御周りのソフトはパワーリミッタだけじゃなくって暴走防止のセーフティが多いからね」
「自動でインストールしますよ?」
「あぁ、走らせて良いよ。こっちでモニターするから。ああ、その前に一旦椅子に座って」
「へい」
ドサリと椅子に腰を下ろして何かを考えてる風な男性型サイボーグ。
医師はタブレットPCの画面を見ながら、書類に何かを書いている。
「一旦コントロール切るよ」
「はい。OKです。いたずら書きとかしないでね」
ヒュン!と音がして、男性の姿勢がロックされた。
顔の表情だけが動いて目をキョロキョロさせている。
「眼球と表情筋だけは機械駆動じゃなくて筋肉なんだよ。だから姿勢制御ソフトをロックしても動ける」
僅かな間にソフトの上書きが終わったのか、再びヒュイーンと音がし始めて男性が動き出した。
スッとまっすぐに立ちあがって直立不動の姿勢になると、まず右手から自動で前に上がり始め、各関節の駆動
部を可動限界まで動かしてゼロ点へ戻る動作を始める。
右腕・左腕・右足・左足・腰部・臀部・頚部・背面・頚椎と動いていき、約5分後に再起動を完了した。
「あ、さっきより滑らかだ」
「そうか、じゃぁこっちの方が良かったんだな」
アレコレと話をしながら姿勢制御を調整しているのを女性が眺めている。
その視線に気が付いたのか、男性は笑顔を向けている。
「早く自分で動けるようになろうよ。結構楽しいぜ。自分で動けるようになったらデートしようよ」
女性は僅かに頷いて微笑んだ。
枯葉舞う季節の、とある大病院のリハビリ室での一こまだった。
−終−
GJ!
サイボーグ4日目の娘か。いいね!
出来る物ならゆっくりで良いから続きを期待しています。
妙な粘着が居ますけど気にしないで続けてください。
あら、気が付かないうちに新作が!
おいでやす。新人さん歓迎します!
マッタリ続きよろしくです。
ヤギーがいきなりできた印象があるのでロボット残党兵の世界とリンクさせたら三船がちょうど祖父の世代で、
ヤギーは戦後のよりハイテク化が進んだ義体と位置づけれるかも
新作GJです!
4ヶ月ぶりのSSな新作、良いなぁ。超好みです。GJですよ。
個人的には闘わないサイボーグ娘の話がツボなんで、ほのぼの路線で行って欲しい。
戦わないサイボーグ娘は自分も大好物だよ
`¨ − 、 __ _,. -‐' ¨´
| `Tーて_,_` `ー<^ヽ
| ! `ヽ ヽ ヽ 俺も非戦闘物のSS大好き
r / ヽ ヽ _Lj 軍隊用語考えなくて済むから好きw
、 /´ \ \ \_j/ヽ なんか現実とか常識と戦ってるようなのが大好物ですw
` ー ヽイ⌒r-、ヽ ヽ__j´ `¨´
 ̄ー┴'^´
725 :
卒業・保健室にて:2012/11/24(土) 23:38:43.96 ID:ioMXdppu
初めまして。こちらのスレ、と申しますか2ちゃんねるに初めて書き込みします。
ムラムラと自分の中で膨らむものを文章に出しました。
ノリとしては特撮ヒーロー物の最終回後みたいだけどちょっと違うかなという感じですが、あまり深く考えずお楽しみいただければ幸いです。
白衣・保健室属性が好きという方は特に。
とりあえず書き上がっている前半部分をアップします。
「失礼します」
扉を開けて保健室に入った俺を、いつもの人物が出迎える。
「いらっしゃい、待ってたわよ」
校医の宮村絵里先生が微笑みながら椅子から立つ。
「いよいよ剣也君も卒業か。ここで私達が会うのも今日が最後ってわけね」
名残惜しそうに絵里先生は言う。
「そう言えば先生、今年度で校医を辞めるそうですね」
「あなたがいない学校なんて、いたって仕方ないでしょう? そもそも『組織』が壊滅するずっと前から、私がここにいる意味は無くなってたのよ」
自嘲するように絵里先生──いや、元『組織』の諜報活動用スパイサイボーグSSB068は答える。
3年弱くらい前、入学したばかりの、ごく普通の高校生だった俺は、ある休日交通事故に遭い、病院に運び込まれた。
ところがその病院は、人間を薬物や機械化で改造し、愛玩用の人形や兵器として売る『組織』の隠れ蓑の1つで、俺は表向き事故で死んだ事にして、改造用素体にされるはずだった。
だが手術台に上げられたその時、重傷を負い、苦痛にさいなまれながらも鮮明だった意識を走る絶対的危機に、陳腐な表現ではあるが、眠っていた能力が目覚めた。
全身の傷が瞬く間に治癒し、常人の何十倍もの身体能力を発揮するサイキックとして覚醒した俺は、病院の医師やその他のスタッフ、警備員──無論『組織』の構成員達を倒した。
そして『組織』の非人道的な活動──改造され、自我を奪われ『組織』の操り人形と化した者達や、失敗作として無残に破棄された素体を目の当たりにした。
そして俺から平穏な日常と両親を奪った事故が、『組織』によって仕組まれたものだという事実を知り、俺は『組織』への復讐と壊滅を誓った。
そうして俺と『組織』との戦いが繰り広げられる中、俺の動向を密かに探り、機会があれば俺を籠絡、
もしくは暗殺するために、俺の通う高校に校医として送り込まれた『組織』のスパイが絵里先生だった。
(もちろん名前は偽物だし、『諜報活動用スパイサイボーグSSB068』という呼称も長ったらしいから、正体が分かった後も俺はそう呼んでいた)
スパイの任務というのは情報を集めるだけに留まらず、集めた情報の分析や正誤の判断、その他様々な状況で柔軟な思考と判断が必要とされ、
戦闘用サイボーグのように薬物や機械で洗脳し、自我を奪ってしまうとそうした能力が著しく失われるので、ある程度は自由な思考ができるようになっているそうだ。
しかしそのために常に『組織』の上層部では常にスパイサイボーグの反逆を警戒しており、正体が露見するしないに関わらず、一定期間使ったら破棄する事になっていたという。
先生もその例外ではなく、ある時組織の戦闘用サイボーグとの戦いで、俺を抹殺するための捨て石にされそうになったのだ。
いくら『組織』のスパイだったとは言え、保険医としての絵里先生は綺麗でスタイルも抜群、かつそれを鼻に掛けず優しく誠実に毎日の勤めを果たしていて、男女を問わず生徒からの人気は高かったし
(俺自身、気が無かったと言えば嘘になる)、他人が使い捨てにされるのを黙っているほど俺は鬼でもなかった。
そして半ば成り行きとは言え、俺に助けられた絵里先生は当然ながら『組織』を見限り、俺の戦いに協力してくれる事になった。
いくら100メートルを5秒も掛からず走り抜き、素手で厚さ50ミリの装甲板を打ち破る戦闘能力を持つサイキックとは言え、それを除けば俺はただの高校生でしかない。
『組織』から送られる刺客を撃破する事はできても、手がかりを探し、『組織』を追い詰めていくための情報を手に入れる事では全くの素人だったから、絵里先生の情報収集、分析能力は『組織』との戦いで大きな助けになった。
そうして戦闘担当の俺と、バックアップ担当の絵里先生のコンビで『組織』の拠点を1つ1つ潰し、2年以上に渡る戦いの末に去年の暮れ、最後に残った『組織』の基地へ俺と、強硬に同行を主張した絵里先生は突入した。
絵里先生が基地の防衛システムにハッキングして混乱に陥った所へ、先生のナビゲートを受けた俺が中の敵を片っ端から倒し、施設を破壊し、遂には『組織』のトップを打ち倒し、基地を完膚なきまでに破壊して『組織』を壊滅させたのだった。
「さてと、いつまでも感傷に浸ってても仕方ないしね」
絵里先生はそう言うと保健室の扉の鍵を掛け、俺は窓のカーテンを閉める。
保健室の壁や窓ガラスは先生が密かに防音、防弾製にしているので、カーテンを閉めたら中で何が起こっているか、外からは何も分からなくなる。
俺と一緒に『組織』と戦うに当たり、絵里先生は1つの『お願い』をしてきた。
先生のような、生体脳を除く全身を機械化したサイボーグは人間の中に紛れて活動する必要上、人間と同じように食事はできるが、
飲み込んだ物は全て体内の貯蔵庫に一旦納められた後、ミンチにして排出するだけで栄養を摂る事はできず、エネルギーは生体脳を活かすためのブドウ糖と、機械の体を動かすための電力のみだ。
加えて味覚・嗅覚もないので食欲は満たされず、それを補おうとするように他の欲望が突出的に増大するという。
他の『組織』のサイボーグ達はほとんど破壊衝動、殺人衝動が増大していたが、絵里先生の場合はいわゆる『性欲』で、俺を探る任務に送り込まれる前から捌け口を求めて夜な夜なあえいでいたそうで、
そこへ俺という若く健康的な青少年の味方になる事は、向こうにとってもある意味渡りに船だったのだ。
そんなわけで、俺と絵里先生は大体週1くらいのペースで、この保健室で『やっていた』のだった。
「最後だもの、思い出に残るようなものにしましょう」
俺の背中に両腕を回し、先生の顔が間近に迫る。
茶色がかったミディアムボブの髪が俺の首筋を撫で、両目の瞳に俺の顔が写る。
それが放熱索と頭部への衝撃吸収機能を備えた特殊繊維製の人工毛髪と、カメラセンサー搭載の義眼だと知っていても、数え切れないほど繰り返してきたシチュエーションだとしても、
この時点で俺の心拍数は速くなり、呼吸を落ち着けるのも一苦労だった──
続く
あ、上の番号は2の間違いでしたね。
失礼しました(汗)。
「始めましょう」
絵里先生の甘い吐息が俺の顔に掛かる。
サイボーグである先生に呼吸の必要は無いが、僅かな違和感からでも正体を気取られないためで、ガスを混ぜる機能も付いていた。
先生がまだ敵だった頃、これで催眠ガスを吸わされかけたことがあったのも、今では思い出の1つだ。
俺と絵里先生は互いに顔を更に近づけ、唇を重ねる。
人間の肌の質感を完璧に再現した、特殊樹脂製の人工皮膚。
だが、作り物の肌、作り物の唇と分かっていても、先生の唇は柔らかく、俺の唇を離さない。
やがて互いの唇を重ねたままわずかに開けると、口腔から舌を伸ばす。
初めは舌先を触れ合わせ、次いで奥まで伸ばし、互いの舌を絡め合わせる。
俺の舌が先生の舌の裏側を舐めたかと思うと、今度は先生の舌先が俺の舌の奥を突く。
負けじと先生の舌を横から包み込もうとするが、生身の人間よりも遙かに長く伸びる先生の舌は逆にそれを絡め取ろうとして、攻めて攻められての応酬が口の中で続く。
長い接吻の後、俺と先生の唇がゆっくりと離れる。そこに掛かった銀色の橋が切れて、数秒間沈黙が流れる。
「上手くなったわね。私が攻めっぱなしだった最初の頃とは大違い」
頬の人工皮膚を仄かに紅くして、絵里先生は言う。
それから先生は俺のブレザーのジャケットを脱がせ、俺は抵抗せず、更にネクタイ、ワイシャツと脱がされていく。
すぐに俺の上半身が露わになる。『組織』との戦いと、そのための訓練で、細身だが筋肉質で引き締まった体。
先生は俺の胸板にその白い手を触れ、細い指先でなぞっていく。
先生の手は胸板から腹筋へ、下に向かって撫でていき、ズボンまで行き着くとためらいなくボタンを外し、ファスナーを下ろす。
そしてズボンを下ろし、更にパンツを下ろすと、既に限界まで怒張している俺のモノが現れる。
絵里先生が俺のモノに、根元からゆっくり指先を伝わせると、敏感な部分への刺激で俺は思わず「うっ!」と叫んで体をビクッと震わせる。
先生は「あらあら、こういう所は全然変わらないわね」と微笑むと、先端まで行った所で指を離し、今度は根元からぶら下がっている袋に手を遣る。
「うわっ、重たい。いっぱい詰まってるわね」
2つの睾丸を手の平で転がしながら、嬉しそうに声を上げる先生。
絵里先生との関係が始まって間もない頃、年頃の健全な男子としての性で、いわゆる男性向け写真集をオカズに出したら、翌日先生にバレて烈火の如く怒られたのだ。
「私という者がいながら、他の女に出すなんて!」と。
何しろ絵里先生の電子義眼はサーモグラフィーの機能も付いているから誤魔化す事もできず、その日の放課後保健室でどんな事になったかは想像にお任せする。
一つだけ、直後にその手の写真集の類は全て処分した、とだけ言っておく。
「こんなにいっぱい溜めてきてくれて、嬉しいわ」
先生がパンパンに膨らんだ副睾丸を指で軽く押すと、思わず出しそうになった俺は歯を食いしばって耐える。
「アハッ、ごめんね」
絵里先生は笑って詫びると袋から手を離し、俺のモノに両手を添えると先端を口に含んだ。
「あぁ……」
小さく声を上げる俺をよそに、先生は更に奥までくわえ込み、舌を絡みつかせ、攻め立てる。
その絶妙な舌技に、俺はプライドと精神力を振り絞って耐えるが、
「くっ……あぁぁぁぁっ!!」
結局限界を超えた俺のモノは、激しく脈打ちながら先生の口の中に精液を吐き出す。
先生は喉を鳴らして1滴もこぼす事なく俺の精液を飲み干し、更に鈴口にも舌を絡めて絞り出す。
「濃厚で量もあったわ……でも、これで終わりじゃないでしょう?」
絵里先生は俺のモノから口を離し、口元を拭うと、一度は放出して萎えていたがまたすぐに反り返るモノを見て満足げに頷く。
「それじゃ、次は剣也君が先生を気持ち良くさせてくれる番よ」
先生はベッドに腰掛けると、来ている物を脱ぎ始める。
まずは白衣、次はスカート、ブラウスも床に脱ぎ捨てて、先生は下着姿になる。
ブラウスがはち切れそうになっていた胸を包むブラジャーと、秘所を隠すショーツが、白い肌と対称的な黒で俺の目の前に入る。
「さあ、いつも通りここから先は剣也君が脱がせて」
微笑みを浮かべ、先生が俺を誘う。
俺は先生に歩み寄ると、背中に両手を回す。
流石に慣れた動作なのだが、あまり早く済ませると先生が物足りなさそうな顔をするので、わざと手間取っているふりをしてじらしてからホックを外す。
そうしてブラジャーを外すと、豊かな膨らみの頂に薄桃色の乳首が立った、白い乳房が露わになる。
「先生、この胸、前より大きくなった気がするんですけど?」
「そうよ。前回の後で改造したの。機械の体って、こういうのが簡単だから便利よね」
剣也君も大きい方が好きでしょう? という先生の問いに、俺は答えずそれぞれの乳房に手を乗せる。
言われなければ作り物とは分からない、柔らかく、温かい感触が両手に伝わる。
最初は優しく、ゆっくり力を込めながら、俺は先生の乳房を揉む。
「あぁ……」
漏らすように、先生が声を上げる。
俺は更に緩急を付けながら手を動かし、時折乳首にも指で刺激を与える。
「ああっ、そうよ、良いわ! 本当に、上手になったわ!」
先生は喘ぎ声を上げながら、右手をショーツの中に差し入れる。
既にショーツは内側からにじみ出る愛液で濡れていて、そこから引き出された指は蛍光灯の光を反射してキラキラと輝いた。
続く
途中ですが今回はここまでと言う事で。
続きは早ければ次の土日に。
これは良い!
「作り物」を強調した文章がツボですw
なんぞこの淫魔ロボはwwwすごくイイ!
サイボーグはロボじゃないもん!
あくまで人間だから萌えるのに
ロボットでは有りませんよ。
ア・ン・ド・ロ・イ・ドです。
まあ、ロボとアンドロイドの間にも絶望的な差があるよな。
あくまで被操作体であるロボットと自立AI作動のアンドロイド。
その意味じゃアンドロイドと完全義体化なサイボーグの間の方が、
実は差が無いのかも。
AIと言うただの「プログラムされた仮想人格ソフト」に人格権が有るのか否かって話なだけだし。
脳を左右分離して二体のサイボーグに移植するとか
>>736 いやアンドロイドはロボットの一種だけど
サイボーグはそもそもロボットに入らないから
R・TYPE…じゃなかったR・田中一郎君は人間じゃありません
ひさしぶりに来ました。
MIBさんが大好きだったんですが、もう書いてくれないのかなあ。
ヤギーの社会人生活をもっと読みたいな。
藤原との結婚生活とかも見たい。
ヤギーは苦手だなあw
ヤギーさんは機械フェチにはもの足りないんだろうな。
サイボーグでなくとも薄幸普通女で話が成り立つ部分多いし。
逆に言うとそこが良いんだけど、戦うサイボーグ娘スキーとは相容れないのかもしれない。
個人的には戦闘兵器が女性型サイボーグであるべき蓋然性を全く理解出来ないのでw
ヤギーさん路線大好きです。そんで、スレの隆盛を願いたいから、どっちの路線でも投下を歓迎します!
自分もヤギー大好き
世界観とか設定とか日常って舞台がいいよね
ヤギーは結構好きだったな
攻殻のような技術設定感の中にある日常のような感じで「サイバーパンク」な日常感が良かった
ただ、細かなメカネタであっちの掲示板が騒いでいた時には萎えた
内輪感がハンパなかった
ヤギーは腐女子敵世界観?が苦手だったな
あとサイボーグものには悲劇性を求めてしまうので、そのあたりも
拉致られて強制的に改造、不条理な扱いを受ける、っていうのは漏れにとっては大前提なんだよorz
変態スマソ
>>742 >戦闘兵器が女性型サイボーグであるべき蓋然性を全く理解出来ない
俺も俺もw
たとえるなら「ガンダム」よりも「パトレイバー」なんだよなぁと思う。
日常生活の中に普通にサイボーグが居る世界を妄想すると妙に楽しいw
サイボーグ娘の日常生活とか楽しそうだよなぁ
SF的観点からじゃなくおれは萌えるのが目的だから
悲惨な境遇に持ち込むには拉致、改造、兵器化が一番萌えるシチュエーションと思う
「舐めてみて」
愛液で濡れた指を目の前に出して、絵里先生が言う。
俺は先生の乳房への愛撫を続けながら、先生の指を口に含む。
「どう?」
若干不安そうに、先生は尋ねる。
「甘くて、良い香りがして、まるで蜜のようです」
「良かった。先生、味覚と嗅覚が無いから成分分析だけが頼りだったんだけど」
安堵する先生。
「前に出してたのは、こんなのじゃありませんでしたよね?」
「ええ、女性器のパーツも、今日のために新しく換装したの。もっと舐めていいのよ」
絵里先生は上体を反らせて俺の手を胸から離す。
俺は視線を下に向けると、愛液で濡れたショーツが目に入る。
「脱がせて……早く……」
囁く先生に、俺は両手をショーツに掛けると、ゆっくり、ゆっくり下ろしていく。
それと共に、絵里先生の隠されていた箇所、女性の最も神秘的とされる場所が露わになっていく。
余計な物に一切隠されていない、気持ち開いた綺麗な花弁。
先生が両足を開くと、俺はその付け根に顔を近づけ、口を付ける。
「あ……」
先生が小さく声を上げる下で、俺は花弁の中へと下を入れる。
中に溜まって今も外へ溢れている愛液の、濃厚な甘味と香りが、俺の味覚と嗅覚へ洪水のように押し寄せてくる。
俺が蜜を舐め取るために下が花弁に触れる度に、絵里先生は快感に身を震わせ、太股で俺の頭を挟み込む。
溜まっていた愛液をあらかた舐め取ると、また新しく染み出して来たが、俺は舌を止めて上を見上げる。
絵里先生の顔はすっかり紅潮していたが、更なる期待を込めた目で俺を見ている。
俺は先生の秘部から顔を離し、立ち上がって先生の肩を掴むとベッドの上に倒し、その勢いで俺自身もベッドに乗る。
俺は屹立を続け、先走り液が垂れるモノの先端を、入口に当てる。
恐怖1割、期待9割の表情でそれを見ている先生の顔を見ながら、俺は腰を突き出す。
入ってすぐ、先端が何かに当たり、「?」という俺の表情を見た先生が、
「いいから、入れて」
そう促され、腰に力を入れると、呆気なく突き抜け、同時に、絵里先生が「んっ──!」と身を震わせる。
俺のモノは襞を押し分けながらどんどん先生の奥へ向かい、遂に根元まで俺のモノが入る。
それを合図のように、俺と先生は互いの唇を合わせる。先生が俺の肩に手を回すと、俺も先生の細く締まった腰を抱く。
俺達は互いに腰を動かし合い、絵里先生の襞が俺のモノに絡み、締め付け、俺のモノも先生の中を激しくこすりつける。
「どう、新しいパーツは? これまでの、データを元に、再設計、したの!」
「はい! 前よりも、強く、締め付けてきて、襞も、吸い付いてくるようです!」
快感の洪水の中で、ベッドを揺らしながら、互いに言葉を絞り出す。
やがて先生が最高潮に達したらしく言葉にならない叫び声を上げ、同時に俺も先端まで迫ってきた熱い物を先生の中に、奥深くまで放出した──。
「凄かったわ……今までで一番激しくて、一番たくさん出したわね……」
互いに絶頂を過ぎた後、絵里先生が先に口を開く。
やはりこういう時はサイボーグの方が回復が早いのか。
思い出したように、俺は先生の中からモノを出す。
愛液に塗れていたそれは、すっかり萎んで小さくなっている。
きっと、溜まっていた物も、出し尽くしているだろう。それだけ激しかった。
その証拠に、2人の体が離れても、俺はベッドの上から立ち上がる事もできない。できないはずだったが──、
「あっ」
不意に先生が声を上げ、俺が顔だけ向けると、続けて絵里先生は思いも寄らない事を言った。
「今、受精を確認したわ」
「受精って、何だよそれ!?」
反射的に俺は跳ね起きて、上体を起こした絵里先生に向き合う。
「保健の授業で習わなかった? 精子が卵子の中に入って細胞分裂によって成長可能な状態になる事よ」
「そんな事訊いてるわけじゃねえ!」
思わず声を荒げる俺に、先生はフフッと笑って、
「冗談よ。計算上では射精からもっと時間が掛かるはずなのに、流石は剣也君の精子だわ」
「答えになってないだろ!」
受精というのはつまり妊娠、俺と先生の子供が出来たと言う事だ。絵里先生はサイボーグ──機械の体なのに!
俺の困惑を見透かしたように、先生は話を続ける。
「去年の暮れ、『組織』の基地へ攻めに行った時、私、無理言って一緒に行ったでしょ。剣也君のサポートをするためというのも本当だったけど、もう1つ理由があったのよ」
「理由?」
何となく察しは付いていたが、俺は問い返す。
「そう、『組織』のコンピューターシステムから研究データ──妊娠可能な人工子宮の設計図やその他諸々を頂くためにね」
以前、俺は絵里先生から聞かされた事があった。『組織』は改造人間や、素体から摘出した臓器だけでなく、人工臓器も金持ち相手に売っていたという。
そう考えれば、不妊症や、病気で生殖器を摘出した女性が子供を産むための人工子宮を『組織』が研究していたとしても、不思議ではなかった。
「私がサイボーグになる前に、研究用に供出して、冷凍保存していた卵子が、処分されずに残ってたのも幸いだったわ」
そして、俺の卒業式を前に人工子宮の現物を完成させ、自身の卵子をセットして体に組み込み、それから色々あって今に至る──と言う訳か。
「何でそんな事したんだよ? もう『組織』はなくなったんだし、俺と先生が一緒にいる理由なんてないだろ!?」
事実、『組織』の壊滅後も残党は散発的に活動していたが、既にあらかた潰していた。だから今日で最後のはずだったのだ。
「甘いわね。『組織』がなくなっても、犯罪組織や結社は他にもたくさんある。そいつらが剣也君の存在に気づくのは、遅かれ早かれ時間の問題よ」
生徒の間違いを指摘する教師の口調で、先生は言う。
「そいつらを相手に、1人で戦い抜ける? 少なくとも私は無理。賭けてもいいわ」
絵里先生は俺に向かって体を寄せ、右手で俺の頬に触れる。
「それに、体は機械になったって、脳は生身なんだもの。人並みの幸せが欲しいって思っても、変じゃ無いでしょう?」
顔を近づけて、先生は囁く。
「ほら、前に言ってくれた事があったでしょう? 『生身でも機械でも関係ない。自分の心が、意志がある限り、先生は人間だ』って」
ああ、『組織』の幹部との戦いで、先生の事を『裏切り者のスパイ人形』と呼ばれた時に俺が返した言葉か。良く覚えてたな。
「あの時、私は思ったわ。剣也君と一生を共にしたい、と。愛し合って、子供を作って、家庭を築いて、普通だけど、当たり前の、幸せを──」
そこまで言って、先生は不意に言葉を詰まらせる。
「けど、もしあの言葉が剣也君の本心じゃなくて、その場の勢いとかで出たものだったら……怖いから、ずっと、考えないようにしてたのに……」
そう先生が言った直後、ベッドのシーツに数滴、滴が落ちて染みを作る。
「あれ、おかしいわね、目から水が出るなんて。改造のせいで、体がシステムトラブルを起こしたのかしら?」
うつむいて、嗚咽を漏らしながら、不思議そうに言う先生。俺は小さく溜め息を吐いて、
「なあ先生、いくら復讐のためだからって、俺が気のない相手と何度もエッチをするような鬼畜だとでも思ったか?」
呆れた口調で俺は尋ねる。
本当に呆れるよ。学校じゃ絵里先生のファンは数え切れないほどいて、かくいう俺もその1人だってのに。
『組織』のスパイでサイボーグだと知っても、俺が先生と保健室で密かにエッチしてるのが、先生を独り占めできるようで嬉しかったのに。
内心じゃ『組織」を潰して卒業してからも一緒にいたかったけど、下手に告白して断られたら格好悪いから、黙って別れようと思ってたのに。
甘党な俺に合わせて女性器から分泌する愛液を味付けしてくれたり、処女膜まで付けてくれたりして、俺に気があるんじゃないか、いや、ただのサービスかもと内心葛藤してたのも知らないで。
言いたい事はいっぱいあったけど、俺は黙って、顔を上げた絵里先生の、まだ嗚咽が漏れていた口を、自分の口で塞ぐ。
「止まるまで、こうしているよ」
それから俺は先生を抱きしめて、耳元で囁く。
「そんな事されたら、余計、止まらなくなっちゃうじゃない──」
俺の肩に落ちる絵里先生の涙は、とても温かかった。
自分の場合、「戦闘兵器が女性サイボーグである事の蓋然性」への疑問というより
「女性サイボーグが戦闘兵器である事の蓋然性」への疑問の方がむしろ大きい
結局「戦闘兵器たる女性サイボーグ」があんまり好きじゃないというところは同じなんだけどもw
サイボーグは強化改造というより失われた生身の体を補う物という側面で見てるので
生身を完全に再現しきれないが最大限の努力が払われているような描写が好き
どうしても生身を再現できない部分はせめて機械の長所をQoLにつなげようとするのも好きなので
機能や形状が生身から逸脱しちゃってるようなのが好きだったりする
悲惨という観点から言えば、事故なり病気なり犯罪なりで生身を失って機械にならざるを得ない時点で悲惨なので
わざわざ強制改造とかは個人的には必要無い。あくまで個人的な好みの上ではだけど。
むしろ何とか日常を取り戻そうとする、何とか人間らしく生きようとするのが好き。
というわけで、個人的にはヤギーは結構好みに近いタイプの話だったりする
わ、ごめんなさい!割り込んじゃいました…orz
「すっかり顔がグシャグシャになっちゃったわね。直してくるわ」
ようやく涙が止まった絵里先生が、恥ずかしそうに笑ってベッドを降りる。
ここで言う『顔を直す』というのは、一般的な表現と同じ、化粧を直すということで、先生は洗面台の鏡に向かって化粧を始める。
「先生、サイボーグの人工皮膚って、そのままでも十分綺麗なのに、何でわざわざ化粧なんてするんですか?」
そう尋ねる俺。言った直後、『あっ、失礼かな?』と思ったが、先生は怒りもせず、「何言ってるの」と呆れた口調で、
「それはまあ、すっぴんでも綺麗なようにこの顔は作ってあるけど、女は化粧で色々と変身するのよ。サイボーグでもそれは同じ」
覚えておいた方が良いわよ、と言いながら、それでも男の俺には分からない微妙な色を先生は乗せていく。
「良し、完成」
出来映えを鏡で確認して、絵里先生はベッドに戻ってくる。
確かに、以前は『オトナ可愛い』という雰囲気だったが、今の先生はより『大人』の雰囲気を纏わせている。
先生の言葉が真実だった事を間近で確かめ、感嘆する俺に、先生は満足げに微笑む。
「この部屋でのエッチは今日で最後だけど、これからはもっといろんな場所でしたいわね。例えば、お風呂でお互いの体を洗いながらやるとか」
先生の話を思わず想像して、出し尽くしたはずの俺のモノが再び元気を取り戻し始める。我ながらなんて素直なんだ、俺の本能は。
「まあ、それはともかく剣也君、喉が渇いたでしょう?」
それを見た先生が、笑顔で尋ねる。
「でも、ここには飲み物はないでしょう? 自販機はここを出ないと行けないし、水道しか……」
「大丈夫」
いたずらっぽく微笑みながら、先生は言う。
「さっき、胸を改造したって言ったでしょう? 実はね、かなり気が早いと思ったけど、生まれてくる子供のために、授乳機能も付けちゃったの」
少し恥ずかしそうに言う先生。
「黙ってたとは言っても、剣也君の胸を揉むテクニック、凄いんだもん。こぼしちゃいそうで不安だったわ」
今回3番目の衝撃に、俺はパニック寸前になる。1番目と2番目は、言うまでも無いだろう。
「摂氏40度でミルクを温めてあるわ。剣也君、味見してくれる?」
そう微笑みながら両の乳房を持ち上げて見せる絵里先生を見て、俺は先生の化粧の意味を悟る。
ああ、これは、母親の顔なんだ、と──。
こうして俺はこの日、高校を卒業したが、絵里先生からは一生卒業できない身となった。
けれど、こういうモラトリアムなら悪いものじゃない。
だって、俺も、絵里先生も、互いをこれ以上無いくらいに愛してるんだから。
終
投下乙!
そして良い完結だった。
うむ。こう言うのも良いな。
んで、ヤギーさんネタの件。
好きか嫌いかを言うのは良いけど、嫌いなネタを追い出さないように気を付けような。
自分好みじゃない話しを作る人にも感謝とリスペクトを。
そうして行けば、スレ全体が必ず隆盛するからさ。
いま現時点でも栄えてるスレは、様々な切り口からでも話が紡がれて、
共存共栄できてるところばかりだからさ。
好みの問題だな
自分は拉致強制改造が萌える
非人道的扱いの最たる物はやはり兵器化とか軍や戦争に利用される、とかだから戦闘に使われて破壊されるのが萌える
故障したら使い捨てられる、みたいな
私は、機械の身体になりたての頃、この身体が大嫌いだったんだ。
まず、ごはんを食べられないことが嫌。うー、正確に言えば、食事はできます。
栄養カプセルっていう世にも味気ないシロモノを水なしで飲み込むことが、私に
とっての食事でした。でも、一般的には、それは食事と呼べるものではないし、
それ以外のものを口にできるような構造に、この身体は、なってない。舌はついて
いるけど、飾りみたいなもので、味なんてこれっぽっちもわかりはしない。食欲、
性欲、睡眠欲が人間の三大欲求ってよく言われるけど、そのうちの三分の一が
永遠に私から消え去ったことになる。これって、人生が三分の一短くなったのと、
ほとんど同じ事だよね。
他にも、嫌いなトコロは沢山ある。ありすぎて、いちいち挙げていけばキリが
ないくらい。義体なんて所詮、生身の身体の代用品でしかないわけで、生身の
身体の感覚を、完全に再現することなんて、まだまだ夢物語だって分かっては
いるけど、地球が50億年かけて作り出した肉体の神秘に比べると、余りにも
稚拙でお粗末なお人形さんには、失望することばかりだった。
もちろん、機械の身体になったからこそ、得たものも、ないわけじゃないよ。
女性にとっては、憧れともいえる永遠の若さってものを、外見だけでも手に入れた
ことになるし、物理的な衝撃には、生身の身体に比べたらずっと強くて怪我知らず。
風邪だってひかずにいつだって健康そのもの。リミッターを外せば120馬力も
出せる力持ち。他にも他にも・・・。まっ、どれもこれも、メリットっていうより、
活用すればするほど自分が、もうニンゲンとはかけ離れた存在なんだってことを
思い知るだけのような気がするけどね。はは。
・・・でも、イソジマ電工に入社して、ケアサポーターとして義体化一級のユーザー
さんたちの担当をさせていただく立場になりますと、やっぱり、そんな考え方も多少は
変わってくるわけです。
突然の事故に、不治の病。理由はイロイロあるけれど、義体化一級のユーザーさんは、
私も含めて皆、死の淵に片足どころか両足までどっぷり浸かった状態から、奇跡的に
生き返ることができた人たちばかり。たとえ身体が全部機械になってしまったとしても、
せっかく助かった命なんだ。新しい身体に一日も早く慣れてもらって、できるだけ早く
社会に復帰してほしいって思うよね。
そのために、まず、私が、自分の身体と向き合わなきゃいけない。それで身体の機能を
ばんばん使いこなして、ユーザーさんに、義体って便利なのですよー、こんなこともできるの
ですよーって、実際に示してあげなきゃいけないって思ってる。自分の身体を使って
お手本を見せられるっていうのは、他のケアサポーターには無い、私だけの個性なんだからね。
と、まあそんなわけで前置きが長くなってしまったけれど、最近は、私も義体の機能も
積極的に使うようにしている。以前は、時計機能を使うことすら抵抗あったから、大きな
進歩だって思いませんか。私って、オトナになったって思いませんか。
ちなみに最近のマイブームは、義体の自動発声機能。しゃべりたいことを前もって録音して
おきさえすれば、自分で意識せずとも義体の補助AIが勝手にしゃべってくれるという
優れもの。どんなときに使うかっていうとさ、たとえば、今みたいなときに使えばいいんだよ。
ふふふっ。
えーっと、今、私がいるのは、菖蒲端のワイ横の、とある価格破壊系のラブホテルの一室。
ラブホとは思えないほどの飾りっ気のなさで、下品な言い方をすれば、やれればいいやって感じ。
藤原も私も忙しくて、ようやく菖蒲端駅で落ち合えたのは、金曜日の終電も間近の時間帯。
もう少し時間があれば、ホントは藤原に付き合って、どこかお店に飲みにでも行くところなんだけど、
時間も時間だし、もう直接ホテルに行こうってことになったってわけ。
でね、鼻息荒くしている藤原には、大変申し訳なくって直接言えなかったんだけど、正直今日、
私は、「してしまう」ことについて、余り乗り気ではない。実は、ここ一週間、あるユーザーさんの
義体トラブルが続いて、ずーっと残業だったんだよね。機械の身体だから、働きづめでも肉体的に
疲れるってことはないけれど、それでもロクに睡眠も取れないとなれば話は別。もし生身なら、
たぶん目の下に大きなくまを作っていてもおかしくない。藤原には申し訳ないけど、やっと仕事から
解放されて緊張感が緩んだこともあって、今すぐにでも寝たい気分なんだ。とはいえ、せっかく
ホテルまで来て、バタンキューでは、ここまで付き合ってくれた藤原に余りにも申し訳なさすぎるよね。
そこで役に立つのが、この義体の自動発声機能です。
藤原がシャワーを浴びている隙に、義体が汚れていないから、今日はシャワー浴びなくていい、
なんて適当に一緒にシャワーに入らない理由をつけた私は、着ているスーツやら下着は綺麗
さっぱり脱いで、いつでも藤原君を受け入れられますよ的体制を整えた後、ベッドにごろんと
仰向けに寝そべりながら、早速、これからの準備することにする。
「んっ」
目をきゅっとつむって、サポートコンピューターにアクセス。まぶたを閉じた私の視界に表示
されるのは、サポコンの義体設定とメンテナンスの画面。
まず、義体の性感の数値は最低にしておく。藤原には申し分けないが、今日は性欲より睡眠欲が
勝っているのである。変に感じてしまって、眠れないと困るのだ。
それから、いよいよ自動発声機能を使う。藤原のナニが、あそこに入っている間は、あらかじめ
録音しておいた
「藤原大好き、藤原大好き(中略)、もっとして、もっとして(中略)、いいよう、いいよう、すごく
いいよう、あっあっあっ(以下省略)」
というフレーズが、私の意志と無関係に喉の奥のスピーカーから出るようにセッティングして
おく。ちなみにこれ、寮で、皆が寝静まった夜中に、ゼッタイに音漏れしないように布団を頭から
すっぽりかぶりながら録音した自信作だ。
藤原は、小さなシャワールームから出てくるとすぐ、ざっと身体を拭いただけの、まだ湯気が
ぽかぽかたつ身体のまま、ベッドに寝ている私に向かって、一直線に飛びかかってきた。
「よしよし、いい子ちゃん、いい子ちゃん」
上から覆いかぶさる藤原の顔をそっとつかんで、お互い目を見つめ合ったあと軽くキス。
それから、藤原の背中に手をまわして、ぎゅっとお互いの身体と頭を抱き寄せる。
(藤原、ごめん。本当にごめんね)
私は天井を見つめながら、軽く微笑んだ後、すとんと眠りに落ちて行った。あとの、藤原との
おつきあいは、補助AIくん、君にまかせたからね。
どのくらい、時間がたったものやら。
・・・・・・ぱんっ!ぱんっ!ぱんっ!
両方の、ほっぺたを手のひらで、軽く叩かれ続けた私は、夢の世界から無理やりゲンジツに
引き戻された。
「いいよう、いいよう、すごくいいよう!」
なんだ、この耳障りな声はって、一瞬思ったけど、よく考えた補助AIに操作をまかせた
私の声だった。
「ふじわら、一体なんなのさ」/「あっあっあっあっあっ」
しまった。うっかり、自動発声機能もセットしたまましゃべってしまい、一人ハモリをしてしまった。
あわてて、目をつむってサポコンを操作して、自動発声をカットする。恐る恐る目を開けると、
目の前で藤原が睨んでた。やばい、ばれたかも。
「裕子さん、ちょっといいかな」
藤原は、私と身体をつなぐのをやめて、ベッドの上で正座。ちんちんおっ立てて裸で正座とか、
超恰好悪いんですケドって、からかいたかったけど、そう言える雰囲気でなし。私も、裸で正座して
藤原と向き合う。
「あのね。俺が気づかないと思ってる訳?」
「え・・・えと、何をですか・・・」
すっとぼけて、天井を見上げる私。もう心当たりがありすぎて、藤原を正視できない。
「俺から全部言わせる気?じゃあ、はっきり言わせてもらうけど、俺、機械人形を抱く趣味は
ないから」
「あ・・・言っちゃったね。藤原、言っちゃいけないことを言った」
「言うよ。言うさ。何やったか知らないけど、さっきの明らかに裕子さんじゃなかったよね。
そうでしょ」
「う・・・えと・・・それはその・・・疲れてたから・・・」
図星を突かれた私は、あっさり白旗をあげた。確かに、さっきの私は、私でない違う何かだった。
機械人形と言われるのも無理はない。
「裕子さんが疲れてるのに気が付かない俺が悪いのかもしれないけど、疲れてるなら、疲れてるって
言ってほしかった。ちょっと人を馬鹿にしすぎじゃないか」
そう言うなり、立ち上がって服を着始める藤原。
「ちょっと、どこ行くのさ」
「やる気失せた。帰る」
後は、私が何を言っても全部無視。最後に
「そんなことばっかりしてると、裕子さん、いつかきっとしっぺ返しが来ると思うよ」
なんて言い捨てて部屋から出て行ってしまった。私は、閉じたドアに向かって、しばらくあっかんべー。
なんて憎たらしいんだろうね。確かに私も悪かったけどさ、私の言うことに耳も貸さないで一方的に
出ていくなんて、ひどすぎるよ。いっとくけど、こっちは義体化一級の身体障碍者なんですからね。
そういう私に対するいたわりの気持ちなんて、一切ないよね。こっちがどれだけ、ヒトとして当たり前の
ことができなくなってるのか、知りもしないくせに。そんな私が、少しくらい機械の身体の機能を使って
ラクしたっていいじゃないか。そんなの、できなくなっってしまった、もっとずっとすっとたくさんのことに
対する、ほんのちょっぴりのお返しみたいなものだ。使って当然の権利だ。しっぺ返しなんて来るわけ
ないよ。